衆議院

メインへスキップ



第1号 平成15年5月19日(月曜日)

会議録本文へ
本分科会は平成十五年五月七日(水曜日)委員会において、設置することに決した。
五月十六日
 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。
      江藤 隆美君    永岡 洋治君
      額賀福志郎君    武藤 嘉文君
      森田 健作君    中川 正春君
      葉山  峻君    山名 靖英君
      中林よし子君    鈴木 宗男君
五月十六日
 山名靖英君が委員長の指名で、主査に選任された。
平成十五年五月十九日(月曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 山名 靖英君
      江藤 隆美君    北村 誠吾君
      永岡 洋治君    西川 京子君
      額賀福志郎君    森田 健作君
      井上 和雄君    海江田万里君
      後藤  斎君    中川 正春君
      葉山  峻君    細野 豪志君
      中林よし子君
   兼務 森岡 正宏君 兼務 上田 清司君
   兼務 松崎 公昭君 兼務 上田  勇君
   兼務 黄川田 徹君 兼務 樋高  剛君
   兼務 重野 安正君
    …………………………………
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       亀井 善之君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       大濱 正俊君
   会計検査院事務総局事務総
   長官房審議官       漆舘日出明君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  春田  謙君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (外務省大臣官房参事官) 長嶺 安政君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           金森 越哉君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局スポーツ・青少年総
   括官)          高杉 重夫君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         長谷川真一君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   政府参考人
   (厚生労働省医政局長)  篠崎 英夫君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局国立病
   院部長)         冨岡  悟君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局食品保
   健部長)         遠藤  明君
   政府参考人
   (厚生労働省労働基準局労
   災補償部長)       高橋  満君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局長
   )            戸苅 利和君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           河村 博江君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    伍藤 忠春君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁長官) 岡本  巖君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房技術
   審議官)         白取 健治君
   政府参考人
   (国土交通省道路局次長) 榊  正剛君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  岩尾總一郎君
   政府参考人
   (農林漁業金融公庫総裁) 鶴岡 俊彦君
   参考人
   (年金資金運用基金理事長
   )            近藤純五郎君
   決算行政監視委員会専門員 小林 英紀君
    ―――――――――――――
分科員の異動
五月十九日
 辞任         補欠選任
  江藤 隆美君     北村 誠吾君
  武藤 嘉文君     西川 京子君
  葉山  峻君     海江田万里君
  中林よし子君     塩川 鉄也君
同日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     江藤 隆美君
  西川 京子君     武藤 嘉文君
  海江田万里君     井上 和雄君
  塩川 鉄也君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  井上 和雄君     細野 豪志君
同日
 辞任         補欠選任
  細野 豪志君     後藤  斎君
同日
 辞任         補欠選任
  後藤  斎君     葉山  峻君
同日
 第一分科員上田清司君、上田勇君、第二分科員森岡正宏君、黄川田徹君、樋高剛君、第四分科員松崎公昭君及び重野安正君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十三年度一般会計歳入歳出決算
 平成十三年度特別会計歳入歳出決算
 平成十三年度国税収納金整理資金受払計算書
 平成十三年度政府関係機関決算書
 平成十三年度国有財産増減及び現在額総計算書
 平成十三年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (厚生労働省、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
山名主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。
 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。
 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての審査を行うことになっております。
 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。
 平成十三年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。
 これより厚生労働省所管について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 おはようございます。
 平成十三年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明を申し上げます。
 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額二十兆千百七十四億円余に対しまして、支出済み歳出額十九兆八千八百八十五億円余、翌年度繰越額千五百三億円余、不用額七百八十六億円余で決算をいたしました。
 次に、特別会計の決算について申し上げます。
 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額三十九兆七千七百十五億円余、支出済み歳出額三十九兆三千九百八億円余、翌年度繰越額が二十六億円余であり、差し引き三千七百八十億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八百二十五億円余、支出済み歳出額八百五十六億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き三十四億円余をこの会計の積立金から補足することとして、決算をいたしました。
 第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額一兆七百八十億円余、支出済み歳出額一兆五百八十九億円余、翌年度繰越額百十九億円余であり、差し引き七十一億円余をこの会計の積立金として積み立てることとして、決算をいたしました。
 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十三兆三千五百三十九億円余、支出済み歳出額二十二兆六百三十二億円余、翌年度繰越額百三十七億円余であり、差し引き一兆二千七百六十九億円余を翌年度の歳入へ繰り入れるなどとして、決算をいたしました。
 第五に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八兆八千四百七十九億円余、支出済み歳出額八兆二千九百四十億円余、翌年度繰越額十九億円余、未経過保険料相当額二百八十四億円余、支払備金相当額千九百五十六億円余であり、差し引き三千二百七十八億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。
 最後に、石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち、厚生労働省所管分の歳出決算につきましては、歳出予算現額百七十五億円余、支出済み歳出額百七十一億円余、不用額三億円余で決算をいたしました。
 以上をもちまして、厚生労働省所管に関する平成十三年度の決算の説明を終わります。
 何とぞよろしく御審議のほどお願いを申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第二局長。
増田会計検査院当局者 平成十三年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百五十件、意見を表示しまたは処置を要求した事項四件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項一件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況三件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号五三号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたものであります。
 同五四号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。
 同五五号は、厚生年金保険の老齢厚生年金の支給及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったものであります。
 同五六号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。
 同五七号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。
 同五八号は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。
 同五九号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。
 同六〇号は、医療関係者養成確保対策費等補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同六一号は、医療施設運営費等補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同六二号は、医療施設等施設整備費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同六三号及び六四号の二件は、介護円滑導入臨時特例交付金が過大に交付されているものであります。
 同六五号は、社会福祉施設等施設整備費補助金が過大に交付されているものであります。
 同六六号から九〇号までの二十五件は、児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。
 同九一号及び九二号の二件は、少子化対策臨時特例交付金が過大に交付されていたものであります。
 同九三号から一〇五号までの十三件は、生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。
 同一〇六号から一一〇号までの五件は、精神保健対策費補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同一一一号から一二八号までの十八件は、介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるものであります。
 同一二九号から一三三号までの五件は、国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるものであります。
 同一三四号から一八九号までの五十六件は、国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。
 同一九〇号から一九六号までの七件は、水道施設整備費補助金の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。
 同一九七号から一九九号までの三件は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。
 同二〇〇号は、介護給付費に係る国の負担が不当と認められるものであります。
 同二〇一号及び二〇二号の二件は、労働者災害補償保険の保険給付に要した費用として事業主から徴収すべき額を徴収していなかったものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 その一は、特定求職者雇用開発助成金と中小企業雇用創出人材確保助成金との併給調整に関するものであります。
 これは、高年齢者など就職が特に困難な者に該当し、かつ、新分野進出等に必要となる者にも該当する労働者を雇い入れた事業主に対して、特定求職者雇用開発助成金と雇用・能力開発機構が支給する中小企業雇用創出人材確保助成金が併給されていて適切とは認められない事態が見受けられましたので、厚生労働省に対して是正改善の処置を要求いたしたものであります。
 その二は、特別養護老人ホームが保有している特別積立預金に関するものであります。
 特別養護老人ホーム二千五百三十八施設における十三年度末の特別積立預金総額千二百九十七億余円、これに係る保護費負担金相当額五百十八億余円については、具体的な使用予定がない状況となっていて、この特別積立預金が長期にわたり滞留し続けることになると認められましたことから、厚生労働省に対して、意見を表示いたしたものであります。
 その三は、特別支給の老齢厚生年金の受給権者に係る現況届による就労情報の把握及び活用に関するものであります。
 厚生年金保険の適用事業所に使用されているのに、現況届に記載がないため就労情報を把握することができなかったり、社会保険事務所等において就労情報を十分に活用していなかったりしていたため、老齢厚生年金の不適正支給及び厚生年金保険保険料等の徴収不足の事態が見受けられましたことから、社会保険庁に対して、改善の意見を表示いたしたものであります。
 その四は、保育所における定員を超えた保育の実施に関するものであります。
 長期間、継続的に定員を超えて保育の実施を行っていたのに定員が変更されていなかったり、増員または減員の定員変更時から定員を超えて保育の実施を行っていたりした保育所が多数見受けられましたことから、厚生労働省に対して、改善の処置を要求いたしたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 これは、国民健康保険の特別調整交付金の対象となる保健事業の実施に関するもので、健康診査等によって得られたデータを健康指導に十分活用していなかったり、一般住民を対象とした保健事業の事業費全体を交付金の交付対象としていたりするなどの事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。坂口厚生労働大臣。
坂口国務大臣 平成十三年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。
 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存でございます。ありがとうございました。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
上田(勇)分科員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。
 きょうは、最初の質疑ということでございますが、どうかよろしくお願いをいたします。
 最初に、重症性呼吸器症候群、SARSのことについてお伺いをしたいと思うんですが、今このSARSが中国、アジアなどの地域を中心といたしまして世界じゅうで猛威を振るっておりまして、既に六百人前後の方々が亡くなっているということが報告をされております。
 それで、最初にちょっと国内のことについてお伺いをしたいというふうに思うんですが、日本国内では現在のところまだ発症報告はないわけでありますけれども、しかし、この週末、テレビでも再三にわたって報道されているように、台湾で発症した患者が、その直前に日本国内を旅行していたというようなことも明らかになっておりまして、これだけ国際化が進んだ、人や物がもう自由に行き来をする時代になってきますと、その侵入を完全に防ぐということにはいろいろと難しい面があるんだろうということを示しているんじゃないかというふうに思います。
 そこで、現在まだ発症していないSARS、国内での発生を防いで、そして万一発生した場合の対応についてはぜひ万全を期して対応していただきたいというふうに考えておりますけれども、まずその辺、一般論で恐縮でございますが、大臣からの御決意をお伺いしたいというふうに思います。
坂口国務大臣 このSARSにつきましては、急に起こってきたことでございますので、各国ともに大変な混乱をいたしているわけでございますが、日本にとりましては、医療の先進国でもございますし、どんなことがあっても日本に上陸をさせないという強い決意のもとに取り組みをしているところでございます。
 しかし、そうは申しますものの、上田議員も御指摘のとおり、これだけ往来の激しい世の中でございますから、水際作戦と申しますか、日本にお見えになる皆さん方に対してどうチェックするかということが最も大事な問題であり、その次には、発生をいたしましたときにどう迅速に対応するかという、この二つのことが非常に大事だというふうに思っております。
 外国からお見えになります皆さん方に対しましては、とりわけ空港におきましての対応が重要だというふうに思っておりますし、旅行をされる皆さん方が、中国でありますとか香港、シンガポールといった発生地から出発をされます、その地域にお住みになっている皆さん方の場合には、乗りますときに空港で第一のチェックをしていただくようにいたしておりますが、飛行機に乗りましてから発熱等があることもありますので、飛行機に乗り込まれた後の健康チェックというものをさせていただいております。一つは、調査票によりまして皆さん方の状況を把握し、発熱等がないかどうかを検査させていただく。あるいはまた、日本に到着をいたしました直後、空港におきましてももう一度発熱等のチェックをさせていただいている。そうしたことを今やっているところでございます。
 この台湾の件がございましたので、今までよりももう一つ詳しく機内におきましてお聞きをしたいというふうに思っております。それは、その前十日以内ぐらいの間に現地において患者に接触をするとか、あるいはまた治療をしたといったようなことがあったかなかったかということを、もう一つ厳密に調査をしたい、こういうふうに思っているところでございます。
 それから、万が一日本の中で発生をいたしましたときには、これはもう早期予防、早期診断、早期治療が大変大事でございますので、早期にこの人たちの治療を行いたいというふうに思っております。しかし、この病気の診断はなかなかつきにくいのがこの病気の特徴でございますので、疑わしい例、可能性例、そうした例におきましても、この病気を予測して、隔離をし、そして治療を行わせていただく、そういう体制を組んで、それで早期にその周辺の予防に当たるといったことを今徹底したいというふうに思っておりまして、全国にそのお願いをしているところでございます。陰圧性のベッドも七百三十三ベッド全国で完成をいたしましたので、全国どこにおきましても対応できる体制が整ってきたというふうに思っている次第でございます。
上田(勇)分科員 けさも、私が家を出てくる前に、テレビをつけておりますと、このSARSにかかわるニュースをどこの局でも取り扱っている。それだけ不安、関心が非常に高いということだろうというふうに思いますので、ぜひ対策について遺漏なきようにお願いしたいというふうに思います。
 それで、このSARS、特に中国を中心といたしましてアジア地域で患者が一番多く出ております。これまで坂口大臣のリーダーシップのもと、厚生労働省といたしまして、こうした地域に対しまして、資金、物資、それから人的な貢献も含めて、大変迅速に、また積極的に対応してきたんではないか、この点については高い評価が得られているんではないかというふうに思っております。
 そこで、さまざまな支援策について、これまでいろいろと厚生労働省の方からも御報告をいただいておりますけれども、今後さらにどういうような支援を考えておられるのか、御説明をいただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
長谷川政府参考人 SARSにつきましては、我が国にとって重要な問題であると認識をしておりまして、四月末にマレーシアで開催されましたASEANプラス3、日中韓及び香港の保健担当大臣によるSARS緊急会合にも坂口厚生労働大臣が出席し、貴重な情報交換、共同声明の採択を行ったところでございます。
 また、SARS対策支援に関する国際協力につきましても、外務省やWHO等と連携して鋭意実施してきております。
 具体的には、国際緊急援助隊専門家チームらを三月にはベトナム・ハノイへ、五月には中国・北京に派遣し、その中で、国立国際医療センターの医師が院内感染対策等を支援することで、技術的観点からの人的な貢献をし、大きな成果を上げてきております。さらに、外務省からは、防護服、検査機器等の必要な機材の供与等を実施してきております。また、国立感染症研究所が支えるWHOを中心とした国際感染症対策ネットワークの運営の継続的支援などによりまして、引き続き国際的な情報の円滑な収集等にも協力してきております。
 今後とも、外務省やWHO等とも連携して、効果的な国際協力を進めてまいりたいと考えております。
上田(勇)分科員 ありがとうございました。
 この件についての国際協力は、周辺国からも大変高い評価をいただいているところでございますし、外交の面からも大きなプラスになっているんじゃないかというふうに思っておりますので、引き続き、できる限り積極的な協力支援をしていただきたい。日本のすぐれた医療技術を活用した協力ができる大変いい分野ではないかというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。
 それでは次に、アレルギーの問題につきまして何点かお伺いしたいというふうに思っております。
 ぜんそくとかアトピー性皮膚炎、花粉症、こういったアレルギー性の疾患というのは、今や国民病とも言われております。私も地元で、そういう患者の団体、あるいはそういうお子さんをお持ちのお母さん方の団体というような方々ともしばしば話し合いを行っておりますけれども、その際に、そうした方々からさまざまな御意見とか御要望をいただきます。そうしたことについて、何点か厚生労働省のお考えをきょうは伺いたいというふうに思うんです。
 まず最初に、一番よく聞く意見というのが、開業されているお医者さんとか保健所の保健師さんなどの医療関係者の中にも、アレルギーに対する正しい知識というんでしょうか、十分な理解を必ずしも持ち合わせてない人が多過ぎるんじゃないかということをよく伺います。
 そこで、せっかく今、国立相模原病院などを中心といたしましたアレルギーネットワークを厚生労働省は構築をしているわけでありますので、その中の拠点病院を活用して、そこにおられる専門医による研修を、必ずしも専門ではない一般のドクターの方々や保健師さんを対象にして、そうした研修をもっと拡充していただければというふうに思いますけれども、お考えを伺いたいというふうに思います。
高原政府参考人 お話にもございましたとおり、アレルギー疾患につきましては、ドクターの間にも必ずしも意見の一致が見られないことも多うございまして、そういうふうなことで大変国民の方に御心配をおかけしているのではないかと思っております。こういった一般臨床医や地域保健活動にかかわる保健師など医療関係者に対し、研修などを通じまして正しい医学的な情報を適切に提供するということは、御指摘のとおり極めて重要なことであると考えております。
 平成十三年度より、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症、リウマチ、この四疾患につきましては、アレルギー疾患にかかわる臨床研究の拠点でもございます国立相模原病院臨床研究センターとの連携のもと、都道府県の保健師等を対象に四疾患相談員養成研修会を実施し、地域におきます相談体制の充実を図っております。また、この養成人員の増加ないしはカリキュラムの豊富化、そういうことも進めております。
 一般臨床医に対してでございますが、厚生労働科学研究事業の中でアレルギー疾患の診療ガイドライン等を作成いたしまして、その普及に努めているところでございまして、今後とも、お話にございました国立相模原病院臨床研究センターの専門医師等の意見ももとに、ネットワークも生かしながら、研修内容の充実、最新の知見や有用な情報の医療関係者に対する提供、そういったものを進めてまいりたいと考えております。
上田(勇)分科員 今答弁にもあったんですけれども、その国立病院で行っている研修、これは大変いい試みであろうというふうに思うんですが、残念ながら、定員が、それぞれの研修で一つの都道府県で数名程度しか一回に受け入れられないということでありまして、その方々が地元に帰ってそれを活用していくというところまではなかなか至っていないというのが現状でございますので、ひとつもっと制度の拡充をお願いしたいということと、また、せっかくそこで日数をかけて研修をした方が、それぞれの都道府県、また地域の中でその結果をもっと活用できるように、ぜひ、厚生労働省の方からもそれぞれの行政機関に対して、またそういったこともお知らせをいただければというふうに思うわけでございます。
 もう一つ、やはりこうした患者の方々からよく伺うことが、どこのどのドクターがアレルギーの専門家なのか、あるいはそういう専門医の方々がいる医療機関というのはどこにあるのか、そういったことはどこに聞いても教えてくれないというようなことをよく伺います。
 私、いろいろと聞いたところ、調べて知らせていただきまして、日本アレルギー学会では、認定医とか専門医、指導医といった資格の認定を行って、なおかつ、今の認定された資格を持った専門医やドクターがおられる医療機関について、ホームページ上で公開をしております。
 これは、私もきのうホームページをあけて拝見をしたんですが、全国それぞれの地域の医療機関が、その専門としている分野なども詳しく書いているんですが、残念ながらこうしたことが一般の方々には余り知られておりませんし、そして、もっと残念ながら、医療機関、一般の開業されているドクターの方々とか保健所などでも、御存じなのかどうかよくわかりませんが、そういったところでもこういった情報については余り教えてくれないというようなことがあるようでございます。
 そこで、このホームページのことには限らないんですが、行政側としてもそういう医療機関に対して、こういうような情報の提供もある、こういう専門医に関する情報の提供もあるというようなことの広報、普及に努めていただければというふうに思いますし、また、いろいろな形を使って、こういう専門医がどういうところにおられるのか、そういったことを周知するような努力を行っていただきたいというふうに思いますけれども、それについて政府としてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
篠崎政府参考人 アレルギーにつきましては、既に標榜診療科としては従来から広告が可能というふうになっておりますけれども、昨年の四月から広告規制を大幅に緩和をいたしまして、専門医としての広告も可能となりました。
 それで、関係学会などでアレルギー科の専門医制度というものがあれば、これは今先生御指摘の日本アレルギー学会には、認定医、専門医、指導医等があるわけでございますが、そういうものがあれば、所定の手続を経て、従来のアレルギー科の標榜に加え、専門医として広告することが可能というふうに思っております。
 したがいまして、私どもといたしましては、こういう学会等の御意見を聞きながら、必要に応じて助言に努めて、そういう広告が可能になりますればそれを国民が広く知るということも可能になりますので、そういう方向で学会等と検討し、助言に努めてまいりたいと考えております。
上田(勇)分科員 広告の規制が緩和されたので、それぞれの医療機関あるいはドクターが独自に自分から宣伝するということは可能なわけでありますけれども、自分の同じ町内にいる医療機関でない限り、あるいは電話帳で見てというようなことがあるのかもしれませんけれども、実際に受診する患者の立場からすると、それだけではなかなかよくわからないんだろうというふうに思います。
 もちろん、どこがいいとかどこが悪いかというのを行政として言うことは非常に問題があるんだというふうに思いますけれども、そういう権威のある学会とかで認定をしている、そういうようなリストがありますよということを例えば保健所に相談に行ったときには教えてくれる、あるいは一般の開業医、ドクターのところでも、もし専門医のところに行くのであれば、こういうところに行けばインターネットでリストが見られますよというようなことを教えてもらうことが一番いいんじゃないのかなと思うんですが、ちょっと現状では、どうも、私が聞くところでは、保健所に行って紹介してくださいと言ってもなかなかそういうふうなことに十分に対応してくれない。それは、情報があるのかないのかわからないんですけれども、そういうような現状であるというふうに聞いているんです。
 だからこそ、もっとそういうところに行政側を通じて広報を進めるというふうなことをぜひ訴えていただきたいと思うんですが、そういう点はどうでしょうか。
高原政府参考人 国民の皆様方に対しましてアレルギー疾患に関します情報提供を行うことは重要であると認識しておりまして、現在、リウマチ・アレルギー情報センターというところがございまして、そこのホームページにおきまして、先ほど医政局長から御説明申し上げました、アレルギー学会が認定した専門医及びその所属医療機関の情報提供を行っております。また、社会福祉・医療事業団の福祉保健医療情報ネットワーク、WAMNETを活用し、全国の医療機関に関する情報をインターネットを通じて提供する準備を進めているところでございます。
 しかしながら、一般の方がこういうふうな専門的なインターネットを検索するということは、検索エンジン等も充実しておりますが、なかなか難しい。それで、都道府県の保健所の保健師さんなんかに、こういうふうなサイトに行けばこういうふうなお医者さんの情報がありますよということを普及啓発いたしまして、これは国民の方が検索されてもよろしゅうございますが、保健所等で御相談いただければ、適切に保健師等がインターネットのサイトを検索しまして、アレルギー学会が認定した専門医、その所属医療機関、そういったものがわかるような指導をやってまいりたいと考えております。
上田(勇)分科員 もう一点、文部科学省にもきょう来ていただいているのでお伺いしたいというふうに思うんですが、どうも、そういう患者の皆さんからいろいろと話を聞くと、やはり学校、教育機関でのアレルギー疾患に対する理解が随分おくれているというようなことをよく伺います。やはり子供は毎日、昼間学校に通っているわけでありますので食物アレルギーなどの発生するケースも多いわけでありますし、これは事実関係について確認をいたしておりませんが、聞くところによると、学校関係者の知識が必ずしも十分でなかったために重症に移行してしまったというようなこともあると聞きます。
 そこで、子供と一番最先端で接する学校関係者の中でも、特に学校医それから養護教諭、あるいは一般の教師の皆さん方に対しても、そういうアレルギーの専門医による研修などを実施してはどうかというふうに考えておりますけれども、その辺、いかがでしょうか。
高杉政府参考人 先生御指摘のように、学校において、アレルギー疾患など、児童生徒に関する新たな健康問題に適切に対処していくということは重要なことでございます。
 私ども、アレルギー疾患につきまして、財団法人の日本学校保健会という団体がございますが、この団体などと協力をいたしまして、教職員などがアレルギー疾患についての正しい知識を持って児童生徒に対応することができるように、例えば、ぜんそくにつきましてその指導の要点をまとめた指導資料、こういうのを作成して配布する、また、アトピー性皮膚炎につきましても、専門医の知見等を活用いたしまして正しい知識を持つことにより適切に対応できるよう、疾患の概要や必要な配慮事項、こういうものをまとめました教職員向けの指導資料を作成するなどの対応を行っております。
 また、研修のお話がございましたけれども、研修につきましても、学校医とか養護教諭を対象とする学校保健研修会というのがございます。この中で、アレルギー性疾患につきましても、専門医の講義、それから研究協議というものを、分科会などを設けるなどいたしまして適宜取り上げているところでございます。
 やはり学校がそういう正しい知識を持って配慮をしていくということは必要なことでございますので、今後とも、研修会等におきまして積極的にこの問題を取り上げるなど、指導の充実に努めていきたいと思っております。
上田(勇)分科員 ひとつよろしくお願いいたします。
 次に、臨床検査技師、衛生検査技師に関する在り方検討会につきまして、時間の関係もありますので、ちょっとまとめて御質問させていただきたいと思うんですが、この検討会の検討結果が近々中間取りまとめという形で公表されるものだというふうに承知をいたしております。検討課題の中には、一定の結論に至ったものもありますが、引き続き議論すべきであるとされた項目もございます。
 その引き続き今後検討するということになった項目の中に、生理学的検査の規定方式の変更というのがございます。
 近年、医療技術、検査技術が物すごいスピードで進歩している中で、そうした変化に機動的に対応する、そういう必要性についてはこの委員の中でもコンセンサスが得られたものの、業務独占にするかどうか、また、その規定の仕方についていろいろな意見があって、結論としては、いずれかのレベルの法令で項目を明確に特定する、そういう必要性があるんだろうというところで大体の意見が一致したと聞いております。
 さらに、現在は検査項目が政令になっておりますけれども、それを厚生労働省令に落として、そうすればもっと機動的に対応できるんじゃないかというような意見もあったと承知をいたしております。これもなかなかいいアイデアではないのかなというふうにも思います。さらに、この業務範囲について論議をするために専門家が集まって検討する枠組みが必要であるというような意見も多数あったと聞いているところでございますが、早急にこうした検討会のようなものを発足して議論を始めるべきではないのかなというふうに思います。
 もう一点、業務独占となっている生理学的検査のほかに、検査結果が診断にとって非常に重要な役割を果たしている、もし誤りがあった場合には人体に重大な影響が及ぶ危険性の高い検査については、検査の品質、信頼性を保って、その結果についての責任を明らかにするためにも、無資格者による検査を規制すべきではないかというような意見が提起され、これについて議論されたものというふうに承知をいたしておりますが、これについてはいろいろな意見があって、結論に至らなかったというふうに聞いております。
 検査結果というのは診断や治療方法の決定にも大きな影響力があるものだというふうに思いますので、やはり国民の医療に対する信頼を維持していくためには果たして今の制度でいいのか、あるいはどういう点を改めていかなければいけないのか、こういったことについてはしっかりと議論をして結論を出していかなければいけないというふうに思いますけれども、そういう意味では、専門家あるいは実際検査に携わっている当事者の方々などで早急にさらにこの議論を進めて結論を得るように努力をしていかなければいけないのではないかというふうに思いますが、今後の方針についての考え方をお伺いしたいというふうに思います。
篠崎政府参考人 先生からこの問題に御指摘を受けたのは昨年の七月でございましたが、それ以後、十月にこのあり方の検討会を設置いたしまして、今まで五回ほど検討を重ねてまいりました。
 それで、その結果でございますけれども、医師と検査技師との関係、それから衛生検査技師の廃止について、それから生理学的検査の規定方式の変更、ただいま御指摘ございましたが、そういう問題、それから臨床検査技師の業務独占分野の拡大について、検査の質の確保について、このことにつきましてはおおよその意見の集約がされたところでございまして、これを受けまして最終調整を行っておりまして、まとまり次第公表したいというふうに考えております。
 今また先生からさらに御質問のございました生理学的検査の規定方式につきまして、個々の検査を個別に規定するのではなくて業務範囲を包括的に規定すべきではないかという意見もございましたけれども、生理学的検査につきましては、患者が負う危険性は個々の検査方法に応じて異なるというようなことから慎重に判断すべきというふうにされまして、その上で、政令または省令のいずれかのレベルにおいて明確に特定すべきという結論に至ったものでございます。法律から直接省令に委任することも一案との考え方が示されておりますけれども、これは近年、他の医療関係資格法においてはこういう形をとっておるのが一般的でございますが、このことにつきましても、関係者の方々ともよく相談しながらその方向性を見定めたいというふうに思っております。
 それから、検査結果が人体に影響を及ぼす検体検査につきましてでございますが、この検討会におきまして、検査技師などの専門的な知識、技能を持つ者が行うことが望ましいことには変わりはないけれども、独占業務を含む法律上の具体的位置づけについてはさらに慎重な検討を行うべきということになっておりまして、将来的な検討課題である、そのように認識をいたしております。
上田(勇)分科員 時間がなくなってしまいましたけれども、今の点について、ぜひ、一応の一段落はついたわけでありますけれども、やはりこれは重要な課題であるというふうに思いますので、引き続き検討を続けていただきたいということを要望させていただきます。
 それで、もうこれで終わりますが、公務員制度改革事務局の皆さんにも、実は公務員制度の労働基本権の問題で御質問をさせていただこうということでお呼びをしたんですが、ちょっと時間がなくなりましたので、まことに申しわけございません、これで終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
山名主査 これにて上田勇君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子君。
中林分科員 日本共産党の中林よし子でございます。
 この分科会は厚生労働省所管ではございますけれども、ちょっと緊急性を要する問題がございまして、冒頭に外務省と防衛施設庁にお伺いしたいというふうに思いますので、大臣にはまことに申しわけございませんけれども、お許し願いたいというふうに思います。
 実は、五月十六日付で広島県知事から外務大臣と防衛施設庁長官あてに、「米軍機の低空飛行訓練の実情等について(要請)」というものが提出をされております。
 この文書を見ますと、一つは、低空飛行というのが相変わらず広島県の県北を中心とする上空でされていて、平成十四年度の下半期、これは二〇〇二年十月から二〇〇三年三月三十一日までですけれども、目撃実日数が八十八日、目撃件数が五百六十四件に及びます。そして、週末、休日、これは九九年一月十四日の日米合同委員会での合意事項で、週末や休日は飛ばないようにするという合意事項が実はあるわけですけれども、それを犯して、この下半期だけでも目撃が十日間、三十一件に上る。
 それからもう一つは、四月十四日から十六日、三日間にかけて県北や東部、これはこれまでの戦闘機などと違ってヘリコプター、米軍のヘリコプターが夜間の低空飛行訓練を行った。目撃者によると、二十メートル、三十メートルの大変低いところだった、こういう目撃がございます。在日米軍司令部によれば、これは米軍機であるということを確認しております。県の調べで、二十四市町村にまたがっている。
 だから、具体的には三つの項目で、外務大臣と防衛施設庁長官への要望事項が出されております。一つは「米軍機の低空飛行訓練の実態を明らかにすること。」二つ目は「県民が生活している地域での低空飛行訓練を行わないよう措置すること。」三つ目「米軍機の飛行(低空飛行訓練を含む)については、航空法第八十一条が適用されるよう措置すること。」この三つの要請が出ているわけですけれども、外務省それから防衛施設庁、どのように対処されるのでしょうか。
長嶺政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま委員の方から御質問のございました点につきまして、まず初めに、外務大臣あてに広島県知事からの要請を、先週の金曜日でございますが受け取ったことは、そのとおりでございます。また、本年四月に三日間連続で、広島県北部、東部地域においてヘリコプターの夜間飛行が行われたことについては、報道等を通じて承知しております。
 一般論として申し上げますれば、在日米軍は日米安保条約の目的達成のために駐留しておりまして、そのためにさまざまな訓練を行っていくということは必要なことだというふうに考えております。
 他方、米軍は、訓練に際しまして、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきであることは言うまでもございません。
 米軍による低空飛行訓練も、日米安保条約の目的達成のために必要な訓練の重要な一環であると認識しておりますけれども、訓練の実施に際しましては、安全面に最大限の考慮を払うとともに、地元住民の方々に与える影響を最小限にとどめるという観点から、日米両国政府は、平成十一年一月十四日に、ただいま委員から御指摘もございました最低高度基準等の六項目について具体的措置を取りまとめておるところでございます。米軍はこれらの措置に従って訓練を実施しているというふうに認識しております。
 いずれにいたしましても、政府としては、今後とも米側に対して、訓練に際してはこの平成十一年の六項目の措置に従い安全面に最大限の考慮を払うよう申し入れていく所存でございます。
冨永政府参考人 防衛施設庁といたしましても、在日米軍の飛行訓練を含みます訓練自体につきましては、日米安保体制の信頼性を確保するという観点からも必要であるというふうに考えております。
 他方、当庁としましては、米軍の訓練等によりまして生じました被害に対する賠償業務を実施しております立場から、米軍に対しましては、飛行訓練に際しての事故や被害の防止あるいは住民に対する影響への配慮、こういったことについて機会をとらえて注意喚起を行っているところでございまして、今回は広島県それから三次市長の方から要請をいただきましたので、これにつきましては在日米軍司令部の方に要請を伝えております。
 また、仮にの話でございますが、被害の申し出がありました場合には、適正に処理してまいりたいと考えております。
中林分科員 今、外務省並びに防衛施設庁から答弁いただいたんですが、これまで私は繰り返しこの問題を質問してまいりましたけれども、全くその域を出ていない答弁に終始しておることはまことに遺憾だというふうに思います。といいますのは、この平成十一年、一九九九年の日米合意事項の六項目を守っているはずだ、こういうふうに、どこの外務省なのかと思うばかりの答弁が続いているわけです。国として低空飛行の実態は把握されていないというふうに思います。
 広島県の各地、私が住んでおります島根県の各自治体は、自治体独自で調査をしております。ここに、広島県独自の、平成九年度から平成十四年度までの目撃件数が報告をされております。
 ちなみに、日米合意ができたのが平成十一年の一月十四日です。だから、平成十一年、それ以降は減っているのかといえば、とんでもない。平成十年度が合計百二十回ということでしたけれども、この合意を結んでからは実に六倍、七百六十七回に及び、それが毎年のように引き上がり、平成十二年度は八百八十四回、平成十三年度は九百九十二回、平成十四年度は千三十六回。まさにウナギ登りという状況です。そして、夜間のヘリコプター、二十メートル、三十メートルの超低空ランということはあり得なかったんですけれども、それをやっているし、病院、学校の上空は飛ばないと言っていたにもかかわらず、それも無視している。
 しかも、私は二〇〇一年の十二月に、当時田中外務大臣のときの植竹副大臣に直接、低空飛行に反対する、中止を求める県北連絡会の芸北町長を初め、一緒にお目にかかったときに、子供たちの作文も携えていきました。内閣総理大臣、やめてくださいと米軍に言ってください、こういう切実な手紙も添えたときに、植竹副大臣は、百聞は一見にしかず、機会があれば直接調査をしたい、自分も行ってみたい、こうおっしゃいました。その前の河野外務大臣、同じ二〇〇一年の予算委員会の場で私が質問をしたときに、調べてみたいということをやはりおっしゃっておりました。そしてことし、川口外務大臣になってから、これは与党の質問ですけれども、実態把握しなければならないということをやはりおっしゃっているんですが、これまで全部約束をほごにしているではございませんか。
 日本の国民の安全を守る、そういう姿勢から、国として調査をすべきだというふうに思いますけれども、その点と、それから防衛施設庁は、具体的なガラスへのひび割れなどは対応しているけれども、子供たちの精神への被害、そういうものもちゃんと見る、そういう決意がありますか。
長嶺政府参考人 お答えいたします。
 今委員御指摘になりました、これまでの大臣の答弁それから地元の方が外務省に来られた経緯等につきましては、よく認識してございます。
 個々の飛行訓練の内容等につきましては、これは米軍の運用にかかわる問題ということでございまして、今委員から御指摘のありました川口大臣の答弁にもございますように、具体的な被害が生じている場合には、政府としてその実態を調査し、対応してきたところでございます。
 いずれにいたしましても、政府としては、今後とも米側に対しまして、訓練に際しては平成十一年の六項目の措置に従い安全面に最大限の考慮を払うよう申し入れをしていく、こういうことでございます。
冨永政府参考人 米軍の飛行によって生じましたこれまでの主な被害の内容は、家畜の損害とか窓ガラスの破損といったものでございます。
 具体的に被害のケースについてお答えするのはなかなか難しいんですけれども、一般論として申し上げますれば、実際に米軍の飛行によって被害が発生しているということ、それから、それが米軍の飛行との間の因果関係があるということがはっきりいたしました場合には、損害賠償の対象になるということで、適正に対処していきたいと思います。
中林分科員 答弁はとても不満ですけれども、こればかりやっているわけにはいかないので、引き続き別の機会でただしていきたいと思います。
 では、外務省の方それから防衛施設庁の方、もうお帰りいただいてよろしいですので。ありがとうございます。
 それでは、子供の小児科医療の問題について、大臣並びに局長などにただしたいというふうに思います。
 子供を持つ親、これから産み育てようとする若い夫婦、それから家族にとって、子供が病気になったとき、三百六十五日、二十四時間、あそこに行けばすぐに診てもらえる、こういう体制があることが何よりも安心になるということは言うまでもないというふうに思います。この小児科医療の充実というのは、少子化対策の上でも最重要課題だというふうに私は思います。ところが、一九九〇年から一九九九年の九年間で、全国の五百九十一の病院で小児科が消えているということが報告されております。
 そこで、大臣にお伺いするわけですけれども、子供の病気というのは、急変するわけですので、一刻一秒を争う、こういう処置が必要だというふうに思います。三百六十五日、二十四時間の対応、これが必要だということには間違いないと思いますので、その点を一点確認させていただきたいということと、しかしながら現在そういう状態になっていない、この現状をどのように把握していらっしゃるのか、それからそれを打開する方策、国としてはどのようにお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 小児医療が非常に大事だということは私も同じ認識を持っておりまして、何とか拡大をさせなければならないというふうに思っているところでございます。
 今お話ございましたように、一九九〇年代、やはり小児科医療というものが、小児科をしていただく先生がだんだんと少なくなってきたという事実はあるように思います。ただ、小児科の先生方の人数を調べてみますと、必ずしもそんなに減っていない。それはやはり、内科小児科という標榜をしておみえになるところがかなりありますために、全体として小児科の数というのがそんなに少なくなっていないという実数になっているのではないか、私は実感としてそう思っている次第でございます。
 さて、なぜそんなに減ってきたのかということでございますが、一つは、やはり小児科というものが、今お話ございましたように、二十四時間体制で昼夜問わず出動をしなければならない、かなり医師の中でも負担の大きい分野であるということ。そしてまた、物を言わないお子さんを相手にするわけでありますから、非常に難しい分野であるといったようなこと。そして、診療いたします診療所の形態が、ビルなんかの一室を借りて行うというようなことになってまいりまして、夜間はそこにお見えにならない、家庭にお帰りになるというようなタイプの医療が多くなってきたというようなこと。そしてまた、女性の小児科医の先生が非常にふえてまいりまして、これはまことに結構なことだというふうに私は思っておりますが、しかし、女性の医師の場合には、お子さんが生まれましたときに、いわゆる仕事との両立の問題等がございまして、とりわけ夜間等に対する勤務が非常に難しくなるというようなことも影響しているのではないかというふうに思っているところでございます。
 いずれにいたしましても、こうした状況を打開しなければなりませんので、それぞれの地域ごとに、やはり連携を密にして小児科医療というものを確保していかなければならない。とりわけ、救急医療等につきましては、二次医療圏に少なくとも一つは何とか救急医療に対応できるようにもしていきたいというふうに思っているところでございます。
 しかし、そうは申しますものの、急激に小児科の先生をふやすというわけにもまいりません。そうした状況の中でございますので、一つは、やはり内科の先生に小児科の方にもう一度、訓練をしていただいてと言うといささか口幅ったいですけれども、小児科のことにも関心をお持ちをいただいて、そして研修等も受けていただいて、内科の先生にも小児科をあわせて行っていただくといったようなことをまず当面行っていかざるを得ないのではないか。
 そして、これからいかにして小児科の医師をふやしていくかということにつきましては、検討会もつくりまして、鋭意さまざまな角度から検討をしてもらっているところでございまして、何とかここの先生方の数をふやしていけるような対応をしたいというふうに考えているところでございます。
中林分科員 今、一定程度、打開策の方向も、厚生労働省として取り組んでいらっしゃる方向も見えてきているわけですけれども、ただ、現状の把握とすれば、私は、やはり一番の問題は、小児医療の場合、不採算になっていることだろうというふうに思うのですね。
 これは、日本小児救急医学会の理事長、北九州市立八幡病院救命救急センター小児科の市川光太郎先生の論文があったので見させていただいたのですけれども、国民医療、負担増で全体的に診療抑制がされていて、一般的な医療経営そのものも今大変困難になっている。そういう中で、やはり不採算部門というのは切り捨てられるということなんですね。そうすると当然、小児科の減少、削減につながり、そうすると小児救急の危機につながり、もちろんメジャーでないというようなことで小児科医の減少につながり、そして小児医療全般の危機を呼び起こしているんじゃないか。この悪循環を断ち切るためには不採算性を是正していくということが何よりも大切だというふうに論じておられまして、私もそのとおりだというふうに思いました。
 それで、そうすれば、診療報酬の抜本引き上げがどうしても必要なんですよね。これはドクターである大臣も御承知だと思いますけれども、点滴にしても検査にしても投薬にしても、子供の場合は、ここの八幡病院で調査をしてみたら、点滴の時間が成人の三倍はかかる、それから採血の場合は七・八倍の時間がかかる、こういう結果が出てきております。それから投薬ということになると、大人の何分の一かということになりますので、そういう意味で、医療点数から考えると、当然、成人を診るよりも医療点数は少ない、しかし人手はかかる、こういう実態の中で不採算部門になっていくんだという、その中身を論じておられました。
 それで、この市川ドクターの論文によると、やはり小児基本診療点数の三〇%ないし四〇%の引き上げが必要だというふうに論じておられるわけですけれども、その考えはおありなのかどうなのか。これから検討されるのかどうか、大臣のお答えをいただきたいと思います。
坂口国務大臣 診療報酬につきましては、昨年の診療報酬改定におきましても、他の分野におきましては引き下げをお願い申し上げたところでございますが、小児科におきましては、そのまま据え置きをできるだけ行うといったことで配慮をしたところでございますし、またそのほか、一部につきましては、小児の入院医療管理料を再編いたしますとか、あるいは新生児に対します手術に対する加算を行いますとか、小児医療にかかわる療養環境の充実を図るとか、こうしたことはやってきたわけでございますけれども、しかし、小児科の先生方からすれば、やはりこれだけではなかなか十分とは言えないというお気持ちをお持ちであることも承知をいたしております。
 どんな科をやるかということは、ただ単にやっていけるか、やっていけないかだけで決まっているわけではないというふうに思いますけれども、ただ、医の倫理だけですべてが決まるわけではなくて、やはり診療報酬ということも重要な課題の一つであるということは私もよく認識をしているところでございます。
 昔のことを思いますと、昔は慢性疾患のお子さんも非常に多かったりいたしまして、小児科というものに対するさまざまな角度からの診療があったわけでございますが、抗生物質の発達によりまして、急性の疾患を治すことによって多くの小児科の病気というものが消えていったといったようなこともあって、小児科の疾患の場合に、薬を投薬しますとか一部の検査といったようなことに限定されてきていることも、私は小児科医療に与える影響は非常に大きいと思っているところでございます。
 これらのことも勘案をして、そして診療報酬全体の問題も考えていかなければならないというふうには私自身も思っているところでございますが、これは全体の診療報酬体系の話でございますので、小児科だけということになりますと、なかなか他の科の先生方の了解も得られにくいということもございまして、これはなかなか現実は難しいところでございます。しかし、そうした中で、この少子化対策の中で、やはり小児科の医師あるいはまた産婦人科の医師というのが減ってきていることだけは間違いのない事実だというふうに思っておりますので、そのことは十分に考慮していきたいというふうに思っております。
中林分科員 今後の打開策で、第二次医療圏ごとにという大臣の御答弁があったわけですが、しかし、厚労省として、三年前から実はその対策を進めているわけです。小児救急支援事業でやってきているわけですけれども、実情はなかなか思うように進んでいないと報告を受けています。全国三百六十三の二次医療圏があるわけですけれども、取り組みがされたのが百十二で、三分の二の二百五十一がまだやられていない。しかも、空白の十六府県があるということで、その進まない原因、それから今後どうするのかということをお答えいただきたい。
 特に、私、島根県なんですけれども、実は、島根県の実態を厚労省の資料で見ますと、過疎地を抱えている大田二次圏域などは夜間の医師確保が大変難しい。小児科が常駐している病院が一というのは、これは大田市立病院、国立から移譲された市立病院一つだというふうに思いますね。ここが抱えているところは一市九町村に及ぶ。物すごく広域なんですよ。こういうところでは、とてもじゃないけれども医師確保なども難しいだろう。ここにいる子供たちはどういうふうになるんだろうかと思うだけでぞっとするような実情がございます。
 そういうところも含めて、この二次医療圏ごとに小児救急体制の整備をするという厚労省の方針、とりわけ空白のところをなくしていく、その対策をぜひ強めていただきたいと思いますけれども、お答えいただきたいと思います。
篠崎政府参考人 御指摘の、二次医療圏を基本として各地域に小児の救急医療体制を整備していきたいというのは私どもの基本的な考え方でございまして、先日発表いたしました医療提供体制の改革のビジョン案でも言っておるところでございます。
 ただ、先ほど大臣も御指摘になりましたような、小児科についてはいろいろな問題がございます。そこで、小児科以外の医師にも積極的にこういう問題に関与していただく、そのためのマニュアル、小児救急外来診療のマニュアルの作成を今急いでおりまして、一月に第一回の会議を開きましたけれども、早急にこのマニュアルの作成をしたいというふうに考えております。
 また、小児救急につきましては、五〇%以上が初期救急が多いということでございますので、ここをぜひ充実をしたいと思っております。
 また、IT技術、これが今大変進歩してきておりますので、このITを活用いたしまして、小児科以外の医師が小児科専門医のコンサルテーションを受けることのできるような、そういう小児救急医療ネットワークの構築もあわせて講じ、小児科医確保が困難な地域などにおける体制の整備を図りたいと思っております。
 こういうことでございますけれども、御指摘のように、なかなかこの対策が進まないということもございまして、まずはそれぞれの地域での関係者による協議会の設置が一番大きな、また早急にできることではないかということでございまして、その協議会の設置を求めておるところでございます。
 こういう地域の実情に応じて、国や都道府県の施策を有効に活用して、救急医療体制の確立のプランづくりに取り組んでいただきたいというふうに考えております。
中林分科員 過疎地も、このように医師不足、とりわけ小児科医がいないということで、しようがないから内科だとか、そこがもうやっているわけですよ。だから、そういう意味では、医師の確保ということはとりわけ重要になってくるし、島根県の中でも松江圏だとか出雲圏だとか、そういうところは比較的医師がいるわけですよね。だから、そういう意味では、こういう偏在しているようなところをバランスよく、やはり救急体制が夜間でもとれるような状況を、空白地におけることを一刻も早く解消していただくよう強く要請しておきたいというふうに思います。
 過疎地のことだけを言っておくわけにもいかなく、大都市も大問題だというふうに思うわけです。
 実は、ここに、「生まれた命を大切にしたい」という、広島の小児医療の充実を求める三団体が、今子供病院の設置をということで、かなりの署名を集め、市、県に要求を続けているところなんですね。たくさんの市民、県民の要求に基づいて、県も市も一定の対応はしております。県立病院や市立病院に分担してもらって何とか対応したいということですし、舟入病院というところは二十四時間の対応ができるようにしているということなんですね。ところが、舟入病院の夜間救急は成人も受け付けていますので、長ければ三時間待ちということで、お母さん方の不安が消えうせていない、こういう状況になっており、非常に重い病気を持っている子供たちはやはり大阪の方に行って手術をしなければならないなど、財政的な負担の問題も要求をされているところです。
 こういう、神奈川こども病院だとか長野こども病院だとか……
山名主査 中林委員、時間が来ておりますので、簡潔に。
中林分科員 はい。
 そういう総合的な子供病院をブロック別に、特に中国地方には一つもありませんので、ぜひ設置を求めたいというふうに思いますけれども、大臣の、短い決意でよろしいですので、一言いただいて、終わりたいと思います。
山名主査 では、簡潔に。
坂口国務大臣 小児科医療につきましては、地域的な格差というものも大きいというふうに思っております。そうしたことも次第に解消していかなければならないわけでございますので、全体としてよく見ながら、小児科医療の前進のために努力をしたいと思っております。
中林分科員 終わります。
山名主査 これにて中林よし子君の質疑は終了いたしました。
 次に、森岡正宏君。
森岡分科員 私は、自由民主党の森岡正宏でございます。
 きょうは、坂口厚生労働大臣や厚生労働省の方、また文部科学省の方にお越しをいただいて、障害者基本法に照らして、障害者福祉がうまく機能しているかどうかということについて伺いたいと思います。
 障害者といいましても、身体障害者、知的障害者、精神障害者、それぞれ対応は違うと思いますけれども、ハンディを持っておられる人たちが生きがいを持って生きていけるような状態にしたい、だれしも思うわけでございます。四月から障害者への福祉サービスが、措置制度から支援費制度に移行いたしました。障害者の自己決定が尊重されると同時に、利用者本位のサービス提供が行われることが期待されているわけでございます。
 施行状況がどうなっておるか、支援センターの活動状況、また支援費支給決定や利用者負担などうまく進んでいるかどうか、まだ施行に至りましてからわずかの期間でございますが、今の状態を厚生労働省の方から聞かせていただきたいと思います。
河村政府参考人 この四月から、障害者福祉サービスにつきましては、先生おっしゃいましたように、利用者の立場に立ったサービスを構築するために、行政がサービスを決定する、障害者はあくまで対象者である、そういう従来の措置制度を改めまして、障害者みずからがサービスを選択して、事業者と対等の立場で契約をするという支援費制度が施行されたわけでございます。
 支援費制度の施行状況についてでございますが、先週、施行状況の第一弾を記者発表したところでございますけれども、この四月に都道府県等に御協力いただいた調査によりますと、支給決定の状況を見ますと、回答の得られた四十三都道府県で見ますと、居宅支援が約十八万六千人、施設支援が約二十万人であり、昨年十月時点で各都道府県でこれぐらいふえるんではないかという予想を立てていただきましたけれども、そういうサービスの利用見込みの数に照らして、おおむねこのサービスの利用が必要な人に対して支給決定がなされたものと考えております。
 また、サービス提供の事業者の指定状況につきましても、居宅支援の柱でありますホームヘルプサービスにつきましては、単価の改善あるいは指定基準の弾力的運用を行ったことによって、介護保険を行っておる事業者を大幅に取り込むということで、多様な事業主体の参入が進んできておるというふうに認識をいたしております。
 また、利用者負担についてのお尋ねがございましたけれども、支援費制度におきましても、基本的に措置制度の枠組みを前提として、所得にかかわらず、必要なサービスが利用可能となるような水準を設定しておるところでございます。
 いずれにいたしましても、支援費制度はおおむね順調にスタートを切ることができたというふうに認識をいたしておりまして、今後とも、サービス提供基盤の整備あるいはサービスの周知等、制度の円滑な施行に努めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
森岡分科員 障害者へのサービスの中で、ホームヘルプサービスが大きな問題になっております。平成十五年度予算で約二百八十億円確保されていると伺っておりますが、厚生労働省からホームヘルプサービスの国庫補助基準が示されておりまして、御承知のとおり、一般の障害者の場合は一月おおむね二十五時間、特有のニーズを持っておる人たちに対しては五十時間、全身性障害者の場合は百二十五時間となっております。それが上限という話もございますけれども、厚生労働省がこれを積算基礎としておられるならば、超えた分についてだれが負担するのか、ホームヘルプサービスの考え方について伺いたいと思うわけでございます。
 例えば、百二十五時間あっても、百時間しか使わなかった人がいる。そうすると、その余りの分を足りない人に、百四十時間欲しい人に譲れるような、全体として市町村ごとにそういう仕組みになっているのかどうか、その辺を伺いたいんです。
河村政府参考人 この新しいホームヘルプサービスの国庫補助基準は、あくまでも市町村に対します補助金の交付の基準でございまして、支援費制度における個々人における支給量の上限を定めるものではございません。
 この補助基準自体は、これまでの平均的な利用実態の約一・五倍、これまでの利用時間を十分カバーできる水準に設定しておるわけでございまして、また、個人個人によってその基準を上回る人もいれば下回る人もいるというのは、先生のおっしゃるとおりでございます。
 トータルで見て、まず、平均値の一・五倍というこの補助基準自体で十分賄える。したがって、先生御質問されたように、国は百二十五時間という形で交付をいたしますけれども、百時間で済む人もいれば、百四十時間使う人もいる。それは、市町村の判断で使っていただいて結構であるというふうに思っています。
 また、一部の自治体につきましては、こうした基準を上回る相当手厚いサービスを行ってきたところもあるわけでございまして、従前の国庫補助金を下回るような市町村が仮に出てきた場合には、原則として従前額を確保することによりまして現状の水準は確保したいというふうに考えております。
森岡分科員 坂口厚生労働大臣に伺います。
 大臣は公明党の御出身でいらっしゃるわけでございまして、与党の中でも、公明党の皆さん方は特に福祉にきめ細かい配慮をしてくださっている、その上に坂口厚生労働大臣が立っておられるという認識を持っているわけでございまして、私は、障害者の皆さん方と選挙区で接しているごとに、いろいろなことを考えているわけでございますが、例えば、民間の銭湯をデイサービスに使えないかとか、また、ガソリンスタンドに車いすトイレを設置できないかとか、そういうきめの細かいことを坂口大臣の指導力のもとにぜひ実現させていただきたいな、そんなふうに思っているわけでございます。
 厚生労働省の障害者施策は、先ほど施設の方と在宅の方の報告がございましたけれども、できるだけ施設から在宅へという基本的な考え方を持っておられると伺っております。
 障害のある子供の親の中には、我が子が在宅での生活が可能なのか、不安を抱いていらっしゃる方が多いと思います。障害者の地域における生活を具体的にどういうふうに厚生労働省が支援しようとしておられるのか、グループホームのような形が一番いいんじゃないかと思っておられるのかどうなのか、その辺を、基本的なことを大臣に伺いたいと思います。
坂口国務大臣 大きな流れとしまして、今まで障害者は施設で施設でという感じでございましたけれども、そうではなくて、やはり施設から在宅へといった大きな流れにあることは御指摘のとおりというふうに思っておりますが、しかしこれも、その障害者の程度やそれから家庭環境によりまして、なかなかそうもいかないケースも私はあるというふうに思っております。
 その場合に、施設で今までどおりお預かりをするのか、それとももう少し、今お話しいただきましたグループホームのような形で、それぞれの地域で、しかも皆さんと御一緒に過ごしていただけるというような姿がいいのかということがあろうかというふうに思います。
 今までのように施設の中でただ見るというだけではなくて、やはり生まれた家の近く、あるいはそうした地域によって障害者の皆さん方が生活をするということを非常に望んでおみえになるというふうに私もお聞きをいたしておりますし、御家庭で難しいというのであれば、グループホームといったようなことが非常に大事ではないかというふうに思っているわけでございます。
 そういたしますと、これから、御自身だけで外出をされるにしろ、あるいはまたどなたかがついて外出をされるにしろ、至るところで、トイレの問題でございますとかあるいはまた町の段差の問題でございますとか、やはりそうした問題が大きくなるわけでございますので、町全体を障害者の皆さん方にも活用していただけるような町づくり、あるいはまた、今おっしゃいましたように、ちょっとトイレに行きたいというときに、何キロも先へ行かなきゃトイレがないというようなことではぐあいが悪いわけでございますので、それぞれの地域、マップをつくっていただいて、どの範囲にどういうことができるかというようなことをもう少しきめ細かくやっていかないと、これからの地域における障害者の問題というのは解決がしない、ただ単に家庭に帰すというだけでは済まないというふうに私も自覚をしているところでございます。
森岡分科員 大変心強い御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 私が障害者の親御さんと接しておりますと、みんな、自分たちが亡くなった後、子供はどうなるんだということを心配しておられるわけでございます。
 障害基礎年金一級で月額約八万三千円、二級で約六万六千円。高齢者の場合は蓄えもございますけれども、障害者は、ひとりぼっちになって果たしてこれで生活していけるのかどうか。施設に入っても、年金を自己負担額ということで差し上げますと、もうその差はほとんどない。また、在宅でもこれで果たして生活できるんだろうか。生活保護基準と比べてかなり低いんじゃないか。障害者基本法第二十四条に照らしてこれでいいんだろうか。
 私も親御さんの心配はよくわかるわけでございまして、大臣の御感想をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 今お話しの障害者年金の問題でございますが、これは、従来からの考えでは、老齢給付年金とバランスをとりまして、二級の場合につきましては満額の老齢基礎年金と同額にする、そして一級の場合には、介護等の必要経費をさらに配慮して、その一・二五倍というちょっと多い額にしているということでございます。そのほか、年金給付以外にも、一級の方などは、寝たきりになりましたときには重度障害者に対します特別障害者手当というのが支給されまして、これは二万円ぐらいあるわけでございます。
 今お話しになりましたように、高齢者の場合と障害者の違いというのは、高齢者の場合には、若かったときが、元気だったときがあるわけでありますから、そのときの蓄えが多かれ少なかれあるだろう。これも、ある人、ない人あるかもしれませんけれども、私は平均してあるだろうと思う。
 しかし、障害者の場合には、若いときからそれができにくい。障害者も、高齢になって障害者になられた方は別でございますけれども、小さいときから、あるいはまた子供時代から障害者になられたような、そういう皆さん方というのはそれもかなわないというようなことでございまして、そうした問題を今後どうしていくかという問題が正直なところあるだろうというふうに私も思う次第でございます。
 さりとて、今後こういうふうにしようというところまで現在至っておりません。現在のこの中で御辛抱をいただきたいということをお願いしているわけでございますが、今後、障害者の問題を考えてまいりますときに、施設から在宅へといったようなことになってまいりましたときに、国のいわゆる財政の流れといったようなもの、今までと同じでいいか、それとも新しい角度から見直していかなければならないか、そうしたことを総合的にやはり検討する時期を迎えるのではないかというふうに思う次第でございます。
森岡分科員 障害者の社会参加とか、生きがいを持って生きていけるようにということでございますけれども、一般就業を支援することによって、個々の障害者が収入を得ながら生きていけるようにしてあげたい、だれしもそう思うわけでございます。これが大変重要なわけでございますけれども、今、御承知のとおり、厳しい社会経済情勢でございます。こんな中で厚生労働省が障害者の就業問題をどういうふうに取り組んでおられるのか、厚生労働省の方からお聞かせをいただきたいと思います。
鴨下副大臣 今先生おっしゃっているように、障害を持つ方々も誇りを持って働いて自立していくというのが、ある意味で最も重要なノーマライゼーションなんだろうというふうに思っております。
 そういう意味で、昨年末に策定されました障害者基本計画の中においても、障害者が能力を最大限に発揮して、働くことによって社会に貢献できるよう、その特性を踏まえた条件を整備していく、こういうふうなことが言われているわけでありまして、現実に例えばIT分野等においては、障害を持っているとはいえ、むしろ健常者にもまさるような能力を発揮されている、こういうようなケースも見られるわけでありまして、かように、さまざまな技術革新を上手に利用して、障害者の言ってみればハンディキャップを乗り越えていくような工夫をしていかなければいけないんだろうと思います。
 ただ、現実はなかなか厳しいわけでありまして、この雇用情勢の中では、厚生労働省としましても、障害者雇用対策を推進し、特に公共職業安定所による雇用率達成指導を強化する、こういうようなことをしていこうと思っております。一つには、障害者等に対する在職中からの相談、支援を行う窓口の設置をする。それから、事業者の団体への委託によります障害者を雇用する企業を対象とする雇用管理相談の実施、それからトライアル雇用やジョブコーチ事業の活用等を内容とします緊急障害者就職支援プロジェクトを実施しまして、障害者の雇用の実施、促進を努めているところであります。
 先生おっしゃるように、結果的には障害者それぞれがある意味で自立をし、職業を持ち、なおかつ税金を納めていただく、こういうような意味でお互いに支え合う、こういうような社会がいいわけだろうというふうに思っておりますので、引き続きそういう方向で進めさせていただきたいと思っております。
森岡分科員 ちょっと問題を変えまして、文部科学省の方に伺いたいと思います。
 私の選挙区にバルツァ・ゴーデルという重症心身障害児施設がございまして、そこの理事長さんからこんな陳情を受けました。障害児の教育を受ける権利の保障ということでございまして、養護学校から訪問教員として施設に来てくれる、ベッドサイドでしか教育できないと。施設側としては、施設の敷地内の土地を提供するから、プレハブでもいいからここへ建ててください、そしてそこで教育を受けられるようにしてくださいということを再三申し出ているんだけれども、らちが明きませんと。
 こういうケースはいろいろなところで多いんじゃないかと思うんですけれども、障害者基本法第十二条に照らしまして、行政はこの要請にこたえていかなければならないんじゃないか、そんなふうに私は思うわけでございますが、文部科学省はどう考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
金森政府参考人 お答えを申し上げます。
 障害のある児童生徒の教育につきましては、一人一人のニーズに応じて適切な教育を行うことが重要でございます。
 訪問教育は、障害の状態が極めて重いなど、通学して教育を受けることができない児童生徒に対して、養護学校等の教員が家庭や児童福祉施設等を訪問して行うものでございまして、平成十四年五月一日現在、約三千三百人が訪問教育を受けております。
 この訪問教育の実施に当たりましては、各学校において児童生徒の実態を的確に把握いたしますとともに、医療上の規制や生活上の規制なども考慮して、どのような場所で実施するのが最も望ましいかについて総合的に検討し、各学校が実情に応じて適切に実施するものと考えているところでございます。
 したがいまして、障害の状態等に応じましては、ベッドサイドで訪問教育を行う場合のほか、施設内に分教室を設置して教育を行う場合、スクールバスにより通学して本校において教育を行う場合などがございますが、いずれにいたしましても、学校や教育委員会において障害の状態等を勘案して適切に対応するべきものと考えているところでございます。
森岡分科員 今の問題、障害の状況に応じてというふうに今おっしゃいましたとおりだと思いますけれども、その施設の理事長さんがおっしゃっている人は、きっとベッドサイドじゃなしに教室で、車いすでちゃんと教育を受けることができる人たちがいらっしゃるんだという思いを持って言っておられるんだと思うんです。ぜひこのことを頭に置いて行政を進めていただきたいな、そんなふうに思います。
 次に、坂口大臣にお伺いしたいと思います。
 無年金障害者の問題でございまして、私の選挙区、奈良市でございますが、そこで本多さんという方がいらっしゃいます。もう既に七十九歳でございます。時々私の議員会館へも来られるわけでございますが、お嬢さんがただいま四十六歳になっておられます。この方が大学四年生のときに発病されて、躁うつ病、非定型精神病、精神分裂病などで診断を受けまして、ここ十五年ほどは入退院を繰り返しながら、家にいても家事はほとんどできない状態でございます。今は御両親の年金などで生活費や医療費も賄えておるという状態のようでございますけれども、学生時代、国民年金への任意加入をしなかったために、いわゆる無年金障害者ということになっているわけでございます。
 お母さんが当時のことを思い出しておっしゃるんですけれども、国民年金の係の方から電話で、娘さんは国民年金に入っても何の得にもならないよと言われましたと。そこで、そのとおり、それを信じて任意加入しなかったそうです。今になればその方を恨みたい気持ちです、こうおっしゃっています。
 御両親は、私たちが死んで娘一人でどうして生きていけるんだろうかと心配しながら、同じ無年金障害者の家族二十八人が一緒になって、全国九地区に分かれて訴訟を起こしておられることは大臣も御承知だと思います。
 坂口大臣は昨年、これらの制度の谷間で苦しんでおられる無年金障害者問題を解決する必要があると述べられまして、私案を示してくださいました。私は大変敬意を表しております。私たち国会議員も、無年金障害者問題を考える議員連盟を超党派で立ち上げまして、苦しんでいる人たちを何とか助けたいものだ、こんなふうに考えております。改めて御決意のほどをお伺いしたいと思います。
 同時に、この裁判がいつ決着するんだろうか、見通しが立たないんだ、こういうふうにおっしゃっているんですけれども、大臣が私案で示しておられる福祉的措置と、裁判の決着がつく、結審のときと、どうなるんだろうかということも私大変心配しておりますし、法律をつくること、立法化が必要だ、こう思うわけでございますけれども、それが裁判に左右されることになるんじゃないかという懸念も持っているわけでございます。
 福祉的措置という言葉が私案の中にあるわけでございますけれども、給付額が月額どれくらいを考えておられるんだろうか。障害者基本法第二十条及び第二十四条が満たされるような額でなければならないと私は思うわけでございますが、その点、私は、坂口大臣がこのことを大変心配していただいているだけに、改めてお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 無年金障害者の問題は大変大きな問題でございまして、名前が示しますように、年金の掛金はしておみえにならなかったわけでございますので、年金の中で考えることはでき得ない。それでは、これは障害者として考えていけばそれでいいのかといえば、先ほどおっしゃいましたように、学生の皆さんの場合のように、掛けても掛けなくてもいいというように受け取られていた側面もなきにしもあらず。そうした中で、この問題、しかし何とか前進させなければならないというのが私の思いでございます。
 ところが、一体全体何人ぐらいおみえになって、どのような状況にその皆さん方がなっているのかという、その実態の状況もわからないというようなことで、それで調査を今開始いたしておりまして、この三月に調査をいたしました。それで、今それを集計中でございます。間もなく、この六月の中ごろにはその集計ができ上がるだろうというふうに思っております。大体実態がそこでかなり明らかになってくるというふうに思っておりますので、それを拝見して、そしてどうするかという問題をさらに考えたいというふうに思っているわけでございます。
 確かに、御指摘のように、障害者基本法の二十四条等におきましては、そうした将来のことも懸念をした項目もあるわけでございますので、年金に入らなかったのが悪いと言ってしまえばそれまででございますけれども、そうばかりも言えない側面もあったことも否定できないわけでございますので、そのようなことも十分勘案をして今後考えていきたい、何とかこの問題を前進させたい、そう思っているところでございます。
森岡分科員 坂口大臣から大変心強いお話をいただいたわけでございますが、大体このタイムスケジュールとして、私は、坂口大臣がいらっしゃる間にぜひこれを実現していただきたいな、立法化への道を開いておいていただきたいな、そんなふうに思うわけでございますが、時間的にどういうふうにお考えか。裁判の推移もございますけれども、その点を最後にお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。
坂口国務大臣 裁判は裁判でございますから、そのことを待ってというつもりはございません。我々は我々として、決断をするべきことはしなければならないというふうに思っているわけでございます。これは、どなたであってもこの問題は一生懸命お考えをいただくわけでございますから、次の大臣になったといたしましても、ちゃんとやっていただけるものと思っている次第でございます。
 あすの日のわからないのが政治家でございますから、余り大きなことは申し上げるのは控えさせていただきたいと思いますが、私も、この職にあらせていただきます間、懸命にやらせていただきたいと思っております。
森岡分科員 時間が参りましたので、終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
山名主査 これにて森岡正宏君の質疑は終了いたしました。
 次に、松崎公昭君。
松崎分科員 民主党の松崎でございます。
 坂口大臣には、実は私、七日に決算委員会で、大臣に直接お聞きしたかった在宅ホスピス問題をやりました。政務官が一生懸命答えていただきましたので、同じことはお聞きいたしません。議事録を読んでいただいておればわかると思いますが、私は、大臣の在宅ホスピスに対する取り組みの姿勢だけぜひお聞きしたいな、そんなふうに思っております。
 そのときも、在宅ホスピスがいかに大事かと。もちろん施設ホスピスも大分整ってきましたけれども、実際には自宅で最期を迎えたいという方が六〇%いるんですね。ところが、残念ながら極めて今少ないわけですね、在宅で終末期を迎える方というのは。ですから、その辺で、在宅のホスピスケアというのは非常に今重要なんだ。しかも、医療費も施設ホスピスより安いんですね。そういうことで、ぜひお力添えをさらにお願いしたい。特に、二十四時間体制をとっている地域のお医者さんが非常に厳しい中で頑張っておりますから、その辺を特に強く今後の政策の中心にしていただきたい、そんなお願いと質問でございます。よろしくどうぞ。
    〔主査退席、森田(健)主査代理着席〕
坂口国務大臣 在宅ケアと申しますか、ホスピスの問題を含めてでございますけれども、一時期、在宅から病院へ病院へと、病気が重くなりますとすべて病院で最終を迎えるという、それがもう習慣になってしまってきております。しかし、最近またその見直しが行われようといたしておりまして、より人間的にと申しますか、人として、より家庭の中で、人間的な場で最終を迎えたいという人がふえてきていることも事実でございますし、それに対する対応をやはり私たちもすべきだというふうに思っております。
 そのためには、病院の中で最終をする、いわゆるホスピスと言われておりますように、がんの患者の皆さん方のような場合に、病院におきましても、一般の治療とは違った、安らかに最期を迎えられるような、そういう医療を行おうというふうにしておみえになるところがかなりふえてきておりますことを大変いいことだというふうに思っているわけでございますが、それだけではなくて、やはり在宅においても同じような最期が迎えられるような、あるいはまた治療ができるような体制を組まなければならないというふうに思っているわけでございます。
 今まで一番大きな問題は、やはり痛みに対する治療のあり方、そうした問題が非常に大きかったわけでございますが、次第に医療の中におきましても合意ができまして、そして在宅におきましても、その痛みを緩和する中で最終的な時期を迎えることができるような形になってまいりました。また、在宅末期総合診療科というのができておりまして、診療を行う届け出医療機関数というものが近年増加していることも事実でございます。そうした人たちに対応しようという、もう五千カ所もできているようでございます。結構だと思いますし、それから、開業医の先生方が対応をしていただけるようにもしなければならないというふうに思っております。そうした皆さん方が十分対応していただけるように、これから診療報酬等につきましても配慮をしていかなければいけないというふうに今考えている次第でございます。
松崎分科員 この前の委員会質疑もかなり密度を濃くやりましたので、しっかり御答弁をいただいておりますので、ぜひ、お医者さんでもあります大臣には、この点の強力な体制をとっていただきたい。特にやはり、人間の最期を自己実現できる、そういうものがこれからの末期医療には一番必要ではないか、そんなふうに思います。
 次に、先ほどもグループホーム、障害者の問題が出ましたけれども、実は、この七日にグループホームの問題をもう少しやりたかったんですけれども、時間がなくなりました。少し残ったところをやらせていただきたいと思います。
 このときも、これは痴呆性のグループホームの問題を扱いました。痴呆症も、今全国でも百七十万ぐらいいるということで、今大変多いわけでありますけれども、これのグループホームの効果が非常にいい、治りもかなりよくなっているということもあります。ですから、この辺で、この前は、一層の充実をお願いしたい、それから、今一番ポイントになっているのは、グループホームでは訪問看護ができません、ぜひその辺もお願いしたいということを言いました。
 そしてまた、今、ターミナルケア、特についの住みかでこのグループホームをやろうというところが出てきて、既に三百カ所ぐらいでは、既に三千カ所ありますけれども、三百カ所ぐらいはターミナルケアもやりましょう、そういうことですね。これは非常に大事なことですから、ぜひターミナルケアの導入もしっかりグループホームでお願いしたらどうか、そういうことをお願いしておきました。
 そこで、今、グループホーム、五人から九人が一つの単位でありますけれども、五人規模のところで、この前四月から指定基準を、質を上げるということで厳しくしましたね。その辺で、五人規模のホームというのは、今夜勤も置かないんですけれども、夜勤加算はつきましたけれども、実際は下がっていますから、非常に厳しくなってしまった。どうも小さい規模のグループホームは経営が今厳しいんだということで、ここで外部評価の問題も、一律の六万円という金額がかかるとか、非常に厳しいんですね。その辺で、特に小規模のグループホームに対してもしっかりと配慮をしていただきたい、そういう質問でございます。
坂口国務大臣 グループホームの問題は、これからさらに重要な問題になっていくだろうというふうに私も認識をいたしております。
 御家庭でそれぞれが過ごされるというのはいいわけでございますけれども、なかなか家庭では手に負えないという場合がある。そうしますと、今までは、家庭で手に負えないときには施設でということになっていたわけであります。施設は施設として十分おやりをいただいておりますけれども、家庭の香りと申しますか、家庭的な雰囲気と申しますか、そうしたものが少なくなってしまう施設ではなくて、家庭ではないけれども、家庭的な雰囲気、環境というものが残っているそれぞれの地域でのグループホームというのは、やはりそれなりに、痴呆性老人などに対しましても非常にいい影響を与えるという結果が出ているようでございます。
 ですから、非常に重症になられて、そして施設に入っていたような方でも、グループホームで過ごされると、かえってそれが回復をするといったようなケースも報告をされておりますから、より重要になってくるんだろうというふうに思っております。
 ただ、グループホームのこれからの経営のあり方という問題は確かにございまして、全体の厳しい財政の中なものでございますから、いろいろお願いもしたり、注文もつけたりということをしているわけでございますが、これからだんだんとこのグループホームがふえてくることも考えられるというふうに思いますので、次のいわゆる介護制度の見直しに向けてさまざまな角度から議論をいたしておりますが、その中で、グループホームの位置づけというものにつきましても十分に考えさせていただきたいというふうに思っているところでございます。
 ターミナルケアのお話もされましたけれども、適切なケアを提供して、グループホームでの暮らしをできる限り続けられるようにそこでしていかなければならないというふうに思っておりますので、そうしたことも念頭に置いてやっていきたいというふうに思います。
松崎分科員 グループホームに近いところで、デイケアの宅老所というのがあるんですね。これは、法的には余りきちっとされていません。でも、介護保険の対象になっております。実は、この宅老所が、今五百ぐらいでしょうか、非常に爆発的に伸びていまして、もう少し密着型、グループホームよりさらに地域に密着するということで、この宅老所はこれからもっとたくさんつくるべきではないか。これもまた、これは痴呆性でない方もいらっしゃるんですけれども、痴呆性用の宅老所があったり、健康なお年寄りの宅老所があったり、障害者があったり、いろいろあるんですけれども、これはこれから高齢化社会の中で一番大事な問題、グループホームにも匹敵するような、これはまた、民家を改造するわけですから、非常にいいんですね。
 これを去年の補正で、実は、地域密着型、小規模、多機能というところで、少し補助金を出しました。それを余り使っていないんですね。二十件の目標が七件しか手を挙げなかった、補正で時間の短いときにやっていますから。これをぜひこれから、デイサービスだけじゃなくて、既にやっていますけれども、宿泊も入ったり、そこにグループホームがつながったりしてきますと、これからの特に痴呆性を中心とした地域での高齢化対策というのが非常にいいんですね。これをぜひ制度化してもらいたいなと。
 と同時に、去年つけた宿泊施設等の補助金がありました。これはNPOでも使えるようになりました。こういう問題に対して制度化をすると同時に、予算も、去年はわずかな時間で百五十億しかついておりませんでしたけれども、その辺の予算化も来年もやっていただきたいな、そんなふうに思いますが、いかがでしょうか。
    〔森田(健)主査代理退席、主査着席〕
坂口国務大臣 予算的な問題はちょっと後で局長の方から答弁をさせますが、これもまた御指摘のようにふえてきていることは事実でございますし、これからもふえ続けるものというふうに私たちも考えているわけでございますが、これを法律的に認めるかどうかということも確かにこれは出てくるわけですね、これがふえてまいりますと。これも次の、来年決着しなければなりませんが、介護制度の中でこの問題も検討したいというふうに思っております。
 地域の中で、グループホームよりもさらに小規模でというふうになるかもしれませんし、そこで皆さんがお寄りになっていくわけであります。ただ、毎日そこへ通われるケースと、それからそこで泊まられるケースと両方あるそうでございまして、お通いになるケースは比較的対応しやすいわけですけれども、そこで泊まられる、そこへ宿泊されるというようなものになってまいりますと、だんだん限りなくグループホームに近づいてくるわけでございまして、その辺のところをどう整理するかということもございますが、十分に考えていきたいというふうに思います。
 ちょっと予算的なことを局長の方からつけ加えさせます。
中村政府参考人 先生から御指摘のありました宅老所、大臣から御答弁申し上げましたように、通って泊まって最後には住みつく、こういう小規模、多機能な施設でございます。大変重要であるということは我々承知いたしております。
 ただ、制度化はまだされておりません。そういった中で、十四年度の補正予算で、介護予防等拠点整備事業というのがあります。そういう中で御要望が、あるいは先進的な取り組みがあるものですから、デイサービスセンター部門に、ここは通う部門ですが、宿泊部門をつくりたいという御要望がありましたので、その宿泊部門については、初めて整備費の対象にさせていただいたところでございます。
 先生から御指摘ありましたように、百五十億の予算の中で、ほかにもたくさんメニューがありますけれども、メニューに加えましたところ、六施設御要望があった。先生の目から見ますと、まだまだ少ない数字だと思います。
 それから、今大臣から御答弁申し上げましたように、運営費の方が対象になっておりませんので、先駆的なところはやられると思うんですが、制度化されない限り、整備費の補助金をつけてもなかなか伸びないのではないかというふうに思います。
 今大臣から御答弁申し上げましたように、これは検討課題になっておりますし、私どもの局の私的研究会で高齢者介護研究会でも今精力的にこういった問題を検討していただいておりまして、六月中に取りまとめする、その取りまとめを得ましたら、正式な審議会の方でそういった骨子についてまたもんでいただくということになっております。重要な課題だと思っておりますので、そういう検討を通じまして、どういう予算的な手当てをしていくかということについても前向きに考えてまいりたいと思います。
松崎分科員 ぜひしっかりやっていただきたいと思います。
 次に移りまして、実は、先週の通告の段階ではそんなに大きくなると思わなかったんですけれども、SARS問題をちょっと危機管理の点からお聞きしようと思っていたんですけれども、たまたま週末からえらい騒ぎになりました。ついでにお聞きをしたいと思っております。
 この大騒ぎは、日本経済あるいはアジア経済、スポーツ界、さまざまなところに大変な影響を与えておりました。対岸の火事というか、日本のことではないだろうということでありましたけれども、今回台湾の医師の問題で、きょうあたりも、きのうも報道関係は大変なパニック状態で報道しておりますけれども、どうもこの辺でよく指摘されるのは、厚生省の対応がどうだったんだろうかと。混乱もありました。例えばホテルの公表とか、こういった問題は、感染症法で対応するとこういうことになるんですね。
 ですから、私は、これはその辺の限界があるのかなと思って、本来はこの委員会じゃなくて内閣府で聞かなきゃいけないことは承知しておりますけれども、担当であります厚生労働省の一番の接点のところでございますからお聞きしますけれども、今回の対応、どうでしたか。私は、公表問題等はやはり後手に回ったんじゃないか、あるいは混乱があったんじゃないか、そんなことがございます。また、調査対象が二千四百二十一人と非常に多いのですね。この辺の、どういうふうに選んだのか、当面の今の対応をちょっとお聞きしたいと思っております。
坂口国務大臣 台湾の医師が、しかもその病院でSARSの治療が行われていた、それにもかかわらず、そこに勤めている医師が、一定の日時を置くことなく日本に旅行にやってきた。学会か何かがあって、その状況でも報告をするとかなんとかというなら、それはまた別でございましょうけれども、そうではなくて観光にやってきたというのは大変残念なケースである。これは台湾当局としてもしっかりと今後考えていただかなければならないケースだというふうに私は思っております。
 しかも、旅行中に発熱を来して、解熱剤を飲みながら旅行を続けていた。SARSを治療する現場にいたわけでございますから、万が一にも自分はそういうケースでないとは言い切れない、万が一のこともあり得るということを、これは医師でありますから、やはり考えて行動をしてもらうのが当然だというふうに私は思っておりますが、それが果たされなかったということを大変私は残念に思っております。そこのところは厳重に抗議を申し上げたいというふうに思っている次第でございます。
 そうした中で、この医師が発熱をして、これは向こうへ帰ってからでございますが、帰ってから発熱をして、SARSの可能性なきにしもあらずというような報が入りましてから、緊急に私たちも省内で会合を持ちまして、そしてそれに対する対応をすぐ立ち上げたところでございます。もともと、SARSに対します検討会あるいはまた対策本部はもうつくっておりますので、そうした情報を得ましたので、すぐさまそれに対応をしたわけでございます。そして、だんだんと、この医師がどこどこを訪問した、どこどこに行った、どこどこに泊まってどこどこを見たということがわかってまいりまして、すぐさま、その宿泊をいたしましたホテルやあるいはまた食事をしましたところに対しましては緊急の対応をしたところでございます。
 しかし、そこは、ホテルや食事をいたしましたところにつきましては、そこの御了解も得なければやはり発表というわけにもまいりませんので、一般にそこに対する対応は少し時間を置きましたけれども、しかし、関係者に対しましては、すぐ健康診断等を受けていただく、あるいはまた体調の不良があれば申し出をいただくということはすぐに対応したつもりでおります。
 不幸中の幸いと申しますか、この二十人ばかりの団体が一つの小さなバスを借りまして、貸し切りバスで全行程を回っていたということでございますので、いろいろの乗り物に乗ったりすることは比較的なかったということで、それは不幸中の幸いであったというふうに思っているところでございます。しかし、それぞれの地域でいろいろのところを見ておりますから、その同時間にそこにおみえになったような皆さん方にもお呼びかけをして、そして健康診断等も受けていただいておりますので、人数としては非常に大きくなってきているということだというふうに思っております。
 さらに詳しいことが必要でございましたら、局長の方から答弁させます。
松崎分科員 詳しいのはもう新聞、テレビでどんどん流れていますから、ここでは時間がもったいないので。
 問題は、二月二十六日ですか、ハノイで最初の発症、そして三月十二日にWHOの発表、それからあれだけ中国の騒ぎ、各国で騒いでおりましたね。たまたま日本には入ってきていないということで、成功したと言われておりましたけれども、今回このお医者さんのことが発表されて以後もまだ大変混乱をしているというのは、つまり、感染症でいきますと、五年前に法律を変えましたね。私も審議しました。人権を非常に大事にするということで、今までのいろいろな歴史を踏まえて変えました。
 ところが、その方式でいきますと、やはりこういうSARSの場合、テロとは直接関係ないと、今のところ一〇〇%とは言えませんけれども、まだはっきりしない部分もあるんですけれども、ただ、SARSの場合は、これは感染症だろうということで言っておりますけれども、私は、これが生物テロだったら、もっと大変な、他国で起こってももっと厳しい対応をすべきではないか、そう思うんですよね。
 今回、SARS事件が起こって、実際にはどうなんですか。内閣は危機管理監というのがいて、ここがいろいろな非常事態で対応するんですけれども、私は、生物テロではないにしても、ある程度こういう、しかも実態のわからない感染症ですから、それに近い形で本来内閣が動かなきゃいけなかったんじゃないかと思っているんですけれども、これは厚生大臣お一人のお答えには難しいと思います。しかし、内閣の一員でありますから、しかも担当大臣でありますから、そういったものを内閣に上げたのか、あるいは危機管理監とそういう打ち合わせをしたり検討をしたのかどうか、それをちょっとお聞きしたいんです。
坂口国務大臣 これは内閣の中でも実は検討いたしておりました。最も関係の深いのは、厚生労働省に加えまして、外務省、国土交通省、これは交通が関係いたします、それから文部科学省、この四つのところが、中国の皆さんが日本にお帰りになりましたりいたしますので、最も関係いたしますので、四省の大臣で集まりまして、そして綿密な意見交換をしている。そして、連携を密にしていくということで話し合いをいたしました。
 そのときに、内閣自体にこの対策本部をつくるかどうかということにもいろいろの話が出たわけでございますが、現在、厚生労働省にはそうしてつくっております。日本にもし一たん患者さんが出たというときには、直ちにそれは内閣全体の本部に切りかえよう、しかし、それまでは厚生労働省が中心になって、関係する省庁と綿密な連携をとってやっていこうということで、非常にきめ細かく連携をとってやっております。
 特に、国土交通省は飛行機の問題がございまして、いろいろあるものでございますから、特に飛行中に発熱を来すというようなことが起こりましたときには、一番近くの空港に着陸をしてもらうようにいたしますとか、もしそういう患者さんが出ましたときには、機内のどういう位置に移して一応対応をしてもらうといったようなことも決めてもらっておりまして、この状況に対応をしてきたところでございます。
松崎分科員 わかりますけれども、ただ、それでいくと、やはり感染症法の範囲で対応ですよね、当然。ですから、SARSそのものがテロとは言いませんけれども、このことを一つの経験にしながら、今度改正、見直しがありますけれども、この辺で、内閣総体として、感染症法も含めて、これから実は天然痘の問題、炭疽菌よりも天然痘の方が、本当はなくなっているはずですけれども、アメリカとロシアの研究所にあって、それが北朝鮮にも流れているといううわさはかなりありますよね、イラクの問題もそうでしたけれども。だから、これは天然痘であっても非常に厳しいと思うんですね。大丈夫だと思ってはいけない。
 ですから、そういう意味で、内閣の危機管理の視点から、今回のSARS問題を受けて、いわゆる既存の感染症等でしたらいいんですけれども、今回みたいにわからないものであったりした場合に、やはり危機対応に近い形でやるべきじゃないか。それを、今の状態でいくと、きょうもテレビで随分言っていました、厚労省、厚労省と言っていました。厚労省では限度があるんですよ、新感染症法でいったら。だから、これはもう内閣なり国が本気になってやらなきゃいけないんだということで私は言いたかったんですけれども、皆さんわかっていない。だから、その辺で私は、新感染症法の改正も含めて、その辺、内閣全体が、こういうSARSのような問題はこれから出てくると思いますから、しっかりと対応すべきだろう。
 それでは、その問題とちょっとずれますけれども、NBCテロの問題でも、例えば厚生労働省だって、Bのバイオ関係に対する管理、細菌の管理とか移動の規制、こういったものをほとんど課長通知で終わらせているんですよね。この辺のことは、こういうテロ問題も大きく起こってきている範囲の中で、そちらの担当省庁の範囲の中のNBCのB問題、バイオ問題、これはできていますか。
坂口国務大臣 いわゆる病原性微生物の問題だというふうに思います。この問題への対応は実は内々進めてきております。特にそこで問題になりますのが天然痘の問題とそれから炭疽の問題、この二つが非常に大きいというふうに思っております。
 炭疽につきましては、全国各地域、薬の状況等も調査をいたしまして、これは抗生物質がよく効きますので、万が一のことがありましたときにはそれぞれの地域で対応できるようにいたしております。
 それから天然痘の場合でございますけれども、天然痘につきましても、御承知のとおり、二十六歳ですかね、二十六、七歳以下の皆さんは受けていないわけです。ですから、三分の一と四分の一ぐらいな間というんで、三千数百万人は受けていない人たちがいるわけでございますので、これは起こりますと大変でございますので、ワクチンの増産を今行っております。かなりな備蓄がもうでき上がっておりますが、さらにこの備蓄をふやすというので、ことしもかなり予算をとりまして対応をいたしているところでございまして、こうした問題につきましても対応できるように、省内におきましては連絡を密にし、そしてまた、政府の中にも我々の考え方というのを伝えているところでございます。
松崎分科員 時間でございます。
 アメリカも全国民分を天然痘のワクチンはつくってあります。ロシアでも一億四千七百万人既に用意してある。日本は、さっき大臣がおっしゃったように、三千七百五十万人受けていない。これだけでも早くやらなきゃなりません。これは大体百三、四十億円の話なんですね。ぜひひとつお願いしたい。
 この問題は内閣府の方でまたしっかりやりたいと思いますので、厚労省そのものの対応は、現実の問題を含めて頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。
山名主査 これにて松崎公昭君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
山名主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 厚生労働省所管について質疑を続行いたします。海江田万里君。
海江田分科員 きょうは、大臣に、SARSの問題と、それから新宿の戸山にございます国立国際医療センター、この問題について、限られた時間ですが質問をさせていただきたいと思います。
 一つはSARSの問題ですが、きょうの新聞あるいはテレビのニュースなどでも、台湾の医師の方がいよいよ発症したと申しますか、日本で観光旅行をしていたわけですが、今日本じゅうといいますか、特に京都や大阪や兵庫県あたりが大変このSARSの問題で大騒ぎになっております。
 私は、このSARSの問題でここ数日、外国を旅行して日本へ帰ってまいりました日本人の方からお話を聞いたんですが、日本の防疫体制と申しますか、とりわけ空港における防疫体制が、ほかの国と比べますと、私がお話を聞きましたのは、カナダから帰ってきた人、それからもう一人はドイツのフランクフルトです。カナダは、御承知のように既に発症の事例がある。フランクフルトは交通の要衝だということで、それぞれの空港で大変厳しい、飛行機が空港に着きましてから、実際に検疫、通関終わるまで一時間以上かかったというふうなお話があるわけでございます。
 日本の場合、非常にこれが簡単と申しますか、たしか温度の測定機、サーモグラフィーというんですか、これも全部入っているようではないわけでございますが、あとは簡単な問診票を渡されて、そこに記入をするということだけであったようでございます。
 やはりこれを、例えば検疫の方がきちっとした装備をして、そしてそれぞれお一人お一人に対面で、それこそ本当に職業などということを聞けば、今度のケースでも台湾から来た医師の方だということがわかるわけですから、何らかの手当てが打てたんじゃないだろうか、そのように思うわけでございます。
 日本の現在の、とりわけ空港における防疫体制と申しますか検査体制と申しますか、これについて、大臣はどういうお考えをお持ちか、あるいは改善する点がないのかどうなのかということについて、お聞かせいただきたいと思います。
坂口国務大臣 空港における対応でございますが、これは人によってかなりおっしゃることが違いまして、先日テレビを見ておりましたら、日本の空港は厳し過ぎるというえらいおしかりを受けているケースがございまして、よその空港ではそれほどでなかったのに、日本はなぜこんなに厳しいことを言うのかというようなことを言っておみえになる方がございましたので、私は、今先生のお話もありますが、多少、人によって受けとめ方が違うのではないかというふうに思っております。
 ただ、台湾のケースがございまして、私たちも若干反省をいたしておりますのは、日本にお見えになります皆さんが、それぞれの国で、しかもこのSARSが流行しております地域からお見えになりますときにはそれなりに念入りにお聞きをしているわけでございますが、実際に病院でその治療に携わっていたとか、少なくともその病院が治療を行っていたとか、あるいはまた親戚縁者等で罹患した人がいてその近くにいたとか、いわゆるはやっている地域からお見えになったというだけではない、そういう皆さん方に対するチェックをもう少し的確にやる必要があったというふうに思っておりまして、そこは少し反省をいたしております。
 機内におきますチェックにおきましても、そうしたことをもう少し詳しくお聞きをする。おりられたときに、そういうことにお答えをいただいた皆さんに対しましては、もう少し詳しくお聞きをするといったようなことをやらなければいけないのだというふうに今思っている次第でございまして、国際的に各地域ございますが、とりわけこの感染が流行いたしております地域からお見えの皆さん方に対しましては、チェックを厳重にしたいというふうに思っている次第でございます。
海江田分科員 厳し過ぎるというお話、意見を、これは大臣が直接お聞きになったわけですか、テレビをごらんになっていて。どういうところが厳し過ぎるというふうにおっしゃっていたんですか。
坂口国務大臣 テレビを拝見していての話でございますから、直接聞いたわけではございません。その方がおっしゃっているのは、一々いろいろのことを聞くのに時間がかかったということを言っておみえになるんだろうというふうに思いました。直接聞いたわけではございませんので、そんな感じを受けた次第でございます。
海江田分科員 一々聞くのに時間がかかると。日本の方かどうかもわかりませんけれども、何か一々聞くようなシステムになっておるわけですか、今の検疫の体制が。
高原政府参考人 実は、このSARSが発生いたしましてから、数次にわたって検疫の強化、それから検疫の対象便というものを変化をつけてやっております。
 初めは、委員御指摘のような問診票だけで通していた時期も確かにございますし、その中では、中国から帰ってきても、ないしは台湾から来ても、問診票を出さなくてもくぐり抜けられたではないかというふうにおしかりをこうむった時期もございます。それから、入国以来、感染地域に滞在等々していた人については、十日間は余り人に会わないでください、何かもし問題があったら保健所に連絡してくださいというふうなことをお願いするのを渡す程度の時期もございました。
 それから、御指摘でございますが、サーモグラフィーといいますか、赤外線カメラでございます。赤外線カメラを一台入れた時期。それから、列をつくっていただいて全員一応赤外線カメラで見ますと、大体、体表面の温度が三十五度以上の人は全部チェックできるということになっておりまして、体表面が三十五度ですと大体三十七度ちょっとぐらいあるらしゅうございまして、三十八度ぐらいの人はひっかかる。これは関西空港、成田空港、全部やっております。
 先般、台湾人医師の件もございまして、実は、対策の、インフォメーションセンターと申しますか、コントロールセンターを土曜日に立ち上げまして、大臣みずから御指導においでになりました。
 それから、具体的にはきょうの一便くらいから始まっておりますが、職業、それから十日以内に親戚、友人にSARSの患者はなかったか等々のことを聞くようにしております。それから、該当の方がありましたら、これはまことに申しわけない次第でありますが、旅程につきましてお伺いをしまして、毎日検疫所の方に連絡いただく。それで、普通の場合、帰りの切符を持っておいでですから、御帰国になるまでないしは国内で十日間が過ぎるまで検疫所の方でフォローをするという体制にしております。
 また、ボーディングブリッジにいたしましても、従来はいろいろなブリッジから出入りして、ややもすると混線するというふうな状況もあったわけでございますから、先週より、中国便につきましては一定のブリッジを全フライトについて利用していただいて、したがって、一列に、漏れなくお顔を拝見し、検疫ができるという体制にしております。
 それから、大臣が申し上げた話とあるいは違うかもしれませんが、私どもは、関西空港については、日本の検疫が厳し過ぎるので乗り継ぎ便に間に合わなかったというクレームを何社からかいただいております。ただ、それについては、飛行機の方で乗り継ぎ便のある人は先に出て先に検疫を済ませるようにやってください、我々はそういうことで緩めるつもりはありませんというふうな対応をとったところでございます。
海江田分科員 少なくとも、私が聞いております話と、それから、これは大臣つとに御案内だろうと思いますが、この種の病気は本当に水際作戦が大事でございますので、その意味では、多少不便がありましても、これはやはりしっかりと厳しく検疫をするべきではないだろうか。きょうより改まったというような部分もあるやに聞いております。
 それから、何といいましても、本当に一人一人に問診といいますか、直接聞くことが私は大切だろうと思うんですね。その場合、お仕事は何ですかとか、これは当たり前の話ですから、医師だとかいうことがわかればまた違った対応もできると思いますので、厳し過ぎるという意見もあるけれどもというようなことではなしに、ここはやはりこれまで以上にさらに厳しくお願いをしたいというふうに思うわけでございます。
 それから、今お話出ましたけれども、中国から帰国した場合、十日間は、あれは、特に北京から帰ってきたような場合は自宅待機をしてほしいということなんですか、余りいろいろな人と接触してはいかぬということですか、どうですか。
高原政府参考人 同じ北京から帰ってきた人でも、ほとんど家庭内にいたという人と、それから語学学校で中国人の学生、しかもその寮から患者さんが出たというところからいらっしゃっている方と、それは天と地ほどのリスクの違いがあると思います。
 したがいまして、一律に十日間は家にいろよというふうにお願いするのではなくて、そこら辺のところは常識的な判断を持って、もちろん在中国の方は、日本人の方は特に非常に不安を持っておられていろいろ情報収集なさっておりますし、現地の総領事館もいろいろ指導なさって、我々国立病院の方からもお手伝いしたところでございますので、そこら辺のところはみずからの自覚と責任でもってお願いしたい。しかし、リスクのある人は、十日間はできるだけほかの人と接触を避けてください、外出するときにはできるだけマスクを着用くださいということはお願いしております。
海江田分科員 そこも本当に、リスクの高い方の場合はしっかりと対応が必要だなというふうに思うわけでございます。
 私、土曜日に、先ほどお話ししました新宿区戸山の国立国際医療センターを視察してまいりました。この施設は、四月の七日に特定感染症指定医療機関に指定をされたところでございますけれども、実際に行ってみまして、私も、地域の住民の方、近辺に住んでおられる皆さん方の不安といったものを本当に実感できたと思うんです。
 土曜日の前、金曜日に厚生省の方にお邪魔しまして、そして幾つかお願いをした点がございます。そういう形で特定感染症の指定医療機関に指定をされたということになりますと、そういう患者さんが運ばれてきたときの医療機関のマニュアルですとか、それはぜひお出しをいただきたいということでしたら、その場でそのマニュアルを出していただける、今週じゅうに出していただけるというふうに承りましたが、それは間違いございませんね。
冨岡政府参考人 国立国際医療センターにおきましては、特定感染症病床における診療体制、院内感染症対策、病原体の拡散防止対策等に関しますマニュアルを作成しているところでございます。
 このマニュアルにつきましては、御要請に応じまして国立国際医療センターの方から公開することといたしたいと考えております。
海江田分科員 あともう一つお願いをしてございまして、それは患者さんが、これは差し当たってはSARSでありますけれども、SARSだということで病室を使用するとき、あそこはそういう指定病院になっているわけですが、とりわけ陰圧というんですか、中の空気が外に出ないような装置を施した特別のベッドが四床、四部屋あるわけでございます。そこも当然お使いになるわけでしょう。
 そういう部屋を使った場合、患者さんがそこに入っているということを地域の住民の方にお知らせいただきたいというお願いをしているわけでございますが、これについてはどうでしょうか。どなたが入っているとか、そんなようなことはいいわけですが、確かにここに入っているよということは、地域の皆さん方の感情からすれば当然知りたいわけですから、それについて、入っていますよということはおっしゃられてもいいんじゃないだろうかというふうに思うわけですが、どうでしょうか。
高原政府参考人 国立国際医療センター、四床、特定感染症指定病院になっております。大体このレベルに近い例えばエボラ出血熱であるとか、SARSも含めてでございますが、SARSにつきましては、大臣の御指示もございまして、全国七百床近い病床について入院に対応するという体制をつくっております。それで、これは委員御理解いただけると思うわけですが、そういうふうなことになりますと、すべての病院において、同じように、今患者さんがお入りになっていますよということをお話し申し上げる、これが筋だろうと思います。
 しかしながら、地方においては、入院したということで、どこから帰ったどういう人がということで病院が特定されますと、例えば、昔HIVの患者さんでもございましたし、それから臓器移植等では日夜経験しておりますし、プレスがその前に待ち構えて報道するというふうなことで、社会防衛と人権尊重を車の両輪として運営しております新感染症法のもとでは、余りふさわしくないのではないかというふうに思っております。
 ちなみに、第一種感染症指定医療機関、全国に十三医療機関、公立病院を中心としてございます。東京にも荏原病院、墨東病院、ございますが、周辺地域に対しまして、入ったときにお知らせするという取り扱いをやっている病院については、私ども、存じておりません。
 したがいまして、人権とプライバシー、社会防衛、周辺の安全、これをすべて守るという点から最大限の努力を払いたいと考えておりますが、使用中、使用後ということを周辺の方にお知らせすることは、現段階では考えておりません。
海江田分科員 先ほどもお話ししましたけれども、特に患者さんのプライバシーにわたる点はしっかりと守らなければいけないということはそのとおりだろうと思います。それから、今、社会防衛という言葉を何度もワードとして使いましたけれども、要らない不安を起こさないようにさせるということだろうと思います。余り社会防衛という言葉がアプリオリに出ますと、これは厚生省では、いろいろな波及効果もあると思うんで、要らない、不要な不安を起こさないようにするということだろうと思いますが。
 そうなりますと、私も実際行ってよくわかったんですが、全国七百床あるということはそのとおりだろうと思いますが、それぞれの病院の環境といったものを私はつぶさに知っているわけじゃありませんけれども、戸山の場合は、その病床の、二重で窓が密閉されておるわけですけれども、そこから一番近い戸山のハイツという大きな住宅があるわけです。そこまで、本当に一番近いところで三十メートルぐらいしかないわけですね。あとは、排気塔があって、排気塔のところから百メートルぐらいですが、全部ベランダが病院の側を向いている。
 そして、近所の住民の方は、何日か前に電気がついていたけれども、もうそこに入っているんじゃないかとか、その病室に電気がついたらわかるわけですから、二日前に電気がついていたとか、三日前に電気がついていたとかいうことを言っている。むしろ、そこに患者さんがいないならいない、つまり、入ってきたときに公表するということによって、その公表がなければ、いないということがわかるわけですから、それの方が不要な不安を防ぐことになるんじゃないだろうか、そういうふうに思うわけです。
 六項目の公表項目を決めた。患者さんの年齢、十代刻みだとか、あと国籍だとか性別だとか、これはこれでいいわけです。こちらを主に、やはり個人のプライバシーの問題からこういうのが決まっておるんだろうと思いますが、これと観点の違う、住民の要らぬ不安を解消するという意味から、これはぜひ御検討いただきたい。
 今、最後に、今の段階ではそれは公表することになっていないという答弁をいただきましたけれども、これからやはり検討していただいて、そしてそれは発表しようということでもいいんじゃないかなと思いますが、これは大臣、どうですか。
坂口国務大臣 問題は、そういう完全装備をした病床において、患者さんが入った場合に、その菌が、それはウイルスのこともあるし、その他の細菌のこともございますけれども、それがそう安易に外へ出ないようにするということが大事なんだろうと思うんですね。完全に消毒をして、そしてウイルスが外に出ないような体制をつくるということがまず何にも増して大事なことだと思うんです。
 このウイルスは、幸いにして、日光には非常に弱くて、一般の空気に触れますとそう生きているわけではないというふうに言われておりますし、ベトナムあたりは、完全な病室がないものですから、窓をあけることによってこれを防いだということも言われているわけでございまして、私は、そこはそんなに心配をいたしておりません。また、この国際医療センターの場合などは、そこはしっかりいたしておりますから、近所の皆さん方に御迷惑をかけるようなことはないというふうに思うんですが、私が言っておりますとあれですから、その辺のところ、詳しいことがあったら、局長の方から答弁させます。
冨岡政府参考人 国立国際医療センターにつきましては、排気とか排水設備といった構造設備につきましては、感染症法に基づきます基準に則しまして、ただいま大臣申し上げましたように、安全性には重々注意いたしまして、整備いたしたところでございます。
 なお、御指摘のございました点でございますが、排気口につきましても、排気ダクトに細菌等を除去できる高性能のフィルターを、基準では一組設置するということになっておりますけれども、ここでは実は二重に設置する等の注意をいたしております。
 また、米国の疾病管理センターでの環境汚染ガイドラインによりますと、給気口と排気口は二十五フィート、七・六二メートル以上離さなくちゃいけないということになっておりますが、そういった基準からいたしましても、距離といったものにつきましても、こういった基準に照らしても問題はない、かように考えております。
海江田分科員 私も行ってみて、細かな点は幾つか、これもまた御返答いただくということでお願いをしてありますので、それを待ちたいと思いますが、例えば、バイオハザードという言葉もございます、生物災害といいますか。そういう施設には、WHOは、バイオハザードマークというものをつけるべきだというようなことも勧告をしているわけですが、少なくとも、私が見た範囲では、バイオハザードマークなんかはどこにもなかったように思っております。
 それから、安全だ安全だということをおっしゃっても、例えば地震のときの対応がきちっとできておるのかとか。前回、二月に住民の方を、そこの病室の見学を許可して、そして、それまでは消火器がなかったわけですが、消火器がなければ、当然、水でやるとか、いろいろ不都合があったわけです。やっと消火器を置いたとか。確かに、皆さん方のお立場からすれば、絶対平気なんだ、安全なんだということを言わざるを得ないんでしょうが、まだまだ改良の余地というのは幾らもあるわけですよ。
 そのことについては、今ここで全部お話をしている時間もございませんが、本当に不安というのは、さっきもちょっと、まだ始まる前に雑談でお話をしましたけれども、例えば、私と私の秘書とアドバイザーと三人で中へ入っていったら、当然、私は、病室の中に入っていくときには、マスクをやって、白衣か、あるいはエアカーテンか何かあって、そういうものをぱっときれいにして中に入るのかと思ったら、そのまま入っていいですよと言われて、そのまま入った。そして、実はそのベッドには、つい何日か前、真性のSARSの患者さんじゃなくて、結局何にもなくて退院をされたようですが、そこにいわゆる疑いのある人が入っていたなんということを一番最後にお話を聞いたりすると、やはりびっくりするわけですよ。本当にこれで平気なんだろうか、どうなんだろうか。
 そういう不安があるうちは、地域の方々にとっては、そういう不安の中で生活をするということは、これは大変なストレスにもなります。そういう点で、もう一工夫、平気なんだよということをお知らせする意味でも、幾ら新聞が大きく書いていても、もしそこに患者さんが入ってくれば、それはちゃんと連絡があるから、連絡がないからここには来ていないんだという安心を与える意味でも、私は、ぜひそういうことを検討すべきだと思います。
 重ねてお尋ねしますが、そういう観点からこの点を検討していただくというわけにはまいりませんか。
高原政府参考人 一番住民の方が不安に感じられてしかるべきは、大部屋で、それこそ窓をあけ放して、バイオセーフティーの設備をしていない一般病床に重い感染症の患者さんが入っていらっしゃる、この状態が一番危険なわけでございまして、もちろん、そういうところにはそういう患者さんは入れない建前ではございますが、そういうことがないように感染症指定医療機関がございます。
 それで、この国立国際医療センターは特定感染症指定医療機関でございまして、国際的に見ましても極めて厳重な内であると私ども考えておりますが、その下の、普通のエボラ出血熱等々を入れる医療機関が十三医療機関ございます。これは、例えば福岡のこども病院であるとか岡山大学の医学部の附属病院であるとか、あと、ほとんど市立病院であり、都立病院でございます。
 それぞれ、こういうふうなところも、かなりいろいろ周辺の住民の方と、安心して周りの地域が受け入れるために御努力なさっていると思いますので、食品衛生法の方でもいろいろ議論になっておりますが、どういうふうなリスクコミュニケーションをなさっているのか。この市立泉佐野病院、国立国際医療センターその他の第一種感染症指定医療機関、担当者の方なんかの知恵を十分聞きまして、住民の方に、利用しているという形の情報が一番適切なのかどうか、できるだけ不安を軽減するような対策の方法はほかに何かないかということを、国立国際医療センター、つい最近から運営したわけでございますが、長くやっておるところもたくさんございますので、ノウハウなどをお聞きして、住民の方に対するできるだけ適切な対応を行ってまいりたいと考えております。
海江田分科員 もう時間もなくなりつつありますので、くれぐれもそこの点はよろしくお願いを申し上げます。
 最後に、ちょっとまとめてお尋ねをしますが、厚生労働省では、SARSの疑い例、それから可能性例、これはいずれも今ではシロとなっているわけですが、それも幾つかあったということをせんだって発表しましたが、これもなるべく細かに今後も発表をしていただきたい、疑い例、それから可能性例を。
 それから、あともう一つは、SARS関連の融資制度でございます。
 既に雇用調整助成金を使った特例措置ですか、それによってレイオフを出したときの助成金だとかというお話を聞いていますが、もう一つ、観光業者だとか何だとか、SARSによって仕事が本当になくなってしまった企業に対しての緊急融資制度、こういうものの検討、最終的には関係省庁と連絡もしなければいけないことになるんだろうと思いますけれども、厚生労働省として、この緊急融資制度を実施できないかどうかというお答えをいただきたいと思います。
山名主査 坂口厚生労働大臣、簡潔に願います。
坂口国務大臣 これは、我が省だけではございませんが、旅行業者等の中小企業者に対しましては、信用保証協会におきまして、通常の保証制度額に加えまして、別枠で信用保証を受けられる措置をいたしております。それからまた、政府系の中小企業金融関係の三機関におきましても、運転資金を別枠で貸し出しできるようにいたしております。これらのことをきめ細かくやっていきたいというふうに思っております。(海江田分科員「疑い例も」と呼ぶ)
 疑い例の場合にも公開をしたいというふうに思っております。
山名主査 これにて海江田万里君の質疑は終了いたしました。
 次に、井上和雄君。
井上(和)分科員 民主党の井上和雄でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、木村義雄副大臣にぜひ御質問をさせていただきたいというふうに思っておったんですが、副大臣は御公務で御出張中だということでございます。したがいまして、きょうは大臣に質問させていただきたいと思います。質問通告の順番と多少前後いたしますので、御了承をお願いいたします。
 大臣も御存じのように、北区に新設予定だった東京北社会保険病院、これは仮称でございますが、昨年の十二月に突然新設が中止されたということでございます。本日はこのことに関してお伺いいたしますが、この病院の計画が突然中止されました昨年の十二月二十五日、この決定がされたということですが、この決定がなされる前後に木村義雄副大臣が現地視察、この病院の視察を行ったと聞いておりますけれども、これはいつのことでしょうか。
伍藤政府参考人 お答え申し上げます。
 木村副大臣が北社会保険病院を視察に参りましたのは、十二月二十六日でございます。
井上(和)分科員 決定がされた翌日に副大臣が行かれたということですね。
 この現地視察にはどなたが同行されたんでしょうか。
伍藤政府参考人 私と社会保険庁の職員二名、三名が随行いたしました。
井上(和)分科員 ほかに同行者はいらっしゃらなかったんですか。
伍藤政府参考人 以上でございます。
井上(和)分科員 十二月の二十六日以外に木村副大臣が現地視察されたことはありますか。これはちょっと通告していなかったんですが、おわかりだと思います。
伍藤政府参考人 二十六日が初めての視察だったというふうに思います。
井上(和)分科員 初めてですね。その後行かれたことはございますか。
伍藤政府参考人 副大臣がその後行ったということは承知しておりません。ないと思います。
井上(和)分科員 もう一度確認いたしますが、副大臣は十二月二十六日一回しか東京北社会保険病院に視察に行っていない、同行したのも社会保険庁三名の、いわゆる官僚の方だけだ、そういうことでよろしいですか。
伍藤政府参考人 それでよろしいかと思います。
井上(和)分科員 昨年の十月三十一日、参議院の厚生労働委員会で、自民党の宮崎秀樹議員が木村副大臣に対して、社会保険病院の整理等について質問されています。
 私、ここに議事録を持っておりますが、宮崎委員が、「木村副大臣には、社会保険庁病院の整理等についてどういうふうにお考えになるか、そして来年度の予算にももうこれを組み入れているみたいな話でございますが、そんなものはもう必要ないということで私は対応してもらいたい」、いかがでしょうかという質問をされています。
 これに対して木村副大臣は、「私も宮崎先生と考えが非常に似ている」、そして、「来年の四月一日に保険料の自己負担が三割になるというときに、まだまだ新しい病院の建設が続いておりまして、同じ四月一日に何かホテルのような社会保険病院がまた一つオープンしてテープカットをしたと、このようなばかなことがないように努めてまいりたいと、かように思っているような次第でございまして、」というふうに答弁をされています。
 これは、当然厚生労働省としての答弁でございますが、四月一日にテープカットをしてオープン云々とおっしゃっているこの病院ですが、これは北区の東京社会保険病院のことなんでしょうか。大臣、お答えいただけますか。
坂口国務大臣 多分、それはそういうイメージで木村副大臣は言ったのではないかというふうに私は思います。
井上(和)分科員 ほかにオープンする病院はこの時期にあったんでしょうか。
伍藤政府参考人 ことしの四月に新しくオープンする予定でありましたのは、この北社会保険病院のみでございます。
井上(和)分科員 では、大臣、多分とおっしゃる必要はないですね。確かですね。木村副大臣がこの答弁でおっしゃっているのは、北区の病院のことですということだと思いますが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 ほかになかったとすれば、そういうことではないかと思います。
井上(和)分科員 実は大臣、宮崎議員はこの質問のときに、坂口大臣に対しても医療費の三割負担のことについて質問をしています。しかし、この社会保険庁病院については、この件に関しては木村副大臣ということで、名指しされて質問をされているわけですね。つまり、答弁者ということで木村副大臣を指定して質問をしています。ということは、つまりこれは、木村副大臣が社会保険病院の整理等について、特にこの北区の病院に関しても特別な関心をお持ちだったということだと思うんですが、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 答弁は手分けをしてやっておりますが、特にそのときに指定をされておみえになったとすれば、宮崎議員の何らかの思いがあって指定をされたんだというふうに思います。
 社会保険病院の問題は、その前後、もう少しさかのぼって、いろいろの御意見が出ておりました。というのは、今も御指摘の三割負担に絡みまして、保険財政が非常に厳しいときに、いわゆる社会保険病院というものが建築をされる、あるいはまた赤字を出したといったときに、いわゆる保険料からそれを補てんするといったようなことは、これはもってのほかだという御意見がずっと出ておりました。そうしたことから、この社会保険病院のあり方、全国五十幾つかございますが、そのあり方についてどうするかという問題が一つ。それからもう一つは、社会保険病院が、いわゆる全社連というところに全部それは一律おろしている。この運営方法がこれでいいかどうかという問題がもう一つございました。
 この二つの点から、いろいろと前から御議論のあったところだというふうに思っております。
井上(和)分科員 大臣の今の御説明、ちょっと私おかしいと思うのは、つまり、三百億円もかけて病院を建設していた。そして、既に職員も採用している。まして新卒の職員も採用していて、例えば看護学校を新しく卒業した人が四月から新しい病院に勤務する、そういうわけでもう決まっていた。それが突然、本当に突然、青天のへきれきに採用が中止になった。これはどう考えてもつじつまが合わない話じゃないですか。
 そして、まして今もってこの病院がどうなるか決まっていない。一月に千二百万維持費がかかっているということを私聞いているんですけれども、そうなんでしょう。どうですか、社会保険庁。一月の維持費というのは一千万ぐらいかかっているわけですね、病院をそのまま置いておって。おわかりですか。
伍藤政府参考人 病院の維持管理、警備等を含めまして、その程度を要しておるというふうに思っております。
井上(和)分科員 つまりは、この政策決定が本当にずさんにやられていると、この場で、決算の委員会ですから、こう指摘されても、大臣、しようがないんじゃないかと私は思いますよ。
 それではお伺いしますけれども、木村副大臣の厚生労働省における政策決定のプロセスにおける役割というものはどういうものなんでしょうか。
鈴木政府参考人 副大臣の役割という御指摘でございますが、副大臣は、政治主導の政策判断の迅速化と大臣の政策判断を補佐する機能を強化する観点から置かれるものでありまして、大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、大臣が不在のときはその職務を代行するということになっております。したがいまして、副大臣は大臣に次ぐ厚生労働省の責任者として、政策決定全般に責任を有する立場でございます。
井上(和)分科員 もう少しはっきりお伺いしますが、つまり、副大臣はラインにいるわけですね。稟議書、つまり政策に関する事柄に関して、副大臣の承認がなければ、これは厚生労働省として政策決定できないということでよろしいんですか。
鈴木政府参考人 政策につきましては、大臣の指示のもと、省内でいろいろ議論しながら決めておるところでございます。
 具体的なことを申し上げますと、例えば決裁ということになりますと、大臣の決裁を要する事項につきましては副大臣の決裁を要するということになっております。
井上(和)分科員 大臣の決裁があった場合には、副大臣の決裁は要るということなの、ちょっとはっきりしないんですが、もう一回。つまり、お伺いしたいのは、副大臣が決裁しなければ、それは大臣に上がらないということなんでしょうか。ちょっとその辺を御説明いただきたいと思います。
鈴木政府参考人 大臣の決裁を要する事項につきましては副大臣の決裁を受けなければならないということになっております。
井上(和)分科員 つまり、大臣の決裁が必要なものに関しては、副大臣の決裁も同様に必要だ、判こが必要だということでよろしいですか。
鈴木政府参考人 御指摘のとおりでございます。
井上(和)分科員 ということは、もし副大臣が反対すれば、それは決裁されないということですね。大臣いかがですか。
坂口国務大臣 役所の一つのルールといたしましては、下からと申しますか、係長、課長、審議官ですか、あるいは局長というふうに、下から判こは上がってくるわけです。したがいまして、副大臣が決裁をして、最終的に大臣が決裁をする、こういうことになっております。
井上(和)分科員 ということは、副大臣が反対すれば、それは大臣の決裁まで届かないということでよろしいですね。もう一回確認してください、大臣。
鈴木政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、大臣の決裁を要する事項については副大臣の決裁を受けるということになっております。
 ただ、いずれにしても、政策につきましては、大臣の指示のもと、いろいろな議論を経て決まるものでございます。
井上(和)分科員 私がお伺いしているのは、大臣の指示があっても、副大臣が判こを押さなければ、それは厚生労働省として決定できないのですかということをお伺いしているんです。
鈴木政府参考人 大臣が政策決定の最高責任者でございます。先ほども申し上げましたように、副大臣は、大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、大臣が不在の場合には職務を代行するということになっておりまして、あくまでも大臣の命を受け仕事をしているものでございます。
井上(和)分科員 今の答弁は、坂口大臣の答弁と食い違っていますよ。大臣がおっしゃっているのは、あくまでも決裁は下から上がってくるものであるということをお答えになっているんですけれども、大臣、いかがですか。
坂口国務大臣 順番としては、私が先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、意見が合わないということになれば、それは調整をするということになるだろうというふうに思います。
井上(和)分科員 この社会保険庁の病院の新設等に関して、これまで厚生労働省としていろいろな団体から陳情を受けていると思うんですが、どういう団体から陳情を受けていますか。
伍藤政府参考人 陳情と申しますか、この病院ができる構想過程、それから設立する過程では、専らその地元であります北区、あるいは北区の医師会、こういったところとよく話し合いをしながら進めてきたところでございます。
井上(和)分科員 この病院の建設に反対ということではどうでしょうか。どういうところから陳情を受けていますか。
伍藤政府参考人 これは、国立王子病院というのがございまして、その国立病院を廃止、統合する際に、その後医療を確保するということで社会保険病院を建設するということが決定されたこともございまして、地元の強い要請があって、建設を進めるということで話が進められてきたわけでありまして、特に反対だとか、つくること自体に反対だといった大きな陳情があったというふうには承知しておりません。
井上(和)分科員 つまり、地元から非常に強い要望があった病院を、まして四月にオープンする病院を、年末の十二月に突然中止した、それは非常に大きな政策的な判断があったというふうにしか私思えません。
 それで、昨年の十月に、先ほど申し上げました参議院の厚生労働委員会で、木村副大臣に質問をされた宮崎議員は、日本医師会の代議員でもいらっしゃるわけです。そしてまた、日本医師会の推薦比例代表議員、つまり日本医師会の推薦によって比例代表に当選された議員であるということであります。ということは、この宮崎委員が質問された、つまり社会保険庁病院の整理等について、もう要らないということをおっしゃっているんですが、これは恐らく日本医師会の総意でもあるというふうに私は思っております。
 それで、木村副大臣は、昨年の十二月、日本医師会から五百万円の献金を受けているというふうに聞いております。非常に突然の形で、この病院の新設に関して政策転換、つまり、病院をそのままでは開かないという、まさしく先ほど御答弁にもあったように、地元からも非常に要望のあったものを中止するという大きな政策判断がなされたというのは、これは常識的に考えても、非常に大きな政治的な理由があったからということだと思います。そして、実際に病院関係者の方がそういう政治的な理由があるということを聞いているという事実もあるんですね。
 大臣、ここでお伺いしたいんですが、先ほど、医療費が四月から三割に上がることになった、当然医師会の大きな反対があった、そして、それに対応するということで、昨年の十月ぐらいからもめていたこの病院を中止するということにしたんじゃないんですか。そして、木村副大臣が、まさしく日本医師会からも多額の献金を受けているという理由があるからこそ、厚生労働省の政策決定プロセスに非常に大きな役割を果たす立場にいるからこそ病院が中止になったんじゃないんですか。
坂口国務大臣 この社会保険病院につきましては、先ほど申しました二つの理由で、いろいろの御意見が出ておりましたことは事実でございます。社会保険全体のあり方を見直すべきだという御意見があり、もちろん日本医師会からあったことも事実でございます。それ以外のところからもあったというふうに思っておりますが、この病院をつくるということに対して反対をしているわけではなくて、社会保険庁が今までのようなやり方でやるということに対して反対をされていたというふうに思っております。したがって、現在、この後をお引き受けいただくところを、全社連でないところでというので公募もいたしておりますし、恐らく六月中ごろまでには決定されるだろうというふうに思いますし、病院が間もなく着工されることは間違いないというふうに思っております。
 その今までのようなあり方といいますのは、確かに一般の国立病院と比較いたしましても、社会保険病院の場合には、例えば職員の給与も高いとか、あるいはまたその他の面でもいろいろのことが指摘をされておりまして、赤字が出たからというので保険からそこに投入をするというのは理にかなわないではないかという御意見があって、その辺のところは、我々も指摘されれば、そこは見直さなければならない。
 そしてまた、社会保険病院の中でもずっと赤字続きで、しかもその地域ではほかにも大きな病院があるといったような、最初、それをつくりますときにはそれなりの理由があったかもしれないけれども、その役割を果たしているようなところは、統廃合も含めて全体として検討をし直す。また、こうした病院の経営のあり方等についても、一つのところだけではなくて、幾つかのところでお願いをするといったことをやらなければならない。
 そういう瀬戸際での話であったわけでございまして、それらのことを背景にしながら宮崎議員は質問になったのではないかと私は想像いたしております。
井上(和)分科員 そういう議論があったのは確かだと思いますし、厚生労働省としてさまざまな観点から検討をしたのだと思うんですが、最終的な決断に至るプロセスが非常に不透明だということをこの場で御指摘させていただいているわけです。まして、木村副大臣はいつ副大臣に就任されたんですか。昨年十月ですね。つまりは、昨年の十月以降急に、木村副大臣がポストに就任された後にこの問題が百八十度政策転換をすることになってきたということだと私は思います。
 まさしく、それまで厚生労働省としてさまざまな観点から社会保険庁病院のあり方を検討してきた。そして、この病院に関しては、地元の要望等も考えて開設することに決まっていた。ところが、昨年の十月に木村副大臣がポストに就任されて、そして、私が先ほど申し上げたような参議院厚生労働委員会での質疑もあって、厚生労働省の政策が大きく変わった。
 そして、その木村議員というのは、日本医師会から多額の献金を受けている方だ。そして、日本医師会としてはこの社会保険病院そのもの自体に反対している。なぜか。差額ベッドがほかの私立病院に比べて安いから患者が社会保険庁病院に集まってしまう。そういう構造なんじゃないんでしょうか。そして、まさしくこういう構造は、今般いろいろ話題になっています木村副大臣が関係していた政策の決定にかかわること、ほとんど同じような構造なんじゃないかと私は思っています。
 それで、最後にお伺いしたいんですが、日本精神科病院協会の全国集会が十一月にありました。新聞の報道によれば、木村副大臣がこの集会であいさつされた、その後に献金を受けていて、出した方が、十一月の献金は集会であいさつしてもらったお礼であるというふうに言っているんですが、このあいさつに行かれたのは、これは公務で行かれたんですか。これは質問通告してありますから、答えてください。
坂口国務大臣 先生から御質問をいただくということで私も聞いたわけでございます。これは、厚生労働大臣に招待状が来ていたのかどうか、私が行けないからかわりに行ったのかどうかということを聞いたわけでございますが、厚生労働大臣に出席依頼は参っておりません。したがいまして、木村副大臣は、衆議院議員木村義雄という立場で出席されたというふうに私は思います。うちの部長も当然のことながら行っておりますけれども、それは、部長のところに招待状が参りましたので部長は行った、こういうことでございます。
井上(和)分科員 招待状云々でないとしても、現職の副大臣、大臣に次ぐ地位におられる方が、ましてその省の所管の団体の集会に出ているわけですから、これははっきり言って公務というふうにとられると思いますが、それがたとえ公務でないとおっしゃるとしても、そういう集会であいさつして、お礼として献金をもらうというのは、これはいかがなものかと私は思うんです。
 大臣は、御自身はそういうことは決してないとは思うんですが、いかがですか。大臣御自身、例えば、大臣としてでも政治家としてでも、どこかに呼ばれて、その後、出席のお礼として献金をもらったことはありますか。
坂口国務大臣 残念ながらと言うべきかどうかわかりませんけれども、そういうものをもらったことはございません。
井上(和)分科員 私は、まさしくそれが李下に冠を正さずだと思うんですけれども、そういう規範をほかの副大臣にもしていただいたらいかがですか、大臣。
坂口国務大臣 もしそういうあいさつをしたことでもらったということであれば、それは、こういうことがないようにこれから指導したいと思います。
井上(和)分科員 最後にお伺いしますけれども、これはちょっと資料のお願いです。
 この昨年の十一月の全国集会に多くの議員の方が出席されているんですけれども、その議員の方のぜひリストというようなものを入手していただけませんでしょうか。この団体自体は厚生労働省の所管ですから、それは可能だと思うので、ぜひよろしくお願いいたします。
 また、この集会にはほかにも自民党の先生方も御出席されているんですが、要するに、献金という形でお礼をされたかどうかということも、ぜひ私は聞いていただきたいというふうに思っています。
 昨今話題になっています木村義雄副大臣と柔道接骨師の協会とのいろいろな関係とか、献金絡みで同じような構造があちこちに見受けられるというふうに私は思います。構造的には、副大臣という地位を利用して、政策決定のプロセスに大きく関与する立場にありながら、そこに非常に不透明な決定がなされているというふうに私は思いますので、本日は、そういうことを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
山名主査 資料の件はよろしいですか。鈴木総括審議官、出せますか、よろしいですか。
井上(和)分科員 検討していただければいいです。
山名主査 これにて井上和雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、樋高剛君。
樋高分科員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。聡明な坂口大臣、どうかきょうも前向きな答弁をよろしくお願いいたします。
 まずSARS、急性の呼吸器症候群についてであります。
 横浜では、今月末から六月、来月の頭にかけまして開催予定でありましたサッカーの国際大会、東アジアの選手権大会が延期されることになったわけであります。一大イベントでありますけれども、横浜市ではこれを何とか成功させようということで準備をしてきたわけでありますけれども、SARS感染者が、特にサポーター、応援団として来日しないとも限らない、その可能性がゼロではないという現状の中において、やはり市民、国民の安全を第一に考えますと、今回の横浜市のぎりぎりの判断は私はやむを得なかったものであると理解をいたしますけれども、この判断に対しての大臣の御所見をまず伺いたいと思います。
坂口国務大臣 この東アジア・サッカー選手権大会、延期されることになったわけでございますが、厚生労働省としましても、これはどちらかといえば文部科学省が中心の大会でございましたけれども、文部科学省と連携をいたしておりまして、参加者や地域住民の健康管理に一つは万全を期してほしい、また、もしそれができないということであるならば延期することも検討してほしいといったようなことを話をいたしておりました。そして、そうしたことをお話し申し上げたことが市長さんのところにも多分届いたのではないかというふうに思いますが、そこはしかし、市長さんが最終的に決断をしてもらうということでございまして、最終的な決断を市長さんがされた。
 このことに対しましては、大変残念なことである、いろいろなことを予定しておみえになりました地元にとりましては大きなショックだったというふうに思いますが、現在の状況からいたしまして、少し延期をしていただくというのはやむを得ざる措置ではなかったか。市長さんのこの決断というものを、私は評価したいというふうに思っている次第でございます。
樋高分科員 こういうふうにサッカーの大会は、今回は、大臣がおっしゃったように、文部科学省さんがいわゆる主管なわけでありますけれども、国民の健康を守るという観点からいたしますと、やはり厚生労働省、大臣のリーダーシップが私は望まれるというふうに思うわけであります。
 厚生労働省さんでは、国内での国際的な大会やイベントの主催者に対しまして、いわゆるSARSの流行地域からの来日者に対して外出の自粛の確保をするよう求める方針であるというふうにもう発表なさっておいでであります。
 今回の横浜市の例をとりましても、いわゆる選手あるいはその選手に随行で来られる関係者に対する自粛というのは可能であったとしても、実際のところは自粛でありますから強制力はない、個人の判断にゆだねるしかないわけであります。特に、応援に来ようとする一般のサポーター、お客さん、観客の方々にまで、各自治体、主催者が外出自粛を徹底させるのはやはりちょっと無理があるのではないか。
 しかしながら、その無理の中で、いかに行政、そして今回こういう緊急事態において国家がどういうリーダーシップをとるのかというのが私はとても大切な部分ではないかと思いますけれども、どのようにお考えでございますか。
渡辺(具)大臣政務官 樋高委員御指摘のとおりだと私どもも考えているところでございます。
 したがいまして、現在、検疫所におきましては、こういった大会やイベントの関係者だけではなくて、とにかく中国、香港また台湾から入ってこられるすべての方々に対しまして、問診票を使っていろいろな健康状態の確認をしているところでありますし、また、入国後十日間の外出自粛要請等も内容とする健康カードを配布いたしまして、こういう事態に対処しておるわけでございます。
 今回のサッカー東アジア選手権大会につきましては、先ほど大臣の方からお答えがありましたように、主催者だけではなくて、参加者や住民の健康管理に万全を期すことが大変難しいのではないかと、今樋高議員御指摘のように考えられて、延期を決定されたのではないかというふうに考えております。私どもも、先ほど大臣が申し上げましたように、妥当な判断だったというふうに考えております。そして、こういう大会について、これからも、自治体を中心にしながら、連携をとりながら慎重に対処していきたいというふうに考えております。
樋高分科員 今現在でありますけれども、日本国内で今後国際的な大会あるいはイベントが行われる予定、特にSARS流行地域から、中国あるいは東南アジア方面から来日者が見込まれるようなイベントについて、役所としてどのように、どのぐらい把握をなさっていらっしゃるのか。また、開催予定の国際的な大規模なイベントに対しまして、どのような対応で臨まれる御予定でしょうか。
渡辺(具)大臣政務官 御指摘のとおり、サッカーだけではなくて、イベントや国際会議、あるいは観光等いろいろなものが主催されているわけでございます。こういう事態になりましたので、厚生省といたしましては、関係省庁、先ほどのサッカーについては文部省と連携をとりまして対処をしてきたわけでございますけれども、すべてのイベントについて把握するというのは大変難しいわけでございまして、そういうものが行われる場合は、情報を早くキャッチしまして、その主催者と十分連携をとって遺漏のないように対処してまいりたいというふうに思っております。
 特に、先ほどもちょっと申し上げましたが、いろいろなイベントの開催状況については、より細かな情報が得られると思われる都道府県ともよく連携をいたしまして、その情報をつかみまして対処していきたいというふうに思っております。
樋高分科員 イベントももちろん大小あるとは思いますけれども、すべてのイベントを把握するのは難しいなどとおっしゃらずに、しっかりとむしろ把握をして、こういうときこそしっかりと役所が、厚生労働省が先頭に立って、イベントを把握し、そして第二次感染が行われることを少しでも未然に防ぐということに尽力をすることが今望まれるのではないかというふうに要望をいたしておきたいと思います。
 大臣に伺いますが、きょうも私、朝の駅前で、国会報告、朝の街頭演説をしているんですけれども、そのときに、きょう電車に乗られる方々から、何人もの方々からも聞かれました、日本国内、本当にSARS感染者はいないだろうか、もしくはその疑いのある方は本当にいないんだろうかというふうに大変心配な声が聞かれたわけでありますけれども、きょう現在ではSARS感染者はいないというふうに断言をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
坂口国務大臣 幸いにいたしまして、現段階におきましては、いわゆるSARSの真性患者というのは発生いたしておりません。しかし、これは幾つもの幸運が重なって私は発生していないというふうに思っております。したがいまして、これから気を緩めることなく、日本の国内で発生しないように努力をしなければならないというふうに思っている次第でございます。
樋高分科員 その感染の疑いのある方もいらっしゃらないという理解でよろしいのでしょうか。ここが今市民が一番知りたいところなんですけれども、いかがですか。もう一回伺います。
坂口国務大臣 今のところは、いわゆる台湾の医師の関係におきまして、日本の国内において運転をいたしておりました人が最初発熱をしたという情報がございまして、我々も心配をしたわけでございますが、現在のところ、発熱等はもう既におさまっているようでございますし、そして血液検査の結果は陰性である、マイナスであるというふうに伺っているところでございまして、いわゆる疑い例の中に入れはいたしましたけれども、現段階でその可能性はほとんどなくなってきているというふうに理解をいたしております。
樋高分科員 今回は、台湾の医師が、台湾本国に戻られて感染をしている疑いがあるということで、その後感染をしていることが判明をして、わかったわけでありますけれども、それ以外にも、台湾からもしくは中国から日本国内に旅行に来られている方、また日本から中国もしくは台湾方面に旅行なさった方もたくさんおいでであるというふうに思いますけれども、やはりこういった方々に対しては、大臣、大丈夫なんでしょうか。
坂口国務大臣 先般、ASEANプラス3、いわゆる中国、日本、韓国が加わりました会合におきまして、もし万が一、旅行をしてそして発症するような人があれば、それはお互いの国が連絡をし合う、すぐそれは連絡をしよう、こういうことで約束をいたしておるところでございます。
 現在のところ、各国からそういう連絡は参っておりませんし、また、北京に約七千人を超える日本の方が行っておみえになるそうでございますが、この件がありまして、中国の方も、できるだけ日本に帰ってもらってはどうかというようなことが言われたりいたしまして、お聞きするところによりますと、その中で約五千人ぐらいは日本にお帰りになっているということだそうでございます。その皆さん方はお帰りになりましてから、ほとんどの皆さんは十日以上もうたっておりますし、その皆さん方に異常があるという報告は一切ございません。
樋高分科員 国内におきましても感染もしくは感染の疑いがあるという方が発生いたしましたときには、どうかスピーディーに、例えば、その疑いのある方が仮に見つかった、それから仮に一日おくれで次の日に発表したとなったら、その間、もうそれだけで大混乱に陥りかねないというふうに私は思いますので、こういうときにこそしっかりと、もうかかってしまったのであるならば、それはそれできちっと対応をしていく、その分しっかりと情報公開をしていただくということをお約束いただきたいというふうに思います。
 次に、医療行為につきましてお尋ねをさせていただきたいと思います。たんの吸引行為についてであります。
 先日の十三日、いわゆる看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会の取りまとめが行われました。ALS患者に対するたんの吸引行為をヘルパーさんにも一定の条件のもとで認めるという方向が示されたわけでありますけれども、これについての御所見をまず伺っておきたいと思います。
坂口国務大臣 昨年何月ごろでありましたか、ちょっと忘れましたけれども、ALSの患者の会あるいはまた家族の会の皆さん方、お見えをいただきまして、家庭における状況を切々とお話がございました。以前からもこのお話は伺いをしていたわけでございますが、改めてお聞きをいたしまして、何とかこの問題の前進をさせたいということを思いまして、そして検討会をつくってもらったところでございます。
 昨年その患者の会の皆さんがお見えになりましたときに、昨年十一月だそうでございますが、いつごろまでに決着をつけてもらえますかという話がございまして、そのときに、桜の花の咲くころには、こう申し上げたわけでございますが、少しおくれてしまいまして五月になりました。北海道は桜の花も遅うございますから、まあまあ多少お許しいただけると思っておりますけれども、少し遅くなりましたが、一応、一定条件をつけてではございますけれども、認めるということで決着をつけさせていただいたところでございます。
 今後、さらにまた具体的に詰めていきたいというふうに思っております。
樋高分科員 この件に関しましては、大臣のリーダーシップ、指導力を発揮なさってすばらしい成果を出していただいたのではないかと私は率直に評価をいたしたいと思います。
 しかしながら、ALS患者以外にも、ほかにもお困りの方はたくさんいらっしゃる。筋ジストロフィー、脊髄損傷、脳血管障害、慢性呼吸器疾患、そして重度の障害を持たれた児童の方々、現在多くの、たんの吸引行為を必要とする方がいらっしゃるわけであります。その看護のために、本人、御家族の御負担は大変なものであるというふうに思います。御家族の方は、二十四時間、本当に職をやめてでも看護に専念していらっしゃる、三百六十五日休みなしで看護に当たられている。この現状をどのように考えられますでしょうか。
渡辺(具)大臣政務官 在宅でのたんの吸引行為を必要とする患者の方々は、樋高委員御指摘のとおり、ALS患者以外にも大変あるわけでございます。このことは承知をいたしております。家族の方々は、ALSの患者と同じように大きな負担を強いられておるというふうに考えております。
 しかし、それぞれの疾病につきましては、病状や経過、その状況が違うわけでございまして、今回ALSがヘルパーさんもできるようになったから同じようにしたらいいかといいますと、必ずしもそうはいかない面もあるわけでございます。病状によって、経過によって、あるいは病気の質も違うわけでございます。
 しかし、いずれにしましても、家族にこういう大変な荷重をかける、負担をかけるということは私どもよくわかっておりますので、何らかの方法で軽減する必要があるのではないかというふうに考えておりまして、今後これらのことについて検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
樋高分科員 大臣に伺いたいと思いますけれども、ALS患者さんに限って今回は例外的にヘルパーさんの吸引行為を認めるということでありますけれども、それ以外の方々、これは医療行為ということでありますから、基本的には、原則としてお医者さんか看護師さんかもしくは本人、御家族ということでありますけれども、それ以外に、たんの吸引をするということによって命が救われるということも私はたくさんあるのではないかというふうに思います。
 今回はヘルパーさんに例外的にお認めになられたわけでありますが、今後こういった部分も柔軟に、人様の命がかかった問題でありますから柔軟に検討をしていって、それ以外の方々にもいずれ認めていくということも私は大切なのではないか。今回は、まず最初の一歩であることに私は評価を素直にいたしたいと思うのでありますけれども、前向きな答弁をいただきたいと思います。
坂口国務大臣 ALSの患者さんというのは、非常に特異と申しますか、いわゆる人工呼吸器等をつけておみえになる方が非常に多うございまして、ここに、胸のところに穴をあけて、そしてそこにつけている。したがって、その分野からのたんの吸入もしなければならない、口の中のたんの吸入だけではないわけでありまして、どちらかといえば非常に難しい分野に属するというふうに思っている次第でございます。この分野に対して、条件つきながら関係者の皆さん方がお認めをいただいたということはちょっと大きな前進であるというふうに思っておるわけでございます。
 そのほか、いわゆる障害者の皆さん方が学校に行かれましたときに、学校で、御家族がおみえになればいいんですけれども、看護婦さんがおみえになればよろしいわけでございますが、看護婦さんじゃなしに養護の先生がおみえになって、養護の先生がおやりになるというときにそれができないというようなことがあったりいたしまして、非常にいろいろの御意見もいただいているところでございます。こうした問題につきまして、引き続きましていろいろと検討をしていきたいというふうに思っております。
樋高分科員 大臣は、以前の御発言なんですけれども、時代の流れに合わせて柔軟にというふうに申されておりますけれども、患者さんや家族の視点に立ってぜひとも御一考願いたいというふうに思います。
 それからもう一つ、次、診療科名について伺いたいと思います。病院のいわゆる看板、病院名についてであります。
 病気にかかったとき、どこの病院に行くかということを私ども考えたときに、まず、かかりつけのお医者さんに行こうか、また、電話帳かインターネットで情報を得てみようか、もしくは、よく通る通り道にあります病院の看板を思い出しながらということも、さまざまなことを考えながら病院を選ぶと思うのでありますけれども、その病院の看板、いわゆる一つの広告というんでしょうか、これは病院の存在拠点を示すだけではなくて、私、考えまするに、患者さんの立場に立ってみれば、やはりその病院の内容を少しでも多く把握する広告としてのあり方も望まれているのではないかというふうに思うのでありますが、本来、病院が掲げる看板というのはいかなる役割を持つべきであるというふうにお考えになりますでしょうか。
坂口国務大臣 これは、一つの情報開示と申しますか、患者さんに情報を提供する、そして、どういうところで自分は医療を受けるべきかという、いわゆる選択ができるようにすることが非常に大事だというふうに思います。したがいまして、広告等の内容を緩和したわけでございますが、それだけに、これは客観性を持っていないといけない、いわゆる誇大広告みたいなことでは困るわけでありまして、非常に客観性を持った内容でなければならないというふうに考えている次第でございます。
樋高分科員 看板や病院名にかかわるいわゆる診療科名の標榜につきましては、医療法及び医療法施行令によって三十七科目に規制がされております。現行の表示内容で十分であるというふうにお考えなのか、またなぜ限定をされているんでしょうか。
渡辺(具)大臣政務官 国民の方々が医療機関を適切に選択できるように医療に関する客観的な情報を提供していくことは、委員御指摘のように極めて重要であります。
 現在、これも御指摘のように、医科と歯科を合わせまして三十八科目定められている標榜診療科につきましては、これまでも随時見直しを行ってきたところであります。これからも、時代の推移を踏まえまして、見直しが必要な場合には見直しをしていくということになろうかと思いますが、これは、医療機関がいかなる診療を行っているかを国民に知らせるために欠かすことのできない手段でありまして、先ほど大臣も答弁されましたように、客観性と正確性というものが私どもは大変大切だというふうに考えておるところでございます。
樋高分科員 例えばですけれども、具体例で申しますが、もしかしたら乳がんではないかというふうに思われた患者さん、この患者さんの多くの方々が婦人科を訪ねてしまうんだそうです。正確には、これは本来は外科でございます。ある調査によりますと、半数以上の方々が、外科ではなくて婦人科だと思い込んでいらっしゃるわけであります。ここにはやはり医療情報のミスマッチが発生をしているわけであります。
 もちろん、おっしゃったように、客観性、正確性は必要であります、それも理解できます。しかしながら、自制し過ぎてしまう、制限し過ぎてしまうがゆえに医療情報の正確な伝達が行われていないという問題も同時に発生をしているというふうに思います。
 もちろん、その標榜科名も随時見直しをしているという努力も私もわかっております。しかしながら、まだまだわかりにくいというところはやはり随時改めていく、それが市民、国民からの要請であり、普通の感覚だと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
渡辺(具)大臣政務官 先ほど申し上げましたように、診療科名につきましては客観性、正確性が必要でありまして、そして、診療科名として一つ独立させるか、認めるかどうかの判断基準としては、国民が適切に受診できるかどうか、あるいはその分野が独立した診療分野とちゃんとなっているかどうかについて注意深く検討しながら、それらに合致したものについてはこれを認めていく、こういうことになるわけでございます。
樋高分科員 大臣に伺いますけれども、患者さんと医療機関の間で、ただでさえこういった、今の乳がんの患者さんの例を具体例としてお話をいたしましたけれども、よりわかりやすい看板を掲げる。もちろん、いろいろな理屈もありますし、今までの歴史的な経過もわかっております。それをわかった上で私はお尋ねをしているのでありますけれども、患者さんに、その病院の診察内容、診断内容を少しでも多くの方々によりわかりやすく伝えるということもとても重要なことではないか、病院名そして看板が少しでもわかりやすいようにお伝えをするということも私は大切ではないかと思いますけれども、大臣、いかがお考えになりますか。
坂口国務大臣 看板だけですべてを表現することもなかなか難しいというふうに思いますが、最近でございますから、インターネット等で、それぞれの病院がそれぞれの病院の内容等につきまして公開をいたしております。その中には、例えば乳がんでありましたら、年間の乳がんの手術件数、あるいはまた、それを手術しまして、成功例と申しますか、何年以上それで、五年なら五年以上生存者何割といったような、具体的な、あるいはまた客観的な数字というのは示していただいてもいいことになっているというふうに思いますから、そうしたこともあわせてこれからお願いをしていけば、国民の皆さん方がごらんをいただいて、そして、自分がどこにかかるべきかということの判断をしていただけるようになるのではないかというふうに思っています。
 もちろん、広告の内容につきましても、できるだけのことはしていきたいというふうに思っている次第でございます。
樋高分科員 インターネットによる情報開示というのもよくわかっておりますけれども、インターネットを扱われない方もいらっしゃる、だからどうしますかということを私はお尋ねしているわけであります。
 医療の現場、お医者さんからも私はヒアリングをいたしました。お医者さんの現場でも、広告に客観性を保つための規定が一方であります。一方で、しかしながら、わかりやすい診療機能を患者さんに表現するというところで、今ジレンマを医療の現場でも抱えている、これも事実でありまして、やはり、こういったところもしっかりと考えていただきたい。
 行政は、患者が求めている情報を、少しでも多く、丁寧に、的確に、理解しやすいように、病院側から情報提供できるよう環境整備を進める必要があるのではないかと私は思います。もちろん、虚偽あるいは過大広告が許されないのは当然であります。しかしながら、一方で、自制し過ぎてしまうがゆえに医療情報のミスマッチが起こっているということも御検討いただきたいと思いますが、このお尋ねを最後にいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
 大臣、お願いいたします。
坂口国務大臣 御趣旨は十分に理解できるところでございます。これからも、できるだけ客観的に、そして、多くの国民の皆さん方がそれによってどの病院にかかるべきかということの判断をしていただける内容を開示していただくようにしていきたい、そういうふうに思っております。
樋高分科員 しっかりとお願いいたします。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて樋高剛君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田清司君。
上田(清)分科員 御苦労さまです。短い時間ですので、手短にお伺いしたいと思います。
 私も年金資金運用基金のウオッチャーの一人でもありますが、きょうは住宅貸付事業についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず、十三年度の貸付残高の合計はどのようになっておりますか。金額だけです。どうぞ。
近藤参考人 年金住宅融資事業におきます平成十三年度末の貸し付けでございますけれども、貸付残高は合計で約八兆八十六億円になっております。
上田(清)分科員 未回収の総額、いわゆる残高は、十三年度で、私、ちょっと計算しましたら二千五百九十六億ぐらいになっておりますが、これは間違いないかどうか。
近藤参考人 私ども、未回収の額でございますけれども、弁済期限が六カ月を超えて延滞した、こういう概念でとっておりまして、その延滞債権残高は、平成十三年度末現在で七百四十七億円になってございます。
上田(清)分科員 七百四十七億ですね。わかりました。
 それで、累積ではどうですか。
近藤参考人 これがまさに累積の残高でございます。
上田(清)分科員 十三年度末の累積という概念ですね。わかりました。
 そこで、十二年度と十三年度を比較すると、累積でも倍にふえておりますし、各項目見ても倍になっているものが大変多い。この辺なんかはどのように御判断されているんでしょうか。
近藤参考人 御指摘のように、若干過去にさかのぼって申し上げますと、この七百四十七億円は、平成九年度末では二百二十四億でございました。十年度末では二百九十八億でございました。それから十一年度末で三百三十六億、それから十二年度末で三百七十八億円になってございます。したがいまして、ほぼ倍増いたしているわけでございます。
 この原因を若干申し上げますと、住宅ローンの関係では、保証会社が要るわけでございますが、この保証会社が、一つでございますけれども、経営が悪化をいたしたわけでございまして、保証会社によります弁済額が延滞する、こういうことで六カ月を超える延滞債権がふえたわけでございます。
 これにつきましては、関係の金融機関の御協力を得まして、関係者間で対応を協議いたしました。その中で、主といたしまして金融機関、これは一〇〇%保証をいただいておりますので、金融機関の弁済によりまして回収のめどが立った、こういうふうに考えております。したがいまして、この金額、十四年度末はふえると思いますが、その後急激に減ってくる、こういうふうに理解しております。
上田(清)分科員 ざくっとでいいですけれども、保証会社の破綻による未回収分というのは全体で大体どのくらいの割合ですか。
近藤参考人 先生にはまだお示ししておりませんけれども、この保証会社によります、これはまだ出てきていない分も含めますと、現在、スキームができました段階で約一千百億程度でございまして、恐らくこれは若干まだふえてくるだろう。ただ、これは、そのスキームによりまして、金融機関が健全である限りにおいては全額が保証される、こういうことになっております。
上田(清)分科員 そこで、未回収についても特段に回収の努力もなされていると思いますし、また、未回収にならないように、貸付先についてそれ相応に、厳しくというのもおかしいんですが、厳格にやることによってロスを減らすということも可能ですね。
 そういうときに、気になるところでは、個人情報の保護法が今国会でも大きな課題の一つになっておりまして、こうした個人情報の保護について特に、職員の皆さんとかに教育だとか注意だとか、そういったことの御指導をされているかどうか。
近藤参考人 個人情報、我々まさに金融機関の一角を占めているわけでございますので、そのようなことについては当然注意深く指導してきております。まだ十分かどうかわかりませんので、これからも十分その点は気をつけて指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
上田(清)分科員 資料で一応はいただいておりますが、分譲住宅融資における貸し付け条件の中身として、貸付先が、被保険者の福祉の増進に必要な業務を行う、設立後一年を経過している法人であることと、貸付先において十分な償還能力があること、当然といえば当然ですが、やや細かい規定的なものが入っていないような気がいたしますので、何か書面上、手続上の細目で、ざくっと言えるような内容というのはあるんでしょうか。
近藤参考人 私ども、分譲住宅と転貸融資と二つございまして、転貸融資につきましては既に業務方法書におきましても準則におきましてもきめ細やかに決めているわけでございますが、分譲住宅につきましては、これは事業主に基本的には貸す、こういう建前で発足いたしましたために、個々の方については被保険者資格があればいい、こういうふうな非常にざっくりした形になっております。
 したがいまして、この関係につきましては、まさに、貸すときに相手方と十分な協議をした上で貸し付け条件の中に書き込む、それから、さらに必要であれば追加をする、こういう形で、相互の信頼関係の上に立って、これは個々に、数が少ないわけでございますので、一件一件、綿密に積み上げてきております。
上田(清)分科員 年金資金運用基金が個人に直接貸すわけじゃありませんので、貸し手である事業主と打ち合わせを丁寧にやっている、このような理解ですね。(近藤参考人「はい」と呼ぶ)はい。ちょっと、一応確認。
近藤参考人 そのとおりでございます。
上田(清)分科員 そこで、たくさんの貸付先があるわけなんですが、ちょっと幾つか確認をさせていただきます。
 例えば、こういうことも一応確認をされるかどうか。集会室が、最近ではもうほとんど、中型、大型のマンション等には必ずつくられるわけですが、特にそこは聞いていませんので書いていないと思いますが、そういうときに、例えばその集会室の利用の中身だとか管理の方法だとか、そういうところまで細かく打ち合わせされるんでしょうか。
近藤参考人 まさに返していただけるかどうかということと、物件が担保になっておりますけれども、そのほかに、あとの担保と申しますのは、その法人がうまく回転していくか、経営内容が悪化しないか、これを重点に見ておりますので、その管理の中身についてまで私どもがタッチするということはないかと存じます。
上田(清)分科員 当然、貸倒引当金の積立額だとかそういうのはチェックされるわけですね。
近藤参考人 当然その辺は業務のといいますか、経営内容につきましても私どもはチェックさせていただいております。
上田(清)分科員 例えば、最終的な買い手というかエンドユーザーの属性、例えば職業だとか経歴だとか収入とか年齢とか、これは当然、基金が貸し付けられる分譲会社は、法人とかはそういうのを調べるのかもしれませんが、基金そのものが調べたりはしないんですね。
近藤参考人 私どももその可能性はありますが、手足が余りございませんので、金融機関にお願いしている、こういうのが実情でございます。
上田(清)分科員 ただ、職業、経歴、収入、年齢等をわざわざ取り寄せたりすることはあるんですか。
近藤参考人 先ほど申し上げましたように、転貸法人を通じる個人融資と分譲の形は違っておりまして、今回のケースですと、私どもの分譲というものにつきましては、被保険者資格があればいい、こういう形になっておりますので、主として私どもが審査いたしておりますのは、その相手方の法人の財務内容をチェックしております。
 ただ、その際に入居という事実がないと、これはまさに入ってくる金がないわけでございますので、利が非常に薄い事業なものですから、すぐ資金ショートしてしまうおそれがございますので、入居という事実関係は、特に被保険者であるかどうかという確認まではいたしますが、分譲の場合にはその細かい収入とかなんとかについては立ち入らないことになっております。
上田(清)分科員 例えば、被保険者だということを確認するには、何をもって確認されるんですか。
近藤参考人 まさにそれを法人の方で出してもらわぬといかぬわけでございますけれども、住所とかその辺がわかれば我々として確認ができる、こういうことでございます。住所とお名前ですね。
上田(清)分科員 それは、住民票もつけろというような話になっちゃうんですか。
近藤参考人 住民票をつける場合もございます、親子で入るとかそういう場合に住民票をつけるということはございますけれども、一般のケースはやっておりません。
上田(清)分科員 これは当然入居者から住民票を集めなくちゃいけないわけですね。だから、お願いしなくちゃいけないんですが、拒否をされたりするとき、どうするんですか。
近藤参考人 したがって、最後まで、そこまで固執はいたしておりません。
上田(清)分科員 住民票がだめなら表札とか電話番号でもいいから持ってこいとか、そういうことは言ったりしませんか。
近藤参考人 そういうことが最近の事例であったかに聞いております。私どもとして、それが妥当な方法か、時間的な余裕があってやってもらったものか、その辺については疑義がありますので、その辺も十分考えた上で対処する必要がある、こういうふうに考えております。
上田(清)分科員 そういう話があった。
近藤参考人 最近そういう話があった、こういうふうに聞いております。
上田(清)分科員 大臣、これは総務委員会ではありませんが、確かに、入居者の確認ということは年金資金運用基金の健全な運営のために必要なことではあるとは思いますが、どちらかといえば、貸付先の財務内容の確認がメーンであって、貸付先がどういう人たちに買っていただいているかとか入居していただいているかということを追っかけるのは、例えて言えば、普通の市中銀行が仮に何とか信販とかというノンバンクに貸し付けをする、そしてそのノンバンクが、住宅ローンでも構いませんが、貸し付けをする、その住宅ローンの借り手の個人の情報を市中銀行に連絡したりあるいは資料を提出したりするのは、これは場合によっては個人のプライバシーの侵害になるんではないかなというふうに私は思いますが、大臣、いかが思われますか。
坂口国務大臣 今お話を聞いておりまして、借り貸しの相手のお名前を聞いたりとか住所を聞くのは当然でございますけれども、先の先まで、その先それをどうこうというところまで余り追っかけるということになりますと、それはいろいろ問題が出てくる場合も私はあるというふうに思っております。
 したがいまして、そこは節度を持ってやらないといけないというふうに思います。
上田(清)分科員 近藤理事長に最後に確認ですが、要するに、行き過ぎた点があった、こういう理解でよろしいんですか。
近藤参考人 若干経緯を申し上げますと、これは、被保険者の本人が入居しているというものを確認はしなきゃいかぬわけでございます。それから、入居者は、担保物権つきの分譲住宅を取得するわけでございまして、担保を提供する方であるわけでございまして、この方がどういう方かということを我々は当然知っている必要があると思っております。
 したがいまして、表札の写真とか、それよりは、現地に行ってお宅を訪問してやった方がいいんじゃないか、こういう考えもあるわけでございまして、余りいい方法ではなかった。それと、時間的な制約のないままに、法人に過剰な負担をかけた、これについては好ましくない。したがって、時間をかけてある程度きちっとした調査をするというのは、当然しかるべきではないか、こういうふうに考えております。
上田(清)分科員 御承知のとおり、最近では、自治会なんかでも、名簿をつくる際には電話番号も記載しないぐらい個人情報についてうるさくなってきておりますので、住民票がとれないなら表札の写真でも持ってこいとか電話番号でもいいとか、仮に基金そのものが入居者の実態を調べるにしても、最近ではオートロックとかもありまして、下手に入ったりしていると不法侵入罪で訴えられることもありますので、その辺もなかなか確認が大変なのかもしれませんが、やはり注意をしていただきたいということを最後に申し添えて、このことがもし世間的に明るみになれば、もう週刊誌の記者だとか情報誌の関係なんというのは喜んで理事長のところへ殺到すると思いますので、注意をさせていただきたいと思います。どうぞ、御退室ください。
 それじゃ、例によりまして、ずっと特別会計を追っかけておりますので、少し、労働保険特別会計の雇用勘定のところでございます。
 必ずしも十分通告していたかどうか、ちょっと確認もわかりませんが、事務取扱費における庁費というところで、被保険者資格の得喪確認費というのと雇用動向等調査費というのを項目で見つけまして、こういうのが庁費なのかなというふうな感じが私はしておりまして、金額は、全体の中では大したことないという話もあるかもしれませんが、二十三億一千九百万、一億一千万、こういう数字でございますけれども、もともと庁費の考え方というのは、これはぜひ会計検査院も聞いていただきたいのですが、財務省ともしっかりまた打ち合わせしてもらいたいのです。財務省の方々にも私も申し上げております。何か、各省庁によってどうも相当ずるずるになってきているのではないかなというふうな気がいたします。
 私は、一般的に言えば光熱費だとかあるいは雑費的な扱いではないかというふうに思いますが、その中には調査費があったり、あるいは一億もするようなコンピューターの購入費になっていたり、そういうものがどんどんそれぞれの省庁で入ってきておりますので、この辺は、政策を遂行する部門なら部門で、きちっとそういうところで支出ができるわけですから、当然そういうところに持っていくべきではないかなというふうに思いますが、特に、雇用動向等調査費なんといったら、いろいろな調査費や研究費、委託費が出ているわけですから、そういう項目でも出せるんではなかろうかと思います。それとも何か名前だけ調査費ということになっていますが中身は違うとか、そういうことでもあるんでしょうか。まず、この点を。
戸苅政府参考人 庁費は、確かに先生おっしゃるように、それぞれの官署の事務遂行上必要なものの取得ですとか維持ですとか、あるいは役務の調達等に充てる経費、こういうことだと思います。
 私ども、どういったものを庁費に充てているかということにつきましては、今先生からもお話がありましたが、毎年度、財務省から歳出予算目の区分表を示されておりまして、その中で、庁費の中にはこういったものが入るということで、それに基づいてやっているところでございます。
 庁費の中には、確かに自動車の購入費、これが備品費に入っていたり、あるいは調査のための賃金職員、調査員の賃金が入っていたり、いろいろなものが入っているわけでございます。
 確かに、先生おっしゃるように、額が大きいじゃないかということでございますが、雇用動向等調査費は、これは間違いなく雇用動向調査等のための経費でありまして、中身といたしましては、今申し上げました調査員の賃金ですとか、あるいは調査票の印刷費、あるいは報告書の印刷費、そういったものが内容になってございます。
上田(清)分科員 ちょっと、ここで論争してもしょうがないので、後で少しゆっくりやっていきたいと思います。
 そこで、雇用勘定における補助金、交付金、委託費というので、ずっと見ましたら、職業講習等委託費というのが三十団体にずっと出されているわけでありまして、ちょっと軽く読み上げていけば、日本労働研究機構、職業講習等委託費二千四百万というような感じで、日本ILO協会、同じ項目です、二千五百万。日中技能者交流センター、三千二百万。それから全国中小企業勤労者福祉サービスセンター、四千五百万。勤労者リフレッシュ事業振興財団、二億三千四百万。二十一世紀職業財団、四億八千四百万。女性労働協会、三億八千万。
 こんな調子で三十の団体に職業講習委託費というのが出されていまして、総計、多分二、三百億ぐらいになるんじゃないかなと思うのですが、とかく雇用のミスマッチが声高に言われている中で、こういう三十の団体に職業講習委託費という形で毎年毎年出されている部分の効果のほどというのは、それぞれ筋目が違う講習もあるのかもしれませんが、何かこの財団、社団を助けるためにやっているんじゃないか、そういう嫌いがなきにしもあらずと私は思っておりますが、そういうことはありませんか。
戸苅政府参考人 ただいま先生の方からお話がありました各種の委託費でありますけれども、これは雇用保険の三事業によります委託費でありまして、労働者の雇用の安定ですとか、あるいは職業能力の開発ですとか、あるいは就職支援、福利厚生等のための福祉の向上といった事業でございます。
 国でやるのが本来である部分が多いわけでありますけれども、物によっては、国が直接実施するよりも、ノウハウを持っている民間、それから今お話しの各種の法人、こういったところに任せた方が効率的あるいは効果的であるということが考えられるわけで、そういったことで各種の法人に事業を委託しているということでございます。
 ただ、雇用保険、本体給付ももとよりでありますけれども、三事業も非常に厳しい財政事情だということで、委託費自身は毎年度毎年度厳しく見直し、予算の圧縮を図っているところでありますけれども、やはり雇用の問題というのが非常に多様化してきたということもあって、委託する団体というものがやや増加傾向にあるということは否めないわけでありまして、先生お話しのように、効果の上がっていないものはきちんと見直しをしていくということが重要だろうというふうに思っております。
上田(清)分科員 ぜひ、大臣におかれましても、とにかく団体の数が多くて、講習を委託する団体が何でこんなにたくさんあるのかなというふうに私は思います。
 そこで、厚生保険特別会計の中に交際費というのが出てきまして、業務勘定、業務取扱費における交際費、金額は予算の中では本当に些少であります、五十八万九千円という。これは何か、説明を求めたら、社会保険庁長官の葬祭時の香典等という支出だということを回答いただいておりますが、他の特別会計のどの項目を見ても、交際費という項目がないんですよ。もし社会保険庁長官に何か葬式のときの香典料が必要だということであれば、水産庁長官にも上げなくちゃいけないだろうし、国税庁長官にも上げなくちゃいけないだろうし、食糧庁長官にも上げなくちゃいけない、特許庁長官にも上げなくちゃいけない、こういう話になりますけれども、これはいかん。聞きます。どうですか。
伍藤政府参考人 そういう趣旨で交際費を計上しておることは事実だと思いますが、他の制度との整合性、そういったものについてはよく検討してみたいと思います。
上田(清)分科員 会計検査院、おられますか。どういうふうにこういうのを見ていらっしゃるんですか。
大濱会計検査院当局者 ただいまの話は今初めて伺ったところでございますので、今後、その趣旨等について調べてみたいというふうに思っております。
上田(清)分科員 大臣、聞かれましたように、実は、本当に交際費という項目、どこにもなかったんです。すべて、三十二の特別会計のどの勘定にもなかった。しかし、ここだけあった。金額はある意味じゃ少ないのかもしれませんけれども、こういう話であればすべての長官に出さなくちゃいけないような話になっちゃいますから、ちょっと、やはりこれはおかしな話だなというふうに思います。
 時間はもうなくなりましたけれども、とにかく厚生労働省も、総じて言えば、大方予算の半分が、すぐ、もうほとんど特別会計の中に入っておりまして、そしてまたこの特別会計の中でも、大方三割ぐらいが特殊法人、独立行政法人それから公益法人に、補給金、補助金、委託費、調査費、名前はともかく、流れておりまして、本体で余り使っていない。もちろん本体で使わないということもまた大事なことかもしれませんが、本当にそういうところに流すだけの理由があるのかどうか。とことん大臣の強力なリーダーシップで再度ぜひ見ていただきたいと思います。
 保険料が値上がることばかりで、国民の負担がふえることばかりで、実はそのお金が役所のOBの皆さんを養っていたり、国家公務員試験を受けないで、ある意味では準じる団体に縁故者が採用されていて、その人たちを養うためにもし保険料が負担されているとなれば、国民はこれは怒ると思いますので、十分注意をしていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて上田清司君の質疑は終了いたしました。
 次に、細野豪志君。
    〔主査退席、森田(健)主査代理着席〕
細野分科員 大臣、長時間の御答弁どうもお疲れさまでございます。
 私からは、きょうは主に三点お伺いしたいことがございます。通告に従ってやってまいりますので、できるだけ簡潔に御答弁をいただければというふうに思います。
 一点目が、予算委員会でも何度か私が取り上げてまいりました、八戸の医療技術専門学校でございますけれども、これは予算委員会で質疑をしていたときは三月でございましたので、この学校、ことしの四月からオープンということになりました。
 ちょっと調べてみたんですけれども、現在のところ、定員が七十名のところに六十二名の方が入学をされているということでございまして、残念ながら、私が懸念をしたとおり、定員割れをしているという状況にございます。
 中身もちょっと聞いてみたんですけれども、そもそもこれは、一たん県の方としては、必ずしも必要性がないんじゃないか、そういう進達をしていたにもかかわらず、さまざまなやりとりの中で、東北地方全体で見ると理学療法士であるとかそういったものの需要はあるんだということで最終的につくったというふうに聞いておるんですが、残念ながら、応募者は、東北地方全体にそれが広がっているというよりは、八戸の周辺の方が来ているというような状況なんですね。
 まず政府委員の方にお伺いをしたいんですが、これは四億円補助金を出しているわけですけれども、こういうものに対して、採算性の問題であるとか定員割れの問題にどういうスタンスで、今までもかかわってきたし、これからもかかわっていこうとされているのか、この辺のことをちょっと御答弁をいただきたいんです。
篠崎政府参考人 理学療法士あるいは作業療法士などの養成施設につきましては、法令に基づきまして、毎年度開始後二カ月以内に、都道府県知事経由で、私ども厚生労働大臣に教育の実施状況などについて報告をしていただくことになっております。その際、この学校の場合はまだできたばかりでございますが、あわせて過去三年間の損益計算書の提出を求めて、養成施設の経営状況を確認しているところでございます。
 これは、仮に養成施設の経営が悪化していることが明らかになった場合、一番問題なのは在学生に対してでございまして、不利益を及ぼす可能性もございますので、そういうことがないように、万が一こういう場合には、養成施設に対して改善計画の提出を求めるなどして必要な指導を行う、このようになっております。
細野分科員 ただいま局長の方から、今後の学校のチェックの仕方について御答弁があったんですが、大臣、私は、過去の経緯をずっと見てきた立場で、もう少し補助金を出すときに厳密にチェックをしていく必要があるんじゃないかというふうに思うんです。予算委員会の中では、それはあくまで県の方がやっているんですというお話を大臣はされましたけれども、四億円出してこれが果たして、適切に運営をされて、しかも地域にも貢献をできるのならそれで結構なんですけれども、今の局長の御答弁を聞いていると、あくまでこれからチェックしますというふうに聞こえるんですが、その辺、どうでしょうか、これから補助金を出すときに、何億円単位の補助金ですから、事前のチェックを厚生労働省としてもやっていくということをもう少し積極的にお考えをいただけないでしょうか。
坂口国務大臣 事前の評価というのは、どの事業をやるにいたしましても、大変大事なことでございます。
 事前の評価をきちんとやるということは、こうした学校をつくるにいたしましても、当然のことだというふうに思います。もちろん、やってみなきゃわからぬというところもございますけれども、しかし、それぞれの環境において、それがその地域においてどれだけ必要性のあるものかということの事前の評価というのは当然できるわけでございますし、中には厳しく数値目標を明確にしろということもあるわけでございますから、そうしたことをこれから明確にしていきたいというふうに思います。
細野分科員 繰り返しになりますけれども、県内では必ずしも必要がないという評価は一回あったんですね。それを覆してつくってしまったというこの問題。このケースに関しては、厚生労働省とともに、会計検査院の方にもきちっとこれからチェックをしてくださいということをお願いをして、やりますという御答弁もいただいておりますので、それもあわせてお願いをしておきたいというふうに思います。
 次の問題に移ってまいりたいと思います。社会保険病院についてでございます。
 これは昨年の十二月二十五日に、「社会保険病院の在り方の見直しについて」というのが「医療保険制度の運営効率化について」ということで出ております。ここでは、社会保険病院の経営が非常に悪化をしていて、効率化を行わなければならないということがおおむね書かれておって、この部分については私もおおむね賛成の部分があるんですが、そもそも、なぜ社会保険病院の経営が悪化をしたのか、こういう報告書が出てきたのかという基本的な問題認識、ここをまず大臣の方からお伺いをしたいんです。
坂口国務大臣 社会保険病院につきましては、これがそれぞれの地域でできるときには、私はそれなりの理由があってできたというふうに思います。しかし、月日がたっておりますうちに、その周辺の環境がいろいろと変わってきたというところも、正直言ってあるわけでございます。地域によりましては必ずしもその必要性のないところも出てきておりますし、必要であるけれども、しかしなかなか採算がとれないというところも私はあると思います。
 ですから、採算がとれていないからすべてだめだというわけにはいかない。採算はとれていないけれども、その地域としてはこの病院がどうしてもやはり必要だというところもあり得るというふうに思っております。それから、採算はとれてはいるけれども、しかし、公的な病院としての機能を全く果たしていないというようなことではいけませんから、そこは果たしていただかなければならないというふうに思っております。
 そもそも、この社会保険病院の問題は二つの理由があっていろいろ問題視されております。
 一つは、三割自己負担を国民の皆さん方にお願いをしなければならない、こういう状況の中で、赤字を常に出している病院に、それが社会保険料そのものから支払われている、あるいはまた、ほかの国立病院よりも職員の給料が高いというようなことがあるにもかかわらず、それがそのままになっているといったようなことが指摘をされまして、現在のこの医療保険の厳しさの中で社会保険病院のことも指摘をされているということが一つでございます。
 それからもう一つは、社会保険病院が一つの全社連というところに、全部そこにゆだねられている。これは少し問題がありはしないか、もう少し幾つかのところにこの社会保険病院をお願いして、そして競争原理が働くようにしてはどうか、こういう二つの理由からいろいろ指摘をされているというふうに理解をいたしているところでございます。
細野分科員 ただいま大臣から、全社連そのものが主体的に経営を行うということについて、これから少し考えていかなければならないという御答弁があったんですが、私もこの全社連という組織自体をそれほど詳しく知っているわけではないんですけれども、資料などをいろいろ読んでみますと、要するに、社会保険病院は全社連が一元的にこれをやっているということになっているんです。
 この全社連という組織そのものの運営のあり方、これは過去に問題があるというふうに、そもそも厚生労働省としては認識をされているのかどうか。これはちょっと、政府委員の方でも結構ですが、その辺のことについて、現時点でのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
伍藤政府参考人 全社連で五十病院を経営するという形になったことにつきましては、歴史的な経過から、そういう意義があるということで、このような形で運営をしておるところでございます。
 全体としては、戦後の経営のあり方としては、かなり、病院の運営に安定性をもたらすという点では、それなりのメリットがあったのではないかというふうに思っておりますが、今、社会保険病院のあり方について、いろいろ問題視なり議論をされておりますのは、全社連が個別の病院に、共同事業という形で、機器の購入費あるいは運営資金をいろいろ貸し付けておる、そういった共同事業がかなり肥大化をしてきておるということが問題視をされておるわけでありまして、事業全体としての安定的な運営という面では、評価された方法も、それが行き過ぎになりますと、そういったことがかえって個々の病院の経営の自律性とか経営努力といったものを阻害するんではないか。こういったことが今議論をされておるわけでございます。
細野分科員 私も、冒頭大臣に御答弁いただいたように、社会保険病院が持っている公的な役割であるとか地域の特性をきちっと考えた中で、これからの問題を考えていかにゃいかぬというふうに思うんですね。
 ただ、その際、この報告書、「運営効率化について」という紙を見ていて感じるのは、全社連自体の問題にもやはりきちっとメスを入れていかにゃいかぬのじゃないか。本当に必要なものであれば、それは残していくという選択もあるのかもしれぬけれども、組織のあり方なり規模なり、役割なんかが縮小していけば当然それなりの形というのがあり得るんでしょうから、そこがちょっと抜けているのかなという感じがしたものですから、先ほどのような質問をいたしました。
 大臣に引き続いて伺っていきたいのが、先ほど、公的な役割であるとか地域の特性に応じて、これから社会保険病院を考えていくんだというお話がございました。
 いろいろな社会保険病院をちょっと調べてみたんですけれども、市民病院と役割がダブっているようなところ、国立病院と役割がダブっているようなところ、そういう公的な病院でダブっているようなところも確かに見られる一方で、例えば、血液の透析を一元的にその地域で担っているであるとか、救急医療をほとんどここで受け入れているようなケースというのもやはり見られるわけですね。
 この辺が公的な役割なり地域の特性ということに当てはまるのかというふうに思うんですが、これから経営がすべてのところでうまくいく、いかないという問題が出てきて、それがうまくいけば一番いいわけですけれども、必ずしもうまくいかないようなケースも場合によっては出てくるかもしれないという状況の中で、その辺をもう少し、どういう地域の特性をこれから考慮に入れようとされているのか。
 この辺については基本的な方向性をぜひこの機会に示していただければというふうに思うんですが、これは大臣、大体の方向だけでも結構ですので、少しお答えいただけないでしょうか。
坂口国務大臣 具体的に事務方と検討しておるわけではございませんけれども、先ほど申しましたように、つくりましたときにはそれなりの理由があってそれぞれの地域につくった、これはもう間違いないというふうに思っています。
 それで、一つはやはり政策医療。国立病院は政策医療を中心にやっておりますが、社会保険病院も、一応公的病院と言われる以上、やはり政策的な医療というものをこれはある程度負担していただかなければならない。それぞれの地域におきます、公立病院があるところはよろしいですけれども、国立病院がないといったようなところにつきましては、そうしたことに対するある程度の補助的な役割を果たしていただかなきゃならないというふうに思っております。それが一つ。
 それからもう一つは、やはり地域医療に対する貢献だというふうに思います。それぞれの地域におきましていろいろの医療機関があったといたしましても、その中で、特異な分野を担当している、ほかの病院に追従を許さない、ほかの病院はそうしたことがなかなかできないといったようなところがあります場合には、経営的に非常に厳しい中であったとしても、私はやはりそれなりの評価をしなければならないのではないかというふうに思っております。
 五十四ありますこの機関の中で、これは、例えば赤十字だとか済生会だとかいうのも同じでございますが、それぞれの機関で何パーセントずつかは出していただいて、そして、それを中央でコントロールをして、特に厳しいようなところにはそれを配分したり、こういったことも行っているわけでございますから、ある程度は、社会保険病院の間の補助といいますか、社会保険病院間のそうしたお互いの助け合いといったことも、その一つの構造としては今後も維持をしていくべきだというふうに思っております。
 したがいまして、先ほど申しましたような理由を幾つか念頭に置きながら、そして、これから整理をしていく病院、統合をすべき病院、あるいはまた残していく病院、そうしたものを決めていきたいというふうに思っているところでございます。
細野分科員 若干くどいようなんですけれども、統廃合の可能性というのは、社会保険病院については十分あると私も考えます。
 ただ、その際に、先ほど私が例に挙げたような地域医療の現状、それを、例えば採算がとれないから赤字だというのですぱっと切り捨てるような話では、これは性質としてはないんじゃないかということを申し上げて、ぜひ確認をしていただきたいなという趣旨なんですが、その辺、大臣、いかがでしょうか。もう一度改めてお願いします。
坂口国務大臣 先ほども申しましたとおり、地域医療に十分に貢献をしている、いわゆる他をもってかえがたい存在になっているといったような場合におきましては、その病院に多少の赤字があったといたしましても、全体でそれはバックアップをしていくべきだというふうに思っております。
細野分科員 政府委員の方にも聞きかけて聞かなかったものですから、最終的に、もう少しだけ詳しく伺いたいんですが、地域医療の必要性というのは、何かその具体的な指標というのはもう用意されているんでしょうか。もし、何か判断基準があれば、ぜひ教えてください。
伍藤政府参考人 現在進めておりますのは、まず十五年度から三年間、各病院でぎりぎりの経営努力をしていただく、その上で整理合理化計画をつくる、こういう手順で今進めておるわけでございまして、この間に、私どもとしては、整理合理化計画を具体的につくる際に、どういった点で地域医療の観点から必要だ、必要度がどの程度高いのかといったことをこれから基準づくりを進めてまいりたいということで、現時点では白紙の状態でありますが、鋭意検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
細野分科員 先ほど、大臣の方から地域医療の特性については十分考慮するというお話がございましたので、それを踏まえて、これからぜひできるだけ前向きな検討にしていただきたいな、そんなふうに思います。
 それではまた話題を変えまして、今度は打って変わるんですが、温泉の問題をやらせていただきたいと思います。
 大臣とこうしてやりとりをするのはもう四回目でございますけれども、毎回温泉のことを聞いておるわけですが、これは、温泉利用型健康増進施設のあり方検討会というのを、厚生労働省の中で随分と、ここ一年以上にわたって行っていただいたということを聞いております。その中で、医療費の控除の対象として温泉を積極的に利用しよう、そういう施設として設けられた温泉利用型健康増進施設の要件を少し緩和しようという報告が出ております。
 これは、従来私が再三要望してきたところなんですが、例えばプールであるとか体育館であるとか、温泉とは必ずしも関係ないような施設がたくさん要件として並んでいて、運動型施設としてはそれでいいんですが、温泉で健康を取り戻すという意味においては、必ずしもそんな施設は必要ないんじゃないかということを申し上げてきた中で、こういう検討会ができて、こういう報告ができて、私自身は大変前向きに評価をしておるんです。今のところ、この施設の要件として挙がっているのが十項目の基準ということでございますが、まだ確定していないと聞いています。この部分は、基本的にはこの方向でいくという理解でよろしいんでしょうか。
高原政府参考人 お話ございました温泉を中心とする温泉利用型健康増進施設のあり方検討会におきまして、幾つかの温泉地において実証事業を行い、報告書が取りまとめられました。これに基づき、御案内のとおり、普及型温泉利用型健康増進施設に関する新しい基準案を公表しました。現在、パブリックコメントを行ったところでございます。
 生活指導を行うための設備、応急処置を行うための設備、医療機関との連携、生活指導を適切に行うというふうなことでございますが、パブリックコメントによる意見の受け付け期間は四月十八日に終了いたしました。基準案を大きく修正すべきであるという意見は提出されておりませんので、基本的には、この基準案をもとに粛々と作業を進めまして、成案を得たいと考えております。
細野分科員 実証実験を幾つかされたというのは、私も現場を知っているものですから話はいろいろ聞いているんですけれども、新しく三類型のものができたというふうに理解をしておるんですが、基本的には、実証実験をしたところはその三類型として新しく基準ができればすぐにスタートする、そういう話になるんでしょうか。これは通告していないのでちょっと申しわけないんですが、お答えいただければお願いします。
高原政府参考人 三類型につきまして、類型1として山形県、類型2として静岡県の三カ所、類型3として長野県、山形県、鹿児島県ということにいたしまして、そういうことでやりまして、結果を得たところでございます。
 具体的にまだ基準案が定まっているという条件ではございませんが、こういう実証をしたところ、対象となったところをもとにして基準案をつくったわけでございますので、当然その成果は反映されるものと考えております。
細野分科員 この報告書自体は私は前向きに受け取っているんですが、どうしても今後の検討課題として残っている部分があり、この部分についてはもう少し前向きに検討いただけないかな、そんなふうに厚生労働省の皆さんにお願いをしておきたいということがございます。
 それは、この実証実験がなされて、三類型、新しく温泉利用型健康増進施設としてできるという方向性では決まったそうですけれども、温泉と医学的効果の因果関係を示す科学的知見は見出せなかった、ここは検討課題である、そういう書きぶりになっているんですね。
 確かに、温泉と健康をどう結びつけるかというのは、これはずっとこのテーマにおける一つの大きな課題ということになってきているわけですけれども、実証実験を実際にやっている長野県の北御牧村、ここで実際に温泉療養に取り組んでいる先生から私はいろいろお話を伺いました。施設のスライドなども見せていただいて、かなり科学的にやられているという感を非常に強くいたしました。
 実際に医療費を見ておると、老人医療費が五年間でこの北御牧村では一人平均六万五千円から五万五千円へと一五%削減されているんですね。これはやはり、あの先生方がかなり熱意を持って丁寧にやられたという結果ではあるんですけれども、これ自身は極めて科学的に、しかも結果を出しているということなんですね。
 あくまで、三類型すべてにまだ効果が検証できないということでこういう報告書が出たという理解を私はしておりますが、実際にこういう施設を新しく認めていくわけですので、この温泉と健康の問題については前向きにとらえて、これからもっと研究をして、しかるべく、これは医療費が総額で下がればいいわけですから、温泉が医療費控除の対象としてどうなんだというあたりについてはより深い研究がなされるべきだと私は考えます。
 これはまず政府委員の方に伺いますが、厚生労働省の見解はいかがでしょうか。
高原政府参考人 医学的な面における健康の改善効果につきましては、一つは血液検査というふうなものを用いて、これは何とか客観化しようとしてやったわけでございますが、余りはかばかしい成果は出ておりません。しかしながら、心理状況調査、主観的な面におきます健康の改善効果は、非常にといいますか、相当改善されたということも出ております。
 医療費のどの要素にきいたのかということは、これだけからはちょっと判明できませんが、やはり何かぐあいが悪いなというふうな心理的な状況から患者さんは受療なさるということを考えますと、御指摘の事例について、温泉を利用した健康づくりの活動がいわゆる医学的な効果を介して医療費の削減をもたらしたということまでは現在言えないとは思うんですが、そういうふうな結果が出たことも事実でございますし、その心理状況調査の結果で、主観的な面におきます満足度、プロファイル・オブ・ムードステータスというふうな心理検査によりまして、効果があるというふうなところも出ておるということでございます。
 そういうこともございますので、なお引き続きまして実証実験を続けてまいりたいというふうに考えております。
細野分科員 私も一生懸命報告書を読みまして、難しいなと思いながらも、ああ、なるほどなと思う部分もありながら読みました。
 ただ、あの実証実験も、限られたサンプルで、しかも極めて限られた期間でやっているんですね。北御牧村が注目すべきは、一定の方を集めて継続的にやっていて、毎年その成果を検証しているから、やはりこの一五%というすばらしい成果が出ているんだと思うんですよ。ですから、この実証実験は、一回で終わって、これでとりあえずそういうお墨つきを与えましたという、そんなレベルでとどまっては非常にもったいない話ですので、引き続いて医療と温泉の関係についてぜひ御検討いただきたいと思うんです。
 そうすると、ことしもまたその実証実験を引き続きやる、そんな理解でよろしいんですか。先ほどの最後にちょっと御答弁いただきましたが、それを確認させてください。
高原政府参考人 これは研究者等とも相談してみなければなりませんし、同じような、血液で評価をするということが適当なのかどうかということも含めまして方法論等も練り直しまして、どうすれば医療費に結びつくような、ないしは心理的な満足度、健康度に結びつくような評価ができるのかということを検討させていただきたいと思います。
細野分科員 若干しつこいようなんですが、私は温泉協会の方とも温泉学会の方ともよくいろいろこういう話をしていまして、ぜひやりたいという要望はあるんですね。温泉地域なり温泉にかかわる人のエゴというのではなくて、医療で効果がある、医療費のマイナスになるということになると、これは社会全体にとって効果がある話ですので、ぜひ早期に着手していただきたいと思うんですが、では、すぐ着手される、そういう理解でよろしいわけですか。
高原政府参考人 一つは、厚生科学研究費の中で公募課題の一つとして検討させていただきたいと思っております。
 したがいまして、これは方法論等をもって研究グループで応募していただきまして、それはある種のコンペティションにはなるわけでございますが、対象とする余裕は十分あると考えております。
細野分科員 では、ことしまた公募をされて、その対象になる可能性がある、そういう話ですね。最後に済みません、もう一度。
高原政府参考人 そういうことでございます。血液で評価をするというのは余り効果が出ておりませんし、ちょっと医療費の下がるメカニズムも違ったルートではないかと。これは大臣も非常にこの領域に造詣が深うございますので、御指導いただきまして、適切に対処したいと考えております。
細野分科員 済みません、しつこいようなんですが、最後に一つだけ。
 その実験というのも、この温泉利用型健康増進施設を使ってやろうというお考えなのか、そこは新しく施設を開拓してまた実験を新たにされようというおつもりなのか、その辺はいかがなんでしょうか。
高原政府参考人 これは公募いたしまして、どこでやるのか、それは研究計画、研究者ともオープンで検討させていただきたいと思っております。
細野分科員 時間もなくなってまいりましたので、大臣にお伺いをしたいんですけれども、以前この議論をしている中で、大臣がドイツの例を引き合いに出して、非常に前向きな御答弁をいただいたことがございました。温泉に一マルク使って、二マルクの医療費を削ったドイツの例もあるというお話をされたのをすごく鮮明に覚えているんですが、こういうものは、やはり研究を継続して、成果が出て、反映していく、こういう連続性の問題だと思うんですよね。
 今回、比較的前向きな報告書が出たわけですので、ぜひこれを生かしていただいて、先ほど局長からもこれからまた研究をしていきたいというお話がございましたが、大臣もそこの部分でぜひ前向きにとらまえてやっていただきたいというふうに思うんですが、ぜひ前向きな御答弁をお願いできますでしょうか。
坂口国務大臣 前回にもお答えを申し上げましたけれども、ドイツは百年の歴史を持っております。これで医療費が非常に削減できるというふうに事実言っておりますし、その療法を行うに当たりましては、医師会そのものが、いろいろの勉強会と申しますか、勉強をさせて資格を与えて、そしてその人たちだけにやらせているという、非常に科学的な証明とともにそうしたことも行っているわけでありまして、やはり何らかの効果はあるんだろうと私も思うんです。ただ、それをどういう評価の仕方をするかということではないかというふうに思っております。
 先ほど局長からの答弁では、生化学的な変化というのはなかなかとらえにくいということでございますが、ドイツの場合にも、どちらかといえば機能的な変化、いわゆる生理学的な変化というものを非常に重視しているように思っております。そうしたことも念頭に置きながら、これから進められるということを期待いたしておりますし、できるだけ努力したいと思う次第でございます。
細野分科員 大臣はこの部分で非常に、当然お医者様として経験もお持ちですし、専門家でいらっしゃいますので、できるだけ長くやっていただければなという思いと政権をとれればなという思いと半々なわけでございますけれども、ぜひ前向きに取り組んでいただきますことをお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
森田(健)主査代理 これにて細野豪志君の質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)分科員 大臣、長時間大変御苦労さまでございます。
 厚生労働関係の最後になりました。三月の時点でも大臣に幾つか御質問を差し上げておりますが、当時、予算委員会がおおむね視界が見え、少子高齢化対策の推進ということで、平成十五年度予算をどうしていくかという時期だったというふうに記憶をしております。その後、少子高齢化の問題というのは、一つの、人口のあり方、年金や保険料というあり方だけではなく、今後の日本経済、社会の仕組みそのものに大きな変化をもたらすというふうにいろいろな形で学識経験者の皆さんを中心に議論が出ているのは、大臣がもう既に御承知のとおりだというふうに思っています。
 冒頭、平成十五年度予算の中では、少子化対策の推進と子育て支援の新たな展開、そして多様な働き方を目指すということで、現状の少子化をどうとらえ、これからどうしていくのか、おおよその方向性が出ているという部分は、初めてのことで多としたいと思っているんですが、私は、今後、次世代の育成を支援する少子化対策の推進ということにおいては、冒頭も御指摘したように、これからこのまま少子高齢化がさらに進展をし、人口構成が変化をする、それを所与として経済政策を運営していくという、その施策全体のあり方というものも考えなければいけません。確かに一兆円を超す少子化対策ということでおまとめになっておりますが、内容を見ると、まだまだ従来型のいろいろな施策をとりあえずまとめたという点も正直言って否めないのではないかというふうに思っています。
 いろいろな厚生労働省の外部機関の研究所も含めて、人口構造はほぼ当たるような形で、ある意味では天気予報でも当たるのかもしれませんが、そういうものにおいて、確かにこの一兆円、私は後でも御指摘させていただきますが、まだまだ不十分だという点も含めて、ある程度の目標値というものが取り入れられなければいけないのではないかなという感じも持っております。
 確かに、子供という点では、両性の合意であるとか家族の問題であるとか、いろいろな数値的にはなじまない面もあると思うんですが、それはもう一歩抜け出してみる時代、先ほど御指摘をさせていただいたようなもろもろのこれからのあり方を含めて、待ったなしだという点も含めて、その目標数値も含めて、きちっとした少子化対策に取り組むという点について、厚生労働省としてどんなお考えを持っておられるでしょうか。
岩田政府参考人 少子化対策はこれまで、子供を産み育てたいというふうに思っている方たちが産み育てることができる環境をつくっていくということを基本的な考え方として取り組んでまいりました。先生御提言の数値目標についてでございますけれども、例えば保育所行政については、待機児童ゼロ作戦という、閣議決定で三年間で十五万人の受け入れ増を図るという数値目標を持っておりますし、それ以外の分野についても、新エンゼルプランで多数の数値目標を掲げて取り組んでまいってきているところでございます。
 しかしながら、例えば子供を何人産むか、出生数の増加数などを数値目標にするというようなことについては、幾つか大変真剣に検討すべき問題があるように思います。
 例えば、今委員もおっしゃいましたけれども、子供を産み育てるということは個々人の生き方、価値観の問題であるという面もございますし、また、そもそも子育て支援対策というのは、子供の数だけを問題にするということではなくて、心身ともに子供が健やかに育つような、いわば子育てができる環境の質の問題でございまして、なかなか数値的に置きかえることが難しいという面もございます。さらには、仮に出生数を数値目標とした場合についてでございますが、保育サービスなどの個々の施策をどのくらいやるかということと出生数が明確な形で因果関係としてとらえ切れないという問題もございます。
 こういった問題がありますので、出生数あるいはそれに関連した数値を政策目標として掲げるというのは、なかなか難しい面を含んでいるのではないかというふうに考えております。
後藤(斎)分科員 確かに、今局長がお答えになったとおりの部分は、この問題についてはたくさんあるというふうに私自身も思っています。さはさりながら、社会保障全体という部分で考えたときに、一方で少子高齢化、この両方が、少子化、高齢化が超スピードで進んでいるという原点を考えるときに、これは現在でもたくさんの問題を抱えている年金制度をどういうふうに、二十一世紀の初頭に、二十一世紀全体を踏まえてこれからどう構築をするかという問題にももちろんかかっている部分だと思うんです。
 いろいろな試算を厚生労働省さんが出されておりますし、関係をする学者の皆さんからもいろいろな数字が出ておりますが、一つ厚生年金という制度で考えてみますと、いわゆる世代間のいろいろな負担、給付のあり方ということで、現在大体七十歳くらいの方だと、保険料をお納めになった方の給付、要するに給付と負担の関係を見ると、これを倍率で見るのはいささか不適当な部分もあるかもしれませんがお許しをいただくと、今、七十歳を超えようとしている方は、保険料と給付の関係を見ると、ほぼ十倍。そして、現在小学校に上がるくらいから中学校に入るくらいの子供たちであると、ほぼ一・五倍。これは税金投入というのがありますからそんな形になる。そういうふうに、この世代間の給付という問題を考えるにも、大きな問題を生じてくるというふうにも思っています。
 もう少しお話をさせていただくと、この厚生年金制度における世代間のいろいろな数字を見るときに、経済的要素の前提というものが、物価上昇率が一・五%、運用利回りが四%、そして賃金上昇が二・五%という、ある意味では今大変深刻な、一方の経済政策でもありますデフレという部分がない前提で置きかえているので、年金制度もこれからもっともっと苦しくなるということで、ますます加入をしたくないという若い方がふえるというのが現状だと思います。
 大臣、先ほど御指摘をさせていただいた少子化問題と年金の世代間の給付の問題との関係を含めて、あわせて、もし御見解がありましたら、お答えをいただければというふうに思います。
坂口国務大臣 先ほどお話ございましたように、少子化対策プラスワンというのを取りまとめさせていただきまして、四つの重点を挙げましたが、その中で特に、地域における子育ての支援と、それから男性を含めた働き方の見直し、この二つが一番大きいんだろうというふうに思っております。地域における子育ての支援の方は、まだ十分とは言えませんけれども、しかし、かなり緒についてきたというふうに思っておりますが、男性を含めた働き方の見直しというのが全然進んでいないと私は思っています、率直に言って。
 これは日本の景気動向等も影響しているわけでございますが、確かに、他の諸国に比較をして、労働生産性を上げていくという努力をしなきゃならないし、それをする一方において、労働時間というものをかなり圧縮していくと申しますか、やはり働き方にゆとりを持って、いわゆる自由を満喫することのできる時間をお互いにどれだけ持つかということがこれからの社会の一番大事なことだという考え方をどこまで浸透させていけるかという問題だと思っております。
 大変大事な問題だというふうに思っているわけでございますが、ここがなかなか思うようにいかない。むしろ、リストラを行って働く人の数を少なくして、そして一人一人の労働時間は長くしてというような傾向さえ見られる。ここのところをどう打開していくかが、私は一つの大きなかぎを握っているというふうに思っているわけでございます。
 先ほど数値目標の話もございまして、局長が御答弁申し上げましたとおり、現状ではなかなか難しいんだろうと私も思います。
 実は一昨年、スウェーデンに参りましたときに、一昨年だったと思いますけれども、スウェーデンに参りましたときに――失礼しました、もう年齢もわからなくなってまいりました、昨年だったそうですが、昨年、スウェーデンに参りましたときに、スウェーデンは数値目標をちゃんと出しているわけですね。一・八まで上げたい、しかし現在の政策では一・六までしか上がらない、こう言い切るわけで、なぜそれが言えるんですか、どうして言えるんですかと、私は再三そこをくどくお聞きをしたわけですが、やはりそれは、今までの政策とそれに対する結果とのいわゆる統計の積み重ねなんですね。過去の厚い統計の積み重ねがあってできる話でありまして、日本のように、今までのそうした統計がないという状況で今出すというのは非常に無理だと私は思っております。
 これは人口統計をやっておる皆さん方にも、ぜひそこを一遍やってください、今すぐでなくていい、将来のために積み重ねをやってくださいよとお願いをしているところでございますが、そうした中で、我々も、スウェーデンほどはいかなくとも、これをやったら、少なくとも上がるか下がるかぐらいの大体の目安は持ってやらないことには話にならぬというふうに思っておりますので、その辺のことも念頭に置きながら、これから進めていきたい。
 しかし、先ほど申しましたように、働き方という、まことに難しい問題に直面をしている、ここをどう乗り切るか、これはかなり知恵を絞らなければいけない、そんなふうに思っている次第でございます。
後藤(斎)分科員 私も、大臣のお話の中にありましたように、うちは三人子供がおりまして、一番下が五歳なもので、保育園が終わると、夜まで家内は一緒にいる、私は外に行っているということで、確かに、いろいろな社会的な合意が多方面で、確かに一年に一遍くらいは家内と一緒に二人で食事をしたいなということも思いますが、なかなかそれもできない。
 いろいろな部分を社会全体でどう支援をしていくかということを考えると、これは後でお聞きをしようと思っていましたが、関連をしてお聞きしてしまうと、介護保険制度というのが三年間たったわけですけれども、当時家庭内で介護をしていた部分を、世の中全体で支えていこう、それが介護保険の一番初めの、いろいろな議論のスタートだったというふうに思っています。
 ある意味では、一兆円を超す、先ほどの少子化対策推進ということは、これから、家庭内でやっていた、大臣のお言葉をおかりすると、いろいろな仕事のあり方、そして家事のあり方を含めてきちっと数字的に、いろいろな部分がやはり見えないから、年金について言っても若い世代の人は、おれたち、私たちはどうせ積み立てしても返ってこないだろうという漠然とした不安感が、一方で賃金が減るという時代ですから、あると思うんですね。
 であればこそ、介護保険は、逆に言えば、設立当初の予想よりもはるかに短期間に認知をされ、そして利用率も高まって、ことしの四月一日から各市町村は介護保険料を上げた。ただ、きょうの朝日新聞でも、市町村の格差が一番安いところと高いところで三倍以上開いている、もっと開いているのかもしれませんが、そういう格差もまたこれから新たな課題として出てきた。
 やはり少子化対策のときに、介護保険制度のときのように新たな、これは保険でやると何かおかしな感じもしますが、社会全体で支えるんだ、ですから心配をしないで子供をたくさん産んでくださいとは言えないまでも、そういう環境づくり、社会全体で支えていきますよというPRがこれからもっと、仮に一つの大きい制度として仕組めないまでも、年金問題も絡めたいろいろなシナリオというのは、年に数度、大きな話題になるときに、審議会とかの答申が出たときに、翌日の新聞にはある程度出ますが、継続的にそういうものを情報公開し、たくさんの世代の方が、そうかというふうに見るところまで、正直、いっていないような感じがするんです。
 ぜひ、そういう点も含めて、厚生労働省も大臣中心に、年金だけの問題でないという部分も含めて、少子化に対する対策をいろいろ講じてはいるものの進まないというのを、大臣がおっしゃったように、少なくとも上向きか下向きかみたいなことも含めて検証しながら、予算執行をできるだけ充実しながらやっていただきたいというふうなお願いをしておきたいと思います。
 先ほどもちょっと御指摘をさせていただいた介護保険については、三年間たったわけですが、サービスはかなり増大をして、保険料も実際、今回の改定で大きく上がってしまったというのは指摘せざるを得ません。これからこの数年間の官から民へという時代の背景も含めて、介護保険報酬ということが、例えば民間の介護事業者の方が介護市場に入るということはもちろん前提として、大きくとは言わないまでも、それを是認をしながら進めていこうという中で、今、四十歳以上が第二号被保険者ということでその負担の主な部分を担っているわけですから、それを例えば、これから三十歳ないし二十歳、押しなべて一般の健康保険料ないし国民保険料を納めているところまで広げるのかどうか。
 そういうものも、また三十にした、二十にしたということでは、ある意味では制度の信頼性というものが対応できませんから、利用者の方がふえるとすれば、要するに、保険料を全体として上げていくのか、それとも負担をする方を広げるのか、事業者側から見れば、介護報酬の部分を下げるのかという三つの選択肢をどうするかということしかないと私は思うんです。
 その制度の信頼性、安定性ということも含めて、これからの介護保険制度というものがどのように進められていくのか、御見解をお伺いしたいと思います。
中村政府参考人 先生から今御指摘ございました、介護保険、三年経過したわけでございますけれども、ある意味で非常に定着し、制度発足当初と比較いたしまして、在宅サービスにつきましては、利用されている方が、二〇〇〇年の四月とことしの四月では倍以上になっているということで、全体としておおむね順調に推移しております。
 介護保険料、ふえたということでございますが、介護保険制度は給付と負担が連動する仕組みになっておりますので、ある程度、利用が進めば保険料が増加するというのはやむを得ない仕組みになっております。しかしながら、先ほど来御指摘ございました、少子化とともに人口の高齢化が進む、そういう問題がございます。高齢者がふえますと、サービスもある意味で増大する、すると保険料の負担も避けられない、こういう状況でございますので、介護保険にとりましては、先生おっしゃるとおり、制度の持続可能性をどうやって維持していくかが最重要の課題と考えております。
 そこで、介護保険制度については、介護保険法で、法施行後五年を目途として見直しをする、こういうことが規定されてございます。社会保障審議会に介護保険部会を設置することといたしまして、五月二十七日からまさに審議を開始しようとしております。先生御指摘のありました、被保険者の範囲、これは制度をつくるときから大きな課題でございまして、今申し上げました検討規定の附則の中でも法律上明定されてございますので、まさに重要な検討課題と考えておりますけれども、この問題につきましては、制度創設時も、四十歳からか二十からか、いろいろ議論はあったところでございます。
 三年間の介護保険制度の実施の状況の検証を十分に行い、また、費用を負担される方、それから、先生おっしゃっております事業者の方もございます。事業者の方についてもいろいろ御心配いただいているわけでございますが、今の介護保険の伸びの状況を考えますと、マーケットとしては、デフレ経済で非常に産業界が苦しんでいる中で、年に一〇%くらい拡大している市場でございますので、ある意味ではこれほど安心な市場はないというふうに私は思っておりますが、それだけに、今度は保険料を負担していただく方、あるいは税を負担していただく方にとっては大変な問題でございますので、そういう費用を負担される方、関係者の御意見も十分踏まえながら検討していく必要があると思っております。
 先生のおっしゃったこと、まさに課題でございますので、よく検討させていただきたいと思います。
後藤(斎)分科員 先ほどもちょっと言いかけていましたが、要するに、新しいこの保険制度、介護保険という制度がようやく定着し、これからというときに、現行では大体五兆円の介護給付費がそのまま介護市場だというふうに言って大体いいと思うんですが、少なくとも、これから年々ふえ、二〇二五年には二十兆の介護給付費になったときに、通常、現在の保険料を前提とすれば、四倍になるわけですよね。ですから、先ほどもお願いをしたように、そういうものもきちっと情報開示をしながら、幾つかの選択肢があるんでしょうけれども、やはりそういうときに、どの選択がいいのかというものを国民の皆さんに見えるような形で将来の設計をぜひお願いしたいと思っています。
 国土交通省さんをお呼びしているので、二点、国土交通省さんの関係について、大変恐縮ですが、御質問を申し上げたいと思っております。
 中央リニア新幹線というのが、実験線がスタートをして、四月の二十八日に、技術評価委員会での大体の中間報告というものが出ました。建設費が七・七兆から九・二兆、車両費が六千億から七千億円ということで数字が出ておりますが、これも、ある意味では、前提条件を実験当初のものに置きながらやられたものというふうなことで、この財政負担に耐えられるかどうかといういろいろな御議論もある中で、これから、最終的に、本当にその部分で対応するのかどうかということで考えておかれるんだと思うんですが、この技術評価委員会の議論も含めて、中央リニア新幹線というものは、どのようにこれから推進というか対応をなさっていかれるのか、御答弁をお願いしたいと思います。
白取政府参考人 リニアモーターカーの技術開発につきましては、平成九年から、山梨のリニア実験線におきまして本格的な走行実験を行っております。先月、先生今言われたとおりでありまして、二十八日に技術評価委員会が開かれまして、実用化のための基本的な技術の確立が着実に進捗しているという評価、これはまだ中間段階でありますけれども、そういう評価を得ました。今後とも引き続き、長期耐久性の確認、あるいは、メンテナンスを含めましたコストの低減、そういった残された課題に対しまして、鋭意、技術開発を進めていくというふうに考えております。
 一方、中央新幹線につきましては、全国新幹線鉄道整備法に基づきまして、中央線につきましては基本計画路線というふうになっておりまして、現在、この法律に基づいて、地形、地質等の調査を行っているところであります。仮に、リニアを整備いたしますと、東京―大阪間約五百キロで、先ほど言われたとおり、八兆円から九兆円、そのほかに、車両費が六千億、七千億という大変莫大なお金がかかります。
 今後の経済社会の動向、あるいは東海道新幹線の輸送の状況、あるいは整備新幹線の整備状況等を勘案しつつ、国民的なコンセンサスを得ながら今後も検討を進めていく大きな課題であるというふうに思っております。
後藤(斎)分科員 もう一点、国土交通省の方にお伺いをしたいと思います。
 昨年の道路関係四公団の民営化の最終取りまとめの際に、政府・与党申し合わせということで、平成十五年度から、高速道路をつくる際に、従来の道路公団が行っていたいわゆる有料道路方式と、新たに直轄方式を導入するという申し合わせが昨年の十二月十二日に合意をされております。ただ、これを見ても、どういう形で直轄方式を導入するのかというものがなかなか見えにくい部分もございます。
 あわせて、従来から、これも国土交通省の方にお聞きをしている中部横断道という道路が、静岡、山梨、長野を通って縦につながる線がございます。私は、国土交通委員会や災害対策委員会の中で、バイパス機能や、災害時の、緊急時の道路としてもきちっと整備を進めていっていただきたいという御指摘をいろいろな角度からさせていただいたんですが、先ほど御指摘をした直轄方式と有料道路方式の進め方と、中部横断道について、あわせて簡潔に御答弁をお願いしたいというふうに思います。
    〔森田(健)主査代理退席、主査着席〕
榊政府参考人 まず、高速自動車国道の整備のあり方でございますけれども、新たな直轄方式で整備しようという区間につきましては、私ども、基本的に無料を原則にいたしたいというふうに思っております。一方、有料道路方式は、今までと同様に、借入金によって整備をするということでございますので、有料でやろうかというふうに思っておるところでございます。
 一体どうやって仕分けるのかということでございますけれども、現在、国土交通省におきまして、道路事業評価手法検討委員会というのを一月に設置いたしておりまして、この中で、高速自動車国道の総合評価に関しまして、採算性や費用対効果といったもの以外に、例えば、高度な医療施設までの搬送時間の短縮とか、そういったような外部効果の具体的な内容について検討いたしております。
 この検討結果を踏まえまして、費用対便益などの整備効果、交通量の見通し、収支見通し等を精査いたしまして厳格な事業評価を行った上で、地方公共団体の意見も聞いた上で、直轄で整備する、こういう手順になろうかというふうに思っております。国土開発幹線自動車道建設会議というのもございますので、そちらの議を経て決定する、こういうような手続になるのではないかというふうに思っております。
 それから、中部横断自動車道でございますけれども、これは、静岡、山梨、長野三県を最短ルートで結ぶということと、東名、中央、上信越自動車道、これとネットワークを形成させる、こういうことでございますので、私どもも、沿線地域の産業、経済、文化、観光といったような点で多大な効果のある路線だということで、早期整備が必要だというふうに認識をいたしております。
 現在、双葉ジャンクションから白根間は供用中、白根―若草櫛形間は今年度中の供用を予定いたしております。若草櫛形から増穂間につきましては、必要な用地買収を行いまして順次工事に着手をしたい、増穂から第二東名に至る区間、これにつきましては、中心ぐいを設置して測量を推進するということでございまして、今後とも、地元の御協力を得ながら、継続的かつ効率的な整備に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
後藤(斎)分科員 ありがとうございます。
 大臣、先ほども御指摘をさせていただいたように、これから本当に持続可能な社会保障制度のあり方というのは、大臣初め厚生労働省の皆さんもその主眼というものは一貫して変わっておらないと思います。ただ、その前提条件というものがいろいろな時代の背景の中で崩れていく、変わっていく。その中で年金も、これだけデフレの状況になると、土曜日のりそなのようにいろいろな前提が崩れるというような時代になった中で、世代間の対立というよりも協調の中でできるような社会保障制度を、年金ということだけに対応せず、先ほどもあったように、難病治療の方にもこれからさらに支援が必要な部分もあるでしょうし、時代に合った総合的な社会保障制度の確立をお願いしまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。
 まず、概要説明を聴取いたします。亀井農林水産大臣。
亀井国務大臣 平成十三年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。
 最初に、一般会計について申し上げます。
 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額四千三百三億四千八百八十八万円余に対しまして、収納済み歳入額は三千八百八十六億四百四十五万円余であり、差し引きいたしますと、四百十七億四千四百四十三万円余の減少となっております。
 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額四兆八十一億七千五百七十九万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆五千四百十七億七千六百六十九万円余であり、この差額四千六百六十三億九千九百九万円余につきましては、四千百五十六億三千三百三十四万円余が翌年度へ繰り越した額であり、五百七億六千五百七十五万円余が不用となった額であります。
 なお、その詳細及びこれらの施策の内容はお手元の「平成十三年度農林水産省所管(一般会計及び特別会計)決算に関する概要説明」に記載いたしましたとおりであります。
 次に、特別会計について申し上げます。
 まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は四兆九百二十四億千三百五十二万円余、支出済み歳出額は四兆八百三十億八百八十八万円余であり、差し引き九十四億四百六十四万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところに従い、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。
 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計並びに国営土地改良事業特別会計がございますが、これら特別会計の概要につきましても、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。
 以上をもちまして平成十三年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。
 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
山名主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院重松第四局長。
重松会計検査院当局者 平成十三年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十八件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項七件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況一件であります。
 まず、不当事項について御説明いたします。
 検査報告番号二〇三号は、景気対策臨時緊急特別林業構造改善事業等の実施に当たり、補助の目的を達していなかったり、補助金の交付条件に違背したりしているものであります。
 同二〇四号は、経営体質強化施設整備事業による特定高性能農業機械の導入に当たり、新規に導入する水稲用自脱型コンバインの利用面積が審査基準の下限を下回り、補助の対象とならないものであります。
 同二〇五号は、農村資源活用農業構造改善事業の実施に当たり、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していなかったものであります。
 同二〇六号から二〇九号までの四件は、畜産振興総合対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、堆肥化処理施設の発酵槽等が補助の目的を達していないものであります。
 同二一〇号は、補助事業の実施に当たり、架空に経理されていた額を補助対象事業費としていたものであります。
 同二一一号は、林業地域総合整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、パイプカルバートの所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同二一二号は、農地防災事業の実施に当たり、旧底樋の撤去に係る施工が設計と著しく相違していたなどのため工事の目的を達していないものであります。
 同二一三号は、地域防災対策総合治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、重力式コンクリート擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同二一四号は、中山間地域総合整備事業の実施に当たり、水路の基礎砕石工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているものであります。
 同二一五号は、林業地域総合整備事業の実施に当たり、練石積み工の施工が著しく粗雑となっていたり、橋梁工の設計が適切でなかったりしたため、工事の目的を達していないものであります。
 同二一六号は、地域防災対策総合治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、重力式コンクリート擁壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているものであります。
 同二一七号は、小規模零細地域営農確立促進対策事業の実施に当たり、物品の購入契約の入札において最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除したため、割高な契約を締結しているものであります。
 同二一八号は、総合食料対策事業等の経理に当たり、補助対象事業費に計上すべきでない消費税の納税額を計上していたため、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。
 同二一九号は、水田農業経営確立対策等の実施に当たり、米の計画的生産実施者であることなどの要件を欠いている農業者に対して、共補償金及び稲作経営安定対策に係る補てん金等が交付されていたものであります。
 同二二〇号は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。
 これは、福岡食糧事務所大分事務所において、用度担当の職員が、消耗品の調達事務等に従事中、同事務所の各部門から請求された郵便切手の購入数量を水増しして前渡資金支払決議書を作成し、振り出させた小切手を使って購入した郵便切手を領得したり、消耗品の購入を装って虚偽の前渡資金支払決議書を作成し、業者の銀行口座に振り込ませた購入代金を回収して領得したりするなどして国に損害を与えたものであります。
 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。
 これは、牛肉在庫緊急保管対策事業における冷凍格差の助成に関するものであります。
 BSEの発生が国内で初めて確認された十三年九月十日よりも前に冷凍された牛肉については、BSEの発生に対処するために冷凍されたものでないことは明らかであるのに、すべての牛肉について、冷凍したことによる商品価値の下落分、すなわち冷凍格差を含めた一律の価格で助成することとしており、冷凍格差の助成について適切を欠く事態が見受けられましたので、農林水産省に対して、是正改善の処置を要求いたしたものであります。
 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。
 その一は、牛肉在庫緊急保管対策事業における助成金の支払いに関するもので、事業主体である全国農業協同組合連合会等に交付される助成金のうち部分肉加工料等や冷凍格差に相当する額については牛肉在庫保有者において発生する経費であるのに、助成の趣旨を明確にしていなかったなどのため、その経費相当の助成金が牛肉在庫保有者にまで適切に支払われる仕組みになっていない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その二は、農業改良普及推進事業の経理及び実施体制に関するもので、農林水産省において、経理の区分方法や事業の実施方法について県に対する指導が十分でなかったりしていたため、この補助金の経理が適切に行われていなかったり、実施した事業の内容が要領等に則したものとなっていなかったりしている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その三は、農村公園等に設置する安全さくへの間伐材の使用に関するもので、農林水産省において、関係機関との連絡調整が十分でなく、環境や景観等にも配慮することとなる間伐材を用いた施工等の検討、都道府県へのこれらの情報の提供等が十分に行われていなかったなどのため、環境に配慮した間伐材の利用促進が図られておらず、補助事業が経済的に実施されていない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その四は、漁船の取り締まりに使用する船舶の借り上げ契約の積算に関するもので、水産庁制定の算定基準により積算されております航海日当が、航海の実態に適合していない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その五は、外国漁船被害対策特別基金造成事業に関するもので、基金設立当初は貸し付け及び利子補給の実績が相当程度ありましたが、その後低調に推移し、その結果、運用果実の剰余金が累増し有効に活用されずに滞留する事態となっておりました。このような状況の中で、唯一基金に拠出していた北海道の漁業者団体が拠出金の返還を受けて基金事業から撤退し、水産庁は事業の実施要領を改正して新たな拠出者を募ったものの、他の漁業者団体や都道府県が基金事業に参加する見込みはない状況にありました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その六は、米穀販売業流通合理化推進事業の運営に関するもので、食糧庁において、管理体制が十分に整備されていなかったり、事業実施主体及び食糧庁において、助成の申請等に対する審査体制が十分に整備されていなかったりしたことなどのため、リース期間当初から機械等が事業場に設置されていなかったり、助成の対象とならない事業費を国庫助成の対象事業費に含めていたりなどしている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 その七は、国有林野事業特別会計における物品の管理に関するものであります。
 林野庁において、物品管理についての基本認識が十分でなかったことなどのため、使用する見込みがなくなりました林業機械等について、不用決定の措置を講ずることなく保管されたままとなっていたり、物品管理簿、物品増減及び現在額報告書等に物品の数量及び価格が誤って計上されていたり、物品管理システムが稼働していなかったり、出力された物品管理簿が正確性を欠いていたりしている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。
 以上をもって概要の説明を終わります。
山名主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。亀井農林水産大臣。
亀井国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十三年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。
 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、一部の事業について、御指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。
 不当事項として指摘を受けたものにつきましては、既に補助金等の返還または手直し工事を施工させる措置を講じたところであります。
 また、職員の不正行為による損害が生じたものにつきましては、既に損害額を全額補てんさせるとともに、行為者等の処分を行ったところであります。
 牛肉在庫緊急保管対策事業における冷凍格差の助成が適切なものとなるよう是正の処置を要求されたものにつきましては、牛海綿状脳症発生が確認された後に冷凍されたと判断される牛肉を対象とする見直しを行う措置を講じているところであります。
 以上、会計検査院の御指摘に対しまして、農林水産省が講じた措置の説明を終わらせていただきますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。
山名主査 この際、お諮りいたします。
 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
山名主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
山名主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
山名主査 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。
北村(誠)分科員 自由民主党の北村誠吾でございます。
 ただいまのそれぞれの御報告に対しまして、関連をして質問をさせていただきます。私は、主に農林水産省、それから、大変恐縮ですが、一部厚生労働省にかかわる部分もありますので、お許しをいただいて御答弁をお願いいたしたいというふうに思います。
 まず、農林水産業の中で、特に私が関心を持っておりますことでありますけれども、魚類養殖業の振興に関する部分についてお尋ねをいたしたいと思います。
 政府は、平成十三年六月に施行になりました水産基本法で、食料である水産物の安定供給を確保するための規定を設け、平成十四年三月には、水産基本計画において、水産物の安全性の確保及び水産動植物の増養殖を推進していく、総合的かつ計画的に施策を講ずべきであるというふうなことを定めておられます。このたびの国会でも、食品の安全性確保のための農林水産省関係の法律の整備に関する法律案というものがその一環として示されており、なお、その中に薬事法の一部改正が上程をされております。水産物の安全性の確保及び養殖業の推進、こういった観点からお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 特に今日、報道等でも改めてまた表面化いたしておりますが、ホルマリンの使用というふうなことに国民の関心が向いておることは御承知のとおりでございます。ホルマリンにつきましては、昭和五十六年ごろから、この物質を水産業、養殖関係において使用することについて、政府としても、それぞれの時期に関心を抱き、国民からの指摘あるいは業界からの指摘等によって、それぞれその時期に応じていろいろな通達等を講じてこられました。最初の五十六年ごろの問題の提起というのは、ウナギの養殖のことから始まったというふうに私は聞いております。今日、養殖の現場におきまして、いろいろな混乱、戸惑い、あるいはいたずらに消費者の方々に不安を与えるというふうなことがあるように感ぜられます。そういった認識のもとにお尋ねをさせていただきたいと思うわけであります。
 現在、水産用医薬品の使用につきましては、薬事法に基づく動物用医薬品の使用の規制に関する省令による規制と、省令によらない水産用医薬品の取り扱いの定めがあるというふうに伺っておりますけれども、具体的にはどのようになっておりますのか、その点につきましてまずお尋ねをしたいと思います。
木下政府参考人 今お尋ねの水産についての薬事法に基づきます動物用医薬品の使用の規制に関する省令に関する規定と、それからそれ以外の規定、規制についてのお尋ねでございます。
 まず、動物用医薬品の使用の規制に関する省令に基づく水産関係の規制について申し上げますと、第一点が、規制対象として、ブリ、マダイなど十一魚種が規定をされております。また第二点といたしまして、医薬品ごとに、使用対象魚種、それから用法及び用量、また使用禁止期間が定められております。このように、使用者は、本基準に違反して使用した場合には罰則が科されるというふうになっております。
 一方で、先ほど申し上げました省令によらない水産用医薬品の取り扱いとしては、ホルマリンなどの未承認医薬品の使用の禁止等について、水産庁通知により行政指導を行っているところでございます。その具体的内容を申し上げますと、トラフグ養殖におきますホルマリン使用につきまして、ホルマリンの安全性について問題が指摘される一方で、使用された魚介類への残留性が解明されていないということから、これまで、委員御指摘のとおり、累次にわたる水産庁通知を発出し、全国魚類防疫推進会議を初めいろいろな会合の場で都道府県を指導する。また一方で、漁業者に対します巡回の指導、それから研修会の開催、また水産用医薬品使用状況調査等を通じましてこの徹底を図っているところでございます。
北村(誠)分科員 次に、今回薬事法が改正をされれば、現在の水産用医薬品の取り扱い規制は具体的にはどのようになるというふうにお考えであるか、お聞かせをいただきたいと思います。
亀井国務大臣 現在御審議をいただいております薬事法改正案が成立いたしますれば、ホルマリンを含め、未承認の水産用医薬品の使用が禁止をされます。これを使用した者に対しましては罰則が科せられることになります。あわせて、今回の薬事法改正を契機に省令を改正し、この規制の対象を、現行のブリ、マダイなど十一魚種から、食用に供される全魚種に拡大することといたしております。
 農林水産省といたしましては、これらの改正を通じて、水産用医薬品の適正使用の徹底に努めてまいりたい、このように考えております。
北村(誠)分科員 大変、現場においてはいろいろ努力すべきことがこのことによって生じてまいるであろう。素人でありますが、私は、先週あるいは先々週地元に帰りまして、フグの養殖場に出向いて、皆さん方の浜の声というのを聞かせてもらいましたが、具体的に聞きますと、現在承認されているマリンサワーという、ホルマリンにかわる薬剤の研究がなされて、それが承認を得ておるということでありますから、それの使用を徹底するというふうなことで、もう先般来水産庁も関係の業界団体の皆さん方と一緒に努力をしておられることは、現場でも十分承りました。
 しかしながら、悲しいかな、この開発をし、認証、認定を受けた薬剤の使用効果について、現場では、戸惑い、あるいは本当に効果が出てこないという声を大変多く聞きました。それで先般、水産庁の技術関係の方々からお聞きした事柄を参考に現場の方々と話をしてみますと、使用方法等につきまして、先ほど長官の答弁の中にもありましたけれども、やはり医薬品でございますから、これの使用につきましては、対象魚種も当然認証、認定を受けるに当たって決められておりますし、その用法、使い方、あるいは用量、使う量、あるいは使用することが望ましくない期間ということなどがあるようでございます。ですから、せっかく医薬品業界が努力をして、関係団体あるいは現場の方々の声を聞きながら努力を重ねて認定を得た薬であるにもかかわらず、現場ではなかなかそれが効果を発揮しないという戸惑いの中で、やはりホルマリンにかえるというふうなことが、悲しい、残念なことですけれども、地域によってはあったということがあるようでございます。
 それで、せっかく水産用医薬品指定、認定をされたからには、現場に行きましてつくづく感じましたことは、その使い方、あるいは時期、あるいは量というものについて、言葉が大げさかもしれませんが、徹底して、やはり官民挙げてその努力をし、あるいは効果的に薬を使用する。そして、トラフグの養殖に使う場合には、使用時間が五分とかそこら辺の短時間で薬浴ということで、マリンサワーという薬を海水に薄めて、それで、それを仕切ったところにフグを入れて、おふろに入れてやるような形でトラフグをつけてあげる。そして、それから引き出す。現場でも確かに聞いたことですけれども、その使用の時間というものを説明してある時間よりも長く使ってみて、狭いところにたくさんの稚魚あるいは養殖のためのフグを入れますから、酸欠を起こして死んでしまうという、まことにお粗末なことなどもあって、そういうことを挙げてマリンサワーは効かないということでホルマリンに手を出すという事例もあるようであります。
 ですから、今回薬事法が改正されて、そしてこれが生産者にも本来よいことになるように、また、消費者に対しましても、安心して、安全な食品として養殖の水産物を消費していただくようにという立場から、農林水産省が、あるいは厚生省も一部関係をしてこの法律の改正に臨まれるということは、大変適切なことであると私も認識するわけであります。
 しかも、先ほど長官の御答弁にありましたように、長い間法律による規制あるいは罰則を設けているということでなくて、いろいろな通達を発出して、それで現場の状況も、生産者の立場あるいは事情というものも勘案しながら政府としては対応してきたというふうに考えておりますから、なおのことぜひ、水産業全般を見たとき、私どもは、沖合遠洋漁業のいろいろな意味での不振、あるいは、特に遠洋におきましては漁場の締め出し等に遭っておりますし、そういう中で、この養殖漁業というものに対する水産の生産の量あるいは金額、あるいは国民全体の魚類たんぱくの確保という面からも、大いに魚類養殖というものに期待をし、それがまた確かに、部門で分ければ魚類養殖の部門は、緩やかではあっても不振をかこつ水産業界にあって伸びている部分だという認識がありますので、ぜひ、この魚類養殖を推進し盛んにしていく上からも、今回の法律の改正がそういった大きな流れに、あるいは大きな求めにこたえてくれるものになるようにということを期待しておる次第であります。
 そういう立場からなお続けて質問をさせていただきますけれども、現在、薬事法に基づいて承認をされていない医薬品が、薬事法改正ですべて一律に規制されるというふうになります。現場におきましては、今私くどくど申し上げましたように、魚を一定の囲いの生けすの中に囲い込んで、えさを与えて養殖していく、育てていく、大きくしていくという営みの中では、必ず、フグであれ、ハマチであれ、タイであれ、あるいはハタ類であれ、カンパチであれ、シマアジであれ、それぞれいろいろな違いはありますが、寄生虫あるいは病気、感染症というものを生じます。ですから、絶えずいろいろな医薬品なり、あるいは飼料なり、あるいは抗生物質なりというものを現場では研究しながらやってきておるわけでございますけれども、これらの養殖の業界で頑張っておられるそれぞれの浜の方たちの苦労というものをぜひ少しでも軽くし、あるいはそれを何とか育てていこうという立場から、今後、現場の養殖業界の混乱というものを避けるために、農林水産省、水産庁としてはどのようにお考えか、お尋ねをいたします。
木下政府参考人 私ども、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、現在の薬事法の改正案が成立し次第、省令についても改正をいたしたいというふうに考えているところでございます。
 もとより、今後とも我が国水産業の中で生産増大が期待される部門でございます。今回の改正を通じて、養殖水産物の安全、安心を確保する、また消費者の信頼を確保するという観点からの改正でございますけれども、私どもは、今回の改正を契機に、今回の改正の趣旨につきまして、国、県また関係の団体を含めて、改めて漁業者の皆さん方に今回の改正の趣旨の徹底を図りたいというふうに考えているところでございますし、また、私ども、養殖業者なり都道府県からいろいろな要望を承っております。現場での混乱が生じないよう、医薬品の製造メーカー、あるいは独立行政法人の水産総合研究センター、あるいは関係の水産試験場の皆さん方との密接な連携を持ちながら、必要な医薬品の開発の推進を図ってまいりたいというふうに考えておりますし、もとより、このような医薬品をできるだけ使わないような漁場づくりを含めた、水産養殖全体についての施策につきましても推進してまいりたいというふうに考えております。
北村(誠)分科員 長官の答弁にありました、一番最後のところの、医薬品とかそういうものを使わなくて魚類養殖ができるというふうなことに研究を積極的に推進していくということは非常に大事なことではないかと思いますし、かねて、薬品による害によって、使うことによって生産がダウンをして養殖の魚種を変更したというふうなことも聞いておりますし、いろいろな工夫や検討、研究というものが必要ではないかと思います。
 ですから、ぜひ、そういう養殖のやり方、あるいは医薬品類等をできるだけ減らして自然の形で、海の自然な生産力を高めながらそういう方向に持っていけるような努力というものを、一方で、基盤の整備という形で予算を投入していただいておると認識しておりますし、一方で、最小限必要な対応をするための医薬品の開発というものについてはやはり積極的に、そして、病気は待ってくれませんし、そういうものに対応できるような体制をつくっていくためには、やはり研究開発ということについて、おっしゃられたようにいろいろなデータを収集しなければならないというふうなことなどで、関係の団体やあるいは業界の協力も得、そして、何としても医薬品を製造するメーカー、こういう方たちにも、人間の、例えばがんのために治療薬を研究開発していく、そういったところに対して推進あるいは奨励のための助成なり補助なりという仕組みもあると認識しております。
 やはり私どもは、浜の漁業者は、それこそまさに生計を維持し、命がけで魚を育てておるというふうなことでありますので、ぜひとも、養殖対象魚種それぞれの病気等について対応できるような医薬品の開発ということについては、国が積極的に力を入れていただきたい、これは要望ということにさせていただきます。
 次に、薬事法改正によって未承認医薬品の使用は禁止、これはもう当たり前のことであります。しかし、薬事法が改正されて、それに違反するということを知りながら、これまでの経過の中からどうしてもその薬を使う、あるいは使う目的で販売をする、そういう売る人の側に対する規制というものはどういうふうになるのでしょうか。どうお考えですか。
木下政府参考人 水産医薬品という観点でございますので、私の方から答弁させていただきたいというふうに思います。
 まず、私ども、薬事法五十条の規定によりますと、医薬品の直接の容器なり被包に製造業者の氏名、住所、医薬品の名称、製造番号等、また五十二条の規定によりますと、医薬品の添付文書等に医薬品の用法、用量等を記載することが義務づけられているというふうに承知をいたしております。また、その中で、薬事法五十五条第一項の規定によりますと、これらの事項が記載されていない医薬品につきましては、販売なり授与、または販売、授与目的での貯蔵、陳列を禁止しているというふうに承知をいたしております。
 したがいまして、一般論で申し上げますと、薬事法に違反して使用されると知りながら、水産医薬品として記載すべき事項の記載のない未承認医薬品を販売するということは、先ほど申し上げました規定に抵触することになるというふうに承知をいたしております。
北村(誠)分科員 厚生労働省はお見えですか。今の部分について改めてお尋ねしますけれども、法令に違反して使われるということを知りながら毒物、劇物を取り扱う販売の業者、登録をしておる方たちが今後どういうふうになっていくかということについてお尋ねいたします。
鶴田政府参考人 毒物及び劇物取締法につきましては、保健衛生上の見地から、毒性が強く、取り扱いに特に注意を要する化学物質、毒物、劇物、これらの事故の発生を防止するために、製造、販売、保管管理等についての必要な取り締まりを行うことを目的としているものでございます。毒物、劇物の用途を規制するものではございません。
 したがいまして、毒物及び劇物取締法に基づいて、医薬品目的で使用される毒物、劇物の販売を規制することは困難ではありますが、販売の自粛について、都道府県等を通じて販売業者に対して指導してまいりたい、そういうふうに考えております。
北村(誠)分科員 最後の段の、法律で規制することはできない、したがって自粛について都道府県を通じて販売業者に指導してまいりたいと。ですから、この指導ということについて、都道府県、特に都道府県の中でも水産業部門と、劇物、毒物を扱うことについて仕事をしておる都道府県の部署、部局というものは違っておりまして、これまでもそこら辺の連携のまずさからいろいろなことが生じてきたという事例を承知しておりますので、ぜひ、指導をなさるときに、そこら辺を十分、都道府県内でも連携がきちんととれるような形でやっていただきたいというふうに要望をいたします。
 引き続き、あと厚生労働省の方にお尋ねをさせていただきます。
 中国においては、養殖のトラフグに対してホルマリンを使っているというふうに聞いておるんです。それで、もしも間違えておれば、しかられたときには私の責任でありますが、仮に外国で養殖、育てたホルマリンを使った魚を国内に輸入するというふうなときに、我々は今後少なくともトラフグに対してホルマリンを使わないというふうなことで、最近話題になりました件におきましても、ホルマリンを使った履歴のある魚は世に出さない、出荷をしないというふうなことで出荷停止の措置を講じ、今後それについては処分をしていくという方向で私どもは臨もうとしております。そういう中で、輸入魚につきましてはどういう対策ができるのか、あるいはやろうと思うのか、そこら辺をお尋ねいたします。
遠藤政府参考人 厚生労働省では、養殖トラフグに寄生虫駆除の目的でホルマリンが使用されているという情報を得まして、平成九年でございますけれども調査を実施いたしましたところ、天然トラフグとホルマリンを使用した養殖トラフグの可食部のホルマリン濃度に差がないという結果が確認をされました。このため、養殖時のホルマリン使用と、それから製品といいますかフグの可食部のホルマリン濃度の間に明確な関係が見られないということで、輸入時検査の対象項目とはしていないところでございます。
北村(誠)分科員 仮に、今の答弁を素直にお聞きすれば、中国から輸入した、ホルマリンを使ったトラフグが入ってきても、安全に問題があるからというふうなことでストップはできないということであるとお聞きしていいんですか。
遠藤政府参考人 ただいま申し上げましたように、天然トラフグとホルマリンを使用した養殖トラフグの可食部のホルマリン濃度に差がないというふうなことが確認をされておりますので、その限りにおいて特段安全性に問題があるというふうには考えておりません。
北村(誠)分科員 最初に申し上げました、今国会での食品の安全性の確保のための農林水産省関係法律の整備に関する法律案、この中で、私の記憶ですけれども、農林水産業で生産される、いろいろな行程を経て食品になります、その中でどういう薬物あるいは飼料、肥料を使うかということについては、国の内あるいは外でどういうふうな行程を経てつくってきたかというふうなことが修正案の中で議論されたんじゃなかったかなという記憶をいたしておるんです。やはり今日、生産者を守り、あるいは消費者を守り、安全な食品を国が提供していく、そういう体制をつくるということが非常に大事じゃないかというふうに思うわけです。
 ですから、例えば、今、ホルマリンをもう使わないというふうなことで決意をして、ホルマリンを一回でも使った履歴のあるトラフグは出荷をしないということで、浜で停止しております。これについては、しかるべく安全性が確保される処分をしようという方向で進めようとしています。それには、零細な養殖業に携わる人たちの大きな犠牲というものがあります。
 ですから、そういう中で、中国から大量のトラフグがおととし、去年あたり輸入されるようになりまして、皆さん方も御存じと思いますけれども、大変トラフグが大衆化して、安いトラフグの料理が提供されるようになったという実情もあり、日本の国内のトラフグ養殖業の生産者の皆さん方は、値崩れということについて非常に危機感を持っております。
 そういう中で、今おっしゃられた残留のホルマリン濃度が天然のトラフグと養殖のトラフグで差異が見られないから危険だとは言えない、食品に不適であるとは言えない、だから食べられる、そういうふうなことで輸入を認めるという考え方は、今私たちが、先ほど申し上げた法律を改正して、内外に、そういう考え方で日本国は輸入、輸出、あるいは国民に対する食品の提供ということについて考えておるという基本を、これは中国に限らず、欧州の方から輸入されておる、あるいは南米の方から輸入されておる輸入魚にもいろいろな形で薬物が使用されているという話は聞いております。
 ですから、トラフグの肉にホルマリンの残留が一定濃度以上検出されなかったから危険とは言えないということでそのまま輸入を認めざるを得ないということにつきましては、そういう国内漁業者の経済的な困難性というものもありますけれども、今考えなければいけないのは、根本的に、ホルマリンについてだけの話になってしまいましたけれども、ホルマリンの発がん性、かれこれいろいろなことが論じられて、昭和五十六年以来今日に至っているわけでありますから、フグの肉にホルマリンの残留がないということで輸入を認めるということについては、この法律の限りではそうであろうけれども、国としてやはり何らかの方策を講じていくという考えを持つ必要があるのではないかということを私は強く指摘をさせていただきたいというふうに思いまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
山名主査 これにて北村誠吾君の質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
山名主査 この際、会計検査院より検査概要について発言を求められておりますので、これを許します。会計検査院重松第四局長。
重松会計検査院当局者 先ほど農林漁業金融公庫についての決算検査結果の概要が抜けておりましたので、追加的に報告させていただきます。
 平成十三年度農林漁業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございませんでした。
    ―――――――――――――
山名主査 質疑を続行いたします。黄川田徹君。
黄川田分科員 自由党の黄川田徹であります。
 地域課題も含めまして、通告に従い、順次質問いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 まず最初に、森林・林業行政の抜本改革についてお尋ねいたしたいと思います。
 一昨年の六月であります、ほぼ四十年ぶりに、林業基本法が森林・林業基本法として抜本改正されました。
 しかしながら、この林業そしてまた森林を取り巻く環境は、本当に今厳しいわけであります。林業が盛んな地域ですら、採算がとれないために間伐が進まず、山が荒れてきている、これが現状であります。仮に間伐できたとしても、林地内から運び出すことができずに、林地に切り捨てられた状況になっております。
 その林地残材、これが下流の住民にとって、一たび大雨が降れば二次的、三次的、そういう災害を引き起こすおそれがあるわけであります。現実に、昨年の台風六号で、私の地元の岩手県でもその典型的な例がありました。今や山を持っておることが財産であった時代ではなくて、むしろ、森林所有者にとっては山が負担とさえ考えられる、そういう時代になってしまっておるところであります。
 そこで、最初に農林水産大臣にお尋ねいたします。
 こうした現状も踏まえまして、今後具体的に林業の活性化、そしてまた森林を適切に整備していくための森林・林業政策をどのように展開していくつもりか、お尋ねいたします。
亀井国務大臣 今御指摘いただきますとおり、我が国の林業は、木材の価格の低迷、またこれらにより大変厳しい状況にあるわけであります。一方、水源の涵養、国土の保全等、森林の持つ多面的機能の発揮に対する国民の要請は大変強いものがあるわけでございます。
 このような中で、平成十三年に森林・林業基本法を制定し、森林の有する多面的機能の持続的発揮、林業の持続的かつ健全な発展と林産物の供給及び利用の確保という基本理念のもとに、森林・林業、木材産業にかかわる総合的な施策の展開を図ることとしたところでもございます。
 具体的には、基本法に基づきまして策定した森林・林業基本計画、森林を、重視すべき機能に応じ、水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林に区分し、これに応じた多様な森林整備を推進するわけであります。
 また、林業の担い手への施業や経営の集約化、需要構造に対応した木材の安定供給体制の整備、木材のバイオマスエネルギーとしての新たな需要を含めた地域材の利用の推進など、林業、木材産業を通じた構造改革を図る施策を展開いたします。新たな森林・林業施策を総合的に推進していく考えであります。
 また、地球温暖化対策として、二酸化炭素の吸収源としての森林の果たす役割の発揮につきましては、昨年十二月に策定した地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策に基づきまして、緑の雇用などを通じた担い手の育成を推進しつつ、多様で健全な森林の整備、保全をより重点的に推進してまいりたい、このように考えております。
黄川田分科員 大臣には、この森林行政の抜本的な改革でもって、緑の再生をぜひともお願いしたいと思います。
 それでは、具体的に各分野ごとにちょっと聞いていきたいと思います。
 次に、国有林野事業の収支状況であります。この国有林野事業でありますけれども、独立採算制によって運営される中で、木材価格の低迷と経営環境の変化への対応がおくれたことなどから、経営状況の悪化を来し、約三・八兆円もの莫大な累積債務を抱えるに至ったところであります。
 そこで、平成十年度から、三・八兆円のうち二・八兆円は一般会計に承継し、そして残り一兆円は特別会計で返済するという国有林野事業特別会計の抜本的改革に取り組んでいるということでありますけれども、この改革でありますけれども、特にこの平成十五年までの五年間に集中して取り組むということでありますけれども、今年度は集中の最後の年となっております。そこで、こうした抜本改革をどのように進められているのか、大臣に重ねてお尋ねいたします。
亀井国務大臣 国有林野事業特別会計の抜本改革、どのように進めているか、こういう御指摘でございます。
 国有林野事業におきましては、先ほどお話しの、平成十年十月に成立した国有林野改革二法に基づきまして、公益的機能の維持増進を旨とする管理経営への転換、組織・要員の徹底した合理化、縮減、一般会計繰り入れを前提とした特別会計制度への移行などを柱とする抜本改革に全力を挙げて取り組んでいるところでもあります。
 具体的には、公益的機能重視への転換につきましては、長伐期施業、育成複層林施業等を推進するとともに、野生動植物の生育地等のネットワーク形成を図る緑の回廊の設定、国有林野内の代表的な巨樹、巨木を選定し保護する取り組みを実施しております。
 組織・要員の合理化、縮減については、平成十一年三月に十四営林支局、二百二十九営林署を、七森林管理局、九十八森林管理署等に再編をし、さらに平成十三年八月一日には暫定的な措置とした組織の七割以上に当たる百五十カ所を廃止するとともに、職員数の適正化を推進しているところでもあります。
 財政の健全化につきましては、新たな特別会計制度での一般会計からの繰り入れとあわせて、収入の確保や効率的な予算執行に努め、新規借入金を着実に縮減等を進めているところでもあります。
 木材価格の低迷など厳しい状況にあるわけでありまして、引き続き各般にわたる努力を尽くす中で改革を着実に進めてまいりたい、このように考えております。
黄川田分科員 平成十三年度の国有林野事業の収支でありますけれども、木材を売った収入は二百五十六億円、林野を売り払った不動産収入が二百二十三億円、二つ合わせても、長年の借金に対する利子の支払い一千十九億円の半分にも満たない、こういう現実であります。引き続き抜本改革を求めておきたいと思っております。
 次に、関連いたしまして、かつてありました、今でもあるんですかね、緑のオーナー制度の実施状況とその問題点について、そしてあわせて森林整備への国民参加の一環としての分収林制度による森林づくり、そしてまた、ボランティア団体等への場所の提供等による森林づくり等、その実施状況はどうなっているか、大臣にお伺いします。
亀井国務大臣 国有林の分収育林につきましては、昭和五十九年から平成十四年度までに八万六千人の参加をいただき、実施総面積は二万六千ヘクタール、このようになっております。このうち、個人などを対象とした一般公募については、分収育林の適地が減少したこと等から現在中止しているわけでありますが、法人等に対しては要望に応じて実施しているところでもございます。
 分収木の販売については、これまで九十四カ所で行ったわけであります。一口当たりの分収額が、木材市況の低迷等により、五十万円の費用負担に対しまして平均四十万円、このようになっておるわけでありまして、分収額が費用負担額を下回る箇所が生じていることは大変残念でありまして、今後とも少しでも高く販売できるように努力をしておるところでもございます。
 また、国有林で、開かれた国民の森林としての、広く国民の方々に植林活動を含む森林との触れ合いや森林づくりを体験していただくために、分収造林十三万三千ヘクタール、これは平成十四年度末現在二万二千件であります。ボランティア団体への森林づくりの場所の提供を行うふれあいの森二千ヘクタール、これは平成十四年度末現在百八カ所であります。
 このようなことを実施しているわけでありまして、今後ともこれらの施策を進め、森林整備への国民参加を積極的に推進してまいりたい、このように考えております。
黄川田分科員 通告では森林交付税をちょっとお尋ねしていましたけれども、なかなかいい回答が出ないのではないだろうか、今三位一体の税財源の移譲、地方分権をやっていますので、これは省略しまして、森林組合の活性化対策についてちょっとお尋ねいたしたいと思っております。
 森林組合でありますけれども、五年前は全国で一千三百四十九組合でありましたけれども、四月一日現在、九百九十組合まで合併、集約されまして、経営の効率化が図られるというところであります。しかしながら、林業をめぐる状況は大変厳しい、そして経営の悪化した組合も多く、森林組合が弱体化すれば地域の森林整備や林業の活性化はますます困難になるではないかと私も心配しておるところであります。
 そこで、このような状況の中で、森林組合でありますけれども、国はどのような方向で育成していこうと考えているのか、農水省のお考えをお聞きしたいと思います。
加藤政府参考人 森林組合の改善につきましては、今お話がございましたとおり、組織等につきましても合併の促進等をしてきているところでございますけれども、森林組合が地域の森林整備の中心的な担い手としての役割を果たしていくためには、健全な自立経営の確立ということをしていかなければいけないというふうに考えているところでございまして、森林組合の経営基盤の強化と業務執行体制の充実強化に向けた森林組合系統の自主的な取り組みを促進していくということが重要だというふうに考えているところでございます。
 国としましても、都道府県と連携しつつ、こうした系統の取り組みを適切に指導していく必要があるというふうに考えておりまして、合併による経営基盤の強化等を積極的に進めるということと同時に、役職員の資質の向上、監査の充実強化等の業務執行体制の充実強化、不採算部門の整理合理化などの事業の再編強化、経営コストの削減等事業の効率化の推進、森林整備の取り組みの強化などを図ることを基本とすることが必要ではないかというふうに考えているところでございます。
 こういった考え方に基づき、現在、系統とも議論をしながら改革プランをつくっていただき、それを実行に移していくということで国としても支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
黄川田分科員 地域にあっては森林組合の再活性化が本当に喫緊の課題でありますので、よろしくお取り計らいいただきたいと思います。
 そして関連して、昨年九月に和歌山県が提唱いたしました緑の雇用事業が話題を集めております。都会からの移住希望者や失業者を森林ボランティアとして呼び込んで森林整備などに従事してもらい、雇用対策、過疎対策あるいはまた環境保護などの効果をねらっている事業だと思っております。
 そこで、この緑の雇用事業でありますけれども、全国的にどの程度広がりを見せておるのか、そしてまたどのような効果を発揮したのか、そしてまた森林組合等へのその後の定着、そういう状況はどうなのか、あわせて林野庁にお尋ねいたします。
加藤政府参考人 林野庁といたしましても、優秀な森林整備の担い手を確保、育成していくということは大変重要な課題でございます。
 今回、厚生労働省の方でも、緊急地域雇用創出特別交付金事業で新たな労働力を森林の整備に振り向けていこうという取り組みをしていただいているところでございまして、各地でいろいろな取り組みが行われているところでございますが、林野庁といたしましては、この緊急地域雇用創出特別交付金事業において森林作業に従事した者を対象としまして、林業事業体への本格雇用や地域への定着を促進するため、平成十四年度補正予算によりまして、四十四都道府県において二千四百人規模で、森林整備の担い手としての必要な専門的技能、技術の習得などを図る緑の雇用担い手育成対策事業に取り組んでいるところでございます。
 本事業につきましては、補正予算で始まったということでございまして、この四月から具体的に動き出しているところでございますけれども、我々といたしましては、この研修を受けられた方々が地域の林業就業者として定着をしていただくというふうになるように努めてまいりたいと思っておりますし、また関係者にもそのことをお願いしてまいりたいというふうに思っております。
黄川田分科員 地方のアイデアが本当に生かされるように、よろしくお願いいたしたいと思います。
 今度は切り口を変えまして、木質バイオマス発電についてちょっとお尋ねいたしたいと思います。
 昨年十二月に、農林水産省、経済産業省などが中心となりまして策定したバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定されたところであります。森林県であります私の地元の岩手においても、県を挙げた木質バイオマス利用の取り組みが進められております。県内の市町村でありますけれども、住田町におけるペレット工場の建設や、これは補助申請していると思いますけれども、あるいはまた陸前高田市での給食センターへのチップボイラーの導入等が進められているところであります。
 しかしながら、ペレット等の熱エネルギーの利用は活発に展開されておりますけれども、電気エネルギーとしての活用はいまだ検討段階といいますか、そういう段階であります。
 そこで、新エネルギーとしても重要であります、森林・林業を活性化し、そしてまた山の再生にも寄与するこの木質バイオマス発電を積極的に進めていったらいいんじゃないかと私は思っているわけでありますけれども、林野庁の見解を求めておきたいと思います。
加藤政府参考人 今お話ございましたとおり、木質バイオマスの利用につきましては、岩手県には大変一生懸命に取り組んでいただいているところでございますが、林野庁全体としましても、木質バイオマスエネルギーを利用するということにつきましては、地球温暖化の防止や廃棄物の減量化等による循環型社会の形成にも資するということでございまして、地域の未利用資源を活用した産業の育成等による新たな可能性の創出ということにもつながるわけでございますので、極めて重要であるというふうに考えているところでございます。
 このため、化石燃料を代替する環境に優しい電力を生み出すということで、バイオマス発電施設であるとか、使い勝手のよい木質燃料であるペレットの製造施設等の木質バイオマスエネルギー供給施設の整備でありますとか、公共施設の重油ボイラーや灯油ストーブにかえて木質ボイラーやペレットストーブなどを導入していただくというようなことについて、支援を推し進めているところでございます。
 さらに、森林整備を行いまして林地残材が出るわけでございますが、これの収集、運搬がなかなか効率的にできないというところが問題点でございまして、今機材の整備というようなことも進めているところでございます。
 今後とも、経済産業省を初めといたします関係府省とも連携を密にいたしまして、発電を初めとする木質バイオマスエネルギーの利用を積極的に進めていきたいというふうに考えているところでございます。
黄川田分科員 今お話しされましたけれども、林地残材の収集そして運搬、それへの支援、これは大事だと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思っております。
 あわせて、資源エネルギー庁にちょっと関連してお尋ねいたしたいと思います。
 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法、RPS法ですか、この制度を、木質バイオマス発電に関連して、どう普及し、あるいはまたどのような助成策を考えておるのか、お伺いいたしたいと思います。
岡本政府参考人 お答え申し上げます。
 バイオマスのエネルギーというのは、私どもも、太陽光や風力などと並びまして、新エネルギーの一つとしてその開発導入を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 ことし四月に施行されました、今先生御指摘のRPS法におきましてもバイオマスはその対象になっておりまして、私ども、こういうものの普及、利用が進みますようにということで、全国十カ所で二度にわたって、まずは発電事業者を対象とする説明会をやりました。それから、木質バイオマス関係の方々、森林組合を初めとするそういう方々の会議でもこの法律の仕組みを御紹介いたしておりまして、この広報、普及ということに特に力を入れてまいりたいと考えております。
 木質バイオマス発電を行うということでこの法律の対象となるためには設備の認定というのが必要になるんですけれども、今現在は二件の設備認定を行っておりますが、それに加えて申請中のものも二件ございます。
 それから、導入促進に向けての助成という点におきましては、私ども、バイオマスを新エネ法の新エネルギーということで位置づけをしまして、技術開発、実証試験、それから実際に事業化をされる地方公共団体及び事業者の方々に対する補助という形の支援措置を用意しているところでございます。
 これらの取り組みに加えまして、当省、農林水産省、環境省等、関係府省で連携をとりまして、昨年十二月に先生御指摘のバイオマス・ニッポン総合戦略が閣議決定されたところでございますので、今後とも農林水産省を初め関係の府省と連携をとりながら大いに進めてまいりたいと考えております。
黄川田分科員 残り時間が少なくなってまいりましたので、エネルギー庁には三問ほどちょっと追加で設問をお願いしておりましたが、このうちの二問をあわせてお尋ねいたします。地方のエネルギー事情に関連してであります。
 まず、この四月に行われた総合エネルギー調査会の基本計画部会でも議論されておるところでありますけれども、天然ガス利用拡大には、陸上幹線パイプラインの充実と、そしてまた分散型発電等によるガス需要の拡大が必要と私は思っておるわけなのでありますが、エネルギー庁長官の考え方。
 そしてまた、天然ガスでありますけれども、これは極めて重要な電源エネルギーであると私は思っております。そこで、天然ガス導入時のインフラ整備の財源について、エネルギー関連特別会計の電源開発促進対策特別会計等を積極的に活用してはどうかなと思っているわけでありますが、この二点についてお尋ねいたします。
岡本政府参考人 天然ガスは、エネルギーの安定供給という面からも、それから化石燃料の中ではCO2の排出割合が一番少ない燃料でございますので、私ども、天然ガスの利用拡大というのをぜひとも進めてまいりたいと考えております。
 それをやるに当たりまして、一つは、天然ガスの導管、パイプラインというインフラが、日本の場合、先生御指摘のとおり、整備が大変欧米に比べて立ちおくれておりまして、今般、今、国会で御審議いただいておりますガス事業法の改正の中で、ガスの導管事業者というものを法律上ちゃんと位置づけて、そのことを前提に、道路の占用の許可であります等、いわゆる公益特権というものをガス導管事業者にも認めるということによって、こういうものをてこにしながら導管網の整備を進めてまいりたいと考えております。
 それから、あわせまして、天然ガス、いろいろな利用の仕方があるんですけれども、コージェネレーションというような、いわゆる分散型電源として利用していくというのも大変有望な方途でございます。これにつきましては、法制面では、今これまた提案中の電気事業法改正の中で、分散型電源の方々が自前で電線を引いて電気を供給するというのをしやすくするための法律改正というのも、今御提案申し上げているところでございます。
 それから、天然ガスの利用拡大ということで、新しい利用技術の開発というようなことに加えまして、先生御指摘の導管網の整備ということについて、今は政策投資銀行による融資、それに対する私どものエネルギー特会から一部利子補給という形での支援を予算の面でやらせていただいております。加えまして、税の面でも特別償却等の税制上のインセンティブを用意しているところですが、こういった措置をこもごも適用しながら、日本における導管網整備、ひいては天然ガスの利用拡大というものを私ども強力に進めてまいりたいと考えているところでございます。
黄川田分科員 後段の方の回答は、電源開発の特別会計の方からの。
岡本政府参考人 導管網、天然ガスパイプライン網の整備自体は、原則として、審議会の答申でも、民間の事業者の方々がやるというのを基本に考えておりまして、そういったものをやりやすくするために、一つは公益特権の付与ということを考えているわけでございますが、エネルギー特別会計からの助成という点では、かなり初期投資が大きいということもありますものですから、原資を政策投資銀行から融資をする。その際に、利幅で〇・三五%ぐらい、今利子補給という形で資金コストの低減化というのをやっておりますが、こういった予算措置も有効に活用しながら、これはエネルギー特別会計の予算で手当てをしている部分でございますが、私ども導管網の整備というものをお手伝いしてまいりたいと考えております。
黄川田分科員 ぜひ、昨今の原子力行政の行き詰まりといいますか、さまざまな課題を抱えておりますので、我が国のエネルギーのベストミックスといいますか、やはり風力あるいはまたバイオマス発電、いろいろなエネルギーの利用もありますけれども、やはり天然ガスは重要な位置づけになると思いますので、指摘しておきたいと思います。
 残り時間あと五分でありますので、まとめてお尋ねいたしたいと思います。
 文化庁と環境省ですか、世界遺産についてであります。世界遺産は文化遺産と自然遺産がありますので、この両面からお尋ねいたしたいと思います。
 最初は文化庁にお尋ねいたします。
 私の地元の平泉の文化遺産でありますけれども、二年前に暫定リストに登録されてから、該当する平泉町が中心になりまして、周辺市町村と連携を深め、そしてまたより広域化を図るとともに、考古学等の専門家から成る世界文化遺産登録指導委員会を設けるなど、地道な活動を日々行っておるところであります。
 そこで、本遺産への登録推薦の見通しはどうであるのか、そしてまたさらに、地域でどんな活動をしたらよいのか、努力を重ねればいいのか、御意見がありましたら、文化庁の見解を求めておきたいと思います。
 それから、残り時間がないものですから、あわせて質問します。
 環境省の方には、環境省も林野庁と共同で、この三月に世界自然遺産候補地に関する検討会を開催しまして、そして、今後五年間に新たに世界自然遺産として推薦できる地域を学術的に検討する体制を整えたと聞いております。
 自然遺産は、現在、屋久島、そして白神山地が登録されてから十年も経過しておるところでありますけれども、これは自然遺産、文化遺産ともユネスコの世界遺産センターが扱うものでありまして、どうも環境省は、この十年間何をしてきたのかなというところもありました。
 そこで、今回、これまた地域課題といいますか、私の地元の話をしますと、早池峰山あるいはまた三陸海岸を含めて全国で十九カ所が新たに候補地に指定されたのでありますけれども、各指定地域、これが全部世界遺産になるとは思っておりませんし、ただ、そういう取り上げていただいたということの中で頑張るという気力も出てくると思うわけでありますので、今後、県あるいは市町村と、どんな方針で臨めばいいか、環境省にこの自然遺産については伺いたいと思います。
銭谷政府参考人 平泉の文化遺産についてのお尋ねでございますけれども、平泉の文化遺産は、奥州平泉での藤原氏による華麗な黄金文化の遺産群でございまして、我が国の古代から中世への過渡期における地方文化の中で傑出した事例だと認識をいたしております。
 今後、世界遺産一覧表に記載されることが適当な候補物件として、先生お話ございましたように、平成十三年四月に、世界遺産の暫定リストに記載をされたわけでございます。暫定リストには、この時期に、平成十三年四月でございますが、平泉の文化遺産のほか、紀伊山地の霊場と参詣道、石見銀山遺跡をリストアップいたしております。
 この暫定リストに記載されました物件につきましては、世界遺産登録のための条件が整ったものから順次推薦を行うこととしておりまして、実は、先ほど申し上げました三件につきましては、本年一月に、先行して準備が整いました紀伊山地の霊場と参詣道を推薦したところでございます。
 平泉の文化遺産につきましては、現在、お話がございましたように、岩手県及び平泉町において世界遺産登録推薦に向けての準備を進めているところでございますが、今後遺産の中心となる史跡の新指定及び追加指定のための準備、それから周辺の景観保護のためのバッファーゾーン、いわゆる緩衝地帯の設定に係る条例の制定準備等が必要でございまして、そのため、地元の御理解、御協力が不可欠かと思っております。
 文化庁といたしましても、積極的にそういう地元の動きに対して支援をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
岩尾政府参考人 自然遺産についてお答えいたします。
 屋久島、白神山地、指定されてから十年たってどう対処してきたのかということでございますが、環境省として、両地域に世界遺産センターなどの設置、それから専任で管理を行う担当官などの配置を行うなど、保護管理を行うために、関係機関、地元自治体と提携して管理体制の充実を図ってきたところでございます。
 今年の三月に林野庁と共同で設置した検討会でございますが、国内で新たに世界自然遺産として推薦できる地域があるかどうかについて学術的な見地から検討を行っております。次回の検討会では、世界遺産条約上の厳しい基準を満たし得る地域が、現在選定されております十九地域の中からどの程度選ばれるか、その結果を踏まえて、私どもとしても、林野庁と共同で保護区の設定、地元の同意の確保など社会的な条件を見詰めつつ、世界遺産の登録に向けて推薦手続を進めたいと考えております。
 なお、最終的に推薦されるか否かにかかわらず、先生御指摘の早池峰、三陸海岸も含めまして、詳細検討対象となっている現在の十九地域につきましては、今後、それぞれすぐれた自然環境でございますので、保全管理の努力を継続することが重要と考えております。環境省としても、各地域の協力を得つつ、保全管理の充実に努めてまいりたいと考えております。
 以上です。
黄川田分科員 平泉の世界遺産については、おかげさまで、広域のバックアップといいますか、県境を越えまして宮城県の気仙沼市でも募金活動ということで始まっております。特段の御配慮をお願いします。
 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。
山名主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。
 次に、上田清司君。
上田(清)分科員 民主党の上田清司でございます。御苦労さまです。
 海のない埼玉県の選出でありますが、魚礁問題を少し取り扱いさせてもらいたいと思います。
 平成十年の会計検査院の決算検査報告で、魚礁問題を取り上げまして検査をしたところ、百三十事業主体が実施した三百四十四の事業においては漁獲量が生産効果期待値に達している、こういう評価をなして、一方では、九十七の事業主体が実施した二百十二事業においては生産効果期待量に達していなかったということで、ざっと言えば、五分の三は成功だけれども、五分の二は失敗である、このような評価と、金額的には国費十三億円がある意味では、むだとは申し上げませんが、必ずしも効果を上げなかった、こういう評価をされております。
 そこで、最終的には改善要求を五項目にわたって行われておりますが、この点について、その後、水産庁では明確な形でこのような改善要求については処置がなされたかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
亀井国務大臣 今御指摘のとおり、平成十年度の会計検査院の決算検査報告におきまして、並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理、活用について改善処置要求がなされたわけであります。
 農林水産省といたしましては、これを受けまして、改善措置として、魚礁設置に伴う漁獲の増加見込み量を適切に把握すること、魚礁の設置に当たっては、漁業者の意向を十分把握し、漁協等とも連絡調整を十分図り、実施することなどにつきまして都道府県を指導しており、その旨をまた会計検査院にも報告したところでもございます。
 魚礁の設置事業の実施に当たっては、地元漁協等とも連絡調整を十分行い、適正な漁場の整備が図られるよう指導しているところでありますが、今後とも引き続き、適正な事業の執行に取り組んでまいりたい、このように考えております。
 なお、平成十一年度から平成十三年度におきましては、魚礁の設置事業については会計検査院から指摘を受けていない、また、平成十四年度は、現在検査中でありますが、今のところ、指摘を受けていない、このような報告を受けております。
上田(清)分科員 極めて模範的な答弁ではあると思いますが、角形、いわゆる従来型は、網を切ったり、あるいは落とした後に、傾きかげんによっては壊れたりするという構造的な欠陥があるんではないかということも指摘されておるんですけれども、こういう点についての構造上の問題について御検討されたようなことがあるのかどうか、いかがでしょうか。
木下政府参考人 私ども、魚礁の設置でございますけれども、漁港漁場整備事業の施行上必要とされる技術的指針の中で検討しておりまして、一つは、対象生物の分布あるいは行動等の生態、あるいは漁業の実態を十分考慮する中で、造成漁場の効率的な利用あるいは的確な管理が行われるよう、その機能を十分発揮させるのに必要な、そのような魚礁を設置するように指導しているところでございます。
上田(清)分科員 いわゆる従来型の、角形というんでしょうか、これについては問題ないというふうな判断をされているんですか。それとも、いろいろ欠点があるというふうな判断をされているのか。
木下政府参考人 私ども、角形につきまして、構造上問題があるというふうには認識をいたしておりません。
 ただ、先ほどの構造上の問題でございますけれども、魚礁につきましては、流体力なり自重、設置時の衝撃力等の外力に対しまして構造耐力上安全なものとする、これが一点でございます。また一方で、造成漁場の円滑な利用あるいは的確な管理を行うために適切なものということで、洗掘なり埋没、あるいは沈下等により機能が低下しない、そういうような魚礁を選択すべきというふうにしているところでございます。
上田(清)分科員 魚礁というのは、選択されると言うんですが、そういうものを選択する主体というのは、基本的には事業主体だというふうに思うんですけれども、選択する事業主体に対して水産庁が指導しているというような意味なんですか、今のお話は。
木下政府参考人 委員御指摘のとおり、魚礁の選定でございますけれども、事業主体であります都道府県あるいは市町村が、先ほど申し上げたような造成漁場あるいは対象の魚種等々を勘案しながら、魚礁についての構造上の問題について、それを先ほど申し上げた事業主体が選定すべきと、そのように指導しているところでございます。
上田(清)分科員 私は素人でありますが、いわば一番身近な事業主体はやはり市町村になると思うんですね、現場を押さえているという。しかし、現場を押さえている市町村は技術者がいない、そして現場で現実に魚を漁獲している漁師がおられる。この方々も、基本的にはその魚礁の技術そのものは知らない。しかし、どの場所に置いたらいいかということはよく知っている。しかし、県庁の皆さんは、技術者もいらっしゃるかもしれない、あるいは水産庁にも技術者はいらっしゃるかもしれない。しかし、どの場所に置いていいかというのは、実は、経験とか過去の実績だとか、そういうものを含めて、現場の漁師の方の方が多分に知っているのじゃないかと思う。この三つが、技術と主体とそして漁業者との絡みが、この場合、どうもうまくいかないような感じが私はしてならないんですけれども、その辺の部分についての協議機関というのはきちっとあるのかどうか、それをちょっと確認させてもらいたいんですが。
木下政府参考人 先ほどの御質問でございますけれども、まさに委員御指摘のとおり、どの場所に魚礁を設置すれば効果があるかという点につきましては、地元の漁業者が一番よく知っておられるんだろうというふうに思っております。私どもも、魚礁の設置場所あるいは形状とかにつきましては、基本的には漁業者の要望に基づき決定すべきというふうに思っておりまして、設置場所につきましても、そのような要望に基づいて設置をする。また、具体的な魚礁の選定でございますけれども、構造上の考え方につきましては私ども水産庁が示しておりますけれども、具体的な事業者でございます都道府県の方で、そのような実態に即しながら決定しているというふうに承知をいたしております。
上田(清)分科員 しつこいようですけれども、なぜ五分の二も目標期待量に達しなかったのか。それぞれの専門家がおられるわけですね、水産庁には、またあるいは県の技術者にも。そして市町村こそ、まさに現場の海や中身がわかっておられる。そしてまた同時に、漁民の方は経験則としてどの場所がいいかとかも知っておられる。この三つがうまく結合すればそういうことはなかったというふうに思われますが、少なくとも十年の段階では、それが五分の二あった。四割あった。これが、幸いというか、十一年―十三年、指摘がなかった。指摘がなかったということと、改善されたということと一緒のことなのかどうか、ちょっとその辺はどうなんでしょうか。
木下政府参考人 私ども、先ほどの会計検査院の指摘も踏まえまして、平成十二年度から事前評価制度というのを導入いたしました。具体的に申し上げますと、このような水産基盤整備事業を実施するために必要な地元調整が完了しているかということにつきまして、事業実施の前提条件として位置づけたところでございます。したがいまして、地元漁業関係者やあるいは住民の同意を、確実に実施できるということを確認するということを一つのチェックリストとして公表している、それが計画段階でございます。
 また一方で、事業の実施段階でございますけれども、関係漁業者との調整が十分済んでいるかという点につきましてもチェックリストの中で確認をするということで、計画段階あるいは事業実施段階の両面から、先ほど申し上げたような点につきまして十分調整が了しているかについて確認をしているということでございます。
上田(清)分科員 これは、後で資料としてぜひ提出をお願いしたいんですが、魚礁の製造会社、どのくらい、どういう会社がどんなものをつくっているのか、ぜひ御提出いただきたいと思います。
 それから、多分、漁船に乗っけていって投げ込むという感じでもなさそうですので、当然、何かそういう専門会社でもあるのかというふうに私は思いますので、もしそういう専門会社があれば教えていただきたいというふうに思います。ちょっと私なりにヒアリングをしてみたいと思いますので、どんなところがそういうのがあるのか。
 多分にこれは、雇用のミスマッチなんという言葉がよく使われますが、それぞれ専門家がいながら何かかみ合いが悪い部分が、せっかくの魚礁をつくり、魚をより育てるという仕組みが必ずしもできなくて、一部網を切ったり、効果を必ずしも出さなかったという、そういう構造的な仕組みが多少あるような気が私はいたしますので、今は改善が進んでいるということでありますけれども、ぜひその辺、教えていただきたいと思います。
 こちらの部分に関しては終わりますので、水産庁長官、どうぞ御退室いただいて結構でございます。では、資料だけよろしくお願いいたします。
 大臣、ありがとうございます。お忙しいところ恐縮です。
 国有林野事業特別会計というのに、私も大変興味を持っております。というのは、毎年毎年、損失額が、約五百億ぐらい赤字額が出ているという現況があります。これは、なぜ解消できないんだろうという素朴な疑問でもありますし、累積損失金も相当大きな金額でもございます。そして、何よりも、この会計そのものが民間金融機関からの借り入れで成っている。これは、特別会計という根本の意味を問う内容の事業会計ではないかというふうに私は思っております。
 まず、根本論からして、特別会計はいろいろな考え方があります。事業会計の場合は、これは特別な事業として、会計は一般会計じゃない方がいいんだ、例えば独立採算性でやるんだとか、そういう考え方に立って当然これはつくられたというふうに、私は歴史的に言えば思っております。ところが、もう十数年、赤字が毎年続いていくのに、抜本的な対策が本当にできるのかできないのか、これは特別会計として成り立つのかどうかということも含めて、疑問を持っております。
 率直に申し上げたいと思いますが、これは、なぜ毎年赤字が出るのか、そして、それをそのままどうしてほうっておられるのか、こういうことからお伺いしたいと思います。
亀井国務大臣 国有林野事業におきましては、平成十年に成立いたしました国有林野事業改革関連二法案、これに基づきまして、公益的機能の発揮や組織、要員の徹底した合理化、縮減など、抜本的改革の推進に努めておるわけであります。
 そのような中で、木材価格の低迷など、状況は大変厳しいわけでありまして、収支両面にわたる努力を続けておるわけでありますが、財務の健全化を図ることが大変重要なことでありますが、これらの取り組みを通じてなかなか損失の縮減にいかない、こういうことでありまして、委員御指摘の、毎年五百億の損失、これを計上しておるわけでありますが、これらを、平成十三年度におきましては五百二十億、対前年比三十億ほど減額をするようなことになったわけであります。
 どうしても、これは、その損失の原因、材価や地価の低迷等による収入の落ち込み、あるいは、抜本的改革の過程における経費等の縮減がまだ途上にある、あるいは、国有林野の経営に必要な投資に対する減価償却の負担が大きいことなどによりまして、特に、減価償却の負担は過去の投資に由来をするものでありまして、これが大変大きい。当面、企業の経営指標である損益計算上の損失が発生せざるを得ない今状況にある、こういうことから、御指摘のような状況にある、このように申し上げさせていただきたいと思います。
上田(清)分科員 それでは、いつになったら収支のバランスがとれるんですか。
亀井国務大臣 今、それらをいろいろの措置をいたしまして、当初の三・八兆円、こういう中での二・八兆円と一兆円、こういう区分の中で、いろいろの努力をしておるわけでありまして、なかなか厳しい材価や、また地価等々の問題、そういう面で、これがすぐどういう状況にいくかというような、大変厳しい状況にありませんけれども、ただ、先ほど申し上げましたとおり、その計画を持ち、そして、先ほど申し上げましたような、年々、新規の借り入れ、あるいはまた借りかえ、借入金、こういうものにつきましてもいろいろ縮減をする、こういう努力を積み重ねていく以外に今のところないのではなかろうか、こう思っております。
上田(清)分科員 何かむにゃむにゃな感じだったんですが、加藤長官、どういう計画で収支のバランスを最終的にとられる予定ですか。
加藤政府参考人 抜本改革につきましては、平成十五年までを集中改革期間というふうに位置づけておりまして、この間につきましては新規の借入金をしない体質をつくるということにしているところでございます。
 そういう点で、平成十一年度におきましては、新規借入金六百五十四億円あったわけでございますけれども、十五年は百六十四億円というところまで縮減をしてきたところでございまして、平成十六年以降は新たな借入金をしないようにしたい。これから予算で、また十六年度予算、要求をさせていただくという状況でございますけれども、我々としては、そういうことを目標にしてやっていきたいというふうに思っているところでございます。
 あと、問題になりますのは、累積債務としまして三兆八千億ありましたけれども、そのうち二兆八千億につきましては一般会計で承継をしていただいたわけでございますが、国有林として一兆円を今後負担をしていかなければいけないということでございます。
 しかしながら、今のような状況でございますから、これについてはかなり長期的にということで御議論をいただいておりまして、五十年かけて返していくというような計画にいたしているところでございます。
上田(清)分科員 要するに、五十年後に収支のバランスがとれる、こういう理解でよろしいんですか。
加藤政府参考人 今申し上げました債務負担についても、返却をするということで考えているわけでございます。
上田(清)分科員 過去の債務はともかく、収支のバランスはどんな感じなんですか。
加藤政府参考人 今申し上げましたように、現金収支上の新たな借金をしないということでいえば、十六年からそういうことにしていきたいということで今考えているわけでございます。
上田(清)分科員 借りかえの問題を一つ、これは長官の方だとは思いますが。
 これは、確かに一%未満、〇・九八ぐらいの金利で借りておられるわけですけれども、この借りかえの金利でも、やはりざくっと計算すると十億か十二、三億ぐらいになるんじゃないかなというふうに思いますが。こういう事態で抜本的解決につながるのかなと私は思うんですが。この金利分だってばかにならないよ、たとえ一%そこそこでも、こんなふうに思うんですが。そういう知恵というのは今のところ出ていないんですか。
加藤政府参考人 実は、三兆八千億円という問題でございますけれども、それが累増してきたという中には、利子が利子を生んだというところがあるわけでございます。利子補給のためにまた借金をしなければいけないというようなことがあったわけでございまして、今回の抜本改革の中では、そういった体質にならないようにしようということでございまして、一兆円、かなり長期をかけて返していくわけでございますから、その間の利子につきましては一般会計で負担をいただくということで御理解をいただいているわけでございます。それから、先ほど申し上げました集中改革期間における新規借り入れにつきましても、これも利子補給をいただくということで法律的に認めていただいておるわけでございまして。
 そういう点では、利子が利子を生むというような形にはなっていかないということで一応このスキームができ上がっているわけでございますので、我々としては、そういった一般会計の確保ということにも努力をしながら、今言いましたような形での改革というものを進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
上田(清)分科員 私もまだ勉強不足ですので、あえてこの問題はこれ以上申し上げません。
 ただ、やはり特別会計の中で諸謝金の項目の中に国有林野管理審議会というのがありまして、そこに対する謝金を平成十五年度で約一千万ほど計上してあります。
 審議会の謝金、金額云々はともかく、どんな審議会かという形でちょっと確認をしましたら、七つのブロックに分けて、二十人ずつ百四十人の審議委員がいらっしゃるということで、年に一回、所要時間は一時間三十分ぐらい。たまたま議事録を、北海道森林管理局国有林野管理審議会名簿という形で、メンバーと審議の会議録をいただきました。これは、林野庁が持つ国有財産の一種の処分で、最小限度、逆にいわば赤字解消にも少しつながるような仕組みをつくっていくことだと思いますが、これを読んでいますと、二十人のメンバーのうち七人が意見を表明されて、うち五人はアドバイスをしているんじゃないのね、逆に教えを請うているの、中身が。全然有益な意思表明というんでしょうか、意見表明がないんですよ。
 言葉で言っていくと、まず会長から「何ぶん素人でございまして」というようなところからスタートしてごあいさつがあるし。それはいいですよ、会長はまとめ役だというふうに考えれば。しかし、ちょっとやはり、議事録を読むと、ある委員、「私素人で申し訳ないんですが、」云々と言って、「非常に稚拙な質問なんですがそこら辺お聞きしたいんですけど。」と。聞くんじゃないんですね、こういうふうにしてやったらいかがですかというのが私は審議会の委員の務めだと思うんですよ。また、ある人は「大変小さな事なんですけど、」と、こういう謙虚だといえば謙虚なんでしょうけれども、しかし、やはりようわからぬという話なんですね。また、さる委員は「すみません。参考のために質問させて頂きたいのですが。」こういう言葉で問われます。ある委員の方は「ちょっとお伺いをしたい」とか「もし差し支えなかったらお聞かせ頂きたい」とか、意思、意見を表明された七の委員の方のうち五人が、どちらかというと、ようわからぬけれどもここはどうなっておるのかという話であって、貴重な林野庁が持つさまざまな土地だとか原野とかをどう処分するかということについて卓見を承るという話じゃないんですね。
 たまたまこれは北海道だけがそうなのかというふうに私には思えません。私も、ありとあらゆる審議会を、一回議事録も山ほど読ませていただいた過去の経験則からして、できるだけ審議会には意見を表明しない人を呼んで、そのための口封じか何か、特別な審議会なんかは閣僚並みの給与をもらうような人たちもいますけれども、これは諸謝金ですからそういうものではないんですが、なぜそういう卓見を聞くような仕組みになっていないのか。でないと、いつまでたってもこの特別会計はペイしませんよということを私は申し上げたいんですが。
 これは大臣、感想で結構ですけれども、こういう議事録になっているんですよ。政治家ですからおかしなことだなと思っていただけるんじゃないかなと思って、機会があれば読んでいただきたいということだけでもお約束していただければありがたいんですが。
亀井国務大臣 その国有林野管理審議会の使命、これは森林管理局長の諮問、それに基づきまして、管理、処分の問題につきまして、いろいろ御意見、また調査をしていただく機関であるわけでありまして、今の御指摘につきましては、私も、若干満足をしない、不満足な点を感ずるわけでありまして。大変、国有林野の問題、大きな課題であるわけでありまして、その処分、またこれをいたさなければ、先ほどのお話のとおり、五十年というような形でいろいろ努力をするわけでありまして、その実現というのはできないわけでありますので、その辺、また議事録等も読みまして、またそれらの審議会の使命が果たされるように指導してまいりたい、こう思います。
上田(清)分科員 これは会計検査院の方にもぜひまた見ていただきたいんですが、森林保険特別会計というのがございます。その中の庁費で設計・計算・審査費で七千万ぐらいの予算が計上されております、十五年度。これは森林国営保険汎用大型計算機による処理費という形でとられておりますが、やはり政策の課題だと私は思っております、これは。それから、森林保険加入促進事務費、まあ宣伝広告費、これも約二千八百万の予算が計上されておりますが、これも、宣伝広告費というのも政策を促進するという課題だと思いますから。庁費というのは、やはり、どこの会計もそうですが、いつの間にかずるずるという形でいろいろなものがつけ加わっているんで、ぜひ私は見直していただきたいというふうに思っております。やはり厳格に、政策執行のところは政策執行のところで予算を計上する、そして雑費的な、光熱費的な、単純な事務関連費であれば庁費でも構わないと思いますが、何か出しやすいところで出すというような会計のルールになってきているんではないかなと思いますから、ぜひ検討していただきたいということを申し上げたいと思います。
 それから、農業経営基盤強化措置特別会計というところで、これは私に言わせれば、貸し付けと補助金だけの特別会計だ。そういう特別会計が本当にいいのかどうか。農業経営基盤強化、これは大事なことだというふうに私も思いますけれども、まさにこれは農水省のメーンになる政策課題ですから、これは特別会計でやるものかというふうに思います。
 そこで、特別会計には、担当職員がある場合とない場合があるんですが、ここは担当職員がいません、特別に。基本給を充てていません。特別手当もですね。他のところで充てています。そういう組織にもかかわらず、職員旅費が八千万出ています。庁費も九千万出ています。職員の活動の基礎となる、俸給としての基礎となる基本給や職員の手当も出てないのに、どうして職員の旅費が出たり庁費が出てくるのか。もちろん、理由があるんです。それはそうなんですけれども、こういう仕組みでいいのかどうかということについて私は問題提起をしておきたいというふうに思っておりますので、また別途、会計検査院の皆さんとはこういうことも、本当にこれでいいのかということをやりたいと思います。
 ぜひ、農水大臣には、一般会計が八十二兆、特別会計が三十二で三百七十兆、出し入れのものがいろいろありますから、日本国の予算は実質的には二百三十二兆、しかも特別会計にはいろいろな公益法人がぶら下がって、そちらに補助金、委託金がどうどうと流れて相当なむだがあるというふうに私は思っておりますので、問題意識をお持ちだとは思いますが、こういうところに切り込んで刷新していかないといかがなものかというふうに思っておりますので、この機会にあえて提言だけ申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。
 きょうはありがとうございました。
山名主査 これにて上田清司君の質疑は終了いたしました。
 次に、重野安正君。
重野分科員 ここは決算委員会の場でありますが、私は、この際、具体的な数字を挙げての質疑というよりも、この間、国がいろいろな施策を展開してきたわけでありますが、しかし、それが現状どういうふうな状況を醸し出しておるのか、そういう点について数点お伺いしたいと思います。
 まず、大臣、米の抜本改革、今、日本の農政の中で米政策の改革という問題が非常に大きなウエートを占めていると思うんです。この国は瑞穂の国と言われるように、米という穀物の存在は、ある意味ではこの国の歴史をつくってきたという言い方もあながち的外れでない、国にとっては基本的な問題だ、私はそういう認識をしております。
 確かに、昨今、米余りというふうな状況もこれあり、どうも農業の中における米の位置というのは相対的に低下しておる。それが私は決していいこととは思いませんが、そのきわめつきが、戦後この方米を担当してきた食糧庁が、食糧庁という名前が農林水産省の中で消えるわけですね。
 私は、この際、これは戦後日本農政の総括みたいな形になると思うんですが、食糧庁が姿を消すということの意味、何がそのことによってプラスに作用し、何がそのことによってマイナスに作用すると担当大臣として分析されておるのか、その点をひとつ最初に聞いておきたい。
亀井国務大臣 今お話しいただきましたとおり、私自身も、こういう政治家になる以前は米の仕事をしておりましたから、そういう面から考えますと、今、米をめぐるいろいろの状況、また米政策の転換、これはやはり時代の要請、こういうこともあろうかと思います。
 かつて私は米の卸の仕事をしておりまして、食糧事務所に米の購入に参りまして、割り当てでちょうだいをする、そしてそれを小売店に販売をしなければならないわけですし、小売店はまた消費者の皆さん方からいろいろ注文を聞かれる。やはり時代が変わり、いろいろの、おいしいお米、またニーズというものを反映しなければならない。しかし、昨今では、自主流通米あるいは計画流通、こういうことで、いろいろのその手法というものも変わってきておりますし、また消費者のニーズに合った生産というものも進めなければならない。昨年、米政策の問題につきまして一つの結論を得、今、今国会に食糧法の改正をお願いしておるところでもございます。
 一方、今度の組織の問題につきましては、昨年六月の食品安全行政に関する関係閣僚会議の取りまとめ、消費者の健康保護を最優先、こういうことで、食品安全委員会を内閣府に設置をいたしまして、リスク評価を行う、こういう点であります。また、私ども農林水産省におきましては、そのリスク評価に伴うリスク管理を担当するわけでありまして、消費者保護、食品の安全性の確保、この観点から、産業振興部門から分離、強化する、こういうことによりまして、消費者行政とリスク管理業務を担う消費・安全局、これを新設することにしたわけであります。
 今日の時代、これらの見直しに当たって、行政の肥大化を防止する、こういう視点、スクラップ・アンド・ビルド、具体的には食糧庁の組織の廃止等既存組織の見直しを行う、こういうことから食糧庁の廃止ということとしたわけであります。
 これに伴い、食糧庁が担ってまいりました主要食料行政、これは、総合食料局、そこの食糧部、こういうものを設けまして、地方においては、これまでの食糧事務所の業務を実質的に地方農政局に編入をいたしまして、主要食料の業務を一般行政との連携のもとに実施する新体制、これを整備するわけでありまして、米政策の見直しを初めとする各般の施策を円滑に進めていくわけであります。
 時代の要請、こういう問題もありますし、食の安全、安心、こういうものもやはり進めなければならない、こういうことから、行政の問題、そして消費者重視、国民の健康保護、こういう視点を十分加味される体制というものを、ぜひ御理解をいただいて、農林水産省といたしましてもその使命を果たしてまいりたい、こう思っておるところであります。
重野分科員 確かに、BSEの問題に端を発して、食の安全ということが強く言われ始めました。私もそのことを否定するつもりはないのでありますが、そのことと食糧庁をなくすということがどう結びつくのか。農林水産省がBSEのリスク管理の部分を受け持つというのであれば、それは農水全体で、しかも今、行政改革の中で人をふやすということは難しいから、各局で協力し合って出して、そして一つの部門をつくっていくというのであれば、そうかというふうに思うんですが。
 私は、地方ですけれども、農業改良普及員をしていましたから、ずっと食糧事務所の皆さんと一緒に仕事をやってきた。そういう私の人生的な経験もある。なぜ食糧事務所かと。そこがやはり、現場、農家の方々の話を聞いていましても、BSEと食糧事務所というものは関係ないやないかというふうな言い方もあるんですよね。やはり、現場においては、周囲を取り巻いている方々の、何となく納得できない、こういう声がよく耳に入るんです。そういうことに対して、大臣、どういうふうに答えるんですか。
亀井国務大臣 現場でのお気持ち、また、改良普及員の皆さん方は農家の皆さん方と常に接触をされておるわけでありますから、今委員御指摘のような点は私も十分わかります。
 しかし、現実に行政改革を進めなければならない、また一方、今度の食の安全、安心、こういうものを進める、国民の健康保護、リスク評価をする、こういう新しい、時代の要請にこたえなければならない大きな問題もあるわけであります。
 一方、食糧事務所の問題も、食糧庁の問題も、新たに総合食料局、その中の食糧部、こういう新しい位置づけをいたしまして、これは末端までいろいろの仕事を進める。こういう面で、全体的、国全体、消費者と生産者、こういう消費者と生産者の顔の見える関係と、また、時代が変わり、消費者のニーズにこたえる、こういうもろもろのことをぜひお考えいただきまして御理解いただきたい、このようにお願いを申し上げる次第でございます。
重野分科員 私はやはり、農林水産省というのはそういう消費者の思いを重視するという、それはそれでいいと思うんです。同時に、この国の農業を支えている生産者の思いと、今起こっている状況に対する認識というのをやはり正面から受けとめなきゃならぬと思うんです。
 食糧庁がなくなる、地方では食糧事務所の名前ももう変わるんだろうと思うんですが、そのことが、第一線で一生懸命国民の食料生産に励んでいる、まあ大変個々の経営は厳しいんですが、しかし頑張っている農民の側から見て、いよいよ国の行政の中でもう我々をすくい上げる網の目が大きくなったんだというふうな悲観的な思いをさせることは、僕はやはり絶対に避けなきゃならぬ。
 そういう点について、食糧庁なき後、農家に対し、農水大臣としてどうなんだという思いを述べていただきたい。
亀井国務大臣 農業の持つ使命は、もう私が申し上げるまでもなく、まさに我々の生命をはぐくむもとであり、また、自然環境やあるいはまた文化を形成する場所でもあるわけであります。
 今度の食糧庁廃止、こういうことで、総合食料局そして食糧部、そしてまたさらに地方農政事務所、これもそれぞれ地方に置くわけでありまして、これはぜひまた地方自治団体や農業団体、この皆さん方と緊密な連携をとらせていただきましていろいろの努力をする、そういう中で、農家の皆さん方にもいろいろまた参画をしていただきまして、御理解をいただくような施策を進めて、そして、心配のないような形をとらなければならない、こう思っております。また、そのように努力をしてまいりたい、こう思っております。
重野分科員 米をめぐる、生産する側から見れば非常に悲観的なというか、そういう流れが非常に表面に出てきている中で、私の県は、特に私の選挙区は、棚田という言葉を知っていると思うんですが、もう海から山まで、狭い範囲の中で一気に上がっているという地形です。どうしようもないんです。そういう地形の中で、全面積に占める棚田の割合というのは非常に高いんですよ。私に言わせれば、この国の米政策の転換ということが、いよいよもって、そういう耕作不適地と言われる、不適地じゃない、非常に非能率的な米作を余儀なくされる棚田地帯、ここの皆さん方の思いというのは非常に深刻です。現にもう、私もずっと、県会議員から、今衆議院に出させていただいているんですが、よく見ていますけれども、間違いなく棚田地域における耕作放棄地は目に見えてふえている。極端に言って、棚田地域でいわゆる水稲が、米作がもう消える、そういう状況になるかもしれぬということを、大臣、思ったことはありますか。
亀井国務大臣 ぜひそんなことにならないように、こう思って、棚田の存在は、防災であるとか水の問題であるとか地域の文化を維持する、そういういろいろな多面的な機能を持っておるわけでありますし、まさに我が国の、中山間地域における農業生産は約四割、棚田が存在する中山間地域は四割、このような中で、我が国の農業、農村の中でも重要な地位を占めておるということは承知をいたしております。
 また、棚田についても今御指摘がございましたが、生産性は低い。あるいは、洪水防止や美しい景観、これの維持など多面的な機能を有しておるわけであります。その保全につきましては、国民的な理解や関心も高まっておるわけでありまして、各地域にNPOによる棚田オーナー制度の取り組みが行われているところも承知をいたしております。
 しかしながら、棚田を含む中山間地域においては、過疎化あるいは高齢化の進行、こういう問題もありますし、担い手の減少、あるいは耕作放棄地の増加、御指摘いただきましたとおり、地域の活力や多面的機能の低下が懸念されておるわけでもございます。
 私ども農水省といたしましても、棚田地域の立地条件を配慮した簡易な農地整備や営農機械を通すための耕作道の整備等を行って耕作を続けられるようにするとともに、農業生産条件の不利を補正するための直接支払いを実施しているところでもあるわけでありまして、棚田を含む中山間地域の農地の保全に努めてまいりたい、こう思っております。
 棚田の地域で本当に、いろいろ今申し上げたように、耕作、不耕作地等々目にするところもございます。しかし、これは何とか、先ほど申し上げましたような中で努力をしてもらわなければならない、こう思います。
重野分科員 私は、そう遠くない時期に、棚田が耕作地の中心を占める、そういう地域の農業の担い手は消えると思いますね。
 そうなったときに、一体、この日本という特殊な、もう山が海岸端に迫っているというような地形ですよ、この棚田というのがやはり水をためる安全弁の役割を果たしている、これはもう間違いない。毎年耕作をし、起こして、堆肥を入れて、水をしっかりためる力を延々と農業者は維持しているわけですよね。そういう作用が働かなくなるということを想定したときに、これは単に米をつくる、つくらぬという次元じゃなくて、もっと大きな問題が出てくる。そういう問題意識を持ってこの棚田地域をどうするか、そういう視点が私は今求められている、そういう思いを、大臣、共有できるかどうか。
亀井国務大臣 御指摘の点、私十分わかる話でございまして、担い手の問題であるとか直接支払いを実施しているような問題、さらにこれら、努力をしなければならない。
 先般もつくばに参りまして、研究所に参りまして、万一、棚田地域、あれが荒れたような状況になったときに、先ほど御指摘の水の問題、災害の心配というのは本当にすぐ出てくることでありますので、これはぜひ棚田を維持する努力をしなければならないと、先般、図面と申しますか、設計、パノラマの状況を見てまいりまして、つくづく感じて帰ってきたような次第でございます。
重野分科員 ぜひ棚田、棚田地域という表現が妥当かどうかは別としまして、そういう地域で一生懸命農業をやっておられる皆さん方が、そうか、やはり頑張らにゃという、励みになるような、具体的な政策、施策というものをぜひ構築していただきたい。
 次に、林野庁長官に聞きますけれども、私の地域は、さっき言ったように本当に山間地域です。まず特徴的に言えることは、山間部を流れる中小河川の流量がもう著しく減少した、雨が降ったときだけしか流れないというふうな川がもう非常にふえている。私は、このことと山の関係というのは絶対あると思うんですね、絶対あると思う。そういう山と中小河川の流量問題という問題意識を持って、林業の最高責任者、林野庁長官、そういう意識を持ってやられているかどうか、まず聞いておきたい。
加藤政府参考人 今、森林の持つ水源涵養機能についてのお話でございますけれども、そういった機能をやはり高度に発揮させていくということで考えていきますと、そのあるべき森林というのは、下層植生が豊かにあるということが必要ですし、根がよく発達をして、我々の言葉で団粒構造と言っておりますが、いろいろな、土壌の中に穴があいておりまして、そこへ水がためられるというような構造がつくられていくということが必要であると思うんです。
 人工林化をいたしまして、そういう点でいきますと、一つは、まだ人工林が生育途上にあるということでございまして、若い林が多いわけでございますので、そういう点での根の発達ということがあるのではないかというふうに思います。
 また、間伐が今十分されないということで、実は下層植生がなかなかないというような林もあるわけでございまして、そういう点では、水源涵養ということから考えましても、森林の整備というものをきちっと進めていくということが必要ではないかというふうに思っているわけでございます。
 今回、森林・林業基本計画によりまして、三つに大きく区分をして、それに応じた森林施業をしていこうというふうに考えているわけでございますが、その一つが水土保全林ということでございまして、水源涵養を果たしていくような森をつくっていきたいということでございます。
 そこの中では、今申し上げましたように、できるだけ根を発達させていくということでいけば長伐期化を図る、あるいは下層植生ということでいけば複層林化を図るというような施業をとっていくというようなことでございますし、皆伐をするという場合も大面積にはできるだけ切らないというようなことでやっていくことで水土保全林というものを考えていきたいと思っているところでございまして、そういうような形で、森林施業を見直すべきところは見直していくということでやってまいりたいと思っているわけでございます。
重野分科員 私は、こういう状況をもたらした責任の一端は、やはり戦後のこの国の植林政策というか森林政策というか、これは免れないと思います。
 それは、今空から見れば、もう一年じゅう山は真っ青ですよね、真っ青です。だけれども、一たん山に入ってみますと、やはり山の地面の状況、木が植わっておる土の状況というのは物すごく変わっていますね。こんなことを言うと年がばれますけれども、僕らが子供のころというのは、雨が降れば、山に行くとヤマミミズがもういっぱいはっていたんですよ。そのミミズをイノシシとか山のけものたちは食って、それで生きていたんですね。ところが、もう今はそんな様子はまるでありませんよ。雨が降ったら一気に水が川に流れ込む。そして、山の土はまことに貧相な土になっている。
 これは、僕は、国の植林政策がやはりその反省を持たにゃいかぬ。やはり杉、ヒノキ一辺倒の政策でやってきたと思いますね。
 だから、僕はやはり今、先ほど前の方が山問題を言っていましたけれども、僕はそれと違った立場で、やはり国土の七割を占める山ですから、この山が豊かであるか貧相であるかということが、これはこの国土を守るか守らぬかという物すごく大きな課題なんです。林野庁もこの間、僕も昨年もまたこのことを聞いたんですよ、それで、やるぞ、こう言うんですが、どうも目に見えないんですね、目に見えない。むしろ国会では、国有林財政が厳しいという話の方が声が大きい。僕はやはり、そこのところをチェンジしていかないと、この国の山はもう衰退の一途ですよ。
 どうですか。戦後からこの方、この国の一年間の降水量、変わっていませんよ。昔はもう、中小河川でみんな夏は泳ぎができた、そして魚もとれていた、ウナギがいっぱいいた。今、全然おりません、泳ぐ場所もないです。ここのところですよ、問題は。これほどこの国の様相が変わったというのは、僕は、やはり山です、山。やはり国土の七割を占めるんですから、山は。山を本当に豊かな山にしていくという責任は、僕は林野庁だけの問題じゃないですよ、これは。農林水産省だけの問題、そういう視点じゃないですよ。国全体のやらなきゃならぬことですよ、本当に。
 瑞穂の国なんか言って、この国というのは豊かで潤いがある、そういうイメージでしょう。しかし、よく見たらそういう国でなくなりつつある。これは何とかしなきゃいかぬ。そういう問題提起というのを僕はやはり、林野庁長官、もっと声を大にして言わないと、本当にこの国の山はもう衰退の一途をたどりますよ。
 そして、そのツケは下流に住む国民がかぶるんです。水害だけじゃありません、CO2の問題もそうですよ。山の機能というのは知る人ぞ知るであって、これが全体化なっておらぬというところに問題がある。それを全体化していくという任務もまた農水大臣も林野庁長官も持っている。そこら辺について、お二方、ひとつ答弁してください。
亀井国務大臣 実は、昨日は全国植樹祭を千葉で開催いたしまして、小学生のお子さんから、大切に育ててくれた苗木を私は受け取りました。そして、彼に、大切に育ててくれてありがとう、そして、さらに豊かな緑を広めるためにお約束をします、こう申し上げ、ぜひ今後とも緑を大切にし、森を守っていただきたい、こういうことを昨日申し上げたわけであります。
 先生御指摘の、まさに日本の面積の七割が山であるわけでありますので、先ほどからお話しいただきますとおり、本当に、山を守らなければ、川下と申しますか、都市部までいろいろの問題を生ずるわけでありまして、今いろいろ国有林野の問題等々ありますけれども、新しい時代に、いろいろな緑の問題等々につきまして施策を進めて、山を守る、また国を守る努力をしてまいりたい、こう思っております。
重野分科員 そこで、国有林あり、県有林あり、市町村有林あり、民有林あり、山の持ち主はさまざまでありますが、今言ったそういう状況を考えて、そして山をもっと肥沃なものにしていくという点では、複層林というのは、もう林野庁も方針、農水省もそういうことを言っていますね、複層林。これをやはりまず国は具体的に実践すべきだと僕は思うんです。そのことを通して、自治体の山、そして民有林、みんなが山の様子を変えていくよ、そして長期的には山の土がもっと肥沃な土になっていくんだ、そういうふうな実践を、もう理屈じゃない、やるべきだ。
 どの規模やるかというのは、大規模な方がいい。少なくとも各県で一カ所ずつぐらい、国にある国有林の中で、県にある国有林の中で、そういう複層林事業というものを実行する。そのことで、それをやはりその県の皆さん方に見てもらう、それで広げていく。こういう具体的な展開をしていかないと、これは言うばかりで全然進みませんよ。林野庁長官、その点はどうする。
加藤政府参考人 今お話がありましたように、森林施業の見直しをして、森林の多面的機能の持続的な発揮を目指す施業をやっていきたいということで、複層林を大幅に増大していきたいというふうに思っているわけでございます。
 そういう点でいけば、やはり今までは、杉、ヒノキ、カラマツ等を植えて、それをある一定の伐期で切ってという林業が定着をしてきているわけでございまして、複層林施業ということについては、民間の方々にもっともっと御理解をいただいて進めていかなければいけないということだろうと思います。そういう点で、言われましたように、国有林でも公益的機能を旨とした施業を行っていくということでございまして、やはり国有林がどういう形で複層林施業をやっていくのかということは大変重要な問題だというふうに思っているわけでございます。
 そういう点で、実は、水土保全林につきまして、まだまだPRが足らないと思いますけれども、国有林の中に百カ所以上、実はモデル林的なものをつくっていこうと。森林の場合は、モデル林といいましても、すぐそれができ上がるということではなくて、でき上がるにはやはり時間がかかりますので、そういう点ではまだまだなかなか御理解をいただくというところまでは行っておりませんけれども、我々としては、今申し上げましたように、モデル的に施業をしていくところを皆さんに見ていただけるような形にしていきたいというようなことで取り組み始めたところでございまして、先生言われましたような趣旨に少しは合っているのかなというふうに思うところでございます。
 いずれにしましても、国有林でも積極的にそういったものに取り組み、さらに、国有林を民間の方々に見ていただいて、民間の方々とも議論しながらそれが普及していくというような形をつくっていくということが必要ではないかというふうに思っております。
重野分科員 時間が来ました。もっと通告しておったんですけれども、もう時間が足りませんので、またの機会にしたいと思います。
 以上で終わります。
山名主査 これにて重野安正君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十日午後五時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時二十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.