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第4号 平成14年7月23日(火曜日)

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(注:この議事情報は、「決算行政監視委員会第一分科会議録第2号」のデータです。)
平成十四年七月二十三日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      岩永 峯一君    小西  理君
      渡海紀三朗君    宮路 和明君
      井上 和雄君    石井 紘基君
      川内 博史君    木下  厚君
      原口 一博君    細野 豪志君
      赤嶺 政賢君    大森  猛君
   兼務 今野  東君 兼務 一川 保夫君
   兼務 藤島 正之君 兼務 瀬古由起子君
   兼務 北川れん子君 兼務 東門美津子君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   環境大臣         大木  浩君
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 村井  仁君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   環境副大臣        山下 栄一君
   会計検査院長       金子  晃君
   会計検査院事務総局次長  関本 匡邦君
   会計検査院事務総局第一局
   長            石野 秀世君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   政府参考人
   (内閣府沖縄振興局長)  武田 宗高君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 渥美 千尋君
   政府参考人
   (外務省大臣官房領事移住
   部長)          小野 正昭君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  西田 恒夫君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君
   政府参考人
   (海上保安庁次長)    津野田元直君
   政府参考人
   (環境省総合環境政策局長
   )            炭谷  茂君
   政府参考人
   (環境省環境管理局長)  西尾 哲茂君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  小林  光君
   決算行政監視委員会専門員 川城 正彰君
    ―――――――――――――
分科員の異動
七月二十三日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     細野 豪志君
  石井 紘基君     原口 一博君
  大森  猛君     赤嶺 政賢君
同日
 辞任         補欠選任
  原口 一博君     石井 紘基君
  細野 豪志君     川内 博史君
  赤嶺 政賢君     吉井 英勝君
同日
 辞任         補欠選任
  川内 博史君     井上 和雄君
  吉井 英勝君     塩川 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  塩川 鉄也君     大森  猛君
同日
 第二分科員今野東君、一川保夫君、藤島正之君、第三分科員瀬古由起子君、第四分科員北川れん子君及び東門美津子君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十二年度一般会計歳入歳出決算
 平成十二年度特別会計歳入歳出決算
 平成十二年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十二年度政府関係機関決算書
 平成十二年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十二年度国有財産無償貸付状況総計算書
 〔会計検査院、内閣府(警察庁)、外務省及び環境省所管〕


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     ――――◇―――――
持永主査 これより決算行政監視委員会第一分科会を開会いたします。
 平成十二年度決算外二件中、本日は、内閣府所管中警察庁、環境省所管、会計検査院所管及び外務省所管について審査を行います。
 これより内閣府所管中警察庁について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。村井国家公安委員会委員長。
村井国務大臣 おはようございます。
 平成十二年度の警察庁関係の歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 平成十二年度の歳出予算現額は三千百四十七億九千四百四十二万円余でありまして、支出済み歳出額は二千九百五十二億四千九百七十七万円余であります。
 この差額百九十五億四千四百六十五万円余のうち、翌年度へ繰り越した額は百二十八億四千百五十万円余であります。
 また、不用となった額は六十七億三百十四万円余であります。
 以上、警察庁関係の歳出決算につきまして御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度警察庁の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして内閣府所管中警察庁についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤島正之君。
藤島分科員 自由党の藤島正之でございます。
おはようございます。
 きょうは、原発の警備の問題についてお尋ねしたいと思います。
 その前に、村井国家公安委員長に、我が国の安全保障の考え方といいますか、現在、緊急事態法制が与党の方から出ておりまして、自由党の方からも対案が出ているわけですけれども、この原発の問題も大規模テロの問題と絡んで微妙に、我が国の安全保障とのかかわりが非常に大きいものですから、その点の基本的な考え方についてまず委員長にお尋ねしてから、細かい点に入りたいと思います。
 かつて、米ソが対立していた時代、世界が二極にあった時代、これは我が国もいや応なくどちらかの陣営に入っていなければいけないので、歴史的な関係もあって米国の陣営に入っておったわけですけれども、その際に、日本の有事といいますと、旧ソ連が我が国に侵攻してくる、これが安全保障問題を考える際の一つの大きな点だったわけであります。
 そうしますと、我が国の生存自体にかかわる、そういう事態がまず念頭にあって我が国の体制も整備されてきた。そのために、自衛隊を一生懸命整備し、米軍との関係における日米安全保障体制も非常に緊密な形でもってきたわけですけれども、これが、ソ連の崩壊ということになりまして、米国の一国ひとり勝ちみたいな形になってきましたら戦争がなくなるかと思いましたら、逆に、小さい戦争がいっぱいふえてきている。
 我が国を取り巻く環境も、そういうことで北の脅威はなくなってきたわけですけれども、西といいますか、朝鮮半島を含む、あるいは台湾海峡を含む、そちらの方の脅威が現実の問題として出てきておる。これは、最初に申し上げたように、我が国の生存自体が脅かされる、そういったふうな安全保障の問題に直ちに影響してくる、そういった安全保障ではなくて、緊急事態という意味では全体を広くとらえた緊急事態なんですけれども、むしろ、治安状態に対する脅威、こういったものが大きく側面として出てきている。
 そんなふうな考え方からしますと、沿岸警備にしろ、警察の果たす安全保障に対する役割、これが従来に増して飛躍的に任務として増大してきている、こんなふうに私は感じるわけでありますが、公安委員長のお考えをお伺いしたいと思います。
村井国務大臣 長年、日本の安全保障政策の立案、推進に携わられた藤島委員の御経験に基づく御見解でございます。
 私は、いわゆる治安維持という問題、これはすぐれて警察がその任に当たるという立場だと思っておりますけれども、最近の現象というのは、確かに今御指摘のように、外国から日本の治安を乱すようなさまざまな働きかけが、それも、しかも正規軍といいましょうか、あるいは正規の政府の力によるものではなくて、よく見えない外の力によって乱される、そういう可能性を非常に大きく含んでおりまして、そういう意味では、シナリオが大変書きにくい、そういう情勢になってきているんじゃないかという感じがいたします。そういう意味で、私ども、今までつくってまいりましたさまざまの治安維持の仕組みというものが果たして今のままでいいのかどうか。
 それから、特に有事法制の御議論に関連いたしまして、いわゆる武力事態法の議論に関連いたしまして、国民を本当にどうやったら守ることができるのかという御議論がございましたが、これを守る任務というのは第一義的には警察が担っているはずでございますけれども、そういったところへの御認識も十分ちょうだいしながら、もう少し建設的な議論をお互い重ねなきゃいけない、そういう主題なのではないか。
 そんなような感じがいたしておりますとともに、我々が享受している自由と民主主義、言論の自由あるいは移動の自由、行動の自由、さまざまの自由をある程度制約することによってようやく治安の維持ができるというような局面も出てきている。そういう意味では、すべての人権というものをそのまま自由にしておきながら、それで安全も確保するということが果たして成り立つのかどうか、そういうところまで議論を深めなきゃならない局面に来ているのではないかという問題意識を持っております。
藤島分科員 おっしゃるとおりだと思うんですね。今回の政府が出している緊急事態法関係も、そこの点がまだ研究が詰まっていないというところはあると思うんですけれども、確かに、国民の権利との関係で非常に微妙な部分が出てくる。これはもうこの法律といいますか、緊急事態の際の必要、避けられない部分だろうとは思いますが、その部分の議論は別の機会にすることにして、きょうは、テロ対策といいますか、その中でも一番重要なのは、私は原発の問題があるんだろうと思うんですね。それで、この原発の警備について絞ってお尋ねしたいと思います。
 というのは、私、実は出身が新潟県の柏崎で、世界最大の原発があるわけでありまして、もう数回見ておりまして、大変広い、きちっと整備されておるんですけれども、いろいろ話してみますと、責任者の方々が非常に心配しておるんですね。そこで、きょう、あとは担当の政府参考人で結構なんですけれども、全国的な原発警備の考え方といいますか、実態についてお尋ねしたいと思います。
漆間政府参考人 お答えいたします。
 警察といたしましては、昨年九月十一日に米国で同時多発テロ事件が起きまして、その直後から、全国の原発と原子力関連施設につきまして、必要な警戒員あるいは必要な装備、資機材をもって、まず、基本的に原発等に不審車両、不審者が入ってこない、このようにするために、その阻止を専門に行う警察官をゲートの前に立たせるとか、施設周辺の警戒を行うとか、そのようないろいろな手法を事業者と連携をとりながらやってきております。
 さらに、さきに行われましたワールドカップの警備に際しまして、原子力発電所等を管轄する関係警察に機動隊に特殊銃の訓練を受けました銃器対策部隊というのがございますが、その銃器対策部隊で原子力関連施設警戒隊というのを編成するなどいたしまして、さらなる警戒の強化を図っておりまして、現在もこれは続けております。
 この中で、新潟にあります柏崎の刈羽原発につきましても、新潟県警が同様の仕方で警戒をしているところであります。
藤島分科員 それでは、海上保安庁はどうでしょうか。
津野田政府参考人 海上保安庁におきましても、昨年九月十一日のアメリカにおける同時多発テロ事件発生直後から、全国十七カ所にありますすべての原子力発電所につきまして、事業者に自主警備の強化を要請しました。また、最寄りの海上保安部署等との緊急連絡体制を確立するなど、連携強化を図ってきたところでございます。さらに、巡視船艇を常時配備するというような形で警備に万全を期しているところでございます。
 柏崎刈羽原子力発電所につきましても、これは第九管区海上保安本部の所管になりますけれども、新潟海上保安部と緊急連絡体制を構築しまして、それから船艇につきましては、九管本部所属の巡視船艇のみならず、全庁的に巡視船艇の運用を図りまして、ほかの原子力発電所と同様に、巡視船艇を常時配備して警備に当たっているという状況でございます。
藤島分科員 それでは、同じように、防衛庁はどうでしょう。
北原政府参考人 御答弁申し上げます。
 まず、原発等の警備につきましては、第一義的には、ただいま警察庁あるいは海上保安庁から御説明がありましたように、警察機関が対応する、そのように考えているところでございますけれども、こうした一般の警察力をもちましては治安を維持することができないといったような場合につきましては、私ども、治安出動によりまして自衛隊が対応するということになります。
 その対応するに当たりまして、私ども、常日ごろからの警察機関との緊密な連携が重要と考えておりまして、仮に治安出動が下令された場合につきまして、迅速かつ円滑に自衛隊と警察が連絡あるいは協議等ができますように、既に、現地部隊レベルにおきまして、治安出動に係ります現地協定もすべての県で締結を終えたところでございまして、これによりまして、万々一、治安出動が下令されるといった事態が生起した場合におきましては、現地におきまして、これら協定に基づきまして適切に対応してまいりたいと思っているところでございます。
 なお、申すまでもなく、自衛隊内部といいますか、もし万々一、武装工作員等がそういった原発等を襲撃するといったような事態が発生した場合につきましては、私ども自衛隊におきましては、速やかに隊員の呼集などの必要な準備を行う等によりまして、事後の治安出動が下令されました場合に、迅速に武装工作員等の襲撃勢力の鎮圧など所要の活動を行うことができるように対応してまいりたいと思っております。
 なお、先ほど先生御指摘の柏崎刈羽原発でございますけれども、この近傍におきましては、これももう先生御承知のところでございますが、私たちの部隊といたしましては、まず高田の駐屯地、ここに第二普通科連隊、さらに第五施設群がございますし、また、北の新発田の駐屯地につきましては第三十普通科連隊が駐屯いたしておりますが、先ほど申しましたような事態が生じた場合につきまして、私どもといたしましては、治安出動が下令されましたら、そのような場合には、初動の段階では、これら部隊などが地元の新潟県警等の警察機関と緊密に連携いたしまして対処してまいりたい、そのように考えているところでございます。
藤島分科員 その防衛庁の問題ですけれども、今、高田、新発田という名前が出たんですが、柏崎はそのちょうど真ん中にありまして、両方から非常に遠いんですね。車で急いでも一時間ぐらいかかる。そういう状況で、最初に申し上げたような国家の生存をかけたような戦争ですと、前兆もあるし、いろいろわかるんですが、テロみたいな場合に、その準備が余り整わないうちに起こる可能性もあるので、なるべく近いところにないと、実際問題として、一時間もかかって行ったんじゃ間に合わないんじゃないかな、こういう気がするんですね。
 これはあと要望なんですけれども、そういうことで、高田、新発田のほかに柏崎近辺に、小なりといえども原発の警備を兼ねた部隊、こういったものが配備できないかどうか、あるいは、部隊配備でなくても、運用上何がしかの部隊が配備できないか。これは北原局長の範囲じゃないので、防衛庁の方にそこの点の検討を要望だけきちっとしておきたい、こう思います。
 次に、警察の方なんですけれども、実はこの間、署長さんとお会いしまして、いろいろ話を聞いたんです。
 今、パトカーで年じゅう、二十四時間パトロールしているわけですけれども、その人がいないんですね。百人足らずの警察署に、さっきワールドカップの話がちょっと出ましたけれども、同時に新潟とあったわけなんですが、ただ、短期間でしたら、それは休暇も返上してもらって警備可能なんですが、これは三百六十五日休みなくやらなければ意味がないわけでありまして、そうしますと、実際問題、人のやりくりが大変なんですね。そうしますと、どういうことになるかといいますと、交番とかに張りつけている人を抜いてこなければいかぬのですね。そうすると、今度、そちらの方の治安の問題も影響が出てくる。これが現実なんですね。
 百人足らずでローテーションを組んで、パトカーで二人か三人、組みますと、結局、三回ずつ回しても十人くらいの人が常時要るという計算になりますと、警察署の一割ぐらいをそこに張りつけなければいかぬ、こんなふうな現実になる。短期間ならそれも十分可能なんですが、長期間になりますと大変きついんだと。これが実態だろうと思うんですね。
 こういう点について、警察庁としては、警備局長、どういうふうに考えておられますか。
漆間政府参考人 確かに委員御指摘のように、特に国際テロとの闘いという形になっておりまして、いつ終わりを迎えるのかわからないという状態でありまして、その中で、特に柏崎の原発につきましては、新潟県警が常時警備するという体制をとっております。
 これにつきまして、現段階におきましては、先ほど委員から御指摘がありましたように、警察署の方も見ておるんですけれども、実は、先ほど申し上げましたように、機動隊の方も原子力関連施設警戒隊という形のいわゆる特殊銃を持った部隊をまた置いてあるわけでありまして、この部隊については、今、新潟県警だけでやりくりをしているという状況でありますが、これがまた新たなテロがどこかから起こるとかいうような事態の変化が起こってくれば、またほかのところの警察の銃器対策部隊というのがございますから、これを応援派遣するなり、その辺のことも検討しなきゃならぬと思っています。
 いずれにしても、情勢に応じて全国的な形で原発に対して警戒体制をきちっとやっていけるように、そういうような支援体制もきちっと考えていきたいというふうに思っています。
藤島分科員 もうちょっと具体的に、定員の増加とか、要するに、今おっしゃったように、これからずっと終わりなくやらなければいかぬ、それは常時やらなければいかぬ、こういうことなので、やはりそれなりに、これは柏崎だけじゃないわけですけれども、各原発全部、そういう心配があるわけですよ。正直言って、今の警備では、やりくりの中でやっているせいもありますけれども、現場では非常に不安を持っているんですね。恐らく、柏崎だけじゃないんだと思うんですね。その点について、警察庁として、各県に、機動隊の一部を時折割くというんじゃなくて、恒常的な形できちっとしたものをつくる必要がある、こう私は思うんですけれども、どうでしょうか。
村井国務大臣 昨年九月十一日の同時多発テロ以来、ある意味では私どもも非常に強く認識しなきゃいけないと思っておりますことは、ソ連の崩壊によりまして、いわゆる東西のイデオロギー対立というものがなくなって、日本の国内でも、いわゆる治安情勢がある一定の安定を得た、一方では、来日外国人による犯罪などがふえて、そういう意味での治安というのはまた悪化が懸念されている、いわゆる体感治安が悪くなったというような問題、犯罪の増加というような問題があるわけであります。一方で、公安的な意味での警備警察と申しましょうか、そういうものの必要度が減ったというふうに認識されていたのが、去年の同時多発テロを通じまして、決してそうではないんだと。先ほど委員御指摘になられましたテロの問題なども含めまして、もう少しいろいろ考えなきゃいけないんだということは、私も同じ認識でございます。
 そういう意味で、この状態というものは決してそう短時間に消滅するものでもございませんし、これからも十分いろいろな意味で警察力の配分につきましても意を用いていかなければならない点ではないか、そんなような気がいたしております。
 それから、大変申しわけございません、先ほど委員が御要望として防衛庁運用局長に仰せになられましたが、少し柏崎の原発に手近なところに自衛隊の部隊配備があった方がいいのではないかという御指摘がございました。
 それはそれで一つの御見解だと思いますが、ただ、自衛隊が出ますのには、私の理解しておりますところでは、いわゆる治安出動の下令というのが必要なことは、もう釈迦に説法でございまして、申し上げるまでもございません。それにつきましては、国家公安委員会の開催でございますとか、それに前置される手続があることもまたこれは委員十分御案内のとおりでございます。
 さような意味で、物理的に接近したところに所在する必要があるかどうかという以前に、どのような対応を緊急の場合にするのかということは、私ども、常に考えていかなきゃならない課題でございまして、そういう意味では、第一義的に、こういった治安の維持に当たります警察がきちんとした対応をするのが一番大事であろう。
 そういう意味で、先ほど警備局長が申し上げました特殊銃の配備など、これは国際的な水準から見ましても遜色がない、相当な武装勢力に対しても十分に対峙できる武装であり、体制を整えつつあると思っておりますが、こういう点でなお意を用いてまいるということが大切であり、さらには、治安の維持というのは、情報の収集というのがやはりどうしても大事でございまして、そういう意味では、先ほど私もちょっと申し上げましたような、いろいろな意味での今の日本の仕組みの見直しというものが本当は大事なんじゃないだろうか、こんなような感想を持っておりますことを、ちょっと余計なことでございますが、申し上げさせていただきました。
藤島分科員 確かに、自衛隊の行動に関してはいろいろ法的な問題があるんですけれども、今の法の体制でいいのかどうかは緊急事態法の範囲の中でまた考え直さなければいかぬと思うんですね。だから、今の現行法制を前提とすればそういう問題があるんですけれども、ほかに、自衛隊の行動について、緊急事態にいろいろ考えていく必要があるんだろうと私は思います。
 と同時に、現実問題として、今おっしゃったように、警察は警察として警備に万全を尽くしてもらわなければいかぬのですけれども、現場というのは非常に不安があるわけですね。やはりそこは、自衛隊がそばにいるというだけで随分違う面があるんですね。どうしても自衛隊の装備というのは警察と違う面があるわけでありまして、そういう意味で、現場では、やはり自衛隊がそばにいてくれるという安心感というのは非常に多いし、それは抑止力になると思うんですね。そういう意味で、私は、ぜひ検討してほしい、こう申し上げておきたい。それは、警察の範囲を自衛隊が侵すとか、そういう問題じゃなくて、現場の、そういう抑止力に対する希望が非常に強いということなんですね。
 今、公安委員長からお話がありましたけれども、私は、現実の問題として、本当に治安上どうのこうのなる前に、ふだんの体制としての警察の警備について、先ほどのような現場の観点から、きちっと人のやりくりをできるように措置してほしい、こう思うわけです。
 といいますのは、無理してやっていますと、どこかでほころびが必ず出るんですよ。これは必ず出ます、現場というのは。それをきちっと見て大所高所から手当てをするというのが警察本庁のやる仕事だろう、こういうふうに思いますので、装備面もそうですけれども、人の手当てをきちっとぜひお願いしたい。検討はされているようですけれども、ぜひ積極的にそういう点をお願いしたいなと思っています。
 公安委員長も先ほどおっしゃったように、機動隊が相当あって、その時代、大規模な国家的な意味での反政府行動が起こって、そこと機動隊が対立するような、そういうのはそんなにこれから考えられないかもわからないんですね。むしろ、局地的なテロといいますか、そういう危険性。
 特に、私は何でこう申し上げるかというと、やはり日本海側にあって北朝鮮がすぐ対岸にある、拉致問題も新潟の方で起こっているというようなことも実は背景にありまして、そういう意味で、太平洋岸にある原発とちょっと違う象徴的な意味がありますので、特にそこら辺を、ほかの原発とは違うという意味、世界最大というのもありますし、そういう意味で象徴的な面もありますので、ぜひ御配慮していただいて積極的にそういう手当てをお願いしたい、これは要望しまして、質問を終わります。
持永主査 これにて藤島正之君の質疑は終了いたしました。
 次に、細野豪志君。
細野分科員 民主党の細野豪志でございます。
 こうして村井大臣に御質問させていただきますのは、この国会が始まりました直後に所信表明を伺いまして、その後、内閣委員会の方で一度質問させていただいた記憶が非常によく残っております。
 その際、私が比較的重点を置きまして質問させていただいたのが、ワールドカップの件でございました。私は、ワールドカップに対して、成功させていただきたいなという思いとともに大変懸念を持っておりまして、そういう中で、村井大臣が御答弁いただいた中で、前向きに御答弁いただいた部分、また、日本の治安が今問われているんだという問題意識を持っていらっしゃる部分、大丈夫かなと思いながらも期待をして見ておったところ、さまざまな要因があったんだと思うんですけれども、最終的には大過なく警備を終えられたということ、これは本当に心より国民の一人としてお礼を申し上げたいというふうに思います。
 警察の皆さんというのは大変な努力をされているというのは、承知をしております。問題があれば大騒ぎになるわけですけれども、問題がないと、褒めてくれる方はほとんどいないという、非常に厳しい任務として皆さんに課せられているというふうに思っておりまして、その点からして、私の方から一言そのことを冒頭に申し上げておきたいというふうに思います。
 一方で、残念ながら、きょう質問させていただきたいのは、ワールドカップの件ではございませんで、村井大臣、よく記憶されていると思いますが、去年の七月二十一日に起こりました明石市における雑踏事故の件についてでございます。
 村井大臣の前回の御答弁を伺っていましても、非常に前向きにいろいろなことをお考えだし、考えを整理されて、実際に警察という大きな組織を引っ張っていらっしゃる方だというふうに、私は個人としては非常に信頼申し上げているんですが、先日、五月十日、村井大臣が会見されました内容を拝見いたしまして、率直に言いまして、この明石市の事故に関しては、村井大臣、少し考え違いをされているんじゃないかと私は思っております。
 その辺のことについて、事実関係を確認させていただくと同時に、村井大臣の見解をぜひ少し変えていただきたい、認識をもう少し厳しく持っていただきたいというのがきょうの私の質問の趣旨でございます。
 五月十日の記者会見のメモが私のもとにございます。そこで、村井大臣はこうおっしゃっている。「催しをなさる方に一義的な責任があるということは、自己責任というものを大事にする社会で、もっと強調されなければならないことではないか」、さらには、「これを主催した明石市、そして明石市が警備を委託した警備会社、これらの責任が最も問われるべきではなかろうか、何か公の機関の責めだけが」、これは警察のことをおっしゃっているんだと思うんですが、これだけが「非常に強調されるというのは、日本人の体質を丸出しにしているのではなかろうか」というような、私から見ると、逆の意味で明確な、責任が民間にあって警察にはないんじゃないかという発言をされているようにしかこれは見えないわけでございまして、再三そのことを指摘されているんですけれども、一番この部分について責任を負っているのがだれなのかというあたりをもう一度確認しておく必要があるというふうに思っております。
 村井大臣、御専門家でございます。もちろん責任者でございますので、改めて指摘するまでもございませんが、警察法二条を見ましても、また警職法四条一項を見ましても、国民の生命財産を守るのは最終的には警察の責任であるというのは、いろいろな法律を見てもすべてきちっと書いてあるわけですね。ここの部分について、果たして今回の事件の最終的な責任がどこにあるとお考えになっているのか、まず冒頭、村井大臣に改めて見解を問いたいと思います。
村井国務大臣 この問題につきましては、現在、兵庫県警におきまして行いました捜査に基づき、検察の手元で、その関係者の責任のありようにつきまして御検討がなされているところでありまして、どこにその最終的な責任があるのかということを私の立場から申し上げるのは余り適当なことではない。検察の手に渡っているという話である、捜査を終えた上で検察の手に渡っている、そういう事態だという認識を申し上げたいと存じます。
細野分科員 事件は、確かに今、検察の手に渡って、被疑者という形で警察の方も実際にその中に名が連なっている。それは私も承知はしております。しかし、一年たちまして、今、遺族の皆さんが事実を知りたがっているというのも事実、そして、明石市からは、ことしの一月に、もう既にこういう調査報告書も出ている。村井大臣、これはよく御存じですよね。そういう中で村井大臣がこういう見解を出された、これも事実であります。ぜひ逃げないでいただきたい。そして、この問題についてこういう発言をされているわけですから、それについて質問させていただきますので、この部分については率直にお答えいただきたいというふうに思います。
 私が特に問題にしたいというふうに思っておりますのは、警察というのはあのイベントを催すことの可否を決めることができる立場にはない、もう一つ同じような見解が示されておりまして、催し事を全部警察が許可することは私はおかしいという気持ちがあるという発言をされている。
 これはもっともだと思います。いろいろなイベントが全国であります。そのすべてを警察がやるかやらないかを決めることはできないし、どういう形でやるかということすべて指導すること、これはできないと思うんです。
 しかし、今回の、去年の明石市の事件においては、この実際の事故が起こったのが公道上なんです、公共の道路の上。道路交通法を見ても、六条四項では、当該道路における危険を防止するため緊急の必要があると認めるときは警察はさまざまな措置をとることができると書いてある。どこにどういう形で道路を封鎖するか、また、夜店を出すかというようなことについても、警察に一元的に権限が与えられているんですね。
 村井大臣は、ここの部分、催し全体の話に話を展開されているけれども、この問題の本質は、公道上で起こった事件に対して、最終的な責任が警察にあるのか、それとも民間の警備会社にあるのか、そういう問題なんですよ。その部分をきちっと認識されてこの御発言をされましたか。
村井国務大臣 いわゆる事件が起きました歩道橋が公道というものであったことは、よく承知しております。
 しかしながら、私が申し上げたことは、あのイベント自体の主催者、そしてまたイベントを主催した明石市が警備会社に警備を第一義的に委託している、そのところにまず主たる責任があるんでしょうということを申し上げたのであって、公道上で起きたというのは、言ってみますと、そのイベントのにじみ出しの結果、公道上であのような痛ましい事件、事故が起きた。これは本当に残念なことでありますし、お亡くなりになった方、そしてまた御遺族に対しては本当にお悔やみを申し上げたいと存じますけれども、ただ、あの公道における事件が公道の上であったからすべて警察の責任だというのは、私は、大変恐縮でありますけれども、いささか論理の飛躍があるのではないかということを申し上げたいわけであります。
細野分科員 最後にその議論はしたいと思いますが、村井大臣、この明石市事件の全容というのを本当に御存じなのかなと。この報告書をすべてお読みになるのは、お忙しいと思いますので、読んではいらっしゃらないと思いますが、明石市がどういう調査をされたかとかいうことは把握されていますか。
村井国務大臣 私も自分の発言にはそれなりに責任を持っているつもりでございまして、その報告書は、全部というふうにおっしゃられるとなんでございますが、一通り読ませていただいております。
細野分科員 そうしますと、問題になるのは、果たしてこの公道上でどういう事件が起こったのか、今回の事件が起こった原因がどこにあるのか。それに警察、これは明石署ということになり、また兵庫県警ということになるわけですけれども、果たしてそこがどういうふうにかかわったのかという非常に重要な問題になってくるわけですね。
 法律を見ましても、公道上においては、実際に出店をするような場合、例えば夜店を出すような場合は、事前に警察にその計画を出すことになっています。実際に、今回の経緯を見ましても、明石署に対して、警備会社及び明石市の方から再三相談が行っている。どういう形で警備をしたいかということについての計画が行っている。夜店を出す部分についても相談が行っているわけですね。
 その経緯を見てみますと、私は、この部分について、警察がきちっと事前にもかかわっていて、しかも、それが原因になっているんじゃないかという思いを持っているんです。といいますのは、今回の事件の最大の原因の一つというのは、私は、事前の準備が不十分だったところにあるというふうに思っているんです。
 朝霧駅から歩道橋を渡って、そして道路におりて、そこに夜店が並んでいた、人がどんどん朝霧駅から花火を見に来て、その夜店の部分で大量の人が滞ることによりまして、人がにっちもさっちも動けなくなってしまったという経緯がございます。私は、原因の最大の部分は、夜店がそこに並んでしまったこと、それを警察がしっかりと指導できなかったところ、この部分にあると思っておりまして、その部分について少し経緯を聞いてみたいというふうに思います。
 これは政府参考人の方で結構でございますが、事前協議が主に六月の前半に行われておりますけれども、その中で、明石市の方からは、夜店の配置についてこういう提案がなされている。できれば民活用地にお店を並べたい。実際に、この報告書によると、六月八日に、民活用地でやらせてくれということを言っていっている。それに対して、明石署の方からは、市有地は、市有地というのは民活用地ですが、市有地は使わずに道路上だけに、これをそのまま読みますと、「追し込めるのが一番いいのではないか。」そういう提案がなされている。
 まず、この夜店の配置についてのやりとり、その後も何度かやりとりをされておりまして、最終的に、六月の十二日から十三日にかけて、最後まで明石市の側は、夜店をできれば民活用地も含めて使いたいということを言っているけれども、最後、あくまで公道に集約する形で明石署の方から言われて決断したという経緯がかなり細かく書いてあるんです。
 この部分についてのやりとり、警察の見解というものは、そういうものだった、この認識と同じということでよろしいんでしょうか。
黒澤政府参考人 出店、露店でございますけれども、いろいろな経緯がございましたようでありまして、調査委員会の報告書にも、大変詳しく資料編にも載っておるわけでございまして、この間、私どもも、その経緯についていろいろと兵庫県警の方から聞いておるわけでございます。
 確かに、六月中心に、いろいろな交渉等がなされておるわけでございますけれども、明石警察署におきまして、六月十二日でございますが、明石市の担当者から、六月七日の協議で決定した露店の出店場所について、一部露店が入り切らなかったことなどを理由といたしまして、その見直しについて相談を受けておりますが、露店の管理上の問題等から変更には至らなかった、かように承知をいたしておるところでございます。
 いろいろ経緯はあったということでございますけれども、必ずしも、関係者、すべてかくかくしかじかということで一致しておるわけではございませんけれども、いずれにしましても、露店の配置につきましては、明石警察署の担当者、主催者の担当者及び露天商の三者で協議して最終的に決まったものと承知をいたしております。
細野分科員 この部分はしっかり御答弁いただきたいと思うんです。この報告書にはっきりこう書いてあるんですよ。市では無理なので、民活用地では無理なので、警察の権限がある歩道橋周辺でやりなさいと担当官が答えたと書いてあるんです。警察の見解は、歩道橋付近、すなわち公道でやれということだったということでよろしいわけですね。確認させてください。
黒澤政府参考人 細かなやりとりにつきましては、ただいま申し上げましたように、必ずしも、関係者、一致をいたしておりませんで、詳細については承知しておりませんが、少なくとも、民活用地でやるという申し出があったようでございますが、その点については、露店の管理上の理由等から、計画どおりということで民活用地の活用はしなかった、こういうふうに承知をいたしておるところでございます。
細野分科員 この部分について細かい経緯を聞いてもとおっしゃるが、ここが事故が起きた本質なんですよ。
 再度確認しますが、道路交通法七十七条一項でも言っている、道路を使う場合は「警察署長の許可を受けなければならない」。最終的にどこで露店を開くか、夜店を開くかという部分についての決定の責任はどこにあるんですか。これは警察ですね。
黒澤政府参考人 おっしゃるとおり、道路交通法上、許可を要しまして、警察が決定をいたします。
細野分科員 では、再度伺いますが、今回の事故はこの部分に原因があると私は思っている。この露店の、夜店の配置というのは、警察としては適切だったというふうにお考えになるんですか。
黒澤政府参考人 露店の配置につきまして、先ほども申し上げましたが、明石警察署の担当者、主催者の担当者及び露天商の三者で協議を実施いたしまして、市道の歩道部分において出店することとなったということで承知をいたしておるわけでございますけれども、結果的に見まして、露店につきましては、歩道橋への観衆の集中防止や迂回路への観衆誘導等、雑踏事故防止に配慮した出店について検討することも考慮すべきであったと認識をいたしております。
細野分科員 今の御答弁というのは非常に重要だと思う。
 最終的に夜店の場所を決めた責任が警察にあるということ、これはよろしいわけですよね。しかも、ここの部分が適切でなかったことが事故の原因になっている。これは事実なんですよ。
 イベントを管轄し、すべてをマネージして無事故でやる、それは、いろいろな場所があるでしょう。確かにそれは無理かもしれないけれども、いろいろな問題があるかもしれないけれども、最低限、公道でそういう事故が起こらないように事前に責任を持ってやる、その義務は警察にあって、それをこれは怠ったということじゃないですか。
 私は、あげつらうつもりは決してないけれども、明らかに、警察の誤りがこの事故の原因になったと思っているんです。この部分に対して村井大臣の御見解はどうですか。
村井国務大臣 今、生活安全局長からは、夜店、露店の配置についてなお考慮すべき点があったという認識が述べられましたけれども、委員は、この露店を配置する公道部分のありようということが事故の一番の原因であったという御主張をなさいましたけれども、私は、恐縮でございますが、兵庫県警におきまして、この事案全体を刑事事案としまして捜査を行い、そしてその過程で、今も生活安全局長の答弁の中にもございましたが、関係者の証言等々、必ずしもその報告書に記載のことと全面的に一致しているわけではない。そういう過程の中で、さまざまの資料を整えて検察に送っているわけであります。
 そういう意味で、今御指摘の、責任の所在が、あるいはこの事案の原因がここにあったかどうかということにつきまして、私は、先ほど来申し上げておりますように、あえて私の見解を申し上げるのは、これは差し控えさせていただくのが適当だろうと申し上げているのであります。
細野分科員 村井大臣、私は、この報告書を全部追認しろと言っていないんですよ。今の生活安全局長の答弁はいいですねということを聞いたんです。事前協議があって、そして、そこで最終的に決める責任が警察にあって、それが適切でなかった、これは警察の責任者として、村井大臣、お認めになりますね、このことを聞いているんです。
村井国務大臣 その点は、生活安全局長の答弁を私も追認いたします。
細野分科員 時間もございませんので、先に行きたいと思います。
 さらに、私は、警察はもう一つ大きな間違いを犯したと思っている。それは警備体制でございます。
 報告書のこの部分を読みますと、全部でこの事件にかかわった警察の担当者は三百四十九人、その中で雑踏の対策にかかわった人数はわずか四十六人、さらに、その中でも雑踏の整備の現場に携わった方の数は十六人。結果的に、大混乱が起こったときに警察は対応できなかった。この配置は、警察として適切であったというふうにお考えですか。これも政府委員の方で結構ですので、お答えいただきたいと思います。
黒澤政府参考人 当時、暴走族等の情勢も大変厳しい状況にございまして、また、雑踏警備につきましては、兵庫県警察本部の本部長訓令でも定まっておるわけでございますけれども、一義的には自主警備が原則でございまして、また、市の、主催者の側からも、特に暴走族等、警察でないと対応できないような案件につきましても強い要望がございまして、あのような体制を組んだわけでございます。
 この体制について、結果から見ていろいろな意見があろうかとは思いますけれども、いろいろな諸般の状況の中で体制を組んだものと承知をいたしておるところでございます。
細野分科員 これが私的な土地であれば、私の土地であれば、それは自主的にどうぞやってくださいというのは言えるかもしれないけれども、これは公道なわけですね。警察法を見ても警職法を見ても、公道の安全、雑踏警備は警察の責任であるというふうに書いてある。それを民間に任せて、これだけの人数でやってきたこと、これは不適切でしょう。この部分について、自主的責任に任せておいていいという話になるんですか。もう一度きちっと答弁してください。
黒澤政府参考人 先ほど来大臣の答弁にもございましたけれども、一般論でございますけれども、主催者は、行事等の開催によりまして雑踏等を生じさせる原因者として自主警備を実施すべきでございまして、雑踏の影響が及ぶと認められる範囲につきましては、会場内だけではなく会場外においても、また、そこが公道であるか否かを問わず、必要な事故防止対策を講じることによって雑踏事故の未然防止を図る必要があると考えております。
 そしてまた、警察でございますけれども、委員御指摘のとおり、警察法二条に定められた責務を果たすために、主催者に対しまして必要な指導を行いますとともに、必要に応じ、事前には、実査等必要な準備の上、雑踏警備計画を作成し、当日には、主催者等と連携して警察部隊の投入も含めた必要な事故防止対策を講じることによりまして、雑踏事故の未然防止を図る必要があると考えております。
 このように、場所のいかんを問わず、主催者と警察はそれぞれの立場から雑踏事故の未然防止のための責任を有するものであると認識をいたしております。したがいまして、警備業者につきましても、主催者の委託を受けて警備業務を行うものでございまして、その意味において責任を有するものと認識をいたしております。
細野分科員 仕事を受託した民間の事業者が一生懸命努力する必要があるのは、これは当然です。しかし、警備体制を把握して、最終的な公道の安全を確保するのは警察の仕事です。
 この部分について、そうしたら伺いますが、警備会社も含めて、今回の警備体制は最終的にこれでよしと判断した警察として適切だったというふうにお考えなんですか。この部分については村井大臣にお伺いします。
村井国務大臣 大変恐縮ですが、どの点をお尋ねか、もう一回。恐縮でございます。
細野分科員 警察と民間の警備会社も含めた全体の警備体制を最終的に決めたのは警察です。最終的にその警備計画をよしとしたのは警察です。その体制が適切であったかどうかという部分について簡潔に御答弁いただきたいということです。
村井国務大臣 ですから、そういうことも含めまして、雑踏警備計画等々につきまして適正を欠く点もあったということで、これは刑事案件として送致をしている。これは、送致されているのは、市側の担当関係者であり、警察の関係者であり、また、警備会社の関係者である。その間でどこに一番責任があるのかということにつきましては、私は、必ずしも警察のみが責任があるとは言い切れない、そういう意味で三者それぞれに責任があるんだろうと思っております。
細野分科員 ここの部分については、恐らく水かけ論になると思いますので、これ以上やりませんが、最後に、時間もなくなってきましたので、当日の対応についても私は問いたいと思うのです。
 こういう質問をさせていただいた中で、私は、最終的に警察に責任があるということを再三再四申し上げた。それは現場においても間違いなく警察に責任があるというふうに私は思っている。なぜかということを申し上げます。村井大臣、よく聞いてください。
 道交法六条四項、さっきも申し上げましたが、警察は具体的に道路における危険があるというときはあらゆる措置をすることができる。それはいろいろな規則や要領なんかにも書いてある。それに対して、警備業に携わる方というのは、警備業法八条によりますと、警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たっては、この法律により特別の権限を与えられているものではないと書かれている。具体的にこう書いてあるんです。そのことに「留意するとともに、他人の権利及び自由を侵害し、又は個人若しくは団体の正当な活動に干渉してはならない。」
 実際、この当日も、村井大臣、いいですか、警備会社の人は必死に努力をして人をとめようとした。いろいろ努力をされた。そういう中で、お祭りですのでビールを飲んでいる人がいて、ビールをひっかけられたり、殴られたりしたという記述もあるんですよ。警察官は、そういう人に対して、公務執行妨害もあるし、法律的な担保もあるわけだから、必要に応じて交通整理をすることもできるし、排除することもできるんです。警備会社の警備員は、責任を持つ、責任があるといったって、できないんですよ。実際、事前の準備が不十分であったとしても、この部分できちっと対応できておれば、今回の事故はもう少しましな形で結末を迎えた可能性が私はあると思う。
 この権限の違い、当日の対応について、これが果たして適切であったのか、あくまで警備員の責任ということで本当に国家公安委員長として適切な判断だというふうにお考えになるのか、この法律を踏まえて警察の当日の対応について村井大臣に見解をお伺いします。
村井国務大臣 私は、警察に責任がないなんとは全然言っていない。いいですか、主催者である市、それから、その委託を受けて警備に当たった警備会社、こちらの方が、まず、いつイベントをやるかというような問題から、どういう形のイベントである、そして、どういう警備をやるというようなことで計画を出してきて、そして、警察とも協調しながらやっていくという意味で、まず一番は主催者である明石市、そしてまたその委託を受けた警備会社のところでいろいろなことがなされ、そこの補完を警察がやるという立場だったんだろうと思っているということを申し上げているんです。
 そこで、もちろん警察の責任につきましては、雑踏警備計画段階において、十分な警備実施計画を策定なされていなかった、不十分な計画のままこれを承認したという疑いもある。警備実施当日においては、こういう過密状態が起きて、そして、このようなトラブルといいましょうか、大変な惨事が起きるということも考えられるのにもかかわらず、集まった人たちの例えば分断ですとか迂回ですとか、こういったことの指導につきまして適切な措置をとらなかった。そういうことにつきまして、それは刑事上の問題としてその責めを、一応捜査を終えまして検察にゆだねている。そういう段階であるから、私としては、警察の責任を別に回避しているわけではないが、しかし、警察のみが責任がある、あるいは警察に全責任があるというおっしゃられ方はいかがなものかという意味で一連の発言をしたわけであります。
 ちなみに、冒頭に大変お褒めをいただきましたワールドカップでありますけれども、これなども、非常に適切な、主催者と警察との綿密な連絡関係、連携関係があったということでありまして、そういうことがあればよかったのでありますが、明石の場合、一言だけ言わせていただくと、たしか一昨年の場合でしたら、神戸のみなとまつりですか、これと明石の花火大会、日をわざわざずらしているんですね。ところが、昨年の場合、同じ日にやっている。そういう意味でも、警察との連携をもっと密にしていただけたらよかったなという思いが、正直言いまして、あの事件の当日から私はしておりました。
細野分科員 時間も来ておりますので、最後に一問だけ。
 この事実を解明する際に一つのかぎになるのが、実はこの事件を警察がモニターしていたというモニターなんですね。それが明石署と兵庫県警に映し出されていて、果たしてどういう混乱があったのか、警備会社の人が何をしたのか、警察が何をしたのか、だれに落ち度があったのかということがわかるようなモニターを皆さんはしていた。それが送られていたにもかかわらず録画がされていないということで、いまだにこの事実が明らかになっていないんです。暴走族を監視するためにモニターをつけたんだということをおっしゃっているようですが、モニターを監視していていつでも対応しなきゃならないときに、撮っていないなんて、私には信じられない。
 兵庫県警、明石署の見解はそうだそうですけれども、村井大臣にぜひお願いしたい。事実を明らかにする上で、この録画は本当に存在するのかしないのか。明石の人はみんな疑問に思っている、この事件にかかわる人は。あるのかないのか、しっかり調査をしていただいて、あるなら出していただきたい。私は、ないわけないと思います。このことを最後にお約束いただきたいと思います。
村井国務大臣 私も、その録画につきましては、存在しない、残念ながらないんだという報告を受けておりますけれども、今、委員の御指摘でございます。十分さらに調べさせていただきます。
細野分科員 どうもありがとうございました。
持永主査 これにて細野豪志君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣府所管中警察庁についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより環境省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。大木環境大臣。
大木国務大臣 環境省の平成十二年度歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 まず、平成十二年度の当初予算額は五十億四千百五十二万円余でありましたが、これに予算補正追加額四百十一万円余、予算補正修正減少額一億一千三百三十九万円余、予算移しかえ増加額三千六百十九億三千五十二万円余、前年度からの繰越額千二百五十億四千八百二十九万円余、予備費使用額八十九億七千三百三十八万円余を増減いたしますと、平成十二年度歳出予算現額は五千八億八千四百四十四万円余となります。この予算現額に対し、支出済み歳出額三千六百八十九億五千五百九十万円余、翌年度への繰越額千二百六十六億四千七百八十五万円余、不用額五十二億八千六十八万円余となっております。
 以上、簡単ではありますが、平成十二年度の決算の概要を御説明申し上げました。
 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十二年度環境省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。
 これは、廃棄物処理施設整備事業の実施に当たり、高率な最低制限価格を設定したため、割高な契約を締結しているものでありまして、この補助事業の事業主体は、契約の入札に当たり、契約の内容に適合した履行が十分期待できる業者を入札に参加させておりましたが、予定価格の九二・三二%に当たる高率な最低制限価格を設定していたことから、これを下回る価格で入札した業者が排除されたため、割高な契約を締結していたものであります。
 以上、簡単ではございますが、説明を終わります。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。大木環境大臣。
大木国務大臣 平成十二年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして環境省所管の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤嶺政賢君。
赤嶺分科員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。四月の分科会でも、環境大臣とジュゴンの問題や泡瀬干潟の問題について議論をいたしましたが、きょうも沖縄のジュゴン保護の問題と泡瀬干潟の保存の問題について質問をいたします。
 まず最初に、ジュゴンの問題ですが、四月八日の決算分科会におきましては、名護市の基地の建設予定地でのジュゴンの保護について大臣に強く求めました。当時、環境省の姿勢というのは、ジュゴンの保護ではなくてこれから調査をしていきたいということでありました。その後、鳥獣保護法が改正をされましてジュゴンが保護対象になったわけですが、鳥獣保護法によってジュゴンをどのように保護していこうというおつもりなのか、まずお聞かせください。
大木国務大臣 今もお話がございましたように、先般、鳥獣保護法を決定していただいたわけでございます。
 ジュゴンにつきましては、今、保護じゃなくて調査だというお話もございましたけれども、調査というのはもちろん保護ということを意識してやっておるわけでございまして、全般的な保護対策を検討するために、昨年度からはあの沖縄の近海におきましてジュゴンとそのえさ場となる藻場の広域的な調査なども実施しておるわけでございます。また、鳥獣保護法の対象種として予定しているところでございますから、今後、同法に基づきまして捕獲、殺傷の原則禁止や違法捕獲個体の流通禁止といったものを図ってまいりたいと考えております。
赤嶺分科員 捕獲、殺傷の禁止、個体の保護、これが鳥獣保護法によってなされていくということですが、ジュゴンが生息している地域は、確認されているのは一カ所です。そういう当該海域というのは、米軍基地の建設が予定されている海域でもあります。
 鳥獣保護法によりますと、ジュゴンの生息地域は、鳥獣保護区ないしは特別保護地区に設定をされる。特に、その場合、ジュゴンですから、県の設定ということではなくて国設ということになるだろうと思うんですが、その辺はどんなふうに考えていらっしゃいますか。
大木国務大臣 まず、ジュゴンの生息地域は確認されているのは一カ所だけ、まあ確認というお言葉もあるわけでございますけれども、私どもといたしましては、必ずしも一カ所だけではなくて、いろいろなところにいるという可能性を考えながら今いろいろと検討しているわけでございます。今度の新しい鳥獣保護法による捕獲規制等を行うとともに、ジュゴンとそのえさ場となる藻場の広域的調査の結果を踏まえて、鳥獣保護法はもちろんでありますけれども、それのみならず、種の保存法も含め、いかなる保護対策をとり得るのか、そんなことを引き続き検討してまいりたいということであります。
赤嶺分科員 この間と同じ議論になりかねないんですが、藻場の調査やジュゴンの生存調査を広域的にやることは必要なんです。あの南西海域でどういう生物が生息しているかわからないというのは当然であるわけですが、ただ、ジュゴンの生息が確認されている地域では基地建設の手続が急がれているわけですね。もう十一月、十月、九月にも次の普天間基地の代替施設移設協議会が開かれて、そこには環境大臣も出席をなさいますけれども、基地建設の手続が着々と進められていく。そういう中で、鳥獣保護法でジュゴンが保護対象動物になった。それは、やはり基地建設とは無関係に環境省としては進めなければいけないと思うんです。特にジュゴンの生息地域は、国設の保護区域に設定するということがどうしても必要になってまいります。
 その場合に、この海域が防衛施設庁の基地建設予定地域だということとかかわって、環境省は何か手続的に遠慮するものがあるのか、検討すべきことがあるのか、この辺はいかがですか。
小林政府参考人 御説明申し上げます。
 普天間の移設問題に関しましては、防衛施設庁において今いろいろ検討がなされているところでございまして、そちらに関しましては、これから基本計画を立てた上で環境アセスメントが実施されるというふうに理解しております。そういう過程の中で、私ども、ジュゴンに関する広域調査の結果などを踏まえまして、適切な意見を申し述べてまいりたいと思います。
赤嶺分科員 環境アセスメントを待たずに、世論がジュゴンの予備的調査を行えということをやって、防衛施設庁は予備的調査をやったわけです。ですから環境省は、あの海域にジュゴンの生存は確認されているという認識のもとに、今度は南西海域の広域調査もやろうというわけですね。
 国の予備的調査で確認されているジュゴンについて、その保存のための取り組みを前向きに進めるような姿勢が何ら感じられないわけですね。私は、ジュゴンの生存を保護できなかったら、日本の環境省はジュゴンの生息している地域を保護できなかったということで世界じゅうから笑い物になるのではないか、急いでジュゴン保護のための環境省としてのしっかりした対策を強く求めるものであります。
 今回は、ジュゴンについてはこの程度にとどめまして、泡瀬の埋め立て問題に質問を移します。
 沖縄県の沖縄市に泡瀬干潟が残っているわけですが、これは、沖縄島最大の面積を持つ干潟であります。この干潟について、環境省も昨年の十二月に国内重要湿地目録のリストに掲げました。シギ・チドリの飛来地としても、それから希少な動物が生息している海草藻場が豊富にあるという点でも極めて価値のある干潟であります。
 その干潟で埋立事業が強引に進められようとしております。埋め立ての前提として、海草藻場の移植が可能かどうか、こういう検討が求められているわけですが、事業を所管している内閣府は、海草の機械化移植は可能と判断しております。そして、尾身沖縄担当大臣みずからが先頭に立って、この八月から本格的な海上埋め立てに着手しようとしています。
 海上埋立工事が始まりましたら、取り返しのつかない結果を生み出すのは火を見るより明らかですが、環境省は泡瀬干潟について、これを守るためにどんな姿勢で臨んでおりますか。
大木国務大臣 もちろん、当省といたしましては確実に移植が実現できるということが目的でありまして、そのためには徹底したモニタリングを実施し、移植技術の向上を図る必要があるということで、そういった方向でいろいろと検討しているわけでございます。
 移植実験につきましては、近々開催されると聞いております環境監視・検討委員会藻場移植ワーキンググループ、これは内閣府の方でやっておられまして、ちょうど明日たしか開会だと思いますが、この中でも専門的な見地からいろいろと議論が出てくると思っておりますので、その内容も踏まえまして、私どもとしては、さらにその議論を踏まえて必要な措置を進めたいと考えております。
赤嶺分科員 環境省としても、海草藻場の移植が確実だということが一つの前提になっているという認識であります。ところが、事業を担当している内閣府は、海草藻場の移植は可能だということで判断して、事業をどんどん前に進めているわけですね。
 あしたワーキンググループが開催されるという御説明でありましたけれども、二月二十二日にも環境監視・検討委員会が開かれました。そのときに、その報告を受けて内閣府は、海草の移植は可能との認識を示して工事を再開いたしました。再開といってもまだ陸上にとどまるもので、海上には手をつけていないということでありますけれども、あのときの海草藻場の移植は成功したという判断は、十一月に移植した海草藻場が、一月までの経過を調べてみたら根づいていますという、それでも五割は枯れて死んでいるわけですが、技術を改良すれば可能でしょうという認識だったわけですね。
 ところが、あれから五カ月を経てもう一度、移植実験で成功したはずの海草藻場のモニタリングをしてみましたら、これはついこの間、国と県、そして埋め立て推進派の団体と干潟を守れという市民団体が共同で調査をしたわけですけれども、当時、よいと評価されているところでも事態が悪化しているなど、二月の環境監視・検討委員会の後、内閣府の調査というのは非常に甘過ぎる、環境に対する姿勢が弱過ぎる、こういう批判を各地から受けました。国内の団体だけにとどまらないで、国際的な自然環境保護団体からも懸念の声が上がりました。
 そこで、内閣府に伺いたいんですが、あすワーキンググループの報告も行われるということですが、二月から今日に至っていろいろな調査、モニタリングが行われて、それでもなお移植実験というのは成功しているというぐあいに評価しておられるのか、あるいは確実に評価するという資料を国会に提出できるのか。できるのであれば、あすのワーキンググループの会議に出す資料はもうそろそろお手元にあるんじゃないかと思いますけれども、そういう提供も含めて、海草藻場の移植実験は成功したという認識なのかどうか、内閣府の今の時点でのその認識をお聞かせください。
武田政府参考人 移植をいたしました藻場の生育状況の評価でございますけれども、先ほどから御指摘のとおり、環境監視・検討委員会とその下部組織でございますワーキンググループにお願いをいたしているところでございます。委員会とワーキンググループにおきましては、もう委員御案内のとおり、本年二月二十二日に、移植はおおむね順調であって、海草の移植は可能という結論をいただいているということでございます。
 その後の状況でございますけれども、事業主体でございます沖縄総合事務局におきまして、継続的にモニタリング調査を実施いたしております。その結果につきましては、現在取りまとめ中でございまして、明日開催予定のワーキンググループ、あとそれを踏まえて開催されます委員会に報告をさせていただいて、改めて審議、評価をいただくということにいたしておるところでございます。
赤嶺分科員 今の答弁だと、二月には海草藻場の移植実験は成功しつつある、しかし、それから経過を経て、あすワーキンググループが開かれる、その結果を見てということですが、その結果、二月とは違う海草藻場の移植実験データの変化が、悪化ということが出た場合には、八月に着工する予定の埋立工事、これの中断はあり得るんですか、いかがですか。
武田政府参考人 明日そのワーキンググループでどういう御議論をいただくのか、それを私どもよく伺ってまいりたいと思っておりますけれども、本件につきましては、二月二十二日に海草の移植は可能という結論をいただいた際に、引き続きモニタリングを行うようにというお話もございまして、現在モニタリング等に努めておるところでございます。その上で、私ども、明日ワーキンググループ、それから環境監視・検討委員会というものを開催いたしまして、事業者でございます沖縄総合事務局におきまして、沖縄県等の関係者とも協議しながら適切に対応するということにいたしておるところでございます。
赤嶺分科員 二月の環境監視・検討委員会では、そもそも海草藻場の移植は可能で、移植実験はおおむね順調に進んでいるというところだけをとらえて、皆さんは、泡瀬干潟、中断していた工事再開というところに踏み切ったわけですね。ところが、今御説明がありましたように、それが成功かどうかというのは引き続き慎重なモニタリングが必要だということも、環境監視・検討委員会では当時から既に言われていたことであるわけですね。それを無視して、引き続きモニタリングを行えというのは、市民団体や県民や環境保護団体の強い要請があって渋々動き出したけれども、工事は再開したという格好になっているんですよ。引き続きのモニタリングの結果を見ないで工事再開した、そういう進み方をしているので、ここには環境よりも開発先にありきという姿勢があったんじゃないか。その姿勢というのは今日でも残っていると私は思うんです。
 あしたの結果を見てというお答えですが、あしたの結果を見ないと事態は全くわかっていないような答弁ですが、六月に既に国と県と市民団体が藻場の調査をやっております。そこでのデータが出ていると思います。そのデータは今お持ちですか。
武田政府参考人 現在、ちょっと手元に持っておりませんが、既に報道等におきまして、そういったいろいろなデータが示されているということは承知いたしております。
 ただ、このデータのとり方等につきまして、私ども、どういうとり方、どういう評価の仕方をされたのか、ちょっとつまびらかでございませんので、具体的には、明日開催されるワーキンググループにおいて私どもの取りまとめ結果を御報告させていただくということを考えておるところでございます。
 それから、先ほどモニタリングにつきましてお話がございましたけれども、正確に申しますと、二月二十二日の環境監視・検討委員会におきましては、海草の移植は可能でありまして、今後ともモニタリングをしていくことにより移植技術がさらに向上するという観点から評価をいただいたところでございます。
赤嶺分科員 このデータというのは、市民団体が勝手につくったデータじゃないんですよ、大臣。これは、国、県、市民団体が一緒になって海草藻場の現場を見てつくったデータなんです。
 これによりますと、二月の段階で、悪い、不良と言われていたのは当時三六%でした。大体四割は悪いという中で移植実験は成功という判断をしたわけですから、それ自身も大変な環境軽視だなと思いますが、いずれにしても、不良と呼ばれるのは三六%でした。ところが、五月に入って、その同じ現場を調査してみますと、もう五八・八%が悪いという状態になっているんですね。
 海草藻場の移植というのは、二カ月、三カ月では判断できない、半年でも判断できない、一年、二年観察をしてみないと成功したかどうかわからない、そういう性格の問題なんだということがこのデータでもあらわれているんです。それを内閣府は三カ月の段階で工事再開という決断をしたわけですから、大変な環境軽視だと思うんですよね。
 それで、今、モニタリングで移植技術は今後改良されるだろうという見通しに期待をかけておられるようですが、成功であるかどうかということは、これが明らかに、あすのワーキンググループ、今後開かれるであろう環境監視・検討委員会で、数字の悪化が、しかも二月に移植した海草藻場の数字の悪化があらわれてきたときには、それは工事中断もあり得るということなのか、あるいは工事再開という基本姿勢をあくまでもとり続けるつもりなのか。この点で、適切な対処をとると言いましたけれども、そういう選択肢として工事中断もあり得るのかどうかという点について、内閣府、もう一度答弁をお願いしたいと思います。
武田政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、明日ワーキンググループ、それからそれを踏まえた環境監視・検討委員会、こういった御審議、評価結果等も踏まえながら、私どもの出先でもございます、事業者である沖縄総合事務局におきまして、県等の関係者とも協議しながら適切に対応させていただくというふうに考えておるところでございます。
赤嶺分科員 大臣、事業者である内閣府の環境に対する考え方を変えない限り、今度の泡瀬干潟の埋め立てというのは強引にやられる危険があるんです。また、実際、強引にやってきたんです。
 この干潟の埋め立てについて、例えば藻場の移植について、環境省はこれまで私の質問等に、これはこの間の参議院での我が党の岩佐恵美議員に対する環境省の答弁ですが、一般的には藻場の移植の成否は大変不確実性の伴うもの、生育状況のモニタリングの実施とか、技術のさらなる向上を図るなど、慎重な対応が必要と言っているんですよ。この答弁からは、工事再開の結論など絶対に出ようのないものですよ。慎重なものが必要だということです。
 例えば、私が、内閣府はおおむね順調で海草の移植は可能と評価したことについて、環境省の見解を求めたところ、そのように判断された詳細な科学的な根拠について、現在のところ承知しておりませんと答えています。環境省の認識と開発先にありきという内閣府、海草藻場の移植という一般的な科学的な認識を必要とするこれらの問題について、全然違うんですね。ギャップがある。そごがあり過ぎる。
 環境省は今までそういう答弁をしてきたわけですが、大木大臣も、この認識に変わりありませんか。
大木国務大臣 環境省は環境省から、また内閣府は内閣府の立場からいろいろと検討しておるわけでございますけれども、私どもとしては、客観的と申しますか科学的な事実があれば、やはりできるだけそれを十分に尊重して、我々としての立場からの御意見を申し上げるということでございます。あした、とにかく二十四日の日に一つ結果が出てくるということでございますから、そこでどういう資料なり御説明があるかということも十分に聞かせていただいた上で、今どうするかということについては、また明日以降に決めさせていただきたいと思っております。
赤嶺分科員 移植実験について、内閣府は内閣府の立場があり環境省は環境省の立場がありということを大臣は答弁なさいましたが、それは政治的な話じゃないんです。今、泡瀬干潟に求められているのは、環境を守る立場なんです。内閣府の立場や環境省の立場というのは必要ないんです。どの立場が泡瀬干潟の豊かな環境を守ることにつながるのかということを求めているわけです。
 この点で、藻場の移植実験については、わずか二カ月か三カ月で開発の再開に踏み切った内閣府の立場というのは、環境を守るという観点からは厳しく批判されて当然です。そして、内閣府が、本当にこの点で県民の信頼、国民の信頼を取り戻そうとするならば、環境を守るという立場にしっかり立ち戻って今回の開発を見直す必要があるんです。私は、そのことを強く求めているわけです。
 環境監視・検討委員会の今後出てくるデータというのは、十一月に移植したものの、わずか一年足らず、五月までですから七カ月ぐらいのデータです。しかし、この間、環境省の奥谷環境大臣政務官が、六月二十九日に泡瀬干潟の視察を行って、こう言っているんですね。移植実験は長い時間かけてしっかり検証する必要がある、このように述べて、事業推進に慎重な姿勢を見せたと報道されております。
 環境省のスタンスは、モニタリングは長い時間かけてしっかり検証する必要があるという政務官の沖縄での発言、これを基本的スタンスとして私たちは受け取ってよろしいでしょうか。
大木国務大臣 奥谷政務官が現場へ行って、いろいろと視察してこられたということは存じております。奥谷さんの御発言というのは、一般的に、できるだけいろいろな調査を十分にやって最終的に判断するということ、あるいは、仮にいろいろと工事の方が始まっても、その後もいろいろな調査というのは必要だということで、一般的に言われたと思います。
 現実に、今ちょうど、あした結果も出てくるという時点でございますから、別に、それによって環境省の基本的な姿勢が、奥谷さんが行かれて私どもとしても基本的に姿勢を変えたということではなくて、あくまでも私どもとしては、あしたどういう資料が出てくるか、御説明があるかということであります。もちろん内閣府としても、沖縄の皆さん方の御理解を十分に得られるような御説明をされると思いますので、私どもは、それを踏まえて、またひとつ私どもとしての判断をいたしたいというふうに考えております。
赤嶺分科員 もう時間になりましたけれども、内閣府の立場というのは、尾身大臣が二月、三月におっしゃっているように、埋め立てた後の土地の利用の需要予測は大まかでいいんだという、需要予測そのものも科学的な見通しのないまま開発を促進している立場なんですよ。経済開発上やむを得ず埋め立てをしているということではなくて、港湾しゅんせつの土砂の捨て場がないために干潟を埋め立てようという、むちゃくちゃな話なんですね。
 それで、モニタリングの調査というのは一年、二年をかけるべきというのが、環境省の周辺にいる科学者の皆さんの常識的な見解ですよ。これを、五カ月、六カ月ぐらいのモニタリングで数字をいろいろ挙げて、移植実験は成功しつつあるという認識のもとに海上の埋め立てに手をつけるのは、本当に許せない態度だと思います。
 これについて、環境省が本当に干潟を守るために働くことができるのかどうか、環境省になった、庁から省になった、そういう存在意義も問われている課題だということを申し上げまして、私の質問を終わります。
持永主査 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。
 次に、瀬古由起子君。
瀬古分科員 日本共産党の瀬古由起子でございます。きょうは、大木大臣の地元の愛知の問題をお聞きしたいと思いますので、大臣の率直な御見解を伺いたいと思います。
 まず、藤前干潟について伺います。
 私たち日本共産党は、藤前干潟の全面保全とごみ問題解決の二つの問題の解決のための提案をしてまいりました。この点では、住民のすばらしい闘いもございまして、両者が一体的に解決したということは大変画期的なことだと思います。この世界的にも貴重な藤前干潟を十一月のラムサール締約国会議で登録できるよう、大臣にはぜひ最善の努力をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 また、この干潟は、シギ・チドリの日本一の飛来地であるとともに、人が干潟に入って干潟のすばらしさを実感できる特徴を持っております。干潟に入る約束事を決めるのは当然ですけれども、立入禁止にはしないでほしいという関係者の皆さんの声も届けられております。干潟の保全の方法、施設のあり方などは、地域住民、市民団体、NPOの自主的管理運動も大変重要でありますし、ぜひ関係者の意見を聞いて進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
大木国務大臣 今、ラムサール条約のお話もございましたけれども、私どもといたしましては、国内的に言えば、国設鳥獣保護区を藤前干潟の周辺地域にまず設定する、これを今検討しておりまして、名古屋市の方からも、設定することとの関連で、またさらにその地区の発展のためのいろいろな御要望もございますから、そういうことも頭に置きながら今調整を進めているところでございます。それから、この国内手続が完了した暁には、ラムサール条約湿地としての登録手続も進めてまいりたい、ちょうどラムサール条約の国際会議もあるわけでございますから、そういったタイミングも考慮しながら進めてまいりたいと思っております。
 また、干潟の活用ということにつきましては、既に昨年から、藤前干潟保全活用構想検討会ですか、これも設置されておりまして、いろいろと地元の、もちろん行政関係者ばかりじゃなくてNGOの方々も、これはもう前々から議員十分御存じのとおりに、いろいろな方の御意見も聞きながら、どうやったら一番望ましい活用ができるかということも考えておりますから、湿地帯として指定したから何も入れないというようなことではなくて、できるだけ全体として湿地帯及びその周辺区域の活用ということも踏まえて、これからできるだけ前向きに活用できるように、ひとつ私どもとしても努力してまいりたいと思っております。
瀬古分科員 では二つ目に、愛知万博、海上の森のオオタカの保護策について伺います。
 海上の森のオオタカのことしの営巣が失敗に終わりました。九九年の四月末にオオタカの営巣が公表されて、この営巣をきっかけに、海上の森での万博の会場計画が大幅に縮小されました。県と協会はオオタカ調査検討会を設置して、保護策が検討されてまいりました。ことし三月の検討会においても、繁殖行動の兆候が確認されておりました。それにもかかわらず検討会は、オオタカの営巣には大きな影響がないとして万博計画を強行して、環境影響評価のやり直しを拒否してまいりました。その結果、今回、オオタカの営巣の失敗という事態になっています。
 これは、環境省の「猛禽類保護の進め方」で営巣や生息上支障を及ぼす行為を避けるように配慮するとされていることなどが守られていない、こういう結果であり、十分な調査や保護策を確立していなかった結果ではないかと私は思うんです。
 環境省としては、オオタカの営巣失敗という事態に当たって、改めてオオタカの営巣の十分な保護策をとるとともに、オオタカの飛行に障害になると実は六月十日のオオタカ調査検討会でも指摘されていますゴンドラ建設計画は、ぜひ中止するように協会に指導するべきではないかと思うんですが、その点の見解を伺いたいと思います。
大木国務大臣 海上の森というか、あれは大分奥の方ですね、オオタカの巣がありましたのは。ですから、私どもは、海上の森というか、むしろ海上の森は今回は万博の主たる地域にせずに、少し撤退しているような形になっていますから、オオタカの営巣が失敗したということと今いろいろと準備を進めていることとの相関関係というのは、はっきり申し上げて、必ずしもはっきりわからないということでございます。だから、今いろいろな準備の方をやめろというところまではいっていないんじゃないか、やめろということにはつながらないんじゃないかというふうに私は考えているわけでございます。
 いずれにいたしましても、今後も、海上の森に限らず、全体の準備につきましては、できるだけそういった環境面の配慮ということが必要でございます。今、言及されましたけれども、オオタカ調査検討会等でもいろいろと御意見がありますから、例えば今のゴンドラの話につきましても、高さを調整して、これはむしろオオタカばかりじゃなくて、全体としての環境ということから考えましても、そういったゴンドラを設置するにしてもそれが環境に悪い影響が及ばないように十分配慮してもらいたいというようなことは私どもとしても申し上げておるわけでございますし、博覧会協会の方もそういうことでやりますというお話でございますから、私どもはそのように進行しておるというふうに理解をしておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、まだこれから、いろいろな準備といいますか工事と申しますか、そういったものも順番に進めていかなきゃならぬわけでございますから、そういったところにおきましては常に環境の問題に十分注意しながらということで、私どもとしても配慮してまいりたいと考えております。
瀬古分科員 今回の営巣の失敗と万博工事との関係、これは影響はわからないということは、ある意味では影響があったかもしれないということなので、そういう点では、「猛禽類保護の進め方」の観点で、やはりきちんと環境省としてはぜひ努力をしていただきたいし、このゴンドラが大きな影響を与えるという場合は、それはある意味では撤去も考えなきゃならぬというふうに思うんですが、その点、いかがですか。
小林政府参考人 御説明申し上げます。
 現在のオオタカの繁殖状況につきましては、大臣も御説明したように、海上の森の会場予定地から大分離れた場所で、そこでことしは繁殖が見られないということでございまして、博覧会協会が設置しています専門家によるオオタカ調査検討会におきましても、環境省で示したガイドライン「猛禽類保護の進め方」に沿っていろいろな検討がされているものと聞いてございます。
 また、ゴンドラのことに関しましては、林間よりも高くゴンドラが飛び出しますと、やはり飛翔するオオタカや何かにも影響があるのではないかという専門家の御意見もありまして、樹林よりもほんのわずか上に通るくらいの高さに制限をしてということで助言をいただいておりますので、博覧会協会においても、基本的にその方向で実施するというふうに伺っております。
瀬古分科員 今のオオタカの深刻な営巣状況からして、もう一度検討するということは当然だと思います。今後、ぜひしっかりとした検討をしていただきたいと思います。
 時間がございませんので、三つ目の問題、名古屋環状二号線問題について質問いたします。
 二〇〇〇年度といいますと、環境にかかわる大きな出来事として、大臣も御存じのように、愛知では名古屋南部大気汚染公害訴訟の判決がございまして、翌年八月の和解への過程まで、何と十二年余にわたる裁判でございました。
 和解になったとはいえ、本当に遅きに失したという状況もございます。既に原告患者の三分の一、約百人は苦しみながら亡くなっていきました。今なおぜんそく発作で、命と向き合って生きている人たちが多くいらっしゃいます。失われたものの大きさに改めて心をいたすべきだと私は思うんです。
 この名古屋の裁判の例をもってしても、現状の環境悪化についての対応はもちろんやらなきゃなりません。しかし同時に、今後、環境という問題については、先回りをして他の行政や産業活動をリードする観点が求められていると私は思うんです。後追い行政で、いろいろ後でやったけれども犠牲者を出したということのないような反省点が、今、環境行政の中にも求められていると思うんですが、その点、大臣、いかがでしょうか。
大木国務大臣 一般論として申し上げるしかないと思うんですけれども、やはり地域の方々に理解をしていただいて、こういうことはあらかじめやるべきだというような議論が何か出てくれば、それに対してはできるだけ耳を傾けるということは、これは一般的な行政の立場として当然に必要な姿勢だと思います。
 ただ、具体的に起こっていることについてどうするかというような話はいろいろあるわけでございます。これは一遍に、すぐ、すべて、悪くなる、悪化する環境は全部何か決めておいてというお話になると、なかなかこれは、やはり順番もありますし、それからどの程度のことができるかというようなことになりますから、今おっしゃったとおりに、予防ということを十分頭に置きながら行政を進めるということは、一般論としてはそのとおりだと思っております。
瀬古分科員 今大臣が言われたように、ある意味では先回りする、事前の対応をやはりきちっとしておく、そして住民の皆さんのいろいろな要望が出たことについてきちんと耳を傾ける、この点は私、大変大事だと思うんです。
 そこで、私は、名古屋環状二号線の具体的な内容についてお聞きしたいと思うんですね。
 環境省は、来年三月、名古屋市において交通と環境に関する名古屋国際会議を開くことを発表しています。その意味でも、名古屋において、世界に恥じない、持続可能な交通や町づくりを進めなきゃならないと思います。大臣は、出身も選挙区も愛知ということで、その意味でもぜひ御尽力を大いにお願いしたいというふうに思っております。
 そこで、名古屋環状二号線という一つの道路の問題に触れつつ質問いたします。
 今後環状二号線が建設される東南部は、道路公害の面で極めて深刻な事態です。南部大気汚染公害裁判で改善を求められている南部を含んでおります。また、典型的な住宅地がつくられて、今後ますます急速に入居が進む住民との矛盾が非常に広範で深刻になることが予想されます。さらに、愛知の環境悪化は、特にこの南部地域において悪化傾向があります。その中でも、移動発生源、いわゆる自動車との関係が大変大きいと思うんですけれども、環境省の認識はいかがでしょうか。
大木国務大臣 自動車を原因とする環境悪化というのはいろいろあるわけでございますね。ですから、それを是正するというのも、一つは、個々の自動車ができるだけ低公害車であるということが望ましい。そういうことはいろいろな意味で既に業界でも努力をしておられますし、低公害車の導入ということは進んでおる。また、それともう一つは、どういう公害が出てくるかということで、これもいろいろと把握しなきゃいかぬわけでございまして、よくNOxだとかSPMだとかいろいろなことがあるわけでございますけれども、そういったものはやはり実態をきちっと調べてどういうことをしていくかというようなことでございます。
 名古屋市でも、自動車排出ガスの測定につきましては、SPMの方の環境基準の達成率は必ずしも望ましい状況にまだなっていないというようなことですから、排出ガス対策の一層の推進は必要ということで考えておられますし、私どもとしても、そういったものについては改善についていろいろと、ただ、一遍に規則といっても、守られないんじゃしようがありませんから、やはり守られるような範囲内でのいろいろな体制というものも整えていきたいと思っております。
 それから、自動車の公害となりますと、あとは騒音とかそういった問題もありますが、これも、また長いお話でございますからあれですけれども、平成十二年度からの測定の結果でも、昼夜間とも環境基準値以下であった住宅の戸数の割合が、大体五七・四%というふうな数字でございます。ですから、これからも引き続き改善を要するというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、今申し上げましたように、自動車単体の方の対策、それから全体としての交通体系あるいは車種のその地域における規制とかいろいろあるわけでございますから、現在も、御存じのとおりに名古屋市の方も、東京とか大阪地域が今まで非常に規制がきつかったわけですが、さらに名古屋市を中心とする地域につきましても、また本年から周辺地域等も含めて対策を強化する地域に含めておりますから、これにつきましても、これから実際に含めたことに応じていろいろと対策を進めてまいりたいというふうに考えております。
瀬古分科員 名古屋の地域、とりわけ南部地域は環境の問題では大変深刻な事態でございます。今、大臣も、名古屋が環境問題で決して芳しい状況ではないということもお認めいただいたと思うので、とりわけこの問題については積極的な対策が今求められていると思います。
 そこで、国土交通省が作成したこういうパンフレットがございます。「環境にやさしい道づくりをめざして」ということで、「名古屋環状二号線東部・東南部」、こういうパンフレットを実は国土交通省がつくっているんですね。
 このパンフで私は大変な問題があるということを指摘したことがございます。実は、住民との間ではっきり約束した環境保全目標、こういうものが決まっているんですね。ところが、これをないがしろにしたような記述、本来なら達成しなきゃならない目標を努力目標にすりかえるということをやってのけて、住民から厳しい批判を浴びて、私も国会で取り上げて、これは訂正された経過がございます。とても不誠実なんですね。環境省はこの事実を御存じでしょうか。
 環状二号線の既に供用されている北部西区山田中学の近辺での調査では、騒音も大気も環境基準を大きくオーバーして、騒音対策として遮音壁を何と八メートルの高さでつくるということになっているんですが、これについても、果たしてこんな遮音壁でいいのかという住民の皆さんの御意見もございます。さらに、大気対策そのものも全然とられていないんですね。これが今現在供用されている北部地域です。それから、これから建設が進められる東南部地域についても、北部供用部と同様の高架部における環境基準、これはまだつくられていないんだけれども、調べたらもうオーバーしている、また、ぎりぎりのところになってしまっている、こういう事実がございます。
 国交省の誠意のない態度に住民は強く抗議しているんですが、一九九七年、環境庁の長官が建設大臣にした要請がございます。「関係地域において環境保全上の問題を惹起することにならないよう、必要な措置を講じること。」このようにされております。
 環状二号線の今日の状況について、環境省は、この立場からして、このように要請された立場からして、当然国土交通省に対し、もう今供用されている部分が環境をオーバーしているわけですし、今後建設予定のところもオーバーする可能性は濃厚だという場合には、何らかの要請をするべきではないかというふうに私は思うんですが、今までしてこられたんでしょうか、いかがですか。
大木国務大臣 瀬古委員のお話は、まず基本的には、今までやってきたところの北部、そちらの方の成績が言うなれば非常に悪いということなので、東南部の方につきましても、これはひとつちゃんと申し入れをしようと。
 そういう話は、北部につきましてはいろいろと申し入れをしましたし、また、それについての必要な改善措置がどういうふうに進んでおるかということは、私どもも注意深くきちっと見守ってまいりたいと思いますが、東南部についてはまた東南部ということでありますから、北部がどうだから東南部やめろというところまではなかなかつながらないと思いますけれども、やはり東南部につきましても、今後、その状況をきちっと見ながら、必要な申し入れというのは、その都度申し入れをしていくということはもちろん当然だと思っております。
瀬古分科員 今ちょっと大臣の御答弁で聞きにくかったんですが、北部については既に申し入れをしてあるということでよろしいんですか。
西尾政府参考人 北部につきましても、もともと昭和五十七年にアセスメントがありました。その後に、この道路につきましては、それぞれの区間、基本計画がかかるたびに追加的に調査をしてほしいということを申し入れてありますので、大臣の申しましたのはそのことを申し上げていると思います。
 今の御質問は、その後の状況をよく見ながら、必要があれば積極的に物を申すべきではないかという御質問だというふうに思っております。その後の状況につきましては、実は幾つかのデータではかなりの線まで来ていると思いますが、一方では、北部につきましても、名古屋市におきます一部の調査などで住民の方に御心配であるという声があることもよく承知しているところでございます。基本的には、これは事業者においてきちんと努力をしていただくということが基本であると思います。そこを見守っていくということが一つ大事だと思っています。
 それから、名古屋市全体の大気汚染対策につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、自動車NOx・PM法にも名古屋市を入れまして、これから県におきまして削減計画ということも立てていく中でいろいろ具体的なこともしていく、全体の努力が相まって改善していけばいいというふうに思っております。
 南部地域につきましては、やはり基本的には事業者が住民に約束されました環境保全目標を守るということで、それは最大限の努力をされるということであろうというふうに思っておりますので、その状況をまず見守ってまいりますが、今後の状況に応じまして、大臣の指示を仰いで、国土交通省とも適切に連絡をとってまいりたいというふうに思っております。
瀬古分科員 北部で実際に供用されている部分では、もう基準をオーバーしているわけですよ。そして、今大臣が言われたように、北部がオーバーしているから南部がオーバーするとは限らないと言うんですが、南部ももうかなり悪い状態なんですね、まだ供用されていないのに。そうすると、ここに道路が走ればさらに悪化するという心配を住民が持つのは当然だと思うんですね。
 それで、きちんと守ります、努力したい、見守っていきたいと言われるんだけれども、さっき私が言いましたように、パンフレットそのものも書きかえたりというか、ある意味ではすりかえたようなパンフレットをつくっていらっしゃる国土交通省なので、やはりしっかり見守っていただき、そして言うべきときは言っていただきたいと思うんですね。少なくとも北部が守られていない以上、北部をきちっと守ってこそ、では南部、東南部大丈夫なんだなということになるのに、北部は全然やらないで、大丈夫です、南部はやりますからなんと言ったって、住民の皆さんが信頼するはずないわけですね。
 そこで、住民の皆さんが心配されているのは、後追いになって、尼崎や川崎や名古屋の南部のような轍を、やりますと言っても結局守られずに多くの犠牲者を出すということにならないようにやってもらいたい。そういう住民の要求は、私はやはり当然じゃないかと思うんですが、その点、大臣、どうでしょうか。やはり今、物を言ってもらいたいと思うんです。
大木国務大臣 先ほどのパンフレット云々の問題は、国土交通省がたしかつくられたはずで、何か表現が足りないというか……(瀬古分科員「ごまかしている」と呼ぶ)ごまかしているとはちょっと、ごまかしているとは思いませんけれども、少し何か表現が十分じゃなかったということは、そういうふうでございますから、たしか訂正もしていただいたというふうに思っております。
 ですから、国土交通省に物申す、あるいは事業主体でございます名古屋市にも物申すということは、これはもう平生から言っておるわけでございますから、何月何日というようなことではなくて、あらゆる機会に、やはりせっかく、名古屋なら名古屋という立派な大きな町の交通体系をどういうふうにするかということは、交通体系の見直しというようなこともいろいろと市長さんやら知事さんも言っているようでございますけれども、そういった問題も含めて、名古屋の環境が今の交通との関連でさらにきちっとよくなるように、私どもとしても、できるだけの話し合いというか申し入れというのは、その都度その都度、いろいろな機会がございますから、市長さんにしろ、あるいは……(瀬古分科員「最近もしていただきたい、近くやっていただきたい」と呼ぶ)
 名古屋市につきましては、特に今いろいろとほかの問題もあって、名古屋市とは非常に緊密に話し合いをしておりますから、そういった問題も十分念頭に置いて、また話し合いをしたいと思っております。
瀬古分科員 国土交通省にも来ていただいているんですが、お聞きします。
 昨年六月二十日の国土交通委員会で、私の質問に対して国土交通省の大石道路局長は、「供用時期が明確になった時点で、この供用時点での環境予測も実施し、地元の皆様方に説明してまいりたい」と答弁されています。
 当然、国交省は、直前でなく説明会でできるだけ早期に予測を示して、住民に理解と納得を得るよう努力する立場が大事ではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
佐藤政府参考人 昨年、先生に御質問いただきまして、当時、大石道路局長から、本道路の供用時期が明確になりました時点におきまして、この供用時点につきましても環境予測を実施するということにしております。
 この工事進捗状況などを勘案しますと、今の時点で供用時期をいつと明確化することが非常に難しい状況ではあります。しかしながら、事業の進捗状況を十分踏まえまして、供用時点における予測の実施時期について、いつごろをめどにさせていただけるかという点について十分検討しながら、きちっとした対応をしてまいりたい、そんなふうに考えております。
瀬古分科員 少なくとも住民の皆さんが協力しようと言えるような一定の時期、言われたときにはもう建設が始まっていてとても手がつけられない、こういうことがないようにやるべきだと思うんです。例えば、地元でいいますと、これは予算がついてから予測値を出すんだなんて言われる場合もあるんですけれども、そんなのではとても間に合わないので、きちっと早い時期に提示するということでよろしいですね。
佐藤政府参考人 少なくとも予算の関係でなかなかできませんというようなことをするつもりは全くございません。
瀬古分科員 では、地元が予算のぎりぎりになってから出すなんて言っている場合がございますので、ぜひ訂正をお願いしたいと思います。
 時間がございませんので、アセスの問題について伺いたいんですが、アセスは国や地方自治体が専門家の協力を十分得て行うんですけれども、実際には、現実、アワスメントという形でなっている事例が多うございます。
 そこで、今この環状二号線については、尼崎や名古屋南部の悔いを繰り返さないというために、住民の皆さんによるアセスが行われています。これは環境省にもお届けされているそうなんですが、二〇〇五年の万博時にはアセスオーバーが明らかになっている。こういう真剣な住民のアセスの取り組み、これには環境省もぜひ関心を持っていただきたいと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
大木国務大臣 万博との関連でお話がございましたけれども、万博については、やはり環境との共生といいますか、環境が非常に主題になっている万博ですから、当然、これはいろいろな意味で必要なアセスも行うし、計画も、そういったことでできるだけ望ましい計画にするということで努力をしているわけでございます。今の何年云々という話は、私、ちょっと聞き漏らしたんですが、いずれにいたしましても、万博は二〇〇五年でございますから、それに向かって、その前にいろいろと必要なことはやっていくということでございます。
 ただ、今、具体的にどの部分をどうというお話になりますと、ちょっとそれは私どもの方も、できることとまだできていないものもありますから、できていないものにつきましても、ある程度計画が固まってくれれば、それはまた万博協会なり、あるいはまた地元でいろいろと御説明なりアセスの努力はされると思いますから、そういうふうに私どもも理解して、それに協力をしてまいりたいと思っております。
瀬古分科員 やはり住民の皆さんは、万博のときにこの道路が供用されて、大変環境悪化になるんじゃないかと心配なさっているんですね。そういう意味では、住民の皆さんが十分判断でき得る時期、少なくとも二〇〇五年についても一定の予測というのは明らかにしていただくということが大事だと思うんですが、その点、よろしいでしょうか、大臣。
大木国務大臣 万博関連の道路の建設というのは、当然、どれだけの需要の予測があるかとか、今、その結果としてどういう影響があるかというようなことを考えながらでございますから、これはまた関係各省あるいは地元とも協議しながら、できるだけ地元の皆さんに御説明できる努力はしたいと思っております。
瀬古分科員 時間がもう最後になりました。
 それで、やはり環境問題では積極的な対応をぜひお願いしたいということで、新しい二十一世紀にふさわしい環境道路行政ということで、できるだけ不必要な道路はつくらないということも大事ですし、車を減らすということも大事です。しかし、どうしても必要な場合には、例えばこの環状二号線でいえば、排気ガスなどもある意味では対応できる、そういう新しい大気浄化システムなんかも研究して、地下に道路を通すというようなことも、この名古屋で、特に大気汚染訴訟が行われた名古屋でもぜひ検討していただきたいというのが住民の皆さんの御要望なんですが、その点、最後に一点伺いたいと思います。
大木国務大臣 場所によって、あるいは状況に応じて道路をつくるのに、地下の方がいいということは十分考えられますけれども、今、万博との関係で全部地下にとか、そこら辺までいきますと、これはとても、いろいろと時間的な問題もございますし、もちろん予算の問題もございますから、それについてすぐやりますとは申し上げませんけれども、一般論として地下の活用ということも考えろということであれば、これは十分検討に値すると思いますので、そういうふうにして、また勉強させていただきたいと思っております。
瀬古分科員 どうもありがとうございました。
持永主査 これにて瀬古由起子君の質疑は終了いたしました。
 次に、東門美津子君。
東門分科員 社会民主党の東門美津子でございます。
 私、決算行政監視委員会で質問するのは初めてですし、また、環境大臣初め環境省の方々に対して質問するのも初めてでございますので、ちょっと緊張もしておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 私の方は、「キャンプ・コートニー水域のヒジキに係る補完的調査結果について」と、その評価書に関して質問をしたいと思います。
 近年、狩猟による鉛散弾と同様に、クレー射撃で用いられる鉛弾による土壌汚染問題が大きな社会問題になっています。二〇〇〇年には、福岡県筑紫野市の福岡県立総合射撃場で、土壌中の鉛汚染が確認され、福岡県によって散弾や汚染土壌の回収、射撃場の改良が行われました。二〇〇一年には、千葉県射撃場でも土壌中の鉛汚染が確認され、鉛分布状況の調査、鉛の撤去計画の作成が行われています。
 沖縄県におきましては、在沖米軍キャンプ・コートニーで、一九六一年から三十七年間、レクリエーションとしてクレー射撃が行われていたということが、二〇〇一年二月にクレー射撃の影響地域におけるヒジキ漁が米軍から許可されなくなったことを地元新聞が報道したことで明らかになりました。
 一九九八年に米海兵隊が実施した調査によって、クレー射撃影響地域にあるビーチの砂の中の鉛の含有濃度が、キャンプ・コートニーのビーチ北二キロメートルの昆布ビーチと比べて二十五倍も高いことがわかりました。また、二〇〇一年に米海兵隊によって行われた影響地域に生息するヒジキ中の鉛の含有濃度については測定されたものの、海藻中の鉛の許容濃度を示す基準が見つからないとして、昨年よりヒジキ漁が規制されています。
 この問題は、その後、日米合同委員会環境分科委員会で非公開で協議され、平成十四年、ことしの三月九日から三月二十九日にかけて、キャンプ・コートニー水域のヒジキに係る補完的調査が実施され、六月二十一日には結果報告に対する評価書が公表されました。
 四省庁名で発表された資料によりますと、評価の概要では、当該水域のヒジキの含有量は、文献調査で得られた他水域のヒジキや海藻類中の値よりも低いレベルである、したがって、当該水域のヒジキの鉛含有量は、食品衛生上の観点では、人の健康に影響を与えるものではないと考えるとあり、事実上の安全宣言を行っています。
 在日米軍の活動から生じる環境問題については、提供施設外の環境問題と異なり、非公開の日米合同委員会環境分科委員会で対策などが話し合われ、その審議の内容が非公開であることから、対策の根拠などについて国民に十分な説明が行われていません。
 そこで、この評価書について何点か質問いたします。
 まず最初に、この質問の前に、質問というよりも要望ということにしておいた方がいいかもしれませんが、この日米合同委員会環境分科委員会のメンバー、そしてそのメンバーの方々の専門分野、そのリストをぜひ提供していただきたいと思います。もう一つ、外部から専門家の助言があったのかどうか、それについてもお聞かせいただけたらありがたいと思います。これは御答弁いただけたらありがたいと思います。済みません、要望と申し上げながら。
西尾政府参考人 日米合同委員会のもとに置かれております環境分科会につきましては、各回ごとの議事録とか内容につきましては、日米の合意なしには公表しないということでございます。
 関係省庁が出ておりますけれども、それぞれの事案に応じまして必要な人は出ている。あるいは、それぞれの省庁においてそれぞれの専門スタッフに聞くということをして、それなりに必要な知識を持った上で議論をしているということでありますので、関係省庁でそれぞれ、必要な範囲で必要な専門職員にそれぞれの案件ごとに確かめるなり、あるいは調査をして対応している、そういう状況でございます。
東門分科員 という御答弁は、固定したメンバーはないということでしょうか。その案件について、関係省庁からそれぞれ、その都度かわったメンバーが出てくることの方が多いというふうに受けとめてもいいのでしょうか。それと外部からの助言と、その二点でお答えいただけたらありがたいと思います。
西尾政府参考人 基本的には、委員会そのもの、分科会そのものに出席しますのは、関係省庁の担当の課長でございます。そのメンバーは決まっております。ですから、アドバイザリーの専門家をそこで雇うということは、基本的にはないと思います。問題があれば、それぞれの省庁がそれぞれ専門家に聞くなり、あるいは外部に委託するなり調査するなり、それぞれ分担してやる、こういう仕組みになっております。
東門分科員 わかりました。
 では、評価書についての質問に入ります。
 五ページ目ですが、生ヒジキの水分含有率について書いてあります。「生ヒジキにおける水分含有率(約八九%)を考慮すれば」とありますが、この数字は今回の調査で計測したものなのでしょうか、まずそこからお伺いいたします。
西尾政府参考人 今先生御指摘の水分含有率約八九%の計数につきましては、今回の調査におきます四十二サンプルの生ヒジキについて調査をした水分含有量約八九%のことでございます。ただ、一般的に海藻類の水分含有率は大体九割程度と言われておりますので、この数字は大体通常の値を示しているものというふうに認識をしております。
東門分科員 その同じ五ページなんですが、「米側調査におけるサンプルは生ヒジキを煮沸せずに乾燥させたヒジキ(乾燥重量当たりの濃度)を使用したため、」とありますが、米側調査報告書では、乾燥重量当たりか湿重量当たりかは表示されていないわけですね。
 どうして「米側調査におけるサンプルは生ヒジキを煮沸せずに乾燥させたヒジキ(乾燥重量当たりの濃度)を使用した」と断定されたのでしょうか、お伺いします。
西尾政府参考人 今のウエットの湿重量なのか乾燥重量なのかという点につきましては、重要な点でございましたので、米側に私どもから個別に聞いて確認をしております。
東門分科員 米側に個別に聞かれたということなんですが、これはどうなんでしょう、説得力ないと思うんですけれども。要するに、非公開、言ってみれば密室ですよ。そこの協議の中で確認されたわけですね、そういうことですね。そうすると、これで十分な証拠だ、米側がこう言ったからこうだということになるわけですが、どうなんでしょう、米側の調査が乾燥させたヒジキを使用して乾燥重量当たりの鉛の濃度を表示したというその証拠、聞いて口頭でということではなくて、その証拠があったらお示しいただきたいと思います。
西尾政府参考人 今般の私どもの調査につきましては、今ここで課題になっております報告書につきましては、私どもといいますか、防衛施設庁がサンプリングして分析した調査、それにつきまして関係省庁で評価をした事柄の結果を示すということがポイントでございます。
 今の米側調査との数字の突合というのは、ある面では参考でございます。私ども、米側調査につきまして、それが乾燥重量であるということを確認いたしまして、それで、両者の数字を見ればそれなりに整合した数字だということをここに参考に掲げているわけでございますので、そこは、この調査の目的自身は、きちんと現実に防衛施設庁で調査をしてはかった数字をちゃんとオープンにしておりますので、それとこの数字とが整合しておるということで、問題がないのではないかというふうに考えております。
東門分科員 関係省庁の皆さんがこの報告書に基づいて今回の評価書を出してきたということでよろしいんでしょうか。実は私、これはきのうしか入手できなくてまだ読んでもいない状況なんですが、その中で、これをしっかりすれば、こういう数字は問題ないというのが局長の御見解なんでしょうか。
西尾政府参考人 今御指摘の調査自身は、防衛施設庁が外部団体に委託して生の測定とか調査数字を出すという作業をしたものの生の数字のまとめでございます。その上に立ちまして、環境省、厚生労働省、外務省、防衛施設庁の関係の省庁で、それをどのように解釈したらいいものであろう、その中からきちんとこれでいいと確認できるものはどれかという議論をいたしまして、それが最初に先生御指摘になりました評価書というものにまとまっているという次第でございます。
東門分科員 では、次に移ります。
 評価書四ページに書かれております、米軍調査によって行われた底質中の鉛濃度について日本側が行った評価についてお尋ねいたします。
 その中に、「我が国の主要な湾域の底質について、海上保安庁等により鉛などの有害な物質について毎年度定期的な観測が行われている。それによれば湾域の底質中の鉛濃度は十二〜七十八マイクログラム・パー・グラム(乾燥重量比)である」とあります。その中の「我が国の主要な湾域」というのはどこを指しているのでしょうか。
西尾政府参考人 この主要海域における鉛の濃度の調査で引用いたしましたのは、海上保安庁によります調査で、毎年実施されているものでございます。その主要湾域ということで調査をしておられます湾域につきましては、これは、東京湾あるいは大阪湾、紀伊水道、瀬戸内海など、我が国の代表的な主要湾域、計十二水域六十四地点を網羅して調査されておる、こういうことでございます。
東門分科員 十二水域六十四地点という今局長の御答弁でしたが、この十二水域六十四地点というのは、用途、その利用目的というんですか、それは皆同じですか。漁場もかなり入っておりますか。
西尾政府参考人 これは主要湾域の標準的なデータをとるという目的で設計されている調査というふうに伺っておりまして、そういう面では、漁場であるからそこにポイントをとるとか、漁場を避けてポイントをとるとかいうことはされていません。ただ、東京湾だけでも湾口から湾奥まで六地点ほどとってありますので、この中には我が国の要するに漁獲を行っておりますような海域というものと当然オーバーラップするといいますか、重複しておるものだというふうに思っております。
東門分科員 この評価書を見ていますと、これの底質中の鉛濃度が十二から七十八マイクログラム・パー・グラムというその湾域が、いわゆる金武湾ですね、そのヒジキが生息しているその金武湾と同じように比較しているというのが、私そこが理解できないんですが、その十二から七十八マイクログラム・パー・グラムというその湾域が良好な水産資源、漁場であるという評価につながるのかどうか。ちょっとそこのところ理解できないので、教えていただきたいと思います。
西尾政府参考人 本件評価書の主要目的につきましては、このヒジキにおきまして鉛の高い濃度が検出されたのではないか、これが心配であるということが中心でございましたので、この事柄について大丈夫かどうかということを確認いたしましたのは、実際にここで調査をしましたヒジキの含有量から、それをWHOなどの標準と比較していくという作業もいたしました。それから、他の地域のヒジキの含有量とも比較いたしました。そういう作業をいたしまして、このヒジキについては心配なレベルではないという結論を出しております。
 ただ、その周辺の調査、周辺の事実関係の整理といたしまして、では、そうはいっても、少ない分量にしてもヒジキが検出されたのはどういうメカニズムで検出されたのであろうかということの考察の中で、そもそも個々の底質中の濃度のレベルというのはどの程度であったんだろうかということにつきまして判定してみた。それは、代表的な湾域というものと余り変わらない、米側調査自体余り変わらない、そういう数字のレンジに入っているということがわかったということでございます。
 ですから、このヒジキ自体のレベルが何か摂取したときの有害性でどうかということは、別の議論のところで整理をしている、こういう形になっております。
東門分科員 比較したヒジキなんですが、よその地域でとれた乾燥ヒジキと、生ヒジキの比較になっているというふうに思うんですが、そこはどうなんでしょうか、乾燥ヒジキの中の鉛含有量と、それから生ヒジキ、そこには全然問題はありませんか、それを両方比較するということに関しては。
西尾政府参考人 この評価書の中で述べております他の地域のヒジキの鉛含有量という数字につきましても、これは湿重量ではかっておりますので、この数字は、今回の調査ではかりました湿重量ではかっております数字とそのまま比較できる数字であるというふうに思っております。
東門分科員 はい、わかりました。別に問題はないという見解であるということですね。
 今回、私が見ていますと、先ほど申し上げました主要な湾域から出たその数値なんですが、これは汚染した港のデータというふうにも言えると思うんです、それから水産に適している水域のデータを比べているんじゃないかなという気がするんですが、比較すべきではないものがここで比較をされて大丈夫ですよと言われているような気がします。
 那覇港のデータ、那覇港がその湾域の中に入っているかどうかわかりません、十二水域六十四地点、主要なものに入っているかどうかわかりませんが、那覇港のデータはこの主要な湾域のデータと符合するんですね。ところが、今問題の金武湾のデータは主要な湾域のデータより一けた低い鉛濃度となっているはずなんです。キャンプ・コートニー沖水域のヒジキあるいは底質は、金武湾の他水域のヒジキや底質に比べ鉛濃度が高いというのが妥当な結論ではないのかというのが私の立場です。底質の鉛濃度に関して比較すべきでないデータと比較しているこの評価書は、著しく客観性を欠いているのではないかという思いがしております。それが評価書全体の信頼度を損なっているという指摘をしている専門家もおられます。
 本当の意味での安全宣言というふうにしていくためには、合同委員会の環境分科会ですか、そこのような、ある意味での密室における検討ではなくて、地元自治体や地元学識経験者が参加する、透明性の高い検討の仕組みが必要ではないかと思われるんです。それが今一番求められると思いますが、これは大臣の見解をお伺いしたいと思います。やはり住民が安心してそれを食していける、それは、しっかりと政府の立場、政府の調査してきた経緯、それが明らかにされている、透明性がしっかりしているということが私は求められていると思いますが、大臣、よろしくお願いします。
大木国務大臣 今回、鉛の調査結果につきましては、一応いろいろな条件を考えて比較すべきものと比べて結果が出たというふうに判断しておりますけれども、さらに、そういった住民の安心と申しますか、理解と申しますか、そういったものを得られるためには、できるだけ広いといいますか、できるだけ適切なその比較の対象も考えながらつくっていくという努力は今後も続けたいと思っております。
東門分科員 ぜひお願いしたいし、ぜひ透明性がしっかり国民から見えるという形でやっていただきたいと思います。
 最後に、その鉛の関連で一点だけ。在沖米軍の海兵隊環境部の調査報告書には、最悪の場合として、キャンプ・コートニーのクレー射撃による影響地域の鉛の量は約四十九トンと想定されています。日米合同委員会環境分科会では、影響地域にどれだけの量の鉛が分布しているとお考えでしょうか。それをお聞かせいただきたいと思います。
西尾政府参考人 今御指摘の数値を十分協議して確定するというには至っておりません。
東門分科員 米軍の方は四十九トンと想定されているということですが、日本側としては、全然予測も立たない、幾らあるかも全然わからない、どれぐらいの鉛が分布しているかということはわからないということでしょうか。それとも、出せないということなんでしょうか。関係ないということなんでしょうか。そこをちょっとお聞きしたいと思います。
西尾政府参考人 今の四十九トンというのは、米軍におきまして、過去の射撃をしたような数値というのを推定しまして、それから推測した数字ということでございます。ですので、現状ではそれが唯一の推測値であるというふうに思います。
東門分科員 ということは、政府としても、多分それくらいはあるんじゃないかなという立場だということですか。イエスかノーで。
西尾政府参考人 米軍からそのように聞いておるということでございます。
東門分科員 わかりました。
 では、最後の質問になりますが、鉛の方はこれで終わりまして、ジュゴン保護について大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
 国内に生息する鳥類や哺乳類の保護を目的とする改正鳥獣保護法が、今月五日、成立しました。そして、来年四月から施行されるということになっております。今回の改正によって海にすむ哺乳類も保護対象に含まれることになり、政府は、ジュゴンを改正鳥獣保護法の対象として捕獲や殺傷を原則禁止する方針であるということを明らかにしています。また、広域的調査の結果を踏まえて、鳥獣保護法とは別に、絶滅のおそれのある種として、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種として指定することも検討していくとしております。
 国際的に見ましても、二〇〇〇年にヨルダンで開催されました世界自然保護会議、IUCNにおいてジュゴン保護に関する勧告決議が採択されていますし、本年二月に発表されました国連環境計画の報告書においても、ジュゴンの生息地を持つ先進国は日本とオーストラリアだけで、両国はジュゴン保護に特別な責任を負っている、そして、早急な保護対策を講じないと、近い将来に日本近海では絶滅するとして、対策の強化を求めています。
 それに対しまして、ジュゴンの生息する場所、日本でいえば沖縄県の、しかも、北限と言われていますが、北部の、今普天間飛行場の代替施設として、その移設場所と予定されているあたりで回遊が確認されているということなんです。そういう意味で、いろいろな国際的な動きもありますが、そのジュゴン保護の動き、どのように認識しておられて、そして今後、環境省として、環境大臣として、ジュゴンの保護にどのような対策、政策を持っていかれるのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
大木国務大臣 今もお話がございましたように、鳥獣保護法の改正によりまして、これから海の方のこともだんだんに我々としても関心を持つということでございまして、とりあえずジュゴンというものが対象になっておるわけでございますから、これにつきましては、これから捕獲の制限とかその他いろいろ、そういったようなことは措置を進めてまいりたいと思いますし、今、これもまた委員からお話がございましたけれども、種の保存というような立場からの対策というのもいろいろと考えてまいりたいというふうに思っております。具体的にはこれから、法律も通していただきましたから進めてまいりたいというふうに思っております。
 あと、沖縄のジュゴンについて、先生も今おっしゃったとおり、日本でいうと恐らく沖縄だけかというようなことでございますから、ただ、沖縄におきまして、どこにどういうふうに生息しているかということになりますと、まだいろいろ議論がありますから、これはきちっとまたこれから調査を進めていかなきゃいかぬというわけでありますし、また、今、飛行場の移転の話との関連において、いろいろ議論もあります。
 これも十分承知しておりますので、これからそういった議論の中で、既に私どもとしては、仮に飛行場を設置するならどういうことを考えるべきだというようなことについては、ジュゴンの問題もありますし、その他もろもろの環境問題についても考慮に入れながら、その都度意見を述べておるというところでございますので、これは今後、また、沖縄におけるジュゴンについては、今お話がございましたように、これは沖縄における重要な環境問題の一つということで、ひとつ十分に前向きに検討と申しますか勉強を続けさせていただきたいと思っております。
東門分科員 今の大臣のお言葉、ぜひそのようにしていただきたいと思います。これはチュラ海と言われる沖縄の海です。きれいな海です。豊かな海です。そこでやはりジュゴンも一緒に共生をしていくという場を私たちは失いたくありません。大事にしていかなければいけないと思っておりますので、環境省として、環境省の立場から、環境問題、あるいは種の保存という立場からもぜひ強く出ていただきたいと思います。
 それからヒジキの問題ですが、漁が多分春先になるんでしょうが、私たちの健康、食の安全性とか、安心して食することができるという観点からも、とても大事なことです。私、機会があれば、またこの場で、この場でじゃなくても、別の場ででも、委員会等で質問していきたいと思いますので、ぜひ、これは防衛施設庁だとおっしゃらずに、環境省でもやはりこれから検討を進めていっていただきたいと思います。
 要望しまして、少し時間が残っているかもしれませんが、終わります。ありがとうございました。
持永主査 これにて東門美津子君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして環境省所管の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより会計検査院所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。金子会計検査院長。
金子会計検査院長 平成十二年度会計検査院主管一般会計歳入決算及び会計検査院所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 会計検査院主管の歳入につきましては、予算額二千七百三万円に対しまして、収納済み歳入額は二千五百二十八万余円であり、差し引き百七十四万余円の減少となっております。
 収納済み歳入額の主なものは、国有財産貸付収入二千三百九十三万余円であります。
 次に、会計検査院所管の歳出につきましては、当初予算額百六十四億四千八百四十六万余円でありますが、これに予算補正追加額、予算補正修正減少額及び前年度繰越額差し引き九億三千八十三万余円を加えた予算現額百七十三億七千九百二十九万余円に対しまして、支出済み歳出額は百六十一億二千六百五十二万余円、翌年度繰越額は九億八千五百六十七万余円でありますので、その差額二億六千七百九万余円を不用額といたしました。
 支出済み歳出額の主なものは、人件費百三十二億九千二百六十九万余円、検査旅費六億五千三百二万余円となっております。
 以上、簡単でございますが、平成十二年度における会計検査院関係の決算の説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度会計検査院の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
持永主査 以上をもちまして会計検査院所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。原口一博君。
原口分科員 まず冒頭、委員長にお許しをいただいて、お手元に資料を提出させていただきたいと思います。
 検査院長、きょうはありがとうございます。幾つかの点についてお尋ねをいたします。
 まず、「内閣官房報償費の執行等について」ということで、特に松尾事件をめぐる内閣報償費の使われ方について、会計検査院、大変威信をかけて調査をしていただきました。これは予算委員会でも質疑をさせていただきましたが、その調査報告に沿って幾つか御質問を申し上げたいと思います。
 これはまだ損害額が確定をしておらない事件というふうに聞いておりますが、松尾室長から損害額が賠償されなければ損害賠償請求の訴えを提起することにしている、内閣官房がこのように考えているということを言っておりますが、その後、この損害というのはどれほど埋められたのでしょうか。会計検査院はどのように把握しておられるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
石野会計検査院当局者 今、詳細の資料が手元にございませんので、金額、確たることは申し上げられませんが、必要に応じまして、内閣官房の方から、現在の状況というものはこういう状況であるという状況の報告は受けておるところでございます。
原口分科員 現在、額がお手元にないということでございますが、どのような状況ですか。松尾室長はこの五億を超える詐取の額を返しているんでしょうか。内閣官房からはどのように会計検査院に報告があっているんでしょうか。
石野会計検査院当局者 財産を確認でき、債権を保全するということで、ありていに言いますと取れるものは取るということで、幾ばくかのものは返ってきておるというふうに承知しております。
原口分科員 私は、やはりこれほど大きな事件でしたから、きょうここでこの詳細について伺うということでございましたので、非常に漠とした答えに多少戸惑っております。
 この会計検査院の報告の十ページでございますが、「ウ 内閣官房長官自身に交付された報償費の管理」ということで、お手元の資料の一ページでございますが、報償費の流れを会計検査院はわかりやすく書いていただいています。まさにこの1―1の部分、1―2の部分で、「内閣官房長官自らの領収証書はあるが、その後の役務提供者等への支払に関する帳簿や支払を証明する書類等を整備するなどの事務補助は行われていないとしている。このため、内閣官房長官における管理状況が十分把握できない状況となっている。」まさに公金の管理で内閣の中で事務補助が行われない。なぜこのようなことになっていたのか、会計検査院はその理由を突きとめていらっしゃいますでしょうか。お尋ねを申し上げます。
石野会計検査院当局者 今お話しの1―1あるいは1―2の部分でございますが、ここはまさに内閣官房長官みずからが管理し、役務提供者等に支払うという経費でございまして、いわば内閣官房長官としての高度な政策的判断に基づき執行される特に機密の高い経費であるということから、今お話しのような管理状況にあったものというふうに承知しております。
原口分科員 そのお答えは必ずしも私は納得できない。
 何となれば、その前の八ページ、「内閣官房報償費に係る計算証明」ということで、会計法令上の支出事務は、支出者から取扱責任者、この場合は内閣官房長官への資金交付をもって終了したと言えるけれども、取扱責任者が交付を受けた報償費は依然として公金であり、よって、取扱責任者は当該資金を報償費の支出目的に従って適正に使用しなければならない、したがって、取扱責任者、内閣官房長官から役務提供者等への報償費の支払いは、会計検査院法第二十二条の第一号の規定による本院の検査対象となると書いてあるわけです。
 ですから、今のお答えでは、なぜ内閣官房長官における管理状況が十分把握できない状況となっていたのか、あるいは、これを改善すべきかという答えにならないというふうに思います。
 限られた時間ですので、もう一つ、十一ページ。「宿泊費差額に係る経理」ということで、この差額費の支払いに当たっては、実態上、事務補助が行われていたわけでありますが、関係資料が作成、保管されていたにもかかわらず、これが会計検査院に提示をされていなかった、このため、会計検査院は、総理の外国訪問に係る宿泊費の差額の支払い等を把握することができなかったというふうに御報告では書いてあります。
 これは、提示を求めてきたんでしょうか、会計検査院は。あるいは、その後、どのようにされているのか。やはり公金である以上、提示をしっかり求めて、それが適切であるかどうかというのは、機密性が高いものであってもやはり必要ではないかと思うんですが、基本的なお考えを伺いたいと思います。
石野会計検査院当局者 先ほどのお話と関連するかと思いますが、事務補助がなされていないということにおいて、それは先ほど申し上げた、みずから扱う経費の特殊性ということであったということでございます。
 それで、今の宿泊費差額に係る分ということにつきましても、従来、内閣官房長官みずからが管理する報償費から支払われるということで整理がなされていたということで、じゃ、どこまでが事務補助を行う範囲で、どこからが直接みずからやる部分なのかという、その範囲が明確に定められていなかったということで、従来は、本院に対しては、内閣官房長官みずから管理する報償費から支払われるものだということでございますので、事務補助の関連での説明はなかったということでございまして、したがって、今回の宿泊費差額の支払いということの把握に至らなかったという状況でございます。
 したがいまして、これですと、どこまでが事務補助の範囲で、どこからがみずからの分かということが明確でございませんので、今後はそこを明確にし取り扱うということを要求したということでございます。
原口分科員 公金の支出ですから、こういったことが野方図に行われていいわけがない。
 次の質問に移ります。十四ページ。これは、やはりまだはっきりわかっていないんですね。一番下の段でございますが、「その他の省庁の一括払同行者について、規定額宿泊料の支援室長への交付状況等を調査したが、一部の同行者を除き、その大半が把握できなかった。」こんなことが本当にあるんだろうかと思うんです。
 実際に宿泊をし、そしてこれは公用で行って宿泊をしている。いつ、どこに、だれが泊まったかということははっきりわかるわけで、これの状況を会計検査院が調査をされて、一部の同行者を除き、その大半が把握できないなんということが、本当にまともに受け入れられるだろうかと思うんですが、なぜでしょうか。
石野会計検査院当局者 ここで規定額宿泊料と書いてございますのは、いわゆる旅費法等に基づいて、一定額といいますか、定められた額が出された分ということでございまして、それの支出が行われているということについては確認できておるわけですが、その先、支援室長との関係で、そこに交付があったのかどうかということについては、資料等もはっきり残っておらないというようなことで、ここに書きましたとおり、把握ができていない状況にあるということを言っているものでございます。
原口分科員 ちょっとよくわからないのですが、差額を支援室長が内閣官房からもらって、そしてそれを埋めていたわけでしょう。ですから、その他の省庁の一括払い同行者がどのような宿泊をしたのかというのがわかれば、支援室長が残りのお金を埋めている、その大半についても把握できるんじゃないですか。ちょっと今の説明、私は理解できないんですが。
石野会計検査院当局者 宿泊費差額と、それからそこで言います規定額宿泊料というものの両方をもってホテル等の宿泊代に充てるということになってございます。支援室長がホテルとの間でどういうふうな支払いを行ってきたのかということは、関係資料等によりまして、ここに書きましたとおり、その交付の状況というものを把握したわけでございますが、他の省庁ということでございますので、そこの一括払い同行者、その同行者に出されました旅費法上のお金、これが支援室長にどういうふうに渡ったのかということについて、関係の資料がないために確認ができないということでございます。
原口分科員 それは他の省庁に当たればわかる話じゃないですか。違うんですか。他の省庁で払った人がいて、他の省庁にも松尾室長と同じように埋める人がいたんですか。違うでしょう。
持永主査 第一局長。わかりやすく言ってください。
石野会計検査院当局者 ちょっと説明が錯綜して申しわけございません。
 ここの一括払い同行者につきましては、各省庁から一括払い同行者に規定額の旅費が出ております。出ておりますが、それが支援室長へどういう形で渡ったのか。旅費の差額と一緒に一括で払いますので、他省庁の同行者に旅費が出たまではわかるわけですが、その先について、支援室長と同行者との間でどういうやりとりがあったのかということについてなかなか確認がとれなかったということでございます。
原口分科員 ちょっとよく納得はいかないんですが、その次の、ここは大変重要な記述だと思うのです。これは予算委員会でも、十六ページの一番下の記述ですが、「これら支援室長が提出した宿泊費差額の精算書類に対する確認状況について検査したところ、内閣官房と外務省の間の事務の分担が明確でないことなどから、双方において、精算書と領収証書の突合等の実質的な確認は行われていない状況となっていた。」こんなことがあるんでしょうか。なぜこんなことがずっと続いていたんでしょうか。事務の所掌が明確でない、これはいつからこんなことになっていたんでしょうか。会計検査院はどのように把握されているんでしょうか。
石野会計検査院当局者 こういう実質的な突合が実際には確認が行われていない状況の原因ということでございますが、内閣官房においては、すべて外務省において宿泊費の精算というものの確認がなされておるというふうに判断しておったということ。それから、逆に外務省においては、支援室長のやっている宿泊費差額の精算に関する事務というのが明確に外務省の事務であるという認識のもとにコントロールがなされておらず、支援室長に任せきりというふうなことで、お互いその確認が行われておらなかったということでございます。
 それから、いつからこういう状態が出てきたのかということでございますが、これにつきましては、支援室が設置されて後、松尾室長がその支援室に就任する前後ということではないかということで、その状況については、お手元の十七ページか十八ページ等に記述しておるところでございます。
原口分科員 問題はそこなんですね。今お話しになった十八ページに、「支援室は、官房長の決裁により設置されたもので、政令ないしは省令に基づくものでなかった。」「支援室の長は室長という新たな管理職が設置されたわけでもなく、課長補佐級のものであった。」ここに言う官房長というのは、どこの官房長ですか。
石野会計検査院当局者 外務省の組織でございますので、外務省の官房長ということでございます。
原口分科員 外務省の官房長が決裁をして設置したものであれば、この支援室の機能やさまざまな役割分担を外務省は知らないわけないじゃないですか。内閣官房の方にその決裁をやっていたなんという今の前段の御答弁は、ここと矛盾するんじゃありませんか。
 また、これはこの決裁書をお持ちだと思うのです。「支援室は、官房長の決裁により設置された」と明確に書いていらっしゃいますから。この決裁書を本委員会に提示をお願いしたいんですが、委員長、お計らいをいただきたいと思います。
持永主査 その件は、理事会の方で相談をさせていただきます。
石野会計検査院当局者 支援室の業務は、総理、大臣等の要人の外国訪問の際の宿舎の手配から、荷物の搬送あるいは訪問の支援といった多岐にわたる業務がその内容になってございまして、ここで問題になっております宿泊費差額の支払いといいますか、精算といいますか、それが明確にこの支援室の業務なのかどうかということについての明定がなかったということで本件のような事態が生じてきておるということかと思います。
原口分科員 ということは、今の私が読み上げた十八ページ、支援室が置かれたときの官房長決裁の中には、その業務の内容について、宿泊費の差額を云々するいわゆるロジスティックの部分というのが含まれていなかったわけですか。
石野会計検査院当局者 まさに今お話しのロジの業務を行うということで設置されたということでございますが、今お話ししました宿泊費差額の扱いということまでには具体的に言及していないということであろうということです。
原口分科員 まさに宿泊費の差額をどうこうするということはこの室の主たることになっていて、そのためにたくさんのお金が詐取をされているんじゃないですか。
 二十ページ、これも変な報告なんですよ。「松尾元室長在任中」、今の「松尾元室長が支援室長に就任して以降、従来主管課が行っていた宿泊費差額に係る業務は支援室が行うようになった。この変更が生じた正確な時期は不明であるが、松尾元室長の就任後、かなり早い時期であったと認められる。」つまり、別の課が行っていた、今お話しになった宿泊費の差額にかかわる業務をここに移すためには、何かの決裁が要るはずなんですよ。組織上の決定があるはずなんです。それがなくていきなり、別の人がやっている、あるいは別のセクションがやっていることをこっちに移すことはないはずなんですね。なぜこんなふうになっているんですか。
石野会計検査院当局者 お話しのとおりでありまして、そういうふうなきちっとした処理がなされるのが本来のあるべき姿であろうと我々も考えております。
 この点につきましては、検査に当たりまして、どういう状況であったのかということを検査の過程で説明を受け、必要な書類については提示を受けて検査したわけでありますが、残念ながら、明確なそういう説明がなかったということ、あるいはもちろん書類もございませんし、我々としては、検査の結果としてこういうふうに書かざるを得ないという状況で、検査の結果をそのままここに記述したということでございます。
原口分科員 検査する側も戸惑っていらっしゃるのがよくわかります。こんなことあり得ないんですよ。上司の決裁があったか否かについては、上司の決裁がなければこんなことはできないんです。
 その有無を書類上確認することができない、書類がないということは、だれかが越権行為でやっているということでしょう。そしてその上司は、それを監督することも、あるいはなぜそうなったかということも全く無視をしているわけですから、組織上大変な問題が起こっているはずです。私は、この書類がないなんという言いわけは通らないと思うんです。
 その後この書類を隠ぺいあるいは破棄されたということまで疑わなければいけないような報告書になっているんですが、私は、ここの下段に書いてある、「松尾元室長在任中の官房総務課長から聴取したところ、宿泊費差額に係る業務を支援室が行うようになったことを認識しておらず、決裁も下していない」と。これはあり得ないですよ。これでは組織ではない。だれも何も松尾元室長に業務を任せないままに、官邸に行って自由にお金が取れる、こんなわけないじゃないですか。官邸は、この人がこの業務をする人だというから何億というお金をそこに預けるんだと思いますが、ここは矛盾していると思いませんか。これで調査が終わったというふうには私たちは思えないんですが、いかがでございましょうか。
石野会計検査院当局者 おっしゃるとおり、まさに松尾元室長の行っていた業務内容、このことについての十分な監督がなされていなかった、コントロールのもとになかったということだろうと思います。
 この点につきましては、ここに記述しましたとおり、検査院としても、これだけの問題でございましたので、外務省等の実地検査等において十分検査をし、説明を受けてきたところでございまして、その結果をここに書いたということでございます。
原口分科員 十分説明を受けてここに結果を書いたとおっしゃいますが、納得できる結果じゃないじゃないですか。日本国のこれほど精緻な行政組織の中でこんなことがあるわけないんですよ。つまり、組織ぐるみでやっていないと、上司が知らないなんということもあり得ないと私は思います。その証拠がもし出てきたときに、また私たちは、これまでの調査や、あるいはこれまでの外務省の説明に対する信頼を損なう危険性がある、ですからこんな質問をしているわけでございます。
 二十六ページもまた同じようなことが書いてあります。「上司である官房総務課長は、松尾元室長が宿泊費差額に係る業務を行っていたことに気付かず、長年にわたって必要な監督を怠ってきたと認められる。」こんなことはあり得ないですよ。だって、業務の主たるものじゃないですか。ほかに、では、松尾室長は何をやっているんですか。支援室はほかに何をやっているんでしょうか。そこはどのように会計検査院は把握されていらっしゃいますでしょうか。
石野会計検査院当局者 宿泊費差額の精算ということも、大きな意味では支援業務かなというふうにも思うわけでございますが、それが主たるということでもなくて、宿の手配から始まりまして、あるいは、そういう支援業務というのはまさに種々雑多なものがあるんだろうというふうに思っております。
 ここに書きましたように、本来、その部下たる支援室長がどういうことを行っているかということは、当然、その上司である者は把握し、必要な監督を行わなければなりません。しかし、調査の結果では、総務課長はその宿泊費差額の業務を取り扱っていたということは全く知らない、こういうふうに申しておりますので、それはまさに必要な監督を怠ったことではないのかということでここに記述したところでございます。
原口分科員 全く納得のいかないことが幾重にも幾重にも行われていると。
 ここの部門で、もう時間がありませんので、最後の質問をしますが、二十七ページに「総理外国訪問に係るその他の経費について」ということで、「これらの経費のうちには本来外務省が負担すべき通常の外交政策を遂行するのに必要な経費も含まれているとの考えから、外務省がその一部を負担している。」と。
 つまり、報償費、外務報償費と内閣報償費がまざっているんじゃないですか。詐取された総額と内閣官房費、官房報償費と外務省報償費を足していくと、それが混在していないとあり得ない額になるんですよ。その辺はこれは何を意味しているのか、最後にお答えをいただきたいと思います。
石野会計検査院当局者 今お話しの、総理外国訪問に係るその他の経費の分担ということでございますが、これはまさに現地において必要となる経費等に充てられていたものでございまして、それぞれ内閣官房あるいは外務省において予算措置が講じられてきたところでございます。実際の執行を見ますと、どこまでを内閣官房が負担し、どこからが外務省が負担するかという明確な区分がなされていなかったという実態がございましたので、そこはやはり明らかにすべきじゃないかということを述べたものでございます。
原口分科員 やはり、公金を支出しているというその自覚、そして自分たちの所掌の仕事に対する責任、これが甚だ不明確であったと言わざるを得ません。
 それで、お手元の資料の一番最後のページをごらんになってください。これは北方支援事業でございますが、会計検査院、北方支援事業は外務省の拠出金ということで支援事務室に出ておりますので、検査の対象でございますでしょうか。いかがでしょうか。
金子会計検査院長 外務省から資金、拠出金が出ているという、外務省が支出しているというところはこれは検査の対象になります。それから先の国際機関のところは会計検査院の検査の対象にはなりません。しかしながら、国会あるいは報道等によって外務省の事務事業としての側面を有するような実態も出てきているわけです。したがって、実質上外務省の事業としての実態を有する面については、これは実質的に会計検査院の検査対象になる可能性があるわけで、したがって、その点については外務省に対する検査として会計検査院では検査を現在進めているわけでございます。
原口分科員 お手元の資料、これは一点だけ指摘をしておきます。
 外務省の皆さんが先週七月十八日に、この十二月の補正予算計上、これは平成十年の補正予算、三島合計でディーゼル発電施設四十億円の決裁書を持ってきていただきました。四十億円の補正予算に向けての自分たちの姿勢を示したものでありますが、そのページの下をごらんになってください。十二月七日、これは平成十年に予算が通って、そして実はその一年後に国後島のディーゼル発電施設については省内決裁をしているんですよ。普通は省内決裁が先にあって、それから予算計上という形なんですが、まことに不思議なことであります。
 院長にお答えをいただきたいと思いますが、私は何回も予算委員会やさまざまな委員会で、これは外務省の責任において支援委員会へのさまざまな支援を行った、そういう答弁もございます。今院長がお話しになりましたように、これは我が国の公金の使い方に対するものでございます。不思議なことがたくさん起こっていますので、会計検査院としては、いつまでにどのような調査をし、そしていつごろ発表されるのか、このことについてお尋ねを申し上げたいというふうに思います。
金子会計検査院長 現在、鋭意検査を行っているところで、これにつきましても、今までも外務省に対する検査について、いつまでにというお尋ねがありましたけれども、これまでの実績では、会計検査院としてはできるだけ早い機会に結論を出すということで努力をしてきておりますし、この件についてもこれまでのような形で、可能な限り早急にまとめて結論を出したいというふうに考えております。
原口分科員 私学助成についても検査についてお尋ねしたかったんですが、時間が参りましたので、これで質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
持永主査 これにて原口一博君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして会計検査院所管の質疑は終了いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
持永主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 これより外務省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 平成十二年度外務省所管一般会計歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 歳出予算現額は九千三百三十六億六千五十七万円余でありまして、支出済み歳出額は八千百二十九億二千五百六十八万円余、翌年度繰越額は一千六十億六千四百九十九万円余、不用額は百四十六億六千九百八十九万円余であります。
 歳出予算現額の内訳は、歳出予算額八千二百三億一千五百七万円余、前年度繰越額一千百三十一億三千四百十五万円余、予備費使用額二億一千百三十四万円余であります。
 以上、平成十二年度の外務省所管一般会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。
 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
持永主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。
石野会計検査院当局者 平成十二年度外務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号五〇号から五二号までの三件は、在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるもので、在パラオ日本国大使館、在ケニア日本国大使館及び在デンバー日本国総領事館に関するものであります。
 同五三号は、職員の不正行為による損害が生じたものであり、外務省の職員がハイヤーの使用料金を水増しして請求させ、実際の使用料金との差額を領得したものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 その一は、物品・役務調達契約に関するものであります。
 外務省において、本来会計課が行うべき事務を各担当課が行っていたり、適切な契約方式によっていなかったり、十分な競争を確保しないまま安易に契約の相手方を選定していたり、給付の確認を十分に行っていなかったりなどして、会計法令等に基づいた物品・役務調達契約の事務が適正に行われていない事態が見受けられましたことから、物品・役務調達契約に際し、会計法令等を遵守して、透明性、公正性及び競争性を確保し、予算の適正な執行を図るよう改善の処置を要求いたしましたものであります。
 その二は、内閣官房報償費の執行等に関するものであります。
 内閣総理大臣の外国訪問に際して、宿泊費差額の精算に当たって、内閣官房と外務省との間における事務の分担が明確でないことなどから、双方において、精算書と領収証書の突合等の実質的な確認が行われていない状況となっておりました。また、そのほかにも、外務省と内閣官房との間における総理外国訪問に係る事務及び経費の分担が明確になっていなかったり、内閣官房における報償費の執行体制等が整備されていなかったりしておりました。
 したがいまして、内閣官房において、損害額を早期に確定し、債権を保全するための措置を引き続き講ずるとともに、外務省及び内閣官房において、総理外国訪問におけるおのおのの事務及び経費の分担を明確にし、内閣官房において、報償費の執行体制を整備し、内部確認、監査体制を構築するよう是正及び改善の処置を要求いたしましたものであります。
 その三は、報償費の執行に関するものであります。
 情報収集のための飲食を伴う会合等について、支払いが翌年度の予算から行われていたり、その後使用することがないものにもかかわらず支払い残額の精算手続がおくれていたり、事前の決裁がされていなかったりしておりました。また、請求書払いが行えるにもかかわらずやむを得ない場合に限って行われるべき立てかえ払いによっているものもあり、この中に書類の不備により会合の内容や人数について確認できないものがあるなど、外務省内部における確認が十分できなかったり、内部監査が十分行われていなかったりしておりました。また、レセプション経費等の他の費目で支出するよう改善できる経費などが報償費から支出されておりました。
 したがいまして、以上の事態が見受けられたことから、外務省において、報償費の適正な執行のため、所要の処置を講ずるよう要求したものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
持永主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。川口外務大臣。
川口国務大臣 会計検査院の検査の結果、物品・役務の調達手続、報償費の執行、総理外国訪問における内閣官房との事務分担、在外公館における会計経理等について指摘を受けたことは、まことに遺憾であります。
 これらにつきましては、物品・役務の調達の一元化を含む調達手続の改善、報償費の執行手続の改善や内部監査の一層の強化、総理外国訪問における内閣官房との事務分担の明確化、在外公館会計経理に関する体制強化・改善等の措置を講じてきておりますが、今後とも、これらの措置を着実に実施し、予算の適正な執行や不正の再発防止に努めてまいる所存です。
持永主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
持永主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
持永主査 以上をもちまして外務省所管の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
持永主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
川内分科員 民主党の川内でございます。
 本日は、決算行政監視委員会第一分科会ということで、外務省関連について、川口大臣を初め局長さんや部長さん、そしてまた、会計検査院の石野局長様にも若干の御答弁をいただきたいというふうに思います。
 私は、きょうは、二つの提案と、それから、ODAに関する質問をさせていただこうというふうに考えております。
 まず一点目は、外務省も最近は評判が悪過ぎて、どうしていいかわからないというような状況でしょうから、私が、ひとつこういうことをやったらどうだろうかということを申し上げさせていただきたいと思うんです。
 日本は、我が国は、明治時代、それから大正、昭和と、たくさんの方々が海外に移住をし、現在でも、生活をその地に根差してしていらっしゃるわけであります。そのことは皆さんもよくよく御案内のとおりですけれども、現在、各都道府県、自治体で、永年移住者表彰が行われている自治体というのが十幾つかあったと存じますが、私は、日本国籍を有するこれらの、長い間異国の地で大変な苦労をされた方々に対する表彰の制度というものを国として実現していくべきだというふうに考えております。
 なぜかならば、国際交流、日の丸の旗を背負って外国の地域で頑張られてきたわけですから、長年その地域に根差して生活をしてきたということだけで十分に表彰する価値があろうかと思いますし、また、二世、三世、四世と、これからどんどんそういう世代交代が進んでいく中で、我が国に対する帰属意識というものを海外に移住していらっしゃる皆様方にも強く持っていただくという意味でも大変に重要なことではないかと思います。
 百歳を迎えられた方に長寿の表彰とか、あるいは特別の功績があった方々に対する外務大臣の表彰という制度があることは存じ上げておりますけれども、私は、それだけでは不十分であるというふうに考えておりまして、ある一定の年数、ある一定の年齢に達した方はほとんどすべての方々に、本当に今まで御苦労さまでしたという意味において、我が国のために尽くしてきていただいてありがとうございますという感謝の表彰をすべきだというふうに思います。
 きょうもお運びをいただいておりますけれども、先日、領事移住部長の小野様に、この表彰制度についてお話をさせていただきましたが、私の提案に対して、趣旨はよくわかるので研究してみたいという前向きな御発言をいただきました。私としては、今後も、外務省がやらないなら議員立法ででもやろうかというふうに考えておりますけれども、大臣、海外に移住している日本国籍を持つ人々に対する、ある一定の年齢、一定の年数に達した方々を表彰するという制度をぜひ実現させていただきたいというふうに思いますが、御決意を伺いたいと存じます。
    〔主査退席、木下主査代理着席〕
川口国務大臣 海外でずっと長いこと住んで苦労していらっしゃる方々を表彰するべきであるという委員のお気持ちはよくわかりますが、外務省は、従来から、移住業務に貢献してきた方々、団体については外務大臣の表彰の対象にいたしておりまして、その御苦労に報いるということは心がけてきております。
 ただ、委員がおっしゃられたような、居住期間、そして年齢ということを要件に一律に表彰するということにつきましては、そういったことが適切かどうかという判断というのもございますが、さらに、その対象範囲をどうするか、これだけグローバル化した時代でございますので、大勢の人が海外に行って仕事をして住んでいるという状況でもありますから、範囲をどうするか、それを客観的に、また公平的にどういうふうに選ぶかといった点、それから、既存の表彰制度とどうかかわってくるか、ダブっているかどうかといったさまざまな観点から検討する必要がある課題だと思います。
 いずれにいたしましても、移住者、日系人は移住先と我が国を結ぶ貴重なかけ橋であるということでございますので、功績のあったそのような方々に対しては今後とも一定の配慮は行っていきたいと考えています。
川内分科員 功績のあった方というのは、現地の大使館なりに対して忠誠を尽くしたという意味なのかどうなのか、よくわかりませんけれども。
 大臣、外務省改革に一生懸命におなりになられているようですけれども、改革のための改革は幾らやっても無意味である、お客様に喜ばれる、国民に喜ばれて初めて外務省は外務省たり得るわけですから、ぜひ、海外で長い間苦労された、しかも、国策として移民をさせられた方々もたくさんいらっしゃるわけですから、外務省設置法の中には移住のあっせんということが出ておりますけれども、国策として移住させられて大変に苦労を重ねられていらっしゃる方々がたくさんいる、その方たちをどう慰謝していくかということはもっと前向きに考えていただかなければ、今のような、そっけない、どうでもいいような答弁をしているようでは、外務省はいつまでたっても国民の皆さんから信頼されないということを申し上げておきたいというふうに思います。
 それから、もう一つの提案でございますけれども、さきの大戦が終結してから六十年近くが経過いたします。外務省が始めた世界大戦ですから、太平洋戦争ですから、そのとうとい、犠牲となられた海外における戦没者約二百四十万の英霊の皆様方のうち、まだ百十六万柱余りがシベリアや南方地域など各地にお眠りになっていらっしゃるという状況は、外務大臣もよくよく御案内のことと存じます。
 終戦から長い時間がたって、戦没者、どの地域でどういう戦闘があって、どういう人たちがどういうところに埋められているのかという記憶を有する方たちも本当に御高齢になられて、数が少のうなってまいります。遺骨の収集が困難をきわめる中で、時間的な余裕はないわけであります。
 もちろん、遺骨収集の直接の所管は厚生労働省でありますし、これまでも政府としてもいろいろな努力をされていらっしゃることは私も承知しております。戦後三回にわたって遺骨収集についてのキャンペーンが行われたとのことであります。しかし、最後が昭和五十年から五十三年というふうに、この前、お聞きしました。それから二十年余、行われていないわけでありまして、私は、最後の遺骨収集のキャンペーンを今こそ行い、一体でも二体でも御遺骨を収集すべきであるというふうに考えております。
 外務省は直接の所管ではありませんけれども、遺骨収集は国を挙げての取り組みが必要なわけでありますから、ぜひ川口大臣が先頭に立って、海外の在外公館のネットワークも持っていらっしゃるわけですから、情報収集等の旗振り役をお務めいただきたいというふうに思いますが、外務省としての御見解をお尋ねさせていただきます。
植竹副大臣 先生の御質問のキャンペーンのことなんですが、実は私自身も、私のいとこがインパールで戦死しておりまして、私も遺族でありまして、その思いというのは本当によくわかっております。特に、諸外国でまだ眠っておられる遺骨の方が早く本国に帰りたいというそのお気持ち、または遺族の気持ちといたしましては、ぜひこれを実現したいというのは、本当に我々、後を継いでいく、これが無二の願いでございます。
 そういうことを考えまするに、早くこういうことを実現し、そして日本に帰られて、皆様の今次大戦におけるいろいろな思いを安らかにしてあげて、そして日本がいかに平和にやっていくか、それを実現したいと思うのが我々遺族の気持ちでございます。
 したがいまして、先生お話しのように、これは厚生労働省の所管でありますけれども、ぜひこれは、私一個人としましても、遺族の方々が御高齢になられておられますから、早く実現するようにやっていきたいと思っております。しかし、外務省としましても、厚生労働省の方から早くこういうことの依頼がございましたら、積極的にこれはやっていきたいと思う気持ちでございます。ですから、これはむしろ超党派でも実現するように、今後とも努力してまいりたいと思います。重ねて申し上げますが、一応政府でございますので、そういう関係省庁からの依頼がございましたら、積極的にこれはやってまいりたいと考えておるところでございます。
川内分科員 よくわからなかったんですけれども、中国なんかは全く、私どものさきの大戦における戦没者の皆さん方の遺骨収集に関しては、それをいまだに拒否されていらっしゃるわけでありまして、外務省が外務省としてできることというのは、中国政府に対して、日本に対する国内的な感情は別にして、我が国の戦没者の遺骨を収集させてほしいということぐらいは、しっかりと申し入れをしていただくべきであろうというふうに思うんですよ。そういう御努力をしていらっしゃるのか、していらっしゃらないのか。もう時間がないのであれですけれども、渥美参事官に来ていただいていますので、その辺のことについてちょっと、中国に対してはどうなのかということを御説明いただきたいと思います。
渥美政府参考人 お答えいたします。
 中国に対してでございますけれども、中国との関係で、昭和四十七年の日中国交正常化以降、私どもも、中国政府に対して、遺骨収集につきましての実施を申し入れるということをやってきております。特に、もちろん、先ほどおっしゃった、いろいろとキャンペーンをやっていたころが中心ではございますけれども、最近でも、たしか平成九年にも、遺骨収集につきまして、中国政府と連絡をとったことはございます。
 ただ、御案内のように、中国につきましては、中国側に多数の犠牲者とか遺族がおられて、その相手方の国民感情などもございまして、遺骨の収集が極めて困難な状況にあるということは変わっておらないわけでございまして、残念ながら、今のところ、そういう状況でありますけれども、今後とも、厚生労働省とも相談の上、連絡を密にしながら実現に努力してまいりたいと思っております。
川内分科員 本当に、戦後長い時間がたって、中国との関係というものもしっかりとつくり上げることのできない外務省のだらしなさだと私は思うんです。家族を守るために、国のために戦った方々の御遺骨を拾うこともできない。相手の国の感情もあることですから、それはそうでしょうけれども、それじゃ、戦争に行かされて戦いで命を落とした方たちのその思いというものはだれが拾うのか。政府として、国として戦争を始めたわけですから、その犠牲となられた方々の骨というものは最後の一柱まで拾うという気持ちがなければ、それは外交の基本じゃないですか、国として成り立つ上での。
 ぜひ、中国政府に対しても、平成九年にという御説明でしたけれども、会うたびに、中国の要人の顔を見るたびに、少しでもいいから収集をさせてくれということを申し入れて、前向きな御努力をいただきたいというふうに思います。
 多分、傍聴していらっしゃる方々は、中国で戦没した人たちが骨を拾わせてもらっていなかったなんてことを恐らく初めてお聞きになられたと思うんですよ。情けないことですよね。ぜひ、冠たる日本国の政府が、政府としてしっかりと戦争の処理をしているということを内外にお示しいただきたいというふうに思います。
植竹副大臣 先生のおっしゃること、本当によくわかります。
 ただ、私も中国に参りまして、例えば靖国神社の問題にいたしましても、向こうの広報関係の部長にも、我々遺族として当然やることをやるんだ、それについてあなたが同じ立場だったらどうだということをお話しし、その点については、向こうの方も、個人としては私どもが言っている意味はよくわかると。また、向こうの新聞の方が来られたときもお話ししまして、機会があれば一歩一歩でも努力しておるところでございます。
 したがいまして、その気持ちは、今後も努力を続けていく所存でございます。
川内分科員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、ODAについて話題を移させていただきたいと思います。
 会計検査院さんが検査をされた平成十年度、十一年度、十二年度の政府開発援助についての検査報告書というものを読ませていただきました。しかし、たくさんある事業の中で、国を抽出し、その中のすべての事業を一応チェックされてはいるんでしょうけれども、具体的な記載のある事業については、三つから四つの事業しか記載されていない。これでは、私ども、ODAが果たして本当に機能しているのかどうかということの判断材料さえ現状では与えられていないということになるわけであります。
 ODAのすべての事業について、外務省として、その効果に対する自己評価はされているのかどうか、また、されているとすれば、国民に対して外務省の自己査定の判断材料を示すという上で、その資料を公開すべきというふうに考えますが、いかがかということが一点。
 それから、同じことを会計検査院さんについてもお尋ねさせていただきたいと思います。
 ODAの検査について、すべての事業について十分に検査していると自負されていらっしゃるかどうか。そして、毎年公表されている決算検査報告の中では、限られた事業について記述されていらっしゃる、その他の事業についてはその記述が全くなく、検査報告として極めて不十分だというふうに私は思うわけであります。国民の貴重な税金を使って行われている事業でありますから、検査結果については、検査したすべての事業について、判断の材料となった資料等をあわせて、そのすべてをつまびらかにすべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
 以上、外務省それから会計検査院、両者に対して質問させていただきます。
西田政府参考人 お答えいたします。
 今委員御指摘の評価につきましては、外務省としましても、その重要性をつとに認識しておりまして、評価の制度あるいはその体制については、その改善方に一生懸命努力してきているところでございます。
 ただいま委員の、外務省ではどのような評価を行い、すべての評価を行ったものについては公表しているのかという御質問でございますが、外務省においては、現在、御案内のように、外務省と実施機関でありますJICA、JBICの間に、この評価につきまして、近年、それぞれの役割あるいはその分担について整理をしてきております。
 具体的に申し上げますれば、外務省におきましては、従来の、個別の事業の評価から、より高い、いわば川上の、政策あるいはプログラムのレベルに重点を置いた評価に移行すべく、現在、努力を行っております。他方、具体的な個々のプロジェクトにつきましては、実施機関でありますJICAあるいはJBICが中心となって評価を進めていくということについて、今、大方の整理ができておりまして、これに従って改善をしております。
 その結果としまして、外務省が行っております政策評価につきましては、委員も御案内のいわゆる評価報告書というものを毎年公表いたしておりまして、かつ、これは今年のものについてもそうでございますが、すべての評価の中身につきましては、ホームページをもちまして公表させていただいております。それから、JICA、JBICにつきましても、行っているほとんどすべての案件につきまして、事後的にこれをホームページ等で公表するという努力をしてきておるところでございます。
 これは、ますますさらに努力すべき分野と思っておりまして、この前の、大臣から発表していただきました十五の改革の中でも、重点分野の一つとして取り上げさせていただいておるところでございます。
    〔木下主査代理退席、主査着席〕
石野会計検査院当局者 検査院では、数多くのODA事業を現地調査の対象にしまして、その中から、事業効果が十分に発現していない事業はどういうものがあるかということを発見しましてその原因を究明するというようなことで、そういった実態を検査報告に記述してきているところでございます。これによりまして今後のODAの実施に資することにつながればということで、そういう対応をしてきておるところでございます。
 したがいまして、現地調査に当たりましては、限られた予算、人員の中で数多くのODA事業を対象にするということのために、一事業当たり一日程度の日数ということで調査を実施しておりまして、その結果、事業効果が十分に発現していないのではないかと思料された事業につきましては、さらに、その現地調査後もさらなる事実関係などを十分に確認した上で、効果発現上問題があるということで検査報告に記述するということにしてきております。
 したがいまして、記述した以外の事業につきましては、現地調査した範囲だけではなかなか判断ができないということでございまして、その状況を検査院として確認をとれた情報ということではございませんので、それをすべて明らかにするという状況にはないということでございます。
 今申し上げましたように、そういった効果が発現していない事態というものを摘出するといいますか、指摘することによって今後のODA事業の改善ということにつながるということで検査をしてきておる関係上、今申し上げたような対応をとっているということでございます。
川内分科員 ぜひ、外務省さんの方はすべての事業について公表しているということでありますから、別に会計検査院さんが遠慮して隠す必要はないわけでありますから、自信を持って公表をされればいかがかなと。外務省の自己評価というのは自己評価ですから、会計検査院の客観的な評価というものも国民の皆さん方の批判にしっかりと耐え得るものでなければならないと思っておりますので、ぜひそういう方向で御検討を今後いただければありがたいというふうに思います。
 外務省の経済協力局長、西田さんの御答弁では、おおむね自信を持ってやっておるというトーンで御答弁があったやに思いますが、そうすると、今までのODAについては自信があるということでよろしいんですかね。
西田政府参考人 お答えいたします。
 ODAをめぐりましてこれほどまでにいろいろな御批判をいただいておるわけでございますから、今、外務省を中心として政府のやっているODAがまことに十全であるというふうには全く思っておりません。引き続き改善すべき努力は多々多々あるというふうに思っておりまして、川口大臣の御指導のもと、早々に今鋭意努力しているところでございます。
 他方で、ODA事業というもの、すなわち、後発の開発途上国を中心とするところでの開発援助という事業に伴いますいろいろな事情というものもございますので、それをも十分に勘案して、よりよいODAをすべく努力いたしてまいりたいと思っております。
川内分科員 ODAのどこが今まで問題で、どういう改善点があるのかというようなことについては、今の御答弁ではちょっとよくわからなかったんですけれども、今回、経済協力局長の人事が割とニュースで報道されました。西田さんという立派な方がいらっしゃるのに何か経済産業省の方から人がいらっしゃるということで、外務大臣の肝いりだというふうに報道では言われておりましたけれども、そこまで川口大臣がこの人事にこだわられた理由というのをちょっと最後にお聞かせいただきたいと存じます。
川口国務大臣 これは、個別の人事については今まさに検討中であるとしか実は申し上げられない。といいますのは、この人事というのは、官邸で、あるプロセスがありまして、委員会を通った後でないと確定しないということでございますので、その手前で人事権者である私が具体的なことを申し上げるということは適切ではないと思います。
 ということで、一般的にお話をさせていただくということでお許しをいただきたいんですけれども、今、新聞等に出ていますように、外務省の経済協力局長に経済産業省から、そして、経済産業省の経済協力の担当のトップのところに外務省から人を派遣するということで話が進んでいるわけでございます。
 これの一番のねらいというのは、経済協力のような国の非常に根幹的な重要な政策、これについて複数の省庁が関係している場合に、今まで、えてして、省益ですとか省の壁ですとか、そういったことが問題になっているわけで、それを、相互に、それぞれの経済協力、この場合は経済協力ですが、のトップに座ることによって、そういった壁をなくし、日本全体の立場から一つの重要な政策について考えるような、そういうことをやっていきたい、それがねらいでございます。
 西田経済協力局長は、改革について今までかなり路線を引いてきてもらっていまして、ずっと未来永劫に経済協力局長というわけにもいかないものですから、そういったことを考えております。
川内分科員 我々は国民の皆さんの税金で食べさせていただいているんだということを、お互いに強く肝に銘じたいというふうに思います。一般の民間の企業ではなく、税金で食べているわけですから、すべてのことについて国民の皆さんが人事を含めて知る権利を持っているということを最後に申し上げて、終わります。
持永主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。
 次に、一川保夫君。
一川分科員 自由党の一川保夫でございます。
 今、質疑を聞いておりまして、私も、このODAの問題について、ふだんちょっと考えていることをお聞きしたいと思います。
 このODA関係の問題、最近特に、いろいろと国民の皆さん方も関心を持ってきておりますし、また、マスコミ等でもいろいろな報道がなされているという面では、私は、ある面では非常にいいことだなというふうに思いますし、我が国の外交にとっても、また、国内のいろいろな課題を解決するためにも、こういうODAに絡んだような問題というのは非常に重要であるというふうに思っております。
 私自身も、若いころ、実は役所におりまして、このODA施策の一環であろうと思いますけれども、技術協力の一環として、開発途上国でも非常に貧しい国へ何回か出かけたことがございました。その当時も、現地で御苦労されている外務省の役人なり、また、各省から派遣された人、民間の方々といろいろとお会いしておりましたけれども、そういう面では、本当に華々しい外交交渉のほかに、底辺でそういう方々が頑張っておられるということが日本のいろいろな経済発展を支えているんだなという思いをしておりました。
 そこで、外務省のODA白書なるものを最近ちょっとちらちら見せていただきましたけれども、当然ながら、外務省としては、これまでのODAの施策についてはそれなりの評価を下しているわけですね。プラスの評価というか、そういう面の記述があったというふうに思いますけれども、大臣としてはどうでしょうか、これまでの外務省の取り組んできたODAの施策というものについて、こういう面でこの施策は間違ってなかったということを、具体的な事例も含めて何か思いがございましたら、ちょっとお話し願いたいと思います。
川口国務大臣 ODAについては、私は、軍事力がない日本として、国際社会で非常に大きな貢献を日本が果たしているとほかの国々に見てもらう重要な要素になっていると思います。
 先般、私はアフガニスタンに参りまして、アフガニスタンの今大統領になりましたカルザイ大統領ほか、財務大臣ですとか、外務大臣ですとか、大勢の方にお会いをいたしましたけれども、皆さんが口々におっしゃったのは、日本の経済協力がいかにアフガニスタンの国づくりに大きな役割を果たしているかということでございました。
 ことしの一月に、アフガニスタンの復興支援のための会合を日本でやりまして、各国から拠出を募ったわけでございまして、我が国としても二年半で五億ドルというプレッジをいたしましたけれども、大変に高い評価でございました。
 それから、パレスチナ、イスラエルにも行きましたけれども、そこでも、パレスチナのアラファト議長、そして、イスラエルのシャロン首相、ペレス外務大臣にお会いしましたけれども、日本はパレスチナに六億ドルを超える支援を行っていますが、それについての高い評価があって、イスラエルからも、パレスチナについての支援をどんどんやってほしいというお話もありましたし、たまたまパレスチナのある小さな町の図書館に行きまして、そこで、町の人たちに本当に厚く感謝されたということでございます。
 そういった形で、日本の支援は世界じゅうで感謝されていると思います。
 つい数日前、イギリスの外務大臣が日本に来まして、ODAの話をしましたけれども、彼からも、イギリスとしてはODAをふやそうと思っている、ふやそうと思っているんだけれども、金額的に日本の経済協力というのははるか上にあって、そこまでなかなか及ばないということも言っていまして、日本の存在感を世界であらわすための一つの大きな要素になっていると思います。
一川分科員 私も今ほどの大臣のお答えにほぼ同感でございますけれども、ただ、一方で、最近になって、このODAの施策なり予算等につきまして、一般の今まで余り関心を示さなかった方々も、何となく批判的に物を言うことがちょっと目立ってまいりました。これは、最近、日本の経済そのものが非常に不況に陥ってしまって、それが長期化しているという中で、国内経済の中でのいろいろな苦しみが増してきているというその問題と大変関係があると思います。
 外務大臣なり総理大臣なり、トップの方々が外国へ行かれると、その会談の中で何百億円という援助の話がすぐまとまってしまうというようなことに対して、一般の我が国の国民の方々からすると、なぜそういう大規模なお金が簡単に援助されるんだというようなことも含めて、素朴な疑問を持ち出したんだろうというふうに思います。
 ただ、逆に言うと、そういう正しいODA予算の考え方が国民に十分理解されていないということも一方であるわけでして、そこのところは、我々国会議員の責任でもあるわけでございます。
 今ほどのお話のように、日本という国の経済というのは日本国内だけで解決するわけではございませんし、世界全体の経済の中で日本の経済というものが動いているわけでございますので、経済協力という一つの施策の中で世界の平和なり安全が維持されるということがない限りは日本の経済の発展もあり得ないということに当然尽きるわけでございますけれども、大臣としては、最近、日本の国民の方々がこういうものに対してちょっと批判的なことを言い出したというのはどういうところにあるというふうに認識しておられますか。そのところを、ちょっと問題意識をお話し願いたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、やはり経済が非常に国内で厳しくなってきて失業率が高まってくる、こういう状況のもとで、何で国の中でお金を使わないのか、外国で使っているのかという疑問が出てくるのは、これは日本だけではなくて、世界じゅうにそういうところはあると思います。それから、そのODAの実際の効果、あるいは適切にお金が使われているかどうか、税金が使われているかどうかという観点でさまざまな情報が飛び交い、批判がふえてくるということもあるだろうと思います。
 外務省で、つい先週末の土曜日に大阪でタウンミーティングをやりまして、このときのテーマはODA、経済協力でございました。ここで二時間、時間を使って、いらした四百人近くの方とお話をさせていただきましたけれども、私の個人的な感想としまして、確かにODAについての御批判はありましたけれども、いらした方、もともとODAに御関心があるということでいらっしゃっている方ですからそうなのかもしれませんけれども、ODAの必要性については、きちんと認識してそういうふうに理解をしていただいているというのが私の印象でもございました。
 委員がおっしゃられますように、ODAについては、国民の皆様の理解あってのODAが国外で使えるということですから、この努力はしなければいけないと思いますし、それから、日本国の存在、平和に安定的に繁栄して存在しているということ自体が周りの国々がそういう状態にあってこそ可能なんだということを、今後とも引き続き国民の皆様に理解していただけるように努力をしたいと思います。
一川分科員 そこで、ちょっと具体的なお話をお聞きするわけです。
 今、いろいろな援助、協力のやり方には、有償援助、無償援助なり技術協力というのが基本的にあるわけです。内容的には、無償援助なり技術協力というのは規模からすると有償に比べれば若干少ないのかなという感じはするわけですけれども、有償援助というのは、当然、後年にそれを償還していただくという前提での資金協力なわけですが、現実問題、有償資金協力の償還状況というのはどういうふうになっているのかというのが我々には余りふだんわからないんですけれども、現状をまずちょっと説明願いたいと思います。
西田政府参考人 お答えいたします。
 平成十三年度、昨年度でございますが、新規の有償援助、いわゆる円借款と申しておりますけれども、これについて数字を申し上げたいと思います。
 その実施機関であります国際協力銀行、JBICが借入人との間で締結しておりますいわゆる借款契約の実績は、昨年度で約六千八百七十八億円でございました。同機関におきまして実際に貸し付けられた額、すなわち貸付実行額につきましては、約六千五百五十九億円でございます。
 他方、委員御指摘のとおりに、これは借款でございますので、以前貸し付けたものが返ってきているという状況がございまして、その回収額、すなわち借入国から返済されました元本でありますが、これが、昨年度につきましては三千四百九十二億円という額になっております。
 JBICの前身でありますOECFも含めましたこれまでの累積でどうなるかというふうに考えますと、承諾額の累計が二十兆四千四百十四億円、貸し付けの実行額の累計が十四兆五千五百九億円、回収額の累計が三兆七千六百九十五億円、したがいまして、いわゆる残高、貸付実行額の累計から回収額の累計を引いたものでございますが、これが十兆九千九百八十二億円となっております。
一川分科員 その残高の約十一兆円という規模の額が残っているわけですけれども、その回収予定といいますか、その計画というものに照らし合わせてみた場合には、それはどういう状況にあるわけですか。
西田政府参考人 お答えいたします。
 これは、委員まさに御指摘のように、それぞれの借入国の経済あるいは財政状況というものが必ずしも確定的には申し上げられませんので、断定的な回答はできませんが、JBIC及び外務省、財務省、経産省で現在いわゆるこの円借について協議しておりますが、この間、大宗についてはこれが返ってくるという見込みを考えて実施しておるところでございます。
一川分科員 おおむね償還されるであろうという見込みの中でやっているということであるというふうに思います。
 そのあたり、こういう開発途上国に貸し出している資金なものですから、先ほども御答弁にあったように、それぞれの国々の開発のいろいろな動きによっては予定どおり返ってこないのではないかということがいろいろと気になるわけでございます。そういったところも、先ほど大臣もちょっと言いましたように、今日、日本の経済そのものが非常に苦しい中で国民が頑張っているという状況の中で、外国にいろいろと資金協力した金がどういうふうに返還されてきているかというところは、機会あるごとに少しでもわかりやすく国民の方々に説明しておくということがODAのいろいろな施策全体なり資金規模なりというものを国民の方々に理解していただくためにも非常に大事なことではないかなというふうに思いますので、引き続き御努力をお願い申し上げたいと思っています。
 そこで、もう一つ、中国に対することも最近よく話題になってきたわけです。
 我々、近くの、本当の隣の中国の実態そのものをそんなに正確につかんでいないところもあるわけでございますけれども、WTOにも加盟し、相当経済発展をしている中国になぜ政府開発援助が引き続き行われるのかという素朴な疑問が一方であるわけです。具体的に、中国に援助されている資金というのは、近年、あそこの国でどういうふうに使われているのかな、それを中国の政府はどういうふうに評価し、中国の国民の皆さん方にしっかりと説明していただいているのかなということが非常に気になるわけだけれども、そこのところについて、わかる範囲内で御答弁をお願いしたいと思います。
西田政府参考人 お答えいたします。
 中国に対するODAについては、大変に批判、コメントを多くいただいております。国会の場、タウンミーティングあるいは私たち外務省のホームページ等を通じましても、中国に対してなぜODAをやるのかと大変に厳しい御意見が多々寄せられているというのが実態でございます。
 これは、ここ一年というわけではありませんで、委員御案内のとおり、この二、三年、さらに言えば数年にわたってこの御議論がなされてきたというふうに私たちは理解しておりまして、そのような国民、非常に広い方々の各般の御意見というものを踏まえまして、昨年十月に、政府といたしまして、今後の中期的な中国に対する経済協力計画というものを策定させていただきました。
 その中で申している幾つかの主要点を申し上げますと、一つは、従来の、いわゆる沿岸部の経済インフラ、鉄道とか港湾あるいはダム等々でありますが、そのようなインフラ整備はもう中国がみずから解決すべき問題であるという考え方で、今後の日本の中国に対する援助は、絶対貧困が依然として存在しております内陸部の民生、社会開発あるいは日本と中国の相互理解の増進というような点を重視する援助に大きくシフトするということをうたっております。
 また、これまでは、中国に対しましては、多年度にわたるいわばコミットメントというものを行ってきておりますが、昨年度から、これを、他の借入国と同様、被援助国と同様に、各年度でこれを考えていくという形に仕組みも大きく変化させていただいたところでございます。
 結果としまして、例えば平成十三年度で申しますと、対中国円借款の約五四%が環境、一九%が人づくり分野というふうになっております。
 それから、中国側の評価でございます。
 これは、平成十年、江沢民主席が訪日された際、日中共同宣言が作成されましたが、この中で、我が国のODAに対して感謝の意が表明されております。その後も、平成十二年、日中経済協力二十周年記念式典が中国政府の主催で開催されまして、我が国のODAの貢献に対して謝意が述べられるなど、中国側による我が国ODAに対する評価あるいは広報の努力は近年改善されてきているものというふうに認識いたしておりますが、まだまだ十分とは考えておりませんので、この点、さらに広報あるいはそのような理解について得られるよう努力するということをやってまいりたいと考えております。
一川分科員 大臣、この中国に対するODAの施策というのは、従来どおり引き続き、基本的には今ちょっと説明がありましたようなお考えでできるだけ積極的に行っていくという方針なのか、中国のいろいろな発展状況を見ながら徐々に減らしていくという方向なのか、そのあたりは大臣はどのようにお考えですか。
川口国務大臣 中国は我が国の隣にある大国でございまして、この国が平和に、安定的に発展していくということは、我が国の平和、安定、繁栄に関係いたしまして非常に重要なことだと私は思っております。
 中国自体は、一人当たりの国民所得で見ますとまだまだ貧しい国でありまして、水の問題とか環境の問題とか、大きな問題を抱えているわけでございます。こういった中国についてのODAの考え方としては、昨年十月に、我が国の厳しい経済財政状況とか中国の開発課題の変化などを踏まえて、また、国内にあるいろいろな意見を踏まえて対中国経済協力計画を策定いたしまして、現在、これに基づいて一件一件考えて実施しているわけでございます。
 当面、そういうことでございます。ずっと未来永劫にということについては、それは、そのときの中国のまた開発課題ですとか、経済発展の状況ですとか、我が国との二国間関係ですとか、我が国の経済財政状況、さまざまな要素を踏まえて考えていくということではないかと思います。
一川分科員 日本も、さきの戦争の後、海外から資金協力を得て日本の国を立て直してきたといいますか、そういう時代もございましたので、当然、未来永劫ということはその国に対して失礼なことでございますので、そういう面では、しっかりと自立した国づくりをしていただきたいというふうに思います。
 ただ、隣の国であり、なおかつ大変大国になりつつある中国に対して、こういう性格の予算をどういう規模でどれだけ続けていくかということについては、やはり国民の方々も大変関心の強いところでございますので、これまた先ほどのお話のように、わかりやすい、そういう説明の仕方を努力していただきたいなというふうに思っております。
 次に、青年海外協力隊の問題についてちょっとお聞きしたいと思うんです。
 先ほどちょっと話題を出したときに、私も昔、例えばバングラデシュだとかホンジュラスとかという相当貧しい国々へ出入りしていたときに、日本の若者というのはすごいなという印象を持ったのは、この青年海外協力隊の中で、電気もない、ガスもない、テレビもない、何もない、ないない尽くしのところに入って大変頑張っている若者の姿を見て、非常に感激したことがございました。
 そういう方々といろいろな話をさせていただいて、何が一番悩みかということをお聞きしたときに、そこに入っている現地の方々と最後に別れることをいろいろと考えると、それが一番つらいといいますか、そのことがいつも頭の中から離れないというふうなことを、当時、隊員の若い男性の方、女性の方も、大体共通した言い方はそういうところにございました。
 そういう面では、本当に志を持ってしっかりと問題意識の中で彼らがそういう役割を担ってきたんだということを思い起こしながら、この青年海外協力隊員の方々というのは、当時も身分は非常に不安定でございましたが、気持ちはあるんだけれども、行って帰ってきたときに自分はどうなるんだということに対する不安感とか、また、日本の国内でもそういう方々に対する評価みたいなものが、最近は相当評価が高まってきたんだろうと思いますし、いろいろな民間の企業等も逆にそういう方々を使いたいというような格好にはなりつつあるんだろうと思いますが、現状、まず潜在的な数がどれだけあるかということも含めて、希望者が多いのか少ないのかもちょっとわかりませんけれども、そういうこととか、そういう方々の日本国内に帰ってからの身分なり処遇問題、そういう問題が解決されつつあるのかどうか、そのあたりを御説明願いたいと思います。
西田政府参考人 お答えいたします。
 JOCVにつきましてまことに温かいお言葉をいただきまして、ありがとうございます。JOCVは、まことに、現地のみならず国内におきましても、どんどん高い評価を得てきているというふうに私たちは認識いたしております。
 そのようなJOCVの方々が不安なく仕事ができる、あるいは帰国できるという体制を整えるためにこれまで努力をしてまいりまして、若干なりとも改善がされつつあるのではないかなというふうに私たちは考えております。
 具体的な数字でまず申し上げますと、今、大体年二回、種々の分野での募集を行っておりまして、同時に、積極的な広報活動を行っておりますが、平成十三年度を例に挙げますと、約八千人の方の応募をいただきました。その中から新規に約千百人の協力隊員を派遣したところでございます。
 隊員の処遇につきましては、セミナー、カウンセラーを通じた就職情報の提供、進路相談あるいは企業との懇談会等を通じて民間企業への働きかけを行うなど、就職の支援に努めてきております。その結果としまして、例えば平成十二年度の帰国隊員につきましては、帰国者の方の数、千百三十一名でございますが、そのうち、千三十七名の方につきましては進路が決定したという報告を受けているところでございます。
一川分科員 今のお話によりますと、そういう面ではだんだん身分的にも国内では割としっかりとした対応がなされてきているということの御報告でございますけれども、引き続き、そのあたりについてもひとつよろしくお願いしたいと思います。
 最近できた制度の中に、青年の域をとっくに超えてしまったシニアボランティア制度というのがあるというふうに聞いております。これも、自分の地元でも、こういうことにちょっと関心を持った方がいらっしゃいまして、いろいろと勉強した人のお話を聞きますと、このシニアボランティア制度というのは、高齢化社会の日本において、これからもっともっと力を入れた方がいいんじゃないかなというのが私の気持ちです。
 高齢者の中でも、ほとんどの人がまだ元気なわけでございます。何か高齢者というと体がちょっと調子が悪いようにイメージがとられますけれども、四分の三以上の方は元気だと私は思うんです。そういう方々、過去のいろいろな蓄積された専門的な力なり人生経験なりというものも踏まえた方々に海外にどんどん行っていただいて、いろいろな協力をしていただけるというのは、私は、コスト的にも安くつくと思いますし、相手国にとっても、直接その専門分野だけのことじゃなくていろいろなことに相談に乗れる、そういう立場の方だろうというふうに思いますので、もっともっとこの制度を積極的に展開していただきたいというふうに思いますけれども、そのあたりに対するお考えをお聞きしたいと思います。
西田政府参考人 お答えいたします。
 シニア海外ボランティア、今委員御指摘のとおり、大変にまだ気力、体力ともに若いシニアの方で、これからの第二の人生を、開発、海外の若者たちあるいは国づくりのために努力したいという方は大変に希望が多いというふうに私たちは認識しておりまして、それにこたえるべく、予算上の手当てというものも、平成十一年度、約百名枠を予算でとらせていただきましたが、平成十四年度につきましては五百名というふうに、この大変に厳しい予算の状況の中でありますが、昨年度、平成十三年度並みの募集枠をとらせていただいたところでございます。
 問題は、実際の派遣国におけるいわばニーズというものとシニアボランティアが持っておられます専門性というものをどういうふうにお見合いをするかというところが、これからこの制度をさらに発展させていく上で最も重要かなというふうに認識しております。
一川分科員 最後になりますけれども、外務大臣に、ODA政策の今後のあるべき方向なり基本的な決意のほどをお聞きするわけです。
 もう既にこんなことはこの委員会で相当やりとりがあったんだろうと思いますけれども、また、最近では、外務省からも、変える会の最終報告なるものも出ておりますように、いろいろな面でそういう決意のほどが示されているわけでございますけれども、先ほどちょっと触れましたように、日本の国民がより充実した幸せな生活を送るためにも、国際経済の中で日本という国がしっかりと発展しなければならない、それを支えるのが、一つの大きな手段としてこのODAというものがあるというふうに私は思います。そういうことの中で、これからの外務省のODA施策に対する基本的なお考えを大臣の方からお聞きしたい、そのように思います。
川口国務大臣 ODAの重要性はどんどん増していっていると思います。私たちとしては、このODAを、限られた財政的な状況の中で、できるだけ資金を重点的に、効率的に、また、国民の皆様に見えるような、理解していただきやすい形で使って、国際的に日本の存在感をきちんと位置づけ、世界の平和、安定、繁栄のために貢献していく必要があると思っております。
 新しい分野としては、例えば平和の構築、紛争予防という分野がありまして、これはまさにアフガニスタンのように国という形をなさなくなっていった国に対して、国づくり、人づくりの支援をするというのが新しい分野でございますし、それから、アフリカのように、一人一人の人間の安全保障といいますか、環境問題にせよ、感染症の問題にせよ、教育の問題にせよ、そういった人づくりをし、そして、国づくりにつなげていくといった分野も重要な分野だと思っています。
一川分科員 終わります。ありがとうございました。
持永主査 これにて一川保夫君の質疑は終了いたしました。
 次に、北川れん子君。
北川分科員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。よろしくお願いします。
 きょうは、機密費の流用事件の発覚から、これは二〇〇一年の一月一日という、記念すべき日になったわけですが、読売新聞に載って一年半がたち、そしてこの年、いろいろと揺れに揺れました。今なお外務省というのは、疑惑と事件が一年半の間に次々出てきまして、注目される省庁であるということには変わりがないというふうに思っています。去年十一月三十日の記者会見では、田中前外務大臣がこんなふうに言葉を締めくくられておりました。「在外に出ても、本省内においても。これは一度革命が起こらないと無理であろうと申し上げて、自分の話を終わらせていただく。」と。
 この一年半後に革命的な改革が行われたかどうかの検証という意味できょうは質問させていただきたいと思います。
 ちょうどこの日の十一月三十日は、調査・再発防止のためのタスクフォースが調査結果報告書を発表しました。これはプール金の問題でありました。私は、このプール金の問題を見ていくと、機密費の問題とすごく似通ったものを感じるわけです。発想が似ているなという、現金を大まかに使える仕組みという意味で、プール金の問題と機密費の問題は、俗称機密費でありますが、すごく似ているというふうに思っています。
 これがどうなったかというところからまずお伺いしたいわけです。これは、外務省職員が私的、公的に一億六千万円、取引先の企業三十一社に、残高、これを小町官房長が債権という言い方で表現されているのもあったわけですが、という形で、相手の企業にお金を持たせておいてという仕組みをとられていたように思うわけですが、その残高が四千二百四十万円。一億六千万円使って四千二百四十万円が残高であったということですから、不適正な保管と処理があったと思います。
 処分対象者総数が三百二十八名、うち懲戒免職が二名というふうになっているわけですが、このプール金問題は、現在、外務省は、関係者を告発したり告訴したり、そういう御準備をされているかどうかをまずお伺いしたいと思います。
北島政府参考人 お答え申し上げます。
 プール金の問題につきましては、昨年十一月三十日に調査結果の報告書を出しまして、その時点で厳正な処分を行ったわけでございます。さらに、現在、会計検査院のチェック等済んでおりますけれども、これまでのところは昨年の十一月の処分を行ったということでございます。
北川分科員 今のは御答弁になっていないと思うのですね。告発、告訴をする準備があるか。といいますのは、もう既に、私的使用額、私的流用された方も、それぞれ返納というふうにはなっておりますが、九名ですかいらっしゃって、あとは、残りの三百数十名の方は、公的な範囲の中で、今まで二十年間の仕組みの中でされていたことなのでというところであろうと思いますが、私的流用があるということはもう証拠もつかんでいらっしゃるということで、告発、告訴、なぜならば、松尾さんのみならず浅川さんという方々も刑事告訴ということに場面が移っていっているわけです。金額の多寡ではないと思いますが、再度お伺いしますが、告発、告訴の御準備はいかがでしょうか。
北島政府参考人 補足申し上げたいと思います。
 これまでの調査の結果、判明した事実関係に関連しまして、関係者の意思や行為が犯罪の構成要件に該当するのか否か等について、捜査当局にも相談しつつ、慎重に検討している状況でございます。
北川分科員 それは裏返せば、告発、告訴するつもりは全然ないというか、二十年間の仕組みの中で行われていた慣例、慣行であるということをお認めになったのかというふうには思いますけれども、私は、告発、告訴をしようとしない外務省というのは全くもっておかしいと思うわけですが、川口大臣にお伺いいたします。
 川口大臣のお気持ちはいかがでしょうか。もう証拠は出ていると思いますが、告発、告訴の御準備はございませんでしょうか。
川口国務大臣 プール金事件につきましては、今、官房長が、どういう状況にあるかということを御説明をしたということでございます。
 一般論として申し上げれば、私は、告発を、これはプール金事件だけのことではなくて一般論として申し上げて、告発が初めからないという状況で物事を考えているということではございません。
北川分科員 では、いずれかの時期が来たらということを大臣は頭の中に描いていらっしゃるということかもわかりませんし、官僚の方々は、官僚を守るためにはそういうつもりはないという二つの、二分解の話を今御提示されたのかもわかりませんが、もう少しお伺いしたいわけです。
 去年の十一月二十一日、決算行政監視委員会の中で、共産党の大森猛議員が聞かれています。同じようなことを聞かれていて、そのときも話ははぐらかされているわけですけれども、先ほど冒頭に述べましたが、当時の小町官房長が、「プール金の発生過程には種々の形態がございます」という話をされています。そして、先ほど言いました「実績を上回る分の余剰金が外務省側の債権として残ったものでございまして、」というお言葉があるわけですが、現金における債権、銀行券のようなもの、現金ではないけれども、現金を相手の企業が受け取っていたとして帳簿のようなものなのか、それは金額としてのそういう債権的なものだったのか、どういう仕組みをとられていたのかわからないんですが、こういう仕組みが、このとき表の世界にその仕組みを小町官房長は御説明になっているんですが、この債権という意味なんですね。
 先ほど機密費とすごく似ているなと言った点につながっていくわけですけれども、この債権というものはどういうものであったのか、御存じの範囲でお答えいただきたいと思うわけです。
北島政府参考人 いわゆるプール金ですけれども、外国要人の招聘や国際会議等の一部において、外務省から取引先に実績を上回る支払いがなされた結果生じたものでございますけれども、それを先方の方でどういうふうに管理していたかというのは、一概に申し上げることが難しいのではないかというふうに思います。
北川分科員 一年前は、小町官房長が債権というシステムを明らかにされたんですが、きょうの御答弁では、そのシステム自身がどうなっていたかということはよくわからないという意味で今お答えになったのだとすると、このとき大森議員も、冒頭に会計検査院にきっちり、支出というものは相手のところにお金を持たせておいてそこから減らしていくものではなくて、一々の関係での契約なので、相手が外務省の公金というものを持つこと自身がおかしいのだということを詰めて聞いているわけですね。にもかかわらず、こういう外務省側の債権というものがあって、その余剰金というものがプール金なのだという言い方で、当たり前のように小町官房長が発言されているものですから、この仕組みというものの解消は今はどういうふうにされているのか。
 きのう「変える会」の最終報告の中にも出ていましたけれども、支出金のありようの適正な処理のやり方をというふうに出ていますが、この債権というやり方は、今どういうふうになっているんでしょうか。今なお債権を預かっている企業はあるのでしょうか。
北島政府参考人 先ほどのポイントにつきましては、企業ごとに違うんだろうと思いますけれども、いずれにしても、残っているものについては国庫に返納するように指導をしているということと、それから、自後の契約においては、残金が生じるような場合には当方に返却するという手続を徹底させております。
北川分科員 残金が残らないような契約自身をやることが適正な処理なんだということを一年前にも会計検査院はきっちり言っていて、どこの省庁もそうやっているんだ、外務省がやっているプール金を置くような形での余剰金の債権のありよう、企業に持たすということ自身の発想がおかしいという指摘があったというふうに思うんです。
 この三十一社のうち十二社しか表に名前の公開をされていません。あと残りの十九社は、本人たちが言うことはまかりならぬという意味があって去年は公開しないんだというふうに言われていますが、今、いかがでしょうか。残りの十九社を公開するというふうには、この「変える会」の意向の中にも沿って、ないのでしょうか。
北島政府参考人 企業名の公表の問題ですけれども、いわゆるプール金が存在した企業のうち、例えばホテルニューオータニそれから日の丸リムジンにつきましては、両企業の社員が刑事事件の関連で逮捕、起訴されたという重大性にかんがみて、厳正な措置、すなわち、取引停止措置を含む措置を講じたわけです。その他の企業につきましては、各企業に対して企業名の公表の可否について意向を照会した結果、押しなべて否定的な感触であったということで、各企業の同意なしに一方的にこちらの方から企業名を公表するということは困難であることについて、御理解をいただきたいと思います。
北川分科員 それは、図らずも企業、例えば同じようなタクシー会社、何社かあると思いますが、どこを選ぶかというときに、こういう債権、余剰金というやり方の仕組みをのんでくれるところを取引会社として外務省が引っ張ってくるというか、ですから、あえて逆に言えば、外務省が選んだ企業だからこそ言えないということではないでしょうか。
北島政府参考人 一つ申し上げたいのは、いわゆるプール金につきましては、その発生がそもそも外国賓客の接遇に臨機応変に対応するため等の外務省側の事情が重要な原因となっていたわけですけれども、余剰金を相手先企業が管理するという意味でのプール金、預かり金、前受け金等は、民間企業間の商慣行上は広く認められているという事情があると思います。
北川分科員 でも、この大森議員が追及されているときの一番目に、そういうやり方は認めていないんだ、そういう税金の使い方をしていればやはり適正な処理というのはできないということをあらかじめ言ってあったと思うので、今の御答弁は、少しというか大分おかしいという気がいたしますし、外務省御自身がこういうやり方をのんでくれる企業としてどういうところを選んだのかを検証するためにも、また、天下りの問題の企業に対して、どういう企業におりていっているかということの検証にもあわせて、このあとの残りの十九社というものは公開すべきだというふうに思いますけれども、再度お伺いします。
北島政府参考人 私どもも非常に反省をいたしまして、まさにそういう余剰が出ないようにきっちり処理するということでやってきているということで御了解いただきたいと思います。
北川分科員 一本のボールペンとか一枚のファクス用紙を物すごく厳密に、むだ遣いをするなというような言い方で、地方自治体の職員の皆さんというのは目の色を変えてやっているというのが現実の中で、臨機応変と言われる言葉の中にまさしく問題が込められていると思うんです。
 普通は、六カ月とか一年前に要人というのはアポをとって、来てくださる方をお迎えする準備というのに入っている。それがまさしくロジ担のお仕事であったわけで、もう一年前に既に臨機応変にできる範囲のことというのはすべて明らかになっているわけですから、近々まで臨機応変にお金が使えるような仕組みを持っていたということ自身をぜひ反省していただきたいと思いますし、今後、プール金、債権の問題を私は追及させていただきたいと思います。
 それで、プール金に関しては、告訴、告発、御自身の公務員の皆さんに対してなかなかできにくいということであったのかもわかりませんが、では、デンバーの総領事公費流用事件というのもちょうど一年になりますが、このデンバーの総領事公費流用事件というものに対して告訴、告発の御準備はおありになりますでしょうか。
北島政府参考人 デンバーの水谷元総領事による不適正経理につきましては、外務省として、同元総領事の責任は極めて重大と認識し、昨年七月、国家公務員法に基づく懲戒免職処分を行ったところであります。本件が、さらに委員が御指摘のように、刑法上の犯罪として告訴、告発すべきものに該当するか否かにつきましては、外務省の調査の結果、判明した事実関係をもとに、捜査当局にも相談しつつ、元総領事の意思や行為が犯罪の構成要件に該当するのか否か等について、現在も慎重に検討しているということでございます。
 本件検討には時間を要しておりますけれども、検討に際しての前提として、総領事公邸の賃貸借契約をめぐる外務省、家主、水谷元総領事の間の関係を初め、本件をめぐる法律関係等を整理、確定する必要があるということでございますけれども、この関係が単純なものではなくて、その整理、確定が容易でないことから、時間を要しているということでございます。
北川分科員 今こういう本でもいろいろ外務省の問題が取り上げられているんですが、その中の一節に「犯罪に追い込まれるノンキャリア」という一項を立てた本もありました。松尾さんの事件の折に、松尾さん五千五百万という形で外務省は告訴するわけですけれども、この水谷さんも、御自身は一千万の私的流用はもううなずいて認めていらっしゃる。本人さえも認めていらっしゃって、進んでいる話でありまして、例えば総務省はガイドラインを出していらっしゃいますね、懲戒免職の。懲戒、戒告とかのガイドラインを出していらっしゃるわけですが、一から横領、窃取、詐取というふうに九項目ぐらいあるわけですが、この水谷さんはどうして懲戒免職になったんですか。
北島政府参考人 懲戒免職の理由ということでございますけれども、元総領事による不適正経理、この責任が極めて重大と認識したということでございます。
北川分科員 それは、一から九の総務省のガイドラインの公金官物処理不適正ということなんですが、職員は減給または戒告とするとあるんですね。だから、懲戒免職になるのは、横領、窃取、詐取の三段階しかないわけですが、どうして九番目の事象をもたれて懲戒免職になるんですか。
北島政府参考人 公邸の借り上げに関する不正経理、これが非常に重要な問題と考えたわけですけれども、それ以外にも臨時職員雇い上げに関する不正経理等々、幾つかの問題について責任を認識したということでございます。
北川分科員 よくわかりません。
 そうしたら、プール金の三百二十八人の方も不適正処理なわけで、懲戒免職対象者というふうにもなりますし、金額の多寡ではないと思うんですね。何か胸算用が動いている、外務省の中の独自のガイドラインをお持ちだというふうに聞こえるわけです。
 ことしの七月の記者会見で副大臣は、きょう植竹副大臣がいらっしゃるわけですが、このデンバーのことで記者から詰められていらっしゃいました。そのとき副大臣は、今、大臣がいろいろお考えになっていると、したがいまして、私はこれからどうだというようなコメントはできない。
 ということは、大臣が考えているからできないんだと。ちょっと七月で、きょうもまだ七月なので言いにくいわけではありますけれども、いかがでしょうか、川口大臣。デンバーの公金流用、私的横領ですね、これに関して告訴、告発の御意思は、お考えはお定まりになりましたでしょうか。
川口国務大臣 私は、植竹副大臣の記者会見の中身というのは全く承知をいたしておりません。
 それで、このデンバーの件については、先ほど官房長が言いましたように、捜査当局にも相談しながら、元総領事の意思や行為が犯罪の構成要件に該当するのか否かについて現在も慎重に検討しているというふうに申し上げたところでございます。
 それで、先ほど申しましたように、私は一般論として、こういうことがあったときに、告発をしないということを前提に物事を考えているということではないということでございます。
 それぞれの件については、今お話を申し上げたとおり、官房長から御説明をしたとおりです。
北川分科員 ということは、告発をするという積極性に、どういうふうになれば動かれるのかといったところを、国民はもう忘れたんだ、忘れているかもしれないよ、松尾さんの事件というのがすべてを体現化してくれた、松尾さんがすべてを担ってくれたというふうにしか私には思えないわけです。
 彼の事件の報道のありようが余りにも、私的な部分のうそ、虚実も交えておもしろおかしくワイドショー的に流されて、彼の七年の懲役ということがすべてをのみ込んでしまった。その中に今、外務省は安穏といられるのではないのかという気がするわけですが、川口大臣が積極性を持たれるというきっかけは、何をきっかけにして積極性をお持ちになろうと考えているわけですか。
川口国務大臣 一つ一つの件について、その人がやったことが、あるいはその意思、行為が犯罪の構成要件に該当するかどうかということについて検討するということが前提だと思います。それをした結果、判断を当然ながらするということだと思います。
北川分科員 もう既に精査はできていると思うんですね。あとは告発する準備の気構えがあるかないかというところにかかっていると思います。
 そして、このデンバーだけではなくて、欧州青年日本研修招聘事業に関する不正経理疑惑というのもありました。これは、関係者の処分も被害額の返済もなしということなわけですが、事実かどうかだけお答えください。
北島政府参考人 浅川元課長補佐ほかによる欧州青年交流委員会事業費の詐取事件でございますけれども、これは昨年九月に警視庁に対しまして、外務省として被害届を提出したということでございます。
 さらに、浅川補佐等に対する民事上の手続でございますけれども、これはまだ全容が明らかとなっていない状況にあるということですけれども、外務省としての対応についての検討を鋭意進めているということでございます。その上で、本件に係る人事上の措置に関しましては、今後の捜査当局による捜査結果を踏まえて対処したいというふうに考えております。
北川分科員 この事件というのは二千二百万円がまだ国庫に返納されていない、被害届は出されたけれども、関係者の処分も行われていないという事実を今お認めになったと思うんですが、やはり事件の場合、時効というものがあります。時間は限られております。
 そしてまた、日本国憲法のもとでは租税の徴収面と使途面を法的に切断しているという考え方には立っていないで、つまり、歳入面と歳出面とを統合した、いわば一元的な租税概念を採用している、こういう論を立てている税法学者もいます。ここが良心的軍事費納税拒否訴訟などのときに成熟していく概念になっていくわけですが、この歳入と歳出が連なっている中で、納税者は納税者の権利として持っているものがあるという点から見ると、納税者側からいくと、やはりなぜ告訴や告発をしないのだろうかと。それが民間人のお金であればすぐにも告訴、告発という形で動くにもかかわらず、税金という公金の場合にかなり腰が重い、このことのそごといいますか乖離というものに関して、もう少し詰めたお話をお伺いしたいと思うんです。
 今言いました、納税者としては租税の使途面について、ということは、こういう使われ方をずっと以降もしていきながら、もし一人の納税者が告訴、告発して適正に明確に処理をしていかないならば私はもう納税しないよということを思えば、外務省のありように対して、公金の使い方に対して、立法的には論破できるというふうに思うんです。そういう一納税者の気持ちからしても、告訴、告発というものはもう準備に入る段階だというふうに思いますが、いかがでしょうか。
北島政府参考人 先ほど申し上げたとおり、本件につきましては、昨年九月六日に警視庁に対して被害届を提出したということで、その後の捜査当局による捜査の状況ということでございますけれども、これについては、当省としてはコメントする立場にないということがございます。
北川分科員 最後にすごく後ろ向きの回答しかいただけなかったのはとても残念なんですが、やはり一つ一つ見ていきますと、からくりが同じといったところで、表に情報を公開しないという姿勢の訂正が今もってされていないということが明らかになったと思うんです。この辺を変えないことには、前田中外務大臣がおっしゃった、革命を起こさなければいけないといった点だろうと思いますので、ぜひ、今後の改革はこの辺に立脚点を置いて、納税者が不服従をしない、明朗会計である外務省としてやっていただきたいということをお話しして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
持永主査 これにて北川れん子君の質疑は終了いたしました。
 次に、今野東君。
今野分科員 民主党の今野東でございます。連日お疲れさまでございます。
 私は、三十分間質問をさせていただきますが、まず冒頭、アフガニスタンの難民救援に当たってなんですが、日本はこのアフガニスタンの難民救援に当たって、従来からUNHCR等、中立的な国際機関を通して支援を行ってきていると思うんですが、外務省としては、我が国としてはどのような対応を今行っているんでしょうか。大臣にお尋ねいたします。
川口国務大臣 アフガニスタンの難民支援について我が国が行っていることでございますね。
 我が国としては、ことしの一月に復興支援会議というのも東京で開かせていただきまして、各国から資金を募っているわけです。その中で、アフガニスタンの難民というのは、今、考えられていたよりもはるかに速いペースで帰国が始まっているわけでございます。全般的にアフガニスタンの人づくり、国づくりといった観点から支援を、例えば女性、それから衛生、医療、教育といったことについて支援をいたしておりますし、それから難民の定着ということも大事でございますので、UNAMAと一緒になって地域開発等についても支援をしようと考えております。
今野分科員 今、大臣がおっしゃいました衛生、医療面についてなんですが、私は国際緊急援助隊について興味を持っておりまして、この活動についてさまざま調べているんです。特に難民救援の医療活動について、私は、去年の十一月の二十七日だったと思いますけれども、安全保障委員会で、当時の田中外務大臣に国際緊急援助隊について質問をいたしました。
 御存じのように、国際緊急援助隊の、特に医療チームは、救急医療の現場で日夜仕事をしておられまして、したがって経験も豊富で、この方々は救急医療のエキスパートです。しかし、こういう十分な経験も持っているにもかかわらず、専門家であるにもかかわらず、この方々は難民救援には行けません。一九九二年、PKO法ができたときに、国際緊急援助隊はなぜか自然災害だけにしか行けなくなってしまった、分けられてしまった。それはおかしいんじゃないでしょうか。経験も実績もたっぷりある国際緊急援助隊も難民救援に行けるようにすべきではないかという趣旨で質問をいたしました。
 当時の田中眞紀子さんは、国際緊急援助隊それから医療チームに参加した経験を有する人材の有効な活用というものを含めて、効果的な支援活動の実施というものに努めていくのはよいことだと思うと非常に前向きな姿勢を示されました。この答弁に従って、外務省としては何か前進があったでしょうか、その後どうなっておりますでしょうか。
西田政府参考人 お答えいたします。
 今、委員御指摘のとおり、いわゆるPKO法が制定をされまして、PKO法とこれまでの国際緊急援助隊による援助隊の派遣について仕分けができまして、いわゆる紛争に基づきます災害等につきましてはPKO法で対処するという仕組みになっておるわけでございます。
 このような大きな枠組みの中で、他方、まさに御指摘のような専門性を持っておられる方をどうやって活用するかという、いわば実際的な運用の問題で何ができるかというお話になろうかと思いますが、このような国際緊急援助隊に参加されて経験を有しておられる人材、あるいは実際に参加されることに伴いまして培ってこられたノウハウというものを、例えば難民、避難民支援のための現地ニーズの調査などに生かすというようなことを含めて検討を進めているところでございます。
 今後とも、このような人材の活用をも含めまして、迅速で効果的な救援活動ができるというための方途を考えてまいりたいというふうに考えております。
今野分科員 この国際緊急援助隊は、特にこのリーダーは日本医科大学の山本保博先生という方でございまして、もう毎日毎日、救急医療に携わっているわけです。残念ながら私たちは難民救援に行けないんですというふうに、実際に私もいろいろ何回もお話をしたことがありますが、おっしゃっていらっしゃいました。
 なぜ自衛隊の医療チームしか行けないのか、私にはよくわからない。自衛隊の医療チームというのは、実際、救急医療というのをほとんど経験しておりません。自衛隊の体しか診ていない、そういう人が、緊急の処置をしなければならないような医療の状況のところで果たして対応できるのか、大変疑問であります。一方、そういうものに日夜携わっていて、すぐさま対処できる人たちが行けないのかというのは大変不思議な状況でありまして、そのあたり、ぜひ大臣から、積極的に検討をしていく、あるいは行けるようにするんだという決意をお伺いしたいと思うんですが、一言よろしくお願いいたします。
川口国務大臣 今、委員がおっしゃったことを伺っていますと、普通に常識的に考えれば不思議だという気がいたしますけれども、多分、かつて、そういうふうに仕分けがなされたということの背景には、そのときにはそれなりの理由があったんだろうかなというふうにも思いますので、そのあたりを少し勉強してみたいと思います。
今野分科員 もちろん、自衛隊のチームでなければできない周辺のことがいろいろあるんだろうと思います、民間の方ではできないというような。ですから、私は自衛隊の方が行っちゃいけないと言っていないんですね。自衛隊の方々でなければやれないことはやっていただいて、中には民間の医療チームの方に入っていただいてというのが最も適切な姿じゃないかと思うんです。ぜひそのあたり、そういうスタイルで行けるように検討していただきたいと思います。
 国際緊急援助隊についての質問はこれで終わりますが、次に、外務省が中心になってやっております難民支援についてお伺いします。
 我が国は、難民条約を一九八一年、人種差別撤廃条約を一九九五年に批准しております。条約が上位にあるとか法律が上位にあるとか、いろいろな議論がありますが、難民や人種差別撤廃ということについて、これは国連の基準を受け入れようという姿勢であるというふうに受けとめていいんでしょうか。
高橋政府参考人 御指摘のとおりでございます。
今野分科員 さて、去年、二〇〇一年の三月、我が国は、国連の人種差別撤廃委員会から何点か、それではいけないんじゃないかというような指摘を受けましたね。それに対してカウンターレポートを出しましたね。そのカウンターレポートの内容についてお尋ねをしたいんですが、人種差別撤廃委員会からの指摘で、インドシナ難民とそのほかの民族的出身を有する限定された数の難民の取り扱いが異なることへの懸念を指摘されておりますが、これについてはこのカウンターレポートの中ではどのように触れていますか。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 お尋ねの人種差別撤廃委員会の指摘と、昨年の三月、人種差別撤廃条約の規定に基づきまして我が国が提出した政府報告に対して、同委員会が審査の上、公表した最終見解に盛り込まれたものでございます。同見解は法的拘束力を有しておりません、また回答が義務づけられているわけでもないことから、お尋ねの指摘に対しては、これまで特に意見は提出しておりません。
 しかしながら、外務省といたしましては同指摘を踏まえまして、難民、いわゆる御指摘の条約難民の方たちに、実際にどういう問題点、支援のニーズがあるのかというようなことを確認するために、昨年度、難民条約上の難民と認定された人を中心といたしまして、生活実態調査を実施したところでございます。
 また、現在、瀋陽総領事館事件を契機として行われております内閣官房での関係省庁間の協議で、インドシナ難民に対する定住支援策を条約難民にも拡充するということが課題の一つとして検討されているところでございますので、政府全体としての取り組みが決定をされ、検討が具体化された段階には、その状況を次回の政府報告に盛り込んで報告をしたい、かように考えております。
今野分科員 つまり、今のお答えだと、インドシナ難民とそのほかの民族的出身を有する限定された数の難民の取り扱いが異なることへの懸念については、何も答えていないということですか。
高橋政府参考人 人種差別撤廃条約の委員会で指摘をされたそのこと自体が、人種差別撤廃条約自体との関係で法律的な問題があるというふうには私ども、考えておりませんが、先ほど申し上げましたように、私どもがインドシナ定住難民の方に行っております定住受け入れ支援策という制度があるのに対しまして、条約難民につきましてはそういう制度がこれまでのところなかったということにつきましては、問題意識を持って今検討いたしており、結論が出たときには、委員会の報告に対しても報告を申し上げるということでございます。
今野分科員 今検討しているということを報告したということでよろしいんでしょうか。
高橋政府参考人 現在までのところは、報告はまだいたしておりません。そういう機会がございませんでしたので、しておりません。
 しかしながら、今、先ほど申しましたような方向で検討いたしておりますので、政府の中で結論が出た段階では、その我々の新しい考え方を踏まえまして、勧告に対する日本国政府としての対応として報告をさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
今野分科員 これについてどのように報告したかということを、何でこんなに何回も何回も聞かなきゃいけないんでしょうね、ストレートに答えてくれれば、別に何も問題ないと思うんですけれども。
 法的拘束力はないとはいうものの、法的拘束力がないから、だから返事しなくてもいいというような姿勢に受け取られませんか。国際社会の一員として、日本として本当にやる気があるのかどうかというところが見られているんじゃないかと思うんですね。
 そして、これは、報告したんですかと言っても、何だかわかったようなわからないような、何度も同じことを聞かなければならないような答えしか出てこないというのは、どういうことなんでしょう。大臣、だから、そういう体質も、私はぜひ改めてほしいと思いますね。
 さて、次の質問ですけれども、同じ昨年のこの人種差別撤廃委員会で、すべての庇護希望者が特に相当な生活水準及び医療についての権利を有するよう確保することを締約国に勧告するというふうに、これも言われております。
 在留資格が与えられた認定申請者は同時に就労許可が与えられるわけですけれども、在留資格が与えられずに就労許可も与えられない認定申請者にも、当然、生活支援が必要ではないかと思います。在留資格を与えられて、そして就労許可を与えられても、なかなかうまく思うような仕事につけないという、それは問題は問題なんですけれども、しかし、この方々については、普通に暮らしていけるという可能性が少々あるということで、まあそれをよしとするとしましても、在留資格が与えられず就労許可も与えられない認定申請者にも生活支援は当然必要で、この生活支援プログラムも一応はあるわけですけれども、異議申し出も含めた認定申請者中、在留資格、就労許可がない者のうち、一体何人の人がこの生活支援を利用しているんでしょうか。この利用している人たちの実態をちょっと知りたいんです。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 外務省におきましては、昭和五十七年度以降、生活に困窮をしております難民認定申請者の方に対しまして、生活費、住居費、それから必要に応じまして医療費等の支給などの支援策を講じております。これ以外には、確立した支援の制度というものは現在のところないというふうに承知しております。
 私どもの方で実施しております難民認定申請者に対します支援の実施状況でございますが、これは、同じ方が一年のうちに二度三度申請をされるということもございますので、まず延べの人数で申し上げますと、二〇〇〇年度で二百四十八人、それから二〇〇一年で三百九十五人ということでございます。現時点、二〇〇二年の七月の時点におきまして、この制度のもとで支援を受けている難民認定申請者の方は七十人いる、そういう状況でございます。
今野分科員 これは、恐らく知らない人もいるんですよね。
 外務省が担っている難民支援について、難民認定申請者に対する生活状況調査というのをしましたね。アジア福祉教育財団難民事業本部が委託をして難民支援協会が行ったものですけれども、そのレポートによりますと、公的扶助制度があることを知らない難民及び難民申請者は、恐らくこれは当然ごらんになっているはずですけれども、百人中五十二人にも上っている。また、公的扶助に関しては、百人中四十人が別のところから支援を受けております。
 認定申請者への生活支援に関する情報提供というのは、どのように行われているんでしょうか。知らない人がこんなにいるというのは、情報提供が十分ではないのではないかと思うんですが、どういうふうに行われていますか。
高橋政府参考人 この制度につきましての周知が十分に行われていないのではないかという御指摘につきましては、そういう面があるのではないかと我々も反省するところがあると思いますが、アジア福祉教育財団難民事業本部の方でつくっておりますいろいろな資料等におきまして、この制度につきまして広報させていただいておりまして、できる限りこれをいろいろな方にお配りするというふうに今しておるところでございます。
今野分科員 できる限りそういった資料を配っていて、百人中五十二人が知らないわけですから、それは何らかの別の方法を考えなければならないわけですが、こういう数字は、この調査の結果は恐らく既にごらんになっているはずで、それについて見て、そのままいわゆる見っ放しになっているんでしょうか。それとも、今検討中、しなければいけないという作業をしているところなんでしょうか。お尋ねします。
高橋政府参考人 周知の方法につきましての改善というのは、私ども、検討いたしたいと思います。
 それから、昨年度実施いたしました難民等の生活状況実態調査の結果のフォローアップでございますが、この調査結果によりますと、非常に法的に不安定な地位に起因をいたしております難民認定申請者の就労、それから医療等をめぐります困難というようなものが、非常に明らかになってきております。
 こうした難民認定者の方が抱えておりますいろいろな問題に対しまして、どのように我々は情報提供というものを充実していくか、さらには、公的支援というものを充実していくかということにつきましては、いろいろな政府機関が関係いたすものでございますので、政府全体としての取り組みが必要になるわけでございます。外務省といたしましては、人権、人道の幅広い観点から、現在、瀋陽総領事館事件を契機といたしまして、内閣官房を中心といたしまして関係省庁の間で我が国の難民政策の見直しを行っているところでございますので、そういう協議の場におきましても、外務省の立場から積極的に問題を提起してまいりたいというふうに思っております。
今野分科員 私は、生活支援に関する情報提供をさらに広めるように、強化するように検討していますかと聞いているんです。もう一度お尋ねします。
高橋政府参考人 現在までのところ、私どもが自分でできるところとして行っていることは、先ほど申しました難民事業本部の広報でございますが、さらに最近力を入れておりますのは、私どもの方で難民の関係のNGOの方たちと定期的な会合、情報交換等をしておりますので、こういった難民支援の分野で御活躍されておられるNGOのネットワーク等も通じまして、私どもとしての情報の提供を充実させていきたいというふうに考えております。
今野分科員 こういうことは、難民支援にそれなりの歴史があって実績もある、そういう方々から口伝えで情報が伝わっていく、それで情報が十分に行き渡るというようなことも、あるいはあるのかもしれませんけれども、しかし、自然に伝わっていくような情報の伝わり方に任せるのではなくて、それをどのように日本に来た人がわかるかということもぜひ検討していただきたいと思います。
 さて、次ですが、さっきちょっとおっしゃいました医療の部分ですけれども、この調査レポートの中で、健康保険未加入で医療費が高額なために病院に行けなかったという回答が百人中二十一名もいたと報告されておりますが、この医療上の支援措置というのはどういうふうになっているんでしょうか。
高橋政府参考人 申しわけございません。その点に関しましては、ちょっと私、今お答えできるあれにございません。
今野分科員 そうか、これは通告しておりませんでしたね。
 これは、自分で質問して自分が答えるというのも何か変なんですけれども、病院にかかると、難民申請者の方は仮払いを一応しまして、そしてアジア福祉難民事業本部に申請をして、それでやっと補助をもらうのですね。それは、ある一定の上限もあるんですよ。
 ところが、窓口でまず医療費を全額払わなければならないというので、この負担が、とりあえずそのお金が大変なので病気になってもお医者さんにかかれないんですという声が多いんですね。そのあたりについては、それを何か救済する方法というのを考えなければならないと思うんですが、ちょっと通告をしていない質問で大変申しわけないんですけれども、そのあたりのお考え、姿勢をお示しいただきたいと思います。
高橋政府参考人 詳細な御説明ができずに申しわけございませんでした。
 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、現在、内閣官房を中心といたしまして、我が国の難民の受け入れ政策をどのようにすべきかということにつきまして、関係省庁が集まりまして協議が行われております。その中におきまして、難民認定者の方たちへの対応ということも検討をすることになっておりますので、今、委員の御指摘になりました医療面におけるニーズに対してどのように支援を強化していくかというようなことにつきましても、検討課題として検討させていただきたいというふうに考えております。
今野分科員 医療面の支援も検討課題として取り組むというお話をいただきまして、大変心強く思いました。
 さて、大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、インドシナ難民の処遇についてなんですけれども、品川にあります国際救援センターが重要な役割を果たしてまいりました。今も果たしております。
 しかし、今日、この建物の一部を取り壊す計画があります。しかし、あそこは大変家賃も高いところなんだそうで、ちょっと残念だけれども、やむを得ないかなという思いもするんですが、私は、あそこはあそことしまして、そういう機能を持った建物が各自治体にできて、国はそうした自治体と協力して難民を支援するのが望ましい、またそうあるべきだというふうに思うんですけれども、難民支援について、自治体との協力という点について大臣はどう考えていらっしゃるか、お考えをお聞かせください。
川口国務大臣 自治体との協力ですけれども、外務省では、昭和五十四年のインドシナ難民対策連絡調整会議においての政府決定を受けまして、定住促進施設を退所したインドシナ難民に対するアフターケアとしまして、難民相談業務を財団法人アジア福祉教育財団に委託をいたしております。
 この財団では、特にインドシナ難民の住民が多い神奈川県横浜市、大阪府八尾市、姫路市等の地方自治体に難民相談員を派遣しているということで、定住支援には高い効果を上げていると聞いています。
 今後、条約難民が地域社会で生活に適応していく上で、中央官庁と地方自治体が連携をしていくということは大事なことであると思います。こうしたことについても、先ほど来、高橋部長が申していますように、内閣官房で関係省庁が集まって協議をしていますので、その中で、そういった問題についても議論をしていくべきだと思っております。
今野分科員 時間がありませんので、これを最後の質問にしますが、これもぜひ大臣にお答えいただきたいんですけれども、難民の支援ということになりますと、その項目は、住むところ、子供たちの学校、言葉の問題、先ほどから出ております仕事、就労の問題、さまざまであります。また、それがそれぞれ厚生労働省だとか文部科学省だとか法務省だとかいろいろなところに、もうほとんど全省庁にまたがっていると言ってもいいぐらいの事柄があります。そうしたことを、外務省が難民支援をしなければいけないからといって、全部外務省に来るというようなケース、そしてまた、そうではなくて、学校の問題については文部科学省ですよ、自分のところは知らないというようなことが、結局は難民の方々を余計に疲れさせ、悲しい状況に追い込んでしまうということがあるんじゃないかと思うんです。
 この際、関係各省庁が連携して、スムーズな調整を可能にするシステムが緊急に必要なのではないかと私は思っております。NGOや専門の研究者、弁護士の方々、法律関係の方々にも参加してもらうことで、現場の声を吸収できる難民支援機関を設けることが急務ではないかと思いますが、このあたりについては、大臣はいかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 確かに、たくさんの省庁が関係をしているということが、何のためにはどこに行ったらいいかということがわかりにくくなっていることの原因だと思います。
 委員がおっしゃった支援センターが、そういった窓口のお話なのか、あるいは政策自体を考えることなのか、ちょっとそのあたりがはっきりいたしませんけれども、いずれにしても、それぞれの省庁が所管をしている仕事は省庁が考え、それぞれのところが考えていくというのが日本政府のあり方ですから、窓口的なワンストップで何かができるということでしたら、あるいは考えようがあるかもしれませんけれども、難民についてまさに調整が今内閣で行われているわけで、そうした機能は政策という面では内閣が行っているということだろうと思います。
 いずれにしても、そういった窓口的な機能という意味であれば、難民の方にどういう体制がいいのかということも含めて、今内閣で議論をしている中で議論をしていったらいいと考えています。
今野分科員 私は、外務省だけが難民支援に一生懸命大変な思いをするのは大変なのよ、みんな各省庁にまたがっているんだから、一つのところで、ばっと一カ所でできるような機能的なセンターみたいなものをつくりましょうよ、そういう声が出てくるのではないかと期待して質問をさせていただいたんですが、ぜひ、難民の方々、また申請中の方々が、日本という国に対していい印象を持ち、やがて離れてきた国に帰るときに、日本という国は国際社会の中で本当にすばらしい国だというふうに言われるような、そういう総合的な支援体制を一カ所でできるようにとっていただきたいと思います。
 時間が参りました。ありがとうございました。
持永主査 これにて今野東君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして外務省所管の質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 分科員各位の御協力を得まして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼申し上げ、ごあいさつといたします。
 これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会


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