衆議院

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第3号 平成23年6月1日(水曜日)

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平成二十三年六月一日(水曜日)

    午後一時三分開議

 出席委員

   委員長 北村 誠吾君

   理事 小林 興起君 理事 佐々木隆博君

   理事 瑞慶覧長敏君 理事 玉城デニー君

   理事 仲野 博子君 理事 秋葉 賢也君

   理事 伊東 良孝君 理事 遠山 清彦君

      浅野 貴博君    石関 貴史君

      石原洋三郎君    大泉ひろこ君

      奥野総一郎君    木内 孝胤君

      杉本かずみ君    福嶋健一郎君

      福田 昭夫君    森山 浩行君

      山岡 達丸君    山崎  誠君

      若井 康彦君    井上 信治君

      今津  寛君    岸田 文雄君

      下村 博文君    宮腰 光寛君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 枝野 幸男君

   内閣官房副長官      福山 哲郎君

   外務副大臣        伴野  豊君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   総務大臣政務官      逢坂 誠二君

   法務大臣政務官      黒岩 宇洋君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   清水  治君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  大辻 義弘君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           小河 俊夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 上月 豊久君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  渡邉 綱男君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  井上 源三君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金子 穰治君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  福田 昭夫君     森山 浩行君

  若井 康彦君     山崎  誠君

  井上 信治君     下村 博文君

  岸田 文雄君     今津  寛君

同日

 辞任         補欠選任

  森山 浩行君     奥野総一郎君

  山崎  誠君     若井 康彦君

  今津  寛君     岸田 文雄君

  下村 博文君     井上 信治君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野総一郎君     福田 昭夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 沖縄及び北方問題に関する件


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     ――――◇―――――

北村委員長 これより会議を開きます。

 この際、福山内閣官房副長官及び伴野外務副大臣から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。福山内閣官房副長官。

福山内閣官房副長官 内閣官房副長官の福山哲郎でございます。

 沖縄の本土復帰後三十九年がたちましたが、沖縄の新たな発展の基礎を築いていくためには、産業の振興や雇用の創出など、解決を要する多くの課題がございます。また、北方領土問題を一日も早く解決させることは、全国民の悲願であります。

 枝野大臣の御指導のもと、沖縄政策及び北方領土問題の解決促進に全力を傾注してまいりたいと考えております。

 北村委員長初め理事、委員の皆様方の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

北村委員長 次に、伴野外務副大臣。

伴野副大臣 外務副大臣の伴野豊でございます。

 本委員会におきまして取り扱われます沖縄及び北方四島に関する問題は、我が国の外交にとって極めて重要な問題でございます。

 外務副大臣といたしまして、松本外務大臣を補佐し、沖縄及び北方領土問題に全力で取り組んでまいります。

 なお、外務副大臣の中では、私が特に本委員会を担当することになっております。

 北村委員長初め理事各位、本委員会の皆様方の御指導と御協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

北村委員長 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官清水治君、内閣府沖縄振興局長大辻義弘君、内閣府北方対策本部審議官小河俊夫君、外務省大臣官房参事官上月豊久君、海上保安庁長官鈴木久泰君、環境省自然環境局長渡邉綱男君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君及び防衛省地方協力局長井上源三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野貴博君。

浅野委員 民主党会派に所属しております新党大地の浅野貴博でございます。

 先月二十九日をもちまして、我が党の代表鈴木宗男の議席を引き継ぎ、私も八カ月が経過いたしました。

 この沖縄及び北方領土問題、鈴木宗男が政治使命をかけて取り組んできた問題でございます。議席を引き継いだ者として、この問題を取り扱うこの特別委員会に所属することができ、また、本日、仲野博子与党筆頭理事初め理事の皆様の御配慮で、質問する機会をいただきました。心から感謝申し上げ、質問に入らせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、松本外務大臣にお伺いしたいと思います。

 先月の二十四日、韓国の国会議員三名が、我が国固有の領土である国後島を訪問する事態が発生いたしました。

 聞くところによりますと、今回のこの三名の訪問、現地で出迎えた者にロシア政府の者はおらず、そして、サハリンから国後島の空港に行き、その返す飛行機でそのまままた戻っていった。滞在時間もごくわずかで、ロシア政府関係者と接触することもなかったと聞いておりますが、改めて、この三名の韓国の国会議員による国後島訪問の詳細を外務大臣は把握しておられますでしょうか。

松本(剛)国務大臣 今委員から御指摘がありましたが、韓国の国会議員三名が、五月二十四日に国後島を訪問いたしたと承知いたしております。その間の動静等については、今委員が御指摘になられたことが、おおむねそのようなふうに私どもも承知をしているところでございます。

浅野委員 今回、韓国の国会議員が、日ロでない第三国の国会議員が国後島を訪問したことにより、北方領土交渉における我が国の立場が不利になったと外務大臣は認識しておられますでしょうか。

松本(剛)国務大臣 この韓国の国会議員三名の国後島訪問については、北方領土に関する我が国の基本的立場から、到底容認できるものではありません。その旨、韓国側に対しては、五月二十四日、事態が判明をした当日、私どもの在韓国の特命全権大使から韓国側に申し入れを行い、また二十五日には、私が権哲賢駐日韓国大使に対して抗議を行ったところであります。

 ロシアとの関係で申し上げますと、本件については、ロシア政府が主体的、意図的に関与があったものとは考えておりません。もちろんロシア側に対しては、北方領土に関する我が国の立場についてはたびたび伝えてきたところであります。

 その上で、第三国の国会議員が北方四島を訪問したことによって、ロシアが法的根拠なく北方四島を占拠していることに正当性が付与されるということは一切ないものと考えておりまして、北方領土交渉における我が国の立場が特に不利になることであるというふうには考えておりません。

浅野委員 わかりました。

 今回の韓国の国会議員の訪問もさることながら、つい先日、五月十五日、ロシアのイワノフ副首相が、他の閣僚を引き連れて同じく北方四島を訪問しております。ロシアの閣僚による北方四島の訪問は、先日のこのイワノフ副首相にとどまらず、昨年十一月一日のメドベージェフ大統領訪問から数えて五度目になるかと承知します。

 どれだけ我が国が、北方四島は日本固有の領土である、ロシアに対して、また他の国に対して、ロシアの管轄権に服するような形で、ロシア政府のビザ発給を受けるような形で四島に行かないでくれと申し上げたところで、残念ながら、何の抑止力にもなっていないのが現実ではないかなと思っております。

 そこで、私が非常に重要な解決のかぎになると考えておりますのが、本年二月十一日、前原誠司前外務大臣がロシアでのラブロフ外相との外相会談において提起された、我が国の法的立場を害さない形で北方領土において日ロが経済協力できないか、この枠組みいかんによると私は考えております。

 改めまして、三月二十三日の衆議院外務委員会での私の質問に対して松本大臣は、「私どもとしては、日本の法的立場を害さないという前提で何ができるかということを考えたい、こういう方針を私は引き継いだというふうに理解をいたしております。」と、前原前大臣の提唱を踏襲していく旨明らかにされていると承知します。

 改めまして、北方領土における日ロの経済協力の意義、その必要性等について松本大臣はどう考えておられるのか、説明をお願いします。

松本(剛)国務大臣 北方四島における共同経済活動については、今委員の御指摘がありましたように、二月十一日のモスクワにおける前原前外務大臣とラブロフ・ロシア外務大臣との会談において、我が国の法的立場を害さない前提で何ができるかを今後双方で議論していくこととなったということでございます。三月の質疑におきまして、私自身もこの考え方を引き継いでいるというふうにお話をさせていただきました。

 この北方四島における共同経済活動につきまして、領土交渉に与える影響などについては、今後の検討及びロシア側との調整によるものでありまして、現時点で具体的にお答えすることは難しい側面があります。その上で申し上げましたら、北方四島における共同経済活動については、日本の、我が国の法的立場を害さない形で実施されるものであれば、ロシアとの間の平和条約交渉のための環境整備などに資することが期待をされるものである、このように考えているところであります。

浅野委員 本年五月十六日、前日のイワノフ副首相の北方領土訪問を踏まえ、伴野副大臣が記者会見に臨まれております。その場で、共同通信の斎藤記者さんからの、現在ロシア側が提案している共同開発の問題については、とりあえず現在は慎重に検討しているという理解でよろしいですかという質問に対して、伴野副大臣が、そうです、それは機運が盛り上がらなければできないわけです、そういったお答えをされております。

 北方四島における日ロ経済協力をこれから実現していく上で、現在、この機運、日本国内はもとより、日ロの交渉の機運というものがどのような状況にあると伴野副大臣はお考えになっておりますでしょうか。

伴野副大臣 浅野委員にお答えいたします。

 このときの記者会見で機運という言葉を使わせていただいた趣旨は、千年に一度の非常につらい被災経験でございました、我が国の三・一一でございますけれども、それ以降にロシアの国民の皆さん方から自然発生的に、日本のそういった被災地の方々、当然お亡くなりになられた方もそうですが、日本国民に対して哀悼の意を行動で、あるいは言動で示されたことに対して、日本の多くの国民の皆さん方も、ありがたいと申しますか共感をした、両国民の間に芽生えたそういった温かい機運を、何人も水を差すような行動、言動があってはならないというような趣旨で使わせていただきました。

浅野委員 北方四島における日ロ経済協力、慎重ではあっても、現在も日ロ双方の事務方で検討作業、協議は行われていると理解してよろしいでしょうか。

伴野副大臣 先ほど松本大臣も申し上げましたように、前原大臣の、北方四島における共同経済活動については、我が国の法的立場を害さないという前提において全体として進めていくという考え方を踏襲されるという発言をされましたが、そうした中で、日ロ関係を全体として進めていくという趣旨の中で、北方四島における共同活動についても検討していく必要があるという考えでございます。

浅野委員 日ロ関係全体を踏まえた上での検討作業は、現在、具体的にどのような進捗状況にあるのか。例えば、一九九八年二月にいわゆる安全操業と言われる漁業の枠組みができております。これも我が党の代表鈴木宗男が尽力をしたものであると私は承知しておりますが、そのようなものをモデルにしているのか。

 海でできることが陸でできないことはないと私は考えております。具体的にどのようなものを想定して、実際にどのような話し合いが行われているのか、可能な限りで具体的なものを教えていただければと思います。

松本(剛)国務大臣 今、伴野副大臣から御答弁を申し上げましたように、これについては、我が国の法的立場を害さないということで、政府、外務省においてもさまざまな形で検討を行っているわけでありますが、ロシア側におきましても、この件は課題であるという認識で取り組んでおるというふうに理解をいたしております。

 具体的に、本件についてどのような形で今やりとりがあるのかということをお答えすることは、まさに交渉の案件でありますので、差し控えさせていただくことを御容赦いただきたい、このように思っておりますが、その上で申し上げれば、今委員がおっしゃったように、これまで我が国とロシアとの間でさまざまな交渉なり、幾つかの成果なりがあったことは踏まえた上で考えることになるということは、御指摘のとおりではなかろうかというふうに思います。

浅野委員 具体的に、何年の何月ぐらいまでをめどに、とりあえず中間報告なり中間的な取りまとめをしよう、そういった話し合いはなされておりますでしょうか。

松本(剛)国務大臣 仕事のやり方としては、おっしゃったように目標を定めて進めていかなければいけないところだというふうに思いますが、現段階で、ロシア側と我が国との間のやりとりの中で、具体的に期限などを皆様に公開で御報告できる段階にはまだ至っていないということで御容赦をいただきたいと思います。

浅野委員 外交交渉は、もちろんいろいろなさまざまな背景、要因を受けて行われるものだと思いますので、なかなか、いつごろまでにとこの場で明言できないのは私なりに理解できるところでございますが、ただ、北海道、特に、きょう根室市東京事務所の伊倉所長も来られておりますけれども、道東、北方領土問題原点の地と言われている根室市で、仲野博子筆頭理事の地元でもございますけれども、のみならず元島民の皆様、既に年齢が七十七歳を超えられて、時間的余裕が残されていない方々からすれば、いつになったらふるさとに自由に帰れるときが来るんだろう、そういう思いを抱いておられると承知します。

 私は北海道釧路市の生まれです。ふるさとでは今でも、両親は酪農業を営んでおります。ふるさとに帰り、ふるさとの情景、そういったものを見れば、自分が生まれてきた、自分の存在価値といったものを認識することができます。ふるさとは、だれにとってもそのようなものであると思います。

 そこに帰ることができない方々、そしてまた北方領土問題という国家主権に翻弄されている中で、根室市初め地域は大変疲弊をしております。そういった方々に勇気、希望を与えるためにも、政府には、外務省、特に松本大臣には、何がしかの具体的な進捗状況もしくは具体的な目標、めどというものをぜひとも示していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

松本(剛)国務大臣 この委員会において私が所信を申し述べる際にも同趣旨のお話をさせていただいたかと思いますが、北方領土問題につきましては、残念ながら、これまで大変長い時間を経過してまいりました。その間に多くの関係者の方々が年を重ねられたということも、重い事実として私どもは受けとめなければいけない。それだけに、この委員会におきましても、就任をした後の所信ということで、時間に大きな猶予があると考えて取り組むべきではないという趣旨の発言をさせていただきました。

 その意味で、委員がお話しをいただいた趣旨は私どももしっかり受けとめて取り組まなければいけない、このように思っているところでございます。

浅野委員 私が申すまでもなく、この問題は、北海道、道東地域のみならず日本国家全体の国家主権にかかわる問題である、日本国民の誇りの問題であると考えております。ぜひとも、松本大臣、外務省の皆様、政府の皆様には、裂帛の気合いで解決に向けて具体的な成果を出し、最終的に四島が返ってくる、その道筋をつけていただきたいと思います。

 その上で、繰り返し申し述べますが、ただただ日本人がロシアの管轄権に服す形で北方領土に入るなとその自粛を求めたところで、現実、残念ながら、多くの日本国民が北方領土に渡っている事実というものがこれまで明らかになっております。

 その上で、一九八九年九月、一九九一年十月、九八年四月、九九年九月と、これまで四度、ロシアの管轄権に服する形で日本国民は四島に行かないでくれという閣議了解が行われております。これはそもそも、旧ソ連時代、一九八九年にできたもの、ソ連からロシアになり、自由と民主のロシアになった今もそれを踏襲している。事実、日本国民による渡航は後を絶たない。

 このような中、この閣議了解を見直して、経済協力のように決して日本の法的立場を害するのではなく、日本人がもっと自由に四島に行き、そして日本のプレゼンス、技術力、そういったものを四島で生かし、実質的な日本化を進めていく、こういった方法こそが一番の北方領土四島を取り返す近道であると私は考えるんです。

 この閣議了解を見直すべきだと思いますが、松本大臣、いかがお考えでしょうか。

松本(剛)国務大臣 一つの考え方として今私も真剣にお聞きをさせていただきましたが、他方で、私どもとして、冒頭の議論でもありましたように、北方領土は我が国固有の領土でありますので、ロシアの管轄権に服するかのような形で我が国の国民が行動するといったことをどのように評価するかという論点は引き続き存在をすると思っております。

 そのような考え方から閣議了解がなされているものと考えており、今の段階で私自身が閣議了解の見直しを求めるということは、北方領土における法的な問題なども含めて、考えていないというふうに御理解をいただきたいと思います。

浅野委員 決して私も、もちろん鈴木宗男代表も、ロシアの管轄権に服せということで申し上げているのではないことを申し伝えたいと思います。この閣議了解を、なくすというよりも、むしろ発展させる形で、日本人が、日本国民が固有の領土である北方四島により自由に入っていける、繰り返し述べますが、その上で四島の日本化を図っていく。そうでなければ、ただ、日本人は行っちゃだめですよ、ロシアに対して、四島は固有の領土です、ロシアの閣僚は行かないでくれ、他国の人間も行かないでくれと申し伝えても、ロシアにとっては、いや、四島はおれたちの領土だ、勝手に言っていなさい、それだけで終わってしまうと思うんです。

 改めまして、北方領土における日ロ経済協力、一日も早く具体化をし、実現に向けて取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、このことに関する松本大臣の見解をもう一度お聞きしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 今も御議論の中で申し上げましたように、結果として長い間この北方領土問題というのが問題であり続けるであろうということについては、私たちも厳しく認識をして取り組まなければいけない、このように考えているところでございます。

 国際法も含めた法的問題の中で、さまざまな形で国民の皆様にも御理解、御了解をいただいて、今お話がありましたように、我が国の法的立場を確保しながら対応する必要があるということでお願いをさせていただいているわけでありますけれども、今後しっかり交渉せよ、こういう御趣旨ではなかろうかと思いますので、これについては、私も、その職責を担っている間、しっかり取り組んでまいりたい、このように思っております。

浅野委員 しっかりと取り組んでいただき、一日も早い解決を実現してくださいますよう心からお願い申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 民主党の玉城デニーです。

 北海道に続いては、沖縄の登場でございます。

 まさにこの沖縄北方に関する特別委員会は、国境と国境をまたぐ、日本国全体の、我が国全体に及ぶ主権のあり方、あるいは均衡ある国土の発展、さらには、自由闊達な議論の中で生まれてくる地域からの声を生かしていくためのさまざまな検討をする特別委員会だというふうに思っております。ですから、きょうはその思いで、沖縄に関することを中心に質疑をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、早速質問をさせていただきますが、まず、沖縄県が政府へ提案させていただいています次年度からの振興計画について伺いたいと思います。

 本年四月に沖縄県が、昭和四十七年の本土復帰以降に行われてまいりました、四次、四十年にわたる沖縄県の振興計画を総点検し、新たな計画の基本的考え方を、沖縄二十一世紀ビジョン基本計画の素案として取りまとめました。総点検の結果、残された課題の克服を初め、これからの自主自立した新たな沖縄県を目指し、特にこの四次の十年間は、過去三十年のキャッチアップ型の発展から、より自立発展をする沖縄県づくりとして、基本的な施策から新しい法律の制定などを含め、我が国の発展へ向けて東アジアの玄関口となる将来像を、県民や市町村と一体となって進めていく大きな構想として高く掲げているものであります。

 そこで、枝野沖縄担当大臣にお尋ねいたします。

 現在、沖縄県から提案されている新たな沖縄の振興に向けて、沖縄県からの主な要求内容、それから予算の要求、さらには、現在それらがどのように検討されているか、進捗の状況、そして、それをいつごろまでに決定していくスケジュールを持っているかについてお伺いいたします。

枝野国務大臣 沖縄県からは今御指摘いただきましたような、特に、残り一年を切った沖縄振興特別措置法後の、次期法制を含めた振興のあり方についてさまざまな提言をいただいております。沖縄政策協議会あるいは沖縄振興審議会を通じて、また、私自身、直接にも知事さんなどからそうしたお話をいただいております。

 特に、これからの沖縄振興を、今まで以上に沖縄の主体性を強める形で進めていく、そういった枠組みにしてもらいたい、あるいは一括交付金の仕組みを、より踏み込んだ形で沖縄で進めてもらいたいというようなことを含めて、幅広く御提起をいただいております。

 大きな方向性としては、内閣としてもそうした方向性でということで考えておりますが、まさに具体的な各論、内容について、現在、県からの要望を踏まえた実務レベルでの論点整理を行ってきているところでございます。

 その各論、具体論のところにおける論点整理の結果を踏まえて、今後は必要に応じて政務レベルでも検討し、場合によっては沖縄県とも政務レベルでのお話し合いをさらにさせていただきながら、概算要求や税制改正要望の時期を考慮いたしまして、本年夏ごろまでに一定の取りまとめを行いたいというふうに思っております。そして、沖縄振興特別措置法の次の法制につきましては、それをもとに、来年の通常国会に所要の法案を提出する見通しで準備を進めたいと思っております。

玉城委員 ありがとうございます。大体、夏ごろの概算要求までには取りまとめていきたいという方向性、大変うれしく思います。

 しかし、他方でまた、多岐にわたる沖縄のこれまでの総括と、将来にわたる要望というものは大変多くございまして、その中でも、きょうは特に一括交付金についてさらにお伺いさせていただきたいと思います。

 沖縄県から特に強い要望のある沖縄振興一括交付金制度の創設。これは、沖縄県からは、二千三百億円、今年度は振興経費で予算をちょうだいしているわけなんですが、それをさらに七百億円程度乗せて、三千億というふうな形で一括交付金を提案させていただいていることと思います。

 その中では、この予算額の確保だけではなくて、使途の自由度の確保もあわせて県の方から要望が出ていると思いますが、その検討についてお聞かせください。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、沖縄振興一括交付金につきましては、金額にとどまらず、より使い勝手をよく、特に使途の自由度を高めてほしいという御要望をいただいております。これを踏まえて、全国ベースでのいわゆる一括交付金の制度設計も踏まえて、できるだけ前向きにと考えているところでございます。

 過日、沖縄政策協議会の沖縄振興部会が開催されました折には、一括交付金全体を所管している総務大臣からも、沖縄については、特に一括交付金について、より先行した形で前に踏み出して進めていきたいというお話をいただきまして、私も意を強くしたところでございまして、総務大臣とも調整をして、できるだけ前に踏み出せるように進めてまいりたいと思っております。

玉城委員 ありがとうございます。

 特に、これからは本当に県民が主体となって計画をつくっていきたいということでまとめた沖縄ビジョンですので、それに沿う形での一括交付金制度の創設、まさに、沖縄のポテンシャルをこの日本という国のために存分に生かしていただきたい、また生かさせていただきたいという思いがこもっていることですので、重ねてお願いをしておきたいと思います。

 さて、さらに、これまでの沖縄振興特別措置法に基づく、例えば観光振興地域、情報通信産業地域、自由貿易地域や特別自由貿易地域及び金融業務特別地区などは、従来の、既存の制度をもっと利活用度の高い仕組みへ変えていくことと、新しい沖縄の振興に向けての国際物流経済特区、環境共生型観光推進制度、さらには教育、子育て、医療から雇用、離島振興、北部地域振興まで幅広い提案もされていると伺っています。

 そして、私はぜひとも、沖縄には鉄軌道を走らせたい。これもぜひ、国がしっかり責任を持ってやっていただきたい。そのためには、今ある交通の制度、ルールなどの変更も含めて、存分な議論と早期の取り組みが必要だと思いますが、そのような沖縄県側から要求されている制度設計や制度の拡充要求などについて、どのような制度面での検討がなされているかをお聞かせください。

枝野国務大臣 御指摘のとおり、県からは、特に、観光振興地域や情報通信産業振興地域などの現行制度をさらに拡充するとともに、新たな国際物流経済特区制度の創設など、制度面についてもさまざまな御提言をいただいているところでございます。

 そして、これはもう沖縄県にとどまらず日本全体にとっても、沖縄の持っておりますさまざまな優位性、いつも申し上げておりますが、アジアとの近接性でありますとか、日本全体の中では相対的に若い人口構成であるということなどを含めて、しっかりとこれを生かした形で、しかも民間主導の自立的な経済を発展させるという観点から、特に特区制度を初めとして制度面でのさらなる改善を進めてまいりたいというふうに思っております。

 御指摘いただきました鉄軌道につきましても、これは、採算性その他さまざまな調査を進めておりますが、その調査を進めるに当たっても、必ずしも現行の制度だけを前提にせずに、もし制度を変えることによって採算性その他のところで大きく状況が変わる、よくなるということがあるのであれば、そうしたことも視野に入れた調査を進めたいというふうに思っております。

玉城委員 ありがとうございます。

 今大臣からの御答弁の中にありましたように、合計出生率が沖縄はずっと伸び続けております。その一方で若年層の雇用問題がありまして、特に、二十代は二けたの失業率をここのところずっと続けております。そのためには制度設計をしっかりして、本当に、沖縄に住んで日本を元気にしたいというたくさんの願いを織り込めるような制度設計に尽力をしていただきたい、そのようにお願いをしておきたいと思います。

 さて、御承知のとおり、沖縄県には今なお多くの米軍基地があります。基地からもたらされる被害は、事件事故、航空機の騒音、この騒音については、特に県民は爆音と言っております。すさまじい激烈な騒音でございます。本当にこれが同じ日本国内の状況なのかという国民、県民の怒りの声はおさまるどころか、残念ですが、政府にとっては日々厳しい状況へ進んでいることも事実でございます。

 政府も、米軍基地の負担を軽減し、県民の日常生活が不安のないように過ごせるためのさまざまな協議や取り組みを行っていただいていると思いますが、広大な基地の早期返還は、当然、多くの県民も期待を持っているところでございます。

 そこで、お伺いいたします。

 平成七年六月に制定された現在の、沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律、通称軍転特措法が平成二十四年三月に期限を迎えるに当たり、沖縄県からは、これは仮称でございますが、駐留軍用地跡地利用促進法として、制度とほかの項目にわたるたくさんの施策の要求も、あわせて提案をさせていただいていることと思います。この跡地利用法は沖縄県民の大きな希望にもなり、また、戦後の大きな整理事業になるものとして県民の関心が高いということも御承知のことと思います。

 沖縄担当大臣として、この新しい制度を恒久法としてぜひとも閣法で制定をし、まさしく自立する沖縄県に向けた取り組みとして強く後押しをいただきたいと思いますが、大臣の思いと考えをぜひお聞かせください。

枝野国務大臣 沖縄の米軍基地につきましては、今現に生じている騒音を初めとして、さまざまな危険や御迷惑をできるだけ軽減するということについて、これは外務大臣あるいは防衛大臣ともども、さらに努力をしていかなければならないというふうに決意をしております。

 と同時に、御指摘いただきましたとおり、今後順次返ってまいります基地の跡地の利用をしっかりと進めていくということが、沖縄の振興、発展、沖縄の皆さんの暮らしのために大変重要であると考えているところでございます。

 御承知のとおり、現在の仕組みでは、沖縄振興全体についての特措法、沖振法があり、そして基地返還に伴う特別措置がいわゆる軍転法という形で、いずれも本年度末に期限を迎えるということでございます。全体としての沖縄振興の議論と同時に、いわゆるポスト軍転法についても議論を進めて、沖縄の皆さんとも検討を進めていただいているところでございまして、沖縄振興の重要な課題の一つとしての跡地利用について必要な法制度は、政府においてしっかりと閣法で準備をしてまいりたいというふうに思っております。

 これを恒久法化するということについては、やはりいろいろな御議論があるのではないだろうか。つまり、これは率直に申し上げて、現実には一年とか二年で基地が全部返ってくるというわけではないのは間違いございませんが、いずれは沖縄から基地がなくなるということが沖縄にとって望ましいことだろうというふうに思っております。それは必ずしも近い将来ではないという現状ではありますけれども、そうしたことを踏まえたときに、恒久法という形が果たして、何か誤ったメッセージになる可能性もあります。

 ただ、いずれにしても、基地があり、基地が順次返ってくるという状況の中では、政府として、その跡地利用についての国としての責任を果たしていくという趣旨はしっかりと踏まえた形で法案の準備を進めてまいりたいと思っております。

玉城委員 力強い御答弁をいただき、本当に感謝いたします。

 本当に、長いスパンが必要な取り組みでございます。これは殊さら、今までの沖縄の置かれている状況をやはりしっかりとお酌み取りいただいて、そこで、どのような自立的な発展ができるかということと不可分の法律になっていくことと思います。

 一方で、このように、とにかく今回の沖縄の振興の見直しに関してはいろいろな制度の設計が必要になってきます。さらには、その中でのさまざまな取り組み、既存の法律の枠組みの中でできるのかどうなのかということも含めて、できる限り頻繁に協議会での御報告もいただき、あわせて、それがまた県民へも広く周知ができるように、県民全体の取り組みとして仕上げさせていただきたいということを強くお願いしておきたいと思います。

 さて、ただいまお話をさせていただきました基地の跡地利用について、今度は普天間に関して、少し気になる点についてお聞かせいただきたいと思います。

 沖縄県の中南部には県民の約八割が暮らしておりまして、普天間基地を含む六カ所の基地が嘉手納以南ということで返還の予定になっておりますが、やはり最も注目度が高いのは普天間基地の返還であります。

 これは外務大臣に伺いますが、ゲーツ国防長官が、六月初旬にシンガポールで予定している北澤防衛大臣との会談で、垂直離着陸輸送機MV22オスプレーを来年普天間飛行場へ配備する方針を伝えると新聞報道にありました。しかし、こういう計画があればきちんと国民に知らせていただきたいということで、安全保障委員会でもたびたび質問にも上がっていたと思いますが、政府には具体的にその通達はないということが繰り返されてきております。

 そこで、お伺いいたします。

 普天間基地は、約四百八十ヘクタール、地料、雇用の給料を入れますと約八十億に近い金額が見積もられているんですが、ここが返ってくると十倍にも二十倍にも、経済効果が高いところだとして早く返してくれというのが県民の正直な思いです。そこにオスプレーが配備されるということについてはまかりならぬというのが県民の思いなんですが、外務大臣、この海兵隊のオスプレーの配備について、米国政府からどのような事前の情報があるのかをお聞かせいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 オスプレーについては、これまでもお答えを申し上げてきているように、現時点で米国政府から日本政府への正式な通報はない、その意味では、政府間において連絡があるものではないということであります。

 他方で、米軍のすべての、現在普天間にあるCH46ヘリコプターは古くなったものとして、順次、オスプレーに更新されつつあるということがあります。

 また、御案内のとおり、米国の海兵隊の海兵隊航空兵力計画にも、普天間飛行場のCH46が西暦二〇一二年の第四・四半期からオスプレーに更新されるとの計画が記述されているということは承知をしているところでありまして、今後、沖縄にオスプレーが配備される可能性はあるというふうに考えております。

 これを受けて、政府としては、オスプレーについて、開発当初大きく問題とされた安全性などが向上しているというような情報もあるわけですけれども、安全性や、また運用に当たって発生する音、騒音などの問題も含めて情報収集などをしていくことが必要と考えておりまして、もちろん、米国政府から正式な通報がなされた場合には、その安全性、騒音性についての情報を含めて、地元の自治体に丁寧に御説明をしてまいりたいというふうに考えております。

 なお、普天間移設をできるだけ早く行わなければいけないということについては、私自身もこれまで何度か沖縄を訪問した際に現地も拝見をさせていただいておりまして、ぜひとも移設を実現して、普天間基地を返還させるべきであるという思いで多くの方がこれまでも努力をしてこられたというふうに考えております。

 今回の、海兵隊が使用する機種の更新そのものが直接返還にかかわっているというふうには私どもは考えておりませんけれども、普天間基地の移設、返還を急がなければいけないという点では私どもも思いを共有しており、精いっぱいの努力をいたしたい、このように考えているところであります。

玉城委員 普天間をやはり早く返すということが一番重要だと思うんですが、同時に、固定化は避けなければならないというのがまた県民の思いでございます。

 アメリカ側からは、先日、カール・レビン上院軍事委員長らが沖縄に訪問をして、嘉手納に移した方がいいというふうなことで、これはアメリカ側の財政上の理由もあるものと思います。しかし、嘉手納は、先ほども申し上げましたとおり、第三次爆音訴訟が二万三千人近い訴訟団によって行われております。当然ですが、嘉手納に普天間基地を受け入れる余裕は全くないというのが県民の思いであります。

 最後に、外務大臣からお聞かせいただきたいのですが、アメリカ側がこういうふうに基地を縮小していくというふうな状況にあったら、それをチャンスととらえて、もっと幅広い展開、グアムへの移転あるいはオーストラリアへの移設などなど、積極的にやっていただきたいと思いますが、そのことについて最後にお聞かせいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 もちろん、私どもとしては、常に議論に対しては開かれた状態で臨んでまいりたい、このように考えております。

 また、米国においても上院の議員の方から提案があったということも承知をいたしております。他方で、私どもが今拝見をする限り、これまでも嘉手納の統合ということについては何度か議論をされてまいりましたが、実現に至らなかったにはやはり実現に至らなかった理由がある、今度の新しい提案によって、これまで越えられなかったハードルが越えられる内容があるというふうには、現段階で拝見をする限りは承知をしておりません。

 その意味では、私どもは新たな議論についても、常にお話をお聞きするという姿勢は持ちつつも、政府としては、これまで積み重ねてきた議論の一つの結果として、ロードマップ、そしてそれを受けた昨年五月の日米間の合意がありますので、私どもに今課せられた使命は、これまでの議論を積み重ねて示された一つの道筋を、実現に向けて努力をすることではないか。このように取り組んでいるところであると御理解をいただけたらと思っております。

玉城委員 ありがとうございます。ぜひ、基地のない島を目指す沖縄の県民の思いを酌んで、しっかりと進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、下村博文君。

下村委員 自民党の下村博文です。

 このような機会をつくっていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 間もなく内閣不信任案が出る状況の中で、政務三役にとってはもしかしたら最後の答弁になるかもしれないし、ならないかもしれませんが、ぜひ誠意を持った答弁をしていただきたいと思います。

 まず枝野官房長官にお聞きしますが、尖閣諸島については、我が国は今どのような統治状況なんでしょうか。

枝野国務大臣 尖閣諸島については、我が国のまさに固有の領土でございまして、我が国の領土としてしっかりと管理をしているという状況だというふうに把握をしています。

下村委員 そのしっかりと管理というのは、具体的に言うと実効支配ですか。

枝野国務大臣 そのとおりです。

下村委員 実効支配ということでいいんですか。それというのも、外務大臣は違うことをおっしゃっていましたよね。実効支配じゃなかったですよね。外務大臣はいかがですか。

松本(剛)国務大臣 日本語として、効果があるという意味で、実効的にと有効的にということは同じ趣旨だというふうに申し上げることもできようかと思いますが、実効支配という言葉は、国際法などでは領土の権利が確立されているかどうかの一つの基準として使われるという意味では、尖閣諸島については領土問題はないというのが私どもの基本的な立場でありますから、有効に支配をしているという言葉を使った方がわかりやすいのではないかということで、私はそのような表現を使わせていただいたところであります。

下村委員 領土の支配が確立していないんですか。今の答弁というのはちょっと不確かでしたね。それが一点と、それから、外務大臣は実効支配じゃなくて有効支配だ、枝野官房長官は実効支配だと。政府としてどうなんですか。

松本(剛)国務大臣 まず第一に、尖閣諸島については私どもが有効に支配をしておりまして、領土問題はないというふうにお話をさせていただきました。

 実効支配という言葉につきましては、領土問題で争われている場合に、実効支配があるとかないとかいう概念を持ち出されるケースがありますので、私どもとしては、有効に支配をして領土問題がないということを申し上げている中では、効果的に有効に支配をしているという意味での、日本語として根本的に変わりがあるかどうかということについては受けとめがいろいろあるかと思いますけれども、実効支配という言葉は、領土問題について争いがある場合に持ち出されるケースが少なからずあるということからしますと、領土問題がないという私どもの立場からすると、有効に支配をしていると申し上げた方がわかりやすいのではないかということでお話をしているわけでありまして、基本的に、今官房長官と私が申し上げたことに違いがあるというふうには考えておりませんし、私どもが有効に支配をしているということは改めて申し上げたいと思います。

下村委員 いや、明らかに違いがあるから聞いているんですよ。違いがありますよ。

 もう一度枝野官房長官に確認しますね。有効支配と実効支配はどう違いますか、違いませんか。

枝野国務大臣 今外務大臣が詳しく御答弁申し上げましたとおり、実効支配という言葉は、使われる局面の性格上誤解を招く部分がありますので、できるだけ使わない方が望ましいと思いましたので、私も、お尋ねがあったのでそうお答えをしたのであって、私の認識も今外務大臣が申し上げたのと全く同様でございます。

下村委員 しかし冒頭、実効支配をしているというふうな言い方をされましたね。(枝野国務大臣「そのとおりと言った」と呼ぶ)その中で、これは松本外務大臣がおっしゃったので、有効支配というのは、事実的にはどういう支配についておっしゃっていますか。

松本(剛)国務大臣 我が国の領土として、我が国が施政権を及ぼしている、我が国の管轄権に服しているということを指しているものと考えております。

下村委員 枝野官房長官もお聞きになっておられると思いますが、ことしの六月十七日に、尖閣諸島を中国漁船千隻が取り囲むという計画があったそうであります。そのうち一部が上陸を計画していた。ただし、池に落ちた犬をたたくようなことはすべきではない、つまり、三月十一日の東日本大震災を受けた今の日本の状況の中で、六月十七日というのは沖縄復帰四十年の記念日に当たるわけですけれども、そういうときにすべきではないということで、これは延期をしたというふうに聞いております。

 この中で、私は、最大の安全保障は何かということを考えた場合、未然に防ぐということだと思うんですね。ですから、尖閣諸島については人を常住させる。それはいきなり自衛隊とか海上保安庁等々、政府からすると、周辺諸国に対する要らぬ摩擦を与えるということであれば、本来はそれの方が望ましいと思いますが、あそこの場所は灯台があります。例えば、その灯台の保守のための気象庁の職員を置くとか、それから、あの場所は非常に自然環境が豊かで、いろいろな貴重な動植物がいるところでもあります。環境省の職員を置くとかいうように、常住をさせるということは我が国が有効支配をするための具体的な方策ではないかと思いますが、これについては、官房長官、いかがですか。

枝野国務大臣 沖縄担当大臣として、一つの御提案として受けとめさせていただきます。

松本(剛)国務大臣 国会での御議論ですので、私どももこれは大切にしなければいけない、このように考えておりますが、一つは、先ほどお話がありました六月の計画については、千人とか千隻とかありますが、いずれにせよ、我が国の領域に対する侵犯などがあれば適切に対処するように、態勢を政府一丸となって整えることだというふうに思います。

 なお、今お話がありました尖閣の灯台については、必要な保守点検はこれまでも行ってきているというふうに理解をしておりますし、また希少資源の調査などについても、必要な調査は行ってきているというふうに理解をしているところでありますけれども、今官房長官もおっしゃったように、国会での御議論をいただいたということは、私どももまたそのように受けとめておきたいというふうに思っております。

下村委員 私もこの尖閣諸島が施政下にある石垣市に行きまして、地元の方々から随分要望を受けました。その中で、今の外務大臣の答弁は十分でない、地元の方々からすると、それぞれきちっとした対応をしてほしいというのがありますが、きょうは時間がありませんので、後で時間があれば、それについて改めて詳しく要望と指摘をさせていただきたいと思います。

 その前に、四月十八日に那覇の検察審査会が、昨年九月の、尖閣海域で衝突事件を起こした中国人船長を不起訴処分にした件、これは不起訴処分は不当である、起訴相当とする、こういうふうに議決をしたというのは御存じだと思います。これは国民感覚からいっても、まさに適切な判断であったのではないかというふうに私は思っております。

 この中で、検察審査会は、この種事案の発生を防止し、我が国の漁業の操業の安全を確保するため、我が国の領海を警備する海上保安官の権限を強化し、我が国の領海での警備の実情を知らしめるためにも、本件に関するビデオの公開を希望するものである、こういうふうに結論づけているんですね。

 これについて、検察審査会が指摘をしておりますので、我が国の領海警備、海上保安官の権限の強化、それからビデオ公開について、海上保安庁としてどう考えるか、お答えをいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 検察審査会の求めにつきまして私どもコメントする立場にはございませんが、お尋ねの点の、尖閣における領海警備の強化につきましては、私ども、常時巡視船を配備して警備を行うとともに、定期的に航空機による哨戒等も行いまして、あるいは情勢の変化に応じて、さらにこれを増強するなどして適切に警備を行っている所存であります。

 それからビデオの公開につきましては、参議院の予算委員会からの求めに応じまして、流出したビデオとほぼ同一の内容のビデオにつきましては提出をいたしましたが、その残りの部分につきましては、私どもの追跡から捕捉に至る一連の手法、あるいはビデオ等の採証資機材の性能等に関する情報が公開されるということになりますので、これについては公開は適切でないものと考えております。

下村委員 公開は適切ではないと考えていると。

 これは検察審査会が、この不起訴処分は不当である、起訴相当だと、理由をいろいろ述べているんですけれども、その中で、「みずき」の乗組員が、「自分たちも乗組員も本件漁船に衝突して死んでしまう」、「このまままともに船首が乗組員に当たったら、死んでしまう」、こういうふうに述べております。

 一方で、この中国人漁船船長が、これは香港の新聞のインタビューで、「船長は海上保安庁の巡視船に故意に衝突したとの見方を否定し、「彼らが突然、方向を変えたため衝突した」と主張した。一回目の衝突の後、台湾方面に向けて逃げようとしたが、複数の船艇に囲まれ、追いつかれたという。」

 つまり、これは立場が全く違うんですね。そういう意味で、何が真実かというのは、これは我々としては明らかだと思っていますが、国際社会ではそうではないというふうに思います。

 本来であれば、検察審査会ですから、検察審査会の関係の方に来てもらって答弁してもらうのがいいんですけれども、法務省ですから、法務省がどこまで答弁できるかというのは疑問ではあるんですが、誠意を持ってお答え願いたいと思うんです。この事実関係というのは、この証言ですね、これは事実なのか。そしてこれは公開できるか。公開すべきだと思いますが、いかがですか。

黒岩大臣政務官 お答えをいたします。

 本件については、委員御承知のとおり、検察審査会の議決後、検察当局におきまして、今、再起をして捜査中であるものと承知をいたしております。

 捜査中の事件に関する事柄、特に証拠の内容にかかわる事柄については、法務省として、事実であるとか事実でないとかいうことについては、刑訴法四十七条の趣旨に照らして、お答えを差し控えるということで答弁させていただきます。

下村委員 これはもう、マスコミによって一般国民はすべて知っていることなんですね。ビデオもそうです。

 にもかかわらず、そのような姿勢をとっておりますので、委員長、これはお願いですけれども、参議院の予算委員会でも、これは一部ですが、このビデオの公開をしているそうですけれども、ぜひ当委員会としてもこのビデオの公開について、委員会としてお願いをしたいというふうに委員長に要求いたします。いかがでしょうか。

北村委員長 ただいまの件につきましては、理事会において協議をさせていただきます。

下村委員 それから、今、この尖閣については石垣市の施政下にあるということで、地元の石垣市長が再三にわたって、政府に対しても上陸許可を求めているというふうに聞いております。近々に官邸にも行ってこれを要望したいということでございます。

 これは以前、枝野官房長官にも質問したことがありますが、今、固定資産評価だけでなく、尖閣については、この地域が先ほど申し上げましたように絶滅危惧種、珍しい動植物もたくさんいる中、一方で野生ヤギが増殖をしていて、特に魚釣島等ではがけ崩れの深刻さ等が出ている中で、相当この尖閣が変形をしつつあるのではないか、あるいは生態系が大きく変わってしまうのではないかというようなことを含めて、これはトータル的な要望として上陸をしたいという要望があって、そして、近々に官邸にもそれを持っていくということでありますが、現時点で枝野官房長官として、これについてはいかがですか。

福山内閣官房副長官 下村委員にお答え申し上げます。

 現状では、官邸にお越しをいただいているということはまだ私自身も承知をしておりません。これからだというふうに思っています。

 これまでは、委員御指摘のように、上陸調査については地方税法の第四百八条に基づくものについて要望が来ているというふうに承っておりまして、我々としては、まずは一般論から申し上げますと、国の機関を除き上陸等を認めないという所有者の意向を踏まえ、また、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の賃借の目的に照らして、政府としては、原則として何人も尖閣諸島への上陸を認めないとの方針をとっております。

 その上で、石垣市からの要望でございますが、地方税法四百八条に基づく固定資産税課税のための実地調査については、これまで上陸調査をせずに課税をしてきておりますし、島の現況にも変化がないこと、徴税費用最小の原則、同条は強制的に立ち入って調査を行う権限を与えているものでないこと、平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の賃借の目的を総合的に勘案した結果、上陸を認めないとの結論となったということでございます。

 現状は、そのような判断をさせていただいております。

下村委員 いや、副長官、そういうふうに質問していないんですよ。私が言ったのは、固定資産税評価の問題だけでなく、ほかの説明も申し上げながらトータル的に、そこが施政下の市長として判断をしてということを申し上げた。それを四百八条に矮小化されたら困るんですよ。どうしてもそういう姿勢というのが、中国漁船の船長の釈放の問題も、一検察の判断に政府がしていますね、これも非常にひきょうな姿勢だと思いますが。

 このことについても、固定資産税の評価だけで上陸したいということを石垣市長が言っているわけではないんですよ。ほかの要因がたくさんあるんですね。ですから、それだけをもってそういう答弁をされたら、これは話が進まなくなってしまいます。ですから、もう一度整理して、一つ一つお聞きしたいと思うのです。

 地方税法四百八条というふうにおっしゃいましたね。この四百八条というのは、時間がないから私の方から申し上げますが、「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少くとも一回実地に調査させなければならない。」こういうことが四百八条ですね。ですから逆に言えば、この地方税法四百八条に照らせば、石垣市長の尖閣諸島に対する実地調査、これは適切な行為であるというふうにも言えるんじゃないでしょうか。いかがですか。

逢坂大臣政務官 地方税法のお尋ねがございましたのでお答えします。

 まず地方税法の四百八条でございますけれども、この固定資産の実地調査というものは、必ずしも、すべての資産について細部の一々にわたってまで実地調査を行わなくてもよい、その固定資産の状況を知り得る程度に行えば足りるというふうにされているものでございます。私自身も自治体の長をしておりましたけれども、すべての固定資産について毎年全部調査をしているかといえば、現場としては、そうではないということでございます。

 加えて、今お話のございました石垣市長の尖閣に対する実地調査に対する御指摘でございます。

 地方税法においては、固定資産税の課税について、固定資産の現況を実地調査する旨が今言ったとおり規定されているところでございますけれども、一般的には、固定資産税の課税に当たって実地調査を行うことは、地方税法にのっとった行為であるというふうに理解をしております。

下村委員 そうしたらお聞きしますが、尖閣諸島について実地調査したのは何年前ですか。

逢坂大臣政務官 私の手元に具体的なデータがございませんので、もし必要であれば調べたいと思いますけれども、申しわけございません。

下村委員 資料がないのは当然です。それというのも、この固定資産税の評価制度が始まって以来四十七年間、一度も尖閣諸島に関する実地調査は行っていないんですね。逆に言えば、これはやはりおかしいんじゃないですか。実際は一度もやっていないです。

 四十七年間、一度もやっていない中で、そういうことも含めて地元の首長が、実地調査をしながら、固定資産税についても自分で検分したいということについては、これは正当な理由なんじゃないでしょうか。いかがですか。

逢坂大臣政務官 繰り返しの答弁になりますけれども、税法の規定によれば、必ずしも実地調査をしなくても、状況がわかるということであれば税法の趣旨に沿うというような解釈がされているところでございますので、御指摘のようなことがおかしいかどうかについては、必ずしもそうだと言い切れるものではないと思います。

下村委員 そういうふうに答弁されるのであれば裏がないと、それなりの確証がないと、そういう答弁はできないと思います。

 では、その確たる、何かそれにかわるような状況というのは把握されているんですか。

逢坂大臣政務官 尖閣諸島に関しましては、政府としては、原則として何人もその上陸を認めていないという方針をずっととっていることでございますので、土地の現況あるいは地目の認定が変わるような変化が生じているとは考えておらないということでございますので、そういう意味からの答弁でございます。

下村委員 だから、それが無責任なんですよ。だって、四十七年間、実際に調査していないわけですから、変形しているか、していないかを含めてわからないわけでしょう、見ていないわけだから。わからないのに変わっていないと。変わっていないって、そもそも最初も調べていないわけですから、それで、そのままうやむやにするということは、非常に無責任なことだというふうに思います。

 それで、国の機関を除き上陸を認めないという答弁が今ありましたが、国政調査権を使って国会で視察をするということはどうですか。

福山内閣官房副長官 先ほどの答弁で、私が至らない答弁だというふうに御指摘をいただいた点についてだけ、まず申し上げたいと思います。

 それは、石垣からまだ正式な要請が来ていないということで、現状の要請の範囲では地方税法の問題だということだったので、政府の今の立場を先ほどはお答えさせていただいたということでございます。

 そして、次の御質問に関しては、国政調査権に基づき尖閣諸島への上陸が国会として決定された場合には、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理を図るという政府の賃借の目的を踏まえて、内閣においてその対応を総合的に判断することになるというふうに考えております。

下村委員 これは福山副長官が担当であったかどうか存じ上げませんが、昨年の秋の話なんです。そのときに、先ほどの固定資産評価以外の項目もたくさん入っていました。ですから、これからの話じゃなくて、今までも要望していたことなので、もう一度見ていただきたいと思います。

 それから今の話に戻りますが、国政調査権でありますけれども、自民党が、尖閣については上陸をし、そして実地調査を、視察をするということを国会の関係委員会で決議すべきだということを党として決めました。関係委員会で今後、お願いしたいと思っております。その中に当委員会も入るかと思いますので、ぜひ、沖縄及び北方問題に関する特別委員会でも、尖閣諸島、上陸をして視察し、調査を要望いたします。委員長、いかがでしょうか。

北村委員長 ただいまの件につきましては、理事会において協議をさせていただきます。

下村委員 今までも、過去、委員会で上空視察というのは、もう十回以上は行ったことがあるそうです。上空ではなくて、上陸をしてきちっと日本の国会議員として、我が国の領土なわけですから、正当に調査するということについては所有者の意向に反することではない。つまり、国の機関を除き上陸を認めない意向というのが政府側の答弁の中にありましたけれども、国の機関の一つですから、これは所有者の意向も無視しないというふうに思います。

 もう一度確認しますが、答弁を明確にお願いします。

福山内閣官房副長官 先ほども答弁をさせていただいたとおり、それは、国会での決議があるかどうかは、国会で御判断をいただくことがまず第一だと思います。そして、国政調査権に基づき尖閣諸島への上陸が国会として決議なり決定された場合には、先ほど申し上げた尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持管理を図るという政府の賃借目的を踏まえて、内閣においてはその対応を総合的に判断していきたいと考えております。

下村委員 次に、もう一度、先ほどの市長の上陸調査に戻ります。

 憲法三十条で国民の納税義務が定められています。所有者及び政府には、この石垣市長の尖閣諸島への上陸調査に対して協力する義務があるのではないかというふうに思います。四十七年間、実際には一度も調査ができていないわけですから、上陸を拒否するには、石垣市が納得する正当な理由が示されない限りはこの地方税法違反に当たるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

逢坂大臣政務官 先般、総務省から、石垣市そして石垣市議会に対して、課税庁たる石垣市が尖閣諸島に上陸しないで調査をし、固定資産税を課したとしても違法ではない旨、地方税法第四百八条の解釈として指し示すと同時に、当該解釈にあわせて、尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の賃借の目的を総合的に勘案した結果、政府としては尖閣諸島への上陸を認めないとの結論となった旨を連絡しているところでございまして、税法違反との御指摘は当たらないというふうに考えております。

下村委員 枝野長官、今全国で、石垣市長の尖閣諸島への実地調査はぜひすべきだ、応援する、こういう支持表明で署名している議会が二百六十八議会、地方議会ですけれども、二千六百六十七人の地方議員がこの支持表明を明確にしているんですね。

 つまり、これはもう尖閣だけの問題じゃないわけです。我が国の領土であって、そして石垣市の施政下にある、その市長が自分の施政下のところに行くことがなぜできないのか。これは石垣市民だけでなく、ほかの地方議会の多くの議員の方々が当然だと言って、調査するぐらいなぜできないのかということで支持表明をしているんですね。これについて政府としてはどう受けとめますか。

福山内閣官房副長官 これは委員に恐縮でございますが、先ほどと同様の答弁になりますので長くなりますが、短くしますと、先ほどの、地方税法の四百八条に基づく実地調査については、我々としては、平穏かつ安定的な維持及び管理のためという政府の賃借の目的を総合的に勘案した結果、上陸を認めないとの結論になったということでございまして、たくさんの議員の皆さんが支持表明をされていることは承知しておりますが、そこは総合的に勘案し、今の理由の上、結論となっているところでございます。

下村委員 そういう答弁で本当に通るのかという話ですよ。

 やはり三・一一以降、それ以前の置かれている状況とそれ以降の置かれている状況が違ってきている中で、多くの日本人の意識も変わってきて、これは領土についても、あるいは我が国の国土に対しても今まで以上に強い関心を持って今対処する中で、今までのような、別にこれは民主党政権、菅政権から極端にそういうふうに変わったというわけじゃなくて、今までを踏襲していることは事実です。しかし、もうそれでは通用しないという部分が今の国際状況と国内状況であるというふうに思うんですね。

 これは枝野長官に前もお聞きしたことがありますが、菅総理が予算委員会の我が党の質問の中で、この尖閣諸島については国有化したらどうか、そのことによって今後の施策をきちっとやったらどうかということについて、せっかくの御提案ですから検討させてみたいと思います、そういうふうに答弁しているんです。これは昨年十一月八日の予算委員会の話ですが、その後、政府としては実際に検討しているのかどうかお聞きしたいと思います。

北村委員長 時間も参っておりますので、簡潔に御答弁を願いたいと思います。

福山内閣官房副長官 この尖閣諸島の平穏かつ安定的な維持及び管理を今後とも継続するためにどのような方策をとるかについては、その必要性や所有者の意向等も踏まえながら政府としては検討しているところでございます。

下村委員 全く主体的な答弁ではありませんでしたけれども、とりあえず時間ですので、終わります。ありがとうございました。

北村委員長 次に、今津寛君。

今津委員 自由民主党の今津寛です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。お礼を申し上げたいと思います。

 なお、きょう、三時からQTがあります。官房長官も外務大臣も出席されることでしょうから、恐らく時間が気になると思いますので、私は自分の時間を短縮して四十五分より前に終わりたいと思いますので、ぜひ御協力をお願い申し上げたいというふうに思います。

 まず、質問に入る前に、今の下村議員とのやりとりを聞いておりましたが、特に中国船のあの船長の問題について、やはり納得できません。我が国の主権を守るために毅然として対処していただきたいと、改めて申し上げたいと思います。

 東日本の大震災でありますが、未曾有の災害でありまして、官房長官を初め、御苦労に、心からお礼を申し上げたいというふうに思います。目がしょぼしょぼしていますが、大分お疲れだと思いますが、休息も大事ですので。ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 我が国固有の領土であります北方領土、この北方領土も恐らく被害があったというふうに思いますが、なかなか私たちには報道がありません。わかりません。

 お聞きを申し上げたいと思うんですが、我が国固有の領土である北方領土について、四島別に、どれぐらいの被害があったか、概略を御説明いただきたいと思います。

枝野国務大臣 今回の東日本大震災に当たりましては、東北の太平洋沿岸や、あるいは茨城、千葉にとどまらず、北海道においても、港を初めとして、津波による大きな被害が生じているところでございます。

 北方四島についても、そうした被害が生じている可能性については認識をいたしておりますが、これは、残念ながら、直接把握をすることができないという状況にございます。

今津委員 北海道も被害がありまして、あるところでは漁船の三割ぐらいがやられたり、釧路なども大きな施設が水に浸って大変なことがあったんですが、恐らく北方領土もあっただろう。

 しかし、私は、今の御答弁は納得できないんですね。というのは、確かに今、不法に占拠されておりますけれども、努力をしてみたのかということですね。我が国の領土ですから、我が国の領土が不法に占拠されているのは事実として、しかし、そこが一体どうなっているかということは当然政府として調べるべきだし、調べなければいけない、そして国民に伝える義務があるというふうに私は思いますが、どうでしょうか。

松本(剛)国務大臣 政府としてさまざま情報収集をする中で外務省でも一定の情報収集をしておるわけでありますけれども、直接外務省など政府が収集した情報で申し上げることは、今後の情報収集の観点などから、差し控えさせていただいているところでありますが、報道など、公開されている情報などもあわせますと、例えば国後島の古釜布というんでしょうか、ユジノクリリスクでは一・五メートルの海面上昇があったとか、高いところでは、色丹島のマロークリリスクでは三メートルの海面上昇があったなどの情報に私どもも接しているところであります。

 同時に、ことしの五月、四島交流に同行する形で、当省の職員が国後島及び色丹島を訪問しております。その際、大震災による具体的な被害について現地で見たり島民から話を聞いたりしたところでありますけれども、具体的な大きな被害というような情報に接することはなかったというふうに聞いております。

今津委員 報道ではということと、四島交流の機会にいろいろと調べてきたということですが、私たちも本当に、自民党のときもいろいろと、でき得ること、できないことがたくさんあったので、これは、やはり本来であれば我が国の調査団が行って調査をするということが当然だと思いますし、その調査をもって国民に知らせる政府として義務があるというふうに私は思いますが、どうしたらそれができるかということをぜひ、私たちも考えていきたいと思いますので、政府においてもそのように努力をしていただきたいと思います。

 私は先ほど不法占拠という言葉を使いましたよね、松本大臣。自民党のときは、例えば麻生政権のときには、北方領土に関し、「ロシア連邦によって不法占拠されているというのは、従来から一貫した政府の法的立場である。」とする答弁書を閣議決定しているのですが、政権交代がありまして民主党が政権をとりましてから、不法占拠という言葉を外務大臣が使わなくなったんですね。

 岡田さんが外務大臣のときは、原則として不法占拠という言葉を使わなかった。その理由を国会で問われたときに、交渉当事者として不必要な摩擦を招かないように心がけていると。前原さんは、一昨年十月に国後島を洋上視察した際には、終戦のどさくさに紛れた不法占拠だと記者団に語ったのだけれども、ソフト路線に転じて、それ以後不法占拠という言葉を使わなくなったということでありますが、松本大臣はどうでしょうか。

松本(剛)国務大臣 北方領土についての我が国の基本的な立場というのは一貫をしておるものでありますし、変わっているものでもないと思いますし、またその法的評価を変えたものでもないというふうに理解をしておりますが、私も、法的根拠なく支配をされていると表現をするのがただいまの状況において適切であると考えて、そのような表現をとらせていただいております。

今津委員 我が国固有の領土をロシアに不法占拠されていると思いますが、どうでしょうか。

松本(剛)国務大臣 法的な根拠なく支配をされているというふうに表現をするのが適切であると考えておりますが、同時に、法的評価が何ら変えられたものではないということも申し添えているところでございます。

今津委員 不法占拠されていると思いますが、どうでしょうか。

松本(剛)国務大臣 御答弁は繰り返しになりますが、北方領土について、我が国固有の領土であって、我が国の立場は一貫をいたしておりますが、私自身は、そのことを表現するに当たって、法的根拠なく占拠されているというふうに表現をするのが適切だと考えて、そのように申し上げてきております。

今津委員 反発を懸念して正当な主張を控える、私はやはりだめだと思うんですね。今はいいかもしれませんよ。表面上はいいかもしれませんよ。しかし、肝心なことが実現できなくなっていくということにつながっているというふうに思います。

 最近、ロシアの報道とか高官とかが発言することが、非常に我が国には受け入れられない、いわば不法占拠というものを正当化する発言が続いているというふうに思うんですね。

 時間の関係で、簡単に言いますと、二十二年の十一月十一日、産経新聞。「日ソ共同宣言は無効」という題で、「北方領土問題をテーマにモスクワで行われた公開討論会で、旧ソ連が平和条約の締結後に色丹、歯舞の二島を引き渡す―とした日ソ共同宣言は「無効だ」とする見解が議員や専門家から相次いで示された。」と。

 同じく昨年の十二月二十五日、産経新聞。「露大統領 「四島すべてロシア領」」、「ロシアのメドベージェフ大統領は二十四日、政府系テレビ三局のインタビュー生番組に出演し、」云々かんぬんときて、同じようなことであります。「「全てロシア領だ」と述べた。また、日本は「ロシアとクリール諸島に関する理解を変えるべきだ」とし、北方領土に日本との「自由経済圏」や「自由貿易圏」を創設することを提案した。」と。

 本年二月十八日、やはり産経新聞。産経新聞が多いですね。「ロシア外務省のルカシェビッチ報道官は十七日の記者会見で、日本との北方領土問題について、「この問題ではどのような交渉も行われない。立場に重大な食い違いがあり、交渉については話にもならない」と述べた。」と。

 十一月十六日、読売新聞。「ロシアの有力紙コメルサントは十五日、メドベージェフ政権が、平和条約締結後に北方領土の色丹島と歯舞群島を日本に引き渡すと明記した「日ソ共同宣言」を土台とした交渉を今後は行わないことを決めたと報じた。」と。

 これについて、大臣の感想をお願い申し上げます。

松本(剛)国務大臣 まず、政府の方、そして必ずしも政府関係者でない方の御発言の引用があったかというふうに思っております。

 私どもとしては、ロシア側の政府の立場に留意をしていかなければいけないというふうに思っておるところでありますが、残念ながら、これまでも、北方領土問題が交渉の対象となってまいりましたように、ロシア側の立場と我が方の立場とは一致をいたしておりません。その意味で、我が方の立場と異なる発言があることは事実であります。そのことは、我が方の立場と違うものは到底容認できないということを、これまでも累次にわたってロシア政府には立場を伝えてきたところであります。

 その上で、先般の菅総理とメドベージェフ大統領の首脳会談でも、静かな環境で北方領土問題について交渉し、平和条約を締結する、このことで一致をしているというふうに理解をいたしております。

 両国は、これまでの諸文書、諸合意に基づいて、静かな環境のもとで北方領土問題を解決して平和条約を締結するという基本的な我が国の方針があるわけでありますし、この点で一致をしているということが確認されているというふうに理解をいたしておりますので、これに基づいて、私どもとしては、引き続き粘り強く、しっかり取り組んでまいりたい、このように思っております。

今津委員 我々と同じ考え方なので、安心しました。しかし、それをきちっと至るところで主張していただきたいというふうに思います。

 ところで、我が国上空におけるスクランブルが急激にふえているんですね。特に北の方、ロシアの飛行機へのスクランブルが異常にふえている。そして一方では、スクランブルはふえているんだけれども、領空侵犯、我が国の領空を侵すことは最近はなくなってきた。こういう例が出てきているんですが、そのことについて、防衛省に御説明をいただきたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まず、スクランブルの回数でございますけれども、ピーク時は昭和五十九年度で九百四十四回でございまして、その後、平成十六年度には百四十一回まで減少してきておりますけれども、平成十七年度以降またふえたり減ったりしておりまして、最新のデータでは、平成二十二年度では三百八十六回ということで、前年度に比べて八十七回増加をしているということでございます。

 それから、領空侵犯についてのお尋ねでございますけれども、これまで我が国に対する領空侵犯として確認された事例は全部で三十四件ございまして、そのうち三十三件がロシアによるものであるということでございます。

 直近の事例といたしましては、平成二十年の二月九日にロシアのTU95による伊豆諸島南部の孀婦岩のところで侵犯がございまして、本件については、外交ルートを通じて抗議を申し入れた、そして事実関係も確認を求めたというところでございます。

今津委員 特に北の方の北海道近辺のスクランブルがふえているというふうに思いますが、どうでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 これまでのロシア機の活動というのは、どうしても、ロシアの方から出てまいりますので、基本的には北海道の近くを通って出ていくということになります。飛行距離が長ければ長い分だけ、いろいろな形でスクランブルがふえていく。そういう意味で、北海道の部隊というのは、スクランブルに際しては最初に対応することが多いということが実態でございます。

今津委員 北の守りは大切だということを感じました。

 防空識別圏でありますが、委員の方々にお配り申し上げた資料を見ていただけばわかるんですが、北方領土と竹島の上はかかっていませんね。なぜでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えをいたします。

 防空識別圏と申しますのは、現在のところでは、我が国におきましては防空識別圏における飛行要領に関する訓令というのがございまして、これが昭和四十四年に定められておりまして、これは、戦後米軍がつくったものを運輸省の航空図誌で引き継ぎ、それを防衛省として制式化したというものでございます。ただ、これはあくまでも防空識別を的確に行うためのものでございまして、領土ないし領空といったものの限界や範囲を定めるものではないということで定められているものでございます。

今津委員 納得できませんけれども、時間の関係で、また別の機会に議論をしていきたいというふうに思います。

 四十五分までと言わなきゃよかったね。縮めなきゃならなくなっちゃった。

 北方領土のロシア軍の状況でありますが、最近とみに、ミサイルまで配備するのかという報道も出てきておりますように、国後、択捉には従来九千人を超えるロシア軍がいたんですが、今は三千五百人に減った。しかし、最近、例えばミサイルを装備したり、また新型原潜だとか、いろいろな近代化がされているようであります。

 簡単で結構でありますが、どのように変わってきたのか、それはなぜなのか、少しわかりやすく御説明いただきたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ロシアの装備の近代化でございますけれども、近年、国防予算の増加傾向を背景として、今後も継続されていくというふうに考えているという記述を白書でもしておりまして、防衛省としても、高い関心を持って動向に注目をしております。最近のところでは、こういった近代化の動きというのは、北方領土に限定されたものではなくて、ロシア軍全体の近代化の中でとらえていく必要があろうかというふうに思っております。

 最近、いろいろな装備の配備についての発言が相次いでおりますので、こういった点につきましては防衛白書等で一年間のいろいろな事象というのを記述するようになってございますので、そういった状況の変化というものについては、またまとまった形でお示しをしていきたいというふうに考えております。

今津委員 今の高見澤さんのお話の中に出てきました防衛白書なんですけれども、これが平成二十二年度版、一番新しいものですよね。しかし、この中には、それが全く触れられていなくて、旧来の北方領土におけるロシア軍の状況だけ書いてあるわけですよね。とすると、これは状況が変わったという認識でいいですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 最近のいろいろな発言というのは特にこの一年間以内のことでございますので、この白書が策定された時点では発言はなかったということでございます。白書の性格にかんがみまして、そういった状況については、的確に評価して織り込んでいくということになろうかと思います。

今津委員 そこで、私は思うんですけれども、日本の自衛隊は、もちろんロシアに進軍するわけでもありませんし、上陸などを考えているわけでもありませんから、ロシアから見れば、日本のことについてはそんなに脅威に感じているわけではない。全体の近代化の中の装備だというふうに、それはわかるんですけれども、しかし、ミサイルが装備をされたり、上陸できる揚陸艦が配備をされたりということになると、当然我々は、北海道を中心とする北の守りもそれにたえ得るように、やはり万が一のことに備えて、中国のこともありますし、そういう面で対応できる内容にしなければいけないと普通なら思うんですけれども、それについてはどうでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 新大綱におきましては、平素の活動を戦略的に実施する、迅速でシームレスに対応する、それから国際協力といった、運用に焦点を当てた動的防衛力を構築することとしております。

 北海道というのは、その戦略的特性あるいは地理的特性ということも勘案すれば、陸海空自衛隊の部隊を配置しておりますし、大規模演習場も含めまして全国の約半分の面積の演習場が所在しているというようなことでございます。そういう良好な訓練環境ということも生かしながら全体の部隊の配置ということを考えておりますし、また、こうした北海道の特性の中で、質の高い防衛力の整備ということは着実に進めているということでございまして、全国の各地の部隊が使用できる演習場をきちっと維持していく、管理していくというようなことは引き続き重要であるというふうに考えております。

今津委員 今度の災害を見ましても、自衛隊のマンパワーの力強さ、優秀さというのは改めて目をみはるものがあるんですね。そして、外国へ行って、PKO活動などでも、日本の自衛隊はすごいぞ、侍、武士道の自衛隊だということで、大きな評価もいただいているんですよね。

 これは常々私たち言っているんですが、今回も設置法がありましたが、私たちは反対をさせていただきました。それは、やはり自衛隊を削減するという考え方に私たちはならないということでありまして、同時に、いつか私たちがそういう立場になれば防衛大綱そのものも見直していこうという覚悟をしているわけであります。

 今、日本の安全保障のために、自分たちだけが安全であればいいという考え方ではなくて、世界のために日本が貢献をしようという考え方に立っていろいろと変えていかなければならないものがあるとすれば、民主党から提案があれば、政府の方から提案があれば、我々も幾つかいろいろな場面で発言をしておりますし、文書も出しておりますので、我々が賛成すればいけるものがかなりいっぱいあるという面で、ぜひ、新しい民主党になっていただいて、そして積極的に国際貢献できるような安全保障体制にするように前向きにやっていただきたいとお願いを申し上げたいというふうに思います。

 また、今の答弁でわかりましたとおり、北の守りは重要である。確かに、動的防衛力ということの中で、西、南を中心とした、重視した安全保障体制になるのですが、同時に、将棋なども同じでありまして、こちらを固めておいてこちらを攻撃するということでなければ、こちらをあけておいてこちらを固めてもこちらから攻撃されますから、そういう意味で北の守りの重要性ということを申し上げて、終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

北村委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時四十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時二十六分開議

北村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。伊東良孝君。

伊東委員 それでは、後もちょっと詰まっているようでございますので、急いで簡潔にいきます。

 ことしは、北方領土へのビザなし交流が始まりましてから二十年目を迎えました。この間、北方領土返還運動関係者の皆さんの御努力、そしてまた熱心な取り組みがあってこの二十年がある、このように思うものでありまして、敬意を表するところであります。

 そもそもビザなし交流の目的は、双方の主張に違いはあることを認めつつ、対話を通じて相互理解を深め、領土問題の解決につなげることにあります。今日まで二十年の交流は、相互理解という点では大きな成果があった、こう思いますし、時には、友好関係がさらに増進し、領土返還に明るい兆しが見えてきた時期もあった、このように思うわけであります。

 この二十年間の日ロ関係を振り返ってみて、枝野担当大臣は、一人の国会議員として、どのようにこれまで北方領土とかかわったことがあるのか、また、運動に参加したりしたことがおありかどうか、まずお伺いいたします。

枝野国務大臣 北方領土問題については、我が国にとって大変重要な、そして、特に元島民の皆さんにとっては本当に切実な大事な課題であるという思いを持ってまいりました。

 率直に申し上げて、直接その運動の集会等に参加させていただくことは、今回担当大臣になるまでございませんでしたが、かつて野党時代の民主党で政調会長を務めさせていただきまして、その折には、北方問題、沖縄問題、いずれも重要な課題であるということで、そうした立場から、当時、野党の民主党として、この問題に対して積極的に取り組むべく、微力ではございますが、努力をしたことはございます。

伊東委員 北方領土担当大臣になられてから、同時に震災が起きまして、それどころではないという大変なお忙しさだ、このように思うわけでありますが、近年停滞している、あるいは後退してきているのではないかと言われるこの北方領土問題につきまして、担当大臣として、どのようにとらえ、どのように今後進めたいと思っておられるか、お伺いします。

枝野国務大臣 この問題は、一つには、外交というか政治ベースの課題であります。そうした意味では、最近のロシアの姿勢については、大変遺憾な行為が幾つかあるということで、我が国にとっては残念な状況にあります。

 しかし、一方で、二十年にわたってビザなし交流を諸先輩方の御尽力によって進めてきていただいたことを初めとして、相互の国民レベルにおける理解の増進、そしてもう一つ、特に北方担当大臣としての主たる役割であります、国内において、多くの国民の皆さんにこの問題について十分な理解をしていただき、また、国民運動的に北方四島を我が国の領土としてしっかりと対応していくという世論の醸成ということの重要性についてはますます高まっていると思っております。

 率直に申し上げて、これまで諸先輩方にいろいろ御尽力をいただいてきているというふうに思っておりますが、若干やはり若い世代が、いろいろと北方領土問題が生じた要因である戦争の記憶等も、一つ上の世代どころか二つ上の世代、三つ上の世代ぐらいまでしか経験がない、直接は知らないというような世代になってきております。

 この若い世代を中心に、この問題の重要性、そしてしっかりとした理解を広めるということの重要性、たまたま私自身が多分北方問題の歴代担当大臣としても相当若い方ではないかというふうに思っておりますので、若い世代に十分な理解と、そして運動に参加していただくということを強く推し進めることによって、外務大臣等の努力を後押ししていくことを進めたいと思っておりまして、大臣就任以来、特に若い人たちへの啓蒙活動のより効果的な推進について、事務方と相談しながら進めているところでございます。

伊東委員 一昨年、北特法ができて、学校教育の中にもしっかりとこの北方領土の問題が明記されるようになった、若い人たちにもこれから認識が広がっていくことを私どもは期待するわけであります。

 しかしながら、二十年を迎えるこのビザなし交流でありますけれども、実は、一昨年のことでありますが、二年前は、北方領土に入域する日本側関係者に出入国カードの提出をロシアは要求いたしました。これは別の書類提出で決着をしたものの、第一陣の渡航が中止になったのであります。また、一九九二年からずっと続いてきた人道支援もなくなりました。

 さて、去年は、日本側訪問団の第一陣が、根室を出発し、国後島に上陸いたしました。ところが、ロシア側がチャーター船に対しロシア運輸省の入港申請書の提出を要求したことがわかりまして、船長は申請書に必要事項を記入し提出いたしました。日本外務省の幹部は、チャーター船の入港前、話は聞いていない、こう言っていたわけでもあります。我が国の領土と主張するところに入るのに入港申請書というのはいかにも問題があるのであります。また、日本側の同行記者にロシア外務省発行の記者証明書の取得も求めたのであります。昨年はさらに、サハリン州政府でありますけれども、この北方四島を管轄する州政府が対話集会の開催を政治的だとして拒否する姿勢を表明いたしまして、領土問題を主要テーマとしない住民交流会という形をとらざるを得なくなりました。

 私が何を言いたいかといいますと、ビザなし交流へのロシア側の姿勢が変化してきているということであります。とても、友好交流を進めたい、増進させたいという姿勢ではなく、実効支配を既成事実化し強化しようとしている、こういうふうにしか見えないのであります。

 ロシア側のこうした姿勢の変化につきまして、どのようにこれらをとらえ、対策を講じてきたのか、松本外務大臣にお伺いをしたいと思います。

松本(剛)国務大臣 一つ一つについてはあれですけれども、御指摘のような問題認識ということについては、私どもも、幾つかの情報に接する中でしっかりと状況把握をしてまいりたいというふうに思っております。

 ロシア側の方は、最近はクリルの発展計画というようなことも取り上げたりしておりまして、北方四島における事実上の支配を強化しようとしているかのように見える部分というのは、私どもの立場とは相入れないものでありまして、遺憾であるということで申し上げてまいりました。さまざまなレベルで申し入れを行ってきておるところでありますけれども、根本的な解決に向けてのさらに努力なり方法というのをしっかり模索していくことが重要ではないかというふうに思います。

 なお、念のため申し上げれば、このような動きのいかんにかかわらず、ロシアが法的根拠なく北方四島を占拠しているということに正当性が付与されることは一切ないということは改めて申し上げたいと思いますし、日本政府の立場にはいささかの変化もないということであろうかと思います。

 今、私どもとしては、外交の面からは、やはり首脳のレベルも含めて、緊密に対話、相互の信頼関係を構築して、ロシア側には、アジア太平洋地域においては日本は重要なパートナーになり得るということを理解させるなどの方法により、あらゆる分野における協力を通じて領土についての交渉も前進させていくことを進めていきたい、こう考えております。

 同時に、先ほど官房長官からも御報告を申し上げましたが、あわせて、やはり両国の国民の感情というか国民の世論というのも大変大きいわけでありまして、これについての理解が内外で広まるということについても、私どもも政府の一員として、官房長官と協力をして努力してまいりたい、このように思っております。

伊東委員 経済交流、人的交流、文化交流を含めて、交流から北方領土にというお話も一部あるんですけれども、逆に、それはそれ、これはこれというのがロシア側の考え方ではないのかなという、そんな思いをいたします。

 突然外務大臣を御指名したので大変申しわけなかったわけでありますが、お二人いらっしゃいますので、どちらに質問するか、先にお話しさせていただきました。

 次に、官房長官にお聞きします。

 昨年の十一月、ロシアのメドベージェフ大統領が国後島を訪問されました。旧ソ連、ロシアの国家元首としては初めての北方領土訪問でありました。このとき、菅首相のコメントは、許しがたい暴挙という強い非難の言葉でありました。私は、このぐらい言って当然だ、こう思うわけでありますが、ロシア政府の反応はなかなか厳しいものがありまして、その後の日ロ関係をさらに冷やす、こういうことになったと言われているわけであります。

 この当時、枝野大臣はこのコメントの作成あるいは相談にあずかっていたか、かかわっていたかどうか、お伺いいたします。

枝野国務大臣 直接的に御発言の内容の一言一句について相談をさせていただくというふうなことはございません。

伊東委員 これはロシア政府を厳しく非難する言葉であった、こう思うものでありますから、担当大臣として、これぐらい言った方がよかったかななどという首相からの相談があったのかなと思ったところでもあります。

 枝野官房長官、担当大臣として、もし、菅首相から、当時、どんなコメントを出したらいい、こう相談を受けたら、どのような答えを大臣はなされたでしょうか。参考までにお聞かせください。

枝野国務大臣 先生も十分御理解いただいているかというふうに思いますが、北方領土の問題と、そして広い意味での日ロ関係の問題というのは、我が国としては、北方四島が日本の領土であるということについての姿勢は、厳しくロシアに対して、あるいは国際社会に対してしっかりと訴え、伝えていかなければならない。一方で、北方領土問題を解決するためには、ロシアとの間で交渉も進んでいかなければならない。この兼ね合いというのは、率直に言って、なかなか非常に難しい問題があろうかというふうに思っております。

 そうした意味では、特に、御指摘いただいた大統領の訪問のような事態に対して、どのような表現で我が国としての断固たる姿勢を示すのかということについては、外交交渉の全体の流れ、経緯、あるいは今後の外交交渉において、例えば、当然、総理は首脳外交もございます、そうしたことと全体の兼ね合いの中で最終的には判断をされることだというふうに思っております。

 私も、官房長官という立場と沖縄北方担当大臣という二つの立場を持っておりますので、なかなか厳しいところがあるんですが、北方担当大臣の立場として尋ねられれば、できるだけ毅然とした強い姿勢をお示しいただくことが望ましい、その上で、北方領土問題解決に向けた全体構造の中で総理としての御判断をいただきたい、こういうふうに申し上げたろうと思います。

伊東委員 大統領の国後島訪問以降、二月四日にはセルジュコフ国防大臣が択捉島、国後島を訪問しておりますし、つい先ごろの十五日には、イワノフ副首相など閣僚五名が国後島、択捉島を訪問しているわけであります。着々と社会経済発展計画、これは中身はさまざまな言われ方をしているところでありますけれども、形的には数百億単位のオーダーで社会資本整備をしていくということであります。

 また、このイワノフ副首相など閣僚五名が国後島、択捉島を訪れたときというのは、ちょうど、二十周年を迎えるビザなし交流の第一次訪問団の実は訪問中でありました。まさに見せつけるかのごとく実効支配の強化ということを誇示した、このように思うものであります。

 この件に関して、松本外務大臣にお伺いいたします。

 これはロシアのベールイ駐日大使を呼んで遺憾の意を伝えた、このように言うわけでありますけれども、首相のように暴挙とまでは言わないまでも、ロシア政府に向けてもう少し正々堂々たる抗議と主張をすべきではなかったかと私どもも思いますし、多くの根室地区また元島民の皆さんもそう思ったのではないか、こう思います。

 外務大臣として、前原さんみたく事を荒立てたくないという思いはわからないわけではないですけれども、主張するところは主張する、抗議するところは抗議する、こういう姿勢があっての日本の外交でなければならないというふうに私は思うわけでありまして、この点につきまして、御見解をお伺いするものであります。

松本(剛)国務大臣 私も前原前大臣のもとで副大臣を務めておりまして、事を荒立てていたというふうには思っておらないのでありますが。

 私自身の表現とかそういったことをどのようにお受けとめいただくかというのはありますが、今回、私自身がベールイ大使を呼んで伝えました内容は、外交的には十分抗議というふうに表現をしていただいて差し支えないものではないかというふうに思っております。

 実際に私自身も、今お話がありましたように、昨年十一月の大統領の北方四島訪問以降、ロシアの政府要人が北方領土の訪問を続けているということでありましたので、これは私から直接抗議をする必要があると判断をいたしまして、五月十六日、これは十五日の訪問でありまして、日曜日であったかと思いますが、いわゆる月曜日の朝一番にベールイ大使を呼んでこのように申し伝えたところであります。

 文章にいたしますとそのように受けとめられるのかもしれませんけれども、外交的には大変強い形で抗議をしていると御理解いただいたらと思います。

伊東委員 またこれに関して後ほどお伺いいたしますけれども、その後すぐでありますが、五月二十四日、韓国国会議員三名が国後島を訪問いたしました。韓国国会の、これは竹島でありますけれども、独島領土守護対策特別委員会に所属する議員三名であります。

 先ほど浅野議員の質問でも若干触れられておりましたけれども、基本的な認識をお伺いしますが、今回のこの三名の訪問経費、これは公費で行っているのか、私費で行っているのか。また、これは委員会の活動として行かれたのか、私的政治活動としての訪問なのかどうか。また、公用旅券の使用の有無について、外務省としての基本認識をお伺いするものであります。

松本(剛)国務大臣 本件につきましては、今、私どもも引き続き確認中のところがありますが、費用につきましては、国会の経費というふうにお聞きをいたしております。

 今、私どもも議会ないしは政府の方にも問い合わせをさせていただいておりますが、我が国の制度とは必ずしも同じと言えないところがそれぞれあるようでありまして、そもそも委員長が既に持っておられる経費というのがあるやのような説明もあったりいたしますので、引き続き確認をいたしております。

 また、委員会でのものなのか、公的なものなのかというようなお話もありました。これについても、韓国政府側からも公的、私的にかかわらずというような説明があって、私どもからすれば、旅券の使用であるとか議員の海外渡航の場合は、公的、私的にかかわらずということはちょっと考えにくくて、これは公的か、これは私的か、これは公用旅券を利用したか、私的な旅券を利用したかというのが明確になっているというふうに思っているんですが、そういう点も含めて確認をいたしたいと思います。

 現在把握をいたしているところでは、費用そのものは議会の費用が使用されているということは、調べましたところ確認できているところでございます。

伊東委員 これにつきましては、私どもの筆頭理事であります秋葉委員から外務省に問い合わせをして、なかなかわからない、また調査しますというお話でありましたので、それから一週間もたっておりますので、少しはわかったかなと思ってお伺いしたものであります。

 ただ、お聞きしますと、国会議員三人に国会の職員がついていったかどうかとか、さらには行った現地でだれか大使館の者が迎えに出たかとか、あるいは、私がちょっと聞いたところでは、ロシアのビザだけではなくて、北方四島に渡るときには国境警備隊の許可がさらに必要だという話を聞いたことがありました。そうなりますと、ロシア政府も韓国の国会議員が北方四島に訪問するんだという認識のもとでありましょうし、それを後ろで支えるのはまさに韓国政府以外の何物でもない話であります。

 これを、日本側の問い合わせ、抗議に対して、野党の国会議員が私的に行った話なんだ、国会とはかかわりないんだ、政府とはかかわりない、そんな当初のコメントでありまして、これとそごが生ずるのではないかというふうに私は思うのであります。

 やはり韓国政府もこれを後押しし、そしてまた、ただ国会議員が三人、北方四島に行くということだけではなくて、やはりロシア政府との綿密な打ち合わせもある。ロシア政府のそうした韓国側に対する一定の理解、配慮があって初めて、そうは簡単にいかない北方領土にこうして国会議員が行けるということになるわけであります。

 この辺の見解につきまして、韓国政府の公式見解が野党の勝手な行動だなどということで、はい、そうですかということにはならないというふうに思っておりますので、この点につきまして、松本外務大臣の認識を再度お伺いします。

松本(剛)国務大臣 今、委員からの御指摘がありましたように、いわゆる政府側の議員に対する便宜供与というのは行っております。在ユジノサハリンスク韓国総領事館駐在官事務所が一行に対して渡航に係る便宜供与を行っていた、韓国国会職員が一行に同行していた、また航空券の入手のためロシア側に働きかけたことなどが判明をいたしております。

 このことについては、私どもの方からも、韓国政府は関係ないという立場との文脈からいきますと遺憾であるということで、在京の韓国大使に、便宜供与についての説明について、外交の責任者として私から抗議をいたしました。

 その上で、韓国側からは、先ほど申し上げたことになりますが、私的であろうと公的であろうと、国会議員の渡航について便宜供与をするということと韓国政府の立場とは、改めて申し上げるが関係ないというのが政府の立場でありました。

 また、実は、五月二十五日に韓国の国会の韓日議員連盟の方々が表敬をされた際に、私の方から本件問題を取り上げて議員団の方々にお話をいたしたところでありますが、韓日議員連盟会長の李相得議員からも、我々としても本件訪問には反対である、議会からも議員本人に伝達したが、残念ながらこのような行動に至った、議会の中には、政党の幹部が話をしても必ずその言うとおりにしない者がいる、こういう説明でありました。また、同じく野党の民主党の事務総長の議員も同席をしておられましたが、議員の行動は個人のものであって、民主党の方針ではないということの話がありまして、事務総長は説得に努めたが、残念ながら聞き入れなかった、こういう説明があったというふうに理解しております。

伊東委員 韓国国会議員が相次いで北方領土に行くようなことのないように、これは厳しく韓国政府に申し入れしていただきたいと思うところであります。

 さて、フランスのドービルで行われた菅首相とメドベージェフ大統領との日ロ首脳会談についてお伺いいたします。

 これは、韓国国会議員が国後島訪問直後の五月二十七日であります。松本外務大臣からベールイ駐日大使へ、イワノフ副首相ほか閣僚の国後島訪問、択捉島訪問につきまして遺憾である旨申し入れをしたことを、菅総理が大統領に伝えた。そして、あらゆる分野で日ロ関係を発展させていく中で、領土問題を解決に向けて進展させていきたい。また、静かな環境下で領土問題についての協議を継続していくということで一致したとあります。

 新聞で読みますと、元島民の二世の人がこの話を聞き、静かな環境で問題解決を進めようとするのでは全く遺憾である、静かに話をして解決するのであればとっくに解決している、こう言っているわけであります。これは、根室現地そしてまた元島民の素直な、率直な声であります。

 そこで、お伺いしますけれども、日ロ首脳の言う静かな環境下とは、どのような環境、どのような状態を指しておっしゃるのか、お聞きいたします。

松本(剛)国務大臣 これは、いわゆる交渉を、マスコミなどを通じた公開の論争ということではなく、首脳同士の信頼関係に基づいて静かな雰囲気の中で行うという意味でこれまで使用しておりますし、今回もそのような意味であるというふうに考えております。

伊東委員 もう時間もありませんので、最後、一つ、二つの質問になります。

 それでは、先ほどから何度もお話し申し上げますように、昨年十一月、メドベージェフ大統領が国後島を訪問した。二月四日にはセルジュコフ国防大臣が択捉、国後島に駐留する部隊を訪問し、兵器や装備の近代化を進める方針を表明しているわけであります。一方、ことしの一月以降、韓国や中国の企業に対し、北方領土への投資を要請いたしております。相次ぐ閣僚の訪問や、韓国国会議員の訪問を許し、不法占拠を固定化、恒久化しようとしているのは明らかであります。

 ロシアは、従来、平和条約締結後の色丹、歯舞の二島引き渡しを明記した一九五六年の日ソ共同宣言を法的に有効な唯一の文書、こういうふうに長いこと位置づけてきたわけであります。メドベージェフ大統領の国後島訪問以降は、四島はロシア領との主張を明確にしてきているわけであります。

 この八カ月の間にこれだけにぎやかに関係悪化の材料がふえているのに、静かな環境下というのは、私は、ロシアの言いなりになって抗議もできない、あるいはこうしたことに反論もできない、まさに顔色をうかがっている日ロ関係になってしまうのではないか、いわば負け犬の理屈ではないか、こう思うわけであります。

 戦後、不法に占拠された、奪われた領土であるということをもっと正々堂々と世界に訴えていかなければならない、あるいは国民の意識高揚を図らなければならないと考えるわけでありますけれども、両大臣の、それぞれ、決意というか、北方領土問題についてのお考えを最後にお聞かせいただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 島民の方々のお気持ち、お考え、また、道東、地元において活躍されてこられた議員のこれまでの活躍に敬意を表する意味からも、私どもとしても、北方領土問題についていまだ何らかの結果が出ていない中で外交の責任をお預かりしている以上は、何かを私の方から申し上げるということはなかなか難しいというふうに思っておりますが、一つ、まさに先ほどお話がありましたように、これまで長い間多くの先輩方がロシアとの交渉に携わってくる中で、合意文書というのも作成をしてまいりました。私どもとしては、ぜひこの合意文書に基づいて交渉を前へ進めていきたいと思っておりまして、この一致点、そして、この問題を解決して平和条約を締結する必要があるんだという基本的な考え方の一致というもののもとで、前へ進めていくためにはやはり静かな環境が必要なのではないかという考え方から、私どもは今こういう視点に立っております。

 同時に、先ほど官房長官も話をいたしましたが、広報を通じて内外に本件の問題についての理解を深めることが必要であるという点については私も全く同感でありますので、ぜひ当委員会の委員を初めとする皆様方とも協力をして、責務を果たせるように邁進をしてまいりたいと思っております。

枝野国務大臣 私も、領土問題を解決しようと思えば、やはり静かな環境での外交交渉が必要であるというふうに思っております。最近の状況は、この静かな環境をどちらが壊しているのか、あるいは壊そうとしているのかという状況は、これははっきりしている状況だろうというふうに思っております。

 そうしたことの中で、改めて静かな環境での交渉ということで合意できたことは、日本の外交にとって、マイナスよりもプラスの方が多いのではないのかと思っております。

 ただ、簡単にできる問題だというふうに思っておりません。特に、北方大臣の立場としては、先ほど申しました、国内の啓発、啓蒙、世論の喚起ということで、オール・ジャパンで外交交渉を後押しできるように、さらに努力をしてまいりたいと思っております。

伊東委員 ありがとうございました。終わります。

北村委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 私は、明年、二〇一二年に日本復帰四十周年を迎えます沖縄の振興策を中心に質疑をさせていただきたいと思います。

 私ごとでございますが、私、参議院の方で十年前に初当選して以来、沖縄に事務所を構えまして、沖縄県選出議員と同じ気持ちで、沖縄で政治家として活動してまいりました。現在は公明党の沖縄方面議長という立場もいただいているわけでございます。

 一九七二年の復帰以来四十年間、我が国政府と国会は、沖縄の特殊事情を踏まえまして、本土との格差是正あるいは自立的発展の基礎条件整備を目的に、国が中心となって振興開発計画、あるいは直近の十年間は振興計画ということで特別な支援を実施してきたわけでございます。

 枝野大臣も松本大臣もよく御存じのとおり、沖縄の特殊事情と私が申し上げたときに、それは単に、日本への復帰が二十六年間おくれたということだけではないわけですね。もちろん、その結果としての米軍基地の集中という問題もございますし、また、日本ではまれな亜熱帯性気候であるということで、気候や自然条件も違う。

 それに加えまして、非常に広い県なんですね。沖縄県の島の数というのは実は百十三ございまして、有人離島だけでも二十九。私はそのうち二十ぐらい回らせていただきました。まだ九つ回っていないんですが、二十は回りました。石垣島とか宮古島はそれぞれ五十回ぐらい行っているわけでございます。島が百十三あって、そしてその面積は、南北に四百キロですから、多分ここから佐渡島より遠いという距離で、東西の幅は千キロなんですね。千キロ、四百キロで、総面積が二千二百平方キロを超える面積を、海域も入れれば持っているわけです。

 沖縄というとどうしても、本土復帰がおくれて、米軍基地があるから特別なんでしょうという印象を持たれている方が多いんですが、それだけじゃないんですね。これだけ広域に島を抱えて、そしてこれだけ広域ということは、きょうの委員会でも出ていますけれども、尖閣も入っているわけです、経済水域も本当に広大なんですね。ですから、これから海洋資源の話とか、自公政権時代からも議論がありましたけれども、いろいろな意味で沖縄というものは、ちょっと違った角度で政府としてやはり見続けないといけないということを強調させていただきたいと思います。

 沖縄に過去四十年間で政府が投じた予算は、今年度以外、補正も含めて申し上げると、十・二兆という大きな規模になっております。この十・二兆の予算を投じて、沖縄の本土との格差是正、自立的発展の基盤整備ということをやってきたわけです。

 まず枝野大臣に、この四十年間の支援でどういう成果があったのか。また、十兆円以上投じたけれども、まだ解決されていない課題はどういうものがあるのか。成果と課題、たくさんあるので、主なものをそれぞれ三つずつ例示していただきたいと思います。

枝野国務大臣 この四十年、先輩諸兄の御尽力によって、沖縄振興に一定の成果は上がってきていると思っております。

 一つは、特に本島を中心にして、社会資本整備が四十年前と比べればかなり前に進んできているというふうに思っております。それから、基幹産業であります観光についても、観光客数や観光収入は四十年間で十倍ということでございますので、これも一定の成果が上がっていると見ております。また、これと並ぶ新たな基幹産業として成長を後押ししている情報通信産業についても順調に増加をしている。

 三点ということであれば、この三点が一定の成果かなというふうに思っております。

 一方で、一人一人の生活の改善ということについて、暮らしがどうなっているのかということを考えますと、一つには、残念ながらまだ、一人当たりで見ますと県民所得が全国で一番低いという状況でありますし、完全失業率も最悪の水準という、こうした一人一人の暮らしという視点に立ったときに、必ずしもこの間の成果というものがそうしたところに結びついていない部分が少なからずあるというのが一つのポイントだろうと思っています。

 二つ目の問題点は、今御指摘もいただいた、非常に広域にわたって離島があって、本島もまだまだ不十分なところがありますけれども、特に離島においては社会資本整備あるいは交通といったところでまだまだ大変不自由な、不便なところが多々残っているということについては、さらに支援が必要であろうというふうに思っています。

 三つ目の足りない点としては、沖縄のハンディキャップの面について補うということが中心になってきているかというふうに思っておりますが、むしろ、今御指摘いただいた、まさに海洋において広域に、本当に自然豊かな島が多々あるなどということも含めて、沖縄の利点を生かした部分というところにまだまだ残念ながらつながっていない。本当に自立的な沖縄振興のためには、観光にしろITにしろ、あるいは地理的条件を生かした点などにしても、この優位性を生かしたという部分のところがまだまだ不十分ではないか。

 私は、三点ということであれば、この三点を特に意識しております。

遠山委員 大変的確な御答弁だと思います。ありがとうございます。

 その上で、私は重ねて、特に課題の部分について指摘をさせていただきたいのは、県民所得が全国四十七位とか、完全失業率が全国で最悪だと、今まさに枝野大臣御指摘のとおりなんですけれども、それに加えて、産業構造が非常に違うんですね。今や沖縄の産業構造は、第三次産業で九〇%を超えております。残りの一〇%で第一次、第二次なんですが、もう第二次が、製造業がほとんどないんですね。

 この製造業がほとんどないということが、どういう最近の政策的な関連があるかといいますと、これは正直言って、皆さんの政権じゃなくて我々の政権時代からの反省点なんですが、エコポイント制度の恩恵が全然ないんですよ。つまりエコポイント制度は、公明党がえらい口酸っぱく今も言っている政策で、私たち公明党は、やったときは、これは全国で成果があるだろうと思っていたんですが、私の地元沖縄に行ったら不評だったんですね。なぜかなと思ったら、沖縄に部品とかをつくる製造工場はほぼ全くないんです。だから、エコポイント制度とか地デジの需要でわあっと液晶パネルが売れましたといっても、ほとんど沖縄に経済効果はない。こういう問題が一つある。

 それからもう一つ、これは民主党政権の問題です、戸別所得補償、お米。福山官房副長官が首を振っていますが、今私の手元に沖縄県の農業産出額構成比というデータがありますが、全国の平均は米で三二・八%なんですね。沖縄は一・二%なんです。ということは、九八・八%を米以外で、サトウキビとかが多いんですけれども、農業をやっているわけですから、戸別所得補償を厚くやりますといっても、そんな一・何%の米のところにお金を入れられても何の恩恵もないんですね。逆に、サトウキビの補助金がちょっと削られて怒っている、こういうことであります。

 それから、これは余談ですけれども、この間、民主党からも大分参加していただいて、私、道州制の議連を立ち上げるのに頑張っていたわけですけれども、PHPの社長をやっておられた江口克彦さん、今、みんなの党の参議院議員でございますが、この人なんかが、道州制が日本で必要だと言うときに必ず挙げていた例の一つが、文科省の画一的な基準で、小学校を建設するときに、窓は南側に向けなさいと。これは、北海道ではそうした方がいいと思いますよ。だけれども沖縄で、もともと物すごく暑いのに、しかもクーラーのない時代に学校は建っているわけでしょう。南側に向けてつくらないと文科省の基準に合わないなんてことを実はやっていたんですね。

 いろいろほかにも事例はありますが、つまり、沖縄は気候も位置も全然違うわけです。皆さん、違うのは文化とか食生活だけじゃないんです、あと方言が違うとかいろいろあるんですが。要するに、いろいろな諸条件が違いますから、全国と同じような政策をやっていても効果がないどころか、マイナスになるケースもある。この点に着目をして新しい振興策を考えなきゃいけない。

 そこで、先ほど玉城デニー議員も、私がこれから聞くことと大分同じ質疑をされていたんですが、一括交付金というのを沖縄県知事を先頭に求めているわけでございます。この一括交付金、沖縄県が求めている制度というのは、実は地域自主戦略交付金の中でも一括交付金という言葉を使われてしまっているので、混同している人が多いんですね。

 そこで、次の質問は、まだ枝野大臣なんですが、沖縄県が求めている沖縄振興一括交付金と、既に今年度から始まっている地域自主戦略交付金の違いを端的に御説明いただきたいと思います。

枝野国務大臣 まず、地域自主戦略交付金は、一定の投資補助金を一括化し、各府省の枠にとらわれずに、自由に対象事業を選択できるようにするものでございますが、沖縄振興一括交付金として御要望いただいておりますのは、一括化された補助金のメニューとは無関係に使用でき、県単独事業にも充当可能なものにしてほしい。

 それからもう一つ、地域自主戦略交付金は、財源が異なる投資補助金と経常補助金の扱いを別々に検討しておりますが、沖縄からの御要望は、これら区分にかかわらず一括化してほしい。

 そして三つ目には、地域自主戦略交付金については、客観的指標に基づく恣意性のない配分を導入したものでありますが、沖縄振興一括交付金については、財源の規模は過去の沖縄振興予算を勘案の上決定してほしい。

 こうしたところが違いとして大事な、大きなポイントかと思っております。

遠山委員 全く大臣のおっしゃるとおりなんですね。

 つまり、これをわかりやすく言うと、大変ドラスチックな、抜本的な要求をしているわけですね。言いかえれば、沖縄を日本版香港にしてくれと言っているんです、日本版香港。だから、北京とか上海もいろいろと特区があったり、それぞれの地域の特殊な制度というのはあるやに聞いていますけれども、御承知のとおり、香港というのはまさに資本主義そのもので、英国統治時代の枠組みを、制度をほぼそのまま受け入れて中国は運営をしているわけでございまして、いわゆる一国二制度というわけでございます。沖縄は、まさにそれを求めている。

 実は、一括交付金も、ですから政府の一部の補助金を一括してまとめて出すというレベルではなくて、私はきょう手元に持っておりますが、内閣府の沖縄担当部局予算、今年度で二千三百億円ありますが、これを全部一括の交付金にして、使い道も含めて丸ごと沖縄に任せてくれ。もっと率直に、直截に言うならば、今この予算をつくっている内閣府の役人たちの仕事を全部取り上げて、沖縄に下さいと言っているんです。

 おもしろいのは、沖縄の琉球新報という新聞に載っていたんですが、内閣府の、だれだかわかりませんよ、匿名で、官僚たちの間ではこの沖縄県の一括交付金の要望をブラックボックスと呼んでいる。つまり、何に使うかは教えないけれども、お金だけたくさん欲しいということを言っていて、そんなブラックボックスみたいなものを国会が認めるわけないじゃないかと内閣府の官僚が言っていたと、県議会議員が言っているのを新聞が報道していましたね、大分又聞きになっていますが。

 ただ、これは、私も与党にいましたから非常に難しい要求だと思いますが、そろそろ沖縄が自立的に発展をしていくために、当然、財政規律とか予算の使い道の透明化は担保しなきゃいけません、一括交付金といっても国費を出すわけですから、会計検査院の検査の対象になりますし、財務省も当然、予算執行調査をしなければいけないわけでございますから、私は、そこをきちんと担保した上で、はっきり言って異例ですけれども、特例ですけれども、沖縄の予算に関してはかなりの自由度を与えて渡すということを、決断をそろそろしてもいいのではないかと思いますが、枝野大臣、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 香港と中国本土との違いほど大きな違いにできるかとか、本当にブラックボックスそのものになってしまってはいけないだろうというふうには思います。しかし、沖縄のさまざまな特殊性を踏まえるならば、そしてそのことが一つのリーディングケースになっていくということも含めて考えるならば、かなり踏み込んで沖縄の御要望を、来年度から一気に、全部できるかということは別としても、踏み込んでまいりたいというふうに思っております。

 これについては、全体の一括交付金について担当している総務大臣においても、過日の政策委員会で御発言をいただいております。もちろん各省、特に、恐らく財務当局がいろいろな御意見があるんだろうなというふうに思っておりますし、これは御指摘もいただきましたとおり、会計監査の観点とか、そういった観点はしっかりとキープしなきゃいけないだろうと思っておりますが、そうした枠の中でできる最大限のところに踏み出すべく、この夏に向けて努力をしてまいりたいというふうに思っております。

遠山委員 大臣、これはすばらしい御答弁でありました。

 自公政権以来の伝統ですが、沖縄担当大臣という肩書をもらったら、できる限り沖縄の側についていただいて、財務大臣とか外務大臣とか防衛大臣と多少けんかをしても、沖縄県の要望をしっかり受けとめてやっていただきたいと思います。今、本当に前向きな御答弁で勇気づけられました。

 その上で、きょう時間を短縮しましたので、次の質問を飛ばしまして、逢坂総務大臣政務官にちょっとお伺いをしたいんです。

 今沖縄は、お配りした資料にありますとおり、県から一括交付金化だけではなくて、県計画への国の支援、つまり、県が主体になって振興計画をやるとかあるいは内閣府の出先機関の見直し、これはまさに、私が先ほど申し上げた話と一にすることを要望しているわけでございます。

 そして、この資料の一の一番上に、「制度提言の実現」ということも入っているんです。もう時間の関係で詳しくは申し上げませんけれども、五十を超えるさまざまな制度改革、これは言いかえれば、規制の特例措置とかあるいは税制の優遇措置とか、まさに総合特区の法案の議論で、内閣委員会で政務官ともやらせていただいたところとかぶる制度改革の提案があるんですね。

 そこで、私、きょうは確認の意味でお聞きをしたいと思っていますが、沖縄は来年度から始まる沖縄振興計画について今いろいろな要望を出しているわけです。でも、それは内閣府の沖縄振興担当部局を基点とした調整で、枝野大臣のリーダーシップもいただいて中身が決められていくわけでございますが、同時に、沖縄は四十七都道府県の一つの県として、総合特区に申請をすることも可能だと思うんです。それは不可能なわけはないですね。

 そうしますと、総合特区に申請をして、国際戦略特区あるいは地域活性化特区として指定を受けた場合、その総合特区として求める規制の特例措置等の中に、例えば振興計画では盛り込むことができなかった制度改革をそちらに振りかえて申請するということは、これは法律上可能だと私は解釈しておりますが、それで間違いないですか。

逢坂大臣政務官 遠山先生の非常に説得力のある話に先ほど来ずっと聞き入っておりまして、本当に感服いたします。

 今お話のあった総合特区でございますけれども、現在、これは衆議院を通過いたしまして参議院へ送付されている段階でございまして、この法案は現在審議中ということであります。

 この法案が成立いたしましたら、今先生が御指摘になったとおり、沖縄振興計画に載っている、載っていないということとは別に、沖縄県から申請があってその内容が認められれば、順次、それらの措置がされていくことになるというふうに思います。

遠山委員 ありがとうございます。

 私の理解が正しいということがわかりましたので、公明党沖縄県本部としては、振興計画に係る沖縄県の要望も政府が十分受けとめて反映をしていただきたいと同時に、総合特区という、法案は今参議院で審議中ですが、自民党さんも公明党も賛成ですので、これは間違いなく今国会で成立するという前提でお話を申し上げれば、この総合特区制度の枠の中でも沖縄県としていろいろな取り組みができるということで、また地元に戻って、そういった方向に関心のある方々と協議をしてまいりたいということを申し上げたいと思います。

 最後になりますが、資料をちょっと見ていただきたいと思います。

 資料の三と四を閣僚の皆様にごらんいただきたいと思いますが、資料三は、もう皆さん御承知のとおり、沖縄本島の中南部の都市圏に米軍基地が大変集中をしているということでございます。

 実は、沖縄県の人口は、伸びておりますけれども百三十万強、別にとりたてて大きいというわけではありません。しかし、実はここに書いてありますとおり、県民の八割強、政令都市以上の百十四万人が沖縄本島の中南部に集中して住んでいるわけでございます。そこに普天間基地を初めとする広大な米軍基地がある。

 もう一枚紙を繰っていただいて、資料の四を見ていただきますと、これは私が予算委員会で取り上げた同じテーマの話でございますが、従来、日本では、米軍基地は大変迷惑な施設で沖縄の皆さんは出ていけと言っているけれども、実は、米軍基地があることでかなり大きな経済的メリットが沖縄県にはあるのではないかという印象を持っている県外の方が多いんです。私が個人的にお話をした中にも、まあ、遠山さん、基地はそれはない方がいいけれども、あるからこそ来る恩恵もあるんでしょうということをよく言われました。

 ところが、この四枚目の資料を見ていただくとわかるとおり、例えば普天間基地だけを例にとりましても、普天間基地が生んでいる経済効果というのは、地代料、年間賃借料は六十六億円、従業員、沖縄県民で雇われている人はたった二百人、雇用者が雇用所得として得られるのは十一億円なわけでございます。

 ところが、この二・五分の一のエリアしかない那覇の新都心、これはもともと米軍の施設だったわけですが、二十年以上かけて跡地が再開発をされまして、どうなっているかというと、直接経済効果が、年間販売額が六百八億円、雇用されている人数は五千七百二人、生産、所得の誘発額は八百億円を超えるという規模ですから、実は、普天間基地の数百倍の経済効果を米軍跡地で生んでいるということが客観的に示されているわけでございます。

 ですから、沖縄が復帰した四十年前はいざ知らず、今は米軍基地がなくても、沖縄は自立的な経済としてやっていけるということがもう実証されているという段階に来ているわけでございます。

 そこで、最後の質問になりますが、こういった現実を受けて、資料の一枚目の四番、沖縄県が今要望しておりますのは駐留軍用地跡地利用推進法という、これは仮称の法律ですが、こういった法律を、確かに、米軍用地がいつ返還されるかというのは普天間移設の問題や米軍再編の問題ともかかわってきますので、今、確定的に閣僚の皆さんはおっしゃれないわけでございますが、しかし、沖縄県から見れば、逆に返還が決まる前からいろいろなビジョンを立てて準備をしておきたいと思っているわけでございます。

 そういう意味からも、与党民主党の玉城デニー議員からも同じ要望が先般ございましたけれども、私も、公明党を代表して、こういった跡地利用の法整備をしていただきたいという強い要望を持っております。最後に、枝野大臣から御答弁をいただきまして、終わりたいと思います。

枝野国務大臣 御提示いただいた資料は、大変貴重な資料だというふうに思っております。

 基地の跡地利用については、来年の三月で期限の切れる沖振法の次のステップの法律を考えていくのに合わせて、軍転法も同時に切れますので、それにつきましては沖縄県から出てきております御要望も踏まえながら、まだ現時点では、ちょっとここは中身について踏み込んだことを申し上げられる段階ではありませんが、十分に沖縄の御意見を踏まえた形で法案の作成に入っていきたいというふうに考えております。

遠山委員 枝野大臣、きょうの御答弁、本当に私はうれしく伺いました。

 今晩、あす、どうなるかわからない状況ではございますが、沖縄のことにつきましては枝野大臣を私は全力で応援してまいりますので、ぜひ、私ども沖縄の要望をしっかり聞いて、できる限り反映させていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。ありがとうございました。

北村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私も、きょうは、沖縄振興策を違う角度から皆さんと議論していきたいと思っております。

 沖縄が本土に復帰して三十九年目、四次にわたる振興計画で約十兆円の振興予算が県内に投下をされました。このうち、八割以上が公共事業関係費であります。

 これが沖縄の環境に及ぼした影響についてまず環境省に聞きますが、沖縄の干潟や海岸、藻場の役割、この間の開発がもたらした影響についてどのように認識しておりますか。

渡邉政府参考人 環境省で実施しております自然環境保全基礎調査、全国の自然の調査でございますが、その中で、干潟に関しましてこれまで、主に地形図、空中写真の読み取りなどによりまして干潟の面積の変化を把握してきております。平成九年度の調査報告書によりますと、沖縄県全体で二千三百四ヘクタールの干潟が確認されております。昭和二十年以降、七百五十七ヘクタールの干潟が消滅をしている状況でございます。およそ五十年の間に約二五%の干潟が消滅したという状況になっているところでございます。

赤嶺委員 ちょっと確認してください。調査の最後の年は何年とおっしゃいましたか。

渡邉政府参考人 平成九年度でございます。

赤嶺委員 平成九年。今は平成二十三年、かなり古い資料なんですね。この間の開発の結果、海岸線がどうなったか、干潟がどうなったか。それ以後の、まあ、目視でわかりますし、いろいろな資料が出ておりますが、ちょっときょう、裏表で四枚にわたる資料も、なくなった干潟についての地図も出しておきました。

 一九九六年以降の埋め立てによって消滅した干潟は三百三十五ヘクタールであります。現在工事中の干潟は百八十ヘクタール、今後計画されている干潟の埋め立ては三百ヘクタール、合計八百十五ヘクタールが失われることになります。これがそのまま続いていくと、二千ヘクタールを超えた沖縄の干潟は残りが三百八十八ヘクタール、南国特有の干潟が復帰後からは二七%しか残らない、こういう環境への影響が出ているんですね。自然になくなったわけではなくて、埋め立てなどによる開発でなくなってきているわけです。

 干潟が失われただけではありません。白い砂浜を初め、海岸線も人工化しております。沖縄県が策定した琉球諸島沿岸海岸保全計画というのがありますが、この中で「近年では、各種の開発によって海岸線が人工化するなど、海岸の原風景が失われ、海岸景観が大きく変化してきた。」として、生物の生育環境や水質浄化機能が低下していると指摘しております。青い海、白い砂浜は沖縄を代表する風景でありますが、実は、少なくない砂浜が、別の場所から砂を持ってきて人工的につくられたものであります。

 沖縄本島の海岸域の砂浜のうち、人工の砂浜は何カ所ですか。内閣府、答えていただきたいと思いますが、その砂はどこから持ってきたのですか。

園田大臣政務官 お答えを申し上げます。

 人工の砂浜ということのお問いかけでございますので、沖縄本島所在の市町村におきまして、県の海岸事業として人工的に砂浜の造成を行ってきた箇所、先生の資料にもございますけれども、三十五カ所であるというふうに聞いております。

赤嶺委員 園田政務官、その砂はどこから持ってきたか、調査はできていますか。

園田大臣政務官 同じく沖縄周辺の海の中から持ってきているというふうに聞いております。

赤嶺委員 沖縄近海の海、慶良間沖のチービシとか国頭村の国頭から砂を持ってきているわけです。

 きょうは、今、園田政務官がお答えになりました三十五の海岸について、海岸名、内閣府でつくっていただきました資料を提出しておきました。人工の砂浜ということであります。

 それで、貝の専門家の名和さんという方がいらっしゃいますが、この方は、漂白されたような真っ白な砂浜の人工ビーチがいつの間にか三十八カ所もつくられた。これは事業がたくさんありますので、確認したら三十八カ所、政府は三十五カ所と言っていますが。そのほとんどが二〇〇〇年代以降につくられた。さらに、計画中の人工ビーチが十カ所以上もある。人工ビーチには生き物の気配がなく、恐ろしいほど沈黙のなぎさだ。こうした状況が生物多様性に影響を及ぼしていると指摘しております。

 これは私たちが衆議院の国交調査室に調べていただいた資料ですが、資料にも各県の名前で出しておりますが、二〇〇〇年から十一年間で埋め立てられた面積は、沖縄県では七・〇六平方キロ、県の面積全体の〇・三一%、長崎県が〇・三二%、大阪が〇・三〇%。埋め立ての三大県になっているわけですね。こういう開発が自然に大きな影響を与えているわけです。

 枝野大臣に伺いますが、本土復帰以降の沖縄振興のもとで沖縄の貴重な干潟や自然の砂浜が失われていることについて、どのように受けとめておられるか。また、今、政府は、先ほど来議論があったように次期振興計画の検討を進めていますが、政府がいろいろな審議会に出す資料の中には、私が指摘した事実、きょうの委員会に出した調査結果が、さっきの干潟の調査でも、かなり古い調査ですから、一切入っていないわけです。自然環境について議論をする、次の振計に向かってどうするかという資料さえない。こういうことを改めて、こういうこともきちんと検証していくべきではないかと考えますが、枝野大臣はいかがですか。

枝野国務大臣 私は、政権交代前から、御批判も多々あるんですが、コンクリートから人へという政治の大きな方向性を変えていくということについて、我が党内でも主導してきたつもりでございます。そうした意味では、いたずらに公共事業によって開発をするということが必ずしもすべてプラスに働くものではないという立場に立っております。

 ただ、沖縄のさまざまな経緯等を踏まえたときに、一定のさまざまな公共投資、公共事業によって、沖縄の持っているハンディキャップを補ってその優位性を高めていくということについて、引き続き一定の役割があるというふうに思っております。

 この兼ね合いというものは、沖縄にとって貴重な自然というものも財産であることも間違いありませんので、これは、県においても、あるいは市町村等においてもいろいろと苦慮されておられるというふうに思いますし、国としても、沖縄振興計画の御相談に当たっては、そういったことも考慮に入れた御相談をしてまいりたいというふうに思っております。

赤嶺委員 ですから、今、政府が主導している沖縄振興の審議会の中でも、沖縄県が主導している審議会の中でも、環境に対する検証、その検証に基づく資料、こういうのが一切出ていないんです。それを出して、検証して、どうあるべきかという検討をやるべきだと思うんですが、この点、いかがですか。

枝野国務大臣 沖縄振興策についての協議、沖縄との御議論、御相談の場においては、どういった話の進め方をしていくのかということを含めて、沖縄県と御相談をしながら進めていかなければいけないというふうに思っております。

 ただ、今御指摘いただきました、沖縄にとって、沖縄の振興のためにも沖縄の豊かな自然というのをしっかりと生かしていくということも重要であるということは、担当大臣になってから私も知事さんと何度かお話しさせていただいておりますが、共通の御認識をされているというふうに私は認識をしておりまして、そういった意識は県としてもお持ちだと思います。

 したがいまして、今御指摘いただいたような視点も含めて、そしてそこでの議論のために必要なデータ、材料等があれば、これも県とも御相談の中で、環境省その他において調査ができるものについては進めてまいりたいと思います。

赤嶺委員 ちょっとトーンが下がってきたような感じはいたしますが、それでも、コンクリートから人へと言ってこられた御自身の立場を改めて表明なさいました。

 そこで、泡瀬干潟の問題であります。

 政府が現在出している埋立地用途変更承認申請書によりますと、干潟については、今後の工事による直接的な改変がほとんどないとしています。

 前原前大臣はたった二%しか影響はないと言っておりますが、干潟の浄化機能というのは、干潟だけで成り立つものではなくて、それに続く浅い海域、海草藻場と一体であります。泡瀬干潟では、その藻場は四十七ヘクタールが埋め立てられ消滅しております。これでは、干潟の浄化機能は今回の埋め立てによって失われてしまうのではないかと思いますが、いかがですか。

枝野国務大臣 今、一部は御指摘をいただきましたが、沖縄市が策定した泡瀬干潟土地利用の見直し計画においては、干潟の消失面積が従来の案の一八%から二%へと減少する、それからクビレミドロの生息地が埋立地から外れるなど、従前の計画と比べて環境への負荷が軽減されることになると考えております。

 ただ、事業の実施に当たっては、環境保全という要素も大変重要だと思っておりますので、これまで同様に、環境影響評価に基づく環境保全措置を適切に実施するとともに、環境に最大限配慮した工事を行うこと、また、環境監視委員会等の助言指導に基づき適切な対応を図ることによって、埋立地周辺への影響を軽微にとどめるよう努力をし、またこのことは可能であるというふうに考えております。

赤嶺委員 この埋立地用途変更申請書によりますと、「埋立地の南側における海浜整備にあたっては、」「部分的に自然海浜に類似した海浜整備を行う。」、自然海浜にまねたというか類似した海浜整備を行う、「画一化、単調化の傾向がある人工海浜に地盤の起伏や岩、植生等の自然の魅力を持たせ、良好な親水空間を創造する。」、このように書いてあるんです。

 干潟、藻場を埋め立てて人工海岸をつくる、単調で画一的だといけないから、人工的にでこぼこもつくろうとか、こんなことを計画しているんですが、干潟の浄化機能を失わせて人工海岸をつくるやり方というのは本末転倒だと私は思います。自然に類似したものをつくるというのなら、自然そのものを残しておけばいいと思います。

 やはり泡瀬干潟にも、これまでの沖縄の開発にも、開発によって失われた多くの貴重な環境がある。それについてまともに政府も向き合ってこなかった。これが今の泡瀬干潟の開発にもつながっている。私は、直ちにやめるべきだと思います。

 きょうは時間がありませんので、次に、下地島空港の軍事・災害拠点について聞きます。

 まず防衛省ですが、北澤防衛大臣は、五月二十三日の沖縄政策協議会で、国際的な災害支援の拠点として下地島空港を利用することを提案いたしました。きのうの記者会見では、シンガポールで開かれるシャングリラ会合で、我が国周辺の災害への支援体制の構築について発言する意向を示しております。具体的に何を検討しているのか、防衛省、説明していただけますか。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 これは先日の安保委員会でも大臣から御答弁をさせていただきましたが、二十三日の基地負担軽減部会の自由討議に入った中で私の方から、これは大臣ですが、かねて沖縄側からも御要請のあるこの問題について真剣に取り上げてはいかがか、また、今回の大震災、また各国からの支援、そういうものを踏まえると、私とすれば、つまり大臣とすれば、後方支援のハブ化というようなことで、近隣諸国にも貢献できるというようなことから、有効活用をしてはどうかと。これは、防衛大臣として、防衛省の政策として申し上げているわけではなくて、振興部会、これは基地負担軽減部会の誤りだと思いますが、という中で提言を申し上げたわけでありまして、これについては、どなたも異論を挟む方はなくて、前向きに検討するべきだと。沖縄側も、そういう意味では受けとめ方は非常に積極的であったというふうに感じておりますと答弁をさせていただいているとおりであります。

 沖縄県の要望書、新たな沖縄振興のための制度提言概要において、アジア太平洋地域の災害援助拠点の形成による国際貢献として、沖縄をアジア太平洋地域の災害援助拠点として位置づけ、アジア太平洋地域の平和と安全に貢献する旨提言をされていると承知しておりますが、こういった点を含めまして、今後の沖縄振興策については、県とも調整を図りながら、政府全体として検討すべきものであるというふうに考えております。

赤嶺委員 この所管は防衛省ではないわけですよね。外務省であるわけです。省内で検討もしていないけれども、防衛大臣が発言をする。私は、非常に軽率だと思います。

 受けとめも、沖縄からいいと言っておりましたが、災害時の国際緊急援助活動の拠点としての沖縄の利用は、その大前提は平和利用であります。今回の防衛大臣の発言について、地元宮古島市の副市長さんですが、自衛隊の常駐配備となれば、市民、県民の反対が予想されると、否定的な見解を示しております。仲井真知事も、自衛隊配備などの防衛論につながるならば、下地島利用を安易に認めることはできない、このように述べているわけです。

 外務大臣に伺いますが、国際的緊急援助活動のための拠点として下地島空港の利用をどのように考えていらっしゃいますか。

松本(剛)国務大臣 緊急援助隊は私どもの所管ということであります。その意味で、現在は、御承知のとおり、緊急援助隊は、全国の警察、消防、海保、自衛隊の職員や医療関係者が当番制、登録制によって、その都度緊急に派遣できるようにしてきているということであります。

 拠点を設けて常設の隊を置くということについては、現在も、先般、ニュージーランドへも援助隊とともに私は参りましたが、その際も、現在の当番登録制でも極めて迅速に派遣をされておるということがあります。その意味では、援助のための拠点を設けて常設のチームを置くという意味では、さまざまな角度からの検討が必要だろうというふうに思っております。

 他方で、私どもとしても、援助活動のために装備などの備蓄というのは内外で行ってきております。御承知のとおり、先ほどの援助隊は成田に援助隊のためのものを置いてありますし、また、援助物資という意味では、交通の便なども考えまして、現在は倉庫をフランクフルト、シンガポール、マイアミ、ヨハネスブルグに設けております。

 そのような意味から、拠点としての意義というのは幅広い角度で検討する必要があるということであるかと思いますけれども、議論は何ら排除されるものではないのではないか、このように考えております。

赤嶺委員 拠点を設けてそこに常設部隊を置くというのは、今の緊急援助隊のあり方からいってもなかなかそれは困難だし、備蓄物資というのも、すぐ展開できるように海外に置いておられるということもありましたが、そういう状態になっていると。

 それでは、国際緊急援助隊法は、第三条第二項で、外務大臣が特に必要があると認めるときに、自衛隊の派遣について防衛大臣と協議を行うとしておりますが、この「特に必要があると認めるとき」、これは具体的にはどのような場合を指すのですか。

松本(剛)国務大臣 今委員が御指摘の国際緊急援助隊法第三条二項の「特に必要があると認めるとき」ということは、被災国政府などからの要請の内容や災害の種類、関係行政機関などの対応能力などを勘案して、文民の援助隊では対応が困難である場合のことを指しているというふうに解釈をいたしております。

 民で対応できない場合のみ軍、ある意味であるいは自衛隊と申し上げた方がいいのかもしれませんが、の部隊を活用するという考え方は国際的なガイドラインにも沿ったものではないか、このように考えてそのような解釈をとっております。

赤嶺委員 つまり、国際緊急援助活動において、自衛隊の派遣は特別な場合に限られてくる、基本は民間航空便ということになるということです。

 下地島空港の軍事利用は、これまで何度も取りざたされ、その都度住民の反対で頓挫してきました。今回の自衛隊と米軍による災害支援の拠点化というような発言は、災害支援を突破口にして下地島空港の軍事利用に道を開くものであり、これは県民として受け入れがたい。下地島空港は、一九七一年の屋良覚書で、軍事目的に使用せず、民間航空機以外の使用を行わないことを約束しております。防衛省はこの覚書を尊重すべきであるということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

北村委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 十八時にも菅内閣不信任案が提出される、こういう状況の中で質問をいたしますが、私は、どんな政権になろうとも、ふるさと沖縄に軸足を据えて、ウチナワの未来はウチナーンチュが決めるという私の政治信念で、沖縄政策についてこれからも政策論争をやっていきたいと思います。

 そこで、枝野大臣にお伺いをいたしますが、沖縄県が新たな沖縄振興として提言した、アジア太平洋地域の災害援助拠点の形成による国際貢献という提言を、沖縄担当大臣としてどのように理解しておられますか。

枝野国務大臣 沖縄は、私が申し上げるまでもなく、その地理的条件から、アジアの各国を初めとして、まさに日本の各国に開かれた窓でございます。そうした意味では、国際的な緊急援助活動を行うに当たって沖縄がその拠点となるということは、近隣諸国との関係、日本全体にとってもプラスであると同時に、沖縄の地理的特殊性、その優位性を生かして、地域の振興につながる可能性のある考え方として前向きにとらえたいというふうに思っております。

照屋委員 先ほど共産党の委員からありましたように、この沖縄県の提言をどうも北澤大臣は誤解をしているように思います。

 北澤大臣は、災害時の国際拠点としての整備と、そして下地島空港を含む南西諸島を日米共同訓練や多国間の共同訓練のために使用しよう、こういう構想のようですが、その構想は内閣の一致をした方針ではございませんね。

枝野国務大臣 先ほど赤嶺先生からも同様の御指摘がございましたが、これは北澤防衛大臣が御発言をされたので、どうしても自衛隊の活動というものと結びつけられて受け取られている側面があるのかなというふうに思っております。

 私も沖縄政策協議会の場で同席しておりましたが、今、例えば国内では成田に緊急援助隊の物資等の倉庫がございます。ところが、この春、震災の前、ニュージーランドの地震の折には、どうやって早く援助隊を送るのかということについて、成田から一般の民間航空機でニュージーランドに入っていただくのか、それとも政府専用機、これは軍用ではありませんが、自衛隊が管理をしているという意味では自衛隊の飛行機でございまして、これを新千歳から成田に持ってきて飛ばすのか、羽田に持ってきて飛ばすのかということを、これは、政府専用機も自衛隊機でありますので防衛大臣もいろいろかかわられて、御尽力をいただいたということがございました。

 そういった御経験も踏まえて、下地島の、あるいは沖縄の地理的条件を踏まえるならば、今成田にあるような物資倉庫が例えば沖縄にあれば、どこに行くにしても、そこに集まってそこから物資を積んでいけば、結構重たい、いろいろな大型の重機等もあるようでございますので、そういうような視点から御発言をされたというふうに私は認識をいたしております。もちろん、特に下地島についてはかつての覚書もあるというふうに承知しておりますし、これを自衛隊用の、あるいは軍事用のものにしようというような意図で北澤大臣がおっしゃったのではないというふうに思っておりまして、あくまでも、沖縄からも御提言をいただいている趣旨を踏まえた中で、一つのアイデアとして御発言をされたというふうに承知をしております。

 そうした視点の中で、実際に沖縄に防災拠点を置くことが適切かどうか、置く場合にはどういった形がいいのかということは、この北澤大臣の御発言も参考にしながら、沖縄県と御相談をしたいというふうに思っております。

照屋委員 枝野大臣、沖縄県に存在する膨大な米軍基地が沖縄振興の障害になっているとの認識は、私は党派を超えた県民の共通認識であろうと思います。

 そこで、沖縄県が求めている駐留軍用地跡地利用促進法(仮称)の制定は、議員立法ではなく、そして時限立法でもなく恒久法として、内閣提出の法律として立法化を図っていく、こういう決意に変わりはございませんか。先ほど大臣は、内容には言及できないというお話でございましたが、決意をお聞かせください。

枝野国務大臣 基地の跡地利用については、沖縄振興の重要な課題の一つであると認識をいたしております。いわゆる軍転法が来年の三月で切れますので、その後のことを含めて、跡地利用のあり方については沖縄振興のあり方の検討の中においてしっかりと進めてまいりたいと思っておりますし、それを踏まえて、私は当然、新たな法制度が必要であると思っておりますので、来年の通常国会に御提案できるように検討を進めてまいりたい、政府、内閣提出として考えてまいりたいと思っております。

 ただ、先ほど申しましたが、恒久法がいいのかどうかというのは、私も率直に言って迷いがございます。基地は、これは残念ながら五年とか十年で沖縄の基地が全部なくなるということはないとは思いますけれども、未来永劫、恒久的に沖縄に基地があるということは決して想定しているものではございませんので、恒久法で設けますと間違ったメッセージになるのではないかという心配もいたしておりますので、そうしたことも、知事さん初め沖縄選出の議員さんを含めて、沖縄の皆さんのお考えもいろいろと考慮させていただいて検討させていただき、いずれにしても内閣提出法案で提出すべく準備を進めたいと思います。

照屋委員 大臣、資金力の乏しい沖縄県において、沖縄振興を金融面から支える総合政策金融機関として、沖縄振興開発金融公庫の存続は必要であると私は考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

枝野国務大臣 沖縄振興開発金融公庫については、平成十八年の法律でございますが、いわゆる行革推進法において、現行の沖縄振興計画の計画期間の経過した後、つまり来年の三月がめどになるわけですが、日本政策金融公庫に統合するものとされたところでございます。

 ただ、今御指摘いただいたとおり、沖縄の特殊性を踏まえた公的金融機関の機能が必要であるという御指摘は私もしっかりと受けとめなければならないというふうに思っておりまして、新たな沖縄振興のあり方についての検討を踏まえて、どういった形でその機能を引き続きしっかりと果たしていけるのかということについての検討も進めてまいりたいというふうに思っております。

照屋委員 枝野大臣、現在、いわゆる戦後六十六年、ところが、沖縄は戦後ゼロ年という芥川賞作家の言葉があります。

 現在の沖縄振興計画における戦後処理政策は、不発弾処理と旧軍飛行場用地の問題に限られております。私は、悲惨な沖縄戦を体験した苦難の歴史に照らしても、新たな沖縄振興計画では、遺骨収集事業や、特に義務教育未修了者の支援にまで戦後処理の枠を広げて、国の責任のもとで取り組んでいくべきだと考えますが、大臣の御意見を聞かせてください。

枝野国務大臣 戦争における御遺骨の収容については、現在も厚生労働省において、沖縄県や地元のNPO団体の御協力もいただきながら積極的に行っているところでございます。本年度も所要の予算を増額しておりまして、引き続き、積極的に国として対応してまいりたいというふうに思っております。

 また、義務教育未修了の方が、戦争中のさまざまな事情によってたくさんいらっしゃるという特殊事情にかんがみまして、今年度から学習機会を提供するための支援事業が実施されるよう、文部科学省や沖縄県と協力して所要の調整を行っているところでございます。

 これは、全体構造の中でどう位置づけるのかというのはさまざまな御議論があろうかというふうに思いますが、国として遺骨の収容や義務教育未修了の方に対する対応をしっかりと進めていくということについては、今後もしっかりと、さらに強化をしてまいりたいと思っております。

照屋委員 特に義務教育未修了者への支援の問題は、大臣御承知のように、学齢期のときに沖縄戦があり、そして沖縄戦終結による戦後の混乱があり、学びたくても学べなかった、しかも沖縄には公立の夜間中学がない。こういう状況で、教育の機会均等を国の責任で保障するという意味では、私は、今政府が行っているNPO法人珊瑚舎スコーレへの支援などを強化してもらいたいと思います。

 最後に、社民党は、新たな沖縄振興のあり方として、これまでの大規模公共事業主体の経済対策から、教育や保育、福祉分野に多くの予算を振り分けること、第一次産業の振興に重点を置いた雇用創出を図ることなどを掲げておりますが、この社民党の考えに対する大臣の所見をお聞かせください。

枝野国務大臣 私も、一般論としては、大規模公共事業よりも教育であるとか、保育であるとか、福祉であるとか、あるいは御指摘いただいたのは第一次産業でございますが、第二次産業、第三次産業も含めて、きめの細かな対応、対策というものが振興に役に立つのではないかと一般論としては思います。

 ただ、さまざまな公共投資がまだ残念ながらおくれているという客観的な状況も踏まえ、沖縄県のさまざまな御要望を踏まえた中で振興計画をつくってまいりたいというふうに思っているところでございます。やはり一番大事なのは沖縄県からの主体的な御意見、御要望だというふうに思いますので、沖縄の先生からの御指摘もしっかりと心に刻みながら、県知事を初めとして、沖縄県の皆さんとしっかり御相談をしてまいりたいと思っております。

照屋委員 終わります。

北村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二分散会


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