衆議院

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第17号 平成28年2月29日(月曜日)

会議録本文へ
平成二十八年二月二十四日(水曜日)委員長の指名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。

 第一分科会(皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項)

   主査 平沢 勝栄君

      岩屋  毅君    小田原 潔君

      保岡 興治君    大串 博志君

      重徳 和彦君

 第二分科会(総務省所管)

   主査 石田 真敏君

      奥野 信亮君    佐田玄一郎君

      長坂 康正君    階   猛君

      松浪 健太君

 第三分科会(法務省、外務省及び財務省所管)

   主査 菅原 一秀君

      衛藤征士郎君    小林 鷹之君

      野田  毅君    緒方林太郎君

      濱村  進君    赤嶺 政賢君

 第四分科会(文部科学省所管)

   主査 石原 宏高君

      井上 貴博君    竹下  亘君

      古屋 圭司君    井坂 信彦君

      浮島 智子君

 第五分科会(厚生労働省所管)

   主査 秋元  司君

      金田 勝年君    根本  匠君

      山下 貴司君    西村智奈美君

      山井 和則君

 第六分科会(農林水産省及び環境省所管)

   主査 鈴木 馨祐君

      小倉 將信君    小池百合子君

      鈴木 俊一君    玉木雄一郎君

      吉田 宣弘君    足立 康史君

 第七分科会(経済産業省所管)

   主査 関  芳弘君

      佐藤ゆかり君    原田 義昭君

      山本 幸三君    福島 伸享君

      高橋千鶴子君

 第八分科会(国土交通省所管)

   主査 赤羽 一嘉君

      越智 隆雄君    門  博文君

      山本 有二君    大西 健介君

      柿沢 未途君

平成二十八年二月二十九日(月曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      秋元  司君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    石原 宏高君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小田原 潔君

      越智 隆雄君    大西 英男君

      大見  正君    奥野 信亮君

      加藤 鮎子君    門  博文君

      神谷  昇君    菅家 一郎君

      木内  均君    小池百合子君

      小林 鷹之君    小林 史明君

      國場幸之助君    佐田玄一郎君

      佐藤ゆかり君    笹川 博義君

      鈴木 俊一君    鈴木 憲和君

      田畑 裕明君    武井 俊輔君

      長坂 康正君    根本  匠君

      野田  毅君    原田 義昭君

      古屋 圭司君    務台 俊介君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      保岡 興治君    簗  和生君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    井坂 信彦君

      江田 憲司君    緒方林太郎君

      大串 博志君    大西 健介君

      岡田 克也君    奥野総一郎君

      階   猛君    玉木雄一郎君

      西村智奈美君    福島 伸享君

      宮崎 岳志君    本村賢太郎君

      山尾志桜里君    柚木 道義君

      濱村  進君    真山 祐一君

      吉田 宣弘君    笠井  亮君

      塩川 鉄也君    高橋千鶴子君

      畑野 君枝君    足立 康史君

      馬場 伸幸君    松浪 健太君

      重徳 和彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   総務大臣         高市 早苗君

   法務大臣         岩城 光英君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       馳   浩君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣         丸川 珠代君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       高木  毅君

   国務大臣

   (消費者及び食品安全担当)            河野 太郎君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)    加藤 勝信君

   財務副大臣        坂井  学君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      高木 陽介君

   衆議院事務総長      向大野新治君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  芹澤  清君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       三輪 和夫君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   前川  守君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     川口 康裕君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    門間 大吉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       福本 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            生田 正之君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            末松 広行君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 日下部 聡君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 田端  浩君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  前田  哲君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  真部  朗君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本放送協会会長)   籾井 勝人君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         浜田健一郎君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事長)        上西 郁夫君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     大西 宏幸君

  奥野 信亮君     井林 辰憲君

  小池百合子君     福山  守君

  鈴木 俊一君     岩田 和親君

  原田 義昭君     大串 正樹君

  古屋 圭司君     務台 俊介君

  山本 幸三君     中谷 真一君

  山本 有二君     勝沼 栄明君

  井坂 信彦君     田島 一成君

  大串 博志君     本村賢太郎君

  階   猛君     小山 展弘君

  福島 伸享君     落合 貴之君

  浮島 智子君     伊佐 進一君

  越智 隆雄君     野中  厚君

  保岡 興治君     斎藤 洋明君

  緒方林太郎君     福田 昭夫君

  落合 貴之君     宮崎 岳志君

  玉木雄一郎君     後藤 祐一君

  吉田 宣弘君     國重  徹君

  勝沼 栄明君     瀬戸 隆一君

  福山  守君     藤井比早之君

  福田 昭夫君     緒方林太郎君

  伊佐 進一君     上田  勇君

  赤嶺 政賢君     本村 伸子君

  松浪 健太君     丸山 穂高君

  大串 正樹君     神山 佐市君

  佐田玄一郎君     渡辺 孝一君

  務台 俊介君     石川 昭政君

  後藤 祐一君     玉木雄一郎君

  宮崎 岳志君     鷲尾英一郎君

  本村賢太郎君     渡辺  周君

  丸山 穂高君     浦野 靖人君

  石川 昭政君     小松  裕君

  岩田 和親君     石崎  徹君

  根本  匠君     谷川 とむ君

  野田  毅君     神田 憲次君

  渡辺  周君     原口 一博君

  本村 伸子君     塩川 鉄也君

  浦野 靖人君     丸山 穂高君

  小山 展弘君     奥野総一郎君

  田島 一成君     神山 洋介君

  玉木雄一郎君     水戸 将史君

  西村智奈美君     笠  浩史君

  上田  勇君     伊佐 進一君

  高橋千鶴子君     田村 貴昭君

  丸山 穂高君     下地 幹郎君

  井林 辰憲君     小林 史明君

  神田 憲次君     國場幸之助君

  藤井比早之君     古川  康君

  大西 健介君     武正 公一君

  神山 洋介君     長島 昭久君

  笠  浩史君     大畠 章宏君

  田村 貴昭君     高橋千鶴子君

  國場幸之助君     武井 俊輔君

  斎藤 洋明君     若狭  勝君

  谷川 とむ君     堀内 詔子君

  野中  厚君     工藤 彰三君

  古川  康君     笹川 博義君

  武正 公一君     大西 健介君

  長島 昭久君     小川 淳也君

  鷲尾英一郎君     菅  直人君

  國重  徹君     稲津  久君

  濱村  進君     真山 祐一君

  塩川 鉄也君     大平 喜信君

  高橋千鶴子君     堀内 照文君

  下地 幹郎君     木下 智彦君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

  大西 健介君     中島 克仁君

  奥野総一郎君     中根 康浩君

  菅  直人君     逢坂 誠二君

  稲津  久君     吉田 宣弘君

  大平 喜信君     赤嶺 政賢君

  堀内 照文君     宮本 岳志君

  鈴木 義弘君     小熊 慎司君

  小川 淳也君     岡本 充功君

  大畠 章宏君     田嶋  要君

  逢坂 誠二君     福島 伸享君

  伊佐 進一君     樋口 尚也君

  足立 康史君     河野 正美君

  小熊 慎司君     小沢 鋭仁君

  衛藤征士郎君     宮路 拓馬君

  田嶋  要君     高井 崇志君

  原口 一博君     篠原  豪君

  福島 伸享君     阿部 知子君

  樋口 尚也君     岡本 三成君

  河野 正美君     椎木  保君

  大西 宏幸君     宮川 典子君

  小松  裕君     神谷  昇君

  武井 俊輔君     山田 賢司君

  堀内 詔子君     白須賀貴樹君

  渡辺 孝一君     大西 英男君

  岡本 充功君     神山 洋介君

  篠原  豪君     中川 正春君

  水戸 将史君     金子 恵美君

  岡本 三成君     浮島 智子君

  吉田 宣弘君     中野 洋昌君

  赤嶺 政賢君     真島 省三君

  宮本 岳志君     島津 幸広君

  木下 智彦君     井上 英孝君

  小沢 鋭仁君     小熊 慎司君

  神山 佐市君     菅家 一郎君

  白須賀貴樹君     武村 展英君

  神山 洋介君     初鹿 明博君

  中川 正春君     本村賢太郎君

  中島 克仁君     大西 健介君

  浮島 智子君     角田 秀穂君

  小熊 慎司君     村岡 敏英君

  武村 展英君     赤枝 恒雄君

  宮川 典子君     宮崎 政久君

  緒方林太郎君     福田 昭夫君

  角田 秀穂君     樋口 尚也君

  真山 祐一君     濱村  進君

  島津 幸広君     池内さおり君

  椎木  保君     伊東 信久君

  笹川 博義君     宮澤 博行君

  阿部 知子君     小宮山泰子君

  初鹿 明博君     井坂 信彦君

  福田 昭夫君     石関 貴史君

  樋口 尚也君     上田  勇君

  真島 省三君     斉藤 和子君

  井上 英孝君     松浪 健太君

  菅家 一郎君     佐々木 紀君

  石関 貴史君     井出 庸生君

  上田  勇君     角田 秀穂君

  中野 洋昌君     大口 善徳君

  池内さおり君     畠山 和也君

  斉藤 和子君     藤野 保史君

  村岡 敏英君     鈴木 義弘君

  赤枝 恒雄君     木村 弥生君

  小林 史明君     今枝宗一郎君

  宮崎 政久君     秋本 真利君

  井坂 信彦君     坂本祐之輔君

  小宮山泰子君     宮崎 岳志君

  本村賢太郎君     中川 正春君

  伊東 信久君     足立 康史君

  神谷  昇君     八木 哲也君

  木村 弥生君     大隈 和英君

  工藤 彰三君     中川 俊直君

  山田 賢司君     藤原  崇君

  畠山 和也君     畑野 君枝君

  藤野 保史君     宮本  徹君

  足立 康史君     河野 正美君

  秋本 真利君     岡下 昌平君

  佐々木 紀君     村井 英樹君

  瀬戸 隆一君     加藤 鮎子君

  八木 哲也君     尾身 朝子君

  井出 庸生君     緒方林太郎君

  坂本祐之輔君     岡本 充功君

  大口 善徳君     吉田 宣弘君

  石崎  徹君     鈴木 俊一君

  今枝宗一郎君     奥野 信亮君

  尾身 朝子君     古屋 圭司君

  大隈 和英君     根本  匠君

  大西 英男君     佐田玄一郎君

  岡下 昌平君     岩屋  毅君

  加藤 鮎子君     山本 有二君

  中川 俊直君     越智 隆雄君

  中谷 真一君     山本 幸三君

  藤原  崇君     野田  毅君

  宮澤 博行君     小池百合子君

  宮路 拓馬君     衛藤征士郎君

  村井 英樹君     原田 義昭君

  若狭  勝君     保岡 興治君

  岡本 充功君     井坂 信彦君

  金子 恵美君     玉木雄一郎君

  高井 崇志君     西村智奈美君

  中川 正春君     大串 博志君

  中根 康浩君     階   猛君

  宮崎 岳志君     福島 伸享君

  角田 秀穂君     浮島 智子君

  畑野 君枝君     高橋千鶴子君

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

  河野 正美君     足立 康史君

  鈴木 義弘君     重徳 和彦君

  井坂 信彦君     松野 頼久君

同月二十九日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     加藤 鮎子君

  岩屋  毅君     井林 辰憲君

  衛藤征士郎君     菅家 一郎君

  小倉 將信君     木内  均君

  越智 隆雄君     岩田 和親君

  小林 鷹之君     田畑 裕明君

  佐藤ゆかり君     國場幸之助君

  根本  匠君     小林 史明君

  保岡 興治君     武井 俊輔君

  山下 貴司君     八木 哲也君

  山本 幸三君     村井 英樹君

  緒方林太郎君     山尾志桜里君

  階   猛君     本村賢太郎君

  玉木雄一郎君     岡田 克也君

  西村智奈美君     柚木 道義君

  福島 伸享君     奥野総一郎君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  浮島 智子君     真山 祐一君

  赤嶺 政賢君     畑野 君枝君

  高橋千鶴子君     塩川 鉄也君

  足立 康史君     馬場 伸幸君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     務台 俊介君

  岩田 和親君     越智 隆雄君

  加藤 鮎子君     井上 貴博君

  菅家 一郎君     簗  和生君

  木内  均君     笹川 博義君

  小林 史明君     根本  匠君

  國場幸之助君     佐藤ゆかり君

  田畑 裕明君     小林 鷹之君

  武井 俊輔君     保岡 興治君

  村井 英樹君     山本 幸三君

  八木 哲也君     山下 貴司君

  井坂 信彦君     江田 憲司君

  岡田 克也君     玉木雄一郎君

  奥野総一郎君     福島 伸享君

  本村賢太郎君     宮崎 岳志君

  山尾志桜里君     緒方林太郎君

  柚木 道義君     西村智奈美君

  真山 祐一君     浮島 智子君

  塩川 鉄也君     高橋千鶴子君

  畑野 君枝君     笠井  亮君

  馬場 伸幸君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     鈴木 憲和君

  務台 俊介君     大見  正君

  簗  和生君     大西 英男君

  江田 憲司君     松野 頼久君

  宮崎 岳志君     階   猛君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     衛藤征士郎君

  大見  正君     岩屋  毅君

  鈴木 憲和君     神谷  昇君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     小倉 將信君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算

 主査からの報告聴取


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     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官芹澤清君、内閣官房内閣人事局人事政策統括官三輪和夫君、内閣府政策統括官前川守君、消費者庁次長川口康裕君、財務省国際局長門間大吉君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官福本浩樹君、厚生労働省職業安定局長生田正之君、農林水産省経営局長奥原正明君、農林水産省農村振興局長末松広行君、資源エネルギー庁長官日下部聡君、国土交通省大臣官房長田端浩君、防衛省防衛政策局長前田哲君、防衛省整備計画局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 本日は、外交・国民生活等についての集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤鮎子さん。

加藤(鮎)委員 おはようございます。

 山形三区選出の、自由民主党、加藤鮎子でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 まず冒頭は、先週末に開催をされたG20につき、麻生大臣への質問であります。

 二月二十六日、二十七日、中国上海市でG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれ、我が国からは麻生財務大臣と黒田日銀総裁が出席をされました。

 会合では世界経済のリスクや各国間での政策協調などについて話し合われたと伺っておりますが、大臣としては、今回のG20の成果をどのように受けとめていらっしゃいますでしょうか。

麻生国務大臣 今回、上海のG20におきましては、いわゆる世界経済について金融市場の動向とか変動とか不確実性がいろいろ高まっている中で、最近の市場の変動の規模とか大きさとか、そういったようなものはその根底にあります世界経済のファンダメンタルズというものを反映したものではないという認識で一致をいたしております。

 その上で、世界経済のより強固で持続可能性がありかつ均衡性のとれた成長を実現するためには、金融とか財政とか構造改革等々全ての政策手段というものを個別または総合的に用いるということでコミュニケの上でも合意をいたしておりますので、市場に対しては安心感を与えるものができ上がったと思っております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。引き続き、金融市場の安定に向け、強いリーダーシップを発揮していただくことを御期待申し上げます。

 次に、TPP発効を見据えた農林水産品の輸出促進についてお伺いをいたします。

 今、政府は、農林水産品の輸出の拡大に積極的に取り組んでおり、二〇二〇年には輸出総額一兆円を目指すという目標を掲げています。実際に、平成二十七年の輸出実績は、総額で過去最高の七千四百五十二億円と、前年に比べ二〇%もアップしました。

 ただ一方で、私の地元の農家や漁師の方々のところを回って歩いておりますと、こんな声も聞こえてまいります。輸出、輸出と言うけれども、それはほんの一握りの人たちが成功するだけであって、うまみは中間業者に吸い取られ、現場で汗をかく自分たちには全く関係のない話であるのだ、そのようにおっしゃる現場農家の方々もたくさんいらっしゃいます。

 そんな声を代弁いたしまして、ぜひ安倍総理にお伺いしたいと思います。

 TPP発効を見据えた農林水産品の輸出促進を今後いかに実現していくのか、また、それが実現されると現場農家の方々の生活には具体的にどのようなよい影響が見込まれるか。そのあたりの意気込みと見通しを伺います。

安倍内閣総理大臣 昨年の農林水産物、食品の輸出額は約七千五百億円でありまして、安倍政権ができて、この三年間で、三年連続過去最高となっております。

 既に現場では輸出拡大に向けた多様な取り組みが始まっておりまして、山形県でも、高齢な農業者が多い果樹組合がリンゴをマレーシアそして香港などに輸出する例があると承知をしています。

 TPPは、おいしくて安全な日本の農林水産物の輸出をさらに拡大するチャンスでありまして、平成三十二年の輸出額一兆円目標を前倒しで達成することを新たな目標としているところであります。

 また、政策大綱には、米や牛肉、青果物、水産物等の重点品目ごとの輸出促進対策の推進や、検疫手続の円滑化など輸出阻害要因の解消、また訪日外国人旅行者への地域農林水産物の販売促進、地理的表示の活用等によるブランド化の推進など、多様な取り組みが盛り込まれています。

 そして、今、加藤委員からお話があった、私の地元もそうなんですが、農地においては、お年寄りも生産者の中において大きな担い手であると言ってもいいんだろうと思います。そういう方々にとって果たして大丈夫かという不安は当然あるんだろう、特に輸出は自分たちとは関係ない世界だ、こう思われることもあるということは私も承知をしております。そういう年をとった方々がつくっておられるものもすばらしく安全でおいしい、すばらしい品質のものをつくっている、これは間違いなく、今でもそうなんですが、海外で評価されている。

 要は、こうしたものをしっかりと輸出に結びつけていく、あるいは、大切なことをおっしゃったんですが、生産者にちゃんと付加価値が手元に残るように、生産者が利益を得ることができるようにしていくことがとても大切なんだろうと思います。そういう点に主眼を置きながら、生産者がつけた付加価値は生産者に行くように、中間の業者等々がそれを全部とってしまうことがないように、我々もしっかりと支援をしていきたい、このように考えております。

加藤(鮎)委員 現場農家の方々にも思いをはせ、その生活にもしっかりとつなげていかれるという道筋をお示しいただきまして、ありがとうございます。

 引き続き、農林水産品の輸出に関し、二つ目の質問をいたします。

 昨年の農林水産品の輸出実績が過去最高を記録したことは、先ほども申し上げたとおりです。これは、生産者はもちろん、輸出関係業者そして政府関係各位も一丸となって尽力をされた、その成果であろうと思います。

 しかし一方で、残念ながら、我が国においては農林水産品の輸出促進に当たっての知的財産の保護といった側面からの取り組みはこれまで十分に顧みられてこなかったのではないか、そのように私は考えております。

 そうした中、昨年運用が開始をされました地理的表示保護制度、いわゆるGI制度ですが、これは地域にひもづいた農産品のブランドを保護するという画期的な仕組みであります。この地理的表示の保護は、TPPの大筋合意の中でも知的財産の章で検討項目として挙げられています。今後、国内のみならず国外においても日本のGI産品が保護される方向にあり、輸出促進につながることが大いに期待をされます。

 これに関しまして、一点、森山大臣にお伺いをいたします。

 昨年末に第一弾のGI産品として登録され、我が国を代表する銘柄牛である神戸ビーフ、この神戸ビーフでありますが、既にアメリカの業者によって商標登録がなされており、アメリカの事業者によって先に商標登録がされてしまっているがゆえに、日本の業者がアメリカにおいて神戸ビーフを神戸ビーフとして売ることができないのではないか、そういう不安の声が上がっております。

 この問題に関しましてどのような対応をお考えか、森山大臣の御見解を伺います。

森山国務大臣 加藤委員にお答えをいたします。

 米国において、米国の商標法に基づきまして神戸ビーフの名称を含む商標が登録されていることは、委員御指摘のとおりであります。

 米国の商標法におきましては、商標の一部分について排他的な使用を主張できる権利を放棄する、いわゆるディスクレームという規定がございまして、米国で登録されております商標、いずれも神戸ビーフの部分はディスクレーム、権利放棄をされておりますので、このために、神戸ビーフを日本から米国に輸出しても商標権者から差しとめ等を求められることはなく、米国内においても神戸ビーフとして販売できるものと考えているところでございます。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。

 日本の誇れる農産品の信頼性がきちんと守られるという見通しがつきまして、農業関係者の方々も安心をされているのではないでしょうか。このGI制度、ぜひ多くの地域や農業生産者の方々に御活用いただき、今後ますます輸出の促進、ひいては地域の活性化に結びつけていただきたいと切に期待をいたします。

 最後に、多様な働き方の支援についてお伺いをいたします。

 先週の金曜日、国勢調査におきまして、調査開始以来、我が国の総人口が初めて減少に転じたと報じられました。我が国が深刻な人口減少の局面に入っていることを改めて確認させられるところであります。また、団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年、我が国は超高齢化社会を迎えます。子育てや介護を担う現役世代は、家庭でも、会社でも、また地域でも非常に多くの役割あるいは活躍を今後ますます期待されるように、そのような時代になっていくでしょう。

 そんな現役世代の頑張りを支えていくには、多様で柔軟な働き方の支援というものが大変重要になっていくと思います。これは政府の努力だけではなく、民間企業をも巻き込んでいくべき重要なテーマでありますが、社員の方々一人一人の責任ある行動はもちろんのこと、特に経営者の方々、つまりは多様で柔軟な働き方をする社員の方々を受け入れて、その方々を、煩雑化する人材マネジメントを遂行する立場にある管理職の方々あるいは経営者の方々による理解、それから積極的な取り組みというものが肝になってまいりまして、欠かせないと私は考えます。

 そこで、安倍総理に伺います。

 経営のゆとりのない中小企業をも含めまして、管理職あるいは経営者の方々がこの多様で柔軟な働き方に対して理解あるいは積極的な取り組みをされるように、日本のトップリーダーである安倍総理として、どのように働きかけをしていかれますでしょうか、また呼びかけをされていくおつもりでしょうか。その決意を伺います。

安倍内閣総理大臣 先般の国勢調査で日本の人口全体が減少傾向に入ったわけでありますが、既に、安倍政権の三年間、生産人口は三百万人以上減少しているわけでございます。その中で、大切な社会保障制度を維持していくためにも、活力ある日本を維持していくためにも、多様な働き方の中においてまさに新たな価値を生み出し、そしてイノベーションを起こしていかなければならないと考えています。

 特に、今まで十分な活用がなされていなかった女性の能力、あるいは高齢者の方々が経験や知恵を生かして社会に貢献をしていく。皆さんまだまだ肉体的にも頭脳においても精神的にもお若い方々がたくさんいらっしゃいますから、そういう方々に貢献をしていただくことによって、我々はもっともっと成長していくことができるんだろうと思います。そのためにも、働き方を変えていかなければならないわけであります。

 昨日も、一億総活躍社会実現対話というものをやりまして、多くの方々にお集まりをいただきました。

 その中で、例えば、もう既に正規、非正規の壁をなくしている銀行で働いている方、あるいはまた、残業時間二十時間を既に給与の中に組み込んでいて、自分で工夫して勤務時間を減らしていくことでまさに自分の人生が豊かになる、そういう働き方にしている会社の方からお話を伺いました。二人とも女性の方なんですが、結果として、非常に自分自身も生産性が上がっていると感じる、企業も成績がどんどんそうした働き方によって改善してきたと認識をしているというお話を伺うことができました。

 私も、先頭に立って働き方改革を進めていく。かつての高度経済成長時代のように、残業を自慢する働き方ではなくて、いかに効率的に働いているか、家庭と仕事を両立させているか、それを自慢できるような社会に変えていく。これからの三年間は、働き方改革にまさに私が先頭に立って取り組んでいきたい、このように考えております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。

 多様で柔軟な働き方支援に求められるさまざまな制度改正については、雇用、労働法制、年金、介護、子育て支援制度など、検討課題が多岐にわたります。多岐にわたる一方で、そのほとんどが厚生労働委員会で取り扱われておりまして、一つの委員会ではなかなか荷が重いためか、前に進みづらいような状況に私は歯がゆさを少し感じております。

 重要で切迫した課題でありますので、これはひとつ特別委員会を立ち上げ、集中的に審議することも検討してみてはいかがでしょうかと、最後にそんな提案をつけ加えさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて加藤さんの質疑は終了いたしました。

 次に、真山祐一君。

真山委員 公明党の真山祐一と申します。

 私は、福島県在住の公明党衆議院議員として、未曽有の原発災害に遭遇し、風化と風評という二つの風と闘いながら、今なお不自由な避難生活を強いられている福島県の被災者の声を代弁させていただきたい、その思いでこの質疑に立たせていただきます。被災者の皆様が希望を持って生活再建、人生の再建に立ち上がり、前を向いていけるような、積極的な御答弁を何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本年三月十一日で、東日本大震災から五年の節目を迎えます。

 私は、浪江町から二本松市の仮設住宅に避難されているある御婦人にこのように言われました。私はがんを患っております、できることなら浪江町に帰りたいけれども、それまで生きていられるかわかりません。

 私はこの言葉が忘れられません。ふるさとに帰りたい人がいる限り、帰れるように復興を進めなければならない、私は自分自身にそう誓い、一つ一つの課題に全力で取り組んでまいりました。

 公明党は、人間の復興を掲げ、被災市町村ごとに全国会議員の担当を決め、徹して被災者に寄り添い、一つ一つの課題に全力で取り組みながら復興を前に進めてまいりました。

 政府内におきましても、政権交代以降三年余り、私ども公明党議員は、被災地の現場で指揮をとる原子力災害現地対策本部長、そして福島復興担当の復興副大臣を務めさせていただきました。

 ふるさと帰還については、病院、学校、商店、鉄道などのさまざまな生活インフラの整備や仕事の再開の可能性等々、さまざまな課題があり、避難者の思いもさまざまでございます。しかし、いずれにしても、国の責任として、地元の声によく耳を傾けながら、帰還できる環境の整備を着実に進めなければならない、そのように思います。

 原子力災害現地対策本部長として、ふるさと帰還のための環境整備やなりわいの再生のための相双官民合同チームの指揮を現地でとられている高木陽介経済産業副大臣に、ふるさと帰還に関する今後の見通しをお伺いさせていただきます。

高木副大臣 真山議員にお答えしたいと思います。

 現在、原子力災害の現地対策本部長を務めさせていただいておりますが、私の前に赤羽前経済産業副大臣が務めてまいりました。この一年九カ月、赤羽さんが務めていた間に毎週福島に足を運びました。私も、一昨年の九月に就任してこの一年六カ月の間に、福島に百十七日間入らせていただいております。

 そういうような中で、これまで田村市、川内村そして楢葉町で避難指示の解除、その前に広野町がありましたが、現在も、南相馬、葛尾、川俣、川内、四市町村で避難指示の解除を目指して準備を進めさせていただいております。この避難指示の解除というのは、ふるさとに戻りたいと希望される住民の方々の帰還を可能にするものであり、さらなる復興へのスタートであると考えております。

 そういった中で、昨年の九月、全町避難していた楢葉で解除をさせていただいたときに、二十回に及ぶ住民の懇談会、また原子力災害対策本部として個別訪問、町議会との懇談、医療、買い物、飲料水等の分野の対策を行うとともに、解除後も楢葉の復興円卓会議を開催して、住民の皆様方の声を聞きながら、寄り添いながら丁寧に課題を解決してまいりました。現在も、解除を目指す四市町村も、個別訪問等を通じながら、しっかりと住民の声を聞きながら取り組ませていただいております。

 その一方で、住民の方々が帰還してふるさとを取り戻すためには事業、なりわいを再建していかなければならないということで、現在、国と県、民間から成る官民合同チームを創設しまして、総勢百七十五名の体制で、被災事業者を二人一組で一件一件個別訪問させていただいております。これまでに三千四百の被災事業者を訪問させていただいて、このうち四割の方々が地元での事業再開もしくは将来の再開を希望しておられます。

 そういう中で、働き手の確保、販路の開拓、さまざまな事業の具体的な課題について、今回、自立支援策として補正予算と本予算で約二百四十一億円を計上させていただきました。事業を再開したいという方のみならず、政府としては、事業再開に至らなかった方々に対しても、生きがい、やりがいづくりに向けて、人々とのつながり創出支援など、全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

真山委員 ありがとうございます。

 今御答弁いただきましたとおり、官民合同チームにおきましても、被災事業者を一件一件訪問されながら取り組みを進めていらっしゃいます。また、避難指示解除に向けても、本当に個別訪問もされながら、また住民との懇談も重ねながら丁寧に進めていただいている。まさに寄り添い型の復興政策、私はそのように思っているところでございまして、引き続き丁寧な対応をお願いさせていただきたいと思います。

 次に、生活の足であります交通インフラについて、総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

 昨年三月、常磐自動車道が予定されていた計画を前倒しして全線開通いたしました。また、先般、原発事故避難者を対象とした高速道路料金の無料化措置の延長を石井国土交通大臣のリーダーシップで早々に決定していただきましたことは、被災者にとって大きな喜びであり励みとなっております。改めて感謝を申し上げます。

 他方、原発被災地域である浜通りの南北の大動脈であるJR常磐線は、被災者の日常生活の足でもあり、その全線開通は最も切実な要望でもあります。昨年三月十日、安倍総理より早期全線開通の大方針が示され、パネルにありますように、多くの区間で開通時期が明示され、順調に工事が進捗していることは評価いたします。

 しかしながら、浪江―富岡区間、このパネルの赤字部分でございますけれども、いまだ開通予定時期が明確になっておらず、いつ全線開通されるかがわからない状況が続いております。

 公明党としてもJR常磐線の不通区間を視察させていただきましたが、この区間の実験除染の結果、空間放射線量の状況もおおむね安全が確保されている、このように認識をしております。

 総理には、足しげく福島の地に足をお運びいただいておりますことを感謝申し上げます。総理が富岡駅を御視察されてから三年余り経過しておりますけれども、ぜひとも近々にこの浪江―富岡区間を改めて御視察いただき、総理の強いリーダーシップのもと、復興・創生期間を勢いよくスタートを切れるよう、三月十一日を前にJR常磐線の全線開通の目標時期をお示しいただきますよう、強くお願いをさせていただきます。

 JR常磐線の全線開通について、総理の御所見をお伺いさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 東日本大震災からの復興は安倍内閣の最重要課題であります。

 福島では、来年春までに帰還困難区域を除く避難指示を解除し、一人でも多くの方に故郷へと戻っていただけるように、生活インフラの復旧に全力で取り組んでいます。

 JR常磐線は、常磐自動車道と並んで浜通りの復興にとって重要な交通インフラであります。昨年三月、地元の皆さんの強い期待に応え、JR常磐線について、将来的に全線で運行を再開させることといたしました。

 開通時期が未定の浪江駅―富岡駅間については、JR東日本が試験的な除染を実施し、その効果を確認したところであります。現在、除染、復旧工事を進めていく上での課題について、政府として精力的に検討、調整を行っています。

 JR常磐線の開通は、浜通りの復興の加速化の大きな後押しになるものと期待をしておりますし、地域の住民の皆様からも大きな期待が寄せられているものと承知をしています。被災地の皆さんの故郷への思い、復興への熱意を全力で応援するため、政府一丸となって、JR常磐線の一日も早い全線開通の実現に向けて取り組んでいく考えでございます。

真山委員 被災地のまさに生活者の足である常磐線でございます。そのJR常磐線の開通見込みが提示されるということが、やはり帰還環境整備を進めていく上で非常に大きな勇気を与え、希望を与える方針になろうかと思います。ぜひ、この浪江―富岡間の全線開通時期の早期決定をお願いさせていただきたいと思います。

 次に、福島イノベーション・コースト構想について、続きまして総理にもお伺いさせていただきます。

 平成二十六年、当時、原子力災害現地対策本部長でありました公明党の赤羽一嘉経済産業副大臣を座長として、一番御苦労された地域が一番幸せになる権利があるとのかたい信念のもと、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催時に世界じゅうの人々が浜通りの力強い再生の姿に瞠目する地域再生を目指し、福島復興の夢と希望の柱として福島イノベーション・コースト構想が策定をされました。

 本構想は、パネルにありますように、廃炉をやり遂げるための研究開発拠点やロボットテストフィールドの設置、また再生可能エネルギーやリサイクル、高度化した農林水産業などの新たな産業集積、そしてそれを可能とする国際産学連携拠点など、多岐にわたる構想となっており、安倍総理も十分に御理解いただいているものと承知をさせていただいております。

 昨年は、楢葉町に遠隔技術開発センター、モックアップ施設が竣工し、二十八年度予算案にはロボットテストフィールドや国際産学官共同利用施設の整備、運営費が盛り込まれ、実行段階に入っております。

 しかしながら、世界に誇れる福島を目指した本構想を実現するためには、経済産業省や復興庁のみならず、文部科学省、国土交通省、防衛省、厚生労働省、総務省、環境省、農林水産省など、さらには民間企業、大学研究機関も巻き込んでいく大きな構想でありまして、強い政治のリーダーシップが必要不可欠でございます。

 そして、福島イノベーション・コースト構想は、福島復興の重要な柱であるとともに、安倍政権が掲げるGDP六百兆円への大きな牽引力となるものと私は確信をしております。

 ぜひ、安倍総理の強いリーダーシップを発揮していただき、国の責任において、地元の多くの企業も参画できる形で福島イノベーション・コースト構想が実現されることを強く強く願うものでございます。本構想実現に向けた安倍総理の御所見をお伺いさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 イノベーション・コースト構想は、当時の赤羽副大臣のもとにこの構想が練り上げられたわけでございます。浜通りに廃炉やロボットなどの先端技術を中核とした新たな産業集積を創出し、地域経済の復興を実現するものであります。

 世界にも前例のない福島第一原発の廃炉作業は、四十年にも及ぶ長い道のりであります。過酷な環境で手探りで進められてきた作業を、安全に確実に、できるだけ早く進めていきたいと思います。

 ロボットを初めとした最先端の技術は、この課題を解決する鍵となるだけではなく、災害対策など他の分野に活用できるポテンシャルがあります。

 構想の実現に向けて、昨年六月には、オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年を当面の目標とした工程表を策定しました。構想は着実に具体化されています。

 昨年十月には、楢葉遠隔技術開発センターの開所式に立ち会いました。このセンターでは、廃炉作業にとどまらず、災害対策に役立つ遠隔操作ロボットの実証試験なども行われます。

 本年四月からは、災害対応などで活躍するロボットの共同研究施設や実証拠点を整備し、利用企業に技術や販路開拓を支援するなど、この分野の企業の集積を促してまいります。志の高い地元の企業にもぜひ参画いただきたいと考えています。

 廃炉は原発を保有する多くの国が必ず直面する課題でありまして、数年後には、国内外の第一線で活躍する研究者が集い、福島で世界をリードする新技術や新産業が生み出されていくことを期待しています。

真山委員 ありがとうございました。

 時間となりましたので質疑を終了させていただきますけれども、一人も置き去りにしない、この信念で公明党はこれからも復興に取り組んでまいります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて真山君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 まず最初に、衆議院の選挙制度改革について、総理、この問題は極めて重要だと私は考えるわけです。

 憲法の法のもとの平等、しかも参政権という民主主義の根幹にかかわる部分、最高裁からは何度も違憲状態であるという判決も出ている、何としてでもこれは解決しなければいけない問題だというふうに考えております。総理もそういう思いも当然おありだと思います。今まで、何回も何回もさまざまな発言を繰り返されてこられました。もう一々言いません。

 そういう中で、衆議院選挙制度調査会の答申が出て、その根幹はアダムズ方式の採用であります。つまり、最高裁の判決は、単に一票の価値が二倍以内におさまればいいということではなくて、やはり都道府県の議席の配分を比例的に行うべきだと。そういう考え方、最高裁がそう言っているということを調査会としても認識し、その具体策として、いろいろなやり方があるわけですけれども、ある意味では最も大きな変化が起こらないマイルドな案としてアダムズ方式を進めたわけであります。

 このアダムズ方式の導入、総理、まずはっきりと、これは採用するということをお答えいただけますか。イエスかノーかでどうぞ。

安倍内閣総理大臣 今回の第三者委員会の答申をよく読んでみますと、まず定数削減については、我が党もお約束をしておりますし、御党も約束をしているし、多くの党が約束をしています。ただ、定数を削減しない、共産党もそうでありますが、削減すべきでないという党もございます。そこで、第三者委員会の結論は、結論としては定数削減は好ましくないという結論ではありましたが、各党が約束をしているということに鑑み、十程度を削減するという案を示しておられます。

 我々は、十の削減についてはこの答申どおりに行っていく。選挙区六そして比例四の削減を今回の国勢調査の簡易調査にのっとって行う選挙区の区画の変更に合わせて行うということを既に明言しているところでございまして、三十二年、十年ごとの国勢調査のときの改正には先送りをしないということを明言しているところでございます。

 もう一点は、先般行われた一五年の簡易調査であります。簡易調査に対しては憲法が二倍以内という要請をしておりますから、違憲状態という状況をなくすためにこれにすぐに応えていくということにおいて、選挙区の区画の境界を変更していくことによって応じていく。いわば第三者委員会もそれを求めているわけでございます。

 まさに今岡田委員が挙げられたアダムズ方式を五年ごとにということではなくて、五年ごとの簡易調査のときには今申し上げた形で対応し、そして十年ごとの本調査に対してはアダムズ方式を導入するようにという提案がなされているわけでございまして、ここのところを正しく読んでいかなければならないわけであります。

 でなければ、では簡易調査でアダムズ方式を導入してやったら、例えば選挙が一七年、一八年になったとすると、もう二〇二〇年には新たな、アダムズ方式で県ごとの人数を変えるということを大幅にやっていかなければならなくなってしまうわけでありまして、これはむしろ、それは行うべきではないという趣旨であろう、こう考えております。

 岡田委員の御質問は、いわば三十二年においてアダムズ方式を導入すべきかどうかということを考えているのかという趣旨だろう、論理的にはそういうことだろう、こう思うところでございますが、そこで今自民党において議論を進めているところでございますが、私が再々申し上げておりますように、第三者委員会の答申を尊重すべきだということを申し上げております。

 当然、アダムズ方式を中心に議論がなされていくものと考えております。

岡田委員 アダムズ方式を、私はそれ以上のことを何も言っていない。アダムズ方式の導入を総理として明言されますねということを確認しているんです。私の質問はそれだけです。はっきりお答えください。

安倍内閣総理大臣 新たな選挙制度に対してどのように対応していくか、そしてまた第三者委員会がどのような答申を出したかということについて少し国民の皆様にもつまびらかにお話をした方がいいんだろうということで、先ほど述べさせていただいたところであります。

 誤解があるのは、一五年の簡易国調においてアダムズ方式を入れるべきだと答申は述べていないわけでありまして、そこのところが間違って伝わってしまっているのかなと思いますので、それをもう一度確認させていただいたわけであります。

 いわば選挙制度を、幾ら何でも五年ごとに県の人数が変わるというものを導入してしまえば、これは非常に毎回毎回大きな議論を行わなければならなくなってくるわけでありまして、それはそうするべきではないという考え方、趣旨で第三者委員会の答申は書かれております。

 そこで、五年ごとのまさに簡易国調においては境界の区画を変えていく、これを求めているわけでありまして、これは普通の読解力があれば、あの答申を読めば今のとおりだろうと思うわけであります。その上において、三十二年、二〇二〇年の国調においては先ほど申し上げたとおりでありまして、まだ自民党において議論がなされているわけでございます。私は、今申し上げたとおり、この答申を尊重すべきであるという点と、アダムズ方式を中心にしっかりと議論してもらいたい、このように申し上げているところでございます。

岡田委員 総理、私も、五年ごとの簡易調査でアダムズ方式を導入すべきだなどということは言っていないんです。十年に一回の本調査、国勢調査でアダムズ方式を導入すべきだ、そのことははっきり申し上げておきたいと思います。

 そして、総理、今までこれだけのことを言ってきたんですから、自民党で議論しているからでもいいんですけれども、あなたは総裁でもあるわけですから、しっかりアダムズ方式は入れると明言されるべきだと思いますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、私と岡田さん、一致できたのは、アダムズ方式の導入は十年ごとの本調査であるということ、これは重要な点だと思います。つまり、十年ごとであれば、当然これはアダムズ方式を導入するとすると三十二年になるんだろう。

 まさか二〇一〇年というのは、もう既に二〇一五年の簡易調査は出てしまっていますから、当然それとの数字の差も出てきます。対象の県が変わってくるんですから、二〇一〇年と一五年、それを考えれば当然のことなんだろうと思いますから、これは二〇二〇年という合意ができたんだなと思います。

 その一致点の上に立って考えますと、先ほど申し上げましたように、現在もまだ党においては議論がなされているわけでございます。私は自民党の総裁ではありますが、独裁者ではございませんから、私が決めれば全員が右を向くわけではなくて、しっかりと、民主主義の土俵ですから、土俵についてはまずは議論してもらう。

 ただ、私が総裁として申し上げたことについては、しっかりと党員の皆さんは理解していただいているんです。十削減というときにも、私はここでは明言しませんでしたけれども、私はその方向で考えているということを申し上げた。私の方向に沿って議論していただけるものと期待しているということを私はここで申し上げた。自民党においても随分反対する人はいましたが、しかし、結論はそうなっております。

 自民党においては、いわば責任政党として、しっかりと申し上げたことは実現するのが我が党であります。ですから、ここはまずは我が党の中において議論していくというのは当然のことだろう。その中で、今ここで私が私の考え方として、三十二年の国調において行われる改正においてはアダムズ方式を中心に議論がなされる、このように申し上げているところでございます。

岡田委員 我が党は党内議論をして、この答申を全面的に受け入れるということを確認しました。各党それぞれ結論を出しています。出ていないのは自民党だけですよ。いつまで議論するんですか。

 これは、憲法十四条、その根幹にかかわる話だということを申し上げているんです。行政府の長であるあなたがそんな煮え切らない態度で、私はこれで本当に立憲国家かというふうに思いますよ。

 そして、先ほど申し上げましたように、私は、本調査と簡易調査はやり方も違います、ですから、この答申が述べているのは、本調査で都道府県間の配分を行い、そして、十年に一回ですから、その間の五年に一回の簡易調査で二倍を超えるところは都道府県間の配分は変えない中で調整を行うべきだと言っているわけです。

 そこで、総理は二〇二〇年の国勢調査だと言われるが、もう既に二〇一〇年の国勢調査の結果は出ているわけです。ですから、二〇一〇年の国勢調査に基づいて都道府県間の配分をまず行う、その上で今回の簡易調査で二倍を超えるところがあれば、それはその県の中で線引きを変える、それがまさしくこの答申の述べているところじゃないですか。

 なぜ二〇二〇年まで先延ばしするんですか。二〇二〇年といったら、総理は多分もう総理じゃないですよ。実際にやるのは二〇二二年、二三年。そんなに先送りして、その間は違憲状態が継続する。それで本当にいいんですか、総理。

安倍内閣総理大臣 二〇二〇年に私が総理であるかどうかというのは関係ない話であります。まずそのことは申し上げておきたいと思いますし、そもそもそれは、我が党の党の規約とかかわることでありますから、これはこの場にはふさわしくないんだろうと思います。

 その上で申し上げますと、今、岡田さんが言われたことは非常に矛盾することをおっしゃっているわけでありまして、答申が求めているのは、あくまでも、いわば直近に行われた調査にどう対応していくかということであります。直近に行われた調査というのは二〇一五年の簡易調査でありまして、この簡易調査においていわば選挙区の区画を変えていく、このことによって二倍以内、しかも我々はさらにそれを深掘りしていこうということであります。これをまず申し上げておく。

 そして、その上において、では二〇一〇年の国調を今やるとなれば、二〇一五の簡易国調が出ていますから、二〇一五の簡易国調と二〇一〇年の国調とは、アダムズ方式を適用した場合、出てくる県の対象が変わってくるんですよ。それはすごく奇妙なことに映ってしまうわけでありまして、求められているのは、恐らくこれは党利党略でおっしゃっているんだと思いますよ。

 いわば我が党は……(発言する者あり)では、それを今私が説明しますよ。民主党の皆さん、少しは静かにしてくださいよ。こちらの席と向こう側の席は行儀よくやっていますよ。ただ、自席から私を誹謗中傷するのはやめてください。

 なぜ私がそう申し上げたかといえば、よろしいですか、落ちついて聞いてくださいよ。なぜ私がそう申し上げたかといえば、つまり第三者委員会が求めているのは、国調をやって、そしてその結果に合わせて選挙区の定数の是正をしていきなさいということを求めているわけであります。

 それを普通に素直に考えれば、今回は、二〇一五年、昨年、簡易国調の結果が出たんですから、この簡易国調の結果にのっとってやるべきことは、五年ごとのことですから、選挙区の区割りを変えていくということ以外にはないわけでございます。さらに五年前にさかのぼるということは、その五年前と今は既に変わっているんですから、皆さん、あと四年すれば新たな十年ごとの国調が出るんですから、そこでやるのが当たり前ではないでしょうか。

 そうしなければ、五年前の国調からして今それを変えていく、作業を終わるのは来年になっていきますよ。そうすれば、それを反映する選挙というのは例えば再来年になるかもしれない、そうすると二年後にまた再び国調をやるということになるわけでありますから、それはやはり求められていないし、そもそもこの第三者委員会のものをしっかりと読んでいけば、そういう結論が導き出される。

 そこで、つまり、我々はこの正当な議論を言うだろう、それは先送りだという批判を、これは当たらないんですけれども、しようと思ったら、そういう誤解を与えようと思ったら与えられるから、そういう誤解を与えようとしていることが私は党利党略だということを今申し上げているわけでございまして、こういうことは……(発言する者あり)

 今、うそつきだという批判がございました。私がこうやって説明しているんですからね。そういう誹謗中傷をするのはやめてくださいよ。しっかりと冷静な……(岡田委員「静かにしよう。議論しましょう」と呼ぶ)今、岡田党首も皆さん落ちついてということを言っておられるんですから、岡田党首に従って皆さんも行動された方がいいのではないかと思いますよ。

 しっかりと、第三者委員会が求めているものは何か、そして現実的に何を変えていくべきかということを私たちは考えなければならないということを申し上げているところでございます。

岡田委員 これは第三者委員会の解釈の問題ですから、責任者の方に確認するというのは一つのやり方だと思いますが、私の理解は、この答申はまず二つの問題があると言っているんですよ。

 一つは、やはり二倍以内にしなきゃいけない。もう一つは、都道府県の議席配分を比例的な方法でやらなきゃいけない。今回、それがアダムズ方式ということになったわけですね。比例的なやり方にする、都道府県の配分を変えるのは十年に一回の国勢調査でやります、しかし、その結果でも途中で二倍を超えることもありますから、簡易国調でそれを調整します、それは都道府県の配分を変えない範囲で線引きを変えます、これがこの答申の考え方ですよ。

 ですから、もう既に二〇一〇年の国調があるわけですから、これで都道府県の配分をまず決めて、その上で今回の簡易調査の結果で都道府県の配分を変えない範囲で線引きを変えて二倍以内に抑える、これを一緒にやればいいだけの話であって、総理の言っているのは、簡易国調と本格的な国勢調査は違うということを総理もおっしゃっていたと思うんですが、いつの間にかこれを一緒にして議論してしまっているんですね。そこの解釈は、私は違うということを申し上げておきたいと思います。

 では、もう一点だけ、本当は十分で終わるはずだったんですが、確認します。

 衆議院議員の選挙区の画定審議会設置法があります。この中に、従来は一人別枠方式というものが配分の基準として書かれていました。これは削除されました。しかし、削除された結果、今、基準が書いていないんですね。では、このアダムズ方式について、区割り審の設置法の三条にアダムズ方式による配分を明記するということはいいですね。これは書かなかったら全然担保されませんよ。そのことは約束していただけますね。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 このアダムズ方式というものをどのように例えば法文に書いていくかどうかということについて、今議論もなされているわけであります。実際に今、アダムズ方式というものについて法律の中に書き込んでいくかということも含めて議論していく中において、アダムズ方式という言葉そのものを使えるかどうか、これは技術的な問題なんですが、そういうことの検討も行っているわけでございます。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、今、自民党の中においてはこのアダムズ方式を中心に議論をしている最中でございまして、きょう法律を出さなければいけないという時期が来ているわけではありません。いましばらく自民党において議論をさせていただきたい、このように思います。

岡田委員 アダムズ方式という言葉を法律に書くかどうかは、それはどうでもいいことなんですね。

 ただ、そのアダムズ方式の考え方をちゃんと区割りの基準として法律に明記するのか、それとも、一部言われているように、附則か何かにアダムズ方式も含めて今後検討するみたいな書き方で、結局先送りして、またもう一度議論がやり直しになるのか。やはり調査会の答申をしっかり受け入れるというのであれば、基準を、アダムズ方式を法律の中に、区割り審の三条に書くということがなければ、私は答申を受け入れたことにならないと思いますよ。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ですから、先ほど来申し上げておりますように、今、自民党の中では議論をしているわけでありまして、民主主義の土俵を決める議論でありますから、我が党においてはまさに上下の差はなく、お互い対等な議論を行います。そしてその中で、我が党は必ず結論を出してまいりました。今回も必ず結論は出します。その中において、先ほど申し上げておりますように、私は自民党の総裁としてこのアダムズ方式について、答申を尊重するという立場から、当然このアダムズ方式を中心に議論がなされるもの、このように確信をしているということを申し上げているわけでございます。

 そこでどのようなことを書き込んでいくかということについてはまだその結論を得ているわけではございませんから、自民党が結論を出すまでいましばらく時間をいただきたい、このように思う次第でございます。

岡田委員 アダムズ方式の具体的内容を三条にきちんと書かなければ、これは何もやらなかったのと一緒だということは申し上げておきたいと思います。賢明な決断を自民党が、あるいは総理・総裁がされることを期待したいというふうに思います。

 次、ちょっと話がかわります。

 総理は、アベノミクスの果実で二十一兆円税収がふえたということをかつて言われたわけですね。私は非常に驚きました。

 まず、アベノミクス、国税ベースでいうと二十一兆円が十五・三兆円になるんですが、この中にはもちろん消費税の増税、引き上げが含まれていますね。財務省の資料でも六・三兆円、これが消費税の引き上げ分だと。あと、所得税で金融課税、これも野田政権のときに一〇%を二〇%に引き上げました。当然それで税収はふえますね。金融課税、株の配当金や売買で三兆円、野田政権のときと比べて、民主党政権のときと比べて税収がふえているということなんですけれども、しかし、それは一〇%を二〇%にしたことによる結果でもあるわけです。

 ですから、この十五・三兆円、税全体でいえば二十一兆円というのがアベノミクスの成果だというのはかなり上げ底じゃないですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 平成二十八年度の国、地方の税収については、政権交代前の平成二十四年度に比べて、これは国、地方を合わせてでありますが、二十一兆円ふえています。

 国の税収としては、今十五・三兆円と岡田委員はおっしゃったんですが、十五兆円以上増加をしております。消費税率の引き上げによる消費税の増収分は十五兆円のうち六兆円でありますが、そのほか、配当、株式譲渡所得に係る税収が約三兆円ふえています。法人税収が約三兆円ふえています。そして、給与所得に係る税収が約二兆円増加をしているわけであります。また、地方の税収も五兆円以上増加をしておりますが、税率引き上げによる地方消費税の増収は二兆円であります。

 そして、我々の政策によっては、法人関係税が二兆円、個人住民税が約一兆円増加をしております。これはまさに安倍内閣における三本の矢の政策の成果であろう。事実、そうした政策の成果により、名目GDPは二十七兆円ふえ、企業収益は過去最高となっているわけであります。

 企業収益がふえていないというのであれば、それは岡田委員のおっしゃるとおりだろうと思いますが、企業収益が過去最高となった結果、法人関係税はふえているわけでございます。そして、賃上げにおいても十七年ぶりの高水準となった。そうしたこと等が給与所得に係る税収……(発言する者あり)今、税収の話をしているんですから。税収はふえているということになるわけでありまして、好調な企業収益が雇用・所得環境の改善につながり、それが消費や投資に結びつくという経済の好循環をこれはまさに反映したものであるというふうに考えております。

岡田委員 私は、安倍総理の経済政策の結果が十五・三兆円の一部にあるということは全く否定していないんですよ。

 だけれども、さっきの消費税の増税分六・三兆とかあるいは金融課税の部分の一部とか、そういうものは野田政権で税制改革をしたその結果ですから、丸々この十五・三兆円がアベノミクスの成果だと言うのは違うということを申し上げているわけでして、総理もそれは否定できないと思いますね。

 それでは、この残りの部分の、今言われたアベノミクスの成果か何かわかりませんが、それで税収がふえたという部分も、例えば次元を超えた金融緩和によって円安になり株が上がった、その結果として一部の企業も所得がふえましたから、そういったことで法人税がふえたり所得税の一部がふえているわけですけれども、これはアベノミクスの結果だけなんですか。つまり、為替とか株の価格というのは、それは安倍総理の政策の結果だけで今の成果を生んでいるんですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも我々は、この政権をスタートする中において、デフレから脱却をしていくということを掲げました。そして我々は今までと違う次元の政策を展開したわけでありまして、大胆な金融緩和を行っていくし、機動的な財政政策を行っていく、持続的な成長のための成長戦略のための構造改革も行っていくということを申し上げたわけであります。

 その際、我々は金融政策によってインフレ期待を上げていくということを一つの手段として掲げたわけでございますが、その中において、結果としてはそうした目標に向かって進んでいるのは事実で、いろいろな御批判の声がありましたが進んでいるのは事実でありまして、行き過ぎた円高がそのことによって是正をされたわけであります。我々は為替に働きかけることを目的とはしておりませんが、結果として行き過ぎた円高が是正されたのは事実でございます。そして、そうしたことによっていわば株式市場において株価が上がっていったのも事実でございます。

 そもそも最初、我々が、さまざまな成果として期待されるものの中においてはそうした株式市場においても恐らく変化が出てくるということは申し上げていたわけでございますから、それはそのとおりになっていると言ってもいいんだろうと思います。それはまさに、消費者のマインドを変えていく、あるいはデフレマインドを変えていく上においては大きな役割を果たした、このように考えるわけでございまして、そうしたことも全てを包含するのが私どもの政策であるということは申し上げておきたいと思います。

岡田委員 先ほど来言っておりますように、安倍総理の政策が円安や株高に一定の効果を発揮したということは私は認めます。ただ、それだけで為替のレートが決まったり、株の価格が決まったりするわけではない。

 総理だって最近、株安について、あらゆる要素が反映されているというふうに言っておられるじゃないですか。つまり、一国だけで決められない部分はたくさんあるわけでしょう。だから、それを全部アベノミクスの成果だと、もっと言うと、成果だから自由に使わせろ、アベノミクスの成果を、だからこれを使っていくんだ、こういう言い方は私は注意した方がいいと思うんですよ。

 最近は余りおっしゃいませんが、税収だって底上げがあるとか、そういうことも言っておられましたよね。やはり余りにも楽観的な一方的な見方で財政再建というものを考えていくと、私は国を誤るというふうに考えるわけです。

 次、ちょっとこれを見てください。

 まず麻生財務大臣に、ちょっと一言、簡単にお聞きしますが、二〇〇九年の麻生政権のとき、予算の規模、最終的にはこれは補正で百二兆円という大幅な対策。これはリーマン・ショックの後ですね。大変な状況になって、世の中は派遣切りで失業者があふれる、そういう状況でした。百二兆円の予算規模になって、公債も四十四・一兆円出したわけですね。こういう状況になって、そして政権交代で民主党政権にかわったわけです。

 いろいろお気持ちはあったと思いますが、非常に経済のどん底の中で民主党政権にバトンタッチをするということについて、麻生元総理はどういうふうに感じておられたでしょうか。

 もちろん、こういうことが私は必要なかったと言うつもりはないんですよ。リーマン・ショックというのはまさしく日本の外で起こったことですから、それへの対応は一定程度必要だったというふうには思いますけれども、しかし、いずれにしても、民主党が政権を受け継いだときはこういうどん底の状況だったということです。

 何か一言あれば、おっしゃってください。

麻生国務大臣 二〇〇八年九月でしたかね、リーマン・ブラザーズの破綻というのが起きたのは。あれは戦後最大と言われておりますので、残念ながら道半ばだったと今は思っていますが。いずれにしても、民主党にも景気回復というものを確固たるものにしていただけるように努力していただきたいとは思っていたのが正直なところです。これは、すぐできる話じゃありやしませんから。

 そういった意味で、私の在任中は、わずか二カ月という早さで、国際金融機関と言われたIMFがほぼ破綻状態になるんだというお話でしたので、ここに、当時で一千億ドル、約十兆円ですか、今で言えば十一兆になると思いますが、それで慌てて各国に、G7の国々に働きかけて、G20でするという話やら何やらをさせていただいて、とにかく世界の金融状況というものを考えたときにこれはもう金融収縮が起きてえらい騒ぎになりますよということから、いろいろな話で三年間で。

 実に四回、補正予算を含めて本予算、四回やらせていただく等々を半年余りでやっておりますので、迅速に対応できたとは思っております。景気対策、経済対策を打ったことは実績としては言えるとは思いますが、それによって借入金がふえたとかいろいろなことによっていろいろな評価が出てくると思いますので、これは、しばらくたちまして、歴史の中で評価されるということではないでしょうか。

岡田委員 我々が政権を受け継いだとき、まさしく経済的にはどん底の状態で受け継ぎました。野田政権まで民主党政権三代の政権の中で、そのどん底から何とか少しでもよくしようということで頑張ってきたわけですね。その間、東日本大震災もありました。

 例えば、安倍総理は雇用の数字をよく言われるんですが、麻生政権の最後のとき、二〇〇九年八月ですが、完全失業率は五・五%。民主党政権の最後は、一二年の十二月ですが、四・二%。五・五から四・二になったわけですね。今は三・三ということで、もちろんそれは安倍総理の御努力の結果でもあるんですが。

 やはりお互い、この国を何とかしなきゃいけない、そういう思いの中で努力してきたことは認め合わないと。何か、民主党政権は全部だめだと。それは、野田政権の最後と比べれば数字はよくなっているものもありますよ。だけれども、そこだけ誇っていて、民主党政権は全部だめだみたいな言い方は、私は、一国の総理としていかがか、いつもそう思って総理の答弁を聞いているわけですね。

 さてそこで、より大事なことは、二〇〇七年度の第一次安倍内閣と二〇一六年度の第二次安倍内閣の予算案を比較してみたいんですが、まず税収、五十三・五兆が五十七・六兆に四兆ふえていますね。それはいいんですが、所得税が一・五兆ふえて、法人税は四兆円ぐらい減っています。では、なぜ税収がふえているのかといえば、消費税が十・六兆から十七・二兆に、つまり消費税を八%まで上げたからここまで税収がふえている。

 安倍総理は税収がふえたことをみずからのアベノミクスの成果だとおっしゃるが、十年前と比べたときに、むしろ消費税の引き上げがなければ税収は減っているわけですね。これが一つ。

 それから、これは国民の皆さんにもぜひ理解していただきたいんですが、社会保障関係費は二十一・一兆から三十二・〇兆に十兆円ふえています。これは、年金も、医療も、そして子ども・子育ても。そういう形で社会保障関係費は十兆ふえている、それはぜひ国民の皆さんにも理解していただかなくてはならないことだと思うんですね。公債金、国債の発行は、二十五・四兆から三十四・四兆に九兆円ふえている。

 二〇〇七年と二〇一六年を比べたときに、もし消費税の増税なかりせば予算は組めていないですよ。この分を全部借金に置きかえたら一体どうなりますか。既にこの十年間で五百四十七兆の残高が八百三十八兆。ほぼ三百兆円ふえているんですね、十年間で。

 私は、こういう現実をきちんと踏まえた上で財政の健全化というものを考えていかないと、何かアベノミクスで経済がよくなって税収が自然にふえていくからそれで何とかなるんじゃないかというような、そういう考え方で財政健全化を考えたらとんでもない間違いになるというふうに思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 私も、民主党政権の政策が全部だめだということは一言も言っていないわけであります。もしそのように捉えていたのであれば私の不徳のいたすところでございますが、そういうことは一回も言っていないということでございます。

 しかし、経済において、常に私どもの経済を批判されますから、比較として、不本意ながら民主党政権時代の数字を挙げつつ比較をさせていただいているわけでございます。

 そこで、平成十九年との比較でございますが、平成十九年も安倍政権でございましたが、そのときは、いわば当時の税収のピークであったわけであります。まさに当時のピークにまた我々は至ることができたということでございます。そして、社会保障費が二十兆円から三十兆円にふえていった。だから、そういう問題意識については共有しながら、そこで税と社会保障の一体改革に、私たちは野党であるにもかかわらず賛成をしたわけでございます。

 同時に、我々は十兆円、公債の新規発行は減額もしている、一方で減額もしているということも申し上げておきたいと思います。

 このように、しっかりと我々は、やるべきことはやりながら経済を成長させ、そして税収もふやしながら、社会保障の水準も維持をしながら、かつ財政の健全化も目指しているということでございます。

 同時に、経済の成長を当てにするなという趣旨のお話がございましたが、これは、先般民主党が提出した財政健全化推進法の中においても、経済成長施策を着実に実施することにより経済成長に伴う歳入増を図る、こう書いてあるわけでありまして、我々は当然のことを目標として、かつ私たちは成果も出しているということは申し上げておきたいと思います。

岡田委員 過去の、二〇〇六年の骨太の基本方針、財政健全化目標ですね、これは小泉政権の最後につくったものです。そして財政運営戦略、これは菅政権で二〇一〇年につくったものです。基本的に、戦略の数字の部分は安倍政権でも現在も引き継がれている。

 非常に似ているんです、書いてあることは。違うのは何かというと、目標年次が二〇一一年度から二〇二〇年度に変わったということです。十年先送りされたということですね。中身は一緒ですよ。

 だから、今、安倍総理が言われたように、安倍政権のときには非常に、アメリカの住宅バブルもあって、輸出好調で経済は恵まれていましたよ。その後そのバブルがはじけて、最後はリーマン・ショックまで行き着くわけですけれども、どんどんどんどん、二〇〇七年の後半ぐらいから税収が予定どおり上がらなくなってきた、そういう状況になっていったわけですね。

 つまり、景気というのは、経済というのはやはり上がったり下がったりする、何があるかわからない。ですから、余りにも過度に経済成長で税収がふえるという見通しに立つと、私は経済成長は必要ないと言っているんじゃないですよ、だけれども余りにも過度にそこに依存してしまうと結局財政健全化というのはできないんじゃないか、やはり過去の歴史に学ばなければならないんじゃないかというふうに考えているわけですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに岡田委員が言われたとおりでありまして、我々は過度に経済成長に依存しているわけではありませんし、よく言われていたように、経済成長だけで財政健全化できるとは思っておりませんが、しかし同時に、経済成長しなければ財政健全化はできない、そしてデフレから脱却しなければ財政健全化はできない、こう考えています。

 やはりデフレ下にあっては残念ながら税収はふえていかないわけでありまして、税収がふえていかない中においてただ単に歳出削減だけを行っていくと、経済はもっと厳しいことになっていくわけでございます。

 そこで、私たちは、しっかりと経済を成長させ、それによる果実を得ながら同時に無駄遣いはなくしていく、そういう考え方のもとに、そしてしっかりとデフレ脱却をして、デフレ脱却はやはり財政を健全化していくために必要な条件でありますから、そういう条件もしっかりとクリアしながら財政健全化の道をしっかりと歩んでいきたい、このように考えております。

岡田委員 大事なことは歳出の削減、あるいは、直ちには削減できなくても仕組みを変えること。

 安倍総理、覚えておられますか。私は一月の代表質問で、安倍政権における行政改革の具体例を挙げてくださいというふうに言いました。総理は三つ答弁されたんですね。私、実は驚いたんです。というのは、三つのうちの二つは民主党政権のもとで、私は行革担当をやっていましたが、ほぼ仕上げて国会まで法案を出したけれども解散で廃案になったもの、それがちょっと変わって出てきたものなんですね。

 つまり、特会改革、特別会計改革ですね、もう一つは独立行政法人改革。それぞれ我々民主党政権でしっかりつくって国会まで出した、しかし残念ながら解散で廃案になった。しばらく中で自民党は御検討になったと思いますが、我々から見ると少し弱まったという感じはしますが、でも、余り変わらないものが国会に出てきているんですね。だから、三つの成果のうちの二つは実は民主党政権が実態的にはつくっているということなんですよ。

 そしてもう一つは、だから、自分でやったものは何かを私は本当は答えてもらいたかったんですね、自分でやったものは基金だと。つまり、公益法人などで外に基金をつくって、その基金のうちの五千億円を潰して一般会計に戻しました、これが三つ目のお答えだったんですね。

 五千億円の基金を、もちろん必要のないものを潰して一般会計に戻すというのは正しいことなんですが、中身を精査すると、五千億円のうちの二千五百億円は第二次安倍政権になってから積んだものなんですよ。だから、この三年間に基金として積んで、結局使い切れずに、あるいはそもそもの目的が間違っていたのかもしれません、それを戻しただけ。自分でつくって、そしてそれを戻して、それが行革の典型例だと言うのは私は恥ずかしい話だと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず、改革については、我々は政治家ですから、いろいろなアイデアはそれぞれ考えます。こうしたいという方針も置きます。しかし、政治というのは、一番大切なことはそれを実行できたかどうかということであります。

 確かに、皆さんのアイデアとして、我々はいいアイデアは取り入れますから、しかし実行したのは、誰が考えたって、我々がしっかりと実行し、実行できる政治力を備えていたからであろう、このように思うわけであります。ですから、我々は、実行した中で三つあるということを申し上げたわけであります。

 そのうち二つについて、民主党政権時代だったではないかと。それは確かに、前からそれは大体そういう考え方としてあったわけでございまして、むしろここは、一致したことをお互いに喜び合った方がいいのではないか、私はこう思う次第でございまして、今後も、岡田委員の建設的な提案であればどんどん我々は取り入れていきたい、こう思っているわけでございます。

 そして、我々も、基金の改革についてもしっかりとこれからも、無駄がないかということに目配りをしながら結果を出していきたい、このように考えているところでございます。

 基金については、毎年度の予算編成において、基金方式による実施が真に必要か個別に精査した上で予算計上しております。そもそもこれは甘い見通しでつくったものではない、このように考えております。

 安倍内閣においては、行政事業レビューにおける外部有識者のチェックを抜本的に強化するとともに、各府省みずからが基金の執行状況や余剰資金の有無を自己点検して、その結果を基金シートとして公表する仕組みを新たに導入いたしました。これをもとに、さらに行政改革推進会議を中心に、経済情勢の変化など、個々の基金を取り巻く状況の変化も含め毎年点検を行い、PDCAサイクルの確立に努めた結果、総額五千億円を超える国庫返納につなげることができたと思います。

 今後とも、行政改革に総力を挙げて取り組んでいく考えでございます。

岡田委員 独法改革と特会改革、重要なのはやはり政府の中の調整ですね。各省庁、さまざまな抵抗があります。それをきちんとまとめて、法案の形にして我々は国会に出したんです。ですから、実質的な作業は私たちがやったということを申し上げているわけですね。

 基金についても、今は一般論で述べられましたが、五千億円のうちの半分をこの三年間で積んだというのはやはり相当反省が要りますよ。必要ないものをいっぱい積んだということでしょう。それが行革だと言っているのは全くおかしな話だと思うんですね。

 一例を挙げましょうか。電気自動車のスタンド、これをつくるために、二〇一二年度の補正予算、安倍内閣ですけれども、一千五億円計上しました。しかし、二〇一五年それから二〇一六年度で七百六十九億円返納する。つまり、使ったのは二百数十億にしかならないわけですね。二割強しか使っていない。やはりこれは、どう考えたって、見通しを誤ったということじゃないですか。

 そういうことを続けていたのでは、しかも、それを、いやいや、七百億円以上国庫に返納したからこれが行革ですと言うのは、私はおかしな話だなということを申し上げているわけです。

 最後にもう一つ、公務員の定員の問題ですね。やはり公務員の人件費をどう削減していくかというのは非常に重要な課題だと思うんです。

 我々は民主党政権で、自衛隊などを除くベースは三十万人ですが、三十万人の中で、二〇一〇年には千九百九十三名純減です。純減。二〇一一年はさすがに東日本大震災もありましたので千三百九人にとどまりましたが、翌年は二千百二人。

 私が行革担当大臣をした二〇一三年は、とにかく三十万人の国家公務員がいますから、その一%、三千人を目指そうと思ったんですね。三千人純減できれば、十年で一〇%純減になるわけですね。ですから、何とか三千人を目指そうということで、現実には二千八百五十一人、これは安倍内閣で閣議決定された一月の数字です。しかし、結局、補正でこれを減らして、二千百八十四人に減らしちゃった。

 その後はどうかというと、千百四十六人、八百八十八人、九百十七人と、民主党政権のときに大体二千人ぐらいやっていたのに比べて、半分になっているじゃないですか。公務員の数って……(発言する者あり)公務員の数は急に減らせませんよ。それ以上減らしようがないって本当ですか。しっかりとそれは見据えて、本当に無駄な人員がないかどうか、必要なところはつけなきゃいけませんよ。だけれども、無駄なところがないかどうかというのをやっていくのが政府の責任じゃないですか。

 なぜ民主党のときには二千人で、安倍政権は千人なんですか。そういうふうになっていることをどう考えておられるんですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 定員の純減については、厳格な定員管理によって自民党政権時代から定員の純減を続けてまいりました。

 今、岡田委員は民主党時代の純減を誇っておられましたが、それは、実態としては相当無理をして採用抑制を行った結果として達成したものと私は承知をしています。その結果、どういう問題や課題が生じたかといえば、交代制勤務職場でシフトが組めなくなるという実態がありました。そしてまた休暇取得が困難となる等の支障が生じたのも事実であります。

 政権交代後の二〇一三年の純減の減少は、尖閣国有化後の海上保安庁体制の整備を行いました、そしてまた北朝鮮問題への対応や、あるいは除染等の震災復興など、急を要するやむを得ない必要な体制整備を行った結果であります。その後も、国際テロ対策やサイバー対策など、取り巻く環境が変化し、内閣の重要課題に対応するための体制整備の必要性が高まっています。そのような中でも、着実に今申し上げましたような新たなニーズに応えつつ、かつ定員の純減は実施をしているということであります。

 国際テロの危険が高まる中で、それは横に置いておけということにはならないわけでありまして、しっかりとその分野においては定員増で対応していかなければいけないわけでありますし、海上保安庁の諸君の今の勤務状況も相当過酷なものがあるわけでありまして、例えば近隣国がどんどん海上警察の能力を向上している中においてそれに対応していかなければならないわけでありまして、それは隻数をふやせばいいというだけではなくて、当然その船に乗る人員も確保していくことは大切だろう、このように思います。

 皆さんがそういうものは全く必要がないと言うのであれば別でありますが、私たちは必要であると考えています。必要なものはしっかりとふやしながら、しかし一方、減らすべきところは減らし、そして減らすべきところは、これは必要なものをふやした以上に減らしていますから純減をしているということを申し上げているところでございます。

岡田委員 総理、議論をすりかえないでもらいたい。必要なところにはつけるべきだと私も言っているんです。しかし、それだけで、今答弁を棒読みされましたが、こういう問題を、役人の書いた答弁を棒読みしている、それで本当にできるんですか、総理。

 政府の中の例えばIT化を進めていけば、人はそれだけ必要なくなるはずですよ。あるいは、今の時代の要請で本当に必要なのかどうか、そういったことも検証できるはずですよ。そういったことをしっかりやっていただきたいということを申し上げているわけです。

 では、次に行きます。

 総理が野党時代の発言を紹介したいと思います。夫婦別姓の問題ですね。

 総理は、夫婦別姓は家族の解体を意味します、家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマです、こういうふうに発言されていますね。これはどういう意味ですか。お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 突然の質問でございますので、後ほど確認させていただきたい、このように思います。

岡田委員 これは昔の発言じゃないんですよね、野党時代の発言ですから。これは、「WiLL」という雑誌の平成二十二年七月、そのときの対談ですね。自民党の何人かの議員が対談しておられる中での総理の発言なんですよ。

 こういう考え方で夫婦別姓というものを考えていれば、我々は選択的夫婦別姓、法案も国会に出していますが、そういうことについて頭から、もうイデオロギー的にだめだということですか。

安倍内閣総理大臣 こういうものは、前後でどういう発言をしているか、対談ですから、それを見ないと私もにわかにはお答えのしようがないわけでありますが、私は、家族の価値を重視する保守党としての自民党の考え方を恐らく述べたものであろう、こう考えるわけでございます。

 いずれにいたしましても、夫婦別氏に対する考え方については、政府としての長である内閣総理大臣として既に答弁をしているとおりでございます。

岡田委員 自分で御発言になったことですから、覚えていないというのはあり得ないというふうに思うわけですね。いずれにしても、ここに総理のやはり基本的な考え方というのが出てきているんじゃないかと思うんですよ。

 この前、最高裁が、憲法違反ではない、そういう判決を下しました。後は立法の問題だ、国会で議論する話だ、こういうことであります。ですから議論しているし、我々は、選択的夫婦別姓、別に夫婦別姓を強制するんじゃなくて、そういうことも可能ですよという法案を国会に提出しているわけであります。

 この最高裁の判決の中で、憲法違反でないという判決に反対した裁判官が何人かいらっしゃいます。女性の裁判官三人全員が憲法違反だという意見を述べられました。

 そこでどういう論理を述べておられるかというと、結局、多くの場合には夫の姓になってしまう、現実的に九六%が夫の姓になるんですね、結婚した場合に。妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個別識別機能を損なわれ、また自己喪失感といった負担を負うことになり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とは言えない、だから憲法違反だと言っているわけです。

 私は、憲法違反だという考え方に立つものでは必ずしもないんですが、それは最高裁が判断されたわけですから尊重しますが、ここの論理というのは、やはり立法的にしっかり対応すべきだということになるんじゃないでしょうか。男女平等の本質に反するような、同姓を強制する、そういう仕組みはやはりおかしいんじゃないですか。先進国の中で、結婚したら同じ姓にしなければいけないと強制している、そういう国はありませんよね、日本だけですよね。なぜここに固執されるのか私はわからないんですが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 諸外国では、中国や韓国はそうでありますが、そもそも別氏であったわけでございます。

 夫婦の氏の問題は、単に婚姻時の氏の選択にとどまらず、夫婦の間に生まれてくる子の氏の問題を含め、我が国の家族のあり方に深くかかわる問題であろうと考えています。

 選択的夫婦別氏制度については、国民の間でさまざまな意見があるのも事実だろうと思います。例えば、直近の世論調査を例にとってみますと、反対が三六・四%、容認が三五・五%、通称のみ容認が二四・〇%などといった結果になっているところでございます。そのため、最高裁判決における指摘や国民的な議論の動向を踏まえながら、慎重に対応する必要があると考えております。

岡田委員 これは日本の伝統だと言う人もいますけれども、明治三十一年からですね、法制的には。それまでは、一部の人を除いて、そもそも日本人は氏がなかったわけでしょう。

 いずれにしても、総理がこういう固定観念を持っておられると、この選択的夫婦別姓の話というのは全く進まないですよね。そこはしっかり考えを改めていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、子ども手当についてもとんでもないことを言っておられますね。

 子ども手当によって民主党が目指しているのは、財政を破綻させることだけではなく、子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化です、これは実際にポル・ポトやスターリンが行おうとしたことですと。これは総理の発言ですよ。

 今、総理は子ども・子育てに随分力を入れておられるようで、具体的政策でも展開しておられますが、根底にあるのはこういう考え方ですか。国家化、社会化である、子育てはということになると、これは非常にゆがんだ形の子ども・子育て政策になっていきませんか。この考え方、撤回されませんか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、民主党政権時代に行われたいわば子育て支援と私どもの支援は違うということを申し上げているわけでありまして、私は、全てを社会化あるいは国家が担うということは間違っているということを申し上げたわけでありまして、やはり大切なことは、家族が子供を育み育てていく、それを地域や社会が支援していく、国ももちろん支援していく、そういう姿が正しい姿であろう、こう申し上げているわけでありまして、その考え方は今も変わっていないということでございます。

岡田委員 総理、それは基本的に違いますよ。我々が言ってきたのは、子ども・子育て、もちろんそれは家族の問題でもある、しかし、それだけでは十分でない、社会全体で支援していくんだと。これが民主党の基本的考え方ですよ。だから、今総理が言ったのと非常に似ているんだけれども。

 当時、私、担当大臣として自民党議員の質問をよく受けましたが、今総理が言われたような話じゃなくて、やはりこれは社会全体で支援するということ自身が間違っているんだというような、そういう議論を展開する方も結構いらっしゃいましたよ。この総理の発言もその一環じゃないかというふうにも思えるわけですね。

 やはり考え方をちゃんと改めるべきだ。この発言を二つ、撤回されませんか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今まさに、子育てについては、家族が愛情を注いで子育てを行う、しかし、その中において地域や社会や国家がしっかりと支えていく、それが正しい子育て支援だと私は今でも考えているわけでございます。

 あのとき民主党の中でこういう発言をした方もおられたんだと思いますが、つまり、子育て支援、子ども手当というのは、両親や家族からいわば養育費が払われるということではなくて、まさに国家から直接子供たちに養育費が行くということによって、自分たちは両親に対し何の義理や義務を感じる必要がないという議論もあったわけであります。ですから、そういうことではなくて……(発言する者あり)済みません、皆さん、静かにしてください。大切なところですから。全て子供を国家に委ねる、いわば家族ではなくて国家が育てるという考え方は間違っているということを申し上げたわけでありまして、その考え方は今も変わりがないということでございます。

岡田委員 総理、今の発言は、私は聞いたことがありません。ですから、どこでどういう発言があったか明確にしてください。民主党ですよ、民主党がそういう発言をしたかどうか。もしそういう事実がなければ、撤回して謝罪してくださいよ。

 終わります。

竹下委員長 この際、階猛君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。階猛君。

階委員 民主・維新・無所属クラブの階です。

 総理は、先般、青山学院の駅伝の選手たちとお会いになられて、もう往路の五区に来たというお話でしたけれども、五区が一番きついんです。我々は、まだまだこの予算委員会で詰めなくてはいけない争点があると考えておりますので、引き続き質問をさせていただきます。

 まず、今週末岩手に帰って、内陸でも被災地でもいろいろな声を聞いてまいりました。安倍政権の閣僚に対しても、大変厳しい声を聞いてまいりました。

 麻生副総理に、通告していませんけれども、まず伺いたいと思います。

 岩手は農業県です。先般、財務金融委員会で、農家というのは、トーゴーサンの例から見ても、いまだかつて一回も税金を払ったことはないという人も多分おられる、こういう発言をされていました。農家に対して失礼ではないか。多くの農家は、払いたくても払えない、こういう方が多いんです。私も農家の方にお会いしますと、農業自体は赤字だけれども、年金があるから何とかやっていけるんだ、こういう方にもたくさん会います。

 発言を撤回して謝罪すべきと考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 二月の二十五日の財務金融委員会におきます私の発言ということなんだと思いますが、インボイス制度の導入に伴う事務負担というものの増加についての御質問がありましたので、それにお答えする中で、世の中に言われている指摘や地元の農家から聞いた話によると、税務関係の事務負担にふなれな方もいらっしゃるのではないかという趣旨を申し上げたものでありまして、一般論として農家は税金を払っていないというようなことを申し上げたわけではありません。(発言する者あり)

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

平沢委員長代理 静かにしてください。

階委員 税金の手続にふなれな方もいらっしゃるということと、税金を払っていないということは、全くニュアンスが違いますよ。税金の手続にふなれな方がいる、そう言えばいいじゃないですか。なぜそう言わないで、税金を払っていない人もいると言われるんですか。これは、農家を軽視している、蔑視しているととられますよ。撤回してください。

麻生国務大臣 御質問の制度は、たしかインボイスの話だったと思うんですね、あのときは。インボイスの話についてはふなれな方もいらっしゃると申し上げたんだと記憶していますが。

階委員 そもそも、インボイスの話をしているときに、トーゴーサンという所得の捕捉率の話をしている。これ自体、全く文脈と合っていないと思いますよ。何でここでトーゴーサンの話とか、農家は税金を払っていないという話が出てくるんですか。わかりません。なぜここでそういう話が出てくるんですか。

麻生国務大臣 私どもとしては、税金全般の話でありましたので、その一端の例として、一つの話として申し上げたのであって、私どもとしては、基本的には、インボイスに関するのが答弁の内容だったと記憶しています。

階委員 総理が戻ってこられたので、総理に伺います。

 今、副総理と、先週の答弁、すなわち、農家は税金を払っていない人もいる、そういうようなお話をされたということを議論してまいりました。その前には、麻生副総理は、中小企業、この軽減税率の導入によって、潰れるところも出るのはやむを得ないといった趣旨の発言もされていました。

 一億総活躍ということを安倍政権は今目標に掲げているわけで、それにもかかわらず、農業をされている方を傷つけたり、あるいは中小企業を軽視するような発言をされたり、副総理は安倍政権の目指す一億総活躍の足を引っ張っていると思うんですが、総理、副総理の言動、問題ないですか。

安倍内閣総理大臣 私は、麻生副総理といろいろな課題について話をする機会が多いわけでございますが、日本の農家の方々がいかに勤勉に朝早くから身を粉にして働き、すばらしい作物をつくっているかということについてよく麻生さんからもお話を伺っているわけでございまして、まさに農民を最も愛するという姿勢が感じられるということも申し上げておきたい、このように思います。

 また、日本を支えているのはまさに中小零細企業でございます。中小企業に対する敬意については、まさに麻生さんの御地元にもたくさんの中小零細企業があり、それが地域を支え、ひいては日本を支えているわけでありますから、それに対する敬意はしっかりと麻生副総理はお持ちであろう、このように確信をしております。

階委員 全くその思いと言葉が整合しておりません。全く言動が軽過ぎる。

 丸川大臣にもお尋ねします。

 言動といえば、丸川大臣は、環境大臣としての資質を疑わせる発言、この委員会でも多々ありました。

 これはこの委員会の発言ではない、別な場での発言ですけれども、年間被曝線量一ミリシーベルト以下という除染の最終目標について、国際機関の勧告に基づいて定めたものであるにもかかわらず、何の科学的根拠もないという発言、また、環境大臣でありながら、環境の日がいつなのかも知らない。

 そして、知識不足だけではなく、私も何度も申し上げましたけれども、今、放射性廃棄物の処理が思うように進まず、岩手でも、宮城でも、それ以外の県でも大変困っている。地元からは、大臣に声を聞きに来てほしいという切実な訴えがあるにもかかわらず、いまだに行こうとされない。

 みずからのこれまでの言動を振り返って、これからも環境大臣を続けていくのにふさわしいと考えていらっしゃいますか。

丸川国務大臣 福島の皆様方に御心配を与えてしまったことについては、本当に申しわけなく思っております。

 また、先生の御地元を含め、お伺いするつもりをもってこの週末も調整をさせていただいておりましたけれども、自治体の皆様の御都合もございまして、今、まだ引き続き調整をさせていただいているところでございます。

 ありがとうございます。

階委員 行く気があればすぐ行けますよ。

 私たちも、民主党の復興推進本部で、きのうは、野田前総理を初め何人かの議員で被災地に行ってまいりました。短期間で先方の約束をとって、伺ったわけです。大臣だって、行く気になれば、先方だって待ち望んでいるわけですから、行けると思いますよ。今のは言いわけにすぎないと思います。

 そこで、総理に伺います。

 先般、この委員会でもお尋ねしました。丸川大臣に関する任命責任を伺ったわけですが、その際、全ての大臣が復興担当大臣だという意識を持ってしっかり職責を果たしてもらいたいというふうなお答えでした。しかしながら、丸川大臣は、今申し上げましたとおり、みずからの言動で被災地から信頼を失っている状況です。最近の世論調査結果でも、七割の方が、大臣にふさわしくないという結果が出ています。

 総理は、丸川大臣が環境大臣としての職責を果たし得ると考えていらっしゃいますか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 閣僚の任命責任は私にあるわけであります。その責任は、究極的には、しっかりと政策を前に進めていくことによって果たされるべきものだと考えています。

 丸川大臣は、松本市における講演のうち、福島に関連する発言を撤回した上で、福島を初めとする被災地の復興のために全力を尽くす覚悟を改めて述べました。福島の皆さんが求めていることは一日も早い除染の実行であり、丸川大臣には、先頭に立って、除染の加速化などに全力で取り組んでもらいたいと思います。

階委員 まさに先頭に立って現地に行くべきではないですか。行っていないじゃないですか。全く先頭に立つ気もないんじゃないでしょうか。

 すぐ行ってください、丸川大臣。すぐ行かれたらどうですか。もう一度答弁をお願いします。

丸川国務大臣 今まさに御相談申し上げておるところでございますので、調整がつき次第、きちんとお伺いをさせていただきたいと思っております。

階委員 この話、ことしの冒頭、国会が始まった当初からしておりますけれども、二カ月たっても一向に行けていない。これは大変問題だと思います。だからこそ、職責にふさわしくないということを申し上げました。

 復興大臣にもお伺いしたいと思います。

 きのう、今申し上げましたとおり、民主党の復興推進本部で岩手県の大槌町、釜石市に伺ってまいりました。仮設住宅にお住まいの方とも膝を交えて話をしてきました。現地でなければわからない、いろいろな切実な声を聞いてきました。

 災害公営住宅、今どんどん建ち始めていますけれども、これは立派なドアよりも昔ながらの引き戸の方がお年寄りの出入りが楽で交流もしやすいといったような声も聞いてきました。

 大臣も現場主義ということで何度も現地に足を運ばれたとかねがね伺っておりますけれども、その反面、きのう伺ったところ、大臣は来たけれどもすぐに帰った、何かやましいことでもあるのではないか、そういう声もありました。

 また、高木大臣になって、どんどん震災の記憶が風化してしまうのではないかという声も聞きました。確かに、高木大臣になってから、非常に残念なんですが、御自身の政治と金の問題、それから、女性宅に侵入して下着を盗んだのではないか、こういう疑惑にばかり注目が集まり、肝心の復興の問題から国民の関心が離れていると思っています。

 もうすぐ五年という重要な節目が近づく中で、御自身が復興大臣としてふさわしいのかどうか、まずは大臣の御見解を伺います。

高木国務大臣 まさに間もなく震災から五年ということで、大きな節目を迎えます。そのときにこの任に当たっているということの重大さというものは十分に認識をさせていただいておりまして、現場主義という話をさせていただくならば、きのうも福島へ行かせていただきましたし、これまで就任以来二十三回にわたって被災地を訪問させていただきました。

 滞在期間が短いというような御指摘もございましたが、少しでも多くの被災地をという思いもあり、そういう御指摘もあるのかもしれませんが、いずれにしても、これからもしっかりと被災地に寄り添いながら、この復興大臣の仕事を務めていきたいというふうに思っております。

 信頼関係云々の話がございましたけれども、これはみずから申し上げるようなことではないというふうに思います。信頼関係が崩れている、あるいはまた築かれている、みずから申し上げることではないというふうに思いますが、これまで四カ月半、私は真摯にこの仕事に取り組んできたと思いますし、これからもしっかりと被災地の方の信頼関係を結ぶべく取り組んでいきたい、そのように考えているところでございます。

階委員 私の隣に座っている柚木議員が復興大臣の問題についてはかねがね議論をさせていただきました。私もずっとその議論を聞いておりまして、疑惑を本当に晴らしたいのであれば、やるべきことはあるんじゃないかと思っています。

 まず、新聞あるいは週刊誌など、さまざまな、大臣の名誉を毀損するような、これが事実でないとすれば当然訴訟沙汰になるような、そういうことが書かれているわけです。大臣は事実無根だというふうにおっしゃっているわけですから、私が大臣であれば、当然、ここは裁判に訴えてでもみずからの名誉を回復する、そういう措置をとると思うんです。これは簡単にできる、御自身の判断でできることです。なぜそれをやらないのでしょうか。お答えください。

高木国務大臣 たびたびこれも答弁いたしておりますけれども、そうした事実はないということ、そして、今、その対応につきましては引き続き弁護士と相談しておりますが、今はとにかく、この復興大臣という大変重い仕事というものをしっかりと務めていくというのが私の責務だというふうに考えているところでございます。

階委員 先ほど被災地の声を皆さんにお伝えしました。やはり、大臣がどうお考えになるかは別として、被災地の方では、何かやましいことがあるのではないか、そういう気持ちでもって大臣が来られた場合に接しているということで、ただでさえ被災地は自分のことで精いっぱいなのに、余計なことに気を使わせる、それは大臣としていかがなものかと思います。

 総理にもお尋ねします。

 来年度からは、復興事業の一部地元負担ということで、復興途上で財政が大変厳しい被災地も負担を強いられることになりました。ならば、一層、負担を求める復興大臣もみずから律してもらわないといけないと考えます。しかし、丸川大臣と同様、先日私が総理に任命責任を尋ねましたところ、しっかり職責を果たしてもらいたいというお答えでした。

 改めてお尋ねしますけれども、総理は、高木大臣がその職責を果たすにふさわしいとお考えになるか、被災地に胸を張って言えるかどうか、この点、明確にお答えください。

安倍内閣総理大臣 東日本大震災からの復興は、安倍政権の最重要課題であります。全ての大臣が復興大臣との思いを持って職務に遂行するように指示をしているところでございますが、その中でも復興大臣の責任は極めて重いわけでございます。しっかりとその職責を果たしてもらいたい、そのことによって責任を果たしてもらいたいと思っております。

 私も毎月被災地に足を運んでいるわけでございますが、これからさらに復興を加速させていくために、一丸となって努力をしていきたいと思います。その中で、復興大臣には職責をしっかりと果たしてもらいたいと考えております。

階委員 確認しますが、高木復興大臣は、もうすぐ五年を迎える被災地の復興をこれからさらに加速させていくためにふさわしい方であるというふうに総理はお考えになるということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 任命したのは私であり、任命責任は私にあるわけでございます。ことし五年を迎えることになりましたが、次の五年に向かってしっかりとその職責を果たしていただきたい、このように期待をしております。

階委員 それでは、次の話に移らせていただきます。復興大臣と環境大臣、どうぞ御退席ください。

平沢委員長代理 では、御退席いただいて結構です。

階委員 ちょっと質問の順番が、二と三、かわりますけれども、法の支配に反する安倍政権の姿勢についてということで伺います。

 まず、パネルをごらんになってください。

 このパネルは前に委員会でお示ししたものでありますけれども、法務大臣が答えられなかった問題です。

 会計検査院は、憲法九十条によって、全ての決算について検査するというふうに定められております。ところが、特定秘密保護法ができたことによって、これができなくなるのではないか。具体的には、特定秘密保護法十条、行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときでなければ、特定秘密は提供されなくなってしまう。

 ところで、この要件、こちらは、特定秘密保護法施行後、会計検査院には適用があるかどうか、こういう御質問をしました。それに対して、適用があると言ったり適用がないと言ったり、二転三転しましたけれども、ようやく先週、政府統一見解が出てきました。

 要するに、法律上はこの要件は適用がある、だけれども、運用上、これは、具体的な事例で適用されることはおよそ考えられない。およそ考えられないということは、一切ないという意味に理解してよろしいですか、法務大臣、お答えください。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

岩城国務大臣 およそ考えられないという趣旨でありますけれども、これは、過去の事例に即し常識的には考えられない、そういった趣旨でございます。

階委員 曖昧ですよね、常識的には考えられない。ということは、常識というのは主観的なものです。一切ないというのとは違うと思いますよ。

 一切ないのか、それとも例外はあるのか、お答えください。

岩城国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、常識的には考えられない、そういうことでございます。

階委員 結局、これでは予測可能性がないわけですよ。法律の定め、しかもこれは重要な定めですよ。事は、憲法九十条が守られるかどうか、ここにかかわってくるわけです。その法律の解釈が今のような曖昧なことでは、到底法の支配は守られているとは言えないのではないでしょうか。

 総理に伺います。

 法の支配は普遍的な概念だということを、国際会議の場でも、G7などと一緒にそれを守るんだといったようなことも、かねがね総理はおっしゃっていると思います。法の支配を尊重する総理として、こうした法務大臣、法の支配を踏みにじるような、ないがしろにするような答弁をされていると私は思いますけれども、その法務大臣が大臣の任に値するかどうか、任命責任を負う総理としてお答えください。

安倍内閣総理大臣 政府としては一貫して答弁をしているわけでございますが、政府は、憲法上の会計検査院の役割の重要性については十分認識しています。会計検査院への秘密事項の提供に関する取り扱いについては、特定秘密保護法の施行により従来と何ら変更が生じるものではないと考えます。

 すなわち、会計検査院の検査に必要な資料の提供は、公益上特に必要と認められる業務を行う者への特定秘密の提供を定める法第十条第一項第一号を根拠として行われるところでありますが、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められたときに限り提供されるという限定が法文上適用されるものとなります。

 しかし、実際には、これは私がこの場で答弁をしたように、この規定により特定秘密の提供が行われないということは実務上およそ考えられないということであります。従来の取り扱いと何らの変更がないことについては、内閣官房において、一昨年十二月の法の施行前に法の逐条解説に関する資料において各行政機関に通知をし、さらに昨年末、改めて関係行政機関に徹底したところであります。

 このように、特定秘密保護法の施行により、特定秘密であることを理由として、検査上の必要があるとして求められた資料の提出がなされないという問題は生じないものと考えております。憲法第九十条に違反するものではないと思います。

 また、政府としては、先ほど述べたとおり、憲法上の会計検査院の役割の重要性について十分に認識をしており、内閣や担当大臣がかわったとしても、会計検査院には特定秘密が提供されるという取り扱いが変更されることは考えられないわけであります。

 このように、会計検査院に対する特定秘密の提供については、将来にわたり法令の規定に従って適切に行われるものと考えているところでありまして、恣意的な運用がなされるものではありませんし、骨抜きとか、法の支配を軽んじる、あるいは人の支配などということはないということは申し上げておきたいと思います。

階委員 先ほど法務大臣は、常識的には考えられないというふうにおっしゃいました。なので、私は、常識的とは言えないような場合、考え得るというふうに理解しました。しかし、総理、今長々とお答えになられましたけれども、一切ないようなお話でした。

 これは、一切ないという趣旨で今お答えになったということですか。それとも、例外はあるということですか。総理、お答えください。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、法文上については今申し上げたとおりでありまして、それは、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限るということは、それはかかっているわけでございます。

 そこで、実務上およそ考えられないというのは、過去の事例にわたって考えてみれば、我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあるものについて、会計検査院がそこまで求めるということは今までもないわけでございまして、ということから、これからもおよそ考えられないということを申し上げているわけであります。

 ですから、一切ということではなくて、今申し上げておりますように、およそ考えられないということでございます。

階委員 だんだんわかってきましたけれども、一切提供しないということではなくて、会計検査院側から求めなければ提供しないということであって、もし、こういう特定秘密で、かつ行政機関の長が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあるというふうに判断するような場合は、これは政府は提供を拒むことがあるということになりますよね。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、会計検査院が求めるものは、会計検査上のいわば必要に応じて求めてくるものでございます。これは今までもあるわけでございますが、例えば、さまざまな我が国の治安や安全保障のために情報を提供する人物がいたとします。あるいは、海外から提供される場合もあります。その名前はユア・アイズ・オンリーということで向こう側は提供するわけでありますから、それは情報を提供した人の目のみに名前の入ったものは提供するわけでありまして、その人以外に行く場合は名前は秘にされるわけでございまして、たとえ上司に行く場合も名前は秘にされるわけでございます。

 そこで、それを提供するときに、名前そのものを付したものを会計検査院が要求するということはそもそも必要性においてもないわけでございますし、その名前を見たところで普通の人には全くわからないわけであります。重要なことは、その名前を提供した側がユア・アイズ・オンリー、あなただけですよというのを超えて日本が行っているということになればその後は一切そうしたものが提供されないとなれば、国の安全に著しい障害が生じるおそれも出てくるわけでございますが、しかし、会計検査上はそもそもそれは必要とされないわけでございますから、そこで、そういう事案があったことについて、どのような形で提供していくかということはあるんだろう、こう思うわけでございます。

 そこで、いわば法の解釈として、我が国の安全保障上に著しい影響を与えているかどうか。これは、今まで述べている、およそ考えられないということについては、いわば会計検査上の必要性において国の安全保障に著しい障害を与えるということとぶつかるということはなかなか想定し得ないわけでありますし、そういう形で提供することもできるわけでございます、事案についても。

 いわば会計検査院というのは、ちゃんとした支出がなされているか、そしてそれが正しいかどうかということでありまして、世界じゅうにおいて、情報の提供をする場合においては、例えば今みたいなことについては、ユア・アイズ・オンリーという情報については、これを、いわば会計検査院の場において名前を明らかにするということは常識として考えられないわけでありますし、その中においてそれが求められるということも我々はおよそ考えられないわけでございまして、そういう意味においても申し上げているわけでございます。

階委員 要するに、要件が適用される場合、今総理がおっしゃったケースというのは、ごく当たり前のことをおっしゃったんだと思うんです。

 ただ、この要件が残されることによって、どんどんどんどん適用範囲が拡大されて、それによって憲法九十条が骨抜きにされる懸念があるから私たちは申し上げているんです。法の支配によってそういう運用の歯どめをかける、これが法の支配の普遍的な意義だと私は考えますけれども、今の答弁では全くそれはなされないということを申し上げます。

 その上で、この委員会では、憲法改正をめぐって総理からもさまざまな所見が披露されました。

 次のパネルをごらんください。

 やはり九条、これについては私も大変気になる答弁でありました。

 安倍総理は、この九条について、憲法学者の七割が自衛隊を違憲としていることを根拠に、九条改正の必要性に言及されました。自民党憲法草案九条、このとおり九条の二項を変えて、自衛権の発動を妨げるものではない。その下に九条の二というものを置いて、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。また、その九条の二の三項では、国防軍は、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動等々を行うことができるというふうになっております。まさに、集団的自衛権を真正面から認めるための改正草案であります。

 私は、平和主義を骨抜きにしないためにも、安易にこの九条を変えるべきではないということをまず申し上げます。

 その上で、総理の論法からすれば、憲法学者の九八%が違憲と認める安保法制は、九条を変えなければこの違憲状態は解消されないわけですから、総理は、なおのこと九条は改正する必要がある、そのために、今回、参議院選挙は憲法改正を争点としているというふうにとれるわけですけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも憲法改正については、草案については、閣法として、政府として提出することはないわけでございます。ですから、憲法審査会において、各政党間あるいは議員個人間において議論を進めていただきたい、こう考えている次第でございます。

 我々は、憲法改正草案を私たちの考え方としてお示しをしております。その中には九条も入っておりますが、それが全て実現できるとは我々は考えていないわけでございます。政治の現実として、国民的な理解が広まり、そして深まっていくものからしっかりと進めていきたい、こう考えております。

 また、自衛隊については、憲法学者の七割が、違憲のおそれも含めて、違憲の可能性がある、こう考えているのは残念なことではあります。しかし、我々は、当然、自衛権、これは最高裁判決が既に砂川判決で確定をしている、こう考えておりますが、自衛隊の存在、自衛隊の行動については合憲であると考えておりますし、国民的な理解もだんだん高まってきている、こう考えております。

 同時に、憲法学者は、集団的自衛権の一部行使容認について、これは憲法違反だと多くの方々が考えているのは大変残念なことではございます。しかし、私たちは、これは合憲であるということは、もうこの国会で何回も答弁をさせていただいたとおりであります。

 幸い、共同通信ですか、直近の世論調査においては、現行の平和安全法制について、廃棄すべきでないという方の方が四八で、廃棄すべきだ、皆さんが出している廃止法案を支持される方の方が一〇%ほど少ないのではないか、こう思う次第でございます。今後も、こうした支持が上がってくるように努力をしていきたい。

 また、憲法においては、私が今、行政府の長として、こうすべきだということは申し上げるべきではないのかな、こう考えております。

階委員 憲法学者の七割が反対する自衛隊の存在をちゃんと正当化するために憲法九条を変えるんだ、変える必要があるんだというお話でしたので伺ったわけです。それが本当にそうだとすれば、憲法九条は集団的自衛権も認めていないわけです。そこで九八%の憲法学者が違憲としているわけですから、なおさら変えるつもりがあるのではないかということでお話ししました。

 この点は選挙の後になってみないと実は明らかにされない。これは大変問題だということを申し上げます。

 日銀総裁にも来ていただいております。時間が残り少なくなってまいりましたので、お尋ねします。

 マイナス金利、マイナス金利と言っていますけれども、要は、当座預金の利息をマイナスにするということです。民法上は利息は元本使用の対価というふうに言われておりまして、使用するのはお金を預けてもらった側、日銀の側なんですね。ところが、なぜか、日銀が銀行に利息を払うのではなくて、逆に、預けた銀行の側が利息を払う。日銀の当座勘定規定には、「当座預金には利息を付さない。ただし、日本銀行が特に必要と認める場合には、日本銀行が別に定めるところにより利息を付すことができる。」となっておりまして、要は、利息はゼロ、ただし、利息を付すことはできると言っていますが、マイナスで利息を取ることができるということはどこにも書いていません。

 なぜ、日銀はこれで利息を取ることができるのですか。お答えください。

黒田参考人 日本銀行は、物価の安定を通じて、国民経済の健全な発展に資するために金融政策を行っております。

 このため、例えば政策金利の変更など、金融機関にとって取引条件が有利になるか不利になるかといった問題とは独立して、適切な金融政策を実施するということが想定されております。

 また、実際これまでも、日本銀行と金融機関の取引においては、国債補完供給など、双方合意の上でマイナス金利で行っているものも存在しております。

 今回の日銀当座預金へのマイナス金利の適用についても、金融機関との契約上、利息の計算方法などに関して明示の定めを置いた上で実施をいたしております。

 こうした取り扱いは、契約自由の原則に照らして法的に何ら問題ないというふうに思っております。

階委員 双方合意の上であれば契約の自由に照らして問題ないと言えるかもしれませんが、日銀は、この当座勘定規定は変えないまま、一方的な新たな規定をつくってマイナス金利にしているわけです。これが許されるのであれば、下の方に、民間銀行、三井住友銀行の預金規定から抜粋しました。ここには、前段で、預金の利息は預金に組み入れます、つまり銀行側が払うということを言っていますが、なお、利率は金融情勢等に応じて変更しますというふうにあるわけですから、今の金融情勢のもと、マイナスにすることも認められるということになりませんか。一方的にできるのであれば、そういうことになりませんか。総裁、お答えください。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、契約においてそういう取り決めをしておりますので、契約自由の原則に従って何ら問題ないというふうに思っております。

 なお、当座勘定規定につきましては、さまざまな決定ができるように書いてございまして、所要事項の決定あるいは規定の改正その他、あらゆることが対応できるようになっております。そうしたもとで、契約自由の原則に従ってそうした契約を結んで実行しているということでありまして、法的に何ら問題がないということであります。(階委員「答えていない。民間銀行について聞いています」と呼ぶ)

 民間銀行につきましては、金融機関の顧客に対する貸し出しあるいは預金の金利というのは、市場金利を参考にしつつ、各金融機関の経営判断で設定されているものですけれども、中央銀行が既にマイナス金利を採用している欧州諸国の例を見ても、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるというふうには考えておりません。

 実務的に、各金融機関が顧客との長期的な取引関係を考えることや、仮にマイナス金利を適用した場合、現金を保有する方が有利となることから、個人向け預金の金利をマイナスにすることの制約になるとは思っております。

 なお、法的には、先般公表された金融法務委員会の考え方の整理では、現在の預金約款のもとでの当事者の合理的な意思解釈によれば、金融機関が受け入れた預金にマイナス金利を適用することはできないというふうにされております。

階委員 この点については、この委員会でも、玉木委員初め、何度も、民間もマイナス利息になるのかならないのか、総裁の答弁、揺れ動いています。マイナスになることを明確には否定していません。だからこそ、私たちは、これは大いに一般の預金者は関心があるところで、これは明確にしていただく必要があると考えております。

 考えられるとか期待されるとかではなくて、絶対にそれはないということをお答えいただけないのか。最後にその点だけ、一言でお願いします。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますように、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるとは全く考えておりません。

 日本銀行における金融機関の準備預金についてマイナス金利が適用されるようになっているわけですけれども、これは欧州の中央銀行でもその例が多く見られます。

 なお、先ほど申し上げた、繰り返しになりますけれども、先般公表された金融法務委員会の考え方の整理では、現在の預金約款のもとでの当事者の合理的な意思解釈によれば、金融機関が借り入れた預金にマイナス金利を適用することはできないというふうにされております。

階委員 金融法委員会というのは、日銀のもとにある私的な勉強会です。それから、当事者の合理的意思解釈というのは、確定的な法的根拠にはなりません。

 明確な法的根拠を示していただきますよう理事会でお諮りいただくよう申し上げまして、質問を終わります。

竹下委員長 理事会で協議をいたします。

 この際、大西健介君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 前回の質疑で、私は、王子ホールディングスがテンプスタッフキャリアコンサルティングの支援を受けて行った退職勧奨について質問させていただきました。そして、これは実質的な退職強要に当たるのではないか、また、これを国が労働移動支援助成金というもので後押ししてきたのではないかという問題について、塩崎厚労大臣としっかりと議論させていただきました。

 きょうは、その基本的な認識について、安倍総理とぜひ議論をさせていただきたいというふうに思っているんです。

 というのは、なぜならこれは、安倍政権の基本政策にかかわる問題なんです。すなわち、君はもう会社には活躍の場はないんだと言われるということは、これは安倍政権が目指す一億総活躍社会とはあべこべのことです。それから、安倍政権の目指すアベノミクスの成長戦略の目玉、これは失業なき労働移動ということでありますから、そして、その具体策が労働移動支援助成金なんですね。

 ですから、きょうは、その基本的な認識について総理と議論をさせていただきたいというふうに思います。

 総理やテレビをごらんの皆様に、前回のおさらいの意味で、今回の事案がどういう問題なのか、パネルに整理をしてみました。

 この企業、今回でいうと王子ホールディングスですけれども、王子ホールディングスが再就職支援会社、テンプスタッフキャリアコンサルティングに再就職支援の委託を行いました。

 ただ、このテンプスタッフキャリアコンサルティングは、退職者の再就職支援だけではなくて、例えば、マニュアルを作成したりとか面談者の研修を行ったりとか、退職勧奨についても、前段階についても無料でサービスを行ってきていることがわかりました。

 そして、国は今回、ここにありますけれども、労働移動支援助成金というものでこれを応援してきたんです。とりわけ、安倍政権になってから、平成二十六年度以降、大幅に予算を増額してきました。また、王子のような大企業であってもこれを使えるようにするとともに、テンプスタッフに委託をした時点で十万円が支給できるように制度を拡充したのも安倍政権なんです。

 前回質疑で、私は、テンプスタッフのこの例というのは氷山の一角にすぎないんじゃないか、つまり、再就職支援会社が退職勧奨のサービス、例えば、マニュアルをつくったりとか、あるいは面談者の研修を行うというのを、再就職支援サービスと退職勧奨の支援サービスをセットで提供しているところがほかにもあるんじゃないかということが考えられるので、それを調査してほしいということをお願いしました。

 その結果、調査結果が出てまいりました。

 皆さんのお手元に資料としてお配りをさせていただいておりますけれども、再就職支援協議会の会員企業、二十四社ありますけれども、このうち、三年間で再就職支援業務を受託した企業は十三社あります。その十三社のうち五社が退職勧奨の制度設計のコンサルティングを受けています。二社がマニュアルの作成をやっています。八社が面談者の研修を行っているということが新たに明らかになったんです。我々が思ったとおりで、やはりこれは、テンプスタッフだけじゃなくて、ほかの人材ビジネスも同じことをやっているということがわかったわけです。

 前回の質疑で塩崎大臣は私の質問に対して、「求職者の再就職支援をするというのが使命のはずの企業がむしろ求職者をつくってしまうというようなことになっているということで、それは趣旨に反するというふうに私も思うところでございます。」と答弁をしています。私も思うんです。右手で退職、首切りを支援しておいて左手で再就職を支援する、これはマッチポンプですよね。

 私は、これはまさに首切りビジネスだと思うんです。例えば、戦争をあおって、そして兵器を売ってもうける人のことを死の商人といいますけれども、私は、これは構図が同じじゃないかと思うんですけれども、この基本的な認識を総理にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これはいわば、例えばリーマン・ショックの直後においては、新たな企業が生まれてくる、あるいはどの企業も雇用をふやすという状況にはないわけでございまして、その間においては、大西さんもパネルとして上げておられますが、雇用調整助成金等を活用しながら雇用の維持を図らなければならないわけであります。

 しかし同時に、景気が回復局面に入っていく中において、しっかりとした成長戦略のもとにおいて新たに成長していく分野が出てきた中においては、将来性においてなかなか厳しい分野があるわけであります。

 しかし、そこにおいても、それなりの価値はあるけれども今までのようなパイを維持することが難しくなっているところについては、そこで働いている人々がそこを離れて、その間しっかりとジョブトレーニングなんかもする機会を得ながら別の成長分野に移っていくということは、その人にとっても、あるいは企業全体にとっても、国にとってもいいことであろうと我々は考えているわけでありまして、その中において、失業なき労働移動をいかにスムーズに行っていくかということが重要であろう、こう思う次第でございます。

 意図的に誰かを首にする、そして、首になったからこっちで就職させるということは、そもそも私どもはそんなことは全く念頭にはないわけでございまして、そうであるとすれば趣旨に反するというのは厚生労働大臣が答弁したとおりであろう、このように思います。

大西(健)委員 まさに私はそうなっていると思うんです。実際、例えば別の企業がコンサルティングをやっているなら、まだ百歩譲ってわかるんですけれども、同じ企業ですよ。再就職支援会社というのは、再就職をやってお金もうけするわけです。だから、そのための退職者を出さなきゃいけないわけです。その退職勧奨に再就職支援会社がかかわれば、できるだけやめさせようという方向に行くんじゃないんですか。

 私は、これは民間企業がやっていることだといって済まされない問題だというふうに思っているんです。なぜなら、こうした企業と、さっきも言いましたけれども、契約しただけでですよ、再就職するかしないかは関係ないです、契約しただけで十万円出るようにしたのは、安倍政権なんですよ。助成金の予算額を大幅に増額して後押ししてきたのが、ほかならぬ安倍政権だからこの話をしているんです。

 次のパネルをごらんいただきたいと思うんです。

 ここに抜粋をしましたのは、いずれも、二〇一三年三月十五日の第四回の産業競争力会議の発言です。

 まず、当時の田村厚生労働大臣ですけれども、これまでの雇用維持型の政策から、労働移動支援型の政策にシフトする、具体的には、雇用調整助成金を大幅に減少した上で、民間人材ビジネスを活用した労働移動の支援等に取り組むということを発言しています。

 それから、次ですけれども、産業競争力会議の議員であって、かつ、民間人材企業であるパソナの会長を務めている竹中平蔵氏。雇用調整助成金を大幅に縮小して、労働移動に助成金を出すことは大変重要、ぜひ大規模にやってほしい、今は、雇用調整助成金と労働移動への助成金の予算額が千対五ぐらいだが、これを一気に逆転するようなイメージでやっていただけると信じていると発言をしています。

 そして、こういう発言を受ける形で安倍総理自身が何と言っているか。成熟産業から成長産業へ、失業なき円滑な労働移動を図る、このため、雇用支援策を、雇用維持型から労働移動支援型へ大きくシフトさせたい、就業支援施策の実施を民間にも委任するなど、民間の人材紹介サービスを最大限活用したいと言っているんですよ。まさにこれは総理の方針なんです。

 そして、下の表を見ていただきたいんですけれども、下の表は予算額です。平成二十五年度の予算額と平成二十六年度の予算額を比べると、雇用調整助成金は半額になっています、大体半分になっている。そして、労働移動支援助成金は三十倍以上ですよね。大幅にふえているんです。これは、言ったとおりに、ここでの発言のとおりにまさになっているんですね。

 すなわち、失業なき労働移動を掲げて民間人材ビジネスを応援してきたのが安倍政権、安倍総理自身なんですよ。

 一方で、先ほど来話が出ていますけれども、では、本当に失業なき労働移動になっているのか。

 皆さんのお手元に平成二十六年度の労働移動支援助成金による再就職の状況というのをお配りしていますけれども、これを見ていただくと、約二割、六百人の方は結局再就職できているかどうかわからない、できていない。そして、就職できた人の三割は非正規になっているんです。それから、再就職先での給与の水準ですけれども、これはもとの七割にとどまっているというのがこの資料なんです。

 そして、問題となった王子ネピアで退職勧奨を受けた方、二十六人いらっしゃいますけれども、私が聞いているのは、今、再就職できているのは二人だけなんです。ですから、私は、実態というのはもっとひどいんじゃないかというふうに思っています。

 失業なき労働移動とは名ばかりで、結局、再就職できていない人もいるし、給料も下がっているし、非正規になっている人もいる。結局は人材ビジネスを応援しているだけに終わっているんじゃないですか。総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 今、委員が私の発言を取り上げた際に、それはひどいという声が民主党側から上がったんですが、成熟産業から成長産業へ人を移動させていく、これは必要があるからであります。それがひどいと考えるのであれば、そもそもこれは議論の根底が崩れるわけであって、そういう成熟産業にしがみつくべきだというふうには私は……(発言する者あり)済みません、ちょっと、常にやじをするのはやめてください。やじというのはたまにするのがいいのであって、常にやじられるのは、雑音と発言に対する妨害でしかないんだろう。拍手がございましたが、そうだと思いますよ。

 そこで、失業なき円滑な労働移動を図る、これも間違っていない、このように思いますよ。

 そして、雇用支援策を雇用維持型から労働移動の支援型、これはまさに、成熟してこれ以上パイがふえていかない、あるいはある程度パイが縮小していくことが予想される業界から、いわば成長産業に人が移っていく、その際、ジョブトレーニング等の支援を行っていくのは当然のことだろう、こういう観点からお示しをしているわけでございます。

 そしてまた、個別の事例について挙げられましたが、個別の事例についてはコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、再就職支援会社は、リストラにより離職を余儀なくされる方々などの円滑な再就職を支援することが使命でありまして、みずから退職者をつくり出すようなことは趣旨に反するものであります。それは申し上げているとおりであります。

 このため、再就職支援会社が、働く方の自由な意思決定を妨げるような退職強要をみずから実施したり、退職強要に該当するような行為のマニュアルを企業に提供したりすることは適切ではなく、仮にこのような事案を把握した場合には適切に指導していきたいと思います。

 また、再就職支援会社が、企業からの委託を受けて事業縮小のためのリストラの方法などについての支援を行う中で、企業の従業員に対して再就職支援の概要や雇用環境の現状などを説明することも考えられます。しかし、再就職支援会社は、さきに述べた退職強要に加担することはもちろん、企業の行う退職勧奨であっても、企業に積極的にみずからその方法を提案し、退職者をつくり出すようなことは、職業紹介事業者の業務として好ましくないということは申し上げておきたいと思います。

 いずれにせよ、厚生労働省で実施した再就職支援事業に係る調査結果等を踏まえて、どのような対応ができるか、厚生労働大臣に検討してもらいたいと考えております。

大西(健)委員 先ほども言いましたけれども、成熟産業から成長産業へということだったら、それは給料も上がるんだろうし、そしてみずから行くんですよ。そうじゃなくて、今行われていることは、退職強要をして、無理やり退職させて、再就職しても、それは賃金も下がっている、非正規になっている、あるいは再就職できていないから問題だと言っているんです。

 そして、再就職会社は、先ほども言いましたけれども、退職者が出てこないと商売にならないわけなので、やはり、おのずと退職させるインセンティブというのが働くんですね。ですから、合意退職に追い込むようにすれすれのことをやる温床になっているんだというふうに思うんです。

 では、退職勧奨と退職強要とはどこに違いがあるのか。これは、判例によれば、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合は違法となるんです。

 王子の場合は、ある日突然、人事本部長と直属の部長から呼び出しがかかります。そして何を言われるかというと、一つは、雇用保険の受給に有利になるように会社都合退職にしてあげるよ、それから二番目は、退職金の特別加算金を支給しますよ、三番目は、再就職が決まるまではテンプスタッフキャリアコンサルティングによる再就職支援サービスを利用できますよ、この三点セットが提示をされます。

 最初は、勧奨を受けても受けなくても自由ですよ、ただ、とにかく一度テンプスタッフキャリアコンサルティングに行って説明を聞いてみたらと言われるそうです。しかし、面談が三回を超えてくると、だんだんと面談者の口調もきつくなってきます。そして、そろそろ受け入れるかどうか答えを出してくれと言われるそうです。そして、もし断った場合には、人事総務部付で会社に籍を置いたまま、テンプスタッフの事務所に来週から通ってもらって自分の就職先を探してもらうというふうに言われるそうです。

 つまり、これはどういうことかというと、退職勧奨を受けてもテンプスタッフ、受けなくてもテンプスタッフなんですよ。だから、だったらば退職金の割り増しをもらってやめるという選択しか、もう選択の余地がないんです。まさにそこに、先ほど判例でも引かれているような、被勧奨者の自由な意思決定というのはないんです。

 安倍総理、一般論として、基本的な認識をお聞きします。

 退職勧奨を断った場合に、再就職支援会社に出向させて自分の就職先を探させるというのは、これは許されるんですか。

安倍内閣総理大臣 個別案件についてはお答えできませんし、仮定の質問について総理としてお答えすることはできません。

大西(健)委員 ごく一般論ですよ。

 だから、まさに、再就職支援会社に行って仕事を探すのがあなたの仕事です、そういう出向が認められるんですか。もう一度お答えください。

安倍内閣総理大臣 そうしたケース、ケースについてどのように判断をしていくかということについては、そもそも質問の通告がございませんから、それについてはつまびらかにお答えすることはできませんが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、厚生労働省において現在調査を実施しているわけでございます。実施した再就職支援事業に係る調査結果を踏まえつつ、どのような対応が可能か、厚生労働大臣に検討してもらいたいと思います。

大西(健)委員 ここに通告した要旨がありますけれども、再就職会社に出向させて自分の仕事を探させるのは許されるのか、このままずばり通告しているんですよ。

 これが許されるということになったら、これは大変なことになりますよ。テレビをごらんの皆さん、皆さん自身が、あるいは御主人が、あるいは皆さんの息子さんや娘さんが、あした部長に呼ばれて、もうあなたにこの会社に活躍の場はないんだ、来月から再就職支援会社に行って自分の就職先を探してもらうと言われるかもしれないんですよ、皆さんの身内の方が。そんなことになれば、一億総活躍社会どころか一億総リストラ社会ですよ。

 総理、もう一度お尋ねします。

 再就職会社に出向させて自分の仕事を探させるということは、いいんですか、悪いんですか。どっちなんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、個別の案件については今お答えすることは差し控えたいと思いますし、そしてまた、その事例について、いわば法律上どのように判断すべきかということについての解釈については、基本的には、それは法令の解釈の問題でありますから、厚生労働大臣を呼んで答えさせていただきたい。これは誰の認識ということではなくて、いわば法令の解釈の問題でありますから、私が答えるよりも厚労大臣が適当であろうと思います。

 ですから、普通であれば厚生労働大臣を呼んでいただきたいと思いますが、残念ながら呼んでいただけませんでしたから、あえてお答えをいたしますが、一般に、企業が従業員に命じることができる業務は、無限定に認められるものではなく、必要性や合理性のない業務を命令することは権利の濫用として無効となり得るものである。その上で、実際の業務命令が権利の濫用に当たるか否かは、個別の事案ごとに司法において判断されるものと承知をしております。

 また、このような仕事をさせることが労働契約法に照らして、労働契約法においては、労働契約法の第三条の五項に、「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。」こうあるわけでありますが、労働契約法に照らして違法かどうかは、個々の事案ごとに司法において判断されるものであります。

 なお、現在、厚生労働省において、企業の労務管理がより適切なものとなり、従業員個人が意欲と能力を持って働けるよう、企業に対する啓発指導を進めるとともに、さらなる対応の検討がされているものと承知をしております。

大西(健)委員 今、総理の答弁の中で労働契約法の話がありました。

 私も、労働契約というのは、労働者が使用者に労務を提供して、これに対して使用者がその労務提供の対価を支払うというのが労働契約ですね、当たり前のことですけれども。この点、使用者が自分の再就職先を探してこいと命じることは、明らかに労働契約の労務提供義務の範囲を逸脱した命令だというふうに思います。まさに今総理が御答弁されたとおりなんです。

 ですから、改めて、会社が自分の就職先を探してこいと命じることは無効だというふうに思いますが、総理、そういうことでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 これは、今答弁させていただいた以上のことは申し上げることができないわけでございまして、労働契約法に照らして違法かどうかは、個々の事案ごとに司法において判断されるものであるということしか言えないわけでございます。

大西(健)委員 これは、私は細かい話を聞いているんじゃないんです。常識的なことを聞いているんです、常識的なことを。

 では、総理、再就職支援会社に出向させて自分の就職先を探させるのが、なぜ労働契約法の趣旨に反して望ましくないというふうに言えないんですか。これは言ってもらわないと、さっきも言っていますけれども、これが問題がないということになれば、日本じゅうの会社があしたからやりますよ、同じようなことを。だから、民間人材ビジネスは大繁盛ですよ。

 我が国では、労働者が能力が低いことのみをもって解雇するということは簡単にはできないことになっているんです。ところが、これが許されるということになれば、合意退職に追い込めばいいということになるんです。再就職会社に追い出し部屋を丸投げするこのやり方をやれば、ローパフォーマー社員、いわゆるローパー、これを自由に首切りできることになってしまうんですけれども、総理、本当にそれでいいんですか。

安倍内閣総理大臣 今申し上げたとおりでございますが、今、大西委員は、今の私の答弁であれば、これは全ての企業がそれをやるというふうにおっしゃっていたんですが、しかしそれは、今私申し上げましたように、個々の事案ごとに司法において判断されるんですよ。司法の場に行かなければならなくなるようなことを、どんどんそれが広がっていくということはおよそ考えられないわけでございまして、それを極端にそうやって不安をあおることは慎んだ方がいいのではないか、こう思う次第でございます。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、そうした個々の事例につきましては、労働契約法に照らして違法かどうかは、これはまさに個々の事案ごとに司法において判断されなければならない。これは、個々の事案において、どういう中身かということについては、それは個々において相当差があるわけでございますから、一般として全てを今ここでくくって私が申し上げることはできないわけでありまして、まさに個々の事案ごとに司法において判断されるもの、このように考えております。

大西(健)委員 結局、総理、否定しないということですよね。

 ということになれば、これは本当に、さっきも言いましたけれども、テレビをごらんの皆さんの、あなたの御主人や娘さんや息子さんが、あした呼ばれて、もう会社にあなたの活躍の場はないんだ、だから再就職会社に来月から行って仕事を探してくれ、そういう出向辞令を受けますよ。そうしたら、どんな人だって解雇できる、まさに一億総リストラ社会になってしまうじゃないですか。

 私は、王子で退職勧奨に遭って、二十年、三十年会社のために尽くしてきたけれども、最終的に会社を追われた方々のお話を聞かせていただきました。彼らが……(発言する者あり)黙ってください。彼らが勇気を出して、また、思い出すのも嫌な、本当なら他人に知られたくないような話を何で私にしてくれたのか。それは、彼らは、自分たちと同じようなつらい思いをする人をもう二度と生んでほしくないというふうに思っているから、そういう思い出したくもない、あるいは本当は屈辱的な話を私にしてくれたんです。

 ある四十代後半の男性は、中学生の娘さんに仕事をやめたことをまだ言えないそうです。現在就職活動中ですけれども、娘さんに怪しまれないように、今までどおりの時間に家を出て、帰宅するようにしているということです。

 また、別の四十代の女性。この方は、退職勧奨のショックでうつ病になってしまって、再就職活動どころじゃないんですよ。

 実は、総理、その王子の退職勧奨で会社を追われた人が、きょう傍聴席に来られているんです。先ほどから総理のその答弁を聞いているんですよ。これが許されるということになったら、本当に同じことが繰り返されてしまうんですよ。

 私は、総理、同じ思いをする人を二度と生んじゃいけないということはもちろんですけれども、安倍政権の誤ったこの政策の被害に遭って人生を狂わされ、家庭を壊された人々に対して、総理はどう責任をとるんですか。

安倍内閣総理大臣 今、一方的に、我々は、こうした民間会社が退職を強要し、そして、それでみずからのビジネスをつくり出しているかのごとき、私たちがそういうことを推奨しようとしているかのごときレッテル張りをしようとしておりますが、それは全く間違っています。

 一番最初に、私はこう申し上げたじゃありませんか。つまり、一番最初にこういう認識を申し上げたわけでありまして、このため、再就職支援会社が、働く方の自由な意思決定を妨げるような退職強要をみずから実施したり、退職強要に該当するような行為のマニュアルを企業に提供したりすることは適切ではなく、仮にこのような事案を把握した場合には適切に指導してまいりたい、先ほどこう申し上げたじゃないですか。

 そしてまた、再就職支援会社が、企業からの委託を受けて事業縮小のためのリストラの方法などについての支援を行う中で、企業の従業員に対して、再就職支援の概要や雇用環境の現状などを説明することも考えられるわけであります。しかし、再就職支援会社は、さきに述べた退職強要に加担することはもちろん、企業の行う退職勧奨であっても、企業に積極的にみずからその方法を提案し退職者をつくり出すようなことは、職業紹介事業者の業務として好ましくない。

 いずれにせよ、現在、厚生労働省で実施をしているんです、再就職支援事業に係る調査をしているわけでありまして、それを踏まえて、どのような対応ができるか厚生労働大臣に検討してもらう、こう申し上げているんですよ。その上において、法令に対してどうかと言ったから、個々の事例については司法の場で判断される、これは当たり前のことを言ったら、まるで、私たちがそういう違法な行為を、間違った、私たちの方向とは違う方向で進めようとしている人たち、これは適切ではないと言った人たちのことを認めているということを言うから、それは全く間違っている、このように申し上げているわけであります。

大西(健)委員 先ほどもお示しをしましたけれども、厚労省が提出をした資料のファクトで私は申し上げているんです。実際に、二割の人は就職できていないです。そして、三割の人は非正規になっている。また、給料が七割になっているんですよ。だから、全然、失業なき労働移動にもなっていません。

 それからもう一つ、そこまでおっしゃるなら、そうやって再就職の支援の玉をつくるために退職をしているような例がないとそこまでおっしゃるなら、私から提案があります。過去一年間に労働移動支援助成金の支給対象となった者について、被勧奨者の自由な意思決定ができないような退職強要に当たる事例がなかったのか、実態調査を行っていただけませんでしょうか。そして、もし退職強要が認められるような例がある場合には、何らかの救済措置や補償を検討させるということを、総理、お約束していただけませんでしょうか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、具体的ないわば労働政策、厚生労働政策でありますから、本来であれば厚生労働大臣をちゃんと呼んでくださいよ、個別的にどういう政策をやっていくのかということを聞かれているんですから。全ての省庁において具体的な政策を私に聞かれても、これは機能としてもうパンクをしてしまうわけでありまして、そこは、どういう政策をやっていくかということについて、例えば調査するかどうかということについては、一番その実情をよく知っている、把握をしている厚生労働大臣を呼んで聞くのが常識というものじゃありませんか。

 先ほど私が申し上げましたように、厚生労働省で実施を今しているわけです、再就職支援事業に係る調査結果を待ちたい、こう思っているわけでありまして、それを踏まえて、先ほど申し上げたじゃないですか、厚生労働大臣に対応を検討させたい、こう申し上げているわけであります。

 これは、もう厚労委員会で一度議論をしているかもしれませんが、そういった議論を踏まえて、ここで、さらにどういうことができるかということについても厚生労働大臣としっかりと議論をした方が私はいいと思いますよ。

大西(健)委員 先ほど総理が答弁で、退職強要の事例はないんだとおっしゃっているから、そこまで言うならば、総理から大臣にちゃんと、労働移動支援助成金を受け取った中に退職強要が本当になかったのかを調査するように、総理から指示を大臣にしてくださいということを言っているんです。

 それから、なぜ私が厚労相を呼ばないのか、この後ちょっとお話ししたいと思うんですが、関連で確認したいんです。

 前回の私の質問の翌日の新聞記事を皆さんのお手元にお配りしているんですけれども、この線を引いた部分、これは王子ホールディングスの会長のコメントなんですけれども、「制度にのっとってやったものだし、退職勧奨が違法というわけでもない」と書いてあります。

 では、政府として、これまで王子ホールディングスに、いつ、どのような調査を行ったのか、また、問題がないというようなことを政府はお墨つきを与えているのか、あるいは何らかの指導を行ったのか、これも通告してありますので、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは、まず、個別のケースの評価についてお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思いますし、そういう個別の企業についての一々のことについては、これこそ厚生労働大臣をちゃんと呼んでいただきたいと思いますよ。

 一般論として申し上げれば、殊さら、多数回、長期にわたるなど、自由な意思決定が妨げられるような状況での退職勧奨行為は違法な権利侵害となるとの裁判例があり、退職勧奨が違法なものか否かについては、こうした観点から司法において判断されているものと認識をしております。

 これは昭和五十五年の七月十日の最高裁第一小法廷の判決でありますが、政府としては、企業が大規模な人員整理を行う場合等には、こうした裁判例を示して、違法な退職勧奨が行われることがないよう、企業に対する啓発指導を行っています。

 また、御指摘の事案については、厚生労働省において、関連する企業の役員等に直接聞き取り調査を行うとともに、当該関連する企業に対して、退職勧奨のほか配置転換や出向、能力不足を理由とする解雇などに関する裁判例を示して、厳しく啓発指導を行ったものと承知をしています。

 いずれにせよ、このような個別の事案について違法な退職勧奨が行われたかどうかは最終的に司法において判断されるものでありますが、政府としては、今後ともその動向を注視してまいりたいと思います。

 また、退職した方から相談があった場合には、都道府県労働局等できめ細かく相談に応じるなど、真摯に対応することとしております。

 また、私がこういう事例がないということをこの委員会の場で一言も申し上げていないということは、はっきりさせていただきたいと思います。

大西(健)委員 なぜ厚労大臣を呼ばないか、私は今からお話しします。

 この件については、先週の月曜日の二十二日に私はこの場で質問したんですが、実は、昨年の末に、山井委員が相談を受けて、既に厚労省に照会をかけているんです。

 このことについて、実は、十二月二十二日の日に、厚労省の三人の課長が王子に行って事情を聞いています。私の手元にそのときのメモがあるんです。これは、王子側がテンプスタッフキャリアコンサルティングにその厚労省の訪問を報告するためにつくったと思われるメモなんですけれども、そこに何が書いてあるかというと、こういうことが書いてあるんです。

 議員対応について今後のスケジュール、十二月二十四日昼ごろに大臣説明。つまり、昨年末時点で既にこれは厚労大臣まで上がっている話なんです。

 さらに、当社から説明した内容についてその場で違法事項等の指摘はなかった、ヒアリングの中の雰囲気については、詰問調ではなく、議員からどのような主張がなされ、どのように答弁するか検討するために、できるだけ情報を得ておきたいという雰囲気であった。

 また、厚労省の課長の発言として、議員に資料を漏えいした社員の見当はついているのかという発言も書かれています。

 私たちには、ちゃんと調べて指導していますと説明しているけれども、実際には問題ないと厚労省は言っちゃっているんですよ。そして、労働者を守ろうという姿勢はみじんもなくて、国会対策や犯人捜しにしか関心がないようにこのメモからは見えるんです。

 だから、厚労相じゃなくて政府のトップの総理にこの問題、しっかり厚労省に指示をしていただきたいという意味で、きょう私はこの質問をやっているんです。このような厚労省の姿勢では、安倍政権は、働く人を犠牲にして人材ビジネスを応援していると。委託しただけで十万円支給する仕組みをつくったのは安倍政権なんですよ。これでは、首切り自由社会、一億総リストラ社会をつくろうとしていると言われても仕方ないんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 今のこの経緯については、私は存じ上げません。それをよく知っている厚労大臣を呼ばなければ、反論のしようがないんですよ。私は、大西さんの質問に対しては、こういう質問があったというのは、きょう朝早くからその質問を初めて見て検討するわけでありますから、そこまでは私は存じ上げないわけですよ。当然、そうやって深い深い議論をしようとするならば、それまでの経緯を知っている厚生労働大臣に聞いていただかなければ、私はこれは、今おっしゃったことは事実かどうかもわからないんですから、反論のしようがない。

 と同時に、私たちが進めていくのは、しっかりと、今成長軌道に乗り始めているわけでありますから、まさに成長分野に人材が供給されていくようにしていかなければならない、そういう皆さんのお手伝いをさせていただきたい。その中で、民間の企業がノウハウを生かして支援をしていくことによって、いわば成熟産業から成長産業にスムーズに人材が移っていく、その中で不都合があるならばしっかりとその状況を把握して対応していく。

 大西さんとか民主党のように、私たちが、むしろ、そうではなくて、そういう首切りを慫慂しているというのは全く間違った認識であり、そういうレッテル張りは無意味な、非建設的な議論であって、そういう事象があるのであれば、ではお互いにどうやってその事象をなくしていこうかということを議論すべきではないかということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

大西(健)委員 厚労委員会でも私は引き続きやらせていただきますけれども、総理に全く基本的な認識が欠けていることがきょうはっきりしたと思います。

 以上で終わります。

竹下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、奥野総一郎君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。奥野総一郎君。

奥野(総)委員 民主党の奥野総一郎でございます。

 きょうは、総理、そして高市総務大臣に、報道の自由の問題、そしてNHKの問題について、主として放送について伺いたいと思います。

 報道の自由というのは、私は民主主義の基本だと思っています。事実を国民が知るためには、自由に報道できなければならない。例えば、アベノミクスが本当にうまくいっているのかどうかと判断するのは国民ですから、その材料を、きちんと事実を報道していくことがやはり放送の基本だと私は思います。しかし、最近、この報道の自由が脅かされている、あるいは萎縮しているんじゃないか、こういう声を耳にします。

 政治とメディアに関する出来事、資料四というのをお配りしていますが、ごらんいただきたいと思います。

 最初、最近の出来事ということで二〇一三年から始まっていますが、これは六月でありますから、前回の参議院選挙の直近の出来事であります。六月二十六日のNEWS23で、これは案件が書いてありませんが、電気事業法が廃案になったという件について、自然エネルギー推進派の方のコメントを番組の中で放送したんですね。それは、この法案が、電気事業法が政争の具にされていますよね、与党はもしかしたら法案を通す気がなかった、こういうコメントを放送した件ということであります。

 これは新聞報道に全部よっているんですが、これに対して、当時の小此木八郎筆頭副幹事長が、番組の内容は公正を著しく欠いているということでTBSに抗議をしたということであります。

 そしてさらに、続いて、二番目の欄ですが、参議院選挙の公示日、七月四日には、自民党役員会メンバーの取材拒否を発表しているわけです。

 ということは、どうなるかといえば、選挙期間中、七月九日にTBS、NEWS23の中で総理との党首討論が予定されていたんですが、総裁たる安倍総理が出ない、この役員会のメンバーの取材拒否が続けば出ないということにもなりかねないということだったわけであります。

 しかし、結局、これは七月五日の夜に安倍総理自身が別のBSフジの番組で、事実上の謝罪をしてもらったので問題は決着したと述べて、一件落着しているんですが、こういった件もありました。

 また、記憶に新しいところでは、三番目ですが、前回の衆議院選挙の直前、十一月十八日、これは何度も取り上げられていますけれども、これもNEWS23なんですが、NEWS23の中で、街頭インタビュー、そしてアベノミクスに厳しい意見の映像が流れた後に、総理自身が、これは全然声が反映されていませんと番組の中で不快感を示した、これはそういう記事となっています。

 そして、その直後の十一月二十日に、これもまた、当時の萩生田自民党筆頭副幹事長と福井報道局長の連名で、NHKと在京の民放テレビ局に対して、番組の公平中立を求める要望書というのが手渡されたわけであります。

 そして、さらにその後、この文書が出た後なんですが、今度は報道ステーションで、十一月二十四日に、アベノミクスの効果が大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないと断定する内容、これは新聞記事によれば党の文書にそう書かれていたようなんですが、アベノミクスの効果が広く及んでいないと断定する、富裕層しか恩恵を受けていない、そういう断定する内容、こういう自民党の文書になっているという報道ですが、これに対して、公平中立を求める文書、今度は福井報道局長名だけで出されているわけですね。

 最初のは放送局全体に対する文書、そして、報道ステーションについては、一旦文書が出た後ということなんでしょうか、個別で名指しに文書が渡っているという報道であります。

 まず、総理に伺いたいんですが、報道の自由というのは大事だ、尊重されるということをまず伺った上で、こうした総理自身の発言、これは何度も聞かれていると思いますが、総理自身の発言が報道の萎縮を招かないか、あるいは、そうした文書を政権与党が渡すことが報道の萎縮を招かないか、また、政権与党の対応、取材拒否であるとか文書を出すということは総理自身は承知しているのか、あるいは総理は容認しているのか、あるいは指示を出しているのか、伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 報道も間違えることはありますし、事実と違うことを報道することはあるんですね。それは委員もお認めになるんでしょうけれども、そのときには訂正をしていただかなければなりません。

 例えば、私がアメリカで講演をしたときに、これは英語で講演したんですが、日本語のテロップ、その私の講演に対して聴衆がコメントを述べているんですが、大変、私が自分で言うのもなんなんですが、思慮深い方だというコメントをしたら、どういうわけか、短気で怒りっぽいという訳が出たんですね。しかし、音はちゃんと通っていましたから、見た人が、これは違う、私は当該番組を見ていなかったんですが、これはおかしいですよという指摘があって、私も調べたところ、とんでもない、真逆の訳が出ていました。これは報道ステーションだったと思います。その後、これは私は抗議をいたしました。そういう抗議もいけないんでしょうか。

 また、例えば、私が総裁選挙に出たときに、私の顔写真と七三一部隊の石井中将との写真をダブらせて、イメージ操作がありました。これは総裁選挙の最中でありました。これはやはりおかしいですねということを申し上げたことがあります。これもいけないんでしょうか。こういうことを行うことがあります。

 そして、先ほど挙げられたTBSにおける民間の方のコメントは事実誤認でありまして、まさに政府としては上げようとしていた。当たり前じゃありませんか。政府として閣法で出しているんですから。ところが、野党の皆さんが反対されたこともあり、残念ながら成立をしなかったのが事実でございます。これは明らかにイメージ操作ではないでしょうか。そのことに対しても政党は抗議をしてはいけないのでしょうか。

 また、ここに、例えば、大越キャスターは飛ばされたのか、週刊誌の記事を書いてあります。

 私は、週刊誌によっては、例えば、隠し子がいるということを実は週刊誌に断定されたことがあります。そういうことに対して抗議をしていました。週刊誌も事実と違うことを書くことは間々あります。そうしたことも、ここにずらずらずらずらずらずらずらずらずらずら書いてあります。そのことについては、少しちゃんと御自身でも事実かどうかということを調べられることを私はお勧めしたいな、このように思います。

奥野(総)委員 私が伺っているのは、明らかに事実に反する事項というのと違うと思うんです。例えば、政治的に公平かどうかというのがきちんと判断できますか、あるいは、アベノミクスというのが本当にみんなに行き渡っているのがきちんと判断できますかということを言っているわけですね。アベノミクスを批判する人は当然いてもいいわけですよ。それを許容できないというのは私は問題だと言っているわけです。

 先ほどの電気事業法の話にしたって、そういう立場の方のそういうコメントを取り上げちゃいけないんですか。そこを言っているわけですよ。その後に、ちゃんとニュースの中では、与野党の政争の具にされて廃案になったんだ、こういう報道もなされているわけですよね。その部分だけ取り上げて取材拒否をする。しかも、総理が明らかにかかわっているわけですね。後で、別の番組で、もういいんだ、謝罪があったからいいんだとおっしゃっておられるわけですから、総理もかかわっているわけですよ。本当にこれで日本の報道が萎縮しないでいるんですか。

 しかも、これは選挙の直前ですよ、いずれも。選挙の直前に殊さらにこういうことをやると、選挙報道を自由にできなくなるじゃないですか。まさにそれこそ意図的なやり方じゃないかということをまず指摘させていただきまして、次に移りたいと思います。(発言する者あり)また最後に戻ってきますから大丈夫です。

 次は、問題の電波停止の話です。

 一連の報道の萎縮についてきょうは取り上げていきますが、この電波停止という言葉が出たのは、二月八日、私と高市大臣とのこの予算委員会での場の議論が最初でありました。

 まず、では電波停止とは何のことですかということで法律を簡単に見ていきたいと思いますが、電波法と、それから、書いていませんが放送法に規定があります。いわゆる地上波テレビ局、それからBSなども電波法の所管になりますし、放送法の百七十四条というのは、ここには出ていませんが、ケーブルテレビなどに適用される同じ条文があるわけです。

 長々と書いてありますが、総務大臣は、放送事業者がこの法律に違反したときは、三カ月以内の期間を定めて電波の停止を命ずることができる、そこがポイントです。総務大臣の判断で、法律違反だ、放送法違反だ、電波法違反だと判断すれば電波をとめられる、あるいはケーブルであれば送信をとめられるというのが、シンプルに読むとこの法律の規定なんですね。

 非常に強大な権限、例えば審議会の諮問とかもないですし、これだけ読むと非常に強い権限が与えられるということになります。だからこそ、どういう場合が放送法違反になるのかということが大事になってくるわけです。

 政府は、この放送法四条については、これは倫理規範だと言って、義務はない、責任を政府が問うことはできないんだという解釈がずっと続けられてきましたが、今は、一九八〇年代の半ば以降は、これは法規範性があるんだという前提で行政が進められています。ここに異を唱えることもできますが、きょうは先に進みませんから、法規範性があるという政府の解釈を前提に議論していきたいと思います。したがって、法規範性があるということになると、四条の違反も問うことができるということになります。

 では、四条についてどういう規定があるかということですが、公序良俗に反しないとか、二号が政治的に公平でなければいけないとか、事実は曲げてはいけないとか、それからいろいろな角度から取り上げなきゃいけないとかということが、放送事業者が番組編集において行わなければならない義務として定められているわけであります。

 そして、これは法規範であるという解釈が既にもうずっと続いてきていますから、四条違反、例えば四条二号の政治的公平性についても違反を問い得るというのが政府の立場だと思います。

 そして、四条一項二号の政治的公平性違反について、もう一度伺いますが、私が二月八日のときに問うたのは、個別の番組についても、一つ一つの番組についても政治的公平性違反を問うことができますか、そして、それが四条一項二号違反だ、政治的公平性を欠くということになったときに、電波の停止、電波法にもとって、放送法違反として電波をとめることができますかという問いを大臣にしたわけであります。

 もう一度確認しますが、こうした場合に、個別の番組について大臣が政治的公平性を欠いていると判断したときに、この条文に基づいて電波法違反として放送をとめることができますか。改めて大臣に伺いたいと思います。

高市国務大臣 ちょっと電波法の適用について、一部事実関係を申し上げさせていただきます。

 電波法七十六条は、これは昭和二十五年に電波法が制定されて以来、無線局の運用停止命令というものが定められております。ただ、対象について、ケーブルテレビは入りません。テレビ、ラジオ、コミュニティーFM、ハードとソフトの事業者が一致している事業者ということで、対象となり得る事業者数は四百八十六社ということです。

 あわせて、一体的に対象を分けて運用しているものとして、放送法の百七十四条、放送業務の停止命令というものがございます。もうこれは御承知のとおり、平成二十二年十二月、民主党菅内閣のもとで新たに設置された規定でございます。この対象となり得る事業者数は八百二十一社でございます。

 ちょっと事実関係、ケーブルテレビとおっしゃいましたので説明をさせていただきました。

 放送法四条を理由に無線局の運用停止命令を行う可能性についてのお話でございますけれども、番組準則については法規範性を有するものであるというふうに従来から考えているところであり、放送事業者が番組準則に違反した場合には、総務大臣は、業務停止命令または電波法第七十六条に基づく運用停止命令を行うことができるということ、これは民主党の平岡副大臣の答弁をそのまま申し上げました。

 そしてまた、個々の番組に対してということでございますけれども、一つ一つの番組の集合体が番組全体でありますから、一つ一つを見るということも重要であるということでございます。

 どのような場合にこれが適用されるかということでございますけれども、これも、これまでこの委員会で私が説明させていただきましたけれども、法律の規定に違反した放送が行われたことが明らかであることに加え、その放送が公益を害し、放送法の目的にも反し、これを将来に向けて阻止することが必要であり、かつ同一の事業者が同様の事態を繰り返し、かつ事態発生の原因から再発防止のための措置が十分でなく、放送事業者の自主規制に期待するのでは法律を遵守した放送が確保されないと認められるといった、極めて限定的な状況のみに行うこととするなど、極めて慎重な配慮のもと運用すべきであるということでございます。

奥野(総)委員 今の後段のところは、まさに民主党政権時代の平岡副大臣の答弁を踏襲されたものということで、私も理解はしています。しかし、なぜ高市発言が大きく取り上げられたかというと、そのときはそういう答弁ではなかったんですね。

 私が問うたのは、個別の番組についてという議論をした上で、もし恣意的に政治的公平性の判断が運用されれば、政権に批判的な番組を流したということだけで業務停止をしたり、その番組をとめてしまったり、あるいはそういった発言をした人がキャスターから外れるということが起こり得るということなんですと。これは私の質問をもう一回読み上げていますが。ですから、ここで明確に否定していただきたいんですけれども、百七十四条の業務停止や電波法七十六条については四条違反に関しては問わない、個別の番組については問わないということを明確に御発言いただきたいということを問うたんですね。

 それに対してどういう答えが返ってきたかといったら、今の公益性云々とか、あるいは自主規制に期待したのでは放送は確保されないとか、こういう厳しい要件はお答えにならずに、まず行政指導をする、そういったことをしたとしても全く改善されない、繰り返されるという場合に、全くそれに対して何の対応もしないということをここでお約束するわけにはいきませんと答え、さらに、法律というのは、やはり法秩序というものをしっかり守る、違反した場合には罰則規定、罰則規定は実は放送法はこの部分についてはないんですが、罰則規定も用意されているということによって実効性を担保すると考えておりますので、全く将来にわたってそれがあり得ないというのは断言できませんと。

 厳しい縛りを全然おっしゃらずに、行政指導をして、言うことを聞かなければ、できる可能性があるという答えだったんですよ。だからこそ取り上げられたんですね。

 決定的に違うのは、個別の番組についてということなんです。従来は、政府は番組全体としてバランスを見て判断するんだという答弁だった。それが高市大臣の答弁で崩れたんですよ。個別の番組についても停波をし得るんだということに変わったわけです。そこが決定的な問題です。

 民主党政権のときに言っていたとか言わないとか。確かに、言ったのは法律全体の解釈をしている。ただし、これは一般論として、放送法に違反した場合に厳しい要件を課してやることもありますよと。これは法律解釈としては当然あり得るんです。

 私が問うたのは、個別の場合に、個別の番組についてあり得ますかということについて、大臣は否定をしなかったわけですよ。

 従来の答弁を繰り返して、ここはそういうことでありますので、個別の場合については答弁を差し控えたいと思いますと言えば、こんな記事にはならなかったわけですね。

 総理にもう一回伺いますが、今の答弁を聞いて、大臣のおっしゃるとおり、個別の番組についても停波あるいは業務停止を行うということはあり得るということで、統一見解を踏まえて答えていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府の統一見解で説明したとおり、総務大臣の見解は、番組全体を見て判断するという従来の解釈を変更するものではなく、これを補充的に説明し、より明確にしたものであります。御指摘のような問題はなく、これは撤回する必要はないと考えておりますが、政府統一見解で説明したとおり、番組全体は一つ一つの番組の集合体でありまして、番組全体を見て判断する際に、一つ一つの番組を見て全体を判断することになるのは当然のことであろう、こう思います。むしろ、一つ一つの番組を見ずにどうやって全体を判断するんですか、そうお伺いをしたいところであります。

 つまり、その点を、今、すごいねといういつものやじがございましたが、一つ一つの番組を見なくてそれを判断できるということで言っているのであれば、大変私は理解ができないと言わざるを得ないわけでございます。

 そして、今まで停波をしたことはないのでございますが、厳重注意したことが二回あります。放送事業者に対し、放送法第四条第一項第二号の政治的に公平であることに違反したとして行政指導が行われた事例はございませんが、同号の規定との関係において、放送番組の編集上の重大な過失があったこと等について地上波のテレビ局に行政指導が行われた例はあるわけであります。

 これは、例えば平成十六年の三月二十日であります。小泉政権時代、私は官房長官だったかと思いますが、山形テレビが自民党一党だけの広報番組を放送したんですね。山形、地方の時代の危機という番組、八十五分の番組、自民党一党だけの番組を放送したわけでございます。自民党政権でございましたが、それにはかかわりなく、この番組は行政指導が行われているわけでございます。やはり、一つ一つの番組を見なければ行政指導ができないのは当然のことではないでしょうか。

 例えば、行政指導をしたにもかかわらず、これは、八十五分のものを選挙中に毎日やったらどうなるんでしょうか。それはやはり問題ですよね。それも問題がないとお考えなんでしょうか。八十五分、自民党だけの宣伝番組をずっと何回もやったら、それはやはり問題なんだろうな、こう思いますね。

 ですから、そういう観点から、そういう極端なことは恐らく起こり得ないとは思いますが、しかし、そういうことというのは起こってはならないということではないだろうか、こう思うわけであります。

 もう一点の……(奥野(総)委員「長い。私からします」と呼ぶ)長いからよろしいですか。もう一点の事例は挙げなくてよろしいですか。はい。

奥野(総)委員 もう一点は私から紹介させていただきたいんですが、確かに一点は山形テレビ、自民党の問題であります。これは繰り返していない、一回だけにもかかわらず、関連してやったという事例ですね。一つの番組を見て一回だけ。確かに問題だとは思いますが、一回だけ、繰り返していない。繰り返したらどうなるんですかとおっしゃっていますが、繰り返さないにもかかわらずやっているというような事例であります。

 それからもう一点は、同じ日にセットで今度は民主党の案件をやっているんですね。これはテレビ朝日、当時はニュースステーションだったのか、報道ステーションだったのか、ちょっと番組名はあれですが、選挙直前に影の内閣、菅内閣の閣僚名簿を発表したんですよ、そのニュースを三十分にわたってやったという案件なんですね。

 では、これが今言っている統一見解に本当に当たるんですか。長時間にわたって繰り返しやったのか、番組全体で見たときに、ほかに総選挙で自民党のニュースをそのとき一切やらなかったのか、そういう判断も一切なく、関連して行政指導をした。まさに私は、この統一見解にすら載らない恣意的な行政指導の例だと思うんですよ。だからこそ問題なんですよ。一つ一つの番組を見て指導するというとそういうことが起こるわけですよ。だからこそ問題。

 総理はいつもそれを挙げられますが、それは私はあしき前例であると。だから、なぜ四条に関連してと言うかというと、四条の例だとするとあしき先例になるからこそなかなか出てこないわけですよ。わざわざそれを言うということ自体、やはり総理の認識に私は問題があると思います。これを指摘させていただきます。

 そして、統一見解なんですけれども、三つ並んでいますが、皆さんから見て左端は従来見解ですね。統一見解では従来見解をまず述べています。下線を引いていますが、政治的に公平であることの解釈は、従来から、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとされてきました。

 これは調べたのですが、平成六年、椿発言のころからこういう答弁が出ています。当時の江川放送行政局長答弁として、「放送番組全体としてバランスのとれたものでなければならない。」という答弁を、逓信委員会、平成六年三月二十四日にやっています。これは検索をかけたので、これが最古かどうかわかりませんが、検索で出てくる初出はそうなんです。だから、ずっと、こうした政治的な問題が起き出して、椿発言以来、全体で判断するということが踏襲されてきたわけであります。

 ところが、今回、この真ん中の部分ですが、解釈が、補充的な解釈だとおっしゃっていますが、つけ加わった、プラスですよね。一つの番組のみでもこういう場合は政治的に不公平だと認められる、こういう例示をしているわけです。

 一つは、今言った選挙の話ですね。選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊さらに特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合というのが一つ。それからもう一つは、国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊さらに他の政治的見解のみを取り上げて、それを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合ということで、わざわざ例示を挙げてつけ加えているわけであります。

 これについてはどこで初めて出てきたかというと、平成二十七年の五月十二日、参議院総務委員会、藤川さん、これは自民党の先生だと思いますが、委員に対する答弁で高市大臣が答えておられますが、なぜこのときに、大臣の言葉で言えば補充、補充ということは追加ですね、新しい解釈を追加したのか、何か事情の変更があったのか、このタイミングでどうしてこれを変える必要があったのか、補充する必要があったのかについて、まず大臣に伺いたいと思います。

高市国務大臣 まず、放送法第四条の政治的に公平であるということについて、従来から、政治的問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏ることなく、番組全体としてバランスのとれたものであることとしており、その適合性の判断に当たっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断するとしてきたものでありまして、この従来の解釈については何ら変更はございません。番組全体を見て判断するとしても、番組全体が一つ一つの番組の集合体であるということで、一つ一つを見て全体を判断するのは当然のことでございます。

 よって、私の見解は、これまでの解釈を補充的に説明し、より明確化したものであり、整合性に問題はないと思っております。

 なぜこういう答弁をしたかということですが、平成二十七年五月十二日、参議院総務委員会において、私に対して質問がされたことから、放送法を所管する総務大臣として真摯に回答をしたものでございます。

 これは、あくまでも放送事業者の自主自律を基本とする枠組みになっておりまして、放送番組は、そのもとで、放送事業者がみずからの責任において編集するものと考えております。

 なお、二月八日の奥野委員の御質問と私の回答について先ほどお話がございましたが、あのとき、確かにキャスターの降板等について触れられましたよね。でも、昨年五月に総務委員会での私の答弁をした時点において、民主党からの御批判もいただいておりませんし、放送事業者からも特に異議もなく、そして昨年の五月から、この答弁をきっかけにキャスターが降板されたとは承知しておりません。

 また、この予算委員会において統一見解が示されたのは二月十二日でございます。委員が配付された資料の中にあった有名なキャスターの方々の降板については、この統一見解が示される前に決定していた旨、委員の配付資料によって明らかでございます。

 そしてまた、委員の当日の、二月八日の御質問ですけれども、放送法百七十四条の業務停止や電波法七十六条についてはこうした四条の違反については使わないということで、今、もう一度明確に御発言いただきたいというお話でございました。ですから、どんなに放送事業者が極端なことをしても、それから、要請をしても全く改善されない、繰り返されるといった場合、全くそれに対して何の対応もしないということをここでお約束するわけにはまいりませんというふうに申し上げたもので、すぐさまそのようなことをする、例えば業務停止命令や電波停止命令をするということを答えたものではございません。

奥野(総)委員 結局、予算委員会で一回伺っているんですが、そのときはきっぱり状況の変更はないとおっしゃったんですよね。それは記録に残っていますからごらんいただきたい。今も、だから答えられないわけですよ。補充する積極的理由はない。答えを聞かれたとしても、従来の答弁を踏襲することはできたはずなんですよ。それをなぜわざわざ変えたのかというのが一つ問題であります。

 そして、これは昨年の十一月に新聞二紙に掲載された広告であります。

 視聴者の会というのがありまして、それについて広告が出ています。そこをごらんいただきたいんです。視聴者の会呼びかけ人の方はそういう方々で、そして主張を見ていただきたいんですが、メディアとしても安保法案の廃案に向けてずっと声を上げ続けるべきだ、右記の岸井氏の発言は、この放送法四条の規定に対する重要な違反行為だと私たちは考えますとあって、さらに、私たちは放送を所管する総務省にも見解の見直しを求めます、こういう広告になっているわけですね。

 これと同種の質問状が総務大臣の方に出され、今の一、二と同じ答えが紙でわざわざ先方に返されているわけです。これが返されたのは、十二月のたしか四日だったと思います。

 これは、わざわざまた紙で返す必要もない。答弁は確かに求められたからしたのかもしれないけれども、大臣も会見でおっしゃっておられるように、一々質問状に、来るのは山とあるわけですから、わざわざ答える必要もなかったわけであります。

 しかも、この回答の中にも書かれていますが、要するに答えられないと。一、二とあって、それを受けて下のところで、では何か説明しているのかと思えば、現時点で総務大臣としての見解を即答申し上げることが困難である、こう書いているわけですよ。全然つながっていないんですよね。例示を挙げておいて、しかし、回答申し上げることは困難であると。これはどういうことを言っているのか。では、この真ん中は要らないんですよね。回答できないと言えば終わったものを、わざわざ一、二というふうに言っているわけです。

 戻りますが、わざわざ、個別の番組について政治的公平性を判断する例を挙げているわけですよ。必要もないのに紙で答え、そして答弁をしているわけですね。では、状況の変化がないとおっしゃいますけれども、一連の流れの中で、例えば四月には自民党の情報通信戦略調査会が開かれて、例のクローズアップ現代の問題やらテレ朝の古賀発言やらでヒアリングをして、終わった後に、自民党の幹部の方がこれまた停波について触れているわけですよ。こうした一連の流れを受けて、呼応する形で大臣は答弁をされたんじゃないですか。

 あるいは、安保法案の一連の審議を受けて、それを受ける形でこの視聴者の会の質問に答えたんじゃないですか。わざわざ意図的に、個別の番組について、政治的公平性、国論を二分するような政治的問題についてと、これは明らかに安保法案、アベノミクスなどを想起させる問題なんですが、そういう言葉をつけて、個別の番組について法律違反を問う、停波を問うということはわざわざ言っているんじゃないか、あえて言っているんじゃないか。そこを言ってください。

高市国務大臣 委員がお持ちになったこの意見広告に対する私の回答でございますけれども、こちらの会の意見広告を見ますと、総務大臣についてもしっかりと批判をしておられます。

 私は、全てのアンケートに、締め切りがあるものに対して全部お答えするのは難しゅうございますが、限られた時間の範囲内でできる限りの対応をしております。

 この会に対して返した回答も、国会答弁で申し上げた内容の範囲でしかお答えできないので、そのほかの案件については今すぐ回答できないということでございます。

 そして、ちなみに、きょう締め切りの民放労連からの公開質問状に対しても、本日お答えをお返しいたします。

奥野(総)委員 総理、今答えになっていないんですが、私が申し上げたいのは、今までの全体で見るという解釈をここで変えたことが報道の萎縮を招いて、キャスターの退任につながったんじゃないですかということを申し上げているわけです。

 そして、総理に改めて伺いたいんですが、こうした日本の政治の姿勢が国際社会でも言われている。「エコノミスト」にも、例えば、消えたキャスターということで、政府批判がニュース番組から抹消されている、こういう国際的な批判も言われているわけですよ。また、御党の谷垣幹事長からも、こういうやり方は自民党のやり方じゃないという趣旨の発言、番組できのうされていますよ。

 もう少し抑制的に、報道に対して対処すべきじゃないんですか。総理がみずから番組に注文をつけたり、そして、大臣が公の場で、こういう個別の番組について停波があり得ると言うことは問題じゃないんですか。

 そして、総理が言った統一見解自体も、さっきから何度も何度も、一つ一つの番組を見るのは当然だと言っていますが、それは、政府が一つ一つの番組を見て、注視している、気をつけろよという間違ったメッセージになるんじゃないですか。

 こんな国は先進国にはないとイギリスからも言われているわけですよ。先進国として恥ずかしいと思いませんか、総理。最後にそれを伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 海外の報道も、事実誤認をしていることがあります。それは別の案件で結構ありますよね。それを殊さらに言挙げして、鬼の首をとったかのように言うことは、私はいかがなものかなと思いますね。むしろ、それはそうではないということをはっきりと私は言わなければいけないと思いますよ。

 それと、既に高市大臣が答弁をしておりますように、電波の停波については、従来の答弁と基本的にこれは変わりがないわけでございますし、萎縮していることも全くないんだろう、このように思います。

 一生懸命、三十数分使って、イメージ操作しよう、レッテル張りをしようとしたんですが、これはなかなかうまくいかなかったのではないかなというのが私の感想でございます。

奥野(総)委員 いや、これは国民の皆さんは総理の姿勢は十分わかったと思います。一つ一つの番組を注視しているぞ、停波するぞ、こういうメッセージは十分伝わったと思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。

竹下委員長 この際、山尾志桜里君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山尾志桜里さん。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 安倍総理、この予算委員会で、私は二回、総理と待機児童問題について、子育て支援について議論してきました。

 総理は、待機児童がふえたことをうれしい悲鳴だと言い、私は、その総理の発言は理屈の面でも感情の面でも不適切だ、正面からこの問題と向き合って子育て予算を優先していくべきだ、こう主張してまいりました。きょうは、この議論の第三弾をやりたいと思います。

 総理のこれまでの私に対する答弁、あるいは人口減少局面なのになぜ待機児童が増加したのか、子育て世代の声はなぜ政治に反映されないのか、こういうこの国の最大の課題をめぐって総理の基本的な認識を伺っていきたいと思います。

 待機児童の当事者となってしまった一人のお母さんが、ネット上で、保育園落ちた、日本死ね、こういう投稿をしました。子育て世代の悲鳴を届けました。すさまじい勢いでシェアされて、複数のテレビメディアや雑誌でも大きく取り上げられて、大反響を呼んでいます。

 総理、この投稿について、もしかして御存じありませんか。

安倍内閣総理大臣 まず、私が言ってもいないことを言ったかのごとく言うのはやめてください。先ほどの方も、そうやってイメージをつけようつけようと努力して失敗されたようなんですが、私は、待機児童がふえたことをうれしい悲鳴だと言ったことはないんですよ。よく聞いてください。

 それは恐らく、読売国際経済懇話会、平成二十七年の十一月六日の私のスピーチだろうと思います。ここで私が述べたのは、しかし、ことし、待機児童は前年よりふえてしまった、安倍政権発足以来、女性の就業者が九十万人以上ふえたから無理もないことであります、その意味で、うれしい悲鳴ではあるのですが、待機児童ゼロは必ずなし遂げてまいります。

 私が言ったのは、その意味でということは、就業者が九十万人以上ふえたというところに置いているわけでございまして、普通の読解力があればそれはわかるのではないのかなと思うわけでございます。

 このことをまず申し上げておいて、そして、今の質問でございますが、今の、保育所を落ちた、日本死ねということでございます。そのメールについては私は承知をしておりませんが、かつまた匿名ということですので、これは実際にどうなのかということは、これは匿名である以上、実際にそれが本当かどうかということも含めて、私は確かめようがないのでございます。そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 その上において申し上げますと、我々は、まさに今、二年間で二十万人、そして二十九年度末までに四十万人ということについて、さらに我々は十万人ふやしていくことを決めているわけでございますし、そしてまた、人不足に対して、保育士……(山尾委員「聞いていないことに答えています」と呼ぶ)いや、今の印象について答えろと言ったので、今の印象について私は答えているわけでございます。私がしゃべっている間は手を挙げるのはやめていただきたいと思います。

 そこで、まさに四十万人から五十万人にふやしていくと同時に、保育士をふやしていくために、しっかりと、一旦保育所をやめた方も戻れるような対策、そしてまた、保育のために専門学校や短大に通っている方々について、月五万円の奨学金、これは返済免除の奨学金、あるいは保育士になった際、就業に対して二十万円の準備金等を出すことにして対応していかなければいけないのかな、このように考えています。

山尾委員 総理、この投稿ですけれども、先日の中央公聴会で与党が推薦された白石公述人が、この場でこの話は出しております。総理、中央公聴会の有識者の議論は本当に聞いておられないんですね。

 それで、今、うれしい悲鳴、待機児童についてうれしい悲鳴と言っていないと総理はおっしゃいました。私、ここにフリップを用意しています。これを読んだ、これを今見ている国民の皆さんが、総理はうれしい悲鳴と言ったのかどうか、判断は国民の皆さんに委ねたいと思います。

 一方、私、今総理に紹介した……(発言する者あり)ちょっと静かにしていただけますか。総理に紹介をしたこの当事者の悲鳴を、やはりちゃんと国民の皆さんにも知ってもらいたい、そしてこの予算委員の皆さんにも見てもらいたい、こう思って、フリップと資料を準備しましたよ。でも、与党の皆さんが、これを委員の皆さんに配ってもいけない、国民の皆さんにフリップで見せてもいけない、そういうことですので、私は、本当に安倍政権というのは、都合の悪い声は徹底して却下する、都合の悪い声は徹底して無視する、本当にそういう安倍政権の体質の象徴となる対応だと思いました。

 でも、私がこの場で発言をすることまで与党の皆さんは禁止されないと思いますので、この場で御紹介をさせていただきます。国民の皆さん、フリップに出せませんけれども、聞いてください。

 保育園落ちた、日本死ね。何なんだよ、日本。一億総活躍じゃねえのかよ。きのう見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ、私、活躍できねえじゃねえか。子供を産んで子育てして社会に出て働いて税金納めてやるって言ってるのに、日本は何が不満なんだ。子供産んだはいいけど、希望どおりに保育園に預けるのほぼ無理だからって言ってて子供産むやつなんかいねえよ。まじいいかげんにしろ、日本。

 確かに言葉は荒っぽいです。でも、本音なんですよ。本質なんですよ。だから、こんなに荒っぽい言葉でも、共感する、支持する、そういう声が物すごい勢いで広がって、テレビのメディアも複数全文を取り上げ、複数の雑誌も取り上げて、これは今社会が抱えている問題を浮き彫りにしている。それを、与党の公述人もそうやっておっしゃったんですよ。

 一方、総理は、こういう発言、うれしい悲鳴と。これがギャップなんですよ。

 でも、さっきの総理の発言を聞いて、言っても無駄だと正直思いましたが、それでも、総理、今私が紹介した待機児童の当事者となった方の声、お母さんの声、そしてそれに対して広がる共感の声、これを知った上でもこの発言を撤回されないのですか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 待機児童がふえたことに、私がうれしいと言うわけないじゃないですか。そんな当たり前のことがあなたはわからないんですか。相手の言っていることを殊さらそうやって曲解して、揚げ足取りをしようとしているんでしょうけれども、それも空振りしていますよ、申しわけないけれども。

 それと、今、例として挙げられたメール、はてな匿名ダイアリーというのが出典なんですか。はてな匿名ダイアリーというのが出典なんでしょうけれども、これは、本当に実際に起こっているのかどうかということは我々も確認しようがありませんから、これ以上我々も議論のしようがないわけでございます。

 しかし、実際、待機児童がまだたくさんおられることも事実ですし、これが実際事実かどうか、これが実際どういう人物か私はわかりませんけれども、しかし同時に、そういう思いを持っておられる方々、この日本死ねというのは別ですが、残念ながら保育所に入れることができなかったということで大変残念な、苦しい思いをしておられる方々がたくさんいらっしゃることは十分に承知をしております。

 だからこそ、私たちは、例えば、民主党政権のときよりも四十万人ふやし、さらにそれを十万人ふやしているんですよ。そして、先ほど私の発言を遮りましたが、保育士をしっかりと確保していくためにも、待遇改善をしていかなければいけないと思っています。

 だからこそ、一旦保育士から離れた、仕事から離れた方々に対して二十万円のいわば準備金を出して、そしてまた、短大やあるいは専門学校に通う方々に月五万円、これはしっかりと就業していただければ返済しなくていい、免除されるものをしっかりと進めていきます。

 そしてまた、保育の補助をする人たちをしっかりと雇用しているということについて頑張っている事業者の方々については、しっかりと支援をしていくということを地道にやっていかなければいけない、こう思っているわけであります。

 ですから、山尾さん、こういう政策についてお話をしていきたい。確かにそういう思いの人たちは今もおられるかもしれませんけれども、それは皆さんの政権時代だっておられたんですよ、今よりも条件が悪いんですから。ですから、それを一歩ずつ私たちは前に進めようとしているわけでありまして、こういう声があるということも私たちも十分に目配りをしながら、そういう声がしっかりと反映されていくように行政において結果を出していきたい、こう考えているわけでございます。

山尾委員 私は最初、理屈の面でも感情の面でも不適切だと申し上げました。感情の面は、やはり総理はこういう声に寄り添うということがなかなかできない。でも、理屈の面でもおかしいんですよ。

 うれしいの根拠として強弁を続けていますけれども、女性の就業者数、ママ世代はふえていませんから。菅官房長官すら、一月二十六日、記者会見でこの待機児童の問題を語るときに、ひそかに就業率と言いかえて、総理と違う答弁をなされていますから。

 そして、このうれしい悲鳴、これは誰が書いたのか。所管、子育てだから内閣府、厚労省に問い合わせましたよ。そうしたら、厚労省は、うちは書いていないと。内閣府は、政治家としての発言だと。ここに紙もありますよ。それはそうですよね。裏づけの数字もまともに分析しないで、我田引水で浮かれて、子育て世代の気持ちを踏みにじるような発言を、それは厚労省も内閣府も、私たちが責任を持って書いたんだと言えないんだと思いますよ。

 そして、総理は今、政策をるる話していましたけれども、総理がやろうとしている、保育士になるときの学費を援助する、あるいは保育士を一度やめた方が戻るときに一回お金を出す。でも、総理、今、待機児童の最大の原因は、保育士が一人でも足りないと保育園は開けない。保育士が足りないのは、なりたい人がいないからじゃないんです。なっても、その平均給与が全産業の給与より九万円も低くて、なっても続けられない。

 だから、そんな、やれる小さなことをちょびちょびちょびちょびやるんじゃなくて、しっかり保育士の給与を上げましょう、そして、それもちゃんと根っこに据えながら、しっかり必要なメニューを私たち政治家が前に進めていこう、こういう約束をしたのが、前にも出した子育て支援リスト三千億のメニューじゃないですか。

 このリスト、軽減税率の横入りでこのリストが後回しにされることが、この予算委員会の議論の中で明らかになってきました。公明党との約束である軽減税率、あと六千億の財源は三月までに必ず見つけると総理は言っています。一方、子育て中のお母さんやお父さん、国民との約束であるこの子育て支援は、二月四日、総理は財源がなければできないと言った。

 安倍総理、一体どこを向いて政治をしているんですか。選挙のためですか。国民のためですか。もし国民のためというなら、消費増税のときに約束した子育て支援のためのこの三千億も、絶対財源を見つけて、絶対実行すると言ってください。

安倍内閣総理大臣 我々は、まさに、消費税を引き上げていく中において社会保障を充実させていく、その中で子育てに対してもしっかりと支援をしていくということをお約束しているわけでございます。

 今お示しになられたのは、民主党の考え方を示されたわけでございます。(山尾委員「違うよ。いいですか」と呼ぶ)いや、ちょっと待ってください。今、意見としては、山尾さんは考え方としておっしゃっているわけでございます。(発言する者あり)いや、意見としてです。ちょっと、みんな黙って聞いてくださいよ。質問している山尾さんも、質問した後、私の言っていることは聞いてくださいよ。

 そこで、我々は、まさにこの一兆円の中においては総合合算制度で四千億円を捻出するということを申し上げているわけで、総合合算制度で四千億円、総合合算制度は三つの中の一つでございまして、それを選択しませんから、この財源は浮いてくるわけであります。残りの六千億円については、今まさに議論をしているところでございます。そして、当然、その中におきましては、必要な社会保障の給付を切るということはしないということは申し上げているとおりでございます。その中で安定的な財源を私たちは見つけていく、こう考えているところでございます。

山尾委員 結局、この三千億は財源を見つけて実現すると言わなかった。結局、軽減税率の横入りで、子育てにとって大事な大事な三千億は事実上断念に近くなっているじゃないですか。子育てより選挙、この国の未来よりこの夏の選挙、そういう政権なんですか。

 それでも、私はちょっと諦めたくないので続けます。

 総理、軽減税率は考え直して、私たちの提案している給付つき税額控除を今でも遅くないから検討したらいかがですか。軽減税率一兆円。私たちの提案なら三千六百億で済む。そうすれば、この三千億、子育てのための三千億の財源が見えてくるじゃないですか。

 そして、総理が、六千億絶対見つけるんだ、安定財源を見つけるんだとおっしゃっていますけれども、もし本当にそれができるなら、それを子育てに使えば、保育士の給与を平均給与並みに引き上げて、待機児童、困っている、こういうお母さんの声に応えることだってできるじゃないですか。

 もう一つ、子育て支援は財源がなければできない、財源がないないと言うけれども、選挙の前になると、どうして、年金を受け取っている方の一部に一回だけ三万円ばらまく三千九百億というのが突然、この財源は出てくるんですか。打ち出の小づちを使うんだったら子育て支援に使ってくださいよ。せめて、一回こっきりじゃなくて持続可能な政策に使うべきだと私は思います。

 総理、もう一回聞きます。

 軽減税率一兆円、あるいは、この選挙前に、年金を受け取っている方に一部一回こっきり三万円で三千九百億ばらまく、こういうことはもう一回考え直してやめて、子育て政策を優先させませんか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 まずは、山尾委員はいろいろな政策をごちゃまぜにしてしゃべっておられますから、それを整理しながら答弁を、国民の皆様にもわかりやすく御説明をさせていただきたい、このように思います。

 子育て支援につきましては我々はしっかりと進めていくということを申し上げているわけでありますが、その中において、まさに希望出生率一・八、これを達成していくという大きな目標があります。御指摘の三千億円超えの保育の質の確保については、自民党が公約をしております幼児教育の無償化の推進等もございます。こういう中においてどういう政策を優先していくかということ、これは財源を見つけながらしっかりと我々は取り組んでいきたい、こう考えているところでございます。そうしたさまざまなメニューがあるわけでありますから、そのさまざまなメニューの中でとっていく。

 それと、軽減税率の一兆円とこの三千億円を対比しておられますが、軽減税率の一兆円というのは、いわば消費税を一〇%に引き上げることについてどう対応していくかということについて、いわば痛税感、逆進性の問題、国民的な納得の問題、あるいはマクロ政策全体から見ての観点から検討をしたわけでございますが、その中で三つ挙げたわけであります。皆さんの給付つきの税額控除も入れて三つあった。それは御党も納得をして、この三つということになった。最終的には、今まさに与党である私たちが、その中の一つ、軽減税率を選んだわけであります。

 軽減税率に伴う税収減として一兆円あるわけでありますが、これは、いわば食品を加工品も含めて毎日毎日買う方が全て、押しなべて軽減税率の恩恵に浴するわけでございます。これは子育てをしている方もそうですし、お年寄りもそうです。これは皆さん、そうであります。そのことによって痛税感を緩和していくということと同時に、マクロ的に与える衝撃を一兆円分下げていく、経済に、消費に与える衝撃を下げていくという意味があるわけでございます。

 それと、低所得のお年寄りの方々……(発言する者あり)いや、聞いていますよ。低年金の方々に対する三万円の給付についても、無駄ではないかという御質問がございました。

 そこで、これはもうまさに今まで申し上げておりますように、我々は経済政策を進めてきた、アベノミクスによって成果は出ております。給与も十七年ぶりの高水準で上がっていますが、しかし、年金生活者の方々の年金については上がっていないわけであります。一方、デフレから脱却をしていく中において、デフレではないという状況になった。かつまた、お年寄りにこびているではないかという趣旨の御発言がありましたが、私たちは、年金財政を安定化させるために、民主党政権時代はやっていなかった、デフレしている間のデフレスライドをまとめてやったんですよ。そういう中においては、今回、やはりアベノミクスの果実をしっかりと給付に……(発言する者あり)済みません、ちょっと静かにしていただけますか。

 その中でしっかりと私たちが、魔法の小づちではないんです、まさに私たちの経済政策の結果として、果実として出てきたものを、アベノミクスの果実を、なかなか果実が行き渡らなかった方々に給付として配分をしていくための政策であります。

 そして、それとこの政策を比べられたんですが、こちらには毎年毎年恒久財源が要るんですよ。これはまさに恒久財源としてでありますが、今私が申し上げたものは、恒久財源ではなくて一回のワンショットであるということであります。

 そのことを、幾つか質問されましたから、まとめて整理してお答えをさせていただきました。

山尾委員 総理、四分を超える演説をされましたけれども、痛税感の緩和といいますけれども、子育て中の親が欲しているのは痛税感の緩和じゃありません。納税の納得感ですよ。気分をよくしてほしいんじゃない。厳しい現実をよくしてほしいんですよ。気分に働きかけるのがお得意のアベノミクス、安倍総理ですけれども、ママたちは気分ではだまされないと思いますよ。

 この予算委員会で、軽減税率がいかにまやかしの政策か明らかになってきたじゃないですか。軽減税率が実は、年収五百万以上の世帯にその財源の六割が使われて、苦しい年収三百万未満の世帯には一割しか使われない。見かけは薄く広く気分よく、でも中身は高所得者優遇で選挙対策、そんな政策じゃないかと私たちが明らかにしてきたじゃないですか。

 なぜ子育て世代の声が届かない。なぜ子育てに税金が回らないのか。その根本的な原因は、投票率が低くてお金に余裕がない子育て世代よりも、票とお金があるところに税金が流れていくという政治の体質。この自民党の体質が端的にあらわれたのが、甘利元大臣のあっせん利得疑惑じゃないですか。

 きょうで甘利元大臣の辞任の会見から一カ月がたちました。今回、当初予算に関連して、URは、平成二十八年度二百四十一億六千二百八十万円の国庫補助金の収入を見込んでいます。この中から、今回のような道路建設に係る補償もこれから賄われていく。今回の甘利元大臣の疑惑は、まさに予算の執行、税金の使い道をお金のため、票のためにねじ曲げたのではないかという疑惑が今あるんです。

 予算を成立させる前にこの疑惑をしっかり解明して、もしそれが本当であったならば再犯防止、再発防止をして、本年度予算だって、国民に、正しく執行されます、票やお金の力でねじ曲げられることはありません、こういうふうに約束してからじゃなかったら、予算成立、そんなやすやすとできないじゃないですか。だからこれを予算委員会でしっかり議論しなければならない、私はそう思います。

 絵に描いたようなあっせん利得とよく言われているので、絵というか図にしました。大きく分けて二つの案件。いずれも、道路建設をめぐって、URがS興業という民間企業に払うべき補償金をめぐる交渉案件です。

 まず、A案件。

 まず一、S興業のI氏からの要望を受けて、平成二十五年六月七日、甘利事務所の秘書がURに接触をした。二、I氏の話によれば、これは一方当事者ですよ、その結果、補償金額が上積みされて、二十五年八月二十日に二億二千万の支払いが開始された。三、四、これは甘利元大臣も認めていることですけれども、その二十五年八月二十日に五百万が甘利事務所に支払われ、十一月十四日には甘利大臣にも直接五十万が受け渡された。

 国交大臣にお伺いします。この二億二千万円には、URに対する国からの補助金も入っていますね、国交大臣。

石井国務大臣 この当該補償が行われた道路事業につきましては、URが施行する事業として、道路整備に要した用地費、補償費、工事費を補助対象として国庫補助金が交付をされております。

山尾委員 税金が入っているんですよ。予算として成立した国の税金が入ったこの二億二千万、これが甘利大臣の口ききにより上積みされた可能性があるのではないか。

 しかも、URから支払われたその日にそのお金の一部が甘利事務所に運び込まれているとしたら、これは相当悪質な、まさに税金が入っている補助金を口ききによってもしかしたら上積みすることで、その一部が政治家に還元されたんじゃないか。もしこれが本当だったら、これほどわかりやすい、絵に描いたようなあっせん利得があるだろうか。こういう疑惑です。

 きょうはURの理事長にもお越しいただいています。支払い日、お答えいただけませんか。

上西参考人 お答えいたします。

 補償契約に係る支払い期日につきましては、法人の権利や正当な利益を害するおそれがあること、また、今後の当機構の補償交渉の遂行に支障を生じさせるおそれがあることから、当機構としてはお示しすることができません。

 なお、本件に関しましては、URに対して社会的に疑念が持たれていることを踏まえ、S社に支払い期日の開示について確認いたしましたが、現段階では同意できない旨の御回答をいただいているところであります。

 以上、お答えいたしました。

山尾委員 おかしいですね。この補償については、もう既に契約内容を公開されています。契約を締結した日も公開されています。金額も公表されています。なぜ、支払われた日だけをひた隠しに隠すんでしょうか。誰をかばっているんでしょうか。

 国交大臣、国交大臣は記者会見で、URの公開のあり方については調整するとおっしゃっています。大臣も当事者ですよね。支払い日ぐらい開示しろ、こういうふうに指示してほしいんですけれども、いかがですか。

石井国務大臣 今御紹介いただいた私の発言は、今回の事案が取り上げられ始めたばかりの一月二十二日の会見で、URにおいて事実関係を調査し、公表できるものから速やかに公表することによって国民の疑惑を払拭すべきであるという趣旨で発言をしたものでございます。

 これまでにURは、二月一日には甘利議員事務所秘書との面談の内容、また、二月九日には、国会からの追加的な開示の要請を踏まえ、URの社会的疑念を払拭する上でも重要と考えられるURとS社の協議録の一部について可能な限り公表してきたものと承知をしております。

山尾委員 総理、任命責任はあるとおっしゃいました。説明責任を果たすべきともおっしゃいました。総理から、この支払い日ぐらい開示しろと指示していただけませんか。

安倍内閣総理大臣 政治資金にかかわることは、これは政府であろうと、また与党であろうと、皆さん、民主党であろうと、やはりみずからそれぞれが襟を正していくことが求められている、このように思いますし、みずからを省みて恥じるところがないかどうかということについても、やはりしっかりと自分自身に問いただしてみる必要がそれぞれあるんだろう、このように思います。

 その上において、私が指示するかしないかということではなくて、もう今既に国交大臣が答弁をしているとおりでございます。

山尾委員 結局、政権一丸となって、開示すべき、解明すべきことをひた隠しに隠す、こういうことだと思います。

 もう一つ、B案件ということで、二つ目の件ですね。これはもっとわかりやすいかもしれません。

 一、平成二十六年二月一日、大和の事務所でS興業さんが甘利大臣本人に会っています。ここで、補償交渉について資料を用いて相談があり、直後に甘利大臣本人が五十万を受け取った。これは元大臣本人も大筋認めています。しかし、このお金を受け取った趣旨は、大臣室訪問のお礼と病気を克服して頑張れ、こういうことだと思ったとおっしゃっています。

 ここに、そのとき大臣に見せて説明をしたという、その資料だとされているものの写しがあります。数十ページにわたる資料。当該土地の詳細にわたる写真や図面、補償の前提事実となっている産廃をめぐる対応経過、登記簿の記録、S興業の代替地をあっせんして費用負担をしてほしいという要望事項など、かなり個別具体的な資料です。

 もし、この資料を見せながら、三十分という面談時間のほとんどをこの説明、要望に費やしたという一方当事者の話が本当であれば、これは甘利大臣本人のあっせん利得の疑惑がかなり深まるということになります。

 でも、これは甘利大臣本人に聞いてみなければわからない。本当に見せられた資料がこの資料だったのか。三十分のほとんどを本当にこの資料説明に費やされたのか。もしそうだとしたならば、その直後にもらった五十万について、病気を克服して頑張れのお金だったと思ったのは不自然ではないか。もしそういう政治活動応援の献金だと思ったなら、なぜ、その場で領収書も渡さず、事実に即して収支報告に載せなかったのか。やはりこれに答えるのが説明責任だと思います。元特捜の出身だとかいう匿名の、本当に実在するのかどうかも私たちにはわからない弁護士が調査する話では、少なくともこの話はない。

 総理、今、甘利元大臣は睡眠障害ということで御病気だと伺っています。これから回復されたらば、しっかり証人喚問に応じて、御自身の口で国民の前にこの説明責任を果たすべきだと思いますが、リーダーシップを発揮して、任命責任の一環としてそういった見解を出すつもりはありませんか。

安倍内閣総理大臣 甘利大臣は、辞職を決意した際、記者会見において、その状況において把握していることについて説明をされた、このように思っておりますが、その後も、新たな事実が明らかになり次第説明をするということをおっしゃっておられますので、そのように説明していかれる、このように期待をしておりますし、確信をしております。

 また、国会においてどのような扱いにしていくかは、これは国会で決めていただくことだ、このように思います。

山尾委員 もう一つ、甘利大臣のあの記者会見と、その後予算委員会で明らかになった内容が食い違っているところがあるんです。大きな部分です。

 甘利元大臣は、この交渉には甘利事務所は関与していない、こういう内容のことをおっしゃった。でも、この場でURの理事長が、同席したことを関与というなら、それは関与もあったと一部認めています。まず、この点だけでも違う。

 そしてまた、私の手元に、URから来たまだ黒塗りだらけの資料がここにありますけれども、この黒塗りが剥がれた部分だけでも、本当にこれは関与だよねという事実がたくさん出ています。

 秘書はURに十一回会っている。色をつけろという発言をしている。甘利事務所の顔を立ててもらえないかという発言をしている。一体、先方は幾ら欲しいのか、私から先方に聞いてもよいがと。甘利という名前を出して、色をつけろと言い、補償交渉の仲介にみずから積極的にまさに関与している。

 でも、URの皆さんは大変だったと思いますよ。もう現提示額が基準目いっぱいだ、目いっぱいだ、限度いっぱいだ、現在以上のことはできない、現在以上の対応はできない、少なくとも五回、これ以上できない、繰り返し繰り返し無理だとURの人は言っている。何に対して無理だと言っているんでしょう。秘書の増額要求以外に何があるんでしょうか。

 そして、きわめつけ、URの方は二回、もうこれ以上は関与されない方がよろしいように思う、これ以上深入りしない方がよいと。これは、関与している、深入りしている、甘利事務所がこの補償交渉に関与していることをまさにURの方が認めているとしか考えられない。

 だから、私は、やはり甘利元大臣本人がこの場に出てくる必要があると思います。甘利元大臣が事実と違うのか、URが事実と違うのか、甘利大臣の言葉が違うのか、この資料が違うのか、こういうことをやはりはっきりさせていただきたいと思うんだけれども、最後にもう一度、総理、説明責任を果たすべきとおっしゃるなら、甘利大臣が病気のうちはしようがないです、病気から回復されたら、証人喚問に応じてこの場でしっかり説明をすべきだ、こうおっしゃることはできないんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、予算委員会の運営については予算委員会でお決めになる、このように考えております。

山尾委員 これでは、票とお金のあるところに税金が流れていくという安倍政権の体質は変わらない。私たちは、そういう体質ではない。しっかりと、本当に必要なこの国の未来のために税金が流れていくように政治家としての責任を果たしていくということを申し上げて、私の質問を終わります。

竹下委員長 この際、江田憲司君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。江田憲司君。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

江田(憲)委員 約一年ぶりに予算委員会に立たせていただきます。維新の党、江田憲司でございます。

 きょうは、総理、細かい話はいたしませんので、ぜひ、総理の政治姿勢、政治的な御見識をみずからのお言葉で披瀝していただきたいと思いますし、それから、この論議を通じて、我々維新の党と民主党は三月中の新党結成に向けて準備会も発足いたしましたので、来るべき新党と安倍自民党政権との違い、対立軸というものもはっきりさせていきたい、そういうふうに思っております。

 まずその前に、私、ずっとこの一月以来、予算委員会を見ておりますと、民主党の議員の皆さんが質問すると、安倍総理は必ず、あんたよりましだ、あんたには言われたくない、こういう趣旨の反論をされるわけです。

 一月の本会議場での安倍総理の答弁を私は覚えているんですけれども、民主党に対して、天に向かって唾するどころか、天に対してブーメランを投げているようなものだという発言もされているわけなんです。総理、もういいかげんおやめになりませんか。国民は、民主党政権よりもましかどうかなんて全く関心がないんですよ。国民が関心があるのは、今をどうしてくれるんだ、これからどうなるんだということなんですね。

 ですから、ぜひとも、総理、建設的な議論をするために、実際、私は民主党じゃないですからね、ぜひこれからはそういうことはやめていただきたい。御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 民主党と合流される江田さんとしては、民主党を批判してもらいたくないというお考えを持っておられるんでしょうけれども、私は別に、おまえたちよりましだなんという、こんな横柄なことを言ってはいないわけでありまして、常に謙虚に民主党であろうと皆さんの党であろうと皆様から学ばなければいけない、このように自分に言い聞かせつつ、日々反省しながら総理の職を務めているところでございます。

 しかし、経済政策については江田さんも同意をしていただけるんだろうと思いますが、批判するのは簡単なんですが、対案と比べてみないとわからないわけでありまして、だからこそ、経済がどのように変化をしてきたのかということについて申し上げる際には、いわば前政権時代はこうだったという話をしております。

 ちなみに、第一次安倍政権のときとも比較をしながら、このときもやはり企業は空前の収益を上げながら、しかし残念ながらデフレ脱却はできませんでしたし、必ずしも従業員の給料に企業の収益が差し向けられなかったということも反省しながら今の政権運営を行っているところでございまして、これからも江田委員からも吸収しながら、学びながら政権を運営していきたい、このように考えております。

江田(憲)委員 民主党の議員の皆さんも、私、聞いていると、この場で政権当時の反省は言葉にされておりますからね。また、安倍総理からも今、みずからの反省のもとに建設的な議論をしていきたいという趣旨と受けとめました。

 だって、あれでしょう、安倍総理も一度目の失敗があったから今があるんじゃないですか。それから、当時は再チャレンジできる社会の構築とかおっしゃっていたんですね。一度失敗しても、やはり再チャレンジする社会を構築していくんだね、そういうことなんですから。

 これからは、くぎを刺しておきますから、もうこんな議論はせずに、まさに今をどうする、安倍政権として国民のために何をする、そしてこれからをどうしていく、国民の不安に応えていく。参議院にも移りますので、ぜひそれをお願いしておきたいというふうに思います。

 さて、甘利さんの問題が起こって、この政治と金の問題、国民の皆さんは辟易していると思いますね。これは今に限ったことではなくて、ロッキードだ、グラマンだ、リクルートだ、それ以来ずっと、これは自民党だけのせいじゃないんですけれどもね。とにかくこういう政治と金の問題が起こるたびに、政治資金は透明化を高めていけばいいんだということでお茶を濁してきたわけですね。

 だけれども、例えば外国人企業からの企業献金であれ、補助金受給企業からの献金であれ……(発言する者あり)ちょっと、委員長、あっちの方で何かやっているので静かにさせてください。懲罰動議が出されている議員じゃないですか。

菅原委員長代理 質問をどうぞ。

江田(憲)委員 とにかくお茶を濁してきた歴史があります。特に、外国系の企業かどうかとか、補助金を受給しているかどうか審査もできずにうっかり受け取りましたというのも頻発しているわけですから、この際、企業・団体献金の禁止、資金集めパーティーの禁止も含めて、総理、きれいさっぱりやめませんか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 政治に係るコストをどのように負担していくか、非常に重要なテーマであろうと思います。まさに政党間、会派間においてしっかりと議論していただきたい、こう思っているところであります。

 要は、お金でもって政治をねじ曲げてはならないわけでありまして、それがたとえ法人であろうと個人であろうと同じことであろう、こう思うわけであります。同じ行為をした、それが個人であったら大丈夫であって法人であったらだめということにはならないわけでありまして、我が党としては、日本の社会のあり方、ありよう等も含めながら、法人そして個人からの献金、また政党助成金ももらっておりますので、そうしたバランスをしっかりととっていきたい、こう考えているところでございます。

江田(憲)委員 総理、白地で議論するなら総理のおっしゃるような考え方もあるんですよ。しかし、これはもう細川内閣当時に決着済みの話なんですよ、皆さん。忘れておられませんか。細川内閣のときに、政治改革の一環として、税金で国民から政党助成金をいただくかわりに企業・団体献金は禁止するという約束をしたんですよ。定数削減の問題だけじゃなく、この問題でも国民との約束を破るんですかという話なんです。

 これは二重取りになっているわけですから、ぜひここは、そういうそもそも論を聞いているんじゃないんですよ、お互いもうこれは禁止しようじゃありませんかと言っているので、もう一度答弁を求めます。

安倍内閣総理大臣 今委員がおっしゃったような経緯については私も承知をしておりますが、しかし同時に、そもそもどうかということについて、原点に立ち返ることも私は大切ではないかと思っています。

 今委員が御指摘になられた点、政治改革の議論の中で、政党助成制度は、政策本位、政党本位の政治を目指す理念のもと、企業・団体献金を政党等に限定することにあわせて提案されたものであります。その際、個々の政治家の資金管理団体に対する企業・団体献金については五年後に廃止されるものとされ、そのとおり五年後に廃止されたわけであります。他方、政党等に対する企業・団体献金のあり方については、各党間で合意に至らなかったものと承知をしております。そういう経緯もあるんですね。

 いずれにせよ、政治に係る費用のあり方は、民主主義の費用をどのように国民が負担していくかという観点から各党各会派において十分に御議論いただくべきものだ、このように考えております。(発言する者あり)

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

江田(憲)委員 懲罰動議が提出されている議員は黙っておいてください。

 残念でなりませんけれども、国民からすれば二重取りなんですよ。国民一人当たり二百五十円の負担をして、三百億円超の税金で政党助成金を国会議員に差し上げた。それでいろいろな、リクルートだ何だ、政治と金の問題をこれで根絶できると思って、企業・団体献金の禁止ということも約束したんですよ。

 それでは、聞き方を変えますよ。

 それほど企業・団体献金を受け取りたいんだったら、その分、政党助成金を返上してください。それが国民との約束を守る手だてじゃないですか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 私の考え方は先ほど述べさせていただきました。

 自民党としては、いわば企業・団体、また個人、そして政党助成金、税金から補助をしていただく、この三つのバランスをしっかりととっていきたい、こう考えております。

 それと、そもそも我々も、よく考えてみて、個人の献金と、政党や団体あるいは企業、いわば法人の献金について、政策を曲げようという意図があるのであれば、これは個人であったって同じ問題であって、個人であったら大丈夫という理屈は私はなかなか理解できないわけでございます。大きな資産を持っている人は個人で、上限もありますけれども、これはできますね。家族であれば何人かに分けてできるということにもなっていくわけでございますから、それを企業・団体と分けて考えるのはどうだろうか、このように思うわけでございます。

 そうした点をまさに政党間でしっかりと御議論いただきたい、このように思います。

江田(憲)委員 そういう議論ももう決着済みなんですよ。

 要は、個人献金を促進しながら企業・団体献金はなくしていくという方向がしっかり政治改革当時から出ていたんですからね。まあ、これ以上言ってもしようがありません。

 いずれにせよ、民主党、維新の党は、統一会派の政策合意でも、企業・団体献金は全面禁止する、かつ二万円の高額チケットを企業や団体に売りつけて収益を何千万も得るような資金集めパーティーも禁止するということで合意をしておりますから、ここが自公政権と大きな違いですし、おおさか維新の会は偉そうなことを言っていますけれども、資金集めパーティーは大々的にやっている。禁止できるのか、こう言いたいと思いますね。

 それから次に、今、テレビ、特にワイドショーでは、号泣県議、あの兵庫県議の政務活動費の詐取の問題が大きく取り上げられておりますね。この問題も大変問題ですけれども、私はこういう小悪よりも巨悪をぜひ取り上げていきたいというふうに思うんですね。

 その巨悪というのは、国会議員が、言うまでもありません、月々百万円、千二百万円もの文書通信交通滞在費をもらっておきながら、全く領収書もつけず、公開の義務もない、闇から闇に使っている。税金ですよ。こんなことがこの世で、この今の世で許されるのかと本当に思いますよ。

 我々は、統一会派の政策合意で明確に、この文書通信交通滞在費も公開するという決定をしております。維新の党は、結党以来、自主的にホームページ上で公開をしております。

 ぜひとも、総理、これは議論する余地はないんですよ。あの衆議院議長の答申でも、こういった税金はしっかり公開しろという答申が二〇〇一年に出ておりますし、公開しない理由を言ってみてくれというぐらいの話なんですね。

 この御時世、千二百万円のお金が、国会議員の第二の給料と言われているようなお金が全く公開もされずに使っていいのか。これはまさに政治家一人一人の感覚の問題ですから、ぜひ公開に踏み切っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 文書通信交通滞在費について、そのあり方については、政治活動に係る費用全体について、金額の多寡、使途の範囲、国民への説明責任など、多角的な視点から総合的に議論すべき問題だと考えております。同時に、さまざまな事情や環境にある者が国会議員として活動するための基盤となるものであることに鑑みれば、多数の意見で押し切る性質の問題ではない、こう考えております。

 したがって、個々の問題を個別に論ずるのではなくて、国会においてこうした観点から各党各会派で真摯に議論していただいた上で結論を得るべき問題であろう、このように考えております。

 いずれにせよ、江田委員は、民主党と合併するに際して全て公開をするということだろう、このように思いますが、これは我が党の中においてはいまだ議論があるところでございますし、各党各会派それぞれ議論があるところだろう、このように思います。

江田(憲)委員 これから議論するといった問題ではないんですね。何度も言いますように、二〇〇一年に衆議院議長の諮問機関の衆院改革に関する調査会で、文通費については領収書等を付した使途の報告書の提出を義務づけ、報告書を閲覧に供すべきだという答申が出ていますし、諸外国も全てそれをやっていますからね。ここも残念ながら自公政権との相違点だということは明確に申し上げておきます。

 さて、議員定数、選挙制度改革についても、午前中にも岡田代表と安倍総理の議論があったと聞いておりますので深くはやりませんけれども、一点、私がお聞きしたいのは、みずから安倍総理が提唱されてできた衆議院議長のもとの諮問機関ですか第三者機関で、アダムズ方式の採用というのがその根幹になっていることは事実だと思いますが、総理、このアダムズ方式については総理はいいと思っているんですか、悪いと思っているんですか。

安倍内閣総理大臣 私はいいとか悪いとか言う立場にはなくて、第三者委員会にお願いをして答申が出されたわけでございますから、そしてその答申を尊重するということは再々私申し上げてまいりました。ですから、当然このアダムズ方式を中心に自民党内においても議論がなされていくものと考えております。

江田(憲)委員 だったら、何でわざわざ、二〇年の国勢調査に基づいて、以降そのアダムズ方式を導入するというふうなおっしゃり方をするんですかね。

 我々は、少なくとも一〇年の国勢調査でアダムズ方式も導入して定数十削減。これは不十分ですよ、不十分ですけれども、我々も後でお願いした諮問機関が出した答申をつべこべ言うようじゃ収拾がつきませんから、これはもう我々は受け入れようということにしているわけですよ。

 それからもう一つ、やはり政治家の姿勢として。それは裏ではあるんでしょう、自民党議員が今当選している地方が随分影響を受けるから、それで党利党略で反対をされているのはよくわかりますけれども、しかし、総理としては御見識を示されるためにも、答申が出た以上は、しかも、野田当時の総理と安倍総裁で議員定数の大幅削減を前提に解散をした経緯も考えまして、また最高裁で違憲状態の判決が累次出ているということも考えますと、やはり前向きに受けとめて、国民に対しても、しっかりこれを受けとめて、もっと突き進んでやるんだぐらいの気概でなぜできないんでしょうかね。それを、わざわざ二〇年の後の。安倍総理なんかいやしませんよ、二〇年、二二年ぐらいのあたりに。そんなことを尊重すると言われたって誰も信用できませんからね、これまでの経緯からすると。

 ぜひこれはそのまま答申の趣旨を踏まえて、もっと一歩踏み込む、二歩踏み込む、政治改革ですからそういう気概でやっていただきたいと思いますが、もう一度答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 私は第三者委員会の答申を尊重すると言っているわけでありますし、私が申し上げていることは基本的にまさにこの答申の中の範囲内だと思いますよ。

 この答申が何を言っているかということについて、これはしっかりと目を凝らして耳を澄ませて読んでいく必要があるんだろうと思いますが、まさにこの答申が言っていることは、一つは、定数削減については実は、定数削減する必要はないということを結論として出しています。しかし、政党がそれぞれ約束しているのだから、その中であれば例えば十程度だろうということを述べているわけであります。

 ですから、我々は、十削減しましょうと。それは、今度の一五年の簡易調査の結果を受けて選挙区の区画を変えていく。これを我々は、二倍以内というよりももっと踏み込んでいこうと考えています。二倍以内をさらにぐっと踏み込みながら、選挙区の区割りの改定を行っていく際に十の削減を行っていく。

 この十の削減の仕方については今自民党の中で議論をしておりますが、各県から一つ一つ削減した中において、影響の小さい県から順番にやっていこうということを中心に考えているわけでありますが、それはたまたま直近の国調の中においても入っているものである。

 そこで、これは二〇年国調に先送りするということではなくて、二〇年に国調をやるんですから、一〇年の国調からもう既に六年が経過しているわけですから、一〇年の国調でやるのはおかしいですし、では一〇年の国調でやるといったら、一五年の速報と対象の県が変わりますよ。既にここでそごが生じているのに、それをそのままやるのはやはりおかしくなりますから。

 これは別に、今すぐ我々が調整が大変だからということではなくて、これがまさに第三者委員会が求めていることであって、五年ごと、五年ごとに行っていくということは余りにも混乱につながっていくから、そうではなくて十年ごとにやりなさいということでありますから、それに従っていく。

 そこで、今私が二〇年にアダムズ方式に決めますと言うことは、私も独裁者ではありませんから、今自民党は議論をしているわけでございまして、そこは、しかし、その中で私が尊重しているということを十分に念頭に結論に至ってくるのではないか、このように考えているところでございます。

江田(憲)委員 私が申し上げたいことは、いいことは先取りしてでもやっていこうじゃありませんかと申し上げているんですね。連立相手の公明党さんもそうじゃないですか。公明党さんは二〇一五年の調査でアダムズ方式を導入するとおっしゃっているんじゃないですか。であれば、今みたいな問題は解消されるんですよ。我々だって考え直して、今は一〇年でアダムズ方式、一五年で選挙区調整という流れですけれども、歩み寄る余地もありますよ、やるのならね。いいですよ、もう。変わりませんからね。

 我々は、第三者機関の答申を受け入れた上で、さらに国会議員の定数削減に向かって行動していく。ここも自公政権との相違点だということは申し上げておきます。

 さて、身を切る改革といえば、やはり国家公務員、公務員の人件費カットもございますけれども、これは、先般、維新と民主で出した財政健全化推進法の中で明確に国家公務員の人件費二割カットということを盛り込みました。

 その前提として、安倍さんの時代ですか、国家公務員制度改革基本法の中にも盛り込まれている公務員への労働基本権の付与、人事院勧告制度の廃止、すなわち人事院の廃止、そういったものも盛り込んで、労使の自律的な交渉によって公務員の人件費を二割カットしていく、これを明定しました。民主党さんもよく決断していただいたと思います。公務員労組を支持母体の一つに持つ民主党さんもしっかりやると。

 小さな野党はただただ反対、無責任にやっていればいいと思いますが、やはり憲法で保障された労働基本権を付与していない、代償措置で認められている人勧というのが厳然としてある以上、一年ぐらい反対するのはともかく毎年反対するのは憲法違反だ、今、立憲主義ということが叫ばれる中でそんな無責任なことはできないということで、今回、例外的に我々は給与法の賛成には回りましたけれども、そのかわり民主党としっかり協議をして、政権をとったらこの国家公務員の人権費二割カットをやるんだ、公務員に労働基本権を付与して、労使の自律的な交渉の場で人件費もカットしていくんだ、こういうことを決めた次第でございます。

 これはもうやれないというふうに決まっていますから、ここも自公政権との大きな相違点だということを申し上げておきます。

 何か、安倍総理、やられる気があるんですか。やられる気があるなら答弁していただきたいと思いますけれども。

安倍内閣総理大臣 民主党と合流する皆さんとの違いは、例えば私たちは自治労には応援していただいていない、これは明らかではないのかなと思います。

 この上で答弁をさせていただきますと、国家公務員の総人件費については、国家公務員の総人件費に関する基本方針において、職員構成の高齢化等に伴う構造的な人件費の増加を抑制するとともに、簡素で効率的な行政組織、体制を確立することによってその抑制を図ることとしています。

 具体的には、一昨年の給与法改正に盛り込んだ給与制度の総合的見直しにより、初任給を据え置く一方、高齢者層を四%引き下げることによって、俸給表水準を平均二%引き下げました。あわせて、地域手当を見直すことによって、世代間、地域間の給与配分を見直しています。定員自体についても厳しく削減を行い、平成二十六年度以降も、震災復興等の時限増員を除いて、政府全体で千人程度の純減を確保しているところであります。

 いずれにせよ、引き続き、厳しい財政事情を踏まえて、給与制度の総合的見直し等の着実な実施によって総人件費の抑制を実現していきたい、こう考えています。

江田(憲)委員 公務員の人件費カット、難しい問題はありますけれども、七・八%削減という空前のカットをしたのはあの民主党政権だったということだけは言っておきたいというふうに思います。支持母体に左右されない、やるべきことはやるというのが今度来るべきの新党でございます。

 さて、普天間飛行場の返還問題に移りたいと思います。

 この問題は、日本の安全保障の根幹にかかわり、かつ日米同盟の信頼性向上のために本当に非常に重要な問題であって、私は、この問題については与野党の別はないんだ、そう思っております。

 御承知のように、九六年四月の普天間返還合意は、当時の橋本龍太郎総理が心血を注いでなし遂げた合意でございました。実のところ、この問題を政府部内で持ち出したときに、外務省からは、こんな戦略的な要衝の地を返すはずがないじゃないですか、クリントン大統領との初めての首脳会談でこんな問題を持ち出しただけで、今度総理になった橋本という男は安全保障のアの字もわからないばかな総理だと思いますよ、そこまで言われて抵抗されました。

 しかし、当時、沖縄の思いは、知事にお聞きしましたところ、二つあると。一つが普天間飛行場の返還だ、もう一つが海兵隊の削減だ、こういうことだったわけでございます。

 そこで、九六年二月のサンタモニカでの初の日米首脳会談、普通は儀礼的な会談で終わる初の首脳会談ですけれども、そこで橋本総理が普天間の返還をしていただければありがたいということをおっしゃられて、これは本当の首脳外交ですよ。外務省もない、当時の防衛庁もない首脳外交。クリントン、ペリー国防長官、モンデール大使、橋本総理の間で、一月ちょっとの間になし遂げた合意でした。

 しかし、そのとき、五年から七年のうちに返還するということだったんですけれども、あれから二十年もたって、まだ実現ができていないどころか、最近は本当に訴訟合戦、泥仕合。警視庁までが現場に入ってデモ隊を排除している、そういう映像も流れている。私は、当時の返還交渉にかかわった一人としても、本当に橋本総理は草葉の陰で泣いておられると思います。

 今の現状について、安倍総理、率直なお考えをお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 橋本総理時代に、当時まだ私は当選一回か二回だったんですが、普天間の返還がスタートしました。しかし、これはただ単に普天間返還ではなくて、辺野古への移転であったわけでございます。

 ですから、残念ながらこれは十九年間一歩も進んでいなかったんですが、しかし安倍政権になって、その後民主党政権でこれが大いに迷走したことは江田委員も認められるだろう、このように思います。そこからこれはやり直さなければいけなかったんですから、結構大変だったんです。しかし、そこから我々はまさに新たなスタートを切りました。

 そして、普天間飛行場も、辺野古に移る中において、面積においてもまた機能においても三分の一になっていきますし、例えば空中給油機十五機も、三つの機能のうちの一つですよ、これは山口県が受け入れたんです。そう簡単なことではなかったですよ。しかし、岩国の皆さんに御理解をいただいて、この十五機の空中給油機をこちらに移していく、あるいは辺野古に移っていくオスプレイの整備は、これはまさに千葉県において、木更津において引き受けていただく、あるいはまた訓練等については本土においてかなり引き受けていただくということを行いながら今進めています。

 また、嘉手納以南につきましても、これは実際に返還がスタートしているわけでございますし、そして同時に、地位協定については指一本全く触れることができなかったんですが、環境にかかわる条文については事実上の地位協定の変更を行うことができました。

 そして、海兵隊のグアムへの移転なんですが、これは民主党政権時代に残念ながら予算が凍結をされてしまいました。我々がまさにこれを全体として動かすことによって予算が復活をしているということもあります。

 ですから、十九年間ほとんどというか全く何ら動かなかったものがやっと今具体的に動いていますし、沖縄返還以降初めて最も大きな面積が返還され始めている、こういうふうに申し上げておきたいと思います。

江田(憲)委員 しかし、どうされるんですか。埋め立てしようと思えば、どのくらいの土砂をダンプカーで運ぶんですか。そのときに、これは考えたくもないですけれども、人間の鎖ができたらどうするんですか。それも強行突破するんですか。

 要は理屈じゃないんです、この問題は。流血事故も起こるかもしれない、それを絶対避けなきゃいけない、そういう中で、私も、普天間の危険除去のためを思えばやはり辺野古移設しかない、しようがないと思っていますよ。

 しかし、僕が本当に疑問に思うのは、当時の橋本総理は、当時の大田知事と十数回、膝詰めで、二人きりで、何度も何度も話し合いをされたんですよ。しかし、私から見ると、この問題については総理は菅官房長官に任せ切りみたいな感じがする。

 この問題は、冒頭申し上げましたとおり、安全保障の根幹にかかわる問題ですから、幾ら官房長官が実力者だといっても、やはりトップ、国政のトップの総理が何度も沖縄入りし、何度も知事と膝詰めでやらなきゃだめなんですよ、こんな問題は。何回お会いになったんですか。二人きりで会ったことはあるんですか。そういう努力をされているんでしょうか。

 当時は、梶山静六官房長官も同じ思いで、岡本補佐官を使って、地べたをはいつくばるような、場末の町まで、バーまで行って酒食をともにしながらも、本音を聞きながら説得作業をして、本当に血を流すような努力をしてやっと、辺野古移設、一旦受け入れたんですよ、名護市長は。このぐらいの努力を総理がなぜやられないのかというのが私はわからないんですけれども。どうぞ。

菅国務大臣 江田委員は当時、橋本元総理とモンデール駐日大使の間の中で大変な御努力をされて、今日の辺野古移設というものを決められたと思います。

 私どもは、政権交代をしてから、まさにこの辺野古移設というものを、普天間飛行場の危険除去、固定化は避けなきゃならない、そしてまた安全保障の抑止力、そうしたことを考えたときに、ここが唯一の道であると。今、江田委員も言いましたけれども、そうだというふうに思います。

 その中で、ぜひ知事と相談をしてみたい、そういうことで一カ月間工事を中止したんです。工事を中止したときに、もう二度と工事はできないだろうという批判もありました。しかし、総理の指示で、そこはしっかり知事と白紙で相談をしようという中で行ったんですけれども、原点が実は違っていたんです。

 翁長知事は、まさに終戦後に強制的に土地が収用された、これが原点だということを主張されました。私はそのときに非常に残念だったんです。翁長知事のそうした主張というのは、橋本元総理を初めとして沖縄県の方々あるいは米国の方々の関係者が重ねてきた今日までの努力を無視するものであって、非常に残念な思いでありました。私は、現職知事として普天間飛行場の危険除去と固定化を避けるのは大きな問題であるということも何回となく申し上げたけれども、全く理解されることがありませんでした。

 普天間飛行場のそうした危険除去を一日も早く進めていくためには、やむを得ない措置として、政府とすれば、仲井真知事から承認をいただいていますので、行政判断はおりておりますので、自然環境や住環境に十分に注意をさせていただきながら工事を進めさせていただきたい、そういう思いには変わりはないということであります。

安倍内閣総理大臣 橋本さんのときと今とは大分事情が違うわけでありますし、その後、大田知事の後、稲嶺知事、そして仲井真知事という非常に協力的な知事がいたんですよ。その間に、実際、辺野古に向けて名護の市長選挙でも勝ちましたから、我々は順調に進めようとしていたわけでありますが、しかし、最低でも県外ということになって、根本的に状況を変えられてしまった中において、もともと我が党にいた翁長さんが、そういうことであればもう話は別だよと。そういうことで一生懸命やってきたけれども、最低で県外ということでいけるのであれば、今まで自分が説明してきたことと違うからと言って、完全にこれは必ず食いとめるということで選挙を戦い、選挙に勝ったわけであります。

 その中で、我々は、しかしながら、しっかりと負担の軽減には努めているわけであります。西普天間の住宅が返還されました。これは相当大きな返還になるわけでありまして、橋本さんのときも一生懸命やっておられましたが、我々も一生懸命やっているんですよ。こうやって一歩一歩、成果を上げていると私は思います。負担の軽減は一つ一つやっています。

 繰り返しになりますが、いわば地位協定については絶対指一本触れられないという常識で来たものを、我々は初めてこれを変えることができたんです。こういう努力を進めていく上においても、米国側の了解がなければできない中において進めているわけでございまして、当然これを円満に解決したい。会えば何とかなるのであれば、私だって何回だって会いますよ。ところが、残念ながら、そういう状況には今なっていないのが残念でならないわけでありますが、これからも努力を続けながら接点を見出していきたいと思っております。

江田(憲)委員 努力をされていることはある程度認めた上で議論しているんですけれども。

 今もおっしゃられたように、もう過去のことはやめましょう。今、現にある普天間飛行場の危険を除去するための辺野古移設というものを本当に実現するためにはどうすればいいか、お互い知恵を絞りましょうという観点から申し上げております。

 その一つとして、私は、出口戦略もないのにとにかく辺野古移設だと言っても、沖縄の人は絶対納得しないと思うんですね。出口戦略とは何ぞやというと、辺野古移設をされたとして、その後、では海兵隊はずっと居座るのか、恒久施設なのか、それとも将来的には県外、国外に移設をしていくのか。こういった出口戦略というものをアメリカとしっかり真摯に交渉しなきゃ、私は、とてもじゃないけれども返還は実現できないと思いますよ。

 そういう意味で、そういう思いはおありにならないのか、やろう、交渉しようという気にはならないのか、総理にお聞きします。

安倍内閣総理大臣 今、江田さんが質問されたのは、将来、辺野古に移転した後、さらに辺野古のいわば海兵隊の規模を小さくしていくという趣旨で御発言されているわけですね。

 現在の辺野古への移設案は、米軍の抑止力を維持しながら、同時に普天間の危険性の一刻も早い除去を図るための唯一の解決策であり、この考え方には変わりがないわけであります。

 そして、仲井真前知事から御要望のあった普天間飛行場の五年以内の運用停止については、政府としても、移設されるまでの間の普天間の危険性除去が極めて重要な課題であるという認識を仲井真知事とは共有したところであります。

 このように、普天間基地が辺野古に移設される、しかし同時に現在の普天間基地の機能についても縮小をしていくという努力は当然行っていくわけでありますし、そもそも、これを進めていった結果、相当、九千人の海兵隊がグアムへ移転するわけでありますが、これは大幅な負担の削減につながっていくだろう、このように思いますし、訓練場の返還もスタートするわけでございますから、今までと比べて最も大きな返還が行われていくことになる。そういうことはしっかりと進めていきたいと思います。

 過去との比較をしなければ、なぜ現在こうなっているかということはなかなか国民の皆様も沖縄の皆様もわかりにくいだろうと思いまして、私も過去からの経緯を御説明させていただいた次第でございます。

江田(憲)委員 それでは、普天間飛行場の運用停止五年以内という期限が二〇一九年二月に参りますが、それはしっかりやられるということでいいですね。

菅国務大臣 五年以内の運用停止についてでありますけれども、これは、仲井真前知事に対して辺野古移設に必要な埋立承認申請を行っている中で、平成二十五年の十二月十七日に仲井真知事から要望を受けたものであります。そしてその後に、十二月二十七日、知事から承認をいただきました。

 政府としては、埋立承認をいただいて工事を進める中で、移設までの間の普天間飛行場の危険性除去を中心とする負担軽減は極めて重要な課題であるという考え方のもとに、平成二十六年の二月に仲井真前知事及び佐喜真宜野湾市長の要望に基づいて負担軽減の推進会議を設置して、この実現のために今全力で取り組んでいるところであります。

 その後に、先ほど総理から御説明がありましたけれども、空中給油機十五機を岩国に移転しました。さらに、緊急時の発着の航空機を福岡県と宮崎県の自衛隊基地に移すことにしています。そしてまた、残ったオスプレイについては千葉県の木更津の自衛隊の基地で整備工場、このことも行ったわけであります。

 いずれにしろ、五年以内の運用停止の実現には、普天間飛行場の辺野古移設、このことが前提である、そのことの協力が得られることがその前提であることははっきり申し上げておきたいと思います。

江田(憲)委員 八千人の海兵隊のグアムへの移転という話が出ましたが、九七年当時は、先ほど言いましたように、海兵隊の削減が沖縄からの強い要望でしたが、橋本政権もそれを受けとめることはできなかったんですね。

 しかし、十年たってみれば、やはり東アジアの安全保障環境も変わります。それから、米軍再編の流れもあった中で、米国の方から八千人削減するという九七年当時では期待もできなかったことがやられたわけですからね。

 やはり、東アジアの安全保障環境の変化や米軍の再編の流れに沿って、ぜひこれは、総理、海兵隊をさらに削減していくとか移転していくとか、そういった意味での出口戦略というのは可能になっていくと私は思いますので、そういう思いをアメリカ大統領にもぶつけて、そうしないといつまでたってもこの辺野古移設は本当に進まないと私は思っていますからね。こういう出口戦略もしっかりやっていただきたいと思います。

 最後に、この問題で、福岡高裁の那覇支部が和解案なるものを出していますよ。一つが、暫定的な解決案として、先ほどの、一旦工事を停止してもう一度話し合うというのが一つ。もう一つが根本的解決案。これが私が申し上げた、中身は必ずしも一致しませんけれども、出口戦略というものです。見ますと、国は辺野古へ移設した後三十年以内の基地返還か軍民共用化を米国と交渉するというようなことも書かれておりますから、やはりこういった出口戦略も考えていかないかぬということが裁判官のレベルでも考えられているんだなと思いますけれども。

 総理、この和解案なるものに対して、どういう対応をされていかれるおつもりですか。

菅国務大臣 今委員から御質問がありましたけれども、和解案に関連したものについてはその内容を国は裁判所から対外的に明らかにしないよう要請されておりますので、具体的なコメントはここは控えたいというふうに思います。

 その上で申し上げれば、先ほど来申し上げていますけれども、普天間飛行場の辺野古移設に必要な埋立承認、これは仲井真前知事から既に頂戴をしまして、行政判断は示されている、法的瑕疵はないというふうに考えておりますし、そういう中で、政府とすれば、自然環境、住民の環境に十分注意をしながら移設工事を進めていくという考え方に変わりはありません。

江田(憲)委員 余り申し上げるべきかどうか、安倍総理が初めて翁長知事と官邸でお会いになった、あれはたしか直後、二、三日後ですかね、私が沖縄へ参りまして翁長知事とお話し合いをしたときに、実は知事は、私が驚くほどの柔軟な姿勢を持っておられました。

 しかし、その後いろいろなことがあって、ここまで問題がこじれている。本当に私が心配するのは、法的権限やいろいろな実力行使でそれは進めることはできるでしょう。しかし、本当に流血事故を見なければならないような事態は絶対避けていただきたいんですよ。これが世界に発信されると、日米同盟にも極めて大きな悪影響を及ぼしますからね。

 行け行けどんどんで、どんどんどんどんやるというんじゃなくて、時にはやはりこういう和解案にあるような、もう一度話し合う、今度は総理が出ていって話し合う、沖縄へ行って話し合う。橋本総理はそのぐらいことをやられたわけですよ。梶山静六官房長官もそうでした。官邸でお会いになるよりも、ちゃんと沖縄へ何度も入って説得を試みる、そういった真摯な姿勢がないから私はここまで問題がこじれていると思いますので、出口戦略も含めてぜひお考えをいただきたいと思います。

 さて、アベノミクスの方に入らせていただきたいと思います。

 アベノミクス、我々維新は基本的な方向は是とするが、しかし、今の現状を評価すると、このパネルに出しましたように、第一の矢の金融緩和、これは私がみんなの党を結党した二〇〇九年から提唱してきた話ですから、これは見事にやられて、株も上がったし、円も円安に振れて、輸出産業を中心に企業収益も上がった。そこは認めましょう。

 しかし、当時から私が申し上げてきたとおり、これはカンフル剤ですから二本も三本も打てないでしょう、仮に二本も三本も打っても効果は減殺されていくでしょうとはっきり申し上げてきたつもりでございます。そのとおりのことが今起こっているわけですね。

 日銀総裁、きょう来ておられると思いますけれども、この前、マイナス金利というまた三本目のカンフル剤を打った。しかし、残念ながらその効果はあらわれていないという中で、量的緩和の方も、国債を毎年八十兆円も日銀が買い増ししているわけです。もう買う国債がないといった状況で、ほぼ来年から再来年にかけてこういう量的緩和も限界に来るという中で、日銀総裁、おられますか、私は同情しているんですね、総裁に。

 総裁はよくやられたと思う。やり過ぎたぐらいやった。しかし、やはりこの限界も近づいている中で金融政策の余地はほぼなくなっていると思いますけれども、それに対する総裁の見解をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入した以降、短期、長期とも国債の金利は下がりまして、それを反映して、貸し出しの基準となる金利あるいは住宅ローンの金利も明確に低下をいたしております。

 このように、金利面では政策効果が既にあらわれていると思いますが、御指摘のように、国際金融市場では、その後も主要国の株価が軟調に推移する、あるいはドル安傾向が続いております。

 この背景はいろいろなことが言われておりますけれども、石油価格が引き続き下落しているとか、中国経済の不透明性とかいろいろなことが言われておりますが、そういうことを踏まえまして、先週末に上海においてG20財務大臣・中央銀行総裁会議が行われまして、御指摘のような世界経済の状況あるいは国際金融資本市場の動向を踏まえて、どのようにしてG20として経済の回復を維持強化し金融市場の安定の強化に貢献するかということについて、こうした目標を達成するためには、このコミュニケで、我々は全ての政策手段、金融、財政、構造政策、これを個別にまたは総合的に用いるという明確なコミュニケを出しておりまして、そういった方向で各国とも努力していくというふうに思います。

江田(憲)委員 このパネルをごらんいただければ、私に言わせれば、第一の矢は、一本目の矢は確かに飛んだけれども、二本目、三本目は矢折れ、矢尽きた状態ですね。

 第二の矢、財政出動ですけれども、これは、公共事業を例年五兆円だったものを十兆円にして使い残しが二、三兆あるとか、基金もことしの返納が五千億近い。要は使い残しですよね。いろいろな基金を百以上つくって、使い残しが五千億で、返納まで来ている。農業土木に至っては、補正と本予算で千二百二十二億円も増加している。従来、無駄が指摘されてきた農業土木ですね。こういうことで、全くピント外れの財政出動をしているからカンフル剤にもなっていないというのが実情です。

 第三の矢、これが一番重要な規制改革を初めとした成長戦略ですけれども、安倍総理は今いらっしゃらないんですけれども、やったやったとおっしゃるんでしょうが、私に言わせれば、確かに歴代政権よりも私は安倍政権はやられたと思いますけれども、そんなことに意味はないんですね。やはり、お金だけではなくて物やサービスを動かしていく。実体経済に影響のない改革なんて幾らやってもだめなんですね。だから、物やサービスを動かしていく、これが成長戦略であり、規制改革であり、構造改革なんです。

 日銀総裁にお聞きしますけれども、私は、第一の矢はもうやり過ぎたぐらいやった、そこで総裁は累次いろいろな場で、とにかく政府には構造改革を求めているんだ、成長戦略をしっかりやってほしいんだとおっしゃっていますから、この場で、安倍総理の前でおっしゃっていただければ幸いでございます。

黒田参考人 御指摘のように、日本経済が持続的な成長を達成していくためには、二%の物価安定の目標の早期実現を図るとともに、あくまでも民間の経済主体の前向きな動きを引き出して我が国の経済の成長力を強化するということが極めて重要でありまして、そうした意味で、第三の矢、構造改革、規制緩和などが極めて重要であるというのは私は全く同じ意見でございます。

 政府におかれては、昨年の六月に日本再興戦略を改訂して、成長力底上げに向けた具体的な施策を取りまとめておられますし、また、TPP交渉の大筋合意を受けて、昨年十一月末にはその効果を我が国の経済再生に結びつけるための総合的なTPP関連政策大綱も打ち出されておりまして、計画をしっかりするということも非常に重要ですけれども、やはりこういったことが着実に実行されていくということが極めて重要でありますので、その着実な実行に期待をいたしております。

江田(憲)委員 このパネルをごらんいただくと、これは二〇〇二年に外国の格付会社が日本国債の格付を下げたときに財務省が反論したペーパーでございますが、私はこの予算委員会で何度も民主党政権時代から取り上げたんですけれども、何とこのペーパーをおつくりになったのは日銀総裁、黒田財務官、そうですね。今うなずかれておりますからね。

 では、行ってみましょうか。

 要は、とにかく今、千兆円の借金で、国債が暴落して金利が急上昇して財政破綻なんだとみんな言っていますよ。財務省にマインドコントロールされた政治家やメディアはそう言っていますよね。

 しかし、ここに書いてあるように、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。日本は世界最大の貯蓄超過国。当時は千四百十八兆円ありました。今や千六百八十四兆。国債はほとんど国内消化で、今でも九割は国民が買っている。極めて低金利。低金利どころか、今はマイナス金利で安定的に消化されておりますし、日本は世界最大の経常黒字国、直近では十六・五兆円まで原油安もあって積み上がっている。債権国、要は海外に持つ純資産ですね、これが百八十兆の二倍、三百六十一兆になっている。外貨準備に至っては三倍の百五十一兆にまでなっている。

 これが黒田当時財務官、財務省の見解で、本当にすぐれた見解であります。ここが何で財政破綻なのかということですね。

 ただ、誤解なきように申し上げますが、我々維新も民主党も財政規律は大事だと思っていまして、先般、財政健全化推進法なるものをもう既に国会に提出しました。その中身は、安倍政権と同様、二〇年にプライマリーバランスを黒字化する、公務員の人件費を二割カットする、定数削減もする、社会保障の効率化もする、歳入庁を設置して取りっぱぐれの保険料徴収増も図っていく。こういうことをやりましたから、ゆめゆめ財政規律を軽んじているわけではないんですけれども、やはりこの二、三年というか、今景気がこれだけよくない。金融政策だけで、実体経済に及ぼす改革がなされていない結果、こうなっているわけですからね。

 総理、ぜひ、一〇%増税、凍結しませんか。今の経済情勢で、先ほど来議論しているように、身を切る改革もほとんどせず、社会保障に消費税収が充てられているのかどうかわからないような状況で、かつ、軽減税率で混乱を来すような麻生大臣の発言もありました。こういう状況でとても消費増税はできない、そう思いますけれども、総理大臣の見解を求めます。

安倍内閣総理大臣 消費増税については、我々は、来年の四月ということにおいてリーマン・ショック級あるいは東日本大震災級の出来事がなければ予定どおり引き上げていく考えでありまして、現在のところ、それを凍結あるいは延期するという考えはございません。

江田(憲)委員 このパネルに見るように、アベノミクスはきいていたんですね、あの八%増税までは。デフレギャップは着実に解消していた。一四年四月、増税する直前ではデフレギャップは完全に解消して、一兆円プラスだったんですよ。これが見事にというか、残念ながら、八%増税からずっとデフレギャップが続いているんですね。こんな状況で増税なんかできるはずないですよ。しかし、そんなことを言ってもまた同じ答えですから。

 しかし、先週末、総理大臣、官房長官からきな臭い発言が出てまいりましてね。特に官房長官、めったにこんなことをおっしゃらないんですが、橋本政権当時のことを取り上げられて、増税しても税収が上がらないような状況では絶対消費税は上げられないなんて。これは官房長官会見ですよね。私は菅さんのお人柄はよく知っているんですけれども、こんな大胆なことはおっしゃらないんですよ。

 総理、総理のリーマン・ショックだ大震災級だというのを世界経済の収縮に置きかえておっしゃった発言とあわせて読み解くと、これはあれじゃないですか、六月、増税凍結、七月、同日選挙じゃないですか。どうですかね。

菅国務大臣 江田委員、これは私が唐突に申し上げたことじゃないんです。記者会見で記者の方から聞かれたんです。

 総理は、リーマンや震災のようないわゆる突発的な事情と。それで、具体的にはどうですかという話をされて、税率を上げて税収が上がらなければ意味がない、そういうことを総理が言った、そのことについて官房長官はどうですかと聞かれましたから、それは当然、消費税の税率を上げても税収が減るようなことはするわけがないでしょうと言ったのがあの記事ですから、前提があったということをぜひ御理解ください。

安倍内閣総理大臣 先日の財金委員会において、リーマン・ショックのような重大事態とはどういうものかと問われた際に、単に個人消費の落ち込みということのみではなく、その背景に世界経済の大幅な収縮が実際に起こっているかどうかについて、専門的な見地から行われる分析も踏まえてそのときの政治判断において決められる事項であるという旨お答えをしたものでありまして、従来の立場と変わりがございません。

 また、これも質問においてあったのでございますが、消費税率を引き上げて税収が上がらなければ元も子もないということについては、そのとおりであるという趣旨の答弁をしたところでございます。

 また、解散については全く考えておりません。

江田(憲)委員 おっしゃるとおり、増税しても税収が上がらないような増税は絶対しちゃいかぬ。デフレギャップを見ても、こんなデフレギャップが七兆も八兆も六兆もあるような状況で増税したら税収は上がりませんからね。

 我々は、来るべき新党でははっきりと、増税は凍結する。それでも、いつでも受けて立ちますよ、同日選でも何でもね。増税凍結で戦い抜きますから、そこははっきり申し上げたいと思います。

 ちょっと時間がもうなくなってきたので、ここも対立軸の一つだということを申し上げて、そしてもう一つだけ、社会的弱者。一つだけ最後に聞かせてください。委員長、申しわけないです。

 要は、政治は社会的弱者のためにあるという言葉がありますけれども、我々はまさに、今度の新党は、これを基本軸につくってあげたいと思うんです。

 総理、反論されると思いますが、はたから見ると安倍政権は、強い者をさらに強くして、そのおこぼれが低所得者や貧乏人に来るだろうという発想なんですよ。だから、我々はやはりしっかりと、成長も大事だけれども分配、特に社会的な弱い人、とにかく低所得者、低年金者、一人親家庭、母子家庭、貧困の子供、非正規、女性、障害を持つ皆さん、こういうところに光を当てる政治をぜひしていきたいと思います。

 最後に総理の見解を伺って、私の質問を終わります。

竹下委員長 安倍内閣総理大臣、手短にお願いします。

安倍内閣総理大臣 我々も、成長と分配の好循環をしっかりと回していきたい。一億総活躍とは、弱い立場にいる人も、障害がある人も、あるいは難病を持っている人も、何回か失敗した人にもしっかりとチャンスのある社会をつくっていくということでございます。

江田(憲)委員 終わります。

竹下委員長 これにて岡田君、階君、大西君、奥野君、山尾君、江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 安全保障法制のもとでの自衛隊のPKO等の任務拡大について質問いたします。

 現在、自衛隊が唯一PKO派兵しているのが南スーダンPKO、UNMISS、国連南スーダン共和国ミッションであります。

 南スーダンでは、二〇一三年の十二月以来、キール大統領と副大統領との政争が、それぞれ属する民族集団の対立を巻き込みながら衝突が激化をして、内戦状況となっております。

 去る二月十七日、十八日、北東部のマラカルで国連平和維持軍が設置した文民、民間人保護施設で民族集団の間で武力衝突が起きて、同国政府軍が侵入をして、住民への発砲や放火など、そういうことが行われて、十八人が死亡、多数の負傷者を出す事件が発生いたしました。

 南スーダンPKOの活動地域、しかも国連施設そのものにおける武力衝突、重大だと思います。

 そこで、総理、国連安保理は今回のマラカル事件を重大視して二月十九日に声明を発表しておりますが、当然総理はその内容を御存じですね。

岸田国務大臣 御指摘のように、二月十七日、南スーダン北部マラカルの国連の文民保護サイトにおいて衝突が発生をいたしました。それを受けて、国連安保理としてもプレスステートメントを発出しております。当然、我が国としてもこのプレスステートメントは承知をしております。

笠井委員 今回の国連安保理声明、これでありますが、安保理は、南スーダン政府軍の制服を着た武装兵士たちがUNMISSキャンプに侵入し、住民に発砲し、略奪し、テントに放火したという信頼できる報告を受けた、こう述べて、政府軍を含む当事者を強く非難しております。さらに、住民や国連への攻撃は戦争犯罪であり、経済制裁の対象になるとまで警告をいたしております。

 先週、現地マラカルを視察した康京和国連人道問題調整事務所OCHAの事務次長補は、マラカルでふんまんやる方ない事態を目の当たりにしたと述べて、こう言っております。戦闘はワーウ、ムンドリなど、新たな地域にも拡大している、和平合意にもかかわらず、この国の文民は引き続き欠乏と破壊、死と荒廃に直面し、人道支援の必要性はいよいよ大きくなっている、こうした事態は受け入れがたく、戦闘は直ちにやめるべきだと力説をしております。

 戦闘が広がっているムンドリというところは、私も地図で確認しましたが、首都ジュバに比較的近いところで、西エクアトリア州にあるところであります。

 そういう状況、まさに南スーダンの現状は、PKOに参加している自衛隊部隊の活動にも影響を及ぼすような極めて重大な事態だと思うんですが、どうでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、二月十七日、北部マラカルにおきまして衝突が発生をいたしました。そして、その衝突の理由あるいは経緯につきましては、現在、まだ十分に明らかにされておらず、政府としましても、今、情報収集に努めておるところです。

 そして、国連も今、調査中ということで、二十四日現在で国連の発表したところによりますと、二十一名の死亡、そして九十名以上の負傷者が出ている、こういった状況でございます。

 そして、南スーダン人民解放軍、政府軍の兵士が現場にいたという報道があるということ、このことについては報告を受けておりますが、彼らの関与の有無あるいは背景につきましては、国連が今、調査中であると承知をしております。

 そして、御指摘の安保理のプレスステートメントにおいても、南スーダン人民解放軍の制服を着用した武装した複数の者が射撃をした、こういう表現になっております。その実態についても、今、国連が調査を続けていると認識をしております。

 いずれにしましても、国連の発表においても、あるいは海外メディアの報道においても、政府全体の関与を示唆するような報道はないと承知をしております。

笠井委員 私、南スーダンの最近の情勢を調べてみました。

 今、国連のことで、制服を着たということであるけれども調査中だという話がありましたが、国連だけじゃないんですね。

 今回のマラカル事件については、南スーダンの和平支援をやっている三カ国、アメリカ、イギリス、ノルウェー、トロイカと言っていますけれども、この代表も共同声明を発表して、厳しく非難をして、南スーダン政府軍が武力衝突を拡大、支援する役割を担った、こういう信頼できる報告について特に憂慮するというふうに表明をしております。まさにそういう状況。

 そして、自衛隊が駐屯する首都ジュバでも、治安は安定どころではない、国連保護施設内では、マラカル事件で反政府派が殺されたことに抗議デモが起きて、ジュバの市街地内外でも民族間の緊張状態が続いている、昨年八月の和平合意後、国民統一移行政府樹立に向けての副大統領の任命とかあるいは閣僚の配分など、一定の前進はあるものの、反政府派のマシャール副大統領のジュバ入りということができない状況で、治安が確保できないというので、それが三月初旬にできるかどうか、まだ見通せない状況にある、こういうことを言われておりまして、今回のような武装グループの衝突は依然続いているという状況であります。

 そこで、安倍総理、こうした南スーダン情勢、いろいろなことが起こっている状況について、そして事実について、報告を受けていらっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 南スーダンの情勢については、報告を受けております。

 南スーダン北部等においては、引き続き散発的な衝突が発生している模様ではありますが、自衛隊が活動するジュバについては、情勢は平穏との報告を受けています。

 いずれにせよ、現地情勢については、引き続き緊張感を持って注視をしていく考えであります。

笠井委員 現在、南スーダンの国内避難民は百七十万人。うち二十万人が国連保護施設にいるとされて、北部においても、そして南部においても、さらには、今、総理がジュバは平穏だと言われたけれども、ジュバを含む南部においても、政府軍による国連に対する危害行為や攻撃が繰り返されている状況であります。しかも、多くの少年兵まで駆り出されている。

 国連事務総長報告によると、昨年の四月から八月までのわずか四カ月の間だけでも、国連PKOに対する攻撃百二件中九十二件が南スーダン政府軍によるものとされている。これが現実であります。

 散発的、偶発的と言われたけれども、何でそんな状況と言えるのか。南スーダンはいつ何どき大規模紛争が再来するかもしれない、こういうふうに国連の報告書が厳しく指摘しているような情勢であります。ここはしっかり見る必要があると思います。

 そこで、安倍総理は、二月四日の当委員会で、我が党の志位委員長の質問に対して、南スーダンに派兵している自衛隊部隊に新たな任務を付与することを検討しているというふうに答弁されましたが、具体的には、どういう任務をどこまで付与できると考えていらっしゃるんでしょうか、現時点で。

中谷国務大臣 新たな任務につきましては、部隊の運用構想とか、また細部の運用規定、武器の使用規定、これを検討している段階でありまして、これに対して部隊の方も意見を述べております。また、訓練をし、フィードバックをいたしまして、これは慎重にこのルールを今決めている段階でございますので、現時点におきまして、新たな任務を部隊に付与するといったことはまだ考えておりません。

笠井委員 昨年九月十九日に強行されて、三月末に施行される安保法制のPKO法の改定で、国連PKO等での自衛隊部隊の業務内容を拡大して、治安活動のための安全確保業務や、他国軍の部隊などを救出する駆けつけ警護が可能とされた、業務を妨害する行為を排除する任務遂行型の武器使用が新たに認められた、こういう状況であります。

 先ほど議論しました南スーダンの内戦と武力衝突で、敵と味方の識別が難しい紛争、そういう現場に自衛隊が任務を拡大していく、こういうふうに法律はなっていて、それに基づいてどうするかという話ですから、そうなっていけば、戦闘の当事者になるのは避けられない。大変に危険だと思います。

 そこで、改めて、今回の改定PKO法そのものについて聞きたいと思うんですが、今回の改定PKO法で、自衛隊はどんな任務をどこまでやれるようになったか、この問題であります。

 ここに、PKO法改正に向けた検討という平成二十四年三月二十七日付の防衛省の文書があります。緊急時の文民等の保護に係る自衛隊の対応というものであります。

 この中で、例えば、離れて所在する文民等が危険に直面した場合について、自衛隊が具体的にどこまでの対応を想定するかを明確にする必要がある、こういうふうに言って、武器使用が当然の前提となる人質救出型の対応について具体的な記述がされております。

 そこで想定される場面として二つ言っております。一つは、武装集団が文民等の所在地を包囲、文民等は銃撃に対する防護力や包囲網を突破できるような輸送手段はなく、自力では退避できない状況。もう一つは、武装集団が文民等を誘拐、拉致し、当該武装集団の拠点、建物などで拘束、文民等は危険な状況にあるも、動きがとれない状況。こういう二つの場合を挙げて、想定しております。その上で、自衛隊の実力行使による救出、強行突入、人質奪還等について具体的な対応が記されております。

 防衛省はこうした任務付与を検討しているんじゃないですか。いかがですか、大臣。

中谷国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、法律に定められたさまざまな任務を適切に遂行するためには、部隊の運用構想、また内部規則類の検討、整備など、訓練の実施のために必要な準備、これを行った上で、実施してフィードバックをするということでございまして、いずれにしても、任務を与える場合には、任務遂行のための能力、これを高めていく必要がございます。

 そのためには、さまざまな検討は実施をいたしておりますけれども、現時点においては、具体的な訓練、これを開始しておりません。この開始時期も含めまして、具体的な方針は決まっておりませんので、このようなことにつきましての所要の準備、検討、これは現時点においては行っているということでございます。

 また、武器使用等につきまして、駆けつけ警護、これはあくまで活動関係者の近傍に所在する施設部隊等が、一義的に地域の安全確保を担う現地治安当局また国連のPKO等の部隊よりも速やかに対応できる場合に、緊急の要請に対応してその現場に駆けつけ、当該関係者の生命身体を保護するということであります。

 自衛隊による武器使用に当たりましては極めて厳格な注意義務が求められ、また、各種情報をもとに相手を的確に識別して武器を使用できるという厳しい教育訓練も行っており、さらには、海外派遣部隊につきましては、派遣先の情報、社会慣習を尊重しながら地元と良好な関係の構築が図られるかどうか、そのようなことも判断をしなければなりませんので、あらゆる面で検討はしているということでございます。

笠井委員 あらゆる面で検討していると。訓練はまだこれからだけれども、さまざまな検討、法律に基づいて何ができるかについてはさまざま検討している。重大なことを言われました。

 この防衛省の文書では、人質救出での武器使用を、任務妨害の制止及びその排除のための武器使用権限、つまり任務遂行型とした上で、自衛隊の実力行使を伴う救出の流れというのをイメージ図にして出しております。こういう形でイメージ図になっている。具体的なイメージですね。

 これを見ますと、人質がいる武装集団の建物を現地警察やPKO部隊が包囲する中で、特殊作戦部隊が次の手順で実力行使を行うというふうになっています。六つあるんですけれども。

 第一は、突入、鎮圧開始前までは努めて隠密に行動。二つ目、必要により、敵監視要員を狙撃、射殺して、突入部隊の突入、鎮圧を容易化する。そして第三番目に、突入口を形成し、努めて複数方向から突入する。そして四番目に、状況により、回転翼機を活用し上空からも突入。五番目に、突入後は迅速に敵を鎮圧し、人質救出。そして六番目に、第一線救護、応急処置というふうに具体的に書かれているわけであります。イメージ図になっている。

 そして、情報活動、偵察、狙撃、突入、鎮圧等の一連の作戦、これを遂行可能な部隊は特殊作戦部隊が当たるというふうになっております。

 極めて具体的で重大な中身が入っているというふうに思います。

 ところで、中谷防衛大臣に伺いますが、大臣直轄の、陸上自衛隊の中央即応集団というのがありますが、その中には特殊作戦群という部隊がありますね。

    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕

中谷国務大臣 中央即応集団の中にそのような部隊はございます。

笠井委員 陸上自衛隊には、みずから唯一の特殊部隊と呼ぶ、今大臣が答えられた特殊作戦群があります。その初代群長だった荒谷卓氏は、二〇〇四年一月から二〇〇六年七月まで行われたイラクの人道復興支援活動の全ての期間、イラク・サマワに派遣されて、要人警護や部隊警護を主な任務にしていたと御本人自身が雑誌東洋経済などで具体的に語っておられます。

 また、自衛隊部隊を海外に派遣するときにこうした特殊作戦群が随行しているとも報じられているところでありますが、そういう部隊が自衛隊には存在するということでよろしいんですか。

中谷国務大臣 自衛隊におきましては、さまざまな事態、あらゆる事態に対応可能なようなことで、各種部隊がそれぞれの訓練を重ねて任務が実施できるようにいたしております。

 そういう意味におきまして、累次イラクの派遣、またPKOの派遣等が行われたわけでございますが、あくまでもイラクの派遣におきましては、施設また給水、医療という内容でした。

 また、今回のUNMISS、南スーダン派遣のPKOにつきましては、施設整備を目的とする部隊を派遣しているということでございまして、安全確保とか警護とか、そのような任務を与えているわけではございません。

笠井委員 今、施設整備の部隊が南スーダンに行っているという話でしたが、施設整備等の部隊ということで、その中に、では、その特殊作戦群がいないのかどうかという問題もある。

 それから、これから安全確保業務でもやれるということに法律でしたわけですから、そういう任務を持つ部隊が行くということだって、この法律のもとではあるわけであります。

 重大なのは、この防衛省の文書で、この特殊作戦群が実力行使をするというに当たって、相手を狙撃、射殺することを前提に位置づけていることであります。しかも、人質救出の実際の作戦は、文書によれば、武装集団を射殺することはおろか、万が一失敗すれば文民等を死亡させるリスクもあるとここにはっきりと書かれているということです。

 この特殊作戦群の荒谷初代群長は、昨年七月二十三日付の産経新聞で、「一人助けるのに仮に自衛官十人が死んだとしても、それは作戦と技量が未熟なだけなので、気にされないように」とまで語っています。それほどリスク、危険があるということだというふうに思います。

 自衛隊部隊にそういう新たな任務まで付与しよう、そういうことじゃないんですか。

中谷国務大臣 先ほどお話しいたしましたように、イラクの復興支援というのは、給水活動を行う、また道路の施設整備や医療支援などを行うということが目的でございまして、御指摘のようなことを目的といたしておりませんので、現実にも、そのような部隊は派遣されたというふうには聞いておりません。

笠井委員 荒谷群長自身が、さっき紹介したように言っているんですよ、イラクのサマワに派遣されて、要人警護や部隊警備を主な任務にしていたと。それで行っていたと御本人が言っているんです。

 何か大したことがないふうに言われるけれども、とんでもない話で、こんな重大なことまで想定して防衛省は検討してきたということじゃないですか。

 中谷防衛大臣は、昨年一月十九日、南スーダンに訪問された際に記者会見をされています。今回の法改正をやることによって求められたことに対応できるようにしていくべきだということで、要するに、もっともっと広げておいて、そして選択すればいいんだと。

 そういう中に、先ほどこの防衛省の文書で明らかにしましたけれども、結局、狙撃、射殺することも前提に、そして、万が一失敗したら文民等も死亡させるリスクもあるようなことまでやれるようにする、この法律でできるようになったら、それをやるようにすると。大臣に言わせれば、もっともっと広げておいて、選択はいろいろやりようがあると。こういうことを具体的に進めた、検討してきたことは重大だと思います。

 大体、十分な時間をかけて、慎重の上にも慎重を期して検討を行っている、そして、能力を高める必要がある、部隊の司令官や隊員が迷うことなく任務を遂行できるように訓練が必要だ、慎重に慎重に、訓練を訓練をと言うこと自体、それほど任務の深刻さを想定しているということじゃないですか。

 こうした自衛隊の任務拡大は、再三警告されているように、戦後初めて自衛隊が外国人を殺し戦死者を出すという現実的な危険を裏づけるものだと思います。

 きょうは時間の関係で絞って聞きましたが、事は重大です。今回の改定PKO法で自衛隊にどんな任務をどこまで与えるかというこれまでの検討状況を、私は、きちっと国会に示すべきだ、報告すべきだと思います。

 まずは、私が示したこの防衛省の文書、PKO法改正に向けた検討という、この文書を当委員会に提出するように求めたいと思います。

 委員長、理事会で協議をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

平沢委員長代理 後刻、理事会で協議いたします。

笠井委員 そもそも、今回の安保法制、改定PKO法で、離れた場所で人質となった他国軍の部隊などを救出、奪還するために、相手に危害を与える武器使用ができるのかどうか。防衛省の文書にあるのに、政府は想定されていないとかということを言ったりもしますが、法律上、人質を救出、奪還することは明確に排除されているのかという問題です。条文のどこにどう書いてあるか、答えてください。

中谷国務大臣 まず、南スーダンで私が現場を見てまいりましたけれども、PKO活動でございます。

 目的というのは、現地の国の復興支援とか人道支援、こういうことに各国が出て、いろいろな、さまざまな活動をしておりますが、中国も、韓国も、インドも、パキスタンも、それぞれの国が自国の組織を出して懸命に活動いたしておりまして、日本もこういった積極的な平和構築支援、さまざまな形で、できることについては積極的に行うべきではないかという現地の感想を述べたまででございます。

 御質問のありましたこの国連のPKOミッションにおいて、救出とか奪回などを行うことがあるのかということでございますが、国連のPKOミッションにおいては、救出、奪回の任務は付与されておらず、PKO部隊が救出、奪回を行うことは想定されておりません。

 その上で、いわゆる駆けつけ警護、これにつきましては、本来は安全確保業務を担わない自衛隊の施設部隊等が、その装備や人員に応じて安全を確保しつつ、対応できる範囲内で、当該部隊が一義的に地域の安全確保を担う現地治安当局や国連のPKO等の他の部隊よりも速やかに対応できる場合に、緊急の要請に対応してその場に駆けつけて行われるということでございまして、PKOの中で、NGO等の活動関係者から緊急の要請を受けて、その侵害や危難から保護するものでございます。

 また、安全確保業務というのは、特定の地区の保安のために監視、巡回などを行うものでありまして、あくまでも派遣先国の警察権の補完や代行を行うものであります。

 いずれも、現地の警察が行うような治安維持活動一般を行うものではないし、また、武器の使用は厳格な警察比例の原則に基づくものでありまして、相手に危害を与えることが認められるのは、正当防衛または緊急避難に該当する場合でございまして、戦闘行為に参加をするというようなものでは全くないということでございます。

笠井委員 南スーダンでの記者会見の話ですが、問いは、駆けつけ警護やそれに伴う武器使用の緩和について聞いて、それに対して大臣が答えて、法律の改正で求められたことに対応できるように、もっと広げて、もっと広げて選択をと言われたんですよ。いろいろな活動ができますという話一般じゃなくて、駆けつけ警護や武器使用の緩和についてどうかと聞かれて、もっと広げて選択できるようにしようとあなたが答えられた。ここに文書があるんですからね。

 今、この法律との関係でお答えがあったんですが、人質の救出、奪還について、想定されていないという話がありましたが、この法律上、しない、できないという定めがあるのか、ないのか。しない、できないという規定は法律上のどこに書いてあるのか。ないですよね。

中谷国務大臣 法律上に、駆けつけ警護、また安全確保業務、こういうことは規定をされているわけでございますが、自衛官による武器使用につきましては、極めて厳格な注意義務が求められておりますし、また、現地の状況等を拝察しまして、危害を加えるという事態というのは極めて想定しにくいものでございます。

 このように、一般……(笠井委員「人質の救出、奪還ができるかどうか、法律に書いてあるかどうかと聞いたんです」と呼ぶ)

 はい。先ほどお話をいたしましたように、救出、奪還につきましては、この任務に入っておりません。

 先ほど説明したように、現地の警察などが対応するようなことができない場合に取り急ぎ派遣をされるものでございますし、基本的には、現地の治安当局また警察当局がそのようなことで実施をするということでございます。

笠井委員 実際どういうふうにやっていくかじゃなくて、法律の話を聞いているんです。法律上、この改定PKO法上、人質の救出、奪還はしない、できないという規定はあるのかないのか。そんなのはないですよね、しない、できないという。ないでしょう。

中谷国務大臣 法律上につきましては、まず、安全確保業務については、防御を必要とする住民、被災民その他の生命、身体及び財産に対する危害の防止及び抑止その他特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問、警護となっております。

 また、駆けつけ警護につきましても、これは先ほど説明をさせていただきましたけれども、PKO活動または人道的な国際救援活動に従事する者、支援をする者の生命、身体に対する不測の侵害、危難が生じ、または生じるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して当該活動の関係者の生命及び身体の保護等を目的として実施をするわけでございます。

 基本的に、武器使用につきましては正当防衛、緊急避難で実施をいたしますので、その範囲でどのようなことができるのか、その規定以上のことにつきましてはできないわけでございますので、その範囲の中でこの任務を実施するということでございます。

笠井委員 法律上について聞いているんですよ。人質の救出、奪還をしない、できないという規定についてあるのかないのかと聞いたら、あるとは言えないんですね。ないんですね。

 駆けつけ警護についても、安全確保を担わない施設部隊等が通常有する装備等を前提に実施するというふうにあるわけですけれども、その説明でいくと、治安活動に当たる安全確保を担う部隊でやれば能力的にも装備的にも救出、奪還をやれる、やり得るということですよね。

中谷国務大臣 活動権限につきましては先ほどお話をした範囲で実施するということでございますが、武器使用等につきましては、正当防衛、緊急避難、これの範囲で遂行するということでございますので、おのずとやれる範囲というのは限定をされておりますし、また実際にやれるかやれないか、これは、部隊の能力、また現地の情勢、また情報、ほかの、現地の治安当局、こういったことにも関連するわけでございますので、そういう中で適切に対応するということになりますが、あくまでも法律で定められた範囲内で実施するということでございます。

笠井委員 何度聞いても、結局法律上、今、中谷大臣からは、人質の救出、奪還についてはしない、できないという規定があるということは一言も言われなかった。

 まさに改定PKO法でいえば、離れた場所で人質となった他国軍部隊などの救出、奪還のために、相手に危害を与える武器使用ができないとは書いていないわけですよ。そういうことでしょう。想定していない、想定していないと言われますけれども、防衛省の文書では現に検討してきている、そして法律上はできないとは書いていない、まさに重大であります。

 総理、このことについてどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 今もう既に中谷大臣からお答えをさせていただいておりますが、いわゆる駆けつけ警護は、現地治安当局が速やかに対応できないときに、施設整備などを行う部隊が、NGO等の活動関係者からの緊急の要請を受けて、その侵害や危難から保護するものでありまして、また、いわゆる安全確保業務は、特定の区域の保安のため監視、巡回などを行うものであって、あくまでも派遣先国の警察権の補完や代行として行うものでありまして、このように、いずれも現地の警察が行うような治安活動一般を行うものではありません。

 また、武器の使用については厳格な警察比例の原則に基づくものでありまして、いわば危害要件でありますが、相手に危害を与える射撃が認められるのは正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られているということでございまして、このようなことから、駆けつけ警護や安全確保業務は戦闘行為に参加するといったものでは全くないということでございますし、また、これらの業務を行い得るのは、これは御承知のように、PKO参加五原則が満たされているときであります。かつ、派遣国及び紛争当事者の受け入れ同意が我が国の業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められる場合に限られるものであるということでございます。

    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 この文書はまた本当に出してもらいたいんですけれども、ここで、実力行使に当たっては、相手を狙撃、射殺することを前提にしたことまで想定していろいろやっているわけです、検討していたわけでしょう、さまざま検討していると言った。そういう状況の中で、まさに重大なことになるという話が今問題になっているわけです。

 総理は、正当防衛、緊急避難というふうに言われましたが、自衛隊における正当防衛、緊急避難について、中谷大臣が会長を務める日本国防協会というのがありますね、この主催の会合で、理事長の森勉元陸上幕僚長は、二〇〇九年の講演でこう述べています。PKOでカンボジアへ派遣されるときに警職法の準用で、正当防衛、緊急避難の場合に限り、武器を使用することが認められましたが、それは個人に与えられた権限です、正当防衛、緊急避難という概念は基本的には我々の組織にはありません、なぜかというと、個人で行動することがないのです、正当防衛、緊急避難という概念がもしそこにあれば、我々の行動は成り立たないのですと。

 つまり、武器使用というのは正当防衛、緊急避難に限ると幾ら繰り返しても、部隊行動を基本とする自衛隊にとっては全く意味がないということじゃないですか。

 今日本がやるべきは、憲法違反の安保法制の具体化、自衛隊への新たな任務付与ではありません。南スーダンでも現在繰り返される武力衝突、壊れそうな和平に対して、憲法九条に基づいて非軍事でどういう貢献ができるかを真剣に考えるときです。

 国連は、世界に対して人道支援の強化を痛切に訴えております。南スーダンでは、人口の半分に当たる六百万人余りが人道支援を必要としているけれども、そのために必要な資金の約二%しか得られていない、最近そういうことで危機感が表明されております。国際社会の協力は不可欠。日本こそ先頭に立つべきであります。

 また、和平への働きかけ、マラカルのような不安定な地方の統治機構の改善など、日本がどういう支援をできるか、NGOと協力して、やるべきことはたくさんあります。

 安保法制、戦争法は廃止、一昨年七月一日の閣議決定はきっぱり撤回すべきであります。新しい国民運動に応えて、民主、共産、維新、社民、生活の野党五党が共同提出した法案の速やかな審議入りと成立を強く求めて、私の質問を終わります。

竹下委員長 この際、塩川鉄也君から関連質疑の申し出があります。笠井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、選挙制度について質問をいたします。

 明治以降の歴史を振り返った場合に、選挙権、参政権をひもとけば、一八七四年、明治七年に板垣退助らが民撰議院設立建白書を提出したことが口火となって、自由民権運動が大きく広がり、議会制定をかち取りました。しかし、選挙権は一部の高額納税者のみ、成人男子全て赤紙が来たら戦場で命をかけて戦わされるのに、政治には全く意見を届けることができない、これはおかしいと普選運動が広がって、一九二五年に男子普通選挙が実現をしました。

 また、女性の社会参加を認めない時代に、女性を一人前の市民として認めさせようという女性参政権獲得運動が広がって、これが戦後の女性参政権実現につながりました。

 総理にお尋ねいたしますが、このような国民のたゆまぬ運動が選挙権の拡大をもたらしてきたと思いますが、総理はどのようにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 我が国の選挙制度は、明治二十二年、衆議院議員選挙法が制定されまして、直接国税十五円以上の二十五歳以上男子に限定した制限選挙で始まったものでありますが、その後、選挙権拡大に向けたいわゆる普選運動と呼ばれる社会的な運動を通じて、累次の納税要件の緩和を経て、大正十四年、一九二五年にようやく普通選挙の実現を見たものと承知をしております。

 また、女性の参政権については、大正時代より婦人参政権獲得の運動が行われましたが、第二次世界大戦後の昭和二十年十二月に女性にも参政権が認められることになり、二十歳以上の完全普通選挙が実現されたものと承知をしております。

 このように、完全普通選挙は歴史的にも社会的にもさまざまな経緯を経て実現したものであり、こうして我が国が得た選挙権は、我が国の民主主義を支える重要な国民の権利であると認識をしております。

塩川委員 今総理からお話ありましたように、普選運動や婦人参政権、女性参政権獲得運動、こういう取り組みの中で、民主主義を支える国民の権利が拡充されてきたというお話を確認いたしました。

 このように、総理もお認めのとおり、国民の運動を通じて選挙権は拡大してまいりました。

 国民主権を確立した日本国憲法の前文は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と始まりますが、これは議会制民主主義、代議制民主主義の原理をあらわすものであり、その議会制民主主義の根幹をなすのが選挙権、参政権だということを示しております。このように、国民の選挙権獲得の闘いは、日本国憲法にも刻まれているものであります。

 そこで、総務大臣にお尋ねをいたします。

 ことし六月から十八歳選挙権が実施をされます。民意がさらに議会に反映され、議会制民主主義の発展につながるものと受けとめております。

 十八歳選挙権によって新たに選挙権を有する者は何人になるのか、その結果、人口に占める有権者の割合は何%になるのか、お答えください。

高市国務大臣 年齢別人口まで公表されている直近の国勢調査ということになりますと、平成二十二年の国勢調査になるんですが、これをもとに申し上げますと、平成二十八年に十八歳、十九歳になると見込まれる者は、当時の国勢調査のときに十二歳、十三歳でいらした方々ですが、合計で約二百四十万人でございます。

 また、平成二十七年十月一日現在の国勢調査、速報値における総人口は、約一億二千七百万人でございますから、十八歳、十九歳になると見込まれる者の総人口に占める割合は約二%でございます。

 このお若い方を含めて、全体の有権者数は六千六百四十万人ですから、総人口の五二%に当たるということでございます。(発言する者あり)

 済みません。よろしいですか。有権者人口が六千六百四十万人でございます。(塩川委員「それは少ないでしょう。少ないですよ。一億人近い」と呼ぶ)ちょっと、失礼しました。

塩川委員 ちょっと確認してもらえますかね。

 重ねてお聞きしますけれども、基本的な話ですからね。

 総務大臣にお尋ねしますが、人口に占める有権者の割合について聞いているわけですけれども、一八九〇年の最初の選挙のときの人口に占める有権者の割合が何%かということが一点。それから、一九二八年の男子普通選挙によって人口に占める有権者の割合が何%になったのか。そして、今回の十八歳選挙権で人口に占める有権者の割合が何%になったのか。

 この三つをお答えいただけますか。

高市国務大臣 済みません。

 まず、一八九〇年でございますね。人口に占める有権者の割合は約一%でございます。

 そして、一九二八年、人口に占める有権者の割合は約二〇%でございます。

 それから、一九四六年もお尋ね……(塩川委員「お願いします」と呼ぶ)はい。

 一九四六年、人口に占める有権者の割合は約四九%でございます。

 先ほどの問いについてでございますが、やはり十八歳、十九歳を含めた有権者数六千六百四十万人、人口に占める割合は五二%ということで間違いがないと、今事務方の確認でございます。(発言する者あり)

竹下委員長 ちょっとおかしいですね。(塩川委員「委員長、とめてください。とめて、とめて」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

竹下委員長 それでは、速記を起こしてください。

 では、次の質問を。

塩川委員 こんな簡単な質問も答えられないというのは極めて重大だと言わざるを得ませんが、大体八割を超えて、八四%ぐらいになるわけですよ、当然のことながら。

 そういうふうに、今答弁を含めて、いわば一八九〇年の最初の選挙のときには有権者はわずか一・一%です。それから、一九二五年の男子普通選挙のときには二割、そして戦後の女性参政権、二十歳以上の選挙権になって五割、そして現在では八割強へと前進をしてきたわけであります。十八歳選挙権は、七十年ぶりに有権者を大きくふやすことになります。

 そこで、重ねて総務大臣です。

 民意が議会に反映されてこそ、議会制民主主義の発展につながります。ところが、この予算委員会で議員定数を削減するという議論が行われております。そこで、議員定数がどうあるべきかを議論したい。衆議院議員定数がどのように推移をしてきたのか、総務大臣に確認します。

 一九二五年の男子普通選挙のときの定数は四百六十六。それから、一九四五年の女性参政権、二十歳以上選挙権のときの定数は四百六十八。しかし、このときは全面占領下の沖縄では選挙が実施されなかったために、一九四六年選挙では定数四百六十六で選挙が行われました。その後、中選挙区制のもとで一票の格差是正などを通じて五百十二となりましたが、一九九四年には小選挙区比例代表並立制が導入されて五百となり、比例二十、選挙区五削減されて四百七十五に減らされてきたわけですが、この数字で間違いありませんね。

高市国務大臣 御指摘のあったとおりでございます。

 先ほどの答弁、修正させていただきます。

 ちょっと御通告の趣旨が、十八歳、十九歳と見込まれる者の総人口に占める割合というところまでしか役所の方で聞き取っておりませんでした。申しわけありません。

 有権者数一億六百三十五万人、八四%の割合です。失礼いたしました。

塩川委員 定数についてはそのとおりということで、確認をしていただきました。

 今回この四百七十五を十削減して、これまでの、戦前の男子普通選挙の四百六十六、それをさらに割り込み、四百六十五にするという、そういう意味では最も少ない定数にするという話が出されているところであります。

 そこで、男子普通選挙実施のときの定数四百六十六の根拠について、総務大臣にお尋ねします。

 一九二五年の第五十回帝国議会で、若槻礼次郎内務大臣は、人口十二万につき議員一人を配当すると定めたと述べておりますが、間違いありませんね。

高市国務大臣 御指摘のとおり、一九二五年の男子普通選挙権、選挙法案の提案理由説明において若槻内務大臣は、各府県について、人口十二万人につき議員一人を配当するの割合を定めましたと述べておられます。

塩川委員 人口十二万人につき議員一人を配当する、配分するというのが基準だったわけであります。

 そこで、パネルをごらんいただきたいんですが、男子普通選挙実施のときに、人口十二万人につき議員一人を配分すると定めましたが、主要国の国会議員、下院における一人当たりの人口を見ていただくと、イタリアは、人口六千二十三万人に対し議員定数六百三十で、議員一人当たり人口は九・六万人であります。同様に、イギリスの議員一人当たり人口は九・八万人、それから、カナダは十・四万人、フランスは十一・一万人、ドイツは十三・五万人。日本は、一九二五年の男子普通選挙のときに十二・八万人で、現在が二十六・八万人です。連邦制のアメリカは、七十二・二万人という数字になっております。

 衆議院の事務総長に確認をいたします。

 衆議院選挙制度調査会の答申の説明でもこういう中身について記載をしていると思いますが、確認したいと思います。

向大野事務総長 お答えさせていただきます。

 今先生がおっしゃったこととパネルに書いてあること、これはいずれも調査会の答申の中の説明及び参考資料にございます。

塩川委員 主要国においては、議員一人当たり人口が約十万人程度であります。日本でも、男子普通選挙を実施した一九二五年当時は十二・八万人、若槻内務大臣が答弁しているように、人口十二万人につき議員一人を配当すると定めたとおりであります。いわば主要国と同等の議員配分となっていたのに、それが今では約二十七万人までとふえてしまって、大きくかけ離れるような状況になっております。

 もう一点、衆議院事務総長に確認をしますが、この衆議院選挙制度調査会の答申においては、現行の議員定数についてどのような評価をしているのか、その部分を読み上げてください。

向大野事務総長 お答えさせていただきます。

 答申では、「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」と言っております。ただ、その一方で、「衆議院議員の定数削減は多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」ともして、今回の定数削減案が提案されたものと承知いたしております。

塩川委員 後段の部分は、この調査会そのものが定数削減ということを諮問事項にしているから結果としてこういう数字を出してきているということで、この調査会の答申が意味するところは、今前段で述べたように、「衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」と言っているとおりであります。議員定数を減らす根拠がないということを述べております。

 パネルをごらんいただきたいんですけれども、この問題について少し立ち入って調べてみました。人口、有権者数及び人口十万人当たりの衆議院議員の推移ですけれども、一人当たりの議員数は今が最も少ないということを紹介しているものです。

 これは、一八九〇年の高額納税者に限った制限選挙時から最初の男子普通選挙時までちょっとジグザグになっていますけれども、人口十万人当たりの衆議院議員数は〇・八人前後、こちらの軸に書いてありますけれども、これは、日本においても、議会制定時は主要国と同様に議員一人当たり人口が約十万人程度としていたのを反映しております。しかし、それが現在は〇・四人を切っている。人口がふえ、有権者数がふえたにもかかわらず、議員数はふえるどころか減らされて、歴史的に見て今が人口当たりの議員数は最も少なくなっているということがこの赤いグラフで見ていただけるとおりであります。

 そこで、総理にお尋ねをいたします。

 答申の説明は、議員定数削減が何をもたらすかを指摘しておりました。国民が国会に代表を派遣する権利を弱体化させる、国民の代表議会としての国会の機能強化を後退させる、またさらには、行政府との緊張関係、つまり政府への国会の監視機能が弱まるということを述べている。このように、答申は、議員定数削減の合理的根拠がないとしております。日本の議会制度の歴史を見ても、主要国との比較でも、定数を減らす根拠がありません。

 総理は、この予算委員会におきまして、答申が出された直後の二月十五日の予算委員会ですとかあるいはきょうの委員会を通じても、たしか、調査会における結論としては定数削減をする必要がないとなっていると述べておられます。そのとおりでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 それは、そのとおりでございます。

塩川委員 答申は定数削減をする必要がないという結論になっているということを、総理も語っているとおりであります。

 そこで、三年前の予算委員会で、我が党の穀田議員が総理に対し質問いたしました。その際、総理の答弁の中に、行政府の長である私が、議員の削減の話をするというのは、本来、私も抵抗を感じている、行政府の長としては、チェックする皆さんの数を減らすということについて、積極的にどんどん減らした方がいいということを言うべきではない、OECDの中においても、最も国民の一人当たりの議員の数として少ないというのは事実と述べておりました。

 そうしますと、答申には、議員定数削減をする必要がないということが書いてあるわけですけれども、総理自身が、定数削減に根拠がないということはお認めになりますか。

安倍内閣総理大臣 これは、まさに各国の状況を見ていくと、決して日本は、一人当たりの有権者が少ないとは言えないということでございます。

 それとまた、私自身が行政府の長として、いわば行政府をチェックする国会議員の数を減らすということについて積極的に発言することについては、抵抗感を感じるということについてお話をさせていただいた、それは変わりがないわけでありますが、同時に、私は自由民主党の総裁として、消費税を引き上げていくということに鑑み、我々も身を切る改革をしなければならないということにおいて、定数の削減をお約束したのは事実であります。

 ただ、その際、どのように変えていくかということについては、当時の野田総理大臣との討論の中におきましても、共産党や社民党といった党等も存在し、そういう党との議論も必要だということは申し上げているとおりでございまして、議員定数の削減については、私は、十という答申を尊重するという立場でございましたので、政治的にこれは尊重しなければならない、このように考えているところでございます。

塩川委員 答申を尊重すると言いますけれども、答申そのものの大前提として、定数削減をしてくださいという諮問になっているわけですよ。それは、我が党などが反対したにもかかわらず、一部の党がこういった枠組みをつくって、議長にそれを要請するという中で調査会ができて、その答申ですから、やはり、入り口そのものがおかしいんです、間違っていると言わざるを得ません。

 そういったときに、総理は、こういった定数削減をする必要がないということについてもお認めになった上で、一方で、身を切る改革という話をされました。これはもともと、このような今回の定数削減の話が出てきたというのは、民主党野田政権のときでありまして、国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る覚悟が必要だと野田政権が言い出して、自民、公明も一緒になって、消費税増税を国民に押しつけることと一体で定数削減を持ち出してきた、それはきっかけということですよね。

安倍内閣総理大臣 きっかけとしては、今申し上げましたように、消費税増税をお願いする以上、議会においても、議員においても身を切る改革を行わなければならないという観点から、私どもも公約に入れたところでございます。

塩川委員 ですから、そこで戻るんですけれども、公約で定数削減を掲げるんだけれども、その掲げた公約の定数削減の根拠がないんじゃないのかという話になるんですよ。定数削減という公約そのものに根拠がないんじゃありませんか、そうなるんじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 この根拠を、何をもって根拠とするかということでございますが、いわば国際的な比較をして、国会議員一人に対する有権者の数が、これは少な過ぎるということを根拠とするということについては、そういう意味においては、少な過ぎることはないという意味においては根拠はないわけでありますが、他方、政治的に、まさに消費税を引き上げていく以上、我々も議員の数を削減していく、これも税金が歳費として私たちに支給されている以上、国会議員の数を減らしていくべきだという議論の中で、我が党も他の党もお約束をしたところでございます。

 今回の答申も、いわば定数削減は必要ないとする一方、二つの決定をしているわけでありまして、各政党が国民と約束をしているから十減らすべきだ、こう言っているわけでございまして、我々はこの答申に従っているということでございます。

塩川委員 河野洋平元衆議院議長は、読売新聞のインタビューで、消費増税などの負担を国民に強いる以上は、国会も身を切る改革が必要だとの主張がある、だが、定数削減で切られるのは、有権者の権利だ、答申も指摘しているように、衆院の定数は欧州の下院と比較しても多いとは言えない、欧州では議員一人当たりの人口は十万人程度だが、日本は約二十七万人だと答申の中身にも触れて指摘をしておられます。

 消費税を押しつけるために国民、有権者の権利を侵害する議員定数削減を行うということは全くの筋違いじゃないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 河野元議長の議論もこれは一理あるんだろう、このように思うわけでありますが、しかし、私どもも、消費税を引き上げる上において、議員定数の削減という形において身を切る努力をしていくというお約束をした以上、政治的な約束を果たす上において、私は、十削減をする、答申の中にも書かれているこの十削減について行うべき、こう考えているところでございます。

塩川委員 その定数削減の根拠がないというのが答申のかなめであるわけであります。

 暮らしと営業を破壊する消費税増税を押しつけた上に、国民の選挙権を侵害する議員定数を削減するなど、二重に許しがたいと言わざるを得ません。消費税増税は中止、議員定数削減はきっぱりやめることを強く求めるものであります。

 そこで、国民の選挙を侵害しているのは議員定数削減じゃありません。このパネルを見ていただいたように、小選挙区制の問題があります。小選挙区制における第一党の得票率と当選者占有率は、まさに四割台の得票で七割台の議席。得票と獲得議席の乖離が生まれているというのが明らかであります。

 小選挙区制の最大の問題は、比較第一党の虚構の多数をつくり出す一方で、少数政党は、得票率に見合った議席配分を得られず、獲得議席を大幅に切り縮められ、多様な民意の反映を大きくゆがめるものとなっています。

 小選挙区制による虚構の多数議席の力で、国民多数が反対した憲法違反の安保法制、戦争法成立を強行した。国民から、なぜ国民多数の声が反映しないのか、これが正当な国民の代表と言えるのか、主権者の声を聞けという声が上がっています。国民との乖離を生み出した小選挙区制の害悪は明らかであります。

 小選挙区制というのは、一票の格差是正も困難にします。このような小選挙区制はきっぱりと廃止をして、民意を反映した選挙制度への抜本的改革を強く求めて、質問を終わります。

竹下委員長 これにて笠井君、塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬場伸幸君。

馬場委員 皆さん、お疲れさまです。おおさか維新の会の馬場伸幸でございます。

 予算委員会、長時間にわたって行われておりますが、この予算委員会と並行して野党の液状化現象というのが今始まっておりまして、どんどんと野党が液状化をして、本当の意味で政権政党自民党と渡り合えるような、そんな政党が生まれてほしい、そして、私自身もその努力をしていきたいというふうに考えております。

 ただ、この予算委員会での質疑を聞いておりますと、何か、一貫した姿勢があるのはいいんですけれども、民主党さん、あえて名づけますと、レッテル張りの嵐大作戦と私はこれを名づけさせていただきました。

 私たちは大地に種をまく大作戦というふうに名づけておりますが、総理、この間のレッテル張り嵐大作戦、どういうふうにお感じになっておられますか。

安倍内閣総理大臣 野党はレッテル張りに流れがちでございますが、我々も、しっかりとそのレッテルを次々と剥がしながら国民に正しい姿をお見せしていきたい、こう考えております。

馬場委員 私は、来年度の予算案が国会に提出をされて、本会議場で質問をさせていただきました。そのときにも申し上げてまいりましたが、私たちは、与党でもない、野党でもない、政策提案政党という道を貫いていきたいと思っております。予算委員会に入るときにも、我々は最初から賛成、反対ということを決めて質問するのではないということも申し上げてまいりました。

 いよいよきょう、国民の皆様方がこの予算委員会を見ていただいて、そして質疑をさせていただく最終の機会になるんじゃないかなと感じております。

 このパネルを見ていただくと、上から一番、二番、三番と空欄になっております。四番、五番は地方にかかわることでございますので、既に党内で討論をして、議論をして、賛成ということで決定をいたしております。残りの三つなんですね。来年度の予算案、そして特例公債法案、そして所得税法の一部を改正する法案、この三つについては、きょうこの場で総理と真剣に議論をさせていただいて、最終的な方針を決めさせていただきたいというふうに思っております。

 私たちの賛否の基準は、先ほど共産党さんが否定をされておりましたが、身を切る改革というのがまず一番です。そして、財政健全化というのを二番目に掲げておりまして、三番目は、成長戦略が政府の提案の中身にあるのかどうか、これをお聞かせいただいて、賛同できるかどうか、もしくは反対なのかということを決めさせていただきたいと思います。

 恐らく、これは国会史上初めて、予算委員会で質問をして政党の態度を決定するということは初めてだと思います。おおさか維新らしい手法をここで使わせていただきたいと思いますが、このことについて総理の率直な御見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この馬場委員とのやりとりにおいて御党が態度を決する、ぜひ賛成していただきたいと思いますが、その意味においては、答弁において緊張するなと思いながら、ぜひ賛成していただけるように、誠意を持って答弁に努めていきたいと思います。

馬場委員 それでは、具体的な中身に入らせていただきたいと思います。

 まず、一番に掲げております予算の組み替えもしくは削減ということでございます。

 私たちは、政府が提案した全省庁の予算九十六兆円を、提案後、連日連夜、フルメンバーで精査させていただきました。その結果、私どもの査定においては、予算化すべきではない項目が七十四項目上がってまいりました。そして、削減する予算額としては一兆二千億円ということになっております。この削除項目の中には、民主党さんが政権時に事業仕分けをして、それでも削減できなかった項目というものが含まれております。

 査定をする物差しは四つでございます。一つ目、財政出動をふやせば経済が成長するという考え方を一度変えていただこうということでございます。二番目は、民間ができることは民間に任せるということであります。三番目、地方ができることは地方に任せる。四番目、増税の前に身を切る改革ができているかという観点でございます。我々おおさか維新の会は、増税の前に無駄を削減するということが最優先であるという考え方のもとで、あす、編成動議の提出も予定をしております。

 予算削減額一兆二千億円、全部の項目を詳細に説明することは時間の関係上できませんので、大きく三つの項目について指摘をさせていただいて、各大臣から御答弁をお願い申し上げたいと思います。

 まず一つ目でございます。

 厚労省所管の生活保護費、二兆九千六百三十三億円計上されております。その中で、医療費にかかわる予算が一兆三千六百七十一億円となっておりますが、これは毎年大きくなっていっておりますし、政府もそのことはよく理解をしていただいていると思います。いろいろな問題があるんですが、医療費の不正受給、そして安易な診療、高額医療品の提供など、さまざまな問題点が指摘されております。

 痛みを分かち合うという観点からは、生活保護支援対象者に医療費の一割を自己負担していただきたいという考えをかねてから私は持っております。このことによって生活保護対象者にもみずからの健康管理をしていただいて、しっかりと生活保護費の削減にも協力をしていただきたいという考えでありまして、決して弱者いじめではないということを申し上げておきたいと思います。

 また、薬、投薬の部分なんですね。国として、ジェネリックについて、積極的に活用していくという方針はお聞きをしております。国民全体においても、この生活保護対象者においてもジェネリックを勧めていくという方向の中で、生活保護対象者にできるだけジェネリックを活用していただきたい、そういうふうに考えております。

 こういったことによる削減額が、生活保護対策費約二兆九千七百億円に含まれる医療費一兆三千六百億円余りの一〇%強、千五百九十四億円を削減できると考えておりますが、塩崎厚生労働大臣、私どものこの考え方に関して御見解をお伺いしたいと思います。

塩崎国務大臣 生活保護制度に対する国民の信頼を確保するためにも、適正化を行うということは、今委員御指摘のとおり重要な課題であります。中でも、約半分を占めている医療費のことでございますが、この適正化についても、今御提案のとおり大事な問題であるわけでございます。

 後発医薬品の使用については、もう既にこの二年間で使用割合を約一六%向上させてまいりました。それから、頻回受診者に対しても、福祉事務所による訪問指導などもやって、適正受診の徹底を図りつつあるわけでございます。

 今、昨年の十二月に改革工程表というのができまして、それにのっとって後発医薬品の使用促進や頻回受診対策に係る計画を地方自治体につくってもらって、それを徹底するということをやろうと思っていますし、後発医薬品の使用割合、これは二十九年の真ん中までに七五%とする、そういうような目標を立てているところでございます。

 今、一部自己負担の問題についても御提言がございました。この問題については、言ってみれば、金銭的な理由によって必要な受診の抑制が起きないかどうかの問題を念頭に入れながら考えていくべきことかなと思っておりますが、いずれにしても、今お話をいただきました方向性として、我々としても、御党の提案も踏まえながら、適正化の取り組みを強化していきたいというふうに考えているところでございます。

馬場委員 この生活保護の問題は、地方の自治体の財政を非常に圧迫しているという点もありますし、この中継をごらんいただいている国民の皆様方、年金等を真面目に長年掛けていただいても、生活保護をもらうということになれば、年金よりも多くの金額を受給しているというような逆転現象もあるとかねてから言われております。この生活保護は、いろいろな観点があると思うんです。自立支援とか、そういうような観点もありますが、削減できる部分は削減しながら、そして対策費は打ち立てていくという観点で、ぜひこれからもお願いを申し上げたいと思います。

 続いて、国交省の問題です。

 今回の予算の中で、三世代同居を促進させるという項目がございまして、子育て支援、高齢者の支援の対象ということで予算化がされております。

 予算委員会において、野党、他党の質問を受けて、国交大臣も、余り説得力のないような御答弁もかいま見えましたが、私は、ただ単に、子育て支援、高齢者支援をするというような名のもとに、玄関の改造とか、トイレを改修したり、お風呂場を改修するということをやったら、三世代、本当に同居することが促進されるのか、甚だ疑問であります。

 この法案の本質的な問題が、三世代同居じゃなくても、実際には三世代が住まなくても、そういうリフォームをすれば補助を受けられるということは非常に大きな疑問を感じます。

 私が地方議員を務めておりますころに、同じような、三世代住宅に対する固定資産税の減免とか、そういうサポート策を議会で訴えたことがありました。そのとき、行政側の答えは、個人の資産形成にかかわる問題に税金を投入することはできません、これが当時の回答でございました。私は、なぜこれが国に来ればこういうことが許されるのかなと。

 三世代の住宅促進というのは、税制の部分、そしてファイナンス、金融の部分、そして改造に必要な補助金というものがパッケージになって初めて有効になるのではないかなと考えておりますが、石井国土交通大臣、本当にこの予算で三世代促進が進むというふうにお考えなのかどうか、御見解をお伺いします。

石井国務大臣 希望出生率一・八の実現のためには、結婚、妊娠、子育ての希望をかなえる環境整備を推進していくことが重要でございます。さまざまな世帯がそれぞれの暮らし方に応じた住宅を確保できるよう、多様なニーズに応じた住宅政策を展開することとし、三世代の同居など、三世代だけでなくですね、三世代の同居など世代間の助け合い、大家族で支え合う生き方も選択肢として支援をしていきたいと思っております。

 三世代同居に対する支援制度は、三世代同居など複数世帯が同居しやすい住宅ストックの形成を促す住宅政策の観点から、いわゆる二世帯住宅仕様とするに当たり割高になる工事費に対する支援を行うものであります。

 具体的には、複数世帯が同居する場合に一般的に行われる工事の内容として、キッチン、浴室、トイレまたは玄関のいずれか二つ以上が複数箇所となる工事を要件としております。

 一方、同居世帯の構成については、親と本人夫婦と子供という典型的な三世代同居の場合のほか、例えば出産を予定している夫婦、予定しているということですから現状では二世代、出産をすれば三世代になるわけですが、出産を予定している夫婦の場合、おじ、おばなど他の親族と同居する場合等を含め、世代間で子育てを支え合うあり方としてはさまざまなケースが考えられます。

 また、家族の構成や間柄、出産の予定、意思などはプライバシーにかかわることなどから、慎重に取り扱うべきものと考えたところであります。

 このため、家族の構成や間柄などについては一律に要件とせず、子育てしやすい環境づくりという観点から、三世代同居など複数世帯の同居に必要となる工事に着目して支援を行うこととしたところでございます。

馬場委員 苦しいなというやじがありますけれども、本当に苦しい御答弁だと思います。

 これまで、リフォームに関する補助制度等もありました。屋上屋を重ねるような補助金をどんどんつくれば幾らでもお金が要るということは、これは誰でもわかることでございます。もう一度原点に立ち返っていただいて、税制、またファイナンス、こういうものを複合的に、制度を一度スクラップして新しい複合型の制度を立ち上げるということも私は一つの選択肢だというふうに思います。ぜひ、今回この予算は、私はやめていただくべき予算ではないかということを申し上げておきたいと思います。

 時間がありませんので、どんどん行きます。

 農水省に次は行かせていただきます。農業農村整備事業についてであります。

 これは、かつてから再三再四、効率化ということで、指摘もされ、精査もされてきました。今回、総予算二千九百六十二億円という、先ほども指摘がありましたが、実に、一気に膨大なものになってしまっています。

 自民党は、長年にわたって、土地改良事業を中心に農業政策を進めてまいりました。しかし、自給率の低下、また耕作放棄地の拡大というものが全く改善されることがございません。また、今回も、この後予定されておりますTPPの問題、この対策という名目であるのかどうかわかりませんけれども、土地改良に過剰な予算をつけることは、ウルグアイ・ラウンド対策事業の失敗をまた繰り返すのではないかということを懸念しているところでございます。

 この予算は、もっと精査をして、そして本当の意味での農業政策の発展につながるものにしていかなければならないと思います。現状では、これは利権の温床と指摘をされても私はおかしくないのじゃないかと思っております。

 そのような観点から、TPPを目の前に控えた今、農産物の輸出一兆円時代、そして農地の有効活用、若者の農業従事者をふやす等、ソフトの事業にどんどんと予算を投入すべきではないかというふうに私たちは考えています。今回は、一〇%、私たちが削減案ということで出させていただいておりますが、本来ならばもっと削減をすべき項目ではないかと思います。

 土地改良予算を削減するとか、または農業のソフトの予算に移していくというようなことについて、農水大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 馬場委員にお答えを申し上げます。

 農業農村事業につきましては、農業の成長産業化の実現に向けまして、農地の大区画化、汎用化を進め、経営規模の拡大や高付加価値作物への転換を促進する事業に充てております。また、農村地域の防災、減災を推進するとの考え方に立って実施をしておるところでございまして、おかげさまで、着実に効果が発生をしていると認識をいたしております。

 例えば、大区画化や排水改良に伴いまして農作業が機械化され、稲作労働時間は大幅に短縮をしてきておりますし、また、基盤整備の実施が担い手の育成にもつながっておりまして、実施をされた地域の農業生産法人数は全国平均の二倍となっております。

 いずれにいたしましても、事業のふだんからの見直しというのはしっかりやらなければならないと思っておりますし、そのことをやりながら、農業の成長産業化や災害に強い農村の実現に向けまして、効果的な事業の推進に努めてまいりたいと考えております。

 また、ソフト事業へのお話もいただいたところでございますが、限られた農林水産予算でございますので、ハード事業とソフト事業を適切に組み合わせて効率的な事業を推進してまいりたいというふうに考えております。

馬場委員 先ほど私の質問中に、あんたは大阪やからやというような指摘も後ろから聞こえてきましたが、私の家内の実家は和歌山の龍神村なんですね。そこで、小さい集落で、私から見ると祖父母が住んでおられました。今はもうその祖父母も亡くなって、この間行きますと、空き家がどんどんふえてきておりますし、また、耕作放棄地というのが、ここもそうなった、あそこもそうなったという状態なんですね。

 ですから、やはり地方によっていろいろな状況の格差はあると思います。それをしっかり見ていただいて、ソフト面で対応していけるところ、また、確かに農業農村整備をしなければいけないところもあるのかもわかりません。ただ、人口減の中で、私は、東京一極集中とも言われておりますし、土俵ばかりつくっても、農業が改善していくということはなかなか進まないんじゃないかなという思いも持っておりますので、また再来年度以降からぜひこれも検討の課題に入れていただきたいと思います。

 総理、今、主な三点、予算を削減することについて各所管大臣の御見解をお伺いしました。私たちの予算の組み替え動議、冒頭に申し上げたとおり、予算化すべきではないという考えで精査をいたしますと、一兆二千七十六億円ございます。

 民主党さんも組み替え動議を出されるというようなことも仄聞をいたしておりますけれども、まあ、ただ単に反対の根拠をつくるための提出だろうと見越しております。私も国政にお送りをいただきまして三年たちましたが、毎年同じような展開をしております。政府が変えられないという立ち位置で、来年度の予算を変えろ、こう要求しています。

 私たちは、国民生活のための現実的な予算、そういう観点を持っておりまして、来年度の予算から、先ほど指摘をさせていただきました三点を初めとする七十四項目の指摘を、政府が再来年度の予算において明確に、安倍総理がそのときも総理であるかどうかはわかりませんけれども、真剣に削減案を実現していく、考慮していくというお答えがあれば来年度の予算案に賛成してもいい、そういう思いを持っています。しかし、曖昧に、これまでの国会の答弁で繰り返されてきたように、前向きに検討しますとか、善処しますとか、そういう答えでは到底賛成できるものではないというふうに申し上げます。

 一兆二千億円削減案、再来年度の予算から応じるということが総理からお答えがいただければ賛成をする、そうでなければ反対をするということでございますが、総理の御答弁をお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 平成二十八年度予算について、御党から組み替えの御提案をいただきました。具体的に言及された事項について既に答弁をさせていただいたように、私どもの考え方と同じというわけではございませんが、建設的な観点からのものと受けとめたいと思います。

 平成二十八年度予算については、経済再生を進めながら歳出改革に全力で取り組んで編成したものであり、この点は御理解いただきたいと思います。

 もとより歳出については、その政策効果も含め、効率化の余地がないか不断の見直しを行っていくことが重要であり、御党も同様の問題意識をお持ちではないかと思います。

 そして、再来年ですか、再来年の予算編成にこういう方針で取り組めということでございますが、今後、二十八年度予算の執行状況をしっかりと評価し、その結果をその後の予算編成に活用するとともに、改革工程表に基づいて歳出改革を具体化していくことで、引き続き歳出の効率化に努めていきたい、このように思います。

馬場委員 御答弁をお伺いしますと、丸にしたくなってくるような気持ちでありますが、今回は明確な御答弁というレベルには達していないということで、予算案については反対ということをこの場で方針を決めさせていただきたいと思います。

 続きまして、二番、東日本大震災の復興債並びに特例公債の問題でございます。

 この特例公債法案、平成二十八年度から五年間、政府に特例公債発行を認めるというものであります。

 本来、予算は、憲法第八十六条を見ますと、毎年国会の審議を通じて議決を経るということになっておりますので、予算に関連する特例公債法案も、毎年提出をされ、国会で議決を経るべきものであると考えております。

 ただし、五年間の自由な発行を認めるということであれば、中期的に財政再建が進められるという何らかの保証が必要であると私は考えております。つまり、一年ごとに財政再建をしないということであれば、五年分を今チェックする必要がある、我が党はそういう立ち位置に立っております。

 政府は、経済が停滞すると、経済活性化を図るために、これまでも幾度も財政出動や減税を行ってきました。その繰り返しによって今の財政状況が深刻な状態になり、財政赤字が一千兆円を超えるというものになっております。

 パネルの三をごらんいただきたいと思います。

 このパネルの三は、ことしの一月、内閣府が中長期の試算を行った、この表を使わせていただいております。

 上の赤の折れ線グラフ、これはプライマリーバランスの試算でありまして、実質二%、名目三%の経済再生が図られるというケースでありますが、このとおりに大変うまくいったとしても、国と地方合わせて、GDPの一・一%である六・五兆円の財政赤字が残ると試算をされています。

 また、下の黒線グラフをごらんいただきますと、歳出歳入のバランスを示しております。国の歳出八十一・二兆円に対して歳入が六十九・一兆円ということで、十二・一兆円の財政赤字が出る見込みであります。

 このように、財政再建は、経済成長のための経済運営、これももちろん大事でございます。そして、国民生活のための財政運営、これをいかにベストミックスさせるかということが課題だと思いますが、そう簡単にできるものではないと思います。

 今回、私たちおおさか維新の会が提案したこの組み替え動議は、経済成長と国民生活のベストミックスというものを考えたものであり、予算化すべきでないものを削除し、公債発行を一兆二千億円抑える予算編成にいたしました。

 総理、今回の特例法案は、国会の財政運営に対するチェック機能を弱めるものであると思います。政府が安易に国債を発行することによって、次の世代に借金を背負わせる、そういったイメージを持たれるのではないでしょうか。このイメージを払拭するためには、総理の財政再建のための政治姿勢が明確にならないと許されるものではないと私は思います。

 つまり、特例公債法の期間が一年か五年かというよりも、問われているのは、総理が財政再建を本気で実行されるおつもりがあるのかどうかということであると思います。そのことを踏まえるならば、五年に延ばすということであれば、安倍総理の財政再建に対する姿勢をより一層明確に示すべきであると考えております。

 今回の特例公債法案、公債発行を単年度にするのか五年ごとにするのかによって、公債発行額が無制限になるのではないかということが問われておるということは先ほどから申し上げているとおりでございます。

 これまで自民党は、財政再建を増税にのみ頼り、身を切る改革を余り熱心に行ってこなかったという不信感が、今回の特例公債法案に対する各党の疑問になっているのではないかと考えます。公債発行も政局にしない、かつてのような政局にしないという意味においては賛成ですが、その前に、安倍総理が財政再建をどのように強い政治姿勢で進めようとしているかを国民に示さなければならないと思います。

 安倍総理、明快な御答弁をお願い申し上げたいと思います。

安倍内閣総理大臣 委員は、特例公債法を延長することで改革が緩むのではないかという点について御懸念のようでございますが、私としては、行政改革の断行と財政再建について、これを責任を持って行うということをまずはっきりと申し上げておきたいと思います。

 我々、政権を得てから二十八年度予算においても、国の税収は十五兆円増加をしたわけでありますが、新規国債発行額を十兆円減額し、基礎的財政収支の赤字は半分以下の十兆円余りまで減少させております。しっかりと今後ともこうした努力を続けてまいります。

 具体的には、今回の特例公債法の改正案は、少なくとも二〇二〇年度までの間は引き続き特例公債を発行せざるを得ないと見込まれる財政状況の中、現行法の枠組みを引き継ぎ、二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化目標に向けて財政健全化に取り組んでいくことを踏まえ、安定的な財政運営を確保する観点から、特例公債の発行を二〇二〇年度までの五年間とすることとしたものであります。

 安倍内閣では、特例公債の発行を複数年度化した現行の特例公債法のもとでも、先ほど申し上げましたように、二〇一五年度の予算を基礎的財政収支の赤字半減目標を達成する予算とするなど、財政健全化を着実に進めてまいりました。

 経済・財政再生計画では一般歳出の水準等の目安が設定されており、平成二十八年度予算においては、これに沿って、社会保障を初めとする一般歳出の伸びを抑制することができたと思います。

 今後の予算編成においても、引き続き、これらを十分に踏まえて、歳出改革を進めていきます。

 また、二〇一八年度時点で目標達成に向けた歳出改革等の進捗状況を評価し、必要な場合には、デフレ脱却、経済再生を堅持する中で、歳出歳入の追加措置等を検討することとしております。

 今後とも、経済財政一体改革を不退転の決意で断行し、経済再生を図りながら、二〇二〇年度の財政健全化目標を実現してまいりたいと思います。

 特例公債の発行期間を二〇二〇年度までの五年間としても財政規律が緩むことはないということは申し上げておきたいと思いますし、あわせて、行政改革にも不断に取り組み、国家公務員の給与について、給与制度の総合的見直しの実施や定員合理化等を行うことなどによって人件費の抑制を図っていく考えでございます。

 また、国会議員の、衆議院議員の定数削減でございますが、先ほど共産党からの御意見もございましたが、十はしっかりと我々は削減をしていく考えでございます。

馬場委員 この法案については、裏わざといいますか、禁じ手の部分もあると思います。東日本の復興債とこれは抱き合わせになっているんですね。人間の心理をついているといいますか、なかなか復興と抱き合わせにされると反対しにくいという部分もありますが、安倍総理のこれまでの政権のもとでの財政再建も拝見をしてまいりましたので、今回は期待の意味も込めて賛成をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 最後に、所得税法等の一部を改正する法律案、これについて御質問させていただきます。

 この所得税法等の一部を改正する法律案には軽減税率が含まれております。総理は、多くの消費者が買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるというふうに再三おっしゃっておりますが、私たちは、痛税感の緩和というのは実際できるのであろうかという疑問を感じています。

 いろいろこの軽減税率には指摘がされておりまして、もう時間がありませんので全て申し上げませんけれども、我々から見てもいろいろな問題があると思います。痛税感の緩和は実感しづらいのではないか。高所得者に対しては軽減額が逆にふえているんじゃないか。適用対象品目の線引きが難しいし、国民になかなか理解を得にくいんじゃないか。中小事業者は事務負担がふえるという嘆きの言葉を我々にも言っております。

 ここは経済を最優先にして、私は本会議でも申し上げました、消費税を延期するという御決断をお願いできないだろうか。

 先週、菅官房長官の記者会見において、かつて橋本内閣が消費税を五%に引き上げた結果、景気の悪化で税収が減ったということを例に挙げられて、世界経済の収縮が起きれば、税率を上げても税収は減るのだから、そういう政策はとるべきではないというふうにおっしゃっておられました。

 この発言を聞いて、本会議で主張させていただきました我々の軽減税率の問題、また消費税を再度延期する問題、こういうことが政府の中においても理解が広がってきているんじゃないかなというふうに感じております。

 総理、ぜひ、官房長官の認識と同じ立場になっていただいて、消費税の延期を決めるということを考えていただきたいというふうに思います。

 この法案については、所得税法の賛成、反対、そういう小さな話ではなくて、消費税そのものの延期についてどうするかということが根本的な問題になっていると思います。私たちおおさか維新の会は、消費税を上げるということについては反対ではありません。今の経済状況ではやるべきではないという考えでございます。

 最後に、総理、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 消費税の判断につきましては、従来から申し上げていることでございますが、リーマン・ショックあるいは大震災級の出来事が起こらない限り、予定どおり引き上げていく考えでございます。

馬場委員 したがいまして、この三番目の所得税法等の一部を改正する法律案については反対ということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

竹下委員長 これにて馬場君の質疑は終了いたしました。

 次に、重徳和彦君。

重徳委員 改革結集の会、衆議院議員の重徳和彦です。

 私ども、改革結集の旗印、二項目めは、消費増税の前に草の根経済をしっかりと再生させるということでございます。

 きょうの集中審議のテーマは外交と国民生活でありまして、まさにTPPが大きな課題となってくると思います。アメリカ大統領選挙の関係で少し先行き不透明感も出ているTPPではありますが、農産物の関税率が下がるということで、例えば牛肉は三八・五%が最終的には九%まで下がる、こういったことで、安い肉が日本にたくさん入ってくることはほぼ間違いないと思われます。農家の経営の安定化も大事なことでありますが、もう一つ、消費者は単に安い肉が手に入ると喜ぶばかりでなく、きょう問題にしたいのは食品の安全であります。

 実は、日本国内では使われていない薬剤がアメリカ、オーストラリア、カナダの牛肉、豚肉には使われているという事実があります。それが成長促進ホルモン剤、またラクトパミンと言われる、餌にまぜる添加物、こういったものが使われている。

 これらの薬剤は人体の健康に影響があると言われておりまして、その基準はどうなっているかということを問いますが、日本では、ある調査によりますと、九〇年代から牛肉、豚肉の輸入が大分拡大しました。その結果、消費量も数倍となり、ある研究によりますと、ホルモン依存性がん、子宮がんとか乳がんとか前立腺がんがふえている、こういう調査もございます。

 成長促進ホルモン剤、また飼料添加物ラクトパミン、こういったものを使用した輸入牛肉、豚肉と人体の健康との関係を政府はどのように捉えておられますでしょうか。

塩崎国務大臣 肥育ホルモン、今ここで配っていただいているような成長促進ホルモンやラクトパミンにつきましては、国際的な委員会でございますコーデックス委員会が科学的なリスク評価の結果に基づいて設定した国際食品規格というのがあります。それを踏まえて薬事・食品衛生審議会などで審議をした上で、食品中の残留基準を設定しております。この残留基準の範囲内であれば、牛に使用されたとしても食品の安全性は確保されているという位置づけでございます。

重徳委員 日本政府はそう判断しているようですが、どうなんでしょうか。

 例えば、この図にありますように、EUでは一九八九年からアメリカからの牛肉の輸入は一切禁止、いまだに、アメリカからWTOで提訴されてもなお、ホルモン剤の投与された牛肉は輸入を全て禁止しております。また、その一方、これまたある調査によりますと、乳がんの死亡率はEU各国で低下している、こういう結果もあります。

 EUはなぜホルモン剤入りの牛肉の国内使用を禁止し、また輸入を拒否しているんでしょうか。政府はどのように認識をされていますか。

森山国務大臣 お答えいたします。

 EUの対応につきましては、EUのリスク評価機関であります欧州食品安全機関、EFSAが、データ不足により、肥育促進目的のホルモン剤及びラクトパミンの使用について最終的な評価を行うことができなかったとしたことによるものであるというふうに承知をしております。

重徳委員 今おっしゃったような理由は、表向きかつ非常に歯切れの悪い、よくわからない説明だと思います。一般に言われているのは、やはり消費者意識が非常に高く、こういった薬剤使用に対して、EUの各国の国民はこういったホルモン剤、ラクトパミンへの抵抗感が非常に強いということも仄聞をいたしております。

 日本は、実は国内ではいまだに、ホルモン剤、飼料添加物は未承認あるいは未指定なんですね。これは、畜産農家の方々が、ある意味ニーズがない、見方によってはニーズがないということなんですが、非常に真面目に、高品質、信頼性の高い肉をつくろう、そして安全な食べ物を国内の消費者に提供しよう、そういった思いが非常に強い、そういうことから、この表にありますように日本国内ではバツなんですよ。ところが、輸入に関しては、日本は丸なんですね。あとはわかりやすいんですよ。アメリカ、オーストラリア、カナダは全部オーケー、EUは全部だめ。だけれども、日本は、国内では使われていない薬剤が輸入肉なら認められているという非常にねじれた、ダブルスタンダードの状況にあります。

 先ほど塩崎大臣は、コーデックスの国際基準、コーデックスの基準があるんだというふうにおっしゃいましたが、これは本当に科学的なリスク評価と言える客観性があるのかどうか、ここに私は疑問を持っております。

 そもそも、コーデックス委員会でこの成長促進ホルモン剤の安全基準を認める際、どういう決め方をしたのか。ちょっと調べてみましたら、ホルモン剤は、一九九五年、異例の投票方式によりまして各国が投票して、非常に僅差で基準を設けている。基準を設けるということは、使用可能ということであります。これは、数字で言うと、三十三カ国対二十九カ国、棄権が七という投票であります。

 それから、飼料添加物のラクトパミンに関しましては、二〇一二年に、アメリカの提案によりまして、これもそもそも投票方式でいいかどうかももめたんですが、もめたあげくに、六十九対六十七という極めて僅差でこの使用がある意味国際的に認められたというふうに私は聞いておるんですが、これは事実でしょうか。

塩崎国務大臣 今の票差につきましては、そのとおりでございます。

重徳委員 これは、国際政治の政治力、パワーゲームの中で、こうした消費者にとって極めて重要な安全基準が決まっていったと言わざるを得ません。国と国の力比べによりまして、厳密に言うと、アメリカを初めとした、今回のこの丸がついている国、アメリカ、オーストラリア、カナダという国は推進派であり、一方で、EU、ほかにもロシアとか中国も、こういった薬剤の投与された肉は輸入を認めておりません。こういう状況の中で、日本は、何も情報を与えられない消費者が、何か安い肉だな、でも大丈夫だろうということでスーパーで買っているということだと思うんです。

 例えば、遺伝子組み換え、これも、危険性がどうという基準はいろいろとあると思いますが、遺伝子組み換えのものが使われているということもちゃんと表示されていますよね。

 河野大臣に確認したいんですが、これは事実確認ですが、この成長促進ホルモン剤または飼料添加物ラクトパミン、これは、国内のスーパーなどの店頭において販売されている肉に表示はされているんですか、されていないんですか。

河野国務大臣 成長ホルモン及びラクトパミンは、食品表示法の表示義務の対象になっておりません。

重徳委員 申し上げたいことはわかると思いますが、非常に国内で真面目に、こういった薬を使わずに、おいしい、そして品質の高い牛肉、豚肉を飼育している、出荷している、そういった畜産農家さんの思いがある一方で、基準は非常に論争のある中で決められた、そして、どういうものが含まれているかもわからない状態で売られている、こういう現状が今、日本国内であるわけです。こういう取り扱いは、少なくとも、この表の中に書かれている先進国の中では日本だけです。こういう状況であります。

 この状況、これは農家にとっても非常にフェアじゃないんですね。国際競争上フェアじゃありません。だからといって、国内の真面目な畜産農家の皆さんに薬を使えと言うわけにはいきません。ということは、解決策としては、EUと同じように輸入を禁止するのか、あるいは、先ほど論争があると言いましたので、それをもう一度論争する必要があると思いますが、その安全性をきちんと本当に確認ができているのであれば、百歩譲って、せめて安全性を確認した上で、商品には、スーパー店頭で売られている牛肉、豚肉にはきちんと表示をするべきではなかろうか、私はこのように考えます。

 安倍総理はこの話を今まで御存じだったかどうかわかりませんが、もしかしたらきょう初めてお聞きになるかもしれませんが、非常に重要な、TPPをこれから最終的に詰めていく上にあっても、農業者の経営安定化はもちろんですが、消費者が本当に大丈夫かと不安に陥るようなTPP、こんなものは支持されないと思います。私自身は、一般的には自由競争を拡大していくというTPP全体の精神には賛成しておりますが、しかしながら、大切なものを置き去りにしてはなりません。

 総理に御質問したいんですけれども、消費者の選択がちゃんとできるような判断材料を提供するべく、この食品表示というもの、きょう具体的に申し上げております成長促進ホルモン剤、そして飼料添加物ラクトパミン、これについて表示をするということをぜひお考えいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 成長ホルモン及びラクトパミンについては、国際基準を踏まえ、食品中の残留基準を定めておりますが、基準以内でなければ食品の流通は認められていません。これはTPP協定によって変更されることはなく、食品の安全性は確保されています。

 食品の表示は、食品を選択する際の重要な判断材料となります。消費者が求める情報が適切に表示されることで安心して食品が購入できる。委員の御指摘のとおりだろうと私も思います。

 一方で、表示の義務づけに当たっては、過剰規制とならないよう、WTO協定など国際基準との整合性等を確保しなければなりません。

 政府としては、食品表示制度が消費者にとって食品を自主的かつ合理的に選択する機会の確保に資する制度となるよう、引き続き適正に運用してまいりたいと考えております。

重徳委員 全くお答えになっておりません。

 過剰規制はだめだ、それはもう当たり前のことです。これは過剰規制になりますか。科学的根拠というのも、先ほど言いましたように、論争があるところです。そういう意味では客観的、科学的根拠が十分にあるとは言えないと私は思います。国民の健康とかあるいは知る権利を守ることが、果たして合理性がないとか、正当な目的がないとか、そういうことが言えますか、総理。

 この問題は恐らく、この予算委員会あるいは国会議員、もう満場一致と言っていいぐらいに皆さんの思いは一致していると思います。ぜひ、安倍総理、ここで決断をしていただきたいと思うんですが、もう一言、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ぜひ今の答弁の行間を読み取っていただきたい、こう思うわけでございますが、いわば表示において、消費者の皆さんが食品の安全性について信頼感を持つわけでありますし、そこから、果たして自分たちが求めていないものが入っていやしないかということを確認するだろう、このように思います。

 それと、今申し上げました過剰規制にならないようにしていくということの中において、我々は考えていかなければならない、こういうことでございます。

重徳委員 もうちょっとストレートに言っていただきたいんですよ。

 食品表示するのかしないのか、検討するのか、前向きなのか、指示をされるのか、もう一言きちんとお答えいただきたいと思います。

河野国務大臣 成長ホルモンやラクトパミンは、食品添加物と違いまして、牛が生きているときに与えられるものでございます。これは、例えば八日間与えても十日間与えなければ、代謝で全部排出されてしまって検出限界を下回ることになります。

 遺伝子組み換え食品の油の問題でもいろいろ議論がありましたけれども、表示を義務づけたときに、もし間違った表示が行われたときには、科学的にきちんと検出されなければ、でたらめな表示がまかり通ることになりますので、きちんと検出されるという前提のもと、やらなければなりません。

 いずれにしろ、残留基準をきちんと下回っていなければ流通されないわけですから、そうした検出の技術の進歩なども考えながら検討してまいりたいと思います。

重徳委員 これはどんどん議論していきたいと思います、これからも。残留しているかどうかがわからないというんだったら、使っていないということを書けばいいんですよ。ちょっと、もっと知恵を使わなきゃいけないと思いますよ。これは本当に、TPPの議論をまつまでもなく、今でもそういう状況なんですから、ここは、担当大臣の河野大臣はもちろんですが、安倍総理、リーダシップを発揮していただきたいと思います。

 以上で終わります。

竹下委員長 これにて重徳君の質疑は終了いたしました。

 各大臣は御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

竹下委員長 この際、各分科会主査から、それぞれの分科会における審査の報告を求めます。

 第一分科会主査平沢勝栄君。

平沢委員 第一分科会について御報告申し上げます。

 その詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主な質疑事項について申し上げます。

 まず、裁判所所管につきましては、裁判所の果たす役割など、

 次に、内閣所管につきましては、マイナンバー制度のあり方、公務員制度改革など、

 次に、内閣府所管につきましては、女性の活躍推進への支援策、障害者差別解消法施行に向けた対応、公文書管理のあり方など、

 次に、復興庁所管につきましては、福島の復興に向けた取り組みなど、

 次に、防衛省所管につきましては、北朝鮮による核開発等への対応、米軍普天間飛行場移設問題などでありました。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 第二分科会主査石田真敏君。

石田(真)委員 第二分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、総務省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、法人住民税の一部国税化、空き家問題解決に向けた税制改正、NHKの放送のあり方、夕張市の財政再建、地方自治法の特別多数議決の規定を改正する必要性、公立病院に対する支援等であります。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 第三分科会主査菅原一秀君。

菅原委員 第三分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、テロ対策のための法整備の必要性、外国人技能実習制度の課題、米軍基地における環境汚染問題、在外の日本人学校への支援策、軽減税率導入の課題、政府保有株式の売却状況等であります。

 以上、報告申し上げます。

竹下委員長 第四分科会主査石原宏高君。

石原(宏)委員 第四分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、文部科学省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、特別支援学校における諸問題、アンチドーピング活動の推進、奨学金制度のあり方、科学研究費助成事業の問題点、小中学校の一貫教育、教科書謝礼問題への対策等であります。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 第五分科会主査秋元司君。

秋元委員 第五分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、主な質疑事項は、少子化対策の今後の取り組み、介護人材不足の解消への取り組み、がん対策推進の必要性、地域医療の推進のあり方、児童相談所体制の充実の必要性等であります。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 第六分科会主査鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 第六分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、農林水産省及び環境省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、中山間地域における農業振興のあり方、鳥獣被害対策の推進、漁業分野における外国人技能実習制度の活用、家畜伝染病蔓延防止への取り組み、太陽光発電設備の事故実態、家電製品等の違法回収業者の取り締まりの方策等であります。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 第七分科会主査関芳弘君。

関委員 第七分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、経済産業省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、中小零細企業への経営支援策、福島第一原子力発電所事故への対応のあり方、核燃料サイクル政策の課題、イノベーション・コースト構想の推進、インフラ整備の経済効果、再生可能エネルギーの普及に向けた課題等であります。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 第八分科会主査赤羽一嘉君。

赤羽委員 第八分科会について御報告申し上げます。

 本分科会は、国土交通省所管について審査を行いました。

 詳細につきましては会議録に譲ることといたしますが、その主な質疑事項は、富士山火山防災のあり方、空き家対策への支援に関する取り組み、軽井沢スキーバス転落事故の教訓を踏まえた事故再発防止策、訪日外国人の受け入れ体制の整備、都市計画における民主的手続のあり方、地震、津波の予知観測体制の整備等であります。

 以上、御報告申し上げます。

竹下委員長 以上をもちまして各分科会主査の報告は終了いたしました。

 次回は、明三月一日午前八時五十五分から委員会を開会し、締めくくり質疑を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


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