衆議院

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第2号 平成15年2月28日(金曜日)

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平成十五年二月二十八日(金曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 斉藤斗志二君
      池田 行彦君    萩野 浩基君
      今野  東君    武正 公一君
      長妻  昭君    佐藤 公治君
      達増 拓也君    中西 績介君
   兼務 山井 和則君 兼務 吉井 英勝君
   兼務 山谷えり子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   総務副大臣        若松 謙維君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房長) 結城 章夫君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       林  幸秀君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            白川 哲久君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部精神保健福
   祉課長)         松本 義幸君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁次長) 肥塚 雅博君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院審議官)   薦田 康久君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十八日
 辞任         補欠選任
  長妻  昭君     武正 公一君
  達増 拓也君     佐藤 公治君
  中西 績介君     植田 至紀君
同日
 辞任         補欠選任
  武正 公一君     今野  東君
  佐藤 公治君     達増 拓也君
  植田 至紀君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  今野  東君     長妻  昭君
同日
 第三分科員山谷えり子君、第六分科員山井和則君及び吉井英勝君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 (文部科学省所管)


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     ――――◇―――――
斉藤主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤公治君。
佐藤(公)分科員 自由党の佐藤公治でございます。本日は、三十分時間をいただきましたので、有意義な質問をさせていただければと思っております。
 まず冒頭に、先般も文部科学委員会でも聞かせていただきました、北朝鮮からの地対艦ミサイルが発射されたということ、これが我が国においていろいろな物議を醸し出したことは事実でございます。
 そういう中で、先日も大臣、副大臣にも尋ねさせていただきましたけれども、これが地対艦ミサイルだったからよかった。防衛庁または自衛隊の方からすれば、この手のことは北朝鮮の方でもよくあることだという話も聞きましたが、これが、ではもしも本当に日本の危機的状況になった場合、まさに本当にそのミサイルというものが飛んでくるような場合、そのとき内閣として、政府としての対応はわかります。これは当然それなりのことをやっていかなきゃいけない。また、物理的にこれをどう阻止していくのか、また国民の生命と財産を守るかということ、当然のことだと思います。しかし、そういう中で、やはり文部科学省として、もしもそういった場合にどういう対応をとっていくのか。先般も聞かせていただきましたけれども、きちんとしたその対応の御答弁がいただけなかった、そういうふうに私は思っております。
 外に出せること、出せないこともあるかもしれません。また、物理的に無理なこともあるかもしれません。しかし、やはりいざというときの危機管理体制において、文科省として、まさに北朝鮮との間、いろいろな緊張、緊迫があると思われます。まさにそういうときに、どういう対応をとられるのか。
 そして、私が思いますことは、鋭意努力をしている、そういったことに対応できるように考えているということをおっしゃっておりましたけれども、予算の方を見ても、そういったことに割かれている予算というのが果たしてどれぐらいあるのだろうかと思ったときに、決してあるとは思えない。原子力関係のところで防災、災害等においてということで予算をとって、そういう対応も多少は考えられているのかもしれませんけれども、まさに文科省として、学校、子供たちのこと、そして科学技術関係の管轄を考えた場合に、どういったことが実際、初動捜査からその連絡、各省庁の連携もあるかもしれません。また、そういったことは総務省または防衛庁の方または内閣としての対応であって、私たちの方ではという答えにもなるのかもしれません。
 もう一回そこを、二日たったわけでございますけれども、その後、その問題意識というのは大きく、多く持つべきだということも委員会でも主張させていただきましたけれども、もう一度聞かせていただきます。いかがでしょうか。
遠山国務大臣 今般の、対艦ミサイルでございますか、これは本当にどなたも予想できなかったことかもしれません。そんな中で、これからいろいろなことが考えられる、ついてはその対応はどうかという御質問でございます。
 私どもといたしましては、何が起こるかわからない今の時代におきまして、常に、何が起きてもしっかりと対応できるように危機管理の意識を持って日々やっていくということは、大変大事だと思っております。
 我が省といたしましては、一般論として申し上げますと、原子力災害あるいは非常災害など不測の事態に備えて、それぞれの事象に応じた関係者への連絡網をしっかりつくっておりまして、これは分厚いものでございます。これはすべての関係する職員が持っております。それから、対応マニュアル、これも大部なものでございますが、これを策定いたしておりまして、従来から危機管理については必要な体制を整備していると思っております。
 私も、いろいろな職業上の経験を通じて危機管理というのは非常に大事だと思っておりまして、これまでいろいろな事態が起きたときに、我が省の対応はそれなりにやってまいったという自負も持っております。それから、予算につきましても、緊急時用の資機材の整備など、原子力防災対策経費、これは平成十五年度予算案におきまして約六十四億円でございますが、これを初めといたしまして、必要な経費を措置しているところでございます。
 もちろん、御指摘のミサイルに関して申し上げますれば、それについて我が省は直接どうするということは、我が省の所掌範囲のことをお考えいただきましても、難しい面があるわけでございますが、その種類あるいは発射等の状況把握について、関係部門からの連絡を待って、その事態に応じて各府省と連携をして、既に述べました危機管理体制を最大限に活用して、省内に対策本部を設置することはもとより、我が省として必要な措置を講じていきたいと思いますが、こうした問題は私は政府一体でなくてはいけないと思っております。その中で、みずからの守備範囲の中において必要な情報収集を行い、正確な情報を集中的に収集し、そして必要なところに伝達をしていくというのが基本であろうと思っております。
 具体的には、連絡を受けました内容あるいは発生した事態に応じまして、学校におきます児童生徒の安全確保、これが一番大事でございまして、その避難に当たるなど、関連施設における安全確保に最大限努める必要があろうと思います。
 ただ、それぞれの地域で十分そういったことも考えておいてもらいませんと、我が方で司令塔として情報を発信しましても、なかなかそれは難しい面があろうと思いますので、それぞれの地域、都道府県、市町村においても、よりこのことについては考えてもらわなくてはいけないと思っております。
 それから、当省所管の原子力施設に対しましては、十分な注意喚起あるいは状況の確認、さらに、原子力施設に不測の事態が発生した場合に必要な措置を講じること、これはもうマニュアルできっちりと定めておりまして、それらについては、事が起きたらそのまま適用できるような体制を常に考えていなくてはならないと思います。
 それから、負傷者が出た場合に、今、国立大学病院のみならず、我が省の関連では、国公私を通じた大学病院への協力要請ということもすることにいたしておりまして、状況に応じて迅速かつ的確に対処しなくてはいけないと考えております。
 いずれにしましても、今回のようなミサイルに関する危機管理につきましては、これは専門的な技術と知識がありませんと、そのことについて十分情報を収集したり、あるいはそれについて予見をしたりということはできないわけでございまして、私は政府が一体となってこの問題に対処すべきだと思います。国民の安全を守るということは一国にとって一番大事な課題であるわけでございまして、私どもは、そうした全体の政府の対処の中で、必要な対応をとっていくという姿勢でいるところでございます。
佐藤(公)分科員 今、大臣、まさに危機管理マニュアル、分厚いものがあるというふうにおっしゃいましたけれども、では、その中で、こういったミサイルなんということは想定されたものがあるんでしょうか。
遠山国務大臣 それはどんなものがどういうふうに起きるかわからないわけですね。したがいまして、どんなことが起きてもそれに対応できるようなことが書いてあるわけでございまして、委員はどのようなことを期待しておられるのか私にはよくわからないわけでございますけれども、どういう事態が起きても対応できるような、特に原子力施設、これについてはしっかりと対応できるようにしていくという姿勢ででき上がっているマニュアルでございます。
佐藤(公)分科員 では、どんなことにも一応対応できるようにというふうになっていればいい、そういうケース。
 では、今回の場合、この前もお聞きしましたけれども、発射ということがわかった場合に、どういう対応をこの十分、三十分の間にとられるんでしょうか。そしてもう一点は、文部科学省としては、やはり学校、子供たちの関係ということもございます。原子力も当然ですけれども、その学校関係というのはどういう危機管理体制、こういったミサイルやなんかの場合に対応し得るべく、初動活動、行動というものをとられるんでしょうか。具体的に、簡単に御説明願えたらありがたいと思います。
遠山国務大臣 やはり一番大事なのは、正確な情報をしっかりと収集することだと思います。それは本当に、事が起きてから実際に何かが起きると、事が起きてというのは、何らかのそういう発射の事実を察知してから実際にそれがどうなるかというまでの時間が極めて短いわけでございまして、その間にどうするかと言われましても、私どもといたしましては、それは、そういう状況が起きたということ自体を察知する能力は当然ながらないわけでございまして、そういう事態が起きたという連絡があれば、今申し上げたような危機管理体制の連絡網なり、あるいはそういうマニュアルに沿って必要な体制をとっていくということでございます。
佐藤(公)分科員 大臣、今言ったようなということをおっしゃられるんですけれども、正直言ってわからないんです。そこのところを簡単、簡潔に、お話を具体的にしていただければということなんですけれども。
 実際、私は、もしもこの件に関してまだきちっと整っていないのであれば、整っていない、またミサイルを想定されたことが今までないということであれば、それは早速やはり文科省としても考えるべきだと思いますが、ちょっと副大臣、いかがでしょうか。
河村副大臣 これまでの文部科学省の対応というのは、今大臣説明いたしましたように、それぞれの連絡網を整備して、例えばテロがあった場合でも、これが核に関することなのか、どういう内容なのかということを、それをABCと分けるまでの対応は考えておるわけです。しかし、ミサイルが飛んでくるというようなケース、こういうことになりますと、これは今大臣が言ったように、何が来てもいいような体制を整えておくということだろうと思いますので、今の佐藤委員御指摘のどこまで文部科学省が体制をつくるかという問題だろうと思いますけれども、これで絶対十分なのかと言われると、さらにどういうものがあるかというのをもっと検討する必要があるかもしれません。
 今、現時点では、文部科学省としては、原子力のああいう事故も起きました、こういうときは一体どう対応すればいいかということも、大変な初めてのケースだったわけでありますが、そういう経験を踏まえて、あらゆることが出てきたときに、きちっと体制を整えて、文部科学省の場合には、やはりまず、今の原子力のああいう施設を持っておりますが、学校というものを持っておりますから、子供たちをどう守るかという使命もありますから、そういうことを踏まえての今体制が整えてあるわけでございます。
 これ以上さらに必要なことがあればさらにやっていかなきゃいかぬと思いますが、佐藤委員の方からさらにこういう点が抜けているじゃないかという御指摘があれば、それを踏まえて対応していかなきゃいかぬ、このように思います。
佐藤(公)分科員 これは、こちらの方に今お二方専門家の方もいらっしゃいますので、そちらの方々にも、池田先生含め斉藤先生、専門家でいらっしゃるので、そちらに聞いた方がいいのかもしれませんけれども、これはやはり僕は大変な問題だと思います。いろいろなことを想定したことで、この件に関しては早急にそれなりの政府一体ということでの考え方、そして、文科省としてのやはり危機管理マニュアルというものをより深く具体的に考え、そして、きちっと説明ができるようにまた体制を整えておかなきゃいけない。
 大臣は思っているということを何回かおっしゃいましたけれども、思っているじゃ困るのであって、それでは国民の生命と財産を守れるとは思えません。そういう意味では、きちっと対応をまた考えていただきたいと思います。
 次に、文科省が去年からスタートいたしました二十一世紀COEプログラムに関する質問をさせていただきます。
 このCOEプログラム、いろいろな結果が出まして、選定された大学が発表された後、いろいろな反響があったと思います。私は、競争原理を導入する意味では非常にいいことでもあると思います。実際、新聞社等がこれの評価に関して調査アンケートしたところによれば、八割近くが大変活性化につながるということで、いい評価も出ていることは事実でございます。でも実際、そういったアンケートの中でも、活性化につながるとはいいながら、初めてのことということもあるかもしれません、改善を求める声も多かったと思います。
 そういう中で、やはりこの二十一世紀COEプログラムは、実際、日本の大学を世界最高水準の研究拠点にするもので、全国の国公私立大学からすぐれた研究チームによる計画を選び、文部科学省が予算を配分するということになっていますけれども、全体の大学のレベルアップ、トップ三十というのか、というふうにも前おっしゃっておりましたけれども、上をかなり突出させた形で全体の底上げを図るという方法論もあり得るというふうに考えております。しかし、引っ張っていく方法論というのが逆に大きな差をつけていくということも考えられるとも思います。
 そういうところの中で、実際、底上げを図っていくためには、やはり選考基準というものを明確にしていかなきゃいけない。ある程度のものは出ておりますけれども、結果というもの、特に落ちた大学に関して、個々においてはきちっとある程度は説明しているということも話を聞いておりますけれども、やはり第三者に対してこの評価というものを、なぜ落ちたのか、やはりこの辺をもうちょっと明確に、オープンにすべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 なかなか手厳しい佐藤委員の方からCOEプログラムはよかったとお話しいただきまして、私も大変よかったなと思っているところでございます。
 これからの日本の大学というのは、まさに護送船団、みんな同じ、結果も同じなどということでは到底許されないと思うんですね。そういうことから、今回、これまでなかったような新しい、二十一世紀COEプログラムを実施いたしまして、私も、委員御指摘のように、各大学が真剣に、本当にすばらしい研究拠点をつくるにはどうしたらいいかということを衆知を集めて構想を立てられ、そして申請をしてこられたということで、波及効果も非常に大きかったと思っております。
 第一回目でございましたけれども、江崎玲於奈委員長を中心といたしまして、研究の評価に定評のある日本学術振興会の事務局の協力も得まして、これについては非常に難しい審査であったと思いますけれども、評価を得るような結果を出せたと思っております。
 その評価の結果につきましては、採択となった拠点については、採択理由を大学へ開示すること、そして一般公表を行いました。それから、不採択になった拠点に関しましても、各案件ごとに当事者の大学に対しまして、二十一世紀COEプログラム委員会からその理由を連絡して示しているところでございます。
 これをすべて公表しろといいますと、やはり、不採択になったところのいろいろな問題点が公表されますと、それなりにその大学にとってはマイナスイメージにもなりかねないわけでございまして、私は、不採択の場合は当事者にお知らせすることで十分であろうと思っております。それを一般化して、どういうふうなところが漏れたかというようなことについてお問い合わせがあれば、それはまた別途考えてもいいと思いますけれども、現在の段階で十分な情報の公開を行っているところでございます。
 また、審査基準についてのことも先般、別の委員だったかもしれません、お答えしたわけでございまして、こういった新しいプログラムといいますものは、国民の皆さんが納得できるような形で、委員がおっしゃいましたようにできるだけ透明性を持って、そしていい審査というものをやっていくということが大変大事な課題だと思っております。
佐藤(公)分科員 今大臣がおっしゃられたことは、わかる部分もございます。しかし、文部科学省の方でこの大学等を発表した次の日の新聞には、全紙において、または論評に関して、活性化の部分ということも評価しているところもございましたけれども、多くの新聞、評論家等の皆さん方が、採択された、または落選した、通らなかった人たちの基準というものをやはり明確にすべきであり、そこを公開してフリーに、フェアに透明性を高めていく。玲於奈先生もコメントの中では、ノーベル賞自体もその辺は明確になっていないというようなこともおっしゃられているようでございますけれども。
 ただ、やはりこれから、日本がまだ成熟していない、未熟な状態の中で信用、信頼をまず選考に求めていくためには、やはり一つの評価における基準、そういったものを明確に結果の中で国民に対して、または第三者に対して示していき、その積み重ねによって信用、信頼というものができ上がっていくと僕は思います。そういう意味で、それをやはり今後公開をしていくことをお考えにはなりませんでしょうか。
遠山国務大臣 先ほど御答弁したとおりでございます。
佐藤(公)分科員 やはりこの辺はもう少し公開をきちっと考えていかなきゃいけないということをお願い申し上げておきます。
 また、この次におきましては、文部科学省としては、来年度から学生の教育に力を入れるということで、特色ある大学教育支援、実践している大学、短大に予算を重点配分する計画を発表されておりますけれども、百校ほどが選ばれる。これは、事前にこの辺の話はしておりませんけれども、こういったのに関してもやはり同じような支援というものを考えられているというふうに思いますけれども、こういったものはやはり公開していくんでしょうかいかないんでしょうか、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 二十一世紀COEプログラムは、まず研究拠点ということで始めまして、研究教育拠点につきましては、今年度が五分野、来年度が五分野ということでこれから粛々とまた進めてまいるわけでございますが、他方で、研究だけではなくて教育についても、特色のある大学の取り組みについてはぜひとも支援をという各方面からの御要望もございますし、私どももそうであるというふうに思ったわけでございまして、その意味で、今回、来年度予算案、今御審議いただいている中でその部分を認めていただこうとしているのは、私としては大変ありがたいと思っているところでございます。
 大学の教育機能の強化に大変資すると思っておりまして、ただ、そのやり方とか、どんなふうに審査基準を設けてやるかというのは、これから精密に考えて、できるだけフェアで、かつ透明性を持った形の審査が行われるように努力をしていきたいというふうに考えております。
佐藤(公)分科員 できるだけ、本当にその評価ということに関しては、結果、落ちたところに関しても、やはり僕は明確に今はすべきだと思います。
 そのCOEの中で、やはりいろいろな方々が、旧帝大七大学、早慶に研究結果の採用がこのたび集中したということですけれども、やはりスタートラインが違うというようなことをよく言われます。やはり今は旧帝国七大学や早慶の方は研究費や何かが非常に多いがため、スタートライン自体がほかの各大学と違うじゃないかということを言われている方々も多いと思いますけれども。
 そういう意味で、全体の底上げをある程度図るという目的であるのであれば、こういった都市部の大学とは別に、地方の大学に焦点を当てた研究支援プログラムを新たにこれとはまた違う観点で設けていき、底上げを図るべきだというふうにも考えますけれども、すべて一律で果たしていいのかなという気もいたします。この辺、大臣、副大臣、またいかがでしょうか。
河村副大臣 御指摘のように、全体のレベルを上げていくということはまた非常に大事なことだと思いますし、私も、今回のCOEの結果ができるだけ地方にもいいものを引き出していくという姿勢があるといいなと思いました。しかし、ただ一方の目的は、今回のCOEを考えたときに、やはり世界というものを目指して、その最先端を行く方向でいっている、また努力もしているし、その方向の可能性が高いというところをまず選んでいただこうということが第一義的にございましたので、評価委員会等々でそういうものを選んでいただいたという結果でございます。
 ただ、その結果を見ますと、確かに旧七帝大といいますか、そういうところへもかなりありましたが、私学も健闘いたしまして、私は、これは配慮というよりも、かなり地域でも頑張っているんだなということがこういうことによってわかりましたし、また逆に、先ほど選に漏れた大学への公表の話がございましたが、選に漏れた大学も非常に残念に思うとともに、さらに努力しようという機運が生まれてきたということが今回のCOEを入れた一つの意味があったんではないかと思っておりますが、確かに御指摘のように、これが第一次スタートして、次に考えなきゃいけないのは、その次の段階への、どういうふうに引き上げるかという支援ですね。地域的の産官学の考え方では例の知的クラスターというものがあって、大学側もそれに向けて努力はされておりますが、そういうことで国全体が上がる方向というのは必要だろうと思いますが、今回はまず最先端を引き上げるというところに意義があるのではないか、こういうふうに思います。
佐藤(公)分科員 地方の大学に対しての焦点を当てた研究支援プログラム等があること、そういう部分も考えていく必要性もあると僕は思います。ただ、これは悪く解釈すれば、メジャーリーグとマイナーリーグ、一部、二部みたいな分け方になってしまうかもしれませんが、まあ地方には地方の独自性、頑張っているところもあります。でも、なかなかトップにはついていけない部分のところも実際あると思います。やはりそういったところに対しての配慮というものを今後考えていただけたらありがたいと思います。
 もう少しこの話をしたいんですけれども、時間がないので次に移らせていただきます。
 こういったものが、産官学ということで連携をとって、やはりその投資効果、研究を民間の活力にもまぜながら日本の活力を上げていこうということでも一生懸命進められているようなお話は聞くんですけれども、実際その産官学の連携自体が、言葉とは裏腹にまだまだ停滞をしている、まだまだ進まない。一体全体どこに問題があるのか、その辺の問題をどう考えられているのかを、大臣、副大臣、いかがでしょうか。
渡海副大臣 委員御指摘の点でございますが、近年、産官学、そういう観点からさまざまな努力を政府の方針としても、また文部科学省としても努力しておるところでございます。
 一つ言えることは、やはり日本のこの産官学の歴史というのは、割と浅いんですね。そういう点で、私は、これは個人的な意見も含めてですが、走りながら考えていることがあるということは事実であろうと思います。しかしながら、近年とみに、私は必ずしも委員が御指摘のように見えてこないということではなくて、例えば成果としては、大学等との民間企業の共同研究件数というものも、この十年間では五倍ぐらいにふえておるわけでありますし、また、大学発ベンチャーという観点から見ますと、三年間で約二百七十を超える企業が新たに創立をされておるというふうな成果もあらわれております。
 もう一つ、研究開発の特性として、特に基礎科学等について言えることは、小柴先生の研究なんかもそうなんですが、要は、成果というものをどういう形で見せていくかというのは実は非常に時間がかかる。今やっていることがすぐ何か見えないけれども、実は大変大事なんだというふうなことがいっぱいあるわけでございます。これは小柴先生自身がそうおっしゃっているわけですから、ノーベル賞の重い言葉と思うんですね。そういうこともあろうかというふうに思います。しかしながら、やはり、知恵を有効に活用し、それを日本の経済社会に還元していく、トランスファーしていくということは大変我が国の社会のためにも大事であろうということでありますから、さらに今後、工夫を重ねながら努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
佐藤(公)分科員 やはりまだまだそれが進みづらい環境があるんだと思います。いろいろな規制もあると思います。そういうものをいち早く撤廃するなり、考えていかなきゃならない。
 最後に、時間がないので、言いたいことはまだまだたくさんあるんですけれども、最後に一点だけ、それに関してなんですけれども。
 私、ちょっと、現場をずっと歩いてみました。しましたところ、この不景気な状況の中、中小が大変厳しい状況になっている。研究機関で研究するために使うものというのは、割とオーダーメードが多い。オーダーメードで、中小零細に対してオーダーをしてつくっていただく。この不景気において、特別な技術を持った中小企業が大変経営危機に陥って、まさに私の友人の関係も先般倒産してしまいました。これはロボット関係の技術なんですけれども、そのところが、会社が倒産したがために、やはり部品が手に入らなくなって研究に支障が出てくるようなことが出てきております。実際、研究者の方々のオーダーメードだけでは食べていけない。ほかもやりながらやっていく。ただし、この不景気な状況の中で、そういう会社が倒産をしていく。結局、研究に支障が出てくるようなことになります。
 こういった中小企業というのは、どちらかといえば経済産業省の分野での話になるんですけれども、文科省としても、やはりそういった技術があるようなところに関しては特段の配慮なり、また支援措置をとれるような体制があると、研究というのはより進みやすくなるのかなと。
 市場主義原理、こういう今の日本の経済状況の中ではいたし方がないといえばそれまでかもしれませんけれども、研究機関で大事な技術、またそういったところをオーダーメードとして今まで地道にやってきた中小企業、こういったものが不景気によってつぶされていくということは、やはり研究にとっても大きなマイナスになると思います。これを普通の中小企業とはまたやはり別な観点で見た支援というものを考えていくべきだと私は思いますが、最後にいかがでしょうか。
渡海副大臣 実例をちょっと今、詳細を把握しているということではありませんが、先生の今の御意見を参考にしながら、経済産業省、主に経済産業省だと思いますが、関係省庁ともよく連絡をとりながら、我が省としてやれることがあれば積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えます。
佐藤(公)分科員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
斉藤主査 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。
 次に、吉井英勝君。
吉井分科員 日本共産党の吉井英勝です。
 かつて科学技術委員会というのがあったときには、高速増殖炉の問題など、かなりまとまった形で国会で議論することができたんですが、残念ながら、文部科学委員会という妙な形になってしまったために、その機会が少なくなってしまっているんですが、きょうは久しぶりに「もんじゅ」の問題を、九五年のころは前後して随分やったんですが、久しぶりに少しナトリウム関係の論文なんかを読みまして、質問をしたいというふうに思っております。
 まず最初に、蒸気発生器の伝熱管が破損して、ナトリウムと水が反応すればどういう事態が起こるのかということが一つ。世界で過去に、ナトリウム・水反応による主な事故はどういうものがあるのかということを政府参考人の方から伺いたいと思います。
    〔主査退席、萩野主査代理着席〕
白川政府参考人 お答え申し上げます。
 先生から今御質問ございましたナトリウムと水反応の海外の事故例でございますが、事故例といたしましてはかなりの数があるわけでございますけれども、比較的有名と申しますか、大きなものといたしましては、一九六二年に米国のフェルミ炉、これは実験炉でございますけれども、ここで蒸気発生器の伝熱管の破損事故が発生をしております。それから、一九八七年でございますけれども、これはイギリスの原型炉、PFRという原型炉でございますけれども、ここでも蒸気発生器の伝熱管の破損事故が起こっております。そのほか、フランスのフェニックス原型炉でございますが、これも何度か蒸気発生器でのナトリウム・水反応事故を経験しておる。この辺が主なところかというふうに思っております。
吉井分科員 ナトリウムと水というのは、これは中学生でも実験でよくわかるわけで、水の中にナトリウムを入れたらどうなるか。これは爆発的な燃焼やさまざまな問題が出てくるわけですが、それだけに非常にこれは、伝熱管の中で部分的であれ、腐食なりなんなり、亀裂なりから水が漏れる。ナトリウム・水反応が起こると大変なことだというのは、これは容易にわかるわけですが、ナトリウム・水反応の際の事故としては、ウエステージ型破損と高温ラプチャー型破損がありますが、七〇年代から始めた動燃大洗工学センターで行ったナトリウム・水反応の実験研究では何を解明したのか。日本の高速増殖炉では高温ラプチャー型破損は起こり得ないということが実証されたのかどうか。この点を政府参考人に伺っておきます。
白川政府参考人 国内の研究開発の状況について御質問がございました。
 先生御質問のように、蒸気発生器におきますナトリウムと水反応、これは、ナトリウムを熱媒体として使います高速増殖炉の安全対策を考える上で大変重要なポイントでございますので、サイクル機構は、旧動燃の時代から大洗工学センターの方で、蒸気発生器の伝熱管が破損いたしまして水漏えいが発生した場合に、ナトリウムと水がどういうふうに反応するかという現象を把握するための研究を鋭意続けてまいりました。一九六〇年ごろから、伝熱管の破損メカニズムの解明や各種データの取得、それから実際に水のリークを起こしました試験によりまして、どういった発生圧力が出てくるか、この辺のことを把握いたします実験をしてきたわけでございます。
 こういう研究によりまして明らかになっております点を二、三御紹介しますと、非常に大きなリークが発生いたしましたときの発生圧力に対しまして、二次系の機器や配管の健全性、これは十分確保されるということ、それから、こういった大リーク時には、隣接の伝熱管の破損伝搬というのは一般的には余りないということがわかっております。
 それから、実機の条件を考えますと、伝熱管の加熱型の破損、いうところの高温ラプチャーでございますけれども、これは非常に起こり得ない、破損伝搬のメカニズムとしては、やはりウエステージ型の方が考慮すべき対象である、こういうことが明らかになっております。
吉井分科員 動燃技報というのが出ておるのです。動燃技報というのは、動燃で、今の核燃料サイクル開発機構、これの前身ですが、そこに、技術報告のレポートですね、一九七八年二月のものを見ますと、SWAT3の実験続行中だということ。これが「もんじゅ」事故後の九九年九月では、技報を見てみますと、SWAT3の破損実験結果では、条件によっては起こるという実例が示されておるのですね。昨年九月にまとめられたものでも、SWAT3の破損実験結果では、条件によっては起こるという実例が示されております。
 ですから、日本の高速増殖炉では、高温ラプチャー型破損は起こり得ないということが実証されたということにはならない。つまり、条件によって、これはウエステージ型もあれば高温ラプチャー型もあるということを、それは実験の中ではきちんとデータを得ているということですから、これはもう一度、政府参考人にそこを確認しておきたいと思うのです。
白川政府参考人 先ほどお答えを申し上げましたように、旧動燃では、昭和四十年代の半ばから大洗工学センターの方で、大リーク・ナトリウム・水反応試験装置、SWAT1と申しておりますけれども、これを建設いたしまして、実験研究を開始いたしました。
 さらに、昭和五十年には、その規模を上げまして、SWAT3と呼んでおります装置でございますが、これによりまして実証的な試験を行いますとともに、並行して、大リーク計算のコード開発を進めまして……(吉井分科員「私の聞いたことだけに答えてください」と呼ぶ)はい。さらに、同様の試験装置を用いて、小規模から大規模までの水リークの挙動、水リーク検出系の開発等を行ったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、それらの試験解析を通しまして、伝熱管の破損事故を考える場合は、高温ラプチャーよりもむしろウエステージ型、こちらの方が重要であるという知見を得ておると承知しております。
吉井分科員 聞いたことに答えなきゃいけないんですよ。SWAT3の破損実験結果では、条件によっては起こっている例がありますね。つまり、日本の高速増殖炉では、これは条件の設定によっていろいろ変わるわけですから、高温ラプチャー型破損は起こり得ないということは実証されていない、そのことを聞いているんです。その一言だけなんです。
白川政府参考人 これは安全評価の方とも関係をすることでございますけれども、先ほど御答弁を申し上げましたように、私どもの認識は、その後のSWAT3の実験によりましても、先ほど来申し上げておりますように、高温ラプチャーの、これは実際の実機の条件を考えればということでございますけれども、高温ラプチャー型の破損、それは起こらないという結果が得られておるというふうに認識をしております。
吉井分科員 ちゃんとこれは九九年の動燃技報にも出ておりますし、そして昨年九月のものにもあるんですが、高温ラプチャー模擬試験をやって、それで破損が広がっている。全くないというものももちろんあるんです。しかし同時に、二次、三次というふうに破損の広がっている例もあるわけなんです。だから、そういうことも全く知らないというのでは、これはちょっと、よく基礎的なところを御理解なさっておられるのかどうかということを疑わざるを得ません。
 それで、実験データでそういうのがちゃんとあるわけですから、あなたの方からもらったのにあるんだからね。ナトリウム・水反応は、事故例もあれば、非常に深刻なものです。だから本来、私は、いろいろな条件設定によってあるんだから万全の対策を尽くし切る、このことが必要だということをまず考えて臨まなきゃいかぬと思うんです。
 大臣、万全の対策をとらなきゃいかぬということは、それはあなたも私と考えは一緒だと思いますが、これは大臣に聞いておきましょう。
遠山国務大臣 これはもう、その面についての素人でございますから当たっているかどうかわかりませんけれども、原子力関係のいろいろな研究開発について万全を期するということはもちろん大前提だと思います。
白川政府参考人 追加的に技術的な御説明をしておきたいというふうに思いますけれども……(吉井分科員「短くていいですよ。全部読んであるんだから」と呼ぶ)はい。
 先ほど海外の事故例として御報告いたしましたイギリスのPFR、これは言うところの、先生御指摘の高温ラプチャーの現象が発生をしたわけでございます。したがいまして、私が答弁いたしましたのは、そういう現象が起こらないということを申し上げたわけではなくて、安全評価との関係で実際の実機の条件を考えれば、動燃事業団が行いました結果によっても、高温ラプチャー、これを安全評価の対象として考える必要はない、こういうことが明らかになったということを申し上げたわけでございます。
吉井分科員 だから、日本の高速増殖炉では高温ラプチャー型破損は起こり得ないということが実証されたということとは全然違う次元の話なんです。そのことをちゃんと踏まえないことには、何の実験をやっているのか自分で理解できないんじゃ、全く話になりませんから。
 次に、九二年九月のドイツのILONA試験装置でダンプタンクからナトリウム漏えい事故が起こって、ナトリウム・コンクリート反応が発生しています。こうした事故はこれまでから何度も経験しているわけですが、だから、フランスのスーパーフェニックス事故報告書では、一九九二年の六月に、ナトリウム火災が各種の二次系配管を囲むコンクリート壁に及ぼす長期的作用に対し追加の予防措置をとることを述べるとともに、高温下での水素放出が起こる可能性を否定できない、あらゆる爆発の危険を排除できるよう放出の大きさを制限する必要があると指摘していると思うんですが、フランスの安全審査当局の意見、指摘は承知していますね。政府参考人に伺っておきます。
薦田政府参考人 お答えいたします。
 承知をしております。
吉井分科員 ナトリウムとコンクリートの接触を防ぐために鋼製の床ライナーというのが張られておりますが、しかしそれは、ナトリウムと鉄の反応が生じてもナトリウムがコンクリートと接触することはないという前提に立っての議論なんです。
 ナトリウム技術に関するさまざまな知見を世界の事故例から当然得て、実験も動燃でもやったりもしているわけですね。例えば、大洗工学センターで七〇年から始めたナトリウム中の構造材料腐食に関しては、七八年に原研に委託したものとか、八三年に委託したナトリウム漏えい燃焼、九五年からのナトリウム燃焼生成物による鉄鋼材腐食など、さまざまな研究をやってきたことは私も知っております。
 そういう海外の知見は既にあったにしても、「もんじゅ」建設の時点では、ライナーが腐食してコンクリートと反応する可能性を軽視してきたということは言えると思いますが、この点はどうですか。
薦田政府参考人 ナトリウムとコンクリートの問題につきましては、これにつきましては既にいろいろ「もんじゅ」設置許可の段階でも知られていた事象でございまして、そういうものを念頭に置きながらライナーを張るということでございます。したがって、「もんじゅ」の審査におきましては、まさにナトリウムがむしろコンクリに触れないようにするということに基本的な重点が置かれておるというところでございます。
 先ほど先生から指摘のございました、ナトリウムによって鉄板が若干腐食をするということは当時から認識をしておりましたけれども、それから先、例えば「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故において、今回明らかになっております新たな現象によります、ナトリウムによります鉄板腐食というのは、その時点では認知していなかったということです。
吉井分科員 そのとおりなんですが、国の審査の中で、ナトリウム漏えい事故対策について、ナトリウムが漏れたとしても、鋼鉄製床張りでコンクリートとの接触は防げる、基本設計が否定されることはないとしてきたわけですね。しかし、今おっしゃったように、「もんじゅ」事故でそれは証明できなかったわけです。
 実は、「もんじゅ」事故の前の一九九四年十二月の動燃技報を見ておりますと、ナトリウム漏えい燃焼の熱的、化学的影響による床ライナーの破損や著しい変形及び雰囲気に露出したコンクリート表面の侵食や破損は認められなかった、ナトリウム漏えい対策設備は万一のナトリウム漏えい時にも設計どおり有効かつ健全にその機能を達成することが実験的に確認、実証されたということですから、まだその段階の実験は非常に不十分だった。だから、「もんじゅ」事故以前の、一年前の段階でも、動燃の実験のレベルは低かった、十分でなかったということが言えると思います。もっとも、コラム状の漏えい燃焼形態に関する知見を補強して評価手法を充実させる必要があるということは指摘しているわけですが。
 それが、九五年十二月に、「もんじゅ」ナトリウム漏えい火災事故で、ビデオを見ておりますと、その後の実験で見ても、床ライナーに穴があいていくということ、ナトリウム・コンクリート反応で、ビデオの中で、ぽっぽっと爆発的に燃焼しているのも見ることができるわけです。
 ですから、そういう点では、当時の国の審査の中で、ライナーがあるからナトリウム・コンクリート反応の心配などはないと思い込みがあったということは、これは言わざるを得ないと思うんですが、これはそのとおりですね。
薦田政府参考人 御存じのように原子炉の審査というのは、基本設計は設置許可の段階でやりますが、その後詳細設計になりますと工事計画の認可という段階に入るわけであります。当然、その工事計画の認可の段階におきましてさらに詳細に、ナトリウムがコンクリートに触れないようなライナーの構造であるとか、そういうものに審査をされるということを前提として安全設計の審査を行っております。
 したがって、今先生がおっしゃったようなことは、工事計画の認可の段階で行政庁によりまして審査をされるということで認識をしたと思っております。
吉井分科員 いずれにしても、審査の段階では、建設時で詳細なものになっていくだろうということではあるにしても、しかし非常に知見の領域が狭くて、十分な先を見通したことをきちんと指摘することができていなかったということは事実です。
 動燃の二十年史というのも少しひっくり返して見ておったんですが、大型ナトリウム漏えい燃焼試験装置で各種実験と解析コードの開発により、「もんじゅ」の二次冷却系ナトリウム漏えい事故については、漏えい事故の防止対策は妥当であるということを実証したというのが二十年史で動燃の方が言っていることですが、それは、各種の実験をやりながら、各種の実験をやって詳細なものにしたというどころか、詳細にしたはずのものが万全だという思い込みをしておったというのが事実です。
 安全審査の方では、一次冷却室の床ライナーの最高温度は設計温度以下であり健全性が損なわれることはない、こういう評価ですから、これは当時の安全審査も非常に大きな欠陥を持っておったし、その安全審査の過程で、おっしゃったように今後詳細にやるんだといっても、その詳細にする上での実験そのものが極めて不十分なために、「動燃二十年史」に見られるような非常に甘い評価を下して、それで安全だ安全だということで突っ走っていったというのが事実であったと思います。
 そこで、私、大臣にここで申し上げたいんですが、この床ライナーの厚さを設置許可審査の対象としないで安全確認をしなかったというのは、これは厚さがうんと厚ければ、つまり政府参考人がおっしゃったように、詳細設計の段階で実験を繰り返して、これだけ必要だ、そういうものをやっておればまた話は変わったかもしれないんですが、床ライナーの厚さを設置許可審査の対象としないで、安全確認をその点ではしなかったというのはやはり問題だというふうに、これは言わざるを得ないと思うんです。
 それから、高温ラプチャー型破損の発生する可能性はあったにもかかわらずその可能性を排除したというのは、やはり問題だったと思うんです。これは、現にイギリスで八七年二月に高温ラプチャー型破損の事故例があったわけですから、八七年の段階で。
 そうすると、万全の対策をとる、そのために何が必要かということについては、少なくとも安全審査の中できちんとそれをやっていかないことには、何しろ国民の側からしますと、安全審査が通ったら安全なんだということで建設側はもうお墨つきをもらって、何を文句言うか、こういうことでやってくるわけですよ。だから、この安全審査というのは、国民の側からすれば、みずからの安全を守る上で非常に頼りにしているところですね。そこが揺らいでくるというのは大変大きな問題です。
 私は、三つの論点がありますが、時間がないので炉心崩壊はまた別な機会にやりたいと思いますが、この判決の論旨が正当性を持っている、反論に証明する力がない以上、上告は取り下げて、「もんじゅ」については判決に従うべきだというふうに思います。大臣のお考えというのを聞いておきたいと思います。
遠山国務大臣 今の点は、上訴をするか否かにも関連してくる大変技術的な話でございますので、政府参考人から答えさせます。
薦田政府参考人 行政庁から、保安院としてお話をさせていただきますけれども、本件につきましては、先生今御指摘の点多々ございますけれども、国といたしましても、本省を初め関係当局と十分相談いたしまして、今回の判決については納得ができないということで上訴させていただいたということでございます。
吉井分科員 あなたたちが納得するしないの話にかかわらず、「もんじゅ」の安全審査の過程で、明白に、世界の既に得られている事故例や知見からしても、またそれに基づく、きちんとした実証実験に基づく詳細設計に進むという点でも、大きな欠陥があったことは明白ですから。ですから、あれで問題ありと思うのは、皆さん思われるにしても、これはやはり、判決の論旨が正当性を持っていて反論に証明する力がない以上、上告を取り下げるということを考えるべきだということを私は申し上げまして、次に、高速増殖炉開発などにかかわる研究予算の問題について伺いたいと思います。
 核燃公社それから動燃事業団、核燃料サイクル開発機構を通じての発足以来の毎年度の全体の予算、それから「常陽」や「もんじゅ」、「ふげん」、ナトリウム施設、その他高速炉関係の研究開発施設や再処理施設、核燃料製造施設などについて、個々の研究施設ごとの予算、決算額の方で、これを既に出していただきました。それは細かいことをやったって時間がむだですから、中身はもうもらっていますから、私も見ておりますから、ここで確認しておきたいのは、一般会計と特別会計の合計で、要するに高速増殖炉開発にかかわってきた動燃関係の事業予算は現時点で合わせて五兆三千七百九十八億円、これだけになると思いますが、確認しておきます。
白川政府参考人 数字の確認をさせていただきますが、今先生おっしゃいました五兆数千億という数字の中には、恐らく政府の支出以外の民間出資、あるいは旧動燃事業団のころから事業を行っておりますので発電収入等の自己資金もあるわけでございますけれども、そういったものが入っておる数字ではないかというふうに思われます。
 政府支出金に限って御報告いたしますと、ことし、平成十四年度までで、昭和三十一年度の原子燃料公社発足以来三兆八千百三十五億、こういう数字でございます。
吉井分科員 三兆九千でしょう。足し算がちょっと、八千じゃなくて九千の方でしょう。それは後で訂正されたらいいですが。
 要するに、動燃事業団の政府支出分、民間出資分、自己資金分ですね。自己資金のお話があったけれども、六百五十億の一般会計と六千九百億の特別会計分なんですが、要するに事業費としては五兆三千七百九十八億円を投じてきているということは、事実の問題として見ておかなきゃいけないと思います。
 その中で、「もんじゅ」関係の事業費の合計、これは「もんじゅ」開発にかかわっていく分ですね。これは「もんじゅ」関係でいうと二兆八千七十億円になると思いますが、これは広い意味での「もんじゅ」関係の関連ですから、「常陽」や高速炉研究開発費、その中にはナトリウム関連経費など、それから再処理、皆含めてですが、これぐらいのものを使ってきているわけですね。高速増殖炉の分野でも、直接的には二兆八千七十億円使ってきているわけです。
 一方、再生可能エネルギーの国の研究開発予算の方は研究開始以来幾らになりますかということでデータをお願いしたんですが、私はもうちょっと前からカウントされてもいいなと思ったのに、経済産業省が九七年度から、文部科学省が〇〇年度からですから少し少ない金額になってくるわけですが、太陽光発電、風力発電、バイオマス、それから海洋温度差発電とかその種の海洋関係、それからバイオと結びつけた燃料電池による再生可能エネルギーの開発の方法がありますから、これらを合わせますと、皆さんの方からいただいた一九九七年から二〇〇三年度までの合計でいうと、再生可能エネルギーの研究開発予算は二千三百六十億円ということになると思いますが、これも確認しておきたいと思います。
林政府参考人 文部科学省の分でございますけれども、今先生も御指摘がございましたように、文部科学省、大学等で競争的資金等を使いましたお金、これは年度当初から枠があるわけではございませんので、後で追加されるわけでございますけれども、予算区分がはっきりされているもの、つまり、プロジェクトとして主体的に当省でやっているものにつきましては、平成十二年度が一・三億円、それから平成十三年度が一・九億円、それから平成十四年度、これは三十六・八億円、それから平成十五年度が七・一億円。
 以上でございます。
吉井分科員 大臣もお聞きになっておられて、どうも、経済産業省と文部科学省で、この再生可能エネルギー、質問をされたときに、区分して、役所の壁でやっているのはおかしいなと思われたと思うんですよ。やはり再生可能エネルギーなら可能エネルギーについて、どれだけ国として研究開発に投じているのか。私は、佐賀大学の海洋温度差発電とか、大学の方のを大分前に見てきました。そういうのがこれにカウントされていないのは私も知っているんですよ。知った上で質問をしているんですが。
 時間が来たようですから、最後に伺っておきたいのは、過去十年の平均でいくと、今の分で一年間当たり三百三十七億円です。カウントされていない分がありますから、大体過去十年の、昨年までの分で平均を出しますと、一年間で二百億円ぐらいになるんですよ。一方、動燃関係に使ってきた予算の五兆三千七百九十八億円に比べてみれば、二百五十年分なんです、動燃の方は。いかに少ないか。
 だから、プルトニウム循環で矛盾を深めて破綻している「もんじゅ」などに大規模にお金を投ずる、一方、再生可能エネルギーの研究開発は年間二百億円とか、最近ちょっとふえてきているようですが、少ないんですね。動燃予算の二百五十分の一。これは、世界の流れからも、求められる再生可能エネルギーにかかわる研究からしても、その他の基礎研究で科学技術のすそ野をうんと広く深く発展させるという点でも、やはり改めていかなきゃならないと思うんです。
 こういう点では、この基礎科学、再生可能エネルギーなどにうんと予算も組み、力を尽くすということを最後に大臣に伺って、質問を終わりにしたいと思います。
遠山国務大臣 核燃料サイクルの事業も大変大事でございまして、これについては、合理化も図りながらしっかりとやっていく。同時に、委員御指摘の各種の再生可能エネルギーにつきましても、これは私も、その面について、我が省としては基礎研究あるいは研究開発が中心でございますけれども、これも十分、しっかりと取り組んでいく必要があると考えます。
吉井分科員 時間が参りましたので、終わります。
萩野主査代理 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。
 次に、武正公一君。
武正分科員 おはようございます。民主党の武正公一でございます。よろしくお願いいたします。また、きょうは、文部科学大臣、副大臣、そしてまた総務副大臣にもお出ましをいただいております。よろしくお願いいたします。
 さて、まず、平成十二年度、高校の中退率二・〇%、大体毎年〇・一ずつ、上がったり、同じだったり、微増、変わらずといったところでございますが、その中退率を見ますと、一年時の中退者が五三・六%を占める。これは、やはり中学校での進路指導がうまくいっていないんではないかというふうに考えますが、まず大臣の御所見を伺います。
遠山国務大臣 確かに、平成十三年度の高校中退者は全体で十万五千人でございまして、そのうちの五万六千人、約五三%が一年生というのはおっしゃるとおりでございまして、その理由を聞きますと、別の高校あるいは専修学校などへの入学を希望したり就職を希望したりということでございまして、そういう積極的な進路変更を理由とする者が三六%余でありますし、さらにそれ以外には、授業に興味がわかないなどといったようなことを理由に挙げる者が三八%いることは確かでございます。そういうことを考えますと、委員御指摘のように、中学校において十分な進路指導が行われていたかどうかという点も確かに問題であろうと思います。
 私は、中学校段階におきましては、これからは、みずからの進路や生き方を主体的に考える態度を育成することが大変大事だと思っておりますし、中学、高校を通じて、自分で意欲的に学んだり、あるいは職業について考えたりする、そういう力をつけていく総合的な対策を、これまでも進めてまいりましたけれども、これからも進めていく必要があるというふうに考えます。
武正分科員 一番大きな理由で、別な高校に移った、三六%、これを文部科学大臣は積極的な理由というふうに言われましたが、私からすれば、義務教育課程を終えて高校に入って一年以内に中退をする、やはりこれは進路指導に問題があるというふうに考えておりまして、親御さんからしても、保護者からしても、せっかく高校へ入って、一年以内に中退して別な高校に行く、それが積極的な理由とは到底思えないんですね。やはり中学校段階までで適切な進路指導を行っていくべきというふうに考えております。
 この点について、平成十四年七月二十三日、決算の分科会で、私から、当時は岸田副大臣と、進路指導主事の実態把握、どの程度できているんですかというやりとりの中で、例えば全国の進路指導主事さん、一万五千強、何年間その進路指導主事の位置にあるか、これについてなかなかお答えいただけなかったものですから、では調べますというような御返事だったんですが、調べていただいたと思うんですが、その実態をお知らせいただきたいのと、もう一点副大臣に、実際に、では進路指導主事への研修がどのように取り組まれているのか、その研修の実態把握が文科省としてできているのか、そして国として進路指導主事への研修を徹底する旨の通知等も出されているのか、以上、お答えをいただきたいと思います。
河村副大臣 在職年数、進路指導主事の問題について御指摘がありまして、調査をいたしました。これは、いわゆる学校基本調査とか学校教員統計調査というきちっとした調査事項に入っていなかったものでありますから、都道府県の教育委員会を通じて抽出調査ということになったわけでございますが、これによりますと、在職年数が一年から二年未満の者が二二・四%、それから二年以上三年未満、さらに三年以上四年未満、これが同じ比率で三一%ずつございますから、一番多いのは、二年以上から四年未満が大体六二%、六割強ということでございます。さらに、四年以上五年未満になりますと八・六、五年以上六年未満が三・四、さらに六年以上という方が三・四、こういう結果でございまして、一番中心部分は二年以上四年未満のところに集中をしているということがわかったわけでございます。これも人事異動等でかわっていくわけでございますが、通常、在職年数については約三年というふうに言われておりまして、これは、大体そういう感じということが裏づけられたと思っておるわけでございます。
 そういうことでございまして、さらに、進路指導主事への研修の問題でございます。
 やはり進路指導主事の教員が、真摯といいますか、本当に子供の立場に立って、子供の目線で一緒に向かい合って、真剣に相談し、その相談に乗ってやるということが必要でありますから、そうした進路指導を担当している教員に進路指導講座ということを実施いたしておりまして、これは各都道府県においても、進路指導に係る研修、講習等を活発に行われておるところでございます。
 また、文部科学省としても、特別に進路指導主事に対する研修を徹底せよということで通知を現時点で出しているということではございませんが、これはやはり各都道府県の教育委員会が、指導主事を集めた会議あるいは各学校の進路指導主事や進路指導担当教員等に対する研修をするように、各都道府県の教育委員会が中心になって、これは非常に大事なことだという観点でやっておるわけでございます。
 さらに、昨年十一月にキャリア教育の推進に関する有識者会議というのがございまして、ここでもやはり進路指導主事教員の指導力向上が必要であるということから、手引書をつくろうということで、その作成を今予定をいたして、その作成に入ろうといたしておるようなわけでございます。
武正分科員 この進路指導主事は昭和四十六年名称変更。京都のキャリアガイダンス研究会が昭和五十六年五月十日に発行した、進路指導主事等が書かれた本によりますと、やはり連絡調整あるいは教職員への指導助言、対外的分野、非常に重い役割を考えられている役職でございます。
 校長の委嘱によって五九%なっているよという、この調査は、実は昭和五十三年、進路指導の現状と問題、文部省が調査をやっております。ですから、もう二十五年前の調査で、多分それ以降、やっておられないんじゃないかなというふうに思います。
 今、通知も出していない、あるいは学校基本調査に盛り込んでいないというお話なんですが、先ほどのように、ここ一年で半数以上が中退をするといった中で、私はやはりこの進路指導主事が大変重い役割を果たさなければならない。それが実際できているのかどうか。調査も十分ではない。今お答えいただいた数字は、八県に対して七校ずつの抽出調査ですので、私はやはり不十分だと思っております。
 このときのキャリアガイダンス研究会では、二年以内の進路指導主事四九%、三年以内六一%ということですから、二年以内で半数かわってしまうといったことも、位置づけが軽いというようなことも言われております。その当時は、持ち時間は何時間かとか、担任しているかどうかとか、計画は学校で立てているかどうかとか、そこら辺まで調査していますので、私はやはりこの進路指導主事にかかわる徹底調査をお願いをしたいというふうに思うわけでございます。
 そこで、一昨年の秋に民主党として提案しました法案、ガイダンスカウンセリング法案、学校教育法の改正で、でき得れば小学校から進路指導あるいは職業教育の徹底をするための外部の専門家の活用ということでの法案を提出しておるんですけれども、進路指導主事に専門家を活用すること、あるいは、現在の進路指導主事さんの研修をさらに高めるためにこうした法案を提出をしたわけでございますが、大臣、これについての御所見を再度私はお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 この問題につきましていろいろお考えいただいて法案をお考えいただいたということは多としたいと思いますが、民主党により提案されました法案は、小中高等学校等に児童生徒の心理相談または指導相談等に応じる専門相談員を配置するという内容と承知いたしております。
 我が省といたしましては、心理相談面としましては、児童生徒の問題行動あるいは不登校が非常に問題になっておりますことから、子供たちの心の問題に適切に対応する必要があるということで、スクールカウンセラー、これは心の専門家でもあるわけでございますが、その配置を推進しておりますし、進路相談面では、進路指導主事が学級担任と協力しながらやっているところでございます。
 特に進路指導につきましては、私は、進路指導主事という専門の人といいますか、それを主事としてやっている人のみならず、クラス担任、それからすべての教員がそのことについてしっかりと認識をし、かつ、子供たちの一人一人の状況に応じながら指導していくということは大変大事だと思っております。
 その意味で、今新しく展開しようとしておりますのが、キャリア教育を各中学校なり高校でしっかりやってもらおうということで今専門家会議を始めておりますし、また、新たな学習指導要領の実施によって体験学習というのを進めておりますが、これは、職業の場に子供たちを連れていって、みずからの将来について体験をさせながらやっていく等、さまざまなことをやっておりまして、専門相談員を置くというだけでは到底今の事態に対応できないというようなことを配慮いたしまして、私どもとしては万全の対策を今とりつつあるわけでございます。
 そういうことで、さまざま課題があるというふうに私は考えているところでございます。
武正分科員 スクールカウンセラーのお話がございましたが、臨床心理士、二〇〇二年三月現在八千七百九十九人、そしてまた指定大学院専攻コースは第一種六十八、第二種三十七、計百五大学ということで、スクールカウンセリング、臨床心理士、いわゆるいじめから発したカウンセリングは確かに文部科学省さん、大変なお取り組みをされております。
 しかし、本来、ガイダンスカウンセリングである進路指導、私は、将来の進路とか職業がはっきりと子供たちの目標に定められない限り、生きる力は生まれ得ないというふうに考えておりまして、そういった意味では、残念ながら日本では、筑波大学院教育研究カウンセリング専攻のみということで、大学院におけるガイダンスカウンセリングの部門が大変劣っているわけでございますので、こういったところをやらなければ、今言われたような、外部の専門家を使わなくてもいろいろキャリアコンサルタントの取り組みありますよといったことでございますが、私はやはりこれでは不十分である、総合的なお取り組みをお願いしたいと思います。
 さて、次に移らせていただきますが、医学系大学、医学系大学病院での救急医療の取り組み、特に地域消防署とメディカルコントロールの連携で、より救急医療の分野に大学、大学病院が参画していくべきというふうに考えております。
 今、国立大学で救命救急センターがあるのは、全国百五十七カ所の救命救急センターのうち、阪大、山口大、香川医大、三つのみということでございまして、この点について、私はもっともっと取り組んでいただきたいと思うのですが、その御所見を伺います。大臣、お願いします。
遠山国務大臣 専門性を有した質の高い救急医療を提供するとともに、地域の救急医療体制への支援を行うことは、私は大学病院の重大な使命だと思っております。
 メディカルコントロール体制の構築につきましては、消防庁が厚生労働省と提携しつつ推進しているところと承知しておりますけれども、都道府県あるいは地域の協議会におきまして、国立大学病院の医師が積極的に貢献しているところでございます。
 また、救急救命士の病院実習につきましても、地域の消防機関からの要請に基づきまして、平成十三年度においては、これは国立大学だけの例でございますが、十九大学病院で二百二十八人を受け入れるなど積極的に対応しているところでございますが、先生御指摘のように、この面につきまして大学病院も十分協力体制をとっていく必要があるというふうに思っております。
武正分科員 大学には講座医局制度というのがございまして、例えば、阪大では二十五名、これは専属で救命救急に当たっているんですね。通常は貸し出しというそうなんですよ。そうすると、医局の教授の意向を気にしちゃったり、御自身の研究で忙しかったりで、なかなかやはり救命救急に専属で当たれないといったことがやはり問題とされております。
 これは、大学の医局制度といったものの根本的な見直しが言われるところでございますが、そういった点でうまくいっているというのは、救急医療の臨床研修実績があると評価されているのは、自治医大の初期臨床研修は評価をされているといったことでございます。箕輪良行船橋市立医療センターの部長さんも、メディカルコントロールという地域医療の取り組みが、病院前のプレホスピタルケア理解のため、今後ますます救急車や消防署と大学との相互理解、連携が必要だというふうに言っております。ぜひこの点、大学、大学病院のお取り組みをよろしくお願いいたします。
 さて、次にまた移らせていただきますが、校庭の芝生化でございます。
 芝生化議連ということで、既に今年度も議連からは補助率三分の一から二分の一への引き上げを要望させていただいておりますし、また、芝生の維持も事業化すべきであろうと。これは、千葉県の印旛小が、年間の水代八十万、肥料代三十万、こういったものは補助の対象になっていないということでございますし、また、使いやすい補助にすべきであって、例えば鉄棒の周辺だけ百平方メートルやるような、そんな小規模だっていいじゃないか。これは議連として御要望を文部科学大臣に出しているわけでございますが、これへの御所見と、あわせて、例えば芝生の研究は農水省、ヒートアイランド対策では環境省、国土交通省など、総合的な取り組みが必要と考えますが、以上二点、これは副大臣でございますか。
河村副大臣 委員もメンバーとして御指摘をいただいております。私もその一員でもございまして、この問題については承知をいたしておりますし、促進をいたしたい、こう考えておるところでございます。
 特に、補助率の引き上げの問題については、もっときめ細かいやり方もあろうとは私も思いますが、現時点では、三分の一というのは屋外教育環境整備事業ということで、芝生だけではありませんで、屋外運動場、グラウンド、芝張りも含めてグラウンドのもの、それから学校ビオトープ、あるいは防災広場の防災緑地であるとか、それから屋外、これは幼稚園関係でありますけれども集会施設等々、一連の支援の中の三分の一、こういうことになっておりまして、これを二分の一に引き上げるというのは、現時点では予算の確保が非常に難しい。むしろ、この三分の一は、私もこれは十分とは思いませんが、これを使って早く広がっていくことがまず必要ではないか、こう思うんですね。
 その方にもっと力を入れたいと思っておりますが、ただ、屋外、先ほど御指摘のありました中庭なんかに小規模に芝張りをやるんだ、これなんかも国庫補助の対象といたしておるわけでございまして、今、その普及がもっと進むように、まだ全国二百二校ですか、ということでありますから、こういうことでおやりになれば芝生については国も支援をするということで取り組んでいただきたいと思いますし、私も、千葉県のあの例もテレビ等で拝見いたしました。これは、芝生を張ると後の維持管理もなかなか大変でありまして、このことも含めて研究しなきゃいかぬ課題だし、そういうところを先駆的にお取り組みになっているところは、PTAの皆さんとか地域のボランティアの皆さんも一緒になってお取り組みをいただいているということでございます。
 お気持ちは我々も理解をしておりますが、厳しい財政事情にあるということも御理解をいただきまして、まずこれが国庫補助の対象になっているんだということで、各地方、都道府県教育委員会、あるいは市町村の教育委員会、また学校長、首長さん方が中心になってこの問題をさらに取り上げていただいて、環境整備にお努めいただく、そのことを期待いたしておるところでございます。
武正分科員 もう一つお伺いしたんですが、関係各省の。
河村副大臣 これは国土交通省、特にヒートアイランドの問題もございます。芝生は学校もございますが、屋上のビルなんかにもするというのが今方向づけになっておりますので、含めて各関係省庁ともしっかり連携をとりながらやっていかなきゃなりません。これは、さっき申し上げましたように、芝の管理等々についてはかなり専門的な知識も必要になってまいりますし、品種はどうあったらいいかとか、そういうことを進めていただくときにはそういう講習会もやらなければいけないのではないか、そういう意味では農水省の御協力もいただかなきゃならぬ、こう思っておりますので、必要に応じて関係省庁との連携を保ってまいりたい、こう考えます。
武正分科員 私も昨年、杉並区の和泉小を見てまいりまして、子供たちが休み時間、靴を脱いではだしになって芝生の上を転げ回っておりますし、あるいは月に一回地域の方と芝刈りをする。まさに学校を通じた地域おこし、町おこしにもつながっているというふうに拝見をいたしました。また、芝生は生き物であるということで、やはり生物を子供たちが育てるといった観点にもなりますし、実際、水やりは大変なんですが、そこはスプリンクラーを設置してやっておりました。
 そういったことで、例えばスポーツ振興くじ、totoでの助成は、新規分は四分の三、改設分は三分の二といった助成の率もありますし、私は、先ほど言ったように、特に芝生の維持、使いやすい方はありましたけれども、これは特にお取り組みをいただきたいと思いますし、また、文科省さんも進めておられるエコスクールについては、ヒートアイランド対策ということでいえば国土交通省さんも加わっていただきたい。これはぜひ文科大臣、お願いをしたいといったところでございます。
 さて次に、芝生から移りまして、ワールドカップ、昨年全国十会場で開催をされ、熱狂のうちに閉会をしたわけでございますが、実際、この十会場、今度この収支を出してみると、やはり当初よりも赤字が多かったわけでございます。これはもうどこの会場も同じでございます。
 私の出身の埼玉県も、埼玉スタジアム、当初年間四億の赤字と考えていたのが、あけてみると六億七千万の赤字。平成十五年度も四億八千万の赤字が見込まれておりまして、私は、やはりワールドカップ開催に当たって、関係自治体にかなり負担をある面強いてしまったところがあるんじゃないかな。各自治体も、参加自治体がたしか二億三千五百万円当初お金を出し合ってこのワールドカップの準備に当たっていた、そういったいわゆる出資金というか出捐金もありましたし、そしてまたスタジアムの建設、これから三十年かけての建設県債を返していくことなどございます。
 そういった意味では、ワールドカップ開催後のスタジアムの有効活用について、どのような観点で文科省としてサポートをするのか。私は、できればその十の自治体、このとき開催をしているんですけれども、この開催したところ、ある面これからはライバル関係にもあるんですが、そこはそこ、やはり文科省としていろいろな形でここのその後の利用を支援するような取り組み、そのためには、できればこの十の自治体の組織化なんかも必要なんじゃないかなと思うんですが、この点についてお答えをいただけますでしょうか。
渡海副大臣 あのワールドカップ、大変成功裏に終わりました。しかしその後はどうなのかということは、大変一つの大きな問題だと思っております。
 しかしながら、第一義的にはこれは地域の自治体がある程度、自分たちの町にこういうものをつくろう、またワールドカップをできるだけここでやろうという、いい意味で自発的な試みとしておつくりになったスタジアムでございますから、その運営等については一義的にはやはり自治体が、これは地方分権の時代でございますから、むしろ積極的に活用するということを主体的に考えていただきたい、そういうふうに私は思います。
 しかしながら、現状を見たときに、今委員も御指摘になりましたように、やはりいろいろな自治体がばらばらにやっているのではというふうなことで、連携をとっていく、これは非常に大事だなと思いますし、そういうことで、我が省としても、そういった動きの中で、さまざまなお手伝いはしていかなければいけないだろう。
 それからもう一つ、具体的に、今一つ十五年度でプロジェクトを持っておりますのは、ワールドカップ終了後の首脳会談で、日韓のスポーツ青年交流ということをやろうということが決まっておりまして、この予算の中におきましても、小、中、高校生を対象といたしました交流競技会の実施を支援していく、これは主にワールドカップをやったスタジアムを使ってこういうことをやっていこうということで考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、繰り返しますが、やはり連携を図っていただく、そういうことは大変大事なことであろうというふうに思っております。
武正分科員 総務副大臣、お待たせいたしました。
 今、渡海副大臣から、第一義的には自治体の責任である、自治体が自発的に名乗りを上げたんだからというようなお話でございましたが、たしか、袋井、掛川ですか、静岡のスタジアムは、できれば名称変更や運営を民間に任せたい、ただ、ついては自治法の改正が必要なんだというお話もございます。また、聞くところでは、東京スタジアムは今度名称を味の素スタジアムに変えて味の素さんからスポンサー料をいただこう、こういったことでそれぞれのスタジアムは工夫をして何とか収支をとんとんに、ワールドカップまでは盛り上がったけれども、今は、各自治体の首長さんはこの後どうするんだと住民から言われているんですね。
 ですから、ここはやはり柔軟に取り組みをということですが、総務副大臣、自治法改正も含めて御答弁いただけますか。
若松副大臣 武正委員の選挙区、まさに埼玉サッカースタジアムがあるところで、恐らく大変御関心があろうかと思います。
 そのようなスタジアムなどの公の施設につきましては、私どもとしましても、民間能力を最大限に活用する、かつ効果的な管理を行うことが要請されておりまして、そのために、現在、公の施設につきましては、地方自治法におきまして、公共団体、公共的団体または一定要件を満たす出資法人に対してその管理を委託することができる、こうされております。
 さらに、株式会社等の民間事業者も公の施設の管理ができるよう、地方自治法の一部を改正する法律案、これを今通常国会、三月中に提出するべく現在立案作業を進めておりまして、あわせて、今掛川市の話も出ましたが、ちょうど私の選挙区も、北本市が、公民館の管理を住民に任せようという、いわゆる公民館特区、こんな申請もありまして、まさにこの法案が、地方自治体の公の施設のさまざまな形の管理という形でのいわゆるアウトソーシングなり効率的な運用に資するのではないか、そのように期待しているところでございます。
武正分科員 総務省もこのように取り組んで、何とか自治体の負担を軽減しよう、その中で、やはりスポーツの振興そして国際交流、文化育成につながるサッカーやスポーツを通じた町づくりに各省挙げて取り組もうといったところでございますが、特に、その先頭に文部科学省は立っていただきたいと思うんです。
 実は、例えばスポーツ振興くじ、totoの助成、先ほどちょっと挙げましたが、四分の三芝生新設、改良三分の二ということでございますが、これは全部で平成十四年度助成は九億二千百十一万あるんですが、小中学校は対象外なんですよ。
 やはり芝生化についても、このtotoを学校の芝生化にもっと使ってもいいんじゃないか。これはもともとやはりくじだからなかなか小中学校に合わないよと、多分そこら辺はあったんでしょうけれども、そこら辺は柔軟にしてもいいのかな。あるいはまた、このtotoの売上金というか収益を使って、十のスタジアム、やはりここで収支ができるだけとんとんになるような、そんな取り組みもこのtotoの売り上げ、収益からできるのではないか。
 ぜひそういう形で、各自治体が、せっかくワールドカップが終わって、その後が、今が肝心ですので、totoの収益をもっと柔軟に、学校の芝生化やあるいは十自治体のスタジアムの収支改善に努めるようもうちょっと運用を広げられないか。この点、再度御答弁をお願いします。
渡海副大臣 totoの運用金の基本的な使い方につきましては、国庫補助の対象になっておるものは、今のところは国が直接出費をしておるわけでございますから、あわせて使うということは余り考えていないということはございます。
 しかしながら、委員御指摘のように、toto自身が実は大きな問題を抱えておりまして、これは、今までのやり方でいいのか、販売方法をもう少し考え直す、こういった問題等も含めて、現在新たな方法を検討しております。そういった中で、さまざまな使用の方法についても今後検討をさせていただきたいというふうに思っております。
武正分科員 国民の理解をtotoにも得るためにも、今国民が大変関心を持っている学校の校庭の芝生化、ここら辺が何か接点になったり、あるいは、ワールドカップが終わってスタジアムの運営をどうするんだろう、特に、自治体首長選挙もあり、自治体選挙もありということで、ある面争点化しているところもあるやに聞いておりますので、ぜひそういったところに積極的に、柔軟にお取り組みをお願いして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
萩野主査代理 これにて武正君の質疑は終了いたしました。
 次に、今野東君。
    〔萩野主査代理退席、主査着席〕
今野分科員 民主党の今野東でございます。
 私は、ちょうど今週の月曜日、群馬県の大泉町に行ってまいりました。
 御存じのように、大泉町は、町の発表の数字ですけれども、町民四万二千五百七十三人のうち六千二百十七人が外国人、多くはブラジルから来ている日系二世、三世あるいはその親戚の方々なんだそうですが、町の住民のおよそ一五%が外国人というところであります。
 多くの外国人は地元にある工場に働いているんですが、ここで暮らしている外国人の方々のお子さんの教育問題であります。
 言葉の問題もありまして、またやがてはブラジルに帰ろうと思っている人もおりまして、町には、正確に言いますと町じゃなくて隣の太田市にあるんですけれども、ブラジルの教育プログラムにのっとった学校があります。今、そこに三歳から十八歳の子供たち百七十人が在籍しておりまして、ポルトガル語で授業が行われております。
 教室に入りますと、実に伸び伸びとやっておりまして、ちょっとうらやましいような授業風景ではあったんですけれども、しかし、この学校、名前はピタゴラスという学校なんですが、国からも県からも市からも町からも、全く助成を受けておりません。ですから、規模は百七十人の生徒というふうに大きくても、本当は学校ではなくて塾であります。親たちは、月六万円ほどの授業料、月謝を払って子供たちをこの塾に通わせています。
 日本の企業に働いている人たちの子供にも教育を受ける権利があると思うんですが、我が国は憲法二十六条で、国民にはひとしく教育を受ける権利を認めております。こうした外国籍の子供たちは、ここで見ると、教育を受ける権利を獲得していないことになります。教育基本法にも「人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。」とあるわけですけれども、彼らは結果的に差別されております。これを大臣はどうお考えでしょうか。
遠山国務大臣 議員が大泉町に行かれまして、日系ブラジル人の子供たちの状況をごらんになっての御質問でございまして、心情はよくわかるわけでございますけれども、私どもといたしましては、公立の学校は常に日本に住む子供たちに開いております。
 したがいまして、日本人子女と同様に日本の公立義務教育諸学校へ無償で就学することを認めておりますし、また、外国語を使っている子供たちにつきましては、日本語をきちっと指導できるような指導教員を加配いたしましたり、あるいは母語のわかる教育相談員を派遣したりいたしまして、できるだけ日本の学校になじむようにということでやっておりまして、憲法上保障しているわけで、憲法上の要請に対応しているわけでございます。
 他方、国内の外国人学校につきましては、私立の各種学校としての認可を受けている例もございますけれども、この設置認可自体は、その外国人学校の申請に基づいて各都道府県知事が行うこととされているわけでございます。
 制度的に、現在の厳しい財政状況のもとで、そういう存在の、学校ではなくて塾でございますね、そういうところに同助成制度を設けることは大変困難であるわけでございます。やはりそれを受け入れている自治体なり、あるいはそういう人たちの労働力を使っているそれぞれの会社なり、いろいろなところが知恵を出し合ってやってもらいたいのと、できれば、私どもとしては、せっかく日本にいてくれる子供たちでございますので、日本の学校で友達もつくり、また日本のカリキュラムも学んでいただいて、そういうよさをぜひとも子供を育てる際に活用していただきたいというふうに思うところでございます。
今野分科員 公立の小学校は入学を拒んでいないから大丈夫なんだというお話ですけれども、確かにこの学校は、三百人ほど小中学校に外国人の子供たちが行っております。しかし、日本に入国してきて、私はこの小学校にも確かに行きまして、そして日本語、会話を教える教室ものぞいてまいりました。先生にも幾つか質問をしたんですけれども、二年間かかるというんですよ、普通の授業になじむまで、会話が。
 この二年間の間、つまり、親にしてみると教育がおくれるわけですね。母国に帰るかもしれないわけであります。もちろん、それは日本語を覚えなくていいということではないんでしょうけれども、やはり親にしてみれば、教育がおくれてもらっては困る、二年間も授業になじむのに時間がかかるんじゃ困るというので、こういう学校が必要になってくるわけです。
 そこのところはどうお考えですか。これは、三百人行っているんですけれども、その半数以上、百七十人はこのピタゴラスという学校に行っているんです。
遠山国務大臣 何とかできるのであれば、私もぜひそういうことについて援助できればいいと思いますけれども、日本の法体系の中での現在の状況、あるいは今の財政状況の中で、外国人の学校というものにもし何らかということになりますと、それは影響力も極めて大きいわけでございますし、私も外国におりましたけれども、それぞれの国民が、他国の国民が独自の教育をしたい場合には、それぞれの国がきちんと学校をつくるというのは国際的なルールでございます。
 その意味で、さはさりながら、地元ないし関係者でいろいろ御努力されるのは大変望ましいかと思うわけでございますが、今お話しのように、公立学校に約三百人通っているわけでして、小学校の関係では、南米系の子供たち六百二十二人のうちの四八%はきちんと日本の学校に通っているわけでございます。その子供たちが、言葉を覚えるというようなことも含めて塾のようなところへ通っておられるわけだと思いますけれども、心情的にはよくわかりますけれども、この段階ででは何かいたしましょうというわけにはまいらないわけでございまして、そこのところはぜひとも御理解をいただきたいと思います。
今野分科員 このことで長く議論をする、時間を使うつもりはないんですけれども、私は、やがてはこういう学校も認めて、そして大学を受験する資格も与えて、多文化共生社会を実現していくべきだと考えております。
 そういう点からしますと、一部報道されている、文部科学省がインターナショナルスクールの卒業生に対して大学を受験する資格を与える方向で検討しているということがありました。これは私自身は評価していいかなと思っているんですが、しかし、その条件が、アメリカにあるWASC、西部地域学校大学協会や、イギリスのECIS、ヨーロッパ国際学校協議会など、外国の民間の評価機関によって認証を受けているということになっているようなんですが、これはなぜ外国の、しかも民間の機関なのかというのが私はどうもわからない。朝鮮学校など民族学校を国立大学の受験資格から切り離すための方便としか思えないんですが、これはなぜなんですか。
遠山国務大臣 お尋ねの件でございますけれども、そういう報道があったということでございますけれども、私どもとしましては、まだ結論を出していないという状況でございます。
 これは、昨年三月に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画におきまして、インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、日本の大学や高校に入学する機会を拡大することとされているわけでございまして、それにこたえるべく、今具体的措置の内容について検討をしているところでございます。検討段階の現在でございますので、今のお尋ねについては、私としてはお答えするわけにはまいりません。
今野分科員 WASCとかECISの認証を受けていることが条件だということを、検討しているのであるとすれば、これはぜひそういうところからは外していただきたい。なぜ、外国の認証機関が日本の大学の資格についてあれこれできるのか、それが基準になるのかどうもわからないし、国民の多くの納得を得られないと思います。
 ならば、日本の大学を受験する資格なんですから、日本の認定基準も定めて、それも、私はそんなにハードルを高くする必要はないと思うんですよ、どうせ大学の入学試験を受けるわけですから。今大臣がおっしゃいました、一定の水準であればということでしたけれども、これは民族学校についてもそういう適用をするおつもりはあるんでしょうか。
遠山国務大臣 先ほどお答えしましたように、今検討中でございまして、いろいろな意見があるということは承知いたしておりますし、委員の御意見も一つの御意見として承っておきたいと思います。
今野分科員 さまざまな政治的な判断もあるんでしょうけれども、しかし、そういうはざまで将来日本で長く暮らしていくであろう人たちに、どうか差別をしないように気を配っていただきたいと思います。
 さて、続いての質問なんですが、中教審、中央教育審議会の中間報告について少しお尋ねをしたいと思います。
 この中教審への大臣の諮問文を読みますと、何か初めから教育基本法の改正をしたくてしたくてしようがないから、そういうまとめをしてくださいね、言葉こそ違いますが、そう書いてあるわけなんですが、なぜそんなに教育基本法を改正したいんですか。
遠山国務大臣 諮問文、ぜひ客観的にお読みいただきたいと思うわけでございますけれども、平成十三年十一月に、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について諮問を行います際には、一つは、教育基本法制定当時とは社会が大きく変化していること、それから教育全般についてさまざまな問題が生じているというようなことから、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方を考えて、その見直しに取り組むことが必要であると認識していたところでございます。そのために、諮問文におきましても、教育改革国民会議の報告の趣旨も踏まえて、例えば、教育の理念については、普遍的な理念、現行の基本法に書かれております普遍的な理念は当然維持しながら、検討の視点として幾つかを挙げたわけでございます。
 そして、それらをもとに、教育の根本であります基本理念にまでさかのぼった検討をお願いしたわけでございますが、その検討の視点としましては、一つは、時代や社会の変化に対応した教育という視点はどうか、それから二つ目には、一人一人の能力、才能を伸ばして創造力をはぐくむという視点はどうか、それから、伝統、文化の尊重など国家、社会の形成者として必要な資質の育成という視点はどうかというようなことをお示しして、御検討をお願いしたわけでございます。
 諮問文といいますのは、審議会に検討をお願いする際にそのバックとなる考え方を示したものでございまして、それを受けた審議会としては、それをベースにしながらも自由濶達な御議論をしていただく場でございまして、現に今の審議会においては、私は十分な御検討をそれぞれの立場の委員からなされているというふうに考えております。
今野分科員 私は憲法調査会にも入っておりまして、この間、小委員会で、中央教育審議会の鳥居会長にもおいでいただいて、いろいろお話を伺ったんですが、どうもこのまとめ、中間報告にある教育基本法を改正する方向で行くべきだというのが、何を聞いてもよくわからない。
 初めから改正してほしいからそういう答えをちょうだいということについて、ただ、それではそのようにと答えたにすぎないんじゃないかと思いますけれども、今大臣がおっしゃった、さまざまな時代、社会の変化あるいは伝統といったものを組み込む必要があるということを聞いていると、またさまざまな大臣のいろいろな発言も聞いていると、教育基本法の改正に積極的であるというふうに私は受け取っているんですが、教育基本法を変えるとそれらの問題は解決しますか。
河村副大臣 私も教育基本法の見直しについては特命をいただいておりますので、その点について私の考えも述べさせていただきます。
 これは端的な質問で、教育基本法を変えたらすぐ今の教育がよくなるかと言われて、すぐよくなりますと言える今の現状にあるかどうか、これは考えはいろいろあると思います。また、中教審でもいろいろな御意見があることは私も承知をいたしておりますが、しかし現実に、今の日本の教育がいろいろな問題点を露出した、制度疲労もあるんだ、こう言われておりますが、そうした中で、ここでやはりもう一回日本の教育を根本から考えていこうという声はちまたにあるわけでございまして、これは、さきの小渕内閣の当時の教育改革国民会議においても、やはり教育を今根本から考えていく必要があろうというところから来ているわけでございまして、一義的に今の教育基本法に基づいて今の教育が病理現象を起こしているんだ、こういう考え方に立つものでは決してございません。
 大臣も今答弁いたしましたように、教育の理念、人格の完成という非常に基本的なところ、それは教育の目的として決して間違っていないし、正しい方向だと思う。しかし、現実に教育現場を見たときに、そして今の、残念ながら、青少年の犯罪が起きる、倫理観が薄れている、正義感が薄れている、こういう問題が招致した。
 これは日本社会全体が生んだといえばそれまででしょうが、やはり教育を担っている文部科学省としては、それを根本的にもう一回見直しながら、国民のいろいろな御意見を聞きながら、この時代にふさわしい教育理念はどうあったらいいかということは当然今この時代に考えていくべきだろうということから、新しい時代にふさわしい今の教育の理念をひとつ御協議賜りたいということで諮問をしたということでありますから、私は、それによって教育全体が、改めて今の教育、日本の教育の現状を考えることによって、それが少しでもよくしようという努力を生んでいくことになる、このように考えております。
今野分科員 私は、この質問は副大臣に質問したわけではありません。大臣にしました。大臣が積極的に発言していらっしゃるから、そのことについてはどうなんですかということをお尋ねしました。なぜ副大臣にかわったんですか。大臣、答えてください。
遠山国務大臣 大臣、副大臣、このことにつきましては心を一つにして取り組んでいるところでございますし、特にこの基本法の問題につきましては、中央教育審議会への出席を初めとして非常にきちんとフォローしてくれております。認証官である副大臣が大臣にかわってお答えしているところでございます。
今野分科員 ですから、それでは大臣に改めてお尋ねします。教育基本法を変えればそれらの問題は解決しますか。
遠山国務大臣 教育基本法を変えるということを私はまだ公の場で一度も申しておりません。私は諮問をした立場でございます。諮問をいたしまして、今、中央教育審議会においてしっかりと御議論をしていただいているわけでございます。その答申を待って対処をするというところでございます。
 もちろん、教育基本法というのは教育の根本法でございまして、今そのあり方について御議論をいただいているわけでございます。その御議論をいただいて、後に私どもの対処なり基本法の改正に向けての法案の準備ということももちろん含まれるのかもしれません、恐らくそういうことになるかもしれませんけれども、しかし、それによって、私は、日本の教育の根本法において今欠けているものについて、例えば付加されるようであれば、それは日本の教育の今のあり方にとってプラスになるということはあり得ると思っております。
 単純に基本法を、基本法というのは根本法でございますから、それが改正されればそれですべて終わるかという御質問自体は、ちょっと私には、複雑な事柄への御質問としてはなかなか答えにくい御質問であるというふうに考えます。
今野分科員 この大臣の中教審への諮問文の中で、「教育の現状を見ると、子どもたちの問題行動や不登校などの深刻な状況、社会性や規範意識の希薄化、」云々というふうにあるんですが、確かに私もそのとおりだと思うんですけれども、これを教育の現状と見ているところに私は大臣の目線の危うさがあると思うんですが、これは教育的病理なんでしょうか、私はむしろ社会的な病理なんじゃないかなと思っているんですが。
遠山国務大臣 社会的な病理あるいは教育的な病理というのも、それは概念をはっきりしないと議論はできないと思いますけれども、確かに、教育というのは社会の中で孤立したものではございませんで、社会の中の重要な部分であるわけでございまして、教育のいろいろな問題というのは、当然ながら社会のいろいろな問題を反映している面もございます。したがいまして、そこに列記をされている、あるいは中間報告でもしっかり述べられているいろいろな教育をめぐる問題というのは、これは社会のいろいろな問題を反映している面が極めて多いと思います。
 しかしながら、教育の面、特に学校教育なり家庭教育なり社会教育なり生涯学習を通じて、教育のあり方自体の問題はあるのかないのか、そういったこともしっかりと検討する必要があるというふうに考えております。
今野分科員 確かに子供たちを取り巻く環境は厳しくて、そして今既に小学校や中学校、高校生になっている子供たちのさまざまな問題行動というのが私たち大人からもさまざまな形で見えているわけでして、何とかしなければならないというのは、これは確かなことでありますけれども、だから教育基本法について考えましょうということも、それはもちろん大事なことかもしれません。しかし、その教育基本法の理念が公教育の中で生かされているかどうかという視点も必要なのではないかと思いますが、そういう諮問をするつもりはありませんか。
遠山国務大臣 今の御趣旨、今の教育基本法がしっかりと実現されているかどうかということで諮問してはどうかということでございますが、既に諮問はいたしておりまして、それにのっかって今着々と御議論をしていただいているわけでございます。
 現行法を前提として、これまでの制度あるいは施策の検討を行って、それが実現されているかどうかということを諮問するといたしますと、現行法の根本理念までさかのぼった検討を行うという趣旨が十分伝わらないというふうに思います。
今野分科員 教育は内面の形成に大きく影響し得るものですから、どのような教育が正しいのか、どのような教育理念がよいのかということは、外部から押しつけられるものではありません。
 最近、文部科学省は心のノートというのを生徒たちに持たせていますが、子供たちの価値観やあるいは理念、生き方というイデオロギー的背景ともつながり得るものを他律的に子供たちに押しつけるというのは、公教育の果たすべき役割ではないのではないかと私は思っております。
 自由社会の中で、子供たちや家庭が自発的に人格の形成のあり方、価値観や理想のあり方を探って、はぐくんでいくということをどのように公教育がサポートできるかということにもっと重点を置くべきではないかと思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。
遠山国務大臣 私は、今の委員のようなお考えというのは、子供たちが相当成熟した段階で、自分で考えて自分の行動規範というのもしっかり持っている子供たちであればある程度通用するお考えかと思いますけれども、一番大事なことは、しかも今の日本の中で起きているいろいろな問題というのは、一人一人の心の中にしっかりした規範意識というのが持たれているのかどうか、それらを本来ならば家庭でしっかりと教えるべきところが教えられているのかどうか、学校ではどうか、そして地域社会もどうか、また、大人社会も子供たちにモデルとなるような社会であるだろうか、そういうふうなことを考えますと、私は、子供たちにぜひとも持ってもらいたい道徳心というものがあると思います。現に、学校では道徳の時間を置いて、その中で教えられるべき内容につきまして学習指導要領の中でも明示しているわけでございます。どこの国でもそういうことはしっかりやっているわけでございます。
 今、その道徳については教科書もないわけでございまして、心のノートというのが、その一つの、道徳の時間に活用され、あるいは一般的な子供たちの学校生活ないし家庭生活の中で用いられることによって、本当に必要な規範というものがしっかり次世代に伝えられていくというふうに思っているところでございます。しかも、この心のノートは、子供たちにとってわかりやすく表現しているわけでございますし、子供たちが自分でその本を開いて、そして、自分は今こんなふうに考えている、こんなふうに成長したというふうなことを時間とともに記録をして、そしてみずからの成長の助けになるような中身になっております。ぜひともよく読んでいただきたいと思います。
 そして、そこで伝えようとしていることが、これは、大人社会が子供たちに期待する中身でありまして、決して押しつけるものではありません。それがまるでイデオロギーの強制というのは、そのようにお考えになること自体が、私は今の日本の大きな問題をはらんでいるというふうに思います。
今野分科員 成熟した段階で理念や生き方というものを個人に任せるというのはいいけれども、もっと小さい子供についてはどうかというお話なんですが、私は、それこそ、さっきちょっとお話ししました教育的病理、社会的病理という話につながっていくのだと思うんです。つまり、教育の段階で、そういう幼い、これから心をはぐくんでいくような子供たちに外から決まり切ったものを押しつけるというのではなくて、むしろ、今の子供たちの心の荒廃やそういったことに基づく問題行動というのは、教育ではなくて、教育の問題もありましょうけれども、地域やあるいは家庭の問題なのではないか。よって、教育の現場でだけそれをどうしようかととらえるときに、大変危険な結果が出てくるのではないかということを申し上げているわけであります。いかがでしょうか。
遠山国務大臣 まさに委員がおっしゃったとおりでありまして、子供の教育には、学校のみならず、家庭、特に親、これは大変な責任を持っているわけでございます。地域社会もそうです。私もそのように述べたつもりでございます。
 心のノートというのは、子供たちに渡して、子供たちが家庭に持って帰って、そして一緒に見ながら、そこで述べられていることについてどのように考えるかというような話し合いが持てれば非常にいいわけでございます。このノートの作成に当たりましては、内容については、役所がつくったというものではございませんで、日本の英知とも言われるような人たちの御協力を得てつくったわけでございます。まさに先生が御指摘のように、私は、子供たちを本当に健やかな心と体と、そしてしっかりした知力というものを持っていくためには、学校ももとより、家庭も、そして地域社会もしっかりとその役割を果たしていく時代であると思います。
斉藤主査 時間が来ております。
今野分科員 もう時間が来ましたから終わりますが、私は、教育基本法というのは理念であって、それをいろいろいじるよりも、むしろ家族で一緒に朝御飯を食べよう運動なんというのを展開した方がはるかに効き目があるんじゃないかと思っているんです。
 民主的な教育の保障、教師や子供の権利の保障というものがその教育のあり方でありまして、このような憲法的な、あるいは準憲法的な性質を持つ法律を見直すというのはよほど慎重でなければならないという意見を申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
斉藤主査 これにて今野君の質疑は終了いたしました。
 次に、山井和則君。
山井分科員 民主党の山井和則です。
 本日は、この三十分の限られた時間の中で、子供の居場所づくりや校庭の芝生化、さらには引きこもり問題などを中心に質問をさせていただきます。
 私は、学生時代、学校の先生になるのが夢でして、当時も児童福祉施設でボランティア活動をして、毎週二回、施設の子供たちと一緒にソフトボールをしたり、折り紙や工作、割りばし鉄砲をつくったり、クリスマス会とかいろいろな行事をしておりました。そういう意味では、きょう子供の問題について久しぶりに質問をさせてもらえるのは、何か懐かしいような気もいたしております。
 今、コミュニティーの崩壊ということが言われておりますが、町づくりの拠点として考えたときに、やはり最も適しているのが小学校ではないかと思います。子供もお年寄りも歩いて通うことができ、まただれもが親しみを持っている場所は小学校ではないかと思います。
 そこで、まず最初にお伺いします。
 小学校が地域のコミュニティーセンターになるべきだと考えますが、小学校の地域開放はなかなか進んでいないように思います。もっと進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 私も委員のお考えに賛成でございまして、学校、特に小学校、中学校のようなものは地域社会の中にしっかり溶け込んで、学校の方も地域に開くと同時に、地域の人たちが学校に来て大いに施設を活用したり、あるいは子供たちの状況も常日ごろ見てもらって、一緒になって子供たちを育てていくということが大変大事だと思っております。
 次第次第に学校開放の状況も進んでおりまして、必要ならばまた数字については政府参考人からお答えいたしますけれども、そういうことを可能にするために私たちも幾つかの措置をとっておりまして、土曜日に学校で子供たちのスポーツ・文化活動などの指導員を配置する場合に必要な経費を地方交付税措置いたしております。ぜひ活用してもらいたいなと思っております。
 それから、厚生労働省において実施しております緊急地域雇用特別交付金というのを活用しまして、学校開放の管理員、それから週末・放課後指導員などの雇用を促進いたしております。やはり、土日のようなときはだれか大人が見ていないといけないわけでございます。そういうこともやっておりますし、そういうふうなことも援用しながら、さまざまな形で地域開放が行われるようにこれからも力を注ぎたいと思います。
山井分科員 今まさに週末の学校利用の話も出てまいりました。
 週休二日制が進みまして、その結果どうなったかなというと、残念ながら、一部では土曜日に子供たちが塾に行ったり、また家でファミコンにかかり切りになったりということで、それは週休二日制の趣旨ではないと思います。
 そういう意味で、具体的に、二番目、お伺いしたいと思うんですが、土曜日の子供の居場所づくりということで、土曜日に、普通教室は私物が置いてあるのでなんなんですけれども、それ以外の小学校の部分を開放して、子供の居場所をつくるのはどうかということであります。
 それで、きょうちょっと、私の地元の宇治小学校で行われております、城南新報の記事をここにお配りをさせていただいたんですが、見ていただければと思います。これは、宇治小学校の子どもの居場所づくり推進委員会というところが、これからやはり土曜日、子供の居場所をつくろうということで始めたものであります。
 この記事にありますように、これは土曜日に、子供たちと近所の京都芸術高校の十八人の人たち、そして保護者の方々が小学校の体育館に集まって、低学年の方は白い布でにじの大きな絵をかいて、高学年は卵の殻でまた作品をつくった。そういうものを土曜日の午後につくって、それを体育館に展示しているということで、子供たちも非常に喜んだし、高校生も逆に非常に新鮮な喜びを感じた、また保護者の方々も非常に喜んだ。こういうふうな地域との交流、また子供たちもいろいろなことを学ぶということで、非常に効果が高いと思います。
 土曜日に小学校を開放して、子供の居場所づくりをしていく、このようなことについて、文部科学省も子どもたちの居場所再生事業とか子ども週末活動等支援事業をされておりますが、ぜひぜひもっと力を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 昨年度から完全学校週五日制を実施しているわけでございまして、今先生がおっしゃったようなことは大変大事なことだと思っております。
 私どもも、そういうことで子ども週末活動等支援事業、これは一種のモデル事業でございます。そこでは、例えば地元の小学校の子供たちが、大学生でありますとか、あるいは地域のいろいろな高齢者の方々でありますとか、学校施設なり公民館等、そういった施設を活用いたしまして、地域でいろいろな形で触れ合っていただく。
 先生のお示しをいただきました資料を見ても、特に今の子供たちは異年齢での交流体験が大変不足をしている、こういう御指摘もございます。いろいろな年齢の方々が地域で触れ合いをする、そういったものを少しでもサポートしていきたい。
 そして、こういった事例を集めまして、全国の教育委員会等に周知をし、いろいろなところで実践をしていただく、こういうこともやっているわけでございますけれども、さらにそういった周知なりPRなり、努力をしてまいりたいと思っております。
山井分科員 この新聞の写真を見ましても、本当に子供たちの笑顔というのはすばらしいものがありますし、また学生時代、私自身も六年間、子供たちと一緒に遊ぶボランティアをしていた人間としまして、やはり子供たちから学ばせてもらうことというのも非常に大きかったと思っております。
 それで、小学校のこのような開放ということに関して、当然開放すればするほど、お年寄りの方も来られる、また障害のある方々も来られるということで、バリアフリー化を推進すべきだと思うのですが、これもなかなか進んでいないように思うのですが、この現状と今後の取り組み、いかがでしょうか。
矢野政府参考人 公立学校におきますバリアフリー化の推進は、ノーマライゼーションの実現を図る上で大変重要なことでございまして、実情に応じた施設整備が進められるべきものと考えております。
 平成十四年度調査によりますと、実態は、公立小中学校におきまして、約六割の学校におきましてエレベーター、障害者トイレ等の何らかのバリアフリーの対応がなされているところでございます。
 文部科学省といたしましても、公立学校施設のバリアフリー化につきまして、施設の新増築、改築あるいは大規模改造事業を実施する際に、エレベーターあるいは障害児トイレ等の設置につきまして、国として補助をいたしてきているところでございまして、今後とも、児童生徒や地域の方々が安心して利用できる学校施設が整備されますように、私どもとしてもそうした設置者の取り組み努力を支援してまいりたいと考えております。
山井分科員 今六割ぐらい進んでいるということでありますが、やはりエレベーターがないということで就学が難しくなったりというケースもありますので、ぜひとも進めていただきたいと思いますし、また、目に見えるバリアだけじゃなくて、例えば、後にも触れますが、目の不自由なお子さんが学ぶあるいは来る上では、補助教員の問題とかそういうガイドヘルパーの問題なども出てくるかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。
 さらに、このような小学校が地域の拠点となる上で重要なのは、一つは防災拠点ということであると思います。その意味で、校舎の耐震構造を評価した上で強化して、防災拠点にすべきではないかと思いますし、さらに、災害時のときに備えて、上空からヘリコプターなどでいろいろ救援したりするときに、小学校の校舎の屋上にナンバリングをすれば、どこの学校かというのがすぐわかるということも言われておりますが、その点についていかがでしょうか。
結城政府参考人 文部科学省では、学校施設を計画あるいは設計する上での留意点を取りまとめました学校施設整備指針というものをつくっておりまして、地方公共団体などの設置者に対して、これを提示しておるところでございます。
 その中で、体育館などの屋内運動施設の計画につきましては、必要に応じ、地域の防災拠点としての利用に配慮した計画とすることが重要であるというふうになっております。また、その構造、設計につきましては、学校開放時や緊急の災害時に多数の住民などが利用することを考慮して、十分な安全性能を確保するように計画し、設計することが重要であるというふうにしておるものでございます。
 また、学校施設の改築や耐震補強などの耐震化事業に対しまして国庫補助を行いまして、その耐震化の推進に努めるとともに、大規模な改修工事に合わせまして災害時のための備蓄倉庫を整備するような場合には、これもまた国庫補助の対象とすることができるようになっております。
 私どもといたしましては、小学校を初めとする学校施設は地域住民にとりまして最も身近な公共施設であり、児童生徒などの教育活動に対して十分な配慮をした上で、地震などの災害時に地域住民の応急的な避難場所として小学校などを活用することは大変有効な方策であるというふうに考えているところでございます。
山井分科員 老朽化した校舎が多いですので、ぜひとも急いでいただきたいと思います。
 次に、小中学校の校庭の芝生化の問題についてお願いをしたいと思っております。
 私の住んでおります京都でも、京都経済同友会のメンバーの中の有志の方々が、京都の小中学校にも芝生の校庭をということでNPO芝生スクール京都というものを立ち上げて、カンパを募って取り組んでおられます。
 昨年度は嵯峨野小学校、今年度は西陣中央小学校と新しくできるフリースクールということで整備をしておられますけれども、大好評でありまして、その効果は、もうこれは言うまでもないことですけれども、いじめが減ったり、キレる子供が減ったり、あるいは休み時間に九〇%の児童が芝生の校庭で遊んでいるとか、あるいは昆虫や花と接する機会がふえて豊かな感受性や自然環境に対する意識の高まりがあったり、また体力づくりにつながったりとか、さまざまな効果が指摘されているわけですけれども、なかなか補助が不十分だという声があります。
 今、補助金を三分の一出しておられるということですけれども、これを二分の一に引き上げてもらうとか、こういうことも含めて、全国の現状と今後の取り組み、国としてはどのように考えておられますでしょうか。
河村副大臣 山井委員が子供の目線に立って、あるいは特に支援を要する子供たちの立場に立って、教育問題を初めとして、さまざまな問題について積極的に御提言、御指摘をいただいておりますが、このことに敬意を表したいというふうに思います。
 芝生化の問題、確かに日本はまだ非常におくれておりまして、イギリスなんかに行きますと、ほとんどの学校はきれいに張ってある。私もあれを見て、早くこうなるといいなと思っておりますし、またこの議員連盟の一員でもございまして、推進をしておるわけでございますが、まだまだ十分とは私も思っておりません。
 特に屋外の教育環境整備事業ということで、この一環としてとらえておるわけでございますが、これが国庫補助になっていることは今御指摘のとおりでございます。平成九年から十三年度まで、校庭に芝を三百平米以上張っている学校は、もう二百三校あると言われております。
 しかし、これをさらに進めるために、補助率を上げること等、私もそれができるといいと思うのでありますが、この補助率の三分の一というのは、全体の校外施設について全体に及ぶ課題でもございまして、現状の取り組みでは、芝生のところだけというわけにいかない面がございます。そういうことで、まず予算を上げるというよりも、まず全体に、早く全国的にこの問題に取り組んでいただきたい、こう思っております。
 ただ、これは、芝生には管理の問題もございます。地域のボランティア等の御参加もいただくということで、いろいろ御苦労いただいていることも承知いたしておりまして、さらに、芝の研究となりますと農水省や何かの資料、報告も要りましょうし、さらに環境省の御協力もいただく、そういう連携もとりながら、早く欧米に追っつけるように、この運動が広がっていくということを期待いたしております。
 なお、私、今二百三と言いましたが、三百平米以上行っている学校は二百二校だそうでございます。失礼しました。
山井分科員 改めて、ここでやはり学校の校庭の芝生化の効果ということを遠山大臣にお述べいただきたいんですが、私、昔二年間、福祉の調査でスウェーデンに滞在しておりましたが、例えば向こうでは、小学生は週に二日は学校から出て森や緑の中を行くというのが教育になっているわけですね。ところが、日本では都市部ではなかなかそういうのは当然難しいと思いますので、そういう意味でも校庭の芝生化というのは重要だと思いますが、遠山大臣、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 本当に日本は豊かな自然を持っているんですけれども、特に、都会の子供たちはなかなか日常的にそういう自然の中に行くチャンスがない。その意味では、芝生化なり、あるいは学校の植林といいますか、木を植えたり花を育てたり、そういうことは大変大事だと思っておりまして、そういうことが心を豊かにしていく一つのあれだと思いまして、副大臣がお答えしましたように、今後ともこの面について力を注いでいかなくてはならないと思います。
山井分科員 ちょっと通告にはないんですが、このような芝生化をして、先ほど河村副大臣からも、管理とかがまたもう一つの新たな課題であるということをおっしゃっていまして、そこで、私の地元でも言っているのは、先ほど質問しました子供の居場所づくりの取り組みと関連して、まさに土曜日、子供たち、保護者の人たち、地域の人たちが、やはり学校に集まって、そこで一緒に芝生の手入れもしていく。そういう中で、地域の交流が生まれ、また自然を大切にする心が生まれてくると思うんですが、遠山大臣、そのような維持管理の方も地域でやっていく、そういうことについていかがでしょうか。
遠山国務大臣 本当に、芝生というのは一度植えただけではなかなか維持できないわけでございまして、委員のおっしゃるとおりだと思います。
山井分科員 今、ある意味で、教育の中での自然との共生ということについて、また地域との共生ということについて述べさせてもらいましたけれども、もう一つ非常に重要なのは、やはり福祉との共生といいますか、障害のある方々との共生というのが非常に小学校の場で必要だと思っております。
 私の家の近所に宇治市立小倉小学校というのがありまして、ここが全国初のパイロット事業で余裕教室を高齢者のデイサービスセンターにしたというところであります。ところが、その後、なかなか数がふえていなくて、私もこれ一つできたらどんどん日本じゅうに広がるのだろうなと思って期待していたんですが、今の資料を見ますと、社会福祉施設への転用は〇・一%、児童福祉施設を入れても一%ということなんですけれども、このようになかなかふえない現状ということは、いかがでしょうか。
河村副大臣 山井委員御指摘の点は大いに進めなきゃいかぬ視点でございまして、特に余裕教室をいかに活用するかということは、これからの大事なことになってきております。
 現在、余裕教室がまるであいた状態になっているかというと、かなり活用されていることは間違いないようですね。ただ、御指摘のように、児童福祉施設とかその転用がまだ少ないということは現実にあるようでございます。これを有効活用していくということで、余裕教室活用指針を策定する、あるいは学校施設以外の転用における財産処分の問題がございまして、この手続をもっと簡素化する、そのための有効活用の手引書、事例集の作成を行ってきておりまして、これを大いに進めていく必要があるというふうに考えます。
山井分科員 例えば、ドイツの教育学者のシュタイナーが書いた本の中には、子供たちの学びの場の中には必ずお年寄りがいなければならない、やはりそういうお年寄りと接する中で、自然と人に対する思いやりの心を子供たちは学んでいくということが書いてありました。そういう意味で、今、核家族化が進んでおりまして、お年寄りと接する機会が非常に減っているわけです。
 それで、実際、この小倉小学校を初めとしまして、こういう福祉施設との合築をやったところでは、例えば、子供に優しさや思いやり、いたわりの心が生まれたというのが五〇%、子供の祖父母に対する接し方が優しくなったというのも四〇%、また、学校のイメージが開放的になったというのも五〇%ありまして、非常に効果が上がっています。
 私の近所の小倉小学校でも、先日行きましたら、小学校の二年生ぐらいの女の子がデイサービスセンターに来て、デイサービスセンターの絵をかいているんですね。それで、何をかいているのかなと思ったら、車いすのおばあさんの絵をかいているわけです。やはり、そういう小さいときから車いすというものに対して知らず知らずのうちになじんでいく中で、障害者やお年寄りに対する差別とかそういう意識もなくなってくるのではないかと思います。
 改めてなんですが、遠山大臣、今後どのように推進していく御決意でしょうか。
遠山国務大臣 私も、幾つかの学校を訪問しましたけれども、少子化に伴いまして、これはちょっと残念なんですけれども、むしろ余裕教室がたっぷりしているところもありまして、そういうところは結構うまく使われております。
 委員おっしゃったように、できるだけ地元の方々もそういうところを御利用いただくように、我々も制度をかなり柔軟化しておりまして、地域がそういうふうにやりたいということであれば、ほとんどできるようになっていると思います。
 それと、複合施設もどんどん建てられておりまして、学校が、幼稚園とか保育所とか、あるいは公民館とか社会福祉施設とか、そういうものと一緒になって、新しい、そういう機能も一つの建物の中にあるようなものもどんどんふえてまいっておりますし、委員冒頭の御質問の、地域のコミュニティーセンターとしての機能というお考えからいっても、今後ともそういう方向を進めるというのは大変大事だと思います。
河村副大臣 今の、福祉の点からもというお話で、最近、エレベーターがまだバリアフリーが少ないんです。これも、これはやはり首長さんの姿勢、教育長さん方の考え方もあろうと思います。その辺はやってもらわなきゃいけませんが、例えば、その学校に障害者はいないけれどもエレベーターをつくってもらいたい、地域からお年寄りが来るんだ、こういう話があるんですね。
 そういうことも含めて、バリアフリーも考えながら、単なるバリアフリーだけじゃなくて、福祉の視点、今のいわゆるお年寄りのこと、小さい子供たちとの共生ですね、そういうことの教育効果を考えて学校施設をつくっていく、空き教室を利用していく、そういう観点は非常に大事なことだというふうに思います。
山井分科員 例えば小学校の余裕教室を高齢者のデイサービスセンターに改築した例では、例えば、あるお年寄りは、それまではデイサービスセンターとかに行くのは嫌だと言って嫌がっていたわけですね。ところが、小学校の、それこそ七十年前ぐらいの卒業生だったわけですね。それだったら、その小学校のデイサービスセンターだったら私行くわということで言い出されて、そこの小学生と交流したら、実は私は七十年前にここの小学校を卒業したのよ、その当時はこの周り、池ばっかりでとか、子供との交流も生まれるわけなんですね。そういう意味では、ぜひとも推進をお願いしたいと思います。
 それに関連しまして、障害児との統合教育ということですね。
 先ほども言いましたように、私もスウェーデンの学校に二年間行っていたわけですけれども、日本と違うなと思ったのは、向こうの小学校、中学校を見ておりましても、例えば車いすの子供がいる、視覚障害の子供がいる、あるいは、もっと言えばクルドやソマリア、カンボジアからの難民の子供もいる。そういうふうに、本当に障害のある方を受け入れているわけですね。そのためには、当然、補助教員が必要だということもあるかと思います。
 私が一時期おりました国民高等学校というところでも、例えば盲目の学生がおりました。月に一遍、その盲目の学生が逆に先生になって、目の不自由な人の介助をどうするのかということを全校集会の場でともに学んでいった。また、車いすの学生さんがいることによって、やはりいろいろな話を聞くことができたり、一般の子供や学生さんたちも学べるところが多いと思うんですね。
 ある意味で、本来、教育の場に障害のある人がいるのが当たり前であって、その方々を排除しているということをやり続けていくと、結局、大人になったときにも、障害者を町で見ると怖い、接したことがないという問題が出てきて、そういう問題が障害者に対する差別や、もっと言えば、最近、ホームレスの人々への襲撃事件も出ておりますけれども、そういう弱い人たち、自分と違う人たちに対していじめてしまう、そういう社会問題にも発展していくと思います。
 このような障害児との統合教育をいかに進めるかということについて、遠山大臣、いかがでしょうか。
矢野政府参考人 我が国におきましては、先生御案内のように、障害のある児童生徒の多様なニーズに応じまして、その可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加のために必要な力を培うために、盲・聾・養護学校あるいは特殊学級、さらには通級による指導等、さまざまな指導形態で教育を行っておりまして、障害のある子供の教育の機会を確保しているところでございます。
 障害を持った子供の就学の問題につきまして、平成十四年九月、昨年でございますけれども、新たな制度改正を行いました。それは、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな教育が可能となるよう、そういう観点に立ちまして学校教育法施行令を改正いたしまして、本来ならば盲・聾・養護学校に就学すべき障害を持った子、そういう障害の状態が基準に該当する子供でも、その障害に照らしまして、小中学校において適切な教育を受けることができる特別な事情があるということを市町村の教育委員会が認める場合には小中学校に就学させることを可能にする、そういう意味での就学手続の弾力化を図ったところでございます。
 文部科学省といたしましては、今後とも、障害のある児童生徒のニーズに応じた教育を行うことが重要であると考えておりまして、そういう観点に立って制度や施策の改善充実に努めてまいりたいと思っております。
 なお、介護を必要とする障害の重い児童生徒、これは私ども、基本的には盲・聾・養護学校において教育を行うことが適切であるというふうに考えておりまして、こうした児童生徒について、通常の学級において教育を行うために補助的な教員を配置するということまでは国としては考えていないということについて、御理解をいただきたく存じます。
山井分科員 きっちり一緒に教育を受けるというのは難しい面もあるかもしれませんが、その場合はどうやって交流していくかとか、そういうふうなことにぜひとも力を入れていただきたいと思いますし、補助教員という問題、非常に重要ですので推進していっていただきたいと思います。
 次に、教育と関連して、引きこもりの問題についてお伺いしたいと思います。
 私も、数年前からこの問題は非常に関心を持っておりまして、きょう初めて質問をさせていただくのですけれども、そもそも引きこもりという定義はどういうことなのか、かつ何人ぐらい日本の中にいらっしゃるのか、またその原因は何なのか、そういうことすらまだまだわかっていない部分があります。
 全国親の会の会長の奥山さんにも先日お目にかからせていただきましたけれども、そういう意味で、この現状と原因と対策というものをどのように考えておられるのか、これは厚生労働省さんになるかと思いますが、御答弁をお願いします。
松本政府参考人 引きこもりについてのお尋ねでございますが、いわゆる引きこもりと申しますのは、一つの病気あるいは一つの障害という概念ではございませんで、一つの社会的状況を呈する状態を指すものということで考えられております。
 一昨年、相談体制を充実するためにガイドラインを暫定的につくりましたけれども、そこでの定義は、いろいろ定義がございまして、社会的引きこもりを、明確な精神疾患、精神障害を持たないが、引きこもりを続けている人々というようなことで定義しているものがございますし、あるいは、十二年度に引きこもりの実態を調査されたのがありますけれども、そこでの定義は、六カ月以上自宅に引きこもって社会参加をしない状態が持続しており、分裂病などの精神病ではないと考えられる者ということで、そういう定義自体も必ずしもはっきりしたものではございませんで、社会的状況を呈する状態を指すということでございます。
 その実態につきましては、正確に把握することが非常に難しい状況ではございますが、平成十二年度に、全国の精神保健福祉センターあるいは保健所等でこういう引きこもりについての相談件数が、受けたことがあるかどうか、あるいは増加傾向にあるかどうか、そういう調査を行っておりますけれども、その調査によりますと、相談件数が増加傾向にあると見られるということでございます。
 この対策といたしましては、保健所、精神保健福祉センター、児童相談所などの相談業務をより適切に実施できるようにするために、ガイドラインを作成し、関係機関に配付しております。
 さらに、引きこもりを含みます思春期の問題行動につきまして、当然、保健所あるいは精神保健福祉センター、医療機関のほかに、教育委員会ですとか学校ですとか警察などの地域の関係機関が連携してチームをつくりまして、その方に的確な支援を行うためのモデル事業というものを十三年度から実施しております。
 さらに、相談に当たる専門家の方が少のうございます。そういうこともございまして、専門家を養成するための研修を行っております。
 また、児童福祉に理解と情熱を有する大学生などを児童福祉司などの助言、指示のもとに家庭に派遣する事業ですとか、夏休みなどを利用いたしまして、児童相談所への宿泊等を通じまして集団的に生活指導などを行う事業を実施しておる。このような取り組みをやっておるところでございます。
 今後とも、関係省庁あるいは省内の関係部局が十分連携を図りながら、関係者や専門家の御意見等もお伺いしながら、適切な対策を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
山井分科員 最後に一つだけ質問させていただきたいんですが、まさに今の相談ということなんですけれども、例えば、私の知り合いのケースでも、精神保健福祉センターに相談に行った、そうしたら、精神科医の方が来てくださったんだけれども、親が甘やかしたのが悪いとかいって説教されたり、あるいは、パソコンを使っているからこんなことになるんだといってパソコンを使うなとしかられて、それがきっかけで本格的に引きこもってしまったというようなケースもあるわけです。
 そういう意味では、先ほどおっしゃったガイドラインというのができてからやはり引きこもりに対する偏見が減ってきたということで、効果はあったと思うんですけれども、まだまだ理解がないわけであります。
 それで、私の知り合いの一番最高齢の方は、四十二歳で引きこもっておられる。二十歳から引きこもって二十年。親ももう七十歳で、親が亡くなったらどうなるんだろうか。今、二十代、三十代の引きこもりの方もふえてきています。
 そうすると、引きこもりの方の就労をどうするのかというような問題も出てきて、小中だけではなくて、二十歳以下、二十歳以上と、ずっとそういう相談窓口が必要なんですが……
斉藤主査 時間が参っておりますので。
山井分科員 はい。たらい回しに遭わないように、こういう相談体制について、最後にお答え願いたいと思います。
松本政府参考人 御家族あるいは御本人が気軽に相談できるように、相談体制を充実していくことが重要だというぐあいに考えています。
 このため、先ほど説明させていただきましたけれども、専門家の研修がございますけれども、これを受講した医師あるいは保健師等の名簿を都道府県に配付して、有効活用を図っている。相談があったときに、必ずしも専門でない場合に、不適切な相談があってはいけませんので、より専門家につなぐということをやっております。
 また、先ほど申し上げました引きこもりのための対応のガイドラインは、一昨年配りましたのは暫定版ということでございまして、来年度当初に、社会的引きこもりに対応するためのガイドラインの最終版というものを今準備中でございまして、その中では、相談体制をさらに整備充実していくための具体的な援助方法や事例などを盛り込むこととしております。
 また、御家族ですとか御本人を対象といたしまして、正しい知識や、どこに相談すればいいかという相談機関等に関しまして盛り込んだ情報を提供するためのパンフレットを作成しようということで、今準備中でございます。それができましたら、そのパンフレットと同時に、厚生労働省のホームページあるいは各都道府県等を通じまして、広く普及に努めていきたいと考えております。
 いずれにしましても、こういう取り組みにつきましては、御家族、御本人が身近な機関に相談できるよう、また関係省庁、省内の関係部局と十分連携をとりながら取り組んでまいりたいと考えております。
山井分科員 きょう質問しましたことは、ある意味で文部科学省と厚生労働省に関係することですので、ぜひとも両省で力を入れていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
斉藤主査 これにて山井君の質疑は終了いたしました。
 次に、山谷えり子君。
山谷分科員 保守新党、山谷えり子でございます。
 二月二十五日、遠山大臣は所信の中で、心に響く道徳教育の充実を挙げられました。道徳教育は、大変に大切なことでございます。しかしながら、教育現場では、本来定められている道徳の時間が実行されていなかったり、また学習指導要領を逸脱したりして、内容的にも問題があるというようなものが、特に最近、メディアの報道あるいは保護者の声などで聞かれるようになっておりますので、その点をもう一、二点確認させていただきたいというふうに思います。
 矢野局長は、五年ごとにその実施状況などを調査し、そして適宜指導を行っているというようなお答えをいただきましたけれども、平成十年度の調査を見ますと、小学校で三十五という規定でいきますと六七・九%、中学校では四一%しか実施されていない。この実施状況をどういうふうに受けとめていらっしゃいますでしょうか。
矢野政府参考人 今委員が御紹介になりましたように、平成十年度道徳教育推進状況調査の結果によりますれば、道徳の時間の平均授業実施時数が、平成五年の調査に比べますと小中学校とも増加はしているわけでございますけれども、そういう意味での改善は図られてまいっておりますが、一部には依然として、先ほど委員が御紹介になりましたように、授業時数が標準時数を下回っている、そういう学級があるなど、改善を要する点が残っているというふうに思っているわけでございます。
 そういう意味で、私どもとしては、今後そうした問題についての改善を進めていかなきゃならないと考えておりまして、具体的には、その調査結果を受けまして、平成十二年の五月でございますが、各都道府県教育委員会に対しまして通知を発出いたしまして、それぞれの学校において、今回の調査結果を参考にして授業時数の確保など必要な改善の措置を講じて、より一層道徳教育を推進することを求める、そういう内容の指導を行ったところでございまして、また、各種会議等におきましてもそうした趣旨の徹底を行ったところでございます。そうした指導を通じまして、今後とも道徳教育についての指導の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
山谷分科員 平成十年の四月一日、参議院予算委員会の席で、道徳教育がきちんとなされていないではないかという指摘を受けまして、当時の町村文部大臣は、やり方も検討し、指導を行う根拠になるような調査をしたいというふうにお答えになられました。
 このときの調査では、学校現場から上がってくるものの中に虚偽報告の疑いが認められるものが多数あったということでございました。それを受けまして、今度は平成十五年、また調査が行われるわけでございますけれども、虚偽報告のチェック、あるいはその内容的なもの、特に最近は、この道徳の時間が過激な性教育に使われたりとか、非常に問題があるということが保護者から声が上がってきて、校長が謝罪するという例もございますので、その内容的なところにまで踏み込んでどのように実態を正しく把握しようとなさっていらっしゃるか、工夫があればお教えください。
矢野政府参考人 道徳教育の充実を図る上で、国として道徳教育の推進状況について実態を把握することは大変必要なことと考えておりまして、これまで昭和五十八年、それから平成五年、それから先ほど御紹介がございました平成十年と調査を実施してまいったところでございます。
 その場合の調査の内容といいますか、調査のあり方でございますが、それにつきましては、実は平成十年の調査の際にも検討をいたしたところでございますが、結論としては、全国的な調査のあり方としては、例えば道徳の時間の授業時数など、実態把握の枠組みとなる項目についての調査というのが国としての調査のおよそ限界であろうというふうに考えたわけでございまして、それをさらに踏み込みますと、まさに全国の小中学校のまたそのすべての学級における取り組みの内容のすべてにわたって把握するということは、これは不可能であって、そういう意味で、そういう内容の調査というのは国が行う調査にはなじみにくいのではないか、そういう判断をいたしたところでございます。
 そういう意味では、私どもとしては、先生がずっとお考えになっておられるような調査、それは個々の学校における道徳教育の具体的な内容あるいはその具体的な状況については、まずはこれは設置者である教育委員会において把握していただくべき、そういうものであるというふうに考えております。そういう考え方を背景にしながら、平成十五年度、新たな、新たと申しましょうか、新しい学習指導要領のもとでの最初の道徳教育推進状況調査を実施する、そのための経費を計上いたしておりまして、私どもといたしましては、これまでの調査のやり方等も十分検討、反省しながら、かつ新たに、新しい学習指導要領のもとでの初めての調査でございますので、そういう意味での調査内容や調査項目につきまして十分検討をして、全国的な道徳教育の推進の状況を把握できるような、そういう適切な調査を実施いたしたいと考えております。
山谷分科員 一九八七年のサッチャーがこんなふうに演説したんですね。自分自身を明確な英語で表現できなければならない子供たちが、政治スローガンを教えられている、伝統的な道徳価値を尊重できなければならない子供たちが、自分たちが浮気する権利を持っていると教えられている。
 これは今、日本の道徳教育に当てはまる部分があるんじゃないかなというふうに思っているんですけれども、少なくともメディア等々で具体的な学校の名前が挙がってきているところがあります。過激な性教育、学習指導要領を逸脱して小学校一年から行われている。それから、保護者からも教育委員会に上がっているものが多数ございます。せめて、そのような具体的な事案が挙がっているものに対しては、教育委員会がしっかりと保護者の声等も聞いて、中身にある種踏み込んで、一体どのような道徳教育が本当にいいのだろうかということを話し合うというような、そのような場づくりの指導というものを行うお考えはございませんでしょうか。
矢野政府参考人 全国的な調査については先ほど申し上げたとおりでございますけれども、個々の具体のケースについて、例えば指導要領を逸脱しているといったような、そういうケースがありといたしますれば、私どもといたしましては、それは都道府県教育委員会と連携をとりながら、まずはその辺の実態調査等も含めてしかるべき対応を検討いたしたいと思っております。
山谷分科員 保護者の方々から、私たちの教育権も大切にしてほしいというような声が上がっておりますので、十分その点を心にとめて御指導をお願いしたいというふうに思います。
 続きまして、政府は観光立国というようなことで力を入れる。保守新党も観光立国推進本部というのを立ち上げました。
 しかしながら、我が国は、例えばアメリカなんかですと、コーネルとかテンプルとかニューヨーク大学、フロリダ大学、ジョージ・ワシントン大学、大学院レベルの観光学部・学科があるわけでございますし、またEUなどでも、EU各国が共通していろいろな形で相互の、単位互換とか、観光に力を入れているわけでございます。日本の観光学部・学科、大学院も含めてどのような現状でございますでしょうか。
遠藤政府参考人 お答え申し上げます。
 現在の状況でございますが、平成十四年度現在で、名称に観光というような用語を用いております学部・学科は、十八の公私立大学におきまして三学部十九学科ということになっております。
山谷分科員 国立大学はございませんね、ないということでございますが、今後、独法化というような方向ではございますけれども、観光立国という形で政府が力を注いでいくとするならば、学部・学科、大学院レベル、それから国立大学での学部・学科設置充実策等々はどのようにお考えでございましょうか。
遠藤政府参考人 我が国での経済活動、地域振興、国際交流等、さまざまな面で重要な役割を果たしていくことが期待されます観光に携わる人材を育成すること、これは大変重要なことだと考えてございまして、これからの国立大学におきましては、それぞれの大学が置かれているさまざまな状況等を踏まえながら、個性豊かな大学として一層発展が大学の自覚のもとに進められることが必要でございます。
 御指摘の観光に関する学部等あるいは大学院ということにつきましても、各国立大学の個性化、特色づくりの一環として、地域で、観光に力を入れたい、国立大学でそういう人材を養成してほしい、こういうことになりますと、地域からの要望等を十分に踏まえまして、国立大学の主体的な運営方針のもとで、新たな取り組みとして展開されていくということを十分私ども期待しておるわけでございます。
山谷分科員 観光というのは、ただの遊びではなくて、生き方そのものであったり、また、安全保障の問題という形で先進国は非常に重視しているわけでございますね。
 我が国に訪れる外国の観光客、実はブラジルの次の三十五位という意味で、非常に先進国とは言えない状況になっております。観光関連産業を含めると、現在、三百九十万人働いておりますが、アメリカでは千八百万人働いていらっしゃるという意味で、人材育成というのは本当に大事なことだというふうに思いますので、この充実を図っていただきたいというふうに思います。
 遠山大臣は、観光立国という政府の方針、また、トルコ大使をなさっていらっしゃいましたので、恐らく大使として日本の文化を紹介することにも力を注いでいらっしゃったというふうに思いますけれども、観光観あるいは観光立国への思い、人材育成についてどのようにお考えでございましょうか。
遠山国務大臣 日本のこれからのことを考えますと、観光というのは大変大事な要素だと思っております。そのときに、単に人を呼ぶというだけではなくて、日本の伝統とか文化とか、そういったものが味わえるようにしていくというのが大変重要だと思います。
 もちろん一番のベースには、安価、できるだけ低廉な価格によるホテルとか、それから交通手段とか、そういったものが大事だと思いますけれども、行ってみたらこんなにすばらしいものに触れられたというふうに思ってもらうことが、将来、また次々に観光客を呼ぶ意味でも大変大事だと思っております。
 日本の伝統文化をどのように大使時代にトルコにおいて現地の人たちに紹介したかということでございますが、さまざまやらせていただきました。それは、日本のトップクラスの芸術家、オペラ、オーケストラ、それからさまざまな、ピアニスト等の演奏家を呼ぶプログラムのほかに、日本の地域の伝統文化みたいなもので、例えばお神楽とか、ああいうものも呼んでみましたら意外に喜ばれますね。それから、日本の人間国宝がおつくりいただいた陶器のようなものの展覧会をやりましたり、それからお茶とかお花とか、そういった庶民がやっているようなもの。
 これらは、たまたま、私が滞在いたしましたときに、土日基金文化センターの設立という、ほかの国ではないようなすばらしいセンターの設立に携わりましたが、そういったことも通じて、日本の伝統文化で洗練したもの、トップクラスのものを紹介するのも大変日本の文化へのあれを、効果がございますけれども、同時に、庶民がどんなふうなことに親しんでいて、書道、お花、お茶、それから柔道、これも大変人気がありましたし、和太鼓などもございますけれども、そういったものが極めて、日本のプレゼンスのために、外国においても大事ですが、いわんや、諸外国から日本に観光で訪れた人たちに大変なインパクトを与えると思いますし、持続的な観光客の誘致に大変大事だと思っておりまして、その意味で私どもも、地域文化の振興、伝統芸能あるいは伝統的ないろいろな技術の伝承、そういったものにつきまして近時特に力を入れているところでございます。
山谷分科員 観光とは、中国の易経では国の光を見ることということで、観光というのは本当に、その国、その地域に優雅に暮らす人々そのものというものが一番の魅力ではないかというふうに考えているわけでございます。
 大臣がおっしゃったように、伝統文化、日本のオリジナリティーというんでしょうか、そういうものを大事に守り育てなければならないと思うわけでございますが、文化芸術立国推進プロジェクトの中で、次世代伝統文化継承事業として、十五年度、二十一億円計上されておりますけれども、これをさらに推進すべきと考えますが、いかがでございましょうか。
銭谷政府参考人 ただいまお話のありました次世代伝統文化継承事業は、十五年度から文化庁として取り組もうと思っている事業でございます。
 内容は大きく二つございまして、一つが、地域の祭礼行事、民俗芸能、伝統工芸の保存団体などの活動に対する支援を行うふるさと文化再興事業というものでございます。もう一つが、次世代を担う子供たちに対しまして、さまざまな日本の伝統文化を体験、習得させる機会を提供する伝統文化子ども教室事業というものでございます。
 これらの事業を通しまして、地域の歴史、文化の魅力をみんなが再確認をして、誇りを持って、そしてそれを継承していくということができればいいなというふうに思っております。
 この事業につきましては、私ども、十五年度から実施をするわけでございますけれども、しっかり取り組んでいきたいというふうに思っております。
山谷分科員 本当に体験して習得していくということが非常に大事だと思いますし、それはまた、地域社会とか異世代のつながりにもなっていくわけで、非常に重い意味を持っているというふうに思います。
 それで、この継承事業を観光立国のプロジェクトとして位置づけて、予算の充実をさらにさらに求めていくというお考えはございますでしょうか。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
銭谷政府参考人 先ほど来の先生のお話や大臣の答弁の中にありましたけれども、日本の文化の魅力というものを日本人みずから発見をして、そしてそれを継承し、また外国にも発信をしていくということは、観光という観点から見ても大変意義深いことだと思っております。
 こういった次世代伝統文化継承事業につきましては、私ども、今後その充実をさらに図ってまいりたいと思っております。
山谷分科員 観光立国というプログラムの中で、文科省として何ができるかというような検討をぜひしていただきたいと思います。
 例えば、地域の中で、自然の豊かなところで廃校になった学校があれば、それをちょっとした長い休暇で家族で使えるように使えないかとか、それからまた、CONEという、さまざまなガールスカウトだとか自然体験活動のリーダーたちが一緒になってつくっている組織がございますけれども、そういう体験活動のリーダーたちによる、何か子供たちとの共同プログラムをさらに開発していくとか、そのような御検討のお考えはございますでしょうか。
銭谷政府参考人 実は、文化庁の中に、国際文化交流懇談会というのを先般つくりまして、その中で、いろいろとこれからの国際文化交流ということを御検討いただいてまいりました。先般、一月でございますが、中間報告を出しましたけれども、そういった中でも、文化活動と観光振興との連携ということが非常に強くうたわれております。
 今お話のございましたようないろいろなやり方があろうかと思いますけれども、私ども、文化や、あるいは我々日本人の日々の生活、あるいは伝えられてまいりました生活文化、こういったものが非常に観光という観点からも大事であるということの認識をさらに深めまして、いろいろと工夫を凝らしてまいりたいと思っております。
山谷分科員 続きまして、動物飼育について伺いたいと思います。
 生命尊重教育といいますか、命の美しさを感じる意味でも、動物飼育、学校での大切なことだというふうに考えておりますが、全国の小学校の九七%が、飼育について講義を受けなくて、また飼育経験もない教師が任されているというような現状でございます。
 その結果、さまざまなことがメディアでも報告されているんですが、ウサギを生き埋めにしたというような事件もございましたし、つい最近も、鶏をほうきで先生がたたいたら死んでしまった、子供たちはもう先生のことは許さへんなんと言っているわけでございますけれども、これは本当に子供にとっても先生にとっても不幸なことでございます。
 飼育についてのマニュアルか何かを作成中ということなんでございますが、これは、どういうふうに作成して、どのように使うおつもりでございましょうか。
河村副大臣 山谷委員御指摘のように、子供たちにとっても、動物、小動物を通じて命の大切さとか優しい心を養う、うまくやれば非常に効果がありますが、失敗をしますとまた逆に反動も来るわけでございますので、やはり適切な飼育をやるということが大変大事だ、私はこう思っております。
 マニュアルといいますか、これはやはり獣医師の方々の御協力も仰いでやらなきゃいかぬだろう、こう思います。私のところにもそういう報告がありまして、獣医師が行ってみると、これは全然飼育の形じゃない、本当にほったらかしで、子供にとってもよくないと逆に言われたようなケースもございます。
 そういうことも踏まえながら、今、小学校の生活科にも学習指導要領の解説書がございまして、その中にも、動物を飼育する際の留意点として、やはり継続的に世話ができる動物でなきゃいかぬだろう、すぐ死んでしまうような動物、飼い方が難しい動物はよくないだろうというようなこととか、それから、管理とか繁殖とか施設や環境に対して十分な配慮が要るということ、それから動物の飼い方については地域の獣医師と連携して指導を受けなさいということ、それから子供にはアレルギーを持っている子がおりますから、動物に近づいて毛なんかが当たると目が真っ赤になるような子供もおります。そういうことをやはり注意しなきゃいけませんよということ、そういうことを解説書にもうたっておるわけでございます。
 こうしたことを踏まえながら、地域や学校の実態に応じて対応がちゃんといくようにやはり指導していかなきゃいかぬ、こう思っておるところでございまして、御指摘の点、十分配慮の必要なことであろうというふうに思っております。
山谷分科員 土曜日が休みになりまして、休日に餓死する動物たちが多く見られるようになったということですし、飼育委員は墓掘り委員なんていうふうに言われているというようなこととか、あるいは、先生が、ウサギなんか二、三日えさも水もやらなくて平気だなんて言ったりとか、現状はかなりひどいようでございますので、今副大臣がおっしゃられたようなさまざまなサポートというのが必要だというふうに思います。
 自治体と地元獣医師会の連携、七十五自治体でそういうような試みがなされているということなんですが、飼育舎の設置場所とか構造とか育て方の維持管理、指導、休日のお世話の仕方、触れ合い方、どんなふうにするともっとすばらしいよということを教えたりとか、やはり連携があるところは相当充実した飼育ができるということでございますが、これは、予算化とか、具体的な部分では今後どのようにお考えでございましょうか。
河村副大臣 このための特別な予算という形で今のところ出てきておりませんが、やはりこれは動物愛護という観点からも必要なことでございますから、今後、都道府県の教育委員会において動物飼育に関する教員の研修会等を開催する、これには当然予算が必要になってくるでありましょうし、それから獣医師に対しても、もっと定期的に指導をしていただくための会合等も持たなきゃならないだろう、こう思っておりまして、そんなに大きなお金が要ると思えませんので、これについては、この対応をこれから特に考えてまいりたいというふうに思っております。
 特に、先ほど御指摘がありましたように、先生方が動物をかわいがるとか、そういうことは非常に必要なので、まだまだその点が、いいところは非常にうまくいっているようですけれども、やはり学校全体が飼育にかかるようにしませんと、特定の人だけがやっていると、その人が転勤でかわってしまうともう後が全然だめになるというようなことも起きるようでございます。そうした配慮も含めながら、予算面からもバックアップできるような体制をつくる必要性がある、こういうふうに思います。
山谷分科員 本当に、おっしゃいましたように、ある特定の先生の善意とか熱意に任されている部分というのもございますので、ぜひ、教育委員会等主導による研修、講習会、幅広い形で行っていただきたいというふうに思います。
 それからまた、教職養成課程での何か講座の設置とか、あるいは獣医師の学校での、その部分での指導とか、そのようなことも考えられるのではないかと思いますが、その辺はいかがお考えでございましょうか。
河村副大臣 私も、御指摘のとおり、教員研修の一環に、今おっしゃるように九七%、もうほとんどの学校で小動物を飼っているという前提にまず立たなきゃなりませんから、当然、教員研修の中にこの動物愛護のこと、動物飼育のことは入れる必要がある、こう思いますので、これが徹底するように努めてまいりたいというふうに思います。
山谷分科員 本当に、心を育てる教育として、さまざまな体験、それから命との触れ合い、教育、それから文化、芸術、体験、習得活動、さまざまなことが大事だというふうに思いますので、教育に対しては、ゆとりか緩みかとか、いろいろいな混乱が生じている中で、文科省も、非常に大変な現場を抱えながら、苦労は絶えないというふうに思いますけれども、ぜひ、いろいろと前向きに、包括的に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 以上で質問を終わります。
斉藤主査 これにて山谷君の質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 これにて散会いたします。
    午後零時七分散会


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