衆議院

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第37号 平成21年5月28日(木曜日)

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平成二十一年五月二十八日(木曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 小坂 憲次君

   理事 小此木八郎君 理事 今井  宏君

   理事 平沢 勝栄君 理事 渡辺 博道君

   理事 高木  毅君 理事 小野寺五典君

   理事 玄葉光一郎君 理事 渡辺  周君

   理事 遠藤 乙彦君

      あかま二郎君    井脇ノブ子君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      谷  公一君    藤井 勇治君

      若宮 健嗣君    近藤 洋介君

      高山 智司君    伊藤  渉君

      佐々木憲昭君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   議員           枝野 幸男君

   事務総長         駒崎 義弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 衆議院憲法審査会規程制定の件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

小坂委員長 これより会議を開きます。

 まず、衆議院憲法審査会規程制定の件についてでありますが、本件について、本日、議員枝野幸男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の挙手を求めます。

    〔賛成者挙手〕

小坂委員長 挙手多数。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

小坂委員長 それでは、衆議院憲法調査会等における調査審議の経緯等につきまして、御意見を伺いたいと存じます。

 それでは、枝野幸男先生、よろしくお願いいたします。御着席のままで結構でございます。

枝野議員 枝野でございます。

 憲法調査会で、何代か代わりましたが、最後の調査会長代理を務めさせていただきました。そうした立場からお招きをいただいたのだと思いますが、お招きをいただき、発言の機会をいただきましたことを御礼申し上げます。

 早速ですが、意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、そもそも憲法とは何かということについて確認をさせていただきたいというふうに思います。

 憲法は、主権者が為政者に対してその公権力行使の基本的事項について縛るルール、これが憲法の定義でございますことは、皆さん御存じのことというふうに思います。民法と書いてある表題の法律に、例えば、人を殺したる者は死刑または何とかの刑に処すると書いても、それは民法ではなくて刑法でしょうというように、これはまさに定義の世界でございます。

 特に、我が国もそうでありますが、民主主義の制度あるいは立憲主義の制度のもとにおける憲法は、主権者である国民が、公権力を行使する為政者、国会であり、内閣であり、裁判所でありというものを縛る基本的事項について定めたルール、これが民主主義下、立憲主義下における憲法ということになります。

 したがいまして、最終的に国民投票でその法制定権者である国民の意思で決定をするという、現行憲法典の国民投票を要するというルールが存在していることは、当然のことであります。と同時に、その発議に当たって衆参両院の三分の二以上の賛成を要するとなっている現行憲法典の発議要件についても、実は相当程度の合理性があると認識をすべきである。

 といいますのは、主権者が、為政者、特に国会に対しては、国会の中の多数派がどうかわろうとも、このルールのもとで国会は公権力を行使しなさい、立法権あるいは内閣を形成する権限というものを行使しなさいということを定めているのが憲法でありますので、政権がかわるたびにころころ憲法が変わるのでは、憲法としての意味を持たない。あるいは、政権を担い得るような政党ごとで、本来こうあってほしいという憲法についてのそれぞれの思いが異なることはあるかもしれません。

 いずれにしても、我々はその命令を受ける名あて人でありますから、国会の、特に政権を担おうとする政党がそれぞれ共通のルールとして従うのが憲法であるということに憲法の定義からなってくるということを考えますと、単純に二分の一ではなくて、政権がかわってもお互いに従うルールなんだからということで二分の一を超える要件を要するということには大変合理性があることになるというのは、憲法調査会の議論の中でも出てきている議論でございますし、ここまでは、私の意見というよりも、一種の定義の御説明かというふうに思います。

 こうした憲法の特徴、あるいは憲法をもし改正する場合の手続の特徴ということを踏まえれば、その手続に当たっては、国会内の広範な合意に基づいて物事を進めていかなければならないということが論理的に、必然的に生じてくるかというふうに思います。

 こうした認識のもとで、中山会長もこの場においでになってお話しになられたというふうに聞いておりますが、中山会長の御尽力のもとで、憲法調査会は、憲法に対する考え方の党派の違いはもちろんあります、各個人ごとの違いはありましたけれども、六年近くの間だったでしょうか、あるいは、そこから事実上引き継がれた憲法特別委員会を通じて、一貫して、その広範な合意に基づいて円滑、円満に議論を進め、手続を進めていくということについて、しっかりと進めてきていただいたというふうに私も認識をしております。

 この点については、中山会長からこの場においても御報告があったとおりであると認識をしておりまして、この場をおかりしまして、改めて、私は、中山会長の高い見識に対して敬意を表する次第でございます。

 ではありますが、こうした中山会長のもとでの長年にわたる積み重ねというものは、安倍内閣発足以降、全く百八十度変質をいたしました。

 個々に細かい、何をどう発言したかということをあえて繰り返しませんが、これを直近にある参議院選挙の争点とするという明確な姿勢、それに向けた議会運営、あるいは、憲法についてあえて政党間の対立の争点にさせようとしか思えないような運営、さらに申し上げれば、我が内閣のもとで憲法改正をしたいという憲法改正手続と憲法の本質を全く理解していない発言等が多々繰り返されておりまして、にもかかわらず、現場においては、特別委員会においては、中山委員長、当時は特別委員長、あるいは船田与党筆頭も相当御苦労をされ、なおかつ御努力をされまして、何とか従来の、調査会以来の円満な合意形成に基づく手続ということに、現場の皆さんには最大限努力をしていただいたと思っておりますが、最終的には、参議院選挙を視野に置いた争点づくり、実績づくりに向けて、後ろを切った日程で物事を進めていくということに、現場の皆さんも与党の皆さんもあらがい切れない状況に追い込まれてしまいました。

 その結果として、大方の部分円満な合意形成ができていた、これも中山会長から御報告があったかと思いますが、その一方で、何点かの論点について合意形成の手続が得られないまま、なおかつ、そうしたことを残して強行するということは、最初に申し上げた憲法の本質あるいはその憲法改正手続の本質から考えたときには甚だ遺憾なことであるという私どもの強い抗議にもかかわらず、強行採決という残念な結果になりました。あのプロセスについては、採決をされた中山委員長も大変内心はじくじたるものがあったのではないかと私は推察をいたしております。

 こうした姿勢のままでは、仮に形式的に審査会規程を置こうが審査会を置こうが、少なくとも国会の共同作業としての憲法論議が今後前に進んでいくことは一〇〇%あり得ない、不可能なことであるというふうに言わざるを得ません。

 つまり、国会内の多数、憲法によって命令を受ける側である国会の広範な多数、政権がかわろうとも、お互いに従うという前提での広範な合意ということに向けて共同作業を本来していかなければならない話であるにもかかわらず、先ほど申し上げた安倍内閣の姿勢というものは、その基本的な憲法観というか、憲法に対する定義を不十分としている、あるいは憲法についての定義、理解を全く欠いているという方と共同作業をするだなんということは全く不可能である。

 しかも、五年以上にわたって、円満に合意形成をしてきた、信頼関係に基づいてつくってきたものを、ほぼ一瞬にしてぶち壊すような政治姿勢の皆さんと共同作業をするということは、まさに、いつ背信を受けるかわからないという状況であって、共同作業をするための前提となる信頼関係を欠いている、その信頼関係がなければ共同作業などできるはずがないというふうに考えます。

 憲法の議論を、結果的に変わる変わらないは別としても、建設的に進めるためには、まさに中山先生が主導して積み重ねてこられたように、選挙の争点にはしない、国会の他の日程、選挙日程、その他の状況、いわゆる政局には一切関連させないという共通認識、そして、手段、段取りを含めて、常に合意に基づいて物事を進めていくという大前提、こうしたものが存在をしなければ、全く意味を持たないものだと認識せざるを得ないというふうに思っております。

 したがいまして、その強行採決で途絶えた信頼関係をまずは回復させることがこの憲法についての物事を前に進めていく大前提であると言わざるを得ないというふうに思っておりまして、まずは、当時の安倍晋三総理大臣を初めとして、当時の信頼関係破壊の責任者の皆さんが真摯に私ども及び国民に対して謝罪をする、そしてその責任を明確にする、そのことがない限り、形式的にどんなことをしようと全く無意味なこと、あえて言えばマスターベーションしているとしか言いようがないというふうなことを申し上げておきたいと思っております。

 さらに言えば、今回も突然、少なくとも私どもからすれば突然、選挙前に急に憲法審査会規程を強行しようという意見が出てきている、浮上しているというふうに聞いております。前回も参議院選挙を前にした争点づくり、実績づくりで、五年超にわたる信頼関係を壊しました。

 またしても同じことを繰り返されるということであれば、私は、前回の強行採決の後の本会議において、このことで日本の憲法議論は最低でも十五年後退することになったと申し上げましたが、今回また同じようなことが繰り返されれば、さらに十五年、つまり三十年は後退することになるんだろうな、残念ながら、私が現役でいる間には憲法の議論が真っ当に進むことはないのかなということをそろそろ割り切らなきゃいけないのかなというふうに言わざるを得ないと思っております。

 こうした認識なしに、単に法律事項あるいは院内規定事項であるから二分の一で押し切ればいいんだというような方向に進む皆さんがもしいらっしゃるとすれば、その皆さんは究極の護憲派であるというふうに言わざるを得ません。

 憲法をもし変える必要があるならば、前向きに変えようとするならば、繰り返し申し上げておりますが、広範な国会内の合意、そして国民の皆さんの合意をどうやってつくっていくのかということを常に視野に置いた手続が必要であり、少なくとも、政党間の、特に選挙の争点にするとか、政局の道具にするとかというような認識を一切取り払う。そういった疑いを持たれることすら、李下に冠を正さずで、十分に注意、留意して進めなければならない。

 にもかかわらず、また選挙を直前にした時期に出てくるということ、このことだけをもっても、そのことを進める皆さんは究極の護憲派であって、憲法を真剣に考えているのではなくて、憲法を通じて自分たちの政治的立場を有利にしようという、憲法をおもちゃにしている皆さんであると断じざるを得ないというふうに私は考えております。

 自民党の中にも、中山太郎先生を初めとして、良識を持って憲法を考えておられる先生方も少なからずおられることを私は十分承知しておりまして、もしそうした方向に進むとすれば、そうした、まじめに憲法を考えていらっしゃる先生方が大変気の毒でならないというふうに思っております。

 また、憲法が結論的に変わる変わらないは別としても、建設的な共同作業が進んでいかないということは、我が国にとっても大変不幸なことであり、残念なことでありますけれども、共同作業でありますから、一方だけがその意思を持っていても、もう一方にその意思がなければ共同作業はできないことになるということを指摘せざるを得ないというふうに思っています。

 るる申し上げましたが、結論的に申し上げますと、政治的なけじめがなく、拙速な駆け込み制定は、憲法の趣旨、性質、本質というものを理解しないものであり、それに基づく議論のあり方に反することになります。ぜひとも、もう一度仕切り直しをして、そして、その仕切り直しというのは、憲法制定手続法の衆議院における強行採決の時点までもう一度しっかりと仕切り直しをして、あのときの瑕疵をどうやって回復させるのかということに立ち返った上で、広範な合意形成に基づいて物事を進めていただきたい。

 そうすることを、特に努力をされてきた中山先生の顔を思い浮かべながら、強くお願いをして、意見の陳述とさせていただきます。

 以上でございます。

小坂委員長 ありがとうございました。

 それでは、枝野幸男先生、御退席いただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。今井宏君。

今井委員 自由民主党の今井宏です。

 憲法審査会規程制定についての意見の発表をさせていただきます。

 小坂議運委員長による、憲法審査会規程は制定するが人事は凍結するとの提案は、二年間続いてきた立法府の不作為を一日も早く解消するための与野党の歩み寄りを促す現実的な提案であったわけです。さきに提出されました憲法審査会規程案起草の動議に私どもは賛成するものでございます。

 改正手続法は強引に採決されたとの主張もございますが、参議院の特別委員会では、審査会の運営について留意すべき点を、自民、公明、民主の三党共同提案で附帯決議に盛り込んで議決をいたしました。民主党も、審査会の開催を前提として法案の成立に応じたものであると理解しております。

 中山太郎前調査会長も、国会法改正部分に関する与党案及び民主党案の規定内容は一字一句同じものであり、審査会規程で規定すべき事項も、法案提出会派である自民、公明、民主の三党間では完全な合意が形成されていたと発言もされております。

 民主党は、さきの議運におきまして、規程の制定には反対ではなく、機が熟すのを待つべき、今国会中の制定に努力するといった趣旨の意見を表明されました。

 昨年来、議運委員長や与党から、何度も丁寧に規程の制定に関して要請をさせていただいており、決して拙速や強引ではございません。議事手続を定める規程が制定されない限り、審査会を実質的に発足することができない。国会の責務として、国会法に定められた憲法論議の場を設けない状態をこのまま放置するわけにはいかないと考えておりますので、ぜひ皆様方の御理解を賜りたいと思います。

 以上です。

小坂委員長 それでは、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党・無所属クラブを代表して、衆議院憲法審査会規程制定の件につきまして意見表明をさせていただきます。

 ただいまの枝野元調査会長代理の意見を伺いまして、中山調査会長が非常に御尽力をされて、憲法のこの五年を超える議論を通じて与野党の信頼関係がつくられてきた。反面で、安倍政権が発足をして、結果として、大方の部分では合意していたにもかかわらず、何点かの論点を残して、後ろを切って強行採決という形になった。枝野調査会長代理は、こうした姿勢のままでは国会の共同作業としてやっていくことは不可能である、この途絶えた信頼関係の回復が大前提であるということを今申されました。これは、安倍内閣の強行採決の前の時点に戻して、謝罪なり政治的けじめがまずは大前提であるということを強く訴えられたものと思います。

 冒頭に言われましたけれども、憲法というのは、そもそも広範な議論と手続で合意を得ることが必要であるという中で、現状、この途絶えた信頼関係の回復はされておらず、この政治的なけじめについて何らかの形でのけじめがつかなければ、この国会の我々の任期が残りわずかとなる中で、駆け込み的に今制定をすることは慎重に考えなければいけないというふうに思っております。

 よって、この制定については、まだ時間をかけて、広範な合意を得られるべく、また信頼関係が回復できるような何らかの政治的な仕切り直しのための知恵を出し合ってからということを申し上げて、意見表明とさせていただきたいと思います。

小坂委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党といたしまして、憲法審査会規程の早期成立に賛成ということで意見表明をしたいと思っております。

 そもそも、憲法九十六条において改正規定があることは御承知のとおりでありますが、これを踏まえ、また憲法調査会での長年にわたる真摯な議論を踏まえて、二年前にいわゆる憲法改正手続法が成立をいたしました。若干の意見の差異はあったにせよ、きちっと手順を踏んで行われたものでありまして、これは正当なものと考えるものでございます。

 そして、この施行まであと一年を切った段階におきまして、ぜひ早期に審査会の手続規定をつくることは、これはもう院の責務であって、これを怠ることはむしろ怠慢のそしりを免れないと考えるものでございまして、ぜひとも、これは、手続法ないし国会法の改正の精神に従って早期に制定の手続を踏むべきものと考えるものでございます。

 また、今の枝野さんのお話の中で、突然とか政争の具といった言葉が出てまいりましたが、この憲法審査会規程につきましては、既に昨年来、委員長並びに与党側よりたびたびにわたって、この憲法審査会規程の審議につきましてお願いをしてきたわけでありまして、大変丁寧に、また忍耐強くお願いをしてきたわけであります。全く反応されなかったというのが実際でございます。そういった意味では、突然とか強行というのは全く当たらないというふうに考えるわけでございます。

 また、政争の具にする云々の御議論がありますが、この憲法審査会規程自体、既に調査会の段階でかなりしっかりと議論をされて、おおむね各党の合意のもとにできた手続的な内容であって、まさに話し合いの場をつくるということにしかすぎません。この審査会ができたからといって、特定の視点に立った憲法改正論議に対してプラスにもマイナスにも働くものでは全くなくて、あくまでも中立的な話し合いの場を設けるということであって、それ以上のものではないということでありまして、決してこの憲法審査会規程が政争の具になるというものではないということも明確に申し上げたいと思っているわけでございます。

 特に、憲法につきましては、大局的に見れば、日本国憲法は大変すぐれた憲法だと思っておりますが、制定以来六十年以上を経過いたしまして、やはり憲法制定当時には想定しなかったものが多々あることは御承知のとおりであります。言うまでもなく、例えば環境問題とか、大変大きな差し迫った課題になっておりまして、こういった問題をいかに憲法に取り込んでいくかということは大きな国家的課題であると考えるわけでございます。

 そういった意味で、ぜひともこういった基本的な問題につきまして話し合いの場をつくり上げて、まさに建設的に、未来志向で、幅広く議論をして、今のすぐれた日本国憲法を二十一世紀型の憲法として進化させる、さらに世界の先頭に立てるようなすばらしいものにしていくということは政治家の責務であると考えております。

 後ろ向きな、政局の具にしていくのではなくて、まさに、未来志向で、むしろ建設的な憲法の進化ということに取り組んでいくことは政治家の責務であると考えるわけでありまして、ぜひとも、そういった視点から、この中立的な手続規定である憲法審査会規程につきましては、早期の成立を期待するものでございます。

 以上です。

小坂委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 本日、前憲法調査会会長代理を参考人として呼んだことは、改憲の原案を審査する憲法審査会の規程づくりに向けて一歩を進めるものであり、このようなやり方に強く抗議したいと思います。

 ただいま参考人の御意見をお聞きしても、今、憲法審査会規程をつくらなければならないという理由は全く見当たりません。今国民が求めているのは、改憲手続を整備することではありません。深刻化する経済危機のもとで貧困と格差が拡大し、まさに憲法二十五条の生存権が脅かされている、この現実をどうするか、これが当面の最大の課題であります。

 そもそも、改憲手続法は、安倍政権のもとで、自民党などの九条改憲の政治スケジュールに沿って強行採決で成立させられたものであります。慎重審議を求める圧倒的多数の国民の声を無視し、審議も不十分なまま、与野党の合意のないまま、数の力で強行したことは、憲政史上に重大な汚点を残したものであります。

 このやり方について、先ほど枝野氏は、発言の中で厳しく批判しておりました。謝罪と反省が与党に必要である、それが前提である、憲法審査会規程を二分の一で押し切るようなことは憲法をおもちゃにしているようなものだ、こういう発言もされていたわけであります。

 改憲手続法の内容は、投票率が低くても国民投票が成立し、有権者の二割台の賛成でも改憲案が通るなど、徹頭徹尾、改憲推進勢力に都合よくできております。このような法律に定められた審査会規程が未整備であるということを問題にするなら、むしろ、強行成立させられた手続法そのものを見直し、廃止すべきであります。

 いずれにしても、今、どの世論調査を見ても、憲法をどうしても変えるべきだという声は多くはありませんし、憲法九条を変えよという声は極めて少数であります。九条を守れという声が圧倒的多数であり、九条の会が全国で七千以上つくられて、九条を守る、そして世界に広げるというのが国民的な世論にもなりつつあるというのが現状であります。

 この議運委員会でも、憲法審査会の規程を今つくれという与野党の合意はありません。合意のないまま、また数の力で強行することを繰り返すことになれば、日本の憲政史上にさらに汚点を繰り返すということになると思います。

 今求められているのは、九条や二十五条、平和と人権の保障を目指す日本国憲法そのもの、これを徹底的に全国民のものにし、そしてこれを生かしていくということが求められていると思うわけであります。このことを強調して意見表明とします。

小坂委員長 保坂展人君。

保坂委員 先ほど枝野元会長代理からの発言を聞いて、まさに憲法とは何か、内閣総理大臣を頂点として、行政府、立法府、そして裁判所と、いわば権力を行使する為政者を最高法規で拘束するというのが立憲主義の根底にあるというのは実に大切な点だと思います。

 その点からいうと、安倍総理が、私の内閣で憲法改正の道筋をつけたい、こういった発言をされ、そして五月、憲法記念日までにはと、こういう時節を示したり、また、結果的には参議院議員選挙の争点でということで、先ほど枝野さんからお話があったような、あるいは中山会長が努力したというお話もありましたが、そういう経過を全部遮断して合意なき採決ということになったということは、実に大きな点ではないか。その結果、参議院議員選挙では与野党は逆転をしました。

 ですから、この改憲問題を参議院議員選挙の争点にしたいという思いはあったにしても、実は国民はどう受けとめたのかということを、与党の皆さんにはぜひこれは考えていただきたいと思います。

 そして、中山会長が、この憲法の問題は、通常、国会では議席配分で発言時間等がいわば違ってくる、この議院運営委員会でも、私たちは今陪席ということで、発言もしない、できないという立場でおりますけれども、しかし、この憲法調査会や特別委員会では、こういった議席数にかかわりなく、国民の間では憲法については各般の意見がある、したがって、発言の時間、発言の機会あるいは幹事会などでの意見交換ということについては対等、平等に運営をしてきたということをおっしゃっています。

 このことは実に大事な原則だったろうと思いますが、小坂委員長は、与野党合意なく、中山太郎氏の意見陳述については、これを開かれた。私たちはそれに反対しました。今回は、与野党合意、共産党は反対でしたけれども、一応はそういった手続を踏んで枝野さんの話を聞いたとなれば、憲法の議論で、少なくともこれは慎重にやろうねというのは、各党が平等に、対等にしっかり意見を言うということだったわけですから、確かに、自民党の中山さんがお話をされた、民主党の枝野さんがお話をされた。当然、憲法のルールに従えば、その他の政党も、対等、平等に、どんな議論をしてきたのか、どんな問題を抱えて、今どういう認識を持っているのかについて、この議院運営委員会の場でもしっかりやらなければいけないわけです。もしそれをやらないのであれば、もう両党の、自民、民主の意見を聞いたから、さあ、ではこれはもう採決だとなれば、まさに中山会長がやられてきたいわば憲法論議の土台そのものを最後的にこれは覆してしまうことになるのではないか。

 究極の護憲派と枝野さんは与党の方を呼ばれましたが、私は実は、強行採決、強行採決と非常に国民の間で評判が悪かった、それがあの参議院議員選挙の結果にもあらわれたと思います。

 そういう意味では、私は、あえて言えば、究極の時代錯誤ではないか。今、憲法を私たちは変える必要はないと思っておりますし、むしろ実現をすべきだと、この立場を、究極の護憲派は私だということで発言とさせていただきます。よろしくお願いします。

小坂委員長 小此木八郎君。

小此木委員 きょうも枝野前調査会会長代理にお越しをいただきましてお話を聞きました。

 前回は、中山先生の場合は合意がないということでのこの委員会の開催ではありましたが、本日は、私は、与野党の合意のもとで行われたということで、賛成、反対ありますが、決まったことで行われたというふうに思っています。

 さきの中山会長の発言の中で、憲法論議は内閣ではなく国会の責務、権限であるべきで、政権を争う与野党対峙の論戦とは一線を画した全国民代表の論議であるべきだということをおっしゃいましたが、きょうの枝野前会長代理も同趣旨のお話をされたというふうに思っています。

 そこで、当時の総理大臣の話も出ましたけれども、たしかあのときの衆議院での採決というのは不正常の採決があったんだというふうに思いますが、あの国会では、その後、参議院での議論も行われておりまして、先ほど我が党の今井理事もお話をされましたように、参議院では、審査会の運営について留意すべき点を、自民、公明、民主の三党共同提案で附帯決議に盛り込んで議決をしたということで、野党第一党である民主党さんも、申し上げましたように、この審査会の開催を前提として法案の成立に応じたというふうに私ども理解しております。

 それから二年がたちました。さらに強行的な行為でこの議論を進めるのかというお話もありましたが、小坂議運委員長のこれまでの運営、あるいは前の委員長、またその前の委員長におかれましても、強行的な行為は一切されていないというふうに思っております。

 今後とも、私は、国会の責任としては、私どもの立場では、この国会できちんとこの規程を制定すべきだ、そして、さらなる憲法の議論、これからまだあるわけでありますから、そういう立場で玄葉筆頭理事とこの進め方につきましてはお話をさせていただきたいというふうに思いますし、立場としては、この国会で憲法審査会の規程を制定させていただきたいという思いで交渉させていただきたいと思います。

小坂委員長 玄葉理事。

玄葉委員 発言の予定はありませんでしたけれども、今、私の方のある意味御指名もございましたので、一言だけ申し上げます。

 これまで、規程をつくりたいということを委員長が何回もおっしゃったことは事実でございます。それに対して民主党は無反応だった、こういう聞き捨てならないお話がございましたので、一言だけ申し上げますけれども、我々は、それに対しては、基本的に、政治的なけじめが必要である、それと参議院での附帯決議の問題のクリアが必要だということはたびたび申し上げてきたわけでございまして、決して無反応ということではございません。

 ただいまも、枝野会長代理から、まさに、もともと憲法の性質あるいは趣旨を体して考えれば、三分の二必要なんだから共同作業をしなきゃいけないんだ、その共同作業の前提は信頼関係だから、しっかりあの時点に戻って何らかの政治的仕切り直しとけじめが必要であるということはあったということだと思いますので、そのことも含めて筆頭間で話ができればというふうに思っております。

 以上です。

小坂委員長 本件につきましては、理事会等におきまして、引き続き御協議願いたいと存じます。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

駒崎事務総長 日程第一ないし第三につき、河野外務委員長の報告がございます。採決は二回になります。一回目は日程第一及び第二で、共産党が反対でございます。二回目は日程第三で、全会一致であります。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十二号

  平成二十一年五月二十八日

    午後一時開議

 第一 経済上の連携に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第二 日本国とスイス連邦との間の自由な貿易及び経済上の連携に関する協定の締結について承認を求めるの件

 第三 航空業務に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

小坂委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

小坂委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十六分散会


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