衆議院

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第3号 平成28年4月26日(火曜日)

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平成二十八年四月二十六日(火曜日)

    午後一時二十分開議

 出席委員

   委員長 渡辺  周君

   理事 武部  新君 理事 西銘恒三郎君

   理事 比嘉奈津美君 理事 堀井  学君

   理事 松本 洋平君 理事 小川 淳也君

   理事 水戸 将史君 理事 稲津  久君

      秋元  司君    尾身 朝子君

      金子万寿夫君    木村 弥生君

      工藤 彰三君    國場幸之助君

      佐田玄一郎君    櫻田 義孝君

      武井 俊輔君    宮腰 光寛君

      宮崎 政久君    山口 泰明君

      渡辺 孝一君    近藤 昭一君

      前原 誠司君    吉田 宣弘君

      赤嶺 政賢君    下地 幹郎君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当) 島尻安伊子君

   内閣府副大臣       福岡 資麿君

   外務副大臣        木原 誠二君

   外務大臣政務官      黄川田仁志君

   文部科学大臣政務官    堂故  茂君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   防衛大臣政務官      熊田 裕通君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   関  博之君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  藤本 一郎君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           山本 茂樹君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 内藤 尚志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 武笠 圭志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 吉利君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           谷内  繁君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  浅川 京子君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           對馬 一修君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         津田 修一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 亀澤 玲治君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  真部  朗君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     木村 弥生君

  國場幸之助君     金子万寿夫君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     工藤 彰三君

  木村 弥生君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     國場幸之助君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 沖縄及び北方問題に関する件


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     ――――◇―――――

渡辺委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ちまして、委員会を代表して一言申し上げます。

 このたびの平成二十八年熊本地震によりお亡くなりになられた方々とその御遺族に対しまして深く哀悼の意を表しますとともに、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 これより、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、黙祷をささげたいと存じます。

 全員の御起立をお願いいたします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

渡辺委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

     ――――◇―――――

渡辺委員長 この際、木原外務副大臣及び黄川田外務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。木原外務副大臣。

木原副大臣 外務副大臣の木原誠二でございます。

 我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、特に尖閣諸島をめぐる情勢について、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意で、毅然かつ冷静に対応してまいります。

 また、ロシアとの間で、さまざまな分野における協力の進展を図りながら、平和条約締結交渉にしっかりと取り組んでいくことが重要です。

 これらの基本的な考えに基づき、外務副大臣として全力で取り組んでまいります。

 渡辺委員長を初め理事、委員各位の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げます。(拍手)

渡辺委員長 次に、黄川田外務大臣政務官。

黄川田大臣政務官 外務大臣政務官の黄川田仁志でございます。

 在沖縄米軍を含む在日米軍の抑止力は、地域の平和と安全の確保に不可欠です。在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減のため全力で取り組んでまいります。

 ロシアとの平和条約交渉への取り組み等の重要問題も含め、外務大臣政務官としての責任を果たすべく、岸田外務大臣を補佐してまいります。

 渡辺委員長を初め理事、委員各位の御支援と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

渡辺委員長 沖縄及び北方問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官関博之君、内閣府沖縄振興局長藤本一郎君、内閣府北方対策本部審議官山本茂樹君、総務省大臣官房審議官内藤尚志君、法務省大臣官房審議官武笠圭志君、外務省大臣官房審議官中村吉利君、外務省大臣官房審議官相木俊宏君、外務省大臣官房参事官飯島俊郎君、外務省北米局長森健良君、厚生労働省大臣官房審議官谷内繁君、水産庁資源管理部長浅川京子君、中小企業庁事業環境部長木村陽一君、国土交通省大臣官房審議官對馬一修君、国土交通省大臣官房技術参事官津田修一君、環境省大臣官房審議官亀澤玲治君、防衛省整備計画局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡辺委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。比嘉奈津美君。

比嘉委員 自由民主党の比嘉奈津美でございます。

 本日は、大臣の所信に対する質疑ということでございますが、十五分という短い時間なので、早速質問に移らせていただきます。

 皆様よく御存じのとおり、沖縄の成長するアジアの玄関口としての優位性と潜在力を生かし、積極的に沖縄振興を推進することは、我が国全体の経済の活性化にも極めて重要であると考えます。

 これまでも、沖縄振興特別措置法に基づく自立した沖縄県の実現に向けて、沖縄振興予算また一括交付金などで後押しをしてきたところですが、これが今、非常に目に見える形となって、県民の生活に寄与することができるところが多くなってまいりました。

 大臣も、就任以来、この一括交付金などの成果を視察して、地域の方々からまた改めて意見を伺い、さらなるよい結果を導くために問題点をどう解決していくのか、積極的に取り組んでいると私は理解しております。

 実りつつある沖縄振興策の一つとしての那覇空港第二滑走路の増設事業、これは、空の便を多くするということで、物流、観光においても非常に充実したものになっていくものだと考えております。

 そのような中で、やはり四方を海に囲まれた沖縄で、港の整備でございますが、物流に関してはもちろん、観光客の受け入れ口としても非常に重要なものだと考えております。

 沖縄の観光は、昨年は前年度比一〇・七%増、七百九十三万人、過去最高を更新しております。特に、クルーズ船の寄港で外国人客は六九・四%増という百六十七万人、すごい外国人の方々が船で沖縄県を訪れているということでございます。

 しかし、本島の主たる那覇港は大変混雑しているのが現状でございます。

 そこで、那覇の港の過密化を解消するために、中北部の港の活用による産業の活性化、観光の開発のための、特に中城湾港の整備による可能性をどうお考えか、教えていただきたいと思います。

島尻国務大臣 お答え申し上げます。

 今御指摘のように、沖縄県中北部の振興のためにも、産業活性化や観光の開発の観点から、港湾を活用していくということが非常に重要だというふうに認識をしております。

 特に、中城湾港については、沖縄本島の東海岸の物流、産業の拠点を形成してきておりまして、最近の誘致活動の成果として、委員も日ごろから大変積極的にこの誘致活動をなさっておられるということに関して敬意を表したいというふうに思いますけれども、この成果として、昨年四月より、鹿児島航路が定期航路化されたと承知をしております。

 また、今月二十三日には、当初の予定より一年前倒しして東埠頭岸壁の暫定供用を開始しておりまして、こういった関係者の努力が新たな定期航路の就航あるいは企業の進出につながるということを期待しております。

 さらに、今月十三日には五年ぶりにクルーズ船が寄港し、本年は現時点でもう既に計十二回の寄港が見込まれているというふうに聞いておりまして、近隣の商業施設やあるいは沖縄における観光地への玄関の一つとなるということを期待しております。

 引き続き、中城湾港に期待される効果が十分に発揮されるよう、整備を促進していきたいというふうに思っています。

比嘉委員 中城湾港の活性化が進むと、中城湾港の後ろに産業用地の開発が非常に進んでいくということで、また、うるま市、沖縄市の雇用が生まれるということに非常につながっていくと思いますので、ぜひ活性化をよろしくお願いいたしたいと思います。

 そして、クルーズ船も、中城の港に入ると、ちょうど沖縄の真ん中、本島の真ん中ぐらいに入るもので、北の方の観光も南の観光もできるということで、北部地域の活性化にもつながる、経済効果が期待できるところであると思います。

 そしてまた、あるセミナーでは、具体的に、中城の港に大型輸送船が海外から直接入ってくることができたら、例えば畜産用の飼料が入ってくれば、畜産業の国際競争力を高められるというような提案もあります。

 そういうことを含めて、ぜひ今後も中城の港の整備に取り組んでいただきたいと思います。

 そして、港でもう一つ、北部地域の港に関することですが、北の方の本部港では、現在、冷凍冷蔵庫が農産物の保管、鮮度の保持、安定供給に非常に寄与して、生産者の所得向上につながっております。

 しかし、実際には、冷凍冷蔵庫が足りない状況であります。さらなる充実というものをお願いできないものでしょうか。

関政府参考人 お答えいたします。

 冷凍冷蔵庫の整備ということでございますが、北部地域の農林水産業の振興のためには、やはり効率的な物流体制とそれを支える冷凍冷蔵庫の整備、これは非常に大事な課題だと我々も思っております。

 今お話ございましたように、本部港に冷凍冷蔵庫がございますが、これは平成二十四年度から使われております。北部振興事業で設置されました。

 御案内のように、この冷凍冷蔵庫ですけれども、容量がいっぱいになってまいりまして、現在は、仮設のコンテナの設置も含めて、そのニーズに応えようとされている状況でございます。

 そこで、そういう状況の中で、北部地域の方から、昨年度、平成二十七年度には、今帰仁村の運天港における新たな冷凍冷蔵庫の調査設計などのお話がございまして、北部振興事業で現在対応しているところでございます。

 今後、この調査設計が終わりますと建設の段階に入ってくると思いますので、その際には、私どもといたしましても、地元の御要望をよくお聞きして対応してまいりたいと考えております。

 本部町と今帰仁村の連携を図って北部地域の物流体制が充実することによりまして、北部地域の農林水産業の一層の振興が図られることを期待しておりますし、いろいろなニーズがまた出てくると思いますので、よく地元のお話を伺って対応してまいりたいと考えております。

比嘉委員 農業、漁業を初めとして、北部、離島振興のためにも大いに役立つと思います。前向きに検討をお願いいたします。

 また、離島の港において、少し強い風が吹くと、漁船は運航できるのですが、大型フェリーが港に着岸できないということで、すぐ運休してしまう伊江港とかがございます。

 フェリーは、島の方々の生活のためのものであり、また、観光、特に伊江島など、近年は修学旅行生の民泊の移動手段にもなっております。

 民泊は、島から子供たちが出ていったお父さん、お母さんが、自分たちの住んでいるおうちに子供たちを宿泊させ、畑を手伝ってもらって、料理をつくって、体験、研修型の旅行でございますが、一泊、二泊、その島で過ごすと、子供たちがこの島を出ていくとき、フェリーで、お父さん、お母さん、ありがとうと、泣きながら、姿が見えなくなるまで手を振る、そういう姿を私も見てまいりました。これは、大都会のふるさとを持たない子供たちに新たなふるさとを提供して、子供たちの人間形成に非常に役立っているという、大きな沖縄の観光の側面だと私は考えております。

 そういう意味でも、離島の港の整備、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。

 そして、もう一つ、重要な問題がございます。沖縄は、子供の貧困率日本一だと言われております。子育て世代の所得は、三百万円未満の世帯が全国六・八%に対して沖縄は二七・八%と高く、母子家庭の割合も全国一位であります。親の世代の貧困が子供の教育格差につながり、次の世代の貧困に広がる貧困の連鎖となっているのが事実だと思います。

 背景には、低年齢の結婚、出産、離婚など、全国の二倍という数字があるのも事実でございます。

 このようにして厳しい中、島尻大臣の大きな思いで、新規で、子供の貧困対策として十億という予算が決まったところでございますが、この子供の貧困に対する具体的な対策案は、今いかが案をお持ちか、教えていただけますでしょうか。

島尻国務大臣 今先生御指摘のように、沖縄の子供を取り巻く環境は、全国と比較して特に深刻な状況でございます。

 私自身、大臣に就任以来さまざまな施設を視察いたしまして、NPOなどの関係者とも意見交換を行ってまいりましたが、例えば、一日の食事が給食のみであったりとか、それから、着がえがなくていつも同じ服を着ていたりする子供の話を伺うなど、子供たちの大変厳しい状況を実感しております。

 これまで、沖縄振興としては、社会資本整備などが進められてまいりましたけれども、今後の沖縄振興策を考える際には、残された課題というところにも目を向けることが必要でありまして、私としては、まさに沖縄の子供の貧困対策がその一つであるというふうに考えております。

 このために、今回、沖縄振興特別措置法に基づいて、沖縄振興を担当する立場から、沖縄独自の施策を講じることにさせていただきました。

 お尋ねの具体策についてでございますけれども、平成二十八年度から、新たに、個々の子供の貧困に関する状況を把握し、支援を要する子供とその世帯を支援措置につないでいく支援員の配置、それから、子供が安心して過ごせる居場所の運営の支援、これらをモデル的そして集中的に行う沖縄子供の貧困緊急対策事業というものを実施することといたしまして、平成二十八年度予算に十億円を計上いたしました。できるだけ幅広い市町村で実施されるよう、補助率を十分の十とさせていただき、また、地域の実情に合わせて実施が可能な柔軟な仕組みにしております。

 加えて、貧困家庭の経済的自立を促進するために、一人親家庭の親の雇用などに取り組む事業者、それから学び直しに取り組む一人親について、沖縄振興開発金融公庫の貸付金利の優遇措置などを行うこととしております。

 こういったように、現場の実施状況を注視しつつ、今後も、沖縄県あるいは市町村のほか、経済界そして教育界などさまざまな立場の皆様と連携して、沖縄の子供のために、率先し、総力を挙げて取り組んでいきたいと考えています。

比嘉委員 人口が全国で一番増加している沖縄県の可能性を生かすためにも、子供の居場所づくりや子供たちの教育というものが一番重要だと考えております。

 沖縄振興の一番の肝は子供の教育だということで、やはり、沖縄は高校の中退も非常に多いそうでございます。中退する子供たちは離職率も高いというデータも上がってきております。沖縄の子供たちが一生懸命お仕事ができるような環境、そして、お母さんの学び直しを重点的にやっていただいて、若い年齢で出産したお母様たちがもう一回仕事ができるということが労働力の一番の力になると思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 このたびは、質問の機会をいただきましたことに心から感謝を申し上げます。

 私からも質問させていただきますが、短い時間でございますので、早速入らせていただきたいと思います。

 まずは、北方対策についてお聞きをしたいと思っております。

 北方対策については、北方領土の返還を初め、元島民の方々が御高齢になられる中、問題の解決に引き続き全力で取り組んでいただきたいというふうに思っておりますが、島尻大臣も、所信表明では、関係団体と密接に連携し、全力で取り組んでいくこと、その決意をお述べになられておりました。

 最初に、元居住者団体の皆様からの御要望について、二点ほどお伺いをしておきたいと思っております。

 まず最初に、元島民の方々は現在六千四百人以上いらっしゃるというふうにお伺いをしております。北方領土に残してきた財産は、この七十年間にわたってその権利行使ができない状態になっております。不動産の所有権及び賃借権の不行使による損失について、元居住者の皆様からは、補償の措置をぜひ講じてほしいという強い要望が寄せられているというふうに承っております。

 これまで長期間にわたりこの要望が続けられてきたというふうに私は承知をしておりますが、当局から、まず、これまでの経緯とそれから現在の御見解をぜひお伺いしたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 元島民の皆様の団体である千島連盟から、これまで長きにわたり、繰り返し財産権に関して要望が出されてきたということは承知しております。

 要望の一つは、残置不動産の現況を把握してその保全措置を講じてほしいというものだと思います。

 この点につきましては、政府としては、北方四島を事実上ロシアが支配し、現にロシア人が居住している現況におきましては、保全措置を講じるといったことは極めて困難であると言わざるを得ないとは考えております。

 また、不動産に係る所有権、賃借権の不行使に対する損失について補償措置をするよう求める声があるということも承知しております。

 元島民の方々の心情は察せられるところ大ではございますが、政府の立場で申し上げますと、これまで、外地からの引き揚げ、一般戦災を含めまして、個別の戦争損害について補償が行われたという前例がないため、北方四島の残置財産の不行使についてのみ補償を行うというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。

 また、元島民の皆様には、これまでに、昭和三十二年の引揚者給付金、昭和四十二年の引揚者等特別交付金に加えまして、その特殊な地位に鑑みまして、昭和三十六年より旧漁業権者法に基づく低利融資制度事業というのを実施してきておりますので、この積極的な利用をしていただきたいと考えております。

 これらの政策的な配慮のほかに、さらに特別な措置を講ずるというのは、他の戦後の補償との均衡を失するということから、なかなか難しいとは考えているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、北方領土返還を踏まえた残置不動産の処理方策というものにつきましては、ロシアとの平和条約締結交渉において明確にされていくべきものと考えてはおります。

 今後とも、元島民の方々の御意見、御要望はよく伺いながら対応していきたいと考えております。

吉田(宣)委員 ぜひ、元島民の方のお心に寄り添うような努力を続けていっていただきたいと思います。

 もう一点、今度は北対協融資制度についてお伺いをしたいと思います。

 地元団体からの御要望では、死後承継の対象者というものを元島民の子または孫の全ての者に拡大するように求めていらっしゃるというふうに承知をしております。

 私は、対象者の拡大を段階的にでも進めていただきたいな、そのように思っているんですけれども、元島民の皆様のお心に寄り添う制度の拡充をぜひこの際お願いしたいというふうに思っております。

 この点、この北対協融資制度の拡充について、島尻大臣の御見解をお教えいただければと思います。

島尻国務大臣 法律に基づいて実施しておりますこの北対協の融資事業でございますが、これは、元居住者御本人の世代の生活の安定を図るということを目的としているものでございます。

 融資の対象についてでございますが、過去、平成八年と十八年、二回にわたりまして、超党派による議員立法で拡大されたところでございます。この対象者の拡大については、引き続き立法府でしっかりと御議論いただくことが必要だというふうに考えております。

 なお、この融資制度につきましては、利用者のニーズを踏まえて、平成二十三年度から、一部資金の貸付限度額の引き上げなどの措置を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、私も精いっぱい、また努力は積み重ねていきたいというふうに考えております。

吉田(宣)委員 これまで議員立法で拡充策というものが図られてきたという意味からすると、我々国会議員の立場の人間も一生懸命努力してまいりますので、島尻大臣におかれましても、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、今度は沖縄振興策についてお伺いしたいと思います。

 先ほど比嘉委員の方からも御質問がありましたので、予定していた最初の質問についてはちょっと割愛をさせていただきたいというふうに思っております。

 ことしの一月に沖縄県が公表した子供の貧困調査というものを見させていただいたんですけれども、全国平均の一六・三%という貧困率の倍近い二九・九%というふうな極めて深刻な貧困状況であるということを私はお伺いをいたしました。

 先ほど比嘉委員からもお話があったところでございますけれども、島尻大臣の御努力で、子供の貧困緊急対策事業、十億円の予算が盛り込まれたというふうに承知をしております。

 この緊急対策の事業については先ほど御説明があったとおりでございますけれども、私の方からは、親の学び直し支援というふうな御言及もございましたが、非常に重要な視点だと私は思っております。この政策の背景などを少し伺いたいと思っておるんですけれども、あわせて、これらの緊急対策がしっかりと子供の貧困対策となっていくように、地元の方にしっかり周知また徹底をしていっていただきたい、広報活動に力を入れていただきたいと私は思っておるんです。

 この点に対する当局の見解をお伺いしたいと思います。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、相対的貧困率の数字のお話が出ましたけれども、実は、母子世帯におきます相対的貧困率は五〇%を超えるというふうに全国的な数字で言われております。沖縄におきましては、先ほどもちょっと御紹介ありましたけれども、母子世帯の出現率が全国の中で最も高いということがございまして、貧困の連鎖を断ち切る上で、この一人親家庭の親の経済的自立を促進する就労支援というものが一つ課題になっているというふうに認識しておるところでございます。

 沖縄県の実態調査によりますと、一人親家庭の親が仕事に関する支援で特に望むものとして挙げられております中に、技術、資格取得の支援が最も多く挙げられております。このように、就労に向けたスキルアップなど、親の学び直しを支援することが求められているという状況がございます。

 このような状況を踏まえまして、内閣府としましては、先ほどもちょっと御説明させていただきましたけれども、親の学び直しを支援し、よりよい条件での安定した就労につなげていくために、沖縄振興開発金融公庫における一人親家庭の親に対する教育ローンの金利優遇措置を拡充したところでございます。

 二つ目に、先生の方から子供の貧困緊急対策の周知、広報について御指摘がございました。

 沖縄では行政の支援が子供に行き届いていないといったような指摘がございまして、この指摘を踏まえますと、先生御指摘のとおり、重要な課題でありまして、その取り組みをさらに進めていくことが重要だと思っております。

 具体的には、市町村におきまして、今後、広報誌で広報を行ったり、学校でチラシを配付するというふうな予定で組んでおりますし、県においても、シンポジウム等の開催の機会を捉えて、県民一般に広く情報提供を行っております。

 また、内閣府におきましても、事業の取り組み状況を随時、報道発表したり、ホームページに掲載し、情報発信に努めてまいるところでございます。

 また、低利融資につきましても、沖縄公庫において、広報体制の強化を図ることとしております。

 今後も、市町村等と情報交換し、必要な周知がきちんと行えるように支援してまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 沖縄の方が本当に元気になるような、そういった取り組みをぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続いて、この点について島尻大臣にもぜひお聞かせいただきたいと思っております。

 子供の貧困対策のための取り組みを具現化させるために、島尻大臣もみずから現地沖縄の関係者の方とさまざまな意見交換や協力要請を行ってきたというふうに承っております。そういった大臣のお仕事の取り組みについてぜひ御説明をいただきたいというのが一つ。それからまた、そのような意見交換の場などで、地元の関係者の方から、深刻な子供の貧困状況の原因や改善のための方策としてどのような御意見が出されたのかについてお教えいただければと思います。

島尻国務大臣 沖縄の子供の貧困対策について、今お話がございましたように、各関係者、関係団体と意見交換等を進めてまいりました。

 また、子供の貧困をテーマに、例えば、沖縄県に今四十一市町村ございますけれども、県全体の市町村長との意見交換を行いました。このときは三十七の首長さんたちが御出席いただきましたけれども、この中で、国、県、市町村が連携して子供の貧困対策を強力に推進していくということを表明するとともに、経済界や教育界、その他さまざまな立場の当事者に協力を呼びかけて、なお意見交換をさせていただきました。

 その後、県内の大学関係者との意見交換では、子供の居場所で子供たちのロールモデルとなる学生ボランティア活動の促進をお願いするとともに、経済団体との意見交換におきましては、一人親世帯の親の雇用促進、それから学生ボランティアへの支援の協力を要請させていただきました。

 その他、これまでの意見交換におきましては、子供の貧困の要因に関連をして、まず、厳しい状況にある世帯が社会から孤立して行政や地域に対して支援を求められない状況にあるということ、そして、夜間に居場所のない子供たちが深夜に町を徘回といいますか、遊びに出てしまって、非行行動につながる傾向があるということ、それから、親が安定して就労するということが難しく、子供に貧困が連鎖をしてしまうということなどの課題が挙げられました。

 その対応方策に関しては、戸別訪問して、子供とその世帯を福祉と教育の支援につないでいくことが必要なのではないか、それから、日中は学童保育に行けず、夜間も家庭で安心して過ごすことができない子供の居場所が必要であるということ、それから、一人親等の就労に向けた学び直し、保育の支援が必要だといったような意見をいただいたところでございます。

 今後とも、こういった現場で活動する地域の方々の声を参考として、施策がしっかりと実行されるよう取り組んでいきたいと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、沖縄の貧困の連鎖というのは大臣の時代に断ち切るんだという強い御決意のもと、努力をしていただきたいとも思いますし、私自身も、九州・沖縄比例というところから選出をさせていただいております。沖縄振興のために全力で取り組んでいきたいというふうに思っております。

 一問残してしまいましたが、時間が参りましたので、ここで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民進党の小川淳也です。よろしくお願いいたします。

 まず、岸田外務大臣、冒頭、通告外ですが、けさほど、北朝鮮の弾道ミサイルの発射に対して外交ルートを通して抗議をされたという報道に接しました。その事実関係なり経緯を少しお述べいただきたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮の核実験、弾道ミサイル等の挑発行為は決して容認することはできないというのが我が国の立場であり、今回も北京の大使館ルートを通じまして北朝鮮側に抗議を行った、こういったことにつきまして、本日、閣議後のぶら下がりにおいて発言をさせていただきました。

小川委員 特に年明け以降、たび重なる核実験、それからミサイルの発射、非常に、自分自身も含めてなんですが、これになれっこになっちゃいけないなという気がするぐらい頻発をしています。

 それで、新たな金正恩体制について大臣はどうごらんになっているか。

 具体的に言うと、私は、金正日体制のころは、経験も豊かでしたから、ある意味、瀬戸際外交は彼らのお家芸とはいえ、ある種の相場観なり安定感があったような気がしています。しかし、新たな若い体制は、経験がないだけに、場合によっては暴発、あるいは余りにも度を過ぎた過激な行動に出るのではないかというような懸念も持っているわけです。

 そこらあたり、岸田大臣の対北朝鮮、この金正恩体制についての御所見を少しお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮につきましては、ことしに入りましてから、核実験、弾道ミサイルの発射等が強行されました。それを受けて、国際社会が北朝鮮に対して強いメッセージを発しなければならないということで、米国、韓国、日本が独自の措置を発表し、そして国連安保理におきましても議論が行われ、結果として、強い内容の安保理決議が全会一致で採択をされました。

 深刻なのは、この決議が採択された後もこうした挑発行為が続けられている、このことではないかと思います。

 先般行われましたG7の外相会談の中においても、北朝鮮問題、特別な時間をとりまして、各国で議論を行いました。大変突っ込んだ議論が行われました。基本的には、金正恩体制のもとで予測可能性はより低くなっている、こういったことについては、各国の考え方、見方は一致していたと思います。

 そして、これからにつきましては、まずは、採択されました強い内容の安保理決議をしっかり履行していかなければなりません。

 そして、安保理におきましては、安保理の下に、北朝鮮問題を監視する委員会あるいは専門家パネルが設置されています。この専門家パネルには日本人も参加をしています。ぜひこうした仕組みを使って安保理決議の実効性をしっかり確保する、これがまず第一であると考えます。

 その上で、北朝鮮側の反応を見ながら、より建設的な対応を引き出すために、各国とも連携しながらこの取り組みを進めていかなければならない、このように考えます。

小川委員 昨年訪中いたしました折に、中国の関係者といろいろ話をする中で、北朝鮮が少々暴れている方が中国にとっては便利だというような感触すら私は受け取って帰ってきました。その意味で、今回、中国が少し毅然たる態度に出てきていることは一つの明るい展望だと思うんです。

 しかし、後ほど北方関連、対ロ外交についてもお聞きしたいと思いますが、これを事実上本当にやっていくには、六カ国協議の枠組み以外に実効性ある取り組みはできないのではないかと思います。

 このあたり、まさにおっしゃった相場観そして予測可能性という観点から極めて難しい対応だと思いますけれども、とにかく大事なことは、向こうに口実を与えないということが大事だと思います。その意味では慎重に、しかし毅然と、引き続きの対応をお願い申し上げたいと思います。

 本題の沖縄関連についてお聞きしたいと思います。

 島尻大臣には、先般の沖振法の改正に当たりまして、私どもは与党時代でした、大臣は野党の責任ある立場でいろいろと前向きな御協力をいただいたことをきのうのように思い出しております。その節は大変お世話になりましたことを心からお礼を申し上げたいと思います。

 沖縄関連についてさまざまお聞きしたいと思うんですが、少しホームページ等では把握できませんでしたので。

 大臣は仙台の御出身でいらっしゃる。沖縄の方と御結婚をされ、そして今日に至っている。沖縄での御在住経験はどのぐらいあるのか、後の質問にも関連しますので、正確でなくても結構です、差し支えなければ教えていただければと思います。

島尻国務大臣 こちらの方こそ、小川委員はきのうのことのようにという表現をされましたけれども、私も本当に全く同感でございまして、第五次の沖縄振興法あるいは跡地法の成立におきましては一緒に仕事をさせていただいたことを、大変いい経験をさせていただいたなというふうに思っております。今、大臣として仕事をしている上で、あのときの第五次の振興法の成立というのは沖縄の振興にとって大変に有意義なものだというふうに思っておりますし、また、それを私はベースとして今後も沖縄振興については邁進していきたいというふうに考えております。

 お尋ねの、私のこれまでの経緯に関してでございますけれども、平成元年に結婚をいたしまして、沖縄にはそのときから行ったり来たりはしていたわけでありますけれども、記憶によりますと、一九九七年に、諸般の事情もございまして、沖縄にそのときからずっと住所を移して住んでおりましたので、結婚してからもう二十五年以上たちますけれども、沖縄に住んでからということでありますと、一九九七年以降は住んでおりましたということだと思います。

小川委員 大変個人的なことに立ち入ってはいけないんですが、質問に当たっての参考ということで、ありがとうございました。

 かく言う私も、今から二十二年前、自治省に入省いたしまして、そしてみずから希望して沖縄県庁に赴任をいたしました。ですから、社会人としてのスタートは沖縄。そして、当時結婚もいたしまして、地元の香川県の人間なんですが、家庭生活もスタートは沖縄ということで、大変強い思い入れを持っております。折しも、九五年でした、米兵による小学校六年生の女の子に対する暴行事件が発生をいたしまして、夫婦そろって県民総決起集会に足を運んだことも、また、それこそきのうのことのように思い出しております。

 それ以降、沖縄はさまざまな国政上の課題に非常に翻弄され、沖縄県民の思いを想像いたしますと、筆舌に尽くしがたいさまざまな葛藤や困難を抱えて今日に至っているということだと思います。私ども国政に携わる人間にとって、これは与党、野党を問わず、この歴史なり県民感情なり置かれている状況については深い思いをいたした上で議論を行うことが必要だろうというふうに感じます。

 この沖縄振興をこれから議論したい、それに関連して質問したいわけですが、当委員会の直接の所管事項でないとはいえ、やはり基地問題と切り離してこれを考えることができませんので、防衛政務官にお越しをいただいているかと思います、少し背景となるこの基地問題の推移についてお聞きしたいと思います。

 現状、政府と沖縄県は、さまざまな訴訟当事者であったわけですが、和解に踏み切った。これは極めて大きな決断だったというふうに受けとめております。しかし、表面的な和解とは裏腹に、必ずしもその両者の歩み寄りが進んでいるのかどうかについては極めて疑問が多い、そういうふうに受けとめております。

 この和解合意、そしてその後の埋立承認取り消しに対する是正指示、これに対する沖縄県知事からの国地方係争処理委員会への審査の申し出、これが今後どういう推移をたどる見通しを現在持っているのか、まずこの点についてお聞きします。

熊田大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘をいただきました国と沖縄県とが訴訟合戦を延々と繰り広げるような関係のままでは、結果として、膠着状態が続き、学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場を初め、沖縄の現状がさらに何年間も固定されることとなりかねないと考えております。

 このような状況は、国、沖縄県双方にとって望ましい結果ではない、そうした裁判所の意向に沿って熟慮した結果、国と沖縄県との将来にとって最適な選択であると判断し、沖縄県と和解することを決定したものであります。

 和解の内容に従った手続は始まったばかりであり、今後のスケジュール等を具体的に述べることは困難でありますけれども、先ほど御指摘をいただきましたように、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する政府の考え方、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取り組みについても改めて丁寧に沖縄県に説明をし、理解を得られるよう、粘り強く取り組んでまいる所存でございます。

 また、この和解は、係属している三つの訴訟、これを一旦白紙に戻し、国地方係争処理委員会を経て、翁長知事による埋立承認の取り消しの是非を争う訴訟を一つにするものでございまして、加えて、裁判所が提示し、国、沖縄県の双方が合意した和解条項の第九項では、国と沖縄県は、是正の指示取り消し訴訟確定後は、直ちに、判決に従い、判決の主文及び理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後もその趣旨に従って互いに協力して誠実に対応するとされておるものでございます。

小川委員 今のお答えに関連して、これは、国地方係争処理委員会の審査結果の通知は申し立てから九十日以内ということでありますから、六月の二十一日が期限になるというふうにお聞きしています。恐らくその後も、和解協議中にあるとはいえ、政府側の意向と沖縄県の意向はすれ違い、あるいは平行線でしょうから、まさに今政務官が御答弁になられたように、訴訟を一本に整理するという効果があるとしても、お互いの距離感が埋まったということにはならないというのが現状想定される見通しだと思うんです。

 その後も裁判が続くんでしょう。そして、一定の判決が出たとしても、まさに今政務官が御答弁になられたのは、この和解条項の第九項の解釈に関連すると思いますが、是正の指示の取り消し訴訟判決確定後、直ちに、同判決に従い、主文及び理由の趣旨に沿った手続を実施する、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する、一応こういう文面になっています、和解条項第九項。

 しかし、例えば、政府と沖縄県との協議会では、この判決そのものの効力あるいはその限界についても、翁長知事側は、協議会において、判決が出た後どこまで縛られるのか縛られないのか、そういったことについても議論したいという沖縄県側の意向があります。しかし、報道を見る限り、政府側がそれに応じる可能性は低いのではないかというふうに拝見されます。

 去年も一カ月でしたね、工事を中止して。あのときに、政府側は本当に中止する気があるんじゃないかという見立てを披露する方々も何人かいらっしゃいました。私は、一カ月の期限が来たら、粛々、淡々と工事を再開するんだろうと思っていました。

 こういう工事の停止や、あるいは和解のあり方、いっとき気を持たせて、しかし、その内実は何も変わらないというやり方は、かえって沖縄県民の心を乱し、事を複雑化させ、困難を増すということが考えられるのではないか、少なくともそういったことを懸念すべきではないかというふうに感じます。

 そこで、お尋ねします。この和解第九項の法的な拘束力はどういうものだと理解すればいいんですか。

 翁長知事側が言うように、例えばこの判決で仮に取り消し訴訟が、取り消しが確定したといえども、例えば知事側は、その後の工事計画の承認申請を認めないとか、あらゆる法的手段が考えられると思います。それから、場合によっては、事と次第によっては、翁長知事みずから、事実上の行為、例えば座り込みに参加するとかいったような実力行使も含めて辞さない覚悟も彼は今秘めているんではないかというふうに感じます。

 ここらあたりは、この第九項の効力はそこまで及ぶものなんですか、それとも、その後の法的行為並びに事実上の行為まで制約するものとは解せないんですか、そこを少しお聞かせいただきたいと思います。

武笠政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の和解でございますけれども、国と沖縄県知事あるいは沖縄県との間に複数の訴訟が係属する、こういった訴訟合戦のような事態が生じておりましたことから、埋立承認取り消しの是非という紛争の中核的な部分の争いに絞って、最終的には裁判所に決着をつけてもらいまして、その判決の主文だけでなく導く理由の趣旨についてもこれに従って、お互いに協力して誠実に対応する、こういうことを約束したものでございます。

 したがいまして、この和解条項九項でございますけれども、強制執行ができる、あるいは違反に対して直ちに損害賠償義務が生ずるといったような意味での法的拘束力はないといたしましても、国と沖縄県の双方が、埋立承認取り消しの是非について最終的な司法判断が下された場合には、その理由中の趣旨も含めて拘束される旨を合意したということで、紛争を根本的、抜本的に解決しようという趣旨であるというふうに解しております。

小川委員 重要な確認だと思います。直ちに、法的拘束力、もちろん一定の法的拘束力のある紳士協定だという理解かと思いますが、今後も、沖縄県知事あるいは沖縄県政にとっては、さまざまな法的対抗措置なり事実上の対抗措置の余地は残した合意、あるいは、これは判決確定後もそうだというふうに理解をいたしました。反論はありますか。反論でなければ、これで結構です。

 その前提で、いずれにしても、これは極めて丁寧に、慎重に事を運んでいただくことが重要だと思います。

 島尻大臣、直接は、もちろん基地問題は所管外だと思いますが、沖縄のあり方、そして振興を考えるに当たって、もちろんこの背景として、基地問題の大きさ、占めるウエートというのは否定できないと思うんです。

 それで、大臣に少しお聞きしたいんですけれども、沖縄北方委員会は余り頻繁に審議する場ではありませんので、本当はタイムリーに審議できれば一番よかったんですが、こういう予算成立明けの審議ということで、一月、二月、三月と、積もり積もった、たまりにたまったお聞きしたいことがございますので、少し過去のことも含めてお聞きしたいと思っております。

 もちろん大臣の資質に関係することとして、例えばカレンダーの配付問題とか、あるいは補助金を受けた独法からの寄附を受け入れたとか、あるいは、大変卑近なことであるとはいえ、特に北海道の方々の思いを想像すればやはり不謹慎ではなかったかと思いますが、歯舞群島に関する漢字の読みの問題とか、大臣にとっても非常に不本意だと思いますが、こうした報道が世間をにぎわせたということについては、大変遺憾ですし、残念なことであります。

 これは過去の言動、言説ということで、直接お聞きはしませんけれども、少し私自身が看過できないと感じることについてお聞きします。

 まず、先ほど在住期間がどのくらいですかとお聞きしたわけですが、私も、当初、沖縄県庁勤務を希望したときには、日本本土、内地とはより違った環境で刺激のある仕事をしてみたい、あるいは生活を体験してみたいという思いがありました。

 しかし、行ってみて、つくづく、日米安全保障条約を体現しているのは、日本では大半が沖縄なんですね。目で見る日米安全保障条約、肌で感じる日米安全保障条約、身につまされる日米安全保障条約、これを体感できるのは沖縄以外にはありません。

 そして、もちろん気候風土も含めて内地とは異なる部分があるわけですが、何よりも大きいのは、やはり悲惨な第二次世界大戦の地上戦の記憶と、そして、さかのぼれば琉球王国としての誇りある伝統であり歴史、こうしたものは、私は、正直申し上げて行くまではわかりませんでした、行ってそこで暮らすまでわかりませんでした。しかし、行ってみて初めて、これは四十七都道府県の一つというふうに扱ってはいけない地域なのかもしれないという思いまで持ったわけです。それだけ特殊であり特別であり、ある意味、本土側は十分に配慮をしなければならない。

 その観点からお聞きします。

 年明けに宜野湾市長選挙がございました。確かに、結果は結果として、ああいう結果でありました。それを受けて、大臣が、御在住経験がありながら、今私が申し上げた背景については大臣はすぐに御理解いただけると思うんです、そうした沖縄県民の感情的、歴史的背景については。それを受けて、軽々に、あれをもって、サイレントマジョリティーは別にある、あるいは、オール沖縄という感覚とは随分違うという官房長官の当時の発言が全く同感であるというのは、少し沖縄に対して配慮に欠けた発言であり、認識を誤った発言ではありませんか。まずその点をお聞きします。

島尻国務大臣 まず、今の御質問にお答えする前に、先ほど私、一九九七年からというふうに言いましたが、一九九三年の誤りですので、済みません、そこは訂正させていただきたいと思います。

 その上で、大臣就任の後、いろいろな私の言葉足らず等で誤解を受けたということもございまして、例えば北海道の歯舞に関しては、現地の皆さんに御心配をかけたとすれば、それは私としても大変申しわけないなというふうには思っております。

 ただ、私も沖縄北方委員として九年間やらせていただいておりますので、歯舞という漢字の読み方を知らなかったというのではなくて、実は、千島連盟の正式名称を読み上げさせていただくときに言いよどんでしまったというところでございます。ちょっと誤解があってということもございまして、先日も北海道には行かせていただきましたけれども、そんな現地での記者会見もさせていただいたところでございます。

 今御指摘のサイレントマジョリティーという表現についてでございますけれども、これは、特に、あのときのコメントは、まず、沖縄担当大臣というところよりは、自民党の沖縄県連会長としてのコメントに関連するものというふうに御理解を賜れればと思っております。

 委員も御指摘されておりますけれども、沖縄県内、本当にさまざまな意見がございます。そういう中で、私も、在住何年かということもありますけれども、それ以前から、パートナーといいますか、主人からずっと沖縄のことについては聞いていたところでございまして、そういったところをベースにしても、あるいは、本当に多様な意見があるということもございます。そういう中で、私自身、サイレントマジョリティーの存在を感じたという私としての感想を述べさせていただいたところでございます。

小川委員 あのとき、宜野湾市長選挙があの時期にああいう形で行われることに関して、私はどう感じたか。一言で言うと、宜野湾市民にとって極めて酷な選挙だと感じたんです。

 辺野古移設は、オール沖縄という言葉が何を指すのか、これは少しあやふやな部分がありますが、沖縄県民全体でいえば、かなり反対の声は根強いわけです。そして、相当数あるわけです。

 ところが、宜野湾市民に限って言えば、目の前に、庭先に普天間基地が厳然として存在しているわけですから、それが辺野古なのかどうかは別として、目の前から世界一危険と言われる基地が一日も早く撤去されることを望んでいる。これは当たり前だと思うんですよ。しかし、そのことイコール、新たに海を埋め立てて辺野古に移設を支持しているかどうかとは別問題であります。ですから、本土にいる人間がこのことを正確に理解できないことは、私も過去の経験に照らしてよくわかります。

 しかし、沖縄に造詣の深い大臣であるならば、単純にあの宜野湾市内だけの選挙結果をもって、それを静かなる多数派だとかサイレントマジョリティーだとか、そういうふうに表現することは極めて不適切だ、むしろ、宜野湾市民の葛藤なり苦悩なり、これが極めて酷な選挙だというぐらいおもんぱかった発言をしてしかるべきではなかったかと私は思いますが、いかがですか。

島尻国務大臣 何度も申し上げますけれども、沖縄の中には本当にさまざまな意見があります。宜野湾の市長選挙というものが事実行われ、そこで一つの結果が出されたということ、ここは事実は事実として捉えるのが当然のことだというふうに思っておりまして、その中で、私としては、いろいろな活動をする中で、私の感想としてサイレントマジョリティーの存在を感じたということを述べさせていただいたまででございます。

小川委員 沖縄県連会長としての御発言と沖縄担当大臣としての御発言を区別することもできないと思いますし、繰り返しになりますが、あの選挙は宜野湾市民にとっては私は極めて酷な選挙だったと思います。

 したがって、もう一点確認いたしますが、あれは辺野古移設を宜野湾市民が容認した選挙だというふうには言えないですよね。一定、普天間の運用停止なり移設について支持があったという受けとめは私は可能だと思うんですが、辺野古移設を容認した、そういう選挙結果だとは受けとめられないと思いますが、そこは大臣の御認識はいかがですか。

島尻国務大臣 それに関しては、それこそさまざまな意見がある。

 この間の私の認識といたしましては、とにかく、普天間の飛行場の危険性の除去ということ、それから、普天間返還の日米合意がなされてからもう二十年たつわけでございまして、そこに対して、宜野湾の市民は、一日も早くこの宜野湾の飛行場は返還してほしい、この思いだということは紛れもない事実だというふうに考えています。

小川委員 大臣にもう一つ、関連して酷なお尋ねをいたします。

 大臣は、まさにこの夏、改選期を迎えるわけであります。六年前の選挙の際には、私ども旧民主党政権にも、結果としてこの問題の大きな混乱をもたらした責任は大きいと思っています。そこは本当に自覚しています。

 しかし、その上で、大臣御自身は県外移設を主張されて選挙を戦われたというふうにお聞きしています。大臣、この夏はどうされるんですか、辺野古移設を容認ですか。この点、非常に酷なお尋ねですが、大臣の御意向をお聞きしておきたいと思います。

島尻国務大臣 まず、今回といいますか、先ほども申し上げましたけれども、私の政治活動において、やはり普天間の危険性の除去というのは必ずやり遂げないといけないというふうに思っております。合意から二十年もたって、やはり政治としては問題を解決していかなければならないというところから、ここをしっかりと、危険性の除去ということはやっていかないといけないというふうに思っております。

 その中で、私ども自民党県連といたしましては、移設先についてはあらゆる選択肢を排除しないというところでやっているわけでございまして、そういう中において、今、政府では、日米合意に基づいて、辺野古への移設ということが日米合意としてなされているという中での普天間の返還ということになっていることは、これは紛れもない事実でございます。

 その上で、今まさに御議論があった今回の和解条項ということがございますので、今や、この議論というのが、ある意味、法廷に移っているということもございますし、あるいは、私は、きょう、ここに立たせていただいているのは、沖縄振興を担当する大臣として今立たせていただいておりますので、そこに対するこれ以上のコメントは控えたいというふうに思っています。

小川委員 大臣、もちろん、今、閣僚の一員でいらっしゃるから、その立場上、言えること、言えないこと、あるいは言うべきこと、控えるべきことはあると思いますが、いずれ国政選挙の候補者ですから。しかも、そういった形で戦ってきた経緯がある。そして、あらゆる選択肢を排除しないどころか、辺野古移設しかないんだと政府は言っている。そういう中で、大臣がどういう角度からこの問題に正面から向き合って選挙を戦われるのか、これについては注目したいと思っております。

 もう一点、この宜野湾市長選挙に対する評価も極めて私は不適切だと思うんですが、あわせて、大臣は所信の中で振興予算の確保についても盛んにPRされました。しかし、これに先立つ予算要求、予算折衝の過程で、これも基地問題に絡めてだと思いますが、翁長知事のスタンス、翁長知事がどういう姿勢でこの問題に取り組まれるかと沖縄振興予算の間には影響があるのかという記者からの質問に対して、全くないとは言えない、全くないとは考えていないと明言されているんです。

 これは、沖縄振興担当大臣として、政府は、基地問題と沖縄振興は極めて別問題、しっかり切り離して議論していくというのが公式見解ですし、その前提で議論していただいていると思いますが、大臣、この御発言の真意なり、あるいはそこに込められた思いなり、そこらあたりを少しお聞きしたいと思います。

島尻国務大臣 今委員の御指摘は、昨年十二月十五日の会見での私の発言だというふうに認識をします。

 そのときには、まず、振興予算と基地問題はリンクしないということはこれまでも一貫して述べておりまして、まさにこのときの会見でも申し上げております。

 その上で、感想としてといいますか、私は、そういう空気感を感じることもありますよということを言ったことは事実でございますけれども、何度も申し上げますけれども、振興予算と基地問題はリンクしないということは一貫しているということは御理解いただきたいと思いますし、その点に関しては、私も何ら逃げ隠れするところはございません。

 それから、先ほどから移設について聞かれておりますけれども、ここはぜひ御理解いただきたいのは、沖縄に住んでいる者あるいは沖縄県民が好んで、辺野古なり、県外、県内のどこだろうが、ここに持ってきたらいいというふうに言う人は誰一人いないということです。

 その上で、先ほどから安全保障の話も冒頭なされておられましたけれども、その中で、苦渋の選択、これまで沖縄の先人たちのそれこそ血を吐くような努力があってここまで来させていただいているということは、ぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

小川委員 もし今大臣がおっしゃったことがそのとおりなのであれば、そういう誤解を招くような、これを言葉尻と言う人もいるのかもしれませんが、そういう誤解を招くような発言すら控えるべきです。よくよく気をつけるべきですよ。全くないとは考えていませんとか言うべきじゃない。そのことに対しては、改めて本当に反省を求めたいと思います。

 それで、ちょっと関連して派生します。

 今、基地問題と沖縄振興予算は全く無関係だということの確認をいただきましたが、きょうは文部科学政務官にお越しいただいています。文部科学省も同じ認識ですね。ちょっと確認します。

堂故大臣政務官 お答えいたします。

 質問の趣旨がちょっと変化球なので、ちょっと確認させてください。教科書の記述の中の指摘だろうと思います。沖縄の振興基金のことについてお尋ねでしょうか。

小川委員 今、島尻大臣は、沖縄振興予算と基地問題とは全く別だということを再確認する、誤解を与えた表現があったのならそれは真意と違うという答弁をされたわけです。これは政府全体の見解でしょうから、文部科学省も同じですねとお聞きしています。

堂故大臣政務官 お答えします。

 そのとおりです。

小川委員 一方、教科書検定は文部科学大臣の責任のもとに置かれていると思いますが、これは既に訂正がなされたとはいえ、なぜ、帝国書院の教科書で、日本政府も、事実上、基地の存続と引きかえに莫大な振興資金を沖縄県に支出しており、県内の経済が基地に依存している度合いは極めて高いなどという記述を持った教科書を検定認可したんですか。これは誤りじゃありませんか。

堂故大臣政務官 教科書において、学習指導要領を踏まえて何をどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において発行者の判断に委ねられています。

 お尋ねのあった、来年度から使用される帝国書院の現代社会の教科書は、昨年度に検定申請され、教科用図書検定調査審議会の審議を踏まえまして、平成二十八年三月に合格したものであります。

 御指摘のあった記述については、申請者から、四月四日に文部科学省に変更申請がありましたので、内容を確認の上、四月十一日に変更申請を認めたところであります。したがって、沖縄経済の基地依存度が極めて高いという記述は削除されたところです。

 それで、当時の検定が間違っていたのではないかという御指摘だと思いますが、沖縄経済について、基地に依存している度合い等を含めまして、さまざまな受けとめ方があったわけでありまして、昨年度の検定において、検定意見を付して修正を求めるまでには至らなかったというのが事実でございます。

小川委員 教科書の記述をある程度自主性に委ねるのはそうでしょう。しかし、この記述は一般的な事実や認識を書いたものではありませんよ。日本政府がどうかということを書いているんですから。日本政府が基地の存続と引きかえに莫大な金を沖縄県に支出していると書いているんですよ。最初の検定で、これは明確に違いますよと言うべきでしょう。いかがですか。

堂故大臣政務官 繰り返しになって恐縮ですが、そのときの状況も、沖縄の経済の状況、基地に依存している度合いが極めて高い云々、あるいはその記述については、修正を求めるまでの記述ではなかったと文部科学省としては判断しております。

 繰り返しになりますけれども、教科書において、学習指導要領を踏まえ何をどのように記述するかについては、欠陥のない範囲において発行者の判断に委ねられているところであり、沖縄の基地問題の記述についても、教科用図書検定審議会がしっかり審議をして合格したものであります。

小川委員 なぜ、全く異なるのに訂正を求めないんですか。まさに検定委員会の職務怠慢じゃありませんか、不作為じゃありませんか。こういうことは一つ一つ沖縄の心をかき乱し、問題を複雑化し、逆なですることになると思いますよ。

 それから、訂正後についても一言申し上げます。

 訂正後は、日本政府は、沖縄のアメリカ統治が続いたこと、広大な海域に多数の離島が点在していること、亜熱帯であること、アメリカ軍施設が沖縄県に集中していることなど、さまざまな特殊事情を考慮して、毎年三千億円の振興資金を沖縄県に支出し、公共事業などを実施している。これは、沖縄県民から見ると、三千億円全部が特別配慮のように読めるといって怒っているんです。

 違うでしょう。全国各地に普通に行っている公共事業費などと比較して、この三千億円、沖縄県は、例えば県民一人当たりで見ると決して下位ではないが、上位に食い込むような状況ではないはずです。

 この記述もそういった誤解を招きかねない記述ではありませんか。

堂故大臣政務官 この記述については、平成二十四年五月十一日、総理大臣決定の方針としても、沖縄については、戦後四半世紀余りにわたり我が国の施政権下の外にあったこと等の歴史的事実、広大な海域に多数の離島が散在している、本土から遠隔にあること等の地理的事情、我が国でもまれな亜熱帯海洋性気候にあること等、さまざまな事情を勘案してという記述になっています。教科書もそれを踏まえた記述になっていると思います。

小川委員 三千億円全部が特別じゃないでしょうと聞いているんです。

堂故大臣政務官 それは私の所管ではありませんが、さまざまな事情を勘案して三千億円になっているということです。

小川委員 これを事実と認めるということですか。三千億円が、こういう特殊事情に配慮して沖縄県に、他県と異なってですよ、他県とは異なって全部交付している特別なお金ですということを認めるということですか。追認するということですか。

堂故大臣政務官 一般的な行政経費も含めてということであります。

小川委員 政務官、よく御自身でお考えをいただいた上でお答えいただきたいと思いますが、一般的経費も含めて、それはどういう意味ですか。

堂故大臣政務官 私の所管ではありませんが、一般的な補助金あるいは行政経費を積み上げたものだと思います。

小川委員 政務官、沖縄政策について聞いているのではないんです。政府の沖縄政策を前提に、教科書で子供たちにどう教えられるべきか、そこに正確性のそごや事実誤認があってはならないのではないですかと聞いているんです。政務官、責任を持って答えてください。

渡辺委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 では、速記を起こしてください。

 堂故政務官。

堂故大臣政務官 ちょっと失礼します。

渡辺委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 では、速記を起こしてください。

 堂故政務官。

堂故大臣政務官 沖縄振興局の予算の中の三千三百億という意味であります。

 教科書の記述の中では、そのことは関係ないと思います。

小川委員 答弁の意味がわかりません。

 これは、沖縄県に対する交付金を、全国とは全く異なる余りにも特別なものと誤解を与える記述ではありませんかと聞いているんです。

渡辺委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 では、速記を起こしてください。

 堂故政務官。

堂故大臣政務官 それらのことも、さまざまなことを含めて、考慮して判断されていると思います。

小川委員 では、こうしてください。

 一人当たりの公共事業費は、沖縄県は、昨年、上位何番目ですか。わかる人がいれば。

渡辺委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

渡辺委員長 では、速記を起こしてください。

 内閣府関政策統括官。

関政府参考人 お答えいたします。

 私どもで分析しているデータは、公共事業ということではなくて、例えば、県民一人当たりどれだけの国庫支出金が全国各都道府県に出ているのか、これでまいりますと、国庫支出金で申し上げますと、沖縄は、被災三県を除きまして、二十六年度決算では第一位になっているところでございます。

 交付税はちょっと種類が違いますので、財政調整ということはよく御存じですので、それを入れると少し順位は下がりますが、国庫支出金で申し上げれば、一人当たり、被災三県を除いて一位ということでございます。

小川委員 特に、ソフト交付金が入りましたから、恐らくそれを込めて計算するとそういうことでしょう。

 しかし、政務官、よく聞いてくださいよ、公共事業を中心にして三千億の資金が全部特別であるかのような記述は、事実と違うし、誤解を与えるおそれがある。今後の検定等に当たってはよくよく御留意いただきたい。

 いいですね、政務官。その私の問題意識はしっかり受けとめて、今後の検定を適切にやっていくとここでおっしゃってください。

堂故大臣政務官 ちょっと変化球なので答弁がどぎまぎして申しわけありませんでしたが、表現上は、沖縄を特別にしたということではなくて、他の都道府県と比較した記述ではなく、振興資金として沖縄県に三千億を提供しているという事実を列挙したわけでありまして、もし御指摘の点があれば、よく検討させていただきたいと思います。

小川委員 ぜひ、これは沖縄県民の思いもそうですし、また、本土の人間がそれをどう理解するかという面からも極めて重要でありますので、こういったところは本当に細部にしっかり配慮した記述なりが必要だと思います。そういう意味で、しっかりと職責を果たしていただけるように、改めてお願いを申し上げたいと思います。

 もう一点、派生してお聞きします。

 大臣も所信の中で、沖縄一括交付金が非常に有意義であるという趣旨について述べられているんですね。これも派生するんですが、民主党政権時代に一括交付金というのは全国展開されているんですよ。ところが、再政権交代後、全国の交付金は廃止され、沖縄の交付金は役立つと担当大臣が言っている。

 これは制度に大差ないはずなんですが、なぜこんなことになっているんですか。

福岡副大臣 沖縄につきましては、本土復帰が昭和四十七年となって、累次の沖縄振興法制に基づきさまざまな振興策を講じるなど、本土とは違う特殊な事情があるということは、先ほど先生もおっしゃいましたとおりでございます。

 このため、沖縄の振興交付金につきましては、沖縄からの要望を最大限尊重いたしまして、ソフト、ハード両面から措置することができるように、沖縄振興特措法の改正時に新たに規定を設けて創設された、そのときに小川先生も大変御尽力をいただいたというふうに承知しているところでございます。

 一方、先生がおっしゃいましたように、地域自主戦略交付金は、これは地域の自由裁量を拡大するという目的でございまして、そもそもその目的が違うということで、同様に扱うことは適当ではないというふうに考えております。

 一括交付金につきましては、再び政権がかわりました後、対象事業が従来の補助事業に限定されていることであったり、また、市町村に対象を拡大する場合を考えたときに、年度間の変動や地域間の偏在、こういったものの調整が難しいということであったり、手続の煩雑さ、こういったこともございまして、一括交付金については廃止をさせていただいていますが、趣旨が違う沖縄の方は残っているということでございます。

小川委員 よくわかりません。目的が違うとはいえ、同じだと思いますよ。各省にまたがった補助金を、自治体の選考に委ねて、取りまとめて交付する、その意味で自由度を高めたという点においては変わるところはないと思います。

 それから、なぜ、沖縄だけ手続が煩雑ではなくて、その他が手続が煩雑なのか、これも具体的に説明できるのであれば、説明してください。

福岡副大臣 委員も十分御承知と思いますが、沖縄の振興交付金については、沖縄からの要望を酌み取った上で、従来のハードだけではなくて、ソフト、ハード両面から措置することができるようになっているということでいうと、ほかの交付金とは違う位置づけであったというふうに承知をしております。

 手続の煩雑等につきましては、運用の改善の中で対応していきたいというふうに考えております。

小川委員 ソフトが使い勝手がいいのであれば全国展開すればいいんですよ。誠意を持って御答弁をいただいておりますが、中身において全く納得できない、そのことは申し上げたいと思います。

 大変残念です。岸田大臣には、北方外交、対ロ外交、北方政策、それから核政策等についてもお聞きしたかったところですが、またぜひ時間を改めてお聞きしたいと思います。

 きょうは、沖縄に関連して思いがあるだけに、少し感情も入りましたし、また、大臣にも厳しいことを申し上げましたが、沖縄政策、沖縄の振興発展に与野党挙げて取り組んでいくということに変わりはございませんので、ぜひお許しをいただいて、質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、水戸将史君。

水戸委員 民進党の水戸将史であります。

 小川委員に引き続いて、私の方は、北方領土、ロシアに対するこれからの日本の外交方針というか、今後どのような形で取り組んでいかれるかを中心にお伺いをさせていただきたいと思っています。

 釈迦に説法でありますけれども、ロシアにおきましては、ウクライナ問題に端を発しまして、EU諸国とか米国等による経済制裁により金融機関やエネルギー関連企業の資金調達に影響が出ているほか、エネルギー開発に不可欠な欧米の製品や技術も制裁の対象とされていることから、エネルギーの供給にも一部影響が出ていることは御承知のとおりですね。

 そういうような状況の中で、現在、ロシアでは、ヨーロッパへのLNG供給は政治的な面から難しくなっているということと、だからこそ、ロシア政府は、今後アジア太平洋地域への輸出の割合が増加すると見込んでおりますし、逆に日本にとっても、ロシアというのは、埋蔵量や価格面からも、今後重要な輸入元の一つであり続けると考えられます。

 そこで、ロシアにおけるエネルギー開発について、特に北方領土交渉との関係を見据えた上で、日本の関係のあり方を問いただしていきたいと思っているんです。

 まず第一問でございますが、一連のロシアにおけるエネルギー分野での共同開発につきまして、具体的に今まで日本の企業はどのような形で開発に加わっていたのか、そして、これがロシア経済に対してどの程度寄与してきたのかについて簡潔にお答えください。

相木政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシア経済におきますエネルギーの位置づけでございますけれども、ロシア側の統計によりますと、現在、二〇一五年の数字でございますけれども、ロシアの輸出総額の約六割、連邦予算の歳入の約四割が石油、天然ガス関連であるなど、ロシア経済におきましてエネルギー部門は大きな比重を占めておるところでございます。

 また、最近の開発の動向といたしましては、ロシアでは、伝統的な石油、ガスの主力の生産地であります西シベリアの地域に加えまして、東シベリアやサハリンを含む極東地域などにおきましても、石油、ガスなどのエネルギー開発が進められているものと承知をしております。

 最近の油価の下落はロシアの経済情勢に少なからず影響を及ぼしておるように考えられますし、ロシア政府もそのように認識しているというふうに承知をしてございます。

水戸委員 今までもかなり日本もロシアの開発には協力してきた、民間レベルでも政府レベルでも、いろいろな形でロシアに助力をしていくということは、本当に、外交方針でも日本の方向性は私は間違ってはいないと思うんですね。

 では、今後の日本の国としての方針といたしまして、ロシアからのエネルギー輸入のあり方についてどのような方針で臨んでいくのか、また、民間企業を含め、ロシアとの共同開発への投資に関する今後の政府の取り組み、大臣、どのような形でこれを行っていくのか、御所見をお述べください。

岸田国務大臣 まず、我が国は、原油及びLNGの一〇%をロシアから輸入しています。そして、日ロ両国の企業が協力する形のプロジェクト、サハリン・プロジェクトですとかヤマルLNGプロジェクト、あるいは東シベリアガス、油田開発プロジェクト、こうした大型プロジェクトが複数存在いたします。

 我が国にとりまして、低廉で安定したエネルギー供給を確保する観点からエネルギーの供給先を多角化する、こうした方針は大変重要だと考えます。

 そうした考え方に基づいて、ロシアとの関係においても、互恵の原則に基づきながらも、エネルギー分野での協力プロジェクト、今申し上げましたような大きなプロジェクト等を含めまして、政府としましてもしっかり後押しをしていく、推進するべく後押しをしていく、これが基本的な考え方であると思います。

水戸委員 民間企業がいろいろな形でロシアともやりとりをしながら政府が後押しをしていく、これは本当に、そのスタイルというのは妥当だと思うんですけれども、そういう中で、おやっと思ったこともありました。

 昨年六月末の段階で、これはウラジオストクなんですが、このプロジェクトは今までも企画、検討していた、いろいろな形で取り組もうという形でやろうとしたやさき、ウラジオストク付近から気体のまま天然ガスを輸入する日本海横断LNGプロジェクト構想が先送りになったというか、記事レベルでありますが、途中で立ち消えになったということなんですね。

 この記事を見ると、日本よりも中国を優先した、ロシア側は、やはり中国の方がいわゆる連携先としては優先だという形で、日本のこの構想に関しましては今後見通しはほとんど立たないというような、そうしたコメントまで載っているわけであります。

 今までの事実経過も含めてでありますけれども、今後、このプロジェクトに関して、この構想については日本はどのような形でこれをやろうとロシアに働きかけるのか。また、シベリア開発というものが、原油安と経済制裁によって、現状、開発計画がほぼストップしている状態の中で、私は中国だけがロシアにとっての得意先ではないと思っているんですけれども、こういう総合的な三国間の関係において、日本の立ち位置なんですけれども、失地回復はあり得るのかということも含めて、どのような形で当局は臨んでいくおつもりか、お答えください。

黄川田大臣政務官 委員御指摘のとおり、ロシアと中国の間で一定の協力関係が存在していることは我が方も承知しているところでありますが、日本政府としては、第三国間のやりとりについて、具体的にコメントをすることは差し控えたいと考えております。

 先ほど大臣もお話がありましたが、ロシアにおける資源開発の可能性、地理的な近接性、また我が国の供給源多角化等の点を考慮すれば、ロシアの石油、ガス資源を有効活用することは、我が国の低廉かつ安定的なエネルギー供給の確保にとって大きな意義を持ち得ると考えております。

 このような認識のもと、政府としては、互恵の原則に基づき、ロシアにおけるエネルギー分野での協力プロジェクトを後押ししていく考えに変わりはございません。

水戸委員 積極的に関与できるところは関与していった方がいいと思うんですけれども、もちろん、今御指摘いただいたとおり、やはりエネルギー分野での日ロの協力関係は、我が国にとっても、経済的な利益とか国際協調の観点からも重要なことであることは変わらない、私もそれはよくわかっています。しかし、他方、やはり我が国にとりましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結する、そうした国民的な願いもありますね。この両者の関係をどういう形で位置づけていくのかということです。

 結局、経済的な利益、また国際的な協調ということと北方領土問題は、これは我が国にとっては切っても切り離すことができない大きな大きな懸案事項でありますから、経済的なことと国際的な協調のこと、あるいはいわゆる我々自身が最も必要とする領土問題について、両者をどういう形で優位に働かせていくのか。要するに、北方領土返還に対してどのような形でこれをアプローチしていくつもりなのかということは、やはり政府としてしっかりした方針を持った方がいいと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。

岸田国務大臣 我が国のロシアとの関係を推進していく上での基本的な考え方ですが、委員御指摘のエネルギーを含めて、政治、経済、文化、幅広い分野において我が国はロシアとの関係を着実に進めていく、こうした方針で臨んでいます。そのために、さまざまなレベルでの対話、特に政治レベルでの対話を重視していかなければならない、こういったことを確認しております。

 このように、幅広い分野での関係推進を進めながら、その中にあって、御指摘の北方領土問題においても、北方四島の帰属の問題を解決した上で平和条約を締結していく、この問題を進めていく、これが我が国の基本的な方針であると考えています。

    〔委員長退席、小川委員長代理着席〕

水戸委員 そういう中において頭の片隅以上に気になるのは、やはりウクライナ問題というものは、当然西側としては許すまじきロシアの大チョンボだと私自身も思っているわけでありますけれども、このウクライナ問題をめぐって、米国を初めEU諸国、また日本も経済制裁に踏み切っております。追加措置もなされていますけれども、日本もある程度西側諸国との協調の中でこのような経済制裁に踏み切っているわけでありますけれども、こうした日本がとった措置がロシアにとってどのような影響を与えているのか。これに対して、今大臣御自身はどのような御認識でしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国は、ウクライナ問題につきましては、ウクライナの領土の一体性あるいは主権、こういったものを尊重し、そしてG7における一体性を重視する立場からロシアに対する措置を行っています。

 そして、委員の御質問は、その我が国の措置がロシアに対してどの程度の影響を及ぼしているのか、こういった御質問ですが、我が国の措置がロシアに対して及ぼしている影響については、今、ロシアをめぐる環境、例えば、中国を初めとする世界経済の状況の変化ですとか、あるいはロシアのルーブルもかなり暴落をしています。そして、ロシア経済の大変重要な要素でありますエネルギーにおきましても、さまざまなエネルギーの価格が暴落しています。こうした大きな動きがある中で、我が国の措置の影響ということを考えますと、この部分が我が国の措置の影響だと確定的に申し上げるのはなかなか難しいのではないかと思います。

 ただ、我が国としましては、あくまでもウクライナ問題におけるG7の一体性を重視する立場から、措置を引き続き続けていく、この方針については、現状、変わりはないと考えます。

水戸委員 では、大っぴらには言えないかもしれないけれども、形上では措置をしている。ある程度西側の、G7等々のおつき合いもありますから。しかし、実質的には、ロシア側のそういうエネルギー供給の問題とか領土の問題がありますから、やはり実質的なダメージをなるべく与えないような範囲の中で制裁を加えていろいろなポーズを見せているというような、そういうイメージなんですか。

岸田国務大臣 経済的な面を中心に我が国の措置がどの程度影響しているかということを数字的にあるいは確定的に申し上げるのは難しいということを申し上げています。

 国際社会における法の支配を重視する立場、あるいは一方的な現状変更を許さないというような立場等、我が国の措置自体は、国際社会における意味は大変大きいものがあると思います。そして、G7の一体性、連帯を重視するという姿勢を示す立場からも、こうした措置の意味は大きいと申し上げております。

 あくまでも、数字的に、定量的に我が国の措置の影響について確定的に申し上げるのは難しい、このように説明させていただいている次第であります。

水戸委員 これは非常に難しい外交的な話になりますから、センシティブなところについては大っぴらに言うことを差し控えなきゃいけないことは私もよく承知をしています。

 では、ちょっと当局に聞きたいんですけれども、確かに、いろいろな経済制裁等々を含めて、追加措置も含めて、日本もある程度、これは西側関係としてやらざるを得ない。しかし、そうはいうものの、日本の国益を考えるのであれば、そればかり一辺倒ではだめだ。一定の、ある程度、見えないところの配慮も必要かな。私も、それはそれとしてやらなきゃいけない、やらざるを得ないということだと思っているんですが、そういう中で今までやりくりしてきたんですね、この一年の間。

 結局、この間において、ロシア側が日本に対して、向こう側の方針として、日本のプラスになるような、日本もそうはいうものの、やはりいろいろな立場があるからこそ、日本に何か配慮をしてあげようというようなロシア側からのリアクションというのか、そういうものは、何か表面的に察知できるものがあるんでしょうか。

岸田国務大臣 委員のおっしゃるように、見返りとかリアクションはあるのかということについて、何か具体的に申し上げることはできませんが、いずれにしましても、日本とロシアとの関係においては、先ほど申し上げましたように、さまざまな分野を通じて関係を進めていく、基本的な方針は確認をしております。

 そして、確かにウクライナ問題等、難しい課題は存在いたしますが、その中で、政治的な対話の重視は大事であるというようなことは両国において確認をされています。先日も、ラブロフ外相が日本を訪問いたしました。私も五回目の日ロ外相会談を行いましたが、一方で、首脳レベルでの対話も続いています。

 このように、日ロの間においては、政治対話を続けることによって両国関係を進めていこう、そして、懸案であります北方領土問題につきましても、四島の帰属の問題を明らかにして平和条約問題を解決していこう、こういった姿勢についてはしっかりと確認をされているものだと認識をしております。

水戸委員 いろいろな水面下のやりとりは、やはりもっともっとこれは進める必要があると思うんですけれども、しかし、さはさりながら、今、表面上において、いわゆるウクライナ問題に対する制裁がロシアに対してどのような形で響いているのかという一つの事例として、これが直接的か間接的かはわかりませんけれども、最近の報道で、ロシアは今後、北方領土を含むクリル諸島において海軍基地を建設することを検討しており、この四月から三カ月間にわたって海軍の専門家調査団を派遣して基地建設の可能性を探るとされております。さらに、本年には二種類の地対艦ミサイルと無人機を配備する計画もあるとされていますね。

 また、一層申し上げるならば、定住化のためのインフラ整備につきましても、国有地などの遊休地を国民に貸して、一定期間、農地などとして利用すれば土地の譲渡が受けられる制度も検討されているということが報道では言われているんですね。

 結局、こうしたいわゆる北方領土の実効支配を強化するんじゃないか、強化を進めているんじゃないかということが臆測されているんですけれども、これに対する御見解は、大臣、どうでしょうか。

    〔小川委員長代理退席、委員長着席〕

岸田国務大臣 御指摘のような報道があることは承知をしておりますし、ロシアの北方領土をめぐるさまざまな言動につきましては、我が国としましてもしっかり注視をしております。

 そして、それと同時に、こうしたさまざまな報道が行われる、あるいは問題点が指摘をされる根底には、やはり北方領土問題が存在するわけであります。ですから、こうした事態についてはしっかり注視をしていかなければならないとは思いますが、この問題を根本的に解決するためには、北方領土問題そして平和条約問題そのものをしっかり解決しなければなりません。

 北方領土問題、北方四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結する、この問題についてしっかり取り組むことがこうしたさまざまな動きの背景にある、根本にある問題を解決することになる、こういった考えに基づいてしっかりと政治対話を行い、この問題について高い政治のレベルでの議論を進め、そして解決につなげていく、こうした努力をすることが大事だということを改めて強く感じています。

水戸委員 努力努力といっても、実際に、向こうはいわゆる実効支配で既成事実化をしようというような、報道ベースでありますけれども、そういう形が昨今かいま見られるというわけでありますから、もちろん事実確認は必要でありますけれども、大臣、やはり実効支配をいかに食いとめるかということなんですね。既成事実化しない、もうそれをしてしまえばおしまいになってしまいますし、その後、なかなか譲歩を迫るのは難しい、そういうことになりかねませんから。

 やはり、経済問題とかいろいろなものを絡めながら、実効支配という、そうした既成事実化するのをとめる、まず、そこに、一点に絞っていろいろな外交努力をしていっていただきたいと思うんですけれども、具体的にどういう形でこれに臨んでいかれるか、もう一度御答弁ください。

岸田国務大臣 おっしゃるように、北方領土をめぐるさまざまな動きについては注視をし、そして、我が国として受け入れられない言動に対しましてはしっかり抗議を行い、対応を求めていく、このことは大変重要だと思います。こうした取り組み、努力はしっかり続ける。一方で、やはりこの根底にある北方領土問題、平和条約締結問題、これをしっかり解決しなければなりません。

 昨年九月、私自身、ロシアを訪問させていただきまして、第四回目の日ロ外相会談に臨みました。そして、北方領土問題、平和条約問題についての交渉を再開することを確認いたしました。そして、四月十五日、五回目の日ロ外相会談を行いました。こうした問題について、日本とロシア、歴史的な立場あるいは法的な立場においては違いがある、これはそのとおりでありますが、その上で、ぜひ、双方受け入れ可能な、具体的な解決策をつくっていこうという議論を進めることになりました。そういった意味で、現実的な、前向きな議論ができたと受けとめています。

 ぜひこれを、近いうちに予定されております日ロ首脳会談の議論につなげていきたいと考えます。

水戸委員 これも報道ベースで大変恐縮でありますけれども、プーチン大統領は、つい先日ですけれども、北方領土問題の解決を含む平和条約締結につきましては、妥協はいつか見つけることが可能だし、見つけられると思うという形で日本との歩み寄りには期待感を示したとあります。

 ところが、大統領が言っているその一方、先ごろ来日したラブロフ外相は、第二次世界大戦の結果、北方領土がロシア領になったという歴史的事実を認めなければ前進は不可能だと言っているんですね。

 結局、いわゆるロシアの首脳の中においても発言がかなり食い違っているのかなということがうかがい知れるところでありますけれども、本当に、まさにロシアの本音というのはラブロフ外相のこの言葉に集約されているんじゃないかと私は非常に懸念しているんですよ。あくまでも領土交渉は見せかけで、経済的な利益を優先する、それを獲得すること、ロシアというのはそれしか念頭にないんじゃないかということも私は懸念しているんですが、これはどうでしょうかね。大臣、どのような御見解ですか。

岸田国務大臣 ラブロフ外相は、日本を訪問する前、記者会見におきまして、委員御指摘のように、北方領土問題については第二次世界大戦の結果であるという発言をしているわけですが、その同じ記者会見におきまして、ラブロフ外相は、安倍総理とプーチン大統領のやりとりを引用しながら、ぜひ、両国関係、日ロ関係を幅広い分野で発展させていきたい、こういった発言もあわせて行っています。

 そして、こうしたラブロフ外相の発言、第二次世界大戦の結果であるという発言については、一九五六年の日ソ共同声明のやりとり等を見ても、これは受け入れられるものではないと我々は考えています。

 日ロで領土問題が解決されていなかったからこそ、一九五六年の段階で平和条約を締結できなかったはずでありますので、その時点でもう決着はついていたという意見は我々としては受け入れることはできませんし、平和条約締結問題の核心は北方領土問題であると我々は考えています。

 こういった立場の違いは確かに日ロであります。しかし、立場の違いがあっても、その上で、現実的な、双方受け入れ可能な策をつくっていこうということで今努力を続けている、これがこの議論のありようであります。

 こうした議論を、先日、四月十五日の日ロ外相会談でも行いましたが、これをぜひ日ロ首脳会談につなげていく、こうした流れの中で具体的な解決策を日ロでしっかりと考え出す、結論を導いていく、こういったところにつなげていきたいと考えています。

水戸委員 今大臣おっしゃったように、首脳会談が五月六日に予定されている、そうした報道もありますけれども、やはり一定の果実を我々自身はかち取っていく必要があるなという気がしているんですね。

 ですから、もう一度、大臣、安倍総理に成りかわってお答えいただきたいんですけれども、やはり私たちが懸念するのは、先ほど言ったように、一方的に経済的な譲歩を迫られるだけで、領土問題につきましては向こうは聞いたような聞いていないような形でお茶を濁していくんじゃないか。そういうことを非常に我々もじくじたる思いで今までは見ていましたけれども、今回の首脳会談は一定以上の果実をかち取っていくんだということをここで決意をしていただきたいんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 もちろん、具体的な結果、成果を確認するためには、首脳会談だけではなくして、外相会談あるいは実務レベルの会談とかさまざまなレベルで、それぞれのレベルにおいて確認をすることによって全体を確認していく、こういったことになると思います。

 ただ、こうした、両国で前向きな議論を進めていこうという機運はしっかり首脳会談において確認をし、引き続き、さまざまなレベルにおける対話を継続していく、こうした流れをつくっていくことは大変重要であると思います。

 ぜひ、こうした大きな流れを確認する首脳会談にしたいと我々は思っておりますし、全体の流れを大事にしていきたいと考えます。

水戸委員 本当に北方領土の返還は日本国民の願いでありますから、より一層それを具現化していただくように、強い強い形で期待していますし、要望したいと思っています。

 これはウクライナ問題の制裁に関するあおりじゃありませんけれども、ロシアの国内法によって、ことしの一月から、ロシア二百海里水域内でのサケ・マス流し網漁が禁止されたんですね。それによって日本の漁業関係者も一定以上のダメージを受けているわけでありますけれども、これをある程度緩和するために、日本としても独自の対策を今講じております。

 昨年度も百億円に上る補正予算を組んでいるわけでありますが、こうした緊急対策事業がどのような効果をもたらしていると見込んでいらっしゃいますか。具体的にお答えください。

佐藤大臣政務官 委員御指摘のとおり、本年一月一日から、ロシア水域におけるサケ・マス流し網漁が禁止をされたところでございます。そうした中、北海道等からの要請に沿いまして、平成二十七年度補正予算等により緊急対策を講じたところでございます。

 この緊急対策におきましては、我が国二百海里水域、公海における代替漁業への転換支援等の漁業者対策、さらに種苗生産施設等の整備、そしてサケ・マス加工原料緊急対策等に必要な経費として平成二十七年度補正予算に百億円を計上するとともに、減船対策として既存基金による救済費交付金の交付を行うこととしておりまして、スピード感を持って対策を進めていきたいと思っております。

水戸委員 国レベルだけれども、これは当然、国だけじゃなくて地方公共団体もある程度歩調を合わせてお金を出し合っていかなきゃいけないところもありますから、やはりこれは北海道とか地元の市町村ともいろいろな形で連携をとりながらやっていかなきゃいけないということなんですね。

 国は昨年、百億円のそういう補正予算を組んでやろうとしている。でも、国がばっとやったといたしましても、では北海道は対応できるのか、市町村は対応できるのか。お金の絡んでくる話になると、なかなか対応できない部分もあるんですね。

 結局、積み残しの部分もあるんですけれども、例えば、種苗生産施設の整備費一部補助につきましては、これは昨年度対応できなかった。したがって、北海道庁としても今年度補正予算で対応することを検討していますけれども、その場合、財源対策として地方債を起債する必要性があるんですね。それについて、特別に国は認める予定ですか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年度補正予算によりまして追加されました投資的経費に係ります地方負担額につきましては、基本的に補正予算債により地方財政措置を講じているところでございます。

 一方で、国の平成二十七年度補正予算に計上された事業でございましても、国において本省繰り越しをいたしまして平成二十八年度に交付決定等を行いますとともに、地方団体におかれましても、平成二十八年度の予算に計上して実施する事業につきましては、平成二十八年度の国の予算に計上されて地方団体が実施する事業と実質的に同じでございますことから、これらの事業につきましては、通常の地方財政措置、いわゆる公共事業等債でございますけれども、これらによりまして対応しているところでございます。

 今委員御指摘の強い水産業づくり交付金事業の一部につきましては、本省繰り越しをした上で平成二十八年度に交付決定等を行うこととしておりまして、北海道におかれましても、今後、予算措置を講じて事業を実施するというふうに聞いておりますので、これらにつきましては通常の地方財政措置ということで対応をしてまいりたいと考えております。

水戸委員 効果が目に見えてあらわれるような形で、国としてのバックアップをしていっていただきたいと思うんですね。

 また、これは中小企業庁に聞きたいんですが、いわゆるセーフティーネット保証の問題なんです。

 結局、こうしてロシアから締め出しを食らった漁業関係者は、漁期、魚をとる期間が短縮化しますから、やはり売り上げが減少する。普通は、対前年ということを対象として、前年の売り上げからダウンした場合という形でセーフティーネットをやっているんだけれども、これは前々年とか前年とか対象年をある程度幅広に見て、そういう形でセーフティーネットでしてもらいたいという要望もあるんです。

 これについてはどうでしょうか。

木村政府参考人 御指摘のセーフティーネット保証でございますけれども、去る一月十八日に適用を開始したところでございます。

 信用保証でございますが、中小企業の資金繰りを支える重要な制度でございますけれども、他方、国民負担が制約なく増大するということは避けなくてはならないということで、一定のバランスがやはり必要だろうとは思っております。

 他方、今回のように、漁業者と取引のある水産加工業者などは、年により、あるいは月によってもそうかもしれませんけれども、売り上げの変動が大きいために、資金繰りが厳しいときにタイムリーな適用が受けられないという実態があるというようなことも承知をしてございます。

 現在、非常に厳しい状況にあるということも踏まえまして、このような売り上げの変動が大きい場合に適し、かつ、ルールを変えるということになりますと一般的な広がりも持ってまいりますけれども、これがセーフティーネット保証の無制約な拡大につながらないような基準のあり方というのを、御提案も踏まえまして、私ども現在検討しているところでございます。

水戸委員 鋭意努力して、そういう形で、うまく現場の状況に合わせた形で対応できるように強く要望したいと思います。

 最後になりましたけれども、こういういろいろな積み残しの案件があり、また、今年度、来年度に対して対応していかなきゃいけない。北方領土問題も含めてなんですけれども、いろいろなロシアとのやりとりの中において、道内経済にも一定以上の影響を、ダメージも含めてなんですが、これを与えかねないということ、実際にこれは与えているわけでありますから、いろいろな形で、国の対応もさらに一層求められてしかるべきことになりました。

 今後、政府において、こうした拡充策というのか対応策というものを、積み残しの部分に関しましても、不足分とか補足面を含めて、その解決に向けて全力を尽くす必要性があると思っているんですが、これについて、どのような形で、このあおりを食った漁業関係者を含めて、道内経済に対して取り組んでいくおつもりかということを最後にお述べいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

佐藤大臣政務官 農林水産省としては、サケ・マス流し網漁の禁止に伴う北海道の道東地域を中心とした関連産業への影響を最小限に抑えるために、まずは、先ほどお話をさせていただいた緊急対策をスピード感を持って進めてまいりたいと思います。

 さらに、あわせて、総合的なTPP関連政策大綱に基づく基金事業等を活用して、来年度以降も持続可能な収益性の高い操業体制への転換に必要な支援等を行うことが重要と認識をしているところであります。

 委員御指摘のとおり、今後の対応につきましては、このような支援策の実施状況を見きわめながら、しっかりと検討してまいりたいと思います。

水戸委員 これから首脳会談が行われるということで、外務大臣もいみじくもおっしゃっていただきましたけれども、やはりこうしたロシアとの関係が北方領土問題解決に向けて一歩一歩前進していくこと、これは国民皆の願いでありますし、国民は皆見ていますから、ぜひ実りある首脳会議になることを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民進党の近藤昭一でございます。

 きょうは、この沖縄北方特別委員会で質問の時間をいただきましたこと、まず感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、まず北方領土問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 私も、初当選以来、この北方領土の問題については大きな関心を持って取り組んでまいりました。実は、私は愛知県の選出でありますけれども、愛知県にも北方領土返還要求愛知実行委員会というのがございまして、有志でつくられたものでありますが、その代表を務めております。

 そして、九七年二月に調査団に初めて参加をしました。それ以来三度であります。調査団といっても、北海道側からということでありますが、納沙布岬から北方領土を望みまして、元島民の皆さんや関係の皆さんと交流をし、さまざまな思いを聞かせていただいてきた、政治家として受けとめさせていただいてきたということであります。

 そういう中で、報道によりますと、ゴールデンウイーク中に、先ほど来から質疑がありますが、安倍総理がロシアを訪問されるということであります。

 実は、御承知であると思いますが、九二年に北方領土のいわゆるビザなし交流が始まって、ちょうど二十五年目というわけであります。ビザなし交流が始まった当初は、ソ連が崩壊した直後でありました。品不足と貧困が深刻だったロシアの皆さんが根室などに来日されて、日本の経済発展とその豊かさに大変驚かれた、こういうことであります。

 ところが、最近、根室を初めとする北海道を訪れるロシアの皆さんからは、むしろ日本側の状況を心配する声が聞かれるという話を伺いました。ロシアの皆さんの感想は、実は、数字にもあらわれているのではないかと思います。

 例えば、根室市の人口を見ると、二十年前の一九九六年には三万四千八百三十五人だった。昨年末には二万七千六百二十九人にまで減っている。二十年間で二〇%の人口減というのは、かなりの激減だと思うわけであります。

 これに対して、ロシア政府は北方領土のインフラ整備を進めており、昨年発表された社会経済発展計画では、十年間で約七百億ルーブル、日本円にして約一千四百億円が投資されているということであります。ロシア側では、既に二〇〇七年から、彼らが言うところのクリル諸島の優先的開発を進めているわけで、インフラ整備も急速に進んでいると聞きます。

 統計数字を見ても、二〇一二年の統計で、国後、色丹両島の労働者の平均所得は三万三千七百ルーブル、ロシア全体の平均所得が二万三千ルーブルといいますから、かなり高いと思います。人口で見ても、択捉、国後を中心とする南クリル地区の人口は二〇一三年で五百六十三人の増加だと聞いております。

 一説では、増加分のほとんどは外国人労働者ではないかということでありますが、いずれにいたしましても、北方領土でインフラ整備が非常に進んで、住民あるいは働く人たちがふえているという一方、その対岸の根室地区では、住民が減少の一途にあるというわけであります。

 そこで、お尋ねしたいわけであります。

 間もなく首脳会談が行われるということ、会談で交渉が進んでいくということ、これは重要であり、もちろん私も歓迎したいと思います。しかし一方で、人が住んでいる、元島民の人たちも住んでいる土地や町が寂れて疲弊してしまうのでは意味がないのではないかと思うわけであります。この状況は北方領土返還運動を進める上でもゆゆしき事態であると私などは考えるわけでありますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

島尻国務大臣 根室市を初めといたします北方領土隣接地域におきましては、領土問題が未解決であるということによって望ましい地域社会の発展が阻害されているという面もあって、また、返還要求運動の原点の地という特殊な位置づけにあることから、安定した地域社会が形成される必要があるという認識を持っております。

 このため、この隣接地域におきましては、北特法に基づいて、国土交通省を中心に、振興のための諸施策を推進しているところでございまして、今後とも、国交省を初めとする関係府省が連携してこの地域の振興に取り組むことが重要と考えております。内閣府といたしましても、隣接地域の皆様が行う啓発活動を支援するための予算を計上しているところでございます。

 したがいまして、私といたしましても、引き続き、国内世論の啓発の強化を図って返還に向けた環境整備に積極的に取り組むということで、外交交渉を強力に後押ししていきたいと考えています。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 大臣おっしゃられたように、そういう状況の中で、なかなか難しい課題もある、しかしながら北特法の中で取り組んでおられるということであります。

 ただ、私は、そういう課題を抱えながらも、もっともっと進めていくべき、そういう状況の中でやらなくてはいけない、だからこそやらなくてはならない、こういう課題があるんだと思うんですね。

 そういう意味では、民進党、つまり民主党政権時代の、先ほども指摘がありましたが、一括交付金のことであります。こうした自由度の高い予算配分を行うべきだ。今御指摘にあった法律があるわけでありますが、もちろん、全国的な課題ということでも、一括交付金のよいところ、長所というのは私はあるんだと思いますが、ただ、まさしくそういう状況だからこそ、まず、北方領土のことを考える中で、こうした一括交付金のような高い自由度を持つ予算配分を行うべきではないかと思うんです。

 改めて、政府の対策を御説明願いたいと思います。

對馬政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省としましては、根室市を初めとした北方領土隣接地域一市四町の振興は大変重要だと考えております。

 先ほどの北特法に基づきまして、第七期の振興計画に沿って、地元の意見をよく聞きながら振興対策事業を推進しているところでございます。

 事業の実施に当たりましては、総合的な事業効果が発揮されるよう、ハード、ソフトを一体的に組み合わせて実施することとしてございます。

 特に、インフラ整備などのハード事業につきましては、通常の公共事業に加えまして、北海道特定特別総合開発事業推進費を活用いたしまして、地元の要望も踏まえながら追加的な配分を行うなど、年度途中の事情変化にも対応しているところでございます。

 また、ソフト事業につきましても、北方領土隣接地域振興等補助金を活用いたしまして、具体的には、水産業などの基幹産業の付加価値の向上、新たな観光メニューの創造、災害に強い地域づくり、そういった取り組みで地元のさまざまな要望に対応してきているところでございます。

 国土交通省といたしましては、引き続き、地元の要望をよくお聞きしながら、関係府省とも連携をして、北方領土隣接地域の振興対策を推進してまいりたいと考えておるところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 いろいろと今繰り返しおっしゃったように、地元の要望を聞いてということで、そういう中で計画を立てられているということであります。そうして取り組んでいただいていることを評価しつつも、先ほど申し上げましたように、人口が減っているという状況、そして、逆に言うと、地元の要望を聞いているということであれば、私はやはり、より使いやすい一括交付金のようなものがあるべきだと思います。

 いずれにいたしましても、大臣におかれましては、しっかりと要望を受けとめて取り組んでいただきたいと思います。よろしいでしょうか。決意を伺います。

島尻国務大臣 もう十分委員も御存じと思いますけれども、私としては、この啓発に関して、世論を啓発していくというところは一生懸命やっていきたいと思っておりますし、また、国交を中心として振興というところもぜひ一緒になって、相まって、地元の発展といいますか、北海道の隣接地域が発展していくということを期待しているところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それでは、沖縄の問題について、辺野古新基地用土砂の搬入について絞ってお伺いをしたいと思います。

 実は、先ほど北方領土の問題、返還運動のことをお話ししましたが、超党派の議員連盟で沖縄等米軍基地問題議員懇談会というのがございます。超党派でつくっております。実は、私はその会長を務めさせていただいております。そういう中で、辺野古の海に新しい基地はつくらせてはならない、こういう活動を議員連盟としては継続してきているわけであります。

 沖縄の辺野古の海の埋立予定海域内には、絶滅が心配されるジュゴンが海草を食べた跡があり、ジュゴンが生息するアジアの北限と言われております。また、大浦湾は、調査のたびにイソギンチャクなどの新種が発見される。辺野古の海は、このように生物多様性の宝庫ともいうべきところであるわけであります。

 島尻大臣におかれましては、辺野古が生物多様性の宝庫であるという認識、もちろんあるんだと思いますが、いかがでありましょうか。

    〔委員長退席、小川委員長代理着席〕

島尻国務大臣 委員御指摘の辺野古の海というものに関して、この範囲というものが必ずしも明らかではございませんけれども、辺野古だけではなくて、沖縄の島々の沿岸域のほぼ全域は、このたびの生物多様性の観点から重要度の高い海域とされているということは承知をしております。

近藤(昭)委員 今ちょっとおっしゃった、環境省として、沖縄の海、大きくそういう生物の多様性があるということでありますが、私がお聞きしたいのは、辺野古の海、今申し上げた、ジュゴンがいる、そしてイソギンチャクの新種がその都度発見される、この辺野古の海がまさしく生物多様性の宝庫だ、この認識はどうかということであります。

島尻国務大臣 繰り返しになりますけれども、辺野古の周辺も含めて、沖縄の本島を含め、沖縄の離島も含めて、ほぼ、その沿岸が生物多様性の観点から重要度の高い海域とされていることは承知をしております。

近藤(昭)委員 御承知おきいただいているということでありますが、辺野古を含めということであります。

 もちろん、沖縄の豊かな自然、ただ、私は、まさしくその中でも特にという言い方をするわけではありませんけれども、辺野古が今基地をつくる対象になっている、そこにやはり問題認識を持っていただきたいということでお尋ねをしました。

 それでは、辺野古の新基地埋立用土砂供給計画についてお伺いをしたいと思います。

 辺野古新基地建設は、埋立場所や埋め立て用の海砂の採取海域がジュゴンの回遊路であって、ジュゴンの生息域が幾重にも壊されることを心配する、こういう声があるわけであります。

 さらに、土砂の岩ズリについて、沖縄島のほか、九州や瀬戸内海周辺など本土から購入して運搬する計画があると聞いておりますが、いかがでありましょうか。

真部政府参考人 お答え申し上げます。

 普天間飛行場の代替施設の建設事業に必要となります埋立用材につきましては、平成二十五年の三月に沖縄県に対しまして公有水面埋立承認を申請いたしました際に、それまでの調査結果に基づきまして、必要な埋立用材の種類あるいは使用量、それから調達が可能な埋立用材の採取場所とストック量などを願書の添付図書の中に記載をいたしたところでございます。

 その添付図書の中で、今御指摘の岩ズリに関しましては、沖縄県内のストック量では使用量を満たせないと見積もられたことから、九州及び瀬戸内の計七つの地区のストック量をもお示しいたしまして、岩ズリの使用量、必要量を満たす調達が可能であることを記載いたしております。

 その上で、具体的な採取場所、これにつきましては、今後必要な調査検討を行った上で、適正な契約手続を経て、工事計画に即した安定、確実な調達が可能な土砂供給業者と土砂購入に係る契約を締結した上で確定していくことになっておりますところで、現時点ではまだ決定はしておらないというものでございます。

近藤(昭)委員 現時点では決定していないということですね。

 では、ちょっと確認をしますが、その辺野古新基地建設に伴う土砂搬入は、それでも一部は、全体ではない一部は本土からの船による搬入であろうと思います。そうすると、港において積み荷等の作業があるとすれば、それは港湾運送事業法の範疇になると思いますが、それでよろしいでしょうか。

津田政府参考人 お答えいたします。

 港において、船舶への貨物の積み込みまたは船舶からの貨物の取りおろしの行為がある場合、当該行為が政令で定める一定の港で行われ、加えて、当該行為が他人の需要に応じて行われる事業である場合、港湾運送事業法第四条において、港湾運送事業の許可が必要となります。

 仮に、辺野古基地建設に伴う工事における土砂の搬入について、港における船舶への貨物の積み込みまたは船舶からの貨物の取りおろしの行為が含まれる際には、当該行為について港湾運送事業法の港湾運送事業の許可等の要否を判断することとなります。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうすると、今のような状況の中で港湾運送事業法の範疇になるということでありますね。これは、本土から沖縄まで大量の土砂を運ぶということであると、小さい船ではないんだと思います。港で積み荷等を行って、港湾運送事業法の範疇になるというわけであります。

 そうすると、今、前提条件のようなものがあったわけでありますが、政令で指定された港以外、こうした港を使って、港湾運送事業法の適用ではないんだ、こういうことはあってはならないと思うんです。これは非常に重要だと思うんですが、国交省、いかがでありましょうか。

津田政府参考人 先ほども述べさせていただいたとおり、港において、まず船舶への貨物の積み込み、船舶からの貨物の取りおろしの行為がある場合において、政令で定める一定の港で行われ、さらにその上で、他人の需要に応じて行われる事業である場合、港湾運送事業法の許可が必要になってくるというところでございます。

 当該行為につきましては、港湾運送事業法の港湾運送事業の許可等の要否について、事案ごとに判断させていただくということになると思います。

近藤(昭)委員 では、確認しますと、政令で指定された以外の港を使う、この場合は港湾運送事業法の適用になるのかならないのか。

津田政府参考人 お答えいたします。

 政令で指定された港以外で当該行為を行う際につきましては、港湾運送事業法の適用は受けないということになります。

近藤(昭)委員 受けないということを確認しました。

 それでは、本土から土砂を搬入する場合、外来種の持ち込みによる生態系の攪乱が非常に心配されるわけであります。搬入する場合は環境影響調査は誰が行うのか、教えていただきたいと思います。

真部政府参考人 今委員がおっしゃいました移設事業に関しまして、埋め立てに伴う外来種対策、そういったものを含めまして、事業者でありますところの沖縄防衛局が実施してまいりました環境影響評価プロセスにおきまして、埋立土砂の供給元などの詳細を決定する段階で、生態系に対する影響を及ぼさない材料を選定することなどによって環境保全に配慮することとしておりまして、埋立土砂の供給業者に所要の調査などを義務づける等、事業者たる沖縄防衛局において適切な対応をとることとすることとしております。

近藤(昭)委員 非常に懸念を持っているわけであります。生態系が乱される、攪乱される、こういうおそれが非常に高いと思うんです。

 そういう意味では、今、業者が調査をするというお答えであったと思うんですけれども、沖縄では、二〇一五年十一月一日に施行された埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する沖縄県の条例というものがあります。懸念される外来種の具体的な混入の例としては、アルゼンチンアリの被害が心配されているわけであります。

 生態系を守る点から、では、外来種の侵入、混入の防止は誰が責任を持つのかということを教えていただきたいと思います。

真部政府参考人 埋め立てに伴いますところの外来種の対策、これにつきましては、私どもで設置をさせていただいております環境監視等委員会の専門家等の指導助言を得ながら、使用する埋立土砂が事業実施区域及びその周辺の生態系に影響を及ぼすものではないことを確認する、こういったことを通じまして、事業者の責任として沖縄防衛局が適切に対応することになろうというふうに考えております。

近藤(昭)委員 そうしますと、監視委員会があって、実施者である、事業者である防衛局が責任を持つ、こういうことですか。調査は業者、責任は防衛局、こういうことでいいですか。

    〔小川委員長代理退席、委員長着席〕

真部政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、責任ということでありますと、事業者として沖縄防衛局が対応するということでございます。

 先ほど申し上げたのは、環境監視等委員会の専門家から意見を聞く等につきましては、事業者がそういう方法をもって外来種対策を講じていくということを申し上げたところでございます。

近藤(昭)委員 対策を委員会がする、防衛局がそこに責任を持つ。

 そうすると、そういう中では、どういう時点でどのようにするのか、そういうような指針といいましょうか、そうしたガイドラインといいましょうか、そこは、どこが策定してどのようにやるというふうにお考えですか。

真部政府参考人 外来種の対策につきましては、埋め立てに伴う環境保全の一環といたしまして、先ほども申し上げたような、埋め立ての土砂について、いつ、どこから、どのように持ってくるかをまず計画いたしまして、それに沿って、具体的な埋立土砂の搬入の計画に基づきまして、それから、もちろんですが、今御紹介ありました条例、その上位の関係法令も含めまして、それに沿った上で環境監視等委員会の専門家の意見を聞いて具体的な外来種対策というものを定めていく、それによって対策をきちんと行うようにしていくことになろうかと思っております。

近藤(昭)委員 そうしますと、その時点で問題があるとその砂は使わない、その砂を使っての埋め立てはしないということでいいんですか。

真部政府参考人 具体的にはこれからでございますけれども、基本的な考え方としては、今おっしゃったように、そういった土砂を使わないという選択肢もありますし、その土砂が問題ないようにした上で使うといった選択肢もあろうかと思います。

 そういったことは、繰り返しになって恐縮でございますが、専門家の意見等をしっかり聞いて、適切な方法を選択してまいりたいと思っております。

近藤(昭)委員 それを使わない、あるいは除去した、その除去がどういう状況で行われるのか非常に危惧をするわけですが、考え方としては、そういう状態でないものを、外来種による、そういう生態系を乱すことがないような状況でないと使わない、行わないということでありますね。

真部政府参考人 今委員おっしゃったとおりでございます。

近藤(昭)委員 私は、辺野古には基地ではなくジュゴン海洋保護区を設けるべきだと考えています。

 二〇二〇年の愛知目標、いわゆる生物多様性条約の会議の際に設けられた愛知目標でありますね、海洋の一〇%を海洋保護区にということに向けて、目標達成に向けて、二〇一三年度までに日本の重要海域の候補を決定したわけであります。

 二〇一四年度に公表と聞いておりましたが、どうなりましたでしょうか。

亀澤政府参考人 お答えいたします。

 重要海域につきましては、専門家や関係地方公共団体の確認も含めた情報の精査を丁寧に行ってまいりましたことから、公表まで時間を要しましたが、先週、四月二十二日の金曜日に、生物多様性の観点から重要度の高い海域として公表したところでございます。

 科学的、客観的な観点で抽出した結果、重要海域として、沿岸域では二百七十海域、沖合海底域として三十一海域、沖合表層域では二十海域の合計三百二十一海域が抽出されております。

 環境省といたしましては、二〇二〇年の愛知目標の達成に向けまして、さまざまな施策を検討する際の基礎資料として活用していきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 これは、法的規制を強める、法的規制ということではないと思うんですが、しかしながら、二〇二〇年の愛知目標、その目標は、生物の多様性を維持していく、その中で具体的に一〇%の目標を立てて指定をしていくということであると思うんです。つまりそれは、法的効力はなくても非常に大きな目標であり、意義があると思うんですね。

 それで、大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 今、防衛省からも、そうした状況にならないということが大前提だ、つまり、いわゆる生態系を乱すことがない、攪乱するようなことがない、こういう状況でしかやらないということでありました。

 また、環境省の方からも、沖縄の海、もちろん沖縄だけではありませんが、日本の、また世界の生物の多様性を維持していく、そういう中で、愛知で会議が行われて目標が立てられた、これを実現していくために重要な指定をしたということなんだと思います。

 ただ、私は非常に心配しているわけであります。それでも、そういう中で予想ができないということ、あるいは今もあったように、法的な規制ではないということ、そういう中で、私は、やはり本土からの土砂の搬入は非常に問題であるのではないかと思うわけであります。

 そういう意味では、島尻大臣は、担当の大臣であるとともに沖縄の選出であります。どうお考えか、思いも含めてお聞かせをいただければと思います。

島尻国務大臣 一連の今の質疑ではあるんですけれども、お尋ねについては、普天間飛行場の代替施設について、建設事業に係る公有水面の埋め立てあるいはその際の環境保全に関することでございまして、沖縄の振興を担当する大臣としてお答えすることは差し控えたいというふうに思います。

 その上で、あえてお答えをさせていただくのであれば、本件については、今関係省庁において、専門家等の指導そして助言を得ながら所要の調査検討などを行って、法にのっとって、環境にもできる限り配慮して進めていくというふうに聞いておりますので、そこはしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

近藤(昭)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、沖縄の子供の貧困についていろいろ議論をしていきたいと思います。

 極めて深刻な実態は先ほど来から繰り返されておりますが、ことしの三月二十四日に、沖縄子ども調査、調査結果が発表されました。沖縄県の子供の相対的貧困率は、全国の一六・三%に対して二九・九%、約二倍近いことがわかりました。

 この沖北委員会で、さきの沖縄振興法の制定を前に、二〇一一年八月三日の参考人の質疑で山内優子参考人が発言されております。

 山内さんは、沖縄の貧困を分析し、「沖縄の貧困は構造的につくられた問題であり、さきの大戦で唯一地上戦を経験し、ゼロからの出発で、しかもその後二十七年間も米国に統治されていたということ、そして、広大な土地を米軍に奪われ、県民は狭隘な土地で第三次産業に従事するしかなく、失業率は全国一であり、それが離婚率につながり子供の貧困につながっていった」「貧困から派生するさまざまな親の問題が子供たちへとつながり、さらに貧困の世代間連鎖が確実に進んでいると言っても過言ではありません。」と参考人の発言の中で述べられました。

 沖縄の貧困は、沖縄戦とそれに続く米軍の占領下のための福祉施策の立ちおくれ、広大な基地の存在に起因する、このように考えられておりますが、大臣はどうですか。

島尻国務大臣 沖縄の子供の貧困がどこに起因するのかということに関しては、さまざまな意見があるということは承知をしております。

 沖縄の子供の貧困の原因について一概に申し上げることは困難であるというふうに思っておりますけれども、沖縄では、雇用環境あるいは家庭環境などの面で、他の地域と比べて厳しい状況にあることが関係しているものだというふうに考えています。

赤嶺委員 さまざまな議論があるんですか、沖縄の貧困の要因について。その要因についての認識、それは沖縄の地域社会が背負ってきた歴史と無関係ではないし、広大な基地の存在と無関係ではないと思いますが、大臣はそういう認識に立たれないんですか。

島尻国務大臣 ですから、さまざまな要因があるというふうに考えております。その中で、今委員もお話をなさった、いろいろな調査によってデータが今明らかになったところでございます。

 その背景にあるということで、例えば、一人当たりの県民所得が全国最下位であること、あるいは、非正規の職員、従業員率が全国一位であること、それから、所得水準が低い傾向にある母子世帯の出現率が全国一位であること、あるいは、就労が難しい傾向にある若年出産率が全国一位であるといった状況にあるというふうに承知をしております。

赤嶺委員 私が聞いているのは、そういう状況は調査で数字も出てもうわかっているんですよ。その要因、原因について認識を聞いたわけです。

 さまざまなということがありますが、沖縄の背負ってきたあの戦争、戦後の異民族支配、そして今なお広大な基地に囲まれている、これが県民の貧しさの要因になっている、そういうぐあいにお考えにならないですか。さまざまなというのは、それ以外に何がありますか。

島尻国務大臣 それこそ、県内にはいろいろな意見があり、いろいろな要因があるということは、今のデータに基づいて明らかだと思っております。

 その中で、私といたしましては、これまで、沖縄の振興を図る中で、委員もよく御存じだと思いますけれども、それこそ、基地なのか経済なのかといった中で、抜け落ちた施策はあるんだと思います。その中で、先ほど来の議論の中で、沖縄の振興に関しての取り残された問題を解決する、その取り残されたという中の一つに沖縄の子供の貧困というものを位置づけて、今後この対処に全力を挙げていきたいというふうに私は考えております。

赤嶺委員 大臣の決意を聞いたのではなくて、今、経済か基地か、そういう対立構図がこれまでの沖縄の議論にあったというお話もありました。

 実は、二〇一一年の議論というのは、沖縄振興法の議論に関して、公共事業やインフラ整備もあるけれども、大事なことは、やはり沖縄の地域社会の貧しさをどう克服するかだ、そういう議論であったわけです。それは大臣も参議院で参加していたはずですよ。それで、そのときに、山内さんは子供の貧困について先ほど述べたようなことをおっしゃいました。

 当時の仲井真知事も参考人として出てまいりました。当時の仲井真知事は、「一部米軍基地の存在が、沖縄本島のど真ん中に普天間飛行場、嘉手納飛行場その他がございまして、経済発展にはむしろ阻害要因になっているというのが現在の認識」と述べられました。

 基地の存在は沖縄経済発展の阻害要因と仲井真知事も述べられたわけですが、また、同じような認識は二十一世紀ビジョンの中にも書かれているわけですが、大臣はそのようにお考えですか。

島尻国務大臣 沖縄振興のあり方に関しては、それこそ、沖縄の特殊事情、歴史的、社会的そして地域的な事情に鑑みてこれまでなされてきたというふうに認識をしております。

 委員御指摘の二〇一一年の改正のときには、いろいろな参考人の意見も踏まえつつ、初めてあのときに人材育成の一文を入れることができたというふうに考えております。私としては、そういったところを重要なこととしてこれからの沖縄振興をしっかりとやっていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 私は、沖縄の子供の貧困について、内閣府が進める中で違和感を持つ発言があるんです。それは、沖縄では行政が行き届いていないから。これは内閣府の紙にも書いてありますよ。

 行政が行き届いていないから沖縄の貧困が深刻だという認識で取り組んでもらっては困ると思っているんです。やはり、沖縄の貧困というのは、沖縄の抱えている歴史的な背景があるわけです。そういう沖縄が抱えてきた歴史認識が非常に大事な構えになっていくと思うんですね。

 大臣、沖縄市の福祉の母と言われた島マスさんという人を御存じであるかどうかわかりませんが、彼女は、いわば、終戦直後の基地の町、コザの町で福祉の事業を民間人として初めて手がけられた方として、非常に敬意の念を持って、子供の貧困ということが問題になるときには、必ず彼女の名前と結びつけられて沖縄の抱えている問題が議論の対象になります。何も二〇一一年からじゃないんです。沖縄県民がずっと七十年抱えてきた問題なんですよ。

 彼女はいろいろ言っていますけれども、戦争で全てを失った孤児、あるいは売春防止法もなかった当時の沖縄で売春という行為が広がっていく中で、売春は確かに悪い、悪いことは誰でも知っています、売春をやめろということです、しかし、この人たちに本当に自立できるような仕事を与えることが先決です、私の役割ではないかと思っていますとか、あるいは、沖縄の方言でいうチムグリサン、心が痛むという言葉に私は感動します、上から恵むのではなく、自分も腹をすかせていながら、少ない食事の中から分けてやらなければ自分の心が痛むという沖縄の民衆の心のありように感動するのです、私はこの心を大切に受け継ぎ、発展させたいと願っています、このようなことを述べているんです。

 つまり、今、子供の貧困をめぐって沖縄の県民の世論というのが沸き上がっているんですよ。それは、母子家庭が多いとか食事がとれないとか、いろいろなことがあるけれども、県民は、これは自己責任として片づけているわけじゃないんですね。やはり、七十年県民が背負ってきた歴史の中で、みんなの力で子供の貧困を解決しようという県民運動になっていると思いますけれども、その背景に基地や、あるいは戦争や異民族支配があると思うんですが、その認識について、その一点で答えてください。

島尻国務大臣 繰り返しになりますけれども、沖縄の子供の貧困、大変厳しい環境にある子供たちが多いということは事実でございまして、その要因については、それはもうさまざまなものがあると思っております。

 私は、大事なのは、その環境にある子供たちを一刻も早く救っていくこと、それから、沖縄振興の観点からすると、やはり人材育成、教育というところが大変大事なことだというふうに考えておりまして、そういった観点から、今回、沖縄の子供の貧困緊急対策事業というものを立ち上げさせていただき、予算措置をさせていただいたところでございます。

赤嶺委員 聞かれていることに全く答えをいただいておりません。やはり、七十年間県民が背負ってきた歴史という認識の上に立って子供の貧困に取り組む姿勢がなければ、県民と一緒になって子供の貧困が解決に向かうということはあり得ないと思います。私は大臣にその姿勢を強く求めておきたいと思います。

 それで、今、内閣府の進めている緊急対策事業、まず、居場所づくりというのがありました。その居場所づくりも、沖縄の中では経験が蓄積されている場があるんですね。もちろん、法の制定後、子供食堂もふえております。同時に、子どもの貧困法制定以前から、学童保育所だとか、あるいは児童館や児童センター、公民館にこういうことがずっと蓄積されてまいりました。

 ふだんからさまざまな子供が集まってくる児童館や学童クラブなどの既存の施設を活用し、貧困世帯の子供たちもそこに気軽に通えるようにすること、子供たちが自由に出入りでき、設備があり、すぐに活動を始められる場所、それが既存の施設だと思いますが、児童館や公民館、あるいは学童保育所、そういうものも緊急対策事業の中で位置づけられている居場所づくりとして活用できると思いますが、この点はいかがですか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 居場所づくりの関係で、児童館、公民館を活用できるのかという御指摘でございます。

 沖縄子供の貧困緊急対策事業につきましては、市町村において、地域の実情を踏まえて、できるだけ効果的、効率的に実施していただきたいと考えておるところでございます。

 子供の居場所の事業を実施する場所につきましても、児童館や公民館など、既存の公共施設を利用して実施することを可能としているところでございます。実際、一部の市町村におきましては、児童館や公民館などの活用を考えているところがあるというふうに承知しておるところでございます。

赤嶺委員 もう一つは支援員の問題なんですが、私も、いろいろ自治体を回って意見を担当者から聞いてみました。一番心配しているのは、まず支援員の確保がなかなかやりにくいと。

 支援員を実際に確保できて事業がスタートしているのは、四月からスタートしたというのは那覇市ぐらいだと思いますが、そのほかの自治体にもありますでしょうか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の支援員の配置の現在の取り組み状況でございますけれども、現時点で網羅的に具体的な配置状況を私ども把握しているわけではございませんけれども、実は、沖縄子供の貧困緊急対策事業につきまして、市町村からの交付申請に基づきまして、四月から六月の間に事業を開始する事業分につきまして、補助金の交付決定を四月二十二日に行ったところでございます。

 市町村からいただいている内容によりますと、支援員につきましては、四―六月中に二十七市町村におきまして計百十二名を配置する予定であると聞いております。

 先ほど言いましたように、全体的な情報は持っておりませんけれども、先ほど委員から御指摘のありましたように、那覇市におきましては四月一日から支援員二十三名を採用しているような話も聞いておりますし、また、沖縄市におきましても四月一日から六名の採用といったような動きが既に出ております。

 いずれにしましても、四―六月中におきまして、百十二名の配置に向けて、これから努力されている、鋭意力を入れているというふうに聞いております。

 以上でございます。

赤嶺委員 那覇市は、いわば生活困窮者自立支援法を活用して三年前からモデル事業をやってきたんですね。これも十分の十の補助金が国からあって、それで経験が蓄積されているわけです。

 それ以外の市町村は、那覇市や沖縄市、都会はいいですよ、しかし、離島も含めて町村はやはり支援員の確保が大変困難だ、都会でさえもそれが非正規の身分であれば長続きしない、この子供の貧困対策事業は長続きしなきゃ解決しないんだ、二年や三年のモデル事業で解決できるわけがないということで、支援員の正規雇用と支援員の確保についていろいろ市町村から意見が上がっておりますが、この点はどのように考えて取り組んでいきますか。

藤本政府参考人 お答えいたします。

 支援員の確保につきましては、市町村でいろいろな努力をされているということでございます。

 支援員の資格につきまして、こういう資格を持っていないとなれないというふうな規定は設けておりませんで、例えば、できるだけ、教員で経験がある方、あるいは福祉とかそういった分野で経験がある方がなっていただければ望ましいと考えておりまして、そういう方をできるだけ採用するように市町村の方が努力されていると聞いています。

 仮にそういう経験がなくても、一定の市町村の判断で採用されて、私どもの方としましては、そういう支援員の活動に資するように研修に力を入れてやっていただいて、支援員の資質の向上に資するような努力も、あわせてこの事業の中で進めていくようにさせていただいておるところでございます。

 また、先ほど委員の方から、支援員の市町村の正規職員という観点からの御指摘がございました。

 子供の貧困対策支援員の配置につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、沖縄における子供の貧困が全国と比較して特に深刻な状況であるという状況に緊急に対応するために、これまでの市町村の取り組みで十分対応がし切れていなかったところを、沖縄の事情を踏まえて、モデル的あるいは集中的に行うこととしている補助事業でございます。

 この取り組みは、貧困の中にある子供を支援措置に実際につなげていくということを目的にしておりまして、この補助金自身を直接正規の市町村の職員の人件費に充てることはできない仕組みになっているということでございます。

赤嶺委員 本当に支援員の正規雇用というところに踏み込んでいかなければ、支援員として子供たちに寄り添って、しかも、学力も向上させようとか、いろいろ役割を持っているわけですから、困難だと思うんです。そこはこれから検討していただきたいと思うんです。

 もう一つ。沖縄県は、法律に基づく推進計画をつくり、そして三十億円を拠出して沖縄県子どもの貧困対策推進基金という事業を立ち上げました。その基金を活用するに当たって、沖縄県が各市町村からいろいろ要望を聞いているんですが、その要望の中で、市町村との懇談会で一番出されたのが、就学援助に対する要望と、その拡大に対する財政負担の増大への懸念だとおっしゃるんですね。

 就学援助金というのは、これは憲法で保障された子供たちの教育の機会均等の権利を保障するものですが、要保護の世帯の子供は国から国庫補助が出るわけですね。ところが、貧困世帯と言われている準要保護は、今、就学援助金は全部一般財源なんですね。だから、子供の貧困の解決のためには、直接支援する就学援助金制度が一番効果的だと思うんだが、今度の沖縄県のこの基金の実施に当たって、就学援助金の希望者が多くなったら市町村の負担が大変なことになる、こういう懸念も出しているわけです。

 就学援助は、大阪で行われた貧困層の割合が一二%で、就学援助は約三割が利用しています。沖縄の方は、貧困率は二九・九%でしたが、就学援助を受給しているのは一九・六五%です。低いんですね。いわば財政力が弱くて子供の貧困の支援に追いつかない。修学旅行や教材や、あるいは学校給食、こういう補助が出る制度を沖縄では非常に少ない子供しか活用していないというんですね。それを本土並みにするにはどうしたらいいかといって考えたんですよ。大体十億円あれば大阪市並みになるんですね。

 私は、内閣府が居場所と支援員をつくる、これはこれでいいですよ、しかし、沖縄の子ども基金にも基金を入れて、そして地方自治体の困難な財政を支援できるような、貧困対策支援事業ですから、そういうのをやったらどうかなと思いますが、大臣、いかがですか。

藤本政府参考人 お答えします。

 沖縄県の方で基金として積んでいるものについては、今、沖縄県の方で、まさしく委員御指摘のとおり、各市町村から要望を聞いて、どういう使い方をするかというのをいろいろ検討中だと聞いております。

 私ども内閣府の方の緊急対策事業の方で、支援員の配置と居場所づくり、そういう基幹的なところをやるとともに、それと連携するような形で、沖縄県の方で、さらに市町村の意見を踏まえながら、連携してきめ細かな対応をとっていただければありがたいと思っております。

 今おっしゃられました就学援助のことに関しましても、今、県の方で、どういう対応ができるのかできないのか、検討中だと聞いております。

 以上でございます。

赤嶺委員 緊急対策事業といって、沖縄県はまた貧困対策事業をやっている。二本立てなんですよ。だけれども、地方自治体が一番今緊急性を感じているのは就学援助金なんですよ。就学援助金に対するいわば財政補助があれば、本当に要保護、準要保護世帯の子供をカバーできると言っているんですね。これは内閣府として検討すべきじゃないですか。検討したらいかがですか。

島尻国務大臣 今、委員がいろいろな首長さんたちとお話し合いをなさっているということでございますけれども、私も先日、四十一市町村にお声がけをして、三十七の首長さんたちが御出席をいただいて意見交換をさせていただきました。その中で、いろいろな問題意識といいますか課題が浮き彫りになりまして、それをもとに、今回の緊急対策事業という中で支援員をふやしていく、そして居場所をつくっていく、そして、例えば一人親の学び直しに対する援助だとか、それから、一人親を一人でも多く雇用を伸ばしていく、ふやしていくという中で企業の援助が必要だとか、そういった問題が浮き彫りになったところでございます。

 その中で、ほかにもいろいろな課題があるということは認識をしているわけでありますけれども、私といたしましては、今回、平成二十八年度から平成三十三年度までを沖縄の子供の貧困の集中対策期間として位置づけてやっていくということでございまして、御懸念の支援員の雇用が短い期間になるとどうなのかとかいったところには、三十三年度までを期間として設けておりますので、その中で集中してこの問題に対処をしていきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 支援員や居場所というのは、那覇市などで実績を上げてきた蓄積もありますから、それを一概に否定するものじゃないんですが、ただ、考え方として、沖縄振興法の一環でやるわけですよね、今度の子供の貧困対策緊急事業というのは。沖縄振興法の精神というのは、この間の沖縄振興法からは、沖縄県が主体的に判断して実施する、こういうことになっているわけですよ。だけれども、内閣府は、そういう沖縄振興策の予算とは別個に十億円持っています、これは居場所と支援員に使わせていただきますと。

 私は、沖縄県が地方自治体から聞き取りした一覧表がありますよ。大臣も会ってきたと言う。私も会ってきたと言う。大臣が会ったら居場所が大事だと言った、私が会ってきたら就学援助金が大事だと言ったという話じゃないんです。これは、沖縄県が各市町村から意見を聞き取りした中にも就学援助金問題というのが大事な緊急な課題としてあるわけですよ。それに一括交付金を使うようなことはいかがですか。

渡辺委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。

島尻国務大臣 誤解のないように申し上げておきたいんですけれども、これは何も県と国が違うことをばらばらにやっているものではありませんで、これは国と県がしっかりと連携をとってやっていかないと功を奏しないのではないかということはもちろん私も思っております。

 そういう中におきましては、もちろん、ぜひ赤嶺委員の強力な御支援のもとにこういった事業は進めていかなければならないと思っておりますので、どうぞ今後も御指導いただきたいと思っております。

赤嶺委員 事業は一本化して、効率あるもので進めていっていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

渡辺委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十分散会


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