衆議院

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第16号 平成28年3月9日(水曜日)

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平成二十八年三月九日(水曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 河村 建夫君

   理事 松野 博一君 理事 御法川信英君

   理事 北村 茂男君 理事 丹羽 秀樹君

   理事 大塚 高司君 理事 薗浦健太郎君

   理事 笠  浩史君 理事 牧  義夫君

   理事 稲津  久君

      伊藤 忠彦君    大串 正樹君

      大隈 和英君    笹川 博義君

      田野瀬太道君    根本 幸典君

      橋本 英教君    宮澤 博行君

      渡辺 孝一君    神山 洋介君

      小山 展弘君    後藤 祐一君

      角田 秀穂君    塩川 鉄也君

      遠藤  敬君

    …………………………………

   議長           大島 理森君

   副議長          川端 達夫君

   事務総長         向大野新治君

   参考人

   (人事官候補者(人事官))            吉田 耕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  福島 伸享君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤 祐一君     福島 伸享君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官任命につき同意を求めるの件


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     ――――◇―――――

河村委員長 これより会議を開きます。

 まず、人事官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る四日の理事会において、萩生田内閣官房副長官から、内閣として、人事官に吉田耕三君を再任いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会の申し合わせに基づき、人事官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者(人事官)吉田耕三君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

河村委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、吉田参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、吉田参考人、お願いいたします。

吉田参考人 吉田耕三でございます。

 本日は、所信を述べる機会をいただき、まことにありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 国家公務員制度は、国の行政の円滑な運営を確保するための基盤となる重要な制度であります。戦後、憲法において公務員は全体の奉仕者と規定され、これを受けて、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に対して保障することを目的とした国家公務員法が制定されました。

 人事院は、この国家公務員法を実施するため中央人事行政機関として設置され、人事行政の公正の確保及び労働基本権制約の代償機関としての役割を担うとともに、中立第三者的な人事行政の専門機関として、調査研究や諸施策の実施などの役割を担ってきています。

 したがって、人事院を構成する人事官には、全体の奉仕者たる国家公務員としての強い自覚と高い倫理観が求められるだけでなく、職員の利益保護の視点を持ちながら、広く国民各層や関係各方面の御意見を伺いつつ、誠実かつ公正に職務に当たることが求められていると考えます。

 公務員制度については、長年その改革が重要課題とされてきましたが、平成二十六年春に、社会経済情勢の変化に対応することと公正な人事行政や労働基本権制約の代償機能を確保することの両面に配慮した国家公務員法の改正が行われました。今後は、成績主義の原則のもとで、公務員が使命感を持って全力で職務を果たすことができるよう、有為な人材を確保し、適切な処遇や勤務環境を整備していくことが重要となりますので、人事院としては、法律に定められた機能分担のもと、その役割をしっかりと果たしていく必要があると考えています。

 私自身は、昭和五十年に人事院事務総局に採用され、国家公務員の人事行政にかかわってまいりました。平成二十四年四月からは、人事官として、各府省の人事管理に接してきたこれまでの経験を踏まえ、給与の地域差や高齢層職員給与の是正を図る給与の総合見直し、フレックスタイム制導入などによる柔軟な働き方の推進などの各種の制度改正等を円滑に実施できるよう取り組みました。また、我が国の公務員制度に対する国際的な関心に応えるべく、JICAの行う協力業務の一環としてのベトナム政府幹部職員研修への協力など、専門機関としての国際貢献にも積極的に取り組んでまいりました。

 今日、少子高齢化等、行政を取り巻く環境が大きく変化する中にあって、行政に期待されるところも大きく、公務や公務員が果たすべき役割の重要性は増していると思いますが、一方で、国民の公務や公務員に対する目には引き続き厳しいものがあります。したがって、公務員は、国民の行政に対する信頼を得るように、全体の奉仕者としての自覚を常に持って、みずからの専門性を高めながら、セクショナリズムに陥ることなく、各府省の行政を積極的に展開していくことがこれまで以上に求められています。

 人事院としても、採用試験や職員の処遇確保だけでなく、適切な人事評価、研修機会の充実、長時間労働慣行の見直し、女性登用の推進、中高齢職員の活用や定年延長など、職員の士気が上がるような人事環境を実現するためのさまざまな課題について、国民の理解を得ながら、着実に取り組むことが求められていると考えます。

 仮に人事官に再任されました場合には、国民の代表である国会での議論を初め、国民各層や関係各方面の御意見に謙虚に耳を傾けながら、お二人の人事官と協力して、微力ではありますが最善を尽くして、適切な公務員人事管理の実現のため努力してまいりたいと存じます。

 以上、簡単ではございますが、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございました。

河村委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 議長、副議長は御退席いただいて結構でございます。

 理事会の申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席をお願いいたします。

    ―――――――――――――

河村委員長 これより吉田参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 笹川博義君。

笹川委員 自由民主党の笹川博義です。

 吉田参考人には、大変お疲れさまでございます。

 所信をお伺いして、これから質疑に入りたいというふうに思います。

 まず、今、日本は、国勢調査初の人口減。少子高齢化に伴いまして、社会環境などさまざまな分野でこのことが大きく影響し、変化をもたらしております。もちろん、働く環境においても同様というふうに考えております。

 その変化にあって、公務員制度の運用について、今参考人からもお話がありましたが、なお一層、国民から厳しい目が注がれるということであります。

 その中にあって、公務員には高い倫理観、そして使命感を持て、それから、社会の変化に対応しなければならないというお話でございました。

 吉田さんにおかれましては、昭和五十年以来一貫して、人事院及び総務庁人事局において公務員制度の行政事務に従事、特に人事院においては、事務方のトップということで事務総長として活躍し、その後、人事官に選任を受け四年間ということでありますが、改めて、事務方と人事官としてとおのずと立場が違いますので、恐らくこの四年間は、事務方としての経験、知識を生かして諸課題に取り組んでこられたと思いますが、その中で、何を大事と心がけて職務に精励をなさったのでしょうか。

 それからもう一点。安倍内閣においては、一億総活躍、そして女性活躍を旗印にしております。特に今、社会的にも、女性のあらゆる分野での活躍が求められていますが、公務員制度においてもそれは同じことでありますので、女性活躍。それからまた、障害者の法定雇用率の向上につなげていかなければならない。法定雇用率については、平成二十七年度においては、前年度と比べると民間、公的機関ともに向上をしておりますが、いずれにいたしましても、女性活躍、法定雇用率の向上につなげるために何が必要であるかということでありますので、まずこの二点、御所見をお伺いいたします。

吉田参考人 お答え申し上げます。

 まず、人事官として何を気をつけているかというか、どういう心構えで臨んできたかという点ですけれども、人事行政というのは、人事行政といいますか、人事というのは割と保守的でありまして、改革についていうと慎重というのが、これは国だけではなくて、どこの人事もそういう傾向があるのではないかなというふうに思っています。

 しかし、人事制度あるいは給与制度というのはそういうことではいけない。個々の人事や給与というのは慎重に丁寧にやる必要がありますけれども、制度というのは環境に応じて変わっていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 この点については、事務方の時代から個人的には、改めるべきところは積極的に改めるというマインドで臨んできましたけれども、人事官になってからはさらに、国民に信頼されて、かつ、よく機能する人事行政という観点からは、社会の変化に敏感に対応して、かつ基本から適切に見直していくことが重要だということを一層考えるようになったと思っております。

 例えば、現在、昨年の四月から給与の総合見直しということで配分の基本的な見直しに取り組んでおりますが、こういうことに当たっても、そういう基本的な考え方で臨んだということが言えると思います。

 それからもう一点ですけれども、日本の公務員制度については、国内ではいろいろな御批判を受けて、私も、個々の事例を見ますと改めなければいけないものも多々あるというふうに思いますけれども、全体を見たときに、そのパフォーマンスというのは欧米の公務員に比べて遜色はないものと思っておりますし、専門能力あるいは高い士気、倫理観、そういう面ではよい方の部類に属しているのではないかというふうに思っております。これは、東アジアの諸国などの公務員担当の方々と話をしていても、日本の公務員制度を見習いたいと彼らが言うときのバックグラウンドにはそういうものがあるということを実感しています。

 このような日本の公務員のパフォーマンスのよさというのを支えているのは何かというふうに考えますと、仕事あるいは研修というものを通じて公務員意識をきちんと継承していくというか伝えていっているということが今までのところうまくいっている。あるいは、適切な給与等の処遇が確保されている。それから、職員にとっても、国民から信頼されているという思いが一定限ある。それに加えて、試験とか人事行政を通じて人事の公正性が確保されているという、職員にとっての安心感があるのではないかというふうに思っておりまして、こうした職員からの期待というか信頼というのを裏切らないような公正な人事行政のために頑張っていかなきゃいかぬということを人事官としては意識していました。

 次に、もう一点お尋ねでありました点ですけれども、男女共同参画社会の実現というのは現在の最重要課題の一つでありまして、昨年十二月には第四次男女共同参画基本計画が閣議決定されたところであります。

 公務における女性の活躍というものの基礎には、女性が安定的に採用されるということが必要でありまして、現在、第三次計画が定める成果目標、採用者の三割程度というのも実現しておりますが、引き続きこれに努めていく必要があると思います。

 そのためには、さまざまな機会に大学等でPRをするとか、そういうことを精力的にやっているわけですけれども、より抜本的には、例えば理工系などは大学の学部に行っても、工学部の女性の割合というのは十数%しかいないということです。それを官民が奪い合うということになりますので、むしろ、高校等もっと早い段階から、職業生活の多様性ということをPRしていかなきゃいけないのかなという感覚を持っております。

 さらに、採用した後の登用ということにつきましては、男女を問わず働きやすい勤務環境を整備するということと、それから女性職員の能力を伸ばす研修、あるいは女性職員を的確に使えるように管理者を研修するというようなことが大事だというふうに考えております。

 それから、ハンディキャップを持つ方々の雇用、採用というものについては、その持てる能力を十分活用して公務に生かすことが大事だというふうに思っております。

 人事院としては、例えば公務員の採用試験において点字受験を導入したり、拡大文字による受験というのを認めるなど、受験上の便宜といいましょうか公正性を確保するための措置を講じてきております。

 今後とも、公務員法で定める成績主義原則のもとで、障害者雇用促進法の趣旨との双方を勘案して、障害者雇用の促進のために適切な措置をとっていくことが必要だというふうに考えております。

笹川委員 最後になります。

 育休制度、朝型勤務、ゆう活といった制度が行われておりますが、中小企業、小規模事業者の立場ではなかなか同様にというのは難しいのが社会全体の現況というふうに思いますが、公務員制度においても、他の状況に配慮すべきという指摘も実はございます。その点についてはいかがでしょうか。

 これをお伺いして、最後といたします。

河村委員長 参考人は、時間の関係もありますので、できるだけ簡潔に。

吉田参考人 育児休業あるいは介護休暇という制度というのは、従業員を雇用したままで勤務しないということになりますので、さまざまなコストという点で、中小企業で実施が難しい部分があるというのはよく理解できるところであります。

 一方、少子高齢化の中で、社会全体として、仕事との両立をどう図っていくかというシステムをつくる観点からは、育児休業あるいは介護休暇というのを整備して、国民一人一人が安心して働ける社会を実現していくことが大事だろうというふうに思っておりますので、その意味では、できる限り経営者の方にも努力していただくことを働きかけていく必要があるのではないかと思います。

 なお、公務員の勤務条件につきましては、情勢適応の原則のもとで、中小企業を含めた民間従業員の制度の適用動向、それから労働法制としての最低基準の動向、そういうものを見ながら見直しを行っているという現実でございます。

笹川委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

河村委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 私は、経済産業省にいたころ、二〇〇一年、橋本当時公務員制度改革担当大臣のもとでの公務員改革、民主党政権時の法案提出、そして、今の自公政権になってからの法案の審議、いろいろなところで、吉田人事官とは直接間接に意見交換をさせていただいてまいりました。

 特に、平成二十六年に公務員制度が大きく変わったわけでございますが、当時もう吉田耕三人事官だったと思いますが、その前の体制での事務総長としていろいろな仕事をやっておられたと思いますし、内閣人事局ができた後、人事官として仕事を見てこられたと思います。

 最も変わった点、特に人事院の仕事が、具体的な実務としてここが変わったんだという部分をお聞かせいただきたいのと、とりわけ、平成二十五年十二月の内閣委員会における公務員制度改革法案の審議において、級別定数関係の事務について効率化を図る観点から、資料の共通化等、各行政機関の説明や資料提出を最小限にとどめ、事務の効率化を最大限図ることとするという政府見解が示されました。また、内閣人事局から人事院に対しても要請がなされています。

 この級別定数関係事務については、実務として相当効率化されたと期待しておりますが、これについてどうなっているかもあわせて答弁いただきたいと思います。

吉田参考人 後藤先生の御指摘をいただいた、今回の法律改正で人事院の仕事はどこが変わったかという点ですけれども、公正性の確保という点、それから代償機能の実施という点、この二つの大きな基本の点は変わっておりませんので、そういう意味で全体が大きく変わったということはないわけですけれども、個々の業務分野で申し上げますと、先生御指摘いただきました級別定数あるいは指定職という給与の部分、それから研修というのが、今までは人事院が専管的にやっていたわけですが、内閣人事局と人事院と両方がやるというふうに変わりました。実際にも、その研修の中身について、両方がそれぞれに応じて行うというようなことを行ってきております。

 先生御指摘の級別定数については、国会での議論もありましたし、特に事務の簡素化あるいは効率化という点について配慮すべきだということがございましたので、一昨年から、制度が発足した年の予算要求から、例えば求める資料といいましょうか、財務省主計局と内閣人事局の担当部局と人事院の給与局と三局が関係するわけですが、必要な資料の型式を統一いたしまして、それから、提出する資料の種類も半減するということで各省の御理解をいただいている。

 それから、例えば要求については、従前はそれぞれが人事課長を呼んでヒアリングをしていたわけですけれども、先ほど申し上げた三省が合同でヒアリングをするというようなことで手続の簡素化を図っているというふうに承知しております。

後藤(祐)委員 随分改善したものだと思います。ぜひ、さらに改善を進めていただきたいと思います。

 あと、配付資料の最後のところに人事院会議への出席状況というのがありますが、平成二十七年は七月に十七回も開いております。これは、一体何を議論していたんでしょうか。

 人事院規則二―一の第七条というところでは、「議事録は、人事院の定める場所において適時に公衆の閲覧に供しなければならない。」とあるんですが、ホームページには、探した限りでは掲載されていません。個人情報などに配慮した上で、ホームページ掲載も含めて公開を進めるべきと考えますが、これについての御見解をいただきたいと思います。

吉田参考人 まず、七月の時期の十七回というのは、八月の勧告に向けていろいろな民間のデータ等が六月の下旬から七月の初めに出てきますので、それを受けてどういう勧告にするのかというのをほぼ連日会議をやっておりますので、十七回ということになっております。

 今先生御指摘の人事院会議の記録につきましては、従前より、人事院会議の議事録を作成するということで議事録を作成しておりまして、求められれば公表するということで、実際に国会に出したこともありますが、今のところ、ホームページに掲載するということはしていないと思いますので、そういうことも含めて検討したいと思います。

後藤(祐)委員 求められれば出すのであれば、これはぜひホームページに掲載ということで、人事官の指導力を発揮していただきたいというふうに思います。

 あと、お手元の資料の四枚目に国家公務員法の条文があるんですが、この五条五項というところで、「人事官の任命については、その中の二人が、同一政党に属し、又は同一の大学学部を卒業した者となることとなつてはならない。」という規定があります。

 政党についてはちょっとわからなくはないんですが、同一の大学学部を卒業した者であってはいけないというのはなぜなんだろうかと。ほかにこういう規定は恐らくないんですね。

 吉田人事官は名古屋大学の法学部の卒業です。一宮総裁は中央大学法学部の卒業です。吉田人事官はいいんですけれども、今、人事院の事務総局以下、トップは財務省の出身の方ですよね。人事院プロパーの方では千葉総括審議官がナンバーツー、人事院プロパーでトップだと思いますが、中央大学法学部卒業ですよね。一宮総裁のうちには人事官になれないですよね。これはおかしいんじゃないかと思うんです。

 ぜひここは法改正も含めて改正すべきだと思いますが、これについての御見解をいただきたいと思います。

吉田参考人 この規定は、戦後、国家公務員法ができたときに、戦前の官僚制度の反省から恐らく入ったものだということだと思います。

 というのは、要するに戦前の官僚制というのは、帝大法学部、東京大学の法学部卒の人たちが独占的にやってきた。それを阻む意味で、大学だけではなくて学部まで含めて一人しかだめだという規定を置いたということでございます。

 これまでそれが支障になったということがないので、今先生が言われたような議論は生じていないんですけれども、具体的にそういう懸念があれば検討する余地もなくはないかなと思いますが、過去のそういう経緯から出てきている今の規定の重さというのも考えていく必要があるかなというふうに思います。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

河村委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 吉田参考人におかれましては、これまで長く人事行政に携わってこられた経験を生かして、この人事官の職においても、人事行政の公正の確保、国家公務員の利益の保護、さらには社会の変化に対応した施策の推進といった人事院の使命達成のために尽力されてこられたことと存じます。

 この間、一期目の四年間においても公務員制度改革について種々動きがあったわけですが、その基本は何よりも、国民の期待と信頼に応え得る人事行政をいかに推進していくかということになろうかと思います。

 そこで、二期目の任に当たるに当たりまして、具体的にこれからどのようなことに特に留意をして仕事をされていくお考えなのか、また、その決意をまず伺えればと思います。

吉田参考人 公務員制度につきましては、先ほど所信でも述べましたとおり、二十六年の国家公務員法の改正によりまして、いわゆる組織的な機能分担というものについては、落ちつきを見て整理をされたところでございますので、人事院としては、公正の確保、代償機能の実施といいましょうか、そういう点について積極的に、今後の公務員制度の改革を進めていく必要があろうと思っています。

 具体的には、特に最近、各府省の職員の在職状況等を見ますと、最近の退職管理の変化、これはいわゆる早期退職を抑制する、あるいは採用抑制というようなことがありまして、四十歳代以上の職員の在職が多くて、二十代、三十代の職員が少ない。定員が一定であっても、中身が変わってきているということがございます。

 中長期的にいいますと、ベテランの人たちが抜けていって、世代交代が非常に難しくなるのではないかというふうに考えておりまして、それに向けて、どうやったら円滑に着地できるのか、公務の中での経験値、ノウハウをきちんと伝えられるのかというようなことについて、人事行政の観点からいろいろ努力していきたいと思っております。

角田委員 今おっしゃられた年齢構成のいびつさ、そうした問題とあわせてもう一点、これからはやはり国際化、グローバル化への対応ということについて、これは成長戦略の大きな柱としても、国際競争力の強化、海外市場の開拓であるとか海外に向けての発信力の強化、こうしたものに官民を挙げて取り組んでいこうとされている中で、こうしたグローバル化に対応した人材の養成ということもより積極的に進めていかなければいけない課題ではないかと考えますが、この点についてのお考えをお伺いできればと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉田参考人 公務員の採用試験におきまして、今年度といいましょうかこの前の試験から、総合職試験で英語試験を、必修にしたわけじゃないんですけれども、英語で一定の資格を持っている人には加点するという制度を導入いたしました。

 そういう意味では、もちろん行政の中には、日常的に英語を使って国際的に接触をする必要がない業務もたくさんあるわけですけれども、将来幹部になる人たちは、そういうところであっても、学生時代にそういう素養があっていいのではないかと。

 さらに、採用後には在外研修という形で、今、人事院から百数十人を二年間にわたって派遣するような制度を持っておりますので、そういうものを通じて国際的に通用する人材を育成していきたいというふうに考えております。

角田委員 先ほどお話の中でも、男女共同参画社会に向けて、女性の登用ということへの取り組みのお話があったかと思います。

 もう一方で、この男女共同参画社会の実現のためには、男性の意識改革、こうしたものが特に大きな課題と言われております。現状、まだ、国家公務員の育児休業の取得率を見ても、女性は九割以上と極めて高くなっているのに対して、男性は五%未満ですか、極めて低い状況であります。

 こうした意識改革への取り組みについて、お考えがあればお伺いをさせていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

吉田参考人 御指摘のように、男性の育児参加、あるいは業務における男性的働き方について見直していく必要があるのではないかという点は、私も全く同感でございます。

 結局、公務だけではなくて企業社会も、これまでは、二十四時間戦えますかというようなことを私どもが若いころはよく言われましたけれども、そういう流れでずっとやってきていますので、やはり夜遅く働けない人は重要なポストにつけられない、そうすると、家庭責任を持っている人はそういう機会を失うというような悪循環が出てくると思います。

 したがいまして、長時間労働慣行を直していくということが職場では大事だと思いますし、それから家庭においても、家庭責任を男性も果たすということが一般的になっていけば、当然働きぶりも変わっていくわけですので、今先生御指摘のように、例えば育児休業を短くてもいいからとって参加していくとか、あるいは、管理者はそういう若手職員をむしろ奨励するというんでしょうか、そういうことが大事だということをいろいろ管理者の研修等で伝えていくというようなことが大事だろうと思っております。

角田委員 ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わらせていただきたいと思います。

河村委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 吉田参考人にお尋ねをいたします。

 最初に、二〇一二年の通常国会で、民主、自民、公明の三党は、議員立法で国家公務員給与特例法案を提出し、成立させました。これは、国家公務員の労働基本権が回復されていない段階で、人勧水準をはるかに超える平均七・八%もの給与削減という不利益を二年間にわたって強要するものでありました。

 この点で、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割という観点から、この給与特例法をどのように評価しているのかをお尋ねいたします。

吉田参考人 給与特例法につきましては、当時の政権が、一部の労働団体といいましょうか職員団体とも合意の上、そういったものを提出した。それから、背景に、東日本大震災というものに対する国民的な協力を図る必要があるというようなことで国会に提出され、国会で議決されて法律になったというふうに承知しています。

 人事院としては、人事院勧告によらない給与の引き下げというのは基本的には問題があるものというふうに当時も言ってきたというか思っておりましたけれども、ただ、東日本大震災という未曽有の国難のもとで、国会でそういう議決をされるということについては一定の理解をするというような判断だったというふうに記憶しております。

塩川委員 次に、二〇一四年の人事院勧告における給与制度の総合的見直しについてお尋ねをいたします。

 給与制度の総合的見直しは、職員の給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなすとする職務給の原則に反し、逸脱を拡大するものではないか、また、この措置によって、一般職国家公務員の給与を引き下げるものとなっている。これらは、人事院の労働基本権制約の代償機能としての役割をみずから否定するものではないのか、このように考えますが、参考人はいかがでしょうか。

吉田参考人 昨年から実施することになりました給与の総合見直しですけれども、私たちの理解では、官民の給与格差というものを前提に、いわば官民が均衡しているという水準のもとで俸給と諸手当の配分をどのように考えるか、あるいは、地域における給与水準をどう考えるかということが問題になったというふうに理解しておりまして、官民の水準の差というのを残したり、あるいは、官民の水準差を無視したりした改革ではなかったという意味において、代償機能というのは守られているというか、むしろその配分というのは、まさにその中で、民間であれば労使交渉でどういうふうに配分していくのかということを決めることでありますので、そこは人事院に委ねられている領域ではないかというふうに考えております。

塩川委員 職務給の原則に反し、逸脱するのではないのか、この点ではいかがですか。

吉田参考人 職務給というのをどう捉えるかということでありますが、俸給表は全国統一の水準で規定されておりますので、同じ仕事をしていれば、北海道でも東京でも同じ給料をもらえるということであります。

 ただ、実際に、いろいろなもの、例えば東京だと物価が高いとかあるいは民間賃金が高いとかいろいろな事情がありますので、そういうことを加味して、実際に、では東京で勤務する人は幾らもらうのか、北海道で勤務する人は幾らもらうのかということに差があっても、その差が合理的であれば、私は問題がないものというふうに思っております。

塩川委員 給与制度の総合的見直しによる給与引き下げ、地域手当格差の拡大というのが地方公務員の給与の引き下げにつながるんじゃないのかという懸念、これが結果として、地域における給与水準全体を引き下げることになり、地域経済にもマイナスをもたらすんじゃないのか、こういう懸念もあるわけですが、そういう観点についてはどのようにお考えでしょうか。

吉田参考人 地方公務員給与について私がとやかく言う立場にはありませんけれども、地方公務員の給与も、民間準拠ということであれば、地域の民間水準というものとどういうふうに均衡させていくのかということが基本になると思いますので、そこで差があるというか、官が高い、公務が高いということであれば下げなければいけないでしょうし、公務と民間が均衡しているということであれば、国家公務員の方が下がったからといって下げる必要はない。

 私たちのところは、全国のパイの中で、特定地域を上げれば特定地域が下がらざるを得ない、そういう中で行っておりますので、それぞれの自治体で、それぞれ比較した結果をベースに水準をお決めになるのが適切ではないかというふうに思います。

塩川委員 東京一極集中が問題となっているときに、こういった給与制度の総合的見直しを通じて地域間の格差が一層拡大するんじゃないかという懸念というのは当然あるわけで、それは、国家公務員だけをやっていますから関係ありませんという話ではないと思うわけで、やはりそういう地域間格差を拡大する、給与、賃金の格差を拡大するという大きな懸念があるということについては受けとめておられないでしょうか。

吉田参考人 今回の見直しでも、引き上げについて、では、どんどん東京に合わせて高くしていいのかということが当然論点としてあったわけでありまして、私たちとしても、同じ公務の中で働いていて、地域による賃金差というのが無限についていいというわけではないという意味で、そろそろ限界なのではないかという問題意識を持っている旨を表明したところであります。

塩川委員 最後に、小泉構造改革のもとで政府が総人件費の抑制政策を行いました。そういう時期に、当時、人事院の給与局長として吉田参考人が進めていたのが給与の構造改革であります。

 これ自身が、公務員の人件費を抑制する、そういった結果をもたらしたと思いますが、この給与構造改革をどのように総括しているのかをお尋ねいたします。

吉田参考人 平成十八年から始まった給与構造改革は、まさに今の、給与の地域差というものに対してどう対応するのか、それから、いわゆる年功序列的な給与と言われていた公務員の給与を、年功序列的な色彩をいかに払拭していくのかというような点から幾つかの大きな改革をいたしましたので、そういう意味では、現実的な、今の社会に適合した公務員給与制度をつくる上では成功したのではないかというふうに思っております。

塩川委員 終わります。

河村委員長 次に、遠藤敬君。

遠藤(敬)委員 おおさか維新の会の遠藤敬でございます。

 吉田参考人、本日は本当にお疲れさまでございます。

 時間も押しておりますので、三点ほど御質疑をさせていただきたいと思います。

 国家公務員制度は、国の行政の円滑な運営を確保するための基盤となる重要な制度でありますが、人事院は、この国家公務員制度の実施においてどのような役割を果たしていくつもりか、お伺いをしたいと思います。

吉田参考人 今の憲法のもとでは、公務員は全体の奉仕者という位置づけにあるということは先ほど所信でも申しましたけれども、そういう人事行政を保障していく役割が人事院に課せられているというふうに思いますので、人事行政の公正の確保、それから労働基本権制約の代償という基本任務というのをしっかりと果たしていきたいというふうに思っております。

遠藤(敬)委員 次に、有為な人材を採用し、しっかりと育てることが円滑な行政運営のために重要と考えておりますが、研修機会の充実に関しても、現在どのような課題があり、どのような取り組みを考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。

吉田参考人 人事院では、採用直後の職員から、係長、課長補佐、課長という段階に応じて、研修をそれぞれ実施しております。

 特に最近力を入れておりますのは、セクショナリズムを打破するという意味で、採用直後の総合職の職員六百人ぐらいを五グループぐらいに分けて、長期にわたって合宿研修をさせ、そしてその中では、地方団体に行って地方の実務を経験させたり、あるいは福祉施設に行って実際に福祉施設の業務を体験したり、いわば頭でっかちにならないように、実際を勉強して将来の基礎にしてもらうというようなことにも取り組んでおります。

 ただ、スマホ世代というか若い人たちの中には、自分で考えて行動するというよりも、何となく、みんながどう考えるのか、あるいは上の人がどう考えるのかということをおもんぱかってしまう。頭のいい人ほどそういうことになることもあるので、やはり自発性、創造性というものを持てるようにというか、付与できるような機会をいろいろ与えていくことが大事ではないかというふうに考えております。

遠藤(敬)委員 最後に、雇用と年金の接続に関しては、現在、定年年齢の引き上げによらず、再任用の義務化で対応しているものと承知をしておりますが、この問題に関してどのように取り組んでいかれますか。お伺いをしたいと思います。

吉田参考人 年金の支給開始年齢につきましては、ことしの四月から六十二歳ということになりますので、定年年齢六十歳との間でいうと丸々二年、実際には途中で年が来ますので、一年から二年の間の無年金期間というものが生ずることになります。これが三年に一歳ずつ延びていって、いずれ六十五歳まで年金が出ないということになるわけであります。

 まだ確定的なことは申し上げられませんが、この四月から定年で退職されていく方々の再任用の希望というのを聞いているところによると、去年よりも再任用を希望する方がふえているというようなこともあるようでございます。

 したがいまして、無年金期間が長期化するという中では、本格的に働いてもらうということが非常に重要ではないかというふうに思いまして、もちろん、フルタイムの再任用というものも重要ですけれども、より抜本的には、定年を延長するということも視野に入れていろいろ研究をしていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。

遠藤(敬)委員 終わります。

河村委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。再度の機会をありがとうございます。

 再就職の適正化についてお伺いしたいんですが、たしか二〇〇七年の法改正以前は、人事院の承認制度というのがございました。それから後、承認制度がなくなって、行為規制、働きかけはだめですよ、あるいは在職中の求職行為はだめですよという形に変わっております。この前後でどういう変化があったのか。

 特に、局長ぐらいやった方なのに、半年ぐらい無職で、探し続けているような方がいて、結構大変だという話を聞く一方で、自分のしていた職務に関係するような会社に再就職している例なども若干見受けられます。これはこれで一つ問題がある部分もあると思うんですが、実際、現実に行われている実例はいろいろ出てきていると思いますけれども、これについての吉田参考人の御見解をいただきたいと思います。

吉田参考人 公務員の再就職には大きく二つのグループがあると思います。

 人事院が承認をしていたというのは、いわゆる民間企業への再就職であります。

 他方、マスコミや国会でたびたび話題になったのは、もちろん民間への再就職もありますけれども、公庫、公団といいましょうか公的セクター、特に政府関係の機関への再就職、わたりがあるとかいろいろと言われた、そういう部分でございます。それは、人事院の承認とは関係なく従前はやれていたわけです。

 しかし、十九年でしたかの国家公務員法改正で、役所によるあっせんを禁止するという規定が入ったことによって、そういう公的セクターへのあっせん、もちろん民間企業へのあっせんは当然できないわけですが、そういう公的セクターへのあっせんも禁止されたということで、基本的に、再就職の出口が人事管理のツールとしてはなくなった状態であります。

 私としては、民間の状況を見ると、民間の企業では、やはり人事当局として、再就職をいろいろな形で準備することで組織の新陳代謝を図るというのは当然のように行われています。そこの部分が手を縛られた形で今人事管理をしているので、各省とも大変人事が停滞しているといいましょうか、それは結局、上の局長や審議官や課長が、自発的にやめない限り、やめることを慫慂できませんので、なかなか今までのようにやめていかないという事態もあると思います。そして、現実に、そういうことで採用者が採れないというようなことにもなってくる。

 もちろん、そのことは、六十歳定年が円滑に回っていけばいずれ終わるわけですけれども、逆に、そういう幹部になった方々の処遇というか人生設計を考えますと、その後は全く知らないよというのが今のスタイルですので、そういう点について、それでいいのかという部分もあろうかというふうに思っております。

河村委員長 ほかにはございませんか。

 それでは、これにて吉田参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 吉田参考人、ありがとうございました。

 以上をもちまして人事官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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