衆議院

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第2号 平成18年3月1日(水曜日)

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平成十八年三月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 森  英介君

      新井 悦二君    川条 志嘉君

      杉村 太蔵君    薗浦健太郎君

      渡海紀三朗君    冨岡  勉君

      西本 勝子君    根本  匠君

      平口  洋君    藤田 幹雄君

      松本 文明君    市村浩一郎君

      加藤 公一君    長妻  昭君

      松本  龍君    三日月大造君

      坂口  力君    徳田  毅君

   兼務 下条 みつ君 兼務 田嶋  要君

   兼務 高木 義明君 兼務 赤嶺 政賢君

    …………………………………

   厚生労働大臣       川崎 二郎君

   厚生労働副大臣      赤松 正雄君

   厚生労働副大臣      中野  清君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   厚生労働大臣政務官    西川 京子君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            名取はにわ君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 梅田 邦夫君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    竹田 正樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           泉 紳一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  中島 正治君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            鈴木 直和君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          上村 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 太田 俊明君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           宮坂  亘君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           伊地知俊一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  渡海紀三朗君     杉村 太蔵君

  山本 有二君     新井 悦二君

  加藤 公一君     長妻  昭君

  坂口  力君     田端 正広君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     薗浦健太郎君

  杉村 太蔵君     藤田 幹雄君

  長妻  昭君     松本  龍君

  田端 正広君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     松本 文明君

  藤田 幹雄君     平口  洋君

  松本  龍君     近藤 洋介君

  高木美智代君     福島  豊君

同日

 辞任         補欠選任

  平口  洋君     冨岡  勉君

  松本 文明君     川条 志嘉君

  近藤 洋介君     福田 昭夫君

  福島  豊君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  川条 志嘉君     大塚 高司君

  冨岡  勉君     西本 勝子君

  福田 昭夫君     市村浩一郎君

  斉藤 鉄夫君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     山本 有二君

  西本 勝子君     渡海紀三朗君

  市村浩一郎君     三日月大造君

  富田 茂之君     坂口  力君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     加藤 公一君

同日

 第一分科員田嶋要君、第三分科員下条みつ君、高木義明君及び第四分科員赤嶺政賢君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

森主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉村太蔵君。

杉村分科員 おはようございます。自民党の杉村太蔵です。

 本日は、初めての質問の機会をいただき、国会対策の先生並びに厚生労働の委員の先生方に深く感謝申し上げます。ありがとうございます。

 早速ですが、きょうは中野厚生労働副大臣と、いわゆるニート、それからフリーターと呼ばれる、僕たち若年者雇用環境についての議論をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、中野副大臣は、いわゆるニートが近年どうしてこれだけ急増したか、働く意欲を失ったと言われている若い人たち、どうして僕たちの仲間が働く意欲を失ったと、その原因についてどのようにお考えでしょうか。

中野副大臣 まず、答弁する前に、杉村議員におかれましては、若者自立塾の視察だとか若い人たちの懇談会とか、若い者の立場に立っていろいろ勉強していらしたり、また若者の声を代弁しておられることについては、心から敬意を表したいと思います。

 今お話しのニートやフリーターの増加をめぐる、若者をめぐる問題点についての現状認識ということだと思うのでございますが、それについてお話をさせていただきたいと思います。

 杉村議員も御承知と思いますけれども、今、若者の雇用環境というものについては、十五歳から二十四歳まで、これは有効求人倍率というのが一・七倍と、普通は一倍ぐらいですからね、非常に高い水準でいるわけでございますけれども、一方で、失業率は、普通は四・四%ぐらいなのが、七・六と高い水準で推移しているというのは御承知のとおりだと思うんです。

 これは、いわゆる求人は多いけれどもマッチングしていないという現状なんですけれども、その中で国としてもいろいろな対策を講じておりまして、状況は、増加じゃなくてとまってはきましたけれども、しかし依然として、ニートについては六十四万人、フリーターについても二百十三万人ということで、厳しい状況だということは私どもも了解をしておるわけでございます。

 そういう厳しい状態の中での御発言と思いますので、これについては、ぜひこれから御質問いただければ、できる限り誠意を持ってお答えしたいと思います。

杉村分科員 いわゆるニートは、働く意欲を失ったと呼ばれている僕たちの仲間がどうして働く気がなくなってしまったか、さまざまなケース・バイ・ケースで考えなければいけないと思うんです。ぜひ中野副大臣に御理解いただきたいのは、正直言って余りニートという言葉は使いたくないんですが、いわゆる引きこもりですね、四、五年前の僕たちの雇用環境というのを思い出していただきたいと思います。

 ちょうど二十から二十一、二十二歳になるころ、テレビや雑誌、新聞、つけたら、広げたら、やれリストラ、倒産、自殺、リストラ、倒産、自殺、中小企業の倒産、そういう活字ばかりが四、五年前というのははんらんしていたわけですよ。当時二十、二十一だった僕もそうです。これは、会社で働くということは大変なことだなと、物すごく恐怖心を植えつけられたわけですよ。

 現に、それでもやはり、就職試験というのには臨みます。ところが、僕もそうだったんですが、三十社、四十社、履歴書を書いて、志望動機を書いて、長所短所を書いて、それで一社も、はしにも棒にもかからなかった人間というのはどう思うか。この国に杉村太蔵は必要ないんじゃないかなと思うわけですよ。物すごい不信を抱くわけですね。

 僕たちは、反省しなければいけないのは、物すごく大企業志向なんですよ。その原因は、今まさに僕が先ほど申し上げた、中小企業の倒産、リストラ、自殺というのが余りにも多かった。

 そこで、今、厚生労働副大臣の中野先生から、雇用のミスマッチングというお話がありました。ぜひ、中小企業ドリームといいますか、果たして、既にこれだけ大きい大企業に就職して、本当に歯車の一つになるのが人生楽しいか、今は小さい企業だけれども、自分の力で大きい企業にしてみせるんだ、また、そういうドリームが日本はかなうんだというメッセージを、ぜひ中野副大臣から僕たちにいただけないでしょうか。

中野副大臣 杉村議員が若者の代表として、今のお話については同感であります。

 その中で、今までどちらかというと、寄らば大樹の陰というようなことで、大企業志向があったということも事実と思います。しかしながら、日本の国の中には、それだけじゃなしに、多くの中小企業が世界的にもいろいろな活躍をしているということも事実でございまして、その点では、これからお話しすると思いますけれども、いわゆる順調な正規社員といいましょうか、そういうものだけが本当に勝ち組と言われることは必ずしもすべていいことだとは私も思っておりませんし、まじめに真剣に働く人たち、その人たちがやはり一番大事な、これからもそういう人たちが報われる、そういう時代をつくっていかなきゃいけないと思っているわけであります。

 ですから、政府としても、小泉総理がいわゆる小泉改革を実行している、その中においても、いろいろと御批判はあるかもしれませんけれども、実際には、この少子高齢化という厳しい時代の中において、やはりきちっとまじめに働く人たちが本当に生かされる、そういう社会をつくりたいというのが小泉総理の願いでもあるし、我々政府の願いでもあるし、自民党の願いでもあるんだと私は思っておりまして、どうか、そういう意味ではぜひ自信を持って頑張っていただきたい。

 そのためのいろいろな話についてお話ししたいと思いますけれども、この経済界の中においても、そういう意味で変わってきているという流れもあります。例えば、いわゆる正規社員というんでしょうか、春の、いわゆる学校を下がって就職する、これが普通の状態だと思いますけれども、それについても、今まではどちらかというとそういう企業が、特に大企業においては約六四%ぐらいはいまだにそういうような企業が多いんですけれども、現実に三五%ぐらいの企業は、そういうのじゃなしに、通年的な問題とか秋の採用とか、いろいろなチャンスも与えているというのも事実と思います。

 しかしながら、反面、今、正規雇用だけじゃなくて、いわゆる非正規といいましょうかそういうものがどうしても多くなっている。これも現実でございますが、その中で若い人たちがどうやって御自分を伸ばしていただけるか、それについては、やはり我々も考えなきゃいけないと思っております。

 特に、今おっしゃったニートとかフリーターの問題が続きますと、御本人にとっても、例えば若いうちに必要な技能とか知識というものの蓄積ができない。その結果将来の生活も不安になってくる。特に、経済的な問題があると結婚でもなかなか、そういう意味では、やはり一番正規の職業についた方の方が結婚しやすいということも事実ですから、やはりそういう点では、その問題もこれから解決しなきゃいけない。

 それからまた、国全体としても、いわゆる中長期的に見れば、競争力とか生産性の低下とか、また、社会的に社会保障の問題がいろいろかかるとか、特に若い人たちがそういう本当の意味での希望を持たなければ、社会不安増大とかいろいろな課題もありますから、その点で、私どもは、この問題についても真剣に取り組んでいきたいと思っております。

杉村分科員 僕たちの仲間にこういう人がいます。大学を卒業しました。二十二歳です。やりたいことがわかりません。入りたい会社が見つかりません。だから、学生時代四年間でこつこつためたバイト代で、一年間、世界一周してきます。二十三歳です。四月に日本に帰国しました。彼に仕事はないわけです。

 こういう方もいます。司法試験を五年間受験しました。昨年、論文試験には合格しましたけれども、口述試験には残念ながら落ちてしまいました。ことし、再チャレンジでもう一度口述試験に挑戦しましたが、残念ながらことしも司法試験に合格することができませんでした。実は、彼もフリーターなんですね。

 なぜそういう状況が起きるか。今、企業は、特に大企業、経団連加盟企業は、ほとんどの企業が新卒採用というものをやっております。この新卒採用という言葉一つでどれだけ多くの若い人たちが夢と希望を失っているかわからないんです。

 中野副大臣、僕たちは、いつ車を売りたくなるかわからないんです。いつ五十インチのプラズマテレビをつくりたくなるかわかりません。いつ四百万画素のデジカメを売りたくなるかわからないんです。

 例えば、大学三年生の就職活動のときに、大手都市銀行に就職しました。卒業して、四月から半年間、銀行に勤務しました。勤務したはいいけれども、やはり、実際自分がやりたかったこと、描いていた職場のイメージとちょっと違った。半年たって、どうしても続けられないというのでやめてしまった。彼も仕事がないんです。

 すべてこの新卒採用という、門戸をきゅっと閉めている、これが大きな原因なんです。

 何が申し上げたいかというと、決して僕たちは働く意欲を失っているわけではないんです。小泉総理のメルマガには、二月二日付で、待ち組という言葉がありました。待たせていた人たちもいるではないかというのが僕の考えです。待ち組ではなく、待たされ組なんです。非常に経済が低迷して、新規採用の門戸が物すごく狭まり、では、二〇〇七年問題で団塊の世代ががばっと抜けた後、もしこの新卒採用をいつまでも続けていたら、僕らは永遠に、もう二度とチャンスはないわけですよ。

 ぜひ、中野副大臣、経済団体の方々に、この新卒採用の撤廃、年齢、性別、学歴不問、二十四時間三百六十五日、意欲のある若い人たちの声は聞きますよと、それで、もし現時点で会社で採用できないなら、その理由をしっかりと、正規雇用の基準をしっかり僕たちに目標を提示していただきたいんですよ。そういう働きかけを日本政府としてやっていただけないでしょうか。

中野副大臣 今、杉村議員のお話でございますが、そういう若者が可能性をいろいろ持っているということについては、我々も十分認識しているつもりであります。

 ただ、今お話しのとおり、日本の社会というものが、ある程度成熟した中で一つの枠組みができているというのも事実でございますし、政府として、いわゆる春の一括採用、これについては、学校から社会へ移るという一つの流れの中での問題、これは、一つのそういうメリットがあります。それからまた企業としても、定期的に採用するということのメリットもあるというのは御承知のとおりだと思うんですよ。

 ですから、私どもは、定期採用が全部悪いというのじゃなしに、それはそれなりの意味はぜひ認めていただきたいと思うけれども、その中で、今あなたがおっしゃるように、いろいろな可能性を持っている若者がいる、その人たちをどうやって救うかというような視点での議論というのは、当然必要だと思っております。

 今、経団連さんにもお願いしたりして、こういうケースはこうだとかというようなモデル的なものも具体的に示さないと、どこの企業でも採用できませんから、そういう事業を今やっている。またことしもやりたいと思っております。

 それからまた実態も、今あなたがおっしゃったような実態があるということは間違いないだろうと思いますけれども、それもよく調べて、そういう中で、では、企業というものが本当に活力を取り戻すにはどうしたらいいかということがあると思うんです。

 現実に、私もよく知っている企業の中に、例えば私の地元には、ホンダという会社があります。本田宗一郎の話を聞きますと、むしろ、企業に入った以上は、もう学歴だとかじゃなくて、やはり本人の意欲であり、力だ、やる気だ、それからまた実際は実績だ。今まで、どちらかというと、どこかの一流大学を出て一流のことをやっていけばそれがすべてそのとおりエスカレーターで上っていくんだと、そういう社会じゃだめだというようなことで今のホンダがあるんだという話をよく私も聞かされます。

 そういう意味では、やはり企業としては、時代に取り残された大きな企業というものについては、そういう意味での時代に対するものをいろいろと吸収できなかった、また、その時代に対する、若者に対する適応、そういうものを自分の企業の中に活力として取り入れなかった企業がどちらかというと取り残されているという現状があります。

 私どもとしては、そういう意味で、政府としてできることは、今言った一括採用というのは、一つのシステムとしては当然残さなきゃいけないけれども、今、だんだんふえてきているわけですよ。大体三四%ぐらいの大企業が通年採用とか秋の採用というのをやっておりますから、これを経済界全体の流れの中に持っていくという努力はさせていただきたいと思います。

 それから、これは私の持論なんですけれども、我が国の雇用政策というのは、今、あなたもいみじくもおっしゃったけれども、大企業だけじゃないんですよ。むしろ、我が国においては中小企業がいっぱいある。

 この中小企業においても雇用政策という問題は非常に重要でして、私は、今大臣にも申し上げ、省の中でも、大企業、経団連といわゆる連合というこの大きな組織がすべての労働政策をやるのじゃなしに、やはり中小企業の声もぜひ反映しようじゃないかということで、それも含めまして、その中にも、ですから、さっき言った雇用できる人材とすれば、もちろん働く場としては大企業の方が舞台は大きいかもしれないけれども、中小企業の場においても、さっき申し上げたホンダだって昔は中小企業だった、それがこれだけ大きくなっている、そういうことを考えれば、その場において若者が活躍していただく、そういう姿勢も私は必要じゃないかと思います。

 ぜひ、その点は、あなたなんかのような若者の現場にいる人が、そういう点でぜひ引っ張ってもらいたいと心からお願いをしたいと思います。

杉村分科員 定期採用のメリット、これはもちろんです。ただ、二十四時間、三百六十五日門戸を広げる方が、今の僕たちの仲間をニートだのフリーターだの時給で働かせているということは、二十年後、三十年後の日本を見た場合、これは大きな国家的な損失だと僕は考えています。昨今は投資ブームですが、あらゆる設備投資、どんな投資よりも、僕たちの世代に投資してもらう方がはるかに確実なリターンが出ます。そのことを明確に申し上げておきたいと思います。

 それから、先ほどエリートというお話がありました。特にこのニートやフリーターの話をすると、格差社会、勝ち組、負け組の話が出てきます。これは非常に僕としては納得のいかない議論が多うございます。どこのだれが何をもって、何を基準に勝ち組だの負け組だの測定されるのか全くわからない。

 先日、散歩をしていたら、神社の境内でお願い事の板の書く欄に、彼の月給が十七万円になりますようにというお願い事がありました。本当に偶然だったんですが、全く同じ日に、あるいわゆる若手のIT企業の経営者で大成功されている方と、御自宅に招かれて、一本十七万円のワインだというんですね、僕の前でそのワインのコルクを抜いたんですよ、飲ませてやると。そして、コルクを、においをかいだ瞬間、これはだめだ、これは飲ませられないと、じゃばじゃばじゃばじゃばと流しに捨て始めたんですよ。これはどっちが勝ち組ですか。本当に十七万円のワインを流しに流すやつが勝ち組ですか。僕は決してそうは思わなかった。

 杉村太蔵、今、勝ち組か。何となく勝ち組のように思う。では、一年前は負け組か。時給で新聞配っていたときが負け組か。大きなお世話であります。僕は思います。勝ち組だの負け組だの、自分たちが勝ち組だ、そう思っていれば、ただ、自分たちがこれは負け組だなと思った瞬間、負け組だな、そう思うんです。この点について、大臣はどのようにお考えですか。

中野副大臣 今、勝ち組、負け組の話がございましたが、これも今あなたが若い方の立場でもって御発言いただいている。私、非常に大事だと思います。

 私は、小さな中小企業のお菓子屋のおやじでございましたから、その中でやってきたことは、人間というのが何のために生きているか、何のために仕事をしているかと考えてくれば、やはり自分が喜びを感じ、相手に喜んでもらう、社会にも尽くせる、これが私は一番本当の喜びだと思うんです。

 そうしますと、今おっしゃったように、一本十七万円のワインを飲む方と、それから一カ月働いて十七万円の給料を取る方、どっちが大事か。私はやはり、今いろんなことでもって、ホリエモンさんの話もありました、それからまた建築の耐震偽装の話もございましたけれども、結局そこにあるのは、お金だけだ、自分だけだという世界だと思うんですよ。

 しかし、そうじゃないんだ、自分だけじゃないんだ、それから、社会と一緒にいるんだ、お金だけじゃないんだということが、やはり今、杉村議員がこの国会の場でもっておっしゃりたいことは、そういう意味で、本当に汗を流してまじめに働くほとんどの国民がいるということ、その中に若者も、みんなそうだと。しかし、その人たちが本当に希望しながら、職業が希望したところへつけない、それについては、やはり我々が政治として責任があると思っております。

 ですから、そういう意味で、今私どもも、若者の自立・挑戦のためのアクションプランというのをつくっております。しかし、これも一生懸命考えておりますけれども、なかなかまだまだ、いわゆる与える立場になってしまっていると思いますけれども。

 やはり、杉村議員が今問題を提起しようとしている、本当に何が勝ち組なんだ、何が負け組なんだという議論については、私は、あなたのおっしゃった議論というものが非常に大事だと思いますし、ぜひこのメッセージを、本当に汗を流し、まじめに働いて、自分も喜ぶ、それから相手も喜んでやる、社会のために尽くせるんだ。

 それが、ゼロサム社会で、自分だけが何千万というお金を、何億というお金を稼いで、それが勝ち組だという今までの社会の風潮というものについては、我々は考えなきゃいけない。むしろ、あなたが主張したような、ぜひこれからもその問題で頑張っていただきたいと思います。

杉村分科員 きょうは、職業安定局長の鈴木様と能力開発局長の上村様にお越しいただいています。

 これまでの議論で僕が申し上げたいことは、ニート、フリーターの問題は、完全にこれは意識改革です。意識改革が重要です。

 そこで、ジョブカフェ、ヤングジョブスポット、ヤングハローワーク、それから若者自立塾、いろいろ政府がお取り組みいただいていますが、僕たちのこの問題で三百億円以上のお金が使われています。決して僕たちはそういうものは求めていないわけですよ。むしろ、七百、八百からあるこのわけのわからない莫大な借金、これを返すのは僕たちですから。皆様方は借金をしたかもしれませんが、その借金を返すのは僕ら世代ですから。

 あることにこしたことはありません。ただ、僕は、二十六歳の国会議員として常々考えていることは、二十年後、三十年後ですよ。この国に生まれ、育ち、そしてこれからもこの国に住み続けたいと思うような国を今からつくりたいと思う。そのためには、何とかしてこの借金を返す、今のうちから返していただきたい。できる限り返済していただきたい。そういう観点からいくと、今中野副大臣がおっしゃっていただいたメッセージをどんどんアピールして、発信してください。

 正直申し上げて、いろいろ視察はさせていただいて、無駄とは申し上げません。無駄な事業だということは一言も申し上げません。ただ、七百兆円の借金があるという前提で考えるならば、余りにももったいない。僕たちは、自分たちの力で仕事を見つけます。僕たちの仲間は十分仕事のやる気はあるんです。ただ、その門戸を改革してほしい、それが僕の要望です。

 時間が迫ってまいりました。最後に、エリートの定義で、農林水産省の方も来ていらっしゃっていますが、これからの僕たち世代のエリートは、決して車を売る人じゃない。プラズマテレビだけをつくっている人たちがエリートか、決してそうじゃないと思っています。お米をつくってくれる人やトマトやレタスやキャベツや、そういうものをつくってくれる人こそ僕たちの世代では本当のエリートになってくると思います。

 そういう意味で、僕たちの世代が積極的に農業に参画できるようなそういう施策、農林水産省としてお考えでしょうか。最後に一言だけ。

宮坂政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘のように、農林漁業、自然と触れ合いながら、また自己の創意と工夫を存分に生かしながら、その成果というのを自分のものにできる、また消費者にも喜んでいただけるということで、今、非常に大事な若者の雇用の場というふうに考えております。

 ただ、いかんせん、農林漁業の体験ということにつきまして、なかなかなじみがないという点がございます。例えば、おっしゃられましたいろいろなものを栽培するといっても、なかなかその栽培の技術、それは家庭菜園的にやる場合は別ですが、これを業として行うというような場合についてのノウハウとか、それから、委員御指摘になりませんでしたが、漁業というのがございまして、船に乗って魚をとるということについてのいろんな技術、それから山の管理、こういうものにつきましてもいろいろと基本的な体験なり知識というのが必要になります。

 そういう意味で、できるだけ農林漁業に入ってきやすいように、若者の雇用の場として活用できるようにということでいろんなことをやっておりまして、具体的には、農業に関しましては、六カ月間合宿研修を行いまして、農業に対する理解、それから職業観というのも形成していただく。

 それからまた、農業法人、具体的には農業を法人で行っている会社みたいなものがあります、会社というか法人でございますが、そこに、就農、就業的、就職というんですか、研修的な形で入って農業を実際に体験するというようなこと。それから、やはり知識を得るためには、今、コンピューター社会でございますので、家にいたまま農業関係のいろいろな知識を得るというようなこと。

 それから、よく出ておりますのが、林野の関係でいきますと、緑の雇用ということで、森林の整備とか保全に関心があり、また意欲があるという若者の方々に対して、安全にそういう作業ができるように研修していただくというようなこと。

 それから、漁業に関しましては、まさに、先ほど申し上げましたが、実際問題、体験乗船と申しますか、体験的に漁業をやっていただく、そういう形で御経験をある程度積まれまして、そして就業につなげていくということで、我々といたしましても、そういう意味で、御指摘ございましたが、いろいろな形で、農業なり林業なり漁業に、そういう大きな意欲と能力のある若者の方が積極的に参入するということを期待しているということでございます。

杉村分科員 最後に、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。

 ぜひ、僕たちを試しに使ってみてください。こんなやつ使えないなと思うやつを試しに使ってみてください。意外と僕たちは使えます。これだけは最後に、明確に申し上げて、初めての質問を終わらせていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

森主査 これにて杉村太蔵君の質疑は終了いたしました。

 次に、新井悦二君。

新井分科員 おはようございます。自由民主党、新井悦二です。よろしくお願いします。

 本日は、中野副大臣におかれましては、予算第五分科に連日、本当に、医療問題やいろいろな改革で今非常に大変な時期であると思いますけれども、ぜひとも、今、国民が一番心配しているものは、やはり医療とか、いろいろなそういう改革という分野であります。特に、先ほど聞いておりましたけれども、今、格差社会というものが非常に問題になっておりますけれども、医療や福祉においては、格差社会というのではなく、だれもが公平でそして良質な医療、そういうものをやはり国民は期待していると思いますので、ぜひとも、中野副大臣におきましても、しっかりと取り組んでいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 今日の我が国の長寿社会をもたらしたものは、国民皆保険のもと、どこでも、だれでも医療を受けられるという保障をしてきた、本当に極めて公益性の高い制度であることは決して否定できないと私は思っております。この保険制度というものは、昭和三十六年に制定され、戦後混乱した経済を立て直し、脅威的な経済成長をなし遂げ、さらに世界一の長寿国になったことは、すべて経済と医療費というものが、両輪がうまくかみ合っていたということは、私は決して否定できないと思っております。

 しかし、現在、この国民健康保険というものは、自営業の方とか農業の方、そしてまた零細企業に勤務する方とか老人保健制度の対象とならない方など、多くの国民の方が加入しております。しかし、国民健康保険というものは、まず、収入の低い方とか高齢者の方もかなり多く占めておりますので、保険税の収納率が他の税に比べると私は低いと思っております。また、保険税と国、県などの収入だけでは到底運営できないのが現状であると思っております。

 このため、市町村は一般会計からの繰り出し金で財源不足を補っているのが現状であり、繰り出し金というものは毎年本当に増加しております。地方自治体の大きな負担になっているのが現状であると私は思っております。その上、これから新たな老人保健制度の改正に向かいまして、七十歳から七十五歳までの高齢者も国民健康保険の被保険者となるため、その分の負担もやはり多くなってくるのではないかと思っております。

 このような状況のもとで、少しでも収納率を向上させるため、まず、保険税の滞納者に対して、短期保険証を交付するとか、そしてまた資格証明書を交付するとか、市町村もいろいろ対策を講じておりますけれども、滞納を減らすことにはなかなか本当につながらないのが現状ではないかと思っております。

 ともかく、この増大する市町村の負担というものを減らしていくために、国民保険をどのようにとらえていくのか、そして、財政的に地方自治体の問題をどのように考えているのか、まずお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

水田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、国民健康保険、これは国民皆保険制度を維持する上で不可欠の制度でございます。いわば最後のとりでとしての役割を果たしているわけでございますけれども、その国保をめぐる状況は、御指摘ありましたとおり、高齢化の進展あるいは低所得者の増加ということがございまして、大変厳しい状況にあるという認識は私どもも持っております。

 今後どうするかということでございますが、まず、財政面のことを申し上げますと、市町村の保険財政を安定化させるために、今般の健保法等の一部を改正する法律案におきまして、一つには、高額な医療に係る共同事業への国、県からの支援、あるいは、低所得者を多く抱える保険者への支援等の財政基盤強化策を、平成二十一年度まで継続するということでございます。それとともに、平成十八年十月、本年十月から、新たに、都道府県単位で国保財政の安定化、それから保険料の平準化を図るために、保険財政共同安定化事業を創設することとしてございます。

 それから、もう一つ、懸念されております収納問題であります。

 収納対策といたしましては、実は、昨年二月に総合的な収納対策を策定しておりまして、滞納対策の充実確保を図っております。今後の新しい対策といたしましては、クレジットカードでありますとか携帯電話を活用した徴収でありますとか、都道府県単位での共同収納センターを設置する、こういった取り組みを行いたい、このように考えてございます。それから、あわせまして、これも今般の法案に盛り込まれている事項でございますけれども、六十五歳以上の国保加入の高齢者の保険料につきまして、年金からの天引きというものを実施していく予定でございます。

 こういった措置を講じながら、国として、市町村における国保財政の安定的な運営が図られるように努めてまいりたいと考えております。

新井分科員 そうですね。私も、市町村というのは、本当に、税を未納の方から取るということで非常に苦労しているのが現状でありますので、国においても、地方だけに押しつけてしまうんじゃなくて、これからの問題というのは、国も地方もやはり一丸となってそういう問題点に取り組んでいかなければ、なかなか徴収、アップしろとかいろいろな面で、計算の上、そしてまた紙の上だけでいろいろな問題を整理するということも問題があると思いますので、ぜひとも、私たち、そしてまた厚生省の皆様方とともに、この収納という面からも考えていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、介護保険についてお伺いしたいと思います。

 今、急速な高齢化に伴う高齢者人口の増加に対するため、介護保険制度というものは、現代社会にとりまして本当に不可欠な制度であると思っております。また、世帯の構成人員が減少して、高齢者だけの夫婦世帯とか、また一人世帯も増加する状況に今ありますけれども、こういうことがこれから高まり、そのようなことから、今後とも持続可能な介護保険制度にするためには、厚生省は、大きく分けると三つの制度の見直しをまずしたと思います。

 まず、その第一というものが、介護以前の高齢者から要支援と要介護一の高齢者に対して介護予防サービスを提供する介護予防の推進ということ、二つ目が、身体ケアとともに痴呆ケアに軸足を置く痴呆ケアの推進、三つ目が、住みなれた地域で暮らせるような地域ケア体制の整備となっております。

 また、介護保険料の見直しも行われ、受益者負担も若干引き上げとなりました。制度が始まって間もない状況のもと、今後、制度の仕組みとかサービスの内容とともに、介護保険料や国と地方自治体の負担割合の再検討がやはり当然必要であると思っております。

 ただし、やはり国民の保険料負担というものも限界があると私は思っております。また、国、地方自治体の財政負担にも、本当に今厳しい状況である、そういう問題を考慮いたしますと、やはり限界にあるため、より効率な、効果的な制度の運営を今後一層真剣に考える必要があると思っております。

 とりわけ、制度の運用主体となる市町村は、増加する国民健康保険とか老人保健制度の繰り出し金とともに、介護保険の財政負担が過重となっているのが今の現状であります。国も財政再建が至上命題となっておりますけれども、それでも、一部の市町村を除き、大部分の市町村は、さらに厳しい状況のもとで予算を編成したりとか財政を運営しているのが現状であります。

 そこで、今後、介護保険の財源確保について、厚生省はまずどのように考えているのかということを一点。そして二点目といたしまして、市町村の財政負担に特段の配慮を考えているのかどうかということについてお尋ねいたしたいと思います。

磯部政府参考人 お答えいたします。

 介護保険制度が施行されまして五年間の施行状況を見ますと、サービス利用の大きな伸びに伴いまして費用が急速に増大しており、この制度が将来にわたって国民の老後の安心を支える制度であり続けるためには、制度の維持可能性の確保が重要であると認識しております。

 こうしたことを踏まえまして、ただいま委員も御指摘のとおり、今般の見直しにおきましては、一つには、軽度の方を対象としたサービスを、より介護予防に効果的なものに見直すなど、予防重視システムへの転換ということを図る。それから、二つ目といたしまして、在宅と施設との利用者負担の不均衡の是正などの観点から、介護保険施設入所者の居住費あるいは食費の負担の見直しを行うといったことによりまして、給付の効率化、重点化を図ることとしております。

 これらの制度改正につきましては、予防重視への転換につきましては本年の四月からの施行、そして、居住費、食費の見直しにつきましては昨年の十月から既に施行しているところでございます。

 そして、その負担でございますが、保険者である市町村が、それぞれの地域住民のニーズを踏まえまして、提供する介護サービスの水準を見込み、それに見合った保険料の設定を行う社会保険方式をとっておりまして、給付と負担が明確に連動する透明性の高い制度であるというふうに考えておりまして、当面、この方法によって費用を賄っていくのが適当ではないかと考えております。

 今後とも、今般の制度改正が所期の効果を上げることができますように、各市町村あるいは都道府県等と協力しながら、制度の適切な運営に努めてまいりたいと考えております。

新井分科員 そうですね、私も、医療も介護もやはり予防が大切だと思います。うちの方の市町村は、高齢者の方にインフルエンザワクチンをただでやってやったら、初期費用はかかりましたけれども、しかし、今度国保の負担が少なくなったんですよ。だから、そういう意味からすると、やはりそういう予防というものがこれからの高齢者にしても十分必要であると思いますので、予防ということはそんなにお金はかかりませんので、ぜひともそういうものに初期投資して、介護にしろ、医療の適正化というものをしっかりやっていただきたいと思います。

 次に、医師不足についてお伺いしたいと思います。

 今日の地方の医療機関の本当に最大の悩みというものは、医師不足と言っても過言ではありません。地域の医療を支える勤務医の確保の困難、そしてまた夜間の救急医師の不足、また、皆様方も御存じのように、小児科とか産婦人科の医師不足は、子育て支援の中で重要な課題にもかかわらず、現実には大変厳しいのが現状であります。

 二〇〇〇年には医師が過剰となるということで、この十年間、医学部では定員を削減してきたわけでありますけれども、確かに、これほど医療が今細分化されまして、患者さん一人一人に対する情報提供、インフォームド・コンセントに本当に時間がかかる、カルテを書くのに時間がかかる、説明も時間がかかる、そういう状況であるとともに、また子供たちも、自治体におきましては、子供の医療負担減というものを訴えています。六歳未満は医療費、入院費ただとか、いろいろな面を、そういうサービス、施策というものを打ち出しておりますけれども、これもやはり現実と施策との間に年々開きがあるわけであります。そういう提供をしたいけれども医師が少ないとかいう問題もあります。そういうのが本当に地方都市としては現実であるわけであります。

 そして、今日において、医師の過労死、過重労働死という問題から、二〇〇〇年には初期研修医制度が導入され、大学以外の研修病院での研修も認められ、なおお給料がもらえるという研修医制度でありますので、大学から医師が去り、大学の医師不足が発生しております。ちなみに、小児科医の教授が当直をしている、そういう大学もあるわけであります。大学病院としての体制が今とれなくなりつつあるのが現状であります。

 地方大学病院ですけれども、医師が都市部のブランド的病院に流れており、また特色ある病院にどんどん流れていってしまう。こういう医師不足というものが非常に著しく、地方におきましては、当直医の確保とか、救急当番日に医師が集まらないというのが現状であります。もちろん、大学の教育としての魅力、そして大学生が学位を取ったりとか、苦学で身を立てている、昔の白い巨塔という時代ですね、そういうテレビの時代のあこがれというものはほとんどフィクションのものになっております。

 そこで、今後の国としての医師確保として、医師の数をまずどのように考えているのか。また初期研修後の医師をどのようにしていくのか。特に、都内の人気のある研修医病院の研修後の医師の将来像を見通しての対応と、想定される問題をどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 医師不足についてのお尋ねでございます。

 地域における医師不足の問題は、厚生労働省としても、あるいは政府全体として大変深刻な課題だというふうに考えてございます。厚生労働省では、総務省及び文部科学省とともに関係省庁連絡会議を開催いたしまして、昨年八月には医師確保総合対策を取りまとめるなど、各般の取り組みを進めてきているところでございます。

 また、今回、今国会に提出をいたしました医療法等改正法案におきましても、法制度面からも救急医療、僻地医療、小児医療、周産期医療などに従事する医療従事者の確保を推進するため、各都道府県が中心となって、大学病院など地域の医療関係者と話し合いを行った上で、各病院に医師を派遣する仕組みや、医学部の卒業生が地元に残れるようにする方策などを検討して実施していく枠組み、都道府県における医療対策協議会の制度化など、法制度面からも必要な処置を講ずることといたしているところでございます。

 日本全体の医師養成につきましては、現状で申しますと、毎年約七千七百名の方が新たに医師となっているところでございます。もちろん、リタイアする方がいらっしゃいますので、全体では毎年三千五百から四千名程度増加しているところでございますけれども、マクロの増加とミクロの各地域でのあれが必ずしもマッチしていないという状況でございまして、今後とも施策を進めていく必要があるというふうに考えてございます。定量的な検討も必要かと考えております。

 なお、医師の卒後臨床研修制度前後の研修医の配置につきましては、各都道府県ごとの格差はございますけれども、今の必修化が行われる前と行われた後、ちょうど二年たちましたけれども、二回の調査を行ってございますが、東京都あるいは大阪等はむしろ以前よりも大きく減少しているというような状況もございました。一律に地方が減少し、都市部に集中しているという状況ではないのでございますけれども、実態としてどこで働いているかとか、そういうもう少しミクロな世界の問題も検討しなければならないのかもしれません。

 また、研修修了後の医師の動向についてのお尋ねもございました。ちょうど平成十六年度から必修化が始まって、二年間の研修でございますので、今年度末に初めて二年目の研修が修了するということでございますので、その動向を今後把握をして、引き続き検討していきたいと考えてございます。

 いずれにしても、地域において適切な医療が確保できるように、関連する動向の把握と対策の実施ということに努めていきたいと思っております。

新井分科員 ありがとうございます。

 そうですね。本当に、厚生省が挙げている、医師が数字的には過剰だと言っておりますけれども、私なども見ますと、都市部は余っているという状況がありますけれども、やはり地方においてはまだまだ少なくなっている、少なくと言っちゃいけないんですけれども、高齢化になっていくために、当直とかそういうのができない院長の先生とかいるわけです。私もやはり若いときは東京にあこがれました。東京に行けばブランド的なものがあるし、いろいろな症例が見られるし、そういう面からすると、やはりどうしてもそういう傾向があるのかなというふうに思いますので、バランスある医療施策というものをぜひともとっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、二〇〇〇年から、初期研修医制度は、地方にとって、せっかく地方大学に入れて医学生とさせてあるのですけれども、その研修医制度のせいでまた県外に出ていって、東京の方とかブランド的病院とか、特色あるそういうところにみんなまた流れていっちゃうということは、地方にとっても本当に、地方で入れたのをまたとられてしまう、そういう考え方もあると思うんですけれども、地方の医学部にとって、今後、改革していくことについてどう考えているのか、ちょっとお伺いしたいんです。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 地方の大学の医学部あるいは医科大学の卒業生が、卒業後に当該の地域医療を支える医師として育ち、地域に定着していくことは大変重要な課題であるというふうに認識してございます。

 文部科学省といたしましては、現在、各大学の医学部で実施されております医学教育のモデル・コア・カリキュラムというのがございますけれども、これにのっとった地域医療に関する教育の充実、あるいは、既存の医学部の定員の中に、将来地域医療に従事する意欲のある、それぞれの当該医科大学あるいは医学部がある県の高校の卒業生を対象とした入学者枠、いわゆる地域枠の設定、こういったことについて、引き続きこれらの取り組みを各大学医学部あるいは医科大学に促したいというふうに考えております。

 とともに、平成十七年度から、地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラムというものを設けて、各医科大学の中で、地域医療等を担う医療人を養成していくための特色のあるすぐれた取り組みに対して重点的な財政支援を行っているところでございまして、こういった取り組みは引き続き充実してまいりたいと思っております。

 ちょっとその具体的な取り組みについて御紹介申し上げたいと思いますけれども、平成十七年度には、例えば北海道大学のプログラムといたしまして、地域・大学循環型の専門医育成定着システムということで、卒前の医学生の教育、卒後の臨床研修、あるいはその後の専門医の研修等を通じて、一貫して、大学病院とそれから地域のセンター病院とを循環しながら十年単位ぐらいで医師を育成していくというようなプログラム、こういったものを採択して重点的な支援を行っているところでございます。

 今後とも、厚生労働省あるいは総務省など関係省庁とも十分に連携をとりながら、地域医療に貢献する医師の養成にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

新井分科員 ありがとうございます。

 やはり地方においても、本当に特色ある医大とか、そういう特色あるものをそれぞれ各県で持っていかないと、どんどん若い人たちというのは離れていってしまいますので、ぜひともそういうことを十分やっていただきたいと思います。

 それで、本当に地方病院というものは、大学からの非常勤医師とか当直医で今対応しているのが現状であるわけであります。医療の六〇%以上は民間の中小病院で成り立っているのが我が国の医療であり、地方の現場では本当に医療不足というのが非常に深刻であり、また救急医療体制も、やはりお医者さんの、要するに、病院長が高齢化とか、やっている人が高齢化のために崩壊しつつあるということに対して、私は本当に危惧しておりますので、ぜひともこういう問題についても真剣に。また、田舎に行けば、ドクターが足りなくなってくると、やはりどうしても人件費等も高騰してしまいます。

 そういう面からして、ぜひとも厚生労働省として、今後、医師の確保と、研修後医師の検討と、救急体制も含めての対策、どのようにしていくのか、お伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 救急対策につきましては、かねてからの課題でございますけれども、今般の医療法等改正案の中でも、救急、あるいは先ほど申しました僻地その他、社会にとって必要な、地域にとって必要な医療について医療計画の中できちんと位置づけをした上で、医療対策協議会を開催して、そこできちっとその対応をとるというような内容の改正案を御提案申し上げているところでございます。また、救急医療につきましては、計画を持って、予算的な措置等も含めまして、それから、先般の診療報酬の改定等におきましても、救急を担当するところにそれなりの援助措置ができるような仕組みといたしているところでございます。

 今後とも、救急医療の重要性にかんがみまして、各般の施策を進めてまいりたいと考えております。

新井分科員 ありがとうございます。

 次に、小児医療について質問させていただきます。

 小児医療の必要性と重要性というものは厚生労働省も十分認識しているため、今回の診療報酬改定に当たりましては特別に配慮しておりますけれども、やはり小児科医の不足というものは全国的に深刻な問題となっているわけであります。出生率も低く、子育てをするお母さん方にとりましては、子供をどのようにして、もし病気になった場合には一時間以内で救急病院に行かなきゃならないような、そういうシステムというものはやはり必要ではないかと思っております。

 このような状況で、今、小児科医を志す学生というものは非常に減少しているわけでありますけれども、ぜひとも、その対策といたしまして、私が考えるには、やはり小児科医を希望する学生をふやすためには、思い切ってもっと診療報酬を上げてあげるとか、小児科医を専攻する学生には支援をしてあげるとか、また小児科医を地方で開業する人たちにとって優遇措置をしてあげるとか、そういうものも必要になってくるんじゃないかなと私は思っております。

 でも、医師も職業の選択の自由というものがありますので、やはりそれは非常に難しいのではないかと思っておりますけれども、厚生労働省としては、小児科医をふやすため、今後どのような対策を考えているのか、お伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 小児科医の不足の問題でございますけれども、先ほど申し上げた三省庁の連絡会議での医師確保総合対策の中でも特に早急な対策が求められております小児科医の確保につきましては、昨年末に各都道府県に対して、公立病院を中心に小児医療の機能を集約化、重点化するための検討を平成十八年度末までに行うよう要請したところでございます。

 また、何度も申し上げますが、今回の医療法等改正法案におきましても、救急医療、小児医療等の従事者の確保を推進するため、大学病院など地域の医療関係者と話し合いを行いまして、各病院に医師を派遣する仕組み、あるいは医師の不足する地域への派遣に魅力のある研修プログラムを組み合わせるなどの優遇策、それから、医学部の卒業生が地元に残るようにする方策などを検討していく医療対策協議会の制度化など、法制度面からも必要な措置を講じているところでございます。

 また、十八年度の予算案におきましても、都道府県における産科医療の集約化等を含めた経費、あるいは小児の救急に関する経費等を計上しているところでございます。

 また、平成十八年度診療報酬改定におきましても、小児医療に係る地域の中核的な病院、深夜の小児救急医療などを重点的に評価することとしてございまして、引き続き、いろいろな方面から総合的な医師確保対策に取り組んでいきたいと考えております。

新井分科員 では、これを最後にしますけれども、今、財政厳しい中、医療費の削減とか言われておりますけれども、やはり国民に良質な医療を提供するためには、中野副大臣といたしましては、その決意というものを最後にお聞かせいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

中野副大臣 今、新井議員がおっしゃるとおり、国民に良質な医療を提供するということは非常に重要でございまして、その中で、今、少子高齢化の流れの中で、医療費全体としての節約というものは当然必要でございますけれども、しかしながら、委員がおっしゃるとおり、そういう点については、我が省としても、全力を挙げて良質な医療を提供する、そしてまた持続的な社会保障、医療制度を、国民皆保険という制度も残すように、そのために全力で頑張りますことをお誓いしたいと思います。

新井分科員 ありがとうございました。

 ぜひとも、やはり国民も本当に期待しておりますので、今後とも頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きょうはどうもありがとうございました。

森主査 これにて新井悦二君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤田幹雄君。

藤田分科員 自由民主党の藤田幹雄でございます。本日はどうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日お伺いしたい点は、大きく分けて三項目ございます。医師関係と歯科医師関係、そして狂犬病予防法の三項目でございます。

 私は選挙区が船橋市でございまして、船橋市医師会そして船橋歯科医師会の会長様の方に取りまとめいただいて、地元からの質問というものもきょう幾つか含まれておりますので、その辺もお含みおきいただきましてお答えいただければと思います。

 さて、まずお伺いしたいのは、これまで医師というのは、医学部を卒業しますと、すぐ免許を得て専門医という方向に進まれるということが一般的でございまして、総合的な診療を学ぶというチャンスが今まで余りなかったというふうに聞いております。

 そんな中で、平成十六年に医師臨床研修制度というものが義務づけられたとお聞きしておりますが、それ自体は結構なことというふうには考えておるということなんですが、その点につきまして、まず、厚生労働省の方で、現在までの評価、そして、もし今お考えになられている改善点等々がありましたら、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

松谷政府参考人 医師臨床研修制度は、今回必修化ということで、平成十六年度から施行されたわけでございます。

 今回の制度改正は、実は、昭和四十三年に、それ以前、インターンの制度というのが一年間の研修としてございました。それが廃止されたとき以来の改革、三十六年ぶりの抜本的な改革でございまして、何年か時間をかけてみないと正確な評価ということはできないと思いますけれども、現在までの状況ということで申し上げますと、まず、新制度では、研修希望者が自由に研修先を選べるようにいたしたところでございますけれども、各臨床研修病院の研修プログラムを公表して、それぞれが、プログラム同士が競うという形になったところでございますが、これによりまして、これまで研修先に係る病院と研修希望者との希望のマッチ、お見合いをしているわけでございますが、そのマッチ率というのが九五%以上一致してきたということがございます。

 また、旧制度におきます研修医の処遇の低さというのも課題であったわけでございますが、これにつきましても、端的に申しますと、平均年収が相当大幅に改善をしたといったようなことから、基盤としての制度は比較的順調に進んでいるというふうに認識をしているところでございます。

 ただし、研修指導医の質及び量の確保などの課題もあるというふうに認識してございまして、これらにつきましては、今後、指導医やプログラム責任者の講習を引き続き開催するとともに、指導医が指導方法を学ぶためのガイドラインの改定など、指導が一層充実するように取り組んでまいりたいと考えております。

 また、現在、臨床研修病院と臨床研修医に対する研修の実施状況あるいは研修目標の達成状況等に関する調査の準備を行っているところでございまして、ちょうど二年間たちますので、これらの調査を行った上で、その結果も参考に、今後の進め方について検討していきたいと考えております。

藤田分科員 ありがとうございます。

 そして、若干重複する点もあるんですが、私の選挙区の船橋市の方では、この研修制度を始めて幾つか問題点が今起きているという指摘をいただいております。

 地域の病院で中核的な働きをしていた医師というのが大学の方に戻るようになってきた。そういったところで、輪番制そして入院や検査を引き受ける二次救急病院のシステム、そして小児救急のシステムが崩れるという危機に直面しているというふうな御指摘をいただいております。

 とある病院では、大学への医師の引き揚げによる医師の数の減少というものがかなり深刻化しておりまして、当番を引き受けることができなくなる、担当の医師がその時間にいなくなるという深刻な問題が起きておりまして、それに伴って、病院そのものの経営が厳しくなる、あるいは医師の退職そして開業へ動いていくというような問題が多々起こっているということでございます。

 他方、研修医におきましては、臨床研修が十分できる有名大学の病院を選択するということで、大学離れということも起きているというふうなことでございます。

 数々のメリットの一方で、こういった影響というものが出ているというふうな御指摘をいただいているんですが、そのあたりのところを今後どのように対応されていくかということをお聞かせいただきたいと思います。

松谷政府参考人 大学病院の医師の引き揚げ等の問題がございます。この原因といたしましては、平成十五年当時のいわゆる名義貸し問題が顕在化したこと、あるいは平成十六年度からの国立大学の独立行政法人化など、臨床研修の必修化以外にもいろいろな要因が複雑に作用した結果だというふうに考えてございます。

 ただし、今先生おっしゃられたように、臨床研修も、その目標、目的は相当程度前向きに進んできたというふうに思いますけれども、制度導入に当たりましては、研修医の募集定員や指導医の経験年数について柔軟な取り扱いとするなどの経過措置もあわせて講じてきたところでございます。

 また、臨床研修が必修化される前の平成十五年十一月から、地域における医師不足の問題につきまして、先ほど申し上げました厚生労働省、総務省、文部科学省の三省で関係省庁連絡会議を開催いたしまして、医師確保の総合対策の取りまとめなどを行ってきているところでございますけれども、医師の確保と臨床研修というのはいずれも大事なことでございますので、その両面が両立するような施策ということを考えていきたいと思っております。

 なお、今国会に提出いたしました医療法等改正案につきましても、先ほど申し上げましたように、法制度面からも医師確保の方策の枠組みを入れたところでございますし、また、研修後の医師の動向につきましては、先ほど申し上げましたように、今年度末に初めて二年間の研修が終了するということでございますので、研修が修了した医師の動向を把握していきたいというふうに考えてございます。

 これらの要素をまた勘案した上で、引き続き、三省庁の連絡会議等の場におきまして、対策をさらに進めていきたいというふうに考えてございます。

藤田分科員 ありがとうございます。

 それでは、次に、小児科医に関しての質問をさせていただきたいと思います。

 小児科に関しての現状なんですが、医師の数が三年前の約五五%に激減をしているという統計があるとのことです。

 そして、国民としても大変、船橋市医師会としても大変な危機感を募らせている。この傾向が続くと、多くの大学は市中の病院から小児科医を医局に引き揚げる、そして深刻な小児科医の不足というものが起こり得るということを危惧しております。

 そして、診療報酬の点で申し上げましても、小児科医の方は、入院医療管理費の引き上げ等々も行われておりますが、まだ希望者の増加というところには至っていないということで、老人の医療費七十に対して小児は三という非常に厳しい数値が出ておりまして、我が国の最重要課題の一つではないかというふうな指摘をいただいております。

 これに関しまして、厚生労働省の方では、今後どのような対応を考えていますか。そして、一つの意見として、少子化対策の一環としても、小児科への思い切った配分だとか、あるいは、就学前の小児科に関しては医療費を例えば無料にするなどの思い切った方策なども考えられているかどうか、そのようなあたりもお聞かせいただきたいと思います。

松谷政府参考人 小児科医の確保につきましては、先ほども答弁申し上げましたけれども、社会全体の少子化の対策にも資するということで、各般の対策をとっているところでございます。

 三省庁の連絡会議の中でも、その確保について早急に対応が求められているということで、公立病院を中心に小児医療の機能を集約化、重点化するための検討を平成十八年度末までに行うよう要請したところでございます。

 また、今般の医療法等の改正法案につきましても、各都道府県におきまして、大学病院などの関係者も含めて、地域での医師の派遣の仕組み、あるいは不足する地域への派遣ができるようなプログラムの優遇策、そして医学部の卒業生が地元に残れるような方策といったことの検討ができるような医療対策協議会の制度化などを盛り込んでいるところでございます。

 また、先ほど申し上げましたように、予算措置、それから、今般の診療報酬改定において、小児医療に係る地域の中核的な病院、あるいは深夜の小児救急医療などを重点的に評価することにしてございまして、総合的な施策というものが必要となっているところでございます。

 以上でございます。

藤田分科員 ありがとうございます。

 具体的には何か診療報酬等で施策は打つ御予定はありますでしょうか。それから、もっと具体的に小児科医をふやしていくような方策というのはおありになるんでしょうか。その辺をお聞かせいただければと思います。

水田政府参考人 十八年度の診療報酬改定におきましては、小児科について重点評価をすべきである、これは政府・与党の医療制度改革大綱でも言われておりまして、乳幼児の深夜加算等の新設、それから評価を充実するということでございまして、やはり御心配な深夜の点、救急の点、ここに重点を置いて診療報酬上の重点的な評価をしたい、このように考えてございます。

藤田分科員 ありがとうございました。

 では次に、高齢者の医療の問題についてお伺いしたいと思います。

 昨今、療養型の病床削減の問題につきまといまして、病床の削減というのが非常に医療費の削減には効果的であるということは周知の事実でございますが、その一方で、療養型の病床から早期に退院を迫られるという患者さんが最近多くなってきているという問題点が発生しております。そして、介護保険で使える施設というのは、最近はどこも満員であって、余り入所できないという問題がありまして、在宅療養に切りかえるしかないというような方が多いということでございます。

 そんな中で、在宅療養というのは、今の制度下ですと、非常に法律の敷居が高くて、二十四時間の往診とか、また訪問看護に対応できる体制等々、要件が厳しい。そのかわりに診療報酬で手厚く加算されるということにはなっておるようでございますが、今後、退院を迫られて行き場のない患者さん等々に対しまして、厚生労働省の方での今後の対応、そして介護施設の充実策なども含めて、こういった患者さんに対してどのような対応をされていくのかというところを聞かせていただきたいと思います。

磯部政府参考人 今回の療養病床の再編につきましては、六年間をかけまして、療養病床は医療の必要度が高い患者の方々に限定して医療保険で対応し、医療の必要度の低い方々への対応といたしましては、療養病床を老人保健施設等の介護施設に転換していただきまして、そのまま主な受け皿となっていただくということを想定しております。

 したがいまして、療養病床の再編に伴って、入院している方々が追い出されるといったことがないようにすることが大前提でございまして、今後六年間は、医療療養病床においても対応できるよう、介護保険移行準備病棟という経過的な類型を医療保険の方で設けることとしております。

 また、介護保険の方におきましても、平成二十三年度までの六年間は、介護療養病床を制度として存続させるということとともに、経過的な類型を用意することとしております。

 また、改築なく老人保健施設に転換できるような経過的な施設基準等も定めて、受け皿に万全を期したいと考えておりまして、いずれにせよ、療養病床の再編に当たりましては、入院、入所されている方々の不安を招かないよう、適切な対応を図っていきたいと考えております。

藤田分科員 どうもありがとうございました。

 退院する患者さんに不利益にならないような施策をぜひお願い申し上げます。

 それでは次に、歯科の問題に移らせていただきたいと思います。

 医科と歯科の格差というのが昨今非常に問題になっておりまして、昨年の実態調査によりますと、所得が医科一に対して歯科が〇・五、総医療費に関しましても、歯科は医科の八%にしかすぎないということになっております。そして、今回の改定におきましても、歯科の引き下げ項目が非常に多いという御指摘を地元で受けております。経営の合理化、職員の削減といった手段をとっても、なお多くの歯科医院は経営が非常に困難に陥っているということでございます。そして、初診料という点で見ましても、点数制度で医科が二百七十点、歯科が百八十点という格差がございます。それから再診料においても、医科が七十一点、それに対して歯科が三十八点という極めて大きい格差がございます。

 そんな中で、一つお伺いしたいのですが、医科と歯科の初診料、再診料のこういった格差の問題、これはどのような理由でこのようなことになっているのか、そして、増加していない歯科医療費というものをさらに削減しなければならない、その辺の理由についてお聞かせいただきたいと思います。

水田政府参考人 医科と歯科の診療報酬上の評価の点でございますけれども、根本的には、その診療の対象となります傷病の性質、診療行為の内容が異なるということで、それぞれの特性を踏まえて、出発点といたしましても、別個の点数表、医科、歯科別に定められているわけでございます。

 それぞれの医療特性の違いの中で、初診、再診に点数の違いがあるのは具体的になぜかということでございますけれども、歯科の場合には、医科に比べまして、歯を削ることでありますとか、抜歯でありますとか、義歯等の小さな外科手術を行うことが多いということから、技術料を重視した点数体系となっているということでございまして、今までの改定におきまして、初再診などの基本診療料よりも技術料に点数を多く配分しているということが実態としてございます。

 それから、もう一点、今回の改定でマイナス改定、歯科にもあったじゃないかということでございますけれども、全体といたしまして、賃金それから物価の動向などの経済動向、あるいは医療経済実態調査の結果等を踏まえまして、診療報酬本体でマイナス一・三六%、こういうマイナス改定があったわけでございます。それぞれ、技術料の分もございますので、各科別の改定率ということで見ますと、医科一・五〇、歯科一・五〇、調剤〇・六〇でございまして、バランスを見ながら、先ほど申し上げましたような医療経済実態調査の結果も踏まえながら、こういった痛みを分かち合っていただく、このような形になったところでございます。

藤田分科員 ありがとうございます。

 ただ、一律で一・五%削減ということで、医科と歯科の間には診療報酬、医療費そのものも大変大きな格差があるわけでございますが、その中で一律で本当にいいのかという声が歯科の方から多く聞こえているわけでございます。

 この辺のところを、今後の方策も踏まえまして、今後、医科と歯科というものが同じような診療報酬制度で進んでいくものなのか、あるいは、歯科の方の立場から申し上げますと、やはり医科に比べて点数制度も、技術料に偏っているとはいえ非常に厳しい。それから、歯科医療費も全然最近は増加をする傾向がないという厳しい状況の中で、医科と同じというのは余り納得できないという御意見がございます。今後の方針も踏まえまして、その辺をどういうふうにお考えかをお聞かせいただきたいと思います。

水田政府参考人 大変難しいお問いかけでございますが、この診療報酬改定率につきましては、いろいろ議論がございましたけれども、政府の予算編成過程で決めるということでございまして、最終的には閣僚折衝で、全体のマイナス幅のみならず各科別の改定率、これにつきましても決められたところでございまして、先ほど申し述べましたように、それぞれの診療報酬におきます技術料の割合とかそういったものを勘案しながら、当然ながら全体バランスよく決定をされるように、私どもとしても実態をよく見てまいりたい、このように思っております。

藤田分科員 ありがとうございました。

 歯科医療の実情、経営状況等も踏まえて、国民に良質な医療を提供できるような方策をぜひお願い申し上げます。

 次に、この歯科の問題でもう一点お伺いします。

 我が国は、少子化と並んで高齢化というものも昨今大変進んでおりまして、皆さん御存じのとおり、八〇二〇運動という、八十歳の段階で二十本の歯を保とうという運動がございます。そういったことで、最近、平均年齢の増加に伴って、八十歳というのも決して特別な年齢ではないという状況になっておるわけでございます。

 そんな中で、現行の歯周疾患検診の節目検診というものがあると聞いております。こちらが、平成十六年の改正によって、四十歳、五十歳、六十歳、七十歳というところで節目検診が行われているというふうに聞いておりますが、八〇二〇運動ということで申し上げれば、これをさらに八十歳にまで引き上げるというようなことが必要なのではないかという御意見をいただいております。これにつきましては、厚生労働省の現時点でのお考えはいかがなものでございましょうか。

磯部政府参考人 老人保健法に基づきます歯周疾患検診の対象年齢につきましては、平成七年に四十歳及び五十歳の節目検診を始めまして、ただいま委員御指摘のとおり、十五年までは四十歳、五十歳であったものが、平成十六年度から六十歳、七十歳の方を加えて対象としておりまして、現時点におきましてはその拡大ということは考えておりませんが、本年の四月から、新たに介護保険制度の中で介護予防事業というものを設けますが、その中で、八十歳の方を含めまして六十五歳以上の方々につきましては、口腔衛生状態の改善や摂食、嚥下機能訓練等による口腔機能の向上を図るための事業を実施するという予定でございます。

 後期高齢期におきます口腔機能の維持向上は生活の質の改善にも非常に重要であると思っておりまして、こうした事業によりまして、今後とも歯科保健対策の充実に努めていきたいと考えております。

藤田分科員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、医科、歯科問わずに、医療の充実というものが国民の健康に直結する重要な問題であるということは当然のことでございます。増加する医療費とそれを賄うための保険料、そして自己負担など、大変な問題が幾つかございますが、国民皆保険は、我が国が世界に誇れるものです。良質な医療のもとに国民が安心して暮らし、人生を全うできる、そういったすばらしい社会をつくるためにも、ぜひこのあたりは協力していただいて、永続性のあるすばらしい方策というものをつくっていただければというふうに思っております。

 私自身も、今後この問題については取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞ御指導をよろしくお願い申し上げます。

 それでは、ちょっと議題をかえまして、狂犬病予防法の点につきましてお伺いをさせていただきたいと思います。

 狂犬病予防法というのは、昭和二十五年に制定されまして、もともとは、狂犬病の発生を予防する、そしてその蔓延を防止する、そしてそれを撲滅するという目的のためにつくられた法律でございまして、簡単に申し上げますと、抑留された犬が三日間を過ぎれば行政の方で処分ができるといった法律でございます。この三日間の内訳というのが、公示期間が二日間、そして所有者の引き取りが一日間、合計三日ということでございまして、三日を過ぎたら基本的には処分をしていいといった法律になっております。

 しかし、そんな中で、昨今、平成元年から十六年までの統計で、合計二百九十五万二千五百九十七匹の犬がこの法律によって殺処分されているという現状になっております。ここで大変大きな問題点があると思うのですが、二百九十五万頭という犬が三日間を過ぎて処分されている。そして、当然のことながら、飼い主が犬を捜して、どこに問い合わせをしていいかわからないといった中で殺されてしまっている犬も多々あるのではないかというふうに考えられるわけでございます。そして、狂犬病そのものも、ここ数十年間日本では発生している例は一例もないといった中で、この三日間というのが余りにも短いんじゃないかという御指摘を特に動物愛護協会等々の方から受けております。

 一方で、当然、狂犬病というものを予防する中で、そんなに簡単に、法律を改正するというのは難しいことなのかもしれませんが、他国の状況を見ましても、例えばアメリカのロサンゼルスでは、保護施設に収容された犬というのは三カ月間収容期間があるということでございます。そして、犬というものが、通常、落とし物には遺失物法によって二週間の公示期間というものがあるわけでございますけれども、それに引きかえこの法律ではたった二日間というのが、やはり短過ぎ、返還の妨げになっているというふうに思うわけでございます。

 鑑札というシステムがございますね。犬につける札でございますが、これがついていれば、当然持ち主は、犬が迷っても、だれの犬かというのが一目でわかるわけでございますけれども、その装着率が余りに低いということでこの問題が起きている、そういった側面もございます。

 そういった中で、今後の対応をお聞きしたいのですが、鑑札の低い装着率も含めまして、今後の厚生労働省のこの点についての対応をお聞かせいただきたいと思います。

中島政府参考人 狂犬病についてでございますが、御指摘にもありましたように、我が国におきましては、国内では昭和三十三年以降この発生はないわけですけれども、中国、ロシア、東南アジアなどにおきましてはいまだに流行が絶えておらない状況でございまして、WHO、世界保健機関によりますと、世界で年間三万五千から五万人がこの病気により死亡しているというふうに推計をされているわけでございます。

 このような状況の中、我が国におきましても、密輸とかあるいは不法犬の上陸なども考えられまして、狂犬病に感染した犬が国内に侵入する可能性もあるということから、徘回している犬につきましては抑留をしておりまして、しかしながら、鑑札によりまして登録が確認された犬については、所有者に通知をして返還を行っているという状況でございます。

 公示期間の延長についてのお話もございましたが、抑留施設におきます飼育管理というような観点から、自治体における負担が増加するということもあり、なかなか難しい問題であると考えておりますけれども、お話にもありましたように、鑑札の装着義務の遵守を徹底させるというようなことを通じまして、所有者への返還率の向上を図ってまいりたいというふうに考えております。

藤田分科員 ありがとうございました。

 ぜひ鑑札の装着率のアップと、それから、やはり常識で考えて、三日というのは持ち主の方が捜されるときに大変短い期間だと思いますので、ぜひその辺の期間の延長の方も御検討の方をよろしくお願い申し上げます。

 私の質問はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

森主査 これにて藤田幹雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻分科員 民主党の長妻昭でございます。

 きょうは、年金改革を進めるためにも、川崎大臣、あるいは村瀬長官と年金の質疑をさせていただきたいと思いますので、端的にお答えをいただきたいと思います。

 まず、川崎大臣にお尋ねをいたしますけれども、年金とは何ですか。

川崎国務大臣 もちろん、国によって仕組みが違いますので、日本の国でいえば、国民一人一人が自助努力で現役時代に積み立てて、そして、老後という表現がいいのか、一定の年齢に達しましたならば今度は給付を受ける立場になる、それが生活の一部に当てられる、こういう認識でございます。

長妻分科員 その給付水準というのも問題になると思うんですが、やはり、老後の生活を保障する、老後の最低限の生活を保障する、こういう意味づけも年金というのにはあるとお考えですか。

川崎国務大臣 これは予算委員会でも与党、野党からもいろいろ質問が出ました。生活保護費と国民年金との比較。そこで私どもが申し上げていますのは、確かに生活保護費は最低の生活を保障するための費用である、基本的には、生活保護をもらう人たちはストックがないという前提で生活補助を行っておりますと。

 そういう意味におきましては、国民年金については、若い時代から、いやまた先祖様からもあるかもしれません、ストックというものと年金というものを組み合わせて生活を送っていく、こういう認識をいたしております。

長妻分科員 このストックがあるという前提、そうすると、端的に言うと、自営業の方というのは厚生年金をもらっているサラリーマンの方よりもストックが多いという認識でありますか。

川崎国務大臣 そこは組み合わせでございますから、例えば、厚生年金でも厚生年金基金があり、また、国民年金でも国民年金基金があり、自助努力でそこを積む、しかし、そこに国が支援しているわけではない、税体系の中でやっているという考え方であろうと思います。

長妻分科員 いや、私が聞いておりますのは、先ほどのストックという意味は、多分資産という意味だと思います。国民年金は、それだけで生活するんではなくて、そこに資産があって、それに上乗せして老後の生活をする、先ほどそういう趣旨のお話をいただきました。

 ということは、厚生年金というのは、国民年金よりは給付額というのは高いわけでございますけれども、自営業の例えば国民年金をもらう対象の方々というのは、厚生年金の対象の方々に比べて自分が持っている資産が多い、そういうお考えですか。

川崎国務大臣 厚生年金にしても、国民年金にしても、基本的には自助努力で積み立てていくという範疇の中で、国民年金でも、国民年金基金として、自分の老後がもう少し欲しいということでやる。すなわちそれは資産ですね、資産です、はっきり言って。生保であろうが、国民年金基金であろうが、自分が掛けて、自分の権利としてたまるわけですから、これは資産と考えていい、こう思います。

長妻分科員 先ほどのストックという意味とちょっと若干ずらしているような気がするんですが、実際問題として、四十年、国民年金、基礎年金を払って、満額もらっても月額約六万六千円。この六万六千円で一カ月。老後、これはみんないろいろな自助努力をしています、自助努力、皆さん、国民全員していますが、仮に不幸にして資産がもうなくなってしまった、貯金もない、資産もなくなってしまったときに、もう年金だけが頼りだというときに、この六万六千円で生活できると思われますか。

川崎国務大臣 人それぞれの生き方がございますので、幾らだったら生活できるとは申し上げません。もっと言えば、その六万六千円というのは四十年間フルに掛けた人ですから、もっと少ない方もいらっしゃるわけですから、現実にそれで生活を送られている方もいらっしゃるだろうと思いますので、私の方から、幾らなければという一つ一つのことについては答えられない。

長妻分科員 ちょっと大臣の常識感覚を疑うんですけれども、私が聞いているのは、一般常識として、資産も全くない、貯金も全部底をついてしまった方が、一カ月六万六千円でこの日本国で生活できるのかどうかという常識感覚を聞いているんですが。

川崎国務大臣 生活保護費と六万六千円を比べたときに多いか少ないかという議論はあるだろう。一方で、当然、親族等との共同の生活もある。逆に言えば、夫婦二人だと十三万二千円、これは明らかに生活保護の最低保障金額より多うございますから、それは、ある意味では多いという考え方になるだろう。

 そういう意味では、六万六千円というものをベースにしながら、年金というものを自分の将来の生活保障という形で組み入れながら、それぞれが生活設計を立てているものというふうに考えております。

長妻分科員 私が先進国を調べますと、やはり、老後、年金をもらっている方が生活保護も受けているというケースはないみたいなんですが、これはそのとおりでございますか。

川崎国務大臣 さあ、諸外国でどういう生活保護のスタイルになっているか、詳細については今申し上げられません。正直言って、今データを持っていませんから。

長妻分科員 実際に、ちょっと大臣の常識感覚も首をかしげるんですが、六万六千円で一人、例えば単身の場合、資産がなくて生活できるのかといったときに、夫婦であれば十分な場合もあるような先ほど発言がありましたが、では、単身、一人の場合、日本で六万六千円で資産なし、何にもなしの場合の生活、常識的にどう思われますか。率直に、大臣。

川崎国務大臣 すべてのストックがなくなり、かつ六万六千円だけで、できるかできないか。先ほどから申し上げているとおり、それぞれのケースがあるだろう。生活保護が必要であるということになれば、私ども、それは対応していくことになっていくだろうと思います。

長妻分科員 年金というのは、老後の最低限の生活を保障する、こういう目的もあるものじゃないんですか。

川崎国務大臣 これは、先ほどお答えしましたように、生活保護費と国民年金の議論の中で、民主党の中でも、また与党の中でもさまざまな議論がございます、正直申し上げて。しかし、そこは、年金については、それですべて生活ができるんだという前提には立っていない。若い時代のストック、また親族関係の援助、さまざまなものの組み合わせの中で生活設計はされるものである、こういう理解をいたしております。

長妻分科員 日本で、年金をもらっていながら生活保護も受けている、こういう方はいらっしゃると思われますか。どのぐらいいらっしゃると思いますか。

川崎国務大臣 数については全く承知しておりません。

長妻分科員 では、年金をもらっているのに生活保護を受けている、こういうケースというのは、大臣、全く知らないですか。

川崎国務大臣 今申し上げたように、六万六千円というのは四十年間フルに掛けたときの年金ですから、そういう意味では、それより低額の方はいらっしゃいます、二万幾らしかないと。したがって、そこに対して生活保護という考え方は当然入ってくるだろう、こう思っています。

長妻分科員 年金をもらっていながら、つまり公的年金制度の給付の対象になっていながら生活保護を受けている、こういうケースは、大臣、自然なことだと思いますか、異常なことだと思いますか。

川崎国務大臣 今申し上げたように、年金が自助努力としての結果、しかし、それが二万幾らしかない。しかし、生活保護は、実際、もう少し高いですね、最低保障ですから。その差額についてさまざまな形で国が援助するということは、当然あり得るだろうと考えております。

長妻分科員 いや、私がお伺いしているのは、そもそも生活保護を受けざるを得ないような低水準の年金、そういうような方々、当然、無年金者も日本には、一生年金を一円ももらえない、こういう方もいらっしゃると思いますけれども、そういう状況が今放置されていることに関して、つまり年金をもらっていても、あるいは六十五歳以上になっても生活保護を受けざるを得ない、こういう状況というのは、これは何とか年金を変えなきゃいけないという御認識というのはないんですか。

川崎国務大臣 年金改革につきましては、一昨年の法改正、さまざまな議論がされて、そして、私ども、今の課題としては被用者年金の一元化ということで取り組んでいる、委員の御承知のとおりでございます。

長妻分科員 いや、私がお伺いしたいのは大臣の認識なんです。

 確かに、年金をもらっていながら生活できない年金ですから、生活保護を受ける、制度上はそういうふうになって、今生活保護を受けておられる方はいらっしゃるわけです。しかし、年金をもらっていながら生活保護を受けるというこの現実が、これは年金の給付額の考え方に問題があるんじゃないのか、私はそういう問題意識を持っているんですが、年金をもらっていながら生活保護も受けるというこの現実に対して、これはしようがないことなんだと思われるのか、変えなきゃいけないと思われるのか、どっちでございますか。

川崎国務大臣 多分、立場が違うということでしょうね。私どもは、先ほどから申し上げているように、自助努力として年金が一部ございますと。それから、若いころからの努力したストック、特に国民年金基金だとか生保だとか、こういう商品は当然あります。それから、俗に言う不動産と言われるものもある、こういうものをあわせながら老後設計を考えていくというシステムを今日までつくり上げてきた、これは事実でございますので申し上げておきます。

長妻分科員 いやいや、大臣、大臣の見識を、別に細かい法律論をお伺いしているんじゃなくて、年金をもらう、つまり給付を受けている、しかし、給付を受けながらも生活保護を申請せざるを得ない、そうしないと生活ができない、こういう現状というのは、まあそれはそれで一つの考え方と思われておられるんですか。

川崎国務大臣 もちろん、人が生活をするのに国家として最後のセーフティーネットを張らなきゃならぬ、したがって生活保護というものがある。国費四分の三、四分の一地方負担という中で最低保障という制度をつくっている。それが生活保護でありますから、そこに足らない人が出てきて、かつストックが全くないと言われるんだったら、国が支援すべきだろう、このように思います。

長妻分科員 私が調べた限りでは、先進国では年金をもらっている方が生活保護を受ける、こういうケースはないというふうに聞いているんですが、私の今の発言というのは、どうですか、先進国で。

川崎国務大臣 きのう、おとといでしたか、予算委員会でも、いろいろ先進国の例を比較して、逆に高いんじゃないかという御指摘をいただいた委員もある。ですから、そこは正確なデータで議論した方がいいと思いますので、場合によってはデータをお出ししたいと思います。

長妻分科員 生活保護と、何しろ老後、最低限の生活ができるような年金というのが、当然、厚生労働省の中でも別の局が御担当されていると思うんですが、非常に別個に今まで検討されてきて、やはりそれが考え方としてなかなか一つに整理がされていないんじゃないか。

 例えば、先ほど大臣が言われたように、年金を四十年払わない場合、ちょっとお伺いしますけれども、二十五年ルールというのを御存じですか。

川崎国務大臣 多分、日本がとっている二十五年掛けなければ給付の権利がないという厳しい制度の一つであろうと思います。

長妻分科員 まさに厳しいと言われたように、先進国に比べるとかなり厳しい、延べ二十五年年金保険料を払わないと、年金保険料を没収された上、一銭も給付金がない、こういう制度で、私も首をかしげる制度です。

 いずれにしても、例えば三十年とか、あるいは二十六年とか、そういうふうに給付基準をクリアしても、おっしゃるように、年金の受給額が四万円とか五万円とか非常に少ない形になった場合に、生活保護を受けざるを得ない方もいらっしゃる。しかし、そういう方も一定の生活保護の基準までは差額をいただけるわけであります。

 ただ、一方で、同じケースで、若いころも含めて全く年金保険料を払っていない方、そして、同じように生活保護を受けざるを得ないような状況の方も、同じ水準の生活保護の給付金というか、それを支給されるわけですね。

 そうすると、そのお二人を比べてみると、非常に何か不公平感というか、そういうお考えはないですか。

川崎国務大臣 日本の国のセーフティーネットとして、人間の尊厳でございます、人間が生きていく、その中の最低保障を国として責任を持つ、足らざる分について責任を持つというのが生活保護という制度であろうと思いますから、年金が二万円あるから、生活保護をゼロの人と同じようにフルにもらって二万円いい生活をしましょう、それはちょっと無理な仕組みになっていくだろうと私は思います。

長妻分科員 いや、私が申し上げたのはそういうことじゃなくて、全く年金の保険料を払っていない方、これはいろいろな御事情があると思います、そういう方も、例えば、個人で言うと、最大月額八万円生活保護を受けるAさんがいらっしゃる。Bさんは、基本的にはもう二十六、七年間年金保険料を払って、ただ満額はもらえないけれども、年金支給を受けたけれども、それはそれで生活ができない状態なので生活保護を受けざるを得なくなったということで、そういうBさんがいらっしゃる。

 BさんからAさんを見ると、最終的には生活に使えるお金、生活保護のお金は自分も同じなんだけれども、Aさんは、若いころ、いろいろな事情があったにせよ、基本的には全く年金保険料を払っていないにもかかわらず、同じ状況になっている。こういう何か不公平感というのは感じられませんか。

川崎国務大臣 切り口なんですね。要するに、ある人が、収入はない、いや、ちょっとだけお金がある、しかし一カ月の生活を送ることはできない。人間の尊厳として、国家としてこういう人に対してきちっとした保障をしようという切り口、損得勘定の切り口でやっている話ではありませんから、最低生活は保障するという中で、私どもは制度としてやらせていただいている。過去この人がどうであったとか、そういうことを問うて生活の最低保障をしているわけではない、こう私どもは考えております。

長妻分科員 私が何でこういうことを聞くかというと、国民年金の保険料を払うインセンティブというところが非常に影響を受けないか、そういう趣旨で聞いているわけであります。

 そうしましたら、何しろ、やはり老後、国として年金制度をつくっているからには、年金の受給資格が出た方、そして受給を実際されている方が生活保護に頼らないと最低限の生活ができない、こういう二つの制度を使わないと最低限の生活ができないというのは、私は非常に首をかしげるんですけれども、やはりそれは年金の制度を直していく、老後を年金で最低限の生活ができるようにしていく、こういうような方向性というのは、大臣はどうお考えになるんですか。

川崎国務大臣 年金を老後生活を送るための一つの糧として、自助努力をしてくださいと。しかし、サラリーマンだって、正直言って厚生年金だけではないですね。普通は、退職金という制度もあれば、いろいろな形で生活設計を送っている。まして自営業の皆さん方等は、さまざまな形で老後というものを考えながら自助努力をしてもらう、しかし公的にこの部分についてはお手伝いをしましょうという中で制度ができ上がっている、私どもはこう考えております。

長妻分科員 やはり両方の制度をちょっと一緒にきちっと整理をしていただきたいと思うんです。

 サラリーマンの方も大変です、年金が非常に少なくなって。しかし、国民年金だけの方に比べれば、それは当然給付は高いわけでありまして、何で国民年金の方々は生活が基本的にはそれだけではできないような非常に低い水準になっているのか。生活保護に頼らざるを得ないようになっているのか。

 実際、平成十五年度の数字ですけれども、生活保護を受けておられる方が、人数でいうと百二十九万人おられて、そのうち六十五歳以上の方が四十九万人、つまり生活保護を受けておられる方の三八%が六十五歳以上。その四十九万人の六十五歳以上のうち二十三万人が年金ももらっておられる、つまり六十五歳以上の生活保護の方の四七%が年金ももらっておられる。では、年金をもらっておられて生活保護を受けておられる方の年金の受給額の平均というのは、一カ月四万五千円ということで、それでも生活保護を受けざるを得ない、こういうようなことです。

 当然、単身では、年金の満額としては、一カ月国民年金約六万六千円、しかし生活保護で最大では一カ月八万円、それに家賃補助も加わると九万三千円ということで、非常にそちらの方がレベルが高くなってしまう。

 大臣に御認識をお伺いしたいんですが、今後、生活保護の水準と国民年金の給付の水準というのは、差がさらに開いていくというふうにお考えですか。

川崎国務大臣 生活保護全体は、生活の最低保障問題、住宅それから医療等があります。特に、入院ということになると、かなりの負担を国がしていることにはなります。そういう意味では、全体を足しますと相当な金額になっているということは事実でございます。

長妻分科員 私がお伺いしたのは、先ほど月額の話を申し上げましたけれども、生活保護の毎月お支払いする金額と、国民年金の毎月の給付の金額、この差というのは今は生活保護の方が高いわけですけれども、その開き、差は今後拡大傾向になっていくでしょうかということなんです。

川崎国務大臣 生活保護費がこの五年間、どのぐらいの推移をしてきたのか私も数字を見ていませんけれども、余り大きな変動はないんではないかなと思っています。大きな変動はないんだろう。そういう意味では、最低生活保障ですから、それが非常に高くなっていくということもなかなか考えにくいなと思います。

長妻分科員 そうすると、国民年金の給付水準と生活保護の支給水準というのは、今差がありますけれども、その差は今後は拡大しないで、今と同じような差でずっと推移していく見込みだ、そういうお考えでよろしいんですか。

川崎国務大臣 何十年ぐらいのスパンで見るかということでしょうけれども、十年ということになれば、大きな差がつくとは思っておりません。

長妻分科員 今差があるので、逆に我々は、民主党としては、最低保障年金、これを消費税財源で入れるべきだ、こういう主張をして、私もそれを実現したいということで、大臣も含めて今いろいろな働きかけをさせていただこうということできょうも質疑をしているわけでありますけれども、そういう意味では、最低保障年金制度、こういう考え方、これは大臣はどういう御理解ですか。

川崎国務大臣 先ほどから繰り返し申し上げておりますとおり、年金が老後のすべての生活を賄うものとは考えておりません。自助努力の中において、さまざまな工夫がされていくものであろう。したがって、今政府としては、被用者年金の一元化ということに取り組ませていただいておるというのが事実でございます。

長妻分科員 国民年金と生活保護の水準に差があるので、私は年金の水準を上げるべきだと思っているんですが、何か今、そうじゃなくて生活保護の水準を下げて基礎年金の給付に近づけるような、そういう動きがあるやにも聞いているんですが、そういうこともあるんですか。

川崎国務大臣 そういう発言をされる方もいることは事実ですけれども、私は考えておりません。

長妻分科員 社会保険庁長官にお出ましをいただいておりますので、お伺いをいたします。

 今の議論を聞いて、長官としては、年金というのは、これは国民の皆さんは年金を掛けておられるときに、万が一老後に財産が全部なくなる、あるいは貯金も全部なくなってしまっても、最低限の生活ができるのがやはり年金だ、こういうふうに御理解されている国民の皆さんも私は大変多いと思うんですが、その期待に今の質疑では基本的にはこたえられていない年金なんですね、日本の年金制度というのは。長官、どう思われますか。

村瀬政府参考人 日本の年金制度は、先ほど大臣からもお話しありましたように、自助努力でございまして、将来の糧の一部が年金で賄われるというふうに私自身も考えておりまして、その中で、現在の水準というのはしっかり守っていく必要があるのではなかろうか、このように考えております。

長妻分科員 社会保険庁の姿勢の問題でちょっと一点だけ申し上げると、民間から村瀬長官は来られたということでありますけれども、ここに表を社会保険庁からいただきましたけれども、国民年金に関しては、二十年間、毎年徴収が未達成になっている。つまり、徴収目標の予算を毎年立てているんですが、実際に幾ら徴収したというのが、毎年達成ができていない。平成十六年度も二千九百十七億円マイナスになっている。これは私は非常に不可思議な印象を持つんです。

 厚生年金に関しても、二十年間、たった二回、バブルのときの二回を除いて全部未達成、つまり、徴収の目標と実際徴収した額が、平成十六年度も四千七百五十八億円マイナスになっている。

 これはちょっと疑念を抱くのは、何か目標を高くするとそれはそれで経費は一定の経費がそちらに入ってくる、ですから、例えば目標を現実的な形にすると経費が削減される、こういうようなことも聞くのであります。普通の企業で二十年間予算が達成しないとしたら首になる、私も民間企業経験ですけれども、あるいは左遷されたり、いろんなことになると思うんですが、何でこれはずっと未達のまま、いいかげんな予算を立てておられるんですか。

村瀬政府参考人 過去の経緯につきましては詳細を私は存じ上げておりませんけれども、おっしゃるように、予算と決算の乖離が毎年大幅にあるということは事実でございます。

 昨年も、大臣の方から御答弁させていただいたと思うんですが、やはり積算根拠をもう少し詳細にして、できるだけ予算数字と決算数字の乖離がないように、こういう形で努めてまいりたいというふうに思っております。

長妻分科員 時間が参りましたので質疑は終わりますけれども、年金の一元化、これは国民年金も入れた年金の一元化、そして生活保護との考え方の整理、そして老後に最低限の生活ができる最低保障年金制度など、年金の改革というのは一歩をまだ踏み出していないという段階だと思っております。国民の皆さんの期待が非常に高い分野でもございますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 以上です。

森主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、田嶋要君。

田嶋(要)分科員 民主党の田嶋要です。

 きょうは、BSEに関して質問をさせていただきたいと思います。

 私は千葉で、たまたま委員長も千葉でございますが、千葉の方では千産千消という言葉がございまして、その地の字を千葉の千にして、千葉で生産して千葉で食べる、そんなようなことも言われておるんです。

 食の安全というのは特に国民にとって大変大きな関心事ということで、ややもすれば、徐々に、遠くで生産されるものというのはどうも心配だ、何をやられているかわからない、そういうような国民感情はだんだんこれから強くなってくるんじゃないかなという感じがいたしております。それはBSEだけにかかわる問題ではない、穀物とかも共通だと思うんです。

 そうした中で、今、BSEの問題が出てまいりました。昨年十二月に解禁をして、一カ月でまた今こういう事態になっておることですが、大変なことだなと思っております。これをどうやって今度再々開をするのかなということで、大臣も大変お悩みではないかなというふうに思うんです。

 まず、前回の再開のことをお伺いしたいんですが、あれは閣議決定に基づいた再開ではなかったというふうに農林大臣から御答弁ございましたが、厚生労働大臣は、その決定の中でどういう役割を果たされておったのでしょうか。

川崎国務大臣 何回も答弁が出たと思いますけれども、安全委員会の答申が出てきた、それに基づいて、厚生労働省それから農林水産省、それぞれ判断を行った。

 形的には、私どもの方の判断が早うございました。たしか、その当日に農林水産省が決定をして、農林水産省が決定したのを受けて我々も、それでは一緒にやりましょうと。当然、両方がやらなきゃだめですから、そういう役割でございます。

田嶋(要)分科員 決定はそのようにそれぞれということでございますが、食の安全、BSEに関して、農林水産省と厚生労働省の役割分担があると思うんですね。ホームページで見ると、どちらにもBSE問題ということが書いてありますが、中でも、農林に対して、厚生労働省というのはどういう役割をお持ちでしょうか。

川崎国務大臣 私どもが食品安全にかかわる所掌をいたしております法律的根拠は、厚生労働省設置法第四条「飲食に起因する衛生上の危害の発生の防止に関すること。」逆に、農林水産省設置法第四条「農林水産物の食品としての安全性の確保に関する事務のうち生産過程に係るものに関すること。」すなわち食品衛生に関することは除く。したがって、役割分担は分かれている。

 しかし、検疫、おわかりのとおり、まず動物検疫を農林水産省がする、その後我々は食品衛生の検査をする、ある意味では二重チェックになっている。そういう意味では、ダブっているじゃないかと言われれば、ダブっている部分はあるということになります。

田嶋(要)分科員 私、成田空港の方にも行ってきましたけれども、あちらの検疫の体制もそのような状況になっているのかなという印象を受けました。

 そういたしますと、厚生労働省、これまでも薬害エイズの問題とかアスベストの問題とか、大変厳しい事態に追い込まれた、日本として厳しい問題がいろいろございましたけれども、やはり同じ轍を決して踏んではいけない。そして、特に人の口に直接入るものでございますから、これは国内も国外もやはり同一の基準で、最優先に食の安全、そして国民の安心感を醸成していくということが最重要の判断基準になってくるというふうに思うんですが、その点は御同意されますか。

川崎国務大臣 基本的には、科学的知見に基づいて判断をしていく、薬の場合でも食料品でも当然でございます。

 そういった意味では、食品安全委員会の御意見、答申を受けて私どもは判断をしたということになります。

田嶋(要)分科員 いろいろお役所の方からレクを受けますと、確かに科学的という言葉を再三お伺いするわけですが、しかし、いろいろな地域でお話を伺っていますと、おとといも北海道の方におりましたが、多くの方が口をそろえて言うのは、日本国内と輸入物に関してのダブルスタンダードということですね。それはもう当たり前なんだ、日本のやり方はそういうことなんだということを多くの方から聞きました。

 BSEの話で、きょうはまず肉骨粉の話もさせていただきたいというふうに事前に申し上げておるんですが、アメリカという国、先進国という意味では日本とEUとアメリカ、北米ということで見ていきますと、肉骨粉に関して、これはもう再三予算委員会でも出ておりましたけれども、アメリカだけは規制の事情が違うということはございますか。

川崎国務大臣 先ほどお読みしたように、生産過程の中でえさの問題が出てまいりますから、基本的には私の所管ではございません。そこは御理解を賜りたいと思います。

 えさの使用について、食品安全委員会からも意見があり、アメリカにおいても、我々としてはこういう形でお願いをしたいということで申し上げていることは事実でございます。

田嶋(要)分科員 農林副大臣、宮腰副大臣もお見えでございますけれども、予算委員会の中で、民主党の川内委員の方からの御質問に対して、小泉総理大臣が、二度、御存じないという御答弁がございましたね。正直ではあるんですけれども、私も大変驚いたわけです。

 副大臣ないしは中川大臣は、十二月十二日再開時点でそういうことは御存じだったのでしょうか。

宮腰副大臣 もちろん、中川大臣は十分に理解しておいでになったと思います。

田嶋(要)分科員 副大臣は。

宮腰副大臣 私も理解しております。

田嶋(要)分科員 厚生労働大臣は、昨年十二月十二日解禁決定の時点での、アメリカのそういった飼料に関する事情を御存じだったでしょうか。

川崎国務大臣 先ほど申し上げたように、安全委員会の答申の中に触れられておりますので、概略は承知しておったところです。

田嶋(要)分科員 これをどのぐらい大きな問題か、軽微な問題か、主観が入ると思うんですけれども、私、個人的には、これを総理大臣が御存じなかったというのは非常に驚きました。

 豚や鶏に特定危険部位が入っているおそれのある肉骨粉が使われていることも御存じなかったし、それが交差汚染という形で牛にまた食べさせているということも御存じなかったということですが、私は、総理大臣もそういった基本的なところをよく御存じない状況のまま前回解禁をされた。しかし一カ月足らずでこういった問題が起きた。しかも、あの解禁のときは大変多くの方が実は反対をされていた。いろいろアンケートをとってもそういう結果があったということを理解しておりますが、そこは御存じでいらっしゃいましたか。

川崎国務大臣 基本的には、先ほどから申し上げておりますとおり、その問題も含めて食品安全委員会が答申を出されたわけですから、当然、それに従いながら私どもはやっていくということになります。

 そのときに、国民のアンケートでどのぐらいが反対をし、賛成したかは、正確に覚えておりません。

田嶋(要)分科員 でも、多くの人が反対をしておりました。そして、その中で解禁されたわけですが、やはり多くの方々が、いろいろな圧力の中でかなり性急に、拙速に解禁をしたのではないか、だからこそ、それ見たことかということになったのではないかというふうに思っておると思うんですね。

 では、今この時点において、いろいろアメリカの方から、原因究明、再発防止策の報告書も出てまいりました。それに対して、不十分だというようなことを政府の方も言っているやに聞いておりますが、これから再々開に向けて、一体どういうふうにやっていこうというふうにお考えになっておるか。

 これは一回目と違いまして、私の意見では、一回無理無理再開をしてしまった、しかし、すぐミスが発覚をした。アメリカのせいだというふうに言い張っても、日本国民が見ているのは日本政府の次のアクションだと思うんですが、一体どうやって再々開を実現していくか。これは大変な難問だというふうに思っておるんですけれども、厚生労働大臣、どのように今お考えですか。いつごろとか、そういう見込みとか、何かありますか。

川崎国務大臣 そういう意味では、委員と私は同じ立場に立っているんじゃないでしょうか。信頼関係が壊れた、この信頼関係をどうやって構築するかということが大事であって、そこは、アメリカから出ました要旨、今訳しているところですけれども、結構量が多いんですよ。詳細について報告がまだ私のところも上がっていない段階にあります。一部出せるかなとは思っておりますけれども。

 いずれにせよ、そういうものを精査しながら、どうやって信頼関係を回復するんだ、こういう思いにアメリカみずからなってもらわなければなかなか話し合いが進まないねという認識を私は持っております。

田嶋(要)分科員 その信頼感を取り戻すのは、日本の国民ですね。日本の国民がアメリカの牛肉に対しての信頼感を最後は取り戻さなければ、だれも買ってくれないわけでございますので、日本の政府じゃなくて、日本の国民ということだと思うんですが、検査官が日本の基準に関する教育を受けていなかったとか、だからそれを行うとか、一名を二名にふやすとか、何だかいろいろ書いていますけれども、どうやってその信頼感を取り戻すかという決め手となるようなものは、何か大臣はお考えですか。

川崎国務大臣 まだ報告書自体も、先ほど言ったように、すべて日本語訳が終わっていませんので、実はそこまで思いは至っておりません。向こうから報告書が来た。それをしっかり読ませていただいた後、みんなで、まさに中川大臣がいつも御答弁されているのを委員がお使いになりましたけれども、国民が食べないですよと、強引にやってみても。したがって、きちっと信頼をどうやって回復するんだというところの視点で、日本とアメリカの中で話し合い、もちろん話し合いはしなきゃなりませんから、話し合いは続けられることになるだろう、こう理解しております。

田嶋(要)分科員 昨年十二月のように、あれあれという感じのところで再開ということは今度はできないと思うんですが、私は、先ほど申し上げた肉骨粉の問題、これは日本の国民の間では、ネット上とかではかなり話題になっていると思うんですね。

 だから、確かに科学的な結論として、肉骨粉のところに関しては入っていないわけですが、しかし、今度のハードルが、この間の、せんだってのハードルよりはるかに高いということを考えますと、私は、肉骨粉に対して強い姿勢で臨んでいくべきだというふうに考えております。

 これも予算委員会の中での総理の答弁にもございました、具体的な事例を挙げて米国政府にきちんと伝える、あるいは警告するというのは大事だと思っております、こういった御答弁。要するに、肉骨粉のアメリカの現状に関しては全く御存じのなかった総理でございますが、すぐさまそういったことを御理解され、御認識を述べられたものだというふうに思うんです。私は、その危険性というのをしっかりとアメリカに訴え、今もやっておられると思うんですが、そして、今度の再々開の条件の中にやはり入れていくというところまで踏み込むべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

宮腰副大臣 食品安全委員会の評価結果の附帯事項としても、米国の飼料規制につきましては、SRMの利用禁止が必須であるというふうに指摘をされておりまして、昨年十二月の輸入再開に際しまして、この旨を米国政府に伝達し、特段の配慮を強く要請したところでございます。

 現在、米国におきましては、BSEリスクを低減するため、SRMの飼料利用の規制強化を内容とする飼料規制の改正案につきまして、パブリックコメントに対し寄せられたコメントも踏まえた検討の後、最終規則を策定、施行する予定と聞いております。

 一方、飼料規制は、それ自体が牛肉の安全性を直接確保するものではなく、米国に対し、牛肉輸入の条件として求めることは適切でないと考えております。

 なお、食品安全委員会による米国産牛肉等についての評価におきましても、米国における飼料規制の実態について考慮した上で、日米間で合意した輸出プログラムが遵守されれば、我が国で生産された牛肉と米国産牛肉とのリスクの差は非常に小さいと考えられるとの結果が得られているところでございます。

田嶋(要)分科員 アメリカと同じような肉骨粉の飼料、日本で、例えば北海道の肉牛を育てるときに同じようなものを使ったらどうなるんですか。それは問題あるんですか。

伊地知政府参考人 お答えいたします。

 米国では、鶏や豚由来の肉骨粉を牛に給与することは認められておりますが、我が国においては、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律に基づく基準において、哺乳動物由来たんぱく質は家畜等を対象とする飼料に含んではならないとされており、この基準に違反して飼料を製造したり使用したりすることは、同法の第四条に違反することになります。

田嶋(要)分科員 要するに、日本では法律違反になることがアメリカでは行われている、そういうことですか。

伊地知政府参考人 今言われたとおりでございますけれども、我が国が米国と同様の飼料規制を行った場合については、交差汚染によってBSEの感染の可能性が高まることも考えられますけれども、牛肉の食品としての安全性という観点からは、食品安全委員会における米国産牛肉についての評価におきまして、米国の飼料規制の内容も考慮した上で、日米間で合意した輸出プログラムが遵守されれば、我が国で生産された牛肉と米国産牛肉とのリスクの差は非常に小さいと考えられるとの結果が得られているところであります。

田嶋(要)分科員 つまり、そういう肉骨粉を飼料として使うことによって、日本の国民の食の安心と安全は何ら影響がないということでしょうか。

伊地知政府参考人 お答えいたしましたとおり、日米間で決められた輸出プログラムにのっとって行われた場合において、日米間の牛肉のリスクの差は非常に小さいという食品安全委員会の評価を得られておるところでございます。

田嶋(要)分科員 食の安全ですので、日本人の口に入る肉です。日本政府、アメリカ政府ということをちょっと今忘れていただいて考えていただきたいんです。北海道から出てきた肉も口に入る、アメリカから出てきた肉も日本人の口に入る、その点で聞いているんです。

 安全と安心という観点で、アメリカの、日本では法律違反だけれどもアメリカでは認められている肉骨粉を使った肉を口に入れても、安全、安心の差は一切ないんでしょうか。

伊地知政府参考人 食品安全委員会におきまして、アメリカの実態を踏まえた形での答申をいただいたわけでございます。

田嶋(要)分科員 では、なぜ日本で肉骨粉を法律違反にするんですか。自由にやらせたらいいんじゃないですか。

伊地知政府参考人 飼料規制につきましては、その国の肉牛の生産の状況とか飼料生産の状況とか、それぞれの国の実態に合った形での規制がとられているというふうに承知しております。

田嶋(要)分科員 食の安心と安全に国境はないんじゃないですか。それをダブルスタンダードというんじゃないですか。どうなんですか。

伊地知政府参考人 飼料の規制そのものは、今申し上げましたように、アメリカの場合は、肉骨粉を製造する、牛の製造工場とかが専業化がかなり進んでいるとか、レンダも、屠畜場も豚と牛を一緒にやっていないとか、そういう実態がございます。

 そういう実態がありますので、それぞれの実態を踏まえた飼料の規制がなされております。それを踏まえて、食品安全委員会でそういうことも御議論していただいた上で、食肉の安全性についてのリスクについて評価をされているというふうに承知しております。

田嶋(要)分科員 何かアメリカを擁護するような発言もございますけれども、科学的何とかというのは、それはいろいろありますよ。だけれども、一回解禁してつまずいているわけです。これをどうやって再々開するか、大変難しい問題ですよ。さらに踏み込んだアクションを日本政府としてとらないと、日本の国民の信頼性はかち取れませんよ。

 前回でも、六割反対したけれどもなし崩しにやられた、しかし、力のない、権力のない国民は、仕方がない、日本政府のやりたい放題だ、そういう印象を受けているわけですよ。アメリカの圧力のもとにやられたな、みんなそう思っている。今度はそれは通用しないんですよ。だからこそ、一つ手前の話かもしれないけれども、飼料の部分のいろいろ書かれている問題に関して、もう一つ新しい要求をアメリカにのませないと、日本国民は納得しないと私は思いますよ。

 食品安全委員会の名前を必ず出すんですけれども、日本国民から見たら、それは明らかなダブルスタンダードですよ。日本でだめなものがアメリカではいいと言われている。何でそういう肉を日本人が食べなきゃいけないんですか。それだけのことですよ、非常にわかりやすい。日本でやっている同じ規制をやれるところからだけ買えばいいじゃないですか。厚生労働大臣、どう思いますか。

川崎国務大臣 これからの我々の議論は、根本的には輸出プログラム、両者の損なわれた信頼を回復して、輸出プログラムをアメリカがきちっと守るところを見せてほしい、これが主体の要件になるだろう。少なくとも、食品安全委員会で答申をいただいたものを踏み越えてまたやれという委員の御意見でございますけれども、今の段階でそのような考え方には立っておりません。

田嶋(要)分科員 今農水の方から御答弁ありましたが、ダブルスタンダードになっていると思いませんか。いろいろなケースを私も北海道で聞いてきましたけれども、その一つのケースがこの話だと思いますよ。ダブルスタンダードになっていると思いませんか、厚生労働大臣。

川崎国務大臣 二十カ月の月齢ということで、一つの基準を引いた中でやっておりますので、基本的に大きな違いはない。また、答申自体も大きな違いはないということでありますけれども、一方で、答申自体にえさの問題、飼料の問題、触れられてありますから、そこが日米間の少し見解の違いですね。しかし、だからといって、今回の安全委員会の答申、それがゆえに、守らなければ輸入は再開するなという答申にはなっていないということだけは御理解賜りたいと思います。

田嶋(要)分科員 ちょっと雑誌に出た記事の話をしますけれども、大臣、御存じですか、ニューズウィークという雑誌がございますね。そちらに二月にBSEの特集記事が二週続けて出ました。これは、私も取り寄せて読んだんですけれども、もともとはアメリカの雑誌ですね。これは、アメリカの方ではその特集記事が載っていないんですよ。それは御存じでしたか。

川崎国務大臣 ニューズウィーク自体見ていませんから、わかりません。

田嶋(要)分科員 私も驚いたんですが、これは、同じBSEの問題が、国によって取り上げられ方が全く違うわけですね。ニューズウィークにも確認をしましたけれども、編集権というのはそれぞれの地域に独立で与えられていますから、アメリカではそんな記事は読まれないということで没になったんだろうというふうに思うんですけれどもね。

 考えてみますと、アメリカの場合は、国民が本当に食の安心、安全に無関心なのか、牛肉の安心、安全に無関心なのかと考えると、そうじゃなくて、やはり発信が全然ないから知らないんだ、私はそういうふうに感じます。大臣、その辺どう思います。アメリカでは何か牛肉の安心、安全に余り関心がないというような話も聞きますけれども。

川崎国務大臣 私も、事後になっていますけれども、アメリカから毎年日本の輸出施設を見に来る。アメリカは何をきちっと我が国をチェックしに来ているんだ。もちろんBSEの問題もございますけれども、基本的にはO157でしょうか、この問題に非常に日本以上のきつい関心を寄せておるということは承知しております。

 そういう意味では、お互いに、やはり国が違いますから視点が多少違うことは事実だろう。しかし、我々、それではBSEだけかといえばそうではない。そういったアメリカが非常に注目している問題も、我々もしっかりチェックをしていかなきゃならぬな、こう思っております。

田嶋(要)分科員 まさに今大臣が言われたとおり、それぞれの国、それぞれの国民、それぞれの政府で視点は違う、おっしゃるとおりだと思うんですね。だからこそ、事BSE、米国産牛肉の問題は、日本の消費者の視点から、それが北海道の肉であろうがアメリカの肉であろうが、その視点からやはり考えていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに私は思うんです。再々開、いつかは再々開されるんでしょうけれども、そのハードルを乗り越えるためには、そういった視点で取り組まなきゃいけないんじゃないかと思います。

 これも予算委員会で総理の御答弁の中でございました、恐らく、日本人だったらば、輸出するためには、外国の基準に合わせて、輸出できるんだったらそれに合わせようとする業者が必ず出てくると思うんですね、アメリカでもそういう業者が出ていると言うんですから、そのような形で日本に輸出できれば、その業者も喜ぶし、日本も安全な牛肉を食べられるんだったら喜ぶ、そういうことを言っています。

 だから、ここで言っているのは、包括的にゴーサインを出すか出さないかじゃなくて、やはり今度は、ぜひ日本の消費者が安心、安全と考える基準に達した製造工場だけを対象として輸入をする、そういう形というのはお考えになっていませんか、大臣。

川崎国務大臣 そういう意味では、輸出プログラムを守る、アメリカ国内できちっとやりますよという約束が破られた。日米間で決めた輸出プログラムを一つ一つの施設にどう守らせるのか、それをアメリカはどう担保するかというのが一番大きな議論であろうと思います。もちろん、そこのところはやはりきちっとしなければならない、このように思っております。

田嶋(要)分科員 私が申し上げているのは、最終的におたくの工場から日本に輸出はいいですよ、そういう判断を日本政府でやる気はないですかということです。

川崎国務大臣 もう委員も御承知のとおり、我が国からのアメリカへの輸出、これも事後チェックになっていますね。我が国が、それでは日本の国が行って見ましょうと。しかし、そうすると、ずっと検疫官が向こうはついていますように、日本の検疫官がついていなきゃならぬということになりますね。一緒に検証しましょうというのはわかりますよ。しかし、日本の国が許可したということになれば、日本の国はずっとついていかなきゃならぬですよ、アメリカで、許可した工場へ。日本がずっと派遣しておかなければならない、もしくはアメリカの人を雇ってその工場をチェックしなければならない。

 そこは、製品すべての輸出の検査体制ということにつながっていく話になりますので、基本的には輸出国の責任できちっと輸出する国に対しての責任を履行していく、これが当然のことであろうと思っています。

田嶋(要)分科員 やはりこれは、買う側が見るというのは世の中の常識じゃないですかね。お客様は神様ですと言わなくても、買う側がやはり力がなきゃいけないと思いますよ。だから、日本が決めていく。現に韓国はそういうやり方をとると聞いていますけれども、何か御存じですか。

川崎国務大臣 韓国が今どういう対応をしようとしているのか、聞いておりません。

田嶋(要)分科員 これは、時間は来ましたけれども、冒頭申し上げたとおり、本当にこれからますます国民の関心が高まってくる分野の第一歩のスタートとしての大きな問題だというふうに思っているんですね。まさに、こういう分野こそ国民の声に真摯に耳を傾けて、時にはアメリカの考え方を改めさせて、さらに一段も二段も高いスタンダードに引き上げていくようなリーダーシップを私は日本政府に果たしていただきたい。それを多くの国民が期待しているんじゃないでしょうか。

 最後に御答弁をお願いします。

川崎国務大臣 損なわれた信頼をどう回復していくか。基本的には、アメリカが主体的に動かなければならぬだろう。しかし、言われるとおり、我が国も国民へきちっとした説明をしなきゃなりませんから、そこははっきり物を申し上げながら、動いてもいかなければならないだろう、このように考えております。

田嶋(要)分科員 いずれにしても、私の趣旨は、交差汚染の問題あるいは全頭検査のような問題も含めて、やれるところはあるんです、アメリカにやれるところはある。そういったところからだけ入れていくという手法を考えていただきたい。そうでもしないと、私は、日本の国民の安心感というのはかち取ることは、再々開はできないと思います。

 そのことを最後に申し上げまして、私の質問時間を終わりにいたします。ありがとうございました。

森主査 これにて田嶋要君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本龍君。

松本(龍)分科員 民主党の松本龍です。

 きょうは、川崎厚生労働大臣、森委員長初め、長時間にわたって分科会、御苦労さまです。

 きょうは、つらくて重い課題になりますので、心してお話を聞いていただきたいというふうに思います。

 事の正確を期すために、文章を読ませていただきます。

 一昨年の十二月の日韓首脳会談において、小泉総理は、韓国の盧武鉉大統領に対して、戦時中の民間企業への動員犠牲者の遺骨収集を真剣に検討すると約束いたしました。そして、昨年五月二十五日に開催された第一回日韓政府協議では、日韓の双方は、朝鮮半島の旧軍人軍属及び旧民間徴用者等の遺骨問題に対して、一つ、人道主義、二つ、現実主義、三つ、未来志向の三つの原則に基づいて取り組んでいくことの合意がなされております。昨年九月には、日本政府が行った当面の調査結果を韓国に報告することに至ったわけであります。

 戦後六十年間たって、今まで放置されてきた重い課題にやっと取り組まれつつあるわけでありますけれども、これにかかわっておられる各省庁に、まず敬意を表したいというふうに思います。

 戦前、戦中に日本が植民地にしていた朝鮮半島から多くの人たちが日本に渡ってきました。一九三八年には国家総動員法が公布されて、全国の学生や女性たちが動員され、ただ、その動員のありさまは、当初行われた募集の形式においても、半ば強制的に連れてこられた方もおられました。全国各地の鉱山などで働かされて、危険な作業につかされていることが多く、余りにもつらく過酷な労働に耐えられなくて脱走した人も数知れません。その結果、たくさんの人々が犠牲となり、亡くなったと推定をされています。しかし、その方々の死亡通知さえ遺族に届けられない場合が多く、まして遺体はどのように葬られたのか、今まで多くがやみの中でありました。

 今回の調査は一昨年の日韓首脳会談のもとで始まりましたけれども、これは日韓両国の関係を改善する一つの対策として始められた経緯もあります。頼まれた調査だからといっていいかげんに済まされる問題ではなく、むしろ、戦後日本の人道的な責任が問われている、あるいは日本政府の信義あるいは正義が問われているというふうに言っても過言ではないと思っております。

 まず基本的な質問として、政府は、当時日本に連れてこられた朝鮮人労働者の総数と死亡者数をどのように把握しておられるのか、また、戦後六十年間に返還された遺骨の総数は幾つで、現在日本に残っている遺骨の数をどのように把握しておられるか、お伺いをしたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 最初の方に御質問のございました、当時日本に来られた民間徴用者の方の総数、あるいは亡くなった方の総数につきましては、データを持ち合わせておりません。

 また、後でお尋ねの、では遺骨の数がどれぐらいありますかということでございますけれども、この朝鮮半島出身の旧民間徴用者等の遺骨につきましては、企業なり地方公共団体、あるいは宗教法人に対しまして、遺骨に関する情報提供の依頼を昨年行いました。これまで韓国側におよそ八百五十体余りの遺骨の情報を提供したところでございますけれども、ただ、先生御質問の遺骨の総数という点につきましては、データを持ち合わせていないところでございます。

松本(龍)分科員 遺骨の総数がわからないということは、何体の遺骨を返還すればいいかわからないという意味ですよね。

 それじゃ、分母もわからない、分子もわからない、そういうことで、そうしたら、ただ情報があっただけの遺骨を返還すればいいということですか。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 朝鮮半島出身者の名簿等の問題につきましては、以前も、平成二年ごろでございますけれども、韓国政府の依頼を受けまして、当時、政府として調査をしたことがございます。旧労働省を中心といたしまして、朝鮮人徴用者等の名簿につきまして幅広い調査を行いまして、その結果をまとめたものを平成三年、四年に韓国政府に対して提出したものがございます。

 この点に関して、朝鮮半島出身民間徴用者に関して政府として把握しているデータというのはそれだけでございまして、そういった意味では、それ以上のデータ、統計等を持ち合わせていないということでございます。

 今回につきましては、今鋭意、地方公共団体、宗教団体、民間企業に対しまして情報提供依頼を政府として昨年来やっているわけでございまして、調査をしっかりやりまして、できる限り所在するものは把握をして、できる限りお返しをしようということで努力をしているところでございます。

松本(龍)分科員 総数もわからない、返還の目標もわからないということで、私はかなりそこのところに誠意が感じられないということをまず申し上げておきたいと思います。

 米国の戦略爆撃調査団の報告では、六十七万人の方々が日本に来られている、そして、これは厚生省勤労局からの提出資料でもあります。そういう意味では、こういったことも言えないということは情けないというふうに思います。

 大臣、お聞きになっていただきたいと思いますけれども、国家総動員法ができてから、一九三九年は募集という形で朝鮮半島から半ば強制的に連れてこられました。その後、官あっせんということで連れてこられました。もう終戦間際になりますと、徴用という形で連れてこられました。

 私は、先般、ある方に筑豊の炭鉱の写真を見せていただきましたけれども、戦争が終わるにつれて子供たちの数がふえている。朝鮮半島から連れてこられた子供たちの数が物すごく写真の中でふえてきているんです。落盤事故で亡くなった方の記録を見ると、十五歳。十五歳で亡くなったということは、十三歳、十四歳で連れてこられている。こういう状況があります。

 そして、この方々が連れてこられた経緯を考えてください。子供のかわりに親が行く。あるいは、親は大黒柱だから、親のかわりに私が行くという子供もいたでしょう。弟はまだ幼いから私が行くという兄貴もいたと思います。そういうそれぞれの家族の歴史や重みを背負ってこの問題があるということを御認識いただきたいというふうに思っています。求めに応じてやっているのではなくて、これはやはり誠心誠意日本はやらなければならない。

 ここで大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、お一人でも多くの遺骨を返還したい、情報を収集して返還をしたいという決意はお持ちですか。

川崎国務大臣 戦後六十年たちながら未解決の問題がある。この間、ハンセン病の問題、一つ取り組ませていただきましたけれども、そういった意味で、やはり、我が国の戦前のさまざまなことを反省しながら、我々できるだけのことをしなければならないだろう。きっかけが、確かに両首脳の会談がきっかけでございましたけれども、厚生労働省として人道的立場から全力を挙げるということを申し上げたいと思います。

松本(龍)分科員 今、全力を挙げるということは、一体でも多くの御遺骨を捜していただきたいということととらえていいんですね。

川崎国務大臣 結構です。

松本(龍)分科員 今、ハンセン病のお話がありましたけれども、大臣が鋭意このことに取り組んでおられることにも、以前から聞いておりますので、敬意を表したいというふうに思います。

 二つ目ですけれども、企業への調査依頼について、政府は、どのような根拠となる資料に基づいて対象企業を特定したのか、何社に情報提供依頼をしたのか、そして何社から回答があったのか、お知らせをいただきたいと思います。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大槻審議官からも答弁の中で言及のありました、いわゆる朝鮮人徴用者等の名簿を平成三年及び四年に韓国政府に提出いたしましたが、その名簿の中に、当時朝鮮半島出身者を雇用していた六百強の企業名が掲載されておりました。外務省は、それらの企業のうち、現存する企業または合併等により名称を変更しておりますけれども存続が確認された企業百二十五社に対しまして、一昨年九月から実態調査を順次実施してまいりました。現在までにほぼすべての企業から回答をいただいておりますけれども、そのうち五社一団体より、計百四十七体の遺骨の所在に関する情報が寄せられております。

 外務省としましては、今後とも、もし朝鮮半島出身の民間徴用者などを雇用していた企業が新たに判明した場合には、調査は継続したいというふうに考えております。

松本(龍)分科員 そのリストの問題ですけれども、対象企業が余りにも少ないと私は思っています。この間、私も、一カ月ぐらいかかって、いろいろなさまざまな人たちと会いました。

 そして、まずちょっと御報告をしておかなければなりませんけれども、「父よどこに眠る」というシリーズを去年の十一月に読売新聞の豊浦潤一さんという方が書かれました。これは七回にわたったシリーズですけれども、大変すばらしくまとめて、よくここまでやったなということで、彼にもエールを送りたいというふうに思います。

 対象企業が非常に少ない。そして、皆さんが出した通達の中には、「可能な限り」ということが前半には出てくるんですけれども、「労働者の遺骨の所在及び差し支えなければ貴社が雇用していた労働者の方々の名簿について御教示下さいますようお願い致します。」その後、「なお、可能な範囲で結構ですので、当時雇用していた事業所近傍のお寺あるいは無縁仏の慰霊碑等がお有りであれば」ということが書いてあります。

 私は、これは腰が引けているというふうに言わざるを得ません。差し支えなければという言葉は、それじゃ、ちょっと暇があればやってくださいよということにもつながりかねません。政府の決意がこの文章からは見えないということを指摘したいと思います。

 どこの企業に情報提供を求めたのかまず明らかにしていただきたいし、そうでなければ、回答のなかった企業が不明のまま放置されることになります。回答がなかった企業について再度問い合わせすることが必要と思われますけれども、今後するつもりはありますか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 回答がない企業につきましては、非常にもう数少なくなっておりますけれども、当然のことながら、督促をしたいと思います。

 それから、もう一点御説明させていただきたいと思いますのは、企業の調査だけでは満足のいく結果が出ない可能性もあるということで、これは政府全体で、関係省庁協力しまして、地方公共団体及び宗教団体に対しましても、朝鮮半島出身者の民間徴用者などの遺骨の所在に関する情報提供をお願いしております。

 いずれにしましても、外務省としましても、一人でも多くの方の遺骨が御遺族のもとに帰ることができるように全力を尽くしたいと考えております。

松本(龍)分科員 一人でも多くの御遺骨を全力で返したいということを今言われました。そのことをしっかり胸に刻んでいただきたいというふうに思います。

 今私が申し上げたことは、つまり、企業にお願いをする、そして、なかなかその情報が乏しいということは、もう去年の十一月の協議でも韓国側から不誠実ということの指摘を受けています。そういう意味では、やはり信義と信頼に基づいて、これから鋭意努力をしていかなければならないというふうに思います。

 例えば、本気で誠意を持って、この「父よどこに眠る」という文章にも書いてありますけれども、ある会社の人は、もう会社の資料室、何十年も扉があけられない資料室に入って、虫に食われながら捜している人たちもいる。一方では、知らぬ存ぜぬを決めて何も報告をしない企業がいる。これは不公平ですよ。

 ですから、そういうところにも、期限を限って、何としても報告を上げなさいというふうな督促をすべきだと思いますけれども、もう一度答弁願います。

梅田政府参考人 改めて、きちっと督促をするようにしたいと思います。

松本(龍)分科員 地方公共団体に対しては、本年一月二十三日段階で、政府が改めて、埋火葬認可証と死亡報告の情報提供を求めました。これらの資料は、死者を特定して遺骨の所在を突きとめるために重要な情報源であることから、大変意義のあることと私は思います。

 しかし、さらに踏み込んで、これらの資料の有無も含めて、すべての地方公共団体から回答を得るように働きかけるべきだと思うが、どうですか。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の埋火葬許可証につきましての調査依頼でございますけれども、第三回日韓協議の場で、御遺骨の実態調査をさらに徹底してほしい、そういう旨の要請が韓国側からなされたことを受けまして、昨年六月二十日付で情報提供依頼をいたしました際の埋火葬許可証に関する部分につきまして、さらに注意を喚起するために、これはすべての地方公共団体に対しまして再度調査を依頼したものでございます。

 引き続き、情報の収集、把握に努めていきたいと考えております。

松本(龍)分科員 死亡情報というのは、私は物すごく大事なことだと考えています。自分の家族、自分の弟、自分のお父さん、自分の息子がどこでどういうふうに亡くなったのか。皆さん、自分の身に引き比べて考えていただいたら、これはもうその人の人格であり、歴史であり、魂であるということをもう一度御認識いただきたいと思います。北海道では、遺骨がなかったけれども死亡情報がわかったということをお伝えしたら、その遺族の方々が号泣をされたということがあります。

 本当に、そういう意味では、死亡情報というものに対して、遺骨は物ではありません、先ほどからずっと言っていますけれども、人道主義に基づいて、なるべく多くの情報を提供されるように要請したいというふうに思います。

 新しい資料の発見は、今後も続くと考えられます。これらはその都度、類する資料がどのような形でほかの地域にあるかを調査し、ある程度存在が予測できれば、改めて調査の要請を行い、判明した資料についてはその周囲まで広げて調査し、情報を収集することが必要となります。戦後、遺骨として保存されてきた経過もあわせて遺族に報告する必要があります。

 そういう意味では、現在、人道調査室がこの問題を中軸となって担当することになったと理解していますけれども、今現在、人道調査室の体制はどうなっているんですか。今後必要となる膨大な調査を考えたら、どういう人員でやられるのかということをまずお聞きしたいというふうに思います。

大槻政府参考人 今、役所の定員事情も厳しい中ではございますけれども、この一月一日から厚生労働省職業安定局内におきまして人道調査室を設置いたしまして、この遺骨返還問題に専門的に取り組むというふうにしたところでございます。

 今後、この人道調査室を中心にいたしまして、遺骨に関する実態調査、実地調査に全力を挙げて頑張っていきたいと考えております。

松本(龍)分科員 何人おられるんですか、担当は。

大槻政府参考人 体制といたしましては、現在三人体制でということでございます。一名は未配置になっておりますけれども、そういう意味で実質今二人でやっておりますが、この体制で今現時点で支障があるということではございません。一生懸命やっているところでございます。

松本(龍)分科員 大臣、三人と言われましたけれども、これからのやはり信義と信頼に基づいて、おととし小泉さんが盧武鉉さんと約束をされたことに対して、三人で大丈夫だと思われますか。

 しかも、私はマンパワーというのは物すごく大事だと思うんです。このことがやはりいろいろなところでやられてきたのは、さっき言った読売の記事を書いた豊浦君とか、あるいは、政府の意向を受けていろいろなお寺に行って汗を流しながら、例えば福岡の田川市の職員とか、そういった本気になって考える人たちがたくさんいたから、今ここまで来ている。それに対して、政府の体制は本当にまだまだ弱い、姿勢が見えないというふうに思いますけれども、大臣、どうですか。

川崎国務大臣 この問題は、委員御存じのとおり、まず、政府全体の調整は内閣官房で行う。先ほど御質問ありました民間企業に対する対応は外務省。それから、地方公共団体及び宗教法人に対する対応は厚生労働省。一方で、宗教団体、地方公共団体と関係が深い文部科学省、総務省におきましても同様の対応をしてもらうという中で、五省庁になりますでしょうか、連携をしっかりとりながらやっていかなきゃならない。また、業務の状況を見ながら、必要とあらばまた判断をしてまいりたいと思います。

松本(龍)分科員 予算措置も含めて、しっかりこの問題、取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 先ほどお話がありましたように、宗教界にもお願いをしたという話がありました。しかし、宗教界では、さまざまな問題があって、遺骨はだれに、どう返還するのか。政府は、全日本仏教会に対して遺骨の情報提供や遺骨実地調査への協力要請を行ってきたが、仏教会から、特にこの遺骨返還の方針や手順を問われて、それが示されないために、全日本仏教会としても協力したいのはやまやまだがこれ以上の作業を進めることができないと困っていると聞いています。

 早急に韓国や北朝鮮と調整をして仏教会に示すべきだと考えますが、どうですか。

梅田政府参考人 お答えいたします。

 現在、遺骨の実地調査に関連しましては、昨年十一月の日韓遺骨協議におきまして実地調査の基本方針について合意が得られました。その合意をもとに、できるだけ早く調査にかかれるようにということで、現在、その具体的な実施要領につきまして韓国側と調整を行っている段階でございます。

 今、委員から御指摘のありましたように、この調査をきちっと実施するためには、言うまでもなく、全日本仏教協会の支持と協力が不可欠でありますし、実際に政府の方は厚生労働省さんの方で中心になってやっていただいておりますけれども、仏教協会の意向を十分に踏まえて韓国側との調整を行っているところであります。また、韓国側との調整の状況につきましては、随時、仏教会に対して説明をさせていただいておるところでございます。

 それから、二点目、北朝鮮に関連しましては、現在、遺骨の調査及び返還に関しまして、北朝鮮当局と具体的に協議を行える状況にはないと考えております。

 仮に、今後の調査を通じ、現在の北朝鮮地域出身の方の遺骨の所在が判明した場合の取り扱いにつきましては、その時点での、御遺族がどこに今おられるのかといったこと、韓国政府の考え方、人道的考慮、それから日朝関係の状況などを勘案して、検討することになろうかと思います。

 以上でございます。

松本(龍)分科員 先ほど仏教協会と言われましたけれども、全日本仏教会ですから。

 温度差があるんですね。全日本仏教会が懸念をしておられるのは、これから遺骨が見つかった場合にそれをどうするのかが示されていないこともあります。韓国と北朝鮮の問題もあります。

 ところが、仏教会は、ある意味ではこの問題に真剣に取り組んでおられるんですよ。何でかというと、やはり宗教者として、この事業が中途半端に終わっては困る、せっかく御遺骨を見つけたけれども、後がどうなるかわからないということじゃ困るということで、彼らは本当に真剣に取り組んでいるんです。遺骨は物ではないし、最後までしかるべき人のところに届けたい、この思いが一番あるから、彼らは悩んでいる。中途半端に終わることを嫌っているんです。だから、そこのところを頭に入れておいてください。そして、温度差があるというのも頭の中に入れていていただきたいというふうに思います。

 大臣、この間、曹洞宗に行ったら、この問題に対して二百万予算つくっているんですよ、御存じですか。曹洞宗という宗派がこの遺骨問題に対して二百万の来年度の予算措置をした。そのくらい真剣にみんな取り組んでいるし、民間のNGOの方々もそうです。みんなボランティアというか、心の思いだけで、みんなやられている。そのことをまず頭に入れていただきたいなというふうに思っています。

 我々凡人、私もずっとこの問題に取り組んで、一月ぐらい勉強しましたけれども、さまざま、周りの人たちは本当に真剣にこの問題に取り組んでいるということをお伝えしたいというふうに思います。

 大臣、この間私、「問題な日本語」という本を読んで、「なおざり」と「おざなり」の違いというのがありましたけれども、違いがわかりますか。

川崎国務大臣 済みません、おざなりというのはいいかげんということでしょうから。

 いずれにいたしましても、六十年経過して、担当者は正直言って苦労しておると思いますけれども、委員の御指摘もあるように、やはり粘り強くやらなきゃならぬ。そして、一体でも多く韓国の御遺族に返せるように努力をしていかなければならない。また、情報収集等、いろいろな御助言もいただきましたので、そういったことも生かしながらやってまいりたいと思います。

松本(龍)分科員 なおざりというのは、無視してほうっておくという意味があります。それを私は、おととしの小泉さんと盧武鉉さんが、なおざりから一歩進んだというふうに評価をしています。小泉さんと盧武鉉さんがやられたことです。いいですか。そこのところ、しっかり腹に入れていただきたいと思います。

 それと、おざなりとは、いいかげんにではあるが、一応物事をするという言葉になっております。なおざりから一歩進んだけれども、おざなりになってはいけない、このことはしっかり肝に銘じていただきたいと思います。

 時間がありませんから、ある方の声をちょっと聞いていただきたいんですけれども、戦前、朝鮮人労働者が北海道と並んで最も多く渡ってきた福岡県の筑豊地方で、三十年以上にわたり寺をめぐり歩き、同胞の遺骨を捜し続けた執念の人が、福岡県福津市に金さんという方が、七十八歳でおられます。日本人と韓国人が不幸な歴史を繰り返さないために、話し合う絶好の機会が到来をしているというふうに言っています。

 そして、この人がいみじくも言ったのは、日韓の遺骨調査の返還は結果より過程が重要と書いてあるんです、結果より過程が重要。つまり、日本がどういう姿勢で臨むのか、どういう信義と信頼を持ってやるのかということが大事だと。この方は一生懸命やってこられて、百歩譲ってこの言葉を、結果も求めているけれども過程が大事なんだということは、百歩譲って言われたというふうに私は思います。

 決断した以上、協力ではなくて国家責任でやっていただきたい。そして、それがひいては日本政府の評価を高めることになろうかというふうに思います。しかも、六十年たって、遺族も高齢化をしています。そういうことでいえば、スピードを上げる必要もある。そういう意味では、大臣は骨のある方だと思います、剛直な人だというふうに思います、物静かだけれども。しっかりやっていただきたい。国際交流という観点でも、大臣のホームページをのぞかせていただきましたけれども、どこかでお互いの心の結びつきを大事にしなければならない、それこそが、何よりも平和と民主主義の大事さを生涯訴え続けた尾崎咢堂翁の言葉であるというふうに書かれています。

 繰り返します。遺骨は物ではありません。その人の人格、歴史、そしてその遺族の歴史でもあります。そういったお一人お一人の歴史、そして人格をしっかり大切にするという意味で、この問題についてさらに取り組んでいく決意を申し述べていただきたいと思います。

川崎国務大臣 まず、取り組む姿勢ということに御言及いただきました。そこはしっかりやっていかなきゃならぬ。しかし、一方で、一体でも多くという結果が出ますよう全力を挙げてまいりたいと思います。どうぞ御支援のほどよろしくお願いいたします。

松本(龍)分科員 終わります。ありがとうございました。

森主査 これにて松本龍君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

森主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。薗浦健太郎君。

薗浦分科員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。本日はよろしくお願いをいたします。

 私は、きょうは、厚生労働という分野の中で、私のどっちかというと得意でございます労働分野の方を中心に、お話をいろいろお伺いしたいと思います。

 まず最初に、細かい個別の質問を聞く前に、労働政策一般についてお伺いをしたいんですけれども、昨年から人口が減少し始め、また、フリーターやニートがふえて、それで、外国人労働者を今後どうするかという問題もさまざまありまして、労働行政を取り巻く環境自体が昨今大きく変化をしているというふうに私自身感じておるんですけれども、厚生労働省として労働行政の今後全般についてどのようなお考えをお持ちか、まずその所見をお伺いできればと思います

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員から御指摘ございましたように、いよいよ人口減少社会が到来したということでございまして、経済社会全体に大きなインパクトがあるわけでございます。その中で、労働政策の目標といたしましては、できるだけ多くの人々が働き手として、その持てる能力を十分に発揮できるような社会の仕組みをつくっていくことが重要であるということを考えておりまして、そのような取り組みによりまして、経済社会の活力を維持増進させるということ、これが一番の目標ではないかと考えております。

 このため、高齢者、女性あるいは若者への就業支援を推進いたしまして、みんなで働いて社会を支える、いわば全員参加型社会をつくっていくことが重要であるというふうに考えておるところでございます。また一方で、働き手が減ってまいりますので、少数精鋭、一人一人の能力を高めて生産性を上昇させていく、そのために能力開発や人材の有効活用に強力に取り組むことが必要ではないかと考えております。

 こういった取り組みを行うことによりまして、働く人の割合、いわゆる就業率を高めること、そして生産性の向上を図るということ、こういうことによって相当程度の経済成長率を達成することは十分可能でございますし、また、そういった活力ある経済社会を目指していくことが労働政策の課題、あるいは労働行政の目標であるというふうに考えているところでございます。

薗浦分科員 ありがとうございました。

 人口が減る以上、労働の参加率を高めること、それから生産性を上げることが私も非常に重要だと思っていますので、ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 それでは、ちょっと個別のいろいろな話についてお伺いをしていきたいと思います。

 最初に、放課後児童クラブについてお伺いをしたいと思います。

 私が選出していただいている市川、浦安という選挙区は、非常に共働きの御家庭、サラリーマンが多いという選挙区でございまして、朝、駅なんかで、子育てをやっているお母さんが出勤をするときに非常に要望を受けるのが、時間延長、その他ニーズ、いろいろな意味で改善をしてくれという話を非常に女性の方からされることが多いんです。基本的に市町村がというのはわかっているんですけれども、省として、このクラブについて、地域ごとの、また利用される方のニーズを吸い上げて、それを施策に反映される仕組みというのはどうなっているのかということをまずお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

北井政府参考人 放課後児童クラブの国庫補助についてでございますけれども、長時間利用のニーズに対応できますように、一日六時間を超え、かつ、十八時、午後六時を超えて開設しているクラブには加算を行っているところでございます。こうした取り組みもございまして、平成十七年五月一日現在で、十八時過ぎまで開設しているクラブは全国で全体の大体三割となっているところでございます。

 今後とも、こうしたことで地域や利用者のニーズに応じた対応ができるように努力をしてまいりたいと思いますけれども、ただ、放課後児童クラブも、いつまでもそこでお預かりするというのもいかがなものかと思っておりますので、そうした放課後の時間については、親がなるべくしかるべき時間に帰れるような両立支援の取り組みとともに、あるいは地域の人材、ファミリー・サポート・センターやシルバー人材センターといった地域の方々のお助けもかりた子育て支援の取り組み、こうしたものが相まってやっていくのがよろしいかと思っておるところでございます。

薗浦分科員 確かに、ニーズがある一方で、子育て、それで本当に子供にとって何がいいのかというのを考えると、預かりっ放しというのでは、やはり家というものからしても問題があると思いますので、いわゆる企業の側も含めていろいろな施策をこれから考えていっていただければと思います。

 もう一点、障害児の話ですけれども、たしか以前は四人で一人というような加算状況になっておったかと思うんですけれども、受け入れ状況を改善するという話を伺っておりますけれども、具体的に、この障害児の受け入れについて今後どのような施策をお考えなのかということをお教えいただけますでしょうか。

北井政府参考人 放課後児童クラブにおきまして障害児の受け入れを推進することは、障害児の活動の場の確保のみならず、障害への理解の醸成といったようなことで児童の成長にも重要なことであると認識をいたしております。

 平成十七年五月一日現在、障害児を受け入れるクラブ数は大体五千カ所、障害児数は一万人程度となっておりまして、年々受け入れが進んでいるところでございますが、厚生労働省では、この放課後児童クラブにおきまして障害児を受け入れた場合に運営費の加算を行っております。

 今お話がございましたように、制度、加算を創設いたしました当初は四人から始めましたけれども、本年度は二人ということになっております。さらに、来年度の予算案におきましては、この加算対象となっております人数要件を撤廃いたしまして、一人でも障害児を受け入れていただいている場合は加算をするということにしているところでございます。

 こうしたことで、障害児のさらなる受け入れ推進に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

薗浦分科員 どうもありがとうございました。

 最後に、これはちょっと根本的な質問になってしまうと思うんですけれども、たしか今三分の一ずつ国とそれから県と市で負担をしておったと思うんですけれども、市町村がその地域のニーズに合った運営をするという意味では、お金というか、権限も含めて、地方にある程度今以上に移譲をしていくべきではないかというふうに私なんかは考えておるんですけれども、その点についてはいかがでございましょうか。

北井政府参考人 現在、この放課後児童クラブの国庫補助というのは、児童勘定、特別会計でやっておりまして、その意味で、今御指摘のように、国庫補助額が三分の一ということになっております。

 ただ、こうした仕組みの中で、今御説明申し上げましたような長時間加算であるとか障害児受け入れ加算であるとか、あるいはボランティア派遣事業であるとか、いろいろな地域の創意工夫、努力のお取り組みによりましていろいろな加算をつけまして、地域の積極的な取り組みが促されるように図っているところでございます。

 今後のあり方につきましては、既に国会でもいろいろ御議論がありまして、例えば文部科学省の居場所づくり事業との連携であるとか、あるいは、放課後児童クラブというのは非常にニーズが高くてまだまだ必要なところに整備が追いついていないということもありますので、その予算の増額であるとか、いろいろな宿題がございまして、今後とも、そういった多方面からいろいろな検討をしてまいりたいというふうに考えております。

薗浦分科員 幼稚園、保育園の話のときも文科省、厚生省といういろいろな話がありましたけれども、その省庁の垣根を取り払って、子供のためになるような施策をぜひ一体となって考えていただきたいというふうに思います。

 次に、若者自立塾というものについて御質問をさせていただきたいと思います。

 そもそも、こんなものまで国がやらなければならないのかと僕は思ってしまうんですけれども、いわゆるニートと言われる若者たちをNPOなんかに委託をして、そこで訓練をして正社員につけようじゃないかという事業であったと思いますけれども、予算、予定されておった人数と、それから今年度の現状、予算の執行状況、それから人数も含めてお教えをいただければと思います。

上村政府参考人 今委員から御指摘のありましたいわゆるニート、教育にも仕事にも雇用にも、それから職業訓練にも参画していない若者がふえているということで、その支援施策として、今年度から今御指摘のありました若者自立塾という事業を始めたところでございます。

 この事業につきましては、予算では二十カ所、千二百人ということで今年度予算でセットしているところでございますが、このような施策が若者の支援策として初めての試みであったことから、準備に時間がかかったこともありまして、七月に三カ所でスタートいたしまして、二十カ所全部出そろいましたのは十一月に入ってからでございます。ことしの二月一日現在の状況でございますが、この塾で訓練を受けた塾生の総数は二十カ所で四百三十二人でございまして、二月一日現在で修了した方々は二百五十人、うち百十八人が仕事についたというふうに聞いております。

薗浦分科員 百十八人で、ことしの予算をお伺いすると、費用対効果の面でいかがなものかという気もしなくはないんですけれども、その点はいかがお考えですか。

上村政府参考人 セットいたしました予算は約十億だったと思いますが、これは委託をして、NPO等、委員からお話のありましたような団体にやっていただいておりますが、その実績を踏まえて一定の要件をかけて精算で支給するということになっておりまして、そういう意味では、予算を全部使い切るという意味での、そういうことはないようになっております。今ちょっと手元に精算した数字がまだ出ておりませんけれども、そういうことで経費を処理することにはなっております。

薗浦分科員 ありがとうございます。

 そうすると、来年度はことしよりも多い十一億という予算を計上されているということは、当然、塾生を集めるとか周知を図るための方策を用意しなければ、ことしとまた同じようなことになってしまうんではないかと非常に危惧をするわけでございます。無理やりやる気のない人を集めてもしようがないわけで、やる気のある人をどこかから引っ張ってきてやらなければならないというための方策というか、PRの方法みたいなものをお考えになっていればお教えをいただきたいと思います。

上村政府参考人 若者自立塾等のニートの対策は、働く意欲が乏しい、あるいはないというような方々をいかに活性化してもらうか、そのきっかけをつくるかということでございますので、委員から御指摘がありましたように、なかなか施策のアンテナにかかってくるというのが難しいところがございます。

 こういった方々をこういった施策に参加していただくようにするためには、本人にそういう気になってもらうのも当然でございますが、親御さんへの積極的な働きかけが効果的ではないかというふうに思っております。現に、親御さんからの塾についての相談が相談の中で最も多いというふうに聞いておりますし、先ほど申し上げました入塾者の多くは、親の勧めで入塾しているというふうに聞いております。

 したがいまして、いろいろな広報、メディアを使いまして、この塾について理解が浸透するように、特に親御さんに対する訴えに努めていきたいというふうに塾の実施者等とも話をしているところでございます。今後とも、広報が行われるように努力したいと思います。

薗浦分科員 先ほど言った人口減少社会の中でいかに若者の労働参加率を高めるかという観点からも、試みとしては非常に面白いと思いますので、全部使えとは言いませんけれども、それに近い人間が参加できるようにいろいろ考えていただきたいと思います。

 それで、ちょっと気になるのは、これは二十カ所ですか、となると地域的な問題が出てくると思うんですけれども、今状況としてない県が実際にあるわけですよね。当然、これがある、いわゆるNPOなんかがここにあるところの人たちは、親が相談をすれば自立塾に入れるけれども、周辺の地域になかなかないところは、そういう救いというか、塾に入れない、受けられないという状況が生じると思うんです。これは、当然、ある程度成果を上げてくると全国展開をしていきたいというふうなお考えだと認識してよろしいんでしょうか。

上村政府参考人 今委員から御指摘がありましたように、東北ですとか四国については、この二十件は入っておりません。塾がないということでございます。今御審議いただいております来年度予算で、五カ所増設をするということを予定してございます。

 塾の実施につきましては、就業意欲、勤労意欲が乏しい、そして就業困難な若者等への対応が必要でございまして、実績や支援体制等、そういったものを総合的に判断してやっていただく塾を決めていく必要がございますが、委員からございましたように、地域的な偏在等についても、そういうことがないように地域性についても十分配慮していきたいというふうに思います。

薗浦分科員 私は、選挙区は千葉でございますが、出身は四国でございますので、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、短時間正社員制度についてお伺いをします。これは、短時間正社員など云々働き方の推進、新規事業というふうになっておりますけれども、そもそも、この短時間正社員制度というのはワークシェアリングの考え方から生まれてきたものだというふうに認識しております。

 ワークシェアというのは、当然、景気が悪いときに、多くの人々が仕事を分け合って少しずつでも働けるようにしましょうよという考え方だったはずなんですけれども、昨今、景気が徐々に戻ってきて、また有効求人倍率も劇的に回復をしてきているというこのタイミングの中で、あえてこの短時間正社員制度、いわゆるワークシェアの考え方に立脚したこの制度を導入される意義、それから目的はどのようなものなのかということをまずお聞きをしたいと思います。

北井政府参考人 今御指摘のワークシェアリングでございますけれども、確かに、景気の悪いときに緊急避難型で少ない仕事を分かち合うタイプのワークシェアリングもございますが、今回、私どもが報告書をまとめてもらいました短時間正社員制度は、多様就業型ワークシェアリングということで、勤務の仕方を多様化することで、女性や高齢者を初めとした多くの方々に雇用機会を提供するという意味で、ワークシェアリングの観点から出てきたというふうに認識をいたしているところでございます。

 こうした多様就業型ワークシェアリングの代表的制度として、短時間正社員制度を位置づけているというところでございます。

 それで、その短時間正社員の意義ということでございますけれども、これまで、育児や介護を初めとしてさまざまな制約によって就業の機会が得られなかった方々に積極的に就業機会を提供することになりまして、そうした方々にも能力を発揮していただける場を提供するということができます。

 一方で、現役の、どちらかというと働き過ぎの労働者にも、みずからのライフスタイルやライフステージに応じた多様な働き方を提供することが可能となるという点がメリットでございます。

 また、企業にとりましても、有能な人材の確保につながりますし、それから人事管理や業務の進め方を見直しまして、企業運営の効率性を高めて生産性の高い企業運営ができるということが期待されることでございまして、こうした制度の導入は労使双方にとってメリットが大きいものと考えております。

薗浦分科員 一点、ちょっと気になるのは、短時間正社員ということは、フルタイムの正社員ではない、一方でパートタイマーさんでもないということは、労働条件の決定が非常に難しいかと思うんですけれども、そのあたりは基本的に労使にお任せをするという考え方でよろしいんでしょうか。

北井政府参考人 この正社員というのは、少なくとも契約期間に定めがなくてフルタイム勤務ということを前提としておりまして、かつ長期的に勤続をして企業活動への強い関与も行うというイメージがこの正社員でございますので、パート労働者の中にも本来はこの短時間正社員になっていただくのがよい形のパートという雇用形態もございますから、ぜひこの短時間正社員をその意味でお勧めしていきたいというふうに考えているところでございまして、こうした導入に当たりましては、まず労使で十分話し合っていただくということが必要かと考えます。

薗浦分科員 時間が余りなくなってきたので、要望しておきたいことが二つございます。

 一つは、我が国は貿易立国と言われているようにものづくりに立脚した国でございまして、技術の伝承というのが非常に大切なことだというふうに考えておりますので、余り短時間正社員という制度、それからパートへの労働の移管が進むと、ものづくり、技術の伝承という意味で非常にクエスチョンマークが出てくる部分があるんじゃないかということ。

 もう一点は、余りこれが進み過ぎて、結局これが言いわけのように使われてしまうと、昼も短時間働いて、それだけじゃ食っていけないから夜も働かなきゃならないという例が出てくるんじゃないかという二点を非常に懸念するところでございますので、そこはうまくやってくださいと言うのも変ですけれども、留意をいただいてやっていただくようにお願いを申し上げます。

 それで、次に、ちょっとこれはもう労働から離れますが、私が非常に気になっているレセプトの話でございます。

 医療費のレセプトの電算化については、諸外国がかなり進んでいようかと思うんですけれども、お隣の韓国が導入をしてほぼ一〇〇%になって、かなりの成果を上げているというふうに伺っておるんですけれども、どの程度把握をされているのか、まずお伺いをしたいと思います。

水田政府参考人 レセプトの電算化についての日韓の比較ということでございますけれども、韓国におきましては、電子請求によるレセプトの件数が全体の約九五%を占めている。これに対しまして、我が国では約二〇%にとどまっているということでございます。

 この韓国において電子化が進んでいる、こういう理由でございますけれども、これは、そもそも韓国で国民皆保険が達成されましたのが一九八九年、平成元年でございまして、IT技術の発展とあわせた制度設計ということが可能であったということが考えられます。その一端といたしまして、当初からレセプト電子化に必要な、例えば傷病名等のコードの統一化ということが図られた、こういった事情があるものと承知をしてございます。

薗浦分科員 この電算化というものによって、いわゆるお医者さんの側、患者の側、それから医療費の面からどのようなメリットがあり、またどのようなデメリットが考えられるのか、我が国はそれを進めた方がいいのか悪いのか、またその見通しについてもお伺いをしたいと思います。

水田政府参考人 レセプトの電算化のメリットということでございますけれども、医療機関、審査支払い機関、それから保険者と考えられるわけでございます。

 まず、医療機関について申し上げますと、もちろん個々の機関の状況によって異なるわけでありますけれども、一般的に申し上げますと、紙レセプトの印刷とか分類とか、そういった手作業が大幅に軽減するということ。それから、請求に当たりまして必要事項の記載漏れあるいは誤記入がシステム上機械的にチェックされるということで、診療報酬請求に係ります業務量の軽減それから事務処理の迅速化につながる、こういうメリットがあろうかと思います。

 二番目に、審査支払い機関につきましては、レセプトの誤記入、そういったことに関します形式的なチェックというものが容易になる、したがってその時間を、言ってみますと審査の重点化に振り向けることができるということ。それから、保険者への請求に係るレセプトの分類作業というものが削減されるというメリットがございます。

 それから、保険者に関して申し上げますと、紙レセプトの保管が要らなくなるわけであります。この紙レセプトは昨年度で申しますと十六億件あるわけでございまして、この保管が不要となる、あるいは統計処理の入力のコストが不要となるということがございます。さらに、被保険者の受診状況あるいは医療費の状況を把握することが容易になりまして、保健事業への活用を図ることができるといったメリットがあるわけでございます。

 デメリットというのは相対的に小さいかと思いますけれども、やはり費用、その分だけの費用がかかるということはあろうかと思います。

 我が国におきます取り組みでありますけれども、これは御承知のとおり、昨年十二月にまとめられました医療制度改革大綱におきましても、レセプトの電子化をさらに超えましてオンライン化までいくべしということを言われております。

 具体的、個別の取り組みとしましては、先ほど申し上げました傷病名のコード化、傷病名等のコードが問題なんですけれども、我が国におきましては、それぞれコンピューターメーカーごと、あるいは医療機関ごとにそれぞれ進められたという現状がございます。このコードを統一化するということが必要なわけでありますので、それにつきましては、統一コードの仕様へ変換する支援ソフトを既に開発しておりまして、医療機関に来月四月以降配付を開始する、こういった支援を講じようとしております。

 また、今回の診療報酬改定におきましても、IT化に向けた取り組みに対して加算を行う、こういった経済的な支援ということも行いまして、全体として、先ほど申し上げました大綱に即して平成十八年度からオンライン化を進めていきまして、平成二十三年度からは原則としてすべてのレセプトがオンラインで提出されるようにしてまいりたい、このように考えてございます。

薗浦分科員 ありがとうございました。

 最後に、ちょっと介護保険についてお伺いをしたいと思います。

 介護保険が導入されてもう大分になるわけですけれども、国庫が二五%負担、それから市町村と県で二五%、それで保険料で五〇%という負担額になっておると思うんですけれども、この国庫負担の二五%の中に五%の調整交付金というものがございます。この五%の調整交付金というのは、自治体によって給付費を調整しましょうという目的でできているものだと思います。

 ある自治体というふうにしておきますけれども、ここは財政的には比較的裕福な自治体ではございますけれども、近年、この五%の調整交付金がほとんどゼロ%に近い支給しかもらっていないということで、例えば十五年度で九千二百万円、それから十六年度で一億円以上の欠損というか、支給がそれによってなされないということで非常に困っておるという話をお伺いしておるんです。そもそも、この調整交付金の趣旨はわかるんですけれども、こういうような自治体が生じておることに関して御見解をお伺いしたいというふうに思います。

磯部政府参考人 介護保険制度の調整交付金は、保険者の責めによらない介護給付費や保険料負担能力の違いに係る影響につきまして全体の調整を行うために、委員御指摘のとおり、五%を各保険者の状況に応じて交付するということでございます。

 具体的には、一つには、要介護リスクの高い七十五歳以上の方の加入の割合、それから所得段階別の第一号被保険者の負担能力の分布状況の違いにつきまして調整を行っておりまして、基本的な考え方としては、保険者の給付水準が同程度で、収入が同程度の被保険者であれば、保険料負担の額が同程度となるように全国的に調整するという役割を担っております。

 こうした調整の結果、各保険者の責めによらない格差というものは一定程度是正が図られておりまして、調整後の保険料負担部分の水準は、主として各保険者におけるサービスの利用状況等を反映したものとなっているわけでございます。

 したがいまして、各保険者におかれましては、こうした調整の趣旨を踏まえまして、調整交付金による調整後の保険料負担を第一号被保険者から徴収することにしていただいて、そうした全体としての調整を図ることについて御理解をいただきたいというふうに考えております。

薗浦分科員 非常に理屈は僕もよくわかるんですが、そのおかげでというか、この自治体は、第二期の保険料が月額三千八十一円、ところが三期になると、これが四千五百三十三円ということで、五割上昇します。この大きな変化は当然負担となって保険者にはね返ってくるわけですけれども、それに対する御見解を最後に伺って、私、終わりたいと思います。

磯部政府参考人 個々の市町村の状況はちょっとよくわかりませんが、先ほど申し上げましたような調整交付金の趣旨から申しますと、それぞれの市町村の能力等に応じて、恐らくは、先ほど申し上げました介護サービスの状況に応じた保険料ということで、今委員が御指摘のような引き上げになるんだろうと思いますので、これにつきましては全国的な調整ということで御理解を賜ればと思います。

薗浦分科員 ありがとうございました。

森主査 これにて薗浦健太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、平口洋君。

平口分科員 私は、平口洋でございます。

 広島第二区の選挙区でございまして、自由民主党に所属をいたしております。よろしくお願いをいたします。

 私の出身地であるふるさとの広島は、六十年余り前に人類史上初めての原子爆弾が投下されて、十五万人とも二十万人とも言われる多くの犠牲者を出したということは御承知のとおりかというふうに思います。そして、いまだその原爆の後遺症で苦しんでいる人々がいるということであります。昔の厚生省、今の厚生労働省も、そのようなことの対策のために多くの努力を払われてこられまして、よくそのことを承知いたしておりまして、大変大きな評価をしているものでございます。

 広島や長崎の住民にとっては、戦後の歴史というものは、ある意味で被爆者の救済の歴史であったというふうに言っても過言ではありません。ただ、では、問題がすべて解決されたかというとそうでもございませんで、いまだ幾つかの問題点が残っていることも事実でありまして、その幾つかのものについて本日お尋ねをしたいというふうに思います。

 まず、戦傷病者戦没者遺族等援護法という法律がございます。古い法律でございますけれども、この法律は、軍人軍属等の公務上の疾病に関しまして、国家補償の精神に基づいて援護するというものでございます。

 私の活動区域の中に、大竹市という人口が三万人ぐらいの自治体があるのでございますけれども、昭和二十年に、この大竹市で国民義勇隊というものが組織をされております。これは、二十年の三月二十三日の閣議決定に基づいて、当時、戦局が悪くなり、もう本土の攻撃も随分と盛んになってきた折でございますけれども、召集令状に基づいてつくられたものでありまして、実態は、当時の大竹市の二十代を中心とする若い女性の方々で組織されたものでございます。この方々が何百人も集まって、列車に乗って一時間ぐらいで広島市内に入り、それから、広島市内で行われておりました建物疎開といったような作業に従事しておられたわけでございます。

 この国民義勇隊の活動につきましては、昭和三十四年に援護法が改正されまして、準軍属として国民義勇隊を認めるということでございまして、国民義勇隊の活動で障害を受けた者については障害年金の支給が申請できるというふうになりました。

 そこで、お尋ねを申し上げたいんですけれども、この準軍属である国民義勇隊の隊員が職務を行っているときに負傷して、恩給法の別表に定める程度の障害に当たる場合には年金が支給されるということになっておりますけれども、この恩給法の別表に定める程度の障害というのは、一体だれが、どのような方法で判断されておられますか。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づきます障害年金、これにおける瘢痕にかかわります障害の程度の認定につきましては、一定の基準に基づきまして、請求者からの申請書あるいは医師の診断書、請求者が提出をされる写真といったものを審査することによって、厚生労働省において行っているところでございます。

平口分科員 わかりました。

 問題は、その審査のやり方なんですけれども、写真を撮って東京で一カ所で判定されているわけであります。

 原爆によるやけどは、いわゆるケロイドという名称で呼ばれているんですけれども、これは、やけどの性質上、年がたつとだんだん変わってきて、一見、見たところわからないようだけれども、よく見ると、白くなっておったり、つるつるしてとても皮膚としての機能を全うしない、汗も出ない、夏は暑くてしようがないというふうな症状になるわけでありまして、何年か前は、こういったようなやけどの部分から全部うみが出て、臭いにおいがしてウジがわいたりしていたというふうなものでありまして、国鉄の大竹駅におりると、臭い人がたくさんいるから嫌だという人がいたというふうな歴史的な事実もあるわけであります。

 昭和三十四年の改正ですので、相当時間もたっているじゃないかというふうな御指摘もあろうかと思いますけれども、国民義勇隊の隊員はみんな、当時二十とか二十五とか若い女性たちばかりでありまして、戦後は、被爆者であると子供に影響が出るとかなんとかいって、みんな差別を受けて生きてきて、被爆者であることをひた隠しにしてきた人たちがほとんどでございまして、結婚して子供が生まれて、子供が、お母さん、うちのお母さんだけどうしてこんなに腕やら胸がごつごつして汚いんだというふうに言われても、まだ、ただ黙って、原爆のことを言わないで来たというふうな人が多いわけであります。

 申請を始めたのは最近であります。召集令状で動員されて国民義勇隊として国家のために働いて、そして被爆したというふうに打ち明けて障害年金の申請をしてきたのには、障害年金のおくれがあったのには、それなりのやはり理由があるということを御理解いただきたいというふうに思います。

 八月六日の日の情景を聞きますと、みんな同じように、軍の命令で、夏なのに敵の飛行機にわかるといかぬというので黒い服を着て、四列で隊列行進をしながら建物疎開の現場に向かっていったということであります。それで、爆心地から二キロメートル程度のところに来たときに八時十五分になって、御案内のような、中心部分が三千度といったような阿鼻叫喚のことになったわけでございまして、爆心地から二キロというと、統計によると大体四人に一人は即死したといったような地域であります。

 生き残った人たちが、あの黒い服が逆に災いになって黒焦げになって、やけどの跡を透明人間のように包帯でぐるぐる巻きながら帰ったというふうに言っておる中で、そういう人たちの中で、ある人は障害年金がもらえて、ある人はもらえないといったようなのは大変な矛盾じゃないかというふうに思います。

 ほとんどの人が髪が後で全部抜けて、今ある髪は生えかわったものだということであります。鼓膜が破れたというふうな主張をしても、鼓膜が破れるほどの爆風だと死んでいるのが当然だから、これは原爆による鼓膜の破壊ではないでしょうというふうに言われたという人もいるわけであります。

 こういったような事情があるわけですから、専門医が見れば十分わかるはずなんですけれども、これをわざわざ写真で、東京で一カ所で、これが恩給法の第五款症に当たる、当たらないというふうな判断をしながら、はねる人も出てくるというふうなことは、もう戦後六十年たった今は、できれば改めていただいて、写真を出せといったようなやり方はもう改めていただいて、もっと総合的な観点からこの障害年金の支給について決めるべきではないかというふうに思いますが、その点についてお答えいただきたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、瘢痕の認定につきましては、医師の診断書、先ほど申し上げましたように、御本人が医師に診断を受けて医師が渡される診断書、また請求者が出される写真といったものなどを総合的に審査して判断をしているところでございます。

 この瘢痕の認定につきましては、具体的に少し申し上げますと、日常露出する部分、この瘢痕につきましては、その大きさ、程度において特に目立つものであるということが一つの要件になってまいりますし、日常露出しない部分の瘢痕につきましては、特に醜形が著しいということが要件となるわけでございます。この点につきましては、写真により十分対応ができるというふうに考えておるところでございます。

 聴覚のことをちょっとおっしゃいましたけれども、そういった点の障害がありました場合には、それはまた、聴覚に関します医師の診断書等々も出るでありましょうから、そういったもので判定をさせていただくことになろうかと思っております。

 以上でございます。

平口分科員 いずれにしても、爆心地から大変近いところで、みんな同じように隊列を組んで行進していって、運よく助かった者はほとんど火だるまで帰ってきたという事実があるわけですから、余りいろいろと細かい点について基準をつくって、これは当たる、これは当たらないというような判断をするのは、現実的な妥当性を欠くんじゃないかというふうに思います。

 そしてまた、今裁判を行っている人たちもいるんですけれども、やはり国家のために、国家の命令に基づいて働いてきたのに、最後まで国家がそのために障害を受けたということを認めないということは、もう死ぬに死ねないというので、棺おけに入るまで頑張るといったようなことを言っている人もいるわけですから、そういう事情、そういう女性たちの戦後受けた苦痛というものをよく理解して、国の方も国家補償の精神にのっとって対応するべきではないかというふうに思います。

 次に、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基づく被爆者健康手帳、いわゆる原爆手帳のことについて、一つ二つお伺いしたいと思います。

 まず、原子爆弾によっていろいろと犠牲者が出たわけですけれども、重病者について当時収容を小学校等で行ったわけですけれども、その収容された施設に救護のために行った人、これは原爆手帳の対象になりますでしょうか。そしてまた、救護に当たった方が女性の場合、背中におんぶしていた赤ちゃんなり幼子というものもこれは対象になるんでしょうか。さらに、その女性が歩ける子供さんを連れていた場合に、手をつないでそういう救護の現場に行った場合、その子供さんの方にも原爆手帳の支給が可能なのか。その点についてお伺いをしたいと思います。

中島政府参考人 お尋ねの件でございますが、被爆者援護法におきましては、広島市長、長崎市長または各都道府県知事が申請のあった者を審査いたしまして、原爆が投下された際に広島市、長崎市などの区域内にいた者、それから、原爆が投下されてから二週間以内に一定の区域内に立ち入った者、そして、原爆が投下された際またはその後に身体に放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者、それからまた、当時これらの者の胎児であった者のいずれかに該当すると認めるときには、その者に被爆者健康手帳を交付するものというふうに規定をされているところでございます。

 お尋ねのような事例につきましては、これらのうち、原爆が投下された際またはその後に身体に放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者に該当をし得る可能性があるとも考えられますけれども、実際にこれに該当するかどうかにつきましては、それぞれ個別のケースごとに、都道府県、市において具体的に審査をいたしまして判断することとなるものでございます。

平口分科員 わかりました。一般的にすべて当たるというふうなことではなくて、当たる可能性もあるけれども、そのことは個別具体の事情、個別具体の審査に基づいて行うという趣旨で理解をしたいというふうに思います。

 次に、そういう事実があったことの証明方法についてなんです。

 お母さんの背中におぶわれて、救助活動に当たられた方の後ろにずっといた、背中にずっといたというふうな方々なんですけれども、こういう方々の証明方法としてよくとられているのは、三親等内の親族を除く人の二人以上の証明書といったようなものを添付しなさいといったようなことになっているようでございます。親や兄弟以外の人の方が、一緒になってうそを言う可能性が少ないというふうなことなのかなというふうに思いますけれども、多くの当時の関係者、当事者はもうかなり高齢でございまして、かなり亡くなっておられる、また、生きておられてもやや痴呆症の方になっておられたりする方があるわけですけれども、戦後もう既に六十年余りたつと、当時二十だった人、これが八十歳、二十五歳は八十五、六歳になっておられるわけであります。

 こういったような状況の中で、証明書の添付というのを余りにも厳格にやると、救っていく道がなくなるんじゃないかと思いますけれども、その辺について何か方策があればお尋ねしたいというふうに思います。

中島政府参考人 被爆者健康手帳の交付の申請に当たっての提出書類でございますけれども、御承知かと思いますが、一通り御紹介させていただきますと、一つは、当時の罹災証明書そのほか公の機関が発行した証明書、それから、これがない場合については当時の書簡、写真等の記録書類、これらがいずれもない場合は市町村長等の証明書、そして、これもない場合には、今お話がありました、三親等内の親族を除いた二人以上の第三者の証明書、さらに、今申し上げたいずれの書類もない場合には、本人以外の者の証明書、または本人において当時の状況を記載した申述書及び誓約書を提出していただくこととしておるわけでございます。

 都道府県、市におきましては、これらの書類に基づきまして、法律に定める手帳の交付要件に該当する者であるか否かを審査することを基本としておりますけれども、証明する書類がない場合や証明する人がいない場合については、家族が手帳を取得した際の資料や、同じ場所で救護を行った人の資料を調査したりすることなどによりまして審査をしているところでございます。

平口分科員 今、大変丁寧なお答えをいただきまして、安心をいたしました。厳格に、血のつながっていない他人の証明書を二通よこさないと証明しないというふうなことではない、総合的な観点から、いろいろな手だてで証明が成り立つように努力するというふうな御趣旨だというふうに思います。ぜひともそういう点から、実際にそういったような事務を行っている都道府県あるいは市町村の方、御指導いただきたいというふうに思います。

 いずれにしましても、原爆が投下されて六十年余りたつわけでありまして、当時生まれた子供がもう還暦を迎えるような事態でございます。被爆者の生存者の方の平均年齢も七十三歳であるというふうな統計もあるわけでございますので、どうか、人類始まって最初で最後の最も大きな悲劇に犠牲になった方々が本当に安心して人生が送れるように、御努力を引き続きいただきたいというふうに思うものでございます。

 最後に、交通事故による脳障害のことについて、二、三お尋ねをしたいというふうに思います。

 私も、この間、去年の十月七日の日に、郵政の法案の審議の後、国会裏の青信号を渡っておりましたのですけれども、一たん停止を怠られた車にはね飛ばされまして、十メートル近く飛ばされて重傷を負ったんですけれども、私の場合は、不幸中の幸いで、右足の骨折と左手首の骨折ということで済みました。しかしながら、こういう場合に、打ちどころが悪くて、あるいは飛ばされた場所が悪くて、頭を強く打ったりあるいは頭を骨折したりということで、辛うじて一命を取りとめたというふうな方も多いわけでございます。

 脳に障害を受けた方の場合、治ると、外見上はほとんど通常の人と違わないという現実があります。家族ですら、もとどおり戻ったんだなというふうに思うんですけれども、実際は、脳に何らかの異常ないしは破壊が行われているために、いろいろと日常生活において困った事態が出てくることがあります。例えば、怒りっぽくなるとかすぐ物を忘れるとか、あるいは体系立った思考が全くできなくなるとか、いろいろとあります。人間の脳でございますので、損傷する部位によって症状もいろいろと異なっていくということは私どもでもわかるわけでございますが、それがゆえに、なかなか対策も難しいという現実があります。

 本当にこういう方を抱えて困っておられるのは、親を初めとする家族の方々でございまして、こういう方々の苦労は本当に並大抵のものではないというふうな現実がございます。交通事故の犠牲者がたくさんいらっしゃる現在、本当にこの事柄は大変深刻な事態であろうかと思いますし、また、交通事故以外のいろいろな事故でこういったようなことになられた方もおられるわけでございます。

 そこで、厚生労働省では、このような、事故で後遺症が残る方々を、通常、脳外傷とか高次脳機能障害という名称で呼称する場合が多いんですけれども、そういう形態として掌握をされているかどうか、まずお伺いをしたいというふうに思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のございました、交通外傷等の頭部外傷、脳血管障害等による脳の損傷によりましてさまざまな障害を持っている高次脳機能障害につきましては、お話のとおり、従前、外見からはその障害の特性がわかりにくいということもあり、一般国民はもとより、医療や福祉にかかわる専門家の間でも十分理解されておらない、こういうことがございました。診断基準、リハビリテーション、支援プログラム等、確立したものがないような状況でございます。

 症状が多岐にわたりまして、必ずしもすべての方々が既存の制度では必要な障害認定を受けることができず、これまでいわゆる制度の谷間の問題と考えられてきた、こういうことでございます。

 私ども、そういう問題点は認識しておりまして、平成十三年度から、診断基準、適切な支援の確立のために、国立身体障害者リハビリテーションセンター及び十二の地域の地方自治体において、高次脳機能障害支援モデル事業に取り組んでいるところでございます。

 今申し上げました課題、診断基準、医学的リハビリテーション等の標準的な訓練プログラム、社会復帰支援のためのプログラムの作成、支援プログラムを活用したサービスの試行的提供を行い、支援体制の確立に努めている、こういうところでございます。

平口分科員 外見上からは全く正常人と同じような姿形をしていても、やはり人間生活を行っていく上でいろいろと障害が出てくる、このような高次脳機能障害の方々は、医学の分野でいうと、脳神経外科、そして精神科、さらにはリハビリ科といったような複数の分野の手だてが要ります。また、運よく命が助かっても、そしてまたそれなりの治癒がなされても、社会復帰をするためにはそれなりの訓練というものを行っていかなければならないところであります。

 今御説明がありましたように、国の方もいち早くそういったような事態を掌握されて、いろいろとモデル事業を初めとして努力をされているということはよくわかりました。この努力を今後とも続けていただきたいと思いますけれども、今現在、脳外傷あるいは高次脳機能障害の方々は全国にたくさんおられるところであります。広島県だけでも千五百人は超えるだろうというふうに言われておりますので、それからすると、全国では十万人近い方々が苦しんでおられるんじゃないかというふうに思います。

 きちんとした対策をするために、それなりの調査をする、あるいは専門家の意見を聞く、あるいはそれらをまとめて議論してみるといったようなことは、もちろん大変大切なことだろうというふうに思います。また、拠点となる支援センターや地域センター、こういったようなものをつくっていく構想があるやに聞いておりますけれども、まだまだこういったような構想で前に進めていない都道府県もたくさんあるというふうにも聞いております。いろいろと施策をきちんと出す前に、もうきょう現在、このようなことで困っている人たちが大変たくさんいらっしゃるわけですから、こういったような方々をどうするかということ、これは喫緊の課題だろうというふうに思います。

 こういったような事情を踏まえて、今後の厚生労働省のこの問題に対する方針というものをお聞きしたいというふうに思います。

中村政府参考人 委員御指摘のとおり、こういった高次脳機能障害などにお悩みになっている方に対する御支援は大事な問題だと思います。

 これまで、先ほども申し上げましたように、障害認定等で対応できない問題もございました。障害者自立支援法の方では、三障害の種別にかかわらず、一元的に自立支援のためのサービスを提供する仕組みとなっておりますので、ある程度、今回の障害者自立支援法の中で救済される方もあるのではないかと思います。

 また、これは非常に診断等難しい問題もございます。障害者自立支援法の方でも、障害者の定義につきましては三年後の見直しということもございますので、そういった点についても課題になるのではないかと思っております。

 具体的な支援につきましては、委員御指摘のとおり、支援拠点機関を中心に地域でネットワークを組んで、高次脳機能障害支援普及事業を進めていく必要があると思っております。

 障害者自立支援法の中で、地域生活支援事業、これは都道府県も実施できることとなっておりまして、都道府県が実施する高次脳機能障害支援普及事業ができることになっておりますので、十八年度より、そこにおいて専門的な相談支援体制の構築、それから支援する人材の育成を図りますこの事業を行うとともに、さらに、国立身体障害者リハビリテーションにおいて、モデル事業により得られた支援手法等を研修していくというような努力を続けてまいりたいと考えております。

平口分科員 国の方でいろいろと努力をするというふうなお心構えであることは、よくわかりました。

 多分、交通事故による脳障害というのは、日本だけじゃなくて世界じゅうの問題であろうかと思います。各国でそれなりの努力をされているところじゃないかというふうに思います。聞くところによると、アメリカ合衆国なんかはかなり進んだ制度、仕組みを持っているというふうにも聞いております。いろいろとそういったような国々の例を調査しながら、一日も早く日本の国でもきちんとした体制が築かれますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

森主査 これにて平口洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本文明君。

松本(文)分科員 平成十八年度予算案を編成された、大臣を初め関係各位に心から敬意を表する次第であります。

 さはさりながら、国民の大切な税でありますから、ぜひ効率的に使ってほしい、あわせて、私の意見もぜひその運用に当たって組み入れてほしいという思いを持って質問をさせていただきます。

 まず最初に、体調不良で病院に行くと、三時間待たされて、三分間の診察しかしてもらえない、十分な病状説明もないままに帰されてしまう、こう言われてかなりの年月がたつわけであります。しかし、私の見るところ、それほど改善されているというふうにも思えないわけでありますが、現状をどのように把握されているのか、そしてまた、どういう方法をもって改善を目指されているのか、医政局長の御説明をお願いいたします。

松谷政府参考人 三時間待ちの三分診療の御質問でございますが、平成十四年の受療行動調査によりますと、いわゆる大病院におきまして、外来患者の待ち時間が三時間以上という方は一・九%、逆に、三十分未満の早い方が三九・〇%となってございます。

 実は、同様の調査を平成八年、今から十年前ですけれども行ってございまして、それと比較しますと、十年前には、三時間以上待つ場合が三・五%、三十分未満の短いのが二七・八%ということでございまして、三時間以上は減り、三十分未満がふえているということで、待ち時間の短縮の傾向は見てとれるというふうに思います。

 一方、外来患者の診療時間の方でございますけれども、三十分以上かけて診ているという場合が三・五%、逆に、三分未満しか診ていないという場合が一七・五%ということでございます。これは余り変化が実はございません。

 厚生労働省におきましては、これまで、平成四年には、医療施設機能の体系化の一環といたしまして、高度な医療を提供する特定機能病院制度を創設いたしたところでございますし、平成九年には、紹介外来制、紹介を原則とするという、かかりつけ医の支援を行う地域医療支援病院制度を創設するといったようなことなど、医療機能の分化、連携が適切に行われるようにする、その取り組みを進めてきたところでございます。

 今回、さらに、医療制度改革の中では、医療計画制度の見直しを通じまして、医療機能の分化などを一層進めて、患者さんに対する情報提供の充実も行うということなどによりまして、疾病の種類や状態に応じ、適切な医療機関が選択されて、適切な医療が提供される体制を構築することとしてございます。プライマリーケアといいますか、御近所のお医者さん等でかかる場合と大病院が必要な場合と機能を分けてやっていくということが、この問題の解決の遅いようで一番の近道ではないかと考えております。

松本(文)分科員 さらなる努力をお願いしたい、こう思う次第であります。

 そこで、あなたは入院が必要だよ、こう言われた場合、入院手続窓口で手続をして帰ってください、ベッドがあき次第御連絡をします、こう言われて、なかなか連絡がない、こういう事例もたくさんあります。

 これは、十分に患者をきちっと即時診る、処置をするということに対して、ベッドが不足しているからそれができないで入院の待ち時間が長くなるのか、あるいは、医師、看護師が不足しているからそういったサービスが十分に行えないのか、大臣、恐縮ですが、国民にわかりやすく御説明をいただきたいと存じます。

川崎国務大臣 今の仮定の話、両方ともそうでないということでまず御理解を賜りたい。

 我が国の医療体制、諸外国と比べますと、一つは、人口当たりの病床数は非常に多い、そして医療機能の分化、連携が進んでいない、すなわち、診療所のお医者さんのする仕事と病院のお医者さんがする仕事、ここがうまく分かれていない。そして、病床当たりの医療従事者が少なくなり、一方で平均在院日数が飛び抜けて日本は長い。これが我が国の実態でございます。

 これをどういうふうに直していくかというのが一番大きな課題。医療機能の分化、連携の推進による平均在院日数の短縮。要は、手術をして、ある程度の状態になったら、またもう少し違うところへ移ってケアしてもらうということで、ずっと病院にいっ放しにはならないという体制を早くつくり上げなければならない。医療安全の確保が特に必要とされる急性期医療を中心に、医療従事者の配置の充実を通じて、質の高い医療を効率的に提供する体制を構築していくことが必要であると考えております。

 特に、脳卒中、がん、小児救急医療など、事業ごとに地域における医療連携体制を構築し、急性期から回復期を経て自宅に帰れるまで、切れ目のない医療提供体制を実現するための医療計画制度の見直し、平成十八年度診療報酬改定においても、入院基本料について、看護職員配置を一・四対一に相当する区分を設けるなど、急性期入院医療における評価の充実等を行います。

 いずれにせよ、こうした取り組みを進めながら、入院日数は短縮をしていく、逆に、ベッド当たりのお医者さんの数、看護師さんの数は多くしながら、そして、言われるとおり、救急の場合はすぐ手術をして、そして次の段階へ移っていくという対応をしていかなきゃならないだろう、こう考えております。

松本(文)分科員 ベッドの回転を速くして待ち時間を減らすという、一つの方法というか思いが述べられたように思うわけであります。

 大臣、私がつい三日前に御相談を受けた人は、がんで手術をやりましょうというお話をいただいた、しかし、手術が込んでいるから七週間待ってくれ、こういう話になっているけれども、どうしたものだろうかと言われました。どうしようもないから、待っているしかないなと思うわけでありますが、手術をしなきゃならぬがんというのはやはり進行性なんだろう、家族にしてみれば大変な心配であります。進行性のがんであれば、七週間ほっぽっといていいのかな、こういう心配が現実にあるということを一方でぜひ御理解をいただきたい、こう思うのであります。

 それで、そういう状態、ベッドが足りているということではありますけれども、やはり都市部においてそのベッドが、これだけ今、ベッドの回転率が八〇%を超えているのではないだろうか、九〇%を超えているのではないだろうかと思うような毎日の状況にあるわけであります。ベッドをふやせばやはり医療会計だとか保険会計に大きな影響が出る、当然のことであります。そちらの方もしっかり見据えていかなくちゃいけないということはよくわかるわけでありますけれども、ベッド間というんでしょうか、病院間の連絡というものが全くとられていないという現実の中で、患者さんにとってスピーディーな対応というのが病院間の連絡によってなされるという時代にしないと、到底追いついていかないんじゃないだろうか。

 また、そういう枠組みの中で、地域医療計画、大変厳しい制限を加えられておるわけでありますけれども、さはさりながら、やはりこの病院については待ち人が大変に多いよという病院等々について、もう少し柔軟な対応ということがあってもいいんじゃないかというふうに思うわけでありますが、医政局長の御見解を伺います。

松谷政府参考人 医療計画において十分な病院間の連携が図れるようにするということは、先生おっしゃるとおりだと私どもも思っておりまして、今回の改正の中でも、そのための仕組みを御提案申し上げているところでございます。

 この医療計画制度の根幹をなしてございます基準病床数制度でございますが、これは、病床不足地域における病床整備を進める一方、過剰地域における病床増加を抑制することによりまして、病床の整備を過剰地域から非過剰地域へ誘導して、資源の効率的な活用を通じて国民に対する適正な医療の確保を図るということを目的としたところでございます。

 この基準病床数制度につきましては、現時点において直ちに廃止等を行う状況にはないと考えておりますけれども、一方で、既存の病床が固定化されて、いわば既得権の保護となっているような指摘もございますので、今般の医療法改正におきまして、一部の公立病院等に見られる稼働率の低い病床を廃止して、地域で真に必要な病床の増加を認める権限を都道府県に新たに創設をいたしまして、地域の実情に応じて柔軟に対応できるよう医療法改正に盛り込むなど、運用面での弾力化を考えていくことといたしたところでございます。

 また、この医療計画制度の見直しによりまして、従来の病床数のみによる医療資源の量的抑制に加えまして、がん、脳卒中など、疾病別に地域の医療機関の機能を明らかにして、機能分担と連携を通じて質の高い医療を確保するということを通じまして、医療機能に応じた柔軟な対応ができるようにしているというところでございます。

松本(文)分科員 ぜひ、そこら辺、力を入れていただきますようにお願いをしておきます。

 中野区内に、公道、都道なんですが、片側一車線の道路を挟んで、病院の建物が二棟建っております。敷地の間を公道が走っていると、一つの病院ではなくて本院と分院という分け方、整理になるんだそうであります。

 患者にとっては、本院であっても分院であっても、そんなことは大したことじゃないんですが、問題は、給食調理を、本院と分院にそれぞれ調理場を設けるか、あるいは、片方でつくった分は片方で、片方は調理の業者に委託をするとか、そういうようなことをやらなければいかぬということになっていて、本院なり分院でつくった調理を、三十メーターもかからない、通り、信号を渡ればすぐのところなんですね、そこに届けるということが許されていない、こういうんですよ。実に不可思議な話だなと思う。これがだめだったら、ではそば屋さんはどうなるんだ、すし屋の出前はどうなるんだ、こういう話になります。

 こういうばかげた規制は早急に外して、病院経営、そして患者さんも、同じ味で、きちっと目の届いたサービスを、本院は自分のところでつくった調理ですよ、分院の、こっち側に入院したら業者の分ですよというんじゃなくて、両方きちっと同じサービスが受けられるように、遠く何キロも離れてと言っているわけじゃない、わずか二車線の道路一つ挟んで目の前に届けちゃいかぬというようなばかげた規制は外してほしいんでありますが、医政局長、外しますという答弁をひとつよろしく。

松谷政府参考人 病院における給食でございますが、医療サービスの一環として患者さんに提供されるということで、その業務の性質から、適温の給食が継続的かつ安定的に提供される必要がございますことから、医療法におきまして、給食施設を病院の必置施設としているところでございます。

 また、給食業務を外部の患者給食業者に委託する場合でも、これらの給食業務の性質にかんがみまして、病院に必要最低限の施設の設置を義務づけた上で、委託に係る一定の基準を設けて、質の確保を図っているところでございます。

 一方で、病院と老人保健施設等が例えば公道を挟んで隣接しているような場合であっても、個別の事例に即して、患者さんへの影響がないと判断される場合には、隣接する施設の給食施設を病院の給食施設として共用できるというふうにしているところでございます。

 したがいまして、今御指摘のケースにつきましては、詳細がちょっと不明なので明確には申し上げられませんけれども、患者さんへの影響等を考慮した上で、給食施設の共用が認められる場合もあり得るのではないかと考えております。

松本(文)分科員 医政局長、中野区か東京都か、きちっとした手続をもってお願いということになろうかと思いますが、その折にはぜひひとつ、あのときあいつが言っていたことだなと、こういうことで対応をいただきたいと思います。

 ところで、病気が完治して元気で病院から退院できる人は大変幸せでありますが、必ずしもそうではない、リハビリ治療の必要な人もたくさんいらっしゃいますし、あるいは老健施設に入所して、社会復帰までにもう少し時間をかけなくちゃいかぬという方もいらっしゃるわけであります。ところが、これらがまた大変な込みようでありまして、退院する日にそのまま移れない。リハビリをする前に三カ月も半年も待たされちゃうと、お年寄りなんかは固まってしまっちゃって、特にリハビリの効果ががくっと落ちる、こういうような実態があるわけでありますが、大臣、これは何とか対策とれないものでしょうか。

川崎国務大臣 委員は中野区ですね。もう御承知のとおり、都道府県別人口十万人に対する介護老人保健施設の定員数、一番高い徳島が二千六十八人、一番低い東京が六百二十八人、およそ三倍以上の開きになっております。そういった意味では、都市部における課題として整備がおくれておるということは間違いない事実だろうと思います。

 全国的には二十九万床が、老人保健施設、整備をされました。その中で、東京都等を中心に整備が必要な地域がございます。一方で、昨年も三位一体改革の中で、こういう福祉、特に介護関係はもう地方に任せてほしいという強い要請が、知事さん、市町村長さんからございました。したがって、昨年、施設の整備費も含めて、地域地域にお任せしましょうと。実は、逆に言えば、財政的に弱い地域は大体整備が終わったものですから、財政的に強い地域の方が実はおくれておる、そういった中で、地域の実情に応じた計画が練られていくことになるだろうと思います。

 一方で、リハビリ問題となりますと、今回の診療報酬改定におきまして、利用者の方が効果的にリハビリテーションを受けやすくする、そういう意味では、施設に入所してリハビリを受ける、もしくは通所で受ける、場合によっては訪問介護という形でやる、そういうようなものを複雑に組み合わせながらやれるような制度に変えていきましたので、そういった点も拡張してまいりたい。

 いずれにいたしましても、私ども、大所高所からしっかりウオッチしながら、一方で地方の自主性というものを尊重してまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

松本(文)分科員 都市部において整備がおくれているという大臣の御認識を聞いて、ではこれからはしっかりやっていただけるんだなと思うわけですが、大臣、お言葉の中で、恐縮ですが、東京が財政力が特に強いわけじゃございませんで、都市特有の財政需要も抱えているわけでございますから、その認識だけはぜひ変えていただきますように、東京も苦労しているということをぜひ御理解をいただきたいと思う次第であります。

 そこで、病院から退院をする場合に、介護が必要な場合、これは大変なんですね。介護認定の申請をやるには、家族の人が区市町村の窓口に出向いて手続をしなければいかぬ。そして、そこから審査をしてくれる人が来てくれるまで連絡を待っていなくちゃいかぬ。やっと来てくれたら、七十項目の質問、それに答えて、コンピューターにインプットしていただいて第一次審査、こういうことになるんだそうであります。そして、医師の診断を加味して第二次審査を行って、介護度数、介護が必要であるかどうかということが決まるわけですが、それが決まるまでに三十日をはるかに超える日にちが現実はかかっております。

 三十日超えるんですけれども、病状が安定をしないと介護申請ができないという事情が片方にあります。病院の方は、三カ月たったら、退院してくださいと、やいのの催促であります。家族は、介護の点数は決まらないし、行くところは決まらないし、うちへ帰ったってこれはとても介護できる状況にないし、そこら辺で疲れがピークに達しちゃう、こういう状況があるわけであります。ぜひ、退院のときには、介護が必要であるか必要でないか、必要度数が病院のベッドの中できちっとわかるように、もうちょっとスピーディーな対応というのはできないものなんでしょうか。

 老健局長、ひとつ答えてください。

磯部政府参考人 介護保険制度におきましては、六カ月以上にわたって継続して常時介護等を要すると見込まれる方を保険給付の対象とするということになっておりまして、したがって、委員御指摘のとおり、心身の状態が安定した段階で行うということで、そういった制約がございます。

 また、要介護認定は、認定調査の結果及びその主治医の意見書に基づきまして介護認定審査会において判定するわけでございますが、全国一律の基準で行うということで一定の時間がかかっているということでございます。ただ、要介護認定の有効性は申請時にさかのぼるということとされておりますので、退院前から要介護認定の申請を行って、円滑に在宅への移行を図っていくというふうにできるのではないかと考えております。

 いずれにせよ、委員御指摘のとおり、認定事務の迅速というのは非常に重要でございますので、その迅速化について努力してまいりたいと考えております。

松本(文)分科員 退院から介護までのタイムラグをぜひなくしていただきたい、そう思います。

 そこで、退院をする際に、リハビリ病院だとか老健施設だとか特養ホームだとかというのも、それぞれの病院にケースワーカーはいらっしゃるんですけれども、ケースワーカーさんに相談に行っても、話を聞いていただいた上で、こういう病院がありますよ、こういう施設がありますよ、連絡をとって頑張ってくださいねと言われるだけなんですよ。そうすると、患者さんの家族は、そのいただいた名簿を持って、それぞれの施設に自分で電話をして、そして面会日をとって、電車に乗ってそこまで出かけて交渉して、それでも入れるか入れないかわからない。申し込みを受け付けていただいて、何週間か何カ月か何年か待たなきゃならぬ。待てない人は、今度は療養型の病院に当たって当たってお願いをして、何とか受けてもらえませんかと。これが大変な苦労なんですよ。

 これだけコンピューターが発達をしている時代に、それぞれの病院にそれぞれの施設の空き状況ぐらいはケースワーカーのところにびしっとそろえて、ケースワーカーが、こういう人がいるんですが、おたくは受けてもらえますかもらえませんかといったような、患者の家族にかわって対応できるような、そういうネットワークシステムを早急につくっていただきたい。そうでないと患者の家族が参っちゃう。こういう現実があるんですよ。

 健康局長、ちょっと答えてください。

中島政府参考人 ただいま御指摘の、退院などの際の連携の問題でございますけれども、今、松本議員の方からは病院にケースワーカーがおられるというふうに御指摘がございましたが、いわゆるケースワーカーの中にも、特に病院で医療について専門的に扱いまして、療養中の患者の抱える経済的な問題あるいは心理的、社会的問題等々、退院援助、社会復帰援助も含めてこういった業務を特に担当しておられる医療ソーシャルワーカーという方々が配置をされるという病院がふえてきている、あるいは医療機関がふえてきているという現状もございます。

 これらの方々は、退院援助業務といたしまして、介護保険制度を初めとする各種の制度の説明、制度の利用に当たりまして患者及びその家族を支援するなど、退院後の処遇に関する相談にもきめ細かく応じているものというふうに理解をしております。

 それに加えまして、いろいろな病院で、退院後も含めた一貫したケアシステムというようなものを開発されておられるところもありますし、御指摘のような情報システムについても、これからの課題ということで認識はしておりますが、こういった仕組みを御活用いただきまして、円滑な退院につなげていくということができればというふうに思っております。

松本(文)分科員 健康局長、確かに親切にはやっていただけますよ、相談には乗っていただけますよ。しかし、汗をかいて時間をかけてやっている家族、家族だから当然といえば当然なんですけれども、しかし、それにしても家族の体力と心労というのは、この問題にかける心労というのは並のことではない。これを何とかしなければいかぬなということをぜひ腹の底にしっかり据えてかかっていただきますように、心からお願いを申し上げます。

 そこで、大臣、介護保険がスタートするときに、今度は措置から選択の時代になります、入所する施設、受けるべき福祉のサービスを自分で選択して選ぶことができるようになります、豊かな福祉社会を実現します、こういう説明でした。

 ところが、今現実に、入るべき特養ホームを選択できるか、入る病院を選択できるか。選択できる施設というのはどこがあるんですか。入れれば幸運ですよ。特養なんというのは六年待ったって東京では入れないという人がいる。早くたって三年待たなきゃいかぬ現実がある。

 大臣、何とかここら辺にもっと力を入れて、本当に選択のできる福祉サービスの時代というのはいつごろ到来するのか、御答弁をお願いします。

川崎国務大臣 社会保障全体の施策の進め方でありますけれども、まず、年金については国が基本的に責任を持つ。また、介護については、基本的には一番身近な市町村が責任を持って、県が調整機能を持つ。もちろん基本的なことは国が決める。医療というものについては、今まで県は余りかんでまいりませんでした。しかし、先ほどからの話のように、全体的な計画は県が書いてもらうという時代を迎える。そういう意味では、社会保障、医療、年金、介護とありますけれども、その中でいろいろ役割、もちろん重層的に重なりますけれども、主体というものは変わっていくであろう。

 その中で、今までは社会福祉施設等施設整備費というのがありました。これは、平成十六年度でやめて地方へ税源移譲になった。十七年度になりますと、今度は地域介護・福祉空間整備等交付金、これについても税源移譲を行うことになったということで、各地方で進めていく。これはもう先ほど申し上げたように知事会等の合意事項でございます。

 その中で、一番御心配いただいておりますとおり、先ほどは老健施設のことを申し上げましたけれども、特別養護老人ホームにおきましても、これも十万人当たりでありますけれども、一番多い石川、島根、福井となりますと、十万人当たり約二千人以上の定員数を持っている。一方で、一番低いのが、埼玉がおくれているんです、埼玉が千百七十四人、東京も千四百五十五人ということで、整備がおくれておることは事実であろう。これは、ある意味では都市部がまだまだ全体的に言えば若かった、地方の方が老齢化が早かったという中で、今、都市部を中心に整備が必要な状況にあるという認識をいたしております。

 今、全体では、特別養護老人ホームが三十八万床、介護老人保健施設は二十九万床整備されてまいりましたけれども、そうした実態の中で地方が自主性を発揮しながらやっていただけるものと。こういう中で、昨年、三位一体の中で合意をしたということだけは御理解を賜りたいと思います。

松本(文)分科員 大臣、県とか地方とか、確かに大臣のおっしゃるとおりの制度の中で進めようとしております。しかし国民は、県や市町村の公約だとは思っておりません。政権政党自由民主党の公約だ、豊かな福祉社会をつくる、選択する社会をつくる、これは自由民主党の政権政党の公約だ、こう思っているわけでありますから、ぜひその点御留意をいただいて、そういう社会をつくるために全力を尽くしていただきますように、国としての責任を果たしていただきますように心からお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

森主査 これにて松本文明君の質疑は終了いたしました。

 次に、冨岡勉君。

冨岡分科員 長崎の冨岡勉でございます。

 まず、質問通告書に基づきまして、一点目の、療養病床がなくなる、今の松本議員からもいろいろ質問が出ていたようですけれども、果たして、私たちが病気になったときにどのようなコースで、介護というのでしょうか、受けるかというのを考えてみたいと思うんです。

 例えば脳出血だと、まず救急車で、ぱたっと委員長が倒れたとすると一一九番を呼ぶわけですけれども、そして病院に運びます。急性期の病床に多分入るでしょう。

 それがよくなっていくと、療養型、医療型の方に入っていきます。大体三カ月ぐらいですね。

 それから、お医者さんがきちっとおる老人保健施設、それから、医師はいつもいないんですけれども特養、特別養護老人ホーム、さらには自宅に行くのか、あるいは介護施設であるグループホームとか、そういうように一連に流れていくんですけれども、国民の目からすると非常にそこら辺がわかりにくいシステムになっています。今自分はどこにいるのかさえもわからないので、病棟の階がかわって、あなたは今度は介護施設におりますよというようなことが発生しています。

 そこで、ちょっと資料をお手元に配っておりますので、その一枚目の資料をごらんくださいませ。

 これは、療養病床がなくなる、病気になった後どこに暮らせばいいのですかということなんですが、健康な人、そして介護を必要とする人、その下に病院があるわけですけれども、紙面の都合上割愛しておりますが、左側にいろいろな名前が出てきております。健康な人、あるいは介護を必要とする人で福祉施設かあるいは民間施設、大きく分かれるんですけれども、おのおのをそこに記載しております。

 実は、このようにして政府が介護保険を立ち上げて在宅介護というのを推奨しながら、このような施設が現存するわけでございます。したがいまして、制度自体が福祉政策から介護保険の立ち上がりということで、そういういろいろな名称の施設ができたわけでございますけれども、非常に大変、まずはわかりにくい。

 これを、やはりそろそろ集約というのでしょうか、同じような機能を持っているものはまとめる、あるいは概念的に少しいじくる必要があるんじゃないかというふうに私自身はまず思うわけでございますが、その点につきまして、この表を見ながら、ああ、これは国民はすぐ理解できるよと、いろいろお考えはございましょうが、まずは、そういった施設の名称と、どのように今後変わっていくのか、あるいはまだ次から次に出ていくのか、あるいは集約しようとしているのか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。

磯部政府参考人 高齢者の方々向けの施設につきましては、高齢者の方々の心身の状況あるいは所得の状況などに応じまして、今まで歴史的にも、適切なサービスを提供するといった観点から、あるいは民間企業が進出してきたというようなことから、多様なサービス類型が委員御指摘のとおり設けられてきているところでございます。

 高齢者が個々の状況に応じて適切なサービスを利用するために、やはりこうした情報を適切にお渡しするということも非常に重要だと思っておりまして、身近な市町村の窓口あるいは今度設置されます地域包括支援センターなどにおきまして、これらのサービスに関する情報を入手できるような環境の整備に努めていきたいと考えております。

冨岡分科員 まだ集約するというお答えはないようですけれども、周知をまずしたいということと解釈させていただきます。その点につきましてはいろいろお考えがあると思うので、まだ推移を見守っていきたいと思っております。

 次に、今の二十三万床の療養型の病床群を制度上はなくすというような今度の医療保険の改正を提案されているわけなんですが、今度は、その名称もさることながら、どういう受け皿で、ここに書いていますから、恐らくこういう施設で請け負うというようなお考えだと思いますけれども、まず受けるためには施設がなくちゃいけないんです。

 仮に、暫定措置として、今の療養型病床群の定義を少し拡大解釈してしばらくはやっていこうというお考えだろうと思いますけれども、ただ、それでも次から次にやはり老人がふえてくるわけです。私も団塊の世代と言われていますけれども、私たちが今二百三十万人ぐらい生きている、生まれたときは二百七十二万人なんですけれども、その団塊の世代だけでも約七百万人ほどおられます。したがいまして、今から十数年たてば七十そして八十といくわけなんですけれども、そのときになると、年間に七、八万人ぐらいの新たな認知症、痴呆症ですね、認知症の患者が発生するだろうと言っております。

 果たして、受け皿となるような施設、それから人手は確保できるのでしょうか。例えば、今地域に密着した介護施設としてグループホームというのがございます。現存するのは約八万九千床、患者さんで八万九千人そこに入っておられます。したがいまして、そこにお世話する人だけを、仮に九万人入っておられるとすると、ホームヘルパーさんを、あるいは賄いさんを入れて約八万人の人手が要ります。

 仮に、グループホームだけで今からふえてくるそういう介護の必要な人を賄うとしたら、とても計算が合いません。毎年毎年、今現存するグループホームを八万床あるいは九万床ずつふやさなくてはいけないというのがもう目の当たりに迫っているわけでございます。

 したがいまして、次のお尋ねといたしましては、療養型病床群を減らすというのはいいにしても、その受け皿として、老健あるいは特養、グループホーム、ケアハウス等がございますが、一体どのように人手を確保し、施設を整備するのか、果たしてそれが現実的に可能かどうか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

磯部政府参考人 今後、委員御指摘のとおり一層の高齢化の進展が見込まれる中で、介護保険が国民の老後の安心を支える制度であり続けますように、昨年の六月に成立いたしました改正介護保険法におきまして、一つには、地域密着型のサービスの創設、それから、在宅サービスにおきます中重度者への対応の強化によって在宅サービスの充実を図る、それから、高齢者の多様な住まいへの住みかえを支援するために、介護保険の対象となる特定施設に高齢者専用賃貸住宅を追加するなどの改正を行って、量的な対応も図ろうとしているところでございます。

 この地域密着型サービスの基盤の整備につきましては、また国としても、市町村の交付金などにより支援をしていくこととしておりまして、これらの材料を使いまして、できるだけ委員の御指摘のような高齢化社会に対応するよう努めていきたいと考えております。

冨岡分科員 大変御苦労が多いかと思います。

 日本が誇る医療それから介護保険ですね、私自身は高く評価しているわけでございます。

 ただ、やはり至らない、気がつかない点が法律を施行していく場合に出てくるわけなので、それを補正しながら進むべきだろうと思っています。

 私どもの大村という長崎のグループホームの施設で火災が発生して、九人のうち八名が亡くなられたという、悲惨な非常に悲しい出来事が起こりました。当直というのは、この九人を見るために、おおよそ六、七名の方が週に一もしくは二回、土日はまた違いますから、毎日当直して、なかなかやはり疲労とか手が回らない現実がございまして、火災なんかには対応できるんかな、そういう心配もございます。

 十分労働力の確保を並行に進めると同時に、先取りをするような施策、すなわち、ある程度やはり能率を求めるような大規模な施設も、市の中心等にコロニー状に、大都市の周辺にやはり整備しないと、今の小型の入居者にとってはそれがいいかどうかわかりませんけれども、とてもじゃないけれども、やはり小型だけでは数が足りないという時代になるのではないかというふうに思っております。ぜひ御検討いただければと考えております。

 次に、五島油症患者の件についてお尋ねをしたいと思います。

 この油症禍というのは、一九六八年に西日本一帯で起きた食品公害でございまして、記憶に古い案件、新しいとは申しません、古いことではございますけれども、今なおそのダイオキシン禍に悩んでおられる方が現実的にたくさんおられるということです。

 ちょうど資料の二をごらんいただければと思います。そちらの方にも、もし余っておれば見せてやってください。まず、ウクライナのユーシェンコ大統領、この顔つきを見てください。これがダイオキシンによる顔貌の変化と解釈していただければいいと思います。これが、今なおカネミ油症の患者さんには背中にあったりあるいは皮膚に残っている方も多く見られるわけでございます。

 また、現存する患者さんの分布をその下に書いておりますが、一千三百三十五名ですね。これはもちろん福岡の会社でしたから福岡県が一番多く、まだ認定されている患者の数値が残っているわけですが、福岡県と長崎県で半数以上がおられるわけでございますが、何もほかの県にいないというわけではございません。

 そこで、なぜこの問題を取り上げるかと申しますと、この公害、責任会社というのは同定されているわけでございますが、PCBそれからPCDFですね、それからTCDD、ベトナム戦争のときに枯れ葉剤として使われたダイオキシンも含まれておるのですけれども、そういった公害という、いわゆる薬剤によるもの、こういったダイオキシン類によるもの、これがこの当時非常にまだ認知されていない。

 裁判でも、結局は和解を勧められて、最高裁まで行ったんですけれども、補償金を一、二審でいただいたんですが、最高裁でそれが和解をしてしまった、あるいは取り下げてしまったという状態になっております。今なおこういった患者さんがたくさんおられて、その補償金としていただいた一時金が返せない、国に戻さなくてはいけないんですが、それが返せない状態になっている方等がおられます。

 したがいまして、お尋ねしたいのは、こういったいわゆる初期の公害問題に対して、今なおその患者さんが悩んでいる、そして、一部ではありますけれども、補償金も返せない、そういった状態に対して、国の基本的な姿勢、それから今後の対策等を含めて、まずお尋ねしたいと思います。

松本政府参考人 カネミ油症事件につきましては、昭和四十三年の事件発生の当初から、厚生労働省といたしましては、一般行政上の措置といたしまして油症研究班を設けまして、その研究班に対しまして研究費の補助を行っているところであります。

 補助金の額が、昭和四十三年度で二千二百万ほどでございますけれども、十七年度で一億四千万ほど、これまで二十四億七千万ほど出してきております。

 油症研究班の取り組みといたしまして、具体的には、油症診断基準の策定及びその見直し、治療方法の開発等油症の診断、治療に関する研究を行っておりますほか、油症と認定された方への無料の検診及び追跡調査、健康不安に悩む患者さん方への健康管理や相談に応ずるための油症相談員の設置というものを行っております。

 また、政府全体の取り組みといたしまして、カネミ油症問題関係省連絡会議というのが設置されているところでございまして、厚生労働省といたしましても、関係省との間でそれぞれの施策に関する情報を共有するなど、連携を図っているところでございます。

 今後とも、厚生労働省といたしましては、関係都府県との連携を図りますとともに、油症研究班の先生方とも相談しながら、漢方薬を活用した臨床試験など、いまだ確立していない治療方法の研究等に引き続き積極的に取り組んでまいりたいというぐあいに考えております。

冨岡分科員 この問題は金銭問題がかかわる問題なので、またPCDFという薬剤公害として認識して新たに訴訟を起こすというようなことはなるべく避けたい、患者さんの団体もそう考えておりますので、できれば議員立法で何らかの救済措置をとれればと考えておりますので、またその際にはぜひ御協力をお願い申し上げたいと思っております。

 引き続きまして、感染症予防対策はどこまで行えばいいのか。狂犬病を見たことのない医師のひとり言というようなタイトルでさせていただいたんですが、種々の感染症というのがあります。エボラ出血熱とかラッサとか非常に危険性の高い細菌から、この狂犬病は四群ですかね、一番軽いものにたしか入ったと思いますけれども、四群に分けて、その対策をきちっとしているわけでございます。

 ただ、注意深くその中の疾患を見ていくと、天然痘のようにもうしばらく発生していない、あるいは撲滅宣言が出た、そして地球上に、ほぼ冷蔵庫の中で、フリーザーの中にしかいないというようなものもございます。

 資料の三番目をごらんくださいませ。日本における狂犬病発生年次別推移という形で出させていただいております。狂犬病も、実際はこの昭和三十二年の、これは外国から帰ってこられた方だったと思いますけれども、猫ちゃんだったかな、いずれにしても、それを最後にして発症を認めておりません。

 つまり、皆さん犬を飼ったりされている方は、年に一度こういうようにワンちゃんをだっこしたり連れて予防注射に行くわけでございます。これは個人負担ということで、一回約三千円からちょっとぐらい、都道府県によって少し違うんですが、年間約六百数十万匹、犬がおります。予防注射に行った数だけが六百二、三十万匹ですが、行かないものを含めると一千万匹を超えるような犬がおると考えられていますが、この間、国民の負担は年間二百億円ぐらいその予防注射にかかるわけでございます。

 それで、イギリスとかアイルランド、北欧とかは、もう既にこういう疾患、狂犬病が出ないということでこの予防注射を中止しております。

 最初にお聞きしたいのは、いろいろな感染症が小さなものまで含めれば恐らく何千種類とあると思いますけれども、その対策に対して、例えば国内で発症していないという基準、十年間あるいは二十年間、今回の場合は五十年間ですね、半世紀の間、日本ではこの疾患が出ておりません。そういった疾患の一体どこまで予防対策をとるのか、そういうクライテリア、基準があるのかどうか、まずお尋ねしたいと思います。

中島政府参考人 ただいまお話のありました、どういった状態になれば予防接種が要らなくなるというようなことについては、現時点では、そういった明確な基準は我が国として設けておらないというふうに承知しております。

冨岡分科員 やはり、ある程度のコンセプトはしていくべきだろうと私自身は思います。いたずらに五十年間、では百年間続けるのか。それはだれもしてくれないんです。我々がしなくちゃいけないということですね。

 しかも、狂犬病のワクチンは、以前まで、平成元年ぐらいですか、ワクチン接種は一年に二回していました。面倒なことでした。ところが一回にしました。調べてみると、ロングアクティング、つまり二年、三年もつようなワクチンも外国にはあります。なぜそれを使わないのか、それが第二点ですね。

 それからもう一つは、たとえ発症しても、犬です、犬だからそこで防ぐことができます。一番多いのが飼い犬に手をかまれる、このケースでございます。したがって、自己責任でワクチンをすることが考えられる。たとえその犬が観察して狂犬病だとわかっても、狂犬病ワクチンを個人に打つことができます。これでほぼ治療は、ただし、発症してしまった例には効きません。

 それから、免疫グロブリンというのがある。いわゆる抗体化を高めるような治療法が現存します。これで、たとえ犬に発症した段階で千匹発症しても、それを全部処分すれば一人も死人は、人間にはうつらないわけでございます。例えば、それにかまれたとして、今言ったような治療法あるいは予防に近い治療法、免疫グロブリン療法というものがございます。これは現存しております。したがって、こういう対策をとれば、いたずらに二百億、五十年で何と一兆円の国民の財産が守られたということになります。

 したがいまして、そういう観点から、こういった疾患に対しての明確なクライテリア、定義をきちっとして、予防対策あるいはそういう治療法についても入れるようなことが可能ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

中島政府参考人 何点か御質問がございましたので、まとめてお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、現状でどうして打っているのか、続けているのかということでございますが、狂犬病につきましては、御指摘のように、国内では昭和三十三年以後発生はないんですけれども、中国、ロシア、東南アジア等ではいまだに流行が絶えていない、WHOによれば世界で年間三万五千から五万人がこの病気で亡くなっている、これは人でございます、というような、現在でも活動性の病気であるということでございます。

 こういった中、我が国におきまして、密輸とか不法犬の上陸などによりまして、感染した犬が国内に侵入する可能性も考えまして、また、人が罹患して発症した場合の致死率、これがほぼ一〇〇%と言われておりますが、そういったことも勘案して、万が一ということで蔓延防止策という観点から、国内に飼育されている犬に対しての狂犬病の予防接種を現在行っているという状況でございます。

 それから、そうであっても、アメリカのように三年有効のワクチンはどうかという御指摘でございますけれども、これについて私どもも承知はしておるわけでございますけれども、我が国は、御承知のように、アジアの近隣諸国におきまして狂犬病がかなり多く発生しているというような状況もございまして、毎年一回の予防接種ということを義務づけておるわけでございます。今後、その三年のワクチンにつきましては、有効性、安全性、安定供給等につきまして、農林水産省とも連携を密にしつつ、調査研究してまいりたいというふうに考えております。

 それから、北欧などで予防接種をやめている国があるのにどうしてかということでございますけれども、日本と同じアジアの地域にあります台湾におきましては、一つの例としてでございますけれども、やはり発生は見られておらないんですが、予防接種を義務づけているというような状況もございます。

 それから、感染源が犬であるということで、犬への対策は狂犬病予防の観点から重要であるということから、先ほど申しましたように、万一我が国に潜入したときの対策ということで、その対策、予防接種を義務づけているということでございます。

 それから、犬にかまれた場合、十分手当てができるのではないかというような御指摘でございますけれども、暴露後の、かまれた後の治療としては、ワクチンそれから免疫グロブリンというようなことで治療が行われるということについても承知をしております。

 しかしながら、致死率が、先ほど申しましたように大変に高い、ほぼ一〇〇%であるということ、それから感染後の予防治療が功を奏さないというような、効かないような例もあるというように聞いておりますので、この対策としては、やはり感染源の対策が最も重要であろうということで、現状、国内飼育の犬に対しまして予防注射の接種を続けているという状況でございます。

冨岡分科員 僕は、やはり客観的に、冷静に分析していく必要があるんじゃないかと思います。

 時間がないので、次に、ちょっと駆け足になりますけれども、石綿症、アスベストーシスについて。

 これに腫瘍登録制度を使う手はないかということなんです。どういうことかというと、患者さんの認定に関しまして、本人もしくは家族が申請して初めてそれを認定するかどうか決めるんですが、全国には、ばらばらながら腫瘍登録制度というのがあります。また、長崎、広島では放射線影響研究所という研究機関があって、戦後、割合早いときから、そういう病理診断、それから手術症例、それから剖検症例をきちんと把握しています。そういったものを使えば、隠れたというんでしょうか、本人があるいは家族が何か肺で取った、肺がんで亡くなったという症例も、正確にアスベストーシスだということが同定できるわけでございます。

 ちなみに、ちょっと調べてみたんですが、平成十六年度では、認定患者が長崎県の場合に一名でしたけれども、その腫瘍登録でいえば十数名、そういう中皮腫というのがどうもおりそうだというデータも出ていますので、こういった腫瘍登録制度あるいは放射線影響研究所のデータ等を使うお考えがないかどうかを最後にお伺いいたしたいと思います。

青木政府参考人 アスベストによる中皮腫が大変取り上げられております。不幸にしてそういうことで災害を受けられたという方に対しましては、労災で認定をいたしましてその補償給付等を行っているわけでございますが、確かに、そういった実際に患者になられた方と、労災で認定をされた方というのは差があるということでございますので、そういう意味では、石綿と中皮腫や肺がん、そういったことの関連性を十分に周知いたしまして、私どもとしては、必要な認定に疎漏のないようにしていきたいというふうに思っております。

 いろいろな登録制度のお話がございましたけれども、各都道府県で実施されている、がん登録事業などについては、一般に集計されたデータから過去にさかのぼって個人を特定できる仕組みということにはなっていないというふうに聞いておりますので、私どもとしては、中皮腫や肺がんとの関連、石綿との関連を解説した一般向けのリーフレットとか、あるいは医療機関向けに対しましてチェックリストを作成するとか、あるいは関係の労働者、使用者などへ広く周知をしていくということを引き続きやって対応していきたいというふうに考えております。

冨岡分科員 ぜひお願いしたいと思います。政府の施策は大変僕は高く評価しておりますので、ぜひ継続して御相談申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

森主査 これにて冨岡勉君の質疑は終了いたしました。

 次に、川条志嘉君。

川条分科員 自由民主党の川条志嘉でございます。

 本日は、この予算委員会第五分科会におきまして発言のお時間を賜りましたこと、厚く御礼申し上げます。

 私の志というのは、女性が安心して子供を産み育てることのできる社会をつくりたいというものです。また、私の地元の大阪でも、子供の数を見かけることが減り、お年寄りの数を見かけることはふえました。この急速な少子高齢化社会に生きる人間の一人として、本日は、女性の働く環境の整備、高齢者の医療と介護について、そして最後に、産科医の不足や病棟閉鎖など個別の事例が最近よく話題となっておりますが、産科医の確保と産科医療に対する将来ビジョンについてお伺いしていきたいと思います。

 質問項目が非常に多うございますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、出生率が一・二九と減り続け、これから団塊の世代が高齢者になってくる。少子高齢化時代が急速に進む中で、労働力の確保という面からも、女性が安心して働き、また子供を産み育てることのできる環境の整備というものが早急に必要となってきていますが、政府として、少子化対策にも資する男女共同参画についての取り組みの決意を教えてください。

名取政府参考人 お答えいたします。

 男性と女性が、互いにその人権を尊重しつつ、個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、二十一世紀の我が国社会を決定づける最重要課題であり、男女共同参画社会基本法や、同法に基づく男女共同参画基本計画に即して施策を推進してきたところでございます。

 昨年十二月には、施策のさらなる充実を図るため、第二次男女共同参画基本計画を閣議決定いたしました。同計画には、政策、方針決定過程への女性の参画の拡大や、女性の再就職、起業等の支援等、さまざまな施策を盛り込んでおります。

 仕事と子育ての両立支援策の推進や、男性を含めた働き方の見直し等、男女共同参画の推進は少子化対策にも資するものであり、今後とも、関係省庁と連携しつつ、第二次基本計画に基づき、施策を総合的かつ計画的に推進してまいります。

川条分科員 ありがとうございます。

 政府のはっきりとしたこれからの未来に対する決意を聞かせていただきました。

 引き続きまして、厚生労働省の方にお伺いします。

 女性の約半数は、出産を機に職業から離れます。そして、子育てを終えて復職しようとしても、正規労働者としての職場にほとんど戻れないというのが現状です。そこで、やむを得ず非正規社員として甘んじることになる。このような生き方をした女性と、正規社員としてずっと働き続けた女性との生涯賃金の差は、一億五千万円から二億円とも言われています。この生涯賃金の差が、生活程度の差になって、信用の差になって、子供の教育の差になって、そして社会的地位の差になっていくんです。

 教育を受けるときには男女同権だと言われて育って、社会に出れば子供を産むことだけを期待されているのでは、女性は教育を受ける意味がないんです。女性に厳しい現状を女性自身が熟知しているから、結婚をためらい、出産をためらって、そして気がついたら子供を産めない年齢になってしまっている、だから少子化が進む、こういったことが起こっているんです。したがって、社会の中で女性が働きやすい環境をつくることは、少子化対策を進めるためにも、人口減少時代に労働力を確保するというためにも、非常に重要なことだと思っています。

 雇用機会均等法の改正案が近く提出されると聞きました。国連の女性差別撤廃委員会の二〇〇三年七月の勧告を受けて、間接差別の禁止が雇用機会均等法制定後初めて規定されるとのことですが、どのようなものでしょうか。

北井政府参考人 男女雇用機会均等法の改正案につきましては、現在、国会提出に向けまして準備中でございますので、本日のお答えは、きょうの時点での考え方の御説明ということで御理解を賜りたいと思います。

 そこで、間接差別についてでございますが、間接差別の定義的なものとしては、業務遂行上の必要その他の合理的な理由がなければ、労働者の性別以外の事由を要件とする措置で実質的に性別を理由とする差別につながるおそれがあるものとして厚生労働省令で列挙するものを講じてはならないといった内容を盛り込むこととしております。

川条分科員 国連女性差別撤廃委員会では、一九九四年に日本政府レポートを審議した際にも同様な勧告を出していると聞きました。具体的にどのようなものか、教えてください。

北井政府参考人 一九九四年の国連女性差別撤廃委員会の審査におきましての勧告でございますが、日本政府は、民間部門が雇用機会均等法を遵守することを確保すべきであり、民間部門において女性が直面している昇進や賃金についての間接的な差別を取り扱うためにとった措置について報告すべきであるという旨の勧告を受けているところでございます。

川条分科員 ありがとうございます。

 つまり、今回の間接差別の要件については、国際社会から十年間ずっと突きつけられてきた宿題だったというわけですよね。

 厚生労働省の二〇〇三年の賃金構造基本統計調査の中で、例えば、三十から三十四歳の男性正社員の年収が四百八十九万円、女性正社員が三百七十一万円、女性のパート労働者が百二十二万円という実態をどう見ておられるのか。見解をお伺いしたいと思います。

北井政府参考人 今御指摘の賃金格差は、男女間の賃金格差、それからいわゆる正社員とパート労働者の賃金格差と両面あると考えます。

 まず、男女間の賃金格差につきましては、職種あるいは職階の男女差、あるいは勤続年数の男女差等が大きな要因として指摘されているところでございまして、このような状況の改善をするために、厚生労働省としては、いわゆるポジティブアクションの実践や、公正で透明な賃金制度や人事評価制度の整備、あるいは仕事と家庭を両立しやすい環境整備等を図ってきているところでございます。

 また、正社員とパート労働者との賃金格差につきましては、仕事の内容や責任の違い、それからパートタイム労働者の就業調整の影響なども要因として考えられるところでございますけれども、基幹的な役割を果たしておられるパートタイム労働者が増加している中で、その処遇が働きに見合ったものとなっていない場合もございまして、正社員とパートタイム労働者の均衡処遇ということについても重要な課題だというふうに認識をいたしております。

川条分科員 ありがとうございます。

 実は私は、この点、今回の法案では規定されていないけれども、将来もしかしたら間接差別に当たるかもしれない事例かもと思っているわけで、きょう聞かせていただいたわけです。

 もう一点、多くの職場では世帯主に対してだけ扶養家族手当や住宅手当が支給されているんですが、これに対してどういう見解をお持ちか、教えていただけますでしょうか。

北井政府参考人 世帯主に対する扶養家族手当や住宅手当の支給が間接差別に当たるのではないかとの指摘があることは承知をしております。

 しかし、これまでの均等法改正についての私どもの労働政策審議会の議論におきましては、この点につきましては、扶養家族手当や住宅手当の支給方法については、これまで長年の労使慣行の中で、生活補助的な賃金として労使協議の中で積み上げられてきたものであることとか、世帯主を男女のどちらにするかについては世帯の選択が可能でございますので、女性の世帯主になることが排除されているものではないといったような指摘もなされておりまして、直ちにこの要件を間接差別として違法とするというコンセンサスは得られなかったところでございます。

 したがいまして、今回の改正におきましては、この要件を間接差別として含めていくということは予定していないところでございます。

川条分科員 ありがとうございます。

 今、北井局長さんからお話がございましたように、間接差別に当たるかもしれないとこれは私も思った事例でございまして、もし今回、間接差別を数点に限定することによって、将来、いろいろな労働相談の中でこれは間接差別に当たるんじゃないですかという事例がいっぱい出てきた場合、どのような対応をされるのか、教えていただきたいと思います。

北井政府参考人 間接差別は、性中立的な要件ということであっても、実質性差別につながるおそれのあるものということでございますから、いわばどんな要件でも俎上にのり得る非常に幅の広い概念でございます。そうした中で、我が国において間接差別を違法ということを断ずるに当たりましては、やはり対象となる範囲を明確にしていく必要があろうというふうに考えております。

 したがいまして、今回の準備しております改正案では、まずはコンセンサスが得られたものについてその対象とすることを考えているところでございまして、同時に、改正案におきましては、今後、判例の動向などを見ながら、必要に応じて対象の見直しができるような、法的仕組みとしてはそういう仕組みとするというようなことを予定しているところでございます。

川条分科員 ありがとうございました。

 女性の家事、育児にかかわる時間が男性の五から十倍だということが少子化白書で指摘されております。この調査結果を踏まえて、女性の残業や休日出勤についてどのような見解をお持ちなのか、まず厚生労働省さんの方からお伺いしたいと思います。

北井政府参考人 子育てしながら安心して働き続けるためには、男性も女性も希望どおり仕事と家事、育児を両立できる環境の整備が重要であるというふうに認識をいたしております。

 このため、具体的な法律といたしましては、育児・介護休業法におきまして、育児負担の大きい小学校に入るまでのお子さんを養育する労働者が請求した場合には、時間外労働や深夜業を制限する制度を設けておりますし、また、就学前のお子さんを養育する労働者については、短時間勤務、フレックスタイム、あるいは時間外労働の免除などのいずれかの措置を講ずることを義務づける、あるいは努力義務としているところでございます。

 こうしたようなことで、仕事と生活のバランスをとりながら、安心して家族の一員としての役割を果たしながら働き続けられるような施策を充実していくことが重要であるというふうに考えております。

川条分科員 ありがとうございました。

 内閣府男女共同参画局の方にもお伺いします。

 女性のいわゆるアンペイドワークについて、家事、育児の負担が、先ほども述べたように過度に大きいのですが、男女がともに仕事と家庭の両立に取り組む必要があると考えますが、見解をお伺いしたいと思います。

名取政府参考人 お答えいたします。

 男女が安心して子供を生み育て、家族として責任を果たしつつ働くことができる社会を形成していくことは重要であると認識しております。

 昨年末に策定されました第二次男女共同参画基本計画におきましても、重点目標として、男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援を掲げておるところでございます。仕事と家庭の両立支援策を含めた男女共同参画施策の推進は、少子化対策にも資するものであり、今後とも積極的に推進してまいりたいと思っております。

    〔主査退席、根本主査代理着席〕

川条分科員 ありがとうございました。

 私は、アンペイドワークについてはもっと積極的に取り組む必要があると思っております。家で食事をつくる、子供の世話をする、老人の介護をするといったことが今評価されていない。外で同じ作業をすれば賃金がもらえ、職業として認められるわけですから、家事、育児といったアンペイドワークが何らかの形で評価される必要があるのではないかと思っていることを申し添えまして、雇用均等法改正についての質問を終わらせていただきます。

 次に、高齢者の医療と介護の分野について質問させていただきます。

 今回、健康保険法等の一部を改正する法律案ができると聞きました。その中で、療養病床の再編が行われると聞いております。平成二十四年までに療養病床が廃止になると聞きましたが、現在、医療保険適用二十五万床と介護保険適用十三万床のうち、医療保険適用として残るものの数、そして、そのもとになったデータについて教えていただけますでしょうか。

 時間がないので、簡潔に教えてください。

水田政府参考人 今回の療養病床の再編におきまして、療養病床につきましては医療の必要性の高い方を受け入れるものに限定しよう、そして医療保険で対応する、その一方で、医療の必要性の低い方々については老人保健施設等で対応する、このようにしてございます。

 これによりまして、結果から申し上げますと、現在、介護療養、医療療養合わせまして三十八万床ある療養病床のうち、十五万床が医療療養病床として残る、このように見込んでいるわけでございます。

 その根拠でございますけれども、一口に申し上げまして、療養病床に入院する患者の方々、そしてその方々に提供される医療に関する調査、これは中医協に提出されたものでございますが、それによりますと、先ほど申しました医療、介護双方の療養病床に、医学的管理の必要性の高い患者さんが合わせまして約四割おられるということから、先ほど申し上げましたような見込みを示しているところでございます。

川条分科員 お答えありがとうございます。

 高齢者は体調の急変が起こりやすくて、また回復しにくい傾向を持ちます。現在の老健施設やケアハウス、在宅という選択肢だけで対応し切れるのか、私はこの法案を見て非常に不安になりました。

 今、ケアハウスやグループホームの入居者の資格条件に、自分で身の回りのことができること、こういう項目が入っていることが多いのは御存じでしょうか。ということは、一たん老健に入っている人でも、体調が悪化すれば施設を退所して病院に入院しなければならない。そうなったら、急性期病院では三カ月で退院させられてしまう。もとの老健やケアハウスやグループホームは、こうなったら、現在だったら受け入れてくれないんです。療養型の医療施設を探さなければならなくなるわけですが、現在でも、費用も高い上、数も少ないんです。

 この制度改正では、療養型で医療の適用も受けることのできる施設が三十八万床から十五万床にと大幅に数が減ってしまう上に、現在の介護療養医療施設は、今のものは平成二十四年をもって廃止される。そうなったら、在宅を進めるといっても、胃瘻をあけた人に、あるいは点滴の必要な人に家で介護をしていくことはできない。また、都市部では賃貸住宅に住んでいる人が多いから、家をバリアフリー化するのに補助金を出しますよといっても、家を改装してバリアフリー化することというのはほとんど不可能なんです。核家族が多くて、奥さんも働かなければ生活していけない人たちがいっぱいいるんです。それに、老老介護やひとり住まいの人もふえている。

 このような状況で在宅支援を幾ら進めるといっても、厚生労働関係の予算総額は減るかもしれないんですけれども、結局、我々の生活という視点で見たら、ほかの方面で問題が起こってくることも考えられます。例えば、高齢者虐待でありますとか、老老介護に疲れたお年寄りが無理心中を図ったり、殺したり、あるいは孤独死をするといった悲しい事例がふえていく可能性というのは十分にあると思います。

 そこで、このような事態も予想されることを踏まえてお尋ねします。

 健康保険法等の一部を改正する法律案における検討規定として、附則の第二条に、介護保険施設のあり方について検討を加えて、保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備の支援に努めるものとする、こういう附則がございます。具体的にどのようなことをされるのか、教えていただきたいと思います。

磯部政府参考人 委員最初に御指摘のございました、容体の急変が起きやすいという方々でございますが、我々の持っております資料では、平成十六年の調査でございますけれども、そうした、病状は安定しているが容体の急変が起きやすい方、あるいは病状が不安定で医学的管理を要する方といった方々は、療養病床におきまして約三分の一以下というような資料を持っておるところでございます。

 こうしたことも踏まえまして、先ほど保険局長もお答えしたような経過から、療養型病床の再編成を行うということでございます。これは、決して無理をして、入院しておられる方々が退院せざるを得ない、追い出しにつながるといったようなことがないということを大前提として、六年をかけて進めていこうということでございます。

 直接的には、老人保健施設等の介護施設に、現在の、医療の必要性の低い方々を入院させておられる療養病床が転換していただく等によりまして、そのまま受け皿となって、そうした退院せざるを得ないというようなことがないようにしようというふうに考えております。

 ただ、そこで、委員御指摘のとおり、そうした老人保健施設等の基本的なあり方、それから、入所者に対するふさわしいサービスを提供するといった観点から、御指摘のような、入所者に対する医療の提供のあり方につきまして、法案が成立いたしますれば、それに基づきまして検討会を設けてこうしたことについて検討するということで、この附則の趣旨に沿って対応をしたいというふうに考えておるところでございます。

川条分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、強制退所を迫られて、あるいは入所する施設を探して泣く人たちが出ないようにお願いいたします。

 ただ、私、もう一点気になっていることがございまして、これから団塊の世代が老年期に突入していく、そしてどんどん体が弱くなっていく、こういう事態を考えた場合、三十八万床が十五万床になったら、十五万床という数字が、予想外に団塊の世代で体の弱い人たちがふえた場合、見直されるということも考えられるのでしょうか。大臣にお伺いしたいと思います。

川崎国務大臣 医療制度の改革についていろいろ御懸念をいただいていますけれども、一方で、現状のままでいけるかということもぜひ議論を賜りたい。

 私は、団塊の世代の生まれなんです。昭和二十二年、二百六十八万人生まれました。二百七十万、昭和二十四年。あと七年で年金支給を受ける年になる。後期高齢者になりますのは、実はまだ十七年あるんです。よく私は言うんですけれども、今、六十から六十四歳の人たち、男は実は七〇%労働力人口に数えられております。我々の時代はやはり八〇%が働く時代だな、こんなふうな認識をいたしております。

 我々が、十七年後、要は二〇二五年ぐらいですね、この時期になりましたときに、負担と給付、今のままでもつかといったら、多分若者は負担し切れなくなるであろう、これは間違いないだろう。したがって、どういう設計にしながらお互いが譲り合っていくのかということを考えなければならないだろう。

 一方で、御心配のように、我々団塊の世代がどんと来たときに、十五万という想定はどうなりますか。これはもちろん、これから六年間考えながら一つずつ歩んでいく。六年間の歩みの中で、そろそろ我々弱ってきますから、さあ、十五万で足りるかなという計算は当然していくことになるだろう。御心配いただいているような、ケアハウスまた有料老人ホーム等の施設、老健施設では療養病床のかわりは十分果たせないという議論が強くなれば、それはまた変わるかもしれません。しかし、基本的には、老健施設なりケアハウスなり老人ホームなり、また在宅なりというものをうまく複合的に組み合わせながら、やれるように持っていかないと、とてももたぬなという感じはいたします。

 そういう意味では、試行錯誤を重ねながら、その都度皆さん方にチェックしていただきながらやっていくということで御理解を賜りたいと思います。

川条分科員 大臣、ありがとうございます。

 その都度チェックしながら、様子を見ながらというお返事を賜りまして、憂慮していた部分、少しだけ助かったなということを思いますが、国民の一人として、制度改正を進めていく上で、やはり生活ということを視点に置いて、順序なり制度の細かいところであるなり、配慮を加えていただくことを重ねてお願い申し上げまして、この問題についての質問は終わらせていただきます。

 次に、子供を産むということについての質問に参りたいと思います。

 質疑時間、五分ということですので、私、将来の産科の統合ビジョンについてぜひ副大臣にお伺いしたいことがありますので、現状の認識をちょっと申し上げます。

 産科医の不足による病棟閉鎖ということが言われておりますが、実際に東京都の中核病院なんかでも病棟閉鎖を検討していたり、あるいは、ある大学病院では教授クラスが当直に当たっていたり、そして、医局にたとえ新入局者が入ってきても指導する指導医がいない、こんな事態が起こっているということを聞きます。また、三十五県医会の統計によったら、平成十四年から十六年の間に、百九十一の病院、診療所が分娩を取りやめたということです。

 私、厚生労働省のホームページを繰りましたら、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課による小児科産婦人科若手医師の確保育成に関する研究報告書でも、そういったことに対するいろいろな対策、あるいは現状認識が出ております。

 そこで、ちょっと、オープンシステムの導入ということも書いてありましたので、きょうは赤松副大臣に、オープンシステムの導入の現在の状況を教えていただきたいと思いますのと、また、産科医療の将来ビジョンについての厚生労働省のグランドデザインをお聞かせいただきたいと思います。

赤松副大臣 川条志嘉委員の、先ほどからの産科医療についての御懸念、私も同じ問題意識を持っておりまして、極めて今、小児科もそうですけれども、産科においても厳しい事態が続いている。これに対して、懸命に今厚生労働省として対応しようとしているところでございます。

 今御指摘の、例えばオープンシステムの導入については、中心となるオープン病院でハイリスク分娩を行って、診療所では妊婦健診やローリスク分娩を行うといったふうな、そういうオープン病院と診療所の相互の病診連携システムを構築するということを内容としたものでございます。

 あと、これから産科の医師をどうやって確保していくのかということにつきまして、厚労省としましては、幾つもの角度でとりあえず当面の対策として考えているところがあります。

 もう御承知いただいているかと思いますが、改めて整理いたしますと、一つは、いわゆる医療法等の改正法案。つまり、法律の角度でやることが幾つかありますが、一つは、医療計画を見直して、周産期医療に係る具体的な医療連携が確保されるようにする、また、各都道府県が中心になって、大学病院などの地域の医療関係者と話し合いを行って、各病院に医師を派遣する仕組みを検討して実施していく医療対策協議会の枠組みをしっかりと制度化する、こういった観点が一つの法制度面的な部分の対応でございます。

 それから、十八年度予算におきましては、都道府県における産科医療の集約化、重点化や、女性医師の労働環境の改善に必要な経費の補助をするということが一つ。もう一つは、女性医師のライフステージに応じた就労を支援するための女性医師バンクの設立や講習会の実施などの予算を計上する、これが二つ目の点です。

 あと、大きい三つ目としまして、平成十八年度の診療報酬改定におきまして、産科医療におけるハイリスク分娩への評価を重点的に強化することにしておりまして、引き続き産科医療の確保に総合的に取り組んでいきたい。

 こういうふうに、今申し上げました三つは、ある意味で当面の対応ということが言えようかと思います。

 川条委員、きょうの委員会の冒頭でもおっしゃられましたように、女性が、今の若い皆さんがなかなか結婚をしたがらないという傾向、根本的な原因を先ほどちょっと触れられましたけれども、あらゆる意味でこの問題は非常に重要な課題と結びついておりますので、引き続き、しっかりと、いろいろ御意見をいただきながら、厚労省としても対応をしてまいりたい、そんなふうに考えております。

川条分科員 赤松副大臣、ありがとうございました。

 いろいろお伺いしましたが、今、公債残高が五百四十一・八兆円で、今年度の一般会計歳出総額のうち、社会保障関係費が実に二五・八%を占めている。だから、少子化対策に取り組む中で、財源を考えると削減とか抑制の方向に向いてしまうのはいたし方ないことかもしれませんが、やはり現場と一番近い厚生労働省さんには、現場の声を聞き、生活者の実情を見て進めていっていただきたいと思うわけです。

 この数字の後ろには実際の生活があるわけで、順序や提供体制の規制に配慮を加えることで痛みが緩和されることもあるわけで、そういう面からも、重ね重ね、この国家とかこの国民のために、生活というものを最優先にして施策を行っていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日は本当にありがとうございました。

根本主査代理 これにて川条志嘉君の質疑は終了いたしました。

 次に、西本勝子君。

西本分科員 自由民主党の西本勝子でございます。

 衆議院予算委員会は、多くの先人、先輩たちが殊のほか熱く万機を論じてきた大きな舞台でありまして、今後とも悠久の歴史をつくり上げていく、その一節を任されましたことに深く感謝申し上げ、ここに立たせていただいております。

 私は、昨年末、方向が定まりました三位一体改革の中の義務教育費国庫補助負担については、結果的には義務教育の水準を国が一定保障することが守られたわけでして、大いに評価をしたところでありますが、それでは、この義務教育前の子供たちの制度、つまり、子育て支援や幼児教育などがこのままでいいのかという点で、時間をいただきましたので質問をさせていただきます。

 少子化社会対策基本法を受けて制定されました次世代育成支援対策推進法ができたとき、私は地方の議会議員でしたが、やっとこれで国も本腰を入れて少子化対策を進めていくのだな、子育てに精いっぱいの若いお父さん、お母さんの助けになればいいね、そして子供たちが伸び伸び育ったらいいねと期待をしておりました。事実、市町村もニーズ調査をもとに行動計画を作成し、県も、また三百人以上常時雇用する事業主も一般事業主行動計画の策定を義務づけることとしておりましたので、エンゼルプラン、新エンゼルプランでは具体化しなかった事業などへの意欲と申しますか、子育て支援が進むものと考えていました。

 ところが、その後の政策では、まだまだスピードが上がっていないといった感じがするのであります。

 予算案では、次世代育成支援対策交付金として、子育て支援など、地方に交付しているわけでありますが、この交付金予算の算定根拠として、何をベースにして計上されたのか、そして、子育て支援に対するどのような思いが込められているのか、お尋ねいたします。事務方の方でお願いいたします。

北井政府参考人 今お話のございました次世代育成支援対策交付金、いわゆるソフト交付金でございますが、これは、できる限り市町村の特性や創意工夫が生かせるような仕組みとすることを考えて、今年度から創設した交付金でございます。例えば、交付額の範囲内においては各事業への事業費の配分を市町村が自由に決定することを可能としておりますなど、自主性、裁量性が従来の補助金に比べて高くなるように配慮をしているところでございます。

 御質問の、何をベースに算定根拠としているかということでございますが、この交付金は、従来の取り組みに基づく所要額を念頭に、事業量や取り組み内容に応じましたポイントを設定して、個々の事業ごとの補助金のような申請ではなくて、市町村が策定する事業計画を総合的に評価した上で、計画全体に対して交付するようなものとなっておりまして、思いといたしましては、子育て支援事業を市町村が創意工夫を生かして総合的に大いに取り組んでいただいて、その充実、向上に力をより注いでほしいという思いを込めて創設したものでございます。

西本分科員 局長の市町村に重きを置いているという点については本当にありがたく思いますので、次に移らせていただきます。

 実は、御存じのように、市町村行動計画は、次世代育成支援対策推進法では、たしか平成十六年度中には計画が完了しているはずでございます。私の地元でも聞いてみますと、ゼロ歳から小学校生までの保護者を対象として、幼稚園、保育園、小学校すべてに協力してもらい、入所外の親には郵送して、今までにない高い回収率でニーズ調査を実施し、これをもとに、民間の方々を多く入れた協議会で十分な検討をして行動計画を作成したと聞いております。

 厚生労働省は、この各市町村の行動計画で目標としている事業量は全国集計されていると思いますが、この行動計画の重みをどのように受けとめ、対応していくつもりですか。また、明年度予算案で、地方が計画している平成十八年度事業のうち、どの程度が実施可能とお考えでしょうか。御質問させていただきます。

北井政府参考人 市町村行動計画は、今お話がありましたとおり、子育て中の御家庭に対するニーズ調査を行ったり、あるいは、子育て支援に関する幅広い知見をお持ちの関係者の皆様方の御意見を踏まえて各市町村が策定をされておる計画でございまして、私どもといたしましても、すべての市町村におきまして、つくられた行動計画の達成に向けて最大限の御努力をいただきたいというふうに思っているわけでございます。

 それで、国としても、そうした地方自治体の計画を踏まえて子ども・子育て応援プランをつくりましたけれども、今年度以降、国としてはそうしたプランに基づいて必要な支援を行っていきたいと考えているところでございまして、平成十八年度予算におきましても、それぞれの市町村におきます行動計画の推進に向けまして、ソフト交付金の充実、あるいは放課後児童クラブの充実、それから待機児童ゼロ作戦を初めとする多様な保育サービスの充実など、必要な予算を計上いたしまして支援をしていきたいというふうに思っております。

西本分科員 私は、市町村の行動計画は策定段階で住民ニーズを十分把握しており、支援事業に対しての期待はかなり大きいと考えます。局長と意を同じくしているという点が確認されましたので、次の質問に移らせていただきます。

 この次世代育成支援市町村行動計画の事業内容で、学童保育などの小学校分を除くと、保育所分の事業メニューは、延長保育、夜間保育、一時保育、休日保育、病後児保育などが中心でありまして、これらの事業の経費の多くは人件費であることが想定されます。

 そこで心配なのが、国が予算化するに当たって、市町村行動計画の事業量に、厚生労働省の定めた保育単価の人件費を基礎として計算された場合は、どうもこの交付金だけでは市町村の実施主体は歳入不足となるおそれがあると考えますが、どうでしょうか、大丈夫でしょうか。大丈夫とするなら、その根拠をお示しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

北井政府参考人 延長保育、夜間保育、一時保育、休日保育などのいわゆる特別保育の補助金につきましては、確かに、保育所の基本のところの最低基準によります職員配置が適用される運営費負担金の対象とはしておりませんが、それぞれの事業の性質に応じまして、そうした最低基準の配置に準じて必要な職員の配置が行えるような水準の補助をしているものと認識をいたしております。

 ただ、一時保育につきましては、地方自治体の方から、市町村の利用児童数が全体として国が想定する標準的な利用児童数を上回っている場合に、その事業に必要な経費が確保できないという指摘を受けているところでございまして、そうしたところにつきましては利用人数に応じた配分ができるように、見直しを検討しているところでございます。

 今後とも、各自治体の声も受けまして、各市町村の行動計画の事業の実施に必要な予算を確保して支援をしていきたいというふうに思っております。

西本分科員 細部にわたりまして御答弁、ありがとうございました。

 局長のおっしゃるとおり、私も、子育て支援のメニューは広く提案をして、子育て世代の方々が選択できることが必要だと考えていますので、そのあたりの御配慮をさらによろしくお願いいたします。

 さて、就学前における児童福祉の今後について、保育所問題をお伺いいたします。

 平成十七年度当初時点での幼稚園と保育所を比較してみますと、施設数は保育園が幼稚園の約一・五倍、園児数もほぼ同倍数でありますが、保育園がゼロ歳児から受け入れられていることを考えますと、全国的に見てみますと、就学前の児童はおおむね二分された形でこの二つの施設で対応していると言えますが、この分科会は厚生労働省ですので、保育所に限って質問します。

 保育所のうち、公立が一万二千百施設で九十九万人を受け入れ、私立が一万五百施設で百一万人を受け込んでおります。そうしますと、公立園の平均園児数は一施設八十一人、私立園の平均は九十六人となっています。私は、この園児数の差は、厚生労働省の定めている保育単価の保育士定数基準表に起因していると考えております。公立が小規模で、私立が比較的規模が大きいことについて、私は市町村の財政的な意図的なものが働いていると思っておりますが、厚生労働省はいかがお考えでしょうか。お伺いいたします。

北井政府参考人 保育所の入所児童数の平均でございますけれども、公立保育所が八十二人であるのに対し、私立保育所は九十六人ということでございますが、一方で、定員数の平均は公立、私立ともに九十人程度となっております。

 このように、公立保育所に比べて私立保育所の入所児童数が多いのは、私どもの考えでは、都市部を中心とした保育需要の増大に対して、民間保育所が定員を上回る弾力的な受け入れを公立よりも積極的に行っていることによるものであるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、保育の実施の義務は市町村にございますので、各市町村が地域の実情に応じて適切な保育を実施されているものと考えております。

西本分科員 御答弁ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきます。

 お答えがありましたが、現場の悩みはこうなっております。経営的には、経費などの支出額を児童保護費負担金の保育所への支弁費と保育料、延長保育などの補助金ですべてが賄えればいいのですが、実際は到底無理であります。特に、園児数が九十人を割り込み、小規模な保育所ほど保育経営は難しくなります。

 それは、厚生労働省が定めている保育士定数基準表にあります。この基準では保育士数を園児当たりで決めていますが、ゼロ歳児は三人で一人の保育士、一歳から二歳は六人で一人の保育士、三歳は二十人で一人の保育士、四歳から五歳は三十人で一人の保育士となっておりまして、一歳児や三歳児の場合は、発育の差が大きく、また、言語、生活能力の違った集団と接することから、結構きつい受け持ち人数となっています。

 この園児数を年齢区分ですべてぴったり受け込んで、人件費として保育士の加配をせず、かつ保育士の平均給料が月額十九万円程度である場合には、ほぼ赤字が出ないような経営ができるものと考えております。裏を返せば、安い給料の保育士で定数基準どおりの人数の園児を担当させ、休みの交代はできるだけ抑えるような運営をしていかないと成り立っていかないということであります。

 ですから、現場では、保育士定数基準の年齢区分で定めている人数を下回ったとき、混合保育を実施するわけです。学校の複式学級と違って、この混合保育には限度があります。なぜなら、学校や幼稚園はクラス単位の授業をすればいいのですが、保育園は、各子供の発達に応じて基本的生活習慣を身につけるという、いわばマンツーマンの保育をしなければならないことがあるからです。ですから、混合保育は保育士の力量と園児の発達ぐあいによっていろいろなクラス編制を考えるのですが、実に大変です。

 それでは、市町村が保育所に委託する時点で、国の基準どおりの園児数ですればよいとの考えがあります。それは、ある程度人口の多い市街地などは可能でありますが、集落の離れた地域などでは無理でありまして、国の基準では混合保育となるけれども、実際は少ない人数を受け持つ形で安全を担保し、おのずと小規模な保育園を多額の赤字覚悟で経営してきたところであります。

 ところが、国と地方を取り巻く税財政環境が変化し、公立保育園の支弁費が一般財源化となり、そして三位一体改革の流れの中で、自治体では、保育所予算に多額の一般財源を投入することができなくなり、今申しました小規模園を大規模園に統合して効率的な保育運営を目指し、かつ人件費、特に個人の給料を抑制するため、公立園から民間の園に移行しようとしています。

 ですから、今後、保育所は公立園から私立園となる傾向が強まり、一園当たりの園児数は平均で百五十人を超す規模まで大きくなることが予想されます。

 このように述べました一連の動きは、あくまで財政的な保育経営からの措置でありまして、決して保育現場が子供たちのためによくなるものとは私は考えておりません。

 私は、保育単価の見直し、特に保育士定数基準において混合保育計算を緩やかな計算とするとか、あるいは規模別加配を増員するとか、制度を創設し、小規模園にも支弁費が増額となるよう改正すべきと考えますが、そのようなお考えがありますかどうか、お伺いいたします。

北井政府参考人 保育所につきましては、御指摘のように、家庭や地域とのつながりを保ちながら運営することが子供の健やかな育ちを支える上で重要であると考えております。

 こうしたことから、保育所運営費国庫負担金につきましては、子供一人当たりの補助単価を小規模な保育所ほど高くなるようにして、規模が小さくても適切な保育が行えるよう配慮しているところでございます。

 また、保育単価も、施設の規模や地域区分別に定めており、職員の勤務年数に応じた加算を設けておりますなど、きめ細かな設定をしているというふうに認識をいたしております。

西本分科員 御答弁ありがとうございました。

 私は、現在の基準では小規模な保育園の経営はかなり難しいと考えておりまして、改正が必要と思いますので、次の質問でお聞きいたします。

 現在の構造改革の流れの中で、保育所も民間に移行することは大いに議論してよいと私は考えております。しかし、保育に欠ける児童措置については、現行児童福祉法では自治事務として入所決定、措置が義務づけられており、当然、保育に欠ける子供を家庭を補完して保育する、そして公の保育として安全と安心を守ることは市町村の責務であると考えます。

 それでは、民間保育所になったら安全と安心が守れないかといえば、そうではありません。現在のように自治体が責任を持っている限り、民間の保育所でもよいわけですが、民間の保育所が自治体の援助なく現行の保育単価だけをもって経営しようとすると、どうしても職員の体制や保育士の質という問題に至らざるを得なくなり、私は、安全と安心の保育が非常に心配されるところでありますが、このことについて局長の御所見をお伺いいたします。

北井政府参考人 保育所運営費国庫負担金におきます保育単価は、児童福祉法に基づきます児童福祉施設最低基準により定めております職員配置基準と国家公務員の給与をもとに算定をいたしております。

 また、あわせて、保育単価は、先ほど御説明申し上げましたように、施設の規模や地域区分別に定め、また職員の勤務年数に応じた加算を設けるなど、きめ細かな設定をしているところでございます。

 さらに、財政事情のなかなか厳しい中ではございますけれども、保育所の多様なニーズに対応するための加算措置の充実なども図ってきているところでございまして、今後とも、安全、安心の保育所という観点からも保育対策のより一層の充実に努めてまいりたいというふうに考えます。

西本分科員 局長の答弁の中に私が期待しておりましたのは、公の保育として安全と安心を守ることはとても大切なことでありますというフレーズがいただければよかったんですけれども、まあ了といたしまして、次の質問に移ります。

 私は、保育所のあり方につきましては、適正規模、できれば百人前後の園児数で、地域に密着した保育園が望ましいと考えております。通園バスで遠距離を送迎するのではなく、保護者や近所に住んでいる祖父母などが徒歩や自転車などで送迎するぐらいの区域に保育園があるのが理想です。そもそも保育園の園児は、地域の生活圏の中で、そこの文化や人々と接し、そして地域の人々に見守られながら育っていくことが始まりでしたし、この保育環境を保護者と協力して自治体は必死の思いで守ってきているところであります。

 今、地域福祉を考えるとき、今まで福祉の受け手であった者が担い手となって地域施策を展開しようとしています。当然、保育所においても、高齢者や家庭婦人ボランティアの方々などに、朝夕の送迎時の園での預かりや送り、季節行事のお手伝い、園内外の清掃活動などを担当していただき、地域密着型保育園であればできる地域力を活用し、創意工夫のもとで、少子化で児童数が減少しても小規模園を守りたいと考えている自治体は少なからずあります。

 が、しかし、私の調べた自治体は、地域密着型保育を守り、三十人ないし六十人規模の保育園が半数ほどを占めていることから、市の税収二十七億円のうち保育園に係る単独市費が約六億円、その六億円のうち保育士の人件費がほとんどであるという実態があります。このことは、今いかに小規模保育を運営することが難しいかをあらわしています。

 このようなときに、本年十月一日から認定こども園という名の施設が設置されようとしています。この施設は、幼稚園や保育園にかわる第三の施設でないということですから、しばらくは双方の機能を付加した形で試行されるものと思いますが、この試行期間中に、ぜひ地域密着型の保育園が残る可能性を視野に入れた検討を忘れないでほしいと思っております。

 三角形の面積は底辺が決まらなければできません。底辺は、私は地域密着型の保育園だと思っております。このことについて局長の御所見をお伺いいたしまして、時間はちょっと余りますが、私の質問を終わりたいと思います。

北井政府参考人 我が国の就学前の教育、保育につきましては、幼稚園と保育所により担われてきているわけでございますが、近年、今もお話がありましたように、少子化によりまして、特に地方を中心に幼稚園、保育所別々では子供集団が余りにも小規模化してしまって、子供の育ちに必要な集団活動の機会が得られないというところまで至っているという事態も生じていることは事実でございます。

 今回、いわゆる認定こども園法案を今国会に提出させていただくべく今準備を進めているところでございますが、この認定こども園は、こうした地域のニーズに柔軟に対応できるように、あくまでも新たな選択肢の一つとして制度化をするものでございます。したがいまして、地域のお考えを無視して、すべての幼稚園、保育所を認定こども園に統合するものではありませんし、例えば小規模な保育所も含めて、認定こども園となるか否かはあくまでも自治体や施設の主体的な選択ということになりますので、御懸念はないと思いますし、また懸念がないようにしていきたいというふうに思っております。

西本分科員 御答弁ありがとうございました。

根本主査代理 これにて西本勝子君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。本日はこうした機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私の選挙区としているところは大阪、神戸のベッドタウンというところでありまして、去年は列車転覆脱線事故が起きて多くの命が失われたあの地域でございます。

 そして、今私がもう一つ大きく心を悩めております問題としては、高齢社会に向けて、大先輩方の今後のついの住みかといいますか、となるべく、有料老人ホームとかそういうのがふえてくると思いますが、そうしたものがこれからどうなっていくのかということにつきまして、昨年もこの場所でちょうど質問させていただいたことがありますが、その後の経過も含めながら、きょういろいろとお話をさせていただきたいと思っています。

 特に、私もまだ四十代、四十一歳でございますけれども、二十代のころちょっと病気をしたことがありまして、本当に段差というのがこれほどつらいものかということを感じたことが実はあります。一センチの段差があっても、それを越えることが本当につらいというときが実は三カ月ほどありまして、老後というのはこういうことになるのかなと思ったことがあるんです。

 大先輩方は、特に私の選挙区なんかは坂が多いということで、坂の上に住宅があったりとかしますから、とても外に出なくなってしまうんじゃないかなと。外に出なくなると、もうおっくうになってしまうと引きこもりになってしまって、ますますそれが早期に介護が必要な状態になってしまう、させてしまうということが非常に懸念をされているところでありまして、大変心を痛めております。

 やはり、医療と介護については大変重要な問題だと思いまして、きょうこの機会を与えていただいたわけでございます。

 この二月十五日に中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協にて診療報酬の決定が決まっています。この中で、六年後に介護保険の中の療養病床は廃止ということになっています。

 私は、実は二年前の五月十八日に決算行政監視委員会にて、介護保険三施設というのがありますけれども、この違いがわからないということで、この場で質問をさせていただきました。ところが、当時の金子政府参考人のお答えは、三施設はそれぞれ役割が違って、その役割を果たしているというふうにあのときはお答えになっていますね。

 今回、三施設について、要するに、いわゆる社会的入院、その療養病床については廃止をするということが決まったわけでございますけれども、このたった二年の間にこれほどのことが突然、あのときは必要だったんだ、それぞれ役割が違うから必要なんだとおっしゃっていたのに、二年もたたないうちに、今度はもう六年後にはいいということになってしまったわけですが、これは一体どういうような経過があってこうなったのか、ついては大臣、お答えいただけますでしょうか。

川崎国務大臣 基本的には、これから十年、二十年先を見ながら、簡単に言えば二〇二五年、私ども団塊の世代が後期高齢者になる時代、これを展望しながらどのような医療制度にしていかなければならないか。皆さん方は御負担される側、私どもは受ける側、その中で、負担と給付というものを考えながら、我が国の医療制度全体を変えていかなきゃならない。その中に、予防という問題と、我が国の医療の中で入院の日数が余りにも長いですね、この問題を考えていかなきゃならないということの中から、さまざまな議論をしてまいりました。

 そういった意味では、二年前には決算行政委員会においてはこうお答えしたようですね。介護保険施設に関する御質問に対し、介護保険施設は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設の三つに分かれている。介護保険制度上、特別養護老人ホームは主に生活施設として、老人保健施設は主に在宅復帰施設として、介護療養型医療施設は主に重介護者の長期療養施設として位置づけられております、こういう三つの役目をお話し申し上げた。

 一方、療養病床の問題は、昭和四十八年の老人医療費無料化以降、福祉施設が不足する中で病院が高齢者介護の受け皿となってきた老人病院の問題として、三十年ぐらいの長きにわたって議論をしてきたことは事実でございます。

 そういった中で、ある意味では大きく医療制度改革をする、すなわち変えるという一つの方針の中で今度打ち出しましたのは、療養病床の見直しを行うし、今回の医療制度改革の中に入れて法案として提出をする。その中で、国会で御審議をいただいて、賛成ならば通りますし反対ならば否決されるということで、まさに国会の一つの結論をもらうということでございます。

 今般の医療制度改革の中でそうした位置づけでございますので、そういう意味では、二年前の決算のときですか、そのときにこういう役目があって、こういう制度でやっています、今度制度が変更になりますということを改めて法案としてお示しをしながら議論をさせていただければ、このように思っております。

市村分科員 この議論は、今大臣もおっしゃっていただいたように、三十年来の議論があったと思います。いわゆる社会的入院という言い方で議論があったことだと思います。

 だからこそ、やはり介護保険が五年以上前に導入された際に、本当はこの社会的入院は解消されるはずだったんですね。ですから、私は、去年も介護保険の大改革の年だ、実は例の郵政民営化ですべてがどこかへ飛んでいってしまったような状況になってしまったんですが、去年も介護保険の大改革の年であればこそ、こうした社会的入院の問題をしっかりと議論すべきじゃないんでしょうかと。

 このいわゆる介護三施設における問題も、やはりここで議論すべきじゃなかったのですかということも去年も申し上げたんです。ところが、そのときもまた、これはいろいろ役割があるということだったわけです。

 では本当に、それでもし今回変えて、いや、変えるのはいいことなんです、方向性としては。いよいよ社会的入院が解消される方向に向かうということは、私もずっと指摘してきたことでもありますからいいことなんですが、去年のことについても、おととしにも、いやいや役割があるんだとここで堂々とこう抗弁されたにもかかわらず、これでもう六年後には移行ですよというのは、何か国会がそれこそ、国会の御審議とおっしゃっていただきましたが、国会を軽視されているような気がしてならないわけですね。

 それならそれで、いろいろ問題があって、いろいろ社会的入院と御指摘を受けているから、だからいろいろ改革の方向で考えていますと、ならばお答えいただければよかったんですよ。ところが、いやいや、いろいろ役割はあるんですからというお答えになっているわけです。

 だから、これはぜひとも厚労省の皆さんにも、やはりそのときに議論があるんだったら、そういうふうに役割があるんだというようなことじゃなくて、いろいろ問題があるということは素直にお認めいただきまして、そして国会ではちゃんとした情報に基づいてちゃんと真摯な議論をしたいわけです。ですから、ぜひともそうした情報は提供していただきたいと思うわけであります。

 それから、実は昨年六月七日、参議院の草川昭三先生が、厚生労働委員会で、社会的入院はどの程度解消しているのかと御質問されているんです。そのときに水田政府参考人は、医療保険の中の療養病床については、社会的入院は、平成十三年度が四三%、十六年度が三十三%というふうにお答えになられています。

 ところが、二月十五日から元厚生労働大臣の丹羽雄哉先生のホームページで、こうした論文が載せられているんです。これを見ますと、「ほとんど必要のない人と医療はせいぜい週一回程度でよい人を合わせると実に八割近くにのぼる。」ということで、実は丹羽先生は、社会的入院は八割いる、これがしかも三十年続いているという言い方をされています。

 これは、どっちが正しいのでしょうか。

川崎国務大臣 丹羽さんが昨年ホームページに発表いたしました、療養病床の入院患者のうち、医師による直接の医療提供がほとんど必要ない者が五割、週一回程度行われている者が約三割であり、合計八割となっている、これを社会的入院と丹羽さんが名づけたのかどうかよくわかりませんけれども、足して八割。一方で、別の調査で、容体急変の可能性が低く福祉施設や在宅で対応可能な患者が約三〇%、容体急変の可能性が低いが、一定の医学的管理を要する患者が三五%、合わせて六五という認識もあるようでございます。

 問題は、私自身も、これはペーパーに書いていないので、社会的入院というのは何だ、社会的入院、その定義がやはりきちっとされていない、丹羽さんの理解とまた別の調査の理解と、多分角度が若干違うのかな、こんな感じがいたしております。分析手法といいますかね。

市村分科員 しかし、水田政府参考人は、当時社会的入院という言葉を使われていますよね。だから、丹羽先生の論文によると、このような療養病床が現在三十八万床に達しているということで、これは明らかに社会的入院を指しているわけであります。社会的入院を指しているということでありまして、だから大臣、これは極めて大切なんです。

 というのも、社会的入院は、もちろん定義ということも今おっしゃっていただきましたけれども、やはりこれは療養病床における介護といってもいいわけでありますけれども、結局そういうことをこれから解消していこうということではいいんですが、この認識が違うというのはいかなることかというのは、大変ゆゆしき問題だと私は思います。やはりこういうのはしっかりと調査をし、今どういう状況にあるかということですよね。

 しかも、これによって、実はどれだけのお金が無駄になっているかということも我々考えなくちゃならないんです。結局、ちゃんと介護に行っていればもっと単価が安く介護できたものを、療養施設の中で介護を行うということによって、単価が物すごく高くなっているわけですね。その結果、恐らく何兆円というお金が無駄に使われている可能性があるんです、この間に。

 これについて、大臣、どのように思われ、また、大臣だけの責任じゃないんですけれども、どのようにこれまでの厚生行政というものをおとらえになりますか、こういったことについて。

川崎国務大臣 御指摘のように、療養型病床で入院しておられる方々を介護の世界できちっとやっていくべきである。一方で、介護保険制度全体がスタートしたのが六年前、どのぐらいの施設ができ上がってきたか。さっきも東京都の方から随分質問をもらいまして、とてもそんな受け皿になるのかという、大変厳しい、自民党ですよ、質問は自民党から。それは、東京都が随分低いんですね。地方と比べると随分低い。だからそういう御心配をいただいて、財政力が高いからすぐ追いつくでしょうというような話もいたしたわけであります。

 そういう意味では、介護施設全体がまさに受け皿としてやはり発達していく過程の中において、多少もごもごした答弁があったのかな、御指摘のように。そこはやはり、これからきちっと分析をしながら、特に法案の御審議のときにはたえられるようにしていかなきゃならぬな、こう思っております。

市村分科員 きょうは極めて、大臣、ありがとうございます、御率直にお答えをいただいておる。

 やはり、私は、国会の議論というのは、こういう率直な議論じゃないとだめだと思うんです。もごもごしたところでごまかしていると、結局まともな議論ができずに、そのうちに現状が悪化してしまうということになって、結局は国民の大切な税金が、無駄なことによって、必要なところに行かずにそこで使われてしまうということになります。

 やはり、たとえ都合の悪いことでも、これまでの政策でちょっと都合が悪かったなということでも、これは率直に言っていただいて、そのための国会ですから。私は、やはり、そこで何か今までの、まあ、今までの野党はどっちかというとそこで割と反対のための反対をする人もいたかもしれませんけれども、それじゃだめなんです。

 やはり、与党、野党関係なく、いいものはいいということで議論をしっかりしていく、私はこれが国会だと思っておりますので、本当に大臣の今の率直なお答えに、私はうれしく思う次第でございます。本当に、若輩が失礼でございますけれども。

 それでは、また大臣に少し意地悪な質問をしなくちゃならないんですが、当時の厚生省が国会に介護保険法案を提出した平成八年その八月に、平成三十七年ですよ、ことしは平成十八年ですけれども、平成三十七年に要介護認定者が五百二十万人になると予測していました。そしてこのような予測値で介護保険制度がつくられたんですが、現時点で要介護者は何万人いらっしゃいますでしょうか。

磯部政府参考人 突然の御質問でございます。

 ちょっと記憶が定かでございませんが、恐らく二百万人台ではなかったかと思っております。

市村分科員 もう一度お答えいただけますか。そんな数字じゃありません。

磯部政府参考人 失礼しました。

 要介護認定者といたしましては、四百七万人でございます。

市村分科員 今の予測値で五百二十万人。平成三十七年に達するとされた五百二十万人には何年で達する予定でございますか。

磯部政府参考人 八年のときの推定値を今御指摘でございますが、我々といたしましては、さきの改正におきまして、ある程度、今後予防給付等の充実等によってそれが漸減されていくだろうという予測をしておりました。たしか一〇%ぐらいはそれによって漸減するだろうと予測しておりますが、そのときの基礎が八年のものだったかどうかは、ちょっと今手元にございませんので、申しわけありませんが、お答えできません。

市村分科員 私の手元の資料、これは厚生省の資料ですけれども、二〇二五年にこの資料は五百三十万なんですけれども、大体同じようなことです。

 実は、五百二十万人というのは、もう数年で達するんです、数年で。ということは、これだけ需要予測を見誤っているんですね。これは極めて違う。平成三十七年とあと数年というのは、もう十五年以上の開きがあって、いや、もっと開くと思いますけれども、それで五百二十万人に達するんですよ。この見込み違いというのはどこから出てくるんでしょうか。大臣、いかがですか、この見込み違いというのは。

磯部政府参考人 委員御指摘の基礎が平成八年ということで、介護保険制度ができる四年前ということでございます。現実には、実際に介護保険制度が始まりまして、やはり、御指摘のとおり、予想を超えるような非常に大きなサービスに対する需要が起こったということで、予測よりは相当大きな見込み数になりつつあるという認識でございます。

市村分科員 今、要介護認定者は、介護保険がスタートしましてから年々三十万人規模でふえているということでありまして、一人平均して月十五万、これは実はかなり低く見積もっています、もし一人月平均十五万かかるとすると、十五万掛け十二カ月掛ける三十万で、年間五千四百億なんですね。安くてですよ、安く見積もっても年間五千四百億円もふえていくということだ、私はそう思っていますが、そういう見通しでよろしいですか。

磯部政府参考人 実は、四百万人でございますけれども、半分弱が要支援あるいは要介護一の方々でございまして、また、その在宅の限度額から、実際に使われている額がそれと比べますと六割ぐらいといったような状況もございまして、必ずしも、これまでのとおり今後も伸びるかというのは、一概には言えないのではないかというふうに思っております。

市村分科員 本当に、伸びない、一概に言えないということで済まされる問題なんでしょうか。

 私は、もう介護保険はこのままでいくと破綻するだろう、そう思わざるを得ないんです、このままいくと。これだけ需要予測も見誤り、伸びについてもそんな少なく見積もってもと思っているのに、いや、大丈夫じゃないでしょうかということで、本当に大丈夫なんですか。大臣、本当に大丈夫と太鼓判を押していただけますか、この介護保険制度。

川崎国務大臣 今回の医療と介護の仕分け、そういう意味では方針転換、したがって介護の需要がふえるであろう。その中において、全体数として私ども、年金が今四十六兆円ぐらいでしょうか、医療が二十八兆円、介護また生活保護、足して十兆円ぐらいで八十兆ぐらいのものを、これから、まさにピークを迎える二〇二五年としましょうか、それでどのぐらいの数字になるか。

 医療は、逆に言えば、今回のいろいろな政策で下がる。しかし、介護の方は若干上がってくることになるだろう。そこへ介護の予防というものを足しながら、どのぐらいの数字にきちっとなるか、それはお示しをしながらやっていかなければならないだろう、このように考えております。

市村分科員 もちろん、示していただきたいと思います。

 ただ、本当に介護保険が、介護に限らず年金もそうですけれども、やはり、税金や保険料を払っている国民の立場からすれば、本当にもつんですかというところが非常に一般的な課題なわけです。

 私がやはり、有権者の方とか友人とかといろいろ話をすると、これはもう、みんなはもたないと思っているんです、私たちの世代は。どうせ払ったっておれたちはもらえないんだよというあきらめの気持ちで払い続けているんです、実は。そういう状況もありますから、いや、大丈夫だ、これでいけるんだというようなことを示さない限りは、やはりこれは信頼がないわけですよね。そうしたら喜んで払ってもらえないんですよね。

 やはり、もともと介護保険というのはみんなで支え合いましょうということだったわけです。特に、いわゆる家庭で介護している、昔は、私も私の祖父とかのことも思い出すと、だめだと言われたら、もう一カ月ぐらいで大体他界するというようなことだったんですけれども、最近は医療の進歩のおかげで、これはすばらしいことだと思います、五年とか、下手すると十年介護をする機会が続くわけですね。

 それこそ、大島監督の小山明子さんが、その悲惨な状況をよく話をされて訴えていらっしゃいますが、本当に介護期間が延びてしまって、悲惨な状況なんです。だからこそ、介護保険を入れて、個人の責任にしちゃいけない、社会全体で支え合おうというのが介護保険だったはずなんですね。

 ですから、これがまた、いやいや、これをやってきたけれどもやはり難しいですねとなったら、これはもう我々浮かばれないということになってきまして、そうした苦しみを負った方が、またさらに苦しみを繰り返すことになりますから。また、しかも例の高齢者虐待防止法が施行されますね。ともかくこういうのも、こういう文脈で結局つくられたんだと私は思います。

 ですから、ぜひとも、その辺のところ、さっき申し上げたように、きちっとやはり議論していくことをしていかなければいかぬ、こういうふうに思っています。

 それから、今回、きょう国土交通省の方にもいらっしゃっていただいていますが、今度、介護保険の特定施設の中に、高齢者向けの優良賃貸住宅というのは入ってくるんでしょうか。一言だけ、お答えください。

    〔根本主査代理退席、主査着席〕

和泉政府参考人 お答え申し上げます。

 まだ決まったわけではございませんが、厚労省の方でそういった方向で検討しているというふうに承っております。

市村分科員 まだ決まったわけじゃないんですね。であれば、ぜひとも私はいろいろ議論していただきたいと思います。

 厚生労働大臣、特定施設にこれを入れようとしているんですけれども、やはり私は、多分質の高いいろいろな住居環境を大先輩方にこれから提供しなくちゃならない。しかも安い買い物ではありません。だから、単に今何かあるから、需要に対して供給も追いつかないし、今ある分を何とか利用していこうという気持ちはわかります。気持ちはわかるんですが、そもそもそういうものにつくられたものじゃないものを何か特定施設にして、介護保険の施設にしようという発想というのは、ちょっと僕は違うのかなと思うんですね。

 やはりちゃんとしたそのためのつくられた住宅の中で、ある部分をこれは介護にも使えるようなしっかりとした設計を立てて、それをその部分だけでも特定施設にするというのならば、私はなるほどなということもあるんです。何かあるものを何となく活用すればいいやという話では、結局、高優賃といいますけれども、高優賃の場合は外廊下ですから、外づけ廊下ですので、結局外に出たら寒いんですね。この話だと、例えば部屋だけが改造されて何かよくなるという話なんですね。

 だから、ぜひとも、私はこういうものをこういう安易な発想でやってほしくない、方向性はいいけれども、こういうような安易では困るということで、一言だけちょっと大臣からお願いします。

川崎国務大臣 二つの意味での御懸念であろうと思います。

 特定施設については、介護保険制度の事業者指定に当たり特別養護老人ホームと同様の人員基準を満たす必要があることなど、ふさわしい質が確保されると考えております。

 一方で、今までは都道府県のコントロールの枠の外でございました。三位一体改革の中で新しい施設をつくること、また、さまざまな制度をできるだけ都道府県、市町村に役割を移譲していく、税源も移譲する。その中の仕組みの中で、いわゆる特定施設については、都道府県が計画的に整備ができるように、今国会に提出したいわゆる三位一体改革法案において、事業者指定を行わない、都道府県がそれではだめですよという拒否権を与える法改正をいたしますので、御懸念のないようにしっかりしてまいりたいと思います。

市村分科員 本当に大分議論したので、またやらせてください。

 最後に、厚生労働省が、当時の厚生省が主務官庁として許可をされている「社団法人 日本WHO協会 寄付金等運用規則」、きょうはお手元に資料として配付させていただいておりますが、この三条にある「前条に定める寄付金等のうち指定寄付金(指定研究助成金等も含む)については、原則五%の手数料を本部経費として徴収し、その差し引いた金額を指定の当該銀行口座に振り込むものとする。」こう書いてあります。

 きょうは財務省からもいらっしゃっていただいていますが、この指定寄附金というのは、いわゆる指定寄附金制度ととらえてよろしいんでしょうか。

竹田政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる寄附金につきましては、寄附金を支払った場合に損金算入できるという制度がございますが……(市村分科員「一言で、ちょっと時間がないので一言で」と呼ぶ)いわゆる私どもがその一類型としてよく指定寄附金という言葉で申し上げておりますが、今拝見させていただいた資料だけではちょっとよくわかりませんけれども、私どもが通常申しております指定寄附金と申すものとはちょっと性格が違うというふうな感じがいたしております。

市村分科員 それで、指定寄附金じゃないとした場合に、こういう細目を持った財団、社団ですか、見たことありますか、聞いたことありますか。こういう運用規則を持ったことを今まで聞いたことありますか。一言、一言でお願いします。

竹田政府参考人 ちょっと個別の社団法人のそうした運用規則については、私どもつまびらかに承知しているわけではございませんので、申しわけありませんが、何ともお答えようが難しいと思います。

市村分科員 WHO協会というのは、実は結局、指定寄附金じゃないんです。

 当時、特増だったんですが、特増制度を、私からすれば悪用して、結局五%だけ差し引いて九五%戻すというようなことをやってきたんですね、これは。やってきていると私は聞いております。

 ですから、厚生労働大臣、これは厚生省が当時認可している団体、そもそもはこれはいい団体だったんです。途中からちょっとおかしくなってしまったようでありまして、大変、これだけじゃなくていろいろなさまざまな問題を抱えています。この間の内閣委員会でのところでも質問しましたら、官房長官も、これは本当に事実だったら問題だというお話もいただいています。

 厚生労働大臣、つまり認可を、許可をされた主務官庁として、こうした団体について、これは今後どうされるつもりか、そのことを最後にお聞かせいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

川崎国務大臣 特定公益増進法人の認定、十六年まで行ってまいりました。しかしながら、事業の状況に照らして、十七年三月以降はまず認定を行っておりません。

 一方、WHO協会、今のような御指摘が私どもの方の耳に届いております。したがって、会長からの事情聴取や事務所の立入検査等によって、会計処理や研究助成に関する事実関係の調査を現在行っております。いろいろな御指摘がされており、遺憾なことであると受けとめております。今後、さらに事実関係の把握に努め、しっかりと指導監督していく考えでございます。

市村分科員 ありがとうございました。

森主査 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、高木義明君。

高木(義)分科員 民主党の高木義明です。

 日ごろより厚生労働行政に尽力をされております大臣初め政府関係者に心から敬意を表します。

 貴重な時間でありますので、私は、被爆者対策についてお尋ねをしてまいりたいと思っております。

 まず、大臣にお尋ねをいたしますが、昨年は、被爆六十周年という節目の年でございました。人生でいけば還暦になるわけでありましたが、いよいよまた新しい歴史が続いていくわけであります。

 言うまでもなく、八月六日は広島、八月九日は長崎、大臣も、許されれば当地に出向かれると思っておりますが、そういう意味で、今日まで被爆者対策についてどのように評価をされておられるのか、総括を含めて御所見をいただきたいと思います。

川崎国務大臣 私が三十二歳のときに初当選いたしましたときの親分が田村元先生でございまして、あの方は手帳を持っておられるんです。そういう意味では、いろいろその当時の話を聞かされたものでございます。

 原爆被爆者の方々の援護については、健康診断の実施や医療の給付、各種の手当の支給、原爆養護ホームの運営等の福祉事業、調査研究、平和祈念事業の実施など、非常に幅広い施策が皆さん方の御支援でやってこられたと思っております。

 全体の予算規模、今千五百億円に上っております。被爆者の方々へ対し、国としてできるだけのことをしてまいりたい、このように思っております。

高木(義)分科員 原子爆弾の投下によりまして、多くの方々がとうとい命をなくされましたし、今なお被爆で苦しんでおられる多くの方々がおられます。放射線に起因をする、いわゆる他の戦争被害者と異なるそういう特殊性を持って、医療、介護、福祉、総合的な被爆者対策がこれからも求められていくのではないかと私は思っております。

 予算の話も出ましたけれども、しかし一方で、被爆者は高齢化をいたしております。したがって、その政策もスピードが要求されるわけでありまして、被爆者予算の確保につきましては何よりでありますが、年々被爆者予算についてはどのような傾向を示しておるのか、この点についてお尋ねをしておきます。

中島政府参考人 ただいま御指摘の被爆者対策の予算でございますけれども、極めて財政状況が厳しい中、厚生労働省といたしましては、非常に厳しい予算編成を余儀なくされてきているところでございます。

 したがいまして、原爆被爆者の方々の援護につきましても、他の施策と同様に、効果的、効率的にこれを進めていくことが必要であると考えておりまして、こうしたことも留意しつつ、関係予算の確保に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

高木(義)分科員 財政が厳しいという状況が話されましたけれども、厳しい財政の中ではあっても、やはり必要な対策はきっちりきめ細かくやる、そのような取り組みが必要だろうと私は思っております。

 そういう意味で、これまでの総括の話を聞きましたけれども、被爆者対策の課題についてどうとらえておられるのか、その認識をお尋ねしておきます。

川崎国務大臣 最近の話では、在外被爆者の方々について、昨年の十一月から、日本に来られなくても在外公館を経由して健康管理手当等の申請をしていただけるようにしました。そういう意味では、少しずつやれる幅を広げてきておるというように理解をいたしております。

高木(義)分科員 私は、特に今回、被爆体験者精神影響等研究事業、この点について、以下尋ねてまいります。

 被爆体験者精神影響等研究事業、非常に長ったらしい名前でありますが、この名称、なぜこのようになったのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

中島政府参考人 ただいま御指摘のありました、平成十四年度から行っております被爆体験者精神影響等調査研究事業でございますが、これにつきましては、平成十二年に長崎市が中心となって取りまとめました調査におきまして、爆心地から半径十二キロメートルの区域内に居住しております被爆体験者につきまして、放射線の影響は認められないけれども、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響が認められたということにかんがみまして、国においてその結果等について検証、検討を進めました結果、平成十四年度に被爆体験者の健康影響等に係る調査研究事業として予算を計上したものでございます。

高木(義)分科員 いわゆる心的外傷後ストレス障害、これに着目をした制度だと私は認識をいたしておりますが、まさに、原爆の精神的なショック、そしてその後に健康の不安、私は特殊なものがあるだろうと思っております。それがゆえにこの事業も今行われておると思っておりますが、今回、この事業について、地元から、地域社会の方から切実な要望、声が出ております。

 すなわち、長崎県・市の方からでありますが、

 被爆体験による精神的影響に着目した被爆体験者精神影響等調査研究事業という制度が平成十四年度に創設されました。

  しかしながら、その後、事業の対象地域について居住要件を撤廃していただくよう要望していましたところ、平成十七年六月から、対象地域が県内に拡大されましたが、併せて、対象外の疾患に対しても医療費の給付が行われていることや事業の実績から所期の効果をあげているとは到底言えない状況であるということを理由に、対象者の審査基準、対象疾患等についても見直しが行われました。

  この結果、長崎県市において、約三割、約三千人という多くの者がこの制度の対象とはならなくなっており、今回の見直しは、制度創設時の背景や経緯を考慮せず、実施要綱に基づく制度論のみによるものであります。

  つきましては、この制度の本来の趣旨に立ち帰り、対象者につきましては、制度創設時の審査基準を適用していただくようお願いいたします。

こういう声が寄せられておりますが、この点について御承知なのか、そして、承知であるとするならば、この点についての御所見をお願いしたい。

中島政府参考人 ただいま御指摘のことにつきましては、私どもも承知を申し上げております。

 この調査研究事業につきましては、平成十六年に専門家から成ります検討会を立ち上げまして、実施状況につきまして精査をいただいたところ、改善を要する点があるということが明らかとなったということでございます。

 特に、今もお話がございましたが、対象外のものまで広範囲に医療費の支給が行われているという実態があること、そして、特定の精神疾患の治療を支援することにこの事業の主眼が置かれているにもかかわらず、所期の効果を上げているとは到底言いがたい状況にあることなど、早急に改善措置を講じる必要があることが検討会でも強く指摘をされたところでございます。

 そこで、事業のあり方を見直しまして、昨年六月からは新しい実施要綱のもとで事業を実施しているところでございます。主な変更内容といたしましては、対象となる疾患名を受給者証に記載をすること、それから、保健師によるスクリーニングの見直し、また、毎年の更新時には精神科医師の意見書の提出を求めることなどでございます。

 なお、こうした見直しに当たりましては、検討会には地元の専門家に参加をしていただくとともに、長崎県及び長崎市の担当者にも出席をしていただいたほか、実施要綱の具体的な見直しに当たりましては、長崎県及び長崎市と協議をいたしまして、いわゆる経過措置については県・市の御要望にも配慮をし、また地元での説明会に担当官を派遣するなど、丁寧な対応を心がけたところでございます。

高木(義)分科員 この対象外になったということについて、スクリーニング検査の判定基準のあり方について問題となっております。これまでは、被爆原体験と放射能不安、どちらかに該当すれば被爆体験がある、こういうことであったものが、新しく変わった制度では、両方がないと被爆体験ありということにはならない。

 したがって、ここで問題点は、原爆体験当時、まさに幼少、少なくともゼロ歳から五歳ぐらいまでの間、こういった方々に記憶はあるかと言われてみても、ないのは当然なんです。しかし、ある日、物心ついたときに、自分の地域ではそういうものがあったんだ、あるいは親兄弟からそういう話を聞かされる、そのことによって新たな不安というのが出てくるのは、やはりこれは当然じゃないですか。こういう方々に、当時記憶はあったかなかったか、記憶はある方が私はおかしいんだと思うんですよ。

 それからもう一つは、認知症ですね、お年寄り、高齢者。こういった方々の心身の状態で、コミュニケーションがうまくとれない、こういった方々もやはりこれから外されておる。これは私は問題があるのではないか。

 まさに、被爆者の現実にそぐわない、そういう状況にある。私たちは、ぜひとも地元の皆さん方の切実な実態を踏まえた声に照らして、対象外となった方々をこれに含める、こういうことをすべきじゃないかと思うんですが、この点どうですか。

中島政府参考人 ただいま御指摘のありましたスクリーニング検査での判断基準についてでございますけれども、この事業を、専門家による検討の結果を踏まえまして、本来の目的に沿ってより効果的な内容あるいは仕組みとするために見直します一環として、この事業の対象とならない、被爆体験の記憶がない方をより的確に把握することができるよう変更を加えたということでございます。

 この変更につきましては、この事業が直接の被爆体験に起因する不安というものに着目したものであるということから、こういったことについては適切なものというふうに考えているわけでございます。

高木(義)分科員 また後ほど意見を申し上げます。

 次に、精神科医の意見書の提出が、いわゆる年に一回になった。今、被爆者はどんどん高齢化しておるんですよ。やはりこのことも実情を踏まえていただかなきゃならないし、また、精神科医の一般診療の影響についても考慮しなきゃなりません。

 どうですか、やはり三年に一回に戻されてはどうでしょう。これが高齢化する被爆者に対する温かい手だてだと私は思っておりますよ。この点どうでしょう、ぜひそのようにしてください。

中島政府参考人 この事業につきましては、被爆体験というものが精神的な面に及ぼす影響に着目をした調査研究事業であるということから、特にこの分野の専門家であります精神科医の役割が重要であるわけでございます。

 それにもかかわらず、これまでは、一年目、二年目の受給者証の更新の際には、御本人が書かれます病状報告書で足りるというふうにしておりましたために、専門家から成ります検討会の御議論においても、早急に改善するよう指摘がなされたところでございます。

 少なくとも年に一度は精神科医師が精神医学的に正しくフォローをするということが必要でございまして、これによって早期の治癒が図られるなど、対象者にとってもよい効果が期待できるものというふうに考えておりまして、現時点でこれを戻すということについては考えておらない状況でございます。

高木(義)分科員 私は、昨年の、平成十七年二月二十八日の予算委員会当分科会におきまして、この件についてもただしております。政府としては、事業の在り方検討会報告書に基づいて見直しを進めている、スクリーニング検査や精神科医の診断など、長崎県、長崎市と相談をしておる、こういうことを述べられております。

 しかし、今、このような実態を見ると、まさに十分な説明、協議がなかったのではないか。むしろ、一方的な結論ありき、いうところの歳出削減ありき。このことが壁になって、むしろ一方的にそのような制度の縮小になったのではないか。県・市と十分な協議をされましたか。どうでしょう。

中島政府参考人 先ほども申し上げましたように、県・市とも十分お話をさせていただきまして、この事業の本来の趣旨ということで今回のようなことになっているということでございます。

高木(義)分科員 大臣、ここにこのような地図がございます。ちょっと説明しますと、いわゆる長崎の原爆被爆地域図というものです。

 この赤色の部分は、昭和三十二年に被爆地域になったんです。被爆は昭和二十年ですから、原爆被爆者対策は十二年たってようやく、当時原爆被爆者医療法ができた。そしてその後、特別措置法、援護法、こういう対応がなされてきたんです。昭和三十二年に初めて医療法ができましたので、被爆地域の指定がされました、赤色のところですね。これは長崎市の行政区で線引きをしたんです。長崎市の行政区、一部町村が入っております。

 大臣、原爆は長崎の上空約五百メートルで炸裂したんです。五百メートル以上の山があれば別なんですが、五百メートル以上の山なんて長崎にない。そうしますと、普通、同心円でやはりその被害は出てくるのではないか。しかし、当時の社会状況の中で、推察するに、国の戦災復興、あるいは財政の方も厳しかったでしょう、こういう形になったんです。

 これはいびつじゃないか。そこで、昭和四十九年に、このブルーの、青の地区に健康診断特例区域が指定されたんです。そして、昭和五十一年に、この薄緑のところが同じく健康診断特例区域に指定されました。しかし、それを見ても、縦長。爆心から南北十二キロ、東西七キロ、こういういびつな形でずっと来たんですよ。

 そして、そこに不均衡の声が出てきて、いろいろな証言が寄せられてきた。何とか、同心円、これに合った被爆地域を指定すべきじゃないか、こういう議論がたくさんございまして、そして平成十四年、今さら残留放射能、戦後十二年、昭和三十二年の時点でもそうですが、残留放射能をはかれといったって、そんなのはもうないに等しいんですよ。科学的、合理的根拠がないから、原爆地域の是正、拡大はだめですというのが国の、当時の基本懇の考え方でした。しかし、何とか政治的にこれをクリアする方法はないか、こういう知恵の中で、いわゆるPTSDに着目をした。やはり、原爆という特別な体験、放射線による健康被害、これは一般の戦争被害と違うんだ、こういうことからそれに着目をしたんですよ。

 したがって、そこからスタートじゃないんです。実情は、当時、このようないびつな形で被爆地域が設定されたことにあるんですよ。ようやくにここに来た。

 だから、被爆者はどこにいても被爆者だ。これは、各原爆被爆者、内外の被爆者の訴訟においても判決は出ておりますね、被爆者はどこにいても被爆者なんだと。被爆体験者はどこにいても被爆体験者なんですよ。だから、居住要件をつくることそのことがおかしい、このように私は思うんですよ。

 そういう流れの中で、大臣、平成十四年度に、新しい被爆体験者支援事業としてこの半径十二キロの黄色の部分がようやく、PTSDに着目をしたこととして、いわゆる健康障害に対する支援事業として被爆者援護法に準じた対応がなされるようになった。それを平成十六年の見直しによって、これを県内に拡大したのはいいんですけれども、逆に、そういったスクリーニングに対して、子供、当時幼少の方々、あるいは認知症でお年寄りの方々が、記憶にないということをもってすべて対象外にされている。それから、いわゆる精神科医の意見書提出も、三年に一回でよかったものが、一年に一回、こういうことになった。冷たいじゃないですか。

 先ほども予算の御答弁がございましたが、被爆者予算というのは、高齢化しておりますから、まさにずっと下降傾向なんです。このぐらいのことは歳出の膨張にはつながらないと私は思っているんですよ。

 この点について、大臣、やはりこれは政治の光をこういうところにも投げかけていくという意味で、ぜひ、被爆者、地域の実態に応じた対策をとるべきではないかと思っておりますが、どうでしょうか。

中島政府参考人 長崎県及び長崎市が被爆地域の指定拡大の要望の活動をしてこられたことについては、私どもも十分承知をしております。しかしながら、要望の対象となりました地域においては、いわゆる原爆放射線による健康被害、健康影響は認められないという科学的な結論が得られているところでございます。

 そこで、被爆体験者精神影響等の調査研究事業につきましては、こうした結論を前提といたしまして、いわゆる光とか爆風とか熱を感じたというような、原子爆弾の破裂に関する体験でございます被爆体験、これに起因する不安に基づく健康水準の低下ということに着目をして始めた予算事業ということでございます。この被爆地域の拡大とは性格を異にするということでございますので、この趣旨につきましては御理解をいただきたいというふうに思います。

高木(義)分科員 性格を異にする、一言でそういうことではないでしょう。被爆地域を是正する、そういうところからこれは始まってきたんですよ。当時、これは時の政治情勢でありましたでしょう、こんないびつな形で地域が設定をされたんですよ。同じ十二キロにあって、この人はそれに該当するけれども、こちらの人にはそれは該当しない。原爆は地上五百メートルですよ。五百メートル以上の山が、あるいは障害物が長崎市にあれば、それはそれでいいでしょう。しかし、そんな山はないんですよ、御承知のとおり。よく長崎の実態を知っていると思いますよ。

 ぜひこの辺については、大臣、大臣としてひとつ御検討いただきたい。私は、前向きに、地元の要望、声については真摯にこたえていただきたい。いかがでしょうか。

川崎国務大臣 高木先生のお地元でございますので、できるだけいい返事をしたいんですけれども、正直申し上げて、被爆地域指定の拡大要望については、いろいろな調査研究がされた結果の一つの結論づけだったと私ども考えております。

 一方で、できるだけのことをしたいという中で、被爆体験者精神影響等調査研究事業というのが始まって、続いてきた。しかし一方で、予算委員会、決算委員会等で、予算の執行についてはやはり負担の見直しをしながら厳しい対応を求められていることも事実でございます。その中で、十六年に専門家から成る検討会を立ち上げ、るる説明を申し上げたような経過でございますので、どうか御理解を賜りますようお願い申し上げます。

高木(義)分科員 理解はなかなかできませんけれども、ひとつどうぞさらに精査をしていただいて、ことしの八月、また広島、長崎においてはあの原爆の記念日が来ますよ。ぜひ大臣も出席をされまして、地元の皆さん方の声にこたえていただきますようお願いをしておきます。

 時間もございませんから、最後に、原爆症の認定制度の改善について申し上げます。

 平成十七年の三月、東京高裁の判決、いわゆる東数男さんの裁判でありますが、C型肝炎も原爆症という判決を下しました。まさに肝機能障害に苦しむ被爆者が多い、したがって原爆症認定になるような制度の見直しをしてほしい、こういう声も上がっております。また、運用改善によって、原爆の影響が否定できないがんなどの疾病、障害にかかったときは原爆症認定ができるようにしていただきたい、こういうことですね。

 といいますのも、ここにこのような資料がございます。これは、アメリカ、放射線被曝退役軍人補償法というのがありますね。原爆投下一カ月後、広島、長崎に駐留した米兵士に放射線被曝退役軍人補償法が制定され、一九八八年、十種のがん疾病に補償が行われた。その後に改定され、現在は二十一種のがん疾病に補償がされておる。白血病、甲状腺がん、乳がん、食道がん、胃がん、小腸がん、膵臓がん、リンパ腫、その後、胆管がん、尿路がん、骨のがん、脳のがん、大腸がん、肺がん、卵巣がん。アメリカでさえこのような対応がなされておるのに、なぜ被爆した日本でこのようなことが非常に厳しいんですか。

 また、内容は異なりますけれども、いわゆる松谷訴訟というのがありました。まさにDS86ですか、松谷判決。これは、平成十二年七月の十八日、最高裁第三小法廷は原告側の請求を認めた、これによって松谷さんの疾病は原爆症と認定されたんですよ。

 このように、国の内外の問題、在外被爆者の問題もそうですが、こういった諸問題が、裁判の判決によって行政がその後追いをせざるを得ない。この現実、これは私は非常におかしいんじゃないか。裁判の判決で行政の態度が変わっていく。裁判の判決よりもその前に、是は是、非は非、きっちり私は対応すべきじゃないかと思っております。

 今、まとめて私が原爆症認定についてのお尋ねをいたしました。最後にこの点についてお答えをいただきたい。

森主査 時間が過ぎておりますので、手短にお願いします。

中島政府参考人 幾つかの点、御指摘ありましたので、順次お答えをさせていただきたいと思うんです。

 まず、東訴訟で、いわゆる肝機能障害に関するものでございますが、これは、肝機能が原爆放射線の起因性があるということなんですけれども、このケースについては、C型肝炎も感染をしていたということで、その際における放射線の起因性ということで判決があったものでございますが、このことにつきましては、医学、放射線防護の専門家の意見等を踏まえましても、特異なものであるというふうに私ども考えてございます。したがいまして、このことをもって直ちに原爆症の審査のあり方を見直すということにはつながらないものというふうに考えております。

 それから、がんなどの疾患については被爆の程度にかかわらず認定を行うべきではないかということでございますが、これについては、やはり、被爆者援護法におきまして、「当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する」ということを要件とされておりますので、その因果関係を問うことなく認定を行うことはできないものというふうに考えてございます。

 それから、松谷訴訟の問題でございますが、これにつきましては、線量推定の方式でありますDS86というものをもとに算出した被曝線量のみならず、さまざまな残留放射線等の要素も入れて審査に当たっているということでございます。

 それから、米国の法律もあるぐらいではないかという御指摘もございましたが、この米国の退役軍人の補償法につきましては、これは、疾病と職務の直接の関連がない場合であっても、一定の職務についた方には補償をするというような趣旨でございまして、我が国の被爆者援護法とは若干趣旨が異なる性質のものというふうに理解をしておるところでございます。

 以上でございます。

高木(義)分科員 終わります。ありがとうございました。

森主査 これにて高木義明君の質疑は終了いたしました。

 次に、三日月大造君。

三日月分科員 民主党の三日月大造です。

 大臣初め関係者の皆様方には、長時間の審議、お疲れさまでございます。

 被爆地の長崎、被爆者の方々の切実なるお声を届けられました高木義明議員に続きまして、私も、この声届けと、大臣初め関係者の皆様方に、その願いや要望を届けたいと思います。大きく言いまして、小児医療そして胆道閉鎖症、難病対策、この三点にわたって質問をさせていただきます。

 まず初めに、子供たちに対する医療の問題、小児医療の関係、多くの委員の皆様、議員の皆様が指摘をされ、議論をしてこられましたけれども、これだけ子供たちが減ってきて、何とか医療の充実、特に救急医療体制の整備をすることによって、いざというとき、病気になったとき、けがをしたときに、きちんと手当てが受けられる状況を日本全国でつくっていこう、そのことによって、子育てに対する不安をちょっとでも軽減して、そして、子供を産むことをあきらめられていたり、ちゅうちょされている方々に産んでいただけるような環境をつくっていこうというこのことは、私も、三人の子を持つ一人の親として、非常に重要な取り組みだというふうに思っています。

 まず一つ目に、端的にお伺いをしたいと思うんですが、この小児医療の今の現状と取り組みについて、そういう聞き方をすると非常に広範囲なお答えになるでしょうから、特に小児科勤務の医師の方々の労働条件というものに絞った形で、どのように把握をしていらっしゃるのかということについて、お答えをいただきたいと思います。

松谷政府参考人 小児科のお医者さんの問題でございますけれども、小児科のお医者さんは、医師の統計によりますと、年々ふえてきているところでございます。逆に、御存じのとおり、少子化が進んでおりまして、子供の方は減っておるということでございまして、子供に対する小児科のお医者さんの数は相対的にはふえてきている、絶対数としても小児科のお医者さんはふえているんですけれども、相対的にはさらにふえているという状況にございます。

 しかしながら、都会における夜の診療あるいは地域における小児科医療の現状というようなことから、そのマッチングの問題、ミスマッチの問題等ございますし、また偏在の問題ということが言われているところでございます。

 また、先生御指摘の労働条件につきましても、これはお医者さん全体の問題があると思いますけれども、開業している小児科のお医者さん、かつては往診したりいろいろ大変でしたけれども、今はそういう状況ではないというようなこともございますが、病院に勤務しているお医者さんについては、かつてよりもとても大変だというような声も聞いているところでございます。

 今、手元に、具体的な、何時間働いて何とかというものはないので、数字のことは申し上げられませんけれども、お医者さん全体について厳しい労働条件のもとで仕事を続けていらっしゃるというのは事実ではないかと思っております。特に小児科のお医者さんについては、子供さんの医療に対する要求というものも非常に高くなっておるところで、それに対応するために大変な努力をなさっているというふうに認識しております。

三日月分科員 済みません、その程度の把握だから、非常に実態がまだまだ御認識いただいていないんじゃないかなと思うんですね。

 まず、昨日、厚生労働省の方からいただきました平成十六年の医師の数の年次推移を見ますと、先ほど小児科医の先生ふえているとおっしゃいましたが、医療施設に従事する小児科医師数の年次推移で見ますと、これは平成十六年までのデータですが、三万二千百五十一名ということで減ってきているんですね。

 もう一つは、労働条件についてのもうちょっと踏み込んだ実態把握についてお伺いをしたかったんですが、例えば、病院小児科の医師、これは小児科学会の皆様方の統計データなんですけれども、まず、病院小児科の平均医師数が二・三人なんですね。加えて、一人小児科医の病院が二七%、二人で小児科を担当されている病院が二二%。加えて、一週間の小児科勤務の労働時間、一週間の小児科の先生方の勤務時間は、驚くことなかれ、二十代の方で週平均労働時間が六十八時間、三十代の方々で六十二時間。しかも、月平均の超過労働時間は八十六・七時間。しかも、一カ月の休日日数、これは五十五大学の八百六十名の先生方を対象に調査をしたんですけれども、一カ月の休日日数、ないという方々が一八%、そして、一日から四日だという方々を合計すると、これは七〇%を超えているんですね。つまり、約九〇%の方々が、月に一日も休まずに、一週間に一日も休めずに勤務をされているという調査実態があるんですね。

 やはり、小児科で勤めるお医者さんをふやそう、ふやそう、よく厚生労働省の資料や何かを見ると、医療圏だとか病院の数だとかという総括的なデータは出るんですけれども、こういう小児科に勤務されるお医者さんの労働条件が厳しくて、そしてさらにお医者さんが減って、そしてさらに今働いていらっしゃる小児科の先生方の労働条件が厳しくなるというこの悪循環を、もちろん地域の偏在というのも大事ですけれども、もう少し踏み込んで把握をし、対策をとるということが必要じゃないかと思うんですけれども、大臣、もし御見解があれば。

川崎国務大臣 実は、先週、厚生労働委員会でも同じ議論が出まして、去年でしたでしょうか、労働基準監督署の方で、一部調査をいたしました。その中で、小児科に関するものがあれば資料をよこせということで、今求めております。これは委員会に多分出すだろうと思います。

 一方で、もう少し実態調査をしろ、特に、拠点になる病院、小児医療、これは三月中に何とかまとめるという方向で、今、実態調査をかけよう、こういうことで進んでおります。

三日月分科員 ぜひ、今御指示をいただいている、委員や議員が指摘をし、今取り組んでいただいている実態調査を、私も入手をし、さらに分析をし、そして対策についての議論に参加をしていきたいと思いますので、ぜひ踏み込んだ調査を求めておきたいと思います。

 小児科学会がホームページを立ち上げられて、要は、病院に行かれる前にお母さん方が、例えばクリックをして、熱が出た、何かてんかん発作があったけれどもどうなんだろうということについて、病院に行く前にまず対策が打てる、シャープ八〇〇〇番ですか、これを補助制度として導入されて、夜間、休日の電話相談を受け付けられている。しかしながら、これは報道を見ますと、国は導入しよう、お金もつけようと言っているけれども、まだまだいろいろな事情で導入できていない都道府県やなんかもあるということが報道で示されています。

 各地それぞれ地域事情はあるんでしょうけれども、地域の小児科医療を本当に必要な人たちが迅速に必要な形で受けられる体制を構築するために、長期的には、小児科医をどうやってふやしていけるんだろうか、そのための労働条件をどうやって緩和していけるんだろうか、短期的には、こういう相談窓口やなんかを国が設置しようということで決めているわけですから、ぜひそのあたりの取り組みの強化を求めておきたいと思います。

 小児科医の方々の時間的、経済的、精神的な負担が非常にふえている状況を十分大臣も御認識いただいていると思いますが、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、胆道閉鎖症についてお伺いをします。

 これも、いろいろな、厚生労働委員会、予算委員会の分科会やなんかでも指摘をされています。若干御存じない方もいらっしゃると思いますので御説明申し上げますと、胆道閉鎖症というのは、肝臓で生成された胆汁を腸に流す胆管というのが詰まったりなかったりという状態のことを指して、長年、不治の病、治らない病気なんだということだったそうです。

 ところが、一九五九年に、東北大学の葛西先生、この方が治療法、いわゆる葛西手術というものを編み出されて導入されて、このことによって画期的に治療成績が向上して、前は治らない、短命で亡くなられるという病気だったものが、十年、二十年以上経過をしても何とか社会生活を送っていけるようになってきたそうです。加えて、葛西手術というものを行っても肝機能障害がある方々については、肝臓移植というようなものにも道が開かれて、大変困難な状況の中ではあるんですけれども、しかし、希望を持って治療を続けて生活をされている方々がいらっしゃいます。

 先天性という言葉がついていた時代もあるようですけれども、しかし、生まれてからなるというようなこともあって、重要なことというのは、早期診断、早期発見にあるということも言われています。

 ここで一つお伺いをしたいんですけれども、今申し上げたように、診断方法によって、胆道閉鎖症の子供じゃないかということについて何とか早くつかもう、診断しよう、検査しようということが行われているんですけれども、一〇〇%確定診断を下せる診断方法というのはいまだ確立されていないと聞いています。

 その中にあって、早期発見法の一つとして、USBA測定法、いわゆる血液検査だとか便の色による検査ではなくて、尿の検査によって胆道閉鎖症を早期に発見しよう、診断しようということが今開発中で、保険適用等も行われて検査が行われているというふうに聞いています。この検査方法が保険から外されるというようなことも検討されて、ちょうど一週間ぐらい前ですか、厚生労働省において関係団体からのヒアリングやなんかも行われているということも聞いていますが、このUSBA測定法という尿の検査の導入是非をめぐる検討過程について、厚生労働省から答弁を求めます。

北井政府参考人 小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患の一つでもございます胆道閉鎖症については、今お話しのとおり、乳児期に早期発見を行い、早期に手術をすることが重要であると聞いております。スクリーニングの方法としては、便の色を観察する手法が効果的ではないかと考えられて、現在、私どもの厚生労働科学研究において研究を実施しており、この研究の枠の中で、幾つかの自治体の乳児一カ月健診において実験的に行われているというふうに承知をしております。

 そこで、今御指摘のUSBA測定法につきましては、既に肝機能の検査方法として保険適用がされておりまして、患者さんの診断に当たっての使用としては有効というふうに考えられているところでございますけれども、スクリーニング、つまり無症状の大集団の中から患者さんかその疑いがある人を拾い上げるということに使用した場合の有効性については、知見が必ずしも集積されておりません。したがいまして、そういうことなしに、直ちに現時点での導入は困難というふうに考えております。

三日月分科員 保険適用について検討された経緯、経過、そして現在どうなったかということについてのお答えは。

北井政府参考人 保険適用の件につきましては、引き続き保険適用されるというふうに聞いております。

三日月分科員 早期発見に向けてのさまざまな検査方法、診断方法、研究過程においても多くの方々が取り組まれているというふうに思いますので、現在、保険適用されているものについて、さらにその精度を高める努力、そして、それを引き続き、検査方法、診断方法として患者の皆様方が、子供たちが使える、そういう支援をぜひお願いしたいと思います。

 それで、今御答弁の中にもありました小児慢性特定疾患治療研究事業というものについて、これは平成十七年四月一日に改正をされました。この胆道閉鎖症というのもこのうちの一つに入っていまして、これは従来は十八歳までだったんですね。それが、医師の方の御判断によって二十歳まで支援が継続されるということになりました。

 しかし、先ほど、前段申し上げたように、胆道閉鎖症の方々は、治療法の開発によって、これまでは不治の病もしくは短い命でしかいらっしゃらなかったんですけれども、長く生きられるようになってきました。しかしながら、非常に医療費がかかるんですね。私は、ある方の医療費の明細をいただいてまいりました。薬、そして治療等々で定期的に病院に通われながら、重い医療費を負担されながら治療を続けていらっしゃいます。

 この医療費負担に対する支援について、特に二十歳以降生き長らえる方々に対する支援について、具体的に申し上げれば、これは難病対策の方に入っていって、難治性疾患克服研究事業、特定疾患調査研究分野というものの特定疾患治療研究事業に加えられる、そもそも百二十一の疾患に加えられる、さらに治療費補助が受けられる四十五の疾患の中に加えられるということについて、検討が行われる必要があるのではないかと私は思うんですけれども、厚生労働省の所見を求めます。

中島政府参考人 いわゆる難病としての扱いについての問題でございますが、この難病のうち、原因が不明、それから効果的な治療法が未確立である、また患者数が少ない、そして生活面で長期にわたる支障を来すという四条件をすべて満たしまして、全国規模で研究を行わなければ原因の究明や治療法の開発等が進まないと考えられる疾患については、特定疾患対策懇談会の意見を踏まえまして、難治性疾患の克服研究事業として、今お話にもありました百二十一の疾患を選定し、関連研究の推進を図っているところでございます。

 その中から、治療が特に困難であること、それから医療費が高額であること等を総合的に考慮いたしまして、特定疾患対策懇談会の意見もこれまた踏まえまして、特定疾患治療研究事業として四十五疾患を現在選定し、医療保険の自己負担分を公費で賄っているという仕組みでございます。

 こうした対象疾患の決定につきましては、専門家で構成されます特定疾患対策懇談会の意見を踏まえて行うこととされておるわけでございますけれども、御指摘の先天性胆道閉鎖症につきましては、現時点においてまだ対象疾患とはされていないという状況でございます。

三日月分科員 いや、ですから、そういう制度の説明だとか状況の説明ではなくて、私が今るる申し上げたことについての思いや、そして取り組み状況についてお伺いしたかったんです。

 本当に多くの団体や多くの患者さんの皆様方から、胆道閉鎖症だけではなくていろいろな病気の方々からの要望がある中ですから、なかなか大変だと思うんですけれども、ぜひ、そのあたり調査の上、支援対策の検討を求めておきたいと思います。

 これは、障害者手帳をお持ちになれるのかと思ったら、持てないんですね。肝臓移植を受けられた方々に対しては、身体障害者福祉法における障害者手帳の交付というのが行われないんですね。これはかねてから指摘をされていて、心臓移植であるとか腎臓移植は持てるんですね。

 このあたり、きょうも、今、坂口前々厚生労働大臣もお座りで、御答弁なさっているんですね。これは平成十五年、ちょうど三年前の予算委員会分科会……(発言する者あり)いや、何を言ったかなとおっしゃっていますけれども、「もう少しわかりやすい形にならないか」ということで、「いましばらく時間をちょうだいしたいと思います。」ということで、読めば非常に長いんですけれども。また、これは平成十六年三月十二日、予算委員会で御答弁なさっているのは、この特定疾患の根拠が明確化するという長所がある反面、法制化によって対象疾患でありますとか施策の固定化が生じて柔軟な運営ができないというマイナス面もあるというようなことで、賛否両論がございますといったことを前置きされて、さらに検討したい、時間をくれというようなことについて述べられています。

 さらに、引き継がれました尾辻厚生労働大臣も、福祉という観点からこの難病対策についてもう少し踏み込んだ支援ができないかといったようなことについて検討するという旨の御答弁をいただいています。

 これは昨年、二十歳までの難しい病気の方々に対する支援策の充実は行われました。それ以上生き長らえながら治療を続けられる、そして社会生活を営まれる方々に対する支援のあり方について、もう少し踏み込んだ、障害者手帳の交付も含めた支援措置を検討していく必要があると思うんですけれども、このあたりは大臣の御見解やなんかもぜひお伺いしたいと思うんですが、いかがでございましょう。

川崎国務大臣 私の前任者でございます尾辻さん、また坂口先生からの御答弁を引かれましたけれども、十六年七月の特定疾患対策懇談会において、研究の成果や医療技術の進歩等を踏まえた対象疾患選定等のためのより明確な基準づくりに向けた検討を進めることの提案が行われた、こうなっております。

 懇談会において研究が行われているということでございますけれども、十六年七月のことでございますので、そろそろ結論を得なきゃならぬなという感想を今持たせていただきました。ちょっと私自身、精査いたします。

三日月分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。非常に難しいデリケートな問題だということも実は担当者の方々から聞いております。とはいえ、ぜひ、こういうはざまで非常に悩まれている方々が多いことを踏まえての早期の検討を要請しておきたいと思います。

 小児慢性特定疾患治療研究事業、これは、二十歳以降どのような生活をされているのかということについて調査をされていると聞いています。医療の給付状況だとか、働かれてどういう状態になっていらっしゃるのだとか、収入の状況はどうなんだ、要は、二十歳まで支援策を延ばしたけれども、その後いかにお過ごしなんだろうかということについて調査をされていると聞いています。このことは非常にいいことだと思います。

 四月末で報告書が完成されるということも聞いていますが、そのあたりの進捗状況、対象はどれぐらい含まれているのか。当然のことながら、今私が話題にしました胆道閉鎖症の方々についても、これは対象として含まれているんでしょうね。イエスかノーかといったことでお答えいただけますでしょうか。

北井政府参考人 小児慢性特定疾患治療研究事業の、成人になられた方々に対する疾患の病状や生活実態の調査でございますけれども、お話しのとおり、厚生労働科学研究におきまして今実態の把握に努めております。

 ただ、その状況でございますが、四月というよりももう少しかかるかなと思っております。胆道閉鎖症に限らず、主な疾患群についてそれぞれやっておりますので、もう少し時間はかかるかと思いますけれども、千人ぐらいの規模の調査をやっておりますので、なるべく早期にその成果を出していただき、また、そうした成果を踏まえて、成人期を迎えた小児慢性特定疾患の患者さんへの支援のあり方について十分な議論を行っていきたいというふうに考えております。

三日月分科員 きのういただいた御報告では、四月末日をめどに報告書を完成するということでしたけれども、いろいろと精査した結果、長引くのではないかというお話もありました。非常に大変な調査をしていただいていると聞いておりますが、ぜひ早急な調査と、そしてその結果の御報告を求めておきたいと思います。

 さらに、先ほど申し上げました特定疾患治療研究事業費、これは、百二十一難病の指定がされて、そのうち四十五の特定疾患治療研究事業については治療費補助が行われている。このことに対して国の補助金を交付されていて、これが平成十八年度の予算額で二百三十九億円、平成十七年度の予算額は二百三十億円なんです。

 ところが、これは私も、都道府県、滋賀県庁に行って、ぜひ、この胆道閉鎖症に対する対応、そして難病の方々に対する対応をしっかりやってくれということを御相談かたがた言ったところ、いや、聞いてください、国で決められたこの制度なんですけれども、実は国の補助金がちゃんと満額おりてきていないんですと。

 非常に財政厳しき折だと思うんですけれども、よろしいでしょうか、もしメモをとっていただければ。数値はもうあるのかもしれませんけれども。平成十三年度は、二百二億円に対して、七二%、所要額との差は七十八億円とんがり。十四年度は、百八十三億円の予算額に対して、所要額との差は百十八億円、六一%。その後、六一%、六三%、六一%という形で、国で決められた制度、確かに実施主体は都道府県かもしれませんが、国で決めて、二分の一は国が補助しますよと言っておきながら、その補助がきちんと交付されずに、例えば私の住む滋賀県でいえば、一億四千万ほどの追加負担、県としての持ち出し負担をしなければならない状況になっています。

 これは、この制度を考える上で非常に大きな問題点だと思うんですけれども、現状に対する認識と、そしてこの超過負担を解消するといったようなことに対する取り組みについて、お聞かせをいただきたいと思います。

中島政府参考人 ただいまお話がありましたように、この特定疾患治療研究事業についてでございますけれども、予算の面で申し上げますと、今御紹介がありましたようなことで、事業の実施主体である都道府県に対しまして、毎年の国の予算の範囲内で事業費の二分の一を上限として補助しているというものでございます。そういう中で、厳しい状況が生じてきているというのは御指摘のとおりでございます。

 本事業につきましては、財政状況が大変厳しい中、平成十五年度以降、増額を図ってきたところではございますけれども、十八年度予算案におきましても、対前年度比十億円増の約二百三十九億円を計上しているところでございまして、今後とも、その事業の適正化及び着実な推進に努めてまいりたいと考えております。

三日月分科員 御尽力いただいていると思うんですけれども、今の答弁じゃ非常に不十分だと思うんですね。国で決めた制度の、また国で決めた割合の額の六一%しか手当てできていないという状況、その超過負担を、これも同じ状況なんですけれども、財政厳しき折の都道府県に押しつけてしまっているという状況を改善するということについての明確な答弁がありません。

 さらに、これは都道府県によって交付率に差があるんですね。所要額の五四%しかもらえていない都道府県から、最大で六五%までもらえている都道府県まで、約一〇%の開きがある、額にしますとそれぞれ違うんですけれども。

 この状況を、確かに国全体の予算が限られております、その中で対前年度ふやしています、頑張っていますというのはあるんですけれども、この制度は難病で苦しまれている方々の治療の補助をするという制度で、もちろん、よもや都道府県も、お金がないからということで、必要だけれども出していないということはないと思いますけれども、しかし、この財政圧迫状況を、国がつくった制度で、国がお金を出さずに都道府県に押しつけてしまっているという状況は、私は好ましくないと思うんです。

 この改善に向けた決意を大臣お聞かせいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

川崎国務大臣 今議論を聞きましたけれども、数字をよく見ていないものですから、先ほど同様、ちょっと精査して、また御回答できたら御回答させていただきます。

三日月分科員 三十分で非常に切実なるこの厚生労働分野の問題を議論するには足りません。また引き続き見ていきますけれども、検討する、報告する、調査すると言っていただいたことのフォローをすることをお誓い申し上げ、そして、それに資する資料の提供をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

森主査 これにて三日月大造君の質疑は終了いたしました。

 次に、下条みつ君。

下条分科員 民主党の下条みつでございます。

 大臣含め、大変夕方でお疲れでございます。あと一時間半、何とかおつき合い願いますようによろしくお願いいたします。

 私の方は、同僚議員から幾つか出たところもありますが、昨年の四月に前大臣の尾辻大臣に質問をしまして、それについてその場で回答をいただいた後の課題について、まずはお聞きしたいというふうに思っております。

 まず、昨年の四月の分科会で少子化について御質問させていただいて、体外受精と顕微授精の不妊治療について、昨年の四月からは一年度当たり十万、二年間やることになった、これはすばらしいスタートだというふうに思います。そんな中で、私が、不妊治療の部分については一回や二回じゃなかなかうまくいかない、現時点で非常に多くの方々が所得の中で苦しんでおられた中で、ぜひ前向きに保険適用の中で検討していただいたらどうでしょうかという御質問を昨年四月にさせていただきました。

 それに対しまして、前大臣は、まあ日経新聞の全国版の第三ページに載りましたが、これについては「二〇〇六年四月に医療保険などの抜本的な見直しをするが、検討課題にしたい」という明言をいただきました。「今回の医療保険改革の議論の中で、適用の是非を検討する考えを表明した。」これはまあ、それぞれ議事録にも載っておりますし、新聞も全国版に載ったということであります。

 そこで、私としては、これはすぐになるのか、それとも検討課題なのか、これはわかりません。ただ、現時点として、大変に少子化というのは、私も実を言うと、大臣と同じ派閥におりましたおやじが厚生大臣でいましたときに厚生省におりまして、やはり厚生省の業務というのは、ともかく現時点においての枯れ枝をそっていかなきゃいけないと同時に、長いスパンで見ていかないと、結局はこの少子化、例えばこのままでよかったら、十年後に財務省から予算を取るのに一番苦労するのは、僕は厚生労働省だと思っています。そういう意味では、汗をかかれると思いますけれども、今ここでどれだけいい間口を開いていくかということではないかというふうに思います。

 そこで、不妊治療の保険適用について、例えば日本では、今言いましたようにいろいろな御努力をなさって、十八年から期間が二年から五年にわたって膨らみました。これは大変すばらしいことだと思います。ただ、それだけでは、先ほど言いましたように、一年間で十万円だけではちょっとなかなか難しいんじゃないかと思います、何百万かかかりますので。

 そうしますと、他国はどうかといいますと、米国では、生殖補助治療として十四州で既に保険による保障が義務づけられている。それ以外は、ここではちょっと申し上げません。いろいろ細かい条件はあるんですが、イギリスとかフランスとかスウェーデンは既に保険適用になっている。特にフランスとスウェーデンは、釈迦に説法ですけれども、一たん落ちましたからね、少子化率が二・内から一・幾つに落ちましたから。そこで、ドイツでも夫婦間体外受精に関して四回までは保険適用になっている。

 諸外国が、こういう中で少子化という大きな国の根幹にわたる、税金を払う方々、また人間の数、そして国力にもつながる部分になります、非常に国家的な意識を持って前向きに取り組んでおられる。

 そこで、私は大臣に御質問したいのは、昨年の四月から十カ月ちょうどたちました。サポート面としては期間を二年から五年にふやしていただいた、これはすばらしい話だと思うんです。ただ、これだけでは、今申しましたように諸外国と比べ、また実態と比べてかなりちょっと乖離があるかなと思います。

 そこで、現在の状況として、今後できれば私の意向としては、保険適用していただいて、産みたくても産めない経済的理由がある方々に間口を開いてあげていただきたいというふうに思っておりますけれども、現在の検討状況と大臣の御所見をまずはお伺いしたいというふうに思います。

川崎国務大臣 昨年、下条先生にお目にかかりまして、大変お元気なお姿を見せていただきました。

 ことしは少子化対策として、児童手当六年生まで、また、出産の祝い金三十万から三十五万、そして、この特定不妊治療費助成事業二年から五年ということで、今御審議いただいているところですから、どこまで踏み込んで私が言えるかなというところはございます。

 ただ、一方で、昨年から我が国の人口が減る、新しい局面の中で、少子化対策というのが極めて重要な仕事という形で国民的にも認知されてきたんではなかろうかな、私はそう思っております。お目にかかる経済界の皆さん方も、やはりやらなきゃいかぬ、こういうお話をいただいております。そういった意味では、経済界の皆さん方には雇用という側面でもう少し踏み込んで協力をしてもらいたい、こう思っております。

 経済的な支援、雇用面での支援、また保育というものをしっかりやっていく、こうした三点から議論してまいりましたけれども、正直、不妊治療というのは四番目の柱かな、こんなふうに考えております。正直言って保険を適用できるかとなると、いろいろ実は理屈があって難しいという認識を今いたしておりますけれども、それじゃ何かできないのか、保険についてできないのか、似たようなことができないのかという形でもう少し議論を詰めていきたいと思っております。

 そういう意味では、厚生労働省として不妊治療という問題についてもう少し突っ込んで議論したい、こう思っておりますので、また御協力のほどお願い申し上げます。

下条分科員 ありがとうございます。

 諸外国と比べてという言い方は非常に難しい表現になると思います。それは、それぞれの経済状態、国の借金の状態、そして景気の状態、そしてまた人口に対して大きくなり過ぎたところもありますし、アフリカみたいに。まあ、小さくなってしまってこれから守らなきゃいけない部分もあるということもありますが、今難しいとおっしゃっていただきましたけれども、それでは、次の段階としてどういう形でそういう費用がかかる方を守っていただけるのかを、ぜひ大臣、温かいお気持ちになっていただいて守っていただきたいというふうに思います。

 そして、私はいつも思うんですけれども、今やればこれからの厚生労働省の後輩の方々も予算取りで苦労しなくなりますので。まあ主計局の予算取りはもう大変であります。これがまた今度人間が少なくなれば、もっと皆さんの十年後の後輩連中は大変になります。そういう意味では、では、今どれだけ知恵を絞るか、僕らの課題だと思いますので、ぜひ温かい、例えば十万円が五年間なら二十万円を五年間に変えるとか、ある程度そこを盛り込んでいただければというふうにお願いしておきたいというふうに思います。

 次に、働く女性の出産、子育てについてちょっと御提案を申し上げたいと思います。

 現在、働く女性というのは、これはジャストアバウトで僕は申し上げますけれども、約二千百五万人で、その中で女性派遣労働者が五十七万人います、これも約でございます。その中で、女性の結婚適齢期というのは非常に難しい表現なんですが、出産可能年齢という言い方をすれば五十四万人いらっしゃるということです。つまり、派遣労働をしている女性の方々で約九割以上がお子さんを持てる年齢であるということであります。これは数字で出ております。

 現在、日本の派遣社員を含む有期契約労働者の育児休養制度と妊娠、出産を理由とする解雇禁止の規定というのは幾つかあります。

 これはもう釈迦に説法なのであえて細かいことは言いませんが、表題だけ申し上げますと、有期契約労働者の育児休養制度の適用については、育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律、これは中身は申し上げません。そしてもう一本が、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律。

 それから、派遣受け入れ期限の制限の規定というのが二つ大きくありまして、その中で妊娠、出産を理由とする解雇禁止の規定ですね。これには二つありまして、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、機会均等と待遇ですね。それから、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律、不当解雇があっちゃいかぬというものですね、などの法律がある。これはもう釈迦に説法でございますのであえて私から表題だけ申し上げました。こういう法律が実際あります。

 ただ、そうはいっても、実際、私の方の事務所、そしていろいろな私の関連の方々に、例えば先日は、ある女性派遣社員から、インフルエンザにかかって一週間休んだ、そうしたら解雇されちゃった。すぱっと首を切られたと。それから、別の方は、半年ごとに契約をしていって、妊娠しました、そうしたら、そのまま産休をとったらもう来なくていいと言われちゃったと。等々、私のところへ、もう挙げれば切りがないぐらいでございます。

 私は何を言いたいかというと、大きく言うと、さっきみたいな表題の法律とか規制はきちっとこの日本国にはあるのでありますが、結論からいえば、実際はそうやって解雇されても全然、言いにくいですけれどもグリップはきいていないということじゃないかと思うんですよ、ですからそういうのがスルーされているんですよ。スルーというか通り抜けちゃっているということでありますけれども。

 実際、このような場合について、現状、罰則規定はあるのかどうか、それをちょっとまずお聞きしたいというふうに思います。

北井政府参考人 今幾つかお示しいただきました法律の中で、育児・介護休業法とそれから男女雇用機会均等法についてでございますが、この二つの法律は、ともに企業の雇用管理の観点からの法律でございます。

 育児・介護休業法は、仕事と育児、介護との両立のための諸制度を規定した法律、それから、男女雇用機会均等法は、性差別の禁止とそれから妊娠、出産を理由とする解雇の禁止等を含めた、母性保護を含めた法律でございまして、この二つの法律が、ともに今は罰則規定はございません。この二つの法律とも、いわゆる行政指導といいますか、助言、指導、勧告といった行政指導によって粘り強く事業主に是正を促して、改善を図っていくということにしている法律でございます。

下条分科員 ありがとうございます。

 そこで私が申し上げたいのは、本当に正直に言っていただいてありがとうございました。大変頭のいい方がつくっている法律です、非常にいいと僕は思っています。ただ、現状は、現場ではそうやって解雇されたり来なくていいと言ったり、要するに、それを聞いた女性の方々はもう子供をつくれないということに順番になります。そういう意味では、これこそがやはりもう少し現状ある法律の中で締めていっていい部分じゃないかと思うんですよ。

 私は、役所同士というのは財務省に向かって予算取りをするところから始まって、全体枠があってそれを振り分けて課ごと局ごとに分けていく、これはもう釈迦に説法であります。ただ、問題は、そこに何か助成をしていくということはお金がかかる、そう思います。例えば身障者の方々を雇った企業に対して助成をしていく、これはまたお金がかかってくるわけですよ、助成といったら金を払う。これも一つの案かもしれません。でも一方で、ではお金がかからなくて何ができるかといえば、簡単です、罰則規定をきちっと決めるということであります。

 そこで私は、例えばですよ、そういうことをしてしまった企業、派遣企業や派遣先企業について、厚生労働省としては全然財政上マイナスになりませんから、お金を出すわけじゃないですから、規則を決めて厳しくしていくということだと思う。

 例えば、厚労省とは関係ありませんが、今回のいろいろな偽装の問題が国で起きた、それをチェックできなかった部分に対する罰金は五十万ですよ。だから僕は、やはりあれは、例えばですよ、極端な話、もしそういう偽装をやったら右腕を切り落とす、左腕を切り落とす、だれもやらないです、極端な話。これはちょっと過激な発言かもしれません。ちょっと済みません、過激過ぎました。ただ、極端な話、そういうことだと思う。

 つまり、この日本丸は大変優秀な人がそろっているんですが、その罰則規定の部分が僕は弱いと思うんですよ。これは何回も申し上げます。きちっと決めておけば、そういう方々を雇うようになって、ひいては、育児をしながら働ける、出産して働く女性をふやすことによって、長い目で見て、厚労省の方々にとってもいいのです、日本国にとってもいい。そういう意味では、その罰則規定についてぜひ、厳しさは極論すれば切りがないですけれども、罰金を取るとか報告義務をもっと過多にするとか。ただ行政指導をするだけだと、はいはい、わかりましたで終わっちゃいます。罰則がないんです。

 その辺、お考えをいただきたいと思います。

北井政府参考人 罰則をつけるというのももちろん一つのお考えだと思います。ですけれども、私どもの法律においては、これまでのところは、本当に育児・介護休業法が守られるように、あるいは均等法が守られるようにするためには、例えば差別でも何でもやって幾らか払って終わりというよりも、本当に、全国の労働局に女性労働者が御相談に来ていただいて、それで粘り強く事業主を説得し、是正を促し、改善を図っていくということの方が有効ではないかということでやってきたわけでございます。

 ただ、今、今国会に提出をさせていただくべく準備をしております男女雇用機会均等法の改正案がございますが、その中におきましては、一つ、過料の創設ということを盛り込みたいと思っております。

 つまり、行政指導に当たって、助言、指導、勧告、あるいは均等法の場合は、最後は大臣名での企業名公表までの制度がありますけれども、その前提としては、やはり必要な報告を求めなきゃいけません。しかし、資料が出てこない場合がございます。そうした行政からの報告の要求に対して正当な理由なく断られるような場合については、過料という形の創設を考えているところでございます。

下条分科員 まさにこれからの部分のお話だと思います。そして今、大臣名での企業名の公表、これはぜひ大臣、お願いしたいと思うんですけれども、いかがでございますか。

川崎国務大臣 この話、少し現場に聞きまして、どのぐらい不利益取り扱いの相談は来ているんだと。下条先生のところは随分来ていると。ですが、これを見たら三十二件しか来ていないんですよ。そういう意味では、やはり国民、特に働く女性の方々へ、こういう問題が生じたら、企業が違反をしているんだから、気軽に都道府県にある労働局に御相談くださいというPRが、正直言って少し足りぬのかな。また先生のところにその話ございましたら、ぜひ、労働局、ちょっとおれが電話してやるから行ってこい、こういうアドバイスをしていただいたらありがたいな。少し我々もPRに努めます。

 企業は、正直申し上げて、言われるとおり企業名を公表する、ある意味では社会的制裁というんでしょうか、これ非常に、正直言って嫌がりますので、粘り強く交渉すればきちっと女性の権利が守られるように思いますので、もう少し踏み込んでやらせていただきます。

下条分科員 大臣、ありがとうございます。

 数字というのはちょっとなかなか難しいんですが、雇用均等室に寄せられた期間雇用者の育児休業制度に関する相談数は、実際は昨年だけで五百九十四件ある。これは資料で出ております。

 ただ、その中で、日本の非常にしとやかな女性の方々が、いやということで思い切って相談できる環境にあるかと言われると、いろいろな例え話があって、お嫁さんにするなら日本の女性が世界でナンバーワンであるというぐらいにおしとやかであるんではないかなと思うので、それはやはり暗黙のうちに相談しにくかったり、今大臣PRとおっしゃったように、それだけでも僕は企業の方々、随分違うと思うんですよ。

 だから、過料の部分をおっしゃいましたけれども、最終的には、もしかするとそういうことまでいっちゃうよと言うだけでも随分僕は違ってくると思います。本気で厚労省は見出したぞということは企業に伝わりますよね。ぜひ、これも含めて、今のお言葉どおりに御検討いただければとお願い申し上げたいと思います。

 次に、私が今子育ての観点から幾つか申し上げる中で、日本では、今年度から、保険自己負担額軽減措置というのが三歳未満から義務教育に拡大となった、所得制限はもちろんありますけれども。これが今年度からということでありますけれども、問題は、これについてなんですが、各地域によって医療助成制度が変わってきちゃっている。例えば東京都だけ見ますと、港区は中三までいいよ、千代田区は就学前まで、世田谷区は小三まで、さまざま。地方都市によっては三歳までしかできないというのもあります。

 私は、子供を育てやすくするためには、格差というのをなくすようにやはり行政指導していく必要があるんじゃないか。またその上、これはちょっと細かくなるんですが、住民登録した県と違う他府県で治療した場合、そこの住民じゃなくて、例えば旅行へ行ったり何かあってそこで治療した場合は、医療費の助成は指定地域しか使うことが、まあ、これはそのとおりですよね、直接支払った場合、領収書を持って役所に行って申請しないといけないということもありますね。私は、この保険自己負担の一定化、つまり統一化というのは非常に難しいと思います。

 例えば、財政の問題があったり税制上の問題、いろいろあると思います。ただ、これをこのまま知らないよとやっていた場合は何が行われるかというと、やはり若い人たちは子供の治療しやすいところに、地域に散っていきます。散っていく。と同時に、子育てで柔軟な自治体はいいよと評判が広がって、また過疎と都市部の差が出てくるというふうに思います。

 これは、人口上の格差というんですかね、これが出てくると思いますけれども、この辺の格差をやはり是正していかないと、ここは中三まで、こっちは三歳までしかだめだとなったら、やはり、私は男性ですから産む方じゃないのであれですけれども、女性にとっては非常にこれは大きい、特に若い人にとっては大きい。住む場所を選ぶ、そして生きていく場所を選ぶ、選定になってしまうということだと思われます。この辺について、ぜひ、統一は一概にはできませんが、この格差を縮めていく方向として御検討いただけないか。御意見をいただきたい。

北井政府参考人 乳幼児医療費の助成に関する、その意味では国の統一的な助成、ある意味では助成になりますのは、乳幼児に対する自己負担軽減の措置でございまして、二割負担の対象年齢が今現在は三歳未満のところを、平成二十年度から義務教育就学前の児童まで拡大するということにしておりまして、今国会に関連法案を提出しているところでございます。その意味では、この医療制度改革におきまして、国として義務教育就学前まで自己負担軽減措置を拡大すれば、かなり格差という点では改善が進むものではないかと思っております。

 それから、今お話のございました、地方自治体が単独でさまざまな乳幼児医療費の助成を、負担軽減措置をなさっているわけでございますが、これは自治体の実情を踏まえた判断でなさっているわけでございまして、国としてこれに関与しているわけではございませんので、その意味では、国民の目から見ますと、それは住んでいる土地によりましていろいろ違ってくることは承知しておりますけれども、これは自治体の判断によることになるというふうに考えております。

下条分科員 それを私は申し上げているので、今ちょっと、失礼しました。今年度でなくて、二十年度ですね。ただ、関連法が今年度から出ていくということでありますけれども、訂正させていただきます。

 そこが今格差を生ませている。つまり、住んでいる私たちの格差を増している要因なので、そこでこれからに向けて行政指導をしていっていただきたいという意見でありますので、関連法案もこれからですから、その中で、また質疑を含めて委員会の方でさせていただきたいというふうに思っております。

 ちょっと時間の関係もあるので、次に移りたいと思います。次は、先ほど同僚議員が話を出しました小児科医の部分であります。

 小児科医は、さっきおっしゃったように、非常に人数が減ってきている。実際、減ってきている。ところが、実際乳幼児の受診というのは減っていないのですね。時間外受診、夜間受診なんて逆に多くなっちゃっている。これはなぜかというと、お父さんお母さんが、もしくはどちらかが働いている人が多くなっている。つまり、働いている最中は子供を見られないので、どうしてもお預けしているところから戻ってきて、家に戻ってきた後、子供の頭痛いとか、おなか痛いとかを見つけまして、その関係で夕方から夜にふえるということが原点にあります。したがって、逆に言えば、小児科というのは緊急性の意味で昼間より夜だな。

 そこで、十七年度の予算関係で、小児救急医療支援事業というのは、小児救急医療圏というのを四百七に分けて、その中に、不十分な地域というのが百四十四地区あったわけじゃないですか。これは皆さんがやった話だけれども。その中で、結局、大病院と言われる病院には約四割ぐらい小児科がある。二百床以下の病院のところには小児科が大変少なくなってきちゃっているんですよね。これが原点にある。

 そこで、ちょっと時間の関係もあるので、御提案をさせていただきたいと思うのですが、小児科のところまで飛んでいかなくてもいいのか悪いのか、なかなかわからない病気が僕はあると思うのですよ。そこで、僕はやはり電話相談というのが必要だと思うのですよね。これは電話相談というのがあります。

 私の提案というのは、電話をするというのは、これは十円でできるわけです。どこの、夜中でもできるし、お母さんが二人の子供を抱えようが一人でもできる。この開業医の電話診療の場合、再診の場合は保険点数がある。再診の場合は、一回診療してやるから、これこれしかじかだとわかる。ところが、新患の場合、新しい患者の場合は、医療相談には点数はつかないというのがあるのですね。これがやはり、医療を電話で受けたときに、緊急性の場合、いやいやというふうになってしまうことが原点にあると思うのですよ。これにぜひ保険点数の加算を御考慮に入れていただけないかという御要望であります。いかがですか。

水田政府参考人 今回の診療報酬改定につきましては、既に中医協からの答申をいただいたところでございます。そこで小児科につきましては、夜間それから救急、こういった分野について重点的に評価するという取り組みをしたわけでございまして、先生の今の御提案のところまでには至っておらないわけでございますけれども、御提案は御提案として承らせていただきたいと思います。

下条分科員 時間が来ましたので終わりにさせていただきますけれども、やはり小児科の方々のいろいろな点数を上げたのは、大変僕は進歩していると思います。ただ、現実として、お医者さんに行かないまでも電話でという部分も、ぜひ温かい予算としてこれからの検討課題に入れていっていただきたいというふうにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

森主査 これにて下条みつ君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、私は、長崎県で実施されているいわゆる被爆体験者医療給付事業、これについて質問をしたいと思います。

 もともと、被爆者援護法の適用地域は旧長崎市の行政区に限られておりました。このいびつな指定に対して、適用地域外の住民を初め長崎県・市は、長年にわたって対象地域の拡大を求めてきた経過があります。こうした事態の反映として二〇〇二年四月から実施されたのが、この被爆体験者医療給付事業であります。これは、爆心地から十二キロ以内を健康診断特例地域として追加指定し、被爆体験による精神的な疾病などに対して、被爆者援護法に準じた医療費の支給を行うというものであります。

 ところが、この事業を開始してからわずか三年で制度を抜本的に変えて、二〇〇五年六月から新たな実施要綱に基づいて実施しております。この新実施要綱に基づいていわゆるスクリーニング検査が行われていますが、その結果について、検査を受けたのは何人で、そのうち、検査を通過した人、通過しなかった人はそれぞれ何人か、また、通過しなかった人のうち、もともと給付を受けていた人は何人なのか、これを明らかにしていただけますか。

中島政府参考人 ただいまの御質問でございますが、被爆体験者精神影響等調査研究事業の実施状況について御説明をいたします。

 平成十七年の十二月三十一日現在、長崎県と長崎市の合計という数字で御説明を申し上げますが、対象者数が一万三百五十一人に対しまして、スクリーニング検査の受検者数、検査を受けられた方が一万百七十三人でございます。それから、精神科医の診断の受検者数が六千四百四十一人、これはスクリーニング検査を経てということでございます。それから、審査会で、申請者の数が四千九百九十人、最終的に受給者証の交付が三千六百七十六人となってございます。

 受給を受けておられる云々ということについては、数字が手元に今ございません。

赤嶺分科員 今の局長の数字はいつの数字ですか。私が聞いたのは、このスクリーニングを受検した人、通過した人、通過しなかった人、そして、通過しなかった人の中にこれまで受給証を持っていた人は何名いるかという質問なんですが、それをもう一度きちんと答えてくれますか。

中島政府参考人 ただいまの御質問ではございますが、これらの検査を受けた方の中で、対象とならなかったという方の中で受給者証を持っていたという方の数については、私ども承知をしておりません。

赤嶺分科員 長崎県・市から、今回のスクリーニング調査についてるる説明や要請を受けているのではありませんか。知らないということはないはずですよ。

中島政府参考人 これまで、御指摘のように、長崎県・市からいろいろとお話を伺っておりますけれども、その中でいただきました数字については先ほど申し上げましたようなことでございまして、先生御指摘の点については、私ども、数字を把握しておらないという状況でございます。

赤嶺分科員 私が去年の十一月段階の数字を申し上げますが、検査の実施者は一万百十一人、検査を通過した人が七千十一人、検査を通過しなかった人が三千百人、そのうち、三年前に受給者証を所持していた人は二千七百七十四人。これは県・市の合計で去年の十一月末現在の数字ですが、その数字は持っておられないんですか。

中島政府参考人 繰り返しになりまして大変恐縮でございますが、私どもが把握しておりますのは、十七年十二月三十一日の、先ほど申し上げた範囲の数字でございまして、ただいま御指摘のありました数字については、私ども、残念ながら持っておりません。

赤嶺分科員 この問題がこれだけ長崎県・市から提起されて、県議会、市議会を含めて大きな問題になっているときに、数字の認識がないということは非常に残念なことであります。

 ただ、皆さんのおっしゃった数字の中にも、制度から除外された、そういう人を言われました。どういう特徴がありますか。当時ゼロ歳だっただとか幼少に除外された人が集中していると思いますが、この点いかがですか。

中島政府参考人 確かに、今御指摘のように、このスクリーニング検査で適合にならなかった方々の中には、被爆当時ゼロ歳、一歳、二歳の方が多く含まれております。

赤嶺分科員 大臣、今度のスクリーニングで、ゼロ歳、一歳、二歳、三歳、四歳、五歳といった、当時幼少だった人々が今度の制度から適用を除外されている、これが大きな特徴になっているんです。その数は全体の三割に上ります。これは制度の根幹が問われると思うんですよね。前の制度では受給できた人が、今度新しい制度になったら三割も切り捨てられた。何のための制度であったかと、この数字は驚くべき数字ですよ。

 何でそういう検査結果になったんでしょうか、幼少の年齢の方々が切り捨てられるということになったんでしょうか。

川崎国務大臣 予算委員会でも決算委員会でもたびたび、私どもの予算執行について、適正な執行がされているか、厳正にやれという御指摘をいただいております。

 この事業については、平成十六年に専門家から成る検討会を立ち上げ、実施状況について精査をいただいて、その時点で改善を要する点があるということで御指摘をいただきました。

 一つは、対象外のものまで広範囲に医療費の支給が行われている実態がある。特定の精神疾患の治療を支援することに主眼が置かれているにもかかわらず、所期の成果を上げているとは言えない。そうしたことから、早急に改善措置を講じる必要がある、こうした指摘を受けました。

 それを受けながら、長崎県及び長崎市と協議しながら事業のあり方を見直し、昨年六月から新しい実施要綱のもとで事業を実施してきた。その結果、今、赤嶺委員が御指摘いただくように、必ずしもこの事業に該当はしないということで、約三千人の方がその対象から外れた、こういう結果でございます。

赤嶺分科員 大臣、違うんですよ。この外された人たちは、対象外の医療の給付を受けた人たちじゃないんですよ。ゼロ歳児、一歳児、二歳児、三歳児、四歳児、当時幼少で、当時の記憶が不十分だった人々、これが外されているんです、大臣お認めのように。それは、対象外の医療給付をこの人たちがみんな、三千人も受けていたんですか。いかがですか。

川崎国務大臣 今申し上げたように、改善を要するという中で、対象となる疾患名を受給者証に記載すること、毎年の更新時には精神科医師の意見書の提出をすること、また、言われるとおり、まずスクリーニングが行われたということでございます。

赤嶺分科員 問題はスクリーニングなんです。対象の医療疾病、これを限定したことによって起こったものではないんです。限定は限定で、それは長崎県・市と話し合っていけばいいことなんですが、被害のこれだけの人が除外されたのは、結局は、判定基準を、当時の記憶にある人、当時のことを記憶している人、これに限定したからではありませんか。いかがですか。

中島政府参考人 ただいまお話がありましたように、今回の、昨年からの新しい考え方につきましては、基本となります考え方として、この事業が被爆体験に起因する不安に基づく健康水準の低下ということに着目して始めたということでございます。ここで言う被爆体験というのは、光とか爆風とか熱を感じたという、原子爆弾の破裂に関する体験であるということで、この趣旨に基づいて今回の考え方がとられているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

赤嶺分科員 この制度が発足した二〇〇二年四月にはそういうようなスクリーニングでしたか。どこが違うんですか、今回と。

中島政府参考人 当初から考え方としてはそういった思想のもとに行われていたわけですけれども、その実施のあり方において、若干そうでない部分も含み得るようなものがあったということで、見直し、いろいろ検討をお願いした結果、このようなことになったというふうに理解をしております。

赤嶺分科員 あなた方は、委員会の報告では対象疾病の見直しということを言ったのであって、前回までは、つまり、記憶にない人、光や熱やあるいは爆風を見た、感じた、触れた、こういう被爆の記憶がなくても、後に親や兄弟から話を聞いて、自分も有害な放射線に被爆したかもしれないという不安のある人、つまり、記憶になかった人も前回は対象として医療給付を受けていた、保険証をもらっていた、そういうことで間違いないですね。

中島政府参考人 その部分についての詳細は、私ども必ずしもつまびらかではありませんけれども、この事業そのものについての趣旨は、先ほども申し上げましたように、御本人が被爆体験という、光とか爆風とか熱とか、こういったものを体験されて、それによって生じたものというものに着目して行われているということでございます。

赤嶺分科員 前回は、ゼロ歳や一歳や二歳、記憶が定かでない人もこの制度で医療費の給付を受けていた、それはお認めになりますでしょう。それは事実の問題として認めるでしょう。

中島政府参考人 そういう方々が対象となっていたという経過については、おっしゃるとおりでございます。

赤嶺分科員 大臣、前回は記憶にない方々も対象になっていたんですよ、今の答弁のとおり。今回はなっていないというんですよ、厚生労働省は。

 では、当時、あなた方は、記憶にない人は対象じゃありませんということを地元の長崎県や市に説明しておりましたか。ちゃんと説明していたでしょうか。大臣、いかがですか。

川崎国務大臣 そこは説明したかどうか、私はわかりません。

 ただ、基本的には、調査研究事業について、専門家から成る検討会を立ち上げて、改善を要する、こういう御指摘をいただいた、そのことから行われたことであります。そういう意味では、改善の必要があるという認識、ここは私ども感じておるところでございます。

赤嶺分科員 専門家から成るその委員会で、記憶にない人は除外せよという明確な勧告なり提起がありましたか。その点いかがですか。

中島政府参考人 これは何度も申し上げますように、専門家からの検討会の意見としてそういったものをいただいておりますし、また、直接の被爆体験に起因する不安に基づく健康水準の低下に着目しているものであるということについては、これまでも申し上げてきているところでございます。

赤嶺分科員 うそつかないでくださいよ。検討会の報告書の中に、本当に、記憶にない人は除外するというのがありますか。ちゃんと読んで答弁しておられますか。いかがですか。

中島政府参考人 今のお話のような、直接の、同じ文言での表現ということではございませんけれども、先ほど申し上げましたような趣旨の表現は、中にございます。

赤嶺分科員 記憶にない人を除外せよというのは、どんな表現であれ、出てこないんですよ。私は、繰り返し目を通してまいりました。

 私は、長崎市に行ってきて、今度、そういう被爆体験者の人々と懇談をしてきたんです。今回の措置に本当に怒っているんですよ。あの原爆放射線による精神的な障害も持っておられる、合併症も持っておられる、前回は医療費の給付証もいただいていた。ところが、今回打ち切られた人々、いわゆる三割が打ち切られた。その大半の人たちと懇談をしてきました。

 こういうことをおっしゃっているんですよ。当時ゼロ歳だった男性ですが、原爆投下の記憶はありませんが、姉たちから当時のことは詳しく聞いているのに除外された。あるいは、当時ゼロ歳だった女性です。保健師に、原爆が落とされたことをどう感じるかと聞かれ、ゼロ歳児ではわからないと答えるしかありません、大きくなり、親兄弟から聞いた話しか覚えていません、このように言っているんです。

 まだまだたくさん、ここにそういう人たちの訴えがあります。例えば、当時四歳だった人は、私は幼少のため、当時のことはわかりません、ただ、兄、姉たち、父母の話を聞いただけを話しましたが、これはスクリーニングでそういう話をしましたが、認めてくださらなかったことを残念に思います、ただ、審査してくださった方々が我が身になってみて、四歳のころのことをよく覚えているか考えてほしいです、ここ一年余り手帳をいただいて健康管理ができたことをありがたく思っていましたが、見直しで認めてくださらなかったことが残念です、残念です、残念です。三回繰り返しています。そして、年をとるにつき、体調不安、入院、病院でも心安らかに療養などできません、平等な目で審査をお願いします。

 私が会った、当時ゼロ歳や幼少だったという人たちは、当時、親や兄弟と一緒にその場所にいた、そして、自分は記憶はないけれども家族から後に聞かされた、そういうことが体験となって、心に不安が広がり、精神的な健康障害が生まれ、そして新たな病気が生まれてきた。

 この人たちは、前回は医療証をもらっていた、もらっていたんですよ、対象疾病ですよ。対象疾病の方々が、記憶にないというだけでこの制度から除外されていいんですか。何でこれが除外できるんですか。大臣、いかがですか。

中島政府参考人 先ほどからお話にあります被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会報告書の文言でございますけれども、それも含めてちょっと御説明をさせていただきますと、その中に、事業のあり方についてというところがございまして、その中では「本事業の対象地域の住民には原爆の放射線による健康被害は認められず、」という、ここは前置きですけれども、「本事業は、原爆の光の目撃などの被爆体験に起因する「有害な放射線に被曝したかもしれない」、「その後遺症が病気になって現れるかもしれない」といった不安等に着目したものである。 したがって、本事業は、被爆体験による精神的要因に基づく健康影響に関連する「特定の精神疾患」を有する者に医療費を支給することによって、その治療を支援することに主眼が置かれている。」というものでございます。これに基づいて私ども行っております。

赤嶺分科員 まさに今読み上げたところですよ。光やあるいは爆風や、そういうものを感じて、それが心の不安になっていった。

 それでは、当時、同じ場所にいて、そして家族の者がそういう体験をした。後に、あなたもその場所にいたのよ、あのときの原爆の体験はねと聞かされて、自分の体に不安が起きたときに、やはり原爆の被害じゃないだろうかと不安に思う、精神的な障害になっていく、病気を併発する。こういう者は除外しなさいとは、どこにも根拠がないじゃないですか。そういう記憶がない者を除外せよという根拠を挙げることができますか、皆さん。いかがですか。

中島政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、確かに、御指摘のように、除外せよという文章はこの中には出てまいりませんけれども、対象としている者が、先ほど申しましたように「原爆の光の目撃などの被爆体験に起因する」云々ということでございますので、その意味を解すればそのようなことになるのではないかというふうに考えているということでございます。

赤嶺分科員 ですから、制度が始まるときは、そういう被爆を感じた人も、記憶はないけれども、しかしその後、あのときの体験を不安に抱き、そういう対象疾病を発症した人も対象だったんです。もっとわかりやすく言えば、記憶にある人もない人も対象だったんです。

 それを、今度の制度の見直しで、記憶にない人は対象じゃないと言ったんです。それで三千人も除外されたんです。まさにそういう人々を除外したということになるのではありませんか。そうであれば、除外した、そういう根拠を示すべきですよ。

 例えば、これまでも国はいろいろな調査報告書をつくってまいりました。このいろいろな調査報告書の中に、ゼロ歳児除外せよと明記したものがありますか。あったら挙げてください。

中島政府参考人 御指摘のように、除外せよという記述は、これはないものというふうに私どもも認識しております。

 ではありますが、先ほどからも何度も申し上げておりますように、この事業がそもそも立ち上がる段階において基づいた基本のデータというものが、先ほど申し上げたような、原爆の光の目撃などの被爆体験に起因するもの、そういった方についてこういった精神的な疾患というものが考えられるということに発しているということでございますので、当初、スタートにおいてそういった以外の方も入っていたということについては、検討会でいろいろ御議論いただいた結果、本来の趣旨にすべきではないかということになったというふうに考えております。

赤嶺分科員 大臣、今出たように、この制度が制度として成り立つまでには、国もいろいろな調査をやっているんです。

 長崎県・市は、被爆地域の拡大でした。それが実現せずに、今のような被爆体験者支援事業になりました。そのときに、やはりその地域で起こっているPTSD、精神的な障害に着目してこの制度をつくったわけですね。この制度をつくるまでにいろいろな報告書を出している。そして、調査をしてみたら、やはり精神的な健康不安を持っている人が多かった。だから着目したわけですよ。

 このときの調査の対象者は、ゼロ歳児の人たちも対象になっているんですよ。ゼロ歳児にも、やはり原爆被爆体験、そういう人たちも精神的な健康障害を引き起こす、データにはそれも入っているんですよ。ゼロ歳児はデータから除外されているんですか、当時の調査で。いかがですか。

中島政府参考人 私どもが過去のデータ報告を読む限りにおきまして、この事業の根拠となったデータは、主として先ほど申し上げたような方々であるというふうに理解をしておるところでございます。

赤嶺分科員 そのデータを集めるときには、当時ゼロ歳だった人も精神科医のいろいろな調査データの中に入っているんですよ。

 局長、余りこの制度を何か理解されていないような答弁が繰り返されておりますが、もう一度立ち返ってみてください。心の不安、いろいろな形で、記憶にある人もない人も起こりますよ。しかも、原爆に対する心の不安でしょう。原爆に対する心の不安を、国が本当に温かいケアをしていくのは当然じゃないですか。世界で唯一の被爆国ですよ。

 私も沖縄で生まれ育って、あの沖縄戦の悲劇というのを体験してきましたけれども、長崎に行って、原爆の被害というものは、これは通常の戦争とは本当に違う、もっと国が責任を持たなければいけないという決意を本当に抱くことができました。

 この制度、記憶にある人もない人も、スクリーニングのあり方を制度発足時に、もとに戻すという検討をすべきじゃないですか。いかがですか、大臣。

川崎国務大臣 たびたび申し上げますけれども、平成十六年に検討会を立ち上げ、改善を要する点があるという御指摘の中で今日の結論を得たわけでございますので、どうぞ御理解を賜りますようお願い申し上げます。

赤嶺分科員 その検討会の結論は、対象疾病を限定するとか、そういう限定的な報告なんですよ。そこには、当時幼少で記憶がない人は除外せよというのは一つもないですよ、局長も答え切れなかった。

 むしろ、記憶にあろうとなかろうと、心の不安というのは、やはり原爆の被害の意識というのは広がってくるものですよ。そこにやはり立ち返ることを強く要求いたしまして、時間ですから、私の質問を終わります。

森主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、徳田毅君。

徳田分科員 鹿児島二区選出の徳田毅でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、医療制度改革について何点か質問をさせていただきたいと存じますが、その前に、学童疎開船武州丸について一つだけ質問をさせていただきたいと思います。

 昭和十九年九月二十五日、徳之島の百五十四名の学童を乗せた学童疎開船武州丸が鹿児島に向け出航、同日午後九時ごろに米国の潜水艦の魚雷を受け沈没、同様の対馬丸については補償や慰霊が行われておりますが、現状ではこの武州丸については何も行われていないというところがあります。昨年二月二十五日にこの予算委員会第五分科会で川内博史議員から質問があったとは思いますが、その後の経過について教えていただきたいと思います。

大槻政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年のこの分科会におきまして、武州丸の沈没地点における洋上慰霊、この実施につきまして御議論があったところでございます。この議論を踏まえまして、平成十八年度予算案におきまして、南西諸島(洋上慰霊)として事項を計上いたしておるところでございます。

 今後、御遺族の要望を踏まえまして、南西諸島方面海域において戦没された方々の合同の洋上慰霊の形なども含めまして、どのような形で慰霊を実施していくのか、これから検討していきたいと考えております。

徳田分科員 ありがとうございます。

 大変ありがたいことだと、遺族の方も、そのような形で洋上で合同慰霊を行っていただければ本当に喜ばれるかと存じます。

 さて、本題に入りまして、今回の医療制度改革に当たって、少子高齢化の進展等を踏まえた将来的な医療費の適正化が中心的な課題になったように思われます。医療の質の向上を目指しつつ、医療サービスの効率化を図って医療費の適正化を進めていくことが重要でありますが、医療費の適正化に当たって、患者の視点と、もう一つは医療の最前線にいるドクターを初め医療従事者の視点というものに立って議論を積み重ねていく必要があるかと存じます。

 今回の医療制度改革の取りまとめに当たっては、経済財政諮問会議の民間議員等との議論ばかりが報道などは表に出てきたような気がしますが、政府案の取りまとめの検討過程において議論がどのように行われてきたのか、また、この医療制度改革に当たって最も重要な視点をどこに置くべきだと考えておられるのか、基本認識をお伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 今回の医療制度改革の検討状況でございますけれども、医療制度につきましては、急速な高齢化の進展等の環境変化に伴いまして、医療費の増大が見込まれる中で、安全、安心で質の高い医療を確保しながら、予防を重視し、人口構造の変化に対応できる持続可能なシステムをつくり上げていくことが必要であるという認識のもとに検討が行われたわけでございます。

 このような観点から、社会保障審議会を中心に進めてまいりました議論の成果も踏まえまして、昨年十二月一日に政府・与党において医療制度改革大綱として取りまとめまして、それに基づきまして、医療法等の一部を改正する法律案、それから健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、それぞれ国会に提出したところでございます。

 具体的には、今回の改革におきましては、医療法の関係で申しますと、医療計画の見直しを通じた地域において切れ目なく医療を提供するための医療連携体制の構築、患者さんに対する情報提供の推進、地域や診療科における医師不足への対応など、良質な医療提供体制確立のための改革に取り組むことといたしてございます。

 また、一方の医療費の適正化を進めるために、生活習慣病の予防や長期入院の是正といった中長期的な医療費適正化対策の計画的な推進、並びに保険給付の範囲の見直しなど、総合的な対策を行うことといたしてございます。

 さらに、医療保険制度体系全体の見直しといたしまして、高齢者の医療費負担の明確化、公平化を図るという観点から、七十五歳以上の独立した後期高齢者医療制度を創設する、あるいは都道府県単位を軸とした保険者の再編統合といったような改革を行うこととしているところでございまして、制度改革の軸足は、このように国民の目に立った持続の可能な制度の構築という視点で進めてきたところでございます。

徳田分科員 ありがとうございます。

 さて、医療制度改革をするに当たって、私は、やはり医療の質を確保する、また、さらには医療の質の向上を目指すことが必要不可欠であるというふうに考えています。その上で、やはり患者の立場に立ったといいましょうか、地域住民または患者のニーズを踏まえつつ、効率的な医療サービスの提供体制を構築していくことが大切だと思います。

 このような住民、患者にとっての救命救急医療や高度専門医療などの体制整備がこれからしっかりと行われていかなくてはならないと思いますが、例えば、地方に行き、高齢化が進んでいる地域ほど、例えば脳梗塞、心筋梗塞など専門的な医療が必要になってまいりますが、まだまだその辺が不足している、偏在していると思いますし、また、きょうも産科や小児科医の不足などが何度も議論をされてきたかと思いますが、特に小児救急についても、やはり都会であっても大変まだまだ不備な点があるかと存じます。

 政府として、今後重点的に取り組むべき分野はどのようなところにあるのか、現状において欠けているものはどのような点があると認識しているのかという部分について、教えていただきたいと思います。

松谷政府参考人 医療を提供する上での認識でございますけれども、良質で適切な医療を効率的に提供する体制を確立するということが基本的に大事だと思ってございまして、そのために今回の改正の中でも、医療計画制度を見直し、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、患者さんが切れ目のない医療サービスを受けることができるように、そして、その中で、脳卒中、がん、小児救急医療などの事項ごとに、地域における医療提供の連携体制の構築というのが極めて大事なことだと思ってございます。

 また、もう一つ大きな柱というか考え方でございますが、都道府県が医療機関に関する情報を住民にわかりやすく提供して、相談に応じる仕組みをつくる、あるいは、入退院時の患者さんへの文書による治療計画などの説明の義務づけなど、医療に関するいわゆる情報提供を推進するということによって、患者さんがみずから情報を得て、判断、選択ができるという基盤をつくっていくということが大事な問題だと思っています。

 また、今御指摘の僻地等の特定地域、あるいは小児科、産科などの特定の診療科における医師の不足問題への対応、さらには医療安全対策の推進といったことにも取り組んでいきたいと考えてございまして、医療制度は非常に幅広いわけでございますけれども、今申し上げましたような情報提供の推進、そして医療機能の分化、連携の推進といったことを通じながら、各般の対応をしていきたいと思っております。

徳田分科員 ありがとうございます。

 先ほどの話の中から、やはりこれからまたこの医療制度改革を進めていく上で、今後都道府県の役割というものが増すようになっていくかと思います。都道府県がこれからやはりその地域の情報を集約して医療体制を構築するということは、大変私は評価されるべきものだと思いますが、これまでにやはり都道府県というものが医療政策に大きくかかわることがございませんでしたので、都道府県における体制への不安、人材不足というところの声が聞かれます。

 今後、医療制度における都道府県の役割の重要性を踏まえた場合、人材の育成を含め、しっかりと国がその方針を示して、都道府県に対する支援が必要だと思われますが、どのように行っていくのかお伺いしたいと存じます。

松谷政府参考人 御指摘のとおり、医療につきましては、医療の提供、そして医療保険、両面にわたって都道府県の役割というものが非常に大事になっていく、また、そのようにお願いをする方向で今回の改革を進めていきたいと考えておるところでございます。

 今回の医療法改正によって見直すこととなります、例えば医療計画制度につきましては、平成二十年四月一日から各都道府県で実施していただく予定としているところでございます。このため、厚生労働省では、先般、都道府県の医療計画の作成に資するよう、モデルの医療計画、そして作成ガイドラインを提示したところでございます。

 また、平成十八年度には、新たに医療提供体制施設整備交付金を創設いたしまして、都道府県の医療計画による事業実施を財政面からも支援するということといたすとともに、厚生労働省におきまして、医療提供体制の確保に関する基本指針を策定する、そして全国で把握すべき共通の指標をお示しする、そして国としての数値目標などを提示する予定といたしてございます。

 あわせまして、全国規模の医療機能調査を実施いたしまして、平成十八年度には、その結果を公表することによりまして、各都道府県の医療提供体制の現状を明らかにするとともに、各都道府県が行います、それぞれの都道府県で医療機能調査が行われますけれども、それにつきましても、その基準をお示しして、その取り組みに資するように対応していくというふうに考えております。

 これは一つの例でございますけれども、このように、都道府県の役割が増大することに即しまして、都道府県の支援を強化してまいりたいと考えております。

徳田分科員 ありがとうございます。

 確かに、都道府県における医療体制の内容といいますか整備度というものがしっかりと明示されれば、どこがどのような形で不足しているかということが明確になってまいりますし、大変すばらしいことだと思います。

 都道府県の中でもまた小さな市町村が存在しまして、その中において、やはり地域の連携、医療機関の枠を超えた形でのクリティカルパスの導入促進を図ることも求められているというふうに聞いておりますが、この地域連携のクリティカルパスの普及に向けてどのような取り組みを進めるお考えか、お伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 地域の連携が大変必要だというのは御指摘のとおりでございまして、これは限られた医療資源を有効に活用して、効率的で質の高い医療を実現するという観点からも大変大事だと思ってございます。このためには、各医療機関、各地域における医療機関が適切に役割を分担して、医療機関同士が連携して疾病の状況に応じた適切な医療を提供していくという必要があるわけでございます。

 医療計画の見直しの中では、脳卒中、がん、小児救急医療などの事業ごとにその連携体制を構築して、それを具体的に医療計画に位置づけまして、住民、患者さんに医療機関や連携の状況を明示するということにいたしたいと考えてございます。

 具体的には、今御指摘がございましたけれども、各地域における関係者間で協議をしていただきまして、その合意を形成しながら、各医療機関や施設が有する医療機能について役割を分担して、そして医療機関や施設の間におきましては、例えば患者さんの診療計画、地域連携クリティカルパスでございますが、このようなことが開発されてございます、これを共有するといったような方策を普及するなど、互いの医療機能を補完し合って具体的な連携を推進するということによって連携体制を構築して、急性期から回復期を経て自宅に帰れるまでの切れ目のない医療提供体制の実現に向けて努力していきたいというふうに考えておる次第でございます。

徳田分科員 ありがとうございました。

 もう一つ、小児科、産科の医師の不足というものが大きな問題となっておりますが、特にまた小児救急についても大きな問題になっていると思います。

 小児救急の実情、現状を見ますと、夜間や休日に集中する、そしてまた、その患者さんの八割、九割は熱発などの軽症である。こういった現状を踏まえますと、小児科でなくてはならないというのではなくて、やはりこういった初期の小児救急においては内科医の活用を図るということも重要な取り組みだと思います。

 また、医師の臨床研修制度において、小児救急も含んだ初期の救急への対応能力を身につけるカリキュラムということも含んでよいのではないかというふうに考えますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。

 それともう一つ、そういったカリキュラムを組む、そういった体制を構築するために、研修医を指導する医療機関の質というものも求められます。こういった救急などがカリキュラムに盛り込まれている臨床研修指定病院の現状と、今後の国の取り組み、支援についてお伺いしたいと思います。

松谷政府参考人 小児救急は、御指摘のとおり、救急といっても、重症というよりも軽症の患者さんが時間外に来る、その負担をどのように分かち合うかということが非常に大事だというふうに思います。軽症の患者さんですので、いろいろな電話相談その他の仕組みによって対応するというようなことも大事ですし、病院における小児科のお医者さんが疲弊しないように、地域での開業の小児科のお医者さんと連携をとるといったようなことも大事かと思っております。

 そういった中で、小児科医に限らず、内科医の活用のお話も今ございました。このようなことから、臨床研修制度の中におきましても、御存じのとおり、平成十六年度から、学校を卒業したドクターにつきましては、卒後の臨床研修が必修化になったわけでございますけれども、その制度の中で、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しながら、一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身につけるということを目的としているわけでございます。

 小児科につきましては、その制度の中で、必修科目として、すべての研修医が一カ月以上研修することとされてございまして、小児のけいれん性疾患あるいは小児のぜんそくなど、小児救急の現場でよく遭遇する疾患につきましては、みずから経験することを求めているところでございます。

 今後とも、現場の声を聞きながら指導医のためのガイドラインの改善を行うなどによりまして、研修の内容が一層充実するよう取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 臨床研修を行う場としての臨床研修指定病院、臨床研修病院でございますが、その現状についてというお尋ねが加えてございましたけれども、臨床研修病院につきましては、大学の附属病院と並びまして、臨床研修の場として非常に大事なものだと思っております。

 厚生労働省では、基準を定めまして、審議会で厳正に審議をした上で病院の指定をしているところでございまして、各病院で、小児科を含めた、今申し上げたような一般的な診療で頻繁にかかわる疾病にきちんと対応できるような基本的な診療能力を身につけた、プライマリーケアがきちんとできるドクターの育成ができるような病院というものを育成しているところでございますし、また、そこで指導するお医者さんというのが非常に大事でございますので、先ほど申し上げましたように、その指導医のための研修等も行って、この改善を進めているところでございます。

徳田分科員 ありがとうございました。

 小児科医というのは大変不足しており、特に小児救急というものは今、医療現場においても大変、もう本当に一生懸命頑張る人たちが苦しい思いをしているというのが現状です。数年前にも小児科の方が週に三日、四日当直をされて自殺をされたという方もいらっしゃいましたし、そして、若いお医者さんも、本当に志を持って小児救急に入ったにもかかわらず、激務に耐えかねてやめるという方もいらっしゃいます。どうかその改善ができたらということを思います。

 ここで実例を一つ挙げさせていただきたいと思います。十二月二十二日の読売新聞にあった記事です。

 一昨年八月、三歳だった男児が自宅でコンニャクゼリーをのどに詰まらせ意識を失った。すぐに救急車が到着し、母親は助かったと思ったが、それからが地獄だった。心肺停止状態の男児に救急隊員たちは懸命に心臓マッサージをしながら、二分以内で行ける地域の基幹病院に受け入れを要請したが断られ、その後、他の五病院にも次々に搬送を拒否された。男児を乗せたまま自宅から救急車は動かず、母親は涙ながらに隊員に詰め寄った。最初の連絡から十二分後、再度の要請で基幹病院が受け入れを承諾、ようやく救急車は走り出しましたが、男児はその夜亡くなった。このトラブルが起きたのは平日の午前九時過ぎで、その基幹病院には計五名の小児科医がいた。当初の受け入れ拒否の理由は、熱性けいれんの患者がおり、蘇生に必要な酸素を送る設備が足りないだったが、その小児科とは別に救急外来にも酸素の設備があり、母親は病院を提訴した、こういう事件がありました。

 この事件において、私は、この一つの基幹病院だけに問題があるのではなく、その前に五件の病院にも断られているということもありますし、この基幹病院だけに問題があるのではなくて、もっと根本的なところに大きな問題が存在し、それが経常化しているからこそこういう悲しい事件が起こったのだと思います。

 その一つの対策として、やはり今の救命救急体制というのは、ある意味では、性善説に基づいた、ドクターであれば、指定病院であったら必ず入れるというものに基づいた形で構築されているのではないか。本当に医師の医療人としてのモラルの問題というものがあると思います。

 もう一つは、この救命救急体制というものが、もう少し消防と医療というものが一体化して、一体となったシステムを各地区、都道府県ごとにしっかりと構築すること。例えば、子供であればこの病院、何時から何時まではこの病院、循環器であればこの病院ということをしっかりと決めて、事前に、もう走っている段階から、救急車の隊員たちは安心して連れていける、行く病院の目的がはっきりしているという形になれば、やはり地域において救命救急を担う基幹病院というものは、大きな義務と責任というものが働いてくるのではないかと思います。こういった視点からも、どうかこれからの医療制度改革、この救命救急も含めた医療制度改革を行っていただきたいというふうに思います。

 最後に、一つだけ、脳死臓器移植法についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 これも二、三日前の新聞なんですが、多摩市で生後八カ月の女の子なんですが、石榑愛ちゃんという子供が、拡張型心筋症で余命半年と診断されております。米国で心臓移植を受けられる、この受け入れ先が決まっておりまして、今両親の友人たちが寄附を募っている。米国で移植手術を受けるためには、手術費や渡航費などで約一億三千六百万円必要だということであります。

 今の臓器移植法において、今の現法では、本人の生前の意思表示と家族の同意というものが二つ必要になってまいります。そして、十五歳未満の小児での生前の意思表示が認められていないことから、小児の脳死臓器移植というものは不可能であります。この結果、この愛ちゃんのように海外で移植手術を受ける例が毎年七例から八例あるというのを聞いておりますが、その一方で、心臓の移植を必要とする子供たちのほとんどが機械的循環補助装置というものが必要となっておりまして、重篤な病状と、こういった経済的理由から海外渡航心臓移植というものができない小児例というものも存在いたします。こういった現状に対してどう受けとめておられるか。

 また、今回の愛ちゃんの件については、先ほど申し上げましたとおり、一億三千六百万も集めなければいけないのにかかわらず、現在のところは四百五十万ほどしか集まっていない。余命半年という中で、本当に間に合うかどうかわからないんですが、何かしら国として援助措置を検討できないものか、お伺いさせていただきたいと思います。

中島政府参考人 ただいまお話にありましたように、我が国の患者さんの方々が国内で移植を受けられないために海外に渡って移植を受けておられるというこの現実については、大変に残念なことであるというふうに思っております。これは、患者さんのみならず、御家族の方々を含めまして、渡航費用や手続などにおきまして大変な御苦労をされているということなので、国内においてできる限り多くの方々が臓器移植を受けることができるようにしていくことが重要であると考えてございます。

 また、先ほどお話にもありましたように、現状では、体の小さな小児への心臓等の移植は事実上できない状況があるということも御指摘のとおりでございます。こうしたために、このような点も含めた臓器移植法の見直しにつきまして、これまで各党あるいは国会等で御議論がなされ、さきの通常国会において議員立法による改正法案が二案提出されたわけですけれども、審議に至らず廃案になったという経緯がございます。

 厚生労働省といたしましては、こうした議論を注視しつつ、臓器移植法に基づき、臓器提供に関する意思がより尊重されるようにするとともに、移植医療について国民の理解を深めていくことなどを通じまして、移植医療を適正に実施し、一層の推進を図っていきたいと考えております。

徳田分科員 ありがとうございます。

 内閣府の調査では、六〇・七%が十五歳未満からの臓器提供ができるようにすべきだという調査結果も出ております。やはり今のこういう現状では、海外任せだ、また、お金がある人たちだけがいい医療を受けられるような状況であると言っても過言ではないと思います。

 私も小さな子供が二人おりますが、この愛ちゃんの両親の気持ちをかんがみますと、やはり本当に言葉にならないほどの悲しみがあり、そして、子供の命を守るために本当にわらをもすがる思いがあると思います。法整備がおくれている、おくれているとは言わないかもしれませんが、今こうした現状の中で、検討をしていくだけではなくて、何かしら方法がないものかまた考えていただければ、検討していただければというふうに思います。

 まだ時間が余りましたが、私からは以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

森主査 これにて徳田毅君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時五十六分散会


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