衆議院

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第1号 平成16年5月17日(月曜日)

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本分科会は平成十六年四月二十八日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

五月十四日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      城内  実君    野田  毅君

      平井 卓也君    福井  照君

      村上誠一郎君    泉  健太君

      北橋 健治君    今野  東君

      都築  譲君    古屋 範子君

五月十四日

 今野東君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十六年五月十七日(月曜日)

    午前十時三十分開議

 出席分科員

   主査 今野  東君

      城内  実君    谷  公一君

      野田  毅君    平井 卓也君

      福井  照君    金田 誠一君

      黄川田 徹君    都築  譲君

      中村 哲治君    本多 平直君

      松野 頼久君    松原  仁君

   兼務 萩生田光一君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   文部科学大臣       河村 建夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   総務副大臣        山口 俊一君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   国土交通副大臣      佐藤 泰三君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       小川  広君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       金刺  保君

   会計検査院事務総局第一局長            石野 秀世君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   会計検査院事務総局第四局長            友寄 隆信君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  山本 庸幸君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  板倉 敏和君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      萩原 久和君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           中嶋  誠君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            藤田 昌宏君

   政府参考人

   (国土交通省土地・水資源局次長)         日尾野興一君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 榊  正剛君

   政府参考人

   (公営企業金融公庫総裁) 持永 堯民君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   岡田 克行君

   総務委員会専門員     石田 俊彦君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

   決算行政監視委員会専門員 熊谷 得志君

    ―――――――――――――

分科員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  野田  毅君     谷  公一君

  泉  健太君     松原  仁君

  北橋 健治君     大島  敦君

  都築  譲君     津村 啓介君

  古屋 範子君     赤松 正雄君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     野田  毅君

  大島  敦君     本多 平直君

  津村 啓介君     中村 哲治君

  松原  仁君     黄川田 徹君

  赤松 正雄君     白保 台一君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田 徹君     松野 頼久君

  中村 哲治君     平岡 秀夫君

  本多 平直君     金田 誠一君

  白保 台一君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  金田 誠一君     北橋 健治君

  平岡 秀夫君     都築  譲君

  松野 頼久君     泉  健太君

  赤羽 一嘉君     古屋 範子君

同日

 第三分科員萩生田光一君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十四年度一般会計歳入歳出決算

 平成十四年度特別会計歳入歳出決算

 平成十四年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十四年度政府関係機関決算書

 平成十四年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十四年度国有財産無償貸付状況総計算書

 〔内閣府(防衛庁・防衛施設庁)、総務省所管、公営企業金融公庫及び文部科学省所管〕


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     ――――◇―――――

今野主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました今野東でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行及び文部科学省所管について審査を行います。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十四年度決算外二件中、本日は、文部科学省所管、内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁、総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 これより文部科学省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 おはようございます。

 平成十四年度文部科学省所管決算の概要説明を申し上げます。

 平成十四年度文部科学省所管一般会計、電源開発促進対策特別会計及び国立学校特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額百二十九億八千三百二十万円余に対しまして、収納済み歳入額は百十億八千七百二十六万円余であり、差し引き十八億九千五百九十四万円余の減少となっております。

 次に、文部科学省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額六兆七千六十一億四千九百三十八万円余、前年度からの繰越額六百三十億九千五百九十五万円余を合わせた歳出予算現額六兆七千六百九十二億四千五百三十三万円余に対しまして、支出済み歳出額は六兆五千八百五十六億六千七百七十八万円余であり、その差額は一千八百三十五億七千七百五十五万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は一千六百七十一億二千七百九十六万円余で、不用額は百六十四億四千九百五十八万円余となっております。

 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、文部科学省所掌分の歳出決算について御説明申し上げます。

 まず、電源立地勘定につきましては、歳出予算額三百八十九億一千九百五十万円余、前年度からの繰越額二十六億七千八百七十万円余を合わせた歳出予算現額四百十五億九千八百二十万円余に対しまして、支出済み歳出額は三百二十五億七千九百二万円余であり、その差額は九十億一千九百十七万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は一億一千八百五十二万円余で、不用額は八十九億六十五万円余となっております。

 次に、電源多様化勘定につきましては、歳出予算額一千百六十五億四千三百七十四万円余、前年度からの繰越額六億四千八百二万円余を合わせた歳出予算現額一千百七十一億九千百七十六万円余に対しまして、支出済み歳出額は一千三億二千四百七万円余であり、その差額は百六十八億六千七百六十九万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は七十四億七百六十万円余で、不用額は九十四億六千八万円余となっております。

 次に、文部科学省所管国立学校特別会計の決算について御説明申し上げます。

 国立学校特別会計の収納済み歳入額は三兆二千九百三十二億二千九百二十万円余、支出済み歳出額は二兆九千八百五十一億九千六百十万円余であり、差し引き三千八十億三千三百九万円余の剰余を生じました。

 この剰余金のうち、特別施設整備事業以外に係るものについては、国立学校特別会計法附則第十七項において読みかえられた同法第十二条第一項の規定により、三千八十億三千二百三十六万円余を翌年度の歳入に繰り入れることとし、特別施設整備事業に係るものについては、同法附則第十四項の規定により、残額七十二万円余を特別施設整備資金に組み入れることとし、決算を結了いたしました。

 次に、歳入につきましては、歳入予算額二兆八千七百七億五百六十七万円余に対しまして、収納済み歳入額は三兆二千九百三十二億二千九百二十万円余であり、差し引き四千二百二十五億二千三百五十二万円余の増加となっております。

 次に、歳出につきましては、歳出予算額二兆八千七百七億五百六十七万円余、前年度からの繰越額四千四百二十七億七千六百三十三万円余を合わせた歳出予算現額三兆三千百三十四億八千二百一万円余に対しまして、支出済み歳出額は二兆九千八百五十一億九千六百十万円余であり、その差額は三千二百八十二億八千五百九十万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は二千七百五十六億九千六百七十七万円余で、不用額は五百二十五億八千九百十三万円余となっております。

 以上、平成十四年度の文部科学省所管一般会計、電源開発促進対策特別会計及び国立学校特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

今野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院友寄第四局長。

友寄会計検査院当局者 平成十四年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 これは、岡山大学において、医薬品等の購入に当たり、当該年度の予算の額を超えて契約等を行い、翌年度において事実と異なる不適正な会計経理を行って代金を支払っているものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、社会参加促進費補助金により整備されたパソコンの管理及び活用に関するもので、IT基礎技能講習事業の終了後も社会教育のために有効活用することの認識が十分でなかったなどのため、管理が適切でなかったり、社会教育に活用されていなかったりしていて、補助事業の目的が十分に達成されていなかったと認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その二は、公立の中学校における初任者研修の実施に関するもので、公立の中学校において初任者研修を円滑かつ効果的に実施するために国庫負担金や国庫補助金により教員の加配または非常勤講師の配置を受けたにもかかわらず、府県市における制度の趣旨に対する認識が不足していたことなどのため、初任者の免許教科と異なる免許教科の教員を教科指導員に任命するなどしていて、初任者研修を円滑かつ効果的に実施する体制が十分に整えられていないと認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その三は、科学研究費補助事業において、研究代表者が資格要件を満たさなくなった場合等に係る手続の履行に関するもので、研究機関の研究者または研究者グループが計画する基礎的研究について、研究費を助成するために科学研究費補助金を交付しておりますが、研究代表者が所属する研究機関である大学から民間病院等に出向して資格要件を満たさなくなったり、外国留学等により、六カ月を超えて長期間所属の研究機関から離れていたりなどしているのに所要の手続をとっていない事態が見受けられました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

今野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 平成十四年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成十四年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。

今野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今野主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

今野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。萩生田光一君。

萩生田分科員 おはようございます。自由民主党の萩生田光一でございます。

 質問の機会をいただきましたので、小中学校の建設費並びに、時間がございましたら、総額裁量制の今後のあり方についてもお尋ねをしてまいりたいというふうに思います。

 一九五〇年代、高度経済成長に沸き躍る日本では、都市部で働く人々による住宅難が問題となり、解決策として、勤労者のための低廉で良好な住宅の大量供給を目的に、国の住宅政策として、関係都府県並びに当時の日本住宅公団が事業主体となって始まったのが、ニュータウン事業の起源であります。

 私の地元、八王子では、隣接の町田市、多摩市、稲城市にまたがる丘陵地帯を切り開き、全国に先駆けて開発が始まった多摩ニュータウン事業がございます。開発開始以来、目まぐるしく変化する社会環境に対応しながら、その都度、役割の見直しを図り、当初の住宅一辺倒から、オフィスや研究施設等、職住近接の町づくりを進め、全国には例を見ない多機能複合都市として、当初計画の三十万人には届きませんが、今日、十九万人の人々が暮らす、外から見れば、一見大成功と言える近代都市ができ上がってまいりました。

 しかし、ハード面では一定の役割を果たしたといっても、三十年以上たった今日、それぞれの自治体では、予想もしなかったさまざまな問題が発生し、困惑しているのが実態であります。

 この三十年、私の地元では、ニュータウンの一住区に二つの小学校と一つの中学校、合計二十一の公立小中学校の建設を賄ってまいりました。その仕様も、グレードの高いものをという当時の国や東京都の指導をまともに受けて、近代的な建築を進めてまいりました。建設費についても、新住宅市街地開発事業の名のもとに、地元の負担を抑えた保留地、換地等、最初は特例的な扱いをしていたようですが、途中からは、結局、学校建設用地も市が購入をする一般的なルールになりました。

 かかる費用については、国が二分の一を補助し、残りの二分の一を、金利も含め、三十年の償還期間で将来にわたり返済するルールで起債を起こし、建設したにもかかわらず、本来、東京都が負担すべき未償還分を、平成十一年度以降は、新たに約二百数十億、地元自治体が強いられる事態となりました。しかも、国は、児童数の減少により、多くの空き教室が発生したり統廃合を余儀なくされる学校について、国庫補助事業完了十年を超えたものであっても、公共施設としての利用以外、転用を認めず、最近になって少し規制緩和が見られますが、それでも問題の解決はできない状況にございます。

 なぜこのような事態になったかといえば、町開き当初、余りにも入居を急ぐばかり、同じ世代、同じライフスタイルの人々を同じエリアに大量に入居させたからであり、そのときは、保育園が足りない、小学校が足りないと大慌てで対応しましたけれども、結果として、今日では、超高齢化の町が出現しているのが実態です。同世代で、入れかえが図られなければ、いずれこういう事態になることは予想ができたはずです。

 すなわち、ニュータウンの学校の統廃合は、少子化という町中の社会現象とは異なる原因があり、国の住宅政策の後始末を、地方分権の名のもとに地元市へ押しつけ、負担ばかりがふえていく現状を、地元の代議士として甘受するわけにはいかないと感じております。

 そこで、本日は、学校の問題に入る前に、国土交通省に参考人としておいでいただいております。まず初めに、このニュータウン事業、全国で展開をしてまいりました。大阪の千里あるいは横浜の港北、みんな今同じような問題を抱えて大変困窮をしているその実情は認識をしているところだというふうに思いますけれども、三十年たった今日、このニュータウン事業の総括を国交省としてはどのようにとらえているのか、お伺いしたいと思います。

日尾野政府参考人 ニュータウン事業についての御質問でございますが、先生今御指摘のとおり、ニュータウン事業につきましては、戦後における都市化の進展に対応いたしまして、大都市圏を中心にいたしましたインフラ整備や良質な住宅宅地に対応できないようなペースで、はるかに超えた大量の人口流入がなされ、それに対応する宅地を供給するために行われた事業でございまして、大都市圏における広域的な宅地事業に対応するとともに、ニュータウンという新しいタイプの住宅市街地の整備を通じて、国民の居住水準の改善に大きく貢献したという状況にあるわけでございます。

 しかしながら、御指摘のように、現時点になりますと、人口の減少社会の到来ですとか少子高齢化の進展、経済状況の変化等々の中に、住宅施設の老朽化ですとか空き施設の発生などの状況が生じておりまして、大量供給政策ということにかわりまして、既存の宅地ストックの適切な管理により質を維持向上し、マーケットにおいて宅地ストックを円滑に循環させるということによって国民の住生活の改善を図ることが、宅地政策において重要なテーマとなってきつつあるわけでございます。

 こうしたことから、ニュータウンの活性化につきましても、これまで蓄積されました都市資源を大切に生かしながら、地域住民、地元公共団体、住宅施設管理者と連携を進めながら行っていかなければいけないと思っておるわけでございまして、こうした取り組みについて支援をしていかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。

 私どもといたしましては、今後とも、需要動向ですとか居住者のニーズの変化、こういったことに対応いたしまして、土地利用計画を初めとして、ニュータウンの活性化に向けまして必要な施策を展開していきたいというふうに考えておる次第でございます。

萩生田分科員 大臣、今まで、私、地方議員がずっと長かったものですから、国会に来るとやはり答弁が違うなと思いまして、本当はもっと国交省が高飛車な答弁をするんじゃないか、胸を張って、ニュータウン事業のどこがいけないんだというようなお話をするんじゃないかというふうに思っていたんですけれども、極めて現実を的確にとらえた御答弁をいただいて、感謝をしたいというふうに思います。

 嫌みじゃなくて、今まで、外にいるとき、国とどんなお話をしても、結局、これだけのニュータウン事業で、こんなに広い公園ができたじゃないですか、これだけすばらしい住環境ができたじゃないですか、モノレールも走っているし、電車の駅もできたじゃないですかというのが、繰り返し国の答弁でありました。

 確かに、町並みからすればすばらしい町ができ上がったわけですけれども、我々地元からすれば、もともとだれも住んでいなかった山を切り開いて、そこに駅をつくった、さあよかっただろう、こう言われても、いささか戸惑いがあります。また、都市基盤の整備をすることによって、自治体としての固定資産が上がったじゃないかということをよく国はおっしゃるんですけれども、固定資産が上がると同時に、当然、お世話をしなきゃならない市民がふえてくるわけですから、これは簡単にプラス要因じゃないというふうに思います。

 今、次長が大変冷静な御答弁をいただきましたので、今後、自治体との協議の中においては、その姿勢をぜひ貫いていただいて、今、八王子ももちろん、町田ももちろん、稲城ももちろんでありますけれども、多分、全国のニュータウンを抱える自治体は、同じような悩みをこれから抱えてくることだというふうに思います。そのときに国交省として、やはり事業主体の所管官庁として、ぜひその辺の歴史的な経過、あるいは今日の、現実、直面している問題についてはサポートしていただきたいということを要望して、御退席いただいても結構でございます。

 今、大臣、お聞きいただいたように、ニュータウン事業区域内で小中学校を所管する文部省としてどんな感想を持っているか、文部科学省の方にお尋ねをしたいというふうに思うんです。

 すなわち、ニュータウン区域内の学校というのは、自治体が、市民が成熟をして、小学校や中学校のインフラが必要だという判断をして建てた学校じゃないんです。だれも住んでいないところに、言うならば、三十年あるいはもっと前の四十年、国の住宅政策で計画を立てて、ここに学校が必要だと言われて建てた学校だというふうに認識をしております。

 これらの学校が、実際には、さまざまな理由で、今申し上げたように、なぜ東京都からの財政負担がなくなったかと言いますと、実は東京都も国も、いい町ができ上がったことによって地元のさまざまなプラス要因があるんだから、学校というのは設置者が地元自治体なんだから、後のかかる費用については地元自治体が地方分権の時代に負担をするのが当然だ、こういう姿勢の中で、途中からルールを変えられてしまって、財政負担が生じているのが今の現状でございます。

 ニュータウンの中に設置をされた小中学校を所管する文部科学省として、今の事態をどのようにとらえているのか、お尋ねしたいと思います。

萩原政府参考人 学校施設についてお答えいたします。

 文部科学省といたしましては、ニュータウン構想に対して直接お答えするのは困難であると考えておりますが、先生御指摘のように、児童生徒の減少に伴いまして、公立学校において余裕教室あるいは廃校ということが出ております。これらの施設は、地域にとっては有効なストックでありまして、これらを積極的に活用することが望まれているわけでございます。

 それに対しまして、文部科学省といたしましては、公立学校の転用の際の財産処分手続の簡素化を図りまして対応しているところでございます。また、各市町村の創意工夫によって余裕教室の活用がさらに推進されますよう、関係省庁の要望や事情に十分耳を傾けながら対処してまいりたいと考えております。

萩生田分科員 このような背景の中で、国は、平成十六年度、三位一体改革の中、教育分野においても改革を迫ってまいりました。私は、必ずしもすべてが聖域とは思っておりませんので、見直すべきは見直すべきであるというふうに思っておりまして、そのことは否定をしません。

 しかし、本質的な教育費の問題以前の問題として、今年度、実は、立てかえ施行による小中学校の建設償還費について国庫負担の先送りが決定をなされました。

 今るる申し上げたように、私どもの町は、多摩ニュータウンという特殊な事情を持って、言うならば必要に迫られて学校建設をしてまいりまして、実は、多摩ニュータウンエリア内だけでも六校、あるいはその後に開発が進みました八王子ニュータウンのエリア内に三校、残念ですけれども、まだ買収を続けている学校施設がございます。

 この立てかえ施行というのは、昭和四十二年、ニュータウン事業が発足をした当時に五省協議によって、こういう特殊な事情で学校建設をするんだから財政的な負担を自治体に余りかけてはいかぬということで、それぞれ施行主であります当時の日本住宅公団、今日の都市公団が学校建設費を立てかえをして、それに対して、国が自治体に毎年必要な金額をお渡ししてそれを自治体が公団に支払っていくという、こういう手法であります。決して全国で多く、手法として取り入れられているわけではございませんので、実は、この十六年度の言うならば事業採択が見送りになったときに余り全国では騒ぎになりませんでした。

 私は、党の部会の中で、こんなことが横行したら自治体として極めて影響が大きいので、ぜひ文部科学省に見直しをしてもらいたいと言ったときに、文科省の認識というのは、大体対象校が一校で、そして今年度の負担額というのは、地元の自治体に負担をかけるのはせいぜい金利分ぐらいですよ、金額で言うならば百万ロットですよ、こういうお話だったんです。ですから、私はいささか勘違いをしたかと思ったんですけれども、その後調べましたら、今申し上げたように、私の自治体では既に九校が対象、そのうち今年度支払いをしてもらえない学校が四校ございまして、対象額は四千万以上に及んでいるというのがまさに実態でございます。

 そこで、全国ペースでは一自治体一校なんですけれども、私の地元のこの四校を考えますと、万が一このような事態が十七年度以降も続くということになれば、まさに学校教育制度の根幹を揺るがすことになると申し上げても過言ではないというふうに私は思います。

 そこで、この決算委員会の中で念のためお伺いしますけれども、本年度の未払い分、あるいはまた来年度以降はどのようになるのか、またこのような事態が発生してしまったことを文部科学省としてどう認識されているのか、お尋ねしたいと思います。

萩原政府参考人 立てかえ施行についてお答えいたします。

 平成十六年度予算におきましては、公立学校施設整備予算について、緊急の課題であります学校施設の耐震化を推進するということと、それからもう一つ、三位一体改革の一環としまして大幅な見直しを図りまして、前年度約百四十億円減の一千三百十一億円を計上したところでございます。文部科学省としましては、平成十六年度予算の適切かつ円滑な執行を行うために、実際の申請前に調整を要請するなど、地方公共団体の御理解、御協力をお願いしたところでございます。

 具体的に申し上げますと、学校施設の耐震化に関する事業及び危険建物改築、こういった緊急性の高いものから重点的に採択することといたしまして、先生御指摘の立てかえ施行につきましては、その必要性は十分文部科学省は認識しておりますが、やむを得ず今回は翌年度以降に採択を見送ることになったということでございます。

 関係の市町村に対しましては、御迷惑をおかけし、申しわけなく思っております。来年度予算に向けまして、現下の厳しい財政状況ではございますが、立てかえ施行を含む地方公共団体の事業計画に対応できるよう必要な予算の確保に努めてまいりたいと思います。そのように努力していく所存でございます。

萩生田分科員 繰り返しになりますけれども、地方分権の時代に、それぞれの自治体が自治体の判断で、小学校が必要、中学校が必要という判断で学校建設をした、それに対して国庫補助を仰いだ。ところが、先見性のなさから、あるいは不測の事態から、その小学校や中学校が必要なくなってしまった。その自治体に対して、ある意味ではペナルティーとして、国庫補助を戻せ、あるいはまた転用に当たっては一定のたがをかけて、勝手なことはしちゃならぬぞ、こういう必要性というのは当然あるというふうに思うんです。

 ところが、私が先ほどから申し上げている私の地元の小学校や中学校は、何も、人をかき分け、八王子市がつくりたくてつくったわけじゃないんですよ。国の住宅政策の受け皿としてたまたま指名を受けた。幾ら地方分権とはいえ、四十年も前ですよ。国が新しい事業を展開するといって市長たちが反対するような、そういう時代じゃなかったですよ。私は、あえて申し上げるならば、言われるままに判こを押し、言われるままに席について、この町づくりについては自治体として協力をしてきたというふうに思うんですよ。

 つくれと言われたからつくった。しかも、グレードの高いものをつくれと言われたから、言われるままにつくった。かかる費用については、心配ないから、国がちゃんと負担をするからといって、こういう五者協議を起こして、わざわざ各省庁で申し合わせをしたにもかかわらず、必要のなくなった小学校を統廃合しなきゃならない事態になったら、全国一律のルールで縛りをかけるというのはおかしいと思うんですよ。自治体が自分の判断でつくったんじゃない学校が必要なくなってしまった原因は、私は自治体にないと思うんですよ。

 先ほど申し上げたように、同じエリアにつくった学校に、同じ世代、同じライフスタイルの人たちをわあっと入れれば、そのときは、確かに子供がいっぱい来て、小学校が足らない、中学校が足らない、大騒ぎしました、増築もしましたよ。だけれども、その人たちの入れかわりが図られなければ、残念ながら、学校は一時的にしろ必要なくなることはだれが考えたって火を見るより明らかじゃないですか。これが地方自治体の責任ですか。私は、そうじゃないと思うんですよ。

 それは、国を一方的に責めるつもりはありません。走りながらお互いに考えたんだというふうに思いますから、当時は、とにかく都市部に人が住むだけの住宅環境が必要だった。ですから、二DKでも三DKでもいいから、とにかく若い世代の皆さんに低廉な住宅供給をするというのが当時の国の使命だったと思いますから、それにあわせて住宅供給がなされた。残念ながら二世帯が同居できませんから、子供たちはそれぞれ独立してよその町へ移り住んでいく、残ったのは老夫婦だけ。ですから、学校は、一学年一クラス。しかも、その一クラスが六名とか七名しか子供がいないなんという学校ができてしまって、さあ、この学校を統合するのにどうしようといって地元の自治体が悩んでいるんですよ。それを、ほかの全国の小中学校を建設したときと同じルールで縛ってしまったんでは、これは、町づくりはできないですよ。

 私は、ニュータウン事業区域内につくった小学校、中学校の、例えば土地利用ですとか、あるいは統廃合に伴うさまざまな施策については、これは例外的に扱うべきだと思うんです。今申し上げたように、公団の立てかえ施行という制度を何も地元の自治体が要求したわけじゃなくて、こういういい制度がありますから心配しないでくださいよと言われて、公団が建てた学校の建設費をことしも払っているんですよ。国が補助金を出さないから自治体は公団に払わなくていいという、そういうルールじゃないんですよ。

 これは、私はどう考えても、全国一律では解決ができない問題だというふうに思います。通告をしていないかもしれませんけれども、地方議員の経験のある河村大臣、ぜひ、ちょっと御感想をお示しいただきたいと思います。

河村国務大臣 今の御指摘の点、関係市町村等お困りだろうと私も思います。耐震化の問題とか危険物が出てきたとか、いろいろな理由はあると思いますが、優先度からいうとかなり高い優先度でこういう対応をしなきゃいかぬと思っておりますが、次の予算確保の段階で配慮をしなきゃいけない課題であろう、こう思っておりまして、当省の部長がお断り申し上げましたように、まことに申しわけなく思っているというのが偽らざる気持ちでございます。

萩生田分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、こういう特殊な事情を抱えている自治体の小中学校建設費の問題については、やはり文部科学省として別途指針を示していただいて、これは総務省も巻き込んでちゃんとルール化をしてさしあげないと、うちだけの問題じゃないですよ、いずれ、大阪でもあるいは横浜でも同じような事態に必ず陥りますよ。

 ですから、これは、一般の学校建設費と分けてぜひ御検討いただくように、この機会に強く要望しておきたいと思います。今大臣からも真摯な答弁をいただきましたので、それを文部科学省としても受けとめて施策をおつくりいただきたいというふうに思います。

 時間が若干ございますので、総額裁量制の導入についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 今年度から総額裁量制が導入をされました。私は、地方にある程度裁量権を持たせるというこの国の姿勢は評価をしたいというふうに思います。ところが、大臣、私は今、党の部会の中でも盛んに発言をしていますのは、教育の三重構造を改革しない限りこの総額裁量制は生きてこないというふうに思うんです。

 今申し上げたように、小中学校の設置者はだれかといったら市町村です。そして、そこで働く学校の先生はだれかといえば都道府県職員であります。政令市を除けば、大体がそういうスタイルになっています。そして、この人件費はどうするかといえば、国庫負担金の堅持という今大きな旗を掲げて我々も足並みをそろえて運動をしておりますけれども、国からの補助金が言うならば根拠になっています。すなわち、働いている場所の自治体では全く任命権のない教員を扱ってその町の目指す教育をしようというのが現在の日本の公教育のあり方なんです。

 私は、これは総額裁量制の導入と同時に、裁量権を市町村へ落としていかない限りは、残念でありますけれども、そこで働く教員の皆さんは、どんなに地方の市町村教育委員会が、教育の高い理想を掲げたり、教育の方針を示したり、いろいろなルールをつくっても、まあ一部の教員かもしれませんけれども、圧倒的に言うことを聞く人たちがいないというのが現在の日本の状況だと私は思うんです。

 ですから、この三重制度を何とか総額裁量制の導入と同時に解決をしていっていただかないと、問題の解決ができないというふうに思うんです。

 そこで、一つ例を示したいと思うんですが、この裁量制がうまく移行をできれば、頑張る先生は、いい先生は高い給料をもらえる、こういうプロフェッショナルとして評価をされるようになると思います。一方、だめな教員にも最低限の給料は払わなきゃならないというふうに思うんです。ところが、だめな教員が、今もらっている給料より支給される給料が安くなったとして果たして黙っているかといえば、私はそれはいささか疑問なんですよ。

 申し上げましたように、学校の設置者は市町村、働くのは都道府県。ですから、給料がもらえない都道府県に対して、あるいは給料が減ってしまった都道府県に対して、私は、明らかにこの皆さんは、ある意味では現場でその補てんを求める動きに変わっていくんじゃないかというふうに思うんです。

 例えば、今まででも、夏休みのプール指導で不法な手当を要求してきた、そういう人たちがたくさんいらっしゃいました。かつては、クラブ活動といえば、私たち子供が帰りたくても先生が熱心で夜遅くまで帰れないなんという学校が日本じゅうにたくさんありました。ところが、今日では、クラブ活動の顧問をお願いすれば、暗にその手当を要求するというのは全国では決して珍しい話じゃなくなってまいりました。

 こういう事態を考えますと、本当に、裁量権のない市町村自治体に対して、裁量権を都道府県にだけ与えたことによって、万が一そのしわ寄せを市町村がこうむるというようなことになれば、これは大きな問題だというふうに思うんです。そして、市町村の教育委員会は、子供たちを日々抱えているわけですから、一日たりともトラブルは起こしたくないという非常に弱い立場の中で、どうしてもこの要求に屈してきたという歴史的な経過があります。

 こんなことを考えますと、私は、総額裁量制の導入にはさまざまな問題があるというふうに思っていまして、これらの点について、今後どうやって、文部科学省として、その問題点が起こらないようにあるいは解決ができるように取り組みをされるのか、お尋ねをしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のように、市町村へ裁量権を移譲すべきではないか、御指摘のとおりだろうかと思っておりまして、現在、中央教育審議会でも、都道府県教育委員会と市町村教育委員会の役割分担、あるいは市町村教育委員会と学校との関係、こういったことも御議論をいただいておるわけでございます。

 先生御指摘になりましたように、この義務教育費国庫負担制度、これは、おっしゃるように、小中学校は市町村が設置者として管理運営に当たっているわけでございますが、教職員の給与費につきましては、義務的な経費であると同時に大変多額のものであるということから、現在、都道府県教育委員会が負担をするという、いわゆる県費負担教職員制度を採用しているわけでございますが、やはり特色ある教育活動をより積極的に展開したい、こういうような地方の要望も高まっているところから、平成十五年度から、これは構造改革特区でございますが、教育上特に必要な事情がある場合には、市町村が給与を負担して独自に教職員を任用できることにしたわけでございます。この全国化をどう考えるかという問題も一つございます。

 私どもは、この制度の評価でありますとか関係者の意見も踏まえながら、中央教育審議会において御議論をいただきたいと思っておりますし、それから、県と政令都市間の県費負担教職員制度の見直しでありますとか、学級編制基準の設定権限の移譲など、市町村と都道府県の関係につきましては、任命権の問題も含めまして、先ほど冒頭で申し上げましたように、中央教育審議会で御議論をいただいておるわけでございますが、大きな方向性としては、やはり市町村が設置者としてその機能を十分に発揮をしていただく、こういう方向で私どもも研究もしてまいりたいと思っておりますし、総額裁量制も、平成十六年度から、本年度からの導入でございますから、やってみてまたいろいろな課題も出てくるかと思っております。それもまた十分に今後とも検証しながら、よりよい制度改善にまた努力をしてまいりたいと考えております。

萩生田分科員 ありがとうございます。

 私は、二人の子供が公立の中学校と小学校に通っておりまして、いずれも私の母校であります。曲がりなりにもPTAのお手伝いなどをしたこともあるんですけれども、非常に感じますのは、今申し上げたように、設置者は市立の小学校であるにもかかわらず、そこで働く皆さんはすべて都の職員、任命権が地元の自治体にない。ですから、例えば問題を起こす教員がいて、それは、地元の市議会や地元の教育委員会では、とんでもない、直ちに教育現場から離れろといっても、処分が下るまでの間、一週間も十日もキャッチボールをそれぞれの市教委と都教委の間でやらなくては問題の解決ができないという不合理を何度も味わってまいりました。

 また、小学校の新しい先生たちが赴任をされて、例えば学校の広報紙に学校の先生方の紹介の欄をつくる、写真を撮りたいと言えば写真は拒否をする、子供たちが年賀状を出したいと言えば平気で学校の住所をおっしゃる。子供たちに何があっても学校の担任の先生というのは対応をしていただける、そういうとうとい公務員だからこそ、一般の公務員より、人材確保法によって等級が上の給料が支払われているのが全国の実態だというふうに思うんです。しかも、年間四%の調整額はいまだに手をつけないままで払われる。

 私は、大臣、総額裁量制の導入と同時に、やはりこの教育公務員というのは、その先生との出会いがその子供たちの人生をも揺るがすだけの大きな影響があるというふうに思うんです。私の中学校二年の担任は女性の数学の先生でありました。私はもともと数学は苦手じゃなかったんですが、ある日その学校の先生が行方不明になってしまって、何週間も姿をくらませて、代員教諭で対応しました。何と、一カ月後、成田の滑走路工事に反対して、ヘルメットをかぶって、そして逮捕されて、身分を明らかにしないまま何日も勾留されていたということが新聞やテレビでばんと出まして、びっくりして、まあ、それが原因で数学が苦手になったわけじゃないのかもしれませんけれども、ある意味では人生が変わった、よくぞここまで真っすぐ育ってきたなと自分で思っているわけでございますけれども、そのくらいに、そのニュースを見た、先生のシーンを見て格好いいと思った子供たちも同級生の中にはいっぱいいました。

 お百姓さんが反対する空港をなぜつくるんだ、そのために先生は体を張って反対したと、子供たちに平気で弁明をすれば、そのことが正しいと思ってしまう子供たちもいるのも事実でありまして、私は、残念ですけれども、そういう教員の皆さんというのは、公職にあって、プロフィールについてはお互いに明らかにしなかったら、信頼関係は芽生えないというふうに思うんです。

 自分の子供の担任が教員になって何年目なんだろうか、今まで何年生を持ったことがあるんだろうか、住所はどこなんだろうか、夜の夜中に万が一何かあったときにはどこに連絡をして相談したらいいんだろうか、こういうことも含めて公教育の充実を図るためには、まさに公務員制度改革、教育公務員制度改革とこの総額裁量制の導入というのは、まさにセットで議論を今後していかなきゃいけない大切な問題であるというふうに思っておりますけれども、時間が参りましたので、大臣に最後に、これらの方向性について今後の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。

河村国務大臣 萩生田委員御指摘のとおり、学校というのは、まさにその成果いかんはそこにおられる教員の力にまつところが非常に大きいと思います。

 そういう意味で義務教育費国庫負担制度もあるわけでございまして、全国に一律の高い教育を受けられるような仕組みをつくっていこう、あるいは教育の機会均等もしかりでありますが、特に教員の質を高めていくということが非常に大事でございまして、今御指摘のような先生も現実に出ておる。やはり任用のあり方から含めて、採用のときのあり方あるいは教員養成のあり方、そういうものも含めながら、これは思い切ってかなり抜本的にこれから考えていく必要があろうと私も思っておりまして、その全国的なセンターとしての文部科学省の役割というのは大きい。

 それから、採用については、県の教育委員会の責任も大きいわけでありますが、そことの連携を持ちながら、今御指摘のような教員の存在は許さない、そういうやはり教員、公務員のあり方、そういうものをつくっていく必要がある、その責任は私も今御意見を聞きながら感じておりまして、今後さらに、よりよき教員といいますか、教員の使命感の高い、また子供の好きな、熱意を持って教育に対応できる教員の確保、そして研修、さらに努めてまいりたい、このように思います。

 ありがとうございました。

萩生田分科員 ありがとうございます。一緒に頑張りたいと思いますので、ぜひ御期待を申し上げたいと思います。

 質問を終わります。

今野主査 これにて萩生田光一君の質疑は終了いたしました。

 午後二時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

平井主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。

 主査の指名により、私が主査の職務を行います。

 午前中に引き続き文部科学省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷公一君。

谷分科員 谷でございます。兵庫五区選出で、昨年の秋に初めて当選しました。よろしくお願いしたいと思います。

 まず、河村大臣にお尋ねしたいと思います。

 義務教育費国庫負担制度の改革についてであります。義務教育に必要な財源を確保しつつ、地方の自由度を最大限に拡大する、そういう考え方で、平成十六年度よりいわゆる総額裁量制ということが導入されたわけでございます。

 もう少し詳しく見てみますと、都道府県教職員給与費の実支出額の原則二分の一は国庫負担、都道府県ごとに必要な教職員数は確保する、給与水準は確保する、そういった根幹は守りつつも、義務教育費国庫負担金の範囲内であれば、給与額、教職員の配置などについては都道府県の裁量に任されることになった。そういうことであればといいますか、そういうような仕組みを活用すれば、教職員の能力に応じた昇給を行ったり、手当やボーナスも横並びでなくすることも可能になるということでありますけれども、もうひとつわかるようでわからないのは、そういった三つの、実支出額の二分の一国庫負担、必要な教職員数の確保、給与水準の確保の根幹は守る、その根幹を守るというのは一体どういうことなのかということを、大変基礎的なことのようでございますけれども、考え方の基本にかかわることだとも思いますので、大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。

河村国務大臣 義務教育の水準を確保しながら義務教育を担う教職員としてすぐれた人材を、必要な人数を確保する、これはもう教育上非常に大事なことであることはだれもが認めるところだと思います。そのために、教職員の給与費について一定の負担、これは今二分の一ということにいたしました。一定の負担を行うことによって、すぐれた教職員を確保する、そのためには財源を保障していくということが必要になってくるわけですね。

 そこで、義務教育費国庫負担制度の根幹というのは、義務教育水準確保のために、義務教育を担う教職員の給与費のための財源を国が責任を持って保障するということがこの根幹である、そう考えております。したがって、文部科学省としては、この義務教育費国庫負担制度については、これは見直しをやらなきゃなりません。義務教育の機会均等、それからその水準を維持する、そういう意味で優秀な教員を確保する、その根っことなる根幹である給与費の二分の一、それを確保することによって国としての教育に対する責任を今後とも果たしていく、こういう趣旨であります。

谷分科員 では、話を進めたいと思います。

 一方、新聞報道等によれば、政府におきましては、国家公務員、あるいは地方公務員も入るかもわかりませんが、各地域の実情に合った給与水準、実態に合った給与水準、あるいはそれぞれの地域の民間水準に見合った給与水準というのを検討する方向で動き出しているようでございますけれども、そうなれば、例えば給与水準を二割カットして財源を捻出して、それで教職員の正規化、あるいは非常勤、臨時の方も含めて、要は人数をふやして教育を充実させようというふうにある都道府県が考えたとしますと、二割も相当なカットのように思いますけれども、ただ、冒頭申しました地方の自由度を最大限に拡大するという考えから見ればそれも一つの考え方で、あとはそれぞれの議会があるいは住民がどう判断するのかなというふうにも思うんですが、そういう考え方でよろしいんでしょうか。

 逆に言いますと、いや、私の地方は例えば二割カットするというようなやり方でしたとしても、文部科学省としては、それはそれで尊重するというお考えなのかということをお尋ねしたいと思います。

河村国務大臣 結論から言うと、それはもう地方の裁量に任せるということになるわけですが、ただし、公立学校の教職員の給与には、人材確保法という法律もございまして、一般の公務員より下回ってはいかぬ。それは、全員じゃなくて、平均したとき下回らないようにという法律がございます。

 そこで、これまではどうであったかというと、国の方で、教員の給与については国立大学の附属学校の教員の給与に準拠した決め方がございましたから、きちっと枠がはまっておったんですね。これは国の方で個々に計算をして、それに準じて二分の一を出す、こういう形になっておりましたが、このたび、骨太の方針も出て、もっと裁量を増すべきだ、国が何もかも、給料まで決める必要はない、地方に任せろと。それは確かに教育現場は地方ですから、地方ができるだけ裁量を持っていただいて、またいい先生も確保していただく。そういう意味では給与も大事ですから、そうすると、各都道府県が給与水準を主体的に決めるためには、国立学校に準拠していた準拠制をやめる。ちょうど国立大学も法人化になりまして、国のいわゆる機関ということじゃなくなりましたから、それを外して今度は各都道府県が条例をもって決めていただくようになりました。

 したがって、今おっしゃったように、うちは二割カットするんだと。しかし、教員の先生を二割カットして一般の公務員をそのままにしておくと教員の方が下がるということが万一あると、これはやはり人確法の精神、恐らくそういう県の場合には全体を下げる、教員も下げるんだと。そうすると、平均したとき教員が下回らなくなっていて、その財源を活用して、優秀な先生には少し多目にやって悪い先生は下げるということをして格差をつけて、平均したときに下回らないような制度をつくるということであれば、これはもう地方の裁量になります。

 ただ、問題は、そうすると、給与は下げさえすればいいかというと、やはり全国レベルの優秀な先生を全国レベルでできるだけ持ってもらおうとしますから、そうすると、例えば兵庫県の場合はそうする、大阪はそうじゃなかった、あっちの方が給与がいいということになると、兵庫県と大阪というのは勤務するところが一緒ですから、先生はいいのがみんな向こうへ行く可能性もありますよ。

 そういうこともやはり教育委員会は考えていただかなきゃなりませんけれども、しかし、それはまさに地方の裁量制になっていくわけで、これによって自由度が増す、こうなっておりますので、それぞれ公立学校の教職員の給与については地域の実態に合わせた決め方をやっていただく。これはこれから可能になってきますし、むしろ文部科学省としても奨励をいたしたい、このように思っております。

谷分科員 よくわかりました。方向としては大変いい方向だと思いますので、ぜひ今後ともその方向で御努力の方をお願いしたいというふうに思っております。

 それでは、学校現場にかかわる問題に話を移らさせていただきたいと思います。

 日曜日、新聞を見ておりますと、我が兵庫県の教師で何かびっくりするような教師がいまして、兵庫県姫路市立中学の教諭が精神疾患を理由に休職していた、約六年余りのようですが、無断で、その間十回以上にわたり海外旅行を繰り返していたことがわかったと。

 私も長年公務員をしていましたので、一般的に、地方公務員であれば地方公務員法などの手厚い身分保障がなされている。それでなかなか処分というのは、実際問題、法律に縛られて難しいということはわかっているつもりでございますが、しかし、新聞で見る限り、何かそれをよいことに、この教諭は県教委の事情聴取に転地療養のためと説明したと新聞記事はありますけれども、余りにも仕組みそのもの、運用そのものに問題があるのではないかと考えざるを得ないわけでございますが、文部科学省としての所見、お考え、あるいは今後の対応についてお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 私どもも新聞で見て初めてこのことを知ったわけでございますが、早速、兵庫県教育委員会に問い合わせをしたわけでございますが、現在、兵庫県教育委員会におきましては、事実関係を調査中であるということでございます。

 ただ、病気休職中は、これは病気療養のために職務に専念する義務を免除されているものでありまして、当然、病気療養の趣旨に反するような行為をしてはいけない、これは当たり前のことでございまして、そういった行為は学校教育に対する信頼を著しく損ねるものと考えておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、兵庫県教育委員会からこの事実関係をよく聞きたいと思っておりますし、今後とも、兵庫県教育委員会に対しまして、適切な勤務管理について指導を徹底してまいりたいと考えております。

谷分科員 基本的には今のあれで私もいいと思うんですけれども、いろいろ事情を聞かれる中で、やはりどうしても、そういう精神疾患ということになれば、どちらかというとフォローが甘いといいますか、という傾向にあるのではないかと思います。よく事情を聞いていただいて、そこから引き出される教訓というか、何も兵庫県だけではなくて全国的にも共通する話ではないかと想像されますので、きちんとした対応をお願いしたいというふうに思います。

 さて、同じ我が兵庫県で、何か少し胸を張って言えないようなところもあるわけですが、教職員の教研集会についてであります。

 この問題につきましては、昨年の秋、横浜地裁の判決が出まして、この教研集会に参加するということ自身が職員団体活動の性格があり、校長が職専免と扱ったのは違法であるという判決が下されたところでございます。当然、そういう常識的な判決かなというふうに私自身思っているわけなんでございますけれども、いろいろ調べるといいますか、私も国会議員になって初めて知ったことなんですけれども、今までどこの都道府県も順次そういったことは、教研集会への有給参加というのは認めていなかった。この春に初めてといいますか、四十七都道府県で最後に兵庫県がその判決を受けて方針を変えるということを決めたということを新聞で見たわけでございますが、なぜ兵庫県がこのように遅くなったのか、どう見られておりますか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のように、教職員組合が主催する教育研究集会、これは組合活動としての側面も有するものでございまして、教育公務員特例法の規定は、こういった活動に参加することまでもいわゆる職専免研修として認める趣旨のものではないわけでございまして、文部科学省といたしましては、従来から、各都道府県教育委員会に対しまして、この教育研究集会の参加について、職専免研修を認めないように指導をしてきたわけでございます。

 これに対しまして、兵庫県教育委員会では、教職員組合と教育委員会との関係が不透明である、不透明であるというのもあれでございますけれども、学校の管理運営に不適正なものが見られまして、この教育研究集会への参加について職専免研修が一部認められてきた、こういったことがこれまでも続いてきたわけでございます。

 しかし、昨年の十月に、横浜地方裁判所で、教研集会への参加についての職専免研修の承認を違法とする判決が出たことを踏まえまして、兵庫県教育委員会としては、本年度からこのような取り扱いを認めない、これを明らかにしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、実際にこの兵庫県の教育委員会の方針どおりに教研集会の参加について職専免研修が認められていないかどうか、今後ともやはりきちっと注視をしながら、適切な取り扱いがなされるように指導してまいりたいと考えております。

谷分科員 そうしますと、今までの取り扱いを変えるということですから、当然、通知とか何らかのペーパーを出すべきだとも思うんですけれども、その辺はどういうふうに把握されているんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 兵庫県教育委員会におきましては、ことしの四月に開催されました県内の市町村の教育長の会議でありますとか、県立学校長あるいは教育事務所長等の会議におきまして周知徹底を図ったということでございまして、特に通知は出していないと聞いておるところでございます。

 私どもといたしましては、問題は、これは実際に各学校におきまして兵庫県教育委員会の方針どおりに適正な取り扱いがなされるということが必要であろうかと思っておりまして、兵庫県教育委員会におきまして適切な方法によって周知徹底を図って十分な指導を行っていただきたい、こういうことを促してまいりたいと考えております。

谷分科員 組合等の問題でいろいろあるということは私もこのところいろいろ耳にするわけでございますが、同じく、今局長は、不透明な関係というような言い方をされたかと思いますが、主任手当の問題につきましても、前の兵教組の委員長でありました石井亮一さんが理事長の、兵庫県学校厚生会が主任手当の拠出にかかわっている。具体的には、先生の給与からの学校厚生会が扱っている生協事業などの利用代金引き落としに関与している疑いがあるとも言われているところでございますけれども、そうしたことについてどういうふうに対応されようとしているのか、お考えをお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のように、主任手当は、主任の職責の重要性にかんがみまして、給与上これを評価するために支給をされているものでございます。この主任手当を主任制度に反対する目的で拠出をするということは、この主任制度並びに主任手当の趣旨に反するものでございまして、学校教育に対する国民の不信を招くおそれがある、こういうことで、私どもは、こういった主任手当の拠出をやめさせるように各都道府県教育委員会を指導してきたところでございます。

 また、この兵庫県におきましては、今先生御指摘になりましたように、教育委員会が所管する法人であります学校厚生会がこの主任手当の拠出に関与している、こういう疑いがあるわけでございまして、そのようなことが仮にあるとすれば、これは極めて不適切であると考えておるわけでございます。

 これにつきましては、会計検査院の検査もあったわけでございますが、そういった動向も踏まえながら、県教育委員会を通じまして十分な実態把握に努め、主任手当の拠出をやめさせるように、教育委員会に対してさらに指導の徹底に努めてまいりたいと考えております。

谷分科員 そのほか、私が個人的にいろいろお聞きしている限りでも、組合の活動と勤務の実態の問題があるかと思います。

 いわゆる組合専従でない方々、職員で支部長を務めている、そういう支部長の多くは、学校の勤務が半日で、残り半日を組合の会館などで組合の仕事をしているという実態があるのではないか、多くの支部で。

 では、そういう支部はカリキュラムをどうするのかというと、学校の現場は不足が生じるわけですから、そういうところには別の名目で職員がプラスアルファで配属されて、カリキュラムの実施に支障がないように、困難が生じないように配慮がなされていると幾つか実際に私は聞いておりますが、文部科学省はそういう話を把握されておりますか。

近藤政府参考人 兵庫県の場合には、県の問題のみならず市町村でもいろいろと課題があると承知をいたしております。

 一例を申し上げますと、学習指導要領に定められた授業時間数を大幅に下回る授業時間数しか確保されていない。あるいは道徳も、これもまた年間総授業時間数が三十五時間やることになっておるわけでございますけれども、年間総授業時間数が八時間とか九時間しかやっていないというような学校があるとか、あるいは主要教科に対しましても、この実施率、極めて低い時間数でしか計画を達していないとか、いろいろ課題がある、こういうことも承知をいたしておりますので、こういった問題についても、きちっと法令あるいは学習指導要領等にのっとった学校教育活動がなされるように県の教育委員会を通じて指導してきているところでございます。

谷分科員 今、学習指導要領の時間のことを言われたわけでございますけれども、私が把握している限りでも、勤務評定が、大分よくはなってきたといっても、例えば平成十四年度では県下全体九百五十一校のうち何と百六十校が全く同じであった。一六・八%ですけれども、信じられないような、そういう勤務評定結果がある。それが十五年度は五分の一弱に減ったとはいっても、九百五十一校中三十校が勤務評定が全く同じだという、どうなっているのかなという感じを持っているわけです。私は、おかしいというよりも、こういうような勤務評定をすること自身が無責任かな、大変無責任なことではないか。

 それで、先ほど局長の方は、学習指導要領にのっとった時間を確保してほしいというような趣旨を言われたかと思いますが、私個人としては、まあ若干それは違ってもいいのかな、指導要領に、個人的な意見としては。

 ただ、それはオープンにしなければならない。問題は、オープンにせずに自分たちだけで決めるというやり方が、もうこれからはよくない、許されないというふうに思うわけです。オープンにして議論を尽くして、こうこうこういう理由でこのカリキュラムは少なくします、しかしこの分野を充実します、そういうような形でするのであればともかく、それがなかなか公表されていない。とにかく教育は教師に任せろという、独善的といいますか、そういうやり方でやっていることがもっと問題なのではないかと私は思っているわけでございますけれども、お考えをお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 おっしゃるように、学校もまたみずからで評価をするということが大事でございますし、できるだけこれは保護者等にあるいは地域の住民の方々に学校の教育等にかかわる情報を提供していく、こういうことが大事であろうと思っております。

 小学校、中学校の設置基準を改正いたしまして、まずは自己評価ということを努力義務として義務づけたわけでございますし、情報提供に努めなきゃならぬということもその中に盛り込んだわけでございまして、そういう観点からの取り組みを今後とも指導してまいりたいと思っております。

谷分科員 それでは、もう時間もなくなってきたわけでございますけれども、それに関連して、私の選挙区で城崎温泉という、志賀直哉の「城の崎にて」で有名な、全国的な温泉があるんですが、実は、そこの中学でこの春、私自身驚愕するような事件がありまして、事もあろうに中学校の卒業文集の中で、社会科の教師が、堂々と小泉内閣を批判する寄稿文を載せていた。

 その文章の中には次のように書かれてありました。「政治家と言う者は、全国民の幸せを考えるものです。特に所得の低い社会的弱者の人達の幸せを優先して考えるべきです。それが、今の小泉内閣はどうでしょう。」いろいろ述べられて、そのような「弱者いじめの政治をやっています。更に消費税も値上げしようとしてます。」さらに少し飛ばしまして、「弱気をいじめ、強気を助け、益々、貧富の差が拡大する政治をやっているのです。」と。

 それで、卒業式で配られて、それで地元の町長の指摘で発覚いたしまして、その日にすぐ校長と教諭に注意をして撤回文書を出したということで、一週間後に地元の地域版でこれらの記事が出て私も初めて知ったわけでございます。

 私自身、長年公務員をしていましたが、仮に私の部下の職員がそういったことをすれば、税金を使ったそういうような出版物に、独善的で、教条主義的で、政党の機関紙と間違うような文書を公文書で配ったならば、ちゅうちょなくその職員を処分するということを当然考えるところでございます。ましてや、政治的中立を遵守するという民主主義国家の基本を、平気でかつ公然と無視する、そういう教師のあり方というのは、どういう神経かなと。教える資格があるとも思えないし、教えられる子供たちも不幸になるだけだと私は考えますし、多くの地域の方、オーバーに言えば我が国の国民も考えているに違いないと信じているわけでございますが、大臣どうでしょう、御所見をお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 志賀直哉の「城の崎にて」というあの有名な、そこでこういう文章が出たというのを私も初めて聞いたんでありますが、これは教育の中立性といいますか、そういうことから考えても、教員が特定の政治的主張を一方的に行うというのはやっぱり問題であります。このケースの場合には、当該文書を撤回するということをすべての保護者にお出しになって、教育委員会は、校長、当該教諭、厳重注意になった、こう伺っております。

 やっぱり子供は大きな影響を受けるわけでございます。もちろん言論の自由もありますから、批判しようと褒めようと、それはそれぞれの個人のあれでございますけれども、やっぱりこういう公的な意味の高いところでこう言うというのは、これはどっちになっても問題なわけでありますから、これは非常に問題視せざるを得ません。

 文部科学省は、政治的な中立を保ちながら、適切な指導が行われるようにこれからも教育委員会を指導していかなきゃならぬ、そしてやはり学校教育は信頼の高いものでなければならぬ、このように考えているわけでございまして、今回のことは極めて遺憾でございます。

 もちろん、児童生徒、発達段階においていろいろな政治的な問題を取り上げて議論をし合う、教材にして議論をし合う、これは非常に意義のあることでありますが、こういうふうになってくると、これはもう本当に問題にせざるを得ませんので、今後こういうことのないように、まさに教育の中立性が保たれて学校教育が信頼の高いものになるような努力をしていかなきゃいかぬ、このように思います。

谷分科員 私のホームページにも書いたんですけれども、「事件は構造を明らかにする」とフランスの社会学者の言葉がございますけれども、何かこの事件に、兵庫県の教育といいますか、あるいはこの中学の教育というか、その実態があるように思います。何か常識的ではない。それは、政治的な自由というのは憲法に保障されていることですし、私もそれは尊重されるべきだと思います。しかし、それを文集で堂々と書くという神経自身が、余りにも常識の範囲を超えている。非常識以上だというふうに思います。

 私も、常識ということを大切にしながら、そして子供たちがすくすくと伸び育つような教育条件を確保するために今後とも頑張っていきたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

平井主査代理 これにて谷公一君の質疑は終了いたしました。

 次に、松原仁君。

松原分科員 民主党の松原仁であります。

 きょうは、教育全般につきまして、河村大臣、また関係の皆様にお伺いをしていきたいと思っております。

 教育問題というのは、極めて、ある意味では抽象論というんですか、そういったものを含むわけであって、数字ですべてが推しはかれるものではありません。そういう中で、戦後の日本の教育が現在の日本をどのようにしたのかということを考えると、それは教育だけの問題とは私は思っておりません。しかし、既に通告でも申し上げておりますが、さまざまなアンケート調査を通して、果たしてそこで語られているような子供たちの状況というのはいいかどうか、そういったものを含め、まず大臣の御所見からお伺いしたいと思います。

 ここに、日本青少年研究所、平成十六年の高校生の規範意識調査がありますが、これを見ますと、これは中国とアメリカと日本の三カ国をデータとしてやっているわけでありますが、一つは「学校をずる休みする」というのがいいと答えた人が、中国では一九・七%、百人に約二十人がずる休みしても構わぬのだ、こういうことであります。アメリカではこれがふえまして五五%、やはりアメリカも大分教育は厳しい環境かなと思うわけでありますが、百人に五十五人であります。そして、日本においては何と七二・一%、百人のうちの七十二名が学校をずる休みしてもよいと答えているわけであります。

 同じような設問の中で「親に反抗する」という設問がありまして、これに関しては、中国の方々、子供たちは、百人のうち二十八人、二十九人、二八・九、親に反抗してもいいと。これが、アメリカは四三・八%ですから、百人のうちの四十四人ですね、親に反抗していいと。日本は百人のうちの七九・七%ですから、八十人が親に反抗してもよいと。こういうふうなデータになっている。

 先生に反抗していいかどうか、こういう話であります。先生に反抗していいというのが、アメリカでは四十・八名、百人に四十人。中国は三十・四名、百人に三十人ですね、三〇・四%。日本は、これも何と七四・七%、百人のうち七十五人が先生に反抗していいと。

 一応こういった数字があるわけでありますが、この数字を私今一つ一つ読み上げましたが、これについて、大臣、どんな御所見をお持ちか、お答えいただきます。

河村国務大臣 これは最近の統計です。我々の時代はこんなことはなかったと私は確信するんですが、その後、ではどういうふうに規範意識といいますか、そういうものが薄れていったかということ、これはいろいろな見方があると思うのでありますが、やはり、家庭教育において、きちっといいこと悪いこと、まさにしつけといいますか、そういう家庭の教育力がやはり低下しているのではないか。これは親に反抗してもいいというんですから。戦後、特に自由でそして自己中心でというふうに教えられたわけではないけれども、そういう風潮がずっと流れてきて、そういうものがここまで行き渡ったかという感じは私は抱くわけであります。

 と同時に、家庭もそうでありますが、地域も、自分の子でもこんなことでありますから、他人の子供に対して周辺が注意するということもなくなってきた、いいこと悪いことをやっていても見て見ぬふりをする大人がふえた、そういうことでありますから、そういうことが平気になっていったということだろうと思います。

 最近の、また教員の皆さんも、そういうことに対して自信をなくしている、こうも言われておるわけでありまして、逆にまた、教員がそういうことでしかると、これは家に帰って、また親が教員に文句を言いに行く、こういう状況下にございます。

 こういうふうに言われておるわけでございまして、そういうものを言われ続けておったわけでありますが、そういうものをこういうふうに数字で示されると、まさにそういう結果が出ているんではないかと思いまして、こういうものをどういうふうにしてこれから正していくか、家庭の教育力を高めながら、地域の教育力も高めながら、そして子供たちにもいろいろな体験とかいろいろさせながら、物の善悪、よしあし、そういうものをきちっと教えていく、そういう教育をこれからどういうふうに取り上げていくかということが、まさにこれから課題になっておるわけであります。

 私も、就任に当たって、人間力向上の教育改革と言われておるのでありますが、人間力というのは、そういうことのよしあしというものがきちっと判断できて、まさに社会において協調性を持って生き抜いていく、思いやりを持って生き抜いていく、そういう人間をつくっていくことが教育でなきゃいかぬ。

 教育基本法には「人格の完成」と書いてありますが、まさにそれが欠如しつつある状況がこういうところにあらわれておると思いまして、極めて重く今のお話というのは、日本もこれ以上これを看過しておいていいんだろうか、文部科学省もこれはきちっと考えていかなきゃいかぬ、また教育現場もこういうことを真剣に受けとめてもらわなきゃいかぬ、こういう思いであります。

松原分科員 今、自信という言葉が大臣から語られたわけでありますが、同じく日本青少年研究所及び一ツ橋文芸教育振興会というのが、両財団が、二〇〇二年十一月、ちょっと古くなりますが、日米中、三カ国の中学生、今度は中学生の比較、意識調査を行った。それによっていろいろな、勉強も学習意欲も低い、自己評価も低いというのが出たんです。

 特に、勉強意欲が低いことよりも、問題は自己評価だという指摘がありまして、このデータが、自分に満足していると答えたのは、アメリカの五四%、半分を超えていますね、一応過半数ですね。中国は二四%、これはちょっと思ったより低いですね。自分に対して満足していないということですね。満足しているというのは二四%しかいない。これは、見方によってはいわゆる今の自分を乗り越えていくんだ、そういう意識のあらわれかもしれませんね。日本は、自己評価で自分に満足しているのはわずか九%。これは、中国二四%、アメリカ五四%で日本が九%。

 その次の設問が、自分の人生に何が起ころうともそれは自分の責任だと考える中学生は、アメリカでは六〇%、十人に六人。中国では四七%、半分が自分のミスは自分の責任だと。日本は二五%、何と四人に一人は、つまり四人に三人はおれのせいじゃないと第三者に責任を転嫁する、こういう姿勢がこのアンケートからも明らかになっているわけであります。

 これについても一言コメントをいただきたい。

河村国務大臣 最近、自己責任というお話が随分出るようになりましたが、やはり自由には責任が伴うんだという教育が十分なされていなかったんではないかという指摘もございます。

 そういう意味で、やはり自分に確たる考え方を持たない、信念を持たない、そういうところからこういう自己満足度というものが、何か自分に自信が持てない、自分の意見がきちっと言えない、そういうところにやはりこういう自信のなさというものとしてあらわれてきているのではないか。これからの教育も、その点にも焦点を当てていく、そしてやはり日本人であることにもっと誇りを持つ、そういう教育が必要ではないか、私はそのように思います。

松原分科員 このアンケートばかり言っていてもいけないんですが、最後にもうちょっと言って、私の見解も申し上げたいと思うんですが、家庭は教育の原点だ、家族を大事にしよう、これは、「どんなことをしても親を養う」と答えた青少年の割合ですね。タイが七七%、ブラジルが七一・八%、アメリカですら六六%、アメリカですらと言ったら怒られちゃうが、六六%。フランスが五六%、イギリス五〇%、韓国四四・三%、日本がこれまた二五・四%、非常に衝撃的な数字が並んでいる。

 さらには、このデータの、結婚前に純潔は守るべきだというデータで、そうではないと回答したということですから、結婚前に純潔は守らなくていいと言ったのが、中国で三九%、アメリカは意外なんですね、やはりこれはキリスト教国なんですか、二三・五%、日本が六六・二%。

 こういう一連の数字から明らかなことは、今の教育が、世界的に見ても、我々の倫理規範から見て極めて問題を持っているということになってくるわけであります。

 私は、もちろん倫理規範そのものの問題もこれありですが、冒頭大臣がおっしゃったように、自信のなさというのが、自己評価というのも、自分を評価できないというのもありますし、自信のなさというのが一つある。親も自信がない、また教師も自信がない、そういう子供も自信がない。もう三すくみで自信がない。私は、日本がそういうふうな国になってしまっているのではないか、こういうふうに思うわけであります。

 この自信のなさの原点、私は、それは、やはり権威あるものが失われてしまっている、権威というものは実は教育において極めて重要だと思うんですが、その権威がない。また、いわゆる国という一つのバックグラウンドも、今非常に崩壊しているような気がしているわけであります。

 私は、実は、きょう、何かこうやってしゃべっているだけで三分の一ぐらい終わっちゃったんですが、幾つか思っているわけでありますが、今後の日本の教育の中で、日本の文化、伝統の継承についてということが言われております。これはもうなぜ必要かというのはこういうデータから明らかだと思いますが、具体的にどのようなことによって日本の文化、伝統を継承するおつもりか、そのことを御所見をいただきたいと思います。

河村国務大臣 松原先生おっしゃるように、これまでの教育の中で、もちろん一通りのことはやるんでしょうけれども、日本のこれまでつくり上げてきた国の歴史といいますか、高い文化を誇ってきた、そういうものをやはりきちっと教える、また、地域の伝統、文化、まずふるさとの伝統、文化、あるいはふるさとのいろいろな行事、そういうものに積極的に参加させる、そして、そういうものを敬う気持ちとか、先祖の皆さんはこういうことをやって、例えば農業とか漁業とか、そういうしきたりのときにきちっとしきたりを守りながらやってきて繁栄をしてきたんだというようなこと、やはりそういうことをきちっと理解させる、そういう教育をもっともっと強めていく必要がある。そういうことが、日本人であることの自覚とか、郷土、ふるさとや国を愛する気持ちを養っていく、また自分自身に対して誇りに思う気持ちが生まれてくる、こういうことではないかと思います。

 同時に、そういうことをやっていれば、自分の文化を理解することによって、他の地域の文化、あるいは他の国の文化、また違いのあることも理解できるようになっていくだろう、こう思って、ふるさとを誇りに思う心というものがだんだん自信につながっていく、そういうふうにつながっていかなきゃならぬと思っておりまして、そういう意味で、学校教育においてそういうことをもっと高める必要があるのではないか。

 体験学習なんかもその一つだと思いますが、そういうことをしっかり学んでいく努力、これは学校現場もしていかなきゃなりませんし、また、先生方も、そういうことに対してもっと自信を持ってきちっと教える。先生に権威がないという話もありますが、みずからもそういうことに熟知していかなきゃいかぬ、そういう点がこれまで薄かったということでありますから、具体的にそういうことにもっと力を入れていくということが、ふるさとを愛するようになり、またふるさとに生まれたことを誇りに思うようになる、そういうことにつながっていくのではないか、このように考えます。

松原分科員 かつてエドモンド・バークという西洋の社会科学者が、政治についておもしろいことを言っているわけであります。かいつまんで言うならば、政治は現在の人々が参加するのが政治だというふうに思われている、しかし、そうではないと。彼は、政治というのは共同作業である、だれが参加する共同作業かといえば、現在の人々はもちろん主体的に参加をする共同作業であると。しかし、現在の人々だけではない、過去の人間も参加をするんだ、未来の人間も参加をするんだ、そしてずっと歴史を、我々日本であれば、大和朝廷の時代からかどうかわかりませんが、この長い日本の歴史の過去の人間、そしてこれから、鉄腕アトムはまだ飛んでいませんが、鉄腕アトムが飛ぶような時代の未来の人間、そして今の人間、そういった過去、現在、未来のすべての私たち国民の共同作業が政治なんであるということをエドモンド・バーク、保守主義者でありますが、言っていたわけであります。

 私は、そういった意味において、この日本の伝統、文化、伝統の継承、文化の継承というものをきちっとやるということは、まさにそういう即物的ではない、時間軸を込めての教育論議になっていくと思うわけであります。

 そこで、大臣に御所見をお伺いしたいわけでありますが、国を愛するというふうに今言っているわけであります。この国という概念が、そういった意味から、例えば社会契約説に基づく人工的国家の国というものを想定しておられるのか、もしくは、エドモンド・バークが言うような歴史的、文化的、伝統的な、いわゆる、有機的というとちょっと言葉に語弊がありますが、共同体としての国をイメージしているのか、大臣の思いをおっしゃっていただきたいと思います。

河村国務大臣 結論から言いますと、松原先生御指摘いただいた、例に挙げていただいたエドモンド・バーク氏の、有機的という広い角度といいますか、そういうものから国を考えていくと思います。だから、まさに我々が生まれ育っているこの祖国、そしてこの国土、人々、歴史、文化、伝統、そういうものを含めて国全体を指す、そのように私は考えます。

 もちろん、国というと、いわゆる国家だけではなくて、国家と同義という場合もあるし、領土、人民、主権があればこれは国と認めるというような言い方もあるわけでありますが、それにはやはりそこに備わっている、今申し上げたような歴史とか文化、伝統なども当然入ってくる。今生まれた国はまだ歴史がないではないかと言われたらそうかもしれませんが、日本において国を愛する心といえば、日本のこれまでの歴史、伝統、文化、そういうものをひっくるめて国を愛する心の中に入っていく、そういうふうに思うわけです。

松原分科員 大臣がそういう思いでなさるということは大変に敬意を表したいと思うわけでありますが、私は、やはり社会契約説に基づく人工的国家というのを国家の前提として考える時代は過ぎてきたんじゃないかなと。これからは、むしろその中の人間のあり方を、例えばハイエクなんか経済学者でもそうですが、要するに、人間が長いこと伝統で培ってきた中に、人知を超える逆にその知恵が入っているんだ、そういったものを崩すことによって失われるものの方が、新しくできるものより多いかもしれない、よほどのことがない限りということを、まあ行き過ぎは確かにそれは窮屈になってしまうかもしれませんが。

 私は、そういった意味で、やはり日本の伝統とか文化というものをもっともっと教育で取り入れるべきだと思うんですね。それが、残念ながら、昭和二十年以来、ちょっとそういった意味では、この人工的な社会契約説的な国家的なイメージに憲法上もなってしまったような嫌いがあるわけであります。その議論は、今、時間が余りありませんからいたしません。

 私は、冒頭申し上げたように、日本の多くの子供たちが自信を持っていない、何で自信がないんだ、こういうふうな話になる。しばしば例に挙げるんですが、プラトンというギリシャの哲学者は「国家論」を書いた。あの中で、国家は大文字の個人であると言った。国家に自信がないから個人に自信がない、個人に自信がないから国家に自信がない、これは卵と鶏ではないかという話があるんですが、私は、そういった意味において、実に、そこにいる一人一人が自信を持たない、持てないというのは、日本の国がやはり自信を持っていないからではないかというふうに思っているわけであります。

 文部大臣にとっては所管外でなかなかお答えしづらいかもしれないわけでありますが、例えば、今、尖閣諸島に中国人の不法侵入者が上陸をする、当初は、日本は毅然としてこれを書類送検すると言った。しかしながら、中国大使館を含め、中国にある日本大使館の前で日本の旗が燃やされたり、中国政府がやんややんやと抗議を言ってきて、尖閣周辺は中国のものであるぐらいの話で言ってきたときに、それに押されるようにして、書類送検すると言っていたのが、聞くところによると、書類送検の二時間前、正式答弁では何か沖縄県警本部長の判断だというけれども、そんなことはだれも信じませんよ、それが強制送還される。これを見たら、日本というのは、中国に言われたら、はい、わかりました、イエス・サーと言ってしまうのかなと。

 例えば、その他にもあるわけでありまして、これはいい悪いということは言いません。私自身は八月十五日に靖国参拝しておりますが、かつて、小泉さんが十五日に参拝すると言って、やりが降っても行くと言ったけれども、近隣諸国のさまざまな反発の中で、十三日に行ってしまった。それだったら、初めから行くなんて言わなきゃいいわけですよ。最高指導者が行くと言って、言われて行かないというのは、これは主権がどこにあるんだと。

 こういった外交が、日本の多くの教育者やまた子供たちに対して極めて敏感に、それは直接的ではなくてもわかるんですよ、ああ、我々の国は自信がないんだなと。こういうふうな影響が、実はさまざまなアンケートに極めて厳しくはね返ってきているんではないか。日本の政治の、特に外交というのは人格がまさに表出をされる、モーゲンソーも言っているように。こういう中において、私は、日本の外交が毅然としていないということが、戦後一貫して毅然としていないと言うと語弊がありますが、極めてここのところ、尖閣の問題でもそうですが、この辺がマイナス影響を与えているんではないかと思っておるわけです。

 これは所管外なのかもしれませんが、大臣、答弁できる範囲で御所見をお伺いします。

河村国務大臣 所管外ではありますけれども、同じ国会議員として、こういう問題というのは我々絶えず考えておかなきゃいけない問題だと思います。

 政府としては、国益、それから国の許容のできる範囲、絶えずそういうことを考えて政策をとっておるというふうに思うわけでありますけれども、これは判断、尖閣列島の問題、これはやはり毅然とした態度をとりませんと、ついには鳥島まで、あれは島じゃないなどと言い出しておりますから、一つ譲ると皆ということになります。どこの国もやはり領土問題等々については非常にシビアできちっとしていますから、これは日本としても毅然とした姿勢が私はやはり必要だというふうに思います。

松原分科員 要するに、それは極めて教育的な意味があるということを、内閣の一員として、内閣の中で、それは結局、教育現場において子供がだめになるという議論は多少あります。しかし、教育の現場において子供がだめになるんじゃない、親の姿勢においてだめになる、もちろん、それぞれそれは要素としてある。しかし、一番重要なのは、日本の国の外交が余りにも自信のない外交を展開している、それは、どういうふうに議論をしようともみんなわかるんですよ、戦後負けてから一貫して自信がないのかなと。それが子供の教育にどれほどマイナスであるか。だからこそ、外交に関しては、イギリスにしてもアメリカにしても、どこの国でも極めて厳しく、毅然として、特に領土問題なんかは一歩も譲らないという姿勢を示しているわけであります。

 我が国は、北方四島を含め、竹島も含め、何か遺憾であるという抗議は表明するけれども、それで終わってしまう。これでは、私は、実は外交の教育における効果というのは極めて大きいということを、文部科学大臣は教育現場の担当でありますので、外務大臣とよくその辺は相談していただきたいと思うわけでありますが、これは強く申し上げたいわけであります。

 そういう中で、実に、今の日本の教育の中で、特に教科書問題というのは常に議論になってきているわけであります。この教科書で議論になるので、これは政府参考人の方の答弁でも結構なんですが、諸外国で、日本の近隣諸国条項のような条項を持っている国というのはあるんでしょうか。通告していませんから、答えられなければ答えられないでいいんですが、もし答えられない場合は、この近隣諸国条項について、ここでもう一回レビューしていただければ結構です。

近藤政府参考人 諸外国のこういった近隣諸国条項に相当するようなものの存在について、現在、事前にちょっと承知をいたしておりませんので、そこは答弁を差し控えさせていただきますが、御案内のとおり、教科書検定におきましては、昭和五十七年に、我が国と近隣アジア諸国との相互理解、相互協調を一層進める上で教科書の記述がより適切なものになるよう、近隣アジア諸国との国際理解、国際協調の見地に配慮する旨の新たな検定基準を設けた、これが私どもの教科書検定基準における近隣諸国条項の問題でございます。

松原分科員 私は、国を愛する、もしくは日本の伝統、文化を継承する、日本の伝統、文化が価値があるからこそ継承するわけであって、我々は日本の伝統、文化に誇りを感ずるから継承するんであって、その誇りと価値、そういったものは、要するに、やはりみずからの誇りを感ずるような教育の中において初めてそれぞれの子供は体得するわけだと思うんですね。

 例えば、日本のまさに近隣諸国と言われる国々の中においては、日本のことについて極めてマイナスに教育をしているところもあるというふうにも言われております。本当はそういった他の近隣諸国の教科書についてはチェックをするべきだと私は思うんです。

 実は、私の兄が北京大学に二年間留学をしていた。こっちの専修大学の教授をやっていまして、そのときに向こうに行って、子供が、女の子二人いたんですが、北京の小学校に通っているわけです。石を投げられると、何で石を投げられたんだ、こういう話であります。

 それはやはり、簡単に言えば、教科書の中身に問題があるわけであります。それだけの、いわゆる向こうの無辜の子供たちが勉強してきて、日本に対しての反日的な感情を持つような教科書が、少なくとも今からあれは七、八年前でありますが、十分に行われて、今でも恐らくそういったものがあるのではないかという危惧を私は持っております。今度、ぜひ文部科学省の皆さんもこれは勉強してほしいわけでありますが、そういったものに対して、文部科学省としては何か注文を出したりすることは今までありましたか。なかったと思うんですが、もしわかれば答弁をお願いします。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 特に注文をつけたということはないものと承知をいたしております。

松原分科員 従来から、そういう諸外国の教科書について、文部科学省としてそういったものをチェックするとか、そういうことはしておられますか。

近藤政府参考人 私どもが所管をいたしております教科書研究センター、こういう民間の機関があるわけでございますが、そこにおきまして諸外国の教科書を研究している、こういうことはございます。

松原分科員 日本に対して極めて批判的だ、反日感情を持つような内容を記述している教科書があるとかないとかという報告を受けたことはありますか。

近藤政府参考人 何をもって批判的と言うかどうかというのは、なかなか難しい問題があるんだろうと思っております。いずれにいたしましても、私ども、その教科書研究センターの研究内容も一度またよく勉強してみたいと思います。

松原分科員 そういう中で、日本の教科書については、彼らはウの目タカの目ですさまじいチェックをしてくるわけであります。人によっては、それは内政干渉という議論もあるわけでありますが、私は、近隣諸国条項というのができた経緯は、村山さんのときか何かだというふうに聞いておりますが、これがあるということは、日本の教育が誇りを持たせる上ではむしろ、言ってみればちょっとひっかかるものがあるんじゃないかと思うんですが、大臣、これもなかなか答弁しづらいかもしれませんが、御所見をお伺いいたします。

河村国務大臣 検定制度の中で、近隣諸国条項ということがありますから、そういうことに配慮しながら検定を適切にやってきた、こう思うわけでありまして、これについて、検定するたびに外国から言われるというのも、これは決して気持ちのいいものじゃないわけであります。しかし、日本が平和外交をやっていくという基本的な概念の中で、何もひざを屈することはないのでありますが、事実は事実としてきちっと教えていくという姿勢さえ間違えなければ、そう言われたからといってばたばた、びくびくすることはないのではないか、もっと検定にも自信を持ってやったらいい、このように私は思っております。

松原分科員 私は、やはりこういう条項があることによって、日本の教育が結果として自信を持ってこれだというふうになかなか現実はいかない要素があるんじゃないかと思うんですよね。結局、先ほど言ったアンケート調査の、今の子供たちの自信のなさやさまざまな問題点というのは、それは小泉さんの外交も責任があると思いますよ。

 しかし、それだけではなくて、こういった近隣諸国条項のようなものが、結果として、いわゆる副作用ではないけれども、こういう自信のなさにつながっているんではないか、こういうふうに思うわけであって、そういった意味では、ぜひともこの近隣諸国条項については、どういうふうな関係で、これは条約ではないわけで、日本が一方的にみずから自主規制しているんじゃないかと私は認識をしているわけでありますが、こういったものは、やはりこの際どこかできちっと、毅然として、それはもう当然言わなくてもわかっていることなんだ、書かなくてもわかっていることなんだということで、むしろ教育の現場からは少し考え直した方がいいんじゃないか、こういうふうに思うんですが、大臣、御所見はいかがでしょうか。

河村国務大臣 松原先生おっしゃること、私も理解をいたしますが、ただ、日本は特に、これまで欧米に向かって追いつけ追い越せということで、その目標をある程度達してきた、もう一回足の軸をアジアに置かなきゃいかぬ、そして一番近い国であります中国と韓国との関係を、どういうふうな距離を保って、どういう友好関係をつくっていくか、これは日本の未来にとって大きな課題でありますから、そういうこともやはり配慮をしながらやらなきゃいかぬ。

 ただ、歴史というのは、本当は、中国と日本にしても、日本と韓国にしても、第二次世界大戦だけが歴史じゃないんですね。本当はずっと長い、このときこうだった、このときああだったということがあるべきでしょうけれども、これは人間のやることでありますから、目の先の問題にどうしてもウエートがかかってくる。そのときにこれをどう考えていくかという問題である、私はそう思うわけであります。

 こう言うとそんな弱腰でどうするかとしかられるのでありますが、明治維新を考えても、私は長州、萩なんですが、会津若松、会津藩との話になると、会津は許さないと言うんですね、まだ長州を。これは市長選挙でいつも問題になるんですから。そのぐらい、やはり人間の心というのは、やった方、やられた方という意識がありますから、やはりそういう配慮を持ちながらも、そのバランスをどうとるかということは結構、私は教育においても大事なことだろうと思っておりますから、近隣諸国条項があるからひざを屈することは何もない、事実だけをきちっと伝えて、こういうことは悪かった、しかしこれはいいことだということをちゃんとしていかなきゃ、それが教育だというふうに私は思っております。

松原分科員 それを言えば、同じく、中国が日本と同じ近隣諸国条項を持って我々に配慮する、これから、将来考えれば、お互いに配慮し合うんだったら、韓国も中国も近隣諸国条項を持って、我々も中国の教科書で、明らかにこれはおかしい、事実と違うということは物を申す、そういう関係ならいいんですよ。一方的に、日本だけ近隣諸国条項を持って言われっ放しでは、これでは子供たちも、ああ、日本というのはそういう国なんだとなってしまうんで、近隣諸国条項をもしどうしてもこれからもやっていくというんだったら、中国や韓国にも、あなた方も同じ近隣諸国条項をつくりなさいというぐらいのことを言っていただきたいというふうに私は思うわけであります。

 実は、きょうは、一九四四年のイギリスの教育基本法と一九八八年のイギリス教育改革法、これはサッチャーが変えた、物すごく重要な、これで子供たちの犯罪が二十万人から年間十万人に減って、教育もぐっと上がったという、これをちょっと実は取り上げたかったわけでありますが、時間の都合で、また次の機会に。

 これは、文部科学省におかれては、大臣も御存じだと思いますが、サッチャーのこの一九八八年の教育改革法によって、イギリスの教育は現実に、今言ったように、非行も半分になった、その他も含めて大きく変わったということを、ぜひとも、やはり、日本の教育基本法が今議論されている中で、このイギリスをちょっとひとつ典故として用いていただきたい。もう詳しい内容は河村大臣御存じだと思いますので、そのことを一言だけ御所見をいただいて、私の質問を終わります。

河村国務大臣 サッチャーさんによってイギリスは自信を取り戻した、こう言われております。大いに見習う点は見習い、日本は日本としての毅然とした教育といいますか、そういうものを打ち立てていく、それはやはり大事なことだ、そういうふうに思います。

松原分科員 終わります。

平井主査代理 これにて松原仁君の質疑は終了いたしました。

    〔平井主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

今野主査 これより内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。石破防衛庁長官。

石破国務大臣 平成十四年度における防衛庁関係歳出の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、(組織)防衛本庁の経費につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆三千八百三億五千七百万円余でありまして、これに改革加速プログラムの一環として行う医療器材、通信機器その他器材の購入等に必要な経費のための予算補正追加額十一億九千七百万円余、平成十四年度総合防災訓練のため、内閣本府から移しかえを受けた額五百万円余、高空における放射能塵の調査研究のため、文部科学省所管文部科学本省から移しかえを受けた額二千万円余、南極地域観測事業のため、文部科学省所管文部科学本省から移しかえを受けた額二十五億七千三百万円余、前年度からの繰越額七十六億四千百万円余、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与するため自衛隊が実施する協力支援活動等に必要な経費として予備費を使用した額百六十六億二千二百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額四百五十三億千二百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆三千六百三十一億五百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆三千三百七十億九千三百万円余、翌年度へ繰り越した額は百二十九億六千七百万円余でありまして、差し引き不用額は百三十億四千四百万円余であります。

 次に、(組織)防衛施設庁の経費につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は五千七百五十三億三千四百万円余、うちSACO関係経費百六十五億二千百万円余でありまして、これにSACOの最終報告に盛り込まれた措置を的確かつ迅速に実施するために必要となる基地周辺対策及び提供施設の移設整備に必要な経費の予算補正追加額百二十九億六千三百万円余、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言に基づき、沖縄県の米軍基地所在市町村が実施する地域経済活性化事業等に要する経費として内閣本府から移しかえを受けた額百十億千六百万円余、沖縄県の均衡ある発展を図る必要があることにかんがみ、北部地域の振興事業の着実な推進に要する経費として内閣本府から移しかえを受けた額五億六千七百万円余、前年度からの繰越額四百九十八億四千百万円余、うちSACO関係経費百二十九億千七百万円余を加え、既定予算の不用等による予算補正修正減少額四十一億五千三百万円余、うちSACO関係経費六千万円余、防衛施設周辺の障害防止事業等に要する経費として移しかえをした額、農林水産省所管農林水産本省へ五億二千五百万円余、国土交通省所管国土交通本省へ十四億八百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千四百三十六億三千六百万円余、うちSACO関係経費四百二十三億四千百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は五千九百四十四億千八百万円余、うちSACO関係経費二百六十一億五千六百万円余、翌年度へ繰り越した額は四百六十億九千八百万円余、うちSACO関係経費百四十九億二百万円余でありまして、差し引き不用額は三十一億千八百万円余、うちSACO関係経費十二億八千二百万円余であります。

 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してございます資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを賜りまして御説明を省略させていただきたいと存じます。よろしく御審議賜りますようお願いを申し上げます。

今野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。

増田会計検査院当局者 平成十四年度防衛庁の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一号は、職員の不正行為による損害が生じたもので、自衛隊仙台病院の職員が、医薬品等の出納保管事務に従事中、倉庫に保管中の医薬品を領得したものであります。

 同二号は、防衛施設庁仙台防衛施設局におきまして飛行場周辺に所在する建物等に係る移転補償金の支払いが訓令に定める手続に違背し、適正を欠いていたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、データの入力等に使用する入出力装置の借り上げに関するものであります。この入出力装置は、各自衛隊等で計算工数データの入力作業等を行うために借り上げたものであります。

 防衛庁では、十二年度から、原価計算方式により計算価格を算定し予定価格を定めて締結する製造請負契約等について、各契約の原価計算で用いた計算工数を集計するなどして計算工数の適正さをマクロ的にチェックする工数集計システムの構築を進めております。このシステム構築のため、契約本部が行う中央調達とは別に、各自衛隊及び技術研究本部が行う地方調達について新たに計算工数データの集計と蓄積が必要となることから、各自衛隊等に同データの入出力装置としてノート型のパソコン四十六台を借り上げることとしたものであります。

 しかし、本件システムの入出力装置は、一般に普及している標準的な仕様のものであり、性能的に各自衛隊等が使用している既存のパソコンと同程度のものであります。

 したがいまして、計算工数データの入力作業等は既存のパソコンで行うことが可能であり、本件入出力装置を借り上げる必要はないと認められましたので、当局の見解をただしましたところ、防衛庁では、十五年十月に既存のパソコンを活用して計算工数データの入力作業等を行うこととし、入出力装置等の借り上げ契約を変更して、同月末をもって入出力装置の借り上げを廃止する処置を講じたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

今野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。石破防衛庁長官。

石破国務大臣 平成十四年度決算検査報告に掲記されております事項について、防衛庁が講じた措置を御説明申し上げます。

 不当事項として指摘を受けましたものにつきましては、今後、このようなことのないよう綱紀粛正のより一層の徹底を図る等再発防止に万全を期する所存であります。

 データの入力等に当たり、入出力装置の借り上げにかえて既存のパソコンを活用することにつきましては、既存のパソコンを活用して計算工数データの入力作業等を行うこととし、入出力装置等の借り上げ契約を変更して、関連ソフトを除き借り上げを廃止する処置を講じたところであります。

 以上、これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層努力する所存であります。

今野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今野主査 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

今野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。本多平直君。

本多分科員 民主党の本多平直でございます。

 四月に繰り上げで当選をさせていただきまして初めての質問になりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 イラクに自衛隊が派遣されておるわけでございますけれども、最近、サマワでオランダ兵が殺されるという事件、そしてまた、近々には銃撃戦があったというニュースも聞いております。これらの事案について、防衛庁としてどう把握されているのか、長官としての現状の把握をお教えいただければと思います。

石破国務大臣 御指摘のように、サマワにおきまして今先生がおっしゃいましたようなことが起こっておりますことは、私ども承知をいたしておるところでございます。

 どのように認識をするかということでございますが、サマワ全体の治安が極度に悪化をしたとか、そのような認識は現在有しておるところではございません。私どもといたしましては、今後とも、情勢を注視していかねばならない、そしてまた、活動並びに安全の確保については細心の注意を払い、万全を期していかなければいけないというふうに考えておりますが、現在起こっておりますことが、サマワの治安が悪化をしたとか、そのようなことだという認識はいたしておりません。

 いずれにいたしましても、適切な情報の把握に努め、今後とも努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。

本多分科員 ただいま長官の御答弁、前半は極度に悪化したとは思っていない、後半は悪化したとは思っていない、若干違うんですけれども、私たち一般から見ますと、新聞報道によりますと、治安のために行っているオランダ兵が殺される、もしくは銃撃戦は一時間だと新聞報道では書いてあったんですが、その辺の事実もおわかりであれば教えていただきたいんです。一時間にわたって銃撃戦がある状況は、極度とまではおっしゃらなくても結構ですけれども、治安が悪化しているというところだけはしっかりと確認をしたいと思うんです。

石破国務大臣 それは、先生、私ども、例えばイラク警察の発表でありますとか、いろいろな情報に基づいて、もちろん現地からの報告もございます。それが一時間なのか、四十分なのか、一時間十分なのか、これは本当に正式に見てはかったわけではございませんので、きちんと何時間ということは申し上げられる状況にはございません。

 ただ、先生が御指摘になりましたように、治安を維持しているオランダ軍というものと人道復興支援に当たっている自衛隊というのは、遭遇する場面というのが違うのだということはまず認識をしなければいけないと思っています。

 そして、例えば、これはきちんと確認をしたわけではございません、あくまで報道によればというお話でございますが、サドル・グループが武器を持って立てこもった、あるいはそこに大勢の人が集結をした、それを放置するということがあれば、さらにさらにサマワの治安は悪化をするということも想定をされるわけです。それがそうならないようにオランダ軍がきちんとした対応を彼らの任務に基づき行ったということを、それをもってして治安がさらに悪くなったと言うべきか、それとも、そういうことになったので今後そのような活動というものはより下火になるというふうに評価をすべきなのか、今の時点におきまして、先生御指摘のように、最初に極度に悪化したと、その後悪化したというふうに言いました。それは別に意図的に使い分けたわけではございません。

 今後とも情勢を細心な注意を持って見ていかねばならないということでございまして、今の時点で軽々な判断をするには、私はまだ十分な情報もないし、そのような立場にもおらないということだと思っております。

本多分科員 なぜそこにこだわるのかよくわからないんですが、治安の悪化というのは、例えば活動の中止の条件でもございませんし、一般論として普通に考えて、今まで割と平穏に、あのような事件がなかったところにオランダ兵が殺される、または単発的に銃が鳴ったという感じではなく銃撃戦のようなものがあったということは、私は治安が悪化したと考えておりますが、長官からそのような御答弁をいただけないという、私はその認識自体がやや甘いのではないかということを御指摘させていただきたいと思います。

 その次に伺いたいと思うんですけれども、またこれも新聞の報道なので、確認のためにお伺いをしたいと思います。

 内閣法制局の方から、この復興支援法では、戦闘地域かどうかということ、大分議論を民主党もさせていただきましたけれども、その戦闘かどうかという定義のところに、その主体は国または国に準じる者というふうなことを御答弁いただいて今まで来ているんですけれども、現在イラクで活発に活動しております、特にサマワでも今回の銃撃戦の主体になったのは、その末端と言われていますけれども、サドル師派というグループ、これは、これも新聞報道で申しわけないんですが、十万人にわたる民兵組織があるという組織だと聞いておりますけれども、この者たちについて内閣法制局さんは国に準じる者ではないかという議論をされた、それが政府内で議論を呼んでいるという報道がありました。この事実はどうでしょう。法制局じゃなくて防衛庁長官、防衛庁から伺いたいんです。

石破国務大臣 そのような報道は承知をいたしておりますが、福田当時の官房長官に対しまして法制局からそのような報告をされたということは全くないというふうに存じておりますし、したがいまして、当然のことでございますが、私に対しましても内閣法制局からそのような考え方が伝えられたということは全くないわけでございます。

本多分科員 了解しました。

 それでは、法制局さんも、そういうことでよろしいかどうか、確認をお願いします。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 全くそういう報道は事実ではございません。私どもは、法律の審査、解釈を職務にしておるわけでございますけれども、本件は全くイラク特別措置法の運用の問題でございまして、私どもはイラク国内でどういうことが起こっているか、そういう事実を知る立場にございません。そういう意味でも、この報道は誤りだというふうに申し上げたいと思います。

本多分科員 その事実関係は、それはそれということでいいんですけれども、そうだとすると、改めてちょっと伺いたいんです。

 このサドル師派というようなグループ、十万人という数が、それは正確に把握できるかどうかは別としまして、軍事的な問題での第一人者である石破長官は、これは国に準じる者かどうかというのは、お考えはどうでしょう。

石破国務大臣 それは従来答弁を申し上げてまいりましたとおり、かくなるものは国であり、かくなるものは国に準ずる組織でありということについて、確定的にこうだというような客観的な物差しが存在をしておるわけではございません。それが国に準ずる組織であるかどうかというときには、その組織性であるとか継続性であるとか計画性であるとか国際性であるとか、そのようなものを総合的に判断をすることになるのだというふうに答弁をいたしております。

 これは私自身が思っていることでございますが、仮に、国というイメージをするとすれば、やはり領土というものがあるのだろう、そしてまた統治機構というものがあるのだろう、少なくともそれに従う国民というものがあるのだろう。例えて言えば、国ということをイメージするときにそういう要件が普通頭に浮かぶわけでございます。その場合に、それは国に準ずる組織というような見方をする一つの物差しにはなり得るであろうと思っています。それだけに限るわけではございません。

 さて、では、このサドル・グループなるものはいかなるものかということになりますと、さてどうでしょうねということになるわけでございまして、これは憲法によって禁じられておりますのは、国際紛争を解決する手段として、武力の威嚇、武力の行使を行ってはならないということになっておるわけでございます。これが九条でございます。

 そうしますと、こういう規定はすべてそれから出ているものでございまして、さて、このサドル・グループなるものはそういうものに当たるのか、憲法というものに抵触をするようなそういう主体になるのかと言われれば、現状におきまして、そのようなことは全く考えられないと思っております。

本多分科員 わかりました。

 そうしますと、国というのはもちろんわかるんですけれども、この議論で、イラク復興支援法の議論の中で、戦闘の定義のところでこの議論になっているわけですが、長官が国に準じる者というふうにおっしゃられたのは、私はちょっとイメージがわかないんですよ。

 つまり、例えば台湾の問題なんかを話すときに、正式に承認していない状態で、国に準じる者なのか、台湾がそういうのに当たるのか、例えばパレスチナのような状態を言うのかというのは何となくわかるんですが、今回の話にそれは出てこないような気がするんですが、いかがですか。

石破国務大臣 それは、先生も議員になられる前、いろいろな政策立案に携わっていらっしゃいましたので、あるいは私も御説明する機会があったかもしれませんけれども、例えて申し上げれば、フセインの残党がお家再興のような形で集まって、かつての内務大臣とか、かつての石油大臣とか、別にそういうものに限るわけではありませんが、そういう人たちが集まってお家再興だ、例えて言いますと、ポル・ポト派みたいなものがそれに当たるのかもしれません。私はポル・ポト派が国に準ずる者だと言っているわけではありませんが、イメージをするとするならばですね。

 つまり、それが統治機構のようなものを有し、そしてまたそれに従う国民というのか民衆というのか、そういうものを有し、そして活動が計画的であり、組織的であり、継続性を有し、なおかつ国際性を有している、すなわちそういうグループに対して、ほかのどこでもいいのですが、国際的な支援、バックアップのようなものがある、そういう場合には国に準ずるということも判断としてはあり得る。別にそう断定するわけではありません。ただ、イラク特措法のときに、どういうものだという御指摘をいただきまして、例えて言えばということで今のような御説明をしたと思っております。

本多分科員 なるほど、フセイン残党のお家復興とかポル・ポト派というイメージでわかったんですが、私も確かにサドル師派というものについてまだ十分な知識を得ているわけじゃございませんので、今後また、私は今の段階では長官の御答弁、そういうふうに受けとめますけれども、我が党としても検討して、今までこの答弁でずっと、いただきながら、戦闘地域の議論をしてきたわけですから、本当にこれでいいのかしっかりと議論させていただいて、また場合によっては追及をさせていただきたいと思っております。

 さて、もう一つ、確認事項ですが、これもずっと、今の御答弁で当然わかっているとおりなんですが、念のため、サマワ周辺、現状でも戦闘地域ではないということでよろしいですね。

石破国務大臣 この法律の仕組みは、これは何度も先生方から御質問をいただいて、私の答弁が多分十分ではないので御理解をいただけないのかと思っておりますが、イラクというものを、はいここは戦闘地域でございます、はいここは非戦闘地域でございますというふうに二つに分けてどうなんだという評価をすることがこの法律によって求められておるわけではございません。

 この法律によって求められているものは、イラクにおいて自衛隊が活動する地域は非戦闘地域であるということが求められておるわけでございまして、先生おっしゃいますように、仮に非戦闘地域でないということになりますれば、これは当然、法律に沿いました対応をするということになります。

 現時点においてそのような評価はいたしておりません。

本多分科員 わかりました。

 私も、法律の議論に入っていくとそういう解釈になるんだろうなと思いますので、その解釈にならざるを得ないのかなと、若干疑問は持ちながらも、そう理解をしておこうと思います。

 そこで、次は、ちょっときちんと通告したかどうか定かではないんですが、石破長官に直接これは伺っても大丈夫な質問だと思いますので、軍事組織の責任者としての一般論として伺いたいんです。

 私たち民主党はそもそも派遣に反対だったわけですが、だから、撤退ということに関してはまたタイミング論とかいろいろありますが、私はもともと派遣にも強く反対だった方ですし、そういう論理からくると、いろいろな状況を見て、できるだけ早く、方法を見て、機を見て撤退をすべきだという、それは野党でもありますし、この法案にも反対をした立場ですから、そうではあります。

 ただ、このことを全くいいことだと思って推進をされているお立場からも、状況においては活動の中止、これは法律にも定められておりますし、場合によっては、大きな変更によっては撤退ということも選択肢にはあると思うんですが、それは当然そういうことでよろしいんでしょうね。

石破国務大臣 これは法律をお読みいただければおわかりになりますとおり、いろいろな対応がございます。そこには一時休止をするというものもございます、中断をするというものもございます。先生が先ほど御指摘になりましたように、これは非戦闘地域という要件を満たさないということになりますれば、実施区域の変更等々を行わなければなりません。それはいろいろな対応というものはございます。

 そして、これは非常に一番ハッピーな事例でございますけれども、自衛隊が行かなくたって、もう水も十分供給されるし、学校も直ったし、病院も十分さということになれば、これはめでたく撤退ということに相なるわけでございます。

 そのほかの場合に、いろいろなケースが考えられるわけでございますけれども、それをだれが決めるかということになりますと、これはもう十年前のPKO法の議論のときもあったのですが、これは下がってよろしいでしょうかみたいなことを東京に電話をかけていいとか悪いとか、そのようなことを防衛庁長官が判断するなんて、そんな話にはならないわけでございます。

 現状はどうなのかということは、当然指揮官が見て、法律にのっとった措置を行うことになるわけでございますが、実施区域の変更等々の措置というのは防衛庁長官が行うということになっております。あるいは先生のお言葉をかりれば、撤収、撤収といっても、撤収という言葉はこの法律に書いてあるわけではございません。どういう形になるか、それはいろいろな形がございましょう。基本計画をどうするとか、いろいろな形がございますが、その判断というものは政府全体として行うことになるわけでございます。

本多分科員 わかりました。

 もう少し一般論として伺いたいんですが、私も戦争というものの、これは戦争じゃないのはわかっているんですが、軍事組織的なもの、自衛隊を出すときの決断も非常に重い決断があったと思うんですね。特に長官は直接自衛官の皆さんの命を守る立場におられるので、それは本当に重要な判断だったと思うんですが、一般的には、あそこでいいことをしているという皆さんの立場からすると、それは多少危険であるとか日本の法律がどうであるとか、いろいろな事情があるにしろ、引くという判断もまたこれは国際的な立場、それからアメリカの視線、それからイラクの方、せっかく期待していたイラクの皆さんの声、そういうことから非常に重い判断になるということを、一般論として、私と共感いただけるかどうか。

石破国務大臣 それは一〇〇%共感をいたします。

 それはもう、おっしゃいますように、例えば五月の六日に私どもの宿営地に自衛隊支援のデモというのがやってきた。要するに、日章旗を振って、正直な日本人の皆さん方とともに、サマワの再建のために我々一緒に働くぞというデモがやってきた。そして、サマワの人々の期待というものも非常に高い。ですけれども、これはどういうことかといいますと、自衛隊はもっと病院を直してほしい、もっと学校を直してほしい、もっと道路を直してほしい、ところが、迫撃砲を撃つとか、人質をとるとか、手投げ弾でオランダ兵を傷つけるとか、そういう者がいるので自衛隊はきちんと活動ができないんじゃないか、こういうような、不逞のやからと仮に申し上げるとするならば、それはサマワ市民の敵であり、ムサンナ県民の敵なのだというようなことを彼らは私どもに言ってくるわけでございます。その期待は裏切りたくない。

 そして、イラクに自衛隊を出しました幾つかの理由の中に、日米同盟の信頼性、もちろんイラクに出すのに日米安保条約に基づいて出しているわけではございませんが、日米安全保障体制の信頼性向上ということもございます。

 したがって、そこは非常に悩ましい判断だという意識は先生と共感をするものでございます。

 しかしながら、他方、法律の要件というものを具備しないということになりますならば、これは、私ども法治国家で、日本はこのイラク特措法に基づいて自衛隊をイラクに送っております以上、それは当然その法律に従った判断をなさなければ、これは法治国家のていをなさないというふうに思っております。

本多分科員 ありがとうございます。

 今私が申し上げたのは、出す判断も難しいけれども、例えば、引くということがもしあれば、それは難しいということの意味は、一般的には世論とか、例えば自民党の議員さんの立場からすると、そのままにしておく方が判断はしなくていいわけですよね。だから、その最終的な厳しい判断は、ぜひ長官がさまざまな状況を常に持ちながらしていただかないといけないという思いで申し上げていますので、そのお立場だということを理解していただきたいという意味でございますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 ここからは若干、初めての質問で、揚げ足取りみたいなことをしたくないんですが、私、この後段でしようと思っていたことが今長官のお言葉で出てきたので、申し上げたいと思います。

 結局、私たちの国が、例えば日本本体もテロに遭うかもしれない。だから、この間の人質事件のようなことも現に起こった。そしてまた、自衛隊の方々も命の危険をさらしてやっているのがこの復興支援活動なわけです。当然、イラクのサマワの方々がどう思っているかということも、普通、日本がやっているODAもいろいろあります。せっかくお金をかけてやったのに評価されていないとか、そんな話はよくあるんですが、それ以上に、日本国として、本当に、東京でテロが起こるというような話さえあるようなことを、かけてやっていることなんですから、やはりサマワの皆さんにはきちっと感謝をしていただかなきゃいけないと私は思っております。

 ところが、先日の夜のTBSのニュース報道なんかを見ますと、非常に批判的な意見も厳しく出ていたんですね。期待していたのと違う、電力なんかをもっと期待していたんだとか、そういうようないろいろ厳しい意見。当然現地にはいろんな声があるでしょうし、報道の仕方というのも、長官もいろいろ御存じのとおり、場合によっては、あの番組がそうだというわけでは決してございませんけれども、いろいろ取り上げ方でというのもあると思うんです。

 ただ、私、長官があえて自衛隊支援のデモが起こったんだよとおっしゃっているので、最近この一連の流れで、そこでちょっとあえて申し上げたいんですが、例えば長官なんか非常に多分お怒りになっていると思うんですけれども、いろいろ、日本から自衛官の方が外国へ行くときとか、船で邪魔するデモとか来るじゃないですか。ああいうのというのは、ではその地域の多数派かというと、私の立場からいうと、残念ながら決して多数派じゃなかったりするんですね。決して、デモがあったからその地域ではそういう歓迎があるとか、みんなが自衛隊のどこか船が出ていくことに、入港に反対しているとか、そういうわけじゃない例は、長官は逆の立場から山ほど御存じなのではないかと思っているんですね。

 ですから、イラクの方がどう思っているかというのは、これは外務省の所管になってくるのかもしれませんが、長官、その論拠としてあのデモだけを言われても、テレビ番組にもいろいろあるけれども、デモと言われてもなという感想を持つんですが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 済みません、私はデモをもってしてすべてのサマワ市民がなどということを申し上げているわけではありません。

 これは、世論調査もいろいろありますから、これがいいとか悪いとか、だれもわからないことですが、例えば四月に、向こうで、アラビア語の新聞アル・サマワというのがあって、サマワのローカル紙かと思いますが、自衛隊の駐留を望むということに対して、望むよとおっしゃった方は、アンケートに答えられた方の中で四九%であったということになります。ノーアンサーとかそういう方がどれぐらいいらっしゃったか存じません。

 ただ、先生、私、この間佐藤一佐が途中で一回帰国をいたしました。そのときも、まさしく先生のおっしゃるのと同じことを私は聞いたんです。本当はどうなんだということを聞きました、やはり実際に行っている自衛官から聞かなきゃわかりませんから。そのときに、サマワ市民の自衛隊に対する期待は、それは当初ほどではないが、でも依然として高い。

 それはなぜなのかといえば、やはり行く前から、私どもは、イラクの文化、イラクの宗教、イラクの民族、それに対する尊敬の念を持とうと。全部なんかとてもわかりませんが、例えて言えば、いろいろな礼儀についてもきちんと勉強していこう、日常会話の簡単なものはできるようになろう、決して見下すような態度をとることはやめようということで、隊長、郡長以下一人一人に至るまでその気持ちでやっております。道路を直しますときも、学校を直しますときも、あるいは水を給水いたしますときも、彼らのニーズにこれが沿ったことなのか、不公平感が生じないのかということには本当に細心の注意を払っております。

 私は、日本に対する期待が高いというのは決して偶然でもなく、日本はお金持ちだから、来ればいっぱいお金が降ってくるとか、そのことばかりだとは思いません。やはりきちんとした配慮、違う文明、違う宗教、違う民族に対する尊敬、そしてまた何が彼らの心に響くものなのかということを今後とも努力していくことが安全確保につながるのだというふうに考えておる次第であります。

本多分科員 今、現地の自衛官のお話をいただいたので、改めて申し上げておきたいんですけれども、私は、今回の政府の決定ということに関してはいろいろ意見が当然あるんですけれども、現場で、行った以上任務をきちっと遂行しようという思いでやっていらっしゃるその中で、今長官がおっしゃったような、イラクの方との交流をどうしようとか、文化をどう尊重していこうという工夫をされている自衛官の皆さんのさまざまな努力は本当に多としたいと思いますし、当然自衛官の皆さんの無事を願っている立場は長官と共通だと思っていることだけは御理解をください。

 ただし、やはり、私、これもまたしっかり軍隊組織論みたいなものというのは一回勉強したいと思っているんですが、長官は御存じかもしれませんが、先ほど言ったように、押すより引くのが難しいなどとよく言われるのと同時に、トップに情報が上がらない、それがいろんな判断の間違いになるということはあると思うんですね。

 もちろん、現場の方が一時帰国されて長官が御意見を聞くというのは大事な情報源ですが、それだけだと長官の判断が、いろんな立場があるわけですから、部下というのは。ですから、もちろんそれだけで判断をされているとは思いませんけれども、例えばこの間私が見たTBSのニュース番組も、現地にまで行っているのは何人かしかジャーナリストがいない方が取材を、まあ彼も、きちっとした警護がなく今のイラクで活動するということは、一応きっと命がけでしているんだと思うんです。彼の情報なんかは本当に厳しいの一辺倒だったので、私も本当にそうかなと。あのテレビ、ぜひ長官に見ておいていただけるように役所の方にお願いしていたんですが、見られて、どうでしょうか。

石破国務大臣 それは、これはどっちの立場に立ってもそうなんですが、テレビに出る方と全く違う意見の方もあるわけで、テレビを拝見した限りは、印象としては、本当にこうなのかな、私の聞いていることと違うがなという印象を持ったことは事実でございます。テレビの編集方針等々について私が物を申し上げる立場には当然ございません。

 ただし、先生御指摘のように、本当に、現場の情報というものがきちんと上がってこなければ、それは判断を間違うということが多くあるのだろうと思います。そして、順風のときの判断というのは多少間違ったってどうってことはありませんが、そうでないときの判断を間違えると、これはとんでもないことになりかねないということは御指摘のとおりでございます。

 したがいまして、今回、イラクに派遣をするに際しましては、その現場の情報というものがどれだけ正確に、どれだけリアルタイムで防衛庁に上がってくるか。陸上自衛隊、航空自衛隊が出ておるわけでございますが、陸上自衛隊、航空自衛隊とばらばらに入ってくるのではなくて、それがきちんと防衛庁全体として認識できるような、統合幕僚会議もあるいは内局も、そして政治の責任を負っております私や副長官にもきちんとした形で入るように。

 一番いかぬのは、伝言ゲームなんかやっているうちに本当のことと違うことが上がってくる。最初はAであったものがBになりCになりDになり、ひどいときになると全く結論が違っているというようなことも世の中にはあるわけでございます。そのためには、精神論だけ言っていても仕方がございませんので、どれだけ通信の手段を確保するか、回線を確保するか、そして、その情報が伝わってきたときにどのようにして政府部内できちんとした認識を共有するか。

 情報というのは、ばらばらと上がってきて、みんなが違うものを持っていてもしようがないわけでございます。情報は、収集の体制とともに、分析、評価、そして配付、決断、こういうことになるわけでございまして、それぞれの過程において誤りがないかどうかを毎日きちんと精査するということが、先生御指摘のような誤りを招かないための我々がとるべき方策かと認識をいたしております。

本多分科員 長官と、最終的に自衛隊をどうするかというような大きな考え方では違う点もあるかもしれませんが、そういう運営に関しては、今、日本国の責任者は長官ですので、ぜひともそこのところは、今おっしゃったようにしっかりと情報を得て、適時的確な判断をしていただきたい。

 そして、私先ほど申したオランダ兵の事件と銃撃戦のみではなくて、やはり国民の皆さんにとって大きく印象に残っているのは、あの刑務所の虐待事件がまだ世界的にも大きなことになっています。私は今回その感想は伺いませんけれども、あれによってもやはり本当に大きく、もちろんサマワだけではなく、イラク全体の国民の感情というものが、私は、長官の、米軍と当然我々は一体の活動をしているわけではないという御説明は法律的には理解していますが、そういう問題ではなくて、イラクの一般の方やアメリカに反感を持っている方からどう見えるのかという問題ですから、そういう意味では、自衛隊が今、そして日本が非常に厳しい視線に、私たちの意図するところとは別に置かれざるを得なくなっている状況はあると思いますので、いろいろな判断を常に持ちながら対処をしていただければありがたいと思っています。

 答弁ありますか。

石破国務大臣 先生のおっしゃるとおりでございます。一体になってやるわけではございません。その点もこの間随分と確認をいたしました。こういうことを常日ごろやっておるところでございます。

 私は、ほかの国がいいとか悪いとか、そういうことを申し上げるつもりはありませんし、日本だけがいい子になればいい、そういうものだとは思っていません。しかしながら、日本は違うよねということ、要するに、決して見下さない、我々の文明にきちんとした尊敬の念を持ち、我々がやってほしいと思うことをやってくれるという認識を持ってもらうということはとても大事なことなんだと思っています。

 しかしながら、他方、例えばサマワにおいては、オランダ軍が本当に命を張ってといいますか、そういう場面に身をさらして治安を維持している。治安が維持できて初めて人道復興支援ができる、人道復興支援がうまくいって治安がよくなる、それはコインの裏表だと思っているんです。私は、日本だけがいい子になろうとか、そういうことは思ってはいけないのだと考えています。

本多分科員 長官、ありがとうございます。

 それでは最後に、会計検査院さんに一言質問させてください。

 一般論として、こういう海外での活動、今回の防衛庁さんの活動、それと、軍事的には非常に秘密が多いという状況があると思うんです。それはもう当然こういう状況ですから仕方ない部分があるんですが、伴って、会計検査には困難性が当然生じているんだろうと思うんです。しかし、こういう状況だからといって、国家の予算を使ってやっている行動ですから、会計検査は困難性があるからこそよりきちっとしていかなきゃいけないと私は考えますが、そこのところを御確認いただきたいと思います。

増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 テロ対策特措法あるいはイラク復興支援法に基づく自衛隊の活動による国費の支出につきましては、私ども会計検査院としても、重大な関心を持って今まで検査を実施してきております。

 確かに、今おっしゃいますような検査の困難性はありますけれども、今先生がおっしゃった趣旨を十分念頭に置きながら、今後しっかりした検査を行ってまいりたいというふうに思っております。

本多分科員 以上で終わります。

今野主査 これにて本多平直君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府所管中防衛庁・防衛施設庁についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

今野主査 これより総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 平成十四年度総務省所管の決算について、その概要を御説明させていただきます。

 まず、一般会計について申し上げます。

 総務省主管の歳入につきましては、歳入予算額一兆三千六百九億一千六百七十四万円余に対し、収納済み歳入額は一兆二千八百十八億三千八百四十万円余であり、差し引き七百九十億七千八百三十四万円余の減少となっております。

 次に、総務省所管の歳出につきましては、歳出予算現額十八兆一千四百十一億五千二百三十二万円余に対し、支出済み歳出額は十八兆百六十一億三千二百四十万円余、翌年度繰越額は一千百三十二億四千百三十四万円余であり、不用額は百十七億七千八百五十七万円余となっております。

 次に、総務省所管の特別会計について申し上げます。

 第一に、交付税及び譲与税配付金特別会計であります。

 この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は六十四兆四千八百八十七億四百四万円余、支出済み歳出額は六十三兆八千百十億六千三百二十九万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は八百四十六億一千九百五十八万円余、支出済み歳出額は七百八十二億八千六百六十七万円余であります。

 第二に、郵政事業特別会計であります。

 郵政事業特別会計につきましては、徴収決定済み額は六兆七千五百十六億四千五百六十七万円余、支出決定済み歳出額は六兆七千四百十三億八千七十九万円余であります。

 なお、この会計は、平成十四度限り廃止され、その際この会計に属しておりました権利及び義務は、日本郵政公社に承継されるもの並びに一般会計、労働保険特別会計、厚生保険特別会計、特許特別会計及び登記特別会計に帰属させる印紙を除き、一般会計に帰属させることといたしております。

 第三に、郵便貯金特別会計であります。

 郵便貯金特別会計につきましては、収納済み歳入額は十三兆一千億四千三百八十万円余、支出済み歳出額は十兆三千九百十一億四千六百三十五万円余であります。

 なお、この会計は、平成十四年度限り廃止され、その際この会計に属しておりました権利及び義務は、日本郵政公社に承継されるものを除き、一般会計に帰属させることといたしております。

 第四に、簡易生命保険特別会計であります。

 簡易生命保険特別会計につきましては、収納済み歳入額は十八兆二千百八十億三千二百三十六万円余、支出済み歳出額は十八兆二千百八十億三千二百三十六万円余であります。

 なお、この会計は、平成十四年度限り廃止され、その際この会計に属しておりました権利及び義務は、日本郵政公社に承継されるものを除き、一般会計に帰属させることといたしております。

 以上が、平成十四年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。

今野主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院石野第一局長。

石野会計検査院当局者 平成十四年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四十件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号三号から五号までの三件は、電気通信格差是正事業費補助金の経理が不当と認められるものであります。

 このうち同三号及び四号は、新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業の実施に当たり、設備を実績報告の額より低額で購入していたなどのため、補助対象事業費が過大に精算されており、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 同五号は、地域イントラネット基盤整備事業の実施に当たり、補助の対象とはならない施設の工事費を含めており、これに係る国庫補助金相当額が不当と認められるものであります。

 また、同六号から四二号までの三十七件は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、補助事業で整備する防火水槽に係る補助金の基準額の算定に関するもので、消防庁では、基準額の算定に当たり、上限を上回る諸経費等が基準額に算入されていて、国庫補助金が過大に交付されており、適正な補助事業の執行を図るよう事業主体を指導するなどの要があると認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その二は、普通交付税における基準財政需要額の算定に関するもので、普通交付税の交付額の算定基礎となる基準財政需要額のうち小中学校費に係る額の算定におきまして、児童生徒が在籍していないゼロ学級校が学校数に含まれており、これに基づいて需要額が算定されておりました。そして、このゼロ学級校の実態は廃校に近いものとなっておりました。

 このように、需要額の算定に当たり、ゼロ学級校の実態が廃校に近いものであるのに、測定単位である学校数に含めることは、廃校により学校数に含まれなくなる場合との均衡を失し、市町村間の公平を欠くことになり、改善の要があると認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 その三は、郵便切手類販売所等に対する委託販売手数料に関するもので、郵政事業庁では、郵便局の窓口以外の場所で郵便切手類及び印紙を販売する業務を個人または法人の販売者に委託して実施しており、郵便切手等の購入実績に応じて月額の手数料を支払うこととしておりますが、購入のない月または購入額五千円以下の場合に定額の手数料を支払うことは改善の要があると認められました。これについて指摘しましたところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

 次に、平成十四年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

今野主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。麻生総務大臣。

麻生国務大臣 平成十四年度決算に関する会計検査院の指摘について講じた措置等につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業及び地域イントラネット基盤整備事業の実施に当たり、設備を実績報告の額より低額で購入していたなどのため補助対象事業費が過大に精算されていた等の指摘につきましては、既に補助金を返還させるなどの措置を講じたところであります。

 次に、職員の不正行為による損害が生じたものとして指摘を受けたものがありましたことは、まことに遺憾に存じております。

 今後、日本郵政公社において、防犯施策のなお一層の徹底を図るとともに、業務監査、内部監査、会計監査等を実施し、不正行為の防止に取り組んでいくことといたしております。

 また、郵便切手類販売所等に対する委託販売手数料につきましては、日本郵政公社において、平成十五年十一月に算定基準の改正の措置を既に講じているところであります。

 次に、防火水槽に係る補助事業につきましては、適正な補助事業の執行の確保に努めることを要請するなどの処置を講じたところであります。

 また、普通交付税におきます基準財政需要額の算定に関するものにつきましても、平成十六年度の普通交付税の算定から、児童生徒が在籍していないゼロ学級校を除くこととしたところであります。

 これをもちまして、概要の説明を終わります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

今野主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今野主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今野主査 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

今野主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村哲治君。

中村(哲)分科員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 まず、私は、郵便事業について伺いたいと思います。特に、信書の定義について、信書の送達について再びお尋ねいたしたいと思います。

 と申しますのは、私は、二〇〇一年、平成十三年の六月十二日、そして、郵政公社化法、信書便法の質疑の際、平成十四年、二〇〇二年の六月六日、六月二十七日、七月四日に、信書の定義、そして信書の送達について、合計四回にわたり質問をさせていただいております。

 その信書便法の質疑の際、かなり厳格に、当時の片山大臣また佐田副大臣と議論をさせていただきまして、その結果、幸いなことにと申しましていいのかどうかわかりませんが、信書の定義がかなり厳格になった。総務省のガイドラインがかなり厳しくなって、今まで、クレジットカードは信書ですよ、地域振興券は信書ですよ、ダイレクトメールも全部信書ですよとおっしゃっていたのが、全部信書ではなくなった。

 その結果、民間事業者に関しましては、信書の範囲がかなり狭くなったものですから、今までの貨物運送でほとんどいろいろなことができるようになった。これは、民間活力を引き出す上ではよかったのかもしれません。

 しかし、そのことによって負の部分も出てきたんじゃないか、そのときには想定していなかったことが出てきたんじゃないかという認識もありまして、今回の質問をさせていただこうと思った次第でございます。

 特に、私が想定していたこととは違うのが、一般信書便業にどの民間事業者も参入しなかったということでございます。これは、ある意味、今まで信書便に参入すると言っていた業者がしなかったわけですから、そこに何か問題点があるんじゃないか、そういうふうに見なければいけないんじゃないかと思っております。

 そこで、一つ、実際の現場の人の話を聞く機会がありまして、そこのことで大臣に御意見等を聞きたいというふうに思うようになったのが、今回の質問のきっかけでございます。

 と申しますのは、営業の方が、郵便、いろいろ使ってくださいよということで各店に回られるわけですね。事業者をいろいろ回られる。その中で言われることが、いや、A社さんのサービスの表はこうなっているんですよ、B社さんはこうなっているんですよと。また、店に行って、A社さんの値段表とB社さんの値段表が違う、そういうことになっている。そして、自分たちが郵政公社の職員として営業に行って競争しようと思っても、競争条件が全く違う。そして、うちは局長の判があってもし値段表をつくりかえることができたらいいのにな、そういう話を受けたわけですね。

 そこで、問題点がどこにあるのか。

 郵便事業は今、信書と非信書のサービスが一体に郵便という名前でやっているわけです。そうすると、非郵便事業に特化している貨物運送にある意味勝てるはずがない。というのは、ユニバーサルサービス義務が課せられていますし、全国あまねく公平に同一料金で基本的にやらなくちゃいけない。そうすると、局長の判断で値つけをするということは信書の世界では許されない。

 そうであるのならば、私は、郵政公社の新サービスとして、非信書に特化したサービスをつくるべきなんじゃないかと思っているわけでございます。そうすると、非信書のサービスができれば、これは局長の判断で、ある程度の枠内で価格競争することができる。

 公社が民営化されるということを前提とするのであれば、いろいろな面に関しては、民間事業者と競争条件を一緒にしなくちゃいけないと私は思うんです、基本的には。もちろん、ドミナント規制、非対称規制という考え方がありますから、公社は、また民営化された郵便会社はその重荷を背負って競争しろ、そういう思想であるのならばいいんですけれども、そうでないのであれば、基本的には民間とはイコールフッティングで競争条件を整えるべきだ。そうすると、非信書の新サービスは、論理必然的に公社のサービスとして必要になると私は考えるんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、中村先生、現行の法律というのは、もう一丁目一番地のように、今言われましたように、「あまねく、公平に提供する」という、これはいわゆる第一条で定められているところでもありますので、これは、何人も郵便の利用については差別されてはいかぬということになっておるという大前提の話で、今の法律を前提にすれば、とてもじゃない話になります。

 郵政公社になったとはいえ、この法律はそのままですから、そこのところが一番問題なので、そうすると、郵政公社が仮に民営化されたといったときに、そのときにどうするかというのは、ちょっと正直、これは今この段階でどうのこうの言えた話じゃないんですが、新しく民間郵便会社になられた社長なりそこの会社の経営執行責任者が、これはやろうじゃないかということで、イコールフッティングという言葉を言われましたけれども、こっちはとにかくイコールフッティング、プラス・ユニバーサルサービスというのをしょうことになりますと、それはかなり、もうからなくてもやらないかぬという義務を負っているわけですから、そういった意味では、広く、田舎の山の中でもちゃんと金の出しおろしができるようにから、ちゃんと郵便は週に五回来るのよとか六回来るのよというのは全部決められると、ちょっと正直申し上げて、今言ったところのバランスをどうとるかというのは難しいところだとは思いますけれども、今の現状では、ちょっとなかなか難しいというところだと存じます。

中村(哲)分科員 私も、現行の法律内でやれと言っているわけではないんですよ。公社化しましたでしょう。私は、この民営化の議論をするときにも、公社でできる範囲に関してはもっと議論すべきじゃないかと思っているんですね。

 今回、投資信託の窓口の販売の法案を提出されようとしていたじゃないですか。まさに、現行法ではできないから法律を改正しよう、そういう発想ですよね。だから私が申し上げているわけですよ。現行法でできないから、非信書の送達ができるような新サービスを法律を改正してすべきなんじゃないか、そう申し上げているんです。これは投資信託の販売の話と同じ話です。だから、そういう必然性を感じていらっしゃいませんかと伺っているわけです。

 私自身は、今現時点で公社を民営化する必要があるのか、甚だ疑問に感じているんです。もっと議論をすべきじゃないか。公社でできる範囲、もっともっとあるんじゃないか。公社でできる範囲をどんどんどんどん広げていって、それでもやはり民営化しないといけないな、そうなったら民営化の議論に入ればいいのであって、もっともっと議論をしていくべきだと考えているから聞いているんです。

 そこで、公社の理事に伺いたいんですけれども、この非信書の新サービスは、公社としては、いや、もうこれは必要ない、民間とは、信書の送達の部分と一緒で、重荷を背負って、イコールフッティングでなくても立派にやってみますよ、そう考えていらっしゃるのか、いや、そうじゃないんですよ、やはり法律改正して、非信書のいわゆる柔軟なサービスが行えるような、そういったものも考えていったらいいんじゃないか、どちらで考えていらっしゃるのか、御答弁をお願いいたします。

岡田参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の非信書の分野についての柔軟なサービスということは、主として料金の話がございましたので、相対料金のことかと考えますけれども、非信書分野の商品につきましては、民間運送事業者におきましては、相対料金があれば競争上一般的に有利ですので、そういったことを導入しておりますけれども、ただいま総務大臣が御答弁をされましたように、現在は、総務大臣御答弁の趣旨から、郵便事業におきましては相対料金は設定しておりません。

 今、非信書分野で競争が激化しておりますけれども、郵政公社といたしましては、昨年四月の発足以降、各種サービスの改善を実施してきておりまして、例えば、冊子小包の分野でございますけれども、年間契約による低廉な特別料金の新設ですとか、配達記録扱いを追加するなどのサービス改善を行いまして、その中身は、実質は料金の選択肢を多様化するということでございますけれども、そういうことをやりました結果、平成十五年度の物数は、対前年度比で八〇%を超える増加となる見通しでございます。

 もう一つ、一般小包郵便物の分野でございますけれども、こちらも、小型物品市場におけるシェア一〇%を確保しようということで、送達速度の向上ですとか、大きさあるいは重量の制限をできるだけ緩やかにしまして、そういったサービス改善を実施した結果、平成十五年度の物数は、対前年度比一〇%弱の増加となる見通しとなっております。

 郵政公社といたしましては、今後とも、お客様のニーズにこたえるサービス改善に努めまして、利用者の方々の拡大を図っていきたい、このように考えております。

中村(哲)分科員 岡田理事、御答弁いただいたんですけれども、私の問いには直接答えられていないんですね。非信書サービスが必要だと考えているか、必要と考えていないのか、検討中だから答えられないのか、三つの選択肢があるわけです、答弁としては。そのいずれにも答えられていない。

 今の御答弁を素直に聞くのであれば、いや、今あるサービスでも十分やっていますよ、売り上げもふえていますよ、非対称規制で十分やっていける、公社はもう競争条件のイコールフッティングは必要ないんだ、そういうふうに聞こえるんですが、いかがですか。

岡田参考人 公社が発足いたしまして、非信書の分野につきましては料金規制がかなり柔軟になってきておりますので、現在、郵政公社といたしましては、その柔軟な料金規制のもとで、料金、サービスの多様化を図っておりまして、ただ、個別の事業者ごとに相対で料金を決めるということにつきましては、そういうことを行っている民間運送事業者もおりますけれども、公社としては、現時点ではまだそこまでは考えておりません。料金、サービスの多様化を推進しているというのが現在の状況でございます。

中村(哲)分科員 つまり、立法事実として、料金の多様化であればもう十分だ、相対料金の制度は必要ない、現時点ではそう考えているということでよろしいですね。

岡田参考人 冒頭、総務大臣から御答弁がございましたように、信書も非信書も含めまして、郵便全体としてユニバーサルサービスを提供しておりまして、そのユニバーサルサービスの大きな中身の一つが、やはり均一料金ということがその大きな中身だ、こう理解しておりますので、この問題については、やはりユニバーサルサービスがどうあるべきかとか、均一サービスの問題等、十分検討しなければ、公社としても現時点では結論の出せる問題ではない、そのように考えておるわけであります。

中村(哲)分科員 大臣、今、岡田理事がおっしゃったように、ユニバーサルサービスと関係しているとおっしゃっているんですよ。

 なぜそもそも信書の送達がユニバーサルサービスでないといけないのかということに関して、私、先ほど申し上げましたように、四回質問しているんですよ。それも、三十分、四十五分、六十分、六十分というすごい長い質問時間を使ってやっているんですけれども、それは何なのか。それは立憲主義の要請だということを主張させていただいて、大臣もそうだとおっしゃったわけですね。ということは、この国は民主主義であるがゆえに、国民の最低限というか、最小限と言ってもいいですね、その通信の手段として信書の送達というものがある、だから、それに関してはユニバーサルサービスが必要なんだということだと思うんです。

 そういうふうに考えると、非信書はなぜゆえに非信書なのか、ユニバーサルサービスをかけなくていいのかといったら、ここは必ずしも立憲主義の要請があるわけではないからなんです。

 ということになると、岡田理事がおっしゃっていたユニバーサルサービスの意味ですよね。非信書のある意味ユニバーサルサービスと言われるものと信書のユニバーサルサービスというものは、おのずから意味が違ってくると思うんですね、必要とされる程度も。非信書の場合はポストがあれだけ必要なわけでもないでしょう。いろいろな貨物運送としてのサービスのあり方があるんだと思うんです。

 そう考えると、今、郵便事業でユニバーサルサービスということで、信書も非信書も一緒くたにして義務を課せられている、だからできない、それが岡田理事の御答弁だったというふうに私は理解します。やはりそこは柔軟に制度を変えていく必要があるんだと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これはかかって、今も御理解をされておるとおりに現状ではできないんですが、これが仮に郵政公社が郵政会社になったときにどういったことになるかという点は、これはそのときの経営者の方々のお考えになるところなんですが、ただ、これは民間の民業圧迫であるという意見は出るでしょうな。多分、私が向こう側の立場だったら、何言っているんだと言うだろうなという感じはするんです。

 これによって利益を確保できる確率は高くなるという点は、ちょっとこの業界にそんなに、商売いろいろやりましたが、この郵便という仕事はやったことがないので、もうちょっとこれを、どれくらいもうかるかという話を計算してみないとわからぬところだとは思いますけれども、民間がこれだけやっているということは、かなり利益が出るからやるのであって、利益が出ぬ仕事はしませんから。

 そういった意味ではやることになるんでしょうが、そのとき、民間会社になったんだからこれやらせてくれということを言ったときは、それはイコールフッティングなんだからいいじゃないかというのは、理屈としては成り立つだろうと思いますが、ただ、それはかなりな反発が出てくるであろうということだけは予想できますので、やるともやれぬとも、ちょっと今の段階では言えません。

中村(哲)分科員 私もそれを考えているんですよ。つまり、先ほど申しましたように、非常に巨大な国営企業が民営化するときには、必ず非対称規制、ドミナント規制という話が出てきます。だから、そういうふうに整理されるのであればいいと思うんですよね。郵政公社が郵政会社になるから、これはもうドミナント規制をしないといけない、そういう議論になれば、いや信書と非信書は同じサービスで、郵便でこれからもやってくださいということになるでしょうし、いやそうじゃないんだ、イコールフッティングだから同じ条件にしないといけないんだ、二つの考え方になると思います。

 それはどちらを選ぶか、それを少なくとも検討しないといけないということだと思います。その点はいかがですか。

麻生国務大臣 それは実に、イコールフッティングの前にユニバーサルサービスという、もうからないところもやらねばならぬという負荷がかかっていますので、イコールフッティングにはプラスアルファつけてちょうだいねとか、これはいろいろ、交渉の仕方としてはあるとは思いますけれども、今言われたところを含めて、これは、そもそもユニバーサルサービスの定義とはとかいうところからきっちり論議をしないと事は進まぬと思います。

中村(哲)分科員 なぜ私がるるこのようなことを申し上げるかというと、信書の送達、郵便業務というのは、独立採算でやられているわけですよね。ここに税金を投入するというのは、今までの明治以来の歴史を転換するということですから、なかなか大変だと思うんです。だから、私は、非信書の部分の上がりで信書の部分の損を埋めるというか、そういうことは必ず郵便会社になっても必要だと思うんですよね。

 今からインターネットがどんどんどんどん進んでいくでしょう。公社化法の質疑をした二年前よりも、ブロードバンドはずっと進みました。その結果どんなことが起こっているか。どんどん文書が電子化されて、PDF化されて、もうメールで送られる。暗号をかけているから、通信の信頼性、秘匿性も十分成り立っている。そうなってきたら、郵便でどれだけのものが送られるのか。

 しかし、それでも、そんな時代でも郵便は必要だな、そのことは議論の過程でずっと明らかになっているわけです。紙に書いたもので人に、相手に伝えること、この紙というものの文化性もある。そういったことも含めると、国民の最低限のサービスとして、信書の送達は国が保障しないといけないということになっているわけですから、これは国が守っていかないといけない。

 しかし、独立採算で損が出たら今度は税金で埋めるのか、いやそこまでいかぬでしょうね、そのことも考えて、郵便事業の収支に関しては考えていかなくちゃいけないんです。そういった意味で私は聞いているわけでございます。

 だから、ここは、この秋から、最終答申が出て、民営化の法案の検討に入って、来年、民営化の法案が出てくるということになると思いますけれども、そのときにはきちんとそこを整理していただいて、しっかり議論をしていただきたいと思います。

 そこで、次の質問に入るんですが、現状、今、そういった非信書の部分で競争は激化しています。それと同時に、非信書のサービスで信書を送られる利用者の人が増大していると私は思うんですね。どこの自治体かは申し上げませんけれども、自治体が私たちに意見書を送ってきます。意見書ですね。地方議会が議決した意見書を国会議員に送ってこられます。国会に送ってくるときに一緒に国会議員にも送ってくるということなんでしょうけれども、そのときに、どこの会社とは申しませんけれども、いわゆるメール便で送ってこられるわけですよ。これは信書じゃないんですか、まず確認します。

麻生国務大臣 これは信書に当たると思いますけれどもね。ちょっとどこの会社まで言えぬと、なかなかそれはそうだと思いますけれども、それはちょっと、今の話は信書に当たるなと、聞いていてそう思いました。

中村(哲)分科員 信書とは、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」ということですから、私も、これはもう完全に信書に当たると思うんですね。

 こういった形で、信書がいわゆる非信書サービスで送達されている例がたくさんある。特に、信書の定義が厳格になって非信書でほとんど何でも送られるようになったから、もう一緒に送っちゃえということで信書の領域がどんどんどんどん、侵されていると言ったらいいのかわかりませんけれども、そういうことになっている。その結果、民間事業者は、一般信書便事業に参入するインセンティブがなくなってきたわけですよね。

 いやA社さん、これはまずいんじゃないですかと例えば総務省が言ったり、私たちが言ったりしても、いや、利用者の方が封しておられるものですから、私たちは、通信の秘密とは別次元で、プライバシーの保護という意味で、お客様のサービスを考えたら、お客さんのプライバシーを侵すことはできません、だから開封して見ることなんて、見て信書かどうかなんか判断することはできませんよねと言われたら、ああそうですよねと。

 そうすると、非信書のサービスで信書を送らせないようにするためには、利用者に対して、これは非信書サービスだから信書は送っちゃいけないんですよと、そういうことを規制するか周知徹底するか、何らかの方法をとるしかないんですよ。

 お伺いしますけれども、このある意味違法行為ですよね、それを放置するのかどうするのか、対応策としてどのようなことを考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今の点はまことに、現実としてどれくらいのことになっているかという調査までしたわけではないんですが、確かに今、向こう、向こうというのはその法を犯している人の言い分も、多分そういうことを言うだろうと私も想像にはかたくないんですね。だって、あけたらそれこそ問題ですから。だから、そういったことになるとは思いますので、密封されているわけだからあけようがないということになるんだと思います。

 やはり基本的には、今、お手元にあるのと同じかと思いますけれども、こういったものを配ってぜひということで、信書は取り扱えないんですよというような話を徹底させたり、ホームページに載せたり、いろいろなことはしていますよ。確かにしていますけれども、現状としては、これがゆゆしき一大事にまで至るかどうかは難しいところですけれども、言った事態にまでは至っておらぬような感じはしているんですけれども、やはり郵便局が配達してくるものの方が何となく信頼があると、一応、今のところはなっていますから。

 ただ、これが民間会社だったらどうするかというのは全然別問題になる時点が起きてくると思いますので、その点も周知が基本だとは思いますけれども、これは、今後の問題としては検討しなきゃいかぬ大事な問題だと私もそう思います。

中村(哲)分科員 大臣、郵便局の方が信頼性が高いとおっしゃいますけれども、民間では必ずしもそうはなっていないと思うんですよ。機密性の高い文書である、あしたまでに届けないといけない、そうなったときに、民間事業者のメール便を使われる方はたくさんいらっしゃると思いますよ。しかし、そこが実は、特定人に対する意思の通知または事実の伝達ということであれば、これは信書の送達なんですよね。だけれども、利用者の側が、いや、それは民間企業を使うんだ、メール便を使うんだということでやっているわけですよ。そこに対して、今のような御答弁だと全然抑止力がないと思いますよ。

 先ほど大臣の示されたパンフレット、これは何万部刷られていますか。多分今すぐ御答弁いただけないと思いますけれども、各家庭に配っているわけでもないでしょうし、非信書サービスをやっているときに、はい、こういうのがあります、これは信書は入っていませんよね、このサービスでは手紙とかそういうものを送れないんですよ、そういう話になっているのかどうか。

 なかなか難しい論点としてあるのは、添え状、送り状のたぐいが、これは信書であっても貨物運送で一緒に送っていいわけですよね。そういった例外規定もある。そうなったときに、なかなか規制としても難しいかもしれません。

 しかし、やはり国交省と相談して、メール便のサービスについては、手紙は入っていませんよねと事業者に周知徹底させる。そういった周知徹底義務、そういうものを課すような検討というのはすべきじゃないんでしょうか。いかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは検討の必要はあろうと思いますし、特に民間会社に仮になったとした場合には、今の中村先生のは考えにゃいかぬところだというのはいたします。

 ちなみに、パンフレット、事業所用、一般用で各十万部ですから、合計二十万部ということになろうかと思います。その程度のものです。

中村(哲)分科員 まあ、十万部ずつで合計二十万部といったら、国民はほとんど知っていないということですよね。だって、読まない人がいるわけでしょう。何万人の人が読んだのかといったら、十万人も読んでいないんじゃないかなと思うんです。だから、そういうことに関してはもう少し今後検討していただきたいと思います。

 残り時間がもうわずかになってしまったんですけれども、周知徹底と関係して、先般の総務委員会での質疑、四月二十七日の質疑での地域自治区についての御答弁があったことの確認をさせていただきたいと思います。

 地域自治区の地域協議会のメンバー、構成員に個人商店主が含まれるのかという質問を私がさせていただきました。そのとき、山口副大臣は、権利能力なき社団に含まれますので、それは構いません、なれます、そういう御答弁をいただいたんですけれども、果たして本当にそうなのかなともう一回帰って考えてみまして、また与党の議員からも、あれは政府の答弁間違っているでという話を伺いまして、これはもう一回聞いておかないといけない。

 というのは、個人事業主というのは、やはり自分の個人の名前で白色申告とか青色申告とかしているわけですから、幾ら従業員を使っていても、結局、その契約の内容とかお客さんとの関係というのは最終的には商店主個人に帰属するんですよね。ということは、その集団というのは権利能力なき社団には絶対当たらないんですよね。

 そうすると、どういう解釈をすればおっしゃった御答弁が適法に理解できるのかというのが理解できなかったものですから、私は、その後、事務方と話をして、私なりに、あなたたちの御答弁はこう考えたら理解できますよねというような話をさせていただいたんですけれども、そこについて改めて、総務省としてはどのように考えているのか、お答えいただきたいと思います。

山口副大臣 先般、総務委員会で中村先生の方から種々御質疑があったわけでありますが、基本的に、前の委員会で申し上げましたように、住民というふうなことで、いわゆる住所というふうなことで御答弁申し上げた中に権利能力なき社団というふうなことがあるということでございまして、ですから、法人格は有しないが権利能力なき社団に該当する商店もあるというふうなことでございます。

 ですから、さらに申し上げますと、では、個人商店が権利能力なき社団に当たるのは具体的にどんなのがあるかというふうなことなんだろうと思いますので、申し上げますが、これはいろいろ判例もあるんですけれども、ともかく具体的な、複数人が出資をして店舗を共同で構えておる商店だとか、あるいは税法の規定によって法人とみなして課税されている実態があるのも実はあるわけでありまして、そういったものに対して権利能力なき社団と考えても差し支えないんじゃないか。

 さらに、これは先般の委員会の続きみたいなお話になるんですが、若干つけ加えさせていただきますと、権利なき社団に入らなくても、例えば、その地域の商工会に所属をしておる、あるいは商工会議所だ、何とか協議会なりに所属をしておるといった場合には、その団体、その法人は認められるわけですから、その一員として協議会に出ておいでるということは大いにあり得るというふうなことでございます。

中村(哲)分科員 時間が参りましたからこれぐらいにさせていただきますけれども、今、山口副大臣がおっしゃったことは、私が事務方に申し上げたことなんですね。つまり、個人であっても法人であっても、営業している商店がある、そこが協議会のメンバーになるということは、大体は商店街とか商工会とかの代表として出る、そこから選ばれて出るのが普通であろう。そうじゃないと協議会のメンバーになり得ないだろう。商店街の有志の集まりだったら権利能力なき社団だし、商工会のメンバーとしてだったらこれは法人格ある団体の代表者、その構成員として出ていくということですから当てはまるだろう。そういう整理でいいんじゃないかと思っております。

 時間が参りましたからもうこれ以上答弁を求めませんが、一言何かありましたら答えていただきまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

山口副大臣 今、実に先生の方でちゃんと整理をしていただきまして、そのとおりだろうと思っております。

中村(哲)分科員 ありがとうございました。

今野主査 これにて中村哲治君の質疑は終了いたしました。

 次に、黄川田徹君。

黄川田分科員 民主党の黄川田徹であります。

 通告に従い、順次質問していきたいと思います。前半は総務省、そして後段は地域課題について他の省庁からお尋ねいたしたいと思います。

 その前に、昨今の政治でありますけれども、強力なリーダーが不在であったように思っております。民主党は新たに小沢一郎代表を前面に立てまして、そして、真の構造改革、そして日本一新を実現するために、そしてまた我々も汗をかいていかなきゃいけないと思っています。麻生大臣にはお手やわらかによろしくお願いいたします。私も岩手出身でありますので、一言述べさせていただきました。

 それで、現在、法律、政省令でありますけれども、およそ六千八百を超えておるというふうな状況であります。これをそしゃくしてしっかりやるためには、優秀な高級官僚があらゆる分野に行政支配を行っておるわけでありますけれども、どうも、私は地方から来た人間でありますので、この中央集権を抜本的に変えまして、やはり地方主権をしっかりと確立しなきゃいけないと思っております。

 そこで、国会、そのとおり来てみて、法案づくりに多大なエネルギーを使いまして、そしてその法律が現場でどう生かされているか、もう疲れ切ってそこにはなかなか目がいっていないんじゃないのか、そう思っておるわけであります。

 そういうような中で、国のかたちがしっかりすれば地方のかたちも明らかになるわけでありますけれども、そういう点を踏まえて、大臣、今の政治状況等について御所見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 やはり黄川田先生、少なくとも、明治四年の廃藩置県以来、日本じゅうにありました約二百七十余の藩を一つにまとめて、中央集権にして、もって近代国家という大前提をつくるわけですけれども、何のためにそんなことをしなくちゃいけなかったかといえば、多分、あの時代の国際情勢を見れば、なかんずくアジアの情勢を見れば、列強による植民地支配、それから日本が生き残るためにはということで、権力を集中させて総力戦で向かった結果、少なくとも、あのナポレオンすら勝てなかった帝政ロシアに勝ったんですから、それは間違いなく制度としては成功した、これは認めないかぬ。少なくとも、有色人種が白人に勝った、五百年間ぐらいの歴史で初めての話が起きたんですから、僕はこれは当たったんだと思います。

 戦後も多分、官僚主導、業界協調型と言われるのが正しいかと思いますが、そういった体制でやってきて、これまた少なくとも十年を経ずして、もはや戦後ではないという言葉が出、そして二十年すれば、ジャパン・アズ・ナンバーワンなんて言葉が出るようになってきて、どんどんどんどん、えらい勢いで、自動車も何も全部輸出過多であるというようなところまで来て、近代工業化社会としては大成功したんだと思うんです。

 これが行き着くところまで行って、今見回してみたら、そこそこみんな豊かじゃないのかと。みんな公民館もあるじゃないか、体育館もあるじゃないか、それで相も変わらず、みんなで集めた金は一部で決められてばんと下しおかれるみたいな話は、これはおかしいじゃないかと。おれたちの、岩手じゃ雪の話だけれども、こっちは雪なんかありませんから、そんな話なんか、こんなの一緒になってたまるかと、みんな、奨励地域、寒冷地、いろいろ違いますし、海もあるところもあればないところもある、そういったところをいろいろ比べて、これはやはりその地域に住んでいる人の意見というものがもっとうまく反映されるような制度に変えないかぬということが、多分今言われております中央集権から地方主権、地域主権ということに流れている大きな流れなんだと思っています。

 ただ、これは、急激にこの五年ぐらいのところで起きてきた。そこに、デフレが来た、冷戦は終わった、少子化が来たと、社会的な大きな流れとしては三つ四つあると思いますけれども、それが全部まとめてこの十年間ぐらいの間にみんな起きてきたというのが非常に混乱を招いていると思いますので、そういった意味では、やはりその地域に住んでいる人たちの意見がよりよく反映できるような制度、システムというものを新たに構築せないかぬところなんだ、私は基本的にそう思っております。

黄川田分科員 明治の大合併、昭和の大合併そして平成の大合併ということで、地方の自立、自己責任といいますか、そういう流れもありますので、やはり一番大事なのは、国と地方の役割をしっかりと分けるといいますか、明確にするといいますか、そこだと思いますし、それから、法律がこんなに多いのは、やはり何でもかんでも中央で縛ろうというふうな感じがあるからなのかなと私も思っております、まあ、見方がちょっと違うかもしれませんが。もうちょっと地方そして国、しっかりと分けていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 そしてまた、年金問題といいますか、保険、医療、福祉などのさまざまな関係では、これは法令とか通達とか政省令、本当にたくさんあって、それを精緻に組み立てても、現実はどうなんだという課題がさまざまあります。

 年金未納問題については、麻生大臣も、三年十カ月ですか、そんな形で言われておりますけれども、この保険制度の事務作業でありますけれども、自治体というよりも社会保険庁ですかね、現場で一生懸命処理しておるんでしょうけれども、これと中央におる皆様方との意識のずれといいますか、何かかけ離れておるというか、現場の国の機関とこっちの本省との関係といいますか、もちろん事務分掌からいけば厚生労働大臣の話なのでありますけれども、聞きたいのは、地方分権一括法、二〇〇〇年の四月からでありますけれども、その前までは年金の徴収事務は市町村の事務だということで、首長の名前で年金加入者納入通知書が行っていたわけなんですよね。どっちかというと身近な年金といいますかね。何か最近は年金も遠ざかってきたような感じがいたしますので、ちょっと中央省庁の官僚の意識と現場の出先の意識が違うのではないかという思いがありましたので、その点、どういうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 まず、年金の未加入の話につきましては、過日も国会でおわびを申し上げたところでありますので、現場の職員がしにくくなっておるということなのであれば甚だ申しわけなく思っております。

 今、中央と地方のお話があっておりましたけれども、確かにおっしゃるように、あれは社会保険庁というのをやめるやめないというときに、社会保険庁が年金の回収をします、徴収をいたしますというのをもってああいうことになって、平成十四年度から正式にスタートした途端に、徴収率ががたんと落ちたという形になっておりますので、これはもう黄川田先生御存じのとおりで、地方分権とは逆な形にあの当時なったというのはもう間違いない事実であります。

 やはりこれはいろいろな意味で、この制度は今後やり変えていかないかぬことになることは事実なので、三党合意でいろいろな形でお話をいろいろされようとしておるのは、私、いいことだと思っておるんですが、少なくとも、今、やはりこれはわかりにくいというのが一番気になるところなんだと思います、一般的に言って。

 例えば、私の場合は、三十年払っても未納と言われるけれども、あれは二十五年払えばいいはずなのが、三十年も払って未納と言われたら割に合わぬと、率直に、正直なところです、個人的なところを言わせていただければ。

 ただ、六十三歳になってもまだ年金は受け取っておらぬ、おかしいじゃないかというけれども、あれはまた別の発想なのであって、あれは申請せぬと来ないことになっておりますので、取るのは強制的だけれども、払う方は申請してこなけりゃ払わないのよというのはおかしいんじゃないかと。

 これは、詰めていけば幾らでも出てくるところでもありますので、私どもとしては、今御指摘のありましたように、こういったものは、もともとは勤労者八人で一人のときぐらいの高齢者の比率で考えたときが、今は四人で一人、将来は二人で一人になるときに、今の制度のままでいこうとはとても思いませんので、そういった意味では、これは全体として考えないかぬところだろうと思っております。

 少なくとも、何となく、これが、個人できっちり把握しようと思えばということになろうかと思いますけれども、地方では個人的にきちんと洗えるところだとは思いますが、そうすると、黄川田先生、一千三百四十何万などなどと番号が全部つかないと、一億何万の番号を振らぬととてもできないということになりますので、そういった意味でも、これは、おまえ、プライバシーどうしたって話がまた出てくることになりますので、いろいろな意味で、この一本化の問題を含めて、これは中央で、地方でというのも確かな問題ですけれども、全体として、この問題の根幹に触れる部分につきましては、これは年金とはという話にさかのぼってきっちり考えないかぬところだと思います。

 私は、この制度自体は決して悪くないと思いますけれども、そのシステムとしては、いろいろ今の時代に当たっては改善の余地があると思っておりますので、私どもとしては、総務省としては、黄川田先生が、おれの年金は幾らになっているんだということを、市役所に行かれて、今、現実どうなっているかというと、例えば私どものところでいえば、和歌山県でいきますと、一日平均三百五十人ぐらいの方が今押しかけてこられるというので、待ち時間五時間、それで知らせてくれるまでに四分とか五分とかいう話なんです。

 私どもとしては、少なくとも、自分の年金番号なり住基番号なり、いろいろありますので、その番号を入れて本人の確認ができたら、おれの年金は今幾ら払っていて、どうなっていて、今どうなったら幾らぐらいもらえるであろうということは外からアクセスできて、自分のことぐらいはちゃんとわかるようにする行政サービスぐらいはしたっておかしくないんじゃないのかということを申し込んでおるというところでありまして、この問題は、中央としてのやるべきこと、地方としてのやるべきこと含めて、これはいろいろこの間に対応すべき問題点は多々あろうと思いますので、私どもとしては真剣に考えていかねばならぬ大事な問題だと思っております。

黄川田分科員 詳細に答弁していただきまして、もうちょっといっぱい聞こうと思ったんですが、まず年金の関係。

 私は、たまたま最初に市町村職員でありましたから共済組合に入った。その後、やめて県会議員に立候補するということで、十カ月間民間に勤めましたので厚生年金だ。その後、県会議員となりまして国民年金だということで、行政におりましたから、末端におりましたから仕組みがわかって、そのとおりなんでありますが、本当にわかりにくいと思っています。

 それから、職業によって年金が違うというのは、やっぱりこれは問題じゃないかと常々思っておりました。もし私が市役所職員を二十年超して勤めていたらば、こんな発想もなかったし、県会議員三期以上勤めたら、こんな発想もないんだけれども、市の職員を二十年も勤めなかったし、県会議員も無競争で来たけれども、やめましたということなので、上手にやれば市の職員で年金をもらって、例えば市会議員三期やって年金をもらって、県会議員三期やってもらって、首長やってもらって、国会議員十年以上やって。そういう制度自体がどうも、私はそういうのは歩んできませんでしたから、問題意識を持っています。

 そしてまた、職業によって、この時代、職業がどんどん変わる時代でありますから、そういう、共済だ、厚生だ、国民年金だという部分には、やっぱりきちっとメスを入れなきゃいけないと思っております。一元化というものは、しっかりやらなきゃいけない。

 それから、窓口が三千二百、合併になるからまた違ってきますけれども、それが三百の窓口になっちゃった、社会保険庁で。やっぱりそういう部分とか、いろんな課題があると思います。大臣は、行政評価ですか、社会保険庁、実施するということでありますから、いろんな切り口でやっていただきたいと思います。

 それで、本当はあと二問ぐらいあったんですが、大臣、答弁上手でありますから、別な質問に行きかねるので、そしてまた地域課題もありますので、ちょっとお休みして、他の省庁の方に移りたいと思います。

 景気回復、声高に叫ばれておりますけれども、地方に住む自分にとってはそれを肌身で感じることができないわけでありまして、やっぱり地方の経済の活性化といいますか、地方に活力を戻すことが持続的な景気回復だと思っております。そういう中で、地域の特色を生かした農林水産業の振興もその一つだと思っております。

 林野庁でありますけれども、構造改善事業等によりましてさまざまな事業をしておりますけれども、林野庁自体では、なかなかそこで完結できないものもあると思います。例えばバイオマス・ニッポンということで、農水やっておりますけれども、事業の経営センス等を踏まえた場合においては、やっぱり他の府、省あるいはまた民間の関与が不可欠だと思っております。

 そこで、新エネルギー特別措置法でありますけれども、昨年の六月に施行されました。私の地元の岩手に限れば、風力発電のニーズが高いこともありまして、木質バイオマスを含めた新エネルギーの総枠でありますけれども、うちの場合は東北電力でありますけれども、この買い取りの義務量が少な過ぎるのではないかというふうな形で、省エネ利用促進上の障害が出ていると私は感じておりますが、それにつきまして、資源エネルギー庁ですか、お答えいただけますか。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘の電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、一般にRPS法と呼んでおりますけれども、この法律では、長期のエネルギー需給見通しを踏まえまして、平成二十二年度までの新エネルギー等電気の利用目標量を定めて、小売電気事業者にその購入を、利用を義務づけているわけでございます。

 この目標量につきましては、現在の新エネルギー等電気、新エネルギーから起こした電気の導入量の約四倍に当たります百二十二億キロワットアワーを二〇一〇年の目標量としておりまして、かなり意欲的な目標を定めたというふうに考えております。

 また、小売電気事業者の義務量につきましては、この制度の導入を提言いたしました総合資源エネルギー調査会の報告書におきまして、目標を計画的、段階的に達成していくアプローチが現実的であるということから、制度開始当初は低目の水準に設定をして、事業者等の制度に対する習熟度に応じて、二〇一〇年度に向けて逓増的、段階的に数値が高くなるように設定すべきであるという御提言をいただいておりまして、そうした御提言も踏まえて設定をしているところでございます。

 本法につきましては、法施行後四年ごとに、ちょうど今一年たったところでございますけれども、四年ごとに目標量の見直しを行うということもこれは法律で定められておりまして、次回の見直しに当たりましては、それまでの導入の状況ですとか、あるいはそれ以後の導入の可能性を踏まえて適切に見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。

 それから、この法律では、RPS法の義務履行上の価値分、新エネルギー等電気相当量というふうに呼んでおりますけれども、これを、例えば岩手のバイオマスの発電でございましても、東北電力だけではなくてほかの電力会社に販売をすることができるという制度になっておりますので、仮に地元の電力会社が買わないという場合にもほかの販売先を確保する道もございます。

 資源エネルギー庁といたしましては、このような新エネルギー等電気相当量の取引が円滑に進みますように、例えば経済産業省のホームページでそういう情報提供も行っているところでございますけれども、今後とも、先生の御指摘もございますので、取引の円滑化に向けて環境整備に努力をしてまいりたいというふうに考えております。

黄川田分科員 岩手で、熱エネルギーということで、間伐材のペレットストーブとかその程度できまして、電気まではまだいっていないんですが、廃材を利用して、秋田の能代ですか、一生懸命頑張っている事例もありますので、そういうことも見据えながら、地方でも頑張っていきたいと思いますので、よろしく御指導のほどをお願いいたしたいと思います。

 通告しておりますので質問したいのでありますけれども、農林水産委員会で、林業構造改善事業の失敗事例を、これは決算の分科会でありますから関連して聞くわけでありますが、森のトレー事業という二十七億の事業が失敗したということであるわけなんでありますけれども、その失敗の中で、林業の事業であるにもかかわらず、木材加工等に全く未経験のトリニティ工業という会社があるわけなんでありますけれども、そこの参入によって、どうも私は失敗したのではないかと思われるわけなんであります。

 このトリニティ工業は、世界に冠たるトヨタ自動車の関連会社、系列会社でありまして、トヨタといえば、ものづくり世界一の会社として、社会的な責任といいますか、倫理規程もあると思うわけであります。実はこの事業は、会計検査院からの指摘も受けて、補助金を返せ、そして訴訟にも至っておるわけなんであります。第一回の公判がありました。

 そこで、ここで何だかんだ論判することじゃないのでありますけれども、経済産業省として、この事例をどのように認識しておるか。世界に冠たるトヨタ自動車の系列会社でありますので、その辺、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。

中嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論ではございますけれども、通常、機械のメーカーというのは、技術的、経営的な見地から、機械を適切に受注した後に、発注先が要求いたします性能、安全性などを確保するとともに、発注先の工場において機械が仕様書どおり動くか検査、確認をした上で納入を行う義務があるというふうに認識しております。

 ちなみに、日本経団連の企業行動憲章におきましても、社会的に有用な財・サービスを安全性に十分配慮して開発、提供し、消費者・ユーザーの信頼を獲得する旨が述べられているところでございます。

 このような企業行動憲章やあるいはトヨタ自動車によるトヨタ基本理念の策定など、産業界においてもこうした問題意識は共有されていると考えておりますけれども、経済産業省といたしましても、産業界の適切な対応を促してまいりたいと考えております。

黄川田分科員 残り二つほど、地域課題、地元課題をお尋ねいたしたいと思います。

 岩手の平泉、世界遺産、文化遺産に登録ということで、今、暫定リストなわけであります。今の状況は、たしか紀伊山地の霊場と参詣の道が登録推薦されまして、現在審査中でありますか、こういう状況になっておると思うわけでありますけれども、地元の平泉はもとより、隣の一関市、前沢町、衣川村もメンバーに加えまして、さまざま、登録に向けて一生懸命汗をかいておるわけでありますけれども、この世界遺産の関係の進捗といいますか、むしろ地元に課されている課題をしっかりやれということだと思いますけれども、文化庁に、その後の推移といいますか、見通しといいますか、改めてお尋ねいたしたいと思います。

稲葉副大臣 ただいまの黄川田先生の御質問と、それから、もう御質問の中に若干お答えもしていただいたようなこともございますが、今現在、おっしゃられるとおり、平成十三年四月に、世界遺産の暫定リスト、ここに平泉の文化遺産について記載をしているところであります。

 今後の作業としましては、やはり中尊寺金色堂を初めとする資産価値もさることながら、さらに周辺についてどのように取り扱おうか、先生御承知のようないわゆるバッファーゾーン、この指定を条例によってしていただかなければならない。これが県、市町村に対してのお願いの中身になっております。

 また、我々としましても、そこから県、市町村を通じて推薦をいただいたこの件について文化庁が受け取って、これに対して世界遺産に対しての申請を出す、こういう作業手順になっておるわけで、我々としましても、我々の仕事は我々の仕事で、文化財の指定等もしなければならない、こういうまだ宿題も残っているわけでありますから、こちらはこちらとしてその作業を進めますが、先生おっしゃられるように、まさに県や市町村からの仕事も一緒にやっていただかなければならない。

 こういうところに来ているところであって、実際、その見通しについてと直接お尋ねくださる案件については、では、九月の三十日までとかに上がったものについて来年六月にかけられるとか、そういうような時期的なものについて、では来年にはその見通しがありますというところまでははっきり申し上げるところには至っていないというのが事実であって、これからお互いに作業を進めながら、協力をし合いながら、世界遺産に向けての登録作業を進めていきたい、こう思っておりますので、黄川田先生は小沢代表と肩を並べるぐらい岩手県に対しては強力なインパクトを持っておられるので、ぜひそちらの方のアクションを私どもとしましてもお願いしたいところであります。

黄川田分科員 ありがとうございます。

 実は、平泉周辺で今度合併のいろいろな話が出ております。そこで一体となって連携しながら進めようということになっておりますので、文化庁としても改めて御指導をよろしくお願い申し上げます。

 最後に、国土交通省の方にお尋ねいたしたいと思います。

 岩手は、御案内のとおり四国四県に匹敵する面積でありまして、高速交通網の体系、道路整備は第一の仕事であります。

 最近、道路法の施行規則が改正されまして、一般国道の指定区間を指定する政令の制定または改廃の立案の基準が定められたと聞いておりまして、鋭意検討中だと思いますけれども、地域課題で申しわけないんですが、具体的に地元岩手のことを話しますと、既に指定区間に指定済みの国道四十六号、これは盛岡から秋田でありますけれども、これにあわせて、国道百六号、盛岡から宮古の全線を指定区間に編入し、そして国が一体的に管理してほしいという地元の意見、要望があります。

 そしてまた、国道二百八十三号の仙人峠道路、これは今整備中なんでありますけれども、平成十八年度供用を目標に国と県で整備が進められております。そしてまた、これは高速自動車国道に並行する一般国道の自動車専用道路として、指定区間による国の管理としてこれもまた進めてほしいという要望がありますが、これについて、検討状況といいますか、今の段階でお答えできるところを答弁いただきたいと思います。

榊政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 一般国道百六号、これにつきましては、宮古から盛岡に至るまで延長九十五キロということでございますし、仙人峠の方は現在、十八・六キロメートルにつきまして国、県でお仕事をしている、こういうことになっておりますが、この一般国道二百八十三号自体は、釜石から花巻に至ります八十九キロメートルということになっております。

 一方で、一般国道自体は全国で五万四千キロございまして、うち直轄区間は二万一千キロということで、先ほど先生御指摘のように、十六年三月十五日に道路法の施行規則を改正いたしまして、この直轄の指定区間に指定する政令の改廃する際の立案の基準というのを決めまして、これから編入または除外について、いろいろな国土全体から見た道路網バランスとか、公共団体の財政状況、それから一般国道の整備、管理状況を踏まえまして、公共団体の意見等を聞きながらやっていく、こういうことになっております。

 ところが、一方では、地方分権推進委員会からの御指示のといいますか、委員会の意見の方は、むしろ直轄管理区間を縮減しろという方向での議論でございまして、一方で、各都道府県からは、どうだろうというお話をいたしましたところ、全国ベースで見まして約四千七百キロメートルをやはり指定区間に編入してほしい、こういう意向、要望がございます。

 この施行規則の基準自体も、関係地方公共団体に十分な調整をとれ、こういうふうになっておりまして、現時点で見通しということになりますと、甚だ申しわけないんですが、今後のスケジュールについて、いつごろまでにというのは非常に難しい状況にあるということでございます。

 なお、仙人峠につきましては、東北横断自動車道釜石秋田線に並行する一般国道の自動車専用道路、こういう形で整備をいたしておりまして、この供用後の管理の取り扱いにつきましては、この東北横断自動車道の釜石秋田線の整備状況、これを踏まえまして、地域の実情も勘案しながら今後検討すべき課題だというふうに認識をいたしているところでございます。

黄川田分科員 国土交通省にはめり張りのある対応をお願いいたします。

 なお、大臣には、県のあり方、都道府県のあり方、あるいはまた、三位一体改革だけじゃなくて人も入れた、人材も入れた四位一体改革というものも、総務委員会の方でいろいろと質疑させていただきます。

 本日は、ありがとうございました。

今野主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、金田誠一君。

金田(誠)分科員 民主党の金田誠一でございます。

 私は、福島県矢祭町の自立の精神に国は学ぶべきであるという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 去る三月二十二日でございますが、福島県矢祭町を訪問して、町長さん初め役場の重立った方々と意見交換をしてまいりました。

 矢祭町といえば、二〇〇一年に「市町村合併をしない矢祭町宣言」の決議というものを行って、その後は住基ネットに真っ先に不参加の表明をしたことで余りにも有名でございます。直接訪問して、その自立の精神と町長、町議会、住民、そして町の職員組合まで巻き込んだ民主主義が根づいていることに深い感銘を受けてまいりました。

 今日、我が国が経済、財政のみならず社会全般にわたって深刻な危機にあるとき、これを打開するに当たって学ぶべきは、この矢祭町の自立の精神とそれを支える民主主義であるというふうに私は思います。とりわけ地方行財政の再建に当たっては、この自立の精神と民主主義をおいて成功はあり得ない。私は、このたびの訪問でそのことを確信してまいりました。国としても挙げてこのことに学ぶべきだ、こう考えているところでございます。

 質問に先立って、矢祭町の概要について御紹介を申し上げます。

 矢祭町という町名は、その昔、八幡太郎義家が奥州征伐から凱旋する途中、この景勝の地に感激して、背負っていた矢を岩山に祭ったという故事に由来をしている、こう伺ってまいりました。そうした歴史にはぐくまれた町だからこそ、歴史や文化、風習、伝統、住民のまとまりを町長はとうとびたいと考えてきた。そのことが、合併をしない宣言や住基ネット不参加、この基本になっていると言われております。

 人口七千百五十六人、一般会計予算三十一億七千万円、職員数八十三人、議員数は削減して十人という小さな町でございます。そんな矢祭町が二〇〇一年、「市町村合併をしない矢祭町宣言」の決議を町議会の全会一致で行ったわけでございます。決議文を事前に、質問取りのときにお渡しをいたしました。目を通していただいていればありがたい、こう思います。

 決議は、その前文において、「地方自治の本旨に基づき、矢祭町議会は国が押しつける市町村合併には賛意できず、先人から享けた郷土「矢祭町」を二十一世紀に生きる子孫にそっくり引き継ぐことが、今、この時、ここに生きる私達の使命であり、将来に禍根を残す選択はすべきでないと判断いたします。 よって、矢祭町はいかなる市町村とも合併しないことを宣言します。」このように前文にうたった上で、六項目にわたって宣言をしております。

 まず第一項目は「矢祭町は今日まで「合併」を前提とした町づくりはしてきておらず、独立独歩「自立できる町づくり」を推進する。」とあります。第二項目には「矢祭町は規模の拡大は望まず、大領土主義は決して町民の幸福にはつながらず、現状をもって維持し、木目細かな行政を推進する。」とあります。以下、三から六項目は略させていただきます。

 何とすばらしい自立の精神ではないかと私はこの宣言に感動を覚えたわけでございますけれども、大臣、まず御感想、いかがでございましょう。

麻生国務大臣 金田先生、心意気はよしというところなんだと思いますけれども、心意気はよしだと思いますが、現実問題として、今、行政というものがかなりな勢いでその形態を変えてきております。

 例えば、行政手続オンライン化法などという法律が昨年の二月に通っておりますが、これは世界で多分これだけ進んだものはないと思いますが、少なくとも書類はすべてオンラインで可ということに全部対応できるだけの人材はそこで備えるということと、また、地方の時代、地域主権として地方でやっていった場合、地域が自立するということになりますと、それを自立する精神に伴って財源等ある程度の能力というものも要る。

 職員の数はもちろんのこと、議員の数も全部減らしていろいろなことをやっても、これは、額としては、もう御存じのように人件費の額で、議員の額というのは数百万の話だろうと思いますので、そういったことを考えますと、これは長期的に、そういった心意気はよしでしょうけれども、隣接する他の町が、何となく合併した結果よくなったというときに、おれのところだけ何でこんなサービスができないんだ、ほかのところは住基ネットで全部オンラインでつながっているけれども、うちはつながらぬとかということの問題とか、いろいろな問題が起きてくると思いますので、私どもとしては、心意気はよしと、私もそう思いますけれども、それに対応できるような基礎的な行政基盤はできるかなと、それが正直な実感です。

金田(誠)分科員 志だけではないわけですね。心意気だけではない、中身もこれは伴っているというところで実は感動してきたわけでございます。大きければ効率がいいとか、さまざまな先端技術、ITを導入できるとか、そういうものではないような、そしてその効率だけがまた住民の幸せにはつながってこない、こういう中身を実は実感してまいりまして、それで今回の質問を思い立ったわけでございます。

 順次、用意した質問を進めさせていただいて、その中から、ぜひひとつ大臣も認識を新たにしていただければありがたいな、こう思う次第でございます。

 今の大臣の答弁にうまくかみ合うような質問の組み立てになってございませんでして、あらかじめつくってきたものですから、ちょっとそごを来すかもしれません、お許しをいただきたいと思います。

 町長さんのお名前、根本良一さんというふうにおっしゃいます。一九三七年生まれ、私よりちょうど十歳年上でございます。町長さんが言うには、忠臣蔵が現代に生きていると。この生きている理由は、討ち入りに当たって堀部安兵衛が宣言文を書いたんだそうです、私もわからなかったんですけれども、その宣言文があることによってその意義、内容が後生に伝わっているということに倣って、今回、合併しない矢祭町宣言もそういうことに倣って書いたものだ、だから、覚悟はできている、腹は決まっているという話をされておりました。

 これはもう見上げた心意気だというふうに思うわけでございます。この心意気のところだけは、まず大臣も、これはもう共感していただけるもの、こう思います。これは改めて答弁は求めません。一点目の質問と同じ恐らく答弁になろうかというふうに思います。

 町長さんの説明で、ここがポイントだな、こう思いましたのは、それは、合併しない矢祭町宣言としたのは、矢祭町は合併しないというだけのことであって、国が進める合併政策に反対という意味ではない。矢祭町は矢祭町、国は国、この精神なんですね。私も多少誤解していたわけでございますけれども、これこそ地方自治の本旨に基づく自己決定であると。言われてみれば、なるほどなと思いました。

 大臣あるいは総務省、お役人、どうでしょうか、この辺、誤解されておりませんでしたでしょうか。もしかすれば、矢祭町というものは国の合併政策に反旗を翻しているというふうに受け取っておられなかったか。そうではなくて、矢祭町は合併をしないで矢祭町としての町をつくっていくんです、こういう宣言だということですが、この辺はいかがでしょう。

麻生国務大臣 住基ネット、ここはたしか入っていないと思いますけれども、そのときの話は余りぴんと来ませんでしたけれども、今回のときの話は、いや、ほかのところとの合併をどうのこうの言うつもりはないというお話は最初から伺っておりましたので、知っておりました。

金田(誠)分科員 それであれば結構だと思います。

 そこで、大臣、この心意気だけではなくて、中身もすごいということをこれから申し上げたいと思います。

 合併しない矢祭町宣言に基づく自立できる町づくりのために、町が推進している具体的な改革、これを幾つか紹介したいと思います。

 まず、町長、助役、収入役、教育長、この給与と、一般職で最高額の総務課長、この給与を同列にした。特別職の方を下げて一般職の最高額に合わせちゃった。一般職の最高額をもらっている総務課長ぐらい役場で忙しい人間はいない、責任も重い。特別職はそこまで下げようではないかということにしてしまったわけですね。あるいは、町職員を、現在は八十三人、これでも類団から比べると少ないそうです。八十三人から今後は五十人台に順次削減をしていく。あるいは、町の部局、七課を四課に削減する。収入役は今後廃止をする。学校給食センター、デイサービスセンターの外部委託をする。審議会委員の報酬の原則廃止。町議会定数を十八名から十名に削減。これで七項目になるわけですけれども、このほかにも、職員の自宅を出張役場として、ここでサービス業務を行うなど、さまざまな改革が実施に移されておりました。

 合併せずに自立の道を歩む、そのためにこのような改革を断行して、合併しなくてもやっていける体制をつくる。これはもう心意気だけではないわけですね、現実にやっているわけです。何とすばらしいことではないか、もうつくづく思いました。これこそ地方自治のあるべき姿と私は思いますけれども、大臣、いかがでございましょう。

麻生国務大臣 合併しないといえば最低限それぐらいせにゃ合併しないでやっていけぬというのははっきりしておられるからそうなんだと思いますので、私も、その点に関しては、これは金田先生、正しいと思いますし、アメリカなんかの町長を見て、町長無給なんというのもありますし、それぐらいの町でしたら町会議員は三人ぐらいしかいない、三人全員無給、皆回り持ちで町長をやるとか、いろいろなのがほかにもありますので、そこのところは、その人たちの心意気はよしと申し上げているのはそういうことです。

 ただ、これからの話で、国から来る情報とか県から来る情報とかいうものは、全部インターネットで流れてくることになりますので、そういった点を含めて、いろいろな意味でさらに合理化ができて、バックオフィス含めてさらに合理化できないはずはないかなと思って、今ちょっと伺っていたのです。

 ただ、他の町を見ていますと、一つの課で三つ、下手すれば四つか五つぐらいの県庁の課を一つの課で受けていることになりますので、その書類を、行ってみると、大体読まずにそのまま積んであるというのが実態のところが多いように思います、随分あちこち行きましたので。

 これが、いや、送った、送っていないという話は、これはインターネットで、ちゃんと、きちんと送信済み、受信済みというのが出ますので、そういったところを含めて、さらにそういったところをやるというようなことを含めまして、それだけやって行政の方のサービスをいかに維持するかという、その行政サービスを最低限維持するというところが課題として一番残るかなという感じがいたします。

金田(誠)分科員 矢祭町は、行政的にも、やはり職員のレベルもかなり高いのではないかな。会話を交わしていてそんな印象を、私、受けてまいりました。

 これは、まあなかなかできないことだなと思った点がいま一点ございまして、これまた御紹介をしたいと思うのですが、議会の定数削減でございます。

 十八名、これはちょっと多いぐらいだったそうです。当初、この十八名を十二名に削減するということで、議会がまとまりかけていた。ところが、その議案を可決する当日になって、さらに削減して十名にしよう、こういうことになって、即日、十名に改正するという議案を可決したそうでございます。

 私がたまたま訪問した日は、その翌日が町会議員選挙の告示日というときにたまたま行きました。あしたから選挙ですということを伺いまして、この十八名から十名に大幅削減に伴って、議長さん初め七名の議員の方が勇退する。この議長さん初め勇退する方は、選挙に強い方だそうです。もう何期かやってこられた、そういう方が率先して後進に道を譲る。自分らが定数削減したんだということで、勇退をされる。新しい方も恐らく出たんでしょう。新たな議会が、今、選挙が始まるという話を聞いてきました。

 これまたなかなかできないことだなと、つくづく、もうびっくりしましたですよ。これは、町長さんも町長さん、議会も議会だ。ただ者でない。後でまた、次、住民の話もいたしますけれども、すごいところだな、ここまで民主主義というものが根づいているのかというふうに、私はびっくりして帰ってまいりましたが、この議会の話を聞いて、どうでしょう。

麻生国務大臣 議員の定数の話は、これは、例えば選挙区の区割りが変わるとどういう騒ぎになるかは、国会でも、世界じゅうどこでも皆同じだと思いますけれども、今言われた中で、矢祭町の方々が、率先して引退をされて、削減率約四十何%ということになろうかと思いますが、そういった形で言う議会があるから、町長もその種のことが言えるということなんだと思いますので、その点に関しましては、その心意気はよしと最初に申し上げたとおりであります。

金田(誠)分科員 また、町長さんは次のようにも話しておられました。

 改革により、一億三千万円削減した。議員定数削減だけで三千万円になる。特別職四人の報酬を総務課長に合わせた。町長は一千百万から八百四十万になったが、これで十分だ。一番大きいのは人件費、欠員不補充で節減する。これで合併しなくてもやっていける。町長さんはこうおっしゃっておりました。

 一方、このような改革をやっても、行政のレベルは落としていないということを、私、痛感してきたわけですけれども、自立推進課というのがありまして、そこはグループ制になっていて、グループ長、昔、係長だったんですが、グループ長ということで、しかし、給料は同じなんだそうです、係長みたく上がらないというふうに言っておりましたが、このグループ長は、組合の委員長さんもお一人、グループ長に就任しておりました。そのグループ長である組合の委員長さんの話でございます。

 人件費は現在八億円台のところ、将来の三十人削減で二億四千万円の削減になる。公債費は過疎債や辺地債が大半で、償還しやすい内容である。高齢化率二九%、結構高いです。特養八十床、デイサービス二カ所、ケアハウス三十床を持っている。しかし、町の政策もあって元気老人が多い。介護保険料は千九百四十円、全国で八番目に低い。こういう話を紹介してくださいました。

 これは大したものです、レベルとしても。という感を深くして、私は帰ってまいりました。もう町長さんの考え方といい、行政のレベルといい、実にこれは立派なものだ、こう思うわけです。

 大臣、どうですか。これは、今までの先入観を少しでも変えていただいて、これはもう素直な目で現実の矢祭町を見てほしいという思いで、私、申し上げているのですが、どうですか。

麻生国務大臣 この種の話をやられる町長さん、またできる環境というものは、やはり今言われたようなことができるという前提がなきゃ言えるはずはありませんから、そういった意味では、最初に申し上げたとおり、それを言えるだけの環境を、町長が自分でつくったのか、前からそういう見識の高い人たちが町会議員でおられるのか、日本じゅうそういう町会議員ばかりだったら、世の中大分違っているだろうなと、それはいろいろ感想は持つところであります。

 基本的には、今申し上げたように、その人たちがいずれ交代されていくことになるのですが、その方たちが交代された後、どうなるのか。私ども、どうしても長期に物事を見ないといかぬ立場におりますので、二十年たちしたときにはどうなるかなという感じがいたしますけれども、今、そういった段階で、きちんと、赤字じゃなくて、会社でいえば経営していくことになりますので、その経営状態が、それだけ人員削減し、行政サービスも落とさず、給与も下げて、そして黒字で転がっていけるということなのであれば、それはそれで結構なことなんじゃないでしょうかとは思いますけれども、ただ、住んでいる住民は、ある日突然にばたっとだめになったときに、話が違うということになる確率も、これはゼロじゃないかなと、正直、聞いて持った感想です。

金田(誠)分科員 その心配には私は及ばないのではないかな、こう思ってまいりました。評価していただいてありがたいと思っております。

 その町長さんが、国に対して苦言を呈したことが一つだけある。それは、矢祭町は国に逆らっていない。否定もしていない。我が国の財政事情は認めている。望むところではないけれども、共同責任だと考えていると。ところが、こうしたときに合併すれば金をくれるというのはどういうことなのか。また、国が倒産しているのに、自治体がまだ金をくれと言うのもおかしい。それは日本の国を思っていない。また、自治体がつらいからといって、そのつらさを住民にはね返すのもだめだと思っている。矢祭は、ほかでやっていないことをやっている。こういう自治体こそ国は大事にすべきでないか。そうすれば国力は上がると。

 本当にもっともな話だな、こういう自治体がふえていけば日本の国は強くなると思いますが、大臣、どうでしょう。

麻生国務大臣 元社会民主党にいらした方の発言とはとても思えぬぐらいだなと思って、僕はちょっと正直、今、経歴を見ていておおっと思ったのですけれども、元自民党におられたのかと思ったのです。

 これは、金田先生今言われておられることは、基本的には、最初に申し上げましたとおりに、全く的を得ていますので、そうしたいと思ってもできないところ、そうしようと思っていない人、やりたくてもできる能力がない人、これは実に、三千もありますので、いろいろな町、村によって状況は違うと思いますけれども、今言われたように、そういった状況を町民が支持しておるという実態というのは、私はそれなりに評価をされてしかるべきなのであって、問題は、それが長く、長期にわたってそれをやっていくだけの町民意識というのは、高齢化率二〇%を超えるというのは結構しんどいところのような感じがしますけれども、そういった点がちょっと少々気になりますけれども、今の段階においては別に特に問題というわけではないと思います。

金田(誠)分科員 誤解をいただかないように申し上げておきたいと思いますが、私は合併反対論者ではありません。合併するもしないも、それはその自治体が地方自治の本旨にのっとって自主的に決めるべきことだ、こういう立場でございます。

 しかし、今日まで国が進めてきた合併推進の政策は、地方自治を否定して合併を半ば強制するというものではなかったのか。その背景には、国の財政破綻と、それと軌を同じくする地方財政の破綻がある。これに対して、地方自治体の規模を合併によって拡大すれば、財政の効率化が実現して財政破綻を回避することができる、国はこういうふうに単純に考えていたように見受けられます。

 しかし、自治体の規模が拡大すれば財政が効率化するということは、何の根拠もないと私は思います。小規模でも矢祭のような町がある。大規模でもその逆のところも多くございます。我が国には古来、大男総身に知恵が云々ということわざまであるわけでございまして、私はそういう面もあると思います。

 加えて、その合併を推進するに当たって、国はあめとむちの政策を用いてきました。合併すれば金はくれるということで、自治体の中央依存の体質をますます助長した、これは残念なことだというふうに思います。一方で、合併しなければ財政が破綻するということを強調されて、矢祭のような自立の道を国はある意味で否定してきた、こう思います。合併すれば金をもらえる、合併しなければ破綻する、この二つの選択肢は、私は選択肢に値しないと思います。この選択肢を選べと言われれば、住民に出せる答えはあきらめるということだけではないでしょうか。そこには住民自治もなければ民主主義もない、こう思います。

 今、全国津々浦々でこのあきらめによる合併が進みつつあります。もちろんそうでない合併もあるとは思いますが、それが多数だとは私には到底思えません。自立の精神と民主主義を失った自治体が金がもらえる合併を選択したときに日本の国はどうなるか。矢祭の町長さんの言葉をかりれば、国力が下がるということになるのではないでしょうか。矢祭の町長さんは立場上抑制した物言いをされておりましたけれども、私ははっきりと言わせていただければ、国が今日まで進めてきた合併政策、これは間違っていると思います。直ちに政策を転換すべきであるというふうに考えます。

 あわせてお聞かせをいただきたいのは、この直ちに政策転換ということは仮に無理にしても、矢祭のような自治体を大事にして、合併しなくてもやっていける自立の精神、そして住民による民主主義、これを奨励する、せめてこういう観点に立って大臣のもとで進めていただけないか、こう思いますが、いかがでございましょう。

麻生国務大臣 基本的には、金田先生、これは明らかに、住民というか、そこにいる場合は町民が決めるというのが今回の地方主権の一番のもとのもとですから、強制するつもりはありません。

 問題は、金が来た、金をどう使うかですよ。僕はそれを、派手な市庁舎を建ててみたり何してみたりすることになったら余り意味がないことになりかねませんので、私どもとしては、そういったいろいろな自分なりの見識を持ってやられる方が出てこられるのは、それはそれなりに、選択はそちらがなすったわけですから、それを支えた議会、それを支えた町民という方の選択の問題なんだと思いますので、私はそれを全然否定するつもりはありません。

 ただ、金をやらないとなかなか合併が進まなかった、いろいろな形がありますけれども、少なくとも合併をすればよくなるはずだった銀行がうまくいったか。例を見ればいっぱいありますよ。拒否した小さな信用金庫、小さな地方銀行の方がよっぽど内容がええ、いっぱいありますよ、そんなもの。だから、そういった意味では、大きけりゃいいというものじゃない、これも確かです。

 ただ、大きくして本当に効率をよくすればその方がよりよいというのは、規模の利益というのがありますので、特にサービスというものをやりますので、そういった意味では、より効率というものは考えにゃいかぬところだとは思います。

金田(誠)分科員 大臣の答弁は正確ではないなというふうに思います。

 というのは、選択肢として示しているのは、合併特例債に乗っかって、交付税の逓減も時間的猶予を得て、こういう中のスキームを選ぶか、それとも、それを選ばなければもうやっていけないよ、この二つなんですよ。第三の道、自立の道、矢祭のような道もあるんだ。それを選択すれば、国も、金は出さないけれども、その他精神的な応援はするんだ、こういう三つの選択肢を示しておっしゃるのであれば、大臣の言うとおりだというふうに思いますが。

麻生国務大臣 それはそれで結構なんだと思います。第三の道というほどなものではなくて、普通、おら嫌だと言うんだったら、それはそれでよろしいので。

 ただ、一人当たり平均的で、全国で、約五千人以下の町ですと行政経費は百三万円かかります。一万人を超えますと一挙に約四十万ぐらいまで下がる、一人当たりの行政経費が。それが平均ですから、ぜひそういった点も御理解いただいて、矢祭みたいに、行政経費が一人頭幾らになるのかは計算できませんけれども、それでうまく、おれは合併しなくても行政経費四十万台に抑えてみせるというなら、それはそれなりに立派な見識だと思います。

金田(誠)分科員 自治体でも家計でも、あるいは会社でも、やりようだと思います。どっちを選択するか、その選択肢はある。それがあたかもないように国が枠をはめてどっちかに誘導するというやり方は、私は違うだろうということを改めて申し上げたいと思います。

 最後に、ちょっと時間をいただいて一分、この話をぜひ聞いていただきたいと思います。

 根本町長さんは、昨年の統一地方選挙の時点で、五期二十年の任期を終えることになったわけでございます。任期中に、今申し上げたような改革にも道筋をつけた、一区切りついたということで、次期町長選には出馬しないという腹を固めて、いよいよ議会できょう不出馬を表明するという日になったわけでございますが、その朝に大変なことが起こったということでございます。不出馬のことを聞いた町民の方々、さまざまな住民団体、婦人会とか消防団とか、そうした方も含めて大挙して町長室に押しかけて、町長を軟禁状態にする。そういう中で、町長さん、何とか不出馬を翻意してくれ、もう一回出てくれという説得が続いて、その中で町長も涙ながらに翻意した。それでは出ようということになったんだそうでございます。

 想像しただけでも、何とすばらしい光景ではないかと思うわけでございます。これこそ、目指すべき二十一世紀の地方自治の姿ではないか。こうした自治体は、私は、恐らく矢祭に限らず全国に少なからず存在するというふうに思います。

 総務省は、今総務省ですが、旧内務省でございました。あるいは自治省という時代もありました。いずれにしても、中央集権的な手法になれてきた役所だと私は思うわけでございますが、そういう中央集権の中でも成長してきた先進的な自治体、これは少なからずある、ただ者ではない状態に育っている、日本の財産だと思うわけでございます。

 大臣としても、あるいは総務省のお役人としても、この辺、あるがままに受けとめていただいて、学ぶべきところは学んでいただきたい、誤解があればぜひ解いていただきたい、そのことを心からお願いを申し上げる次第でございます。

 ちょっと時間が過ぎました。申しわけございません。質問を終わります。ありがとうございました。

今野主査 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。

 次に、松野頼久君。

松野(頼)分科員 松野でございます。大臣、よろしくお願いいたします。

 きょうは、大臣、地方税は地方税でも、固定資産税ではなくて、東京都の豊島区が導入をいたしました放置自転車税についてちょっと伺いたいと思います。

 この税は、もう大臣御承知かと思いますが、平成十五年の十二月九日、区議会で可決をいたしまして、同十九日、総務大臣に対しまして、法定外目的税として、地方税法に基づく協議の申し出があっているという状況であります。そしてまた、この四月には総務省におきましてヒアリングも行われているという、マスコミの報道なんかも多々あって、非常に議論になっている法定外目的税ということであります。

 当然、区議会が多数で可決をしているわけですから、その内容等についてはあくまでも尊重をしなければいけない。しかしながら、今度それが総務省に送られてきて、大臣が同意をするかしないかというところが焦点になっていると私は思います。

 それで、こういう税が出てきた経緯につきまして、総務省としては、まずどういうふうに思われていますでしょうか。

麻生国務大臣 これは目下係争中の話なので、どちらともちょっと言いにくいところなんだと思いますが、松野先生、昔、東京都はたしか銀行でもありましたね、同じ法定外目的税で、結果的にあれはだめになったんですけれども。少なくとも、税の公平が図られているかという点からは、法律家の間でもいろいろ意見の分かれるところ。

 それから、特定の納税者、そこの場合はJRということになろうかと思いますが、特定少数の納税者に義務を課するということになりますので、その意味からいくとちょっとなかなか簡単な話じゃないので、この区がやると、特定の人がねらい撃ちされるというのは、議会だけで決められるというのは極めて危険なところでもあります。

 ここはいろいろ、係争中なところでもありますので、今ここで、大臣の立場としては、これはどうでしょうかねとちょっとなかなか言える立場にはないんですが、そういった点も考えた上で、これは慎重な審議が必要かなという感じはいたします。

松野(頼)分科員 もちろん、地方自治の本旨というものがありまして、どういう税を出してくるかというのはあくまで自治体の判断でしょうから、その中身について云々という部分はないんですけれども、ただ、地方税法の七百三十一条から三十三条まで、法定外目的税をつくるというものに対して、平成十五年の十一月十一日に、総務省の自治税務局長が各自治体に対しまして通知を出しているんですね。「法定外目的税の新設又は変更に対する同意に係る処理基準及び留意事項等について」、大体、指針みたいなものであります。

 この指針の中に、こういう税、こういうところに注意をすべきだという文言が入っておるんです。その第六の「法定外税の検討に際しての留意事項」、その二番目の「その他」というところで、まず、「税の意義を十分理解のうえ、慎重かつ十分な検討が行われることが重要」であると。そして、その(1)に、「地方公共団体の長及び議会において、法定外税の目的、対象等からみて、税を手段とすることがふさわしいものであるか、税以外により適切な手段がないかなどについて十分な検討が行われることが望ましいものである」、要は、税を導入する、課税をする必要があるのかないのか慎重に検討をして、どうしても税でなければいけないという以外は、またそれ以外の方法を考えた方がいいという意味だと私は思うんです。

 また、もう一つ、「公平・中立・簡素などの税の原則に反するものでないこと等のほか、」るる書いてあるんですが、その公平・中立・簡素などの税の原則に反しない、そしてもう一つ、「特に、特定かつ少数の納税者に対して課税を行う場合には、納税者の理解を得るよう努めることが必要である」、これが、大体、法定外税を導入するときのガイドラインみたいなものをお示しになっているんです。

 そのガイドラインとこの放置自転車対策税の矛盾点というのをちょっと幾つかきょうは議論をしたいというふうに思っているんですが、まず、この税は、受益者負担の税なのか原因者負担の税なのか。

 見ると、駐輪場じゃなく、放置自転車を駅の前にとめるから、それは駅が原因者である、だから、駅を所有している鉄道事業者に対して課税をするんですという趣旨なんですね。

 私は、最初、放置自転車税と聞いたときに、自転車を所有している人か、それともそこに駐車をした人にかけるものなのかなというふうに思いましたらば、駅に、鉄道事業者にかけるという。非常に不思議に感じたところでございます。

 そうしますと、今度、地方税、要は、法定外目的税は条例でありますから、条例はあくまで国の法律の範囲内におさまっていなければいけないという理論があるわけです。

 そうしますと、自転車法というのがありまして、その自転車法の第五条第二項では、確かに、鉄道事業者に対しまして、違法駐輪または迷惑駐輪に対しての協力をしなければいけないということを定めているんです。ただ、その隣の第三項では、その周りの官公署、学校、図書館、公会堂等の公益的施設の設置者及び百貨店、スーパーマーケット、銀行、遊技場等の自転車等の大量駐車の需要を生じさせる施設の設置者に対しても、同じような努力義務を課しているわけであります。

 ですから、先ほどのこのガイドラインの課税の公平性というところで見れば、もし鉄道事業者にかけるのであれば、その近隣のそういうその他の施設にもかけることが公平だと私は思いますけれども、大臣、その辺はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、その現場に行っていないのでちょっとよくわからないんですが、ほかに何かいろいろな公共施設があったとしましょうか、そこは全部駐輪場がある、駅だけがないんだ、何鉄道だか知りませんけれども、そこの鉄道会社だけないんだというんだから、おまえら何とかせいという場合に、物理的に場所があるかと言えば、場所もないのにできませんから、そういったいろいろなことを考えないと、ちょっと一概に答弁のしようがないところなんです。

 この中で、やはり納税者の理解を得るというのが、今得とらぬから文句がついておるわけでしょうから、得ていないということになろうと思いますので、そういう意味では、本来の目的は違法駐輪をやめてもらうというのが目的だから、極端なことを言えば、駐輪しそうな場所に全部鉄条網を巻いて絶対駐輪できないようにする、それでもう目的は達することになる。けれども、それはちょっと危険じゃないかとかいろいろなことになりますので、税以外の手段は本当にないかといえば、それはまたちょっと別の話として考えられるんじゃないかなと。

 この駅の状況を見とらぬのでちょっと言えませんけれども、私どもの近くでも似たような、こんな歩道橋の下に、私が散歩するところにこれだけとめられて、私が倒れている自転車を毎朝直したりするのはやっとられぬなと思っているところがないわけじゃありませんから、現実問題として、聞いてみたら、預かり料でも取って駆除すりゃいいじゃないかと思うんですが、自転車の方が安いもんだから、そんな金を払ってまでとりに行かない、また買った方がいいとかいうような話になるよ、お父さんと息子が言うわけ。なるほど、聞いてみると、えらい安い自転車というのは世の中にもういっぱい売っていますので、そういうことにも一つなるんだと思います。

 いずれにしても、ちょっとこの話は、現場へ行ってみないでうかつなことは言えませんけれども、この留意事項に書いてありますように、基本的には、税以外に本当に方法がないのかという点がちょっとまだはっきりしないというところが一番気になるところだと思います。目的は、違法駐輪の排除が目的なんだと思いますので。

松野(頼)分科員 大臣、ちょっと論点がそれましたので戻させていただきますが、今、課税の話なんですね。駅には課税をする、ただ、自転車法の五条三項で定められている、その他の駐輪が発生するであろう施設には課税をしていないんです。要は、駐輪場の設置とかを義務づけてはいるけれども、税の世界でいえば、鉄道事業者には税をかける、その他には税をかけない、そうしますと、このガイドラインの課税の公平性に外れていないかということをもう一回伺います。

麻生国務大臣 ちょっとここらあたりはプロの世界でしょうけれども、何となく外れとりゃせぬかなという勘だけはしますけれども、うかつに言うとそれだけまた足を引っ張って忙しいので、税務局長からちょっと答弁させます。

板倉政府参考人 ただいまの点につきましては、豊島区におきましても、長い検討の期間の中でいろいろと御検討をされているわけでございます。そういうことで、例えば、今の商業施設とか何かについては、自転車法の中なりなんなりで駐輪場をつくらなきゃいけないというような設置義務があるとかなんとかいうようなことを考慮されて鉄道事業者にというような結論に至ったという御説明でございます。

 これに対しましては、当然、鉄道事業者の方から、今、松野先生がおっしゃいますような反論が出されておりまして、私ども、その両方の御意見をいろいろ伺いながら、ただいま検討をしているという段階でございます。

松野(頼)分科員 いや、違うんですよ。今も言いましたように、課税当局として、課税の世界で不平等じゃないですかということを伺っているんですよ。駐輪場を設置しろとか、どうも駐輪場がないと建築許可をおろさないとかいう話を聞いていますけれども、それはまた別途の話で、課税だけを考えたらば、鉄道事業者には課税をして、その他の施設には課税をしないというのは公平じゃないんじゃないですかという論点なんです。それについてお答えください。

板倉政府参考人 そういう御意見もあろうかとは思いますけれども、少なくとも豊島区は、そういうことはないというお考えで今回の条例をおつくりになったわけでございますし、私どもは、今の点がもう一つの論点として、今、最終的にどういう判断をすべきかという検討をするに当たって、いろいろその検討対象にしているということでございます。

松野(頼)分科員 いや、そうじゃなくて、通知をした公平であることということに合っているか合っていないか、イエスかノーかの話なんですよ、これは。課税として公平な課税であるか公平じゃないかという、鉄道事業者には課税をする、自転車法で定められているその他の施設には課税をしない、これが公平か公平じゃないかという、イエスかノーかの話なんです。

板倉政府参考人 これは、環境によりまして、これが公平でないということになる場合もあろうかと思いますけれども、いろいろな条件を考えた場合に、これ自身はそれほど不公平な状況ではないということもあり得るというふうに私は思います。

松野(頼)分科員 そこをもっとはっきり答えてください。これは、ここが非常に大きな論点なんですよ。

 要は課税ですからね。税じゃなければ別にどうでもいいと思うんですよ。これは、協力金だとかそういう名目であれば、別にそこが公平じゃなくてもそれは構わないのかもしれませんけれども、あくまで税です。

 自転車法というのは、第五条の二項では鉄道事業者、三項ではそれ以外の施設、同じ努力目標というものを求めているわけです。そういう範囲の中で、一方では鉄道事業者には課税をする、一方ではその他の駐輪をする施設には課税をしないということが公平ですかという質問ですから、状況とかは関係なく、税の世界で答えてください。

板倉政府参考人 税ということを前提にして私どもも検討しているわけでございまして、御質問の答えは先ほどと同じでございまして、これは、やはりいろいろ環境によりまして、それが不公平だという判断をされる場合もあろうかと思いますけれども、その他のいろいろな条件を考えた場合に、それ自身はそう不公平ではないというような判断もあり得るのではないかというふうに私は思っております。

松野(頼)分科員 ここはどうも押し問答になりますので、もうこれ以上言ってもしようがありませんので、これは、税の世界では絶対に公平ではないというふうに思います。

 そして、原因者負担でありますその原因者が鉄道事業者になっている、だから鉄道事業者に課税をするということになっているわけです。

 では、鉄道事業者が原因であるという根拠がいかがなものなのかということももう一回伺いたいと思うんですが、どうも、豊島区の調査におきましては、調査をしたら、七割が、駅にとめていた自転車は、電車に乗っていた、そういうアンケートがあるから鉄道事業者に課税をするんだと。残り三割は違うというふうに向こうも認めているわけであります。そういう中で、七割分の鉄道事業者だけに課税をするのはいかがでしょうか。

板倉政府参考人 この点につきましては、豊島区の検討の中で、先ほどからも申し上げておりますが、原因はそれぞれのところにあることは事実だろうと思うんです。それで、七割程度が鉄道であるというふうに認定をされているわけでございますが、それはそれとして、では、残りの三割の方はどうなのかということで、それぞれを検討をされた結果、その三割の方についてはそれなりの、要するに自転車の駐輪対策というのをやっているとか、その他いろいろな、そういうことをお考えになって鉄道にと、こういう結論でございます。

 それが適正かどうかということを含めて、現在いろいろ検討をしているということでございます。

松野(頼)分科員 では、その残り三割をその他の施設から取るというなら百歩譲ってまだ公平なのかなというふうに思うんですけれども、残り三割はよくわからないから課税しませんよ、七割はアンケートで出たから課税しますよと。そのアンケートの中身も、聞きましたらば、月決めで駐輪場を借りている人にアンケートをとった。それは、月決めで借りている人はほとんど鉄道ですよ。また、駅のそばにとめていた人に、とりに来たときにアンケートをとったら七割。それは、何時にとったかでも随分違うと思うんですよね、お昼ごろ行けばその辺の買い物している人かもしれませんし。その辺も、原因者負担になるにしたその原因が非常に不明朗だと私は思うんです。それを、鉄道事業者にかけるというのはちょっといかがなものなのかなというふうに思うんです。

 では、その残り三割に課税をしないことに関しまして、七割と三割、これが公平であるかという、そこの見解を伺います。

板倉政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、一応、三割の部分と七割の部分については、豊島区の方ではいろいろと検討されて、その原因、要するに、豊島区が自転車対策として歳出を余儀なくされている、それについての責任がより鉄道事業者の方にあるのではないかということでこういう税をおつくりになったということでございますので、その辺は、鉄道事業者の皆さんがおっしゃっていることなども総合的に勘案をして最終的に判断をしなきゃいけない、こういうふうに思っているところでございます。

麻生国務大臣 これは、松野先生、一般論として言えば、それは放置自転車対策なんだから、その自転車を放置したやつから税金を取るのが最もわかりやすいよ、そんな話。物すごくはっきりしていると思いますね、一般論で言えばですよ。

 ただ、自転車を放置している人を、駐輪場でお金取るところもあるということがわかったから今そう申されているのかと思いますけれども、こういった話が、一般論としては間違いなく私の言ったとおりだし、先生の考えと多分同じなんだと思うんですが、ただ、これはもう既に協議に入っていますからね。

 だから、常識的に言えば、税じゃなくて、鉄道さん、おたくもほかの残りの三割の商業施設と同じように何らかの負担を出してくださいとか、協力金を依頼するというならまだわかるけれども、いきなり飛び越えて税ときているところが、しかも議会で通したというから、何となく、話題提供としてはおもしろいかもしれませんけれども、現実問題としてはどうかねというのが率直な実感ではあります。

松野(頼)分科員 私は個人的に、これはいい悪いを言う立場にないと思いますが、やはりこれがちゃんと同意をするかしないかという総務省の判断に来たときには、ぜひ、これは前例として同意をしないでいただきたい、不同意にしていただきたいというふうに思いまして、きょうはこうやって質問をしているんです。

 地方税法七百三十三条では、不同意の事項というのが三つございます。これのどれに当てはまるんだろうなというふうに私も考えました。きょう、国交省から来ていただいているんですが、自転車法を所轄するところでもありますし、鉄道事業を所轄するところでもあるので、その鉄道事業を所轄する国交省の立場から、総務大臣が不同意をする、同意をしない条件の一つに、「国の経済施策に照らして適当でない」という項目があるんです。

 これが国の施策として、鉄道事業の中で、国交省の立場としてはいかがかなと思うんですが、例えば、豊島区だけで、この放置自転車税で、五社か六社かの鉄道事業者に約二億円かけるんですね。これがもし全国に広がって前例ができたらば、どこも放置自転車で悩んでいるわけです、ですから、鉄道事業者に対しての莫大な負担が出てくるおそれがある。また一方では、例えばJRは、国の施策として、まだまだ特殊会社になって体力がないからということで、さまざまな税の減免措置というのも行われているわけです。

 片やせっかく国の施策で税の減免をしていながら、一方ではこうして自治体の自主課税によって税が取られていくという、私は矛盾だと思うんですが、国交省の立場はいかがでしょうか。

佐藤(泰)副大臣 ただいまの放置自転車の問題でございますが、国土交通省といたしましては、重要な問題として認識しております。

 これまで、自転車法に基づきまして、鉄道事業者に対しまして、自治体等と協議しながら自転車駐輪場の整備促進に取り組むよう指導するとともに、地方公共団体による自転車駐輪場の整備に対しまして、道路事業等により支援を行ってきたところであります。この結果、全国の放置自転車台数は、内閣府の調査によりますと、平成十三年は五十四・一万台と、ピーク時の昭和五十六年度の九十八・八万台の約半分に減少したわけでございます。

 しかしながら、今般の豊島区によります新税導入の動きからもおわかりのように、駅周辺の放置自転車が依然として大きな問題として残されている状況にあります。

 豊島区は、鉄道事業者に対する税導入により放置自転車対策を図ろうとするもののようでございますが、本税については、第一に、自転車法では鉄道事業者の責務として駐輪場の設置に関する努力義務を定めているわけでありますし、税による費用負担を強制することになり、法律の趣旨との整合性の問題、第二は、鉄道事業者のみに課税することによる税の公平性の問題、第三に、本税の導入を契機として他の自治体等でも同様の課税が実施された場合、全国の鉄道事業者の経営に及ぼす大きな影響等の問題があると考えております。

 したがいまして、国土交通省としましては、放置自転車対策につきましては、引き続き、鉄道事業者に対し駐輪場の整備促進に積極的に協力するように指導するとともに、関係者と協力して自転車駐輪場の整備促進に一層努めることにより解決を図るように努力しているところでございます。

 以上でございます。

松野(頼)分科員 はっきり、税導入には反対だと言ってください。

佐藤(泰)副大臣 ただいま申しましたように、好ましくないと思います。

松野(頼)分科員 大臣、確かに、地方自治の本旨、そして今、三位一体の改革で非常に各自治体が苦しい状態になってきているので、法定外税の創設というのが全国で始まるかと思います。

 法定外税で自主課税権だというのは私はいいと思うんですけれども、ただ、あくまで、このガイドラインをせっかくつくられているわけですから、ある程度このガイドラインに沿って、そして、今回のこの一件でちょっと調べてみましたら、総務大臣が同意をしない不同意要件も、もう少し明確に次の改正のときにはうたわれた方がいいのではないかというふうに私は思います。

 といいますのは、やはりなるべく浅く広く、そして受益者負担の原則というのが税にはあるわけですよね。それで、無理やりその原因、今回、どうも新税を見ていると、原因者負担で、取りやすい企業から取っている税というのが非常に多いんですね。産廃税もそうでしょうし、そしてまたミネラルウオーター税なんかもそうでしょうし、さまざまな企業から、収益の上がっている企業からねらい打ちをして課税をするという方式にどうも走っております。

 当然、自治体の長も選挙をするので、なるべく住民から嫌われたくないという心理もあるのかもしれませんけれども、やはり課税に当たっては、もう少し総務省で、法律の中で、こういう税の基本的理念、そしてまた浅く広く多くの方から、または受益者から負担をしてもらう、そういう原則を地方税法に書き込まれた方がいいのではないかというふうに私は思います。

 同時に、横浜市の馬券税というのも、不同意をしている案件がございますので、どうかぜひ今回のも不同意をしていただいて、そして対処をしていただきたい。よもや、もう面倒くさいから司法に任せて、裁判でいって、裁判で結果を出してもらえばいいじゃないかというような態度をぜひとらずに、国権の最高機関として、また総務大臣も、同意をしたという責任が裁判に持ち込まれると出てまいりますので、どうか慎重に検討をしていただきたい。そのことを最後に一言だけ答弁いただいて、終わらせていただきます。

麻生国務大臣 当然です。

松野(頼)分科員 ありがとうございました。

今野主査 これにて松野頼久君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

 次回は、明十八日午前九時二十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十六分散会


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