衆議院

メインへスキップ



第2号 平成20年2月28日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十年二月二十八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 西銘恒三郎君

      河村 建夫君    田中 良生君

      中森ふくよ君    三原 朝彦君

   兼務 高木美智代君 兼務 佐々木憲昭君

    …………………………………

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         合田 隆史君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         磯田 文雄君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房政策評価審議官)       杉浦 信平君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

   予算委員会専門員     井上 茂男君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     田中 良生君

同日

 辞任         補欠選任

  田中 良生君     中森ふくよ君

同日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     河村 建夫君

同日

 第一分科員佐々木憲昭君及び第五分科員高木美智代君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十年度一般会計予算

 平成二十年度特別会計予算

 平成二十年度政府関係機関予算

 (文部科学省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

西銘主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。

 平成二十年度一般会計予算、平成二十年度特別会計予算及び平成二十年度政府関係機関予算中文部科学省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中良生君。

田中(良)分科員 おはようございます。きょうは渡海大臣と、教育政策に関しましてこのように質疑の機会を設けられたこと、大変光栄に存じております。ひとつよろしくお願いいたします。自民党の田中良生でございます。

 それでは早速、三十分でありますけれども、質疑に入らせていただきたいと思います。まず、国政における全般的な教育の位置づけについて質問をさせていただきたいと思います。

 小泉改革が成立いたしまして、それ以降、構造改革路線を我が国は一貫して推し進めてまいりました。国際化、そしてまた規制改革等が進展し、一時落ち込んでいました経済も大きく発展してきました。明るい兆しをもたらしてまいりました。その意味で、この構造改革路線を推進してきた意味というのは大変大きなものがあるかと思います。

 しかし、その一方で、戦後、世界じゅうで人や物、金、情報が国際的に目まぐるしく動く中におきまして、このグローバルスタンダードによりまして、だんだんと均質化が進んできた、そういう現実もあります。

 しかし、世界で多様な文化を相手に交流を進めていくためには、やはりみずからの軸足をしっかりと定めていかなくてはならない。そのことを通じて初めて自分と相手との違いを理解して、お互いを認め合う、そういう関係をつくり上げていくことができるのではないでしょうか。

 我が国でも、古くから日本の伝統や精神文化と深く触れ合う機会というのが多く存在していました。しかし、戦後だんだんそうした機会が失われてきているのではないか。改めて今、教育の再生にしっかりと取り組んでいかなくてはならないと考えているところでございます。

 国際化の中にあっても、日本人を日本人たらしめる、そういう精神的支柱を有してこそ、日本人は国際社会の中で価値ある地位を占めることができるものと私は考えております。こうした教育、しかし即席につくられるものではありません。親の愛、社会のまなざし、恩師の指導、またよき友人、多くの人々に支えられて成り立つ。効率性を物差しにして評価できる、そういったものでは決してないと私は考えております。

 構造改革によりまして、効率的な政府の運営が心がけられるようになりました。少なからず、その影響が教育にかかわる分野にも影響を与えているのではないか。しかし、教育はやはり、次代の日本を背負う人間を育てるための投資であります。教育は国家百年の計であります。積極的な負担をいとわないようにするべきではないかと私は考えるところでございます。

 その辺に関しまして、大局的なもので結構でございます、ぜひ大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 今、委員が前半の部分でお述べになりましたことは、一昨年末に教育基本法が改正をされておりますが、そのときに、なぜ今教育基本法改正なのかといったような議論が多くされております。委員がお述べになりましたような時代の認識といいますか、現在のとらえ方が全くその基礎になっているというふうに聞かせていただいておりました。

 国際社会の中でこれから日本人が日本人としてしっかりと生きていくというためには、まず、みずからよって立つこの日本という国、この国がどういう国なのか、また、日本人としてどういうアイデンティティーを持って国際社会に臨んでいくのか、こういうことが望まれているわけでございまして、こういったもと、教育基本法が改正をされたわけでございます。

 日本は資源のない国でございますから、そういった意味では、私は科学技術をライフワークというふうに言わせていただいておりますが、この科学技術も実は人なんですね、人材が大変大切でございまして、教育、科学技術の振興、こういったものは、人材をつくり上げていく上で、ひいてはこの日本の国を、未来、持続的に発展させていく上で大変重要な仕事であるというふうに認識をいたしております。

 そういうもと、現在我が省では、この改正教育基本法の理念を踏まえて、知徳体の調和がとれて、将来にわたって自己実現を目指す自立した人間をつくり上げる、また、公共の精神をとうとび、国家社会の形成に主体的に参画する、こういった国民を育成する、我が国の伝統文化を基盤として国際社会を生きる日本人、こういったことを目指して今教育に取り組んでいるところでございます。現在、新しい学習指導要領の改訂ということでパブリックコメントを行っておるところでございますが、こういった理念のもと、新しい学習指導要領も作成しておりますし、また中教審で議論されたというふうに承知をいたしております。

 今後とも、私どもは、こういった理念、考えのもと、新しい学習指導要領のもとでしっかりと日本の教育行政に取り組んでまいりたい。そのために最大限努力して、財政再建というのも、これは国家として大きな課題でございますから、その中ではございますけれども、それに必要な予算を確保してまいりたい、そのように考えておるところでございます。

田中(良)分科員 ありがとうございます。

 一昨年、教育基本法が新たに改正されました。それに基づきまして関連する三法も改正されて、新たな教育の体制がつくられた。先生今お話があったように、それに基づいて教育基本法の理念を実際に実効あらしめるものがこの学習指導要領だと思います。

 そして今、新たな教育基本法の精神を生かす学習指導要領の作成を通じて、学力の向上ですとか道徳の習得、そしてまた体験活動、こういったものを通じて豊かな情操をはぐくむことができる、しっかり進めていくということをお示しいただいているものだと思います。

 ぜひちょっと、その学習指導要領について、その趣旨、どういったものなのか、主なものをお聞かせいただければと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 約六十年ぶりの教育基本法の改正や学校教育法の改正により、教育の目標や義務教育の目標として新たに、公共の精神、生命や自然を尊重する態度、伝統や文化を尊重し、我が国と郷土を愛するとともに、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことなどの重要な教育の基本理念が規定されたところでございます。

 これらを踏まえ、今回の学習指導要領の改訂に当たりましては、改正教育基本法のもとでの初めての改訂ということを強く意識したところでございます。

 具体的には、改正教育基本法で道徳心を培うことが明記されたことを踏まえ、指導内容や教材、指導体制など、道徳教育の充実を図りますとともに、改正教育基本法で示され、新たに規定された理念を踏まえ、各教科等において、伝統や文化に関する教育の充実、自然体験活動や職場体験活動の充実、環境教育の充実などの改善を行っているところでございます。

 また、学力の向上につきましては、知識、技能の確実な習得と、思考力、判断力、表現力などの育成のバランスを重視しているところでございます。

 今後、各学校におきまして、改正教育基本法や改正学校教育法を踏まえた新しい学習指導要領にのっとって、次代を担う子供たちがこれらをしっかりと身につけられる教育が行われるよう努めてまいりたいと存じます。

田中(良)分科員 やはり日本人が世界に誇るべきもの、これは日本人たる倫理観の高さだと私は思っております。道徳という部分に関してはしっかりと習得できるような、そういうプログラムを推し進められるような力をぜひこの学習指導要領の中にしっかりと入れていただきたいと思います。

 そしてもう一点、学力という部分に関してちょっと質問させていただきたいと思います。

 今回の指導要領にも、今ありましたように、現に学力の低下というものが取り上げられております。これはPISAテストの例を引いてみましても、二〇〇〇年、二〇〇三年、二〇〇六年と日本はこのテストに参加をしてまいりました。二〇〇〇年から比べると、数学の部分においては一位から現在十位、そしてまた科学は二位から五位、そしてまた読解力、これは八位から十五位という成績になっています。

 参加国が増加してきた、そういう部分があるため、順位については変動はあるかとは思いますけれども、平均点を五百として補正してあると聞いております。回を追うごとに毎回ちょっと低下傾向にあることは否めないのではないか。学力低下との関係、この辺がやはりPISAの結果にも出ているのではないかなと思います。

 そしてまた、特に重要な読解力、世界平均程度ではありますけれども、コミュニケーションがとれるという部分が重視される、これが今子供たちが社会に出ていく上で、私は一番重要な部分ではないかなと思います。パソコンですとか、あるいはゲーム、どうしても一人の世界に入りがちな子供たちの環境があるのではないかなと危惧しているところでございます。

 日本では、平成十七年ですか、文字・活字文化振興法が制定されました。国民の活字離れが進んでいる状況にあります。また、出版不況など、こういったものの現象に見られることはよく知っているところでございますが、いわゆる読書離れ、これがPISAの読解力テストにも顕著にあらわれていると思っております。その辺のところの文科省としての何か見解みたいなものもお聞かせいただければと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 PISA二〇〇六における我が国の読解力の結果を見ますと、前回二〇〇三年の調査と同様に、OECD平均と同程度でございまして、記述式問題の無回答率が高いなどの課題が引き続き見られたところでございます。また、読解力が調査の中心分野でございました二〇〇〇年のPISA調査におきましては、読書習慣がある子供ほどPISA型読解力の得点が高い傾向にございました。

 このため、文部科学省といたしましては、読書活動などを通じて言語についての知識や経験を深めることにより、児童生徒の読解力を支える基礎力を育成することが重要であると考えており、引き続き、学習指導要領の改訂による言語活動の充実や、読解力向上プログラムに基づく取り組みなどを推進いたしますとともに、朝の読書を初めとした読書活動や、学校図書館を活用した学習活動の推進、また地域における取り組みを活性化させるための子ども読書応援団の派遣や、子ども読書の街の指定、子どもゆめ基金による助成などを通じて、児童生徒の読書活動の推進に努めてまいりたいと考えております。

田中(良)分科員 そこで、ちょっと図書予算というものに関してお聞きしたいと思います。

 現在、交付税措置によって小学校の図書購入費が賄われております。その執行状況は県によってまちまちであります。一校当たりの図書購入費が、最大の山梨県、そしてまた最小の青森県では、四倍近い差が現実に開いているという状況にあります。

 子供たちの読書環境を整える上で、この交付税措置は重要な役割を私は果たしているのではないかなと考えております。読解力テストの成績、図書購入費の大小、これが相関しているということであれば、やはり早急に底上げを図っていく、こういう必要があろうかと考えているところでございます。

 同様に、公立図書館などにつきましても、生涯学習の拠点として大きな役割を果たしております。私の地元のさいたま市でも、今、新しくできた駅ビルの上の方の階に図書館を併設いたしました。買い物帰りや通勤通学客がとても通いやすい図書館となっております。そして、利用者が、何と一日当たり利用者数約四千人、貸出数も四千冊であります。ことしの一月の月間利用者数は、何と貸出数も十万人、十万冊を超える、大変多くの方が利用される、本当に好調なスタート、滑り出しをしたという状況にあります。

 利用のあり方などを見直すことによって潜在的な需要を掘り起こすことは私は可能だと考えておりますが、ぜひこの件に関しても御見解をいただければと思います。

池坊副大臣 今委員がおっしゃいましたように、小中学校の学校図書館の図書購入費は昭和六十年から一般財源化されております。毎年、地方財政措置を講じておりますけれども、今おっしゃいましたように、最も高い山梨では六十七万円使っている。ところが、青森では十七・八万円と差がございます。図書を買いませんで、ほかのものに使っているということではないかと思います。十九年度からは、五カ年計画で一千億です。これは新しい図書を買ったり、また古い図書を捨てますときに新たに同じものを購入するためのお金でございますが、これがなかなか使われないということになっております。

 学校図書館図書標準の達成状況を見ますと、十七年度では、小学校で四〇%、中学校では三四・九%にとどまっております。

 私どもは、情報開示をすることによって、また地域の住民並びにそういう方々の熱意によって首長さんの意識を高めたいというふうに考えております。私は府会や市会で、ぜひどうなっているのかというのを聞いてくださいと地方議員にはお願いしているところでございます。

 全国学校図書館協議会の調査によると、地方財政措置額が十九年度大幅に増加したにもかかわらず、一校当たりの平均図書購入費というのはむしろ減っております。これからも、公表することによって市町村に促していきたいと思います。

 委員も、ぜひ地元の議員の方にも、首長さんに言っていただけるようにお力をいただけたらというふうに思っております。

 それから、図書館の利用でございますが、私も党の子ども読書プロジェクトチームの座長を十二年間しておりまして、子供に本を読ますということが生きる力につながっていくと思っておりますので、いろいろな図書館などを視察に行っております。例えば、九年連続、人口一人当たりで一番本の貸し出しが多い長野県の富士見町図書館に参りました。ここは平均して年間二十冊借りているんです。そこに参りましたら、やはり七月、八月は無休であるとか、それから九時までやっているとか、あるいはぬくもりがある施設とか、いろいろな工夫をしているんですね。ですから、そのような工夫を市町村でやっていただけたらいいのじゃないかというふうに思っております。

 さらに、これから図書館法を改正いたしまして、ただ設置するだけでなくて、社会教育と連動しながら、社会教育のさまざまな事業を行っていったり、あるいは運営の評価をし、またそれによって改善を行っていく、あるいは地域住民への情報開示をするというようなことを盛り込んだ改正もしたいというふうに思っておりますので、また委員のお力をいただけたらというふうに思っております。

田中(良)分科員 例えば、地域では公民館の一室なんかを利用して、地域の方が持ち寄った本を置くスペースがあったりします。そしてそこで、幼児に対して読み聞かせ、そういうボランティア活動も今盛んに行われております。

 ぜひそういったもののいろいろな情報を開示していただいて、少しでも読書離れに歯どめをかけていくように、ぜひそういった御労苦をまたお願い申し上げたいと思います。

 次に、公教育の再生について御質問させていただきたいと思います。

 私立の学校と比べて、公立学校は、地域の子供たちすべてを受け入れられるよう間口を広くとっている。それがゆえに、教育対象となる子供も多種多様とならざるを得ない。それが原因かどうかはあれですけれども、平等や公平を重視したカリキュラム編成、指導が行われていると思っております。

 この結果、教育を受ける子供たち、そして、保護者からのニーズから乖離しつつあるのではないか。公立学校でも、いわゆる必修の授業とは別に、子供たちのニーズに合った授業、例えば、基礎を固めるための復習中心で実施するクラス、また発展問題などを考えるクラス、これを選択制にして提供する方法もあるのではないか、そのように考えております。

 その辺に対して御見解をいただきたいと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 確かな学力の向上を図る上で、児童生徒一人一人が学習内容を確実に身につけることは大変重要でございます。このため、各学校におきましては、これまでも、各教科等の授業において、個別指導や補充的な学習、発展的な学習などの学習活動を取り入れた指導など、指導方法を工夫、改善し、個に応じた指導の充実に取り組んできたところでございます。

 先生御指摘の子供たちのニーズに合った授業といたしましては、例えば、児童生徒の学習内容の習熟の程度に応じた指導を行うことにつきましては、義務教育段階である小中学校では、教科の学習内容に応じて、学級内または学級の枠を超えて学習する集団を編制し、児童生徒の習熟の程度に応じたきめ細かな指導を行うことができるようになっております。実際に、平成十八年度におきましては、公立の小学校の八二・七%、公立の中学校の七四・四%の学校で、この習熟度別指導を実施しているところでございます。

 また、通常の授業とは別に、読書活動や漢字や計算の学習、各教科等の補充的な学習などを始業前や放課後を活用して実施している割合は、公立小学校で八六・九%、公立中学校で八四・五%となっております。

 今後とも、児童生徒一人一人のよさや可能性に着目し、好奇心やその能力を存分に伸ばす観点から、習熟度別指導など、個に応じた指導を引き続き適切に実施されるよう促してまいりたいと存じます。

田中(良)分科員 そのためには、そういう習熟度別も大変重要なことだと思います。そして、何よりもそこで重要となるのが対応する教員だと思います。学校教育法で教員の増員をうたったにもかかわらず、増員が要求と比べて著しく抑えられているんではないかというような気もいたします。もちろん財政との関連もあります。人件費増に直結する増員の問題、これはなかなか難しい部分もあると思いますけれども、やはり長年の懸案であります少人数教育の実現、そしてまた、子供一人一人の目配りを密にしていく必要性、これを考えてみますと、今後もう少し積極的な増員をお願いしたいと考えているところであります。

 今年度約千人の増員を見込んでいるということでありますが、この増員による効果をどの程度現実には見込んでいるのか、御所見をいただければと思います。

渡海国務大臣 私が就任いたしましてから、実はこの問題が一番パワーの要った仕事といいますか、教員を増員しなければいけない、そういう声にこたえて頑張ってきたところでございます。結果は委員御承知のとおりでありますが。

 一つだけ申し上げたいのは、やはり今行政改革の中で、財政の問題もございますけれども、国家公務員、地方公務員は共通して人員削減を図っていこうという、この大きなたががございます。これがすべていいとは私は申し上げませんけれども、そういった中で地方公務員も大変努力をしている。そういう環境の中で先生だけというのがなかなか、実はまだまだ御理解がいただけていないのかな。

 ぜひ、今後とも、今先生がおっしゃったように、いろいろな意味で教育を充実するために教員の増員が必要だという、お力添えをいただきたいということをお願いしておきます。

 効果ということでございますが、今回は、まず教職員定数の改善、外部人材の活用、それから、ボランティアを活用して事務の外部化、これは教員のさまざまな仕事をできるだけ子供に向けよう、こういうことを考えたわけでございます。

 一つは、今回、主幹教諭、これはまた今法律もお願いしておりますけれども、この主幹教諭という配置に伴うマネジメント、要は、経営というのはおかしいかもしれませんが、学校を運営していく、こういったことを強化するために、ここを補てんするために、この教員増というものがきいてまいります。また、発達障害、こういった児童に対する通級の指導の充実や食育の充実ということにもきいてくるわけでございます。

 そして、外部人材の活用という意味では、非常にベテランの先生方、私もそうでございます、団塊の世代が退職の時期に来ております。こういった多くの経験のある先生方に、習熟度別少人数の充実、または小学校の高学年における専科、特に最近言われておりますのは、理科の先生なんかがそうだと思いますが、あと、入ってきたばかりの小一プロブレムとか不登校の生徒の対策、こういったことに退職教員や経験豊かな社会人を幅広く登用する。時間がございませんから多くは申しませんが、あとは、地域支援本部というのを今度千八百カ所、予算を計上しております。

 こういったところで働いていただくボランティアに対する簡単な謝金とか、それから、それを運営していく予算の手当てというものを行って、全体として教員が子供と向き合う時間を拡充したい、そのことによって教育の質を上げていきたい、こういうふうに考えているところでございます。

田中(良)分科員 ありがとうございます。

 やはり非常勤講師ですとか、あるいはまた地域の住民の力もかりて、どんどん教育にかかわれる人をふやしていく、やはり社会総がかりで教育に取り組んでいく、その体制をどんどん進めるように、ぜひこれからもお知恵を出していただきたいと思います。

 また、やはり何といっても教員の増員、これは、いじめ問題や学習指導といった部分からきめ細かく対応していくことは必要であります。それなりの教員の増員、これは踏襲をしていくということを考えても、今後の予算もしっかりとつけていく、そういう姿勢を示していかなければならないと私も思っているところでございます。

 ちょっと質問をかえまして、最後に一点、中高一貫教育という部分について質問させていただきたいと思います。

 例えば、私の地元さいたま市におきましても、市立の浦和中学校というのが開校しました。定員八十名に対しまして、平成十九年度には二十五・二倍、平成二十年度には十四・九倍と、極めて高い倍率の応募がありました。大変人気を集めているようであります。

 こうしたことを踏まえますと、公立学校における中高一貫教育は、受験勉強から解放される結果、ゆとりある学習環境、カリキュラム、そういったものが組める。また、その結果、大学受験にも集中できる。そういったものがあります。また、公立・私立大学への進学率が高いという点からも大きな人気を博しているような状況にあるようであります。受験倍率もかなり高くて、生徒や保護者のニーズも非常に高いと思われます。

 しかし、当初文科省が想定した中高一貫教育を導入しようというペースと比べますと、実現がなかなか少ないようにも思われます。今後、導入促進を図っていくのか、だとすればどのような方策が考えられるのか、最後に御見解をお聞きしたいと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 中高一貫教育は、これまでの中学校や高等学校に加えまして、生徒や保護者が中高一貫教育校も選択できるようにすることにより、中等教育の一層の多様化を進めることを目的として、平成十一年度から制度化されているものでございます。

 中高一貫教育校を設置するかどうかにつきましては、子供たちや保護者のニーズ、また地域の実情を把握している地方公共団体の主体的な判断によるべきものでございますが、文部科学省といたしましては、希望する生徒や保護者が中高一貫教育を選択することができるよう、できるだけ設置されることが望ましいと考えております。

 このため、文部科学省におきましては、従来から、中高一貫教育などの実践研究課題についての委嘱事業の実施や、全国の地方公共団体や高校関係者が中高一貫教育などの先進的な取り組みや検討状況について情報交換や協議などを行う会議を開催するなど、中高一貫教育を推進しているところでございます。

 今後とも、こういう取り組みを通じて各都道府県教育委員会等の取り組みを促してまいりたいと存じます。

田中(良)分科員 時間となりましたが、最後に、やはり財政再建、これはもう国家の至上命題であります。そしてまた、歳出削減もしていかなきゃいけないところでありますけれども、やはりそういった意味でも、教育は投資であると私は思います。国家百年の計としてしっかりと教育の分野、これだけは、日本はもう少し国際社会の中でもランクを上げていくように、ぜひ私も力を注いでまいりたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。

西銘主査 これにて田中良生君の質疑は終了いたしました。

 次に、中森ふくよ君。

中森分科員 おはようございます。自民党の中森ふくよでございます。きょうは、お時間をちょうだいできましたこと、心から御礼申し上げます。

 五十年ぶりに改正されました教育基本法を受けまして、日本の教育は大きな転換期を迎えていると思うわけでございます。だれもが望む、よりよい教育を目指しまして、党派を超えて取り組むべきものと考えております。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。主査を初め、渡海文部大臣、そして文部科学省の皆様、よろしくお願いを申し上げます。

 まず、我が国固有の領土の教育についてお伺いをいたします。

 日本の領土、領海、領空は、私たちの国の基本でございます。これらに対する理解を小さいころから認識させることは、教育の重要なテーマであると考えています。

 このような意識から、私は、一昨年、北は北海道の納沙布岬を訪れまして、上空からも水晶島等の北方領土を間近に視察させていただきました。また、南は沖縄の上空からヘリコプターで尖閣諸島に迫りました。上空からよく眺めてみますと、幾隻もの中国船籍の船舶が停泊する中、海上には中国の開発が進み、油田パイプが立ち並んでいました。

 ところで、中華人民共和国発行の社会科の地図には国境線が二種類存在しています。一つは、一九七〇年以前のもので、中国大陸と尖閣諸島の間に国境線が引かれています。もう一つは、一九七一年以降で、尖閣諸島と日本の間に国境線が引かれています。しかし、北方領土や尖閣諸島はもちろん日本固有の領土です。

 この尖閣諸島の中でも大きな島の一つに魚釣島があります。その魚釣島近海で、大正九年の冬、三十一人を乗せた中国船籍の船が遭難したと記述がございます。当時の八重山島庁石垣村の村民が三十一名全員を救出して、無事に中国に帰国させることができた。このことに対しまして、後に中華民国長崎総領事から、日本帝国沖縄県八重山郡尖閣諸島内和洋島、魚釣島と記載して、石垣村村長ほか四名に対して感謝状が贈られています。この感謝状は、今でも沖縄県石垣市の市役所に保管されているそうでございます。

 当たり前のことでございますけれども、自国の領土を知ることなくして、自国を尊敬することも、また、自国を愛することもできません。まして、自国の領土を守ることなど到底できないことと存じます。そしてまた、他国の領土を尊重することもできないのではないかと思います。

 お尋ねをいたします。

 我が国固有の領土の歴史や地理を学ぶという当たり前のことができるということ、この教育を果たすという役割は大変重要と考えますが、この点について文部科学省の御見解をお聞かせください。また、日本固有の領土に関する教育を、歴史的経緯も含めて小学校の早い段階から取り組むべきと考えますが、あわせて文部科学省の御見解をお聞かせください。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 将来の日本を担う子供たちが北方領土や尖閣諸島を含めた日本の領土などについて正しく理解をすることは、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を深め、公民としての基礎的教養を培い、国際社会に生きる民主的、平和的な国家、社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養うことにつながるものであり、大変重要と認識をいたしております。

 また、北方領土や尖閣諸島につきましては、すべての地図帳、教科用図書、地図に我が国の領土として明記されており、これに基づいて指導がなされているところでございます。

 なお、中学校社会科の教科書におきましては、例えば北方領土につきましては、明治時代のロシアとの条約、千島樺太交換条約について触れているものがございます。また、尖閣諸島につきましては、第二次大戦後にアメリカの統治下に置かれたが沖縄返還とともに日本の領土に戻った旨の記述をしているものもございまして、歴史的経緯にも触れているところでございます。

 今後とも、我が国の領土などに関する指導が適切に行われるよう努めてまいりたいと存じます。

渡海国務大臣 領土は国家の基本でございますから、そのような認識に立って、今の先生の御意見も踏まえ、教育の場で発達段階に応じてしっかりと我々も教育をしていきたいというふうに考えております。

中森分科員 大臣から大変前向きなお話をいただいて、本当に心強い限りでございます。ありがとうございます。

 それでは、次に進めさせていただきます。

 私立学校と国立、公立学校の国費負担額のバランスについてお伺いをいたします。

 日本の私立学校は、国公立学校に負けず劣らず多様な人材を社会に輩出し、日本社会に大いに貢献してきました。また、私立学校は、国立、公立学校を補完するものとも言われてきました。しかし、それぞれの在学者数で見てみますと、例えば、大学では約七五%が私立大学、短期大学では約九〇%が私立短大、幼稚園では約八〇%が私立幼稚園に通うという結果が出ております。この状況を見ますと、まさに日本の教育の屋台骨を支えてまいりますのは私立であると言い切っても過言ではございません。

 本日は、時間の関係上、国立、公立大学と私立大学に絞って議論を進めさせていただきますが、国からの補助金、交付金は、国立大は学生一人当たりにつきまして約百七十六万円、しかし、私立大学におきましては、学生一人当たりにつきまして約十五万円という数字を文部科学省の方からいただきました。つまり、私立大学は、国の負担金は国立の十分の一となっております。また、国立大の学校経費に占める国費負担額の割合は五四・二%であるのに対しまして、私立大学の学校経費に占める国費負担額の割合は一二・四%と、四分の一以下となっております。

 今話題のiPS細胞の研究は、国立の京都大学でなされております。私立大学に通う学生にも国立大学に極めて近い研究や勉学のチャンスをつくることが、日本の国力にもなり、より夢や希望に満ちた学生生活が送れ、高度な教育がより可能になると考えております。

 お伺いをいたします。

 この国立と私立における国の支出額の格差を可能な限り解消して、バランスをとる必要があると思いますが、できましたら文部大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

渡海国務大臣 私も実は私学の卒業でございますが、それだからというわけではありませんが、今委員がおっしゃったような問題意識は従来から持っておるところでございます。

 実は、この話を聞かせていただいて、ちょっと余計なお話をしますが、いつも思い出すのですが、私は、父親も政治家でございまして、ほとんど私のことは構ってくれなかったんですが、大学へ入学する前、試験を受ける前に、あるとき、いきなり表を持ってまいりまして、これは学生一人当たり校舎の面積がどれぐらいあるか、公私の比率でございます。お金が、どれぐらい税金がかけられているか、こういったさまざまな、授業料が幾ら、こういうのを持ってまいりまして、今とは全然違う時代でありますけれども、暗に、これは何の意味があるのかと。ふだん何も言わない父親でございまして、ああ、国立へ行った方が安くつくんだ、こういうことだったと思います。余計なお話ですが、三原先生は国立でございますから笑っておられますが、公私のバランスをもっととっていくということは大事なことだという認識でございます。

 しかしながら、私学は建学の精神というものがございまして、そして、ある意味、逆に言うと、だからこそできることがある。私は、私学関係者の皆さんにいつも、むしろそういうことを目指してほしいと。

 それから、我々は、例えば、今iPSのお話がございましたが、研究開発の分野ではできるだけ競争的資金をふやす。しかも、一つ問題は、これを採択するときに、どういう基準で選んでいくかというのが、どうも国立偏重になっているのではないかと思います。これは検証してみなければわかりません。いろいろな人が入っているといいますが、実は今、どこどこ某私立大学の教授も入っているといっても、出どころは某国立大学だったりするわけですから、そういうことも含めて、やはりもう少し基準を変えていく必要があるんだろう。

 そして、そういう環境の中で頑張っていただいたら、例えば、今iPSの話がありましたが、この分野でも実は随分、これもあえて名前は出しませんが、某私学は優秀な成績を出しておられます。今度、チームの中にも入っていただきます。そういうことも考えれば、いろいろな意味で私学を支援していく、こういったことはできるんじゃないかなというふうに思っておるところでございます。

 学生の多くが今、特に大学の場合、短大も含めていいますと、私学に通っているという現状を考えますと、この政策は非常に重要であるというふうに思っておりますので、今後とも我々もしっかりとそのことを念頭に置きながら頑張っていきたいと思っておりますので、先生の御支援もよろしくお願いしたいというふうに思っております。

中森分科員 大変幅の広い、希望に満ちたお話をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 次に、私立学校の耐震化の促進についてお伺いをいたします。

 御存じのように、東海、東南海、南海地震や関東大地震などは、いつ発生してもおかしくないと言われております。公立の学校が災害時の避難地になっていることで、各学校施設の耐震化は早期の対応が求められております。また、河村先生初め議員連盟の方でも大変な活躍をしていただいて、かなり早期に対応を、ピッチを上げていただけるとも思っております。

 そんな中、昨年、関東の私立短期大学連盟から、私どもの学校の校庭や校舎、体育館といった施設を災害時にはぜひ近隣で御使用くださいという申し出を国の方にいただいております。関東の私立短期大学連盟の申し出のとおり、災害時は、私立も公立もなく、助け合いが最も重要であろうと思います。

 ところで、国立、公立学校の場合は、設置者である国や都道府県が税金で耐震化を進めることができます。片や私立学校の場合には、設置者である学校法人がみずから資金を調達して耐震化を行っていくことになっています。私立学校には、経営が厳しく、耐震化の費用を賄うゆとりがないところもございます。同じ地震が来たとき、耐震化がしっかりしている国公立の生徒が助かり、私立の生徒に多数の死傷者が出るなどという状況が生まれるのは極力避けるべきと考えております。子供の命に国公立と私立の差があるはずもございません。

 そこで、お伺いを申し上げます。

 私立学校の耐震化の促進について、今後どのように支援を考えておられるのか。また、建設から二十年が経過したような古い施設については、補修するよりも思い切って建てかえてしまった方が結局安く上がるという場合もございます。補修だけでなく、建てかえにもより手厚く助成を行っていくべきであると考えますが、いかがでしょうか。

渡海国務大臣 先生おっしゃるように、耐震化ということに公私はないと思います。しかも、先生のお地元で、これは、地域の避難施設ということにも提供いただけるということでございますから、大変重要な課題でございます。

 一方、今我々は、義務教育、小中学校の耐震化というものを最優先課題として取り組んでおります。この現状が十九年の四月で五八・六%という状況でございますから、急げということで、今、できるだけ早急に危ないものはやろうということで頑張っておるところでございます。

 そういう観点から、私学に対しても、大学においては二分の一、幼稚園から高校においては三分の一という補助金を用意いたしまして、今、耐震化を図っていただいておるところでございます。幸いといいますか、大学等では七二%、これは十九年五月でございますが、幼稚園から高校につきましては六三%、これは十九年四月の段階で耐震化が行われておるようでございます。

 一番の問題は、もちろんお金の問題もございます。ただ、例えば十九年度で四十五億円の補正予算を組ませていただいています。対前年度二十五億でございますから、額が少ないじゃないかと言われれば、公立の方はたくさんございますから、一千億超えていますから。

 ですが、補正ですと、なかなか予想ができないということで、準備がなかなか実は整わないみたいなところがございまして、今、十九年度から全国七カ所で相談窓口というものを開設いたしまして、私学の耐震化の相談、準備とか、それから、大体ことしもこれぐらいは何とかできるんじゃないかとかいうふうなことを御説明を申し上げて、私学が取り組みやすい、そういう試みもやっておるところでございます。また、補助申請手続、こういうのも簡素化をいたしまして、できるだけ耐震化を図っていただく、そういう努力を我々もしているところでございます。

中森分科員 済みません、もう一つ、大臣、建設時から古くなっているものについて。

渡海国務大臣 これにつきましても、私学のさまざまな経営状況とかの中で、一義的には学校側が計画をされることであろうというふうに思っております。

 ただ、この耐震化という問題は、即、大きな地震が起これば、例えばあるレベル以下のものは、震度が七ぐらいであれば倒壊のおそれがあるとか、こういった基準がございますから、そういったものはすぐにでもやってもらわなきゃ困るということで今お願いをしておるわけでございますけれども、古くなったものについて改修をされるというのは、やはり、そういった学校の経営計画または施設整備計画、そういったものの中で行われるというものであろうと思います。

 ただ、そういった計画があるときにできるだけ我々はお手伝いをする、これは融資という形になろうかと思いますが、そういった形で私学が老朽化の校舎をかえていくということの促進というものについても支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

中森分科員 済みません、もうちょっと突っ込みたいんですが、そうすると、建物を耐震化するためには壊した方が安いときに、その補助金は耐震化としては考えられないで、ほかの施設の目的でやるという形になってしまうんでしょうか。

渡海国務大臣 耐震化につきましては、今も言いましたように、幼稚園から高校、これは三分の一の補助金ということになります。(中森分科員「改築の場合に」と呼ぶ)改築ということになりますと、これは耐震とは違いますから。ですから、そこの基準は、まず耐震化が今の喫緊の課題でございまして、これは国公立にも言えることなんですね。

 例えば、小中学校をやっていますときも、これはもちろん公立の場合は三分の一の補助がございます。これは補助率が三分の一になります。だけれども、耐震化は二分の一という基準でかさ上げをして今行っているところでございます。

 改築の場合の具体的な資金については、当局からお答えをさせます。

磯田政府参考人 お答えを申し上げます。

 耐震への対応ということで、むしろ補修ではなくて改築することがより効果的ではないか、そういう御議論は承っておりまして、その点は私学関係者とも議論をしておりますが、その基本にあります、施設の整備をそれぞれの設置者が行うという考え方との整合性をつけるということで今課題がございまして、その点が今はまだ乗り切れていないという状況でございます。

 繰り返しになりますが、緊急性という意味では補修をして耐震化を、強固なものにする、これは必要ではございますが、その考え方と、基本として施設を設置者が整備するということとの、御指摘の点はよくわかりますが、整理が今はついていないという段階でございまして、そんな検討状況でございます。

中森分科員 ありがとうございます。

 ただ、それでは今後の検討ということで結構でございますが、例えば、建てかえる場合、修理するよりも建てかえちゃった方が安いといったような結果が出た場合は、半分は一般の施設だよ、だけれども残り半分は耐震だよというような見方もぜひ御検討いただけたらと思います。これはきょう通告しておりませんので、また考えていただけたらというふうに思います。ありがとうございます。

 次に、道徳教育についてお尋ねを申し上げたいと思います。

 ことしの二月、つい先日でございますけれども、新しい教育指導要領が発表されました。さて、指導要領の道徳教育につきましては、道徳教育をどのように変えていくのか、明確に伝わるものが、大変頭が悪いものですから、見つかりませんでした。その上、現場の専任教師が計画をつくるとの記述もあり、結局は、現場の教師に道徳のすべての判断を任せてしまうことにもなるのではないかという不安が残っております。

 つまり、道徳とは何か。本を読んで理解することなのか、しつけを加味することなのか、いわゆる人の道、人道、そしてまた日本の場合は文化の中に華道それから武道、そういったものがありますが、そういった道を教えていくものなのか、内容も方法も中身も、指導要領からは残念ながら余り伝わってきませんでした。この状況は好ましくないと実は私は思っております。総合的学習の時間の二の舞を踏んではいけないと思っているわけでございます。

 総合学習も、その理念はすばらしいものでございます。しかし、実際の対応を現場の教師にかなり重点を置いてしまったために、創意工夫を凝らして一生懸命熱心に取り組む先生もいれば、他方、ただ自習をさせたり本を読ませたりするだけの先生もいたと聞き及んでおります。

 子供たちが先生を選ぶことはできません。子供がめぐり会う先生によって受ける教育に差が出る状況が生まれた前例でございますけれども、こういったことでは子供たちが不幸になると存じます。人格の基礎を築く小中学校の段階で道徳教育を充実させることには、国民の大多数が賛成でございます。

 そこで、お伺いいたします。

 基本的に、だめなものはだめと明確に具体的に指導できるのか、自分がやられて嫌なことは他人もやられたら嫌なことである、具体的にどういうものがよくてどういうものがだめなのか、道徳教育の考え方について文部科学省はどのように考えて、どのように実行していらっしゃるのか、お伺いいたします。

渡海国務大臣 この議論は大変実は白熱をいたしました。中教審での議論もございました。また、党でも議論をされております。教育再生会議の議論もございました。

 私は、キーポイントは三つだと思っております。一つは、先生が今おっしゃった、何をどう教えるか。もう一つは、それを教えるためにどういう教材を使うか。これは、検定はできませんから、細かいことは時間がありませんから言いませんけれども、教材。もう一つは、しっかりと教育が行われるために、今までは時間があってもちゃんとやられていないじゃないかということが現場で起こっていましたから、そのためにはやはり責任を持って計画してやっていただく。この三つを今回の教育指導要領の中ではしっかりと書き込んだつもりでございます。

 ただ、書き込んだだけではこれはうまく回りませんから、しっかりと二十年度一年間かけていろいろとこの指導要領の説明に、研修に参りますから、また集めますから、そのときに話をしていきたい。

 そこで、最初の内容でございますが、これはやはり発達段階に応じて、この段階では、例えば小学校の低学年では、よいこと悪いこと。まあ、何がよいこと何が悪いことと言い出すと、ある人がよいと言っていることをある人は悪いと言うわけですから、この辺はやはりいろいろな整理の仕方が要ると思います。

 その段階で一つやはりポイントになるのは教材でございまして、大体一致している意見、また賛同できる、だれもが賛同していただける、やはり読んで感動するような教材を用意しなければいけない。そのためには、やはり伝統や文化、そしてスポーツなんかも、そういう意味では非常に心の教育にはいいだろうというふうな御意見がございます。

 そういったことを、今回の指導要領の中では従来にも増して、発達段階に応じてきめ細かく全体に書いてございますので、またよく読んでいただければ、そういうことが書いてあるなということが御理解いただけるというふうに思います。我々もしっかりとやっていきたいと思います。

中森分科員 ありがとうございます。一番大事な心の教育、ぜひよろしくお願い申し上げます。

 それでは、最後になりますけれども、指定前の文化財の保護についてお伺いをいたします。

 日本には、美術工芸品や建築物など、世界に誇れる偉大な芸術作品が多く存在いたします。これらを保護するために、文化財の指定制度も確立しております。けれども、建物は建築学的に見てもすばらしいものであったとしても、国や県、市の文化財に指定されていなかったために、固定資産税や維持費などの負担に耐え切れず建物を解体してしまったり、文化庁でつかみ切れていない工芸品や建造物が人知れず腐食を始めているといったケースも多々あるのではないかと危惧しております。

 また、最近、指定前の文化財に関する問題が起きております。東大寺南大門の金剛力士像を制作いたしました運慶作と見られている国宝級の仏像が、文化財指定を受けていなかったために、三月の十八日にニューヨークでオークションに出されてしまうということが報道されました。オークションに先立つ東京都内でのオークションプレビューで仏像が公開されました。多分、落札価格は一億六千万から二億一千万円だろうというふうに見られているようでございます。

 そこで、まず、なぜこの仏像が、限りなく運慶作に近いということもお聞きいたしましたけれども、海外のオークションに出されてしまうことになったのか、その経緯を、御存じでしたら教えていただきたいと思います。あわせて、この仏像を海外オークションに出品することを阻止できなかった理由もお教えいただければと思います。

 仮に、海外でもきちんとした美術館や博物館が落札すれば問題はないと思いますけれども、個人の手に渡り、公開を拒めば、永久に人々の目に触れなくなってしまうという可能性があるわけでございます。国宝や国、県、市の重要文化財の指定に係らないものでも芸術的に価値の高いものはたくさん残っていると思いますので、こういったまだ未指定のものに対する文部科学省の対応について、御見解をお聞きしたいと思います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御質問ございました文化財の指定でございますけれども、今の文化財保護法では、国宝、重要文化財に指定されていないものについては、輸出が制限できないということになっております。しかしながら、重要文化財に準ずる文化財で、海外への流出のおそれがあり、国において緊急に保存を図る必要があるものにつきましては、所有者の同意が得られれば買い取りを行い、流出を防ぐということを行っているわけでございます。

 お尋ねの大日如来坐像につきましては、平成十八年に文化庁と所有者の間で買い取りにつきまして交渉を行いましたけれども、条件での折り合いがつかず、買い取りを断念した経緯があるわけでございます。

 私ども文化庁といたしましては、指定に際しましては、その文化財の伝来を含めまして、詳細な調査を行った上で審議会に諮問をするという手続がございますけれども、その際、所有者の同意ということを得ているところでございます。

 しかしながら、いずれにしろ、貴重な文化財を保護するべく、私どもとしては、適切に指定ができるよう、さらに努力を重ねてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

中森分科員 ありがとうございました。

 これで質問を終わらせていただきます。きょうは本当にありがとう存じました。

西銘主査 これにて中森ふくよ君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代君。

高木(美)分科員 おはようございます。早くから大変にありがとうございます。本日、渡海大臣、また池坊副大臣には初めて質問をさせていただきます。

 私は、公明党におきまして障害者福祉委員会の委員長を務めさせていただいておりまして、障害者施策、日本は大変おくれていることもあり、急ピッチで進めていかなければいけないと思っている一人でございます。

 ノーマライゼーション、またインクルーシブな教育を推進し、障害のあるお子さん一人一人のニーズに適切に対応した教育を保障することは、現在、我が国におきましても、国連の障害者権利条約の批准に向けまして準備をしておりますが、その条約の理念でもあり、推進しなければならない大事な点であると思っております。

 また、ただいま障害者雇用促進法の改正案も検討をされておりますけれども、障害者の自立という就労までの一貫した支援の上からも、教育の持つ重みというのははかり知れないものがありまして、そのツールとなる教科書を手にすることができるかどうか、教育の機会均等という点からも重要なことと考えております。

 我が党は、そうした教科書の重要性を踏まえまして、これは通常学級に通うお子さんが対象でございますが、教科書の無償化につきまして、大先輩の女性国会議員が昭和三十八年度からということで提案をいたしまして、昭和四十四年に完全実施されたという、これは私も女性議員として受け継ぐべき大事な考えであると思っております。参議院におきまして、附帯決議で、こういう重要性をかんがみて三度にわたって盛り込まれているということも承知をしております。

 この拡大教科書という課題でございますが、文科省におきましては既に取り組まれていると伺っておりますので、拡大教科書の無償給与の現状とこれまでの取り組みにつきまして、まずお尋ねをさせていただきます。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、通常の学級に在籍する視覚に障害のある児童生徒の教育条件の改善に資することを目的といたしまして、平成十六年度から、検定教科書の文字などを拡大した拡大教科書の無償給与を開始したところでございます。平成十八年度におきましては、約六百人に対し約一万一千冊を給与しているところでございます。

 この拡大教科書の普及充実につきましては、平成十八年度に国会で三度にわたり附帯決議がなされるなど、これまでも御指摘をいただいているところでございまして、平成十八年七月には、文部科学大臣名で、教科書本文等のボランティア団体へのデジタルデータの提供と、教科書発行者における拡大教科書の発行の検討につきまして、書簡により各教科書発行者へ要請を行うなど、取り組みを進めているところでございます。平成十九年十二月には、一部の教科書につきまして、教科書本文デジタルデータが提供されることになったところでございます。

高木(美)分科員 今の通常学級に在籍する弱視児童生徒数、それから、そのうち何人に給与されているのか、重ねてお尋ねをさせていただきます。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十七年度の文部科学省の調査によりますと、小中学校の通常学級に在籍する弱視児童生徒数は千七百三十九人でございます。

 十七年度で申しますと、拡大教科書が給付された人数は六百四人、十八年度では六百三十四人となっているところでございます。

高木(美)分科員 重ねまして、特別支援学校、また支援学級におきまして、この拡大教科書が無償給与されているという状況は、数字でいかがでしょうか。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的な数字は今手元にございませんけれども、特別支援学校につきましては、通常の無償給与の対象になっているところでございます。

高木(美)分科員 私が伺っておりますのは、恐らく対象となる生徒の人数ですが、特別支援学校は四百八十七名、支援学級の方は二百六十七名ではないかと先般お伺いをいたしまして、これを全部合わせますと、今御答弁いただきました千七百三十九人と、今の特別支援学校、学級等を考えますと、対象者は約二千四百九十三名、約二千五百名ではないかというふうに承知をしております。

 ただ、その中で何名に果たして行き渡っているかといいますと、通常学級の千七百三十九に対して、十八年度で六百三十四という、恐らく三分の一という人数でございますので、残りの三分の二の方たちにつきましては何らかの形で、ルーペを使われたりさまざまな御努力を御自分でされている。本来であれば、望む方たちすべてにお渡しできるというのが学校教育法であり、また無償措置法に基づく理念ではないかと思っております。

 このように、先ほど大臣から書簡で要請をされた等々、取り組みがなされている状況でございますが、また、デジタルデータの提供等も今少しずつふえているという御答弁ございました。

 ただ、こうした全員に給与されていないという実態、この進まない理由をどのようにお考えか、また、今後の対応をどのようにこれから進めていかれるのか、お伺いをいたします。

池坊副大臣 今委員がおっしゃいますように、確かに拡大教科書はボランティアに八割をお願いしているのが現状でございます。

 なぜかと申しますと、ここにボランティアの方々が手書きでしてくださいました教科書がございます。私も拡大教科書というのは文字さえ大きくしたらいいのではないかと思っておりましたら、そうではなくて、レイアウトも変えてきちんと子供が弱視の方でも読みやすいようにする、あるいは配色も考えるというような創意工夫というのが必要でございます。そういうようなことから、今まで普及が至らなかったということもございます。それからまた、教科書発行者が提供されるデジタルデータの種類が少ない。これを質も量もふやさなければいけないということでございます。

 現状をかんがみて、私たち文部科学省は、これから文部科学省が主導いたしまして、調査費二千五百万をつけまして研究会を設置いたします。そして、教科書デジタルデータの提供、今までつくっていただいておりますボランティア団体などに使い勝手がいいような、促進のためにそれらを提供していく。また、多くの弱視の児童生徒のニーズがカバーできる拡大教科書の標準規格の策定、普及、これをしていかなければいけないと思っておりますので、教科書発行者等における拡大教科書の発行を促していきたいと思います。

 これは、今までは教科書、拡大教科書会社が二割でございますが、これがふえなければならないというふうに思っておりますので、この促進に努めていきたいと思っております。

高木(美)分科員 今副大臣より御答弁いただきましたとおり八割がボランティア団体に頼っているというこの現状は、恐らく、このボランティア団体の方たち、私も状況を少しお伺いいたしましたけれども、やはりお子さんたちに何としても教科書をお渡ししたい、こうした父兄からスタートしたと認識をしております。しかしながら、その中には当然、年代的にもパソコンが苦手であるとか、データをいただいてもそれを処理する能力が甚だ低いものがある。そしてまた、そうした人員の確保につきましても、高齢化しパンク寸前というふうに伺っております。

 このボランティア団体のやはり一つの持っていらっしゃるキャパというのがあるかと思います。ですので、先ほど来、池坊副大臣からお話しいただいておりますとおり、この教科書発行者、また拡大教材製作会社、こうしたいわゆる事業者、こちらの方にもう一つ大きく働きかけていただきながら、ここの部分を推進しませんと、いつまでたってもこのボランティア団体の方たちの負担が軽減されない。また、そこが少しあきますと、また次は高校の教科書の方を自分たちはやってみようか、こういうふうにまたさらに拡大ができるわけですけれども、そのようなことを踏まえまして、今、この拡大教科書政策、これにつきまして現状をどのように認識しておられるのか、局長にお伺いをさせていただきたいと思います。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 拡大教科書につきましては、教科書発行者や拡大教材作成会社から発行されている拡大教科書が少なく、御指摘のございましたように、多くのボランティア団体の御協力のもとに作成していただいているところでございます。平成十八年度におきましては、小中学校の通常学級に在籍する児童生徒に給与された拡大教科書のうち、約八割がボランティア団体の作成によるものでございます。

 文部科学省といたしましては、ボランティア団体の負担の軽減という観点からも、ボランティア団体等への使い勝手のよいデジタルデータの提供や、教科書発行者による拡大教科書の発行の促進が必要であると考えているところでございます。

高木(美)分科員 少し話が重複するかもしれませんが、このような状況を踏まえまして、恐らくお考えをこれから進めていただかなければいけないわけですが、新学習指導要領の完全実施に合わせまして、新課程教科書につきましては、小学校二十三年度、また中学校は二十四年度には拡大教科書を必要とするすべての児童生徒に対して無償給与することが目標、このように文科省は置かれているわけですけれども、先ほど来さまざまなお取り組みの話もございました。この目標に対しまして今後どのようにお進めになるのか、重ねてお伺いをいたします。

池坊副大臣 拡大教科書を必要とする視覚に障害のある児童生徒に対して無償給与を行っていくということは、新学習指導要領の小学校二十三年度、中学校二十四年度、これの完全実施というのは機会均等の保障を図る上でも大変重要だというふうに思っておりますので、私どもは、この普及に積極的に教科書会社に促進を促していきたいというふうに思っております。

 今まで考えておりますのは、平成二十年度には拡大教科書の標準規格の作成、平成二十一年度に標準規格の普及、発行者における編集体制等の準備、そして平成二十二年度に発行者において作成、供給できるようにというふうに願っております。

 それらのことを踏まえまして、平成十九年十二月から、ボランティア団体等に対して、一部の教科書について、教科書本文等デジタルデータの提供を開始したところでございます。平成二十年度以降も教科書のデジタルデータの提供の拡大を図っていきたいと思います。教科書のデジタルデータの提供の拡大を図らなければ、この普及促進もできないというふうに考えておりますので、それには力を注いでいきたいと思っております。

高木(美)分科員 それでは、お手元に、拡大教科書の発行状況及びデジタルデータの提供状況という一覧表を実は作成をさせていただきました。これは、文科省の資料をいただきまして、またわからないところは御協力をいただきながら、一応今の段階でどの出版社が、これも主要出版社十九社あると伺っておりますが、その中でもここにありますのはまだ十数社でございます。

 この点から考えましても、この丸印は拡大教科書が既に発行者から出版されているもの、これが丸印です。三角はデジタルデータが提供可能となったもの。これは本文に関するものですが、これが三角。既に提供されているものも含みます。星印は、またさらにお調べをいただきました内容ですが、発行され、かつデータの提供が可能となったもの、これがこれから進むという分野と思っております。

 このような状況を見ますと、恐らく二年、三年、四年、この辺のところはまだ少しデータの提供も行われ始めている。しかしながら、例えば東京書籍の国語の教科書をお使いのお子さんが二年、三年、四年、五年、六年、こういうふうに上がっていくことを考えますと、まだまだここのところはボランティアに頼っていらっしゃる、もしくはボランティアの教科書が間に合わなければ御自分でルーペ等を使いながら補充しなければいけない、こういう状況になっているわけでございます。

 本来であれば、この一覧表が今ぐらいの段階でもう星印がきらきらと埋まる、そういう状況であってもいいのではないかという思いがするのですが、そこで、大臣に、大変恐縮でございますが、この実態につきましてどのようにごらんになりますか。大臣の御所感を伺わせていただきたいと思います。

渡海国務大臣 まだまだだなというのが私の率直な印象でございます。今、こうやって見ましても、まだまだあいている部分が多いわけでございますから、今副大臣からも今後の取り組みについてお答えになったところでございますけれども、より一層、小坂大臣のときにも各教科書会社に要請書を出させていただいたようでございますけれども、私どもも、どういう方法をとればこれが促進されるのか、さらにこの促進について努力をしてまいりたいというふうに思います。

高木(美)分科員 ぜひ大臣の陣頭指揮でお取り組みをいただきまして、それぞれの事業者への働きかけもお願いをしたいと思っております。

 まず、このデータ提供の進捗状況ですけれども、このデータはボランティア団体に提供していただいているようになっておりますが、ボランティア団体の方たちがおっしゃるには、データも本文中心で画像をなかなかいただけない。先ほど副大臣の方で、拡大をするだけではなくて、そうした図表についても改めて手書きで加えているというお話がございました。確かに、画像も受け取っても、ではそれがそのまま、視覚障害をお持ちの方がそれを拡大しただけで読めるかといいますと、縁取りをしたり、また色を少し濃くしたり、さまざまな手を加えなければならないというのも現状でございまして、切り張りをした、手間のかかる御苦労の多い作業となっていると伺っております。

 このような形で、ボランティア団体がとりやすい提供の仕方、これを今後どのように働きかけていかれるのか、副大臣にお尋ねをいたします。

池坊副大臣 平成十六年度から、教科書協会を通してボランティア団体に提供されるデジタルデータ、もっとするようにという要請はいたしておりますけれども、種類も少なく内容も十分ではないという指摘を受けております。今、大臣が答弁されたように、平成十八年七月には、その当時の文部科学大臣が、各教科書発行者に対して、拡大教科書の普及充実を図るため、ボランティア団体の使い勝手のよい教科書デジタルデータの提供をしてほしいというふうに申しました。でも、まだまだなかなか、教科書会社の方でどのようにしたらいいのかというのが積極的でないように思っております。

 これは、文部科学省が再度主導いたしまして、教科書会社の方に、ボランティア団体の意見を取り入れながら、平成二十年度用の一部の教科書本文デジタルデータの提供を今までも行っておりますけれども、さらにこれは本腰を入れて、引き続いてこの促進を図っていきたいというふうに思っております。

高木(美)分科員 先ほど来、この民間事業者ですね、ここがやはり大きな焦点と思います。ここは、デジタルデータを民間事業者間では送り合っていない。例えば、拡大教科書を製作する会社があっても、そこに他社からは行かないという、もちろんそういう構造になっているわけですが、やはりこの製作する技術を持っている民間事業者にもデータを送ることによりまして、より早く行き渡るのではないかと考えます。また、それが、先ほど来局長からも、また副大臣からも、ボランティア団体の負担の軽減というお話もございました。民間の事業者間の提携を推進すべきではないかと考えます。

 このようなコーディネーターの働き、これをぜひ、文科省の大臣を先頭にお働きが必要なのではないかと思っております。具体的にこの事業者にどのように働きかけていかれるのか。また、そのときには補償金等の問題も発生すると伺っております。そうしたことについてもどのように対処されるのか、お伺いをいたします。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 教科書デジタルデータの提供につきましては、社団法人教科書協会が取りまとめて、申請のある団体に提供しているところでございます。教科書デジタルデータの提供先につきましては、拡大教科書を作成する者や点字教科書を作成する者などを対象としているところでございまして、このデジタルデータの提供に当たりましては、かねてより要望のあった、ボランティア団体の使い勝手のよいデジタルデータの検証を行う必要がありましたために、まずこれらに先に提供を行ったところでございます。

 御指摘のございましたように、拡大教科書を発行する民間事業者への教科書デジタルデータの提供につきましても、その円滑な提供方法や、また管理運営方法のための仕組みづくりを具体的に検討するよう、教科書発行者などに促してまいりたいと考えております。

高木(美)分科員 どうぞよろしくお願いいたします。

 昨晩もニュースで流れておりましたが、出版界も生き残りをかけて、講談社と小学館が一緒に雑誌を発行する、そういう時代に入ってまいりましたので、そうした点を考えますと、ぜひとも、どこの発行者がどのような取り組みをされているのか、そうした情報を、やはりほかを知らなければ、うちもやらない、やはりどうしてもコストがかかる話ですので、うちはやらない、こうなるわけで、そこのやはり競争意識というものも、今環境とかそしてまた障害者の雇用とか、そうした点では大きく進んでおりますが、この拡大教科書の分野における、障害児に対して配慮をする、こういう意味からも、ぜひ、例えば大臣が、先頭を切ってやっているところへは何らかの、感謝状ではありませんけれども、何らかのお褒めの言葉をいただくとか、そうしたことをぜひ働きかけていただきながら、いろいろな知恵を出していただいて、お願いをしたいところでございます。

 また、それとあわせまして高校の教科書につきましても、これもお声が強いところでございます。拡大教科書の取り組みもそうですが、また、あわせて特別支援学校の高等部専攻科におきます音声教科書の費用の援助を行うなど、やはりこれも利用推進をしていただくことも必要かと考えております。やはり、高等教育を望むお子さんたちが、その意思がありながらツールがなくて阻害されてしまう、そのこともあってはならないと考えております。

 この取り組みはまだまだ始まったばかりと承知しておりますけれども、ぜひ今後とも、この点につきましてもスピードアップをしていただきながら、視覚障害を持ちながら、またその世界をリードしていけるような、ああいう人になりたい、そう思うような、またそうした人材のトップランナーの輩出も、またそうした多くの方たちが望む、その方たちお一人お一人が悔いない人生を生きるためにも、そのようなお取り組みをお願いさせていただきたいと思います。

 そうしたことも含めまして、大臣は先ほど拡大教科書の重要性につきましても少しお触れいただきましたけれども、改めて、この拡大教科書の重要性を大臣がどのように認識されまして、今後どのように普及啓発にお取り組みいただけるのか、その御決意を伺わせていただきたいと思います。

渡海国務大臣 先ほどからの御議論を聞かせていただいておりまして、随分いろいろな方がいろいろな意味で努力をされてきて、それでまだ足りない分がある、こういう認識を改めてさせていただきました。私どもはやはりこういうふうにお願いをしている、また予算を用意しているということだけではどうも進まないようでございますから、さらなる方策というものを何か考えなきゃいけないのかなというのが率直な実感でございます。

 やはりこれは結果をしっかりと出していくようにするために、今一番何がネックになっているのかということをもう一度よく、遅いと言われるかもしれませんが、検討させていただいて、実効ある方策をやはりとっていくというのが政治の役割であろうとも思いますし、義務教育を所管している我が省の役割であるというふうに改めて感じさせていただきました。そういう観点に立って、さらなる努力をしてまいりたい、そのように思っております。

高木(美)分科員 どうぞよろしくお願いいたします。

 最後に、文字・活字文化振興法、これは池坊副大臣が中心となられまして、もう大変な御尽力で取りまとめられた法律でございます。平成十七年七月二十九日に公布になっております。その第三条に、「文字・活字文化の振興に関する施策の推進は、すべての国民が、その自主性を尊重されつつ、生涯にわたり、地域、学校、家庭その他の様々な場において、居住する地域、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを旨として、行われなければならない。」とございます。

 現在、身体障害者手帳を取得されている視覚障害の方は、全国約三十万人と伺っております。さらに、高齢者、弱視者、そしてまた低視力者、こういう方たちへの情報提供、また、そこに対する支援が改めて必要ではないかと思います。これから高齢社会がますます進んでいくことを考えますと、図書館に大活字の図書を設置することや、読書支援のための機器の購入などが求められるところでございます。これを推進される御見解につきまして、これは副大臣と大臣に御決意とあわせまして伺わせていただきたいと思います。

池坊副大臣 私は、子どもの読書推進プロジェクトチームの座長を十二年間いたしておりまして、御存じのように、朝の十分間の読書、それからブックスタート、読み聞かせを全国的に広めるために、これをライフワークといたしております。それらのことを受けまして、二〇〇一年には子ども読書活動推進法ができ、そして、その後、文字・活字文化振興法ができました。目の不自由な方々も本当に多くの本を読むことができるような環境整備は、私たち文部科学省が主導してやっていかなければならないことだと思っております。

 今国会に出したいと思っておりますけれども、図書館法を改正いたしまして、今まで、ただ設置されているだけではなくて、社会教育と連動しながらさまざまな社会事業をしていく、あるいは、図書館の活用の評価だとか、それを受けまして改善あるいは情報開示等々を行っていけるようにしていけたらというふうに願っております。また委員のお力もいただきたいと思いますけれども、それらのことも考えながら、やはり図書館が大きな活字で本をきちんと置いてあるということは必要なことではないかと思っております。

 私、いろいろな図書館を視察に参りまして、浦安は図書館が充実しているからというので、お子様を持った方々が転居なさるのが多いんですね。やはり、図書館だとかあるいは社会教育会館とか、いろいろなところでいろいろな催しをする、それも生涯教育、それからまた、障害を持った方々も入りやすい図書館の運営ということが促されていると思いますので、そういうことにも力を注いでいきたいと思います。

 いつも高木委員は障害者自立に対しては温かなぬくもりのある政策を打ち上げていただいておりますので、連携しながらいいものを目指していきたいと思っております。

渡海国務大臣 政策的には今副大臣がお話をされたようなことだと思います。ただ、地方によって随分ばらつきがあるというこの現状をどうとらえて、どう変えていくか、こういう課題があるかと思います。

 地財措置が行われているようでございますが、どうもそれがうまく働いていないんじゃないかな。この辺に対して、我々は縦割りのつもりはありませんから、総務省にもきっちりと話をして、よく地方にも、我々も直接も言いますし、あらゆるルートを通じて、これは基本法ですか、振興法ですか、法律までつくってあるわけでありますから、そういうことが促進されるように努力をしていきたい、このように思っております。

高木(美)分科員 ありがとうございました。

 以上で終了させていただきます。

西銘主査 これにて高木美智代君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)分科員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず渡海大臣に、公益法人のあり方について基本的なことをお伺いします。

 本来、公益法人というのは、慈善事業、学術、文化など公の利益に資する事業を行う、そういう財団、社団であると思います。きょう取り上げる日本美術刀剣保存協会もその一つでありますが、大臣、公益法人とは何か、どうあるべきか、その基本的なお考えをまずお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 一言で言いますと、言葉のとおりだと思います。

 公益でありますから、公のために利益があるということであろうと思いますし、いわゆる営利を目的としないで、広く、自律的に、また中立的に社会に対してある事業を行うということが基本でございます。

 もう一点、あえて言わせていただければ、だからこそ社会に対する説明責任というのが非常に大事だ。私は相撲協会の問題を扱いましたので、常に協会に対しては、みずからがしっかりと社会に対して説明責任を果たすようにという指導を行っております。

佐々木(憲)分科員 日本美術刀剣保存協会というのがありますが、その設立の趣旨によりますと、目的は、「美術工芸品としての価値ある刀剣類の保存及び公開、さらに無形文化財としての日本刀の製作・研磨並びに刀装・刀装具の製作等の技術の保存向上に資するとともに、作刀に必要な材料の確保を図り、これに関する調査研究と鑑賞指導を行い、わが国文化の普及と文化財の保護に寄与する」、こうされているわけです。

 この協会の重要な役割の一つに、刀剣の値打ちを評価する仕事がございます。これは当然、公平公正でなければならないと思うわけです。いささかも一部の利益を図るというような不公平なものであってはならないと思いますけれども、いかがでしょうか。

高塩政府参考人 今大臣から申し上げましたように、公益法人でございますので、先生のおっしゃるとおりだというふうに考えております。

佐々木(憲)分科員 この協会に対して、平成十三年以降、文化庁による実地検査がたびたび行われております。この実地検査の目的、その結果、それを踏まえた指導、その内容を明らかにしていただきたい。

 昨日二十七日から改めて実地検査が行われているようですけれども、その目的、内容というのはどういうものでしょうか。

高塩政府参考人 財団法人日本美術刀剣協会に対しましては、刀剣や刀装具の審査を初めとする業務運営につきまして、投書や苦情といったものがございました。そうしたことを踏まえまして、業務運営につきまして、文化庁におきまして、定期的な検査、これは三年ごとの検査でございますけれども、それの機会をとらえまして、業務運営全般につきまして協会の実態を的確に把握することを目的といたしまして実地検査を行っております。

 とりわけ今年度、平成十九年度におきましては、昨年の五月になりますけれども、三日間にわたりまして、業務の運営状況、事業の内容及び実施状況、会計処理、収支及び資産の状況、予算及び決算の状況といった通常の定期検査に加えまして、刀剣の審査の手続、それから、平成十六年四月に行われました特別重要刀剣等審査の申請の状況、さらに、特定の刀剣の審査の実施状況等に関する臨時的な検査を実施したところでございます。

 その結果が昨年の十一月並びに本年の一月に報告をされましたので、それを受けまして、その報告の内容が適切に遵守されているかということを再度確認するために、今先生から御紹介がございましたように、昨日から三日間にわたり、本年度二度目の臨時的な検査を行っている、こういった状況にございます。

佐々木(憲)分科員 この協会は、昨年十一月七日、文化庁に対して、会長以下新執行部が一年間鋭意調査した結果、刀剣審査について疑惑に該当する事実はなかったという報告を提出しているようですね。ことし一月三十一日にも、刀剣等の審査に当たっては、公正かつ厳正な審査を旨としており、一昨年の怪文書に言うような不正を行っている事実はありませんと。

 私は、これは全く開き直りではないか、この間の国会答弁、文化庁が答弁をした内容さえ否定するものだと思うんですよ。何のための国会審議をしているのか、これは全く挑戦的なもので、非常に私は問題があると思いますが、そうは思いませんか。

高塩政府参考人 今先生御指摘ございました昨年十一月七日付の協会からのいわゆる改善報告でございますけれども、その中に、私どもが昨年六月の十八日に改善指導通知を出したわけでございますけれども、要望改善事項の三番目の項目といたしまして、理事会のとおり別紙のとおりに決議されたと。

 今先生御紹介されました、なお、無記名の投書によって引き起こされた当協会の刀剣審査に関する疑惑について会長以下新執行部が一年間鋭意調査した結果、疑惑に該当する事実はなかった、この旨の記述がございますけれども、第三に関する旨の記述ということを踏まえますと、この部分につきましては、いわゆる役員、それから職員等が刀剣審査の申請をしないということを求めたわけでございまして、それについては、一昨年の八月に、現会長でございます佐々会長が就任以降、現の執行部体制におきましては、役員、職員等が刀剣審査の申請をしない、こういった違反事例がないことを述べたものであるというふうに理解をしている次第でございます。

 また、本年一月三十一日付の、御紹介がございました、いわゆる不正を行っている事実はないという部分でございますけれども、一月三十一日の文書につきましては、昨年十一月七日の文書で後に回答すると言った、いわゆる非会員、会員の問題ですけれども、その問題に加えまして、最後に、当協会においては、刀剣等の審査に当たっては、公正かつ厳正な審査を旨としており、一昨年の怪文書に言うような不正を行っているという事実はありません、この旨の記述がございまして、その後、刀剣商との癒着の旨の記述がございますので、私どもとしては、この旨の記述につきましては、審査そのものについて不正がないということを述べたものというふうに理解をしているところでございます。

佐々木(憲)分科員 では、その文書は、真っ当な文書だということですか。

高塩政府参考人 不正を行っていないということに関しましても、昨年の五月の九日から十一日までに行いました三日間の検査におきまして、私ども、可能な限り、その時点でいわゆる不正の情報が寄せられておりましたので、刀剣につきまして、その当該申請書類の確認を行うとともに、審査関係者から詳細な聞き取りを綿密に行ったわけでございますけれども、その結果としては、不正があるという明確な証拠は見出せなかったという状況にあるところでございます。

佐々木(憲)分科員 平成十三年八月三十一日の実地検査を踏まえて、文化庁は協会に対して、刀剣及び刀装具の審査については、今後、財団の役員、職員並びにその親族は申請できないように改善すべきだ、こういう通知を出しましたね。それは、本来のルールと違うことが行われていたので改善するようにということだったわけであります。

 その理由を、高塩次長は、昨年三月一日の予算委員会、当第四分科会でこう言っているわけです。「刀剣審査の公正性を担保し、審査に対して疑義を挟まれることのないよう、同財団の役員、職員、その他の親族等が申請できないよう、自主規制による改善を指導した」。これを受けて協会から、改善措置を講じた、そういう報告を受けた。これが原点であるはずであります。しかし、昨年十一月七日の協会の報告によると、疑惑はなかったと。こういう開き直りですね。

 私が重大だと思うのは、この協会の報告で、今後、刀剣及び刀装具の審査について、申請者を協会の会員に限るか、受け付け期間をどのようにするか、理事、職員、審査員及びその親族の申請をどのようにするかについて今後協会内で検討し、当面は申請者を会員に限ること、受け付け期間を厳守すること、理事、職員、審査員及びその一親等以内の親族は申請を自粛することについて改めて理事会で確認したと言っていることなんですよ。

 これは、当面はと、こういう言い方をしているんですね。それまでは、これはまともにやっていなかったということではないのか。平成十三年当時の改善措置というのは、わずか六年で踏みにじってきたということを意味していると思うわけです。この改善措置というのは、文化庁として、とるようにということを言っているわけですけれども、実態は、まあ当面は自粛しましょうという程度の対応です。

 私は、具体的な事例を質問主意書で出しました。協会の現職の常務理事、課長がかかわった規程違反であります。受け付け期間が過ぎて受け付けるというんですね。これは全くルール違反ですけれども、それを具体的に示しました。これは昨年六月の違反です。

 申請期間を過ぎてから受け付けをしたという事例で、それは小林常務理事より依頼されたとか、岩田課長の指示のもとというふうに、協会の役職にある人物によって申請期限を過ぎてから受け付けを指示されているわけです。

 これは、文化庁、私の質問主意書に対して具体的にどう対応されましたか。

高塩政府参考人 先生からさきに御質問がございました、役員、職員等の、まさに申請を行わない、いわゆるインサイダー取引と申しますか、そういった関係につきましては、昨年の三月の協会からの報告書におきまして、平成十三年で改善通知を私どもが行い、協会の方からその旨行うという報告が出ましたけれども、平成十八年に至るまでの間、相当数の理事や職員の親族からの不正があったという報告をいただいておりまして、私どもとしても大変遺憾に思っております。

 それを踏まえて昨年の五月に指導を行っておりまして、昨年十一月の、この疑惑がなかったというのは、十八年の、具体的には十月に行われました重要刀剣審査以降そういった理事や親族からの申請はない、こういうふうなことを協会から報告をいただいたところでございまして、その点についても、昨日から行っております実地検査において確認をするということでございます。

 また、後段、先生から御質問のございました、いわゆる非会員からの申請につきましては、これは先生からの質問主意書にもお答えいたしましたとおり、今回行う実地検査におきまして私どもとして確認をしたい、こういうふうに考えているところでございます。

佐々木(憲)分科員 これは非常に問題が多いわけです。これは「刀剣美術」という専門雑誌ですけれども、ここに堂々と発表をされていますけれども、小泉忠雄という名の会員番号、これは存在するんでしょうか。申請者氏名、住所、これは一致しますか。

高塩政府参考人 先生からの先日の二月の質問主意書にもございましたけれども、この会員番号につきまして、一九九四五というものは存在しないという御指摘でございましたので、昨日から行っております実地検査において今確認中でございます。

佐々木(憲)分科員 それを確認して、また報告していただきたい。

 もうちょっと具体的に指摘しますけれども、協会の常任理事にかかわる新たな不正であります。

 私、今ここに持っているペーパーは重要刀剣等審査申請書というものの写しなんですが、ナンバー八四三です。申請物件として「太刀銘保則」と書かれてあります。問題は、その下の括弧の中なんですが、「国不詳 時代鎌倉後期」とありまして、それをわざわざ二本の線で消してあります。そして、その右に「伝新田庄・時代鎌倉末期」、こういうふうに書かれているわけです。

 さらに、そのわきに一つの書き込みがありまして、平成十九年十一月六日「田野辺常務理事の指示により変更」と記入されています。後で明らかに書き込んだ、全然筆跡の違うものです。

 もう一枚、合格というのをあらわす登録証の写しなんですが、ここにも、それに合わせて同じ書き直しが行われております。同じように線で消されて、「伝古吉井・時代鎌倉末期」、これが「伝新田庄・時代鎌倉末期」と書きかえられている。

 この指示どおりになっているのは、「刀剣美術」昨年十一月号、これのゲラ刷りの段階では「伝古吉井」となっていたわけです。それが、手が加えられまして「新田庄」と変えられているわけです。

 これがなぜ重要かといいますと、専門家によりますと、書きかえられる前の伝古吉井というのは備前のものである、新田庄というのは群馬のものなんです。群馬のものというのは珍品と言われている。非常に値打ちが高くなるというんですね。

 これは、田野辺常務理事が書きかえを指示した、そういう疑惑が濃厚であります。昨年十一月六日というのは、ちょうど印刷所に入稿して最後の校正の段階で、その段階でこのような手が加えられているわけです。

 しかも、もう一枚、伝古吉井というのは伝新田庄に書きかえるべきである、こういう指示の紙がありまして、このとおりに全部やられているわけですよ。これは、どういうことなんですかね。

 平成十九年三月三十日付、協会から文化庁への報告によると、平成十八年八月二十三日、林専務理事に対しては無給三カ月の停職処分、田野辺、小林については、余人をもってかえがたい鑑定眼のゆえをもって厳重注意とされているだけだ。

 それまでいろいろな不正にかかわってきたけれども、刀剣の鑑定眼がすぐれているということで協会が重宝してきた。その結果、申請書を改ざんする、発表用のゲラまで改ざんする、そういうことを指示してきた。これは役員自身がやっているわけです。

 こういうことも、これは新しい事実ですけれども、当然、今回の調査でしっかり調べていただきたい。いかがですか。

高塩政府参考人 今先生から御指摘のあった件につきましては、昨日から行っている検査の中でしっかりと確認をしたいと思っておりますが、五月の検査におきまして同様の事例について調べたところ、協会側の弁明は、結局、審査は一次審査、二次審査と二段階ございますけれども、一次審査がいわゆる協会の学芸員の、田野辺氏も審査員でございますけれども、合議制、二次審査は外部からの六名を加えた十一名の合議制という中で、合議の中で審査員のベテランでございます田野辺氏の意見によりまして結果が変わりましたけれども、それは全員の合議の結果だという説明を私どもは受けておりますけれども、先生から今承りました新しい話については、この検査の中でしっかり調べたいというふうに考えております。

佐々木(憲)分科員 これは昨年の十一月ですからね。よく調べていただきたい。

 それから、新作名刀展に対する文化庁の後援ですとか文化庁長官賞、こういうものが今までありましたけれども、これが中止になったということですが、その理由、それから、補助金が取りやめになったということですが、その理由を明らかにしていただきたい。

高塩政府参考人 日本美術刀剣協会につきましては、文化庁の選定保存技術の玉鋼製造の保存継承のために、当協会が行います後継者養成事業に対して経費の一部の補助というのを行ってまいりました。また、協会は、現代刀の作家の作品コンクールといたしまして新作名刀展を毎年行っておりまして、文化庁としては、昭和四十年度の第一回展以来、後援名義の使用を許可するとともに、文化庁長官賞を授与してきたところでございます。

 しかしながら、平成十三年の文化庁の指導に基づきます改善措置が一昨年になりまして適切に履行されていない、しかもそれが、改善を求めておりますけれども、報告書の中に必ずしも事実とたがう結果がある、こういった状況を踏まえまして、私どもとしては、改善状況をさらに確認する必要があるということから、昨年六月に開催されました新作名刀展に対します後援名義の使用許可及び文化庁長官賞の授与を取りやめるとともに、また、いわゆる玉鋼製造の補助金につきましても、現在なお実地検査を行っている段階ということもございまして、本年度の交付を見合わせることといたしているところでございます。

佐々木(憲)分科員 次に、厚生労働省に来ていただいておりますので、お聞きしたいと思います。

 一般論でよいのですが、組合員、労働組合の加入を理由に、それに所属していることを理由にして、賃金ですとか昇給ですとか昇格、こういう点で差別的な扱いをするという場合は不当労働行為に当たると私は思うんですが、いかがでしょうか。

杉浦政府参考人 お答えいたします。

 労働組合法第七条第一号におきましては、労働者が労働組合の組合員であること等を理由として、解雇や不利益な取り扱いをすることは不当労働行為に該当するというふうに規定されております。この不利益な取り扱いの中には、先生の御指摘のありましたような、賞与や賃金等についての差別的取り扱いをすることを含むというふうに解されておるところでございます。

佐々木(憲)分科員 昨年十一月二十二日に、この日本美術刀剣保存協会の佐々会長名で賞与通知書というのが出されているんです。ここには次のように、「標記について、平成十九年十二月期賞与を下記のとおり支給することと決定したので通知する。」と。

 この中に査定というのが導入されていまして、これは今回初めてなんです。組合加入の職員に対してのみ査定を導入している。しかも、組合に加入している方に対しては、今日に至るも、賞与は払われておらないんです。その理由は、協定が結ばれていないから出せないんだ、こういう協会当局の言い方なんですけれども、ほかの職員には賞与は出しているんですよ。

 組合に所属しているというただそれだけの理由で、わざわざ査定というものを持ち込んで、これについてまだ協定が結ばれていない、だから出せないんだといって出していない。これはどう考えても不当労働行為だと思うんですが、いかがでしょうか。

杉浦政府参考人 先ほど申し上げましたように、労働組合法におきましては不当労働行為についての規定がございますけれども、個別の事案について、その行為が不当労働行為に該当するかどうかにつきましては、労働委員会に申し立てがあった場合に、当該事案ごとに労働委員会が判断するものでございまして、個別の問題についての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)分科員 組合側は労働委員会に提訴するとしていますので、私は、しっかりとした事実に基づく厳正な対応を求めたいと思います。

 さて、最後に、公益法人に対する設立の許可取り消しなどの対応についてですが、これまで文科省所管の関係で何件あったか、お答えいただきたいと思います。

坂田政府参考人 お尋ねのことでございますけれども、主務官庁によります公益法人の設立許可取り消しにつきましては、民法七十一条によりまして、主務官庁の監督命令違反など、他の方法により監督の目的を達することができないとき、あるいは、正当な事由なく引き続き三年以上事業をしないとき、そういったときに行うことができるということとされております。

 文部科学省が所管をいたしております公益法人のうち、過去五年間について見ますと、設立許可の取り消しを行ったケースは五件でございます。このうち一件は、業務上の問題と債務超過がございまして、法人運営の改善にかかわる命令に違反し、他の方法により監督の目的を達することができないと判断をいたしまして設立許可を取り消したものでございます。また、残る四件につきましては、休眠法人であることによる取り消しでございます。

佐々木(憲)分科員 伊吹前文科大臣は、こういうふうにおっしゃっているんです。「公益法人改革ということが今言われている中で、やはりきちっと国民の信頼を得ていかないと当該団体自体も困るわけです」、さらに、「余りに非常識なことが起こっている場合は、」「民法の規定にのっとって適切に対処していただくようにお願いをしなければならない」、こう述べています。

 民法六十七条第二項は、「主務官庁は、法人に対し、監督上必要な命令をすることができる。」と定めております。主務官庁の指導や実地検査を受けた直後にも先ほど言ったような事態が起こっているというように、審査にかかわる不正行為を繰り返したり、幽霊会員の解明もまともに行わなかったり、非会員全員が入会したという態度をとったり、これはかなり問題の多いやり方をしている。

 最初に大臣がおっしゃった、公平公正な公益に資する活動というのが本来の筋なんですけれども、今までも一定の処分を受けているわけです。さらに現在、実地検査が行われております。

 今回、刀剣審査をめぐるさまざまな疑惑や問題、こういう点が明らかになってきておりますので、この際、大臣、こういう本来の目的から外れているという事実、それから、今調査が行われておりますので、それを踏まえて厳正、公正に大臣として対処する、そういう決意を最後にお聞かせいただきたいと思います。

渡海国務大臣 先ほど来、やりとりを聞かせていただいておりました。

 現在、そういった点で、先生が御指摘をいただきました点も含めて調査をいたしておるようでございますから、その結果を踏まえて適切に対応していきたいというふうに考えております。

佐々木(憲)分科員 終わります。ありがとうございました。

西銘主査 これにて佐々木憲昭君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午前十一時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.