衆議院

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第6号 平成13年12月4日(火曜日)

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平成十三年十二月四日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 永井 英慈君

  理事 田野瀬良太郎君 理事 棚橋 泰文君

   理事 蓮実  進君 理事 林 省之介君

   理事 河村たかし君 理事 肥田美代子君

   理事 石井 啓一君 理事 中井  洽君

      坂本 剛二君    竹本 直一君

      野田 聖子君    松本 和那君

      茂木 敏充君    森  英介君

      山本 明彦君    桑原  豊君

      玄葉光一郎君    小林  守君

      伴野  豊君    牧  義夫君

      青山 二三君    矢島 恒夫君

      大島 令子君

    …………………………………

   参考人

   (三重県知事)      北川 正恭君

   参考人

   (滋賀県知事)      國松 善次君

   参考人

   (奈良県知事)      柿本 善也君

   参考人

   (京都府副知事)     山田 啓二君

   衆議院調査局国会等の移転

   に関する特別調査室長   内野 隆正君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月四日

 辞任         補欠選任

  小林  守君     桑原  豊君

同日

 辞任         補欠選任

  桑原  豊君     小林  守君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国会等の移転に関する件




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     ――――◇―――――

永井委員長 これより会議を開きます。

 国会等の移転に関する件について調査を進めます。

 本日は、参考人として、三重県知事北川正恭君、滋賀県知事國松善次君、奈良県知事柿本善也君、京都府副知事山田啓二君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 なお、議事の順序についてでありますが、まず、北川参考人、國松参考人、柿本参考人、山田参考人の順に、合わせて三十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承をいただきたいと存じます。御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず北川参考人にお願いいたします。

北川参考人 おはようございます。

 本日は、この特別委員会に参考人として御招致をいただきまして、意見を述べる機会を与えていただいてありがとうございます。

 また、七月には三重・畿央の現地調査に、お忙しい中を懇切丁寧に御視察をいただきまして、まことにありがとうございました。

 それでは、私のところの意見を申し述べさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 首都機能移転につきましては、国会決議が行われてから十年以上が経過いたします。この十年は、経済的、政策的には失われた十年とも称されるわけでございますが、失うことがあったり失速させたりすることがあってはならないのがこの首都機能移転論議であるということをまず申し上げたいと思います。

 また、国会を初めとするこれまでの論議は国会等の移転に関する法律をベースに展開されているところであり、法律が要請するところにのっとってその結論を得ることは、法治国家にある者として当然の責務であるということもまた指摘しておきたいと存じます。

 法律がうたうところによれば、移転論議の根幹にかかわる東京問題や中央集権構造などの諸情勢に何らの変化はなく、移転の意義や必要性は現在においても全く失われていないばかりか、閉塞感などはむしろ強まる傾向にあります。このような状況を打ち破り、日本が未来に向け明るい展望を開くためにも、今こそ首都機能移転をなし得る国であることを内外に示すべきであると考えます。それは、日本の改革にかける意気込みを世界に印象づけることにもなりますし、また、改革に伴う日本の形をより明示的にメッセージすることにもなり、世界における日本のポジションを一層鮮明にする意味からも有意義であろうと思います。

 昨今の構造改革をめぐる議論において、焦点がぼやけがちなのは、改革の到達点とその姿を示すことがないままに議論が展開されているところにあるとの指摘がありますが、首都機能移転は日本再生の象徴としても極めてわかりやすいアジェンダになると考えています。

 一方、この問題に関連して、集中と集積は文明の趨勢であり、集積を生かした東京の再生を通じて日本の再生を図るべきだとの意見があります。しかし、文明史的な視点に立てば、歴史上、多くの文明が集中、集積による繁栄の果てに衰退、滅亡しているところであり、栄枯盛衰こそが文明の趨勢であるように思います。また、東京一極集中を言うときに、自然に本社等が東京に集まってきたとの見解も耳にするところですが、これも歴史が教えるところとは明らかに違います。

 あえて申し上げる必要もないことですが、日本が近代化に乗り出した明治以降、国の根幹にかかわる税制を初めとするさまざまな制度や仕組みは、中央、すなわち東京に何もかもが集まるようにつくられてきました。国家総動員体制がそれに拍車をかけ、現在の憲法の発足後も、この集権官治の仕組みは壊れることなく現在に至っています。まさに集中せざるを得ない状況が人為的につくり出されてきた、その結果が東京一極集中にほかなりません。

 日本がとってきたこの集権官治の仕組みは、資源小国日本が限られたリソースを効率的に配分し、近代化や高度成長をなし遂げる上では極めて有効であったわけですが、今やその弊害が目立つところとなっています。端的に言うなら、集中、集積により効率を追求してきたシステムがとんざし、それにかわるべきシステムを模索しているが、今なお見出せないでいるというのが現在の日本が置かれている状況と考えておりますので、集中、集積の向こうに明るい未来や将来展望を描くことは甚だ困難であると言わざるを得ません。

 世界同時不況とも相まって、昨今、悲観的な論議が目立つところですが、日本はGDPが五百兆円の経済規模を持つ国家であるということの積極的な意味合いにもう一度思いをいたし、世界における日本の役割、将来に向けてとるべき針路についての展望を今こそ明らかにすべきであると考えます。その際、考慮すべきは成熟社会日本としてのありよう、形であり、キーワードは分散、自立、多様であろうと考える次第です。

 このような思いのもと、本県としても生活者起点の県政を展開すべくさまざまな改革に取り組んでいるところですが、何よりも、地域が自立的に地域の魅力を創造、発揮できる分権自治の国づくりに向け、持てる資源や英知の限りを尽くすことが求められているのであり、首都機能移転とは、まさにこのような文脈で語られるべき命題であります。首都機能移転論議とは、すぐれて日本のあり方論議にほかなりません。どうかこの国の形について大いに議論をしていただきたいと存じます。

 政治、経済、文化あるいは交通網、情報通信等すべてが東京に一極集中する現状において、東京経由でしか何もできないというような、発展途上国型、あるいはキャッチアップ型とでもいうべきこの国のシステムや、最も成功した社会主義とされる中央集権型のこの国のありようを抜本的に見直し、分権自治の確立を図り、自己決定、自己責任のもと、本当の意味の自己実現が図られるような地域社会を築くことが求められています。

 そのように考えるなら、明治維新や戦後改革にも比肩し得る大議論を通じてぜひ実現を図るべき国家プロジェクトが首都機能移転であると思います。ここにおいて、何よりも日本の構想力が求められているのではないでしょうか。

 また、成熟社会を展望する上では、日本が豊かさのグレードを今後一段と高める必要があり、東京再生のみならず、地方の都市再生も大変重要になってくると考えています。とりわけ巨大都市東京は、冒頭申し上げた文明史的視点でいえば、膨張に次ぐ膨張で非常に危ういところにあり、過集積の解消による以外、真の豊かさを実現することは困難でないかとも思われます。

 首都機能移転により集権官治の仕組みにメスを入れることは、真の東京再生を図る上でも極めて有効かつ効果的と思っておりますので、比較考量においては、東京再生効果という観点からも論議を深めていただきたいと存じます。

 また、財政悪化や財政負担の増大を理由に移転反対を主張される向きがあります。財政状況の悪化は深刻ですが、そうであるからこそ、今国が行うべきは何か、優先すべき事業は何かの徹底した議論が求められているのであり、財政状況の悪化を生んだ構造にメスを入れる意味からも、首都機能移転は、現下の財政状況においてさえ、最優先される国家プロジェクトの一つであると確信する次第であります。

 なお、財政負担の問題や事業に伴う費用対効果の検証などは、移転先の決定や移転規模、事業手法の選択など、事業の具体化に合わせ、国において適宜的確に実施されるべきものと考えており、瑣末な各論にとらわれて大局を見失うことのないよう特にお願いしたいと存じます。

 いずれにいたしましても、首都機能移転を考える上では、何よりも改革とセットで移転は行われる必要があります。それが担保される限り、どこに移転しようとも移転には賛成ですし、移転先には拘泥いたしません。しかし、我が国が今後とるべき針路にふさわしい国のあり方を追求すれば、歴史、文化が重層する三重・畿央をおいてほかにないと思っておりますので、ぜひとも掘り下げた審議をお願い申し上げます。

 以上で私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

永井委員長 どうもありがとうございました。

 次に、國松参考人にお願いいたします。

國松参考人 滋賀県知事の國松でございます。

 こういう機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 限られた時間でございますので、三点に絞って簡潔に申し上げさせていただきたいと思います。ただ、既に十分御議論をいただいておりますので、生意気なことを言うことになるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 まず一点目は、この首都機能移転を考えるときに、今なぜそれを考えなきゃいけないのかという、このことをしっかりみんなが押さえておかないと、どうもこの議論がなかなか時間ばかりたって前へ進まないし、世論も高まらないという感じがいたします。とりわけ、こんなに日本経済が深刻な状況になっていたり、国、地方ともに財政的に苦しいというときだけに、この問題とそういう今日的な状況が一緒に考えられてしまいますと、むしろ大変不幸なことになるのではないかと思うからであります。

 首都機能移転を考えるときに、やはり時代認識というのは極めて大事ではないかとまず私は思います。今の日本の状況からいえば、日本が二十世紀の延長線上でこれからいくのか、新しい世紀をスタートに、これからやはり何百年先も見越しながら、しかも日本が世界で求められているという立場を十分意識した国づくりをするのかしないのか、ここがポイントになるのではないかと思います。したがいまして、この問題は、日本の新しい時代を見据え、むしろ日本の新しい時代をつくるんだ、新しい日本をつくるんだという視点で、首都が今のままでいいのかどうかということを考えるべきではないかと思います。

 日本の過去を振り返ってみますと、それぞれ時代が地名で語られています。それは何かといえば、都をどこに置くかによってその時代をつくり、文化をつくってきたということのあかしではないかと思います。そういう意味では、やはり都、首都をどこに置くかということが次の時代をつくることであることは間違いありません。どんなリーダーが生まれてどんなことを言うよりも、まず首都をどこに置くかによって新しい時代をつくることが明確に可能であり、日本はそうしてきました。そして、過去を振り返ってみますと、四百年ごとに、あたかも西と東に振り子のように都を移すことによって今日の日本をつくってきたというように私は思います。したがって、これは新しい日本をどうデザインするか、こういうことだと思います。

 二点目は、その場合の新首都の、どういう都市像にするかということだと思いますが、四点申し上げたいと思います。

 一つは、今の東京のように、何もかも、政治、経済、文化、学術、あらゆるものを首都に持っていって、そのことによるキャッチアップをするということでは成功しましたが、これからはそうではなくて、首都機能を純化させるという形で首都を考えるということが大事だろう。頭脳部門を経済やその他の部門と分離して、頭脳としての機能をさせるということが大事ではないかというのが一点。

 二点目は、世界で日本の役割が求められているわけですから、日本の顔が明確に見える首都であるべきだと思います。

 三点目は、日本の首都であると同時に、これからは、日本の首都はアジアの首都も意識した首都づくりでなければいけないのではないかと思います。

 四点目は、同時にそれは新しい首都の理想像を描くべきであろうと思いますので、例えば、自然と人間がいかに共生した、環境に配慮した都市であるとか、より人間臭いといいますか、生活しやすいとか、そういうような新しい都市像を具体的に提示する首都というのを考えるべきだと思います。

 大きな三点目で申し上げたいと思いますのは、三重・幾央の魅力でありますが、私は、三点あえて申し上げたいと思います。

 一つは、中部圏あるいは関西圏の接点のような位置にありますだけに、周りに母都市としてさまざまなすばらしい都市機能がネックレスのように配置されているように見えますので、これをうまく生かすことによってコンパクトな新首都をつくることができるというのが一点。

 二点目は、見事なまでに日本の歴史、文化がこの地域にあるという点で、この日本の歴史、文化の宝庫をうまく生かすという形で新しい首都ができる、日本の顔づくりを非常に明確にしやすいというのが二点目です。

 三点目は、位置がいい位置にあるということです。東京から見ると遠いというように見がちでありますが、現在の首都からどうだというのではなくて、日本の将来にとってどうなのか、アジアの首都ということも意識して首都をどこに置くべきだということも含めて考えれば、むしろ三重・幾央の位置が全国からもアジアからもいい位置にあるということと、交通手段もあらゆる交通手段がフルに生かせるという意味で、むしろ非常に適地ではないかと思います。鉄道、道路、航空その他も含めて、見事に交通位置がすばらしい、こう思うわけであります。

 ちょっと生意気な言い方になったかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。(拍手)

永井委員長 ありがとうございました。

 次に、柿本参考人にお願いいたします。

柿本参考人 柿本でございます。

 まず、こういう発言の機会を与えていただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。

 時間の都合もありますので、できるだけ重複を避けて、数ポイントお話しいたしたいと思いますが、その前に、お手元に恐らく「日本再生のシナリオ」というパンフレットが届いているのではないかと思います。きょう、三重県の北川知事初め発言する要旨はここに凝縮して記録されておりますので、これもごらんいただきながらお聞きいただければ大変ありがたいと思う次第でございます。

 そういう点からいきますと、一枚めくっていただきますと、実は「国政全般の改革の起爆剤」という表題が一番上に載っておりますが、まず私が申し上げたいのはこの点でございまして、首都機能を移すということの意味をしっかり考えると、今、国政全般、あるいは国と民間との関係、あるいは国と地方との関係、あるいは行政機能の中の関係、そういうものにいろいろな意味で改革が必要とされていると思います。そういうものを促進することになるのではないか、こういうことでございまして、これは今後の論議をお願いしたいという点でございます。

 例えば、首都機能移転といいましても、恐らく東京のあらゆる役所機能、国会も含めて、移るとお考えではないだろうと思います。ある部分を移していくということでありまして、その場合には、やはり政治と官庁組織との関係とかあるいは官と民との関係、あるいは行政機能の中身の分化の問題、そういう点を伴わなければならない。逆に言うと、そういうことを伴うことが改革の促進になる、こういうことでございまして、その要旨はこのパンフレットから御理解いただけるのではないかと思います。

 例えば、我々の関係する地方分権の問題でいえば、これは中央政府と地方のいわゆる役割分担ということ、特にパートナーシップを確立する必要があるわけですが、その中で、やはり中央政府が持っておられる法律をつくる機能とか資源を配分する機能等の大枠の話、これはやはり国がやってもらわにゃいかぬですが、その他のいわゆる実施機能とかあるいは許認可機能とか、こういうのは地方団体とまさに役割分担して、お互いにパートナーシップで相談しながら対等の立場でやる、これが地方分権の本格化の本旨だと思いますが、そういうことからいたしましても、中央政府の機能をやはり二つ以上に分けていく、こういうことが必要だと考えておりまして、その中身を今後よく吟味していただきたいな、こう思う次第でございます。

 もう一つは、この観点から必要なのは、先ほど来から出ていますが、東京に一極集中、あらゆるものが、それは行政や政治だけではなくて経済から報道から娯楽から、いろいろなものが東京に集まり過ぎているということについての問題点ということを、やはりしっかりと腹に据えてかかるべきではないか。

 今のままでいきますと、太陽の黒点ではないですけれども、どんどんあらゆるものを吸い寄せていくという不気味な機能を持っておりまして、そのことが、発展の芽を育てるのじゃなくて、画一化とか、あるいは我々が読む新聞も東京系の新聞ばかりで、支社の記事はほとんどそのままでは載せていただけない。本県の例で言いますと、室生寺の五重塔が壊れたときは全部ニュースに出ましたが、普通のニュースはほとんど出ることはございません。東京でセレクトされる、こういう機能をこのままでいいのか、こういうことを考えると、これに対して何らかの新たなインパクトを与える、そういう一つの手段ではないか、あるいは動機づけではないか、こういうことを申し上げたいと思う次第でございます。

 そういう観点で首都の移転ということを考えた場合、もう一つは首都のありようというか姿ということについて、ちょっとこの際、申し上げておきたいと思います。

 やはり首都の姿は、国から見た東京と、東京を外国から見たイメージと、これは両方とも大切だろうと思います。そういう際に、先ほど来出ましたのでくどいことは申し上げませんが、やはりいろいろな日本の新しい面を見せる、文化、歴史的な深さも、そういうものを含めて見せるような首都のあり方ということは大変貴重な意味合いを持っているのではないか、こう思っている次第でございまして、そういう点も含めて今後の御検討をいただければ大変ありがたいと思います。

 それから、景気との関係その他が議論されていますが、やはり首都機能の移転というのは世紀、少なくとも数十年をかけた課題で、大きなサイクルの課題であるというふうな理解で、決して片方をないがしろにするという意味ではございませんが、それは別の舞台で議論されるべきものであろうと私は考えている次第でございます。

 そういうことで、日本のイメージの面からも、この首都機能の移転ということは、重要な一つの我々の日本という姿の示し方にもなるのではないかと考えている次第でございます。

 以上のような点を御考慮いただきまして御議論いただければ、大変ありがたいと思う次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

永井委員長 ありがとうございました。

 次に、山田参考人にお願いいたします。

山田参考人 京都府の副知事の山田でございます。

 本日は、知事の荒巻がやむを得ない所用のため出席できないことについて、まずおわび申し上げますとともに、知事にかわりまして、私から首都機能移転につきまして、京都府の意見を述べさせていただきたいと存じます。

 本特別委員会におかれましては、永井委員長様を初め委員の皆様方には、七月の現地調査を含め、御熱心な調査、御審議を賜っておりますことに対し、この場をおかりしまして厚くお礼を申し上げます。また本日は、三重・畿央地域の関係府県に意見陳述の機会を賜り、まことにありがとうございます。

 首都機能移転につきましては、国会等移転審議会においても御指摘がございますように、戦後五十有余年を経て重大な転換期にある我が国において、地方分権や規制緩和の推進を初めとした、現在進められている国政全般の諸改革を本格的な軌道に乗せ、明治以来の現行諸制度をその根源に立ち返って見直し、その集大成として移転を論じていくべきであるというふうに考えてございます。

 政府におかれましても、本年六月にいわゆる骨太の方針を出されまして、地方でできることは地方にを基本に、地方の自立、活性化を重点分野の一つに位置づけ、さまざまな改革を進めようとされておりますけれども、これはまさに、これからの国政は、地方のことは地方にお任せいただき、国はその役割をさらに純化させた新しい形をつくることが課題となっていることが指摘されているのだというふうに私は考えております。

 そして、その場合においては、政治、経済、文化の一極集中を廃し、安定成長時代、成熟化する社会に応じ、経済との過度の一体化を避けた、二十一世紀において日本が世界にその文化を誇れるような政治文化都市を構築すべきではないかというふうに考えてございます。

 その点で申し上げますと、三重・畿央地域は、審議会答申におきましても、「長く我が国の伝統文化の創造と継承に中心的役割を担ってきた」とお認めいただいているところでございまして、京都、奈良、近江、伊勢など、我が国固有の歴史、文化を創造、継承してきた地域を周辺に有するとともに、後で述べさせていただきますけれども、関西文化学術研究都市と相まって、新たな日本のアイデンティティーを象徴する都市づくりが可能になるのではないかと考えております。

 また、もう一つ重要な視点といたしましては、今後予測される大規模な地震災害や、このたびのような恐ろしいテロにより政治、行政と経済の中枢が同時に被災するリスクを回避し、国土の均衡ある発展を考える上でも移転は大変大きな意義があるものと考えております。

 首都機能の移転は、一見大きなコストがかかるように思えましても、国家としての安全を考えた場合の保険費用として考えた場合、また均衡ある発展による柔軟でより可能性を秘めた国家づくりを考えれば、決して高くつくものではないというふうに考えております。

 特に、私どもが強く移転をお願いしております三重・畿央地域は、先ほどから知事さん方が述べられましたように、一つは、国土の大体中央に位置しておりまして、東京圏との位置関係において国土の均衡ある発展に寄与するとともに、東京圏に問題が生じた場合でも、比較的その影響を受けることが少ないという利点があるように考えます。

 また、二つ目といたしましては、関西圏と中京圏という東京圏に次ぐ二大経済圏を連結することによりまして、経済の一極集中を既存のインフラを十分に生かして避けることができるため、経済の安全という点からもすぐれた位置にあると考えております。さらに、今後、太平洋岸の第二国土軸の整備が期待されますが、三重・畿央地域は、従来の国土軸とこのような新しい国土軸の中間に位置し、等距離で接することができる地域でございまして、この点でも安全面から大きな利点を有しているというふうに考えております。

 続きまして、京都府地域がどのような貢献ができるかについて、簡単に御説明申し上げます。

 先ほど申しましたように、新しい首都機能を持つ都市のあり方を考えた場合、文化、学術のすぐれた地域と密接な関係を保つべきであると考えますが、三重・畿央地域から西へ約二十キロメートルの京都、奈良、大阪に広がる京阪奈丘陵におきましては、二十一世紀を担う文化、学術、研究の新しい拠点づくりを目指し関西文化学術研究都市が、産学官の協力のもと、ナショナルプロジェクトとして建設が進められております。

 また、この春閣議決定されました第二次科学技術基本計画におきましても、この関西学術研究都市は、内外に開かれた国際研究開発拠点として位置づけられておりまして、また、都市再生プロジェクトにおきましても、関西圏においてライフサイエンスの総合的な研究開発と起業化を推進する上で重要な拠点として位置づけられております。

 このように関西文化学術研究都市は、東の筑波学園都市と並び、我が国を代表する学術研究都市として、次世代をリードする創造的な学術、研究や新しい文化の発信基地として、首都機能を持つ新都市と呼応することにより、三重・畿央地域を中心とした地域は、日本はもとより、世界へ政治、文化、学術を発信する一大地域となると確信しております。

 また、この学研都市には、現在、国立国会図書館の関西館が、平成十四年秋の開館を目指して建設が進められているところでございまして、関西館は、国会図書館の蓄積する情報資源を東京本館と分散保存し、災害などに備えることとされているほか、IT時代に即応したさまざまな情報集積機能を有しておりまして、国会の政策立案機能をサポートする上で欠かせないインフラが既にこの地域には整備されつつあることに御留意いただきたいというふうに考えております。

 また、京都御苑内では、京都迎賓館が着工される運びとなっておりまして、先ごろ入札が行われたところでございます。これも、我が国の歴史、文化の象徴の一つとも言える京都の地に、多様で緊密な外交、国際交流を展開し、歴史的、文化的側面も含めた幅広い対日理解を醸成していくために建設が進められているものでございます。

 京都迎賓館は、首都機能を持つ都市と一体となりまして、我が国を訪問された海外からの賓客の方々に、日本の歴史や文化に直接触れていただくなど、首都機能に不可欠な外交機能や国際交流機能に大きな役割を果たせるものと考えております。

 このように、京都だけを見ましても、既に首都機能の一端を担うべき国の施設が着々と整備されつつありまして、三重・畿央地域での新しい都市の建設に、これらの機能を十分活用していくことのできる有利な条件を有しているものと考えております。

 以上、三重・畿央地域について京都府の意見を、京都府の特色も含めまして申し述べさせていただきまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

永井委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

永井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 この際、委員各位に一言申し上げます。

 質疑につきましては、理事会の協議に基づき、一回の発言時間は三分程度となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。また、御発言は、挙手の上、委員長の許可を得た後にお願いいたします。御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、挙手をお願いいたします。

坂本委員 各知事さん、御苦労さまでございます。大変いいお話を伺いまして心強く思っております。

 実は、国会移転運動ももう十年が過ぎまして、いよいよ来年には大詰めを迎えるのかな、こう思います。個別に移転地区が決定した後、さらに引き続き、全国的にこの運動の盛り上がりは続けていかなければならぬと思うのですね。その際に、最終候補地から漏れたからといって、四県知事さんの腰が引けるようなことはないのだろうとは思いますが、今後の意気込みについて、お一人ずつお聞かせください。

北川参考人 私どもは三重・畿央が一番いいというふうには思っておりますが、他の二候補地域とも話し合いはしておりまして、まず、東京と比較考量する場合に、一地点に絞られるべきであろう、したがって、それは国会でお決めいただくことでありますから、決まったことについては従うというふうなことでございます。それまではぜひ十分な御議論を尽くしてほしい。そして、先ほどもこの国のかたちということを申し上げましたが、ぜひ御一緒に運動として盛り上げていきたい。しかし、そのことはまさに国会の仕事でございますから、国会の先生方、ぜひ本当によろしくお願い申し上げたい。切に、逆にお願いしておきたいと思います。

國松参考人 先ほども申し上げましたように、今、日本がこの問題を真剣に考えなければいけないことが一番大事なのであって、その結論からすると当然三重・畿央になるのだろうと思いますが、それにならなくても、もっと大事なことは、新しい日本をみんなでしっかりとつくっていかなければいけない、しかも、グローバル化の時代における日本の活力、日本の将来ということが一番大事だと思っておりますので、国会の皆さんの御審議の結論に従って、みんなで努力をしたいと思います。

柿本参考人 先ほども申し上げたように、やはり三重・畿央地域が最適の場所だと、これは四県共通でございますが、我々は思っております。

 ただ、もともと、こういう首都機能を移転することに対する期待なりねらいは、先ほど申し上げましたように、一極集中の是正であるとか、地方分権の実質化であるとか、こういうことに大いに期待を寄せているわけですから、よそに行っていいということではございませんが、決まりましたら、やはりそのねらいになるような、中身も含めて、それこそ国会でいろいろな企画をしていただいて、実施していただきたいということで、それについては我々は協力していきたい、こう思っております。

山田参考人 もう今まで知事さん方が述べられましたように、今回の移転の議論は、私も先ほど申し上げましたように、地方と国との役割というものの中で、大きな構造変革を進めていく中で考えていくべきだろうと思っておりますので、その点から申しますと、どこに決まりましょうと、これは地方としてもこれからの日本のあり方を考えていく上で大きな転機だろうと思っておりますので、京都府としましても積極的に応援させていただきたいというふうに考えております。

玄葉委員 参考人の皆様、まことにありがとうございました。

 私も、どこに決まっても国会の移転は行うべきだという立場でございます。特に、お上意識を日本人からなくさなければいけない、それにとって国会の移転はとても有効だ、そういう立場でございます。

 それで、委員長のお話にも、既に東京都との比較考量に入っているということでございますので、石原都知事が何とおっしゃっているかということと関連して少しお尋ねをしたい、お話を伺いたいというふうに思います。

 二つございますが、一つは、先般石原都知事がこの委員会にいらっしゃって、基本的に国会の移転というのは全くナンセンスだということをおっしゃっておられました。東京への集中というのは文明的かつ歴史的趨勢である、そして首都というのは政経不可分でなくてはならない、こういうことをおっしゃっていました。まず一つは、そのことについてどのようにお考えになられるかということでございます。

 私は、歴史的な趨勢、文明の趨勢であれば、過去の遷都をどういうふうに評価されるのかということと、政経不可分というのであれば、中国、アメリカ、あるいは最近のEUの事例はどういうふうにお考えになられるのかということを石原都知事にはお尋ねをしましたけれども、二つの点について、お三方の知事さんで結構でございますが、一言ずついただければと思います。

 もう一つは、国際空港を考えない国会等移転についてはこれも全く意味がない、こういうお話でございましたけれども、この国際空港と新しい移転先との関連をどういうふうにお考えになられているかということについて。

 以上二点について、一言ずつで結構でございますので、お答えいただければというふうに思います。

北川参考人 二十世紀型といいますか、明治維新以来中央集権で坂の上の雲を求めて、見事にこの国をつくり上げてきたのはすごい成果があった、そのように思います。そのときには、やはり基本的には物不足時代だと思いますから、供給側の論理が当然強くなるわけですから、供給をするということで、行政的にいえば、お上がしてあげましょうということになりますし、経済界でいえば、つくってあげましょうということになりますから、製造メーカーが強くなるのは、これは物が不足して需要を満たすということになれば当然だと思います。

 しかし、そのことで、大変な御努力があって、幸いに成熟国家になり物が充足をしてまいりますと、今度は逆に消費者の方が圧倒的に強くなるのは自明の理だ、そのように思います。したがって、今度は消費者が中心になる。民主主義は需要者、ディマンドサイドの方へこたえていかなければいけませんし、エコノミーの場合も、顧客満足をでき得ない企業というのは成り立たないということだと思います。私は、それをデモクラシーととっておりますので、生活者起点ということに当然なってきます。

 二十世紀は結局は供給型の論理ということで、これは政官財が護送船団を組んできたということ。これが五百兆円を超える見事な政治社会、大経済大国をつくったこのときに、まだ政治、行政が管理しようということが閉塞感をもたらしている最大のものだ、そのように考えるところでございますので、まさに政経不可分というのは二十世紀型の負の遺産であろうと私は考えておりますから、先ほど申し上げましたように、当然、分散、自立、多様ということがとても重要な議題になり、そのことに本格的に踏み込まない限りこの国の閉塞感は取れない、そのように思っているところでございます。

 国際空港に関しましては、三重・畿央は、道路が整備されれば関西新空港、中部新国際空港からそれぞれ四十五分内外の時間で来れる。リダンダンシーとして、一方の空港が何かの都合でだめになれば一方の空港が機能するということでは、最高に恵まれた国際空港があり、しかも二つの空港が同時併用できるということは圧倒的な強みではないかな、そのように思います。

國松参考人 いろいろな意見があるというのはそれはいいと思うんですが、ただ、お話によれば、政経不可分という考え方で、しかも首都機能移転がナンセンスだとまでおっしゃるとすると、これはやはり今までの成功体験をこれからもずっと引きずっていくという考え方になるのではないかと思うんですが、成功体験に引きずられるようでは、もはや次の時代を生き残れないというのは、これはもう常識なんであって、そういう点からいえば、過去の日本もそうであったように、絶えず新しいものをつくり出すという発想のもとに都を移すことによって新しい時代をつくってきたという日本人の経験法則からいっても、むしろ新しい時代に対しては国家戦略として首都機能をぜひ移転するというのが、これまた常識だと私は思います。

 それから、国際空港との関係でいえば、国際空港が今度名古屋にもできるわけですし、大阪にもあるわけですし、私は滋賀県ですが、滋賀県にも空港をつくろうと思っています。そうなってきますと、まさにこの三重・畿央の隣、もうわずかのところにできるわけですから、空港の問題は全く心配をいただく必要はないんじゃないか、こう思います。

柿本参考人 都市というものは確かに集中してきたという経過があると思います。ただ、際限なく集中していったらいいのかというのが今まさに問われているわけでございまして、そういう観点から、右肩上がりと同じでございまして、何でもともかく発展すればするほどいいということ、それで本当によかったのかな、よいのかな、こういうことが議論になっていると思います。

 それで、政経不可分という話でございますが、私は、東京に限らず、中核的な機能を果たしているところにはある程度そういうことは言えると思います。これは大阪でも京都でも言える話だろうと思います。

 ただ、それを、あくまであらゆるものがそろったもので二十一世紀もいくかというと、お二方もおっしゃいましたが、私は、いろいろな機能が地域的にも分かれて、機能を分化させて分担するという方がより広がりがあると思うんですよね。

 分化して自立していくということをそれぞれの都市あるいは地域に期待するという観点からすると、野方図に東京があらゆる機能を集中していけば効果的だ、効率的だというのは大変短期的な見方であって、さらに世紀が変わったようなスパンで考えると、それ以外の尺度があるのじゃないか。

 それは、今申し上げたようなことで、機能の分化でありますとか、それぞれの都市の特徴をどうやって国内的にも国際的にも発揮していくか、こういう観点がまさに今必要とされているので、それを、東京からあらゆるものを離しちゃいかぬという話ではなくて、これは別に独立するではないかという発想で動かしていいのではないかと思います。

 それから、国際空港につきましては、お二方から申されたとおりでございますので、私からは申し上げません。

竹本委員 お三方の知事さんにちょっと簡単にお聞きをしたいんですが、先ほどの話を聞いておりますと、三重・畿央がなぜいいかという理由の一つに都市の集積があるということを述べておられましたけれども、私はそれを前から言っておる人間の一人でありまして、何もない野っ原にある日突然にローマが一日にしてできるわけがないわけでありまして、都市の温かみ、わい雑さ、そういったことも含めますと、やはりいろいろな候補地の中であえて選ぶとすれば三重・畿央の方がいいのではないかなとは思っておりました。

 ただ、今時点に立って新しい首都を建設するにはどういう意味があるのか。効率だけを考えれば石原知事の言うように東京都がいいんだろうと私は思いますけれども、しかしながら、国のあり方、先ほど閉塞感の打破という言葉が出ておりましたけれども、そういうことを考えるのであれば、やはり私は文化のフロンティアをつくる必要があると思うんです。それをこの新首都建設という一つの方法で実現する方法があるんじゃないかなというふうに思います。

 アメリカの歴史を見ましても、やはり、若者よ西部へ行けというキャッチフレーズのもとに、アメリカの建設が二十世紀初頭からどんどん進んでまいりました。こういう目標があるときは国家は繁栄し栄えるものであります。今の日本はその目標を失っているわけでありまして、新しいところに首都を建設し、そしてそこにいろいろの人知を尽くした新しい文化をつくっていこうという気になりますと、国は改めてまた活力を取り戻すのではないか、そのように思うわけであります。

 ところが、現時点の大変な不況の中、そして十年に及ぶこの国会移転論議の中で、私は、より現実的な方法として、一つは、諸外国にあって日本にないもの、それはやはりアメリカでいえばキャンプ・デービッドのような国際会議場、そういうものがなくて、サミットのたびごとに大警備を投入しなきゃいけない、こういう現実を見ますと、外国の国賓を迎え、あるいは国際的な会議をやる場を首都機能の一部として東京都外に求めるのがいいのではないかというふうに思います。

 いろいろな計画の中では、国会も移転し、その関連施設も移転するという計画になっておりますけれども、現実的な対応としてそういうことをまずやるのがいいのではないかなと私は思っておりますが、三人の知事さんの御意見を簡単にお聞きしたいと思います。

北川参考人 基本的な考え方というのは、まず前段の項は全く賛成でございまして、本当に、国家目標を掲げて、そして夢、ロマン、そういったことに集中できるときに国は右肩に栄えていくといいますか、そういったことはとても重要なことだと思っています。そのロマンが首都機能移転だというふうに私は考えておりまして、そういった大構想力のもとに本当にみんながやっていくんだというようなところが今は見受けられないところに閉塞感があるのではないか、そのことを強く思っております。

 ただ、キャンプ・デービッドのようなことは、一つの発想ではありますけれども、首都機能移転とは全く違うと思います。

 それで、今回のことは、国が法律でお決めいただいたことに対して私どもが頑張っているということをどう見られるかということを本当にお考えをいただかないと、政治不信に陥ることは確実なことではないかなというふうなことを思いますので、現段階で私どもはキャンプ・デービッドは全く考えておりません。

國松参考人 私も北川知事と全く同じなんですが、要は、竹本先生がおっしゃる文化フロンティアという考え方は全く同感です。やはり私たちが今の二十世紀の経験の延長線上で物を考えていたのでは、日本が滅びるというのはちょっとオーバーかもしれませんが、衰退していくことはほぼ間違いないと思います。したがって、新しいものを、しかも、グローバル化の時代における日本の役割を意識して、明確にビジョンをつくって国づくりを開始しないといけない。

 ところが、今や、そういう開始どころか、火の粉を払うのが精いっぱいという感じでございますから、ここはやはり新しいビジョンを持って、しかもそれは、世界に日本が貢献するということを明確に意識して、その上での国づくり、もっと言えば、日本の新しい国づくりであり時代づくりだと思うんですが、そういう意味で、文化フロンティアという考え方は全くすばらしいと思います。そのように、そういうものをきちっと持って考えるべき性質のものだと思います。

 ただ、現実的な対応ということの中でキャンプ・デービッドというお話が出てきたわけですが、対応の仕方は大いに現実的な対応をすればいいことであると思いますが、それが今のようなお話になってしまいますと、ちょっと話が違うんではないか。やはり首都機能移転にどういうスケジュールで現実的な対応をするのかというのは大いに考えるべきだと思いますが、首都機能移転と違う方向に行っちゃうというのは、これは新しい時代をつくる話におおよそならないんじゃないかというように思います。

柿本参考人 お答えいたします。

 私も大同小異でございまして、やはり、先ほど申し上げたように、この首都機能移転は、単に東京のある部分を移すというんじゃなくて、それが持つインパクトといいますか、それが副次的にいろいろな要素に波及する効果も期待しておるし、それを機会にしていろいろな改革も進めていただきたいということを期待しておるわけでございまして、そういう点からすると、首都機能の重要な部分はやはり中身になきゃいかぬというのが基本的な考え方でございます。

 ただ、今のような国際的な場所なり機会を副次的に、あわせてつくるということは、これはいろいろな応用問題として考えてもいいかと思いますが、やはり基本は、この今日的な意味というものを考えると、ちょっと私も違うのではないかと考えております。

矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。

 参考人の皆さん方には、貴重な御意見、ありがとうございました。

 さて、御案内のとおり、当委員会では、社会経済情勢の問題やあるいは国民の合意形成の問題、東京都との比較考量、これを三本柱といたしまして候補地を一つに絞る方向で論議が進められているわけです。本日も、そのことの一環として御足労いただいたわけでございます。

 考えてみますに、十年前を振り返ってみますと、あの当時は国民的な議論も、賛成、反対それぞれありますけれども、比較的活発であったわけです。日本共産党は、その間一貫して反対してまいりました。その理由は、時間の関係で省略いたします。

 ところが、今日、国民的な議論というのは極めて低調だということは、やはり認めざるを得ない状況だろうと思います。その理由、なぜそうなっているかという理由については、いろいろな考え方があろうかと思います。しかし、この国民的合意というのは、国会の仕事であります。私たち、そのことのためのいろいろなことをやっているわけですけれども。

 そこで、お聞きしたい点は、県民の合意形成、こういう点で二つ聞きたいんです。

 一つは、県民対象の世論調査などをされたことがあるかということと、もしされた場合に、賛否の状況というのはどんな状況だったか。また、賛成、反対の内容で、主なものが挙げていただければ挙げていただきたい。

 二つ目の問題は、国民的合意形成。先ほど国の仕事だ、こういうことで申し上げましたけれども、このことについて何か御意見がありましたらお聞かせいただきたい。

 以上二点についてお願いいたします。

北川参考人 まず、県民の声を聞いたかということですが、聞かせていただきました。

 それで、まず、これは平成十一年の三月のことでございますが、二十以上の男女一万人を対象にして、お答えをいただいたのが四千九十五人でございます。それで、首都機能移転に対する認知度、九〇・一%。首都機能が移転することに六九・六%が賛成。三重・畿央地域への首都機能移転を六四・八%の方が好ましいということで回答が来ております。そういったことは、我々は、さまざまなフォーラムとかあるいはパンフレット等で議論を進めておりますので、議論としてはかなり高まってきているというふうに考えさせていただいております。

 もう一つは、合意形成の話でございますが、いささか失礼になるかわかりませんが、やはり、本当の意味の国家戦略とかこの国の形とかいうことが、ややもすると議論がされてこなかったのではないかということを大変心配しておりまして、私どもは、まさに国民に夢を持たせ、ロマンを持たせ、そして、こういう国家像を二十一世紀には築き上げ、それが数世紀にわたって続いていくんだというようなテーマを、ぜひ御議論を賜れるようになってくればいいと思うんですね。

 そうしますと、私も国会議員を経験しておりますのでよくわかりますが、やはり忙し過ぎる点があると思うんですね。そのことはどういうことかというと、やはり中央集権でありますと、さまざまな点において、中央と地方との関係において利害調整をしたり予算獲得をしたりというようなことになれば、やはり分権自治だと思います。そして、そのことによって国の権能と地方の、県、市町村の権能を明確に分けて、そして責任と権限を分けていかないといけないのではないか。

 そういったことも含めまして、大変口幅ったい言い方でございまして失礼でございますけれども、まさにこの国の形なんかを御議論いただくことがこの国の形を大きく変えていくということになろう、私はそう思います。

 したがって、二十世紀につくり上げてきた国家像というのは見事なものがあって、坂の上の雲を達成しつつあったと思います。さあ、今度はもう一回、次なる坂の上の雲は何ぞやということになったときに、例えば東京の首都というのは二十世紀型で、政官財が護送船団で見事に機能し得たと思いますが、果たしてパリの魅力、ウィーンの魅力、ローマの魅力、これが本当にあるかどうかというようなことは成熟した社会でこれから考えていくべき課題だとするならば、新都を構想しまして、インテリジェントシティーであるとか環境にふさわしい、本当に世界に情報が発信できるような、そういった技術の粋を世界から集め、それが新しいビジネスモデルになって、日本が世界の牽引車になっていくというような壮大な構想力こそ、私は国会でぜひ御議論をいただきたいなと強くお願いをするところでございます。

國松参考人 私ども、県民の意識調査をやっております。これは平成十年でございましたが、それによりますと、首都機能移転への関心度を聞いてみましたら、七四・三%が関心があるということでして、大いに関心があるというのが二五%ほど、多少関心があるのが五〇%でございましたが、首都機能の移転が望ましいかどうかという問いに対しては、望ましいと端的に答えられたのが三一、それから、どちらかといえば望ましいというのが二六、一概に言えないというのが二五で、望ましくないとかどちらかといえば望ましくないと言われた方は八・八%、こういうことでした。

 そのように、一定、意識調査もやっておりますし、またこの議論を深めるために、シンポジウムやいろいろなこと、あるいは県の広報紙でいろいろな議論の材料を提供しております。

 それから、この議論を高めるためにどうしたらいいかという点の感じですが、これはやはり私は、国会のこうした議論も、例えばこういう議論もここでやるだけじゃなくて、北海道でやるとか九州でやるとか四国でやるとかいうように、地方でやっていただいて議論をすることによって、みんなが見えてくるんだろうと思いますね。委員会としても現地を視察いただいたりしているわけですが、現地の方はまだ世論が当然高まっているわけですから、むしろそれ以外の地域に議論を高めていくということでしょうから、大いにそういうことはしかけていただくというのはいいんじゃないかという点があります。

 もう一点は、今の時期、十年前に比べて低調だというお話がございましたが、それはやはり今日の経済情勢が大変厳しいということに尽きるんだろうと思うんですが、同時に、こういうものは、そのときそのときの経済情勢で判断していったんでは大変な失敗をしてしまうということになるわけでございますから、いかに冬、寒い北風が吹いていても、まくべき種はきちっとまいておかないと春には芽が出ないという事実があるわけですから、それと同じことだと私は考えます。

柿本参考人 まず、県民のアンケートですが、県独自でやったものはございません。したがって、これについてお答えすることはできません。

 なお、合意形成につきましては、やはりこれは重要な一つの課題であろうかと思いますが、今お二方からも言われたように、どういう形にしたら国民が自発的あるいは積極的に参画できる環境になるか。やはり、こういう言い方をすると誤解が生じるといけませんが、一般の国民というのは、ある種の素材なり状況なりが用意されて、その中で、要するに、それぞれの国民が自分はこの問題についてどう考えるかということを、意見をつくっていただけると思うのですね。何も提供しないままで盛り上がらないと言っても、やはり一般の方は日常のいろいろな活動にお忙しいですから、その人たちから起こらないということでもってこの問題が国民的課題でないということに結びつけるわけにはちょっといかないだろう。やはり、そういう環境、要するに国民がそういうことに参画できる環境をつくる必要があるのではないか。県なんかでは、そういうためにいろいろな機会に広報をやっておりますが、そういうことだろうと思います。

 それから、これは余分なことかもしれませんが、日本の首都が移転したとき、時代も変わりますから単純な比較はできませんが、どういう要素で動いてきたのだろうかということも、やはり一つの参考になるのではないかと思った次第でございます。

 以上でございます。

山田参考人 京都府におきましても、広報紙を通じてPRはしておりますけれども、特に意識調査は行っておりません。

 確かに、京都府におきましても、やはり雇用問題など喫緊の問題の中で、どうしても関心が埋もれがちになるということはございますけれども、これはまさに日本の基本のあり方を考えるものでございますから、そういった問題につきましては、行政を担う者として、府民の間にも粘り強く合意形成について訴えかける必要があろうというふうに考えております。

 以上でございます。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆様、大変天候の悪い中お出かけいただきまして、貴重な御意見ありがとうございました。

 この国会決議がなされましてから十年過ぎました。ずっとその間、この国会移転に関する特別委員会も開かれ、議論もされ、またいろいろなところを視察しているわけでございますけれども、先ほどお話がございましたように、去る十一月の二十一日、石原都知事が参考人としてお見えになりまして、いろいろな意見を発表された中で、この国会移転決議、この決議を、こんなばかな決議をした国会は世界にはない、ばかな決議だ、このようにおっしゃったわけですけれども、石原都知事も国会議員でいらっしゃいました。

 今参考人の北川三重県知事さんも、同じく国会議員で一緒にいろいろとお仕事をしてきたわけでございますけれども、国の最高機関の国会で決めた決議を、ばかな決議だとか世界にこんな決議をしたところはないのだとかいうようなことをおっしゃられましては、私は大変なことだと思うんですね。私は、国会決議というのは大変重いものだと受けとめているわけでございます。

 この決議につきまして、同じく国会議員でいらっしゃった北川知事さんからお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

北川参考人 私ども、国会決議を重く見させていただき、法律事項でございますから、それにのっとって今日まで猛烈に運動をしてきているところでございます。

 したがいまして、このことにつきまして、国会で、筋道を立て、適切な議論をしていただき、そしてこの国の形をお決めいただくということはとても重要なことだ、本当にそう思っているところでございますので、もう間もなくのことでございますから、すばらしい御決定をしていただくことを、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

大島(令)委員 社会民主党・市民連合の大島令子でございます。きょうは、ありがとうございます。

 まず第一点目は、四人の参考人の方に質問したいと思うのです。

 私は、きょう配付されたパンフ以外に、いつも配られているパンフレットをきのう読ませていただきました。「日本創生新都」というパンフレットでございます。

 この中に、「政・官・民の新たな関係を築く」というのがあります。それは、「国政全般の改革を推進します」ということの一環でございますけれども、「政治と経済の中枢を分離することにより、政・官・民に透明度の高い新たな関係が始まり、国・地方におよぶ横断的情報ネットワークが構築されて、真に国民と密着した政策立案が可能になります。」こう書いてあるわけなんです。

 今、政官民の癒着とかいろいろと言われておりますが、東京に政治と経済が集中しまして、政治的にも、国会議員の中まで、いろいろなスキャンダルとか問題も起きてまいりました。

 そういう中で、今想定している町は、人口二十万人規模の町を当初つくっていくということでございますが、なぜ政治と経済を分離して十万人の町をつくると今までのそういう癒着構造がなくなっていくのかという、その理由が、このパンフレットを見てもよくわからないので、代表の方でも結構ですので、ちょっと御説明していただきたいと思います。

 そして二点目は、地域にもたらす経済的効果ということですけれども、建設中の間は小さな公共事業が連続して行われるわけですので、多少その地域にとっては経済効果とか活性化というのはあるとは思うわけなんですね。しかし、国会等の移転というのは、そういう小さな公共事業のとり合いではなく、先般もいろいろな知事さんから、どこに決着しても誘致合戦はしないようにしようということで、すごく崇高な国会移転の理念を聞かせていただいたわけでございます。しかし、町をつくるには、どうしても民間の業者がつくるわけですので、経済効果があれば、自治体に対してもそれなりの税金という形で収入にも入りますし、雇用の創出もできるわけですね。

 そういう観点から、建設途上はそういうものがあるにしましても、例えば国会が移転してきてしまうと、また新たな課題、例えばごみの処理の問題ですとか住環境、二酸化炭素、空気の汚染とか、いろいろなまた違った問題も発生してくると思うのです。そういう意味での問題、経済効果とか活性化というのは、どのように国会移転に対して考えているのか。これは四名の参考人の方に聞きたいと思います。

 三点目は、北川知事だけにお聞きしたいと思うのですが、慎重論の中に、東京一極集中は今後大きな問題にならないということでございます。現在の国、県、市町村で、そういう形で幸せになれるのか、本当に自治のあり方とか産業構造、働き方から、やはり問い直す必要があるのではないかということなんですが、北川知事は、地方分権とか情報公開などで、よく先進的な知事さんということで報道機関でも取り上げられております。最近では、産廃税の導入などは、本当に自分たちの県、自治体は自分たちの意思でつくっていくんだということで、私は高く評価されていると思うのですね。

 その北川知事さんと一緒の、同列の中で、私は長野県の田中知事のことを教えてもらったのですが、やはり田中知事も、就任して一年一カ月の中で、大臣とか国会議員への陳情、これをやめて、なるべく提案型の意見交換に切りかえてきたそうなんですね。また、県と市町村との関係も、長野もうでをやめた。例えばそれは、南北二百キロ長野はあって、北側に県庁があるということなので、これをやめて、御自分みずからが「どこでも知事室」ということで県内の十の地域へ伺って、直接市町村民とか県民とか県の職員の意見を聞いてくる、そういう新しい形でやってきた。

 そしてまた、私は、考え方としても、既存のものを大事にし活用することによって、権限を地方に分け、地方が自立することによれば、もう国会をあえて物理的に移転しなくても私たち日本人は幸せになれるのではないかと考えているわけなんです。この私の意見に関しまして、北川知事にもちょっと御意見を聞かせていただきたいと思います。

 以上です。

北川参考人 最初の項目の政官民が透明度の高いという話と最後の御質問とは、考え方といいますか、少し似通っておりますので、あわせて考え方を申し上げたいと思います。

 世の中がリーズナブルにといいますか、理論、理屈で動くことが最も重要なことであると私も考えておりますが、政治の世界はなかなかそうはいかないものだと思うんです。例えば、第二次世界大戦を経験したからこそ戦後の政治は形成され、国民性も形成されていったというようなことを思いますときに、ショックとかいろいろな大事件とか、そういったことが決定的な要因になる場合が多いと思います。

 理論、理屈だけでは動かずにということが多いと思いますが、そういった中で、例えば形から変わるということは、理論、理屈以上に大きな要素になる場合があるのではないか、そのように考えています。

 例えば徳川幕府の末期に、井伊大老以下、一八五三年にペリーが来航、あの前後から数十年かけまして、徳川の閣僚と言われる人たちが全力を挙げて変えようという努力をされましたが、結果、何ら変わらずに、薩長土肥の若い志士たちが出て、そして京都に政権的な中心が移り、そして初めて明治維新という万機公論に決すべしというようなことが行われたということは、実はそこに、場所の移転、権力の移行が起こったからこそ大きく変わることができたんだ、それは理論、理屈よりは、むしろ形が変わったからだ、そのように私は思うところでございます。

 例えば、簡単な例ですが、カジュアルウエアの日を県庁に設け、夏は環境のサマーエコタイムということで、四県の知事さんや近畿の知事さんなんかと御一緒に三カ月間ほど私どもは、県庁がオール、ネクタイを外し、半そでで来ます。そうしますと、百の理屈よりも、環境適温二十八度だねというようなことが一気に広がるということは、実は形から変わるとても重要な要素ではないか。

 その決定的なことが、権力が集中し、今までの二十世紀までのパラダイムをつくり上げてきたこの地において本当に変えることができるかといえば、答えはノーに近いと思います。それを変えるぐらいの情熱とか馬力とか勇気とか志がこの国に欠如していたのではないか。見事なパラダイムシフトで右肩上がりで動き始めてまいりますと、まさに国家目標が失われて、それの中での利害調整が主な役割になっていったというようなところが今日閉塞感を生んでいるんだと私には思えてならないんです。

 したがいまして、本当の意味で、この国の今までのありよう、形というものを、全部東京を経由しなければ、交通も政治も経済も文化も情報も全部通らなければというこのパラダイムを変えない限りは、なかなか難しいのではないか。あるいは、もう少し言い方をえんきょくにいたしますと、この地域から離れた方がはるかに変わりやすいのではないかということを実はずっと申し上げてきたところでございます。

 そして、政官財が御一緒に護送船団でというのは、もはや五百兆を超えるGDPができ上がったときに、五十兆円内外の国家予算でそれを管理、統制というのは、物理的にももう無理であろうということも思わせていただいているところですから、新しいパラダイムをつくり上げていく。

 例えば、新たに起きる、ごみの問題、住環境の問題、CO2の問題等々、まさに大実験で、こういったことを本当に解決できるんだということは、今の技術をして、あるいは新しい概念、新しい感覚であれば必ずできる、私はこう考えておりまして、そういったことを全世界にアピールすることこそがとても重要なことだ、そのように考えているところでございます。

 長野県の田中知事とは若干いろいろな面で考え方において違うことは、この際申し上げておきたいとは思いますが、私は、物理的に移転しなくてもよいのではないかというのは、そのような理由から、やはりこの際は、移転をする勇気ぐらいは持っていただいて、そして世の中をゼロからつくり直す、過去の延長線上ではなしに、全く新しい価値をつくり出していくというゼロからのスタートということからすれば、移転するべきである、そのように考えているところでございます。

 一極集中は大きな問題にはならないというのが慎重派の御意見だといいますが、集中が集中を呼び、本当に東京で環状線ができると皆さんが思っていらっしゃるかどうか、費用対効果をお考えいただきたいと思います。いわんや首都高速の渋滞を本当に直すことができるかどうか、この密集地域で本当にどれだけの予算、費用がかかるか、大深度という新しい工法はとても重要な要素であろうと思いますが、それの汚れた排気ガス、空気は一体どこへ抜いてくるか、それが、環境の意識が進んだところで果たしてできるかどうか、そういった議論こそを本当に国会でしていただくことこそが国会の役目だ、そして地方のさまざまな問題についてはぜひ地方にお任せをいただきたい、そのように私は思っておりますので、この際、私は、移転をした方が、よりさまざまな点で、新しいパラダイムがつくりやすいし、この国の形を、成熟した社会の中で、あるいは世界がボーダーレスになった中で、日本のアイデンティティーを見事に証明でき、情報発信できる、そういうことになろうと思いますので、移転した方がはるかにいい、そのように考えています。

大島(令)委員 ちょっと私の質問の仕方が悪くて、長野県知事のことを私は引用しただけですので、長野県知事がこう申しておったということではありませんので、お願いいたします。

國松参考人 まず、一点目の、政官民の新たな関係の部分ですが、要は、今の東京、政治、経済、文化、学術、報道、さまざまな部門を集中して持つ首都、キャピタルをつくることによって日本は発展をしてきた、それは見事に成功したと思うんですね。ただし、この成功には、僕は一つの秘訣というか背景があったと思うんです。それは、私たち日本にはモデルがあったからだと思います。

 つまり、日本が最初にモデルにしたのは中国だったと思いますが、中国をモデルにして日本をつくり、今度はヨーロッパをモデルに明治以降近代化を進めました。そして、戦後、アメリカをモデルに日本の新しい国づくりをしてきたと思うんですが、そのように常にモデルがありました。

 しかし、これからはモデルがない時代に日本は入るわけです。私たち日本がモデルをつくらなければいけない時代に入るわけです。そういうときに、何もかも首都機能の中に集中して持つという手法で新しいモデルをみずからつくるということは不可能だと思います。むしろ、頭脳部門は、そういう生活とかいろいろなものから距離を置いて物を見る、社会全体を見るということによって新しい発想ができるんだろうと思います。

 私は滋賀県でございますので、滋賀県を考えるときに、長野県知事さんの例が出て、何か日本で初めてやっておられるように聞こえましたが、私どもは、もう私の先代、先々代からそんなことはずっとやっておることでございまして、私も月に一度は必ず県下どこかへ出かけまして、県民の皆さんと車座になって議論をしながら、改めて県庁を見る、知事の責任を見るということを通して地域を考えることにしています。琵琶湖もそうなんですけれども、琵琶湖の中から陸を見るということによって自然と、人間がどういう生活をしているのかというのが、距離を一歩引いて、距離を置いて物を見ると、物すごくよく見えることがあるんですね。

 例えば、毛利さんが地球は青かったと言うように、地球を飛び出して初めて地球がすばらしいということを発見されたというお話がありますように、やはりこれからの頭脳部門は、東京のような何もかもあるところから一歩引いて、それこそキャンプ・デービッドじゃないですけれども、いい環境で日本の将来を語る、あるいは日本の現実の課題をいろいろ議論するというように持っていく方がいいのではないかと私は思います。

 そういう意味で、このことは、表現はいろいろあるとしましても、今のように何もかもやっていくというキャピタルは、もはや限界が来ているし、それに頼っておったんでは日本そのものがおかしくなる、こういうことだと思いますので、むしろ頭脳部門はそこから離して、しかもその離す場所が、よりこれからの戦略にも合う、日本の役割が果たせる、日本の文化が世界にちゃんとしたものとして貢献できるということも意識して、新しくつくり上げることによってさまざまなものが生まれてくる、このように考えるところです。

 それから二点目の、地域経済効果の話なり活性化の話は、これは地元向けに書いてある話でありまして、こんなことで首都機能の移転の議論がされるというのはおおよそない話でありますから、もっと高い次元で考えていただくということになると思います。

 ただ、お話しのように、新しく都市をつくることによって、地元には当然、経済効果だけではなくて、ごみとかいろいろな問題が出てくるではないかというお話、それはもっともな話なんですが、それはすべて、私たち、今までの経験で、こうした方がいいなということがもうアイデアとして整理できつつあるわけですね。

 だから、新しい都市をつくるときには、そういうことを全部計算して、やはりちゃんとしたゼロエミッションの新しい首都をつくる。言ってみれば、世界で最も進んだエコキャピタルをつくるんだというように持っていけば十分解決できることだと思いますし、そのことについては、私は幾つか提案できることが既にあります。

柿本参考人 まず、政官民の関係ということですが、まず一つは、そういうことに対してインパクトにはなるけれども、すべて一つのことで問題を解決してしまうというのは何事につけても無理な話でございまして、やはり、先ほど北川さんからも話がございましたが、それとは別な見方で、要するに、首都機能を分けることがそういうものに対するきっかけを与える、こういう御理解をいただいて、それですべてが、問題を解決してしまうということには直ちにはならない、それがいろいろな副次効果をもたらして所期の目的を達成するものだと思います。

 それで、同時に、政官財の癒着と言われるようなことが温存されるのは近代性が欠けているんじゃないかという視点も必要ではないかと思います。これだけ日本は進んだ国になってきたわけだし、充実した国になってきましたが、政治も経済もあるいは産業界も、それぞれが自立した活動をもっとしてもいいのではないか。例えば、景気の問題が起こったときに、何が何でも公共事業に頼るとかそういう話ではなくて、やはりそれぞれが持てる力を自立的に発揮するということができるような時代に入ってきたのではないかと思います。

 そういたしますと、そういう点から、いわば、そういうことを前提にした形でいろいろな機能も地域的にも分担していける、そういう国になりつつあるんじゃないか。また、そうでなければ新しい芽も出にくい、こういう点ではなかろうかと考えております。

 それから、首都機能が移転されたときの地域の経済効果は、これはもう國松参考人から言われたとおりでございまして、私も同じ意見でございます。

 ただ、マイナスの効果につきましては、地域では、今後そういうものをつくった場合には、いろいろな形で地域づくりを考えておりますので、それはやはり、あらかじめ一定の構想のもとにつくられた場合は、かなりの配慮が十分できるのではないか。しかし、申されたことから言いますと、もし首都機能を移転しないのであれば、そういういろいろなマイナスの効果がなお一層東京に集まるということにも、大変逆をとるような言い方で恐縮でございますが、そういう東京がいいのだろうかということが、むしろ今問題を提起されているのではないだろうかと思います。

 それから、これはお聞きになったことかどうか知りませんが、やはり我々、自分の、物を考える場所を変えるということは大変大切でございまして、私らはいつも言っておるんですが、ちっぽけな県の中でも、県庁所在地に座って物を考えているだけではだめだということを私は常々職員に申し上げております。それは、過疎地域も控えておりますし、いろいろな都市的でない地域もある、そこに立ってみた、あるいは立ってみたつもりでないと発想できないポイントというのもございます。

 やはり機能分化とあわせてそういう機会をつくっていくということが、いろいろな意味での大きな可能性を生み出していくんじゃないかと思いますので、そういう点だけつけ加えさせていただきたいと思います。

山田参考人 もう知事さん方が述べられましたので、余りつけ加えることはないんですが、やはり行政において透明性、公明性を高めるという意思のもとに政治行政と経済を分離するというシンボル的な行為自身が官民の新たな関係を生むような気がいたします。

 それから、公共事業につきましては、我々申しておりますのは、やはり二眼レフの方が、均衡ある発展に資して、安全で、日本経済全体としても発展するのではないかという観点から申しているわけでございます。

 以上でございます。

林(省)委員 自由民主党の林省之介でございます。きょうは御苦労さまでございます。

 この委員会で既に東京都知事もお招きをし、あるいは他の二候補地の知事さん方にも来ていただきました。私、いろいろ議論を聞いておりまして、まあ難儀なこっちゃなということがまず真っ先でございます。

 やはり、今各知事さん方がおっしゃっていただいていますように、私は大阪なんですが、大阪で、例えば大阪府あるいは大阪市と特に予算要望などでお話をしますと、必ず出てくるのが、もうむちゃむちゃじゃ、当然じゃ、この十年間ぐらいで大阪から大体九千社が東京に本社機能を移してしもうた、商工会議所の会員が約二万五千人減ってしもうたと。そして、現在、大阪はおよそ五千億円の税収減、東京は三千億の自然増。当然なことなんですよね、全部動いちゃうんですから。

 先ほど、柿本知事さんでしたでしょうか、東京はまさにブラックホールだというふうなことをおっしゃいましたが、どんどん人も物も金も吸い込んでいっているというのが東京の現状だろうと私は思います。私も、東京―大阪を行き来するときに、長い間教師をしておりましたから、よく教え子と出くわすわけですね。おまえ何しに行くんじゃと。大阪の会社が全部東京に仕事をとりに来るんですね。東京でないともう仕事がない、全部東京へ仕事をとりに来るんです。今、こんな現状になっているわけです。

 税収が大阪が大きく落ち込むというのもまさにうなずけるような現象が起こっているわけでありまして、大体、江戸時代ぐらいまでは、政治は江戸で経済は上方でと、大阪の人間に私はある意味での誇りがあったような気がいたします。今まさに、大阪の人間は誇りも何もなくなってしもうた。

 そんな状況の中で、例えばホームレスの人たちに、何であんたら、こんなにたくさん大阪にいるんですかということを聞いたことがあります。江戸へ行け、江戸は物も金も人もあるぞ、江戸へ行けと言うんですけれども、いや、こっちの雰囲気がいいんです、この退廃的な、厭世的な雰囲気がいいんですと。今、大阪はそんな状況で見られているんですよ。

 国土の均衡ある発展、この国土の均衡ある発展というのは、何も私は都市基盤整備だけだとは思っておりません。経済も含めてできるだけ均衡ある発展をしていかなきゃいけないと思うわけです。その意味で、首都機能の一部あるいは全部を、どうするかはこれからになるんでしょうけれども、あるところに移転をするということについては賛成でございます。

 ただ、きょういただいた、今回の資料と言った方がいいのかもしれませんが、この中には、いわゆる費用対効果の問題ですとか、あるいは経済波及効果がどうなってくるとか、余りそういう数字が示されておらないような気がいたします。他の候補地の資料には、まあこの数字が果たして本当かなというふうなものはありましたけれども、示されておりました。その辺のところ、もし、これぐらいに考えていますよということがありましたらお聞きしたいのが一点。

 それから、なかなかこういう厳しい状況の中で仮に移転をするとなれば、これはもう国の費用だけで、まさに国家の仕事としてそれでほっておいていいのだろうか。私はいろいろなことを考えるべきではないかと思っております。例えばPFIを活用するとか、あるいは移転先の自治体が、では我々の方で例えば都道府県会館をつくりましょうとか、あるいは都道府県が協力をして、いろいろな、いわゆる必要な施設の一部をつくっていきましょうというようなお考えが各知事さん方におありになるのかどうか。

 この二点についてお伺いをいたします。

北川参考人 私ども、この四府県の知事なんかが寄りまして、これは一世紀、二世紀単位の大きな国家プロジェクトとして考える場合に、ややもすると公共事業的な見られ方をするのは正直嫌だねと、ちょっと基本的な考え方に基づいてさまざまな行動をしてまいりました。そこで、これの経済効果とかいう形は少し控え目にさせていただきましたので、御指摘いただくとおりだと思います。

 さはさりながら、考え方で、例えば東京との比較考量なんかはさせていただいておりまして、東京都がいろいろな試算されたことは、国民的議論を呼ぶことは、それはそれでいいと思いますが、東京を基準にして、例えば面積掛ける土地の値段というようなこととか、そういったことをぜひ御吟味いただきまして、まさに東京という一極集中が集中を生むようなところでのさまざまな高コスト体質が日本じゅうに及ぼしているんだというようなことをぜひ御勘案いただきますれば、これにかかる費用とそれに対する効果という問題は、果てしなく効果の方が大きくなるだろう。

 あるいは、民間のコンサルタントなり、こういったことの御専門の皆さんが試算をされておるところによりますと、総合的に言えば、例えば三百兆円ぐらいの経済効果があるという試算もございます。これは、単に公共事業を回したからというのではなしに、国家改造をし、そして政官財の護送船団を変えてという、そういうことも含まれているわけでございます。したがって、私どもとしては、百年、二百年の大きな国家プロジェクトとしてとらえておりますので、比較的そういうことは書かなかったということ。

 もう一つ、当然、新たな技術的なビジネスモデルをつくり上げることと、つくり方は、PFI方式でございますとかPPPとか、さまざまな方法は、当然それもビジネスモデルの一つとしてつくり上げていかなければいけない最大の課題の一つである、そのように思っております。

國松参考人 費用対効果とか経済的な面のことが、我々の地域の方は資料が十分でないというお話ありましたけれども、もともと私は個人的にこう考えるんですが、第一、首都のイメージを、規模とか内容とかいうことを、その所在地の地方にデザインをさせることがそもそもいかがなものか。

 これは、国の方がこういうものを示すという中で試算されるべきものであって、しかも、その効果は、そんなに地域に大きな差があるとも思えない。あったとしても、それは場所を決めるときの議論の材料にすべき内容なのかどうかという点ですね。経済効果からいえば、一定の、規模をどうするか、どんな内容にするかによって基本的なものがあって、あと、多少その地域の地域性によって増幅される部分があるのかないのかという程度の話ではないかというのが一点。

 もう一点は、やはりこれは、地方が考えるべきものというよりも、国の方が専門家を使って第三者的に考えないと、それぞれ主催者発表の話を聞いて比較考量してもしようがないんじゃないかという感じがいたしますので、余りそのことはどうかなというように思います。

 それから、それぞれの県で、こういう首都をつくるときにどういう提案が具体的に協力としてできるのかという話もわからぬではないですが、これはまた、そんなことで場所を決めはるの、こういう話になりますので、やはり、それはむしろ、第三者的に皆さんの方でというか、国の方で中立公平な立場でお考えいただいてということで、聞かれれば私ども考えないでもないですが、場所を決めることに関してでいえば、そんなことで決めるという話ではないのではないかという気がいたします。ちょっと生意気ですが。

柿本参考人 具体的な数値は知りません。お二方から話されたのは、両方私はそのとおりだと思います。というより、今首都機能移転についていろいろな論議がされていますが、どの程度の機能をどういうぐらいの、要するに、それは、数字に入る前に理念的にイメージとしてある程度のものができ上がってこないと、恐らく数値を示しても仮の数値であろうと思います。

 逆に、今國松さんから言わっしゃったように、それが何か駆け引きの材料になっているようではむしろ本質を失うということで、決してこれ、それを避けているわけではないですが、むしろ、本当の意義から出発した、どういう機能は最低限移さなきゃ意味がないとか、そういう議論は、一番核になる考え方を整理していただくことが、どういう機関がやるかということは別にして、それがやはり一番主力ではないかと思います。

 その結果として、地域なり、これはもう地域だけではなくて、いろいろな交通通信手段、最低限の流通機能、そういうことを考えますと、いろいろな各界の協力は必要であろうと思います。それはまさに、そういうのが固まってくれば、それに従って協力を求めれば、大きな国家的プロジェクトですから当然どの団体も協力するだろう、我々もそれは同じ気持ちになるだろうと思います。

 それから、ちょっと今お聞きしながら思ったのですが、明治維新のとき、東京をつくるときにどういうものを手段にしてつくったんだろうかというのをちょっと調べてみる必要があろうかと考えましたが、私もこれは知識ございませんので、思ったということだけ申し上げておきます。

山田参考人 もう大体出尽くしていると思うのですけれども、強いて申し上げますと、お願いになってしまうかもしれませんけれども、この地域は非常に自然に恵まれた地域でございますので、やはり二十一世紀は環境の時代ということを考えれば、二十一世紀で日本が世界に誇れるような環境と共生した都市づくりができればすばらしいし、またそういったものをお願いしたいなというふうに考えております。

林(省)委員 費用対効果等を聞きましたのは、例えば東京都知事さんは、首都移転したら二十何兆円も要るよとか、いろいろな数字を出してこられるわけですよ。他の地域も皆さんそれぞれ、こうですよ、こんな効果ありますよと出してこられるものですから、あえて聞かせていただいたということでございます。

中井委員 自由党の中井です。

 お忙しいところ、ありがとうございます。また、夏には、視察に参りましたとき、大変な御熱意のもとに視察に御協力をいただきましたことを感謝申し上げます。

 いろいろとお聞かせをいただきましたが、他の二候補とこの畿央地域との違いは、四つの県が御参加でありますが、一体の地域である、他の地区は、岐阜・愛知といいましても山脈で大きく隔てられておるし、福島・栃木も全く文化も含めて違う地域だけれども、この畿央高原は、風習、文化、こんなことを含めて一つの地域である、これが特徴か、こんなふうに思っております。

 この特徴を生かして、皆さん方は、幾つかのクラスターに、分散型の首都機能移転、こういうことで御提言をいただいております。これに対して東京都の石原知事は、この一つのクラスターそのものが千代田区より広いじゃないか、どうしてこういう千代田区というところに固まっている機能をそういう広いところへ分散して、この間の交通網だけでもどうするんだ、こういうことをこの間この委員会においてほえ続けたわけでございます。

 東京都の距離感と私どもの地域での距離感と、全くわかっていらっしゃらないなということを含めて、これについて奈良県の知事さんからひとつ御意見をお聞かせいただきたい、このように思います。

 それから、今、費用の面がいろいろ出ました。これはこれで御議論をいただいたらいいと思うんですが、畿央につきまして、正直言いまして、新幹線網をどうするんだ、つくるのかつくらないのか、ここのところで随分費用が違ってくるんだろう。この新幹線網について、奈良県の知事さんからお聞かせをいただければありがたいと考えております。

 それからもう一つ。先ほど環境の問題が出ましたが、例えば人口十万から二十万の首都機能というものが移転をしたときに、この人たちが生活するにおいて水が要る。この水を、ダムをつくらずに、新たな環境破壊をせずに供給することは可能なのかどうか。あるいはまた、電力においても、他府県で発電所をつくって延々と送電をしてくる、こういうことなしに電力供給というのが十分可能なのかどうか。これらの点を踏まえて、三重・畿央の特徴的なことを北川知事から御説明いただきたいと思います。

 以上です。

柿本参考人 東京の千代田区霞が関を中央官庁のあり方の最終の姿と考えるかどうかにあると思うんですよね。私どもは、田舎者かもしれませんが、新幹線で入ってきますと、品川あたりからこのごろ東京はすごく高層化されてきて、何となくいろいろな感じが起こるんですが、うらやましいなと思うと同時に息が詰まるような思いもするんですよね。

 これは、移転した場合の首都というのはどうあるべきかということを考えた場合、他の国の首都を見た場合、こんな過密なところが政治あるいは行政の中心になっているだろうかというと、私は、そうでないという答えの方が、私は全部回っていませんが、出てくるんじゃないかと思います。やはり、かなり余裕を持って、それこそ、窓の外を眺めたら心が和むような、そういう環境もむしろ本来の高度の判断をする機能の場所としては重要ではないか、こういうことも考える必要があると思うんです。

 それからもう一つは、先ほどからちょっと申し上げておるように、霞が関が全部移ると考えるのかどうか。これは答えが出ていませんので私が勝手に言うわけにいきませんが、少なくとも中枢的な企画立案機能というのは行くべきかと、あるいは国会と一体になるようなものは行くべきだと思いますが、その他の実施的な部門あるいは許認可をやる部門もすべて行くのかどうか、これは一つのまた判断の内容だ。そういうふうに考えると、私は、それだけ環境の問題が備わっているところの方が望ましいということは言えても、コンパクトに、何キロの中におさめにゃいかぬという代物ではむしろないというようなことが感じられます。

 それから、新幹線の問題につきましては、ちょうどこの地域に、中央新幹線ということで、今、リニア新幹線ということで、山梨県で実験が進んでおりますが、これが一つ、この地域をつなぐ大きな国土軸になると思います。ただ、一つは、これがいつの時点ででき上がるかという問題もありますので、あわせて暫定的な幹線網を我々の中では考えておるわけでございまして、そういう暫定と長期対策の両面でこの問題は解決できるのではないか、そのように考えております。

 以上でございます。

北川参考人 一つは、水の問題でございますが、時系列的に、新首都を形成していく最初の十年間ぐらいは、規模にもよりますが、私どもの地域は、ある意味で関西の水がめというか、琵琶湖と、我々供給のもとでございますから、そういった点で、まず、近隣の現在あるダムなど、それで賄えると思います。それで、将来的にふえれば、私ども長良川の水を持っておりますから、これで十分ございます。水の点については全く心配の要らない地域だ、そのように思います。

 もう一方で、電力供給の点につきましては、これは私どもは電力供給県になっておりますので、私どもは心配をいたしておりません。

 したがって、そういったインフラ整備については、私どもは既存の体制が十分ございますし、また、それが最大大きくなれば、それに対する許容量といいますか、それが十分あるということを申し上げておきたいと思います。

蓮実委員 自民党の蓮実でございます。

 きょうは、北川知事さん、國松さん、そして柿本知事さん、それに京都の副知事さん、御苦労さまでございます。

 一昨年の十一年の十二月に審議会が答申を総理のもとに出され、総理から我々国会の方に回ってきてから多分三度目だと思うんですが、本当にありがとうございました。毎度毎度同じような質問でちょっと歯がゆい点があるかと思いますが、御了承をいただきたいと思っております。

 実は私も、平成二年の国会等の移転に関する決議をちょっと今見ておるんですが、

  わが国の現状は、政治、経済、文化等の中枢機能が首都東京へ集中した結果、人口の過密、地価の異常な高騰、良好な生活環境の欠如、災害時における都市機能の麻痺等を生ぜしめるとともに、地域経済の停滞や過疎地域を拡大させるなど、さまざまな問題を発生させている。

  これら国土全般にわたって生じた歪を是正するための基本的対応策として一極集中を排除し、さらに、二十一世紀にふさわしい政治・行政機能を確立するため、国会及び政府機能の移転を行うべきである。

ということで、当時の内閣も全面的に協力をしてやりたいということでこれは決議されたわけです。

 実は、先般、東京都知事の石原さんにこちらへおいでいただいたときに、石原さんはそのときに反対で起立をしなかったというお話をされたんです。私の記憶では、その当時の政府高官の方の話では立っていたというふうに実は聞いているんです。これはまだ今確かめているところなんですが、かなりの政府の高官ですから間違いがないんじゃないかなと思っているんですが。

 そこで、私いろいろ調査しました。

 ここに「二十一世紀への橋―新しい政治の進路―」という小冊子があるんですが、これは「二十一世紀委員会からの報告」ということで、平成六年の四月二十八日、自民党が野党の時代に復権を目指して有志が取りまとめた試案で、これの文責、要するに責任者は石原慎太郎さんなんです。

 その書き出しに、「首都移転と国土開発」と第一番目に書いてあるんですね。それで、その内容を見てみますと、

  今日しきりに首都機能の移転が言われているが、こうした国家的なビッグエベントは社会における文明の画期的な発展の大きな引き金たりうる。

こうなっているんです。

  もっとも、現代の文明がコンピュータに象徴されるコンピュータエイジにある限り機能の集約は文明の運営のための必要条件であるが、しかしもろもろの波及効果を考えて首都そのものを移転しなおすというならば、それはあくまでも、思い切った行政改革による日本の官僚機構の再編成、それによる地方への分権の上での小さな政府の樹立、前述のようにスタッフとラインの完全分離による、小さくても機能的な政府の樹立と並行して行なわれるべきである。

はっきり言っているんです。これは責任ある文書なんですね。

 そうすると、この前こちらに来られたときの知事さんの発言はちょっと脱線しているんじゃないかと思うんですが、私は、恐らく心の底には、これが本当の考えだと思うんです。

 そこでお伺いしたいのは、これ、平成六年でございますから、運輸大臣になったりしていろいろ活躍されておったわけですから、知事さんになると、そういう考え方もまるで変わっちゃうのかどうかということをちょっと三人の知事さんにお伺いしたいんです。

北川参考人 個人差があると思います。

國松参考人 個人の意見と、知事というのは都民なり県民なりを代表する立場がございますので、代表していないときとしているときとでは、当然、代表して仕事をしなきゃいけないという立場はあると思います。

柿本参考人 場面によってニュアンスが変わったりということはあるかとは思いますが、あとは、個人差だという北川参考人の意見が大変うまい表現だと思うので、私も倣っておきます。

蓮実委員 そういう意味で、東京都知事さんも、きちっとした段取りを踏んでくれば、やはりこういう見識のある方ですからある程度理解は得られるのではないか、私はそう思っておるんですが、ひとつ今後とも四県の知事さんの御協力を心からお願いを申し上げたいと思います。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、各参考人の知事さん、副知事さん、お忙しい中御参集いただきまして、また貴重な御意見を賜りましたことを、まずもって御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 それで、ちょっとお聞きしたいのでございますが、「日本再生のシナリオ」というパンフレットをきょう見せていただきました。一番最後のページに「移転の是非は総合的評価による判断が必要」という項がございます。この中にも、いわゆる経済効率性だけをかんがみた費用分析等だけでは非常に危険ですよと。おっしゃるとおりでございまして、多くの分析というのは、効率性を是とした価値観のもとで出てくる数量化あるいは数値化でございます。

 そうした中で、では一方で、総合的評価とは何ぞやということでございますが、私はさまざまな価値観を踏まえた上での大いなる大なただと思っております。場合によっては、感覚的なもの、直観的なもの、哲学、信念なんだと思います。

 そういった意味で、こちらの「日本創生新都」というパンフレットの中で、三重・畿央の資源、特性ということが歴史性を初め幾つか書いてあるわけでございますが、この地区に首都を移転することに対して責任を持って誘致をかんがみていらっしゃるきょうの四方の皆さん方が、今後ここへ日本の首都が来れば百年の日本のここの部分は絶対保証するよというような、もっと言うならば、ほかの地域に比べてここはうちは売りだよというようなことを一言でメッセージを出していただければありがたいかと思います。

北川参考人 そのことは国会が決められることだと思いますが、私どもは過去の集積がございます。文化の集積とか、あるいはさまざまなコンベンションホールを初めとする集積がございます。

 そこで、それのセンターに一応いたしておりますので、私どもとしては、インテリジェントシティーあるいは環境先進都市というものを確実につくり上げることができて、都市というものはアスファルトジャングルであるとか混雑であるとか密集であるとかという、そういったイメージを払拭する、そういった大実験ができる、そう思っております。

國松参考人 おっしゃるように、私も、場所というのは、最後、数字の上で、経済でという話じゃなくて、かなり感性のようなものが大事ではないかと思います。

 前にも参考人に呼ばれたときに言ったことではあるんですが、織田信長がなぜ安土に城を選んだのかということは、もともと愛知県の方が岐阜にも城をつくり、最後、安土につくったわけですけれども、あそこに立ってみると、なるほどなというようにみんな思うわけですが、それはやはり時代を見て何をしようかということを一番真剣に考えたときの感性というのが非常に大事になってくるんじゃないか、そんな感じがします。

 ともあれ、もし三重・畿央になれば、間違いなしに言えることは、日本のこれからの役割というのは、日本の持っている文化、特性を生かして世界にどう貢献できるかということが非常に問われてくると思いますので、そういうことを考えようとすると、この三重・畿央の持っている、あるいはこの近辺の持っている歴史、文化、プラス琵琶湖や山々から学んだ、環境に学ばなければいけない。

 言ってみれば、単なる生き物の一つであるということをアジアの文化はもともと持っていたのに、ヨーロッパの文化を吸収することによっていつの間にか忘れてしまっていたということを今問われているということがありますので、この辺は大いに、日本のこれからの将来を考えるときに、すばらしい首都ができるのではないか、こう思います。

柿本参考人 やはり首都というものに、国内と、特に国外のイメージというのは大切だと思うんですね。

 このごろはイメージが消えたんですが、日本人はエコノミックアニマル、奈良県のような経済的には大した県でないところも、各国からいらっしゃると、経済的にどういう協力していただけますかと今もって聞かれるんですよね。それは大変寂しい思いも一面でするんですよね。その他のことは、奈良県としたら別のものでセールスポイントがあるつもりなんですが、むしろ、どういう経済的な御協力いただけますかということを聞かれる。これが大変寂しいという気がしております。

 そういう点からいうと、やはり首都をつくった場合に、その首都が、特に東京が一世紀以上続いていますので、ビルの林立する東京が即首都であるというイメージが余りにも重なっているんじゃないか。しかし、いろいろな国の首都を見ますと、必ずしもそうではない。そのときに何が重要であるかということで考えますと、やはりイメージじゃないかと思うんですね。

 そうすると、やはりいろいろな意味で、歴史的な集積あるいは本当の生活の集積、環境、そういうものの整った、そういうことから考えると、やはり歴史とか自然環境が周りに整っているというのが、これがおっしゃる売りになるかどうかは知りませんが、大変プラス要素として作用するんじゃないかと私は思います。

山田参考人 京都は、その持っております文化、心、そして学術と集積、すべてを傾注して貢献できると思っております。

河村(た)委員 民主の河村たかしでございます。

 いつも同じことばかり言っておりますけれども、この間もそちらへ伺ったときにお話ししましたが、北川さんが言われた、移転の必要性はさらに高い、時代の閉塞感がある、日本のあり方の論議とかかわらないかぬという議論、まさにそのとおりで、結論を言いますと、私は本当に移転をせないかぬと思うんだけれども、残念ながら、時代は大きく変わって、やはり、はっきり言えば、このくそもうからぬときに何を税金で食っとる連中がやっとるのかというのが、今の大方の大衆の意見だと思いますね。

 時代のあり方をどう認識するか。北川さんは分権自治だと言われたけれども、分権の考え方は、地方分権というのも一つだろうと思うけれども、もう一つは、やはりタックスペイヤーといいますか、頭を下げて稼いどる人たちが立派なので、政府部門の役人と議員というのはもっとへりくだらないかぬというのが二十一世紀の日本の最大の課題だと私は思いますね。叙勲でもそうですけれども、何か知らぬけれども公務員とか議員だけ勲章もらって、とんでもないことですよ、これは。それで、災害でも、やはり議員はもっと危ないところへ住む。そういう思想を持って、やはり国で稼いでいただく人たちを本当のお客さんとして大事にする、そういう国家をつくらないと、経済もだめになるし、子供たちに本当に夢がなくなると私は思いますよ。

 そういう意味で、国会移転法の前文が――今の、森の中に宮殿をつくって、図面を見ると、何か宮殿の横に必ず池があって、池の横に国会議員が歩いとるんですけれども、私はこれはとんでもないと思っとって、これは結局国会が変えないかぬから知事さんに言ってもなんですけれども。私、ちょっと新たな仕組みの法律も考えとるんですが。

 例えば三重県だったら、今の仕組みだったらちょっと遺憾ですけれども、一定の調査会の基準がありますから。だから、例えば木曽岬干拓とか、それから大阪だったら伊丹の空港とか、名古屋でも小牧の飛行場がありますよ。それから、奈良なんか私大好きなところで、この間も橿原市の今井へ行って、一日ずっと見てまいりました。私、歴史的建造物が大好きなもので、本当に好きなところです。

 だから、そういう森の中の宮殿型のものじゃなくて、本当にシンプルというか、単純なシンプルじゃないですよ、もっと国会議員があくせく働く、とにかく日本というのはそういう国なんだ、税金を稼いでくれる人を本当に大事にするんだ、そういう国家像をつくれるように、ひとつ何ぞ提案してもらえぬですか、北川さん。どうですか。

北川参考人 そっくり河村議員にお返しして、国会議員さんの仕事をぜひよろしくお願いをいたしたいと思うのです。

 それで、タックスペイヤーの立場に立つとかいう、謙虚にならなければというのは、そういう意味の、国の、政治のあり方、行政のあり方、それを問うときに、このまま今の権力構造の中心にある東京でできますかということを問うているわけでございます。したがって、そのあり方論については、煮詰めていただくのは結構なことですけれども、移転するかどうかという議論が国会で決められてもう一年を切っている状況の中で、ぜひそちらに集中して御議論をいただき、そしてその中で首都のあり方論はお願いをできればなと、そのように思うところでございます。

 したがって、まさに移転と改革は不即不離のものだ、そういう意味でお願いをしているところでございますので、よろしくお願いいたします。

田野瀬委員 きょうは、四知事さん、どうも本当にありがとうございました。

 いよいよ来年の五月を目指して当委員会もまとめに入っていきたい。過去、約十年間で百二十六回、参考人にして七十五回という大議論を展開してまいりました。その間大変御協力いただき、また何度も国会に来ていただいて、御足労をお願いしたところでございますが、我々としても、いよいよ五月を目指して一定の結論を出していかなければならない、そういう責務を負っておるところでございます。そのことを考えましたときに、本当に我々も胸の痛みを覚えるような、そんな状況でございます。

 今国会でおおむねこういった議論は終えて、来年の通常国会に入りまして一つに絞り込む作業をしていかなければならない、このように考えておるのですが、この委員会としても、その絞り方の方法、手段ですね、年が明けますとこれが一つの大きなテーマになってこようと思うのです。これはもう一〇〇%我々の責任でございますが、もし四人の知事さんに、こういうやり方でこの三つを一つに絞っていただいたらどうかというような御提案あるいは案があれば、そのとおりになるかどうかは別として、参考にさせていただけたらと思いますので、簡単に述べていただけたらと思うのです。なかったらそれで結構でございます。

北川参考人 総合的に高度な御判断が必要だと思いますので、一つをもってこれというのはちょっと言いにくいかなという感じがいたしますので、総合的に、ソフト、ハードの面も含めまして御判断をいただければと、そのように思います。

國松参考人 ぜひ五月には結論を出していただきたいと思うのですが、それだけに時間がありませんので、今から、時間があったときにやったらと思う話はありますけれども、時間がないのでちょっと難しいなと思うのですが、時間があればという点でいえば、一つは、先ほどもちょっと触れましたように、こういう議論をやはり日本列島各地でやることによって、世論を高めるということをしながら議論をするということがあるといいのかなというのが一点。

 もう一点は、比較考量のときに、やはりそれぞれの地域の関係者がこうだと言うよりも、第三者機関、機関というよりも、第三者の専門の方々が、ここの地域だったら同じパターンで考えるときにこういう費用がかかるとかこういう効果が出るとかいうことを横並びで見ていただく調査があると、議論が皆さんも国民もわかりやすいのかな。

 そんな感じはしますが、何はともあれ、もう随分時間をかけていただいたのですから、あとは国会議員の責任において大いに判断をいただければと思います。

柿本参考人 一番肝心の話でございますが、やはりこれは大変高度で、しかも総合的な判断が必要だと思います。これはやはり国会でぜひともしていただきたい。

 その際に、やはり、それぞれの出てきた議論は、それぞれ言っておられる方の立場なり考え方からすると正しいと思うのですね。それを総合化するためにどういう考え方でこれを整理していくか。先ほど、そういう意味で我々は、意義とかねらいとかそういうことを申し上げてきた面もありますが、やはり、首都機能移転をするのは何のためにやるんだろうかということをある程度頭で整理していただきながらアプローチしていただくのかな。

 個々の地域の比較は、恐らく、国会の場に移ります前に、あれは協議会か何か、検討委員会みたいなところでかなり資料ができていると思いますが、ある場合はそれをかなり使えるんじゃないかと思いますので、むしろ国家的な大変高度のプロジェクトの判断を、一つじゃないと思いますが、どういうことを視点にして考えるかということ、考えていただくことかなと思いましたが、国会議員の先生方に口幅ったいことを申し上げるのはこれぐらいにしておきますので、よろしくお願いします。

山田参考人 特に意見はございません。よろしくお願いしますとだけ申し上げておきます。

永井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。

 北川参考人、國松参考人、柿本参考人及び山田参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げる次第でございます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会




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