衆議院

メインへスキップ



第1号 平成26年2月26日(水曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成二十六年二月二十四日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十五日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      林  幹雄君    船田  元君

      岡田 克也君    坂本祐之輔君

二月二十五日

 林幹雄君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十六年二月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 林  幹雄君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      白石  徹君    船田  元君

      前田 一男君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    岡田 克也君

      後藤 祐一君    武正 公一君

      吉田  泉君    今村 洋史君

      上西小百合君    上野ひろし君

      坂本祐之輔君    中丸  啓君

   兼務 辻元 清美君 兼務 佐藤 英道君

   兼務 樋口 尚也君 兼務 古屋 範子君

   兼務 杉本かずみ君 兼務 畠中 光成君

   兼務 笠井  亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (国家安全保障強化担当) 菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)

   (福島原発事故再生総括担当)           根本  匠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)

   (国土強靱化担当)

   (防災担当)       古屋 圭司君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)

   (海洋政策・領土問題担当)            山本 一太君

   国務大臣

   (女性活力・子育て支援担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   森 まさこ君

   国務大臣

   (行政改革担当)

   (公務員制度改革担当)

   (再チャレンジ担当)

   (クールジャパン戦略担当)

   (規制改革担当)     稲田 朋美君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   復興副大臣        谷  公一君

   内閣府副大臣       後藤田正純君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   内閣府副大臣

   兼復興副大臣       岡田  広君

   総務副大臣

   兼内閣府副大臣      関口 昌一君

   外務副大臣        岸  信夫君

   経済産業副大臣

   兼内閣府副大臣      赤羽 一嘉君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   厚生労働大臣政務官    赤石 清美君

   農林水産大臣政務官    横山 信一君

   国土交通大臣政務官    中原 八一君

   国土交通大臣政務官

   兼復興大臣政務官     坂井  学君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   衆議院事務総長      鬼塚  誠君

   参議院事務総長      中村  剛君

   裁判官弾劾裁判所事務局長 阿部 芳郎君

   裁判官訴追委員会事務局長 岡本  修君

   国立国会図書館長     大滝 則忠君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    小松 一郎君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      原  恒雄君

   会計検査院長       河戸 光彦君

   会計検査院事務総局次長  川滝  豊君

   会計検査院事務総局第一局長            鈴木 繁治君

   会計検査院事務総局第三局長            堀部  貢君

   最高裁判所事務総長    大谷 直人君

   最高裁判所事務総局経理局長            垣内  正君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  由木 文彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  佐々木裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  谷脇 康彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  能化 正樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  北村 博文君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 持永 秀毅君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   西崎 文平君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   日原 洋文君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   武川 光夫君

   政府参考人

   (内閣府北方対策本部審議官)           山本 茂樹君

   政府参考人

   (宮内庁次長)      山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  辻  義之君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗生 俊一君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    倉田  潤君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          三井 秀範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    細溝 清史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 青木 信之君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           室田 哲男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長谷川浩一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 南   博君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   梶川 幹夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中岡  司君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       半田 有通君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西山 圭太君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           大橋 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            鈴木 英夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉基盤整備総合調整官)    藤原 正彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     吉田 光市君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           田村  計君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         望月 明彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         清水  亨君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局次長)       加藤 久喜君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       塚原 太郎君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  山本 哲也君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 鈴木 康裕君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 吉田 正一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  中島 明彦君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  山内 正和君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

   安全保障委員会専門員   齋藤久爾之君

   決算行政監視委員会専門員 平川 素行君

   衆議院調査局第三特別調査室長           清水  敦君

   衆議院調査局東日本大震災復興特別調査室長     宮部  光君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     白石  徹君

  船田  元君     勝沼 栄明君

  岡田 克也君     階   猛君

  坂本祐之輔君     今村 洋史君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     宮川 典子君

  白石  徹君     宮崎 謙介君

  階   猛君     武正 公一君

  今村 洋史君     中丸  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     船田  元君

  宮崎 謙介君     大野敬太郎君

  武正 公一君     吉田  泉君

  中丸  啓君     丸山 穂高君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     前田 一男君

  吉田  泉君     近藤 洋介君

  丸山 穂高君     上野ひろし君

同日

 辞任         補欠選任

  前田 一男君     衛藤征士郎君

  近藤 洋介君     三日月大造君

  上野ひろし君     上西小百合君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     後藤 祐一君

  上西小百合君     山之内 毅君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤 祐一君     岡田 克也君

  山之内 毅君     坂本祐之輔君

同日

 第二分科員辻元清美君、第四分科員笠井亮君、第五分科員佐藤英道君、古屋範子君、第六分科員樋口尚也君、第七分科員畠中光成君及び第八分科員杉本かずみ君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十六年度一般会計予算

 平成二十六年度特別会計予算

 平成二十六年度政府関係機関予算

 (皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

林主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁及び防衛省所管並びに他の分科会の所管以外の事項についての審査を行うことになっております。

 平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算及び平成二十六年度政府関係機関予算中皇室費について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。山本宮内庁次長。

山本(信)政府参考人 平成二十六年度における皇室費の歳出予算について、その概要を御説明申し上げます。

 皇室費の平成二十六年度における歳出予算要求額は、六十一億四千九百八十四万六千円でありまして、これを前年度当初予算額六十億七千七百六十一万六千円と比較いたしますと、七千二百二十三万円の増額となっております。

 皇室費の歳出予算に計上いたしましたものは、内廷に必要な経費、宮廷に必要な経費及び皇族に必要な経費であります。

 以下、予定経費要求書の順に従って事項別に申し述べますと、内廷に必要な経費三億二千四百万円、宮廷に必要な経費五十五億六千三百三万七千円、皇族に必要な経費二億六千二百八十万九千円であります。

 次に、その概要を御説明いたします。

 内廷に必要な経費は、皇室経済法第四条第一項の規定に基づき、同法施行法第七条に規定する定額を計上することになっておりますが、前年度と同額となっております。

 宮廷に必要な経費は、内廷費以外の宮廷に必要な経費を計上したものでありまして、その内容といたしましては、皇室の公的御活動に必要な経費七億四千三百二万四千円、皇室用財産維持管理等に必要な経費四十八億二千一万三千円でありまして、前年度に比較して七千十九万六千円の増額となっております。

 皇族に必要な経費は、皇室経済法第六条第一項の規定に基づき、同法施行法第八条に規定する定額によって計算した額を計上することになっておりますが、前年度に比較して二百三万四千円の増額となっております。これは、文仁親王第二女子佳子内親王の御成年に伴うものであります。

 以上をもちまして平成二十六年度皇室費の歳出予算要求額の説明を終わります。

 よろしく御審議くださいますようお願いをいたします。

林主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

林主査 次に、国会所管について審査を進めます。

 まず、衆議院関係予算の説明を聴取いたします。鬼塚衆議院事務総長。

鬼塚事務総長 平成二十六年度衆議院関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十六年度国会所管衆議院関係の歳出予算要求額は、七百三十九億六千万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、十九億八千五百万円余の増額となっております。

 その概要を御説明申し上げますと、国会の権能行使に必要な経費として四百四十二億七千万円余、衆議院の運営に必要な経費として二百五億四千六百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、議員関係の諸経費、事務局及び法制局の事務を処理するために必要な経費でございます。

 増加した主なものは、歳費等の特例減額の終了に伴う議員歳費及び職員人件費等でございます。

 また、衆議院施設整備に必要な経費として十一億六千八百万円余、民間資金等を活用した衆議院施設整備に必要な経費として七十九億六千八百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、議事堂本館等の施設整備費、新議員会館等の整備に係る不動産購入費でございます。

 このほか、国会予備金に必要な経費として七百万円を計上いたしております。

 以上、平成二十六年度衆議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

林主査 次に、参議院関係予算の説明を聴取いたします。中村参議院事務総長。

中村参議院事務総長 平成二十六年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十六年度国会所管参議院関係の歳出予算要求額は、四百三十八億四千四百万円余でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、約二億円の減額となっております。

 その主な内訳は、議員歳費等の特例減額の終了に伴い所要の経費が増額となる一方、参議院通常選挙の実施に伴う経費が減額となること等でございます。

 その概要を御説明申し上げます。

 まず、国会の権能行使に必要な経費として二百二十九億五千五百万円余、参議院の運営に必要な経費として百五十四億五千六百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、議員活動に係る諸経費並びに事務局及び法制局の所掌事務を処理するために必要な経費でございます。

 次に、参議院施設整備に必要な経費として十一億五千八百万円余、民間資金等を活用した参議院施設整備に必要な経費として四十二億六千八百万円余を計上いたしております。

 これらの経費は、本館その他庁舎の整備等に必要な経費及び新議員会館の整備に係る不動産購入費でございます。

 最後に、国会予備金に必要な経費として五百万円を計上いたしております。

 以上、平成二十六年度参議院関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

林主査 次に、国立国会図書館関係予算の説明を聴取いたします。大滝国立国会図書館長。

大滝国立国会図書館長 平成二十六年度国立国会図書館関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十六年度国会所管国立国会図書館関係の歳出予算は、一般会計予算と東日本大震災復興特別会計予算から構成されております。

 このうち、まず、一般会計に係る歳出予算要求額は、百九十五億九百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、七億二千万円余の増額となっております。

 増加した主なものは、職員給与の特例減額の終了に伴う職員人件費等でございます。

 その概要を御説明申し上げます。

 第一は、運営に必要な経費でありまして、人件費等として九十三億九千四百万円余を計上いたしております。

 第二は、業務に必要な経費でありまして、国会サービス経費及び情報システム経費等として七十四億三千百万円余を計上いたしております。

 第三は、科学技術関係資料の収集整備に必要な経費でありまして、十億九千二百万円余を計上いたしております。

 第四は、施設整備に必要な経費でありまして、十五億九千万円余を計上いたしております。

 次に、東日本大震災復興特別会計に係る歳出予定額は、一億九千百万円余でありまして、東日本大震災アーカイブの運用に要する経費を計上いたしております。

 以上、平成二十六年度国立国会図書館関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

林主査 次に、裁判官弾劾裁判所関係予算の説明を聴取いたします。阿部裁判官弾劾裁判所事務局長。

阿部裁判官弾劾裁判所参事 平成二十六年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十六年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係の歳出予算要求額は、一億七百三十九万円余でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、九百六十五万円余の増額となっております。

 この要求額は、裁判官弾劾裁判所における事務局職員の給与に関する経費及び事務処理費並びに裁判官弾劾法に基づく裁判官の弾劾裁判に直接必要な旅費及び庁費でございます。

 以上、裁判官弾劾裁判所関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

林主査 次に、裁判官訴追委員会関係予算の説明を聴取いたします。岡本裁判官訴追委員会事務局長。

岡本裁判官訴追委員会参事 平成二十六年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十六年度国会所管裁判官訴追委員会関係の歳出予算要求額は、一億二千三百四十一万円余でございまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、九百六十九万円余の増額となっております。

 この要求額は、裁判官訴追委員会における事務局職員の給与に関する経費、訴追事案の審査に要する旅費及びその他の事務費でございます。

 以上、裁判官訴追委員会関係歳出予算の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

林主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

林主査 次に、裁判所所管について審査を進めます。

 最高裁判所当局から説明を聴取いたします。大谷事務総長。

大谷最高裁判所長官代理者 平成二十六年度裁判所所管歳出予算について御説明申し上げます。

 平成二十六年度裁判所所管歳出予算の総額は、三千百十億五千八百万円でありまして、これを前年度当初予算額二千九百八十八億七千八百万円と比較いたしますと、差し引き百二十一億八千万円の増加となっております。

 次に、平成二十六年度歳出予算のうち、主な事項について御説明申し上げます。

 まず、人的機構の充実、すなわち、裁判官及び書記官の増員等であります。

 かねてより裁判所の体制の充実強化が求められている中で、民事訴訟事件の審理充実及び家庭事件処理の充実強化のため、裁判官は、判事三十二人、書記官は二十九人、合計六十一人の増加をすることとしております。なお、このほかに、速記官等から書記官への振りかえ十五人も計上しております。

 他方、政府の定員合理化計画への協力として六十五人の定員削減をすることとしておりますので、差し引き四人の純減となります。

 次は、司法の体制の充実強化に必要な経費であります。

 まず、裁判事務処理態勢の充実を図るため、百五十八億二千四百万円を計上しております。

 その内容について申し上げますと、第一に、民事事件関係経費として四十三億八千六百万円を計上しております。この中には、民事調停委員手当、労働審判員関連経費等が含まれております。

 第二に、刑事事件関係経費として四十七億千六百万円を計上しております。この中には、裁判員制度関連経費、心神喪失者等医療観察事件関連経費等が含まれております。

 第三に、家庭事件関係経費として六十七億二千二百万円を計上しております。この中には、家事調停委員手当等が含まれております。

 また、庁舎の耐震化等のための経費として百四十億三千九百万円を計上しております。

 以上が、平成二十六年度裁判所所管歳出予算の概要であります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

林主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

林主査 次に、会計検査院所管について審査を進めます。

 会計検査院当局から説明を聴取いたします。河戸会計検査院長。

河戸会計検査院長 平成二十六年度会計検査院所管の歳出予算について御説明申し上げます。

 会計検査院の平成二十六年度予定経費要求額は、百七十億四千六百万円余でありまして、これを前年度予算額百五十九億二千三百万円余に比較いたしますと、十一億二千二百万円余の増額となっております。

 ただいま申し上げました要求額は、日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく会計検査院の運営及び会計検査業務に必要な経費等であります。

 次に、その概要を御説明申し上げます。

 まず、会計検査院の運営に必要な経費として百五十一億五千三百万円余を計上いたしております。これは、会計検査に従事する職員等の人件費及び庁舎の維持管理等に必要な経費であります。

 次に、会計検査業務に必要な経費として十八億二千三百万円余を計上いたしております。これは、国内外における実地検査等のための旅費及び検査活動を行うためのシステムの開発・運用等に必要な経費並びに検査活動に資する研究及び検査能力向上のための研修に必要な経費であります。

 次に、会計検査院施設整備に必要な経費として六千九百万円余を計上いたしております。

 以上、会計検査院の平成二十六年度予定経費要求額の概要を御説明申し上げました。

 よろしく御審議のほどお願いいたします。

林主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

林主査 次に、内閣及び内閣府所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。菅内閣官房長官。

菅国務大臣 平成二十六年度の内閣及び内閣府関係予算について、その概要を御説明申し上げます。

 内閣所管の平成二十六年度における歳出予算要求額は千百四十一億五千百万円でありまして、これを前年度当初予算額九百六十九億五千五百万円に比較しますと、百七十一億九千六百万円の増額となっております。

 要求額の内訳といたしまして、内閣官房には、情報収集衛星システムの運用・開発等、内閣の重要政策に関する総合調整等のための経費として千十三億八千九百万円、内閣法制局には、法令審査等のための経費として十億七千四百万円、人事院には、人事行政等のための経費として百十六億八千九百万円を計上しております。

 次に、内閣府所管の平成二十六年度における歳出予算要求額は九千六百二十三億六千二百万円でありまして、これを前年度当初予算額七千三百三十一億四千万円に比較しますと、二千二百九十二億二千二百万円の増額となっております。

 要求額の内訳としまして、内閣府本府には、経済財政政策、科学技術イノベーション政策、規制改革、公文書管理制度、国民の安全・安心の確保、暮らしと社会、国家戦略特区、地域活性化、沖縄政策、北方対策、宇宙空間の開発・利用等の推進のための経費として六千五百三十七億七千二百万円、宮内庁には、その人件費、事務処理のための経費として百六億九千万円、公正取引委員会には、厳正かつ実効性のある独占禁止法の運用、消費税転嫁対策を含む中小企業に不当に不利益を与える行為の取り締まり強化、競争環境の整備等のための経費として百十三億二千百万円、警察庁には、警察庁、その附属機関及び地方機関の経費並びに都道府県警察費補助等のための経費として二千五百十四億五千九百万円、特定個人情報保護委員会には、社会保障・税番号制度における適正な特定個人情報の取り扱いの監視・監督等のための経費として六億一千五百万円、金融庁には、金融庁一般行政、金融市場整備推進、金融機能安定確保等のための経費として二百三十億二千百万円、消費者庁には、食品表示の適正化及び充実、悪質商法による高齢者被害の防止などを目的とした地域体制づくり等のための経費として百十四億八千四百万円を計上いたしております。

 以上をもって平成二十六年度の内閣及び内閣府関係予算の概要の説明を終わります。

 よろしく御審議をお願いします。

林主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

林主査 次に、復興庁所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。根本復興大臣。

根本国務大臣 平成二十六年度復興庁予算について御説明申し上げます。

 まず、復興庁においては、東日本大震災からの復興を円滑かつ迅速に推進するための予算として、総額二兆二千四百四十一億円を計上しております。

 以下、その主要施策について御説明申し上げます。

 第一に、被災者支援については、被災者の方々の住宅再建、被災した学生の修学等を引き続き支援するとともに、被災者の避難の長期化が見込まれる中、心のケア等の被災者の健康、生活面での支援を着実に進めるために必要な経費として千百十七億円を計上しております。

 第二に、町の復旧復興については、津波被災地において、防災集団移転促進事業等の事業着手が着実に進展しており、まちづくりの動きが本格化しつつある状況を踏まえ、東日本大震災復興交付金等により、引き続き復興まちづくりの加速化を図るために必要な経費として一兆三千二百九十六億円を計上しております。

 第三に、産業の振興、雇用の確保については、着実に進んでいる産業の復興の動きを確実なものとするため、被災した中小企業や農林漁業者等の復旧復興の取り組みを引き続き支援するために必要な経費として千三百六億円を計上しております。

 第四に、原子力災害からの復興再生については、福島の復興再生について、除染、放射性物質汚染廃棄物処理を加速するとともに、昨年八月の避難指示区域の見直し完了を受け、福島再生加速化交付金等により、長期避難者のための支援策、早期帰還支援策等を引き続き推進するために必要な経費として六千六百億円を計上しております。

 その他、「新しい東北」先導モデル事業等の実施に必要な経費として所要額を計上しております。

 なお、東日本大震災復興特別会計においては、復興庁所管予算に加え、復興加速化・福島再生予備費や震災復興特別交付税交付金など一兆四千二十三億円を計上しており、東日本大震災復興特別会計予算全体では三兆六千四百六十四億円を計上しております。

 以上、平成二十六年度の復興庁予算の概要について御説明申し上げました。

 何とぞよろしくお願いいたします。

林主査 以上で説明は終わりました。

 それでは、御退席くださって結構です。

    ―――――――――――――

林主査 次に、防衛省所管について審査を進めます。

 政府から説明を聴取いたします。小野寺防衛大臣。

小野寺国務大臣 平成二十六年度の防衛省関係予算について、その概要を御説明申し上げます。

 平成二十六年度予算においては、一層厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、国民の生命財産及び我が国の領土、領海、領空を守る態勢を強化するため、先般新たに策定された平成二十六年度以降に係る防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づき編成される初年度の予算として、統合機動防衛力の構築に向けた防衛力整備を着実に実施することとしております。

 具体的には、各種事態における実効的な抑止及び対処並びにアジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善といった防衛力の役割をシームレスかつ機動的に果たすよう、統合機能のさらなる充実に留意しつつ、特に、警戒監視能力、情報機能、輸送能力及び指揮統制・情報通信能力のほか、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応、宇宙空間及びサイバー空間における対応、大規模災害等への対応並びに国際平和協力活動等への対応を重視し、必要な事業を計上することができたと認識しております。

 平成二十六年度の防衛関係費の一般会計歳出予算額は四兆八千八百四十七億九千四百万円となり、前年度の当初予算額に比べ、一千三百十億一千六百万円の増となっております。

 新たな継続費の総額は、平成二十六年度護衛艦建造費で七百四十二億五千五百万円、平成二十六年度潜水艦建造費で五百十九億九千七百万円となっております。また、国庫債務負担行為の限度額は、武器購入、航空機購入、弾薬購入、武器車両等整備、提供施設整備等で二兆一千八十二億一千二百万円となっております。

 また、東日本大震災からの復旧復興に係る経費を、平成二十六年度一般会計とは別途、東日本大震災復興特別会計に歳出予算額三百七十億七千三百万円、国庫債務負担行為の限度額八十一億二千七百万円を計上しております。

 これをもちまして平成二十六年度の防衛省関係予算の概要の説明を終わります。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります資料を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

林主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま小野寺防衛大臣から申し出がありましたとおり、防衛省所管関係予算の概要につきましては、その詳細は説明を省略し、本日の会議録に掲載したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林主査 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

林主査 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝沼栄明君。

勝沼分科員 おはようございます。自由民主党の勝沼栄明です。

 本日は、予算委員会第一分科会におきまして、このようにトップバッターとして質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 また、小野寺防衛大臣におかれましては、日ごろより、国防のかなめとして獅子奮迅の御活躍、心より感服いたしている次第でございます。

 さて、同僚議員にはもはや忘れられていることなのですが、私は医者をやっておりました。その経験と北部方面衛生隊の予備役であった経験から、自衛隊の医療体制、とりわけ防衛医大に関しまして質問をさせていただきたいと思います。

 有史以来、特に近代におきましては、大きな戦争が劇的に医療を進歩させてきたと言われております。例えば、第一次世界大戦におきましては、戦闘員の体内機能の監視のためにエックス線や心電図が発達しました。また、第二次世界大戦におきましては、戦争中のペニシリン需要に応えるためにその量産体制が確立されたりと、枚挙にいとまがございません。

 また、最新の医療技術には、レーザーやCT、また重粒子線治療でのターゲティングなど、本来、軍事技術であったものを転用したものが多く見られ、軍事と医療は、元来、切っても切り離せない関係にあると言えます。

 戦場においても、例えば、実戦をいつの時代も経験してきたアメリカ軍などは、軍事医学研究を積極的に推進することで救命率を向上し、負傷兵のケアを行い、死傷者ゼロ、いわゆるゼロカジュアルティーに向けて国全体で取り組んでおります。

 さらに、彼らは、軍の衛生部門の強化だけではなく、第一線の兵士に衛生兵並みの技術と能力を持たせるための教育を行い、装備を持たせ、後送体制を整備し、戦地においても自国内と同等レベルの医療が受けられるような体制を整えつつあります。

 では、そういったアメリカの取り組みと比べて、我が国自衛隊での医療体制はどうでしょうか。

 半世紀以上にわたり実戦経験がないこともあり、決してというか、とても満足できるような衛生支援体制はいまだ構築できていないというのが現状だと思います。

 しかし、近年、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増し、弾道ミサイル攻撃、ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応、阪神・淡路大震災、東日本大震災のような大災害への対応、国連平和維持活動、国際テロ、海賊行為への対処、パンデミックへの対応など、自衛隊衛生の任務は多様化しております。また、我が国が掲げる国家安全保障戦略の理念である積極的平和主義に鑑みれば、ますます自衛隊衛生部門に求められる多様性、重要性は増すと思われます。

 平成二十六年度以降に係る防衛大綱におきましても、自衛隊病院の拠点化、高機能化等の推進、防衛医科大学校病院等の運営の改善、事態対処時における救急救命措置に係る制度改正を含めた検討、迅速な後送体制の整備等の文言が入っております。

 恐らく、自衛隊の医療体制に対する問題意識は、我々も政府も以前から共通するものがあると思っております。実際、二〇〇九年、今から四年も前になりますが、自衛隊病院等在り方検討委員会が開かれ、報告書を出しております。そこには、「医官等の低充足などに起因する部隊への衛生支援の限界、自衛隊病院の病床利用率の低さなどに起因する医官等の医療技術の維持・向上の制約、医療設備等の老朽化・陳腐化の現状など、自衛隊衛生全体の能力低下への懸念が顕在化してきている。」といった指摘もなされており、それを受けて、民主党政権におきましては、防衛力の実効性向上のための構造改革推進に向けたロードマップにも衛生機能の強化がうたわれておりました。

 では、そのロードマップに従って、具体的な何らかの改善策はとられたのでしょうか。その成果とあわせて、お答え願います。

鈴木(康)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のロードマップでございますけれども、防衛医大、それからその病院につきましては、五点の課題が示されております。

 まず一点目は、防衛医大の学生の防衛大学校での訓練でございます。これにつきましては、平成二十四年度から、第一学年の学生について、基本教練、それから学生舎生活というのを二週間実施しております。

 それから二点目は、防衛医大の卒業生を防衛医大に配置するということでございました。これについては、平成二十四年までに既に十六名配置をされておりましたけれども、それに加えて、平成二十五年四月に外科に一名、それから同十月に救急部に一名ということで医官を配置いたしました。

 三点目は、医官の卒後研修としての必要な症例数の確保、特に手術室の稼働状況の確保ということでございます。これについては、平成二十五年度の予算について看護師を増員いたしまして、手術室の稼働率を上げました。さらに、平成二十六年度予算については現在要求中でございますけれども、これも看護師を八名増員いたしまして、集中治療部、ICUでございますが、これの病床数を増加させようということで要求をしております。

 四点目は、看護師の学生教育及び卒後教育に必要な体制の準備ということでございますが、これは、自衛隊の中央病院の高等看護学院、それから防衛医科大学校の高等看護学院をこのたび廃止いたしまして、二十六年四月に合同させて、防衛医科大学校の医学教育部に看護学科を新設するということで、ことし四月からでございます。

 最後に、医療資格保有隊員の臨床研究の場として防衛医大を活用するということでございますが、これは、従前より特に救急救命士の実習を実施しておりますけれども、今後さらにそうした研修を強化してまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 では、そのロードマップと順番は前後いたしますが、二〇一一年三月十一日、東日本大震災が発災いたしました。その爪跡は余りにも深く、復旧復興は大分進展したとはいえ、約三年たってしまった今も避難されている方は二十七万人にも及び、福島第一原発の問題が大きく横たわるなど、いまだ道半ばでございます。その一方で、発災当時の自衛隊の皆様の被災者への献身的な働きに日本じゅうが感銘を受け、国民と自衛隊の距離が非常に縮まったことは記憶に新しいことでございます。

 では、東日本大震災において、防衛医大病院そして自衛隊病院の動き並びに支援はどうであったんでしょうか。具体的に御教示をお願いいたします。

鈴木(康)政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災においてでございますけれども、防衛省・自衛隊の衛生部門ですが、被災各地に応急救護所を開設いたしまして、被災者の診療、健康相談というものに当たったほか、自衛隊医官を含む衛生科隊員による巡回診療、健康相談などを実施しました。また、自衛隊の仙台病院それから海上自衛隊の八戸駐屯地の医務室においては被災患者の診療を行いました。

 具体的には、避難所での診療、健康相談が約二万三千件、それから宮城県の精神保健福祉センターでの健康相談が約五百件、仙台病院での被災者診療が約五千件、歯科医官における遺体の所見採取それから照合作業、これが約七百三十件でございます。

 また、これに加えまして、防衛医大においては、埼玉県との協定に基づいて、防衛医大のDMATを、これは災害派遣医療チームでございますけれども、入間基地に派遣するということとともに、宮城県内の遺体安置所支援を行う各職員のメンタルケア、さらに御遺体の検案支援というものに努めてまいりました。

 今後とも、一人でも多くの国民の生命を守ることができるよう、隊員の派遣など、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 DMATを防衛医大は一チーム出したとのことでしたが、私も、各地方自治体で出しているDMAT等が非常に活躍していたという経緯がございますので、自衛隊病院、防衛医大病院の規模等を考えるともうちょっと頑張ってもらいたかった、少し寂しい気がしております。日本赤十字病院やほかの民間病院の方も非常に頑張っていらっしゃったので、本当に、もう少し働いていただきたかったというのが私の率直な意見でございます。

 自衛隊衛生の中核は、言うまでもなく、防衛医大病院であり、そして自衛隊病院です。先ほども述べましたように、自衛隊衛生に求められるものはますます多様化し、さらにその重要性は増しております。その一つが、いみじくも、今回の東日本大震災での働きではなかったのでしょうか。その期待に十分に応えられたとは、ちょっとお世辞にもまだまだ言えない状況かと思います。

 では、そもそも、防衛医大病院を擁する防衛医大とはどういった医科大学校なのでしょうか。防衛医大を除く全ての医学部、医大が文部科学省管轄なのに対して、唯一、防衛省が管轄し、さらに臨床研修も厚生労働省ではなく防衛省が管轄し、また予算も全て防衛予算から出ています。非常に特殊な存在と言えます。

 それでは、防衛医科大設立の経緯並びにその目的を教えてください。

鈴木(康)政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛医科大学校でございますけれども、そもそもの経緯は、自衛隊員の壮健性を維持し、部隊等の任務遂行を確実に支援するため、自衛隊衛生の中核となる医官は、医者でございますけれども、必要不可欠でございましたけれども、当時の防衛庁として、医官の充足率が低いということを問題視しておりまして、これを抜本的に解消し、自前で恒常的に補充することができるよう、昭和四十八年に防衛医科大学校を設置することにいたしました。

 ちなみに、昭和四十七年度末の医官の充足率は三二・一%でございますけれども、現在、平成二十五年十二月段階でございますけれども、七八・九%ということで大幅に向上しております。

 防衛医科大学校の設置の目的についてお尋ねがございました。

 二つございまして、一つは、医師である幹部自衛官となるべき者の教育訓練、これは医学生の教育ということでございます。それからもう一つは、その課程を修了した者に対する、自衛隊の任務遂行に必要な医学に関する高度な教育訓練、この二つになっております。今後とも、その機能の強化に向けて努力をしてまいりたいというふうに思っております。

勝沼分科員 ただいまの御答弁の設立の目的の中で、任務遂行に必要な医学とありましたが、それは具体的にはどういったものでしょうか。お答え願います。

鈴木(康)政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊衛生の任務、責務でございますけれども、これは先ほどもちょっと申し上げましたが、隊員の壮健性の維持に大きく関与するということが大きな目的でございます。

 大きく三つぐらい目的がある、責務があるというふうに、必要な医学については思っております。

 一つは、平素において、隊員の健康管理、それからメンタルヘルスケア、こうした総合診療的な技量、技能というのが必要になるというふうに思っております。

 二つ目は、有事、それから大規模な災害への備えということでございますが、これは重症な外傷等が多く出てございますので、災害医療、それから救急医療というものがやはり特殊に必要だということになろうと思います。

 最後の三点目は、近年、PKO、それから国際緊急援助等々、海外での活動がふえておりますので、そういう意味では、例えば熱帯感染症等についての知見というものも求められているということだと思います。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 私も独自に防衛医大並びに防衛医大病院の現状を調べてみたんですけれども、やはり理想というか、掲げた理念と現実はどうしても乖離があるなというのが率直な感想であります。

 先ほどおっしゃった、任務遂行に必要な医学を習得して、さらにそれを修練する場所として、防衛医大及び防衛医大病院がその責務を本当に果たせているのか、正直疑問が残ります。

 防衛医大病院は、特定機能病院に指定されております。特定機能病院の数は全国に八十大学病院あるのですが、他施設と比較した場合、医師数は七十五位、看護師数は七十八位、各種コメディカル職員数は全て七十五位以下になっています。事務職員に至っては最下位で、一位の広島大学病院に比べて九分の一以下となっております。著しい職員不足を抱えております。したがって、現在は、八百床あるうちの約五百二十床ほどしか稼働できず、看護配置もいまだに十対一のままであります。

 また、内科、小児科の医師数が最も多く、三次救急を担う救急救命センターを持ち、さらに災害拠点病院の指定も受けてはおりますけれども、救急部所属の医師は教授等の教官も含めて五人、集中治療部も二人、総合診療部も三人です。先ほど、任務遂行に必要な医学、救急医療並びに災害医療とありましたが、そこが非常に手薄となっております。これが現状でございます。

 また、ほかの研修先である自衛隊病院におきましても、ベッド稼働率は約三〇%未満であり、一部オープン化されているとはいえ、基本的に患者さんは自衛官並びにその御家族ですから、一般病院と比べ、圧倒的に症例数は少ないものがあります。これでは、医官以前に医師としてのスキルが上がらないですし、モチベーションも下がる一方だと思われます。

 さらに言えば、防衛医大病院、自衛隊病院で診療に使われる費用は、全て防衛予算という問題もございます。一般会計による病院運営ですから、防衛医大病院や一部オープン化された自衛隊病院において得られた診療報酬も全て国庫に入ります。多くの患者さんを受け入れ、症例数をふやし、高度な医療をすればするほど、与えられた予算を圧迫し、自分の首を絞めることになってしまう。予算が枯渇したので何もできない状態に陥る可能性が容易に予想されます。

 医師としてのスキルを上げたいと思っても、地域医療に貢献したいと思っても、それができにくい状況がここにあります。これでは、頑張って人を助けたいという思いが人一倍強く、医師としても医官としても使命を全うしたいと思う隊員ほど、落胆がひどく、自衛隊を去ってしまうのではないでしょうか。

 当然、そこを問題視し、いろいろと対策を講じられてきたことも存じております。防衛予算としての患者医療費をふやし、二十六年度は対前年比五億円増額の四十二億円計上されておりますが、正直、これはまだまだ少ないと思います。例えば、血友病の患者さんですと一月に一億円近く医療費がかかることもありますし、全身熱傷の患者さんを受け入れた場合、一カ月間、集中治療室で治療を行った場合、医療費は優に一千万を超えます。

 また一方で、医療材料や薬剤等の購入価格を下げたり、投薬の日数を短くしたり、現場の方々が相当努力をされているのも聞いております。

 しかし、医療がどんどん高度化し、必然的に経費が上がっていく中で、こういった状況ではいずれ破綻してしまう、そういったことは自明のことと思います。必要な経費までを削減し、相対的に医療の質、量を下げていくという、本来であれば今求められている医療機関としてやってはいけないことをやらなければならないかもしれない。一般患者の受け入れが、技術や士気の向上のために資するどころか、防衛医大病院の足を引っ張ってしまっている現実があります。

 一度独立行政法人化の議論もあったようですが、もう一度この問題を同じ観点で議論するなり、診療報酬の特別会計化を考えるなりを早急にしないと、自衛隊の医療体制の強化など、とても現状ではできないと思います。

 そこでお聞きしたいのですが、私は、この防衛医大病院、自衛隊病院の病院予算の執行の問題は構造的な欠陥と言っても過言ではないと思うのですが、この予算、会計の問題に関する政府の見解をお聞かせ願います。

小野寺国務大臣 昨年三月、防衛医大を視察いたしました。今先生が御指摘されたことは、一つ一つそのとおりだと思います。

 私も、防衛医大の難しさ、当初、医大が発足当時は、当然、自衛隊員に対しての医療ということになりますから、健全な体を持った自衛隊員、疾病に関しても、かなり、例えば外科等が中心の疾病で、なかなか、医師として本来必要な総合的な経験をすることが少ない。そういう中で、防衛医大を離れる医官がふえている。

 それを一つ改善するためにオープン化をし、そして多くの診療をできるように、そういう体制で進んでいる中で、一つの足かせというのは今言った予算の問題です。特に診療費、これは、しっかりとした医療をすればするほど、その診療報酬はそのまま国庫に入ってしまう。そして、逆に、防衛医大を含めて、防衛予算からその診療費が払われてしまう。しっかりやればやるほど、実は防衛予算全般が食われてしまう。こういうさまざまな循環の中で、防衛医大の方向性がなかなか定まっていないんだと思っています。

 その過程の中で、医官が離れるだけではなく、看護師の充足率、コメディカルの充足率も落ちていき、そして病院としての機能がだんだん落ちていく、その悪循環の中にあるという指摘、これは私も同じ認識に立っております。

 昨年、その問題意識を持って、防衛省内でしっかり対応するようにという指示をさせていただきました。まず、抜本的な問題、防衛医大がどのような経営体質であるべきかということの議論には、もう少し時間がかかると思います。今現在、私どもがまずすることというのは、一つは看護師の充足、これが大切だということで、今回、制度の見直しをさせていただきました。

 もう一つは、診療の予算ということの増額であります。過去、予算請求というのは、三年程度の過去の診療予算の実績を踏まえて予算要求をしていたということであります。ところが、全国の国立大学病院等の平均を見ますと、毎年、医療予算は一〇%ぐらい伸びているということですので、従前の防衛省の考えであれば、過去三年間の予算並みの予算要求ということであったと思いますが、ことし、平成二十六年度の予算要求、今回におきましては前年比一三%の伸びということで、これでまず二十六年度の診療はしっかりできるような体制をとっていく。その中で、今後、このあり方をどうするかということを要請する必要があると思っています。

 埼玉の現地の皆さんにお伺いをしますと、防衛医大に実は期待する役割というのは、先生がおっしゃったように、救急医療の問題、これはぜひ担っていただきたいということと、意外なことに、新生児の救急医療というのは防衛医大が埼玉県の中では突出しているんだと。防衛医大で自衛隊員に課せられる役割になぜか小児部門というのが、これは地元ではかなり強く要請されている。こういうバランスもとる必要もあるんだなと思っておりました。

 いずれにしても、指摘にしっかりと対応することが必要だと思っております。

勝沼分科員 ありがとうございます。

 わざわざ大臣に御答弁いただきまして、恐縮でございます。

 この予算の執行の問題は、やはり自衛隊衛生の強化を考えていく場合に決して避けては通れない問題だと私も思っておりますので、ぜひ、時間はかかると大臣はおっしゃいましたが、本質的な議論をお願いしたいと思います。

 今、国内では、周辺事態有事の勃発や首都直下地震、南海トラフ地震の発災に対する懸念がございます。もし、それが実際に、現在もしくは近い将来に起きてしまった場合、自衛隊衛生の果たすべき役割は何か、そのために必要な体制や機能は具体的には何か、被害想定や行動計画はどうなっているのか、医官は何科のどのような練度の者が何人必要なのか、看護官や薬剤官はどの程度必要なのか、そして、それらを現状に照らし合わせて、本当に任務遂行可能なのか、そういった一つ一つのことを具体的に検証し、計画を策定し、それをつくり上げていくことが防衛医大そして自衛隊衛生に今一番求められていることだと思います。

 私は、自衛隊のかなめは衛生だと思っております。衛生がしっかりしていれば、前線の隊員は後顧の憂いなくその責務を完遂できるはずです。その衛生のかなめは医官であり、その医官を育成できる唯一の機関が防衛医大です。つまり、防衛医大は国防の中枢を担っていると言っても過言ではないと思っております。

 改めて、医官育成の目的と達するべきゴールを明確化し、医官や看護官などのキャリアパスを見直し、さらには、医師不足、看護師不足にあえぐ地方への派遣など、部外研修制度を今以上に積極的にふやし、当然、予算の問題も解決して、真の医官・看護官養成機関になってほしいと願っております。

 最後になりましたが、防衛医大の抱えるさまざまな問題、ほかにも多々ございますが、早急に真摯に防衛省・自衛隊として防衛大綱に書かれている以上に改善に取り組んでいただきたいのですが、ぜひ大臣、力強い一言を最後にお願いいたします。

小野寺国務大臣 全国の部隊視察をする中で、例えば、それぞれの部隊は、災害医療、あるいは緊急医療、あるいはNBC対策、それぞれに応じた装備を持っております。そして、その装備を実際担当する、担任するのは医官、あるいはそれぞれの分野の救急隊員も含めてですが、そういう役割になるんだと思っています。

 自衛隊が、本来、いざというときにしっかりとした対応ができる医官あるいはさまざまな医療従事者の充足というのは、これは大切な役割だと思っています。あの東日本大震災のときに出せた人数を見たときに、私も実は防衛大臣になってその数字を見て驚きました。本来であれば、かなりの人数を災害医療に真っ先に展開するのが防衛医大の役割かと私は思いましたが、御指摘がありましたように、むしろ、赤十字を含め、さまざまなDMATが現地では医療活動に中心的な役割を果たしておりました。

 こういう抜本的な問題について、これは早急に見直すことが必要だと思いますし、それぞれの医療現場の人間は必死にやっていると思います。構造的な問題、あるいはこれは全国的な医師不足という問題もあります。政府全体での受けとめも必要な医療の問題だと思っておりますが、まずは、私ども防衛医大のあり方について、委員の御指摘も踏まえながら真摯に検討していきたいと思っております。

勝沼分科員 ありがとうございました。終わります。

林主査 これにて勝沼栄明君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕

岩屋主査代理 次に、武正公一君。

武正分科員 民主党の武正公一でございます。

 きょうは、第一分科会、南スーダンでの弾薬一万発の提供について、それぞれ各省からお話を伺えればというふうに思っております。

 資料の方もお配りをしておりまして、これは内閣府、外務省、防衛省作成資料ということで、今回の物資協力についての、政府がお使いになっている一連の資料でございます。

 まず、南スーダンで弾薬一万発をUNMISSを通じて韓国軍へ提供した経緯について防衛大臣にお伺いをしたいと思います。

小野寺国務大臣 南スーダン共和国におきまして、現地の情勢が急激に悪化し、同国中部のジョングレイ州ボルにおいては、国連南スーダン共和国ミッションの韓国隊宿営地において、反政府勢力等による争乱行為等により発生した避難民約一万五千人を受け入れていました。このような状況を受け、韓国政府及び国連から我が国政府に対して、緊急事態に対応し、韓国隊の隊員及び避難民等の生命身体を保護するために必要な弾薬の譲渡について要請がありました。

 この要請については、韓国隊の隊員及び避難民の生命財産を保護するために一刻を争い、また、韓国隊が保有する小銃に対して適用可能な弾薬を有するUNMISSの部隊は日本隊のみであるという緊急事態であり、緊急の必要性、人道性が極めて高いことに鑑み、官房長官談話を発出することにより、武器輸出三原則等によることなく、国際平和協力法第二十五条に基づく物資協力の枠組みで譲渡することといたしました。

武正分科員 お手元の資料五でありますが、UNMISSから弾薬提供要請文が自衛隊宛てに届いたということを聞いておりまして、民主党の外務・防衛部門会議で同資料を提出いただきました。

 これは具体的に一ページでいいますと、十二月二十二日、日本時間七時四十分、現地時間一時四十分は口頭での要請だ、その後この文書が届いたというふうに聞いておるんですけれども、具体的に届いた時間というものがおわかりになればお答えをいただきたいと思います。これは防衛省の方にきのうもお願いをしておりますので。

小野寺国務大臣 時間について、今確認をさせます。

武正分科員 続いて、この一ページをごらんいただきますと、今回、武器輸出三原則等によることなく、国際平和協力法第二十五条に基づく物資協力の枠組みで譲渡を行ったということなんですけれども、なぜ、武器輸出三原則等によることなく、PKO法二十五条に基づく物資協力の枠組みで譲渡を行ったのか、お答えをいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 平成三年九月十九日の関係省庁了解において、国際平和協力業務に従事する自衛官等が使用を認められている武器については、武器輸出三原則等によらないこととする一方、自衛官等が携行する武器以外については、同法に基づく物資協力を含め、武器輸出三原則等により厳正に対応するものとしてきたところであります。

 今般、韓国政府及び国連からの要請については、韓国隊の隊員及び避難民の生命身体を保護するために一刻を争い、また、韓国隊が保有する小銃に対して適用可能な弾薬を有するUNMISSの部隊は日本隊のみであるという緊急の必要性及び人道性が極めて高いものと考えられております。

 この点に鑑み、今回は、当該弾薬が韓国隊の隊員及び避難民等の生命身体の保護という自己保存のためのみに使用されること、及びUNMISSの管理のもと、UNMISS以外への移転が厳しく制限されていることを前提として、官房長官談話を発出することにより、武器輸出三原則等によることなく、国際平和協力法第二十五条に基づく物資協力の枠組みで譲渡いたしました。

武正分科員 内閣府もおいでだと思います、PKOを担当されていますので。

 過去、武器弾薬については、PKOでこれを提供するということについて、政府は国会でどういう見解を述べているのかを、資料は八ページにつけておりますが、改めて御紹介をいただきたいということが一点と、その上で、今回、武器弾薬を初めて提供するわけですけれども、これについて、これまでの国会答弁との整合性、これをどのように考えられておったのか、お答えをいただきたいと思います。

西村副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、平成四年の国際平和協力法制定時には、物資協力として我が国が国連等に物品を譲渡する場合には、政府の方針である武器輸出三原則等に従って対処することとしておりまして、また、御指摘の武器弾薬の供与を要請されることは想定していない、要請があっても断るというふうにしておりました。

 これは、そもそもPKOにおいては、各参加部隊は、基本的には必要な武器弾薬をあらかじめ携行してミッションに参加するということを前提とした基本的な運用方針を述べたものでありまして、緊急事態における例外的な措置までも排除する趣旨ではありません。

 他方、今般の韓国政府及び国連からの要請につきましては、韓国隊の隊員及び避難民の生命身体を保護するために一刻を争う緊急事態であり、その緊急の必要性、人道性が極めて高い、そういう事情に鑑みまして、今回の譲渡は例外的な措置として、武器輸出三原則等の例外として行ったということでございます。

武正分科員 今、当初からPKOにおいて部隊間での武器弾薬の融通ということは想定していないというお答えをいただいたんですが、防衛省からも、資料六にあるような形で、他ミッションを含め他国のやりとりを全て把握できているわけではないが、弾薬を融通した例は承知していないということで、こういう部隊間で弾薬を融通するということはないという想定で来ていたわけであります。ですから、今回の申し出というのが極めて異例であったということだと思いますけれども、果たしてその異例を、これから一つの実例として適用していいのかどうか。

 官房副長官もお見えですので、今、武器輸出三原則の見直しを政府が進めている中で、こうした国際協力活動あるいは他部隊に対してのそうした供与ということが、果たしてこれを実例に認めていいのかどうかといったことは、かなり大きな議論をしっかりと国会としてもやらなければならないというふうに思っております。

 そこで、防衛大臣にお伺いしたいんですが、自衛隊以外に同型の弾薬を持ち得ないということをどうやって検証したのか、お答えをいただきたいと思います。

小野寺国務大臣 まず、通常の部隊の任務を行う場合には、当然、PKOであっても、必要な装備、弾薬等を有するのが通常だと思っております。ただ、今回の韓国隊の緊急的な要請は、やはり私どもとしても通常想定できない要請でありましたが、人道上、私どもとしてこれは重要だと思って対応させていただきました。

 今お話がありました、持ち得ないことをどうやって検証したかということでありますが、これはあくまでも、各部隊が保有している武器の詳細については、南スーダン共和国ミッション、UNMISSの軍司令部が把握しているということであります。韓国隊が保有する小銃に対しての適用可能な弾薬を有するUNMISSの部隊は日本隊のみであるというのが国連南スーダン共和国ミッションの判断だというふうに思っております。ですから私どもに対してこの司令部から供給の依頼があったということだと思っております。

武正分科員 外務省さんと内閣府さんと、そしてそれを主催する内閣官房ということで、日本時間四時四十五分、韓国隊隊長から第五次施設隊長に対して弾薬の提供要請があってから、今のその四省庁というんでしょうか、三省庁プラス内閣官房で対応を協議したというふうに聞いております。それでさきの結論が出て弾薬の提供が行われたと承知をするわけですが、果たして本当に自衛隊以外、同型の弾薬を持ち得ないのかということについて、どこまで検証したのかということを伺いたいと思います。

 まず、外務省、こうしたこれまでにない異例の弾薬の提供といったこと、あるいは、これまでの国会答弁とは異なるそうした対応を政府としてするに当たって、他国の軍隊が、現地、南スーダン以外も含めて、また、この小銃はNATO仕様ということも聞いておりますので、NATO、米軍ほか、そうしたものがないかどうか、こういったことはしっかりと当たったということでよろしいでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今るるお話がありましたとおり、今回は、韓国隊の隊員及び一万五千人の避難民の生命財産を保護するために、極めて緊急の必要性、人道性が高いということに鑑みて実施をしたということでございます。

 当時の状況についてでございますが、あくまでも、UNMISSの司令部から、UNMISS全部隊の中で日本の施設部隊が唯一韓国隊と互換性のある弾薬を保有している、そういう説明を受け、我が国以外に弾薬を譲渡できる部隊がほかにいるとの情報はなかった、そういう中で実施をさせていただいたということでございます。

武正分科員 政府からは、この韓国隊から要請を受けて一日半で提供に踏み切るわけですが、この間、今言った三省庁、内閣官房のもと集まって協議をしたということですが、外務省、それでよろしいですか。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。

武正分科員 その中で、今私が伺った、他国の軍隊が同型の弾薬を持ち得るということを当たるとすれば、外務省がその任に当たるというふうに私は聞いているんですが、先ほどの政務官のお話では、この間、そういった当たる、照会をするということはしなかったということでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 繰り返しの答弁、大変恐縮でございますけれども、あくまでも今回は、UNMISSの司令部からの、他国には互換性のある弾薬を保有している部隊がないという説明のもとに実施をさせていただいたということでございます。

武正分科員 当たっていないというお答えでございますが、これについては防衛省の方にも尋ねさせていただきまして、どうなんだということなんですけれども。

 例えば、資料六の問三でありますが、防衛省の方からは、韓国隊への弾薬の供給についてアメリカと調整を行ったのか、アメリカから補給するという手法もあり得たのではないのかということを聞きましたところ、人道的観点から至急の対応を行う必要があったため、我が国として可能な対応について迅速に検討を行い、弾薬一万発を提供することとした、アメリカが韓国隊に弾薬を供給したという報道は承知しているが、他国軍隊の行動につきお答えできる立場にない、また、報道されている弾薬三千―五千発が韓国隊に供給されたとしてもなお、韓国隊のニーズは満たせなかったのではないかと考えている、こういうお答えをいただいたんです。

 そうしますと、防衛省は、この韓国隊の弾薬依頼について、アメリカ軍あるいはまたNATO関係軍、こういったところが同型の弾薬を持っているのではないのかということで何か照会をした、当たったということがあるんでしょうか。

小野寺国務大臣 まず、先ほどのUNMISSからの文書がいつ着いたかということですが、これは、現地時間二十二日の十三時三十分、日本時間二十二日の十九時三十分に到着したということであります。

 済みません、これは昨日、武正議員の事務所の秘書さんの方には回答したというふうに報告を受けております。事務所の秘書さんにはこの話をお伝えしているということであります。(武正分科員「もう一回、時間は」と呼ぶ)時間は、UNMISSから弾薬に関する要請の文書が来たのは、現地時間二十二日の十三時三十分、日本時間に直しますと二十二日の十九時三十分に文書で来ました。

 先ほどからの御指摘ですが、まず、UNMISSの本部の方から、自衛隊の弾薬しか韓国隊の弾薬に適用するものはないんだということで要請が来ましたので、当然、これは国連のUNMISSの方で調べた中で日本に要請が来たということであります。

 それから、今の米側の話でありますが、南スーダンには米国はUNMISSの部隊として派遣をしておりません。もし南スーダンに米国の部隊があるとすれば、恐らく自国の基地警備等に十数人程度いるというレベルだというふうに私は伺っております。

 なお、この報道につきましては、その後、韓国側に確認をいたしましたが、韓国側からの返答はありませんでした。ですから、この報道の真偽かどうかもわかりません。

 いずれにしても、我が方に要請がありましたのは、まず第一報としては、現地の韓国隊の隊長から我が方の派遣している隊の隊長に対して電話連絡で、私どもボルの周りには敵だらけである、弾薬を至急提供してほしいという要請が韓国側からあり、またその後、UNMISSの本部からも自衛隊にあったということであります。

武正分科員 防衛省はそういった照会をしていないというお話でありますが、外務省さんに事前に尋ねましたら、韓国軍が米国軍と、韓国と米国の間でそういった弾薬、ここにあるような、アメリカが弾薬を韓国軍に提供したという報道もありますので、そういったやりとりがあったのか韓国の方に照会してほしいというふうにお願いをして、そうしましたら、答える立場にないというようなお答えがあったと聞いているんですが、その点、ちょっと確認をしたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 新聞報道のことについては承知をしておりますが、韓国と米国とのやりとりにつきましては、大変恐縮でありますけれども、我が国としてはお答えする立場にないというふうに考えております。

武正分科員 事前に私が伺ったところでは、韓国に外務省から照会をしていただいたところ、韓国の方から答える立場にないと、お答えをいただけなかったというふうに説明を受けているんですが、今は日本が答える立場にないというお話なので、ちょっとそごがあるんですけれども、前者ではないでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 繰り返しで大変恐縮でありますけれども、韓国と米国のやりとりについて我が国としてお答えするのはなかなか難しい、そういう立場にはないというのが公式の立場でございます。

武正分科員 私が説明を伺ったところでは、韓国からそういった返答があったというふうに聞いております。政務官のお答えとはちょっと違うということであります。

 これは大変大事なことだと思うんですね。韓国が答えられないというんだったらわかります、照会していただいたというふうに聞いているので。日本が答える立場にないというお話なんですが、これまで、平成三年の国会答弁でも、武器弾薬をPKO部隊に提供するということはないということを政府が一貫して言ってきた。これを、初めて今回弾薬を提供したわけです。しかも、それはPKO法二十五条の物資提供ということで、これも初めてであります。そしてまた官房長官談話を発出してということでありまして、これまでにないことをやったわけです。

 ただ、先ほど来のお話では、三省庁、内閣官房のもと集まっている中では、外務省は照会をしていない、防衛省も照会をしていない、他国に同型の弾薬がないのかということは検討していないというお話を今両省庁から受けました。

 では、そういった報道があるので、アメリカ、韓国の間でやりとりはなかったのかどうか照会してくださいということで私が事前に頼んだら、照会して、韓国からは、答えられないという返事だったということなんですが、今、外務政務官は、日本政府として答える立場にないというお話なんです。大変これは、今までの国会の答弁を覆す事態というふうに私は認識をしておりまして、それについて政府が説明ができないというのは甚だ納得できません。

 私はさらに、外務省には、昨日、韓国が答えられないんだったら米国に聞いてくださいというお願いもしました。

 やはり、同型の弾薬が本当になかったのかどうか、短い時間ではあっても内閣官房を中心にきちっと精査ができているのかということはこの後官房副長官に伺いますが、NSC四大臣会合、そしてNSC九大臣会合、閣議決定、特に九大臣会合、閣議決定は持ち回りということで決めております。NSC四大臣会合も極めて短時間での会合だと承知をしておりますが、本当にこの点を十分検証できたのかどうかということについて、官房副長官、いかがでしょうか。

加藤内閣官房副長官 韓国隊への武器等の供与につきましては、今御指摘ございましたように、十二月二十三日の昼の四大臣会合において、国家安全保障に関する外交防衛政策の観点から議論がなされ、方向性が確認をされました。それを受けて、九大臣会合、そして閣議においては持ち回りがなされたということでございますけれども、それまでに、今るる説明がございましたような事務的な確認を踏まえ、そうした報告を踏まえた上で、四大臣会合でそうした方向性の確認が行われた、こういうふうに承知しております。

武正分科員 具体的に、他国で、あるいは他国の軍隊で同型の弾薬があって、場合によってはそれが提供し得るのではないのかという検証は、四大臣会合でそういった意見は出なかったんでしょうか。あるいは、そういった質問はなかったんでしょうか。あるいは、そのことについて、主催する内閣官房、官房長官としてきちっと説明をしたのでしょうか。いかがでしょうか。

加藤内閣官房副長官 NSCの中身、議論については、従前から、具体的なことは申し上げられないということで対応させていただいておりますので、ここでも同様な対応になろうかと思います。

 ただ、いずれにしても、その場においては、それぞれの省庁から今お話があった点について説明があって、それを踏まえた方向性の確認に至った、こういうふうに承知をしております。

武正分科員 ただ、先ほど、外務省、防衛省は他の国に照会していないというお話なんです。UNMISSが言う、日本隊だけしか同型の弾薬を持っていない、それを唯一のよりどころにして今回提供に踏み切ったということでよろしいですか。

小野寺国務大臣 やはりこれは問題意識を共有していただきたいと思うんですが、韓国隊の方から、周り、自分たちだけではなくて、避難してきている避難民も含めて大変な状況になっていて、そして、私どもとして弾薬の提供をお願いしたいという要請があり、そしてまた、UNMISSからも、UNMISSは南スーダンに展開している各国の部隊の調整をしておりますので、それぞれの部隊がどのような装備を持っているかというのを当然知っている。その国連からの要請もさらにあった中で、日本として、それだけ緊急性があり、人道性が緊迫しているような状況の中で、さらに各国に確認をするとか米側に聞くとか、そういうことができる状況ではなく、緊迫したような状況になっていると思っております。

 従前から、この二十五条による物資の提供については国会で累次の議論はございました。ただ、全て、例えば緊急の場合、それが排除されるものではないというふうに私ども承知をしておりますので、いずれにしても、当時の緊迫した状況の中での対応ということをぜひ共通の認識として御理解いただきたいと思います。

武正分科員 我が国は、法に基づいて、国際約束に基づいて、また国会が国権の最高機関として、そこで政府がされた答弁、こういったものが基底になって国のさまざまな運営がされていると承知をしております。

 今の緊急性、人道性ということはよく理解するところなんですが、一日半の間でも、政府が懸命に、他に手段がないのか、そのことをどこまで追求したのか、これを伺っているわけであります。

 官房副長官、再度のお尋ねでありますが、他国に照会しないで今回の決定に至ったということでよろしいでしょうか。

加藤内閣官房副長官 今のお話は、NSCの中での議論ということになってしまいますので、それについては、詳細は控えさせていただきたいと思います。

武正分科員 特定秘密保護法案でも、このNSCについて、その議論の内容を明らかにしないということの問題点、国会の方でも随分指摘をされていると思います。これがまさに今、官房副長官の答弁で露呈されたというふうに思います。

 質問をかえますと、今回の、弾薬を一万発提供する、こういう決定を官房長官談話を公表して行ったわけですが、その官房長官談話に至る、結論に至るに当たって、他国には照会はしていないということでよろしいでしょうか。

加藤内閣官房副長官 先ほどから申し上げていますように、その中身に関することについては控えさせていただきたいと思いますし、あとは、いずれにしても、そこにおけるそれぞれの役所等の話を踏まえてそうした方向性が確認された、こういうことでございます。

武正分科員 NSCの中身ではありませんので、今回の官房長官談話発出に至った根拠、これを伺っているわけで、なぜそれが答えられないんでしょうか。

 先ほど、外務省、防衛省は照会していないということなんですから、照会していないというふうに言っていただければ、それで済むわけです。照会していないけれども官房長官談話を発出するに至ったということをお答えいただければいいわけですが、いかがでしょうか。

加藤内閣官房副長官 先ほどから申し上げていますように、各省庁からの御報告をいただいた上で判断をしているということでございます。

武正分科員 内閣府、聞いていなかったんですが、内閣府は他国に照会をされましたでしょうか、同型の弾薬があるという可能性について。外務省、防衛省は照会していないということなので、伺いたいと思います。

西村副大臣 私どもは、先ほどから防衛大臣あるいは外務政務官が答弁しているとおり、UNMISSから、日本部隊、日本の施設部隊が唯一韓国と互換性がある弾薬を保有しているという説明を受けておりますし、武正先生のお配りの資料の四にもありますとおり、見ていただいたら、NATO軍は同等のものを持っているということは承知をしておりましたが、NATO軍はおりませんので、私どもとして、他の部隊が弾薬を譲渡できるという情報はありませんでした。

武正分科員 三省庁いずれも照会していない、UNMISSからというお話で、それをもってこの官房長官談話が発出されたということが確認をされました。

 これから武器輸出三原則の見直しを政府は行うようでありまして、報道では、国際機関あるいはまたこうしたPKO部隊などへの提供、こういったものも緩和するような報道がありますが、今のように、しっかりと他国に対して、同型の弾薬があるかなしか、こういったことも検証せず、緊急性、人道性、それからUNMISSの情報のみを頼って提供に至ったということは、これまでの国会での答弁を覆す大変大事な今回の行為、行動でありますので、私はやはり、政府としてまだまだやるべきことはあったのに、それを尽くせなかったということを言わざるを得ません。

 当日は天皇誕生日でありまして、私もちょっと早目に宿舎を出ました。エレベーターで菅官房長官とも一緒になりましたので、では、早く皇居に行かれるのかなと思いましたら、おくれて入ってこられたので、多分、この四大臣会合に出席されてから来られたんだと思います。

 天皇皇后両陛下、そして皇室のいやさかを安倍総理が言葉を述べて、そして祝杯を上げた。その後、戻ってきて、同日、こうした決定がされたことを、あるいはまた、NSC四大臣会合、九大臣会合、閣議決定がされたことを伺いまして、非常に私は驚きました。

 短時間の間でやむを得ないとはいっても、やはりこれだけ大きなこれまでの方針を変更するに当たってどれだけ精査がされたのかといったことを伺ったわけでありますが、それがきちっとできていないということを改めて確認した上で、武器輸出三原則の見直しに当たっては、より精緻な議論、そして国会での議論を深めることを求めてまいりたいと思います。

 なお、外務省にあっては、ぜひ、政府として答える立場にないということではなくて、韓国、それから米国にしっかり照会をしていただいて、その結果を委員会の方に資料として御提出いただきたい、このことを委員長に申し上げたいと思います。

岩屋主査代理 また協議をさせていただきます。

武正分科員 以上で終わります。ありがとうございました。

岩屋主査代理 これにて武正公一君の質疑は終了いたしました。

 次に、今村洋史君。

今村(洋)分科員 日本維新の会の今村でございます。

 去る二月十三日、米海軍のジェームズ・ファネル大佐がシンポジウムで、中国軍には電撃的に尖閣諸島等の島嶼群を奪取する作戦があり、訓練を行っていると述べました。そういう報道がなされていますが、大佐はあくまでも個人的見解とし、米軍の公式見解ではないとしています。

 防衛省としてはこの報道は当然把握されていると思いますが、もし中国軍が仮にこのような蛮行に及んだ場合、軍事行動に対し海上保安庁では当然ながら対処できないというふうに思います。

 防衛大臣におかれましては、予算委員会で我が党の石原代表の質問に答えて、明らかな攻撃があった場合、個別的自衛権の中できちんと対処できるとお答えになりながらも、交戦規定については、部隊の行動基準を設けているが、手のうちは明かさないとおっしゃられています。

 改めてお聞きいたしますが、米海軍大佐がコメントしているように、中国軍の島嶼奪取作戦があり、その作戦の実行の兆候が見られた時点で、我が自衛隊は個別的自衛権をもって中国軍に対峙することは考えていらっしゃるんでしょうか。結果的に交戦も辞さないという構えがおありになるんでしょうか。お聞かせください。

小野寺国務大臣 その報道については承知をしております。個人的な意見ということでお話をされておったと思います。その話の中では、尖閣、それから琉球の南というんでしょうか、ですから先島諸島のうちのどこかということの言及だったと思います。

 これはあくまでもこの大佐の個人的な見解でありますが、一般的なことを言えば、尖閣も、もちろん先島諸島も我が国の領土でありますので、我が国の領土に対しての侵害行為が外部からの武力攻撃に該当すると判断し、我が国を防衛する必要があると認められる場合には、自衛隊法七十六条の防衛出動により、自衛権を行使して対処するということになります。

 このような内容につきまして、防衛省・自衛隊は、平素からさまざまな検討を行っております。個別具体的な事例におきます行動の詳細につきましては、事柄の性質上、自衛隊の任務に支障が生じますので、お答えを差し控えさせていただきますが、私どもの役割といいますのは、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くということであります。

今村(洋)分科員 もしそういう有事が起こった際に、米軍の協力といったものは求められるというふうにお考えになっておられますでしょうか。

小野寺国務大臣 まず前提は、我が国の領土、領海、領空、国民の生命と財産は、当然、私ども自衛隊を含めて、国全体としてしっかり守っていくということが基本的なスタンスであります。

 その中で、同盟国であります米側に関しては、安保五条適用の中で、日本を防衛する義務があると思っております。

今村(洋)分科員 昨今、集団的自衛権の行使について衆院予算委員会でも議論が交わされておりますが、私自身は、日米同盟において、今大臣がおっしゃられたように、米国が、米軍が日本と中国の交戦に関与する可能性は低いんじゃないかというふうに考えております。

 歴史をさかのぼりますと、尖閣の問題は、もともと、一九七一年の日米繊維問題の決裂の意趣返しに、沖縄返還に際し、緯度、経度を表示することはおかしい、尖閣諸島の主権にアメリカがかかわるべきではないと米国が言い始めたことに端を発しておると思います。それにすぐさま反応したのが、台湾の外交部長であった周書櫂でした。

 アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにあるニクソン大統領図書館に大統領執務室内音声記録というものがありますが、そこでニクソン大統領と当時のキッシンジャー補佐官の一九七一年の沖縄返還協定調印の十日前の会話というものが録音されております。

 その中で、ニクソンは、日本には繊維問題で裏切られた、日本のどぎもを抜くような対抗措置を考えてくれ、あのいまいましい島々を我々がなぜ捨てたかということだと言い放ちます。対してキッシンジャーは、一九五一年、尖閣諸島を含む沖縄県については、サンフランシスコ平和条約のときに既にアメリカによって日本の潜在的な主権が認められています、このことについて台湾から特別な交渉は一切行われなかったが、この四月、台湾が突然尖閣の領有権を主張し始めたと言います。ニクソンは、日本にとって尖閣がそんなに重要なことなのか、尖閣の台湾の領有を日本に強要すればいいだけの話だと主張します。キッシンジャーは、日本にそのことを強要すると、完全に日本との縁を切ることになると返しています。

 調印された沖縄返還の文書では、緯度、経度は記載されておりますが、結局、返還されたのは領有権ではなく施政権でした。

 存命しているキッシンジャーは言います。アメリカは一九七一年当時、尖閣が日本、中国、台湾のいずれに属するかに関して明確な立場を示さないようにしていた、その問題は後にトウショウヘイと日本政府の間で話がついたと思っていた、アメリカの関心事の基盤は日本と中国の友好関係を維持することである、この問題に関して、日中が対話で解決することを望みますというふうに取材に答えています。

 糸で縄を買ったと言われた沖縄返還でしたが、沖縄返還協定調印後、日本が輸出規制と引きかえに繊維業界へ補償を出し、日米繊維協定が結ばれました。

 しかし、私は、いかに日本が貿易等で譲歩しようとも、アメリカの対アジア戦略として、当時からもアメリカは意図的に尖閣諸島の主権を曖昧にし、火種を残していたというふうに考えます。アジアにおいて日本と中国が対立し続けること、そして朝鮮半島が不安定であること、これがアメリカのアジアにおける基本戦略というふうに私は思います。

 現在、アメリカ国債を最も多く所有するのは中国であります。次いで日本です。新自由主義というあしきグローバリズムに溺れつつあるアメリカが、金主である中国と、事尖閣において事を構えるとは私は到底思えません。

 今般、中国が手前勝手に主張する防空識別圏においても、アメリカは表面上抗議しつつも、民間航空機にはフライトプランを中国へ申請せよ、提出せよと指示するなど、アメリカの心底は知れていると私は思います。

 これらのことを勘案すると、アメリカは中国の電撃的な尖閣奪取作戦に対し、日米同盟を発動し、我が自衛隊とともに戦うということはない、そういうことを我々は自覚し、日本は、自衛隊は個別的自衛権のもとに有事に対する交戦規定、行動規定を定め、今そこにある危機に対処するべきというふうに思います。

 安全保障委員会におきまして、私は昨年十月にもお聞きいたしましたが、そのときの中島政府参考人の御答弁では、自衛隊法第七十八条の治安出動、自衛隊法第八十二条の海上警備行動による警察機関との連携によって、警察権の行使によって対処するとおっしゃられ、自衛権の行使には、領土、領海、領空への侵害行為が外部からの武力攻撃に該当し、防衛の要ありと判断された場合に、自衛隊法第七十六条の防衛出動によって対処するというふうにおっしゃっておられます。

 しかし、明らかな武力行使でなくとも、偽装漁民の尖閣上陸、また、非国家主体、いわゆるテロリストを装った集団の上陸といったような、いわゆるグレーゾーン事態も考えられます。

 先般、安保法制懇で、安倍総理が、グレーゾーン対応の必要性が認識されている、自衛隊が十分な権限でタイムリーに対応できるか、法整備で埋めるべきすき間がないか、十分な検討が必要と挨拶され、官邸サイドからも、防衛省に対し法整備に着手するよう指示があったと報道されております。

 当然、中国もこうした報道は承知しているものと思われ、私は、我々の準備が整う前に、さきの米海軍大佐が述べたような電撃作戦や、あるいは自衛隊の対処行動の間隙をつくようなグレーゾーンを狙った行動に出る可能性が高いというふうに思われます。

 さて、中国は、尖閣、そういったものの領有に関して核心的利益という言い方をしておりますが、何ゆえに中国は、南シナ海、ひいては東シナ海への海洋進出をもくろむのでありましょうか。防衛大臣、御意見をお聞かせください。

小野寺国務大臣 まず、きょうの委員の質問は、もちろん周辺国が関心を高く持って聞いているかもしれません。

 私どもとしては、中国を含む周辺国とは、それぞれ友好関係を結び、お互いに経済的に成長していくということ、これが共通の利益だと思っております。もちろん、戦略的互恵関係という言葉、これは安倍総理がよくお使いになることだと思っておりますが、私どもとして、こういう中で、我が国の領土、領海、領空をしっかり守っていくということであります。

 そして、累次、さまざまな、日米間の首脳の間では、あるいは米側の責任ある立場の方から、尖閣を含めて、ここは安保五条適用下にあるという発言をしていただいております。

 基本は、我が国の領土、領海、領空は、自衛隊を含め、私どもがしっかり守っていくということだと思いますが、同盟国であるアメリカにも、しっかりとした対応が当然要請されるものだというふうに思っております。

 その中で、御指摘がありましたように、やはり私ども、さまざまな事態にしっかり対応するための役割を今後とも担うために、日ごろから部隊行動基準の見直し等については鋭意心がけておりますし、また、想定されるいろいろな事態について、現行法でしっかりとした対応ができるのかどうかということについては、安保法制懇の中で、グレーゾーンを含めて今議論をされていると思っております。

 いずれにしても、私ども、こういうさまざまな議論を踏まえ、国会の中で審議が行われ、その議論の中で私どもに対しての役割が付与されると思いますので、その中でしっかりこの国を守っていきたいと思っております。

今村(洋)分科員 中国がそういう領土的野心といったようなものを持っておって、我々はそれにきちんと、そういう事態がむしろ起こらないように対応されるというのが政府の考え方だというふうに思います。

 世界の人口の二〇%、人口の二割を中国は抱えております。しかし、中国国内の耕地面積は世界の全耕地の七%です。中国政府は自国の食料自給率がおおむね九五%としていますが、昨今の食肉の消費がふえ続けている中国の現況では、到底自国のみでは国民を養えないといったような事態に至っております。

 加えて、中国では水不足も深刻で、水の供給は、一人当たりでは世界平均の四分の一しかないと言われています。これは、既に水ストレスという状況、水不足の状態に入っておるということです。

 この中国国民の飢えと渇き、これが背景にあるからこそ、中国の常万全国防相が、中国が自身の核心的利益を手放すことを夢想すべきではないと言い放っていますが、そういう表明にもあらわれているとおり、中国は、南シナ海、東シナ海などの海洋資源を獲得することで自国の国難を乗り切ろうというふうに考えているのだと思います。

 私は、ゆえに、中国が国際常識を無視しても、何らかの行動を起こす可能性が近日中にあり得るというふうに思います。我が日本の対応、準備が後手に回らぬよう、法整備、対処作戦行動を行い、尖閣諸島のいずれかに自衛隊を常駐させ、それこそ、刀の鯉口を切るということを内外に示していただきたいと切望いたします。

 それがなされぬまま、ある朝テレビをつけたら、尖閣諸島が電撃的に侵攻され、周辺海域を中国艦船が、中国海軍が遊よくしているといったような映像が流れて、海上保安庁、自衛隊もなすすべなく、日本政府はその蛮行に抗議するのみ、そういう事態にならないでいただきたいというふうに強くお願いいたします。

 次に、話はかわりますが、昨年、特定秘密保護法が成立し、どこからか、これでファイブアイズに近づいたという声が聞かれております。

 先般の予算委員会での我が党の石原代表の、ECHELONの存在を政府は承知していますかという質問に、防衛大臣は、そういう形状のものがあるのは承知しているが、その機能は知らされていない、米国とは同盟関係にあり、信頼しているというふうにお答えになっておられますけれども、諜報の世界でファイブアイズと呼ばれる米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの五カ国は、ECHELONと呼ばれる通信傍受網を用い、膨大な情報を収集し、情報を共有しているとされ、そういう諜報網の存在を認めることがはばかられる我が国は、いまだに、本来的な意味で独立を果たしているのかと首をかしげたくなる、そう思わざるを得ません。

 改めて大臣にお聞きいたしますが、ECHELONという存在はお認めになられるんでしょうか。どうでしょうか。

小野寺国務大臣 報道で、そのような諜報機関があるということは承知をしておりますが、それがどこに、どのような形であるということは、私どもは承知をしておりません。

 石原代表がお話をされた三沢基地での、米軍基地の状況ですが、これは、外からもそういう形状のものがあるというのは確認ができていますが、実際にどのような形で使われているかということについては、当然、私どもは承知をしない立場にあります。

 今、日本の情報収集機能のことについて少しお話がありましたが、日本としても、合法的な中でさまざまな情報収集を行っており、例えば、これは表に出た話ですので、ここでお話をしてもいいと思いますが、大韓航空機の撃墜事件のとき、あのときに、詳細な状況について、実はどこが把握をしていたかというと、日本の自衛隊がその情報を把握しておりました。これは米側の強い要請がありまして、開示をいたしました。通常は、そういうことは行いませんでしたが。

 いずれにしても、私どもも、法律の範囲の中でしっかりとした情報収集にこれからも努めていきたいと思っております。

今村(洋)分科員 先ほど述べましたECHELONにかかわる五カ国の政府は公式にはその存在を認めておりませんが、EU欧州議会が二〇〇一年七月に、公的機関としては初めて、ECHELONという世界的傍受システムの存在は疑いようがないというふうに報告しております。

 ECHELONの機能は、イスラム圏、中国、北朝鮮等の共産圏に向けられたものでもありますが、一方、当然ながら日本へも向けられており、アメリカの同盟国とはいえ、日本政府、日本企業等の中枢は通信傍受され、監視の対象になっているというふうに考えられます。

 かつて、一九八〇年代の日米構造協議のころ、日本側はいつも盗聴されている前提で話をしていたということも明らかになっています。

 例のスノーデン事件を受けて、ドイツ、フランスは、アメリカに対し、相互にスパイ活動を禁ずる協定を締結するように求めているとの報道がありますが、日本政府には、アメリカにそのような協定を求めていく意思はおありになりますでしょうか。

岡田副大臣 お答えいたします。

 いわゆるECHELONにつきましては、今村委員からの御質問の中にもありましたように、欧州議会がこの存在を断定する報告書を公表したことは承知をしておりますが、この事実関係については把握をしておりません。

 以上です。

今村(洋)分科員 ECHELONの存在を認めていないのであれば、スパイ活動を禁ずるような協定というのも、これは後々なんでしょうけれども、今の時点ではないということですね。

 私は、今般の特定秘密保護法の目的の一つに、このファイブアイズの輪に加わる、少なくともそのサークルの会話を聞きたいという希望があると思いますけれども、先ほど防衛大臣がおっしゃったように、青森県三沢にある傍受局を置いている協力国、日本は協力国でありながら、アメリカ側は、サイバー攻撃への対処がおくれている日本とは機密の共有が難しいという認識もあるやに聞いております。

 サイバー攻撃対策に関し、国家安全保障戦略には、「国全体としてサイバー防護・対応能力を一層強化する」とうたってありますが、この方針は内閣官房セキュリティセンターによって担うことになるんでしょうか。お答えください。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、サイバー攻撃への対応は、国家の安全保障、危機管理上の重要な課題であるというふうに認識をしております。

 委員御指摘の、昨年十二月に閣議決定をいたしました国家安全保障戦略におきましても、サイバーセキュリティーの強化を我が国の重要な社会システムを防護するという観点から進めていく必要があるという点が記載されております。

 サイバー攻撃に対しては、まずは、攻撃に強いシステムを構築するとともに、攻撃を完全に防げなかった場合に、速やかにこれを認知して対策を講じまして、被害の拡大を最小限に抑えることが肝要でございます。

 このため、政府機関については、内閣官房情報セキュリティセンター、NISCを中心といたしまして、情報セキュリティー水準を底上げするための統一基準の整備、あるいはそれに基づく対策の実施等々を講じているところでございます。

 また、重要インフラにつきましても、情報通信、金融、電力等十分野を位置づけまして、IT障害の未然防止及び再発防止の双方の観点から、安全基準の整備、浸透、情報共有体制の強化、分野横断的演習等の諸施策を実施しているところでございます。

今村(洋)分科員 今般、国家安全保障局が発足いたしましたが、その局内にはサイバー対策の専門部署は設けられておりません。

 かつて、大東亜戦争当時、日本政府、軍の情報管理が甘く、奇襲であったはずの真珠湾攻撃も実際には作戦計画が筒抜けであり、以後の作戦もことごとく漏えいしておりました。

 現在も日本の情報管理体制は十分でなく、私は、日露戦争当時には、情報戦という意識、認識があったというふうに思いますが、大正以後の日本人には情報を軽視する傾向があるのではないかという懸念を抱かざるを得ません。

 サイバー空間は、陸、海、空、宇宙に次ぐ第五の戦場と位置づけられておりまして、既に各国も、サイバー部隊ともいうべき部隊を創設しています。これは中国、北朝鮮においても同様に専門部隊がある由です。北朝鮮のような、通常兵力では他国に太刀打ちできないような国家でも、サイバー攻撃なら、少ない費用で相手に深刻な被害を与えられます。

 そのようなサイバー攻撃の目的は、情報窃取からインフラ破壊へ変化してきており、電気、ガス、水道や交通網などが標的とされることが多くなっております。市民生活に直結する重要インフラはコンピューター制御されています。これにサイバー攻撃をしかけられ、電気がとまれば、交通網も麻痺するなど、その影響は広範囲に及ぶと考えられます。

 平成二十五年十月に政府がまとめましたサイバーセキュリティ国際連携取組方針の中では、制御システムセキュリティセンターを設置し、そこで制御システムへのサイバー攻撃に対処する演習や普及啓発事業を実施予定というふうにされておりますが、その報告、成果は今現在どのようになっておりますか。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 重要インフラにつきましては、先ほど申し上げましたけれども、情報通信、金融、電力等の十分野を重要インフラというふうに位置づけまして、IT障害の未然防止、再発防止等の観点から、安全基準の整備、浸透、情報共有体制の強化、分野横断的な演習などを実施しているところでございます。

 委員御指摘の国際連携でございますけれども、昨年六月に策定をいたしました政府のサイバーセキュリティ戦略に基づきまして、昨年十月、官房長官を議長といたします情報セキュリティ政策会議におきまして、サイバーセキュリティ国際連携取組方針というものを策定したところでございます。

 重要インフラの防御を含めて、各国との連携強化ということを図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

今村(洋)分科員 NATOにはタリン・マニュアルというようなものがあるんですけれども、我が日本において、こういう国際ルール、今お話がありましたけれども、タリン・マニュアルのような国際ルールの策定というものはお考えになっておられるんでしょうか。お答えください。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、タリン・マニュアルの位置づけでありますけれども、二〇一三年三月にNATOのサイバー防衛センターのもとで取りまとめられた、サイバー空間を利用した行為に適用される国際法に関する研究の成果として、いわゆるタリン・マニュアルが公表されたものというふうに承知しております。

 ただ、タリン・マニュアルは、NATOの公式見解ではなく、同研究会に参加した欧米等のサイバー安全保障分野並びに国際法分野の専門家によって形成された成果物というふうに承知しております。

 我が国はこのような取り組みを高く評価しているところでありますけれども、タリン・マニュアルで取り上げられている論点は多岐にわたり、ただ、同文書はサイバー空間を利用した行為に対して従来の国際法が適用されているということを前提としている面で、我が国の立場と一致しております。サイバー空間を利用した行為に適用される国際法を考える上で有益であり、今後参考にしていきたいというふうに考えております。

今村(洋)分科員 わかりました。

 政府の方も、サイバー空間というものが第五の戦場であるという認識をぜひ強くお持ちになっていただいて、今後の対応、対処法を決めていっていただきたいというふうに思います。

 次に、サイバー攻撃への対処が難しい理由の一つとして、サイバー空間のあらゆるシステムが攻撃対象となり得るということが挙げられると思います。

 自衛隊に対する直接的な攻撃でなくとも、脆弱な部分を狙い撃ちされ、我が国の機能が低下してしまうということが十分に考えられます。サイバー空間の安全を確保していくためには、防衛省・自衛隊だけではなく、各省庁、地方自治体、あるいは防衛関連企業や重要インフラを担う各種事業者といったものまで目を配り、対策を講じていく必要があるというふうに考えます。

 そこでお聞きいたしますが、昨今言われております、今後運用されるサイバー防衛隊が防護する対象というのはどういう範囲に及ぶんでしょうか。お聞かせください。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、現在、サイバー空間は、社会及び国家のあらゆる活動が依拠する場となっておりまして、自衛隊にとりましても、情報システム、それから通信ネットワークで構成されるサイバー空間の安定的利用が不可欠というふうに考えております。

 今般編成されるサイバー防衛隊におきましては、まずは、みずからの情報システム及び通信ネットワークの防護のための能力向上に精力的に取り組んでいくということになろうかと思います。

 他方、防衛省・自衛隊以外における統一的、横断的な情報セキュリティー対策ということにつきましては、先ほどお話がございましたとおり、内閣官房を中心とする取り組みが進められておるところでございまして、防衛省・自衛隊としても、社会全般におけるサイバー空間の安定利用の確保、これが極めて重要という認識のもとに、例えば内閣官房情報セキュリティセンターへの要員の派遣、それからNISCを通じた関係省庁などへの情報提供、さらには情報セキュリティ緊急支援チームへの要員派出といった、政府全体としての総合的な取り組みに積極的に貢献することとしておるところでございます。

今村(洋)分科員 時間が参りましたので、質問を終わりますが、今後、日本は、こういった相手の見えない戦争といったもの、グレーゾーンも含めて、そういったものに巻き込まれていく可能性が高いと思われますので、政府の方も、何とぞ、そういったところを勘案していただいて、きちんと対処していただくように切に願います。

 きょうはどうもありがとうございました。

岩屋主査代理 これにて今村洋史君の質疑は終了いたしました。

 次に、中丸啓君。

中丸分科員 日本維新の会、中丸でございます。

 ことしに入りまして、小野寺大臣と質疑させていただくのは初めてだと思います。

 これはやはり予算委員会なので、いろいろな質疑が、各分科会もそうですけれども、集中審議、一般質疑、いろいろ出ているようですけれども、ちょっと今回は、予算を見ながら、防衛大綱、中期防を踏まえながら、いろいろ御質問させていただきたい、このように思っております。

 まず、今回の新防衛大綱それから中期防における全体的なものを見ますと、海空優勢と水陸両用機能を導入していくというところに非常に焦点があると思うんですけれども、大きな意味でこの二つを軸に据えられている狙いについて、お話しできる範囲でお聞かせ願えればと思います。

小野寺国務大臣 今回の予算の大もとになりますのは昨年の防衛大綱そして中期防があり、その初年度として今回の二十六年度予算を審議していただくことだと思っております。

 新大綱においての防衛力の役割としては、周辺海空域における安全確保、島嶼部に対する攻撃への対応、弾道ミサイル攻撃への対応等が挙げられておりますが、いずれも、これらの役割を実効的に果たしていくためには、その前提として海上優勢、航空優勢の維持が不可欠と考えております。

 こういう問題を前提に、今回、予算は組ませていただいております。

中丸分科員 そういう中で、海空優勢を考えたときに、特に空の部分、これからきょう質問させていただく中にも出てきますけれども、輸送機の離発着であったり、こういったところでは当然滑走路というものが必要になってまいります。そして、普天間の辺野古移転も含めて、沖縄の基地負担軽減の中で、やはり夜間、早朝訓練であったり、こういったものの中で、以前も質問をさせていただいたことがあるかもしれませんけれども、私は、沖縄にある下地島、JALとANAが訓練用に使っていた飛行場、これが屋良覚書があって使えないということは重々承知しているんですけれども、ぜひこれを使っていただきたいと思うんですね。

 昨年、沖縄に私行ってまいりまして、いろいろ沖縄の皆さんからヒアリングを行ったところ、覚書に対しては、法的根拠がない、はっきり言うと、知事が、使わない、軍事利用しないというのが根拠である、逆に言えば、今の仲井真知事がおっしゃられるかどうかは別にして、新しい知事でも構いません、知事が撤回すれば、実はこの下地島は法的に使えるという話を聞いてきたんですけれども、大臣の御所見をお願いします。

小野寺国務大臣 下地島の空港については、民間航空機の訓練等に使われている、非常に整備の行き届いた空港だということは承知をしております。ただ、ここの、特に自衛隊の使用につきましては、今委員の御紹介がありましたが、屋良覚書がありまして、その中で、沖縄県として使用させないという方向性がたしか出ていると承知をしております。

 いずれにしても、県管理の空港でありますし、県のお考えということ、これが大変重要だと思っております。

中丸分科員 今、大臣、御答弁をいただきましたように、県の管理。ですから、逆に言えば、県が使ってもいいよという御判断をいただければ、もちろん周辺整備は必要ですけれども、ぜひともまた今後の御検討の一つに入れていただければというふうに思います。

 今回、海空優勢、水陸両用機能の中で、そういう滑走路の問題もあるんですけれども、私、一つ懸念しているのが、先ほどから尖閣の問題とかが出ていますけれども、尖閣だけに限らず南西諸島全般ということを考えれば、洋上撃破という流れになるのが今回の新大綱、中期防における予算の考え方ではないかなというふうに思っているんです。

 大東亜戦争時代に、イギリスがドイツに対して戦ったのがこの洋上撃破という考え方であるんだと思うんです。このときイギリスは、本土において地の利を得て迎撃戦で勝利していたということが考えられると思うんですけれども、南西諸島の場合は、迎撃戦という意味では、はっきり言って施設が全然足りないというふうに考えているわけです。

 そういう意味で、先ほどの下地島の空港の訓練での使用というのは、当然米軍と共用という形になるとは思うんですけれども、非常に有効なのではないかというふうに思うんです。

 その洋上撃破というものを考えると、どうしても船というのは足が遅いので、そういう意味では、もちろん空もということなんですけれども、それで水陸両用とくるんですが、実は、このイギリスとドイツの考え方、迎撃戦というものを考えたときに、南西諸島に陸上自衛隊を配備していくのも一つの方法として考えられると思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。

小野寺国務大臣 南西諸島のみならず、島嶼防衛については、今回の大綱の中でもしっかり位置づけをさせていただいております。その中で、特に南西、先島諸島に関しての防衛の重要性は、私ども認識をしております。

 現在、既に、地元の合意を得て進めさせていただいておりますのは、与那国島においての、陸上自衛隊の、小規模ではありますが警戒監視ができる部隊を配置するために、今必要な予算をとり、宿営地を含めた整備を今後行っていきたいと思っておりますし、また、今年度予算の中で、この島嶼部、南西諸島における適正な警戒監視部隊の配備についての検討を今してもらっておりますので、その中でどのような体制が重要かということを省内でまとめた上で、予算もしっかりとっていきたいと思っております。

中丸分科員 ぜひとも前に進めていただきたいんですけれども、やはり防衛省の予算全体で見たときに、財源の問題であったり、どうしても財務省との協議の中で決めていく部分があるので、なかなか枠を広げにくい部分があると思います。

 今、我々日本維新の会、きょうも朝からやっていたんですけれども、予算の修正案の中で、防衛省予算をおよそ三千億円増額するプランというのをちょっと考えていまして、そういう中で、大幅に増額しようと思うと予算取りは非常に厳しいものがあるんです。

 私、一つ提案なんですけれども、防衛国債という考え方もあると思うんです。防衛省専門の財源として防衛国債という考え方もあると思うんですけれども、そういう考え方はどのようにお受けとめになられますか。

小野寺国務大臣 たしか財政法上の制限があると思いますが、建設国債といわゆる赤字国債という仕組みが基本的だと思っております。建設国債は、多年度にわたって維持管理をする、そういうインフラ等に主に役立てているというふうに承知をしております。

 いずれにしても、これは財政法の中の議論でありますので、我が省としては、あくまでも必要な予算を財政当局に要請していくということになると思います。

中丸分科員 というのも、緊急性の高いものがあるときに、予算がないからできないというのは、国民の生命財産を守るという一番の重要項目で考えたときに、予算がないから十年かけてやろうかではなくて、今本当に必要があれば先取りする部分も必要だと思うんですね。そういう意味での、防衛省の予算には基金とかそういったものはなかなかないですから、私は、防衛国債、名前は何でもいいんですけれども、そういったものの考案も必要なのかなというふうに思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 陸上自衛隊の定員の充足率についてなんですけれども、今年度の予算の中でやはり人件費というのは非常に大きい部分があります。その中で、全体としては充足率が九〇%を超えているということで、非常に充足率は高いように見えるんですけれども、実は、階級別に見ますと、二十五年の防衛白書をもとになんですけれども、幹部、准尉、曹、ここまでは九〇%を超えているんですね。これが士になると、任期制の自衛官も含めて六八・八%しか充足していないというデータがあるんですけれども、小野寺大臣、このデータは御存じですか。

小野寺国務大臣 今委員の御指摘がありましたように、二十四年度末における自衛隊の定員に対する現員の充足率は九〇・八%、その内訳は、幹部が九四・八%、准尉が九一・一%、曹が九八・三%、士が六八・八%ということでありますので、認識は共有しております。

中丸分科員 要は、士は、普通に考えれば、一番最前線で、一番現場に近いところにいる方々なんです。これが、実は七割を切る充足率しかないんです。これは非常に大きな問題だと思っていまして、逆に、では応募が少なくてそういう状態なのかというと、倍率でいうと全然そんなことはなくて、少なくとも三倍から四・七倍、一般曹候補生のところにいけば、陸でいえば十一・二倍の倍率があるわけですね。

 そういう意味では、応募が少なくて充足率が足りていないのではなくて、これは私の推測ですけれども、総予算の中に占める人件費の割合で、ここの部分に使えなくて、あえて採用枠が少なくなっているような考え方もちょっと思ったんですけれども、その辺、いかがですか。

豊田政府参考人 陸上自衛隊の自衛官の充足率についての御質問でございますけれども、先生御指摘のように、士の充足率につきましては六八・八%という状況になってございます。

 これには二つ大きな理由がございまして、一つは、統計技術上の問題というふうに申し上げた方がよろしいかと思いますが、平成二十二年度から任期制の自衛官につきましては制度を改めまして、いきなり自衛官に採用されるのではなくて、自衛官の候補生として一旦採用して、三カ月トレーニングを受けてから自衛官とする制度に変わっております。

 先生御指摘のデータにつきましては、これは年度末の統計をとるデータでございますので、三月三十一日現在のデータということになっておりまして、そのデータには、私がただいま申し上げました自衛官の候補生として入ってこられる方は、まだ自衛官ではございませんので、統計データ上入っていないという問題がございます。これらの方につきましては、七月になりまして、約一万人でございますけれども、士に任官されて、統計データ上に上乗せされるような形になろうかと思います。

 それともう一つ、大臣から御説明させていただきましたけれども、幹部、准、曹が非常に高充足であるのに対して、相対的に士が低くなっているという点でございますけれども、この点につきましては政策的な配慮というのがございまして、近年、装備品が高度化、複雑化している中で、任務も多様化して、さらに国際貢献等々、国際化の問題もありまして、難しくなってきておるという現状がございます。

 こうした中で、部隊の精強性を確保するということを考えますと、やはり、私どもとしましては、人員の養成にどのぐらいの時間がかかるのかという点についてある程度配慮せざるを得なくなりまして、相対的に時間のかかる幹部、准、曹の方についてはできるだけ充足率を高くし、そういった施策を追求していることから、逆に、相対的に士の充足率が低くなってきているという点はあるかと思います。

 いずれにしましても、先生御指摘の充足率の問題については、自衛隊の体制強化を図る観点からも非常に重要な問題だと認識しておりますので、引き続き、私どもとしては自衛隊の充足の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

中丸分科員 いろいろ御説明をいただきまして、ありがとうございます。いろいろ装備とかお金がかかるから、難しいという本音の部分も見えるのではないかと思うんです。

 そういうところも、今年度予算にはもちろん反映できないにしても、来年度以降、やはり充足率を上げていくというのは、災害救助一つとっても非常に大事なところで、特に第一線でやっていかれる方々の充足率を上げるというのが非常に大事だと思うんです。

 その中で、分科会ということで、少し地元のお話もさせていただきたい。

 私、広島で、いろいろ安全保障委員会の質問の中でも呉の海上自衛隊のお話だとかをよくさせていただくんですけれども、中丸は陸上自衛隊の話は余りしないなというような話もありまして、きょうは一三旅団、海田町にあります陸上自衛隊のことについて少しお話をさせていただければと思うんです。

 一三旅団は今約四千名いると言われているんですけれども、実は、カバーエリアが、広島だけじゃなくて、山口、島根、鳥取。というのも、最近、中国の脅威という話はあるんですけれども、実は拉致問題も含めて、やはり北朝鮮を我々は忘れちゃいけないと思います。北朝鮮が来やすいのは、日本海側、島根、鳥取ということになるわけですね。海田町というのは逆に瀬戸内側の海側に存在する基地でございまして、南海トラフ地震のときの対策も含めて、北朝鮮に対するものを考えたときに、果たしてこの人数で足りるのかという問題があるんです。

 逆に九州なんかは、福岡に六千名、熊本に九千名、広島というか中国ブロックの三倍、四倍の人員があるわけでして、正直、現場の陸上の皆さんの一部の中には、やはり装備も含めて増員していただきたい、でないと、日本海も含めてきちんと守るのはなかなか大変なんじゃないかという意見があるんですけれども、そこについての大臣の御見解をいただければと思います。

小野寺国務大臣 委員の御指摘は的を得ているところが多いと思います。

 九州においては、北部、韓半島に近いところでは部隊がかなり多くなっておりますが、中国、北陸については、確かに手薄な印象を持ちます。

 先般、富山駐屯地、金沢駐屯地を訪問しまして、そこで、実際に沿岸警備についての単任をどのような形で行っているかということについて報告を受けました。

 私どもとしまして、それぞれ師団、旅団がありますので、その本部から速やかに増強するという体制を常日ごろからとっているということでありますが、機動的に速やかに対応できるように、いざというときには、特に日本海側の沿岸部の警戒監視は重要な陸の役割だと思いますので、そこは旅団、師団の中でしっかりと対応できるように、特に機動性についてはしっかりと指示をしていきたいと思っております。

中丸分科員 非常に共通の問題意識を持っていただいているということで、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、そういう陸上自衛隊の装備、人員の配備で、もちろん足りない部分はふやしていかないといけない。ですけれども、今動かせないようになっているのは本当に動かせないのかという話をちょっとさせていただきたいと思います。

 陸上自衛隊にAH1Sというヘリコプターがあります。これは、米軍なんかではよくコブラと呼ばれていた、今のAH64Dアパッチが入る前の、一世代前の旧型の対戦車を目的としたヘリでございます。この旧式化したヘリが全国に今六十機配備されておりまして、配備されているということは、当然そこに、維持にかかわる要員として八百名の自衛隊員がかかわっております。これで、航空機の修理費として維持管理にAH1Sが年間約五十億円、八百名の経費がプラスアルファでかかっている。かなりの金額がかかっているわけですね。

 これは何が問題かというと、要は、AH1Sはもう古くて、はっきり言うと旧式化して、部品調達も含めて今後かなり難しい。一例を挙げると、搭載されている対戦車ミサイル、TOW、これは命中するまで照準を維持するのに時間がかかるんです。現代戦では完全な時代おくれ型の兵器だとはっきり言い切ってもいいと思います。

 これに対して、例えば、最近普及したロケット弾を改造した小口径のセミアクティブミサイルを改装するとかというお話も特別ないようですけれども、導入したとしても、これは終末誘導を行う手段もあわせてやらないといけないので、では、そこまでこの旧式にお金をかけるのかという話になると思うんです。例えば、これを島嶼防衛で使おうとしても、海上飛行は単発ですから、非常に危険が伴うタイプだと言えると思います。これをなぜまだ六十機持っているのかと聞くと、基本的にはまだ代替がないというのが答えなんですね。

 代替がなければほかにも方法があって、思い切ってスクラップ・アンド・ビルド、例えば一気に全部退役させるとかということが出てくると思うんです。その後継としてUHXを武装化した軽武装ヘリを充てようとお考えだと思うんですけれども、それは大体いつぐらいのことになるというところでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のAH1Sでございますけれども、昭和五十二年から導入を開始したものでございますので、そういう意味で既に長年月が経過をしております。そして、今後、減耗、つまり用途廃止が進んでいくものというふうに見られております。

 他方で、先生が先ほどまさにおっしゃられたように、今六十機あるものでございます。そして、これを今後どうするかということなのでございますけれども、そもそも、空中から火力を発揮する、そして侵攻してきた場合の敵の地上部隊を撃破する、そういう機能を持っているという意味で、陸上自衛隊にとっても大変重要な機能ではあると思っております。

 したがいまして、こういうものを今後どういうふうにしていくか、つまりAH1Sの減勢にどう対応していくかというのは確かに重要な課題だと思っておりますけれども、これを延命して改修するとか、あるいは後継機種を取得するとか、そういうようないろいろな選択肢はあるかと思います。

 そして、陸上自衛隊全体の兵器システムの中で、こういう空中からの攻撃機能というものをどう位置づけていくかという問題でございますので、その点は今後幅広く検討していく必要があるものというふうに考えておるところでございます。したがいまして、具体的な計画は今ございません。

中丸分科員 具体的計画がないということなんですけれども、もともとはAH64Dに切りかえようと思ったら、十三機調達した時点でとまっちゃったんですね。そうすると、それに限界があって、今おっしゃられたように検討中ということだと思うんです。

 一つ、私から御提案をさせていただきたいと思います。

 AH1のかわりに、アイデアとして、ヘリにこだわるわけではなく、要は、滑走路が短くて、機動的に動けて、しかもお値段も安い、約一機十億円程度のものなんですけれども、スーパーツカノというものがあります。COIN機と言われるものなんですけれども、イメージとしては、昔のプロペラの戦闘機みたいな形だと思っていただければいいと思います。

 今どきそんなプロペラ型のものを使うのかと思うんですけれども、これは実は、非常に値段も安くて、使い勝手がよくて、各国が今導入しています。実はアメリカも、民間の軍事会社が使っているんですよ。これは山林等があるゲリラ戦とか、そういうのに非常にいいのです。要は、昔の戦闘機のようなプロペラ機にミサイルが装着されているというふうなイメージを持ってもらえればいいんですけれども。

 これを今、アメリカが特殊作戦、まさに今回の防衛大綱、中期防の中でも出てくるゲリラ・コマンドー、特殊部隊対応に非常に向いた機械で、値段も非常に安いので、研究の一環として、このスーパーツカノを考えていただきたいなというふうに思います。

 ヘリに比べてのメリットは、当然飛行機ですから高速で飛べる、それから航続距離が長い、小回りがきく、いろいろなメリットがあるんです。だから、こっちの方が運用コスト自体が根本的に安いんですね。これをぜひ検討していただければと思います。

 もう一つ追加で言いますと、これを買って研究する中で、これだったら国産でもつくれる、民間転用もしやすいものになると思いますので、ぜひ技術開発本部の一つの考え方として考えていただければと思います。

 アパッチで難しい部分でいえば、スーパーツカノは研究ということなんだけれども、島嶼防衛については、UH60も代替機として調達数をふやすことによって使えるんじゃないかなというふうに思います。

 時間がなくなってきたので、ヘリコプターに関してはそれぐらいにさせていただきます。

 機動戦闘車と装輪装甲車の今後の選定プロセスについて、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 機動戦闘車を今回かなり導入されていくという方向で決まっているんですけれども、いただいている資料の運用イメージでいうと、島嶼防衛に関するもの、それから原発等も含めて市街地等でのゲリラ・コマンドー、特殊部隊対応で導入されているものではあるんですけれども、これが今から退役していく七四式戦車の砲塔と同じ百五ミリ砲を搭載している。

 これは以前もちょっと、私、問題視していまして、なぜ百五ミリ砲をつけたのかと話を聞くと、既存の技術及び各種弾薬の活用と。これは、読み方を変えると、弾が余っているからこれにしたというふうに、はっきり言って言えなくもないところもあるわけです。

 それはそれで有効活用でいいんですけれども、まず、島嶼防衛で考えれば、これは非常に装甲板を薄くして、二十六トンにトン数を減らしたおかげで空輸ができるというメリットはあるんですが、今の自衛隊保有の輸送機で一機飛ぶときに一両しか運べない。五両持っていくなら五回飛行機を飛ばさないといけない。これは本当に空輸でいいのかというのがまず一つ。

 それと、島嶼防衛で輸送機が飛ぶということは、滑走路のないところには行けないということですから、まず尖閣は行けません。これが島嶼防衛になるのかという考え方もあると思うんですね。

 もちろん、国内のゲリラ・コマンドー、原子力発電所等も含めてという話なんですけれども、百五ミリ砲というのは物すごい破壊力があります。原子力発電所に立てこもったゲリラ・コマンドーなんかにこんなものをぶっ放したら、原発自体をぶっ壊すというか、大変なことになっちゃうわけですよ。

 そういう意味では、前も指摘しましたけれども、四十ミリ砲だったり、七十五ミリ砲とか、もっと小さな口径でピンポイントでいけるものも必要だと思いますし、ゲリラなんというのは、山の裏に隠れていたりしたら、これは迫撃砲で本来は対処するものなので、機動戦闘車は本当に要るのか。全然要らないとは言いません。先ほどのAH1Sと同じ話で、これも台数をほかに振り分けられないか。

 ちなみに、空輸の話をしますと、先日、普天間の米軍基地に行ったときに米軍の将校とお話をさせていただいて、オスプレイ、ティルトローター機を導入して、人員だけでなくて、こういった島嶼防衛のときにどうやって対応して、このオスプレイに積めるものがあるのかと聞くと、さすが米軍です。ジープ型の、車幅を、横を狭めて小さくしたものに迫撃砲を搭載した形の車両をオスプレイに積めます、これを積んでいけばそういう島でも十分活用できますと。

 だから、国産の開発、私も大事だと思います。国産開発するには、国産で開発してメリットのあるものを、本当にこれから、防衛大綱、中期防に照らし合わせて、その他のものと合わせたものを使っていかないと、こういった大型のもので弾が余っているとか、一部この砲身をつくったのは広島の会社なので余り言いませんけれども、そういうところに配慮するのであれば、違うものをつくってもらうことで、新しい技術を国内で維持することはできると思います。

 時間がなくなるので、まとめて先に申し上げた後、お答えいただきたいと思うんですけれども、この機動戦闘車は三菱重工さんがつくられているということでございます。これから取り入れる装輪装甲車は、現状のものはコマツさんがつくられております。どちらも八輪の車台、プラットホームでございます。

 今、世界の軍事の流れでいえば、こういった装輪装甲の車両のプラットホームの共有化、これはもう自動車業界では当たり前です。フォードとマツダが一緒にやったり、そういう他メーカーでも一緒のプラットホームを共有することにして、値段を下げつつやっていく、上物それから装備を変えていくというような流れになっている中で、日本みたいな、自衛隊のその一部の中で、こっちは三菱、こっちはコマツというようなことではなくて、それこそ政府が主導して、このプラットホームを共同で開発するような流れ。

 何でもかんでも入札だったらいいというものじゃないと思うんですけれども、その辺の共同開発、もっと言えば、世界では多国籍企業で共同開発しているものもたくさん今出てきて、そういう意味では、企業自体のスクラップ・アンド・ビルドも世界的には起きているんですね。

 日本国内だけのすみ分けじゃなくて、国内の技術基盤を本当に維持するには、やはりオール・ジャパンという発想が非常に必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

小野寺国務大臣 今御指摘がありましたプラットホームですが、一般論としては、これは共通化、ファミリー化して、装備品を複数の企業が生産できる体制を整えていくことは、防衛生産、技術基盤を維持強化する点でも大変重要だと思っております。

 防衛省としましても、次期の中期防整備計画の中に、各企業の最もすぐれた技術を組み合わせ、国際的にも競争力を有する装備品の取得を可能とする企業選定方式と共同企業体という枠組みを用いて、より最適な受注体制の構築を目指す、そのような検討を行っております。

 具体的に、今回の機動戦闘車の部分が想定される、あるいは装輪装甲車が想定されるかどうかはわかりませんが、いずれにしても、全体としての共通の認識を持っております。

中丸分科員 時間も来ましたので、最後に、南西諸島の防衛に奪還訓練を米軍と一緒に多くやられていますけれども、奪還というのは、とられた後に取り返す訓練です。

 本当に防衛大綱、中期防で考えていただく上で必要なのは、南西諸島には百五十五万人の日本人が住んでいるんです。奪還ということはその人たちに何かあったという前提になりますので、奪還する前に、上陸させない、とらせない。洋上撃破、空中撃破もいいでしょう。そういう意味での今後の装備にかかわるものを真剣に、まあ真剣に取り組んでおられるのは重々承知ですけれども、ぜひとも、より細かく分析して、効率よく使っていただきたいということを申し上げまして、中丸の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋主査代理 これにて中丸啓君の質疑は終了いたしました。

    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

林主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 金融庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。樋口尚也君。

樋口分科員 公明党の樋口尚也でございます。大臣、お疲れさまでございます。

 きょうは、中国のシャドーバンキングと理財商品についてお伺いをしたいと思います。

 この問題は、先日のG20でも話題になったというふうに伺っております。市場関係者や私の知り合いの直接お会いする経営者、また国民の皆様からも、中国は世界第二の経済大国ですから、このシャドーバンキングの問題は中国の国内問題ではない、それは日本経済にとってことし最大のリスクシナリオだ、こうおっしゃる方もいれば、また逆に、これはあくまでも中国の国内問題であり、直接影響が海外や日本に及ぶことはない、このようにおっしゃる方も、楽観視する声も聞かれているところでございます。

 よくわからない実態でございますけれども、今、実感のできる景気回復へアベノミクスが前進をする中で水を差すようなことになってはならない、こういう思いから、本日は、国民の皆様の疑問に答えて現場の声をお届けする、こういった視点で少し詳細に質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、中国におけるシャドーバンキングとは何なのか、また理財商品とは何なのか、御説明をお願いします。また、中国のシャドーバンキングや理財商品について、我が国政府としてどこが窓口として担当をしているのか、さらに、担当されている部署が理財商品の問題についてどのような役割を担って、どのような分析と対応をしているのか、御説明をお願いします。

西崎政府参考人 まず、いわゆるシャドーバンキングについてでございますけれども、銀行理財商品のほか、信託商品、委託商品等、銀行規制の枠外にある取引によって家計や企業から資金調達することを指すものというふうに承知をしております。また、この銀行理財商品につきましては、銀行が販売する資産運用商品でありまして、オフバランスで取り扱われているものというふうに承知をしております。

 内閣府といたしましては、この問題につきまして、景気判断や内外の経済動向の分析を担当しております立場から、御指摘の中国における理財商品やシャドーバンキングの動向につきましても可能な限り把握に努め、世界経済や日本経済への影響という観点で注視をしているところでございます。

樋口分科員 中国の有力経済誌「財経」によれば、シャドーバンキングの総資産額は約二十四兆元、日本円で約三百八十三兆円にも上り、中国のGDPのほぼ半額に匹敵するというふうに報じているところでございます。

 政府は中国のシャドーバンキングの総資産額をどのように見ているのか、御答弁をお願いします。

西崎政府参考人 中国の監督当局による調査によりますと、二〇一三年九月時点での理財商品の規模は九・九兆元、GDP比二割弱とされております。

 また、シャドーバンキング全体の規模につきましては、これは十分に把握はされておりませんけれども、民間機関や中国政府が推計を行っておりまして、GDP比で三〇%台から六〇%台程度というふうに見られていると承知をしております。

樋口分科員 次に、日本の金融機関や証券会社、またその現地法人が、理財商品または理財商品を組み込んだ商品、これを扱っている可能性はあるのかないのか、お答えをお願いします。

細溝政府参考人 お答え申し上げます。

 中国におけるいわゆる理財商品につきましては、いろいろな種類のものが発行されておりまして、そのリスクはまちまちであると承知しております。

 我が国の主要な金融機関に現時点で聞き取りを行ったところ、大手金融機関は現地におきまして、いわゆるシャドーバンキングとして、先ほど内閣府から御答弁のありましたオフバランスで販売されている理財商品、これは扱っていないというふうに聞いております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 次に、政府は、中国在留の日本法人が理財商品にかかわっているかどうかの実態調査、また関係者に対する指導や通達などを実施したことがあるかどうか、お伺いをしたいと思います。

鈴木(英)政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省としては、海外にいる企業の事業活動について、それを支援するためのいろいろな活動を行っているわけでございますけれども、本件に関して、特に調査をした、また指導したという事実はございません。

 ただ、日々の情報交換の中で、日本の主要な事業会社につきまして、中国においてそういった商品を購入したという話は今のところ伺っておりません。

樋口分科員 ありがとうございます。

 次に、先日のシドニーで開催されたG20についてお伺いをいたします。

 G20でシャドーバンキングや理財商品について取り上げられたようですが、そもそも何が問題となったのか、その上で各国が中国に何を求めたのか、さらに中国にどう働きかけたのか、また我が国としてどのような発言をなさったのかについてお伺いをしたいと思います。

梶川政府参考人 G20に関してのお尋ねでございますけれども、G20という国際会議の性格上、他の参加者の具体的な発言についての言及は差し控えさせていただきたいと思います。

 我が国からの発言ということでございますけれども、今回のG20では、世界経済に関しては、米国の量的緩和の縮小であるとか、あるいは新興国への影響といったところが中心的な話題であったということもございまして、日本から中国経済に関する発言は行っておりません。

 ただ、いずれにいたしましても、シャドーバンキング問題への対応につきましては、中国当局が引き続き監督を強化するとともに、この問題がどのような経路を経て中国経済に影響を及ぼすかを監視を強めるということが重要であるというふうに考えておりまして、今後ともその動向を注視していきたいというふうに考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 今、G20での中国からの発言、監督を強化する、これは報道ベースですけれども、有効な監督管理を実行しているという発言もあったというふうに報道はされておりますが、我が国としましてはこれでシャドーバンキングや理財商品に対する懸念が解消されたというふうに受けとめているのかどうかについて、御答弁をお願いします。

梶川政府参考人 G20におきまして中国当局がそのような発言をしたという報道があることは承知しておりますけれども、ただ、繰り返しになりまして恐縮でございますが、他の参加者の具体的な発言についての言及は差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、シャドーバンキング問題への対応につきましては、中国当局が引き続き監督を強化するとともに、この問題がどのような経路を経て中国経済に影響を及ぼすかを監視を強めるということが重要であるというふうに考えておりまして、日本経済及び世界経済に与える影響も含めまして、今後ともその動向を注視していきたいというふうに考えております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 続きまして、中国で年内に償還を迎える金融商品の額はどれくらいだと推定をされているか、お答えをお願いしたいと思います。

西崎政府参考人 年内に償還を迎える金融商品の額についてでございますが、私ども、そうした統計につきましては存じ上げてございません。

 ただ、一般に、理財商品につきましては数カ月単位の比較的短期間に償還を迎えるものが相当数あるというふうに聞いてございます。

樋口分科員 ありがとうございます。

 いろいろ報道されておりますけれども、一説では六十兆円と言われているところもございますので、ことし償還を迎える額も随分あるなという感じを受けるわけであります。

 国際協力銀行の渡辺総裁が、シャドーバンキングについて、先月二十八日、ロイター通信のインタビューに答えています。その中では、システミックリスクは起こらないというふうに考えているとお答えをされておりました。

 今後も理財商品の返済は続いてまいりますけれども、政府は、渡辺総裁が言うように、理財商品やシャドーバンキングの問題を理由に中国においてシステミックリスクは起こらないと見ているかどうかについて、お答えをお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 渡辺総裁の発言の詳細について把握しているわけではないんですが、いわゆる中国のシャドーバンキングというものにつきましては、あの国では預金金利の上限というのが決められておりますので、投資家としては、より金利の高い理財商品を求めていろいろ物を購入する一方、当然、それによってデフォルトが起きたらという可能性があるんですが、そういうときは何らかの救済措置がとられるであろうという期待、モラルハザードとかいろいろな表現があるんでしょうけれども、期待するということなどが存在しますので、構造的な問題が背景にはあるだろうなと私どもは想像はしております。

 他方で、市場関係者の間では、どのみち、投資家のほとんどは中国の国内にいる人たちで回している、金を借りてきて投資しているわけじゃない、自分たちの金だけなので、大半は中国の国内投資家であるということが、投資家のその内容。

 加えて、当然なこととして、商品にレバレッジがかかっているわけじゃありません、自分の金ということになりましょうから、そういった意味では、システミックなリスクというものに関しては、これは限定的であろうというのが大方の声と承知はしております。

 ただ、御存じのように、この国の内容の話というのはよくわからぬのが実態で、発表された数字がちょっと違ったりなんかよくしますので、その資金の流れの実態が十分に我々のところで把握できているかといえば、これは、そんな確実に一円まできちっとわかっているわけではないと思われます。したがって、こういったものに関しては、日本としては、これによって不測の事態が起きるということを考えて、ある程度高い関心を持って見ておかねばならぬものだと考えております。

樋口分科員 大臣、ありがとうございます。

 高い関心を持って見ているということが非常に重要だというふうに私も思って、質問をさせていただいているところでございます。

 昨年の六月の二十四日、上海株などアジア株がシャドーバンキングに対する懸念から下落基調を強めると、日経平均も引けにかけて下げ幅を広げました。ことしの一月の二十七日にも、シャドーバンキングのデフォルトを懸念して東京市場が全面安となりました。このように、中国の株安をきっかけに、日本市場に強い影響を及ぼすことがあるというのは周知の事実でございます。

 そこで、シャドーバンキング、理財商品が仮に行き詰まった場合に、日本の株式市場など金融市場への影響をどのように考えていらっしゃるのか。また、世界について、人民元の暴落の可能性、円、ドル、ユーロなど主要通貨の為替相場、また世界経済への影響をどう見ていらっしゃるのか。大臣の、日本に対する影響と世界に対する影響の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、樋口先生、一部繰り返しになりますけれども、中国のシャドーバンキングの実態というものが、どこの金なのか、軍の金なのか、民間の金なのか、政府の金なのか、何の金なのかがよくわからぬ上に、市場関係者の間の話を我々仄聞しているところによると、しょせんは中国の国内の投資家が大半なんだから、システミックな影響というのは極めて限定的ですよという声がある一方、御存じのように規模が大きいものですから、そういった意味では、資金の流れというものからいきますと、その実態を我々十分把握できているかと言われると、なかなかさようなわけにはいっていないのではないかということだと思っております。

 また、シャドーバンキング自体や、それが扱っております理財商品で仮に問題が何か起きたとした場合、その額にもよるんだとは思いますけれども、どのような対応が中国政府によってとられるのかについても、これはシャドーバンキングの話で、俺たちは知ったことじゃないという話になるのか、必ずしも明らかにされておりません。

 したがって、世界経済や金融市場に与える影響について言わせていただければ、関係省庁やら、我々では例えば日本銀行等々と連携をきちっととりながら、高い関心を持って引き続き注視をしていかねばならぬ大事なところだと思っております。もともとはここから起きて何とかと、講釈を今いろいろな方が言われますが、それは本当かねという話でよくわからぬものですから、お答えは今程度しか申し上げられません。

樋口分科員 大臣、ありがとうございます。

 シャドーバンキング、理財商品問題は、今お答えにもありましたけれども、日本経済のみならず、これがどう作用するかわかりませんが、悪い方に作用した場合には、アジア同時株安や世界同時株安を引き起こす、世界経済にも影響を及ぼす可能性があるということも考えられておるところであります。

 このような事態を避けるために、先ほどから、なかなか詳細な実態の把握はできないということでございますけれども、我が国として中国にどのように働きかけていくのか、また、我が国としてどのような対策を講じていくつもりなのか。この実態がなかなかつかめない中で、政府はこの実態の把握を今後どのようにしていくのかについて、お答えをお願いしたいと思います。

西崎政府参考人 まずは実態把握ということだと思います。ただ、先ほど来御議論がございましたように、実態把握については非常に限界も大きいかと思います。

 そうした中で、私どもといたしましては、国際機関の調査報告、あるいは中国当局による調査、現地の報道、関係者からのヒアリング等によりまして、可能な限り状況を把握するように努めてまいりたいというふうに考えております。また、こうしたこととあわせまして、本件に対する国際金融資本市場の反応等につきましても注視をしてまいりたいと考えております。

樋口分科員 著名な投資家ジョージ・ソロス氏は、シャドーバンキングについて、アメリカが金融危機を招いたサブプライム住宅ローンに似ている、こういうふうに分析をし、投資家に警鐘を鳴らしております。リーマン・ショックの際には、幅広い金融機関が影響を受け、金融市場全体に問題が波及をいたしました。理財商品で日本の金融機関の資産などが毀損する可能性はないのかあるのか、あるとしたらどのようなケースなのか、御答弁をお願いします。

細溝政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、中国におけるいわゆる理財商品につきまして、投資先の経営破綻等により元利金の支払いが滞ることがあり得るという指摘はございます。

 ただ、これら理財商品について、日本の個人、法人の保有状況をすべからく承知しているわけではございませんが、我が国の大手金融機関とその現地法人においては、保有しているという報告は現時点で受けておりません。したがって、仮に理財商品が毀損したとしても、我が国の大手金融機関、その現地法人に対する直接的な影響は小さいものと考えております。

 ただ、理財商品の大規模な毀損が起こって、中国の実体経済、ひいてはグローバル経済に悪影響を与えまして、結果として日本の実体経済あるいは金融システムに影響を与えるということも考えられるところでございます。

 引き続き、中国を含む国内外の経済、金融の動向などについて、高い関心を持って注視してまいりたいと思っております。

樋口分科員 ありがとうございます。

 私も調査をいたしましたけれども、中国にある日系合弁会社が理財商品を購入して資金運用を行っているというふうにも聞いているところでございます。それが債務不履行を起こして多額の損失をこうむる可能性も大であります。

 この際、政府として、我が国にかかわる理財商品の購入実態について調査をすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 十分に調査はしておかねばならぬとは思いますけれども、かかって、こういうものは自分でもうかったときはえらいいい思いをするわけですから、もうかったときは黙っていて、損をしたときだけ何とかしてくれという話、下手をするとそういうことになりかねませんので、この扱いはなかなか難しいかなという感じはします。

樋口分科員 大臣、ありがとうございます。

 そのとおりでありますけれども、把握をするということの一環で、ぜひ調査も御検討いただきたい、このように思っております。

 次に、国際的そして長期的な視点から独自の分析で定評があります中前忠氏は、昨日の日経の夕刊で、中国は、この二年間、世界で最大の借入国である、こういうふうに述べておりました。借金が多いということを言っているわけでありますが、中国はアメリカ国債の最大の保有国であります。

 仮に、中国当局が不良債権処理のためにアメリカ国債を売却し始めれば、アメリカの金利の上昇、そしてアメリカの国債価格の下落が進み、世界の投資マネーが逆回転しかねません。そういう懸念が考えられるわけですけれども、政府としてどのような見通しを持っていらっしゃるか、お答えください。

西崎政府参考人 シャドーバンキング問題との関係で、不良債権処理の問題についてのお尋ねだと思います。

 シャドーバンキングの問題につきまして、今後どのように状況が推移していくのか、また中国当局がこれにどう対応していくのかにつきましては、引き続き注視をしていくことが重要と考えております。

 日本政府として、現時点で、中国当局の対応やその見通しにつきまして申し上げることは差し控えたいというふうに考えております。

樋口分科員 さまざま御答弁を賜りましたところであります。問題の一端が明らかになったと思いますが、非常にわかりにくい問題だということがよくわかったと思います。

 やはりこの問題は世界同時に対応していかなければいけないという問題でありますから、大臣に先ほど御答弁をいただきましたように、世界各国との連携、これが非常に重要で、情報を共有化していかなければなりませんし、当然、日本だけで済むことではありませんし、日本だけは知らないということでは済まされないことだというふうに認識をしたところでございます。

 このシャドーバンキングの額につきましても、中国のGDPの三〇%から六〇%あるのではないかという御答弁もいただきました。そういう意味では、日本円に直すと三百兆円、四百兆円、五百兆円、どのぐらい規模があるかわからないということもございます。

 私、きょうは政府の中で窓口を明確化していただきましたので、それとあわせて、今後のさらなる実態調査と不測の事態に備えたアクションプランの策定、この二点をぜひともお願いしたいというふうに思っています。日本経済に水を差すことのないように、投資マインドが冷え込まないように、この問題について、一言、最後に大臣に御所見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、リーマン・ショックが起きまして以後、中国の中で急激に起きてきた話でありますから、資料があるわけではなし、誰がつけたか知りませんが、おまけにシャドーとつけるぐらい、よく影で見えない部分で、しかも、誰もこれでもうけたとか損したとかいう人はいない割に、金融は、本国ではとめられているにもかかわらず、地方で続々建造物が建つ。建造物が建つのは主に地方、地方政府が借り主。したがって、それに投資している人は、地方政府が保証しているから金を貸しているのかなと思えるので、誰かが保証しているはずなんですが、その土地を買って、建てているのが中央政府ということになると、何が何だかよくわからぬという話になってきます。

 今の状態としては、この内容が不透明のきわみなので、この数年間で起きた話とはいえ、急激に額だけ伸びてきておりますので、これを一挙に縮めようとしている中央政府に対して、地方政府は今とめられたら回らなくなるということもこれあり、いろいろなものが重なっていて、複合的なものから、私どもとしては、想像を超えている部分が幾つもありますので、答えようがないんです。

 私どもとしては、これが与える影響は、先ほどアメリカの国債を何とかのためにというお話もありましたけれども、さらに、世界最大のアメリカの資産を持っている国ですから、売れば売るだけ資産が下がりますから、それは自分で自分の首を絞めることになりますので、もっといろいろなことを考えるんだとは思います。

 いずれにしても、私どもとしては、十分にいろいろなものに目を配りながら対応していかねばならぬと思っております。

樋口分科員 ありがとうございました。大臣、おっしゃったとおりだと思います。

 非常にわかりにくい仕組みでございまして、一般的に考えますと、公共団体がやるような事業で、金融商品が一〇%であるとか八%とか一二パーと言われていますが、そんな利回りでは回らないわけですので、どうやって返すのか、非常に不思議な仕組みでありますがゆえに、わかりにくさもあって、この規模が余りにも大きいということもございますので、実態の把握、そして、不測の事態に備えた、世界各国との協調をしたアクションプランの策定をぜひともお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

林主査 これにて樋口尚也君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

林主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 復興庁所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉田泉君。

吉田分科員 民主党の吉田泉でございます。

 きょうは、福島復興の諸課題ということで、復興大臣を中心に御質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 先週末の二月二十二日でしたが、福島県浜通りを走る常磐自動車道広野―富岡間の再開通式というのが開催されまして、大臣、そして副大臣、たくさんの方においでをいただきました。

 この区間は、三・一一の地震で路面が大きく損傷した、そしてなおかつ、去年までは警戒区域という指定で、人が入れなかったところでございます。そういう中で、除染をしながら復旧工事を続けて、三年近くかかりましたけれども、とうとう完成をいたしました。多くの県民が、やっとここまで来た、もしくは、よくぞここまで来たというふうな感慨を覚えたところでございます。ちょっと新しいステージに浜通りが入ったという感触を私は持ちました。

 そしてまた、来る四月一日、今度は田村市の都路町というところで避難指示が解除される。ここも警戒区域だったわけですが、初めて解除になる。

 こういったいろいろな実績を踏まえて、それに我々も自信を持ちながら、深めながら、一歩一歩前進していきたい、こういうふうに思っているところでございます。

 ただし一方で、いまだに、指示避難者が十万人、自主避難者が四万人、合計十四万人の方が自宅を離れて避難中。もう三年近くになりますので、いよいよ避難の長期化という問題が現実化しつつあるということだと思います。

 その方々の生活の安寧のためには、我々も、住宅と賠償が一番重要だ、この二つだという思いで、これは国も県も市町村も共通認識で、今まで一生懸命取り組んできたと思います。そして、その二つの課題については、大体環境は整いつつあるというふうに思います。

 それで、そんな中で今非常に大きくクローズアップされている問題が、避難者の方々の心身の健康管理の問題でございます。三年たって、うつ症状の方がふえているというお医者さんの指摘もございました。それから、要介護の度数がふえているという自治体の首長さんの指摘もございました。そういう方々をどうやって今後支援していくか、今やこれが福島における最大の課題の一つになりつつあるというふうに思います。

 この認識は復興大臣ももう既にお持ちだとは思いますが、改めて御見解を伺います。

根本国務大臣 委員には、福島の復旧復興、懸命に当たっていただきました。そして、特に、復興副大臣として御尽力をいただいてまいりました。その意味で、委員はよく今の現状、課題を御承知のことだと思います。

 私も、今のお話のように、仮設住宅暮らしが長くなる、避難が長期化する、それに伴って、今お話のあったうつ病の問題、あるいは要介護度の上昇、さまざまな心身の健康の問題、あるいは生活が不自由なことに伴うさまざまな問題が出てくると思っております。

 その意味で、昨年の十一月に、私のもとに関係省庁のタスクフォースをつくりました。これは、私が入って、具体的な問題について関係省庁の局長と具体的な制度の深掘りをしていく、こういうタスクフォースを昨年十一月につくりました。これは、健康、生活面での対応ということのタスクフォースであります。

 そして十二月に、被災者に対する健康、生活支援に関する全体の施策パッケージ、これをまとめました。その大きな柱の一つが、仮設住宅入居者などの避難者に対する健康支援、これを最初の柱立てに据えました。

 そして、具体的には、体の健康対策として、保健師による巡回保健指導、それを行う保健師の確保等への支援。心の健康対策として、心のケアセンターを設置し、訪問、来所など各種相談対応を実施する。三点目は、高齢者対策として、被災地でのサポート拠点における相談支援、生活支援サービス、地域交流などの支援。孤立対策として、市町村、社会福祉協議会、NPO、ボランティア、専門職などによる見守り活動や交流の場の提供。それぞれ、具体的な予算措置もして、関係省庁挙げて取り組む、こういう体制と対策を講じたところであります。

 これからも、被災者の健康、生活面に関する施策、これをしっかりと進めていきたいと思います。

吉田分科員 ありがとうございました。

 この問題は、それぞれの方の生き方とか考え方も関係してくるような問題だと思います。なかなか一律、全ての方に即効性のある対策はないと思いますが、今大臣がお話しになったような対策を地道に、丁寧に続けていただきたいとお願いをいたします。

 さて、福島復興の行方を根本的に左右するのが、福島第一発電所の問題、特に汚染水の問題でございます。

 二月十九日の深夜でしたが、残念ながら、またまた漏えい事故というのが起きてしまいました。今回の漏えい量は、新聞報道でしたが、約百立米、そして、放射能の濃度は二億三千万ベクレル・パー・リットルだということでございます。

 今回の漏えい事故が一体どのぐらい重大な漏えいなのかということをちょっと知りたいと思います。

 昨年の八月にも似たようなことがございましたが、そのときは三百立米で八千万ベクレルだというふうに聞いておりました。そのときの事故の評価がレベル3であったということでございますが、そのときと比較して、今回の事故の重大性、これから正確には評価することでしょうけれども、どのぐらいと考えておられるのか、これは規制庁にお伺いしたいと思います。

山本(哲)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、二月の十九日に、タンクからの漏えいの事象が発生いたしました。この漏えい事象そのものは、その日の翌日、ちょっと日をまたぎましたけれども、まず、漏えいは停止をしているという状況でございます。

 それから、こういう事象が発生いたしましたので、まず、東京電力におきましては、委員御指摘のように汚染水が約百トンぐらい漏えいいたしましたので、この汚染水の回収、おおよそ約四十二トンぐらいでございます、まずこの回収を実施しております。それから、汚染水がタンクの周辺に拡大してございますので、その拡散した範囲の土壌、これは約百トンぐらいでございますけれども、これらを回収するということで、汚染水の拡大防止、これも引き続き、今現在も進めているところでございます。

 それから、漏えいのありましたタンクの周辺には、幸いなことに、海につながるような排水路がございませんでしたので、海域、海には直接流出はしていないものというふうに考えているところでございます。

 それで、御指摘のこの事故の評価ということでございますけれども、今申し上げましたような種々の拡大防止対策を今現在実施してございますので、その効果がどの程度になっているのか、それから、周辺海域を含めましてモニタリングを今現在実施しておりますので、そういったところのデータをきちっと十分精査するということが必要だと思っております。こういったことの評価、検討をした上で、影響評価などを行った上で今回の漏えい事象に対する評価を行っていきたいと思っておりまして、今現時点でこれぐらいというのはまだ決まっているわけではございません。

 御指摘のように、昨年の夏に三百トンのタンクからの漏えい事象がございましたので、そちらとの比較も含めて、今回の事象の評価を適切に行っていきたいというふうに考えているところでございます。

吉田分科員 詳細はこれからでしょうけれども、素人考えですけれども、去年と比べて、漏えいのボリュームは三分の一、濃度は三倍、そういう数字になっていますので、大体同じ程度というふうに考えたらいいのかなと思っているんですが、詳細を待ちたいと思います。

 今回の事故はなかなか不自然な面がございます。弁の開閉について不自然な、これが故意にあけられたのか、ミスだったのかというような問題、それから、警報が出たわけですけれども、警報が鳴ったにもかかわらず有効な対策がとられなかったというような問題がございます。

 これもまた東電の今の社内のヒアリング等の調査を待つしかございませんけれども、きょうの新聞によると、またまた、残念ながら、新しい事故が起こったようでございます。

 昨日のことだと思いますが、四号機のプールで、電源ケーブルを誤って切断してしまった。これは人為的なミスということでしょうが、それで四時間半にわたって、何とプールの冷却装置が停止してしまった。その後復旧はしたわけですけれども、この相次ぐ人為的なミス、一体大丈夫なのかという思いが、こう続きますと、湧いてこざるを得ません。

 専門家の方、この方は諸葛さんという東大のかつての特任教授の方ですが、この方の新聞のコメントは、長引く汚染水対策で作業員に疲労がたまっていることがトラブルの背景にあるんじゃないか、廃炉作業はこれから最大四十年かかる、このままでは長続きしないぞ、態勢の見直しが必要だという指摘をする専門家もおられます。

 この点に関して、監督官庁、つまり厚労省と経産省の見解を聞きたいと思います。

半田政府参考人 お答えいたします。

 東電福島第一原発の作業員の方々には、放射線被曝のリスクがある厳しい環境の中で作業していただいておりまして、その勤務環境を改善し、被曝線量管理や健康管理に万全を期していくことが大変重要であると認識してございます。

 このため、私ども厚生労働省では、被曝線量の迅速な測定評価、それから法令に基づく健康診断や日常的な健康チェックの実施、それから医療体制の整備、休憩施設の整備、こういったことにつきまして、関係事業者に対しまして厳しく指導してきているところでございます。

 さらに、一定以上の被曝が見込まれるような作業につきましては、事業者の方に事前に届けを出していただきまして、防護装備や作業時間の短縮、こういったことなどにつきまして適切に実施するよう指導しているところでございます。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原子力発電所の廃炉、汚染水への対応という意味では、まさに、環境自身がかなり放射線レベルが高い状況での作業となりますし、他方で高度な作業能力を要求されるということもありますので、そういう専門性の高い方々が安心して、それも継続して働いていただけるように、我々としても、しっかりとした労働環境を整備するというのは必要だと思っております。

 そのような観点で、政府といたしましては、廃炉措置に向けた中長期ロードマップといったものをつくってございます。その中でも、過酷な状況の中で少しでも働きやすいようにというふうな視点から、例えば、作業員の安全管理、放射線の管理、さらには健康の管理といったことにつきましても、継続的にそのロードマップの中で位置づけ、その進捗状況をしっかりと管理しているということになってございます。

 具体的にはということでございますけれども、とりわけ、昨年の十一月になりますけれども、東京電力の方が緊急安全対策といったものを発表してございます。その中では、作業環境の改善という視点から、大型の休憩所の整備とか給食センターをつくる、さらに救急医療用機器の充実、労務費の割り増し分のさらなる増分といったことについても対策を打つというようなことになってございます。

 そのような労働環境全体を変えていくというようなことをもちまして、今先生御指摘のような、ちょっとした人為的なミスがないようなしっかりとした環境がつくられていくというふうな形で、政府も、ともになりまして前向きに取り組んでいきたいと思ってございます。

 よろしくお願いします。

吉田分科員 現場の方々の健康管理、労働環境管理、直接は東京電力の仕事だと思いますが、監督官庁として、引き続き、規制庁も含めて、問題意識を持っていただきたいというふうに思います。

 今度は、ちょっと視点が変わりますけれども、原発避難者の方々のための災害公営住宅の建設状況でございます。

 今時点で計画されている戸数が四千八百九十戸でございます。五割で代替用地のめどがついた、一割で着工が始まった、ここまで来たわけでございます。

 ちょっとお尋ねしたいのは、この四千八百九十という数字ですが、これは避難している方々の意向調査をしてはじいたということですが、実際にこの意向調査にマル・バツをつけた方の話を聞くと、ほんの軽い気持ちでマル・バツをつけたよ、まだまだ決められないからねという声が結構ございます。つまり、流動的な数字ではなかろうかというふうに思います。

 今後、最終確定に向けて、戸数さらには建設場所、どのように避難の方々の意向の実態を反映させるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。

根本国務大臣 今委員からお話があったように、意向調査に基づいて、福島県、避難元市町村と共同で住民意向調査を継続してやっておりまして、それをベースに、具体的な復興公営住宅の必要戸数、今、地元の県や自治体と十分に協議しながら、そして住民の意向を反映させていただいて決めております。

 昨年六月に第一次整備計画を発表しましたが、昨年の十二月には再度計画の見直しをして、四千八百九十戸の整備を予定しております。詳細は今委員のおっしゃられたとおりでありますが、住民の意向調査は、避難者の方の実情に沿った内容をより精緻に把握する必要があるだろうということで、福島県、各避難元市町村とよく協議をして、共同で協議を重ねております。

 復興公営住宅の整備計画に必要な意向調査の中身ですが、入居希望あるいは入居希望先のほか、入居する家族構成、あるいは世帯が分散して入居する希望の有無、さらに、ペットの有無、自動車保有台数、被災者の方のできるだけ詳細なニーズを把握しようということで、丁寧にやっております。

 今後も、これからも引き続き、住民の皆さんの意向を把握しながら、適宜計画の見直しを行いながら、避難者のニーズに即した復興公営住宅の整備を進めていきたいと思います。これは、地元の市町村と十分協議を重ねながら意向調査をやっておりますので、この意向を踏まえてしっかりと取り組んでいきたいと思います。

吉田分科員 ペーパーによる調査だけじゃなくて、私は、最終的にはやはり個別の面談、これは自治体にやってもらうしかないと思いますが、そこまで踏み込んで意向を吸い上げていただきたいとお願いをいたします。

 それから、この公営住宅も含めて復興事業を今いろいろ、しゃかりきになってやっておるんですが、人材不足というネックがございます。

 せんだって、地元の中堅ゼネコンの社長とお話をしたら、人材不足の中でも、特に一級施工管理技士、この方が現場監督をするわけですが、この人たちが足りないんだということでございました。政府としてもこの一級技士の検定試験の受検資格の見直し等をやられているということですが、それを含めた全体の対策をお伺いします。

吉田(光)政府参考人 お答え申し上げます。

 福島県を含めました被災地における復興事業につきましては、事業の円滑な施工が重要であり、これまでも、人材や資材の状況に応じた施工確保対策をとってきているところでございます。

 御指摘のございました一級施工管理技士等の技術者を含みます人材確保対策といたしましては、人材の効率的な活用を進めるため、例えば、地域の実情等に応じまして、発注ロットの大型化等の措置をとってきたところでございます。

 また、将来の建設産業の担い手を確保するため、一級施工管理技士の試験の受検のために必要な受検資格の見直しを行いまして、ことしの試験から適用することといたしております。具体的には、これまで一級施工管理技士試験の受検に当たりましては、二級試験に合格後、実務経験が五年必要でありましたところを、二年短縮いたしまして三年で受検可能とし、若手技術者が早期に受検することができるようにしたところでございます。

 今後とも、復興事業の円滑な施工確保に努めるとともに、建設産業の担い手の確保、育成に向けた取り組みを推進してまいる考えでございます。

吉田分科員 受検資格の緩和だけではなかなか即効性はないかもしれませんが、それと、発注ロットを大きくするとか、いろいろ組み合わせてぜひ対応していただきたいと思います。

 ちょっと時間の関係で、一つ、賠償は飛ばしまして、線量不安という問題をお伺いしたいと思います。

 時々地元でいただく質問に、今回福島は避難基準が二十ミリシーベルトということでやったが、チェルノブイリのときは五ミリだったと聞く、日本の避難基準は少し甘いんじゃないのかという質問がございます。政府は、チェルノブイリにも職員を派遣していろいろ実態を調査してきたということでございますので、チェルノブイリにおける避難の実態をどう把握しているのかということと、それが今のところ世界的にどういう評価を受けているのかというあたりを、これは副大臣にお願いしたいと思います。

赤羽副大臣 今のお問い合わせですけれども、チェルノブイリ事故後の強制移住の基準は、年間五ミリシーベルトというのは、事故が発生した一九八六年当初の基準でなくて、九一年に策定されたものです。事故発生直後から約一年間は年間百ミリシーベルト、そしてそれを段階的に、三十ミリ、二十五ミリ、二十ミリと、そして下げたというふうに承知をしております。

 この基準につきましては、IAEAですとかロシア政府などの国際的な評価としては、過度に厳しい基準であって、かえって第二次、第三次的な副作用を生んだというような評価もされていると承知をしております。

 我が国のこの避難基準の設定につきましては、もちろん住民の皆様の安全を最優先にすることを基本にしながら、国内外の専門的な知見も踏まえつつ設定をさせていただきました。

 これは、まず、先生よく御承知だと思いますが、国際的、科学的な知見によりますと、放射線による発がんリスクの増加は、百ミリシーベルト以下の低線量被曝では、喫煙など他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さく、発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされています。また、具体的には、放射線防護に関する国際的な専門機関であります国際放射線防護委員会、ICRPが、事故後の緊急時における避難を含む放射線防護措置を講じるべき水準として年間二十ミリから百ミリシーベルト、こういう範囲を示しておりまして、我が国では、このうち最も線量の厳しい年間二十ミリシーベルトを避難指示の基準として採用しているところでございます。

 しかしながら、私も、昨年一月二日から、毎週基本的には二日間、被害現場に足を運んでおりまして、被害を受けた皆さんと接触もする中で、先週も田村市の住民集会にも出席をしてまいりましたが、どうしても、一ミリシーベルト以下というようなことじゃないと安全じゃないんじゃないかという、これが大変強烈に残っております。

 私は、あの未曽有の事故の発災直後はそういったことがあったというのはしようがないかもしれませんが、このことを、どれだけ、国際基準というか、リスクコミュニケーションを図っていけるのかどうかが、今後、大変、ふるさと帰還が進むかどうかに重要なことだと思っております。

 その点につきましては、先週の月曜日に実は廃炉・汚染水対策に関する福島評議会というものを設定させていただきまして、この評議会では、当該十二市町村の首長の皆さんはもとより、関係団体の代表だけではなくて、NPOの女性の代表ですとか、青年会議所の青年代表として皆さん幅広く出ていただいて、こういったことについてのリスクコミュニケーションのあり方についての協議会を定期的にやるということも始まっておりますので、何とかうまく結果が出せるように全力を尽くしていきたい、こう考えております。

吉田分科員 チェルノブイリと日本でどちらが厳しい基準だったのかと簡単に言えないということでございますが、いずれにしても、日本の二十ミリ基準、さらには長期的な一ミリという目標基準を、その趣旨を、体系的に今後とも住民に伝えていっていただきたいと思います。

 もう一つ、この線量不安の問題でありますけれども、県内で十八歳以下の方々三十六万人を対象にして甲状腺の超音波検査をして、間もなく一巡するというところまで参りました。今まで二十七万人の方が検査をして、三十三人に甲状腺がんが見つかったということでございます。

 八千人に一人ぐらいの割合なんですが、実はこの数字はよその県と比べてそんなに大きい数字じゃない、かえって少ないんだということもわかっておるんですが、この三十三人という数字がひとり歩きをして、相当な県民不安をかき立てているということになっております。

 県、さらには最近の国際ワークショップでは、今回の事故の影響とは考えにくいということを言っておりますが、政府としての見解をなるべく早く出していただきたいと思います。

 今の政府の検討状況、今後の予定を、これは環境省にお伺いしたいと思います。

塚原政府参考人 お答えします。

 福島県では、事故時十八歳以下の全県民を対象に、超音波による甲状腺検査が実施されております。二月七日に開催されました県民健康管理検討委員会におきまして、甲状腺がんと診断された方がこれまで三十三名という報告がなされております。

 環境省と福島県立医科大学では、二月二十一日から三日間、OECDの原子力機関と共同いたしまして、放射線と甲状腺がんに関する国際ワークショップを開催し、福島県民の調査において見つかっている甲状腺がんにつきまして、国内外の専門家により、最新の知見に基づきまして御評価をいただいたところでございます。

 その中で、甲状腺がんが見つかっている理由として、国内外の専門家は、今回のように精度の高い超音波検査を無症状の子供に実施した例がないこと、最新の機器を用いて熟練した医師、技師により丁寧な検査が行われていることから、早期の小さながんがこれまで知られている発生率以上の割合で確認された可能性があると分析をしております。

 原発事故によるものと考えにくい理由といたしましては、これまでに行った調査によりますと、原発周辺地域の子供たちの甲状腺被曝線量は総じて少ないこと。それから、小児甲状腺がんの潜伏期は最短でも四、五年と言われております。今回の検査結果は原発事故後間もない時期である受診者からの発生であることから、原発事故によるものとは考えにくいという御指摘もあります。

 また、がんが見つかった方の事故時の年齢でございますけれども、放射線に対する感受性が高いとされている乳幼児期、チェルノブイリの場合は乳幼児期の発生が多かったわけでありますけれども、現在の福島県の三十三名の方の年齢分布というのは、十歳代、しかも十歳代の後半の方に多く見つかっているというようなことで、そういった意味からも、事故による影響とは考えにくいというような指摘がなされております。この見解は、国際的にも、WHOあるいは国連科学委員会の専門家の御評価も同様でございます。

 これらの評価を踏まえつつ、環境省といたしましては、現在、専門家会議を設置いたしまして、事故による放射線の健康影響につきまして、さらなる知見の収集に努めております。昨年十一月からこれまでに二回開催をいたしまして、本日、第三回目の専門家会議を開催することとしております。来年度には、福島県の県民健康管理調査の結果についての国としての評価を含め、健康管理のあり方全体の方向性を示していただきたいというふうに考えております。

 以上です。

吉田分科員 ありがとうございました。

 時間がなくなってまいりましたので最後の質問にしたいと思いますが、東京オリンピック・パラリンピック関連でございます。

 何らかの形で福島県がこのオリンピックに参加することによって、六年後になりますが、立派に復興したぞという姿を示したいという気持ちが非常に強いものがございます。

 政府と福島県、今までもいろいろ検討されてきたと思いますが、その状況、さらには、どういう分野に参加の可能性があるのか、お伺いしたいと思います。

冨岡大臣政務官 吉田委員の質問にお答えいたします。

 委員も御承知のように、東京オリンピック・パラリンピックを一過性の行事として終わらせたくないと思っておりますのが我が国の思いでございまして、これをオール・ジャパンでやっていこうという思いであります。

 しかしながら、東京大会につきましては、競技ごとの国際団体とそういった調整を行った上で提案したものでございまして、競技会場を変えたり、時間を変えたりというのは困難になってきております。

 したがいまして、東京大会では、委員のようにふるさとに強い思いをされている方々がたくさんおられます、そういった意味で、関連イベントの実施、聖火リレー、あるいは各国代表選手団の事前合宿、各地域の文化芸術行事とともに、そういった文化プログラム等で配慮を行っていこうという方向を出しております。したがいまして、こうした取り組みによって、福島の復興に資するような大会運営ができるのではないかと思っております。

 また、内閣府のオリパラ室というところで、夢ビジョンということで三百課題ぐらいリストアップしまして、どういう支援策がとれるかを検討しておりますので、そういった思いでおりますので、お伝え申し上げます。

吉田分科員 ありがとうございました。終わります。

林主査 これにて吉田泉君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

林主査 次に、会計検査院所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。杉本かずみ君。

杉本分科員 みんなの党の杉本かずみと申します。

 林主査、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 また、本日は、会計検査院の方から、河戸光彦院長、川滝豊事務総局次長、鈴木第一局長、そして堀部第三局長にお運びいただき、お忙しい中大変恐縮ですが、国権の最高機関として、会計検査院に大いにその力量を発揮していただいて、国の財政の大変厳しい状況の中で無駄遣いを少しでも見つけていただいて、そして是正をしていただく、指導していただくということで、ますます御活躍をお願いしたいということで、きょうは本当にお忙しい中お運びいただいて恐縮ですが、御答弁をいただきたいと思っています。

 改めて憲法九十条を読ませていただきますと、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」、二項で「会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」こうございます。

 私もまだ国会議員になって二期目で、まだまだ経験不足ではある中で、地元で、無駄遣いであったり、あるいは効率的でない予算の使われ方はどうなんだろうかということで、地元活動、地元回りも必死にしている中で地元からいろいろな声が上がってきます。

 現在も国土交通委員会に所属して質問をさせていただいたりするんですけれども、ミッシングリンクという言葉がございまして、このミッシングリンク、道路がつながっていないというような意味で、主に高速道路に使っております。一方で、一般の県道なり国道なりといったところでも、つながっていなくて、もったいないんじゃないかなという部分があったりします。一方で、こんなところに道が要るのというようなところがあったりもするわけなのでございますが、いろいろな思いの中で総合的に国が、県が、そして市町村が道をつくっていっているということがあるわけですが、ちょっと私の地元を例えに、基本的な考え方としてどうあったらいいかということでお伺いをしたいと思います。

 私の地元は愛知県の一宮市でございますが、この一宮市で、愛知県に交付されました社会資本整備総合交付金、この交付金が、お手元に地図等がお配りされているかと思うんですけれども、この地図で見ますと、左側の「1一宮伝法寺土地区画整理事業の事業範囲」ということで緑でくくってある部分と、右側の「2西春鍛冶ケ一色土地区画整理事業の事業範囲」というオレンジでくくってある部分、この事業として、住宅市街地基盤整備事業として本来使われるという予定でおったんですけれども、この事業費がちょっと、地図の中央になりますけれども、「都市計画道路萩原多気線の県道名古屋江南線と岩倉市道北島伝法寺線の間の区間」という赤で書いてある区間、この地区の予算に使われて、この事業を二つ見比べていただくと、距離にして一キロ以上離れていて、しかも、その地域と直結しているというような事業ではない中でこの交付金が使われているということがわかりました。

 そもそも、交付金というものは、地方公共団体、県に裁量は認めているということではあるものの、こういった本来的なものと少し違う形で使うということが、本質的に、国の予算の使われ方として本当に効率的であり、効果があるものなのかどうか、こういう調査をしていく必要があると思っております。

 こういったことの、地方の部分について、会計検査院のお立場として、成果の評価、検証、あるいはサンプリング調査、こういったようなことがなされているのか、あるいは、これはあくまでも県の中での監査の問題であるとかそういうことなのか、このあたりの整理をお聞かせいただければと思います。

河戸会計検査院長 会計検査院は、住宅市街地基盤整備事業に係る社会資本整備総合交付金につきまして、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から検査を行っているところでございます。

 先生御指摘の、愛知県が実施しております都市計画道路の整備事業につきましても、その実施状況や国土交通省による成果の評価が適切なものであったかなどの点に十分留意して、検査に当たってまいりたいと考えておるところでございます。

杉本分科員 国交省と連携をして検査を、チェックをしていくというお言葉をいただきました。

 私の地元の、つくってほしい方の道路は一宮春日井線というんですけれども、そういったものがまたとまっているというような状況も、できれば把握しておいていただければと思っております。

 次に、ちょっと包括的に、日本版GAOというんですか、ゼネラル・アカウンティング・オフィスというような議論が、組織を大きくしてもっと日本の予算、財政の無駄遣いを削っていこうじゃないかというような議論が、この前の政権は民主党政権で、その前の、自民党政権のときにむしろ民主党が言っていたような記憶があるんですけれども、なかなか現実として日本版GAOといったものはできにくいのかなというのが昨今の現状だと思っています。

 そんな意味からいたしますと、会計検査院の院自体の活躍の幅というか奥行きというか深さというか、そういったことでさらなる御活動をいただく必要があると思っておるんですけれども、そういった意味から、定員が十分足りているのか。いや、余っているんですよ、うちも無駄遣いしちゃいけないので減らさなきゃいけないんだ、こういうことなのかもしれないんですけれども、いや、むしろ足らないんだということをお伺いしたいのでありますけれども、過去五年間の定員、要員の推移と、率直なところ、こういう場では言いにくいかもしれませんが、あえて言っていただくことが大事だと思いますので、その過不足の思いといったところを御担当の方からお聞かせいただければと思います。

川滝会計検査院当局者 会計検査院の事務総局の定員でございますけれども、平成二十一年度から二十五年度の過去五カ年間の定員の推移について申し上げますと、二十一年度は千二百八十一人、二十二年度が千二百七十七人、二十三年度が千二百七十三人、二十四年度、千二百六十二人、二十五年度、千二百五十八人となっております。

 会計検査院としては、業務量の増大に対応するとともに、さらに、検査体制の充実強化の要請に応えるなどのため、これに見合った定員を確保するよう、検査業務に従事する職員の増員を毎年度要求しているところであります。

 一方、厳しい財政状況に鑑みまして、会計検査院も定員の合理化に協力してきたところでありまして、二十五年度定員は、二十一年度と比べますと、二十三人の定員減となっております。これは業務の見直しを行った結果でありまして、かつ、行政のスリム化に資するため、可能な限りでの定員削減であることから、検査活動に支障が生ずることはないというふうに考えております。

杉本分科員 ありがとうございます。

 定員の数が減っていく中で、あえて、やはり隗より始めよということで、会計検査院さんが定員削減に積極的に向かっていらっしゃるということを確認させていただきました。

 翻って、国会の方は、残念ながら、まだ定数削減の議論が進んでいないというか、まだ与野党の責任者の間でなかなか一致できる方向感を見出せていないというようなこともありますし、日銀と政府が共同声明という形で、デフレ脱却ということの中で賃金上昇、公務員人件費、国会議員の歳費、復興対策で削減していた予算が、この四月からですか、また上がってしまう、そんなことで、我々自身がやはり隗より始めよということを会計検査院さんから改めて学ばせていただかなければならないんだなということを、今改めて、私の思いとして感じさせていただいています。

 さて、次に、さきの予算委員会でも少し触れさせていただいたんですが、財政法四十一条で差し引き剰余金というのが出てくる形になっております。これは、金額で見ると、政府予算の本当に一割以上の数字が出ているんじゃないかなという年度もございまして、平成二十四年度は十兆六千七百四十八億円、二十三年度、九兆二千六百四十一億円、平成二十二年度、五兆二千二百二十二億円、平成二十一年度、六兆一千四百八億円と、かなり巨額と言える差し引き剰余金というものが生まれております。

 ここ数年を見ていると、少なくとも五兆以上が出ているということでございますけれども、この差し引き剰余金、決算上の剰余金が出てくるんですが、ポリシーミックスと言われる財政出動と金融政策の中でデフレ脱却をしていくということで、予算という概念でいくと、額は大きい方がインパクトがあって、経済への効果としてはプラスが大きいと思うんですけれども、決算を締めてみると結構剰余金が出るということになっております。

 この差し引き剰余金というものが巨額と言えるかどうかも含めてなんですけれども、この剰余金について、会計検査院としてはどういう御評価をされるかを教えていただければと思います。

河戸会計検査院長 財政法第四十一条の剰余金は、歳入決算総額から歳出決算総額を差し引いたものと承知しております。そして、この中には、歳出の不用額、翌年度に繰り越した歳出予算の財源及び地方交付税への特定財源などが含まれておると承知しております。

 このように、剰余金の発生原因につきましては、歳入面、歳出面など、さまざまな要因があると承知しているところでございます。

 会計検査院といたしましては、予算が適切に執行されているか、経済性、効率性、有効性などの観点から検査してまいりたいと考えているところでございます。

杉本分科員 財政法四十一条、そしてまた、御存じのとおりの財政法六条というのがあって、剰余金のうち半分は翌年か翌々年度かに繰り入れなさいというようなことがございます。

 予算は多い方がいい、しかし、決算してみると、意外と使った額は少なかった、これが実は理想じゃないかと思うので、ある意味で、この財政法四十一条の差し引き剰余金というのはできる限り多く生み出すというのが、実は財政上は望ましいと言えることかとも感じております。

 こういったことについて、剰余金、今ちょっとお話ございましたけれども、各府省にわたって予算は使われますけれども、いかなる努力で予算を使わずに剰余金として残すことができるだろうか。非常に禅問答みたいな話で恐縮ですが、いかに各部局課が努力をしたらいいだろうか、そして、予算主義より決算主義というような考え方を持つことはいかがか、こんな禅問答的なお話ですが、御答弁を賜れればと思います。

河戸会計検査院長 ただいま御説明いたしましたように、財政法第四十一条の剰余金の中には、歳出予算の不用額、翌年度に繰り越した予算の財源及び地方交付税のための特定財源などが含まれております。

 会計検査院としましては、近年の厳しい経済財政状況に鑑みて、事務事業の実施につきまして、経済性、効率性、有効性などの観点からの検査を重視しているところでございます。予算の執行に当たって、このような点にも十分留意して実施する必要があると考えているところでございます。

 また、会計検査院といたしましては、財政統制として予算制度も決算制度も、いずれも重要であると考えているところでございます。

杉本分科員 ありがとうございます。

 次に、直近でいくと、決算上は、平成二十四年度決算検査報告というものに掲載され、その事項の総件数は六百三十件、指摘金額は四千九百七億四千五百十万円、こうあります。そして区分が、一、不当事項、二、意見表示・処置要求事項、三、処置済み事項、四、特記事項、こういう区分がございます。

 まずもって、ちょっと残り時間を使って確認というかお伺いしておきたいのは、平成二十四年度より前の、平成二十三年度以前に指摘をいろいろされておられると思うんですけれども、指摘しているにもかかわらず、いまだ処置済みに至っていないような件があるかと思います。どうしても作業に時間がかかるといったものもあると思うんですけれども、主な、金額の大きい順に十項目ほど、当初指摘した掲載年度と、時間がどうしてもかかって処置済みに至っていないというような理由について、会計検査院さんが把握している未処理の理由といったものをお聞かせいただければと思います。

川滝会計検査院当局者 お尋ねのありました意見表示処置要求事項で処置が完了していないものを、金額の大きい順に十件申し上げたいと思います。

 第一に、平成二十三年度決算検査報告に掲記いたしました独立行政法人都市再生機構のニュータウン整備事業について、長期未処分地の需要を喚起するための方策を検討したり、土地の時価を算定する際の精度の向上に向けた取り組みを行ったりするなどして、事業完了に向けた取り組みが計画的かつ的確に行われるよう意見を表示したもので、指摘金額は九百三十六億三千八百二十万円であります。

 その処置状況ですが、機構は、財務諸表作成時の土地の時価の算定につきましては、二十五年度以降の決算において算定の精度向上に向けた取り組みを行うとともに、宅地造成等経過勘定の繰越欠損金については、二十五年度末を目途に公表を予定している第三期中期計画の策定とあわせて検討することとしております。

 第二に、平成二十三年度決算検査報告に掲記した独立行政法人日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」の研究開発等について、適時適切に研究開発経費を把握して公表することにより研究開発の一層の透明性の確保を図るとともに、使用可能な関連施設の利活用を図るよう意見表示したもので、指摘金額は八百三十億八千五百二十五万円であります。

 その処置状況ですが、機構は、リサイクル機器試験施設の当面の利活用については、国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を踏まえて、関係機関との協議を行うということにしております。

 第三に、平成二十二年度決算検査報告に掲記した経済産業省のエネルギー対策特別会計の周辺地域整備資金について、当面の間は資金残高の規模を縮減させるとともに、今後需要額の算定が必要となる場合には積立目標額の規模を見直すなどして、当面需要が見込まれない資金を滞留させないような方策を検討するよう意見表示したもので、指摘金額は六百五十七億円であります。

 その処置状況ですが、経済産業省は、資金を滞留させないような方策については、エネルギー基本計画の内容等を踏まえて適切に検討していくこととしております。

 第四に、平成二十三年度決算検査報告に掲記した総務省の独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構における利益の処分について、同機構が業務を履行するために保有する必要がない利益剰余金の額を速やかに把握して国庫に納付させるとともに、関係機関と調整し、国庫納付のあり方について検討した上で、今後は中期目標期間の終了時だけではなく、適時に利益剰余金を国庫に納付させることが可能となるように適切な制度を整備するよう意見を表示したもので、指摘金額は六百七億千六百九十二万円であります。

 その処置状況ですが、総務省は、制度の整備については、引き続き検討して、関係機関と協議の上、適切な処置を講ずることとしております。

 第五に、平成二十三年度決算検査報告に掲記した文部科学省の独立行政法人日本スポーツ振興センターが運用型の基金として設置しているスポーツ振興基金の有効活用を図るよう意見を表示したもので、指摘金額は二百五十億円であります。

 その処置状況ですが、文部科学省は、センターの検討結果を踏まえて、振興基金の有効活用について取り組んでいくこととしております。

 第六に、平成二十三年度決算検査報告に掲記した内閣官房及び人事院の人事・給与等業務・システムについて、参加府省等との調整をより一層実施するなどして、安定的に運用できるよう引き続き改修に努めるとともに、参加府省等と十分情報共有を図り移行支援を実施するなどして、最適化効果が早期に発現するよう意見を表示したもので、指摘金額は八十九億二千七百三十四万円であります。

 その処置状況ですが、人事院は、移行経費の合理的な算定方法については、参加府省等の移行作業の業務内容を把握するための調査を実施した上で、適切に検討することとしております。

 第七は、平成二十三年度決算検査報告に掲記した独立行政法人水資源機構の水資源開発施設等について、保有の必要性について検証を実施し、不要と認められるものについては売却等の検討及び協議を行ったり、公道と兼用の管理用道路に係る管理費用について、道路管理者との間の標準的な負担方法等に係る協議方針を定め、応分の負担を求められるよう道路管理者と協定の見直しの協議を行ったりなどするよう改善の処置を要求したもので、指摘金額は八十億百九十二万円であります。

 その処置状況ですが、機構は、実態調査の結果を踏まえた協議方針を定めた上で、応分の負担を求められるよう道路管理者と協定の見直しの協議を二十五年度中に開始することとしております。

 第八に、平成二十三年度決算検査報告に掲記した防衛省の防衛施設周辺放送受信事業の実施において、テレビ放送の聴取における航空機騒音の実態を反映させたものとなっているかを検証し、指定基準を見直すなどして、補助金を交付する根拠について透明性を十分に確保するよう意見を表示したもので、指摘金額は五十五億三千四十一万円であります。

 その処置状況ですが、防衛省は、引き続き検討を行い、指定基準の見直しなどの所要の措置を講ずることとしております。

 第九は、平成二十三年度決算検査報告に掲記した厚生労働省の社会福祉法人により設置された民間保育所が保有する積立預金について、透明性の確保を図ることなどにより、有効に活用されるよう意見を表示し、及び過大に保有している当期末支払い資金残高が是正されるよう改善の処置を要求したもので、指摘金額は三十一億七千百二十四万円であります。

 その処置状況ですが、厚生労働省は、会計状況が明確になるような仕組みを設けることについては、子ども・子育て会議において、財務情報の公表を含めた民間保育所における会計処理の運営基準等を新制度の施行までに検討することとしております。

 第十は、平成二十三年度決算検査報告に掲記した農林水産省の家畜導入事業の終了後も国庫に返納されないままとなっている基金の国庫補助金相当額を速やかに返納させることにより、事業主体間の公平を確保するとともに国費を効率的に使用することができるよう適宜の処置を要求したもので、指摘金額は十一億四百三十二万円であります。

 その処置状況ですが、三十四事業主体のうち二十五事業主体については二十四年度から二十九年度までに分割して納付させることとしたため、まだ返納されていない国庫補助金相当額があるというものでございます。

 以上でございます。

杉本分科員 枚挙をいただきました。

 改めて、いろいろな独法であったり関係省庁が存在することを確認できたかと思いますし、処置状況ということで、全体としては、引き続き関係府省等が検討し、所要の措置を講じるというお答えだったんですが、それぞれいろいろ具体的な事情があると思いますので、ぜひ会計検査院さんには引き続き各府省に対するウオッチというかフォローをお願いしたいと思います。

 今もお話のあった文部科学省の予算で、日本スポーツ振興といったことで、きょうのお昼のニュースを見ていましたところ、正しいかどうか、情報という部分もあるかもしれませんが、フェンシングの協会で、出張の旅費が二万円ずつ支払われるはずであったのが、選手にはそれが行っていなかったというような使い方もあったやに報道がされておりました。

 今枚挙をいただいたことを初めとして、二十四年度でも、申し上げたとおり六百三十件御指摘をいただいています。この件数が多いことがいいのか、少ないことがいいのかといったら、それぞれの持ち場持ち場で無駄遣いをしないという使い方をしていただくことによってこの件数が一件でも減っていくことが本来あるべき姿かとは思っておりますが、一方で、会計検査院の立場としては、より厳格に、厳しく見ていただく中でそういった件数が減っていくという啓蒙活動みたいなことになるかとも思いますけれども、御指摘を、関係各行政のところに御指導をいただきたいということを申し上げたいと思います。

 若干残余の時間がございますけれども、切りがいいので、このあたりで終了とさせていただきます。

 本日は、お運びありがとうございました。

 主査、ありがとうございました。

林主査 これにて杉本かずみ君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

林主査 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上野ひろし君。

上野分科員 上野ひろしでございます。よろしくお願いいたします。

 私は、先週、予算委員会集中審議、また昨日も災害対策特別委員会で、二月十四日、十五日の大雪のことについて質問させていただきました。本日も、また別の観点からになりますけれども、幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず最初に、道路の除雪の対策についてお伺いをしたいと思います。

 二月の十四日、十五日、大変な大雪が降りました。降りやんだ後も多量の積雪がありまして、私、地元は群馬でありますけれども、県庁所在地前橋でいうと七十三センチ、観測史上、それまでの最高値の倍ほどの雪が降ったということであります。かなり日にちがたってからも雪が残っていた。社会生活に大変な影響があったわけでありますけれども、随分、除雪のあり方について問題があったんじゃないかなという指摘もございます。

 まず最初に、道路の管理者は、国道、県道、市道ということで異なるわけでありますけれども、管理者ごとに、除雪をする責任を持つ主体が違うということでなかなか統一をした除雪が進まなかったんじゃないかという話もございます。あるところからあるところに行くのに、県道を通る、国道を通る、市道を通る。そのときに、そこが一貫して除雪をされていない。どこかの道路だけかかれていて、また別のところでかかれていないところもある。そうすると、実質的にはそこを通れないということでもあります。

 そういった場合に、例えばその道路の管理者が違うからといって、実質、その道路が社会生活に影響があるということでは意味がないんじゃないかなと思いますし、また、個別の道路の実例を見ますと、人がたくさん使っている、また車が通る主要な道路の除雪が後回しになっていたりというケースもございました。

 こういった点、管理者がばらばらだというのはもちろんあると思うんですけれども、しっかり連携をして、車が通る、人が通る、まさに地域の大事な道路について、管理者がどこであるということにこだわらず、ぜひ優先的に除雪をすべきだったんじゃないかなというふうに思います。

 このあたり、どう現状把握をして、また今後対策をとっていかれるのか、お伺いをいたします。

田村政府参考人 お答えいたします。

 今回の降雪は、御指摘がありましたように、前橋を初め各地で観測史上最高となる記録的大雪でございました。高速道路では三区間、直轄国道では六区間が通行どめになるというふうな大きな影響がございました。

 国土交通省といたしましては、みずから管理します直轄国道の除雪を急ぐ一方で、機械力が不足しております自治体に対しまして、除雪機械や専門家による支援を行ってまいりました。

 しかしながら、除雪能力を上回る記録的大雪のため、御指摘がありましたような、住民が思う重要性の順番に道路を開通させるということには必ずしもならなかった面はあると考えております。

 今回の対応の経緯等を踏まえまして、今後、このような豪雪の際に自治体とどう連携していくか、また、どう支援をしていくかということを検討いたしまして、地域の道路交通確保に努めてまいりたいと思います。

上野分科員 ありがとうございます。

 まず、国土交通省の方には、道路の管理といった観点からしっかり連携をとっていけるように、今回の実例も踏まえながら検証をお願いしたいと思います。

 その上で、より柔軟に指示ができなかったのかという観点からお伺いをしたいと思います。

 今回、群馬県と、例えば新潟県であるとか、個別にいろいろな関係があった自治体から地域を超えて除雪の支援をいただきました。また、孤立集落といったところでいうと、例えばTEC―FORCEであったり、また自衛隊の方々に、孤立集落の解消に大変な御尽力をいただきました。

 その上で、こういった孤立集落の解消は当然大事なわけでありますけれども、市街地の除雪といったところについても、より柔軟な指示がいただけなかったのかなという思いがあります。

 当然、孤立集落は大変な状況にあるわけでありますけれども、市街地の中でも、例えば雪が積もっていることによって、救急車が通れなかった、消防車が目的のところになかなか到達をできなかったという話もあります。また、道路が使えなかったということで、物資がなかなか供給されなかった。例えば、私が具体的に聞いたところでいうと、病院の中で食材が不足をしてなかなか食事が出せなかったということもありました。また、例えば透析患者さんの話というのもございます。

 当然、孤立集落、これは自衛隊も出動していただいて大変な御貢献をいただいたわけでありますけれども、例えば市街地の除雪についても、地域を超えた除雪の依頼であるとか、またはTEC―FORCE、自衛隊の出動の要請といったことを地域を超えて今回やっていただければ、随分状況が変わったんじゃないかなというふうに思います。

 今回の現状を踏まえてどう対応されていくのか、これは大臣にお伺いをしたいと思います。

古屋国務大臣 今回の除雪対策は、委員御承知のように、歴史始まって以来の豪雪でしたから、対応は地方公共団体の関係者の皆さんも本当に御苦労をされたと思います。

 今の質問は、例えば孤立集落だとか地方の道路だけではなくて市街地、そういうところもやはり積極的な除雪が必要だったんじゃないか、その対応が十分だったのかという趣旨の質問だと思いますけれども、基本的に、やはり地方公共団体がどこを優先して除雪をするかということを、はっきり都道府県知事なりが御判断をして対応するということになっています。

 そこで、もちろん市街地に自衛隊を派遣するということはできますし、TEC―FORCEも派遣することはルール上全く問題ないんですね。例えば、災害対策基本法七十条で、あるいは七十一条、むしろ七十条の三項ですね、国の出先機関等に対する応急措置の要請ができる。要するに、都道府県知事はそういう要請ができるようになっているんです。だから、国交省を通じなくても都道府県知事が、ではちょっとこれは早くやってくださいと言ったら、そういう要請がすぐ、国交省の本省からじゃなくて、直接要請ができます。

 さらに、医療とか土木、建築工事とか輸送関係者に対する応急措置への従事命令、これは命令なんですよ、だからちょっとランクが高いんですね。これは災対法の七十一条でできるようになっています。

 やはりこういったことを十分認識いただいて、首長さん、災害対策は基本的に地方公共団体の意向というか、それを非常に尊重して対応するというのが法律あるいはルール全体のたてつけの前提になっていますので、こういった法律でも認められていますので、住民の皆さんの安全を考えたときは、ちゅうちょすることなく、こういった命令や要請を発動していただきたい。

 ただ、そのためには、やはり日ごろからそういうシミュレーションをして、例えば知事会だとか市町村会とか、そういったところでしっかり対応を考えておく必要があるんでしょうね。もちろん内閣府としても、いろいろそういう戦略的なアドバイス等々は十分にさせていただきたいというふうに思っています。

上野分科員 ありがとうございます。

 実際には、随分、地方自治体、地域では、TEC―FORCEであったり自衛隊に対する出動の要望といいますか、思いがあったんじゃないかなと思います。柔軟に要請をしていただいて、またそのときにはちゅうちょなく出動をする方向だという話を今大臣からいただきました。今回の大雪の教訓をしっかり検証して、またシミュレーションしていくという話もございました。ぜひ、国も含めて、地方公共団体含めて、しっかりと準備をして、またこのようなことがないように、今回の大雪をしっかりと教訓にできるようにしていきたいと思います。

 次に、地域の除雪能力の話についてお伺いをしたいと思います。

 これは随分もういろいろなところでも言われているとは思います。地域の除雪を担うのは地域の建設事業者であります。ただ、こういった事業者が、ここのところの建設関係の需要の減少といったことに伴って、そもそも事業者の数が減ってきている。また、個々の事業者の経営体力もなくなってきているという状況があるんじゃないかなというふうに思います。

 私の地元の群馬県でいいますと、建設事業者、ピーク時は三百八十一社あったのが、今二百六十八社ということで、大変減少をしております。従来であると、日ごろの事業の中でしっかりと利益を出していって、事業者の方々に話を聞くと、除雪はある種地域への貢献という思いでやっているんだという話もございました。

 実際に、地方自治体との契約で、例えば除雪をした面積、距離といったことに応じて、当然必要な費用が支払われるということだと思うんですけれども、場合によっては、雪が降る前から建設事業者の方々は待機をしなければいけない。そのときの待機の費用というのはなかなか出なかったり、または、重機を持っている、これも維持費が大変かかるわけでありますけれども、その費用というのはそういったところでは賄えないということでもございます。

 ぜひ、建設事業者、しっかりとこういった事業が活性化をするようにしていただきたい、これはもちろん根本としてあるわけでありますけれども、その上で、除雪の費用、コストに見合ったしっかりとした支払いをしていくといった形にしていくことが、もう一つ大事なことなんじゃないかなと思います。

 本日、政務官に来ていただいておりますので、ぜひお考え、今後の対応をお伺いしたいと思います。

坂井大臣政務官 委員が御指摘のように、業者の数でございますが、群馬県でも減少しているということでございましたが、全国でも平成十一年度の約六十万業者をピークに減少しておりまして、平成二十四年度末は約四十七万業者ということになっております。そのほかにも、除雪オペレーターの高齢化、除雪機械保有台数の減少、老朽化が進行しておりますし、担い手の確保の上でこれらが課題となっているところでございます。

 それでは何をやっているんだ、こういうことでございますが、地方公共団体を含め、入札時の適切な地域要件の設定などにより地元建設企業の受注機会の確保を図るとともに、複数年契約の導入などを通じて、地域のインフラの維持管理等の計画的、安定的な確保を図っているということでございます。

 また、施工力とか技術力の面に関しましても、総合評価等における災害協定の締結状況、それから建設機械の保有状況等の適切な評価、そしてまた建設機械の購入に対する金融支援の実施ということを行っておりますが、御指摘の点なども踏まえて、今後もその支援のあり方について検討が必要だと思っているところでございます。

上野分科員 ありがとうございます。

 今、建設事業者、建設業に対するさまざまな配慮というお話をいただきました。今回の除雪の問題、これは私も前に国土交通委員会でも何回か質問もさせていただいたと思うんですけれども、除雪に係るコストに見合った、しっかりとした支払いをしていただく、これはぜひあわせて検討をいただきたいと思います。

 待機をするときの人件費であったり、重機の維持費、これは車検代ぐらいは出ているという話もありますけれども、除雪のための機械というのを持っていること自体が事業者にとっては随分な負担になっているという話もございます。除雪の費用、コスト、これはボランティアで地域の建設事業者にやらせるというのはちょっといびつな形なんじゃないかなと思います。ぜひあわせて御検討をお願いしたいと思います。

 続いて、除雪費用について、きょう総務省がいらっしゃっていると思いますのでお伺いをしたいと思います。

 今回、二月の十四日、十五日に、大変な大雪がありました。実はその前の週にも大雪が降っております。地域の地方公共団体については、除雪の費用というのは大変な負担になっているわけでございます。もちろん、その前、その後にもさまざまな支出がありまして、しっかりと除雪に係る費用を手当てしていくといいますか、地方公共団体で資金がなくなるということがないように手当てをする必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 その上で、総務省の方に、特別交付税、これは繰り上げ交付といったことをぜひやるべきなんじゃないか、速やかにやるべきなんじゃないかなと思いますけれども、現在の状況をまずお伺いしたいと思います。

青木政府参考人 お答えを申し上げます。

 このたびの大雪により災害救助法の適用を受けた団体、また、平年を大きく上回る大雪に見舞われた団体について、当面の資金繰りを円滑にするために、各団体の要望を踏まえまして、三月分の特別交付税の一部を繰り上げて交付することを昨日決定いたしまして、本日、四十九の市町村に対し、総額六十七億円を交付することとしております。

 群馬県内におきましても、災害救助法の適用を受けた九団体のうち、四団体の希望がございましたので、沼田市、下仁田町、南牧村、高山村に交付することとしているところでございます。

上野分科員 ありがとうございます。今御説明をいただきました。地元の話でいうと、群馬県内は、四市町村、自治体ということであります。

 これは当然でありますけれども、群馬県内一円、大変な降雪で、各自治体は除雪のための費用というのは大変な支出をしているところであります。わずかというとあれですけれども、四団体しか交付をされない、交付をされない自治体がたくさんある。そういったところも大変な除雪の費用負担をしているわけであります。また、それこそ観測史上最大の降雪の倍の雪が降っているということで、特別交付税が交付されてもそれで足りるのかどうかというところもございます。

 これは補助金ということになるので、これも国土交通大臣政務官にお伺いをしたいと思います。

 特別交付税の前倒しの交付だけでは全く十分ではない、必要なところにも行っていない、また額としても不十分じゃないかなというふうに思うわけであります。地域の除雪費用の負担に対して何か追加的な予算措置を講ずることを検討すべきなんじゃないかなと思いますけれども、お考えをお伺いいたします。

坂井大臣政務官 積雪寒冷地域における道路交通の確保に関する特別措置法、いわゆる雪寒法と呼ばれるものでございますが、これにおきまして、積雪や寒冷が特に甚だしい地域におきまして、特に道路交通の確保が必要であると認められる道路を指定し、その道路における除雪費用に対しては予算措置を行ってきたところでございます。

 しかし、そうじゃないところもございまして、そういったところは、全国的な豪雪の年で、地方財政措置だけでは間に合わないというような場合には、国土交通省において、幹線市町村道の除雪費について、市町村道除雪費補助の臨時特例措置ということで、国から二分の一の補助ということでございますが、これを講じてきたところでございます。

上野分科員 政務官、確認ですけれども、ぜひ今回の大雪についてもそういった措置の検討をお願いしたいというふうに思うんですけれども、対応をお伺いしたいと思います。

坂井大臣政務官 国土交通省としては、精いっぱいやらせていただきたいと思います。

上野分科員 大変心強いお言葉をいただきました。ありがとうございます。

 今ほど、除雪についてお伺いをいたしました。次に、観光対策についてお伺いをしたいと思います。

 今回、そもそも、大変な大雪が降って道路が使えなかった、観光地にアクセスができなかったという問題もありますし、加えて、いわゆる風評被害といいますか、大変な大雪が降って、なかなか行けないんじゃないか。今もう道路が通じていて、群馬でいうと、いろいろなところで、主要な温泉地への道路のアクセスは確保されていますというのはもう随分PRをしているんですけれども、それでも宿泊客に大変な影響があるということでございます。

 これは、件数、金額についても、大雪が降った日から、今月の十五日から十七日まで、私の地元のみなかみというところでいうと、温泉地があるんですけれども、キャンセルが六千人出た、損失額が八千万円ということであります。これは一つの温泉地だけで、その三日間の数字でありますので、それ以外を含めると何億、何十億という観光被害が出ているんじゃないかなと思います。

 ぜひ、これも観光を所管する政務官にお伺いをしたいと思います。

 地域の観光振興、これは随分国土交通省も力を入れて取り組んできていただいているところなんじゃないかなと思います。こういった風評被害を払拭していく、国内外の観光客をふやしていくという観点から、現状をしっかり周知していただく、また、こういった観光地の復興、活性化にしっかりとお力添えをいただけるというお言葉をぜひいただきたいと思います。

坂井大臣政務官 まさしく風評被害防止というのは大変重要なことでありまして、これは、観光を営む、観光業に関係をする方々と同時に、当然のことながら、観光にお出かけになる観光客の方々にも大変重要な情報だと思っておりまして、今回も、観光庁におきましては、被害発生直後から、関係団体からいろいろな情報収集を随時行っておりますし、また、情報の発信を、ホームページでありますとか、それから旅行業者団体に情報提供をする、もしくは依頼をするという形でお願いをしてきております。

 しかし、これは、いざ災害があったときだけ注目をされるというような形よりは、常日ごろ、どこの地域はどんな状況になっている、被害があったり、どこが行ける行けないという話を、観光庁のホームページに行けば見られるんだというようなことで常に周知をしておいた方が、いざこういった被害があったときにも、では寄ってみよう、では見てみようということになろうかと思いますので、その辺の取り組みに関しても、これから真剣に検討していきたいと思っております。

上野分科員 ありがとうございます。ぜひしっかりとやっていただければと思います。観光業、また関連の、飲食であったり、その他の産業、小売業を含めて大変な影響が出ているところでございます。国土交通省としてしっかりと対応いただければありがたいと思います。

 次に、防災の観点から、インフラ整備ということについて何点かお伺いをしたいと思います。

 災害の防止、事故の防止という観点から、老朽化をしたインフラ、社会資本の整備というのがこれから大変なボリュームで出てくると思います。

 一方で、そういった作業といいますか、更新、修繕をやっていかなきゃいけない、特に地方の自治体においては、なかなか技術系の方々、職員の数が確保できていないというのが現状ではないかなと思います。地方自治体によっては、技術職の方々が一人もいらっしゃらないところもあるというふうに聞いております。こういった中で、むしろそういった地域ほど、たくさんの更新需要、修繕のニーズも出てくるという状況であります。

 こういったところ、特に人材の話について、国土交通省として、これはしっかりとした対応をしていかなければいけないんじゃないかなと思うんですけれども、今後どういう方策を講じていくのか、お伺いをしたいと思います。

清水政府参考人 地方公共団体の技術系職員の不足に関する御質問がございました。

 市町村を含みます地方公共団体の老朽化対策を国が支援するということは、先生御指摘のとおり、大変重要であるというふうに認識してございます。

 そのために、老朽化対策に係る地方公共団体からの技術相談に対する窓口を地方整備局に設置しております。そこで助言を実施するとともに、維持管理に係る基準あるいはマニュアルといったものを整備して地方公共団体に提供しているところでございます。

 あわせまして、技術職員の人材育成の観点からは、国土交通省が実施しております維持管理に関する研修の受講者数の拡大を図りまして、地方公共団体職員の一層の受け入れを図ってまいりたいというふうに考えてございます。

 今後は、これらの支援を充実いたしまして、各地方公共団体において老朽化が進むインフラの安全が確保できるよう支援してまいりたいというふうに考えてございます。

上野分科員 ありがとうございます。人材の確保は大変大事な話なんだと思います。しっかりやっていただきたいということを申し上げさせていただきます。

 その上で、特に橋梁の補修、更新についてお伺いをしたいと思います。

 市町村が管理をする橋梁の補修工事、補強工事、これも大変なニーズ、件数がこれから出てくると思います。

 一方で、こういった橋があるところ、これも、特に山がある地域だったり、なかなか財政力がない地域にこそ、こういった改修をしなければいけない、補修をしなければいけない橋というのが、数がたくさんあるんじゃないかなと思います。

 また、例えば大きな道路をまたいで橋がかかっている、高速道路をまたいで橋がかかっている、こういったケースもたくさんございます。こういったところについては、しっかりとした補修をしていかないと本当に大事故につながる、そういった状況でもございます。

 ただ、一方で、今申し上げたように、なかなか財政上の余裕がないというところもたくさんございます。これも私の地元、先ほども申し上げたみなかみというところでいうと、今後十年間で補修が必要とされる八十九橋のうち、平成二十五年度に交付金を活用して補修できる、できたのは二橋のみであるということであります。

 現実に、今、地方の財政力を考えると、管理をしている橋の補修、改修を自前でやっていくのはなかなか難しいという現状があると思います。

 国として、国土交通省として、どうこれを支援していくのか、また、必要に応じて財政的なサポート、支援をどうやっていくのか、考えをお伺いしたいと思います。

坂井大臣政務官 お尋ねの点でございます。

 地方公共団体は、多くのインフラを管理する一方で、財政力、技術力、そして人員等の体制が厳しいという状況にございますので、国が老朽化対策を支援することが重要ということで、昨年、メンテナンス元年ということで諸施策を講じてまいりました。

 財政面でございますが、社会資本整備総合交付金というものがございますが、それに加え、昨年度には防災・安全交付金を創設させていただきまして、地方公共団体で活用が進んでいる、こう思っております。

 また、技術面では、地方公共団体職員を対象にした研修の開催、それから現地に専門家を派遣して助言する等の支援を行っておりまして、昨年、道路法改正で国による修繕の代行制度というものも創設をさせていただきました。

 今、委員はみなかみのお話をされましたけれども、それぞれの地方自治体、それぞれの事情もあろうかと思います。地方整備局を初めといたしまして、しっかりと協力をさせていただきながらこの問題には取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

上野分科員 ありがとうございます。

 さまざまな対策が講じられている、予算上の措置もされるということでありました。地域の実情、これはもちろん私の地元だけではなくて、全国に同じような問題、特に山が多いところ、また都市部ではないところほどこういった問題というのはたくさんあるんじゃないかなというふうに思います。

 八十九橋があるうちで二つしか交付金では手当てができないということであれば、これは本当に実質上進んでいかない。また、先ほど申し上げたように、道路を橋がまたぐ、そんなケースでは、ちょっと崩落をすれば大事故につながりかねない、そういう状況でもございます。ぜひ実態把握をしっかり引き続きしていただきまして、必要に応じて、また追加的な措置、財政的な支援をお願いできればと思います。

 時間が限られておりますので、最後に一問、これも政務官の方にお伺いをしたいと思います。

 今、修繕、改修の話もさせていただきました。その上で、そもそも抜本的な対策というのをしっかりやっていく、必要な社会資本を整備していく、これが防災という観点からも大事なんじゃないかなと思います。

 これも地元の案件でいうと、国土交通省さんにもさまざまな機会にお願いをさせていただいております。地元でいうと、上武道路、前笠道路、新三国トンネル、それから綾戸バイパスといったところ、これは随分、何度も何度もお願いもさせていただいております。

 ぜひ進めていただきたいということを改めてここで申し上げるとともに、その中で、特に三国トンネルについて言うと、今、既存のトンネルがありまして、これも随分老朽化しております。老朽化するとともに、走行できる空間が大変狭くなっていて、大型車両がなかなか安全にすれ違えない、すれ違おうとするとトンネルの壁面に車をこすったりするという状況でもございます。

 そういった中で、昨年でありますけれども、新三国トンネルの建設ということで事業が動き出したところであります。これは地元の大変な悲願でもありますし、また、まさにそこを通行する方々の安全という観点からは大事な社会資本、インフラではないかなと思います。

 このトンネルの整備につきまして、我々もこれは格段の思い入れがある案件でございます。しっかりと進めていく、その御決意をぜひ政務官の方からいただきたいと思います。

坂井大臣政務官 今御指摘がありました三国トンネルでございますが、群馬、新潟両県をまたぐ国道十七号線、危険物搭載車両の通行が禁止されている関越自動車道、関越トンネルの代替路にもなっておりまして、物流上も重要な区間であると認識をしております。

 現在の三国トンネルは、御指摘があったように、建設後五十五年が経過をした延長約一・二キロメートルのトンネルでありますけれども、過去の補修により断面が縮小されまして、大型車同士のすれ違いが困難なことに加えて、漏水の問題も出てきております。そんなこともありまして、昨年九月に新潟県側で準備工事に着手をいたしておりまして、新しいトンネルをつくろうということでございます。

 現在、群馬県側で工事用道路の整備、新潟県側ではトンネル坑口付近ののり面工事を推進しているということでございまして、動き出しております。この動き出した工事を、引き続き、早期開通に向け、整備を推進してまいりたい、このように思っております。

上野分科員 ありがとうございました。

 防災面、また地域の経済の活性化という意味でも大変大事なトンネルであります。今、早期開通に向けてしっかりやっていくという話をいただきました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

林主査 これにて上野ひろし君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、衛藤主査代理着席〕

衛藤主査代理 次に、笠井亮君。

笠井分科員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、首都東京の地震対策、防災対策について質問いたします。

 昨年十二月に、中央防災会議の首都直下地震モデル検討会と首都直下地震対策検討ワーキンググループが、東京都とその周辺地域での地震について、発生可能性や防災対策の対象となる地震について検討をして、被害想定を明らかにしております。想定などについてはいろいろ議論はありますが、対策は待ったなしだと思います。

 そこで、きょうは早速、関連して、特に木造密集市街地の震災予防対策について伺いたいと思います。

 東京消防庁火災予防審議会が二〇一一年の三月に、減災目標を達成するため木造住宅密集地域において緊急に実施すべき震災対策という都知事への答申を出しております。その中で、対策の第一に挙げているのが火災対策です。まず「出火をさせない」、続いて「木密地域では地震時の出火を早期に発見し、火災を初期段階で確実に消火し延焼拡大させないことが火災被害の軽減につながる。」というふうにございます。

 そこで、古屋防災担当大臣に伺いたいのですが、まさにこの点、大事だと思うんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。

古屋国務大臣 委員御指摘のように、昨年末、首都直下地震対策ワーキンググループの最終報告書を出しました。そのときにも、木密対策が極めて大切、やはり火災が非常に懸念されますので、その対策ということで出させていただきました。

 阪神・淡路大震災を思い起こしてみますと、あれは、早朝、ほとんど無風状態だったんですけれども、大規模な延焼火災が発生をしまして、大きな被害となりましたね。仮に首都直下地震が発生したら、同時多発的に市街地にそういったような火災が発生して、建物被害、人的被害が非常に大きくなるものと予測をされておりますので、やはり、火災対策は首都直下地震の防災、減災対策の要諦であるということは間違いないというふうに、私も同様の認識を持っております。

 一方では、委員御指摘のように、東京消防庁の火災予防審議会で、初期消火の重要性についての提言もまとめられていますけれども、自助、共助、公助、あらゆる段階で最善を尽くすことが大切なんだという重要性を同時に指摘されているんですね。

 したがって、脆弱な木造の密集地域の解消を図ることは、まず首都直下地震対策の中でも極めて重要であるというふうに認識をいたしておりますけれども、全て、そういった合わせわざですね、首都直下地震の切迫性に鑑みて、出火防止対策、初期消火の実効性、そして木密対策のいろいろな対策にハード、ソフト両面で取り組みながら、火災の被害も少しでも減少させていくということが極めて大切であります。

笠井分科員 中央防災会議ワーキンググループの報告書でも、建築物の耐震化とともに、火災対策が強調されております。東京都の火災予防審議会答申でも、火気器具などの出火防止、家具類の転倒、落下防止対策とともに、具体的に強調されているのが感震ブレーカーの設置であります。

 地震で停電した電気が復旧をして、電気製品が再び作動するなどして火元になる通電火災に対して、感震ブレーカーは、地震を感知すると自動的にスイッチが切れて、火災を防ぐというものであります。

 総務省消防庁は、一九九八年に、地震時における出火防止対策のあり方に関する提言をまとめております。今大臣も言われましたが、阪神・淡路大震災における火災の出火原因で最も多かったものは何か、お答えいただきたいと思います。

室田政府参考人 今委員が御指摘になりました、消防庁が平成十年三月に取りまとめました調査検討報告書によりますと、阪神・淡路大震災におけます地震発生後十日間の出火件数の合計は二百八十五件となっております。

 この二百八十五件のうち約半数の百四十六件は、大規模延焼火災の場合、出火時の様相を特定することが困難であることなどから、発火源が不明となっております。発火源が明らかになったものでは、電気ストーブや熱帯魚用のヒーター、屋内配線など電気関係が八十五件と最も多く、次に、ガスこんろや石油ストーブなどガス、油類関係が二十四件となっております。

笠井分科員 内閣府に伺いますが、中央防災会議は、出火防止対策等が強化された場合の火災被害の軽減効果について、端的にどのように述べているでしょうか。

日原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のワーキンググループの被害想定等によりますと、仮に、感震ブレーカー等の設置により電気火災の出火を完全に防止できた場合には、人的、物的被害を約半分に、さらに、住民等により初期消火が可能な限り達成された場合には一割以下にまで減らせるものと試算しております。

笠井分科員 被害を軽減する効果は大きいということだと思います。ところが、感震ブレーカーの普及率はまだまだ低い。

 中央防災会議のワーキンググループは、感震ブレーカー等の一〇〇%配備の方策の検討を進めて早急に実施すべきと述べて、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた対応の第一に、即効性ある取り組みとして、まずは木造住宅密集市街地を対象として、短期間での感震ブレーカー等の設置を目指すべきというふうに述べております。

 大臣、これは早急に検討して具体化すべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

古屋国務大臣 最終報告書の提言にもございますので、現在、政府として、首都直下地震対策について、個別に、関係する省庁、関係者と検討を鋭意始めています。

 感震ブレーカーの一〇〇%というお話もありましたけれども、確かにそれも大切でございます。感震ブレーカーだけではなくて、やはり出火防止対策ももちろんしていかなきゃいけない。一方、そうはいっても、仮に出火をした場合に、延焼をいかにして軽減させていくか。

 そして、木密の地域ですと、住民の避難の経路の確保であるとか、こういったいわば合わせわざが必要でございますので、感震ブレーカーの普及も含めて、やはりそういう総合的な対策を講じていかなければ効果的な火災防止対策を実現することは難しい、こういう認識でおります。

笠井分科員 総合的な対策の中で、重要なものである感震ブレーカー、これは検討を急ぐということであります。

 東京消防庁の火災予防審議会の答申が、地域の消火活動体制の整備、それから軽可搬消防ポンプの配置、消防水利の整備なども提起をしているというのは非常に大事なことだと思いますが、もう一つ、総合的といえば、建物の耐震化の問題があります。

 阪神・淡路大震災でも、亡くなった方の約八割が建築物の倒壊による死亡であります。中央防災会議は、耐震化の推進による建物被害の軽減について、耐震化率が全国で九〇%となった場合には、全壊棟数と死者数は約五割減、一〇〇%なら九割減になるとしております。

 建物の耐震化は、火災を起こさない、広げないという点でも重要だと思うんですが、耐震化による延焼火災の軽減効果というのはどのようにごらんになっているでしょうか。

古屋国務大臣 確かに、委員御指摘のように、建物の耐震化というのは、大きな強い揺れから人間の命を守る上でも最も基本的な対策であることは間違いないと思いますし、ワーキンググループにおいても、住宅の耐震化率の向上により、今御指摘があったように、被害を人的被害も含めて大幅に軽減できる、こういう試算がなされているんですね。

 一方、耐震化さえ進めれば出火や延焼が軽減されるというものではないというふうに考えています。やはり、建物と建物の間に一定の距離を確保するということも、被害を軽減させるには極めて重要なことであると思います。

 建物の耐震化というのは、やはり居住者の安全を確保する上でも極めて重要なものでございまして、そして、建物の耐震化と、それからオープンスペースを図る、こういったことを、先ほど申し上げましたように、合わせわざで取り組んでいくということが大切だ。

 ちなみに、最終報告書の中でも、建物全てではなくて、例えばその一部だけでも耐震化をすることによって効果があるというような指摘をしているのは、大変、私たちとして注目をしているところでもあります。

笠井分科員 まさに総合的にやらなきゃいけないと思うんです。ところが、今、東京都が、木密地域不燃化十年プロジェクトとして、特に特化してと言ってもいいほど力を入れているのが特定整備路線という道路事業であります。

 大臣それから政府側の皆さんには資料もお手元にあると思うんですが、既に国に対して事業認可の申請がこの中でなされている箇所もあると思うんですが、あるかないか、間違いないか、国交省、お答えください。

坂井大臣政務官 東京都は、平成二十四年十月、木造密集地域において災害時における延焼遮断等に大きな整備効果が見込まれる道路約二十六キロメートルを特定整備路線として位置づけ、平成三十二年度までの整備を目指すこととしていると聞いています。

 これまで、品川区内補助二十九号線ほか十三路線について事業認可申請が行われておりまして、このうち九路線で事業認可を取得、事業実施中ということを聞いております。

笠井分科員 この特定整備路線というのは、JR山手線と環七通りの間の地域を中心にして、都内各区を一回りするような、二十八カ所が対象でありますが、昨年ごろから都による説明会が始まって、各地で住民から猛反発が起こっております。

 対象路線の多くは、一九四六年、昭和二十一年に戦災復興計画で都市計画されたもので、住民の反対も強く、事実上凍結されてきたものであります。

 先日、私も品川区と北区で計画地沿線を訪ねて、住民の皆さんから話を伺ってまいりましたが、まず問題だと思うのは、延焼遮断帯をつくるための道路整備としているんですけれども、果たしてそういう計画になっているかであります。

 資料でいいますと二ページ目のところになりますが、北区では補助七十三号線、八十一号線、八十六号線の赤羽西地域、志茂地域という四カ所で事業が計画されております。そのうち、八十六号線の赤羽西地域は、道路延長千百五十メートルという計画でありますけれども、約三分の一の区間は区の自然観察公園とスポーツの森公園を二十メートルの幅で貫通するというものであります。

 この公園は、かつて自衛隊の分屯地だったんですけれども、今では、防災機能を有する公園として区が整備をして、災害時の避難場所にもなっております。南西側にはナショナルトレーニングセンターの広い敷地もあります。

 こうした広い公園の真ん中に道路を通して、果たしてどのような延焼遮断効果があるということになるんでしょうか。

坂井大臣政務官 木造密集市街地の改善に向けましては、避難地や救助の拠点となる公園等と連携をして、延焼遮断帯や避難路として効果を発現する道路整備を行うことが必要だと考えておりまして、この補助八十六号線につきましては、市街地火災を防ぐ延焼遮断帯としての効果に加え、被災地の安全な避難路を確保する効果が期待をされ、避難地となる公園と一体となって、当該地域の防災力が向上するということで考えております。

笠井分科員 避難路という言葉があったんですが、そこを見ていただくと、道路としてつないでいかなきゃいけないという話になると思うんですけれども、計画道路の東の端の赤羽西一丁目の側、そこは間が切れているわけですよ。特定整備路線としてつながっていないという、全くおかしな計画になっているわけですね。

 もう一つ、品川区の例でありますが、これは三ページをごらんいただきたいんですが、補助二十八号線、二十九号線、放射二号線という三つの路線が対象になっております。そのうち放射二号線というのは、延長千二百メートルの計画ですけれども、星薬科大学という大学キャンパスを貫通することになっております。

 その地図、ちょっと見にくいかもしれないんですが、赤い、放射二号線ということになっていて、星薬科大学ということで、道路を挟んでその下側の中学校の左側も星薬科大学なわけですから、まさに薬用植物園を潰して、本館のすぐ南側を通って、イチョウ並木を切り裂くように通っていく。薬用植物園は約三千平方メートルの広さで、約八百種が栽培をされて、大学構内にあるというのが特徴で、学生が生きた教材を学べて、研究にも生かされているということであります。

 文部科学省に伺いますが、こうした大学の敷地内に幅二十メートルもの道路をつくるという事例が全国にあるんでしょうか。

中岡政府参考人 委員お尋ねの、大学の敷地内を横断する幅二十メートルの道路がつくられた事例は、文部科学省で調べた範囲では承知はしておりません。

笠井分科員 こうした、大学敷地内を二十メートルもばんとぶち抜く道路建設というのは、これは教育上望ましいことなのかどうかという点では、文科省はどのようにお考えでしょうか。

上野大臣政務官 委員の質問ですが、大学のキャンパスについては、大学の教育を行うにふさわしい環境を持つことが求められ、大学設置基準等に基づき、必要な校地、校舎、施設設備等を備えることが求められております。

 一方、大学設置基準等を満たした上で、具体的にどのようなキャンパスを整備するかについては、各大学が、その教育理念や教育研究の分野、学生の状況等を勘案し、決定すべきことでございます。

 星薬科大学における道路建設についても、当該大学がその教育理念等を踏まえて決定すべきことと考えております。

笠井分科員 まさに大学が決めることだと思うんですが、本館というのは、大正十三年に完成した大学のシンボル的な建物で、世界的にも有名な建築家アントニン・レイモンド氏の設計で、日本建築学会の近代日本の名建築や、品川区のしながわ百景にも指定をされている。道路がその前を通れば、景観を含めて貴重な建築物が台なしになる。

 キャンパスも薬用植物園もイチョウ並木も、そもそもそれ自体が延焼遮断の効果があるところであります。近所の住民の皆さんは、家族もみんな知っているわかりやすい場所で、いざとなったらその大学に逃げるつもりと言われております。道路で延焼遮断などお門違いだというのが共通の意見。大体、学生が勉学に集中できる良好な環境を保持するのが行政機関の役割でありますので、こうした点でも逸脱しているというふうに思います。

 もう一つ、大きな問題は、都が二〇二〇年度までに一〇〇%整備するといって、この事業を強行しようとしていることなんですね。

 北区の補助八十六号線の志茂地域というのは、昨年十月二十九日に第一回の説明会があって、翌月十一月には測量を開始するというやり方です。説明会も、時間の大半は都の説明があって、住民の質問に答える時間というのはごくわずかだということであります。住民へのアンケートでは、約八割が反対していて、賛成は三%にも満たない。

 こんな強引で性急なやり方では、住民は、どんな計画で、何が起ころうとしているのか、理解しようもない。ある年配の女性は、私に言われておりました。やっと家のローンが終わって、安心して住み続けられると思ったところに立ち退きの話が来た、かわりの家も用意されず、都営住宅を勧められたが、入れる保証はない、生存権を奪うものというふうに怒っていらっしゃいました。最初から土地収用をほのめかす、そういう地域もあると聞いております。

 国交省に聞きますが、一回説明会をやって、十分な説明もないまますぐ測量に入る、最初から土地収用もほのめかす、国はこうした強権的なやり方を推奨したことがありますか。

坂井大臣政務官 道路事業につきましては、事業主体におきまして、事業の規模、そして周辺の状況などを勘案し、説明会等により、地元住民など関係する方々に事業内容等を御理解いただきながら事業を進めることが適切と考えておりまして、国としてもその旨を地方公共団体にこれまで助言しているところでございます。

笠井分科員 適切じゃないということですね。

 強引な追い出しが行われれば、地域のコミュニティーも壊されると住民の皆さんは怒っている。既に、さっき大臣が共助ということも大事な要素だと言われましたが、まさにそういう精神で、災害が起きたときにもお互いに助け合う関係というのを、その地域コミュニティーでつくっているというところであります。

 中央防災会議の最終報告も、地域における初期消火の成功率の向上をまず挙げて、自主防災組織等の地域防災力の向上、可搬ポンプ等の装備の充実、断水時に利用が可能な、簡易なものも含めた防火水槽、防火用水の確保等を進めることを指摘しております。東京都の計画というのは、この最終報告にもたがうものだと思います。

 さらに、住民への説明内容も問題であります。

 資料の四ページ目をごらんいただきたいんですけれども、品川区の補助二十九号線の例であります。

 説明会では、専ら延焼遮断帯をつくるということで事業の理由を説明しております。ところが、二月五日に東京都が関東地方整備局に対して行った一部区間の事業認可申請書を見ますと、申請の理由は、まず、交通の円滑化であります。続いて、またと書いてあって、防火の向上も理由にしている。これを見て、住民の皆さんは、だまし討ちじゃないか、説明と違うじゃないかと怒っていらっしゃいます。この道路に並行して、三百メートルほど西を、国道一号線、第二京浜が走っているところです。

 国土交通省に伺いますが、国が直轄で事業を進める場合に、住民には説明しなかった内容、それを理由にして大臣の承認を受けるようなことがあるんでしょうか。あるとしたら、いつ、どんな事業で行ったか、示していただきたいと思います。

坂井大臣政務官 特に当該路線につきましては、延焼遮断帯だけではなく、多種多様な機能を有していると考えております。

 御指摘のように、二月五日に東京都が関東地方整備局長宛てに申請した当該路線の事業認可の申請書の中では、申請の理由として、交通の円滑化、安全で快適な歩行空間の確保、延焼遮断帯としての整備による防災力の向上についての記載がございます。

 住民への説明ということですが、東京都より伺っているところによりますと、これら説明会でも住民に説明はしているということも聞いておりますが、整備理由については整合しているものと考えております。

笠井分科員 多種多様だと説明している、東京都側に聞いたらそうだというけれども、地元の方は聞いていないというんですから、そういう問題なんですよ。

 それで、東京都側のというので、東京都の仕事みたいに言われるけれども、都市計画道路の事業というのは国土交通大臣が認可をする。東京都は、とにかく国の防災・安全交付金を活用する考えであるようですけれども、補助率は十分の五・五でありますので、国の責任は大きいわけですね。だから、東京都の事業で、何かそう聞いていますみたいな話で済む話じゃないということを申し上げたい。

 既に述べたとおり、これらの路線の多くは、一九四六年、昭和二十一年の戦災復興計画で定められたものであります。当時の写真を見ましても、一帯が焼け野原だった時代の計画でありまして、今では住宅地が広がっているというわけであります。

 本来、こうした事業を強引に進めるべきではないんじゃないか、都から事業認可の申請があった場合でも、国は慎重に、それこそ総合的に判断すべきじゃないかと思うんですが、国交省、いかがでしょうか。

坂井大臣政務官 委員が今指摘をしました補助二十九号線の二区間につきましては、二月五日に、東京都より国土交通省関東地方整備局長に対して事業認可の申請がなされております。その申請内容について、都市計画法に基づき、都市計画への適合や事業施行期間等について審査をしているところでございます。

 このように、現在審査を行っているところですので、認可の可否について申し上げる段階にはございませんが、法に基づき適切に対処してまいります。

笠井分科員 法に基づき適切にという中に、住民というのがやはり主役なんですよ。そこのところが一番大事なわけです。

 実は以前、東京では、戦災復興計画で定められた道路計画が再燃しようとしたことがありました。一九八一年に鈴木俊一当時都知事のもとで都市計画道路の見直しが検討されて、わずかな部分だけが変更されて、一九四六年の計画路線は大半が残るということがありました。

 当時もやはり、高校のど真ん中を道路が突き抜ける計画だとか、中学校のプールが潰される等々、大問題になって、各地で大反対運動が起きました。そのとき、国会でも議論になったことがあります。

 一九八一年四月七日の参議院の建設委員会で、当時の斉藤建設大臣は、我が党の上田耕一郎議員の質問に答えて、「御指摘の問題につきましては、これは大変なことだと思います。」「事務レベルということでなく総合的に、縦横からよく検討させていただいて、軽々しく三十五年前の計画を持ってきたから、はいよという形で認可するということは私はなじまないというように考えておりますので、十分な配慮をもって対処してまいる所存でございます。」こう答弁をしております。

 こうした答弁が行われたことは間違いありませんね。

坂井大臣政務官 御指摘の建設大臣答弁についてでございますが、昭和二十一年に都市計画決定された都市計画道路につきまして、都内の中学校及び高校に係る三つの個別案件への御質問に対して、総合的に、縦横からよく検討し、十分な配慮を持って対処してまいる所存と答弁しているところでございます。

笠井分科員 大臣は、こうも言われているんですね。

 やはり三十五年前の恐らく東京都がこの過密以前の、将来の東京都を見越しての街路計画であったと思います。その後、戦争後焼けた東京都が御案内のような形で町をつくっておるわけで、それに三十五年前の地図を合わせて、軽々しくという表現はいけないかもしれませんけれども、計画先行ということについてはいかがなものであろうかということは、私もお話を聞きながら考えました。

  さすればどうするかといいますと、当初申し上げましたように、やっぱり地域の事情をよく調査し、住民の声も聞き、そして可能、不可能のわきまえをしながら新しい計画をつくってもいいんじゃなかろうかというように考えたわけです。

 まさに当時の大臣の見識だと思うんです。今ではもう六十八年も前の計画の問題でありまして、これはもともと国が責任を持っている計画だったわけですけれども、まさにこういう問題について、やはり私は、進めるべきではないし、申請があった際にも、机上の事務レベルの判断で認可ということでやるんじゃなくて、北区は太田国土交通大臣も地元でありますから、ぜひ、大臣自身も現地を見て、地元住民の声を聞くようにということで、政務官、大臣に伝えていただきたいんですが、よろしくお願いします。

坂井大臣政務官 委員の御指摘をお伝えいたします。

笠井分科員 最後に、大臣にですけれども、来年三月には、第三回の国連防災世界会議が仙台で開かれる。ホスト国日本の防災ノウハウというのを世界に紹介するとされておりますけれども、防災対策を進める上でも、やはり住民の理解と合意、そしてさらには参加ということが大事で、我が国の民主主義の成熟が問われている。コミュニティーを大切にするということも大事だと思います。

 あの家にはお年寄りが一人で暮らしている、障害を持った方がいる、隣には学校に通う子供がいるが帰ってきただろうか、近所でそういうことを理解し合い、助け合ってこそ、命や安全を守ることができる。そういう中で、これが日本の防災なのかと疑問に思われるような事業を世界に紹介するわけにいかないんだと思うんですよね。

 今回の事業でも、一度対象に挙がりながら、北区でも、無量寺という、鎌倉時代につくられたという本当に名刹があるんですけれども、御住職はもちろんですが、地域の方々、自治会長、商店会長こぞって反対ということで、対象区間から除外されるということもありました。

 まさにそういう点では、住民の理解や合意、これは本当に大事だということで防災の問題を考える必要があると思うんですが、その点についていかがでしょうか。

古屋国務大臣 ちょうど昨日、国連の防災の責任者、ワルストローム事務総長特別代表が見えまして、私、一時間ばかり一緒に議論したんですけれども、日本の防災のノウハウ等々を世界に発信していただく、大切だねということを非常に指摘していましたね。

 それと一方、二月八日に、防災に関する世論調査が出たのは御存じだと思いますけれども、十年前は、どちらかというと公助の部分がかなり多かったんですけれども、自助、共助、公助、バランスをよくとりましょうという国民意識がぐっとふえたんですね。これは私は、やはり国民の理解、住民の参加、合意というところにも関係していると思います。

 過去の災害の教訓を取りまとめた冊子とかDVDだとか優良事例の紹介とか、あとは学校教育、防災教育、これは災対基本法の改正によって盛り込まれていますけれども、こういった取り組みをして、自助、共助の取り組みを推進していく、極めて大切だというふうに思っております。

 今後とも、あらゆる機会を通じて、こういう認識を国民の皆様と共有していきたいと思います。

笠井分科員 住民の理解や合意、大事な問題だと大臣も言われました。そして、災害の予防策が重要であって、国民の財産を守るために国がやはり第一義的な責任を負っている。そういう点では、政府が積極的な役割を果たすということを強く求めて、質問を終わります。

衛藤主査代理 これにて笠井亮君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮川典子君。

宮川分科員 自由民主党の山梨一区選出、宮川典子でございます。

 本日は、この機会をいただきましたので、二月の十四日から起こりました雪害のことについて、ぜひとも質問をさせていただきたいと思います。

 平成二十六年二月の十四日から降りました大雪によりまして、関東近辺では、観測史上初の大変大きな積雪がございました。お手元にあります資料をごらんいただきたいと思いますが、私の地元山梨県でありましても、過去十五年の積雪量の中で圧倒的に、非常に多い積雪でありました。

 私も、当時山梨におりましたので、翌朝家を出ようと思いましたら、ドアが五センチしかあかない、そして、その中に入っていきましたら、胸まで雪につかってしまったという状況で、本当に予測できないような事態が起こりました。写真をごらんいただければと思いますが、大変厳しい状況であります。

 また、日がたつにつれて被害状況が出てまいりましたが、特にフルーツ王国山梨においては、果樹のハウスが八割以上が倒壊するということであります。二枚目の資料を見ていただければ、そこに割合が書いてありますが、果樹が八四%、野菜が六六%、花卉に及んでは、まだ九%でありますが、大変大きな被害を受けているところであります。

 この中で、営農を断念せざるを得ない、もう本当に生きる気力、やる気をなくしてしまったという農家の方も非常に多くいらっしゃいます。

 また、とにかくやりたいはやりたいんだけれども、これだけ多く潰れてしまったハウスの撤去をどうしたらいいのか。そして、それにかかる、例えば一反潰れてしまえば、大体八百万円から一千万円の再建費がかかりますけれども、それが六反も八反も十反も潰れた人は、一億円をどうやって、これから自分たちが借金をしてやっていけばいいのか。また、平成十年の雪害からやっと借金を返したところで、またこの雪害かということで、二重ローン状態になって大変苦しんでいる方がいらっしゃいます。

 このハウスの撤去を早くしたいというのは、景観の問題もありまして、何とか早く気持ちを取り戻していただきたい、住民の方また農家の方にはそう思うわけでありますが、しかしながら、大規模にわたる、広範囲にわたる被害でありますので、何としてもそのハウスの撤去を自衛隊の皆様にもお願いしたい、そんな声まで出てきております。

 これだけ大きな農業被害、また経済被害が出ている中で、古屋防災担当大臣に、ぜひとも今後の見通し、また、どんなふうにこれからの復旧に向けて国として支援を強めていかれるのか、御所見をお伺いしたいと思います。

 そして、防衛省には、自衛隊の方たちが、例えばハウスの撤去なんかを手伝うことができるのか、二次的な被害のところにもどうやってコミットできるのか、ぜひともお答えいただきたいと思います。

古屋国務大臣 宮川委員、地元で、本当に歴史始まって以来の大変な豪雪で、私の携帯にも連絡いただいたり、あるいはSNSを活用して、ちょうど内閣府で災害対策本部をやる直前に入ってきましたので、四百十一号の問題、百四十号の問題、全て通達して、速やかに対応しましたよ。速やかな行動と、SNSをうまく活用したいい例ですね。本当に、そういう意味では、いいフットワークに大変に感謝し、敬意を表したいと思います。

 その上で、今、農業被害の話ですけれども、基本的には農水大臣がお答えすることだと思いますけれども、私もこの問題については非常に問題意識を持っていますので、農水大臣とも連携をしてしっかり対応していきたいと思っております。

 農水大臣も、予算委員会で、もうこの際、営農をやめちゃおうかなということが頭をよぎる営農者もいらっしゃるかもしれないけれども、そうではなくて、そういうことがないように、最大限の支援をしていきたいということをはっきり言明していましたね。あれはテレビ中継入りの委員会でしたから、ごらんになった農業者の方もいらっしゃると思います。

 そこで、十八日には農水省で災害対策本部をつくって、林農水大臣の指導で取り組んでいますけれども、具体的には、例えば災害関連資金の無利子化とか、農業用ハウスの撤去、再建、修繕への助成、これは経営体育成支援事業、こういったものを適用します。あるいは、共同利用施設への助成とか、果樹の改植への助成だとか、被災農業法人等の雇用の維持のための支援。それから、環境省が、いわゆる災害等廃棄物処理事業費補助というのがありますので、これは昨日の災害対策特別委員会でも、農水省と環境省がしっかり連携をとって、被災をされた方、申請をされる方が上手に対応できるように連携をとるようにということで、私からも強い指示をさせていただきましたので、そういう対応をしていただけると思います。

 いずれにしても、どれだけの被害があったということをしっかり把握して、現場のニーズを真摯に伺った上で、今後とも、農水省としても追加対策を検討するということでございますので、国と被災地方公共団体、そして関係者が連携をして、今後ともやはり営農は続けていっていただくということが極めて大切ですね、そういう視点に立って、国も一体になって御支援を申し上げていきたいというふうに思います。

若宮大臣政務官 お答え申し上げます。

 宮川委員におかれましては、本当に何十年ぶりの豪雪という中で、まさに御自身の、みずからの御自宅も、今おっしゃられたように大変な被害に遭われた中で御活躍ということで、本当に敬意を表するところでございます。

 私の地元の東京でもかなり交通が麻痺いたしまして、本当に自然災害というのは恐ろしいものだなということを改めて感ずるところでございます。

 御質問の件でございますが、防衛省といたしましては、今回の豪雪に際しましては、二月の十五日の土曜日、山梨県知事より災害派遣要請を受けまして、人命救助、人命救助のための除雪、そして救援物資の輸送及び患者の空輸を行わせていただきました。

 御存じのとおり、自衛隊の災害派遣につきましては、地方自治体が一義的にその区域内におきます災害対応を担うという責務を有してございます。そうした考え方を踏まえまして、緊急性、非代替性、それから公共性、この三つの要件を総合的に勘案いたしまして、市町村及び都道府県の災害対応能力を活用してもなお人命または財産の保護という観点から、自衛隊による応急的な救援活動の必要があると認められる場合に行われるところでございます。

 御指摘いただきましたように、多くの果樹園等々の壊れたビニールハウスの撤去、なかなか人手が足りなくてできないというようなお話を頂戴いたしましたが、被災農業者が農業経営を維持するために必要であるということは重々私どももわかるところではあるんですけれども、先ほど申し述べました三要件に照らし合わせますと、やはり自衛隊の活動としては対応はなかなかちょっと難しい面があるかなというところでございます。

 他方、政府といたしましては、今、古屋大臣の方からもお話し申し上げましたけれども、農林水産省そしてまた環境省を中心に、被災農業者への支援対策ということは、さまざまな部分で検討しているということで承知をいたしてございます。

 いずれにいたしましても、災害が発生して自衛隊が災害派遣を行う場合といたしましては、自治体の皆様方と緊密に、調整、協力しまして、効果的な救援活動に全力で取り組んでまいるつもりでございます。

宮川分科員 御答弁ありがとうございました。

 東日本大震災のときに瓦れきの撤去で自衛隊の方が大変御活躍をされていたのも、私は、落選中でしたので、現地でボランティアに入って本当に間近で見ていたところでありますが、今回は、確かに、ハウスという決められたものかもしれません。また、それ以外には、例えば建物被害だとか大きな瓦れきがあるという被害ではありませんけれども、ただ、果樹というのは、その時期を逃してしまえば、もう三年も五年もずっと無収入の人たちが山梨県内にあふれ返ってしまうという、大変緊急性を帯びているものだと思います。そして、山梨県というところにおける基幹産業を守る大変重要な施設でもありますので、そこには公共性も生まれてくるかと存じます。

 今の政務官のお答えで、確かにルールはそうかもしれませんけれども、ぜひここはルールの中でも御配慮をいただいて、防災担当大臣にもぜひとも新たな整備をしていただきたいなというふうに思っております。ぜひとも、そこにはお力添えをいただきたい。地元の人間として、また、フルーツ山梨再建に向けて、みんな若手の人たちは何とか歯を食いしばって頑張ろう、子供の教育費を五年払えなくても何とか今までの貯蓄で頑張ろうというふうに皆さん思っておりますので、ぜひともそのお力添えを心からお願いしたいところでございます。

 今回の大雪というのは、全国範囲にわたって起こった大きな災害というよりは、局地的に関東近辺で起こった災害というふうに言えると思います。この局地的に起こった災害のときには、全国で起きているさまざまな災害の場合は広範囲にわたって情報が入りやすいかと思いますけれども、局地的に異常な、例えば豪雨だとか豪雪だとかといった場合には、その地域の内情がなかなか国の方に伝わってこないというような状況もあったのではないかなと思います。

 また、過去の震災やいろいろな自然災害に学んで、防災意識、防災対策というのは各自治体でも非常に進んでいたわけではありますけれども、この局地的な、今まで経験したことのないことに対応するには、まだまだ足りない、脆弱な点があったというふうに私自身もちょっと感じております。

 特に挙げれば、まず一点は、乗り捨て車の問題、二点目は、国、県、市道というふうに、セクショナリズムかもしれませんが、徐々に徐々に進めなければいけない道路の除雪、そして三つ目は、民間への災害時の外出自粛規制の強化、これが足りなかったのではないかなと思います。四点目は、地方への国の出先機関、また自衛隊との指揮系統の問題、そして五つ目は、それにまつわる、やはり非常時における首長の権限の強化ということが大変重要ではないかなというふうに思っておりました。

 その点について御質問したいと思います。

 まず、今回、山梨県内においては、全ての国道、中央自動車道そして鉄道もとまってしまって、十七日の午後十一時まで三日間、陸の孤島でありました。この国道においては、大変な立ち往生車がありました。それによって除雪が進みませんでしたが、その中で一番の問題は乗り捨て車でありました。

 本当に大きな雪でありましたので、それで動けなくなった車を乗り捨てて、例えばタクシーなり公共機関なり鉄道で移動された方がいて、これを一台一台、警察がナンバーを照会して、それで確認をして、持ちに来るのかどうするのか、所有者にその許可をとって、自衛隊の方が動かして除雪をするということでありました。

 確かに、私有物について簡単に無断で撤去することはできない、今法制度はそのようにあると認識しておりますけれども、やはりそこはしっかりと、緊急時は首長の判断、もしくは現場の判断で動かすことができるというルールづくりが絶対的に必要だということを今回強く感じました。

 今後の法整備について御所見を伺いたいと思います。

古屋国務大臣 宮川委員、現場で実際に見られて、非常に重要なところを指摘されましたね。

 確かに、今度の豪雪でも、除雪できないんですね。道路法があるので一応はやれることになっているんだけれども、現実には警察が一件一件車をチェックして、オーナーを呼んできて、それで了解をとって、これでは、とてもじゃないけれども、除雪できないんですよ。だから、除雪がおくれた大きな要因になっているんです。

 実は、昨年の災対法の改正のときにも、この放置自動車問題が議論になりました。それから、雪だけではなくて、地震。地震はいつ来るかわかりませんから、事前の対応は不可能なんですね。首都直下地震が起きたときにどうするか、この議論はあって、官房長官も私と問題点を共有していまして、会見でも言っていただきました。私も、どういう要件のもとで強制的に放置自動車を撤去できるのか、これは法整備も含めて早急に検討していきたいということを、会見でも、あるいはこの予算委員会でも発表させていただきました。

 豪雪はもちろんですけれども、申し上げましたように、地震が起きたときはこれは本当に大きな障害になりますので、速やかに法改正を含め対応について検討し、結論を出していきたいと思います。

宮川分科員 ありがとうございます。

 全くもって、法整備ができていたら今回も除雪が早くできたのかな、食料が足りないとか燃料が足りないといって県民の不安をあおることもなかったかなというふうに思います。私も、今回の雪害を経験した一人として、しっかり法整備に向けて自分なりに活動していきたいと思いますので、ぜひとも御配慮をお願いしたいと思います。

 二点目でありますが、道路の除雪の順番というのも今回大変大きな問題だったかと思います。

 私たちの山梨県では、国道が全てとまってしまいましたので、基幹道路、幹線道路をまずは除雪するんだということでありましたけれども、しかしながら、その道路の状況によっては、そこから延びている県道だとか市道、そういうところを先にもし除雪することができれば、大きな迂回路をつくることができて、多少の立ち往生車を排除して除雪を進めることができたという地域も正直言ってあるかと思います。

 これが、国道をやった後に県道、県道の後に市道というふうになってしまいますと、どうしても、国道に大きな車が滞留していた場合、また除雪が進まない、ずっと交通渋滞がおさまらないという問題もあります。

 ですので、その場合は臨機応変に、迂回路になり得る県道、市道は先に除雪をする、そういうようなルールづくりも必要かと思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

古屋国務大臣 除雪については、基本的に、都道府県知事あるいは首長さんの御判断でやっていただくということです。

 ただ、今御指摘のように、特に山梨県のようにめったに雪が降らないところは、ノウハウを御存じの方もいらっしゃらなかったんですね。もちろん、機材もない、マンパワーもないということです。ですから、新潟県だとかあるいは北陸地整から助っ人を出して、専門家で対応しましたけれども、派遣するまで時間がかかりましたので、なかなか進まなかったということもあろうかと思います。

 そういった、めったに雪の降らない地域が幾つかある。だから、これからは、まず一点は、豪雪地帯でチームとかノウハウを持っている人がいますから、あらかじめそういうチームをつくっておいて、それですぐ依頼をしてやれるようなシステムと、それから、ではどういう形で除雪をするのがいいか、そういうルールというかマニュアルをやはりつくっていく必要があると私は思いますね。山梨県も、一回ありましたので、二度ないという保証はないので、いい教訓ですね。やはり、そういう教訓をしっかり生かす。

 災害の場合は、どうしても予想外のことが起きてしまうことがあります。しかし、それを必ず次の教訓に生かすということですから、災害対策基本法も昭和三十六年の伊勢湾台風以来、五回大改正しているんですよ。今、四十本基本法がある中で一番大きな、百七十条もある法律になりましたね。

 そういうことがありますので、やはりしっかりスキームをあらかじめ考えていくということが極めて大切。ぜひ、委員におかれましても、県とも連携してそういう取り組みをしていただきたい。

 なお、知事には、もし後ほど質問がありましたらお答えしますけれども、災対法によって国とかあるいは事業者に対して、特に事業者に対しては命令権限もありますし、それから国の出先機関に直接要請権限がありますので、ちゅうちょしないでその法律をしっかり最大限活用するということも大切だと思います。

宮川分科員 ありがとうございます。

 実は、この豪雪があった後、豪雪地帯の青森県の方と連携をして、除雪計画というのをしっかり立てているんだということで、レクチャーをいただきました。それを見ますと、地域に合った、また地域の道路状況に合った適切な除雪を本当に早くされている。我々だったら三日かかった道路を二時間で除雪してしまうというようなお話を聞いて、やはりそういうものを持っているということが重要だなということと、ふだんのいろいろなセクショナリズムもあるかと思いますけれども、やはり非常事態のときに、災対法にあるような権限をしっかり首長が行使していくということ、それが大変必要だということを感じました。

 この二点は、県と連携をしてこれからも進めていきたいというふうに思っております。

 三つ目でありますが、六枚目の資料をごらんいただきたいと思います。

 雪が降りました後に私が大変危惧しておりましたのは、十四日が金曜日、十五日が土曜日、そして十六が日曜日でありましたので、土日、余り人が外出をしなかった、また大雪の中で外出ができなかったという状況でありました。ただ、十七日の月曜日になって、これはみんなが一気に、電車が動かない状況であれば、公共の乗り物が動かない状況であれば、車で出勤をする人が必ず出てくる。であるならば、除雪が進まないこの状況下において、何とか民間の外出自粛規制をするべきではないかということを、県の対策本部でもその前の日、日曜日にかなりしつこく私もお話をしました。しかしながら、民間になかなかそれを言うことはできない、難しいんじゃないかという話で、結局、外出の自粛規制は、何か系統立って出たものが実はありませんでした。

 しかしながら、この図を見ていただくと、「4渋滞状況」と書いてあるのは、これが十七日の状況であります。県内の中心部に向けて、物すごい渋滞でありました。私も県庁に行きますまで、ふだんだったら十五分で行けるところを、三時間、四時間かかってやっとたどり着いたというところで、はっきり言って、除雪車が邪魔だからどけというような状況になって、本末転倒な状況でありました。

 災害時というのは、まずは復旧をさせる、民間のというよりは生活を守るようなライフラインをまず復旧させることが重要だと思いますけれども、それにはやはり民間の人たちにも協力をしてもらわなければいけない。多少会社を休んでも、学校は三百十五校休校になりましたので、やはりそういう措置が大変必要かと思いますけれども、これについて、もっと知事の権限、執行者の権限を強めるべきかと思いますが、そのあたりについて、災対法の中に決められている以上に、例えば国からも要請を出していただくようなことができないものか、ぜひともその点について御意見を伺いたいと思います。

古屋国務大臣 まず、国民の皆様がそういう認識、自覚を持っていただくということが極めて大切ですね。そのために、やはり日ごろからそういう啓蒙活動をしていく。山梨の場合は、雪はほとんど降りませんから、その必然性がなかったのかもしれませんけれども、でも、いい機会じゃないですか。

 それで、私、十四日の金曜日に既に、内閣府でいわゆる関係省庁災害警戒会議をつくって、これは内閣府設置法四条に基づいて、私が本部長として取り組みました。マスコミにも、外出自粛、ぜひ放映してください、通知してくださいと言ったんですけれども、正直言って、十四日、ほとんどやってくれなかったですね。

 これはいろいろ理由はあると思うんですが、例えばNHKは、放送法百八条がありまして、この議論もあったと思いますけれども、災害が起きたときには国民の皆さんにしっかりと通知をしなさいという規定もあるので、やはりそういったところはぜひメディア関係者も御協力をいただきたいなというふうに思います。

 県も、ホームページだとか、あるいは実際に会見をするとか、あるいはローカル放送、こういったものを使っていくということも必要。

 それから、宮川委員が大変駆使されましたSNS、これは使えますね。誹謗中傷もありますけれども、そうではない、正しい情報もありますので、そういう合わせわざをしながら、県民の皆様に啓蒙活動をしていく、そういう取り組みをしていく。

 やはり、この教訓の中から、新しい、いい制度をお互いにつくり出していこうではありませんか。

宮川分科員 ありがとうございます。

 今申し上げた問題以外にも、いろいろな対策をしていかなければいけない、また、とにかく地域において機動的な対応ができるようなルールづくりをしなければいけないと思います。

 今回強く感じましたのは、例えば、十四日の日に、自衛隊だとか気象庁だとかいろいろなところでさまざまな積雪の予報が出ていたと思います。また、それぞれの地域で、こんな状況下であるということを認識されていたと思いますが、それが、県庁と、県にある対策本部と気象庁と自衛隊とというふうに、さまざまな機関が一斉に情報を収集して、もしかしたら早い対応ができたかもしれないというふうに思います。

 十五日の未明に大変雪が降りましたから、夜中の対応というのはなかなか難しかったかと思います。しかしながら、十四日にもう少しお互いの情報共有ができていれば、もうちょっと夜中の対策というのもできたのかなというふうに正直思いました。

 つまりは、災害が起きた場合、また、起き得ると想像がついた場合に、やはり一度、執行権者である都道府県知事のところに一括して指揮系統をまとめて、対策本部の本部長である首長が、例えば自衛隊、気象庁、民間の団体、また市町村、それぞれ、全てのところから情報収集できるように、非常事態に対応するような、しっかりとした系統づくりをしなければいけないんじゃないかなということを強く思いました。

 例えば、セクショナリズムの問題を非常に強く感じたわけですけれども、もし私がこの災害に対応しなければいけないリーダーだったとしたならば、そのルールがなくても、そんなセクションの問題は度外視して、まずは国民の生命財産を守るために活動しなければいけないというふうに思います。

 しかし、どうしても、権限が限られている、また指揮系統が別であると、対応が非常におくれている。私がいろいろな情報が欲しくて県庁に行きましても、自衛隊の情報と県の情報は出てくるのが非常にタイムラグがあったり、厳しい状況というのが現場にはありました。

 ですので、非常事態には、例えば、二日、三日、しっかりと権限の執行者に指揮系統を一元化して、そして迅速な対応をとるということが大変重要かと思いますが、そういう体制づくりについて、また、そういうルールづくりについて、ぜひとも前向きな御答弁を頂戴したいなというふうに思います。

古屋国務大臣 今委員御指摘いただきましたけれども、では現行法でそれができないかというと、そうではないんですね。

 災害対策基本法の七十条がありまして、ここで、都道府県知事は、消防とか水防とか救助の応急措置を速やかに実施するとともに、市町村の実施する応急措置が的確かつ円滑に行われるように努めなければという、まず努力義務規定があった後に、これは枝番の三項なんですけれども、国の出先機関等に対して応急措置が要請できると書いてある。

 それから、その後は、医療、土木、建築工事、要するに土建屋さんとか重機屋さん、または輸送関係者に対する応急措置への従事命令。これは命令なんです、要請じゃなくて。命令はすごく重いんです。

 それから、これは自衛隊法八十三条ですけれども、自衛隊の派遣要請ができる。

 だから、これを全部有機的に連携していけば、今の法制度の中でもできるんです。

 先ほども言ったように、内閣府設置法四条によって本部をつくることもできれば、あるいは、災害対策基本法二十四条によって本部をつくることもできるんです。私は両方やりました。最初は内閣府設置法、次は、総理の指示もあって、バージョンアップして、二十四条。

 この違いというのは、強いて言うと、例えば、ちょっとへそ曲がりというか変わった知事がいて、私は絶対自衛隊に派遣要請は出したくない、こういう知事がいましたら、私は知事に対して自衛隊を出しなさいという命令ができるようになるのが、災対法二十四条。

 だから、ルールは全部でき上がっているんですよ。このルールをしっかり正しく運用する。そのためには、知事もあるいは首長さんも遠慮することなく堂々と、そういった住民本位に立って速やかに行動するんだという決断をしていく。

 ただ、そのためにはあらかじめシミュレーションが必要なんです。だから、これからも都道府県知事会とか市町村会にもそういうシミュレーションをどんどんして、やはり知事がそういうマインドを持つ。そのマインドを持てば、必ず住民が持っていきますよ。

 例えば、去年の十月二十六日の台風のときも、警告が出ていたにもかかわらず避難勧告、避難指示を出さなかったというのは、これは出しづらいところがあるんですね。四年に一遍首長さんは選挙があるから、彼はオオカミ少年だなんと言われると困りますので、ちょっとちゅうちょする。逆に、空振りだったら幸いだったと思う、そういうような気持ちを首長さんも住民の皆さんもみんな持つということがリスク管理につながって、そして災害を減らしていくということにつながるだろう。

 ぜひ、そんな取り組みを委員におかれましても積極的にやっていただきたいと思います。

宮川分科員 ありがとうございます。

 質問の時間が限られてまいりましたので、最後に一点御質問させていただきたいと思います。

 やはり今回、災害についての情報の提供、また情報体制、発信の強化というのが大変重要かと思います。

 私も、十五日、実際に内閣府や官邸やいろいろなところに電話をしましたが、土日ということで対応ができず、警備の方と何時間も話をする。何とか誰かと連絡をとれないかという話をしましたけれども、ここで活躍したのが、実は古屋大臣に送ったSNSでのメッセージでありました。そこから直接お電話をして、いろいろな状況を、また対策をすることができたわけでありますが、今回、県のポータルサイトもとまってしまってSNSも動かせなかったということで、大変に住民の人は不安を抱いておりました。

 また、立ち往生車の中にいる人たちは、今ほとんどラジオを聞かずにカーナビのテレビを見ているパターンが多いんですが、最後の資料を見ていただきますとわかるように、地元のテレビであっても、緊急な被害また災害について回数を極端にふやして放送するということがなされませんでした。NHKにおいては、ソチ・オリンピックに完全に雪害が負けたというようなお話もありますが、やはり情報というのは、提供されるだけで不安を取り除くことができる、災害時にはとても重要なことだと思います。

 東日本大震災でもツイッターが大活躍したというのも現実問題としてありますので、今後、災害時の情報発信の強化について、内閣府また総務省、いろいろなところでどんな展開をされていくのか、御所見、また今後の方針があれば伺って、最後の質問にしたいと思います。

古屋国務大臣 一つの具体例として、千葉市が市長が先頭に立って、熊谷さんという若い市長なんですけれども、彼はSNSを災害のときに徹底活用する、それが全部住民の皆様に行くようにするということで、千葉もかなり雪が降ったんですね、まず雪が降らないところで二十センチぐらい降ったんじゃないですか、混乱はほとんどなかったというんですよ。それは、そういう先取りした情報、対応というのが功を奏したと思いますね。

 そういうことの取り組みを、全首長さん、知事会とか市町村会とかそういうところでもしっかりテーマとして議論して、そういう制度をつくり上げていくということが必要だと思います。

 一方、放送事業者の皆さんも、特にローカルの皆さんを中心に、できるだけこういう放送はしていただくということを、私、改めて内閣府あるいは防災担当大臣としてもメディア関係者には要請したいと思いますけれども、やはりこれは都道府県の知事を初め部局が、ローカル放送はいつも非常に密接な連携をとってやっていると思いますので、そういったところにもしっかり放送していただくということが必要だと思います。

 ただ、今回は十四日になかなかできなかったのは、実は十五日の午前中までヘリコプターが飛ばない、情報が入らない、だからNHKでさえも絵がつくれないんです。そういう状況があったというのは事実だと思います。

宮川分科員 ありがとうございます。

 これで質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

衛藤主査代理 これにて宮川典子君の質疑は終了いたしました。

    〔衛藤主査代理退席、船田主査代理着席〕

    ―――――――――――――

船田主査代理 次に、警察庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。上西小百合君。

上西分科員 日本維新の会の上西小百合でございます。

 本日は、不正そして犯罪防止のための取り組みについて質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 私は大阪の出身なんですが、東京に次ぐ大都市であるにもかかわらず、ビルの大きさ等では随分な差があることをしばしば痛感しておるところでございます。その中の一つが、東京では地下鉄やトンネルの中でも携帯電話が通じる、こういった通信インフラの差でございます。携帯電話やインターネット等の通信過疎地解消に御尽力くださっている関係者各位の皆様方には、本当に頭の下がる思いがいたしております。

 しかし、その一方で、コンサートホール等で公演中、携帯電話の電源の切り忘れやマナーモードへの切りかえを怠った方の着信音で座が白けたり、あるいは、おととしの京都大学の入試や、公安委員会の免許試験場での中国人のグループによってなされた組織的な集団カンニング等の事例は、何とか防がなければならない事案であると思っております。

 そこで、私は、去年五月二十一日の総務委員会で、時間やエリアを限定して携帯電話の電波をシャットアウトする、こういった携帯電話抑止装置について、さまざまに質問や提案をさせていただきました。その後、東京都公安委員会では、鮫洲、江東、府中、全ての免許試験場にて、昨秋、携帯電話抑止装置を購入、セットされました。このことに関しましては、まことに同慶の至りでございます。

 今、就労のために日本に来る外国人、とりわけASEAN諸国や中国の方がお金の次に日本で欲しいのは、運転免許証だということです。パスポートや保険証と異なり、顔写真や住所表示もあるので、在留カード以上に身分証明書にもなり、そして、それがあれば銀行口座も開設できるという理由だからだそうです。その口座を利用して本国に送金をしたり、それほどの不正をする方々でしたら、それをもとにマネーロンダリングを行う等で、本当に喉から手が出るほど運転免許証が欲しい。しかし、識字ができないので、なかなか運転免許証が取得しにくい。そのため、カンニングをしてまで運転免許証を取得したい、そういった方が後を絶たないというふうに聞いております。そうした中で、東京都公安委員会が、不正防止のため、全国に先駆けこの装置を導入されたことをまず心から歓迎いたしたいと思います。

 しかし、その一方で、東京都公安委員会の試験場ではカンニングができないので、中国人を中心とした多くの外国人が、居住地を埼玉県、神奈川県、千葉県等へ移し、そこで試験を受けている、そういった事例も多いというふうに伺っております。警察庁では、こういったちまたで言われているような傾向、うわさ、そういった情報をつかんでいらっしゃいますでしょうか。それとも、これは単なるうわさ話なんでしょうか。

 また、その傾向はまだ現段階では顕在化していない、そういった状況だとしても、考えてみれば十分に起こり得る現象でありますし、そして、東京都の試験場だけでなく、全国一律、どこの免許試験場でも同様の対策が必要ではないか、このように思いますが、警察庁の御見解をお聞かせください。

 また、東京都下の運転免許試験場に携帯電話抑止装置が設置されて以降の外国籍受験者の動向を、わかる範囲で構いませんので、教えていただけますでしょうか。よろしくお願いします。

倉田政府参考人 警察庁では、外国語学科試験の受験者数につきまして、毎年、年別の数値を取りまとめているところでございますが、昨年中の数値につきましては、現時点では取りまとめられていないところでございます。

 したがいまして、昨年の警視庁における携帯電話等抑止装置の導入後に、お尋ねのような事例があらわれているかどうかについては、現時点、把握をしておりません。

 いずれにいたしましても、不正受験の防止及び不正受験を把握した場合には、厳正に対処すべきものというふうに認識をしております。

上西分科員 そうしたら、こういったうわさは、今の段階ではそういった数字を把握していないということで、単なるうわさ話ということでよろしいんでしょうか。

 そして、もう一つ、先ほどお伺いしました、全国一律、どこの免許試験場でもこういった対策が私は必要だと思うんですけれども、そういったことに関しましてどういった御見解をお持ちか、お聞かせください。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 裏づけられた話として把握しているものではないということでございます。

 それから、他の免許試験場においても、不正防止対策については所要の措置をとっていくべきものというふうに考えております。

上西分科員 ありがとうございます。

 前向きに御検討いただけるということで、そういった回答に感謝をいたしたいと思います。

 また、まだ携帯電話抑止装置がついていない道府県では、試験中に受験者が不正目的で携帯電話が使えないように、こういった対策はどのような形でとられているんでしょうか、お聞かせください。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 各都道府県におきます携帯電話等の使用による不正受験対策といたしましては、警視庁における携帯電話等抑止装置の導入のほか、携帯電話の電源を切った上での、かばんまたは透明な袋への収納等が行われているものというふうに承知をしております。

上西分科員 わかりました。ありがとうございます。

 今後も不正が防止されるように、しっかりと取り組みを行っていただきたいと思います。

 また、このように今まで不正を働いていた者たちが、それが厳しい、できないような状況になると楽な方へ移行していく、これは極めて自然な流れだと考えております。交通ルールに影響を与えないためにも、また金銭犯罪を起こさせないためにも、また、何とかこの装置を全国に普及させ、四十七都道府県全てで試験中は携帯電話をシャットアウトした中で行われる、こういった環境づくりをしっかりとしなくてはならないというふうに思っております。

 そのような中で、東京都公安委員会の設置例を調べますと、その契約に当たりましては、同業者が複数ある中で、月額五十万円、そして五年のリース契約、すなわち三千万円もの取引が随意契約という形で締結されておりまして、これは不可解ではないかと思っております。

 随意契約になったいきさつを、同じく総務委員会、十月三十一日の私の質問でお伺いしましたところ、警視庁によりますと、携帯電話等抑止装置を運用するに当たりまして、試験室のガラス窓等を通じ、運用場所以外の場所への妨害電波の漏えいを最小限にする必要があったことから、ガラス窓などへの電磁波シールド材の張りつけと妨害電波の併用技術により相乗効果が生まれ、運用場所のみを抑止範囲として電波の漏えいを最小限にできること、こうした併用技術の特許権を有するのが今回契約した業者であったこと、地方自治法施行令において、随意契約できるのは、「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。」と規定されていること等を踏まえ、同社と随意契約したとの報告を受けておりますとの御回答をいただきました。

 しかし、このときに契約の決め手となったというふうに述べられたシールドは約数百円の市販のものですので、いかなる特許があるのか、レク等で何度か御説明をいただいておりますが、私としては理解をできないところでございます。

 契約の相手方が有する特許権がどのようなものなのか、これを同業者の皆さん、国民の皆さんがわかるように、端的に御説明をお願いします。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 警視庁によりますと、お尋ねの特許とは、ガラス窓等への電磁波シールド材の貼付と妨害電波の発射装置を組み合わせて用いる技術に関する特許であり、こうした特許権を有するのが今回契約した業者である旨の証明書を当該業者から提出を受けたとの報告を警視庁から受けたところでございます。

上西分科員 本当に、レク等でこういった説明、何度もお伺いをいたしまして、私もさまざまな予習、業者さんに問い合わせて技術等をお勉強させていただきましたが、とても今の御説明で、そういった業者の皆様、専門的な知識を持った皆様方が納得できるのか、こういったところの疑問をやはり拭えないわけでございます。

 むしろ、振り込め詐欺防止の目的でガラス張りのATM周辺でその効果を発揮している他社製品、あるいは、そもそも抑止電波を弱く調整し、シールド自体を必要としないメーカー製のものもあり、他社製品もガラス窓のある部屋でもシャットアウトは容易であり、特別にコスト高になるわけでもない中で、今現在、そして総務委員会で列挙された理由で公平な入札なく業者や機種を特定された根拠がやはり全くわかりません。

 私は、必要なエリアで限られた時間、この装置を設置し、とりわけ運転免許試験場など公的な場所には必要だと考える立場から、随意契約が今後も続き、そして入札による競争原理が働かなくなると、価格が高値で硬直化してしまい、国民の血税が無駄に使われるのではないか、こういったふうに懸念をしておりますので、改めて警察庁から御答弁をお願いしたいと思うんです。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 警視庁によりますと、携帯電話等抑止装置を運用するに当たりまして、試験室のガラス窓等を通じ、運用場所以外の場所への電波の漏えいを最小限にする必要があったことから、ガラス窓等への電磁波シールド材の貼付と妨害電波の併用技術により相乗効果が生まれ、運用場所のみを抑止範囲として電波の漏えいを最小限にできること、こうした併用技術の特許権を有するのが今回契約した業者であったこと等を踏まえまして、地方自治法施行令における随意契約が可能となる場合である「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。」に該当すると判断をし、同社と随意契約したとの報告を警視庁から受けているところでございます。

上西分科員 ありがとうございます。

 本当に、先ほどから何度も同じような御答弁をいただいておりますが、それでしたら、私が今御説明をしました他社製品のものは同じ効果を発揮していないのか。実際、同じような目的でほかの場所で使われているんですね。こういったことに鑑みますと、やはりそういった判断で特定の業者と随意契約をするというのは少しおかしいと思うんですね。ですので、今回、とりわけ以前の答弁で、この装置が競争入札に適しないもの、こういうふうに断言された趣意を教えていただきたいと思います。

 道府県警に及ぼす今回の警視庁の判断の影響はすごく大きいものだと思っております。今後、ほかの免許試験場でこの抑止装置が導入される際も、入札に不向きだ、こういった理由で今回の業者との随意契約が続いていくのか、国民の皆さんにも納得がいく説明をよろしくお願いします。

倉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたが、ガラス窓等への電磁波シールド材の貼付と妨害電波の併用技術により相乗効果が生まれ、運用場所のみを抑止範囲として電波の漏えいを最小限にできること、そして、こうした併用技術の特許権を有するのが今回契約した業者であったこと等を踏まえ、警視庁において、地方自治法施行令における随意契約が可能となる場合に該当すると判断をし、同社と随意契約をしたとの報告を警視庁から受けているところでございます。

 また、今後、警視庁以外の道府県警察が、携帯電話を使用した不正受験の防止策の一つといたしまして携帯電話等抑止装置を導入するとの判断をした場合には、その時点における最新の携帯電話等抑止装置の開発状況等を踏まえつつ、それぞれの道府県の財務規則等の規定に基づき、適切に契約方法が選択されるべきものと認識をしております。

上西分科員 ありがとうございます。

 本当に、同じ効果がほかの会社、ほかのメーカーでもあるんですから。やはり、私たち国民の血税でこういったものが設置されているわけです。ですから、物を発注するときには、普通の会社だったら普通に行われていることだと思うんですね。ですので、こういった場合は、入札という形、これをしっかりと公平に正しく行っていただけるように、今後、抑止装置を設置していただける場合は、しっかりと入札制度を利用していただくようにお願いをしたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、次に移りたいと思います。

 今申し上げました装置は、静ひつを必要とする図書館や葬儀場の中でも非常に効果が高いと言われており、当然、裁判所等も例外ではありません。先日も、交通裁判の事例でございましたが、裁判中に携帯電話の呼び出し音がして、裁判官に注意されたと言われる方がインターネットに書き込みをしていらっしゃいました。口頭弁論や判決の最中に呼び出し音が響き、円滑な審理に支障が出る、こういったシチュエーションはまれにでもあるのではないかと思います。

 しかし、それ以上に私が懸念をいたしておりますのは、裁判所は静ひつを保つのはもちろんのことでございますが、法廷内では、無罪の推定を受けている、こういった被告の方々のプライバシーを最大限守る、そして同時に被害者のプライバシーも守る、こういった使命もあろうかと思います。

 写真を撮る場合にはシャッター音が響くので周りの方もわかるかもしれませんが、音のしない動画、こういったものを撮影されたりすると、その撮影自体は携帯電話抑止装置を使っても防止することはできませんが、少なくとも、その動画をそのまま、例えば記者さんとかがリアルタイムで外部に送信して本社に送ってしまうだとか、そういったことも防げると思いますし、法廷内、被告の様子が流出しライブ中継される、こういったことは防げる、そういうふうにも考えているんですが、最高裁といたしましては、このような装置の必要性をどのように考えられているか、教えていただけますでしょうか。

垣内最高裁判所長官代理者 裁判所におきましては、携帯電話を利用して法廷内で通話をしたり、法定内の様子を撮影したりといったことは、円滑な審理の運営や関係者のプライバシーの保護、そういった観点から、一般的に禁止されております。

 また、委員御指摘のとおり、法廷内の様子を動画撮影して生中継をするというようなことが行われた場合、プライバシー保護等に加えて、警備上の観点からも大きな問題になるおそれがあるというふうに認識しております。

 これまで生中継のようなことが行われたという情報には接しておりませんので、現時点で直ちに抜本的な対策を講じる必要があるとまでは考えておりませんが、今後その必要が生じた場合には、委員御指摘の装置につきまして、対策手段の一つとして、技術的、経費的面も含めて検討してまいりたい、このように考えております。

上西分科員 御検討いただけるということで、ありがとうございます。

 今後、やはり携帯電話の機能もどんどん進化していくと思います。ですので、被害者等のプライバシーを守るためにも、本当に前向きに、しっかりと誠実に御対応いただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

 また、学校の現場、こういったところでも同様だと思っております。

 最初に述べたとおり、京都大学の受験生が、試験会場から携帯電話のメールで外部に問題を流出させ、正解を求める、こういったカンニング事件は記憶に新しいところでございますが、こうしたカンニング防止にはこの抑止装置が効果があると思っております。

 また、最近では、高校や中学では、生徒同士が、携帯アプリ、いわゆるLINEというもので集合場所等を連絡し合い、来なかったり、そしてメッセージを開封しない者をいじめの対象とする、こういった事案がしばしば報告、報道されているところでございます。

 この装置の設置はいじめやカンニングの防止にもなると思うのですが、現場の先生方からは、本来学校へ携帯電話を持ち込む生徒はいないのだから必要がない、また、家族の急病を知らせる緊急の電話までシャットアウトするのは後々問題が生じる、こういった話もしばしば伺います。

 しかし、私は、それは、現在の子供たちの身に起こっている現実を掌握されていないだけだと言わざるを得ないと思います。本当に、一般の国民の皆さん、保護者の方も同じように思われていると思いますが、今や小学生でも多くの児童が携帯電話を持ち、中高生ならば学校内で使用はできないのかもしれませんが、常に持っている、こういった生徒がほとんどであると思っております。

 そうした中で、本来、子供たちの携帯電話へではなく、学校の事務所なり教官室なりに入るべき緊急の電話が通じなくなる等というふうに懸念する、こういった声は大きな矛盾を感じるところなんですけれども、文部科学省の御所見をお聞かせいただけますでしょうか。

義本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、携帯電話をめぐる問題について、特にネット上のいじめや違法有害情報サイトを介した犯罪に巻き込まれる事態等が生じておりまして、学校、家庭、地域と連携した取り組みが重要な点については論をまたないところでございます。学校における携帯電話の取り扱いにつきましては、小中学校では持ち込みを原則禁止すべきというふうな指針に沿いまして、学校、教育委員会において指導方針を定めて、児童生徒への指導を行うよう周知しているところでございます。

 一方、防止装置の問題についての御指摘がございましたけれども、委員御指摘のとおり、学校での危機管理の体制のため、教職員が電話を保持して連絡するという場合の問題、あるいは、子供たちが携帯電話を使う時間、場所を問わず、校内とは限らないということもございまして、まずは情報モラルの教育や保護者等への啓発、あるいは、いじめの未然防止などの取り組みを総合的に推進してまいりたいと思っております。

 具体的には、ネット上のいじめの問題にかかわります情報化の進展に伴います課題に対しまして、学校における情報モラルの指導を充実するための教員向けの手引書を年度末までを目途に作成いたしまして、教育委員会等に配付して、それを指導に役立てていただく、あるいは、トラブル、犯罪防止の事例、その対処方法のアドバイス等を盛り込んだ子供向けのリーフレットの作成、PTAと連携したシンポジウムの開催などの取り組みを行っているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、まずは、子供たちにモラル、あるいは保護者への普及啓発をしっかり取り組んでいきたいと思っているところでございます。

上西分科員 ありがとうございます。

 今、手引書、シンポジウム、そしてモラル、啓発活動、しっかりとさまざまな面で取り組んでいただいているというお答えをいただきました。

 しかし、私が心配しておりますのは、今までもこういったことに随分取り組まれてきたと思うんですけれども、やはりネット上でのいじめ、こういったものは日々深刻化しているというふうに私は捉えておりますので、もう少し危機感を持って対応していただければありがたいなと思っております。よろしくお願いをいたしたいと思います。

 そして、ここで青少年犯罪に絡んで質問をさせていただきます。

 インターネットも、先ほど申し上げましたように随分普及してきました現代、例えば、人気グループのコンサートチケットにネットオークションで法外な値段をつけたり、ありもしないチケットを所持しているように装い、オークションに出品し金銭を奪う、こういった事例が多発しております。それに対して、野球場やコンサート会場周辺でのダフ屋行為は厳しく取り締まられるのに、ネットオークションはそこまで制約はない。

 双方同様に被害者が発生している現状に鑑みますと、本質的な相違、こういった対応の相違がよくわかりません。また、インターネットオークションの近時の摘発例がもしあればその例を、なければ一般論でその相違をお答えください。

辻政府参考人 お答えいたします。

 一般に、いかなる価格であればチケット等の取引価格が適正であるのかにつきましては、経済取引のあり方の問題であるというふうに承知をいたしておりまして、警察としてお答えする立場にはないものと認識をいたしております。

 委員御指摘のとおり、公共の場所等におきまして、不特定の者に転売する目的でチケット等を購入したり、転売する目的で得たチケット等を不特定の者に売却する、いわゆるダフ屋行為につきましては、迷惑防止条例において規制されているところでございます。

 これは、例えば、その中で、人につきまとうなどの行為を伴うことで公衆に著しく迷惑をかけ、公共の場所等における市民生活の平穏を害するものであることから禁止されているものであり、その価格の高低により規制を設けられているものではないというふうに承知をしているところでございます。

上西分科員 ありがとうございます。

 そうしたら、インターネットオークションの近時の摘発例というのはないということでよろしいんでしょうか。

辻政府参考人 例えば、委員おっしゃいました、ありもしないものを販売するというようなことになりますと、これは詐欺に当たってくる可能性というものはございますし、また、他の法令に当たってくる場合もあろうかと思いますけれども、インターネットオークション利用の詐欺の検挙状況ということで申しますと、平成二十四年中には二百三十五件を検挙しているところでございます。

上西分科員 ありがとうございます。

 こういった形で、二百三十五件、今お答えいただきましたけれども、本当に多くの国民の皆様方が被害をこうむっている、私はこのように思っておりますので、対策等をよろしくお願いいたしたいと思います。

 そして、今、私のもとに外国人の方が相談に来られることがあるんですけれども、彼らは日本人よりも指紋をとられるという行為自体に非常に神経質でいらっしゃいまして、ピッキング詐欺などの被害に遭っても、被害者として指紋をとられることを非常に嫌い、そのために被害を届けないという方もいらっしゃるようなんですね。

 そこで、お伺いをしたいんですけれども、前例のような被害に遭った際や、被疑者として逮捕されたのに不起訴になったり、裁判で無罪になったとき、既にとられていた方々の指紋や肖像写真などは、捜査終了後、どのように扱われるのでしょうか。御回答をよろしくお願いします。

栗生政府参考人 お答えいたします。

 警察では、犯罪現場などに遺留された指紋の中から被疑者の指紋を選別するために、被害に遭われた方々からも本人の承諾を得まして指紋を採取することがございます。これは、被害を遭わせたその犯罪を立証するために御協力をいただくというものでございます。

 このような指紋につきましては、犯罪現場に遺留された指紋との対照が終わる、すなわち、その方は被害者であるということがわかった段階で捜査の目的を達成しますので、廃棄するということになります。

 また、被疑者の指紋につきましては、捜査の記録として警察において保有をしておりまして、その中には、結果として無罪になられたり、不起訴になった方々のデータも一般には含まれているところでありますが、誤認逮捕など捜査手続に瑕疵がありましたときは、これらを抹消しているところでございます。

上西分科員 ありがとうございます。

 基本的には、捜査が終われば、そういった指紋とか写真等の証拠は廃棄をしていただいているということでは、一つ安心をいたしたところでございます。

 質問時間が残り少なくなってまいりました。最後に、一番最初の質問でも申し上げましたとおり、私ども日本国民の血税がしっかりと公平にそして有効的に利用されますように、こういった特定の業者と随意契約をするという形ではなく、公平な入札制度、こういったものをしっかりと御活用いただくようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

船田主査代理 これにて上西小百合君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

船田主査代理 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。白石徹君。

白石分科員 自由民主党の白石徹でございます。

 本日は、質問する機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。また、きょうは、私も初めて当選をしてから一年を過ぎ、これまでの一年の活動の思いを込めて、大臣にそれを受けとめていただきたくここに参りましたので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 世界の歴史では、一国のリーダーの判断の間違いによってその国が滅びた事例はたくさんあります。私たちの日本も、まさにそのような危機的状況でありました。そのぎりぎりのところで政権が戻り、そして、安倍総理の強いリーダーシップによってようやく明るい兆しが見えてきたところであります。

 船でいえば、沈没しかかっていた船が、ようやく、へさきを持ち上げて前へ向けて進み始めたところだ、そういうふうに思うわけでありますけれども、この前を向いて進もうとしている船がさらに力強く前進をしていくためには、船のこぎ手全員が心を一つにして、そして力を込めてこいでいかなければならない、そういうふうに思うわけであります。

 例えば、都市部だけとか、大企業だけとか、そういった限られた部分ではなくて、地域でも、そして中小企業の人たちも、個人であっても、まさに、全員が参画できるような、そんな全員参加型の社会こそが、これからの日本の持続可能な成長を堅持できるのだ、私はそのように思っているところでございます。

 アベノミクスの二年目、正念場の年、そして、総理みずからも、アベノミクスの地方展開の年である、そのようにおっしゃっておられました。大臣が進めておられるクール・ジャパンこそが、全員参加型の社会の大きな牽引車となり得る、私はそういうふうに確信をしているところでございます。

 そこで、きょうは、クール・ジャパンについて幾つか御質問させていただきたいと思います。

 世界の文化産業全体の市場規模は、二〇二〇年には九百兆円にも上ると言われております。この巨大市場において、日本は、二〇〇九年時点ではありますけれども、まだ二・三兆円の市場の確保しかできていない。しかも、コンテンツ産業では、韓国は順調に売り上げを伸ばしているにもかかわらず、日本は、ここ数年、売り上げは減少傾向にあります。

 今後、さらに国際競争が激しくなる中において、日本のクール・ジャパン産業の可能性はいかなるものか、大臣の基本的な御認識をお伺いさせていただきたいと思います。

稲田国務大臣 議員に当選されて一年目ということで、私も、委員のその思いをしっかりと受けとめて答弁をしたいと思います。

 私は、安倍内閣において、初代のクールジャパン戦略担当大臣ということであります。それは、今までクール・ジャパン戦略を各省それぞれ行ってきたのを、委員御指摘のとおり、みんなで一緒に、横串を刺してこのクール・ジャパン戦略というものを世界に向けて発信していこうというのが、まさしく安倍内閣におけるクール・ジャパン戦略というふうに私は認識をいたしております。

 御指摘のとおり、アニメ、ゲームなどコンテンツ産業は、クール・ジャパン戦略にとって大きく成長が期待される分野であります。しかしながら、今、コンテンツ産業の日本のシェアというのは横ばい状態でもございます。

 特に、コンテンツを発信したことによって、そのコンテンツそのものだけではなくて、そこの中にある、例えばアニメの主人公のライフスタイルであるとか、日本製品の売り上げとか、いろいろな波及効果が期待できると思います。日本の魅力の発信は、世界の日本に対する理解を含めて、世界じゅうのいろいろな方々から日本のファンをふやしていくということであると思いますので、もちろん、クール・ジャパン戦略は、成長戦略の一翼を担うとともに、文化的、外交的な効果もあると思っております。

 みんなで一緒に頑張れば夢はかなうというのが総理の常におっしゃっていることでございますので、関係府省の連携を深め、今後も幅広い日本の魅力の発信に努めてまいりたいと思っております。

白石分科員 ありがとうございます。

 大臣がおっしゃったように、各省庁のいわゆる横串を通して、なおかつ、省庁間の協力やお互いの共通認識を醸し出しながら全体で進んでいく、そんなお話を頂戴させていただきまして本当に勇気づくところでございますけれども、ただ、海外戦略においての話をお伺いします。

 大臣も、昨年九月には、私の友人が実行委員長を務めておりましたけれども、トーキョー・クレイジー・カワイイ・パリに御出席をしていただきまして、花を添えて、みずからゴスロリの姿で参加をしていただきました。二万人を超える来場者で、なおかつ、日本が主催した会としては本当に大成功に終わったというふうにお伺いしております。

 先ほども申しましたが、売り上げ減少、今、大臣のお話だと横ばいでありますけれども、外国の、例えば韓国などは、海外展開政策においてうまく伸ばしている。

 そういう中で、戦略的な弱さというのが日本にあるのではないかというふうに思われないかというふうに思うんですが、今後の大臣のお考えの海外展開についてのお話をお伺いさせていただきたいと思います。

稲田国務大臣 初代のクールジャパン戦略担当大臣としてみずからも発信していこうということで、今御指摘になったトーキョー・クレイジー・カワイイ・パリスでゴスロリのファッションをしたり、先日は、ニューヨークでクール・ジャパンの講演をしたりもいたしました。

 私は、やはりクール・ジャパンというのは、国民一人一人のムーブメントというか社会運動というか、みんなで盛り上げていくというところに意味があると思っております。それと、やはり各分野、各府省の連携を強化することによって、一体となることによって、クール・ジャパンの発信力は海外に向けても強化されていくと思います。ただ、まだまだそれが十分でないという面があると思いますので、そこはしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っています。

 昨年、クールジャパン推進会議で取りまとめたアクションプランに基づいて、例えば、クール・ジャパンとビジット・ジャパンの連携、また、食、物、サービスなどの発信イベントについて、さまざまな分野や府省が連携した日本のトータルな魅力の発信などが実施をされています。そして、何よりも総理自身が、海外に行かれて、いろいろな機会に、日本のよさとか日本のすばらしいものを発信していただいているところであります。さらに各分野、関係府省との連携を強化してまいりたい。

 今、韓国の例を出されました。私もやはり戦略というのは必要だと思うんですけれども、あえて言うのであれば、私は、やはり日本のクール・ジャパン戦略というのは、国が出張っていくのではなくて、民間のクール・ジャパンの取り組みを政府が後押ししていく、民間の活力を最大限発揮いただけるように国が後押ししていくというのが、これからの取り組むべき、目指すべき方向ではないかなというふうに思っております。

白石分科員 ありがとうございます。

 今の大臣のお話の、国民の社会運動としてうねりを上げていく、まさに私がこのクール・ジャパンの運動の中で目指す姿を今この場で大臣におっしゃっていただいて、本当にうれしく思います。

 また、これは私の個人的な話になりますけれども、先日、総理もオマーンへ行くときに愛媛の紅まどんなというミカンをお持ちいただきまして、随分評判がよかったとお伺いしてうれしく思ったわけですけれども、そういった一つ一つのつながりがだんだん大きなうねりとなっていくというところがやはり大きな日本の総合力になってくると思うんです。

 私は、やはりクール・ジャパンの目指すところというのは、日本としての総合力をいかに醸し出していくか、そういうところだと思うわけでありますし、また、クール・ジャパンは、先ほどのお話のように、アニメやゲームなどのポップカルチャーだけではなくて、歴史や伝統芸能、また古くから養ってきた文化力、物づくり力に立脚しているわけであります。そのような、現代と伝統、文化と技術の総合力が重要であって、実は、その力は全国津々浦々に秘められているわけであります。ですから、地方の文化や技能を掘り起こすというところもやはり重要なところだと思っておりますし、まさにそれが、先ほど大臣おっしゃった、国民的な社会運動となる。

 その最初の芽が出るところをどう掘り起こしていくかという施策も進めていく必要があるというふうに思うんですけれども、国として、地方のよさをどう掘り起こすかについてどのように取り組んでおられるか、お伺いさせていただきたいと思います。

稲田国務大臣 先ほども御答弁いたしまして、委員からもそのとおりだとおっしゃっていただいて心強いんですけれども、私は、やはりクール・ジャパンというのは、それぞれ私たち一人一人が、日本のよさであったり自分のふるさとのよさを発見して、それを発信していく国民運動だというふうに捉えています。

 そして、国民の関心を高める具体的な取り組みとして、クールジャパン推進会議を開催いたしました。そこで、日本を代表する七人の文化人、私はこの方々のことを七人の侍と呼んでいたんですけれども、その七人の侍に参加をいただいて、それぞれの思っているクール・ジャパンの切り口を色紙に書いていただきました。

 また、総理や私自身による日本の魅力のトップセールス、そして、先ほど委員が御指摘になった、それぞれの地方に埋もれているものを掘り起こす、また、それぞれの地方で取り組んでいるクール・ジャパンの戦略というものを横展開していくということも必要であろうと思いまして、地方版クールジャパン推進会議を開催いたしております。昨年末に第一回を京都で開催いたしました。その前も、札幌で、そういう名前はつけませんでしたけれども、クール・ジャパンの取り組みを座談会形式でやりました。そういうことによって、またそれを次々とやっていく展開なんですけれども、地方におけるそれぞれのクール・ジャパンの取り組みを横展開していきたいと思っています。

 また、ネットで国内外からクール・ジャパンに関する提案を受け付けるクールジャパン推進ホットラインというものも設置をいたしております。

 そういった仕掛けを次々と行っていて、国民一人一人が自分がクール・ジャパン大使だと思っているような社会的なムーブメントを盛り上げていきたいと思っています。さらに、こうした考えを進化させるための新たな仕掛けも現在検討中でございます。二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催が決定するなど、世界の日本への注目はますます高まっていますが、それが、単に東京だけではなくて、全ての四十七都道府県津々浦々に世界じゅうの注目が集まるように、クール・ジャパンを国民運動として盛り上げてまいりたいと思っております。

白石分科員 ありがとうございます。

 今の七人の侍の方にぜひ私もお会いさせていただきたい気がいたします。

 それとまた、クールジャパン推進ホットライン、これもクール・ジャパンらしくて、本当にいい事業を推進されておられる、そのように思います。

 漏れ聞こえておりますのは、次回のクールジャパン地方会議は私の愛媛で開催していただけるというような、大臣の御答弁の中で出てくるかなと思ったんですけれども、私の方で言ってしまいまして申しわけございません。そんなことで期待をしておるところでございます。

 そういう地域のいわゆるかけがえのないものを掘り起こしていく、そういう動きと同時に、今度は、産業界の中でいろいろな産業を横につなぎ合わせていく、もしくは、産業界の中で異業種をいわゆるマッチングしながらシナジー効果を生み出していく、そういう活動というか、そういう事業も推進していくべきだと思うわけであります。

 総合力を醸し出す、大臣がおっしゃったように、総合力とは、地域の別をなくしたいろいろな地域からの力、それともう一つは、先ほどのお話のように、産業の領域を超えた中で横軸を通しながら産業間のマッチングを進めていく、そういうことも重要ではないかというふうに思うわけでありますけれども、その産業間のマッチングについて、異業種を横断したビジネスをどのようにつくっていくか、それについてお伺いをさせていただきたいと思います。

大橋政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の製品、サービスの競争力を最大限に発揮するためには、今御指摘のありましたとおり、マッチング等を通じて業種を超えた企業者間の連携を図って、クール・ジャパンの相乗効果をしっかりと生み出していくということが重要であるというふうに考えております。

 こうした問題意識のもとで、経済産業省としましては、これまで、クール・ジャパンに関心を有する事業者同士のビジネスマッチングでありますとか、海外のニーズやライフスタイルを熟知するプロデューサーの活用、それからコンソーシアムによる海外でのテストマーケティング、こういったことを支援する中で、異業種連携を通じた海外販路の開拓などを後押ししてまいりました。

 こうした取り組みを通じ、例えば、山口県の日本酒の酒蔵が、パリのシャンゼリゼ通りにおいて、日本食レストランと日本各地より集めた食器や包丁といった食関連雑貨を販売する店舗をオープンさせる予定であることや、自動車メーカーが日本のアニメーションを用いてASEAN諸国において自動車の販売プロモーションを行った結果、同メーカーのブランドイメージの向上につながったといったような具体的な成果が上がってきております。

 我が国には、自動車や家電など高い技術力に裏づけされた製品のみならず、生活の文化の中で育まれたコンテンツ、ファッション、あるいは日本食、アミューズメント、観光サービス、海外において高い関心を呼ぶ製品、サービスが多数存在しており、また、日本の各地域には、少し磨けば世界に通用する可能性のある商品、サービスがまだまだ数多く眠っているというふうに認識をしております。

 今後も、今御指摘をいただきましたように、異業種間の連携を一層促進することで、クール・ジャパンの相乗効果というものをしっかりと後押ししてまいりたいというふうに考えております。

白石分科員 ありがとうございます。

 今のお話にあった日本酒のパリの店ですか、そこには、日本酒で始まって、日本食のレストラン、さらには陶器や、全国のいわゆる陶芸、本当に、日本の伝統工芸が醸し出す、そんな商品が集まってきて、そこで日本を味わうことができる。まさにこれこそが総合力を醸し出している姿だと私も思います。今のお話のとおり、業種間を超えたそのようなマッチングというものが大きな効果を生み出していくと考えている、そのとおりだと思います。

 また、先ほど申しましたように、いわゆる地域を超えた総合力、それと業種を超えた総合力、それとプラス、私が思うのは、いわゆる世代を超えた総合力といいましょうか、そういう総合力の観点でいえば、若者からお年寄りまで、全員参加が重要だというふうに思うわけであります。

 先日のソチのオリンピックでも、頑張る若者の姿というものは私たちに感動を与えてくれました。そして、日本人の皆さんに心の連鎖が生まれたのではないかというふうに思うわけであります。

 私の地元でも、商業高校の生徒が芋を取り扱って、芋を使って餅をプロデュースしました。その餅が今大評判になっているわけであります。こうした若者のチャレンジを企業などが応援したり、高校生が会社を起こしたりする、そんな環境もおもしろいと思うわけでありますけれども、これまで経済活動に参画していない人材を生かせる環境を整えていく。

 また、徳島の上勝町という町なんですけれども、そこは、高齢者による葉っぱビジネスがすばらしい成功をおさめています。「いろどり」という会社ですけれども、経済効果は当然でありますけれども、お年寄りが元気になって、地域の活性化に大いに貢献するとともに、医療や介護費の抑制にもつながっているわけであります。

 このような、今まで生かし切れていない人材の活躍というものは、経済効果とともに二倍、三倍の効果を発揮する。日本の総合力をさらに高めていくためには、こうしたことを応援していくことが重要なことだと思うわけでありますけれども、今の、そういう世代を超えた、生かし切れていない人材を生かす、そのような政府としての取り組み、考え方をぜひお聞かせ願いたいと思います。

西山政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、先生から総合力というお言葉がございましたけれども、まさに御指摘のとおり、若者それから高齢者の方も含めて、多様な人材が活躍をされるということが我が国の経済活性化のために大変重要であるというふうに認識をしております。

 こうした観点から、昨年取りまとめられました日本再興戦略におきましても、これは先生が総合力とおっしゃったことと同じ意味だと思いますけれども、「全ての人材が能力を高め、その能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」を構築する。」ことを目指すということがうたわれているところでございます。

 具体的な施策としましては、例えば、私ども経済産業省では、今先生が挙げられたような若者を含めまして、高齢者の方も含めまして、そういう方々が起業、業を起こすような場合について積極的に日本政策金融公庫の低利融資を使って応援するという制度を運用しております。

 さらに、徳島県の「いろどり」の例を出されました、非常に有名な例でございますけれども、そういうことも踏まえまして、これは高齢者の方に限りませんけれども、高齢者、女性、さらに障害をお持ちの方を含む、まさに多様な人材が活躍をして成果を上げているような先進的な企業の事例をベストプラクティスとして紹介するという事業を、ダイバーシティ経営企業百選と呼んでおりますけれども、やっております。

 例えば、その中では、長野県の例でございますけれども、特に高齢者の方を活用する事例として、まさに六十歳で新たに採用して定年なしといったような取り組みをされているような企業も取り上げさせていただいております。

 こうしたことも踏まえまして、今後とも、まさに若者あるいは高齢者も含めました多様な人材の活躍推進に向けまして、さまざまな施策で努力を続けてまいりたいと存じます。

 以上でございます。

白石分科員 ありがとうございます。

 まさに世代を超えた、そして生かし切れていない人材を生かしていく、そしてそれによって日本の総合力をさらにさらに上げていく、これは重要なことだと思いますし、全国にそういう事例はたくさんあると思います。そういう事例を、多くの人に触れていただきながら、そして、それを進めている人たちもそのことで勇気づくし、それに触れる人にとっても、我々もできる、そんな思いを持ってもらえる、そんな事業もぜひともこれからも続けていっていただきたいというふうに思います。

 先ほど、大臣の御答弁が私のきょう求めていた答えの全てでございまして、いわゆる国民運動、これが私はやはり重要だというふうに思って、それを最後に大臣のお言葉として頂戴をさせていただきたかった、そんな思いできょうは立ったわけであります。

 大臣が先ほどおっしゃっておられましたように、二〇二〇年の東京オリンピックも、東京じゃないか、一部ではそんな声もあります。でも、大臣おっしゃったように、東京オリンピックも、全国の、日本の東京オリンピックとして、国民みんながそれを応援し、また国民みんながそれによって自分たちができることを進めていく、そんな日本であってほしいと思っておりますし、一方、国土の強靱化についても、これは国土の強靱化だから国交省が進めるべきだ、それだけではなくて、やはり全国民的な運動を、うねりを起こしていかなければならないと私は思っているわけであります。

 そういう意味では、大臣の先ほどのお言葉は本当に胸にしみる言葉でありましたし、また、これからのクール・ジャパンの事業によって日本に大きな大きなうねりが起こっていき、そして、先ほどの大臣のお話のように、一人一人が輝いて、地域が輝いて、さらには企業も輝いて、日本の総合力としてのすばらしい高まりを見られる、そんな事業を展開していただきたいというふうに思います。

 最後に大臣、もう一度そのあたりの大臣のお心をお聞かせいただきたいと思います。お願いします。

稲田国務大臣 今お話を聞いて、全く委員と気持ちは一つだなと思いました。

 私は、クール・ジャパンのクールというのは、もちろん、私たち日本人が日本のよさを再発見する、そういった試みであると同時に、それは押しつけではなくて、実は、外国から見て日本が何がクールなのかというのは、私たちの思いとまた違っているときもありますよね。そういうのを、外国の人から見て何が日本がクールかということも発見していく、そういった試みでもあり、それを一人一人が、また企業も、そして地方も、それぞれがそれぞれの立場で盛り上げていく国民的な、社会的なムーブメントだというふうに思っておりまして、これを盛り上げることによって、日本の今まで何となく内向きだった気持ちをもう一度前向きにしていきたい。

 そして、二〇二〇年のオリンピックというのがまさしくこのクール・ジャパンという矢を飛ばす風になってやってきているわけですから、東京だけではなくて四十七都道府県、日本全部、オール・ジャパンでムーブメントを盛り上げていきたい、私もその牽引役というか発信をしていきたいというふうに思っております。

白石分科員 大臣、どうもありがとうございました。

 本当に、きょうは私の思いをぶつけるつもりで参ったわけですけれども、逆に大臣のクール・ジャパンに対する熱いお気持ちをお聞かせいただきまして、これから我々もチーム・ジャパンの一員として頑張っていきたい、そんな思いを強く持たせていただくことができました。

 きょうは、本当にありがとうございました。

船田主査代理 これにて白石徹君の質疑は終了いたしました。

    〔船田主査代理退席、岩屋主査代理着席〕

    ―――――――――――――

岩屋主査代理 次に、内閣府所管について審査を進めます。

 内閣府本府について質疑の申し出がありますので、これを許します。古屋範子君。

古屋(範)分科員 こんにちは。公明党の古屋範子でございます。

 きょうは、質問の順番を少し変えさせていただきまして、行政改革推進会議の秋のレビュー、基地問題について、先に後藤田副大臣に質問させていただきたいと思っております。

 昨年十一月に出されました秋のレビューなんですが、この中で、特定防衛施設周辺整備交付金というものがございます。交付対象の厳格化、あるいは予算削減等の指摘がございました。

 私の地元は横須賀でございます。基地関係の市町村は、やはり、我が国の安全保障を担っている、そういう気持ちで、基地の安全使用のために、常に周辺住民等の理解また協力を得ようということで、市長も、また議会も、当然住民の皆さんも努力をし、協力をしてきているわけでございます。その上に我が国の安全保障があると言っても過言ではございません。

 神奈川県内の米軍基地なんですが、十四カ所、約二千八十四ヘクタールが存在していまして、その多くが密集地にございます。私の横須賀の地元も、米軍基地は一等地でございます。広大な面積を有しておりまして、もちろん、中には、野球場とかゴルフ場とか。それで、原子力空母が寄港をいたします。空母をごらんになったことがあるかどうかわかりませんけれども、船というよりは、ビルが海に建っているというような巨大な空母でございます。

 基地は、住民にとって、さまざまな意味で不安、また生活環境、都市整備等、障害となっていることは言うまでもございません。この土地が使えたら何ができるだろう。住宅なのか、あるいは産業なのか、商業地域なのか。あらゆることが想定をできるわけでございます。

 横須賀においても、二〇〇八年、原子力空母ジョージ・ワシントンが寄港いたしまして、このときもさまざまなことがありました。私たち公明党も、市議会で多くの議員がおります。ここで対立を起こしてはならない、住民投票のようなことも国の防衛に関してそれはなじまない、何とか住民に御理解をしてもらおうと非常に私たちも努力をして迎えました。決して、喜んで迎えたわけではございません。

 それが、ジョージ・ワシントンから今後はロナルド・レーガンに引き継がれていくということでございまして、やはりアジアの地域の防衛力、そういうプレゼンスをさらに高めていこうというアメリカの方針もあるかというふうに思っております。

 その中で、基地に頼る、そこに私たちも主眼があるわけではありません。何とか、歴史の上で旧海軍があり、米軍基地があり、自衛隊があり、それでもそこに頼るのではなく、例えばYRP、横須賀リサーチパーク、ICTの研究開発の拠点をつくり、新たな活路を求めていこう、そういう努力もしているわけでございます。

 本来であれば、我が国安全保障に係る負担に相応した、十分な代替措置や助成等の措置が講じられるべきであるというふうに思います。現状では、基地負担に対する国の財政的措置は十分とは言えない状況でございます。直接的な財政支援というものがどうしても必要です。基地交付金、調整交付金制度とともに、特定防衛施設周辺整備交付金の充実も重要であると考えております。

 また、交付対象となる施設、事業を限定せずに、そこの米軍基地の入り口だけに何かがあるわけではない、市全体にさまざまな、陰に陽にその影響というものはあります。どこに住もうか、横浜か横須賀か。そう思ったら、基地のない市に住みましょう、そう思う方が多いんですね。ですので、この使い道も、さまざまなものに使えるように、市民のために使えるようにしていただきたい。

 この特定防衛施設周辺整備交付金、基地の設置、運用により生じている障害、不利益を軽減するために特別な施策として、まちづくりや生活環境のための改善に必要な財源。

 この秋のレビューでまとまりました、交付対象の厳格化、それから予算削減などの指摘もございます。確かに、PDCAサイクルは重要かと思います。それはやっていかなければいけません。しかし、数字にあらわれない、スーパー防犯灯を駅の前につくりました、ではそれで犯罪が減ったかといえば、米兵による殺人事件があるんですね。ですので、こうした行革も大事ですけれども、地元住民の理解を得るために、ぜひとも地元の意見を十分に聞いていただきたい、このことをお願い申し上げたいと思います。

 副大臣の御見解をお聞かせください。

後藤田副大臣 古屋先生のまさに御関心の自衛隊並びに米軍施設の周辺事業につきまして、やはり交付金、特に特定防衛施設というのは、著しい影響を及ぼしている、こういうものが形容詞としてつきますから、その点については、日本の国民、国家の安全のために重要な施設でございまして、そこにお住まいになる方々に対する生活の安定、福祉の向上、これはしっかりとやらなければいけないというのは私もまさに共有しております。私のところは自衛隊でございますが、私の地元にもございますし、周辺事業につきましてのいろいろな御要望も伺っておりますので、先生と認識は一致しております。

 我々、内閣官房の行政改革の立場としまして、やはり国民の皆様に、今度は、費用対効果という意味でしっかりと効果的、効率的に使われているか、これは今までチェックをさせていただいてまいりまして、委員先ほど御指摘の、昨年の十一月に実施されました秋のレビューにつきまして、PDCAサイクルの徹底のための事業の有効性、実効性の観点から議論が行われました。

 先ほど、削減というお話があったんですけれども、削減ということは申しておりませんで、いかに費用対効果が実施されているか、しかも、これを地元自治体の皆様と、そして地域の防衛局、そして本省である防衛省がしっかりそれをチェックしていただきたい、こういう見解を述べさせていただいたところでございます。

 そういう意味では、今まで、事業評価書というのがあるのでございますけれども、おおむねというか全てポジティブな評価を防衛省さんがされているわけでございますが、我々、またその委員会の皆様方の意見を申し上げますと、例えば、公民館とか建てたのはいいけれども、なかなか利用率が少ないものを建ててしまったとか、予防接種の基金を使ったけれども、利用は余りなされていなかったりとか、あと医療費補助の基金、これもいいことだと思うんですけれども、利用が少なかったりとか、一般財源でやるべきことを、いわゆる更新ということであっても別に問題はないとは思うんですけれども、しかし、もっと違うものに効率的、効果的に使うべきではなかろうか、こういう指摘をさせていただいたところでございます。

 我々といたしましては、引き続き、今まで以上にさらに、防衛省さんとしてPDCAサイクルの徹底に向けた検討が行われていると聞いておりますが、これを我々も適切に今後もフォローアップしてまいりたい、こういう考え方でございます。

古屋(範)分科員 ありがとうございました。

 二十六年度は昨年並みの予算を確保させていただいておりますので、その先、削減がないようにというふうに思っております。副大臣がおっしゃるように、しっかり有効にこれが充当されるように、私たちも、市長、また地元の方々とともに知恵を絞り、今後取り組んでまいります。ありがとうございました。どうぞ御退席くださって結構でございます。

 それでは、国家戦略特区について、副大臣にお伺いをしてまいりたいと思います。

 日本経済を牽引するビジネス拠点をつくる国家戦略特区、日本経済の風景を変える大胆な規制緩和あるいは制度改革を実行していく、その突破口といたしまして、居住環境を含めて、世界と戦える国際都市の形成、医療等の国際的イノベーション拠点整備といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じて、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するということを目指しております。この基本方針も閣議決定をされたところでございます。

 総理も、国家戦略特区は成長戦略のかなめとなる規制改革の突破口だ、まずは三月に具体的地域を決定することを目指すというふうにおっしゃっています。

 この基本方針の意義、目的、また特区の指定の進め方について、まずお伺いをしたいと思います。

関口副大臣 今先生の方から、国家戦略特区においての意義、目的、また区域指定に関するスケジュールという御質問をいただきました。

 その前に、私は、総務副大臣ということで、先ほど御質問がありました基地交付金、さらに調整交付金の担当もしておりまして、総務省としても、三百四十五億、二十五年度がプラス十億ということでございまして、減ることなく、しっかり取り組んでおります。基地の周辺の自治体、基地を抱える自治体の皆さん方が財政的負担を負わないように、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 まず、重複する場面も多いかと思いますが、国家戦略特区においては、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制さらには制度改革を実行するための突破口として、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、さらに、先ほど先生からもお話がございましたとおり、医療等の国際的イノベーション拠点の整備といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じて、世界で一番ビジネスがしやすい環境をつくろうということであります。

 昨年の八月に募集を行いまして、全国で二百ぐらいの提案があったわけであります。そうした流れの中で、先ほどお話がございましたように、基本方針は閣議決定を二月二十五日にさせていただきました。そして、区域指定にまでいくスケジュールでございますが、今、諮問会議を行っておりまして、そして三月下旬までに具体的な地域を決定することを目指して、さらに引き続き国家戦略特区諮問会議において検討を進めているところでございます。

古屋(範)分科員 ありがとうございました。三月下旬までにというスケジュールでございます。

 神奈川におきましては、京浜臨海部が既に国際戦略総合特区に指定をされまして二年が経過をいたしました。

 この間、川崎では、羽田空港に隣接をしております殿町国際戦略拠点、キングスカイフロントといいまして、世界有数のグローバル企業、公的研究機関の立地誘導などにもよりまして、ライフサイエンス分野における革新的なイノベーション、これを生み出す拠点形成に向けた努力を既に開始しております。

 国内外の臨床研究機関、またグローバル企業とも連携をいたしまして、日本が世界をリードするナノテクノロジーなど最先端医療技術の活用による、長期保存可能なワクチンあるいは難治性の抗がん剤などを開発する環境づくりを進めてきております。

 また、横浜では、iPS細胞に関する画期的な研究成果を発表いたしました先端医科学研究センターあるいは理化学研究所、こうしたものがありまして、この強みを生かして、予防・健康医療、診断、再生医療、情報基盤構築、創薬、創薬・機器開発支援、医療機器開発の七つの分野で十八のプロジェクトを推進して、iPS細胞を活用した臓器再生などの成果が生まれております。

 この京浜臨海部というのは、羽田からすぐでございます。こうした地の利も生かして、非常によい立地条件でございます。

 この川崎殿町地区には、国立医薬品食品衛生研究所の移転も決まっておりまして、基礎研究から応用、さらに産業化、こうした非常に既にいい条件がそろっております。

 このように、最先端の医療の実用化に不可欠な機能が既に二年間しっかりと集積をされてきている、この京浜臨海部のライフイノベーション国際戦略特区の評価について、まず副大臣にお伺いをしたいと思います。

関口副大臣 まず、総合特区についての評価でございますが、おのおの地域ごとに設定した数値目標、生産高、雇用者数、また観光入り込み客数などの達成状況や、さらに、規制の特例措置、税制、財政、金融上の支援措置の活用状況等について、各自治体みずから評価を行うとともに、国において、有識者から成る評価・調査検討委員会において検討、評価を行っているところでございます。

 また、この評価は、指定して一年経過した後、毎年度行うこととしておりまして、二十四年度の各地域の評価結果を昨年十一月八日に公表したところでございます。

 御案内の京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区の方の有識者による評価においては、研究開発部門では、取り組み自体は積極的に行われていると一定の評価をいただいております。その支援施策も充実しているということであります。ただ一方で、データベース部門などで、成果の指標が低くなっている箇所があるということであります。例えば、健診、疾病情報等の大規模なデータベースの構築がちょっとという話とか、あと、研究費ですか、研究開発費が十九億を想定していたところが進捗度がちょっと少ないというようなことであります。ただ、総合評価としてはBということで、十分にすぐれているということになったところであります。

 こうした評価結果を受けて、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区をも含めて、総合特区各地域において、より一層効果的に取り組みが推進されるように対応してまいりたいと思っておるところでございます。

 国家戦略特区といろいろ言葉が似たような言葉になっちゃってあれですが、今そちらの方にも出しているということでございます。

古屋(範)分科員 Bということで、適正な評価をいただき、感謝をいたしております。

 川崎は、かつては公害の町とかいうイメージがございましたけれども、今はそうではなくて、音楽の町、ベルリン・フィルなども参ります。また、川崎フロンターレがあり、スポーツの町、非常に大きなショッピングモールもあり、都内からも多くの方がいらっしゃる、そういう町に今変わってきております。これからも、さらにこの効果をしっかり上げるべく努力をしてまいりたいというふうに思っております。

 そこで、我が国として、ライフイノベーション、これは非常に重要な分野だと思っております。この重要性についてお伺いしてまいりたいと思います。

 私も、今までも、病気になる手前で発症を防ぐ予防医療、あるいはテーラーメード医療、がんの免疫治療、このようなものにもかかわってまいりました。日本では、御存じのようにiPS細胞、あるいはSTAP細胞というものも最近成功いたしましたけれども、こうした先端分野の基礎研究では国際競争力が極めて高い。しかし、さまざまな規制から、実用化に関してはやはりおくれをとっております。病床規制の特例は、世界に先駆けたライフイノベーションを実現するために推進すべき改革かなというふうに思っております。

 アジア地域では今後、急速な高齢化が見込まれておりまして、ライフイノベーションの推進は国際社会の要請でもあると思っております。国際貢献という観点からも、予防、個別化医療を一体化して提供できる仕組み、これはやはり皆が求めるものであります。

 こうした国際貢献できる医療戦略、ライフイノベーションの推進の重要性について、副大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

関口副大臣 古屋委員が御指摘のとおり、健康医療などの社会的な課題について、今、日本再興戦略においても、今後確実に巨大なグローバル市場を形成するとされているところでございまして、成長分野としてライフイノベーション分野が大変重要であると考えているところでございます。

 特に、医療等の国際的イノベーションの拠点整備といった観点から、今後その具体化を図るとともに、既に指定された総合特区についても、その推進に努めてまいりたいと思います。

 今、予防の話も出たんですが、私も歯科医師ということで医療に携わる一人でございますが、やはりこの医療のところに、しかも、予防の観点から、今医療費のいろいろな話も出てきておりますけれども、医療費の抑制という観点というのは、まず予防のところの政策に力を入れて、健康増進も含めて、それが第一だなと私はいつもライフワークで考えておりますが、ちょっと話がそれて申しわけなかったんですが、一生懸命取り組んでまいりたいと思います。

古屋(範)分科員 ありがとうございます。ぜひとも、欧米あるいはお隣韓国などにおくれをとることのないよう、迅速で安全なこうしたライフイノベーションの推進をお願いしたいというふうに思っております。

 この川崎また横浜両市というものは、安倍政権が成長戦略の柱に位置づける国家戦略特区に対しまして、健康・未病産業と最先端の医療関連産業の創出を目指すプランを共同提案いたしております。

 このプランは、京浜臨海部に集積をする最先端の医療技術と、病気が発症しない未病を健康に戻す取り組みを融合させていく、既に進めているこの京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区、それからもう一つ、さがみロボット産業特区というのをベースに、健康・未病産業、最先端医療関連産業、基盤構築の三つに分けて、合計十八本のプロジェクトを打ち出しているということでございます。

 この提案の目標としては、まず、規制緩和を通じて健康、医療市場のビジネス環境を整備して、革新的な新規ビジネスモデルを確立していくというものを掲げております。健康で質の高い生活を提供するとともに、企業主導で健康・未病関連の新市場、新産業を創出して、国内需要の喚起、成功モデルの海外展開など、経済成長を牽引する。

 もう一つは、最先端の医療関連産業も大きな産業的ポテンシャルを持っている。日本が世界の研究開発をリードするナノテクノロジー、バイオテクノロジーは、物づくり企業と非常に親和性が高い、我が国の製造業の勝ちパターンとなっている高品質、大量生産を可能にする技術でございます。もともと京浜工業地帯を中心に多数立地する製造業が、こうした研究開発拠点と近接した場所で、ナノ、バイオの分野、こうしたところと融合して、世界に先駆けてさまざまなものを実現させていく。製造業との関連でございます。

 具体的には、がん、生活習慣病の早期発見技術の確立による予防医療の実現、健康、医療情報のビッグデータを活用した各自に適した個別化医療の実現、iPS細胞を活用した再生医療の実現などを盛り込んでいるところでございます。

 産業創出につなげるために、再生・細胞医療の薬事承認制度の規制緩和、外国人医師・看護師の国内従事緩和、臨床試験の円滑化を図る専用病床制度の創設などを求めております。

 いずれも、超高齢社会を見据えて課題解決を図るという非常に画期的なプロジェクトであると自負をいたしております。

 国家戦略特区の提案に当たって、医療情報データを活用した予防、個別化医療、再生医療、ナノテクノロジーを活用したがん治療薬の開発といったプロジェクトに一層の弾みをつけるため、規制・制度改革の必要も提言をしております。

 この神奈川、横浜、また川崎、京浜臨海部を健康・医療分野の一大拠点にしていくためにライフイノベーション国際戦略総合特区を着実に進めてきたものと評価をいただいて、新たな国家戦略特区にぜひとも指定をいただきたいと思っております。

 これが今回の質問の主眼でございます。副大臣の御見解を伺いたいと思います。

関口副大臣 限られた時間でございますので、そうしますと言いたいんですが、まだ三月にこれから決定ということでございます。

 とにかく、神奈川県、横浜市、川崎から共同で、健康、医療市場のビジネス環境を整備することなどを内容とした提案をいただいております。これから国家戦略特区諮問会議の意見等も踏まえて、プロジェクトの経済的社会的効果や先進性、革新性など、基本方針に掲げた具体的な基準に基づいて検討を進めてまいりますが、先生の熱意が通じるように頑張ってまいりたいと思います。

古屋(範)分科員 大変御丁寧な答弁をありがとうございました。今後とも、応援よろしくお願い申し上げます。

 最後に、副大臣の御決意を伺って終わりにしたいと思っておりますが、これから私が注目しておりますのは、世界トップクラスの国際医療拠点を目指す特区の設置によって、日本の医療のグローバル化というものが進んでいくことでございます。

 例えば、保険外併用療養については、いろいろな声が確かに上がっております。これを特区でどのような仕組みで構築していくのか、世界標準の薬や医療機器がいかに早く使えるようになるのか、しかし患者負担がどうなるか、いろいろな問題がございます。

 安全というものが確かに最優先だと思っております。今後の医療のあり方にも影響を与えるかと思っております。過去に何度もはね返された岩盤規制の改革、これが日本経済の成長になるということが期待をされております。

 この特区制度の成功に向けた副大臣の御決意、最後にお伺いいたします。

関口副大臣 アベノミクスの三本の矢、成長戦略、それにとって国家戦略特区というのは非常に大きな期待をされているところでございます。とにかくスピーディーに決めてすぐに実行に移すということ、それが日本の経済の再興につながると思っております。全力で取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

古屋(範)分科員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

岩屋主査代理 これにて古屋範子君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

岩屋主査代理 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。佐藤英道君。

佐藤(英)分科員 北海道選出、公明党の佐藤英道でございます。

 去る二月七日、北方領土返還運動全国大会に出席をいたしました。北方領土返還運動は、ことし六十九年目となりましたが、来年、年度でいうと再来年度、七十年。残念なことに七十年も続けなければならなかったということになりますが、一つの節目を迎えることになったわけであります。

 当然、元島民の方々も七十年分のお年を召されました。半数の方が亡くなられ、平均七十九歳、御高齢の問題は、すなわち後継者の問題ともなります。同時に、返還まで返還の運動を継続していく、また、返還後は北方領土問題という残念な歴史があった、その問題を解決するためにこれほど長きにわたって御努力をされた方々がいらっしゃったのだという歴史も後世にしっかりと伝えていかなければならないと思っております。

 総理は、任期中の解決をと、先日、力強く御発言をされました。元島民の皆様方も、何とか一日も早く故郷に帰りたいという思いできょうも過ごされております。

 そのような中で、先日、千島歯舞諸島居住者連盟の方々と意見交換をさせていただきました。これまで何度も御意見を伺い、御要望も伺ってまいりましたが、今回強く御要望いただいたのは、一つは、大臣もよく御存じと思いますが、低利融資の承継権者の問題、緩和措置についてでありました。

 それと同時に、今回は、長年頑張ってこられた方々に感謝の気持ちを伝えるようなことが何かできないか、また、返還運動七十年という重要な節目に当たって、ここまで頑張り続けたそのあかしを何か形として刻めないかということでもありました。

 私は、モニュメントの作成や、元島民の方々の銘板、これを例えば島ごとにつくって、元島民の方々のお名前を彫り、晴れて北方領土返還の日には、お亡くなりになった方々も、お元気で返還を実現された方々も、そろって皆で島へ帰ろうという石碑やモニュメントなども移設できるようにされてはどうかと御提案を申し上げました。

 それはいいと大変に喜んでいただいたわけでありますが、いずれにしても、そうした事業を行うには相当のお金もかかるわけでございます。連盟の皆様方もそこを一番心配しておりましたので、よく皆さんの御意見に耳を傾けていただき、十分な七十年事業ができますよう、切にお願いをしたいと思います。

 ぜひ御所見をいただければと思います。

山本(茂)政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、四島を追われた元島民やその後継者が長きにわたって返還要求運動に御努力されていることに敬意と感謝を示すとともに、その活動への支援は返還要求運動にとって非常に重要だというふうに考えております。

 これまでも、千島連盟とは密に連携を図りながら、その活動を支援してきたところでございます。千島連盟さんとは日ごろから連絡を密にとっておりますので、戦後七十年という重要な節目に当たりまして、それにふさわしい何らかの事業を検討できるかどうかというふうなことを今検討されていることは承知しております。引き続き、千島連盟ともよく相談しながら進めたいと思います。

佐藤(英)分科員 ありがとうございました。ぜひ御検討のほど、よろしくお願いいたします。

 次に、東日本大震災と子供の心のケアについてお伺いしてまいります。

 来月十一日が来ると、東日本大震災の発災から丸三年となります。災害公営住宅は七割が着工している、高台移転は一〇〇%合意ができた、宮城、岩手の災害廃棄物の処理が完了した、南三陸鉄道が全線運転再開する、復興まちづくり計画がほぼ出そろった、そうした御報告を伺うとともに、私自身、宮城県名取市の被災地の出身ですので、足を運ぶたびに、ゆっくりとではありますが、被災地の復興が進んでいるという感も受けます。

 しかし一方で、震災前の水準まで回復したという企業は、被災地では四割に満たない。漁協の回復も三割強であります。いまだ約十万の方々が応急仮設住宅にお住まいですし、何といっても福島の方々は、十四万人の方々が避難生活を余儀なくされております。復興はまだまだ道半ばという、これが現実だとしっかり受けとめなければ、そして少しでも自分のできることに取り組んでいかなければとも強く感じているところであります。

 これからが復興加速化に向けてますます国が力を出していかなければならない局面だと、どこまでも被災地に寄り添っていくという姿勢を我々は絶対に忘れてはならないと思います。

 そうした中で、大変に心痛む報道を目にすることがございます。震災に遭遇した幼児の心の傷が大変に重く、引きこもりや暴力的な行動など、心の問題で治療を必要とする子供の割合が、被災地以外の子供たちに比べて明らかに多いという結果が出ていることであります。

 震災というショッキングな出来事を受けとめ切れず、さらにその後の避難生活による極度のストレスや喪失感が、子供たちの心に容易には癒やすことのできない深い傷を残しているのではないかと思います。

 こうした心のケアについては、これまでもスクールカウンセラーやケースワーカーなど、さまざまな対応をとってこられたということは承知をしておりますが、その上で、さらに実態として浮かび上がる深刻な状況について、政府としてどのように受けとめていらっしゃるのか。また、子供の心のケアについて、今後一層の取り組みの強化が必要だと思いますが、どのような対応をしていかれる所存なのか。御見解を伺いたいと思います。

谷副大臣 委員のふるさとである宮城県名取を初め、被災地の復興の加速化に向けて、今後ともしっかり頑張ってまいりたいと思います。

 御質問のございました被災地の子供に対する支援でございますけれども、阪神・淡路大震災の教訓などから、従前より、安心こども基金を活用した子供の心のケアであるとか、遊び場の確保、そして、学校などへのスクールカウンセラーの派遣、こういったことに、震災後、取り組んできたところであります。

 一方で、そうはいいながら、今までにないほど、避難の長期化、そうしたことが見込まれる中で、委員御指摘のように、心のケアに関する懸念ということが強まっていることから、根本大臣のもとにタスクフォースを、昨年の秋、立ち上げまして、現場から寄せられた現状と具体的な課題を総合的に把握したところであります。そして、子供に対する支援の強化を主要論点の一つとして検討を行い、それらを含めました被災者に対する健康・生活支援に関する施策パッケージを昨年の末に取りまとめたところであります。

 それを踏まえまして、平成二十六年度予算におきましては、新たに、一つは、仮設住宅の空き部屋を活用した遊び場、学習スペースの確保など、子供たちが安心して過ごすことができる環境づくり事業、もう一つは、子育て世帯に対して心身の健康に関する相談、支援を行う新たな訪問事業、これらに取り組むことといたしました。

 一方で、教育サイドからのアプローチといたしまして、引き続き、学校などへのスクールカウンセラーの派遣や、子供の学習支援や、地域住民の学習、交流活動の促進などの施策もしっかりと推し進めることとしております。

 復興庁といたしましても、被災地の子供に適切な支援が行われるよう施策を着実に推進するとともに、現状や課題を十分踏まえて、関係府省が一体となって、政府全体として取り組んでまいりたいと考えております。

佐藤(英)分科員 力強いお言葉、ありがとうございます。何とぞよろしくお願いいたします。

 次に、大規模災害に対する防災力の強化策について順次お伺いしてまいりたいと思います。

 初めに、バックアップ機能についてです。

 さて、二十六年度予算でも、防災・減災ニューディールの考え方に立った、老朽化インフラの長寿命化を含めた、国土全体の強靱化に取り組む色合いがはっきりと出ております。

 そこで、私は、こうしたハードの取り組みに加えて不可欠なソフトの取り組みについて、特に今後懸念される首都直下地震、東海、東南海、南海の三連動地震について、政府の事業継続のための準備がどこまで進んでいるかについてお伺いしたいと思います。

 一昨年来、さまざまな防災、減災対策の見直しが行われ、発災時緊急支援の司令塔である官邸機能や中央官庁の業務がしっかりと継続できるような対応がどこまでできているのか。いわゆるBCPの問題でありますが、伺うところによりますと、官邸がどこに行くかということは決まっているそうでありますが、各府省庁は、それぞれに任せられているものの、まだまだ不明確な点もあるようであります。

 また、司令塔が号令をかけても、国内の三分の一ほどの都府県が被害を受けるような三連動地震が発生すれば、救急救援のサプライチェーンに大きな被害が出る可能性がありますので、直ちに大規模な支援体制を司令塔のイメージどおりに動かすことは容易ではないと考えます。

 私は、こうした事態に対しても、北海道は、応急救援を力強く後方から支援するための高いポテンシャルを有していると思います。食料の確保と備蓄に適した気候と風土、エネルギーの備蓄に適した広大な土地があり、かつ、緊急輸送のための輸送インフラとしての十三の空港と四十三の港湾もあります。

 北海道庁も早くから政府のバックアップ機能の一端を担う拠点構想を発表しておりますが、今後、応急救援のための物資の備蓄、搬送等を含めた広い意味でのBCPに対する大臣の御所見を伺いたいと思います。

日原政府参考人 お答えいたします。

 首都直下地震が発生した場合に、政府機能が麻痺することなくその継続性を確保するため、あらかじめ業務継続計画を作成し、政府機能のバックアップを行う代替拠点を確保することは大変重要でございます。委員御指摘のとおりでございます。

 このため、昨年十二月に取りまとめた政府業務継続計画案におきましては、官邸が被災により使用できない事態を想定いたしまして、内閣府それから防衛省、立川の広域防災基地を政府の代替拠点として位置づけているところでございます。

 立川と霞が関が同時被災する可能性は低いという前提に立っておりますけれども、ただ、さらなる事態を想定するということもあり得るわけでございまして、そういった点につきましては、平時の利用ですとかサポート体制をどうするかというような問題もあるので、既存施設の活用なども念頭に置きつつ、さらに、代替拠点の確保について、どういうような業務を実施するのか、内容も含めて検討してまいりたいと思います。その際は北海道も対象から外すことなくしっかり検討してまいりたいと思っております。

 また、物資の供給という観点でございます。

 現在、首都直下地震あるいは南海トラフ地震におきます物資供給、どういう体制をしくのかということにつきましては、比較的近傍における物資の集結、そこに集めて、そこからどういうふうに供給するかという観点で計画をつくっておりますけれども、もう少し広域的な部分についての計画というものにつきましても今後検討していく必要があると思っておりますので、その点につきましては、先生の御指摘も踏まえながら検討してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(英)分科員 ありがとうございます。ぜひ北海道庁さんとも連携をとりながら御検討いただければと思います。

 次に、災害時多目的船についてお伺いをしたいと思います。

 東日本大震災を振り返ったときに、まず指摘できることは、特に沿岸地域が津波による壊滅的とも言えるほどの大きな被害を受け、被災地内のほとんどの医療機関が機能不全に陥るとともに、交通網の寸断により、内陸部の医療機関による支援も十分なレベルに達するには相当の時間を要したという点ではないかと思うのであります。

 災害による傷病者、発災前から加療中の患者や要介護、要援護者等も含め、医療、介護を必要とする方が大規模災害の発災時には大量に発生することを十分に踏まえ、不測の事態に陥らないよう、洋上からの医療支援を可能にしておくことは、国民の生命を守るという国の第一の責務を果たす上でも大変に重要な施策であると考えます。

 これを踏まえて、公明党は、災害時多目的船が、米国、中国、ロシア、スペインなどにおいては既に同様の備えが確立されていることを前提に、今後、災害多発の可能性が否定できない我が国においては、災害時多目的船の整備の必要性が極めて高いことを主張してまいりました。

 そして、今年度、政府は、広域医療搬送訓練において、災害時多目的船の実験的な演習を実施いたしました。今年度は訓練のうちに含めての実施でありましたが、来年度は首都直下を想定して、民間船を活用して、亜急性期及び慢性疾患により加療を要する方々を受け入れると想定して新規事業を行うこととしております。

 そこで、平成二十五年の訓練で得た成果を二十六年度の事業ではどのようにして生かされていくおつもりなのか。また、この事業はようやく来年度二回目の実証事業を行うわけですので、再来年度以降もぜひ継続していくべきものと思っておりますし、いずれかの時点では、実際に災害時多目的船の整備に取りかかっていただきたいと考えております。こうしたことが、東京で行われるオリンピック、パラリンピックの成功に向けて、海外から見る、東京、日本に対する見方も変わってくるのではないかと思うのであります。

 そこでお伺いをしたいのは、まず、今年度の訓練の中で多目的船の必要性をどのように感じられたのか、また、来年度はどういった観点で事業を実施されるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

日原政府参考人 海からのアプローチによる医療機能の提供というのは、陸上の医療機能を補完する役割を果たすということで、災害時の医療機能の拡充と多様化の観点から、非常に意味のあるものと考えております。

 ただ、平時の利用とかメンテナンスコストなどを考えますと、専用船を設けるというよりは、医療モジュールを船に積み込むという形での医療の提供というものもあるかということで、昨年、実証訓練といたしまして、海上自衛隊の輸送艦を活用した訓練を行ってみたところでございます。

 昨年の訓練におきましては、発災後間もない初期の段階ということで、急性期の患者さんを想定した、患者の搬送から応急処置までの一連の訓練を行ったところでございます。

 その中では、船内で行うべき治療内容、要するに、船内ではどういう治療をして、医療全体としてはどういうところでどういうふうにやるのかという役割分担的な話。それから、医療スタッフの要員をどのように確保するか、あるいは海と陸との間での連絡調整、あるいは船内における指揮命令系統など運用体制についての課題、あるいは船内におきます患者の搬送手段の確保。これは、要は、海上自衛隊の船は結構段差があったりしますので、そういうところをどうするか。それから、患者の収容に当たっての、船内で滞在する環境の確保など、さまざまな検討課題が浮かび上がってきたところでございます。

 これにつきまして引き続き検討するとともに、委員から御指摘ございましたように、来年度の予算案におきましては、民間船舶を活用した実証訓練を行おうとしております。

 来年度の訓練におきましては、民間船舶でございますので、比較的快適な客室機能を持っておるということも踏まえて、慢性疾患の患者さんでありますとか、あるいは避難所の診療機能の補完を対象とする、そういったようなことを念頭に置きつつ、災害医療の中でどのような役割が適当か、また運用に当たっての課題は何かということを、昨年とはまた別の観点から検証してまいりたいと思っております。

 これらの実証訓練の検証結果を踏まえまして、災害医療全体の中で洋上の医療拠点が担うべき役割を明らかにした上で、制度上、運用上の課題について関係省庁とともに整理してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(英)分科員 ぜひ有意義な実証が行われるよう御期待を申し上げたいと思います。

 最後に、東アジアレジリエンス協定の締結についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 東日本大震災では、世界じゅうの国々からさまざまな支援が寄せられました。国家間のあらゆる差異を超えて、同じ人間として、苦しんでいる人々のために持てる力を発揮するという行為のとうとさと気高い美しさを感じさせ、ほかの国々における大規模災害に対して我が国が取り組む背景もまた同様に、支援を行うべき根拠が、利害ではなく、もう一重深い次元での人間性の発露として行っていくことを再認識させたのではないかと強く思っている一人であります。

 同時に、こうしたことが危機的な状況においてしか発揮されないことが多いことについて残念に思うこともありますし、平時においてもこのような相互扶助の精神が発揮される方途を見出すことはできないものだろうかとも考えております。

 同時に、現在、日本は、日韓での情報交換や日中韓防災協力の枠組みでの防災演習を実施するなど、近隣諸国間とのバイの関係性での防災に関する情報交換や技術協力に取り組んでもおります。また、国連防災世界会議や三十カ国が参加するアジア防災会議など、マルチの関係においても継続的な協力関係を築いておるわけであります。

 こうした国際的な相互協力関係を深化させる上で私が特に注目をしているのは、ASEAN地域フォーラムが、災害救援をテーマにした多国間の実動演習をこれまで三回実施し、それこそシビリアン主導、軍支援のコンセプトのもと、医療、防疫、給水の部隊が参加しての訓練が行われてきたことであります。

 これを軍事競争の質的転換、人道的競争という新たな試みであると捉えれば、このASEAN地域フォーラムによる災害救援訓練をきっかけに、応急救援のみではなく、復旧復興や事前防災においても多国間が強固な協力関係を模索することが地域の安全保障上の重要な安定にもつながり得るのではないかと私は考えております。

 特に、日中韓の三カ国に安定的な外交関係を樹立するためには、隣国としての強みである姉妹都市など、自治体間でのより身近な感覚の交流を深めていくことが長期的に有効なことではあると私は思っております。

 菅官房長官も地方議会の御出身であると承知をしております。私もそうでございまして、地方ごとの、自治体ごとの姉妹交流というのは本当に重要な交流である、いざというときも揺るがない本当に重要な交流であると私は認識をしているところでございます。

 この身近さと事前防災や復旧復興の協力関係を徐々に徐々に推進することができれば、いずれはアジアの発展と安定を担保していくことになるのではないかと考えているのでございます。

 隣国の強みである姉妹都市などの自治体間でのこうした姉妹交流なども参考にしながら、アジア復興レジリエンス協定の締結について検討していただければと思うのでございますけれども、官房長官の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 私も、委員と同様に地方議員の出身でありまして、横浜市会では、特に、中国の上海とか、さまざまな都市と姉妹都市を結んで、議員同士の交流あるいは経済、文化の交流も数多くありました。

 そういう中で、今御指摘のとおり、中国、韓国を含め、それぞれの国と協力関係をつくっていくことは極めて大事なことだというふうに認識をいたしております。

 また、自然災害の多発するこのアジア太平洋地域においては、防災は共通の課題であり、防災分野の地域協力も進めていくところでありますけれども、そうしたことがやはり地域の安定に資するものであるというふうに思っています。

 日中韓でも、防災担当閣僚級会合の開催、こうしたものを実は行っておりまして、防災協力を推進しており、防災対策の共有や共同研究等の取り組みを含め、できるところから互恵的な協力関係を発展させていく、このようなことが極めて大事だというふうに認識をしておりまして、今委員から提案のありましたこうした問題についても前向きに考えていきたいと思います。

佐藤(英)分科員 大変に前向きな御答弁、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

岩屋主査代理 これにて佐藤英道君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

岩屋主査代理 次に、皇室費について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。宮崎謙介君。

宮崎(謙)分科員 自由民主党の宮崎謙介でございます。本日は、このような質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私はふだん経済産業委員会で経済政策について質問しておりますけれども、本日は、宮内庁を中心に、国体について質問させていただきたいと思います。

 菅官房長官におかれましては、大変御多忙の中、こうしてお時間をいただきまして、まことにありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 さて、先日、大学生たちと語り合う機会がございました。その中で、国体について彼らに話をしましたところ、国体という言葉を聞いて彼らが真っ先に思い浮かぶのは国民体育大会ということで、私も愕然としたわけでございますが、こういう若い人たちに対して、国体という言葉はだんだんなじみがないものになってきてしまったということを私も実感した次第でございます。

 言うまでもなく、国体というものは、その国の国民にとってアイデンティティーの根幹となるものでございます。そして、それがなくなってしまったらその国がなくなってしまうというようなものが国体であるわけであります。

 例えば、アメリカにおきまして、アメリカの国体は何かと言われれば、それは自由でございます。

 それは、アメリカの建国にさかのぼるわけでございますが、イギリスのピューリタン、清教徒たちが、信仰の自由を求めてアメリカ大陸に渡ったということがその起源になっているわけであります。そこから派生をしまして、今でもアメリカ合衆国の国体は自由であります。

 したがいまして、たとえホワイトハウスが崩壊しようと、大統領がお亡くなりになろうと、さらには上院、下院議員が一斉に辞職をしようとも、アメリカに自由というものがあれば、アメリカという国は再生することができる。また逆に、自由が奪われてしまえばアメリカという国はなくなってしまうというようなものがアメリカにはあるわけでございます。

 同様に、フランスでございますが、フランスにおきましては、平等というものが国体に当たると思われます。

 これもまたフランス革命以前の話になりますが、このときのフランスは、王家を頂点に置きまして、そして貴族、それから僧侶、全体の二%の人たちがフランスを牛耳っていたということで、いわゆる封建社会でございました。大変な格差がある中で、国民たちが立ち上がりまして、格差是正のために行動を起こした、これがフランスの建国の始まりでございますので、それが今でも根強く残っていまして、この平等というものが彼らの、フランスの国体であるというわけでございます。

 さらには、中国におきましても、中国共産党一党独裁の社会主義国家というのが彼らの国体であるというわけでございますので、中華人民共和国から中国共産党というものを取ってしまったら、もはや中華人民共和国ではなくなるというわけでございます。

 では、日本においての国体というものは何でしょうか。

 我が国の歴史は、少なくとも西暦からさかのぼること六百六十年以上前でありまして、世界最古の国でございます。この日本という国は天皇と歩んできた国でございまして、精神的な、国民の心のよりどころであり続けてきたことは間違いありません。

 天皇の任命権を定めている憲法六条、そして国事行為を定めている憲法七条のとおり、現行の日本国の統治機関として、またシステム上、天皇は日本にとって、なくてはならない唯一無二の存在であります。もしも天皇が不在になってしまったら、日本の立法、行政、司法、全てが機能しなくなります。内閣総理大臣の任命も、最高裁判所の長官も、閣僚の認証も、国会議員の総選挙の公示も、全て、天皇が不在ではあり得ません。

 同じく、法律をつくるのは国会ですが、全ての法律は天皇が公布しなければ効力を持ちません。天皇が不在となれば、法律を公布することもできない、たとえ形式的なものであったとしても、天皇が不在であっては日本国は機能しないというわけであります。それが今の日本の制度でございます。つまり、日本の国体は天皇であるというふうに私は思っておりますし、私たちは皇室を守っていかなければなりません。

 これから、天皇家をお守りすることを趣旨にしまして質問させていただきたいと思うわけですけれども、最初に触れておきますのは、決してこれは天皇の政治利用ではないということをお伝えしておきたいと思います。

 そこで、官房長官にお伺いしたいと思います。日本国憲法におきまして、象徴天皇制の意義についてお伺いしたいと思います。

菅国務大臣 憲法第一条が、天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴である、このように定めておるのは、天皇の存在を通じて日本国と日本国民統合の姿を見ることができるという日本国民の総意というものをあらわしている、このように考えています。

宮崎(謙)分科員 ありがとうございます。

 まさに、日本の国民の心と、そして今の法律上におきましても、天皇というものはなくてはならない存在であるというふうに私も今理解をして、その先に話を進めさせていただきたいと思います。

 さて、話はかわりますが、明治維新以降、つまりは明治天皇から東京の皇居にお移りになられました。理由はさまざま言われていますけれども、維新に不満を持っている武士たちから明治天皇のお命をお守りするという目的でお移りになったという説もあれば、また、先ほど私が言った話ではありませんけれども、政治利用として東京に連れていかれたというような話もございます。いずれにしましても、お移りになられているという事実が今あるわけでございます。

 歴史をさかのぼりますと、七九四年に桓武天皇によって平安京へ都が移されました。その前は長岡京の都がございます。まさに長岡京の都は、私の地元、選挙区でございます向日市、長岡京市というのがこの位置に当たるわけでございますが、そこに都がございました。さらにその前になりますと、奈良の平城京があるわけでございます。我が国は、天皇の遷都宣言に基づいて、天皇が移り住まれてきました。

 明治天皇が東京にお移りになってから百四十年以上がたっております。東京は、その後に大変な経済発展もなし遂げ、そして今や政治の中心地になっていることは明らかであります。しかし、日本の首都は、実際、法律上で明記されていることはございません。法律で定められているわけではないというわけでございますが、実質は首都機能を果たしているというわけでございます。

 しかし、明治天皇も、大正天皇も、昭和天皇も、今上天皇も、遷都宣言はなされておりません。御存じのとおり、京都には現役の御所がございます。そして、天皇の玉座として即位の礼に用いられる高御座は、京都の御所にしかありません。京都では、天皇陛下はお出かけになっている、そして、いつお戻りになるのかということが今でも根強く言われております。

 また、明治天皇は、東京にお移りになってからも、ふるさと京都のことをしのび、多くの歌を残されています。幾つか御紹介をしたいと思います。

  賀茂川のむかひをさして白鷺のひとりとびゆく夕暮れの空

  住みなれしわがふるさとは夏草の深きところとなりにけるかな

 読んでいますと、どの歌も、明治天皇の望郷の念が、私に、また多くの皆さんに伝わってくるのではないかというふうに思います。そのことを踏まえて質問をしていきたいと思います。

 今現在、皇室の皆様が戦後減少傾向にある、数が減っていらっしゃるということでございますけれども、それが大変な危機になっているというふうに私も捉えているわけでございますが、現在の皇室は一体何名でいらっしゃるのか、また、過去の推移、そして、これからどうなっていくのかということも、見通しを教えていただきたいと思います。

山本(信)政府参考人 お答えいたします。

 明治時代からの皇室の人数の推移でございますけれども、旧皇室典範が制定されました明治二十二年に着目いたしますと、同年末時点で四十五方でございます。その後、例えば、明治四十年の末時点では七十二方となり、その後、おおむね六十台から七十台の人数で推移をしてまいりました。

 昭和二十二年になりまして、現在の皇室典範が施行されまして、同年十月十四日に十一宮家五十一方が皇籍を離脱されましたが、離脱前におきましては六十七方でございましたので、離脱後は十六方でございます。それ以降、おおむね十五方から二十五方で推移をしてきておりまして、現在は二十二方ということでございます。

 今後のことでございますが、二十二方のうち、未婚の女性皇族が八方おられます。皇室典範十二条では、婚姻をされたときは皇族の身分を離れると規定されておりますために、今後、女性皇族の婚姻により減少していくことが予想されるところでございます。

 以上でございます。

宮崎(謙)分科員 今御説明いただきましたとおり、この先の皇室の存在というものが大変危ぶまれているわけでありますが、ここで皇室典範について本当は議論をしたいところではございますが、今回は、視点を少し変えまして質問を進めたいと思います。

 地震の多い我が国におきまして、何といっても、我々の記憶に鮮明に残っている、そしてまた、これからも一刻も早く復興しなければならないのが、あの三・一一の東日本大震災でございます。私も、今でもきのうのことのように鮮明に覚えておりますし、一刻も早くこの復興はなし遂げなければならないというふうに思っております。

 そして、それ以前の大きな地震といえば、阪神・淡路大震災や中越地震などがあります。関東ではといいますと、大正十二年の関東大震災、これが一番大きな地震として挙げられると思います。

 この関東大震災では、百九十万人の方が被災され、そして十万五千名の方々が命を落とされ、または行方不明になったというふうに言われております。

 また、建造物に対しても大きな被害をもたらしました。丸の内の内外ビルディング、これは建造中でありましたけれども、三百人の作業員が圧死をされました。さらには、帝国劇場や三越日本橋本店などの文化・商業施設も焼失いたしました。さらには、このかいわいでも、大蔵省、文部省、内務省、外務省、警視庁などの官公庁の建物も焼失しました。

 そこで、この関東大震災におきまして、皇室の皆様も被害に遭われたというように私も認識をしておりますけれども、その際、皇室に対してどれぐらいの被害があったのかということをお伺いしたいと思います。

山本(信)政府参考人 今委員御指摘の関東大震災、大正十二年九月一日のお昼ごろに発生いたしましたけれども、この震災によりまして御三方が薨去なされました。女王殿下お二人、殿下お一人でございます。

 小田原、鎌倉、鵠沼の宮家別邸に御滞在中に建物が倒壊をして薨去されたところでございます。当時は七十名の皇族方がおられましたので、そのうち三名がお亡くなりになられたというところでございます。

 また、宮殿でございますが、当時は、宮殿と御所機能が一緒になっておりまして、表宮殿、奥宮殿ということでございましたけれども、宮殿自体は、家具調度品が転倒するというようなことはございましたが、それほどの被害はございませんでした。当時の皇太子殿下、後の昭和天皇でございますが、摂政をお務めになられて、この発災時は宮殿で執務をしておられましたが、もちろん御無事でございました。大正天皇は、当時、日光の御用邸に皇后陛下とともに御滞在でございました。

 ということで、宮殿自体は大きな被害というものはございませんでしたけれども、その他、例えば宮内庁庁舎は壁が剥落するなど大きな被害を受けましたし、それから、赤坂御用地内の一部庁舎、あるいはいろいろな、馬車等の車庫、それから物置、こういったものは全半壊または大破、それから学習院ですとか芝離宮の洋館等も焼失をいたしました。小田原、鎌倉、葉山の各御用邸も全壊といったようなことで、これ以外の施設につきましても、皇室用財産は深刻な被害を受けたところでございます。

宮崎(謙)分科員 大変な被害が皇室にももたらされたというお話を今していただきましたけれども、実際に、今、皇室の数がどんどんと減っている中で、首都直下型地震の可能性が極めて高いということも言われている中で、皇室のお命をお守りするというのは、これから本当に重点を置いて我々は検討していかなければならないというふうに思うわけでございます。

 そんな中で、今、京都では、双京構想というものを掲げております。これは、京都市の市議会と京都府議会、さらには有識者から成る協議会が、オール京都で声を上げている構想でございます。

 我が国の繁栄のため、そして皇室のいやさかのために、京都にも皇室の方にお住まいいただき、東京と京都が名実ともに都として機能を果たすことを目指すというものであります。

 今では、京都だけでなく、関西広域連合、それから関西経済連合会、さらには大阪、堺、神戸、京都、四商工会議所による双京構想の趣旨が盛り込まれた意見が出されるなどしております。

 関西に大きくその動きが広がっているわけでありますけれども、先ほどから申し上げましたとおり、明治天皇の思い、さらには歴史的な背景、そしてその他の角度、例えば首都直下型地震の可能性などから見てみましても、この双京構想というものは、我が国にとって非常に重要な意味を持つ構想であると私は考えております。

 ぜひとも推進していただきたいと思うわけでありますが、幾つか課題がございます。

 まずは、お住まいいただく場所でございます。京都には、古くから、天皇、皇后、皇太子、皇太子妃がお泊まりになる大宮御所がございます。しかし、二〇一三年二月に行われた調査では、震度六強によって倒壊する可能性があるというふうな調査結果が判明しました。現在は、天皇皇后両陛下が京都に御訪問される際には、京都迎賓館にお泊まりになっています。

 そこで、御質問でございます。京都にある大宮御所の耐震化費用、また、その工事の計画があるのかどうか、ぜひこうした皆さんにも大宮御所にはお住まいいただきたいというふうに思うので、ぜひその点についてお伺いしたいと思います。

山本(信)政府参考人 今委員御指摘の京都大宮御所でございますが、この建物は慶応三年、一八六七年に建設をされまして、御指摘のように、両陛下、皇太子、同妃両殿下の御宿泊所ということで用いられてきておるところでございます。

 今お話ございましたように、平成二十四年度に耐震診断を実施したところ、震度六強以上の大地震で倒壊のおそれがあるという判定結果が出ましたことから、早急に耐震補強工事を実施するということにしております。現在、鋭意、工事のための詳細な設計業務を行っておりまして、この設計は今年度中に終えまして、新年度、平成二十六年度になりましたら直ちに耐震改修工事に着手をし、二十六年度末、すなわち平成二十七年三月にはこの耐震工事を完了させる予定でございます。

 もう一つ、その大宮御所につながっております厨房ですとか、あるいは供奉していく職員の宿泊機能、そういう施設も必須でございますが、事務棟と呼んでおりますが、これにつきましては、平成十年度の耐震調査で対策が必要だという判定がございましたので、既に平成十七年、十八年度に改修工事を実施し、現在、耐震上の問題はございません。

 以上でございます。

宮崎(謙)分科員 大宮御所の耐震化が平成二十七年の三月末ごろには整うということでございますので、ぜひ、先ほどの事務棟も含めて、完成に向けて御尽力いただきたいなというふうに思う次第でございます。

 大宮御所が安心してお住まいになれる場所になったからといって、すぐに先ほど申し上げました双京構想が実現するという簡単な話ではございません。実現に向けて幾つか段階を踏んで進めていく必要があると思います。

 長期的な展望のもとに立って進めていかなければならないと思いますが、まずは、皇室の皆様には頻繁に京都にお越しいただきたいと考えます。当面、宮中の祭祀、儀式や行事の一つを京都でとり行うことを考えてはどうかと思っております。そのほかにも、明治以降途絶えた五節句を復活させて、京都にてその行事を開催させることなどが考えられます。

 明治以降に途絶えてしまった行事もあるというふうに聞いておりますけれども、ぜひ、皇室の皆様に京都にお運びいただく、そういうきっかけとなる行事をふやしたいと思いますが、途絶えてしまった行事、一体どういうものがあるのか、教えていただきたいと思います。

山本(信)政府参考人 明治天皇が東京にお移りになった後に行われなくなった宮中行事、その例を申し上げますと、今委員もお話しになりましたけれども、例えば太陰暦を太陽暦に改定した、そういう時代だったわけでございます。

 それに伴いまして、明治六年には、それまで行われておりました五つの節会、この節会というのは、朝廷が日を定めて群臣を集めて賜った公式な宴会のことをいいます。例えば、五月五日の端午節供、七月七日の七夕節供、あるいは九月九日の重陽節供、こういったような五つの節会が廃止されております。

 そのほか、例えば後七日の御修法、ちょっと難しいのでございますが、仏教行事で、一月七日までは宮中の新年の節会をやりますが、その一月七日が終わった後に、国家の安寧あるいは陛下の御健康を祈念して真言宗の仏教行事が宮中で行われておりましたが、廃止をされております。

 それから、これは神社関係でございますが、賀茂奏事始といいまして、京都の賀茂社の、旧年中の行事、どういう行事を実施しました、こういうことを年の初めに天皇に奏上する儀式というものがございましたが、こういったものも廃止をされております。

 以上のようなものが、変わり目で廃止をされたという例でございます。

宮崎(謙)分科員 今の御答弁のとおり、多くの行事が明治を境に途絶えてしまっているというわけでございますので、いま一度復活させていただければというふうに思っております。

 そして、先ほどから申し上げているとおり、東日本大震災の後に、また大震災について日本全体が注意をしているわけでございますが、首都直下型地震の想定もしていかなければならない中で、皇室に被害が生じないようにすることも踏まえた上で、さらには、皇室の繁栄という観点から、一部の皇族の方々に京都にお住まいいただくということを考えていくのは大変重要なことであろうかと思います。

 そうした観点から、今後、皇族の方々の京都への御宿泊、お出ましの回数をふやしていきたいというふうに思いますが、そういうことも含めた上での双京構想の実現の可能性について、官房長官の御所見を伺いたいと思います。

菅国務大臣 委員から、皇室に対してのさまざまな熱い思い、さらには京都に対しての思いというものを今いろいろ伺ったわけでありますけれども、過去十年間で天皇及び皇族の方々の京都府へのお出ましは合計で九十七回にも及び、全国の都道府県の中でもお出ましがぬきんでて多いところであるということを承知いたしております。

 このうち、天皇皇后両陛下におかれましては、例えば平成二十年度以降を見ても、ほぼ毎年度お出ましになられているというふうに伺っております。

 一般に、お出まし先は、皇室の御公務への要請内容によって決まってくるものでありますが、そうした要請内容や皇室の方々の御都合をよく伺った上で、宮内庁において適切に対応してきているというふうに承知をしています。

 京都大宮御所は、行幸啓等の際の御宿泊所として専ら用いられておりますけれども、耐震化工事が完了すれば、さらに、京都への御滞在の環境、そうしたものも整ってくるんだろうというふうに思っております。

 私の立場で答えられるところはここまでかなというふうに思います。

宮崎(謙)分科員 菅長官、ありがとうございます。

 今お答えをいただきました京都と天皇の結びつきというのは、日本の中では非常に深いものがあるということでございますので、これからも、ぜひ日本全体でこのムードを広げていきながら、皇室の皆様に京都にもっとお越しいただきたいなというふうに私は思うわけでございます。

 また、平成三十年、二〇一八年になりますが、明治改元からちょうど百五十年を迎えます。この一つの節目というのも生かすべきかなと私は思っておりますので、ここを焦点に入れながら、ぜひ宮内庁の皆さんも双京構想の推進にお力添えいただければというふうに思います。

 最後になりますが、我が国は農耕民族の国でございます。日の出とともに起きて、日の入りまで働いてきました。晴れの日も雨の日も、空と大地とともに暮らしてきました。

 したがいまして、大雨や干ばつは非常に困るものでありました。そこから、天に祈って、自然に対する畏敬の念が生まれてまいりました。このことが神道につながり、我が日本国民のベースとなります勤勉さ、さらには謙虚さにつながってまいりました。その後に仏教の教えが入ってきまして、慈悲の心というものが日本に広がり、そして儒教の教え、仁義というものがこの日本国に寺子屋を通して浸透していったというわけでございます。神道と仏教と儒教、そこからくる勤勉さ、謙虚さ、さらには慈悲の心、そして仁義というものが日本人の心根となったわけであります。

 この日本の心根をつくるそばには、常に天皇がいらっしゃったわけであります。我が国の国民とともに二人三脚をされてこられた天皇家を守っていくというのは、私たちの原点であろうかと思います。新しい日本をつくる、そして、再び輝ける日本をつくっていくためには、この原点回帰をしなければならないということを強くお訴えいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岩屋主査代理 これにて宮崎謙介君の質疑は終了いたしました。

    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

林主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。

大野分科員 自由民主党の大野敬太郎であります。

 官房長官におかれましては、きょう御出席を賜りましたことを本当に心から感謝申し上げたいと思います。また、先般、自民党本部で、私の地元からお越しいただいた方がいらっしゃったとき、大変お忙しい中をちょっと寄っていただいて、これも本当に心から感謝を申し上げたいなと思います。

 地元ネタでありますけれども、香川県というとうどん県みたいなイメージばかりでありますけれども、実は、お越しいただいて御対応賜った方は多度津というところから来ていた方であります。多度津というのは、例えば、高村先生が少林寺拳法の議連の会長をされていますけれども、その少林寺拳法の本部があったり、あるいは、うどんだけじゃない、いろいろないいものがある。

 例えば、ことしは瀬戸内海国立公園が指定されてから八十周年の非常に記念すべき年になっていまして、トーマス・クックという世界で初めて旅行会社をつくった方が、いろいろな国を回って、それで瀬戸内海を見たときに、こんな美しい国があるんだ、それだけ美しい瀬戸内海なんだということで感銘を受けたという記事が残っていますけれども、ぜひ官房長官も一度香川県にお越しいただければと、先ほど宮崎先生が京都にお越しいただきたいとおっしゃっていましたけれども、そんな思いであります。

 地元ネタはさておきまして、内閣官房、本当に国家の中枢の官房組織でありますけれども、非常に重要な役割を担っているんじゃないか、そんな思いがありまして、きょうは官房の組織について、何点か御質問、御提案を含めてさせていただければと思います。

 今、予算は千十四億円、人員は年度末で千七人、こういう規模になっているかと思います。

 実は、自民党本部で、国家戦略本部、これを設立された経緯というのは紆余曲折があったやに聞いておりますけれども、現在では山口俊一先生が本部長で、国家の戦略、つまり、二〇三〇年ぐらいを主眼に置いて、その二〇三〇年に一体国というのはどうなっているんだろうか、こういう推計、推定を行いました。

 二〇三〇年にはこういう国家になっているべきなんだ、だから、そこからバックキャスティングして、今からこういう政策を打っていくべきなんだ、戦略眼と申しますか、そういった形で今議論させていただいて、本当にこれは、おもしろいというよりは、政治家としてはやはり重要なところであります。

 とある方が、私にこんなことをおっしゃっていました。帰納的な考え方をする方は実務派だ、演繹的な考え方をする方は戦略家だ、そんなことをおっしゃって、本当におもしろい表現だな、そんなことを思っています。

 いずれにせよ、この中長期の戦略、これは自民党本部で今議論しておりますが、それでは官房の中にそういった人材もやはり育てていかなくちゃいけないんじゃないか、そういう思いがありまして、この官房の中の戦略、ここを担っている人材があるのかどうかという質問をまず一点目。

 それから二つ目が、それとは別に、情報の話でありますけれども、今、内閣に情報調査室、CIRO、こういう組織がございますが、この点について。

 それから三番目、時間がありましたら、情報セキュリティー、今、サイバー、宇宙、非常に重要だと言われていますけれども、このサイバーの司令塔であるセキュリティセンターについてお伺いをさせていただきたいと思っています。

 まず初めに、これとはちょっと別に、官房長官として、この内閣官房というのは一体どうあるべきなのか、本当に基本的なところでありますけれども、今、内閣府というものもありますけれども、あるいはほかの行政府省もありますけれども、あるべき内閣官房像というもの、もし御所見がありましたら、お伺いさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 私、官房長官に就任をして一年と二カ月であります。そういう中で、本来は総理を支える組織として私たち内閣官房が存在をするわけでありますけれども、やはり、一番は総理の指示に的確に、また敏速に対応することのできるような機動的組織であるべきだというふうに思います。

 それと同時に、今、委員が言われました中長期的、そうした政策について、この国のあるべき姿を初め、内閣としてどうあるべきか、そうしたものもしっかりとそこで捉えることのできる、そうした組織であるべきだろうというふうに思っております。

大野分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだと思います。本当に、内閣官房というのは、ある種機動的と申しますか、有機的と申しますか、多様性も含めて、そういった有機的な立場が一番いいんだろうな、そういう観点が非常に大切なんだと私もずっと思っていまして、実は、科学技術・イノベーション推進特別委員会でも、山本大臣に、司令塔機能の議論のときにそんな話をさせていただいたところであります。

 組織というのは、組織をつくったからといって動くわけでは全然ないわけであります。当然、人が中心になっているわけでありまして、組織はなくてもヘッドが意思を持っていたら当然動く、そういうところなんだと思っています。

 人で動く、そういう組織であるんですけれども、一方で、人とか情勢が変わっても絶対に必要な組織、必ず動く組織、こういうある種かたい部分、こういうものも必要だと思っていますし、一方で、分野によっては、官房長官がおっしゃったように、機動的な有機体のようなものの方が当然いい部分があるんじゃないか。本当にいろいろなことを組織論で考えてしまうんですけれども、そんなことをすごく思うところなんです。何回も申し上げますが、内容によって違うんだろうと思っています。

 例えば、昨年でありますけれども、NSC、国家安全保障会議それから国家安全保障局、こういうものがつくられました。これは、外交、安全保障という意味では、岩屋先生も御尽力賜ったこのNSCみたいなものは、やはりある種かたい部分。確かに、有機的な部分、機動的な部分は必要でありますけれども、政権が仮にかわったとしても連続性を担保できる、こういった組織であるべきで、NSC以外に、例えば、また議論されるであろう内閣人事局でありますとか、あるいは、後で御質問させていただきたいと思っています情報調査室とか、そういうものはある種かたい部分だと思うんです。

 一方で、今、内閣官房の中には、特定の分野、例えば海洋の戦略とか、あるいはITの戦略とか、あるいは宇宙の戦略とか、こういうものの戦略本部というのがある種司令塔機能としてずずっと並んでいるわけであります。つまり、宇宙については宇宙が一番ヘッドに立って、あとは下に並んでいただく、こういう機動的な部分、考え方というのは本当に大切だと思っているんですけれども、いずれにせよ、かたい部分と機動的な部分、両方ある。

 それでもやはり、問題というのが見受けられなくもないのかなという部分が、今、内閣官房それから内閣府を俯瞰してみると、ちょっと思うところがあるんです。

 それは、もちろんこれは各省庁単独ではなかなかうまく進まない、そういった意味で例えば宇宙とかがあると思うんですけれども、では、どんどんいろいろな課題が社会に出てきて、社会もどんどん変化をしていますので、どんどん何とか本部というのがたくさんできて、ある種もう肥大化してしまってはいないのだろうかというのが私の問題意識の一つなわけでありますし、また、そもそも、結構わかりにくい部分になっているんじゃないか。

 内閣官房とか内閣府の組織図、これは中まで私もさすがにどういう組織になっているのかわかりませんけれども、ただ、この組織図を見たときに、結構似たような名前が並んでいたりするわけで、一体どこがどうなって、どういう権限構造になっているのか、それが正確にわからないところがあるんです。わからないということは、その指揮命令系統というのがすっとおりないんじゃないかという危惧も抱いているわけでありまして、この点、多少やはり改善が必要なんじゃないかと思うんです。

 例えば、内閣官房、内閣府、それから内閣府の中にある、担当の大臣の皆様とか、その権限構造とか、あるいは、実動部隊であるところの内閣府の職員とか、それがちょっと複雑な感じがいたしております。

 もちろん、こういった意味で、先般、官房長官も、このままでいいとは思っていないんだという御発言を報道ベースで承知しておりますけれども、そういう問題意識を共有しているのかなと勝手に思っております。

 いずれにせよ、これは行政改革の方で御議論されるであろうということでありますけれども、必ずしも行政改革の視点だけで論じるべきではないんじゃないか。もちろん、行政改革でスリム化、効率化という観点は必要だと思いますけれども、必ずしもこの部分だけでは論じられない部分であります。

 そういった意味で、先ほど言ったかたい部分、それから機動的な部分、それからわかりやすい、こういう三点の観点でぜひ見直しが進めばいいなと思っています。

 この部分について、もしお考えがございましたらお伺いしたいなと思うんですけれども、私、きょうの本旨はその部分にあるわけではなくて、これは行革の方でお話をされるということでございますので、直接はおっしゃられないと思いますので、もしあればということで賜れればと思います。

 問題意識としては、もう先ほど申し上げましたとおりであります。国家の中長期的な戦略、ここの部分を基本的に担っているのは、当然ながら総理大臣であり、それを支える官房長官であり、そして総理大臣をお支えいただけるその他の大臣の皆さんであると思います。もちろん、政治家であると思いますけれども、その政治家を支える事務としてのスタッフ、これは組織をつくっていただくのがいいのか、あるいは人材という意味でグループがいいのか。

 いずれにせよ、シンクタンク的なものというのは私は官房の中に絶対必要だと思っているんですけれども、その点について、ぜひ御知見を賜れればと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

菅国務大臣 委員御指摘のとおり、外から見た場合、内閣官房、内閣府、何となく、その辺の分け方というんですか、極めてわかりにくい。

 ちなみに、実は、発足当時、平成十三年ですけれども、内閣府は定員二千二百十名、併任が二百二人だったんですね。定員は余り変わっていませんけれども、併任が六百六十人もいるんです。三倍ぐらいになっていますし、内閣官房についても、定員は五百十五人で併任が五百三十九、定員が八百十八人の併任が千六百四十五人、これも三倍ぐらいになっているんですね。ですから、何かあると、併任をかけて、各省庁に籍がありながら内閣官房や内閣府に来ている。

 そこで、今、さまざまな政策課題を解決していくためには、省庁横断的なことが非常に多くなりましたから、全部内閣官房なり内閣府で対応策、そういうことが実は非常に多くなってきているんです。例えばTPPがそうですね。安倍政権になって、このTPPに参加をする、TPPの事務局をどこに置くか、これは例えば内閣府。そういうふうに、それぞれの時々の政策によってそうした組織をつくっていく。

 問題は、その組織をつくった後なんですね。それが残ってしまうんですよ。ですから、一定の方向性が出たら、今の組織の中では何々省庁がそれを担当する、そういうふうな形でやはり外に出していかないと、非常にわかりにくい組織に実はなってしまいます。残念ですけれども、所管としてなかなか受け取ってくれる役所が少ないものですから。ただ、そこはスクラップ・アンド・ビルドみたいな形で、必要なときは内閣府なり内閣官房につくって、その使命が終わったら主要な省庁に所管をしっかり移していく、こういうことというのは物すごく大事だというふうに思っています。しかし、残念ながら、今そうしたことが行われていない状況であります。

 それと同時に、やはりこれだけ肥大化しましたので、全体をもう一度見直す必要もあるだろうというふうに思います。自民党の行革本部で、内閣府、内閣官房とたしか総務省とか、そういうところをもう一度見直すべきだという提案も実はあったわけでありますから、そういうものを踏まえて、現在のままでいいのかどうかということは十分私は考える必要があるだろうと思います。

大野分科員 ありがとうございます。

 私の御質問は、それが一点でありましたけれども、もう一つが、官房の中に中長期的な戦略を、当然政治家が担うんですけれども、それを支える事務方というのをある種しっかりと養成と言ったら失礼かもしれませんけれども、そういうものが必要なんじゃないかということについて、御所見を賜れればと思います。

菅国務大臣 現在、内閣官房には、重要課題を担うための内閣官房副長官補というのが三人おりまして、重要課題について、特命事項もあるわけでありますけれども、そこで実は対応しておるわけであります。これは総理の指示のもとに、私ども官房長官あるいは官房副長官等も含めまして、戦略的な対応策の組織というんですか、方向性を見出すためのさまざまな政策をここでやっているということも事実であります。

 先ほど申し上げましたけれども、中長期的な問題、あるいは今すぐ解決しなきゃならない問題、ある意味では全てをそこでやっていますので、果たしてそれでいいのかどうかということはやはり考えなきゃならないだろうというふうに思います。長期的にやる部署があっていいのかどうかも含めて、そこは検討する必要があると思っています。

大野分科員 ありがとうございます。

 戦略というのはいろいろな使われ方をするんだと思いますけれども、私としては、先ほど申し上げましたように、本当にバックキャスティングですね。こういう世の中をつくらなければならないのである、そのためにはこうしていかなくちゃいけないんだ。それはいろいろなパスがあると思うんですね。いろいろな国家像があると思うんです。こんないろいろなものをしっかりと議論して、その部分と、総理あるいは官房長官が御指命になった部分とをしっかりとつないでいかなくちゃいけないんだと思っているんです。

 私も官邸に入っているわけでも何でもないのでわかりませんけれども、もうそういうことになっているのかもしれませんけれども、私の問題意識としては、今、どちらかというと帰納的になってはいないんだろうか。要するに、総理の思いがあって、そこから、では、こう将来に引っ張って、こういう政策を打っていかなくちゃいけないね、ある種ちょっと短期的なところになってはいないんだろうか。

 何回も申し上げますけれども、むしろ、バックキャスティングで、国家像、これをしっかりと描いて、そして、こういう政策ツールがありますよというのを議論して、そして温めておいて、十本なら十本、こういうオプションがありますよというのをリーダーに提示できる、こういった人材、組織になるのかグループ、そういうシンクタンク的なものをぜひつくっていかなくちゃいけないんだろうな、もうあるのかもしれませんけれども、そんな思いがありますので、ぜひよろしくお願いしたいなと思っています。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 実は、これはちょっと先ほどの戦略の部分にも絡む話だと私は認識しております。それは、内閣の情報調査室の話であります。

 戦略をつくるに当たっては、当然、情報というのは必要でありますので、情報調査室の中にそういう人を結構養成できればいいなと勝手に思っているところでありますし、また、官房の中では、恐らくプロパーの人材が最も必要なセクションだと思いますので、いろいろな長期的な戦略眼というのを持っていられるような組織体系になっているのか、そんな思いがありますけれども、私の今回の質問は、それとは別に、情報というものの重要性、これは私も初当選して以来ずっと訴えているところでありまして、去年の分科会では、実は外務大臣に対して情報の必要性を訴えさせていただきました。

 その情報というのは、要するに、情報を保全すること、そしてもちろん、それを公開するというのもセットだと思いますけれども、ある一定のルールで公開する。それから二番目は、当然、発信をしていくこと。そして三番目は、当然ながら収集していくこと。これが全てセットになって初めてうまく機能するものなんだ、私はそういう漠然とした認識があるんですけれども、私の懸念は、昨年通った特定秘密の保護法、これによって保全ができた、保全ができたことによって、今、パラダイムがちょっと変わって新しい時代に突入したので、収集能力というのを絶対に高めていかなくちゃいけないんだ、そういう思いがいたしております。

 実は、昨年の特定秘密の保護法の審議の中で青山さんという参考人がおっしゃったのと私は同じ意識を共有させていただいているんです。保護ができたから、例えば特定の国を挙げますと、アメリカがいろいろな情報を提供してくれるようになるんだ、だから強固な関係になるんだ、こういう観点も一つありますけれども、一方で、この情報が入ってきたら、この情報を、当然、特定秘密ですので、どこかに相談をかけるわけにもいかず、これは本当なのかねといってやることはなかなか難しいです。そうなると、そこに盲目的に追従せざるを得なくなってしまう、こういう観点がやはりあると思うんです。

 それだからこそ、その新しいパラダイムに突入した今の時点で、しっかりとした情報収集の能力、これをぜひ構築していかなくちゃいけないんだ。今、情報調査室というのは、恐らく、法律上の根拠というのは、内閣法に、情報をとっていくことというこの一点だけに求められるものだと思いますし、それはそれでいいのかもしれませんけれども、もっと積極的に情報をとれるような、しっかりとした組織というものにしていかなくちゃいけないんだと思っています。

 その情報の収集についての機能強化、CIROの情報収集の強化について、官房長官のお考えをぜひお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 冒頭、委員が言われましたけれども、やはり、質の高い情報を取得するというのは、国家にとって、また国民の皆さんの生命財産を守る上でも極めて重要だというふうに思っています。

 そういう中で、昨年に特定秘密保護法が成立をして、関係国から、従来より増して質の高い情報というものが入ってくるようになるというふうに思っています。

 それについて、情報調査室、あるいはそれぞれの役所にまた情報がありますから、そうしたものを国家安全保障局で今度は集約をし、そこで企画立案し、そしてまた調整をする機能がようやくできたわけでありますから、そうした意味合いにおいて、従来と比較をすると、かなり高度な質の高い情報というものが入ってくることのできる体制はできたというふうに思っています。

 ただ、日ごろ、やはり信頼感を持って交流がなければ、そうした情報もなかなか取得することができないわけであります。そうした中において、対外の情報収集も含めて、これからまだまだ検討する必要があるだろうというふうに考えています。

大野分科員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりだと思います。情報収集の強化、これは随分昔からの議論でありますけれども、今この時点では新しい時代に突入したわけでありますので、これから本当に情報収集の強化というのはぜひお願いしたいところであります。

 時間も参りましたので、次の議題に入りたいと思いますけれども、それはサイバーの話であります。

 これは、国家安全戦略の文書の中でも、いろいろな国の2プラス2の文書の中でも、あるいは外交交渉の議論の中でも、相当な重要性を持ってサイバー対策をしなければいけないと。ことしも、自民党の中でIT特命委員会というのがありまして、そこへお越しいただいた慶応大学の村井先生という方がおまとめになったところによると、二十六年度の政府全体のサイバー対策の予算が、ちょっと正確じゃないかもしれませんが、五百億ぐらいに伸びてきている。それだけ真剣に対応しているんだというあかしだと思います。

 参考人の方、きょうお越しいただいていると思いますけれども、昨年、情報セキュリティ政策会議でサイバーセキュリティ戦略が打ち出されておりますけれども、まず、今の進捗状況というのをぜひお聞かせいただければと思うので、よろしくお願いします。

谷脇政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の六月でございますけれども、官房長官を議長といたします情報セキュリティ政策会議、ここにおきまして、サイバーセキュリティ戦略というものが決定をされたところでございます。

 現在、これに基づきまして、政府、各府省のセキュリティーポリシーの基礎となります統一基準群の見直し、それから通信、電力等の重要インフラにかかわりますセキュリティーのあり方、行動計画というふうに呼んでおりますけれども、この見直し、それから人材育成プログラムの改定など、年度末に向けて検討を進めているところでございます。

 また、それ以外にも、研究開発戦略のあり方等々についても現在議論を進めている、こういう状況でございます。

大野分科員 ありがとうございます。

 このサイバーについては、本当に深い深い議論がこれから必要になってくると思いますし、いろいろな国際的な協調、それからサイバー対策のやり方、これはもっともっと突っ込んだやり方をしていくべきなんじゃないか、こんなことを私は実は思っています。この点については、ぜひ官房長官も、今以上にもっともっと機能強化が行われますように。

 そしてなお、このNISCという組織、セキュリティセンターでありますけれども、これもまだ法律上の根拠に基づいていない組織であります。予算も限られた中でやられている。この制約の中でもかなりの成果になっているんじゃないかと思いますけれども、これから本当にしっかりとした機能になっていかなくちゃいけないと思いますので、ぜひいい組織になりますように、また御尽力を賜りますようにお願いしたいと思います。

 もう時間が参りましたのでお答えは結構でございますが、最後に、私、ずっと思っていたことがあります。

 それはちょっと毛色の変わった話でありますけれども、実は、国内、内政においては構造的な、根幹的な問題は何だろうといったら、当然のごとく少子化であると思っているんです。少子化大臣を中心にいろいろな政策を打っていただいて、今、合計特殊出生率も、ひどいときよりはかなり改善してきている傾向にあるので、それはすばらしい成果だなと思っているんです。

 私、実は、地元でしきりにこういうことをおっしゃった方がいらっしゃって、なるほどと思ったのが、総理大臣とかあるいは官房長官とか、要するに、政治、国家を運営する、メディアにもよく登場される方が、結婚するとか子供を産むということは悪いことだけじゃないんだよ、いいことなんだよということを常に言う。

 昔、古代のローマのときに、大カトーという政治家が、毎回のように、カルタゴは滅ぼされるべきである、全然関係ない演説をしたにもかかわらず、最後にずっとこれを言い続けて、カルタゴはああいうことになった。

 カルタゴと比較してはいけない話ではありますけれども、滅ぼしちゃいけないんですけれども、滅ぼすべきはやはり少子化でありますので、毎回のように、子供っていいよね、こういうことをぜひおっしゃっていただければ多少の改善にもなるのかな、そんな地元の思いを官房長官に伝えさせていただきまして、私の質問にさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。

林主査 これにて大野敬太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、前田一男君。

前田分科員 北海道八区の前田一男でございます。

 きょうは、お時間をいただきまして、まことにありがとうございます。間もなく戦後七十年になろうとしております。その中で、戦後の枠組み、特に国連を中心とした国際社会の枠組みというものは全く変わっていないように感じています。

 特に私が憂慮するのは、日本人の心自体が、戦後の体制、GHQ史観と言ってもいいのかもしれません、そういったものから抜け切れていないというふうに感じているのであります。

 占領文書二百五十万ページを読破した高橋史朗先生が最近上梓された本があります。表題は、「日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと」というものであります。

 この方がこの本を書いたその目的として、戦後思想とか戦後教育の問題は、全て占領軍の目を気にしたおびえのような自虐史観から生まれてきている、その原点をきちんと実証的に解明して、それは誤解であるということを世界に向かっても日本人に向かっても明らかにして日本を取り戻したいというのが、この本を書いた目的であるというふうに書かれています。

 もう七十年たったんですから、憲法の改正も含めて、日本人自身が、この国をどうしていきたいのか、将来どんな国にしていきたいのかということを決めなければいけないというふうに思います。

 私自身は、さきの戦争において、その当時の日本人が、そして政府関係者が、その置かれた時代環境の中でどうしても戦争に向かわなければならなかったのだというふうに、自分の頭で考えて思っています。

 それは決して戦争を肯定するという意味ではなくて、その当時の大義をきちんと説明して、その結果、日本は負けた、そして新しい平和国家として生まれ変わった、そういったことを後世にきちんと伝えていく必要があろうというふうに思っています。

 一方、私たちは、中国大陸に入っていきましたから、中国や韓国に対しても大変なつらい思いをさせたと思います。今、中国や韓国には、日本に対しての恨み心というか、悔しい思いといいましょうか、そういったものがあると思います。したがって、これは条約で片づいたからおしまいだというのではなくて、これからもさまざまなレベルでもって心を寄せていくべきだというふうに思っています。

 しかし、そのことと、我が国が名誉を毀損されている、そういううそに近い話、そういったことまでも甘んじて受けなければならないというのは、私は別のことだというふうに思います。いわゆる従軍慰安婦の問題がこれに当たるというふうに私は考えています。

 二〇〇七年に、韓国系のアメリカ人投票者会議の働きかけによって、アメリカの下院で対日非難決議というものが出されました。この内容は、日本政府による強制的な軍隊売春制度が行われた、そして、二十世紀最大規模の人身売買の一つであり、その根拠は河野談話であるというふうに言われています。

 この河野談話で言っている軍の関与というのは、民間事業者による売春あっせん業を軍も利用した、そういう趣旨ではないんでしょうか。それとも、この決議で言われているように、軍が二十万人の韓国人を初めとする女性を拉致して、そして強制的に日本の軍人の性の処理に使った、そういうことなんでしょうか。ぜひこの点をお答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 河野談話に述べられている軍の関与としては、慰安所は当時の軍当局の要請により設営をされたものであること、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与したこと、慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったこと、そうしたことが挙げられるというふうに思います。

 これらに鑑みれば、御指摘については、そのいずれにも該当はしないというふうに思います。

前田分科員 アメリカの下院決議に戻りたいと思います。

 この決議がなされたときに、日本政府はどんな抗議をして、それに対してアメリカ政府はどんなふうに反応したのか、これは非常に重要な問題だというふうに思います。

 当時の質問主意書などに対して、政府は、日本政府の立場は十分説明している、そして、この説明の内容については明らかにすることは差し控えるというふうに言っておられます。

 私は、説明の内容を明らかにすることを差し控えるというのが、本当に国益にかなうものなのかというふうに疑問に思うんです。この日本政府の立場とは、決議の前提、そして内容は間違っている、決議は取り消してほしいというものだったのか、それとも、巷間伝えられているように、河野談話により私たちは十分謝罪をしている、見舞金も出している、だから解決済みなのだ、そういう立場なんでしょうか。この点をお答えいただきたいと思います。

岸副大臣 委員御指摘の米議会における決議についてでございますけれども、日本政府としては、慰安婦問題に関する事実関係、特に慰安婦問題に対する日本政府の取り組みに対して正しい理解がされていないとの考えのもとで、在米国大使館を初めとする政府関係者から米国議会及び行政関係者など各方面に対しまして、日本政府の立場について十分に説明をして、米国側の理解が得られるよう最大限努力をした、こういうものでございます。

 米国との具体的なやりとりにつきましては、説明の相手方との関係もありますので、個々の事例について明らかにすることは差し控えさせていただきたい、このように考えております。

前田分科員 明らかにはなかなかしていただけないのかもしれませんが、しかし、今や、河野談話がつくられたその経緯、そして真相というものは明らかになってきたというふうに思います。

 韓国に、もうこれで終わりにするから日本軍による強制性を認めた文書を出してくれ、そんなふうに言われて、特に証拠はなかったですけれども、韓国が選抜した十六名の元慰安婦という女性のヒアリングをさせていただきながら、しかし、結論は、軍の強制性、そういったところに話を合わせるようにして一つの文書をつくっていった。そして、それも、韓国政府とどういう言葉を使うかというところまで事前にすり合わせをしたものであったというふうに思います。結果、河野談話は、韓国によって大いに政治利用される結果となりました。現在、そして将来、もっとこれが政治利用されていくのだというふうに私は思います。

 私は、この河野談話は、政治的打算による文書であって、日本の政治の敗北の象徴ではないかというふうにも思うのであります。河野談話と、そしてその後政府がこれを継承し続けたことで招いた現在の事態、国際社会では、日本軍が二十万人の女性を拉致して性奴隷とした、こういうことがまかり通っているのであります。

 これは、韓国がけしからぬというんじゃなくて、日本国政府自身の招いた帰結であるというふうに思うのでありますが、この点、どうお考えでしょうか。

岸副大臣 お尋ねの点でございますけれども、日本政府として、当時、政府文書の包括的調査や韓国で実施した聞き取り調査等を行い、それらを全体として判断した結果、河野談話のとおりとなったものである、こういうふうに承知をしておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、安倍内閣におきましては、この問題を政治問題あるいは外交問題化させるべきではないという考えでございます。

前田分科員 河野談話を取り消すのが私は一番いいと思うのでありますけれども、しかし、それが政治的に、また外交的に難しいのであれば、新たな談話を発表するというのも一つの方法だと思いますし、また、河野談話を継承しながら、しかし、その真意が正確に伝わっていないというふうな考え方で、河野談話のつくられた経緯や、そして真意はこうだったということを改めて声明か何かの形で出すべきではないかというふうに考えています。

 二月二十日の予算委員会の中で、山田議員と石原元官房副長官との質疑で河野談話の真相の一端が明らかになりました。その中で、各紙世論調査では、五〇%から六〇%の方々が、河野談話についてはもう一度検証してみるべきではないかというふうにも答えられているようであります。

 河野談話の真意を改めて国際社会に説明する時期、それが今来ているというふうに思うのでありますけれども、この件についてはいかがでしょうか。

岸副大臣 安倍総理は、この慰安婦問題につきまして、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々のことを思い、心を痛めておられる、この点については歴代総理と変わらないということでございます。

 これまでの歴史の中で、女性の人権が侵害されてまいりました。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、また、日本としても、これに対して全力を尽くしていく考えでございます。

 安倍内閣として、先ほども申しましたけれども、この問題を政治問題あるいは外交問題化させるべきではない、こういうふうな考えでございますけれども、今後も国際社会に対してしっかり説明をし、そして理解を求めていくということでございます。

前田分科員 政治問題化させることは、我が国にとっても、また相手国政府にとっても、必ずしもいいことではないというふうに思います。

 私が危惧するのは、今はそれでやり過ごせたとしても、これから二十年後、三十年後の私たちの末裔が、あのときにきちんと説明してくれれば、今こんな状況にはならなかったのにというふうに言われはしないかというふうなことであります。

 私としては、ぜひここは、乾坤一てき、日本の名誉を回復するための声明というものを発していただきたいというふうに思います。これは決して蛮勇ではありません。英霊たちが手を合わせて切望していることだというふうに私は思います。

 こういった過去の談話についての検証を進めていく、そして声明を発していくということとはまた別に、同時代の日本人が人道的な功績をなしてきた、こういったこともあわせて国際社会にアピールしていくことも、戦時中の日本のイメージ、印象を変えていくには重要なことではないかというふうに思っています。

 一九四〇年、昭和十五年から一年くらいの間に、ナチス・ドイツに追われて逃げてきたユダヤ難民が六千人ぐらいおられました。そして、この助かったユダヤ難民の口から命の恩人と言われた日本人がお二人おりまして、一人は、リトアニアのカナウス領事館の杉原千畝領事代理でありまして、もう一人は、鎌倉におられた小辻節三博士であります。

 杉原千畝の名は比較的知られておりますけれども、彼がリトアニアで発給したのは日本の通過ビザでありました。この通過ビザは十日間しか猶予がありませんで、この十日間の中で希望する国に行くのには十分な調整ができませんでしたので、この十日間の通過ビザの延長を実現させて、そして、太平洋戦争が始まる一年の間に約五千人の方々を希望する国に渡航させていった、そういったことをしたのがこの小辻節三さんであります。

 最近、山田純大さんという四十歳の俳優さんでありますけれども、この方が小辻節三さんの本を世にあらわしました。この人は杉良太郎さんのお子さんなのでありますけれども、従軍慰安婦が問題にされたのと同時代に生きた日本人のこの勇気ある行動、そういったものもあわせていろいろな形で、政府がやるのか民間の方々がやるのかは別として、ぜひアピールをすることが必要ではないかというふうに思っています。

 この小辻節三さんに助けられた人たちが今世界じゅうにおられますので、ぜひこういった話を広げてもらうということも、一方で、日本の戦争中の印象をよくしていくためには必要なことだというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 外務省としても、杉原千畝元副領事の行動は勇気ある人道的な行為であったと認識しております。また、御指摘のあった、我が国国内に入国したユダヤ人のビザ期限の延長及び出国支援を行ったとされる小辻節三氏の行為も同様のものであったと思われます。

 外務省は、これまでも外交史料館に杉原千畝顕彰プレートを設置する、杉原氏関連映画、展示会に対する支援を行うなど、さまざまな協力を行ってまいりました。杉原元副領事や小辻氏の業績を語り継いでいくことは重要であると考えております。

前田分科員 今、この小辻節三さんの映画をつくろうという動きが民間の中でも出ているようであります。ぜひ、こういった日本人の戦時中の功績、また勇気ある行動、そういったものをいろいろな形で世界に広げていく、そういう助けを政府としてもしていただきたいというふうに思います。

 次に、国連憲章の敵国条項の削除に向けた活動、これについて質問したいというふうに思います。

 冒頭申し上げたように、今の国際連合の枠組みは、戦後の体制をそのまま引きずったものだというふうに考えています。まさに戦後体制の象徴であろうというふうに私は思います。

 本当は、戦後七十年の節目のこのときに、平和への脅威に向かって新たな国際社会の枠組みとしての新しい国連憲章というものをつくって、そして、世界が協調体制の中で将来に向かっていくという形ができるとよかったのでありますが、まだ一年ありますけれども、どのような動きになっているか、私にはそのような動きがまだ見えておりません。

 そして、この中で、敵国条項がいまだに残っていることは残念であります。この敵国条項の削除について、現在の日本政府の考え方をお聞きしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がありましたいわゆる旧敵国条項でございますが、まず、事実関係として、一九九五年の国連総会で既に死文化をしているという決議が採択されております。

 また、二〇〇五年の国連首脳会合、これはまさに国連六十周年でございますけれども、憲章上の関連する条項における敵国への言及を削除するという加盟国の決意を示す成果文書が採択されています。ただし、さはさりながら、死文化したとはいえ、今委員からも御指摘がございましたように、日本としては、引き続き、この旧敵国条項の削除を求めていくということが大変重要だと考えております。

 他方、ただ、旧敵国条項の削除は、国連憲章上、非常にハードルが高いことも事実でございます。国連憲章の改正が必要でございまして、国連憲章の改正には、加盟国の三分の二の賛成、そして、安保理の全ての常任理事国、いわゆるP5でございます中国、ロシア等も含みますが、彼ら全ての賛成を含む安保理のメンバーの三分の二による批准、ある意味で極めて困難、難しい手続が定められております。国連憲章の改正というのは決して容易なことではございません。

 ただ、この関係で、委員御承知のとおり、国連憲章の改正の関連では、私ども、日本のある意味で悲願として安保理改革がございます。現在日本は、国連の分担金の一〇%以上、アメリカに次ぐ第二位のお金を拠出しているにもかかわらず、安保理のメンバーには自動的には入れない。いつも何年かごとに非常任理事国の選挙に出て、大変な選挙活動をして当選しないとメンバーになれない。今は、現に非常任理事国になっておりません。そういうこともございまして、国連憲章を改正することにより安保理改革をするというのが非常に重要な外交テーマになっているわけでございます。

 そういうこともございまして、今申し上げたような憲章改正の厳しい手続も踏まえて、安保理改革も含む国連憲章の改正を実現する、そういう他の課題との関係にも留意しつつ、まさに今御指摘がありました旧敵国条項の削除というのを求めていくことが必要だと考えております。

前田分科員 この点はちょっと粘りたいというふうに思うのでありますけれども、国連憲章の五十三条は強制行動について書かれています。これは、安保理決議などがなくても、例えば安保理の国が日本に新たな侵略の意図ありとみなせば、これを盾に軍事行動に出ることもできると読めないこともありません。

 死文化されているということではありますが、しかし、国連改革全体の先が見えない中においては、私は、この敵国条項の削除を各国政府に働きかけていくことを優先すべきではないかというふうに思うのでありますが、その点、もう一度答弁いただけませんか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がございましたように、いわゆる旧敵国条項というのが国連憲章の中で三つあると言われておりまして、五十三条と七十七条と百七条に敵国、エネミーステートあるいは敵、エネミーという文言が使用されております。

 その中でも特に五十三条につきましては、委員からも御指摘がございましたとおり、地域的取り決めまたは地域的機関によってとられる強制行動について、これは通常安保理の了解が要るわけでございますけれども、旧敵国についてはそれを例外とするというような規定が残っているわけでございます。

 そして、先ほど申しましたように、私どもとして、この旧敵国条項の削除を求めていかなければいけないということは当然でございまして、あと、若干繰り返しで恐縮でございますが、先ほどの死文化しているという話につきましては、一九九五年と二〇〇五年、総会と首脳会合でそれぞれ死文化の決議等が、成果文書が採択されておりますが、例えば九五年の国連総会の決議でも反対をしている国は総会のメンバーの中でゼロでございまして、中国とかロシア等も含めて、一部棄権をしている国はございますが、ほとんど九割九分が賛成ということになっておりますし、国連六十周年の首脳会合においても、コンセンサスの形で国連加盟国全部がそれに賛成しているということでございます。したがって、死文化といっても、もちろん法的にはそれが削除されたわけではございませんが、実質的には、今申し上げたように、この敵国条項というのが、五十三条、御指摘の面も含めて適用される余地はもはやないということは考えております。

 その上で、繰り返しでございますが、削除は必要だと思いますが、憲章改正はやはり非常に各国にとっても重い、難しいということはあると思います。過去、国連ができてから国連憲章が改正されたのは三回だけでございます。これは、安保理あるいは経社理のメンバーをふやす、あるいはその関係での憲章の改正でございますが、その当時は、国連のメンバーがまだ百から百二十ぐらいでございました。その中で三分の二をとって、国連のメンバーがどんどんふえていく中で、経社理あるいは安保理の数をふやした。他方、今は百九十三カ国が国連の加盟国になっておりまして、その三分の二は、百二十カ国以上の賛成が必要となっております。

 したがって、そういう中で、今申し上げたように、旧敵国条項の削除を先に求めていくということがどこまで現実的なのか。他方、それをやることによって、同時に、私どもにとってある意味で最も重要な日本の外交課題の一つでもある安保理改革というのが取り残されてしまっても困る。そういう中で一体どういう形で、御指摘があった、来年、国連の七十周年でございます、どういうふうに日本として国連に働きかけをしていくのかということについては、今の委員の御指摘も踏まえてこれから考えていかないといけないと思っております。

前田分科員 敵国条項の削除が仮に実現したとして、それが今度、安保理の改革が遠のくということは、これは全く別の話だというふうに私は思います。今、死文化というお話もありましたし、また、この決議に対して反対する国がほとんどなかったというふうなこともおっしゃられました。決してハードルは高くないというふうにもとれないでしょうか。

 敵国条項の削除には、日本などが改正決議案を総会に提出して、加盟国の三分の二、百二十九カ国以上の支持を得て、そして批准を得ることが必要だというお話でありました。反対する国がないのであれば、そして、六十年、今から九年前にもそのようなコンセンサスがとれているのであれば、来年はやはり戦後七十年という一つの大きな節目であります、今の日本の国力でそれは無理なんでしょうか。高いハードルかもしれませんけれども、そういったことをぜひ実現していただきたいというふうに思います。いかがでしょうか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員がおっしゃったように、来年は国連ができてから七十周年の節目の年でございます。まさに、日本として何ができるか、何をするべきか、国連の主要メンバーとして考えていかないといけない、全くおっしゃるとおりでございます。

 そして、国連総会の決議等でほとんどの国が旧敵国条項の死文化に賛成しているのだから、日本の力をもってすれば憲章改正もできるのではないか、それは、一面、そういう面もあると思います。ただ、同時に、やはり、旧敵国条項を死文化させることには賛成しても、今申し上げたように、憲章改正ということになると、各国はいろいろ思い入れがあるわけでございます。日本にとっては、もちろん、安保理改革と旧敵国条項の削除というのがある意味で一番大事な憲章改正との関係のテーマでございますけれども、これは、ほかの国もそれぞれあるわけでございます。

 そういう中で、今言ったように、委員もおっしゃったように、百二十カ国以上集めて、みんなが賛成でき、かつ、P5、常任理事国の全ての賛成を得ることができる憲章改正、そしてそのパッケージの中にうまく旧敵国条項の改正をどうやって入れるかというのは、それはよく考えないといけなくて、日本の立場からすれば、旧敵国条項の削除だけを見れば委員がおっしゃるとおりだと思うんですが、各国の立場、各国の帽子をかぶってみますと、彼らにしてみれば、この問題もあるんだ、あの問題もあるんだというふうになって、場合によっては収拾がつかなくなってしまう可能性もある。

 そこをどうやってうまく、日本のプライオリティー、重要な問題に持っていくかということは知恵を絞る必要があると思いますが、今委員の御指摘のありました点も含めて、戦後七十周年に向けてさらに外務省としても考えさせていただきたいと思っております。

前田分科員 一九九五年の国連総会の決議において、敵国条項削除のための国連憲章の改正を行うために、将来の最も至近の適当な会期において開始する意図を表明するというふうに言っているんですから、もう何年たってしまったんでしょうか。来年は七十年という一つの節目ですから、そういった敵国条項の削除、もっと大きく安保理の改革とかそういったものまでいければなおいいことでありますけれども、ぜひその希望を諦めないでいただきたいというふうに思います。

 私は、この国の未来を憂う同志と一緒に、今、日本がまだ覆われているGHQに植えつけられた自虐史観、ウオー・ギルト・インフォメーション・プログラム、日本人に戦争犯罪の意識を刷り込む情報宣伝計画、こういったものからこの国を解き放って、道義国家として将来の世界に貢献できる、そういうふうな国をつくっていきたいというふうに思って政治家になりました。これからもそういう方向で努力してまいりたいというふうに思いますので、御指導のほどよろしくお願いします。

 本日は、ありがとうございました。

林主査 これにて前田一男君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、岩屋主査代理着席〕

岩屋主査代理 次に、辻元清美君。

辻元分科員 私は、集団的自衛権の行使について小松法制局長官と官房長官に質問したいと思います。

 まず、小松長官に御質問をいたします。

 法制局の仕事というのは、今、集団的自衛権の行使の憲法解釈に焦点が当たっていますけれども、法制局の日常の業務というのは膨大な数の法令審査を行っていらっしゃると思います。基本的に、私たちも政府におりましたときに、非常に厳しい法令審査がありまして、何回も突き返されました。

 そこでお伺いしたいんですけれども、今、法律というのは日本に何本ぐらいあるんですかね、長官。

小松政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 突然の御質問でございますので、今資料を持っておりませんので、後ほど調べましてお答え申し上げます。

辻元分科員 政令はいかがですか。

小松政府特別補佐人 政令につきましても、御通告をいただいておりませんので、今ここで答える材料を持っておりません。

辻元分科員 いや、大体でいいですよ。法制局長官なんですから。日本の法律の数も御存じないんですか。大体で結構です。後ろに聞かないでください、後ろに。

小松政府特別補佐人 大変恐縮でございますが、御通告をいただければ、当然調べてお答えができるわけでございます。

辻元分科員 両方とも約二千ですよ。

 今、法制局長官として、集団的自衛権の行使についての解釈変更ということに焦点が当たっておりますけれども、法制局の仕事というのは法令の審査、そして、最低限の知識を持っていただかないと、法制局長官としては私はお仕事できないんじゃないかと思うんです。

 法制局というのは、普通、最低十五、六年法制局で訓練を積んだ方が長官になるわけです。日本の法律の数も政令の数もわからない、そんな法制局長官が世界にいるでしょうか。私はこんなもの通告せぬでもわかるやろうと思って聞いたまでなんですが、法制局長官、それでいいと思いますか。

小松政府特別補佐人 マスコミ等から、法制局勤務の経験がない、そういうことで、こいつは国際法はちょっとかじったかもしれないけれども国内法の知識は基本的に欠けているのではないか、そういう御批判があるということはよく認識しておりまして、それなりに私も八月以来勉強もし、努力をしているつもりでございますが、足りないところがございましたら、これからさらに努めて、職務を全うしたいというふうに考えております。

辻元分科員 昨年の八月から勉強して、法制局長官というのは務まる仕事ではないと思いますが、長官、いかがですか。

小松政府特別補佐人 私は、八月に内閣法制局長官を拝命いたしまして、職員の皆さんを前に挨拶をいたしましたけれども、そのときに申し上げましたのは、私は、参事官の経験もございませんので法令を審査する側に回った経験はございません、しかし、外務省で条約等を長らく担当してまいりましたので、これは、条約をやるということは、単に条約だけではなくて、その担保法でございますとかそういう国内法の知識を当然必要とするわけでございます。私は、審査する側に回ったことはございませんが、審査を受けたという立場で法制局の御指導をいただいたという経験は外務省員の中ではかなり豊富ではないかと考えていると。

 今回、図らずも内閣法制局長官の任命を受けたということは、今まで試験を受けていた側の者がまれに試験官に回ったようなところで戸惑いもございますが、今までの経験を生かして、かつ、仕事と申しますのは、役所、これは私を含めまして七十七名の組織でございまして、それぞれ一騎当千の法律のプロでございます、そういうプロの力をかりて、私どもは一丸として内閣の重要な仕事を果たしていく、こういう覚悟でございます。

辻元分科員 一回も審査をしたことがない、法制局に御指導をしていただいた経験はあると、今長官おっしゃいました。

 日本は、一つの国家として成り立っております。法治国家です。そのトップが、法制局長官として、法令審査、非常に大事なお立場なんですよ。この八カ月、何を勉強してきたんですか。どうぞ、具体的に。

小松政府特別補佐人 政府の要職をお務めになりました辻元委員は、当然、御承知、御案内のとおりでございまして、法制局審査と申しますのは、まず、法制局参事官がそれぞれの法令の案を非常に綿密に精査いたします。それが、今度は部長に上がります。部長が審査したものをさらに法制次長、私のナンバーツーでございますが、ここにおいてまた厳しい審査をするわけでございます。

 私は、内閣法制局設置法上、内閣法制局の事務を統括するという立場に置かれております。この統括するという言葉の意味でございますが、それは、最終的にはその仕事について責任を負うということでございます。

 例えば、非常に法制局の仕事は技術的な仕事であるという御指摘でございますが、確かにそのとおりでございます。しかし、それでは、ほかの省庁は技術的な仕事がないのか、専門的な仕事がないのかといえば、例えば、厚生労働省にいたしましても、金融庁にいたしましても、経済産業省にいたしましても、大変専門的知識を有する部局はたくさんございます。

 官庁の仕事を統括する立場にある大臣が、極めて専門性の高い仕事をしている部局の仕事の、専門で当たっている方と同じ精度を持って、同じエネルギーを持って仕事をすることが求められるとすれば、各省に大臣は必要ないということになるわけでございます。法制局についても同じだというふうに認識しております。

辻元分科員 法制局は違います。法制局というのは、今まで、歴代、長年訓練を積み、さまざまな法令審査をし、その経験を積んだ人が日本の法令を審査するトップとして働くというのが通例だったんです。今、八月から何を勉強してきたんですかと言ったら、いや、何か、部長がおって何々がいてと。

 そうしたら、法制局では、例えば、出された、今回も集団的自衛権の行使について解釈を変更する閣議決定をしたいと総理は言っています、これが今の憲法の範囲を超えるのか超えないのか、法制局で誰が審査するんですか。具体的に言ってください。

小松政府特別補佐人 その前に、冒頭御質問のございました法律、政令の数でございますが、法令データ提供システムより検索をいたしまして、法律千九百七本、政令二千三十二本でございます。

 ただいまの御質問でございますが、これは、内閣法制局設置法上、内閣法制局長官はこの事務を統括するわけでございますから、最終的に私が判断いたします。

辻元分科員 しかし、その私には経験がなくて、今、検索して法令の数もわかったようですけれども、今までは法制局に御指導いただいていたと。ですから、法制局の中では次長が判断するんですか、次長が。最終的に、経験を積んだプロフェッショナルの次長が判断するんですか。

小松政府特別補佐人 お言葉を返すようで大変失礼でございますが、私は、憲法の解釈をするのに法令の数を知っている必要があるとは考えておりません。

 それで、憲法の解釈でございますが、それなりに私も別の立場で仕事をしてきたつもりでございますので、もちろん、法制局は組織として動いているわけでございますから、今、私は就任以来、局内で議論を積み重ねておりますけれども、最終的には私の責任において判断を申し上げるということでございます。

辻元分科員 それでは、国際法等、外務省でもお仕事されてきたということで、今、安倍総理から頼りにされていて、集団的自衛権の行使の憲法解釈を変更するということについて、閣議決定で行うと明言しましたが、二十四日に、それについてはどうですかと記者に問われて、小松長官は、これは総理の方針に従ってやるということですと。総理の方針に従って何をするんですか。

小松政府特別補佐人 私が退院をいたしまして、初めて登庁いたしましたのが二十四日でございますが、そうすると、合同庁舎の入り口のところで記者の皆さんが待っていらっしゃって、そこでぶら下がりの質問を受けました。その質問は、以下の質問でございます。

 それで、いろいろ報道されておりますけれども、実は相当事実と違う報道がなされております。ただ、さらに申し上げますと、事実と明らかに異なる報道をしているのは、私の見たところ一紙でございまして、ほかの新聞につきましては、その立場にかかわらず、そんなに違わないことを言っているわけでございます。

 そこで、申し上げますが、そのときの記者の方々の質問は、私が入院をしていたときに、衆議院の予算委員会で、岡田先生だと思いますけれども、総理との質疑がございまして、その質疑の中で総理が、安全保障の法的基盤の再構築の問題、これについて今検討中であるけれども、安保法制懇から報告書が出されたら、それを検討の上、これは法制局の意見も聞きつつと、たしかおっしゃったように私は記憶しておりますけれども、まず閣議決定を内閣の考え方として示したい、その上で、それを国会にお諮りして議論をしていただきたい、そういう答弁をなされたが、小松はどう思うか、こういう御質問でございました。

 それを受けまして私が答えましたことは、私は入院中、テレビでその質疑も見ておりました、安全保障の法的基盤の再構築について、内閣の考えを閣議決定として示す、それを国会で御議論いただく、そういう方針を内閣総理大臣がお示しになったということであるので、内閣の一部局である内閣法制局としては、それを前提としてやるべきことはやります、こういうふうにお答えしたわけでございます。

 そこで、一紙は、言いませんが、それは、集団的自衛権に関する憲法解釈を変更するという内閣総理大臣の方針に従い、やるべきことをやるという、私が言ったというふうに報道しておりますが、それは間違いでございます。

辻元分科員 それでは、集団的自衛権の行使という、最も戦後、私は、十七年前に初当選から安保委員会、それから周辺事態法の議論にも参加しておりまして、その都度都度、集団的自衛権の行使の制約があるために、何ができて何ができないかとさんざん国会で議論してきて、歴代の法制局長官とも議論してまいりました。非常に日本の根幹をつかさどっている憲法九条。

 そうしたら、法制局長官にお答えいただきたいと思いますが、現時点で、この憲法九条では何が禁じられているんですか、現時点で。

小松政府特別補佐人 これは、安倍総理も、それから官房長官も私も、現時点において、憲法九条に関する解釈は従来どおりであると言っているのです。その上で、今、安保法制懇で議論をしているので、その結果を踏まえて再検討するというのが現在の内閣の立場でございまして、それは私の立場でもございます。

 そこで、今の、従来の憲法解釈は何かということ、これは長々と申し上げるのは大変申しわけございませんので、なるべく短く申し上げたいと思いますが、こういうことでございます。概略、次のように言っております。

 憲法第九条一項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定し……(発言する者あり)

岩屋主査代理 質疑者以外は御静粛に願います。

小松政府特別補佐人 さらに、同条第二項は、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定している。

 しかしながら、憲法前文で確認している日本国民の平和的生存権や、憲法第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を国政上尊重しているという趣旨を踏まえて考えると、憲法第九条は、外国からの武力攻撃によって国民の生命や身体が危険にさらされているような場合に、これを排除するために必要最小限度の範囲内で実力を行使することまで禁じてはいないと解され、そのための必要最小限度の実力を保持することは禁じていないと解される。

 したがって、こういう考え方に基づきまして、次のようなことを言っております。

 我が国が例外的にやむを得ず武力を行使する場合があるが、その要件として、以下の自衛権発動の三要件が満たされなければならないということでございます。

 すなわち、第一要件、我が国に対する急迫不正の侵害があること……(発言する者あり)

岩屋主査代理 答弁中ですから。

小松政府特別補佐人 すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、二、これを排除するために他の適当な手段がないこと、三、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、この三要件を満たさない武力行使が禁じられているというのが政府の見解でございます。

辻元分科員 それでは、ちょっと具体的な認識をお聞きしたいと思います。

 集団的自衛権の行使は、もう歴代、法制局長官が答弁してきました。具体的に聞いてみたいと思います。

 ベトナム戦争にアメリカは参戦しましたね。これはどういう根拠で参戦しましたか。法制局長官の御認識を聞きたいです。

小松政府特別補佐人 ベトナム戦争という言い方が適当かどうかということは私は存じませんが、いわゆるベトナム戦争と言われているものについてアメリカが参加をいたしましたということは、国際法上は集団的自衛権を援用しているというふうに承知しております。

辻元分科員 それでは、つい最近、アフガニスタンに米軍が行きました。これは何ですか。

小松政府特別補佐人 これは、いわゆるナイン・イレブンでございますけれども、同時多発テロで、これはアメリカに対する武力攻撃であるとNATOも認定したわけでございます。これは初めてNATO条約第五条を発動いたしまして、NATO諸国は集団的自衛権を発動するということを言ったわけでございます。

 それで、この九・一一の同時多発テロがございましてからしばらくたちまして、米英軍がアフガニスタンからタリバンそしてアルカイダを放逐するという作戦を展開いたしましたけれども、これにつきまして、米英軍は集団的自衛権を行使したという報告を国連安全保障理事会にしているというふうに認識しております。

辻元分科員 このとき、日本はインド洋の給油にとどまったわけです。これはなぜですか。

小松政府特別補佐人 給油にとどまったのはなぜかという御質問でございますけれども、それは、まず、どういう観点からの御質問か、私、必ずしもよく理解できないわけでございますが、まず、これはテロに基づく大変な惨事であるということから、世界におけるテロとの闘いに日本としても応分の、これは対岸の火事ではないので、協力をしなければならないという内閣の判断がございまして、その上でできることは何かということで、アメリカ、米軍が行っておりました、当時、不朽の自由作戦で、海上からテロリストがアフガニスタン等に侵入をするということを防ぐための作戦をしておりましたので、それを支援するためにテロ特措法という法律を国会で議決をいただきまして、この給油活動を行っていたものでございます。

辻元分科員 今、アフガニスタンに、米軍は個別的自衛権で行っているんですよ。NATO軍は集団的自衛権なんですよ。長官、後ろの人にそんな聞かなくても、長官なんだから。長官はこうもおっしゃっているんですね。憲法の解釈の変更には一定の限界があるだろう、これは十一月二十五日の参議院の決算委員会、昨年です、極めて慎重に行わなければならないと。しかし、この限界の範囲内であれば変えるということもできる、これは歴代の内閣と同じ答弁をしているわけです。

 長官、今もしも、こういうように変えたいと、安倍政権から安保法制懇のものが出たら、いや、これはできます、できませんと判断するわけですよね。例えば、アフガニスタンにNATO軍が集団的自衛権の行使で行きました。このようなことは、今で言う憲法解釈の変更の一定の限界に当たりますか、限界を超えますか、どうですか。長官の判断をお願いします。

小松政府特別補佐人 NATO軍が集団的自衛権を発動したときに給油活動ができるかという御質問でございますか。

辻元分科員 NATO軍は集団的自衛権の行使でアフガニスタンの陸上に行っているわけですよ。一方、長官は、憲法解釈を変えるとしても限界があるとおっしゃっているわけです。これは答弁されているわけですよ。では、長官の言う限界というのは、NATO軍がアフガニスタンに集団的自衛権の行使で行った、自衛隊がそこまでいくというのはどう考えても解釈変更ではできない、限界があるかと聞いておるわけです。

小松政府特別補佐人 これは、安倍総理も何度も繰り返し答弁をされていますけれども、安保法制懇の報告書を待って全体を見直したい、こう言っているわけでございまして、その過程において、当然ながら、内閣法制局設置法に基づきまして、法制局は適切な法的な立場、観点から、法的なプロフェッショナルとしての意見を申し上げる立場にあるわけでございまして、まだ検討段階にございますので、現在、意見を申し上げる立場にはございません。

辻元分科員 それでは操り人形ですよ。限界があると言っているわけですよ、一定の。この限界に当たるかどうか。

 では、アフガニスタンにNATO軍が行ったように、ああいうようにやりたいと安倍さんが言ったときに、法制局は、限界ではなく、認める可能性もあるということですか。

小松政府特別補佐人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、安保法制懇の報告書が出ましたら、それを踏まえまして、全体的に、従来の憲法解釈、そのままでよいのか、また、改める余地があるのかということを検討いたします。

 現時点において、結果を予断することはできないと考えております。

辻元分科員 今の話を聞いているんですよ。おっしゃっているわけですよ、長官自身が。憲法解釈には限界があるんだと。この限界というものは今、法制局にはないということですね。何が限界なのかという見解はないということですね。安保法制懇を待って、安倍さんがどう言うか、それを見てじゃないと、法制局にはその限界が何であるかという見解も何もないということでいいですか。

小松政府特別補佐人 私は、そういうことを申し上げているつもりはございません。

 当然のことながら、現在も検討はしております。しかし、まだそれを最終的な形で申し上げる段階にはないと考えております。

辻元分科員 それでは、周辺事態法の議論における集団的自衛権がどう議論されたか、幾つか問いたいと思います。

 周辺事態法において、後方支援、ロジスティックサポートは日本はできますか。

小松政府特別補佐人 後方支援、ロジスティックサポートという言葉は一般的な用語でございますが、補給とかそういうことを念頭にした、武力行使自体ではない活動ということでございますが、周辺事態法におきましては、後方地域支援という言葉をたしか使っていたというふうに記憶しております。

辻元分科員 なぜですか。そのとおりですよ。なぜ後方支援とせず、後方地域支援としたんですか。そのときの議論はどうだったんですか。

小松政府特別補佐人 それは、従来から政府が述べております憲法解釈の一環として、武力行使との一体化という議論がございまして、その活動自体は輸送、補給のように武力行使自体には当たらない活動でも、他国の武力行使と非常に密接に一体化するという場合には、我が国自身が行っている活動が輸送、補給等であっても、これが武力行使を行ったと同一視されるといいますか、そういう評価を受けるという心配があるので、そこがそうならないという仕組みをつくる必要があるという議論でございます。

 これは、何も周辺事態法のときに初めて出てきた議論ではございませんで、PKO法のときにも、それに先立つ、廃案になりましたけれども国連平和協力法のときからある議論でございまして、周辺事態法においては、他国の、米軍等が行います活動との一体化をしないということをいやが上にも明らかにするために、地域を限定して、後方地域支援という名称にしたというふうに記憶してございます。

辻元分科員 ということは、それは要するに集団的自衛権の行使ができないということだったわけです。

 これも、長官が言うところの憲法解釈の変更の限界に、どうなんですか、限界との関係でいえば。これもまた安保法制懇のお答えを待ってということであれば、何の物差しもないじゃないですか、長官自身の。いかがですか。

小松政府特別補佐人 従来の憲法九条の解釈に関する政府の立場というのは一つの体系をなしておりますので、その全体を憲法解釈の変更の限界の中で変更することができるのかできないのかということを検討する必要があるわけでございます。現在、内々に検討も議論も局内ではやっておりますけれども、最終的な結論が出ているわけではございません。

 それで、今、個別の、この体系の中のいろいろな部分について御質問がございましたけれども、それが最終的に、仮に変えるということであれば、当然ながら、平成十六年に民主党の島聡議員からいただきました質問主意書に対する答弁書に詳しく書いてございますような限界の中で、厳しい制約の中で、真に従来の解釈を変更することが至当であるという結論がなければできないわけでございます。

 それがそういう結論になるのかどうかということをあらゆる角度から検討しているところでございまして、ただいま結果を予断するというわけにはまいらないわけでございます。

辻元分科員 安保法制懇の結果が出ないと、法制局には何の基準もないということじゃないですか。

 そうしたら、最後にお聞きしたいんですが、これを閣議決定して解釈を変えました、次、総理大臣がかわりました、その総理大臣がまたもとに戻すというようなことがあったとしても、あなたは法制局長官としてそれに従うわけですよね。

 要するに、内閣がかわるたびにころころ憲法解釈が変わる国というのは、信頼もされないし、社会も政治も安定しません。

 憲法解釈というのは、きのうの産経新聞でのインタビューでも、総理大臣が最高責任者だと。総理大臣、要するに総理大臣の、今、諮問機関の安保法制懇のことばかりおっしゃっていますけれども、総理大臣が変えるということで……

岩屋主査代理 辻元君、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

辻元分科員 ちょっといただくということになりました。

 総理大臣がかわるたびに、また次の総理がもとに戻そうということであれば、あなたは戻すというような見解ですね。

岩屋主査代理 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

小松政府特別補佐人 御案内かとも思いますけれども、法制局長官は特別職の公務員でございますので、全く反対のお考えの総理大臣ができたときに、成立したときに、私がそのままこの職にとどまっておられるかどうかということは極めて悲観的に考えざるを得ないわけでございます。

 内閣がかわれば解釈を変更できるのかということでございますけれども、それ自体は、厳しい制約の中でそれはあり得るわけでございますけれども、総理も御答弁になってございますように、例えば自衛隊の行動を伴うような憲法解釈の変更ということになりますと、これは単に解釈を変更しただけでそれが行政に反映できるということではないわけでございまして、当然に立法措置を必要とするわけでございます。

 それについては、総理は、まず閣議決定を行って、その内容について国会で御批判をいただいた上で、法律を、立法措置を国会にお願いすると言っているわけでございまして、そこで法律ができれば、もちろん、そのもとになっている憲法解釈というものを変えるためには、その一旦成立した法律を変えなければならないわけでございます。これはもちろん国会がお決めになることでございます。

 そういう法律ができていないときに政権交代があったらどうかという御質問でございますれば、それは不可能であるということはないというふうに考えております。

辻元分科員 非常に心もとないです、官房長官。集団的自衛権の行使の憲法解釈変更専用の内閣法制局長官を据えている。私は、日本は立憲主義の国で、法治国家であると思います。私は、これを崩すということは、きょうは二・二六の日ですけれども、武力を使わないクーデターに等しいと思いますよ。

 官房長官は、本当にそれ専用の長官を据えられて、基本的な実務も非常に心もとないです。何でも、内閣、法制懇に従ってと。操り人形じゃないですか。

 官房長官、今まで官房長官の先輩方も、ガラス細工のように、憲法九条のもとでさまざまな積み重ねをやってきたことを御存じだと思いますよ。今のような長官で非常に私心もとないと思いますよ。法令数、法律や政令の数も知らない長官で、法制局長官がこの日本国で成り立つと思いますか。

 最後にそれだけ答弁してください。適任ですか。

菅国務大臣 私は、自信を持って、法制局長官を、役割を果たすことができると思います。

辻元分科員 終わります。

岩屋主査代理 これにて辻元清美君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)分科員 早速始めたいと思いますが、今回の雪害の対策について、私の選挙区でも、国道の除雪が県道、市道に比べてもかなりおくれたという話がございました。

 今ある設備の中では非常に一生懸命やっていただいたんですけれども、やはりこういった非常に深雪になったときに備えて、もう少しこの除雪の設備を、具体的には、グレーダーと言われるものですとか、スノープラウと言われるもう少し安く済むものですとか、こういったものを常時配備すべきではないでしょうか。

 そして、歩道が歩けないという状況が今でも続いているところがございます。歩道の除雪についても重視してやっていただけないでしょうか。

 また、実際に除雪した雪を置いておく場所として歩道が、これはこれで機能している面もございまして、歩道整備がおくれている場所はさらに苦しい状況になっております。国道の歩道の整備もあわせて、雪対策という意味でもスピードアップを図っていくべきではないでしょうか。

 この三つをあわせて、国交省からお願いしたいと思います。

中原大臣政務官 今回の降雪は、甲府を初め、各地で観測史上最高となる記録的な降雪であり、通常の対応能力を大きく超え、社会生活、経済面で重大な影響ができ、大変な状況であったというふうに思っております。

 国道二十号におきましても、神奈川県の大垂水峠を初め、山梨県上野原市から勝沼町、長野県富士見峠において大規模な立ち往生が発生し、全線の通行どめが解除されるまで五日を要したところでございます。

 委員御指摘の、今回のような大雪に備えた除雪車等の整備をすべきだという御指摘でありますけれども、やはり、ふだん雪が少ない地域にロータリー除雪車等を配備した場合、現実的には費用に見合う出動回数が確保できないということがございます。したがいまして、今回、北陸地整及び中部地整から約十八台の除雪車を出動させましたけれども、こういう広域的な支援を充実することによって対応してまいりたいというふうに考えております。

 それから、歩道の除雪でありますけれども、今回の大雪で記録的な積雪となったことから、除雪を行っても排雪の作業が追いつかず、多くの場所で路肩や歩道に雪が残ったままになったため、歩行者の通行に不便を来したものと考えております。

 積雪地域においては、除雪を行っても車道、歩道の幅員が確保されます堆雪幅を確保して道路整備を行っているんですけれども、国道二十号につきましては、今回大雪となりましたが、通常は積雪地域となっておりません。このため、国道二十号につきましては、歩道の除排雪を進め、歩行者の通行の安全を確保していきたいというふうに考えております。

 なお、国道二十号の相模湖付近の歩道整備につきましては、平成二十年度より順次整備を進めておりまして、通学路等における歩行者の安全を確保してまいりたいというふうに考えております。

後藤(祐)分科員 ロータリーはえらい高いので、せめて、グレーダー、これは少し安いです。スノープラウというのは、もともとある散水車みたいなものの前につけるだけの、非常に安くて済むものですから、こういったコストパフォーマンスを考えた形で、常時整備、少しでも充実していただけるようお願いしたいと思います。

 続きまして、除雪した後の雪を、あそこは湖がすぐ近くにあるんですが、通常、豪雪地帯においては河川敷なんかに置く場合が多いと思うんですが、河川敷が全くない、谷間が湖になったようなところで、湖に捨てたい、ですが、これができないということで、大変除雪作業がおくれました。

 これについては、河川法上、どの根拠で、二十九条の河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為の禁止、これにひっかかって湖に捨てられないということなのか。きのう、質問通告のときの事務当局の説明では、根拠は必ずしも明確ではありませんでした。河川法上のどの根拠に基づいて湖に今捨てられない状態になっているのか、これについて説明をお願いしたいと思います。国交省、お願いします。

中原大臣政務官 少し細かい説明になりますけれども、豪雪地帯におきましては、例年、河川区域内の土地に雪捨て場を設置して雪を捨てる行為につきましては、河川法第二十四条及び第二十九条に基づく同法施行令第十六条の八第一項第二号の規定により、河川管理者の許可を得ることが必要でございます。河川法第二十四条及び同法施行令第十六条の八で規定する河川区域内の土地とは、水面を含むものでありまして、河川に直接捨てる場合においても同様の許可が必要となるところでございます。

 今回、関東地方の直轄河川におきましては、記録的な大雪であったことから、緊急的な措置として河川敷を雪捨て場として開放させていただきました。水面を含めて、各河川管理者が河川管理上支障のない箇所において柔軟かつ迅速に対応すべきというふうに考えておりまして、国交省の取り組みを神奈川県に説明してまいりたいというふうに考えております。

後藤(祐)分科員 そうしますと、あの地域、津久井湖、相模湖があるわけですが、ここは、湖に捨てることは可能ですか、神奈川県が判断すれば。

中原大臣政務官 今御説明させていただいたとおりでございますけれども、国土交通省といたしましては、今回、緊急的な措置として河川敷を雪捨て場として開放したこともございまして、今後、神奈川県にこうした取り組みを説明していきたいというふうに考えております。(後藤(祐)分科員「直接も可能ですか、湖の水面に直接捨てること」と呼ぶ)そのことも含めまして、御説明をしてまいりたいというふうに思っております。(後藤(祐)分科員「可能かどうかを」と呼ぶ)

岩屋主査代理 後藤祐一君、委員長を通してやりとりしてください。

 後藤君。

後藤(祐)分科員 説明するということは、可能だということですか。どの条件を満たせば可能なんですか。施行規則を読んでも、縮尺五万分の一の位置図を出せとか、物すごく細かい。そんなものをやっている暇はないという状況なんですけれども。雪が降ってきて、緊急対応のときに、ここに書いてある条件を全部満たせと言われても、なかなか難しいと思うんです。

 ですから、あらかじめ、こういった場合はここに捨てていいということを国交省と神奈川県が相談した上で、そういった状態になった場合には可能ですよということをあらかじめ判断することはできませんか。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 委員の御指摘の件でございますけれども、判断の権限は河川管理者にございまして、取水口の閉塞とか水質の汚濁等の可能性を含めて検討いたしまして判断するということでございまして、そこが河川敷なのか、湖に直接捨てるのかということではなくて、今の前提の条件のところを判断していただいて河川管理者が決めていただくということでございまして、先ほど政務官が申し上げましたように、緊急的な措置というものを私どもはしておりますので、そのことを説明させていただきながら、その事例を参考にしていただくようにしていただきたいと思っております。

後藤(祐)分科員 あらかじめそれを可能だという判断をすることはできませんか。雪が降ってから申請書をつくってということではもう間に合わないわけですよ。

 しかも、この場合は申請者は誰になるんですか。国ですか。国道二十号を管理している国、国交省、相武国道事務所が神奈川県に対して申請書をつくって出すんですか。あるいは、県道なり市道なりをやっているのは、あそこは政令市ですから、三桁国道以下は全部やっているんですけれども、相模原市が、雪が降ってから申請書をつくって出せということですか。

 これはあらかじめ可能にしておくべきでありませんか。事前の対応で、こういった場合の雪についてはこういう条件であれば大丈夫ですということを事前に処理することはできませんか。

加藤政府参考人 御指摘のあった地点については、国道二十号以外は政令市の管理になっておりまして、申請していただくとすれば政令市の方で申請をしていただくということになりますし、今の、あらかじめということでございますが、個別具体のいろいろなケースがございますので一概にこれということにはなりませんけれども、そこは私どもの今やっておりますいろいろな緊急的な事例を紹介することによって、判断の参考にしていただいて対応していただくということをしっかり御説明して、お願いしてまいりたいというふうに思っております。

後藤(祐)分科員 ほかの県でもこういった事例はあると思うんです。河川敷はないけれども水面がある、川の場合もあると思うんですね。事前に、こういう条件であればやっていいということを国交省の方から各都道府県に通知していただけないでしょうか。ぜひ柔軟に対応いただきたいと思います。

 これは、道路の除雪のため、国交省の任務を遂行するための話でございますから、しかも、緊急事態の場合の話でございますから、柔軟に御対応いただきますよう、政務官もぜひここは政治主導で御判断いただきたいと思います。

 ちなみに、環境の観点からは、環境省はこれは廃棄物じゃないので問題ないと言っておりますので、これは純粋に国交省の問題でございますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 次に、農水省ですが、今回の雪対策で、二月二十四日に農水省の対策が発表されました。この中で、果樹等の対策というところについては、二月二十四日の2の(4)、果樹の改植への助成というものなんですが、これは平常時の予算でやれることを書いてあるだけで、あえて言うと、果樹棚が対象として追加されただけだと先ほど民主党の中での会議で説明がありました。

 つまり、果樹の場合は一反当たり年間五万円を四年間、一括で二十万払うそうですが、茶の場合は、これが四万円になるんでしたか、三万円が四年でしたか、いずれにしろ合計で十二万というところは、そこをかさ上げするということを今回の緊急対策でやるつもりはありませんか。かつ、これは、実際に植えかえるといっても、膨大な時間とお金がかかるわけでございまして、こんなお金では全く、これでやめてしまうという事例が恐らく多発すると思います。

 ハウスの方の助成についても、この額では、もうやめようという人を物すごく誘発してしまうと思いますので、ぜひ今回の対策では、既存の予算措置としての補助を超えた、被害額全額かどうかはともかく、それに類するような補助をすべきだと考えますが、農水省としての御見解をいただきたいと思います。

横山大臣政務官 今般の大雪による茶樹への影響については、今なお雪が茶樹を覆っている地域もございます。現時点で被害状況を詳細に把握することは困難な状況にございます。そういう意味では、農林水産省としては、関係県と連携をいたしまして、融雪の進捗を見ながら被害状況の把握にまず努めてまいりたいというふうに考えております。

 仮に、今般の大雪により被害を受けた茶樹を改植する必要が生じた場合には、今ほど質問の中にもございましたとおり、茶改植支援事業の活用が可能でございます。改植費用、十アール当たり十二万円、また、収益が上がるまで、改植をしてから時間がかかりますので、その間、三年間の未収益期間につきましては、十アール当たり四万円を三年間利用することが可能でございます。

 また、同事業への公募につきましては柔軟に対応していきたいというふうに考えておりまして、平成二十四年にも、九州北部豪雨を受けて、この場合には締め切りを四回に分けて公募を行った。そういった過去の実績もございますので、複数回に分けるなど柔軟に対応してまいりたいというふうに考えております。

後藤(祐)分科員 今の十二万円ではみんなやめちゃうと思いますよ。実際にかかる費用をもう少し考えながら、果樹の方はもっと深刻だと思いますけれども、ぜひこれは与党の方でも御検討いただきたいと思います。我々も民主党の中で検討しておりますので、与党・政府でここの補助のアップというのは真面目に検討しないと、これから先、やるのをやめようということにつながってしまうので、官房長官もこれをぜひ督励していただいて、御検討いただきたいと思います。

 それと、特別交付税ですが、三月交付分の繰り上げ交付というものがこの前ありましたけれども、これは、実際に除雪なんかにかかった、地方公共団体でかかったお金を特別交付税で出すというものなんですが、必ずしも全額出ていない、対象にならないと思うんですね。実際にかかった経費をきちんと三月に特別交付税で措置するべきだと思いますが、総務省、いかがでしょうか。

関口副大臣 御指摘いただきました今回の特別交付税の繰り上げ措置でございますが、災害救助法の適用を受けた団体、さらに、平年を大きく上回る大雪に見舞われた団体に対して、特別交付税の繰り上げ措置をさせていただきました。

 先生が御心配しているところは、そういう繰り上げ措置をされた以外にどうするのかということでありますが、これは総務省も、できる限り実態を把握した、所要見込み額を把握して、反映した形で、三月の特別交付税においてしっかり対応してまいりたいと思っております。

後藤(祐)分科員 ぜひ、これは全額出ないという話もありますので、全額対象にしていただけるよう、よろしくお願いいたします。

 雪害は以上でございますので、国交省、農水省、総務省は、以上で御退席いただいても結構でございます。

 次に、ちょっと順番をかえまして、通報者保護の話、J―ADNI事件にかかわる部分についてお伺いしたいと思います。

 これはこの前の予算委員会でもやりましたけれども、通報された方の情報が漏えいしてしまった事案を踏まえて、現行の「研究活動の不正行為への対応に関する指針について」というものの中で完全に禁止されていなかった、これを見直すべきではないかということについて、前向きに検討されていると伺っておりますが、今の指針について、公益通報に該当しない場合でも、告発に該当しない場合でも、通報者の情報は漏らしてはならないということを盛り込むよう指針を改正すべきだと考えますが、厚生労働省赤石政務官、よろしくお願いします。

赤石大臣政務官 委員の御指摘の研究活動の不正行為への対応に関するガイドラインでは、受付窓口に寄せられた告発や相談について、告発として受理するかどうかにかかわらず、その氏名や内容を守るべき秘密の対象とし、そのため適切な方法を講じるよう求めております。

 一方、今指摘のように、その表現ぶりについては一部わかりにくい点があることも事実であります。今回の事案も踏まえまして、告発や相談に関する秘密保持を徹底するため、ガイドラインの表現を工夫するなど、よりわかりやすくするための見直しについて検討してまいりたいと思っております。

後藤(祐)分科員 これは岡田副大臣の方になりますが、こういったガイドラインをつくるときの通則ルールがあって、国の行政機関の通報処理ガイドラインというものが決まっているわけです。この中では、公益通報に該当しない通報についても情報を漏らしてはならないとはっきり現行書いてあります。このガイドラインに沿った、そのままの表現でぜひ改正いただけるよう御検討いただければと思います。これは大臣もその方向で考えるというふうにおっしゃっておられましたので、ぜひよろしくお願いします。

 岡田副大臣、今申し上げた国の行政機関の通報処理ガイドラインが、要するに各省で守られていないんです。全省庁、この通報処理に対するさまざまな規定がございますが、これをきちんと国の行政機関の通報処理ガイドラインに沿った形で、公益通報に該当しない通報についても情報漏えいしてはならないという形で全て見直させるべきだと考えますが、御見解をいただきたいと思います。

岡田副大臣 公益通報者保護法の施行に伴い、国の行政機関において、内部の職員等からの通報や外部の労働者からの通報を適切に処理するためのガイドライン、これは関係省庁の申し合わせでありますが、これを策定しております。これに基づき、各省庁はそれぞれ通報処理に係る規定を策定しております。

 その内容は各省庁の実情に応じて作成されたものであると考えられますが、今回の件も踏まえ、各省庁の通報処理に係る規定が公益通報者保護法の趣旨を踏まえたものとなるよう、法及びガイドラインの周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

後藤(祐)分科員 ぜひ、それぞれの省庁のガイドラインをチェックしていただいて、満たしているかどうか、確認してください。

 それと、そもそも公益通報者保護法自体にこの規定がないこと、つまり、公益通報に該当しない通報についてもその情報を漏らしてはならない、漏らした場合は罰則といったことを規定していないことに私は問題があると考えます。公益通報者保護法の改正をすべきではありませんか。

岡田副大臣 お答えいたします。

 行政機関に通報した者の氏名などの個人情報を当該行政機関が保護すべきことについては、これは公務員の守秘義務を定めた国家公務員法や行政機関個人情報保護法等からしても当然のことであると考えております。行政機関に通報した者の秘密はこれらの法制度によって保護されているものと考えており、まずはこれらの法制度をしっかりと運用、適用していくことが重要であると考えております。

 以上です。

後藤(祐)分科員 刑罰適用とされた事例はほとんどないんです、国家公務員法百条は。個人情報保護法のところでも、刑罰までいくような事例が本当にそれほどあるんでしょうか。つまり、これは運用できないんですよ。公益通報者保護法の中で特則として、これらの法律の特別法としてきちんと規定しないと、同じことがまた起きると思います。ぜひ、この法改正を検討いただきたいと思います。

 それでは、公益通報者については以上でございます。岡田副大臣はもしあれでしたら、厚生労働省も、結構でございます。

 続きまして、集団的自衛権ですが、まず、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の変更は、方法は三つあり得ると思うんです。まず、閣議決定で行うというケース。それと、閣議決定ではなく、安全保障基本法的な、内容としては同じようなものであっても、それを法律で書くケース、これを通すというケース。三つ目としては、閣議決定も安全保障基本法もやらずに、個別の自衛隊法の改正、周辺事態法の改正でも結構ですが、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更が必要な個別法をいきなりストレートに出してくるというやり方。

 三つあり得ると思いますが、これは三つとも法制上は可能でしょうか。法制局長官、お願いします。

小松政府特別補佐人 時間が限られた中、そもそも論で恐縮でございますが、重要な問題でございますので、まず、憲法解釈の変更について大前提を申し上げることをお許し願いたいと思います。

 まず、憲法第八十一条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定しておりまして、いわゆる違憲立法審査権を定めているわけでございます。したがって、憲法の最終的な解釈は最高裁判所において示されるものでございますが、当該権限は司法権の作用でございますところから、ドイツ、フランスにあるような憲法裁判所がない現行日本国憲法下においては、裁判所の判断が示されるためには具体的な訴訟事案が提起されることが必要であり、その場合でも、裁判所の判断は当該個別の訴訟についてのみ効力を生じ、したがいまして、第一義的には、憲法解釈は、行政機関が動いて、行政権の帰属主体である内閣の責任に帰されるものである。

 その上で申し上げますのは、内閣が憲法解釈のような重要な問題について立場を改めることとした場合には、憲法上、国民の代表であり、国の唯一の立法機関である国会に対して責任を負うこと、内閣としては直ちに国会に対して十分な御説明を行うことは当然であるというふうに考えております。

 憲法解釈を行政府が変更いたしましても、自衛隊の行動を伴うようなものについては、それを行政に反映し得るようにするためには必要な立法措置を国会にお願いしなければならないわけでございます。これをつなぐ手順についてはいろいろな方法があると考えますが、まず閣議決定を行い、内閣としての考え方を確定した上で、具体的に立法措置を求めるに先立って国会で御議論をいただくという総理のお考えは、なるべく丁寧なやり方で物事を進めたいとのお考えに基づくものと私は理解しております。

後藤(祐)分科員 三つの方法は可能かどうか答弁してください。余計な前段は要らないです。答弁していないんですよ、今のは。

小松政府特別補佐人 先ほど申しましたように、内閣として、まず、憲法解釈については立場を固めなければならないであろう、それと、立法措置が必要であろう、それをつなぐ方法としては、いろいろな方法があると思いますので……(後藤(祐)分科員「今言った三つの方法が可能かを聞いているんです」と呼ぶ)今の三つの方法も、いずれも法制上排除されるものではないと考えております。

後藤(祐)分科員 そうしますと、先ほど辻元さんの話にもありましたけれども、今回、例えば集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定をしたとします。政権がかわったとします。また行使は可能でないという閣議決定をすることは可能ですか。

小松政府特別補佐人 これは先ほど辻元委員にもお答えしたところでございますが、内閣の解釈をそのまま行政に反映させることはできないので、立法措置が必要であろうということを申し上げているわけでございます。

 したがって、その立法が行われれば、その立法、国会の意思と反して、前提になる変更された憲法解釈を行政府限りで変更することはできないと思いますが、その前の段階であれば、これは、先ほど申しましたような憲法解釈の制限というのはございますけれども、その範囲内で次の内閣が憲法解釈を変えるという可能性は排除されないというふうに考えます。

後藤(祐)分科員 官房長官、三つの方法があります。そして、閣議決定でやると、後でひっくり返される可能性があります。安全保障基本法でやれば、立法府で決めるわけですから、立法府はこれに拘束されます。つまり、法的安定性という観点からすると、閣議決定よりも安全保障基本法の方がいいんです。個別法の自衛隊法改正案をいきなり出す方法ももちろんあると思いますが、なぜ閣議決定でやるんですか。つまり、法的安定性の観点からすると、これと同じ内容を法律で出した方が安定しますし、将来の政権も拘束するということは、今法制局長官が言ったとおりです。

 なぜ閣議決定でやるんですか。そのメリットは何ですか。お答えください。

菅国務大臣 まず、安保法制懇、これについて、現在、集団的自衛権と憲法との関係について検討が行われているところでありますので、まずはこの懇談会の議論を待ちたい。

 そういう中で申し上げれば、二十日の衆議院の予算委員会において安倍総理大臣から答弁したとおり、政府としては、懇談会からの報告書が提出された後に、内閣法制局の意見も踏まえつつ、与党と相談の上、対応を協議した上、閣議決定を行い、国会でも御議論をいただくことを考えているということであります。

 いずれにしろ、このような取り進め方にとっては、法的安定性というのはこの場合でも確保されるんだろうというふうに思います。

後藤(祐)分科員 閣議決定はひっくり返ることがあり得ると言っていました。法的安定性は、少なくとも基本法に比べると弱いのではありませんか。法的安定性のより強い、同じ内容を国家安全保障基本法という形で出した方が安定的じゃありませんか。

 しかも、公明党の漆原国対委員長が、国民の声を聞くという一番大切な部分が欠落しているとおっしゃいました。そして、菅官房長官は、いきなり閣議決定するのではなく、政府・与党の中でしっかり相談しながら対応を検討していく、国民的理解を得て進めることが大事だというふうにお答えになられています。

 これは、政府・与党の中で議論することも大事ですが、国会で議論することが大事なんです。最終的に解釈の変更をするのであれば、国会で議論するためにも、そして法的安定性の観点からも、閣議決定ではなく、同じ内容で結構です、それを基本法という形で法案を出す方が、より安定的かつ国民的議論を踏まえた形になりませんか。

 なぜ閣議決定にこだわるのか、その理由をもう一度、今の話を踏まえてお答えください。

菅国務大臣 私が申し上げたのは、懇談会からの報告書が提出された後に、内閣法制局の意見も踏まえながら、与党と相談の上、その対応を検討した中で、閣議決定を国会でも議論いただくというのは、ある意味で当然のことだというふうに思います。

 また、仮にこうした中で決定がされたとしても、立法措置が必要でありますから、そこにおいては国会によるコントロールというのは可能である、このように思っています。

岩屋主査代理 後藤君、時間が来ていますので、簡潔に願います。

後藤(祐)分科員 はい。

 法制局にさらに聞きますが、安保法制懇の報告書が確定する前に法制局チェックはするのですか。つまり、法制局チェックされたものが安保法制懇に出てくるのか。もしそうでないとするならば、おそらくそうでないでしょう、安保法制懇のものが出るまでは法制局はチェックしない。報告書が出た後、法制局のチェックをするとしたならば、もしその後にチェックをするということなのであれば、安保法制懇の内容は、法制局チェックの結果、否定される可能性はあると考えてよろしいですか。

小松政府特別補佐人 これは、政府の立場は、安保法制懇の報告書が出れば、それはそのまま政府の立場になるということではございません。

 内閣は、有識者が長い間議論されたことを踏まえて、その上で、法制局も、法的整合性であるとか過去の答弁との整合性であるとかいろいろなことを熟慮いたしまして意見を申し上げた上で、内閣がそれに対する最終的な意思決定を行うということを従来から申し上げているわけでございまして、したがいまして、この法制懇の報告自体に私どもがチェックをするということはないわけでございます。

後藤(祐)分科員 その後の質問に答えていないですよ。だとしたらば……

岩屋主査代理 後藤君、もう時間が来ていますから、簡潔に、最後に。

後藤(祐)分科員 今答弁していないので。

 であれば、後にチェックするということなのであれば、法制懇の報告書が、法制局が事後的にチェックした結果、否定されるということ、あるいは修正されるということもあり得るんですか。

小松政府特別補佐人 これは今お答えしたとおりでございまして……(後藤(祐)分科員「答えていないですよ」と呼ぶ)いや、お答えしております。お答えしております。報告書が出たものをそのまま政府の立場にするということではないと申し上げているわけでございますから、それを踏まえまして、その上で、内閣法制局の意見がそこで違うところがあれば、それは違う内容の決定になるということは、内閣の決定になるということはあり得るわけでございます。

岩屋主査代理 後藤君、時間です。

後藤(祐)分科員 終わります。ありがとうございました。

岩屋主査代理 これにて後藤祐一君の質疑は終了いたしました。

    〔岩屋主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

林主査 次に、防衛省所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。畠中光成君。

畠中分科員 結いの党の畠中光成でございます。

 本日は、遅い時間にもかかわらず、防衛大臣、ありがとうございます。

 この一月から、私、結いの党所属議員となりまして、院内の各位の皆様に御協力いただいた末、会派離脱も認められ、改めてこうやって質問の場に立たせていただけること、本当に感謝いたします。

 こうやって防衛大臣とお話をさせていただく機会、私、実は昨年、安全保障委員会で一年間お世話になったわけでございますけれども、残念ながら安全保障委員会に属していないという状態になりましたので、ことしも事あるごとにこういった機会を通じてまた防衛大臣に質問をしていく所存でございますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。

 大臣に、まず冒頭、もう間もなく三月十一日がやってまいりまして、あの東日本大震災から三年になろうとしています。大臣の御地元は気仙沼でいらっしゃいます。まだ復興道半ばであると思います。この復興については与野党を超えて取り組む必要があるということを、ぜひとも改めてお互いに認識させていただければと思います。

 また、私の方は、実は、一九九五年、阪神・淡路大震災、西宮が地元でございまして、大学四年生のときに被災をし、そして実家が全壊をした、こういったところが政治活動の原点でもございます。そういった意味で、復興また防災も含めて、大臣にはぜひともお願いをしたいところでございます。

 きょう質問を幾つか用意させていただいておりますが、昨年末に、十二月の二十三日でしょうか、PKOにおける自衛隊の活動において、国連南スーダン派遣団、UNMISSを通じて韓国軍に小銃の弾薬一万発を提供したことに関して、国会閉会中でございましたので、改めてこの場を使って質問させていただきたいと思うんです。

 これを決断したのがNSCだということですが、どのような判断でこの決断に至ったのか、また、その後この評価をどのようにされているのかということを、防衛大臣、お聞かせいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 委員のお許しをいただきまして、冒頭、答弁に先立ちまして、一言申し上げさせていただきたいと思います。

 平成二十六年度防衛省関係予算について、本予算委員会の分科会の冒頭で私から概要を御説明申し上げるとともに、資料を配付させていただきました。その中で、東日本大震災復興特別会計に歳出予算額三百七十億七千三百万円を計上しているといたしましたが、正しい歳出予算額は三百七十億九千百万円でございました。大変申しわけございませんでした。おわびして訂正させていただきたいと思います。

 その上で、今、国連南スーダン派遣団、UNMISSを通じた韓国軍への弾薬一万発を提供することについての御質問がございました。

 韓国軍の方から弾薬提供についての要請がまず初めにありましたのは、南スーダンのボルに駐在します韓国隊の方から我が自衛隊がおりますジュバの自衛隊司令の方に、電話連絡で弾薬の提供についての依頼がございました。その後、韓国政府、そして、最終的には国連南スーダンミッション、UNMISSを通じて要請がございました。直ちに、私ども、防衛省本省にも参りましたし、官邸の方にもその要請について諮らせていただきました。

 私自身の当時の瞬間の判断というのは、弾薬の提供というのは、これは現地の部隊からするとかなり緊急性の迫った内容である、そして、ボルの韓国が宿営する宿営地の周辺には多数の避難民がいるということでありますので、やはりこの緊急性、人道性を考えた場合に、弾薬の提供を検討する必要がある、まして、UNMISSの方から来た内容では、韓国軍と同じ弾を持っているのは日本の自衛隊だけだということでありましたので、その中で、官邸と御相談する中で、これはNSCで判断する大切な内容だというふうに判断をしまして、最終的にNSCの四大臣会合でありますが、当時、このような内容でありますので、経産大臣も入っていらっしゃったと思います。

 その中で一つの決定をさせていただき、韓国側に弾薬を提供させていただくということになったんですが、そのとき、やはり国連からの要請ではありますが、私ども、国際平和協力法第二十五条による物資協力の枠組みでの譲渡ということが必要だと思いましたが、その中でも、累次の国会での政府方針の中で、ここの中に今まで弾薬というのを想定していなかったということでありますので、新たに官房長官談話を発出する中で、国際平和協力法第二十五条に基づく物資協力の枠組みで韓国側に譲渡をさせていただきました。

畠中分科員 今、UNMISSを通じた弾薬、韓国軍への一万発の提供に関して大臣にお答えいただきました。

 緊急性、そして人道性ということで決断をされたということでありますけれども、その後、報道等で韓国政府との多少の食い違い等も聞こえてまいりました。

 改めてこの場で確認をさせていただきたいと思うんですが、十二月の二十一日の現地時間二十二時四十五分に、韓国隊の隊長から自衛隊の第五次施設隊長に対して弾薬の提供要請があった。改めて、二十二日の現地時間一時四十分、UNMISS軍司令部から施設隊長に対して同様の要請があった。そして翌日、二十三日に、今おっしゃられたように、NSCの四大臣会合が開かれて、これが十二時、そして十二時二十分、閣議決定、持ち回りということで、その間二十分です。

 私がお聞きしたところによると、本来は十四時に国連のヘリがジュバからボルに動くことが予定されていたので急いだというふうに聞いていますが、結果として、そのヘリが飛んだのが実際は二十二時三十五分と、大幅におくれたというふうに聞いています。

 このおくれた理由について、大臣、改めて教えていただけますでしょうか。

中島政府参考人 事実関係に属することかと存じますので、事務方の方からお答え申し上げます。

 先ほど先生がおっしゃられましたように、我が国の派遣施設隊は、日本時間十二月二十三日の十三時四十五分に、首都ジュバでUNMISS側へ弾薬を提供しております。ただ、同日二十二時三十五分に弾薬はジュバからボルに運ばれ、ボルにおいて韓国に引き渡されたものでございます。

 この弾薬のヘリ輸送は、UNMISSが国連のヘリにより調整しながら実施したものでございまして、政府としてお答えをする立場には必ずしもないものと存じますけれども、反政府勢力の活動などによりまして、全般的に国連の輸送計画が流動的になっていたということが背景にあると承知しております。

畠中分科員 事実関係ということで確認しましたので、了解をいたしました。

 私がお伺いしたいこと、この件に関して幾つか問題意識がございまして、そのうちの一つ目を申し上げますと、大臣も少し触れていただきましたけれども、弾薬の提供というのは、PKO法、それから武器輸出三原則から例外扱いということになるんでしょう。歴代内閣は、PKO協力法に基づく国連への武器提供について、国会の答弁の中で、要請は想定していない、あってもお断りする、そして武器弾薬は含まれないというふうに言ってきたわけであります。

 今回は、緊急性、人道性ということで、NSC四大臣会合を開いて二十分で決定をしたということでありますけれども、改めて、今後もこういう同様の要請があったら応じるということなんでしょうか。それとも、今回はあくまでも例外だということなんでしょうか。

小野寺国務大臣 一般的な対応から考えますと、このようなPKOの任務においても、何かあったときのためにしっかりとした弾薬等を準備していくのが私ども通常のやり方であると思っております。

 ただ、今回は、韓国隊の方から、非常にせっぱ詰まったような状況での要請があったということで、私ども、人道上あるいは緊急性をかなり重く見まして、今回は例外的な措置ということで、三原則の例外という形、それから、PKO法の中で、累次の国会答弁の中での内容とはまた例外的な対応をさせていただいたということでございます。本当に、これは例外的というふうに考えていただければと思っています。

 ただ、今後、もし同じように、今回と同じような状況ではないとは思いますが、緊急性、人道的な対応でどうしても必要な場合、これは決してないと排除されませんので、その場合には、私ども、その後しっかり国会あるいは国民の皆さんに説明できるような対応の中で判断をすることが必要になってくると思っております。

畠中分科員 ちょっと質問が前後いたしますが、NSC、私も担当として大臣にもいろいろ質問をさせていただきました。

 このNSCは、四大臣会合が設置されたのが十二月の十日ごろですか、事務局が年が明けて一月の七日に発足をした。今回の韓国への弾薬提供というのは十二月の二十三日ですから、事務局発足前ということであります。

 何が申し上げたいかといいますと、NSCの本来の使い方といいますか、創設意義、当時もさまざまな議論をさせていただきましたけれども、今回の弾薬提供の是非を申し上げているのではなくて、単に政権の意思決定を早めるためだけのNSCだと本来の趣旨とちょっと違うんじゃないかなと私は思うんです。余りにも今回、スピーディーな判断でしたので、そういった懸念を少し申し上げておきたいと思うんです。

 改めて、昨年議論をし、そして発足をいたしました国家安全保障会議、NSCの創設意義についてお聞かせいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 昨年、国会の審議をいただきまして、NSCの創設ができたと思っております。その中で、国会審議の中でもさまざま御意見をいただき、それを今しっかり取り込む中で、NSCの一員として会議に参加させていただいております。

 御存じのとおり、安全保障環境というのは、例えば防衛分野だけで我が国の安全保障を担えるわけではない。外交面でのさまざまな働きかけも必要ですし、また情報収集も多岐にわたる必要があります。衛星情報も含めた内閣全体としての考え方、情報のあり方、そして、今後、何か安全保障面での活動をする中で、防衛省、外務省だけではなくて、必要な大臣も入った形での関係大臣会合もこの中では予定をされています。

 現時点で、やはり、さまざまな情報が横断的に入る国家安全保障会議というのは大変有効な役割を果たすことになると思いますし、また、今後とも、そのためにも事務局を含めた充実が必要だと思っております。

畠中分科員 韓国軍への弾薬提供を発端として、韓国側、特に韓国政府あるいは韓国メディアとの食い違いというのが聞こえたわけであります。あわせて、きのう、アメリカの議会の報告書で、日米関係に関する報告書ですけれども、特に日韓関係の冷え込みを懸念する、そういう報告書が出てきました。

 日米同盟があって、そして、同盟国同士の関係が冷え込むというのは、アメリカにとっても我が国にとっても当然よろしくないことでありますけれども、弾薬を提供するというのは当然お礼を言われてしかるべきものだと私は思うんですけれども、そういう反応が返ってきていないということであります。

 そういった状態の中で、我が国といたしまして、特に弾薬の提供を通じたその後の韓国政府とのやりとり、どのようなことを向こうにおっしゃっておられるのかということ。これは、ここに外務省の方はおられないかもしれませんが、防衛大臣、もしよろしければ、そのあたりの御見解、あるいは政府としてどう対応していくべきか、お聞かせいただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 弾薬の提供を決めまして、現地ジュバの部隊から、UNMISSのヘリコプターを使いボルの方に運び、そこから無事韓国隊の方に渡ったということがあった直後に、韓国隊の方から現地の自衛隊の部隊の隊長宛てに、ありがとうございますという感謝の言葉がございました。私どもはそれだけで十分だと思っておりますし、その後、韓国内でいろいろな発言があることを報道では知っておりますが、特に私どもとして何かを期待して提供したわけではないということですので、むしろ、弾薬が届いて、そして十分な活動ができることはよかったと思っております。

 また、その後、三週間かかりましたが、韓国から韓国隊に弾薬が無事提供されたということでありますので、それであればまた十分な活動ができるなということで、今度は韓国側から弾薬をお返しいただいたということであります。

 現場の部隊レベルでは、このような普通のやりとりをさせていただいております。大切なのは、やはり私ども、政治レベルでこれからも対話をしっかりしながら、大切な日韓関係であります、特に朝鮮半島のことを考えますと日米韓の関係は大変重要だと思いますので、関係改善に向けてこれからも努力をしていきたいと思っております。

畠中分科員 ありがとうございます。

 私も、この件に関しては、韓国への対応としては、今大臣がおっしゃられたような、毅然と、冷静な対応でいいと思います。

 ただ、我が国国内におきましては、先ほども申し上げましたが、弾薬提供というのは、PKO法、それから国会答弁の積み重ねの中で、あくまで例外なんだろうと思います。

 そこで、お聞かせいただきたいんですが、こういった歴代内閣あるいは国会答弁等で積み重ねた解釈を時の政権が変更してしまうということに関して、集団的自衛権のお話も、先ほど別の委員の方から幾つか質問も出ておりましたけれども、こういったことに関して、大臣の御見解、どのようにお考えか、お聞かせください。

小野寺国務大臣 委員から御指摘のありました国際平和協力法第三条四号におきまして、物資協力は物品を譲渡するという定義を規定しているということで、この条文の中では武器弾薬を排除はしておりません。

 ただ、平成四年のこの法制定時におきまして、政府の方針であります武器輸出三原則等に従って対処することとしておりまして、また、武器弾薬の供与が要請されることは想定していない、要請があっても断るというふうに答弁をしております。

 これは、そもそもPKOにおきましては、各部隊が基本的には必要な武器弾薬をあらかじめ携行してミッションに参加することを前提としたものであります。基本的な運用方針を述べたものであります。したがって、緊急事態における例外的な措置までを排除する、そういう趣旨ではなかったと私ども認識をしております。

 今回の韓国政府及び国連からの要請というのは、緊急性、人道性が極めて高いということで、私ども、今回の方針の中で、これは緊急事態に当たるという極めて例外的な内容だということで判断をさせていただいたということでありますので、今回の譲渡は、あくまでも例外的な措置ということで、法律の解釈自体を見直したものではないと御理解していただければと思います。

畠中分科員 質問のテーマを少し移しまして、昨今、安倍政権側も集団的自衛権の問題、議論がスタートしているのか、あるいは報道が先走っているのか、そこはさておきとして、非常に注目されているテーマであると思います。

 結いの党の中でも、この集団的自衛権について、賛成派あるいは慎重派双方の識者をお招きして検討も積み重ねているところでありますが、間違いなく言えることは、いかにして我が国の国土、国民の生命財産を守っていくかということが一番大事なわけでありまして、理念的に、あるいは個別的、集団的、こういう言葉遊びのような議論というのは、私は、どちらかといえば慎まなければいけないのではないかと思っている立場です。

 しかしながら、そういった中でよく言われるのが、鳩山政権のときは夢見るリベラリストだ、安倍総理は夢見るリアリストだ、どっちも夢を見ていることについては同じじゃないかということを聞いたんです。

 つまり、集団的自衛権がなぜ必要かということ、なぜ行使容認をしなくちゃいけないのか、そういう状況というのはどういった事態を想定してこういう集団的自衛権の行使が必要ということが出てきているのかということが、いわゆる政権側からの、政府・与党側からの説明が本当に不十分ではないかと思うんです。

 まだ議論が始まっていないというふうにおっしゃられるかもしれませんが、とはいえ、自民党の政権公約の中にあるわけでありますから、なぜ集団的自衛権の行使が必要かということについて、大臣、御説明いただけますでしょうか。

小野寺国務大臣 防衛省・自衛隊を預かる私の役割としては、憲法や法律の中で定められた範囲の中で、日本の国を守るためのさまざまな行動について命令を出すという立場であります。自衛隊という実力組織を預かる私にとって、逆に今のような議論を私どもの方からすることは適切ではないというふうに思っております。

畠中分科員 ちゃんとしたお答えはなかなか難しいだろうというふうに思います。

 けれども、ぜひとも申し上げたいのは、先ほど申し上げた夢見る云々の話ではありませんけれども、やりたいことだけが先行して、実際、国民の生命財産を守れなかったら何の話にもならないので、今、私はこれが必要かどうかというのは本当に慎重に検討しなくちゃいけないと思いますし、我が党でも十分な議論を尽くして答えを出していきたいというふうに思っています。

 ただ、そういった安全保障の問題を考えていく中で、これは本当に必要だろうというふうに我が党の中でも議論が落ちつきつつあるのは、グレーゾーンの対応、このすき間をどう法律で埋めていくかということであります。

 この件に関して、優先順位、グレーゾーン対応の話と集団的自衛権の話だと、私は、まずは、海警行動と治安出動のすき間を埋める、この間をしっかりと整備していかなくちゃいけないというふうに思うわけでありますけれども、大臣、どのようにお考えか、お聞かせください。

小野寺国務大臣 大臣としての基本姿勢は、先ほど言ったように、そういう内容について実力組織を指揮する私の方からコメントする立場ではないと思いますが、ただ、今、安保法制懇で議論されている中で、例えば、純然たる有事でもない平時でもないグレーゾーンについての対応について議論をされているということ、このことについては、大変注意深くその議論について傾聴させていただいているということであります。

畠中分科員 時間もあっという間にたちますので、ちょっと質問も飛ばしながらお話をさせていただきたいと思います。

 次は、話題を移しまして、NSCに続いて、昨年、特定秘密保護法案、国会も大荒れでありましたが、私も担当させていただきまして、大臣にも質問させていただいたかと思うんですが、特に、特定秘密保護法案の国会審議の中で後半一番の争点となったのが、いかに恣意的な運用がなされないようにチェックをしていくかということだと思います。

 例えば、立法府でのチェック、あるいは第三者機関によるチェック、こういった重層的なチェックを早期に整える必要があるかと思うんですけれども、政府としてどのようなスケジュールでこれをお考えかということをお聞かせいただけますでしょうか。

北村政府参考人 特定秘密保護法は、公布の日から一年以内に政令で定める日から施行するということになってございます。

 政府におきましては、各省庁における施行準備といったようなものを考えますと、秋の早い時期には、政令あるいは運用基準といったものを閣議決定できるようなスケジュールで施行準備を進めてまいりたいと考えているところでございます。

 御指摘のございました、法律の附則第九条で検討、措置することとされております新たな機関などにつきましても、施行までに間に合うように設置できますよう、今現在、民間の有識者から成ります情報保全諮問会議も設置しておりますけれども、こちらの有識者の方々の御意見も承りながら、施行に間に合うように措置してまいりたいと考えているところでございます。

畠中分科員 今おっしゃられた情報保全諮問会議、一月十七日に第一回が開かれまして、議事録を拝見しました。情報公開請求をしないといけないという代物の議事録でありましたけれども、黒塗りの部分もあって、そもそも、この情報保全諮問会議の議事録そのものの情報公開のルールというのはどういうふうになっているんでしょうか。本当に、スタートから国民が見ることができないような状況だと、改めて懸念がもう一度再燃するようなことを私は懸念するわけですが、いかがでしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の情報保全諮問会議の議事に関しましては、議事録それから議事要旨はいずれも作成する、また、議事要旨につきましては会議終了後に公表するということが一つでございます。また、会議の配付資料というものにつきましても、原則として公表するということを会議を最初に開催いたしますときに決定しているところでございまして、御指摘のように、一月十七日に開催いたしました第一回会議につきましても、議事要旨それから配付資料をホームページに速やかに公表しているところでございます。

 他方、議事録でございますけれども、こちらにつきましては、情報保全諮問会議におきまして、機密性の高い事柄についても御議論されることもあり得るということでございますので、議事録は公開しないということにしておりますけれども、これにつきましても、情報公開の開示請求があった場合には、情報公開法に基づきまして対応しているところでございまして、現に、請求には対応して、開示しているところでございます。

 なお、第一回の会議録につきましても、委員御指摘のように、一部不開示情報に該当する部分というものがございましたので、あらかじめ議事録を当初から公表するというふうに方針を決めることは困難であろうというふうに考えたところでございます。

畠中分科員 時間が参りましたので、質問ではなく、私からぜひお願いということでさせていただきたいと思うんですが、NSCにせよ特定秘密保護にせよ、昨年の国会であれだけ審議をして、いろいろな議論が出てきたわけであります。

 先ほどのNSC、弾薬提供のことについても余りにもスピーディーな決定。これはNSCがあることのメリットでもあるんですが、一方で、しっかりと情報を収集して分析して、日々それを総理が見ることができる、そういったことがNSCの最大の創設意義だと私は思いますし、それをしっかりと特定秘密保護法案によって支えながら、この国の外交、安全保障、ひいては国民の生命財産を守っていくということが大前提でありますので、そういった国会審議で出た議論をしっかりと踏まえていただきながら、国民の不安を解消しつつ、かつ、期待に応えられるような政府のあり方というのをぜひお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

林主査 これにて畠中光成君の質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力を得まして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時三十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.