衆議院

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第2号 平成16年2月27日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年二月二十七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 大野 功統君 理事 北村 直人君

   理事 杉浦 正健君 理事 園田 博之君

   理事 松岡 利勝君 理事 玄葉光一郎君

   理事 筒井 信隆君 理事 細川 律夫君

   理事 谷口 隆義君

      伊吹 文明君    植竹 繁雄君

      大島 理森君    倉田 雅年君

      小泉 龍司君    小杉  隆君

      鈴木 俊一君    滝   実君

      玉沢徳一郎君    中馬 弘毅君

      津島 雄二君    中山 成彬君

      西川 京子君    西銘恒三郎君

      萩野 浩基君    蓮実  進君

      二田 孝治君    井上 和雄君

      池田 元久君    石田 勝之君

      生方 幸夫君    海江田万里君

      河村たかし君    吉良 州司君

      小泉 俊明君    鮫島 宗明君

      首藤 信彦君    達増 拓也君

      中津川博郷君    永田 寿康君

      鉢呂 吉雄君    平岡 秀夫君

      藤井 裕久君    石田 祝稔君

      遠藤 乙彦君    高木 陽介君

      吉井 英勝君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   公述人

   (大阪府立大学経済学部長)  宮本 勝浩君

   公述人

   (千葉大学法経学部教授) 新藤 宗幸君

   公述人

   (一橋大学大学院経済学研究科長)  田近 栄治君

   公述人

   (全国一般労働組合書記長)  田島 恵一君

   内閣府大臣政務官     宮腰 光寛君

   総務大臣政務官      平沢 勝栄君

   総務大臣政務官      松本  純君

   総務大臣政務官      世耕 弘成君

   法務大臣政務官      中野  清君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   経済産業大臣政務官    江田 康幸君

   経済産業大臣政務官    菅  義偉君

   環境大臣政務官      砂田 圭佑君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  町村 信孝君     西銘恒三郎君

  佐々木憲昭君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  西銘恒三郎君     町村 信孝君

  吉井 英勝君     佐々木憲昭君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算、平成十六年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 おはようございます。

 公述人の皆さん、大変お忙しい中にもかかわりませず本委員会に御出席をいただきまして、公述をしていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず宮本公述人、次に新藤公述人、次に田近公述人、次に田島公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、宮本公述人にお願いいたします。

宮本公述人 大阪府立大学の宮本でございます。平成十六年度の予算につきまして、私見を述べさせていただきます。

 基本的には、私はこの予算案に賛成でございます。ただし、若干のコメントをつけさせていただきたいというふうには思っております。

 お話をさせていただく前に、配付させていただきました資料について御説明させていただきます。「平成十六年度予算について」という文章の入ったものが一枚、その後、図と表が三枚、合計四枚、事前に配付させていただいております。

 まず、具体的に内容に入ります前に、全体としてのお話をさせていただきます。

 御承知かと思いますけれども、クレジット・デフォルト・スワップというものがございまして、これが、海外から見た日本の現在の公的債務といいますか、そういうものの評価ということを一部あらわしているかと思われます。このクレジット・デフォルト・スワップ取引といいますのは、国が破綻しましたときにその債務の肩がわりをするという取引でございまして、その国の信用が低下し不安が増加しますと、その取引、クレジット・デフォルト・スワップというのがふえるということでございます。

 二ページの第一表をごらんいただきたいと思います。二〇〇三年の国際決済銀行の十二月の四季報ですけれども、そこに数字が出ておりまして、そこから抜粋をいたしました。

 これは過去四年間のクレジット・デフォルト・スワップの合計の値でございますけれども、日本は実は三番目に評価されております。先ほど申し上げましたように、この取引が多いということは決して喜ばしいことではございません。日本は、ブラジル、メキシコに次ぎまして第三番目。日本の下にフィリピン、南アフリカ、コロンビア、中国、韓国、ポーランド、ベネズエラというふうになっておりまして、日本は第三番目の評価を受けております。この評価が高ければ高いほど、国の不安が増しているということでございます。

 若干数字についてお話しさせていただきますと、二〇〇一年にかなり取引数がふえておりますけれども、これは、二〇〇二年に日本の国債の評価がAAからシングルAに下がる、そういう情報が流れたものですから日本の国債の評価が下がりまして、取引がふえたということでございます。我々日本人としましては、このような低い評価はかなり心外だというふうに思っておりますけれども、海外から見た場合には、このような評価も一面ではなされておるということでございます。

 この表を見ますと、我々思い起こしますのは、二〇〇二年に世界銀行に対する債務が不履行になりましたアルゼンチンがございますけれども、このときのアルゼンチンの公的債務のGDPに対する比率というのは一二〇%でございました。つまり、GDPよりもさらに二〇%多い一二〇%の公的債務だというふうに言われておりました。

 現在、先生方もよく御存じかと思いますけれども、日本の国債、地方債合わせまして、対GDPが一四〇%という数字になっておりますので、そういうふうな数字から見て、日本の公債の評価が非常に低いのではないかというふうに思います。

 私は、現在の日本は、あの当時のアルゼンチンのようなことにはならないというふうに思っております。それは、一つは民間の貯蓄が非常に大きいということと、日本の国債の外国での保有率が非常に低い、三・五%程度でございますので、アルゼンチンのように海外のお金に頼っているというわけではございません。したがって、この数字が高いからといって、日本はアルゼンチンよりも悪いというふうなことには決してならないわけでございますけれども、このままの状態が続きますと、やはり非常に危険な状況に陥るのではないかというふうに思います。

 続きまして、三ページの表をちょっとごらんいただきたいと思います。これは、先進国ばかりの国及び地方の債務残高の対GDP比率の一九九〇年からの推移をあらわしてございます。日本だけがひとり右肩上がりでずっと上昇してきております。

 つまり、日本は、国及び地方の公的債務、これは公債と政府借入金、両方合わせたものだと思いますけれども、この対GDP比率が先進国の中では飛び抜けて高くなってきている。一〇〇%以上を超えておりますのはイタリアと日本だけでございます。イタリアに関しましても、一九九七年程度から右下がりに転じております。以前、カナダが実は一〇〇%を超えたときがございましたけれども、これも現在は一〇〇%を割っております。先進国の中では日本だけが一〇〇%を超えて、なおかつ、かなり高い上昇を示しているということでございます。

 イタリアはどうしてこの数字が若干下がってきたかといいますと、イタリアは財務警察というものを強化いたしまして、脱税の防止それから摘発をかなり厳しくやりました。その結果、債務残高の対GDP比率が下がったということでございます。

 カナダも一九九五年あたりは一〇〇%を超えておるわけでございますけれども、これも現在は非常に下がってきております。これはどうして下がったかといいますと、カナダは、社会保障を初め人件費等の聖域ない削減、経費、歳出の削減を図りました。かなり大変なことをやりましたけれども、その結果、下がってきておるということでございます。

 国債の依存度というものの昭和元年からの表をつくりました。これは二ページの下の方、少し小さい表でございますので見にくいかとは思いますけれども、国債の依存度といいますのがひし形の折れ線グラフでございます。つまり、予算に占める比率がどの程度国債に依存しているかということと、それから、四角のマークがついております折れ線グラフは一般会計(歳出)に占める国債費ということで、この比率が高くなってきますと、国債の利払い償還にたくさんのお金が使われて、歳出の弾力性が失われてきているということでございます。

 ごらんいただきますと、昭和の大恐慌のときにはかなり高い数字が出ておりますけれども、過去、昭和の元年から振り返ってみますと、現在の状況は、国債依存度にしましても一般会計に占める国債費の割合におきましても、日本では歴史上最高のところに来ているというふうなことがおわかりいただけるかと思います。したがいまして、このような状況を続けていきますと、先ほどのアルゼンチンではございませんけれども、非常に厳しい状況になる、そういう可能性があります。

 そうすることを阻止するといいますか回避するためにはどうしたらいいかということでございますけれども、まず、一番最初にやはり歳出の合理化を図っていただきたい。歳出の合理化を可能な限り行って、その次に歳入の工夫をする、つまり、税収の増加を図るということが手順ではないかというふうに思います。

 本年度の予算につきまして少し具体的に内容に入らせていただきますと、今年度の予算では、特別会計に関しまして、かなりシビアなチェックと透明性の確保が行われたというふうに私は評価しております。

 特別会計と一般会計につきましては、四ページをごらんいただきたいと思います。第三図に一般会計と特別会計の推移。これは金額ベースで棒グラフで書いておりますけれども、一般会計の増加というのはそれほど急ではございませんけれども、特別会計の増加というのは非常に急速なものがあります。

 その下、第四図を見ていただきますと、これは、GDPに対しまして一般会計と特別会計がどのぐらいの比率であるかということを折れ線グラフであらわしておりますけれども、平成七年ごろから特別会計の対GDP比率が非常に急速に高まってきております。

 ということは、日本の公債の増加の基本的な原因は、この特別会計の膨張というのが一つの大きな原因ではないかというふうに考えております。したがいまして、今年度の予算で特別会計に大きくメスを入れたということは、かなり評価してもいいのではないかというふうに考えております。

 しかしながら、先生方御存じのように、ことしでも、一般会計が八十二・一兆円に対しまして特別会計が三百八十七・四兆円という、五倍近い特別会計の金額が計上されております。これをさらに、二重計算がございますので、二重計算しているところをカットいたしまして、ネットの純計で計算いたしますと、一般会計が三十五・一兆円、特別会計が二百七・四兆円となります。そうしますと、比率が一対六に上がります。つまり、ネットではかった方が、実際使われているお金のネットの金額ではかった場合にはノミナルよりもなおかつ特別会計の比率は上がる、そういうことでございます。そのような状況になっておりますので、今後我々は、日本の予算それから公債の発行等を考えますときには、この特別会計に一層シビアなチェックを入れるべきではないかというふうに考えております。

 もう一つ、歳出項目につきまして、若干苦言を呈させていただきます。

 新しい歳出項目につきましては、慎重な議論が必要ではないかというふうに考えております。例えば、今年度、児童手当が小学校三年生まで引き上げられました。これは確かに給付を受ける家庭におきましてはありがたいことではございますけれども、小学校三年生まで一カ月一人当たり五千円が給付されますけれども、これをトータルいたしますと九百九十三億円、約一千億円の歳出増加ということになります。

 これは確かに、今申し上げましたように、給付を受ける家庭におきましてはありがたいことであろうかと思いますけれども、この給付が、それではそれによって少子高齢化がストップし、子供がたくさん育ってくるというふうに、その因果関係が明確であるのかどうかということ、この一千億円の歳出増加といいますのはこの制度を続けていく限り何年も継続されていくわけですから、かなり大きな負担になるだろうというふうに考えております。

 もう一つ、問題になっております基礎年金の国庫負担金の割合の二分の一引き上げでございます。これにつきましては、財源があるとかないとかという議論になっておりますけれども、基本的に、年金というのは保険制度でございます。国庫負担金が二分の一に上がるということは税負担になりますので、年金というのは、特に基礎年金は、保険であるのか税金で賄うべきなのかというもう少し突っ込んだ議論が必要ではないかというふうに考えております。

 さらにもう一つ、ODAの問題のお話をさせていただきますと、我々は、予算の歳出につきまして、プラン・ドゥー・シーという三つのポイントが非常に大事かというふうに思っておりますけれども、ODAに関しましては、国内で予算が使われた場合と比べますと、シー、チェックのところが非常に弱いのではないか。したがいまして、この歳出につきましても、非常に重要なチェックといいますかシーといいますか、それが今後必要ではないかというふうに考えております。

 歳入の工夫でございますけれども、いわゆる税を負担する原則としまして租税原則というのがございます。日本の場合、過去、長年にわたって、能力説といいますか、税金を払う能力がある人が払えばいいんじゃないか、そういう能力説が非常に強かったように私は感じております。しかしながら、やはり利益説といいますか、国、地方自治体から公的なサービスを享受している人々はそのサービスに応じてある程度の負担をすべきではないかというふうに考えております。したがいまして、便益と負担の関係の明確化というものが必要ではないか。これを議論していきますと、消費税の引き上げというふうなことも将来視野に入れなければならないのではないかと私は考えております。

 最終的に結論を述べさせていただきますと、平成十六年度の予算は、これまでの習慣とかしがらみという厳しい制約のもとで、歳出項目に関するチェック、それから歳出の削減を図るなどの一定の努力の跡が見られるというふうに思います。特に、塩川前財務大臣が、母屋ではおかゆをすすっているのに離れではすき焼きを食べているというふうに言われましたけれども、これまで歳出の合理化に努めてまいりました一般会計と比べましてとかく不透明だというふうに言われておりました特別会計に大きく切り込んだということは、私は、高く評価していいのではないかというふうに考えております。

 しかし、先ほども一番最初に申し上げましたように、日本の財政状態というのは非常に危機的な状態にありますので、最初に申し上げましたいろいろの厳しい制約、過去の習慣とかしがらみとか、そういうものを今後一層改革する努力が必要ではないかというふうに考えております。

 それと、先ほど申し上げましたように、便益と負担の関係というものをもう少しはっきりして、国民には応分の負担をしていただくこともこれから必要ではないかというふうに考えております。

 私は野球が好きなものですから、野球の話に例えてお話しさせていただきますと、野球では、三番、四番、五番がクリーンアップトリオで、ホームランをよく打つとか長打を打つということで、三番、四番、五番だけが打っておりましても、数試合程度は勝つかもしれませんが、長いシーズンを通して優勝をすることは非常に難しい。つまり、三番、四番、五番だけではなくて、それぞれのメンバーがその与えられた場所において自分の力を発揮するということが必要ではないか。三番、四番、五番が打って、あとは打たなくてもいいというふうなことではそのチームは優勝できないのではないかというふうに考えております。ホームランを打つ力がなくても、バントがうまければバントをする、そして進塁を助ける、ピッチャーで、先発、抑えができなくても、ワンポイントリリーフとかそういうふうなところで与えられた仕事を全うするということをやりまして、メンバー全員が能力に応じた仕事をして初めてそのチームが優勝という美酒を味わうのではないかというふうに考えます。

 国の繁栄についても同じことが言えるのではないかというふうに思っております。私たちの子孫が、この日本に生まれてよかった、日本に住んでよかったと考えられるような国にするためには、現在の私たちの日本国民全体が、享受する公的サービス、それから各人の能力に応じた負担を行い、また自助努力をすることにより、大きなマイナスの遺産を後世に残さないということが必要ではないかというふうに思っております。そのためには、これまでいろいろなところで議論されてまいりました、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランスをとるということを、この際明確な政策目標にして、実現に向けて努力していっていただきたいというふうに思います。私の意見は以上でございます。

 基本的には、平成十六年度予算に賛成でございます。しかし、今後とも一層の改革の努力は必要ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

笹川委員長 どうもありがとうございました。

 次に、新藤公述人にお願いいたします。

新藤公述人 千葉大学の新藤でございます。

 私は、この政府予算、基本的に多々問題が多過ぎる、そういう観点から反対という考えでございます。

 きょうは、時間も限られておりますので、予算全般といいますか、そうではなくて、三位一体の改革を中心にお話をしたい、そのように思っております。用意いたしましたペーパーに沿って、時間も限られておりますので、読み上げさせていただきたいと。済みません、お手元には行っておりません。

 平成十六年度予算、とりわけ一般会計予算を全体として見ますと、既存の財政構造に積極的な改革の手を加えずに歳出削減を図る一方において、国民に負担増を求める図式がいよいよ鮮明になっていると言えます。

 この予算における国債発行額は、本年度を千四百五十億円上回る三十六兆五千九百億円であり、これは過去最高の発行額です。一般会計歳出総額は八十二兆一千百九億円ですから、実に四四・六%が借金ということになります。政府の予測では、二〇〇四年度末の公債発行残高は四百八十三兆円であり、一般会計税収の十二年分に相当します。しかも、国債の償還に充てる借換債は八十四兆四千五百七億円に達しております。

 谷垣財務大臣は、財務省原案の内示後に、国債依存度を本年度と同一の水準に抑えたことをもって、二〇一〇年代の初頭にプライマリーバランスを回復するという政府目標への手がかりを得たと述べられておりますが、それは余りに楽観的と言えるのではないでしょうか。端的に言って、財政は、危機などというレベルを超えて破綻に近いと言ってよいかと思います。

 こうした状況からいかに脱するのか、その方法は当然一つではありません。とはいえ、一つの有力な方法は、地方分権改革を大胆に実施することだと言えます。

 私は、これまで幾たびも著書等において、日本の財政は拡張主義的な財政運営を特徴としていると述べてまいりました。高度経済成長期のように、減税をしてもなお自然増収によって前年度歳入を上回る収入があった時代の財政運営が、経済財政状況のいかんに関係なく、惰性となって続いていると言えます。

 しかも、この拡張主義的財政運営は、制度的に見ると、集権・融合型の国、地方関係に支えられていますし、同時に、集権・融合関係を常に強化するものでした。補助金行政の網の目が実に細かく張りめぐらされてきたのはその一つの典型例であり、知事らが時に語る、もらった補助金よりもらうためにかかった経費の方が多かったという笑えぬ話は、補助金自体の妥当性もさることながら、補助金申請、交付の過程において、中央、地方の双方に多大な経費と時間のロスが生じていることを意味しております。例えるならば、老朽化した水道管から漏水しているようなものでありまして、水道管を取りかえるだけではなくて、その構造を根本から改めることが必要であると言えます。

 この意味で、地方分権改革として三位一体の改革が大胆に実施されるべきことは言うまでもありません。二〇〇〇年四月に施行された地方分権一括法による第一次地方分権改革は、権限、税財源の移管ではなくて、関与の緩和でした。これによって機関委任事務制度が全廃されたことは高く評価しておきたいと思います。しかし、この改革は、政府と民間との関係でいうと、事業認可権限は霞が関が依然として握り続ける、ただし、事業参入の基準や手続を緩和するというのに等しいものでありまして、地方の政府である自治体の自治を強化するには不十分な改革であったと言えます。また、財政改革の観点からも、現状に風穴をあけるものではありませんでした。

 したがって、補助負担金の廃止、それに見合う国税の自治体移譲、一般財源による財政調整とはいうものの、実は、第二補助金ともなっている地方交付税の改革を同時に実施していくことが、第二次地方分権改革として重要性を増していると言えます。

 昨年六月末に閣議決定された骨太の方針第三弾は、この三位一体の改革について、二〇〇四年度から向こう三カ年間で四兆円規模の補助負担金の廃止、そして義務的経費については全額、それ以外は八割相当額を基幹的国税から地方に移譲する、地方交付税については財源保障機能を縮減するとしました。その後、私が申し上げるまでもないことですが、補助負担金の廃止規模は小さ過ぎるとの批判が続出しました。そして、改革派知事連合あるいは梶原全国知事会会長私案、全国市長会などから、五兆円から九兆円規模の一般財源化が求められました。また、十一月の総選挙で民主党は、十八兆円規模の補助負担金の大胆な改革をマニフェストで公約しておりました。ともあれ、小泉政権の継続によって、骨太の方針第三弾に言う三位一体の改革が二〇〇四年度予算において実行に移されることになったわけであります。

 しかし、二〇〇四年度予算の編成過程を振り返ってみますと、補助負担金改革はどたばたの数字合わせの色彩が濃厚であったと言わざるを得ません。もともと骨太の方針第三弾は、御承知のとおり、四兆円規模の補助負担金の廃止を言いつつも、具体的にいかなる補助負担金を廃止するのか、また税源移譲についても基幹的国税と言うにとどまっているわけで、何ら明記してはおりませんでした。首相の一兆円削減の指示に対して各省官僚の抵抗が強まるのは当然と言ってよいわけでございまして、この問題に限らず、政権が強調する内閣主導体制に疑問が提示されても、ある意味でいたし方がないと言うべきではないでしょうか。

 ともあれ、二〇〇四年度予算においては、公共事業関係補助金等四千五百二十七億円、義務教育費国庫負担金の退職手当等二千三百九億円、介護保険事務費交付金などの奨励的補助金二千六百四十三億円、公立保育所運営費負担金千六百六十一億円など、総計で一兆三百億円の補助負担金の廃止が盛り込まれました。しかし、地方が自主性、裁量性を持って事業に取り組めるようにするという政府方針からはいかにもほど遠いと言わざるを得ません。それは、一般財源化される補助負担金の規模が小さいというだけではなくて、補助負担金廃止の一方での地方財源対策を見れば、一層はっきりすると言えます。

 移譲税源については、当初たばこ税の移譲が構想されていましたが、結果的に、四千二百四十九億円の所得譲与税の新設によって所得税から移譲するとされました。この問題については、また後に述べることにいたします。

 加えて、義務教育費国庫負担金の削減額二千三百九億円については、将来の税源移譲までの暫定的措置として、二千三百九億円丸ごと特例交付金で国が面倒を見るとしています。また、公共事業補助金の削減に対応するかのように、市町村の市街地再開発等のまちづくり事業への交付金として、まちづくり交付金千三百三十億円が新設されています。これは、それぞれ自治体側からの負担増の批判にこたえたもののように見ることもできるのですが、私は、転んでもただでは起きない官僚機構の巧みさであるというふうに思っております。

 特例交付金あるいはまちづくり交付金は、中央統制の新たなチャンネルを創出すると言わざるを得ません。政府は、「まちづくり交付金の対象施設は、道路、公園、下水道、市街地再開発、公営住宅等の国土交通省所管施設に限定されず、市町村の自由な提案により追加可能であるほか、国の詳細な事前関与を廃止し、事後評価に重点を移す」としております。しかし、仮にこれが本当であるならば、まさに税源移譲によって自治体の自由度を高めればよいのであって、わざわざまちづくり交付金を新設する必要のないことであります。

 三位一体改革のもう一つの柱である地方交付税については、特別会計分を含む地方配分ベースで一兆一千八百三十二億円減の十六兆八千八百六十一億円となっております。四年連続の減少でありますけれども、交付税の制度あるいはシステムそのものには何ら改革の手は加えられておりません。単に総額の削減を図ったにすぎません。

 ところで、こうした補助負担金の削減、所得譲与税による財源保障、地方交付税の総額抑制が自治体財政にどのような影響を与えているのか、具体例を述べておきたいと思います。

 先生方には地元の方がいらっしゃるかもしれませんが、まず第一に取り上げるのは、人口四千五百五十三人、これはついこの間の国調人口ですが、四千五百五十三人の北海道ニセコ町です。廃止対象となる国庫補助負担金と削減額は次のとおりであります。保育所運営費負担金二千百二十八万一千円、介護保険事務費交付金百八万二千円、児童手当分の児童福祉費委託金十万一千円、児童扶養手当分の児童福祉費委託金が一万一千円、生きがい活動支援通所事業補助金八十八万八千円、療養給付費等事務費負担金十万二千円の総計二千三百五十五万五千円です。これに対して、所得譲与税収入は七百六十一万七千百六十九円です。したがいまして、普通交付税による基準財政需要額算入要素を除くと、税源移譲並びにこの補助負担金廃止に伴うニセコ町の赤字額は千五百九十三万八千円となります。

 もう一つの事例は、同じ国調人口で十万四千百三十五人の岐阜県多治見市です。御存じのとおり、陶器の町とはいいますが、大都市圏におけるベッドタウンとして特徴づけられる、ある意味で日本の典型的都市であります。

 そこでの削減額は次のようになっております。第二種地方特例交付金四百五十九万四千円、児童運営費負担金、これは公立保育所分ですが、九千五百九十一万一千円、介護保険事務費交付金二千二百五十二万七千円、児童手当事務費交付金七百三十七万四千円、生きがい活動支援通所事業補助金三百二十二万四千円、児童扶養手当事務費交付金七十八万二千円、療育給付費負担金八十五万円、公共事業関係六百三万円、総計一億四千百二十九万二千円です。一方、所得譲与税は、交付税収入七五%を算入して一億七千四百万円です。この限りで三千二百七十万八千円の黒字なのですが、実は、公立保育所の児童運営費負担金の県支出金四千七百九十五万五千円が差し引かれますから、差し引き千五百二十四万七千円の赤字となっております。

 このように見てまいりますと、政権は所得譲与税によって廃止される補助負担金の財源移譲を掲げてはいますものの、それは実態を伴っているとは言えません。三位一体の改革は、既に初年度において、地方分権改革による自治体の税財政面における自由度や裁量の強化ではなくて、自治体への負担転嫁の色彩が濃厚であると言ってよいでしょう。

 したがって、多くの自治体は臨時財政対策債、赤字地方債ですが、これを発行限度額ぎりぎりまで発行し、収支のバランスを形式上保つ、そうした二〇〇四年度予算の編成を余儀なくされております。しかし、繰り返すまでもなく、臨時財政対策債は赤字地方債そのものですから、国、地方を通じた借金漬け財政を高じさせるだけのことです。三位一体の改革が、言葉とは裏腹に借金漬け財政を加速させていること、この点にこそ注目しておくべきであると言えます。したがって、二〇〇四年度予算について言うと、補助負担金改革の結果自治体側に赤字が出る状況というのは是正されねばならない、そのように考えております。

 さて、こうした実態を踏まえて、三位一体改革について、少しそのあるべき方向を述べておきたいと思います。

 国の補助負担金といいましても、補助金総覧を見ればわかるように、その性格は一様ではありません。したがって、補助負担金の精査が必要であり、国庫支出金の性格に応じた改革が問われるのは当然です。補助金等の予算額二十二兆円余のうち約七八%が自治体に交付されておりますが、この改革を、まず大きく言えば、義務教育費国庫負担金のような、ナショナルミニマムの保障と国の財政責任の遂行に関係する支出金を厳選して抽出することであると思います。そして、これらの補助金は廃止、一般財源化するよりは、むしろ一括補助金、ブロックグラント化するべきです。つまり、使途を大くくりにして、自治体の政策裁量を大幅に高めるだけではなくて、配分は、中央各省の裁量がきかない社会経済的変数から成る配分公式によるべきであると言えます。

 こうした補助金、国庫支出金以外については、自治体の一般財源化が図られるべきであります。そして、当然のことながら、財の最終消費に応じた税源の再配分が行われるべきですが、税源移譲については、単純に基幹税イコール所得税、法人税と言うべきではないでしょう。なぜならば、自治体は住民生活に密着した地方の政府であって、地方政府の基幹的税制は、税源の偏在が比較的少なく、かつ景気変動にこれまた比較的左右されない税をもって構成されるべきであるからです。一九四九年のシャウプ勧告以降、市町村の中心的税制が固定資産税に置かれてきているのも、こうした理由によるわけであります。

 したがいまして、少し端的に申し上げるならば、現行消費税を完全な付加価値税に改革して、つまり、課税対象の厳選、インボイスの導入、それから課税最低限以下の階層に対する申告による戻し税などの改革を加えて、地方への移譲税源とするべきである、そのように思っております。

 地方交付税については、地方への税源移譲の規模と密接に関係いたしますが、自治体の首長や民主党などが求める大規模な移譲が実現するならば、現行のような垂直的財政調整によって副次的に水平的財政調整を行うシステムはそもそも作動の条件を持たなくなります。しかし、いかに税源の偏在が少なく景気変動に相対的に左右されない地方税制を実現しても、自治体間の財政調整をせねばなりません。したがって、三位一体の改革として追求するべきは、自治体間における水平的財政調整システムであります。

 ただし、直近の問題として言えば、架空の自治体を想定した基準財政需要額の算定方式を改め、第二補助金から脱却すること、並びに、何かといえば合併特例債であり、あるいは地域再生債のような、後々交付税で面倒を見るといった、双方ともに無責任体制を呼び起こすこうした方式を改めることが重要であろう、そのように思っております。

 以上、私の公述とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

笹川委員長 どうもありがとうございました。

 次に、田近公述人にお願いいたします。

田近公述人 ただいま御紹介にあずかりました一橋大学の田近と申します。

 本日は、平成十六年度の予算について申し述べさせていただきたいと思います。基本的には賛成の立場に立ちながら、日ごろ財政学を研究している者として、日本の財政について、根本にある問題は何かということについてお話ししたいと思います。

 お手元に資料を用意させていただきましたので、ほぼそれに沿ってお話しさせていただきます。「日本の財政規律をどのようにして高めることができるか」そうした中で、本年度予算についての評価も加えていきたいと思います。余り時間もありませんので、論点は三つです。

 まず、日本の社会保障、その中でも介護保険にやや的を絞って、何が問題なんだと。具体的に言いますと、日本の社会保険はどれだけ保険なんだというようなことをお話ししたい。

 第二点は、今、前の公述人の方がお触れになりましたけれども、地方財政です。やや立場の違う態度から、どのようにして交付税改革をしていったらいいのか。キャッチフレーズ的に申し上げると、困ったら助けてあげるでは地方も自立ができないという観点から申し述べたい。

 第三点は、歳入の面で、本日は基本的には歳出の面を申し述べようと思いますけれども、歳入の面で一言申し述べるならば、所得税改革がいかに今重要なのかということを、幾つか数字をお示ししながら話したいと思います。

 まず、一ページ、社会保障の面ですけれども、保険というのは何なんだと。いろいろな保険があります。年金、医療保険、介護保険とあります。でも、結局、いろいろなリスクに対して、例えば、長生きして所得がなくなってしまうんじゃないか、健康を損なって稼得能力がなくなるんじゃないか、あるいは高齢になって身体を損ねて日常生活に支障を来す、そういうリスクに対して備えることが保険なわけです。

 その原則は何なのか。原則というのは、保険に加入する人々の間でみんなでリスクをしょうんだ、長生きする人もいれば早く死ぬ人もいる、健康な人もいるし病気の人もいる、みんながそういうリスクを背負うことなんだ、それをみんなで負担し合うことなんだと。

 したがって、ここで負担に見合わない給付を行い続ければ、結局は、財政の破綻を招き、人々を不安にする。そして、負担に見合わない過大な給付を行っていると、人々に保険の乱用を誘発して、財政を悪化させる。結局、そのツケは、現世代であろうと将来世代であろうと、どこかに行ってしまうわけです。その点が、我々は皆理解しているわけですけれども、重要なんだと。

 そして後は、余りページを繰っていただくのもあれなので、四ページをごらんになってください。基本的には図を見ていただきながら話したいと思います。

 では、日本の保険の特色は何なんだと。これは、二〇〇二年度予算ベースで社会保障費を見たわけです。厚生労働省の資料ですけれども、八十二兆円使っている。年金ですと、四十三兆円給付して国庫負担が七兆円。医療が、二十六兆円に対して九兆円。介護は、五兆円に対して三兆円、これは初年度で、制度立ち上げでやや国庫負担が高いと思われますけれども、こうなっている。

 つまり、八十二兆円社会保障している。基本的には、福祉の一部は、あるいは介護保険を除く部分は措置ですけれども、ほかは保険です。ざっくり言って、八十兆円のうち二十兆円近くは、社会保険だというけれども、国が面倒を見ているというわけです。

 それが何なんだということで、介護保険について、具体的に論点を絞っていきたいと思います。

 次のページをごらんになってください。五ページです。これを見ながら御一緒に考えたいんですけれども、介護保険というのは、全部の費用を一〇〇とすると、そのうち一〇%は、利用する人が払う自己負担です。残りの九〇%を給付費といいますけれども、それは半分ずつ公費と保険料で割ろうじゃないかと。公費のうちさらに半分は国だ、残りの半分は都道府県と市町村が半分ずつだと。ただ、この都道府県、市町村の部分は、地方財政措置というか基準財政需要に入っていますから、これは市町村は保障される。

 ちなみに、保険自身は市町村が管理する、保険者です。保険料部分の五〇%のうち、三二%は四十歳から六十五歳の現役サラリーマンが払う。したがって、ある意味で、それぞれの市町村に自動的にお金が入ってくるわけですね。そうすると、一八%は、それぞれの市町村のお年寄り、第一号被保険者、六十五歳以上の人が保険料として払う。

 これをごらんになっていただくと、どういうふうにこの制度が働くんだろう。利用すれば御本人は一〇%だと。そして、第一号被保険者の保険料は、全国平均で大体三千二百円。制度改革されて三千二百円。まあ三千円程度でしょう。そうすると、利用される人は一〇%の負担、そして、第一号被保険者は三千円程度の毎月の保険料の負担。これを管理する保険者の方、市町村は、給付費の一八%を集めるか集めないかがすべてなわけです。そこにまた問題が生じているわけです。

 そうすると、この制度を適用していくとどういうことが起きるんだろう。つまり、全部の費用の一〇%を払ってください、それぞれの介護度で上限はありますけれども払ってください、そして月々三千円払ってください、後は上限までお使いくださいということです。

 その次のページをごらんになっていただきたいと思います。少し急いで資料をつくったもので、出典は厚生労働省の資料です。これは私がつくったものではありません。

 そうすると、介護保険で起きたことは、非常に興味深い、重要なことが起きたわけです。これは、平成十二年、十四年度における給付費がどう変わったか。給付費ですが、先ほど一〇%引いたものです。全体で三〇%伸びたことはわかる。そうすると、施設の方は、大きな額ですけれども、伸びが比較的少ないというのは、ベッド数が限られているからです。居宅の方は伸びた。つまり、施設の方で利用できない部分が、ちょうど火山のマグマが噴出するところを探していくようにして居宅の方に、在宅サービスに流れていった。

 私は、決して利用することがいいとか悪いということではなくて、やはりさっき言ったメカニズムがあって、自宅にベッドを入れても一〇%でいい、そして、訪問介護してもらっても一〇%でいい、その仕組みがだんだん定着してきた。それが思った以上に介護保険を膨らませた。我々も眺めていましたけれども、当初、こんなに早くこの保険が大きくなると思わなかった。ざっくり言うと、医療が三十兆円です。介護保険はもう五兆円の保険に育っているわけです。

 したがって、我々は、いい保険をつくりたい、国民に利用してもらいたい。しかし、やはり保険の原則というのは貫かなければいけないんじゃないのか。それは、基本的には負担に見合った給付なんだということを私は申し上げたいと思います。ただ、生活力に応じた適切な救済も必要なわけです。ここでもし一点だけ申し述べろと言われたら、やはり負担に関しては生涯の視点が大切だ。生きているときに、お年寄りで所得の少ない方もいらっしゃいます。その人たちに負担しろ、それはできないわけですけれども、では、死んだときはどうなんだ。まくら元に年金の使っていない分があるかもしれない。

 だから、みんなが利用するもので、やはりみんなが支えなきゃならないわけですから、死んだときに残っている財産、真っ先に故人が社会に対して支払うべきものは、やはり生きているときに所得がなくて十分払えなかった保険料、それから利用した自己負担部分、それを真っ先に払うべきなんじゃないか、そうすることでみんなが支え合っていくべきだ。

 したがって、具体的な改革案を申し述べれば、とりあえず今やるべきことは、私は、自己負担をふやすことだ、そして、生活力に見合った負担というのを、人々の生涯の視点で負担してもらうんだというようなことだと思います。あわせて、この保険を全国三千の市町村がマネージする、管理するということですけれども、それも可能なんだろうかというようなことで、時間がありませんから、これ以上申し上げられませんけれども、基本的な観点から見直すべきだ、みんなが支え合うものである以上、その仕組みを国民にも訴えてつくっていくべきだと思います。

 続けて、地方財政についてお話ししたいと思います。時間がありませんから、八ページ、図四だけを見ていただきたいと思います。

 日本の地方財政の根本問題は何なのか。私は、財政規律がきいていないことだと思います。図四は、来年度予算の本当の骨格を示したものです。ステップワンということで交付税総額が決まりますけれども、地方歳出総額が八十四・六兆円というふうに計画されるわけです。それに対して、地方税収とか補助金とか地方債が幾らなんだ。それが六十三・五兆円。では、残りの二十一・一兆円は歳入不足になるわけです。歳入不足は何かというと、これが交付税で地方に措置されるわけです。

 幾つか制度改革があって、その歳入不足のうち、地方交付税は十六・九兆円、残りが地方の臨時財政対策債ですけれども、この臨時財政対策債は、基本的には、後年度、一〇〇%地方交付税化されます。したがって、今までこの二十一・一兆円を交付税、交付税と言っていたわけですけれども、地方の臨時財政対策債部分が減って十六・九兆円。ただし、地方のその対策債部分は後年度交付税で措置されますから、実質的には二十一・一兆円が交付税だという理解で正しいと思います。

 そうすると、足りないものは払ってあげる。では、足りないものをどうやって払うんだというのがステップ二です。

 地方交付税に基準財政収入額というのを足したものを基準財政需要額だというわけです。そうすると、この数式を見ていただくと、基準財政需要額から収入額を引くと地方交付税額にぴったり合う、ここにマジックがあるわけです。基準財政需要額は、基準財政需要額から収入額を引くと地方交付税になるようにつくられるということです。それが、私は、日本の地方財政の最も根幹にある問題だと思います。

 つまり、そのじゃんけんのゲームは後出しなわけです。予算が決まった、そしてそれを使うように、基準財政需要額を使うんだ。そうすると、じゃんけんで、終わった後にグーを出したりチョキを出したり、相手がグーならパーを出そうというようなことで、やはりじゃんけんは最初にルールを決めなきゃいけない。

 具体的に、では今年度の予算についてどのような評価があるか。もう少し申し述べさせていただくと、済みません、最後です、十二ページ、図五をごらんになっていただきたいと思います。そのような財政措置をした結果、どうなってきたかということですけれども、八五年を一〇〇としたときに、国の歳出と地方の歳出を比べていただくと、地方が圧倒的に大きくなってきた。これ自身、大変な問題もあります。景気回復の中で、公共投資等を地方が引き受けたというのもあります。ただ、根っこの問題は私の言っているとおりで、結局、じゃんけんの後出しのゲームの結果、歳出が膨らんでいったというわけです。

 そうした中で、どのような改革をしていくべきなのかということの視点を幾つか申し述べたいと思います。

 第一点は、差し伸ばす手は、それぞれの個人に差し伸べるのか、地方に差し伸べるのか。つまり、貧しい人もいる、困った地域もある等々はわかります。ただ、我々は、ソーシャルセキュリティーということで、いろいろなセーフティーネットを張っているわけです。そのときに、社会保障という制度を活用してやっているわけですから、その制度と地方を救済するということは混同されてはいけないだろう。

 それから、具体的な補助金の問題ですけれども、今年度の予算で私が一番興味深く思った点は一括交付金です。義務教育費国庫負担金を総額裁量制度にした、たったそれだけの文章ですけれども、これは、今後の改革において非常に興味あるものだと思います。義務教育費を一括して全部地方の税源で措置するんだという議論もあるかと思いますけれども、重要なことは、義務教育という日本の国民にとって最も基本的なサービスを国がどうやって保障するかだと思います。ただ、それを実際に運営するのは市町村であって、いい教育をしたり特色のある教育をすることは地方がやればいい。

 では、国の責任はないんだろうか。全部お金を地方に税源で上げてしまって、後は知らないよと。その結果、教育にいろいろな差がついても、国は、それは市町村の責任なんだからね、都道府県の責任なんだからねと言えるのかと思います。その意味では、まずやるべきことは、いわゆる補助金を交付金化することだ。そして、義務教育であったならば、総額これだけは義務教育で使ってください、しかしその中身は細かなことは問いません、いい教育をしてください、ただこれだけは使ってくださいねという考え方なんだろうと思います。

 とすると、そのようにきちんと補助金を整理していくと、現在ある基準財政需要額というのはかなり整理されてくると思います。基準財政需要額で膨らんだものを、それを今言った形のひものつかない交付金という形で置きかえていく、そうすると、基準財政需要額というのは減っていきます。先ほど申し上げた交付税の問題から我々はだんだん脱却できるんじゃないか。まさにそこが日本の財政のこれからかなめになるところだと私は思います。

 最後に、歳入について一言申し述べたいと思います。済みません、先ほど最後と申しましたけれども、本当の最後です。十四ページをごらんになってください。

 歳入で多くの問題があることは私も理解しているつもりです。しかし、所得税の問題がどれほど深刻な問題なのかということをぜひ御理解いただきたいと思って、これを持ってきました。簡単な表です。これは、二〇〇二年度予算ベースで、一体、いろいろな控除によってどのぐらい減収しているんだろう、税収が失われているんだろうというものです。この年の所得税見込み額が十五・八、まあ十六兆円ぐらいです。そうすると、基礎控除で二・一兆円ロスですけれども、これで問題なんだと言う人はだれもいないだろうと思います。そして、上の方ですけれども、配偶者控除の方では、特別控除が廃止になってきました。

 ごらんになっていただくと、日本の所得控除の大きな問題は、やはり給与所得控除、それから社会保険料が全額控除されていること、公的年金等控除、これです。その結果、控除による税収ロスというのが非常に大きな額に及んでいる。そして一番下に、これは控除ではありませんけれども、一九九九年の定率減税で大体毎年三兆円ぐらいの減収になっているということです。

 したがって、取るだけではだめだ。先ほど言ったように、歳出の部分の抜本的な改革を伴うとしても、いろいろな問題があるにせよ、まず議論すべきものは、やはり日本の所得税を基本的には立ち直らせる、きちんと取る、そして負担を広く、公平に取るということだと思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

笹川委員長 ありがとうございました。

 次に、田島公述人にお願いいたします。

田島公述人 御紹介いただきました全国一般労働組合の田島といいます。全国一般というのは、あらゆる産業、業種を超えて中小企業労働者で組織している組織でありますし、昨日、草野事務局長が公述人として参加しましたけれども、連合の一員として一緒に活動しているものです。

 本日は、労働者の立場から今次予算について意見を述べさせていただきたいというふうに思いますし、今次予算については、問題がたくさんあるし、雇用問題あるいは中小企業政策の一層の充実を求める、あるいは組み替えをお願いしたいというふうに思います。

 まず、私たち中小企業の現状について、労働相談対応から見てみますと、つい先日、GDP、国内総生産が発表されましたけれども、実質で七%成長だというふうに出されましたが、労働者の立場から、あるいは中小企業の立場から、本当にそうなのかと、全く別世界の出来事のような感想を持ったのが率直な気持ちです。

 皆さんのお手元に、ちょっと新聞の切り抜きや私どものデータが入っていますので、一ページ目の1についてお目通しいただきたいというふうに思います。

 これは、日経新聞が四半期ごとに中間決算の結果と予測を出しているものです。一番上の全産業で見てみれば、上場企業では、九月期決算で、売り上げは一・五%の伸びですけれども、経常利益は一七・八、純利益は二二%伸びている。本年の三月の予測は、売り上げはそんなに伸びない、一・二%なのに、経常利益は二〇・七、あるいは純利益は六一%に上るというデータが出されています。

 右側に、十二月四日に、やはり日経新聞ですけれども、上場企業の全体で二割の企業が史上最高の収益を上げているという結果が出ているわけですね。大手企業そのものがこういう形で収益を回復しているけれども、では、果たしてその成果そのものが労働者や中小企業に回っているのかと。

 先ほど宮本先生が、野球に例えて、三番、四番、五番のクリーンアップが打っても下位打線がやはり役割を果たさなくちゃだめだと言いましたけれども、日本経済を労働者あるいは中小企業、大企業というふうに見てみると、大企業のクリーンアップはもうカンカン打っているわけですね。しかし、下位打線の中小企業は逆に悲鳴を上げている、一、二番を打つ労働者はリストラで苦しんでいる。結局、同じチームなのに、一、二番や下位打線の労働者や中小企業のエネルギーが、いわゆるクリーンアップの大企業に富が集中していることが、今日大きな問題ではないかというのが率直な感想です。

 私ども中小企業の実態について申し上げたいというふうに思います。一ページの2に書いてありますように、職場構成は、百人以下が七割、三百人未満にすると九割の職場の生の声なんですけれども、一万人調査をした結果なんですが、年収は、男女合わせて二〇〇四年は三百六十七万円、二〇〇二年よりは下がっているのが現実なんです。右側の方に男女別あるいは雇用形態別でデータがありますけれども、正社員の場合の男で四百三十七万円、女性で三百五十五万円。

 これを四十一歳の賃金センサスと比較してみますと、皆さんのお手元の三ページの7、ちょっと細かい表で恐縮なんですけれども、四十一歳のところを見てみますと、全国一般の中位数は平均値が二十六万三千八百円なのに、千人以上の規模の賃金センサスの平均値は三十六万七千円なんです。十万円の格差があるわけですね。あるいは三十五歳時点でも、全国一般の場合の中位数は二十三万六千円なのに、賃金センサス、千人以上の規模では三十一万七千円。これだけの格差が本当に今あって、社会がうまくいくのかという問題を抱えています。

 そういう生活実態の中で、では、生活を自分たち自身が支えるためにどうしているのかといった場合に、結局は、複数の世帯の場合には共働き家庭が八割です。それから、自分たち自身の生活をやりくりするために、預貯金の取り崩しとか、一時金、賞与で補てんするというのが高いんですけれども、日銀の調査で、預金ゼロ世帯が二割を超えている、ゼロ世帯がふえているという結果を受けて、預金はどうなっているのか、初めてことし調査をとったら、生活費部分で借金をしているというのが一七%も出たわけですね。

 こういう中で組合員の気持ちはどうなのかといえば、二ページ目に出されていますように、年収での満足度は、八五%が不満を訴えているし、一年前と比べて苦しくなったというのが三分の二、六五%もいるわけです。

 そういう中で、自分たち自身が本当に賃金の引き上げを求めても、中小企業の厳しさの中でなかなか改善できない。大手企業の方はもう高コストだ、高コストだと言われているけれども、中小の場合には全く生活をやりくりしていると。今も、預金取り崩しと同時に、あと生活を支えているのが、やはり残業、時間外労働の手当を当てにせざるを得ないというようなのが実態なわけです。

 こういうことで本当に日本社会がいいのかなという思いをしていますし、大手企業はベア・ゼロの場合でも定期昇給制度というのがあって、たとえ成果給が入っても一年一歳経過すると六千円ぐらいのアップがあるわけですけれども、中小企業にとっては定期昇給制度そのものがありませんから、結局はベア・ゼロ、据え置きのまま終わってしまうわけですね。

 本来、労働組合があるんだから、労働組合の団結権やストライキ権があるんだから、ストライキで闘えばいいじゃないか、日本の労働組合は弱過ぎるよということがよく言われるんですけれども、では、中小企業でストライキをもって闘えば本当に結果が出るのか、よくなるのかと。そうでなくて、もう経営自体がおかしくなってしまうよということを本当に肌身で感じているわけです。

 そういう意味では、中小企業労働者にとっては、企業内労使で解決できる枠がどんどん狭まって、やはり今の取引問題とか政治にかかわる課題が、すごくかかわってきているなというのが私たちの感想です。とりわけ小泉政権になって規制緩和が打ち出されてくる中で、社会的に規制緩和する中で、はっきり言って、中小企業もあるいは労働者の実態も悪化しているのが実情ではないかというふうに思います。

 こういう中で、なぜ中小企業対策が大切なのかということを述べさせていただきたいというふうに思います。

 皆さんのお手元の資料の四ページに総務省あるいは厚生労働省の資料がありますけれども、今の労働者構成で、上の表が、一人から九十九人が五割になっているわけですね。それから五百人未満を足しますと、合わせて六五%が中小企業なわけです。ここが本当に元気を取り戻さなければ日本経済あるいは地方経済も活性化ができないし、地方経済が大変になったから交付金とか手当てということは、そのこと自身は大切だろうというふうに思いますけれども、それ以上に、今の中小企業の抱えている大企業との取引問題、規制緩和による過当競争の問題、あるいはダンピング合戦というものに対して、しっかりと政治の場からメスを入れていかなければいけないだろうというふうに私自身感じています。

 とりわけ中小企業労働者の立場からいえば、大手企業や金融機関が経営不安や破綻したときには公的資金が投入されるよ、しかし中小企業や労働者の場合には自己責任が強調される、こんな矛盾があるのかというのが、本当に一労働者の立場から見ると率直な感想です。お手元にデータそのものはありませんけれども、やはり公正取引委員会による不公正取引の摘発なども広がっていますし、そういう意味で、もっともっと中小企業政策あるいは取引問題について、政治の場から政策課題を訴えたいというふうに思います。

 二つ目の課題が、やはり今の雇用問題です。今日のリストラ効果あるいは輸出によって大手企業の収益が回復しているというのがよく言われていますけれども、まさにそのとおりだろうというふうに思います。

 自分たち自身の実態を見た場合に、つい先日も私、中国地方に行ってきたんですけれども、いわゆる家具、三百人の企業なんですけれども、ここでは、もう経営がなかなかやり切れない、賃金そのものは高くはないんだけれども、結局は正社員をやめさせて、そしてパートに切りかえたいんだというのが現実提案としてあります。その経営内容については、僕ら自身も経営者と話し合いながら、何とか雇用を維持しようというふうに取り組んでいます。今までパートや非正規の労働者の人たちは正規雇用の安全弁だと言われていますけれども、今は安全弁ではなくて、主力な基幹労働力となりつつあるし、正社員の方が雇用調整に使われているという現実が出ているだろうというふうに思います。

 四ページの下段の方には、今日の、総務省のとった雇用者数の変化のグラフ、これは連合白書でことし出しているんですけれども、結局は、九八年から〇三年の増減を見てみますと、正規従業員は三百七十六万人が減って、パートが九十三万人、あるいは派遣、嘱託、その他が二百十三万人もふえているという結果が出ているわけですね。

 これは、今の小泉政権のもとのいわゆる規制改革あるいは規制緩和のもとで、雇用の多様化、流動化が必要だという政策のもとで進められているというふうに思いますけれども、まず問題は、では何でパートや派遣や契約労働者に置きかえるのかということを考えてみた場合に、次の五ページを見ていただければ、これも労働省が就業形態の多様化調査で出したデータなんですけれども、断トツに一位が人件費節約のためなんですね。それから二つ目が仕事の繁閑に対応するため、これは本当にパートの人たちを活用するのは必要だろうというふうに思いますけれども。さらに第三位にあるのが、景気変動に応じて雇用量を調節するためとあります。

 これは、言いかえれば、どういうことかといえば、いつでもやめさせることができますよ、置きかえることができますよということなわけですね。そうすると、経営者にとっては、もう本当にコスト削減が限界に来ている中で、正社員は雇い切れないよと。そういう意味では、パートや契約労働者に置きかえようというのが今日出ている。

 そういう中で、雇用の多様化や流動化を考えた場合に、そのことを例えば是とした場合に、まず最低担保しなければいけないのが、雇用形態による格差や差別をなくしていく。そして、長時間働けないけれども、この時間帯なら働ける労働者を活用する。これを単に人件費コストのために、あるいは入れかえが簡単だからということで置きかえることに対して、そういう動機でパートや派遣がふえていくことは問題だろうというふうに思っています。

 この均等待遇と、もう一点は、多様化について考えなければいけない。では、多様化している中で、労働者自身がその多様化の中で選択権を持っているのか。選択権が全くなくて、正社員の道がないからパートを選ばざるを得ない、あるいは契約労働者だ、派遣だ、あるいは若者が就職口がないからフリーターだというのが現実ではないか。多様化を言うんだったら、その選択肢あるいは選択権そのものは労働者がきちっと持てるような形が必要だろうと思いますし、そのためには、やはり均等処遇、均等待遇というのを真剣に考えていかなければいけないだろう。

 雇用が不安定化した場合にどういうことが起きてくるのかといえば、やはり企業に対する帰属意識や愛着心が薄くなるし、そういう意味では、労働災害の多発とか、先日も情報漏れが起きましたけれども、こういう問題が多発する兆候ではないかというふうに思います。それと、この多様化の中で、もう一点、私どもが今、地方労働委員会に不当労働行為で訴えている事件を提起させていただきたいと思います。

 つい先日、名古屋で軽トラックの一人事業主が、何月分が払われないからということでガソリンをまきました。ああいう悲惨な事件があった直後に、そういう労働者が不安を抱えて全国一般労働組合に加盟をしてきました。百五十名ぐらいの、やはり軽トラックを中心とした大阪の企業なんですけれども、そのうちの百名が一人事業主扱いなんですね。正社員も何人か組合へ入って、全国一般労働組合として団体交渉を申し入れたところ、契約労働者の場合には、一人事業主の場合には、労働者ではないんだから団交応諾義務はないんだ、したがって、全国一般とは団体交渉をするけれども、その者を除外しなければしないよ、それからその一人事業主の契約問題を交渉議題にするんだったらしないよということで、今、不当労働行為で争っています。

 不当労働行為だけではなくて、契約の打ち切りという問題について、今いわゆる地位保全で裁判闘争もあわせて取り組んでいますけれども、やはり今の労働者が置かれている状態の中で、やむにやまれず労働組合に結集をして改善をしていこうといったときに、その改善の道が閉ざされるというのは極めて問題ですし、個別紛争処理がたくさんふえているというふうに言いますけれども、個別紛争をふやさないで、やはり集団的に物事を解決する日本的な労使関係のルールをきちっと定着させることが必要だろうというふうに思っているところです。

 それから次の課題が、今日、雇用問題。やはり失業率が高いことが犯罪の多発や自殺者の多発あるいは社会不安をあおっているのはそのとおりですし、連合そのものが、雇用を中心とした福祉社会の実現というのをうたって、まさにその実現に向けて僕ら自身が頑張っているわけです。

 今、高い失業率の中で、失業者だけの問題ではなくて、今何が起きているのかといえば、働いている現場では、たとえ賃金が上がらなくても、あるいは不払い残業があっても、雇用があるだけ恵まれているではないかというような経営者側の発想のもとで、泣く泣く働いている労働者が非常に多い。私ども、個別相談で労働相談をしていますけれども、有給休暇そのものをどうやってとればいいのかとか、女性労働者が、日本の労働基準法では産前産後休暇など立派に保障されているのが、妊娠していることがわかったことによって、もうそういう労働者を抱えていられないからやめてくれという相談があるわけですね。本当に日本が法治国家なのかという思いをしています。

 皆さんのお手元の五ページの下段に有給休暇の取得状況が書いてありますけれども、有給休暇も今は日本の労働者全体で十八・一日与えられているわけですね。あるいは普通の企業でも、勤めて半年たてば十日が保障されるよと。しかし、その行使ができるのは恵まれた労働者だけであって、労働組合がない、あるいは中小企業やサービス産業で働く労働者はどうしているのかといえば、自分のおじさんやおばさんを死んだことにして、忌引だからということで何とか休ませてくれと。本来だったら、有給休暇というのは堂々と、このために休みますというのは権利として行使ができるはずなのに、その権利さえ行使できない社会は本当にこれでいいのかという思いと、もう一点は、やはり雇用の問題について非常に考えなければいけないのが、不払い残業が相変わらず横行していることです。

 かつて社会経済生産性本部が、不払い残業をやめれば百万人の雇用という提起をしましたけれども、まさに僕は、日本の企業社会が法令遵守あるいはコンプライアンスを守ることによって雇用が広がるんだよと。そのことをやることによって、働いている者はゆとりや豊かさや家庭生活を大切にできるという課題がありますし、もう時間ですから多くは語りませんけれども、中小企業の労働者に、あるいは中小企業そのものに光を与える予算に組み替えていただくようにお願いして、私の発言にしていきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

笹川委員長 どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小泉龍司君。

小泉(龍)委員 おはようございます。自由民主党の小泉龍司でございます。

 四人の公述人の先生の方々、早朝から御出席を賜りまして、大変貴重な御意見をいただきました。厚く御礼を申し上げます。

 二十分しかありませんので、できる限り全員の方にお話を伺いたいと思いますけれども、最初に、田近先生、地方交付税について大変本質をついた御指摘をなさったというふうに私も思います。三位一体改革というのは、今回の予算の大きな柱でございますけれども、税源移譲と国庫補助金の削減は密接に結びついている、二者一体だということは国民の目にも明らかでございます。また、具体的な姿もはっきり示されております。しかし、最後の、一番重要な交付税、これがどういう関係で三位なんだ、一体なんだというところがなかなか地方自治体に伝わらない、そういう問題点があると思います。

 この地方交付税のあり方については、政府は、財源保障機能を小さくするんだ、これは決めているんですけれども、小さくするというのが、いや、実は一兆二千億の地方交付税の減額でありました、ふたをあけてみたら、こういう大きなインパクトがあったわけでございます。プライマリーバランスも、十六年度はGDP比〇・八ポイント改善しますけれども、その中の〇・三が実はこの地方交付税の減額、地方の一般歳出一兆六千億の減額によってもたらされている。一般会計分は〇・一%なんですね。これがずっと続くということになると、地方に大変な負担がかかります。

 しかし、なぜそういうことができたのか、一兆六千億も地方財政計画上の収支、歳出をマクロで瞬間的に削れたのか、私も大変大きな疑問がございました。だって、基準財政需要というものがあるじゃないですか、積み上げてくるんじゃないんですかというふうに自然に考えるわけですけれども、そうではない。今回は、マクロで地方の一般歳出を削って、それを下へ流してきて、公平に分けるために基準財政需要額の算出、大変細かい方程式がございますけれども、これを使った。

 ですから、今までは財政規律を緩める方向にこれは作用しておりましたけれども、今度は、裏返せば、地方にとっては厳しい財政規律を求められる、そういう仕組みとして作動していくんだろうと思いますね。

 しかし、裏返せば、まずマクロの総額で地方歳出の総額を決める、そして下へ流していくという方法が、よく使われる財源保障機能ではないかと思うんですね。その点の確認を含めまして、そして、それを外せという方向性の議論をされました。これは新藤先生も同じ方向性を向いておられると思います。財源保障機能を外すんだと。

 では、今度は地方に大きな覚悟が要ります。相当な覚悟、思想の転換が要ります。与えられたもので全部きっちりやるんだよ、足りないからもらうわけにはいかないんだよ、一括交付金はありがたいけれども、しかし、相当制限された中でやるんだ、これは準備できているんでしょうか。そこが非常に大きな問題だと思いますね。

 国のあり方、地方財政のあり方として、地方自治体の関係者が、また自治体の首長さんが、また我々がそういう意識をしっかりと持ち得るところに立っているかどうか、この点について、田近先生にお話を伺いたいと思います。

田近公述人 大変貴重な御意見、また御質問をいただいたと思います。

 お話を伺っていて、日本の交付税、地方財政の問題も煮詰まってきたんだなと。つまり、マクロの財政支援というのが基準財政需要額を通じて地方に流れていくと。

 それで、御質問の何点かですけれども、財源保障機能とは一体何を指すのかということですけれども、これはまさに、今申し上げたように、マクロというとそれもわかりにくいでしょうから、総務省が地方財政計画というのを立てます。八十二兆円立てました。その歳出を実行させるために地方交付税が使われている、そういうのがわかりいい説明かと思います。

 そして、どこでカットしたんだ、どうやってカットできたんだと。それは具体的に言えば、地方自治体の給与と、それから、地方単独事業と申しますけれども、公共事業の部分でカットした。ただ、それも同じルールで、膨らんでいたと同時に膨らみ過ぎてきたわけですからそれはカットしたわけで、そこで一兆円ちょっとカットできた。それ自身、やはり日本の戦後の地方財政を振り返ると、大変な改革だったと思います。

 最後に、では今後どうするんだ、なぜ三位一体なんだというときに、決して小さな政府がいいとかそういうことを言っているわけではない。逆に言うと、この議論が煮詰まっていくところは、国は地方に対してどういう責任を持つんだ、国は人々のベーシックな生活に対してどういう責任を持つのかというのが同時にあるはずです。その点、もし義務教育等々のベーシックなサービスに対して国が責任を持つならば、その部分は、例えば一括交付金とかいう形で、首長ができるだけ使いやすい形で出していく。

 というわけで、単に総額をカットしていくのではなくて、次のステップは、まさに国が同時にどう関与していくのか、地方分権というのは当然だとしても、逆に、では国はなしでいいのか、国がどう関与するのか、そこがまさにこれから問われるところだと思います。

 以上です。

小泉(龍)委員 これまで、総務省と財務省の主計局が年末に一発回答でその総額を決めていたというところに、大きな問題点はあるんだろうと思います。そして、それをブレークダウンしていって、個々の地方のニーズを的確に国がどう把握できるか、制度化できるか、システム化できるか、大変大きな課題であろうというふうに思いました。

 次に、もう一点、田近先生にお伺いしたいんですが、きょうは時間がなくて余りおっしゃりませんでしたけれども、所得税の問題でございます。

 歳入構造の安定のためには消費税しかないんだというふうに多くの議論が今流れているように思います。しかし、戦後の我が国の、中流国家というか中産階級、総中流化社会、そしてそこから民主化が行われる、それが崩れてきているというのが田島公述人のお話でございますけれども、こういう安定した社会を形づくってきたのは、私は、間違いなくシャウプ税制だと思いますね。シャウプ税制というのは何かというと、直接税、なかんずく所得税中心でいきましょうと。所得税というのは何かというと、一言で言えば、累進カーブだと思うんですね。

 ところが、先生おっしゃるように、さまざまな控除制度が生まれてきたために、日本の所得税の累進カーブは、実は控除というものに首までのみ込まれてしまっている、下から控除、控除、控除で、首まで累進カーブがのみ込まれている、私はそういうふうに感じておりました。

 先生の文献の中で、所得分位、十分位をとって、実は累進カーブがきいているのは最高所得、十分位だけですよと。これは年収一千二百万超の所得階層でございますけれども、その部分だけは単純な比例税額よりも現実の所得税額が上回る。あとは全部比例税より低いわけですね。のみ込まれている。

 これも一つの累進カーブのあり方だと思いますけれども、いずれ、消費税の議論が本格化するときに、これは非常にきつい逆進性を持っております。消費をする限りは、課税上の所得がゼロでも払わなきゃいかぬ。日本の社会構造に大きな影響を及ぼす。そこを十分見きわめる必要がある。私は、そういう観点から、消費税の前に所得税を見直すべきだという御議論は、大変貴重な議論だと思いました。

 お伺いしたいのは、日本の所得税の累進カーブ、それによる所得再分配効果、これをどういうふうにごらんになっているのか、簡潔にお伺いできればと思います。

田近公述人 今の御質問に対して実態的なことを申し上げると、そのとおりで、私がやった仕事は、給与所得に関してですけれども、たまたま全国何万人かのデータがありまして、調べた。そうすると、申し上げたように、いろいろな理由で控除が大きい。したがって、負担している人たちは非常に偏ってくる。そして、時間がないのでどういう意味で累進かということは申し上げられませんけれども、所得階層を十に分けると、その一番上のところが非常に高いということです。

 だから何なんだということですけれども、逆に、こういうふうに私は今考えているんです。

 所得税じゃなくて消費税なんだといったときに、非常にそれは痛みの伴う税だ。こうお考えになるとわかりやすいんですけれども、一〇〇の所得のうち仮に七割使った。そして、消費税を五%だとしますよね。そうすると、一〇〇のうち七〇使って五%ですから、一〇〇稼ぐと三・五%税金を払っちゃうわけです。それはだれでもそうですよね。だから消費税は税金が取れるわけです。そうすると、逆に言うと、それを所得税に直すと、何でもいいよ、もういいんだよ、所得税を直してくれなければ消費税でいいよ、五%でいいですよと。だけれども、みんな、一〇〇稼ぐと、今言った例では、三・五%払ってくださいと。

 そうすると、国民に言いたいのは、そういう改革に今一挙にいっていいんですか、そういうふうなことをして、所得税はいろいろな控除をしてきた、そういう人たちが、では一挙にそういうことをしていいんですか、そうじゃないでしょうと。やはりここでまず我々が襟を正すべきことは、所得税をきちんと見直して、適度な負担をみんながし合うんだ、そして、その次に消費税にいきましょうという議論が必要だ。

 だから、あえて、私は別に消費税反対とかいうわけじゃないんですけれども、今、所得税の改革の正面に向かわないで、打ち出の小づちのように消費税にいくということは非常に問題がある、そういう意味で申し上げました。

小泉(龍)委員 ありがとうございました。

 財務省主税局は、いつの間にか、所得税の所得再分配機能というのは社会保障制度に任せるんだよ、どうもそういう気分があるようでございまして、もう一度、消費税というものの本格的議論の前に、所得税制が我が国の社会に与えた影響、またその所得再分配効果、こういうものを私は財務金融委員会等でまた議論をしたいというふうに思っております。大変貴重な御議論をいただきました。

 宮本先生にお越しいただきました。大阪からきょうはお見えいただいたわけでございますけれども、景気回復、軌道に乗りつつあるということは事実でございます。輸出関連の大規模な製造業の企業収益が改善していく、しかし、これが中小企業あるいは地域に波及しないという二重構造の問題、勝ち組、負け組の問題がしばしば指摘をされているわけでございます。

 大阪という都市は、東京と並ぶ二極を担う中枢機能を持った都市であったと思いますけれども、関西経済、大阪経済、なかなか芳しくありません。先生は阪神タイガースの優勝の経済効果をたしか試算されておられたと思いますけれども、毎年阪神タイガースが優勝するわけにもいかないと思うんですね。

 そういう意味で、関西経済を身近にごらんになる立場から、これは全国の中小都市同じなんですけれども、東京はよくなるよ、どうしてもおくれていく地方都市のあり方、つまり、景気回復の二重構造、これをどういうふうにごらんになっているか、難しいけれども、解決策があれば端的にお示しをいただきたいと思います。

宮本公述人 小泉先生の御質問にお答えさせていただきます。

 ただいま御質問がございましたように、いわゆる大阪を中心とした関西経済といいますのは、東京を中心とした関東圏と比べますと相対的に低下してきている。特に、大阪で万博がありましたとき、あの辺が大阪は実はピークで、それ以降、ずっと右下がりではないかというふうに言われております。

 先生今お話しいただきましたように、昨年は、関西、大阪は、阪神タイガースが優勝して結構盛り上がりましてプラス効果があったわけですけれども、今言われましたように、毎年阪神が優勝するわけではありませんし、そうしたところで、いわゆる経済効果が毎年続くというわけではないと思います。ただ、若干、大阪、関西経済、昨年の暮れからやや明るさが見えてきております。

 これは、先生も御存じのように、デジタル化というのが始まりまして、例えば、デジタルカメラであるとか、昨年暮れから放送が開始されましたテレビの地上デジタル放送、こういうもので、テレビの受像機は全部買いかえないと、アナログ放送用のテレビはもうこれから映りませんよと。さらに、ブラウン管から薄型の液晶とかプラズマテレビ、プラズマ受像機、そういう非常に付加価値の高いテレビになって、しかも地上デジタル放送だということで、そのような生産、需要が結構大きくなってきております。

 関西は、御承知のように、そういうものをつくっております家電がたくさんございますので、少しずつ関西も明るさが見えてきておるというのが現状でございますけれども、全体といたしますと、先生御指摘されましたように、やはり東京、関東圏と比べますと、大阪経済というのは、以前と比べますと、かなり落ち込んできている。万博のころは関西が日本のGDPの大体二割ぐらいあったというふうに言われているんですけれども、もう今ではせいぜい一六%ぐらいだろうというふうに考えております。

 それでは、関西といいますか地方、関西を例といたしまして、どうしたら一つの地方の活性化を図ることができるかということでございますけれども、一つは、やはり地方分権、規制緩和といいますか、そういうふうなことが大事ではないかと考えております。

 それからもう一つ、先ほど田近公述人の方からもお話がございましたように、私は、地方自治体の改革というのがこれから必要ではないかというふうに考えております。

 今までは国の方から足らず分は全部出していただいたということで、先ほど田近公述人のデータにもございましたように、国と比べますと、地方の歳出の伸びというのは、ここ二十年ぐらい非常に急速なものがあります。地方の自治体が、いわゆる歳出の合理化といいますか、歳出のカットですけれども、そういうものに対して今までやはり努力を怠ってきたのではないかというふうな気がいたします。

 ですから、そういうふうなことをやることによってさらに地方の民間企業の活力を引き出す、今まで地方自治体がやっていたことをできるだけ地方の民間企業に任せる、地方の民間企業を育てる、そういうふうなことがこれから必要ではないかというふうに考えております。民間企業を育てて、その民間企業の活力を利用していくということが地方の活性化につながるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

小泉(龍)委員 ありがとうございました。

 もう一問だけ、宮本先生に、簡単にお答えいただければと思います。

 景気回復が見えてきた。私は、二つ問題があると思います。一つは、今申し上げた二重構造、もう一つは、景気が回復してくると金利が上がってくることが大変心配でございます。

 先生のきょうの予算に対する大変的確な御指摘、特別会計、歳出項目見直し、利益に応じた負担、こういうものをがっちり固めながら、しかし一方で、国債の金利負担が、財政破綻のリスクを上乗せする形で、リスクプレミアムが乗った形で急上昇すると、これはもう一遍に崩れてしまうと思うんですね。経済財政諮問会議のマクロの経済見通しによりましても財政収支見通しによりましても、二〇〇六年度から名目成長率が実は名目金利を上回るんですよと。逆転させる、ここがこの統計のみそだと思うんです。これがうまくいかないと拡散してしまう。

 そういう意味で、今、金融政策の量的緩和が続いておりますが、この量的緩和の脱出する逃げ道、つまり、どうやって撤退してくるのか。これは、福井総裁がその詳しい内容を説明されていますけれども、そのタイミング、方法はなかなか難しい問題がありますけれども、金融政策というものの重要性が財政と非常に今密接に関連していると思いますから、その点、御意見がありましたら、短くお願いをしたいと思います。

宮本公述人 お答えいたします。

 先生が御指摘されましたように、もしこれから金利が上がってきました場合に、日本の公債の負担、それから民間企業が借り入れしている場合の金利負担が上がってくるというリスクは非常に高いというふうに私も考えております。

 これと関連いたしまして、先ほどから私がお話しさせていただいております国及び地方自治体の公債がふえてきますと、もしこの公債の引き受けがスムーズに進まなければ、必然的に金利の上昇をもたらすリスクが結構高いわけであります。したがいまして、このようなことが起こらないためにも、やはり公債を減らしていく、国債、地方債を減らしていくという努力が必要ではないかというふうに考えております。

 現状で、今先生おっしゃいましたように、名目成長率が上がっていきますと、まだいいんですけれども、名目成長率が上がらない段階で、そういうステージで金利が上昇していきますと、これは日本経済にとって非常に大変なプレッシャーになるというふうに考えております。

 以上でございます。

小泉(龍)委員 ありがとうございました。

 もう質問の時間はないと思いますが、新藤先生も、きょうお越しいただいてありがとうございました。文献を私もかなり読ませていただきましたので、御質問する機会はなかったんですが、お許しをいただきたいと思います。

 それから、田島さんがおっしゃった所得分配の不平等というものが所得格差、私、こういうものが日本にとって大きな問題だというふうに今思っております。

 新築の高層マンションが都心にはどんどん建つ。しかし、隅田川沿いあるいは皇居前広場にはホームレスが大勢いる。二万五千人いる。経済は大きくなっている。バブル崩壊のときを一〇〇としますと実質で今一一五でございますから、パイは大きくなるんだけれども、差が開く。これが新しい構造問題だろうというふうに受けとめておりますので、御質問はできませんでしたけれども、御意見は十分踏まえてやっていきたいと思います。

 大変ありがとうございました。

笹川委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 四人の公述人の先生方には、御出席を賜り、また貴重な御意見を賜りまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 私の持ち時間は十分しかありませんので、端的に質問に入らせていただきたいと思います。

 まず田近先生に御質問したいんですが、特に先生の社会保障に関連した部分でございますが、今、年金、医療、介護と、大きな社会保障の項目があります。年金について、私は、高齢者がどんどんふえることは一面おめでたいことでもあって、年金の増額を抑えるということは非常に難しいし、またそれはきちっと保障すべきだと思っておりますが、医療と介護については、医療費がふえること、あるいは介護費用がふえることを前提に議論するのはちょっとおかしいんじゃないか。単に負担の分担をどうするかというのみならず、医療費の伸び、また介護費の伸びをどう抑制し、また、あるいは場合によっては削減していく、そういう予防的な視点が、今後の社会保障改革に大変重要な視点であると私は考えております。

 そういった意味で、医療保険あるいはまた介護保険、いずれも、健康で自立して頑張って生きていく人に対する支援といいますかインセンティブが十分ない。そういった、自立して努力をして健康で生きることに対するインセンティブを、もっと内在的なものを設ける必要があるのではないか。逆にまた、保険の浪費、乱用に対するディスインセンティブもやはり設けていく必要がある。こういったメカニズムを、さらに日本の医療保険、介護保険に内在させて、もっと効率を高めるという視点が大事ではないかと思っております。

 一つ、介護については、日本の場合、国際比較をすると、非常に寝たきりが多いということが注目をされます。特にアメリカとかスウェーデン等と比べると、大変大きな格差があるというふうに言われております。

 また、医療についても、今、日本の場合に、病気の中心が感染症から生活習慣病に大きく移っておりまして、感染症とか先天的な欠陥による病気の場合にはやむを得ないですけれども、生活習慣病の場合には、予防努力によってこれは大きく削減できるわけです。特に、一次予防を強化することで非常に大きな成果が上がるものと私は考えておりますし、現実に、もう日本国内でも都道府県によって大きな格差があります。また、同じ病気でも病院によっては随分費用格差がありまして、日本の医療の中でも、例えば出来高払い制をやっているために、薬を使っただけ、検査をやっただけ費用が出るということで、薬漬け、検査漬けの医療ということも言われております。

 こういった問題に対するむしろチェックシステムを保険制度に内在することが非常に大事だと思っておりまして、そういった意味で、予防的な方法あるいはまた健康で自立する人々を支援するようなメカニズムをどうこのシステムに内在させるかということだと思っております。

 アメリカなんかの場合ですと、健康保険は民間でやっておりますが、一たん入りますとすぐ健康指導士が来て、さまざまな、栄養とかたばこをやめなさいとか体重をどうしろとかいろいろな指導が入るし、また、そういったリスクファクターが高い人には高い保険料を設定される等のメカニズムがあります。また、自動車の保険等では、無事故を続けた場合にはノークレームボーナスというのがあって、保険料それ自体が下がるというシステムがあります。

 こういったことも参考に、もう少し医療費や介護費用の伸びを抑制し、さらには削減するというメカニズムをもう少し切り込んでいく必要があると思っておりますが、この点につきまして、田近先生の御見解を賜りたいと思います。

田近公述人 御質問ありがとうございます。

 その点については、先ほど時間がないので触れられませんでした。また、御質問の中に、もう回答のヒントのようなものもいろいろいただいたような気がしますけれども、私の考えを述べさせていただきます。

 まさに非常に重要な点で、三十兆だ五兆円だ、それを当たり前のようにして議論するのはおかしい、そのとおりです。また、日本の医療制度というのは、ベッド数が多いから医療費がかかるんだ、保険の点数、その単価が高いからいけないんだと。社会主義をやっているわけですよね。ベッド掛ける単価掛けると何か費用が出てきて、保険の点数掛ける何か掛けるといろいろ出てくる。そうすると、その量をチェックするにはどこか減らせばいい。何か、人口が一億人いて、一年みんな靴何足履くと何億足の靴が要るからそれをつくろうというような形で、それと似ているわけですけれども、そうじゃないだろう。

 結局、構造的な問題としては、ぜひこういう場で議論していただきたいと国民が思うのは、やはりかかっただけの費用は、まさにここはヒントをおっしゃっていただいたんですけれども、かかった費用はみんな保険で払ってあげるという出来高払いというのはもう根本的に見直すべきだ。一部、それに対して包括払い、この病気に対しては一括幾らですよという形の考え方が出ています。それは今後の日本の抜本的な医療改革になるだろう。

 それから、そういうことを実現するには一体どうしたらいいんだろう。日本の保険者というのはいっぱいあります。国民健康保険、政管とありますけれども、非常に興味深いのは、国民健康保険は三千の市町村がやっていて、政管健保は全国一本です。全くおもしろいことが起きているわけですけれども、そういうことでいいんだろうか。つまり、保険者の最適な規模というのもあるでしょう。

 それから、やや踏み出させて言わせてもらうと、日本の医療保険はいろいろなすばらしいことがあるけれども、一つ欠けているものがあるとすれば、我々は保険者を選べないわけですよね。私は今国立大学にいる、それは自動的に共済に入る。議員の皆様は、ちょっとそれはよくあれですけれども、自動的になっちゃう。そういうことも含めて、保険者機能を強化する。

 それに関連して予防ですけれども、介護保険で付加的に申し上げると、まさにそこがこれから正念場になると思うのは、介護保険の費用が膨らんだ。どこで膨らんだかというと、要支援あるいは要介護度一の低いところで広がっていったわけです。そうすると、社会主義の議論をしていくと、では、そこが広がったんだから、そこを縮めればいいじゃないか、そういう要支援、要介護度一のところのサービスの単価を下げて額を下げればいいじゃないかと。

 それはまさに逆行していて、そこの人たちをどうして悪くならないようにしたらいいのか。介護保険でサービス面でまさに問われているのは、要支援、要介護度一の人たちがそれ以上悪くならないような仕組みをつくること。それはサービスの内容の抜本的な見直しということで、まさにそういう中身の話が重要で、御質問の中にもありましたように、その重要な核となるアイデアは芽生えていると思います。それをいかに実現するかということだと思います。

 以上です。

遠藤(乙)委員 宮本先生に一点だけ。

 先生の御意見の中で、基礎年金の国庫負担の二分の一引き上げは慎重に検討すべきだというお話の中で、特に、税方式と保険方式、明確にすべきだというお話があったんですが、今の国民年金の場合には混合方式というふうに思うんですけれども、先生の御意見として、税方式と保険方式、どちらがいいのか、あるいは、なぜ明確にしなければいけないのかという理論的根拠、私、何かやはり混合的なことも大いにあり得ると思っておるんですが、この点につきまして、先生の御意見をお願いいたします。

宮本公述人 御質問にお答えさせていただきます。

 新規の歳出項目といいますか、新しい項目についてはやはり慎重にお考えいただきたいということで、例として、基礎年金の国庫負担の割合の二分の一引き上げというものをもう少し検討していただければよかったのではないか、そういう発言をさせていただきました。

 基本的に、先ほど田近公述人も申されましたように、保険というのは、我々が保険料を払って、それに対して、その保険料の中から対価をいただくというものであります。もしこれが税金で賄われる形になれば、ある意味では生活保護に近い形になっていきます。そうすると、基礎年金は生活保護なのかというふうな議論が実は必要ではないか。もしこういう形で基礎年金部分が税金で賄われるというふうになってまいりますと、四十年間保険料をきちんと払った人と払わない人の差はほとんどなくなってくる可能性があるというふうに考えます。

 例えば、保険に関しましては半額免除という制度がございますけれども、片一方の人は四十年間半額が免除された、一方の人は保険を四十年間全部払いましたと。それで、今受け取っておりますのが大体月六万六千円ぐらいでございます。全額払った人は六万六千円いただけますけれども、保険料の半額免除の人はどうなるかといいますと、計算いたしますと四万九千円いただく。そうしますと、全額四十年間払った人と半額払わなかった人、非常に少ない差しか出てこない。それはやはり、保険制度として考えた場合には少し異論があるのではないか。もしそうであれば、これはもう生活保護ですよというふうな形できちんと議論し直す必要があるのではないかという意味で申し上げたわけでございます。

 以上でございます。

遠藤(乙)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、小泉俊明君。

小泉(俊)委員 民主党の小泉俊明でございます。

 本日は、お忙しいところ、四人の先生の皆様方には御出席いただき、ありがとうございます。

 まず、先ほどお話をいろいろ聞きまして、特に田島公述人の、中小企業のまさに血を吐くような現実のお話をお聞きし、胸が詰まる思いがいたしました。私も中小企業の経営者から国会議員になったわけでありますが、やはり現場の実態というものをきちっと認識する、そこからすべての政治が始まるということを、先ほどのお話を聞きながら強く再認識させていただきました。

 さて、まず最初に宮本公述人にお聞きさせていただきたいんですが、先ほど先生、最後のところに、日本に生まれてよかった、これを感じるような国にすることが大切だというお話がありました。先生、私、いろいろな論文を読ませていただきましたら、チャレンジが報われる社会にしなければいけないとか、あと、まじめに努力をすることが報われる社会、そういう社会が必要なんだということを先生はいろいろなところでお書きになられていると思うのでありますが、今、実は、内閣府の調査だったと思うんですけれども、一つ私が大変大きな問題だと思いますのは、二十代の方にアンケートをとりますと、この国というのは努力をしても報われない、七割がこんな回答を寄せております。

 そしてまた、先ほど田島公述人のお話の中にもありましたが、大企業は非常に利益が上がっています、しかし、そのしわ寄せが中小に来ていると。また、一千四百兆円という非常な国民金融資産を大きく持っているわけでありますが、実際、ことしの発表では、二割の方たちが預金はゼロだと。極めて貧富の差の拡大、そしてまた、強い者はより強くなるんですが、より弱い者はより弱くという、昨年からことしの予算にかけましても、そういったような社会にどうも向かいつつある。

 こういったことというのは、やはり日本の国の経済、また国家の将来に向けて、私は、余り望ましい方向ではないと思うのですが、先生の御所見をお伺いさせていただけますでしょうか。

宮本公述人 お答えさせていただきます。

 今先生がおっしゃられましたように、一時期、日本の国民の平均的な感覚といいますか、そういう思いが、一億総中流家庭というふうな時代がございまして、それが、いわゆるバブルがはじけてから、グローバルスタンダードというふうなことで、いわゆるアングロサクソン的な経営とか視点とか考え方というものが入ってまいりまして、そうしますと、やはり競争社会だというふうなことで、かなりそういうグローバルな競争が大事なんだというふうになってまいりました。

 私は、基本的には、いわゆるアングロサクソン的な、企業に関しまして経営といいますか、そういうふうなものが日本に合っているかどうかというのは、実は非常に疑問を感じておりまして、基本的に、企業経営とか社会システムといいますのは、その国の伝統とか歴史とか民族性とか、そういうふうなものに培われたものであろう。したがいまして、日本が、バブルがはじけたから、非常に経済経営、経済の運営で自信がなくなったから、それで、うまくいっているアメリカのシステムを取り入れようというふうなことは、日本になじむのかなというふうな気がしております。これが基本的な考え方であります。

 しかしながら、私は、努力した者が報われるという世界はやはり必要であろうというふうに考えております。結果平等というふうなことを言われますけれども、私は、結果平等というのは、その国の経済、文化、もろもろのものの活性化というものには決してつながらないというふうに考えております。機会の平等といいますか、そういうふうなものは必要であろうというふうに考えておりますけれども、やはりある程度努力した人が報われるというふうなことでなければならない。

 私、先ほど申し上げましたように、税につきましても、税をどういうふうな理由で取るんだと言われる、いわゆる租税原則というものには大きく分けまして二つございまして、いわゆる能力説それから利益説というものがありまして、税を払う能力のある人が払っておればいいじゃないかという考え方と、いや、そうじゃないんだ、国とか地方自治体からサービスを享受している人はそのサービスに応じてある程度の負担をすべきであるという考え方がございます。

 これはどちらが正しいかというのは、議論してもなかなか結論は出ないだろうと思いますけれども、私は、やはり両方の考えを取り入れたような、そういう税システム。つまり、片一方だけであるということではなくて、やはり能力のある人が払っていただく必要もあるでしょうし、しかし、サービスを受けておる、しかし自分は払うつもりもないし払う能力もないから払わないよというふうなことでは困るわけでありまして、その両方をミックスしたような形のきちんとした税体系といいますか、そういうものをつくっていく必要があろうかと思います。そういうふうなことをやることによって、日本のいわゆる経済、社会、文化の活性化が図られていくのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

小泉(俊)委員 ありがとうございました。

 引き続き宮本先生にお伺いいたしますが、先ほど、今年度の特別会計は切り込んでいて評価できるというお話をされていたと思います。

 実は、私は今、自民党のここ五年間、特に今年度の予算もそうでありますが、最大の問題は、特別会計中心の会計であるということだと思います。国と地方を全部合わせますと、大体、たしか昨年で五百四十兆、ただ、純計は二百八十七兆円ぐらいだと思います。また、先ほど先生がお話しされましたように、特別会計が約二百七兆、そして一般会計が三十五兆円なんですね、純計で見ますと。

 要するに、氷山がそうなんですが、海に浮かんでいる氷山というのは、三割が出ていて、七割は水面下で見えないわけですね。実は、この透明性がなかなか、民主党はずっと、予算委員会も含め本会議もすべて、この特別会計の水面下の数字を公表するように、ディスクローズしろ、それをずっと言ってきたわけでありますが、その闘いをずっと続けてきたんですが、いつまでたってもそのデータが出てこないのが本当なんです。

 ですから、今予算委員会もそうでありましたが、やはり現在の特別会計、これをディスクローズをきちっと正々堂々とする。それをしない限り、私は、本当の意味でのこの国の先行きとか、国民も満足度がありませんし、これからどういう経済政策をとるべきか、すべてがやみの中なんですね。

 ですから、先生の、特別会計の透明性が必要だという点、そしてまた、ただ、切り込んでいるにしても、私はまだまだ足らないと思うんですが、その辺についての御所見を、先生、お聞かせいただけますか。

宮本公述人 お答えいたします。

 ただいま先生から御指摘いただきましたように、私も実は、特別会計というのは今まで余りオープンにされてこなかったというふうに考えております。

 しかし、これは、国の方がそういうふうに隠してきたというふうなこと、私はちょっと正確にはわかりませんけれども、それだけではなくて、マスコミも、年度末の予算の問題を取り上げるときは、ほとんど一般会計しか大きく取り上げないわけであります、この八十二兆円しか。あとのこの特別会計、ノミナルで言いますと三百八十七兆円、非常に大きいんですけれども、これはほとんど書かない。そこだけを新聞を初めマスコミで皆大きく書く。

 したがいまして、私は、マスコミの人に、もっとこの特別会計のところを取り上げなさいよと。私の表でも指摘しておりますように、一般会計というのは、対GDP比でここ十年間ぐらいそんなにふえていないんですよ。ですから、ここは幾らつついてもそんなに問題ないんですけれども、特別会計というのが非常に膨らんでいる。ここが実は日本のいわゆる公的債務を大きくした一番大きな原因の一つではないかというふうに考えておりますので、ここのところを書けということを私はマスコミにはしょっちゅう言っております。

 先生おっしゃいましたように、ことし切り込みましたけれども、その削減幅といいますか、合理化幅はそう大きくはありませんが、私は、やはりある意味で、切り込んだということで評価したい。これをどんどんどんどん続けていくということによりまして、特別会計で不必要なものは、不必要と言ったら怒られますけれども、やはりもう合理的でないものは減らしていくという方向が大事ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

小泉(俊)委員 引き続き、宮本先生にお尋ねをさせていただきますが、今予算委員会におきまして、私は、小泉総理そして谷垣財務大臣も含め、自民党の予算編成、これの過去のずっと失敗というのは、要するに、積極財政で歳出を増加していくわけですね。ところが、景気がよくなり始めた時点で、すぐ緊縮財政に入って歳出を削減します。ずっとここ十年間この繰り返しをしてきたのが、ストップ・アンド・ゴーというか、このやり方が非常にまずいんだと私は思うわけであります。

 そしてまた、今回も実質GDP一・七%、ただ、これは、GDPデフレーターが大分かさ上げされていますので、実際は私は名目で見た方が正しいんだと思うんですが、少しよくなってきた段階で、実は、先生のレジュメを見ますと、「歳入の工夫」というところで「(2)増税の場合は景気の足を引っ張らないように配慮すべきである」と。

 これは、実はどういう増税が用意されているかといいますと、昨年の税制改正によりまして、一月から配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止で、これは五千億円です。四月から年金物価スライド制の適用で年金支給額が減額されますね、六月は住民税がアップされます、これで五百三十九億円です。そしてまた、十月には厚生年金保険料の引き上げ、今論議しているところでありますが、労使ともに平年度で五千億円の負担増になります。そして来年、年金世代への課税強化で、国、地方を合わせると三千八百億円もあります。さらには、今これは議論が始まっているところでありますが、定率減税の廃止で総額三兆三千億円。実は五兆円弱の増税が、特に家計に対する増税が予定されているわけですね。

 先生、計量経済学の御専門家でありますので、私は、これほどの増税を家計に、ことしから二年間で五兆円近い増税をかけていくということは、また消費を冷え込ませ、ひいては長期的に見た場合の日本経済全体を収縮させて、決していい方向にはいかないと思うんですが、どの程度の影響が計数上あるとお考えでございましょうか。

宮本公述人 お答えいたします。

 私は、今先生の御質問にありました計算をしたわけではございませんので、消費にどの程度のマイナスの影響があるかということをちょっと正確にはお答えできないわけでございます。その点はおわび申し上げます。

 まず、先生がおっしゃいますように、これからいろいろな形で家庭に対する負担がふえてくるであろうということは若干予想ができるわけであります。ただし、私は、一番最初にも申し上げましたように、実は、この国全体を考えました場合に、いかに日本のいわゆる公的債務の額がGDP、そういうものに対して大きくなっているか、先進国中最大である。

 実は、今まで我々は、人間というのはそうなんですけれども、ある現状がありますと、その現状が当たり前だというふうに考えるわけです。そこからふえます、例えば負担がふえますよということになると、非常に問題になるわけです。実は、例えば今まで景気をよくしようということでいろいろな形で公的な支出が行われてきましたけれども、それが今当たり前の水準であるということを考えること自身を、これから我々は少し考え直さないといけないんじゃないか。

 つまり、今の状態を続けていきますと、一番最初に申し上げましたように、日本の公的債務の額それから対GDP比の比率が全く減らないという方向にいくわけであります。したがいまして、小泉総理も一番最初に言われましたように、ある程度はお互いに痛みを分かち合うというふうなことも必要であろうというふうに考えております。

 先生が言われました二年間で約五兆円の負担増加というのは、これは正直申し上げまして、決して小さいものではございません。ひょっとしたら、確かに消費を冷え込ますという可能性がなきにしもあらずでございますけれども、しかし、私も書いてございますように、景気の足を引っ張らないような形でというのは、確かに難しいことだろうと思います、抽象的に書いてございますけれども。しかし、そういうふうな配慮をしながら、私の基本的な思想は、やはり歳出カットだろうと思います。しかし、それではどうしてもこのままではいかない。そうすると、先ほど田近公述人は所得税と言われましたけれども、私は実は消費税を考えておりますが、そういうふうなものを含めて考えていかざるを得ないのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

小泉(俊)委員 続きまして、新藤公述人に御質問をさせていただきます。

 三位一体の改革についてお尋ねさせていただきますけれども、本来、三位一体の改革の目的というのは、やはり地方自治の裁量権を拡大していくことにあると思います。

 小泉総理は常々、中央から地方へ、官から民へというふうにいろいろおっしゃっているわけでありますが、先ほどの先生のお話でもそうでありましたし、私も今いろいろなものをデータで、数字で、結果で見ますと、どうも言っていることが逆じゃないか。中央から地方へと言っていますけれども、中央から地方へ渡すのは借金だけでありまして、実際は国家財政のまさに身軽化というか、借金のつけかえだけをする形にどうもなっているのではないか。そして、結果を見れば、逆に中央集権が強まっているように思えてなりません。

 そしてまた、これは三位一体とは違いますが、官から民へと言っているんですが、そういうふうに言っている割には、例えば、りそなの問題、足利銀行の問題にしろ、そしてまた、産業再生機構もそうなんですが、民間企業の生殺与奪をどうも官が握る、これは逆じゃないか。だから私は、民から官へというのが本来逆に強まっているような気がしてなりません。

 この辺について、先生の御所見、忌憚のない意見をお聞かせいただけますでしょうか。

新藤公述人 まさにおっしゃったような感想を、私も正直に言って受けております。

 首相は私の高校の先輩ですが、成立当初から、私は、あれは二、三周おくれのサッチャー主義である、そういうふうに繰り返し申し上げてまいりました。

 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、三位一体の改革、確かに遂行せねばならない。しかし、現実にここの、小泉政権成立以降のみならずなのですが、見てまいりますと、地方のことは地方でとおっしゃいますが、しかし、現実には地方に対してツケ回しをしているというふうにしか思えない、そういうふうに思います。ですから、今回の仮に一兆円規模の問題でも、一兆円規模で補助負担金の廃止をする、義務的経費は全額、そしてそれ以外は八割ということを昨年六月にみずから閣議決定しているわけですから、先ほど二つの例を出しましたが、ああいう結果が自治体に出るということは決して政権自体にとっても好ましいことではないだろう、そのように今思っております。

 それから、まさに、官から民へではなくて、民から官へ、そういう色彩が濃厚でありまして、ですから、あれは二、三周おくれの新保守主義だと。

 とりわけ東京のこの都心部における再開発といいますか、都市再生という、しかも、民間事業者に事実上の都市計画権限を移譲するような形で再生が行われております。これは、一方で、地方を豊かにするどころか八〇年代以上の東京一極集中をみずからつくろうということであり、他方において、まさに、官から民へということを仮に言うとしても、民の極めてある特定の集団に利潤をもたらそう、そうしているものであるというふうにしか言いようがないと思います。

 私の感想でございます。

小泉(俊)委員 先生、私の認識と全く同じで、ありがとうございます。

 引き続き、新藤公述人に御質問させていただきますが、今、二、三周おくれて来たサッチャリズムというお話なんですが、私は、小泉総理のやり方を見ていまして、どうも中国の列子に出てくる朝三暮四と非常に似ている。朝三つクリを上げると言ったら、猿が騒いだ。朝三つ、夜四つと言ったら騒いだ。ぎゃあぎゃあ騒ぐので、じゃあ朝四つにしたらどうと言ったら、それでおさまったと。

 結局、本来であれば、質的な転換をしなければいけないところに、量的な問題で解決をしている、ここにやはり私は、小泉総理ないしは今回の予算もまだまだだめなところが正直言ってあると思います。

 例えば、本当に財政再建と言うのであれば、私は、明治以来、一八七一年の廃藩置県以来、国、県・市町村という二段階でやってまいりましたが、よくよく人件費総額を調べてみますと、国、地方の総額は三十七兆円であります。そしてこの内訳を見ますと、国が十兆円、三千二百の市町村が十一兆円であります。ところが、四十七都道府県の総人件費を見ますと、十六兆円もあります。そしてまた、地方交付金の二十兆のうちの約十兆円、半分が四十七都道府県で使われています。結局、明治百三十六年たちました、戦後これだけ長い時がたちました。私は、そろそろ国家の構造というものを質的に転換していかなければならない時期に来ていると思います。

 その中で一つ、道州制というものが、それについての御意見をお伺いしたいんですが、私は、道州制も含めて、ただ、県を廃止というか、県の機能を縮小することによって質的に国家構造を変えなければいつまでたってもこの歳出構造を変えるということはできないと思うんですが、それを含めまして、都道府県の機能の縮小並びに道州制という観点から、先生の御所見をお伺いさせていただけますでしょうか。

新藤公述人 間もなくスタートする第二十八次の地方制度調査会は、多分、道州制をまさに本格的に議論することになろうかと思います。

 道州制といった場合に、これは戦前から多様な議論がございますけれども、とりわけ六〇年代までの道州制と昨今言われている道州制というのは、私はかなり、論者によっても違うとは思うんですが、客観的条件を異にしていると思います。

 六〇年代までの道州制というのは、まさにこの国を重厚長大型の、そういう産業をもとに、いかに追いつき型近代化を果たすか、こういうことであったわけでありますが、昨今の道州制というのは、地域的なまさに多様性を考え、しかも、霞が関の百三十年にわたる集権構造がまさに政治、経済、社会をむしばんでいるのだということを前提に考えて出てきているものであろう、あるいは少なくともそういう流れが強力であるというふうに思います。

 ですから、基本的には私は全く反対ではございませんが、その際には、やはりでき得る限り画一性を排した、まさに一国多制度ともいうべき、そうした、道州制という言葉がいいかどうかはわかりませんが、道州制を構想し、議論していくべきではないだろうか。その意味でもまた、北海道がどういう対応をするのか。つい先日、道新にも書いたのですが、もう少し元気のいい道州制プランというか構造改革特区案を出すべきである、こういうふうに書きましたが、できる限り一国多制度的なことをやるべきだと。

 同時に、ただ、道州制をどういう区域でしくかはともかくとして、他方において、地域の自治といいますか、近隣の自治、今度地方自治法の改正法案を御審議になられるとは思いますけれども、まさに近隣の自治をどうするのかということも我々は忘れてはいけないんだろう。この両方を追求することが大事である、そういうふうに考えております。

小泉(俊)委員 引き続き新藤先生にお伺いさせていただきますが、一つ今、地方自治で大きな流れが、先生いろいろな論文等でもお書きになられていると思いますが、合併です。

 今、合併特例債の期限があるものですから、もう慌てたように、しゃにむに、何しろ合併をしないと合併特例債が使えない、どうもこの一点をもって、本来あるべき地方自治の姿とかそういったものと離れたところで、地方では非常に議論が現実には今進んでいるわけであります。結局、行き着くところはどこかといいますと、今までやってきた箱物行政の再燃です。

 実は、今やろうとしているのは、早く一緒になりまして、合併特例債を使って、早く図書館をつくったり、またプールをつくったり、体育館をつくったりする。結局、これでやっておりますと、何のための三位一体か、地方分権なのかがさっぱりわからないわけでありますが、最終的にそのツケというのは当然、地域住民に来まして、そしてまた、地方におきましては、実際は議会が非常に形骸化しているために、市長の権限がますます、県知事もそうです、極めて大きくなって、なかなかこのチェックが実際働かないんですね。私、ある県で調べましたところ、これをチェックしようと思いましたら、できるのは国の制度では議会以外ないんですね、地方の議会以外。

 ですから、この点について、今の進んでいる地方の合併に関しての問題点と、先生の御所見をお伺いさせていただけますか。

新藤公述人 まさにおっしゃるとおりです。

 私は、ここ何年か、口を酸っぱくするぐらい、一体どういう理念で合併をするのか、別に合併自体は反対じゃございませんけれども、そこを明確にするべきであって、合併特例債を当て込んで、新たな公共事業をという。

 そもそも多くの首長さんたちが、なぜ合併が必要かというのは、建前上は、このままでは立ち行かなくなると。立ち行かなくなる理由は、おっしゃったような箱物を次々とつくってきたから立ち行かなくなっているんですけれども、新市建設計画の中に載るのは軒並み箱物でありまして、立ち行かなくなった話と全く同じことを繰り返す。しかも、その新市建設計画の九五%について特例債の発行、そして七〇%が基準財政需要額で面倒を見る、交付税措置される。しかし、そうだとして、三〇%は自分の懐から返していかなくてはならない話ですよね。しかも、各地を回ってみますと、この七〇%は別途、地方交付税交付金とは違う、上乗せされてくるかのような話が、全国各地で推進派は語っております。やはり私どもすべて、政治のお立場にいる皆様方も含めて、合併は結構なんだけれども、どういう町をつくるべきなのか、そこを強調する必要性があろうかと思います。

 それと、時間があれですが、もう一つは、この委員会でも議論をしてもらいたいと思いますのは、地総債以来、この特例債に見るように、何かといえば交付税で後で面倒を見ますよと。しかし、交付税総額は減っているわけであって、そんなことできないだろうがと。この手法について議論をしていただきたい、そう思っております。

 以上です。

    〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕

小泉(俊)委員 まさに先生のおっしゃるとおり、後ろの委員も皆さん大分声がかかっておりますが、そのとおりだと思います。

 一つ、今どうも、私は、この予算も含めまして、小泉総理のやっている改革の大きな問題点、目的と手段が取り違っちゃっているんですね。要するに、明確なあるべき姿とか日本の未来とか目指すべき社会というものの目的がなくて、手段面を目的化してしまっている。ですから、どこに行くかわからないわけですよね、理念がないというか。そこにやはり今のこの予算におけるいろいろな問題、国もそうです、地方の問題、税の問題もそうでありますが、私は、出ているんだと思います。

 時間がなくなってまいりましたが、最後に田島公述人に、先ほど大変現実のお話をお聞きさせていただきまして、ありがとうございます。

 私、常に大臣に、財務金融、予算委員会でずっと大臣に必ず聞いているのは、現実をどの程度認識しているのか、知っているのかということを必ず最初に尋ねます。そうでなければ、すべての対策論というのは全く狂ってきちゃいます。

 やはり今、自殺者が六年連続まず三万人を超えることは確実でありますし、失業者も三百五十万人、高どまりですし、個人破産が二十四万件を突破する。そしてまた、高校生は過去二番目、最低から二番目の就職率でありまして、大学生は過去最悪と。こういう状態の中で、先ほどいろいろな御教示をいただいたわけでありますが、具体的に本予算のどこを一番どうしてほしいというか、端的にその辺について御指摘いただきたいと思います。

田島公述人 予算については、まず、連合が求めている福祉政策の充実、それと中小企業政策そのものが年々減らされている現状の中で手厚くしていくのと、それとあと、中小企業にとって大変な現実というのは、やはり取引問題。したがって、予算と直接関係ないようですけれども、やはり取引の公正化を図っていかなければ、予算でどれだけ手当てするかという問題とあわせて、基本的な課題について改善していかないといけないだろうというふうに思っています。

 あと、労働者の問題で、やはり雇用対策について一層の充実をお願いしたいというふうに思っています。

小泉(俊)委員 一応時間が参りましたので、大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。また今後とも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。

杉浦委員長代理 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 きょうは、四人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。

 先ほどの公述人のお話の中でも、売り上げは伸びなくても、大企業の方では特に史上空前の利益、数表等を挙げてお話がありました。その一方で、リストラとか、中小企業は単価据え置きで大変な状況が続いておりますから、ですから、そのことは、所得という面でも、それから年金や介護その他のことを考えても、財源をどう支えるかということにかかってくる問題ですから、きょうは、そういう角度から、公述人の方々に順にお伺いしていきたいと思います。

 宮本公述人に伺いたいわけですが、宮本先生は、「消費者情報」のことしの一月号でも、雇用拡大で企業改革を図るべきであるというお考えなど、雇用についても随分切り込んで言っておられますが、私も、この間、厚生労働省の資料を見ておりまして、九七年のあの不況が始まったとき、九七年不況から二〇〇二年までの間で、常雇用の労働者の数が百九十二万人減って、派遣労働の数が百二十八万人ふえている。

 ですから、そこだけでもリストラされている方が多いんですが、常雇用、正規社員をどんどん切ってしまって、派遣労働、不安定雇用をどんどんふやしていくという、このやり方をやっておったのでは本当の意味での景気の回復という力は生まれてこない。それはまた、雇用者所得はふえませんから、減りっ放しですから、税収その他を考えても、大変深刻な問題になると思うわけです。

 そこで、二点。そういう雇用の問題について、先生としては雇用拡大で企業改革をということですが、どう雇用拡大の面でお考えになっておられるか。もう一つは、労働者の所得をふやす。これは引かれる方が余り多くなるとだめなわけですが、可処分所得をふやす、それがGDPの六割を占めております家計消費を伸ばすことになるという面と、もう一つは雇用者所得をふやしてこそ税収が伸びるという、このことをきちっとやはり考えていかなきゃいけないと思いますが、この点について伺いたいと思います。

宮本公述人 お答えいたします。

 私、先生今お話しされましたように、雇用の確保というのは非常に大事だというふうに考えております。

 私、先ほどお答えの中で申し上げさせていただきましたように、こういうふうな形で非常にパートタイマーとか派遣社員という形の雇用がふえて、常雇用が減ってきているというのは、いわゆるアングロサクソン型の経営というものが取り入れられてきたという一つのあらわれではないかというふうに考えております。

 といいますのは、いわゆるこれまでの日本型経営といいますのは雇用というものを非常に大事にしてまいりまして、株主の利益よりも従業員といいますか、企業またその家族的経営というものが維持されてきたわけでありますけれども、バブルがはじけまして、経営が非常に苦しくなってきました段階でいわゆるアングロサクソン型の経営が入ってきた。それは何かといいますと、実は、株主の意向を非常に尊重する、そういう形になってきたというふうに若干考えております。

 そういたしますと、やはり利益を上げないといけない。その一番手っ取り早いといいますか、その場合に、人件費を削減するというふうな形の行動を日本のかなりの企業がとった。これは、私は、これまでの日本型経営の中ではなかった方向転換であろう。

 先ほど申し上げましたように、企業経営といいますのは、基本的には、その国の伝統とか歴史とか民族性とか文化というものが培ってきた経営方針というものが、その国の国民性になじむのではないかというふうに考えております。したがいまして、私は、基本的には、やはり日本では雇用を大事にする、そういう経営というものをもう一度見直していただきたいというふうには考えております。これが第一点であります。

 もう一つは、今先生がおっしゃられましたように、もしそういう常勤の雇用がふえますと、所得が安定いたします。したがいまして、その所得が安定することによって消費の拡大も図ることができるというのは、まさにそのとおりであろうというふうに考えております。したがいまして、雇用を確保し、そして安定した所得を確保することによって消費の拡大、景気の拡大につなげていくということは、非常に大事なことであろうというふうに考えております。

 したがいまして、グローバルな競争時代に日本企業が外国の企業と競争していく、そういう激しい、厳しい状況にはあるわけですけれども、従来の日本的な雇用形態というものをやはりもう一度見直していただくということも必要ではないか、それが、お勤めされている方の所得の増加、それから消費の拡大、そして精神的な安定にやはりつながるのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

吉井委員 今の問題というのは、同時に、地域経済、地方の税収の面でも大変な問題が生まれてきておりまして、ですから、地方税収が落ち込んでいる上に今度の三位一体改革ということで、地方自治体がどこも予算編成から大変だというところに来ております。

 そこで、新藤公述人の方にお伺いいたします。

 二〇〇一年六月の地方分権推進委員会の最終報告の方では、まず税源移譲があって、これに応じて交付税や国庫補助負担金の削減を考えていく。要するに、歳入中立という原則をうたっておりましたが、今度は、今言いましたように、もともと地方税収が落ちている上に国庫補助負担金で一兆三百億円削ってしまう。それから、交付税とさらに交付税見合いの臨財債合わせると二兆八千億円ですから、合計三兆八千億円超えるもの、四兆円ぐらい減って、実際の所得譲与税などによる税源移譲は四千五百億円ですから、一二%しか移らないわけですから、だれが考えてみても、これは歳入中立とは言えないと思うんですが、この点についての公述人のお考えというものを伺っておきたいと思います。

新藤公述人 地方分権推進委員会の最終報告は、今おっしゃったような税源移譲を前提にしたということをおっしゃっている。ところが、その後身ともいうべき地方分権改革推進会議の考え方というのは、私の見るところ、まさに財務省ベースで話を運んだというのが昨年五月のてんまつだったんではないか。そして、六月末の三位一体改革ということになれば、もちろん、他二者からのいろいろ議論はございましたけれども、地方分権推進会議よりは一歩前進だったというふうに言ってもいいかもしれません。

 しかし、現実には、先ほどもお話し申し上げましたが、そしてまた今も御指摘のとおりでございますけれども、これは、三位一体改革の原則といいますか原点を踏み外しており、歳出削減を図るものでしかない。原点に返った対応が政府には求められる。少なくとも、骨太の方針第三弾のあそこに書かれた原則をこの予算においても反映することが求められるというふうに申し上げておきたいと思います。

 ただし、自治体側にももちろん、みずからの努力といいますか改革をせねばならないことは山ほどあるということもまた事実である、そういうふうに申し上げたいと思います。

吉井委員 推進委員会自身の考え方そのものにいろいろな問題はもちろんあります。ただ、その立場に立っても、当初歳入中立と言っておったものから大きく外れてしまっているというところが問題だと思うんです。

 重ねて新藤公述人にお伺いしておきたいと思うんですが、宮沢元総理が大蔵大臣のときだったと思いますが、九〇年代の緊急経済対策でどんと、国は金がないから地方単独事業でやりなさい、後で起債は交付税で面倒見てあげましょうと。どんどんどんどん借金が膨らんでいって、ちょうどどの自治体も今は借金のピークを迎えていて、そういう中での今度の削減ですから、なおのこと大きな問題が今出ております。

 そういう中で、やはり地方の税財源、権限とともに税財源そのものを移して、どう地方自治を拡充していくのかということが基本であるのに、どうも見ておると、そうじゃなくて、国の方の都合で、国の財政が大変だからばっさりやってしまう、そっちが中心になっているというふうに考えざるを得ないんですが、この点についての新藤公述人のお考えを伺っておきたいと思います。

    〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

新藤公述人 ですから、国の財政が極めて大変であるから歳出額を削減し、自治体の側も頑張れやという、この議論ですよね、端的に言ってしまうと。それは、ですから、分権改革推進会議のときにも、西室会長を初めとした会議の多数派はまさにそのように主張をされていたわけであります。

 私は、基本的に考えているのは、まさに、そうではなくて、権限と財源の大幅な移譲を図る、最終消費に応じた国税と地方税のシェア、つまり、四対六を六対四に変える、あるいは、片山前総務大臣は五対五でもいいというようなことをおっしゃったことがございますけれども、少なくともそのレベルを目標とした改革を進めるということが大前提であるというふうに今思っております。

 以上です。

吉井委員 次に田近公述人にお伺いしたいと思いますが、所得税の問題にしても、消費税の問題にしても、お書きになったものなども若干読ませていただいて、私はやはり生計費非課税という原則が大事だろうという考えを持っている者ですが、そういう議論はきょうはちょっとおいておきまして、税収、それから年金、介護の財源ということを考えた場合にも、やはり雇用政策の問題、とりわけ若年者の雇用ということをきちっとやっていかないと、今、若い人たちの非正規の雇用が広がってきて、それは所得が非常に抑えられてしまっているという問題も出ておりますし、一方では将来不安が高まっております。

 この状態が続いていきますと、厚生年金にしろ国民年金にしろ、非正規がふえれば、厚生年金はもともと保険者が減ってしまうし収入も落ち込むわけですが、年金保険料の支払いが困難になってくるということで、その基礎を非常に困難な事態に追い込む、将来不安がますますそれを加速するという点で、税金、年金、介護の財源ということを考えたときに、若年者の雇用をどう確立するか、それを伸ばすかということを考えないと、根本的な問題の一つがやはり欠けてくると思うんですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。

田近公述人 若年者の雇用をどうするかということですけれども、その雇用対策自身の問題と同時に、では、税で何ができるのかという面があると思います。

 今後、若い人、それからあと、今働いていないけれども働く可能性のある人に対する問題としては、アメリカ、イギリス等の国では、働くことに対して税を還付してあげるというような仕組みもあります。だから、税としては、もう少しそういう人に対する支援という形もあり得ると思います。ただ、それは今急ではないと思いますけれども、今後、日本の税制の中では考えなきゃならない問題だと思います。

吉井委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

笹川委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 きょうは、公述人の皆さん方に大変貴重なお話をお聞きすることができました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 最初に、田島公述人にお伺いいたします。

 きょう総務省が発表した労働力調査結果によりますと、一月の完全失業率は五・〇%、前月より〇・一ポイント悪化をしたということが報ぜられております。内訳でいいますと、男性は五・二%で、前月より〇・二ポイント悪化しております。女性は四・六%となっておりまして、前の月より〇・一ポイント改善をした。依然として高い失業率でございます。

 雇用不安というのはますます深刻になったなという感じがするわけでありますが、わけても若年者の失業率というのは極めて深刻ですね。平成十四年度の統計でいいますと、二十四歳以下の完全失業率は九・九%。私の住んでいる沖縄県でも、失業率は全国平均の約二倍、また、若年労働者の失業率というのは極めて高いんですね。

 さらに問題なのは、フリーターがふえておるという問題ですね。昨日の公聴会で、連合の草野事務局長が公述人として、四百十七万人という数字も発表しておりました。このフリーターの数字についてはいろいろな見方、統計があるようでございます、二百万人という数字もありますが、いずれにしろ、若者の間では、最初から働くことをあきらめてしまうという人も多いようであります。

 田島公述人は、若年労働者の深刻な失業の問題、それから増加する一方のフリーターの問題についてはどのようなお考えでしょうか、お聞かせください。

田島公述人 日本社会といいますか、社会生活にとって、やはり労働あるいは雇用というのは非常に大切な政策だろうというふうに思っています。本日、五・〇%が発表されたそうですけれども、現在、実態としてはもっともっと多いなというのが肌身に感じている実感です。これは、もう就職をあきらめてしまった人とか家庭に入った人は失業率に入らないわけですし、もっと膨大な数の、いわゆる実態としては失業実態があるんだと。これを、やはり雇用の場を広げていくという意味で、連合そのものが、若者への就職支援で二千二百八十億円の予算要求をしていたり、あるいは転職者に対してのトライアル雇用を広げていこうという要求をしています。

 そういう意味では、政策として、できる課題について政治の場で積極的に取り組んでいくと同時に、やはり現在、リストラが進んで収益が回復しているよ、しかし今、雇用のある人たちは今まで以上に忙しく働いている現実があるわけですね。不払い残業といいますか、いわゆる違法な残業があるわけですから、そういう違法状態をなくすことによって雇用の場を広げていく道が必要だろうというふうに思っています。

 あと、若者のフリーターについては、先ほども述べさせていただきましたけれども、いわゆる雇用の多様化と言っていますが、若者が好きこのんでフリーターになっているのか、あるいはもう正社員の道がなくてやむを得ずフリーターになっているかによって、大きく政策が変わってくるだろうというふうに思っています。最初からフリーターではなくて、まともに働いて、あるいは安心して働きたいよという思いを持って正社員で入ったとしても、よく言われるのが、七五三現象というふうに言われていますけれども、三年たったら中卒七割、高卒五割、大卒三割がやめているという現状の中で、雇用の場があっても安心して働けないという現実、これはもう失業面の裏返し、雇用の場がだんだんに権利低下あるいは労働条件が悪化をしている裏返しだろうというふうに思います。

 フリーターについては、やはり労働者本人、働く、希望する本人が選択する道をどう広げていくのかというのがこれからは大切なことだろうというふうに思いますし、あと、やはり政治の場で、雇用の場をふやしていく政策拡充を求めていきたいというふうに思います。

照屋委員 先ほどの田島公述人の意見を拝聴しておりまして、正規雇用がどんどん減って、逆に非正規雇用がふえているという実態がよくわかりました。

 確かに、日常的に経済活動の現場で私どもが実感するのも、パートタイマーだとか臨時社員、臨時職員、臨時雇用がふえているということが現認できるわけでありますが、これは単に、雇用の多様化で結構じゃないか、いいことじゃないかという評価は私はできないんだと思うんですね。本当に雇用の流動化現象と言うべき、このようなことが起こっているんではないかと思います。その理由として、人件費の節約のため、あるいは景気変動に応じて雇用量を調整するため、こういうことであれば、なおまた大きな問題だなというふうに思っております。

 田島公述人は、雇用形態による格差や差別をなくしたい、こういう趣旨のことをおっしゃっておりましたが、政治の場に身を置く私たちが自覚をして取り組まなければならない課題というか、立法上、制度上の対策を含めて、御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

田島公述人 先ほども、努力した人が報われる社会というやりとりがありましたけれども、本当に努力した者が報われるのかなと。努力をしてもしても報われない不条理が広がっているなという思いをしています。

 勤めた企業、大手と中小あるいは子会社で格差があって当たり前、あるいは正社員とパート、派遣が労働条件が違って当たり前、いわゆる同じ労働、同じ質の働き方をしても、その格差が当たり前という社会をやはりなくして、そして、同じ労働をしているんだったら同じように処遇をされるということがなければ、社会そのものがおかしくなってしまうだろうというふうに思います。

 そういう意味では、そういう不条理をなくすのが、僕は、政治の大きな役割であるというふうに思うし、雇用の側面でいえば、やはり雇用形態による採用の動機そのものが、人件費が格安になるからとか雇用調整がしやすいからということではなくて、その人の能力を活用したい、あるいは仕事の繁閑にやはり必要なんだという本来の多様化の道を歩むべきであって、人件費が安いからとか雇用調整しやすいというのを動機にさせないことが不条理をなくす道ではないかというふうに肌身で感じています。

 契約労働者の場合には、有期で、もう期限が近くなると、自分はまた雇用の継続があるのか、打ち切られるんではないかということで不安を抱えているし、あるいはそういう人たちがいわゆる憲法で保障されている労働組合を立ち上げて頑張ろうと思っても、自分は有期だから組合結成なんかしてにらまれたら大変だという思いで、団結権さえ保障されないという構造をやはり変えていきたいというふうに思っています。

照屋委員 最後に、新藤公述人に一点だけお伺いいたします。

 私は、これまで新藤教授の本や論文を読むように努めてまいりましたけれども、予算の財務省原案が発表されたときの論評を新聞で読ませていただきました、財政はもう破綻に近いのではないかということを含めて。

 個別のことになりますけれども、その際に、刑務所整備費や出入国審査体制の強化に予算を多く使って、若年雇用者対策費は少ない、これにお触れになりまして、政権は治安や管理の強化を志向しつつも、国民の間に高まる雇用不安や将来不安への危惧を直視せずに、それぞれ個人が自己責任で考えなさいと言っているに等しい、こういう批判をしておりました。それは私も同感でございます。

 きょうお伺いしたいのは、その論評の中で、公共投資の重点配分のあり方との関連で、目先を変えた土建国家の継続でしかない、こういうふうにおっしゃっておりましたが、その点について、もう少しお話をお伺いできればと思っています。

新藤公述人 時間が限られておりまして残念でございますが、要するに、あそこで申し上げたいのは、公共事業費そのものの総額は補助金の削減をしている。ただし、先ほど少し話をさせていただきましたが、全般的なものの削減とは別に、例えば都市再開発という形で新規プロジェクトが出されているわけですね。しかもそれが、かつてのシーリングのやり方とは違って、次々と特別枠をつくってその手の事業をしている。それが、土建国家からの脱却と言いながらも目先を変えた継続ではないかというふうにお書きいたした理由でございます。

 以上です。

照屋委員 終わります。

笹川委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人の四名の先生方、きょうは大変お忙しい中、本委員会に御出席を賜りまして、貴重なる御意見を陳述していただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼申し上げます。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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