衆議院

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第2号 平成22年2月26日(金曜日)

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二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      田村 憲久君

平成二十二年二月二十六日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席分科員

   主査 伴野  豊君

      岡本 充功君    沓掛 哲男君

      中林美恵子君    江田 康幸君

      富田 茂之君

   兼務 宮本 岳志君

    …………………………………

   厚生労働大臣       長妻  昭君

   文部科学大臣政務官    高井 美穂君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   厚生労働大臣政務官    足立 信也君

   厚生労働委員会専門員   佐藤  治君

   予算委員会専門員     杉若 吉彦君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  岡本 充功君     福田衣里子君

  富田 茂之君     江田 康幸君

同日

 辞任         補欠選任

  福田衣里子君     岡本 充功君

  江田 康幸君     佐藤 茂樹君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤 茂樹君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  高木美智代君     富田 茂之君

同日

 第六分科員宮本岳志君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十二年度一般会計予算

 平成二十二年度特別会計予算

 平成二十二年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

伴野主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成二十二年度一般会計予算、平成二十二年度特別会計予算及び平成二十二年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮本岳志君。

宮本分科員 大臣、政務官、おはようございます。日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、放課後児童健全育成事業、いわゆる学童保育についてお伺いしたいと思います。

 学童保育は、親の就業を保障するというだけでなく、子供たちにとって、かけがえのない遊びと生活の場でありまして、育ちの場となっております。かく言う私の二人の子供たちも、かつて学童保育にお世話になって育ってまいりました。

 私はこの間大阪で、学童保育の指導員さんたちや子供たちから、直接、学童保育のすばらしさ、値打ちについて、いろいろと話を聞かせていただいてまいりました。

 日本で最初の学童保育所は大阪市東住吉区の今川学童保育所で、一九四八年に開所したと言われておりますから、学童保育というものはもう六十二年の歴史を持ちます。

 ただいまと元気な声で帰ってくる小学一年生、そして、お帰りと温かい声で返事を返す指導員。勉強道具がいっぱい詰まった重たそうなランドセルをおろし、早速、きょう学校であったことを指導員に一生懸命話し始める姿は家庭そのもので、話を聞く指導員も、子供たちの学校での生活に変化はないかと気を配る。また、学校には行けなくとも学童には行けるという子供たちもおります。学童保育は留守家庭の子供たちのオアシスだと語られておりました。学童っ子として育った子が今は二十になり、同じ学童で指導員として働いている、次は親として我が子も学童で育てたい、そういう感動的な話もお伺いをいたしました。

 まず、厚生労働大臣に確認をいたしますけれども、政務官で結構ですけれども、児童福祉法第六条の二第二項では、放課後児童健全育成事業をどう規定しておるでしょうか。

山井大臣政務官 宮本委員にお答え申し上げます。

 放課後児童クラブについては、児童福祉法第六条の二の二項において、放課後児童健全育成事業として位置づけられております。

 具体的には、この法律ではこの育成事業とは、「小学校に就学しているおおむね十歳未満の児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。」というふうに規定をされております。

宮本分科員 適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る、これが大切なところだと思います。

 ただ単に遊ばせておけばよいというものではありません。あくまで、保護者が仕事で昼間家庭にいない子供たちにとって、学童保育は生活の場であり、指導員はいわば親がわりの役割も負っているわけであります。だからこそ、ただいまと帰ってくればお帰りと迎え、親のかわりに一日学校であったことも聞く。これは、児童福祉法に定められた福祉事業であって、親にかわって生活の場を保障するかけがえのない事業だ、これは大臣、間違いないですね。

長妻国務大臣 今言われた趣旨だと思います。

 保育所から小学校一年生になって、やはり親御さん、働かざるを得ない方、御心配だと思いますけれども、この放課後児童クラブはその延長線上にもある非常に重要なシステムだと思っています。

宮本分科員 二〇〇七年四月からスタートした放課後子どもプランは、当初、文部科学省の放課後子ども教室と厚生労働省の放課後児童健全育成事業を一体的あるいは連携して実施する総合的な放課後対策という表現がとられておりました。そして、すべての小学校区での実施が目指されておりました。

 しかし、ことし一月二十九日に新政権のもとで閣議決定されました子ども・子育てビジョン、私もこれを見せていただきましたけれども、この中での書きぶりは少し変わっております。このビジョンの中の施策の具体的内容では、「「放課後子どもプラン(放課後児童クラブ・放課後子ども教室)」の推進」として何と書かれてあるか、これも政務官、ひとつお答えください。

山井大臣政務官 子ども・子育てビジョン、施策の具体的内容、私もこの作業に実務としてかかわらせていただきましたが、その中では、「「放課後子どもプラン」などの取組について、全小学校区での実施を図るため、放課後児童クラブと放課後子ども教室を連携して実施する総合的な放課後児童対策を推進します。」というふうに記載をいたしました。

宮本分科員 放課後児童クラブと放課後子ども教室を連携して実施という表現になり、一体的という言葉が抜け落ちているわけです。実は、これは非常に大きな意味を持つことだと思います。

 自公政府のもとで始まった放課後子どもプランについては、この一体的という表現があったために、関係者からも大きな不安と懸念が表明をされてまいりました。

 二〇〇六年六月一日の衆議院青少年問題に関する特別委員会、私、これも会議録をすべて読ませていただきましたけれども、この特別委員会でも、この一体的という表現のために、この本来別々の意義を持つ事業が一本化されてしまうのではないか、あるいは学童保育がなくなってしまうのではないか、我が党はもちろんでありますけれども、自民党の委員も民主党の委員も、とにかくみんながその不安と懸念を表明しております。そして、当時の馳浩文部科学副大臣も、厚生労働省の北井久美子雇用均等・児童家庭局長も、これまでの放課後児童クラブの果たしてきた機能、役割が損なわれないようにするという旨の答弁を繰り返しておられます。

 今回の子ども・子育てビジョンでこの一体的という言葉が抜け落ちたことは、放課後児童クラブと放課後子ども教室という本来別々の意義を持つ事業は、連携は必要だとしても、まるで一体化してしまうかのような誤解を与えることのないようにするというふうに理解してよろしいでしょうか。

山井大臣政務官 この策定に私もかかわりましたので、お答えさせていただきます。

 放課後子どもプランは、放課後等の子供の安全で健やかな活動の場の確保を図る必要があるということで、すべての小学校区において、先ほど言いましたように、放課後児童クラブと子ども教室推進事業を一体的あるいは連携して実施する、こうなっていたわけですが、先ほど私も答弁しましたように、今回の子育てビジョン、子どもプランの中では連携して実施するとなっております。

 これは、宮本委員御指摘のように、さまざまな議論があることは私たちも承知をしておりますが、プランの実施方法の趣旨を変更したものではないと私たちは理解をしております。そして、両事業を一体的あるいは連携して実施するかどうかは、地域の実情に応じて、自治体の判断により実施するものと考えております。宮本委員のおっしゃる意味は、よく理解をしております。

宮本分科員 これはやはり、きちっと議論をしていただかなきゃならない問題なんですね。

 それで、実態は、二〇〇六年当時のみんなの危惧というものは、実は現実のものになりました。一体的という名目での学童保育の形骸化が各地で進められてきたというのは事実なんです。私の地元、大阪市などでは、放課後子ども教室と学童保育とを区別すると逆に差別になるので、区別はしない方がよいなどという論まで堂々と飛び出しているありさまであります。

 今回の子ども・子育てビジョンでも、「「放課後児童クラブガイドライン」を踏まえ、放課後児童クラブの質の向上を図ります。」こういう表現も出てまいります。

 これも確認いたしますけれども、学童保育の質を向上させる上で、二〇〇七年十月に出された放課後児童クラブガイドライン、これを踏まえることが大切だという立場には変わりはありませんね。

長妻国務大臣 先ほど山井政務官も、地方の実情に応じてという話で、大阪市の資料も入手しましたけれども、放課後子ども教室と児童クラブを組み合わせたり、いろいろ三つぐらいのメニューでやられていると聞いておりますけれども、ただ、その根本にあるのは、今おっしゃられた放課後児童クラブガイドラインというのが基礎にあるわけであります。

 中身は言うまでもありませんけれども、集団の規模についてはおおむね四十人程度までとすることが望ましいとか、最大七十人までとするとか、あるいは、土曜日や長期休業期間等は保護者の就労実態等を踏まえて八時間以上開所ということで、夏休みもやっていただくような、こういうガイドラインというようなものについては変わっておりません。

宮本分科員 では、現場でこのガイドラインが守られているかということをお伺いしたいんです。

 大阪市では、いきいきクラブと呼ばれる学童保育の事業と、全児童対象のいきいき活動というものは、まさに一体的にやられてまいりました。ある小学校では、それぞれの表札はかかっているものの、いきいきクラブ室では遊びを中心とし、いきいき活動室では受付と宿題など学習をすることになっております。また、別の小学校でいいますと、学校施設の一階でいきいきクラブをやり、二階でいきいき活動をやるというふうに部屋を分けているものの、日常的には一階のいきいきクラブを全体で使用し、いきいき活動の部屋はほとんど使われていない、こういう実態があります。

 政府が踏まえることが大切だと今おっしゃっている放課後児童クラブガイドラインでは、「児童のための専用の部屋または間仕切り等で区切られた専用スペースを設け、生活の場としての機能が十分確保されるよう留意すること。」「子どもが生活するスペースについては児童一人あたりおおむね一・六五平米以上の面積を確保することが望ましい。なお、子どもが体調の悪い時などに休息できる静養スペースを確保すること。」等々を示しております。

 ガイドラインに照らしても、およそ、いきいきクラブに生活の場としての機能が保障されているとは言いがたいと私は思いました。これが学童保育とみなされて、国からの補助金対象となっているというのは一体どういうことなんですか。

山井大臣政務官 今、大阪市の事例を御指摘いただきました。

 確認になりますが、平成十九年度に策定した子どもプランにおきましては、児童クラブと子ども教室を一体的あるいは連携して実施することにより推進するということを定めておるわけですが、ただし、これは委員御指摘のように、当然、放課後児童クラブとしての質が確保されていることを前提としたものであります。

 この放課後児童クラブと放課後子ども教室を一体的に実施する場合においても、放課後児童クラブの補助の要件を満たしていることが必要であります。事業の実施主体である大阪市において、補助の要件に照らし、運営状況を御確認いただいているものと考えております。

宮本分科員 それは当然のことであって、ガイドラインに沿ってきちっと基準を満たしていただかなきゃならないわけですけれども、しかし、このガイドラインというものが技術的助言だとされておりまして、決して最低基準という扱いになっていないわけですよ。

 このガイドラインを出した二〇〇七年十月十九日の局長通知というものも私は読ませていただきましたけれども、最低基準ではない、こう書いてあるんですね。同時に、放課後児童クラブを運営するに当たって必要な基本的事項を示し、望ましい方向を目指すものだとも書いてあるわけなんです。

 必要な基本的事項を示すというのであれば、本来、最低基準と言うべきだと私は思う。そういう形でガイドラインを運用してきて、もう二年たちます。そして、現に実態、現場で起こっていることは、これを一体的という表現で、必要な基準すら守られないという事例があるわけですから、学童保育が望ましい方向へ進むためには、ガイドラインをもっと充実させる、そしてやはり最低基準に格上げすることを検討すべきではないか、私はそう思いますけれども、大臣の御見解をお伺いいたします。

長妻国務大臣 今御指摘の放課後児童クラブガイドラインでは、クラブとして望ましい運営内容を目指すためのガイドラインという位置づけになっておりまして、一方で、やはり地域の実情に応じた運営をお任せしていくということも必要だ。

 つまり、待機児童、保育所ではそういうふうに呼びますけれども、放課後児童クラブの定員が本当にどういう状況なのかというのは地域によっても異なりますので、一律にこのガイドラインを最低基準として義務づけるということに関しましては、やはり地方の自由度、事情、そういうものに応じた対応がなされるべきだというふうに考えておりますが、当然、このガイドラインの趣旨をよく御理解していただいて運営をしていただくというのは大前提にあるというふうに考えております。

宮本分科員 地方の自由度に任せておけば、今申し上げたような事例が生じているということを私も指摘させていただいたわけですから、ぜひ御検討いただきたいということを申し上げて、次の質問に移りたいと思うんです。

 この放課後児童クラブガイドラインでは、職員体制、それから指導員についても定めております。どのように定めてあるか、政務官、お答えいただけますか。

山井大臣政務官 放課後児童クラブガイドラインにおいて、職員体制については、「放課後児童クラブには、放課後児童指導員を配置すること。放課後児童指導員は、児童福祉施設最低基準第三十八条に規定する児童の遊びを指導する者の資格を有する者が望ましい。」と記載をされております。

 私自身、大学時代、児童福祉施設の、まさに放課後の子供の遊び相手を六年間やっておりまして、そこで福祉に関心を持ったということもありますが、やはりこういう職員体制というのは非常に重要だと思っております。

宮本分科員 今答弁にありましたように、ガイドラインでは指導員について、児童福祉施設最低基準第三十八条に規定する児童の遊びを指導する者の資格を有する者が望ましいとして、放課後児童指導員の役割について、子供の人権の尊重と子供の個人差への配慮、あるいは保護者との対応・信頼関係の構築など六つの留意点を示すとともに、七つの活動というものを列挙しております。この七つを、これも政務官、ひとつお願いします。

山井大臣政務官 放課後児童クラブガイドラインにおいて、放課後児童指導員の活動について、次のとおり書かれております。

 (1)子どもの健康管理、出席確認をはじめとした安全の確保、情緒の安定を図ること。

 (2)遊びを通しての自主性、社会性、創造性を培うこと。

 (3)こどもが宿題・自習等の学習活動を自主的に行える環境を整え、必要な援助を行うこと。

 (4)基本的生活習慣についての援助、自立に向けた手助けを行うとともに、その力を身につけさせること。

 (5)活動状況について家庭との日常的な連絡、情報交換を行うとともに、家庭や地域での遊びの環境づくりへの支援を行うこと。

 (6)児童虐待の早期発見に努め、児童虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所や保健所等の関係機関と連携して対応を図ること。

 (7)その他放課後における子どもの健全育成上必要な活動を行うこと。

と記載されております。

宮本分科員 今、七つ読み上げていただきましたけれども、本当に専門的で、そしてやはり相当大きな役割が求められているわけです。児童虐待の早期発見に努め、児童虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、きちっと関係機関にも連携してそれに対応するということも求められるわけですね。

 まさに、学童保育指導員は、昼間家庭にいない保護者にかわって、いわば親がわりの役割をも果たさねばなりません。だからこそ、ガイドラインにも、放課後児童指導員としての資質の向上ということがきちんと掲げられております。つまり、全児童対象の放課後子ども教室における指導者と違って、特別の専門性が求められる、これは明瞭なことだと思うんですけれども、大臣、この点の御確認をお願いしたいと思います。

長妻国務大臣 これは確かに、余り御存じない方は、子供と遊ぶ方だという認識程度の方もいるかもしれませんけれども、小学校一年から三年ぐらいの子供を、本当に親がわりで、今言ったような非常にデリケートな心を持っておられる時期でありますので、非常に専門的な知識も必要だ、大変な仕事だと一言で言えば思います。

 現在、二十一年五月現在ですけれども、指導員の七割が児童の遊びを指導するなどの資格を有しておられるというふうに聞いておりまして、今後とも、そういう皆様方が専門知識をつけていただくために、厚生労働省としても後押しをしていきたいと考えています。

宮本分科員 大臣から大変心強い答弁をいただいたわけです。

 ところが、何と、その専門性を持つべき多くの学童保育指導員が極めて不安定な雇用のもとに置かれているわけです。

 全国学童保育連絡協議会の二〇〇七年の調査によれば、回答を寄せた指導員六万四千三百人中、公営の学童保育で正規職員となっているのはわずか二千六百人。それに対し、非常勤や嘱託、パートといった非正規職員が二万八千四百人。法人など民間で運営されているところでは、正規職員は一万四千五百人。非正規職員が一万八千八百人。両方合わせても、圧倒的に、指導員は非正規職員として働いておられます。

 二〇〇六年三月十五日、衆議院厚生労働委員会で、当時の川崎厚生労働大臣は、放課後児童クラブにおける職員と児童の関係は、児童の健全育成の観点から重要であることから、職員にはできる限り継続的に勤めていただけるよう、自治体において研修の充実などに配慮していただくことが重要だと答弁されております。

 前政権でもこういうふうにおっしゃったわけですから、これはもう、新しい政権の長妻厚生労働大臣、この立場に変わりはないと思いますが、いかがでしょうか。

山井大臣政務官 大臣の前に、私も一言。なぜかといいますと、川崎大臣に質問をしたのは私でありますので。

 当時から、宮本委員御指摘のように、やはり専門性を持ってもらうためには継続した雇用が望ましいというふうに私自身も思っております。

 やはり、長妻大臣からも御指摘ありましたように、ただ単に遊ぶだけではなくて、子供にとってはすごく重要なひとときを過ごすわけでありまして、小学校の時間よりも逆に学童クラブの時間の方が夏休みも入れると長くなっていますし、子供にとっては、かた苦しい授業というのを超えて、本当に先ほどおっしゃったようなオアシスを提供する、そういうさまざまな、ある意味で学校の先生にまさるとも劣らない専門性というのがこれから必要となってくるのではないかと思っております。

長妻国務大臣 川崎厚生労働大臣の議事録も拝見しておりますけれども、基本的には立場は変わっておりません。

 継続的な勤務が望ましいということでありますけれども、その一方で、やはり職員の方を自治体が確保しなきゃいけない、こういう要請もあるのも事実でありまして、その中で、今はこういう、今おっしゃられた非正規、正規の比率になっているということであります。

 いずれにしても、継続的な勤務、そして専門性、知識の向上ということについては、今後とも我々としては進める立場にあるということです。

宮本分科員 しかし、今現実に自治体の現場で起こっていることというのは、できる限り継続的に勤めていただけるようになどというものではないんです。

 全国学保連の先ほどの調査によれば、勤務できる年数に制限を設けている自治体が、回答を寄せた七百七十一自治体中、百五十五自治体ございます。私の地元である大阪では、豊中市、茨木市、寝屋川市、枚方市、四条畷市などで、指導員が三年任期の任期つき雇用に置きかえられてきております。

 総理は施政方針演説で、「放課後児童対策の拡充など、子供の成長を担う御家族の負担を社会全体で分かち合う環境づくりに取り組みます。」こう述べられたわけですけれども、こんな雇用の現状では、子供たちの成長と発達を保護者や教師らとともに支える指導員の専門性も継続性も守られない、こういうことだと思うんです。

 これは厚生労働大臣、そういうふうに思われませんか。

長妻国務大臣 これは一般の企業でもそうなんですけれども、非常勤で、正社員とか正職員を望まれる方全員がそういう形になるというのは理想だと思いますけれども、いろいろな事情、財源等々でそういう形になっている部分もあるということでありまして、基本的な立場としては、質の向上ということで、クラブ指導員の研修費用の補助なども行って、これは毎年度やっておりますけれども、そういう形で我々は支援をしていきたいと考えております。

 そしてもう一つ、先ほど御紹介いただいた子育てビジョンを受けて、新しいシステム、幼保一元化も含めた、子供の育ちをどう現物支給で支援していくか、こういう検討会が始まりますので、その中でもよくそれは議論をしていきたいと思います。

宮本分科員 私、今議事録を、青少年特でやられた議論もここに持ってきたんですけれども、かつて厚生労働省は、このガイドラインをつくる過程で、まだ厚生労働省の放課後児童クラブにおけるガイドラインが出る前ですけれども、これをつくる前にどういうものを参考にするかという議論をやっておりまして、我が党の石井郁子衆議院議員の問いに答えて、財団法人こども未来財団が発表した放課後児童クラブにおけるガイドラインに関する調査研究というものについて当時の厚生労働省の村木さんが、こども未来財団の調査研究報告、大変いい内容でございまして、私どももこれをしっかり参考にしてガイドラインをつくりたい、こういうふうに答弁しておるんです。これは政務官でいいですけれども、事実ですね。

山井大臣政務官 宮本委員御指摘のように、子供と安定的に継続的なかかわりを持てるように配置されることが求められるという、このような記述、これはまさにこれからも守るべきであると思います。

 私の地元でも、学童クラブの指導員の方が、非常にすばらしい指導員さんだったんですけれども、やはり余りにも雇用が不安定で先が見えないということで、その仕事は好きだったんですけれども、泣く泣くほかの仕事に転職されてしまったという本当に残念な残念なケースがあって、子供たちも大変悲しんだというケースもありますので、やはり、継続して、プロの仕事としてやっていけるようにしていかねばならないと思っております。

宮本分科員 ぜひ、そういう方向で頑張ってください。

 最後に、社会保障審議会の少子化対策特別部会での議論で気になる点を一つ確認しておきたいと思うんです。

 学童保育を全国的に実施していくことや、小学校全期を対象として量的拡大を図っていくことや、質の維持向上を図るべく制度上の位置づけや財源のあり方を検討する、これは大いに賛成でありますけれども、しかし、非常に危惧されるような議論も出てきております。多様な体験活動を保障すると称して、地域のボランティアや定年退職者など多彩な人材の参画が、指導員の質の確保の中で論じられているわけです。

 先ほどから議論しているように、指導員には保育士や教師のように高い専門性が求められます。指導員がいた上で、多様な体験活動を保障すべくボランティアや定年退職者の力もかりるというのならば、学童保育の質の向上にもつながるかもしれません。しかし、この部会では、指導員の配置の基準や指導員への研修などを議論しておりまして、多彩な人材を安易に指導員にとってかえる、こういうことがあったのでは、指導員の質の確保どころか、学童保育の質そのものが守れないと思うんです。

 厚生労働省として、多彩な人材という言い方で、安易に指導員としてこれを入れかえるというようなことはないと私は思うんですけれども、その点を最後に確認して、私の質問を終わります。

長妻国務大臣 昨年の九月一日、少子化対策特別部会でいろいろ議論があって、地域ボランティア、定年退職者など多様な人材の参画とありますけれども、もちろん、放課後児童クラブで、これまでやっていた方が全くいなくて、地域ボランティアの方だけでやるということではありませんで、きちっと専門知識を持った方がいた上で、そういう方々の御協力もいただいて、行く行くは、御関心があって専門知識を身につけるということであれば、そういう方々に仕事についても同じ立場で参画していただく、そういう趣旨だと考えております。

宮本分科員 ありがとうございました。

伴野主査 これにて宮本岳志君の質疑は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田(康)分科員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、命を守りたい、命が第一である、そう主張しておられる鳩山政権のその先頭で闘っておられる長妻厚生労働大臣に、命を守る政策の一つ一つについてお伺いをさせていただきたいと思っております。

 きょうは、難病対策について、HTLV1の感染予防対策について、またアレルギー対策について、時間のある限り御質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 大臣は、HAM、また遠位型ミオパチー、さらには再発性多発性軟骨炎という病気について御存じでしょうか。

 HAMという病気につきましては、人の白血球に感染するHTLV1というウイルスが感染して起こる、脊髄の神経麻痺を起こす病気でございます。また、発症すると排尿障害、歩行障害、そういうさまざまな障害が出てまいります。重症になってくれば、強い痛みを伴いながら、寝返りが打てない。根本治療法が見つかっていない状況では、だんだん歩けなくなって、車いす生活に移ってしまって、いずれは寝たきりになる。そういう自分の姿を想像して生きていかなければならない。そういう精神的な苦痛を伴う過酷な病気でございます。

 また、遠位型ミオパチーという病気がございます。これは、体の中心部から遠いところの部分から徐々に筋力が低下していく進行性の筋疾患でございまして、有効な治療薬、そして治療法はない難治性の疾患でございます。国内でも、二十から三十代の若年で発症して、筋力低下とともに、やはり歩行困難、そして日常生活全般に介助を要して、やがて寝たきり。経済的にも大きな負担を強いられる。この宣告、診断は、患者さんにとっては不治の病の宣告を意味している、そういう過酷な病気もございます。

 さらには、再発性多発性軟骨炎という病気もございます。これは、軟骨炎というのは軟骨が溶けていくんですよ。だから、外形とか鼻が突然陥没したり、耳がなくなる。こういうような病気ですから、もう全身、体じゅうに、関節に痛みが走るわけでございます。激痛ですよ。胸に来たらどうなるかといえば、呼吸困難になって亡くなっていく方が何人もいらっしゃいます。

 こんな病気も、まだ難病、いわゆる特定疾患の治療研究事業の対象にはなっていない。公費で医療費を助成するという対象になっていない。こういう方々がいっぱいいらっしゃる。そして、その声を、叫びを我々は聞いてきて政策に生かしていきたい、そういうことでずっと活動させていただいております。

 きょうお聞きすることでございますけれども、国の難病対策には難治性疾患克服研究事業と特定疾患治療研究事業の二つがございますね。患者団体と我々公明党の長年の主張もありまして、難治性の克服研究事業の予算が百億円と大幅に拡大されました。これによって、臨床研究調査分野は新たに、先ほど言ったHAMとかクッシング病など七疾患が追加されて百三十疾患になりましたし、また、研究奨励分野が新たに設けられて、遠位型ミオパチーやまた再発性多発軟骨炎など百七十七疾患が対象になりました。大きな進展でございます。

 しかし、鳩山政権の来年度予算の概算要求の時点で七十五億円にこれが削減されておりまして、昨年の臨時国会で我が党が強く要求したことによって百億円に戻された経緯がございます。

 これは大臣もよく御存じだと思いますが、概算要求で一たん削減した理由は何なのか。また、もとに戻した理由は何なのか。百億円が有効に使い切れていないというような話も聞きますけれども、厚生労働省の研究の採択状況というのはどうなっていて、また、研究内容は事業の趣旨に合った適切なものになっているのか、お答えをいただきたいと思います。

長妻国務大臣 今るる御紹介いただいた、大変重篤で厳しい病気でありますけれども、遠位性ミオパチーの患者さんの方とは、先日、私も大臣室で直接お会いをいたしまして、本当に深刻な御病気であるということは私も認識をしております。

 そして、今の点でありますけれども、当初は、概算要求の段階で確かに七十五億円ということにいたしましたのは、ほかの研究分野の予算でそれが対応できるというような判断がありましてそういう形にさせていただいたんですけれども、ただ、公明党も含めていろいろ御指摘をいただき、さらにこれは財政当局とも交渉をして、前年度と同額の計上ということになったわけです。

江田(康)分科員 さらに話を進めさせていただきますけれども、前政権の公明党の主導で、特定疾患の治療研究事業が大幅に拡充をしました。新たに十一疾患を追加して、対象は五十六疾患となったわけでございますけれども、これも画期的なことであると思います。

 これは、平成二十一年度の補正予算の措置でございますけれども、恒久的な予算措置はなされているんでしょうか。その場合、過剰になってくる地方の負担についてはどのように対処されようとしているのかということでございます。

 本来、国と地方は一対一、五対五でございます。それが今や、国が三、地方が七という過剰な負担が地方にかかっている。このような問題についても、将来的に、恒久的にどのようにしていくのか、伺います。

長妻国務大臣 特定疾患治療研究事業ということでありますけれども、これも公明党を初め、いろいろな皆様方の御尽力で十一疾患が加わったということであります。

 それ以外についても、医療費助成も含めた御要望は多く寄せられているわけでありますけれども、やはり安定的な財源確保が大きな課題だというふうに考えておりまして、今後の難病対策のあり方を今鋭意検討しておりますので、その中で、個々の疾患を医療費助成の対象とすることについては、その結果を踏まえて我々は決定していきたいと思います。

江田(康)分科員 抜本的な改革で検討していくというお話ですが、もう一つ、前政権で決めたその他数疾患の追加についても見送りました。これも、先ほど来の難病の患者さん、また患者団体の方から多くの要望が大臣のもとにも届いていると思います。

 その他数疾患について、見送った理由は何なのか。また、来年度予算で追加するべきと考えますけれども、改めてお聞きいたします。

長妻国務大臣 この十一疾患で、追加で四十三億円増加の二百七十五億円なんですけれども、御指摘のように、その他疾患という御議論がありまして、五ないし六疾患という議論があったというのも十分承知をしておりますけれども、それにつきましては、我々も財源の問題も含めて十分検討していくということで、個々の難病の助成の全体像の見きわめの中で、これは継続的に審議をするという状況に今なっています。

江田(康)分科員 やはりその答弁は、難病の抜本改革の中で検討していかざるを得ないということでございますが、これは、前政権で十一プラスその他数疾患まで決めて予算措置をとっていたわけでございます。やはり、それについては多くの人たちが失望している。

 今後の抜本改革についてお話を進めさせていただきます。

 まもなく四十年になろうとする日本の難病対策も、新たな展開が必要になってきていると思います。今回の難治性疾患克服研究事業の対象疾患の大幅拡充、また、特定疾患治療研究事業への十一疾患の追加というのは、大きな前進でございます。

 しかし、難病と言われる疾患は、大臣も御存じでしょうけれども、五千とか七千とかいうような多くのものがあるわけでございまして、ある疾患は対象にする、またある疾患は対象にしないというような、こういう現在の制度が果たして公平と言えるのか、不公平なことが許されるのか、こういうことがあります。

 また、経済的な問題として、難病やがんなどの慢性疾患を持つ患者、家族の皆さんは、例えば二百万円ぐらいの年収だと、高額療養費の月々八万円の限度額の医療費をずっと払い続けなければいけないわけでございます。二百万円の収入で月々八万円を払い続ければ、年間百万円です。二百万円で百万円の医療費を、一カ月なら払えるかもしれないけれども、二カ月だったら払えるかもしれないけれども、難病の患者さん、またがんなんかの慢性疾患の患者さんは、生きていく限り払い続けなければいけない。これは極めて困難なことでありますけれども、現実に、そういう低所得でありながら、生きていくために必要な高額な医療費を負担している患者がたくさんいる現実の中で、高額医療費の負担上限額は本当に適切なものなのか、こういうような大きな問題がございます。

 さらには、小児慢性特定疾患治療研究事業のキャリーオーバーの問題もありますよね。

 昔は二十歳を超えて生存することができなかった小児の難病が、医学の発達等でかなり多くの病気の患者さんが二十を超えて生存しています。しかし、二十の誕生日からその制度を利用できなくなって、医療費は一挙に三割の負担となる。フェニルケトン尿症の皆さん方からも、強い叫びの声を聞いております。子供のころから、あるいは生まれたときから、その病気でさまざまな困難な中で生きてきた子供たちが、二十になった途端に三割の医療費を払わなくちゃいけない、こういうような大きな問題があります。

 厚生労働省は、この問題を、一方は児童福祉法に基づく福祉事業であって、そして大人の難病は医療法に基づくものである、医療と福祉が違うということでこれを放置してきた、こういうような状況も私は事実としてあると思っております。

 こういうような大きな問題を抱えている現在の難病対策を見直すときが来ていると、大臣、私は強く主張したいわけでございますが、現在の難治性の克服研究事業は、難病対策をそこに特化して、すべての難病を対象に研究を進めるべきではないか。一部の難病だけではなく、すべてをそこに特化して進めるべきではないかと考えます。ここに予算を集中して、一日も早い原因の究明と治療法の開発を進める、これが多くの患者さんの共通の願いであると思っております。

 もう一つは、生涯にわたる医療費の負担軽減は健康保険制度で支えるべきではないかという提言です。また、小児慢性特定疾患の二十問題、キャリーオーバーの問題も同時に解決して、生涯にわたって高額な医療費を必要とする長期慢性疾患の問題も解決するような、そういう抜本改革でなければならないと思っております。

 そういうような意味で一つ提言をさせていただくのが、これらを解決するものとして、公明党は、この国会でもそうですが、高額療養費の負担上限の大幅引き下げを提唱してまいりました。これは、難病だけにかかわらず、高額な医療費を必要とするがんなどの長期慢性疾患等においても重要な提言でございます。高額療養費は、同じ月内に同じ医療機関で払った費用を世帯単位で合算して、自己負担限度額を超えた部分が払い戻されるという制度ですよね。

 一月の二十二日、衆議院の予算委員会で井上幹事長が、七十歳未満の方の一般区分を二つに分けて、収入の少ない方の自己負担額を引き下げてはどうかと質問して、鳩山総理は、重要な課題である、検討をしてまいりたい、そう約束をいたされました。

 また、一月二十七日の参院の予算委員会で山口代表は、一回の医療費が二万一千円を超えないと世帯で合算できないという問題、また、月をまたぐと合算できないという問題、さらには、同じ病院でも診療科が別なら別計算になる、さらに、病院が別なら別計算、こういう制度の不備を公明党から指摘をさせていただいた。これに対して長妻大臣が、科が別だと合算できないので、ことし四月から改善すると明言をされました。

 ほか三点の指摘に対しては、大臣、どうするのか、また、自己負担上限額の引き下げも含めて、いつまでに検討して実施していくのか、これらの難病の抜本改革とこれは軌を一にしているかと思うんですけれども、その工程表についても大臣からお伺いをしたいと思います。

長妻国務大臣 高額療養費について、これは今国会でもいろいろ御提言をいただいて、今もいただいたわけでありますけれども、この二万一千円を超えないと世帯で合算できないということにつきましては、レセプト電子化の進展でそれが改善できるのかどうか、つまり、二万一千円より少ない方も合算ができるのかどうかというのは、保険者の事務負担についても御意見を聞きながら、可能かどうか、これは検討は進めていくということであります。

 また、もう一点の自己負担限度額の引き下げということでありますけれども、公明党の井上委員から、所得区分一般をさらに二つに分けて、平均よりも所得が低い方々の自己負担限度額を引き下げてはどうかと具体的にいただきました。

 この点についても、長期慢性疾患患者の方々の負担の現状を把握するとともに、医療保険の厳しい財政状況を踏まえると、保険者の御意見を十分にお伺いする必要があると考えております。先ほどの運用改善の点とあわせて、平成二十二年度において、患者や保険者、医療関係者が入った社会保障審議会でも議論をしていくということにしたいと思います。

江田(康)分科員 どうぞ、大きく着実に進めていただきたいと思います。

 最後は提言でございますけれども、そのほかに、難病対策というのは、難病の患者さんというのは一般の福祉、例えば生活支援とか福祉とか、身体障害者福祉法だけでなく自立支援法も、また介護保険法も対象にならないというような問題もあるんですね。難病の患者さんも、一律に病気だから福祉の対象にならないということではなくて、その必要性に応じて福祉サービスを受けられるような制度にしていくということも抜本改革に入れなくてはなりません。

 こういうところにおいては、各制度や法律を我々政治が整理してつなげていくという形での難病対策基本法が不可欠であるということを公明党は強く提言したいと思っております。また、これから与野党にも呼びかけてまいる、そういう所存でございますので、大臣、政治主導でそれを支えていただきたいとお願いをして、残り時間が少ないんですけれども、HTLV1の総合対策について御質問をさせていただきます。

 HTLV1というのは、ヒトT細胞白血病ウイルスでございます。これは、先ほど言った神経難病のHAMとか、もしくは血液のがんである成人T細胞白血病、ATLを引き起こす重篤なウイルスです。

 我が国のキャリアは、人口の約一%の百二十万人も存在します。これは肝炎患者さんと同じレベルとも言える。ATLやHAMに対する有効な治療法はないです。発症予防法も確立されていないために、キャリアの皆さん方は、発症への不安を抱えながら生活をしなければならないという状況にございます。

 このHTLV1の主な感染経路は、現在では献血がスクリーニングされておりますから完全に予防されておりまして、現在は母子間感染が主経路と言われております。これは断乳または三カ月の短期母乳による感染率が大幅に低下することが証明されておりますので、母子間感染予防対策による効果は確実に期待がなされるわけです。

 一九八〇年代に、日本の研究者、高月先生や納先生や日沼先生らがこのウイルスを発見した、病気を発見した。ここの十年は非常に大きく進みました。しかし、その後、九〇年代に入ると、重松班の研究報告で、放置しても感染者は自然に減少して、将来消滅するだろう、九州、沖縄の風土病であり、それ以外の地域では対策は不要、もしくは、全国一律の検査や対策は必要ないとされて、組織的な取り組みがなされてこなかったんです。しかし、ATLの死亡者は毎年千人以上と、確実にふえ続けている。

 また、平成二十年度から厚生労働省の山口班の研究がスタートしました。改めて調査すると、全国の推定患者数は約百八万人、九州、沖縄に限らず、関東と近畿の大都市圏で感染が広がっている、したがって、我が国のキャリアは余り減少していない、全国に拡散する傾向がある、こういうことが二十年ぶりに報告されたわけでございます。

 これらの情報を背景にして、我が国のHTLV1感染対策の大幅な見直しをやるということで、HTLV1感染総合対策等に関する有識者会議が設置されました。

 それで、質問に入りますけれども、この有識者会議の目的は、HTLV1の感染総合対策の体制を国が確立すべしということでございます。母子間感染予防対策については、これまで全国的な取り組みは行われてきておりません。鹿児島と長崎県の二県のみでこれがなされた。その結果は、断乳とか三カ月の短期母乳をすれば、感染率は十分の一まで下がる、二〇%から二ないし五%以下まで下がるということが証明されています。しかし、妊婦の抗体検査は、二県以外では組織的な取り組みが行われておりません。ですから、母子間感染の予防の取り組みがなされていないで、これは母子間感染が放置されてきたと言えるんですよ。

 これは、費用対効果という理由で、母子感染予防対策の介入を地方行政の判断に任せた国の責任ではないかと私は思うんです。また、感染数が自然に減少する可能性に依存して、非常に不確実、消極的な政策によるものであって、発症予防法や治療法が確立されていない現状においては、新たな感染の被害を受ける国民の人権を軽んじたものではないか。大臣としてはどのように受けとめているのか、あわせてお伺いをしたいんです。

 それともう一つ、この妊婦の抗体検査の実施状況や産婦人科医を初めとする医療関係者のHTLV1感染予防意識に対する実態把握を早急に実施するべきだと思います。それとあわせて、全国一律の妊婦の抗体検査を実施すべきであるということを強く提言申し上げたい。感染の実態把握と感染拡大防止の観点から、少なくとも妊婦の抗体検査は国が公的補助を実施すべきであるということもあわせて主張したいと思いますが、大臣の見解をお聞かせいただきたい。

長妻国務大臣 今、いろいろな論点をおっしゃっていただきましたけれども、このHTLV1の感染についてはいろいろな課題がありまして、これは先ほど言及していただいた、昨年の七月三十日に、有識者の方など、研究者、患者団体も参加した感染総合対策等に関する有識者会議というところで議論をするということであります。

 そして、母子感染予防について、地域ごとに異なるという御指摘ですけれども、これはまず、ウイルスの保有率に明確な地域格差があるという点や、母乳を与えなくても二%から一〇%程度に感染が起こるということ、あるいは告知による妊婦への精神的負担などが指摘されておりまして、地域の実情に応じた対策が望ましいというふうにされてきたのも事実だと考えております。あるいは、関係学会のガイドラインでも、一律の母子感染予防は推奨されていないというようなことが言われておりますけれども、いずれにしても、先ほどの検討会等で議論はするということ。

 あとは、全国の妊婦さんに対する抗体検査について、全国にそれを広めていく、プラス公的補助を実施する必要があるのではないかという御指摘でありますけれども、これについても、今後の妊婦に対する検査については研究をしておりまして、本年度中に研究成果が出てまいります。本年度といいますともう来月でございますけれども、そういうものも見きわめて、我々としては適切に対応するということであります。

 いずれにしても、その有識者会議の先生方あるいは患者さんの方からの御意見を十分聞きながら検討するということです。

江田(康)分科員 有識者会議で議論がなされております。それに対して迅速に反応をしていくべきだということを改めて申し上げておきたい。なぜなら、今でも母子間の感染は起こっている。そういう母子間感染の予防対策を中心として、私は、HTLV1の感染拡大の予防や、また検査体制の充実、そして発症予防法、治療法の開発、さらには基礎研究をどう推進していくのか、普及啓発活動も重要だ、こういうようなことに関して、HTLV1の感染総合対策を、これは肝炎対策の総合対策に匹敵するようなものにしていかなければならない、また、国が先頭に立って、責任を持って強く進めていかなければならないと思っております。

 これらについて、この国の政策を、HTLV1の感染総合対策が立ち上げられて、着実にこれが進められるよう、また、それは縦割りではなくて、関連局や関連室や、厚生労働省に限らず、このすべての関係部局が横串でそうやって取り組んでいけるように、私は、HTLV1の感染対策基本法の制定を呼びかけたいと思っております。こういう法律にのっとって大きくこのHTLV1の感染総合対策が進むことを期待したいと思っております。

 もうほとんど時間がない、最後の一分かもしれませんが、アレルギー対策も大変重要な課題でございまして、今や、国民の三人に一人以上がぜんそくやアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症などのアレルギーの病気に悩んで、特に子供たちの間でふえ続けております。

 我が党は、この十年間、アレルギー対策を大きく前進させてきたわけでございますけれども、その結果、二億円だった予算は今や百億円に拡充されて、国の臨床研究の拠点である臨床研究センターや基礎研究の拠点である免疫アレルギー科学総合研究センターがつくられてまいりました。そうやって治療研究が進む一方で、しかし、地域においては適切なアレルギー医療を受けられる体制がなかなか進められていない。残念ながら、すべての地域で適切な情報や医療、学校での支援を受けるまでには至っていないのが現状でございます。

 住んでいる地域にかかわらず、正しいアレルギー医療が受けられて、学校などあらゆる場面で生活の質を高める支援が受けられる効果的な政策を推進することが、今まさに求められていると思っております。これらの施策を国の責任のもとで強力に推進するために、アレルギー疾患対策基本法の制定を公明党は主導して、今国会で成立を図ってまいりたいと思っております。

 最後のアレルギー対策については、全く質問する時間はございませんでした。私の時間の調整不足でございます。

 大臣、きょう、難病対策、またHTLV1の感染総合対策、そしてアレルギー疾患対策と、この命にかかわる政策、どうぞ、大臣、先頭に立って大きく進めていただきますように、心からお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伴野主査 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午前十時一分散会


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