衆議院

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第1号 平成15年2月27日(木曜日)

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本分科会は平成十五年二月二十五日(火曜日)委員会において、設置することに決した。
二月二十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      衛藤征士郎君    津島 雄二君
      松岡 利勝君    上田 清司君
      細野 豪志君    石井 啓一君
      佐々木憲昭君
二月二十六日
 石井啓一君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年二月二十七日(木曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 石井 啓一君
      衛藤征士郎君    小西  理君
      津島 雄二君    松岡 利勝君
      上田 清司君    高木 義明君
      武正 公一君    楢崎 欣弥君
      平岡 秀夫君    細野 豪志君
      横路 孝弘君    佐々木憲昭君
   兼務 青山 二三君 兼務 赤松 正雄君
   兼務 上田  勇君 兼務 斉藤 鉄夫君
   兼務 福島  豊君 兼務 武山百合子君
   兼務 都築  譲君 兼務 中川 智子君
   兼務 保坂 展人君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         冨岡  悟君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局長
   )            松崎  朗君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省職業能力開発
   局長)          坂本由紀子君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    上田  茂君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   政府参考人
   (社会保険庁運営部長)  磯部 文雄君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁原子力
   安全・保安院審議官)   薦田 康久君
   厚生労働委員会専門員   宮武 太郎君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  津島 雄二君     小西  理君
  上田 清司君     武正 公一君
  細野 豪志君     高木 義明君
  佐々木憲昭君     木島日出夫君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     津島 雄二君
  高木 義明君     横路 孝弘君
  武正 公一君     平岡 秀夫君
  木島日出夫君     石井 郁子君
同日
 辞任         補欠選任
  平岡 秀夫君     楢崎 欣弥君
  横路 孝弘君     細野 豪志君
  石井 郁子君     塩川 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  楢崎 欣弥君     上田 清司君
  塩川 鉄也君     藤木 洋子君
同日
 辞任         補欠選任
  藤木 洋子君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  小沢 和秋君     佐々木憲昭君
同日
 第一分科員青山二三君、第四分科員武山百合子君、都築譲君、中川智子君、保坂展人君、第八分科員赤松正雄君、上田勇君、斉藤鉄夫君及び福島豊君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十伍年度政府関係機関予算
 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――
石井主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いをいたします。
 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 おはようございます。
 平成十五年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計予算の概要につきまして御説明を申し上げます。
 平成十五年度厚生労働省所管一般会計予算の総額は十九兆三千七百八十七億円でありまして、平成十四年度当初予算額と比較をいたしますと七千百三億円、三・八%の増加となっております。これは国の一般歳出の四一%を占めております。
 以下、その主要施策につきまして御説明を申し上げます。
 第一に、少子化の流れを変え、次世代の育成を支援するため、昨年九月に少子化対策プラスワンを策定し、子育て家庭を社会全体で支援するとともに、地域における子育て支援体制や保育サービスの充実、働き方の多様化に対応した改革など、各種施策を総合的に推進してまいります。
 さらに、児童虐待防止対策を推進するとともに、増大する母子家庭等についても、子育て支援や就労支援等を充実してまいります。
 第二に、食品衛生法の抜本改正等により、新たな食品の安全確保の仕組みを構築するため、残留農薬基準の整備、食品添加物の安全性確認の徹底、輸入食品や健康食品などの安全確保対策を推進するとともに、食品の安全性確保に係る研究を充実し、国民の健康を守るための食品安全対策を整備してまいります。
 第三に、現下の厳しい雇用失業情勢及び不良債権処理の加速する過程における影響に対応し、早期再就職及び雇用機会の創出を進めるとともに、新たな挑戦や再挑戦がしやすい労働市場の実現に向け、官民による労働力需給調整機能の強化などを進め、円滑な労働移動の支援を強化してまいります。また、地域の課題にこたえる地域雇用開発の促進など、良好な雇用機会の創出、確保等を図ってまいります。
 なお、雇用保険につきましては、制度の安定的な運営を図るため、基本手当の見直しなど、給付と負担の両面からの見直しを行い、雇用のセーフティーネットの整備を図ってまいります。
 第四に、次代の日本を支える若年者の総合的な雇用・能力開発対策の推進、経済社会の変化や技術革新に機動的に対応できる能力開発システムの構築など、人間力の向上を目指した人材育成を推進してまいります。
 第五に、多様で柔軟な働き方を可能とする環境を整備するとともに、労働者の安全、健康の確保などだれもが安心して働ける環境づくりを推進してまいります。
 第六に、急速に高齢化が進展する中、健康づくり施策を推進し、六十五歳までの雇用の確保や中高年齢者の再就職を促進するとともに、介護サービス基盤の整備、介護サービスの質の向上等への支援を行います。
 なお、介護報酬につきましては、賃金、物価の動向等を踏まえ、見直しを行います。
 また、国民年金等については、保険料を負担する現役世代との均衡にかんがみ、高齢者等の生活に配慮しつつ、特例として平成十四年の消費者物価の下落分であるマイナス〇・九%のみによる年金額の改定を行うこととしております。
 第七に、障害者の自立、社会参加の推進と良質な福祉サービスの提供を行うため、障害者基本計画重点施策実施五カ年計画(新障害者プラン)の実施を軸として、雇用と福祉の連携等による障害者雇用の推進や平成十五年度から実施される支援費制度の円滑な施行等を推進してまいります。
 また、ホームレスの自立支援等に関する施策を一層推進するとともに、良質な福祉サービスを提供するための体制整備を進めてまいります。
 なお、生活保護につきましては、平成十五年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の動向を基礎とし、国民全体の消費水準との均衡を図るための生活扶助基準等の改定を行うとともに、引き続き、その趣旨に沿って適正な運用を図ってまいります。
 第八に、質の高い医療の確保等のため、総合的な医療安全対策、医療のIT化等を着実に進めるとともに、医療従事者の確保と資質の向上を図るなど、医療提供体制の整備を図ってまいります。
 第九に、先端医療を実現するとともに、医薬品、医療機器等の産業活性化を推進するなど、科学技術の振興及び産業の国際競争力の強化を進めてまいります。
 以上のほか、世界保健機関や国際労働機関等の国際活動の支援、戦傷病者、戦没者遺族や中国残留邦人などの援護対策、生活衛生関係営業の振興、原爆被爆者対策など諸施策を推進してまいります。
 なお、委員各位のお手元に資料が配付されておりますが、一般会計及び特別会計予算の主要経費別概要につきましては、お許しを得て、説明を省略させていただきます。
 今後とも、国民生活の保障、向上と雇用の安定を図るため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様のなお一層の御理解と御協力をお願い申し上げる次第でございます。
 ありがとうございました。
石井主査 この際、お諮りいたします。
 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
石井主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
石井主査 以上をもちまして説明は終わりました。
    ―――――――――――――
石井主査 この際、分科員各位に申し上げます。
 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、政府当局に申し上げます。
 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
上田(勇)分科員 おはようございます。公明党の上田でございます。
 きょうは朝から随分長丁場の分科会になろうかというふうに思いますけれども、その一番最初でございますが、どうかよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 最初に、健康保険法の加入資格の問題につきまして、その解釈、運用等についての見解を若干お尋ねしたいというふうに思っております。
 私、地元が神奈川県でございますけれども、その神奈川県の川崎市議会では、川崎協同病院出身の市会議員の方が、休職扱いで同病院の健康保険組合に長期間にわたって加入をしていたということが議会で指摘をされまして、問題になっております。これに関して、厚生労働省の見解というのは、公務に就任しこれに専従する場合については、休職とは認められず、資格喪失されるべきであるという見解、これがたびたびいろいろな形で示されております。
 この公務というのは、一般職の公務員ですと、私も公務員だったんではあるのですが、兼職が禁止をされておりますので、どういうことを指しているのかというと、これは、浮かぶのが、議会の議員だとかがこれに該当するんではないかというふうに思いますけれども、この公務という解釈についてまずお尋ねしたいということと、また、公務に就任している者に対して休職とは認めないというような扱いを行っている理由について御説明をいただきたいと思います。
真野政府参考人 今お話がございましたように、健康保険の被保険者資格は、適用事業所と使用関係があるということが要件でございまして、したがいまして、単に休職の場合でも、使用関係が継続していると認められる場合は、被保険者資格は継続いたします。
 ただ、御指摘のように、公務に就任し、これに専従する場合等においては、資格を喪失せしめることが妥当であるという解釈をお示しをいたしております。公務というのは、先生御指摘のとおり、国家公務員なり地方公務員の場合には兼職は認められませんので、そういう意味では御指摘のようなことかと思いますし、それから、この場合に資格を喪失をさせているというのは、今申し上げましたように、適用事業所との使用関係が継続していると認められないということから資格喪失をさせているということでございます。
上田(勇)分科員 確かに、国民皆保険でございますので、いずれかの保険には加入しなければいけないのですが、その際に、一般論として、議員になってなおかつ休職扱いということになりますと、本人には随分メリットがあることなんだろうというふうに思います。
 例えば、私自身も国保に加入をしておりますが、市会議員で国保に加入すれば、最高額の保険料になることが多いだろうというふうに思います。どういう扱いになっていたかは別にいたしまして、休職扱いということになると、厚生労働省の考えでは休職前の標準報酬に基づく保険料で行うということで、ここでも随分差が出てくるのではないかというふうに思いますし、また、これも基本は労使折半でありますから、随分と負担が軽くなる。受診した場合についても、本人についての負担の軽減があるということのメリットが相当あるのではないかというふうに思います。
 また他方、国保の財政というのは、これはどこでも非常に、大変逼迫をしている状況があります。最高額の保険料を納入すべき人が入ってくれないということは、その一つをとってみれば、全体の財政からすれば大したことじゃないのかもしれませんけれども、これは他の国保の加入者に損害を与えているというようなことにもなるのではないかというふうに思いますので、公職にある者がそうしたような行為をとるということは、道義的にも非常に大きな問題があるのではないかと私は感じております。
 ただ、実際いろいろと聞いていますと、こうした行為というのはこのケースだけじゃなくて、ほかにも相当、そういう意味では広く行われているというようなことも聞くのですけれども、厚生労働省として、実態はどのように把握をされているのでしょうか。
真野政府参考人 適用関係につきましては、事業主並びに健保組合につきまして、適正な適用を行うように指導いたしてきております。
 ただ、従来は、ややもいたしますと、どうしてもやはり適用漏れといいますか、本来健康保険を適用すべき方々が適用されていないのではないかというところに指導の重点が置かれてきたのではないか。それぞれ、適用をしている、保険料も納付されているという状況に対して、勤務実態との突合性、という先生御指摘のようなケースの指導というのは、今申し上げましたように、適用を漏れている方に対する事業主なり健保組合への指導に比べますと、きちっと行われていたかというと、そうは言えないのではないかと思います。
 そういう意味で、今後そういう面も含めまして、勤務実態をきちっと把握をして、そうした本来の法律上の適用を行うように指導したいというふうに思っております。
上田(勇)分科員 ただいま私が指摘させていただいたケースというのは、これは明らかに解釈の上で脱法行為でありますし、道義的な責任も極めて大きいということを考えれば、ぜひ調査もしていただきたいというふうに思いますし、改善を求めていただきたいというふうにお願い申し上げます。
 それでは、次に保育事業のことについてお伺いをいたしますけれども、構造改革特区の第二次提案においては保育所に係る提案が五十八件あったというふうに伺っております。そのうち三十七件が幼保一元化にかかわるものであったというふうに聞いております。また、幼稚園の所管は文部科学省、それから保育所の所管は厚生労働省というのが、あたかも縦割り行政の典型例みたいな形でよく指摘をされるところでございます。
 確かに、幼稚園と保育園、これは本来の目的も、設立以来のこれまでの経緯といったことも異なっておるので、二つに所管が分かれているといったことは理解できないわけではありませんけれども、近年やはりその役割というのは非常に近づいてきているのではないのかなというような感じがいたします。私立の幼稚園の過半数の箇所においては居残り保育みたいな事業が行われておりますし、これはそうしたニーズが非常に強くなっているということを反映していることなのではないかというふうに思います。
 そこで、この幼保一元化について、政府の見解というのは、これはやはりいろいろと難しいというのが見解ではないかというふうに聞いておりますけれども、改めて、厚生労働省それから文部科学省それぞれに、幼保一元化に関するお考え方についてお伺いしたいというふうに思います。
岩田政府参考人 保育所と幼稚園についてでございますが、保育サービスと幼児教育というニーズに応じまして、それぞれが整備充実を図ってきているというふうに理解しておりますけれども、その中で、やはり地域の実情に応じてもう少し弾力的な設置運営をしたいという声もございましたので、二つの施設の連携をより図れるように、これまでも文部科学省と共同作業をしてまいりました。
 具体的に少し御紹介させていただきたいと思いますけれども、まずハード面ですが、保育所と幼稚園という二つの施設を共用化できるようにということで、共用化指針というものを両省で作成をいたしております。
 また、保育所の保育内容と幼稚園の教育内容についてですけれども、それぞれが整合性をとれるようにということで、保育所の保育指針を幼稚園の教育要領との整合性も十分考慮して改正をするということもやっております。
 また、職員の資格のことについてですが、保育士と幼稚園の教諭の両方の資格を同時に取得しやすいようにということで、保育士の養成課程を十四年度から改めましたし、また、十五年度においては、既に片方の資格を持っている方がもう片方の資格を追加して取得しやすいような方策についても、文部科学省と御相談をして検討を進めたいというふうに考えております。
 こういうことで、実質的には既にそれぞれの地域のニーズにこたえる形で二つの施設が連携してと申しましょうか、融合して設置運営できるようになっているというふうには考えているところでございます。
 今先生御指摘の構造改革特区の第二次提案についてでございますけれども、子供の数が減少しているようなところの地方公共団体からの要望が多かったように思いますけれども、こういった要望を踏まえまして、保育所と幼稚園の連携を一層図る、連携をさらに進めるといったような観点から、一定の条件のもとではありますけれども、保育所の保育室で保育所児と幼稚園児を一緒に保育するといいましょうか、保育所サイドから見ると合同保育ができるような、そういうことも認めてまいりたいというふうに思っておりまして、これによって一層、二つの施設の弾力的な設置運営が可能になるというふうに考えているところでございます。
金森政府参考人 お答え申し上げます。
 幼稚園と保育所は異なる目的や役割を持つ施設でございまして、それぞれの制度の中で整備充実に努めているところでございますが、一方、両施設とも就学前の幼児を対象としておりますことから、文部科学省におきましては、厚生労働省ともども、両施設の連携を強化するよう努力しているところでございます。
 具体的には、先ほど御紹介がございましたように、両施設の共用化指針の策定でございますとか、幼稚園の教育内容と保育所の保育内容の整合性の確保、幼稚園教諭と保育士の合同研修の実施や資格の併有の促進、幼稚園と保育所の連携事例集の作成などの取り組みを行ってきたところでございます。
 また、構造改革特区に関する地方公共団体からの第一次提案を受けまして、特区において幼稚園児と保育所児とが幼稚園で合同の活動を行うことができる特例を設けることとしたところでございます。
 さらに、全国的に対応する事項といたしまして、幼稚園教諭と保育士の資格を相互に取得しやすくする方策を平成十五年度中に検討し、結論を得ることとしておりますほか、平成十五年度予算案におきまして、幼稚園、保育所と小学校の連携に関する総合的な調査研究を行うための予算を計上しているところでございます。
 今後とも、多様化する保育ニーズにこたえる観点に立ちまして、厚生労働省との連携を一層緊密にしつつ、これらの取り組みを進めてまいりたいと考えております。
上田(勇)分科員 今、両省とも連携を強化していく、強めていくというようなお話ではあったんですけれども、これはただ、なかなか、それぞれの部門を担当しております地方行政部局の方に行きますと、必ずしもそうした意図がまだ十分伝わっていないというふうな気がいたします。そういう意味では、まだまだ実際には縦割りの部分が弊害になっているというのが実感でございますので、今、これからよく連携をしていくというふうなことでの御答弁をいただきましたので、ひとつこれから鋭意努力をしていただきたいというふうに思うわけでございます。
 もう一つ、やはり子育て支援という意味で、仕事を持つ母親にとって、今度は小学校に入ってから、放課後に子供を預かってくれる施設、これは、やはり仕事を安心して続けていくという意味では非常に重要なものでございます。十五年度予算案においては、この放課後児童クラブの予算額七十四億円が計上されておりますし、国庫補助対象の施設八百カ所が追加というようなことになっております。これはやはり、内閣としても放課後児童対策、これを非常に重視し、力を入れていこうという姿勢のあらわれではないかというふうに思いますけれども、お考えを伺いたいと思います。
岩田政府参考人 今先生がおっしゃいましたように、放課後児童クラブについては、子供の健全な育成を図るということとあわせて、子育てと仕事の両立を支援するという観点からも大変重要な施策であるというふうに考えております。
 このため、平成十二年度から、新エンゼルプランに基づきまして既に放課後児童クラブの整備に取り組んでおりましたけれども、さらにそれに追加をいたしまして、平成十三年七月の閣議決定、これは「仕事と子育ての両立支援策の方針について」という閣議決定でございまして、保育所待機児童のゼロ作戦を打ち出したものでございますが、そこで、あわせて放課後児童の受け入れ体制の整備についても決めていただいております。具体的には、平成十六年度までに全国で一万五千カ所とする目標を置きまして、それに向けて今整備を進めているところでございます。
 この目標を達成するために、平成十五年度の予算案についてでございますが、放課後児童クラブについて、八百カ所の増を図ることといたしております。また、障害児を受け入れていただいたときに加算の措置を講じておりますけれども、従来は、障害児を四人以上受け入れたときに初めて加算措置が適用になるといったことでございましたが、この四人を二人ということで、条件を緩和するというようなこともあわせて十五年度にはやりたいというふうに考えておりまして、総額七十四億円を計上させていただいているところであります。
上田(勇)分科員 この放課後児童対策というのは、私も非常に重要なことであるというふうに思っておりますし、これからもぜひ力を入れて推進していただきたいというふうに思うわけでありますけれども、ただ、どうもこの放課後児童健全育成事業の現行の制度というのは、やはりいろいろと規制も多いし、必ずしも親や地域のニーズに十分適切に対応できていない面も出てきているのじゃないかという感じもいたしております。もっと事業に多様性や柔軟性があってもいいのではないのかなというのが率直な意見でございます。
 例えば、児童福祉法で定められている対象だけではなくて、もっと全部の児童を対象にするような、そういう放課後児童対策といったことも、自治体のいろいろな発意で行われている面があります。私の地元であります横浜市では「はまっ子ふれあいスクール」というのがありまして、また川崎市では「わくわくプラザ」という事業、それぞれ小学校の施設を使って、一年生から六年生までの全部の児童を対象にした、そういった放課後事業を行っているわけでございます。我が党の両市の市会議員も、これをずっと強力に推進してきているわけであります。
 こうした事業というのは、学校の施設であります校庭や体育館なども利用することができるというような点だとか、六年生まで、大きい子も小さい子もあわせて交流を深めながら、遊んだり勉強したり、そういうふうなことができるというようなメリットも非常に大きいのではないかというような感じがいたしております。こうした多様な事業についても、ぜひこれからも推進をしていっていただきたいというふうに思うわけであります。
 もう一つ、ちょっとお伺いをしたいんですが、私も地元などでは、幼稚園の施設を活用して放課後児童クラブを設置したい、あるいは設置してほしいというような要望をよく伺います。多くの幼稚園では、実際に居残り保育というような形も行っているわけでありますし、幼児と小学生の児童が交流できるといったことは、社会性を育成していくという意味でも非常に有益なのではないかというふうに思いますし、また、親の立場からしますと、兄弟姉妹そろって同じ施設で午後預かってくれるという非常に便利な面もございます。また、幼稚園でありますので、施設もそれなりに整っているわけでありますので、その児童クラブとしての基準を満たすにも、部分的な改良などで済むというようなメリットもあるというふうに思います。
 伺ったところでは、幼稚園を活用するということについて制度的な制限はないというふうに伺っておりますけれども、どうも余りそうした積極的な推進がされているというふうにも感じないわけでありますけれども、これはいろいろなメリットがあることだというふうに思いますので、幼稚園の施設をもっと積極的に活用するような放課後児童対策、そうしたことについてもぜひ力を入れて推進をしていただければというふうに思いますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。
岩田政府参考人 放課後児童クラブは、放課後の、特に親御さんが働いておられるということで留守家庭になっておられるようなお子さんの、放課後の遊びとそして生活の場、いわば家庭にかわる場ということで整備をしていただいておりますけれども、どの場所でなければいけないということはございませんで、児童館でやられたり、学校の余裕教室を活用させていただいたり、それ以外の公的な施設を使っておられたり、さまざま自治体で工夫されているというふうに思っております。
 平成十四年の五月の時点での放課後児童健全育成事業実施状況調査によりますと、全国で既に二百二十九カ所の幼稚園でこの事業に取り組んでいただいております。まだまだこれから放課後児童クラブを整備していかないといけないような地域、利用したいけれども利用できずに待機しておられるようなお子さんがいらっしゃるような地域については、特に幼稚園の午後の時間を活用するということも大変いい方策であるというふうに思いますので、そういった形で事業を展開させていただければ、私どもにとっても大変ありがたいというふうに思っております。
上田(勇)分科員 もう時間なので、これで終わりにいたしますけれども、昨年九月に厚労省の方で策定をいたしました少子化対策プラスワンの中でも、この放課後児童クラブをもっとふやしていこう、サービスを充実していこうということが書かれているんですが、その上で特に、幼稚園において放課後児童等を受け入れる異年齢交流を実施するということが、これだけが特に特記をされているので、今御答弁でいただいたよりももうちょっと積極的にお考えなのかなというふうに思っていたものですから、ちょっとここで、厚労省の方で策定をした内容とその辺、今のスタンスというのが多少ニュアンスが違ったのかなという感じがいたしますけれども、これで決めていることでございますので、ぜひ積極的な対応をお願いしたいというふうに思います。
 以上で終わります。
石井主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。
 次に、武正公一君。
武正分科員 おはようございます。民主党の武正でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、一般職業紹介状況の就職率ということでございますが、昨年十二月分で二六%ということを厚生労働省は発表しております。この数字は、いわゆる新規求職者数で職についた方を割った数字でございますが、十二月分の有効求職者は二百四十六万人ですから、本来の就職率というのは、就職件数十三万人ですから五・三%になるんではないかというふうに考えるのですが、なぜ新規求職者数で割るのか、その理由をお聞きするとともに、私は、実態をあらわすという意味では、職を求めている方の数で職についた方を割る、これをしっかりと就職率として出していくべきと考えますが、御所見を伺います。
坂口国務大臣 おはようございます。
 先生から御指摘をいただきました、有効求職者で割るべきであるが、その所見を聞くという話でございます。
 この統計資料というのはそれぞれ前提条件がございまして、そして、先生がお出しになりましたような出し方というのも確かにあるというふうに私も思います。
 我々の方が出しておりますものは、これは一年間に安定所に求職の申し込みを行った求職者のうちで何人の求職者が就職できたかというふうに、ある程度の幅を持った期間を対象とする場合におきましては、有効求職者数として用いる数字は各月の新規求職者数と前月から繰り越された求職者数の合計でありますことから、同一の求職者が何度も重複してカウントされた数字になってしまうことがございます。すべてがそうとは決して申しません。
 例えば、五カ月間求職活動を続けておみえになります方で、毎月届け出をされる方がございます。そうしますと、本当はその人お一人なんですけれども、五人分にカウントされることがあるといったようなことから、現在のような出し方をしているわけでございます。
 しかし、初めにも申しましたとおり、統計の出し方がいろいろございますので、先生に御指摘をいただきましたのも一つの方法だというふうに私は思っておる次第でございます。
武正分科員 それでは、ダブルカウントの数字、二百四十六万人のうちどのぐらいに当たるのか、教えていただけますか。
戸苅政府参考人 雇用保険受給者の場合は、雇用保険の需給期間が最大三百三十日ございます。そういうことで、長い方は三百三十日丸々もらって就職したいという方もございますが、平均的に申し上げると、ちょっと手元に詳しい資料を持っていないので恐縮なんですが、有効求職者数と新規求職者数の比率というのが大体五対一でございますので、大体新規求職者数の四倍ぐらい有効求職者というか、前月から繰り越された方がいる、こういうことではないかと思います。
武正分科員 そんなことは聞いていないんですよ。今、ダブルカウントがあるというふうに大臣が言ったから、二百四十万人で、ではダブルでカウントされているのは何人ですかと聞いたんですよ。五倍なんということは、それは数字を見ればわかるわけですからね。それがわかるんですかということですね。
戸苅政府参考人 何度ダブルカウントするか、例えば、一カ月で就職した人、その月で就職すると一回なんですけれども、二カ月かかると二回ダブルカウント、三カ月かかると三回ダブルカウント、こういうことになります。
 先生おっしゃるように、具体的にどれだけかというのは、ちょっと今手元にありませんので、まことに申しわけないんですけれども、ちょっと調べて御報告に伺います。
武正分科員 要は、そういったこともわかっていないわけですので、二百四十万人の方が職を求めている、これが年間の求職者数ですから、その職を求めている方のうち、では、実際にダブルの数字はどうなのか。ダブルを省いて就職した人の数を除する、これが就職率でありますから、それが出せないのであれば新規求職者数で割るというのはいかがなものかというふうに考えるわけでございますが、再度、大臣、この点、御所見はいかがでしょうか。
坂口国務大臣 初めにも申しましたとおり、いろいろの出し方がございますし、先生が御指摘になりました出し方も一つの出し方だというふうに私は思っております。
 我々が出しております数字をもう少し具体的にしようと思えば、御指摘いただきましたように、それではどのぐらいダブルでカウントされている人があるのかということを明らかにしなければいけないというふうに思っておりますから、そこははっきりさせまして先生のお手元にお届けしたいと思います。
武正分科員 ありがとうございます。
 これは、日本の失業率が、アメリカの失業率と比較をした場合、実は一〇%近くではないかというようなことで、この統計のある面トリックというか、この数字というのはとり方によって随分変わってくるといったことでございますので、私は、日本の失業率のとり方についても問題点がある、この点は指摘にとどめたいと思います。
 次に移らせていただきます。
 職業紹介業の規制改革に伴い、九九年の大規模改正でも、民間の職業紹介業は求職者からは紹介料は取れない、あるいは無料職業紹介の許可基準もまだ不透明である、こういった指摘もある中で、さりとて、例えば今のハローワークの就職率が、実際にダブルカウントでない求職者で割った場合の数字にしても、それが下がっていくような形で、民間職業紹介業への規制改革については多分厚生労働省さんは抵抗感があるのではないかなというふうに考えるんです。
 何かそういった意味では、いいアイデアというんですかね、例えば、もう最初から求職者は、ハローワークに来ないあるいは民間職業紹介業に移った場合にはそれは省くとか、いろいろなやり方の中でやはり民間職業紹介業への規制改革というのはできるのではないかなというふうに思うんですが、鴨下副大臣、何かアイデアがあったらちょっとお聞かせいただけますか。
鴨下副大臣 今先生がおっしゃっているように、トータルで、官民合わせて、求職している方々が就職ができていく、こういうようなことになればいいわけでありまして、ハローワークとそれから民間の就職紹介事業者が、競うということもあるんですが、最終的には補完していけばいいんだろうというふうに思います。
 そういう中で、ハローワークの方が何をやるべきかというような話でのアイデアだろうと思いますが、これは、ある意味でハローワークというのは全国を網羅するネットワークでありますので、この機能を十分に発揮していくというのが一義的な問題だろうと思います。
 それに加えて、求人開拓を積極的に行っていくというような意味での労働力の需給調整機能の強化を図っていくわけでありますが、具体的には、先生御存じのように、本年の一月の十四日から、ハローワークが保有する求人情報についてはインターネットで企業名まで、もしくは所在地、連絡先まで情報提供をする、こういうようなことを行っていこうじゃないかというふうになりました。
 それから、もう一つは、これは民間ではなかなかできないような、じっくりとした相談をやっていこうというようなことで、ハローワークにキャリアコンサルタントを配置しまして、ある意味できめ細かな相談を実施する。
 さらに、早くとにかく就職したい、こういうような方に対しましては、個々のニーズに応じて計画的に一貫した就職支援を行うこととして、ハローワークに早期再就職専任支援員、就職支援ナビゲーター、こういうものを配置しまして、とにかく早く就職しやすいように、こういうようなことであります。
 また、今度は求人の方でありますけれども、求人の方は、求人票を出したんだけれどもなかなか音さたがない、こういうようなこともあるようでありますので、受理後三週間たっても紹介のない求人については、求人企業にその状況を説明する、こういうようなことで、いずれにしても、きめ細かく求職者、求人者にサービスをしていこう、こういうようなことをしていこうと。
武正分科員 私が申し上げたかったのは、就職率が下がってしまうような規制改革については厚労省さんは多分抵抗があるだろうから、就職率が下がらない形で、例えば分母を、例えば民間職業紹介業の方が請け負うんだったらその分を減らしてやるとか、いろいろな形が、工夫が必要ではないですか、そのアイデアがあればというようなことをお聞きしたわけでございます。これも指摘にとどめさせていただきます。
 さて、公取の社会的規制等ワーキンググループでは、昨年、ハローワークの見直しが必要ではないかといった議論の中で、このような意見があります。民間職業紹介業とのイコールフッティングが問題になるのではないか、まさに今、この点でございます。セーフティーネットとして、国費を投入して無料職業紹介をハローワークは行っている、行うにしても、ハローワークが行う必然性はないと考える、こういった意見も公取のワーキンググループでは出ているわけですので、やはり、イコールフッティング、官民の連携なり調整ですね、そのときに、厚労省さんが非常に抵抗感を持つ。例えば、今の就職率が下がってしまうようなことがないように、やはりそれはいろいろとやり方を柔軟にしていく必要があるのではないかなというふうに考えるわけでございます。
 先ほど、副大臣からも、一月、企業名をインターネットで公表した、あるいは、民間に比べてハローワークはじっくりと相談に乗るんだ、あるいは、キャリアコンサルタント、これはたしか五万人でしたよね、こういった目標を掲げられております。しかしながら、失業率は改善が見られない。求職、求人のミスマッチはなかなか解消されないわけでございます。
 こうした中、地方分権一括法で、それぞれの都道府県にいらっしゃった厚生労働省からの職員の皆さんが、国に保険も、そして労働部門も引き揚げるという、そのような形がありました。あのときに、私は県議会で、これから独自に都道府県なり地方自治体が雇用施策を展開しなければならないとすれば、やはり求人求職情報、これが厚労省さんからしっかりと地方自治体に提供がなければ、手足をもがれた形で雇用施策をやれといってもできないではないかというようなことを指摘したことがございます。
 さて、厚労省から地方自治体へのそうした提供は進んでいるんでしょうか。あるいは、平成十五年度、どのような取り組みをされるのか。これは厚生労働大臣、よろしいでしょうか。
坂口国務大臣 御指摘のとおり、国のやります分野と、そして地方自治体で引き受けていただきます分野と、はっきりと分けたものでございますから、以後、地方自治体の皆さん方の方からは、ハローワーク的な仕事もやはり地方自治体としてもやらないと、これは回っていかないのではないか、こういう御指摘をいただいてきたところでございまして、ことし法案を提出させていただきますが、地方自治体におきましても職業紹介等の仕事をおやりいただけるように今したいというふうに思っております。
 現在も、雇用対策連絡調整会議というのをつくりまして、そこで労働局と地方自治体との協議というのはやらせていただいておりますが、今後、こうした地方自治体と共有する部分が多くなってくるだろうというふうに思っておりますので、国、地方自治体、そして民間合わせてネットワークを密にして雇用対策に取り組んでいかなければいけないというふうに思っております。
 これは、特に今までは国が一本でやっております雇用対策で間に合っていたわけでございますが、地域による格差も非常に大きくなっておりますし、また、失業をされる皆さん方の内容も、これまた多種多様になってまいりまして、地域間でそれぞれ違った対応をしていかなければならないということもございますので、地方、そして民間、これでネットワークを密にしたい、こういうふうに考えているところでございます。
武正分科員 法案提出ということで、ぜひ積極的なお取り組みをお願いしたいと思っております。
 というのは、今回も構造改革特区法案で、群馬県等から無料職業紹介事業の対象を地方自治体に拡大要望があるわけですが、法案をこれから出しますよということで、困難であると。ただ、そのときの理由として、全国一律で雇用政策はやっているんだよといったことが困難な理由に書いてあるわけですね。私は、ここに雇用政策の本音がやはり隠れているように思えてなりません。
 今、大臣から前向きな御答弁いただいたんですが、これは、後ほど救急医療についてもお伺いいたしますが、実は、都道府県境を越えて求人、求職というのは動くわけですよね。救急医療もそうなんです。都道府県を越えて、例えば私の埼玉県からは、全国平均の倍、東京に救急車で運ばれているわけです。
 ですから、ぜひ、今度の法案提出に当たって、都道府県を一つの単位、地方自治体にとっては最大の単位になると思うんですが、都道府県境を越えた、ある面のブロック、あるいは都道府県間の連携などもやはり視野に入れてお取り組みをいただきたいと思いますが、大臣、もう一言御所見をお願いします。
坂口国務大臣 大変大事な御指摘だというふうに思います。
 一つの県というふうに言いましても、自分の県の中心よりも隣の県の中心の方が近いというところももちろんあるわけでございますし、また、交通のアクセスによりましても大変違いがございますので、それぞれの都道府県でお取り組みをいただくと同時に、やはり、近県と申しますか、いわゆるブロックの都道府県におきます連携も密にしていかなければならないというふうに思っております。
 現在は、ブロック別に、都道府県の代表の皆さんと、それから国の方は厚生労働省と経済産業省の出先がそこに参加をいたしまして、いろいろの意見交換をする場を一昨年の八月からつくっておりますが、そうしたこともこれから充実をしていきたい、こういうふうに思っています。
武正分科員 今度は医療の分野の方に移らせていただきます。
 昨年、厚労省さんと総務省、消防庁との、いわゆる救急医療、特に特定医療三行為、これについての検討会の最終報告が出ました。言ってしまうと、除細動は原則認める、気管挿管は限定的ながらも平成十六年七月から認める、輸液については要検討、特に平成十五年度もいろいろと、実験というか、やっていきながらといったことでございますが、この最終報告の中でもメディカルコントロール体制、この充実ということがかなり柱としてうたわれておりますが、これを具体的にどう進めるのか。
 これは札幌市の例ですけれども、市立札幌病院内に救急ワークステーション、この救急ワークステーションにドクターカーが置かれまして、九五年から二〇〇〇年までに八百四十八回出動、しかも、また、このワークステーションで延べ五百三十三人の救急隊員の教育実習、再教育、講習を行った、医師はPHSで二十四時間体制で市内の十の消防署、二十八救急隊に連絡がとれるようになっているということであります。
 実際に、これから、メディカルコントロール体制、協議会もかなり都道府県で設置が進んでいるようでございますが、この先進事例のところに対しては、やはりそこで、先ほどの輸液についても含めて、やはりある面、モデル地域のところで、モデル地域としていろいろと先進的な取り組みをやってもらうという必要があろうかと思うんです。ですから、ここはもしかしたら構造改革特区とも絡んでくるかもしれない、救急医療について、ここでは輸液は認める、やってみてもらうというようなことも含めて、モデル地域で進めるということを考えてみること。以上二点、これも大臣でしょうか、御所見を伺います。
坂口国務大臣 このメディカルコントロールをどういうふうに位置づけていくかというのは、これは人によりましてメディカルコントロールの定義の仕方も若干違うわけでございますが、幅広くできるだけ考えて、そして、その体制を整えていかなければならないというふうに思っております。
 救急救命士にできるだけ業務のあり方を拡大していくということが今求められてもおりますし、事実、そういう方向に動き出したわけでございます。したがいまして、一つは、救急救命士の教育というものをしっかりとやっていくということが基礎的なこととして大事だというふうに思っております。
 それから、いずれにいたしましても、救急救命にかかわります医師がやはり常勤で存在するということが非常に大事になってくる、片手間にやっていたのでは救急対応ができないということだろうというふうに思いますので、やはりそういう医師も養成をしていかなければならないだろう。何も病院の中でやるということだけがこれは仕事じゃありませんから、そういうことに情熱を燃やすような人たちにやはりそれなりの教育を受けていただくということが大事になってくるのではないかというふうに思います。
 今、北海道のお話をいただきましたけれども、そうしたドクターカーのようなものが出動できるということになれば、さらによろしいのでございます。コントロールタワーに電話をすれば必ずそこに対応してくれる人がいるということがまず大事ではないかというふうに思っておりますので、それらの整備を進めていきたいというふうに思っているところでございます。
武正分科員 ぜひ、そうした先進地域をモデル地域として認めていく、あるいは、そこに対してはさまざまな形で援助をする、こういったことを要望させていただきたいと思います。
 さて、今メディカルコントロールにはいろいろな定義があるんだというお話でしたが、事後のメディカルコントロールというものが私は大事だなというふうに思っておりまして、これは日医ニュースの九百九十一号でも、事後のMCとはどういったことなのかといったことを昨年十二月二十日号で述べてもおられます。
 しかしながら、厚労省さんの病院前救護体制のあり方に関する検討会報告書では、事後のことを後ろ向きと書くんですね。「後ろ向き(事後)の間接的メディカルコントロール」、これはちょっと誤解を招くと思うんですね。なぜこういうふうに書くのかわからないんですけれども、それこそ後ろ向きであるなというふうに言われてしまいかねませんので、ぜひ事後のMCを大事にしてほしいというふうに思うわけでございます。
 これについては、消防庁からも通知も出て、マニュアルを検討中というようなことも指摘があるわけでございます。私は、一昨年三月、そして昨年十二月と、質問でも取り上げておりますが、病院側から搬送後の患者さんの容体がどうなったかを搬送者である消防署側に提供すべきだというふうに考えます。これについては昨年、民主党案として厚生労働、総務両大臣にこのことも提出をしておるんですが、残念ながらこの最終報告書では明確な記載がございません。
 厚生労働大臣、再度、搬送後の患者さんがどうなったのか、これを搬送者である消防署側に提供することについて御所見をお伺いするとともに、平成十三年で四百十九万人が搬送されて、年間二十万人、今も毎年増加しています、うち重症者は四十七万人。特に重症者の一カ月後生存率、これがどうなっているか、これが特に私は大事だと思うんですね。それもやはり搬送者側にフィードバックすべきと考えますが、実際のところ、これはなかなか、調べていない、わからないという答弁が続くんですね。
 まずはこの数字を調べることと、そしてあわせて搬送者側にフィードバックすること、以上三点、お伺いいたします。
坂口国務大臣 やるとすれば、やはり重症者からやらないといけないと思うんですね。今回、例えば除細動なんかが認められることになったわけでありますから、特に除細動なんかを行った場合にそれが一体どうなったかということは、救急救命士の皆さん方も非常に関心のあるところだと思います。
 だから、まずはどこかからスタートをして拡大をしていかなきゃいけないわけでありますから、そういう除細動を行った、あるいはまた挿管したというようなケースの場合に、まずその状況がどうであったかということを報告するというようなことからやはりスタートをして、どこまで重症のところに広めていくかということになってくるんだろうと思います。手順としましては、その辺のところからこれはスタートできるように努力したいと思います。
武正分科員 特にそういったところでは、先ほどもモデル地域というのがありましたけれども、なかなかすぐには全国一律でスタートできないと思うんですが、私がさっき言ったような札幌市などを含めて、モデル地域で、重症者が一カ月でどの程度の生存率だったのか、それも含めて、そのときに除細動をやったり気管挿管であったり、あるいは先ほどのモデル地域であれば輸液も認めながらやって、それで一カ月後の生存率の比較ということをやっていけるのではないかなというふうに思います。
 最後になりますけれども、一昨年三月二日、やはりこれも、県境を越えた取り組み、救急医療ですね、これは一昨年のその前、ですからおととしの前の年に質疑の中で求めまして、救急車で県境を越えてどの程度搬送されているんですか、これは数字を出してくださいといってお願いして、平成八年の患者調査で、厚労省さんに出していただいた。
 当時の、平成八年の三百二十四万人の搬送者のうち、県を越えて救急車で搬送された、この方が四・四六%、十四万五千人が県を越えて搬送されているということが推測できたわけでございますが、多分この数字はもっとふえているし、まして埼玉の場合はその倍である。ですから、都市部の方が多いのか、ここら辺もまだまだ各都道府県の検証が必要だと思うんです。先ほども、労働部門、雇用部門で県境を越えた取り組みということを申し上げましたが、救急医療部門、これも地域保健医療計画で都道府県ごとでみんなやっているわけですね。
 ですから、これは、県を越えた取り組み、特に救急医療ほど必要ではないか。ドクターカーだけでなくてドクターヘリの導入も今進めているわけでございますので、この点についてどのようにと、私はそのときお願いするということを言ったんですね、お願いしましたら、副大臣から、当時は桝屋副大臣、県境を越えた取り組みを各都道府県にお願いするという答弁があったんですが、一昨年三月二日、この予算委員会分科会からもう二年たっておりますが、その後どのようにお願いをし、どのような成果が上がっているのか。これについて、これは副大臣でございますか、お答えいただけますか。
木村副大臣 この件は特にドクターヘリの点に力点が置かれておりまして、ドクターヘリの点でございますけれども、救急医療体制を県境を越えて整備するに当たりましては、広域をカバーし、搬送時間の短縮により救急患者の救命率の向上に寄与するには、やはり非常にドクターヘリが有効である。この導入、活用を図っていかなきゃいけないということで、このために、御指摘いただきました次の年度の平成十三年度からドクターヘリ事業を本格的に導入するに当たりまして、これを広域救急患者搬送体制の向上を目的とするものと位置づけました。それで、隣県を含めた広域出動範囲を決める場合には、運航調整委員会に関係県の参加を求めるなど、密接な連携のもとに同事業を実施することにしたものでございます。
 現在、ドクターヘリは七県におきまして導入、運航しているところであり、うち二県は近隣県との共同運航を行っております。また、一県は共同運航に向けて現在協議会において検討しているところでございますが、今後とも、広域的な救急医療体制の整備を促進するために、各都道府県の導入意向を踏まえつつ、ドクターヘリの事業を一層推進してまいりたい、このように思っています。
武正分科員 時間になりましたけれども、最後、ぜひ大臣、今はドクターヘリに限っての御答弁でしたが、救急車で県境を越えてたくさんの患者さんが移動されている。平成八年、十四万五千人。この方々がやはり県境を越えてくると、それは医療機関は当然受け入れますけれども、やはり都道府県ごとの保健医療計画といった制約の中で、ある面でこれを超えた形で、人命でございますので、しっかりと受け入れるといったことで、このドクターカー、いわゆる救急車、これについてもしっかりやるんだと、御決意を最後お聞きして、質問を終わらせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 貴重な御意見でございますので、十分参考にさせていただきます。
武正分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
石井主査 これにて武正公一君の質疑は終了いたしました。
 次に、小西理君。
小西分科員 自由民主党の小西理でございます。よろしくお願い申し上げます。
 きょう私は、日本経済、今再生を言われておりますけれども、その中でやはりセーフティーネット、これの重要性と、再生していく上でどうしても避けて通れない、企業を担う人材の育成について質問をさせていただきたいというように思います。
 どこのお役所に質問しようかと迷ったんですけれども、やはりブレークスルーを一番していただけそうな厚生労働省にちょっときょうは質問をさせていただきたいと思って、きょうこの場で立たせていただきました。
 今声高にというか、企業、日本の絶対的な命題として、デフレの対策それから構造改革、これはどうしてもやっていかなきゃいけないということで言われておりますけれども、口で言うのはやすく、行うはなかなか難しいというのが実情ではないかと思っております。特に、その中でも、行う中でも、それを支えていく能力のある人材とその労働力をどのように有効活用していくのか、特に、やはり国力を最大限に発揮していくためにこの点をどういうふうにするのかというのは、私は非常に重要な点だというように思っております。
 今、構造改革の中で、やはり産業、企業の再編というのはどうしても避けて通れない。昨年から私も地元を回らせていただいておりますけれども、今不況と言われる中で、実は会社というのは一律にぐあいが悪いわけではなくて、幾つかの、何割かの一生懸命やっている会社と、あと残り何割かの非常に今経営状況がなかなか厳しくなっている、こういうのが偽らざる実態ではないかというように思っています。
 最初にちょっと漠とした質問をさせていただきたいんですけれども、今いろいろなところで日本も、科学技術創造立国、また観光、サービス産業など、いろいろな面で将来の産業構造が言われておりますけれども、やはりこれから人材というものを考えていくときに、どういう産業構造を念頭に置いてやるかということは非常に重要なことだというように思っております。
 非常に言いづらいところかもしれませんけれども、今厚生労働省、大臣、どのようにそのあたりの将来の日本の産業構造の変化というのをとらえておられるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
鴨下副大臣 今委員おっしゃっているように、大変難しい話ではありますけれども、厚生労働省の方の認識としましては、我が国の産業構造については、技術革新によりまして情報化の進展などがありまして、最終的には医療、福祉、環境関連などの分野がさらに成長していくだろう、こういうようなことでもありますし、ある意味で、従来の製造業等からサービス業へのウエートはかなり急速に進んでいくものだろう、こういうふうな認識をしております。また、こういうような構造変化によって、雇用面においては情報化関連産業やサービス業などで労働力の需要が極めて高まっていくだろう、こういう認識であります。
 一方、これまでの我が国の経済を支えてきた製造業における物づくり等の伝統を十分に生かして、そこからさらにブラッシュアップしたような高度な技術力を持った物づくり産業も、さらにこれは進めていかなければいけない、こういうようなことであります。
小西分科員 どうもありがとうございました。
 それと同時に、今度は、今、日本の高度成長を支えてきた一つの大きな要因として、中小企業が大変頑張ってきた部分があろうかと思います。私も、先ほど同様地域を回っていまして、今元気な中小企業というのはどうなんだろうかというのを見てみると、やはりアイデアを持ってエンドユーザーと接しておられる企業、また自社の製品、ブランドを持っておられるような企業、こういうところが比較的強いような印象を持っております。
 そういう中で、今まで下請ということでかなり大企業に依存してきた下請企業もたくさんあるわけなんですけれども、将来的にこのあたり、この中小企業のあり方という面で将来どういうようなビジョンを持っておられるのか、お聞かせいただければと思います。
鴨下副大臣 言ってみれば、新しい産業構造になっていく上で、従来のいわゆる基幹産業が下支えをするということは言うまでもないわけですけれども、これは経済財政諮問会議の中での構造改革に関する基本方針の中にもうたわれておりますが、やはり新事業への挑戦的なことというのは中小企業がやっていかなければならない。そういう意味で、創造力や柔軟性や意欲に満ちた、こういう中小企業があってこそ構造改革が前に進んでいくんだ、こういうような認識だろうというふうに思います。
 またさらに、これは我々、雇用面でのことにつきまして申し上げますと、言うまでもなく、雇用者数の約七割を中小企業が担っていただいているわけでありますので、こういう意味で、さらに今後とも中小企業が元気を出してもらわなければいけないということは間違いないわけでありまして、これからも新しい産業に応じた中小企業がどんどん活発になっていただいて、結果としてそれが雇用を多く支えていただく、こういうようなことで、中小企業が果たす役割というのは今後とも極めて重要だろうというふうに考えております。
小西分科員 方向性について今ずっと述べていただきました。私もそういう方向だと思いますけれども、方向に行くためには、最初申し上げましたように、それを支える能力のある労働力というのが必要でございます。今その方向に合った人材を育成するためにどういう施策を打っているのかというのは問うつもりはございませんけれども、それぞれのほかの官庁も所管が重なるようなところも多分多いかと思いますので、ぜひとも、一番切実な労働者の声、また産業の痛みを一番もろにかぶっておられる厚生労働省様に、その辺のリーダーシップをとって、その辺の施策を推進していただきたい、私はそういう思いを持っております。よろしくお願いいたします。
 次の質問に移らせていただきます。
 一方は、さりはさりとて、現実に失業率が今増加をしておりまして大変厳しい状況にある、こういうところでございますけれども、一昨年の補正予算以来、セーフティーネット、非常に今注目といいますか脚光を浴び、いろいろ手だてを打っていかなきゃいけないということで進めてこられたと思いますけれども、私ちょっと気になっておるのは、今、不良債権処理や産業再生機構ということで表の方に注目が行っておりまして、それを本当の意味で支えていかなきゃいけない幹の部分である失業対策といいますかセーフティーネットの部分で、一生懸命やっておられると思いますけれども、最近表に出てきておりませんので、ちょっとそのあたりをもう一回レビューする意味を含めて、今実施をされている施策とその正直なところの評価というものをお聞かせ願いたいというように思います。
戸苅政府参考人 今先生おっしゃいましたとおり、平成十三年の九月に総合雇用対策を取りまとめ、これをこれまで実施してきております。中身としては、雇用のミスマッチの解消、それからセーフティーネットの整備、これが二本柱になっておるわけであります。
 雇用のミスマッチ解消ということで、これは官民の求人情報、これをインターネットを通じて職場でも、あるいは家庭でも見られるようにということでやってございますが、これにつきまして、総合雇用対策の一環として、それまで大都市圏中心にインターネットでハローワークの求人を提供していたのでございますが、これを全国のハローワークの求人情報を提供しよう、さらに携帯電話でもアクセス可能にしよう、こういうふうにしております。これの最近におきます状況を申し上げますと、パソコンでアクセスされている方が一日二十一万件程度、それから携帯電話でアクセスされている方が二十九万人程度、こんな状況になってございます。
 それから、能力あるいは年齢のミスマッチを解消するというために、キャリアカウンセラーを養成し、五年間で五万人程度を目標ということでやっておりますが、これも着実にキャリアカウンセラーの配置が進んでいるというふうに思ってございます。
 その他、雇用情勢が非常に厳しい若年者につきまして、直接正規の雇用ということではなくて、試行雇用ということで取り組みを始めたわけでありますが、これにつきましても、現在までのところ二万八千人の方が試行雇用に取り組まれている。そのうち、試行雇用が終わった方が一万七千人ございまして、そのうちの七六%であります一万三千人の方が正規の雇用に移行されている。こういうことで、我々としては、着実に成果が上がっているんではないか、こう思っております。
 それから、セーフティーネットの整備といたしまして、地方自治体がそれぞれの地域の実情に応じましていろいろ知恵を絞っていただいて、臨時的、短期的な雇用機会を創出するということで、緊急地域雇用創出特別交付金というのを実施してございます。これにつきましては、これまで約十六万人強の新規雇用が見込まれているという状況でございます。
 さらに、新規・成長分野の事業を行う事業主の方が中高年の非自発的な失業者の方を雇い入れた場合に、これも大幅な助成を行っております新規・成長分野雇用創出特別奨励金というのがございます。これについては、民間の職業紹介機関を通じて就職された方も対象にということで取り組んでございますが、これらにつきましても、ほかの助成金を含めまして、約六万人の新規の雇用が創出されるという状況でございます。
 ただ、中には、なかなか当初我々の想定していたような企業の実情あるいは労働市場の実情でなかったというものもございます。こういったものにつきましては、先般成立させていただきました補正予算を含めまして、制度の改善を図り、今後実効が上がるようにということで努力したいというふうに考えております。
坂口国務大臣 貴重な御意見をいただいておりますので、一言だけつけ加えさせていただきたいというふうに思いますが、具体的な話は今局長から御答弁申し上げたとおりでございます。
 今まで厚生労働省、ハローワークの仕事をやってまいりまして、言ってみればこれはいわゆる技術屋的関与の仕方でございまして、非常にきめ細かく、そしてこれはもう他の追従を許さないというような形でやってきたわけでございますが、しかし、それではなかなかカバーし切れなくなってまいりまして、もう少し、厚生労働省の雇用政策としては、民間もおやりをいただき、地方自治体もおやりをいただき、それをいかにコントロールしていくかという大きい立場からの雇用政策というのがやはり大事になってきているというふうに思っております。そうした全体を抱えて、そこで全体でどうしていくかということの方向に今この方向を向けているところでございます。
 一言だけつけ加えさせていただきます。
小西分科員 御答弁ありがとうございます。
 今いろいろ成果が上がっているというお言葉はいただいたんですけれども、ちょっと私、感想と言いますとおかしいんですけれども、今の施策というのは、これはこれまでの厚生労働省の役割として仕方がなかったとは思うんですけれども、やはり対処療法的なものではないかというふうに疑問を持っております。
 例えば、私の地元のある中堅ぐらいの建設業者の方なんですけれども、求人したら四十五人来た、三人採用したい、でも、採りたい人間は一人もいなかった。これは地方の建設業者でそういう状態の話を私は聞きまして、今ハローワークできめ細かくやっておられるとおっしゃったんですけれども、それはそのとおりだと思いますけれども、もとのところが、来られる方の意識であるとか能力のところがこれは変わってこなければ、砂地に水をまく、申しわけないんですけれども、そういう努力多くして実が少ないというようなことにもなりかねないなというように私は思っております。
 今施策の中でいろいろおっしゃっていただく中で私が非常に気になるのは、例えば緊急雇用されましたけれども、それが切れた後、次どういう、また緊急雇用をするのかどうかという点もございますし、例えば企業に助成をしました、雇ってもらいました、戦力になればいいんですけれども、ならない場合、いつまで助成を続けるんだ、助成が切れた途端に企業からまた出されるとしたら、根本的な解決にはこれはなっていかないと思うんですね。
 今この点について、これも解決方法を言っていただくこともできないと思いますけれども、今後どういうように考えていかれるのか、御意見をいただければと思います。
戸苅政府参考人 確かに、先生おっしゃるとおり、雇用というのは産業経済の活動の結果として雇用機会ができてくる、こういうことがあります。逆に言うと、産業経済の動きの影響が雇用に出てきちゃう、こういうことがあって、これまでの雇用対策というのは、確かに事後対応的あるいは応急措置的な対応というのが中心だったということはおっしゃるとおりだろうと思います。
 そういう意味で、先ほど大臣申し上げましたとおり、これからの雇用対策の方向として、雇用対策そのものというよりは、むしろいろいろな産業政策あるいは地域政策、そういったものとあわせて、これからの労働市場の動向あるいは産業の動向と一体となって、雇用の安定、雇用の創出をどう図っていくかということが重要だろう、こう思っているところであります。
 個別に申し上げますと、さっきの緊急地域雇用創出特別交付金でありますが、これにつきましては、六カ月の雇用、要するに、景気が回復し、雇用が回復するまでの間のつなぎの雇用だ、こういう考え方でやってきておるわけであります。ただ、実際には、景気の低迷が長期化しているものですから、六カ月たってもなかなか雇用機会がふえないというのは先生のおっしゃるとおりでありまして、そういった意味で、我々もできるだけ、交付金の六カ月が終わった後になるべく雇用につながるような交付金の活用の仕方、あるいは交付金による働き方、そういったものに心がけてほしいということで自治体にもお願いをしているところであります。
 ですから、交付金で臨時的に雇われた事業にそのまま継続雇用されなくても、そこで培った技能なり能力なりが再就職に役に立つようなやり方、こういったやり方で運営していくということが重要だろうというふうに思っておるところであります。
 それから、あわせまして、交付金がそういう性格のものだということがありますので、今回の補正予算におきましては、むしろ常用雇用の機会を直接つくっていくようなもの、例えば自治体から事業を発注していただくとか、あるいは地域のいろいろなニーズにこたえられるようなきめ細かなサービスを行う事業とか、そういったものを起こしていただいて雇用の受け皿事業をつくっていただいた事業所に対しての支援をするとか、そういうことでいろいろ工夫を凝らしてやっていこうというふうに考えておるところであります。
 それから、雇い入れた後、金の切れ目が縁の切れ目になっちゃうんじゃないかというお話でありまして、これは我々も大変危惧しているところでありまして、そういったことがないように、雇っていただくときにきちんと、雇い入れの助成金の支給が終わった後もきちんと定着いただくようにということで、事業主の方にもお願いし、それから我々としても、やはり交付金が切れた後の定着の状況というものをきちんと見定めていく必要もあるかなということを思っておりまして、そのあたりも今後の課題として検討してまいりたい、こう思っております。
小西分科員 ありがとうございます。
 今の問題でちょっと角度を変えて質問させていただきたいと思うんですけれども、例えば、私なんか非常に興味があるのは、ある倒産した会社、例えば千人規模とかそういう会社がありまして、そこで失業した労働者の方がその後どういうように就職されて、どうされているのかとか、そういうことをサンプル調査とか実態把握をされたことというのはありますでしょうか。
戸苅政府参考人 確かに、倒産ですとか解雇ですとか、そういったことによって非自発的な理由で失業された方というのは、ここ一、二年大変ふえているという状況でございます。昔は自発的な失業者の方が非自発的な失業者より多かったということなんですが、最近は非自発の方がふえている。しかも、総務省の統計ですと、失業期間もだんだん長くなっているということも事実であります。
 そういった中で、確かに先生おっしゃるように、非自発的に倒産、解雇等でやむを得ず離職されてしまった方がその後どういう経路をたどっているのかというあたりをきちんとフォローするというのは、これからの政策を立てる上で非常に重要なことだろうというふうに思っています。
 我々も、定性的にといいますか、どういった状況なのかというのをケーススタディー的に把握したり、ハローワークの窓口を通じてこんな状況だということを見たり、あるいは総務省の労働力調査の詳細集計で推測したりということはやっているんですけれども、確かに先生がおっしゃるように、直接それに取り組んでいる統計というのは私も承知しておりませんで、我々も実は同じような問題意識を持ち始めているところでありまして、今のお話を受けて、既定の予算の中でそういったものにちょっと取り組む必要があるんじゃないかというふうに思っています。
小西分科員 ありがとうございます。
 今私が申し上げたのは、このあたりをやはり要因別に、いろいろな能力だとか要因だとかそういうものの分析をして相関関係とかを見ていけば、これはミスマッチを解きほぐしていく一つのかぎになるんじゃないかなというように思います。
 最初のこととも関連しますけれども、その中で次、どういう手を打っていけばいいのか、逆に言うたら、私、午後から文部科学省に質問するつもりにしていますけれども、どういうような要求をほかのところに出していけばいいのかという一つのかぎになってくるんじゃないかなというように思っております。ぜひともよろしくお願いしたいというように思っております。
 次に、今既に就職されている方の非自発的な失業のお話をさせていただいたんですけれども、同じように、今新卒についても大変な就職難が来ている。特に、やはり高卒のレベルで非常に仕事が見つからない。地域においてもこれは大変な問題になりつつあるわけなんですけれども、私は、これは単に不況のせいだけなんだろうか、こういう疑問を持っておるわけでございます。
 今厚生労働省様の方で、これはなぜ起こっているんだ、そのあたりどうお考えなのか、御所見をお伺いできればと思います。
戸苅政府参考人 ことしの三月の高校の卒業予定者の就職内定状況、実はこれまでで一番厳しい状況にございます。これを何とか解消しようということで取り組んでおるところでございます。
 新規高卒者を初めとして若年者の就職状況が厳しいということの最大の理由は、恐らく最近の経済情勢が厳しい、経営状況が厳しいということだろうと思いますが、あわせまして、やはり企業の人材に対するニーズというのが高度化している、あるいは即戦力を求めている、こういったことが一つあるのではないかというふうに思います。そういった意味で、新規高卒者というよりは大卒を求めるとか、あるいはすぐ即戦力になるような中途の採用者を求めるとか、こういう傾向が強くなっているというのが求人側の要因だろうというふうに思います。
 一方で、就職者側の要因というのも否定できないわけでありまして、これにつきましては、学校を卒業する新規高卒者の職業に対する意識、職業意識というのがやはり十分形成されていないと言わざるを得ない。それからもう一つは、やはり労働市場の状況というか、そういったものについて正しい知識を持っていないために、自分の求めている、自分で就職しようとする職業、職種と、産業、職種と、企業、求人側のものとのミスマッチが非常に大きくなっている。こういったいろいろな要素が絡んで、今のような厳しい状況になっているのではないか、こういうふうに思っております。
小西分科員 今お答えいただいた中にも出てきているんですけれども、今文部科学省の方で教育基本法等のいろいろな検討をされておるわけなんですけれども、教育を何のためにやるかというと、やはり国を成り立たせていくためにやる。そのためには、働くための教育だという面は非常に大きな面があるというように私は思っております。
 きのうもちょっとお話をしていた中で、あいさつができないとか、敬語が使えないとか、時間に来られないとか、こういう社会人としての基本的なマナーといいますか常識の部分、こういう部分についてもっと教育の面で真剣に取り組んでいっていいのではないか、そのようなことが私もちょっと頭に浮かんだ次第でございます。ぜひともまたそういう機会がありましたらそういう御提言をいただいて、しっかりとした、将来を担う人材が出てくるようになっていければというように思っております。
 今申し上げましたように、労働省のいろいろな役割というのはこれからどんどん変わってくるのではないかなというように私は思います。特に国として、やはり労働者で、マクロというか大きな意味で、国全体という意味で、アビリティーコントロールと言うとおかしいので、アビリティーマネジメントといいますか、どういう能力の人間をどれぐらいつくっていくんだ、こういうようなところというのが、今後労働政策、またこの就職等を考えていく上で最も大事な基本のポイントになってくるんじゃないかと思います。ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 それから次の、これも私の非常に前々から思っておる疑問でございまして、何か手だてはないかなと思っておるところでございますけれども、今、日本の経済が置かれている状況、終身雇用というのが壊れつつある、そういう状況になっているかと思います。その中で、やはり労働力の流動化、流動化した労働力をどのように健全に雇用していくか、これは非常に大きな課題になっているのではないかなというように思っております。
 実は、こういう問題が解決しないと、ほかのさまざまな課題、例えば男女共同参画だといっても、長期育児休暇だといっても、フレキシブルな人生設計だといってもままならないわけでございまして、我々はしっかりした能力を身につけていないと、次どこに行くか、一回会社をやめてしまえば不安で不安でたまらない、そういう状況が現実には起こってくるんだというように思っております。
 それを思ったときに、例えば私の経験で言わせていただきますと、欧米の社会では、会社外で専門のスキルを身につけて、その専門のスキルを武器に就職して、かつその仕事を通じてキャリアアップをしていくというような形が普通の形ではないかなと思います。
 一方、今、日本の社会では、私も会社に入ったときに言われましたけれども、大学で勉強したことは忘れろと、そういう形で入りまして、会社の中での仕事を通じて、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングというもので仕事のスキルを身につけていくというような形が主要ではないかと思います。そういう中で、終身雇用であればよいんですけれども、その中でいくと、ややもすると、自分がどういう能力を身につけて、何ができるのかというのがわからない、そういうような状況も出てきかねないというようなことになるかと思います。
 ちょっと漠とした質問なんですけれども、このあたりの、いわゆる企業のあり方ですね、この辺について御所見をお伺いできればと思います。
鴨下副大臣 先生の問題意識はまことに的確だろうというふうに思います。
 先生がおっしゃっているような、ある意味で終身雇用だとか長期雇用だとか、それから企業主導の能力開発が中心になって行われておりまして、労働者側からいうと、そういうような意味での寄らば大樹のような部分もありまして、結果的には、その企業の中では非常に能力を発揮するようなことがあっても、では、企業の外に出たり、企業横断的な、いわば標準的な能力があるか、こういうようなことに関してはなかなか疑問の部分もある、こういうような御指摘だろうと思いますが、そういう意味では、我々もそういう認識は一にしておるところであります。
 そういう中で、これからはどういうふうに言ってみればホワイトカラーの方々の能力だとか技能をスキルアップしていくか、そのためにはどういう評価をするべきか、こういうようなことの問題意識があるんだろうと思います。今、厚生労働省の中でも、各業界団体等の協力を得まして、職業能力を評価する仕組みを整備しようじゃないか、こういうようなところで、それに着手したところであります。
 ただ、それはなかなか難しい部分もありますので、これから少し試行錯誤しながら、先生方の御意見も承りながらやっていかなければいけないんだろうというふうに思いますけれども、結果的には、そういうような評価を得て、創造力やそれから問題解決能力のようなものを身につけて、自分で決断して、ある意味で自分で責任を負う、こういうようなことと同時にやっていかなければいけない、そういう能力を備えていかなければいけないんだろうと思いまして、先生の御指摘に沿って、個人主導の職業能力の開発、それから属人的なといいますか、自分に属するようなキャリア形成の促進に向けて厚生労働省も努力していきたい、このように考えております。
小西分科員 時間になりました。
 今おっしゃっていただいたように、今この状態を放置しますと、教育力のある大企業がどんどん強くなって、即戦力の欲しい中小企業というのはますます人が集まらなくなる、そういうようなことにもなりかねません。ぜひともひとつそのあたり、これから踏み込んで施策を打っていただければと思います。
 どうもきょうはありがとうございました。質問を終わらせていただきます。
石井主査 これにて小西理君の質疑は終了いたしました。
 次に、高木義明君。
高木(義)分科員 民主党の高木義明でございます。
 本日は、坂口厚生労働大臣初め、特に被爆者行政に関心の深い副大臣にも、また政務官にもお越しをいただいております。日ごろより被爆者行政に対しまして大変な御尽力をいただいております皆さん方に、心から敬意を表したいと思います。
 貴重な機会でございますので、私は、今回、在外被爆者問題、また在韓被爆者の渡日治療、あるいは長崎県内における被爆者の当面の強い要望である案件についてお尋ねをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 まず、今、御承知のとおり、在外被爆者をめぐる裁判が、既に決着をした福岡高裁を含めて、大阪地裁、また三月十九日に判決予定の長崎地裁、広島地裁と先日の福岡高裁の判決を含めると四判決が、四裁判が当面の課題になっております。
 既に二月七日の福岡高裁判決、これは韓国の李康寧さん、これは国側の控訴を棄却いたしました。これは長崎地裁の判決を支持するという内容であります。福岡高裁判決におきましては、二月十七日に国側は、手当の支給は争わないが、国に支給義務があるとする解釈は誤り、こういうことで、最高裁へ上告をいたしております。
 こういう被爆者問題に対して少し振り返ってみますと、まず、平成十三年、二〇〇一年の六月に大阪地裁判決が出ました。広島で被爆をされた郭貴勲さんの件でございます。在外被爆者に対する問題が提起をされました。
 そしてその年の八月、厚生労働大臣は、私的諮問機関といたしまして在外被爆者に関する検討会を設置し、そして以降、議論を開始いたしております。
 それから平成十四年、昨年、二〇〇二年の十二月五日に大阪高裁判決、これは、被爆者はどこにいても被爆者、また被爆者援護法の規定上、日本に居住または滞在することが適用の要件とはなってはいない、こういうことで、同法が人道的目的の立法であることを照らせば、支給を打ち切った、これは健康管理手当でありますが、支給を打ち切った国の解釈は誤り、こういう判決がございました。
 それを受けて、十二月の十八日、坂口厚生労働大臣は上告を断念する、こういう経過がございました。この対応については私は高く評価をいたしておるところであります。
 したがって、この問題は今後に課題も残されておりますので、まず初めに、在外被爆者の現状、実態について、その認識をお尋ねしておきたいと思います。
木村副大臣 高木先生は長崎で、まさに原爆の被害に遭った県で、被爆者の方々初め、原爆問題に大変真摯に取り組んでおられますことにまず敬意を表する次第でございます。
 在外被爆者の現状いかんということでございますけれども、広島、長崎で被爆をされましたが、日本の国内に居住も現在もしていないいわゆる在外被爆者の方々は、主に韓国、北朝鮮、北米、南米、合計約五千人おいでになるということで今見込みをさせていただいておるようなところでございます。
高木(義)分科員 この五千人に上る在外被爆者に対する対策は極めて重要になってくると私は思います。したがいまして、先ほど私が触れました直近の裁判、この結果についてどのように認識をされておるのか、このことについてお尋ねをしておきたいと思います。
坂口国務大臣 大阪高裁そして福岡高裁と判決が出まして、共通する部分もございますし、若干違う部分もあったというふうに思っておりますが、先ほどお話しいただきましたように、被爆者はどこにいても被爆者という考え方のもとに論理構成がされているというふうに思っております。現在日本にございます原爆に関します法律を中心にいたしまして、そしてやはりその法律の解釈に乗っかって、冷静に判決を下したものというふうに理解をいたしております。
 したがって、我々といたしましても、現在存在いたしますこの法律をもとにして、それを正しく解釈し、そして在外被爆者に対しまして対応をしていかなければいけないというふうに思っているところでございます。
 そうしたことで、これからもまだ詰めなければならない点は幾つかあるというふうに思っておりますが、この二年間を振り返ってみますと、しかしかなり前進はしてきたというふうに思っている次第でございます。
高木(義)分科員 これまで国は、法律の規定なしでやってきておりますね。すなわち、一九七四年の公衆衛生局長通達を根拠にしております。それは、国外に居住を移した被爆者には法律上の援護の手は及ばない、こういうことから、ずっとこういう姿勢で来たわけです。ところが、さきの大阪高裁判決を受けまして、国は上告を断念するという対応になったわけでありまして、私は、日本国内の在住者と同様の施策について在外被爆者にも講ずるべきだ、このように思っております。
 そういう意味で、在外被爆者にも、一九九四年、平成六年の十二月に国会で新たに成立をいたしました被爆者援護法、これを適用すべきではないか、このように私は思いますけれども、この点について御所見をいただきたい。
木村副大臣 現行の被爆者援護法につきましては、日本において手帳の取得及び手当の支給の認定を受けた後に出国した場合のみ、手当を受給できることとなるものであります。すべての在外被爆者に適用があるわけではございません。この点につきましては、大阪高裁判決及び福岡高裁判決におきましても認められているところでございます。
 なお、在外被爆者の方々に対しましては、本年度から手帳取得や渡日治療のための支援等に関する事業を行っているところでありまして、今後ともこの事業の着実な推進を図ってまいりたい、このように思っているところでございます。
高木(義)分科員 在外被爆者の今後の援護策についても今お触れになりましたけれども、ちょっと確認をさせていただきますが、今年度から、いわゆる被爆者健康手帳の発給あるいは手当の支給の認定を受けた被爆者には、出国しても手当の支給を継続するということでいいのかどうか、その点、どうでしょうか。
木村副大臣 そのとおりであります。
高木(義)分科員 次に、過去に支給認定を受けたが、出国したために資格を失った人には、過去五年以内に限って未支給分を支給する、これもそのとおりでいいでしょうか。
木村副大臣 そのとおりでございます。
高木(義)分科員 今後の課題としては、先ほど判決が出ておりましたけれども、被爆者というのは既に高齢化をいたしております。健康に不安がある被爆者にとっては、日本に来て手当を受けられないままの人が多い。来ること自体、大変御苦労が要ること。また、この支給は症状によって三年から五年の上限がありますが、期限後は更新手続が必要です。しかし、この更新手続のためにまた再び日本に来なければならない。
 こういう状況の中で、平均年齢が既に七十歳を超えた被爆者には大変酷ではないか、こういう指摘がございますが、この点についてどのようにお考えになっておられるのか。
坂口国務大臣 御指摘の点につきましては、これは法律的に忠実に読みますと、この手当の申請時には日本国内に居住または在住することが前提となり、そしてまた、もう一度それを再申請いたしますときには日本に来ていただかなきゃならないということになっているわけでございます。
 ただ、先ほどもお話ございますように、この健康管理手当の対象になります病気にはさまざまなものがございまして、生涯この病気は治らないというものもあるわけですね。それから、中には、五年ぐらいなところでは一遍見直しをしなきゃならないという病気もあるわけです。
 だから、見直さなければならないようなものについては私は見直しをお願いしなきゃならないと思うんですが、ずっともうこの病気は変わらないというような病気につきましては、五年とか三年とかという期限をつけるのもいかがなものか、この辺のところを少し検討してはどうかということを今言っているところでございます。
 ですから、私の言うのが適当かどうかわかりませんけれども、例えば大変動脈硬化が進んでいろいろの症状が出てきているというような人、それも、もとへ戻るということはないわけでありますから、そう再三再申請をしてもらわなければならないものではないというふうに私は思っておりまして、その辺のところを一遍検討してほしいということを今言っているところでございます。
高木(義)分科員 そこで、時間が限られておりますから、この件についてはまとめに入りますけれども、さかのぼって、私は、今の被爆者援護法が制定をされた平成六年の十一月、この国会議事録を持っております。当時の政治情勢は、かなり激しいものがございました。私どもが所属をいたしておりました当時の改革というところでは、被爆者援護法に対して、対案を出しております。この対案の主なる基盤は、やはり放射線障害によって、特殊性に着目をする、そういう意味で、国家補償的な見地に立って援護法をつくろう、こういうことで、当時大臣もおられましたけれども、私たちはそういうことを訴えてきた思いがございます。
 したがって、裁判の判決があれば国の制度が、仕組みが変わっていくということではなくて、むしろ制度に不備があれば法改正なりなんなりして、きちっとしたこの流れを受けとめて人道的な見地から改善を加えていく。被爆者援護法を改正することも一つの選択肢でありましょう。そういう意味で、私は、新たな専門家会議みたいなものをつくって、このことについて徹底的に議論をする、そのことが必要ではないかと思うんです。この点について、大臣の御所見を賜っておきたい。
坂口国務大臣 現在のこの法律も、かなり国会の中で激しい議論が繰り返されまして、そして決定したものであるというふうに私も思っております。当時は私も立場を異にいたしておりまして、いろいろの質問をしたことを記憶いたしております。
 しかし、こうして国会の御意見、御同意を得てできたこの法律でございますから、これに準じて我々は忠実にやっていかなければならないというふうに思っておりますが、それは、時代の変遷というものもございましょう。そうしたこともございますから、今後、皆さん方のそれぞれ国会におきますお考えといったものも十分に参考にさせていただきながら進んでいかなければならないというふうに思っております。
 ただ、現在の存在しますこの法律を忠実に私たちは今実行する以外にないわけでございまして、現在の存在します法律に基づいて、我々は今諸施策を講じていく。その中で、しかしその時々の流れというものを十分に酌み取って、そして可能なものは何かということを考えていくというのが、今我々に与えられた任務ではないかというふうに思っております。
高木(義)分科員 ぜひ抜本的な検討をしていただきたいと強く要望しておきます。
 次に、在韓被爆者の渡日治療に対してお伺いします。
 長崎県にある医療法人共生会長崎友愛病院、茅野丈二院長さんでありますが、この病院は、一九九三年から十年間にわたって在韓被爆者二十六名の渡日治療を受け入れておりまして、延べ五十二回の入院治療を行っております。この実績が評価されまして、昨年六月に韓日平和交流功労賞を授与されております。
 今回、昨年の十一月から十二月にかけてでありますけれども、韓国原爆被害者協会釜山支部から招きがあって、ひとつこの十年の節目に立って追跡調査をしたい、そういうことで訪韓をいたしております。
 その目標は三つありまして、病院で渡日治療を受けた在韓被爆者の方々が現在どのような経過をたどっているのか、これを調査する。二つ目には、在韓被爆者の家庭や被爆者指定病院を訪問し、そのことを通して、韓国人被爆者の生活状態や医療の現実を知る。三つ目には、交流会を通して、在韓被爆者が真に求めていることは何なのか、これをさらに理解して、今後の在韓被爆者問題に取り組んでいく参考にしたい、こういうことで行っております。
 時を同じくして、先ほど私が触れました郭貴勲さん、平成十四年十二月十八日の大阪高裁判決が出まして、被爆者はどこにいても被爆者だ、こういう司法の判断が下って、坂口厚生大臣がそれを認めたという形で今の対応がなっておるのであります。
 そういう中から、当面大事なことは、今後、韓国の被爆者もそうでありますけれども、在外の被爆者が日本に手帳の申請あるいは交付を受けに来る。もちろん検査、入院ということにもなるけれども、かなりふえてくるんではなかろうか。しかし、我が国の受け入れ体制が本当に十分なのか。もちろん自治体の協力とか協力病院の対応とかありますし、言語の障害もありますし、生活習慣の違いもある。そういう中で、本当にこういう方々を受け入れていけるのだろうか、そういう危惧がありますけれども、その点について、私は万全を期すべきだと思うんですが、お考えをお聞かせいただきたい。
木村副大臣 先生御指摘のように、これからは渡日治療の希望者がますます増加されると考えられるわけでございます。そのために、平成十五年度予算案におきまして、渡日治療を含めた在外被爆者渡日支援等事業を対前年比五割増しの七・五億円に増額をしたところでございまして、今後、本事業の実施主体である自治体とも十分に協議しながら、在外被爆者の受け入れ体制の整備に努めてまいりたい、このように思っております。
高木(義)分科員 検査があって入院をするということになるんですけれども、治療は負担をしていただきますけれども、検査は自己負担、こういうふうになっておるということを聞きます。少なくとも、検査、入院、初回については検査も含めて、また、検査によってはいろいろなまた病気も発見されることもあり得ますので、この点について、私は国が責任を持ってやってやるという体制をお願いしたい。
 それからもう一つは、自治体においては、土日の閉庁等もありまして、こっちに来られてもなかなかその受け付けの対応ができないという行政窓口の問題もあります。こういったことについては、ぜひ国が指導されて、また国が支援をする形で問題を解決していくべきではないか。
 また、先ほども言いましたけれども、追加検査によって入院期間がかなり延びることもあり得ます。したがって、そういうときにはひとつ弾力的な運用を図っていただくことが妥当ではないかと思いますので、この点について御対応をお聞かせいただきたいと思います。
高原政府参考人 検査でございますが、言うまでもありませんが、この方が手帳の所持をなさっている場合、これは最初から検査、全部給付となるわけでございます。手帳が未所持の間に、特に格別の自覚症状もなく申請前に御入院なされますと、委員御指摘のとおりのような事情は生ずるわけでございまして、特に私ども、土曜日に訪日されまして、その後入院された、そうすると申請日が月曜になる、土日分が空中に浮くというふうなお話も伺っております。ここら辺につきましては、地方庁に土日に開庁しろと言うことはなかなか難しゅうございますが、訪日の日程を事前に確実に調整するなど、適宜適切な指示を該当県市とやってまいりたいというふうに考えております。
高木(義)分科員 代理申請も含めて、また入院期間の件についても、大臣、今の状況でございますので、被爆者はどこにいても被爆者だ、こういう判決を受けて上告を断念された経緯からすれば、ぜひひとつ国の御対応をいただきたいと思いますが、いかがでしょう、一言。
坂口国務大臣 被爆者はどこにいても被爆者というのはそのとおりだというふうに思っておりますが、しかし、被爆者であることの確認はきちっとさせていただかなければならないというふうに思っている次第でございます。そのことに対しましては、これは御協力をいただかなければならないと思っております。
高木(義)分科員 最後の質問にいたしますが、いわゆる長崎の被爆地域の是正の問題につきまして、健康診断特例区域、これは昨年の四月から、坂口大臣の御決断をいただきまして大きく前進をし、地元の皆さん方も高く評価をいたしております。
 これは、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響が認められる、いわゆる心的外傷後ストレス障害、PTSDに着目をした仕組みでございまして、健康診断は年一回、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響が認められた場合は、関連する疾病については被爆者援護法に準じた医療費の自己負担分を支給する、こういうものでございます。
 ただ、この制度ができましたけれども、実は一定の居住条件がついておりまして、今現在そこに居住していないとこのような措置は受けられないという実態がございます。
 先ほどから私は何回も言っておりますが、当時、被爆後の惨状を目の当たりにして非常に精神的にショックを受けた、そういうことがいろいろな疾病につながっていく、こういうことでありますので、今現実にそこにおろうがおるまいが、こういった制度の中に組み込んでいかれて当然である、このように私は思っております。
 これについては、制度が施行されまして一年が経過しました。いろいろ御検討の向きもございましたけれども、ぜひ改めてこの点について御検討いただき、今申し上げましたとおりになるようにしていただきたいものだと私は思っておりますけれども、大臣、御所見をいただきたいと思います。
渡辺(具)大臣政務官 被爆体験者のいわゆる心の病に対する支援事業でございますが、ただいま評価いただきましたように、第二種健康診断特例地域、つまり長崎の爆心地から半径十二キロの区域内での被爆体験をした者、そして現在もそこの区域に居住する者を対象にいたしております。
 この対象者をこのように限定いたしましたのは、専門家に依頼して行いました研究結果に基づきますと、被爆体験者は、爆心地から半径十二キロの区域内に現在も居住することによって、今なお不安が続いて健康影響があると考えられることによるわけでございます。
 そこで、今はその外に住んでいる者についても対象にしたらどうかということでございますが、この事業におきまして十二キロの範囲内に住んでいる者を対象にいたしましたのは、今もそういう地域に居住していることによって、今なお心的外傷となった出来事を再体験させられる外的要因、例えば同じ地域に住んでいるので同じ風景を見るとか、そういうことが多いと考えられることから、十二キロ以内に居住する者の精神的影響を考慮したものでございます。
 したがって、そのような外的要因に触れる機会の少ない、今の十二キロの外に住んでおられる方については、長崎被爆体験者に対する支援事業の対象にはならないのではないかというふうに考えております。
高木(義)分科員 最後になりましたけれども、私は、今のお答えは合理性はないと思っております。したがって、当時の被爆の現場におられた、そういうときの精神的ダメージ、ストレス、これによって影響は出てくるということですから、例えば、きのう、その前に移転をした人がもうそれでだめか。そういう話は通らないのではないか。したがって、ぜひこの点について御再考いただきますようによろしくお願いを申し上げまして、もう時間でございますので、これで質問を終わります。ありがとうございました。
石井主査 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。
 次に、中川智子君。
中川(智)分科員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 今、被爆者問題のお話が出ましたので、大臣にちょっと一つだけ、思い出してしまいまして、済みません。
 大臣、御答弁の中で、手帳の申請のときに、被爆者であるかどうかということの確認を日本に来て一からすると時間もかかるので、向こうに審査官というか係官を送って、そして向こうでいろいろな手続をして、日本に来られたときは本当にごく数日で手帳がとれるようにしなければいけないということで何度も御答弁がございましたけれども、広島、長崎県市に確認しましたら、そのつもりはない、県市の方は、郵便でやりとりをしていきたい、そして、現地に係官を派遣する余裕も、そういうことをする考えも今のところはないということでした。
 これは高原局長に伺いたいんですが、県市がどのように考えているか。係官をしっかり送りなさいよ、それは大臣答弁ではっきりされていて、早急にするべきじゃないかということで御指導をしっかりしていただきたいんですが、県市、きのう伺ったところでそうだったんですが、いかがでしょう。
高原政府参考人 御指摘の事業につきましては、もう既に、数は必ずしも、委員御指摘のとおり、現地の、特に韓国等の被爆者の団体が、いわゆる五億円事業、これは五億円事業の対象でございますが、今度七・五億円でお願いしておりますが、その対象にしておりまして、やっていただくということで、四県市と調整済みでございます。
 ただ、出だしのときには、在外の被爆者団体によっては、必ずしもこの事業自身に好感を持っていなかったということも聞いております。そういうふうな点から、当面、窓口になっていただくのは現地の被爆者団体等なんだろうと思いますが、そういうところから、県市とのコミュニケーションが必ずしも十分いっていないんじゃないか。私どもは、その補助事業の対象として四県市ともしっかり調整してございますので、予算も増額をお願いしていることでもございますし、四県市と調整いたしまして、期待にこたえるような事業の展開というふうなことを調整してまいりたいと考えております。
中川(智)分科員 ぜひとも厚労省、いま一度現地にどなたか飛んでいただきたい。局長もお忙しいでしょうが、予算委員会とかこういう分科会が済んだら、行ってくださったらやはり全然違うと思うし、そこでいろいろ協力もお願いできますので、いらしてください。どうでしょう、大臣、すぐに現地の方に厚労省からどなたか、どなたも行っていないですよ、韓国に。一度いらしたらいかがでしょう。大臣は忙しいでしょう。どなたか担当の方で、厚労省としていらっしゃらないと、なかなか前に進まないと思いますが。
坂口国務大臣 座って言っておってはいけませんので、正式に御答弁申し上げますけれども、私は、前回、もう一年になりますか一年半になりますか前にお邪魔させていただきまして、そして、向こうの皆さんともお話をしてまいりました。
 現在のような状況にまだなっていない前のことでございますから、こういう新しい事態になりましたので、これからさまざまなことをやらなければならないわけでございますので、そこは連絡を密にしたいというふうに思っておりますし、担当する者は、それが局長なのかだれなのかよくわかりませんけれども、やはり連携を密にするために行かなければならないときには行ってもらいたい、こういうふうに思っております。
中川(智)分科員 ぜひともよろしくお願いいたします。
 それでは、質問の第一点目になりますが、MMRの予防接種被害についての御質問をしたいと思います。
 健康局長にお伺いいたしますけれども、今、大阪地裁で、三名の方のMMRワクチン被害者が裁判を起こしておりまして、三月の十三日が判決日になっております。
 そこで、一九九二年当時ですが、当時の厚生省は、MMRの被害が続発する中で、統一株の接種見合わせということを決定いたしました。一九九二年の九月で統一株の使用期限が切れたわけですけれども、それ以降、期限切れワクチンが多量に使用されていた事実が最近明らかになりました。これは朝日新聞の記事ですが、同僚議員の阿部知子さんの質問主意書の中で、新しい事実がはっきりいたしました。そして、当時の公衆衛生審議会の議事録や資料などから計算しますと、実に四百六十四人の方が期限切れのものを接種されていたことになります。
 マスコミなどでの報道では、新たに約二千人が期限切れのMMRのワクチンを接種されていたということです。厚労省は全国の自治体に調査を要請しているようですけれども、まず、今の時点で厚生労働省が把握している、期限切れ統一株を接種した人の数を教えてください。そして同時に、このような重大な事実に対してどのようにお考えかを教えてください。
高原政府参考人 委員御指摘のとおり、平成三年十月に統一株から自社株に切りかえまして、その一年後に、統一株を用いたものについては有効期限が切れていたと。その期間に、接種報告が統一株として上がっているものが約二千ほど、私ども調査の結果、判明しております。
 しかしながら、これはその市町村、現場まで係官を派遣しまして、詳細に今聞き取り調査を行っておりますが、中には、有効期間中の自社株と統一株の欄があるわけでございますが、昔からこの統一株の欄に数字を上げるんだねということで、錯誤によって、自社株を使っているにもかかわらず、統一株というふうに報告した事例もございます。
 したがいまして、私ども、できるだけ詳しく精査をしておりますが、委員御指摘のように、期限切れのMMRワクチンが使用されていないということは言い得ないわけでございまして、私どもは、その点につきまして、さらに精査をさせていただきたいと考えております。
 専門家の方に、有効期限が切れたワクチン、これは平成五年の四月にワクチンの一時見合わせというのを行っております。したがって、最大限切れていて六カ月かなと思うんですが、そういうふうな六カ月切れたものについて、例えば力価、いわゆるワクチンとしての有効性が著しく減ることは考えられるのか、ないしは副作用が出るということは考えられるのか、これは十分聞いたわけでございますが、そういうことはないだろうということであります。
 しかし、委員御指摘のように、これは国民の予防接種への信頼にかかわる基本的に重大な問題であるというふうに認識しておりますので、事実関係の調査をさらに深めまして、また御報告ができると。それから、当然のことでございますが、正しい使用法につきまして、これはMMRワクチンに限りませんが、有効期限等の問題につきまして、現場を指導してまいりたいと考えております。
中川(智)分科員 今の局長のお話の、その全体ににじみ出るのは、やはり申しわけなかったというような思いでのしっかりした報告をして、そして公表していただいて、それに対する責任というものもあわせてまたお伺いしたいと思いますが、報告がいつごろという期限に関してはいかがでしょうか。早急にということで、大体の目安を教えてくださいますか。
高原政府参考人 これは、追跡可能な都道府県、つまり各市町村までわかっている、この地でこういうふうな人が受けたということがわかっているところと、それから、半分くらいの県においては、どこの市町村でやったかもよくわからないというところもございます。したがいまして、そこら辺のところを、どういう形でやれば実態がわかるのか、それでその後の問題点も明らかになるのかということで、いつまでにはわかるだろうということはなかなか申し上げられませんが、節目節目には御報告申し上げてまいりたいと考えております。
中川(智)分科員 大臣、このMMRワクチン、本当に重篤な被害を生んでおります。三月十三日に判決がございますが、判決が出た暁には、いつも控訴しないで、上告しないでというお願いばかりですが、ぜひとも賢明な御判断、御英断をちょうだいしたいと思います。
 続きまして、年金の問題で質問させていただきますが、坂口厚労大臣の前の津島大臣のときに、二年前になります。平成十二年十一月の十七日に、私は主婦の空白問題、三号被保険者の空白問題で質問したんですが、そのとき、当時の津島大臣は、実態を調べますとはっきり答弁されたんですね。ですから、いつ実態が手元に届くのか、どのような形できっちり御報告いただけるのかと思って、ずっと長い間待っておりました。
 そして、この質問通告をいたしましたときに、報告いたしますといって来たのが、このたった一枚のペーパーでした。実態調査とはほど遠いものでございまして、このたった一枚、国民年金第三号被保険者期間について、未届けだったために空白がある人の人数、平成十三年七月、十八万八千人、たったこれだけです。どのような原因によるものか、それがどのように対処されたのか、そのようなことは一切なくて、ただこれだけぽんと来まして、ああ、実態調査というのはこんなもので約二年費やされたのかと愕然といたしました。
 そこで質問ですけれども、未届けだったために空白期間のある者、平成十三年七月現在で十八万八千人ですね。これのせめて原因別の件数を書いた、実態調査という名にふさわしい報告をいただきたいのですが、御答弁をお願いします。
磯部政府参考人 若干、お話を伺っていまして、やや行き違いがあったやにも思います。
 と申しますのは、一昨年、十三年の四月に、先生からの御質問に私の前任の運営部長が、その当時の調査結果の概略を御報告しているというふうに認識をしておりました。
 それから、ただいまの御質問についてでございますが、国民年金の三号被保険者となるべき方であって、その届け出を行っていないという方々につきましては、その届け出がないわけでございますので、その数を把握することができないために、三号被保険者期間について、未届けのために空白期間がある者全体の人数を把握することは困難でございます。
 しかしながら、これまでに一度でも三号被保険者としての届け出を行った方のうち、三号被保険者期間に係る未納の期間がある方々の人数として十三年七月に調査をいたしまして、約十八万八千人という把握をしたところでございます。
 しかしながら、残念ながら、このような未納期間を有する理由別の人数というのはとれませんで、ただ、その理由といたしまして考えられますのは、一つには、本人が短期間就労し、第二号被保険者となっていたことを認識していなかった。また、二つには、第二号被保険者である配偶者が退職し、短期間のうちに再就職したということから、改めて第三号被保険者となったときの届け出が必要と考えていなかったなどの理由によるものと考えております。
中川(智)分科員 私は、あのときのきっかけは、生命保険会社などで、主婦、三号の方が就職して、その生命保険会社が本人に知らせもせずに厚生年金に入ってしまって、自動的に三号の資格を失い、でも本人は会社から知らされてもいない。それで、会社をやめた後、もう一度三号の届け出をしなければいけなかったのに、本当に本人の過失ではないのに、そこで全く三号たる資格も失い、厚生年金からも排除されて、将来的に無年金になる。ですから、生命保険会社に対して指導を徹底してくださいと言ったことも、具体的に報告も受けておりません。生命保険会社への指導がどうなったのか、その会社に対して具体的に注意をしたとか、そのような報告も聞いていません。
 そして、十八万八千人というのは、これは二年間にさかのぼって、そして資格を復活した人の数でありまして、一説には、三号で、未納とかさまざまな理由で資格を失った人たちは百万人にも上るということがあるわけですね。それはさまざまな研究をされている方々の情報で、百万人にも上る。でも、そういう実態把握もしていない。そして、救済としては、二年間にさかのぼって、二度にわたってされました。
 でも、お伺いしたいのは、今の生命保険会社の問題も一つ伺いたい。それと同時に、空白期間ができたために将来の年金支給額が減額される人がこれほどの人数にも上っているし、この埋める措置としてやったのは、たった二年間だけさかのぼって救済措置がされた。これの根拠は税金のいわゆる徴収措置でしょうか、税金の措置に準じて、二年間と限定されました。
 もともと三号というのはみずからは保険料を払っていない。免除という言葉が適切かどうかわかりませんが、三号被保険者は直接納入していないわけですから、三号と認定されたら、その資格を有すれば、全期間復活させても不公平にはならないと思うのですね。ですから、二年間と区切るという根拠は、これはやはりおかしいと思う。それに対して答弁を求めたいと思います。
 ですから、私が主張するのは、証明されれば、何年間であっても空白に対して認めるべきだと思います。特例期間だけの救済ではなく、いつでも救済すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
磯部政府参考人 第一点目の生命保険の関係につきましては、これも私の理解では、十三年当時に、私の前任部長から先生の御質問に対してお答えしているところだと思っておりますが、我が方に残っております記録といたしましては、生命保険会社の外務員につきましては、二週間程度の研修を受けた後、外務員の試験を受け、この試験に合格した者について、その翌月から外務員として採用し、給与を払っているという実態で、そのため、その翌月から社会保険を適用するということになっているというふうに承知しております。この場合において、健康保険と厚生年金の適用が同一であるということから両方を適用しているというような実態を踏まえ、その手続がとられているのではないかというような調査結果を御報告したのではないかと承知しております。
 それから、第二点目でございますが、時効の関係につきましては、一般の年金保険料、これにつきまして、年金法の規定に基づきまして二年の時効があるということから、二年間にさかのぼって対応をするという措置をとっているところでございます。
中川(智)分科員 私はそのような答弁をいただいたことは記憶しておりますけれども、そのときに、重ねてそのような、いわゆる悪質と申しますか、手帳を本人に渡さずに、そしてその人が三号の資格を失った、そのようなことをする生命保険会社に対してきっちりと注意喚起をして、そしてそれに対してその会社名を公表するような措置さえもとるべきだし、そのようなことが繰り返されてはならないということで、生命保険会社に対する聞き取りなどきっちりやるべしということで、答弁を不服として質問をしているはずですし、そのような答弁に対して全く、ああ、それで結構ですということは一度も言ったことはございません。生命保険会社に対する注意喚起、そして具体的にその生保会社に対する処罰なりなんなりということをするべきだということを主張してまいりました。それに対しては全くそのような対応をされていないということで、改めて、きょう、この場で言っているわけです。
 そして、二年間の問題ですけれども、今私が質問いたしましたのは、特例という期間だけではなく、証明されれば、いつでもそれを申請して、そして過去にさかのぼって何年間でも認めるべきではないかということに対しての御答弁はないようですが、いかがでしょうか。
磯部政府参考人 先生の御指摘につきましては、現行法の枠内ではなかなか難しいというのが我々の認識でございます。
中川(智)分科員 こうなりますとお互いに平行線ですので、また追って質問させていただきたいと思います。
 先ほど、私が百万人ぐらいというふうに申し上げましたら、えっとのけぞったような印象ですが、この実態把握というのはきっちりされていますでしょうか。
磯部政府参考人 私どもの方も、百万人というお話も伺ったものですから、ちょっと調べましたが、なかなか根拠がはっきりしないというのが現時点までの、きのうからきょうにかけての調査の結果でございます。
 十八万八千人はある程度しっかりした数字だと思っておりますが、御指摘のように、その周辺に届け出をされていない方がいるということは認識しております。
中川(智)分科員 それは将来、無年金状態になる、そして本人に非常に不都合なことが生まれる。そういう人をどう救っていくか。そのためには、調査をするというのがまず第一歩のはずです。きのうからきょうにかけての調査などといいましても、もともと何もやっていないわけですから、出るはずがないわけですね。
 この主婦の三号問題、いろいろな形で、今年金の議論の中で、本人にとって非常に気の毒な状態になるということがあらかじめわかっていながら調査も全くやっていないということは、これはゆゆしき状態だと私は思いますが、調査をするお考えはおありでしょうか。
 大臣、急に振ってしまって申しわけないんですが、年金問題、来年、年金の制度改革があります。いろいろな意味で、これほど不信を生んで、空洞化がのっぴきならない状況になっていて、そしてやはりきっちりとした調査をして実態を把握することが一つ一つ解決していくことになると思いますので、三号被保険者、全く調査もしていない状況ですし、調査するといろいろ大変なことになってくるので、大変なのかやる気がないのか、そのあたりを含めてですが、三号の空白問題に対して前向きに取り組むという御答弁をいただければ、今後非常に救われる方が多いと思います。大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 御指摘いただきましたように、来年は年金制度全体の見直しを行わなければならないわけでございます。その中で、根幹のところの年金制度をどういう形にするのであれ、三号被保険者の問題は避けて通れない問題でございまして、この問題は必ずその中に取り入れていかなければならないというふうに思っている次第でございます。全体の年金制度の中でどう位置づけるかということを見直していかなきゃいけないというふうに思っております。
 したがいまして、過去の問題につきましても整理をしなければなりません。国民の年金に対する信頼を取り戻すという前提のもとに、どこまでできるか、これは十分検討しなければなりませんけれども、そうした過去の問題も含めて検討させていただきたいと思います。
中川(智)分科員 ありがとうございます。ぜひとも実態の調査、それを足がかりにして、いい形での制度改革議論が行われるように期待しております。
 続きまして、年金の個人情報の開示の問題について伺いたいと思います。
 年金加入記録など本人の個人情報の交付状況についてやっと調査に乗り出していただきまして、昨日私の手元に参りました交付状況の集計を見ていますと、交付しているが取り扱いが適切ではない、またこの一枚ペーパーが手元に寄せられました。すべての社会保険事務所が交付している事務局とか、交付しているが取り扱いが適切でない事務局、一部または全部の社会保険事務所が交付していない事務局というのがございまして、この真ん中の交付しているが取り扱いが適切ではない事務局というのがありますが、こういうものに対してなぜ今まで放置していたのかということが第一点。そして、なぜこの記録に都道府県別にきっちりと書き込まれていないのか。これは書き込まれますよね。書き込んだのを下さいというのが質問です。お願いします。
磯部政府参考人 この出力帳票は、八種類ぐらい主なものについて調査したわけでございます。
 これは実は、その取り扱いにつきまして、部長通知などによりまして、地方事務局に対して、交付を前提とした扱いをするようにという通知を昭和五十五年に出しておりまして、その当時は、むしろ非常に個人情報の保護が前面に出ておりまして、相当限定的に、出さないようなところが多かったというようなことも踏まえてそうした通知を出してきたということでございます。
 したがいまして、非常に長期間にわたりまして、私どもとしては、その通知に従って現場の事務局で実際の交付が行われているだろうという認識でおりましたために、五十五年以来余りこうした調査をしてこなかったというのが実情でございます。
 それにつきまして先般来いろいろな御指摘も受けまして、私どもとしても、その状況を、通知どおり動いているかどうかというようなことで今回調査をさせていただいたところでございます。
 御指摘の実際の県の名前につきまして、そうした状況もございますので、できますれば御容赦いただければというふうに考えておるところでございます。
中川(智)分科員 個人情報とか、そのことと今私が都道府県をちゃんと書いてというのは、公表できない理由が全然納得できません。なぜ都道府県できっちりやっているところと適切でない事務局というふうに、こんなアバウトでは、そちら側がどのように具体的に指導をしていくかということも見えませんし、ここで質問させていただくのに、ぱっとこの一枚ペーパーで、具体的にどの辺がどうなっているのかということが質問する議員も全くわからないというのでは困りますので、ぜひとも出してください。
磯部政府参考人 形式は一枚でございますけれども、非常に中身の濃いものと思っておりますし、その理由につきまして、最初に御指摘がありました、交付しているが取り扱いが適切でないというのも、そこにちょっと事例を注で書かせていただいておりますが、例えば、特に希望があった場合に交付するという扱いをしている、あるいは被保険者記録の交付については、受給が近いという意味だろうと思うんですが、五十歳以上としているというような扱いを適切でないと表現しているところでございます。
中川(智)分科員 もう時間が参りましたが、大臣、年金制度が非常に複雑で、自分がどれぐらいの年金を受け取ることができるだろうか、自分は大体加入期間がどれぐらいでという、その情報を本人がしっかり、本当に親切に説明を受けて、そして安心をそこで初めて生むわけですね。
 ですから、その窓口対応が非常に不適切であるというところは、都道府県などは一県もそういうところを今放置していてはいけないわけで、個人情報にしっかりと配慮しながら、本人が知りたいときにはしっかりと見せて、年金に対する関心などを生んでいくというのが非常に大事だと思いますので、相談窓口などきっちり徹底させて、今の部長の御答弁にあったように、その都道府県に対して不利益になるというようなことで情報を私どもにも知らせないということは非常に遺憾でございますので、前向きにまた考えていただきたいと思います。
 また追って質問を、委員会は外れましたが、差しかえで大臣のお顔を時々見に、副大臣もそうですが、官僚の皆さんもそうですが、環境委員会から出張してまいりますので、今後引き続き頑張っていきます。よろしくお願いします。ありがとうございました。
石井主査 これにて中川智子君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時三十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
石井主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。武山百合子君。
武山分科員 どうも、連日、皆さん御苦労さまです。自由党の武山百合子です。
 早速質問に入りたいと思います。
 ここずっと医療制度改革ということで議論してまいりましたけれども、その中で、まず、医療改革の中の検討課題についてお聞きしたいと思います。
 さきの健康保険法改正では、制度改革について、おおむねの年限を目途として各問題について改革を行おうという趣旨だと思います。ところが、国民にとっては結局のところ負担増だけが先行して、直撃を受けているのは保険料を払う側、国民の側、それから診療を受ける側、両方とも国民の側である。
 それで、この各項目の課題について、幾つかのピンポイントで結構ですので、今の進捗状況についてお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 附則に書かれたものすべてのものが今進行しているわけではございませんが、いわゆる抜本改革の中で主なもの、すなわち、いわゆる五千に分立しております保険者の統合一元化の問題、それから、それに付随いたしまして高齢者医療の問題、それから診療報酬体系の基本の見直しの問題、それから、もう一つ挙げるとすれば、いわゆる国民の側から見て医療の質をどう上げるかという問題、これらの問題につきまして現在進めているところでございます。一応今年度内に結論を出したいということで、今鋭意進めているところでございます。
武山分科員 その中で、昨年の予算委員会の医療改革に関する集中審議の中で、我が党の佐藤公治議員の質問のやりとりなんですけれども、来年の四月までに結論を出さなければいけないものもあるし、中には来年の予算に組み入れなければならないものもあって、言ってみれば十四年の暮れまでに結論を出さなければならないものも多いと答弁されていたわけなんですけれども、その結論はどうなったかということをお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 まだ結論を見るに至っておりませんけれども、今鋭意進めておりますので、三月末までには結論が出せるというふうに思っておる次第でございます。
 若干その中の内容によりまして濃淡ございまして、質を上げる問題等の中にはほとんど結論の出たものもございますけれども、これから煮詰めなければならない問題も含まれている、そういうことでございます。
武山分科員 十四年の暮れまでと言いながら、また三月に結論を先延ばしした。国民は、やはり先送りじゃないかということを私は言わざるを得ませんので、それは先送りなのかと。十四年中ですけれども、現に十五年になりましたから。
 それで、改革を推進するという割には、厚生労働省予算案の主要事項でも、改革推進という言葉はまず見ることができない。現実にないというわけですね。その中に出てくる言葉は、せいぜい「安定的な医療保険制度の構築」と称して、医療費国庫負担を計上する項目があるのみですね、現実的には。
 まず、改革事業の結果は、平成十五年度予算案においてどこに計上されているのか。それから、「安定的な医療保険制度の構築」というのは、財政的問題の安定的発想だけでしかないのではないかと言わざるを得ないと思うんですね。ですから、どこに計上されているのか。それから、国庫負担を計上する項目があるのみである。「安定的な」というのは、財政的問題の安定だけじゃないか。先にいわゆる負担ありきで、負担増だけが現実に先行しているものですから、そこのところを、発想だけでしかないんじゃないかという質問の趣旨です。
坂口国務大臣 具体的な予算のことにつきましては局長の方からの答弁をお許しいただきたいと思いますが、この抜本改革を、先ほど挙げました三本ないし四本柱につきましては十四年度中ということでございますので、あと残されましたところ約一カ月というふうに思っております、この間に仕上げを行いたいというので、今進めているところでございます。したがいまして、三月中には結論を皆さん方にお示しすることができるというふうに思っている次第でございます。
 それから、そのことが予算にのらないではないかという御指摘がございますが、十四年度中に出します結論につきまして、それは十五年度の予算にはなかなか入らないわけでございますが、結論と、そして今後それを実施に移しますスケジュール、どういう段階でそれを進めていくかということにつきまして、今後のスケジュールとあわせてお示しをするということにさせていただきたいと考えているところでございます。
 あと、ことしの予算につきましては、局長の方から。済みません。
石井主査 武山君に申し上げます。
 答弁要求のない政府参考人ですが、答弁させてよろしゅうございますか。(武山分科員「はい、どうぞ」と呼ぶ)
 真野保険局長。
真野政府参考人 十五年度予算でございますが、十四年度に診療報酬の改定、引き下げを行いました。それから、十五年の四月から三割負担の導入、そういうものを見込みまして十五年度予算を編成いたしております。そういうもろもろの結果が国庫負担額という格好であらわれているということでございます。
武山分科員 せっかくわざわざ御発言いただいたのに、中身がはっきりしなくて、またグレーで、相変わらず省庁の発想だけで、そういう答えを私は聞いたんじゃないんです。もっと詳しく、財政的問題の安定的発想だけなんじゃないかというところに対して、こういうふうにして予算をつけたということを聞いたんですけれども、相変わらず同じ答弁でした。これ以上はいたしません。
 それからもう一つ、今度はお話ししておきました医療分野のミスについていろいろとお聞きしたいと思います。
 まず、医療提供において、患者と相談し、患者側が希望する医療を行うために、医師は適切に対処すべきだし、そうでない場合は指導ができる体制を整えるべきではないかと思うんです。医療分野では、説明不足からくるトラブルやいろいろな問題が出ていると思うんですね。
 それで、私、父が四十数年前の日赤の輸血でC型肝炎になりまして、最後は肝臓がんになりまして、当時厚生大臣をされた小沢辰男先生にお聞きして、いい病院がないかということで、千葉県柏市にあるがんセンターを紹介していただいて、そこで最終的には亡くなったんですけれども。そこへ行った場合は、説明責任も、本人にも、こういう状態でこういう投薬をされるとか、きちっと説明されていたんですね。
 国立のがんセンターでもありますし、大きな設備もありますし、人的な配置もある程度充実しているということでそのような指導体制ができるわけですけれども、国内にある医療機関というのは、ベッド数二十以下のところが、本当に私の地元でもほとんど八割、九割がそんなような状態なんです。そういうところで指導体制をつくるというのは非常に問題だ、なかなかできにくい環境にあると思うんです。
 これは、できないからといってやらない、そして医療ミスを、今後本当にミスの起こらないようにと言って謝って終わり、そういう体制ではいつになっても、人の命は地球よりも重いといいながら、現実的には対処していないということになるわけですけれども、本当に患者側が希望する医療を行うためには、やはり医師は適切に対処すべきだと思うんです。
 その中で、いわゆる説明責任の間で、どういう医療ができるかというのが、患者の側の理解もそこで深まるわけですし、医師にとっても、患者がいろいろと理解して、またそれ以上のことを望んだりした場合に指導ができる体制を整えるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。その辺の指導体制は、大きな病院はできておると思いますけれども、小さな病院はどのように考えていますでしょうか。
坂口国務大臣 小さな病院ということになりますと、これはいわゆる診療所と言われるものが中心でございますし、医師も、二人なり三人なりいるところもございますけれども、恐らくは一人だろうというふうに思います。したがいまして、お見えいただきます患者さんに対してすべてのことを一人で行わなければならない、そういう状況にございますので、そこをどのように対応してもらうかということになるだろうというふうに思います。
 入院のベッドをお持ちになっていない外来だけのところでございますと、外来は外来としてのそれなりの時間をとって説明をしていただくということもできるというふうには思いますけれども、しかし、患者さんの数が非常に多いということになりますと、それもなかなか不可能になってまいります。ちゃんと説明を何とかしなきゃならないというふうに思われるところは、あえて看護婦さんを一人、こういうことでということで、ある程度の説明を看護婦さんにさせるといったようなところも中にはございます。そして、それ以上のことについてはまた先生にお聞きくださいといったようなことをおやりになっているところもあるというふうに聞いております。
 いろいろ考えてはいただいているというふうに思いますが、はやるという言葉は適当かどうかわかりませんが、よく多くの患者さんがお見えになるところに限ってなかなか説明する時間がなくなるというのは、これはそういう物理的な時間の中でございますから、どうしてもそういうことが起こるということだろうというふうに思います。
 問題は、入院がありますところ、病院が中心でありますけれども、そこでの説明責任であるというふうに思っておりまして、入院の皆さん方に対する明確な説明というのは必要でございます。
 我々厚生労働省として今後考えていかなければならないことは、患者さんからいろいろお話を聞く、あるいはまた医師の方がそれに対して丁寧に説明をする、そのことに対する評価、そこが現在少し足りないのではないかと私個人は思っております。もう少しそこをきちっと評価をして、そして話を聞いたり指導をしたりということができれば、私は、医療従事者と患者側との間の信頼関係はもっと前進するのではないかというふうに思っております。それらのことも、先ほど申しました診療報酬体系の基本の見直しの中で考えたいというふうに思っておるところでございます。
武山分科員 国民健康保険は市町村が中心になっておりますので、市町村が中心にそういうことは連携して考えていくのかなと思うんですけれども、その連携、医師会になるのか、市町村がなるのか、国が関与するのか、県が関与するのか、その辺も、大病院はある程度はそういう体制が整っておるけれども、小さい病院は整っていない。
 それで、いわゆる小さい病院もいろいろまたあると思うんです、ベッド数にも応じて、それから公的なものから私的なものから。その辺の体制、それを今後どうしていくのか。それは大問題だと思うんですね。この辺の体制が整っていないことにやはり一番問題が集中しているんですよ。
 それは、本当に今国民が心配しているのは、老後、病気になったときどうするか。病気になったとき、いい病院に入りたい、いい医者に診てもらいたい、病院に入院しなきゃいけないときにいい環境で過ごしたい。みんな、それのみ本当に心配しているんですよ。
 ですから、医療の抜本改革ということで、国も本腰を入れてやろうということで腰を上げたんだと思うんですけれども、その辺の議論は、今お話で状態はわかりましたけれども、今後どういう方向に進めていこうとするのか。また審議会の議論を待ってとかといいましたら、一年とか二年とかということで進んでいかないと思うんですよ。
 今、社会が大きく変わろうとして、大転換だと思うんです。国内的にも世界的にも大転換、そういうときに、命は大事だと言われながら、日々そういう医療ミス、そういう状態で亡くなってしまう。法が整備されない、本当に議論されない、そういうことで命がなくなってしまう。
 ですから、そういう方向性がこの三月までに確実に出るのかどうか、提供体制と患者に対する説明責任、その辺の指導の体制、どのように考えておりますでしょうか。
坂口国務大臣 今お話になりましたところは、いわゆるカルテ開示の問題でございますとか、先ほどから出ております病状についての説明でありますとか、そうしたことをどうしていくかということに結局は尽きてくるというふうに思います。
 市町村や都道府県も、それはいわゆる市町村立の病院でありましたり、あるいはまた県立の病院でありましたりといったときには関与いたしますけれども、普通の私的な病院等につきましては、そうした地方自治体が多く関与するということもなかなか難しいんだろうというふうに思っております。
 したがいまして、これから大事なことは、そうした病院にできるだけ患者さんに対する情報開示をしていただく、広告規制を緩和いたしましたり今やっておりますが、多くのことを患者さんに開示をしていただく。すなわち、患者さんの側から見れば、その病院が本当に自分が受けたいという病院に適しているかどうかということがわかるようにするということが一番大事じゃないかというので、広告規制の緩和をかなり昨年来やっておりますし、今後もさらにやりたいというふうに思っております。
 そうしたところをごらんいただいて、そして、この病院は今までどういう病気に対して取り組み、そしてどんな成績を上げてきたのかということがわかるようになれば、他の病院と比較をし、自分はこの病院に行きたいということを決定していただけるのではないか。その辺のところが明確でないと、なかなか選択していただけないのではないかというふうに思っております。
 ややもいたしますと、病院の例えば親切さでありますとか、そうしたことによって左右されがちでございますが、それも大変患者さんにとりましては大事なことではあると思いますけれども、そこがどういう医療にどういう実績を上げているかということがわかることが一番大事ではないかと思っておりまして、その辺のところが明らかになるような方策を取り入れていきたいというふうに思っているところでございます。
武山分科員 その方策なんですけれども、もうちょっと詳しく、どういうふうに整理されていくのかというところももう一つお聞きしたいと思います。
 それから、医療の苦情、相談がほとんどですけれども、いろいろお話聞いておりますと、過剰診療、過剰投薬、数限りなく、本当に多いわけなんですね。不正診療や診療に対する疑問、苦情、こういうものが適切に指導や対処ができる体制がやはり整っていないと思うんです。
 大病院の場合は、きちっとお話しすれば、私自身が柏のがんセンターできちっとお話も聞きましたし、こちらも質問しましたし、本当にいろいろ体制が整っておりましたけれども、そういう体制は、ほとんどのところがこれからというところだと思うんです。そういうところが一番国民が心配している部分なんですけれども、例えば、本当に数限りなく、大小さまざまな問題があるわけですけれども、それを一つの窓口をつくったり体制を整えたりしていくのが改革じゃないかと思いますけれども、そういう改革の方向性もまず聞きたいと思います。
 それから、今私がお話ししました医療サービスに対する苦情や相談体制、こういうのが、大きな病院はある程度は整備されておりますけれども、余り整備されていないところが多いんじゃないかと思うんです。
 まず、半ば強制的にでも改善指導できる体制が整備されているのかどうか。それから、整備されているのであれば、整備されたとして、実質的に機能しているのかどうか、そこをもう少しお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話しになりました中身は、一つは医療の安全についてのお話だと思います。いわゆるミスをどうチェックするかというお話。それからもう一つは、苦情のお話。これはちょっと内容が違うと思うんですね、その二つは。
 したがいまして、病院等に対します苦情というのはさまざまだろうというふうに思います。長く待たされたというものから、あるいはまた対応が悪かったというものまで、苦情というのはさまざまだろうと思うんですね。率直に言って、個々の病院に行ったときのその苦情というものを全部聞いて、それを改善していくというのは、一般の私的な病院の場合にはなかなか難しいというふうに言わざるを得ません。
 ただ、国が関与しております国立病院でありますとか、あるいは地方自治体が関与しております病院等につきましては、それなりに改善しなきゃならないことはあるわけでありますので、御指摘をいただいたところは改善をしていく。たくさんそういうことを言っていただく人がございますし、それから、場所におきましても、そういう苦情受付の箱が置いてありましたり、そういうところもあるわけでございますから、それは積極的にそういうふうにしてやっていく以外にない。
 問題は、冷やり、はっとから本格的なミスまで、医療ミスに対してどう対応していくかということだろうというふうに思っています。
 一昨年から研究会をつくりまして、そして、医療ミスにつきましては、どう改善していったらいいかということを今我々も懸命にやっているところでございます。
 医療ミスが非常に発生するようになりました原因をたどっていきますと、だんだんといわゆるチーム医療というものが進んでまいりまして、一人の人がするんじゃない、多くの人がそれぞれの部分を受け持って、何人かの人で一人の人の治療に携わっていくという形になりましたので、その皆さん方が連携をよくしていかなければならないわけであります。そういったときに、皆の連携がうまくいくためにどうするか。連携ミスのために起こる場合がございますから、それをどうするかという問題。
 それから、薬でありますとか、あるいはまた医療機器のようなもので非常に紛らわしいものがある。例えば、薬で、同じ形、同じ色で、そして名前も似ているというようなものも中にはあるわけでありまして、そうしたものにつきましては、製薬メーカーに言いまして、名前を変えていただくとか、新しい医薬品をつくっていただくときには、そうした過去の医薬品についてのものもよく注意をしながら名前をつける、あるいはまた、形を考えていただくというようなこともやっていかなければならないといったようなことまで今手を伸ばしているところでございます。
 それから、病院でそれぞれ起こりましたミス、それが表面に出てこなければいけないわけでありまして、それをどのようにして表に出していただくかということでございます。
 各病院におきましては、中で医療ミスに対する検討会議をそれぞれつくっていただくことにしまして、そして、それは冷やっとした問題から、はっとした問題から、起こったものはすべてそこに上げていただいて、そこで検討していただいて、そして将来に備えていただくというふうにしよう。
 それ以上、人身にかかわるようなことが起こったりとか、そういう大きなミス、あるいは裁判ざたになったような場合にどうするかといったような問題を今議論していただいているところでございますが、それらのことは、より明確になって、そして、将来そういうことが二度と繰り返されないようにフィードバックしていかなければならないというふうに思っておりまして、今その最終の詰めに入っているところでございます。
武山分科員 そうしますと、三月には最終的には方向性が出るというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
坂口国務大臣 この問題も、医療ミスの問題も、十四年度末までに結論を出すようにいたしております。
 その出ました結論に従って、それを全国的にこれからどう展開をしていくかということになるだろう、考え方はまとめたいというふうに思っております。
武山分科員 その中で、もう一つとらえておきたいことは、身内の不正といったことに対する内部告発に対する保護のあり方、身内の不正に対して、どうしても守りの医療の体制だったと思うんですね、今までは。ですから、内部告発した方に対する保護のあり方もこの視点の中に入っているかどうか、そこもお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 それは医療だけの問題ではございませんで、社会全般に通じる問題でございますから、そうした問題も現在議論されておりますけれども、医療ミスの問題につきましてはそこまでの議論はされておりません。
 ただ、医療ミスが起こりましたときに、それがその病院の中だけにとどまらないようにどうするか、それを県なら県のレベルまでどう出していただくかということが大事でありまして、厳しくすればいいというわけでもないわけでありまして、どうすればそれを表面に出していただくことになるかといったことを中心にして、今最終の議論をしているところでございます。
武山分科員 それでは、あと一カ月足らずですけれども、その方向性を期待いたしまして、抜本的な方向性が出ることを期待いたしまして、終わります。
石井主査 これにて武山百合子君の質疑は終了いたしました。
 次に、福島豊君。
福島分科員 大臣、御苦労さまでございます。本日は政府参考人からお答えしていただくことになっておりますので。
 私は、きょうはグルタルアルデヒドの問題を取り上げさせていただきたいと思います。
 このグルタルアルデヒドというのは、グルタラールアルデヒド、化学物質としてはそのように呼ぶのでしょう、消化器内視鏡学会が内視鏡の消毒法のガイドラインに記載している唯一の高度作用の消毒剤でございます。最近使っているところが多いと思います。ステリハイドまたはグルタラールといった商品名で販売されております。
 先日、大阪市内に住むある婦人の方からお手紙をちょうだいいたしました。それは、看護師さんの方で、大腸ファイバー、大腸の内視鏡ですが、その消毒の作業に携わっていたところ、口内炎そしてまた歯茎の潰瘍といったような症状から始まり、そしてまた胸の苦しさであるとか息苦しさであるとか、そういう症状まで起こってくるようになった。そして、その後労災の申請に至るわけでございますけれども、その職場を離れてこのグルタルアルデヒドに接触しなくなっても、さまざまな化学物質に対しての過敏な症状を呈するようになり、看護師として仕事ができなくなってしまったという切実な訴えでございました。
 そのお手紙がきっかけで、このグルタルアルデヒドでどのようなことが今起こっているのかということについて、私も調べてみました。決してこの方の事例だけではありませんで、北海道新聞の二〇〇〇年の九月二十二日の記事では、市立旭川病院、これは同じくこのグルタルアルデヒドで鼻やのどに痛みが起こったということで労災の申請をし、また認定されたというような報道もありました。そしてまた、実際に使っておられる方の研究、日本消化器内視鏡技師会というのがありますけれども、そこの会報では、昨年の九月にグルタラールに対して副作用のある人のアンケートをとったわけですが、百十二名、これは全体の六〇・二%、そんなふうに大変大きな数字が報道されていたわけでございます。
 このグルタルアルデヒド、適切に使用すれば非常にいい消毒剤でございますけれども、使う側にとってどうなのか、そしてまた安全に使われているのかということは大変大切な課題ではないかというふうに思っております。
 まず初めに、確認でございますけれども、こうした消毒薬でございますけれども、添付文書には危険性についてきちっと表示がされていると思いますが、それについて、どのような中身になっているのか、まず御説明いただきたいと思います。
小島政府参考人 御指摘のグルタラール製剤の添付文書でございますが、この製剤につきましては、重要な基本的注意といたしまして、製剤を使用する際の注意事項を記載しております。
 具体的には、まず、人体に使用しないこと。グルタラール水溶液との接触により皮膚が着色することがあるので、液を取り扱う場合にはゴム手袋等を装着すること。また、皮膚に付着したときは直ちに水で洗い流すこと。次に、目に入らぬよう眼鏡等の保護具をつけるなど、十分注意して取り扱うこと。誤って目に入った場合には、直ちに多量の水で洗った後、専門医の処置を受けること。グルタラールの蒸気は目、呼吸器等の粘膜を刺激するので、眼鏡、マスク等の保護具をつけ、吸入または接触しないよう注意すること。換気が不十分な部屋では適正な換気状態の部屋に比べて空気中のグルタラール濃度が高いとの報告があり、換気状態のよい部屋でグルタラールを取り扱うことが望ましい、と記載されております。
福島分科員 しかしながら、そうした添付文書に記されておりますような注意事項というものがしっかりと守られているのか、ここのところが大変大切な問題だろうというふうに思います。先ほどの大阪市に在住の女性の方は、このグルタルアルデヒドの使用に際してさまざまな症状が出てくるので、これは病院でございますけれども、その病院の会議で改善を求めたり、また感染防止委員会にも提案しようとしたけれども、この病院では、議題が違うといって、取り上げてもらえなかった。多分、全くそういう認識がなかったんだろうというふうに思います、知っていてもやらないのか。
 大腸の内視鏡の場合には、レントゲン装置のところでやるんですね、ファイバーがどういう位置にあるのかと。ですから、当然、やったところに自動洗浄機があればいいですけれども、ない場合には、バケツと言ってはあれですけれども、その中に液を入れて、そこに浸して消毒をするというようなことをするんだと思います。そのレントゲン装置のある部屋というのは、大体窓があるわけではありませんで、大変密閉された環境の中ですね。その中でちゃんとマスクをつけてというふうに使用説明書には書いてありますけれども、そうではなくてやっていれば、当然室内の濃度というのは高くなると容易に想像されることですけれども、しかしながら、そういうことを院内で提案しようとしても取り上げてもらえない。管理者の側の認識が極めて薄いということなんじゃないかと思います。
 実際に、先ほど申しましたこの日本消化器内視鏡技師会の会報で、副作用のある人は六〇・二%だという結果でしたけれども、強制排気装置のない施設というのが百二十五、これは全体の六五・七%、三分の二は強制排気装置がありません。そういう中でこれが使われているという実態であるということでございます。これは労働衛生上も大変大切な問題だと思いますが、こうした医療機関における安全管理についてどのように把握しておられるのか、認識をお聞きしたいと思います。
松崎政府参考人 御指摘のグルタルアルデヒドでございますけれども、これは御指摘のように、内視鏡等の消毒で一般に病院で使われているようでございます。これは今おっしゃったように、目とか鼻とか粘膜、そういったところを刺激しまして、長期間にわたって接触したりするとアレルギー症状を起こすといったような有毒性があるということは、私どもも承知しております。
 そこで、従来からでございますけれども、平成五年でございますけれども、変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針というものを策定いたしまして、現在四百五十以上の対象物質を指定しまして、そういったものを扱います労働者の健康障害を防止するための対策ということで、事業者に対する指導を行っております。
 それで、この指針に平成十年から、御指摘のグルタルアルデヒドにつきましても対象の物質といたしまして、ただいまお話がございましたように、作業場所の換気でございますとか呼吸用の保護具、保護手袋の着用、そういった措置を講ずるようにということで、この指針に基づきまして事業者を指導しているということでございます。
福島分科員 その指導が現場にどこまで伝わっているのかということではないかというふうに思います。
 そしてまた、先ほどの調査では、強制排気装置のない施設が六五・七%でしたが、その約三分の二の七十六施設は、これからもそういうものをつけるつもりはないと。医療機関の経営も大変厳しいということもあると思いますけれども、十分にその通知の趣旨が現場に伝わっているかどうか、私は甚だ疑問ではないかなというような思いがいたしております。
 そしてまた、健康被害に遭われた場合には、私は当然、適切に労災保険というものが適用されるべきではないかというふうに思っております。この大阪の方も、労災の申請をしたときにいろいろと御苦労があったようでございます、細かいことは申し上げません。現場の認識も基準監督署の認識もまだまだ十分ではないところもあるのではないかというふうに想像されますけれども、現在、労災認定、これはどの程度事例があるのか、御説明いただきたいと思います。
松崎政府参考人 ただいま御指摘の労災認定の関係でございますけれども、これは、平成十一年度以降でございますけれども、私ども三件把握しております。その内訳は、気道粘膜損傷一件、接触性の皮膚炎二件ということで労災認定されております。
    〔主査退席、衛藤主査代理着席〕
福島分科員 これは、私は多分氷山の一角だろうと思います。この看護師の方も、当初そういう症状が起こったときにはなぜ起こるのかよくわからなかったと、内視鏡学会の方に行って、そういうグルタルアルデヒドでさまざまな副作用があるという報告を知って、そして自分もそうではないかというふうに思ったということでございまして、先ほどの内視鏡技師学会の会報にもありますように、近年、そういうものがあるんだということがようやっと認識として広まってきたぐらいの段階なのではないか、そんなような思いがいたします。そしてまた、三件あるということですけれども、実際にその事業所での対応がどれだけ変わったのか。一例は改善指導をしたというように聞いておりますけれども、そこのところも、私はフォローが必要ではないかと思います。
 この方がおっしゃいますには、英国では、このグルタルアルデヒド、空気中の許容濃度の法規制というものがあります。これは、現在〇・〇五ppmですけれども、九九年に従前の〇・二ppmから〇・〇五ppmに強化された。そしてまた米国の産業衛生専門家会議でも、同じく〇・〇五ppmというものを勧告値として採用しておる。当該の女性の方の働いておられた病院での濃度は一体どうだったのか。これは労災の申請に当たって調査をしたわけですけれども、〇・八ppm。ですから、英国の規制値の十六倍もの濃度になっていたということが明らかになっております。
 そしてまた、産業衛生学会誌の、これは二〇〇〇年の出版でございますけれども、内視鏡室内における気中濃度の実態というようなものについての測定値の報告があります。この報告でも、これは実験でございますけれども、洗浄機を用いた場合にはなかなか数値は低いのですが、洗浄槽、先ほど言いましたバケツのようなものですけれども、洗浄している最中または消毒中では〇・二六五ppm。ですから、五倍ぐらいの濃度になる。それだけではありません。環境によってはもっと高い数字を示すデータも示されております。
 こうした数値規制、これが必要なのではないかという御指摘がありました。私は、直ちにその数値を決めるというのもなかなか難しいことかもしれないという気はいたしますけれども、現実に五倍も十倍もの濃度の中で看護師の方が働いているという実態があるのであれば、それをどうするのかということについて、労働衛生管理上、政府としても真剣に考える必要がある。
 今後、どういうふうに、特に医療機関というものを指導していくのか、そしてまた、これは製薬企業ということもあるかもしれません、添付文書の問題もあるかもしれませんけれども、注意をどうやって喚起していくのか、こういったことについて被害者がふえないようにするために努力をすべきだというふうに私は思いますが、御見解をお聞きしたいと思います。
松崎政府参考人 おっしゃるとおりだと考えております。
 したがいまして、引き続き、先ほど申し上げました指針の徹底、これはまだ十分には周知されておらないということであろうかと思いますけれども、この指針の周知徹底に十分努めてまいるということと同時に、今後、医療行政と連携いたしまして、特に、先生がおっしゃったような実態把握に努めまして、それに応じて必要な対策を考えていきたいというふうに考えております。
福島分科員 厚生労働省となったわけでございまして、厚生行政とこの労働行政と、ちょうど重なり合うようなところの問題ではないかな、そういう思いがいたしております。
 先日、この方からまた新しい資料をいただきましたが、それは最近の東洋経済の二月十五日号でしたけれども、「むしばまれる医療現場 グルタルアルデヒドの恐怖」、そういうような記事が最近も載っておりました。こうした事態を踏まえて、ぜひ積極的な御対応というものをしていただきたい、そのように要請をさせていただきたいと思います。
 次に、話は全く変わりますけれども、骨髄バンクの登録事業のお話についてお聞きをしたいと思います。
 私の地元の守口のライオンズクラブの方で、骨髄バンクの登録事業に非常に熱心な方がおりまして、ライオンズクラブというのは各地で献血の取り組みも実はやっております、そして守口のライオンズクラブは献血に毎年協力しているけれども、昨年は、単に献血をするだけではなくて、骨髄バンクの登録もそのときに一緒にやってもらおうということを考えました。これはいわゆる献血併行と言われている登録の仕組みでございますけれども、大阪ではこうした献血併行という取り組みがなかなか進んでいなかったわけでございます。
 非常に熱心に取り組んでいただいて、昨年の秋に、大阪におきましては第一回目と言っていいと思いますけれども、この取り組みができまして、その後、聞くところによりますと、大阪の大企業の事業所においても労働組合の協力を得ながらこうした献血併行が進んできたという話がありました。
 この献血併行というのは、骨髄バンクの登録を進めるためには極めて有効なやり方ではないかというふうに私は思っておりますけれども、これについて、現状はどうなっているのか、そしてまたその意義についてどう認識しておられるのか、お聞きをいたしたいと思います。
高原政府参考人 御指摘の献血併行型ドナーの登録でございますが、これは、オープン献血などの移動献血会場におきまして、骨髄提供希望者の呼びかけを行っておるものでございます。
 平成十三年八月から全国的にやっておりまして、実情で申しますと、平成十三年には全国で約四百回実施されておりまして、五千名の新規登録の方がいらっしゃいます。これは、全体の新規ドナー登録者の約二割を占めております。平成十四年には約七百五十回実施されておりまして、約七千名の新規登録をいただいておりまして、これはやはり全体の約三割ということで、非常に御理解いただいておるところでございます。
 そういう点で、厚生労働省といたしましても、献血併行型のドナー登録会はドナー登録の機会を拡大する観点から大変有効であると考えておりまして、十四年十月に、再度地方公共団体に対しましてその実施への協力を呼びかけております。
 また、十五年度予算におきましても、登録にかかわる説明を受けた方に対しまして、登録希望者証、これは仮称でございますが、これを交付いたしまして、これを持参した方は、全国どこの献血会場や、いわゆる固定会場と言っております献血センターとか、そういうところでも登録ができるというふうな、この併行型ですと、採血させていただくということと、もちろん献血していただくということと、それから御説明をちゃんと聞いていただく、この二つでございますが、この説明の方で、きょうは登録はあれだけれども説明は十分聞くという方にも、説明を聞いていただいたというので、後でまたいわゆる献血センターとかそういうところで登録していただく、こういうふうな登録を可能とする体制を導入するための経費を確保した、そういうふうに考えております。
福島分科員 取り組んでみて、反省会をライオンズの人を中心にやったそうです。その中で出た話が、採血をどういうふうにするのかということがあったようでございます。というのは、ドナー登録用にはやはり少し余分に採血をさせていただかないといけない。
 通常の献血における採血の手順というのは、皆同じように一律にやっていきます。このことが非常に大切で、途中でこの人はこっちの採血だけれどもこの人はこっちの採血だというふうになりますと、サンプルを間違えるというようなことがあってはならないわけですから、どうしたものか、こういう話になるわけです。
 逆に言いますと、一遍針を刺したときに一緒に抜いてくれた方がありがたいわけでして、それをもう一遍また針を刺すのか、こういう話になるとおのずと忌避されるということもあるわけでして、効率からいえば一遍にやっていただいた方がいい。しかしながら、それは、登録を希望する人もしない人もいるから、献血をする担当の看護師さんの立場では、一人一人手順が変わってしまうということで間違いが起こるリスクがあるんじゃないか。非常に責任感を持ってやっておられますし、間違いがあってはならないことですから、そういう懸念もあるわけです。
 ですから、希望として、おっしゃっておられましたけれども、どういうふうに採血をするのか、どういう採血のあり方でやるのか、そういうマニュアルというようなものをきちっとつくっていただけないか、個別個別に判断しなさいということではなくて、こういうやり方でやってくださいというものがあると、それは大変助かりますという話がありました。
 先ほどるる申し上げましたようないろいろな観点がありますから、なかなかシンプルにお答えになるのは難しいのではないかと思いますけれども、御見解をお聞きしたいと思います。
高原政府参考人 ドナー登録会につきましては、血液事業の実施主体でございます日本赤十字社の協力をいただきながら実施しているものでございます。また、骨髄ドナー登録に必要な検体採取のための採血につきましても、やはりまた日本赤十字社の血液センターにお願いしているところでございます。
 そういうことでございまして、血液事業の担当部局と連携しながら、血液事業及びドナー登録にかかわる採血の実施主体である日本赤十字社と十分詰めさせていただきまして、できることなら、そういうふうな方向で検討させていただきたいと思っております。
福島分科員 ありがとうございます。よく御相談して、現場が、献血併行、これを進めやすい環境づくりをぜひ進めていただきたいというふうに思います。
 時間も残り少なくなっていますし、最後に言語聴覚士のお話をお聞きしたいと思います。
 先般も脳卒中の患者さんの団体の方とお会いしました。そして、失語、こういったことが脳卒中で起こるわけでございますが、言語聴覚士による言語療法というものが極めて大切だ、そして、その体制の充実というものをぜひ図っていただきたいというような要請がございました。
 言語聴覚士が国家資格とされて、徐々にマンパワーの整備というものが進んできているというふうに思います。そしてまた、昨年の診療報酬改定、ことしの介護報酬の見直しといったようなことの中でも、この言語療法というものが光をだんだん当てられてきたのではないか、そんなような思いがしますが、この取り組みをさらに進めていただいて、言語聴覚士の活躍する場の確保というものをぜひ行っていただきたいと思いますが、御見解をお聞きしたいと思います。
真野政府参考人 私の方から、診療報酬と介護報酬、今先生が御指摘の点についてお答えをしたいと思います。
 失語症等の言語や聴覚機能に障害を有する患者さんに対します言語聴覚療法につきましては、従来より診療報酬上評価を行ってきておりますが、平成十四年、昨年の診療報酬改定におきまして、常勤の言語聴覚士を配置していることを算定要件とするとともに、言語聴覚士が三人以上勤務する施設で実施された場合を高く評価するというようなことなどの見直しを行いました。
 また、御指摘ございましたように、今回の介護報酬の改定におきましても、言語聴覚士の行います言語聴覚療法の評価の充実を図るとともに、通所リハビリテーションの人員基準に言語聴覚士の配置を位置づけるなどの見直しを行っております。
 引き続き、診療報酬や介護報酬におきます言語聴覚療法等の評価の充実につきまして、検討してまいりたいというふうに考えております。
福島分科員 よろしくお願いいたします。
 そしてまた、先日、言語聴覚士の方からこんなお話をお聞きしました。それは、言語聴覚士の養成に当たって実習ということが非常に大切である、私もそうだろうというふうに思います。現場でのトレーニングがなければ、座学だけでどうするのかというのは、なかなか身についていかない問題がある。しかしながら、現在、厚生労働省の指定の施設、指定校は三十七校あるというふうに伺っておりますけれども、なかなか実習のための施設が十分ない。いろいろなところに協力を求めるんだけれども、なかなかない。
 先ほど申し上げましたのは、診療報酬や介護報酬で評価をされると、おのずとそうした言語聴覚療法に取り組む施設が広がってくる、ですから、実習の場を確保することにもつながってくるんだろうというふうに思いますので、評価を高めていただきたいというふうに申しましたが、一方で、その養成のあり方という観点からこの実習というものが十分になされるような体制の整備というものに対して厚生労働省も努めていただきたいというふうに私は思うわけですが、この点について最後に御見解をお聞きしたいと思います。
篠崎政府参考人 御指摘の実習施設につきましては、厚生労働省で施設を認可いたしますときに、個別にこういう実習施設をきちんと確保しているかどうかを見て認可をするわけでございますし、また、実習施設の変更がある場合にも、それをまた届けていただいて承認をするというようにしておりまして、必要な実習施設が学校として必ず確保できるようにという指導をしておるところでございます。
 この法律は、平成九年にできた、国家資格としては比較的新しいものでございますから、平成十七年度までの間につきましては、実習指導者の特例を設けまして、言語聴覚士の免許を受けていない者であっても実習指導者となり得ることを前提にして、そういう実習施設の確保もしやすいようにしておるわけでございます。
 ただ、もし御指摘のような事態が現実に先ほど申されました施設のところであるとすれば、これは大変遺憾なことでございますので、実態の把握に努めまして、質の高い実習が行われるよう、その必要に応じて指導してまいりたいと思っております。
福島分科員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
衛藤主査代理 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。
 次に、平岡秀夫君。
平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。
 坂口大臣には法務委員会等を通じまして何度か質問させていただいておりますので、もう私が何を期待しているかということは十分にわかっていただいていると思うんです。先日、予算委員会の一般質疑の中で、精神保健福祉施策の問題についても議論させていただきました。そのときに、分科会で必ず私聞きますから、よく検討しておいてくださいということでお願いしておった件につきまして、きょうはじっくりと時間をとって質問させていただきたいというふうに思っているわけでございます。
 ちょっとその前に、私、一般質疑の中で、法案審議、つまり、心身喪失等の状態で重大な他害行為をした者の医療及び観察等に関する法律案を審議している最中に、多分厚生労働省のお役人だろうと思いますけれども、医療関係者等の方々に対して、この法案を通さないと十億円の指定入院医療機関の設備をつくるという予算が使えなくなってしまうんだというような話をし、そして、それがまた関係する議員の方にある意味では圧力という形になってはね返ってきたわけであります。
 こういうことを働きかけたというのは、まさか大臣が指示されてそういうことをされたのではないと思うんですけれども、こういう事実については御存じでしょうか。そして、それについての責任というものについては大臣は何かお感じになっているところがあるでしょうか。まず最初にそれをお伺いいたしたいというふうに思います。
坂口国務大臣 心神喪失者等医療観察法案、その概要につきまして関係者の皆さん方のところに御説明に行ったことはあるようでございますし、そのときに予算のことに触れたこともあるようでございます。それ以上のことは私にはちょっとわかりにくいわけでございますが、その過程の中で行き過ぎた点があったといたしましたら、おわびを申し上げなければならないというふうに思っております。
平岡分科員 誠実な対応をされておられる坂口大臣ですから、決してそういう、予算を人質にとるような形でこの法案を通そうとするというようなことは多分されないと思いますけれども、まだこの法案は参議院の段階で継続審議になっているわけでありますから、予算を人質にするというような形での審議の促進ということではなくて、本当にこれからの精神保健福祉施策のあり方としてどうあるべきかということを真剣に議論していただいて、あるべき施策を実現していくということをよろしくお願い申し上げたいというふうに思っているわけでございます。
 そこで、私がお約束申し上げました平成十四年度精神保健福祉施策関係予算の中で、私はこれを見たことはないんですけれども、指定入院医療機関の整備用に十億円の予算が計上されているというふうに言われておるわけでありますけれども、この問題、これをどのようにしていくのかという問題について、大臣と、そして、必要があれば政府参考人の方々にもお伺いしながら、ちょっと議論をさせていただきたいというふうに思っております。ぜひ実りある議論にしたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 まず最初に、私がいわゆる十億円というような言い方をしているのは、ずっと予算書を、どこをひっくり回しても、この指定入院医療機関という言葉も出てきやしないし、その金額も全く出てきもしない。一体これは本当にあるのかないのかすらも、この国会の審議の場においてさっぱりわからない、こういうのが現状であるわけでありますけれども。
 実は私も、精神保健福祉施策関係予算、平成十四年度、どのようになっているのかということをちょっと調べるために資料をお願いいたしましたら、私、質問予告しておりますから大臣も多分ごらんになったと思うんですけれども、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課が作成した平成十四年度精神保健福祉施策関係予算の概要という紙がございます。多分これは説明の際に見られたと思いますけれども。この中に、いわば指定入院医療機関のシの字も出ておらぬということでありまして、一体これは本当に予算に計上されておったのかどうか、なぜそういう指定入院医療機関の整備のために十億円もの多額の予算が計上されていることが全く説明されていないのか、まずこの点を明らかにしていただきたいというふうに思います。
上田政府参考人 議員御指摘の、平成十四年度精神保健福祉施策関係予算の概要という資料の中では、指定入院医療機関の病棟整備に必要な経費十億円につきましては記載がされていないところでございます。これは、平成十四年度予算案が閣議決定された平成十三年の十二月において、指定入院医療機関を規定します心身喪失等医療観察法案が政府部内で検討中の段階であったことから、記載がされていなかったものでございます。
 なお、十五年度の精神保健福祉施策関係予算の概要におきましては、予算案が決定されました十四年十二月の時点で、法案は既に国会に提出され、審議中であるということから、指定入院医療機関の病棟整備約三十五億につきまして記載がされているところでございます。
平岡分科員 そうすると、平成十三年の十二月にはまだ法案が決まっていないという段階、それはまあ当然といえば当然なんですけれども、という状況の中で、確かに指定入院医療機関という言葉自体は使えないんだろうと思うんですけれども、ただ、十億円という予算がその後指定入院医療機関用の予算として使われるということになったときに、十億円はその予算の中に入っているわけですよね、当然。一体、この十億円というのは何を根拠に予算計上されているんですか。一体、どういう検討状況の中で予算計上がされ、そして、予算案が国会に提出されたときに、まあだれも気がついていないんでしょうから聞く人はいないかもしれませんけれども、もし聞かれたら一体どのようにお答えになったんでしょうか。
 そんなあいまいなものがこの予算案に入っていたということは、我々は一切、予算審議の過程の中で説明も受けませんでしたし、知りもしなかった。これに対してどのようにお考えになっているんでしょうか。
上田政府参考人 概算要求に当たりまして、これは十三年の八月の段階でございますが、ただいま御指摘の十億円を計上していたわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、法案につきましてはまだ検討中ではございましたが、しかしながら、法案が成立したときにその対応をするということで、その予算要求を行っていたところでございます。
平岡分科員 そうすると、十三年の八月に概算要求したときに十億円ということを言われましたけれども、その時点、そして平成十三年の十二月の時点では、この十億円というものはどのようなものに使うかということについて既に決まっておったわけですか。
 今回の法案で出されている指定入院医療機関というのは、我々民主党が出した対案によれば、必ずしもこんな病院じゃなくて、指定入院医療機関のようなものじゃなくて、もっと施設の整った、一般の人たちでも利用できるような、そうした精神病棟、精神病院をつくるということでいいんではないかというような対案を提示させていただきますけれども、そういうものに使うこと自体も許されないものとして計上されてあったんでしょうか。それとも、そういうものに使うこと自体は特に限定をされていない、つまり、我々民主党が提案していたような精神病院あるいは精神病棟に使うことも許されるものとして十二月の時点では計上しておったんでしょうか。いかがでしょう。
上田政府参考人 ですから、先ほど申し上げましたように、法案が成立した際に必要な施設と病棟ということで概算要求に当たって検討したわけでございます。しかしながら、繰り返して申しわけございませんが、当時はまだ法案が提出されていないわけでございますので、そういう意味では指定入院医療機関というようなことがまだ提出されておりませんので、そういう意味では、名称と申しましょうか、予算項目としてはそういった指定入院医療機関ということではなく、今申し上げましたように、成立した際の受け皿としてのそういった必要な病棟ということで要求をしたところでございます。
平岡分科員 いわば、このいわゆる指定入院医療機関と呼ばれるようなものについて言えば、必ずしも法律で予定しているようなものじゃなくても、別の形のものが法律案としてでき上がったかもしれないし、それから、その後の議論として、法律案そのものをつくらなくて、こんなような、例えば高度な医療設備を持った精神病院をつくろうということであるならば、それにも使えたというふうに私は思うわけでありますけれども。
 そこで、平成十四年度予算についてはそのような経緯があったということでありますけれども、平成十五年度予算、先ほど政府参考人の方からも、平成十五年度予算では指定入院医療機関として堂々と計上してありますという御説明がございました。確かに、厚生労働省の精神保健福祉課がつくった予算の概要の中にはそういう言葉もあります。ありますけれども、では、これを予算書の中でどこに書いてありますか。
上田政府参考人 施設整備予算につきましては、一般に、予算書においては、個別の施設類型を明示しておらず、このため、平成十四年度予算及び十五年度予算案におきまして、指定入院医療機関の整備に限定した予算は、予算書上は明示されていないところでございます。
 なお、指定入院医療機関の病棟を整備するための経費としまして、平成十四年度の予算におきましては、特別会計予算の中で、厚生労働省所管国立病院特別会計療養所勘定の施設整備費の一部として十億円、また、十五年度予算案におきましては、同じく特別会計予算の中で、厚生労働省所管国立病院特別会計療養所勘定の施設整備費の一部として約三十億円、また、一般会計予算の中で、都道府県立病院整備分としまして、厚生労働本省、項の保健衛生施設整備費の一部として五億円、合計約三十五億円を計上しているところでございます。
平岡分科員 今、予算書のどこを見ても指定入院医療機関という言葉が全く出ていないということは、説明にありました。そうすると、予算書には書いていないことでありますから、一体、政府はあるいは国会は、この問題についてどこまで制約されるんでしょうか。
 つまり、指定入院医療機関の施設整備に使わないで、別の目的、例えば、高度な医療設備を持った精神病棟をつくったり、あるいは精神病の研究のために使ったり、そういうようなことをすること自体は、この予算書上、何か制約はありますか。この予算書には全く指定入院医療機関という言葉が出てきていないという状況の中で、もっと自由に使えるんじゃないでしょうか。いかがでしょう。
冨岡政府参考人 国立病院の特別会計に即して申し上げますと、先ほど障害保健福祉部長が申し上げました、当初の目的以外に予算を使用する方法といたしましては、私どもは、一般的には移用という手法が考えられると思っております。
 移用につきましては、財政法及び平成十四年度特別会計予算総則の規定によりまして、療養所勘定の各項の相互の間において行うことが制度的には可能でありますが、仮に国立療養所の運営関係の経費として使用する場合には、年度内に執行し完結するものに限定されるわけでございます。
 そういうことで、例えばほかの、物品を購入するということにいたしますと、契約から納品まで、あと一カ月というような期間で諸手続を行うということは実質的に困難でございます。また、新規の事業を展開するといたしました場合、非常勤等の職員の方を雇用するための経費として使用すると仮にいたしましても、一カ月のみに限定されました事業で、翌年度以降は継続することができないといった問題がありまして、これもなかなか困難と考えております。
 そういうことでございまして、また、移しかえということにつきましては、特別会計の平成十四年度予算総則にはこの規定がないものですから、十四年度につきましては、他の組織に移しがえして使用するということは制度的にはできないものと考えております。
 以上でございます。
平岡分科員 私の質問を先取りしてしまっておるので、そこまでまだ行かなくていいんです。
 まず、施設整備費の中で、例えば、さっき私が申し上げました。これは指定入院医療機関をつくるための予算だというふうに皆さんは言い張っているんですけれども、予算書のどこにも書いていない。だれもそれに制約を受ける人は、少なくとも国会はそれに制約を受けていない。政府の中では、いろいろ、主計局との間での積算根拠の中で、こういうのに使いますというような約束を役所レベルではしているかもしれませんけれども、それは別に、予算書の中に書いてあるわけでも全くありません。
 先ほど言われました移用とか流用とか移しかえといったようなことも全く関係のない世界で、国立病院特会の中の施設整備費の中で、指定入院医療機関じゃなくて、例えば、今古くなっているかもしれない精神病棟の建てかえであるとか、あるいは精神病棟について、もっと先進的な、もっと設備の整った、そうしたいいものを、モデル的なものをつくろうということを仮にしようとしたときに、これは何か制約はあるんですかと、こういうことを私は今お聞きしたかったわけでありますけれども、ただ、項施設整備費という枠内で何か考えられることがあるんじゃないでしょうか、この質問に対して、まずお答えいただきたいというふうに思います。
冨岡政府参考人 先ほど申し上げた続きという感じでございますが、この予算につきましては、使用の範囲につきましては、国立療養所の施設整備に事実上限定しているものと考えておりますが、現在、厚生労働省といたしましては、心神喪失者等医療観察法案が継続審議となっておりまして、平成十四年度中に成立するよう同法案の早期審議をお願いしているところでありまして、国立病院部といたしましても、その成立を待ちまして、予算計上の本来目的であります指定入院医療機関の病棟整備を行う必要があるものと考えているところでございます。
平岡分科員 心神喪失者等医療観察法案が仮に成立したときに指定入院医療機関をつくっちゃいけないと言っているわけじゃないんで、それは十五年度予算で計上されておるわけでありますから、法律が成立したならば、着実につくっていただければ、それはそれで、私は特に異論を挟むわけじゃありません。
 今問題にしているのは、平成十四年度予算の話であります。平成十四年度予算について言えば、もう一度確認のために聞きますけれども、先日、予算委員会の一般質疑で、こういう目的のために十億円が用意されている、これは予算書の中のどこを見ても書いていないんですけれども、そういうふうに説明を受けている。
 それで、この予算、どうするんですかと聞いたら、質問の前には、明許繰越費になっているので、繰り越して、来年度、平成十五年度に使用するつもりです、そういう説明でありましたけれども、その後よくよく検討したら、これはやはり繰り越すことは適当でないという判断で、繰り越すことはやめましたと、そういうことで、大臣の方からも、これは不用を立てます、こういうふうなお話でございました。
 まさに、その平成十四年度予算に計上されている十億円について、どうされるんですかということを聞いているのであって、平成十五年度予算の話を聞いているわけじゃないんです。この平成十四年度予算について、先ほど言いましたように、精神病院に既存の古くなったものがあれば、それを新しいものにする、あるいは、モデル的な、先進的な医療設備なりあるいは病棟、病室、そうしたものを備えたものをつくるということになぜ使えないんですかということを聞いているんです。そこの点を明確にお答えいただきたいと思います。
冨岡政府参考人 繰り返しになるようでまことに恐れ入りますが、私ども、これを執行する現場の立場といたしましては、予算計上されました趣旨に沿いましてそのような執行をいたしたいと考えているところでございまして、先ほど申しましたように、その法律の成立を待ちまして、本来目的に沿って執行ということを考えております。(平岡分科員「十四年度予算に計上した十億円をどうするのかという話です」と呼ぶ)
 それで、当初の計上しました目的に従いまして使用することが困難になりそうな状況ということになっているからといいまして、直ちに他の目的のためにこれを使用するということは、私どもとしては適切ではないのではないかと考えております。
平岡分科員 今、私どもとしては適切でないと考えているというお言葉がありました。適切でないというのはどういう意味でしょうか。法律上許されていないという意味ですか。それとも、政策判断として、今非常に貧しい状態にある精神医療について、全くそうした分野に予算を使う必要がない、それを使うことは何か大きな問題がある、そういうふうに判断されて、政策的判断として適当でないというふうに考えておられるんでしょうか。どっちですか。法律的にできないということで、法律的あるいは予算的にできないという判断か、それとも政策的判断としてできないという判断か、どっちですか。
坂口国務大臣 正直なことを申しますと、実は、先生が質問をしていただくというので、けさもいろいろ聞きまして議論をしたわけでございますが、いささか私の能力を超えた話でございまして、事務当局の話を聞きましても、すとんと心に落ちるようになかなかいかなかったわけでありまして、これはきょうは先生にこのことを詰められたらどうするかなと思いながら実はここへ来たような次第、率直に申しますとそういうことでございます。
 私の立場からすれば、これはいわゆる法的に許されるものであるならば、それはどこかに使わせていただきたいという気持ちは率直に言って私はございます。しかし、予算編成上、約束された目的以外にはもう全くこれは使うことができないんだということであるならば、それはあきらめざるを得ないというふうに私は思っております。
 事務方から聞いたところによれば、予算をつくりますときに、これは目的をちゃんと決めてしたことだからそれはなかなか難しいんだという話だものですから、難しければやむを得ないなと。しかし、それが可能なものならば、それは使うという手もあるじゃないかということをきょうも実は言ったところでございます。
平岡分科員 今大臣の御説明、確かにそうだろうなというふうには思います。ただ、結論的に言うとまだ最終的に結論を出していないというようにもちょっと聞こえたんでありますけれども、制度の問題として許されないことと政策的判断として適当でないということとはやはり違うと思うんですね。
 さっきから何回も言っているように、この予算書の中に指定入院医療機関という言葉は一つもないんですよ。どこで十億円を何に使うかということが全く書いてないというような状態の中で、それで、政府の中の各省庁間の説明の中でこういうものに使いたいと言って約束しているから使えないんですというんじゃ、一体何のための予算制度なのか。役所のための予算制度でしかない。我々はもっと、予算というものはやはり国民のために使われるものであって、予算の仕組みの中で許されている範囲内であれば、国民のためになるというものであれば、我々はそれは積極的にその予算を使っていくという姿勢を持たなければ、何のための予算かわからないということになると思います。
 せっかく私も、いろいろ想定問答を、このたった一つの問題についてどういうふうにして攻めてやろうかと思って一生懸命考えてきましたので、先ほどもう既にお答えになっていますけれども、移しかえとか移用とか流用という、こういう制度もあるわけです。これは、予算書の中に、仮に、ここに使いますよと書いてあっても、それをいろいろな事情によって別の目的のために使えるような仕組みまでできている。これを利用してでも、使い道が一切ありませんというのは、本当に、皆さん、精神保健福祉政策というものをまじめに考えているのか。
 例えば、私、これをずっと見てきましたら、これは必ずしも病院特会じゃないかもしれませんけれども、精神医療の分野で、「研究の推進」というのがあって、例えば「精神疾患の疫学調査、原因の究明及び治療法の開発等を対象とした精神・神経疾患研究、障害保健福祉総合研究等の推進。」とかとあるんですね。これは病院でやっている分もあればやってない分もあると思いますけれども、これをちょっと見ましたら、平成十三年度が約五十二億円、そして平成十四年度の要求が何と八十五億円あるんですね。ということは、三十二億円ぐらいの要求増なんです。そして、平成十四年度予算でついたのが約五十六億円、二十八億円ぐらいカットされている。そして、平成十五年度予算で計上されているのが五十三億円、去年よりも三億円少なくなっている。こんなような予算もあるわけですね。
 で、考えてみたら、これだけ要求ベースでは多額の要求をしておいて、いざ予算ができ上がってみたら三十億円近いものをカットされている。そういうものにも全く使えませんというふうに言われたんじゃ、本当に真剣に考えているのかなと、そういう気になるわけであります。
 移しかえとか移用とか流用とかといったような仕組みもあります、それは事務方がよく勉強しておられると思いますので、そういうものも含めてすべて、この予算がどこからどこまで使えるかという大きな範囲の中で物事を考えていただいて、物によってはこれは繰り越しすることも可能なものもあるでしょう。そういう目でもう一度、この予算、本当に困っている精神障害者の方々、精神医療が必要とされておられる方々、こういう人たちのために有効に使える、そういうものとして利用していっていただきたいということを最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
衛藤主査代理 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、赤松正雄君。
赤松(正)分科員 公明党の赤松正雄でございます。
 きょうは、厚生労働省に対しまして、半自動除細動器にまつわるお話をぜひ聞いていただきたいというか、厚生省の考え方を聞き、そしてこちらの考えを申し上げさせていただきたいと思います。
 最近、健康のための大変な運動ブームといいますか、ジョギングをしたりランニングをしたりということで、私もそういったことに大変興味があるんですが、かつて、少し前ですけれども、アメリカでランニングブームをつくったと言われる「奇跡のランニング」という本がありまして、その著者はジェームズ・F・フィックスという人なんですけれども、この人の本が大変売れているということで、私も読んだんですが、実はその人が肝心のマラソンの途上で死んじゃったという話があって、大変なショックがあったわけです。そういうケースが少し前にあって、今日本でも、運動の途上で突然に死んじゃうという運動中突然死、そういうケースが結構報道されているということがあるわけです。
 そういう私たちが報道の場面で接触するということと、それ以外にも余り知られていないところでそういうことがあるということもあろうかと思いますけれども、まず、そういった運動途上の突然死というのは、運動をやっている最中あるいはやった直後、そういった突然死というものはどれぐらい発生しているかというその掌握をどのようにされているかということをまずお聞きしたいと思います。
篠崎政府参考人 先生御指摘の、いわゆるスポーツによるものですとか、一般には突然死のような死亡者の数が幾つぐらいかということでございますが、なかなか把握が難しい問題ではございますけれども、調べましたところ、平成十二年に日本循環器学会がまとめた報告書でございまして、ただし、かなり推計によるものでございますが、全国で年間約四万人程度の心原性心肺停止、医学的に言うとそういうことになるんだそうでございますが、心原性心肺停止の数が病院外で発生している、こういう数字を持っております。
赤松(正)分科員 聞いた本人がびっくりしておりますが、それは平成十二年の発表で、年間に約四万人、そういう数で心原性心肺停止という格好で亡くなっておられる方がいる。これは大変な数だと思うんですね。
 それ以降、最近ではといいますか、私たちが目にするケースでは、例えば平成十四年の十一月二十三日に福知山、名古屋マラソンで三人の死亡事故が、心筋梗塞が原因の心室細動であった。あるいは、大変に多くの皆さんの注目を集め、心を痛めた十一月二十一日の高円宮殿下のスポーツ時の心室細動といったことが、いずれもいわゆる半自動除細動器があれば救命できていた可能性がある。もちろん、全部が全部それに適合するかどうかは別にいたしまして、かなりの程度いわゆるAEDがあれば救命できたという可能性が指摘をされております。
 そういったことを背景にいたしまして、日本では現在、この半自動除細動器、AEDの活用が欠かせないといった基本的な認識が定着しつつあると私は思うんですけれども、今現在、この医療器具AEDが日本にあってはどういったところでどれくらい保有されているか、こういった現状についてどのように掌握をしておられるか、お聞きいたしたいと思います。
篠崎政府参考人 今御指摘の自動除細動器あるいは半自動除細動器でございますが、その具体的な設置場所につきましては、私どもとして正確に把握しているわけではございませんけれども、医療機関そしてまた救急自動車内に多くのものは設置されているのではないかというふうに考えております。
 自動式、非自動式を含めまして、全自動式と半自動式とそれから非自動式と三つあるのでございますけれども、それを全部合わせた数字でございますが、約二千六百台ほどが出荷をされておるというような数字を持っております。
赤松(正)分科員 全自動、半自動そして非自動合わせて二千六百台ぐらいというお話でございました。
 私が関係者に聞いたところによりますと、やはり先ほど例に出しました高円宮の急逝というかああいう格好で亡くなられることを契機にして、あれより以前はかなりまだ数が少なかった、二百台ぐらいだったというふうに聞いておるのですけれども、その後、かなり急速に世の中に出るといいますか、そういう形で数がふえている、こういうことがあるわけでございます。
 そういった状況が、今次第に、この短い期間の間に、半自動除細動器あるいは全自動除細動器、そういったものが日本の社会の中に言ってみれば普及しつつある、こういう状況があるわけですけれども、一方、先ほど局長がおっしゃったのは、日本においては、病院あるいはまた救急自動車の中、そういったところに限定をされてくるということなんです。
 それは、現在の使われ方というのが、要するに医師、医師法のもとで使われるということですから、最終的にそういったところでしか使われない、こういう状況があるわけですが、日本以外の国、といってもいっぱいいろいろな国があるのですけれども、こういったいわゆる半自動、全自動除細動器というものを幅広く使っている国というのはどういう国で、どれぐらいそういったものが普及している、こんなふうに掌握しておられるでしょうか。
篠崎政府参考人 私どもが把握しておりますのは、米国が、やはりこういう心臓死の患者数も多いというようなこともあって、一番こういう方面では普及が進んでいるのではないかというふうに思っております。
 数はちょっと正確にはまだ把握できていないのでございますが、アメリカで、二〇〇〇年の五月に当時のクリントン大統領が、すべての連邦政府ビルに、これは自動除細動器でございますが、それを置くよう指示をしたということでございまして、現在では、空港、駅、学校など多くの人が集まる公共施設などには設置がされているというふうに聞いております。
赤松(正)分科員 今、アメリカの例を出されましたが、アメリカ以外のところ、ヨーロッパ、イギリスとかドイツとかフランスではどういう状況かというのは掌握されていないんでしょうか。
篠崎政府参考人 まだ掌握しておりません。
赤松(正)分科員 今、アメリカの場合は、医療機関だけではなくて公共の施設、つまりお医者さんがその場にいないところででも置いてあるということでありますけれども、そういうアメリカのAEDに対する取り扱いと、日本における取り扱いの違いというものを教えていただきたいと思います。
篠崎政府参考人 先ほど申し上げましたように、除細動器には非自動と半自動と、それからごく最近、全自動というふうな三つの形があるわけでございますが、非自動の場合もまた半自動の場合も、電気ショックを与える状況というのにかなり医学的な判断が必要ということでございますので、今までのところでは、医師もしくは救急救命士、看護師等に医行為として限定をされております。
 全自動の除細動器の出現によって随分状況が変わってまいりまして、我が国でも昨年から輸入が始まったわけでございますが、まだ国産のものはございません。
 心臓停止をした状況で機械を設置いたしますと、心電図をとりまして、その心電図を機械が自動的に判断いたしまして、ボタンを押してもその適用以外の場合にはスイッチが入らないというような機械になっております。それで全自動ということでございますが、そういう全自動の除細動器については、かなり医行為としても考え方がいろいろあるのではないかということでございます。
 それからまた、こういう心停止が起きた場合には、これは緊急避難的な場合でございますので、医師法の違反というものには当たらないのではないか、私どもはそういう解釈を現在しておるところでございます。
赤松(正)分科員 ちょっと話は戻りますが、先ほど、アメリカのケースのみで、あとはまだ掌握しておられないということでした。
 そういった諸外国のケースでいくと、アメリカのみの事例であり、かつ、先ほどおっしゃったように、全自動ということであって、医師以外の人間であっても取り扱いが比較的スムーズにいくというふうな状況で今日までこの問題が推移してきた、こういう認識だろうと思うんですけれども、アメリカのケースだけではなくて、ほかの国々は日本と同じような状況であるのかどうか、あるいはまたアメリカと同じように、そういった半自動あるいは全自動除細動器の効力というものがどういうふうに認識されておるのかということについて、ぜひとも早急に調査をされる必要がある、こんなふうに思います。
 やはり心停止後五分以内に除細動を行うために、AEDを携帯した人員の配備が必要だということを強く主張する医師が日本にも多くおられますし、アメリカにおけるケース、アメリカが特段そういったことについて習熟している人が多くて日本が少ないというわけでもないでしょうし、同じ人間がやることでありますから、そういった行為について、より広く積極的に取り入れるということをしていくことが大事じゃないか、そんなふうに思います。
 例えば、アメリカでは、二〇〇〇年の十月二十七日にCASA法というのが議会を通過して、連邦政府ビルへのAEDの配備、あるいは民間旅客飛行機へのAEDの配備、それの関連法案が通過をしているということ。さっきちょっと局長がおっしゃったことと関連するのかもしれませんが、シカゴのオヘア空港では四十二台のAEDが空港内に置かれていて、十六例の救命事例が報告をされている。そんなことがあり、さっきおっしゃったことと関係するんですが、二〇〇三年度予算に公的施設にAEDの設置を推進するために二千五百万ドルの予算を組み込む案にブッシュ大統領は署名をした、こういう格好で、かなり急速にアメリカの場合は取り組みを強めている。
 日本の場合は、先ほど来お話を聞いておるわけですけれども、こういった状況に一挙にならない一つの大きな障害というか原因というものは、もう一遍確認のために、どういったことがあるがゆえになかなかそうはいかない、あるいは、こういうことが除かれればかなりアメリカ並みになる、この辺のとらえ方はどういうふうに考えておられるでしょう。
    〔衛藤主査代理退席、主査着席〕
篠崎政府参考人 まず、欧米といいますかアメリカ等も含めましてでございますが、心臓死に対する対応というのが若干違っているんではないかというように思います。
 今、我が国でも、生活習慣病、あるいはそういう生活習慣を改善しなきゃならないということでいろいろ言われておりますけれども、まだ日本では死因順位の第一位はがんでございますが、西欧諸国ではもう心臓死がずっと前から一位になっているということもございまして、そういう心臓死に対する対策というのがかなり、認識が少し今までは違っていたんではないかということが一つございます。
 それからまた、機械の進歩によりましていろいろな医療の状況も変わってくるわけでございますが、全自動除細動器ができたのもまだ日が新しいわけでございますし、我が国では、昨年の五月とか七月に初めて、ノルウェー製、アメリカ製が輸入許可になったというような状況でございます。
 それともう一つは医行為に対するとらえ方がございまして、これは心臓の中でも特に心室細動ということでございますので、いわば心臓がとまる寸前の状態のところでございます。そこに大きな電気的なショックを与えて、心臓の動きをもとへ戻すというものでございますので、非常に危険性の伴う医行為だということで、そういう整理で今までまいりました。
 しかし、またこれは、そういう医療機器の進歩によりまして、そういう考え方もだんだん変わってきているという状況にあるのではないかと思っております。
 特に病院外、病院の中ではいろいろな医行為が、昔から手動式の、非自動式の除細動器あるいは半自動式の除細動器を使って治療はされておりましたけれども、病院外のものにつきましては、あるごく限られたところで行われておりました。特に、救急救命士法というのが制定をされまして、搬送途上において、心肺停止状態の傷病者に対して、医師の指示のもとに除細動器を使うという仕組みでずっとまいったわけでございますが、今御指摘のようないろいろな国際的な動向等も踏まえまして、検討会を設け、昨年の十二月に報告をいただきました。その中で、ことしの四月からは、救急救命士につきましても、医師の包括的な指示のもとでそういうものが行えるというようになっておりまして、医行為についての考え方も少しずつ変化をしているということだろうと思っております。
赤松(正)分科員 今、局長のお話の中に、アメリカ製、ノルウェー製、こういったものが日本に輸入されているというお話がありましたが、このいわゆる価格的なものはどんな感じになっているんですか。
篠崎政府参考人 今、手元にございませんが、まだ高価でございまして、私の記憶では、七十万円ぐらいから九十万円ぐらいというふうになっております。
赤松(正)分科員 私も、関係者に聞くと、当初は、救急自動車に置くようなものについては二百万円ぐらいだったそうですが、現時点では、今局長がおっしゃったようなレベルにまで下がってきている、それは、先ほど来お話し申し上げている、いわゆるアメリカにおける公共施設等に置くものなどがそういう値段になっている、こんなふうなことと承知をいたしております。
 それで、今のお話にも一部ございましたけれども、過去においていわゆる航空関係の業界等からの要望とか、あるいはまた最近では日本循環器学会からの意見要望、こういったものが出されているわけですが、三田村教授の意見書で、非医療従事者にぜひAEDの使用許可をしてほしい、こういった要望に対する国の対応ということでありますけれども、いつ三田村意見書が出て、それに対して国はどういうふうな対応、お答えをされたのか、改めてお聞きをいたしたいと思います。
篠崎政府参考人 三田村先生の方からいただいたのは平成十四年の十二月でございまして、この対応につきましては現在検討中ということでございます。
赤松(正)分科員 現在検討中だということでありますけれども、検討はいつごろまでに終わられるんでしょう。
篠崎政府参考人 御質問がございましたので、なるべく早く検討結果を出したいと思っております。
赤松(正)分科員 検討検討で、ボクシングじゃありませんし、いつまでも検討しないで、早急に結論を出していただきたいと思いますが、その結論としてはぜひ、アメリカでは、心臓協会が心肺蘇生法の世界統一ガイドラインを発表して、一次救命措置にAEDの積極的な導入を提唱している。さっき局長のお話の中に、事が心臓であるがゆえに、なかなかその取り扱いがちゅうちょされるというか難しいということをおっしゃいましたけれども、私も本当にど素人で、こういうことを言うとあれでございますけれども、意外に心臓というのは、大臣の前で余計なことを言っちゃいけませんけれども、そうやわではなくて、しっかりしているという側面があって、そんなに難しい取り扱いをするものではないというお話もある。そんなふうに理解をいたしておりますので、ぜひともこの辺のことについてはしっかりと日本も対応するということが急がれる、こんなふうに思いますが、改めて、局長。最後に大臣にお聞きします。
篠崎政府参考人 今御指摘のございましたように、アメリカの方ではこういう方面に非常に力を入れておるところがございまして、アメリカの心臓協会、AHAというんだそうでございますが、それが特に心肺蘇生についてのいろいろなガイドラインをまとめて、世界で一番進んだ、心臓、こういう心肺停止状態の場合の対応についての書物、書物というかかなり分厚いものでございますが、出ております。私どもとしては、救急医療財団というのがございますが、そこでいろいろ関係者に集まっていただいて委員会を組織いたしまして、それを早速日本語に訳し、また日本風につくり変えまして、心肺蘇生法の指針というものをつくりました。これはごく最近でございますが、それを平成十三年七月に各都道府県に配布いたしまして、これからだんだんふえてくる心臓死に対する我が国の対応として周知徹底を図っているというような状況でございます。
赤松(正)分科員 心室細動は除細動が一分おくれるごとに救命率が一〇%ほど違ってくる、こんなふうなことも指摘されています。五分以内では五〇%が救命できる、こういうことから、心停止後五分以内に行うために、身近な場所にAEDをぜひとも装備する必要があるということを、実は私の住んでおります兵庫県の県の健康センターの所長の河村というドクターがいるわけですけれども、この人が非常に強く熱心にこのことを提唱いたしております。
 特に、兵庫県は阪神・淡路の震災という大災害を経験いたしました。そんなこともあって、個人の人間の安全保障という観点に強い関心を持っているお医者さんや、あるいはまた一般の子供たちから大人に至るまで、際立ってそういう関心が強い。しかし、いわゆる心肺蘇生法、人間が人間の体に直接蘇生をさせるためのそういう手だてだけでは、なかなかすべてをうまくすることはできない。そういった観点で、強くそういったことを主張する人がいるということをきっかけにして、兵庫県内ではそういう普及状況がかなり進んでいる、こんなふうに私たちは理解をしておりますけれども、こういった事実を認識しておられるのかどうか、各県における個別のそういう動きというものをどういうふうに厚生労働省は認識しておられるのか、お聞きいたしたいと思います。
木村副大臣 今先生の御指摘の点でございますけれども、救急患者の救命率の向上を図るためには、その現場におられる方が一刻も早く手当てを行うということが、先生御指摘のとおり、非常に重要なことである、このように考えているわけでございます。
 このため、医師がおられない場合、医師が直ちに駆けつけることができない場合に医師以外の方が自動式の除細動器を使用することについて、どのような形でやれば適正に使用していただけるのか、専門家の御意見を伺い、早急にこれを検討してまいりたい、このように思っております。
 厚生労働省といたしましては、こうした取り組みとあわせまして、今後とも幅広い関係者の方々の相互の連携のもとで広く救急蘇生法の普及とその技術の向上に努めてまいり、心肺停止患者の救命率の向上に最善の措置が講ぜられるように今後一生懸命努力をしていく、そういう決意でございます。
赤松(正)分科員 前向きなお答えをいただきました。非常に重要なことであろうかと思います。
 決して、そのAEDを導入したからすべて何もかもがうまくいくということではなくて、同時に、先ほど申し上げましたように、今その場で、この中で例えばだれか突然にぐあいが悪くなって倒れたときに、一体私たちそれぞれが何ができるかということを考えていった場合に、いろいろなことが求められる。
 私も印象的だったんですが、この河村さんという所長が兵庫県のある高校に行って、その高校は、救急救命士の資格を全員持つようにということをいわばお互いに義務づけ合うというか、そういうことに対して強い関心を持っておる学校だということで、そのドクターが行ったそうです。
 現実にみんなの前でさて一人倒れたといって、一体どうするんだということで対応を求めたところ、だれも手を挙げなかった。それは、最近の日本の教育のありようというものと関係してくるので、必ずしも、日常的に頭に入れていることが、いざという場合に、しかもそれが大勢を前にしてそのドクターからやれと言われてもできないというか、違う要素があって、そんな、はいとかいってやらなかったのかもしれませんが、だれも出なかった。生徒会長に、君は生徒会長なんだからやってみろと言っても、彼もやらなかったということを通して、要するに、今の日本社会というのは、だれかが危険だというときに、お互いに声をかけ合って助けるということがなかなかできなくなっているという、ちょっと違う話に発展していきますけれども、そういうこともあり、日常的に、今そばにいる自分の愛する人が、あるいはまた身近な人がいざというときにどうするのかということについて、もっともっとみんなが関心を持たなくちゃいけないということを言っておられる指摘は、私には非常に重要に聞こえます。
 そういう心肺蘇生のやり方の普及と同時に、先ほど来申し上げております半自動除細動器の普及について、先ほど副大臣の方から、積極的に今検討を進めているというお話がございましたけれども、最後に厚生労働大臣に対しまして、大きなスポーツやあるいはイベントをやる、そういう機会が多いわけですけれども、そういう会場での保有、設置義務づけというものが急務になってくると思うのです。ぜひともそういったことに対する取り組み姿勢強化、聞くところによりますと、今年度の予算の終わった直後あたりには結論を出したいというようなことも考えておられるようでありますけれども、そういった時期的なものも含めて、最後に大臣のこの問題に関する姿勢をお聞きしたいと思います。
坂口国務大臣 機械の方もだんだんと発達をしてまいりまして、先ほどからお話がありますように、全自動というようなものができてまいりました。そういう発達をしてまいりますと、それに対応できる人の幅も広がってくるわけでございますから、今までは医師でなければできないというふうに言われていたものを、もっとこれはそういたしますと拡大してもいいのではないかということになってくるわけでございますから、その辺の議論も機械の発展に合わせてこれはやっていかなければいけないというふうに思っております。
 したがいまして、今検討中という話でございましたけれども、いつまでも検討しておりましてもなかなからちが明きませんから、早くこれは結論を出すようにしたいというふうに思います。私が余りいつまでと言うと、こちらの方が困るでしょうから、まあまあ、しかしそうはいいますものの、夏までにはひとつ……。
赤松(正)分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
石井主査 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、青山二三君。
青山(二)分科員 公明党の青山二三でございます。
 坂口厚生労働大臣、本当に連日連夜お疲れさまでございます。
 きょうは、私の方からは、アレルギー性疾患対策の取り組みにつきまして質問をしてまいりたいと思います。
 ことしも花粉症のシーズンがやってまいりました。先ほどからくしゃん、くしゃんとやっておられる議員もいるようでございますが、いよいよシーズン到来でございます。
 現在、国民の一六%、二千万人以上の患者がいると言われておりますこの花粉症は、ぜんそく、アトピー性皮膚炎とともに三大アレルギー病でありますが、こうしたアレルギー性疾患に加えまして、アレルギー性の鼻炎やアレルギー性の眼疾患、食物アレルギーなど、アレルギー疾患は近年急増しておりまして、それがより長期化をし、また重症化するという傾向にございます。
 最近の国立成育医療センター研究所の調査によりますと、花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患になりやすい体質の若者が急増いたしまして、二十代前半では九割近くがアレルギー疾患になりやすい体質の人たちである、九割近くがアレルギー予備軍であるということがわかりました。
 また、昨年十二月に文部科学省が公表いたしました二〇〇二年学校保健統計調査では、ぜんそくにかかっている小中高生の数はいずれも過去最高で、その割合がこの十年間で倍増していることもわかりました。
 さらに、本年一月に報告されました埼玉県の県アレルギー性疾患あり方検討委員会の調査では、この一年間で何らかのアレルギー症状があった人たちが過半数を超えまして、五三・四%との結果が出ております。こうしたアレルギー性疾患の増加は、大気汚染、生活環境、食生活、免疫の変化などさまざまな要因の複合が指摘されておりまして、まさに二十一世紀の疾患と言えるのではないでしょうか。
 私は、公明党で、これまでアレルギー疾患対策プロジェクトということで、中心になっていろいろと対策を進めてまいりました。そして、アレルギー制圧十カ年戦略を政策に掲げまして、積極的に取り組んできたわけでございます。
 こうした我が党の積極的な取り組みと厚生労働省の御努力によりまして、ここ数年でアレルギー対策関連予算が年々拡大をいたしまして、治療研究の拠点整備が進展しております。二〇〇〇年十月に国立相模原病院に臨床研究センターが発足して以来、免疫・アレルギー科学総合研究センターの発足など、研究体制が拡充いたしました。さらに、国立療養所南福岡病院に新たにアレルギー専門外来の開設がされるなど、医療体制も徐々に整い始め、アレルギー性疾患対策の国の取り組みも着々と前進しているようでございます。
 しかしながら、アレルギー疾患に精通した医師の不足、そしてインフォームド・コンセントの不足、膨れ上がる医療費の家計負担、正しい情報の不足、職場、学校、家庭を含めた周囲の無理解などによりまして、患者とその家族は苦しい状況に置かれている例がまだまだございます。
 そこで、本日は、アレルギー性疾患対策をさらに前進させていただくために質問をしてまいりたいと思っております。
 まず初めに、専門医の確保と育成についてお伺いをいたします。
 あらゆるアレルギーの的確な診断、治療には、日進月歩の治療ガイドラインに精通した臨床と研究に熱意あふれる人材の確保が不可欠であります。特に、最近急増いたしております食物アレルギーや命にかかわるアナフィラキシーを正しく診断、治療できる医師は、残念ながら全国でもごくわずかしかいないというのが現状でございます。
 このために、患者や家族は、信頼できる医師に出会うことが難しく、危険な自己判断を余儀なくされるなど、手薄な医療体制に不安を募らせております。各地方自治体でも、このアレルギー対策への取り組みが始まってはおりますけれども、絶対数が少ないために、地方では専門医不在のところが多くて、確保が思うように進まず、大変苦慮しているのが実情でございます。
 そこで、どの地域にあっても格差なく安心してアレルギー治療が受けられるような専門医を養成すべきであります。アレルギー専門医の確保をどのように進めていくのか、国としての取り組みを伺います。
 また、専門医の確保には、何といってもその養成が重要でありますが、アレルギー専門医については日本アレルギー学会が認定しております。根本的な治療のできるアレルギー専門医制度をきちんとしたシステムとして確立することが必要であると私は考えております。アレルギー性疾患に精通した医師の養成と専門医制度の確立についてお伺いをしたいと思っております。
高原政府参考人 アレルギー専門医の充実及び人材についての御質問でございますが、アレルギー専門医の養成につきましては、日本アレルギー学会、お話にもございましたが、高い医療水準を確保するための医師の養成を目的に、認定医制度というのを設けております。また、その認定医の中から、より高度な専門的診療を行うことができる医師を認定専門医制度として認定し、さらに、専門医の養成のために、研修指導にふさわしい医師を指導医として認定しております。
 平成十五年二月二十日現在、認定医の方は千九百三十三名、認定専門医の方が七百八十六名、指導医が二百八十一名となっていると聞いております。
 また、厚生労働省におきましては、平成四年度から研究事業を開始いたしまして、免疫・アレルギー疾患の病態の解明や治療法の開発などの研究を推進してきたところでございまして、昨年、その成果につきまして、リウマチ・アレルギー研究白書というものを出させていただきました。これを都道府県や医療機関等を通じまして現場の方々に普及啓発することにより、専門的知識を有する医療従事者の育成に努めているところでございます。
青山(二)分科員 以前に比べますと、大分医師もふえたようでございますが、まだまだ足りないのが現状でございますので、さらに前進していただきますようにお願いを申し上げます。
 アレルギー性疾患の特徴は、例えばアレルギー性鼻炎患者の約四割に気管支ぜんそく症状が見られるという実態から見てもわかりますように、二つ以上のアレルギー症状があらわれるなど、併発を招きやすいことが明らかになっております。
 このアレルギー疾患は、乳幼児期から思春期、成人期、高齢期と全世代にわたって発症、継続する病気でございまして、単一科あるいは一人の専門医のみですべて対応できる疾患ではございません。さらに、小児期と成人期では、症状等は同じように見えましても、かなり異なっている状態があると考えられます。そして、多くの患者が三つから四つの症状を抱えておりまして、病院に参りましても、すべてに該当する専門科がないために、他の病院に行かざるを得ないなど、不便を強いられている患者が少なくございません。
 このようなことを考慮いたしますと、今後ますます、小児科医と内科医やまた各科の医師が連携をとってアレルギー疾患をトータルに診療していくことが必要であり、総合的な治療が重要であると思われます。アレルギー疾患の症状が重症化あるいは複合化した患者のためには、必要に応じて一人の患者を複数の科の医師が協力して診察できるトータル医療、チーム医療ができる体制を整えることが重要であると考えております。
 さらに、近年、治療薬の飛躍的進歩で、ぜんそく患者の長期入院は激減いたしております。こうした医学の進歩は喜ばしいことではありますが、一方、アレルギー患者に限ったことではございませんが、入院患者の治療は、必要な期間、必要な治療を必要なだけ受けられるというのが本来の入院治療のあり方だと考えております。
 とりわけ、この気管支ぜんそく患者のケースを見ますと、特に共働きの家庭、一人親家庭などにおきましては、経済的、時間的、体力的限界から、生活のリズムが乱れ、生活環境の整備が行き届かない、投薬や受診がおろそかになる、家族関係の崩壊でストレスが多いなどの問題が生じているようでございます。また、それが原因となりまして、ぜんそく発作を頻繁に繰り返して重症化を招き、ぜんそく死の危機にさらされる場合もあるとのことでございます。こうした事態を防ぐためには、患者それぞれの状況によって違いはありますが、このような特別なケースにおいては長期入院が可能な体制整備が必要であると考えます。
 いずれにいたしましても、医療体制の整備について国が早急に取り組むべきであると考えますが、御見解を伺いたいと思っております。
 また、アレルギー患者は、時に、周囲には理解しがたい病態のために社会的な差別を受けたり、免疫の異常が高じて心のバランスを失うことや、ストレスで症状が悪化することなども知られております。そこで、手厚いケアの体制の整備が必要であると考えますが、この点についても伺っておきたいと思います。
坂口国務大臣 先ほどからお話がございますように、アレルギー疾患の人が非常にふえてきたことは事実でございます。それは、一つにはやはり環境問題もあるんだと思いますし、食生活それから精神面も非常に大きく影響をしているというふうに思われます。
 これらの問題に対応いたしますときに、まず大事なことは、そうした複合的な原因によるものと思われますけれども、原因を究明して、どうすればふやさないで済むか、予防をどうするかということをやはりもう少ししっかりとやらなければいけないというふうに思っております。それが一つ。
 それから、なってしまった人に対する対応をどうするかでございますが、先ほど局長からも答弁ありましたように、専門医も以前に比べるとかなりふえてはまいりましたが、日本全体の患者数から比べますとまだまだ十分とは決して言えない数でございまして、少なくとも今の十倍ぐらいにはならないと対応できないのではないかという気がいたします。
 そうした医師の養成等につきましては、専門的な経験のある医師が中心になって、それが内科医であれ皮膚科であれ、他の科目を標榜している医師たちに対しまして最新の医療情報というものを提供し、そしてどういうふうに対応しなければならないかというふうなことを講習をする、研修をするといったようなことがやはり大事ではないかというふうに思っております。
 そうした中で次第に専門医もふやしていくということでなければならないというふうに思っておりますが、限られた医療従事者の中でございますから、そうなかなか無理も申せません。だから、多くの医師がやはりこの実態に対応できるようにどうしていくかということが、今後の対策として非常に重要になってくるというふうに思っている次第でございます。
青山(二)分科員 確かに、このアレルギー疾患に対する医者の養成というのは難しいとは思いますけれども、今大臣がおっしゃいましたように、患者がたくさんいらっしゃいます。本当に悩んで困っておりますので、しっかりと対応をお願いしたいと要望しておきます。
 次に、このアレルギー性疾患の中で、食物アレルギーの症状には、じんま疹、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、このようなものがありますけれども、これらは生活習慣病と同様に、患者自身の病態の正しい理解が欠かせません。そのために、薬の詳しい説明や生活指導があれば症状をコントロールできる患者さんも多いのでございます。
 しかし、ごく微量でもショックを起こすというアナフィラキシーは、呼吸困難や心機能の低下など、重症の場合は命にかかわることもありまして、食物アレルギーの正確な診断が重要になっております。
 この診断には、最終的には、何時間もかかる除去負担試験というのがあるようでございまして、これは、実際に食べてどうなのか、いざというときの体制を整えてチャレンジするものだそうでございますけれども、これが大変に不可欠だと言われております。保育園や幼稚園、学校など集団生活に入るときに、関係する人たちとの文字どおり命を守るためのきめ細かな打ち合わせが必要になってくるわけでございます。
 そのためにはインフォームド・コンセントに十分な時間が必要であると考えますけれども、これには診療点数がついておりませんので、その確保が難しいという実情がございます。この重要なインフォームド・コンセントを確保するための体制整備について、大臣の御所見を伺いたいと思います。
坂口国務大臣 アレルギーの場合には、医師の方がどういう状況かということを詳しく説明しなければならないと同時に、患者さんあるいはその家族から、どういう状況であるかということを詳しく聞かなければいけない。説明だけではなくて、どういう状況かということを聞く方が、より大事なことが多いわけでございます。食生活におきましても、どういうものに対してアレルギー反応を起こすのか、時にはアナフィラキシー症状を起こすのかといったようなことをやはりよく聞いておかないといけないということだろうというふうに思います。
 最近は食べ物だけではございませんで、さまざまな環境と申しますか、先日も、ある学校の塀を塗装しましたら、その塗装の中に含まれている化学物質によりまして、そしてアナフィラキシーショックを起こしたというお子さんがおみえでございまして、それ以後、その学校に行けないというようなことが起こっております。そして、その学校は、そうした塀の塗装を全部取り払いまして、そして対応したということを聞いておりますけれども、そうしたこともあり得るわけでございますので、学校の改築等におきましても、今までとはかなり違って、神経を使ってやらないといけないというふうに思います。
 そうした情報をやはり詳しく聞くということがまず大事、それに対しまして、どういうふうにしたらいいかということの説明をすることが大事になってくるというふうに思います。
 これは、現在の診療報酬体系の見直しの中でも検討したいというふうに思っておりますけれども、そうした、話を聞く、あるいは説明をするということに対する保険点数上の問題も実はあるわけでございまして、そうしたことを詳しくやりたいけれども、それを詳しく全部やっておりますと経営が成り立たないというふうに言われるところも現実問題としてあるわけでございますから、そうしたことに対する配慮もしていかないといけないというふうに思っている次第でございます。
青山(二)分科員 アレルギーというのは大変難しい問題で、患者の皆さんのお話を聞けば聞くほど、私も悩みを深めているところでございますが、大臣のそうした前向きな対応をこれからもよろしくお願い申し上げます。
 アレルギー性疾患の中でも、特にぜんそく患者におきましては、日ごろきちんと投薬や生活環境を整えているにもかかわらず、過労や風邪などの感染症等がきっかけとなりまして、夜中に思わぬ発作に襲われることがございます。その場合、受診のタイミングがおくれますと一気に重症化してしまうことがございまして、大変危険な状況になることが少なくありません。
 その一方で医師側も、夜間救急のため三十六時間連続勤務など、過重労働もまれではないようでございまして、かけがえのない小児科医の過労死や、医療ミスを招きかねない現状がございます。
 夜間など、いつ症状が急変しても受診できる二十四時間救急体制の整備が急がれております。平成十五年度予算案の中にも、小児救急医療体制の整備として十四億円が確保されておりまして、さらなる充実が求められているところでございます。
 これまで再三言われておりますが、小児救急医療の問題点は、不採算性と小児医療の医者の不足でございます。例えば診療報酬を倍額にしたといたしましても、小児科の病院の赤字は解消されないと言われるほどに小児科病院は苦しい実態にあります。
 こうした小児救急医療は通常の医療制度の中では成り立たないために、政策医療として位置づけ、対応すべきであるとの専門家の意見がございますが、こうした意見に対して大臣の御見解と、小児救急医療体制の充実に向けた今後の取り組みをお伺いいたします。
坂口国務大臣 これはなかなかうまく答えることができなくて残念なんですが、小児救急医療につきましては、二次医療圏に少なくとも一つはその救急医療の体制をつくっていこうということになっておりますが、これもなかなかままにならないということで、せめて二次医療圏二つ合わせたところでとにかく一つはつくっていこうというようなことに今なっているわけでございます。
 確かに、小児科の医師は少のうございますし、さりとてこれを急にふやしていくということもなかなか無理なことでございます。徐々にはふえていくだろうというふうに思いますけれども、なかなか急にはふえない。それではそこを一体どうしたらいいかということだろうと思います。
 考え得ることは、内科の先生にもう一度小児科のところをしっかりと勉強していただいてといいますか、基礎的な知識はできているわけでありますから、少し小児科のことにつきましても範囲を広げていただいて、そして内科の先生にもお手伝いをいただいて救急医療体制をつくり上げることができないか、それが私は考え得る一番近道ではないかという気がいたしております。
 内科と小児科はほとんど同じではないかというふうに言われますけれども、実はかなり違ったところがございまして、大人でありましたら物を言いますけれども、子供は物をはっきり言わないわけで、物を言わないのを診るのと物を言う人を診るのとではかなり違うわけでございますから、かなり違いはあるというふうに思いますけれども、内科の先生に御努力をいただいて、そしてそこに救急医療体制をつくり上げていくというのは、方法論としては私は一番現実的ではないかという気がいたしております。
 そうしたことを織りまぜながら、それぞれの地域の特徴を生かしながら体制をつくり上げていくということでなければ、これは急にはなかなか不可能だという気がいたしております。そうしたことも含めてこれから対応していきたいと思っております。
青山(二)分科員 大変ありがとうございます。
 過日、私の地元の足利からも要望書をお持ちしまして、大臣に御無理をお願いしたところでございますが、地元のお母さんたちは大変このことを心待ちにいたしておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、アレルギーの相談体制でございますけれども、アレルギー性疾患の相談員の養成についてお伺いをしておきたいと思います。
 厚生労働省では、一昨年末より、全国の保健師に対しまして、アレルギー相談員となるための研修を代表五十名からスタートさせておりまして、毎年百名規模の相談員を育てて、正確な予防や対策の知識が得られるように仕組みをつくって頑張っていただいておりますけれども、実際には、現場の担当保健師が専門的で質の高い相談に乗ることができる体制にまで至っていないようでございます。
 患者の深刻な相談に対しまして、質の高い相談員の養成、相談体制の充実が望まれているところでございますけれども、今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。
高原政府参考人 アレルギー疾患につきましては、御指摘のとおり、原因や治療法に根本的な解決が、進歩はしつつありますが、なかなか見出すことができない。また、正しい情報を適切に提供されているかというと、なかなか悩みが多いところでもございます。
 このため、厚生労働省といたしましては、都道府県等の保健師等を対象に、四疾患相談員養成研修会、四疾患と申しますと、リューマチ、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、この四疾患がアレルギーの代表的なものでございますが、こういうふうなものを対象とする相談員を養成しております。もって地域における相談体制の整備を図っていくところでございます。
 研修人員といたしましては、平成十四年十月に行いました場合は百二十名程度ということでございまして、徐々に質のいい相談が提供できるというふうに考えております。
青山(二)分科員 それでは、時間も参りましたようなので、最後に、不妊治療への公的支援について坂口大臣にお伺いしたいと思います。
 この不妊治療への公的支援につきましては、昨日、予算委員会の私の質問に対しまして、副大臣からは、重要な課題として検討を進めていく、このような御答弁をいただいたところでございます。
 これまでも、坂口厚生労働大臣は、不妊治療の保険適用の範囲について検討を進め、早急に結論を出される、こういう答弁をされておりますが、早急に結論、この早急の期間はどれぐらいを指すのか、ここで改めてお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
坂口国務大臣 不妊治療につきましては、不妊治療の内容もさまざまでございますので、どの範囲に行うのか、そしてまた、現在まだ確実にそれが成功するとは言えない状況にございますから、行いますときに何回までするのかといったようなこともございます。そうしたこともあわせまして今議論をしている最中でございまして、そのようなことをあわせまして決定をしたいというふうに思っております。そして、最終的にそれが保険でやった方がいいのか、あるいはそのほかの財源でやった方がいいのかといったこともあわせて、今最終議論をしているところでございます。
 桜の花の咲くころには何とかなるのではないかと思っておりますが、早く結論を出したいと思っております。
青山(二)分科員 それでは、桜の花の咲くころを楽しみにいたしておりますので、どうかよろしくお願いいたします。大変ありがとうございました。
石井主査 これにて青山二三君の質疑は終了いたしました。
 次に、横路孝弘君。
横路分科員 障害児のデイサービス事業が、今回支援費制度の中に組み込まれたわけでございます。私は、支援費制度そのものは、従来の措置制度に比べるとよりよいシステムだというように思っておりますが、この事業が果たして支援費制度になじむものかどうか、若干問題がございますので、その点をきょうは議論させていただきたいと思います。
 障害を負っている人にとりまして、そのライフサイクルに応じたそれぞれの段階で必要なサービスが十分に提供される、福祉とか保健とか医療とか教育とか労働とか、関係する分野が非常に広いわけでございますが、それが十分連携をとって総合的に提供されることが必要だということはますます強く認識されているわけでございます。ノーマライゼーションという理念に基づいて、総合的なリハビリテーションのシステムをつくっていこう、そういう中で、障害のある人々が地域での生活や社会参加を御自分の選択で、しかもその選択肢が多様にある社会が望ましいわけでございます。
 そうした障害者のライフサイクルの中で、最初は、まず子供が生まれて、障害があるかないかといったところから始まるわけでございまして、乳幼児期の障害を早期に発見して早期に療育をしていくということがすべてのスタートなわけですが、ここが非常に大事だと思うんですね。
 そこで、まず大臣に、この早期発見、早期療育ということについてどのようにお考えになっているのか、これはシステムとしてつくっていかなければいけないというように思いますけれども、御見解をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 まず最初に、横路先生に御質問いただいて大変恐縮でございます。
 乳幼児におきます障害でございますが、今お話ございましたように、何と申しましても早く発見するということが大事でございます。早く発見いたしますと大変軽い状態でいくこともできますし、あるいはまた障害児にならずに済ますこともできるというものも中にはあるわけでございますから、いわゆる乳幼児健診、そこに対して障害児に対する配慮というものがかなり必要だろうというふうに思っております。
 今まで乳幼児健診を行いますときに、どちらかと申しますと、股関節の脱臼はないかとか、あるいはまた結核等の疾患はないかとか、あるいは発育のおくれはないかといったようなことに重きが置かれてまいりましたけれども、障害児の問題はその時期にきちんと診ているかどうかによって決まるといったこともございますので、中には尿の検査その他もやらなければならないものもございますけれども、そうしたことも踏まえてやはり乳幼児健診のあり方というものに注意をして、そして対応をしていくということがより重要になってきている。
 こうした問題、すべてこのごろは市町村におろしてきておりますので、市町村の格差もあるというふうに考えられますから、それぞれの市町村がそれに対応できるようにどうしていったらいいかといったようなことにつきまして、これは各省庁とも連携をとりながら進めていかなければならないというふうに決意している次第でございます。
横路分科員 親が自分の子の障害に気がついて、そして悩んで、あるいはそのことをどうしても認めたくない、拒否したり混乱したりしていくわけですね。そうした中で、親が自分の子の障害を本当に受けとめて、受け入れるまでには時間が非常にかかります。例えばダウン症などの場合ですと、割と早く、生後三カ月ぐらい、大体医療機関で発見されているわけですね。こういう場合は、親に受け入れる準備がありませんからショックが非常に大きいわけですが、比較的早く療育の方に移していくことができるわけです。
 ところが、自閉症児とか知的障害児の場合は、親が最初に気がついて、どうも言葉がおくれているんじゃないかとか、反応が乏しいんじゃないだろうかということで、いろいろなところに相談に行く。だから、相談に行く回数というのは、調べると非常に多いんですね。そして悩んで、それをやはり認めたくないからためらう時間もあったりして、療育に移る時間が非常におくれていく場合もあります。
 障害を発見して、判定をして確定するというまでには本当に時間がかかるんですね。これは私のところのちょっと古い数字の、北海道の一九八七年ですが、この年、五万九千人子供が生まれて、この年に心身障害児として認定された子供は六百二十五人です。これは生まれた中ではなくて、その年に認定されたものです。そのとき同時に、グレーゾーン、いわゆる経過保護が必要だと言われて、いろいろなところで相談を受けたり通っていたりしている子供が七千八百人おったわけです。ですから、七千八百人おって、あと六百二十五人、毎年認定していけば就学前で三千人ぐらいになりますでしょうか、そうすると合わせて一万人ちょっとということになるわけですね。問題は、このグレーゾーンのところですね。
 ですから、今乳幼児健診の話がございましたけれども、それももちろん非常に大事なところでありますが、障害確定前の状況での支援が必要ではないかというように思うんですけれども、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 それは御指摘のとおりでありますし、グレーゾーンのところがそんなにたくさんあると私もちょっと思っていなかったんですが、今先生から数字を挙げていただいて、少し驚いた次第でございます。やはりグレーゾーンのところも含めて、今後対応をしていかなければならないんだろうと思います。
 グレーゾーンのところの人は、中には、ちゃんと家庭において、あるいはまた地域において対応をすれば、正常な児童と同等に将来扱っていけるお子さんもかなり含まれているんだろうというふうに思っております。その辺の判断をする、この子は少しそういう意味でグレーゾーンだということに気づく、そして両親にもそのことをちゃんと話のできる専門的な知識を持った人がかなり必要になってくると思うんですね。現在の段階で、そうしたことが現在の保健所だけで対応できるだろうかということもあろうかと思います。
 ひとつこれも、地域の医療と保健所なり市町村の担当課あたりが連係プレーをしながらやっていかないと今後うまくいかないのではないかと思いますし、人の配置の問題も、そうした中で、この地域にはこういう人が足りないからどこかで採ろうじゃないかというような話になっていかないというふうに思いますので、そういうネットワークをつくっていくことがそれぞれの地域で最も大事ではないかというふうに私は思っている次第でございます。
横路分科員 障害というのは、早期であればあるほど、それが単なる個人差なのかあるいは障害なのかという判定もなかなか難しいわけですし、親の方の心の準備もできていないということですから、子供の成長に従って精密な判断、診断を行って、経過を見ながら必要に応じて療育ができるというような体制が必要ですし、それから、親が子供の障害を受け入れるためには幾つかの段階があります。そのときには、それぞれの段階でそばに相談できる人がいるということが一番親にとっては心強い限りなんですね。
 そこで、母と子供が一緒に通園して、そして母親指導も含めた早期療育のできる、また、対象の児童を幅広くとらえて、確定した診断のできない早期からの療育も可能である、そしてなおかつ児童の発達や育児について幅広い相談機能を持つ、そういう柔軟で利用しやすい、しかも地域になければなりませんから、地域に根差した通園事業というのが私は大事ではないだろうかというように思うんですけれども、いかがでしょうか。
上田政府参考人 障害が健診等で発見され、そしていろいろな形で相談あるいは療育指導等を行い、またさらにはただいま議員御指摘の障害児通園事業、こういった事業を通じながら、児童に対して日常生活における基本的な動作の指導とか、あるいは集団生活への適応訓練とか、こういう働きかけが非常に重要だというふうに私どもも考えております。
 また、今私申し上げましたように、この事業は、地域生活を中心としながら身近な場所でこういったサービスを行うという事業でございます。あるいはまた、肢体不自由児施設とか重症心身障害児施設とか、こういった施設で専門的に手厚いサービスということも必要かというふうに思います。
 したがいまして、障害児通園事業とか、各種の施設等におけるこういった療育の体制をそれぞれの地域の中で整備していくことが非常に重要だというふうに考えております。
横路分科員 早期発見、早期療育の中で大事なことは、今大臣言われましたように、一つは、医療とか保健とか教育だとかいろいろな機能があります。そういう機能を総合的にネットワークをどうするかということも必要ですし、今局長から答弁いただいたように、地域の中でやはり身近なところにあるということが必要なんですね。
 それからもう一つは、だれでもいつでも受け入れる。割と障害のいろいろな仕組みというのは、障害別だとかいろいろな基準みたいなのがあって、そこで分けられている。それはそうではなくて、トータルに受け入れることが必要なんですね。
 実は、今回の支援費制度で少し心配になりましたのは、私のところの北海道で、母子通園センターという第一次療育圏、第二次療育圏、第三次療育圏という、早期発見、早期療育のシステムをつくってきたんですね。第一次療育圏というのは六十七カ所全道にありまして、そのうちの四十五は政府の国庫補助を受けている、いわゆる今で言う障害児デイサービスセンターの補助事業で、二十二は道の単独事業でやっていまして、今現在、三千人以上の発達に心配のある乳幼児が通っていまして、それをサポートしております。
 ここの機能を何とか早期発見、早期療育システムとして充実させるということで、持っている機能は、親や地域の相談に乗ったり、乳幼児の健康診断にも立ち会ったり、それから保育所や保健所と並行して通園している子供がいますから、そことの連携を密にするというようなことで非常に地域にとって大切な存在になっております。センターによっては、ミニ児童相談所のような役割を果たしたり、あるいは育児支援センターのような機能も持っていまして、非常に機能的で柔軟なシステムとして、この児童のデイサービス事業というのを活用させていただいてきたわけです。したがって、地域の中にもいろいろな協議会ができまして、医師だとか保健婦、それからいろいろな人たちが、専門家が集まって協議するような機関もできているわけであります。
 それをやっている人々から、ちょっと心配だと、今回の支援費制度に障害児のデイサービス事業が組み込まれたものですから。そこでの心配というのはどういう点かといいますと、一つは、支援費制度ですと、申請をして障害の認定をして、契約をして利用するという仕組みですね。乳幼児の場合、もちろん本人ができませんから親がやるわけでございます。障害があるかどうかという不安を持っている子供たちが、従来は母子通園センターという形で障害児童のデイサービス事業を活用できたんですが、これは支援費制度になったとき一体どうなるのか。
 つまり、もともと、支援費制度のルールと今までやってきた母子通園センターというものと、中身が全然違うわけなんで、支援費制度に取り入れたこと自身がちょっと間違っていたんじゃないだろうか、なじまないんじゃないだろうかという意見があるんですけれども、この点はいかがでございますか。
上田政府参考人 まず、支援費制度でございますが、これまでの、行政がサービスの利用者を特定しましてサービス内容を決定するいわゆる措置制度から、利用者本位の考えに立つ新しい仕組みということでございまして、利用者が事業者との対等な関係で自由に選択し、そして契約によって利用するという制度でございます。
 これまでのデイサービス事業につきましては、基本的に、支援費制度移行後も、事業の対象者とかその内容については現行と同様であるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、利用者の立場に立っての支援費制度で御利用をいただくという形にこの四月から行うこととしたところでございます。
横路分科員 だから、これは結局、申請すると、障害があるかどうかという判断するわけでしょう。私が言っているのは、今までの事業の中では、障害があるかどうか不安な人たちたくさんいるわけですよ。そういう人を、だれでもいらっしゃいといって、お母さんと一緒に通ってもらって、母親に対するエネルギーというのは、子供に対するエネルギーと同じぐらいみんな費やして、職員の人たちやっているわけですね。
 今回、これでそれぞれの市町村に申請するわけでしょう。だから、一体これはどういう基準になるんですか。障害ということが前提になると、障害認定されていないとだめだということになりますと、全然行けなくなるわけですよ。そうすると、今までの、例えば地域でもっていろいろ工夫してやっているような事業がカットされたら困るという心配があるんですね。
 ですから、本来は、これはちょっと支援費制度に移行したのは私は間違いだと思うんですけれども、移ってしまった以上、そのかわり、あらゆる人をちゃんと受け入れますよと。つまり、障害の認定みたいなものは、特に、例えば何とかの手帳だとか医者の認定だとか、そうじゃなくて、お母さんが心配で、子供がどうなのか心配だという人はみんな受け入れるという運用にしていただかないと、そうやって療育のシステムをつくってきた基本のところが崩壊をしてしまうんですね。関係者はそういう心配を非常にしているんです。
坂口国務大臣 これは介護のときにも全く同じことが起こったんですね。要介護が上の人はそれでそれぞれ認定してよかったんですが、それこそグレーゾーンで、比較的元気だけれどもどこかちょっと当てはまるといったような人が多く利用をいたしておりましたところが、あの介護保険をつくりましたときに、あなた方はだめよということになってだめになった。だめになったその人たちは、その人たちに手を差し伸べれば将来悪くならなかったものが余計悪くなってしまうというような矛盾が起こったわけでありまして、介護の場合には、その人たちは別枠の予算をつけて、そしてその皆さん方に対する対応をしてもらうように市町村にもお願いをしているわけでございます。
 今お話を聞くと、よくこれは似たケースになるなというふうに思ったわけでございますが、そこをちょっと考えさせてください。今ここで即答できないのは申しわけないんですけれども、御指摘いただいたところは十分に理解できるところでございますので、そういう皆さん方に御迷惑がかからないようにどうしたらいいかという観点から、一遍考えさせていただきまして、御報告させていただきますので、お願いいたします。
横路分科員 どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 今まで地域で、それぞれ工夫していろいろなことをやっているんです、このデイサービス事業も。ですから、そこでやってきたことは地域の工夫として、制度は変わったけれどもそれは認めるよという方向性をはっきりさせていただくこと。
 それから、窓口で、親が行って、いろいろと聞かれるわけですね。これが、子供に障害があるかなどうかなと迷っているお母さんにとっては、ちょっと対応が悪いと非常に厳しいことになって、もうやめたということになりかねないんですね。ですから、非常にここのところ、大事なところでございますので、その点。
 それからもう一つは、今度自己負担がかかるわけですね。こういうものが、自己負担を入れることがいいのかどうなのか。障害を持っている人がいろいろな選択をして制度を利用するという趣旨と若干違って、まだ子供が障害があるかどうかはっきりしていない、そういうグレーゾーンの乳幼児期の話ですから、その時期のデイサービスについて一割負担というのは、これはなかなか大変だなと。つまり、迷っているお母さんにとって、お金がかかるんならばいいやということになりかねない。今まで地域では、ともかく何か心配のある人、できるだけたくさん来てやりましょうということでシステムをつくってきたものですから、お金の点も、利用者負担を私はぜひなくすようにしていただければというように思います。
 障害がはっきりした子供たちよりも、むしろ障害を認定される前、あるいは軽度の発達障害を疑われているというような、なかなか決めかねる子供たちはたくさんいるわけですから、そういう意味で、一つは早期発見、早期療育システムとしてどういうシステムがいいのか。
 今度、支援費制度が施行されていって、市町村が相談を受けることになるわけですね。そうすると、これはどちらかというと、サービスの選択など、サービスの利用援助としての相談機能というのがどうも中心のようなんですが、しかし実際には、いろいろやっていきますと、やはり全体的ないろいろな相談に応じざるを得なくなるわけです、市町村で。
 ですから、それは最初の早期発見、療育システムの中の一つにちゃんと位置づけてもらって、そして、そうはいっても専門家が必要ですから、従来のこういう施設というのはそこに専門家がおります。特に、地域によっては、ネットワークを張ってきちんと位置づけてやっているところはなおかつそういう仕組みができているわけでございますので、この支援費制度の相談体制をつくるということで、都道府県中心にして、都道府県が市町村をバックアップしろというような仕組みになっているようでございますが、これは当然なんですね。北海道の仕組みでいうと、第二次療育圏というのは大体児童相談所の圏域で八カ所ぐらいにありまして、それが地域に対するいろいろな支援の機能を持ってバックアップしているわけです。
 問題は、やはり市町村のところでなかなか専門的療育がないところが多いと思いますので、早期発見、早期療育システムの一つとしてもこの支援費制度の相談支援体制というのを充実させていただいて、そして、それを活用しているいろいろな児童のデイサービス事業から、あるいはそれ以外の施設もございますから、そういうものの活用をどうするのかということをお考えいただければ、各地でいろいろと苦労しながら積み重ねてきている努力というのが全国あちこちにあります、そういうものをうまく生かしていくことになるんじゃないかと思います。
 これは、いきなりばっとやっちゃうと、制度、仕組みが違いましたということで、それはだめですよとかといって、せっかくやってきたものを崩壊させてしまうことになりかねないんですね。ぜひ、そういうように、ひとつ支援の体制づくりの中でも考えていただきたいと思います。
坂口国務大臣 北海道以外にもあるいはそうしたやり方をおやりになっているところもあるかもしれませんし、全国的な問題であろうというふうに思いますので、その辺もよく調べまして、そして、中間的なと申しますか、まだ予防し得る段階にあるような、そういう皆さん方のことも含めまして、今後どう対応していくかということを一遍検討させていただき、御相談にまた伺わせていただくと思いますので、よろしくお願いします。
横路分科員 最後に、障害者プランなんですが、このプランのいろいろな目標と達成度というのを見ていますと、この児童のデイサービスのところはどんなぐあいになっているでしょうか。どうも余り成績はよくないようなんですが、その理由はどういうことなのか、障害者プランに関連して、最後にお答えいただければと思います。
上田政府参考人 デイサービス事業につきましては、十四年度の目標値が千二カ所でございましたが、十三年度末の実績は四百九十八でございまして、そういう意味では目標に比べて低い状態のような状況にございます。この点につきましては、私ども、このデイサービス事業の必要性、重要性等につきまして啓発、働きかけを行ってきたところでございますが、必ずしも私どもの働きかけが十分でなかったために、その結果、地方公共団体での取り組みが必ずしも十分でなく、こういった状況でございます。
 したがいまして、私ども、今後とも、デイケアサービス等々、こういった在宅サービスにつきましては、全力を挙げて都道府県、地方公共団体の方へ働きかけをこれからも引き続き進めてまいりたいというふうに考えております。
横路分科員 千カ所というと、例えば北海道でいう、ちょうどこの母子通園センターの六十七カ所ぐらいに該当するんです、全国で千カ所というと。普及しないのは、バックアップの仕組みがちょっと弱いということですね、補助の制度を含めて。
 いろいろな障害を持った子供さんというのは、残念ながら重度、重複化して、数もふえているというような状況にあるわけでございますから、そういう需要というのはしっかりあるというように思っています。なぜ目標に半分ぐらいしか達成できなかったのかということで、今PRのお話ありましたが、私はそうじゃなくて、システムそのものに問題があるんじゃないかというように思いますので、その辺のところを十分総括されて新しいプランに取り組んでいただきますように、しかもその際は、やはり早期発見、早期療育というシステムの中の位置づけということが私は大事ではないかというように考えておりますので、どうぞそういった意味での御検討を進められますようにお願いをして、質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
石井主査 これにて横路孝弘君の質疑は終了いたしました。
 次に、保坂展人君。
保坂分科員 社民党の保坂展人です。
 予算委員会の審議の中で二度ほど年金積立金の議論をさせていただきました。私、前回、平成十四年版の厚生労働白書、こちらの最後の四百十八ページの年金積立金の記載部分、これを質問させていただきました。四百十八ページには、厚生年金保険、国民年金の積立金の累積状況の年次推移の数字でございますけれども、十三年度は百四十七兆、こういう数字が出ております。
 一応確認の意味で、社会保険庁から来ていただいていますが、十三年度の数字は百四十四兆というふうに聞いておりますけれども、その予告を多分社保庁の方へしていなかったと思うんで答弁は求めませんが、ここにはこういうふうにあります。大臣からも言っていただいているように、累積利差損を時価評価で今回やることにした、二・八兆減で百四十四兆幾ら、こういう数字に現在なっているんですね。ところが、こちらの反対側の四百十九ページの年金財政の将来見通しの方を見ますと、十三年度の年金積立金は年度末で百八十一兆、こういう数字になっているということを前回指摘させていただきました。
 では、年金局長に再度伺いますが、先般答弁で、これは厚生年金基金の代行部分を含んでいるので、その差異が生じているんです、こういうことでしたね。よろしいですか、ちょっと確認の意味で。
吉武政府参考人 まず、最初のお尋ねでございますが、簿価と時価の差でございまして、先生がおっしゃいました百四十七兆三千四百二十四億円、これは特別会計における積立金の総額でございます。これに対しまして、時価で申し上げますと、百四十四兆三千三百十五億円という形でございます。
 それから、厚生労働白書の今先生お尋ねの件でございますが、左の方は、今申し上げました特別会計における積立金を表示いたしております。それで、右の方でございますが、これは平成十一年の財政再計算の際の財政見通しでございますが、この中には、厚生年金の代行部分に相当するものが含まれている形でございまして、そういうことで次元が違うという状態でございます。
保坂分科員 まさに議論したいのはこの点なんでございます。
 私もどっちかというと数字には余り強い方ではありません、文系ですので。先日、広島市長に再選された前議員の秋葉忠利さんなどは数学者でございまして、そういう意味で緻密な話じゃございません。どっちかというと小学生みたいな話かもしれません。足し算、引き算の世界のことでございます。
 なぜかというと、一枚のペーパーを送られてきたんですね、年金局から。議員の質問に対してこういうペーパーがありますと。平成十二年の部分は、厚生年金基金の最低責任準備金三十四・一兆円が入っているんですよというペーパーでございます。私、それを見て、ああそうですか、そうするとその前の年、平成十一年度、平成十年度、九年度、八年度、経年で見たい、どのぐらいの最低責任準備金があるのか。年金局数理課の担当者の方はこうおっしゃったんですよ。保坂議員、この年しか出していないんですよ、つまり平成十二年しか出していないんだと。
 私は、ちょっと、引き算、足し算の世界でわけがわからなくなったんですね。要するに、トータルの数字が出るのに、その最低責任準備金の額がないわけです。そうすると足し算できないじゃないですか、おかしいですねと言って、いや、ないんですよと言って、どういうことですかねと言っているうちに、一日たったら、もう一枚のペーパーがぺらっと送られてきたんですね。ありましたということなんです。ちゃんとあるんですね。一日で計算しちゃったのと聞いたら、いや、ちょっと勘違いで、あったんですということなんです。
 だけれども、三十兆、二十九兆といったら、国債発行額三十兆円の議論なんかありますけれども、これは大変な額ですから、きちっと押さえておきたいんです。私は、これを見て、ちょっと首をかしげるんですよ。
 厚生年金積立金という大枠がここにございます。そして、ここに社保庁の数字と厚生年金基金の方の最低責任準備金があって、年金局は包摂して考えていると。つまり、その最低責任準備金というのは、いざというとき、代行返上などのときに戻ってくるからという部分でここへ記載しているんだと。これは年金局の正式見解ですか。そういうふうにやってきたんですか。
吉武政府参考人 過去の経過も含めて御説明申し上げたいと思います。
 両方の計算のやり方はもちろんあるわけでございます。端的に申しますと、厚生年金制度が四十年代に発足をいたしておりますが、昭和五十五年度財政再計算までにつきましては、厚生年金基金を推計いたしまして、そしてそこを外した形で財政再計算を行ってきております。
 ただ、先生御案内のとおり、例えば、最近で申し上げれば、厚生年金の代行返上のような事態が起きておりますので、トータルとして申し上げますと、厚生年金基金から今まで給付をしていた部分につきまして代行返上で返上をいたしまして、政府の方で支給するという、その際の責任準備金を払っていただくという形になっております。そういうこともございまして、代行部分もある意味で厚生年金の給付の一部でございますので、全体として財政再計算を行った方がいいだろうという形で、現在の形になっている状態でございます。
 それから、先ほど先生お尋ねがございました十一年財政再計算の平成十二年度のところで申し上げますと、これは当時の実績の予測で出しておりますので、このうちの基金代行部分については三十三・八兆円というふうに見込んでおります。
 ただ、その先の姿で申し上げますと、今申し上げましたように変わってまいりますので、厚生年金基金の方も厚生年金の被保険者でございますので、トータルとしての賃金なりトータルとしての給付の推計を出しまして、その内数として入っているという状態であります。
保坂分科員 私、割かし人を信じやすい性格でもございまして、一応ちゃんと信じるんですね。それから、きょうになって、さらに説明をしていただいたんです。来ていただいたんですが、そして、きょうこれをいただいたわけです。
 つまり、私のところに最初にいただいたペーパーは「平成十二年度財政状況」、社会保障審議会年金数理部会で昨年四月二十四日に配付されたものです。これを見ますと、私のところに来たぺらっとした一枚紙は、「特会の決算に基金代行部分の推計値等を用いて加工して比較した場合」、参考なんです、あくまで。一枚めくると、ちゃんと書いてあるんですよ。
 「収支状況の比較」で、十二年度実績が百三十六兆円、将来見通しが百七十七兆円、こう書いてあるじゃないですか。つまり、私が思ったのと同じような落差が本来生じているという資料はここにあるわけです。
 しかも、こちらの概念図を見ても、どこにも、今局長がおっしゃった最低責任準備金というのはないですよ。
 これ、あくまでも推計値でしょう。だから、本来は、このペーパーの十四ページであるように、十二年度の実績は百三十六・九兆円だった、将来見通しは百七十七・二兆と見通していた、落差は生じたということでいいんじゃないですか。どうですか。
吉武政府参考人 ちょっと御説明が十分ではなかったのかとも思います。そういう点では反省を申し上げたいと思いますが、今先生がおっしゃいました十二年度実績の百三十六兆九千億、これは実は厚生年金の本体でございます。いわゆる特別会計でございます。
 それから、平成十一年の財政再計算で計と出しております百七十七・二兆につきましては、今申し上げました基金代行部分も含んだものでございますので、その違いでございます。
保坂分科員 これは、大臣、本当は答弁になっていないんですね。これは大事なことなので、一応調べました、時間がなかったんですが。
 日銀に聞きました。日本銀行に聞いて、日本銀行の方のデータはどういうふうになっているのかなというふうに、資金循環統計を取り寄せてみたところ、日銀の場合は、社会保障基金、うち公的年金、この中に厚生年金基金の最低責任準備金は入っていません。
 それから、財務省の主計局の財政分析の方に取り急ぎ聞きました。これは国のバランスシートです。国のバランスシートの公的年金預かり金の中に公的年金基金の積立金は含まれておりますかと言った。これは含めないですよ、債務だけ一方的に載っけるというのはおかしいです、資産も載っけてあげなきゃいけないわけだし、これは入っていません、こうなんですね。
 しかも、社保庁に聞くと、今そういう予告をしていませんでしたから、年金積立金は幾らですかと聞くと、最低責任準備金を外した金額を答える。しかし、今局長がるる答弁したように、なぜか財政見通しだけは入っている。これは混乱のもとじゃないでしょうか。どうしてこういうことが生じているのか。
 そして、年金白書というのは、恐らく、社会保障制度について関心の深い、例えば高校生あるいは大学生、もしかしたら中学生ぐらいでも買うわけですね、あるいは図書館で借りる。そして、日本社会はこれから大丈夫かなというのを見る資料ですね。そこにないんですよ、何もそういうただし書きは。それで、三十兆も数値が違っている。これはきちっとそろえるべきじゃないですか。ちょっと、大臣にまず見解を。
坂口国務大臣 先生は数字に弱いどころじゃなくて、先生の数字の強さに驚いて聞いているわけでございますが、確かに、数字というのはそれぞれの根拠があって出すものでございますから、並べて出すときにはやはり同じ根拠のものを並べないと比較にならないということは御指摘のとおりだろうと思います。
 私も、その根拠になるものが、違ったものが並べてあるのか、同じにして並べてあるのかというところまで確認をいたしておりませんが、もし違っているとすれば、それは同じ根拠の数字を並べるということにして、ごらんいただいた皆さん方にわかりやすくしなきゃいけない、私の方がもっと素人でございますけれども、私はそう思います。
保坂分科員 局長にもう一回伺いますけれども、来年、我が国の大事な大改正があるわけですね、これから議論していかなきゃいけない。私は、その後、積立金はずっと手をつけないというわけにはいかないだろうと思っているんですよ、新しい制度に変わっていくためにも。今積立金は幾らあるのかということもきちっと把握をしてやっていかなきゃいかぬ。ですから、困るわけですね。左のページは百五十兆で、こっちは百八十兆で、三十兆はどうなんでしょうなんという話は困る。
 これについて、もう一回伺います。ここに、十四ページにはちゃんと落差があるでしょう、実績ベースと将来財政見通しの。あくまでも、数理課からお出しになったペーパーというのは、繰り返しますが、参考資料なんですね。当てはめて、特会の決算に推計値を用いて加工して比較した場合とただし書きがあるんです。ですから、本来はこれで見るべきであって、この裏だけを私に送るというのはちょっとアンフェアじゃないかなと思います。いかがですか。
吉武政府参考人 まことに申しわけございませんが、ちょっと私、その資料を今手元に見ておりませんで、まことに恐縮でございます。
保坂分科員 では、渡します。
 裏をめくると「参考」と書いてあるんですよ。
吉武政府参考人 今先生おっしゃられるのは、平成十二年度実績では特会の積立金を表示し、それから将来見通しの十一年財政再計算では厚生年金基金の代行部分を入れた数字で表示をいたしておりまして、違った側面のものが出てございまして、その最後の「特記事項」の中で、「厚生年金基金の最低責任準備金、国庫負担繰延額及び公社未移管積立金残高」というふうになっておりますが、確かに、この数字を見た瞬間は、最後の「特記事項」までごらんいただかないとこの差異がなかなかわかりにくいという表現になっております。
保坂分科員 なかなか答弁うまいですから、何となく答えられたように思っちゃうんですが、違うんですよ。
 大臣も聞いていただきたいんですが、三十四兆円近く違う。それは厚生年金基金の最低責任準備金だと言われたんです、最初。それは、今局長ごらんになっている十五ページのデータなんですね。そのときに初めて計算したものですと聞いたんですよ。だから前の年はわかりません、統計をとっていないからというふうに聞いたんですが、出てきたわけですね、これは。だから、どちらを信じたらいいのかというふうに思うわけです。つまり、局長、本当にこの厚生年金基金の最低責任準備金を加えてずっと計算してきたんですか。いつからそうしてきたんですか。(吉武政府参考人「代行部分ですか」と呼ぶ)ええ。発足当初からですか。
吉武政府参考人 先ほど一番最初にお答え申し上げましたが、財政再計算は五年に一回実施いたしております。それで、基金を創設しました昭和四十年の財政再計算見通しにおきましては、まだ基金が実は設立されておりませんので、これはトータルで計算をいたしております。その後、昭和四十四年の財政再計算から昭和五十五年までは、厚生年金基金を一つの独立制度として推計をいたしまして、収支の両面、それから積立金から厚生年金基金の代行部分を控除して作成をしておったわけでございますが、先ほど申しましたように、代行給付というのは厚生年金の給付と一体でございますので、それ以降につきましては一体として取り扱って、現状のような収支見通しを出しておるという形でございます。五十五年の次、五十九年に財政再計算を行っておりますので、五十九年以降、現行方式で計算をしておるということでございます。
保坂分科員 ただ、日銀も財務省も含んでないわけですね。つまり、年金積立金はと社保庁に電話すると、それは含まない数字を答えるわけですね。けれども、多分、年金局の数理課に電話をすれば、財政見通しについては今局長の言うような答弁をされるでしょう。だけれども、この責任準備金とは一体何かということをやはり考えてみなきゃいけないと思うんですね。
 これは免除保険料にあって、それぞれ各基金が確保するべきものであって、もし代行返上で積み立て不足の場合には設立母体企業がその補てんを返上するべきもので、何か誤解を呼ぶんじゃないかという心配があります。つまり、このように記載をしておくと、いわゆる各企業の補てん義務を免除してすべて国が面倒を見るというような姿勢を持っているのかと、そうではないと思いますが、そういう誤解を呼びませんか。
吉武政府参考人 一つ申し上げたいと思いますが、厚生労働白書で先生最初にごらんになりましたときに、財政見通しの右側のページでございますね、ここについて、厚生年金基金の代行部分について、含まれているということを注でつけておりませんので、こういう点はきちんとわかるように改めたいというふうに思っております。
 ただ、財政再計算を行いますときには、いずれにしましても、トータルとしての厚生年金の給付、それから保険料をいわば動態計算で計算をしながら将来の姿を示すという形でございますので、先ほど申しました厚生年金基金の代行部分というのは、厚生年金本体といわば一体のような形、運営主体は違いますけれども、給付としては一体のような形、保険料負担も全く同じでございますし、給付としても両方足して厚生年金の給付となってくる、こういう性格上、財政再計算の場合には、むしろ今行っておりますトータルとしての比較をやった方が、いわば保険料なり将来の給付総額についての推計がトータルとしては安定をしておるという形で、今の姿でやらせていただいているという形でございます。
保坂分科員 今、前厚生大臣もいらっしゃって、バーチャルな世界だ、そういう声がちょっと聞こえました。
 いわば実際の資産であるところの年金積立金と、あくまでも理論値である責任準備金を合体して計算しちゃうというのは、これはちょっとやはり論理的におかしくはないかと思います。
 それで、ここにまた戻ります、小学生の気持ちに。そうすると、もし年金局長の答弁が正しければ、一体のものでございますからこうやって計算しますというんであれば、今度左側がおかしくなってくるんですよ。それだけ一体のものをなぜ実績ベースで今度含めないのか、こういうふうに問われたらどう答えますか。なぜ代行部分を外すんですか、実績からは。
吉武政府参考人 厚生労働白書で左側に記載をいたしましたのは、これは実際に特別会計で保有しております積立金が決算で出てまいりますので、その決算の数字をここに示させていただいているという形です。
 ただ、先ほど申しましたように、右側を確かにごらんをいただきますと、これはトータルとしての、厚生年金基金の代行部分の給付を含めまして財政再計算をやっておるわけですけれども、そこの違いについてもっと明確に御説明をしていないという点は私どもは改めたいというふうに思っていますし、今後わかりやすくそういうことを御説明できるように表示していきたいというふうに考えております。
保坂分科員 一定の議論は進んだと思います。
 坂口大臣にちょっと積み残しの議論をさせていただきたいんですが、これは我が党の土井党首が代表質問で、いわゆる株式市場運用の問題、これは私が昨年も一昨年も取り上げてまいりました。上田議員なども取り上げていらっしゃいますけれども、大変な損失を今生んでいるということで、深刻だということですね。
 これは、郵貯、簡保においては、郵政公社スタート時に、一応新規資金はとめようということが明らかになりました。一方において、年金資金は、昨年の予算委員会でも坂口大臣から、これで大丈夫なのか、損失を生まないかという指摘を踏まえて、その是非についても議論していきたいということでございまして、議論しているんですね。しかし、議論はしているけれども、とりあえずやっていくという結論に今なっていると聞いています。
 そうすると、国民からの預かり金であるところの郵便貯金、簡易保険と年金積立金というのは、国民から預かっている大切なお金であるという点において本質的な違いはないんじゃないかということを我が党の土井党首、聞きました。それに対する小泉総理の答弁なんですが、「公的年金給付は賃金上昇率に応じて給付額が増加するという点で郵貯や簡保とは異なる性格を有していることから、賃金上昇率を上回る収益を長期的に確保することを目標としており、」株式を一定の割合で限定的に運用していますという、これは何か、随分、タイムマシンに乗って昔に戻ったような答弁なんですね。要するに、賃金は上がる、そして運用して実績を上げてふやすという話ですから、全くかみ合っていない議論なんですね。
 郵便貯金、簡易保険でストップをしているのに、年金資金においてはまだいろいろな議論はあるけれども続けるということ、どういうふうにその二つの資金、公的な預かり金、国民からの預かり金という意味で違いがあるのか、違いはないのか、大臣の認識を問いたいと思います。
坂口国務大臣 この年金資金の問題には、土井党首からも御質問いただきましたし、上田議員からも予算委員会において御質問をいただいたところでございます。
 そこの総理の答弁にありますように、確かに、今までの過去の経緯を見れば、賃金の上昇分というものをこの年金資金には上乗せをしていかないと、それに見合った年金というものを将来払うことができない、これはそのとおりでございますが、昨今の経済状況、インフレからデフレになってきているというこの状況、まさかデフレがずっと続くということはないというふうに思いますけれども、少なくとも今までのような右肩上がりがずっと続くという状況でなくなってきていることだけはよく認識をしなきゃならない、私も率直にそう思っているわけでございます。
 そうした背景の中で、この年金資金をどう運用していくと最も堅実に行けるのかということなんだろうと思います。国債を買ったら安心かといえば、そういうわけにもいかないわけでございます。そうしたところも十分に念頭に置きながら考えていかなければならないと思いますが、昨年の十月から再び議論を始めまして、間もなくこの議論、三月の初めごろには終わるのではないかというふうに思っております。これらの議論も踏まえながら、そのとおりにするということではないと思いますけれども、もう一度、最も大切な年金資金を今後どうするかということに対する結論を出さなければいけないということになります。
 私個人も、人任せではなくて、自分も勉強しなきゃいかぬというので、先生ほど数字に強くございませんけれども、今一生懸命勉強しているところでございまして、誤りないようにやっていきたいと思っております。
保坂分科員 坂口大臣十分おわかりになっての答弁だと思いますが、この年金資金というのは大変デリケートですね。日本のマーケットの中でどのように動くか、もし新規資金がとまるなんということになったらどういう影響を与えるかということで、発言は慎重になるのはわかります。
 しかし、〇・九%物価スライド制を適用してみて、四月からこれは始まるわけですね。お年寄りはみんなそういうことを言いますよ、街頭で話しかけてこられるお年寄りは。それで、いわば支出が、年金給付が一体幾ら減るのかなということで、ちょっと資料をくださいと言ったら、二千六百億円、国庫負担分は四百億ぐらいですか、まあ三千億円ぐらいなんですね。しかし、厳しい時代ですからと。皆さん、厳しい時代ですからというふうに言いますよ。少子化でお年寄りが多くなるし、だから、ある程度いたし方ないのかなという思いも持ちながら、しかしまじめに働いてきたのになということで不満もある。
 しかし、五兆円の損失とか、二・八兆でまた新たにカウントされれば五兆近くになります、こういうことは余り知らないのですね。これをもし国民の多くが知っていったらどうでしょう。その〇・九%、わずか三千億、しかし何兆というお金が、しかも気づかなかったというのじゃなくて、たびたび議論していて、やはり最終責任者は坂口大臣ですね。
 その認識と、いわゆる郵便貯金と簡保の資金と、国民から預かっているという意味においては差はないと私は思います。いかがですか。
坂口国務大臣 現在の年金の運用方法を見てみますと、厚生労働省が、別枠にはしておりますけれども、責任を持って運用しているわけでございますから、最終的な責任はやはり大臣に来るんだろうというふうに私は思っております。決してこれは逃げられる話ではないと思っております。
 それだけに、ここを明確にして国民の皆さん方にお答えをしなければ、年金制度をどう改めましても信頼回復はなかなかできないという気がいたします。したがって、年金運用の問題、それは資金での運用の問題それからその他にさまざまなものをつくって、そうして今日まで来たといったようなことの整理、そうしたことをあわせて、年金制度の将来をどうつくり上げていくかということをワンセットでお示しをしなければ、やはり納得を得ることはできないのではないかというふうに思っている次第でございます。
保坂分科員 確認なんですが、郵便貯金、簡易保険、それも国民からの預り金、年金資金も国民からの大切な預り金、本質的に差はないと私は思います。大臣はいかが認識されますか。
坂口国務大臣 今までは、そこは少し違うというふうに認識をして今日までの運用をしてきたわけであります。
 これから先、そこの相違をこれからも主張していくのか、これからはそこにはもう差がないということで運用をしていくのかといったことは、前提としてその認識の仕方というのは非常に大きな違いになってくるというふうに私は思っております。
 今、そうしたことも含めながら議論を進めている最中でございまして、そうした議論を踏まえて、私も最終的な結論をしなければならないというふうに思っております。
保坂分科員 済みません、あと一問で終わります。
 では、ちょっとくどいようですが、まさか、郵貯、簡保のお金は削れないけれども、年金資金は流失していいなんということはよもやお考えになっていないですね。差異はないのかということはそういう意味です。かつての時代を今お答えになりました。そうじゃなくて、国民からの預り金は守る、そういうしっかりした決意を示していただきたい。
坂口国務大臣 そこは大事なところでございまして、国民からお預かりしました年金というものを守っていかなきゃならない、その決意で決定したいというふうに思っております。
保坂分科員 終わります。
石井主査 これにて保坂展人君の質疑は終了いたしました。
 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)分科員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 大臣、御苦労さまでございます。
 本日は、特定疾患対策研究事業、それから小児救急医療、この二点について質問をさせていただきます。
 昨年、小児難病の一つであります胆道閉鎖症で苦しむお子さんを支援している団体の方から御相談をいただきました。十月には、大変お忙しい中、坂口大臣に団体の代表の方及び患者さん方に会っていただいたところでございます。
 胆道閉鎖症というのは、肝臓でつくられた胆汁を腸へ流す胆管が閉鎖または欠損する病気、そういう病気を持って赤ちゃんが生まれてこられるわけですけれども、現在、胆道閉鎖症の患者さんは全国で約三千人ほどいらっしゃる。昔は、生まれてきて二、三年で亡くなられるということだったわけですが、最近、医療技術が進歩して手術が開発され、一割の方はお亡くなりになるそうですけれども、大体九割の方は助かる。しかしながら、助かってもこれが完治するわけではなく、助かった患者さんも、いずれは肝機能障害、肝臓移植ということになるそうでございます。
 このように、手術は開発されましたけれども、引き続き一生その病気に苦しめられる、こういう病気だそうでございます。この胆道閉鎖症の患者さんや御家族の方にもお会いし、生活を支えていくための社会保障制度や福祉、医療制度が不十分なため、医療費の負担を初め大変な困難を強いられているというお話を伺ったところでございます。
 まず初めに、厚生労働省としてこのような胆道閉鎖症の患者さんの実態をどのように把握し、認識をされているのか、お伺いをいたします。
岩田政府参考人 胆道閉鎖症は、放置しますと、今先生がおっしゃいましたように肝不全に陥るということでございまして、そういうことから、この病気は出生後できるだけ早い時期に手術する必要があると聞いております。
 その結果、多くは救命されますけれども、術後の障害が残る場合もあり、御家族の御苦労、御負担は大変大きいものがあるというふうに認識いたしております。
 この病気は出生一万人に約一人の割合で発生するというふうに言われておりますが、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象といたしておりますので、その事業の中で患者を把握いたしております。平成十二年度の状況ですけれども、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となっている患者、したがいまして十八歳までですけれども、千九百三十名ということでございます。
 また、胆道閉鎖症の治療を行っている医療施設が会員になっております日本胆道閉鎖症研究会というのがございまして、ここが一九八九年から登録事業を行っているというふうに聞いております。これによりますと、手術を受けた乳児などの術後一年後の状況を見ますと、九割の方は生存なさっておられて、一割の方が死亡されております。生存されている方を見ますと、黄疸のない方が全体の約六割、黄疸があるという方が約四分の一、そして一%弱の方が肝移植の手術をさらにされている、そういう状況のようでございます。
斉藤(鉄)分科員 先ほど答弁にありましたように、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象になっておりまして、十八歳までは手厚い保護があるわけですけれども、十八歳以降は高額の医療費負担が強いられることになる、このように伺っています。しかし、十八歳を過ぎると病気がなくなるというものではありません。黄疸が出る人は約四割ということで、一年後でそういう結果らしいんですが、短い長いの差はあれ、いずれ皆さん、肝臓移植という結果になるとも聞いております。
 この難病に苦しむ患者さんの負担を少しでも軽減するさらなる措置を講じていかなければならないと思うわけですが、患者さんの医療費の負担軽減を図るという意味では、厚生労働省として特定疾患治療研究補助金があり、現在四十五疾患がその対象になっていると聞いております。
 この特定疾患治療研究の対象疾患は、学識者から成る特定疾患対策懇談会の意見を聞いて選定し、主に四点の要素をもとに検討されているそうです。一点目に疾病の希少性、二点目に疾病原因の不明、三点目に効果的な治療法の未確立、四点目に生活面への長期にわたる支障とありますが、胆道閉鎖症はこの四点をいずれも満たすのではないかと私自身は思います。
 そこで、この四十五疾患が対象になっている特定疾患治療研究補助金、これの対象になるためには、まず特定疾患対策研究事業に加えられなくてはならないそうです。現在、これについては百十八疾患が対象になっているそうですが、この特定疾患治療研究補助金の対象疾患として選定できる道を開くべく、この特定疾患対策研究事業に胆道閉鎖症を加えるべきではないかと考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
高原政府参考人 委員御指摘のように、特定疾患の治療研究事業は、原因の不明性、治療法が未確立である、それから患者数が少ないということ、生活面で長期にわたる支障があるということで選んでおりまして、そういうふうなものにつきまして、原因の究明等を目的とする百十八の特定疾患対策研究事業、その中から、診断基準が定まっており、かつ患者数の少なさや重症度を考慮して、特定疾患治療研究事業、これが現在、御指摘のとおり四十五疾患になっておるわけでございます。
 この両研究事業の対象疾患でございますが、上記の要件を厳密に勘案して選定しているところでございます。御指摘の点につきましては、特定疾患の対象になるのかという点もいろいろ整理した上で、特定疾患対策懇談会の委員にも意見をお伺いしまして、検討させていただきたいと考えております。
斉藤(鉄)分科員 私も直接お話を伺いましたが、十八歳まではこの小児慢性の研究事業に入っていて何とか生きてこられたけれども、十八歳になった途端非常に高額な医療費がかかる、治療費がかかる。当然、こういう病気を抱えているわけですから、働くこともできない。そういう中で大変苦しんでいらっしゃいますので、ぜひ何らかの措置を、温かい手を差し伸べる措置をとっていただきたいということをお願いするわけです。
 今度は、手術を受けて、肝臓疾患になった、閉鎖症の方が肝臓機能の疾患を持たれるようになった場合ですけれども、心臓移植や腎臓移植には身体障害者福祉法による障害者手帳が交付されていますが、肝臓移植を受けた患者さんには身体障害者手帳は交付をされておりません。これは、身体障害者福祉法に定める障害にそもそも肝機能障害、肝臓機能障害が含まれていないことが理由であると伺っております。
 そこで、なぜ肝臓機能障害は身体障害者福祉法における障害として認定されていないのか。肝臓移植者についても身体障害者手帳の交付がなされるように検討すべきではないかと考えます。胆道閉鎖症手術を受けられた方も、先ほども申し上げましたが、早い遅いの差はあれ、必ず肝機能障害という状況になります。また、肝臓移植ということになるわけで、こういう面での手当ても必要ではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
上田政府参考人 身体障害者福祉法におきましては、身体機能に一定以上の障害が存在し、かつその障害が永続し、固定していること、こういった考えに基づき身体障害の認定を行い、身体障害者手帳を交付しているところでございます。
 お尋ねの肝臓疾患につきましては、継続的に医療が行われていること、または治療により改善する可能性があること、こういうことが想定されるものでありまして、一般的には、障害が永続し、固定しているという要件に該当しない、このように考えられますことから、肝機能につきましては障害の対象とはしていないところでございます。肝臓移植を受けられた方が日常生活におきまして大変御苦労されておられるわけでございますが、今私が申し上げましたこういった要件と申しましょうか、で難しいというようなことで、身体障害者として認定し、そして身体障害者手帳の交付の対象とすることは難しいというふうに考えているところでございます。
坂口国務大臣 この問題は、超党派の肝臓疾患研究会でございましたか、ちょっと名前は違ったかもしれませんけれども、それぞれの党の先生方がお入りいただいた会がございまして、その皆さん方からも実は申し出が出ている問題でございます。
 心臓、腎臓は移植をした後それは対象になるのに、肝臓は移植をしてなぜ対象にならないのかというお話でございまして、今部長から説明したのが現在の厚生労働省の一つの説明でございますけれども、これはなかなか詰められると難しいところがあるんですね。
 先ほどの特定疾患対策研究事業、あるいはまた特定疾患治療研究事業、どれを入れてどれを入れるべきでないのかという話もなかなか難しい話でございまして、先ほど挙げました四要件、原因不明で、治療法が確立されていなくて、患者数が少なくて、生活面で長期に支障を来す。これも、この胆道閉塞症ですか、この場合に、例えば手術をしてある程度生き延びることができるようになった、このことが治療法が確立したということの中に入れられるのかどうかということなんだろうと思うんですね。それを入れるとここから外れるということになるし、いや、それは手術はできても長生きはできないので、とりあえず一時つなぎにやれるだけだというふうにいえば、それは治療法は確立していないということになるわけでございます。
 そういう、見方によって非常に難しい。この辺のところを今局長のところで一遍整理をしてもらって、そしてもう少しわかりやすい形にならないかというので、今いろいろと検討をしていただいているところでございます。
 これは検討しましても難しいことには変わりがないので、検討したらえらいきれいさっぱりになったというわけにもなかなかここはいかないところであることだけは事実でございますけれども、多くの皆さんが、その理由ならそれはまあやむを得ないなと、こういうふうに思っていただけるような割り切り方がやはり必要なんだろう。
 だんだんいろいろの疾患が後から出てまいりまして、それを入れて、入れなかったり、入れたり入れなかったりと、こういうことがあって、だんだんと複雑になっておりますので、少しその辺のところを今整理をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。これも専門の先生方にも入っていただいていろいろやっておりますので、いましばらく時間をちょうだいしたいと思います。
斉藤(鉄)分科員 大変心のこもった温かい御答弁をありがとうございました。
 それでは次に、小児救急医療について質問させていただきます。
 現在、小児救急医療の危機が叫ばれております。私も地元を回っておりましても、若いお母さん方から、子供が急に容体が悪くなるが、診てほしいときに、夜中でも対応してもらえる小児科が近くにないという切実な声を本当によく聞きます。
 ということで、まず初めに、昨年、岩手県一関市での事故がございましたけれども、小児科医がいないとの理由でたらい回しされて、結局亡くなるという痛ましい事故が起きましたが、こういう事故を起こさないためにも、現在、危機的とも言われている小児医療の現状を厚生労働省としてどうお考えになっているか、御見解をお伺いします。
篠崎政府参考人 岩手県の一関市におきまして生後八カ月の乳児が死亡した今回の事例、まことに痛ましい残念な事件であるというふうに考えております。
 御指摘の小児救急医療体制の整備につきましては、安心して子供を産み、健やかに育てる基礎となるものでありまして、少子化対策としても大変重要であるという認識をいたしております。
 この岩手県一関市のことを契機にいたしまして、小児救急医療、特に私どもも重要な事項の一つでありますし、また今までも対策は講じてまいりましたけれども、再度それを充実させるべく、昨年の十一月に各都道府県の小児科救急医療の担当課長会議を開催いたしました。
 そこで主に四つのことを議論いたしたわけでございますが、まず第一は、小児救急医療体制の確立のための関係者の協議会をそれぞれの地区につくっていただいて、計画的にその整備を進める。そしてまた、その進捗の状況の点検や新たな整備方針の策定をそれぞれの地域で行ってほしい。
 それから、国立、公立、公的病院は比較的、小児科の救急医療がある程度充実しておりますが、その人たちに積極的にそれ以外の病院等に支援をこの際してほしいということを、それぞれの自治体なり国なり、あるいは公的団体の事務当局の方にお願いをいたしまして、それぞれの末端の施設がそれに協力体制を組んでいただくようにお願いをいたしました。
 それから、先ほどの坂口大臣の御答弁にもありましたように、小児科以外の医師の人も小児科についてもう少し勉強していただくといいますか、再び勉強していただいて、小児救急に対応していただけるように、そういうマニュアルをつくろう、これは私どもの責任でつくろうということでやっております。
 それから、いざというときに専門の小児科医と連絡をスムーズにとれるように、ITを活用した遠隔医療的なものの整備というようなもの、こういう小児救急医療ネットワークの構築というような、主に四つの項目につきましてそれぞれ議論をして、都道府県のいい事例を紹介いただきました。
 それをもとにいたしまして、この間、この会議を昨年の十一月に行いましたので、その会議を受けて今どうなっているかというところを、その進捗状況につきまして、二月一日現在、それぞれの地区でどういうような状況になっておりますかということをフォローアップしておりまして、今月末までに各地区からの報告をいただくようにいたしております。
 私どもといたしましては、その報告の結果を受けまして、さらに小児救急医療体制の整備充実に向けて努力をしてまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)分科員 広島市にあります舟入病院小児科、昨年、広島県内で唯一、二十四時間、三百六十日体制になりました。これは広島市では大変大きな話題になっておりまして、我々の安心の一つの大きな柱になっているんですけれども、それに伴い、夜間救急に訪れる患者が非常に大きく増加したそうでございます。
 これは地元の新聞にも大変大きく報道されたんですが、とにかく夜間に患者が多い。そして、その患者の九割以上が軽症であり、理由として、共働きで夜しか病院に行けない、いわゆる本当の小児救急医療ということではなくて、二十四時間、三百六十日体制というのが救急病院のコンビニ化という状況になっていると言われておりまして、現場の医師からは、多数の軽症患者に紛れて一割に満たない重症患者を見落としてしまうことが怖いとの不安の声も出されております。
 このように、体制を整えれば整えたでこういう新たな問題が起きるということで、現場医師の責任のみにとどまらず、行政と一体となってこういう現状の改善を図る用意があると思いますけれども、御見解を伺います。
岩田政府参考人 今先生が例としてお出しになりました舟入病院も勉強してみたいというふうに思いますが、各地でさまざまな工夫が、今取り組みがなされております。
 地域において近隣の小児科医間の輪番制を実施するというのはよく見かけるケースですけれども、また、ある病院では、三人の小児科医の勤務時間の組み合わせを工夫することによりまして、一人一人の医師の過重な労働時間を改善しながら、夜間も含む診療機能は維持できるといったような、こういう例も出てきております。そういう好事例を収集、評価しまして、有効であるというふうに認められることがございましたら、広く関係者に周知をしていくということも大事かなというふうに思っております。
 それとあわせて、これは坂口大臣から非常に強い御指示があり始まったことなんですが、若い小児科医をいかに確保して育成していくかという課題がございます。小児科医の数は全体としては減っていないんですけれども、高齢化が進んでいるということがございまして、若いお医者さんに小児科に入ってきていただく、そういうことで、今年度から、厚生労働科学研究の中で研究を始めているところでございます。
 例えば、小児科医師の勤務条件の改善のあり方とか、特に小児科という分野では女性の医師が大変ふえておりますので、女性の医師自身の子育てと仕事の両立のための条件のあり方ですとか、地域で限られた小児科の医師の配置をどういうふうに考えたらいいかといったようなことも含めて、この厚生労働科学研究で研究をしていただいております。
 この結果を踏まえまして、政府としても必要な対応を講じてまいりたいというふうに考えております。
斉藤(鉄)分科員 よくわかりました。
 子供の病気は軽症かどうかわからないことが多くて、特に小さいお子さんを抱える若い夫婦は経験も浅く、子供の容体が少し変化してもうろたえることが多いのではないかと思います。広島県では、地域保健対策協議会が昨年九月より、全国で初めてとなる小児救急医療電話相談事業を開始して、親御さんの不安を少しでも解消すべく取り組んでおります。
 そこで、小児医療の充実を図る上で、医療機関の整備や小児医師の確保などは当然として、電話相談事業や小児医療情報の提供など、親御さんに対して少しでも安心感を与える措置を講ずべきと考えますが、いかがでしょうか。こうすることによって先ほどのコンビニ化が防げるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
岩田政府参考人 医療機関を受診する前の段階で適切な医療情報が得られるということは、病気になった子供を抱える家族にとっては大変有効、安心できることであるというふうに思いますし、また、電話相談事業を実施するということで、医療機関の混雑の緩和にもなるという効果も期待されるというふうに考えているところでございます。先生御指摘の広島県の事例は、実は、先ほど御紹介させていただいた、今年度から始まっております厚生労働科学研究の一環としまして、モデル的に、地域の熟練した小児科の先生方の協力を得て始めているところでございます。
 また、子供を育てておられる家庭に対して、理解しやすい小児医療情報をいかに提供していくかということについても、同じくこの厚生労働科学研究の中でこれから検討してみたいというふうに、今の先生の御指摘をお聞きして考えたところでございます。
斉藤(鉄)分科員 最後に、坂口大臣、著書「タケノコ医者」を読ませていただきましたところ、ちょっと読んでみますと、卒業時に「内科や精神科からも熱心な勧誘を受けた。しかし、私は学生時代から決めていた。 「臨床をやるんだったら小児科がいい」 迷いはなかった。」と。
 このようなところもあるわけでございますが、この小児救急医療についての御決意をお伺いいたします。
坂口国務大臣 小児救急医療というのは、この少子化対策の中で、やはり子育てをするための最低限度の要件の一つだというふうに思っております。しかし、そうは言いますものの、それに十分対応できていないのが現実でございまして、なかなか十分に対応できる環境にありません。
 これは、先ほどから話が出ておりますように、小児科医が足りないということに一つは起因をいたしております。小児科という科がなかなか経営的にも難しいということもございますし、また、小児を扱うということは非常に、裁判等も多いといったようなこともございまして、敬遠をする人がふえてきたといったようなこともあるというふうに聞いております。いろいろの事情があるというふうに思いますけれども、やはり安心していただきますためには、小児を診る医師をふやすことが大前提でございますので、それに対する対応に取り組みたいというふうに思っております。
 そして、それは大前提でございますが、急にその結果が出るというわけではございませんので、先ほど局長からも答弁がありましたとおり、内科の先生方にもひとつ応援をしていただけるような体制を組むことができないか、そうしたことも含めて現状を乗り切っていきたいというふうに思っている次第でございます。
斉藤(鉄)分科員 ありがとうございました。終わります。
石井主査 これにて斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎欣弥君。
楢崎分科員 民主党の楢崎欣弥です。
 私は、昨年の臨時国会会期中に、トラブル隠しの不祥事を起こしました原子力発電所に関する質問主意書並びに再質問主意書を提出いたしました。その再質問主意書に対する答弁書はこの二月七日に受領いたしましたけれども、きょうは、その原子力発電所に勤務する、従事する現場労働者の問題に絞って質問をさせていただきます。
 まず、大臣にお伺いしますけれども、原発に従事する現場労働者が被曝状態に置かれるということ、これはもう宿命といいますか、この労働の本質なんですね。以後、原発被曝労働者と言わせていただきますけれども、これまでに三十万人を数えるまでになっています。
 それで私は、一昨日こういう労働者を派遣している会社の一つ、ゼネラル・エレクトリック社、GE社を訪問してお聞きしたのですけれども、確かに被曝者はいます、しかし東京電力のお許しをいただかないことには公表できませんということでした。東電の方にも行きましたけれども、この問題はまた別の機会で取り上げます。一方、同じ被曝者として広島、長崎の原爆被爆者団体があります。被爆者手帳を持っておられる方はこれまたおよそ三十万人。現実問題として、このように我が国には二つの被爆者団体があると言ってもいいと思うんです。
 原爆被爆者には、法律によって健診などの健康管理に関する配慮がなされております。ところが、日本のエネルギー産業をその根底から支えている原発被曝労働者は、健康管理の面においても全くの無権利状態に置かれている。ただ、その対症療法としての治療を受けるのみで、亡くなられた方もおられる。このような状態はやはりおかしいと私は思うんですね。まず大臣の見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 原爆の被爆者の場合には、これは予測しがたい状況の中で、戦争中でございますから何らかのことは予測できたというふうに言えるかもしれませんけれども、原爆という今まで過去に経験しなかった予測のできなかった爆弾によりまして被爆された皆さん方でございますので、戦争という非常に悲しい現実の中におきましても原爆の方だけは別扱いということで、この皆さん方に対して対策を立て、これは国民の皆さん方の合意を得ているというふうに思っている次第でございます。
 一方、原子力発電の場合でございますが、原子力発電の場合には、そこで働く皆さん方にとりまして、若干の被曝というものは、これは想像できるわけでございます。そこに原子力発電という被曝するかもしれないところがあって、そして、それであるだけに十分な注意をして、そして被曝量を少なくしていく、そういう状況の中で受ける被曝でございまして、いわゆる被曝する量からいきましても、それは比較にできないほどの大きな差があるわけでございます。
 余り問題になっておりませんけれども、病院等におきます医師やレントゲン技師が受けました被曝量というのは、過去におきましては原子力発電で働いている皆さん方をはるかに超える量であったわけでございまして、しかし、それは異常を生み出すまで至らない範囲の量であるということで今日まで来たわけでございます。
 そうしたことがございますので、この原子力発電所におきます被曝の問題は、これはもう最小限にとどめなきゃなりませんし、そのための対策を十分にしなければならないわけでございますが、そうした意味で、原子爆弾による被爆とこの問題とはやはり別次元の話であるというふうに私は認識をいたしております。
楢崎分科員 今大臣は若干の被曝という言葉を使われましたけれども、一度現場を視察するとか、現場労働者の方々から話を聞く、そういう機会が得られたら、今の答弁の内容も若干変わってくると思いますよ。
 そこで、原発被曝労働者には、被曝線量等の把握を目的とする放射線管理手帳、いわゆる放管手帳と言われるものですが、これが渡されます。ただ、現実には、就業中は事業者が保管していますけれども。この放管手帳制度は、財団法人放射線影響協会と参加事業者との間で契約に基づいて自主的に運用されているとのことなんですが、この制度のあり方に国は全く関与していないんでしょうか。
松崎政府参考人 ただいま御指摘の放射線管理手帳制度でございますけれども、これは言われたとおり、財団法人の放射線影響協会という財団が実施しているものでございます。この財団の所管は文科省になっておりますけれども、厚生労働省の所管ではございませんので、直接の関与というものはございません。
楢崎分科員 ところが、この放管手帳の存在というものが労災申請においては一つのかぎを握っているんですね。また、労働者にとっても自分の被曝状態を知る非常に重要なものなんです。ところが、余りにも事業者側の恣意に任されている。だから、離職時に、確実に労働者にこの手帳が渡らないという事例も出てきますし、また、記録に改ざんされたような痕跡が見られることも出てくるわけですね。やはり私はこの手帳に何らかの法的根拠というものを持たせるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
松崎政府参考人 この放射線管理手帳でございますけれども、これは御指摘のとおり、保管は原則として、就業中といいますか勤務中は事業者が行うことになっておりますけれども、離職後は本人に渡されるということを聞いております。また、その記載内容につきましても、御案内かと思いますけれども、移動の経路でございますとか、被曝の前歴、健康診断の結果、被曝線量、それからまた教育訓練の歴史、そういったものが書かれておるわけでございまして、いわば退職後はみずからの健康管理の一つの資料ということになるものだと私どもは理解しております。
 また、ただいま労災保険の認定のお話がございましたわけでございますけれども、これはやはり労災認定の基準でございます仕事、業務と障害との相当因果関係と業務上というところ、この二点により判断するわけでございまして、放射線管理手帳というものも確かに参考資料の一つということにはなるわけでございますけれども、これは、こういった労災申請があった場合には、これに私ども頼っているんではなくて、監督署みずからがきちんと自分たちの目といいますか、その資料をきちんと精査して認定をするということでございまして、これだけということではございませんので、そこは御理解いただきたいと思います。
楢崎分科員 では、自分の受けた被曝量は何で知るんですか、労働者は。
松崎政府参考人 これは、私ども、放射線影響協会というのに直接関与がないわけでございますけれども、伺ったところ、自分の被曝した総量とか、そういったもの、これは手帳に書かれているわけでございますけれども、これは労働者からの照会によってすべて明らかにされているというふうに私どもは伺っております。
楢崎分科員 私が聞いたのは、今まで労災申請して認定をされなかった、それは被曝量を明確に記すものがなかった、そういう事例があるから聞いたんですよ。
 そこで、放射線障害というのは、大きく分けて二つに分けられるんですね。犠牲者が出ましたあの九九年十月のJCO東海村事業所の事故、このときは急性障害で亡くなられたんですね。もう一つは、被曝後期間を置いて症状が出てくる後発性障害。原発被曝労働者のほとんどはこの後発性障害なんですね。だから私は、離職後に、国費による健康診断が受けられるように放管手帳に何らかの法的根拠を持たせていただきたいと思うんですけれども、大臣、私の言っていること、間違っていますかね。
松崎政府参考人 ちょっとその前に御説明させていただきたいと思いますけれども、これは御案内のように、原発労働者等のいわゆる放射線障害の防止ということにつきましては、受けた後というんではなくて、特に放射線につきましては被曝量というもの、これは総量規制ということで、受けないようにということで、例えば労働時間についても時間外は二時間というように限定され、またさらに、放射線管理区域、御案内と思いますけれども、そういった区域で働く人につきましては、労働安全衛生法それからいわゆる電離則でございますけれども、こういった規則に基づきまして、被曝量の限度の規制、これは総量規制でございますけれども、国際基準であります五年間百ミリシーベルト、それから一年間五十ミリシーベルトときちっと限度基準を決めて、それを下回るようにということでやっております。さらには、被曝線量の測定といったもの、これも義務づけております。
 したがって、インチキといいますか、それを改ざんするということは、これは法令違反になりますので、そういうことがないように、きちんと対応していきたいというふうに考えております。
楢崎分科員 少し視点を変えます。
 今、電離則というものが出てまいりました。今言われましたように、確かに電離則五十四条でそういう放射線を計測するための器具を身につけて作業することが義務づけられている。ポケット線量計、フィルムバッジ、アラームメーター等ですね。
 そこで、ポケット線量計ですけれども、これは最高何ミリシーベルトまで記録されますか、目盛りがあるんですか。
松崎政府参考人 私はこれは専門外でございますけれども、直読式のポケット線量計では三ミリシーベルトではなかったかと思います。
楢崎分科員 それを超したらどうなりますか。
松崎政府参考人 これは、御案内のように、外部被曝を測定する場合に、累積して測定するものと、今おっしゃったようなポケット線量計のように、その時々の被曝といいますか、それを測定するものと両方、二つつけるということになっております。したがって、その時々のものについては、換気であるとか、後ほどまた御説明させていただこうと思いましたけれども、作業環境での汚染の除去とかですね、そういったものに生かしていくということになろうかと思います。
楢崎分科員 目盛りがあるんであれば、それを超せば目盛りが振り切れますわね。その場合は、今度は何で測定しますか。ポケット線量計で測定できない事態が出たときは、何で。
松崎政府参考人 今お話しになっているのは、個人個人がつけているものでございますので、移動とかによってその場その場で変わるかもしれません。
 そういったものと同様に、もう一つ、作業環境の測定ということで、働く現場、そういったところを測定するというものはございます。そういったものにつきましては、御案内のように、空間の総量でございますとか、さらには、何か、漏れた場合の表面とか、それから汚染濃度の測定とか、そういったような、作業環境を測定するというものが常時そこに設置されておりまして、それは作業場全体として測定しておるということでございますので、そちらの方で危険信号といいますか、出れば、またそこのところで作業をストップするなり、さらには、そこまでいかない場合であっても作業方法を変えるなり、そういったものになろうかと思います。
楢崎分科員 私は人体測定を前提にして話していますので。
 じゃ、フィルムバッジ、これは何のためにあるんですか。
松崎政府参考人 私の理解では、フィルムバッジは、総量といいますか、受けている累積の被曝線量だと理解しております。
楢崎分科員 つまり、ポケット線量計で測定できなかった数値を記録させるためにこのフィルムバッジはあるんじゃないですか。
松崎政府参考人 基本的に、先ほどの被曝の限度でございますけれども、これは体内被曝、体外被曝を合わせての総量で規制されております。したがいまして、累計で一年間で五十ミリシーベルトといったようにトータルで規制されております。
 したがいまして、大事なのは累計の方だと思っておりますけれども、それが短時間の間に集中的に高まるといったことは別の観点から危険だということで考えられているというふうに思います。
楢崎分科員 いや、もうさきの予算委員会で答えられているんですよ。ポケット線量計で測定できなかったものはこのフィルムバッジで測定するんだと。
 それで、アラームメーターは何ミリシーベルトを超えると鳴り出しますか。
松崎政府参考人 アラーム式のものは、そのアラームの鳴る限度といいますか、どこまでいけば目覚まし時計のように鳴るということだと思います。
楢崎分科員 まあ、セットのしようがあるんでしょうけれども。
 放射線核種、いわゆる核の種と書きますけれども、この放射線核種というのが放出する放射能というのはいろいろ組み合わさっているわけですね。例えば、外部被曝のときに問題になるのは、エックス線、ガンマ線、中性子線ですね。それから、内部被曝のときは、アルファ線とかベータ線が問題になる。今言いました計測器、これはどの放射線を計測しますか。
松崎政府参考人 書類を見ながら答えさせていただきますけれども、フィルムバッジでは、エックス線、ガンマ線、熱中性子線、速中性子線というふうに書いてございます。それから、ポケット線量計につきましてはエックス線とガンマ線ということでございます。
楢崎分科員 今、性能よくなったんですかね。基本的にはガンマ線しか測定できないんじゃないですか。まあ、いいです。そのように前の委員会では、予算委員会では答えてあるんですよ。つまり、内部被曝に一番重要なアルファ線とかベータ線とか、これはガンマ線が出すエネルギーとか、そういうものによって推定するということらしいんですけれどもね。
 なぜ私がここにこだわっているかといいますと、今のような質問をしたかといいますと、内部被曝というのは、そのとき受けた外部被曝の五倍から十倍と指摘されているわけですね。現場労働者が、定期点検時とか非常点検時とかに、いかに過酷な内部被曝を受けているかということを言いたかったんですよ。先ほど大臣は若干の被曝とか言われましたけれども、そんな問題じゃないんですよ。
 そこで、放管手帳に法的根拠を持たすことができないのであれば、せめて労働安全衛生法に定められている健康管理手帳制度の対象業務、これに放射線業務を加えることは検討できないんでしょうか。
松崎政府参考人 労働安全衛生法に基づきまして、健康管理手帳の制度がございます。これはもう御案内だと思いますけれども、これは、がんでありますとか、じん肺でありますとか、そういったような非常に重度の健康障害を生ずるおそれのある業務ということで、ベンジジンでありますとかクロム酸でありますとか、それからじん肺なら粉じんの発生する作業場でありますとか石炭でありますとか、そういった特定の十二業務というものを、きちんと因果関係のはっきりしているものを規定しておりまして、そこに当該業務の従事期間といったような一定の要件をかけまして、そういった方について発給しているというものでございます。
 ですから、業務そのもの自体を、被曝量といいますか摂取量といいますか、そういったものを直接規定しているのではなくて、そういった作業に長期間にわたって従事しているような方について、確実性の高いものについて規定しているというものでございまして、もともと、ただいまの電離放射線のように内部被曝と外部被曝を合わせました総量規制でもってがちっとやっていこうというものとは趣旨が違っておりますので、ちょっとそれは難しいのではないかというふうに現段階では考えております。
楢崎分科員 何とか原発被曝労働者のこの問題を重くとらえて検討していただきたいと思います。それが結局、原発行政に対する国民の信頼を得ていくことになるかと思います。
 そこで、政府は、労災にかかわる原発被曝労働者の死亡に関する私の質問に対して、放射線にかかわる疾病を測定した事例は、さきの質問書に対して三人、それから再質問に対しては、この三人のほかに原子力発電施設以外での作業に従事していた労働者死亡二件を明らかにされたのです。また、原発被曝労働者が死亡したことによる労災申請で放射線にかかわる疾病とは認定しなかった事例は現在までに二件あるという答弁書が来ましたから、私は、それぞれについて、労災申請日と認定、不認定決定日を明らかにするように問取りのときに言いましたけれども、先ほど、個人のプライバシーにかかわることなので答えられないという返事が来たのです。
 それで、私自身、資料を持っているわけですけれども、じゃ、九二年十二月一日に労災が申請されて九四年七月二十七日に認定されなかった事例があるのではないでしょうか。あるかないかだけだったら、答えられるでしょう。
松崎政府参考人 トータルで何件とか一年間何件とかということは統計上の処理としてお答えできますけれども、具体的に何月何日申請、何月何日認定とかまた不認定といったことになりますと、これは個人が特定されるということになりますので、まことに申しわけありませんけれども、お答えはできませんということでお許し願いたいと思います。
楢崎分科員 隠そう隠そうとして、個人のプライバシーにすりかえているんじゃないですか。これも別の機会にやります。
 東京電力におけるインセンティブ制度、これは、定期検査の時間とか期間とかを短縮した請負業者に報奨金を支払う制度。安全の上に安全を求められる原発事業に、こんなでたらめな制度はないと思うんですね。結局、安全よりもコストを重視する大企業の姿勢があからさまに出ている、私はそのように思います。
 労働者の健康を守るという観点から、このような制度を、大臣、どう思われますかね。
松崎政府参考人 先に、労働基準行政を預かっている者としてお答え申し上げたいと思いますけれども、企業がコスト削減を追いかけるのは当然かもしれませんけれども、私どものこの労働基準の最低条件、これは安全衛生も含めてでございます。もうからないから最低賃金を下回ってもいいとか、利益がないから安全衛生をサボっていいということでは全くございません。これは労働条件の最低基準でございますので、これはきちんと守っていただくということで対応してまいっておりますし、今後ともそう対応いたしてまいります。
楢崎分科員 保安院の方から薦田さん、来ておられますですね。薦田さん、このインセンティブ制度、どのように思われますか。
薦田政府参考人 お答えいたします。
 保安院といたしましては原子力の安全を守るということが最も重要でございまして、このインセンティブ制度が、安全を守る、あるいは電気事業者が行わなければならない自主検査であるとか、あるいはその他もろもろのメンテナンス、こういう行為に悪影響があるということになれば問題であるというふうに認識しておるところでございます。
楢崎分科員 ほかの電力会社はこんなことをやっていませんか。
薦田政府参考人 当方では承知をしておりません。
楢崎分科員 せっかく薦田さんがお見えになっていますので一つお聞きしたいんですが、これは、済みません、問取りから外しているんですけれども、もし御存じだったらお答えください。
 今、市民団体の方から運転差しどめの仮処分の申請をされています中部電力の浜岡原子力発電所、ここの線量数値、これがちょっと突出しているんですよ。これはもう報道されましたので名前を言いますけれども、九一年の十一月に亡くなられました嶋橋伸之さん、亡くなられた後、労災の認定を受けられましたけれども、ここで被曝されているんですね。十五ミリシーベルトを超え二十ミリシーベルト以下というところに来ると、あの福島第一原発よりも非常に突出した数字が出ているんですね。
 きのうも浜岡四号機のひび割れで検査をやり直すという報道が出ましたけれども、ここは体制的に問題があるんじゃないですか。この浜岡原発のことについて、もしお知りでしたらお知らせください。
薦田政府参考人 お答えいたします。
 今、私の手元にあるのは、保安院が出しております「平成十二年度の原子力施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況について」というものでございます。
 浜岡原子力発電所の被曝の状況でございますけれども、平成十二年度を見ますと、社員の方が〇・三七人シーベルト、その他五・九人シーベルト、合計六・二七人シーベルトです。それから、平均線量でございますけれども、社員の方が〇・五ミリシーベルト、それからその他の方、先ほどお話があったような方でございますが、一・五ミリシーベルトというものでございます。
 例えば、東京電力の福島第一原子力発電所の線量でございますが、これは十二年度の例でございますけれども、平均線量で見ますと、社員の方が〇・八ミリシーベルト、それからその他の方が二・七ミリシーベルトということでございまして、福島第一と比べてみて、特に突出してということではございません。
 ただ、数値そのものは、例えば福島第二で見ますと、十二年度は、社員の方が〇・三ミリシーベルトに対しまして、その他の方が〇・六ということでございまして、この数字から見ますと浜岡の方が多くなっておりますけれども、各発電所におきましてこのぐらいばらつきのある数値ということでございますので、この数値を見る限り、先生が今おっしゃったような、突出してという感じは、ちょっと私、今のこの時点、見ただけでございますけれども、していないのでございますけれども。
楢崎分科員 私、十三年度の資料を持っているんですよ。私が言った、十五ミリシーベルトを超え二十ミリシーベルト以下というところが突出しているんですよ。それから、全体量も十二年度よりも十三年度の方が非常に多くなっていますので、そのことだけ申し添えておきます。
 そこで、東電の今ある原発十七基のうち、定期検査それから非常点検、合わせて十基以上がとまっているんではないかと思うんですけれども、その点検に携わっておられます下請、孫請の現場労働者の方が、今このときにも被曝状態に置かれているわけですね。何とか、健康管理の面において、国の手だてというものを御検討していただきたい、このことを申し述べて、終わります。
石井主査 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。
 次に、都築譲君。
都築分科員 自由党の都築譲です。
 きょうは、本当に長時間の予算委員会分科会、御苦労さまです。
 最後に出てまいりまして、ちょっと細かい話なども含めて幾つかお聞きをしたいと思います。公務員制度改革の問題、児童虐待の問題、そしてまた健保自己負担増の凍結などの問題についてお伺いをしたい、こんなふうに思っております。
 ちょっと順番を変えまして大変恐縮ですが、まず児童虐待の問題について、それから次に健保法改正の問題、さらに最後に公務員制度改革という順で、ちょっと通告した順番とは違いますが、お話を伺ってまいりたい、こんなふうに思っております。
 まず、児童虐待の問題であります。
 以前、参議院議員をしておりましたときに、九七年、九八年、愛知県の豊田とか一宮とかいろいろなところで実は児童虐待の問題が大きくクローズアップされて、参議院の方の予算委員会でも審議をさせていただいて、その後、児童虐待防止法といったものが制定をされ、対策もかなり充実をしてきているんだろう、こんなふうに思うのであります。
 ただ、現実には、この間もNHKの報道でありましたが、乳児、本当に一歳未満の小さな赤ちゃんが、施設の職員の呼びかけとかあるいはまたほほ笑みかけとか、こういったものに全然応答しない、笑わない乳児とか、そんな報道もありましたし、それからもう一つは虐待の件数、実際にそういった対策が講じられることで、むしろ通報といったものがしやすくなって、件数がかなり上がってきております。
 そんな中で、十分な対応をする施設の能力があるのかということと、もう一つ、実際には、子供を一時的に保護しても、最後はやはり親との関係、親の教育の関係といったものが重要になるわけでありまして、そこら辺についての対応を少しお伺いしていきたい、こんなふうに思うのであります。
 事務的に資料をいただきましたら、乳児等を保護する施設、こういったものについては、実はそれなりにやってきているんですが、地域によってかなりばらつきがあるわけで、これは自治体の方でしっかりと取り上げていかないといけないんではないのかな。県の施設とか、そういったものがございます。
 それから、児童相談所の数についても、実はこれまた、県の設置基準、同時にまた政令指定都市の設置件数といったものが、特に愛知県の場合は名古屋という大きな政令指定都市があるわけでありまして、そういったものの体制もしっかりつくっていく必要があるんではないのか、こんなふうに思うわけでありまして、自治体自身の取り組みも大変重要だと思います。
 国の方としても、大体、二分の一補助というふうな形で施策の充実を図っているわけでありますから、そういったものについて、もっと自治体の十分な対応を促すような、そういった方向はとれないのかどうか、そこについてお聞きをしたいと思います。
鴨下副大臣 先生がおっしゃるように、近年、児童相談所等における児童虐待の相談処理件数が増加しておりまして、特に児童虐待防止法等の施行以来さらにそれが加速された、こういうような現状であります。
 また、今お話しになりました乳児院、そして児童養護施設等の入所件数もふえてきて、ある意味で、もう大体いっぱいいっぱいというような状況にあることは間違いないんだろうと思います。
 そういう意味で、平成十四年度の補正予算においても、増加する被虐待児童への対応を強化するべく、緊急に児童養護施設の整備の促進を図る、こういうようなことをしているところでありまして、さらには、入所児童の個々の状況を踏まえた質の高いケアを行えるように、特に乳児院や児童養護施設において、必要に応じて、従来の職員配置基準に上乗せをするような形で、心理療法の担当職員や個別対応職員を配置するなどの取り組みが行われているわけです。
 それからもう一つは、温かい愛情と正しい知識を持った家庭で養育をしていただくというようなことが重要でありますので、里親制度の見直し、それから、平成十五年度の予算では、地域に比較的小規模の養護施設の箇所数をふやしていこう、こういうようなところでありまして、自治体を含めて、施設の充実を図っていこう、こういうような方向でございます。
都築分科員 ぜひその方向で、自治体の取り組みといったものを大いに支えていっていただきたい、こんなふうに思うのですが、もう一つ、私の弁護士の友達がおりまして、児童虐待の問題に愛知県の方でも取り組んでいる人からのお話を聞きますと、実際に児童相談所などそういったところに通報があって児童を保護するいわゆる一時保護の状況、一月とか二月、親から引き離して保護するその一時保護所の収容能力といったものが、実はほとんどもう限界に達しているんじゃないか。
 先ほどお話がございましたいろいろな施設がございます。乳児院とか児童養護施設とか、あるいはまた情緒障害児短期治療施設といったものについても、事務的に資料をいただいて拝見すると、ほとんどもう八〇%、九〇%の入所状況に実はなっておる。児童相談所の方は、そういったものを発見してそこのところで預からなきゃいけないケースもあるわけで、赤ちゃんだったら乳児院とかそういったところに、そこだってもういっぱいで、手いっぱいで預かりようがないじゃないかというふうな問題もあるわけです。
 ですから、この一時保護を行うような施設の充実といったものもまた大変重要ではないのかな、こんなふうに思うわけでありまして、さらに、実際にそのキャパシティーが満杯だということで、ではその一時保護の委託といったことを民間の病院とかいろいろなところにお願いしよう、こう思ったら、そっちもまたいっぱいだったとかいうふうな状況になると、一体どうやって効果的な虐待からの回復といったものを子供たちにやっていくことができるのか、こんなことになるわけで、ぜひその一時保護の状況について、ちょっとこれは通告のあれから外れておりましてあれですが、一般論としてお聞かせいただければと思います。
鴨下副大臣 児童相談所に持ち込まれる相談の中で、特に保護を必要とするような場合に一時保護をしなければいけないということなわけでありますけれども、現実には一時保護所そのものがいっぱいになっておりまして、そして、さらにその後の乳児院それから養護施設の方もなかなか収容できないということで、結果的には一時保護所に一カ月以上お子さんを預かっている、こういうようなことも起こってきているわけでありまして、先生おっしゃるように、できればその各段階において施設をもっと充実させていかなければいけないわけであります。
 ただ、そのさらに前に、先ほど御指摘になったように、市町村との連携という意味におきましては、相談を持ち込まれる件数等も、できれば自治体、特に身近な自治体の各施設もしくは機関が対応をして、それで、できればその地域なり家庭の中で見ていけるというようなことも含めてやっていきますと、多少、一時保護所に預かる子供の数が是正されるのかな、こういうようなことも考えている次第です。
都築分科員 その点について、また実情などもぜひいろいろお聞きをいただいて、対応を講じていただければ、こんなふうに思います。
 それからもう一つは、今度は、以前からも大きく問題になっておりましたが、結局、児童虐待の再生産というふうな事態で、虐待された子が大きくなって赤ちゃんをつくって、またやはり自分が親からされたようなことを繰り返していく。だから、どこかでその連鎖を断ち切らないといかぬわけで、親御さんに、若い親御さんが多いと思いますけれども、虐待をしないように、子供を本当に慈しむというか、そういう親としての心根をどういうふうにやっていくのか。
 ただ、子供を引き離されると、児童相談所とか児童相談センターなどはかたきのように思われてしまって、以前もお聞きした話だと、本当に児童相談所で子供を保護したら日本刀を持って子供を取り返しに来る事例とか、いろいろな話を聞かせていただくと、児童相談所も大変だなと思うので、今回は警察も入っていろいろな連携をとりながらやるような形になっていますから、人命をまず守れるというふうな状況をしっかりと確保する必要があるのですが、親の教育といったものを、これまたNHKのテレビ報道で、それこそ五、六年前ですが、アメリカで完全に親を切り離して親の教育をやっている、うまくいっているような報道だったのですが、最近話を聞くと、どうもやはりそれはうまくいっていないんじゃないか、こういう話も専門家の人から聞くと、本当にどういうふうに親の教育、措置といったものをやっていくのか、難しい面があると思いますが、日本だっていろいろな経験があるわけでありますから、ぜひそこのところの対応もしっかりとしたものをつくっていただきたい、こんなふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
鴨下副大臣 確かに、虐待をする親は過去にも自分自身が虐待を受けている、こういうような意味で、連鎖をするといえばするというようなことなんですが、それでは、虐待を受けたお子さんたちが親になったらみんながそうなるかというと、そういうことではないわけでありまして、一部そういうようなお話もあるので、では実証的にはデータがあるのかというと、なかなか難しいところだろうというふうに思います。
 ただ、少なくとも虐待を受けたお子さんたちが成長するという中には深い心の傷を持っているわけでありまして、できるだけ温かく見守り、なおかつ、はぐくんでいかなければいけないんだろうというふうに思っておりまして、そういう意味では、先生おっしゃるように、養護施設でお預かりする場合もありますけれども、できれば一人の保護者がきちんとした形で絶え間ない愛情を注いでいく、こういうような形が一番、ある意味で、その虐待の連鎖を断ち切る上で最も効果的なわけであります。
 ですから、それが本来だったら親が一番いいわけでありますけれども、なかなかそういう状況にない場合には、例えば専門の里親のようなものをお願いするとか、非常に専門性の高いような方に心の傷をいやしていっていただくのに前面に立っていただく、こういうような工夫が必要なのだろうというふうに思っております。
都築分科員 今副大臣が言われるように、親の愛情がやはり一番で、虐待された子供たちも本当に、それでもお父さんお父さんとか、お母さんお母さんといって泣きつくような子供たちが多いわけだし、それこそシモンヌ・ド・ボーボワールじゃありませんけれども、自分が素直に育ってきたのは、親が自分を欲した子供だ、ウオンテッドチャイルドだ、こういうことで、やはり親の愛情を一身に受けてすくすくと成長するものだろうと思うわけでありまして、ぜひそこの、親を本当に指導、矯正していくような措置を、例えば今も申し上げましたが、ちょっとここら辺で時間が参りますから、児童相談所ももう本当に手いっぱいの、子供の保護だけでも大変な状況の中で、親の指導教育といったものをやっていく別の機関をつくる、そういったものを考えていただきたいなということをお願いして、別の、次の問題に移りたいと思います。
 次は、健保法改正に伴う自己負担増の凍結について、私ども野党四党、凍結法を出しております。ぜひこれを一日も早く審議してもらいたい、こういうふうに議運の場でも主張しておるわけであります。
 ただ、実態のところ、この間も予算委員会でちょっとお話を聞きましたが、平成十五年度の健保財政の黒字の予定額が、当初は一千八百億とか二千億ぐらいあるという話が、三分の一の六百億に縮減をしてしまったので、ここら辺の理由、本当にその程度で済むんだろうか。
 賃金水準が上がらない、賃金の総量がふえない、こういう状況もありますが、企業の倒産、さらにまた前回も指摘したように、本当に三割負担ということになったら、中小企業、零細事業主の皆さん方は、強制適用といいながらさっと抜けていってしまって、政管健保の財政が本当にがたがたになってきちゃう。事業主負担なんかもうこれだったらみんな一緒なんだからいいやというふうな状況になってしまうことも考えると、本当に危惧しておりまして、六百億に縮小した理由というのは、一体どういったものをお考えになってこういうふうになっているのか、それをちょっと聞かせていただけますか。
坂口国務大臣 確かに、約千八百億という数字を出していたわけでございますが、これは医療制度改革が議論をされました昨年初めの時点と比較をいたしますと、いわゆる被保険者数でございますとか報酬額の減少に伴いまして、保険料収入が減少してきております。一番大きいのは被保険者数の減少でございます。これで約三千三百億円悪化いたしました。
 あわせまして、被保険者数の減少に伴いまして、今度は保険給付費を出す額がこれは少なくなるわけでありますから、この保険給付費でありますとか老人保健拠出金、これが今度は減少をいたします。この減少額が約二千五百億円でございます。具体的に細かいことを言いますと、国庫負担の問題や何かいろいろあるわけですけれども、トータルで申しますとそういうことでございます。
 それで、この差を見ますと、これで平成十五年度の黒字が約八百億円縮小した、こういうことになるわけでございます。こういう事態によって、こういう数字を出させていただいているということでございます。
都築分科員 いずれまたこの問題、私ども、凍結法案を審議してもらう過程の中でもっと議論をして、本当に大丈夫なのかということを強く求めていきたいと思います。
 それからもう一つは、これまた四月から施行の部分ではなくて、十月にもう既に施行されました老人医療、老人高額医療費の問題でございます。
 これについて、実は青森県の私のお友達のお医者さんから、青森県の保険医協会の方がすごくしっかりした調査をやりまして、青森県内の償還申請状況、市町村担当課の対応調査結果なんというしっかりとしたものをつくっております。恐らくこれは役所の皆さんにも多分提出されていくんじゃないのかな、こう思いますが、老人高額医療費について、結局、償還を申請しないまま、そのまま二年を経過してしまうと、時効ということで、それはどうも国保の財政の方に入っていく、こういうことのようであります。
 例えば十月分一月分を調査しただけで、青森は回答しておりますが、弘前とか八戸、大所は確認中ということで返事がない状況で、未払い金額を確かめると約三千万。だから、八戸とか弘前とか、そういったところが入ってくると、一月で恐らく五千万ぐらいの未払い金額になるんじゃないか。そうすると、一年にすれば約六億、二年にしたら十二億、こういう計算になっていってしまうんじゃないのか。こういうことで、これで本当に老人医療といったものが正しくやれるんだろうか。
 確かに、高齢者の皆さんにコスト意識を持ってもらうという理屈はあったにしても、これじゃ本当にただ取りに近いような状況になってくるんじゃないか。しかも、実際にはお一人五百円とか千円とかあるいは二千円とか少額のもので、本当に田舎の方でわざわざバスを乗り継いで役場まで申請なんか面倒くさくてやれないと思う人もたくさんいるでしょう。
 それから、もともと実際にこの通知が、去年の九月十二日に厚生労働省の課長通知ということで、各市町村担当者に対して、そこら辺のところをしっかりやるようにと、全国的に徹底させるというふうなお話をされたようでありますけれども、実際にそれぞれ小さな町の担当部局に聞いてみると、そんな話は知らないとか、そういうふうなところもあるわけです。
 これではやはり、高齢者の面倒くさいと思う気持ち、あるいはまた実際に本当に身動きも十分とれないような状況、そういった弱みに何かつけ込むような仕組みになってしまって、これで本当に、国民全体の医療を確保し、皆さんが健やかに住んでもらえるような状況になるんだろうかという声が出ているわけでありまして、ここについてももう少し、だから本当はこれは制度を直してもらいたい、もとへ戻してもらう必要があると私などは思うのであります。
 もともと私ども自由党は、そういった老人医療費の部分は基本的には消費税で負担をしていくんだ、そういう基礎的な社会保障はみんなで支え合っていくんだ、こういう発想でやっていかなければいかぬ、こういう思いでございますから、これはもとへ戻せというのはまた別の議論でありますけれども、せめてこんな仕組みだったら何とかならないのかという思いがあります。そこのところはいかがでしょうか。
石井主査 都築君に申し上げます。
 答弁要求のない政府参考人ですが、答弁させてよろしいでしょうか。
都築分科員 はい。
石井主査 では、真野保険局長。
真野政府参考人 御指摘ございましたが、昨年十月からの高齢者への高額医療費の支給でございますが、高齢者に過重な事務的負担がかからないように、それぞれの市町村の実情に応じてではございますけれども、市町村から高額医療費の支給対象になられた高齢者の方々に対して直接通知を行うということで、高齢者の方々が制度を知らなかったというようなことによる申請漏れをぜひ防止したい。また、申請書の記載内容の工夫などを行いまして、高齢者が支給対象となります都度申請書を提出して市町村窓口に出向く、そういったような手間を省くというような、私ども、先ほど先生御指摘の通知を出しまして、指導をいたしております。また、ことしの全国課長会議でもその旨、それぞれの地域の状況も把握もお願いをしつつ、指導をいたしております。
 ただ、それぞれ市町村にはそれぞれ市町村の御事情がございまして、今先生がおっしゃられたような状況も私ども把握をいたしておりますけれども、それはそれで、県にさらに、やはりそれぞれ全部の自治体、市町村ができないというわけではありませんで、既にやっていただいている市町村もあるわけでございますので、そういう市町村の工夫を参考にしながら、それぞれの私ども昨年出しました通知の趣旨を御理解いただきまして、それが徹底できるように都道府県を通じて指導いたしておりますし、また、私ども、場合によっては直接市町村にお願いをするということも考えております。
都築分科員 おっしゃるように、全部がやっていないわけじゃないんです。かなりの部分がやっているんですね。郵送で通知とか電話で通知とか、小さな町ですけれども、十和田湖町なんというのは、一人一人に電話してとりに来させているとか、大変きめ細かい対応をしている。
 ただ、実際には多くの市町村みんな手作業でいろいろなことをやるという状況の中で、コンピューター会社が、その請求書が回ってきたら自動的に通知をするソフトをつくったんですが、これは七百万円もかかる、こういうふうな話があって、そんな小さな町で七百万円の新たな財政負担なんかできるのかい、こういう議論もあるので、ぜひそこら辺のところも勘案していただきながら、だから本当はもとへ戻していただく、去年の十月以前の状況に戻していただきたいということを念頭に置きながら、そこら辺の対応もよくお願いをしたい、こんなふうに思っております。
 それで、また大変はしょって恐縮ですが、次のテーマは公務員制度改革であります。
 実は、第二分科会で片山大臣とも先ほど議論を少ししてまいったのでありまして、本当は内閣府行政改革担当の石原大臣なんでしょうが、国家公務員法と地方公務員法を所管しているという立場で、いろいろな考え方をちょっとただしてきたんですが、私自身もやはり労働省に以前勤務した経験があって、この問題も直接担当してもらって、ILOの総会にも出席をさせてもらってやってまいりました。あのころ、行政官としての良心からそういう対応をしておったことは事実であります。
 ただ、そうはいいながら、正直言って、ILOの本部に行ったときに、一階に展示場があって、ILOの仕組みとか、あるいはまた条約の事例とかそういったものが掲げられておりまして、今から、どうでしょう、十五、六年前でありますけれども、私が行ったときにびっくりしたのは、批准書というのは、大変立派な条約の批准書が、日本については八十七号条約が、御名御璽をして、きれいに展示されているわけじゃないです。展示場の床の下のところにごてっと置いてありまして、何だこれはということで、当時の参事官に、これはILOに抗議すべきだ、条約の批准書という貴重なものをこんな扱いをするというのはけしからぬということを申し上げたんですが、その後どうなったか、ちょっと私は見ておりませんが、ただ、正直申し上げて、それがILOの皆さん方の日本に対する感情なのかなと。
 当時は、当然バブルの絶頂期に向かうころでありましたし、日本は大変好景気に沸いてやっていますが、実際には国際的な労働基準一つ守れない国ではないのか、こういう思いを持っているんではないのか、こんな思いがしたわけであります。
 手短にちょっとお聞きをいたしますと、民間の労働関係は労働省が所管をしておりますが、公務員関係は、それぞれ総務省とかあるいは人事院とか、こういうふうな形になっていくわけですが、正直言って、戦後既に五十年以上、六十年近くが経過しておるわけでありまして、明治維新以来の官僚制度、そして戦後の民主的な公務員制度を取り入れながら発展してきた今でありますが、日本の労働関係というのはやはり特殊なのか。特に、公務員の問題について本当に特殊なんだろうか。
 先ほども片山総務大臣は、公務員の特殊性、地位の特殊性ということと全体の奉仕者といった観点から、こういう労働基本権の制約というものがある、こういうふうに言っていますが、私は、管理職とか国家運営の枢要の地位につく人たちは、それは基本権の制約というのはあって当然だと思いますけれども、一般の公務員の皆さん方、こういったものに対してまで本当に制約しなきゃいかぬのか、世の中が物すごく大きく変わったんじゃないか、こんな思いがしております。
 その上で、もしそこまで言うんだったら、誤解があるとか、ILOの事務局の理解が、結社の自由委員会の理解が浅いなどということではなくて、明らかに言い続けているわけですから、むしろ八十七号条約を、あるいは九十八号条約を履行できないと言うんだったら、私は、破棄するぐらいの、そのぐらいの覚悟でやっていく必要があるんじゃないか、こんなふうに思っておりますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 このお話、予算委員会でも何度か出していただきましたし、そのときにも議論をさせていただいたわけでございますが、結論から先に申し上げますと、決して破棄するというようなつもりはございません。できる限りこれは守っていかなければならないというふうに思っているわけでございます。
 先生も御承知のように、先生が労働省におみえいただきましたころには、いわゆる消防署の問題が一番中心でございまして、ここを何とかならないかというお話はずっと続いてまいりました。しかし、そこの範囲にとどまっていたわけでございますけれども、連合からのお訴えということもあるんだろうというふうに思いますけれども、ILOの取り組みも、姿勢も変わってきたことも事実でございます。今までILOが主張してまいりましたことと、そして昨年からことしにかけましてILOが言っておりますこととの間には、かなりな開きが出てきたことも事実でございます。
 しかし、これらのことも踏まえて、日本の現状というものもよくお話を申し上げながら、そして最終結論どうするかということにしないといけないというふうに思っている次第でございます。
 公務員制度につきましても、最終決着をこれからつけなければいけないわけでございますから、その中でどのようにこれを位置づけていくか、やはりILOの御意見というものも十分にお聞きをして、我々の思いというものも十分にお話をしていかなければならないというふうに思っております。
都築分科員 時間が参りましたので、これで終わりますが、私は、できる限り守っていくのではなくて、条約は契約でありますから、これは完全に履行していただく必要があると思いますし、公務員制度も、本当に大くくりの大きな公務員制度改革の中でやるべきものが、今かなりゆがめられた形で、都合のいいところだけ持っていかれているような気がしてなりません。
 ですから、ぜひ、労働問題所管のお立場から、そこら辺のところを積極的に御発言いただくことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
石井主査 これにて都築譲君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十八日金曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十五分散会


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