衆議院

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第8号 平成18年6月1日(木曜日)

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平成十八年六月一日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 大野 松茂君

   理事 秋葉 賢也君 理事 斉藤斗志二君

   理事 原田 令嗣君 理事 福井  照君

   理事 宮下 一郎君 理事 奥村 展三君

   理事 下条 みつ君 理事 谷口 隆義君

      小川 友一君    岡本 芳郎君

      木村  勉君    近藤 基彦君

      坂井  学君    平  将明君

      高鳥 修一君    谷  公一君

      長島 忠美君    丹羽 秀樹君

      西村 明宏君    林   潤君

      林田  彪君    平口  洋君

      三ッ矢憲生君    望月 義夫君

      盛山 正仁君    森  英介君

      山本  拓君    岡本 充功君

      黄川田 徹君    小平 忠正君

      田村 謙治君    松本  龍君

      森本 哲生君    鷲尾英一郎君

      伊藤  渉君    石井 啓一君

      高橋千鶴子君    菅野 哲雄君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   参考人

   (東京大学地震研究所教授)            阿部 勝征君

   参考人

   (富士常葉大学環境防災学部教授)         重川希志依君

   参考人

   (東京都危機管理監)   島田 健一君

   衆議院調査局第三特別調査室長           佐藤 廣平君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  谷口 和史君     伊藤  渉君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤  渉君     谷口 和史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 災害対策に関する件(首都直下地震等の地震防災対策)


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     ――――◇―――――

大野委員長 これより会議を開きます。

 災害対策に関する件、特に首都直下地震等の地震防災対策について調査を進めます。

 本日は、参考人として東京大学地震研究所教授阿部勝征君、富士常葉大学環境防災学部教授重川希志依君、東京都危機管理監島田健一君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。首都直下地震等の地震防災対策につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、阿部参考人、重川参考人、島田参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えいただきたいと存じます。

 なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、阿部参考人にお願いいたします。

阿部参考人 東京大学地震研究所の阿部でございます。十五分ほどお時間をおかりしまして、首都直下地震について述べさせていただきます。

 私は、主に地震と津波の発生メカニズムを専門としておりますが、防災にも大変関心を持っております。

 お手元の資料に沿いましてお話しいたします。

 一枚めくっていただきまして、「震源分布とプレート」というのがございます。

 地震は、地球を覆っているプレートと呼ばれます岩盤が衝突したりこすれ合ったりして発生いたします。日本が世界でも有数の地震国になっている原因は、日本の周りに、先進国では大変珍しい、四枚ものプレートを抱えているためであります。つい先日起こりましたインドネシアも日本と同じ環境にございます。それが一ページ目をごらんになればおわかりになるかと思います。

 二枚目は日本周辺のプレートの分布であります。先ほど申しましたように、日本付近には四枚のプレートがひしめき合っております。先進国では日本だけでございます。そのために多数の地震が発生します。火山も発生いたします。

 三ページ目。日本はプレートがひしめき合っているわけですが、プレートとプレートが衝突している場所をプレート境界といいますが、そのプレート境界に沿いまして巨大地震が発生いたします。二年前に発生しましたスマトラ島沖の地震と大津波もこのプレート境界の地震でありました。

 めくっていただきまして四ページ目。過去三十年、日本でどれほど地震が起きていたかという場所を示したのが四枚目の絵でございます。赤いバツ印は、過去三十年間に震度六以上の揺れをもたらした地震の震源であります。海側にも内陸部にもバッテンがございます。また、日本をほぼ均等に埋め尽くすように地震が発生しているということもおわかりになるかと思います。

 五ページ目。中央防災会議が国としての防災対策を講じております。これまで防災対策を考慮した懸念される地震というものは、左上から東海地震、想定東海地震ですね、それから西日本、紀伊半島、四国沖で起こります東南海・南海地震。これらの地震が今後三十年以内に発生する確率は五〇%、六〇%と推定されております。それから首都直下地震、これがきょうのテーマでございます。

 つい先日は、日本海溝、千島海溝沿いの海溝型地震についても防災対策を考慮いたしました。北海道、東北地方の沖合でも過去マグニチュード七クラス、八クラスの地震が起きているわけですから、こちらの方も手抜かりなく防災対策を講ずる必要がございます。

 それから六ページ目。ここから首都直下地震のお話になります。

 この六ページ目の絵は、横軸に時間をとっております。現在が右の方、過去、江戸時代が左の方になります。縦軸は地震の規模をあらわしております。黄色い大きな四角で囲った地震があります。これは海溝型の巨大地震であります。一七〇三年に元禄関東地震というのが起こりました。それから、関東大地震が八十三年前の一九二三年に発生しております。

 日本の地震活動の特徴の一つは、巨大地震の前後に内陸部での地震活動が活発になる活動期があります。それから、静穏期もあります。活動期と静穏期が交互に起こるという特徴を持っております。関東大震災からもう八十三年たちました。このクラスの地震は二百年程度の間隔で起きると考えられております。したがって、まだ次の関東大地震までには時間があるわけですが、それに向けて活動期に入りますと内陸部での直下の大きな地震が発生しやすくなると考えられております。

 現に、一九二三年の前、一八五五年には安政江戸地震が江戸を襲いました。このときの死者は町方、武家方合わせて約一万人と推定されております。当時、江戸は世界でも有数の大都市で、百二十万人の人口がございました。百二十万人の人口のうち一万人の方が亡くなったわけですから、ほぼ一%の犠牲者が出たという大変大きな地震であります。

 そのような地震が今後南関東で起こりやすくなるだろうと考えられております。そのような地震に対する対策には時間がかかるものですから、もう今から準備しても遅くはないというわけでございます。

 七ページ目は、南関東の直下は大変複雑な構造をしているという図でございます。

 南からはフィリピン海プレートが入ってきております。東からは太平洋プレートが沈み込んでおります。何枚ものプレートが南関東の直下でぶつかり合っているわけであります。その場所のどこで起きてもおかしくはありません。西は神奈川県西部、東は茨城県、それから、浅いところから深さ九十キロメートルぐらいの深さまで、どこで地震が起きてもおかしくないということで、場所を特定できないという難しさがあります。

 そのような中でも、現在の地震学の知見を考えますと、起きやすそうな場所、起きにくそうな場所というものを区別できます。そのような観点から、八ページ目のように、地震がどの程度起こりやすいかというのを縦軸にとりまして、横軸に首都機能の重要性というものを考えまして、全部で十八タイプの直下地震を考えました。十八のうち、どれが起きてもおかしくはありません。その十八の地震の中には、活断層による地震もあります。それから、プレート境界の地震も考えてあります。

 最も大きな被害が予想される地震としましては、一番右上、東京湾北部という地震を想定いたしました。この地震の規模はマグニチュード七・三であります。兵庫県南部地震の規模と同じものであります。これが安政江戸地震タイプのメカニズムを持つであろうと考えております。

 九ページ目は、その東京湾北部の地震が発生した場合に南関東の揺れの強さを示したものであります。震度六弱以上の強い揺れに襲われるということがわかりました。

 それから十ページ目。このような直下の地震を考えていく上で、津波というのも検討対象にいたしました。ですが、津波は、神奈川県西部の地震で起きたところ相模湾で二メートル未満ですが、東京湾で発生した直下地震では五十センチ未満ということで、対象にしなくてもいいということがわかりました。

 十一ページ目が被害想定でございます。建物の被害八十五万棟、死者一万一千人、その他もろもろ推定されました。

 それから十二ページ目。経済被害も算定いたしました。東京湾北部地震の場合、経済被害は直接、間接合わせまして百十二兆円に及びます。東海地震は三十七兆円、それから東南海・南海地震は五十七兆円ということになります。

 このように非常に大被害が予想されているわけですが、十四ページ目、最後のページです。このような災害を未然に防ぐには、大きな柱として三つあります。そこに赤い字で書いてございます、建物の耐震化とか初期消火率を向上させるとかいろいろ考えているわけであります。

 被害想定の話はこの程度にしまして、最後に、この全体から外れまして、地震予知の現状という点について一言述べさせていただきます。

 地震予知がもしできれば被害を大きく減らすことができるわけですから、昔から国民の悲願であるということは私どもは承知しておりますが、研究者の目から見ますと、地震予知に期待をされても、現実は非常に困難であるということを述べておきたいと思います。

 何でもかんでも地震予知はできると思われている方もおられるかもしれませんが、決してそのようなことはなく、現在予知が可能であろうとされているのは想定東海地震のみでございます。なぜかといいますと、これは、マグニチュード八クラスという大変規模の大きな地震で、かつ震源域の大半が静岡県の直下にあります。そのために、前兆現象がとらえやすい、とらえられれば予知できるだろうという体制を現在とっております。そのようなことが考えられますのは想定東海地震のみであります。その他の地震、内陸で起こる地震、それから海域で起こる巨大地震、これらすべてについて、現状では地震予知は困難と言わざるを得ません。

 何が困難かといいますと、やはり、いつ起こるかという予知が困難だということであります。場所と大きさは大体は推定がつきますが、いつ起こるということは決して事前に精度よくわかるというものではございません。

 地震予知の現状を最後に述べさせていただきました。以上で説明を終わらせていただきます。(拍手)

大野委員長 ありがとうございました。

 次に、重川参考人にお願いいたします。

重川参考人 おはようございます。富士常葉大学の重川と申します。

 私は、主としまして人の立場あるいは地域のコミュニティーの立場から、こういった事態に一体何を備えればいいのかという面でふだん研究をしております。

 まず、お手元に二枚のレジュメを御用意させていただきました。まず、首都東京は、余りにもほかの地域と違う、今まで考えてもみなかったようなことが起こるんじゃないかというふうに皆さん考えていらっしゃいます。ところが、やはりそこに暮らす人あるいは家族、コミュニティー、組織というのは皆同じです。どのような災害であっても、我々が必ず乗り越えなきゃいけないハードルがあります。これは、水害だろうが地震だろうが火山災害だろうが共通しております。それから、立場が異なる、性別が異なる、いろいろな違う条件があっても、みんなが共同に乗り越えなきゃいけないハードルというのが三つあります。

 一つ目が、命を守るということです。当たり前のことのようですが、これが一番難しいです。なぜ難しいかというと、被害想定でどんな数字が出されても、その中の一人が自分だとだれも思っていないからです。さらに、だれの命を守るか。これはほかでもない自分自身の命です。総理だろうが大臣だろうが都知事だろうが警察官だろうが消防職員だろうが、まず最初にやるべきは自分の命を守るということです。それができて初めて人の命、地域を守ることができます。このときには助ける人と助けられる人の区別はございません。みんな非常に平等な立場に立ちます。

 そして、二つ目のハードルが、生き残った人の暮らしをどう守るかということです。特に、大規模な地震が起きますと、長期間ライフラインがとまります。国民にとって当たり前のように享受していた便利な生活が長い間途切れます。その不満は一斉に行政に向けられます。自然災害というのは、犯罪と違いまして、だれを責めていいかわからないと国民は思います。そのときに集中砲火を浴びるのが行政になります。いずれにしても、非常に苦しい状況の中で、最低限の皆さんの暮らしを維持していくことの苦労が二つ目です。

 そして三つ目のハードルが、さまざまなものを失った人や地域や組織がそこから再建、復興を図っていくということです。家族を失った個人の生活再建もあります。企業の事業再開もあります。あるいは政治、経済。あらゆる面で再建、復興をどう図っていくか。これが三つ目のハードルになります。

 次に、一つ一つのハードルをどう乗り越えるかということを見ていきたいんですが、まず、一つ目の地震災害から命を守るということを考えてみたいと思います。

 先般、インドネシア・ジャワ島で大きな地震がありました。六千人近くの方が亡くなっています。日本、世界で数限りない地震が発生しますが、大量の人命を奪う被害の原因というのは三つあります。

 一つ目が地震の揺れそのものです。揺れている最中に家が崩れる、建物が倒れる、揺れている最中に命を失ってしまうというのが一つ目です。土曜日に起きましたジャワ島地震もそうですし、阪神・淡路大震災もこのタイプです。二つ目が津波です。東海、東南海・南海地震あるいは北海道の奥尻島、それから一昨年の十二月に起きましたスマトラ地震津波、これらはすべて地震がおさまった後の津波によって大量の死者が出ました。そして、三つ目の要因が火災です。先ほど阿部先生のお話にもありました。関東大震災では死者の九五%が火災で亡くなっています。東京では、あのとき火災さえ起こしていなければ、地震そのもので亡くなった死者は阪神・淡路大震災よりも少数でした。今の東京で万一地震火災が起きて初期消火に失敗したら大量の人命、財産が奪われることは、市街地構造を見ても、残念ながらその危険性を抱えています。

 では、それに対してどう対応するかということです。まず、一つ目の地震の揺れです。東京ではあらゆることをやはり皆さん心配しています。地下鉄に乗っているときはどうなんだろう、超高層ビルではどうなんだろう、こんなデパートで起きたらどうなんだろう、帰宅困難者はどうなるんだろう。いろいろ皆さん心配をしているわけなんですが、最も警戒すべきは我が家です。

 理由は二つあります。一つ目は、今まで住宅というのは個人の財産でした。したがいまして、耐震性、安全性の基準というのは最低限のレベルが建築基準法、消防法等で定められているだけです。我が家の安全性というのは、ほかの建物、施設に比べて低いレベルにあります。それから二つ目は、たまたま家にいるときに地震が起きたのではなく、実は私たちが我が家で過ごす時間というのは極めて長いのです。

 例えば、毎日学校に通う子供たちが学校にどれぐらいの時間いるかを調べてみると、一年間トータルすると約一〇%の時間しか学校にいません。残りの九割は学校以外、多くは我が家にいます。つまり、学校の耐震性、防災対策を整えるというのは非常に重要なことなんですけれども、それをやっても守れるのは子供の生活時間の一割です。我々サラリーマンも同様です。高齢化社会が進んでおりますので、仕事をリタイアされた方の数がふえます。ということは、さらに我が家での滞在時間が長くなります。少なくとも我が家にいるときに地震が起きても命を失うことはない、この対策をとっておくということは非常に重要だと思います。

 それから、津波につきましては、後でお話が出ると思いますが、首都直下の場合には余り心配されておりません。

 火災につきましては、繰り返しになりますが、消防力というのは、日常の火災に備えて我々は消防自動車や消防職員を雇っております。地震火災というのは、それを上回った火災件数が必ず起きます。そのときに消防では足りない火災をほっておけば延焼火災になります。だれが消すかといったら、我々市民しかいません。その私たち市民の初期消火力を高めるための訓練というのは非常に重要になってくると思います。

 それから四つ目、暮らしを守るために何が必要か。ここではコミュニティーの力と書きました。命を守るのは自己責任が基本になりますが、その後になってきますと、地域コミュニティーあるいは組織でなければ解決できない課題が出てまいります。

 例えば、限られた救援物資をどういうふうに分けるか、あるいは、高齢者を中心とした弱者が実は避難所の中で切り捨てられ、命を失うという例もあります。阪神・淡路大震災では、避難所で五百人の高齢者が亡くなりました。今の非常に進歩した日本で、避難所にまで来て五百人の高齢者が亡くなったのはなぜなのか。皆さんの協力が足りなくて高齢者が切り捨てられたということが非常に大きな原因になっています。

 このときに重要なのがリーダーです。ほっておけば個人というのは好き勝手なことをします。時間がたてばたつほど、わがままが出てきます。何をしていいかわからない烏合の衆を防災力にするためには、地域のリーダーの一言が非常に大事です。最初の一人が何を言うか。みんなで頑張ろうと言うのか、それとも文句を言うのかで多くの人の意思決定が変わってきます。例えば初期消火でも同じなんですけれども、みんなで火を消せと言う人が一人いたときに、地域の防災力というのは非常に大きくなります。直後というのは、人は非常に素直です。だれかの一言によって、きちんと協力をしてくれます。言うことを聞かなくなるのはその後です。

 後の段階でも、地域のリーダーというのは非常に重要です。最後の五番目を見ていただきたいと思うんですが、やはり時間がたてばたつほど地域の力が重要になってくるということを阪神・淡路大震災の被災者の方が示してくださいました。これは、暮らしの再建のために重要な要素は一体何だったのかということを、神戸の地震から五年目と十年目に被災者にアンケートをとった結果です。白い棒グラフが五年目の結果です。黒い棒グラフが十年目の結果です。

 五年目の段階で被災者が何を求めていたか。一番多かった答えが住まいでした。やはり住まいがもとに戻るということが被災者にとって非常に重要な要素だったことがわかります。二番目に多かった答えがつながりです。これは、人と人とのつながり、家族とのつながり、行政とのつながり、地域社会とのつながり、ボランティアとのつながり。人とのつながりによって何とか五年間やってこられた、これが二番目に多かった答えです。例えば、行政とのかかわり。行政の支援策がなければ被災者の生活再建はあり得ない。

 あるいは、「くらしむき」と書いてあります、暮らし向きや経済が上向かなければ被災者の生活再建なんて難しいんだ、よくマスコミでこういう報道がなされますが、そういった答えはむしろ予想に反して少なかったです。

 そして、黒い棒グラフが地震から十年目です。十年目になりますと、住まいという答えはなくなりました。ほぼ皆さん、何とか新しい住まいの再建をなし遂げた。ここの段階でトップになったのがつながりです。ほかでもない、十年たって、一番我々の暮らしの再建に重要な要素を果たしていたのは、やはり人と人とのつながりだった。それから、二番目が備えです。これは、次の災害への備え、新しい暮らしへの備えという答えです。

 そして、二つ新しい項目が出ました。一つ目が人生観それから価値観の変化。もう一つの答えが震災体験、教訓の発信です。十年たってようやく、今までの暮らしではない、新しい人生観、価値観を何とか認めることができるようになった。失ったものを悔やむだけではなくて、他に新しい価値観を認めることができるようになった。そして、今までは一方的に与えてもらう立場だった自分たちだけれども、自分たちの体験や教訓を次の災害に備えて皆さんに発信していくという役割、それを果たすことが我々の暮らしの再建にとって重要な要素なんだと。

 いろいろなことがありましたが、あの未曾有の災害から十年たって、暮らしの再建をなし遂げた方たちが出した結果がこの最後のグラフになります。

 きょうお話ししましたことは首都圏の直下の地震に直接は関係ありませんが、どこで災害が起こっても、基本的に人間としてやるべきことはこういうことであり、そして、最後に、コミュニティーの重要性というのは今の人たちは忘れています。

 なぜ災害時にコミュニティーが必要か。これは人のためではなくて自分のためです。自分が助かりたければ、隣の人に声をかけてもらう、地域の人に顔を知っておいてもらう。避難所に行ったときに、あの人が来ていないね、どうしたんだろうと心配して気遣ってくれる人が地域の中に何人いるか、自分たちがその人を何人地域の中につくっているか、それが自分の生死を分けます。

 ところが、ふだんの生活の中ではそういうことが必要ありませんので、皆さん忘れています。何かあっても自分は大丈夫だ、やっていけると思っていますが、災害時だけはそのときその場にいる人以外に自分の命を助けてくれる人はいない。やはりそのことをもう一度我々一人一人が知る。そして、ふだんの生活を含めて、自分が助かるために地域の一員としての務めを果たすということが非常に重要であると思います。一般の方にお話をするときにも、必ずそのことを強調しております。

 以上で終わらせていただきます。(拍手)

大野委員長 ありがとうございました。

 次に、島田参考人にお願いいたします。

島田参考人 東京都危機管理監、島田でございます。

 日ごろから東京都の防災対策にお力添えをいただきましてありがとうございます。また、本日は、東京都の震災対策につきまして御説明する機会を与えていただき、ありがとうございます。

 東京は、いよいよ千二百五十万人を超えた人口に加えまして、近隣各県からの通勤者、通学者が集まり、また七十万を超える企業の集積、そしてそれを支える都市インフラから成る大都市を形成しております。こうした東京を直下地震が襲ったなら、その被害ははかり知れない。私、危機管理監になりまして都庁の隣のマンションに住んでおりますが、毎日身も細る思いでございます。

 本日は、今回都が公表いたしました首都圏直下による東京の被害想定、次に現在まで実施してまいりました東京都の震災対策の概要、そして三番目に今後の方向といった順序で御説明をさせていただきます。

 お手元の資料一ページをお開きください。まず、被害想定であります。

 経緯でございますが、都は平成九年、阪神・淡路大震災を踏まえまして、あのときマグニチュード七・二と言われておりました、その被害想定を公表しております。現在の対策はこれを基本に実施しているところであります。

 昨年の二月、先ほどお話がありました、国の中央防災会議が首都圏直下地震の被害想定を公表し、これを受けて都として独自に被害想定の策定作業を開始いたしましたが、その七月に御存じの千葉県北西部地震が発生し、都市型災害などが発生をいたしました。そうしたことも盛り込みまして、この三月、都の防災会議地震部会で新たな被害想定を公表しているところであります。

 二番目に、今回公表しました都の被害想定の特徴でございます。手法は基本的に国のものと同じでございまして、数値的には大きく変わるものではありませんが、特徴が三点ございます。

 一つは、国が想定いたしました七・三に、先ほど阿部先生からありましたが、過去三十年間で十六回発生し、発生の頻度が高いと言われるマグニチュード六クラス、六・九という数字にいたしましたが、これも加えて想定したことであります。二つ目に、区市町村の対策に生かせるよう、二百五十メートルメッシュごとに建物の構造等々で積算をしたこと。三番目に、昨年の七月に千葉県北西部地震で顕在化いたしましたエレベーター閉じ込め台数、ターミナル駅での混乱状況を想定したことなどであります。

 二ページをお願いいたします。

 震度分布がございます。マグニチュード六・九の場合、地盤が軟弱な二十三区東部に震度六強が発生し、その面積は区部の約二五%となっております。西に行くに従い、地盤の強さと震源からの距離も関連いたしまして、六弱、五強、五弱、四と移ってまいります。

 建物全壊は区部東部の木造密集地域を中心に約六万棟発生し、火災による建物焼失は環状線沿いの木造密集地域を中心に約十八万三千棟となります。

 右側が、エネルギーが六・九の四倍となります七・三でございます。被害は約一・七から二倍となっておりますが、六強の震度分布は区部の面積の四八%、建物全壊十二・七万棟、建物焼失三十一万棟と想定されております。

 三ページをお願いいたします。

 その他の被害でございますが、人的被害は、マグニチュード六・九の場合、二千七百八十二人、このうち、火災によるもの五〇%、建物倒壊によるもの二六%、負傷者数は七万五千人となっております。なお、七・三の場合、死者五千六百三十八人、負傷者約十六万人でございます。

 交通被害やライフラインは、やはり震度六強の発生する区部東部のエリアで発生いたします。避難者は発災後一日目がピークで約二百七十万人、七・三では三百八十五万人という数字が想定されました。

 帰宅困難者でございますが、従来の距離的に帰宅できない帰宅困難者という枠を広げまして、外出者は夕方の五時に千百四十万人おります、その行動シミュレーションという概念でとらえております。帰宅困難者は、先ほどありました三百九十万人に、都内の特徴であります観光客それから首都圏外からの出張者など約五十八万人を加えまして、四百四十八万人と推定しております。東京、渋谷などの主要なターミナル駅では、一時的に十万から二十万人近い滞留者が発生すると予想されます。

 エレベーターの閉じ込め台数でございますが、都内に十四万五千台のエレベーターがございます。このうち約十一万台が停止をし、そのうちマグニチュード六・九では七千五百二十台、七・三では九千百六十一台に閉じ込めが発生するという予想でございます。

 四ページをお開きください。

 次に、現在まで進めてまいりました東京の主な震災対策の概要でございます。

 地域防災力では、現在、消防団が九十八団二万六千人。残念ながら、平均年齢が四十九歳、約五十歳となっております。防災市民組織五千七百団が組織化されております。

 事業所防災計画が震災対策条例により策定義務化されております。

 火災焼失による死者が多く考えられますが、従来より二百五十メートルメッシュに一カ所の防火水槽を整備してまいりました。

 発災時の通信手段は大事でございますが、国並びに都などの防災行政無線を使いまして通信が可能となっております。

 医療救護では災害拠点病院六十五病院の整備とあわせ、地域医師会との協定、また医薬品の備蓄などをしております。

 避難所は小学校、中学校など二千九百三十六カ所を指定しておりまして、収容人員約三百万人でございます。

 水でございますが、約二キロメートル以内に必ず応急給水槽があるという形にしておりまして、都民約四週間分が確保されます。食料は避難民の約二日分、その他毛布やトイレの備蓄などをしております。

 ボランティアは、応急危険度判定員、建物が危険か危険でないかという判定でございますが、判定員や語学ボランティアなど約三万人が登録をしております。

 帰宅困難者対策といたしましては、都立高校、コンビニ、ガソリンスタンド協会とも協定を結びまして、そういったところが帰宅支援ステーションに指定され、飲料水や情報を提供することとなっております。

 埼玉、千葉、神奈川など八都県市の広域連携プランの中で、医療や物資の相互応援協定もしております。

 五ページをお願いいたします。

 今回の被害想定と現状を勘案いたしまして、十八年度中に地域防災計画の抜本的な修正を行いたいと思っております。

 その際の基本的な考え方でございますが、各地域で発生するさまざまな災害にどのように対処するか。場所によっては、火災もあり、建物倒壊あり、駅の混乱あり、道路の渋滞あり、エレベーターの閉じ込めあり。言葉をかえて言えば、局地戦をどう戦っていくか。それにはそれぞれの機関が役割を果たしてお互いに連携していくことが重要であり、そうした仕組みづくり、体制づくりが重要であると考えております。こうした地域防災計画は、優先順位をつけた予防対策並びに時系列の応急復旧対策、国から今回出されました減災目標の検討など、整理されたものにしていきたいと考えております。

 この計画を策定する体制といたしまして、防災会議で部会を立ち上げて検討してまいります。

 一つは、安全な都市づくりでは、耐震化、不燃化、木造密集地域の整備。地域防災力、企業防災というくくりの中では、家具転倒に対する対応。今回の被害想定でも、三〇%の負傷者の方が家具転倒。消防団、防災市民組織の活性化、地元企業との連携。

 道路、ライフラインでは、復旧のために事業者間の連携が必要だと思っております。また、資材を置くオープンスペースをどこに確保するか、そういった具体的な内容について詰めていきたいと思っております。

 エレベーター対策は大変な問題でございます。メーカーにも相談いたし、ハード、ソフト両面からの対策が必要と思っております。

 外出者対策でございますが、滞留する都民への情報の提供、駅の混乱防止、企業との連携、また一時的な収容施設の確保、こういったことも必要と考えております。

 避難所対策は収容体制の整備、介護など要援護者の対策、支援物資の受け入れなど。

 また、医療救護では、東京DMATというものをしております。医療体制の拡充、医療搬送の確保。

 その他、瓦れき処理、トイレ、また、今まで遺体の処理などはなかなか見過ごされてまいりました。こういったものが検討課題になろうかと思っております。

 雑駁でございますが、東京都の震災対策について御説明をさせていただきました。(拍手)

大野委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

大野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平将明君。

平委員 自由民主党の平将明でございます。

 本日は、首都直下地震等の地震防災対策について御質問をさせていただきます。

 まずは、本日は、参考人の皆様、本当にありがとうございます。きょうからクールビズということで、軽装で失礼をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、阿部先生にお伺いをしたいんですが、先ほど、東海地震は予知の可能性があるものの、その他の地震に対しては予知は困難だろうというお話を伺いました。しかしながら、やはり事前にわかる、たとえ数秒前であっても事前にそれが想定されるということは、被害の軽減に大きくつながるというふうに思うわけなんです。

 例えば、地震発生時に最も早く到達するP波と、おくれて到達して主要な破壊現象を起こすと言われているS波の、到達時間の差を利用した緊急地震速報というシステムが開発中です。これは主に、例えば新幹線とか、高速で走っているものをその数秒間で減速をさせるとか、そういうような目途で開発をされているというお話を聞いているんです。

 数秒間であっても、事前に多くの人間に知らせることによっていろいろな対策が講じられるのではないかなと思うんですけれども、緊急地震速報というのは現在どのぐらいのレベルにあるのか、開発はどの程度進んでいるのかというところをお伺いしたいと思います。

阿部参考人 お答えいたします。

 おっしゃられましたように、地震予知は困難であるというのが現状であります。東海地震を除いては、予知の可能性は今のところ全くございません。

 それにかわるものとしまして、御指摘の緊急地震速報というものを検討中でございます。地震の波には縦波と横波、P波、S波というのがあります。それぞれ伝わる速さが違います。大きな揺れをもたらすのは後から来るS波であります。ですから、P波で地震の位置、規模を推定して、その何秒後にS波が来るかということを事前に速報しようとしているわけであります。

 現在、そのレベルはかなり到達度の高いものであります。多少誤差はございますけれども、技術的には問題は解決して、二年間ほど試験運用をしております。現在、検討会が開かれまして、実用化に向けてレベルアップを図っているところであります。早ければことしの八月ぐらいから、特定の利用者に向けて発表していこうと考えておりますが、一般の方には、間もなく強い揺れが来ますと、この場にそういう情報を流されても、それに対する心構えというものを勉強して身につけておかないと、ただただ混乱するだけであります。例えば、満員の野球場に間もなく強い揺れが来ますとか、満員の通勤電車の中に放送が流れて間もなく強い揺れが到達しますと言われても、多くの方は困惑すると思います。

 ですから、一番基本的なことは、まず身の安全を図りなさい。これを身につけていただくまで、しばらく教育のための時間が欲しいと思っております。あと半年から一年以内には皆様のところに届く情報になるかと思います。

 以上でございます。

平委員 ちなみに、もう一度阿部参考人にお伺いしますけれども、それは大体何秒ぐらいの猶予があるんでしょうか。

阿部参考人 これはP波とS波の速度の差を利用しているわけですから、直下の地震ですと一秒ないし二秒です。情報が出るまでに強い揺れに遭います。上越新幹線が脱線したときも、直下の地震で揺れて、一秒から二秒の間にもう脱線を始めているという状況でございました。それから、例えば東京でいいますと、三陸沖とか北海道の方で起こりますと二十秒から三十秒ぐらい余裕があります。

 ですから、非常に近いところはすぐ揺れてしまいますけれども、遠くなれば二十秒、三十秒の時間は稼げる。それから、想定東海地震が発生した場合にも、二十秒程度は東京の場合には時間を稼げるということになります。

 以上です。

平委員 今回想定している直下型でいくと、そうすると二秒とか三秒とか、そのようなことになるんでしょうか。

阿部参考人 直下地震も深さによりますけれども、大きな被害をもたらすであろう直下地震というのは、深さが三十キロから六十キロメートルぐらいです。その場合ですと数秒でもう強い揺れが来てしまうわけです。一秒ぐらいで状況を判断して情報を流したとしても、一般の方にその情報が伝わるまでには、放送にかかる時間とかいろいろございます。それで十秒前後とられてしまいますから、情報が流れるまでもなく揺れてしまうということになります。

平委員 何でもそうですけれども、例えばボールが飛んできて、ああボールが飛んでくるなと思ってぶつかるのと、何も意識しないでボールがぶつかるのではけがの度合いが違うのと一緒で、やはりわかるということがとっさの判断にもなると思いますし、今、阿部先生御指摘のとおり、心の準備ができていないとかえって混乱を招くことになると思います。

 例えば今、携帯の端末なんというのは皆さん持っているわけであります。災害時の放送となると多分これは全然間に合わない話になると思いますが、特定の発信者によって着信音を変えるというのは、今もう皆さんやっていると思うんですね、妻からなのか上司からなのかとかそういうのを。だから、今そういうようなシステムというか仕組みがありますので、例えば、数秒間であっても携帯端末に一斉に配信をする、その配信の着信音がこういう音ですよということ、この着信音があると数秒後に強い揺れが来ますよということは、今の技術をもってすればできるんではないかなと。

 「着信アリ」というホラー映画がありまして、その着信音が鳴ると何時間以内に死ぬというのがあって非常に印象的だったんですけれども、しっかりとしたそういう教育とITのシステムというのを、既存のインフラを使えば、もしかしたら少しは身構える時間ができるかもしれませんので、ぜひその辺は御検討をいただきたいと思います。

 続きまして重川先生にお伺いをいたしますが、今まさに地域コミュニティーのお話がありました。私も東京青年会議所というところで理事長をしておりまして、地域コミュニティーの重要性、特に私の東京JCというのは二十三区内ですので、まさに地域コミュニティーが壊れている、崩壊しているというのを痛感しているわけでありますけれども、そういう中で、やはり地域コミュニティーが、例えば教育とか治安だとか、ありとあらゆるものの問題の本質ではないかなという認識を持っております。

 そんな中で、今回は防災という視点でありますが、ではその地域コミュニティーをどうやって築いていくか、どう密接にしていくか。これは非常に大きな課題でありまして、我々もいつも頭を悩ませているところなんですけれども、地域コミュニティーを強化するために、どのように常日ごろから取り組みをすればいいのかといったところを、ちょっと御意見をいただきたいと思います。

重川参考人 御指摘のとおり、一朝一夕で解決する問題ではなく、非常に難しいです。ただ、防災訓練をしても地域コミュニティーはなかなか育ちません。なぜかというと楽しくないからです。

 一つは、やはり楽しいイベントをやる、結果的にそれが災害時にも役立つということだろうと思います。それともう一つは、非常に家庭での教育というのが大きいと思います。大人になって、人のために地域コミュニティーに参加をしなさいと言っても、まずだれも聞く耳を持ちません。

 実は、新潟県中越地震のときに高校生に作文を書いてもらいました。その作文の中に頻繁に出てくるのは、例えば、地域の人たちと車の中で避難生活をした、みんなの家に残っているものを持ち寄って、みんなで御飯をつくってみんなで食べた、すごく楽しかった、物をみんなで分け合って協力し合った、地震がおさまった後もやはり地域の人たちと仲よくしていきたいという作文がたくさんありました。そういう若い人たち、子供たちというのは、体験をさせると、身をもって地域のコミュニティーというのは大事なんだということをすごくよくわかってくれています。

 やはり子供のときに、災害というイベントを起こすわけにはいきませんけれども、そういう助け合いとか、地域の人と楽しいことをやるという体験をたくさんさせるということが、ちょっと時間はかかるかもしれませんけれども、結果的に、そういう人たちが大人になったときに、地域の一員としてコミュニティーの中で果たさなきゃいけない役割というのをきちんとわきまえてくれると思っています。

 もう一点は、楽しいことをやると同時に、子供に地域社会の中で楽しく過ごす、あるいは地域の人たちと一緒に何かをするという機会をたくさん設けていく、その二つのことが非常に重要なんじゃないかと思っております。

 以上です。

平委員 ありがとうございます。

 地域には、町会があったり、消防団があったり、NPOがあったり、我々の青年会議所があったりするわけですけれども、そのどこにコアを置いていくのかというところが大事だと思うんですね。例えば、町会とかお祭りというものは各地域でやっているんですが、実際、私も衆議院議員になるまでは、こんなに地域でお祭りをやっているというのは全然知らなかったわけでありまして、地域のコミュニティーはあるんだけれどもそこに接する機会がないというような状況もあるのかなというふうに思います。

 ですから、そういう中で、新たな地域コミュニティーの担い手をつくるのか、もしくは既存の地域コミュニティーの団体というものを活性化していくのか。何か一つコアになるものをつくっていかなければいけない。

 一つの事例は、例えば小学校なんかで牛の丸焼きとかすると盛り上がるんですね、物すごい人が集まってきて。その小学校の通学エリアのコミュニティーが結構活性化するとか、そんな話もありましたので、それはまたいろいろな役割があるかと思いますので、また別途御指導いただきたいというふうに思います。

 続きまして島田先生にお尋ねをいたしますが、今出た地域コミュニティーの活性化という点で、東京都の立場から、防災という視点でどのようなお考え、お取り組みがあるか教えてください。

島田参考人 地域コミュニティーの立場からということでございますが、先ほどお話ししました、二十三区の消防団の平均年齢が約四十九歳、三十歳以下は六%の構成ということであります。東京都のコミュニティーが崩壊しているとよく言われますが、こういったところにも一つの東京の生活環境の傾向というのが出ていると思います。もう一つ、都民へのアンケートを行いまして、地域の自主防災活動に参加したことがありますというのがわずか一七%でございます。

 しかしながら、地域コミュニティーを防災ということをキーワードにして復活させた地域の例が幾つかございます。そういったものを私ども東京都として区市町村と一緒に守り立てていくことが一つの防災、また地域コミュニティーの復活になるんではないかというふうに考えております。

平委員 ありがとうございます。

 消防団は私もおつき合いがありますけれども、やはりかなり高齢化が進んでいるなという気はいたします。そんな中で、例えば今「海猿」という映画があって、海上保安庁の入隊希望者がふえているというのもありますけれども、そういうようなやはりイメージ戦略というのは必要かなと。

 もう一つは、やはり消防団というと縦の組織でありまして、なかなか若い人はなじみにくいところがあって、その消防団を補佐する準消防団のようなNPOなり組織なり、それはまたそのユニフォームも考えなければいけないと思うんですけれども、そういう消防団自体がちょっと弱体化しているんであれば、その周辺に若い人を巻き込んでいくような、そういう仕掛けなんかが必要なのかなというような気がします。

 続きまして、時間もありませんのでちょっと飛ばしますけれども、災害対策の中で疎開というキーワードが出ていたと思います。我々の世代からいうと疎開というのはぴんとこないわけでありますけれども、その疎開ということの取り組みとは実際どういうようなことを想定されているのか、島田参考人にお願いしたいと思います。

島田参考人 私も疎開には縁のない世代でございまして、疎開という言葉が去年あたりから出てきまして、ちょっと正直、忌憚のない意見ということで言わせていただきますと、びっくりしております。阪神・淡路大震災、また新潟中越地震でも、何日間かの親戚への避難といいますか、そういう縁故などへの疎開はありましたが、行政が主体となった疎開というのはありませんでした。また、そういったニーズや行政の動きがあったとも私のところへは入ってきておりません。

 あくまで個人的な見解でございますが、仕事、家庭などの今ある生活環境を考えれば、住みなれた地域を疎開という形で離れることを被災者がその時点で望まなかったのではないかなというふうに推測されております。また、私ども区市町村並びに八都県市などともそういう問題を話しておりますが、疎開というのは今問題提起されていないというのが現状でございます。

平委員 先ほどの御説明によると、一時避難者は、要はその区内の小中学校で収容できる、そういう認識でよろしいんでしょうか。

島田参考人 都内で約三百万人でございます。たしかマグニチュード六・九で二百七十万。そのうち、先ほど言いましたが、親戚だとか知り合いのところへ避難する方が三〇%ぐらいいますので何とか入れますが、ただ、もう一つ、この次にレベルアップしなきゃいけないんですが、帰宅困難の人たちが避難所へ来たらどうするかというのが大きな問題でございます。

平委員 避難所で帰宅困難者も含めて収容できれば、それは近くにいるにこしたことはないわけでありますけれども、それが収容し切れない、特に東京は人口が密集しておりますので、そのときに大量に疎開をさせる必要があるのかなと思いますけれども、その辺のシミュレーションによるんでしょう。

 今、各地域が均衡ある発展から、それぞれ特色を持った役割を担っていこうという中で、もしそれで収容し切れないんであれば、ある特定の都道府県なり地域と事前にやはり協定を結んでいく必要があるのかなと思いますし、一部の取り組みとしては、疎開を前提として、被災が想定される地域と疎開される地域との行き来をするんですね。それで、平常時からコミュニケーションをとり、またキャンプか何かになるのかわからないですが、人間関係というものをつくっていく。

 これは意外と私はいいなと思っていて、いざとなったときは疎開をするんだけれども、平常時は田舎と都心の行き来をすることによって、その都度防災意識を再確認するし、多分これは楽しいと思いますので、地域コミュニティーの活性化にもなるんではないかなというふうに思っています。

 今、現状、疎開というのは前向きに検討されていないということもありますけれども、そういう中で、地域コミュニティーの活性化であったり、実際疎開が必要となったときにスムーズに事が運ぶ。また、最近は財政が逼迫してきて田舎と東京で非常に悪い雰囲気になっておりますので、これは東京と地方の交流にも資するのではないかなという思いがあります。それは帰宅困難者の問題も含めて、収容し切れなければということにはなるかと思いますけれども、そういう視点で御検討をいただきたいと思います。

 最後に島田先生にお伺いをいたしますけれども、東京の中にたくさん中小企業や企業群があります。その企業群の防災に対する取り組みの現状、また企業が果たすべき役割といった部分について御示唆をいただきたいと思います。

島田参考人 先ほど申し上げましたが、都内には七十万を超える多数の事業所が存在しております。こうした現状から見て、東京の震災対策に企業の防災力、みずから防災対策をする、このことは欠かせません。また、企業は指揮命令系統がきちんとしておりますので、これは逆に考えると戦力になるという考え方もあろうかと思っています。

 こうした考え方から、平成十二年、東京都は震災対策条例をつくりまして、事業者の基本的責務を明記いたしました。事業所に来所する顧客、従業員、周辺住民の安全確保並びに地域協力、こういったことをきちんと明記いたしまして、これらの責務を達成するため、現在三十人以上の事業所につきましては事業所防災計画をつくっていただいております。東京消防庁が消防計画と一緒に指導するという形になっておりますが、これを条例で義務づけました。

 今のところ大体七七%ぐらいが事業所計画をつくっておりますが、これからはそれをきちんと執行するといいますか強固にしていく、計画だけではいけない、そういうことが次の課題かと思っております。

平委員 わかりました。

 終わります。ありがとうございました。

大野委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 きょうは、阿部参考人、重川参考人、島田参考人、大変お忙しい中お時間をいただきましてありがとうございます。端的に幾つか質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 今幾つか述べられておりましたけれども、まず地震予知についてお伺いさせていただきたいと思います。

 阿部参考人が三年前の十二月に災害情報学会で、地震予知はまだまだ研究段階であるというふうにおっしゃっておりました。先ほども、東海地震のみが想定できるかなと。さらに先生は、地震が起きるときは時間も地震の大きさもきちんと言わないと地震の予知にならない、そこまで精緻さが必要であると。先ほど、技術的な問題は私も素人でわかりませんが、P波、S波等を含めた地震について御研究をさらに深めていかれるというお話をお聞きしております。

 予知ということが非常に精度を高めていかなくちゃいけないという中で、今、政府の公務員の定員を五%純減するという行政改革の重要方針があります。これで気象庁も定員の純減が検討されている。全国四十六カ所の測候所を今から四年後の二〇一〇年度までに原則廃止する、職員三百三十八人を削減していく。これは検討事項として、機械化、自動化、そして包括的民間委託、機械の整備とか、そして民間等主体による観測データの活用等々でございます。

 ということは、今精緻を深めなきゃいけない予知対策という一方で、先ほど阿部先生がお配りになった資料にあるように、プレートが大変な状態の岩盤の上に日本がある。私としては、聞いておりました段階で、本当に民間にどんどん委託しちゃっていいのか、専門職員がますます逆に必要なんじゃないか。そして、先ほどの被害想定額で何千億、下手をすれば何兆、何十兆の被害が出てくる。今ここで人一人を切ったり三百人を切るのが重要なのか、それとも精緻を高めていく地震予知の方に配分していくのが重要なのかという、ある意味で岐路に立っていると思います。

 そういう意味では、私どもとしても、専門家の方々に一体どういうふうにそれについて進めていけばいいのかアドバイスをいただければというふうに思いますので、今の視点に関しまして、地震予知、これから精度を高める部分について、まず阿部参考人にちょっとお伺いしたいというふうに思います。

阿部参考人 大変難しい質問で、私うまく答えられるかどうかはわかりません。

 人員を削減するとか測候所をなくすということ自体、本当に悪いことなのかどうかというのも考えてみなければいけないと思います。

 例えば、自然現象を見るには、観測してデータをとって、そのデータを分析することから始まるわけですね。その観測するということが、従来、明治からずっと人の手をかりて観測を続けてまいりました。ですが、だんだん技術レベルが上がってきますと、人を介さなくても機械で観測できるようになってきたものもあります。ですから、そのようなものをうまく取り入れて、お互いに知恵を出し合っていくということが大事ではないかと思います。

 百人定員削減するところを百人残せば地震予知は進むのかと言われましても、私はそう簡単に足し算引き算でいくものではないと思います。機械で補えるものは機械で補うし、人間で補うものは人間で補っていく必要があるかと思います。特に、気象観測の場において人員が削減されますと、やはり人間同士のコミュニケーションというのも少し減るのかなという危機感は持っておりますけれども、観測がそれで自動的に補えるものならば、それも考慮すべきではないかと思います。

 お答えになっていないかもしれませんが、一応ここまでにしておきます。

下条委員 先生、専門職の部分はどのぐらい残していけばよろしいかというのは、もし御意見があればお伺いしたいと思います。

阿部参考人 ちょっと私、行政の立場にないからわかりません。

 専門職というのもどの分野の専門職を指しているのかわかりませんけれども、例えば、私は大学に属しておりますが、もともとは国家公務員でした。大学法人化されてしまい国家公務員ではなくなったわけですね。それで本当によかったのかよくなかったのか、これはかなり時間がたって考えてみなければ結論は出せないものだと思います。

 ですから、今どうですかとお尋ねされても、私はちょっと即答しかねるという状況でございます。

下条委員 難しい質問で申しわけございません。これから我々はいろいろな審議をしながらということになりますが、専門性を持った方がどのぐらい必要かなという意味でございますが、大変難しい質問で恐縮でございます。

 今の点に関して、島田参考人からも御意見をいただければというふうに思います。

島田参考人 東京都としては、地震予知については全くやっていないといいますか、それは国とか学校の先生に頼っているというのが現状でございます。私どもにはそういった専門の職員もいませんし、私たちは、起きたところから、また事前対策、応急対策の部門といったところでございます。

下条委員 ありがとうございました。

 次に、地震防災についてちょっとお聞きしたいというふうに思います。

 昨年から耐震の問題がいろいろ出ております。その中で、東京都の震災対策の中に同様にいろいろな部分が出てくる。先ほどいろいろおっしゃっておりました中で、戸建て住宅とか集合とか、不特定多数の方が集まる学校、病院、百貨店等々ありますが、その中でとりわけ、やはり先ほど重川参考人がおっしゃったように学校は大体一〇%ぐらいしかいらっしゃらない、ほとんど自宅であるということになると思います。

 そうなると、では個人の住宅については自由だ、また建築基準法の前の住宅については特に個人の判断でやるしかない。木造住宅も多いです。ただ、それが原因で、近隣とか含めて非常に大きな被害が想定されるのではないかというふうに思われます。

 この辺、個人の住宅の耐震化について、東京都の具体的な方針があればお聞かせいただきたいというふうに思います。

島田参考人 個人住宅の耐震化率という数字でお示ししますと、現在の日本全国の平均が七五%、それを十年間で九〇%に持っていこうという国の減災目標が先日出されました。私ども、この国の算出方法を当てはめて都内で計算してみますと、約八〇%でございます。

 今都内では、御存じのように鉄筋コンクリートのマンションが続々と建設されておりまして、都内の耐震化率は当分の間は向上するかな、それが一つでございます。しかしながら、都内で約二万三千ヘクタールの老朽化した木造住宅密集地域、例えば東向島とかそういったところがございます。ここをどうするかが課題でございます。

 現在、区市町村でも、二十七の区市町村で耐震診断、二十の区市町村で耐震改修を実施しております。ちょっと数字をお示ししますと、去年、十七年度で、都内全体でこういった耐震診断を受けた戸数が二千四百七十九世帯でございました。しかし、残念ながら、工事まで行った、耐震改修を行ったものは百二十四戸、五%というのが現状でございます。なかなか進んでいないというのが実態でございます。

 アンケートをとりまして、耐震住宅にすることを望まない理由というのがありますので御紹介しますと、お金がないが五〇%、それから集合住宅、借家に住んでいるので自分で決められないが二三・七%。現場の声としては、高齢化しているから、効果がわからないから、地震が来るかどうかもわからないから、こういった声が大きいと聞いております。

 東京都としては、これをどうしようかということでございますが、昨年、安い金額で信頼できる耐震改修工法を民間から公募しております。百九の応募がありまして、三十一の工法が選定されました。現在、この工法を進めていこう、普及していこうとしています。その中には、百万から百五十万ぐらいだと思うんですが、そうでなくて三十万くらいの、寝室だけを守る、安全にする耐震ベッドといった工法もございます。

 耐震化のレベルを、建物そのものを耐震化していくのか、それともレベルを考える、選択肢を広げる、こういったことも一つのこれから考えなくちゃいけない方向ではないかというふうに考えております。

下条委員 ありがとうございます。

 大変いい進め方で、結局は、こういう時期でございます、不景気でございますし、未来に予想される大地震よりも今どうやっておまんまを食うかだということで、今おっしゃった非常に低廉で、低価格でできる、休まれている部分についてやっていくというのは非常にいいことではないかと思うので、ぜひ引き続き進めていっていただきたいというふうに思います。

 次に、都市には非常に大きな高層ビルがあったり、沿岸にはいろいろな危険物を保管している施設があったり、石油タンクがあったりします。このようなところで大火災が起きた場合の対策を今からとっていくべきじゃないかということを二年前の座談会で阿部参考人がおっしゃっております。私も大変危惧しておりまして、昨年、耐震改修促進法の改正法案を出されたときに、石油タンクを含む火薬、石油等を扱う建築物の耐震はもっとしっかりやるべきではないかと。非常に被害が広がるということであるので、こういう質問をさせていただきました。

 この辺、東京都では具体的に、今申し上げた部分についてどういう対策がとられているか、お聞きしたいというふうに思います。

島田参考人 高層ビルに関してのお話が先にあったと思うんですが、残念ながら高層ビルのデータがなかなかございません。阪神・淡路とか過去の地震でございませんので、今回は被害想定は中高層住宅の定性的な評価ということにとどめております。

 建物につきましては、やはり旧耐震ですと高層ビルといえども損傷が生じるおそれがある。それから、生活に支障が出る最大のポイントは、エレベーター、それから建物の上にある受水槽です。今、圧送方式といいましてポンプで下から圧送する方法があるんですが、水槽が上にあると揺れが大きいので、水槽が損傷して生活することができなくなる。

 それから、先ほどタンクのお話がありました。東ガスのガスタンクの例でございますが、これは設計が国のガス事業法、消防法、建築基準法などに基づいて相当しっかりしていると聞いております。また、製造した後も、高圧ガス保安法に基づいて、定期的に都並びに国の関係機関の検査を受けていると聞いています。さらに、阪神・淡路大震災でも激震地区のガスのタンクについては被害がなかった、安全であるという話は東京ガスの方から聞いております。

下条委員 ありがとうございます。

 その中で、今おっしゃった高層の旧耐の部分についても引き続きぜひ進めていただきたいと思います。

 同じ御質問をちょっと阿部参考人にお聞きしたいと思います。御意見をいただければと思います。

阿部参考人 ただいまの御質問の内容は大変重要な問題を含んでいると思います。

 高層ビルそれから石油タンクのたぐいは、非常に周期の長いゆったりとした波で共振現象を起こしますと、思わぬ災害に達することがあります。したがって、私どもは、やや長周期の地震動と呼んでおりますが、普通の地震の揺れよりももっとゆったりとした周期の長い揺れに対する対策というものも講じていく必要があるかと思います。

 まだこの辺のところは詳しい調査研究が進んでいると言えない面がございます。今後、鋭意、調査研究を進めていく必要があるかと思います。一たん大きな事故になりますと、大変大きな災害になります。石油タンク、それから高層ビル、それから橋もそうなんですね。長い橋も長い周期の振動で共振を起こしてしまいますと大きな災害になります。今後の調査研究が大事かと思っております。

下条委員 ありがとうございます。

 私も、実を言うと、民間に二十年いて、仲間があのニューヨークのトレードセンターの南の七十九階に三百人以上いまして、全員死亡しております。あの高層ビル二棟だけによってニューヨークは混乱しました。ですから、高層ビルのいろいろな災害については非常にインパクトを周りそしてかつ人間の心理に与えるということも含めまして、ぜひ今後も御研究を進めていただければというふうに思います。

 時間が迫ってまいりましたので、次に移りたいと思います。地域コミュニティーについてちょっと御質問させていただきたいと思います。

 私も、実を言うと、ロサンゼルスにずっと住んでおりまして、あの地震のとき、ノースリッジの震源地の四キロぐらい南に住んでおりました。そのときに、自分自身、実際に何が役立ったか。実際、地震がどんと来たときは、もうパニックになって、だれも人は助けてくれない。警察が来る、消防車が来るなんというのはずっと後でございます。一番最初にまず助かったのは、隣近所で日ごろからいろいろなボランティアをやっている方々に、その訓練の中で、NPO法人ですけれども、助けに来てもらったということだと思います。

 そして、実を言うと、私は今、親の近くに住んでおるんですが、実際、どこそこに避難しなさいといういろいろな指示書などというのは一回も見たことがない。こういう状態で、もしきょう晩に何か起きたときに、果たしてこの東京は機能するのかということもあると思います。

 消防士さんが来ても、そこの家におじいさん、おばあさん、あそこに足が悪い人が住んでいるなんて知らないわけです。私は、アメリカにすべて学べとは言いませんが、やはりNPO自身がもっともっと、政府が認可をもっと、実を言うと今認可している数はすごく少ないんです、これは重川先生がよく御存じだと思いますが。その部分についてもっとブラッシュアップをして、国が後押しをして、地域コミュニティーについて、実際どかんと起きた後の部分のフォローをしていくべきじゃないかと思いますが、重川先生の御意見をいただきたいと思います。

重川参考人 NPO、ボランティアが果たす役割は非常に大きいと思います。おっしゃるとおりだと思います。例えばアメリカの場合は、行政が頑張るというよりも、本当に市民あるいは企業、ボランティア、NPO、いわゆるNGOですね、それが負う役割が大きいです。

 ただ、そのときにその人たちの力を最大限発揮できるために、ふだんいろいろある規制や何かを緩和いたします。例えば運転免許証で州を越えて使えないライセンスでも、救援物資を運ぶトラックとかボランティアの車の場合には一時的にそれを許可するとか、あるいは物資を積む、積載量のトン数をふだんは規制しているものを規制緩和して、緊急なんだからもっとたくさん積んで運べるようにするとか、いわゆるそういうボランティアや民間の人たちの力を最大限生かせるように、災害時にはふだんある縛りを緩める。

 それから、特に企業についてもそうです。例えばこういう話がありました。阪神・淡路大震災のときに、ある住宅メーカーが公園の中に仮設住宅をボランティアで建ててあげますというふうな話が神戸でありました。そのときに、受ける行政の側はやはり都市公園の管理上そういうものをすぐに認めるわけにはいかないということで、それはうまくいかなかったんですけれども、そうすれば例えば行政がやらなきゃいけない仮設住宅の建設というのは民間の力によって大分助かったわけです。

 そういう意味で、企業、ボランティア、いわゆる民間パワーの力を生かすために、ある意味で行政はふだんの規制緩和をしてその人たちが動きやすいようにしてあげるということが非常に重要なのではないか。

 アメリカの場合は、よく御存じでいらっしゃると思うんですが、非常にそこら辺をうまく、彼らの力を引き出すということをやっていらっしゃるなというふうに思っております。

下条委員 ありがとうございました。

 ぜひ、この問題はいつか自分にかかってくる問題でございますので、諸先生方含めて、きょう大変いい御意見をいただきましたので、さらにブラッシュアップをお願いしたいと思います。

 時間が参りましたので終了いたします。ありがとうございました。

大野委員長 理事の協議により、質疑順序を変更いたします。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、三人の参考人の皆さん、貴重なお時間を割いて御出席いただいて御意見をいただきましたこと、ありがとうございます、感謝を申し上げます。本当に限られた時間ですので、質問をしていきたいと思うんですが、最初に阿部先生にお伺いをしたいと思います。

 先生は最後に、地震の予知は大変困難であるということを強調されました。どこで起きてもおかしくない、これがまさに今科学者の間でも共通の認識にされているのかと思います。ただ、そういう認識に至るまでに、さまざまな震災があり、かつ犠牲があったわけであります。

 先生は、研究者の持っている地震学上の常識と一般の国民との間にギャップがある、こういう言い方をされております。〇三年十二月の日本災害情報学会での講演の中でも、例えば阪神・淡路大震災、関西には大地震は起きない、国民の中にはそういう思いがあって、研究者はそうは思っていないんだけれどもギャップがあった、そういうことをおっしゃっています。

 ただ、では、その後の新潟はどうだったのか、福岡はどうだったのか。福岡に関しては、先生自身が被害を受けにくい地域であるということを述べられていたということもあったかと思うんですね。

 私が伺いたいのは、やはり国民や行政に対する心構えとしては、どこでも起こり得るんだ、そのための対策が必要だというのは当然のことだと思います。ただ、では研究者は、言ってしまえば予知は要らないのか、突き詰めていくとそうなってしまうわけですよね。

 では、どういう情報を本来発信すべきだろうか。宮城県沖地震が九九%、東海地震は八六%という、発生確率は今数字として細かく挙げられております。私たちはそういう中でそれをどう受けとめ、対策に生かすべきなのか、そして科学者がどういう情報を出していくべきなのか、こうしたことについて先生の考えをお伺いしたいと思います。

阿部参考人 ただいまの御指摘、よくお調べになったと思います。

 阪神・淡路大震災のときに私どもが耳にしたのは、関西には大地震は起こらないという、関西の人がお持ちになっていた誤解と、私どもは関西でも大地震は起こると思っていた知識とのギャップに大変驚いたわけであります。国会でも、その点、議員の方々も驚かれ、国が持っている地震の正しい情報が国民に伝わっていないという反省から、地震調査研究推進本部というのができたわけであります。そこを通しまして地震の正しい知識を一般の国民に広報して、その正しい知識を持って地震に備えていただきたいと願っているわけであります。

 その情報の一つとして、揺れやすさを確率であらわして地図にしたものをただいまお配りしている最中でございます。そのような情報をもとに、自分の住んでいる場所の地震の危険性をよく知っていただきたい。新潟県中越地震も福岡県西方沖地震も最近起きましたが、ここは決して地震の発生確率の高いところではありませんでした。発生確率というのは、数字の大小によって地震が早く起こる、遅く起こるというのを示すものではありません。起きやすいか起きにくいかを示しているだけで、日本は至るところ地震が起き、どこで起きてもおかしくないという発想から防災に努めていくべきではないかと考えております。

 以上です。

高橋委員 その上で、この間の予知の研究をどう防災対策に生かしていくべきなのかということを、もう一言お願いいたします。

阿部参考人 地震予知というのは、現在は困難であるという状況ですが、やはり私はロマンのある研究分野だと思います。わからないことにチャレンジするというのは科学者の使命であります。それを通して、いろんな地震の知識を得ます。その地震の知識をやはり国民に伝えるという努力も阪神・淡路大震災は教えてくれたのではないかと思います。地震の知識は学者だけのものではなく、国民も共有すべきであると考え、私ども研究者もそのように努力する必要があると考えております。

高橋委員 ありがとうございます。

 予知の問題を何か費用対効果で単純に割り切って話す議論もよくありますけれども、先生がおっしゃられたように、やはり国民に共有していただくという形で生かしていくことが大事だと思いますし、今後の研究をぜひ国民に生かされるような形で続けていただきたいと思っております。

 次に、被害想定の問題なのでありますけれども、私は、首都直下の被害想定が中央防災会議により発表されたときに、やはり皆さんも大変ショックを受けたかと思うんですが、非常に大きなショックを受けました。死者一万一千人という数字が、実はそれで済むだろうかというのを率直に思いましたし、やはり、帰宅難民が非常に多いということですとか都市の構造ということから見ても、これは確かにあるだろうなと思いました。

 問題は、その被害の大きさに、国民がどう思うかということを非常に考えさせられたんです。つまり、これほど被害が大きいんだったら何をやっても意味がないんじゃないかというふうに国民が思いかねないということなんですね。自分だけ頑張っても隣の家が耐震じゃなかったらどうしようとか、うちでなくて地下鉄の中にいたらどうしようとか、いろんな不安が広がってくるわけです。ですから、想定は細かくできた、ではそれをどう国民が生かすかということが次の課題になると思うんですね。

 それで、島田さんにお伺いしますけれども、東京都が、中央防災会議が発表した被害想定に加えて、独自に修正をしたり、都としての被害想定を策定しておりますけれども、その特徴について、まず簡単に教えていただけますか。

島田参考人 今回の国の中央防災会議を受けまして、先ほど申しましたが、一つは、マグニチュード六クラスをやりました。このマグニチュード六クラスが過去三十年間で十六回発生している。東京は、企業人口の集積で、中規模地震でも大きな被害が出ると予測されています。かつ、六・九と七・三を比較すると、先にやる優先順位がつけられるといったことがあるかと思います。いろんな対策がありますが、財源の問題もありますし、いろんな状況もございますから、順番をつけてやれるといったことで六・九をやった。

 二つ目が、国のは一キロメッシュでやっておりますが、細かい二百五十メートルメッシュで、その地域がどうなるのか、これは区市町村並びに都民にもどんどん公開していきたいと思っております。

 大体そんなところが特徴でございます。

高橋委員 ありがとうございます。

 非常に大きな地震の前に、一定、中規模などの地震も想定されるわけですから、そうやって順位をつけて想定されたりメッシュを細かくされたということは、非常に大事なことかなと思って伺いました。

 そこで、その想定をどう生かすかという話なんです。

 私、昨年、宮崎に、これは地震ではないんですが、水害の調査で行ったときに、避難所である集会所にハザードマップが展示してありまして、そのとき被害を受けた地域とハザードマップの浸水想定地域がぴったり重なっていたんです。まさにぴたり賞だというのはいいんですが、何の役にも立たなかったということなんですね。当たっていても、それが住民に周知をされていなければ意味がないわけですし、使いこなさなければいけないということで、それを本当にどう生かすのか。逆に言うと、それが先行すると恐怖心だけをあおっていく、そういうこともあるわけですよね。

 そういう点で、まず何をすべきかということ。これは島田さんと重川さんにそれぞれ伺いたいと思うんです。島田さんには、都民に対して被害の想定をどう浸透させていくのか、あるいは都民はどう受けとめたのかということも含めてお話しいただきたいと思います。重川さんには、やはり住民の立場として何が必要なのかということをぜひ伺いたいと思います。

島田参考人 私ども、被害想定をつくりました。先ほど申し上げましたが、これをベースにいたしまして、地域防災計画をきちんともっと現実的なものにしていこうというふうに考えております。

 さらに、区市町村それから住民にどうやって浸透させていくか、そういったことが次の課題かと思っております。

重川参考人 今の御質問、都民として何をすべきかというのは非常に重要なことだと思います。

 それで、実際に、防災対策というのは三つ種類があります。

 一つ目は、被害を出さないための対策です。地震はとめられませんが、被害を出さないために、例えば建物の耐震性を図るとか、河川の堤防を強くするとかという事前の備えです。それから二つ目が、被害が出るのはしようがないんだけれどもそれをいかに軽くするかという対策です。例えば拠点病院を整備するとか、防災訓練をするとか、防災無線を整備するといったようなことです。そして三つ目が、実際に災害が起きたとき我々都民は一体何をすればいいんだろうか。

 この三つなんですけれども、実は最初の二つは事前対策です。地震が起きた後に訓練しても間に合いませんし、地震が起きた後に家具の固定をしても何の役にも立ちません。

 三つ目の、実際に災害が起きたときに我々何ができるかというのは、最初の二つをどれだけしっかりやっているかで決まります。つまり、防災というのは日ごろの備えが重要だとよく言われるんですけれども、災害が起きたとき我々都民がどう動けるか、そのためには、まさにふだん何をやっているかということが非常に重要です。

 今、東京都や区が進めていらっしゃることを中心に、いろいろな場所でいろいろなスタイルの訓練や研修が広がりつつあります。学校、企業、地域、あるいは趣味のサークル、そういったところを通じながら、あらゆる場所で、行政はどんどん情報を出していただきたいと思います。

 今までは物をつくる、備蓄をするということにお金を使うのが行政の防災対策の中心のように思われてきましたけれども、これからは都民の訓練とか教育とか今まで余り予算を使ってこなかった分野にこそむしろ集中的に予算を使う、それが非常に重要だと思います。

 ただ、残念ながら、今、行政の、区役所とか東京都で何が起こっているかというと、そういう教育訓練用のパンフレットや何かに使える予算はどんどん削減されています。そして、むしろ、拠点をつくるとか毛布を何枚備蓄したのかとか、そういうところにお金が費やされていて、肝心の子供向けの防災教材であったり、地域コミュニティーで教育、訓練をやりたいというときに講師に払うお金がないとか。そういうのは実は知れているんです、非常に少ない予算で済むんですけれども、そちらはどんどん削減されている。

 私は、むしろ逆で、限られた予算であるのであれば、今おっしゃったように、都民を教育するとか子供にいろいろなことを伝えるといったようなことに予算を優先的に割いていただきたいと切に思っております。

 以上でございます。

高橋委員 予算のお話がありました。これは、行政、自治体においても、本当は余り目立たない、お金をかけない分野にこそお金をかけてほしいというお話だったと思いますし、国としてもやはりそういうところにこそ自治体を支援していくということをぜひ求めていきたいなというふうに思って聞いておりました。

 さて、重川先生は、先ほど神戸の十年たってのアンケートなども紹介をされておりましたけれども、阪神・淡路大震災四年半後の神戸新聞で、先生は、被害認定のあり方について、被害認定とはだれが被災者かという問題を解くこと、だれが被災者かは時間とともに変わる、どの時期にどの物差しを使うかを考え直さなければ、少なくとも建物の被害を示す罹災証明だけで五年間も通してしまうのはおかしい、こういうことをおっしゃっていますね。

 このことは、この間もいろいろなところでお話をされておりますけれども、やはり私も被災者支援のあり方として、時間の経過とともに変化する支援というのを本当に大事にしていかなければならないし、それを自治体の判断で支援できるようにバックアップする体制も大事ではないかというふうに思っております。

 被災者生活支援法も、四年後の見直しといって、今ちょうど折り返し地点に参りましたけれども、その点で一言お伺いしたいと思います。

重川参考人 被災者支援の問題というのは、実は御質問のとおり非常に重要なことです。

 御承知のとおり、支援金の額を上げることが被災者のためになるという御努力のもとに、まあそれだけではなく、いろいろな条件によって被災者に使いやすい制度になってきております。

 ただ一方、三百万円をもらった被災者の方たちが一体どうしているか。どうやってこのお金を使えばいいんだろうと皆さん大変苦労されています。本当にそのお金が被災者の暮らしの再建にとってプラスになっているのか。だれでもお金を上げましょうと言われればうれしいです。私だって、いただければありがたいと思うと思います。ただ、それが、さっき申し上げましたように、いろいろなものを失いながらみんなでやっていかなきゃいけない被災者の自立再建にプラスになっているかというと、実は、プラスになっている反面、逆のものもたくさんあります。

 具体的に言いますと、全壊、半壊、一部損壊というたったの三つの分け方によって、三百万円もらえる人と全くもらえない人の区別が出てきます。

 声の大きい被災者ではなく、サイレントマジョリティーと言いますけれども、何も言わないけれども黙って頑張っているといういわゆる中間層、我々のような普通のサラリーマンです。一番子供にお金がかかり、一番大変な世代の人たちが何も公的な支援がもらえずに、でも自助努力で頑張り、そして経済や産業の復興を支えています。

 もちろん、社会的な弱者への支援というのも非常に重要なんですが、私は、日本という国が首都直下によって沈没しないためには、本当にそれを支えてくれている、原動力となっている働き盛りの階層の人たちの住まいの再建、あるいは子供たちの教育の継続、そういうものを公的に支えていくようなシステムがもっと重要になってくると思います。

 今まではたまたま、失礼な言い方ですが、地方の都市で、まあ神戸の場合はそうではないですけれども、首都直下に比べれば限られた被害の大きさであったために、今の支援システムで何とかいった。でも、首都直下の問題を考えたときに、それとは違う階層の人たちを公的に支援しない限り、経済産業復興というのは非常に難しいと思っております。

 新たな、そういうサイレントマジョリティーの方たちの支援策のあり方というのを早急に、先生方のお知恵を拝借しながら、整えていっていただければ大変ありがたいと思っております。

 以上でございます。

高橋委員 ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます。

 きょうは、三人の先生方、本当にどうもありがとうございました。

大野委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 総務委員会の採決と重なりまして順番を入れかえていただきまして、委員長並びに高橋委員、また委員の皆さんに感謝を申し上げる次第であります。

 地震は突然やってくるもので、先ほどから三人の参考人の皆様がおっしゃっておられたわけでありますけれども、まさに今、インドネシアのジャワ島の中部で大変な地震が起こって、六千名を上回る犠牲者が出ておりまして、大変な負傷者の皆さんが出ておられるわけでありますけれども、亡くなられた方に弔意をあらわしたいと思いますし、またお見舞いを申し上げたいと思います。

 地震はいつ起こるかわからないという観点で、非常に重要な、対策を十分講じていかなければならない、このように思う次第であります。

 私、選挙区が大阪でございまして、あの阪神・淡路大震災のときにも大阪におりまして、一九九五年の一月の早朝でありましたけれども、大変な地震が起こって大阪でも大変揺れました。私は当時マンションに住んでおりましたけれども、地震が起こって、ドアがあかなくなると大変ですから、すぐにドアをあけて外に出ました。早朝でございましたのでまだ真っ暗でしたけれども、何げなく空を見ますと、お月さんが真っ黄色だったのを覚えておるんです。鮮明に覚えております。そういう意味では、前兆現象というのはやはりあるのかなというようにも、私自身が体験しましたので、思ったりいたしておるわけであります。

 その翌日に現場に入りまして悲惨な状況を視察いたしまして、三宮の駅前から見た姿は、まさに映画の中に出てくるような世界があったわけでございます。大変な方がお亡くなりになったわけでありますけれども、このような都市型の大震災、阪神・淡路大震災などは首都直下地震に大変大きな教訓をもたらしておるというように思うわけでございます。

 先ほどからお伺いをいたしておりましたが、重川参考人は、先ほど高橋委員の質問で都民としてどういうふうに対応するべきなのかという問いがありましたけれども、例えば事前の備えだとか、それぞれの拠点を整備しなけりゃいかぬとか、子供の教育が大事だ、こういうふうにおっしゃっておられました。一つは、一般の家庭で、大きな震災が起こったときに、特に阪神・淡路大震災などを教訓にした場合に、まずどういうものを備え置いておくべきなのかということを端的に教えていただければと思っておりますが、よろしくお願いいたします。

重川参考人 個人の備えということで、非常に重要な部分だと思います。関東大震災以降、日本では災害後に飢え死にをした人というのはいません。ということは、首都直下地震であってもそういう事態は恐らく起こらないと思います。では、何を最低限備えておくべきか。個人的に備えておかなければ救援物資や何かでは来ないもの、しかも自分の命にかかわるものを最優先に考えるべきだと思っています。

 例えば持病を持っていらっしゃる方が毎日飲まなければいけない薬、あるいは眼鏡とか入れ歯とか。本当に冗談のような話なんですけれども、これがなくて、避難所に行って物があっても何も食べられなかったというお話もあります。

 それともう一つ今重要になっているのは情報です。携帯電話というのはすべての人にとって命綱なんですけれども、被災地で皆さんがお困りになるのは充電ができないということです。携帯電話のバッテリー、これを持っておかれるということ。それともう一つは、いざというときに家族同士がどういう行動をするのかということを事前に決めて確認をしておく。たとえ会えなくても、家族はみんなここに集合するんだ、あるいは、たとえ携帯がつながらなくもここにまずみんなで情報連絡を入れるんだ、そのことを認識しておくということと、それから、これがなければ自分の生き死ににかかわるといったようなものは個人の責任で備えておく。

 あとは、生きていさえいれば何とかなるというふうに思っております。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 そうですね。それぞれの状況がございますので、これを準備しなさいというようになかなかいかないんだろうと思いますが、しかし、いずれにしても、そういう広報というんですか、この程度は最低持っておった方がいいでしょうというようなものは、もう既に東京都でもされておられると思いますが、必要なんだろうと思います。

 それで、首都直下地震でありますけれども、先ほどから出ていると思いますが、首都圏というのは明らかに他の地域と違うわけでございます。これは、行政の中枢があり、また政治の中枢があり、もっと言うと経済の中枢があるわけで、先ほど申し上げました阪神・淡路大震災が起こったときも大変な犠牲者が出ました。人口が密集しているところでございますのでいろいろな問題が出ましたが、それをはるかに上回るような、表面的な問題以外に、大きなことになるだろう。日本全体が麻痺をしてしまうというようなことになりかねないという意味で大変重要な地震であります。

 このような観点で首都中枢機能を継続させていかなければならない、その努力をしていかなきゃいかぬ、こういうことが大事であります。中枢機能がダメージを受けますと、日本全体が大きくダメージを受けるという観点で非常に重要だ。

 そこで、島田参考人に、東京都の方はそれを想定していろいろなことをなさっているわけでありますけれども、先ほどもお話を聞いておりましたら、いろいろなことがあって、東京都の震災対策の今後の方向のところで拝見をいたしますと、優先順位をつけた予防対策、時系列の応急復旧対策、減災目標の検討ということもおっしゃったわけでありますけれども、こういう優先順位という観点で都が今しておられるようなことを、ごくポイントを挙げてお話しいただきたいと思います。

島田参考人 優先順位ということで一つ例を挙げますと、先ほど申しました木造密集地域というのがございます。そこは避難路となる道路が狭いということが昔からございます。そこの道路の周りはみんな木造住宅だ、それが倒れたらどうするんだという話がございます。消防車も走れない、そういったこともございますから、まず、そこの道路沿いの建物をまず耐震化しようではないかというふうに、木造密集地域の避難路の両わきを重点的にやっていこうというのが一つの優先的な対策の例かと思います。

 それから、ちょっと話が飛ぶんですが、今度は逆に応急復旧対策でございまして、電気、通信、いろいろなインフラがとまったり、電気がとまったり、通信が途絶したり。では、どこを先にやろうかと。私さっき国会議事堂へ来て、この国会議事堂の耐震化はちゃんとしているんだろうなというふうに思ったんですが、この周りは電気なり通信なり早目に復旧しないといけないんじゃないか、そういう優先順位をつけた復旧対策が必要なのではないかなと私は思いました。

谷口(隆)委員 そこで一つのポイントといいますか基準になるのは、私が先ほども申し上げました、東京都というのは行政の中心であり、政治の中心であり、経済の中心であるというようなことで、今どんどん首都圏一極集中というような状況がございます。私の地元大阪は、従来は経済の非常に大きな割合を持った地域でありましたけれども、だんだん大阪を本社とする企業が東京へ本社を移し、行政もやはりどんどん東京に東京にというような状況があるわけでございます。

 一方では、それが非常に、大地震でも起こってしまうと大変大きなダメージを受ける、先ほど申し上げたとおりであります。そういう意味では、私は、我が国の国土形成上、やはりあらゆる意味でのバックアップの体制を事前につくっていかなければならないのではないか。例えば経済が今東京に集中しておりますけれども、これを一定程度は大阪に持っていくとか、行政も大阪に一定程度は持っていくというようなことで、大変なダメージを受けても日本全体がポシャってしまうことのないような国づくりをしていかなければならない、このように思うわけでありますが、こういうリスクの分散という観点で阿部参考人にお伺いをいたしたいと思います。

阿部参考人 首都地域が被災した場合に、政治、経済の中心であるダメージは大変大きく、それは東京から日本全国へ波及していくということが考えられますし、それから日本の経済の流れがとまりますと国際的にもその影響が波及していくという意味で大変重要な場所であります。

 たまたま今ここで見たデータがありますけれども、例えばデータのバックアップという面から見ますと、中央省庁のデータは、国の調査ですと八割、八〇%という高い割合でバックアップ体制をとっているわけであります。ところが、そのバックアップしたデータは、全体の七割が同じ建物の中に保管してある。すなわち、その建物が壊れた場合には全部のデータを失ってしまう。そういう意味では、やはり離れた場所にバックアップ体制をとるということは大変大事だと思います。

 それから経済、恐らく国よりも経済関係の方が進んでいると思います。銀行とかライフライン関係のところも、バックアップ体制を東京以外の場所に求めているというふうに聞いています。これをどんどん進めていくべきではないかと思います。事業継続計画というのがありますが、災害に遭っても事業を継続できる、政治も行政も継続できるという態勢をとるためには、やはりバックアップ体制というのは大変大事であり、同じ場所でバックアップをとるというのはよくない方法だと思います。

谷口(隆)委員 私も阿部参考人と全く同じ意見でありまして、例えば、東京で大きな地震があって避難をされた、避難をしたときにキャッシュカードだけを持って外に出たんだけれども、金融機関のシステムが完全にポシャってだめになっているといったような場合はもう出金もできない、お金が出ない。どういう状態が想定されるのか、いろいろな状況が想定されるのだろうと思います。アメリカでさえ、あの大洪水のときに大きな混乱が起こって、物をとって逃げるような人たちが出てきたりするわけで、生きるためにはそういうようなことも予想されるわけであります。

 いずれにいたしましても、そういうシステムがどんどん進んでおります今の状況をよく考えますと、確かに、阿部参考人のおっしゃるように、金融機関などは東京と大阪にツーセンターシステムをとっておるわけであります。民間はそういうところがどんどん進んでおりますけれども、しかし、一方で、行政の方はどうも、聞いておりますと、すべてがすべてそうではないと思いますが、東京に一つのシステムの中心があって、非常に近いところにまたそのバックアップがあるというようなこともあるようでございます。

 ですから、そういう思想そのものを、日本がこれからどうあるべきなのかという全体の考え方をまず整理していかないとだめなのではないか。そういう意味では、中央防災会議で、このような国全体のバックアップ体制について、より一層論じる必要があるのではないかというように思うわけでございます。

 それで、先日、当委員会で委員長を中心にして視察に行ってまいりまして、その視察は、電力、ガス、また道路状況、民間のところにも行ってまいりました。丸の内の地区、大丸有地区というんですか、大手町、丸の内、有楽町、この地域は非常に企業が集中している。聞きますと、連結売上高がGDPの約二〇%程度という企業が集まっている。百二兆円と言っておりましたけれども。昼間人口が二十四万人強で、上場企業の約一〇%程度が集中している地区である。ここは割と耐震性が強くて立派なビルが建っておりますから、マグニチュード七クラスの直下地震が発生してもそれほど大したことはない。

 しかし、ここの問題は帰宅困難者が数十万人あふれるだろうということが言われておりまして、この帰宅困難者がたくさんあふれるということの前提で、東京駅周辺防災隣組というのをつくりまして、帰宅困難者の誘導訓練をしておられるようでございます。

 阪神・淡路のときにも家に帰れないという方がおられたわけでありますけれども、このような地域ごとの隣組、防災の隣組みたいなものは、東京駅の周辺ではできておりますけれども、今後、都において、こういうような地域防災体制、いろいろなことを考えておられるんだろうと思いますが、このような試みについてどのようにお考えで、今現在はどのようになさっているのか、お聞きいたしたいと思います。

島田参考人 丸の内の東京駅前の大手町、大丸有ですか、丸の内、有楽町。協議会だと思うのですが、実は、私もあそこの国際フォーラムに出向したことがありまして、今でもいろいろなおつき合いをさせていただいております。

 帰宅困難者対策から日常の防災対策までいろいろなことをされておりますが、同じような取り組みは例えばお隣の銀座地区でもございまして、昨年は、「安全、安心を贈る街、災害に強い街づくり「銀座」」といたしまして、総務省の消防庁長官賞などをもらっているという事情がございます。それから、もうちょっと新宿の方へ行きますと、牛込などは、企業だとか大学だとか町内会が一緒になっているんですが、そういったところが防災をキーワードにいたしまして協定なりを結びまして、いろいろな活動をしております。

 地元、企業、町内会、商店街、そういったものをどんどん東京に広げていくということが、今回の首都直下地震の対策の一つの大きな柱になってこようかと思っております。

 それからもう一つ、帰宅困難者対策についてお話がございました。

 私も、新宿の駅で、ここで地震が起きたらどうなるのかなと思って、まずやることは、みんな携帯電話を持っておりますので、携帯電話を一度にピッと鳴らしてしまうだろう。何をやるかといえば、家族と安否確認ができるかどうか、これが大きな問題じゃないかと思っております。家族と安否確認ができればとりあえず落ちつくかな、そこから次の行動をどうするかといったことですね。

 逆に言いますと、きょうは国の先生方がいらっしゃいますので、携帯電話が、今メールの災害情報伝言ダイヤルみたいなのがありますが、NTTドコモでは四千万ボックス用意されていると思いますが、それが本当に、一度に鳴らしたときに機能するものなのかどうか。千葉県北西部地震でさえ有線の電話は全然だめで、メールが三十分おくれたというふうに聞いております。そこが一番最初の帰宅困難のスタートになるのかなと。

 いろいろあるんですが、そこを東京の場合きちんとしていかないと、パニック、混乱は防げないのではないかなというふうに考えております。

谷口(隆)委員 首都圏の直下地震の場合には、帰宅困難者の問題も、今までいろいろ質問された委員の皆さんの考えておられるような問題もたくさんあるわけで、都も国も一体となってここはやっていかなければなりません。六・九だとか七・三だとか、いろいろ想定をした対応を講じていただいておるわけでありますけれども、先ほど阿部参考人のおっしゃった、まさにいつ起こるかというのは、予兆はわからないというようなことでありますので、事前の対策が非常に重要だというように思うわけでございます。

 それで、ちょっと首都直下型地震から離れまして、私の選挙区は先ほども申し上げました大阪で、大阪の場合は、東南海・南海地震について非常に対策を講じております。あそこで起こった地震は、津波が発生し、大阪の淀川を逆流していくというようなことが想定されているわけです。

 それで、淀川という河川は、大都会の中でも最も大きな河川で流域人口が物すごく多いわけで、当時の建設省が、淀川の左岸が決壊しますと五十兆円の経済的な損失だ、右岸が二十兆円の損失だと。東京の今の経済の損失が百十二兆円ですか、おっしゃっていましたけれども、この基礎はどういう算定根拠なのかわかりませんけれども、大阪でも淀川の左岸が決壊しただけで五十兆円の損失だ、このように言われているんですね。

 それで、そんな場合に、もう逃げるところがないんですよ、大阪は全部平野ですから。そうすると、公的施設に収容できませんから、民間に入らなきゃいかぬ。民間に入るといっても、国民保護法制の場合では国の方から開放してくれと言ったときにはやらなきゃなりませんけれども、今は民間がだめだと言えば受け入れられないというようなことがあって、やはり現実の問題としてこういうことも考えていかなきゃいかぬのだろうというように思うわけでございます。

 東京都においても、余り津波の問題は大したことないということですけれども、ゼロメートル地帯があって、破堤した場合にそれがどうなるかというような問題もあるんだろうと思います。もう時間が参りましたけれども、このような問題について阿部参考人に、短くて結構でございますが、お考えをお伺いいたしたいと思います。

阿部参考人 確かに、東南海・南海地震の場合には津波対策が大変大事だと思います。十メートル、場所によっては二十メートルを超える津波が発生いたします。ですが、首都直下地震の場合は、最初に申しましたように最大でも五十センチメートル以下であろうと考えております。

 淀川の例も出されましたし、東京のゼロメートル地帯も出されました。津波対策の一つとして、万が一堤防が決壊した場合とか、そういうのに備えて、避難ビルというものをあらかじめ考えておいたらどうだろうかというのが私の考えでございます。それで、津波でもう逃げる間もない場合には、避難ビルというものをあらかじめ指定しておいて、そこの三階以上の高さへ逃げ込む。堤防が決壊した場合にも、やはり避難ビルというものをあらかじめ指定しておいて、それを活用するということも一つの考えではないかと思っております。

谷口(隆)委員 まさにおっしゃるとおりで、私も、事前に民間に開放していただくような避難ビルを指定しておいて、いざというときにはそれを開放していただくというようなことが、これは事前にぜひやっておかなきゃならないことだというように思っておるわけでございます。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

大野委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 三人の参考人の方々、貴重な御意見を披瀝していただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、阿部参考人からお聞きしますが、私は宮城県の気仙沼出身でございまして、宮城県沖地震についてこれまでずっと議論をこの場で行ってきておるんですが、きょうの意見陳述を聞いて、それから講演の議事録を読ませていただいて、これまでは地震予知に力を入れてきたというふうに思います。この四十年間、いかにして早く、地震が起こったことに対応するかという形で進んできたというふうに私は思っています。

 そのための技術開発等も含めて多くの投資がなされてきたという今日までの経過であって、十年前の阪神・淡路大震災以降、その方向が大きく変わりつつあるというふうに私は思うんです。先ほどの意見陳述においても、予知できるのは現段階では東海地震くらいなものだ、あそこは観測体制を陸地にしくことができるという条件面での優位性から、今日まで東海地震に対する予知ということをずっと念頭に置いてこられたというふうに思うんですが、先ほどもずっとおっしゃっておられましたけれども、この今日までの流れをここに来て大きく防災という方向に転換していかなければならない。

 一定、中央防災会議を中心としてそういう方向に進んでいるというふうに思うんですが、これまでの一連の流れとこれからの流れというものをどうとらえているのか、お聞きしておきたいというふうに思います。

阿部参考人 確かに、地震予知研究は国の予算をいただいてもう四十年近く進めてきました。現在でも進められております。四十年にわたって、では何を研究してきたんだという厳しい声も聞かれました。その結果出た答えが現状では地震予知は困難と言わざるを得ないということだったわけですが、その投資というのは決して無駄ではなかったと思います。

 地震予知の最初のころは、前兆現象をつかまえれば予知なんて簡単にできるんじゃないかと思って始めたわけですが、観測体制を強化し、国の予算を使いながら研究を進め、だんだん精度を上げてくるにつれて、地震の前兆現象というのは単純なものではないということがわかってきました。ある場合には前兆が起こることもあるし、ある場合には起こらないこともあるという、地震の性質が次第に明らかになってきたんですね。

 今後もそのような研究はどんどん進めていった方がよろしいと私は思います。先ほど述べましたけれども、地震予知研究というのはやはり学者のロマンでありますし、その研究を今後も進めて、その成果を国民に還元していくのも私どもの役割ではないかと考えております。

菅野委員 基礎的研究というのは私は必要だというふうに思うんですが、今の予知連の委員もなさっておられますから、予知連の中でどういう議論がなされるのかというのも御承知だというふうに思うんですけれども、やはり基礎的研究分野というものに限定していって、そしてデータ収集を徹底していくという方向に方向転換して、そして防災に国としても力を入れるべきだというふうに私は今日思っているんですけれども、その考え方について再度お聞きしておきたいと思います。

阿部参考人 基礎研究と防災は一体だと思います。防災だけでは片落ちだと思いますね。基礎研究と防災は車の両輪みたいなものですから、その基礎研究の上に立った防災というのが大事だと考えております。

菅野委員 九九%の確率で宮城県沖地震が起こるということが、県民あるいは地域の人たちがずっと防災意識をそれ以降持つようになったということで、日本海溝・千島海溝型地震に関する特別措置法ができて以来、地域は防災体制に取り組むようになっております。そういう意味での全体の果たす役割というのは大きかったのではないかというふうに思っております。しっかりとこれからも取り組んでいきたいと思います。

 きょうは首都直下型地震ということで議論しているんですが、重川参考人にお伺いしたいんです。

 まず、我が身を守るためには我が家の防災体制をしっかりと行っていかなければならないんだ、子供は年間通して九割自分のうちにいるという先ほどのお話がございました。それと同時に、地域のコミュニティーをどうつくっていくのか、これも大事なことだというふうに言われていたんですけれども、この二つというのは非常に私は困難なことだと。

 後から島田参考人にもお聞きしますけれども、大都市において、実際に木造住宅を耐震構造に変えていくということは本当に大きな仕事だというふうに思っています。それから、地域コミュニティーが壊されたと言っていいと思うんですが、それを再構築していくためにはよほどのリーダーシップを発揮していかないとできていかないというふうに思うんです。耐震構造の強化と地域コミュニティーをつくっていくことに対して、先生の御見識、考え方をお聞きしたいと思います。

重川参考人 おっしゃるとおり、住宅の耐震化というのは非常に難しいです。

 では人が死ぬような壊れ方を首都圏の住宅がするかというと、まず、新潟県中越地震や阪神・淡路大震災にあった、人が亡くなったような壊れ方をした住宅とは基本的に構造が違います。あれは屋根が非常に重いつくりの建物でした。しかも、人が亡くなった建物の壊れ方を見ると共通していまして、総破壊という壊れ方です。つまり、二階建ての一階部分がぺちゃんこになって、まさにゴジラが踏みつぶしたような壊れ方をした住まいでしか人は亡くなっていません。

 ですから、そういう意味で、首都圏に建っている住宅がそういう壊れ方をするかというと、私は人が亡くなるような壊れ方をするケースは予想以上に少ないと思っています。

 もう一つは、耐震対策だけではなくて、今住宅の安全というのはいろいろな面で注目されています。例えばホームセキュリティー、それから高齢者のためのバリアフリーの住宅。そういうものを含めて、耐震だけではなくて、やはり安全な住まいというのは我々にとって非常にステータスのある重要なことなんだということが、今まで見過ごされてきたことなんですけれども、快適な住まい、安全な住まい、年をとっても安心できる住まい、犯罪に対しても強い住まい、その中の一つに防災に対しても強い住まいという観点を入れていく。これは、住宅メーカーさんとかいろいろな民間の競争の中で、安全というキーワードで住まいを売っていくということを私は進めていけるのではないかと思っています。

 建ってしまった住宅に防災だけのために手を加えるというのは面倒くさいです。なかなか進まないです。そうではなく、そういう住宅を売るのが企業としてのステータス、そういう住宅を買うというのが賢い消費者という立場でやっていく。それから、日本の住宅の寿命は短くて、三十年たてば建てかわりますので、その建てかえのチャンス、買いかえのチャンスにそういうものを入れていくということが非常に重要だと思っています。

 それから、コミュニティーの問題につきまして、おっしゃるとおり特効薬はございません。私は、家庭の中で親がそういう姿勢を見せる、親がそういう見本を見せるということがやはり基本になっていくというふうに思っております。

 以上でございます。

菅野委員 地方都市においてはコミュニティーづくりというのはいろいろな形ででき上がっているというふうに思うんですが、大都市におけるコミュニティーをどうつくっていくかというのは、私は大きな課題なのかなというふうにとらえておりますし、先生おっしゃるように特効薬というのは本当にないのかもしれませんけれども、やはり隣に住んでいる人同士が話し合える、こういう環境というのをつくっていくというのも大きな課題なのかなというふうに思っております。

 最後になりますが、島田参考人にお聞きしたいというふうに思っています。

 先ほども議論されておりますし、意見陳述もなされておりますが、やはり大都市直下型のときに一番心配なのは木造で、木造密集地域の対策をどうしていくのかだというふうに思うんです。阪神・淡路の大震災のときも、最終的にそういう木造の密集地域から火災が発生していったという状況が存在するわけでございます。そして、先ほどの答弁の中で、そういう地域は二万三千ヘクタールも存在するんだ、そしてそこに手をつけていこうとしてもなかなか進んでいないのが実態だというお話もございました。

 そういう地域において、国もそうだと思うんですが、防災という立場から大都市における都市計画のあり方というのをしっかり私は議論していかなきゃいけないというふうに思っているんです。人が集まる地域ではそういう意味での都市計画というのは進んでいるんですが、住宅密集地域における都市計画というのはまだまだ進んでいないなと率直に思っているわけでございます。そこを防災体制の取り組みの第一番目に挙げているというふうにおっしゃっていますけれども、今後の木造密集地域における整備促進をどのような形で進めていこうとしておられるのか、その辺について再度お聞きしておきたいと思います。

島田参考人 木造密集地域の防災対策でございますが、前から木造密集地域整備計画というものをつくっておりまして、特に悪いところを重点地域に指定しております。

 そこでどうやって道路を広げて、かつ公園をつくって、火災があってもそこで焼けどまるように、また、逃げるところがあるように。ただ、私有財産権が絡みますのでなかなか進まないんですが、それを地道に、都並びに区市町村、そして地元の方々、知恵を出し合って、都市づくりという形で自分たちの土地を共有し合って耐震性の高い建物を建てる、そういったことが、少しずつではありますが進んでいるというのが現状でございます。

 それから、加えまして耐震の話でございます。先ほどお金がないんでという話で、東京都の方は安い耐震の方法を公募したということでございますが、ここに、お手元にちょっと配っていないんですが、こういうふうに用意をいたしました。(資料を示す)例えば、窓枠のところにアルミの強い窓枠をつくって、これで十分に耐震化になる。それから、壁を構造壁にする。先ほどありました、寝室のところだけシェルターにする。ここに書いてございませんが、寝るところだけ耐震ベッドにする。そういったいろいろな工法がございます。

 ですから、まちづくりプラス個人住宅、そういったことをうまくバランスよく組み合わせていってこれから取り組んでいくのが一つの大きな方向ではないかというふうに考えております。

菅野委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

大野委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 本日は、三人の参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中を当委員会に御出席いただきまして、また、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 私も、数点ではございますけれども、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、阿部参考人と重川参考人にお伺いをさせていただきたいんですが、お二人は中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会の委員として被害想定や各種の対策の立案にかかわっていらっしゃったわけでございますが、今まで公表されてきた国や東京都の首都直下地震対策で十分だというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。さらに講ずべき対策があるというふうに考えていらっしゃるのであれば、御見解をお伺いしたいというふうに思います。

阿部参考人 これで十分というのは防災にはありませんで、幾らやっても、防災というのは手間暇かかるものであります。

 私が中央防災会議の専門調査会で首都直下地震にかかわって一番感じたのは、とにかく人が多い、これを何とかしないと。人が多いと家も多いし、古い家も多いということになります。この千代田区でも、昼間の人口は八十万人になります。夜間の人口は三万人であります。七十七万人の人がこの千代田区に集まっている。こういう状況では、防災対策というのは根本からいろいろ考えていかなければいけないものだと考えております。

重川参考人 首都直下の地震対策で、繰り返しになりますが、基本になるのはやはり一人一人の住民がいざというときに何を考え、どうやってくれるかということだと思います。

 ただ、一つ、そういう場でなかなか検討されないことがあります。何かというと、先ほど来話題に出ております中枢機能をどう維持するかというときに、中枢機能というと何か漠然とした感じがするんですが、基本的には三つの要素で成り立っていると思うんです。

 一つ目は入れ物です。例えば、国会という建物や施設、国の省庁の建物や施設。建物の耐震性がよくても、じゃ、例えばこの部屋で直下の地震が起きたら一体何が起きるかというと、壁にかけてある絵が吹っ飛んできます。あるいはこの机やいすがひっくり返ります。

 その中で、二つ目の要素です。働く人、皆様ですね。議員の皆様とかあるいはスタッフの方とか、人間は動けるんだろうか。まず、御家族が安全であること、皆さん自身がけがをされていないこと、人の問題。人がどう働き続けるかということが二つ目になります。

 三つ目は、皆様のお仕事を支えるためのロジスティクスや情報です。情報のバックアップの話はありましたが、もっとつまらないもので、ファクス、コピー、パソコン、プリンター、電源。中枢という漠然としたことではなくて、こういった日常の自分たちの業務を支えている機能というのが本当にそのときに生きるのかどうなのか。

 それと、もう一つ重要なのは、皆様の休養です。食べること、寝ること、休むこと。何か事が起こると、中枢機能を支えるスタッフ、人間というのは、それこそ寝る間もなくやり続けなきゃいけない。でも、機能を維持するためには、その方たちの労働条件というのを守ってあげなきゃいけない。やはり、そういう今まで余り考えられていないことをきちんと手当てをすることによって中枢機能は継続していくんだろうなというふうに思っております。

 以上でございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 私も、箱だけではなくて、例えば病院は耐震化したけれどもそこに来る水がないとか、そうすると手術がなかなか進まないとか、やけどの手当てができないとか。箱だけはちゃんと整えるんですけれども、なかなかインフラが整っていないなというのを実感しているわけでございます。

 それから、今度は阿部参考人にお尋ねをさせていただきたいんですが、首都直下地震対策の専門調査会の出された被害想定によりますと、東京湾北部での地震が冬の夕方十八時に発生した場合に、死者が約一万一千人、建物の全壊、火災焼失棟数というのが約八十五万棟、経済被害は最大で約百十二兆円、こういう甚大な被害をもたらして、帰宅困難者が約六百五十万人、避難者は最大で約七百万人とされておるわけでございます。

 しかし、ここで想定されている被害というのは定量評価による直接被害や間接被害であって、長周期の地震動によります超高層ビルの被災ですとか、鉄道事故による被害ですとか、大規模施設でのパニック被害、こういう定量評価することが非常に困難であるものは被害想定に含まれないわけでございます。これらも含めると被害はさらに大幅に拡大するのではないかなというふうに思われますし、新たに対策を講じなければならないことも出てくるのではないかなというふうに思うわけでございます。

 首都直下地震の切迫性が言われている中で、首都直下地震に適切に対応するためにも、これらの被害についても早急に被害想定を行って対策を検討することが必要なのではないかなというふうに思うわけでございますが、御見解をお伺いしたいというふうに思います。

阿部参考人 大変重要な指摘だと思います。数字にあらわせるものは数字であらわしてきたわけですが、数字であらわせない被害というものも考えております。

 報告書には定性的な被害というものがあります。先ほど出ましたような石油コンビナートの被害とか、それから鉄道事故ですね。この鉄道事故も、たまたま運悪く満員の列車が走って、それが被害を受ければ大変な数に上るわけですが、走っていなければ被害はゼロになる、これをどうするか。それから、治安が悪化した場合、これにどう対応するか。治安の悪化というのは数字にはあらわせません。

 このような定性的な被害にも報告書は言及しておりますので、それを参考にいろいろ対策を講じていただきたいと思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 次に島田参考人にお伺いさせていただきたいんですが、今週の月曜日に、首都直下地震対策に関する実情調査ということのために都内の視察をさせていただいたわけでございます。

 その資料によりますと、大手町ですとか丸の内、有楽町、こういう地区の防災の町づくりの取り組みの中で、三菱地所さんが非常食十三万食を備蓄しているということでございました。また、その切りかえに年間一千万円もかけている、一千万以上のお金を費やしているわけでございます。

 この帰宅困難者対策に関して、地方公共団体と企業、こういうことの協力のあり方と協力企業への助成について、どのように考えられていらっしゃいますでしょうか。

島田参考人 先ほどのお話と重複するところがありますが、震災対策予防条例の中で企業の責務を明記いたしまして、そこに働く従業員、顧客の安全を確保しなさいという話がございます。防災計画を出させて、やはりその中に備蓄をしなさいということも入ってございます。一つはその中で考えております。もちろん、三菱地所の方は、それをはるかに超えた、帰宅困難者まで含めた対策をしていただいているということでありますが、そこまではいっておりませんが、企業がまず自分の従業員、顧客を守りましょうというところまでは計画的にはつくっております。

 ただ、行政がそこの企業の帰宅困難者対策に対して補助なりなんなりという話についてはまだ進んでおりません、まだそこまでは至っておりません。

糸川委員 ありがとうございます。

 もう一問、島田参考人にお伺いしたいんですが、今、私も水道の問題を取り上げるわけでございまして、これは大変、地震のときには断水によって今度は水洗トイレが使用できない、こういう事態が想定されるわけでございます。

 阪神・淡路大震災のとき、神戸市では市民のトイレの確保とそのし尿処理ということが大変大きな問題となったわけでございます。学校などの避難所などにタンク式の仮設トイレが設置されたわけでございます。くみ取りがそれでも機能しなかった、トイレが詰まって市民からの苦情が相次いだ、こういうことでございます。また、本当にボランティアの方も、ここの点では非常に問題があるということで指摘もされておるわけでございます。

 避難生活が長期化した場合には、今度は衛生面でも心配が出てくるわけでございます。水洗トイレがほぼ完全普及していると言ってもいいこの都心部では、し尿処理というものは最も身近で深刻な問題になるのかなというふうに言われているわけでございます。

 そこで、東京都では、災害用の仮設トイレの備蓄ですとか、それからマンホール直結型のトイレですとか、それから衛生面の配慮、こういう災害時のトイレ対策に対してどのように取り組んでいらっしゃるのか伺いたいなというふうに思います。

島田参考人 冒頭の説明でも申し上げましたが、トイレの問題というのは非常に大きな問題と思いまして、ことしの地域防災計画でもう一度、また少し見直そうというふうに思っております。

 現在までの対策でございますが、まず、避難所になるところは特別に下水管、水道管を強くしております。そういったことはやっております。それから、段ボールでできるような仮設トイレと、並びに区市町村がその避難所の近くまたは中に置いている、そういったことで当面しのいでいこうというところが現状でございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 私も、いろいろなマンションなんかを視察しますと、最近では、大型のマンションではマンホール直結型のトイレなどを擁しているところもあるわけですけれども、まだまだ足りないんじゃないかなというふうに感じます。そういうのが率直な御感想だと思うんですけれども。

 これは私の興味でもあるんですけれども、参考人の方全員にお伺いしたいんですが、日々、参考人の皆様は地震防災対策にかかわるお仕事に携わられているわけでございます。そこで、御家庭において、実際に地震に対してどのような備えを講じられていらっしゃるのかお聞かせいただければなというふうに思います。

阿部参考人 想定外の質問に聞こえましたが。

 家庭で一番気をつけているのは、やはりだれでもできる家具の転倒防止です。家具の転倒防止のための対策を講じております。

 それから、水の確保です。これも、ポリタンクに私どもは水をためております。それで、そのまま置いておきますと傷んできますから、一週間に一回、洗濯のときにそのポリタンクの水を使って、それでさらに水を補給しておくということも考えております。

 その他いろいろ、家族の連絡のとり方ですね。安全が確認できれば私どもは大いに働けるわけですから、その確認のとり方とか、途中で電車がとまった場合の対策とかいうのを時々話し合ったりしております。

重川参考人 私の家では、家具は全部固定をしました。引っ越したときについでにやってもらいました。つまり、改めてやると大変なので、何かのタイミングのときにやるということで。集合住宅なものですから、コンクリート壁なので自分ではできませんのでやってもらいました。

 それから、食器戸棚の扉があいてガラスがおっこちて飛散するということがよくわかっていたものですから、揺れるとロックがかかってドアがあかないというものを食器戸棚や台所には全部つけました。それから、揺れている最中には絶対なべややかんなんかに近づくなということを家族に徹底しています。

 以上です。

島田参考人 危機管理監になりましてからわびしい単身赴任をしておりまして、何も置かない大きな部屋に一人で寝ております。

 自分の自宅は、うちの女房のたんすに傷をつけまして、柱からたんすが倒れないような施策をしましたら最初大分怒られまして、これも命を守るためだということで、阪神・淡路の後やりまして、それから何とかなっております。

 それから、もう一つ心がけているところは、いつも体を鍛えております。何かあるときに、これは危機管理監としてもそうなんですが、一市民としてもやはり健康でいたい。健康でいないと防災対策はできないということでございます。

 以上です。

糸川委員 どうもありがとうございます。大変貴重な御意見でございました。

 ただ、私は国会議員になって約八カ月ぐらいになるんですけれども、まだ疑問に思っていることがあります。国会議員というのは震災があったらどうするのかなとか、例えばどういう召集システムがあるのかなとか、全くそういうのを知らないなと。電話は、何か通じるようなシステムの電話にしていただいているんですけれども、その後のシステムというのはどうなっているのかなとか、結構疑問に思うところがありまして、またそういうところも今後議論をさせていただきたいなというふうに思います。

 きょうは本当に参考になりました。ありがとうございました。

大野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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