衆議院

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第7号 平成25年11月14日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十五年十一月十四日(木曜日)

    午後一時三分開議

 出席委員

   委員長 坂本 剛二君

   理事 うえの賢一郎君 理事 北村 茂男君

   理事 原田 憲治君 理事 福井  照君

   理事 盛山 正仁君 理事 三日月大造君

   理事 山之内 毅君 理事 石田 祝稔君

      井林 辰憲君    井上 貴博君

      伊東 良孝君    泉原 保二君

      岩田 和親君    金子 恵美君

      神山 佐市君    川田  隆君

      木内  均君    小林 鷹之君

      笹川 博義君    清水 誠一君

      鈴木 憲和君    高木 宏壽君

      竹下  亘君    長島 忠美君

      藤丸  敏君    堀井  学君

      松野 博一君    宮内 秀樹君

      務台 俊介君    湯川 一行君

      吉川  赳君    黄川田 徹君

      寺島 義幸君    中川 正春君

      吉田  泉君    今井 雅人君

      宮沢 隆仁君    濱村  進君

      樋口 尚也君    佐藤 正夫君

      高橋千鶴子君    小宮山泰子君

    …………………………………

   議員           中川 正春君

   議員           三日月大造君

   議員           吉田  泉君

   参考人

   (東京大学地震研究所地震予知研究センター長・教授)            平田  直君

   参考人

   (早稲田大学理工学術院教授)           濱田 政則君

   参考人

   (初代内閣安全保障室長) 佐々 淳行君

   参考人

   (京都大学大学院教授)  藤井  聡君

   衆議院調査局第三特別調査室長           清水  敦君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十四日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     堀井  学君

  工藤 彰三君     小林 鷹之君

  笹川 博義君     鈴木 憲和君

  林  幹雄君     高木 宏壽君

  務台 俊介君     金子 恵美君

  吉川  赳君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     吉川  赳君

  金子 恵美君     務台 俊介君

  小林 鷹之君     宮内 秀樹君

  鈴木 憲和君     笹川 博義君

  高木 宏壽君     林  幹雄君

  堀井  学君     川田  隆君

同日

 辞任         補欠選任

  川田  隆君     大見  正君

  宮内 秀樹君     工藤 彰三君

    ―――――――――――――

十一月十四日

 国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案(中川正春君外四名提出、衆法第九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案(中川正春君外四名提出、衆法第九号)

 災害対策に関する件


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 災害対策に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、東京大学地震研究所地震予知研究センター長・教授平田直君、早稲田大学理工学術院教授濱田政則君、初代内閣安全保障室長佐々淳行君、京都大学大学院教授藤井聡君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず平田参考人にお願いいたします。

平田参考人 本日は、貴重なお時間をいただきまして、地震と地震の調査研究に関する意見を述べさせていただく機会を与えられまして、ありがとうございました。

 私は、本日、このお時間で、日本列島及びその周辺では地震が頻発してきた、今後もするであろう、それから、地震の災害、震災に多く見舞われてきたということについて意見を述べさせていただきたいと思います。

 御存じのとおり、地震という現象は、地下の岩石がずれるように破壊する自然現象でございます。なぜ破壊されるかというと、力が加わっているからでございます。この力の源は、地球上を覆うプレートと呼ばれる岩盤が水平方向に移動することによって力が加わっております。

 お手元に資料を配付させていただいておりますが、この二ページ目を開いていただいて、三というふうに番号が振ってある、「日本は地震と震災が多い」という図をごらんになっていただきたいと思います。

 日本列島の東側には、太平洋プレートという地球上で最も大きいプレートが、西の方、ユーラシア大陸の方に一年間に十センチメートルぐらいのスピードで押し寄せてきまして、さらに南には、フィリピン海プレートというプレートが日本列島の下に沈み込んでいる。この沈み込むプレートの境界に日本列島が位置するということが、我が国及びその周辺で地震の多い理由でございます。

 このページの下の表でございます。

 小さい表で恐縮でございますが、ここは、明治以来約百二十年間に、千人以上の方が犠牲になる大震災でございますが、これが十二回発生したということを示した表でございます。細かい数字はごらんになりにくいと思いますけれども、要点は、千人という大勢の方が亡くなるような震災が百年ぐらいの間に十年に一度ずつ発生していたということが、歴史的な事実でございます。

 しかし、この十年というのは、十年置きに起きていたわけではなくて、関東大震災から戦後の福井地震まで、二十五年間に八回、ちょうど戦争の間は毎年千人を超えるような地震が起きていたということであります。

 つまり、東北の地震あるいは阪神・淡路大震災のような大震災というのは、まれに起きる現象のような印象を持たれると思いますけれども、日本列島全体を考えたときには、非常に頻度の高い現象であります。

 もちろん、一人一人の個人にとってみると、一生のうち大きな震災に遭うことがない人もいますけれども、列島規模、日本全体を見たときには、十年に一度ぐらい、運の悪いときには毎年のようにそういうことがあるということが、この表から読み取っていただけると思います。

 その次のページをごらんになってください。

 日本列島全体もそうですが、私どもが今おります首都圏あるいは南関東でも、明治からだけではなく、過去にさかのぼって江戸時代、それから先史時代、地質時代においても、繰り返し大きな地震が発生しております。例えば、江戸時代の安政の江戸地震、それから元禄の関東地震などというときも、やはり大正の関東大震災に匹敵するような大きな地震が発生しております。

 関東だけではなく、この下の六枚目の絵にございますように、日本列島の西南日本の太平洋沖、南海トラフというところでは、少なくとも七世紀までさかのぼることができて、過去九回の巨大地震の系列が記録されてございます。

 一番新しいのは一九四四年、四六年の東南海地震、南海地震というのがございますが、こういった地震が繰り返し起きているということに基づいて、国の地震調査研究推進本部は、その次のページをごらんになってください、ことし、地震の長期評価というものを改訂しました。

 これによると、南海トラフでは、マグニチュードが八から九クラスの巨大地震が今後三十年以内に六〇%から七〇%の確率で発生するということが言われております。この確率は大変高い確率でございます。

 また、その下の八枚目の図にございますように、南関東でも、明治から百年の間に、マグニチュード七程度の地震が五回発生しておりまして、この地震は、今後三十年以内に発生する確率に直すと、七〇%で発生するというふうに言われています。これも大変高い確率でございます。

 しかし、この南関東、首都圏で発生するというのは、必ずしも二十三区の下で発生するわけではございません。南北百五十キロ、東西百五十キロメートルぐらいの広い範囲のどこかで起きるということまでしか今の地震学では言うことができませんが、中央防災会議は、もし都心の下でマグニチュード七クラスの地震が起きたときにどういうことが起きるかということを評価いたしました。

 その次のページをごらんください。

 これは、二〇〇五年、平成十七年に公表された中央防災会議の想定でございますけれども、東京湾の北部でマグニチュード七・三、つまり、阪神・淡路大震災を起こした地震と同じ程度の地震が起きれば、最悪のシナリオで一万一千人の犠牲者が出る、それから百十二兆円の経済損失が出るという甚大な災害が発生するということが、既にもう二〇〇五年には公表されております。

 内閣府中央防災会議は、現在、東北地方太平洋沖地震の後、この想定についての検討をしているところでございますが、ことしじゅうには新しい想定が出ると思います。それでも、古い想定でもこれだけの大きな被害が出るということがございます。

 これが東北の地震の前に知られていたことでございますが、その次のページをごらんください。

 この絵の十一ページ、十二ページは、東北の地震が起きた後、日本列島はより地震の起きやすい状態になったということを示したデータでございます。

 大きな地震が起きると必ず、余震といって本震よりも少し小さな地震が頻発します。おととしの東北の地震はマグニチュード九という非常に大きな地震であったために、余震といえども、最大の余震は今のところマグニチュード七・六でございまして、つまり、マグニチュード七を超える余震が既に八回、マグニチュード六を超える地震は百回以上、マグニチュード五を超える地震は既に千回に近い数の地震が起きています。

 日本列島全体で見ると、一年間にマグニチュード七程度の地震は、これまでは一回か二回発生している状況が、余震だけでもこのようにたくさん起きております。また、余震域の外でも、南関東、つまり、首都圏を含むこの領域では、東北の地震の直後に地震の数が非常にふえまして、地震の前後半年で比べると、六、七倍に数がふえました。

 現在は、この状態が少しずつもとの状態に戻っていますが、それでも、東北の震災の前に比べると、倍程度は地震が起きているというのが現状の事実でございます。このことは、将来地震の発生する確率が、これまでよりも減ってはいない、むしろふえているということを示していると思います。

 その次のページをごらんになってください。

 このことは、実は東北の地震というのは、震災という意味では、今でも御苦労されている方がたくさんいるという意味で終わっていませんが、自然現象としても、日本列島は、おととしの東北の地震の影響を受けて大きく変動し続けているということを示しています。

 この十三枚目の絵は、国土地理院がGPSという機械で国土の非常に精密な位置を、形をはかっているもののデータでございます。

 東北地方というのは、基本的には、一年間に一センチから二センチ縮んでいたというのが東北の地震の前の状態ですが、地震の三分間の間に、東西に大きく三メートルから四メートル引き伸ばされました。それが、おととしの二〇一一年三月十一日午後二時四十六分の三分間だけではなくて、現在でも東西に引き伸ばされ続けているというのが、この図が示していることでございます。

 この図は、地震の後一年間で、東北地方は一年間に二十センチメートル伸びたということを示しておりますが、現在でも、一年間に十センチメートル程度の速さで東西に伸びています。こういう状態は、日本列島の力のバランスが大きく変わったということを示しておるわけで、これは地震がより発生しやすくなったということを示していると思います。

 その次に、こういったことがわかるようになった我が国の地震調査研究の現状について、少し御説明させていただきます。

 その次のページを開いてください。

 日本では、阪神・淡路大震災の後に、文部科学大臣が本部長となる地震調査研究推進本部というものが法律によってできました。この組織が地震による被害の軽減のための調査研究をしています。

 この結果は、例えば、国の内閣府であるとか自治体の防災対策の立案に情報を提供し、また、企業や民間団体などの共助のためにも使われております。また、国民一人一人の防災リテラシーの向上などにも貢献していると思います。

 このように、国として一体的に地震の調査研究をするようになったのは、阪神・淡路大震災の後でございます。

 もう一つ、日本では、地震の調査研究は、ボトムアップの基礎研究ということで、科学技術・学術審議会が関係大臣に建議した研究というのがございます。

 その次のページをごらんください。

 ちょっと小さい図で恐縮でございますが、この十一月に文部科学大臣に建議いたしました計画では、これまでの地震と火山の噴火の予知に関する研究を、地震や火山の災害を軽減するための観測研究ということに強化する方向で研究を進めてまいります。

 十八ページに書いてある、日本地図にたくさん点の打ってありますのは、日本の地震の観測網、それからGPSの観測網を示してあるもので、研究開発法人の防災科学技術研究所、それから国土地理院などがこういったものを運営しております。この国土地理院のデータによって、先ほど申し上げたように、日本列島が縮んだり伸びたりするということが今ではリアルタイムでわかるようになって、この観測網は世界じゅうでも最も進んだ観測をしているというふうに考えられます。

 その次のページをごらんください。

 これは何のためにやっているかというと、一つは、現在の地震活動の現状の評価をして、将来どういう地震が起きそうか、どのぐらいの確率かということを国として評価する調査でございます。

 この十九ページ目にございますように、地震調査研究推進本部は、日本じゅうの活断層、日本じゅうの海域の断層の調査をして、発生の確率を評価し、各地域でどのぐらいの強さの揺れが発生する可能性があるかということについてまとめて、毎年公表しております。このように毎年地震の揺れの強さを公表しているのは、やはり世界で日本だけでございます。

 しかし、こういった研究でも東北の地震について適切に評価できなかったことについては、現在、この方法を改善するということで、各方面の方が努力しているところでございます。

 その次をごらんください。

 もう一つ、こういった調査で重要な成果は、現在、気象庁が緊急地震速報といって、地震が発生したことを早期に検知して、強い揺れが来る、あと何秒後にどのぐらいの揺れが来るということを情報として提供しているものでございます。これは、強い揺れについては警報として気象庁が発表している情報でございまして、二〇〇四年、平成十六年に試験的に情報を提供し、平成十九年からは一般に情報が公開されているところでございます。

 最後に、こういった地震調査を進めていく上で、私の思っていることを一つ述べさせていただきます。

 次のページをごらんになってください。

 我が国では、陸域の地震と地殻変動の観測については、阪神・淡路大震災の後に非常に手厚い予算措置をいただいて、観測ができるようになりました。しかし、津波を起こすような海域の地震については、やはり海底で観測をする必要がございまして、去年、ことし、新たな海底ケーブルの観測をするということで建設中でございます。これができますと、津波の評価については格段に精度が上がるということが期待されております。

 それからもう一つ、このページの下の図でございますけれども、首都圏では、文部科学省のプロジェクトとして、首都圏の地震の姿を明らかにするプロジェクトとして、地震の観測点を約三百カ所、多くは小学校、中学校の校庭に設置させていただく、そういうプロジェクトを進めております。

 その次のページをごらんください。

 こういった研究をすることによって、二〇〇五年に中央防災会議が評価した東京湾北部地震について新たな知見が得られて、これが、例えば東京都の災害対策の被害想定に採用されまして、ここに書いてありますように、従来の考えよりも揺れの範囲が広くなったということがわかりました。

 最後のページをお願いいたします。

 こういったことは、首都圏の周辺部では、海域を含めて調査を続けることが必要だと思います。

 まとめます。

 日本は、たびたび大きな地震とそれによる震災が起きてきました。今後も、そういうことが考えられます。災害を軽減するためには、これを予測して、備えることが重要でございます。

 我が国には、世界トップレベルの地震観測網、地殻変動観測網があり、災害の軽減に貢献しております。最新の地震研究によりますと、従来の評価に比べて、将来の地震の被害が大きくなる可能性がございます。

 こういったことに対応するためには、引き続き、陸域の地震、地殻変動の観測を長期間維持することが必要ではないかというのが、私の意見でございます。

 以上でございます。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、濱田参考人にお願いいたします。

濱田参考人 早稲田大学の濱田でございます。

 今国会におきまして、国土強靱化基本法案の審議が開始されると聞いております。自然災害に対しまして、国、社会を強靱化するには何が課題であるかということをお話しさせていただきたいと思います。

 お手元にお配りしている資料に沿いまして御説明をいたします。右肩に番号をつけておりますので、参照していただきたいと思います。

 二ページ目でございますが、国土強靱化を推進するための五つの課題を挙げさせていただきました。この順番にお話をさせていただきたいと思います。

 三ページ目でありますが、まず初めの課題は、国土強靱化を進めるためには、対象とすべき自然災害の想定が問題であります。

 我々が備えるべき自然災害の想定が、国として統一されていないように私は思います。国土強靱化のためには、ハード、ソフト両面にわたりまして、社会のどの部分に脆弱性が存在するかを洗い出す必要があります。そのためには、まず備えるべき自然災害を想定する必要がありますが、この想定に、国として混乱が生じていると考えております。

 この三ページ目の図でございますが、これは、昨年の八月に、内閣府の南海トラフ巨大地震検討会が出しました南海トラフ沿いの震源域を想定したものであります。

 南海トラフ沿いの地震としましては、従来から、東海地震、東南海地震、南海地震の三つの地震が連動して発生する可能性が指摘されてきましたが、この検討会では、この三つの地震の震源域が南海トラフ沿いのより近い海域に広がる可能性、さらには宮崎県の日向灘の地震と連動する可能性を示しました。この想定に基づきまして、中央防災会議は、地震動の強さ、津波の高さ、人的及び物的被害の予測をしております。

 四枚目をごらんいただきたいと思います。

 この図でございますが、これは、本年度より文部科学省が開始した調査研究プロジェクトを説明しているものであります。

 南海トラフ沿いの海域について、大きなクエスチョンマークがついております。これは、この海域の地震が、従来からの南海トラフ沿いの三つの地震と連動するかどうかということを、今後八年間かけて調査しようとするものであります。もう既に始まっております。国の機関におきましても、将来想定する地震が統一されておらず、混乱が生じているということを示していると思います。

 もう一つ、例を御紹介したいと思います。五枚目でございます。

 平成二十三年十二月に、津波防災地域づくりに関する法律というものが制定されました。この法律、いろいろなことが書いてございますが、重要なところは、都道府県知事が、津波による浸水区域や浸水深を想定するということが規定されております。これまで、建物とか橋などを建設する場合に、地震力の強さは、国あるいは国が直接関連した機関が、全国版で、地域的に余り偏りのないように定めてきましたが、津波に関しましては、知事がそれぞれ決めるという法律になっております。

 この法律の施行によりまして、混乱が生じているというふうに感じております。この図は、東京湾に面した一都二県の津波の予想であります。ばらばらになっているのが現状だと思います。

 まず、左上の写真でございますが、これは神奈川県の予測であります。京浜コンビナート地区では、最大五メーターの津波高を予想しております。これに対しまして、右上の東京都による予測では、最大で二メーター、陸上に遡上することはないという結論になっております。多摩川を挟みまして、津波の想定高に大きな差異が出ているという現状がございます。千葉県の予測、下の図でございますが、東京都と同じような予測をしております。

 なぜこのような差が出るかといいますと、想定する海底の震源、地震、これがまず違っている、こういうものも統一されていないという現状でございます。

 次の六枚目でございますが、国、社会に潜む脆弱性の洗い出しというお話をさせていただきたいと思います。

 国土強靱化を進めるためには、どこが弱いのか、そういう脆弱性を徹底的に洗い出すことが必要だと思います。そのリスクの大きさに基づいて対策の優先順位を決める必要があります。

 南海トラフ沿いの海溝地震、首都直下地震などに対してさまざまな脆弱性が指摘されておりますが、私が最も重大なリスクと考えておりますのは、臨海部のコンビナートの問題であります。

 御存じのように、二〇一一年東北地方太平洋沖地震では、仙台及び千葉の石油精製工場で火災と爆発が発生いたしました。千葉のLPG球形タンクの爆発では、その破片が六キロも飛んでいって住宅地に落ちたという報告もございます。東京湾で、このLPGの爆発のほかに、十件もの事故が報告をされております。

 そのほか、この下の写真でありますが、これはコンビナートではございませんが、気仙沼では、十数基の燃料用タンクが津波によって流出し、海上火災になった、それが陸上部に引火したという報告もございます。

 七枚目の図をごらんいただきたいと思います。

 過去にどういうことが起こってきたかということを御説明したいと思います。

 左上の写真でありますが、これは兵庫県南部地震の写真でございます。タンクが傾いております。内容物は石油製品だと思います。なぜ傾いたかといいますと、液状化によって傾いたということであります。こういうタンクは、一般的に、基礎、くいは打っておりません。地面の上に置いてあるだけであります。下の地盤が液体のようになりますと傾く。

 ただし、この兵庫県南部地震では一基も倒壊しなかったという事実がございます。なぜ倒壊しなかったかといいますと、兵庫県南部地震の地震動の継続時間は極めて短かった。主要動は大体十秒から十五秒ぐらいであります。これがかなり長く続いたとしますと、タンクが倒壊する、破壊される、内容物が外へ出る、海上に流出して、運が悪ければ、海上火災につながったかもしれないわけであります。

 右側の図でございますが、少し細かい図で恐縮でございますが、矢印がいっぱい書いてございます。この矢印は何かといいますと、地面が液状化によって動いた量であります。数字がございますが、センチメーターでございます。護岸が三メーターから四メーターぐらい海方向に移動しまして、四百メーター四方ぐらいあるタンクヤードでございますが、それ全体が移動しております。このタンクヤードでは、LPGの配管系が破壊されまして、大量のLPGが噴出いたしました。付近の住民を二十四時間避難させた。幸いなことに、これも爆発には至らなかったということであります。

 下の二つの写真、左側の写真ですが、これは二〇〇三年の十勝沖地震のときにタンク火災が起こった。なぜタンク火災が起こったかといいますと、コップの水を想定していただきたいと思いますが、コップの水を揺すりますと、ある周期で揺れます。その直径がだんだん長くなってきますと、数秒で揺れます。この火災を起こしたタンクは、直径三十メーターから四十メーターぐらいのものですが、五、六秒の周期で揺れます。いわゆる長周期の地震動に遭遇いたしますと、液面が揺れる。

 このタンクの構造の特徴でありますが、浮き屋根式といいまして、屋根が液体の上に浮いております。内容物が揺れますと一緒に揺れまして、飛び上がる。飛び上がって側板に衝突すると、金属と金属の衝突で発火する、そういう現象が起こったということであります。

 東京湾、伊勢湾、大阪湾も同じでありますが、右側の写真は東京湾であります。

 東京湾には、この浮き屋根式タンクが六百基ございます。東海地震と東南海地震、二つの地震だけでありますが、連動した場合に何基のタンクから油があふれるかという試算をいたしました。六十基からあふれるという試算が出ております。あふれた後、防油堤が機能しなければ海上に流出するということも予想しなければならないということであります。

 八枚目に移りたいと思います。

 八枚目は、民有施設の強靱化と公的資金の投入ということをぜひともお願いしたいと思います。

 左上の写真、これは京浜コンビナートの京浜運河でございます。重要な航路でございますが、この航路に面しては、公的な護岸と民有の護岸が混在しております。

 下は東扇島という島ですが、基幹的防災拠点を設けまして、ここに緊急物資、人員を集結することになっております。公的な護岸だけを補強したのでは、この航路を守れないということであります。

 右側の図でありますが、これは国土交通省の委員会で検討した結果でございますが、仮に油があふれ出したときにどういうことになるかということを試算したものであります。

 京浜運河から一万二千キロリッターの原油が流れ出す。一万二千キロリッターというのは、前にナホトカ号の事件がありましたが、あれが六千キロリッターですから、その二倍を想定した。南西の風が毎秒五メーターで吹いているときにどういうふうに原油が拡散するかということを試算したものであります。

 中央に楕円形のマークで示してございますが、三日間で京葉コンビナートに到達する。それから、細い線が幾つかございます。これは何かというと、一日の航跡図であります。漁船とかレジャーボート、小型の船舶を除きまして、中型、大型の船舶、二百隻毎日往来しております。こういう状態で原油が広がったときには、航行を制限せざるを得ない。

 この原油を回収するのにどのくらい時間がかかるかという試算もいたしました。全国の原油回収船を東京湾に集結しても二カ月はかかるだろうという試算結果が出ております。

 そういうふうになりますと、まず一番最初に問題になりますのは、左の図でありますが、東京湾にはLNGの火力発電所が今十二基ございます。毎日のように燃料を運んできております。二カ月間燃料の供給がストップするということになりますと、発電能力がほとんどとまるであろう。首都圏の電力供給は危機的な状態を迎えるのではないかというふうに思います。

 九枚目でございますが、港湾施設の被害というのが国力に極めて深刻な影響を与えるという一つの例を御紹介したいと思います。

 三枚の写真がございますが、これは兵庫県南部地震のときの神戸港の状況であります。

 神戸港には荷役施設、これはガントリークレーンといいますが、六十一基ございましたが、全てが被災いたしました。この復興に十年間かかったということであります。

 阪神・淡路大震災の前、兵庫県南部地震の前ですが、神戸港のコンテナの取扱量といいますのは世界五位であったわけでありますが、神戸港は震災後二十三位になった。その後、整備事業のおくれもありまして、現時点では四十九位ということになっております。こういうことは、一度低下してしまうとなかなか挽回できないということであります。

 十枚目、四番目の課題でありますが、国、自治体のリーダーシップの強化ということがぜひとも必要だと私は考えております。

 国土強靱化には、関連省庁、自治体、地域社会の連携が不可欠だと思います。これまでのように、省庁個別の施策の推進ということでは許されないだろうと思います。

 国土強靱化推進本部というのが設けられるそうでありますが、そこには、自然災害分野の多数のエキスパートを常勤で置く必要があるのではないかと思います。各省庁からの短期の出向ということでは、十分な成果を上げ得ないと思います。国土強靱化のために、防災、減災分野の人材育成ということが指摘されておりますが、まず最初に、国の強靱化対策を担う専門家の育成、確保ということが何よりも重要だろうと思います。

 お聞きしますと、国土強靱化に関する調査会でこの問題に各政党が取り組まれていると聞いております。国土強靱化を推進するために、超党派で強力な政治力を発揮していただきたいと思います。

 最後の課題でありますが、十一枚目であります。

 自然災害分野の横断的連携、これはどちらかというと私どもの責任だと思います。

 自然災害を軽減するためには、理学、工学だけでなく、左側にございますが、人文・社会科学、社会学とか経済学、政治学あるいは法学、こういう分野の方々の参画がぜひとも必要であろう。

 それから、下に書いてございますが、情報、これは震災が起こるたびに、いつも情報の収集のおくれということが指摘されます。情報科学の方々の参画がぜひとも必要だ。

 それから、医療でございますが、東京湾北部地震が起こったときに、都内で二十万人の負傷者が出るという数字が出されております。この負傷者のケアをどうするか、医療分野の参画ということがこれも不可欠な問題だろうと思います。

 このような連携を推進するのは、関連学協会あるいは日本学術会議の役割であろうと考えております。

 以上で私の発表を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、佐々参考人にお願いいたします。

佐々参考人 佐々淳行と申します。

 脊柱管狭窄症のため歩けないものですから、車椅子のまま失礼をいたします。

 お手元に配付いたしました資料は、主として、第百三十二回国会、これは阪神大震災直後に衆議院予算委員会において集中審議の形で行われた阪神災害の危機管理の検討会でございましたが、これに私は自民党の公述人として出席をいたしました。当時は社会党内閣でございましたが、そのときの発言の重立ったところを御参考までに差し上げておるわけであります。

 大部分がこの公述内容になっておりますが、どちらかというと、こういう議論にはソフトの議論が多いんですけれども、ハードの議論がとかく実務的に欠けてしまうものですから、きょうもあえて、装備資機材の問題、ハードの問題に重点を置いて、ソフトの問題は時間があればちょっと触れたいと思っております。

 配付資料の二番目。

 自衛隊員というのは、御承知のように、災害派遣というのは本来の任務ではないんですね。自衛隊法第八十三条によって、要請主義となっております。それも知事の要請がないと出動できない。

 さらに、その次の、破壊消防という問題が提起されておりますけれども、これも実は重要なソフトの問題でございます。

 消防法二十九条で、やむを得ないときは消防長が防火のために破壊消防をしていい、これは、憲法二十九条に戻りますが、公共の福祉のために私権は制限される、ただし補償を伴うと書いてございます。

 これによって、破壊消防をしなきゃいけないときがあるんですが、実は阪神大震災のとき破壊消防は行われませんでした。それは、破壊消防をした場合の憲法二十九条に基づく補償義務は市町村長なんですね。国あるいは県は補償をしなくてもいい、その決断も消防長がこれを行う、こういうことになっておりまして、消防法そのものを、委員各位におかれては、この時点でもう一度根本的に見直していただく必要があるというソフトについての大きな問題提起なんです。

 これは御存じと思いますけれども、消防というのは、昭和二十二年、マッカーサー司令部が内務省解体を行ったときに、旧内務省の部局にあった消防課が国家公安委員会の指揮下に入って、消防組織法では、その条文上、明文で、消防の行政管理、行政管理というのは人事だとか予算だとか法律ですね、その行政管理や運営管理、運営管理というのは人命救助とか救急活動とか消火、これに対して指揮権は知事にもなければ消防長官にもないとわざわざはっきりと書いてあるんです。

 これがありますために、危機管理の、特に消火活動、消防活動における権限が極端に地方分権化してしまったものですから、お気づきのように、あのときに警察もばらばらになって、三千ぐらい、自治体警察が、人口五千以上の、さすがに村はなかったんですけれども、町と市に警察権を与えちゃって、それで知事にも警察庁長官にも指揮権がないという状態、これは今でも同じでございますが、内務省を弱体化させるためにやったGHQの占領行政の一つがまだ消防法に残っちゃっているんですね。

 ですから、大きな広域消防というのができない、あるいは広域防災、津波対策なんという、あんな東北全般に来てしまったものなど、知事でさえ指揮できないという状況になっておる。

 こういう災害行政の危機管理の中央集権化、特に原子力発電所の警備の問題から安全対策の問題、これは本気になって考えなきゃいけないのに、いまだにどうもそういう基本的な考え方に基づく改革案が出ておらないように思います。

 私は、実は、防災の関係、あるいは原子力関係の事故を私ほど経験した者はいないと自負しております。

 一番最初の事件が原子力船「むつ」。これが、病院でレントゲンを一回撮るぐらいの放射線の漏えいであの大騒ぎになってしまった。これは、当時の自民党政権の対応の仕方が悪かったと私は思っております。

 フライング・ダッチマンみたいになって全国漂流を始めちゃった。船長一人だけ残って「むつ」が漂流を始めた。それで、「むつ」が行った先の漁協が全部漁業補償を求める、寄港を拒否する。幽霊船みたいになって漂っていて、結果的にお金で、陸奥のホタテ貝なんというのは全く汚染もしていないのに、金丸信さんが、二十億かなんかのキャッシュを持っていって、札束でほっぺたをひっぱたいて片づけちゃった事件です。

 それで、全国的に、至るところで原子力船「むつ」反対闘争というのが起こってしまって、港湾労働者も全部、寄港したら港湾ストライキを起こす。こういうような騒ぎで大混乱が起こったんですが、そのときの警備課長でございます。

 それから、その次に起こったのが「もんじゅ」なんですね。「もんじゅ」というのは、そもそも、放射性廃棄物、今、放射性のごみをどうするか大問題になっちゃっているんですけれども、日本国の経済、戦後の方針というのは、大量生産、大量消費、ここまでは経済成長のために大変よかったんですけれども、大量廃棄、その廃棄物の処分の問題というのが全く民間任せみたいになっておりまして、これが原子力問題で大きな問題になりました。

 それを再処理、リサイクルして、プルトニウム一トンをフランスから輸入したんですね。国際条約上、複数の武装護衛をつけなきゃいけないというのに、日本は、海上自衛隊を出すのを、当時、海外派遣だといってやらなかったものですから、海上保安庁の「しきしま」一隻でシェルブールから持ってくるという大騒動になっちゃったわけです。このときも、私はこれの輸送に関与いたしました。

 一トンさえ来れば、プルサーマルで、日本は、今後永久に、その一トンの再処理でエネルギー問題は解決したと、当時、かねや太鼓で大騒ぎしたんですけれども、これがナトリウム火災を起こしました。ナトリウムというのは、水その他と同様に、原子炉を冷やす効果を持った物質なんですけれども、これが火災を起こしました。

 これはまた、対処を誤って、大したことない、大したことないと言ったものですから、大したことになってしまった。当時、原子力問題については安全神話というのがございまして、これから私が申し上げるような装備機材を早急に整備しろと、東海村のジェー・シー・オー騒動のときに強力に提案したんですが、これも、自民党の総務会まで行きましたけれども、没になってやらなかった。

 この「もんじゅ」も、実は、記者会見の失敗なんですね。説明責任を十分果たさなかったために、あんな大騒動になってしまった。あれはナトリウム火災で、原子炉そのものは全く関係ないんです。

 そういう説明をうまくやればいいのに、科学技術庁担当で技術屋さんが記者会見をやったために、この「もんじゅ」の事件を事象と呼んだんです。事件でもなく事故でもない、事象であると。これは、全く大したことないんだという説明で、どう大したことないんだという説明が下手だったんですね。

 そのために、いまだに「もんじゅ」が再開できないという状況になっちゃっているわけです。あれが廃棄物処理の一つの道でもあり、再処理ができれば、日本のエネルギー問題に随分大きく貢献したんですが、これも失敗しました。

 そして、事象というのは事件でも事故でもないというのが、記者会見で大騒ぎになっちゃったんですね、事象とは何だと。事象という態度がよくない、雷が鳴ったとか、雨が降ったとか、こういうのをフェノメノン、事象というのであって、アクシデントかインシデント、事件か事故であろうといって、新聞記者は大騒ぎになった。

 そのときに、私はコメントして、やはり事象という言い方がよくない、政府がもう少しちゃんと説明しろと言ったら、科学技術庁の技術担当の審議官からこんな厚い手紙が来まして、あなたは不勉強だ、科学技術庁の内規を読んでいないではないか、その内規によれば、あの程度のことは事象と呼ぶことになっておる、人が死んだり、けがをしたりすると事件であって、重大な機材の損失があれば事故である、だけれども、あれは何にもないんだから事象であると。全く説得力のない説明をして大きな問題になって、今日も尾を引いています。

 それから、三つ目の大きなものがやはり東海村でありまして、これは、非常に危険な中性子が漏えいしてしまって、非常に危険な状態、臨界状態になっちゃっている。

 そのときに、私は実は、橋本知事と堀貞行君という県警本部長に呼ばれて現場へ行きまして、現場指導をした一人なのであります。

 これも、今の災害対策基本法は根本的におかしい。あれだけの大事故の避難誘導、十キロを死の灰の降る危険区域だといたしますと三万人いたんですね、その三万人を村上東海村村長が法律上の責任者で避難誘導させるという災害対策基本法そのものが間違っているんです。

 橋本知事のところに行きましたら、橋本知事が、日本には国家というものはないんですか、この大規模な原子力発電所の事故というのは当然国家がやるべきである、村上がやるのはおかしいということを主張されて、せめて私はこれから申し上げるハードウエアで住民の安心を買おうと思ったんですけれども、これも入れられない。

 要するに、そういう危険があるんだと言うこと自体が反原発闘争を刺激するけしからぬ意見であるということで、私はたたかれまして、原子力行政、安全行政に関しては日本は本当にどうしようもないなと思ったわけです。そして、今度の東日本、福島原発なんですね。

 きのう、テレビのニュースを聞いていて、私はまた腹を立てました。それは、福島第一号機から汚染水が漏れているんじゃないかという疑いがあった、それでロボットにカメラを持たせて百枚か何か撮りに入ったら、パイプが折れているとか、あるいは、はっきり水道の蛇口ぐらいの勢いで水が漏れておる、汚染水が漏れているというのを見つけましたと。東京電力というのは一体どういう会社なのか。もう二年間やっていて、ロボットを使うことを考えないんですか。

 しかも、ロボットを使いなさいということは、多分この中に載っていると思いますけれども、日本はロボット大国なんですね。高校生の手づくりロボットの競技会まである、非常にすぐれたロボット大国。労働力のかなりの部分をロボットが取ってかわりつつある。こういう先進国でありながら、安全保障政策上、ロボットというものをもっと使うべきなんですけれども、ロボットを、何か間違えてしまって、ワンワンと言う犬だとか、おもちゃだと思っているんですよ。おもちゃの方にどんどんロボットの技術が流れちゃって、安全保障に使わなかった。

 東京電力もよくないですけれども、また、原子力行政の所管が文部科学省だというのもおかしいんですけれども、非常に安全に関する責任感が希薄であります。

 そこで、消防組織法の改正とか災害対策基本法の改正。

 きょう御出席の皆様が現職である間、現職というのは、一期、二期続けられるという意味でありますけれども、まだ現職であられる間に、恐らく三つ子の大地震というのはあるんじゃないか。

 我々の悪夢は、首都直下ももちろんですが、三つ子の大地震なんですね。東海、東南海、南海、これが三つ同時に起こったときは、日本、もう東海道は壊滅状態ですし、津波も起こるだろうし、最悪の事態になるわけですが、今からいろいろ準備をしておけば何とか間に合うかなと思って、きょう、あえてもう一度提案させていただこうと思って参上いたしました。

 それは、さっき平田先生やなんかからも三つ子の地震の可能性というのは非常に強く言われましたし、コンビナートの石油タンクの火災、これは実は大津波を食って火災が起こっちゃった。奥尻もそうなんですね。何で水と火と同時に起こるのか。それは、大体、石油タンクというのは海に近いところにあって、これが水よりも軽いものですから水の上に流れてきて、それに何かのスパークした火花か何かがあれすると火災が起こってしまう。

 こういう広域かつ三次元といいましょうか、こういうような災害に対しては、やはり中央集権で、今度できる国家安全保障会議が担当して、陸海空自衛隊等の実力部隊を総動員して全力を挙げて対応しないと、都道府県単位の今の地方行政では対処できません。

 そこで、この百三十二回国会で提案した、後でお読みいただきますけれども、その中で一番大きいのは消防飛行艇なんです。消防飛行艇というのは、二式大艇以来、日本は哨戒艇に物すごくすぐれた国なんですね。

 今、自衛隊でも、少なくとも七機、US1を人命救助に使っております。離れ島の急患輸送やなんかに使っておりますが、元対潜哨戒機であります。主力対潜哨戒機で、非常に日本の安全保障、ソ連の潜水艦作戦に対してアメリカと協力して役に立っておった武器なんです。これが、二十何機あったんですけれども、そのうちの一機を、私が現職のときに、当時、東京大地震だとか富士山が噴火するとかの大騒ぎがありまして、立体的な災害対策を考えようと。

 地震だの津波なんというのは防げるものではないんです。仮に予知してもどうしようもない。せめて避難命令を早く出して避難させるしかないんですね。危機管理の一番大事なことは、危機が発生してしまったときの一番最初の二十四時間、少なくとも七十二時間、これは生きている可能性があるので、この間に全力を尽くして被害局限措置をしなきゃいかぬというのが危機管理です。これは災害だろうが何だろうがみんな同じですね。

 その一つの大きな手法というのは、昔の二式大艇の伝統で今持っておりますUS1という飛行艇、まだ七機残っています、これを我々がかつてやったように、四億円かけると消防飛行艇になるんです。ドアを八つつけまして、水を十五トンまで積めます。海水がいけないというのなら、琵琶湖なり猪苗代湖、どこでもいい、湖におりて淡水を吸い上げてくる。飛行しながら、滑空しながら水を吸い上げる能力を持っておりまして、一遍給油すると十回水を補給することができるんです。そうすると、一回十五トンですから、百五十トンになります。

 だから、十五トンの水を、いずれあるであろうタワーリング・インフェルノ、これが僕らの目的だったんですが、超高層ビルの火災が起こって手がつけられないとき、上から水を消防飛行艇で落とそうと。消防飛行艇というのは低空、低速、長距離、対潜哨戒機だからそういう性能を持っておりまして、広域火災の上空、これは森林火災でも結構ですし、そういう上空を飛ばせて、最大百五十トン上から水がかけられる、こういう性能を持っております。

 これを何とか、今まだ七機ありますから。一機四億で我々はやりました。あれは属人的なものなんですね。私がいなくなったらみんなまたもとの哨戒機に戻しちゃったんです。そして、これは九億かかっています。だから、十三億かかって、つくったり廃止したりしてやっておったんですけれども、今また、これをどうにか再生してほしいということを私は強く主張しているところであります。

 二番目は、さっき申し上げたロボットです。

 ロボットも、原子力発電所の事故があったとき、無人ロボットで偵察に入るということを前から主張しておるのに、そういうものをつくると原子力発電所というのは危険なものだと周辺の住民が反対運動を起こすから、危険であるということを言っちゃいけないというのが当時の妙な不文律でございました。

 ロボットの次はハズマット。

 そこに書いてございませんけれども、ハズマットというドイツ製の危機管理車があるんです。これは、五メーターのアームがついておりまして、爆発物の処理もできますし、あるいはサリンガス、CBRに全部対応できるんです。ケミストリー、サリンガスですね、バイオロジー、そういう生物兵器、そしてレディエーション、これを全部処理できる西独製の危機管理車があるんです。一台約五億です。

 そして、湾岸戦争のときに、それを持っていなかったアメリカもイギリスも大量に買い付けた。あのころはサダム・フセインが現場でサリン爆弾を使うということだったものですから、大量に買い付けた。

 それを五十四台購入して、軍用と消防車仕立てと両方ありますが、それを消防車仕立てで五十四カ所の原子力発電所を担当する消防署に配備すべきである。

 これは私、自民党の総務会まで上げました。当時の亀井静香総務会長は、こんな経済情勢のときにそんな防護車みたいなものを輸入して買うなんということはとてもできないということで、現在、大変能力の低い防護車が自衛隊に二十四台ありまして、これにみんな鉛をかぶせるというやり方で対処しました。

 その鉛で対処した化学防護車なるもの、お気づきのように、この東日本で全く役に立っておりませんでしょう。もうまるっきり役に立たないものを使ってしまって、そのハズマットの輸入をしなかった。これは私は、このころは村山さんでありましたけれども、大きな失敗であったと思っております。

 それから、災害の現場というのは、水はあるけれども水はないという状態。汚水浄化装置というのがあるんです。これは神戸製鋼か何かがつくったのでありますけれども、三千万円であります。私は、自分の現職のときに、自衛隊の施設大隊、現場に行く工兵隊には全部この浄水装置を持たせました。そういうものを地方自治体が全部やはり持つということが大事なんじゃないかと思います。

 それから、消防車なんですけれども、消防車は、はしごがあって、化学防護能力があって、化学消防ができて、かつ、タワーリング・インフェルノに水をかけられるような高気圧の消防車を人口一万人に一台整備したいというのが消防の現場の要求なんですけれども、これはほど遠いものがあります。近年要求されてきているのは、路地に曲がって入れる小型消防車で、高圧放水の筒先を運んでいくもの、ロボットでもいいんですけれども、こういう機能が求められておる。

 やはりこういうせっかくの委員会でありますので、皆さんの在任中に起こるかもしれない、そういう被害の局限のためには、私が今提案しているようなハードウエアについてもお考えをいただきたいと思うのであります。

 消防法は根本的に変えないといけません。災害対策基本法も根本的に変えないといけません。自衛隊法の八十三条というのも、これだけ自衛隊が災害対策で大きな役割を果たしているときに、まだ要請主義だ。それも、阪神大震災で一部改正されて、政令指定都市の長も権限が与えられまして、要請権が与えられて、かつ、市町村長も要請できることになったんですけれども、直接要請できないんですね。知事を経由。だから、知事が外出していて不在だとその分だけおくれるという欠陥がございます。

 こういうようなソフトの面も、もし必要でございましたら、私、お招きいただければいつでも説明を申し上げますが、私は実務家でありますので……

坂本委員長 佐々参考人に申し上げます。

 お約束の時間が過ぎておりますので、御協力願います。

佐々参考人 はい。御注意、恐れ入ります。

 事ほどさように、やらなきゃならないことはいっぱいあって、長い間何にも、国会も政府もやっていないんです。ですから、こういう機会を与えられましたので、直接委員の皆様に陳情をし、意見具申を申し上げて、終わらせていただきます。

 委員長、時間を過ぎまして済みませんでした。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、藤井参考人にお願いいたします。

藤井参考人 京都大学大学院並びに京都大学レジリエンス研究ユニット長の藤井聡でございます。本日は、かような機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 きょうは、災害対策特別委員会ということで、災害対策に関しましての基本的な考え方につきまして、私の方から、恐れ入りますが、公述申し上げたいというふうに思います。お手元の資料、A3の一枚物でお話しいたしたいと思います。

 先ほど佐々先生の方からも、我が日本国家にはやるべきことが山のようにある、災害対策のためにやるべきことが山のようにあるにもかかわらず、それが十分になされていない現状があるという御指摘がございました。同じようなことを各先生方も御指摘になっているところでございますが、この状況をいかに改善していくかというのが災害対策における基本的な考え方になろうかと思います。

 この基本的な考え方を最もわかりやすく、まず思想的なといいましょうか、考え方のところをお示しするという意味で、一のところに日本の古典について引用させていただいております。

 日本の国家においても、危機管理というのは当然ながら千年以上にわたって進めてきたわけでありますけれども、その千年の歴史の中で危機管理を担ってきた人々というのはやはり武家であったというふうに思います。その武家の危機管理の要諦、危機管理だけではなく、さまざまな要諦がまとめられた古典の一つに「葉隠」というものがございますが、「葉隠」に次のような節がございます。

 「覚の士、不覚の士といふ事軍学に沙汰有り。覚の士といふは、事に逢うて仕覚えるばかりにてはなし。」要するに、武家の人には、覚悟の人、それと不覚をとる人、この二種類がいるんだと。そして、覚悟のある覚の士というのは、事に逢うて仕覚えるばかりではない、すなわち、覚の士、覚悟の士という人は、何か大変なことが起こったときに、そこであたふたと事後対策を繰り返すということは絶対になくて、「前方に、それぞれの仕様を吟味し置きて、その時に出合ひ、仕果するをいふ。」。すなわち、事前に何が起こるかということを徹底的に想像し、イメージし、それに対してどうするかということのイメージトレーニングをし、そして、それを毎朝毎夕繰り返し、そして何が起こっても軽く対応できる、そういう態勢で行う、これが、備えあれば憂いなしということでございます。

 例えば、武士というのはどういうことを毎朝考えていたかというと、こういう一節がございます。

 「必死の観念、一日しきりなるべし。毎朝身心をしづめ、弓、鉄砲、槍、太刀先にて、すたすたになり、」すなわち、弓やら鉄砲やらでずたずたに切り刻まれるということを毎朝イメージする。並びに「大浪に討ち取られ、大火の中に飛び入り、雷電にうちひしがれ、大地震にてゆりこまれ、数千丈のほきに飛び込み、病死、頓死等の死期の心を観念し、毎朝懈怠無く死しておくべし。」。すなわち、毎朝、武士なるもの、どういうふうに我が身が滅ぼされるのかということを、さまざまな、ここに書いてありますが、大津波とか大地震とか、そういうことを毎朝毎朝、確率はほとんど、〇・〇一%しかないかもしれないけれども、そういうことを徹底的に想像しておくべきであるというお話でございます。

 もしも、三十年確率が七〇%とか八八%というような数字があるにもかかわらず、それを考えない、想像しないというのは、これは完全に不覚の士であるということは疑うべくもないことでございます。恐らくは、これこそが災害対策の要諦であるというふうに私は感じるところでございます。

 さて、これはあくまでも日本の一ローカルなナレッジと言えるかもしれませんが、こういうような考え方というのは、非常にインターナショナルな、グローバルな考え方でありまして、地震対策等に関しましては、一般に、リスクマネジメントという洋風の言い方がございますが、この洋風の言い方の考え方と先ほど申し上げました「葉隠」の精神というものは全く同じことを言っているということを、まずここで申し上げたいと思います。

 政府は、今申し上げましたようなさまざまな危機、佐々先生が御指摘になったようなさまざまな危機に対して、本当に抜かりのない覚の士になるというような方向でこの国というものをつくっていかないといけないわけでありますから、政府は、国家的なあらゆる災害に対するリスクマネジメントをすることが必要である、これを回していくことが必要であるというふうに考えます。リスクマネジメントをやっていく責務がある、これは政府の責任であって、これをやらないのは責任の不作為の罪であるということを、まず強く申し上げたいと思います。

 では、このリスクマネジメントとは一体どういうものとして学術的に言われているかということをこちらの絵の方に書いてございます。

 まずは、一番最初に重要なのは、どんな深刻なことが起こるのかを評価する。すなわち、毎朝懈怠なく死しておくという先ほどの「葉隠」の精神がございますが、ありとあらゆる可能性、コンビナートがどうなるのか、食料安定供給がどうなるのか、例えば、この建物がどうなるのか、あるいは役所がどうなるのか、金融危機が訪れるのか、あるいは経済危機が本当に訪れてしまって株が全部外国で売り飛ばされるというようなことがあるのかないのか。そういうことを懈怠なく、毎朝毎夕考えておく義務が政府にはあるということであって、どんな深刻なことが起こるのかをきちんと評価する、これがリスクマネジメントの全ての出発点であります。

 実際のところ、これがきちんとできるとするのならば、例えば国土の強靱化、国家の強靱化ということをするならば、こういうイメージ、深刻な、どういうことが起こるのかということを国民全体で考えることができるとするのならば、それは、もう国土の強靱化という取り組みの六割、七割が終わっているというふうに考えることもできるのではないかというふうに思います。

 それほどに、一番最初に何が起こるのかということを考えることは難しい。なぜならば、怖いからであります。怖いことは考えたくない。こんなことが起こってほしくないと思うがゆえに考えないのでありますが、考えなければ、それは不覚の士になって、とんでもない被害が起きて、その被害を百倍、一千倍にしてしまうということがあるということでございます。

 ということで、どんな深刻な事態があるかということをしっかりと考えることがリスクマネジメントの出発点でありまして、その後、それに対してどのような対策を図るのかという意味で、基本的な計画を立てる、これがステップツーでございます。

 この基本的な計画を立ててどういうふうにやっていくかということを、しっかりとここで合理的な議論を、虚心坦懐、さまざまな議論を重ねて、その計画を立てる。そして、その計画を立てた後に、しっかりとした体制でそれを実行していく。場合によっては、さまざまな法体制の改善というものもあるでしょうし、あるいは、必要な事業があり、予算が必要であるならば、それに対する手当てを十二分に考え、財政の出動に関してのさまざまなリスクの回避、当然ながらリスク回避をしておくということも含めてそれを実行していく。

 そうすると、その国というものは幾ばくか強靱になります。幾ばくか強靱になるんですが、百点満点の国家になるということは恐らく永遠にないでしょう。したがいまして、幾ばくか強靱になったそのステージにおきまして、もう一度、何が起こるかということを毎朝毎夕懈怠なく想像し、この国がどういうふうにして潰れるのかということを徹底的に理解し、考えて、想像する。そして、それに基づいて再び計画をつくり、それを実行し、そしてもう一度想像するということをぐるぐると回していく。これがリスクマネジメントというものでございます。

 これを通して初めてあらゆる災害に対して国家が強靱化されるということでありまして、この国家とは何かというと、これはいわゆるネーションステートのことを意味しており、国土、国民、主権であります。

 したがいまして、国家を強靱にしていくことは、まず、全ての源であるところの国土をしっかりと強靱化するということをベースにして、それから国民が強靱になり、そして、主権、すなわち政策そのものが、それ自体が強靱化していくということを目指すべきである。さもなければこの国が潰れる可能性が十二分以上にあるんだということを想像する能力をきちんと持たなければならないという責務が政府にあるということであります。これが二番目でございます。

 したがって、その次に、どういうリスクを考えるのかというのが三でございますが、国家危機管理、国家的リスクマネジメントでは、あらゆる国家的な災害を考えるべきである。

 そのあらゆるという中には、巨大地震あるいは富士山の噴火、そういうものもあります。さらには、世界恐慌の危機もありますし、消費税が増税されるのに伴います経済ショックというものをきちんと考える必要がありますし、あるいはエネルギー危機、さらにはテロあるいはサイバーテロの危機、こういったもの、あらゆるものについて考える責務が我が国にはあるということが三番目であります。

 さて、そういうような危機を考えて、我々の国を強靱にしていかないといけないと私は学者として考えているわけでありますが、強靱化していくとはどういうことかということをイメージで書かせていただいているのが四でございます。

 強靱化というのは二つの概念の融合概念である、複合概念であると思います。

 まず一つは、耐ショック性であります。

 大きな被害が起こったときにその被害をできるだけ小さくする。被害が、例えばGDPでいうならば、二百兆の損害があるところをどうにかして百兆に抑える、それを五十兆に抑える、そういう格好で、耐ショック性、これはいわゆる狭義の防災とか減災力、そういうことを意味すると思います。

 そして、重要なのは、それだけではなくて、それ以後の回復力であります。

 被害を受けた後、それをいかにして迅速に回復していくのかというこの回復力というものを絶対に忘れてはならない。最悪の状況は、仮に防災、減災力があったとしても、それを契機にしてどんどん国力がそがれていくということになれば、その国はむちゃくちゃになってしまうということでありますから、防災、減災力を高めると同時に、回復力をきちんと確保することが必要だ。

 この回復力は別名、事後の成長力と呼ぶことができるかと思います。したがいまして、ある意味、強靱化というものは回復力を含むものでありますから、成長戦略をその概念の一部として含んでいるんだということを我々は理解することが必要であるというふうに思います。

 そういう意味で、危機が起こったときに、被害を受けて、それから成長していくという過程でありますが、この山をどうやって小さくしていくのかということが強靱化をするということであります。

 この二つが重要であるということは、要するに、災害の恐怖はXデーにおける激甚被害だけではないということであります。Xデー以後に長期間悲惨な状況が続くことこそが恐怖の本質なのだということであります。

 しばしば、地震が起こったXデーに、たくさんの方が亡くなって、こんな火事があって大変だというイメージがある、これを最小化することが必要なんですが、その後に来る地獄をどういうふうにマネジメントしていくかということに徹底的な国力の注力をやっていくことを絶対に忘れてはならないという、このメッセージが強靱化という言葉の中に入っているのではないかというふうに思います。

 したがいまして、強靱化というのは、何があっても成長できる力を身につけることであって、したがって、それはリスクを見据えた成長戦略と同義なのだということをぜひぜひ国会の先生方には御理解いただきたいというふうに思います。

 さて、五でございますが、強靱化のためには何をしていくべきかということでございますが、ここに記載いたしましたとおり、強靱化のためには、全省庁、組織の体質の改善が必要であります。

 先ほど佐々先生が御指摘になったように、我が国は災害に対して脆弱であるという体質を持っているのであります。これは、いわば成人病のような病気になっているのであって、この病気の状況をいかにして健全化するのか、こういう発想が極めて重要であるというふうに私は感じております。

 つまり、別の言い方をいたしますと、全ての平常の業務が、平時を見据えるだけではなくて、有事のリスク、災害のリスクを見据えたものとして展開されていくべきであるというふうに考えます。これは、別の言い方をしますと、平常業務に有事の対策を溶かし込んでいくということが大事なのだというふうに考えられるわけであります。

 例えばこれはどういうことを意味するのか、幾つかの例を書いてございます。

 例えば、各システムの一重化ではなくて二重化。一個が潰れても次がある。それは、輸送システムに関しても、サプライチェーンに関しても、二重化されていると非常に強靱であります。平時からそういう運用をしていく。

 あるいは、各別々の組織というものが、有事のときに連携を図って、迅速な回復を果たさなければなりませんから、いろいろな組織間で連携を図っていく必要がある。それは、地域の中で連携を図ることも必要ですし、業界の異業種間でも連携を図ることが必要ですし、例えば、自治体同士が有事を見据えて、東京は誰が救うのか、神奈川は誰が救うのかというような、地域間の連携も図っておくということ、平時からそれを考えておくことが大事であります。

 さらに、各システムの自律分散化というのも当然大事になってまいります。

 全てが集中しているときに、一極が全て破壊されれば、その国はジ・エンドになってしまいますから、そういうことにならないように、最低限の分散化を果たしておくというのは、当然ながら、体質改善における最も重要な論点であるというふうに考えます。

 そして、有事の転用と書いてございますが、ふだんは大型小売店ではありますけれども、例えば有事のときにはそれが防災倉庫になる、物流センターというのが、例えば災害のときには防災拠点になる、そういうふうな転用というものを見据えなければならないというふうに思います。

 そのためにも、全てを市場に委ねることを避け、市場、政治、社会の適切な調和を図ることこそが、この国における強靱化の最も重要なことなのだということを強く強く先生方に申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、最後でございますが、なお、こういった有事対応のための強靱化、すなわち、連携、二重化、分散化等を図るということは、平時の経済成長力を伸ばすことになるんだということをぜひ御理解いただきたいと思います。並びに、平時の社会の活力というものを強靱化することにもなるんだということも最後に申し添えておきたいと思います。

 経済成長力になるのは、連携によりシステムが効率化したり、あるいは遊休資産を使うということを通して、平時における強靱化をするということで、連携を図るということで経済成長力も出てくる、成長が大きくなると同時にさまざまな防災対策を進めるということです。

 例えば、私は京都に住んでいるんですけれども、京都に防災団というのがあるんですが、そこが軸になってみんなが仲よくなりますから、防災団を中心に祭りをやったりとかして、そういう防災をきっかけとしてそこの地域の活力が増進していくんだということはしょっちゅうあることでございますから、ぜひそういう効果があるのだということを御理解いただいた上で防災対策を進めていただきたいと思います。

 時間が長くなりましたので最後でございますが、最後に、ここに書かせていただいたことを朗読させていただいて、終わりたいと思います。

 つまり、災害に強い社会とは、災害のためだけの特別事業を別途行っているだけの社会ではないということであります。そうした特別事業は、当然ながら、一定水準進めることが必要でありますが、それとともに、あらゆる事業が災害を見据えたものに調整されていく社会、平時だけではなくて有事のことも見据えながら、ついつい平時のことしか考えなくなるようなマーケットのメカニズムとか社会のメカニズムとか行政の仕組み、そういったもの、常に有事のことを想像しながら少しずつ少しずつ体質を改善していく、そういう方向に調整されていく社会、つまり、社会風土、文化の中に災害対応が織り込まれている社会、これこそが強靱化と呼ばれる取り組みの要諦なのだということを最後に申し添えまして、私の公述を終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井林辰憲君。

井林委員 井林でございます。

 まず初めに、四人の参考人の先生方には、大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りましたことを厚く御礼申し上げます。順次、質問というか、御意見をさらに深掘りして、また問題点なども教えていただければというふうに考えてございます。

 まず、平田参考人の御意見でございますけれども、地震対策、これはやはり予知というのが非常に重要なテーマでございまして、一番いいのは、いつ起きるかということが正確にわかるのが一番理想ではあると思いますけれども、そこまではなかなか難しいということがございます。

 ただ、確率が高いものに対してしっかりと我々は社会として備えていくということが非常に重要だと思うんですが、例えば、南関東で三十年で七〇%の確率で非常に大きな災害が起きるというようなことを、資料でも、そして御説明でもいただいていましたが、平田先生のほかの文献などで勉強させていただきますと、ことしの一月ごろには、四年間で七〇%ぐらいの確率でそれが起きるんじゃないかというような御発言をされたことがあると思います。

 きょうの資料でも、地震の起きやすい確率というのは時々刻々非常に変動しているということで、地震の調査研究というのは、そういった意味ではまだまだ道半ばかなというふうに思うんですけれども、こうしたことをやはりさらに精度よく学術的に高めていくということに関しまして、もう少し、社会全体、政府全体でどうした御支援ができるのか、また、資金面以外でも、いろいろな制度上の壁になっているようなものなどがあれば御示唆を賜れればというふうに思います。

平田参考人 御質問ありがとうございました。

 御指摘のとおり、現在の地震学、科学の実力では、何月何日あるいは来週大きな地震が東京で発生するというような意味の地震予知は極めて難しい状況でございまして、唯一、東海地方で気象庁が二十四時間体制で監視しているところで前兆現象と言われる現象が起きたときには予知ができますが、それでも、地震の多様性といいますか、必ず決まった前兆現象が起きるわけではないというところで、地震発生の可能性が高まるということは言えても、不意打ちが来るということは依然として避けられない状況でございます。

 きょう御説明したように、例えば百年であるとか五十年であるとか、三十年で地震が何回ぐらい来るか、そういうような意味では、これまでの調査によってかなりいろいろなことが言えるようになってきましたけれども、それでも、一年単位、何カ月単位ということでは、まだはっきりと言えるわけではございません。

 将来は、あるいは遠い将来かもしれませんけれども、天気予報をするように、地下の状態を計算して、つまり圧力であるとか強度を計算して予測をするということができるようになることを目指して研究は進めてはいるところでございますけれども、現状では、地下の深さ、十キロとか十五キロの深いところの力を直接はかることもできずに、なかなか進んでいないところが実情でございます。

 しかし、これまで国が整備してきたいろいろな地震あるいは地殻変動の観測網によって、今の日本列島が、例えば五ミリ伸びたり縮んだりしても、それをはかることができるようになりました。これはこの十年の研究の成果でございます。

 こういうことは非常に地道なことで、まだなかなか防災や減災に直接は役に立っておりませんけれども、こういうことを続けることによって、将来は、地震の発生する可能性を、防災に役に立つ、減災に役に立つような精度で情報を提供できるようになる。例えば、緊急地震速報というのは、予知ではございませんけれども、揺れがいつ来るかということをあらかじめ予測するという情報でございますので、そういったところを進める必要があります。

 そういうことで、今の研究を進める必要がございますので、お金をたくさんかければすぐに予知ができるというものではありませんので、人材の育成も含めて、長期的な視野で地震の調査研究を進める環境をつくる。私は大学におりますので、大学の責務としても、そういった人材育成も含めて研究を進めるということが重要じゃないかというふうに思っております。

井林委員 ありがとうございました。

 次に、濱田参考人にお伺いしたいと思うんです。

 液状化現象ですとか長周期地震動というのは極めて大きな問題でありますし、また、特に長周期地震動に関しては、浮き屋根式タンクといいますと、なかなか解決策が、現実の問題として見つけるのが困難じゃないのかなというふうに直観的には思うんですけれども、そうしたことも含めて、やはりどういった災害が起きるんだろうかということを予見しておくことは非常に重要なことだというふうに思うんです。

 その中で、参考人からも御紹介をいただきましたけれども、産業・エネルギー基盤強靱性確保調査事業というのが平成二十五年度に経済産業省で行われて、総事業費は四十三億円ということで非常に巨額でございますけれども、事業所数が二十五カ所ということで、我が国の沿岸部での工業活動を見ると、やはりまだまだボリューム的にも少ないのかなというふうに思っているところでございます。

 これは平成二十五年度の実施でございまして、今進行中だと思うんですけれども、こうした民間の施設の脆弱性を調べるということに関しまして、恐らく民間企業であると、調べて、その次どうなるんだということも含めて出していただかないと、なかなか経済活動として存立しないというか、できたら調査をしないでもらいたいという言い方はよくないのかもしれないですけれども、そうしたこともあるのかもしれないんです。実際の現場の声と、そうした民間の施設を国が調べることに対する問題点などを御示唆いただければというふうに思います。

濱田参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 少し雑駁なお答えになるかもしれませんが、まず一番の問題は、リスクが存在しないという立場に立っている方が多いんじゃないかというふうに思います。リスクを認めますと翌日株価が下がるというようなことをおっしゃる方もおられます。

 リスクの共有化ということはよく言われるんですが、非常に難しい問題だと思います。こういう問題を社会全体として取り組んでいくような仕組み、こういうものをつくるべきだ。これは石油会社だけを攻撃しても始まらないと思います。社会全体の問題としてこれに取り組んでいくというような雰囲気をつくる、そういう状況をつくっていくということが重要だろうというふうに思います。

 長周期地震動の問題が出ましたが、これも当然、消防庁がいろいろ指導をしてきております。まず、タンクの液面を下げる。それから、仮に発火しても、初期消火設備を整える。それと、あふれ出ても防油堤で食いとめる。いろいろな指導をしてきているんですが、それが十分に徹底されているかというと、そうでもない。

 例えば、防油堤なんかも、この前の東北地方太平洋沖地震で大分壊れました。これもいろいろ石油関連の方にお聞きするんですが、対策は終わっているというような答えが多いんですけれども、実際にはそうじゃないんじゃないか。

 どこまで対策を進めているのかということも、そういう情報も十分に出していただいて検討していくということが必要だろうというふうに思います。

井林委員 ありがとうございます。

 用意していた質問が幾つかあったんですが、私の時間の配分が上手じゃないものですから、申しわけございません、ちょっと一つ、参考人、飛ばさせていただきまして、藤井参考人に教えていただきたいんです。

 全てを市場に委ねることを避け、市場、政治、社会の適切な調和を図るというような御提言をいただいたんですけれども、そうした中でもう一つ、リスクを見据えた成長戦略ということも御発言をいただいたんです。

 今、成長戦略ということで、やはり規制緩和をしっかりとやっていくべきだ、そして、それを推進して、その分野にしっかりと予算づけもして、さらに成長を促していくんだというのが基本的な考え方でありますし、大きな流れになっているかと思います。そして、それはある一面では、経済的に非常に高い評価をいただいているというふうに思うんです。

 それと、全てを市場に委ねることを避け、市場とか政治、社会の適切な調和というと、やはりある程度のルール、規制という言葉が適切かどうかはわかりませんけれども、そうしたルールのもとに経済活動を行っていただくということが大事になってくるかと思うんです。

 そこら辺の両立のあり方、またそうした社会の将来像のような形をもう少し詳しく説明していただけるようにお願い申し上げます。

藤井参考人 御質問、どうもありがとうございます。

 しばしば、平時対応と有事対応というものが対立するんだというふうなことを言われることがあるわけでありますけれども、その両者を満たすような解があるのではないかということを申し上げているわけであります。

 例えば、ここに書いてありますような二重化の論理というのは、例えば東海道新幹線、これは一本であると投資は最小化で、平時の物流、交通流動を支えるということではあるんですけれども、それが一つ壊れると二年間復旧できないということになると、これは深刻な経済被害をもたらすことになりますから、そういう意味で、例えば中央リニア新幹線というような議論がなされていて、もう一つの新幹線が通るということがあり得ます。

 しばしば、これは無駄だというふうに言われるのかもしれないですけれども、よくよく考えると、中央リニア新幹線が通るということで物すごく大きな経済成長効果というものも当然考えられるというふうに思われます。これが二重化の論理であります。

 例えば、連携の論理では、平時のときにはただ単に業者同士が競争していればそれで競争が保障されて経済成長するんだ、こう言われているわけでありますけれども、それぞれの業者が全然情報交流をしないで、分散化していた中で大きな被害があったときには誰も助けることができないということになります。

 したがいまして、平時からいろいろな連携を図っておくことが有事の対策にとっていいということになるわけでありますけれども、平時においてもいろいろな連携をしておくと、その地域そのものがほかの地域と競争するときに、例えば中京圏が関東圏とどう戦うか、あるいは日本海側がどう戦うかということを、ほかの地域と一緒に考えるときには、平時においても、競争だけではなくて協力をしておくということがその地域全体の競争力を高めるということになると思います。

 したがって、いろいろな地域が協力をすると競争がなくなって成長がとまるんじゃないかと言われるかもしれないですけれども、そういう側面はないとは申し上げないですが、国家全体が協力をすることで、より一層強力な経済力を日本国家として携えることができて、アジア、そのほかの国々と戦っていくことができるということがあり得ると思いますので、競争と協力が適切に調和している社会、そういうものをつくるためには、全てを市場に委ねることを避けて、そういう適切なバランスというものは、政治の判断であったりとか、あるいは社会の判断でそういう状況を創出していくことが必要不可欠なのではないかというふうに考えている次第でございます。

井林委員 ありがとうございました。

 最後に、済みません、時間がまだありましたので、佐々参考人に御指導いただきたいと思うんです。

 いろいろな装備をそろえるべきだということが今言われてございます。やはり、全国的に見ると非常に発生確率の低い災害に対して大きな設備投資、または備えが必要だということでございますけれども、それと、我が国で今議論されています地方分権ですとか道州制といったような議論、多極化した都市形態と、そのバランスがまた極めて難しくなってくるのではないかというふうに思います。

 災害対策とそうした地方分権というもののあり方について、御所見があれば賜れればと思います。

佐々参考人 お答えいたします。

 地方分権の問題、特に維新の党その他によって強力に、大阪を都にするんだとか、妙な形で大きく取り上げられて、それにつられて地方分権というのが大きな問題になっているんですけれども、これはどちらかというと行政権の問題と税金の配分の問題、こういう問題として議論されておりますが、危機管理という観点から申しますと、私は、マッカーサー体制というのを打破して、この危機管理に関しては国家を中央集権にしないといかぬと考えております。

 特に、きょうは時間がなくて言えなかったんですけれども、堤防、水の脅威というものが、かつてないほど高まっております。それは、四季折々だった日本から春と秋がなくなっちゃって、冬と夏の、東南アジア並みの状況になって、集中豪雨というのは全く異常な現象ですよね。

 あれは、我々は冷や冷やしているんですけれども、堤防の高さというもの、強さというものは、明治時代の数値を基準にしてやっているんですね。今はどこでも溢水する、堤防が破壊される可能性のある豪雨が思いがけないところで降っております。これこそ広域行政で、何々県でやれるものではない。

 今、私が一番恐れているのは栗橋の決壊なんです。栗橋の決壊というのは、御記憶ないでしょうけれども、昭和二十二年にキャサリン台風というのが関東を襲いまして、栗橋で堤防が切れちゃったんです。そして、切れてみてびっくりしたのは、河床の方が、川底の方が関東平野より高いんですね。しゅんせつしたことがないんだから。

 将軍吉宗が、無理やりに坂東太郎をひん曲げて、銚子に持っていったわけです。その角のぶつかっている所が栗橋ですね。栗橋がしばしば目いっぱい増水してしまって、中川がその分だけ氾濫したりしているんです。

 そうすると、地方分権で多分できないであろうことは、さっき申し上げた破壊消防。大都市で大火災が起こったときに、破壊消防を知事もやれない、国土庁長官もやれないということで、本当に市町村長でできるんですかということです。

 だから、戦後の大きな問題があっても、これは二十九条によって市町村長に与えられている、市の消防長に与えられている権限なんですけれども、これを断行する人はいないと思います。そのためには、堤防を切った場合、自分の市に有利な、村に有利な方向に、隣の村に流れ込むように切るでしょう。そうすると、利害関係がまともにぶつかっちゃいますし、これはやはり、より高い水準で、国家賠償を前提とした体制をとらないかぬなと。

 水というのは、実は、日本の戦後の危機管理行政ではほとんど問題にされていないんです。水というのは、大体四つ、大きな分野がありまして、戦後の農水省や何かで、第一が工業用水なんです。もちろん一番大きいのは農業用水。そして、飲料水その他の上水。そして四番目が遊びなんです。どうやって水と遊ぶかというのが大きな文部省の課題で、危機管理というのはなかったんです。亀井建設大臣のときに初めてそれが導入をされて、水を危機管理の対象にしたんですね。

 実は、もしキャサリン台風がもう一回来て、猛烈な圧力が栗橋にかかって切れたとしましょう。それで溢水をすると、その水は、十数分で東京駅、銀座地下街まで来ちゃうんですね。地下鉄が冠水します。そうすると停電で、どんどん深くなっている地下鉄の人命救助を誰がどうやってやるのという、水を脅威として考えなきゃいけない時代になっているんです。

坂本委員長 答弁者に申し上げます。

 お約束の時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

佐々参考人 はい、わかりました。

 ぜひひとつ、水の脅威というのを、津波だけでなくて、日常的に、堤防が決壊するという形で起こる、そのときの措置、これはもう絶対に、最低、道州制、できれば国交省直接指揮でやらないと、大規模河川の溢水というのは重大な被害をもたらします。こういう問題をきょう問題提起しようと思って、あえて申し上げます。

井林委員 四人の参考人の皆様方、大変短い時間で端的に答えていただきまして、ありがとうございます。また、いただいた御意見を参考に、取り組みを進めてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、四人の参考人の皆様に大変貴重な意見をお伺いすることができました。大変にありがとうございました。

 時間もございませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず最初に、濱田教授の方から、自然災害関連分野の横断的連携が必要だというお話がございました。今、地震の予知に関して研究をなされていらっしゃる平田教授におかれましても、こういったところで連携が必要であるということを御認識されていらっしゃるかとも思うんですけれども、どういった御連携をされながら、今現在、研究に取り組んでいらっしゃるかという点について、平田教授からお話をお伺いできればと思います。

平田参考人 お答えいたします。

 まず一つは、地震あるいは火山の災害は、人間の歴史、人間の人生に比べると非常に長い期間でございますので、理学の研究だけではなくて、歴史学あるいは考古学との連携が非常に重要でございます。それによって、古い時代に何が起きたかということを理解する。

 もちろん、そのときに、災害史の研究が必要でございますから、当時の歴史あるいは政治の状況をきちんと把握した上で、災害がどういうふうに起きたか、それを将来の防災、減災に役に立てるという研究で、人文・社会科学で、もちろん、現在の工学の知識をそこに融合させることは重要でございますので、理学、工学、人文・社会という学際領域の連携を進める必要があるというふうに考えております。

    〔委員長退席、福井委員長代理着席〕

濱村委員 ありがとうございます。

 続いて、先ほどの井林議員の質問とも少し重複するところがあるんですけれども、地方と国との役割分担について少し触れさせていただきたいと思います。

 佐々参考人の方から、中央集権化するという視点も重要であるというお話がございました。そういった視点につきましては、濱田教授も、あるいは藤井教授におかれましても触れておられたというふうに思います。

 濱田教授の方では、国、自治体のリーダーシップの強化が必要であるというふうにおっしゃっておりました。あるいは、藤井教授におかれましては、同じように、必要であるというふうな御見解が発せられたわけでございますけれども、濱田教授、藤井教授におかれまして、地方と国との災害対策における役割分担はどうあるべきかという点について、御見解がおありかと思いますので、御所見をお伺いできればと思います。

濱田参考人 お答えします。

 よく災害に関して、公助、共助、自助という言葉が使われますが、私は今、国土の強靱化に関しては、これは公助だ、国、自治体がやるべきだと思います。

 寺田寅彦先生が、防災は国防であるということをおっしゃっているんですね。まさにこれは国防だ、ですから国が率先してやるべきだと。一事業者に、耐震化というんですか、そういうことを押しつけていても、なかなか進まないというふうに思います。

 そういう意味で、公的資金の投入、これは、私有財産でありますから、非常に大きな問題があるかと思いますが、そういう制度をつくって、公的な資金が投入できるような仕組みをぜひともつくっていただきたいというふうに思います。

藤井参考人 国と地方がどういう役割分担をすべきかということでございますが、基本的に、国内で生ずるリスク、危機、災害に関しては、地方も国も、どちらも当然ながら役割を果たさなければならない、全てのものについて役割を果たすことが必要だろうと思うのがまず一点。

 ただ、さはさりながら、どちらがより中心になるべきかということは当然ながら差配してしかるべきであって、そのときに、やはりナショナルレベル、国家レベルの大地震とか国家レベルの大噴火、国家レベルの、例えば荒川の決壊なんというのも、これも三十数兆円ということを言われておりますから、こういうような国家レベルのもの、あるいは、非常に広域的な、例えば国土全体の森林あるいは農地の荒廃の問題とか、こういう国家レベルのものに関しては、国が中心的な役割を担いつつ地方がそれをサポートするというか、それに協力をしていくという体制が必要になってこようかと思います。

 一方で、地域レベルの河川の災害とか、あるいは複数県の火事とか、そういうものに関しては、地方が中心となってそれに対処すべきだけれども、それを国家がバックアップしていくということが必要になってこようと思います。

 今まさに求められているのは、先ほど各先生方からも御指摘があった、巨大地震というのは、明らかにこれはナショナルレベルの、国家レベルの危機でありますから、中央政府が非常に大きな役割を担っていくことが絶対に必要になるだろうというふうに思います。

 例えば、巨大な地震リスクに対する対応の中で、いろいろな学者の先生方がおっしゃっているのは、先ほども申し上げましたが、一極集中は大きな問題がある、したがって、自律分散協調型のシステム、こういうものをつくっていかないといけないんだということを考えたときに、この問題は、一地域の問題ではなくて、一地域の問題だと、ただ単に単体の耐震補強とか液状化対策ということになってしまいますけれども、自律、分散、協調というシステム的な話になると、一挙にこれはナショナルワイドな、北海道から九州、沖縄まで全ての地域が、何がしかの意味で分散化、自律化の仕事が必要になってくる、そういうふうなことになってまいります。

 ぜひ、こういうレベルに関しては、例えば自律、協調、分散なんかの議論も含めて、こういうことをやる上でも、しばしば、分散化ということを考えるときに、分権化が必要だというような誤解があると思うんですが、これは誤解であって、分散化を進めるためにこそ中央集権化が必要になるということもあったりすると考えられますので、そういう意味で、分権化と中央集権化、どちらがいいかということではなくて、それぞれの領域、イシューに応じて、どの程度の分権化、どの程度の中央集権化が必要なのかということを是々非々で御議論願いたいというふうに思います。

 以上でございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 今、お二人の教授からお話を伺うことができたわけですけれども、やはり、これだから地域でやるべき、あるいはこれだから国でやるべきというお話、レベル感によってしっかりと定義するべきであるというふうに思います。その議論がまだまだし尽くされていないのかなというふうに私も思っております。

 その上で、今、佐々参考人から挙手がありましたので、ぜひ御意見を伺えればと思います。

佐々参考人 その御質問にぴったりの答えは、フェルディナント・ラッサールというドイツの政治学者がおりまして、これが夜警国家論という論文を発表して一躍問題になるわけです。

 それは、ビスマルクの時代に出てきた社会主義者なんですけれども、国が果たすべき任務は治安、防衛、外交、危機管理だ。そのほかの金融、財政、経済、教育、文化、これはみんな、ドイツは連邦ですから、連邦がやってもいいし、民間がやってもいいし、あるいは外国人にやらせてもいい、だけれども、治安、防衛、外交、そして危機管理というのは国家がやらないかぬと。それで、国家というものは、国民が安心して夜眠っている間、夜回りしている夜警国家であるべきだという、夜警国家論というのを打ち出したことがあるんです。

 明らかに小泉純一郎さんはそれをどこかで読んだなと私は思っているんです。だから、郵政なんというのは民間でいいんだと断固としてやっちゃったんですけれども。

 メルクマールをあえて置くとすると、治安、防衛、外交、危機管理というのは中央集権的にやるべきだと私は考えております。

濱村委員 ありがとうございます。

 危機管理について、本当に国家でやるべきというところは我々も認識を共有しているところでありますけれども、一方で、先ほど藤井教授からもありましたけれども、地域の川があふれたとか、そういった管理につきましては、地域でやっていただくのが適切であるというふうに思います。

 ただ、今我々が議論しているところであれば、大きな大きな地震に対して議論をしておったりとか、先日も伊豆大島のような災害があった、他国のことではございますけれどもフィリピンにおける台風被害、こういったことに対する対応というのも必要であるというふうに考えます。

 そうした意味でいうと、今申し上げただけでも、自然災害も複数あるわけですけれども、リスクという意味でいうと、さまざまなリスクがあるというふうに考えます。

 これにつきましては、藤井教授の方から、あらゆる国家的な災害について対策をとるべきだということを御意見として伺うことができたわけですけれども、濱田教授も同じように、コンビナートの災害を例に挙げておられました、こういったリスクにつきまして。あるいは、濱田教授からは、国に潜む脆弱性、これを洗い出す必要があるというふうに御意見を伺いましたけれども、この脆弱性について、もう少しほかの脆弱性についても教えていただきたいというのが一点と、藤井教授にも、あらゆる国家的災害というところについて、ほかの国家的災害についてもぜひ御意見をお伺いできればというふうに思います。

濱田参考人 お答えします。

 まず、リスクという言葉が先ほどから出てきているんですが、リスクに対する正しい考え方といいますか、それがどうも少し乱れているんじゃないかと私は思います。

 リスクといいますのは、起こり得る災害、これは人的災害、いろいろありますが、そういうものに確率を掛けたものをリスクといいます。私、問題なのは、それを混同していると。

 例えば、南海トラフ沿いの巨大地震の発表があったわけですが、あのときの発表は、あり得る最大だというような言い方をしているんですね。あり得る最大、起こり得る最大という言い方をしているんですが、これでは、私は、防災対策は進まないと。

 というのは、我々は、有限の資源を投入して強靱化をしていくわけですから、優先順位をつけなくちゃいけない。そのときに、やはり確率を考えざるを得ない。その辺がどうも議論が混乱をしているというふうに思います。

 二番目の御質問の、どこが脆弱か、それは東京を考えればいろいろあるわけですが、例えば、よく言われるように、木造密集地域、これをどうするんだ、火災をどうするんだ。これを、この町をつくりかえるんだ、高層化するんだと。それは恐らく間に合わないだろうというふうに思います。

 できることは何かというと、要するに、実践に即したような、避難訓練を繰り返すというようなことしか我々はできないんじゃないか。それから、東京は低地がございます。ゼロメーター地帯ですね。今、東京都が河川に鋼管ぐいを打ってこれを補強しているわけですが、これも相当時間がかかる。一旦破堤すれば全体が水没してしまう、そういう脆弱性があるわけですが、そういうものを掘り起こして、何から手をつけるべきか、リスクが一番大きいのは何かという議論をすべきだというふうに思います。

    〔福井委員長代理退席、委員長着席〕

藤井参考人 国家的なリスクとしてどういうものがあるのかということにつきまして、少し追加でお話し申し上げたいと思います。

 先ほど申し上げましたように、地震、大噴火、大洪水等々の自然災害、そういう自然災害に加えて、例えば世界恐慌の危機であったりとか、あるいは消費税の増税のとき、四月一日にどういう事態が起こるのかとか、あるいはエネルギー危機があったり、テロの危機があったり、さまざまなことに関して対策を練るべきだというふうに考えられると申し上げました。

 そういうことをさまざまに考えるために、まずは個別具体的なことをしっかりと考えていくということが当然一つ重要になるわけでありますが、多くの危機、さまざまな種類の危機に対して共通的になさなければならない事柄も浮かび上がってくるというふうに思います。

 そこがさまざまな危機を考える上で重要、有効かと思うんですが、例えば、大地震のときには港湾が大きく破壊されて国際貿易ができなくなるということもありますし、並びに、大地震の場合は、内需がさらにシュリンク、小さくなって、震災デフレという言葉がありますが、そういうものが起こっていく可能性もある。

 並びに、港湾が潰れると、外からの石油なんかが全然来なくなったりしたり、あるいは食料なんかが来なくなったりするとさらに被害が大きくなるということを考えると、そういうためには、一定の自給率の確保というもの、食料とエネルギーに関しては、この国家の強靱性、地震だけを考えたとしても重要になるという論点が出てまいります。

 さらには、内需、すなわち需要に関しても自給率を高めることが必要だ。これは変な言い方でありますが、需要に関する自給率を高めるということは、外需依存度を低減させて内需依存度を上げる、内需型経済をつくり上げておくことが重要であるというふうにも言えます。

 したがって、巨大地震対策を考えるためにも、内需主導経済で、自給率がそれなりに、食料、エネルギーという最低限のものに対しては必要なのだというようなことが議論として出てくるわけであります。

 こういうような強靱化を遂げておくと、例えばリーマン・ショック等で外需が急激に冷え込んだときでもそのショックというものを最小化することができますし、あるいは、増税等で何がしかの内的、外的な経済的なショックがあったときでも、内需がしっかりと存在していれば、その被害というものは最小化できる。

 したがって、たくましい体を持っている人はいろいろなことができるというようなことを考えるときに、やはりいろいろなリスクを考えたときには、ある種バランスのとれたたくましさという像が浮かび上がってくるのではないか。

 そういう意味で、あらゆる危機に対してしっかりと考えておくということは、本当に何に関してもしなやかに対応できる、そういう国家ができるということになるのではないかなというふうに思います。

 そのときに、経済というものはどのリスクに関しても何がしか被害を受けるものでありますから、経済的な強靱性、これは学術用語では経済レジリエンスと呼びますけれども、そういうものをしっかりと担保しておくことが必要であるということと同時に、国土的には、さまざまなリスクに対して、例えば富士山の噴火があったときに東京圏が全て破壊されるということも考えられなくもない。そのときに、やはり一極集中ではなくて、自律分散協調型の国土をつくっておくと、地震に関してだけではなくて噴火なんかにも強くなってくる。

 そういうふうな、全ての危機に対して強靱な国家のあり方は何か、そういう次元の議論というものを重ねていくことが必要じゃないかなというふうに思います。

 以上でございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 優先順位をしっかりと決めて進めていく、あるいは個別をしっかりと議論した上で全体を考えていくことが大切であるというふうに認識をいたしました。

 まだまだ質問は尽きないわけですけれども、時間が来ましたので終了いたします。

 大変にありがとうございました。

坂本委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月と申します。

 平田先生、濱田先生、佐々先生、藤井先生、きょうはありがとうございます。

 藤井先生が言われたように、懈怠なく、あらゆる災害を想定し対処しておくこと、本当に、緊張感のある御示唆、ありがとうございます。

 また、佐々先生、憲法との関係で、消防法、破壊消防を見直す、また、自衛隊法を見直して、災害派遣のあり方、要請の仕方、これも法制度の改善をぜひしっかり我々も検討させていただきたいと思います。きょうはありがとうございます。

 全ての先生にたくさん聞きたいことがあるんですけれども、済みません、十五分と非常に短い時間でございますので、それぞれの先生方がおっしゃっていただいたことを踏まえながら、まず濱田先生にちょっとお伺いしたいと思うんです。

 いただいた資料の八ページに、これだけ重要な港湾である東京湾にコンビナートがあって、六百ものタンクがあって、首都直下地震が想定されている。濱田先生の資料の八ページなんですけれども。これは、多くが民有施設であり、この強靱化が必要だ、民間でなかなかできないんだったら公的資金を投入してやるべきだ、私もそのとおりだと思うんです。

 国土交通委員会でも常々主張させていただいているんですけれども、先生、公的資金投入をしてまず何をやるべきだと。これは護岸、地盤の補強等々あると思うんですけれども、より即効性のある対策として先生はどのような対策を、工法を御提言いただいているのか、これを後ほどお伺いしたいということ。先に私の質問だけ申し上げたいと存じます。まず、それが濱田先生に一点。

 そして、平田先生に大きく三つ伺いたいんですけれども、一つは、先ほど佐々先生のおっしゃった三つ子の大地震が起こる可能性について、東京大学地震研究所地震予知研究センター長でいらっしゃる平田先生は、周りの専門家の方々とともに、どの程度を想定していらっしゃるのか、どういう御知見をお持ちなのかというのが一点目。

 そして、先ほど濱田先生が資料に基づきまして、国土強靱化のところで文部科学省の調査研究プロジェクトを例に出されて、国の機関でも将来想定する地震が統一されておらず、混乱が生じているという御指摘をなさいましたけれども、これについてのコメントといいますか、どういう統一策が有効だと考えられるのかということについてお聞かせいただきたい。済みません、たくさん申し上げて。

 最後に、三つ目の質問は、中長期の地震予知というのは、随分、おかげさまで高まってきていると思うんです。私は「地震予知の科学」という、日本地震学会地震予知検討委員会がまとめられた本を読ませていただいたんですけれども、直前予知というか、緊急地震速報ですね、この精度を高めていくために必要なインフラというのにどのようなものがあるのか。先ほど先生は、海域での観測ポイントを充実させるべきだという御指摘がありました。この本の中でも、宇宙から、また地中から、もっと観測できる、そういう体制をとるべきだという御指摘をされておりますけれども、この直前予報の精度を高めるためのインフラ設備について、何か教えていただければと思います。

 まず、濱田先生、よろしくお願いいたします。

濱田参考人 最初の御質問にお答えしたいと思います。

 このコンビナートが立地している埋立地なんですけれども、この埋立地がいつ造成されたかといいますと、戦後から昭和三十年代にかけて埋め立てられた。年代にどういう意味があるかといいますと、液状化現象というのを我々が最初に認識したのは昭和三十九年の新潟地震であります。その前の文献をいろいろ調べてみますと、砂が噴き出すとかいろいろあるんですが、工学的な観点から認識したのは昭和三十九年です。それから数年たって、対策をしよう、護岸は丈夫につくろうという話になったんですが、それ以前につくられた埋立地があって、そこには何があるかといいますと、戦後の復興期のいわゆる化学工業、石油工業、それから重工業、そういうものが立地をしているわけであります。一旦そういう地盤に物をつくってしまうと、これはなかなか改善が難しいということで、実態がよくわかりませんが、かなりの部分が耐震対策がされないまま放置されている。

 特に護岸が問題だ。護岸が崩壊しますと全体が動き出す。先ほど一例を申し上げましたが、そうしますと、タンクが破壊される、製造施設がやられる、海上に危険物が流れ出す。そういうものをぜひとも防がなくちゃいけない。

 必要なことは何かといいますと、対策工法を開発する。それは非常に長距離にわたって補強しなくちゃいけないということになりますので、大変なお金がかかるかと思います。廉価でできるような効果的な対策工法を開発すべきだというふうに思います。

 それから、二番目の御質問で、混乱の話でありますが、これは私どもの責任だというふうに思いますが、理学と工学の間の乖離がますます広がっていると私は感じております。理学の方は、これも起こる、あれも起こるというようなことをいろいろおっしゃいますが、我々工学の人間は、物をつくる、それによって社会をつくる責任があります。

 自然現象というのはいわば無限大であります。その無限大に向かって我々は社会をつくるわけですが、そのときに一定の線を引かなければならないんです。自然現象に一定の線を引きます。どうもそういう意識、我々が持っているような意識が理学の方の方になかなか浸透していない。これはちょっと反省なんですが、やはり学協会で横断的にそういう意識を統一していく必要があるだろうというふうに思います。

平田参考人 難しい質問なので、うまく答えられるかどうか。

 まず最初の御質問は、三つ子の地震と言われて、その三つ子の意味なんですけれども、私の理解したところでは、首都直下地震のような地震と、それから南海トラフ沿いの地震、そういう意味でよろしいですか。(三日月委員「そうです」と呼ぶ)

 だとしますと、これは、過去にそういう地震は現に起きております。例えば、宝永のとき、あるいは安政のとき、それから慶長のときなどは、関東で大きな地震、それから関西というか南海トラフ沿いで大きな地震も起きておりますから、そういうことは可能性として十分に考慮する必要があると思います。つまり、東日本で日本列島の東半分全体に影響を及ぼすような地震が起きた後に、日本の真ん中、関東から西の方まで含めたような大きな地震がある可能性があるということは事実だと思います。

 それについて、次の御質問とも関連しますが、今、濱田先生からも御指摘があったように、では、それに確率をちゃんと入れて、どのぐらい可能性が高いのかということについては、実は、正直に申し上げるとなかなか難しいということです。

 つまり、確率はいろいろな方法で評価することはできますけれども、次に起きる地震が、本当に関東から東海沖、東南海沖、南海沖、あるいは九州まで含めたような非常に大きなものになるのか、それとも、例えば東海地域だけなのか、あるいは関東地域だけなのかということを、今の知見からだけで明確に言うことは非常に難しいということです。

 ですから、これは、東北の教訓を考えるならば、やはり最大のことが起きたときにはどういうことか、それから、もっと頻度は高いけれども、それでも、やはり東海地域だけで起きてもそれは大きな災害になりますから、それについての備えをするというのが必要かなと思います。

 それから、三番目の、直前の予報についての御質問でございます。

 緊急地震速報というのは、狭い意味の予知とは少し違います。これは、地震が起きたことを早期に検知して、小さな揺れを検知して、次に来る大きな揺れを予測するということです。いわゆる予知というのは、地震そのものが起きることをあらかじめ知るということですので、ちょっと違うんですが。

 今実用化されている緊急地震速報というのは、日本じゅうに百カ所以上の高精度の地震計があって、それでP波という最初に来る小さな揺れを検知して、それから、その地震がどこで起きるかをいち早く計算して、次に来る大きな揺れのSが何秒後にどれだけ来るかということを予報する技術でございますので、これは、地震計が地震の起きたすぐそばにあればあるほど、その時間的猶予が高まります。

 日本では、非常に大きな地震が海域で起きますので、やはり海域に観測網をつくることによって、大きな揺れ、つまりS波が来るまでの猶予時間を稼ぐことはできますので、今整備しつつあるのは、紀伊半島沖の海洋研究開発機構がつくっているのと防災科学技術研究所が東北でつくっている二カ所がありますけれども、こういったものを整備することは非常に役に立ちます。

 それから、本当に地震が起きる前にあらかじめその地震を知るということについては、今、気象庁が、東海地震のために、ひずみ計という地面の伸び縮みを正確にはかる器械でやっていますけれども、大きな地震の前に必ず小さな地殻変動が起きるわけではないというのが最近の地震学の知見です。しかし、起きたときにはそれを確実にキャッチできるような観測体制をとることは非常に重要です。しかし、実際には、観測可能なだけの大きな地殻変動がなくて地震が起きてしまうということもあるということは、社会としては、地震学をそれほど信用せずに備えていただくということが必要かなというふうに思っております。

 以上でございます。

三日月委員 余り地震学を信用せずにということを地震の専門家の先生から言われると、あれなんですけれども。

 最後に、済みません、藤井先生。私どもも昨日、強靱化すべきは国民生活だという視点から、国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法というのを提出させていただきました。それで、その肝は幾つかあるんですけれども、やはり脆弱性評価がポイントだと思うんです。

 より多くの方々に懈怠なく最悪のことを想定していただくためには、専門家、ましてや大臣だけが脆弱性評価を行うのではなくて、広く知見を集めて脆弱性評価を行うことが肝要だ、不可欠だと私は思うんですけれども、その点につきまして、藤井先生のコメントをいただきたいと思います。

藤井参考人 御質問ありがとうございます。三日月先生がまさにおっしゃるとおりだと思います。国家を挙げて、懈怠なく脆弱性評価をすべきである。

 この国家というのは、しばしば、ステート、すなわち政府と同義語で使われるときがあるんですが、本来は国家というものは、先ほども公述のところで申し上げましたように、ネーションステートであって、国民国家全体であって、国家、家でございますから、そこの家族のメンバー全員のことを意味することであります。当然ながら、家長であるところの政府の役割は極めて極めて大きいものではあるんですが、やはり国民一人一人の意識というものが最も重要な要素の一つであることは論をまたないところであると思います。

 例えば、例でありますけれども、民間住宅投資の強靱化投資が進まなければ、やはり、いわゆる旧耐震と呼ばれる古い基準で建てられた建物は非常に危機に今さらされているところ。これに関しては、当然ながら、政府の補助の制度等々もつくるということはできるんですが、民間の投資をするかどうかという判断は、国民一人一人の皆様の判断であります。

 したがって、国民一人一人の意識というものが極めて重要であるということと同時に、専門用語で、経済産業行政の中ではBCP、BCMというものがあります。これも結局、政府の方でBCP、BCMのマニュアルをつくり、それを誘導するための、例えばいろいろな制度というものをつくることが、できることはできるんですけれども、そこでやるかどうかという判断は、それぞれの法人の社長の皆様、経営陣の判断になりますから、まさに先生がおっしゃったように、国家の危機意識の高揚というものが最も重要なものではありますけれども、その国家の国民の皆様方、法人の皆様方、業界の皆様方の御理解並びに強靱化に対する危機意識というものが非常に重要な要素であることは論をまたないという意味で、国土強靱化の行政を進めるに当たっては、恐らくは、いわゆるリスクコミュニケーションであるとか、そういう危機意識の醸成というようなものを中央的な対策の一つに据えなければならないのは当然の取り組みではないかというふうに思います。

三日月委員 ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。

坂本委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 日本維新の会、宮沢隆仁であります。

 四人の先生方、非常におもしろいお話、ありがとうございました。

 私は、ちょっと時間の関係もありますので、藤井先生に限定させていただきます。

 まず最初は、自律分散型国土ということは私は非常に気に入ったんですが、実は日本維新の会は道州制を促進しておりまして、これは災害に対しても有効であろうと。ただ、道州制というものがなかなか国民にもイメージできていない状況ですので、これは私の個人的見解なんですが、多極化という意味で、全国に十から十五ぐらいの、いつでも極になり得るような都市をつくって、地域経済の発展も目指すというような構想を持っているんですが、そのような考え方についてはいかがお考えでしょうか。

藤井参考人 ありがとうございます。

 強靱なシステムは、国土に限らず、通信ネットワークにせよ産業システムにせよ、システムとして考えた場合には、自律、分散そして協調、自律的であるぐらいに分散化しているんだけれども、その多極が、いろいろな分散化された極が連携を図っている、こういうシステムは、一部が破壊されたとしてもどこかが残るということになりますから、非常に強靱なシステムであるというふうに思います。

 したがって、国土の構造というものがやはり国家における枢要な構造になりますから、国土の構造それ自身も自律分散協調型であるべきだと思います。ここで重要なのは自律、分散であり、かつ適切な協調もあるというところであります。ただただ自律、分散だけをしていて、そこで一切の協調がなければ、さながらほかの国のような状況であれば、一つのところが破壊されたとしても救援に行かない、バックアップをとるということができなくなりますので、この協調というものは必ず必要な要素であるというふうに思います。

 その上で、道州制というものをどう考えるかということであります。道州制という言葉はあるのでありますけれども、実は、道州制の中にもさまざま、幅があって、例えば、広域の都道府県、関西連合とか九州連合のような格好で、県同士が今まで連携が不十分であって、それによって国民生活に一定のサービスの低下があったという場合には、都道府県間の連携を図っていくということが必ず必要になってまいりますので、今の仕組みにプラスアルファでそのような格好で連携の仕組みをつくっていくというものも、場合によっては広い意味での道州制ということになります。

 一方で、完全に政府機構を別々にしていくというような、最後に国家は、夜警国家というんでしょうか、それこそ自衛隊の問題であったりとか通貨発行とか、そういう最低限のことだけを国家がやり、あとは全て州政府が持つというようなやり方もあろうかと思います。

 それを考えると、道州制というものをどういうふうに定義するのかということで変わってくるということがまず一点でありますが、今、後者のような仕組みにしてしまうと、極めて自律、分散ではありますが協調が図れないという意味で、逆に脆弱化してしまうというところがありますので、ただ単に自律、分散だけではやはり問題があるというふうに思います。そのような道州制というのは、危機管理の点では大きく問題があるだろうというふうに思います。

 一方で、緩やかな自治体間連携というものを図れるという仕組みであれば、一般にこれは道州制と呼ばれないような気もいたしますけれども、そこまで広げて広域連合的なものを考えるとするならば、これは強靱性を増進する上で非常に有意義になってくるのかなと思います。

 いずれにしても、分断するような要素が入ってしまうような道州制というものは、国家的な、ナショナルレベルのリスクに対しては極めて脆弱化してしまうという危険があるのではないかなと僕は感じているところであります。

宮沢(隆)委員 恐らく道州制に至るプロセスは相当多様であるというふうに理解いたしました。貴重な御意見をありがとうございました。

 それから、先ほど経済的レジリエンスという言葉をお使いになりましたが、先生にいただいた資料をちょっと昨日読んだんですが、これを書かれた時点では、TPPには大反対ということがたしか書かれてあったと思うんです。現在、安倍政権はTPPはもうどんどん促進している状況なんですが、今の段階での先生のTPPに対する見解はいかがでしょうか。

藤井参考人 京都大学教授として、理論的な観点からお答え申し上げたいと思います。

 TPPについては、今政府がお取り組みになっておられるという取り組みでございますので、国益を最大化する方向でその交渉を検討いただきたいというのが、当然ながら、一学者としての願いであります。

 その上で、強靱性というものとTPPというものの関係に関しましては、強靱化するという概念の中に、先ほども申し上げましたけれども、自給率の増進というものが非常に重要な意味を持ってまいります。エネルギーの自給率並びに食料の自給率、エネルギー安全保障並びに食料安全保障と呼ばれますけれども、こういうものを一定確保するということが強靱化の上で極めて重要であるということは論をまたないところであります。

 その意味で、もしもTPPというものがエネルギー自給率並びに食料自給率、さらに言いますと、先ほども申し上げましたような需要の自給率、要するに内需率、そういうものを低下させるものであるとするならば、TPPというものは一定の国力の毀損を危機管理の観点からもたらすであろうということに論理的に帰結するというふうに思います。

 しかしながら、先ほどの道州制の議論も同様でありますけれども、TPPの交渉いかんによって今申し上げたような要素がどう変わってくるのかというところは、一国民として注目してまいりたいというところでありますので、そこの部分については、国益をきちんと守っていただく方向で、一国民としてはそういうことが起こらないような方向で進めていただきたいと思いますが、もしも自給率を下げるような方向にそれが展開するということであるならば、脆弱性を向上させるということが論理的な帰結として導かれるということは、京都大学教授として申し上げられることかなというふうに思います。

宮沢(隆)委員 TPPの交渉の結果次第というふうに理解いたしました。

 先生の一連の強靱化に対する哲学の中に、成長神話とかあるいは競争促進という言葉が出てきて、常に災害を意識していましょうということであると思うんですが、実は私は医者なんですけれども、個々の人間一人一人にとってもそれは同じことで、病気やら外傷やら、災害はいつやってくるかわからない。ところが、健康とか、いつけがをするかわからないとかと余りそっちの方に入っていっちゃうと、日々生きた心地がしないとかあるいは健康フェチとか、そういう現象に入っていっちゃうことがあるんですね。むしろそれがストレスになって、ノイローゼになってしまう人もいる。

 それを今度は国家の話に移した場合に、もちろん僕は先生に大賛成で、国民一人一人が災害を常に意識するというのはそうでなきゃいけないと思うんですが、例えば、先ほど国民生活のレジリエンスという言葉を民主党から提言されましたが、日本人一人一人のレジリエンスというふうに置きかえた場合に、まずはそれに対して先生がどのようなお考えをお持ちかということと、それから、先生がこのレジリエンスという考え方の上に立って、どのような国家を念頭に置いてこれを提唱されているのかというのをちょっとお聞きしたいと思います。

藤井参考人 重ねて、ありがとうございます。

 一人一人の国民の強靱性と国家の強靱性の関係でありますけれども、これにつきましては、やはり、福沢諭吉先生がおっしゃった、一身独立し一国独立す、これと全く同じ関係が強靱化の上でもあるのではないかというふうに感じております。したがって、一人一人の国民が強靱化を果たす。すなわち、さまざまなリスクというものを織り込んだ上での生活を行っている。織り込むというのは、例えば武士であるならば、毎朝毎夕懈怠なくそれを想像する、そしてそれに対して備えを怠らないということかと思います。

 そういう国民で構成された国家であるのならば、例えば政府が強靱化というような方針を打ち出したときには、当然ながら、その内容についての議論、公論が喚起されることだと思いますが、危機意識を十二分に持った国民であるならば、それは大きく賛同されていくだろう、内容に関しては議論されるとしても、方向に関しては賛同されるのではないかというふうに思いますので、国民の強靱化というものは国家の強靱化、国家全体の、政府の強靱化、全体と大きくつながっているだろうというふうに思います。

 そして、先ほどの御指摘を踏まえまして、どういうような国家を構想するのかということでありますけれども、私は次のように思っております。

 先ほど公述のところでも申し上げましたけれども、社会風土、社会の文化それ自体の中に災害対応が織り込まれている社会。そういう社会は、ふだんやっていることがそのまま災害対策になっている。これはしばしば防災研究なんかで言われているんですけれども、年に一回行うお祭り、大阪にありますだんじり祭りなんかも含めて、いろいろなお祭りというもので年に一回みんなで共同で何かをやっていくということをやっているので、そこでいろいろなネットワークができて、災害にも強くなっていくというような社会学的な効果があったりとかします。

 そこで重要なポイントは、だんじり祭りをやっているときは、ただただ、そこにだんじりを愛している住民がおられるということであって、先ほど心的ストレスのことをおっしゃられましたけれども、常に地震のことを考えているような状況で地震に備えるのではなくて、地震対応というものが文化的に溶け込んでいる、そして、そういう状況であるがゆえに、何かが起こったときにすぐに対応がとれる、そういうようなことがいろいろなところに含まれているという国家が強靱な国家であり、それを構想すべきではないか。

 そういうような国家というのは、一極集中ではなくて、恐らく自律、分散で協調的であるでしょうし、全て、サプライチェーンにしろ、いろいろなお仕事上のつき合いも、一重ではなくて複数のおつき合いがあって、その中でいろいろと対応している社会であるでしょう。

 すなわち、それは、いろいろな地域間できずながたくさんあるような国家であって、一つのものが有事に転用できるということは、一つのものに関していろいろな、文化的、経済的、社会的な意味を帯びている。例えばお祭りというものは、経済学的な意味もあれば、地域コミュニティー的な意味もあれば、歴史的な意味もあれば、さらには政治的な意味もある。

 そういうようなことで、一つのものが多面的な意味を持っているというもの、たくさん持っている社会というものは、何が起こったとしてもすぐに対応できるというふうに思いますので、要するに、非近代的で無機的だけれども、有機的にいろいろなものが連携しているような社会、それが極めて強靱で、しなやかで強い、たくましい社会ではないかというふうに感じております。

 以上でございます。

宮沢(隆)委員 よくわかりました。どうもありがとうございました。

 これで終わります。

坂本委員長 次に、佐藤正夫君。

佐藤(正)委員 みんなの党の佐藤正夫です。きょうはありがとうございます。

 早速ですが、先ほど濱田先生の方から、いわゆる民間の施設、コンビナートにも公的資金を入れろというお話がありました。そこで、先生の本それから資料を見ますと、コンビナートについてはかなりお詳しいようでありますので、工法も含めて先ほど御質問がありましたけれども、例えば首都直下型地震を考えたときに、今あるコンビナート、ここに公的資金を入れるとすれば、どれぐらいの費用がかかるか想定されていますでしょうか。

濱田参考人 お答えします。

 一例を申し上げますが、護岸を補強する方法の一つとして、埋立地があるわけですが、その島全体を、直径一メーター五十センチの大口径の鋼管ぐいを連続的に打設して、地面が横に動くのを阻止するという方法が提案されたことがございます。

 これは一メーター当たり幾らかかるか。三百三十万かかるという話になりました。これは大変なお金だということなんですが、東京湾で仮に百キロ、これを補強するとすると、三千億です。三大湾、東京湾、伊勢湾、大阪湾、全部やっても一兆円。

 先ほどちょっと申し上げなかったんですが、東京湾で生産をされている揮発油、これは国税がかかりますが、これが年間どのくらいあるかというと、一兆円あるんですね。島がやられて石油精製工場がやられれば、税金のもともとがなくなるわけですから、予防措置としてそういうものを投入するということは十分考えられるんじゃないかというふうに思います。

佐藤(正)委員 要は、民間に公的資金を入れるというのはなかなか難しいことだろうと思います、例えば原発施設もそうですから。

 ただ、そうはいっても、どれぐらいのお金が実際にかかるのか、そういう根拠がないと、我々が今から、先ほど民主党の三日月さんが前向きに考えていきたいといっても、全く数字が見えないと、なかなか前に進んでいかないというのが現実だと思います。それで今、予算的なものがどれぐらいかかるのかというのをお尋ねさせていただきました。

 次に、この間、大島に当委員会で視察に行かせていただいたわけですけれども、避難勧告についてなんです。そこでは、基本的に、町長さんがお留守で出なかったということなんですが、この避難勧告自体が今市町村長に任せられておるんですけれども、その点について、四名の先生方に御意見を聞かせていただきたいと思います。

平田参考人 お答えいたします。

 私は、地震学の専門でございますので、それほど専門的な知見はございませんが、例えば大規模な地震の広域に発生した被害に対しては、必ずしも市町村の単位では対応できないということがあると思います。

 しかし、地震の揺れあるいは津波の高さというのは、地域地域によって、地域の例えば地盤の強さであるとか入り江の形などによって非常に違いますから、やはり地域のことをよく知っている自治体の知識というのは非常に重要と思います。

 それと、東日本大震災のときのように非常に広域に津波災害が起きたときに、それを地域、自治体をまたがって連携してやらなければいけないときには、単に市町村の、自治体の長の方だけの判断を超えたところもあるというのも事実だと思いますので、そこをうまく連携する仕組みが必要かなというふうに私は思います。

 以上です。

濱田参考人 直接のお答えにならないかもしれませんが、今回の震災でもそうですが、それと神戸のときもそうだったと思いますが、要するに、情報収集のおくれというものが緊急対応のおくれにつながっている、そういうことを我々は繰り返してきているわけですね。

 情報の問題はいつも取り上げられます。ただ、なかなか改善されていない。こういうものにやはり抜本的に取り組んで、情報をきちっと集めて、必要な避難誘導に努めるということが重要だというふうに思います。

佐々参考人 今御答弁がございましたけれども、被害状況というか、津波の強さだとか高さだとか火災の状況とかというのは、実はほとんど二十四時間わからないんです。それは、問題が起こっているところというのは報告している暇がなくて、自分もやられちゃっているし、物すごくおくれるんです。

 神戸大震災のときのNHKの朝の八時ごろのニュースは、何とか小学校の窓ガラスが何百枚割れましたなんて言っているんですよ。内閣も全然危機感を持っていなかったし、あんな大きなことになっているというのは誰も知らないわけです、誰も報告してきませんから。

 だから、特にどの程度国が態勢をとって応援するかというのは、やはり二十四時間後ぐらいになります。そこで、最初の二十四時間が、ある程度自動的に作動する、マニュアル化したものである必要があるわけですね。

 その中で、例えば、東京直下型とおっしゃいましたけれども、警視庁四万三千とよく言います、四万の警察官がおると。ところが、三交代でやっていますから、一万人はいないんですよ、休んでいますから。それで、その次の一万人が、下手すると夕方六時ぐらいになるとみんな帰途についちゃうわけです。だから、実勢力というのは一万と我々は思っているんです。

 その意味で、さっき申し上げたように、自衛隊が要請を待たずに動いてくれるということがすごく大事になる。

 なぜなら、第一師団という練馬にいるのは八千、ばっちり、みんな集合宿営していますから、警備力がまとまっているんです。それから、非常に近いところに強力な部隊がおります。習志野に千五百の落下傘部隊がおりますね。それから、富士教導団という、富士に下士官ばかりでつくった新兵教育用の精鋭部隊が千五百おります。チヌーク大型ヘリコプターや何かを持っておりますから。

 一番最初、二十四時間ぐらいは、警視庁機動隊よりは、場合によっては自衛隊が来てくれる方が、もしそういうシステムをつくっておけば、早いんですね。そこで、自衛隊法八十三条の要請主義は変えましょうとさっき申し上げたわけです。

 その意味で、やはり最初の二十四時間というのは、これは先ほどお話に出ました自助、共助。公助が出てくるにはどうしても閣議決定が要りますし、今の制度でいきますと、四十八時間ぐらいはだめです。国が出動するといっても、閣議決定しないと出られませんから。その意味では、自助と共助なんです。自分たちで守る、それから、共助というのはお互いに助け合う。

 阪神大震災の実例を見ましても、八千人ぐらい埋まっちゃったわけです。そのうち、助け出された人の事後調査をやってみると、その六割が家族及び隣組なんです。隣の人に助けてもらっている。警察に掘り出してもらった、消防に掘り出してもらったというのは実は少ないんです。

 そういう状況ですので、やはり、さっきからお話の出ている、藤井さんなんかもおっしゃっているコミュニティーといいますか自助体制、自分で自分を助けるという基本が災害対策の基本だと思います、自分の家族は自分で守れというのが。これを徹底しないといかぬと思います。

藤井参考人 御質問は、例えば大島の避難指示のあり方等々に端を発するような議論だと思いますけれども、これは、要するに、国土強靱化あるいはナショナルレジリエンスにかかわる広義の議論として考えますと、次のように言えるかと思います。

 すなわち、ナショナルレジリエンスを高めていくためには、国土といいますか、インフラですとかそういうものも強靱化しないといけないし、幾つか御議論があったように、国民そのものも強靱化しないといけないと同時に、主権も強靱化しないといけない。主権とは何かというと、これは、政策とか政治の仕組みというふうに簡単に言いかえてもいいと思います。それで、それぞれに対してリスクマネジメントにおける脆弱性評価を行う必要があるというのが、ナショナルレジリエンスの取り組みの上で極めて重要なところになると思うんです。

 そのさまざまな仕組みの中の一つに避難指示制度というものがあって、それに関して脆弱性があったという疑義が今指摘されているわけでございますから、これに関しては、今申し上げましたような、政治的な仕組み、行政的な仕組みの強靱化のための脆弱性評価を徹底的にやって、どういうことが起こり得るのかということを考えて、何が起こっても適切な避難誘導ができるような体制をどうするべきなのかというふうに議論を組み立てていただきたいと思います。

 そのときに、佐々先生がおっしゃったように、最悪の場合、行政の仕組みが全部潰れている可能性がありますから、その場合に、自助というものをやはり強靱化しておくことが必要である。それとともに、行政の仕組みの一部が残っているけれども、今、インチャージしている、要するに責任を持っている首長の方、村長、町長の方だけが被災をしているという可能性も当然ながら考えられるわけでありますから、そのときにもきちんと避難指示ができるような制度という意味で、それは、県とかあるいは政府というものが何がしかの対応をとることができるような仕組み、あるいは、そういう場合も見据えて、とるような仕組みの必要性なんかも議論していくことが必要なんじゃないかと思います。

 いずれにしても、避難指示問題というのは、今回、脆弱性評価として脆弱であるということが明らかになった事例ではないかと学者として認識しておりますので、ぜひ皆様方で、そのあたりの強靱化、脆弱性評価に基づく強靱化というものをお願いしたいというふうに思います。

佐藤(正)委員 なぜそういう質問をしたかと申しますと、大島だけじゃないんですよ。集中豪雨のときも同じようなことが多々あるんですね。首長さんが判断をし切れない。

 今御答弁いただいたわけですけれども、情報が薄い、これはまさに政府としてやはり考えなきゃいけないことだと思っています。今言うように、一番大事なのは、そういう仕組み、そういうソフト、ここの脆弱性をしっかりまずやることが一番先だろうと私は思って質問をさせていただきました。

 それから、もう時間がありませんので、藤井先生にお尋ねしたいんですけれども、例えば、先ほど優先順位をつけてやらなきゃいけないというお答えをされておりましたが、具体的に、今、大震災の復興をやっていますよね。そして、今回、南海トラフそれから首都直下型、これは法案に我々は賛成したわけですけれども、そうやって考えてみますと、今、優先順位は何なのかというのを明確に出さないと、確かに一遍に全てできれば最高にいいんですが、それは当然不可能ですよね。人もいない、物もない、お金も当然ですが、そういう意味では、藤井先生がどのように優先順位を考えていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

藤井参考人 どうもありがとうございます。

 強靱性という概念でいいますと、東日本大震災はどういうプロセスにあるかというと、激甚被害を受けて二年数カ月たって、今回復の過程にあるというところでありますから、強靱性を担保するためにも徹底的に復旧復興作業を進めていかないといけないというのが、当然ながら日本国家として最優先課題であろうというのが一つでございます。

 さはさりながら、それ以外のものに関しても、いつ地震が起こるかわからないということでございますので、強靱化を果たしていかないといけない。そのときに、優先順位を当然つけていかないといけない。そのときに、やはり重要になってくるのが、濱田先生が御指摘になったようないわゆるリスクの概念であって、被害の深刻さ並びにその起こり得る確率、確率というよりも起こりやすさ。ただ、不確実性というものを評価するのは必ずしも確率尺度だけではなくて、ライクリフッドとかいろいろな尺度がありますので、いずれにしても、起こりやすさと一般名詞で申し上げますけれども、その深刻さと起こりやすさ、この二つで評価をしていくことが必要だろうと思います。

 ただ、起こりやすさという点で余り起こりやすくなかったとしても、国家にとって極めて深刻な問題というものは幾つか考えられる。これは必ずしも全て言及しなくとも、多くの国民の方が共有できるような極めて重要な項目があると思いますが、それに関しては徹底的に強靱化していくことが必要だろう。

 わかりやすいもので申し上げますと、例えば官邸とか国会とか、そういう建物の強靱化というのが大事になってくるでしょうし、あるいは地域レベルでいうと学校とか役所というものが非常に重要になってくるかなというふうに思います。

 そういう意味で、確率は低かったとしても、本当に国家にとって大事なものは優先してしかるべきでありますし、それ以外のものに関しては深刻さと確率ということになってくる。そのときに、やはりコンビナートの問題というのはかなり確率も高そうだという指摘もありますし、その被害の程度も極めて深刻だということが見込まれていますので、このあたりに関してはかなりやっておくことが必要だろうというふうに思います。

佐藤(正)委員 時間が参りました。

 一つだけ、道州制の議論が先ほどありましたが、道州制になると連絡がとれない、横のつながりがない、これは全く違いますから、やはりそこはしっかりと国家としての形を示すわけですから、それは全然違うということだけ御指摘をして、質問を終わります。

坂本委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、貴重なお時間をいただきまして御意見をいただきましたこと、お礼を申し上げます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず平田参考人に伺いますけれども、先ほどの資料の一番最後のまとめの中で、このように先生はおっしゃっていらっしゃいます。日本には、世界トップレベルの地震観測網があり、災害の軽減に貢献している。その中でも、先ほど詳細なデータの積み上げの経験などを紹介していただいたわけです。

 私たちも、例えば海底地震計を、私は東北ですので、宮城県沖地震に備えてもっとふやしてほしいとか、そういう要望をやってきたなということを考えてさっき聞いていたんですけれども、実際、今求められる観測網、観測網の体制というものがトップレベルだとおっしゃるんですけれども、十分なのか、あるいはもっとこういう分野が必要なのではないかとか、そうした御意見を伺いたいと思います。

平田参考人 お答えいたします。

 私が例示した地震の観測網、地殻変動の観測網というのは、実は阪神・淡路大震災の後に国として非常に力を入れてつくった観測網でございまして、これは掛け値なく世界のトップレベルと思います。ただ、問題は、地震の調査研究は長期にわたってデータをとり続けるということが必要で、なかなかそれは難しい状況です。新しい研究をするとか新しい施策をするということで次々とつくっていくのは我が国では比較的、地震の後にできていますけれども、それを継続して、例えば、国土地理院は明治から測量を繰り返して、百年、二百年とデータをとっていますから、そういうことをやはり続けていくということが、かなり地味ではございますけれども、必要なことだと思います。

 もう一つは、御指摘がございましたように、日本では海域で大きな地震が起きて、東北でも引き続き、おととしの地震があったからもう安全ということはなくて、津波の起きるような大きな地震が起きる可能性は依然として高いと私は思いますので、海底のケーブルの整備を着実に進めていく。東北だけではなくて、西南日本であるとか、あるいは日本海側でもやはりそういうことは必要で、ただ、お金が非常にかかることでございますから、優先順位を確かにつけて、着実に進めていくことが必要ではないかというふうに思います。

 以上です。

高橋(千)委員 今のお話は、技術的にはトップレベルのものを持っているんだけれども、しかし、全体を網羅するには、まだ長期にもかかるし、予算もかなりかかるんだというお話だったと思います。先生、今、かなり地味なとおっしゃったのは、すごく大事なことだと思って、やはり基礎的なそういう力をつけていくということが本当に求められているのではないかと思っています。

 そこに関連してもう一問伺いたいんですが、人の役割というのをどのようにお考えでしょうか。

 この間、測候所の廃止などがずっとやられてきて、原則全廃ということになって、気象台に集中されたということと、それと引きかえに、観測の機械というのは物すごくハイレベルなものになりました。でも、先ほどお話にもあった大島の被害なども、実は、測候所があって、人が迅速に警戒をアドバイスできるということもあったのになという指摘もございます。

 ですから、データの積み上げをずっとやっていくもので、それを本当に防災に生かすという点で、人の役割というのも大事なんじゃないかなと思うんですが、一言いただければと思います。

平田参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、人の役割は非常に重要でございまして、地震や火山の災害というのは、人間の一生のスケールに比べて長い時間の現象を扱うので、特に人材の育成という観点で、研究者、技術者、それから防災の行政の担当の方も含めて、技術を継承し、新しい知見を得るということでは、人が継承していくということは非常に重要なことだと思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 次に、濱田参考人に伺いたいと思うんですが、コンビナートの被害について、非常に興味深く伺いました。

 そこで、先生、これまでいろいろなところで書かれているもので、長周期地震動によるスロッシング被害ですとか液状化など、やはり複合的な被害が拡大するのではないかということを指摘されていると思うんですね。その中で、では、どういう被害が起こるのか、起こり得るリスクがあるのかという点で、一つは、先生おっしゃっていますけれども、東日本大震災による液状化被害、地震動の関連による被害がどのようなものだったのかというその全容を明らかにする問題と、それから、それぞれのコンビナートのいわゆる地盤、液状化しやすい地盤であるかどうかとか、そういう調査などをどの程度やられているのか、あるいはできるのかという点で御提言いただければと思います。

濱田参考人 お答えします。

 東日本大震災で、例えば東京湾のコンビナート地区で何が起こったかということを調べることは極めて重要であります。東日本大震災での東京湾の揺れと、将来起こるであろう東京湾北部地震、これは数倍違います。恐らく液状化のぐあいも格段に違うだろう。それを予測するために、東日本大震災で何が起こったかということを調べる必要があると思いますが、残念ながら、そういうデータというのは十分には集まっておりません。それは、企業の中の事業所の中で起こったものでして、立ち入って調べることができない、これは非常に残念なことであります。

 私はいつも申し上げるんですが、先ほど来、公的資金を投入すべきだということを申し上げたんですが、公的資金を投入する前に、やはり企業のトップの見識、これに期待をしたい。自分の事業所のリスク、これをきちっと意識して必要な投資をしていくということが重要なんじゃないか。

 川崎のコンビナートのある一角でありますが、アメリカ系の石油会社がございますけれども、そこはもう三十年前に液状化対策をいたしました。その隣の日本系の石油会社はいまだに何もしていない。

 私は、日本の企業のトップが、リスクに対する感覚といいますか、そういうものが非常に薄いんじゃないか、それを機会を捉えて皆さんに申し上げて、やはりトップの判断というのが非常に重要になるだろうというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございます。非常に貴重な御提言だったかと思います。

 確かに、企業にしてみれば、リスクを公表するということは、そのものが自分たちの営業にかかわるものでもあるので、なかなかやりにくいということがあるんだろう。だけれども、コンビナートというのはほとんど民間企業が立地しているという中で、やはりそれを乗り越えていかないと、だからこそ国がリーダーシップをとってほしいということだったのかなと思います。

 例えば、経済産業省が昨年度の補正予算で産業・エネルギー基盤強靱性確保調査事業というのを計上しております。石油コンビナートなどを持つ十三の事業所を対象に、ボーリング調査などによる液状化や側方流動などの評価を委託しているということなんですね。

 ただ、その結果について、例えば立地の自治体ですとか住民などに公開していただかないと、調査はしたんだけれどもわからないということになる。そういうのが大きな一歩になるのかなと思っていますが、御意見をいただければ。

濱田参考人 お答えします。

 先ほど、ちょっと私、冒頭の説明で、私の資料の十枚目の説明を少し省略しましたが、おっしゃるように、経済産業省がこの産業・エネルギー基盤強靱性確保調査事業というのを始めております。

 ただし、これは十分ではありません。手を挙げた事業所、これに公的資金を投入して調査をしているということですが、抜けているところがいっぱいございます。抜けているところがあるということは極めて重大でして、一つの事業所が被災をしますと、その被災が他の隣接する事業所に及びます。島全体に及びます。島の被害が海域を通して他の島に及ぶということですから、これは全体でやらなければ意味がない。

 経済産業省にもいつも申し上げておりますが、この事業を次年度もぜひとも継続すべきだ、それから、調査をしてそれで終わりということには決してならないだろう、調査をした後、これをいかに補強するか、工法がどういうものがあるか、そういう調査もあわせて進めていかなくちゃいけないと。

 それと、今度は実際に補強、実施、実践ということになりますと、それをどういうふうに国が助けていくか、補助率とかそういうことになるかと思いますが、そういうような制度整備も必要だろうというふうに思います。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 藤井参考人に伺いたいと思います。

 昨年、藤井参考人が自民党の国土強靱化総合調査会に呼ばれて講演をされた。強くしなやかな国を目指してということで、膨大な本になっておりますので、拝見をいたしました。ただ、そのときに進めていた国土強靱化の法案というのと、今どうなのかということで、先生が率直にどう思っていらっしゃるのかを伺いたいと思うんですね。

 十年間で二百兆円ということがよく言われました。そのことは、そもそも一年間で二十兆円は大した額ではないのだということもおっしゃっておられます。また同時に、国土強靱化というだけではなくて、リスクがあっても成長できる国にすることが強靱化なんだと。きょうも最後に成長戦略のことをおっしゃいました。

 そういう意図と、今、民主党さんからも修正案も出されているという中で、今出されている法案というのは、先生が考えていらっしゃったものから見てどうなんでしょうかということです。

藤井参考人 お答えしたいと思います。

 まず、十年で二百兆程度使う必要があるということを、私は、書籍並びに国会の委員会等でも主張申し上げていたかと思います。自民党の政務調査会でも主張申し上げていたと思います。その学術的根拠というものを、当然、私はそのときに示しておりました。それにつきまして、どれぐらいの金額が合理的なのかということを含めた議論というものが、これから当然必要になってくるだろうというふうに思います。

 ただ、その金額について、私は一学者としてそれを公表申し上げていたわけではありますけれども、もし仮に、政府として、財政規模というものを含めて強靱化の方針を考えていくというときには、次のように考えるべきだろうというふうに私は思います。

 それは、例えば、イメージとして、少しずつ投入をしていって、そのうち地震が起きてしまう。そうしたら、大して強靱化されないうちに地震が来るので、被害がかなり大きくなる。その一方で、物すごく巨大な財政を組んで、それで強靱化を果たして、地震が来ても大丈夫なようにする。メリット、デメリット等を考えたときに、たくさんの財源を組んで、地震が来て、それで大丈夫だったというシナリオと、それから、少しずつ少しずつ強靱化をして、やはり途中で地震が来てしまったというときの国益全体と、我が日本国家の安泰とか安寧とかいうものをこの二十年、三十年という視点で考えたときに、どちらが有効なのかということを考える。こういう視点でもって財政規模というものを考えていくべきであろうというふうに思います。そういうような視点でもって、当時、私がああいう試算に基づいて申し上げていたということでございます。

 そのときに、やはり、大きな地震があったときに、成長できなくなって大きく問題があるという、二つのシナリオで申し上げたわけでありますけれども、これは連続的な数字でありますから、これに関してはどの程度なのかということを、より議論の精緻化を図っていくことが必要だろうというのが一点。

 並びに、そういうような発想が必要なのだということを理解した上では、是々非々で、全省庁の力を使いながらきちんと脆弱性評価を行って、それに対してどういうような政策をやることが合理的なのかということも、これも是々非々で、査定をきちんとしながらやっていく。

 その結果として、どれぐらいの財政規模になるのかということを考えていくことが必要であろうと思いますし、そういうような方向に現法案があるのではないかというふうに考えますと、計算の精度の差こそあれ、基本的な方向については、さして大きく違いはないのではないかというふうに認識しているところであります。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 私は、きょうの先生方のお話を聞いていて、やはり、ちょっと災害対策特別委員会の枠でこの国土強靱化を議論するのは難しいかな、もう少し大きなレベルで、あるいは時間をかけて議論する必要があるかな、一つ一つ大事な問題だなと思って承りました。

 終わります。以上です。

坂本委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党、小宮山泰子でございます。

 きょうは、四名の皆様、本当に貴重な御意見、また研究をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。私が最後の質問者となりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、まず最初ですけれども、平田先生にお伺いしたいと思います。

 日経ビジネスの、これは去年のですか、記事等も読ませていただきました。その中で、「東京に大地震が起きていないのは幸運でしかない」という見出しの記事がございました。先ほど東北地方の地殻変動の御説明を伺ったときにも、東西に現在も伸びているという御説明もありました。大変心配もするところでもありますし、先週の参考人質疑におきましても、必ず来るんだという、その思いで見なければならないんだということ、災害はいつ来るかわからない、忘れたころにやってくるなんという言葉は昔からございますけれども、本当にそのとおりなんだなというふうに思っております。

 そこで、私、住んでおりますのが埼玉県でございまして、北関東の部類になるんだと思いますが、南関東を随分と取り上げておりますけれども、首都圏といった中で、内陸のところというのはなかなか取り上げられることがございません。この点に関しての研究の進みぐあいとか、特に、津波が来るエリアでもない、また、そういう意味では、濱田先生にもお伺いしようと思っておりますけれども、恐らく内陸に向けての緊急輸送道路とか、そういうものも今後考えていかなければならないんだというふうに考えております。

 そういった意味で、トータルな面で捉えると、この点に関しましてどんな研究が今されているのか、予知がされているのかというようなこともちょっとお聞かせいただければというふうに思います。

平田参考人 お答えいたします。

 内陸の地震というので一番記憶に新しいのは、やはり平成七年、一九九五年の阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震でございます。この地震は、いわゆる活断層で起きた地震ということになっておりますが、実はその後、地表ではっきりと活断層として認められていないところで、例えば二〇〇四年の新潟県中越地震であるとか、あるいは宮城県の地震などが起きております。それから、東北の地震の後でも、茨城県と福島県の県境付近では、一種の余震ですけれども、それでもマグニチュード七を超える大きな地震が起きて、人的な被害もございます。

 そういった観点からいうと、平均してマグニチュード七程度の地震は内陸で一年に一回以上は起きているわけですから、それが人の住んでいる都市部あるいは市町村で起きれば被害が出るということでございます。ということは、皆さんが住んでいる場所の揺れやすさというのを日ごろからよく理解して、それで、日本の耐震技術というのはすぐれているものがあると私は思っておりますので、いわゆる新耐震以前の木造家屋についての耐震化等を進めるということは重要でございます。

 残念なことに、地震学では、内陸のどこでいつ地震が起きるということを十分な精度で言うことは今はできませんので、これは何%という、そういう平均的な頻度の概念を使って十分な備えをする必要があるというふうに思っております。

 以上です。

小宮山委員 ありがとうございます。

 東日本大震災の直前に起きましたニュージーランドのクライストチャーチも、たしか内陸でありました。私も被災地へ行かせていただきましたけれども、本当に、過去の記録がしっかり残っているかどうかというのは大変重要なことだと思います。また、研究が進むということによって今後の予知というものに役立てていただけるような、そういった体制を御支援できればなというふうに思っております。

 さて、コンビナートのこととか、本当に考えなければいけない問題がたくさんあるんだと思います。東日本大震災のときも、海外からの輸送や物資など、そういう意味では、海からちゃんと運んでということはあったにもかかわらず、残念ながら港湾に船を横づけすることができなかったということも伺っております。

 また、そういったことになりますと、先ほどから佐々参考人さんからも、二十四時間以内というのは、どんな状況になっているのか、情報を収集することがやはり難しいというお話もございました。その中で、もちろん緊急の備えとしての港湾部分というのも大変重要かと思いますが、首都圏ということで限って考えてみますと、内陸へ向けての避難路というものも大変重要になるのではないかというふうに思っております。

 先生の研究の中でその点があるか、申しわけございません、事前に調べておりませんけれども、そういった観点での議論等がございましたら、御紹介いただければというふうに思います。

濱田参考人 首都圏で地震が起こったときの緊急対応、緊急物資、人員の輸送路についてはいろいろ議論をされてきているわけですが、先ほど東京湾の話をしましたが、東京湾に国土交通省が基幹的防災拠点というのをつくった。ここは、船舶で物資あるいは人員を東扇島に集めて、小型船舶で被災地に運ぶということなんですが、先ほど申し上げましたように、これが本当に機能するのか。同じ国土交通省の中でも、基幹的防災拠点をつくっている部局と航路を守ろうとする部局、これは分かれております。その連携がないまま、こういうものになったということだと思います。

 それから、陸路につきましては、東名高速道路がどうなるか、第二東名がどうなるか、中央高速道路が使えるのか、そういう検討もしております。これからもしなくちゃいけない。

 交通機能を確保するためにどこを補強すべきなのか、どこにお金をかけるべきかというようなことを検討していく必要があると思います。

小宮山委員 ありがとうございます。

 大変興味深いことだと思いますし、また、私の住んでいるところは、関越自動車道も通っております、また圏央道も開通をしている部分でありますけれども、本当に、先ほどから藤井参考人のお話を聞いていると、何を優先したらいいのかというのは大変迷うところでもあり、また、それよりも、強靱化ということは、もしかすると、今まで単体で、先生も今、分かれて計画されていたり検討されているというのがありましたけれども、そういうものを複合的に、価値観をふやすという話なのかなと。であるならば、なおのこと、物を四方から見るからこそ、優先順位というのをつけるのは大変難しくなるなというふうにちょっと感じているところでもあります。

 先日、首都直下の法案の質問をさせていただいたときに提案させていただいているんですけれども、どちらかというと、もしかすると、一番は、首都機能の中枢の機能を守るという、特化した法案というものが本来必要だったのではないかという思いを最近はしております。それによって、明らかなる優先順位というものが設けられるんじゃないかというふうに思ったところでもあります。

 ちょっと時間もありますので、本当は皆さんにその点も伺いたいところなんですが、本日、ちょっと印象的だったのは、佐々参考人から平成七年の二月九日の議事録を配付いただいております。あらあら読ませていただきながら、本当にきょうも同じ主張も随分見受けられました。逆に言えば、私自身、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件があったあの年に初めて県議会議員にならせていただき、被災地にも行かせていただいた。そういった中で、このような議論がその後あってということを考えますと、正直申し上げまして、特に当時はまだ自民党政権、その後も随分長くありましたので、なぜ進まなかったのかなと素直に思ったところでもあります。

 そこで、きょうの観点ではなかったんですけれども、佐々参考人にぜひ伺いたいのは、広報のあり方ということをお聞かせいただきたいんです。

 「むつ」などの担当をされた御経験から、さまざまな広報の仕方というものがあるんだというふうに思いましたし、また、二十四時間の間、現場の情報を、担当されている方が上げることができないからこそ、その間、どのように上げるのか。また、福島第一原発の後、やはりそのときの情報提供というものが後になって間違っていたという情報、それによってさらに不信が募るということもあります。

 事実は事実としてしっかりと伝えるべきである。しかし、最近よくありますのが、不安をあおるなということをよく言われます。議事録の関係で、私自身、同じようなことで、かわいそうだからとかそういった印象の問題で議事録の削除を求められた経験もございます。

 そういう意味においては、後々きちんと検証される、そういう時代だと思いますので、やはり初期の段階、また途中の段階も含めまして、真実をきちんと広報する行政のあり方、そして、大変さまざまな情報が錯綜している中で伝えるわけですから、どういった、広報官というんでしょうか、そういった方々の情報を伝える技術を磨くべきなのか。長年のさまざまな経験から何か示唆することがございましたら、ぜひ佐々参考人にはそのことを私どもに教えていただければというふうに思います。

佐々参考人 大変時間のかかる答弁になりますが、できるだけ簡単にいたします。

 まず第一に、優先順位のことをしきりにおっしゃっていますね。優先順位は、やはり命だと思うんです。

 それで、何よりも、やはり今、日本の危機管理システム、特に災害対策で一番欠けているのはトリアージなんです。

 トリアージシステムがあるのとないので物すごい差が出てしまったのが、一九九四年の一月十七日。ロサンゼルスでノースリッジ大地震というのがありまして、マグニチュードも六・九だし、三百万都市のロサンゼルスがやられて、三十万人が避難して、三万人がけがをして、二百カ所火事が起こって、起きた時間が四時三十五分です。

 その三万人がけがをしたのが、アメリカの場合は、FEMAが、大統領直属の連邦機関がすぐ出動して、何が違ったかというと、医療体制なんです。

 トリアージドクター、トリアージというのはフランス語なんですね。ナポレオンのつくった野戦病院の原則と言われています。一人の負傷者を助けるために十人の兵士を死なせてはいけない。つまり、優先順位の判断をして、重傷者をすぐ手術なり集中治療室に入れて命を取りとめろ、これがトリアージの本質なんです。アメリカの場合、それが機能しまして、全米から登録されているトリアージドクターがロサンゼルスに自動的に集まってくるんですね。ですから、死者の数が六十一名なんです。

 ところが、日本は、同じような条件の大地震があって、始まったのも五時四十五分で、同じようなものでしょう。それで、トリアージドクターはありません。日本では、全部命は平等というので、悪平等で、番号札を配って先着順というのをやったんですね。だから、日本は六千四百三十四、アメリカの百倍死んでいるんです。

 だから、一番大事なのは、きょう、この災害対策特別委員会にぜひお願いしたいのは、厚生労働委員会の仕事かもしれませんが、災害という観点から、死者の数を減らすには、絶対にトリアージドクター、優先順位を、治療順位を決める。

 これは、それを見てきた石原慎太郎都知事は、トリアージカードというのを導入しまして、災害訓練のたびにそれをやっています。一番上が黒、赤、黄色、緑です。それで、ドクターが判定して、死んでいるとなったら黒だけ残してちぎっちゃうんですね。重傷は赤です。パトカーや救急車は、赤カード、赤カードと拾っていって、病院は最優先にこれを手術して治療します。

 ところが、日本の場合は、軽傷者の若者が、元気なやつがみんな救急病院に集まっちゃって、これがまた、今の若者というのは自己中心ですから、俺を手当てしろといってみんな要求するわけですよ。その結果、病院は先着順に番号札を配った。これは大失敗で、待たされていた重傷者がみんな死んじゃったんですよ。

 発表の仕方というのがありましたけれども、消防庁の最初の発表は五千人ぐらいでしたか、それは伊勢湾台風をしのぐ大変な死者の数で、参ったなと思っていたら、一週間ぐらいしたら、突然六千台になるんですよ。千人が生死の境をさまよっていたということですね。アメリカの場合は、これがみんな救われちゃっているんです。そのトリアージドクター制度をどうしてもやはり導入していただく。

 それから、新聞発表は、これは、今の虚偽表示のホテルの発表というのは反面教師です。よくもあんな下手くそな、虚偽表示ですと言って謝ればいいのに、特にアメリカの、あの総支配人の記者会見、これはみんな現場に責任を押しつけちゃっている。ああいうのが一番いけないですね。

坂本委員長 佐々参考人に申し上げます。

 簡潔に御答弁をお願いいたします。

佐々参考人 はい。どうも済みません。

 そういうようなことで、絶対にうそを言っちゃいけない。後でばれるうそは言っちゃいけない。

 いろいろなルールがあるんですけれども、時間が来ましたので、これで打ち切らせていただきます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 ばれないうそはないんだというふうに思って広報されたらいいなというふうに思いました。

 また、トリアージについては、私も県会議員のときに県の方で提案をさせていただいたのをちょっと懐かしく思っておりますが、しっかり普及することで多くの命が救われることを願っております。

 藤井参考人は残念ながら時間の都合で質問できませんが、今後さまざまな中でお伺いすることもあるかと思いますので、その節にはよろしくお願いします。

 本日は、貴重な御意見、ありがとうございました。

坂本委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 参考人の皆様方には御退席いただいて結構でございます。

     ――――◇―――――

坂本委員長 次に、本日付託になりました中川正春君外四名提出、国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案を議題といたします。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。中川正春君。

    ―――――――――――――

 国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中川(正)議員 ただいま議題となりました国民生活強靱化のための防災・減災対策基本法案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 我が国は、これまで数多くの災害に見舞われてきました。今後も大規模な地震等が発生するおそれが指摘される中、大規模自然災害から国民の生命や生活を守ることは、国が果たすべき基本的な責任の一つであります。しかしながら、財源に限りがあることも事実であるため、早急に対策を進めるためには、災害に対する脆弱性をできる限り科学的かつ客観的に評価し、優先順位を定め、大規模自然災害に強い国土及び地域をつくるとともに、地域住民の力を向上させることが必要であります。

 このため、災害予防、災害応急対策及び復旧復興の各段階において、ソフト面の施策とハード面の施策を組み合わせた大規模自然災害に備えた防災及び減災に係る対策を推進するとともに、地域の実情に応じた防災及び減災に係る対策を推進するための体制の整備を推進することにより、大規模自然災害から国民の生命や生活を守る国民生活の強靱化の取り組みを推進するために、本法案を提出した次第であります。

 次に、本法案の主な内容を御説明申し上げます。

 第一に、国民生活強靱化対策の基本方針として、一、大規模災害に際して人命の保護が最大限に図られること、二、予測できない大規模自然災害が発生し得ることを踏まえ、ソフト面の施策とハード面の施策を組み合わせた対策を推進するための体制を早急に整備すること、三、防災及び減災のための取り組みは、自助、共助及び公助が適切に組み合わされることにより行われることを基本としつつ、大規模自然災害については、国が防災及び減災のための取り組みの中核的な役割を果たすこと、四、大規模災害を未然に防止し、発生した場合における被害の最小化並びに国家及び社会の諸機能の代替性の確保等を図ることにより、大規模自然災害が発生した場合における我が国の政治、経済及び社会の活動を持続可能なものとし、並びに大規模自然災害からの円滑かつ迅速な復興に資することを旨とすること、五、現在のみならず将来の国民の生命や生活を守るために実施されるべき施策については、人口の減少等に起因する国民の需要の変化、社会資本の老朽化、国民生活強靱化対策を実施するために必要な財源の不足等を踏まえ、財政規律の維持の観点から、その重点化を図ることの五点を定めております。

 第二に、国民生活強靱化対策の策定及び実施の方針として、一、大規模自然災害の発生から七十二時間を経過するまでの間において、迅速かつ適切な救助活動を行うために必要な措置を集中的に講ずること等により、人命を保護することを最も優先して行うこと、二、内閣府防災担当及び消防庁を中核とした組織を設置して、大規模自然災害への対処に係る事務を総括する機能の強化を図ること等の十八項目を定めております。

 第三に、政府は、国民生活強靱化対策に係る国のほかの計画等の指針となるべきものとして、閣議の決定を経て国民生活強靱化基本計画を定めるものとし、国民生活強靱化基本計画以外の国の計画は、国民生活強靱化基本計画を基本とするものとしております。また、都道府県または市町村において、国民生活強靱化対策に係る当該都道府県または市町村の他の計画等の指針となるべきものとして、国民生活強靱化地域計画を定めることができることとしております。

 第四に、国民生活強靱化対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、内閣に、国民生活強靱化推進本部を置くこととしており、国民生活強靱化基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること等の事務をつかさどることとしております。なお、本部員のうち有識者等については国会同意人事としております。また、国民生活強靱化基本計画の案の作成に当たっては、国民生活強靱化推進本部が脆弱性評価の基準を定め、これに従って脆弱性評価を行い、評価結果について検証を受けた上で、その結果に基づき国民生活強靱化基本計画の案を作成しなければならないこととしております。

 第五に、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本法案の趣旨及び概要であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十三分散会


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