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第1号 平成20年4月21日(月曜日)

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本分科会は平成二十年四月九日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

四月十八日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      石原 伸晃君    木原  稔君

      西銘恒三郎君    福井  照君

      福岡 資麿君    金田 誠一君

      寺田  学君    松本  龍君

      横光 克彦君    谷口 和史君

四月十八日

 横光克彦君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十年四月二十一日(月曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 横光 克彦君

      木原  稔君    土屋 正忠君

      西銘恒三郎君    平口  洋君

      福井  照君    福岡 資麿君

      小川 淳也君    金田 誠一君

      後藤  斎君    田島 一成君

      松本  龍君    谷口 和史君

   兼務 西本 勝子君 兼務 林   潤君

   兼務 古屋 範子君 兼務 玉沢徳一郎君

    …………………………………

   総務大臣         増田 寛也君

   財務大臣         額賀福志郎君

   文部科学大臣       渡海紀三朗君

   防衛大臣         石破  茂君

   財務副大臣        森山  裕君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       斉藤 邦俊君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       榊  智隆君

   会計検査院事務総局第一局長            諸澤 治郎君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   会計検査院事務総局第五局長            高山 丈二君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化推進室長)          木下 信行君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           岡崎 浩巳君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  橋口 典央君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    加藤 治彦君

   政府参考人

   (国税庁次長)      佐々木豊成君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          金森 越哉君

   政府参考人

   (文化庁次長)      高塩  至君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局企画部長)         飯高  悟君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 平工 奉文君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   政府参考人

   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君

   政府参考人

   (公営企業金融公庫総裁) 渡邉 雄司君

   政府参考人

   (国際協力銀行総裁)   田波 耕治君

   政府参考人

   (日本政策投資銀行総裁) 室伏  稔君

   参考人

   (日本郵政株式会社取締役兼代表執行役副社長)   高木 祥吉君

   参考人

   (日本郵政株式会社常務執行役)          伊東 敏朗君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

   文部科学委員会専門員   佐久間和夫君

   安全保障委員会専門員   板垣 芳男君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  石原 伸晃君     土屋 正忠君

  木原  稔君     平口  洋君

  金田 誠一君     後藤  斎君

  寺田  学君     田島 一成君

  松本  龍君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  土屋 正忠君     石原 伸晃君

  平口  洋君     木原  稔君

  小川 淳也君     松本  龍君

  後藤  斎君     金田 誠一君

  田島 一成君     寺田  学君

同日

 第一分科員古屋範子君、第三分科員西本勝子君、玉沢徳一郎君及び第四分科員林潤君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計歳入歳出決算

 平成十八年度特別会計歳入歳出決算

 平成十八年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十八年度政府関係機関決算書

 平成十八年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十八年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、国際協力銀行、日本政策投資銀行、文部科学省及び防衛省所管)


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     ――――◇―――――

横光主査 これより決算行政監視委員会第二分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました横光克彦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行、国際協力銀行、文部科学省所管及び防衛省所管について審査を行います。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十八年度決算外二件中、本日は、文部科学省所管、防衛省所管、総務省所管、公営企業金融公庫、財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 これより文部科学省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。渡海文部科学大臣。

渡海国務大臣 平成十八年度文部科学省所管一般会計及び電源開発促進対策特別会計の決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、文部科学省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額二百三十九億七千八十四万円余に対しまして、収納済み歳入額は三百六十三億二千四百五十九万円余であり、差し引き百二十三億五千三百七十四万円余の増加となっております。

 次に、文部科学省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算額五兆三千四百十二億八千二百二十二万円余、前年度からの繰越額千四百七十六億八千五百六十万円余を合わせた歳出予算現額五兆四千八百八十九億六千七百八十二万円余に対しまして、支出済み歳出額は五兆一千九百四十二億九千六百三十万円余であり、その差額は二千九百四十六億七千百五十一万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は二千七百二十七億六千四百五十八万円余で、不用額は二百十九億六百九十三万円余となっております。

 次に、電源開発促進対策特別会計のうち、文部科学省所掌分の歳出決算について御説明申し上げます。

 まず、電源立地勘定につきましては、歳出予算額三百二十三億六千七百七十四万円余、前年度からの繰越額三億五千八百四十四万円余を合わせた歳出予算現額三百二十七億二千六百十八万円余に対しまして、支出済み歳出額は三百億三百二十一万円余であり、その差額は二十七億二千二百九十七万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は三億三千九百四十二万円余で、不用額は二十三億八千三百五十四万円余となっております。

 次に、電源利用勘定につきましては、歳出予算額千三百十三億五千四百三十二万円余、前年度からの繰越額百二億六千五百五万円余を合わせた歳出予算現額千四百十六億千九百三十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は千三百四十二億六千七百六十万円余であり、その差額は七十三億五千百七十七万円余となっております。

 このうち、翌年度へ繰り越した額は五十七億九千三十七万円余で、不用額は十五億六千百三十九万円余となっております。

 以上、平成十八年度の文部科学省所管一般会計及び電源開発促進対策特別会計の決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院鵜飼第四局長。

鵜飼会計検査院当局者 平成十八年度文部科学省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十六件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項の結果一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一四号から二九号までの十六件は、補助事業の経理が不当なものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、私立大学等経常費補助金(私立大学教育研究高度化推進特別補助)の算定に関するもの、その二は、芸術創造活動重点支援事業等における支援額の精算に関するものであります。

 これら二件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十七年度決算検査報告に国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報について意見を表示した事項を掲記いたしておりますが、その結果についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。渡海文部科学大臣。

渡海国務大臣 平成十八年度予算の執行に当たりましては、予算の効率的な使用と経理事務の厳正な処理に努力したところでありますが、平成十八年度決算検査報告において会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 御指摘を受けました事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例の発生を未然に防止するため、より一層指導監督の徹底を図ったところであります。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして文部科学省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林潤君。

林(潤)分科員 自由民主党の林潤です。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。また、地元より送っていただきました神奈川四区、鎌倉、栄区、逗子、葉山の皆さんに心より感謝を申し上げまして、質問を始めさせていただきます。

 まず初めに、歴史的文化財の保護について質問させていただきますが、私の地元、鎌倉市におけます歴史的文化財のことです。

 私が住んでおります鎌倉市大町地区に、鎌倉幕府の初代将軍源頼朝の妻政子の父であります北条時政のやかた跡とされる遺跡の地があります。二十数年前までは、所有者の好意で敷地が一般開放され、花見なども行われておりましたが、所有者がかわりまして、それからは閉鎖されて、最近は、その土地を取得した業者による宅地開発の構想が明らかになりまして、地元自治会、住民も開発に反対し、現在、保全運動を始めております。

 私も先日、実際に現地を見て回りましたが、北条時政邸とされる遺跡にはやぐらが複数ありまして、中には中世のものと見られる仏像、そして五輪塔などが残されておりました。また、やぐらの掘られた断崖と反対側のがけがつながっている切り通しは、北条時政邸の裏門という仮説もありまして、一目見まして、これは開発によって失ってはいけない貴重な歴史的遺産である、こういったことが見てとれました。

 さらに、この庭からは十四世紀の宋や元の時代と見られる中国の青磁の大皿が三枚発掘されておりまして、国の重要文化財として上野の国立博物館に収蔵されております。もっとも、この大皿は庭師が見つけたために、正確な場所や地層がわからないことになっておりますけれども、周辺から出土したことは間違いありません。

 私は、地元民の一人といたしまして、この北条時政邸とされる遺跡を国の史跡に指定してもらいたいと考えますが、国の史跡は文部科学大臣が指定をいたします。全国で約千六百カ所あるうち、鎌倉には二、三十カ所も集中しているということで、我が国の歴史を考える上で極めて重要と思われるものが国の史跡に指定をされると聞いております。

 そこで、大臣にお尋ねをいたします。この極めて重要であるというような判断基準はどこにあるのでしょうか、また、保護すべき文化財とそうでない文化財はどこで線引きをすべきか、考えをお聞かせください。

渡海国務大臣 委員が御指摘になりましたように、文化財というのは、国家にとってもそうでありますし、また、委員が御指摘になったような史跡というものは、地域にとっても大変、当時の生活をかいま見たり、また地域が歴史や文化というものをはぐくんでいく、そういう点で非常に重要であろうというふうに考えております。

 委員の御質問は線引きということでございますが、これは基本的には、やはり学識経験者なりさまざまな専門家、そういった方々の御意見をいただいて、文化審議会、そういうところで審議をしていただいて、ある種の線引きをしておるということであろうと思います。

 ただ、なかなかこれは難しいところがあるというふうに私は日ごろから正直思っておるところでございますが、やはり当時の文化財として、それが地域に対してどういう影響を持っていた、また日本の歴史、日本の文化、そういうものに対してどういう意味を持つのか、そういった点が中心になってしっかりと審議がされるというふうにならなければいけないというふうに思っておるところでございます。

 国といたしましては、そういった基準に基づいて、そういった御意見をいただき指定をさせていただくわけでございますが、しっかりとした調査も行い、また保存にも努めるということが大事であろうと思いますし、なお将来、そういった歴史的な文化財というものがしっかりと保存をされるということに対して、我々も努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。

林(潤)分科員 大臣の、調査、保全に努めて、努力をしていきたいというところを、ぜひこの鎌倉の、新しく今開発をされようとしている、もめているところ、考えていただきたいなということを思っております。

 今回、このように現行の文化財保護に関する法律とか理念と、宅地開発の業者との利害が反している場合があるわけですよね。そして、こうした反した場合に、史跡を本当に守り切ることができるのかということです。もし現行法で史跡が守れない場合はどのように対応していくつもりなのか、お聞かせ願います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から今お話ございましたけれども、文化庁では、史跡につきましては、発掘の調査等を行いまして、今大臣からお話ございましたけれども、歴史上、学術上の価値のあるものにつきましては、文化財保護法の規定に基づきまして史跡に指定いたしまして、その保護を図っているところでございます。

 また、その際に、同じ文化財保護法の第百十一条第一項というのがございまして、史跡等に指定するに当たりましては、「関係者の所有権、鉱業権その他の財産権を尊重する」とされていることから、所有者の同意を得た上で史跡の指定を行っているという経緯がございます。

 また、この同意を得るに当たりまして、地方公共団体がその史跡を公有化する場合につきましては、文化庁として、地方公共団体の公有化に必要な経費の八割の補助を行っているという制度も設けまして、支援を行っているところでございます。

 したがいまして、史跡の指定と所有者の関係でございますけれども、現在は、全国的に見て幾つかの問題も起こっておりますけれども、私どもとしては、今申し上げた公有化の手法なども使いながら、地方公共団体におきまして粘り強く交渉を重ねまして、理解を得ていきたい、そのために努力をしていきたいというふうに考えている次第でございます。

林(潤)分科員 ぜひ粘り強く交渉して、保全に努めていただきたいと思います。

 それでは、この北条時政邸とされる遺跡につきまして、今後の展開についてお聞きをいたします。

 遺跡のある場所は、古都保存法第六条の歴史的風土特別保存地区に指定されているため、木の伐採や採掘をされる心配はありませんけれども、周辺のがけにも、やぐらに関連すると思われる貴重な史跡がたくさん見られます。しかし、古都保存法第四条の歴史的風土保存地域で風致地区条例による風致地区だった場合、この場合は制約があっても開発は可能でありまして、やぐらも、記録保存のために発掘調査をするとして破壊をするというおそれがあります。

 しかし、それでいいのかというふうにいいますと、私は断じてやぐらが破壊されることはあってはならないと思います。これは、鎌倉時代を考証するためにも貴重な史跡であり、人類共通の財産だと言っても過言ではありません。

 そこで、業者に工事中止を求めるには、国の史跡の指定を受ければいいと聞いておりますが、指定を確実に受けますには、周辺から国指定の文化財を発掘する必要があると聞いております。こういった認識でよろしいんでしょうか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からお話ございました北条時政邸跡につきましては、古都保存法によりまして、山稜部につきましてはその開発が難しいわけですけれども、平たん部につきましては、条件が整えば開発が可能ということになっているわけでございます。

 先生からお話ございましたように、この北条時政邸跡につきましては、現在に至るまで本格的な発掘調査が行われていないといった実態がございます。したがいまして、私どもが伺っておりますのは、鎌倉市の教育委員会におきましては、当該地におきます遺構の内容や保存状況を確認するための発掘調査を早期に実施する必要があるというふうに判断しているというふうに伺っておりまして、文化庁といたしましては、この発掘調査が行われる場合に、二分の一の支援を行いたいというふうに考えているわけでございます。

 文化庁といたしましては、この鎌倉市が実施します発掘調査の成果につきまして、神奈川県の教育委員会と連携いたしまして、専門家の意見を伺い、検討を行い、適切に対応してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

林(潤)分科員 関連して、だとすれば、やはり市の教育委員会が試掘をしなくてはならないということですけれども、試掘作業の間は工事を休止するという認識でよろしいんでしょうか。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 その件につきましても、市の教育委員会といわゆる開発業者の間で十分な話し合いを行いまして、当然に調査を行っている間は工事というものはできないわけでございまして、しかもこの地は、先生も御案内かと思いますけれども、いわゆる周知の埋蔵文化財包蔵地という指定がございまして、これにつきましては、開発を行う前に一定の発掘調査を行うということが求められておりますので、当然、市と業者の関係になりますけれども、その辺のことも十分周知しながら適切に対応が行われていくものというふうに考えております。

林(潤)分科員 確かに、そういうお言葉を聞いて、しばらくはきちんとやはり猶予をいただいた、そういう認識で私もおります。

 こうした試掘に関しまして、先ほどおっしゃいましたように、文化庁が費用の五〇%を負担しておりますけれども、国指定の史跡に指定をされまして、最終的に遺跡として保存をする決定が出た場合、国はどのように対応をしていくのか、買収という形になってくれるのでしょうか、お聞かせ願います。

高塩政府参考人 お答え申し上げます。

 史跡に指定された場合には、先ほども申し上げましたけれども、いわゆる市町村が公有化というか、市の土地にするという場合に、その八〇%を国として補助をするという仕組みがございまして、これは単年度でやる場合もございますし、また、大がかりなものですと何年かに分けて公有化を図るということがございますけれども、いわゆる八割補助ということで、財産権の保障の裏打ちという形で私ども支援の仕組みをつくっているところでございます。

林(潤)分科員 この質問を通じて大体歴史的文化財の流れの方を伺わせていただきましたけれども、このように鎌倉時代の貴重な史跡でございますので、文化庁、文科省全体としてもきちんと見据えて、いたずらにこの法律の抜け穴を縫って宅地開発業者によって住宅がつくられ、そして歴史的文化財が破壊されるというようなことをみすみす看過なさることがないように要望いたしまして、この質問から次に移らせていただきます。

 次に、学校教育について質問をさせていただきます。

 平成十八年の十二月に成立した教育基本法によりますと、第一章の「教育の目的及び理念」に、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」とあります。文科省は、これに基づき、小学校国語科の改訂ポイントについて、ことわざ、故事成語、伝説、古文・漢文の音読など古典の指導を充実と目標設定をいたしました。新学習要領も新たに加筆をされまして、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」ということが記されました。

 日本語を充実させるということは、方向性として正しいと私は思っております。しかし、肝心なのは、日本語の基礎となります五十音図のことについてであります。

 私の祖父で洋画家の林武は国語問題協議会の会長をしておりましたが、こうした活動で国語教育の充実に力を入れてまいりました。私も、祖父の遺志を受け継いで、一国会議員として国語教育の向上を目指したいと考えておりますけれども、戦後の国語改革によって五十音図が破壊されてしまったという認識を持っております。わ行内のゐとゑが欠けており、五十音図に穴あきがあります。当然、戦前に生まれてこの字を使う方の名前を表記するのにも問題があります。また、このゐ、ゑについては、あ行とわ行は発音が同じでも音質が違います。

 国語の成り立ちや文法を学ぶ上からも、五十音を正しく理解することは極めて重要だと考えますが、大臣は現行の五十音図で問題ないというふうにお考えでしょうか。見解をお聞かせください。

渡海国務大臣 教育基本法が改正をされまして、その中にも新しい理念として、公共の精神や、それから命や自然を尊重する、環境を保全する、また伝統文化、こういったものを尊重する、こういった新しい理念が加えられたわけでございます。そういった趣旨に基づいて、このたび、三月に学習指導要領の改訂をさせていただいたところであります。

 現行の学習指導要領においても、古典の学習においては、小学校では五年生、六年生において「易しい文語調の文章を音読し、文語の調子に親しむ」、こういうこともあるわけでございますし、中学校で「古典としての古文や漢文を理解する基礎を養い古典に親しむ態度を育てる」、こういうことを規定しておるわけでございます。これは新しい指導要領においても同じことでございます。

 また、義務教育の学校用の教科書検定基準というのがございますが、この中において仮名遣いの表記について、文語文において、原則として歴史的仮名遣いを用いるものとしており、そういった意味で、今、義務教育段階の教科書でも歴史的仮名遣いにより古典の作品が掲載をされております。

 こういったことを通じて、仮名遣いについて教材に即して必要な範囲で適切に指導する、これは中学でございますが、としておりますし、いろいろな意味で、そういった、今先生が御指摘をいただいたような、音も含めた教育というものがしっかりとやれるように学校現場では指導しておるところでございます。

林(潤)分科員 くどくなるようで申しわけないんですけれども、五十音図は今、わ行のゐとゑが抜けているんですよね。これについて復活させるお考えというのは、あるいはそれを、検討を学者間で盛り上げるような、そういったお考えはないんでしょうか。

渡海国務大臣 指導要領で今も申し上げましたような記述がされておりますので、現場ではしっかりと教育がされているというふうに承知をいたしておりますが、なお、今、そういった先生の御指摘も踏まえて、もう既に学習指導要領は出しておりますので、それに加えてどういった指導をきっちりとやっていったらいいかということを我々としても検討させていただきたいというふうに考えます。

林(潤)分科員 ぜひ、そういう立派な指導要領ができたものですから、現場でやらなければ意味がないと私は思っています。私が今これから質問するほかの問題についても、理念とか要綱の方は非常に立派なものを持っていても、現場の教育の方で徹底をしていませんと本当にもったいないことになってしまいます。ですから、まず五十音に関しましては、国語は日本の基礎です、やはり美しい言葉を使って自国を尊重してこそ他国の尊重もできると私は思っていますので、日本語教育の一層の充実、よろしくお願いしたいと思っております。

 先ほどのと重複をするところもございますけれども、私は五十音図を中心に考えておりまして、古典の指導ということをちょっと別にして考えますと、正仮名遣いの問題と現代仮名遣いの問題にも発展してまいります。

 現代仮名遣いというのは文語に適用しないことになっておりますので、先ほど大臣おっしゃられましたように、中高で古典を学ぶときには正仮名遣いというものが出てくるわけでありまして、口語は現代仮名遣い、文語は正仮名遣いと使い分けるところに、私は実はこれは無駄もあるんじゃないかと思いますし、敬遠される原因にもなるんじゃないかと思います。

 初めから学校教育で正仮名遣いを教えていれば二度手間にもなりませんし、頭のやわらかい子供たちが原文で夏目漱石、森鴎外、こうした作品を読みこなしていけば、原文のよさを味わうことができるんじゃないかと思います。これこそ国語教育の真髄ではないかなと私は思っているんですけれども、学校教育で一貫して正仮名遣いという正しいものを教える必要があると私は考えますが、大臣の見解をお聞かせください。

渡海国務大臣 繰り返しになりますが、今、そういった文語に関して学校現場ではきっちりと指導するようにということを指導要領にも書いてあるわけでございますし、また、新しく改訂をさせていただきました指導要領、これにつきましては今年度一年かかってしっかりと学校現場に周知をするということを考えているところでございまして、そういった中でしっかりとそういったものを教えていきたいというふうに思います。

 今、委員の問題意識、正仮名遣いという言葉をお使いになりましたが、そのことについては、これはちょっと私、中教審の議論がどうなのかを今即座にお答えはできないわけでございますが、そういったいろいろな議論を踏まえて、実際は現場で、古典という扱いにはなっておりますけれども、しっかりと指導しておるわけでございますから、どういったやり方がいいのか、それにつきましては再度、今後の検討課題として受けとめさせていただきたいというふうに考えております。

林(潤)分科員 ぜひともこれは検討課題として強力に推進していただきたいなと思っております。

 現代の乱れた国語を正していくには国語教育からだと思いまして、いたずらに簡便化と合理性を求めるだけの国語の改悪、これは今は少しずつ戻ってきていると思っております。ただ、戦後のしばらくの間ずっと続けてきてしまったこの反動を今少しずつもとに戻しているんだと思いますけれども、こうした国語政策については、国語問題の研究機関をさらに強化いたしまして、広く有識者の意見に耳を傾け、それによる十分な研究調査に基づいて推進してほしいと要望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。

 次に、学校教育における日の丸・君が代の扱いについてです。

 卒業式のシーズンになりますと、国歌を斉唱するときに教員が起立をしなかった、そうした行為をめぐって処分されたなど、国歌をめぐる報道がにぎわいます。こうした事案がニュースになること自体が本来不可思議だと私は思っておりますが、公立学校の卒業式という公の場で学校教員も含め全員が国歌を斉唱するということは、国歌を歌いたくないという教員にとって思想、信条の自由が侵されるということにつながるのでしょうか。そして、国歌を歌わずに着席したままの教員は正しい行為と言えるのでしょうか。大臣の見解をお願いいたします。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校における国歌の指導は、児童生徒に我が国の国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものでございます。

 教育の場におきましてこうした指導を行うということは、教員の内心の自由を損なうというようなものではないと考えております。

林(潤)分科員 思想、信条の自由を損なうものではないというふうにされるのでしたら、君が代の内容について、私は、これはもっと考えなきゃいけないし、国民全体が知るべきだと思っております。

 君が代は日本唯一の国歌でありますし、また歌詞の内容自体も、日本国民とその象徴であります天皇を初め日本国が未来永劫にわたって平和で繁栄がありますようにという実に平和的な内容でありまして、本来、政治判断が介在し得ない問題であると考えます。

 しかし、私自身、小中学校時代、音楽あるいは社会で君が代の歌詞について深く授業を受けたという記憶はありません。今の小中学校の音楽、社会の教科書には、日の丸・君が代について、各国の国旗や国歌を互いに尊重し合うように書かれております。しかし、日本人が自国の国歌や国旗に自信が持てないで、どうして他国を尊重することができるんでしょうか。

 既に国旗・国歌法が制定されてから来年で十年がたとうとしております。法制化されて十年近くたつのに、なぜしっかり国旗や国歌について教育現場で教えるように徹底されていないか、こうした不満を実に私は持っているわけであります。

 そこで、国旗や国歌について、今の教育現場では十分に教えているか、それともまだ不足であるという認識か、御見解をお聞かせいただきたいと思いますし、また、不足だとすれば、何かさらなる対策が必要だと考えているのか、お聞かせ願います。

渡海国務大臣 今の学校現場で、この国旗・国歌の問題、しっかりと指導するように、そういうことは現場に対して我々もしっかりと発信をしておるわけでございます。新しい学習指導要領では、きっちりと歌えるようにすることということも書いたわけでございます。君が代の意味においても、歌詞の意味について小学校で指導も現在もしておりますし、今後もするようにということになっておるわけでございますし、教科書も、小学校六年生の社会科、音楽科、すべての教科書に国歌の意味について記述されているということでございます。

 ただ、記述されていてもしっかりと教えられていなかったら、今委員がおっしゃったような、ちゃんとやっていないじゃないかということになるわけでございますから、今後ともしっかりと指導していきたい。

 それと、私は今一番国旗・国歌について思いますのは、実は私も余り、委員の世代だとちゃんと学校で教えていたんじゃないかなと正直思っていたんですが、我々の世代、歌詞について余り教えてもらったという記憶はありません。ないんですが、しかしながら、国旗・国歌法というものができて、しっかりとこれが位置づけをされたわけであります。当選をした当時にいろいろな野党の方々ともお話をさせていただいて、いや、これは国旗・国歌と決められていないじゃないかという話になったんですね。それが実は法律によってしっかりと規定をされたわけでございまして、そのことで、やはり我々はしっかりとこれを指導していこうというふうになったんだと思います。現場はそうなっているはずでございます。ではどうなっているかと聞かれても、調査をいたしておりませんけれども、しかし、そういうことを前提にしっかりとやっていく。

 何よりも大事なことは、国際社会の中にあってこれがグローバルスタンダードだということなんですね。要は、国家に国旗があり国歌がある、この価値観を何も押しつけるということでなくて、いわゆる国旗・国歌に対して国民が基本的に敬意を表するという行為そのものが国際社会の中において一般的だということを我々は重く受けとめ、そして、子供たちが将来国際社会に出ていったときに、世界の子供が立っているのに日本の子供は座っていたというようなことは、これはやはり恥ずかしいことでありますから、そういった意味においてしっかりと教えていきたいというふうに思っております。

林(潤)分科員 大臣、誠実な答弁、ありがとうございます。

 法制定より十年がたちまして、やはり法整備によりまして正当性というものが確実にできたと思います。日の丸・君が代が国旗・国歌であるということ、さらなる大臣の仕事といたしまして、現場の調査ということを今後きちんとやっていただいて、本当にそれが現場まで徹底されているかということ、それをよく御指導いただいて、日本じゅうが国旗・国歌に対して、それを尊重する気持ちを持って他国とも友好親善、尊重するような、こういう国民の意識がさらにはぐくめますように、ぜひともお願いをしたいと思っております。

 きょうは、本来は教科書の検定のことについても少し質問したかったんですけれども、最後にちょっと要望だけ言わせていただきますが、歴史教育のことについてでございます。

 私は、現代史教育、特に明治維新、ペリー来航、あの十九世紀の歴史から現代に至るまでが極めて大切だと思っております。神奈川県の県立高校が日本史教育の必修化を決めたことはまことに歓迎したいわけですけれども、いまだに全国的には日本史を履修しないで高校を卒業する生徒が何割もいるということをゆゆしき事態だと思っております。世の中の政治的事象、文化的な事象はほとんどが現代史に端を発しているということから、特に、自国の歴史や文化を尊重することなしに相手の歴史、文化を思いやるということは到底かなわないのではないかと思います。

 ぜひとも大臣、大臣のお仕事といたしまして、現代史教育の必要性ということをもう一度新たに考え直していただきまして、現場で、受験があるからとかいう理由で現代史をやらないで卒業する生徒も多いと思います。アメリカと日本が戦争したことも知らない、原爆がどういう意味を持っているかも知らない、沖縄の集団自決の問題も、本当にそんなことがあったのか知らない、だから問題意識さえ起こらない人も実はたくさんいるんじゃないかと思っております。

 こういうような状況をぜひお考えいただいて、現代史教育、さらに徹底を図っていただきたいと希望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて林潤君の質疑は終了いたしました。

 次に、土屋正忠君。

土屋(正)分科員 きょうは、子ども農山漁村交流プロジェクトという新しい画期的なプロジェクトが平成二十年度予算で可決をされ、決定されたわけであります。文科省が中心になって、農水省そして総務省、三省一体となった画期的なプロジェクトが予算に組まれたことをまず大臣に心から御礼を申し上げるとともに、恐らく将来の教育のターニングポイントになるんではないかという気持ちがしておりますので、そういう角度で、さらに進めるという立場で、大臣並びに政府参考人の皆さんに質問させていただきたいと存じます。

 最初に、大臣には現在の子供たちの置かれた状況、そしてなぜ農山漁村交流自然体験プロジェクトのようなものが必要なのかということについての御見解をお尋ねいたしたいと存じます。

 私は、昭和二十年代に小学校を卒業し、昭和三十年代に中学、高校の言ってみれば人格形成期を送ったものでありますが、まだ至るところに自然が残っておりましたし、また非常に貧しい時代でありましたから、すき焼きなんというのがあるともうすっ飛んで帰って、まずしちりんの前で今か今かと母親がつくってくれるのを待っている、そういう経験をしながら人格を形成していった、そういう世代であります。恐らく大臣もそういった御経験がおありだと存じます。

 こういう時代に比較をいたしますと、今日の子供たちをめぐる状況というのは、一見、物すごい恵まれていて、飢えることもないし、生まれながらにエアコンのきいた中にいて、暑さ寒さからも逃れることができるといった、これを恵まれているといえば恵まれているわけでありますし、開発途上国の皆様から見ると、本当にうらやましいような話なんでありますが、しかし、こういう生活様式の変遷といったようなものが決定的に子供の教育に影響を与えているのではないか、このように考える次第であります。

 子供たちの学ぶ意欲が低下している、あるいは何を目標にして生きてよいかわからない、子供たちのひとみが輝いていない、すぐキレる、子供たちが根深い疲労感がある、こういうさまざまな専門家が指摘をする現象の根っこにあるものというのは、私は、第一に物が豊かになった、貧乏という偉大なる教師が去ってしまった。二番目は、先ほど申し上げましたが、エアコンのきいた人工空間に生まれながらにいて、そうして暑い寒い、おなかがすいたといったような、そういう生物としての体験をしていない。また、過度の都市化によって、飛び回れる空間やスペースがなくなった。また、四点目として、核家族化の進行により、家庭の中における切磋琢磨、集団化あるいは会話、こういうものがないためにコミュニケーション能力が極めて衰えている。また、さらにそれを加速したのがIT化の促進、こういった五つぐらいの大きな原因が考えられるんではないか、このように考えております。

 子供の遊びという角度から物を見ても、昔は戸外で集団で体を動かして遊んでいたわけでありますが、今の子供の遊びというのは、私は武蔵野市長時代に何回か子供の生活実態調査をしたわけでありますが、昔は、今から二十年前ぐらいまではプラモデルというのが一位でございまして、二番目がテレビ、三番目が漫画でございました。七、八年前にとったときは、第一位はファミコンであります。第二位がテレビ、第三位が漫画であります。このように、かつては戸外で集団で体を動かして遊んでいたものが、今は室内で一人で指と目と神経だけ動かしている、こういう状態になってきたわけであります。極めて憂慮すべき事態になっている、このように考えているわけであります。

 私、こういった現状認識から、これではだめだ、ちょうど私も子育てをする時代が集合住宅、マンションという集合住宅にいたものですから、遊ぶところもなく、自分の子育ての体験の中からも、これでは子供がだめになると思って、さまざまな試みをやってきたわけでありますが、そのうちの一つが、お手元に資料をお配りさせていただきましたが、セカンドスクールの試みであります。

 セカンドスクールというのは、自然に恵まれた農山漁村に実は一週間、今は一番長い学校では九泊十日という長い期間行きまして、そこで民泊などしながら農業体験をしたり、自然を観察したり、暗やみ体験をしたり、時には地びき網を引いたりといったような極めてリアリティーのある体験をして、そのことによって総合学習をしよう、こういう試みなんであります。

 ここに至るまでには非常に長い歳月がかかったわけでありますが、幸い、教育委員会と校長会の全面的な協力を得て、一九九五年の春から始めたわけであります。既にもう十二年、十三シーズンがたっているわけであります。

 さて、この特徴は、何といっても、夏休み、春休みにやる特別活動ではなくて授業時間の中でやるという、いわゆる正規の授業時間としてやっているところが特徴なんであります。

 こういうことをやった結果、さまざまな現象が出てきたわけでありますが、その典型的なものがお手元にお配りをした資料で、これは武蔵野市の教育委員会の資料なんでありますが、大臣、一番最後のページ、子供や父母の感想文が載っているんでございますが、これをちょっとごらんいただきたいと存じます。

 六泊七日から九泊十日までの間でございますが、子供の感想は、一つだけ読ませていただきますが、三番目に「民宿の人たちは、まるで自分の子どものように私たちのことをかわいがってくれました。民宿の子どもになったような気がして、お別れのときはすごく悲しかったです。」お別れのときに、私とおばさんをつないだテープは今でも大事にとっている。大体、テープなんかを大事にとっているような子供はいないですよね、今は。それはやはり思い出のこもったテープだからであります。

 保護者の感想もいろいろでありますが、ここに書いてあるように、保護者の方も非常に深い感銘を受けているわけであります。

 このように自然の中で農作業をやったり、あるいはブナの木に、その写真、カラーの資料でございますが、ちょうどこれは飯山の天然のブナの中に聴診器をつけて、木が水を吸っているところを観察するという自然観察なんでございますが、こういう体験を通じて、子供たちは心身ともにたくましく、表情のなかった子供が表情が出たり、非常に無表情で、LDだとかそういうことじゃないかというふうに心配していた子供が、そうじゃない、もう泣いたり笑ったり、感情豊かになったりして復活をするわけであります。何といったって、登校拒否していた子供が行っちゃったりして、成長するんですね。もっとも、帰ってきてまた登校拒否になったりするんですけれども。

 それはともかく、そういう過程の中で子供たちが成長していく、こういうことが非常に大事なことだと私は思っております。次の世代が心身ともにたくましく育つための、国を救う根本的な教育だ、私はこのように考えて、かねがね市長時代から、たまたま私も中教審の委員などを仰せつかっておりましたので、そういう場をかりて、長らく主張してきたわけでありますが、幸い、平成十六年から予算をつけていただいて、ことしになって、画期的、飛躍的なことになったわけであります。

 また、さきの学習指導要領の改訂には、小学校の中に自然体験教育という項目を一項目入れていただきまして、ちなみに、中学校では職場体験教育、高校では奉仕体験教育、体験教育重視、こういうことになったわけであります。

 暑い寒い、おなかがすいた、こういう生物としての体験から人とのコミュニケーション能力、こういったことを総合学習する、こういう営みを、十億という予算をつけていただいたことに大変感謝すると同時に、大臣としてどのようなお立場でこれをお進めになろうとするか、自然体験教育の意義と今年度の予算執行についてお尋ねをいたしたいと存じます。

渡海国務大臣 いろいろなお話がございました。

 最近、教育再生会議の後継組織として、教育再生懇談会というのができたのは土屋委員も御存じだと思います。総理がその中でよくおっしゃるのは、最近は物があり過ぎるんだよねということをよくおっしゃいます。これは新聞にも載っておりましたが、携帯電話、この有害情報の問題をこの前議論したときにも、大体持たない方がいいんだよ、こういう発言もあったわけでございまして、物があふれていい部分とかえって失われた部分、ここの部分を我々はしっかり考えていかなきゃいけないんだろうと思っております。

 そのためには、やはり親にしっかりしてもらわなきゃいけないというところもあるんですが、しかし同時に、やはり学校教育でやれることは一体何かという、その中に、今先生がおっしゃったこのセカンダリースクールというものも非常に有効な手段としてあるんだろうと思います。国が腰を上げたのも、まさに武蔵野市のこのセカンダリースクールがあったからというような感じが私は率直にしております。

 やはりこういったことを今後ともしっかりと進めていくことによって、ちょっと話が前後いたしますが、これは、中教審の議論でも、そして学習指導要領の中にも、実験とか体験、見て、さわって、感じて、こういうことを大事にしていこうということも新たに書かせていただいたわけでございますし、今まさにやろうとしております振興基本計画の中にも、この自然体験ということについては、五年ぐらいの間にすべての小学生に体験をしてもらうということを目標として掲げようとしておる、まだ決まったわけじゃありませんから、しておるわけでございまして、そういったことを通じて、子供の豊かな感性、また失われたものを取り返すということをしっかりやっていくことが大事ではないかなと。

 余談の話になりますが、野依先生と実は対談をやらせていただいたときに、理科離れの話でございますが、自然の中に出ていけばそこいらじゅう理科なんだよねという話をされたんですね。例えば、木はどうやって育つのか、ここの木は何で育っていないのか、それは日陰なんだという、こういうことを実体験することそのものが少なくなったことが実は理科離れの一つだという話もございました。

 そういった面においても、時間がありませんから私もこれぐらいでやめますけれども、今後とも、この自然体験というものを学校教育の中でもしっかりと位置づけていきたいというふうに考えているところでございます。

土屋(正)分科員 ありがとうございました。前向きな、積極的な御答弁をいただいて、感激をしております。

 新しく道徳教育も入ったわけでございますが、今から七年ほど前に、東京都の石原知事が「心の東京革命」というのを提唱して、それで七つの誓いなんてやったんですけれども、これは参考のためにお聞きいただければと思いますが。他人の子供もしかりましょうと七つの誓いの中の一つに入っておったんです。そのとき、まだ私は市長でしたが、知事に申し上げたのは、今は他人の子供をしかると刺されちゃう時代なんだ、だから、他人の子供をしかって、その他人の子供がそうだと、言うことを聞くためにはそのような状況をつくらなければならない、それが時には部活であったりあるいは自然体験教育であったりというようなことじゃないかと申し上げたわけであります。

 今年度から新しく入った、道徳を教科にして教科書をつくるかどうかという議論があるわけでありますが、それはともかく、その道徳というものを体験させ、学ぶためには、そういった道徳を支えている社会状況というものをつくらないで、ただスローガンで幾ら教えてもだめだという感じを私は持っております。そのことも含めて大臣にはお心にかけていただきまして、自然体験教育を進めていただきますように重ねてお願いを申し上げておきたいと存じます。

 さて、具体の話として政府参考人にお尋ねいたしますが、農山漁村におけるふるさと体験推進校事業ということで、平成二十年度予算では、四十七都道府県で平均五校、二百三十五校の予算をとったわけであります。現在の応募状況等はどうか。聞くところによりますと、三月三十一日現在で百三十九校、追加公募を行っても百七十一校、こういう状態のようであります。

 応募が少ない原因はどこにあるのか、今後どのように取り組んでいくのか、また、全国展開を目指して新学習指導要領に明確に位置づけられたわけでありますし、今大臣からもお話がありましたように、教育振興基本計画にも位置づけられるという方向になっているわけでありますから、これらのことについて文科省はどう取り組むのか。

 また、平成二十三年四月の学習指導要領の完全実施ということになると、小学校で二万三千校ぐらいが取り組むということになるわけで、この五カ年に対してどのような心構えでいかれるのか、お尋ねをいたしたいと存じます。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 文部科学省におきましては、お話がございましたように、平成二十年度から、農山漁村におけるふるさと生活体験推進校を指定することといたしております。この事業は、全国で二百三十五校のモデル校が指定できるよう予算を確保いたしまして、各都道府県教育委員会等を通じ公募を行ったところでございますが、現時点で百七十一校の応募があったところでございます。

 応募校数が伸び悩んでおります理由といたしましては、例えば、平成二十年度予算が確定した時点では、既に多くの学校が、それぞれ各活動や学校行事等に関する次の年度の予定について調整済みであって、それを変更するということが困難な面があったということ、それから、このモデル事業では、これまで必ずしも広く行われているとは言えない農山漁村での民泊を事業の内容としておりましたことから、この事業実施の理解を得る必要があったということが考えられるところでございます。

 私ども、各都道府県教育委員会などを通じまして今後とも追加募集を行いますとともに、全国の小学校に理解をしていただき、幅広い参加が得られるよう、農林水産省や総務省とも連携しつつ、全国推進協議会の立ち上げや、また、シンポジウムの開催、政府広報、ホームページなどを通じて、このプロジェクトを積極的にアピールしてまいりたいと考えているところでございます。

 今後五年間で、全国の小学校で農山漁村における宿泊体験を含めた長期宿泊体験活動が実施されますように、新しい学習指導要領を踏まえた体験活動の重要性の一層の理解とその取り組みを促していきますとともに、ただいま申し上げましたこのモデル校の指定などを通じまして、その普及に努めてまいりたいと考えているところでございます。

土屋(正)分科員 お答えになっている意味はよくわかります。大体一年前ぐらいに学校行事というのは決めますから、そういうことになりがちなのはよくわかるわけでありますが、逆に言えば、二十一年度が勝負になるわけですね。ですから、その二十一年度に勝負するためにも、今年度できるところをどんどんやって、それで、財務省から予算が残っているじゃないかなんて言われないようにしなきゃだめなんですね。

 ちょっとざくっとした言い方で恐縮でございますけれども、金森局長はずっとこのお仕事に携わってこられたわけですから、ぜひ督励して、何としてもいい成果を出すようお願いいたしたいと存じます。ぜひ大臣からも号令をかけていただきますようにお願いをいたしたいと存じます。

 とりわけ、市町村の教育委員会がどれだけ本気になるか。これは、学校におろして、結局、学校が教育課程を校長のもとに組むわけですから、校長たちが本当にその気になるかどうかということなんだろうと思います。ですから、ぜひ成果を前広にアピールしていただきたいと存じます。

 農林水産省にお尋ねをしたいわけでありますが、農林水産省にとって、ある面では、農村の活性化ということに極めて大きな意義があるんだろうと思います。私も、あちこちに姉妹友好都市などがありましておつき合いをしておりましたし、この間、山口県の中国山脈のところにある限界集落にも行ってまいりました。ここは、四戸しかないという集落で、もう本当に大変だったですけれども。

 しかし、こういうことも含めて、今、農山漁村が、なかなか農林漁業だけでは食べていけない、しかしまた人がいなくなるばかりで人が来ない、こういうことがあるわけですから、少なくとも農山漁村に人が来る、そしてまた、今、一反当たりの稲作というのはせいぜい大体十二、三万でしょう。だけれども、例えば、一反のところに子供たちが来て、一泊五千円で民泊すれば、十人来れば五万円ですから。五泊すれば二十五万円ですから。まあ十人も泊まれるところはないかもわからないけれども、五人ぐらい泊まれるんですから。

 だから、私はかねがね申し上げてきているわけでありますが、第一次産業の第五次産業化。つまり、都会の子供たちに魂の教育をやって、魂を復活させる。これは第五次産業と私は申し上げているんですけれども、第三次産業がサービス業、第四次産業は情報産業とすれば、魂の休養産業に農山漁村を活用できないか。こういうことからしたら、本当に本腰を入れて農山漁村の活性化の大きなばねとしてほしいと思っているんですが、いかがお考えでしょうか。

飯高政府参考人 お答えいたします。

 この子ども農山漁村交流プロジェクトにつきましては、先生再三御指摘のように、子供たちにとって大変意義深いものであると同時に、私どもの所管しています農山漁村の活性化という面におきましても、地域経済への効果、生きがいの創出など、さまざまなよい効果をもたらすものと認識しております。我々、これまでも、都市農村交流というものを進めてまいりましたが、このプロジェクトがそういう位置づけの中で本当に大きな役割を果たすものと認識してございます。

 このため、平成二十年度におきましては、小学生を受け入れる意欲のある地域に対しまして総合的な支援を行うことにより、小学生の長期宿泊体験活動の受け入れをモデル的に実施していくこととしております。具体的には、受け入れモデル地域におけます農業体験などの体験プログラム、あるいは農家民宿などによる宿泊体制の構築といったいわゆるソフト、受け入れ地域づくりですとか、それから、ハード面では、廃校などを活用した受け入れ拠点施設を整備していく、こういったものに対しても支援を行ってまいりたいと考えてございます。

 これらの取り組みを通じまして、文部科学省、総務省とも十分な連携をとりながらプロジェクト全体を円滑かつ着実に推進いたしまして、全国的な取り組みへ向けてしっかりと対応してまいりたいと考えてございます。

土屋(正)分科員 ぜひ受け入れ側のお立場として環境整備をすると同時に、やわらかく、いろいろなことがあるんですから。例えばある地域なんかは、絶対にバスみたいのは必要なんです、移動のために。こういうバスに対するうまい補助制度とか、いろいろなことがあると思います。だから、これからは本当の意味の農村振興の核になる、人が来なきゃどうしようもないんですから、短期においても長期においても。ぜひ、ひとつ戦略的な課題として取り組んでいただくよう要望したいと思います。

 最後に、総務省にお尋ねしたいわけでありますが、二十五億の特別交付税を措置していただいて、まことにうれしく思っております。これは三省合わせると四十五億という大きなお金になり、本当の意味で地域の活性化のために大きな飛躍をすると思うんですが、ぜひ総務省にお尋ねしたいのは、今まではどうしても総務省は中の振興策の具体的なイメージというのはなかなかなくて、あとは、交付税で措置をするとか、もちろん災害や何かに対しての措置は別枠にしても、今まで、俗に言うと銭金の話が中心で、どうしたら地域が振興するかという、そういうところは、例えば経産省だとかほかの省庁にゆだねているといったようなところがあったように私は思うんです。

 これからは、総務省も、どうやったらその地域が、人々が定住し、またあるいは、よそから、交流人口という言い方を今から二十五年前ぐらいからずっと総務省はされておられますけれども、こういうことをきっかけにして、具体の話として地域の活性化についてどういうふうにとらえていくか、この事業を一つのばねとしてどうお考えなのか、ぜひお尋ねしたい。

岡崎政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、総務省としても、地域活性化等に大変大きな効果が見込まれる子供農山漁村交流につきましては、単に財政的バックアップだけじゃなくて、農林水産省あるいは文部科学省と連携しまして、当事者として中身についてもしっかり議論していこうと思っております。

 そういう中で、全国の小学校において、一学年規模で交流を行うことを目指しているということになりますと、やはり御指摘のありました武蔵野市あるいは兵庫県等で先進的事例はあるものの、やはりまだハード、ソフト両面での受け入れ体制の整備とか、子供の安全の確保の面、あるいは保護者の理解が足りないというような問題があると思っております。

 こうした課題に対応するためには、そういうモデル事業等通じましてそれぞれの地域において取り組みを重ねることが大事ですが、また、その成果を全国的に共有するということが非常に大事だろうと思っております。

 したがって、総務省としましては、そういう観点から、都道府県や市町村等に対する先進事例の情報提供等の支援が必要だと思っておりまして、先ほどお話があったような子供とか保護者の感想なんかをみんなに知ってもらうということが非常に大事でありますので、周知広報するためのセミナーをことしも五回ほど開きたいと思っております。第一弾の兵庫県神戸市におけるセミナーを五月九日に行いたいと思っております。

 こういうふうに当事者としてかかわりますけれども、あわせて、具体に地方団体が行いますときの地方財政措置につきましては、当面、二十五億用意しておりますけれども、しっかりと支えていきたいと思っております。

 今後とも、三省庁連携しまして積極的に支援をしてまいりたいと思っております。

土屋(正)分科員 知事や市町村長がその気になるということが非常に大きいわけですね。とりわけ都会部の市町村長、余り村長はいないかもわかりませんが、市長、区長などがその気になるということが非常に大事なことで、どうやって都会にそういう情報をリターンしてくるか。また、今度は受け入れ地域の方にもそういう気になるかということを、ぜひ総務省がコーディネーター役として、都道府県単位、時には市町村単位で、ディストリビューターのような役割を果たしていただきたいと存じます。

 最後に、時間が来たようでございますので、大臣にも重ねてお願い申し上げておきますが、福田内閣は地域格差の是正、地方の重視ということでやっているわけでございますが、この事業は、そういう意味で、本当の意味の大都市と地方のエネルギーを交換していく、大都市の活力を地方に、地方の元気を大都市に、こういう戦略的な課題だろうと思います。

 同時にまた、縦割り行政の弊害を打破するということも福田内閣の目標の一つでありますが、三省庁がこんなにスクラム組んで一つの目標に向かってやるということは、まさに大臣のリーダーシップを初め、関係者の皆様のお力だと思いますので、そういう意味では、ぜひ、内閣におかれましても、戦略的な課題としてお取り組みくださいますようにお願いを申し上げ、きょうの質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

渡海国務大臣 我々も大事だと思っておりますし、また、学習指導要領を一年間かけて地方へ発信してまいります。その中でもしっかりと位置づけてやりたいと思います。

 縦割りの弊害ということがありましたから、あえて立たせていただきましたが、これは弊害は役所じゃないんですよ。やはり政治家がしっかりスクラムを組めば、こんな弊害なんか出てこないんですね。土屋先生それはよくおわかりだと思う。

 それから、あと地方です。地方がしっかりとそういう気になっていただかないと、耐震化ですら国の枠の中へ入ってこないんです。私は非常に焦っています、今。ですから、またそういうことも含めて、いろいろな御協力をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

土屋(正)分科員 どうもありがとうございました。

横光主査 これにて土屋正忠君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより防衛省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。石破防衛大臣。

石破国務大臣 平成十八年度における防衛省関係歳入歳出の決算につきまして、その概要を御説明いたします。

 まず、防衛省主管の歳入につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳入予算額は六百十六億九千二百万円余でありまして、これに予算補正追加額三億五千六百万円余を加えますと、歳入予算額は六百二十億四千九百万円余でありまして、これを収納済み歳入額五百十六億三千七百万円余に比較いたしますと、百四億千百万円余の減少となっております。

 次に、防衛省所管(組織)防衛本省の歳出につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は四兆二千六百四十五億五千七百万円余でありまして、これに予算補正追加額四百九十二億七千六百万円余、移しかえを受けた額九十八億八千二百万円余、前年度からの繰越額二百七十三億六百万円余、予備費を使用した額百四億四百万円余を加え、予算補正修正減少額百四十四億千九百万円余を差し引きますと、歳出予算現額は四兆三千四百七十億七百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は四兆二千八百三十三億九千万円余、翌年度へ繰り越した額は四百六十四億三千四百万円余でありまして、差し引き不用額は百七十一億八千二百万円余であります。

 次に、防衛省所管(組織)防衛施設庁の歳出につきまして御説明申し上げます。

 当初の歳出予算額は五千四百九十億千九百万円余でありまして、これに予算補正追加額二百十八億八百万円余、移しかえを受けた額八十一億九千七百万円余、前年度からの繰越額四百五十四億八千百万円余、予備費を使用した額五十一億二千三百万円余を加え、予算補正修正減少額五億七千百万円余、移しかえをした額十一億四千万円余を差し引きますと、歳出予算現額は六千二百七十九億千八百万円余となります。

 この歳出予算現額に対して支出済み歳出額は五千四百八十九億四百万円余、翌年度へ繰り越した額は六百八十二億二千四百万円余でありまして、差し引き不用額は百七億九千万円余であります。

 なお、主な事項につきましては、お手元に配付してある資料のとおりでありますが、委員各位のお許しを得まして御説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院榊審議官。

榊会計検査院当局者 平成十八年度防衛省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件、意見を表示しまたは処置を要求した事項二件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項五件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項の結果一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 これは、職員の不正行為により現金が領得されたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、着後手当の支給に関するものであります。

 防衛省では、自衛隊員が人事異動により赴任する場合、国家公務員等の旅費に関する法律に基づき、赴任旅費の一部として着後手当を支給することとしております。一方、新在勤地に到着後直ちに公務員宿舎に入居した場合などには、着後手当を減額調整することとしております。

 直ちに宿舎に入居できず実家や友人宅等に宿泊した場合の着後手当について検査いたしましたところ、宿泊費用の発生が確認できないのに、減額調整を行っていない事態が見受けられました。

 このため、防衛省に対し、実家や友人宅等を利用したものについては、着後手当を減額調整することを明確に定めるなどの所要の措置を講じるよう是正改善の処置を求めたものであります。

 その二は、営舎内に居住する自衛官が居室内で使用する電気器具に係る電気料金の負担に関するものであります。

 自衛隊法等の規定に基づき、曹長以下の自衛官は、原則として、その勤務する部隊等に集団的居住場所として設けられた営舎に居住することとされております。

 航空自衛隊の営舎内に居住している自衛官が、基地司令等の許可を受けて居室内で私的に使用している電気器具に係る電気料金の負担について検査いたしましたところ、これらの電気料金は原則として各自衛官が負担すべきものでありますが、国が全額負担して各基地等の運営経費の一部として支払っている事態が見受けられました。

 このため、航空自衛隊に対し、各基地等において営舎内で私的に使用している電気器具の使用の実態を調査するとともに、これらの使用及び電気料金の負担に関する規程を定め、使用実態に即した電気料金を当該使用者に負担させるなどの所要の措置を講じるよう是正改善の処置を求めたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、自衛隊病院における入院基本料に係る診療報酬の請求に関するもの、その二は、輸送役務契約におけるクレーン作業料金の単価の決定等に関するもの、その三は、海上自衛隊で調達しているソノブイの管理に関するもの、その四は、艦艇乗員待機所の仮眠室の利用の促進に関するもの、その五は、重機関銃の物品管理簿への記録方法に関するものであります。

 これら五件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十七年度決算検査報告に任期制自衛官に係る退職手当制度について意見を表示した事項を掲記しておりますが、その結果についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。石破防衛大臣。

石破国務大臣 平成十八年度決算報告に掲記されております事項について、防衛省が講じた措置を御説明申し上げます。

 不当事項として指摘を受けましたものにつきましては、まことに遺憾であり、綱紀粛正のより一層の徹底を図るなど再発防止に万全を期する所存であります。

 次に、指摘を受けました事項のうち、営舎内に居住する自衛官が居室内で私的に使用している電気器具に係る電気料金の負担につきましては、指摘の趣旨を踏まえ、速やかに電気料金を各自衛官が負担するよう処置を講ずる所存であります。

 その他の指摘事項につきましては、直ちに是正措置を講じたところであります。

 今後このような御指摘を受けることのないよう、より一層事務の適正な執行に努めてまいる所存であります。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして防衛省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古屋範子君。

古屋(範)分科員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、今の在日米軍の再編の問題あるいは在日米軍基地にかかわる問題について質問してまいります。

 初めに、横須賀で起きましたタクシー運転手が殺害をされた事件についてお伺いをしてまいります。

 私の地元、神奈川県横須賀市でございますけれども、先月十九日夜に横須賀市内で起きたこの事件から約一カ月が過ぎました。脱走米兵が県警に逮捕されまして、調べは動機の解明に移ったものとの報道がございます。乗せた客に刃物で襲われ命まで奪われた、タクシー運転手にとってこれほど怖い事件はございません。

 今回は脱走兵ということでしたが、これまでも在日米軍人による同様な事件がたび重なり起きております。横須賀市では、二年前、女性が米海軍キティーホーク乗組員に殺され、現金を奪われるという事件がございました。さらに、ことし二月には沖縄で、海兵隊員が女子中学生を乱暴し、逮捕される事件があったばかりです。広島では、昨年、山口・岩国基地の海兵隊員による女性暴行事件が起きております。こうした凶悪犯罪が後を絶たない状況は、沖縄だけでなく、全国の、米軍基地がある町の住民にとっては大変不安な毎日を過ごすことにもなっております。

 在日米軍人による事件がたび重なっているということもございますが、この事件に対する石破大臣の受けとめ方をぜひお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、福井主査代理着席〕

石破国務大臣 二月二十二日に、再発防止のための当面の措置を取りまとめました。今後とも、再発防止について、着実かつ真剣に取り組んでまいりたいと思います。

 考えられるありとあらゆることをしなければいかぬだろう。申し入れ、わかりました、二度と起こらないようにしますとか言いながら、二度、三度と起こっているわけですね。我々の方として、申し出るだけではなくて、一体どんな対策をとったのか、それが実効性が上がっているのか上がっていないのかということを、本当に我々が常にウオッチをしておかなければいけないのだということがございます。

 やはり、よき隣人というふうに申しますが、これはもう本当に善良な米兵もたくさんおるわけでございます。地元の困った人を助けたり、あるいは福祉施設に慰問を行ったりという、本当に立派な米兵もたくさんいることはよくわかっているし、それが報道されないというのもまた事実なのかもしれませんが、しかし、本当にもう何百分の一、何千分の一かもしれないけれども、不心得者がいることによって日米同盟そのものが揺らぎかねないのだという意識、これぐらいいるんだからこれぐらいの不祥事はみたいな、そういう考え方は我々は断固として排しなければいけない。

 私は本当に、二度と起こることがないようにという言葉がそらぞらしく、むなしく響かないようにするためには、これはもう我々も意識を非常に強く持たねばなりませんし、これは、例えばゲーツ長官にしても、ライス長官にしても、あるいはライト、ライス在日司令官にしても、それは上の人はわかっているのですが、下という言い方は余りよくはないのかもしれませんが、第一線の人たちが、自分たちがやることが何を引き起こすのかという認識をきちんと持っていただくということは大変重要なことだと私は考えております。

古屋(範)分科員 やはり、基地を抱える町に住む者といたしましては、こうした事件が続きますと、若い女性にとっても夜は歩けない。この事件がありましたところも、私などもしょっちゅう通っているところのちょっと入ったところでございます。たくさんの人が乗降している駅のすぐそばで起きております。また、タクシーの運転手さんに聞きますと、米兵一人は絶対乗せないということをおっしゃっている方もいらっしゃいます。地元としては、市民としてもそういうさまざまな防衛策をとっているわけなんですが、大臣おっしゃいますように、考えられるありとあらゆる手段を講じていく、ぜひこのことを徹底していただきたいというふうに思います。

 確かに、善良な米兵も多いと思います。今回はナイジェリア国籍の米兵ということで、そういった事情もございますでしょう。また、未訓練であったかもしれません。まあ事情は、詳細はこれからでございますけれども、ありとあらゆる手段を講じて、地元の市民にとっての安全、これを第一に考えていただきたい、このように思います。

 今回の事件におきましては、強盗殺人容疑で逮捕された米兵が脱走兵であったにもかかわらず、事件発生前に日本側には何も伝わっていなかったということが明らかになっております。

 こうした在日米軍人による相次ぐ事件を受けまして、日米両国が協議をしていた日米地位協定の運用改善策がまとまったというふうに伺っております。

 この協議は、当初から、協定の改定ではなく、運用改善での決着を目指しておりまして、こうした姿勢に、基地を抱える自治体では一部不満もくすぶっております。また、脱走兵通報の対策の効果については、限定的と見られるとの報道もございます。

 今回協議をされました運用改善策の内容とその効果についてお伺いしてまいります。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点でございますけれども、まず、これまでに、米軍人が行方不明となった場合に、米側が必要と判断した際に、事案に応じて都道府県警察に逮捕要請がなされる、そういう場合もあったというのが現状でございました。逆に申しますと、脱走の状態が生じた場合に直ちに関係当局に連絡がなされていたわけではない、来る場合もあるけれども来ない場合もあるということでございました。

 それで、先般の横須賀市の強盗殺人事件を受けまして、また、私、直接伺いましたが、蒲谷市長からも大変強い要望があったことも踏まえまして、この脱走米兵の情報共有、やはりこれを日米間で共有しないといけないのではないのかという問題意識で、鋭意、協議検討を行ってまいりました。その結果、四月十一日でございますが、日米両政府は、今後、在日米軍人の脱走が判明した場合には、そのすべてにつき、直ちに米側から関係都道府県警察に対して逮捕要請を行う、また、日本政府にも当該脱走兵に関する情報を提供するということで基本的に一致した次第でございます。

 なお、これは日米合同委員会でもう少し詰める必要がございますが、今鋭意作業をやっておりますので、正式な形に間もなくなるというふうに考えております。

 こうした措置を通じまして、脱走兵が生じた場合には直ちに県警当局の知るところとなり、県警が何らかの形で脱走兵の所在を把握するなどした場合に逮捕することが可能となるわけでございます。

 また、これでは不十分ではないのかといったような声も私も新聞などで拝見しております。まさに米軍内部において行方不明になる事情というのはどうもいろいろあるようでございまして、単に行方不明である人間の扱いをどうするのかということについて協議いたしましたが、とりあえずのところ、米軍といたしましては、米軍が逮捕要請をすべきような人物については、もう脱走兵として認定していくということに重きを置きまして、それを直ちに通報するということにしたわけでございます。

 一部紙上に三十日間わからないというふうに報じられておりますが、少なくとも意図するところは、三十日間待つということではなくて、これまでは行方不明のみならず脱走兵でも連絡が来なかったというのを、積極的に認定していく。もちろん、すべて、いなくなったから脱走兵というわけにはまいりませんが。そして、どんなに遅くても部隊を離脱後三十日過ぎれば、これはもう自動的に脱走兵に認定されるということでございまして、私どもとしてもできるだけのことをしたつもりでございまして、ぜひ御理解を賜ればというふうに存じます。

 なお、日米地位協定につきましては、その時々の運用の改善により機敏に対応していくことが合理的なのであるというふうに私ども考えておりまして、今回の例のように、なるべく早く具体的な対応をしていくためには、今後ともそのような方針で努力してまいりたいと思いますし、今後とも、今回の脱走米兵の通報体制のような、国民の皆様から見ても目に見えるような改善を一歩一歩積み上げていくように努力してまいりたいと存じます。

古屋(範)分科員 御答弁にもございましたように、ぜひとも厳格な情報共有、これはお願いしたいと思います。もっと短期間でもいいのではないかという気さえしております。

 今回は、都内で乗せたタクシーが横須賀市内で殺害事件ということですので、捜査も広域である必要があるかとも思います。こうした観点へのさらなる強い取り組みをよろしくお願いいたしたいと思います。

 今回の事件で逮捕されました米兵は、事件の十日以上前に基地から逃げ出していたと。米軍が捜していた状況ではあったわけなんですが、そうした脱走兵がいるという情報、今回は、今おっしゃるように、伝えられていなかったわけでございます。

 このような形で、運用改善策で脱走兵情報が共有化されていくこと、今後ぜひこの効果が発揮をしていってほしいと願うわけなんですが、日米地位協定では、今のところ、行方不明の米兵について日本側に通報する義務がなかったわけでございます。米兵が基地内でトラブルを起こして姿を消した、すなわち、基地外で問題を起こすおそれがあるということは十分に予測できたはずであります。

 横須賀市では、以前から、地元警察と協力をいたしまして、基地周辺にスーパー防犯灯を設置しております。女性が殺されました米が浜というところから今回の事件があった汐入までスーパー防犯灯を設置しておりますが、当然、市内すべてに設置するということは、現実、不可能ではございます。また、地元住民、警察、市の職員、米軍によるパトロールなどの対策をこれまで行っております。

 また、今回、脱走兵の情報が日本に伝わっていれば、警察は周辺のパトロールを強めたことと思いますし、また、凶行に至る前に米兵を見つけることができたかもしれない。タクシー運転手も、それらしい外国人を乗せれば警戒したわけであります。事件を起こすおそれのある米兵がいる場合にも、その情報が日本側に確実に伝わるよう、お願いしたいと思います。また、今回の事件を契機に、米兵の綱紀粛正に万全を期し、日米地位協定の運用でも、さらに柔軟で弾力的な対応に努めていただきたいと思っております。

 そこで、米軍の綱紀粛正はもちろんでございますが、再発防止に向けて、徹底した対策を日米両政府がしっかりととっていただきたいと思っております。実効性ある再発防止策について、外務省の方にお考えをお伺いいたします。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 既に石破大臣からもございましたけれども、さきの沖縄の事件を受けまして、二月二十二日に当面の措置を発表いたしました。

 施設・区域外のお話が委員から御指摘ございましたけれども、例えば、まずは、こういったことの実態把握が十分なされていなかったということを踏まえまして、施設・区域のある市町村別の基地外居住者、あるいは基地内居住者もそうでございますが、数を把握していこうということでございまして、平成十九年三月時点、一年前の時点の数字につきましては、市町村別に二月二十七日に防衛省から発表をされたところでございます。

 ことしの三月現在の数字につきましても、今、鋭意作業をしております。近々にこれを発表できることを期待して、作業を督促しているところでございます。

 それから、基地外に住む方の資格というものは、我々、わかっておりますし、公表しているわけでございますが、そういう資格がある兵隊さんたちを実際に住まわせる場合に、米側がどういう方針を持って住まわせているのかという点につきましても、引き続き協議をしていきたいというふうに考えております。

 それから、二月の事件は性犯罪ということでございまして、米側自身が性的犯罪の再発防止に向けたタスクフォースというのをみずから設置いたしまして、沖縄を初めとして各施設・区域を今巡回しているところでございます。まだこの作業が実は終わっておりませんで、彼らの持ってきた所見であるとか、彼ら自身の再発防止策というものについても、我々、意見交換をしてまいりたいというふうに思います。

 なお、こうした意見交換の一環といたしまして、先般、国会で、未成年者に対する性犯罪や暴力的な性犯罪で有罪判決を受けた者について御質問がございました。

 その後、調べましたところ、これはアメリカ連邦法のウェッタリング法というものでございますが、未成年者に対する性犯罪または暴力的な性犯罪で有罪判決を受けた者については、その氏名、現住所などなどを州政府に登録する、あるいはその一部を公開するというような法律、これはアメリカの連邦法でございますが、これと在日米軍のいわば兵隊さんのリクルートというのはどういう関係になっているのかというものも当然のことながら照会させていただきました。

 この点につきましては、未成年者に対する性犯罪や暴力的な性犯罪で有罪判決を受けた者についてはそもそも入隊を認めていないという回答も得ておるわけでございます。

 先生方からごらんになって、いかにも歩みが遅いではないかというおしかりを受けっ放しでございますけれども、大切なことは、継続的に取り組んでいくことであるというふうに考えております。それから、いろいろな施策あるいは米側の方針といったものも、それで終わりということではなくて、本当に効果的に作用しているのかというのをフォローアップしていくこと。また、そういった得られる知見に基づきまして教育プログラムを充実する。米側もいろいろ教育プログラムをつくっておりますけれども、我々もアメリカ軍の教育プログラムにいろいろ注文をしていくといったようなことも大事ではないかというふうに考えております。

 失礼いたしました。

古屋(範)分科員 今回、あの事件発生後、米軍は日本の捜査に協力的だったと言われております。二年前の殺人事件のときも、やはり同様であったと記憶をいたしております。

 日ごろから米軍と横須賀市は、さまざまな場面で交流をいたしております。米軍が協力的なのは、原子力空母が横須賀に八月に配備を控えている、地元の反発を避けたいのではないかという観測もございますけれども、やはり、地元市民との今までの歴史的な上での交流というものも非常に役に立っているのではないかというふうに考えております。

 米軍再編そのものは沖縄の負担を軽減していくという趣旨もございますけれども、やはりこれは着実に進めていかなければいけないんだろうというふうに考えます。しかし、県民、市民の感情が悪化していくようであれば、米軍再編は進まないというふうに思います。政府は、強くこの点を認識され、しっかりした対応をとっていただきたいというふうに考えております。

 こういった事件が在日米軍再編に与える影響について、石破大臣、どのようにお考えになりますでしょうか。

石破国務大臣 航空母艦の交代につきましてのお話でございます。

 当省といたしましても、関係省庁、横須賀市及びアメリカの実務担当者から成ります原子力空母に関する防災、安全対策に関する実務者協議へ積極的に参加するなど、地元の方々の安全、安心の確保のため努力をしてきておるところでございます。

 原子力空母にかわる理由というのは委員よく御案内のとおりでありまして、合衆国でも、もう通常動力型の空母はほとんどない。残る一隻、ジョン・F・ケネディというのもございましたが、もうこれもほとんど、あと使える期間が少ない。しかしながら、抑止力ということを考えましたときに、日本において航空母艦を定係港とするということは極めて重要なことである、また、通常動力型から原子力型にかわることによって抑止力は相当に高まるという認識は持っておるのです。

 ただ、持っておりますが、それが横須賀を定係港とするということで、また乗組員がほとんどかわりますので、今まで、それでも、キティーであれば横須賀のいろいろなこともわかっている、日本とは、横須賀とは、神奈川県とはということは理解をしておるわけでございますが、新しい乗組員がやってくるということになりますと、これが定係港になりました、夏に横須賀に入りました、そこから日本の勉強をしましょうということでは全然だめなので、日本に入る前にきちんと基礎的なことは学んでおかねばならないということだと私は考えております。

 アメリカもそうは言っていますが、どういう教育プログラムで何をやっているのかということは、我々もよく認識をしなければいかぬというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、横須賀の市民の方々、地域の方々に本当に受け入れていただけるということでなければ、委員御指摘のように、米軍再編も何もあったものではございません。それは、津々浦々あまねく基地を置くわけにもまいりませんし、そんな話にも全くなりません。やはり横須賀であり、あるいは厚木でありということで、一部の地域に多くの御負担をいただいておるわけでございます。そうしますと、本当に横須賀市民のよき隣人としてのアメリカ軍人ということでなければ再編そのものもうまくいかないのだというような強い認識を持って、委員の御指摘を踏まえて、再編そのものの成否にもかかわるものであるという認識を持って私としては取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)分科員 横須賀市民としても、もろ手を挙げて空母を容認したわけではございません。できれば来てほしくないという気持ちはありながらも、やはり日本の安全保障ということを考えれば、我が市だけのことではなく、もう一段高いところから日本の防衛を考えている、考えざるを得ないというところにございます。非常に苦渋の決断をしたわけでございます。

 ぜひとも、空母の安全の確保、また米兵によるこうした事件の再発防止、これは何としても全力を挙げていただきたいと思っております。

 続きまして、再編交付金についてお伺いをしてまいります。

 昨年二月の予算委員会におきまして、私は、この再編交付金の趣旨と交付の仕組み、対象自治体選定の判断基準、交付に関する基本的な考え方などについて質問をさせていただきました。在日米軍再編特別措置法が成立をいたしまして、昨年五月三十日に施行されたわけでございます。

 横須賀市としては、さまざまな問題を乗り越えて、市長、市民、苦渋の決断によりまして、原子力空母が初めて配備されることになります。こうした実績が評価をされまして、今回の対象市町村に指定をされたわけでございますけれども、現在の再編関連特定周辺市町村の指定の状況についてお伺いをしてまいります。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 再編関連特定周辺市町村につきましては、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法第五条に基づきまして、平成十九年十月三十一日に、横須賀市など、十四防衛施設に関係する三十三市町村を指定させていただきました。

 その後、同年十一月十九日には、キャンプ・ハンセンに関係する三町村、平成二十年三月二十一日には、岩国飛行場に関係いたします岩国市、三月三十一日には、キャンプ・シュワブに関係する名護市、宜野座村の二市村、延べ三十九市町村を指定させていただいており、残り、キャンプ座間に関する座間市のみが指定していない状況でございます。

古屋(範)分科員 神奈川の座間市が最後に残っているということでございます。地元の方々、また市長にとっては大変難しい決断を迫られているところでございます。国としても、あめとむちという厳しい選択でございますけれども、やはり自治体にとっては、容認も、また反対も非常に紙一重のところにある、これは複雑な心境の中でそういう決断をいたしているわけでございます。

 また、こうした苦渋を理解され、さまざまな難しい点もあるとは十分承知をいたしておりますけれども、座間市としっかり対話を重ねて、基地の恒久化解消策を早期に示すなど、座間市に対しましても、できる限り可能な支援、一致点を見出していただきたい、このように考えております。

 次に、対象となる事業について、法律では、事業といたしまして、第五条には、「当該市町村において再編関連特別事業」と規定をされております。この政令が昨年の八月二十九日に施行されております。この政令第三条、「再編交付金を交付しない事業」とございます。第一号に、「国が行う事業又は」「その経費の一部を負担し、若しくは補助する事業」となっております。まず、この政令第三条第一号についての具体的な説明をお願いしたいと思っております。

 また、この政令第三条第二号では、「法令の規定に基づいて毎年度経常的に行っている事業で、駐留軍等の再編の円滑かつ確実な実施に資するため必要なものとして特別に行う事業とは認められないもの」とございます。この内容について、逆に、どんなものなら対象事業となるか、御説明いただきたいと思います。

 また、最後、この政令第三条第三号、「再編関連特定周辺市町村の区域内において、駐留軍等の再編により影響を受ける住民の生活の安定に資するよう適切に配慮された地域において行う事業とは認められないもの」とございます。

 地元にとっては、ぜひ使い勝手のいいものとしていかなければいけないと思います。この点について御説明をお願いいたします。

地引政府参考人 御説明させていただきます。

 再編交付金につきましては、先生御承知のとおり、市町村等が、公共用の施設その他の住民の生活の利便性の向上、産業の振興に寄与する事業を行うことによりまして、駐留軍等の再編の円滑かつ確実な実施に資することを目的とするものでございまして、再編特措法施行令二条で、再編交付金を交付し得る事業を明示させていただいております。

 また、同施行令三条におきまして、再編交付金を交付しない事業について規定しているところでございまして、それは、大きく三つから分類されております。

 同条第一号につきましては、「国が行う事業又は国がその経費の一部を負担し、若しくは補助する事業」としており、これは、一つの事業に対しまして目的の異なる二重の補助となることから対象外としているところでございます。

 また、二号につきましては、「法令の規定に基づいて毎年度経常的に行っている事業で、駐留軍等の再編の円滑かつ確実な実施に資するため必要なものとして特別に行う事業とは認められないもの」としており、これは、具体的には、例えば市町村の職員の給与など、単なる財政負担の肩がわりとしてでしかなく、住民の方にとってメリットのないことから対象外としているものでございます。

 また、第三号につきましては、「再編関連特定周辺市町村の区域内において、駐留軍等の再編により影響を受ける住民の生活の安定に資するよう適切に配慮された地域において行う事業とは認められないもの」としており、これは、再編により影響を受ける地域の住民の方にとってメリットにならないことから対象除外としているところでございます。

 今申しました規定につきましては、当初の再編交付金の目的に沿ったものとなるよう、ある意味では確認的に規定したところでございます。

 いずれにいたしましても、再編交付金につきましては、住民の方に有効に活用いただけるよう、今後とも防衛省としては市町村と十分調整しながら適切に対応させていただきたいというふうに考えている次第でございます。

古屋(範)分科員 もう時間でございますので、最後の質問に参ります。

 平和外交の推進について、石破大臣にお伺いをしてまいります。

 我が国を取り巻く安全保障の環境は、北朝鮮問題を初め、極めて厳しい状況にありまして、外交の重要性はさらに重くなっております。この在日米軍再編という、我が国の安全保障にとりまして大きな影響を持つ問題にこれからしっかりと取り組んでいただきたいというふうに考えておりますけれども、石破大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 米軍再編のキーワードは、抑止力の維持と負担の軽減、こう言われます。

 ところが、その抑止力を維持しながら負担を軽減するというのは、一種、二律背反みたいなところがありまして、これをどのようにしてやっていくかというのは、余り容易なことではございません。お題目を唱えておっても仕方がないのでありまして、私は、本当に今委員がお触れになりましたように、では、北朝鮮は今どのような状況にあるのか、我が国の周辺はどのような環境にあるのかということで、抑止力の対象についての把握は正確に行わなければいかぬのだと思います。

 脅威、脅威といって言い立てることは決していいことではないが、しかし、完全な楽観論もよくないということで、この状況を正確に認識するということ、そして、これも委員がおっしゃいましたが、外交の努力というのをきちんとやった上でなければそれはいかぬということであって、外交の努力をどうやって安全保障の考え方と一体化させるかということは、ちゃんと認識を持っておかねばならぬことです。

 そして、負担の軽減というのを考えましたときに、今横須賀のお話がありましたが、どこがどのような負担を負っているのかという認識を、これまたちゃんと持たねばならぬだろう。騒音なのか、事件なのか、あるいは土地の問題なのか。どこがどんな御負担を負っておられるか、それに対してどのような軽減ができるか。それをやる策というのは、一つは、基地移転のように、沖縄の訓練を移転するように分散するというやり方もございましょう。そして同時に、今の技術の革新でどれぐらい変わるかということ。

 この負担の軽減と抑止力の維持、ともすれば、日米両国でそこの重きがちょっと違うような気がしないではありませんが、そこの認識もよく共通化を図りながら、この二つを両立させていきたい、また御指導賜りますようお願いを申し上げます。

    〔福井主査代理退席、主査着席〕

古屋(範)分科員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

横光主査 これにて古屋範子君の質疑は終了いたしました。

 次に、西本勝子君。

西本分科員 自由民主党の西本勝子でございます。

 時間をいただきましたので、国の守りについて、自衛隊の防衛力、役割について、ごく身近な視点で質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 私は、地元の駐屯地の行事や協力団体の会合に出席させていただき、隊員の皆様方に激励のあいさつをする機会があるのですが、そこでお話を伺ったりしていますと、若い隊員の方々からは、国の守りはおれたちでという、任務に対する使命感であるとか責任感がひしひしと伝わってきて、大変心強く、安堵感とともに、激励した私の方が勇気を与えられることがたびたびあります。特に、野山が黄緑色に色づくころに毎年行われます自衛隊、防衛大学の入隊、入校式に臨むフレッシュマンと若葉のみずみずしさがオーバーラップして、いつも感動を覚えております。

 ところが、地元で接する自衛官の方はみんな陸上自衛隊の方ばかりですので、よく考えてみますと、高知県は自衛隊の施設といいますと、高知駐屯地と土佐清水市にある航空自衛隊の通信施設でして、四国というエリアを見ましても、駐屯地が善通寺、松山の二カ所と、徳島、小松島の海上自衛隊の飛行場しかなく、在日米軍への提供施設もありません。

 このような四国の施設の実態は、陸上自衛隊の配置については国土防衛という視点からおおむね均衡がとれているのではないかと思うのですが、海上自衛隊、航空自衛隊の施設が少ないのは、もともと旧日本軍の施設がなかったためなのか、それとも、周辺事態や本格的な侵略事態が太平洋側で起きる可能性が低いことから、四国は手薄でもいいのかという素朴な疑問もあるのですが、それはそれとして、新たな脅威として、弾道ミサイルや複雑な海岸線の防衛、そして、いつどこで起こるとも限らないテロなどの脅威に対する備えとしては、四国内の自衛隊施設の現状で四国の守りは大丈夫なのか、防衛体制上どのような御見解をお持ちなのか、お伺いいたします。

石破国務大臣 これはなかなか難しい議論で、私が前、長官をやっておりましたときもこの四国の防衛体制をどうするのかという議論は相当にいたしました。基本的に南西方面にシフトをしてきておりますが、その中において四国をどうするか、四国選出の高知の先生のみならず、他県の先生方も何度も防衛庁長官室にお越しになって議論をいたしました。

 陸自の再編につきましては、もう委員御案内のとおりでございます。次期中期防中には完了したいというふうに考えております。

 そうしますと、海と空はどうなんだということでございますが、現在のところ、海上自衛隊も航空自衛隊も機動力というものを重視いたしておりまして、速く大量に物が移動できるという能力を上げていかねばならぬだろう。あちらこちらに密に基地を置くよりも、速くそして大量に物が輸送できるという能力をどれだけ持つことによって四国の防衛ができるか。あるいは、ウエポンにいたしましても、SM3の能力等々を考え合わせまして、仮にミサイルということになりましても、四国の方々の安全を確保するということはきちんと考えていかねばならないことだと思っております。

 私は、北海道から九州、沖縄まで、防衛力という点において充実したところとそうでないところ、そういうことがあっては絶対ならないことだと思っております。そこのところ、どこの地域にも陸海空がきちんとあればこれは一番よろしいのでございますが、なかなか、きょうの決算で申し上げましたように厳しい状況にございます。

 高知県も非常に大きな県でございまして、では、土佐清水に何かあったらどうするんだというシミュレーション、それはきちんといたしております。それを間断なく行うことによりまして、抑止力としての防衛力がきちんと発現できますように、また、現場をよく御存じの委員の御指摘も踏まえて努力をしてまいりたいと考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 陸海空の機動力を生かして、くまなくシミュレーションもしていただいているということで、四国の一国民として安心いたしました。

 次の質問に移ります。

 東西の冷戦下の時代に比べ、冷戦後の自衛隊の任務は多様化してきているのですが、従来からの任務として国民に大きな安心を保障してきているのが、大規模災害や特殊な災害に対する救助支援であります。

 四国内においては、過去に豪雨災害や森林火災など、大きな災害のたびに自衛隊の派遣を受け、救助支援活動に御尽力をいただき、地元の災害救助に大きく貢献されてきたところですが、四国の地図の中に高知、松山、善通寺の駐屯地の位置を落とし込んだとき、四国西部地域を見てみますと、駐屯地からの距離が大きく離れており、道路事情も悪いのですが、緊急を要する災害の場合、三カ所の駐屯地では四国内に時間的な空白地帯が生じないのか心配なのですが、どのようにカバーしていくのか、お伺いいたします。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国の場合、地震でありますとか、あるいは台風でありますといったような自然災害に見舞われやすい環境のもとにあります。とりわけ、大規模災害が発生したような場合に、自衛隊の機動力あるいは輸送力といったような能力を初めとしまして、さまざまな能力の活用についての期待には非常に大きなものがあるというふうに私ども認識をいたしております。災害の場合における国民の安全を確保するということも自衛隊の非常に重要な役割だと認識をしておるところでございます。

 そして、まず全国的に申し上げますと、自衛隊は災害に備えて、陸上自衛隊の場合、全国で常時約二千七百人、車両約四百十両、ヘリコプター約三十機の部隊をもって一時間を基準に出動できる即応態勢を確立しておりまして、災害派遣即応部隊を主要な駐屯地に待機をさせておるところでございます。

 それから、海上自衛隊は、一、二時間以内に派遣できる即応態勢を確立している応急出動艦五隻、それから航空機十七機を主要基地に待機をさせております。

 さらに、航空自衛隊は、一、二時間以内に派遣できる航空救難待機用の航空機十三機を主要基地に待機をさせているところでございます。

 そこで、四国地区で災害が発生をして、自衛隊に災害派遣要請がなされたというようなことを考えますと、四国に所在をいたします陸自を中心とする部隊はもとより、地元の地方自治体と十分に調整を行いまして、そのニーズも踏まえて、近畿地区を初め、四国以外の近隣に所在する自衛隊の部隊を災害発生地域に進出させまして対応をすることとしております。

 例えば、御指摘のような、道路事情が余りよくない地域というような場合には、陸海空各自衛隊のヘリコプターでありますとか、あるいは輸送機、それから海上自衛隊の船などの輸送力、機動力を十分に活用いたしまして、自衛隊の部隊を迅速に被災地に展開をさせて、円滑かつ効果的に被災者の方々の救援活動を行うということにしておるところでございます。

西本分科員 ありがとうございました。

 先ほどの大臣の答弁と同じく、機動力をフルに活用して、また四国外からも災害援助に来てくださるということを聞きまして、安心いたしました。

 次の質問に移ります。

 一たん災害が発生しますと、初期は地域の自主防災組織であり、次に非常備の消防や水防の組織、常備消防といった順に対応し、災害規模や特殊な事情により自衛隊の派遣要請となることが想定されます。

 自治体では、自主防災組織、非常備消防、常備消防の間においては、防災計画に沿ったマニュアルもあり、防災訓練もしているのですが、大規模災害を想定したもので自衛隊との連携を訓練項目に入れたものは、県レベルや広域防災訓練では実施していても、市町村単独の訓練では実施していないのが実情であります。特に、四国の沿岸地域の自治体は、近い将来必ず発生する南海・東南海地震、津波に対する防災対策を急いでいます。

 一例を挙げますと、私の地元に須崎港という重要港湾があります。この港湾の地形は、湾口が太平洋にラッパ状に開いていることから、津波の襲来を受けますと、過去の歴史から見ても、湾奥の市街地に大きな被害が発生することが予測されます。さらに、湾内の港には木材団地があり、常時輸入木材が野積みされていることから、この大型木材が流出した場合は大惨事になることが必至であります。

 そこで、木材による被害をどのように食いとめるのか、流出防止対策と流出した場合の防災対策に取り組んできたのですが、確実に安全が守られる状況にないのが実態でありまして、木材流出を想定した津波防災訓練では自衛隊との連携したメニューが必要ではないかと考えるところであります。

 このような状況でありますので、訓練への協力要請のある場合はぜひ参加していただきたいと思いますし、自治体と自衛隊が連携した防災訓練を実施することにより、訓練がより質の高い実効性のあるものになることに加えて、自衛隊に対する国民の信頼感も定着するのではないかと考えるのですが、自治体の防災訓練に隊を派遣することについての御所見をお伺いいたします。

江渡副大臣 西本委員にお答えさせていただきたいと思います。

 今委員が御指摘のように、常日ごろから、我が防衛省・自衛隊と自治体との、関係機関との連携を深めていくということは大変重要なことであると思っております。

 このため、平素より、国や地方公共団体が実施いたします防災訓練等への自衛隊の積極的な参加、災害派遣要請先の自衛隊部隊の周知徹底、各種災害への対処マニュアルの作成、配付、自衛隊員の都道府県防災会議委員としての参加など、このことを推進させていただいております。さらには、平成十八年には、地方公共団体の連絡調整をより一層円滑にしていくということで、自衛隊の地方協力本部におきまして国民保護・災害対策連絡調整官というものを設置させていただきました。

 また、実際に災害が発生した場合には、近隣の自衛隊の部隊等から速やかに連絡要員を都道府県庁に派遣いたしまして、都道府県の災害対策本部等において、地方公共団体や警察、消防等の関係機関と密接に連絡調整を行うこととさせていただいております。

 また、四国地区におきましての自衛隊は、平成十九年度の県が主催する九つの防災訓練に参加させていただいておりますし、また、市町村が主催いたします十の訓練にも参加を行ったわけでございます。その際、災害発生時の情報伝達要領、あるいは実際に部隊を動員して行う消防、警察などの地方公共団体の防災機関との協同要領、あるいは地方公共団体の災害対策本部等における図上演習など、地方公共団体のニーズに応じて積極的に参加しているところでございます。

 今後とも、防衛省・自衛隊といたしましては、国や地方公共団体の関係機関と協力して国民の安全、安心を確保すべく、そして、日ごろから円滑な災害派遣活動が実施できますよう、国や地方公共団体が実施いたしております津波防災訓練など各種防災訓練へ積極的に参加してまいりたいと思っております。

 なお、津波の件でいきますと、参考まででございますけれども、平成十七年の七月二十七日には、高知県におきまして津波防災総合訓練ということをさせていただいておりますし、また、翌年の十八年の七月三十日には、徳島県において大規模津波防災訓練、あるいは、同じ十八年の九月三日、愛媛県におきましては地震津波訓練、そして、十九年の五月二十日においては、同じく愛媛県におきまして防災地震津波避難訓練というものを実施させていただいております。また、委員御出身の高知県の方におきましては、十九年の六月三日、これは県主催でありますが、高知県の総合防災訓練の方におきまして実動訓練やあるいは住民広報等の訓練をさせていただいております。

 また、市町村の方におきましては、高知県の方の大豊町、十九年の五月二十七日でありますけれども、実動訓練でヘリの誘導及び搭乗者の補助等の訓練、あるいは、同じく十九年の九月二日、土佐清水市におきましても、総合防災訓練でありますけれども、実動訓練や機材展示等の形で訓練をさせていただいているところでございます。

西本分科員 御答弁ありがとうございました。

 私が持っている情報以上にたくさんの訓練をしていることがわかりまして、恐縮いたしております。今後も、国民の安心、安全のために自衛隊に大いに協力していただきたいことをお願いいたします。

 さらに、自衛隊と自治体との連携ということにおいては、重要な事柄に自衛官の募集事務があります。自衛隊の隊員確保は、少子化が進み、若年人口が減少する中で、今後の我が国の安全保障を考えたとき重要な課題でありますので、このことは国家の責任としてやらなければならないと思うのであります。

 実際は、自衛隊法第九十七条に基づき、法定受託事務として、知事、市町村長が募集事務の一部を行うこととされています。ここで言う事務の一部とは、自治体の持っている住民基本台帳に基づく適齢者情報の提供が主なものでありますが、自治体によって協力の温度差はあるのではないかと思うのです。募集事務における自治体との連携について実態はどのようになっているのか、お伺いします。

渡部政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、都道府県知事それから市町村長におきましては、法定受託事務として、自衛官の募集事務の一部を行うこととされております。

 具体的には、自衛官募集ポスターの掲示でありますとか、広報誌等への募集記事の掲載、ホームページなどの広報媒体による募集広報、あるいは募集資料の作成、配布、それから、今先生御指摘の適齢者情報の提供といったような面で協力をいただいているところでございます。

 現在、大部分の地方公共団体におきましては、募集事務を実施していただいているところでございます。ただ、残念ながら、ごく一部の地方公共団体におきましては、未実施ということで、御協力いただけてないところがございます。それで、御指摘の適齢者情報につきましても、全く協力がいただけてないというところがごく一部ございます。

 これまで、少しずつ改善は図られてきておりますけれども、防衛省としましては、こうした未実施の地方公共団体に対しましては、なるべく早く募集事務をきちんと実施していただけるよう努力をしていきたいと考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 募集事務の実態はよくわかりましたけれども、全く協力をしてくれてないところがあるということをお聞きしまして、本当に残念でございます。いざ災害が起こったときに一体だれに助けを求めるのか、そういうことを考えたときに、必然的にそれには協力する必要があるのではないかと私は思います。

 そこで、さらにお伺いするのですが、自衛官の募集については、二等陸海空士について毎年協力本部で行っているようですが、都道府県別の自衛官数を見てみますと、人口比における自衛官の人員に不均衡があると思えるのですが、このことは募集システムによるものか、何か要因があるのでしょうか。お伺いいたします。

渡部政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県別の採用自衛官数と人口が必ずしも比例していないというのは御指摘のとおりでございまして、その要因につきましては、いろいろな要素が考えられるわけでありまして、一概にこれだということを申し述べることは困難でございますけれども、地域別に、相対的に数字を比較してみますと、関東地方、中部地方、近畿地方につきましては、人口比の採用自衛官数、これは二等陸海空士でございますけれども、少なくなっております。

 他方、北海道、東北、九州、沖縄につきましては、人口比の採用自衛官数が多いという傾向が見られておりまして、これは、それぞれの地域の経済情勢あるいは社会情勢、特に景気動向を踏まえた雇用情勢といったようなことでありますとか、あるいは職業としての自衛官の認知度の高さ、あるいはなじみやすさといいますか、そういったものが影響を与えているのではないかと考えておるところでございます。

 なお、西本先生の地元でございます四国地域につきましては、おおむね全国平均に近い状況になっております。

 他方、募集システムの影響ということでございますが、先生御案内のとおり、この募集につきましては、地方公共団体でありますとかあるいは募集相談員の皆さん方の御協力をいただきながら地方協力本部が実施しているわけでございますが、こうした募集組織の仕組み、システムは基本的に各都道府県共通でございますので、そういう意味では違いはないと思いますので、募集システムの違いが採用数と人口の比に影響を与えているといったようなことはないと考えております。

西本分科員 ありがとうございました。

 次の質問も答弁してもらったようなもので恐縮でございます。ありがとうございます。

 私も自衛隊相談員をしておりまして、募集することの大切さ、そしてまた、自衛隊に入ってからのいろいろな相談等も聞いておりまして、先ほどお答えいただいたのには本当に同じ苦労をなさっているんだと思いました。

 少子化の影響もありますし、また近年の景気回復傾向により募集環境が厳しくなっていると聞いておりますが、しかし、新たな安全保障環境下のもとで質の高い人材の確保の重要性は高まっていることから、自治体を含めた関係機関の募集協力は欠かせないものですので、今後とも連携を密にしてほしいと思います。

 そこで、さらに言うならば、国としてやるべきことは、自衛隊を職業として魅力あるものにしなければならないと考えます。そうすることによって就職先としての人気を上げることができれば、募集事務の課題は一定解決できるのではないか。

 例えば、現役時は誇りある隊員としての評価をしてやることが必要で、特別な褒賞制度を設けるとか、離職、退職後の処遇の改善、年金の優遇制度を導入するなど、魅力ある職業として厚遇することが必要だと思いますが、自衛隊を一つの職業として優遇することについて、どのようなお考えをお持ちでしょうか。お伺いします。

渡部政府参考人 お答えを申し上げます。

 自衛官を魅力ある職業とする必要があるというのはまさに先生御指摘のとおりでございまして、防衛省といたしましても、自衛隊の任務の多様化、国際化あるいは装備の高度化、また、今御指摘のとおり、少子化、高学歴化に伴う厳しい募集環境でありますとか、あるいはシニア世代のライフサイクルの変化といったような状況の変化の中で、質の高い人材を確保し、育成していくとともに、若年で退職する隊員が安心して生活していくための施策の充実など、隊員が安んじて職務に専念できる環境をつくるといったようなことは、まさに大変重要なことであると考えております。

 このため、特に退職後に関連するものといたしましては、従来から、若年定年制あるいは任期制のもとで退職する自衛官の退職後の生活基盤確保のために、職業教育訓練とか雇用情報の有効活用といったような、いわゆる就職援護施策といったものを行っております。また、若年定年制から生ずる不利益を補うために、若年定年退職者給付金制度といったようなものを運用しております。

 また、今申し上げましたいろいろな環境の変化を踏まえた対応といたしまして、昨年六月、防衛大臣を委員長とします防衛力の人的側面についての抜本的改革に関する検討会というものを設けまして、結論を得たわけでございますが、ここにおきましては、入り口から出口までといいますか、募集から退職後までを含めた幅広い観点から、防衛力の人的側面について検討を行いまして、報告書を取りまとめたところでございます。

 その中で、就職援護でありますとか退職後の措置あるいは褒賞制度といったようなものに関連する事項といたしまして申し上げますと、例えば、退職後に他の公的部門、公務員でございます、公的部門を希望する自衛官に対する支援策でありますとか、自衛官のライフプラン、これは退職後も含めたライフプランの支援の充実でありますとか、あるいは、市町村レベルでの危機管理ポストの求人の開拓、これはいろいろな分野での市町村等との連携の強化につながっていくわけでございますけれども、そういった求人開拓でありますとか、国際平和協力業務等に従事した隊員に対する記章、これは新たな褒賞制度として検討していきたいといったような点につきまして、いろいろ議論をしたところでございます。

 今後、これらの措置あるいは検討を踏まえて、可能なものから着実に実施してまいりたいと考えております。

西本分科員 どうもありがとうございました。

 持ち時間が迫ってまいりまして、九問目まで用意してあったんですけれどもどうもかなわないようでございますので、中間は省きまして、八問目を質問させていただきます。

 防衛力の規模は、財政状況も考慮して現行の計画決定となっているのですから、それに基づき実行するのですが、このまま陸自の編成人員が減少しますと、本格的侵略事態に対処するための最も基礎的な部分についても対処できる範囲が限定せざるを得ないのではないかと心配しています。そうなれば、一問目、二問目で質問したように、施設の少ない四国内の安全の確保が不安であります。

 そこで、現在、中期防は進捗の過程ですが、平成二十一年度の計画期間末の編成定数についての見通しと、それを可能にした組織の見直しがどのように進んでいるのか、お伺いします。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先生今御指摘のとおり、陸上自衛隊はマンパワーでございまして、これはファイナルゴールキーパーというような言い方をしておりますけれども、そういった形でしっかりとした防衛力を維持していくということが非常に重要だというふうに思っております。

 それで、現在の中期防におきましては、中期防末、平成二十一年度でございますけれども、編成定数でおおむね十六万一千人程度をめどとすることになってございます。これは、中期防が始まる前の平成十六年度末は十六万七千人でございましたので、そういった形で削減が進んできております。最終的には平成二十一年度というふうに申し上げましたけれども、次の中期防が終わるところで今の大綱の目標であります十五万五千人ということでございます。

 ただ、単純に数を減らしていくということではございませんで、中身を見まして、ゲリラや特殊部隊による攻撃でありますとか、あるいは、先ほど御指摘のありました大規模災害等、そういったものへの対応体制というのはきちっと充実を図っていく、それと同時に効率化を図っていくということでございます。

 また、現実に第十四旅団への改編におきましては、普通科部隊あるいは化学防護部隊の拡充というのを行いますし、軽装甲機動車の導入なども考えているところでございます。

 また、いろいろな全国的に展開する能力を高めたり、あるいは国際平和協力活動への派遣を念頭に置いた中央即応集団というようなものも昨年編成をいたしましたし、ことしには中央即応連隊の新編も行ったというようなことでございます。

 したがいまして、これからもいろいろな効率化を図りながら、実際に多様な事態に対応できるような、実効的な能力というものを追求してまいりたいというふうに考えております。

西本分科員 私の時間配分のまずさで、七問目と九問目は質問することができませんでした。御答弁を用意してくださった皆様に申しわけないと思います。

 最後に、防衛省においては、いろいろな問題が発生したとはいえ、限られた予算、人員の中で、本来の使命を全うしていく姿勢に敬意を表するものであります。

 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

横光主査 これにて西本勝子君の質疑は終了いたしました。

 次に、玉沢徳一郎君。

玉沢分科員 私は、せっかくの時間をいただきましたので、三月二十一日付で発表されました「艦船事故調査委員会による調査について」という報告書と、「イージスシステムに係る特別防衛秘密流出事案について」、この報告書につきまして順次質問させていただきたいと存じます。

 去る二月十九日午前四時七分に護衛艦「あたご」が起こした漁船との衝突事件は、守るべき国民を深く傷つけたということによって国民の信頼を損なう、まことに残念な事件であったと思います。同時に、防衛上の観点からいうならば、小型漁船をよけ切れずに衝突事件を起こしたということは、夜間の暗やみの洋上で、もし小型船による自爆テロが行われるようなことがあれば、近代的装備を施したイージス艦であってもこれに対処できないということにもつながるわけでありまして、事は極めて重大である、こう思います。

 原因究明につきまして、大臣が常に先頭に立って行っていることに対しましては、私は心から敬意を表したいと思います。原因究明をしっかり行いまして、二度と事件は起こさないという体制と、防衛上の欠陥を正して、今後の防衛体制をいかに整えていくかということが重要となってくると思います。私は、そうした観点に立って、以下質問をさせていただきます。

 まず、報告書に基づきまして、衝突事件について質問します。

 この報告書によりますと、当日の当直員の供述内容を見てまいりますと、衝突直前の四時五分ごろには、右五度及び右二十から五十度の方向に数個の灯火を視認しているが、いずれも危険距離にはないという認識であったと考えます。ところが、清徳丸が接近したことを知るのは四時六分ごろ、つまり衝突寸前になって視認し、右七十度百メートル付近になって赤灯を掲げた清徳丸を発見し、両舷停止と後進いっぱいが下令されたが、清徳丸をよけ切れずに衝突したと解されるが、それでよろしいでしょうか。

石破国務大臣 これは先生御指摘のとおり、聞き取りに基づいてこの報告書は作成をいたしました。一部聞き取れてない者もございます。

 そこに書きましたのは、先生がまさしく今御指摘をいただきましたとおりでございまして、両舷後進いっぱいが下令をされた、その前に両舷停止、自動操舵やめがかかっております。その後で衝突音らしき音を聞いたというふうに述べておりますので、ここから聞きます限りは、間に合わずに衝突したという先生の御指摘どおりかと思います。

 今後、さらに詳細な調査が捜査当局によってなされるものと承知をいたしております。

玉沢分科員 イージス艦の特徴というのは、やはり、レーダーによりまして長距離の敵ないしは相手を視認しまして、そしてそれに対抗していく、こういう大きな特徴があるかと思うわけでございますけれども、報告書を見てまいりますと、この特徴あるレーダーが十分有効に使用されていなかったという私の認識が深まります。

 暗夜における見張りといいますのは、肉眼で見るのはどうしても限界があると思うんです。それを補うのは当然のことながらレーダーの役目であるはずでありますけれども、報告書の内容を見てまいりますと、当直士官の指示があったかどうかはわかりませんけれども、レーダーを操作する体制というものが極めて不備であったということが報告書を見るとよくわかるわけであります。

 例えば、前の当直は前直、こういうんだそうでございますけれども、当然ながら、漁船の存在は前直の段階から認識したと報告書にあります。しかし、漁船の航跡をレーダーでしっかりととらえられているかというと、どうもそうではなかった可能性がある。

 この報告書の三ページの(五)にありますけれども、あえてここで読み上げますが、「前直におけるCICの当直体制」とありまして、「CICについては、通常であれば七名の当直員が勤務すべきところ、前直については、電測員長の判断により、前半の一時間は三名、後半の一時間は四名の当直員しか勤務しておらず、CICに設置されている二台のレーダ指示機のうち一台については、継続的には要員が配置されていなかった。」とあります。

 この理由として書いてあるわけでございますけれども、七名の当直の人員数のうち三名ないし四名にした理由については、「本来、CICの当直体制について判断するのは船務長の権限であるが、電測員長は、かかるCICの当直体制の実施について、船務長の許可を得ていない。」と。少ない要員とありますね、少ない要員によって十分な監視が行われていないというのは、そこに起因するのではないか。つまり、電測員長の独自の判断によりまして船務長の許可なしに行われた、これは規律違反と指摘されてもいいのではないか、私はそう思うわけでございますが、これの緩みが一つある。

 それから同時に、継続的に一台については要員が配置されない、こういうことから、漁船の存在を、一つ一つ航跡を、走る跡ですね、つまりここを十分追跡しなかったという考えが出てくるわけでありますが、この点についてはどうですか。

石破国務大臣 まだ確たることは申し上げられませんが、大体先生御指摘のようなことではないかと思ってはおります。

 イージスが持っておりますレーダーは、水上レーダー、航海用レーダーというのがあるのはもう先生御案内のとおりでございまして、レーダー指示機と申しますが、これのディスプレーがたしか艦橋に一台、それからCIC二台というふうに承知をいたしております。

 まさしく、見張りだけでもだめでレーダーだけでもだめで、これが両々相まって見張りということになるわけで、ほかにも音とか風とかいろいろなものがございますが、それ自体が全体として適切ではなかったというふうに私ども思っております。

 わけても、わけてもと申しますか、電測員長はそんな判断をしてはいかぬのでありまして、船務長の権限であるにもかかわらず電測員長が、継続的にそこのレーダー指示機のところに人がいなかったというようなことも、それも間違い。そしてまた、継続的に見ておらなければいけなかったということもございます。それから、見張りというのは総体で考えるものでございまして、総体として私ども十分ではなかったというふうに考えておりますが、個々のそれぞれの行為がどのような結果との因果関係を持つかということにつきましては、現時点で確定的なことは申し上げられません。

 どちらにしても、見張りと体制が不十分であったという認識を持っておるところでございます。

玉沢分科員 それを裏づけるものとして、報告書七ページ、「四 レーダによる漁船の認識状況」とありまして、「「あたご」は、通常航海において、レーダ指示機を三台使用しており、一台が艦橋に、二台がCICに設置されている。」また、「レーダ指示機は、水上レーダ又は航海用レーダの画面を表示することが可能であり、また、レーダ指示機のうち一台は表示内容を記録することが可能であるが、記録はとっていない。 また、これまでの調査では、当直員が、レーダ指示機で「清徳丸」を認識していたとの情報は得られていない。」八ページには、「「あたご」全体の対応の評価」として、「艦橋で当直していた見張員の一部及びCICで当直していたレーダ見張員の供述に基づけば、衝突前の見張員の配置やCICにおける当直員の配置状況も含め、艦全体として周囲の状況等について見張りが適切に行われていなかった。」これは今大臣が指摘したとおりであると思うわけでございます。

 問題は、当直士官がいかにしてチームである全員を、見張りあるいはレーダーのもと、それを十分駆使して、そして適切な判断を下すべきところであるわけでございますが、あるべきレーダーの要員が継続的に配置についておらないで、遠くの方はよく見えたようでありますけれども、足元の方の近距離における漁船の存在を見落としておった、こういう点は極めて重大な問題ではないかと考えるが、いかがでございましょうか。

石破国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

 確定的なことはまだ申し上げられません。私どもは捜査当局ではございませんし、聞き取れない者もおります。ですから、その上で申し上げますが、見張りも、外ではなくて艦橋の中で見張りをしておった、艦橋内の者ですね。通り雨があったのでという部分の記述を先生はお読みになったと思います、中にいたと。そしてまた、CICの前直は、常続的にといいますか、継続的に見ていないという状況であった。どうしてこんなことが起こるのかというのは、幾つもそういうのが重層的に重なり合って起こったのではないかというふうに考えております。

 私も、事故の直後、東京湾におきまして清徳丸の行方不明のお二人を捜索中であります「あけぼの」という、これも新しいタイプ、イージスではございませんが、DDでございますけれども、これに乗って、夜間の見張り態勢というものを実際に見てまいりました。

 幾つも幾つも重なり合った形で見張りというのは行われているわけで、どこかが抜かっておったから全部だめだということにならないはずなのでございますが、それでもこういうことが起こったというのは、全体として不十分であったし、そういうのが幾つも連鎖というか重畳的にというか、そういう形で起こったのではないかという認識を持っております。

 いずれにいたしましても、きちんとした事故の原因というものを究明するということが極めて重要なことだと考えております。

玉沢分科員 私は、海上自衛隊の隊員の皆さんにお会いしまして非常に感心するのは、どんなに雨が降っておっても傘を差さない、そして常に勤務している。ところが、この事案におきましては、見張り員が、つまり、通り雨が降ったために艦橋内に入って、雨が上がっても艦橋内にとどまっておった、こういうのはまことに士気にかかわる問題だと思うんです。ですから、あえて言えば、気が抜けておったとか緊張感が足りなかった、こういう点を指摘せざるを得ない、こう思うわけでございます。

 しかし、これからの問題でありますけれども、やはり何としましても、これは指揮命令系統をしっかりとしなきゃならぬわけでありますから、当直士官の指示と当直者の連携、まあ指示、連携ですね、これに基づいて今も、今度は再発防止のための訓練をされておられるようでございますけれども、今後、こういうような事件が起こらないようにするためには、どのような点に留意して対処されるのか。

 それから、やはり自爆テロというようなものが起こるということを想定して、見張りの態勢、レーダーの態勢とか、そういうことに対してもっと真摯に取り組むべきときが来たのではないか、こう思いますが、その対応方針につきまして、大臣の御見解を賜りたいと思います。

石破国務大臣 要は、基本の徹底以外にないと私は思っております。先生御指摘になりましたように、まさしく通り雨があったというので中におりましたと。外にいると、温度、風、音、そういうものを体感することができますが、中に入ったらそれができない。何でこんなことが起こるんだということでございます。あるいは、CICに継続的に人がいなかったみたいな話もそうでありまして、基本の徹底ということにかかりたいと思っております。それは、限られた船、限られた部署、限られた人員ということではなくて、本当に全艦徹底したかどうか、本当にそれぞれみんなが聞いたか、習熟したかというところまできちんと確認をしなければならぬと私自身思っておるところでございます。

 もう一つ、自爆テロの御指摘がございました。こういうことで、近づいてくる漁船も察知できずぶつけてしまうというようなことで、自爆テロ、大丈夫かという御指摘を多くいただくわけでございます。そのときには、もちろん、そういうときは警戒態勢も高いのでありましてというようなことを申しますが、余りそれではだめなのであって、やはりテロというのは、いつ、どこで、だれがだれから、なぜ、どのようにして攻撃を受けるかわからないということですから、今は大丈夫だなんというようなことを言っておってテロが防止できるとは、私はテロの本質にかんがみてちっとも思わないわけでございます。

 アメリカの駆逐艦コールが大破したという事案もございました。あれも、アメリカ海軍としてはそういう認識がなかった、そういう状況だとは思っていなかったというようなことで、相当に甘い態勢にあったわけでございます。

 洞爺湖サミットもございますし、私どもとして、テロの本質というのがいかに恐ろしいものであるかということをきちんと想起しながら、私どもは万全でなければならぬ、少しでも足らざるところがあってはならぬという認識のもとに、もう一度、私ども自衛隊を、きちんと動きますように、隊員一人一人の努力というものをよく念頭に置きつつも、完全な組織であらねばならないということで努力をしてまいりたいと思います。

 もう一点、防衛庁長官の大先輩でありますので、またお教えを賜りたいと思うのですが、装備の高度化に伴いまして、そちらの技術の方に時間をとられてしまって、シーマンとしての基本的な能力、そういうものの教育に割く時間が足りないのではないかという認識を持っております。SM3とかあるいはイージスシステムとか、そういうものに対して非常に高度なわざは身につけたけれども、船乗りとしての基本的な技量の訓練について十分な時間が割かれているだろうかという問題認識を私自身持っておりまして、海上幕僚監部ともよく議論をしながら、その点も詰めてまいりたいと考えておるところでございます。

玉沢分科員 今、大臣がおっしゃられましたように、有事の際は緊張感を持って取り組みますので、こういうことは起きない、自爆テロにも対処できるというようなことはよく言われるんですけれども、テロというのは有事の際に起こるわけじゃないんですから、平時に起こるからテロなのでございます。したがいまして、やはりこれは備えあれば憂いなしということがありますけれども、常にあらゆる事態に備えてやっていかなきゃいかぬ、こういうふうに思いますので、大臣は防衛省の改革にも取り組んでおられるわけでありますから、今後しっかりとこの点についてお取り組みをいただきたいということを申し上げて、次に移ります。

 次は、イージスシステムに係る特別防衛秘密流出事案についてであります。

 一読いたしまして結論を得たわけでございますけれども、この事件は、二等海曹、そちらの資料でありますと、Aという人の妻の方が外国人登録法違反によって捜査された中において出てきた資料によってこの秘密漏えい事件が発覚したわけでございます。

 当然、その外国人の妻、つまり、外国にこういう防衛機密がそれを通じて流れたのではないかという観点から捜査をされたと思うわけでございますけれども、この報告書によりますと、なぜ秘密の漏えいというものがなされたかというと、理由としましてはたくさんありますね。勉強のために教育用の資料をつくったとか、部下の教育の参考にするためにつくったとか、訓練用の資料として、また今後の任務の参考のためとか、それから留学中の参考とするため、こういうことで情報漏えいが簡単に行われたと。

 これは、もし外国に渡るというようなことがあれば、日本のイージス艦の機密が外国に漏れるわけでありまして、それを通じまして重大な事件が、つまり、イージス艦の、例えば弱点とか有利な点だとか、相手に知られるわけですね。同時に、これだけ機密漏えいに鈍感な日本の海上自衛隊に対しましては、同盟国のアメリカから多大の懸念が示されておる。しかし、この報告書にありますように、外国にこの資料が流れたということはないというように結論づけられておるように感じますけれども、それでよろしいんでしょうか。

石破国務大臣 そういう問題認識のもと、可能な限り徹底した調査を行いました。その結果、イージスシステムに係る特別防衛秘密の自衛隊外への流出というものはないというふうに確認をしたところでございます。

 あわせて、先生、今中国人の配偶者のお話をなさいました。中国人女性を配偶者としておりましたのはこの二等海曹でございますが、これが持っておりました外づけハードディスクに記載されておりましたこの資料への最終にアクセスした日時というのは、平成十八年の三月でございます。ということは、最終にアクセスしたのが十八年三月でございますので、この二曹が後に配偶者となります中国人の女性と知り合ったのは、それから五カ月後の平成十八年八月でございます。そのように確認をされておるところでございます。

 そういうようなことで、自衛隊外への流出は確認できなかったということでございますし、その動機は、自衛隊の特別防衛秘密を外国へ漏らそうというような意図ではなくて、教育でありますとかそういう、ある意味善意の話なのですが、そんなものが善意で済む話かということでございます。

 そしてまた、善意だったからもうよろしいでしょうという話には全然なりませんで、このイージスシステムは、日米で今イージスシステムを持っているわけでございますが、これをやがて、韓国でありますとか、あるいはオーストラリアでありますとか、あるいはスペインでありますとか、多くの国々が抑止力の発現のためにイージスシステムを採用するわけでございます。これはそういうような、軽い気持ちがとは申しませんが、教育だとか参考だとか、そういうことで、ある意味、多くの国々の防衛というものに大きな影響を与えかねないというような事案でございますので、私ども、非常に真摯に、かつ深刻に受けとめて、再発防止に全力を傾けねばならぬと思っているところでございます。

玉沢分科員 こういう事案は、かつては、やはり同じように起きたんですね。

 無断海外渡航事案というのがありまして、平成十八年のことだったかと思いますけれども、要するに、上対馬の警備所に勤務する一等海曹が無断で中国に数回参りまして、それで、外務省の職員がハニートラップにひっかかった、上海のかぐや姫という、これはキャバレーだと思いますが、そこで歓待を受けて、数回中国の要員と接触しておると。これは、ある面においては、幹部でもありませんし、重大な情報が向こうに渡ったというようなことも、この際も何もないという形になりましたね。しかしながら、この関係の友人の、この人をAとすると、友人B、友人Cは、やはり同じように何回も外国に行って、調べを受けて、一人は自殺するというような事件が起きた。

 私は、実際の意見を聞きましたら、さっきの、資料へのアクセスが結婚する五カ月前とか、そういうことだから大丈夫だというようなお話だったんですけれども、中国が我が国の防衛機密を常に欲しがっている、それでいろいろな情報戦が行われている、こういうようなことを考えた場合におきましては、十分警戒をする必要があるんじゃないか。だから、この情報漏えいの問題についても、外国に対してどういうふうな、カウンターインテリジェンスというんですか、そういうこともやりますと言っているわけでございますけれども、十分な警戒をする必要があるんじゃないかと。

 情報戦におきましては、サイバー部隊を中国は相当数持っておって、いろいろなサイバー攻撃を各国にしかけているとアメリカの報告書が言っていますね。私は、日本も対象になってくる可能性があると思うんですね。同時にまた、中国は、今までの二十年間にわたりまして二けた以上の防衛費を拡大しまして、周辺諸国に対しまして大きな脅威を与えている。しかも、そのやり方を見てまいりますと、中国は、問題解決するときは必ず軍事的な手段を行っている。最近においては、ベトナムとの国境紛争がありました。中印国境紛争もありました。あるいは、ソ連との国境紛争におきましては、約十二年間にわたりまして、年間に三千回も紛争を起こしましたね。こういうことを見てまいりますと、非常に、中国のやり方ということに対して警戒をしておかなきゃいかぬ、私はそう思うんです。

 そういうことで、これから防衛省におかれましても、我が国の防衛を守る上におきまして、ただ警戒だけではなく、これは当然対応しなきゃならぬということもたくさんあると思いますけれども、十分注意して対応していかなきゃいかぬのではないかと思うんです。そういう点で、大臣以下、防衛省のこれからの健闘をお祈り申し上げたいと思います。

 私は、最後に、なかなか国会で発言する機会がございませんので、ここで明確に申し上げておきますけれども、中国の、チベットの人権侵害に対しまして重大なる抗議の意を表明いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

横光主査 これにて玉沢徳一郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして防衛省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより総務省所管及び公営企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。増田総務大臣。

増田国務大臣 平成十八年度総務省所管の決算について、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算について申し上げます。

 総務省主管一般会計の歳入につきましては、歳入予算額六百七十六億二千三百三十三万円に対し、収納済み歳入額は七百三億八千百十四万円余であり、差し引き二十七億五千七百八十一万円余の増加となっております。

 次に、総務省所管一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額十八兆八百七十五億七万円余に対し、支出済み歳出額は十七兆九千九百八十六億二百七十三万円余、翌年度繰越額は七百二十九億三千九百四十五万円余であり、不用額は百五十九億五千七百八十八万円余となっております。

 次に、総務省所管の交付税及び譲与税配付金特別会計の決算について申し上げます。

 この特別会計には、交付税及び譲与税配付金勘定と交通安全対策特別交付金勘定を設けております。

 まず、交付税及び譲与税配付金勘定につきましては、収納済み歳入額は七十四兆七千二百六十億二千九百六十万円余、支出済み歳出額は七十二兆七千百十二億八百八万円余であります。

 次に、交通安全対策特別交付金勘定につきましては、収納済み歳入額は九百六十一億三千六百六十五万円余、支出済み歳出額は八百四十一億四千九百六十六万円余であります。

 以上が、平成十八年度総務省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要であります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院高山第五局長。

高山会計検査院当局者 平成十八年度総務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項七件であります。

 検査報告番号二号は、合併補助事業を実施するに当たり、補助対象期間外の合併に係る事業を補助対象としていたため、補助金が過大に交付されていたものであります。

 検査報告番号三号から六号までの四件は、いずれも情報通信格差是正事業等の実施及び経理が不当と認められるものであります。

 このうち、同三号は、加入者系光ファイバ網設備整備事業の実施に当たり、補助の対象とならない空き家等に係る光加入者装置等の整備費を補助対象事業費に含めていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 また、同四号から六号までの三件は、地域イントラネット基盤施設整備事業の実施に当たり、補助の対象とならない地図情報の作成費を補助対象事業費に含めていたり、必要のない接続確認試験を行う設計としていたりなどしていたため、これに係る国庫補助金が不当と認められるものであります。

 検査報告番号七号は、消防防災施設整備事業の実施に当たり、補助対象装置の実支出額が補助要綱で定める基準額を上回っているとした事実とは異なる実績報告書等を提出し、これにより国庫補助基準額を算出したため、補助金が過大に交付されているものであります。

 検査報告番号八号は、職員の不正行為による損害が生じたもので、行政評価事務所の職員が、小切手の作成等の事務に従事中、無断で小切手を作成するなどし、これを現金化して前渡資金を領得したものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 次に、会計検査院斉藤審議官。

斉藤会計検査院当局者 平成十八年度公営企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。

 これは、公営企業金融公庫資金の貸付額が過大となっているもので、病院整備事業を実施する地方公共団体に対する資金の貸し付けにおいて、当該年度の起債対象事業費から、前年度に起債対象となったもののその年度内の支出が終わらなかったため当年度に繰り越した逓次繰越事業費を控除する必要があるのにこれを控除していなかったため、公営企業金融公庫資金が過大に貸し付けられていたものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。増田総務大臣。

増田国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、総務省のとった措置について御説明申し上げます。

 所管事業に係る予算につきましては、その適切な執行を図るよう常に心がけているところではございますが、会計検査院の検査の結果、市町村合併推進体制整備費補助金において補助対象期間外の事業費が精算されていた等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に存じます。

 これらにつきましては、既に地方自治体から補助金を返還させるなどの是正措置を講じたところでありますが、内容を真摯に受けとめ、今後なお一層事務の改善を求めるとともに、厳正な態度で事務の執行に努める所存でございます。

横光主査 次に、渡邉公営企業金融公庫総裁。

渡邉政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、公営企業金融公庫のとった措置について御説明申し上げます。

 公営企業金融公庫資金の貸し付けにつきまして、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾に存じております。

 当該貸し付けにつきましては、既に繰り上げ償還をさせ、是正措置を講じたところでありますが、今後は、このような御指摘を受けることのないよう、地方公共団体に対して、公庫資金の適正な借り入れ申し込みを行うよう十分な周知を図り、貸し付けの適正を期する所存でございます。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして総務省所管及び公営企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平口洋君。

平口分科員 衆議院議員の平口洋でございます。

 自由民主党に所属をいたしておりまして、選挙区は広島の西の方の広島第二区でございます。

 きょうは、郵政の事業について質問をしたい旨の申し出をいたしましたところ、答弁者に御出席いただき、質問の時間を与えていただきましたこと、本当に感謝を申し上げたいというふうに思います。総務大臣、そしてまた日本郵政の方からも常務に来ていただきまして、本当にありがとうございます。

 御案内のように、郵便事業あるいは郵便貯金、簡易保険という事業は、明治に入って我が国が知恵を絞って始めた制度でございまして、本当に、関係者の御努力で、我が国の発展のために大変寄与したということは大きく評価できるのではないかというふうに思います。

 ただ、二十一世紀に至った今日において、例えば、郵便事業については、宅配業者さんや運送業者さんの参入、あるいは貯金、保険といったようなところも、金融機関の発展、そういったようなことから、スタート時点からかなり状況が違っておりますので、二十一世紀らしい、こういう郵政の事業を展開するにはどうしたらいいか、大きな国民的な議論を経て、最終的には、郵政を民営化し、そして分割するという方針で進んできたところでございます。

 法案が通って、それから分割・民営化がスタートするまでの期間、余り長くなかったものですから、いろいろと難しい問題も生じたことと思いますし、また、関係者、本当にいろいろと頭を悩まされたというふうに思いますけれども、分割・民営化がスタートして半年になるわけでございますが、この間、問題をはらみながらも順調に事を進めてこられた関係者の御努力に対して、まずもって深く敬意を表したい、このように思います。

 私も巷間、いろいろな人と話をし、この問題についての議論もいたしますけれども、やはり何といっても圧倒的に多い声は、郵便局が大変親切になった、そしてまた愛想もよくなったし、丁寧になったという声が非常に強いわけでございますので、その限りでは、分割した形での民営化というのは国民的には大変評価されているのではないかというふうに思います。

 ただ、また一方で、いろいろと困難な課題を抱えながらスタートしているものですから、苦情とか文句とか批判とかいうものもあるわけでございまして、誤配、遅配が大変多いとか、あるいは大変待たされるとか、さらには、郵便局の関係者の中でも、今のシステムはいかぬと腹を立ててやめた人もいるわけでございます。なるべくいいところは残しながら、御批判をいただいているところは正していく、こういう姿勢が大事ではないかというふうに思います。

 そういう意味で、私は、民営化のところはよしとして、分割が果たして、五つに分割する方法でよかったのかなというふうな若干の疑問も感じる昨今でございますので、郵政の法案が通るまではどちらかというと理論上の議論を膨大な時間をかけてされたと思いますけれども、スタートして半年を経た現在、実際はどうであるのかという議論をやはり緻密にやっていく必要があろうかと思います。

 そういう意味で、やや前置きが長くなりましたけれども、問題となる点について幾つかちょっと御指摘をさせていただいて、今後の参考にしたい、このように思うものでございます。

 そこで、まず郵政公社さんの方にお伺いしたいんですが、分社化したおのおのの会社、五つございますけれども、その状況と今後の目標あるいは課題、こういったようなことについてお伺いしたいと思います。

伊東参考人 お答えいたします。

 民営化いたしまして、各事業の現状を簡単に申し上げさせていただきまして、あわせまして、今後の課題について触れたいと思います。

 まず、郵便事業でございますが、民営化後の平成十九年下期、十月からになりますが、直近の一月期までの総引受物数というのを把握していますが、これは、これまでもそういう傾向にはあったんですけれども、やはり若干減っている現象が出ております。具体的には〇・九%ぐらい減っている状況でございます。

 また、ゆうちょの関係で申し上げますと、貯金残高でございますが、平成二十年三月末時点で、民営化直前、平成十九年の九月末時点でありますけれども、やはり約五兆円、貯金残高の減少となってございます。

 また、かんぽ生命につきましても、平成十九年十月から平成二十年二月まで、個人保険の新契約件数がやはり前年同期の件数との比較では四七・七%の減少になっておりまして、非常に経営状況が厳しく、業績の回復に向けしっかり取り組んでまいらなければならないという認識をしております。

 また、民営化後、こういった経営状況面以外におきましても、コンプライアンス違反とか個人情報の不適正な取り扱い等、私ども、コンプライアンスの水準向上というのを最重要課題としておるにもかかわらず、幾つか事例が出ておりますので、こういった点について今後大きな課題として取り組むこととあわせまして、基本であります郵便のユニバーサルサービスとか郵便局ネットワークの維持に向けまして、効率的な事業の推進や、また、これも御指摘をいただいておりますが、簡易局の一時閉鎖対策などの取り組みを強化してまいりたいと思っているところでございます。

平口分科員 わかりました。

 民営化して分割して半年ですので、半年の間の業績はどうかということもなかなか数字的には明示しづらいところかと思いますが。

 民営化の前、直近の時点ぐらいになろうかと思いますけれども、郵便物そのものはここ五カ年間でかなり減少をしておりまして、これはいただいた数字なんですが、五年前は大体郵便物が七十四億通あったわけでございますが、これが平成十九年度には六十五億通まで落ちている。ただ、こういう中で、ゆうメールは、五年前が二億余りだったんですけれども、今は八億通ということで、御努力の跡が見られるわけであります。また、郵貯の方も、五年前は二百三十八兆円あったんですが、平成十八年度末では百九十三兆円まで落ちている。保険あるいは年金保険といったようなところもかなりの趨勢で落ちているわけでございますので、ひとつここはしっかり頑張って、グループが結束して難局を乗り越えてもらいたいと思います。

 そういう中で、持ち株会社と言われる日本郵政株式会社の役割についてちょっとお伺いしたいと思います。

伊東参考人 御指摘ございました持ち株会社であります日本郵政株式会社の役割でございますが、これは日本郵政株式会社法の目的のところにも明記されておりますが、まず、二事業会社、郵便事業会社と郵便局株式会社の経営管理を行うこと、それから業務支援を行うことということが明記されております。

 これらを踏まえまして、四つの会社があるわけでございますけれども、グループ全体の経営理念、経営方針を示した上で、先ほど申し上げましたグループ会社の経営管理あるいは投資などの必要な支援を行うという役割を担っているというふうに私ども認識しているところでございます。

平口分科員 わかりました。

 通常、グループ企業の中で持ち株会社というとやや別格的な存在で、ありていに言えば親分の会社だということで、グループがきちっと結束して一つの目的に向かって進めるように中心になって努力する会社というふうに理解をしたいと思います。

 そこで、これは私はインターネットで見たんですが、ことしの三月のインターネットの記事の中に、ことしの二月に日本郵政グループの中のゆうちょ銀行が全国の郵便局向けに預金保険機構の制度を知らせる冊子を作成して、各郵便局、つまり全国二万四千の郵便局に配付をした。そこで、あろうことか、この二万四千の配送作業を郵便事業の方の株式会社にやらせないで、ある民間の別の宅配業者にやらせた。これを聞いて西川さんという社長さんが非常に腹を立てて、何だというふうに言われたという記事が載っていますが、これは事実でしょうか。

伊東参考人 先生御指摘のとおり、二月の二十五日の週でございますが、ゆうちょ銀行が郵便局へ書類を送付するに当たりましてヤマト運輸を利用したのは事実でございます。

平口分科員 それに対して、西川社長を初めとする日本郵政の方はどういう態度なり活動、行動をとられましたか。

伊東参考人 これはまさにグループ全体としての連携の不備ということで、もう少しゆうちょ銀行と郵便事業会社が十分な連携をとって事を進めればもっと違った対応もあったのかなと。

 確かに、今回の配送は、単に郵便物を送るということだけではなくて、預金保険機構から大量に収納した資料を格納場所、預金保険機構さんが納められた格納場所から取り出しをいたしまして、あて名ラベルを作成して、さらに配達をするという作業を伴いますので、これまでの郵便の仕事とはやや異なるわけでございますが、郵便事業会社も、民営化されまして、そういったいわゆるロジスティックな仕事というのは今後できるようになっておるわけでございます。

 もちろん、その辺がまだ十分なれていないというところはございますけれども、事前に十分ゆうちょ銀行と郵便事業会社が連携をとっていろいろ知恵をめぐらせればもうちょっと違った対応があるということで、今後は、それぞれのレベルで必ず、事務的なレベルではなく、まさにこういった場合は郵便事業会社であれば営業担当も含めてハイレベルで事前の打ち合わせを十分にした上で対応するようにということで、グループ内、意識統一をしたところでございます。

平口分科員 どう考えても、グループ企業があって、その中に配送ないしは配付する役割を持っている会社があるわけですから、個々の値段とか作業は別として、そういったようなものをほかの会社にやらせるというのはメンツにもかかわりますから、こういったようなところは親分企業である日本郵政株式会社の方できちっと指導して、分社化によるデメリットが余り出ないように、一致団結して事を進めるように今後とも努力をしていただきたい、このように思います。

 それに関係して、一つ、料金後納の手続について、実際に私が体験した事柄についてちょっと御披露して、お答えいただきたいんです。

 私の選挙区の中に、離島というと悪いんですが、島がありまして、江田島市という一つの島があるんですけれども、後援会の開催が広島市内でなかなかやりづらいものですから、その島の中で毎年やることにしておりました。もちろん、政治家の後援会でございますので、来る人がいたり来なかったりする人がいるものですから、だから一々案内の中に返信用のはがきを出していても、来ない人に対しては空振りになるものですから、料金後納という大変便利なシステムを毎年使ってきていたわけであります。

 それが、去年の十月一日以前では、江田島市内の中心的な郵便局である江田島郵便局というところで別納の手続をきちんとしてくれた。誤りがあればその場で指摘をして、書き直せば、もう一時間もあれば手続が終わったわけでございますけれども、分割・民営化されてから、この江田島局で処理ができなくなりまして、窓口の担当だけだというので、誤りすら指摘してくれなくなった。その後で呉の郵便局に送って、さらに呉から東京の本社の方の審査を受けなくちゃいけないということになって、順調にいけばこれでも一週間以内ぐらいで済むのですけれども、誤りでもあれば、その都度、何日かして返ってくるというふうなことが実際にありまして、一日で済んだ作業が今は二週間も二十日もかかるといったようなことになっておるんですが、この点は、どうしてこのようなことになるのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。

伊東参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘のとおり、郵便料金の料金を納めます方法であります後納につきまして、民営化前は、それぞれの郵便局の方で御申請をいただき、承認をしてまいりました。民営化後は、事業主体が分かれましたので、郵便に関します後納料金の承認につきましては、その経営主体である郵便事業会社が行うということにさせていただきました。

 料金後納収入というのは郵便収入の大半を占めますので、その基本となります与信判断というものはやはりみずからの法人において行う必要があるだろう、こういう判断をしたわけでございます。

 そのことによって、実際申請されるお客様に一週間も二週間もかかっていいのかというのはもちろん別の問題でございまして、今私どもといたしましては、民営化されました以上は、今まで原則、担保を出していただく、例えば五十万円以下とか上場会社とか、それから三年間ぐらいずっと必ず納めていただくとか、一定の条件がある場合は担保は要りません、こういう形になっていたわけですが、民営化されましたら、その条件をもっと緩和しようということも考えております。その結果、今までは支店あるいは郵便局レベルで承認できたものを、今は全部一括本社で、効率よく、あるいは今申し上げたような観点から一元管理をしております。

 もちろん、非常にリスクの少ない五十万以下のものにつきましては支店で対応できるようにはしていますけれども、そんなこともあわせまして、もう一つ、十月一日、郵便局会社も郵便会社もそれぞれ民間会社になりまして、いろいろな決済に関します、日締めをするとかそういうことを、決済金のシステムをつくりまして、それに後納などの債権管理もあわせて載せたものですから、若干その混乱もございました。

 いずれにいたしましても、私どもとしては、事業主体が変わったことによるためのリスクというものをできるだけ少なくするために、郵便会社の方で与信管理はさせていただこう、しかしながら、繰り返し申し上げますが、今後、可能な限り担保をとる場合を限定していこうということで今対応しているわけでございます。

 したがいまして、郵便局にお出しいただいて、すぐその場でということはなかなか難しくなったわけでございますが、さっき申し上げましたように、二週間も三週間もかかるということはもう可能な限り、現実に今の段階ですとほぼ一週間ぐらいで御承認させていただいていると思いますし、この期間も今後いろいろな工夫をいたしまして短くして、お客様に御不自由をおかけしないようにしていきたいと思っている状況でございます。

 以上でございます。

平口分科員 分割した後での理屈というんですか、理論としてはそうかもしれませんけれども、国民にもっと便利になるように分割・民営化をしているわけですからね。そこはやはり国民にとっては、郵便事業会社がやろうと郵便局会社がやろうと知ったことじゃないわけですよ。きちんとした、迅速なサービスを提供してもらいたいと思いますので、こういったようなこともちょっと、分割をしたことによる弊害なんじゃないかなというふうに私は思います。

 もちろん、それまでの郵便局がいいかげんな審査をしていたというふうな指摘をする人もあるかもしれませんけれども、全国で別納郵便で事故が起こったというのはそう聞いたこともありませんし、おっしゃったように、担保さえきちっととればすぐ、それ以内の、我々のやることはもうせいぜい数万円以内のことですから、そういったようなことは、会社が分割されようと従前のままきちっと、ある程度その場で判断できるような、そういったような分割・民営化の方向を進んでいただきたい、このように思うわけであります。

 それと、分割のデメリットじゃないかなと思うようなことについて、ちょっと二、三個別に指摘をしておきたいんです。

 現在、郵便局の中に全国一生懸命、どこへ行っても間仕切りをしておりますね。これはどういう考え方で間仕切りをしているのか、どの程度まで間仕切りをする予定なのか。それと、間仕切りをするコストも、安く済むところもあるかもしれませんけれども、結構高いんじゃないかと思うんですけれども、一郵便局当たりどのぐらいかかるのか、全国ではどのぐらいかかる予定なのか、その辺についてお伺いしたいと思います。

伊東参考人 間仕切りにつきましては、私ども、民営化されまして、現場で働いている社員も、もう少し何とかならないかとか、いろいろそういう指摘をいただいております。

 もともと間仕切りをした根拠ですけれども、会社が分かれまして、会社間の情報セキュリティー等の確保のために間仕切りをしたわけでございます。個人情報の扱いとか、そういったことを含めまして、私どもとしては最小必要限のつもりでやったわけでございます。

 したがいまして、さらにこれから間仕切りをふやすということは、今のところ想定しておりません。

 これにかかりましたコストですけれども、およそ三千六百局で、経費は約二百八十二億円でございます。一件当たりは、工事の規模が異なりますので多いところ少ないところございますけれども、単純に平均いたしますと、一局約七百八十万円程度になるわけでございます。

 今後、先ほど申し上げましたように、間仕切りがあるために社員の作業が非常にしにくくなっているとか、先ほど申し上げました情報セキュリティー上の確保が必要なんですけれども、さはさりながら、もう少し工夫の余地があるのではないかということも現場からもいろいろ声が出ておりますので、今これだけではなくて、郵便局、作業が相当複雑になっているとか、その結果、先ほども先生から御指摘ありました、結局お客様を待たせてしまうというようなこともございますので、今、レイアウトの見直しということを行って、できるだけ間仕切りの、ある意味では、もう一回工夫をするとか、そういったことも行うことによって、社員の仕事をスムーズに行う、結果としてお客様に少しでも待つ時間を減らすということの対応を考えているところでございます。

平口分科員 間仕切り程度のことで国会の方で余りごたごた言うのもどうかなとも思うんですけれども。

 今聞くと、一件当たり七百八十万円かかるというので、それまでの郵政省が五つの会社に分かれて、封筒の印刷なんかだってばかにならないときだと思います。それと、業績もどちらかというと下降ぎみにあるときに、やはりこういったようなことは、ちょっと支出としては余り妥当じゃないんじゃないかなというふうに思います。

 もったいないというわけじゃないんですよ。そういうわけじゃないんですが、こうまでして分社化を進めていかなくちゃいけないのか。もし職員をきちっと分ける必要があるんだったら、腕章でもすれば済む話なものですからね。

 それよりも何よりも、一般の顧客が郵便局に入って、これは何事だろうと。言ってみれば、たらい回しにされて、こっちじゃありません、こっちは事業会社であっちが郵便局会社ですみたいなことを言うことは、そういうことは今までなかったんですよね。無用な分社化による弊害を増長するような方向でいっているんじゃないかというふうな気が私はいたしますので、ちょっと御検討いただきたい。

 むしろ一体化させる方向で、今やはりどこの企業もみんな分社化の方向で進んでいますけれども、経理はきちっとする、自分のところで収益をきちっと上げるような、そういう経理体制にするという意味での分社化ならいいですけれども、物理的に分けてしまって、うちの会社の仕事じゃありませんみたいなことが優先するような方向性というのはちょっといかがかなというふうに思います。

 それと、分社化によって、一つ目につくのは、外務関係の職員がえらい減っているんじゃないかというふうなこと。あるいは、外務の職員、つまり渉外系統の職員が、今まではいろいろなことをやっていたのが、自分のところのフィールドを狭くして、それで非常にそこのところがぎくしゃくした体制になっているんじゃないかというふうな感覚を持っているんです。

 それについて、まず、外務職員は今どのぐらいいらっしゃるのか、以前はどのぐらいいらっしゃったのか、そしてまた今後はどのぐらいにされるつもりなのか、これは金融系統の事業と郵便系統の事業で違うかもしれませんけれども、そこらを区分していない質問で恐縮なんですが、そのことについてちょっとお答えいただきたいと思います。

伊東参考人 今先生御指摘ございましたように、集配に携わる外務の職員と、それから金融の方で営業活動をする、私ども渉外担当職員と呼んでいますが、それぞれについて分けて申し上げさせていただきます。

 郵便の方につきまして申し上げますと、二年前、平成十八年三月三十一日現在で約六万四千九百人おりました。これが、二十年四月、これは正社員の頭数、先ほども正社員の、このときは計画人員ということで私ども呼ばせてもらっていますが、二十年四月一日現在で五万八千七百十一人となっております。今後この郵便の配達の方につきましては、具体的にどうするかということは今のところ数字は持ち合わせておりませんが、できるだけ私ども、郵便の場合には人件費の占める割合が大きいものですから、単純にすぐ社員を減らすということだけでは必ずしもないんですけれども、いずれにせよ、人件費の全体に占めるシェアを減らしていこうというようなことは、経営の考え方として持っておるところでございます。

 それから、金融の方の貯金、保険の外務職員でございますが、二年前、平成十七年度末、平成十八年三月三十一日現在ですけれども、貯金、保険の外務職員数は約三万三千人でございました。これが、実際は、郵便局会社に帰属した部分とゆうちょ銀行とかんぽ会社に分かれて、なかなかそれを全部把握することは難しいんですけれども、基本的にはそんなに大きく変わってございませんで、郵便局会社だけ申し上げますと、郵便局会社に帰属した社員数は、貯金、保険の渉外を担当する職員として二万三千人でございます。

 こちらの方は、特に、先ほど来申し上げていますように、保険の契約件数なども減っていることもございますし、貯金の残高も減っていることもございますし、郵便局の渉外社員の役割というのはこれまでより非常に重要になることかなと思っておりまして、どのぐらいふやすかという計画は具体的なものはございませんけれども、やはり十分な営業、渉外社員数を確保する必要はあるのかなということで今考えているところでございます。

平口分科員 そういう方向でひとつよろしくお願いをしたいと思います。

 それと、ふるさと産品の事業についてちょっとお伺いしたいんですが、ある日突然、郵便局に行くと、いろいろな商品を郵便局でも配達しますよというふうなビラが置いてありまして、本当にこんなことまでしてもらえるのかなというふうなことを思った記憶があります。以来、多分十年、二十年の歳月が流れたんだと思うんですけれども、全国の特定郵便局長さんを中心に、こういうふるさと産品を全国にお買い求めいただこう、こういうことをやってきていただいたわけであります。多分持ち出しも相当多かったんじゃないかと思いますけれども、これがかなり功を奏してきたと思います。

 特に、今、地域社会は限界集落なんかの表現でも言われるように本当に疲弊をしておりまして、高齢化が進んでおりまして、地域社会をどう発展させるかというのは別の意味でも本当に大変大きな問題なんですけれども、こういうところに貢献のあったふるさと産品の事業が、分割・民営化によって、それぞれの会社の権利主張ですか、権利主張というのも表現は悪いかと思うんですが、例えば、ゆうちょ銀行であれば振り込み手数料はいただかなくちゃいけない、郵便事業会社であれば輸送料に相当するお金はいただかなくちゃいけない、そしてまた郵便局会社であれば、これだけの仕事ができるのは郵便局のネットワークがあるからだということで販売手数料もいただかなくちゃいけない、そういったようなことになっておりまして、これに関与する関係の、カタログ販売事業者なんかですけれども、非常に過大な負担になっているんですね。

 ここの点について、余りこれをぎちぎち、四社の利益をきちっと確保するということでみんな頑張ると、結局、角を矯めて牛を殺すようなことになるものですから、その点についてちょっとコメントいただきたい。

 それと、もう時間が来ましたので、この後で大臣にお答えいただきたいんですけれども、鳴り物入りで分割・民営化がスタートしたんですけれども、分割の方がどうにもやや問題を残しているような気がしてしようがないわけであります。先ほど来私が指摘してきたこともそのことでございますが、従来は郵政三事業が一体化ということでやってきたんですけれども、これが、いきなり五つに分ける、特に事業の方は四つに分けるということで、現場が混乱しているというふうに感じております。これに対応するために、日本郵政グループの会社間の一致団結の努力が一層必要とされると思うわけでございますが、総務大臣の御所見をあわせてお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

伊東参考人 ふるさと産品事業につきまして、民営化後、各生産事業者の負担が大きくなっているのではないかという御指摘でございます。

 以前は、ポスタルサービスセンターというところにそれぞれの事業者は販売手数料というものを払って、それを私ども郵便局がゆうパックとして売るという形でやってきたわけですが、今回は、郵便局会社みずからが販売あっせん業というような形で事業を行っております。

 したがいまして、もちろんこれまでもポスタルサービスセンターはそれなりに商品の品質管理などは行っていたと思いますけれども、郵便局会社が直接やることになりまして、その辺を厳格にやるということから、若干販売手数料がふえております。これまでは約七%ぐらいだったものが、一〇%ぐらいになっています。そういうことによる負担とか、あるいは、チラシをつくるのはこれまでと同じですが、そのチラシを、公社時代は公社が寄附受けいたしまして、公社の中で各郵便局に配っていた。ところが、それぞれ郵便会社と郵便局会社が分かれたことにより、私どもの方で配送する、全体に配る部分のコストは生産業者からいただくということも出てきております。その辺はもっといろいろな工夫があるんじゃないかということは私どもも考えていきたいとは思いますけれども、まず、そんなことで、それぞれの生産事業者は前よりもコストがふえたということの御指摘を私どももいただいております。

 しかしながら、先ほど申し上げましたように、今度は郵便局会社がみずからの事業として行うことになりましたので、それだけ、お客様に対する信頼とかあるいは我々の力の入れ方というのをもっともっとこれまで以上にすることによって、全体の数を少しでもふやすとか、そういうことで生産業者の御理解を賜りたい。また、制度そのものもいろいろ工夫もしてまいりたいと思っておるところでございます。

増田国務大臣 確かに、今委員の方から御指摘をいただきましたとおり、前は一体でやっておりました事業を、分社化をすることによって個々のサービスの主体が違ってまいりますので、現場が混乱をしている、そして国民の皆さん方がそのことに不便あるいは不安を感じている、こういう指摘をいただいていることは私も承知をしてございます。そういうことがないようにするために最善を尽くさなければいけないというふうに思いますので、当然のことながら、グループ各社、五つの会社お互いによく情報交換をして、そして連携を図ることが重要だと考えております。

 一番最新では、三月三十一日に、今年度の事業計画を認可するに当たって、今申し上げましたようなことがないように直接西川社長の方にも要請をいたしましたし、それ以前にも、そういう声が聞こえてくるたびに、折に触れて向こうの方にも、とにかく、いろいろ事情はあるにしても、ぜひ英知を絞って工夫してください、そして成果を出してくださいという話を申し上げております。社長の方も、国会の場でも、附帯決議の遵守を含め、そのような旨を答弁してございます。

 いずれにしても、委員お話がございましたが、これは実例で、大変重要な御指摘でございますので、改めて会社の方にもそういったことのないように申し伝えたいというふうに思いますし、ぜひ各会社がもっと連携を図って、国民によりよいサービスを提供するように知恵も出していただきたいと思いますし、そうしたことによる今回の民営化の成功を大いに期待しているところでございます。

平口分科員 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

横光主査 これにて平口洋君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)分科員 大臣、きのうは山梨に御出張御苦労さまでございました。大臣と連日お会いできるとは思っていませんでしたので。

 きょうは、大臣には三点、残りは郵政の関係で具体的な事例について御説明をお願いしたいのですが、冒頭なんですが、大臣、きのうも山梨に行っていただいて、ちょうど桃が最盛期の花盛りから少し散り始めて、十二分な景色を堪能していただかなかった部分もあるかもしれませんが、山梨も、大臣が以前知事をやられた岩手もそうだと思うんですが、やはり農林業というのが地域産業の主体で、そこに地場産業を形成し、また新たな企業誘致ということで、いろいろな角度から自治体経営をするということが今求められている。

 その中で地域再生というものをという、大臣もきのう講演をなさいましたけれども、その中で病院というものをどう考えるかということが、今は、もちろん自治体病院だけではなくて医療制度全体が、今これからお医者さんの数は実はふえてはいるのですけれども、要するにお医者さんの数の偏在みたいなものが起こりながら、特に産婦人科や小児科という一番弱いところにしわ寄せがある。それは当然所得や労働条件の関係もあり、勤務医だった先生方が、もうこれ以上肉体的にも耐えられないということで、この四月一日からも、実は、私の知り合いの方でおやめになった方もいらっしゃいます。これは二番目にお聞きをするこれからの合併のあり方もそうなんですが、実は、山梨でも一番小さな町では一万人、合併をしておりますから一万数千人の町で一つの自治体病院を経営されている。あるところでは、五万人の市で二つの自治体病院を経営なさっているというふうな地域もございます。一方で、七、八万の合併した市でもゼロの自治体病院。いろいろな偏在性はあるにしても、大臣、やはり千を超すいわゆる自治体病院と言われているところが、七割の病院が要するに利益を出していない。

 もちろん、利益を追求するだけが必要ではありませんし、特に自治体病院の役割ということは、昨年来、夏ごろから総務省の中でも検討会を開いて、十二月に、これは後で言いますが、やはり基幹病院というものをどう位置づけるか、そのときに、地方税も含めた税の部分でどういう支援をするかということがないと、実際、例えば、平均的かどうかは別としても、僕の同級生もちょうど五十になりますので、大体自治体病院の部長ぐらいになって、小さな病院では院長とか副院長になっているんですけれども、大体総収入が年間で一千二百万から一千四、五百万。要するに、通常の公務員の方よりも二、三割、医療手当ということでついている。でも、それでも週二日夜勤があり、二十四時間で仕事をし、一週間の勤務時間が百時間をやはり超すという人もいっぱいいるわけですね。一方で、開業医の先生方にすれば、夜勤は当然ありませんから、例えば十時間働いても二千万、三千万の所得。もちろん所得だけではないのはわかりますが、そこのやはりアンバランスをどうするか。

 そのときに、今、少なくとも厚労省がいろいろ検討なさっている医療制度全体の改革がどう進むかは別としても、まず総務大臣として、そのギャップを所得の部分も含めてどう埋めていくかということが、やはり具体性があって方向性が示されなければならないと思っています。

 昨年の十二月に公立病院の改革ガイドラインというのも見せていただきましたけれども、やはりこれも、従来と言うほど、大変失礼な言い方かもしれませんが、なかなか本質の、例えばドクターの給与体系であるとか、地方交付税の部分をどういうふうに支援するとか、そこまで踏み込んでいないというのが、これは私の拝見した率直な感想なんです。

 やはり大臣、これからも、特に都市と地方の格差という部分も含めて、その地域のやはりアンバランスをどうし、そして、医療体制をどういう形で、住民の皆さんのサービスとして一番必要だという部分をサポートしていくかというのは非常に大きな課題だと思うんですが、その点については、大臣、これからどんな形で具体的に総務省として対応していくのか、御所見を冒頭お伺いしたいと思います。

増田国務大臣 委員の方から、自治体病院の問題、非常に端的に今御指摘がございました。

 私も、自治体病院、岩手のときも大変多く県立病院を持っておりますが、そこで勤務をしておられるお医者さんと、それから地域で開業しているお医者さん、決して岩手の開業しているお医者さんが高収入とは言えないような状況も見聞きしておりましたが、それでもやはり勤務医と開業医との間に非常に差がある。それから、これも今委員から御指摘ございましたが、勤務時間体系においてはそこがさらに非常に差が出てきている。これを埋めていくということが、やはりこの問題の非常に大きなポイントであろうというふうにも思います。

 今委員の方から御指摘いただいた公立病院改革ガイドラインのことも、昨年十二月にお示ししたものも御指摘いただきましたが、その中で、もちろんこれが全部で、このガイドラインで解決するというものにはなっていないわけでございますが、少なくとも公立病院が、特に過疎地域ではもうそこしかなくて、なくてはならない病院でありますから、経営効率を云々する前に必ず残していかなければならない。それには当然のことながら公費等を投じて維持させるということを行っていかなければならないので、ねらいは、まず病院としても経営を効率化していただく。それから、再編・ネットワーク化で、周辺の病院との診療科目の統合を初め経営形態もいろいろやっていただく。それから、サテライト化などの工夫も必要かな。それから、経営形態をそういう中で見直しをしていく。三点の視点に立ったガイドラインをお示しして、自治体独自の、地域に合った改革を進めていただきたいというふうにしたものでございます。

 そしてその上で、とりわけ医師確保については、これは別途、厚生労働省が中心になって昨年五月に緊急医師確保対策をまとめてございますが、これもその線に沿って行うことがなかなか十分な対策とはもちろんいかないというおしかりをいただくわけでございますけれども、診療報酬等の問題も含めそういったことの改善も加えていかなければなりませんし、その中で、総務省としては、地財措置、公立病院に対してのしっかりとした地財措置を行うということによって経営状況を少しでも改善を加えて、そして地域の自治体病院の体制を整備していくということに主眼を置いているところでございます。

 今後、こうした地財措置については今年度も新たな検討をさらに加えていかなければならないというふうに思ってございますが、そうしたことによって、少しでもこうした地域での自治体病院の役割が果たせるように、総務省としても努力していきたい、このように考えております。

後藤(斎)分科員 大臣、この地財措置も見せていただいて、確かに一歩前進だとは実は思います。

 ただ、大臣、このポイントとかこのガイドラインの中に、経営の数値目標、効率化の数値目標がございます。例えば病床の利用率というのがありますけれども、大臣も御案内のとおり、先ほどもちょっと指摘をさせていただいたように、公立病院の先生方が瞬間的に例えば一人いなくなると、病床は例えば百床あっても、実際のその入院のベッド数というのは実質ベースでは一割減るとかということで、あいていても入院ができないという状況が至るところで今あるわけですね。

 ですから、私、今大臣が絶対必要なものは残すんだということが、なかなか正直言ってこの文章からは、申しわけないんですけれども、伝わってこないというのを御指摘させていただきたいと思いますし、これは、ある意味では自治財政局長から知事や指定都市や関係企業団、企業庁、何か難しい名前ですけれども、むしろ大臣が、少なくともベースの分はきちっと総務省も首長さんと一緒に支えますよというメッセージをどう与えるか。そうでなければ、実際のお医者さんというのは、全体、これから若いお医者さんもふえていくにもかかわらず、やはりふるさとに戻ろうという意思よりも、少しでも違った思いをというか。

 それで、今はもっと、この部分はこれだけで終わりますけれども、例えば脳外科であるとか心臓外科であるとか、難しい病気ほど、現場の先生方は、特に自治体の、私どもの県立中央病院でも、そういう自治体や県はどこでも、難しいところが夜は特に集中して来るわけですね、昼間もそうですが。

 それで、もういいやと。悪い言葉で言えば、むしろ病院がノーと言ってみずからの責任が達成できない方がいいやというふうに、これは本音ベースで、というふうにおっしゃるお医者さんもいらっしゃいます。それは、医術の部分でどうしても救ってあげないとという気持ちよりも、むしろ何でこんな状況になっているのかなと。

 ですから、勤務実態についても、よく言われるように、管理部門というのを効率化をどんどん進めるべきだと私は思うんです。特に、患者さんと向かい合う現場の医師とか看護師さんとかは、やはりそうではない、労働時間もお仕事の評価も含めてきちっとした対応ができなければ、まさにこのガイドラインも、地財措置を講じますという大臣のこの三ポイントはありますけれども、おっしゃるとおりなんですけれども、やはりもっと踏み込んだ対応が必要だと思うんです。

 改めて、簡潔で結構ですから、大臣の御所見をお伺いします。

増田国務大臣 今やはり、こういう自治体病院、きちんと我々の努力によって守り抜くというメッセージは確かに大変重要だと思います。そのことは十分に私も心にとめておきたい。

 そして、あとやはり具体的なさまざまな各論の対策につきましては、これはもう厚生労働省とも十分相談をいたしたいというふうに思いますし、とにかく、難しいことに対して、今のような形で、現場が本当に考え抜いたあげくに受け身受け身になっていって消極的になっていってしまう、これだけは絶対避けなければいけませんので、本当にそのことだけ、具体例はもう申し上げませんけれども、いろいろと我々も知恵を出して対応していきたいというふうに思います。

後藤(斎)分科員 大臣、それともう一点なんですが、今、千七百九十九まで市町村の数が平成の大合併で減少したということでありますけれども、大臣、それ以降の、平成十八年度以降の合併の数というのは、今の新しい合併の枠組みの、いわゆる合併新法の部分ではなかなか進んでいないのが現状であります。

 与党の皆さん方が行財政改革推進協議会というのを、平成十二年の十二月の閣議決定を踏まえた、市町村の合併の今後の目標というのを千にするというふうなことが以前合意をされております。これはあくまで目標ですけれども。

 私どもの党も、三百の基礎自治体ということを一つの大きな目標として、財政力を高めながら自由度を高めという、いわゆる本当の地域主権ができるような形。これはいろいろな考え方があると思うんですが。

 大臣、先ほどの自治体病院もそうなんですが、以前の旧合併推進法はある意味では財政的な支援措置があって、今の新しい合併推進法については、知事の勧告権はあるものの、なかなかそれが実態として、千八百から数が減っていかない。減ることだけがこれもいいことじゃありませんけれども。

 ということで、やはりこれから大臣自身が、今までの地方自治の本当に豊富な経験の中で、自治体の数を減らし、そして自治体の枠組みを少しでも大きくしなきゃならないと。特に、今、一万人以下の町村というのが五百程度ございますから、そういう部分も含めて、やはりこれもメッセージ性が足りずに、もう平成十八年の三月までで大体いいやと。ほとんどそれから数も動いていないのも現状なので、その点について、今後具体的にどんな形で、県、市町村とも、首長さん、部長さんたちとも協議しなければいけないかもしれませんが、その強いメッセージを出していただきたいと私は思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

増田国務大臣 今お話にございましたとおり、人口一万人未満はまだ四百八十ほどございますし、やはり基礎自治体の行財政能力を全般を高めていくという上で、この合併を政府としても強力に推進をしていきたいという思いでおります。

 前回との大きな現行法の違いは、特に財政措置が大分前回は手厚かったんですが、もちろん財政措置も講じておりますけれども、交付税での補てんなどの割合を低めてございます。これはいろいろあって、前回までは、その財政措置があるということでいろいろと合併に向かう一つの動機づけにしていただきたいと。それで、これをまたずっと続けてしまうとまたずっと、なかなかそういう形にならないからということで、きちんと差をつけますよといった意味合いがありますので、現在のような形になってございます。

 いずれ、現行法のもとで行われているものは、期限が来ると今度はもう切れる。こういうことで、前回ほどではございませんが、今の現行法の合併推進法のもとでの財政措置というのはきちんとまだ受けられる部分がございますので、それを十分お使いいただくと同時に、ですから、合併算定がえとか合併補正とか合併推進債などをお使いいただける期間というのはもうあと残り何年かの間でございますので、その間にぜひ真摯な話し合いをしていただきたい、そしてもっと基礎自治体の能力の向上に努めていただきたい、このことを今いろいろとしているところでございます。

 お聞きをしますと、各地域で、前回いろいろな経緯で合併できなかったところの話し合いが大分進んできているというふうにも聞いてございますので、総務省としても、それから各都道府県の協力もいただきながら、各地域で真摯な話し合いをしていただいて、この問題にきちんと取り組んでいきたい。そして、支援措置も、そういう中で財政支援措置を講じていきたいというふうに考えております。

後藤(斎)分科員 大臣、これについても、確かに大臣がおっしゃったことはよくわかります。

 平成十八年の三月末までは、ある意味では駆け込みでいろいろなブームがあったことも承知をしておりますが、今回の合併新法の部分も、あと二年で、二十一年度ですかでとりあえず失効するわけですから、あと二年弱しかない。確かに協議会ができて話し合いが進んでも、ではその後の、例えば、大臣、もうあと二年を切っているわけですから、スキームはどうなるのかなという。もっとよかったらいいし、どうしようかなと、多分、フラストレーションの中でどうしようかなとでも思っている市町村長の方もいらっしゃるのじゃないかなと。

 だから、やはり早目にスケジュール的に、これは全然違いますけれども、暫定税率の問題やそういうものも、期限があるにもかかわらずというのがよくある法制度の形なので、やはり期限がある部分についてはその後がどうなるのかというものがないと、踏み込んでいいのか、それとも待っていた方がいいのかというどっちつかずになってしまうということもややもすればあるということで、少なくとも平成十八年四月一日以降はそんなに多く合併がされてということはないという現実を踏まえて制度設計を二十二年の四月一日以降するということがやはり求められていると思うんです。

 大臣、その点について、簡潔で結構ですから、お答えをいただけますか。

増田国務大臣 いずれにしても、期限も意識して対応していかなければならぬ、これはもう御指摘のとおりだと思います。

 そして、財政支援などについては、やはり切れるということを前提に議論を進めないと、なかなか、今まで、前回の財政措置があるということで一生懸命やられた方との均衡もございますので、やり方はいろいろ工夫が必要かと思いますが、いずれにしても、今の期限が切れるということを前提に真摯な議論はしていただけるように、私ども努力していきたいというふうに思います。

後藤(斎)分科員 それでは、先ほどもお話があったようでありますが、三点目の、郵政民営化が実施をされて半年少しがたちました。

 いろいろな指摘がありますし、私なんかは実は郵便局は余り使わない方なんですが、家内はよく使っているようであります。

 いろいろお話を聞くと、確かに窓口の対応はよくなったという評価をされる方もいるものの、先ほどもお話があったようでありますけれども、やはり待ち時間が長いとか、配達のスピードというか、私、実はこういうことがあったんです。

 昨年の十一月に、私がある方に文書をお出しして、隣町に出したんですけれども、一週間かかって着いて、そのメッセージが間に合わなかったということが実はございました。

 これは大臣に後でお聞きをしますが、週刊ダイヤモンドの昨年の末のときに、「国民一万人にアンケート!」ということをされております。それで、郵政民営化は将来の利便性の向上に結びつくと思いますか、思う方が二九・九、思わないという方が三一・七。ほぼ拮抗しているものの、少し不安を主張される方がこの時点でも多かったです。

 あわせて、私もいろいろな形で、郵便事業に携わっている現場の方や郵便局の局長さんといろいろなお話をするんですが、どうも本当にプラスになったのかなというふうな声が実はあって、これは、郵政株式会社の方にお聞きをしますが、今ちょっと指摘をさせてもらった、例えば配達のスピードが悪くなったとか、誤配が多くなったとか、窓口の時間が長くなる、こういう不満に対しても、多分たくさん会社の方にも話が、苦情と言っていいのか相談と言っていいのかわかりませんが、あると思うんですが、その点については、今後どんな形で解決されていくというふうにお考えでしょうか。まず、その点について確認をしたいと思います。

    〔主査退席、福井主査代理着席〕

伊東参考人 御指摘いただきました配達スピードが遅くなった、特に今先生の昨年の十一月の隣町に出された件は大変びっくりしていまして、翌配の体制そのものは民営化後も変わっておりません。それで、私どもといたしまして、当然のことながら、どんな状況かという調査はもう定期的に行っておりまして、簡単に申し上げますが、送達日数調査というのを、これは年間十万通、民間の調査会社に委託してやっております。

 そして、毎月報告をもらっているわけですが、民営化前、ちょうど十八年、一昨年の十月から十九年の三月と、その全く同じ去年の十月からことしの三月、半年間、比較しましても、民営化前が九七・五%で、民営化後は九七・七%。もちろん、本来はこれを一〇〇に近くならなきゃいけないので、決して〇・二%いいなということを言うつもりはないんですけれども、配達のスピードに関しては、私ども、不着、遅延の申告も、もちろんこれもゼロにはなっておりませんので、その対策は立てなきゃいけないんですけれども、極端に民営化後大きく遅くなったとかという、私どもが今申し上げた数字からはちょっと見とれないのかなと。

 ただ、現実に先生のお話もございましたので、私ども、常にどこがとまっているのかとか、そういうのは調べまして、例えば、配達するところでとまっているところがある場合もございますけれども、隣の町で一週間というのは、場合によってはちょっとほかのところへ一たん行ってしまって、また戻ってきたのかなみたいなこともあり得ますので、そういうことのないように、区分を間違えないようにするとか、ちょっと全体の輸送の、言ってみれば時間の設定の仕方が厳しいときは見直すとか、そういうことをやっております。

 それから、窓口の時間が長くなったというのは、もうこれは私どもも相当数聞いております。現実にいろいろな方からの御指摘もいただいておりまして、これはもちろん、これも先生御案内のとおりでございますが、金融商品取引法が昨年の九月三十日に施行されまして、説明をしなきゃいけないとか、書面でやらなきゃいけないとか、これはもう銀行さんも一緒ですけれども、そういう部分と重なった部分もありますし、その辺が私ども十分なれていなかったという点もございます。

 しかしながら、もう少し何とかならないかということで、実際の郵便局で扱う作業をできるだけ簡素化するということを今グループ全体で取り組んでおりまして、何としてもお客様に御迷惑をかけないようにということで、現在対応しているところでございます。

後藤(斎)分科員 それで、やはりこの同アンケートによりますと、いわゆる公の部分にお勤めになっている方で、警察官の方が四八%が最も信頼できる、次が郵便局の局長さんや郵便局員の方が二五・六%で、何と政治家は一・一%という、そうかなという感じもしないでもないんですが、そうあってはいけないんですが。

 ですから、これだけ信頼をされている分野であった、これをやはりもっと信頼性を上げていくということが必要だと思いますし、そんな中で、やはり現場で働く方々も含めて、民営化してよかったという形に、後で、これは大臣、最後にお聞きをしますが、ぜひ私は持っていってもらいたいと思います。

 時間が余りなくなってきたんですが、具体的な、例えば、簡保についても新規契約ということでいえば、会社からいただいた資料によりますと、ことしの二月なんかは前年度に比べて三〇%契約件数が減少している。民営化をした十九年の十月なんかは前年度に比べて七五%ぐらい減少しているとか、いろいろな意味でこの新規契約が非常にとりにくい。これもある意味では、現場の方々のインセンティブが、その郵政民営化の前と後で変化をしている部分ももしかしたらあるのかなと。これは推測なのでよくわかりませんが、この分析というのは、ある意味ではどんな形でされているのか。

 これで、例えば、いわゆる民営化の前には、いや、民業を圧迫しちゃいけないよという話も出ながら、民営化後の郵政事業、簡保も郵貯も含めた部分をどうバランスを民業ととっていくかということが政策の非常に大きなテーマであったにもかかわらず、ある意味では、減少し過ぎると、今度は働く現場も、その会社自体のこれからの経営も非常に困ってしまうというのが、これは続いていけば、二割も三割も新規の契約数が減っている会社なんて当然ありませんから、そういう意味では、やはり、この数字というのは、ある意味で、私、見させていただいて、え、こんなに本当になっているの、本当に厳しいじゃんというふうにやはり思わざるを得ないんですが、この点についてはどのような御理解をされていますでしょうか。

伊東参考人 先生御指摘のとおり、昨年の十月は、この新規契約件数、対前年比二五・八%、逆に申し上げれば七四・二%の減少になっております。それまでも大体二割ずつぐらいは減少してきたんですが、急激に落ち込んだ。

 もちろん、このときの大幅な落ち込んだ事情というのは、私どもなりに一応考えますと、九月の後半にお申し込みいただきましたものは、大体十月に入りまして契約をするということで十月のカウントになるんですが、ちょうど九月末で民営化されるということで、それまでのものがみんな旧契約ということになりますので、一切それは九月の末に整理する形で件数を把握しているということもございまして、七四・二%の減少ということになっているのかなと。その後、直近で二月ですと、逆に六九・九%ということで減少の方が逆転しているような感じにはなっておりますが、ただ、いずれにいたしましても減少傾向が続いていることは事実でございます。

 したがいまして、私どもとしては、もともと現在の私どもの貯蓄性の高い保険商品というものが、保障性の高いとか、いろいろな第三分野とか、そういうことに対するお客様のニーズに対応していないんではないかということを考えておりまして、民営化されまして、もちろんその民間とのバランスとか、いろいろな手続がございますけれども、やはり新しい商品を開発するとか、委託を受けるとかということもやらなきゃいけないのかなと思っておりますし、それまでの間、当然のことながら、手をこまねいているわけではなくて、各種キャンペーンをやったり、現場の渉外職員を初めとした社員が働きやすいような対応も今とっているところでございます。

後藤(斎)分科員 大臣、時間がなくなったので、最後に一括してちょっとお尋ねをしますが、大臣、この十二月二十二日号の週刊ダイヤモンドのインタビューにお答えになられて、先ほども御答弁をいただいたように、民営化が実現できたからこそ限界集落の住民が守られるという、これは表題でありますけれども、中には、いろいろ確かにきちっと大臣お答えになっていたんです。

 先ほども御指摘をしていただいたように、例えば、特定局の窓口がそれぞれ分かれて、相互融通がきかない。以前であれば、みんなで一緒に仕事をして、できるだけ時間も、そんなに超勤もしないで対応しようというインセンティブが働いていたにもかかわらず、今、実際、そういう形になっていない。手伝いたくても手伝えないという形で窓口が停滞をする、お客様サービスが減少する。手数料は上がる。集配局は少なくなる。本当に限界集落という、大臣はそういう言葉をこれから使わないようにという話もしていましたが、やはり、そういう本当に高齢化が進んでいる自治体では、もう郵便局はいずれなくなっちゃうんじゃないかという声は、実際いっぱい聞くわけですね。大臣もきのう市町村長の皆さん方とお話をされたときに、多分そういう話が出たと思います。

 やはり、現場の方々が、確かにまだスタートして半年なのか、もう半年なのかという評価は分かれるにしても、まだ引き続き、そんなに大きな混乱はないにしても、現場の郵便局長さんにしても、働く人たちにしても、手伝いたくても手伝えない。

 そして、例えば、窓口みたいなものが、そこで自己完結ができませんから、横浜の集配センターでいろいろ問い合わせをする、そういうひとつ、答えがすぐ出なくて、だれかに相談をしなければという形でお客様を待たせる。例えば、解約をするにしても、そこだけで自己完結できなくて、通帳記入もできずに、一回横浜に送って、それを戻して、またお客さんに通帳記入をしてもらう。その現場の人が困るだけではなくて、特定郵便局の人が困るだけではなくて、一番困っているのは利用者ではないかなというふうに思うんですね。

 ですから、やはりこのメリットというものも当然あるというふうに、大臣はここにも記述されていまして、繰り返しいろいろ御答弁されていますけれども、やはり、今ある現状と、それをどう変化させて、いいものをもう一回生かしていくという、それは、これから二万数千人、二〇一一年まで社員の方を減らすという計画もあるようでありますけれども、そういうことだけではなくて、今あるネットワークを生かすということは、大臣は絶対守っていくんだという話を繰り返しされています。

 ですから、そういう部分で、やはり利用者の視点、現場で働く人がよりもっと一生懸命やる視点、そして、いずれにしても、やはり全国津々浦々のネットワークが守られるかどうかというのは、本当にこれからの社員の方のやる気、局長さんたちのやる気、そして地域の皆さん方がそれを支えるかどうか、そういう本当に地方の自治体の、先ほど冒頭お話をしたような、そういう自治体経営にとっても、やはり非常に大切な部分だということも含めて、メリットがあったかどうかという御評価と、これからどんな形でこのネットワークを守っていくのかということをあわせて御答弁をお願いいたします。

増田国務大臣 お答え申し上げます。

 確かに、民営化になりまして、いろいろな御指摘が私どもの方にも直接届いております。こういった待ち時間の問題ですとか、簡易局の閉鎖の問題ですとか、手数料の問題ですとか、そうした実際に起きていることに対しての国民の声にきちんと真っ正面から向き合って、今まさに委員お話ございましたとおり、そうした中、正すべきところはきちんと正していく。

 それから、あと、これも今御指摘いただきましたが、社員の皆さん方に、他の、今までは自分でもやれたことが、会社が分かれることによって、そういったことになかなか自分が乗り出せないということによっての、そういう面でのフラストレーションがたまって、さらにお互いの会社がぎくしゃくするようなことは避けなければいけませんので、事業の内容について会社間でもよく連携を強化して、そこでいい知恵を出していただくことが絶対必要だろう。

 いい面も確かに、グループの中で新しいサービスが出てきたり、それから今度、地銀は地銀でいろいろ連携して、ゆうちょに負けないようにということで、これは国民にとって非常にいいことでありますが、常に、これは国民のための民営化ということでありますので、社員のやる気、それからなお、忘れてならないのは、こうした民営化がうまくいくかどうかも、地域の支えがあって初めてうまくいくかどうかということでございますので、決して地域の皆さん方から見放されてはいけません。

 ですから、地域の支えをもっとより引き出すような積極的なアプローチが会社側からも必要だと思いますので、今いろいろ御指摘いただきました点も含めて、また会社の方に総務省としてもいろいろ要請をしていきたいと思いますし、会社もこの点を自覚して、今後の民営化にさらにプラスになるように取り組んでいただくことを期待申し上げているところでございます。

    〔福井主査代理退席、主査着席〕

後藤(斎)分科員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

横光主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。

 次に、田島一成君。

田島(一)分科員 民主党の田島一成でございます。

 私が本日の最終バッターでございます。どうぞ、明解な御答弁、前向きな御答弁をぜひいただきたいと思っております。

 先ほど質問に立たれた後藤委員とも重複をする郵政民営化についてお尋ねをしたいと思い、総務大臣、そしてまた西川社長にお願いをしておったんですが、もう五時で終わりますけれども、どうも仕事の都合がつかないというようなことで、きょうは高木副社長にお越しをいただいておるところでございます。御多用の中、本当にありがとうございます。

 さて、今も答弁の中にもありました、さまざまな課題を大臣も相当受けとめていらっしゃるというふうにお話がありました。もちろん、民営化された郵政グループもその声を聞いていらっしゃることというふうには思いますが、もう一度やはり振り返らなければならないのが、国会で議論をしてきた経緯と、そして申し送りをした附帯決議の一つ一つであります。

 その中に、平成十七年の十月十日、参議院の郵政民営化に関する特別委員会において、十五の附帯決議が決議されました。その一番最初に、

  国民の貴重な財産であり、国民共有の生活インフラ、セーフティネットである郵便局ネットワークが維持されるとともに、郵便局において郵便の他、貯金、保険のサービスが確実に提供されるよう、関係法令の適切かつ確実な運用を図り、現行水準が維持され、万が一にも国民の利便に支障が生じないよう、万全を期すること。

  簡易郵便局についても郵便局ネットワークの重要な一翼を構成するものであり、同様の考え方の下で万全の対応をすること。

と決議をされております。

 さて、この国民の利便性に支障を生じさせない、簡易郵便局のあり方についても万全の対応をするというふうに結論をつけたところでありますが、昨年十月一日現在で、簡易郵便局四千二百九十九、何か報道によっては四千二百九十七という数字もありますが、その中で一時閉鎖が、昨年の十月一日現在では四百十七局、同年の八月末現在から約一カ月で百七の簡易局が一時閉鎖になっております。

 私の方で調べさせていただきまして、ついせんだって、本年四月一日現在で閉鎖中の郵便局の数ですけれども、直営の郵便局では九つ、簡易郵便局ではさらにふえて四百五十三局というふうになっております。このようにふえ続けていく郵便局の閉鎖の実態。

 わざわざ附帯決議にもしっかりと決議をさせていただいたところでありますけれども、まず、この実態をどのように受けとめていらっしゃるのか、総務大臣、お答えをいただきたいと思います。

増田国務大臣 今委員からお話がございましたとおり、そしてまた、国会の附帯決議にもございますとおり、郵便局がこれまで持ってまいりましたネットワークというのは国民の貴重な財産でありますし、それから、ネットワーク水準の維持が極めて重要である、こういうふうに認識をしております。

 その中で、民営化後も本来守られなければいけない簡易郵便局の一時閉鎖が増加しているというのは今御指摘いただきましたとおりでございまして、この点について、それを打開すべく、移動郵便局の試行を行ったり、あるいは巡回サービスで、時間を限ってでありますが、閉鎖されたところの再開を図ったり、あるいは、委託の手数料も大幅に引き上げをして見直しをして、そして簡易郵便局に携わってくれる方の数を何とか新たに掘り起こす、そんなことも会社の方で行っているということでございますが、それにしても、まだ十分な再開が行われていない状況でございます。まだ、再開に向けていろいろと数十名、予備軍で今いろいろと準備を進めているとは聞いております。

 したがいまして、私も、この点についてはぜひ会社の方として努力をして、そして再開を進めてほしい。それから、今ある簡易局がもうこれ以上閉鎖にならないような取り組みをしていただきたいということで、直接、日本郵政の社長さんにもお会いをしてお願いをしてございます。総務省としても、その点について会社の方に文書でも要請をしてございます。

 あともう一つ、一点、我々としても、自治体にも協力をしていただいて、こういう簡易局の閉鎖に対していろいろと協力ができるのではないかということです。新たに委託者を見つけたり、あるいは、そこに他の機能も含めて合わせることによって、再開に向けての動きをさらに加速させることができるのではないかといったようなことも含めて、今自治体の方にもお話をして、何とかこのネットワーク水準を守りたいということで、個別に少し取り組んでいるところもございます。

 総務省としても、こういうことで簡易局の閉鎖がふえているということは大変問題だと認識をしてございますので、それに向けての、再開あるいはそれがふえないような対策に努力をしていきたい、このように考えております。

田島(一)分科員 その対応はまた後ほど聞かせていただくとして、大臣が、実は、昨年十二月二十二日発行の週刊ダイヤモンドにコメントを寄せていらっしゃるのを拝見いたしました。「仮に、郵便局が民営化されていなかったとしても、いわゆる「限界集落」のような過疎地域では、おのずと郵便局は閉鎖されていく方向にあった。そう考えれば、民営化が実現したからこそ、国民は、郵便局サービスを享受出来る保証を得た、と言えなくもない。」とおっしゃっている。

 私にとって、大臣がおっしゃる、民営化で限界集落の住民が守られるという方程式がどうも解けないのですね。今大臣も御認識あるような、いわゆる限界集落のネットワーク水準がどんどん低下をしていっている。もちろん試行錯誤で、巡回サービスであるとか移動郵便局の試行等々もやっていらっしゃるという話ですけれども、移動郵便局の試行をとっても、当初あった簡易局の機能をきちっと果たしているかといったら、到底そうではありませんよね。

 ましてや全国にたった一台、豊田市だけで移動郵便局は走っているわけでありますし、毎日九時―五時というようなタイムスケジュールでやっているのかといえば、小原福祉センターふくしの里には毎週月曜と水曜日の一時半から三時のわずか一時間半、もう一方の御作公民館は水曜日と金曜日の十時から十一時半の一時間半、これも三月三十一日で試行期間が切れたところでありますが、ようやく延長されたというような報道もされたところであります。が、果たして、この移動郵便局や巡回サービスだけで、おっしゃるようなネットワーク水準が維持をしていけるのかどうか、限界集落の住民が守られるというふうに言えるのかどうか、私はやはり甚だ疑問であります。

 民営化を控えながらもまだ郵政公社だった二〇〇六年の九月から、例えば集配業務を取りやめて近隣の局に移した郵便局、これですら千四十八に上っています。不在で持ち帰られた郵便物をその日のうちには受け取れないであるとか、午前中に届けられていた新聞の朝刊が午後になってしまった。また、集配業務の統合で範囲が拡大し、誤配がふえてきた。そして、先ほども申し上げた民営化後の簡易局の一時閉鎖。一時といいながら再開のめどがなかなか立っていない。

 そんな状況で、果たしておっしゃるように、このネットワーク水準を本当に維持できるのかどうか。中には、一時閉鎖といいながら、設備がすべて撤去されている簡易局もあるんですね。何か一時とつければ国民は納得する、まあ、とりあえずですからと言いわけされているようにしか私は思えないのですが、本当にどのようにお考えか、お答えください。

増田国務大臣 実は、私も知事時代に、当時岩手県内の郵便局、これは民営化以前ですから当然公社の時代でございますが、郵便局の閉鎖、それから集配局の統合という実態がございましたので、岩手県内の郵便局をかなり何カ所か見て歩きました。

 その当時、今話がありました過疎化で、大体、簡易局というのは農協の支所などと併設されているところが多いのですが、先に農協や漁協が撤退をしていくわけですね、もう既に。最後、やむを得ず、郵便局が頑張っていたのですが、どうしても閉鎖せざるを得ないということで、これは民営化以前の段階で、もうそこは大変過疎化の影響で、どうしてもそういう状況にならざるを得なかった。

 そのときに、何か別の新たなサービスなどを付加させる、それからあと、やはり最後は自治体がそこで、行政サービスも含めて、地域の拠点として何かそういったものも集合的にセンターとしてやるようなことでなければ、もう到底そういったところの郵便局は守れないなというふうに思ったんですね。

 ですから、今回、民営化によりまして、まだまだ工夫が足りないと私は思っていますが、会社で郵便局に附帯していろいろな事業ができるようになりました。それから、自治体としても、行政サービスをそういった郵便局とあわせて行うような拠点をつくり上げるということも大事でございますので、そういった自由度を拡大する中で、過疎地域の総合的なサービスのセンターとして、新たにそういったところをよみがえらせないのかなというふうに思って、これはぜひ、自治体も含めて、会社にばかり知恵を出させるということではなくて、我々も含めて工夫をしていかなければならないというふうに思っています。

 それからあと、集配局も確かに遠くの方に行ってしまうのですが、郵便番号を七けたにして、いろいろ細かな区分けができるようになって、機械で全部できるようになったということもあって、あれをフルに使うためにはどうしても、ある程度量を多くするために集配局を統合して、そういったものを入れているところであっという間にそれを仕分けする。そして、余剰の人たちには、地域でいろいろなサービスが展開できるわけでありますので、集配局で持ち帰ったものがそこになくて、また集まった方に持っていかれてしまうので、そこの差をどういうふうに埋めるかだと思うんですが、そこは会社の方で丹念にやはり工夫をしていただくと同時に、集配の業務を思い切って効率化をした、人による、人員の余剰の部分をぜひ新たなサービス、地域に向き合うようなサービスに向けていただいて、そしてこのサービスの向上にぜひ寄与していただけないか。

 過疎化の問題というのは、郵便局だけじゃなくていろいろなところに来るわけでございますが、それにしても、郵便のサービスのみならず、いろいろなサービスを少ない人たちの中で効率化していくということは一方で大事でございます。おしかりもいろいろあろうかと思いますし、工夫もまだまだ足りないと思っておりますが、今起きております現状をきちんと真っ正面から受けとめて、この問題に対して、会社にもいろいろ工夫をしていただきますし、我々も、会社ができない点で何か新たな対応ができないか、これをきちんと真剣に考えていきたいというふうに思っています。

田島(一)分科員 その前の答弁にちょっと戻らせていただきたいのですが、自治体に協力をお願いしていくというお答えをされました。

 自治体でどのような形の協力が果たしてできるのだろうか。もちろん、郵便局のネットワークと自治体のいわゆる支所、出張所等々のネットワークと比べれば、きめの細かさははるかに郵便局の方がございます。果たしてそれが自治体で請け負えるのかどうか。ただでさえ、自治体も今や人員削減、また、施設等々も市町村合併等々で随分ネットワーク自体が小さく、また広く、小さくというのはいわゆる範囲が大変広くなってきているところでありますが、もう少しそのあたりでわかりやすくお答えをいただけないでしょうか。

増田国務大臣 今、自治体の展開しておりますさまざまな行政サービス、これのサービスの拠点として、仮に廃止をされた、あるいは一時閉鎖をされた郵便局を活用して、そこで、単に郵便事業のサービスの拠点ということではなくて、自治体がいろいろとサービスを展開する、あるいは相談窓口を設ける、そういった機能もあわせ持って、そして、そこの例えば再開に向けて努力ができないか。

 あるいは、自治体の方でいろいろと再開に向けて、今簡易局を引き受ける人たちのかわりの人たちがなかなか見出せないわけでございますので、そういうかわりになる人たちを探すのを、会社のみならず、地域に一番精通している自治体がいろいろと入って、そういう人たちを、自治体からもお願いをする。その際には、利用者が当然それほど多くない地域でございますので、ほかのサービスもあわせて展開できるようにして、そして地域の人たちにそこを大いに使っていただくような形にできないかどうか、そういったことを工夫できればということであります。

 これは、地域によってもいろいろ事情が違うわけでございます。ネットワーク全体を維持するのは、これは当然会社の責務としてやっていただかなければならないわけでありますが、その中でどうしても閉鎖せざるを得なかった地域、閉鎖をせざるを得なかった拠点を再開するに当たって、そうした自治体の協力も、あるいは知恵ももっと引き出すということが考えられるのではないかということで、今いろいろ自治体とも幾つか御相談をしているところでございます。

田島(一)分科員 あっさりと、お手並み拝見と申し上げたいところでありますけれども、性格の全く異なるものが果たして本当にうまくやっていけるのかどうか。これまでの郵政省もしくは郵政公社であるならば、何となくそのおっしゃるイメージの延長線に見える部分があったのかもしれない。

 しかしながら、民営化をされた中で、いわゆる他の民業とのあつれき、考え方の違い等々で、他の民業圧迫等々のまた違う問題も出てくるわけであります。やはり慎重にそこのところは考えていただく必要も出てくる可能性もあろうかというふうに思いますので、それはきょうの段階では大臣のお考えということで聞きおきたいというふうに思います。

 さて、きょうは高木副社長にもお越しをいただいたわけでありますから、実際にこの郵政民営化がどのように進んでいるのかを具体的にお伺いをしていきたいと思います。

 これまで、平成十六年に民営化準備室の副室長に就任以降、企画また経営にも携わっていただいているわけでありますから、相当この状況、流れについては掌握をされていただいているというふうに思いますが、実際に半年を過ぎて、副社長が想定をされていたとおりにこの郵政民営化が進捗されているとお考えなのかどうか、まず御見解をお聞かせください。

高木参考人 お答え申し上げます。

 郵政民営化につきましては、先生今お話がございましたように、準備室でも携わっておりましたし、民営化後も一生懸命、今取り組んでいるところでございます。

 確かに、承継計画なんかで民営化の姿を明らかにしているわけでございますが、当然、その時点その時点でまだはっきりしない不透明な部分もあったりして、その中でベストな絵をかいてきたわけでございますが、やはり想定していない事態もいろいろあります。

 そういうことで、その時々に対応しながらやってきておりますので、承継計画どおりいっていない面はもちろんございます。ただ、我々としては、その承継計画に書かれた姿に向かって、経営理念に向かって、何とかその実現のために今も引き続き一生懸命取り組んでいるところでございますので、よろしくお願い申し上げます。

田島(一)分科員 お考えというよりは、何か余り深く突っ込まないでくれというようなニュアンスにしか私はとれないんですね。

 きょうは、これは決算行政監視委員会でありますから、決算書等々をもとにしての質疑応答をさせていただくべきでありますが、通常の株式会社であるならば、決算は決算期、それから半期、四半期というような形で公表されているわけなんですけれども、残念ながら上場もしていない、民営化の途上だということなのでしょうか、半年を経過したわけでありますけれども、やはりここでこの半期の経営状況というものを公表していくのが筋ではないかなと私は考えるわけであります。

 今後、経営状況として決算を公表していくお考えがあるのかどうか、それから、実際に郵政グループ各社の経営状況はどのようになっているのか、そのあたりを御説明していただきたいと思います。

高木参考人 まず、決算につきましては、五月下旬には公表できるように、今現在、鋭意作業をしている最中でございます。

 ですから、そういうことで、正確なことはまだ申し上げられませんが、今時点で私の持っております感じを申し上げますと、やはり郵便、貯金、保険、それぞれ近年厳しい状況が続いてきたわけでございますが、その流れは依然として引き続き存在しているというふうに思います。

 骨格を申し上げますと、郵便事業につきましては、昨年の十月から一月期の間の総引受物数で、対前年同期〇・九%の減少となっております。また、ゆうちょにつきましては、その残高がこの三月末時点で約百八十二兆ということで、民営化の時点から見て約五兆円の減少となっております。また、かんぽ生命につきましても、新規の契約が相当落ち込んでいるという厳しい状況にございます。

 いずれにいたしましても、民営化後、半年たったわけでございますから、いろいろな作業も一段落してまいりましたので、これからしっかり取り組んで、健全な経営となるように頑張ってまいりたいと思っております。

田島(一)分科員 今あらあらの数字等をお示しいただきましたけれども、大変厳しいですね、これは本当に。五月下旬に公表というふうにおっしゃいますけれども、その理由等々、また背景等々は報道関係でも結構いろいろと指摘をされているところでもあります。

 きょう、実は副社長ではなく、社長にぜひお越しいただいて、その経営手法等々についてお伺いをしたいというふうに思っておりました。民営化後、それこそJR東日本や日本通運など、矢継ぎ早に異業種提携に踏み切ってこられた西川社長であります。もちろん、この郵政全体で三百五十兆円に上る莫大な資産であるとか、全国二万四千カ所の郵便局ネットワーク、これに群がる民間企業はごまんとあるわけでありますから、決して珍しいことではありませんし、もちろん国会での審議の段階からも随分意見をお示しいただいてきたところでもあります。

 ことしの二月に業界第二位の大手コンビニエンスチェーン、ローソンと全面的に業務提携を結んだということでありました。提携内容はさておいて、あの提携を結んだという発表の記者会見で、郵便局株式会社の会長さんが御出席されていなかったということが報道されておりました。これも報道の聞きかじりの部分ばかりではありますけれども、西川社長と出身母体であります三井住友銀行の同じ出身の側近の皆さんで構成をされている、いわゆるチーム西川で進められてきたという報道と照らし合わせると、何やら民営化後の経営陣の足並みが乱れているのではないか、そんなことも今お示しいただいた大変厳しい経営状況につながっているのではないかというような不安が頭をよぎるわけであります。

 別の新聞報道によりますと、民営化前の昨年七月十七日の日本郵政公社の理事会で、当時の社外理事が、生田前総裁のときに比べて、だれも発言しなくなってきていると大変風通しの悪い経営環境に苦言を呈したというふうな報道がありました。

 もちろん、西川社長は激動の金融業界を勝ち抜いてこられた方であり、即断即決のその経営手法は経営の神様としてあがめられているところが側面としてあります。私自身もそれは一定の評価をするところでありますが、しかし、グループとしての重要な経営判断は、経営者はもちろんでありますけれども、現場の郵便局の局長さん、また社員の意見をしっかりと聞いて反映をしていくというようなこと、これが、先ほど私が示した社外理事の苦言のように、自由に発言できる環境整備が日本郵政グループのトップとして求められているのではないかというふうに考えるわけでありますが、高木副社長はそれこそ今日まで西川社長の右腕として社長を支えてきたお立場であります。このような報道は好き勝手書いているというふうに聞き流していただいているのかもしれませんけれども、この環境整備等々について、高木副社長、どのようにお考えなのかお示しをいただきたいと思います。

高木参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、郵便局は我々日本郵政グループにとりまして、顧客との接点で、大変重要な役割を果たしております。そういうことで、郵便局長を初めとする現場の御意見、考え方、課題なりをいろいろお聞きしていくことは大変重要だと思っております。

 ですから、そういうことで、しっかりそういうふうに努力したいと思っておりますが、最近もそうした考え方がございまして、それで、郵便局活力会議という会議を開催しております。これは郵便局の現場のフロントラインの方にお越しいただいて、それで経営側は持ち株を含めた五社の会長、社長がそろって出席する、そしていろいろな御意見を承るという会議でございます。

 今後とも、そういった会議あるいは会議以外の場であっても、先生御指摘のように、フロントラインの意見に真摯に耳を傾けながら、しっかり郵便局にその期待する役割を果たしていただけるように努力してまいりたいというふうに思っております。

田島(一)分科員 私、経営者ではございませんけれども、実は副社長に負けず劣らず、今回、私の地元の郵便局の社員さん、そしてまた局長さんとかと随分いろいろな意見交換をしてまいりました。

 実際に聞いてきた感想として、もう何か民営化に振り回されて、怒りが渦巻いているというような、そんな印象を実は持ちました。恐らく、副社長の耳にはそんな声は届いていないのではないかな、そんなふうに実は心配をしたものですから、今回、私、このような質問を取り上げさせていただいたところであります。

 とりわけ皆さんの不満の声は、この分社化による業務の細分化、非効率化に対して不満の声をお持ちのようだと私は受けとめたところであります。集配局の統合によって配達の走行距離がふえて負担が大変重くなったこと、また無集配化が進んでお客様とのつながりがどんどん薄くなってしまい、営業自体、いわゆるついでに簡保であるとか貯金を言づかってきたことももうできなくなってしまったことによって営業成績自体も悪化をたどってきている。もちろん、利用者の国民の方々からも同じような声を聞いています。

 そして、昨年末、やはり一番皆さんが驚かれていたのが、年賀状の販売ノルマの増大でありました。売れなかった局員は、そのノルマを自分で買い取って自腹を切る、そして結果的には、チケットショップにそれを持ち込んで、少しでも元を回収するといったような、やってはならないというよりも、仕方なしの、地獄寸前の状況をそれぞれ社員が強いられているという声を聞いてまいりました。実際にチケットショップを私も見て回りました。今までよりも積み上げられている年賀状の枚数が半端ではない、しかも、チケットショップの買い取り価格の値段も、買い手市場でありますからどんどん値崩れしていたというような実態でありました。

 このようなことを毎年毎年繰り返していて、果たして、民営化後の郵政グループが本当にうまくいくのかな、そんな心配をしたわけであります。例年以上に年末は年賀状をセールスに来られる社員の方々が大変多かったのも特徴的でありました。年賀はがきのノルマが多かった分、簡保や郵貯のいわゆる営業が全然できなかったという声もありましたよ。そういった、何と言うんでしょうか、行き当たりばったり的と言ったら大変失礼かもしれませんけれども、年賀はがきだけをとにかく売れ売れとノルマを課したことによって、簡保も新規が落ち込んだ、貯金も三月末で五兆円マイナスというような、そんな数字が出てきているのではないかなというふうに私は思うわけであります。

 国民と直接に向き合って声を拾い上げているのはまさしく現場の局長さんであるとか社員さんであります。こうした方々の意見を拾い上げるために、先ほど活力会議を設けられたというふうにおっしゃいましたけれども、実際に耳ざわりのいい声だけ聞いていても何の改善にもならないということはだれが考えても明らかだというふうに思います。

 とりわけ、この業務の細分化、非効率化、これが分社化がもたらした悪影響だというふうに思うわけでありますが、このことについて副社長はどのようにお考えなのか、そして、今後どのように対応していこうとお考えか、ぜひお示しをいただきたいと思います。

高木参考人 お答え申し上げます。

 民営化いたしまして、やはり御指摘いただきましたようにいろいろな問題があったことは率直に反省をしております。例えば、典型的に一言で言いますと、各郵便局に、現場に非常に過剰な負担がかかったとか等々、やはり反省すべき点は率直に反省しなければいけないというふうに思っております。

 そういうことで、いろいろな問題を網羅的に拾い出して、それで、先般ですが、郵便局活力向上宣言というものを郵便局会社の方で取りまとめまして、各郵便局に提示をしております。それを確実に実施することによって、郵便局に、より仕事しやすいといいますか、郵便局の活力を引き出していきたいというふうに思っております。

 さらに、これにとどまらずに、先ほども申し上げましたけれども、郵便局等々現場の実情をよく吸い上げて、さらなる取り組みも進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

田島(一)分科員 時間も参りました。

 最後に、ぜひ大臣の御所見をお伺いして締めくくりたいと思います。

 私、実は小学校一年生のころから大変な切手マニアでございました。当時は土曜日も学校がありましたけれども、早く学校から帰るといつも郵便局に私は足しげくお邪魔をしておりました。朝早くから記念切手を買うために並んだこともございます。それだけに、本当に身近な存在として郵便局を私自身はとりわけとらえてきたところであります。

 しかし、本当に世知辛い状況になったというのがこの分社化、民営化のもたらした傷跡のように私は思います。問題点は問題点としてしっかり受けとめていく、後戻りできないと短絡的に多分おっしゃるかもしれませんが、反省すべきは反省していかないと、先ほどおっしゃってくださったネットワークの維持であるとか国民へのサービスの低下にどんどん拍車がかかっていく。働く現場の皆さんが本当に汗して、今何とか持ちこたえてきた半年間ではなかったかというふうに思います。

 しかし、この綱渡りもこの先本当にうまくいくのかどうかも大変不透明な状況にあります。そのことも踏まえて、この附帯決議をそしゃくして踏まえた取り組みをしっかりとすることはもちろんのこと、総務省として、国としてどのような責任を果たしていくのか、それのお答えをいただいて終わりたいと思います。

増田国務大臣 この民営化でございますが、この半年間にいろいろな現象が起きている。これはもう事実でございますし、そして、何よりもこの究極の受益者というのは国民の皆さん方ということでありますので、まず郵便局サイドで、中でいろいろと御努力をいただくわけでございますが、地域の支えがあって初めてそうしたことが成り立つ。逆に地域の支えをみずから引き出していくような、そういう努力が必要ではないかというふうに思います。

 この民営化全般につきましては、法律のスキームによって、総務省としてもさまざまな報告を求めたり、意見徴収、それから報告徴収、そして勧告等のさまざまな措置を持つような、そういう権限も我々は持っておりますので、それ以前の段階から、常日ごろから、会社からの話もよく聞いて、そしてお互い知恵を出し合って、とにかく成功に導かなければならない、こういうふうに思っております。

 私ども自身もよく国民の声を聞いて、お話を我々自身でそしゃくして、知恵を出していきたい。そして、国民のための民営化というその実現に向けて最大限努力していきたい、こういう考えでございます。どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

田島(一)分科員 ありがとうございました。終わります。

横光主査 これにて田島一成君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。額賀財務大臣。

額賀国務大臣 平成十八年度財務省主管一般会計歳入決算及び財務省所管の一般会計歳出決算、各特別会計歳入歳出決算並びに各政府関係機関決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入決算について申し上げます。

 収納済み歳入額は八十三兆二千七百二十五億円余となっております。

 このうち、租税等は四十九兆六百九十億円余となっております。

 次に、一般会計歳出決算について申し上げます。

 歳出予算現額は二十兆四千九百九十六億円余でありまして、支出済み歳出額は十九兆三千七百八十一億円余、翌年度繰越額は六十八億円余でありまして、差し引き、不用額は一兆千百四十六億円余となっております。

 歳出決算のうち、国債費は十八兆三百六十八億円余であります。

 次に、各特別会計の歳入歳出決算の概要を申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきまして、収納済み歳入額は二百五十六兆三千二百六十億円余、支出済み歳出額は二百二十一兆四千二百四十二億円余であります。

 このほか、財政融資資金等の各特別会計の歳入歳出決算につきましては、決算書等によって御了承願いたいと存じます。

 最後に、各政府関係機関の収入支出決算の概要を申し上げます。

 国民生活金融公庫におきまして、収入済み額は千六百八十七億円余、支出済み額は千二百四十一億円余であります。

 なお、損益計算上の損益はありません。

 このほか、住宅金融公庫等の各政府関係機関の収入支出決算につきましては、決算書によって御了承願いたいと存じます。

 以上が、平成十八年度における財務省関係の決算の概要であります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

 以上です。

横光主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十八年度財務省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一一号は、租税の徴収が適正でなかったものであります。

 同一二号は、貸付金の経理が不当なものであります。

 同一三号は、職員の不正行為により現金が領得されたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、独立行政法人国立印刷局における土地及び土地譲渡収入などによる資金に関するものであります。

 独立行政法人国立印刷局では、十五年四月に独立行政法人に移行する際に、印刷局特別会計から現金及び預金などの資金百三十億余円、事業用の土地一千九百三十四億余円、賃貸土地一千三十七億余円などの資産を承継しました。その後、賃貸土地の譲渡などにより、十八年度末には、十九年度末の中期目標期間終了時の資金見込み額四百七十八億余円を三百億余円上回る七百八十五億余円の資金及び帳簿価格二千七百八十二億余円の土地を保有しております。

 保有資金のうち四百九十八億余円が長期運用されており、また、土地譲渡収入のうち売却益の二分の一相当額については中期目標期間終了後に国庫に納付される見込みですが、土地の帳簿価額相当額については国に返納する規定がないため同法人が保有し続けることになり、国の特別会計から承継した資産の有効活用の面から適切とは認められません。したがいまして、財務省において、独立行政法人国立印刷局の保有資産の適正規模について検討し、不要な資産は国庫に返納させることができるよう適切な制度を整備するよう意見を表示いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 これは、外国へ長期出張する職員に対する日当及び宿泊料の算定に関するものであります。

 この件について指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

横光主査 次に、会計検査院高山第五局長。

高山会計検査院当局者 平成十八年度国民生活金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。

 これは、清掃業務請負契約に係る予定価格の算定に当たり、近年、清掃単価の下落傾向が著しいことから、直近の積算参考資料の単価を採用すべきであったのに、年度を取り違えて古い年度の単価を採用するなどしたため、支払い額が過大となっているものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

 引き続きまして、平成十八年度日本政策投資銀行の決算について検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上でございます。

横光主査 次に、会計検査院諸澤第一局長。

諸澤会計検査院当局者 平成十八年度国際協力銀行の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項一件であります。

 これは、職員の不正行為による損害が生じたもので、駐在員事務所の現地職員が、現金の出納保管等の事務に従事中、数量等を水増しした請求書により業者に支払ったこととするなどして、現金を領得したものであります。

 以上、簡単でございますが、説明を終わります。

横光主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。額賀財務大臣。

額賀国務大臣 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、財務省のとった措置について御説明申し上げます。

 会計検査院の検査の結果、不当事項として、税務署における租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。これらにつきましては、すべて徴収決定等適切な措置を講じましたが、今後一層事務の改善に努めるとともに、綱紀粛正の徹底を図りたいと存じます。

 以上です。

横光主査 次に、薄井国民生活金融公庫総裁。

薄井政府参考人 ただいま会計検査院から御指摘のありました事項につきまして、国民生活金融公庫のとった措置について御説明いたします。

 平成十八年度決算検査報告において、不当事項として、清掃業務請負契約の一部について、予定価格の算定に適正を欠いたため、支払い額が過大となっているとの御指摘を受けましたことは、まことに遺憾に思っております。

 当公庫では、このようなことが再び発生することのないよう、予定価格の算定要領を整備するとともに内部検証体制を強化したところであります。

 今後とも、業務の適正な遂行に努めてまいる所存であります。

横光主査 次に、田波国際協力銀行総裁。

田波政府参考人 平成十八年度決算検査報告におきまして、海外駐在員事務所における現地採用職員の不正行為について、不当事項として、会計検査院から御指摘を受けましたことは、まことに遺憾であります。

 本件につきましては、今回の事態を受け、海外駐在員事務所の管理体制の強化徹底を図るとともに、内部監査の一層の充実により、このような不正行為が再び生じないよう万全を期する所存であります。

横光主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横光主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横光主査 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

横光主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。小川淳也君。

小川(淳)分科員 民主党の小川淳也でございます。

 大臣、きょうは、限られた時間ですが、決算等につきまして質疑を行わせていただきます。よろしくお願いいたします。

 今、御報告をお聞きしておりまして、詳細は後ほどかもわかりませんが、お答えになれればお答えください。

 外国へ長期出張する職員に対する日当及び宿泊料の算定に関し、何をどう見直したのか、お答えになれる方がおられましたら、お願いします。

額賀国務大臣 後でよく調べて伝達をさせていただきたいと思います。

小川(淳)分科員 できるだけ通告ということは心がけたいと思いますが、これは、今大臣が御説明になられたことですから、何をどう変えられたのか、関心を持たれるのは当然だと思いますよ。ぜひ御準備をいただきたいと思います。

 それから、大臣、もう一つお尋ねします。

 この不当事項の指摘の中で、租税の徴収が適正でなかった、これは財務当局としては最も反省を要する事項の一つではないかと思います。課税の過不足があったということでありますが、きょうまさに、課税が適正かどうか、その点に対するお尋ねをするわけでございます。

 財務省が所管されるさまざまな行政所掌分野において、課税の仕組みなり、あるいは納税者との信頼関係なり、この点、最も大きな注意を払うべきと思いますが、大臣、その点の御認識、まず冒頭、お聞かせいただきたいと思います。

額賀国務大臣 これは小川委員のおっしゃるとおり、国の成り立ちは国民の税負担等によって基盤がつくられているわけでありますから、この税の負担については、丁寧によく説明をし、国民の皆さん方に納得できる形で行っていかなければならないというふうに思っております。これについては、最も注意をしていかなければならないことであるというふうに認識をしております。

小川(淳)分科員 いい御答弁をいただきました。ありがとうございました。

 それでは、課税の適正に関連して、私自身の問題意識を絡めながら、この間の経過をお尋ねしたいと思いますが、まず、何をおきましてもガソリン税であります。

 これだけ税率が上下をするということが短期間のうちに繰り返されますと、納税者、また、これは当然小売価格に反映されますから、最終的なガソリンを購入している消費者に大変な混乱をもたらすこと、これは当然であります。一方で、私ども野党の主張の結果がこの間の経過ですから、この点に対しては責任の一端を私どもも感じながらお尋ねをしなければなりません。その前提でお答えをいただきたいと思います。

 四月一日をもってこの暫定税率が期限切れをいたしました。ガソリンスタンドを初めとした石油業界が大変な混乱に巻き込まれた。私は非常に理不尽なこの間の経過であったと思っておりますが、課税当局である大臣の御見解、また、石油業界を所掌しておられる経済産業省の御見解、この混乱に対する御見解、まず端的にお聞かせいただきたいと思います。

額賀国務大臣 政府といたしましては、政府提出の税制改正関連法案が年度内に成立をさせていただくことが最も大事なことであるというふうに思っておりまして、これまでもいろいろとさまざまな努力を展開してきたところでございます。

 二月二十九日に衆議院を通過させていただいて、参議院側に本予算及び税制関連法案が送付されたわけでありますけれども、残念ながら、今日までまだ成立に至っていないわけでございまして、その結果、国民生活や経済活動に大きな混乱、支障を来しているわけでございます。私といたしましても、国民の皆さんや業界の皆さん方にもさまざまな影響、支障を起こしたことについては、残念に思っているところであります。

 小川委員も、この国会において、衆議院は政府・与党が多数を持っておりますけれども、参議院側は民主党を初め野党の皆さん方が多数を持っているわけでございまして、その上で責任の一端を感じているという政治家としての御発言がありましたけれども、その上に立って、一日も早くこの税制関連法案を成立させていくことが混乱を収拾することではないかというふうに思っております。

平工政府参考人 お答え申し上げます。

 もともと厳しい経営環境に置かれておりますガソリンスタンドにおきましては、売上高の大幅な変動による資金繰り悪化に加えまして、今回の不測の事態を受け、旧税率で課税済みの在庫の価格転嫁ができないことによるさらなる収益の悪化、また損害の発生が懸念されておりまして、これら販売業者を初め関係者の皆様には多大な御迷惑をおかけしたところでございます。

 このため、経済産業省といたしましては、石油販売事業者の資金繰りや経営への影響をできる限り軽減するため、信用保証の特別保証枠の拡大や特別利子補給制度の創設など、さまざまな対策を講じているところでございまして、こうした対策を着実に実施し、スタンドの資金繰り支援や経営の安定化に全力を尽くしてまいりたいと考えております。

小川(淳)分科員 経済産業省に重ねてお尋ねいたしますが、全国で一体どのくらいのガソリンスタンドがどのくらいの在庫を年度末経過で保管をして、どのくらいの税金をかぶった可能性があるのか、私は今回に関しては理不尽な課税負担だと思いますが、その推計を教えてください。

平工政府参考人 お尋ねの全国のガソリンスタンドの軒数につきましては、平成十九年度末時点で約四万四千となっております。

 また、三月末時点の在庫推計量及び値下げによりスタンドが負担した揮発油税額についてでございますが、石油業界からは、通常、元売の油槽所で約八十万キロリットル、スタンドで約百五十万キロリットルの課税在庫を保有しているというふうに聞いておりまして、仮にこれらの在庫にかかる暫定税率をすべてガソリンスタンドが負担したというふうに仮定をいたしますと、最大で約六百億円の負担となる可能性があるというふうに承知をいたしております。

小川(淳)分科員 財務大臣、お聞きのとおりであります。推計でありますが、約六百億円近い理不尽な課税負担を今回ガソリンスタンドに押しつけた。

 大臣、先ほど御答弁の中で、参議院で法案処理が速やかに進めば、これが最もいい解決策じゃないかという御見解をいただきました。まさにそれは、一つあり得る議論でしょう。しかし、その前に、前段として、冒頭の話に戻りますが、課税当局として必要な措置を怠ってはいなかったのか。私は、その点、行政当局としてできることがあったのではないかという観点から今回お尋ねをしているわけでありますが、大臣にお尋ねをする前に、もう少し経済産業省の見解をお聞きしたいと思います。

 石油連盟から、この年度末の前後にかけて、さまざまな要請なり要望があったはずでありますね。その概要なり、また、それを受けて経済産業省としてとられた措置、あるいは課税当局とのさまざまな調整、何か説得できる材料があればお示しいただきたいと思います。

平工政府参考人 お尋ねの石油連盟からは三月二十四日付で、全国石油商業組合連合会からは四月一日付で要望書をいただいたところでございます。もちろん一度ではございませんけれども、それらの内容につきましては、経営に対する支援に加えまして、暫定税率についての還付についても要望があったところでございます。

小川(淳)分科員 大臣、これもお聞きのとおりでありまして、少し御紹介をしたいと思いますが、二〇〇八年三月二十四日、石油連盟の渡会長から経済産業大臣に対してこういう文面で要望がございます。抜粋をいたしますが、「長年にわたり適正な徴税・納税に協力してきた石油業界に不当な損失が発生」すると。先ほど申し上げた、推計で六百億円であります。

 大臣の御認識をお聞きしたいんですが、これは不当な損失だという石油業界の主張に対して、課税側である大臣は、どうお答えになられますか。

額賀国務大臣 私どもは、政府といたしましては、暫定税率の水準を維持する形で道路特定財源の改正法案を出させていただいたわけでございまして、その上で、衆議院では二月二十九日には可決をして、参議院に送付させていただいたわけでございます。本予算は成立をしましたけれども、税制関連法案が成立をさせていただけなかったということでございます。

 私どもとしては、年度末までに必ずこれを、本予算とあわせて歳入法案を成立させることに全力を尽くしてきたわけでございまして、それこそが国家国民あるいはまた国民経済活動等々のために最も最適であるという認識を持っておりましたので、これは石油業界の皆さんや国民の皆さん方にも御理解をいただけるものというふうに思っていたし、また、よく説明をして御理解をいただけるように最善の努力をしつつあったところでございましたし、また、今もしているところでございます。

小川(淳)分科員 お尋ねの趣旨なんですが、石油業界からは悲鳴にも似た声が聞こえてきていたわけですね、当時。

 お尋ねをかみ砕くとこういうことです。ガソリン税は確かに庫出税ですから、仕入れの際に納入しています。高値で仕入れたものだから、安売りしたのはあなたたちの勝手だろうということを課税当局がおっしゃるのか。税率が下がったことが国民、世論にこれだけ周知の事実になったに際して、非常に低価格で売らざるを得ない。追い込まれた結果、私は、不当な、理不尽な値下げ競争だと思いますが、さっき申し上げた六百億円近い税金をかぶらなければならなかった。これが、課税側として、それはあなたたちの勝手だろうということなのかどうか、その点をお尋ねしています。

額賀国務大臣 石油業界あるいはスタンドの皆さん方については、末端の価格に価格転嫁ができなかったということについては、一定の混乱状況に陥ったことはよく承知しております。そのために、経済産業省の方からお話がありましたように、セーフティーネットの融資対策あるいはまた利子の補給等々、政府もお互いに連携をとりながら最善の努力をしてきたところであります。

 と同時に、一方で、我々は、法律を出させていただいたその本当のねらいというのは、従来どおり道路特定財源できちっと必要な道路はつくっていくということ、さらには、日本の国の財政事情それから環境問題、そういう基本的な考え方の上に立って暫定税率を維持していくことが大事であるということ、そういうことから法案を出させていただいておりまして、三月三十一日ぎりぎりまでその最善の努力を続けていたということでございます。

小川(淳)分科員 再三のお尋ね、もう時間の無駄ですから控えたいと思いますが、仕入れのときにかかった税金が直ちに小売価格に反映できない、しかも、これは減税されたことが国民に広く知れ渡っているわけですから、不当な、理不尽な値下げ競争に追い込まれざるを得ない。その結果として、税負担を、リッター何銭とか何十円とか何円とかいうところで本当にぎりぎりの利益を生み出すことに血眼になっておられる方々に大変大きな負担を強いた。そのことに対しては、やはり気の毒だったというふうに課税当局としておっしゃっていただかないと、これは冒頭にもありましたとおり、長期にわたって、本当に石油業界を挙げて適正な納税に協力してきたわけでありますから、大変浮かばれない、気持ちがおさまらない経過だったんじゃなかったかと私は想像いたします。

 現に、たくさんの石油会社の方々から、本当に悲鳴にも近いような声をいただきました。全国で推計六百億ですから、小売店当たり、スタンド当たり、少ないところでも大体三百万円から五百万円ぐらい負担しているわけですね。このことに対しては、やはり課税当局として率直に、これは気の毒なことをしたというふうに御認識をいただきたいと私は思います。

 その上でのお尋ねになりますが、当然もう大臣はよく御存じのとおりですが、その気になればできていたはずじゃないかというお尋ねであります。

 平成九年、ほぼ十年前に、同じ仕入れの際にかかる庫出税である酒税、お酒の税金、これを減税した際には、特に法的な措置もとらずに、必要とせずに、たった一枚のといいますか数枚のといいますか、国税庁長官の課税解釈通知で、この仕入れに伴う混乱、在庫調整、また理不尽な値下げ競争、これらに追い込む一切を回避されたと私は理解しておりますが、このときの概要を御説明いただける方がおられたら、お願いいたします。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の平成九年の酒税減税に際しまして、輸入ウイスキー類等の戻し入れの場合の酒税額の控除の適用につきましての手当てを含みます酒税法を改正する法律案を政府として国会に提出し、国会の審議を経て法律が成立しました上で、この施行日が十月一日でございましたので、その時点において流通在庫となっている課税済みのウイスキー類等について、国税庁から通達を発出いたしまして、これは七月でございますが、現品の移動を伴わない伝票処理により戻し入れの場合の酒税額の控除の適用を認める特例的な扱いを、その施行日の時点の在庫品の現物確認を行うということなどとあわせて、そういう手続とあわせて通達で定めたところでございます。

 この点につきましては、今般の税制改正におきましては、政府として、揮発油税等の暫定税率の維持を含む税制改正法案を今国会に提出し、その一日も早い成立をお願いしているところでありますために、平成九年の酒税法改正の際と同じような法律上の手当ては行っていないところでございます。

小川(淳)分科員 これは確認ですが、このときと同じ趣旨の国税庁長官の課税実務に関する通達が一枚出ていれば、今回のガソリン価格の混乱、理不尽な値下げ競争、そして、この課税額をスタンド、零細事業者がかぶるということはなくて済んだのでしょう。

佐々木政府参考人 国税庁の通達によって単独でできたのではないかという御趣旨だと思いますが、国税庁の通達も、一般論として申し上げますと、個別間接税の減税を行う際の税負担調整は、減税額の効果を小売価格に確実に行き渡らせるという観点から、必要となる法令上の手当てを含む税制改正案を政府として提出し、国会の御審議を経て税制改正法が成立した上で、国税庁がその円滑な執行に当たって必要となる通達を出すということで対応しているものでございます。

 過去におきましても、先ほど御指摘のような平成九年でもそうでございますが、そのような政府としての方針のもとで輸入品に対する特例措置を法令で手当てするということを行った上で、十分な準備、周知期間とともに、関係業界等の協力を得て、現品移動を伴わない伝票処理による戻し入れ控除といった特例的な取り扱いを通達によって実施したものでございます。

 したがいまして、このように、税負担調整は必要な法令上の手当てのもとで行ってきたということでございまして、国税庁だけの判断によって通達で実施できるという性格のものではございません。

小川(淳)分科員 大臣、今の当局御担当の御答弁でありますが、私は、以後課税当局として少し認識を切りかえていただくためにも引き続き議論させていただきたいと思いますが、今、政府提出法案なり政府の方針に従った場合には必要な通知を行いますという趣旨の御答弁であります。

 しかし、時代は大きく変わったわけでありまして、政府提出法案といえども、予定した期日に予定どおり成立するか否かはわからない時代に入ったという、その大きな認識の切りかえをぜひ課税当局にはお願いしなければならないんだろうと思います。

 その上で、本当の意味で課税の公正が一体どっちなのかということを、この庫出税の仕組みそのものにさかのぼって一度お考えいただきたい。

 庫出税というのは、これは私が事前にお聞きしたところによりますと、政府が製油所から支払ってもらうのは、納税義務者がわずか三十社で済むんだそうですね、製油所しかありませんから、あるいは一部の油槽所。しかし、これをもし、軽油なんかは現にそうですね、各スタンドごとに、小売業者に課税した場合は、冒頭にお答えがありました四万四千軒ですか、二万社余りだと思いますが、そこから、一々というと言葉は悪いですが、納税をお願いしなければならない。これは課税当局にとっても大変な負担であります。

 つまり、この庫出税という仕組みそのものが、納税者との間では非常に課税実務を簡便にして、税の確保を容易にしている。そういう、本当に、ある意味で有利な仕組みなんだろうと思います。

 ところが、今回のように庫出税に税率の変更が起きた場合、これは、政府が望むと望まないとをこの場合問いません、あくまで国会の議論の結果です、あるいは経過です、それによって税率が変わったときに、容易に消費価格、小売価格に転嫁しがたいこの庫出税を最終的に事業者にかぶらせるんだということが今後も続くようでは、これは庫出税そのものが成り立たないと思いますよ。

 政府と国会の関係、あるいは与党と参議院との関係は、今少なくとも、これは暫定的か恒久的かわかりません、大きく変わったんですから、庫出税という税の仕組みの特徴にぜひ立ち戻っていただいて、なかなか小売に転嫁できないからこそ、仕入れの調整、在庫調整が不要になるような手当てを庫出税に関しては以後していかなきゃいかぬ。ぜひこういう頭の切りかえをお願いしたいと思いますが、財務大臣、いかがですか。

額賀国務大臣 一つは、国会の場において、それぞれ衆参両院の勢力図が異なっている中できちっと国民の期待にこたえていくためには、やはり国会の中できちっと話し合いをする中で法律制定をしていっていただきたい、その上で国民の期待にこたえていってもらいたいということだと思います。

 今度の予算の場合も、政府は何回かそういう呼びかけをしたし、道路特定財源については二十一年度から一般財源化をするという大胆な譲歩もして、与野党の協議機関の設置を呼びかけ、そして先日それがセットされたわけでございますので、このままでは国民の期待にこたえることができないという共通の認識を得つつあるものと思っております。ですから、小川委員のおっしゃるように、一つの教訓としてこれが生かされることが大事なことであるということであります。

 一方で、もう一つは、衆議院の段階で、本予算もそれから租税関連法案も院の意思として参議院に送られてきているわけでございますから、これを変えることは、参議院の意思としてきちっと賛否両論ではっきりさせていただく以外手はないわけでございますから、この国会の場でしっかりとしていただきたいというふうに思っております。

 先ほど来お話がありますように、租税をいじくる場合は、国会の場においてきちっとその基盤づくりをしていただいた上で、我々は、政府はそれに対応させていただくことが常道であるというふうに思っているところでございます。

小川(淳)分科員 大臣、残念ながら、すれ違いの御答弁でありますが、国会の決定が政府の意のままにならなくなったからこそ、もちろん国会で結論が出ればそれが一番いいんでしょう、しかし、必ずしもそうならなくなったからこそ、特にこの課税という国家の統治なりの根幹にかかわることですから、事務通達で回避できる混乱は回避するのが政府の責任ではありませんかということを申し上げている。

 これが、さっき御答弁にありましたが、国税庁長官の一存でやったものではありませんということなら、国税庁長官通知でやったらだめですよ。国税庁長官通知でできることだから国税庁長官通知でやっているんだ。国税庁長官通知の一存ではできませんなら、長官通達では以後やらないように、ぜひ法律に書き込むように、これはぜひお願いをしなければならないと思います。その点、御答弁があればいただきたいと思います。

 今、もう、この間の経過よりも、今後どうなるかに各石油業界なり石油会社の関心は既に移っています。

 そこで、はっきりさせていただきたいと思いますが、現在参議院で仕掛かり中の法案の施行日は四月の一日であるはずであります。しかし、ちまた、私どもは反対の立場ですから軽々にこの議論はできませんが、あえて、心配をしておられる石油業界の方々あるいは小売、消費者の方々の心中をおもんぱかって議論をしておきたいと思います。

 早ければ四月の二十九日あるいは三十日にも再議決の姿勢をちらつかせておられる与党。これは国会の話ですよ。政府の対応を議論したいと思いますが、国会で万一そうなった場合、二十九日なり三十日に再議決ということになった場合、このガソリン税の暫定税率分はいつをもって復活をするのか、何日から課税が始まるのか、その政府としての対応の見込み、並びに、それをどう国民に対して、石油業界に対して十分な周知をとろうとされるのか。その二点、お伺いをしたいと思います。

佐々木政府参考人 先ほど、国税庁長官の単独の判断で通達で実施をできない旨申し上げました。それは、法的に、例えば平成九年の状況下において、通達でできなかったか、そういう特例的措置ができなかったかどうかという問題とは別でございまして、全体としての政策判断がありまして、国会の御審議を受けた政府、国会の意思がございまして、その政策目的を遂行するために法令上の手当て及び通達という手段で実行しているということでございます。

額賀国務大臣 今、小川委員から、政府提出の税制改正法案の衆議院の再可決の話が出ましたけれども、これは立法府の議案の処理の方法論であり、政府としては、再可決を前提とした仮定の話に現段階でお答えすることはできないと思っております。

 一般論からいえば、政府提出の税制改正法案においては、施行期日の原則として二十年四月から実施するということになっておりますけれども、もう御承知のとおり、このような施行期日規定を有する法律が四月二日以降に公布された場合は、国民の権利を制限するような規定については遡及適用はできないということでございますので、仮に現在の法案について国会で成立をいただいた場合には、基本的には公布日以降に適用されるということしか今の段階では言えないので、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

小川(淳)分科員 公布日以降は当然だと思いますが、それがいつなのかということは、本当に最大の今関心事になっています。このことに対しては、政府として、国会はもういいんですよ、国会はどうなるかわかりません。しかし、国会のいろいろなことを想定しながら、政府として最善を尽くしていただくということをぜひお願いしたいと思います。

 同時に、経済産業省におかれては、駆け込み需要とか、それから二度目の混乱がやってくる可能性が大であります。そのことに対しては、十分ないろいろなシミュレーションといいますか、想定を含めて、ぜひ対応をお願いしたいと思います。

 この庫出税の税率の変更のあり方については、また時間をいただいて、ぜひ今後とも議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

横光主査 これにて小川淳也君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管、国民生活金融公庫、日本政策投資銀行及び国際協力銀行についての質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十二日火曜日午前十時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十七分散会


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