衆議院

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第5号 平成14年4月10日(水曜日)

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平成十四年四月十日(水曜日)
    午前九時三分開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 小野 晋也君 理事 田中 和徳君
   理事 宮本 一三君 理事 吉田六左エ門君
   理事 今田 保典君 理事 松原  仁君
   理事 山田 正彦君
      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君
      岩屋  毅君    大村 秀章君
      梶山 弘志君    左藤  章君
      高木  毅君    谷本 龍哉君
      中本 太衛君    西川 京子君
      堀之内久男君    増原 義剛君
      村上誠一郎君    谷津 義男君
      吉野 正芳君    大島  敦君
      奥田  建君    後藤  斎君
      鈴木 康友君    津川 祥吾君
      土肥 隆一君    中津川博郷君
      前田 雄吉君    赤羽 一嘉君
      山名 靖英君    塩川 鉄也君
      藤木 洋子君    菅野 哲雄君
      山内 惠子君    西川太一郎君
    …………………………………
   参考人
   (東京大学名誉教授)   溝上  恵君
   参考人
   (独立行政法人防災科学技
   術研究所理事長)     片山 恒雄君
   参考人
   (東京工業大学大学院総合
   理工学研究科教授)    翠川 三郎君
   参考人
   (東洋大学経済学部助教授
   )            白石 真澄君
   衆議院調査局第三特別調査
   室長           柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十日
 辞任         補欠選任
  中野  清君     増原 義剛君
  山本 明彦君     吉野 正芳君
  山本 幸三君     岩永 峯一君
  小泉 俊明君     大島  敦君
  東  順治君     山名 靖英君
同日
 辞任         補欠選任
  岩永 峯一君     山本 幸三君
  増原 義剛君     中野  清君
  吉野 正芳君     山本 明彦君
  大島  敦君     小泉 俊明君
  山名 靖英君     東  順治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 災害対策に関する件(地震防災対策)


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     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 災害対策に関する件、特に地震防災対策について調査を進めます。
 本日は、参考人として東京大学名誉教授溝上恵君、独立行政法人防災科学技術研究所理事長片山恒雄君、東京工業大学大学院総合理工学研究科教授翠川三郎君及び東洋大学経済学部助教授白石真澄君に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、大変御多用中にもかかわらず本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。地震防災対策につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、溝上参考人、片山参考人、翠川参考人、白石参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
 それでは、溝上参考人にお願いいたします。
溝上参考人 よろしくお願いいたします。
 お手元に「東海地震をめぐる最近の状況」という図面の冊子と、それからその図面に関します説明の文章を書きましたものが配付されていると思います。この資料に従いまして御説明いたします。
 東海地震の最近の状況をお話しいたします前に、日本の地震について全般的な話をさせていただきます。
 まず、この一ページ目の絵を見ていただきたいと思います。
 御存じのように、日本は世界有数の地震大国でございまして、日本は全地球表面のわずか〇・二%ほどの領域を占めるにすぎませんが、その狭い範囲で、地球全体で放出される地震のエネルギーの約一〇%というものが賄われております。また、日本では、マグニチュード八クラスの巨大地震が平均して十年に一回、そしてマグニチュード七クラスの地震は平均して一年に一回の割合で発生しております。
 そういう状況でございますから、図の一に示しましたように、日本列島は、地震の発生域を地点をプロットいたしますと、海岸線が見えないほどに埋め尽くされるということになります。
 次の二ページ目の図を見ていただきたいと思います。
 地球の表面は大小十数枚のプレートと言われる岩盤の板で覆われておりまして、そのプレートは、それぞれ異なる方向に異なる速度で移動しております。そのためにプレートの押し合いへし合いが起きまして、そのプレート境界にはひずみがたまっていきます。そのひずみが限界に達しますと、激しい断層運動を引き起こして、長年蓄積されたエネルギーが一気に解放されて、そのとき地震が起きるということになります。
 日本列島につきましては、第二図にありますように、四つのプレートが日本列島の周辺を取り囲んでおります。北米プレート、ユーラシアプレートというのが陸側のプレートで、太平洋プレート、フィリピン海プレートというのが海側のプレートでございます。
 太平洋プレートは年約十センチ、フィリピン海プレートは年四センチほどの速度で日本列島の方に向かって押し寄せてきて、日本海溝や南海トラフから沈み込んでまいります。そのときに、陸側の日本列島の先端部ですね、房総半島、野島崎とか三浦半島あるいは御前崎、潮岬、室戸岬といったような部分はこのプレートの沈み込みによって引きずり込まれ、その結果、ひずみがだんだんたまってきて、それが限界に達しますと、その先端部が急激にばねがはね返るようにはね返って地震が起きます。こういうタイプの地震のことを海溝型地震と申しまして、東海地震もこのタイプの地震の一つでございます。
 このように、太平洋から押し寄せてくるプレートの運動によって直接引き起こされるプレート境界、海溝型の地震に加えまして、そのひずみが内陸部へ波及してまいります。
 その結果、次の三ページで見ていただけますように、内陸部では内陸地震と言われる地震が発生いたします。その多くのものは活断層として日本列島の地殻の表面に傷を残しております。この波及効果によって起きてくる内陸の地震の起きる間隔は、千年とか二千年とか三千年とか、極めて長い。しかし、海溝型の地震の方は、百年とか百五十年あるいは二百年といった比較的短い間隔で繰り返します。このように、地震というものはいろいろなタイプのものがありまして、その発生の繰り返し間隔はその地震のタイプによって大きく異なるということが言えると思います。
 次に、地震災害について申し上げます。
 日本ではたびたび多くの地震が起きて、その中には千人以上の死者を伴うような地震も発生いたします。一八〇〇年以降、現在までに千人以上の死者を出した地震というのは十七回にも上ります。一番最近のものが兵庫県南部地震でございます。
 さて、地震の切迫性というものの評価は、地震対策上、非常に重要なものでございますが、五ページ目を見ていただきますと、今切迫性がかなり明瞭に指摘されているものは、東海地震、そして南関東直下地震がございます。そのほかにもいろいろ議論はございますけれども、この東海地震と南関東直下地震につきましては、中央防災会議等でいろいろその点が具体的に指摘されております。
 切迫性のある地震としての東海地震は、駿河トラフ沿いのプレート境界で起きるマグニチュード八クラスの巨大地震でございますが、ひずみが既に臨界状態に達していると考えられ、いつ起きるかわからない、非常に切迫した状態であるということで、気象庁は二十四時間の観測体制をとって監視を続けております。
 それから、南関東直下地震の方は、関東地震が起きまして、もう七十八年ほどたっておりますが、その間に南関東直下にひずみがたまり、次の関東地震まではまだかなりの期間が残されておりますけれども、それに至るまでに南関東直下でマグニチュード七クラスの地震が起きてくるということが予想され、中央防災会議においては、南関東直下地震はある程度の切迫性があるということを南関東地域直下の地震対策に関する大綱で指摘しております。
 次の六ページを見ていただきますと、東海地震というものの起きてくる、その時間系列を見ますと、一八五四年の安政東海地震から現在に至るまで、東海地域は空白域として百四十七年間取り残されております。
 その間に、昭和の南海、東南海地震が起きましたけれども、この際、浜名湖以東、駿河湾に至る地域は地震が起こらず、これまでひずみをため続けているために、現在、東海地域では東海地震という巨大地震の発生が極めて切迫しているというふうに考えられております。
 次の七ページは、そのシリーズを地図の上に示したものでございまして、元禄の関東地震、一七〇三年から現在までにプレート境界で起きました地震のありさまを示したものでございます。
 その次に、東海地震の発生の仕組みでございますが、東海地震というものは、海のプレートが沈み込んでまいりまして、上盤側の東海の陸のプレートの先端部を引きずり込んでいきます。そのときに問題になりますのが固着域と書かれたものでございまして、ひずみがたまっていきますと、固着域という、海のプレートと陸のプレートの接着されている、その部分の状態が変わってまいります。「固着域が変質する」と書いてございます。その固着域の縁辺部、周辺部がやがてはがれを起こしてまいりまして、その後ゆっくりとした滑りが始まる。その滑りが、最初は非常に局部的でゆっくりとしたものでありますが、一たん前兆滑りというプレート境界の滑りが起こり始めますと、それは急速に拡大し、加速して東海地震に至るということになります。
 東海地震の直前予知は、この前兆滑りをいち早く検知して、そして警報を発するという仕組みであるというふうに考えております。
 さてその次は、東海地方における現在の状況でございますが、プレート境界縁辺部の固着域と言われる部分の周辺がはがれてきたのではないかということが実際の地震活動で認められましたのが、九ページ目に書きました、静岡県中部地震、愛知県東部、遠州灘、そして御前崎沖の固着域をぐるりと取り巻くような形で発生した地震でございます。
 その地震の分布の様子を書きましたものが、次のページ、カラーの絵でございます。この絵に見られますように、東から西へ傾き下がる、海のプレートの中で起きる地震が浅い地震と分かれて見えますが、そのプレートの境界付近で、一九九六年川根付近の地震あるいは二〇〇一年四月の静岡県中部といった地震が発生し、この地震によって、はがれの現象、固着域のはがれというものが伴ったというふうに理解できる現象であると解釈されます。
 さて次は、東海地震に関する中央防災会議の専門委員会のことでございますが、十一ページの絵の下に、想定震源域の見直しの結果の図が示されております。
 従来の長方形の震源域が、見直しの結果、立体的なナスビ型の曲面の震源域として浮き彫りにされてまいりました。これは、最近の新しい、二十数年間の観測研究の蓄積からこういうものが浮き彫りになってきたということでございます。
 その結果、次の十二ページを見ていただきますとわかりますように、東海地震が起きた場合の震度の分布、それから津波の高さ、あるいは津波の到着時刻といったものの詳しい評価が行われ、その想定に従って、今後、強化地域あるいは地震防災対策がとられることになるのであろうと考えております。
 十三ページには、その津波の起きる仕組みと、それから地震発生直後から時間順に追っていきますと、津波の波頭が白く映像として描かれておりますが、地震が発生した直後から、もう数分を置かず駿河湾沿岸では津波が襲ってくるという状況がおわかりいただけるかと思います。
 そういう意味で、東海地震の直前予知というものは、このように地震が起きたとほとんど同時に津波が襲ってくるということを考えますと、人命の大きな損失を防ぐために直前予知は極めて重要なことであるというふうに考えられます。
 さて、十五ページに参りますと、これはごく最近観測された事実でございまして、国土地理院の資料によりまして御説明申し上げます。
 日本列島は、GPS観測によってその動きは時々刻々の状況としてとらえられるようになりました。その状況を見ますと、十五ページに見られますように、矢印が西ないしは北西に向いております。これは、太平洋の方から押し寄せてくる海のプレートの運動によりまして、日本列島の太平洋沿岸を中心に、西ないし北西向きに地面がずれ動いている様子をよくあらわしていると思います。
 ところが、二〇〇一年の三月ごろから、この動きにちょうど反対の方向、逆向きの方向の成分を持った地殻変動があらわれてまいりました。これは、先ほどの八ページの東海地震の発生の仕組みの絵に立ち戻りますと、東海地震が近づいてまいりますと、陸側のプレートが反転して、今までの地殻変動の方向と逆向きに動き始めるということが想定されますが、少なくとも、この方向につきましては、そういうことがこれから読み取れるわけでございます。
 この観測値は、プレート境界の動きに戻しますと、一センチ、二センチ、三センチメートル弱ぐらいの量になって、量的には非常に小さい。それから、東海地震が直前に切迫した場合の動きの場合にはこれが加速してくるはずでございますが、現在のところ、量も小さくまた加速性もないということで、東海地震が今すぐ目前に迫っているというふうに考えるかどうかは議論の分かれるところだと思います。同様な絵が十七ページのところに袋井、掛川を例といたしまして時系列的に示してございます。
 さて、いよいよ東海地震が目前に迫ってまいりますと、十八ページに書きましたように、気象庁が展開し、二十四時間観測しております体積ひずみ計にその変化がとらえられます。十八ページの下の絵にありますように、急速に各点に変化があらわれてまいります。この変化は、東海地震が発生する数十時間前あるいは数時間前にあらわれてまいりますので、これを早期に検知して東海地震の警報を出すということで、こういう仕組みは、東海地震の直前予知というものは地震が発生する前に地震を予知するというのではなくて、東海地震が起き始めたその時点をいち早く検知して警報を出すということでありまして、がんの早期発見と同じような、類似点が多々あろうかと思います。
 それから、御前崎に関しましても同様な観測が現在続けられておりまして、その沈降が今言ったように続いておりますが、これが停滞、反転いたしますと、東海地震が切迫してくるという一つのシグナルになるということでございます。
 最後に、ナウキャスト地震情報というものについてお話しいたします。
 ナウキャスト地震情報というものは、地震が発生したその時点でP波、初動のシグナルで、自動的に地震の震源、マグニチュードを決定いたしまして、それをすぐさま遠隔地に通報いたします。そうしますと、地震の主要動が到達する前に、間もなく大きな地震の揺れが襲ってくるという情報を相手に送り届けることができますので、その情報によって身構えるということで、大きな揺れが来る数十秒以内程度の余裕を持って身の安全を図ることができるということになります。
 こういったナウキャストのシステムが、あるいは情報が活用されますと、行政、企業、一般市民など、いろいろな分野でいろいろな活用の可能性が考えられるものとして、防災のために大きく役立つものと期待されるところであります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
田並委員長 大変ありがとうございました。
 次に、片山参考人にお願いいたします。
片山参考人 ただいま御紹介にあずかりました独立行政法人防災科学技術研究所の片山でございます。
 本日は、「これからの地震防災」という題目で、日ごろ私が考えておりますことについて、意見を述べさせていただきたいと思います。
 私は、日本の震災は都市の震災であるというふうに考えております。都市を襲う地震災害は、前ぶれもなくやってきて、数十秒ですべてのものに大きな傷跡を残し、都市のもろさを予想もしない形で我々に突きつけるという意味で、最悪の都市災害であると思います。
 日本の都市には土地の余裕がございません。そして、土地に余裕がありませんので、道路を広くするとか、空き地や公園を大きくするとか、一戸一戸の家を離して建てるとかいった、だれが考えても災害に強い都市づくりに役立つことが、わかっていてもできません。土地の余裕のみならず、一般に余裕がないということこそ、日本の防災の最大の特徴であろうかと私は思っております。
 日本の水道技術というのは世界一流でありますが、例えば、東京の水道は五、六時間停電が続くと配水池が空っぽになってしまいますし、都市ガスの技術レベルも世界一でありますが、道が狭いためにガス管が軒先の地下に埋められているという現状が続いております。
 都市災害としての日本の地震災害には、三つのタイプがあると思います。最もひどいのは火災型の震災であって、話は大分古くなりますが、一九二三年の関東地震のときの東京とか横浜の被害がその典型であります。
 二つ目は、たくさんの建物とか橋などが被害を受ける構造物型の震災であります。これもちょっと古くなりますが、一九六四年の新潟地震が比較的最近の例であります。
 そして三番目が、ライフライン型の震災でありまして、物は壊れず大した火事も起こらないのに、水道、ガス、電気、情報などのライフラインが機能しなくなって生活が大いに迷惑をこうむる震災であります。一九七八年、宮城県沖地震による仙台市周辺の被害がその例であります。水道、ガス、電気、情報などの被害は、当然、都市でなくても起こるわけでありますが、その影響は都市において特に大きいというわけであります。
 東京都が最初の地震被害想定の報告書を発表したのは、一九七八年六月のことでありましたが、この被害想定が発表されて十日もたたないうちに、一九七八年、宮城県沖地震が発生いたしました。そして、仙台市を中心とした地域のガス、水道、電気といったものに被害が大きく起こりまして、これが注目されました。仙台市の震災は都市的震災と言われ、この震災を契機にライフラインとかハードな震災対策、ソフトな震災対策といった言葉が使われるようになりました。
 地震に対して物を強くするハードな震災対策は常に基本でありますが、幸いなことに我が国の構造物はだんだん強くなってきておりました。物が強くなるに従って都市の問題、生活の問題、都市内のシステムの問題といった、ソフトな震災対策の重要性が高まってきておりました。多数の人が住む都市を強い揺れが襲えば、ある程度の被害が起こるのは避けられません。しかし、阪神・淡路大震災で苦い経験をするまで、私は、日本では構造物が大規模に被害を受ける震災はもはや考えにくくなったというふうに思っておりまして、日本の大都市では、システム的な対策、ソフトな対策の方が大切な時期が来つつあると考えておりました。
 要するに、我が国の地震対策では、物よりシステムの方が重要な時代になったと考えていたのでありまして、当時、私は、構造物の耐震からシステムの防災へという言い方をよく使っておりました。
 また、私は、都市震災は四つの特徴を持つと思っておりまして、一つは火災であると。そして火災は、地震発生の条件にもよりますが、避けることができない場合がある。
 もう一つは情報の問題であると。地震後に十分な情報がないことによって、大都市の震災は混乱の度合いを高めることになります。
 さらに、ライフラインの問題がございます。何万キロものパイプが地下に埋められていることを考えますと、ある程度の被害は避けられません。
 最後に、巨大な経済的打撃の問題であります。阪神・淡路大震災の場合もこれらの四つの特徴、すなわち火災、情報、ライフライン、巨大な経済被害のすべてが起きました。
 しかし、当時の私の頭の中からは、構造物の問題がすっぽりと抜け落ちていたのであります。いつもは非常に立派に見える建物の中にも、被害を受けるものがたくさんあるかもしれない、そして、何千という人命を直接奪うのは、多くの場合、古くて弱い住宅の倒壊であるということであります。地震の後で多くの被災者に苦しい生活を強いるのも、やはりシステムより物の被害であります。
 現在の建築基準に合致していない建築物のことを既存不適格建築物と申します。今全国に約二千万棟の建築物がございますが、そのおよそ半分が既存不適格建築物であるというふうにも言われております。これらのすべてが地震に弱いというわけではございませんが、神戸で全壊した十万棟のうち八万棟が既存不適格建築物であったという推定もございます。そして、地震の直後に亡くなったおよそ五千人の犠牲者の大部分は、倒れた建物の下敷きになったためでございました。
 地震災害への対策は、大きく分ければ三つの時期に分けて考えることができます。第一が、地震の起きるまでの時期。第二が、地震が起きて右往左往している時期。実際の地震の揺れが続くのは数十秒にすぎませんが、地震が起きてから数時間、震災の規模によっては数日後までをこの右往左往の期間と考えることもできます。そして第三が、応急対策に始まって復旧復興につながる時期であります。
 第一の期間というのは、地震に備える期間でありまして、地域ごとの地震の性質や起きやすさを検討したり、耐震設計の手法を改善したり、弱い構造物を補強したり、地震に対するいろいろな啓蒙活動を行ったりと、事前に備えておくべきことはたくさんございます。我々の健康の問題でも同じでありますが、大切なのは病気にかかる前の予防でありまして、地震対策についても事前対策の重要性が非常に高いと思っております。
 そして、事前対策の中でも私が重要だと思いますのは、一に地震予知、二に構造物の強化、三に地震保険であります。人命の損失を小さくするという立場から申しますと、地震予知こそ究極の事前対策でありますが、残念ながら、実用的な地震の短期予知は現状では難しいと言わざるを得ません。しかし、活断層や過去の地震活動などをもとにした地震動の予測地図の作成といったものは、地震前の調査研究としても極めて有用であります。
 また、地震対策は、対策実施の主体によって三つに分けることができます。それは公助と共助と自助であります。
 従来、特に我が国では、国や自治体が行う対策、公助でありますが、これが主要なものと考えられてまいりましたが、南関東地域のようなところが大震災に襲われた場合を想定いたしますと、公助には財源的にも限界があります。地震の直後に近所の人とか職場の人が助け合うという共助でありますが、阪神・淡路大震災のときにも、崩れた家屋の下から一番たくさんの人たちの命を救い出したのはこの共助でありました。そして、公助、共助の重要性は当然のこととして、これまでの地震防災で一番欠けていたのが、自助努力に対する個人個人の積極的な取り組みであります。
 こういったように考えてまいりますと、地震前の自助努力ということが、これからの地震防災のかなめと言えると思います。先ほど申し上げましたが、地震予知、構造物の強化、地震保険という特に重要な三つの事前対策のうちで、自助努力という視点から申し上げますと、構造物の強化と地震保険がその対象となります。現時点では、普及率が全国平均で一六%という地震保険をもっと魅力的な制度にするということも大切ではありますが、地震保険を購入したからといって家が強くなるわけではありませんし、地震保険に加入しても、将来、強い地震が来れば家は壊れてしまうことに変わりはありません。一方、既存不適格建築物の耐震診断を進め、弱いとわかった家屋を耐震改修すれば、将来の地震による被害を劇的に減少できる可能性があります。
 一九九五年、兵庫県南部地震による建築物被害は五兆円に達するという報告がありますし、全壊した十万棟の住宅のためにいろいろな形で国が支弁したお金の総額は一兆三千億、一棟当たり一千三百万円に上るという報告がございます。これに加えて、自治体からも多額の出費がなされております。多数の既存不適格建築物が残っている限り、都市を将来襲う地震によって、人的、物的に莫大な被害をこうむることは避けられません。最近、相当な額の補助金を出す自治体がふえてまいりましたが、それにもかかわらず、耐震診断、耐震改修は遅々として進んでおりません。
 現行の制度で耐震診断、耐震改修を進めるにいたしましても、住宅主がやる気を起こすためには、耐震改修の大切さを理解してもらうことが重要であります。
 現行の制度の問題点は、耐震診断、耐震改修をした住宅が地震で万一壊れたときに関する保証が全くないことであります。最近、東京大学の目黒助教授らが、しかるべき耐震補強をした建物が地震で被害を受けたら、建て直しを含めて、被災建物の補修費用の一部を行政が保証するという制度を提案しておられます。この制度では、地震前にきちんと耐震改修等の対応をした人には必ず一定の支援金を支払うということを約束することで、家の持ち主に耐震改修のインセンティブを与えようというものであります。改修が促進される結果、全壊する住宅の数が大幅に減少する、そのため、行政側としては最小限の準備金を積み立てておくだけで十分な効果を上げ得るというシミュレーションの結果も発表されておられます。
 阪神・淡路大震災の後、生活再建支援に関して、事前の公平かつ透明なルールなしで多種多様な公的支援が行われました。地震発生後のさまざまな時期に、公的支援による事業が継ぎはぎ的に行われ、しかも、これらのうちのかなりが、被災者への直接的な現金給付とみなされるものでありました。
 大都市が大震災を受けたときの個人に対する公的支援は限定的とならざるを得ない、そして、前もって公的支援の範囲や内容などをルール化しておき、過大な期待感を抱かないように理解してもらっておくということは行政の責務であろうと思います。
 震災時の住宅再建、生活再建は基本的に自助の問題でありまして、個人はより積極的な自助努力に取り組むべきでありますし、行政は個人の自助努力を助けるための政策展開に努めるべきではないかというのが、本日の私の結論であります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
田並委員長 ありがとうございました。
 次に、翠川参考人にお願いいたします。
翠川参考人 東京工業大学の翠川と申します。
 お手元の資料に従いまして、地震被害想定とその課題について意見を述べさせていただきます。
 皆様が御存じのように、適切な防災対策を策定するために、大地震時に生ずるおそれのある被害を事前に想定すること、いわゆる地震被害想定というものが国や地方自治体によって行われてまいりました。その流れを簡単に御説明いたしますと、まず第一番目といたしましては、その地域に対して大きな影響を及ぼすと考えられる地震を想定する。二番目といたしまして、この地震が発生した場合に対象地域の各所でどのように揺れが生ずるかということを予測する。三番目といたしましては、予測された揺れによってどのような被害が生ずるかということを推定する。最後に四番目といたしまして、推定された被害に基づきまして課題を整理し、今後の防災施策に役立てる。こういうことが行われておりまして、その概念図を示しましたのが、お手元の資料の一ページ目の図の一でございます。
 まず一番目の、対象地域に影響を及ぼす地震を選択するに当たって、それぞれの地域でどんな大地震が起こりそうなのかということを知る必要があるわけですけれども、このデータとしては、例えば地震調査研究推進本部などで、主要な活断層ですとか海溝型大地震の活動度の評価が行われております。ということで、それぞれの地域に危険を及ぼす地震像というものがだんだんとわかってまいっております。
 二番目の問題として、揺れの予測という問題がございます。これについては研究が進展しておりまして、計算機の能力も向上しているということもありまして、非常に細かい計算が可能となっております。先ほど溝上先生からもお話があった東海地震の予想震度分布、これは二ページ目の図二に示してございますけれども、こういったものも最新の手法を活用して描かれたものでございます。
 それから、図の三が、大変申しわけないんですが、ファイルをメールでお送りしましたらファイルが化けてしまいまして、変な絵になっておりますけれども、地震調査研究推進本部でも地震動予測地図というものを作成しつつありまして、全国での揺れによる危険度を概観できるようにというようなことで作業を進めております。
 こういった地震の揺れの計算の手法というものは非常に進展しているわけでございますけれども、実際に予測を行うという場合にはいろいろなデータが必要となってまいります。例えば地震の揺れの性質というのは、地盤の条件によって大きく変化いたします。お手元資料の二ページ目の図の四は、揺れやすい地盤ですとか揺れにくい地盤で地震の揺れの性質が大きく変わるという例を示してございます。したがいまして、それぞれの地点での地盤の情報というものが、こういった計算には必要となってまいります。
 残念ながら、現在のところ、全国を網羅するような精密な地盤のデータベースというのはまだ整備されておりません。したがいまして、地震被害想定を行うたびに、それぞれが対象とする地域の地盤データを整理するというのが現状でありまして、今後、効率的に地震被害想定を実施するためには、全国規模での地盤情報データベースというものを整備するということが一つの技術的な課題となっております。
 三番目の被害の推定に関しては、現状では、三ページ目の図の五に示しておりますように、地盤の液状化ですとかがけ崩れなどの地盤災害、それから、建物やライフラインの被害といった、揺れによって直接生ずる一次災害、それから、一次災害によって引き起こされる人的被害や地震火災、生活支障などの二次災害、こういった推定された災害に基づいて、被災者の行動ですとか防災対策の時間的推移をまとめた災害シナリオなどが示されております。
 一例といたしまして、関東地震の再来を想定して神奈川県が行いました被害想定のうちの建物の被害想定図というのを三ページ目の図の六に示しておりますけれども、一般には五百メートルメッシュですとか一キロメッシュ単位でこれらの被害が推定されているということでございます。
 このようにいろいろな被害、各種の被害というものが想定されているわけですけれども、課題も残ってございます。
 四ページ目の方に移らせていただきますが、まずは災害の広域化という問題がございます。図の七には首都圏の例を示しておりますけれども、大都市圏というのは市街地が連続しているために、行政区画を超えて広域に被害が拡大するおそれが非常に高い。したがいまして、図の八に示しておりますように、各自治体ごとで従来ばらばらに被害想定が行われているわけでございますが、複数の自治体をまたぐ広域での被害想定というのも重要となってまいります。これによって、災害時の自治体による相互応援計画の立案等も可能となってくると考えております。
 さらに、問題点といたしまして、災害の複雑化の問題もございます。先ほど片山先生もおっしゃいましたが、高度情報化など、社会は複雑に発展しております。これに伴いまして、災害も複雑化、巨大化しております。
 例えば、昨年九月十一日のニューヨークでのテロ事件では、死者、行方不明者が約三千六百名、物的損失が四・四兆円というようなことが言われております。この大きさは、兵庫県南部地震、阪神・淡路大震災での死者数六千名、物的被害十兆円と比べまして、ほぼ同じオーダーの非常に大きな被害でございます。また、このニューヨーク・テロ事件で間接的に生じた経済的な損失というものも、六兆円ないし八兆円ということが言われております。これは、直接的な物的損失を上回る非常に大きなものでございます。
 このように、高度に発展、集積化が進んだ大都市では多様な被害が生じ、二次災害として都市のそれぞれの機能が低下し、それが波及して三次災害として都市機能全体が麻痺し、経済活動の低下、停止によって社会経済システムが破壊され、それが他の地域へと広く波及、拡大するというおそれがございます。その災害波及のイメージというものを、お手元の資料の五ページ目の図の九に示してございます。
 したがいまして、このような三次被害を含む総合的な地震被害想定を行い、対策を検討するということが重要かと思います。しかし、三次災害の評価手法というのはまだ確立されておりませんで、これに対応した災害予測技術の開発というのも技術的な課題の一つでございます。
 最後に、四番目、こういった想定結果をどのように活用するかという問題点でございますけれども、行政は、こういった結果に基づきまして、都市の安全性向上に向けた長期的な課題ですとか、応急活動の充実に向けた中期的、短期的課題、復旧復興期の課題などを整理して、今後の防災施策に役立てようとしておられます。これはこれで大変結構なことでございますが、しかし、最終的に災害の軽減に生かすためには、被害想定結果を行政が利用するだけではなくて市民が利用し、市民の防災意識や防災行動の向上に生かすことが望ましいと考えます。
 市民が自分たちの地域の危険度を正しく認識し、防災意識が向上することにより、例えば住宅の耐震改修への理解と実施、密集市街地整備への理解と協力、災害発生時の迅速な救出、救命、消火行動、災害発生時の適切な避難行動など、具体的な防災行動に結びつくはずだと思います。
 それでは、実際に市民の方が地震被害想定を見た場合にどう思うかということですが、まず自分の家は危険であるかどうかということを知りたいと思うでしょうし、もし危険であるというふうに想定されていれば、どうしたらいいんだろう、こういうことを思うと思います。
 しかし、従来の被害想定では、先ほどの図に示した例もありますけれども、五百メートルメッシュですとか一キロメーターメッシュ単位で計算がなされておりまして、自分の家の場所の情報がピンポイントで与えられているわけではございません。また、市民がどのように対応すべきかといったような記述も、被害想定結果には示されておりません。ということで、現状では、地震被害想定結果を市民が直接利用するということはなかなか困難なことになっております。
 そこで、市民の皆さんにどういうふうに活用していただけるかという試みとして、昨年七月に横浜市は市民向けに地震マップを公開いたしました。それがお手元の別添のパンフレットでございます。これは、地震の揺れの詳細な予測マップとその解説並びに耐震改修補助などの行政施策を示したものでございます。
 あけていただきますと、こういった大きな地図がございます。これは南関東地震を想定いたしまして、どのような揺れの大きさになるかということを、市域を五十メーター角のメッシュに分割いたしまして、各メッシュごとに地盤の揺れやすさを考慮して詳細に計算されたものでございます。この非常に小さい、粒のように見えるのが五十メーターの大きさでございまして、これによって、市民は自分の家の場所で予想される揺れの大きさというのを実感していただくことができるわけです。
 それから、こちらの裏の方を見ていただきますと、これに対して市民ができる対策に関しまして、例えば木造住宅の無料耐震診断ですとか耐震改修工事に対する助成についても記述がなされております。
 横浜市では、この地震マップを数万部印刷し、区役所などで配布したり、インターネット上で公開するとともに、各地域での説明会を現在までに三十回程度行っております。その結果、この地震マップ公開後、年間千件程度だった無料耐震診断の応募者は年間当たり二千件と倍増いたしました。また、耐震改修工事助成の応募者も年間七十件程度だったのが倍増いたしまして、ある程度の効果が上がっているというふうに思います。
 この横浜市の試みも踏まえまして、地震被害想定結果を市民レベルでの活用を進めていく際の問題点を考えてまいりますと、情報の送り手側の行政と情報の受け手側の市民がそれぞれ歩み寄る必要があるのではないかと思います。
 情報の送り手側の問題といたしましては、市民の視点に立った身近で詳細な情報の提供が必要であり、このためには地盤の情報や都市の情報などについて詳細なデータベースを整備する必要があります。また、単に想定結果を示すだけではなくて、推定結果の精度ですとか結果が意味すること、また、具体的な対策例などの解説も加えることが重要かと思います。
 一方、情報の受け手側の問題点としては、やはり与えられた情報を正しく理解するための知識が必要だと思います。その助けとしては、市民防災教育の充実が不可欠であると考えます。市民防災教育の方法としては、いろいろな形が考えられると思いますが、効率的な方法の一つといたしましては、学校教育での防災教育の充実が考えられます。小中学校での総合的な学習の時間の利用というのも一案かと思います。
 以上、申し上げました課題を踏まえまして、「よりよい地震被害想定のための方向」というのもお手元の資料の七ページ目の図の十一に示しました。研究者は新たな災害に対応した推定手法の開発を進め、行政は身近な情報が与えられるよう地域のデータを整備し、市民は与えられた情報を正しく理解することに努め、研究者、行政、市民の三者がこのような努力を続けていくことで、地震被害想定が今後さらに地域の防災力の強化に貢献するものと考えております。
 どうもありがとうございました。(拍手)
田並委員長 ありがとうございました。
 次に、白石参考人にお願いをいたします。
白石参考人 おはようございます。東洋大学の白石真澄でございます。
 私の発言内容は、お手元に二枚物の資料として配付をさせていただいております。
 まず最初にお断りを申し上げなければなりませんが、私の専門領域は防災、災害対策ではございません。バックグラウンドは建築でございます。本日は、中央防災会議、今後の地震対策のあり方に関する専門調査会の一員として、また、私が一市民の立場から日ごろ考えております点について御意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 私の専門領域は、少子高齢化と町づくりでございます。今後、皆様御存じのように、二十年いたしますと、人口の四人に一人が六十五歳以上の高齢者でございますし、とりわけ高齢者の単身、夫婦のみの世帯、高齢者世帯が増加してまいるわけでございます。小規模化するということで、家庭内での相互扶助能力や地域の相互支援能力が低下していく、こうしたことが懸念されます。このような中で、災害時の安全確保についても、今までのレベルを変えていく必要があるのではないかなと最初に申し上げたいと思います。
 一たん地震が起こった場合でも、逃げおくれる、情報が届かなくて二次的な災害に巻き込まれる、こうした災害弱者がふえていくこと、さらに、現在障害を持たれていらっしゃる方の六割が六十五歳以上の高齢者であることを考えれば、初動体制というものが災害の二次的被害の拡大を防止するというふうに考えます。
 特に、今後、高齢者の増加ということを考えますれば、私は、片山先生もおっしゃいましたように、災害対策というのは都市の課題ではないかなというふうに思います。人口密度も多く、とりわけ高齢者の数自体も多い、さらに、地域コミュニティーも希薄化している、こうした都市についてが、まず災害に対する緊急の課題ではないかなと感じております。
 まず、本日の発言の位置づけについて御説明を申し上げたいと思います。
 お手元の資料の二ページ目をごらんいただけますでしょうか。災害対策に関しましては、片山先生もおっしゃいましたように、平常時、地震が起こった直後、さらに地震のときから復旧復興、また平時に戻っていく、こうした複数の段階がございますし、それぞれの時間軸の中で、個人が、企業が、地域が、自治体が、さらに国が行うべきことはそれぞれ違ってまいる、こういう認識でございます。
 私がお話しさせていただくところは、本日、網かけをさせていただいているところが一番主要課題でございます。国による法制度整備、この1のところについて重点的にお話をさせていただきたいというふうに思います。
 この中で、情報提供というところが括弧で書いてございますけれども、これを個人の立場に置きかえれば、平常時には、自分が住んでいる地域の安全性がどのようなものかということを常に自覚し、それに備えておく、こうした状況が必要だと思いますし、地震災害が起こった直後には、自分たちがどこに逃げればいいのか、さらに、避難路はどこにあるのか、物資の輸送はいつ、どこから来るのか、こうした地震直後の情報が必要になってきます。また、避難所で生活しながら時間経過をするうちに、自分がここでできることは何なのか、自分の住宅の再建や経済的な復興についてどのようにすればいいのか。個人によりましても、各段階で必要な情報が違ってまいります。ぜひ、こうした三つの時間軸、主体によって整理をして考えていくべきではないかなと感じます。
 まず最初に、「建物の耐震性強化」と「耐震性に強い都市づくり」が最優先課題、これについてお話をさせていただきたいと思います。
 レジュメにございますように、建築物の耐震改修の促進に関する法律、これは耐震改修促進法と言われておりますが、平成七年の十月に施行されました。
 この法律の目的は、不特定多数が利用する特定建築物について、階数が三階以上で、かつ面積が千平方メートル以上の建築物について、現在の耐震基準に適合しない場合は必要に応じて耐震改修を行うことを求めたわけでございます。いわば建物の所有者に対して努力義務を課した法律でございます。これによりまして、国、地方公共団体が資金の融通、あっせんを行いますし、耐震改修計画をつくって耐震改修工事を行う場合、住宅金融公庫の貸付資金の特例を設ける制度などが盛り込まれております。これにより、現在まで一定の成果を上げていると私は認識しております。
 二ページ目の図表二をごらんいただきますと、平成十三年九月現在で耐震改修促進法に基づく耐震改修の認定状況をお示ししておりますが、これは公共の建物で千六百三十九件、民間の建物で二百六十五件、全体が千九百四件でございますので、このうち民間の建物の占める割合はわずか一四%でございます。
 若干図表番号が飛んでしまいますが、特定建築物の耐震診断・改修を行っているかどうかの進捗を示したものが図表四でございます。
 図表四の中で誤植がございまして、対象建築物Bと示しておりますのは耐震を実施した建築物でございます。対象建築物Aに対して、実施した建築物はB、これをBというふうに変えてください。
 これをごらんいただきますと、地方公共団体の中では、全体の三三・六%が耐震診断を実施しております。その中で半数が改修、建てかえが必要と診断され、耐震改修を実施しております。もしくは、建てかえ、除去されたものが、六千四百と千二百ですので、これを合わせて合計七千六百。しかし、結果、改修や建てかえが必要とされた一万八千百戸の中で既にそうした実施が終わったものを七千六百としますと、残りの一万五百戸がまだ必要な手続が終わっていない、この数字でございます。民間については、全体の三・九%しか耐震診断を受けておりません。
 このように考えますと、不特定多数が利用する建築物の耐震化のさらなる促進が必要だと思いますし、耐震診断を義務化して、きちんと都道府県がそれに指導を行える、従わない場合は氏名を公表する、こうした手続が必要ではないかと思います。また、民間の建築物の所有者に対しては、より一層の耐震診断の普及促進が求められるというふうに思います。国の助成制度についても、地域要件が現状ございますが、要件緩和をするなどして、工夫の余地があるのではないかと感じております。
 次に、密集市街地の防災性の向上、道路と沿道建築物の一体的整備のお話をさせていただきたいと思います。建物が倒壊して、その建物が緊急避難路をふさぐ、また、沿道沿いに建物がたくさんつぶれて瓦れきが存在しているということであれば、被災時の応急活動の支障になります。これについては、公費を一定程度投入しても、沿道建築物の倒壊を防止し、緊急時に避難路が即座に確保できる、こうした手続が必要だと感じます。
 次に、個人住宅の耐震化、老朽化住宅の建てかえ促進についてお話をさせていただきたいと思います。
 図表三をごらんください。新耐震、これは昭和五十六年でございますが、新耐震が基準施行された昭和五十六年以降に建築された住宅ストックは全国で二千三百万戸ございます。それ以前に建築された住宅は二千百万戸でございます。ほぼ同数程度でございます。このうち、古い住宅のうち、新耐震基準レベルの耐震性を有していないものが千三百万戸ございます。すなわち、八百万戸が既存の不適格なまま残っている住宅でございます。
 国土交通省の調査によりますと、我が国の住宅の平均寿命は約二十六年、この計算によりますと、五年後の二〇〇七年には旧耐震基準を有した住宅はほぼ半減することになっております。片山先生もおっしゃいましたが、阪神大震災のときでもそうでございましたように、多くの高齢者は老朽化した住宅に住んでおり、とりわけ住宅の倒壊などで多くの犠牲者を出しました。神戸市では、八割が建物の倒壊による圧死だったというふうに伺っております。
 私は、これについては、住宅の性能評価を行い、質のよい、安全性の高い住宅を市場に流通させる市場原理を導入するということ、さらに、個人が耐震診断や耐震改修を行う、個人の努力に対してインセンティブをつけていく、個人の自助努力を支援するような制度、自助努力を後押しするような制度が必要ではないかなと感じております。
 現在の個人住宅への諸制度は、耐震診断や耐震改修の利子配分程度まででございます。個人の資産形成への支援というものはモラルハザードにつながる。低所得であればお金がもらえる、こうしたことによってモラルハザードにつながる。つまり、公費投入をするにはある程度公共性が必要、こうした観点に立っておりますけれども、しかし、忘れてはならないのは、低所得者や高齢者の住宅をどうしていくかということです。
 とりわけ高齢者にとりましては、老朽化した住宅に住んでいる人が多いわけでございますが、改修を行ってもあと何年住めるかわからない、こうしたことによりなかなか改修が進んでいないというふうに聞いております。低所得者や高齢者については自助努力についても限界がございますので、耐震補修への補助、さらに公営住宅への入居誘導等もあわせて考えていく必要があるというふうに思います。
 次に、都市の高齢化、地域コミュニティーの希薄化など、地域で防災力の低下に備えるというところについてお話をさせていただきたいと思います。
 私は、災害に強い都市づくりに備える、こうしたハード以外にも、あわせてソフトの対策を行っていくことが必要だというふうに感じております。
 まず、日ごろから地域の防災意識を高め、防災教育を行う、これが肝心ではないかなと思います。阪神・淡路大震災以降、一時的には国民の防災に対する意識が非常に高まりましたが、また最近では低下傾向を見せております。環境保護やボランティア活動に対して住民は参加したいという意向を持っておりますが、防災活動については参加意識が非常に低く、内閣府の調査でも、防災活動に参加したことがないという人は住民の七割を超えています。
 また、九月一日の防災の日などに都道府県を挙げて大規模な防災訓練を行っているところがございますけれども、私は、ぜひ地域で、小グループで、役割感、被害想定を行った上で、自分が災害のときに何をすればいいか、きちんと自分の役割認識ができるような小グループでの防災活動が重要ではないかなというふうに思います。
 また、三点目には、阪神・淡路のときにも、災害からの立ち直りが早かった地域というのは、日ごろからの人間関係が濃厚であった地域、とりわけ真野地区などがそうであったというふうに伺っておりますが、災害からいち早く立ち直るには、日ごろからのつながりというものが重要であると考えます。日ごろからのボランティアやNPO活動、地域の見守り、こうした住民の活動を促進していく必要があるというふうに思います。
 次は、自治体への期待でございます。
 まず、自治体の役割としては、市民参加による防災計画づくりと自主防災組織への支援でございます。市民の中には、参加したいと思っていてもなかなか防災活動に参加する機会を見出せないでいる。総理府の調査によれば、国民の一七%が避難場所を知らない、自分が災害のときにどこに避難していいかわからない、こうした現状がございます。市民が自助努力をするために情報提供をしていくことが自治体に求められているというふうに思います。
 次には、実効性あるマニュアルの整備です。都道府県等で整備をされている、市町村で整備をされているマニュアルを拝見しましても、震災のときには関係機関が連携をして迅速に対応する、こうしたあいまいなことが書かれているというふうに聞いております。いつ、だれが、どのように行動するか、役割分担等、関係各所のスケジュールを明確にした、実効あるマニュアル整備が必要だと思います。これについては国が、各都道府県がどのレベルまで整備をすればいいか、ガイドラインのようなものもつくっていくべきだと考えております。
 次には、ハイテクだけではなくローテクも利用した情報提供ということを申し上げたいと思います。障害を持つ方の八、九割がパソコンやインターネットを利用した経験がございません。たった一〇%しか利用しておりませんし、高齢者の一二%しか携帯電話を利用しておりません。日ごろ使っていないものは災害時にも使えない、こうした認識を持つべきだというふうに思います。私が神戸や有珠のときに避難所を回りましたときにも、パソコンを活用して情報をとっているのはほぼ若い人たちでございました。ITが普及しているとはいえ、ぜひそのペーパー情報、ローテクの情報によってどの人にも即座に情報が行き渡る、こうした工夫が必要ではないかなというふうに思います。
 ハザードマップの公表については、先ほど翠川先生からおっしゃっていただきましたので、割愛させていただきたいと思います。
 さらには、要援護者、障害者や高齢者を想定した避難所、これはバリアフリー化とマニュアル作成のことでございます。現在、都道府県などの調査によりましても、避難所においては、階段にスロープが設置してある、車いすも利用できるトイレがある、さらに、点字や外国語表記などが備えてある、こうした避難所の八八%がバリアフリーについての配慮を行っておりません。車いすが利用できるトイレというものは一五%しかございませんし、手話通訳やガイドヘルパーが置かれている避難所は一一%、そうしたことを配慮するという避難所は一一%でございます。掲示板や聴覚障害者用のファクスを設置しているところなどは七%しかございません。こうした避難所についても、ハード、ソフトともにあわせた対策が必要だというふうに感じます。
 最後から二点目でございますけれども、広域被害を想定した広域防災活動に関する計画、これは、兵庫県の副知事の方のお話によりますと、兵庫県と大阪で職員がどのレベルで出動するか、その災害想定のレベルが異なっているというふうにお聞きいたしました。ぜひ、広域被害を想定して、国がまず広域の都道府県を連携させて、複数の都道府県を結ぶような広域通信網の整備、こうした広域被害を想定した広域防災活動が必要ではないかなというふうに思います。
 さらに、私は、都市の問題というのは、帰宅困難者が多く発生していく、こうした問題も顕在化してくるのではないかなというふうに思います。
 災害時の役割においては、企業も何らかの役割発揮をすべき、コンビニ等で備蓄した食料品を拠出する、こうしたことは既に協約として結ばれておりますけれども、都心区においては、地元へ、帰宅難民をどのように安全かつ円滑に帰宅させていくか、こうした都市の交流人口も想定した避難計画が求められるべきではないかなというふうに感じております。
 さらに、ここには書いておりませんけれども、こうしたことを自治体が行っていくためには、自治体の専門職員の養成です。
 通常のローテーションのように一、二年で一回、二、三年で一回というふうに人員の配置が異なりますれば、災害時の知識のストックというものが離散してしまいます。ぜひ中長期にわたって、十年ぐらいで地域の防災計画を立て、それを遂行する、こうした専門職員を養成していただきたいというふうに感じております。
 以上でございます。(拍手)
田並委員長 ありがとうございました。貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
田並委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。
西川(京)委員 自由民主党の西川京子でございます。よろしくお願いいたします。
 溝上、片山、翠川、白石の各先生方、本当にきょうはお忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございました。
 一昨日、東海地震の防災強化地域というのが発表になりまして、きょう新聞にも出ておりまして、けさ方のニュースでもやっておりました。いよいよまたこの東海地震に対する住民の人たちの関心も高まるようになってまいると思いますけれども、先生方のお話をお聞きしておりまして、基本的に、地震が起こる前の状況と、それから起きた後にどう対応するか、この問題に絞られるんだろうと思います。そういう観点から、二つに分けて私も御質問させていただきたいと思います。
 その中で、耐震建築の問題なんですけれども、五六年あるいは七一年、八一年と、住宅のかなり厳しい改正がずっと行われたわけで、五〇年当時に比べると、いわゆる壁の量なんかが二倍になるとか、ある程度の耐震は進んでいるかもしれないんですけれども、先ほどの白石先生のお話の中でも、まだまだ公共構造物のあれも進んでいないという状況があるようでございます。
 その中で、私が今、ああ、なるほどと思いましたのが、片山先生、申しわけございません、構造物の補強がなかなか進まない原因という中で、ぜひ、できたら自治体が一定の支援金を支払ったらどうか、要するに、補強してもそれがまた壊れてしまったら、何の保証もないわけですから、そういうものに対して、もしそういうときには自治体が、補強した家で被害に遭った建物には一定の支援金を支払うような制度はどうかというお話がありまして、大変今興味を引かれたんですけれども、もうちょっと詳しくお話ししていただけたらと思います。
片山参考人 実は、これはアイデアそのものとしては、東京大学の目黒助教授が今あちこちでおっしゃっていることでございます。
 今、西川先生がおっしゃいましたように、せっかく保険に入っても、建物が強くなるわけではない。これはインセンティブをそいでしまうのではないかというのが一番大きな目的でありまして、こういう人たちに診断、それから改修のインセンティブを与えるにはどうしたらいいかというふうに考えたときに、きちんとした対応をしていた人たちには、それなりの評価が地震の後でもなされるべきだというのが目黒先生の考え方でございます。この考え方は、考え方そのものは非常に簡単でして、それ以上のことはほとんどございません。
 ただし、実際にシミュレーションなんかをやっておられるときに、考えておられるのは、それでは一体どれぐらいの準備金を国とか自治体が考えておけばこれが可能になるだろうかということであります。実際に、国、自治体が、一戸の耐震改修が進むたびに、それぞれ一万円、例えば両方で二万円ぐらいの準備金をきちんとしておけば、実際には一千万戸近くあるという構造物のうち、耐震改修したものは一%以下に、多分、全壊の被害率が減るであろうから、それだけの数で十分なお金の対応ができるというのが考え方でございます。
 よろしゅうございますでしょうか。ちょっと、余りきちんとはしていないみたいですが。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 これはまだ研究の余地がかなりありそうですが、確かに、国の方で平成十四年度に耐震改築に関して七・七%補助をする、そういう案も出ておりますけれども、なかなか現実には進まないという中で、本当にそれで壊れてしまったときには、ではこれだけのものは出しますよというのは大変大きな一つの考え方だと思いますので、ぜひ参考にさせていただきたいと思います。
 それと、阪神大震災のときに、特に大きな木造住宅が、九〇%ぐらい、古い建物が倒れたと。このときに、私はこれは地震対策以外の、一つの印象を持ったのです。これは言いにくいことかもしれませんが、割合密集地であって、割合古い木造住宅が多かった、そういう中で、木造住宅は危険だよというテレビからの一つの発信があったように思うんですね。そういう中で、大変、日本の伝統的な木造住宅というものに対するイメージダウンというのでしょうか、そういうことがあったような気がいたします。
 私は、これはある意味で、しっかりと、きちんと昔ながらの工法なんかで建てられた木造住宅は、それこそ物すごい、むしろ鉄筋なんかより高い、地震には強いあれがあるわけですけれども、そういう点で、申しわけございません、翠川先生があるシンポジウムで、木造住宅のそれに対して、特にかわら屋根がちょっと重かったりする、その辺の危険性もあるんでしょうが、伝統工法の家屋などでびくともしない家はたくさんあったので、そういう表面的な理解はどうかという御意見もあったように思います。
 ですから、もちろん鉄筋でも古いものはやはり壊れているわけですので、その辺のきちんとした情報を発信するときの整理というのでしょうか、そういうものも私は必要なように思いますけれども、その辺の御意見をちょっと、翠川先生、よろしかったら一言お願いいたします。
翠川参考人 今御指摘のように、在来工法が耐震性が低かったということではございません。きちんとして建てられた在来工法は、やはり耐震性が高くて被害を免れております。
 ただ、なぜこういう混乱が起こったかといいますと、一般にプレハブ住宅というのは新しいものが多くて、新しい設計をされているものがあるので、割合としてはプレハブ住宅は耐震性の高い割合が多かったということで、在来工法はそれに比べて耐震的でないというような言い方をされた場合もありますけれども、きちんと建てられたものについては、在来工法でもプレハブでも高い耐震性を示して大きな被害はなかったということが、阪神・淡路の教訓の一つかと思います。
西川(京)委員 ありがとうございました。
 特に、地震対策と経済界の一つの事情と余り合わせてはいけないのかもしれませんが、今、日本の森林が大変荒れておりまして、ひとえに日本の木が使われていないという現実があります。そういう中で、こういう発信というのは、特に大きな地震のときには国民全員が注目してマスコミの発信を見ているわけですので、そういうときにはやはり正確な情報というのもまた必要かな、そんな思いを持ちました。
 続きまして、震災が起こった後の、では、そのときの対応をどうしたらいいのか。これは皆様の、それぞれの先生方が御意見をおっしゃっていらっしゃいますが、その中で私は、兵庫県の淡路の北淡町の例を、大変興味を持ちまして、ちょっと読ませていただきます。
 淡路島の北淡町は「二千二百戸が全半壊、四十人が死亡したが、当日午後四時の段階で一万八百人全町民の安否を確認、火災発生をゼロに抑えるという迅速な救助活動を行った。 消防団とOB千人が台風の度に出動し、町内会と自治会が支援する体制が出来上がっていたからで、日常の防災活動がいかに大切かを教えている。 町内会、自治会が活動する自主防災組織は、大震災の前年までは全国市町村の二七%しかなかったのが、八〇%まで増えた。」こういう記事も載っているわけです。今、大規模大震災というのが一番皆さんの大きな興味であるわけなんですが、それとまた対極にある、地方における小さな自治体の対応というのがいかに大規模大震災における参考になるかということだと思うのですね。
 神戸はこの大震災のときに行方不明者が膨大な数に上った中で、一日のうちに行方不明者ゼロにしてしまった。これはまさに、ああいう小さい自治体の長は、特に災害非常時や火災のときは常にトップに即なるわけで、その町の隅々まで状況を把握しているということが大きな力になるわけですね。的確な処理が、指示系統ができている。それと、地域コミュニティーがまだまだ残っていて、特に消防団活動というのが大きな力になっていると思います。
 そういう今の現実を考えますと、この消防団という組織が、各田舎の方でもだんだんなり手がなくて厳しい状況ではあるんですが、これは私は世界に誇る自治組織だと思うのですね。これを何とか私は、今の、地方ではもちろんですが、都会にもそれに似た組織あるいはそれの再復活をぜひ図って、この地震災害のためにもしていただきたい、そういう思いを持っています。
 その中で、翠川先生、新たな消防団活動の中で、地域の、結局、企業の中にもそういう組織をつくる、あるいは大学生やら、私は高校生まで広げてもいいと思うのですが、一つのボランティア活動の一環として、そういう消防団組織でいろいろな訓練をしたりして、災害でNPOの人たちと一緒にそういう活動をするような考え方、これは教育の面からも、公共な、公のものに対する一つの奉仕精神なり、毎日の日常生活の一つのけじめなりをつけるためにも、私はぜひいいアイデアだと思うのですが、翠川先生、その辺のところ、ちょっとお話しいただけたらと思います。
翠川参考人 確かにコミュニティーの問題、大変重要な問題かと思います。特に大都市ではコミュニティーが非常に希薄ですので、どういうふうにして強化したらいいかということはなかなか難しい問題かと思います。
 その一つの方策として、今御指摘のように、学校教育を通じてそういう防災コミュニティーをつくるということも非常に重要な方向で、やはり学校での防災教育を非常に活用して、生徒の防災教育を向上させるとともに、そういったコミュニティー活動にもつながるような仕組みができると、今後の地域の防災力の向上に大変有益なことだと私も考えております。
西川(京)委員 ありがとうございます。
 白石先生も、きょうは建物の建築家としてのお話が主だったように思いますけれども、特に介護の方々、老人、寝ていらっしゃる寝たきりの方々、いわゆる介護が必要な方々の地震のときの緊急避難が一番大変だったというようなお話も伺ったように思います。実は私の娘が地方の放送局に勤めておりまして、やはり阪神大震災のときに入りまして、一番それが怖かったし、大変だったという話を聞きました。
 そして、瞬間的に起きたその後のいっときのあれでは、ボランティアの方が大勢来てくださって、もちろん人が一人でも多い方がいいに決まっているんですが、その地域で瞬間的にぱっぱっとうまく指揮系統を発令するリーダーの存在が本当に必要だということを皆さんがおっしゃっていたということを聞きました。都会でも、体が不自由な人たちを運ぶにしても、まさにお互いに、あ、あそこにああいうおばあちゃんがいるよ、そういうお互いの人間的つながりというのでしょうか、それが都市では特に希薄になっている。この問題は、私はまさに日本の将来のためにも課題だと思うのですね。
 特に、今、IT社会がどんどん進む中で、都会に住む人たちが本当に一日ほとんど人と話をしないで過ごしてしまうような生活が中にはあるような状況の中で、いかに都会に地域の消防団なりなんなりを参考にしたような地域社会を構築していくか、これは大変厳しい問題で、教育にもかかわってくるんですが、私も、先ほど翠川先生のおっしゃった学校教育の中にそれを入れるという話と、地域の中でそういう小グループで活動する必要性というのでしょうか、そのことに関して、ちょっと白石先生にも一言いただきたいと思います。
白石参考人 貴重な観点からの御質問、ありがとうございます。
 私は、福祉の方の情報としては、社会福祉協議会へ持っていったり、どこにどういうレベルの寝たきり老人がいらっしゃるかということを把握されている、しかし、この情報が、防災側、例えば消防団の方に行き渡っていないのではないかなというふうに思います。
 福祉や医療情報、プライバシーにも配慮する必要があると思いますけれども、こうした情報を防災にかかわる組織というものも共有していくべきだろう、そうすることによって、災害が起こったときにだれがだれを救出しに行くか、だれとだれがチームを組んでだれの安否を確認できるか、こうした実効的な組織ができるのではないかなと感じております。
西川(京)委員 ありがとうございました。
 これで質問を終わります。
田並委員長 後藤斎君。
後藤(斎)委員 参考人の四人の先生方、お忙しいところ、ありがとうございます。
 冒頭、溝上先生に御質問をしたいと思います。
 地震のみならず災害全般にわたって中央防災会議が国全体の対応をし、地震防災計画の作成やその実施の推進をするということになっております。あわせて、先生の先ほどのお話の中で、予知という中でも、地震予知会とか、あと複数の調査研究機関、審議会がございます。その辺の、複数にまたがっている問題点がもしあるのか、それとも、それぞれ目的の違いで、複数あって、審議会、研究会がきちっと機能しているのか。観測体制の強化も含めて、これから予知というものをどう生かすかということも含めて、冒頭御意見をお伺いしたいと思います。
溝上参考人 今御指摘の点は、地震予知連絡会というのが一つございますね、それから政府の地震調査の委員会ですか、それから東海地震にかかわります気象庁が事務局となっております会がありますね、この三つのことについてのお尋ねかと思います。それぞれ歴史、その成り立ちの特徴がございます。
 まず、地震予知連絡会は、非常に長い歴史を持っておりまして、これは国土地理院が事務局になっておりますが、全国の地震の研究に携わる専門家が集まりまして、最近の地震、地殻変動の状況について、極めて基礎的、学術的な視点から幅広く情報を交換し、議論する。場合によっては特定のテーマを取り上げまして、そのテーマについて深く掘り下げた議論をする、そういう性質の会でございます。
 それから政府の、先ほど申し上げました、正確な名前は私、ちょっと記憶しておりませんが、調査委員会ですね。ここは、私の知っている範囲では主に広報活動、特に新しい地震、地殻変動の状況等につきまして、例えば大きな揺れを伴う地震が起きた、若干被害が起きたというような場合には、その背景について広報をする、国民に詳しくそれを知らせる、そういう役割を主なものとしていると思います。
 それから三つ目の、気象庁が事務局となっております会は、東海地震という巨大地震が切迫しておりますので、これに対して気象庁あるいは関連機関は、監視、観測を強めておりますが、これに対する観測データの推移の評価、そして、究極には東海地震の発生の直前にその直前予知に関する情報を発信する、そういう役目を持っております。
 対象は地震でございますから、地震、地殻変動現象でありますから相互に関係がございますけれども、今申し上げましたように、それぞれの特有の任務そして機能を有しながら、相互に協力しながら行っていると。実際のメンバーもかなりオーバーラップしている面があることも事実でございますし、こういう機能を分担し合いながら行っていっているというふうに申し上げたらいいのではないかと思います。
後藤(斎)委員 四人の参考人の先生方にお尋ねをしたいと思います。
 地震のみならず、全体の防災関係予算、内閣府全体で整理をすると四兆五千億を超す数字になっております。そのうち、予知等の科学技術の研究は一・七%、七百八十億余り、そして防災予防が一兆一千四百億、国土保全二兆四千億、災害復旧に九千四百億と、これはそれぞれの各省のいろいろな予算も積み上げた数字でありますが、先ほどそれぞれの先生方のお話がありましたように、予知の重要性、予防の重要性、そして行政や地方自治体の行政、住民へのその意識の徹底等々には、なかなか、多分この予算のうち使われている部分は少ないと思いますが、この四兆五千億余りの予算と、今予算のいろいろな比率をお話ししましたが、それについて、個別でも結構ですが、こういう点が問題だ、こういう点をもっときちっとした方がいいという具体的な点がありましたら、簡潔に、溝上先生からお答えいただきたいと思います。
溝上参考人 私は、予算の仕組みあるいは内容については深く存じておりませんけれども、今の御指摘の点については、薄々は感じておりました。
 地震に関する予算の項目内容は実に多岐にわたります。地震の調査研究あるいは予知研究という名前のもとの予算の内容を見てみますと、例えば、日本の国土の基礎的な調査、これは測量調査ですね、こういうものは部分的には地震予知という名目に入っている場合がございます。それから基礎的な地球科学、そして日本の地下構造の研究あるいは地震活動の研究、これもまたその中に入ります。
 それに対して、実際に異常が起きてくる、そして地震が起き、火山噴火が起きるという我々一般市民が見たところの地震現象、切迫する地震現象に対する監視というものももちろん入っております。その比率は、必ずしも直接予知にかかわるようなものが非常に大きいかというと、全く逆でありまして、極めて少ないんですね。
 ところが、国民一般から見ますと、巨大な予算が、例えば地震予知に投じられているというふうに理解する、あるいは週刊誌やマスコミはそう書くと、これは極めて大きな誤解を呼ぶものでありまして、本当は、地震の予知、直接の観測にはもう少し予算が投じられないといけないという実情もございます。ところが、世論がそのように受けとめていない面があるのは、つまり、今御指摘の点がまさに図星の点だろうと思っております。
片山参考人 研究予算が少ないというのはある程度事実であろうと思いますが、私は、自然災害に対していろいろな研究をしたり活動をしたり、それから常時たくさんの地震計のメンテナンスをしたりという人間の数が足りないというのが、もっと大きな問題ではないかというふうに感じております。
 今、人間は外から、アウトソースするというのは当たり前でありまして、我々の独立行政法人でもそれをしておりますけれども、やはり自然災害に対する戦争をしているのが独立行政法人防災科学技術研究所みたいなところでありまして、そういうところでは人のニーズというのが非常に大きいということを、先生におわかりいただければ大変ありがたいと思います。
翠川参考人 今、片山先生がおっしゃったように、人の問題というのは私も非常に重要だと考えておりますけれども、もう一つ別の観点としては、広報活動というものも重要かと思います。
 先ほど溝上先生がおっしゃったように、地震調査研究推進本部ですとか内閣府の防災担当等でいろいろな防災に関する調査研究が進んでいるわけですけれども、これは周りの方に聞くと、意外と知られていないのですね。せっかく阪神・淡路大震災以降、国の地震調査研究というのは一体化して非常に進んでいるのに、こういった研究成果がなかなか国民の皆さんのところに伝わっていないということで、広報についてもそれなりの予算をつけて国民の皆さんに正しく理解していただく、そういう努力も必要かと思います。
白石参考人 私も、予算の内訳については詳しくは存じ上げておりませんけれども、先ほど申し上げましたように、すべての国民が有する住宅が、自分の住宅の安全性がどのようなものか、建物の耐震診断等については予算を重点化していっていただけるのではないかなというふうに思っております。
 また、先ほど地震予知の研究者の人材というお話も先生方からいただいたわけでございますけれども、自助努力ということを考えれば、企業で防災マニュアルの存在は知っているけれども、その内容については知らない、こうしたところの内訳を見ますと、企業で防災管理者がいない地域ほど社員の安全性に対する認識が薄い、こうした結果も得られております。
 ぜひ、地元の自治体で防災に専門的にタッチするような職員の人材育成と、企業がきちんとした防災活動ができるような人材育成、教育の面にも予算を注力していただきたいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 大変ありがとうございます。
 次に、翠川先生と白石先生のお二人にお尋ねしたいと思います。
 先ほど、都市の防災、そして予防のあり方の重要性について御指摘がございました。
 さはさりながら、都市だけではなくて、いわゆる都市に対応する言葉でいえば過疎地的な部分、先ほどお話もありましたが、森林災害、森林も含めた防災体制が都市とはちょっと違うのかなというふうに思っています。むしろ、高齢化が進み、そして一たん大きな火事になると、地震になると大きな災害になるということでは、都市の問題とあわせて過疎地の問題も考えるべきではないかなというふうに思っておりますが、過疎地と防災という点でどんなお考えをお持ちなのか、端的に翠川先生と白石先生にお尋ねを申し上げます。
翠川参考人 確かに、大都市の問題だけでなくて、過疎地域の問題というのは、結局、高齢化が進んでいて助けてもらう人ばかりで、助ける人がいないということになりますので、非常に重要な問題かと思います。
 それにはやはり、先ほど北淡町の例がありましたけれども、日ごろのコミュニティーのつながりというのが重要であって、例えば福祉と防災の連携とか、そういったような日常と非日常の連携を考えながら、総合的な防災対策を考えるということが一つのかぎではないかと思います。
白石参考人 過疎地の問題でございますけれども、地震と同様に、今後、深刻な被害になるであろうと考えられるのは土砂崩れや集中豪雨、こうした自然災害もあろうかというふうに思います。
 そうした際に、まず、過疎地の人が災害から逃げおくれ孤立化することがないように、初動体制ができるように、ハザードマップをきちんと整備して、初期の情報がうまく伝わるような仕組みを導入するべきです。また道路事情が悪く、高次医療を受けられるような地域に三十分圏内で到達できない、こうした地域が日本の中には数多く残されています。そうした地域に関しては、きちんと緊急輸送ヘリなどを使って医療地域に運ぶ、こうした交通面でのサポートも必要ではないかなと感じております。
後藤(斎)委員 ありがとうございます。
 片山先生にお尋ね申し上げます。
 私たち民主党では、被災者生活再建支援法の抜本改正を今求め、対応しております。公的支援と自助という、いろいろな対応の考え方はあると思いますが、今、大変、世帯主に所得制限を課したり、支援金の上限は現行では百万円でありますが、それを五百万に引き上げる、先ほどの所得制限では一千万を上限にする等々のいろいろな見直しをしております。
 片山先生から見られて、現行の被災者生活再建支援法をどう認識され、今二点だけお話をしましたが、その点についてコメントがございましたら、お願いをしたいと思います。
片山参考人 神戸の場合には全壊住宅が十万戸ということで、百万円相当で、それなりのお金で間に合ったわけでございますけれども、これが南関東地域、二千万か三千万人いるところで、同じような割合で全壊被害が出たといたしますと、百万円でも大変な国費の出費になるのではないかというふうに私は思っております。それをさらにふやすとかいうようなことは、基本的に、地震後の国の財政を非常に圧迫することになるという意味もあって、現金による給付というのは余りこれ以上広げるべきではないのではないかというのが私の個人的な感想でございます。
後藤(斎)委員 翠川先生にお尋ねをしたいと思います。
 いろいろな災害が大規模化をし、そして、それぞれの自治体も連携をしながらやっていかなければいけないという御指摘がございましたけれども、よく言われる日本の危機管理体制、自治体ごとの消防組織でありますし、それをトータルとしてまとめる消防庁の権限も、平時では大変弱いものになっています。そして阪神・淡路でも露呈をされたように、内閣と自治体とのいろいろな権限の問題も含めて、なかなか実際に、迅速に災害への対応ができない部分があると思います。
 アメリカではFEMAが、いろいろ歴史的な経緯はありましたが、結果は今、国民から大きな支持を得て、そして機動的に各地域の大規模災害に対応しているということを含めて、私たちは今、日本型FEMAの確立を求め検討しております。先生の御認識では、日本にFEMA的な組織はどのような形で導入すべきと思われておるのか、御見解をお伺いしたいと思います。
翠川参考人 御指摘のように、災害が大規模化して、行政を超えて大きな災害が起こるということで、当然一つの行政で対応できなくなる、そのときにどういった総合的見地から意思決定ができるかということで、一つとしては、やはりアメリカのFEMAがやっているようなところで、意思決定を一元化してやるというのは非常に効果的なやり方かと思います。
 ただ、こういったやり方が日本の社会になじむかどうかという問題もございまして、私自身、ちょっとまだきちんとした考えを持っておりませんが、やはり意思決定というのを一元化するということは、混乱を防ぐということでは重要なやり方だと思っております。
後藤(斎)委員 溝上先生に、多分最後になると思いますが、端的にお尋ねしたいと思います。
 先生、きょうは東海地震をめぐる状況ということでお話をいただいたのですが、富士山も低周波地震ということで、去年はかなり大きな記事になって、今は落ちついているらしいのですが、富士山のその低周波地震の今後の予想というと大変おかしいかもしれませんが、どんな展開になって、そして観測体制はどんな形で対応していくべきか、簡潔にお答え願いたいと思います。
溝上参考人 富士山は、日本の活火山の最大規模の火山でございますけれども、私は火山学者ではございませんので、今の御質問に適切なお答えができるかどうかわかりませんが、東海地震をめぐるというくくりで申し上げますと、東海地震のような巨大な地震がその準備過程の中にありますと、ひずみがだんだん蓄積されていきますね。その異常なひずみが及ぶ範囲というのは極めて広い範囲でありまして、伊豆諸島から恐らく南関東の一部、そして北の方は富士山の直下まで及んでいると思われます。
 富士山の直下に及ぶひずみの変化が、もし富士山の直下にマグマだまりのようなものがありますと、そこに影響を及ぼして、あたかも、富士山直下のマグマが感度の高いひずみ計のような役割を果たして低周波地震という反応を引き起こす、こういうことは十分考えられるわけです。
 しかし、実際にこれが検証されたものではありませんので、そういう意味で、富士山の火山噴火は、火山学者によりますと、今直ちに噴火するというような状態でないと私は聞いておりますが、もっと広く、周辺の地震活動とりわけ東海地震との関係などにおいては、やはり微妙な変化をとらえる一つの特異なポイントとして注目していくべきことがあろうかと思っております。
後藤(斎)委員 大変ありがとうございました。
 以上で終わります。
田並委員長 次に、山名靖英君。
    〔委員長退席、松原委員長代理着席〕
山名委員 公明党の山名靖英でございます。
 四人の先生方、それぞれの各分野におきまして日ごろ御活躍をいただいておりまして、また、きょうは大変有意義なお話を承りました。心から御礼を申し上げる次第でございます。
 阪神・淡路大震災、七年を過ぎたわけでありますが、六千五百名近い死亡者を出し、災害としては本当に日本の災害史上、歴史的な被害を高じたわけでございます。ある試算によりますと、住宅あるいは鉄道、道路、こういった損害は約十兆円、それから生産活動の停滞等、形にあらわれない被害は約十一兆円、合計二十一兆円ですから、国家予算のおよそ四分の一が一瞬にして失われたわけでございまして、今さらながら震災の恐ろしさというものを感じているところでございます。私も隣の京都におりましたから、震度五強の地震に見舞われまして、まさに地震の恐ろしさというものを体験した一人でございます。
 前もって地震が十分予知できそれなりの対応が準備としてできるならば、これにこしたことはないわけでありますが、地震の予知についてはなかなか困難性をきわめている、こういうことでもあろうかと思います。しかし、そういってあきらめていても困るわけでありまして、そのために日常的にそれぞれの立場で専門家の先生方に研究をしていただいているわけでありまして、今後ともそういった研究に大きな期待を私は持つわけでございます。
 そこで、まず一点目としまして、予知の問題について、もう少しお聞きをしたいと思います。
 大変困難をきわめるこの予知という問題でありますが、現在の予知能力といいますか、日本が、我が国が持つ能力は世界に冠たるものがあると聞いておりますが、今後どの程度まで予知が可能なのか。五百メーターメッシュ、一千メーターメッシュというところまでの予測というものがなされているようでありますが、やはり横浜が行ったような五十メーターメッシュ、ピンポイント、ここにいかに近づけることのできる予知体制が今後いつごろまでに可能なのか、その研究の状況等についてまずお聞かせいただきたいと思いますが、溝上先生、よろしくお願いします。
溝上参考人 今御意見を伺っておりまして、ちょっと地震現象及び地震の被害想定につきましての御理解に、私の見方として一言申し上げなきゃならないことがございます。
 まず、最後におっしゃいました一キロメートルあるいは五百メートルメッシュの揺れの想定、これは、ある地震がどこどこで起きたことを想定して、その地震がこれこれの断層を動かしてこういうメカニズムで起きた地震であるという前提に立って、それぞれの地点での揺れを予測するという、これは被害想定予測というものでありまして、地震予知ではございません。
 ですから、東海地震の場合も、東海地震というものがこういう地震であるということが絞り込まれておりますので、今かなり具体的に一キロメッシュで被害想定をしておりますが、横浜のパンフレットをごらんになられましたように、南関東、いわゆる関東地震ですね、それからもっと別のさまざまな直下地震について別々に被害想定をしている、これは、その地点での地震が起きた場合の揺れでございます。
 それから、地震予知というのは、これこれの地震が、どのくらいの規模の地震が、いつどこで起きるかということを事前に予知する。これは二つ、別の事象でございます。
 それで、地震予知の方から申し上げますと、きょうは東海地震のお話をしておりますので、東海地震の直前予知というのは、実は、一般に言われております予知とは違います。地震というのは、地震を起こすまでの準備過程というのがあります。これは、百年とか百五十年、あるいは地震によって千年、二千年とかかります。そして、今度はある時点を超えますと、地震が発生するわけですね。実は、東海地震の直前予知というのは、もう既に断層が地下でずれ動き始めて、東海地震がわずかながら起き始めている、その時点で警報を出すということでありますから、よく辞書で、本に書いてあります、地震が起きる前にいつどこでというような地震予知ではございません。
 御指摘の地震予知、一般的な地震予知というのは、実は、地震が起きる随分前に、いつどこでどのくらいの地震が起きますかということを言い当てる。現在の時点でこれを実際に防災と直接結びつけて地震予知をするということは極めて難しい、幾つかの例外もございましょうが。今後の研究をもっと進めていかないと、実際に実用化できるような地震予知に達成する、すぐに到達するということはなかなか困難であろうと思っております。
山名委員 予知の大変な難しさということについては、今、先生からのお話を伺いまして認識をしたわけでありますが、いろいろな予知の方法といいますか、それぞれデータ解析をしていろいろな発表もあるわけでありますが、今の研究体制、こういったものが現状の上で、費用面も含めまして、研究の段階で今後の進展とか発展をお考えになった上で、果たして十分なのかということを私は危惧をしているわけであります。
 今後、予知に関しての改善策として、先生からお考えになって、この部分はもう少し力を入れたい、改善をしてほしい、国に対してもまた自治体に対しても、こういった形での御注文といいますか要望といいますか、こういうものがあれば、ぜひこの機会にお聞かせをいただきたいと思います。
溝上参考人 一般的な議論に入ります前に、今、中央防災会議が取り上げております、今世紀の半ばごろには必ず起きてくるであろう巨大地震、南海地震、東南海地震というものに対する備え、予知について申し上げます。
 この地震は東海地震と並ぶ巨大地震でございまして、切迫性が指摘されている。しかしながら、震源域が海底でございます。東海地震は陸にかかっておりますので、そこに測器を置くことによって直前の前兆をとらえる可能性は極めて高いわけでございますが、震源域が海底にありますと、そうはいきません。今後の課題として、沿岸の海底を震源とする地震に対する予知あるいは直前予知の観測体制をどうしていくかということ、この調査研究をまずなるべく早く行わなければいけない。
 なぜかといいますと、この地震はもう三十年、四十年しますと目前に迫ってまいりますので、これに対する対策をいろいろ考えるための研究あるいは基礎調査観測を行う必要があるというふうに思っております。
 それから、さらにもっと一般的な議論から申しますと、予知観測というのは、予知というのは予知だけがぽんとどこかに切り離してあるものではございません。これは地震学あるいは地球物理学などの非常に基礎的な研究を積み上げた上にあるものでございますから、そういう意味では、先ほどから指摘がありますように、研究者の養成、そして基礎的な研究を積み上げていくという地道な努力を行う必要が最も重要であろうと思っております。
山名委員 ありがとうございました。
 次に、耐震対策についてお伺いしたいと思いますが、まず白石先生、いろいろと先ほどお話をいただきました。
 我が国の耐震対策につきまして、民間施設、公共施設、それぞれ震災後のことも含めた対応ということが非常に、特に小学校の体育館あるいは病院等は、いわば阪神・淡路大震災でも避難民の避難場所になったわけでありまして、極めて重要な役割を持っているわけでございます。
 そこで、この耐震対策について、国、地方自治体あるいは民間業者、個人、こういったそれぞれの役割分担は今後どうあるべきか、このことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
白石参考人 先ほどお話をしましたように、国は既に耐震改修促進法というものを定めております。現在、自治体で独自に助成制度を設けているところは二百三十六ぐらいあります。これは都道府県、市町村を入れて二百三十六でございます。これをもう少し普及させていく、これが自治体の役割ではないかなというふうに思いますし、この制度を活用して個人が自助努力をしていく、きちんと自分の住宅の安全性を認識し、自助努力でそこについて改修をしていく、これが個人の役割ではないかなと認識しております。
山名委員 片山先生にお伺いをしたいと思いますが、いわゆる既存不適格と言われる建物、これは一九八一年の建築基準法改正以前の耐震基準に基づく建物が既存不適格と言われるわけでありますが、これが先ほどのお話のように極めてたくさん残っている。まさに阪神・淡路級の地震が起きますと、崩壊、それに伴う二次被害を含めて大変な事態を招く。今後、こういった既存不適格と言われる建物の耐震性を進めることは極めて重要なわけでありまして、この耐震化を進めるための方策についてお考えがもしございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
片山参考人 実は、これは一番難しい御質問でございますが、非常に一般的なことを含んだお答えしかできないことになります。
 一つはやはり教育の問題だと思っておりまして、そういう弱い建物に住んでいたらどんな悲惨なことになるかということをきちんと教育するということが第一であります。
 それから第二は、やはり自助または自立の問題でありまして、自分の住宅は自分で守る、それが責任だということを理解していただくということが二番目。
 三番目は、やはり努力した個人に対する優遇制度を何かの形でつくっていく。それは税制もあり得るかもしれませんし、先ほどちょっと申し上げましたような方法もあるかもしれませんが、優遇制度をつくっていく。この三点ぐらいしかないと思います。非常に一般的なお答えで申しわけございません。
山名委員 片山先生、防災科学技術研究所の理事長という立場でもございますので、ちょっとこの際お聞きしたいんです。
 お聞きしますと、防災研究所におきましては、阪神・淡路大震災以降Hi―netという高感度の地震観測網を全国に展開されて、今一千百地点ぐらいですか、されている、こういうふうに聞いておりますが、この高感度地震観測網の整備について、今後それをさらに拡大する、こういったことは必要ないのかどうか、これが一点。
 それから、阪神・淡路大震災の地震を教訓にいたしましてE―ディフェンスという、振動台ですね、こういったものを開発し、そしてそれを設置して、今後どのような展開をしていくのか。このE―ディフェンスの導入に対しての意義づけ、どこにどういった研究結果を期待しての設置なのか、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。
片山参考人 Hi―netについては、今御質問があったとおり、神戸の地震の後、国が設置したもので、今、いろいろなものと合わせますと、高感度のものが大体千台ぐらいあるというのはそのとおりでございます。
 一番最初に私どもとして申し上げたいのは、神戸の地震が起こった後で、地震計が少ないところにともかくネットワークを充実していこうということで、いい地震計は当時地震計の少なかったところに集中的に配置されました。それで、実は一番困っているのが、現在、発生が懸念されている東海地域では古い地震計が残ってしまったということであります。それは、当時からもう既に地震計のネットワークがあったということで古い地震計が残ってしまいまして、今その更新を一生懸命やっておりますけれども、私はそれが一番大切な問題であろうかと思います。
 それからHi―netの使われ方でございますが、Hi―netは今はすべてリアルタイムで気象庁に記録を送っておりまして、常時の地震活動の監視もやっておりますし、地震が起きたときに気象庁の地震計と一緒に震源とか規模の決定に使われております。最終的には、私は、こういう高感度の地震計の記録をたくさんため込むことによって地震予知に直結するデータが得られるのではないか、これを一番に期待しております。
 それから、E―ディフェンスでございますが、地震が起こった後で地震で壊れた建物を見た人というのはたくさんおられるわけですけれども、地震の最中に構造物が壊れていく状態を子細に検討したというのは専門家にもおられません。我々は、今度こういう非常に大きな振動台をつくることによって、実物大の構造物が本当にどういうふうに壊れていくかというプロセスを明らかにしたいと思っております。
 これは、神戸の地震の後ある程度の被害は許容しようという設計の体制ができてまいりまして、そうなりますと、安全に壊れるというプロセスをきちんと見きわめることが非常に大切になりますので、それが非常に大切な一つの点。
 それからもう一つは、やはり国内だけではなくて国際的な共同利用ということをぜひ考えていきたいと思っておりまして、最近でも何千人という人命を奪った地震は世界のあっちこっちで起こっておりますので、発展途上国の震災軽減というところで、国際的な共同利用を考えたいというふうにも思っております。
山名委員 ありがとうございました。
 もう時間がありません。最後になりましたが、翠川先生、横浜市と協力されまして、さっきお見せいただきました地震マップを作成されたと聞いております。大変有意義なものでございまして、ぜひともこれは全国発信をしなきゃならない。各地方自治体が地震マップ、防災マップ、こういったものをきちっとつくって、本当にいざというときの対応にふだんから意識啓発を図っていく、こういうことが本当に今求められていると思います。
 そういう意味で、最後、時間がございませんが、この全国発信への取り組みのお考え等ございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
    〔松原委員長代理退席、委員長着席〕
翠川参考人 先ほど御紹介したように、横浜市で非常に詳細なマップをつくったわけですけれども、マップをつくるためには、やはりいろいろなデータを従来から横浜市では整理をされてデータベースをつくって、そういったような事前の、従来からの努力によってこういうものができているわけです。
 ですから、やはりそれぞれの自治体についても、それぞれの地域のデータというのをきちんと整備していただいて、身近な情報というものを市民の方に提供していただくということをぜひ進めていただきたいと考えております。
山名委員 どうもありがとうございました。
 今後とも御活躍を心から祈念申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
田並委員長 山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。きょうは参考人の先生方、本当に私にとっても大変驚くようないろいろお話をいただきまして、ありがたく思っております。
 溝上先生にお聞きしたいんですが、先生からいただきました資料の中で、GPS観測により測定された平均的な地殻変動、この中で、一九九八年から二〇〇〇年までの一年当たりの換算と、その次の十六ページにあります、逆の方向に地殻変動が動き始めた、これはついごく最近のことなんでしょうか。
 もしそうであったとして、これは先生が東海地震発生のメカニズムを八ページにつくっておられますが、いわゆる固着域がはがれるという現象なのかどうか、私、その辺がよく聞き取れていなかったのですが、前兆滑りというところなのか、その辺を含めて、もう一度教えていただければと思います。
溝上参考人 今のポイントは、私どもも非常に重大な関心を持って見守っている事象でございます。これは、国土地理院がGPSの観測というものを全国に展開いたしまして、そのGPS観測によって、東海地域に従来の動きとは逆向きの成分を持った変化が二〇〇一年の三月ごろから検知されたということで、その後、ずっと逐一この動きを追跡しているところでございます。
 東海地震との関係から申し上げますと、東海地震のメカニズムという絵がございますが、その中に、固着域が形成され、変質し、そしてはがれて前兆滑りに至ると。非常に単純化したプロセスでございますが、大まかに言いますと、私個人の意見といたしましては、この固着域がはがれるという現象は、一九九六年、九七年の一連の地震としてこの絵につけてございますが、静岡県、これは九ページでございますけれども、固着域の周辺を埋めるように起きた一連の地震というのがございます。この地震が一年にわたって起きたときに固着域がはがれ始めたのではないかという議論が関係者の中で出ました。
 その後、この固着域のはがれは進行しているんでしょうけれども、はがれが進むと同時に固着が緩んできて、そして今、ゆっくりとではありますけれども、逆向きに陸のプレートが海の方に動き出している。もしそうであるといたしますと、ステージは、固着域がはがれて前兆滑りが起きる、その中間のどこかの地点にあるというふうに私個人は解釈しながらデータを見守っているという状態でございます。
 十五ページと十六ページを比べますと、明らかにこれは反転をしておりますが、まだこれは非常に小さな量でございまして、しかも加速していない。これが加速し始めますと、このプレートの境界が本当に東海地震に向かって滑り始める。つまり、前兆滑りから東海地震に向かうステージに入りますが、現在はまだ一定の速度で動いているということが十七ページの絵を見ていただけるとわかりますが、袋井、掛川であります。
 いずれにいたしましても、こういう現象がとらえられるという観測レベルに今達しておりまして、とりわけGPSの観測は重要な役割を果たしているわけですが、現在そういう見方で監視を、十分な注意を持って見守っている。
 もしこれがさらに進みますと、次の十八ページにあらわれますように、今度は気象庁が展開しておりますひずみ計にいよいよ滑りを観測するということがとらえられて、前兆滑りを確認する、こういう段取りになっております。
山田(正)委員 そうすると、いわゆる固着域がはがれる前兆滑りの中間ぐらいではないかということなんですが、いわゆる前兆滑りが始まってマグニチュード八以上の地震が起こるまでの間、例えば何日間なのか、何カ月なのか、あるいは何時間なのか、その辺はいかがなんですか。
溝上参考人 前兆滑りを気象庁がとらえまして、そしていよいよ東海地震に向かうという時点から、大きな揺れを伴って断層が全面的に破壊して東海地震が来るという、その間の時間は、一つには前例、例えば東南海地震のときの測量結果を見ますと、当時の観測レベルは今よりもかなり低いものでありますが、約四十八時間程度の時間の差がございます。もちろん、当時はそれが前兆滑りとは思っておりませんから、何の手も打たなかったのですが、今であれば四十八時間というふうに見ることができます。同様なことが、南海地震の場合、一九四六年も、検潮儀であらわれ始めたのが大体四十八時間前、これは前例でございます。
 それからもう一つ、いろいろなケースを考えるという意味で数値シミュレーションをやってみると、もっと時間が短い。ずっと足元まで来てから蛇がかま首をもたげるように、ぐっと異常が出てくる。その場合には、例えば四十八時間というような保証はないわけで、十二時間であったり、場合によっては数時間前であるかもしれない。
 これは自然現象の側でございますが、これをなるべく早くつかまえるためには、やはり観測網を充実すれば、その立ち上がりの非常に早い時点でつかまえるという人間サイドの技術的ないわゆる観測のレベルを上げれば、その分だけは間違いなく早まりますから、その努力を積み重ねてきて判定の招集の基準をぐっと一けた下げた、そういう判定の基準を最近設けております。それは、観測の能力を上げて、人間の努力で早目に持ってくる。
 だけれども、一方、自然の方は我々のコントロールはききません。東海地震の直前予知というのは、一つには、地震が起き始めてから情報を出しますから、非常に確度の高いものでありますけれども、同時に、観測の限界というものと、自然の出てくる出ぐあいによって、四十八時間であるかもしれないし、もっと短いかもしれない。ですから、情報を発信するときに、なるべく手際よく、早く確実な情報を出して、ゆとりの時間を十分とるような努力に励む、今後わざも磨くということが非常に重要だと思っております。
山田(正)委員 お聞きしますと、いわゆる前兆滑りを観測して四十八時間から数時間前までには地震の予報がほぼ確実にできる、そういう段階に東海沖地震はあるんだと考えていいかと今お聞きしたのですが、四十八時間前に前兆滑りがわかって、予知判定委員会というのですか、そこで、今申しましたように、予知を素早くといいますか、もたもたせずにというか、そういった形でのシステム、それはもう十分にできているものなんでしょうか。
 なお、四十八時間あるいは四、五時間前に東海沖地震を予知できたとして、その予知の後の、例えば火災に対する備えとか、そういったことについてはことごとくシミュレーションができているのかどうか、その点については片山先生にお聞きしたいと思うのですが、お二人から今の件でお話を。
溝上参考人 ただいまの件に関しましては、十八ページの、東海地震直前に想定される体積ひずみ計データの変化というものをごらんになっていただきたいと思います。
 ひずみ計の変化というのが、前兆滑りをつかまえるかなめになります。前兆滑りが始まりますと、例えば十八ページの上に書きましたようなひずみの変化が、ある領域に発生いたします。それを気象庁の現業室でモニター上で見ますと、下の図のように、伊良湖、三ケ日、天竜、静岡、清水、富士といったそれぞれの観測点が、次々と時間を追うようにして変化が加速してまいります。このときに、どのレベルに来たら異常かということは、既に、雨が降ったとかいろいろな気象条件も含めて、どのレベルまで上がってきたら、変化してきたら異常かということが詳細にわたって調査され、それぞれの観測点に対して成績をつけられております、レベルが。その基準に従って、三点以上の観測点に異常があらわれたとなった場合には自動的に判定会が招集される、そういう仕組みがシナリオ的にきちっと今定められております。そこまで持ってくるために、二十七年間の長い蓄積が役に立っているということでございます。
 ですから、体積ひずみ計によって前兆滑りをとらえ、そして、気象庁が内部的に立ち上がり、判定会を招集し、次のステップへ行くというそこの段取りは、極めて精緻にわたった調査、そしてデータに基づいて客観的に行われるというのが特徴だというふうに申し上げます。
片山参考人 おわかりのように、すぐに予知ができれば命が救われます。予知ができれば火事も最小限に限ることができます。問題は、予知ができても物は壊れるということでありまして、予知ができるかできないかにかかわらず、やはり耐震改修とか強度アップということは基本であると私は考えております。今ので答えに……。
山田(正)委員 私の質問とは違うんですが。私が聞きたかったのは、予知が例えば五時間前にできたとする。そのときに、どういう警報、例えば、具体的に火災についての備えとか、あるいは耐震構造のできていない建物に住んでいる人に対してはどこどこに避難しなきゃいけないとか、そういうことは少なくとも東海地域ではなされているのかどうか、そういったことの実情をお聞きしたい。
片山参考人 なされております。ですから、予知ができれば、火災は最小限になるというふうに御理解いただいてよろしいと思います。
山田(正)委員 ただ、火災の場合に、もし最小限度であったとしても、気になるのは、阪神・淡路大震災のときもそうだったと思うんですが、倒壊した家屋のところで近代的消防設備が機能しないということは十分考えられる。人力で火災を防災することはできない。そういった場合に、むしろ原始的な、家を取り壊して火災を食いとめるとか、あるいはかつてやったような、水おけじゃないけれども、非常に原始的な消防の備えといったものも必要なんじゃないかと考えたりしておったんですが、そういった点については、ちゃんと対策その他できておるのかどうか。
片山参考人 予知が可能だという基本のもとに、火災対策は火のもとを残さないということでございますので、それを前提に火災は最小限になるというふうに申し上げました。
 それから、今おっしゃったような、火災を消すのは近代的な消防では難しいのではないかということでございますが、これは一番問題は、大きな地震のときに水が来ないということでございまして、神戸でも、消防の人たちも、住んでいる人たちも、いつかは水が来て消してくれると思っていた水が、水道管の被害のために結局ほとんど来なかったということでございます。
 今おっしゃったような、家を壊すとかいうようなこともある程度は考えられるかと思いますが、やはり一番大切なのは、火事を出さない、それから、火事のときの水の供給をきちんとできるような体制を考えるということが基本ではなかろうかというふうに思っております。
山田(正)委員 私がお聞きしたのは、そういったライフライン、いわゆる水が来ない、そして、近代消防車も入れない、そういった場合の対策はきちんとできているのかとお聞きしたんであって、もうそれ以上聞こうとは思っておりません。
 溝上先生にお聞きしたいんですが、いわゆる活断層、二千ぐらいあるということです。非常に危険な活断層が百から二百ぐらいある、それを五年以内に調査して云々ということを前にお聞きしておったんですが、今現在、いわゆる東海沖地震以外の活断層についての調査、その結果とその危険性というのはどの程度なものなんでしょうか。
溝上参考人 私は、活断層の調査に直接かかわってはおりませんが、いろいろな方々から聞き及ぶところによりますと、活断層の調査は着実に一つ一つ進められていて、場合によっては大阪の直下に活断層が新たに見つかったりしております。
 ところが、活断層の中には、地震の切迫性を秘めているものもありますが、また同時に、まだ地震を引き起こすだけのひずみを蓄えてはいないと思われる活断層も多くあります。さらに、活断層として地表にあらわれていない隠れた伏在断層、物理的には活断層と同じでありますが、そういうものもあって、活断層のないところで浅い直下地震が起きるということも間々ございます。
 活断層の重要なことは、活断層がそこに存在するということのみではなくて、その活断層が今や準備を整えて間もなく地震を引き起こすかどうかというところを評価する、それを長期予測と言っておりますが、非常に大きな地震を引き起こすであろう活断層があって、それをよく調査してみますと、まだ地震の繰り返し間隔の道のり半分まで来ていないというようなものは、まだ先が長いということであります。ところが、よく調査してみますと、その繰り返し間隔に匹敵するぐらいの時間がもう最近の過去の地震から既に経過している、こういう活断層の場合には、やはりそれは十分マークしてかからなければいけない。こういう区別をするというのが、地震防災対策と活断層の調査の接点だと思います。
 ところが、活断層というのは非常に網の目のように入り組んでおりまして、一つの活断層で地震を起こしますと、隣の活断層の状況が変わってくる。そういう、例えば四本の柱のうちの一つが倒れると、その負担を残りの部分で分担するというような時間的な相互作用、空間的な相互作用がございます。ですから、東海地震のように一つの地震が固有の周期を持って繰り返すというようなものとは違って、一つが起きるとお隣に影響するということで、なかなかそこら辺の地震の予測というものを短期的につなげていくというのは難しい。
 ただ、長期的な予測、百年、二百年という幅で見ますと、こういう調査は非常に重要であろうというふうに考えております。
山田(正)委員 白石先生にお聞きしたいんですが、いわゆる耐震構造の建物、基準に沿った基準適格の建物ですね。そういったものは阪神・淡路大震災ではほぼ大丈夫だったんでしょうか、地震の際に。ほぼというのは、どの程度安全なんでしょうか。
白石参考人 基準不適格な建物でございますか。聞き取りにくかったんです。ごめんなさい。
 基準不適格な建物については、建築年数が古い基準不適格の建物は大部分が倒壊したというふうに伺っております。
山田(正)委員 基準適格な建物は。
白石参考人 適格な建物ですか。適格な建物、基準に合っていても、やはり途中の施工の問題、手抜き工事の問題もございますので、基準に合っていたとしても、そのプロセスがいかようになるかによっては倒壊したものもありました。
 したがいまして、きちんと基準に合っているかどうか、工事ができているかによっては、中間検査等の実施等も必要であるというふうに感じます。
山田(正)委員 工事も手抜きがなくて基準に合った建物というのは、ほぼ九割ぐらいは大丈夫なんですか。
白石参考人 九割かどうかという比率については確認しておりませんが、やはり基準に適格させるということが最大の要件ではないかなというふうに思います。それが最大の備えになるというふうに存じております。
山田(正)委員 その結果、確率を聞きたかったんですが、もう私の時間が終わりましたので、最後に翠川先生に、きょう横浜市のこのマップを見て大変ありがたいなと思ったわけですが、地盤の調査からこういうマップの作成というのは横浜市だけなのか、東海地域で行われているのか、それを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
翠川参考人 こういったマップというのは、ほぼ全国で発表されておりますが、問題はきめの細かさでございまして、例えば静岡県ですと、被害想定をやっておりますけれども、五百メーターメッシュ単位ぐらいで地盤のデータを整理して計算を行っている。五十メーターメッシュという非常にきめ細かいものは、今回のものが初めてということになっております。
山田(正)委員 ありがとうございました。
田並委員長 塩川鉄也君。
塩川(鉄)委員 日本共産党の塩川鉄也です。
 きょうは、四人の参考人の皆さんに貴重な御意見を伺いまして、本当にありがとうございます。
 まず最初に、溝上参考人にお伺いいたします。
 東海地震対策での地震予知体制の整備強化の問題についての詳しいお話を伺いました。そういう中で、地震予知体制について、では、全国的にどうなのかということを思うわけですね。
 といいますのも、先日の新聞で伺ったんですが、これは文部科学省の関係なんでしょうか、測地学分科会地震部会というのがあるそうですけれども、そこでまとめられた報告の中で、地震の観測や研究の現状について、一部の研究は進んだが、東海地震以外は予知のめどは現在も立たない、このような報告をまとめたというふうに報道されています。
 その点で、地震予知の体制は全国的にどのような状況にあるのか、全国的な常時観測体制の整備強化の現状はどうなっているのかをお伺いしたいと思います。
溝上参考人 東海地震の事例をとって、地震予知を実際に行うための必須の要件というのは、まず、どこで今地震が切迫しているかということを絞り込むこと。
 二番目に、そこに十分な観測網を張ること。張っただけではなくて、その観測網を今気象庁がやっておりますように、二十四時間体制で見張るということ。見張った上で、異状があった場合には、その異状が単なる異状ではなくて来るべき大地震に向けての前兆であるということを判断するだけの、いわゆるソフトといいましょうか知識があること。そして、その状況をすぐ発信して市民に伝えるという伝達機能をきちんと法律で整備している。この条件のどれかが欠けても、これは予知体制ということは社会的には申せません。そういう意味で、東海地震はそれをとにかく満足しているという意味で、東海地震の前兆、直前予知というものが今進められているわけです。
 では、他の地域はどうかといいますと、いずれかの点が、あるいは複数の点が欠落しているわけですね。前提からいいますと、どこに地震が起きる場所が絞り込まれてきているかということになりますと、先ほど申しましたような南海・東南海地震とか南関東・首都圏直下地震というものはある程度絞り込まれてきております。宮城県沖もそうです。ところが、ほかの地域は必ずしもそうではございません。
 そういう意味で、幾つかの、そういう五つ挙げました項目のまず一番最初の時点から一つ一つチェックをして、そこを積み上げていくという努力がこれから求められているということになります。
塩川(鉄)委員 そういう点では、地震予知の最も進んでいるのが東海地域だと思いますけれども、東海三県、いわゆる国の機関のうち三分の一がまだ建物の耐震診断を実施していないということについての指摘が、中部管区の行政評価局からされたということを聞きました。行政評価局として、東海地震も予想されており早期の診断、改修が必要というふうに指摘されているということですが、国の機関でのこういった耐震診断も進んでいないような現状については、率直に溝上参考人はどのように受けとめていらっしゃるのかをお聞きしたいと思います。
溝上参考人 この種の施策というのは、国、それから地方公共団体、企業とがそれぞれ関連しております。
 静岡県の場合は、私の勝手な印象でございますが、県としては随分努力されて、そして公共機関につきましてはかなり今の点が改善されていると聞いておりますが、まだ学校等、小学校等の建築に関しては十分な対応がとられていないということでございます。ましてや、個人、一般市民の家屋につきましては、まだまだ多くの問題点が残っている。
 これは、国が恐らくそれについて、これまでも進めてこなかったというわけではございませんが、私の見たところ、これまで静岡県も、県としてやっていてもなかなか進捗しない。それは、やはり一方には行政側の問題もありますが、市民、受けとめる側が、東海地震というものに対してどれほどの認識を持っているか、自分の問題だとしてとらえるかという、そことの接点がもうちょっとはっきりしてくる必要があろうかと思います。
 そういう意味で、市民の意識をもうちょっと高めて、積極的にそういう問題に自分の問題として取りかかっていくという動機づけというものを国がもっと推進する、そういうことも含めてのさらなる努力が必要だと思います。
塩川(鉄)委員 片山参考人にお伺いいたします。
 お話の中で、耐震改修の重要性について強調されました。私もそのとおりだと思います。片山参考人は、中央防災会議の今後の地震対策のあり方に関する専門調査会の座長もされておられます。その中で、先ほども御紹介いただきました目黒先生のお話なども、そこでも紹介されているというふうに承知しております。
 この専門調査会の中で、目黒先生以外にも耐震改修の促進のあり方についていろいろな御意見がおありかと思うのですが、かいつまんでということで恐縮なんですけれども、耐震改修につきましてのいろいろな御意見、特徴的なものを御紹介いただけないでしょうか。
片山参考人 基本的には、教育の問題、教育の問題が進まなければ耐震改修は進まない。
 それからもう一つは、その場でいろいろな意見から出たのは、イマジネーション不足といいますか、大きな災害が起きたら一体どんなことが個人に降りかかってくるのか、どんな悲惨な状況になるのかということを十分想像できるような形で教えていないということが一般的な議論でございまして、ある程度政策的に結びついた議論となりますと、先ほどの目黒先生の御意見が唯一と言っていいのではないかと思います。
塩川(鉄)委員 教育や、それとのかかわりのイマジネーションをつくっていくというお話がありました。私、その点で政府の取り組みがどうかというのをお聞きしたいんですが、片山参考人に続けてお伺いしたいと思うんです。
 総理府の行っております防災と情報に関する世論調査、何年か置きに行われています。そういった中で、「大地震対策に関する要望」ということで、項目を多数列挙して選んでいただく複数回答のものがありますね。こういう中に、備蓄の必要性ですとかライフライン施設の耐震性の向上など、幾つかずっとあるわけですけれども、私、これを見てみましたら、個人住宅の耐震改修という項目がないんですね。
 ですから、片山参考人も強調されました個人住宅の既存不適格建造物なども含めた耐震改修について、この政府の世論調査に項目すらない状況というのが率直にある。私はその点で、今の政府の取り組みの中でやはり耐震改修、耐震補強の取り組みがまだまだふさわしく位置づけられていないんじゃないかという思いをしているんですけれども、今お聞きしての率直な感想をお聞きしたいんです。
片山参考人 おっしゃることは、かなり私が考えていることとも一致いたします。
 従来、こういう自然災害に対する対策みたいなものは、個人は国がやるものと思っておりましたし、国は国で自分たちがやるものという意識が非常に強くて、これはやはり、個人のレベルに落とすとかいうようなところは、国が自分たちでやるというレベルに比べて少なかったんじゃないかと思います。
 だけれども、本当にやろうと思いますと、公だけが幾ら頑張ってもできないことはたくさんありまして、どうやっても個人がそれぞれ頑張らなければできないというところがたくさんあるわけです。神戸であれだけの被害が起こって、そういう割合で仮に南関東に被害が起こったら、とても公的な援助だけではできないということはだんだんと浸透してまいりましたので、やはりその辺、すべてを公が賄うぞという態度は、やはり変えていかなきゃいけないというふうに思います。
塩川(鉄)委員 私自身は公的支援の重要性というのは思うわけですけれども、政府の自主性を重んじるような立場においても、そういったアンケート項目にすら耐震改修の項目が入っていないということ自身に、政府の姿勢の反映があるんじゃないかなというのを率直に思うわけです。
 続けて片山参考人にお伺いしますが、今後の地震対策のあり方に関する専門調査会で、今後の地震対策のあり方に関する検討事項ということで今議論がされていると思うんですが、そういった中にも、住宅等建築物や防災拠点となる公共建築物等の耐震化の強力な推進ということが挙げられています。
 総務省消防庁のまとめた耐震化推進検討委員会の報告書がこの前出されたかと思うんですけれども、この全国調査の中でも、全国の自治体が保有する施設のうち、一九八一年の新建築基準以前に建てられた耐震性が懸念されるものが二十六万二千棟ある、その七四%に当たる十九万四千棟がまだ耐震診断を済ませてないということですね。
 私は、まずは病院ですとか学校ですとか、こういった公共施設についての耐震診断、耐震改修にやはり優先的に取り組む必要があるんじゃないかと思うんですが、そういう点での調査会の中での議論ですとか、片山参考人の率直な御意見を伺いたいと思うんです。
片山参考人 私の個人の意見を申し上げますが、私も、四分の三にも当たる公共建物の耐震診断が進んでいないという数値には、大変びっくりいたしました。
 これは、神戸の地震の後でこそ、ああいった直下の地震は日本のどこにでも起こっておかしくないという認識が非常に広まってまいりましたけれども、まだ、神戸に比べたらとか南関東に比べたらとかといったぐあいに、自分たちの地域はそれほど危なくないと思っている自治体がかなりあるのではないか。それが一つの原因ではないかというふうに思いますが、私は、それはどんどん進めなければいけないというふうに思っております。
塩川(鉄)委員 ありがとうございます。
 続けて翠川参考人にお伺いいたします。
 お話の中で、地震被害想定の市民レベルでの活用の重要性について指摘をされました。市民への情報提供、情報交換のやりとりというのが大切だというのは、本当にそのとおりだと思うんです。
 翠川参考人がほかの機会でお話しされたのを少し拝見した中に、サンフランシスコの湾岸地域での地震動予測地図の取り組みのお話がありました。一九六〇年以前に建てられた住宅の二〇%がこの地図を見て、この地図を見た人の六〇%が耐震補強したいと考えている、こういう調査のお話がありました。
 非常にこの地震動予測地図が住宅の耐震補強の動機づけとなっていることを紹介されておりますけれども、この経験と教訓についてお伺いしたいと思います。
翠川参考人 今お話にありました例は、アメリカのサンフランシスコ湾岸地域の自治体連合というのがございまして、そこで地震マップというのを非常に積極的に公開しております。市民レベルにもわかるような非常にきめ細かい情報を提供している。それから、もう一つ特徴的なのは、どうしたらいいかということをきちんと書いてあるのですね。
 例えば、相談できる構造設計者のリストですとか、行政としては耐震改修に対するローンのシステムがあるとか、そういった関連の情報をたくさん載せておりまして、市民がそれを見て耐震改修をやろうかなと思ったときに、実際に実行できるような方法をきちんと書いてあるんですね。ですから、背中を非常に強く後押しするようなシステムになっていまして、こういったものをやはり日本でもぜひ参考にしてつくっていくべきだと思っております。
塩川(鉄)委員 その点で、横浜市の地震マップというのも大変参考になると思っております。
 私も、横浜市が行っています個人住宅の耐震改修の補助、積極的なものということで、実際、市の担当者の方からお話も伺って、その促進に当たってこの地震マップが大変役に立っているということを伺いました。
 この五十メートルメッシュという点での努力もありますし、非常に、横浜特有の谷津地形、実際の、自分が住んでいるところが具体的にどういう地震動の影響を受けるかということまできちっとわかる。自分のうちがここだということがはっきり言えるような、こういったマップの効果というのを大変評価をしていただいている、何か、マイナスの意見というのは今までいただいていないというようなことも、横浜の担当者の方はおっしゃっておられました。
 この作成部数というのが四万五千ぐらいということですね。横浜市の世帯数が百四十一万世帯ですから、そういう意味では三%ぐらいの割合ですね、区役所や必要な役所の出先などで配布をするような状況で、一部に増し刷りをして配るようなところもあったそうですけれども、とても全世帯にまでは届かない。
 四万五千部ほぼ回った中での効果もあらわれているわけですから、そういう点でも全世帯に届くような取り組みが大事じゃないか、そういう点を促進する上でも、自治体での限りもあるでしょうから、国としての積極的な支援策も、財政的な支援も含めて考える必要があるんじゃないかなと思うんですが、その点、翠川参考人の方でお感じになっているところをお伺いしたいと思うんです。
翠川参考人 ありがとうございます。四万部ないしその後増刷したということです。数万部刷ったということですが、私もやはりこういったものはもっと広く皆さんに知っていただいた方がいいと思います。
 ただ、もう一つの方策としては、インターネット上で公開しておりますので、インターネットが利用できるような環境におられる市民の方には、そちらの方からも知っていただくというような方策はとっているわけですけれども、先ほど申し上げたように、広報というのは非常に重要だと思いますので、せっかくこういったものをつくったので、さらに広報を進めるべきだと私も個人的に考えております。
塩川(鉄)委員 そういう点では、やはりペーパーでの配布物というのは大変大事だと思いまして、なかなかインターネットに接する機会がないような方も多いということでの、積極的な支援策というのはぜひ国としても求めるように、私自身も努力したいと思っています。
 その関係で白石参考人にお伺いします。
 白石参考人がことしの一月でしたか、消防庁のかかわるシンポジウムでの御発言というのを、簡単なメモで私、拝見しまして、そういう中でお聞きしたいんですが、災害対策マニュアルのチェックの問題で、例えば、災害弱者対策として三十二万人の聴覚障害者の方のお話などがされたというふうにお聞きしました。だれもが得られるような情報提供の検討とか、障害者への独自の個別のマニュアルも必要じゃないかというお話がありました。
 そういう点での取り組みということと、あわせて、学校が避難所の拠点になる場合が多いということで、非常時を想定しての避難所のバリアフリー化、学校の整備の重点化が必要じゃないかという話があったというふうにお聞きしています。神戸や有珠の避難所を回っての実感ということで、この点でお感じになっていることをお聞かせください。
白石参考人 まず一点目でございますけれども、災害弱者、とりわけ障害を持つ方への情報提供は重要だというふうに思います。しかしながら、これは公でできることには限界があるというふうに思います。それぞれ個人も、災害が起こったときにはどこに連絡してほしいか、自分に生命の危険が生じたときにはどういうことをしてほしいか、私は投薬状況は毎日こうだというようなことを日々書いておいて、災害が生じるとそれをだれか第三者に渡せるようにする、そうした個人の努力も必要だというふうに思います。
 また、公だけでできないこと、ある民間企業では、iモードを使って、災害の種類や災害のレベル、それを事前に申し込んでおけば必要な人に必要な情報が文字で得られる、こうしたビジネスを始めて、それが、単に障害者だけではなく一般にも普及しているというふうに聞いております。こうした民間企業を活用するような支援策、こうした企業がありますよというような情報提供とか、そうした企業を育成するような行政の支援策も必要ではないかなというふうに思います。
 二点目の避難所に関してでございますけれども、阪神・淡路のときとか有珠のときとか、いろいろ拝見しました。そこで感じますのがプライバシーの問題でございます。非常事態でございますからいたし方ない点はあろうかと思いますけれども、やはり間仕切りがあったり、そうしたことも必要ではないかなというふうに思いましたし、とりわけ高齢者の中には、排せつ介助をしていただくのが非常に周りに申しわけないからということで、みずから水分をとらなくなって脱水症状になる、こうしたことも出ております。こうした災害弱者については、避難所の中でも、やはりクローズドされたところで特別なケアを必要とする、そうした人たちへの配慮も必要ではないかなというふうに感じました。
塩川(鉄)委員 こういった避難所に入る人が少なくて済むように、本来は個人住宅の耐震改修などを行ってライフボックスとして確保するということが、何よりも優先的な施策なのかなということを感じました。
 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。
田並委員長 菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 まず初めに、溝上参考人にお尋ねしますけれども、私は実は宮城県出身なんです。それで、今の説明において、東海地域や南関東地域の今日的な置かれている状況というのは理解しました。先ほどの説明の中で、今後、将来的に起こるであろう地震ということで絞り込んでいったときに、これ以外は宮城県沖地震という部分が近い将来予想されると。ただし、この宮城県沖地震に関しては、ここの五ページにあるんですが、「前兆現象の把握が困難であり、現状では予知は非常に難しい。」という地域に入っているという先ほどの御説明がございました。
 私は、地域地域において絞り込んだときに、その地域がどういう状況になっていくのかという観測体制の整備というものが国の施策として問われているんじゃないのか。そうすると、東海沖地震はここまで進んだ、いや、そちらの方は危険はあるけれども、観測体制は整備がなっていかないんだということであれば、私は、国が責任を放棄しているような気がしてならないわけですけれども、そういう体制について、あるいは宮城県沖の状況について、今知っている点がありましたら、御説明願いたいというふうに思っています。
溝上参考人 日本では、地震が、ある時点で一カ所だけで起きるということは必ずしもありませんで、例えば阪神・淡路大震災の場合、すぐ前に三陸はるか沖の地震が起きて、皆さんが非常に津波のことを心配された、そういう中で神戸の地震が起きたために、視点がそっちへすっと行ってしまったと。津波に対するさまざまな測器を、津波計などを海底に設置するという要望が出されているにもかかわらず、もう目が神戸に行ってしまったということがございます。
 そういう意味で、宮城県沖の地震は、絞り込みという意味では、この地震が繰り返し短い間隔で起きるということで、ある意味では絞り込まれているわけですね。ただ、その直前の現象をつかまえられない、そういう難点がございます。
 これから二十年、三十年いたしますと、平均間隔が三十何年、それから二十何年でございますから、だんだん目前に迫ってまいります。そのとき問題になりますのは、やはりその地震が、過去に八クラスの巨大な地震のある場合、それから比較的小ぶりで七で起きる場合、その区別をなるべく事前にできるかどうか。それから、津波がございます。津波に対してどういう対策をとるか。その地震の性質、地域による、とるべき対策が宮城県沖地震に対してはさまざまあろうかと思います。
 そういう意味で、宮城県沖地震につきましては、東海地震のことは東海地震といたしまして、あるいは首都圏直下は直下として、宮城県沖地震に対しましても十分ないろいろな対策をとる課題がたくさんあろうかと思います。
菅野委員 現状については理解しました。
 ただし、先ほど先生の、これは平成四年八月二十一日の検討結果報告等から抜粋されたこの五ページ目、あるんですが、ここでは、「東海地震以外の予知は現状では非常に困難である。」という断言をしているわけですね。
 それを、先ほども委員の質問に対してこの断言している現状という部分は御説明がなされましたから理解はするものの、私は、もう少し科学技術の進歩に伴った予知体制というものを、先ほども予算の点から議論はございましたけれども、やはりもうちょっと国に、私どももそうなんですが、国に申していくという点は必要なんではないかと。技術者としてそういうことをぜひ申し上げていただきたいなというふうに思うんです。今日的な科学技術の発展に伴って、それで何かなおざりにされている部分があるんではないのかなと私自身は思えるんですけれども、先生のこの点に対する見解をお聞きしておきたいと思います。
溝上参考人 私も同意見でございます。
 ただ、とりわけ宮城県沖のように沿岸のすぐ前面の海底を震源として地震が起きて、津波も、それから揺れもともに襲ってくる、こういう事例は、東南海・南海地震が今議論されておりますが、同じような課題を抱えているわけです。技術は日進月歩でございます。ですから、海底における観測というものもこれから力を入れていくことによって、陸上での対応となるべく近いレベルで地震を迎え撃つような対策、観測体制というものを構築していくのが、技術先進国としての日本の非常に重要な役割であろうというふうに考えております。
菅野委員 それでは片山参考人にお聞きいたしますけれども、先生のお考えは先ほどの意見陳述でわかりました。
 私は、一つは、今日的な問題は、後でも触れたいと思うんですけれども、ライフラインの確保の問題ですね、これを防災の根底に据えて物事を議論していかなきゃならないんじゃないのかなというふうに思っております。日本は戦後復興で高度経済成長の波にもまれて今日まで来ているんですが、この防災という視点とライフラインを結びつけた議論というものが数少なかったんではないのかなというふうに私は思っているんですね。
 それで、このライフラインの防災という観点が今日的にどのような位置になっているのか、そして、今後のライフラインの確保のためにどのようなことを防災科学技術研究所で行っているのか、その辺を御説明願いたいというふうに思います。
片山参考人 ライフラインの問題が非常に重要であることはおっしゃるとおりでございます。
 私は、地震の災害の重要性というのは二つに分けられると思っておりまして、一つは、生き残った人に対する重要性、これはライフラインが非常に重要であります。
 それから、死んでしまった人に対する、これはもうどう言ったらいいかわからないんですけれども、これは死なないことでありますから、先ほど申し上げましたように、やはり家を強くするとか物を強くするというのが一番大切であります。
 最後に、どんな地震が起ころうと、結局は生き残る方の方が多いわけですから、この人たちの生活を最小限の時間でもとに戻すということを考えますと、ライフラインの問題が非常に大切であるというふうに考えられます。
 今、日本のガス会社とか電力会社とか、それからその他通信会社なんかも、地震時のライフラインをどういうふうに生かすか、生かしたまま災害時を越えるかというようなことがいろいろな意味で検討をされておりますので、きょうはそのすべてを、私、具体的にデータは持っておりませんけれども、ライフラインが重要だという意識は、ライフライン事業者の中にも非常に強くなってきているというふうに思います。
菅野委員 阪神・淡路も含めて、宮城県沖地震も含めてですが、このライフラインの痛手、それから復旧というのは、全国から駆けつけて復旧態勢をとったということがございます。それ以降も、水道あるいはガス等も含めて、耐震構造のものが入ってきているというのは理解します。
 ただし、これは、今想定されている東海地震や大都市における地震が起こったときにそれを確保するというのは、被害が物すごい甚大なものですから、一気にはいかないと思うんですが、国としても、一つの方向づけをやりながら、都市構造というものを変えていかない限り、私は対応がとれないんじゃないのかなというふうな危機感さえ持っているんです。これからも、防災科学技術研究所でぜひ提言していただいて、民間も含めた指導体制をとっていただきたいというふうに思っております。
 それで三番目に、翠川先生にお伺いしますけれども、先ほどの説明で、「災害の広域化・複雑化への対応」ということで、四ページ、五ページに述べられております。このとおりだというふうに思うんです。
 例えば、四月一日に、みずほフィナンシャル銀行ですか、ATMが一つプログラムミスが起こっただけで社会的混乱を招いている。地震が起こったときに、高度に発達した情報化社会において情報網が寸断されたときにどういう事態になっていくのかなというのは、今日的に大きな問題だというふうに私は思っております。あるいは携帯電話、もう普及していますけれども、これも使えなくなるというのが現状だというふうに思っています。
 それで、先生は、追加されるべき検討事項ということで、「今後望まれる地震被害想定の検討項目」の中に、都市機能麻痺とか経済活動の停止、社会的混乱云々ということで述べられておりますけれども、今の現状において、このことがどの程度検討されている状況なのかなということをまずお聞きしておきたいと思うんです。
翠川参考人 今の問題、非常に難しい問題で、研究が始まったばかりのところということの方が実情かと思います。
 こういった問題は、定性的には非常に大変なことが起こるであろうということは皆さん御指摘されるわけですけれども、では、どのくらいの被害が起こって、例えば世界的にそれがどういうふうに波及していくかというような問題も含めて、定量的に評価するということが非常に重要なんですが、システムが非常に難しい、複雑ですから、これをモデル化するというのがなかなか難しくて、これを定量化して評価するということは今のところなかなか難しいところでございまして、現在、研究が進み始めているということでございます。
菅野委員 先ほども申し上げたんですが、防災の視点に立った、災害が起こるという視点に立った経済活動が、これは世界も含めて、日本もそうなんですが、日本が特にだと思うんですが、行われているのかというところが私は問われるべきだというふうに思います。
 効率化、効率化ということで、すべてがそちらの方が優先していく現状の中において、一度大都市災害、首都災害が起こったときにどういう状況になるのかというのは今度の九月十一日の世界貿易センタービルが示しているというふうに思っていますけれども、そこは中央防災会議においてもぜひ早急に議論してほしいなと。私どもも努力していきたいというふうに思いますけれども、お願いしておきたいというふうに思っています。
 それと同時に、例えばどれくらいの経済損益が生まれるのかというシミュレーションというのはやはり行うべきだというふうに思うんですね。これはこれからの研究課題だというふうにおっしゃられていますけれども、その辺は大体どれくらい経済的な影響を受けるんだろうというふうな考えを持っておられるのか、この点だけお聞きしておきたいと思います。
翠川参考人 例えば、具体的な例を申し上げますと、関東地震がもう一度起こって首都圏を襲ったらどのくらいの被害になるかというのは、試算例がございます。
 直接的な被害としては百兆円くらい、阪神・淡路大震災の十倍ぐらいだと言われています。それから、これに付随して間接的な被害というのもこれとほぼ同程度ないしこれを上回るであろうということで、少なくとも二百兆円以上の被害が出るというようなことになっておりますけれども、波及する被害というものをどこまでカウントするかということで、例えば株価の、これによって経済が低下して株価が下落するということもあるかもしれませんが、どこまで考えるかということによっても結果は幾らにでも変わってしまいまして、その間接的な被害というのもどこまでカウントできているかというのは、現状ではまだまだ不十分なところがあるかと思います。
菅野委員 最後になりますが、白石参考人の方にお聞きいたします。
 今言ったこの「自治体への期待」ということで、ここで「ハイテクだけではなく、ローテクも利用した情報提供」ということをおっしゃっておられますけれども、これは多分、災害が起きたときに情報伝達がスムーズにいかないということを想定していることだというふうに思うんですね。
 今は、ややもすれば、ハイテク、ハイテクということで、インターネットを使ってという形が情報提供の手段になっていて、逆に言うと、ペーパーレスという形が進んでいます。そこに新たにローテクも利用した情報提供ということを、言っている意味はわかるんですけれども、実際に一度ペーパーレスをやってしまうと、もとに戻すまでには大変だという考えを私は持っているんですね。
 そこに警鐘を鳴らしているということだと思うんですが、今、ハイテクがどんどん進んでいる現状において、このことを行っていく自治体への提言をどのように全国に発信していこうとなされているのか、その辺の見解をお聞きしておきたいと思います。
白石参考人 その「ハイテクだけではなく、ローテク」と書かせていただいたのは、私は、ハイテク機器、情報機器が使えない人たちが一定割合存在するということを考えてのことでございますけれども、ハイテク、ローテクというこの二つの範疇だけではなく、さまざまなメディアを使って情報提供をしていくべきだというふうに考えます。
 一つは、聴覚障害のためには、テレビには文字放送、キャプションつきにする。当然、紙を使うということも必要でございますし、パソコンだけではなくラジオなどの音声で伝えていくということ、さらに、外国人がふえてくる中では、きちんと外国語表記等もしていく、こうしたことが必要ではないかなというふうに感じております。
 こうしたことを考えますと、やるべきことが非常に多いわけですが、国としては、避難所についてどういう配慮が必要か、情報提供においてどういうことをしていくかというミニマム部分のガイドラインを示して、自治体が取り組むべきアクションプランの筋道をつけていく、こうしたことに取り組んでいただきたいというふうに思います。
菅野委員 四人の方々、本当に御意見をお聞かせ願ってありがとうございます。
 国として、やはり災害が起こったときにどう対応していくのか、あるいは予知をどのようにしていくのかということは、私は重要な課題だというふうに思っております。これからも精いっぱいその部分で取り組んでまいりますけれども、ぜひ専門的な知識を私どもに提供していただきたい、一言このことをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
田並委員長 西川太一郎君。
西川(太)委員 きょうは、四人の先生方、本当にありがとうございます。御苦労さまでございます。
 実は私は、阪神大震災が発生をいたしましたその時間に、アメリカから帰ってまいります飛行機の中におりました。指導的な政治家と御一緒であったのでありますが、ところが、成田に着きましたら、党の若い議員が飛行機に飛び込んできまして、けさ阪神でこういう大きな地震があった、その時点では五百人程度の方が犠牲になられたという情報であったわけであります。それで、乗り継ぎ客もジャンボ機でありますから大勢おられたんですが、何にも情報がないんですね。私は、いたずらに不安をかき立てることはよくない、こう思いますが、しかし、後でその航空会社の責任者に来ていただいて、やはりそういうことはきちっと、その時点でもうかなりの情報があったわけでありますから、報告をするべきじゃないかということを注意を喚起したことがありました。
 皮肉なことに、その飛行機の中では墜落した飛行機の事故によって亡くなった方のお葬式のニュースなんかを平気でやっているくせに、たった今起こったそういう大事な情報については何も知らせないというのはおかしいじゃないか、こんなふうに思って、やはり地震の情報というものをいかに管理し、いかにそれを警告していくかということ。
 実は今、政府・与党でいわゆる有事法制、武力攻撃対処に対する法律の用意をいたしておりまして、その議論の中で、放送関係を特定公共機関というふうに位置づけて、こんなことは起こるはずもないだろうと思いますが、万に一つ起こった場合、そうした情報をきちっと管理してもらう、こういうことが大事ではないか、こんなことを思うのでございますが、どの先生にお尋ねしたらよろしいかあれでございますが、こういう問題に専門に取り組んでおられる先生、では、翠川先生、よろしいですか。
翠川参考人 確かに、兵庫県南部地震、阪神・淡路大震災では、災害の情報というのが非常におくれて、国の災害対策本部の立ち上げもおくれたということがございます。
 これは、結局、非常に被害が甚大であると、そこから災害情報が発信できなくなってしまうということで、被災者が、被災された方が自分が災害を受けたということが発信できないということで、結局、情報がないということで、それは逆に被害が小さいのか大きいのかがわからないということで、問題になりました。
 これを受けて、この阪神・淡路大震災の後、国や自治体は、リアルタイム地震防災システムというものの整備に努めております。いろいろなところに地震計を置きまして、地震の揺れをキャッチして、その揺れの大きさから、どこでどんな被害が起こっているかということをほぼリアルタイムに推定して、それの結果に基づいて適切な緊急対応対策を考えようということでございまして、国の方でも、当時の国土庁、現在の内閣府防災担当の方で、EESというシステム、こういうものを立ち上げまして、阪神・淡路大震災の一年後ぐらいから実際に稼働しております。
 それから、これは国レベルのシステムでございますけれども、それぞれの自治体でもこういったようなシステムをつくっているところが数多くございます。横浜市でもリアルタイムシステムというものをつくっておりますし、それから広島市もつくっておりまして、芸予地震のときにこのシステムが動いて被害予測を行ったというようなことです。
 そういう意味で、災害の情報というものが非常に重要であるという認識が進んでおりまして、そういう対策というものは進んでおります。
西川(太)委員 ありがとうございます。
 実は、私の選挙区は東京の荒川区と墨田区、京島地区という東京都の災害危険度の一番高い地域が私の選挙区の中にあり、親しい方々が大勢そこに暮らしておられるわけであります。私の地区は萩原尊礼先生の御出生地でもあり、したがって、私の母などは、かつて関東大震災のときに、隅田川に渡されたロープにつかまって一命を取りとめたというような経験もあって、そういう中で私は育ったものでありますから、地震については非常に関心があったわけであります。
 十六年間、東京都議会議員を務めたのでありますが、地震の問題で力石常次先生と対談をあるところでさせていただいたときに、西川さん、自治体は地震予知なんというものにお金をかけちゃいけませんよと。そのころ東京都は、水元の選挙区の人がいますけれども、水元の自然公園にナマズを飼っておりまして、ナマズの動静が副知事の机の上に、マル秘の判こを押して日々届けられる。これは非常にまじめな研究をしておられて、そうかと思うと、井戸をたくさん掘ってラドン濃度を調べたり、いろいろなことを東京都としてはしておられた。そういうことに対して専門家の先生方は、自治体はそんなことにお金を使うべきでないと、そういうものは国に任せなさいということでありました。
 先ほど菅野議員からも、予知の問題について切ない思いが吐露されましたけれども、やはりわかっていれば安心だというか、私は寝る前に、夜中に地震が来てショック死するんじゃないかと思って、自分に言い聞かせて寝るんですよ。
 それから、これは余計なことですから後であれでございますけれども、東京なんかでは、予知というのはやはり効果はないんでしょうか。だとしたら、やはり地震に対する対策というのは根本から考え直さなきゃいけない、こう思うのでありますが、これは少し的外れな議論なのか、予知は効果があるのか、東京のようなところで、やはり予知ということはかなり予算をかけてした方がいいのか、その辺のところは、大変乱暴な質問だと思いますけれども、どうでしょうか。溝上先生、ひとつ。
溝上参考人 東京都がナマズを飼っていたということは、私も聞き及んでおります。そのナマズが最後にはかば焼きになったかどうかは知りませんけれども。
 予知という一般論をここでいたしますと、非常に長くなりますので、今の御質問のポイントに絞ってお話しいたしますと、東京を襲う地震の中には幾つか種類がありまして、関東地震ですね、これは東海地震と同じように、プレート境界、相模湾のプレート境界が大きく滑って起きる巨大地震でございます。ところが、これはまだ百年、百五十年先で、ひずみはたまっておりませんが、このタイプの地震ですと、東海地震と同じように、さまざまな手だてを講じて、その前兆をきちんと科学的な根拠に基づいて調べて予知情報を発信することができます。
 ところが、今東京都民にとって一番怖いのは、直下地震です。この直下地震は、規模も小さいながらさまざまなタイプのものがあって、しかもその前兆をつかまえるということは、二十四時間非常にノイズの高い首都圏の中で、しかもタイプもさまざまで、前兆がどう出てくるかわからない。これは、予知というのはまだ、不可能とは申しませんけれども、今後の研究の成果にまつところが大きいんですね。
 ですから、地震の予知というのは、それぞれ地震の種類に応じて、病気と同じように、これは何とかなる、これはほとんど無理だと、でもこれは今途上だというように仕分けをして、それに対応して地震の防災の戦略を立てていくというのが、これからの地震の防災対策というものであろうかと思います。
 そういう意味で、直下地震というのは、やはり予知というものを前提に考えるよりは、もう準備が整っていると言われておりますから、そういう起きてくるポテンシャル、可能性というものを十分認識して対応する、そういうたぐいの地震であるというふうに考えております。
西川(太)委員 ありがとうございます。
 あと十分ほどでございますので、片山先生、白石先生に一問ずつお尋ねをしたいと思います。
 片山先生、私、阪神大震災のときに、現場に風邪薬を一万人分持って議員団で行ったんですね、リュックをしょって。そのときに、警視庁が、埋められているところにファイバースコープを突っ込んでのぞくという、胃カメラの原理ですか、あれがすごい効果があったということ。
 それから、先ほども参考人のお話がございましたが、湊川の地区の小学校で、トイレが、水洗が使えなくて、異臭が物すごいわけですね。そして、自治体から寄附した簡便トイレが、もうドアをあけると気絶するようなにおいなんですね。しかし、その後の研究によると、科学技術の発展によると、使用した後に焼却をするというトイレもあるし、それから、この間幕張の、これは介護の技術の会に行って私、見てきたんですが、細かいチップで排便をくるんじゃうと、隣で食事もできるという、一つの例としてはそういうお話もありました。
 それからもう一つは、そのときに被害に遭われた方々が何が困ったといったら、ガラス、人形ケースが落ちてきたりガラスがあれして、懐中電灯をふだん用意していたけれども、どこかへ飛んじゃった、そういうものをどこか、反動で天井にぶつからないでゴムでつるしていた知恵者がいて、その人は使えた。それから、私はそのとき先輩議員と御一緒に二千足の運動靴を寄附したんです。それはなぜかというと、現場の人たちが逃げるときに靴箱まで行けない、玄関まで行けない、運動靴があった人は足をけがしないで助かった。私、今まくら元に、家内と私の分の運動靴をベッドの足にくくりつけているんですよ。これはすごい効果がある。
 だから、要するに、起こった後、二次災害というかそういうものを防げたり、行方不明の人が早く捜せるような技術開発に私はお金をかけるべきじゃないかということが一点、先生にお尋ねしたいと思います。
 それから、白石先生、私は防災ジュニアリーダーという仕組みを東京都議会で提案したことがあるんですが、うまいこと何かはぐらかされちゃってそれっきりになっちゃったんですけれども、これは、先ほど翠川先生のお話の中にも、住民教育が大事であると。
 私の地元では、おんぶ作戦というのがNHKで取り上げられて、お年寄りの多い地区でありますから、元気な者で自分の家にいる者は、隣のおじいちゃん、おばあちゃんを、日ごろからどこにだれがいるかということをみんなで町内会で把握して、それっというのでみんなでおんぶで助けに行こう、これはNHKで放映されたんです。だから、そういうことを子供のうちから教えておかなければいかぬと思うのですね。
 そのことについて、これをもっとシステム的に、私たちも頑張りますが、先生たちのお力で文科省や各自治体にひとつ教育をしてと言うと語弊がありますが、ぜひそういう御指導をいただければと思います。
 以上で質問を終わりたいと思います。
片山参考人 今御提案いただいたのは、極めて先端的な技術からローテクまでいろいろございまして、一つ一つに対して私の判断を今全部言うことはできませんが、防災に対する対策というのは、これはもう総合的な対策になります。
 ですから、何か一つだけいいことをやっておけばこれで全部救えるかというとそれはないわけでして、今おっしゃったように、非常に身近なところから、例えば家の中のガラス、これは非常に阪神・淡路大震災のときにも皆さん苦労なさったということも知られておりますし、トイレが問題になるのはこれはいつものことでございます。それに対して、ファイバースコープとかロボットとかいった種類のものの研究が今緒についていることも御存じのとおりでありまして、どれにどういう割合でどれだけの投資をしてというところ、私、今すぐには申し上げられませんけれども、今おっしゃったことはすべて大切であって、こういうものに総合的にやはり取り組んでいく、まじめに取り組んでいくということが、私は長い目で見た防災対策に非常に大切だと思います。
白石参考人 西川先生からは非常に重要な御指摘をいただいたというふうに思っております。
 ジュニア防災リーダー、こうしたリーダーを育成することはもちろん重要なことでございますが、このリーダーの活動を通じてすそ野を広げていく、防災に対する知識を持った人たちをより多く育成していく、これが重要ではないか。
 西川先生がおっしゃいましたように、阪神・淡路などを通して、市民レベルでできる重要な伝承といいますか、体験がずっと伝わってきたわけでございますが、時間経過とともにこれも散逸してしまう可能性がある。日ごろからガラスの飛散防止フィルムを張っておくとか、懐中電灯ではなく帽子につけるような懐中電灯の方が両手が動けるとか、冬は薄い寝巻きを着て寝るのではなくスエットで寝る方がいい、こうした市民レベルの知恵がいつか時間経過とともに飛散してしまうのが状況ではないかなというふうに思います。
 こうした家族でできること、まず子供でできることを教育の現場の中でも教えていくということが重要であるというふうに思います。それに関しましては、この四月から総合学習とか週休二日制ということが導入されておりますので、地域の中で学校現場を通じてできることというのが私はたくさんあるような気がいたします。
西川(太)委員 どうもありがとうございました。
田並委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の四人の先生には、長時間にわたりまして御出席を賜り、貴重な御意見を承ることができまして、本当にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第です。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十九分散会


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