衆議院

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第12号 平成25年3月5日(火曜日)

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平成二十五年三月五日(火曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 佐田玄一郎君

   理事 高木  毅君 理事 古川 禎久君

   理事 御法川信英君 理事 秋元  司君

   理事 平沢 勝栄君 理事 櫻田 義孝君

   理事 渡辺  周君 理事 石関 貴史君

   理事 大口 善徳君

      越智 隆雄君    鈴木 憲和君

      田野瀬太道君    根本 幸典君

      藤丸  敏君    星野 剛士君

      牧島かれん君    郡  和子君

      津村 啓介君    木下 智彦君

      阪口 直人君    中野 洋昌君

      浅尾慶一郎君    山内 康一君

      佐々木憲昭君    小宮山泰子君

    …………………………………

   議長           伊吹 文明君

   副議長          赤松 広隆君

   事務総長         鬼塚  誠君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(学習院大学経済学部教授))            岩田規久男君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(日本銀行理事))     中曽  宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月五日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     津村 啓介君

  今村 洋史君     阪口 直人君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  津村 啓介君     菊田真紀子君

  阪口 直人君     今村 洋史君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行副総裁任命につき同意を求めるの件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

佐田委員長 これより会議を開きます。

 まず、本日の本会議における国務大臣の演説に対する質疑は、まず公明党の井上義久君、次にみんなの党の渡辺喜美君、次に日本共産党の志位和夫君、次いで生活の党の青木愛君の順序で行い、本日をもって国務大臣の演説に対する質疑を終了することになっております。

 なお、質疑者の要求大臣は、お手元の印刷物のとおりであります。

    ―――――――――――――

 一、国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

  質 疑 者     時間   要求大臣

 井上 義久君(公明) 35分以内 総理、国交

 渡辺 喜美君(みんな) 25分以内 総理、財務、外務、甘利国務(経済再生)

 志位 和夫君(共産) 20分以内 総理

 青木  愛君(生活) 20分以内 総理

    ―――――――――――――

佐田委員長 それでは、本日の本会議は、午後一時五十分予鈴、午後二時から開会いたします。

    ―――――――――――――

佐田委員長 次に、日本銀行副総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る二月二十八日の理事会において、加藤内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行副総裁に学習院大学経済学部教授岩田規久男君、日本銀行理事中曽宏君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、日本銀行副総裁候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行副総裁候補者・学習院大学経済学部教授岩田規久男君、日本銀行副総裁候補者・日本銀行理事中曽宏君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

佐田委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、岩田参考人、中曽参考人の順で所信をお述べいただき、その後、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、岩田参考人、お願いいたします。

岩田参考人 学習院大学の岩田規久男でございます。よろしくお願いします。

 本日は、所信を述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 私は、東京大学の博士課程を修了した後、一九七三年から上智大学経済学部で教鞭をとり、一九九八年からは学習院大学に移りまして、研究と学生の指導にずっと当たってまいりました。

 専攻は、金融論、経済政策、初期は都市経済学も研究しておりました。国際経済学者として著名な小宮隆太郎先生のもとで、金融論、マクロ経済学といったものも学んでまいり、この二十年からもう少し長い間は、専ら金融政策の研究に携わるようになっておりまして、現在も、研究活動の中心は、金融論が中心になっております。

 このたび日銀の副総裁の候補に挙がったわけですが、もしも国会の同意が得られれば、これまでの研究、蓄積を生かして、現実の金融政策にそれを生かして、全力で職務を全うしていきたいというふうに思っております。

 それでは、これから、少し、私が考えるデフレ脱却、あるいは、政府と日本銀行の合意である二%のインフレ目標に関する私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 御案内のとおり、日本では長い間デフレが続いておりまして、一九九二年以降、原油価格の高騰とか消費税の増税といった影響を除きますと、インフレ率は二%をずっと割り込んでおりますし、一九九八年以降は、消費者物価で見るとマイナスが続いております。

 このような状況は、結局、人々がデフレ予想を抱くようになってしまって、それが自己実現的にデフレをもたらすという悪循環に陥っております。

 デフレ予想のもとでは、家計や企業が、お金をそのまま持っていれば実質的な購買力が上がると考えて投資や消費を抑制しておりまして、現在では、日本の企業までもが、家計のように、金融資産を運用する、設備投資や生産を控えて、むしろ金融資産を運用している、家計化と私は呼んでいますが、企業がそういうふうになっている。これがデフレの特色であります。

 こうした状況を踏まえて、安倍政権が、大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢を打ち出したわけですが、私は、これは、日本経済がこれから好循環をつくり出していくという意味では、極めて適切な政策であるというふうに思っております。

 この三本の矢のうちで、私は、かなめになるのは、やはり金融政策であるというふうに思っております。

 と申しますのは、金融政策によって、人々の間に定着してしまったデフレ予想をインフレ予想に転換させる。インフレ予想にならなければ、実際にも、マイルドなインフレにはならないということであります。

 そのために、日本銀行は、消費者物価の上昇率二%を必ず達成する、この達成責任を全面的に負うという立場に立つ必要があるというふうに思います。

 これを金融政策のレジーム転換といいますが、そのようにして市場がそのことを信頼すると、予想インフレ率が上がってきて、今までのように現金や定期預金、普通預金などで持っている部分、企業までもそうしているんですが、それが、株式への投資を始めるとか外貨への投資を始めるという行動に出てきて、それが株高、円安を招いていくわけです。いわば、資産市場あるいは資本市場が先に反応します。これが金融政策の特色です。

 そして、金融政策によって市場の期待が変わって株高、円安が起こってくると、株高は企業の増資や内部留保の資本コストを非常に引き下げる効果がありますので、設備投資に積極的になっていく、あるいは、株が上がると消費者も消費をふやしていく、あるいは、円安になると輸出がふえていくというふうにして、だんだんと需要がふえていく。

 今現在の日本は、デフレギャップといって、需給ギャップで、供給に対して需要が少ないためにデフレになっている。そこで、需要を供給能力まで押し上げてやるというのが金融政策の基本的な役割です。これによって生産が増加すれば、当然雇用も増加しますので、やがて賃金も上昇する。雇用需要がふえない限りは、賃金はなかなか上昇しないわけであります。

 現在の日本は、デフレの中では雇用需要がずんずん減少している。物価の下落以上に賃金が実は下がっております。実質賃金は、むしろデフレの中では下がっている。二人ぐらいの勤労者世帯では、二〇〇〇年から最近までの間に約八%の実質可処分所得が減っています。

 これから、ある程度、インフレが二%ぐらいになると、むしろ、生産がふえて、雇用需要はふえてくる、その過程で、物価も上がるけれども、賃金も上がってきて、実質賃金が上がってくるというのがデフレ脱却のメカニズムであります。

 この一連のプロセスの、最初の、資産市場への影響は、既にもう始まっております。

 株式市場を活性化し、外国為替市場も、予想インフレ率が上がることによって、あるいは長期金利が下がることによって、ある程度の円安になり、株高になるという動きがもう既に始まっております。

 こうした動きをとめないためにも日本銀行のこれからの金融政策が必要で、そのための第一の条件は、何といっても、日本銀行が、きちっと、二%の目標というのは中期的に達成する、その責任がある、これは義務である、こう考える必要があるというふうに思います。

 その上で、実際にその義務を本当に果たしていくということであれば、もう既に政策金利はゼロになっていますので、どうしても、マネタリーベースを拡大するといういわゆる量的緩和を進めなきゃいけない、今まで以上の量的緩和を進める必要があるというふうに思います。

 最後に、機動的な財政出動と成長戦略と金融政策のかかわりです。

 金融政策というのは、資産市場に早く影響を与えますが、生産は少しおくれるわけですね。生産や雇用は時間がかかるわけです。そこで、そのつなぎの間、需要を支えるための財政出動というのが非常に有意義だというふうに思います。

 ただ、これはつなぎでありますので、長期的に続けると財政が悪化しますので、短期的にやらざるを得ない。そうすると、財政出動だけですと、実は、金利が上がって、円高になってしまって、また輸出が減るというふうになってしまいますので、機動的な財政政策には金融緩和政策が伴わないと機動的な財政政策の効果もなくなってしまいます。

 それから、成長戦略というのは、潜在的な能力、供給能力を上げる政策ですので、このままやっていくとデフレギャップは開いてしまいますので、もう一回、成長戦略で潜在成長率が上がった分、それを金融政策で、やはり需要をアップしてやらないと、実際、政府の、潜在成長力は上がったけれども、それは実現しないということで終わってしまうということです。

 二本の矢の機動的な財政政策と成長戦略を成功させるためにも金融政策が非常に重要だということで、そのような観点から、もしも国会の同意が得られましたならば、職務を全うしていきたいというふうに思っております。

 所信を説明させていただく機会をいただきまして、ありがとうございました。

佐田委員長 ありがとうございました。

 次に、中曽参考人、お願いいたします。

中曽参考人 中曽でございます。

 本日は、所信を述べる機会を賜り、大変光栄に存じます。

 私は、一九七八年、日本銀行に入行し、以来、三十五年間勤務してまいりました。その間に、信用機構局信用機構課長、金融市場局長など、金融システムや金融市場に関する実務に携わりました。

 二〇〇八年からは、理事として、主に国際分野を担当してまいりました。

 この間、二〇〇六年からは、BIS、国際決済銀行の市場委員会の議長として国際会議を仕切るという機会もいただきました。

 もし副総裁としてお認めいただきましたならば、日本銀行の組織に長く身を置いてきた経験を生かしまして、職員の力を束ねて全力で総裁をお支えし、また、政策委員会の一員としてしっかりと議論に貢献してまいりたいというふうに思っております。

 まず、金融政策面からお話を申し上げます。

 日本経済は、米国、中国など海外経済の持ち直しの動きが見られる中で、下げどまりつつあるというふうに見てございます。海外経済の改善や日本銀行、政府の政策に対する期待を背景といたしまして、株価の上昇ですとか円安方向への動きも見られております。

 まさに、積年の課題でございますデフレからの脱却と物価安定のもとでの持続的な成長を実現するため、またとないチャンスだというふうに思っております。これを生かすことが日本銀行の重大な使命であるというふうに考えてございます。

 過去二十年間、累次にわたる内外の金融危機対応の最前線に身を置き、日本経済の苦境を目の当たりにしてきた者として、この機会を逃してはならない、そういう強い思いでおります。

 この一月、日本銀行は、政府との共同声明におきまして、消費者物価の上昇率二%を目標といたしまして、これをできるだけ早期に実現する、そういうことを目指すということをお約束いたしました。その実現に向けまして、政策委員会の他の八人の皆様とともに、前例にとらわれることなく、常に新しい発想で施策を生み出し、実行してまいりたいというふうに思っております。

 この点、幾つかの面で私なりの貢献ができるのではないかというふうに考えてございます。

 まず、金融の実務面でございます。

 金融政策というのは、金融市場で金融機関との取引を通じて行うものでございます。とりわけ、非伝統的な金融政策におきましては、通常とは異なるオペレーションになります。したがいまして、市場や金融実務に関する知識が重要になります。この面では、六年弱金融市場局長を担当した経験がきっと役に立つというふうに考えております。

 また、これまで海外中央銀行の幹部との間に築きました人的なネットワークを通じまして、日本銀行の金融政策とその目的とするところをしっかりと説明してまいりたいというふうにも思っております。

 次に、金融政策以外の面では、日本銀行は、考査ですとか、あるいは、最後の貸し手としての役割など、金融システムの安定にも責任を負ってございます。

 一九九〇年代後半の金融危機の時期に、日本発の金融恐慌は絶対に起こさない、こういう決意でほとんど全ての破綻処理に携わった経験を、これらの業務遂行に役立てたいというふうに思っております。

 また、地震などの災害時も含めまして、日本銀行券を流通させ、日銀ネットなどの決済システムを円滑に運行することなど、間違いなく業務を遂行していく、こういった必要もございます。

 そうした日々の業務を支えておりますのが、本支店約五千人の職員でございます。いっときたりとも中断してはならない業務を、彼らは強い使命感を持って遂行してございます。

 職員の高い士気を維持し、組織力を結集することにより、政策委員会の判断と総裁の御指示に沿って、その意図を忠実に実現してまいります。

 組織運営の面で総裁をしっかりと補佐することも、これは私に課せられた重大な任務だというふうに認識をしてございます。

 日本経済が極めて重要な局面にあります現在、日本経済のために貢献できる機会をお与えいただきましたならば、全身全霊、職務に精励してまいりたいと考えております。

 ありがとうございました。

佐田委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 中曽参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 理事会の申し合わせに基づき、許可された記者以外の報道関係の方々は御退室をお願いいたします。

    ―――――――――――――

佐田委員長 これより岩田参考人の所信に対する質疑を行います。

 それでは、御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自民党の御法川でございます。

 岩田候補、おはようございます。よろしくお願いいたします。

 今、所信を聞かせていただきまして、昨日の黒田総裁と軌を一にしたデフレ脱却のための決意というものを聞かせていただきまして、非常に頼もしく、また心強く思っているところでございます。

 そこを申し上げた上で、一言申し上げさせていただきます。

 国会同意人事というのは、極めて厳粛なプロセスであるというふうに考えております。五年前の日銀同意人事の際にも私はこの議運におりまして、あの混乱の中での、白川総裁が選ばれるまでの過程、全て体験をしてまいりました。決して、政府の追認をするのが国会ではございません。そういう意味で、ぜひ、きょうは、議長も御同席でございます、この国会のプロセスというものの重要さというものを御認識なさって御答弁いただければというふうに思っております。

 その上で、質問に入らせていただきます。

 二%の物価安定目標という話は、きのうの黒田総裁からもいただきました。また、きょう、今、岩田候補からは、中期的なという言葉で表現があったと思いますが、昨日は、二年間というタイムフレーム、極めて具体的なものが出てきていたというふうに聞いておりました。

 この点について、まずは、この二年間というタイムフレームについて岩田候補はどのようにお考えかということをお聞きいたします。

岩田参考人 達成の期間ですが、一般に、私はインフレ目標採用国の研究をずっとしているんですけれども、そこでは、ミディアムタームと英語では書いてあって、中期的と書いてあって、それで、それのいろいろ研究をした研究書などでは、実際には一年半から二年で大体その目標圏内にきちっとインフレ率が維持されているということであります。

 ですから、私も、それが標準的なスタンダードだということで、ただ、日本の場合、非常にデフレが長くて、デフレマインドがもう定着しておりますので、これを金融政策である程度マイルドなインフレに転換することが必要ですので、今言った中期的のうちの二年は、遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています。

御法川委員 ありがとうございます。

 二年というタイムフレームについてはそういうことだと思いますが、では、その中で、金融の分野として、日銀として具体的にどういう政策をしなくてはならないかということを、ぜひ一つ二つ御開示いただければというふうに思います。

岩田参考人 これからインフレ目標二%を掲げてやっていくわけですが、これを達成する仕組みというのは、ニュージーランドが、インフレターゲットを始めてからもう二十年以上たって、経験があるわけです。

 この仕組み、どうしてインフレターゲットの国がうまくいったのかということなんですが、それは、第一は、まず中央銀行が物価の安定、例えば二%なら二%の達成に全面的な責任を負う。英語では、デュアルマンデートといいます。このマンデートは、自分が責任を持って達成する義務だというふうに認識するということであります。まず、これが第一。これがないと市場が信頼しないということですね、二%を達成するのに。これを金融政策のレジームの転換といいますが、ですから、その立場にまず立つということが非常に大事です。

 その上で、今言った、それが本当にそうだということをするためには、市場の予想インフレ率がどう動くかというのをデータで見ながら、マネタリーベースを大量に、基本的には大量ですけれども、特に、長期の金利に影響を与える。長期の金利に影響を与える必要があるのは、設備投資とか住宅投資とかいったものは長期の金利に影響されますので、それに影響するのには、やはり長期国債を買っていくということです。現在三年程度までしか買っていないようですが、それを五年以上やっていく。これは、今FRBが実際やっている政策であります。

 こういう政策をやっていきますと、今はそういう政策にまだ踏み出してはいませんが、もう安倍首相が、去年の十一月十四日に解散の発言があって、その後、大胆な金融政策といって、レジームチェンジをすると。レジームチェンジを市場が期待しているために、既に名目金利の引き下げ効果が、例えば十年物であれば、既に〇・一ポイントぐらいもう下がっております。それから、予想インフレ率も、何と、安倍首相が発言される前は、十年物でいえば〇・七%ぐらいだったんですが、今や一・一六六と、大体一・二%ぐらいまで予想インフレ率が上がってきております。

 ただ、二年物はまだ〇・五ぐらいですので、二年物の国債から、物価連動債から見ると〇・四ぐらいなので、これをもっと上げていかなきゃいけない。

 しかし、そういう芽がもう出てきているので、この流れ、予想インフレ率が今十年物だと一・二ぐらいですけれども、これも二%まで上がっていく。二年物や三年物、今、三年物はほぼ一%、〇・九五%まで上がっていますので、この流れを絶やさないためには、先ほど言った、日銀がきちっと金融政策のレジーム転換をするんだということが求められているというふうに思います。

御法川委員 質問を終わります。

 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介でございます。

 岩田さんに幾つか御質問をさせていただきます。

 まず最初は、日銀法の改正についてでございます。

 かねてから岩田参考人は、現行日銀法は大変問題があるということで盛んに改正を主張されてきましたが、今回の人事案提示後も重ねてその御主張をされているように報道されております。

 きのうの黒田総裁候補は、いろいろお考えはあるものの、これから中央銀行のトップに立つ者として、その制度自体を否定するようなことは立場上控えたいというお立場でしたけれども、岩田さんにおかれては、日銀法改正はやはり必要だということで、お考えに変わりはございませんか。また、必要であるとすれば、どういった改正が必要とお考えですか。

岩田参考人 先ほど申しました金融政策のレジーム転換というのは、要するに、物価の安定あるいは二%のインフレ目標というのは、日本銀行に責任が全部あるという立場なんですね。それが市場に信頼されるというのがこの基本的なメカニズムなんですね、デフレを脱却して二%インフレになるという。

 そうしますと、現在、日本銀行法では、そういうふうなレジームになるというのは、なかなか法的には担保されていないということで、私は、やはり法治国家ですので、法律できちんと、日銀に、物価のコントロール、二%のインフレ目標というのは達成する責任があって、しかし、その達成手段は日銀が自由に政府から選択できるんだということを明記するというのが中長期的には必要だというふうに思いますので、そのことを国会の方でも少し議論して深めていただければというふうに思っております。(津村委員「端的にお答えいただきたかったんですが、日銀法改正は必要とお考えですか」と呼ぶ)必要です。

 しかし、議論しないとあれですので、すぐ、もうあしたからやるというぐあいにはいかないと思いますので、世界のいろいろな中央銀行の仕組みなども研究した上で、私自身としては、改正は、する方がインフレ目標の達成は容易になるというふうに思っています。

佐田委員長 津村君、挙手の上、お願いいたします。

津村委員 はい。失礼いたしました。

 二%ということを先ほどおっしゃられていましたが、岩田さんは、全責任を負う、マンデートだ、それを市場が信頼するからこそインフレ期待が上がるんだ、それについては現行の日銀法では不十分ということをおっしゃいましたが、これから中央銀行のトップ、副総裁につかれるとなれば、運用で、自分はこうやるんだ、全責任を負うんだということを明確にされることで、ある意味では、岩田さんのおっしゃる今の法の不備といいますか、そこを補っていかれるということだと思います。

 そこで、お伺いしたいんです。

 一つは、二年とおっしゃるのは、この就任の三月から二年後、つまり再来年の春ということでよろしいかというのが一点。

 それから、もう一つは、全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。

岩田参考人 それは当然、就任して最初からの二年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれがいいのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。

津村委員 二年間というのは、二年後の春、つまり、二〇一五年の春の消費者物価の上昇率二%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね。

岩田参考人 それで結構でございます。

津村委員 私は、失敗してほしいと思っているわけではありません。ぜひ、二年間で頑張っていただきたい。

 しかし、任期は五年ございます。そうしますと、二年後に目標を達成した残り三年間、ここも大事な職責があるわけで、いわゆる出口戦略について、中央銀行のトップの方はしっかりとシナリオを描いていただきたい。大変大きな国債残高が積み上がって、しかも、長期のものを買おうとおっしゃっているわけですから、なかなかそれを売却するのは難しいと思います。

 そういう意味では、副総裁候補は、日銀の自己資本はマイナスになってもいいという御発言までされていますけれども、出口戦略について具体的なシナリオをお持ちですか。

佐田委員長 もう時間になっておりますので、簡単に、簡略にお願いします。

岩田参考人 はい。

 出口戦略をするためには、国債を、まず売りオペをするというよりも、日銀当座預金の付利を引き上げていって銀行の信用創造を少し抑えるというのが最初の常道だというふうに思っています。

 それからもう一つ、金融システムの安定化をさせるためにこそ、銀行等にはもう少しデュレーションを短いものにしていただきたい。三年ぐらいまでにしていただきたい。そのためにこそ日本銀行は長期国債を買う、そのかわり短期の国債を民間には持っていただく。

 そのことをうまく進めるためには、やはり物価連動債を、これはインフレヘッジになりますので、ぜひ発行を再開していただきたい。そうすれば、投資家はインフレヘッジのできる国債を持つということになって、金融システムは安定しますので、出口戦略が非常にやりやすくなるというふうに思っております。

津村委員 終わります。

佐田委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 日本維新の会は、改革をとにかく前に進めていく、そして地方の自立を実現していく、そういった基本的な考え、哲学を持っておりますので、本日は、そういった考えに立って質問させていただきたいと思います。

 さて、特殊法人や霞が関の改革が、スピード感があるかどうかは別として、ある程度進んでくる中で、日銀の組織、これはなかなか進んでいかないということが言われておりますが、日銀の組織の評価と、そして、その改革のあり方について、お考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。

岩田参考人 私が一番懸念しているのは、どうも日本銀行が、物価の安定あるいは一%とか二%とかそういうインフレ目標達成を金融政策だけではなかなかできないという立場に立っている。やはり、世界のインフレ目標国のように、物価の安定は責任を持って日銀がやるんだ、中央銀行がやるんだ、そういうような考えをもう少し持っていただきたいというふうに思っておりますので、それが組織上の問題でそうなっているのかどうかよくわかりませんが、私、そういうふうな考え方も、もう少し柔軟になってほしいなという気持ちは持っております。

阪口委員 岩田候補の、とにかく、そのときの経済や政府の政策のせいにはせず、日銀の責任で二%を達成する、この覚悟、これは大変にすばらしいものだと思います。

 また、先ほど、それが二年という期間内に達成されなかった場合には責任を負うんだと。このことも、ある意味、きょうは、市場を動かす上での大きな御発言であったかと思います。

 一方で、本当に、黒田総裁候補、そして岩田副総裁候補の考え方というのは、これまでの日銀の考え方とはかなり異なるのではないか。そして、理事、局長等、白川総裁を支えた方々が日銀の組織の中枢にいるわけでして、かなり猛烈な抵抗もあるのではないかと思います。

 そのあたり、組織のトップの一人として、これから仕事をしていく上でどのようにマネジメントをしていくのか、その手法と、また、覚悟についてもお聞かせをいただきたいと思います。

岩田参考人 私は、こういうマーケットの流れがあって、安倍首相のリーダーシップも非常にある中で、この動きをとめるようなことは日本銀行の今の方もなさらないというふうに思っておりまして、おっしゃるような何か抵抗というようなことは余り予想していないので、今のようなことを余り考えたことがないということで、皆さん一丸となって協力する体制に変化していただけるんじゃないかというふうにもともと思っておりますので、その点は余り心配しておりません。

阪口委員 抵抗がない方がいいんですけれども、我々は、常に危機管理、そして最悪の事態も想定をしなくてはいけない。現実に、やはり、外部から乗り込んでいった場合、仕事を進める上で、外部にいてできると思っていたことがなかなか難しいということはあり得ると思います。

 例えば、これまでの日銀のさまざまなスタッフあるいは局長、理事の中で岩田先生の味方になってくれるような方々というのは、実際、今、中にいるんでしょうか。チームを組んでやっていけそうな、そういった方が今いるのかどうかということについてもお伺いをしたいと思います。

佐田委員長 持ち時間は終了しております。

岩田参考人 そういう中のことまでは、私、全然存じ上げないので、それはちょっと答弁ができないんですけれども。

 ただ、やはり、本当にこの流れをとめないためには、もう一つ、経済財政諮問会議というところで、総裁は出席されるわけですので、そこでかなりの説明責任を果たさなきゃいけなくなってきますので、その説明責任を果たせないようなことには絶対にならないんじゃないかというふうに、むしろ、委員よりも私は楽観しているんですけれども。

阪口委員 終わります。ありがとうございます。

佐田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 岩田規久男候補者につきましてお伺いをさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 今、物価安定目標二%達成、これはマンデートだ、義務だ、こういうお話でございました。

 ただ、法的担保がないとなかなか市場の信認は得られないということなんですが、そうしますと、日銀法の改正、法改正をしないとこの二年以内達成というのは難しい、こう思っておられるんですか。

岩田参考人 難しいというよりも、日銀法を改正していただいて、まあ、私が言うような改正をしていただかないと困りますけれども、それの方が早まるということは間違いないというふうに思います。

 要するに、予想インフレ率の上がり方なんですけれども、それはやはり日銀法を改正していただいた方が早いということで、より容易になる、あるいは確実性が増すというふうに、何事でも不確実性ですので、不確実性が非常に低下するというふうに思っています。

大口委員 法改正をした場合としない場合で、どれぐらい期間は違うんでしょうか。

岩田参考人 そこまで計量的にまだはっきり申し上げるほどの研究実績はないんですけれども、去年、バレンタインショックと言われて、二月十四日に一%めどをやったというときと、それから、今回のいわば安倍ショックで、何もしないのに予想インフレ率がすごい上がり方をしています。

 ですから、そういう金融政策の転換ということは、きちっとマーケットが信用するとかなり早くはなると思うんですが、それによって何カ月違うかというところまで経済学で言えるほどのものはまだないけれども、早まるということは間違いないんじゃないかというふうに思っています。

大口委員 金融政策、金融緩和でそれこそ二%はできる、こういうことなわけですけれども、マネタリーベース、どれぐらい考えておられるのか。

 それから、資産の買い入れ、どれぐらい考えておられるのか。今、二〇一四年から二兆円の長期を含めて毎月十三兆円、それで、百十一兆円、二〇一四年以降続ける。これの前倒し、あるいは、もっと根本的に変えるということをお考えでしょうか。

岩田参考人 まだ、幾ら、どのぐらいにすればいいかというのは、むしろ、いろいろな仲間の研究者がいるので、今計算してもらっていまして、私の計算と突き合わせたいというのを今週から来週にかけてやりたいと思っているので、幾らにマネタリーベースをすればいいかというのはちょっとお答えできないんですが、かなり大きいということは間違いない。

 それからもう一つ、現在の資産買い入れ等基金ですか、あの方式ですと、自分で買うんですが、償還して戻ってきちゃうのがあって、日銀がネットでマネタリーベースをどれだけふやすか、あるいは、ネットで差し引き資産高がどれだけふえるかが見えないんですね。

 そのためには、やはり、長期国債は償還する、それで、ネットで少なくなってしまう分を補うような政策をしながら、ネットで差し引きマネタリーベースがどれだけふえるかを見なければいけないということで、その点も、実際の金融政策では、少し改める必要があるんじゃないかというふうに思っています。

大口委員 候補者の著書の中で、中央銀行のガバナンス制度、これを取り入れなきゃいけないということで、中央銀行、日銀の改革ということを訴えておられるのですね。

 その中で、政府は新日銀法を改正して、政策目標設定の権限を日銀から取り戻し、金融政策の目的としてインフレ目標を設定し、日銀にその目標達成の義務を課すということ。これはおっしゃったところです。そして、日銀の金融政策を監視、評価する第三者機関を創設すべきである、こういうこともおっしゃっています。この点についてはどうなのか。

 あるいは、今、運用で日銀の改革ができることはどういうことなのか、お伺いしたいと思います。

岩田参考人 今言ったようなのは、なかなかすぐできないと思うんですね、私がそう思っていても、すぐ賛成してくれるということではないので。ただ、中長期的には、私はその信念は変わっておりません。

 そのモデルになるのは、私は、イングランド銀行を念頭に置いています。

 イングランド銀行は、非常にガバナンスがしっかりして、中央銀行の実際の実績を評価する第三者委員会もありますし、あるいは、二%を目標にするけれども、上下一%を超えた場合には、財務大臣に向けてイングランド銀行はきちんと詳細な説明をしなきゃいけない。あるいは、いつまでに二%に戻すのか、なぜ二%を離れたのか、二%に戻す手段は何かということをきちっと説明する。

 私、ずっとその財務大臣宛ての中央銀行の書簡を読んでいますけれども、非常に説得的で、丁寧で、感心しておりますので、そういう仕組みを、それはできるだけ早くできるんじゃないかというふうに思っておりますので、中長期的な課題として考えております。

大口委員 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 岩田参考人にお伺いいたします。

 きょうは、日銀法改正、あるいは、二年以内に達成できなければ職を賭すというかなり踏み込んだ発言をしていただいて、私自身としては、これはかなり踏み込んだ発言で、評価ができるのではないかなというふうに思っております。

 例えば、二年、達成するための手段として、昨日、黒田参考人に伺ったところ、日銀券ルールについて見直すことも検討対象だというふうに言っておられましたけれども、その点、岩田参考人はどういうふうに考えておられますか。

岩田参考人 日銀券ルールは、日銀券の残高ぐらいに、長期国債ですけれども、国債残高を抑えていくということですが、FRBは、最近ちょっと見ていないんですけれども、一年ぐらい前のデータを調べると、銀行券の一・五倍まで国債を買っております、日銀のような制約を設けていないということで。

 要するに、物価の安定のために何ができるか、国民経済のために何ができるかという視点で考えていけばいいので、そうすると、よくそれは財政ファイナンスとかいろいろ言われますが、インフレ目標というのは二%を達成するまでにやるので、政府がそれ以上国債を買ってくれと言っても買わないというのが、これがインフレ目標の政策の意味です。

 政策手段は日銀が持っている、達成目標は二%、ですから、そこまでしか国債を買いませんので、財政ファイナンスになって金利が高騰して財政は破綻するとかいう懸念は、むしろない。

 そういう懸念はないということを市場に伝えながら、どれだけ国債を買っていけばいいかを決めるということだというふうに思っています。

浅尾委員 金融政策の手段は、今おっしゃったように、目標を達成するためのあくまでも手段ですから、幅広ければ幅広いほどがいいと。

 現行の法律を読んでも、為替の介入とは別個に外債を買うということは現行の日銀法でもできるわけでありまして、これは政府の事務の取り扱いとしてではなくて、現行法上もできるわけでありますけれども、このことについて岩田参考人は、やるやらないはまた手段ですからそのときに判断すればいいと思いますが、外債購入についてどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。

岩田参考人 既に、レジーム転換が予想されるだけでも、予想インフレ率が、今言ったように、もう一・一六まで上がってきているというような状況で、レジーム転換はかなり力強いということですね。そういう中で今までよりも金融緩和をすれば、必然的にある程度の円安になるのは、これは経済メカニズムで、当然です。したがって、何か円安誘導と世界に思われるような外債をわざわざ買う必要はないというふうに私は思います。

 ただ、何か、これはしないよ、あれはしないよと、そういうことを事前に中央銀行が縛ってしまうというのは、目標を達成する上ではぐあいの悪いことだというふうに思いますので、差し当たりは外債を購入しなくても二%達成はできるだろうけれども、本当に何をやってもできないという場合には、やはり手段としては、とっておくべきだと。

 ただ、その場合には、円安誘導だというような海外の批判をどう説得していくかというもう一つの課題はあると思います。

 そういう意味で、手段は縛らないけれども、差し当たりは、長期国債を買って、しかも期限の長いのを買っていって市場の動向を見てみるというのが、最初のやるべきことだというふうに思います。

浅尾委員 一部に、岩田参考人に実は総裁の就任要請があって、御自身が副総裁の方を希望されたというような話がありますが、それが事実であるかどうか、そして、そうだとすれば、なぜそういうふうにされたのか、伺いたいと思います。

岩田参考人 それはちょっとお答えはできないんです、要するに、プライベートのいろいろな思いがあるということで。

 私の人生設計としては、ことしの三月で定年しますので、そういう定年後の設計を描いていたところにこういうことになってきたということで、非常に戸惑いの中で自分のプライベートの生活とパブリックな生活をちょっと考えたということで、それを要請したとかなんとかという事実はございません。

浅尾委員 終わります。

佐田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、なぜデフレになったのかということでありますが、先ほど来のお話を聞いておりますと、従来の日銀の金融緩和が不十分であった、その上に、デフレ予想が生じてデフレが長期化した、こういうお話をされました。

 私は、それ以外、以外といいますか、もっとベースにあるのは、需要の落ち込みというものがあるというふうに考えておりまして、それは、従来の賃金の低下、これが十年間で二十二兆円という落ち込みをしておりますし、それから、政府の側からさまざまな増税や負担増というのが庶民の側に行きまして、実は、私、計算しますと、小泉、安倍内閣で十二・七兆円、さらに、昨年の三党合意で二十兆円という負担が家計にかかるわけです。

 そういうものが全体の需要を落ち込ませて、その結果デフレという事態が生じているのではないかというふうに思っておりますが、岩田参考人は、需要の面というものをどのように位置づけておられるのか、そこをお聞きしたいと思います。

岩田参考人 まず、最初にデフレがどうして起こったかということですが、一番最初は、一九九二年ごろに、ちょっとその前ぐらいから、日本銀行が非常に金融引き締め政策を急激に実施しました。これによって資産価格の暴落が生じました。

 資産価格が暴落する前に、企業も非常に大きな借金をしておりましたので、資産価格が暴落すると企業のバランスシートは非常に悪化します。それで、返済もできないということになると今度は銀行のバランスシートも悪化するということで、バランスシートの調整をするためには、バランスシートというのは要するに自分の資産がなくなることですので、資産を回復しないとリスクが非常にとれなくなりますので、みんな貯蓄に励み、借金を返済するということを企業もするわけです。

 そうすると、貯蓄に励むということは、内部留保をして、金融資産か何かで運用して物には支出しないということになって、需要が落ち込んでデフレになる。

 デフレになると、企業は収益が上がらないので、どうしても賃金に下方圧力が働くんですが、正社員は何とか初めはなかなか下げないようにしますが、非正社員とかそういった人を下げていく、あるいは失業者がふえるということで、格差も拡大してくるということです。最初にそういうふうにデフレになってくると格差も拡大するという、それはございます。

 そこで、議員がおっしゃるように、そのようにして需要は落ちるので、そうすると、その需要が落ちている中で、金融政策が、もっとインフレを上げてやって、企業にとっても収益が上がるようにしてあげないといけないわけですが、それをしない中で増税すればますますデフレ圧力が働くということは、おっしゃるとおり。それによって可処分所得が減るということも、メカニズムは同じです。

 物価を二%ぐらいというのは、これは世界の標準です。別に高いインフレでも何でもないんですね。そういうふうにすると、企業活動はよくなってきて、そんな超円高も進まなくなるというので、需要が回復してきて、雇用が回復してくる。それによって賃金もやがて上がってくる。そういうメカニズムをこれからつくっていく。

 インフレターゲットの国というのは、一九九〇年ぐらいから二十年そのメカニズムを使っているわけで、日本経済よりもずっといいパフォーマンスを上げているということです。

 まず、インフレを二%ぐらいにして、実質が一%ですと、三%名目成長になります。これをやると税収を上げる効果が非常に大きくなりますので、まずそれを使って税収を上げてみて、それでも財政再建がなかなかできないというところを見きわめてから消費税増税で遅くはないというふうに私は思います。

 まず、インフレターゲットと政府の成長戦略によって名目成長率を三%ぐらいに少なくとも上げる、それによって税収を上げるということを先にやっていけば、財政再建の道も出てくるし、雇用も安定し、賃金もやがて上がってくるというメカニズムが作用するんだというふうに期待しています。

佐々木(憲)委員 あと一、二問質問したかったんですけれども、もう時間が来てしまいましたので、以上で終わります。

佐田委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。

 まず、日銀法改正の話が随分出ておりますけれども、現在の日銀法の中での副総裁としての職務、これはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

岩田参考人 日銀法を読みますと、いろいろな銀行の業務の掌握をしなきゃいけないというふうに書いてあるので、その内容は具体的にはちょっとわからないんですが、基本的には、私の役割というのは、ほかのこともいろいろやらなきゃいけないんだと思いますが、やはり、マーケットやいろいろなマスコミに対してきちっと説明責任を果たすだけの理論的根拠、実証的根拠を持って、その上で総裁を支えていき、審議委員の方にもそれを説得していくのが一番の役目だというふうに考えています。

小宮山委員 日銀法の中では「役員及び職員」という項目の後にこのことを書いておりますし、また、その後の、任命のところに関しましても、当然、国会の同意があってということでございます。

 今回、随分と、報道が先行したというよりかは、お流しになられた。インタビューに応えるということをされております。やはり、まず、現行法をきちんと守っていただくこと、ぜひこの点は、日銀でございますので、現在の法律に従っていただきたいと思います。

 また、デフレ脱却、それは必要ではありますけれども、インフレ目標。

 二十四年度末で七百九兆円に上る膨大な公債残高に対して、一%金利が上がれば、年七兆円もの金利負担がふえる。これは、住宅ローンであったり変動金利を抱えている方々には大変大きな影響でもあります。

 また、今までもですけれども、金融緩和を進めることではあっても、日本を支える中小零細、個人企業、こういった方々がすがっている金融のところは、貸し渋りであったり、さまざまなところで回ってこない、そういったことも多々ございます。

 結局のところ、銀行が貸したい相手である大手企業は、多額の内部留保があり、投資したい場面でもわざわざ借金をせずにやりくりができるということで、先ほどからありますけれども、銀行のバランスシートや、また、そういった貸したいところに対してのバランスシートがよくなっても、実体経済にはつながっていかないんではないか、そういった懸念もございます。

 この点に関して、簡潔に御意見をお願いします。

岩田参考人 金利がどうなるかというのは、名目金利ではなくて、名目金利から予想インフレ率を引いた予想実質金利、この実質的な金利がどう動くかが中小企業にとっても資金調達が容易になるかどうかということです。

 現在のところ、アベノミクスの初めから、ずっと予想実質金利は、実は、かなり下がっております、名目金利も下がっておりますけれども。

 ですから、将来は、経済がよくなれば名目金利は少し上がると思いますが、今デフレギャップがあるときには、生産の拡大要素があるために、所得がふえて貯蓄がふえることによって、貯蓄から、国債を買ったりする、あるいは企業へ資金が流れるということになりますので、実質金利は基本的に上がらないというのが経験的に言えるので、それほど心配をする必要はないというふうに思っています。

小宮山委員 心配することはないといっても、過去に、やはりそうやって、結局のところは、日本の企業、本当に地域を支えてくれるところには回ってこないという現実がある。この声は、町に出れば本当によく聞きます。

 また、外債を買うということも、念頭に、大胆な金融緩和という中では選択肢としてあるかと思いますけれども、きのうもそんなようなことに触れられておりますけれども、結局、外債を買えば、日本の国民の預金が海外での資金調達に使われることになって、日本のデフレ解消や景気回復にはつながらないんではないかと懸念をしております。

 その点に関して簡潔に一言いただきまして、終了したいと思います。

佐田委員長 時間が来ております。簡潔にお願いいたします。

岩田参考人 今委員のおっしゃったことは、むしろデフレ要素が蔓延しているときに起こることで、これから円安になれば、製造業が海外に脱出するというようなこともなくなって地方経済も潤うし、あるいは、海外旅行ばかりだったのが国内旅行が有利になるということで地方経済も潤ってくるということで、少し辛抱強く見ていただければ、今おっしゃったようなことの心配はなく、やっていける。

 景気がよくなっているというのは、今まで、依然としてデフレ脱却をしていない中で、うまく回らなかったということだというふうに思います。

小宮山委員 以上です。

佐田委員長 これにて岩田参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 岩田参考人、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

    ―――――――――――――

佐田委員長 これより中曽参考人の所信に対する質疑を行います。

 それでは、秋元司君。

秋元委員 自民党の秋元司でございます。

 時間がないので、手短に質問させていただきたいと思います。

 まず冒頭申し上げたいのは、一消費者から見れば物価は安いにこしたことがないわけでありますけれども、余りに長きにわたるデフレの中でそのことが大きな悪影響を与えてしまったということで、今現在、デフレ脱却ということが、ある意味、国民にもう理解されている、私はそういうふうに思っているわけであります。

 だからこそ、この機を逃すことはない、積極的に、私は、日銀に対しては、デフレ脱却、二%の物価安定目標に向けて、早期に達成する、その思いで頑張っていただきたい。まず冒頭申し上げたいと思います。

 その中で、二%の物価安定目標達成、これを早期に達成するためには、何といっても、今回、日銀の同意人事の中で、唯一のプロパーであって、そして、実務経験もあり、さらにまた、日銀内部をよく知っていらっしゃる中曽さんでありますから、極めて大切な役割じゃないのかな、そういうふうに私は思っているわけであります。

 その中で、中曽さんに三点の質問をさせていただきたいと思います。

 一点目は、まず、デフレの解釈でございます。

 デフレは、特にこれは安倍総理も申し上げているところでありますが、よく貨幣的現象だということが言われております。そのことに対する所感をお伺いしたいと思います。

 二点目は、一九九八年以降、先ほどからお話が出ておりますけれども、日銀は一生懸命ゼロ金利政策または量的緩和政策等を行ってきましたが、結果的にデフレ脱却ができなかったわけであります。その理由は何であるかということをお伺いしたいと思います。

 あわせて、その際、長年日銀の組織の人として働いていらっしゃったが、デフレ脱却ができなかった理由として、日銀に何が問題があったのか、その辺をお伺いしたいと思います。

中曽参考人 お答え申し上げます。

 まず、デフレは貨幣現象かという点でございますが、そういう学説、学術上の考え方があることは承知しております。

 デフレの克服に向けまして金融政策が果たすべき役割は大変重要だというふうに思っております。我々としては、二%の物価安定目標に向けて全力を尽くしてまいりたいというふうに思っています。

 その上で、物価だけではなくて、経済の成長と物価上昇の好循環、効率をつくり出していくことが大変重要であるというふうに思っていますので、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みが進展すれば、金融政策の効果は一層、その分だけ、なお強まるというふうに思っております。

 これまでデフレ克服が十分にできなかった理由、基本的には、デフレの背景というのは、九〇年代以降、需要が足りなかった、そこへ向けて、リーマン・ショックの後に景気が大きく落ち込んだ、そういったことが大きかったと思います。金融政策面でもいろいろやってきたというふうに思いますけれども、なお工夫の余地があったのかなというふうに思います。

 私どもは、そういうことも踏まえまして、今後、新しい政策委員会のメンバーで、先ほども申し上げましたけれども、日本銀行の全ての機能を活用しながら、前例にとらわれることなく、いろいろな政策手段というのを考えていきたい。そのために、私としては、総裁をしっかりと補佐してまいりたいというふうに思っております。

秋元委員 最後に、日銀の組織の問題として、いわゆる金融政策決定委員会、ここが全ての政策を決めるところでありましょうけれども、八人のメンバーがいらっしゃるということでありましょう。

 トップの権限が極めて弱いんじゃないのかということをよく指摘されることがあるんですが、その点に対する御感想は何かございますか。

中曽参考人 これは合議制でございまして、経済の実情、経済、物価の見通しなどをよく踏まえながら議論をしておりますし、そういったこれまでの議論というのは、今後とも踏襲をしていくことになるというふうに思います。

 いずれにしても、組織運営という点では、私に期待されているのは、委員御指摘のとおり、日本銀行に長く身を置いてございますので、そういった経験を十分に生かして、業務、組織運営に関して、日本銀行法に定められた、法律に定められたところに従いまして、職員の力を結束して、全力で総裁をしっかりと補佐していきたい、この点を改めて申し上げておきたいと思います。

秋元委員 終わります。

佐田委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介でございます。

 中曽さんに幾つか御質問をいたします。

 今回の人事案の中で、中曽副総裁候補、私は、非常に難しいお立場、非常に重要なお立場だと思っております。

 と申しますのは、今盛んにレジームチェンジという言い方をされていますけれども、その考え方に立つならば、まさに白川さんのもとで、いわばアンシャンレジームのもとで理事をお務めになってこられたわけで、その補佐のあり方も含めて問われているわけです、黒田さん側から見れば。

 一方で、今回の人事は、よくバランスのとれた人事という言い方をされる方もいますが、逆に言えば、必ずしも全ての方が同じ意見、同じ考え方というわけではなくて、ある種のバラエティーといいますか、中曽さんと黒田さんと岩田さんのそれぞれの個性に着目して、お考えの違いがあるからこそ非常にバランスがある、そういう見方で評価をされている方もいらっしゃると思います。

 そこが、これまでの、総裁、副総裁が理事を選んでいく、あるいは理事がさらに局長をということではなくて、政治任用として今回副総裁が、決して総裁候補から選ばれたわけではなくて、政府から副総裁候補として指名をされ、また、独立の国会同意人事としてここに立たれているということの意味合いだと思いますので、ぜひ、その政治任用された中央銀行員というお立場、非常に難しいお立場と思いますが、しっかりと発信すべきことは発信していただきたいなと、期待を申し上げておきます。

 そうした中で、昨日、黒田さんの所信、そしてその後の質疑の中で、白川日銀に対して大変厳しいコメントも黒田さんの方から出てまいりました、お聞きになっていたかと思いますが。白川さんのもとで理事をお務めになられていた中曽さんとして、どう聞かれていたのか。もし反省の弁のようなことがあるならばお聞きしたいですし、いや、そうではない、黒田さんにはこういうこともわかっていただきたいということがあれば、伺いたいと思います。

中曽参考人 白川総裁個人への評価はもちろん差し控えたいと思いますけれども、日本銀行のこの五年間を振り返ってみますと、幾つか指摘ができようかと思います。

 まず第一は、リーマン・ショックの後に経済が大きく落ち込んだ局面がございましたが、この局面におきましても、我が国の金融システムを安定確保することができたのではないかというふうに思います。この点は評価をしていただいていいのかなというふうに思っております。

 第二に、長目の市場金利と各種リスクプレミアムの縮小を促すという観点から、包括的な金融緩和政策を導入いたしました。

 そして、第三に、金融機関の一段と積極的な行動、あるいは、企業や家計の前向きな資金需要を喚起する、こういう観点から、成長基盤強化やその貸し出し増加を支援するための新しい供給の仕組みをつくりました。

 このように、日本銀行はデフレ克服に向けて多くの施策を実施してまいったことは事実でありますが、現在、消費者物価が前年比は引き続きゼロ%近傍で推移をしている、そういう意味ではいまだに結果が出ていない、こういう事実は重く受けとめる必要があるかなというふうに思っております。

 今般二%の物価目標が定まりましたので、この目標をできる限り早期に実現する、これを目指して全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

津村委員 私が聞いたところでは、きのうの黒田さんのお考えとこれまでの日銀の考え方の一つの大きな違いは、デフレ脱却というのは、複数の主体がそれぞれ努力をしていかなければいけない、日銀だけで必ずしも一〇〇%できるものではないということだと思いますが、黒田さんあるいは岩田さんは、いや、全責任は日銀にある、あるいは一義的には日銀にあるという言い方をされています。

 そこは、中曽さん、どうお考えですか。

中曽参考人 金融政策の果たすべき役割は大きいというふうに思います。

 その上でなのですけれども、やはり、非常に緩和された金融環境というのを、経済の主体ですね、家計ですとか企業ですとか、これが活用できるような状況になるということがあれば、緩和された金融環境、緩和的な金融政策というのは、なお一層効果を発揮することができるというふうに思います。

 したがいまして、政府との連携を強化しながら、一体となってデフレ克服に向けて努力していくことがこれから求められているんだろうというふうに思っております。

津村委員 終わります。

佐田委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人と申します。

 これまでの白川体制下で行ってきた日銀の金融政策が結果的にはデフレ脱却に導くことができなかったということについて、その責任の明確化ということを視点に、私、お伺いをしたいと思うんです。

 先ほど答弁をされた岩田候補は、とにかくこの責任は日銀が負うべきである、二%のインフレ目標については、ほかの情勢に責任を負わせるのではなくて、自分たちの政策の結果として責任を負うんだということを明確にされました。

 また、達成できなかったときには職を辞すというところまで踏み込んで覚悟を示されて、そういった覚悟こそが市場の信頼につながるんだと、そういった踏み込んだ考え方を示されました。

 この点について、お考えを伺いたいと思います。

中曽参考人 二%という物価安定の目標は、日本銀行が金融政策決定会合において定めたところであります。これは、政府との共同声明にも明記したものであります。

 みずから決めたということにおきまして、これは大変重い約束だというふうに認識をしております。

 ですから、みずから決めた以上、金融政策が果たすべき役割を責任を持って遂行していきたいというふうに思っておりますし、それを対外的にしっかりと説明するということで物価安定の目標をできるだけ早期に実現したい、そういうふうな方向で全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

阪口委員 今、大変に重い責任があるということをおっしゃいましたが、例えば、目標が達成できなかった場合、民間であれば、トップあるいはトップを支える立場の人たちは辞任をするということが避けられないと一般的には思います。また、我々議員も、政権目標を達成できなかった場合には、国民によって、選挙という大変に厳しい関門があるわけです。

 一方で、中曽さんは、日銀における大変なエリートであられます。将来を嘱望されている方だと思いますが、目標を達成できなかった場合にどの程度の覚悟を示すのか、これは大変に世間が注目していると思います。

 自分の職責をどうしていくのかということについて、もう少し踏み込んだお答えをいただきたいと思います。

中曽参考人 私自身、もし任命されればということでございますが、政策委員会の一角を占めることになりますので、まず、そういう立場として、英知を結集して、知力の限り、自分として、議論に有効に貢献できるように頑張っていきたいというふうに思います。

 また、副総裁という立場ですから、これは、総裁をしっかり補佐していくことによって職責を全うする、そういう部分もあると思います。

 いずれにしましても、繰り返しになりますが、二%を達成するということは大変重いお約束でございます。約束であります以上、この達成に向けて、今申し上げたような意味で、全力で努力をしていきたいというふうに思っております。

阪口委員 特殊法人や霞が関の改革というものも、スピード感はともかく、進んできていると思いますが、その一方で、日銀は、その範疇外といいますか、大変に改革がおくれている組織である、このような評価も一般的にはあるように思います。

 中曽さんに関しては、ずっと日銀の中にいらっしゃったわけですが、日銀の組織の評価と、そして、今申し上げた、目標を達成することを踏まえたその改革のあり方について、また、地域に目を配る政策を実行していくということも踏まえて、お考えを聞かせていただきたいと思います。

佐田委員長 時間になっていますので、簡潔にお願いします。

中曽参考人 私どもは、公的機関の一員として、日本銀行法で定められております適正かつ効率的な業務運営、この実現を目指して、さまざまな努力をしてきたというふうに自覚をしております。

 これは、人員面の削減、それから調達面の効率化、そして不要な不動産の売却、こういった面で業務、組織運営の効率化を進めてきておるというふうに思っております。

 当然、今後とも、いろいろな工夫をしながら、業務、組織運営の一層の適正化、効率化を進めていくことがもちろん重要というふうに思っております。

阪口委員 終わります。

佐田委員長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、ことし一月二十二日の政府、日銀の共同声明、そして、決定会合で決定した政策、これにつきまして、二%達成、これは、日銀の単独責任なのか、あるいは、幅広い主体との共同責任なのか、政府との共同責任なのか、そのことが一つ。お願いしたいと思います。

 二点目に、この金融緩和の手法でございますけれども、二〇一四年には百十一兆円ということで、それ以降ずっとこれを維持していくということですが、これについて、大胆な金融政策ということからいって、変える必要があると考えておられるのか。

 三点目に、二〇〇〇年の八月のゼロ金利解除、二〇〇六年三月九日の量的緩和の解除、これはどう評価されているのか。

中曽参考人 日本銀行だけで達成できるかということでありますが、その二%の物価目標というのは、私どもが政策委員会で決めたことでございます。したがいまして、このデフレ克服に向けて、私ども、つまり金融政策が果たすべき役割は極めて重要だというふうに思っております。この二%の目標実現に向けて、全力を尽くしたいと思っております。

 もちろん、物価だけでなく、経済成長と物価の上昇の好循環をつくり出していく必要がありますから、そこは、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取り組みが進展すれば、その分、金融政策の効果は、なお一層高まるというふうに考えております。

 それから、打ち出した金融政策、今後につきましてでありますけれども、なお一段の工夫の余地があるのではないかというふうに思っておりますので、これは所信の中でも述べさせていただきましたとおり、日本銀行のリソースを結集して、前例にとらわれることなく、いろいろ考えていきたいというふうに思ってございます。

 それから、最後の点、二〇〇〇年及び二〇〇六年の解除のときのお話でありますけれども、これは、当時は、その時点で入手可能でありました経済データなどをベースに判断をしたということだったと思いますけれども、結局、ITバブルの崩壊ですとか、二〇〇六年以降はリーマンの破綻ということが生じまして、結果的に大きく需要が落ち込んでしまったという事実はございました。

 その部分に関しましては、いろいろな御意見、御批判もあると思いますので、こういった点を生かしながら今後の金融政策運営に努めてまいりたい、つまり、得られた経験、知見などを今後の政策運営にぜひ反映させていきながら考えていきたいというふうに思っております。

大口委員 二%達成につきまして、黒田候補者あるいは岩田候補者は、二年等々、期限を明確にしております。それに対してどうお考えなのか、その達成に対してどういう覚悟でおられるのか、お願いしたいと思います。

中曽参考人 日本経済の現状でございますけれども、現在、回復軌道に復する条件が整ってきているのではないかというふうに思います。この前向きな動きが生まれ始めている今がデフレからの脱却に向けた好機であるというふうに捉えております。したがいまして、この好機を逃すことのないよう、強力な金融緩和を進めてまいりたいというふうに思っております。

 達成時期につきましては、世界経済などさまざまな要因にも左右されますので、緩和的な金融環境、企業とか家計が活発に活用するほど金融政策の効果が大きくなります。その分、デフレ脱却は、より早く、より確実なものになるというふうに考えております。

 ですから、さまざまな不確実要因に左右される部分もありますが、私どもは、早期に二%を達成することができるよう、全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

大口委員 やはり、賃金の上昇でありますとか、あるいは設備投資が活発になりますとか、そういう環境というのは非常に大事でございます。

 そこら辺について、どうお考えでしょうか。

中曽参考人 おっしゃるとおりだというふうに思います。

 結局、賃金、物価が増加する、そして企業収益が改善する、こういった、いわば国民生活がより豊かになる、そういう状況の中で好循環が達成されていく、こういう状況をつくり出していかなくてはならないというのは、御指摘のとおりだというふうに私どもも認識しております。

大口委員 ありがとうございました。

佐田委員長 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 きょうの中曽参考人の御答弁を伺っておりまして、もう皆さん聞かれておりますけれども、きのうの黒田参考人、そしてきょうの岩田参考人とずれがあるというふうに認識をいたしました。

 それは、黒田参考人も岩田参考人も、二年で二%は達成できる、それは目標だというふうに明確に言っておられますが、そのことについて中曽参考人は断言されていないように思います。

 それは、考え方は違っても合議体の日銀ですから別にいいんですが、考え方が違うのか、それとも二年間で二%達成できるのか、端的にお答えいただきたいと思います。

中曽参考人 先ほど申し上げましたように、達成の時期というのは、世界経済などさまざまな要因によって左右をされます。不確実性もございます。そういった要因に左右される部分が残ります以上、必ず二年でというところは言いがたいところがあります。

 ただ、私どもは、二%というのはお約束してございます。共同声明の中にも、極力早期にと明記してございます。これはお約束です。

 したがって、私どもは、その約束を達成することに向けて全力でやってまいりたいというふうに思っております。

浅尾委員 確認ですが、そうすると、若干幅があるという理解でよろしいですか、黒田さんや岩田さんとは。

中曽参考人 デッドラインについてはなかなか難しいところがありますけれども、極力早期にと、ここは意識がそろっているというふうに認識をしてございます。

浅尾委員 中曽参考人は、長らく日銀に勤めておられて、さまざま金融政策に携わってこられましたが、これまで達成できていなかったわけですね、その二%ということ、あるいは一%ということも達成できていなかったわけですが、今回、できるようになるのは、金融政策の中身を変えるからなのか、日本経済が持っている力が変わったからなのか、それはどちらの比重が大きいのか、伺いたいと思います。

中曽参考人 両方だというふうに思っております。

 つまり、マクロ的には、今、リーマン・ショックの後ある程度時間がたちまして、米国におきましては家計のバランスシートが回復する、あるいは、欧州の債務問題については最悪のシナリオは回避されるのではないか、そういう期待も出てきております。多少期待先行のところはあるんですけれども、これが経済の好循環に結びついていくのではないかという期待が今生まれているところだと思いますので、こういう機会を捉えて、実際に実体経済の面でも好循環が働いていくように、これは今、絶好のそのチャンスが訪れているのではないかというふうに認識をしています。

 したがいまして、このチャンスを逃すことのないよう、金融政策面でも強力な金融緩和を続けてまいりたい、そのように考えている次第でございます。

浅尾委員 過去、例えば十年とかの範囲で、今が唯一のチャンスなのか、そうでないのかについて伺いたいと思います。

 私、先ほどの、例えば、リーマン・ショックの後、日本の金融システムが安定していたという見方について、確かにそうなんですが、それには理由があって、非常に金融問題をきれいにした、結局、危ない融資がなかったから安定したということだと思いますので、今が唯一のチャンスなのかどうかということについては少し違和感があるんですけれども、今が唯一のチャンスだというふうに思っておられるかどうか、伺いたいと思います。

中曽参考人 過去にチャンスがあったかどうかという点につきましては、これは金融政策という観点に引きつけて見ますと、ある程度、もう少し工夫の余地があった、局面があったのではないか、そういう部分があるのは事実ではないかというふうに思います。

 金融システムにつきましては、九〇年代の後半の金融危機以降、非常に長い時間をかけて、バランスシートが、二〇〇〇年代の初頭くらいにかけて、ある程度これが過去のものになった。そういう意味におきまして、日本の金融機関、今は相対的に資産内容も健全ですし、信用仲介能力も損傷を受けてございません。

 そういう信用仲介能力がほぼ無傷でいるということは、デフレの克服に向けても大きな利点になると思いますので、私が申し上げているチャンスというのは、そういう点も含めてでございます。

浅尾委員 終わります。

佐田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、一言で物価上昇と言いますけれども、私は二つの側面があると思っております。

 一つは、需要が供給を超えて伸びることによって物価が上がるという現象。もう一つは、通貨が過剰に供給されて、必要量を超えてあふれ出るということによって通貨価値が下がる、そのことによって名目的に物価が上昇する。これは管理通貨制度のもとでは起こり得るというふうに思います。

 その二面がある、そういう認識はございますでしょうか。

中曽参考人 はい。そういう二面的な整理は可能だというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 私は、非常に気になりますのは、通貨価値が下落することによって名目的に物価が上がっていくという、いわゆるインフレですね、厳密な意味での、それにつながっていくことは非常に恐ろしいことになると思っております。

 例えば、建設国債を発行して全て日銀が買えばいいという発言も、安倍さん、昨年されておられましたし、輪転機をぐるぐる回して日本銀行に無制限にお札を刷ってもらうという発言もありました、お札を刷るのは日銀ではありませんけれども。まあ、そういう発言がある。

 今、国債を、直接引き受けは多分否定されると思います。しかし、大量に国が国債を発行いたしますと、それが今大量に銀行に保有をされておりますが、それを市中から買う、間接的な引き受けだと私は思いますけれども、それが大規模に行われれば行われるほど、これは通貨の供給というものが過剰に行われることになるのではないか。

 そういうおそれはないのかという点についてお聞きしたいと思います。

中曽参考人 まず、二%を実現していくそのプロセスにおきましては、これは若干繰り返しになりますけれども、企業収益の改善、あるいは賃金、雇用の増加、つまり、国民生活がより豊かになる、そういう状況を伴いながら物価上昇率が徐々に高まっていく、そういう好循環をつくり出していくことが大切だというふうに思っております。

 ですから、物価だけが上がっていくという状況というのは、これは適切ではないというふうに思っております。

 それから、国債の引き受けに関する御議論でありますけれども、これも、二%の物価目標の達成という観点からいいますと、金融政策面では、我々は、みずから決めたことを守っていく、金融政策の面から我々自身の努力を重ねていくということでありますが、一方で、御指摘のような国債市場の安定というのは、大変重要だというふうに思っております。

 つまり、金融政策は、これは、日本銀行が恐らく今後も大量の国債買い入れを行っていくということを踏まえますと、財政の面では、これは景気動向を踏まえた機動的な財政とのバランスをとりながらではありますけれども、中長期的な財政健全化の道筋への市場の信認を、これがしっかりと定着しますように、確保するようにすることが国債市場の安定という点から大変重要になる、これが金融政策の有効性にも大事な点であるというふうに認識をしてございます。

佐々木(憲)委員 終わります。

佐田委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。よろしくお願いいたします。

 中曽氏は、九八年の日銀法改正後初めて再任され今日に至っているというふうに認識しております。つまり、現在の白川総裁のもとでの日銀の考え方を体現されているということにもつながるかと思います。今までもたびたび指摘がありますけれども、積極的金融緩和を進める立場を表明されている黒田日銀総裁候補たちとはまた違った考え方、スタンスをお持ちなのかというふうに思っております。

 合議制ではございますけれども、場合によっては、このあたりは、調整をすること、また、行き過ぎた金融緩和というものに関してのさまざまな意見があるのかというふうに思っております。

 この点に関して、何かありましたら、簡潔にお聞かせください。

中曽参考人 物価目標二%の達成ということは既に政策委員会で決めた政策目標でございますので、今後の日本銀行にとっては、新しい体制のもとで、それをどうやって達成していくことができるのか、こういった議論をしていくことになるというふうに思います。

 私自身としては、政策委員会の一員としてこの議論に貢献したいというふうに思いますし、また、副総裁という立場をお認めいただけましたらでございますけれども、総裁をしっかり補佐していくのが自分に課せられた役割だということを認識してございます。

小宮山委員 為替相場は、貿易収支と資本収支によって上昇したり下降したりするのが本来の形だと思いますし、株価も、企業業績の反映と将来性への期待などから、投資などで、上昇するとか、まあ下落ももちろんありますが。

 今、通貨の価値が上がって、同じ価値のものを手に入れるにはより多くお金が回らなければならないとか、そういう意味では、金融市場というものが実体経済との乖離を起こしているのではないか。その中において、マネーゲームと言われるようなことに金融緩和というものがつながるのではないかということを指摘する方が大勢いますし、また、その中にいた方もいろいろな警鐘を鳴らしているものだと思っております。

 本来であれば、この金融政策というものが、中小零細企業で支えられているこの日本というもの、その経済に寄与しなければならないと考えております。貸し渋りであったり、せっかく銀行に回ってもそれが有効にされないのではないかという懸念。

 この点に関しまして、どのようなことをお考えになられるのか、お聞かせください。

中曽参考人 金融市場のお話がありました。

 長く金融市場に関係する業務に携わってきた立場から一言申し上げたいと思いますが、金融政策は、金融機関との取引を市場で行うことによってその効果というのが伝播してまいります。ですから、うまく機能する金融市場というのは、金融政策の実効性を確保する上でも大変重要な点だというふうに思っております。

 一方で、金融政策をいろいろ考えるということのほかに、金融市場の機能をいかに維持していくか、こういう観点も非常に大事ではないかなというふうに思っております。

 その上で、中小企業に関する言及もされましたので、この点を一言申し上げておきますと、確かに今世界経済の回復というのが起こりつつありますが、そうしますと、勢い、どうしても世界経済と結びつきの強い大企業に比べますと、中小企業、確かに改善のモメンタムというのは多少弱いように感じております。実際、私ども、企業とか経済団体からヒアリングをしますと、中小企業の景況感は厳しいですとか、あるいは価格競争が厳しい、こういった声は引き続き多く聞いてございます。

 したがいまして、日本経済におけます中小企業というのは非常に大きな役割を果たしているということを踏まえまして、私どもとしましては、今後とも、中小企業の現状把握にしっかりと努めてまいりたいというふうに思っております。

小宮山委員 この点に関しましては、現実に、回らなければならない外貨など、結局、日本に回らずに海外に流れるばかり、また、金融機関の中で融資を支店ごとにやるみたいな、そういったことではなく、やはり、現実に日本の国内が景気回復するためのデフレ脱却であるということを実現するために、ぜひ頑張っていただければというふうに思います。

 時間となりましたので、以上で質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

佐田委員長 これにて中曽参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして日本銀行副総裁候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

 中曽参考人、ありがとうございました。どうぞ御退席ください。

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佐田委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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