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第1号 平成17年4月25日(月曜日)

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本分科会は平成十七年四月十三日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

四月二十二日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      今村 雅弘君    柴山 昌彦君

      菅  義偉君    平沼 赳夫君

      武藤 嘉文君    内山  晃君

      河村たかし君    前田 雄吉君

      徳田 虎雄君

四月二十二日

 菅義偉君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十七年四月二十五日(月曜日)

    午後一時開議

 出席分科員

   主査 菅  義偉君

      今村 雅弘君    柴山 昌彦君

      谷  公一君    萩生田光一君

      市村浩一郎君    内山  晃君

      金田 誠一君    河村たかし君

      下条 みつ君    樋高  剛君

      前田 雄吉君

   兼務 稲見 哲男君 兼務 田嶋  要君

    …………………………………

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   会計検査院事務総局事務総長官房総括審議官     真島 審一君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第五局長            船渡 享向君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   山木 康孝君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森口 泰孝君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  岩尾總一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          上村 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 井口 直樹君

   政府参考人

   (社会保険庁長官)    村瀬 清司君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 小平 信因君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     松永 和夫君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         森下 保壽君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  山本繁太郎君

   政府参考人

   (中小企業金融公庫総裁) 水口 弘一君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

   決算行政監視委員会専門員 奥村 卓石君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  今村 雅弘君     谷  公一君

  柴山 昌彦君     萩生田光一君

  内山  晃君     井上 和雄君

  河村たかし君     樋高  剛君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     今村 雅弘君

  萩生田光一君     柴山 昌彦君

  井上 和雄君     市村浩一郎君

  樋高  剛君     金田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     下条 みつ君

  金田 誠一君     河村たかし君

同日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     内山  晃君

同日

 第一分科員田嶋要君及び第四分科員稲見哲男君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十五年度一般会計歳入歳出決算

 平成十五年度特別会計歳入歳出決算

 平成十五年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十五年度政府関係機関決算書

 平成十五年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十五年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団)


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     ――――◇―――――

菅主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十五年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管、経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 平成十五年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額二十兆三千五百九十億円余に対して、支出済み歳出額二十兆一千五百二十二億円余、翌年度繰越額七百六十九億円余、不用額千二百九十八億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして申し上げます。

 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額四十兆七千七百三十二億円余、支出済み歳出額四十一兆九百十億円余、翌年度繰越額四千六百五十九万円余であり、差し引き三千百七十八億円余をこの会計の積立金から補足するなどとして、決算をいたしました。

 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額七百六十二億円余、支出済み歳出額七百三十一億円余であり、差し引き三十一億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 第三に、国立病院特別会計につきましては、収納済み歳入額一兆五十七億円余、支出済み歳出額九千七百二十六億円余であり、差し引き三百三十一億円余を国立高度専門医療センター特別会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十二兆六千九百八十三億円余、支出済み歳出額二十一兆二千百三億円余、翌年度繰越額四十九億円余であり、差し引き一兆四千八百三十一億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 最後に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八兆一千二百二十一億円余、支出済み歳出額七兆三千百二十五億円余、翌年度繰越額三十二億円余、未経過保険料相当額二百三十七億円余、支払備金相当額一千八百九十三億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き五千四百三十九億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する平成十五年度の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

菅主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院大濱審議官。

大濱会計検査院当局者 平成十五年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項百二十四件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一二号は、庁費等からの支出が適正でなかったものであります。

 同一三号は、国民年金事業に使用する金銭登録機の購入契約が会計法令の趣旨に反し適切でなかったものであります。

 同一四号は、届出用紙等印刷システムの提供を受ける役務契約について、その導入の必要性がなく不当と認められるものであります。

 同一五号は、健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたものであります。

 同一六号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものであります。

 同一七号は、厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったものであります。

 同一八号は、雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったものであります。

 同一九号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったものであります。

 同二〇号は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。

 同二一号は、労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払いが適正でなかったものであります。

 同二二号は、血液確保事業等補助金等の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。

 同二三号は、医療施設運営費等補助金の経理において、補助対象事業費の精算が過大となっているものであります。

 同二四号は、保健事業費等負担金が過大に交付されているものであります。

 同二五号は、医療施設等施設整備費補助金の交付を受けて取得した建物を無断で担保に供するなどしていたものであります。

 同二六号から二八号までの三件は、保健衛生施設等施設整備費補助金の経理が不当と認められるものであります。

 同二九号は、緊急雇用創出特別基金事業における新規・成長分野雇用創出特別奨励金の支給が不当と認められるものであります。

 同三〇号は、早期再就職者支援基金事業における早期再就職者支援金の支給が不当と認められるものであります。

 同三一号から三五号までの五件は、在宅福祉事業費補助金が過大に交付されているものであります。

 同三六号から四〇号までの五件は、社会福祉施設等施設整備費補助金等が過大に交付されているものであります。

 同四一号から五九号までの十九件は、児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。

 同六〇号から六七号までの八件は、生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。

 同六八号から七一号までの四件は、精神保健対策費補助金が過大に交付されているものであります。

 同七二号及び七三号の二件は、介護保険事務費交付金が過大に交付されているものであります。

 同七四号から八一号までの八件は、介護保険の普通調整交付金の交付が不当と認められるものであります。

 同八二号から九〇号までの九件は、国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるものであります。

 同九一号から一二八号までの三十八件は、国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。

 同一二九号から一三二号までの四件は、水道施設整備費補助金の経理において、仕入れ税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないものであります。

 同一三三号及び一三四号の二件は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。

 同一三五号は、介護給付費に係る国の負担が不当と認められるものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、国民健康保険の収納特別対策事業に係る特別調整交付金の交付に関するもので、国民健康保険の特別調整交付金には、保険料収納体制の整備等を図る観点から、通例の収納事業に加えて収納特別対策事業を実施した場合に交付されるものがありますが、市町村において、口座振替の促進などの滞納未然防止対策が進んでいなかったり、被保険者資格証明書の交付など法令等に定める滞納者対策を的確に行っていなかったりなどしている事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 その二は、国立病院等における医薬品等の購入に係る予算執行に関するもので、国においては、示達を受けた歳出予算の額を超えて支出負担行為をすることができないとされておりますが、年度中に納品させた医薬品等の一部について、支出負担行為等の処理を翌年度に持ち越している国立病院等が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 その三は、中小規模事業場健康づくり事業の実施に関するもので、厚生労働省では、中小規模事業場健康づくり事業を中央労働災害防止協会に委託して実施しておりますが、医学的検査の実施時期、実施内容に応じた経済的な経費の支払いになっていない事態が見受けられました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

菅主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。尾辻厚生労働大臣。

尾辻国務大臣 平成十五年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

菅主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

菅主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

菅主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

菅主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。樋高剛君。

樋高分科員 民主党の樋高剛でございます。

 きょうは、質問の機会をいただきましてありがとうございました。

 きょう、朝の九時二十分ごろでしょうか、兵庫県尼崎市におきまして、列車の脱線衝突事故、大惨事が起きました。現時点で二百数十名以上の方々が死傷なさったということでございまして、お亡くなりになられた方々に対しましては、謹んでお悔やみを申し上げさせていただきます。また、負傷なさった方々に対しまして、心からのお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。

 政府として緊急の態勢をとっていただく、原因究明も含めてということだと思いますけれども、大臣は、医療の分野におきまして、政府におきまして、責任者でございます。何かコメント、発言がありましたらお願いいたします。

尾辻国務大臣 大変痛ましい事故が起きました。私からも、お亡くなりになった方々また御家族の皆様方に心からお悔やみを申し上げます。また、けがをなさった皆様方に対してお見舞いを申し上げます。

 政府といたしましては、九時四十分に官邸連絡室を設けましたが、これを十二時に対策室に切りかえて、今対応に当たっておるところでございます。

 お話のように、私ども厚生労働省といたしましても、けがをなさった皆さん方の治療に今全力を挙げておるところでございます。引き続き、まずこの皆様方の治療に万全を期したいというふうに思います。その後、またこうした方々、御家族の皆様方に対する心のケアといったようなことも出てまいりますので、そうしたことに対しましてもしっかりとした対応をしていきたいと思うところでございます。

 政府全体といたしましては、事故の再発防止その他に対しまして、万全の対策をとってまいりたいと存じております。

樋高分科員 政府として万全の態勢をとっていただきたく、強く要望させていただきます。

 質問に入らせていただきます。

 まず、確認なんでありますけれども、ことしの二月十六日に予算委員会で私が大臣と議論させていただきました、いわゆる混合診療の解禁の議論の中にありました医療費についてであります。

 軽度の病気、例えば風邪ですとか感冒などの軽症につきまして、今後、自己負担になり、あるいはまた処方される薬についても保険適用から除外をするということも一部新聞で報道されておりましたので、私このことをお尋ねさせていただきましたところ、大臣は「私どもはそういうことは全く考えておりません。」と答弁をいたしておりますけれども、これは間違いございませんでしょうか。全く考えておりませんではなくて、保険適用除外はあり得ないと断言をしていただきたいんですが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 混合診療の議論のときもそうでございましたが、今私どもは、十八年度に医療保険、医療の提供体制全般についてもでございますけれども、見直しをさせていただきたいということを申し上げております。そこでいろいろな御議論があるわけでございますけれども、その御議論の中に、公的保険給付の内容、範囲のあり方等も検討すべき課題であり、この中で軽度の医療を公的医療保険の保険給付の対象外にすべきとの意見があることは承知をいたしております。

 そうした御議論の中で、軽度の医療というのをどう定義するとでもいいましょうか、その仕方に、まず病名、風邪みたいな軽いもの、あるいは水虫も入るかと思いますが、そうした病名で軽度の医療を定義するということと、それから医療費の額で、額の小さいものを保険給付の対象外とするといったような両方から軽度の医療ということを定義しての御議論があるわけでございますけれども、私どもは、申し上げましたように、そうした問題に対しては、今検討いたす時期ではない、そうしたことは考えていないということを先日もお答えいたしたところでありますが、そのことを今確認させていただきたいと存じます。

樋高分科員 保険の適用除外はあり得ないということのようであります。

 私の懸念なんでありますけれども、いわゆる医療費における保険適用の歴史をひもといてみましたところ、自由診療は保険適用にされることなく恒久的に保険外扱いされる可能性が高いと思います。

 例えば、歯科でありますけれども、六七年から混合診療を導入いたしましたけれども、質のよい入れ歯などが具体的な話だと思いますが、保険外の診療はいまだに保険外のままであるということでありまして、混合診療の解禁で患者さんが保険外診療を受けやすくなればなるほど保険適用範囲はその後拡大しにくくなるという問題もまた後々発生してくるんですね。

 ちょっと言葉は厳しいかもしれませんけれども、今までの医療のなし崩し行政を考えてみたときに、やはり医療費抑制のためには今後間違いなく保険給付項目の削減をどさくさ紛れにするのではないかということを私は懸念しているのでありますが、ここは間違いありませんでしょうか、大丈夫でしょうか。

尾辻国務大臣 確かに、今後医療費をどうして抑制するかというのは大変大きな課題になると思います。そうした中で保険給付の議論もいろいろに生じてくるとは思います。そしてまた、先ほども申し上げましたように、既にそうした御議論もあるところでございますけれども、今私が御答弁申し上げたことは、これは私どもの考え方として先日来申し上げておるとおりでございますので、一言で言いますと、御懸念に及びませんということを申し上げたいと存じます。

樋高分科員 次に、高齢者の雇用につきましてお尋ねをさせていただきます。

 私自身、本当に常々問題意識を持っているんですけれども、高齢者の方々、有技能者という意味で私は申し上げるのでありますけれども、高齢者の方々と若い世代の方々との交流の重要性というのを私自身本当に感じております。

 高齢者の方々の最適な仕事の一つというのは、さまざまな人生経験を踏まれて失敗と成功から学んだ、時に専門的な経験を他人に伝えるというところにあるのではないかと私は思います。

 例えば、高齢者の方々が地域の公民館あるいは学校などに派遣されて、そこで社会人講師として一定期間あるいは継続的に専門的な体験や経験から学んだことを後世に伝えていくということを政府として奨励していくべきではないかと私は思うんです。例えば証券会社にお勤めになられた方は、株の仕組みはこうなっているんですよとか、さまざまなことが考えられると思います。それは別に学校という範疇だけではなくて、地域社会という概念からしましても、例えばスポーツをやってこられた方は地域のスポーツのいろいろなコーチをやってもいいかもしれません。

 高齢者の方々が社会人の講師として、人生の先輩として、今後次代を担っていく方々に対してお育てをいただくというか御指導をいただくということを、私は、やはり政府として強く奨励していくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 急速に少子高齢化が進行する中で、高齢者の皆さんがその経験と能力を十分に活用して地域社会で活躍していただくということは、これはもうますます重要になってきておると存じます。もう御指摘のとおりでございます。

 そして、今お触れいただきましたけれども、高齢者が持っておられる経験でありますとか知識を若者に伝えていくということは大変意義のあることでございまして、各地域でさまざまな取り組みを行っていただきたいと考えております。

 そこで、厚生労働省といたしましては、高齢者の多様な就労・社会参加ニーズに対応するために、シルバー人材センターによる地域に密着した就業機会の提供などにより高齢者の就業機会の増大を図ってまいりたいと考えております。

樋高分科員 しかし、さまざまな政策を見てみますと、高齢化社会に現実に適合しない、逆行するような政策が随所で見受けられると私は思っております。

 例えば、年金制度一つとってみましても、一生懸命働いて収入がふえると年金の給付額、受け取る金額は減るという、高齢化社会に不適応な年金制度であると私は思います。もちろんいろいろな難しい問題部分もありますけれども、どうせ年金を減らされるんだったら家でゆっくりテレビを見ていた方がいいやというふうになる声もあちこちで聞かれるわけであります。

 そういうインセンティブというか誘導策の部分を、現実に意欲を持っている方でも、できれば政策的に誘導されるような仕組みを政府としてやはりとるべきであるというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 これは私どももそのように考えております。そこで今、働く意欲といいますかインセンティブを収入の面でお話しになったわけでありますが、またそうしたことも当然人間でありますから必要な部分でありますし、否定するものでも全くないんですが、私ども、またそうしたことについても当然配慮しながら政策を考えていかなきゃいかぬと思うわけであります。

 そういう面だけではなくて、実は私も、もう同級生がみんな六十を過ぎておりますから、今お話しになったようないわば対象者であるんですが、この同級生が六十になって定年になるときにほとんどの者が口々に言いましたのは、もう金は要らぬから働きたいなということを随分言いました。とにかく元気なんだからまだ世の中の役に立ちたい、働きたいんだと言っていた言葉が非常に耳に焼きついておるわけでございます。

 そうした働くインセンティブというのはいろいろな面からあるだろうと思いますので、いずれにしても、そうしたものをうまく働けるように結びつけていくということが私どもの果たすべき役割だろうというふうに思っております。

 そこで、私どもも、今やれることはやらなきゃいけないということで、高年齢者雇用アドバイザーによる企業への相談援助でありますとか、職域の開発の取り組み、これは具体的に、例えばといいますと、コンベヤーによる組み立ての流れ作業を高齢者向けにセル方式に改めるといったような、そうしたことに取り組んでおるところでございまして、引き続き、こうした対策を講じながら、皆さんがお元気で働いていただけるようにする環境づくりをいたしたいと考えております。

樋高分科員 例えば、介護サービスという分野におきましては、人生の先輩の方々が介護という働く場を自分たちでみずからつくっていくという新しい芽が今育ってきているのであります。高齢者自身が、経験に基づいた総合力あるいは判断力に着眼して、みずからの汗と知恵で地域の方々を支え、また新しい仕事をみずからつくり出すという動きがあちこちで芽生えているんですね。

 こういうことこそやはり政府としてしっかりと背中を押していかなくてはいけないと私自身思うんですけれども、そういうところをきちんと把握して、そして実際に大きく育っていくように政府として取り組みをなされていらっしゃるのかどうか、お尋ねいたします。

尾辻国務大臣 今これまたお話しいただきましたように、確かに、高齢者の方が高齢者の皆さんをケアしていただくという、本当にありがたいことでありますし、またその方が気持ちがわかるというようなところもあって、うまくいくというケースも私ども耳にしたり見せていただいたりもいたしております。

 高齢者が、培ってこられた知識と経験を生かして、企業に雇用されて働くことだけでなくて、多様な働き方、地域で活躍をしていただくということは、先ほど来申し上げておりますように、重要であると私どもも考えております。

 そこで、厚生労働省は、高年齢者等が共同して創業し、労働者を雇い入れた場合に、事業の開始に係る経費の一部を助成することにより、それまでの就業による職業経験を生かして新たな事業を始めようとする高年齢者等の支援を行っておるところでございます。

 こうした施策を通じまして、多様な働き方をまた高年齢者の皆さんにしていただけるように努めてまいりたいと考えております。

樋高分科員 培った技術あるいは能力を地域住民の一員として生かす、いわゆる働く場あるいは活躍の場をつくるということは、高齢者の自負心あるいは誇りも高めることになっていくというふうに思いますし、やはり、お年寄りの方々が社会に積極的に参画をして、自分の知識と経験を伝えることで生きがいを見つける、また伸び伸びと健康的に毎日を過ごすということこそが、私は、介護予防に実はつながっていくと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まさにそのとおりだというふうに考えます。今私どもも介護予防ということを介護保険制度の見直しの中で言っておるわけでありますけれども、介護予防というのは、そうした広い意味の中でまた考えさせていただきたい、そのことが大変重要なことだと私どもも考えております。

樋高分科員 しっかりと形にしていただきますように強く要望させていただきます。

 次に、少子化対策につきましてお尋ねをいたします。

 日本はますます少子化社会になるということで、出生率は下がり続けております。去年、合計特殊出生率は一・二九であります。東京では〇・九九、ついに男女二人の間に生まれる子供が東京においては一人以下になってしまったということでありまして、少子化への対応は最重要課題の一つであるというふうに私は思います。

 そんな中にあって、政府としてさまざまな政策をとっているのも、私は、今までも国会での議論を通じてずっと深めてきたつもりにしているんですけれども、しかし、どれも何か総花的で、もちろんそれぞれ一つ一つの政策は重要でありますけれども、いや、政府として、例えばこの大きな三つの政策をやっているんだからというふうにして、少子化対策に取り組んでいるんだというところが私にはいま一つ見えてこない気がしてならないんでありますけれども、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 少子化対策というのは、言われてもう長くなりますし、私どももその都度対策を講じてきたところであります。

 そこで、振り返ってみますと、最初にエンゼルプランをつくりました。次に新エンゼルプランをつくりました。今また新たなプランをつくったところでございますけれども、そうしたプランを振り返ってみますと、私はこう思っておるわけであります。

 最初のころ、エンゼルプランそれから新エンゼルプランのころは、わかりやすく言いますと、少子化対策イコール保育の充実だった時代だと振り返っておるわけであります。あのころ、保育の充実さえすれば、何かもう少子化対策ができたような、あるいは少子化の問題が解決するような、錯覚とまでは言いませんけれども、私どもはそんな感じを持って、ひたすら保育の充実をやってきた、待機児童を減らそうということで頑張ってきたと振り返るわけであります。

 そして、だんだんそれに対する反省が出てきて、少子化対策というのはそんな限定されたものではない、もっと広く、もう社会全体で対策を講じなければ、そして取り組まなければ、少子化というのは対応できないという考え方になったのが今度のプランだというふうに思います。

 そうなりますと、社会全体で取り組もうとすると、あれもやらなきゃいけない、これもやらなきゃいけない。言うならば、住宅政策もあるとか教育にも及びますねとかいろいろ言うものですから、今先生お話しのように、今度それを見ると、何か総花的じゃないか、こういうふうな御批判もいただくところがあるな、実は、率直に申し上げると、今そう思っておるわけであります。

 そうした中で、これというのが、なかなか決め手が難しい。総花的と言われるかもしれないけれども、今私どもが思いますのは、やはり少子化対策というのは、もう社会全体で取り組んでいくことは必要だなというふうには思っておるわけであります。強いて言うと、その中で、民主党が少子化対策で言っておられるようなことというのはやはり一つの考え方だとは私も思うわけでありますが、私どもとして、今そういうふうに社会全体で取り組もうということで取り組んでおりますということを申し上げます。

樋高分科員 少子化対策、人口の問題というのは、もちろん個人の選択にもかかわるデリケートな問題でもあります。産めよふやせよという人口政策をとるのではなくて、産む産まないというのはそれぞれの自己選択、自己決定であることを政策をつくる際には忘れてはならないと思います。

 一方で、日本では、さまざまな調査で、若い方の九割が将来子供が欲しいと答えていると私は伺っております。また、ことし成人した人に聞いた民間の調査では、七割の若者の方が、子供は将来二人欲しいという結果が出ております。また、二十の女性に五年後の夢を聞いた調査では、働きながら子育てがしたいと過半数の女性が現実に答えていらっしゃるのであります。

 必要な政策が実施されていれば、望む子供は産めるはずであります。子供を持ちたい人が欲しい子供の数をあきらめるといった現状を考えてみますと、必要な政策をとってこなかった政府の責任は大きいと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 今お述べになりましたように、国立社会保障・人口問題研究所の調査によりますと、未婚者の約九割はいずれ結婚するつもりと答えておりますし、結婚した夫婦の八割以上は二人以上の子供を持ちたいと考えておるという結果が出ております。このように、多くの国民が結婚したり子供を持ちたいと願いながらそれがかなえられていない現状については、まことに残念なことでございます。

 政府といたしましても、仕事と家庭の両立の負担感でありますとか子育てそのものの負担感など結婚や出産をためらわせる障壁を極力取り除いて、安心して子供を産み育てることができる環境整備を進めることが大事だというふうに考えております。

 環境整備が非常に大事だというふうには考えておりまして、先ほど来申し上げておりますように、社会全体で取り組んでいかなきゃならない。そのためにも、先ほど来申し上げております一番新しい子ども・子育て応援プランに基づいて、各般にわたる施策を総合的、計画的に実施していきたいと考えておるところでございます。

樋高分科員 外国で出生率が向上した国があります。例えばでありますけれども、フランスにおきましては、九五年一・七〇、これが七年後の二〇〇二年には一・八八、つまりプラス〇・一八という数字が出ております。またオランダでは、九五年には合計特殊出生率は一・五三という数字でありますが、二〇〇二年、七年後には一・七三、つまりプラス〇・二〇という数字。現実に出生率の数字が大きくなった国があるわけなんです。外国でこのように成果を上げた国があるということであります。

 もちろん、歴史も違えば、言葉も違えば、文化も違えば、それぞれの考え方も国々によって違うと思いますけれども、やはり外国の成功事例からも、しかも結果を出せているわけですから、私は、やはりそこからしっかりと学んでいくべきだ、どん欲に学んでいくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 確かに、今フランスの例それからオランダの例をお述べになりましたが、さらにイギリスの例を見ましても、おっしゃるような傾向にございます。そして、そうした例に当然私どもも学ばなきゃならないところでございます。

 そこで、そうした例を学ばせてもらおうということで、私どもなりに分析もするのでありますけれども、そういった先進諸国がとった方向というのを私どもなりに分析する、理解いたしますと、我が国が今とろうといたしております少子化社会対策大綱、これをつくっておりますけれども、方向性は同じものが少なくないというふうに見ております。

 したがって、今お述べいただきましたように、こうした例に学ぶことは当然のことでありますし、私どももそうしなきゃならぬと考えておるわけでございますが、方向性はそう大きく違いはないのじゃないかというふうに考えるものですから、さらに、申し上げております子ども・子育て応援プランなどにそうしたものを盛り込みつつ、効果的に私どもの施策も講じてまいりたいと考えております。

樋高分科員 フランスでは家族手当制度、あるいはオランダではパートタイム就労一・五人モデル、オランダ・モデルというふうにありますけれども、私ども民主党としてもしっかりと政策議論を今させていただいておりますが、やはり積極的にいろいろな政策的手段を講じていくべきであるということを表明させていただきます。

 最後に、少子化対策に関連しまして、小児救急についてお尋ねいたします。

 三年前の平成十四年の決算行政分科会で私自身もお尋ねさせていただきました。そのとき、当時、大臣は、お医者さんは足りていますよ、小児科医は足りていますよという答弁でありました。しかし、約四百あります小児救急医療圏ごとに担当病院の輪番制などを役所としても推進してきたというふうに伺っておりますけれども、実際導入できたのは半数程度であって、小児科医が一人しかいない病院も乱立をしている。また患者のたらい回しもあり、また医師の過労の原因にもなっているという現状も踏まえて、やはり総合対策をしっかりと講ずる必要があると私自身は思います。

 やはり子供は大切な国の宝でありますから、だからこそ、その子供の健康と生命を守るため、二十四時間の小児救急体制をきちんと国が責任を持って整備する、なおかつ、小児科医の先生方が常にベストコンディションで診療できる体制をきちっと構築するべきであると私は考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

尾辻国務大臣 小児医療の体制を構築することが重要である、これはもうお話のとおりでありますし、また改めて申し上げるまでもないことでございます。

 そこで、私どもとしては、厚生労働省としては、入院治療を要する小児救急患者を受け入れますところの小児救急医療拠点病院の整備でありますとか、あるいは適切な小児救急医療が提供できるよう全国的な体制整備に取り組んでいるところでございます。

 こうしたものに加えまして、平成十六年度からは、医療関係者が積極的に小児救急医療に従事できるように、地域の内科医等を対象とした小児救急に関する医師研修の実施などを、また、新たに平成十七年度予算におきましては、離退職いたしました小児科医師の掘り起こしと再教育による小児救急医療に対応できる医師の確保を新たな事業として盛り込んだところであります。

 これにさらに加えまして、先ほど来申し上げております、平成十八年に予定をいたしております医療制度の改革におきましては、小児科学会や医療関係団体等の御意見を十分伺いながら、小児救急医療体制の構築のための施策の充実を図りまして、国民が安心できる医療を提供できるように努めてまいりたいと考えております。

樋高分科員 政府によります小児救急の総合対策を確実に実施していただきますように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

菅主査 これにて樋高剛君の質疑は終了いたしました。

 次に、市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。本日はよろしくお願いします。

 まず冒頭でございますが、本日九時十八分ごろ、福知山線の尼崎駅―塚口駅間で起きました事故につきまして、犠牲になられた方々に心からのお悔やみを申し上げますとともに、本当に御家族の方々の心中いかばかりかと心からのお察しを申し上げております。

 なぜ私がここでこのように申し上げるかといいますと、今回の事故でございますけれども、兵庫県の宝塚駅を出発して、事故が起きたのが尼崎でありますが、実際に尼崎の駅にはとまっておりませんで、あの快速列車は宝塚駅を出まして、中山寺駅、川西池田駅、そして伊丹駅にとまって事故を起こしております。すべてそのとまった駅は私の選挙区である兵庫六区でございまして、基本的に、私の選挙区の方々が乗っていらっしゃる、もしくは選挙区を訪れた方々が、大阪方面に向かう方がこの電車に乗っておられたということでございます。しかもあの路線は、私がしょっちゅう、頻繁に利用している路線でもありますし、電車でもあります。具体的にどういう情景かすぐ思い浮かびますので、亡くなられた皆さんに本当に心からお悔やみを申し上げる次第であります。

 それで、きょうは国土交通省からも来ておりますが、この事故の状況について、今さっき、現場に秘書が行っておりますので聞きましたら、今現在最新で、死亡が確認された方が三十七名、実際秘書の前を三名の方が担架で運ばれていった、またさらに三名の方がまだ電車の中に残されているということを聞いておりますが、国土交通省の担当者の方、ちょっとその概要を御説明ください。よろしくお願いします。

森下政府参考人 お答えいたします。

 本日の九時十八分ころ、JR福知山線の尼崎駅―塚口駅間の第一新横枕踏切道の手前付近におきまして、宝塚駅発同志社前行きの快速列車が脱線をしております。

 まず、お亡くなりになられた方々へお悔やみを申し上げたいと思いますし、たくさんのおけがをされた方々に対してもお見舞いを申し上げたいと思います。

 我々は、関係者と連携しまして、救助活動に全力を挙げているところでございます。現地の状況といいますか、事故発生の情報を受けまして、現地運輸局から直ちに係官二名を派遣いたしました。また、本日の事故が起きまして二十分後の九時四十分に、近畿運輸局長を本部長とする福知山線事故対策本部を設置しております。また、本省では、九時四十五分に大臣を本部長とする福知山線事故対策本部を設置し、現在、大臣と鉄道局長が現地に向かっておるところでございます。また、係官二名を別途現地に派遣したところでございます。

 今後、全力を挙げて情報収集に努めたいと思っておりますし、適切な対応を図ってまいる所存でございます。

 以上でございます。

市村分科員 まず今は、救命救助にとにかく全力を挙げて努めていただきたいと思っています。

 その中で、きょうは時間がなかったので来ていただいていませんが、自衛隊なんですね。先ほど防衛庁の方に問い合わせましたら、一応、十一時四分に知事より派遣要請がありまして、三十六分に伊丹から行っていただいています。本当にすぐそばに、伊丹に自衛隊の施設がたくさんあります。中部方面もありますし、陸上自衛隊の千僧も。だから、十一時四分ということになりましたけれども、事故が九時十八分、本当に自衛隊の機動力からいけば三十分以内には現場に当然到着できるだけのものがあって、なぜこんなにおくれたのか。

 きょうは防衛庁からいらっしゃっていませんから、これは改めてまた、事故調査、またはその後の救命救助に当たってのマニュアルといいますか、今後のためにも反省として生かしていただきたいと思いますが、とにかく、ずっとテレビで放映されていても自衛隊の姿が見えていなかったんですね。だから、自衛隊の皆さんだって多分恐らくすぐに出たいと。私はいつも自衛隊の皆さんと接していますから、気持ちとして出たいけれども出られなかったと思います。こういうところの対応がやはりまだ欠けていたのではないかと思います。

 それで、今回の事故なんですが、たしか信楽線で以前大きな事故があったと思いますが、死者が四十二名とお聞きしています。恐らく、不幸なことに、それに迫るような、また超えるような死者の数になるかもしれませんが、これについて国土交通省の認識、この事故についてはどれほどの認識を持って今対応に当たっていただいているのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

森下政府参考人 お答えいたします。

 今回の救出状況につきましては、二両目までの電車は救出を終えております。先頭車、一両目については、まだ数名が閉じ込められている状況ということで現在詳細調査中でございますし、先ほどのテレビ報道では、死者三十七名、負傷者が二百三十九名に及ぶというようなことがなされておるところでございます。

 国土交通省としましては、こういった大規模な脱線事故に対しては、直ちに対策本部を設けて情報の収集を図り、対策をとっていくこととしておりますし、それに沿って今本部を立ち上げて情報収集に努めているところでございます。

 以上です。

市村分科員 何かお聞きしましたら、一応事故のレベルが一から五段階まであるということですが、今回は何段階目になるという認識を持って今お答えになったんでしょうか。

森下政府参考人 事故のレベルでいきますと、上から五段階ございまして、今回の事故につきましては第四レベルというふうに認識をして対応しておるところでございます。

市村分科員 その五と四の違いを教えていただけますでしょうか。

森下政府参考人 第五レベル、最高のレベルの事故につきましては、死者の数が数十人以上というようなものを想定してございますし、非常災害対策本部を設置することとしております。

 今回はレベル四ということで、死者の数が十名から数十名の規模というふうに考えておりまして、国土交通省に大臣を筆頭とする対策本部を設けることとしております。

 以上です。

市村分科員 恐らく、今まで最大だと言われている事故の死者数を超えていくということが現在の段階でもう明らかになっているわけでございますから、やはり私は、最高レベルで対応すべきことだというふうに思います。これはここでイエス、ノーを言っていただくことじゃないと思います。ぜひとも最高レベルの対応をしていただき、とにかくまずは、事故究明ももちろんできるだけ速やかに確実に行っていただきたいわけでございますけれども、救命救助の方をしっかりとお願いします。

 やはり鉄道は本当に私たちの足なんですね。前回の新潟地震のときに新幹線が脱線した、一人のけが人すら出なかった。二名ほどちょっとしたけががありましたけれども。本当に奇跡的だと思いました、すばらしいと。すばらしい技術力を私は実際にあのときに、実はそのとき新潟におりましたので地震を体験しておりますので、これで脱線して一人も負傷者が出ないというのはすごいことだと、ある種驚きを持って感動を覚えたことがありました。

 ところが、こんな身近で、先ほど申し上げたように、ふだん私も使っている、私の家族も使っています、また私の知り合いもたくさん使っています。この電車がこんなことで脱線、まあこんなことかどういうことか理由はわかりませんが、とにかく脱線して、こんな多数の死傷者が出るなんということはまさに想定外でありまして、まずは救命救助をお願いします。そして、速やかに事故原因を究明していただきまして、それを速やかに発表していただいて、そして二度とこんなことがないように、それは国だけじゃありません、私たちも、すべてだと思いますが、責任があると思いますけれども、またしっかりと協力しながら、二度と起こらないようにということでお願いしたいと思います。これにつきましては、これで終わります。

 本当はすぐにでも地元に戻りたいんですが、きょうは、前から皆さんに御用意いただいていることでありますので、特に、ちょっときょうは大切な質問をしたいと思っておりますので、これからの時間、よろしくお願いします。

菅主査 では、国交省はいいですね。

市村分科員 国交省さん、もういいです。もう戻ってください。お願いします。

菅主査 戻ってください。

市村分科員 それで、まずは社会保険庁さん。実は、去年のこの決算行政委員会の分科会で、サンテール千葉の件を御質問させていただきました。そのときに、一坪が二百三十万もの高価な、土地建物合わせて合計九十億円という超豪華、終身介護つきの有料老人ホームを社会保険庁さんが建てられていると。有料老人ホームに関しては全国に五十ほどある、ただ、終身介護つきの有料老人ホームは唯一でありました。しかも、その坪単価が二百三十万だということで去年この場で質問させていただき、新聞にも取り上げられるような御関心をいただきましたので、私は、同僚の民主党の議員とともに、実際にサンテール千葉の方に行ってまいりました。

 そのときに施設を見ましたが、正直申し上げて、どこにこんな九十億円もかかるんだろうか、どこに坪二百三十万もかかるのか。普通の三倍か四倍ぐらいかかっている施設だったということを私は見てまいりました。

 ゴルフ練習場のことがよく問題になりましたけれども、確かにそれもそれで大きな問題かもしれませんが、もっと大きな問題は、九十億円をかけた私たちの国有財産が、少なくともそうは思えないような施設であった。至るところにひびが入っていました。雨が中にしみ込んで、中の鉄がさびて、外に鉄さびの液が出てきて、非常にみすぼらしく感じるような施設でもあったわけでございます。

 それで、大体こうした建物を建設しますと、一応十年間は、施工者ですか、建設した者が、指摘を受けて、もし明らかな過誤があれば、それは無料で直す、修理をするという契約が通常結ばれているそうです。だからそのとき私は、結ばれていますかと言いまして、結ばれているということを確認しました。九十億円をかけた、土地が二十億と聞いていますので、結局、建物に七十億円をかけたそうですけれども、信じられない、とてもそんなふうに見えませんけれども。

 その建物がたった十年で非常にみすぼらしい状況になっていた。それを、では、しっかりと建設会社さんと話をして、建物を建てたところと話をして、十年以内ならまだ無料で直してもらえますから、ちゃんと直してもらってくださいということを申しておりました。秋にも確認しました。というのも、去年の十二月ぐらいで十年目を迎えたんです。だから、十年を過ぎていますからもう無理です。けれども、去年の五月の段階で、まだ十年以内で残っていましたから、ちゃんとしてくださいよ、交渉してくださいよということを申し上げておりました。

 どうでしょうか。きょうは社会保険庁の方、いらっしゃっていると思いますが、その後どういう状況か、お知らせください。

青柳政府参考人 終身利用老人ホーム、サンテール千葉の不備につきましては、ただいま議員からもお話がございましたが、昨年の七月にも議員に御視察をいただきまして、それを踏まえて私ども、昨年の九月に改めて調査をさせていただきました。

 その結果といたしまして、六点、すなわち内壁の仕上げのクロスのはがれ、あるいはサッシ窓の開閉の不良、それから二階の看護専用室の窓側のすき間、それから外壁のひび割れ、三階の廊下の温度が高いこと、それから低層棟の北側の汚れ、この六点について検討させていただきました。

 これらの不備は、結論から申し上げますと、いわゆる経年劣化によるもののほか、日常のメンテナンスの不足が原因ではないかというふうに考えておりまして、施工業者の重過失によるところの瑕疵に該当するものではないというふうに認識をしております。

 したがいまして、法的には施工業者に修繕を行う義務はございませんけれども、私ども、施工業者といろいろ協議をいたしました結果、今申し上げたもので申し上げれば、クロスのはがれ、あるいはサッシ窓の開閉不良、それから二階の看護専用室の窓側のすき間、これらにつきましては、施工業者がいわばアフターケアの一環といたしまして修繕をするということになりましたので、この予定で現在取り組んでおるところでございます。

    〔主査退席、前田主査代理着席〕

市村分科員 御自身は行かれたことがございますでしょうか。

青柳政府参考人 申しわけございません。まだ足を運んでおりません。

市村分科員 恐らく、部長さんの部の方か、課の方が行っていらっしゃると思いますけれども、その方たちの御意見はいかがでしたでしょうか。

青柳政府参考人 ただいまも申し上げましたように、昨年の九月に、私どもの方にも建築専門官という形で一級建築士の者がおります、これも参りまして、状況をつぶさに調査させていただきまして、先ほどのような結論を得た次第でございます。

市村分科員 やはり私は、行っていただいたら本当にわかると思います。七十億かかっている建物だろうかというふうに思っています。まあ敷地の整備もあるでしょう。坪二百三十万です。去年、社会保険庁長官がこの場で二百三十万ということをはっきりとお答えになられたわけですね。その建物がとてもそんなふうに見えないんですね。

 実は、きょう厚生労働省さんも来ていただいておると思いますが、その隣に年金の計算センターがあるんですよ。この計算センター、立派なんですが、建物が建ってから何年たっていますでしょうか。

青柳政府参考人 大変恐縮でございますが、サンテール千葉の近辺には計算センターというのはなかろうかと。もし、社会保険大学校の近くの支払基金の……(市村分科員「そうです。支払基金」と呼ぶ)

前田主査代理 挙手を求めて言ってください。

青柳政府参考人 社会保険大学校の隣の支払基金の建物だと思います。大変恐縮でございますが、これは私どもの方でつくった建物ではないものですから、ちょっと承知をしておらないということで御勘弁いただきたいと思います。

市村分科員 だから、きょう厚生労働省さんいらっしゃっていますから、あの建物が大体何年たっているか、ちょっと教えていただけますでしょうか。隣です。済みません、社会保険大学校です。さっきのゴルフの練習場も社会保険大学校でございます。済みません。失礼しました。

青柳政府参考人 繰り返しで大変恐縮でございますが、社会保険大学校は私どもの施設でございますのでもちろん承知しておりますが、隣にございます支払基金の建物は私どもとは別の法人の建物なものですから、それがどのくらいたって、どのくらいのお金がかかったものか、ちょっと承知をしておらないということで御勘弁いただきたいと思います。

市村分科員 今はわからないということですね。では、必ず教えてください。

 私、隣の方も見ましたけれども、えらい立派な建物でして、トイレも大理石のようなものが敷き詰めてあるような立派な建物なんです。こっちで坪二百三十万と言われたらわからないですけれども、でも二百三十万ならもっとと思いますけれども。やはり青柳さん、ぜひとも一度御自分で行ってみてください。あの建物が本当に坪二百三十万かかっている建物かどうか。あそこに行ってみてください。そうしたらわかるはずですよ、あれがどんな建物であるかということは。

 結局、アフターケアということは、施工者がやってあげましょうということなんですか。どうでしょうか。

青柳政府参考人 本来、法的責任はないけれども、施工業者としてはアフターケアの一環として対処をするというふうに承知をしております。

市村分科員 社会保険庁のことについてはいろいろなことが指摘されています。これはもう言うまでもなく保険料で行われております。必要なものは必要かもしれません。しかし、できる限り少ないコストでいいものをというのがやはり基本的な姿勢ではないかというふうに思います。結局は、お聞きしたらそれほど直っていないということだと思います。最近行っていませんので、どうなっているかはわかりませんが。

 では、これから補繕というか補修をすることはまた考えていらっしゃるのですか。その補修費はどこから出るのでしょうか。

青柳政府参考人 御存じのように、年金の福祉施設等に新たに保険料は投入しないという大原則で私どもは対応させていただいております。しかしながら、これまで運営してきている中で、若干なりの利益というものも、この施設のみならず事業を受託しております厚生団全体として生じておりますので、必要な修繕はそういったものの中から状況に応じてさせていただきたいと考えております。

市村分科員 それで間に合う。修繕が済むのでしょうか。入居者の皆さんから預かっているもので。つまり、保険料の積み立てから出ていかないにしても、税金から出ていくこともないということでよろしいですか。

青柳政府参考人 施設を運営することによって生じる利益というものが、受託をしております厚生団全体として相当ございます。これで、例えばほかの年金の福祉施設や病院等の修繕もしておりますので、そういうものの一環としてこの修繕をしていただくということでございますので、利用者の方から何かお金をいただいたりとか、あるいは新たに税金等を投入するということは考えておりません。

市村分科員 その厚生団の資金の中に税金及び保険料というのは振り込まれていないというふうに理解してよろしいでしょうか。

青柳政府参考人 御存じのように、年金の福祉施設は、建物は特別会計で国の方で建てますが、その運営に関しては一切運営費等に補助はいたしておりません。したがって、そこで出てきた利益、これについてはそういった修繕等に充ててもらうというふうに考えておる次第でございます。

市村分科員 当然、その利益というのは、具体的に言うと、入居者の方からの預かり金とか、それから毎月のいわゆる施設管理料とかいうものと考えてよろしいのでしょうか。

青柳政府参考人 このサンテール千葉に関して言えば、利益が上がる部分は毎月の利用料等でいただくものがその意味での収益になってまいりますので、こういったものを充てさせていただくということになろうかと考えております。

市村分科員 ですから、サンテール千葉に関しては、では利用者のもので賄うという基本的な考え方でよろしいですね。利用者が出している管理料とかで賄っていって、それ以外のものは厚生団からも出ないというふうに理解して、厚生団に一回入るのでしょうけれども、厚生団の中に例えば税金とか保険料がまたある種紛れ込んでいて、これが使われるということはないということですか。

青柳政府参考人 繰り返しで恐縮でございますが、厚生団の方には他の施設についても税金やあるいは保険料を新たに投入するということはいたしておりません。したがいまして、サンテール千葉だけで仮に賄えないような大規模な修繕があったとしても、他の年金の福祉施設や厚生年金病院等で収益が生じている部分を充てて、それで厚生団全体としてこれに充てるということを考えておる次第でございます。

市村分科員 ということは、厚生団としては収益事業は黒字ということで理解してよろしいわけですね。黒字でなければ留保しませんからそれは使えませんよね。したがって、税金も保険料も厚生団に入っていないということは、いわゆる事業収入だけで賄えるということは事業収益が黒であるというふうに理解をしてよろしいですね。

青柳政府参考人 年金の福祉施設のさまざまな利用料や厚生年金病院の診療報酬収入等によりまして、全体として黒になっております。

市村分科員 わかりました。なるほど、病院等もあるのだなということを今理解しました。

 サンテール千葉に限らず、大臣、やはりこれは国の、私たちの財産なわけです、これは保険料だろうと税金だろうと。それが、そもそも破格の値段で建てられている。坪単価二百三十万なんて考えられないものなんです。これをはっきりと、長官が去年の五月にここで二百三十万とお認めいただいています。もう驚きです。しかも、行ってみたらえらい周りよりみすぼらしく私には見えてしまったのです。とても坪単価二百三十万かけているように見えない。

 そこにまたさらに、税金はもうない、税金はないけれども、しかし、もう実際これは入居者が今いらっしゃるのですよ、終身介護つきで。ここはやはり国として責任を持たないと、やはり入居者の方の不安というのもありますので。別に私は、入居者の方たちに不安を持ってもらうために言っているわけじゃなくて、逆に入居者の方たちが不安を今感じていらっしゃると思います。しかも、施設が老朽化しても、何だ、修繕もされないのかということになってくるわけですね。これは大変困るでしょう。ですから、やってしまった以上はやはり責任をとり続けなくちゃいけない、これは国の責任だと思います。

 ただ、その以前の問題の反省として、そうしたものは国が本当にやるべきかどうか、まず終身介護つきの有料老人ホームというのは国もしくは国の関係機関がやるべきかどうかということについては、やはりしっかりと考えなくちゃいけないと思います。しかも、どう考えても国民が納得しないような単価で建物を建てていくということも、これはやはり見直していかなくちゃいけないと思いますが、大臣、この点についていかがでしょうか。

尾辻国務大臣 まず、社会保険庁をめぐるいろいろな御指摘がございました。そこで、今後保険料を保険の給付以外と申し上げますと、給付のための説明だとかなんとかという若干のものが入りますから、給付にかかわるという表現をしておりますけれども、そうしたもの以外にはもう一切使わないということは決めておりますから、有料老人ホームであれ何であれ、今後もそうしたものをつくるということはあり得ないというふうにまず御理解をいただきたいと存じます。そういうことはもういたしません。

 それから、とはいえつくってしまったものがあるわけでありますから、特に終身型と言っておるわけで、その責任は当然ございます。今度また、今、国会で御審議をお願いいたしておりますけれども、そうした福祉施設と言っておりますものは全部売却をするということになっておりますから、このホームも当然その対象になるわけであります。そのときに、終身でお入りくださいと言ってお約束をしているものを売るといっても、ではどういう形で売るのか、これはまた私どもに責任があるところでありますから、入っておられる方に御迷惑をかけないようにしなきゃいかぬと思っておりますし、それよりも何よりも、今言っておられるようなひび割れがしているようなところでは、これは申しわけないことでありますし、まずそうしたこともきちっとしなきゃいけないというふうに考えております。

市村分科員 ありがとうございます。

 この問題は、いろいろまた細かいことを突き詰めればあります。あと、これは質問というよりも私が思っていることなんですが、社会保険庁に限らず、今回社会保険庁のところで、例えば宿舎とか公用車とかいろいろ問題になりました。それはやはり、今後コストパフォーマンス等々を考えながら、本当にそういうのをつくった方がいいのかどうなのかとかいうことも、改めて政府全体としてこれは見直していくべきことだと思いますので、また大臣、よろしくお願いします。これは、質問じゃありません、私の意見です。

 それでは、きょうの本題中の本題に入ってまいりたいと思います。介護保険法改正、今厚生労働委員会を中心に大議論をしていただいているところでございます。その中で実は余り議題になっていないことがありまして、私がとても重要だと思うことがあります。そのことについて、残りの時間、質問させていただきたいと思うんです。

 介護保険法の改正、十三条第一項関係ということで住所地特例というものがあるのですが、これについてちょっと説明してください。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 住所地特例という制度がございまして、これは従来介護三施設についてございまして、これはあるところに介護三施設、特別養護老人ホームなどが建てられました場合に、要介護の方が一カ所に集まってしまうという問題がございます。

 そういたしますと、そこに要介護の方が集まりますと、その所在地の市町村の介護保険の費用が上がってしまう、こういうことがございまして、住所地特例というのが設けられておりまして、この介護三施設につきましては、そこの施設に入居された方々の従前の住所をもって介護保険においてはその扱いをする、したがって、例えば介護の費用などにつきましては、その施設に入られました方の従前の住所地の市町村が介護保険の費用を支払う、こういうものでございます。

 これが従来の仕組みでございましたが、ただいま委員から御指摘のございました今回の改正法案の見直しにおきまして、この住所地特例対象施設として、介護専用型特定施設、これは例えば介護専用型の有料老人ホームなどが該当いたしますが、入居定員が三十人以上であるもの、それから、これは介護施設ではございませんが、老人福祉法で規定されております養護老人ホーム、これは低所得の方を措置する施設でございますが、その養護老人ホームを住所地特例の対象施設として追加する、こういう御提案をいたしているところでございます。

市村分科員 済みません、ちょっと一番肝心なところを聞き逃しました。この中には有料老人ホームが入っているということですね。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 そのとおりでございまして、介護専用型特定施設、これはいわゆる介護専用型の有料老人ホームでございますが、入居定員が三十人以上の施設につきまして、住所地特例の適用を行うことといたしております。

市村分科員 これは大変重要な点だと私は思います。なぜならばこれまで、今おっしゃったように、有料老人ホームに関しては、つくると、そこに介護対象者が、要介護の方が集中する、だから地方自治体の介護保険の方に圧迫を加えるということで、それがやはり抑制的になって、有料老人ホームというのをなかなかつくらせなかったことがあるわけです。

 今度は、住所地特例を有料老人ホームに拡大させる。ある意味では、地域からすれば有料老人ホームは欲しい。実は私の地元もそういう要望があるんです。なぜならば、また新たに地震がありましたけれども、阪神・淡路大震災で、実は、老人関係の施設に入っていて亡くなられた方はゼロなんです。ほとんどの方が自宅で亡くなられていまして、施設で、しかも高齢者の施設の中ではゼロなんです。みんな知っているわけです、そのことを。要するに、施設の中ではゼロなんですね。だから、安全であるということもありまして、実はそういうニーズが高いのです。

 もちろん特養も高いです。けれども、この時代、なかなか特養をつくれないという状況になってきて、だから多分、老人福祉法が平成二年に改正されたときに、ある種、あそこでもう民営化の流れというのはできているんでしょうか。どうでしょうか、その辺は。民営化の流れと考えてよろしいでしょうか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 有料老人ホームの制度は、委員御指摘がございました平成二年で見直しをされておりますが、もう少しさかのぼりますと、昭和三十八年の老人福祉法が設けられましたときに、この制度がつくられております。ただ、その当時の有料老人ホームについては、事後届け出、つくった人は事後に都道府県の方に届け出をするということでございましたが、いろいろ問題がございまして、平成二年の改正で、事前の届け出をする、こういう制度がつくられました。

 なお、民営化の方向にかじを切られているんじゃないかということでございますが、有料老人ホームの数の推移で申し上げますと、介護保険が始まる前、平成十一年に三百三カ所でございました。平成十六年に九百八十カ所ということで、この五年間に、実は有料老人ホームの数としては三倍になった。それまで四十年近くで三百三カ所であったものが、この五年間で九百八十カ所ですから、六百カ所くらいふえた。それから、入居者数ですが、平成十一年、二万四千人だったものが、平成十六年、五万二千人になっています。

 これは、つまり介護保険で、委員からお話がございましたように、有料老人ホームを特定施設ということにいたしまして、介護の費用については介護保険の方からお出しするという制度がつくられましたので、いわば有料老人ホームの歴史でいえば、この五年間、急速に入所者数の方それから施設の数がふえた、そういった意味では、介護保険がある意味で有料老人ホームを大きくふやすという作用を与えたと考えております。

市村分科員 それで、介護保険というのは、在宅介護が中心というのがそもそものスタートだったと思います。ところが、私の手元にある資料で、今特定施設とおっしゃいましたけれども、何と、この特定施設は在宅の方に分類されているんですね。事実はそれでよろしいでしょうか。

中村政府参考人 さようでございます。

 まず、介護保険では施設と在宅に分類されておりまして、施設は、先ほど申し上げました特別養護老人ホーム、老人保健施設、それから介護療養型医療施設でございます。その他のサービスは、在宅サービスに位置づけられております。

 例えば、有料老人ホームにつきましては、その方が入居金などを払われて、いわば自分の家として住んでおられる、そういう性格のサービスであり、それに対して、介護保険の方で、介護の方の人件費相当分を介護保険の給付として出しているという考え方に立ちまして、在宅サービスというふうに分類されているところでございます。

市村分科員 資料によりますと、例えばグループホーム、これも在宅、通所リハビリ、在宅、通所介護、在宅、短期入所生活介護、在宅、短期入所療養介護、在宅ですね。これは、実は私たち一般の感覚でいうと、これを在宅と呼ぶには値しないと思いまして、むしろ施設、施設介護と言う方が一般の国民の感覚にはそぐうと私は思います。ということは、大体、私の計算でざっと四分の三なんです。四分の三は、現在でももう施設だと言ってもいいんですね。

 だから、私が申し上げたいのは、やはりはっきりさせた方がいいと思っているんです。結局、日本においては在宅ということでやってきたけれども、実際はもう現実には施設の方に移さざるを得ないんだ。その中で、今回、住所地特例も外して、確かに介護保険ができて、有料老人ホームがふえているのは当然のこととしてあると私は思います。ただ、しかし、この住所地特例が外れればやはり誘致合戦が起きますよ。さっきのサンテール千葉だって、申しわけありませんけれども、これだったらうちが経営しようかな、こういったところも出てくるかもしれません、安く払い下げれば。

 ですから、もう実際はそういう状況にあるということを、やはり私はもう現実をしっかり認めた上で、こんな、ある種まやかしとまで失礼なことは言いませんが、やはりもうどう考えても、一般国民からすれば施設介護に当たるものを、やはり特に有料老人ホームが施設介護じゃないと言ったら多分みんな驚くと思いますね。どうして有料老人ホームが施設じゃなくて在宅なのと言って。

 しかも、有料老人ホームの伸びを見てください。三六五%、この五年間で。グループホームが一〇七二%ですよ。圧倒的伸びなんです。これが在宅になっているんです。これで、在宅介護が進んでいるというふうにおっしゃるかもしれないけれども、もうこういうのはやめた方がいいと私は思います。はっきりと、もう日本においては、残念ながら、将来はわかりません、今の段階では、施設介護の方向にもう重点を移さざるを得ない、やはり日本の住居環境とか社会環境、地域環境とかがそれを許さないんだということを認めた上から出発をして、では、どうすればいいかということを私はやっていくべきだと思っているんです。

 実は、これは五年前の新聞です。これは日経新聞。五カ年計画、予防を強化ですね。今回、予防介護というのが目玉ですよね。でも、実は、五年前から予防強化というのが目玉だったんです。それで、この五年間、では何をしてきたかという話も実はあるんですね。

 私は、時間がありませんから、あえてここで細かくは詰めませんが、やはり現実をしっかりと見据えて、もうごまかしじゃなくて、介護の三施設についてもわかりにくいということをずっと申し上げていました。非常にわかりにくいんです。なくなるはずのものが残っていまして、いまだに残っているんです。療養型介護とか言いながら、残っているんです。何が違いかわからないんです。今回、住所地特例が外れますと、では、有料老人ホームと特養の違いというのは何なんですか、教えてください。

中村政府参考人 委員からたくさん御指摘いただいております。

 まず、住所地特例のお話で申し上げますと、例えば市長会などの要望で、これまで有料老人ホームというのは住所地特例がなかった、それで、先ほど申し上げましたように、介護型の有料老人ホームができますと、大変要介護の方が集まって当該市町村が苦労される、こういったことで有料老人ホームも住所地特例の対象に入れました。そういった意味では、委員まさに御指摘がございましたけれども、扱いは特別養護老人ホームと一緒になりましたので、ますます委員のお立場からすると有料老人ホームと特別養護老人ホームと似てくるではないか、こういうお話になると思います。

 今、有料老人ホームと介護型の特別養護老人ホームの明確な違いは、特別養護老人ホームは社会福祉法人しか設置が許されていないということでございますが、有料老人ホームは、社会福祉法人も設置できますし、また営利法人も設置できる、そこの点が一番の違いだと思います。

 それから、いろいろ先ほど社会保険庁の方の施設のお話もありましたが、有料老人ホームにつきましては、ある意味で、特別養護老人ホームはこれまで国庫補助をしてきたということがありハードウエアの面でも規格がございますが、有料老人ホームの方は、この四十年間、施設を建てられた方と利用者の間で契約でされるということで、ハードウエアがある意味で非常に自由であるということ。

 ただ、介護保険の対象になるためには、入所者で要介護の方の人数に対して何人かの、これは特別養護老人ホームとほとんど同じ基準の介護職員を配置しなきゃならない。そこで、介護保険の対象になるかどうかの違いでございますので、ハードウエアが自由、ソフトウエアについてはほとんど、特別養護老人ホームと介護職員の配置という意味では非常に似通っている、こういうことが言えるかと思います。

市村分科員 まさに大変なことだと思いますね、今おっしゃったことは。簡単におっしゃいましたけれども。もうこれまでの常識は置いておいた方がいいというような状況にこれからなってくるということだと思います。今まで特養、特養と言ってきたけれども、実質上は有料老人ホームでも変わらなくなる、住所地特例もできて。

 一点だけ、簡単にお答えください。

 では、特養だって別に株式会社でもいいわけですね。まあ変わりませんから、その制度自体をもうなくすということもあるかもしれませんが、どうでしょうか。

中村政府参考人 委員御指摘のような御議論を例えば規制改革会議などでいただいております。

 結論を申し上げますと、現在、特区法で、営利法人が特別養護老人ホームを設置できるということで、私が承知している限り二カ所ほど既に動いております。特区法の関係で、これは実施状況を見て全国的に適用するかどうかを検証しよう、こういうことになっている状況でございます。

市村分科員 ありがとうございます。

 それで、今こうして議論させていただいて明らかになってきましたように、今後の流れとしては、基本的には、やはりもう国が施設をこれからふやしていくこと、いわゆる税金によって補助をしながら施設をふやしていくという流れではなくて、もう民間の力をかりて、そして、有料老人ホーム等、グループホーム等、一応三十人がその分岐点ということでお伺いしていますが、三十人以下と三十人以上と分けて、それで三十人以上についてはその住所地特例を施していくということをやっていく。結局、こうなってくると、やはりもう大体想像にかたくないですが、有料老人ホームがどんどんできてくるということに恐らくなってくるだろうと思います。

 今まで市町村が、自分のところの負担がふえるので嫌がっていたものが外れるわけですから、その市町村は住民がふえるわけですから、しかも、ふえる割には、負担に関しては前の住所地が持ってくれるというありがたい話でありますから、だから、ぜひともうちで有料老人ホームということができてくると思います。

 さて、ここで大切な問題なんです。

 では、ふえてきます。有料老人ホームにたくさんの、私からすれば大先輩方が入られます。さて、これまで有料老人ホームが果たしてそんなに安心できる場所だったのかということが今度は問われてくるわけですね。

 つまり、消費者の立場。今度は、入る人間の立場。供給者の立場としてはこれでいいわけです。住所地特例ができた、よし、これでどんどん供給をしていこうという力が働いてきます、全国で。今度は、そのサービスを受ける側、消費者の立場に立ってみると、これまでの有料老人ホームがどういうところだったのか。本当に終身介護つきで入って最後まで面倒見てもらえたのか。本当に手厚い介護を受けられたのか。

 私の聞いている範囲でも、終身介護つきといいながら、入所してみたところが、いざ介護が必要になったときには、あなたはもう出ていってください、病院に行ってください、うちではもう面倒見切れませんということで追い出される例があった。もしくは、不幸にも倒産をしてしまうという例もあった。

 これからますますふえてくるわけです。多分、簡単になりますから、どんどん出てくる。もちろん、歯どめはあると思います。それは、市町村の認可なのか許可なのかわかりませんが、事前の届け出が必要だということですから、それは悪徳業者がぽんぽんつくるものを許すということではないとは思いますが、供給側の圧力としては当然ぜひともつくらせてくれという方向。土地が余っている、土地を持っている人たちにとってみれば、駐車場にしておくよりはそっちの方がいいというようなことも出てくるかもしれません。

 消費者の立場に立ったとき、きょうは公取さんに来ていただいておりますが、去年、私、景品法四条三号ということで質問しましたが、そのときにこの改正案がありました。施行の暁には、正確に表示をしていただくように指導なり法の運用を図っていきたいということで、たまたまこれは入居一時金の話でこういう話があったのですね。

 ただ、入居一時金だけに限らず、結局、有料老人ホームの案内に、いかにも安心です、この場所は安心です、最後まで面倒を見ますとか、提携病院もちゃんとしっかりしていますとか、これだけ介護が手厚いですとか、そう言いながら、実際に入ってみると全然違うということがありまして、去年ここで質問させていただいたんです。

 それで、去年、景品法が改正されて、この辺は強化するということになったのですが、公取さん、ちょっとこの経緯を、去年力強く語っていただいたわけですけれども、どうですか、その後、ちょっと事実確認をお願いします。

山木政府参考人 先生おっしゃいましたように、昨年の四月に有料老人ホーム等に関する不当な表示ということで、一般の不当な表示の事件に比べまして特別なルールを昨年の四月につくりまして、昨年の十月一日から施行しておるわけでございます。

 この特別ルール自体を適用した事件というのはまだございませんけれども、これまで平成五年以降、私どもといたしましては、十七の事業者に対しまして、表示と実際の間に相当な食い違いがあるということで、消費者を誤認させるということで排除命令等を行ったところでございます。

 昨年来は、この特別ルールもございますし、またその運用の基準もつくったところでございますので、引き続き不当な表示については厳正に対応していきたいと考えております。

市村分科員 では、もう一度、確認の意味で。

 施行後、排除命令は出ているんでしょうか。出ていたら、もう中身はいいです、何件かだけ簡潔にお答えください。

山木政府参考人 施行後は、一件排除命令を出しております。

 ただ、これは排除命令施行前の行為でございましたので、景品表示法四条一項ということで処理をさせていただいております。

市村分科員 ということは、まだ四条三号ではないということでございますか。

山木政府参考人 そういうことでございます。

市村分科員 特に、今の議論を聞いていただいたと思いますけれども、これから有料老人ホームが恐らくたくさん出てくると思います。そのときに、やはり公取さんの役割というのは大きいのですね。

 やはりこれはきちっとした、不当表示を排除して、正しい情報が、いわゆる入居前の方に、入居をされようとする方に正しく伝わっていないと、入ってみたら全然違っていた、それで、今さらどうにもならない、結局、泣く泣く出ていっていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるんですね。ますますこれはふえてくると思います。

 万が一倒産したということでいうと、今、入居者基金、昔、倒産基金と称していたのがあるといいますが、こういうのがあるのでしょうか、事実関係を教えてください。一言、あるかどうか。

中村政府参考人 有料老人ホーム協会が入居者基金制度をつくっておりまして、そこでそういう有料老人ホームに対するいわば一時金保全の措置の一環としてそういうものが置かれております。

市村分科員 これは今、掛金が幾らで、その内容、掛金が一体何にどう振り分けられているか、教えていただけますでしょうか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 まず、この制度は、先ほど申し上げましたように有料老人ホーム入居者基金制度で、全国有料老人ホーム協会定款第四条で行われている制度でございます。入居者一人当たり二十万円を基金に拠出していただきます。これは事業者の負担になるわけでございますが、保証金として、倒産したような場合に入居者一人当たり五百万円の支払いを保証する、こういう制度でございます。

 なお、今入居者一人当たり二十万円と申し上げましたが、入居者の方が八十歳以上の方は一人当たり十三万円の拠出金になっております。

市村分科員 では、その二十万なり十三万なりの内訳、どこにどれだけのお金が行っているか、ちょっと教えていただけますでしょうか。

中村政府参考人 拠出金につきましては、基金への積み立て、それから基金が支払いのときに備えて加入している保険の保険料への支払い、それから基金の運営に係る事務費として活用されているところでございます。

市村分科員 もうちょっと具体的に答えていただきたいんですが、では、掛金はもともと十万だったのが、なぜ二十万になったんでしょうか。

中村政府参考人 入居者一人当たり五百万円を支払う、こういう必要がございますので、そのリスクを考えて、設定当初に比べて引き上げる必要がある、こういうふうに承知いたしております。

市村分科員 実はきょう、阿曽沼医薬食品局長さんもいらっしゃっていますが、実はこの制度をつくられた方が阿曽沼局長さんだというふうにお聞きしています。

 今の質問、阿曽沼局長、どうして十万が二十万になったのか、お答えいただけますでしょうか。いやいや、制度をつくられたときの局長さんですから、ちょっとお願いします。

阿曽沼政府参考人 確かに私も十五年前にその仕事をしておりましたが、十五年前のことでございますので記憶が断片的でございます。したがいまして、あいまいな記憶に基づいてお答えすることはいかがかと思いますので、担当局の方できちんと調査をして経緯を御説明させていただきたいというふうに思っております。

市村分科員 ただ、そのとき阿曽沼さんが担当でいらっしゃったというふうに私はお聞きしていまして、やはりこの経緯は大変重要なんですね。この辺については改めていずれまたやらせていただきたいと思います。大変大きな問題かもしれません。

 実は、この入居者基金については消費者契約法に違反しているという指摘があるんですが、これについてどうお考えでしょうか。

中村政府参考人 委員のおっしゃっている意味、ちょっと私、今直ちにはかりかねる点がありますので、これも、今阿曽沼局長の方から御答弁申し上げましたように、私の方の担当でございますし、私先ほど挙手いたしましたのは、阿曽沼サービス振興室長のとき、私が老人福祉課長だったもので、私が上司になりますので、すべて、今も私が所管でございますので、委員の御指摘についてはきちんとお答えをさせていただきたいと思います。

 それから、委員御承知だと思いますが、今回法改正で老人福祉法の改正も行っておりまして、委員の御指摘を受けまして、有料老人ホームがきちんとされますように、有料老人ホームの定義の見直し、それからサービス内容等の情報の開示、それから、特定施設になりますと介護保険の方の対象になりますので、介護保険の事業者としての情報開示の義務づけ、それから、今委員御指摘の有料老人ホーム協会の制度ではなく、まさに有料老人ホームとして、入居時の一時金の保全措置を、新たに法律で義務づけをお願いすることとなります。

 これは、これから有料老人ホームを実施されようとする方に係るわけでございますが、そういう措置も講じておりますので、これまでの有料老人ホーム協会についてのお尋ねにつきましてはもう一度きちんとお答えさせていただきますけれども、そういうこともとっているということを御報告させていただきます。

市村分科員 ぜひともお願いします。そうしないと、これからふえていったとき、消費者保護を図れないということになってきます。

 また、この入居者基金について、一時金化につきましては頭どめの制度なんですね。つまり、幾らか払ったら、そのうち何も返ってこないということになって、結局これが何かまた悪用されるというおそれもあるんですね。それがちょっとありますから、ぜひともその辺のことは、また改めて機会をいただいて質問させていただきたいと思っています。

 それから、きょうはせっかく国土交通省の山本住宅局長にもいらっしゃっていただいているんですが、なぜ来ていただいているかといいますと、国土交通省さんで終身建物賃貸借制度というのがあるというふうにお聞きしました。

 結局これは、大変残念ながら、まだハードルが高くて全国で一件しか適用事例がないそうですが、やはり国土交通省さんでもこうやって終身建物賃貸借契約制度というものをつくっていらっしゃる。これを、もう時間がありませんので、ごく簡単に御説明ください。

山本政府参考人 この制度は、貸し主が、高齢者単身あるいは夫婦世帯を対象にいたしまして、バリアフリー化されました住宅を都道府県知事の認可を受けまして運用するものでございます。借家人に対する配慮としまして、借家人が希望しますれば、定期借家制度を使いまして、終身建物賃貸借契約の前に一年以内の仮入居が可能でございます。

 それから、貸し主が当初終身にわたる家賃の前払いを受領するという場合には、貸し主の返還債務につきまして、返還しなきゃいかぬ家賃分について必要な保全措置を講じることを法律で義務づけていることなどでございます。

市村分科員 これはまだ適用事例が余りないということなんですが、例えば、今度有料老人ホームに入られる方々も、やはりこうした終身建物賃貸借権というものがありますと多少まだ安心できるかなと思います、今説明があったように。だから、やはり厚生労働省さんの方でも、国土交通省さんが一般的にこういう制度も考えていらっしゃるわけですから、今後ともこういうものも検討課題としていただきたいという思いがあります。

 大臣、最後なんですが、私のこれまでの議論を聞かれて、大臣としてのいろいろな御見解とかお考えとか、今回の議論に対して私一言いただきたいと思っているんですが。

尾辻国務大臣 介護議論をいたしますときに、いつも施設と在宅の議論というのは、これはもう基本の議論になります。私どもは、できるだけ在宅で高齢の皆さんが生活できればというふうに考えて、そのことを施策の中に盛り込もうとしておりますけれども、しかし、なかなかそうもいかない。やはり施設に頼る部分というのは大きいところがございます。したがって、施設をどうするかというのは私どもの中の大きな議論だというふうに考えております。

 そうした中で、よく私どもは、三つの施設がございますが、その三つの機能、それぞれに機能が今分かれている。したがって、三つの機能と言います。それから、実は課題を分析すると三つの課題になるものですから、三つの課題と言ったりもしておりまして、三つの機能、三つの課題という言い方をいたしますけれども、そうしたことをよく検討しながら、今後しっかりやっていかなきゃならぬなと思っております。

 そうした中で、きょうは、有料老人ホームについて随分時間を割いてお述べいただきました。そして、その中で最後に、終身建物賃貸借という新しい考え方、これはまさに新しい考え方として出てくるものでありますから、私ども、今後の施設を考える中での一つの検討する課題としながら、また施策を進めていきたいというふうに存じます。

市村分科員 議論は尽きませんが、時間になりましたので、またぜひとも議論させてください。

 ありがとうございました。

前田主査代理 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷公一君。

谷分科員 ありがとうございます。自由民主党の谷公一でございます。

 けさ、JR西日本の尼崎駅の近くで大変な事故がございました。私の選挙区の隣でございまして、同じ兵庫県ということで、お亡くなりになられました方に心からお冥福をお祈りいたしますとともに、負傷された方が少しでも早く回復されることをお祈りするところでございます。あわせて、なぜこういうことになったのかという速やかな原因究明も、国土交通省を中心にしていただければというふうに思っているところでございます。

 きょうは、二点、尾辻大臣にも来ていただきましてお尋ねをしたいというふうに思っております。一つは、社会保障制度の一体的見直しということであります。もう一つは、いよいよこの七月に施行をしなければならない心神喪失者医療観察法の施行ということについてお尋ねをしたいというふうに思います。

 社会保障制度でございますけれども、給付費が今後大変ふえてくる。厚生労働省の推計によれば、二〇〇四年度八十六兆円が、二〇一五年度は百二十一兆円になり、二〇二五年度は、今からちょうど二十年後でございますが、百五十二兆円と大変な数字になるということであります。そういう状況にかんがみて、昨年の年金改革における議論の過程におきまして、いわゆる三党合意で、社会保障制度全般の一体的見直しを行うということを合意して現在進められているところであります。

 また、一方、与党の税制改革大綱、昨年の十二月では、平成十九年をめどに、年金、介護、医療等の社会保障給付全般に要する費用の見通しなどを踏まえつつ、「消費税を含む抜本的税制改革を実現する。」ということも決められ、また、政府におきましては、昨年六月の骨太方針に基づき、七月には内閣官房長官の私的諮問機関として社会保障の在り方に関する懇談会というのが設置されて、検討を進めているところであります。この懇談会では、社会保障の役割であるとか制度の持続可能性であるとか、それから社会保障給付費の規模であるとか、そういう幅広いことについて議論を進めて、昨年十二月に中間的な論点整理を行ったところであります。

 その中間の論点整理を見ておりますと、見ておりますとといいますか、その中でちょっと大臣の御見解というのをお尋ねしたいんですが、それはまず、社会保障と経済財政の両立についての問題であります。

 ある考え方に立てば、まず、個別の年金とか介護とか医療とか、そういうことを個別に徹底的に見直して、そして積み上げて社会保障制度全体の規模を論じるべきだ、そういう意見と、いやいや、そんなことを言っても、もう個々に幾ら議論をしても、大事なことは全体の規模で、それが経済なり財政との関係でどれぐらいの規模かということが大変大事で、そういう全体の規模をまず設定する、そして、その次に個々の制度の合理化に関する見直しを進めるべきだという、単純化して言えば二つの大きな見方に分かれるのかなというふうに思うんですけれども、尾辻大臣の、どちらかの意見にくみするのか、また、その理由もまずお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 今のお話、まさにそのとおりでございます。両方の意見がございます。特に、経済財政諮問会議におきまして議論をさせていただきますと、まず、民間議員の皆さんからは、社会保障給付費の伸びについて、名目GDPなど何らかのマクロ指標を設定した上で制度を見直すべきだという御意見がございます。そういう御意見は確かにございます。先生が二つお述べいただいたうちの一つであります。

 私は、その議論の中でいつも言っておりますことは、やはり社会保障というのは、国民の安心あるいは生活の安定を支えるセーフティーネットを構築する部分でございますので、どうしても必要なものを積み上げていかざるを得ない。もちろん、社会保障給付費の適正化は図る必要があるわけでありますが、先生が二つお述べになりました、私は、やはり申し上げた理由は、国民の安心、生活の安定を支えるセーフティーネットだから、それはもうどうしても必要なものだから積み上げざるを得ませんということを申し上げて、積み上げるべきだという意見をいつも述べておるところでございます。

    〔前田主査代理退席、主査着席〕

谷分科員 では、そうしますと、一部に、五〇%程度が潜在的国民負担率の上限ではないかと数字を挙げて論じる方がおられますし、何となく一般の国民の方も、余り重たいのもあれだし、これは感覚の問題ですけれども、税を含めて五〇%程度であればまあやむを得ないかなという方もおられるのではないかと思いますが、それについても、やはり尾辻大臣としては、そんな数字ありきではないと考えているというふうに理解させていただいてよろしいでしょうか。

尾辻国務大臣 これもまたいつも議論になるところでございます。

 潜在的国民負担率につきましては、骨太の方針などでも、いわばとか、そういうちょっとぼかした表現で潜在的国民負担率五〇%という表現になるわけでございますけれども、そのときに私が申し上げているのは、やはり、最初にそういうキャップをはめるというのは社会保障に対しては大変難しい、また、我々もそうした議論にはくみするわけにはいきませんということを申し上げておりまして、最初に数字ありきというのは、我々はまずいと考えておりますということを言っておるところでございます。

谷分科員 ただ、一方、大臣、私も、最初から数字ありきで、とにかく経済なり、経済というのか、負担率とか財政まずありきで、どれぐらい耐えられるかということから、いや、この社会保障のレベルはこうだと言うのは確かにいかがなものかなというふうには思います。

 ただ、そうはいっても、一方でしかし、今現在、国、地方を通ずる財政赤字が八百兆円近くになろうとしている。我々政治家が、次の時代あるいは我々の次の次の孫の世代のことを考えると、これ以上負債を大きくするというのもいかがなものかなと。やはり、未来への責任という言葉がございますが、そういう意味からも、これ以上ツケを回すといいますか、それも慎重に考えなければならない。

 そうなると、社会保障制度を将来にわたって持続可能なものにしていくためには、キャップというふうに今大臣おっしゃられましたか、何らかの方法でコントロールといいますか、言い方かもわかりませんが、では、総額といいますか、それは経済成長とか財政に全くお構いなしにいいのかというのも、一方でやはり素朴な疑問としてあろうかと思うんです。

 やはり、何らかの方法で社会保障全体をコントロールといいますか、それは必要ではないかとも一方で私は思うんですけれども、もう一度御見解をお尋ねしたいと思います。

尾辻国務大臣 確かにおっしゃるとおりに、このまま今の財政赤字を放置していいとは思いません。また、私どもが社会保障の給付費用を何とか抑制しなきゃならないと考えておることもまた事実でございます。

 ただ、申し上げましたのは、例えば、今、国民負担率のお話が出ましたものですから、そして五〇%というお話が出ましたので、よく例にして出させていただきますのは、スウェーデンなどがたしか国民負担率は七〇%を超えていたと思いますけれども、それでもそれなりの経済力を持ってやはりやっておるわけでありますから、国民負担率が五〇%を超えたから経済に深刻な影響が出てくるとかということも言えないしということを今言っておるわけでありまして、とはいえ、何らかのものが必要だというのは、何かいい指標があれば、それはまたそれなりの指標を定めて努力をするということも必要なことだというふうに考えておりますので、私どもは、そうした議論が必要だということを申し上げておるつもりでございます。

谷分科員 きょうは井口政策統括官にも来ていただいているわけでございますけれども、少しお尋ねしたいんですけれども、社会保障制度の一体的見直しということはよく言います。私も何か人前でわかったように言うことは時々あるんですけれども、では、具体的にどういうようなことを一体的見直しと言うのか、具体的にどういう作業をしているのかということになると、どうもいろいろな場でまだそこまでいっていないというのか、具体的な一体的全体としての見直しが、厚生労働省でも我々自由民主党の中でも本当にそこまで進んでいないように思うんです。

 先日から、先日といいますか先月ですか、自民党の中でも中堅、若手議員でそういう勉強会などもしているんですけれども、それはそれとして、政治家は政治家として、しかし厚生労働省は厚生労働省として、税制も含む全体ということになれば大変大きな話になりますけれども、少なくとも、年金、介護、医療、生活保護等々、そういう厚生労働省所管の分野だけでも何かいろいろ内部で検討を進めて、独自の、独自のといいますか、厚生労働省としての今後の国民の生活全般、社会保障全般にわたるデザインはかくあるべしというようなものを持っていただいてもいいのではというのか、そういう積極的な問題提起があってもいいのではないかというふうにも思うんですけれども、政策統括官の御意見をお尋ねしたいと思います。

井口政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話しございました社会保障制度の見直しにつきましてですけれども、先ほども御指摘ございましたけれども、昨年の骨太の方針二〇〇四というものの中で、平成十八年度を目途に結論を得るということとされておりまして、そのため、先ほどもお話がございましたけれども、昨年の夏以来、経済界、労働界の参加を得ました社会保障の在り方に関する懇談会におきまして、特に負担と給付の関係という点に重点を置きまして、幅広い観点から御議論をいただいているというところでございます。昨年の末に中間的な取りまとめをしまして、それ以降、年明けに、さらに医療、雇用、社会保障、あるいは経済、財政との関連等々も御議論いただきましたので、次回の五月には、それらを踏まえまして、改めて論点の整理をいたしたいということで論議をいただいている最中でございます。

 それから、一方で、経済財政諮問会議におきましても、社会保障の一体的見直しということについて御議論いただいておるところでございますし、また、これも先ほどお話がありましたけれども、国会におきましても、年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議が立ち上げられまして、各党間でも活発な御論議をしていただいているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、これらの議論を踏まえまして、これから一体的見直しということに取り組んでまいりたいと思っておりますが、それと同時に、喫緊します、例えば介護保険の問題、医療保険等の問題がございます。こういうふうな問題にも、今現在で対応できるものは対応しながら、将来にわたり持続可能な社会保障制度を構築するということで、改革に向けて省を挙げて取り組んでまいりたいと考えてございます。

 その際には、負担と給付の両面ということになりますので、私どもの省だけで給付の体系をこういうことでお願いしたいというやり方もございますが、やはり負担のことも一体的に見直していくべきだ、こういう御指摘が従来ありますので、まずはこうした懇談会等々の御意見を踏まえながら、私どもの基本的な考え方を整理して考え等はお示ししたい、そんなスケジュールで考えているところでございます。

谷分科員 ありがとうございました。ぜひ、積極的な取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 二番目の、心神喪失者医療観察法の問題に移らせていただきたいと思います。

 四年前の六月八日、私も覚えておりますけれども、大変な事件というのか、とにかく、小学校の中で無差別の殺傷事件というのが起こりました。いわゆる大阪池田小事件であります。たしか、八名の児童が殺されて、それを含んで二十数名の方が傷を負われたのではないかというふうに思います。その事件も一つの大きな契機として、その前から動きはあったかと思うんですけれども、重大な犯罪を行った精神障害者の再犯を防止するために、特別な処遇制度を特別法を制定して定めたということであります。最終的に二年前の七月に制定をされて、その施行が二年以内ということでございますから、この七月には施行をしなければならないということであります。

 では、法施行の準備はどうなのかということが大変気になるところでございます。特に、指定入院医療機関がなかなか整備が進んでいないのではないかということを耳にしますし、一部の新聞でも出たように記憶しております。

 そこで、厚生労働省にお尋ねしたいというふうに思います。この指定入院医療機関の整備の状況はどうなっているのかということ、それで、どの程度の整備が必要で、現在の進捗状況はどうなのかということをまずお尋ねしたいと思います。

塩田政府参考人 心神喪失者等医療観察法でありますけれども、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に対しまして、適切な医療を行うことなどによってその人の社会復帰を促進することを目的とする法律でございます。この法律の円滑な施行のためには、実際に治療を行う指定入院医療機関を整備することが重要であると考えております。

 この指定入院医療機関の整備につきましては、法律で国公立などの公的な医療機関に限られているところでありますけれども、今後三年間で段階的に全国でおおむね二十四カ所、約七百ベッドでありますけれども、を確保することが必要であると考えております。

 これまで、厚生労働省といたしまして、国関係の病院につきましては八カ所を候補として選びまして、十七年度中に三カ所、九十床程度の整備ができる見通しが立っておりますけれども、その他については見通しが立っておりません。

 また、都道府県関係の病院ですけれども、幹部が直接都道府県を訪問しまして整備を強く要請してきたところでありますけれども、一、二の都道府県を除きまして、現在のところ、整備に積極的な意見を得られていないところでございます。したがいまして、現時点におきましては、指定入院医療機関を必要数確保するということが非常に厳しい状況にございます。

 厚生労働省といたしましては、今後、指定入院医療機関の整備に向けまして、関係者の御協力を得まして、省を挙げて最大限の努力を、ぎりぎりの努力をしてまいりたいと考えております。

谷分科員 どうも整備が進んでいないようであります。確かに今は、私は法務委員会にも属しているんですけれども、刑務所を誘致するために全国の自治体がいっぱい手を挙げているということを聞きまして、時代も変わったなと思うんですけれども、ただ、この指定入院医療機関についてなかなか手を挙げるところも少ないのではないかというふうに想像はしていたんですが、今の塩田部長の答弁ですと、確かになかなか厳しいと。

 ただ、それは、二年前、二年前といいますか法を制定していたときに、そういう、なかなかスムーズに金さえつけば整備ができるというものではないということはわかっていたのではないかとも思うんですが、どうでしょう。

塩田政府参考人 この医療観察法の対象となる人の社会復帰のため、あるいは地域の精神保健福祉の底上げという観点からは、この医療観察法をしっかりと施行することが必要であると考えているところでございます。

 このため、地域住民の方々など関係の方々の御理解をいただくということが大変重要であると考えておりまして、なかなか難しいテーマではありますけれども、これまで、国関係の八カ所の病院の候補地に対しまして延べ九十回を超える説明会を行いまして、理解を深めるべく努力をしてきたところでございます。

 いずれにいたしましても、関係者の御理解をいただくということが必要不可欠でありますので、法律制定当時から、理解を得るということが大前提の法律であったと思いますので、厚生労働省としては、ぎりぎりまで住民の理解を得られるべく努力したいと思いますし、法施行後もそういった努力を続けていきたいと考えております。

谷分科員 実は、この法律は厚生労働省と法務省の共管だと思います。きょうは大林刑事局長も来ていただいているわけですが、では、そういう状況であれば、大林局長、どうされるんですか、法施行を法務省としては。

大林政府参考人 今御説明があったように、指定入院医療機関の整備につきましては、一義的には厚生労働省において検討されることだと思いますけれども、施行ということを考えますと、今度は私どもにおいてやらなければならないことがたくさんございます。

 厚生労働省におきましては、関係省庁や都道府県の意見を聞くのはもとより、いろいろな意見をお聞きしながら幅広く検討していきたいという方針であると承知しておりまして、法務省といたしましても、厚生労働省と十分に協議を行い、本法を円滑に施行するため必要な検討を行っていきたい、このように考えております。

谷分科員 共管ですから、もちろん法務省と厚生労働省、十分に協議をしていただく必要があろうかと思いますけれども、ただ、こういう状況であれば、一つの考えとして、施行は目の前ではありますけれども、まだ施行されていない、では、もう一回法改正をするというようなことは、塩田部長、あり得るんですか。

塩田政府参考人 医療観察法の趣旨を実現するためには、指定入院医療機関の整備が不可欠でございます。

 したがいまして、今後とも、地域の方々、都道府県の関係者に指定医療機関の必要性についての御理解を得るべく努力をしたいと思っておりますが、どうすれば地域の方々あるいは都道府県の方々の理解を得られるかについて、さまざまな手だて、いろいろな工夫をしないといけませんと思っておりますので、関係省庁あるいは都道府県、また、国会の先生方の御意見やお知恵もかりながら、ぎりぎりの努力をするとともに、いろいろなことについて考えていきたいと思っておりまして、法施行に万全を期すべく最大限の努力を引き続き行いたいと思っております。

谷分科員 最大限の努力、では、法改正はないというふうに受け取ってよろしいのでしょうか。

塩田政府参考人 指定医療機関の整備が進まない理由は、一つは、地域の方々の理解を得るのに時間が要るということ、それから、法律上、都道府県の同意が必要だということなどいろいろな課題がありまして、いずれにいたしましても、指定入院医療機関の整備にはそれなりの時間がかかるということでありまして、そういう中で、どうすれば指定入院医療機関の整備ができるかにつきまして、いろいろな対応、いろいろな措置をぎりぎりの努力で考えていかなければならないと思っております。

 この場合には、御指摘のような法的な面も含めまして、国会の先生方、関係都道府県の方々、いろいろな方の知恵をかりながら検討をしていきたいと思っております。

谷分科員 東京だけといいますか、こちらだけ、霞が関だけで汗をかいてもこれはなかなかうまくいくものではありませんので、現場といいますのがありますので、大変だろうかと思いますけれども、残された日は少ないというのも現実でございますので、精いっぱいの努力をお願いしたいというふうに思います。

 実は、今度の国会で、障害者が地域で生活することを支援する障害者自立支援法案が国会に提出されているところでございます。いわゆる支援費制度で対象外であった精神障害者の方も、三障害一体ということで、新たにそういうサービスを受けられるような仕組みを、法案を出されているところでございますけれども、そういう精神障害者の社会復帰促進のためにもこの医療観察法の施行というのも大変重要であって、あわせて、精神障害者の社会復帰とか地域の受け皿づくりも大変大切なことであるというふうに考えております。

 最後に大臣の方にお尋ねしたいんですが、今、塩田部長から答弁をいただいた医療観察法の施行も含めて、目の前ですので、精神障害者の社会復帰促進に向けた大臣の決意をお聞かせ願いたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 精神障害を含めまして、障害のある人もない人も地域でともに安心して暮らせる地域社会づくりが必要であると考えております。このため、今後の精神保健福祉施策につきましては、入院医療中心から地域生活中心へという基本的な考え方に基づき進めていくことが必要でございます。

 今お話しいただきました、今般、国会に提出させていただいております障害者自立支援法案では、精神障害を含め、障害の種別を超えて、市町村が中心となって障害福祉サービスを一元的に提供する仕組みに改めて、精神障害者に対する社会復帰や地域生活の支援を抜本的に強化することといたしておるところでございます。

 こうした精神障害者をめぐる大きな流れの中で、医療観察法も社会復帰支援の一環としての役割を担うものでございまして、私どもはその施行に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

谷分科員 では、大臣の御決意を聞きました。なかなかこの問題は大変難しいところもございますけれども、しかし、私の大先輩たちが苦労をしてやっと通った法案でございます。ぜひ、速やかな施行ができますよう万全を期していただくことを要望いたしまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

菅主査 これにて谷公一君の質疑は終了いたしました。

 次に、萩生田光一君。

萩生田分科員 自由民主党の萩生田光一でございます。

 余計なことなんですけれども、大臣、今、谷先生の最後の質問で、私も地域で支えていくというのは大賛成なんですけれども、精神医療の場合は、おっしゃる地域というのが生まれ育った地域ではない場合があります。精神病院というのは余りにも偏在性があって、例えば私の地元は一つの自治体に十七の精神病院を抱えているんですよ。入院患者さんというのは、退院しても地元、地元というのは生まれ育ったところに帰れないものですから、結局病院の近くで生活をするんですね。そうすると、おっしゃっている地域というのは、生まれ育った地域ではなくて、病院の所在地の近く、こういう偏在性が発生してしまうので、その辺は今後の法案の進め方の中で実態をよく見ていただきたいなと。余計なことなんですけれども、今最後の答弁を聞いて、ちょっと実態とかけ離れているなという危惧がございましたので、発言をお許しいただきたいと思います。

 昨年の決算委員会で、私、小児医療のこれからの国の取り組みということでちょうど質問をしかけたところで時間が終わってしまいましたので、ある意味、一年経過をしましたけれども、その続きということでお伺いをしたいというように思います。

 当時、我が党の政調会長が額賀先生だったのですけれども、我々世代の政策提言として、ぜひ若い感覚で、党としてあるいは国として取り組まなくてはならない医療の問題について提言をせよ、こういう御指示をいただきまして、今は大臣になってしまいましたけれども、当時は棚橋先生が中心になって、少子化問題とそれから小児医療のあり方について、我々なりに党内で勉強を始めて、厚生労働省の皆さんとの話し合いを始めたところでございました。

 ところが、数回会合を持ったのですけれども、入り口で非常に認識に違いがあって、つまずきをしてしまいました。私どもは、今我が国は小児科医が大変不足をして、まさに危機的状況にあるのではないかという危惧を持っている。ところが厚労省としては、いや、一方では小児科ドクターの標榜医というのはふえていますよ。こういうことで、認識のずれがあったんですね。

 そのことを私、大変危惧して、この決算行政委員会の方で質疑を始めたところ、我が国の小児医療につきましては、数字の上で見ますと、確かにここ十年、十五歳未満の入院患者ですとかあるいは外来患者というのは人数が減っています。これは少子化という背景があるんだというふうに思います。小児科の病院も一〇%ほど減少しているけれども、診療所は逆に一〇%ふえているという数値を厚労省の方から示されました。

 なるほど、この数字を見ると、小児科は減っているのではなくてふえているということになるではないか、入院する患者もあるいは通院する患者も減って、逆に診療所がふえているのだから、プラスマイナスだったらプラスではないかというのが当時の厚労省の御認識だったというふうに思うのですけれども、少なくともこの一年間、冷静に推移を見てまいりましたけれども、テレビのドキュメンタリーや報道番組などを見ても、各地区で本当に小児科医の皆さんが不足をして、特に夜間救急などはもう手いっぱい、あるいは公立病院であっても小児科の診療標榜をやめざるを得ないというような、こういう事態も目の当たりにしてまいりました。

 そのことを考えますと、どうも厚労省が考えている日本の小児医療の実態と、我々が現場で接している小児医療の実態の中に温度差があるのではないかということを大変危惧するところなんです。要するに、需要と供給のアンバランスがあるということが国民の不安につながっているのだという厚労省の考えと、そうではなくて、実態的に音を立てて小児医療というのはどんどん悪い方向に行っているのではないかと思う我々の認識の差を埋めていかないと、問題の解決ができないというふうに思うのです。

 そこで、例えば、地方の小児科標榜医というのは圧倒的に高齢化をしているというふうに思うんですね。すなわち、開業医で、ある程度経済的にも、あるいは地域への貢献も含めて一定の成果を上げた先生が、息子も資格を持って、二人で診療所の経営をすることになった。息子さんは主に内科医を標榜するけれども、言うなら、おじいちゃん先生の方は、もう一仕事終わったという満足感もあって、たとえ不採算であっても地域のために小児科をやってやろうじゃないかということで小児科を担当する、こういうケースが多分一般的だというように思うのです。そうしますと、今の統計で、人数だけで、紙の上で追いかけていきますと、ある日突然、どんと小児科医が全国で減少するという事態に遭遇せざるを得ないのではないか。

 あるいはまた、勤務医に関して申し上げますと、これも厚労省は認識していると思いますけれども、圧倒的に女医さんが多いですよね、女性のお医者さんの方が多いです。ですから、今は確かにマンパワーとして確保できているような実態はあるのですけれども、例えば結婚ですとか出産によって一時的に穴があいて、その穴をまた埋められないというようなケースも発生をして、各病院では大変悩んでいることもお聞きをします。

 そこで、初めに認識を確認したいのですけれども、私は、我が国の小児医療というのはもうまさに深刻な事態になっている、この小児科不足というのはまさに国家的な危機であると申し上げても大げさではないというふうに認識をしておりますけれども、現状認識と今後の小児科医療の確保対策についてどのように考えているのか、お尋ねしたいと思います。

伍藤政府参考人 先生が御指摘いただいたような小児科の医師不足ということは、国民的な問題としてしばしば取り上げられる問題でありますので、私どもも、それにどうこたえていくか、現状をよく分析して対策を考えていかなければいかぬと思っております。

 今御紹介のありましたような、数字の上でいうと小児科の数が減っていないというようなことで、私ども、こういう事態の深刻さとか問題を十分認識してないというのではございませんが、数字の上から見ると、今、平成八年と仮に比較をいたしますと、小児科医の数が五%増程度、七百人ぐらい数はふえておる。医師の数全体ももう少しふえておりますが、小児科もある程度の数はふえておるという状況でございます。

 どういうところに問題があるかということで、これは今まで三年間、プロジェクトで、委託研究でいろいろ研究をしていただいておりますが、そういった中でも、やはり先生の御指摘のような、高齢化の問題、開業医の問題もございますが、医師が広く薄く診療所あるいは病院に偏在をしておって、集中する患者のニーズにこたえ切れていないのではないか、こういうことが言われておるわけでありまして、特に大都市部でそういう傾向が大きい。特に、茨城、千葉、埼玉、こういった大都市部近郊では、絶対数そのものも全国平均に比べてかなり低い。さらに加えて、患者が病院、特に大病院に集中しておるということで、なかなかそういうところの勤務体制が組めないということがしばしば社会問題として取り上げられるのではないかというふうに思っております。

 こういったことをどういうふうに解決していくのか。今、関係の学会等ともいろいろ議論を重ねておるところでございますので、そういったいろいろな御指摘を受けながら、今後の見通しを立てていきたいと思います。

 ことしの二月に、厚労省全体といたしましても、医師の需給に関する検討会、これは、将来的には医師の数そのものは全体として供給過剰になるのではないか、こういう認識のもとにこの検討会が立ち上げられたものでありますが、特に小児科とか産科とか、部分的に非常にむしろ深刻さを増しているのではないかという御指摘のような問題もありますので、全体として、こういう問題にどう取り組んでいったらいいのか、現状はどうなっているのかというようなことも含めて、ここで十分検討していきたいというふうに思っております。

 それから、具体的な対策として、来年度以降、医療計画の見直しでありますとか診療報酬の改定といった具体的な政策的な手段もございますが、そういった中で今のような問題にどこまで対応できるのか、さらに私どもも検討していきたいというふうに考えております。

萩生田分科員 私は東京の出身でございますけれども、都では、以前もお話をしましたが、東京都が担う医療の役割分担の視点から、都内に三病院あった小児の専門医療施設を一カ所に統合して、同じ敷地内に、総合病院が立地するキャンパスの中に設置して、より強固な医療基盤に支えられた心から体に至る小児専門の総合医療センターの計画というのを進めているんです。

 当初は、東京都は高度で専門性の高い医療を提供して、小児のプライマリーケアというのは地元の自治体の責任だ、何とか地元でやってくれということで、すみ分けをしようじゃないかといって始まったんですけれども、結局は、センター的機能を東京都が持ったとしても、残念ながら、いわゆる一次、二次の医療の穴は結果として地元では埋められないという事態に直面をしております。

 たまたま私の地元八王子市にも、統合予定の病院、九十床の都立の小児病院というのがあるんですけれども、この問題が浮上し始めたころから地元でも大変な問題になりまして、もちろん市民の世論は反対でありますけれども、それでも冷静に対応を協議して努力をしてまいりました。

 例えば、問題が発生した後に開院した大学病院には、大学側は当初計画になかった産科、小児科の設置を私どもが強く求めて、二十四床の小児病床の確保をしました。あるいは、地元の医師会の先生方もそのことに端を発して大変な危機感を持っていただいて、当初は小児科標榜医というのが二十名に欠けていたんですけれども、その後、四十数名の先生方に手を挙げていただいて、研修のし直しをしてくれて、地元の夜間救急診療所という市が経営している診療所があるんですけれども、今までなかった小児科という科目をふやして、そして輪番制で、夕方の五時から夜の十一時まで、いわゆる準夜間の時間帯、子供たちが一番容態の変化のあるこの時間帯に二人体制で一次救急をやってくれています。そして、新しくできた大学病院と以前からあった大学病院、二つの大学病院を市の基幹病院という位置づけをして、そして偶数日と奇数日に分けて、必ずどちらかの病院で夜間の小児の二次救急に当たってもらう、こういう体制をつくってまいりました。

 つくってきたんですけれども、地元の自治体にできることというのはここまでが限界でありまして、例えば、二次医療圏でたった九床しかないNICUというのはすべて都立病院の中にあるんですね。ですから、これがもし移転ということになると、医療圏でNICUがゼロになる、こういう事態になってしまいます。あるいは、ドクターカーというツールを持っておりまして、我々の八王子から三多摩地域四百万の市民が生活している地域へどこへでも飛んでいって、万が一の場合の小児の救急医療に当たっているんですけれども、これも新しくできる病院の方に移すということになると大きな穴があくので、やはりドクターカーも必要だよね、NICUもどこかに置かなきゃいけないよねということで、東京都が自分でかいた絵なんですけれども、自分で精査をしていくうちに、これは危険だ、地元の自治体に幾らお願いをしても、協力をしても、こんなに前向きに取り組む自治体があったとしても、やはり今の小児の医療の体制というのは埋められないということを最近になって認識してきたところでございます。

 例えば、今申し上げたNICUですとかドクターカーというものを民間病院で受け入れをしてくれ、こうお願いをしたとしても、よほど財政的な支援をしない限りは引き受け手がないんじゃないかというふうに大変心配をしております。こういったツールは、日本の小児医療あるいは小児の救急医療を考えるときにはどうしても避けては通れないツールだというふうに思うんですけれども、国の方は、NICUの整備計画、医療圏ごとにいろいろきちんと考えていただいておりますけれども、ドクターカーというツールも明確に厚労省の方でもうたっております。この小児のためのドクターカーというのは全国でどんな整備状況にあるのか、あるいはその効果をどのように考えているのか、お聞きをしたいと思います。

 次いで、周産期医療の充実というのも避けて通れない問題なんですけれども、NICUやMFICUの整備は、二次医療圏ごとの計画を先ほど申し上げましたとおり国は示しておりますけれども、率直に申し上げて、一向に数値が上がらない状況にあるというふうに思います。私の地元の例で示したとおり、行政側がその必要性は認めていても、受け皿となり得る医療基盤そのものがないので、幾ら待ってもふえないのが実態だというふうに思います。

 次の一手がない限り、厚労省が幾ら旗を振っても、結局はこういった施設はふえていかないという状況が続くというふうに危惧をしますけれども、NICU及びMFICUの整備状況と今後の整備方針はどのように考えているのか、お尋ねいたします。

岩尾政府参考人 まず、先生最初にお話しいただきました医療計画の話でございますが、私ども、十八年の医療制度改革に向けて、現在、医療計画の見直しの議論をしております。

 先生御指摘のように、どうしても、中央である目標を定めてもなかなか難しいということがございますので、現在、小児医療や周産期医療といった母子医療の推進、それから小児を初めとした救急医療体制のあり方などに関して、都道府県に、策定した医療計画で数値目標を立てていただこう、そして質の高い母子医療の提供体制を効率的に確保していただきたいということで、先週もこの医療計画の見直しの検討会がありましたが、そういう数値目標を入れようという議論をさせていただきました。

 その中で、ドクターカーですとかNICUというような話、そういうのを目標にしようということになるのかもしれませんが、ドクターカーにつきましては、小児のみならず、いわゆる救命救急センターに設置した車ということで、現在、百六十五カ所救命救急センターがあるうち六十三カ所に七十四台配置されております。これに対しまして、私ども、救命救急センターの事業としての補助事業がございますが、一カ所当たり六千万程度かかる費用のうちの三分の一の補助ということで現在進めておりまして、主に病院間の搬送ということで活躍しているようでございます。

 具体的には、札幌の市立病院ですとか船橋の市立の医療センターなどで、救命救急センターに消防機関の救急自動車を配置していただいているような救急ワークステーションという方式もありますので、迅速に搬送できるようなものとしては効果が上がっているんじゃないかというふうに思っております。

萩生田分科員 総じて小児医療については、この危機を突破するために、その位置づけを国としてさらに明確にしていかなくてはならないというふうに私は考えております。

 例えば、医療を提供する側の体制として、あるいは行政上の医療区分というもの、この必要性はわかるんですけれども、小児やとりわけ乳幼児の場合は、最近の医療事故を見ても、一瞬にして容態が変わって、初期ですとか二次ですとか三次の区分というのは非常に難しいんだというふうに思います。表面的なあるいは量的なサービスと中身の問題というのをしっかり考えていかないと大変なことになるんじゃないかというふうに思います。

 そこで、小児医療は、その提供者が国立病院であれ、あるいは市立病院であれ、あるいは私立の病院であれ、現行の診療報酬制度ではだれがやっても採算が合わないということはおおむね国も理解しているところだというふうに思います。私は、たとえ不採算であっても、将来を担う小さな子供たちの命を守ることはまさに国家の責務であり、我々政治家の使命だというふうに思っております。

 しかるに、この小児医療という分野は、少子化時代を迎えた今日、完全に地域に必要な行政的医療のカテゴリーに入れざるを得ないという状況に来ているんじゃないかというふうに思います。国がNICUの二次医療圏ごとの計画や救急体制の必要性を紙の上で幾ら書いても、立ち行かないという地域が全国にあるわけですから、やはりこの担い手をしっかり確保していくためには、国が具体的な支援メニューを講じていかなくては問題の解決はできないというふうに強く感じます。公的医療として、医療計画においてその確保を推進していくべきと考えますけれども、これはぜひ大臣に御所見を聞きたいというふうに思います。

 また、小児に限らず、いわゆる医療のマンパワーのアンバランスを解決するというのは、冒頭御答弁にもありましたように、必要な問題だというふうに思います。

 例えば、厚労省は女性の罹患率第一位の乳がんの撲滅に向けて大きく動き出して、本年度、十七年度には全国でマンモグラフィーを二百五十台配備する、このことは私は高く評価したいと思うんです。ただ、二百五十台の機械を配っても、非常に危惧をするのは、読影医師がいないあるいは撮影の技術者が足りないという問題が各地域では発生してくるんだろうというふうに思います。こういう読影医師を一体どうやって育てていくのか。

 あるいは、医師そのものは過剰状態にあるけれども、必要な小児科医ですとか産科医ですとか、今申し上げた、せっかくマンモを普及させても読影医師が足りなかったらその成果はあらわれないわけですから、私は、医療計画というのはどこまで国が権限を持つのかよくわからないのでありますけれども、将来必要なドクターをきちんとした計画を持って養成していくということをこれからは具体的に考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 例えば、具体的なことをもっと申し上げますと、医師を夢見ていたけれども、残念ながら家庭環境で、財政的な事情で医学部へは進学できない、だけれども能力のあるという子供は世の中にはいっぱいいるんだというふうに思います。ですから、そういう人たちに不足する行政的な医療に一定期間従事してもらうことを前提として、国がある意味でドクターを育てて、そして全国へばらまいていく、そういう施策を今後考えていかないと、どうもこういう問題は自分の判断に任せていたのではなかなか解決できないんじゃないかというふうに思いますけれども、これらについてのお考えもあわせてお示しをいただきたいと思います。

尾辻国務大臣 きょうお述べいただいておりますように、小児医療体制の整備というのは極めて重要なことでございます。したがいまして、厚生労働省として、これまで、まず小児救急医療拠点病院の整備でありますとか、こうしたもので適切な小児救急医療が提供できるように全国的な体制整備に取り組んでまいったところであります。

 それから、どうしても小児医療が不採算部門といいますか、そういう言われ方をいたしますから、そのことにつきまして、診療報酬の改定、このことがまた一つの課題だというふうに考えておりまして、小児科医療の重点的な評価をこの診療報酬の中で行ってきておりますけれども、引き続き小児医療に対する診療報酬の適切な評価に努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

 さらに申し上げますと、厚生労働科学研究におきまして、三年間にわたり、小児科若手医師の確保、育成に関する研究を実施してきたところでございまして、現在、最終的な取りまとめを行っているところでございます。近く報告が参ると思いますので、またこの報告も見ながら今後の対策を講じていきたいというふうに考えておるところでございます。

萩生田分科員 大臣、人材確保策をいろいろ講じていただいているんだというふうに思いますけれども、どうしても、学生時代は高い理想があったとしても、いよいよ町の中へ出てドクターをやるということになると生活というのも考えなきゃならない。そうすると、自分の収入や何かを考えると、本当は小児科で生涯頑張ろうと思ったドクターたちも途中で道を変えなきゃならないという実態はあるんだろうというふうに思いますので、ぜひその辺を大いに先回りして議論していただいて、今後の対応を期待したいというふうに思います。

 最初に余計なおしゃべりをしちゃったので時間がなくなっちゃったので、新薬の許可についてお尋ねをしたいと思います。

 脱毛症用薬であるフィナステリド、薬品名プロペシアという名前で市販をされているようでありますけれども、この薬が個人輸入により大変多く使用されているというふうに聞きます。

 もともとこの薬は前立腺治療の処方薬として開発されたものが、副作用として発毛効果があるとの実証を経て、欧米では数年前から数万人とも数十万人ともいう利用者があるそうであります。アメリカのFDAでも、効果があるのはあくまで男性のみで、女性への服用を禁止しております。なぜならば、このホルモン剤を妊婦が服用すると胎児の生殖器に異常を及ぼす危険性があるとのことで、実際にいわゆる半陰陽の子供たちの出産が確認をされているとのことです。もちろん欧米では薬の服用は自己責任に基づくところが大きく、その実態を正しく把握することは困難でありますけれども、専門家の報告からは、明らかに原因の一つに挙げられております。早くから服用を奨励している国内のクリニックなどでは重大な副作用はないと宣伝をしておりますが、私は、極めて危険な状況にあるというふうに感じております。

 厚労省では国内処方を認めるか否かの新薬として審査中とのことですが、脱毛症という疾患の背景から、もし許可が出たとしても、医師の処方を求めずに個人輸入に頼る人がいることはかつてのバイアグラの例からも想像がつきます。

 そこで、過去、個人輸入されたバイアグラによる死亡やあるいは重症な副作用がどの程度発生をしているのか、それは国民のどういった背景から発生してきたと厚労省は認識しているのか、実数とあわせてお答えいただきたいと思います。

阿曽沼政府参考人 まず、バイアグラについてのお尋ねでございますけれども、バイアグラは平成十一年の一月に承認をしております。今委員御指摘のように、その前に個人輸入という形で使われている実態がございまして、承認前の平成十年の七月に、医療機関からバイアグラの服用中に死亡した症例が一例報告されました。この報告を受けまして、私ども、個人輸入でありながらこれは大変重要な問題であるということで、広く国民に注意喚起をすると同時に、未承認医薬品でございますけれども、医薬関係者に医薬品等安全情報を発出いたしまして、十分な周知の徹底を図ったという経緯がございます。

 それから、フィナステリドでございますけれども、これは、委員御指摘のように、男性型脱毛症における進行遅延ということで承認申請が行われておりまして、現在、追加的な臨床試験が行われているというふうに承知をいたしております。

萩生田分科員 専門家の意見を聞きますと、日本人は欧米人に比べて体も小さいことから薬の効きがよいというふうに言われているそうであります。もちろん個人差はありますが、そのような視点から、バイアグラが国内に輸入され始めたときにも、欧米でスタンダードだった十ミリや五ミリの錠剤を勝手にカットして服用することが一般的になり、かたいタブレットをカットする専門のカッターもインターネット上で多数販売されたというふうに認識をしております。今回のフィナステリドも、利用者の間では同様の解釈が横行し、輸入薬、高価な薬でありますから、カッターで刻んで、複数に分けて服用する実態がサイト上でも示されているとのことです。

 ところが、この薬の場合、カッターで切ることによって成分の微粒子が空気中に浮遊して、それを偶然妊娠中の女性が吸い込むことによって同様の障害が起こる危険性が指摘をされております。冒頭申し上げたとおり、脱毛症に悩む男性が家族に隠れて個人輸入でこの薬を購入する。お小遣いの中で買うわけですから、カッターで刻んで、分けて飲む。ところが、奥様やあるいは自分のお嬢さんやお嫁さんが妊娠中だったりする。その方が偶然部屋に入ってきて、カッターでカットして目には見えないそういう微粒子を吸い込んでしまうことによって、さっき申し上げたような事態になる。ドラマのような話なんですけれども、私は、日本人のシャイな国民性に照らして考えると、これは決して偶然では済まない話じゃないかなというふうに心配をしております。

 今、国が許可をするに当たって、国内の製薬会社から申請をされたもの、これはアメリカでは一日一回一ミリがスタンダードなんですけれども、臨床検査の結果、〇・二ミリから一ミリで効果があるというようなことで、本年の三月に〇・二ミリ錠についての追加申請を出すようにという指導をどうも製薬会社にしたということであります。

 私は、一ミリで効果がある、いや〇・二ミリでも効果があるというと、国内で販売が許可されたとしても、さっき言ったような理由で輸入で買う人がふえるんじゃないか。そして結果として、〇・二ミリでも十分効果があるんだよということであれば、五分割できるわけですから、薬を五分割するという作業が果たしてそんなに簡単だとは思いませんけれども、素人ながらにそういうことをやることによって万が一こういう事態を招くとするならば、やはりこれは避けて通らなくてはいけない大事な問題だというふうに思います。

 そこで、国が許可をするならば、一日も早くその効用を確認して、タブレットのグラムについて、これは〇・二ミリの根拠は私はわかりませんけれども、〇・二ミリが十分効くんだという根拠だとすれば〇・二ミリにするべきだと思いますし、〇・二ミリから一ミリという幅で許可を出すということになると、並行輸入は相変わらず減らないというふうに思います。

 この辺についてどういう対応をするのか。ぜひ慎重な対応をお願いしたいと思いますし、お考えを示していただきたい。

 そして、安全性の確保について、これはあくまで輸入薬でございますけれども、かつてのバイアグラを考えても、国内で多くの服用者がいらっしゃる、そういう実態があるわけですから、女性に対する危険性ですとか副作用については、その重大さを含めて、個人輸入された薬剤についても安全性の確保のため何らかの対応が必要ではないか。

 すなわち、薬の注意書きというのは、僕もそうですし大臣もそうだと思いますけれども、一般的なことまでは何となくわかっているけれども、よく読んだことはやはりないと思うんですね。ですから、その辺を政府広報などを通じて、万が一この薬の市販を許可するということであれば、やはり徹底して、そういう危険行為を避けてくれということは奨励するべきだというふうに思いますけれども、時間がなくなりましたので、その御所見を最後に聞いて、終わりたいと思います。

阿曽沼政府参考人 承認申請を今されておりますので、承認をする際には十分に種々検討いたして対応いたしたいと思います。

 それから、最後の点でございますけれども、この薬は、FDAにおきましても、脱毛症用等の適応症で認可をされておりますが、女性や子供は使用してはいけないという形で言われておりますし、それから、妊婦または妊娠の可能性のある女性につきましては、粉砕、破損した錠剤を取り扱ってはいけないという注意喚起がなされております。

 したがいまして、私ども、個人輸入されて使用されている場合であっても、委員御指摘のように、妊婦などに対しましては同様の注意が必要なものだというふうに考えておりますので、その旨の注意喚起に努めるべく具体的な対策を考えていきたいというふうに思っております。

萩生田分科員 終わりますけれども、今、個人輸入されているこの薬品の説明書は英語なんです。ですから、英語が理解できない人は何が書いてあるか全くわからない、こういう状態が今も放置されているということをぜひ認識していただきたいと思います。

 以上です。

菅主査 これにて萩生田光一君の質疑は終了いたしました。

 次に、田嶋要君。

田嶋(要)分科員 民主党の田嶋要です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず冒頭、きょうは大変な事故が起きておりまして、この間にもふえているということで大変びっくりしました。亡くなられた方にお悔やみ申し上げるとともに、けがをされた方のお見舞いをまず冒頭申し上げたいというふうに思います。

 本当に最近の日本は安心、安全がどこへ行ったのかということを、こういうことが起きるたびに考えさせられるわけでございますけれども、今回の私の質問内容も、地域における安心、安全、防犯力、教育力あるいは人々のコミュニケーションの拠点としてのさまざまな施設をこれからどうしていくか、そういう観点で私は質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、村瀬長官、初めて直接お目にかかりましたけれども、日ごろ大変御苦労されていると思います。昨年、特に焦点になりました、一躍有名になった社会保険庁でございます。そうした中で日々御苦労されていることに、改めまして敬意を表しまして、質問を始めさせていただきたいと思います。

 まず、ちょっと一般論を質問通告なくお伺いしたいんです。社会保険庁、これはさまざま改革されておると思うんですが、民間から入られて、長官が、えっと思うようなことの連続でした、そんなようなことをどこかの記事で読んだんですが、長官、今率直に、長官がやりたいと思われている社会保険庁の改革の中で、今大体何合目にいらっしゃるという御実感ですか。よろしくお願いします。

村瀬政府参考人 極めて難しい御質問でございまして、自分で何合目かというのはなかなか言いにくいのでございますけれども、昨年の十一月に「社会保険庁は変わります」宣言というものをさせていただきまして、私自身は、社会保険庁は新たな方向に向かって確実に動いているというふうに思っております。

 その中で、九月に八十項目にわたります改革プログラムを出させていただきまして、それを今実行に移している最中でございまして、そういう点では、私自身は、点数がとれるところまでは来ていますけれども、先ほど申し上げましたように、それが五十点なのか八十点なのかというのはなかなか申し上げにくいので、着実に進んでいるという形のお答えで御勘弁いただけたらと思います。

田嶋(要)分科員 ありがとうございます。

 先日私も、この決算委員会、長妻委員の質問のときに聞いておりました。新聞にも出た件でございますが、エアロビとか綱引きとかいろいろある、それに対する長官の御答弁、十六年からはもうそういうのはなくなっているよということをおっしゃいました。こういうことというのはなかなかなくならずにここまで来てしまった、ただ、それに対してもう手は打ってあるという御答弁だったと思うんですが、それは要するに、そういうことも含めて長官が細かいところまで、普通だったら長官がやるような仕事じゃないところまで、担当者に全部チェックして、洗いざらいやっておる、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。

 長妻さんの質問にもありました。普通は、担当者がそれを変えない限り変わらない、長官の目も通らない、そして財務大臣も知らない、もう本当にそういう状況だということが長妻さんの質問の中で出ていたわけですけれども、それが変わったということは、子細に今長官が、つぶさに、経理のやり方から予算の立て方からすべて御自身も関与されている、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。

村瀬政府参考人 まず、先般の件でございますけれども、十六年度予算から変わっているということは、実は十五年度の予算要求時点からもう変えているわけでございまして、私が就任前から基本的には変わっているということでございます。

 私が来ましてから変えているところは何かといいますと、先般もお話し申し上げましたけれども、調達委員会というものを十月に立ち上げまして、具体的なお金の使い道の問題につきまして精査に調査をした上で、むだなものを徹底的に排除している、こういう点で変わっているというふうにお考えいただけたらと思います。

田嶋(要)分科員 ありがとうございます。

 本当に、知れば知るほどやはり愕然とするようなことが出てくるわけでございます。冒頭申し上げたとおり、大変御苦労は多いと思いますが、ぜひ着任初日の気持ちを忘れずに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それでは、具体的な内容に入らせていただきます。

 今回、社会保険庁の約三百あるさまざまな施設を今後売却していこうという話でございます。そうしたことに関しましてお伺いをしたいんです。そういったことで思い出すのは、今もまさに続いているグリーンピアですね、全国十三ある、そのうち八つぐらいですか、大体決まったというようなことを聞いております。グリーンピアも非常に有名になりましたが、そのグリーンピアの処分というか売却という話と、それから今回これからやらんとしているさまざまな宿泊施設やカルチャースクールのようなものから医療から、そういったものとこれはどういう関係にあるのでございましょうか。

村瀬政府参考人 まず、グリーンピアにつきましてお話し申し上げたいと思います。

 グリーンピアにつきましては、特殊法人改革に関する平成十三年の閣議決定及び昨年成立しました年金積立金管理運用独立行政法人法により、平成十七年度末に廃止をするということが決められてございます。

 このグリーンピアの譲渡に当たりましては、平成十二年に旧厚生省が決定いたしました譲渡方針、各施設を地域で有効に活用していただく観点から、減額譲渡の手法も活用しつつ、地元の地方公共団体等へ譲渡を優先する、こういう決め方がなされてございます。

 一方、年金の施設等につきましては、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況、それから施設を取り巻く社会環境及び国民ニーズの変化等を踏まえまして、今後は保険料を年金福祉施設に投入しないこととするとともに、年金資金等への損失を最小化するという考え方に立って、例外なく廃止、譲渡する整理合理化を進める、こういう形になってございます。

 この方針を踏まえまして、年金施設等の譲渡に関しましては、不動産鑑定の手法に基づき適正な価格設定に努め、あらかじめ譲渡先につきましては制限を設けることなく、原則といたしまして一般競争入札によることとしていることでございます。

田嶋(要)分科員 国民の目から見ればどれも似たようなものでございまして、そもそも社会保険庁がそういうところにさまざまお金を使っていたということ自体、結構知らなかった方が多かったと思うんですが、グリーンピアに関しては、つまるところ、経済性というか、最も高く売るということが必ずしも最優先の原則ではなかったということでよろしゅうございますか。

村瀬政府参考人 先ほど申し上げましたように、グリーンピアにつきましては、同じような施設として御利用いただきながら地元に売却をする、こういう考え方でございます。

田嶋(要)分科員 確かに、今まで売却されたものの多くが地方自治体に行っておりますね。その中で、二つのケースは民間が買っておりまして、そのケースが最も高額に買っているということで、その五割まで減額をしてというところの財政的な配慮があるのかなという感じが私もいたしました。

 ただ、ではその売却されたグリーンピアが今どういう目的で使われているかというのを見ますと、これはどれも一緒なんですね。結局、一つには予防医学、一つには生涯学習、全くそのとおりだと思います。先ほど言った、安心、安全の拠点としてこういうさまざまなグリーンピアを生かしていこうというような方向だというふうに理解をしております。

 そして、今回、この三百余りの施設の中にも、既に今そのような機能を地域で果たしているものがいっぱいありますね。では、おっしゃった、経済性を考えてということなんですが、そのバランスというのはどのように考えていかれるおつもりですか、長官。

小林政府参考人 今回の整理合理化につきましては、年金制度改正に伴いますさまざまな議論の中で、年金福祉施設について、それまで果たしてきた一定の評価というのはしつつも、今後どういうふうに年金福祉施設についての対応をしていこうかということを、相当の時間をかけて政府部内あるいは与党の中での議論がされたところでございます。

 基本的に、今回の整理合理化に当たりましては、先ほど長官が御答弁申し上げましたように、年金制度を取り巻く厳しい財政状況、あるいは施設を取り巻く社会環境、さらには国民ニーズの変化、こういうことを踏まえまして、今後は保険料を年金福祉施設等に投入しないということを基本といたしまして、年金資金等への損失を最小化する、こういう考え方に立って年金福祉施設等の廃止、譲渡を行う、こういう方針を立てたものでございます。

 したがいまして、年金福祉施設の譲渡に際しましては、私どもとしては、年金資金等への損失を最小化する、これが大原則ということを踏まえまして、これを実現すべく対応していかなければならない、かように考えております。

田嶋(要)分科員 大原則は、要するに最も高く売りたい。そういうことでございますね、裏を返せば。それはよく理解できます。

 では、最も高く売る、そのときに、片方で先ほどのグリーンピアがこれからやろうとしているのが生涯教育だとか予防医学だとか言っている傍らで、今既に何十万人もが利用している予防医学、生涯学習の施設がいっぱいありますね。そういう機能を大切にしていく、そういう原則というのは、今おっしゃった、一円でも高く売りたいという原則とどのようにバランスをとっていくかという質問を申し上げました。もう一度御答弁を。長官、お願いできませんか。

村瀬政府参考人 施設譲渡の基本的な考え方ということで幾つか区分けをして考えておりまして、トータル三百二十八の施設のうち、先ほどお話ございました宿泊施設等につきまして、二百六十一施設ございますが、これは基本的には一般競争入札で一番高いところへ売却をさせていただく、こういう考え方でございます。

 一方、地域医療に貢献している施設であります厚生年金病院であるとか社会保険診療所、それから入居者に配慮すべき施設であります老人ホーム等につきましては、おのおのその機能の公共性を損なうことがないように十分に検証した上で適切な方法によって結論を得る、こういう形で個々に考えておる次第でございます。

 したがいまして、先ほど先生おっしゃいました宿泊施設等の分類に入ります社会保険センターであるとかスポーツセンター、厚生年金会館等につきましては、基本的には一般競争入札で年金資金へ一番たくさんのお金が戻せるような形での売却を考えているわけでございます。

田嶋(要)分科員 医療と医療以外ということだと思うんですが、先ほどの、新しい、生まれ変わったグリーンピアの目的もそうなんですけれども、やはり予防医学というのは医療と同じような今後の極めて大きな重要課題だと思いますね。それから、生涯学習ですね。だから、そういうところで線を引くことがどういうことなのかなと私は思います。医療が大切、しかし、医療のお世話にならないような地域づくりをしていくというのは、それに劣らず重要な政策だというふうに私は思います。

 そしてちょっと確認なんですが、では、一円でも高く売りたい、そういうときに、例えば建物がある、今既にさまざまな人が利用している、基本原則はどういうふうにされるんですか。更地にするんですか。それとも、更地と箱物だけ残して、はい、買う人いませんかとやるんですか。それとも、今あるプログラム、さまざまな活動はそのまま維持する形を原則として考えられているんですか。いかがですか。

村瀬政府参考人 先ほど申し上げましたように、一番高く売却をするという前提で考えておりますので、その施設がそのもので売却した場合が一番高くなる場合はそのものという形になろうかと思いますし、一方、建物は古くなっておりまして、これは壊して更地で売った方が高く売れるという場合には更地で売るという形で、個々の物件ごとに売り方は違ってくるというふうに考えております。

田嶋(要)分科員 ということは、売る側からは事前に条件をつけないということでよろしゅうございますか。

村瀬政府参考人 最終的には独立行政法人の売却方針に従って売却をしていただくという形になりますけれども、そのときの基本的な考え方といたしましては、宿泊施設等につきましては条件をつけずに一番高く売れる方法で売却する、こういう形で考えております。

田嶋(要)分科員 まだできるかどうかわからない独立行政法人の方針というのはよくわかりませんが、やはり、今の時点で長官は、今あるそういう三百の施設を、条件をつけずにさまざまな民間の知恵を引き出せるような形で手放していただきたい。

 社保庁がやらなくするということは、国民みんな賛成です。ただ、手放すときにまた何か世の中の理解とずれたやり方を、まさか長官はそういうことをされないと思いますけれども、そういうことをやると、また社保庁、非難ごうごうですよ。最後ぐらいは、手放すときぐらいは世の中の人が納得いく形で手放していただきたい。理想は、利用している人から見る、あたかも翌日から何も起きていないように違うオーナーが経営していればいいんですよ、社保庁以外の。そういう形の経営が私は理想だと思います、移譲が。

 それで、一つ確認なんですが、運営も含めた、言ってみれば事業としての売却と、それから資産の売却とありますね。そうすると、通常、民間で考えれば、会社の例えば一部門が不採算で売却する、それは事業として、言ってみればのれん代、そういう無形の部分も含めて全体としての価値があって、それを売却、買い手を探す、そういうプロセスを私はとると思うんですが、基本的にはそういう方向を望まれている、できるだけ現状を維持しながら売却したい、そういうお考えでよろしゅうございますか。再確認です。

村瀬政府参考人 先ほど申し上げましたように、基本的には、年金財源に対してたくさんのお金を戻し入れるというのが基本原則でございますので、どういう形で売却をすれば一番高くなるのか。更地がいいのか、それとも今現在運営しているそのものをソフトも含めて売却するのが一番高くなるか、それは個々によって私は違うというふうに思っております。したがいまして、個々に一番高いお値段で売れる方法で売却交渉を考える、こういう形だというふうに思っております。

田嶋(要)分科員 理解にずれはないと思います。

 ですから、どういう選択肢がベストかということを、社保庁や、ひょっとしたらできるかもしれない独立行政法人が考えるのではなくて、民間の人が決めてくれる。民間の買う側が、私はこの事業が非常に魅力的だと思う、だから十億円で買いたい、そういう選択肢を最初から入り口をふさぐようなことはぜひやめてもらいたいというふうに私は強くお願いを申し上げたいと思います。

 例えばこういう本。きのう、私は本人と会ってきました。「ハコモノ再生」。この方、御存じだと思うんですけれども、土佐のグリーンピアを再生された方です。今まで一番赤字が大きかったところを一年ちょっとで黒字化した、こういう方もいるわけですね。

 だから、世の中には、さまざまなリスクをとって、民間の知恵で、普通、今までだったら考えられないようなことをちゃんとやっていける、要するに、お役所の運営とは違う発想でやれることが幾らでも私はあると思うんです。そういう可能性をぜひ長官には、ほかのスタッフが皆反対されても、長官にはぜひそこは、だめだ、民間の自由にやらせようというふうに原理原則を貫いていただきたいというふうに思います。

 それでは、稲毛の話をしたいと思います。

 私の地元の選挙区の中にも、一つ社会保険センターというのがあるわけですね。これは、約四千二百人の方が閉鎖に反対をする署名運動をしました。これは長官には届いたと思うんですが、その皆様方に何か御返事されましたでしょうか。

小林政府参考人 今先生御指摘のちば社会保険センター、これに関しまして、清算のための独立行政法人、機構の主たる事務所として転用するということに対しまして、地域の利用者の方々から撤回の要請が来ているということは承知をしております。長官にも御報告をしております。

田嶋(要)分科員 私の質問に答えておりません。四千二百人のそういう署名が届いたというのはいいんですが、では、市民のそういう疑問、懸念に対してちゃんと御回答はされましたかという質問でございます。長官、いかがでしょうか。

村瀬政府参考人 まだ御回答はさせていただいておりません。

田嶋(要)分科員 これは、四千二百人でそういう扱いを受けるんだったら、一体何人がそういう懸念を表明したら、ストレートに長官に言ってもこういうことなんですよ、長官。だから、やはり国民の声、住民の声をもう少し真摯に受けとめるべきじゃないでしょうか。私はそう思います。

 これは私の選挙区ですから、私がやらなきゃだれもほかはやりませんよ。だから、私が本当に頑張らなきゃいけないと思うんですけれども、これは地域エゴで言っているんじゃないですよ。おかしい、普通に考えておかしい。

 私が聞いた話だと、四十人、民間の人を雇うと言っているんですよ、長官。四十人雇うスペースが欲しいので、十二万人が利用している施設を九月末で閉めますよと一方的に通告しているんです。不思議ですね。こういうことをやっていいんですか。どう思いますか、長官。

村瀬政府参考人 まず一つは、今回、新たに独立行政法人をつくらせていただくとしますと、その部分の人数は四十一名で設立をしたいと考えてございます。

 その中で、機構の運営経費をできる限り節減する、それから、機構へ出資する施設を活用することということで、今お話がございましたように、千葉市稲毛のちば社会保険センターが一つ候補ということで、今現在進めているわけでございます。

 具体的な設置場所の選定ということにつきましては、首都圏にある施設であること、それから事務室に転用しやすい部屋を備えていること、それから建物規模が必要最小限のものである、こういうような観点から選定をさせていただいているわけでございます。

 一方、御存じのように、多極分散型国土形成促進法及び昭和六十三年七月の閣議決定によりまして、国の行政機関等の移転については、原則として行政機関や特殊法人等を東京都区部から移転させる、こういう中で、今お話ししましたように千葉を選んでいるわけでございます。

田嶋(要)分科員 二十三区には置けないという話は私もお伺いしました。でも、今の原則、幾つかおっしゃいましたけれども、稲毛はどれも合わないんですよ。ごらんになりましたか、長官。あそこに四十一人というのは、私はちょっと理解できないですね。

 それから、やはり一つ大切なのは、何でテナントビルを借りてやらないんだ。一銭たりとも使えないという話ですね、家賃を発生させることはできない、テナントにはなれない、そういうことですね。でも、普通のファイナンスの考え方を理解されている方ならば、今の稲毛の建物の事業収入、あれはちゃんとキャッシュを生んでいるんですよ。ということは、稲毛をクローズしたら機会費用が生まれるじゃないですか。テナント料を払っていないかわりに、今出ている利益はとまっちゃうんですよ。やっていること、一緒じゃないんですか。どうですか、長官。

村瀬政府参考人 現在の稲毛の収益状況という観点からお話し申し上げますと、御存じのように、平成十五年度で、収入、支出の収支差はマイナスでございます。平成十五年度末という累積上の問題は残っておりますけれども、これは減価償却をしなくてマイナスという形になっておりまして、そういう点では、収益を生んでいるということではないというふうに考えております。

田嶋(要)分科員 確かにその年度はマイナスだったみたいですけれども、その前の二つの年度は黒字でございました。いずれにしても、料金設定などは変えることがもちろん可能ですし、そういうところにまさに民間の創意工夫を導入することが重要だ。

 ただポイントは、稲毛は、先ほど言った、条件をつけない、縛らない、自由にオープンにしておくという原則に反して、四十人をそこに入れたいからといってクローズをしようとしているんですよ。

 長官、余り考えなくても、これはむちゃな話だというふうに私は思うんですけれども。これは私、地元だから言っているんじゃないですよ。だから、私は、稲毛をやめて埼玉へ持っていけとか、そういう主張をするつもりはないです。そうじゃなくて、おかしいでしょう。四十人入れるのに何平米必要か、御存じですか。

 一応調べたんですけれども、三掛ける三の十平米あれば多分十分ですよね、一人。日本でそんな広いオフィスを持っている人、余りいませんよ。三掛ける三で十平米、掛ける四十で四百平米。あの稲毛の平米数、御存じですか、長官。

村瀬政府参考人 敷地面積が二千三百平米、延べ床面積二千三百平米ということで存じております。

田嶋(要)分科員 延べ床面積二千三百平米でしたよね。それで、四十人入れるということは、一人十平米あるとしても四百平米でいいんですね。私も二度現地を見に行きました。部屋も一つずつチェックしましたよ。三階だけでも余るぐらいなんですよ。ほか、どうするんですか。

 要するに、そういうところが、この間の綱引きやエアロビの話じゃないけれども、一生懸命やっていますと言っても詰め方が緩いんですよ。全然、選択肢をきっちり見ていない。何で四十人入れるためにビル一つ空っぽにしなきゃいけないのか、さっぱりわからない。地域の人はみんな怒っているんですよ。

 それともう一つ、千葉には白井市というところに社会保険大学校というのがあります。広大な敷地があります。もし独法を千葉の中につくりたいんだったら、そこがいいと私は思いますね。テナント料ゼロですよ。広大な敷地、部屋はいっぱいあります。見てきました。御存じですか、社会保険大学。御存じですよね、もちろん大臣も。

 あそこはゴルフの打ちっ放しもあったんです。これはなくなりましたよ。ゴルフの打ちっ放しだけはなくなりました。今これから、運動場やサッカー場や何とかかんとか、体育館は地域にも開放する、半年前、私もそういう説明を受けました、いまだに開放されていませんけれども。ただ、そういうふうにやると言っているんです。教室だって、利用率をもらいました。五割から七割ですよ。幾らでも使えるんですよ。

 役所にスペースがないなんて考えられますか。私には理解できない。テナント料を払えないというんだったら、どこかの役所のスペースを使ってくださいよ。四十人が仕事するのにそんな広い部屋要らないんですよ。私にはさっぱり理解できないのです。

 私は、村瀬長官だったら御理解いただけると思って、きょうわざわざこの質問を取り上げさせていただきました。地元の方もいっぱい聞いています。おかしいでしょう、そう思いませんか。

 家賃収入を払わなくていい、余ったスペースを活用できる、そして稲毛のコミュニティーは守られる、一石三鳥じゃないでしょうか。社会保険大学校を利用できませんか。どうですか。

小林政府参考人 白井市にございます社会保険大学校、こちらの方に設置することにつきましては、現在、年間通じて、延べ約四千人ほどの社会保険関係職員に対しての研修を実施しております。こういう状況にございますので、事務局を定常的に置くというようなことに対応できる余剰スペースというものの確保は非常に困難でございます。

 また、敷地にグラウンド等ございますが、そちらのグラウンド等のスペースに新たにそういう事務局を入れるための建物を設置するということを仮に行うとすれば、そのためのまた経費の確保と予算的なものが必要になってくるというようなことも考え合わせるとなかなか難しいのではないかと考えています。

田嶋(要)分科員 一つ言えばああ言う、一つ言えばこう言う、理由は必ず返ってくるんですね。必ず返ってくるんですけれども、先ほど冒頭言いました、長官ともお話ししました。やはり重要なのは、一円でも多く保険料を負担してくれた方に戻す、それが大原則。それから、やはりコミュニティーは大切にする。グリーンピアが再生する場合もみんなそうしている。だから、その両方は最重要なんですよ。

 それ以外のさまざまな理由を今おっしゃられましたね、常設で何かスペースは無理だとか。それはおかしいと思いますよ。あいているスペースはごろごろしているんですよね。霞が関に置くと独立性が見られないから困るというんですよ。やはり社保庁がこれだけ批判されているから、物理的に離さなきゃいけないというんですね。それも余り説得力がないと思うんですが、離したいんだったら白井市に持っていってくださいよ。そういうことになりませんか。

 要するに、冒頭申し上げた、稲毛の、私は住民エゴを代表しているんじゃないんですよ、稲毛にコミュニティーがある、年間十二万人利用している、月一万人ですね。ということは、一日三百人ですよ。そういうものが今あるんです。それは、土地と建物があれば済む話じゃないんですよ。長い時間たって、いいコミュニティーができる、教育力、防犯力、さまざまなものが。何でそれを社保庁の判断でとめちゃうんですかね。私はさっぱりわからないんですよ。ほかの選択肢を同じだけ真剣に、どうやったら大学校を使えるのかということを本当に真剣に考えているんじゃないんですよ。まあいいや、稲毛、アクセスもいいしと、そのぐらいですよ。

 四十人のために四百平米あればいいのに、二千何百平米のところを、何でみんな追い出してやるのか。私はこれは理解できないですよ。具体例だけれども、大臣、理解できないんですよ。

 ところが、法律にはこれは入ってこないんですね。ということは、事務方がそうやっていきたいと言うと、だれもとまらずに最後行っちゃうんですよ。この間のあの谷垣財務大臣の話と一緒ですね、長妻さんの。要するに、担当者が数字をそのままやったら、それで予算が上がったら、だれの目にもとまらずに通っちゃうんですよね。同じ話ですよ。だから、稲毛をつぶそうと決めたら、もう大臣、そんな細かいことをチェックしませんものね。それは長官も同じでしょう。だから、最初の人が良心を持ってくれないと困るんですよ。おかしいと思いませんか、こういうのは。

 やはり、一番これから大事なのは、地域のコミュニティーを大切にする。それで、縦割りでさまざまなむだがあるんだから、片一方で文科省がスポーツクラブをつくるとかいろいろ政策がありますね、あるものを大切にしましょうよ、お金がかからないんだから。私は、この稲毛に、四十人のために、そういうコミュニティーを壊して、四十人そこに入れるというのは、絶対やめてほしいと思います。それはおかしいですよ。だから、そんなのは長官がやめようと思えばなくなるんです。

 だから、大学校を使ってください。千葉がいいんだったら、そこを検討するのが一番いいでしょう。それが世間の目から見て、国民の目から見て一番正しい選択ですよ。お金もかからない、空きスペースを利用する。

 最後に大臣に答弁いただいて、終わりにしたいと思います。

尾辻国務大臣 冒頭、これ以上非常識なことをしちゃいかぬというふうに言われました。私も全くそのように思います。

 具体的なこの件につきましては、正直言って、私も初めて聞きますので、よく調べてみます。そして、お話しになりましたように、これ以上社会保険庁が非常識なことはしちゃいかぬと思っておりますから、私の責任でさせません。

田嶋(要)分科員 ありがとうございます。本当に、これは一地域の話ですけれども、こういうところに姿勢があらわれるんです。一生懸命やっています、中にいる職員は頑張っています、おっしゃるとおりです。だけれども、世の中の方から見ると、まだ何かずれているんですよ。

 民間から長官が入っても、まだまだやはりそういうことがある。ぜひ私は、たかが稲毛と思わずに、ぜひともこの方針はやめていただいて、あいたスペースで頑張っていただきたい、そのように思います。それを最後に申し上げまして、私からの質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

菅主査 これにて田嶋要君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

菅主査 これより経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。中川経済産業大臣。

中川国務大臣 平成十五年度経済産業省所管の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算につきまして御説明申し上げます。

 経済産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額三百十一億円余に対し、収納済み歳入額は四百八十八億円余であり、差し引き百七十六億円余の増加となっております。

 次に、経済産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額九千七百五十七億円余に対し、支出済み歳出額は九千三百億円余でありまして、その差額四百五十六億円余のうち、翌年度への繰越額は三百二十億円余、不用額は百三十六億円余であります。

 次に、特別会計について申し上げます。

 まず、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は一兆五千九百二十五億円余、支出済み歳出額は一兆一千三百二十二億円余であります。その差額四千六百三億円余のうち、翌年度への繰越額は九百九十一億円余、剰余金は三千六百十一億円余であります。

 このほか、電源開発促進対策特別会計、貿易再保険特別会計及び特許特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要については、お手元の資料に掲載いたしております。

 以上をもちまして、平成十五年度におきます経済産業省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要に関する御説明を終わります。

 何とぞ、よろしく御審議のほどお願いいたします。

菅主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院船渡第五局長。

船渡会計検査院当局者 平成十五年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一五〇号から一六〇号までの十一件は、地域活性化創造技術研究開発費補助金、中小企業経営革新支援対策費補助金等の経理が不当と認められるものでございます。

 また、同一六一号から一六三号までの三件は、小規模企業者等設備導入資金の貸し付けが不当と認められるものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、技術開発関連補助事業における都道府県の実績確認業務の実施に関するもので、中小企業庁では、中小企業者等が都道府県を通じて国庫補助金を受けて実施する技術開発関連補助事業を実施しているところですけれども、都道府県が行う実績確認業務におきまして、関係部署と連携を図るなどの対策が十分にとられていなかったり、検査マニュアル等を十分に活用していなかったりなどしていて業務の実施が適切なものとなっていないと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものでございます。

 その二は、石油製品品質確保事業における試買分析業務に要する経費の算定に関するもので、資源エネルギー庁では、石油製品品質確保事業を行う社団法人全国石油協会に対し、石油製品品質確保事業費補助金を交付しているところでございますけれども、補助対象経費の算定に当たり、給油所から購入いたしました揮発油等の試料の分析業務に要する経費の算定方針を定めていなかったなどのため、同業務の経費の算定方法が実態を反映しておらず、補助金の交付額が過大に算定されている事態が認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものでございます。

 その三は、出願適正化等指導事業等の委託契約における人件費の算定に関するもので、特許庁では、知的財産権制度に関する事業の一環として、出願適正化等指導事業等を社団法人発明協会に委託して実施しているところですけれども、職員等が委託事業以外の複数の業務に従事できる勤務体制となっているのに、当該年度中の基本給等すべてを対象として人件費を算定したため、委託事業に該当しない人件費を含めて算定されており、適切でないと認められました。これについて指摘したところ、改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

 引き続き、平成十五年度中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 さらに引き続きまして、平成十五年度中小企業総合事業団信用保険部門の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上でございます。

菅主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。中川経済産業大臣。

中川国務大臣 平成十五年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでございまして、まことに遺憾に存じております。

 これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力してまいります。

菅主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

菅主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

菅主査 以上をもちまして経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

菅主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲見哲男君。

    〔主査退席、前田主査代理着席〕

稲見分科員 民主党・無所属クラブの稲見哲男でございます。

 この二月の二十五日でしたか、予算委員会の分科会で核燃料サイクルのさまざまな問題について御質問させていただきました。きょうは、高レベル放射性廃棄物、いわゆるガラス固化体に絞りまして何点かお聞きをしたいと思っております。

 まず、今、建設から実験に入っております六ケ所再処理工場の高レベル放射性廃棄物ガラス固化の処理技術、これについては、東海村の再処理工場におけるLFCM法、液体供給式直接通電型セラミックメルター、こういう溶融炉になっているということでお聞きをしておりますが、その点、間違いないかどうか。

 加えて、コジェマ社のこの同じようなガラス固化体は、AVM法というロータリーキルンか焼方式、こういうふうなことになっております。再処理工場の大半がコジェマのUP3をモデルプラントとして技術導入をした、それが、コジェマも安定稼働しておるし六ケ所も安定稼働する、そういう根拠、こういうふうにされてきたわけですが、なぜこのガラス固化技術だけが東海再処理のものなのか、この点、加えてお答えをいただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 最初の御質問でございますけれども、日本原燃、六ケ所村の再処理施設の高レベル廃液ガラス固化設備におきましては、御指摘のとおり、LFCM法が採用されているというふうに承知をしております。

小平政府参考人 お答えを申し上げます。

 この六ケ所の再処理工場で高レベル放射性廃棄物ガラス固化につきましてLFCM法を採用した理由につきましてのお尋ねでございますけれども、これにつきまして日本原燃株式会社から聴取をいたしましたところ、この核燃料サイクル開発機構が開発を進めてまいりましたLFCM法につきまして、第一、システムが単純で保守が容易であること、寿命が長いというような特徴を有しておりますこと、第二に、この技術を実規模プラントに適用しても安全性、信頼性が十分に確保でき、経済性もすぐれたものにできる見通しが得られたこと、第三に、核燃料サイクル開発機構から技術支援、協力が期待できることといったような理由から、昭和六十三年三月にこの技術を採用するということに決めたということでございます。

稲見分科員 では、六ケ所のガラス固化施設が東海村からの技術移転がされているということでありますので、それぞれのことについて具体的にお聞きをしたいと思います。

 まず、六ケ所村のそのガラス固化施設溶融炉、この建設並びに試験の進捗状況がどうなっているのか、この点についてお聞きをしたいと思います。

小平政府参考人 お答え申し上げます。

 日本原燃株式会社から聴取をいたしましたところ、六ケ所再処理工場のガラス固化施設溶融炉の建設はおおむね終了いたしておりまして、また、模擬廃液を使いました試験を本年二月に終了したということでございます。

稲見分科員 そうしますと、次に、前回の御質問のときに、六ケ所村での再処理、年間八百トンということでございますと、高レベル廃棄物が約五%、四十トン程度発生をする、これは千本のガラス固化体という形になるというふうにお聞きをしたと思っております。

 まず、その固化体になる前の廃液としてこの四十トンというのはどれぐらいの立米になるのか、これにかかわりまして、六ケ所の高レベル廃液貯槽の容量はどういうふうになっているのか、この点を教えていただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 日本原燃の再処理施設におきまして八百トンの再処理が行われました場合、発生する高レベルの廃液の量でございますけれども、約五百二十立方メートルの発生が見込まれております。

 また、高レベル廃液の貯槽の容量でございますけれども、全体で十基、約六百八十立方メートルでございまして、約一年強の運転から発生をいたします高レベル廃液を貯蔵できる容量を備えているというふうに承知をしております。

稲見分科員 六百八十立米の内容なんですが、高レベル廃液貯槽並びに高レベル廃液一時貯槽、こういうふうに分かれていると思います。高レベル廃液貯槽が六基、それから一時貯槽が四基、こういうふうなことでありますが、それぞれの規模といいますか、こういうものがわかりましたらお教えいただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 貯槽全部で十基の内訳でございますが、今御指摘の高レベル濃縮廃液貯槽、これにつきましては一基当たりの規模が百二十立方メートルでございまして、二基ございます。それから、高レベル濃縮廃液一時貯槽でございますけれども、これは一基当たり二十五立方メートルの規模でございます。これも二基ございます。

稲見分科員 六基と四基ですよね。二基ずつといいますと、そのあとはどういうふうなレベルですか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 今、高レベルの濃縮廃液だけ申し上げましたが、十基の内訳でございますが、そのほかに、不溶解残渣廃液貯槽、これが七十立方メートルのものが二基、それからアルカリ濃縮廃液貯槽、これが百二十立方メートルのものが一基、それから高レベル廃液共用貯槽、これが百二十立方メートルのものが一基、さらに、一時貯槽の方でございますけれども、不溶解残渣廃液一時貯槽、これが五立方メートルのものが二基でございます。

 全部トータルいたしますと、先ほどお答え申し上げましたものを合わせまして、十基全体で六百八十立方メートルということになります。

稲見分科員 では、六百八十立米というふうにお聞きをしましたが、高レベル廃液ということからいいますと、百二十立米掛ける二で二百四十、それから、一時のところで二十五立米掛ける二で五十、二百九十、それに共用という形で百二十立米のものを一基とおっしゃいましたから、高レベル廃液という形でいいますと四百十立米、こういうふうな形で理解してよろしいでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 八百トンから発生をいたします五百二十立方メートルの高レベル廃液と申しますのは、今、内訳で申し上げましたいろいろなタイプの廃液を全体トータルしておりますので、五百八十立方メートルがこの五百二十立方メートルにいわば対応するというふうに考えております。

稲見分科員 そうしますと、一度東海の方に少し戻りたいと思います。

 前回も申し上げたんですが、平成七年から十年間だけ運転しているというふうなことでございましたが、それでも百五十本余りの生産というのは少ないんではないか、こういうふうに御指摘をしました。

 いろいろ調べてみますと、固化施設のトラブルによってこの十年間のうちでもとまっていた期間がある、こういうふうなことのようでございまして、そういう意味では、停止期間の合計日数、それから、では稼働した日数と生産した本数、こういうふうに少し分けてお教えいただけないかなというふうに思います。特に、六ケ所村に技術移転をしたという二〇〇四年十月から稼働している改良型二号溶融炉、これがいつから動いて、どれだけの生産実績があるのかというふうなことについてお聞かせ願いたいというふうに思うわけであります。

 それで、前回の分科会で、五百十六立米の廃液が、百立米については百五十本の固化体にできた、あと四百十六立米が残っておるというふうな御返事だったと思いますが、そうしますと、二号溶融炉になりまして、この四百十六立米の廃液はどういうふうに固化体になっていっているのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生おっしゃられましたように、二月の二十五日の衆議院予算委員会でお答えしておりますのは一月末現在の数字でございます。一月末現在の数字で高レベル放射性廃棄が四百十六立米、安全に管理されております。また、ガラス固化体は百五十体製造している、そういうふうな御答弁を申し上げたところでございます。

 その後、東海の再処理施設そのものも順調に稼働してございます。それで、三月末現在で高レベル放射性廃液は四百十二立米でございます。そしてガラスの固化体でございますけれども、その後三十一体、これは四月の二十二日まででございますが、三十一体製造いたしておりまして、合計で百八十一体というふうに現時点でなってございます。

 それから、これまで、今先生がおっしゃられましたように、東海のガラス固化施設は平成七年から十年ほど運転しておるわけでございますけれども、その間、東海再処理施設のアスファルト固化処理施設の火災爆発事故等がございまして、その間、安全点検等も含めまして、平成九年の三月十一日から平成十二年六月二十八日までの約千二百日ほど停止してございます。

 それから、溶融炉の更新といいますか、につきまして改良工事を行ったわけでございますが、これにつきまして平成十四年の四月一日から平成十六年の九月まで工事をしまして、運転再開が十月の二十日でございますが、その間約九百五十日間停止をしておったということでございます。

 したがいまして、約十年間で約三千七百日ぐらいあろうかと思いますが、そのうち、両方合わせまして二千百五十日ほどが停止をしておったということでございます。

 以上でございます。

稲見分科員 三月末の廃液のところはちょっと聞き取れなかったんですが、一月末から三月末まで新たに三十一体できたということでしたが、残っている廃液は四百十六から四百十二に変わっただけですか。三立米……(森口政府参考人「四……」と呼ぶ)

前田主査代理 挙手を求めて発言してください。

稲見分科員 四立米減ったということですか。

森口政府参考人 はい。一月末現在で四百十六立米が三月末現在で四百十二立米に減ってございます。

 これは、四百十六立米が、その後東海再処理施設が稼働しておりまして、高レベル廃液が当然発生してふえているわけでございます。その一方でガラス固化体に処理いたしまして、その関係では廃液が減るわけでございますが、三十一本になったわけで、その足し引きで、トータルとしては四百十二立米、四立米ほど減ってございます。

稲見分科員 その点はわかりました。理解できました。

 それで、今、火災の問題もあったということですが、もう一つの九百五十日ぐらいとまっていたというのは、まずこの溶融炉自身が、平成十四年の三月に主電源冷却空気流路の閉塞事象ということで、まさに一号炉としては、これではだめだ、使えないというふうな故障であって、その後二号炉に変える、改良し、撤去して据えつけをしてということだったと思うんですね。

 しかも、その後、ここに「ガラス固化技術開発施設における高レベル放射性廃液のガラス固化処理技術開発」中間評価というふうな報告書とか、それを受けて、研究開発課題評価委員会の評価結果、中間評価に対する措置、核燃料サイクル開発機構、平成十六年六月、こういうふうな文書がございます。これを素人ながら散見をしておりますと、中に出てくるのは、例えば、今後五年間の技術開発計画がどうだというふうなことが出てまいりますし、溶融炉の寿命が期待どおり長寿命になることを期待するというような言葉、あるいは、最大の課題は、この一号炉でもだめになった原因である白金族元素の堆積による悪影響の低減をどうしていけるのか、あるいは、このガラス固化体を減らしていく、減量化をしていくためには、廃棄物高含有率固化体製造技術、二五%から三〇%に引き上げていくというのがこれからの開発の目標だけれども、これは、基礎試験、コールド試験、ホット実証など長期にわたる開発になる、こういうふうな言葉がどんどんこの報告書の中に出てきております。評価委員会からの指摘があったり、核燃料サイクルからのそれに対する答弁があったり、こういうふうなことでございます。

 長くなるのでお役所の方に答弁はあえて求めませんけれども、ここで明らかにされていることは、東海村で開発が進められておる、そして、その都度六ケ所村に技術移転されていく、こういうことがあるとしても、東海村で、最初に申し上げたLFCM法のこの固化技術というのが完成品ではないんではないかということが見られるわけであります。その上で、関連をして次の質問に移りたいと思います。

 六ケ所村の固化施設における化学試験が、この二月ですか三月ですか、終了したというふうな先ほど御答弁でございましたけれども、今、再処理工場の上流部分では劣化ウランのウラン試験を行っていますよね。それが今度は、実際の使用済み核燃料を使ってのアクティブ試験、こういうふうに徐々に移っていくということでありますが、この固化施設についてウラン試験というのはいつから行うのか。

 このガラス固化体というのは、発熱量とか放射線量とか、後ほどまた詳しくお聞きしますが、廃液とガラスの配分によって決定をしていく、あるいは廃液自身の濃度によるというふうなことだと思うんですが、そうすると、先ほど申し上げたように、東海の技術自身がいろいろこれから五年計画で改良していかなければならない、それをその都度六ケ所村に技術移転をしていくというふうな段階であるとするならば、このウラン試験というものをどう十分していくのか、その検証のもとにアクティブ試験をどうするのか、こういうふうな段取りになると思うんですが、化学試験に続いてウラン試験、いつから行うということになるんですか。その点、お聞きをしたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 高レベル廃液ガラス固化設備でございますけれども、ウラン試験につきましては、今御指摘の、ウラン溶液を用いた試験項目はございません。ウラン試験のいわば最終段階でございます総合確認試験の対象になっております。この総合確認試験におきましては、次の段階でございますアクティブ試験に向けての再処理工場全体の安全性を確認する、こういう位置づけでございまして、この総合確認試験につきましては、現在のところ、ことし十月から開始をする、こういう計画になってございます。

 この高レベル廃液ガラス固化施設につきましては、この施設におきます建屋全体の負圧の確認、あるいは排気筒の風量の確認、あるいは外部電源喪失試験等を行う計画になってございます。御指摘のとおり、アクティブ試験に至るまで非常に重要な状況でございます。

 高レベル廃液ガラス固化施設に関するアクティブ試験につきましては、高レベル廃液の処理能力の確認を行うことになっておりますけれども、原子力安全・保安院といたしましては、このアクティブ試験の開始までには、この総合確認試験の結果につきましても日本原燃から報告を受けまして、試験運転が適切に遂行されているかどうかということを十分に確認していきたいというふうに考えております。

稲見分科員 ウラン試験をする必要はないという理由がちょっとよくわからないんですけれども、先ほどから申し上げているように、東海でもやはり最初は模擬液を使った固化の試験から始まって、しからば今度は本当に、例えば劣化ウランであっても、どれだけの放射線量があるものが何度でどういうふうに固めることができるのかというふうな試験をやらないと、安全性というのは確認をできないんじゃないかなというふうに思います。

 そういう意味では、この総合確認試験というのは、固化体をつくるという試験が含まれているのか。どうなんですか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、ウラン試験の中では、劣化ウラン溶液を使ってガラス固化体にするというそういう工程にはなっておりませんけれども、ただ、ガラス固化体をつくるに当たりまして最も重要なポイントでございます、当該建屋が負圧になっているかどうか、あるいは排気筒がきちんと機能を果たしているかどうか、あるいは、いざというときにきちっと対応できるように特に電源面から問題がないかどうかというところ、いわば押さえるべきところについてはきちんと試験を行うという位置づけになっているというふうに承知をしております。

稲見分科員 先ほど申し上げたあの「評価結果(中間評価)に対する措置」のところでも、今後の五カ年計画では、K施設へ技術移転する時期との関連でK施設の試運転開始との整合が重要になる、どういうふうな形でこれは技術移転を間に合わせていくのかというふうな指摘もあるんですよね。

 今、ウラン試験をしないというのは、むしろ、東海で技術開発をしていることがまだまだたくさんあって、そのことを待たなければ完成品の六ケ所の固化施設としては試験ができないというふうな段階にあるんじゃないんですか。

小平政府参考人 お答え申し上げます。

 今の点でございますけれども、日本原燃株式会社は、核燃料サイクル開発機構が開発をいたしました先ほどのLFCM法を基本といたしまして、これを大型化した溶融炉をこの機構の東海事業所内に設置をいたしまして、同機構の協力を得ながら実証試験を平成十一年以来実施いたしております。

 この実証試験におかれましては、先ほど、あの報告書にもございました白金族元素対応技術、これは、白金族が炉の中に、下の方にたまるというような問題があるということで、これに対応するための技術の検討が行われまして、その成果は六ケ所再処理工場の高レベル廃液ガラス固化施設に設置をされております溶融炉には反映をされておるわけでございます。

 これは、もともとLFCM法が採用されました一つの理由は、先ほど申し上げましたとおり、コジェマの技術でございますと大体二百日に一回取りかえをしないといけないということでございましたが、このLFCM法によりますと大体五年ぐらいの期間で取りかえをやればいい、どうもこういうことでございまして、したがってこの溶融炉を採用したわけですが、この白金族によりまして少しその期間が短くなるということで、これからさらに、先ほど御指摘のような研究開発も踏まえまして、次の溶融炉の取りかえのときに、今後開発される技術を反映させていく、こういう考え方で進めているということでございまして、したがいまして、先ほど申し上げました模擬廃液、この中には白金族等も模擬的に入れておりますけれども、それを使いましてこの溶融炉については試験が行われた、こういうことでございます。

稲見分科員 二、三納得いかないんですが、時間も押していますので、次の質問に行きます。

 ガラス固化体の安全性についてなんですが、ガラス固化体としては、今、六ケ所にはコジェマから戻ってきている固化体が一つある、東海は東海でつくった百五十本、今百八十本ですか、を保存している、これからBNFLからも固化体が戻ってくる、あるいは六ケ所で、今おっしゃっているようなところでつくっている、こういうことなんですが、まず、固化体一本一本の仕様としては国際的な基準があるのかどうか、そして、その国際基準に沿って原子力安全委員会あるいは安全・保安院、ここでチェックをこれまでもしてきたという実績があるんでしょうか。その点、ちょっと簡略にお答えいただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のコジェマあるいはBNFLから返還されるガラス固化体、それから、今後六ケ所の日本原燃において製造されるガラス固化体につきましては、それが貯蔵されます廃棄物管理施設あるいは貯蔵施設の安全性につきまして、原子炉等規制法に基づきまして、廃棄物管理の事業許可、あるいは再処理事業の指定、あるいはこれらに係ります設工認、設計及び工事の方法の認可の審査等によりまして、貯蔵される期間を通じてガラス固化体が適切に冷却されること、あるいは、ガラス固化体が安全に貯蔵されるということを確認しているわけでございます。

 世界的に、ガラス固化体の仕様そのものについて国際的な水準あるいは基準というものがあるわけではございません。

稲見分科員 これを聞いて非常にびっくりしたんですけれども、ガラス固化体は非常に高レベルの放射性廃棄物なので、三十年から五十年、それも根拠というのは余りはっきりしないんですが、まず中間貯蔵しなければならない、それから地層処分をしていく、こういうふうなことは、そのステンレスに入った固化体そのものが、まず中間貯蔵の五十年つぶれないかどうか、あるいは地層に入れて半永久的といいますか、そこで管理をしていくときにそれが腐食をしたりつぶれてしまわないのかということは、当然ながら、日本政府としてあるいは原子力安全・保安院としてその基準を持っておられるというふうに僕は思ってこれまで議論をしてきたんですよ。全くそれはありません、上屋として貯蔵施設が冷却できる、ちゃんと安全に管理ができる、外に放射線が出ていかないということとしては審査をするけれども、固化体一本一本の耐久力についての基準もなければ、それは保安院としても審査しないというお答えなんですよ。

 これは、これからどんどんガラス固化体が入ってくる、生産者の方の言い値というか、こういうふうにつくりましたという言い値で、それはもう審査せずに、すべてわかりましたというふうにして、例えば六ケ所の中間貯蔵施設でその一つ一つのステンレスの筒が三十年、五十年もたなかったら、これは中間貯蔵ではなしに、そこから移動できないわけですよね。そういう意味では、この一本一本のガラス固化体についてやはり基準を持ち、そしてそれを審査するということが必要なんじゃないかというふうに思っているんですが、いかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 ガラス固化体につきましては、今御指摘のとおり、五十年といったような期間を置いて安定的に貯蔵されるということが非常に大事でございます。

 そういう意味で、受け入れられる廃棄物の管理施設の段階でどういうガラス固化体が入ってくるのかということをきちんと確認をした上で、それが、その当該貯蔵施設の中で放射能漏れみたいなものが起きないような、そういう形で完全にきちっと管理をされて保存されるのかどうかというところを、炉規制法に基づいてきちっと審査、確認するということでございます。

稲見分科員 事業所外廃棄確認申請書というようなものもあります。つまり、こういう仕様といいますか、熱量がどれだけ、放射線がどれだけ入った何キロの分がこういうふうにここに貯蔵したいというようなやつはありますけれども、今の御答弁でも、固化体そのものの安全性というのが担保されていないあるいは審査されていないということは、やはりこれから大きな問題になってくるんじゃないかなというふうに思います。

 そういう意味で、最後に経産大臣に少し申し上げておきたいんですが、今までの質問で、六ケ所の固化施設、大変努力がされていますが、東海村の技術移転は開発途上のものであるということは一つ明らかになっていると思うんです。これからもどんどんその技術が六ケ所村に移転されてくる。そういう意味では、安定稼働できるかどうかは甚だ疑問である。

 それから、今申し上げたように、固化体自身の仕様がまちまちであって、それは審査の対象になっていないということからいいますと、この核燃料再処理については、トイレのないマンションというふうにこれまで危惧をされてきたわけですが、それより前の段階で果たして高レベル廃棄物を安全に生産できるのか、生産されたものが中間貯蔵と最終処分に耐え得るものなのか、途中でつぶれてしまわないものなのかというところが十分説明責任が果たされていないんじゃないかというふうに思っております。トイレのないというよりも、卑近な引用で恐縮ですが、うんこがちゃんとできるのかどうかというのが今問題になっているんじゃないかなというふうに思うわけです。

 今の質疑を聞きまして、もう質疑は終了しておりますが、経産大臣、御感想なり所見がありましたらお願いしたいと思います。

中川国務大臣 もとよりこの問題は、本当に何十年、何百年かかるサイクルの話でございますから、そういう中で、トイレ云々の御指摘もございましたけれども、きちっと今の最大限の知見を、イギリス方式、フランス方式、日本方式を含めてきちっとやって、御地元の御理解あるいは国民的な御理解を踏まえて、これは、私どもといたしましてはエネルギーの安定的な需給確保に必要不可欠なものだと思っておりますので、そういう観点から御理解いただきながら、何としてもそういう前提でうまくいけるように努力をしていきたいというふうに思っております。

稲見分科員 時間が参りましたので、終わります。

 高レベル放射性廃棄物、ガラス固化体については、さらに私も勉強して、またいろいろ教えてもらいながら、国民の皆さんが安心できるようなそういう説明をこれからもお願いしたいと思います。終わります。

 ありがとうございました。

前田主査代理 これにて稲見哲男君の質疑は終了いたしました。

 次に、金田誠一君。

金田(誠)分科員 民主党の金田誠一でございます。

 今回は、原子力政策における国策という考え方について質問をしたいと思います。

 原子力発電あるいは再処理について議論をするとき、原子力は国策である云々という言葉を関係者の方々からたびたび聞くわけでございます。どのような文脈で使われるかといえば、原子力発電あるいは再処理は国策であるから、これに疑問を差し挟んだり異議を唱えたりすることは許されないと言わんばかりの立場からのものが一つでございます。私は、このことは民主主義の否定につながる、こう危惧をいたしているところでございます。

 そしていま一つは、国策で行われているのだから、電気事業者などに選択の自由が許されているものではない、したがって原子力発電あるいは再処理についての最終的な責任は国にあるという立場からのものでございます。私は、このことは電気事業者等の責任放棄につながるということを危惧いたしているわけでございます。

 こうした国策という言葉は、通常の国家の政策という意味を超えて、特別な政策、絶対的な政策という意味を持って使われております。そのことは、例えば同じエネルギー政策である自然エネルギーの使用促進について話をする場合、関係者の方々から自然エネルギーは国策であるという言葉を寡聞にして聞かないことからも、単なる国家の政策という意味ではないことが理解できるわけでございます。

 このような、原子力、原子力発電は国策である、核燃料サイクル、使用済み核燃料の再処理は国策であるという趣旨の言葉を聞くたびに、私は疑問を感じてまいりました。そこで、改めて大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 原子力発電や再処理などの原子力政策については、単なる国家の政策という意味を超えた、特別な政策、絶対的な政策という意味においての国策であるのかどうなのか。私はそうは思わないわけでございますけれども、もしそうであるならば、何らかの法的根拠があってしかるべきだと思うんですが、国策であるのかどうなのか、あるいは根拠があるのかどうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。

    〔前田主査代理退席、主査着席〕

中川国務大臣 金田委員も私も、同じ国会議員、そして北海道ということで、大変日ごろからおつき合いを深くしておりますけれども、やはり国会議員として基本的に大事なことは、国民の平和、あるいは普通の生活をするための最低限のことを挙げるとするならば何なんだということになりますと、例えば、金田委員と私とは多分ここは一緒だと思いますけれども、食糧問題あるいはエネルギー問題ということになるんだろう。

 エネルギーの安定供給、食糧の安定供給、そういうところで、少しでもエネルギー、食糧がきちっと自給できるように、あるいは安定的に確保できるようにということになったときに、食糧は、極端に言えば、買えばいいじゃないか。ですけれども、エネルギーについては、北海道でも日本でも、どこを掘っても余りないという状況の中で、世界じゅうから安定的に確保していくことが大事じゃないかという観点というか、そういうふうにせざるを得ないという現状の中でエネルギーの安定供給というものをやっていく。

 そこで、国策ということになると、金田先生がおっしゃるように、国策という言葉は多分、若干抵抗があるのかどうか、問題があるのかもしれませんけれども、国の基本方針でも何でもいいんですけれども、国家として国民に対して最低限のやるべきこととしてのエネルギー政策、食糧政策という観点から、やはりエネルギー政策は非常に大事だという観点で我々は取り組んでいるということをぜひ御理解いただきたいと思います。

金田(誠)分科員 ちょっと理解が違うのかなと思うわけでございますが、重ねて質問をさせていただきます。

 私は、現行の原子力政策は多くの誤りを抱えているというふうに思っております。したがって、このまま推進することに対しては反対でございます。目指すべきは、脱原発ということを目的として目指すべきだというのが私の立場でございます。しかし、反対、賛成、あるいは脱原発その他、いろいろあるにしても、原子力政策そのものは極めて重要な政策であって、だからこそ原子力の関係法令もまた、常に改廃を含む議論にさらされる必要があるというふうに思っております。この辺は共通するのではないかな、こう思うわけでございますが、これこそがまさに民主主義の民主主義たるゆえんだ、こう思っております。

 であるとすれば、原子力をめぐるさまざまな議論が国策という名のもとに仮にも制約されるようなことはあってはならない、そういうことは万が一にもあってはならない。大いに議論はされてしかるべきだ、賛成、反対、脱原発、原発推進、いろいろあっていいわけですから、そういう議論は大いにされるべきだ、これは当たり前のことでございますが、大臣、そういう観点から再度御答弁をいただきたいと思います。

中川国務大臣 こういう議論というのは私は大好きですから、金田先生と議論したいんですけれども、国策としての、まあ国策はちょっと抵抗があるかどうかは別にしまして、エネルギー政策として国家が一生懸命基本的な方針をやっていくということについては、これは多分、国会議員として、大事なことだろうという前提にあるのではないか。なければないでいいんですけれども。

 その上で、原発云々ということに対して、脱原発かどうかということに対して、次の段階ですね、次の段階で原発について金田委員が、私は脱原発だと。私は原発も基本的な大事なエネルギーの基本的な考え方として位置づけられるものであるというふうに考えておりますので、その上で議論を進めさせていただきたいと思います。

金田(誠)分科員 私が申し上げたいことは、今大臣との間で議論をしたような議論が、何の制約もなく、いつでも国民の間で交わすことができる、そういう素地をつくること、このことが最も重要である、民主主義の原点である。それが、国策という名のもとにややもすると制約されるような雰囲気が漂うことがある、それはまずいということを申し上げたかったわけでございまして、余り違いはないのかなという気もいたします。また機会を改めて、できれば場も改めて、議論をできればありがたいなという気がいたしてございます。

 次の質問に移らせていただきます。

 原子力発電や再処理は国策であるから電気事業者に選択の自由はない、したがって原子力発電や再処理の最終的な責任は国にあるという考え方について質問をいたしたいと思います。

 この考え方は電気事業者の責任放棄につながるものである、遺憾な考え方だと私は思っているわけでございますけれども、我が国はこうした国策をとっておられるのかどうか、これについては担当の方からで結構でございます。

小平政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国政府といたしましては、平成十五年十月に閣議決定をされましたエネルギー基本計画におきまして、原子力発電については安全確保を大前提とし、今後とも基幹電源と位置づけ引き続き推進するといたしております。また、我が国としては、核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方といたしております。

 国といたしましては、こうした基本的な考え方のもと、民間事業者の取り組みが円滑に行われるよう、基本的な方針の明確化、事業環境の整備、基礎的、基盤的な研究開発の推進などに取り組むことが基本的な役割だというふうに認識をいたしております。

 電気事業者につきましては、先日まとめられました原子力委員会長期計画策定会議におきまして、国のエネルギー政策を踏まえつつ、経済性、電源構成の最適化などの観点から、みずから原子力発電を選択してきたことも踏まえ、安全の確保と地元の信頼回復に向け、原子力発電の安全かつ安定的な運転を行うことや、長期にわたって原子力発電を継続し、プルサーマルを初めとする核燃料サイクル事業を着実に推進することに責任を持って取り組むことが期待されるというふうに論点整理をされております。

 国、民間事業者それぞれが役割を分担し、それぞれの責任のもとに原子力に取り組んでいくということであろうと思っております。

金田(誠)分科員 重ねて質問をいたします。

 今日、我が国においては、遅まきながら電力の自由化が実施に移され、いわゆる護送船団方式から徐々にではあるが脱却しつつある、こう思います。そうした時代にあって、主要な発電設備について選択の自由が奪われていたり、場合によっては会社の破綻にまでつながりかねない再処理、こうしたことが強要される、あるいは義務づけされる、こういうことはあってはならない。日本は社会主義の国家ではないわけですから、自由主義を原則とする限り、あってはならない、私はこう思うわけでございます。

 質問をいたしますけれども、原子力発電を選択するか否かは電気事業者の意思によって決定できる仕組みになっていますか、イエスかノーか、お答えをいただきたい。

 また、仕組みの上ではそうはなっていたとしても、実質的には行政指導その他によって一定の原子力発電を義務的に導入せざるを得なくなっているということも往々にしてあるわけでございますね、国のやり方としては。こういうふうになっているのかどうか、これについて端的にお答えいただきたいと思います。

小平政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力、火力、水力などの各種の電源の中からどの電源を選択するかということにつきましては、電気事業者の判断によるところでございまして、電気事業者に特定の電源の導入を強制するような制度は存在をいたしておりません。

 また、資源エネルギー庁の行政指導などによりまして電気事業者が一定の原子力発電を導入せざるを得なくなるといった事実もないわけでございます。

 政府といたしましては、先ほど申し上げました平成十五年十月に閣議決定をいたしましたエネルギー基本計画におきまして、原子力発電を基幹電源と位置づけまして、引き続き推進することといたしておりますけれども、そのために、立地推進対策、税制、研究開発など所要の環境整備を行ってきたところでございまして、この点からも、電気事業者に特定の電源の導入を強制するような行政指導とか制度が存在しないことは御理解をいただけるのではないかというふうに思います。

金田(誠)分科員 わかりました。判断は電気事業者にあるということは明快だと思います。

 大臣、そういうことでよろしいですね。確認だけさせていただければと思います。

中川国務大臣 エネルギー政策そのものの最終的な責任は、さっき申し上げたように、食糧とかそういうものと同じように国民にとって大事なことですから、経済産業省に責任があるというふうに思っておりますが、その中で電気事業者が、基本的な枠組みの中で最大限、競争とか自由化とか、そういう中で大いにメリットを生かして、競争して、いい効果を生み出していただきたいというふうに思っております。

金田(誠)分科員 それでは次に、使用済み核燃料の再処理、このことについて電気事業者に選択の自由があるかどうか、こういうことについて質問をしたいと思います。

 電気事業者が原子力発電の導入を選択し、原子炉等規制法によって主務大臣の設置許可を申請する場合、使用済み燃料の処分の方法についてもこの申請書に記載するものとされているわけでございます。

 この場合、仄聞するところ、使用済み核燃料の処分の方法については再処理するという旨の記載をするように行政指導等が行われており、そう記載をしなければ受理されない、したがって実質的に再処理は義務づけられている、こう言われているわけでございます。

 そこで質問するわけでございますけれども、このような再処理を義務づけるという行政指導はいつから始まったのかが一点目。

 次は、記載を指導する文言、どういう文言を記載させているんでしょうか。再処理をします、こうなっているんでしょうか。こう書きなさいというふうに指導している文言をひとつ、余り長ければ結構でございますが、短いものであればちょっと読み上げていただきたい、こう思います。

 電気事業者がそのとおり記載しない自由があるか。例えば、再処理せずに別な方法、ワンススルーで何らかの方法、諸外国でも結構こういう選択は多いわけでございますが、そういう、再処理という記載をしない自由はあるのかどうか。

 四点目、そのような行政指導を行う根拠となる法律、政省令等は何があるのか。

 以上、四点について簡単にお答えいただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 電力事業者が炉規制法の二十三条第一項に基づきまして、原子炉設置の許可を経済産業大臣から取得をしようとするときには、使用済み燃料の処分の方法を記載した申請書を提出する必要がございます。

 私ども原子力安全・保安院では、この申請が、同じ炉規制法第二十四条第一項第二号に定める許可の要件でございます原子力の開発、利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないことを満たすかどうかなどについて審査をするわけでございます。

 審査に当たりましては、先ほど御説明いたしましたとおり、閣議決定文書でございますエネルギー基本計画、あるいは閣議了解文書でございます当面の核燃料サイクルの推進について、あるいは原子力長期計画などを総合的に踏まえまして、電力事業者の使用済み燃料の処分の方法が適切であるかどうかを確認するわけでございます。

 これまでのすべての案件につきましては、事業者は使用済み燃料の処分の方法を再処理とする申請を行ってきておりますけれども、申請書への記載内容につきましては事業者の判断によるものでございまして、これを行政指導で強制する、あるいは行政指導をするということはないわけでございます。

金田(誠)分科員 そういう再処理という記載をさせることはいつから始まったかというのを、答えが漏れていると思いますが、もう一度。

松永政府参考人 失礼いたしました。

 今御説明いたしました設置許可申請書において再処理する旨の記載がされましたのは、我が国で最初の軽水炉でございます日本原子力発電敦賀発電所一号機の当初の設置許可申請書において、使用済み燃料の処分の方法として再処理する旨が記載をされております。

金田(誠)分科員 では、もう我が国の軽水炉始まって以来やっているということなわけですね。

 このように記載をせよという文言は、再処理をしますというような程度なんですか。何か相当長いものがあるのでしょうか。もし長いようでしたら、後で資料でいただけるかどうか。

松永政府参考人 最近の例でございます。そんなに長くございませんので、御説明申し上げます。

 使用済み燃料は、国内の再処理事業者において再処理を行うことを原則とし、再処理されるまでの間、適切な貯蔵管理を行う。再処理の委託先の確定は、燃料の炉内装荷前までに行い、政府の確認を受けることとする。ただし、燃料の炉内装荷前までに使用済み燃料の貯蔵管理について政府の確認を受けた場合、再処理の委託先については、搬出前までに政府の確認を受けることとする。

 おおむねこういう内容でございます。

金田(誠)分科員 そういう指導が、原子炉等規制法第二十四条一項二号、これに基づいてそういう記載をさせているということだと思います。

 その場合、この二十四条一項の二号、「原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。」こういう記載でございますが、これが直ちに再処理ということになりますか。これが直ちに再処理ということになるのであれば、法文上、明確になる必要があるのではないか。これを、すべて再処理であるということを義務づけるというのは余りにも飛躍し過ぎではないかと思いますが、いかがでしょうか。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたような形で、炉規制法二十四条第一項第二号の許可の要件の解釈として、電力事業者に対して再処理を行政指導したり強制したりということはしておりません。あくまでも事業者の判断でございます。

 ただ、それが出てきた場合につきましては、この要件、原子力の開発、利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないことを満たすかどうかについてはきちんと審査をしてまいる、こういう構造になっているわけでございます。

金田(誠)分科員 そうはおっしゃいますが、実際的には、再処理以外の記載をされた申請書が出てきたためしがない。そして、この二十四条一項二号によれば、再処理という記載をしなければこれはもうこの二号に適合しないということであれば、事業者の判断だとか選択だとかということは単なる言葉のあやにすぎなくて、実際的には再処理が義務づけられている、こういうことではないんですか。

松永政府参考人 繰り返しお答え申し上げますけれども、原子力安全・保安院として、あるいは経済産業省として、再処理を行政指導したり強制したりしていることはございません。

 ただ、先ほども御答弁申し上げましたとおり、現在のエネルギー基本計画、あるいは当面の核燃料サイクルの推進について、原子力長期計画等につきまして、国として核燃料サイクルの政策的な基本的な考え方を示しておりますので、こうした中で事業者が判断をして申請書に書かれ、また保安院としては、書かれましたその処分の方法等について、こうした全体的な国の基本的な政策を踏まえて審査をしているということでございます。

金田(誠)分科員 大臣、そういうことが実質的に再処理を義務づけているということに当たるわけです。そう思いませんか。

中川国務大臣 金田先生と保安院長との間で極めて専門的なやりとりをやっておりますので、もう少しわかりやすく説明したらいいんではないかと思いますね。

金田(誠)分科員 例えば、ここに「選択」という雑誌がございます。二〇〇四年十月号でございますけれども、ここに、原子力長計策定会議の中での東電の社長と関電の社長の発言が載っております。

 東電の社長は何と言っているか。これは勝俣さんでございますが、「原子力設置許可申請においても」、これは原子力と書いて、誤植かもしれません。「原子力設置許可申請においても再処理を行うこと、これを実質的な許可要件としているところであります」と述べているわけですね。

 関電の、これは藤洋作さんというんでしょうか、こちらは「民間事業者の原子力発電や原子燃料サイクルの諸事業は、法律上、国の計画である原子力長期計画との整合が求められている」ということを言っているわけで、事業者の方は、国から義務づけられているという立場をとっている。

 こういう重要な問題について、これは双方、責任回避しているということですか。業界の方は国の責任だ、国の方は業界の判断だ、選択だと。こういう基本的な重要な問題についてこんな状況ということは非常に問題があるというふうに思いますが、今申し上げた業界を代表するお二方の発言、これはこのとおりおっしゃっていると思うんですよ、これは一貫して業界の立場ですから。これを踏まえた上で、いま一度御答弁をいただきたいと思います。

松永政府参考人 今御指摘の雑誌での発言については、私、承知をしておりませんけれども、繰り返しになりますけれども、事業者におきましては、どういう形で使用済み燃料を処分するのかということについては、全体としての事業者の判断として再処理という形で、独自に自主的な判断として出してきているということは、今でも変わっておりません。

 私どもといたしましては、出てきました申請につきまして、原子炉規制法に基づいてきちっと確認をし、審査をしているということでございます。

金田(誠)分科員 そういうことをおっしゃって何かが前に進むとか、何かが解決するとかいうことには全くならぬわけですよ。

 皆さんはそうおっしゃる、業界は別なことをおっしゃる、そういう状態の中で事実だけが進む。何かが起これば結局どうなると思いますか。国民負担ですよ。だれも責任をとらずに国民負担。こういう無責任な構造の中で原子力政策、それも再処理、他の国がもうほとんど撤退をしている再処理という、危険きわまりない、経済的にも極めて問題の多い、そして何よりも核拡散という観点からも非常に問題の大きい政策が、双方責任をとらない形で現実に今一歩一歩進んでいっている。私はこのことを危惧して再三質問をいたしているところでございます。

 大臣、どう思いますか。業界の判断で再処理の申請をしてきているんだ、しかし、原子炉等規制法二十四条によれば「開発及び利用の計画的な遂行」、こうなっていて、それは原子力長計その他の計画に適合しなければならない、さまざまな計画には再処理ということになっているという説明を前段でされているわけですよ。そして、実質的には法律的に枠をはめられている、義務づけられているという立場を業界はとっている。そんなことでいいんですか、大臣。

 これは、今まで原子力がずっと続いてきた、だから途中からこれに異を差し挟むとかなんというのは非常に困難だということはよくわかります、大臣、お立場としては。これをこのまま継続するということが大臣のお立場だと第一義的に考えることもわかります。しかし、前段申し上げたとおり、国策といえども、いつもさまざまな議論に、原則的な議論にさらされなきゃならない、その立場が大臣にもあるんじゃないですか。このままの形で双方責任を回避しながら事実だけが進んでいく、そんなことで本当によろしいのかどうか、大臣、いかがでしょうか。

中川国務大臣 金田委員から、冒頭、国策ということは多分エネルギー政策についてだと思いますから、繰り返しませんけれども、日本としては、国家としてエネルギー政策をやります。

 それから、その中の基幹電源としての原発、原子力発電については、これは非常に時間が長いタームの問題であって、その中で、原子力発電所から出た使用済み燃料についてどうしますか、直接処分ですか、あるいは再処理ですか、その他ですかという中で、日本としては、専門家の先生方の御指導もいただいて、これは再処理を基本的にやっていきましょうということにしたわけでございまして、そういう中で、我々としては使用済み燃料についてきちっとやっていく。

 これは、金田先生も御承知のとおり、単にエネルギー政策だけではなくて、例えば環境政策、あるいはまたCO2、いろいろなメリットがあるんだということでやってきているところでございますので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

金田(誠)分科員 私、きょうは、再処理がいいか悪いかという話はしませんでした。いいか悪いかという話をする前に、だれの責任において再処理路線が今進行しているのか、だれがそれを推進し、だれがこれを中断する立場にあるのかということが明確にならなければ、よしあしの議論をしても始まらないという状態なんですよ。極めて遺憾な状態にある。国は電気事業者の判断である、電気事業者は国から義務づけられている、こういう状態の中で今事実だけが進んでいる。大変残念な事態です。

 大臣、ひとつ、いま一度お考えをいただきたい。

中川国務大臣 基本的なエネルギー政策、特に、その基幹であり、物すごいエネルギーを発生する原子力発電については、その中でもとりわけ国の責任、方針というものが大きい。ですから、エネルギー基本計画、あるいはまた長期計画その他の基本計画に基づいて、国民的な理解をいただきながらやっているということをぜひとも御理解いただきたいと思います。

金田(誠)分科員 まだまだ反論はあるんですが、時間になりましたので、またの機会にいたしたいと思います。

 ありがとうございました。

菅主査 これにて金田誠一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして経済産業省所管、中小企業金融公庫及び中小企業総合事業団についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

菅主査 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。下条みつ君。

下条分科員 民主党の下条みつでございます。

 遅い、一番最後の時間でございます。経済産業大臣が途中で入りまして、その後ということで大臣そして政府参考人の方に御足労いただきまして大変ありがとうございます。貴重な時間でございますので、ぜひよい御回答、またお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

 それでは、私の方は、少子高齢化の問題点について幾つか御質問と提言をさせていただきたいと思います。

 もう釈迦に説法でございますけれども、総務省統計によりますと、平成十五年では、六十五歳以上が二千四百三十万人、人口の約一九%、ゼロ歳―十四歳が千七百九十万人余、全体の一四%。一方で自然増減は十一万六千人増、戦後最低となっている。この問題点は、やはり、いろいろな問題を踏まえて、少子化の問題そして高齢化に対する対策ということだと思います。

 そこで、私は、きょうは時間の限りがありますので、この問題の解決に対して一体どういう方向感が必要なのかなということを踏まえて、ちょっと数点それぞれについて御質問したいと思います。

 まず、高齢化社会に対応した施設や地域などの受け入れ体制の整備でございます。

 高齢化に伴って、介護を希望するお年寄りの方、また家族の方々が非常にふえている。介護施設の供給がニーズに追いつかず、特別養護老人ホームに入りたいという希望を持っている人がいますけれども、三、四年待ち、当てにできないという状態になっている。老健施設を実際は渡り歩いているような方々も非常に多くなってきていると思います。

 老健は、別名中間施設と呼ばれているとおりでございまして、本来の目的は、要介護度の低い方が家庭で自立して生活できるようにリハビリなどの支援をするものであるけれども、実情は、特養老待ちの、要介護度の高い方が生活している場所であるということであります。

 そこで、まず一点目なんですが、施設、サービスは増加しているんだけれども、結局ニーズにまだ追いついていない。要介護度の低い方から高い方まで対応して、どのような施設がどのぐらい必要で、どのような対策をもってふやしていきたいかというところをまず一番目にお答えいただきたいというふうに思います。

中村政府参考人 今委員から御指摘ございましたように、今日二千四百万人の高齢者がおりますが、二〇一五年にはこの方々が三千三百万人になるということで、御指摘のとおり、大変施設の整備が重要になってきております。

 私どもも、施設の整備は、介護保険が実施されましてから、市町村の方で事業計画をつくられ、都道府県の方が広域的な計画をつくる、こういうことで整備を進めてまいりたいと考えております。

 平成十六年では、八十七万人の方が施設や、あるいは居住系サービスと呼んでおります有料老人ホームの方に入っておられますけれども、十年後の平成二十六年度、これは第五期の、三年ごとにやっております介護保険の現在第二期の最終年でございますが、三期、四期、五期と十年後の平成二十六年度では、この八十七万人を少なくとも百八万人程度まで整備していく必要があるのではないかと考えております。

 そういった中で、今委員御指摘ございました介護三施設、それぞれの施設に特色がございますが、特に、介護施設につきましては、重度の方をお引き受けいただきたい、こういうふうに考えておりまして、現在、要介護認定で四、五の方、これは重度の方で入所者の五九%でございますが、平成二十六年度では七〇%以上、重度の方をお引き受けいただくようにということをお願いしております。

 委員から御指摘ありました、さまざまな施設があるのではないかということでございますが、この介護の三施設以外にも、有料老人ホームでございますとか、それから今度の介護保険で提案しております小規模な地域で高齢者の方が暮らし続けていただけるような多様な住まいの普及ということも課題になっていると考えております。

下条分科員 ありがとうございました。大変な予算の中でいろいろな計画をなさって、その中で交付金も、自治体に対して国が二分の一、県が四分の一と公的補助の中で進めてこられたことについては、今、具体的にはパーセントがお出になっておりませんでしたけれども、今までの経緯からして、また目標からしてもすばらしいというふうには思います。

 ただ、特養老や老健などの広域、大型な施設もさることながら、もう一方では、地元の生活圏に密着した施設をふやしていく必要があるのではないかと私は思います。簡単に言えば、お年寄りにとって、長年住みなれた場所からなれない場所に生活を移して不安と負担をかけるということは、かわいそうだなと私は思うんですね。

 そこで、地域に密着した小規模の施設としてグループホームなどがあると思います。これも、自宅に準ずるようなアトホーム的な環境を介護を受けるお年寄りにそれぞれ提供していくということだと思いますけれども、この中で、運営していく方々にちょっと聞いたお話を私も一つ述べさせていただきたいのです。

 ともかく、グループホームを立ち上げるのは大変だ、運営について最初にすごい負担がかかってくる、中でも、介護給付費及び公費負担医療等に関する費用の請求に関する省令の第三条に、介護給付費等の請求は、各月分について翌月の十日までに行わなければならないというふうに設定されております。また、一方で、国民健康保険団体連合会介護給付費審査支払規則例の第十一条に、支払い確定額を決定したときは、請求の審査が終わった日の属する月の翌月末までに、指定金融機関に振り込みの依頼をし、指定居宅サービス事業者等に支払うと。簡単に言えば、今月、四月の頭にやったものは来月の終わりにならないとお金がなかなか入ってこない、二カ月ぐらいかかるということになると思います。そこで、いろいろな方々によって苦しい中で立ち上げた中で、実際に入った御老人の方からのお金が入ってくるのは二カ月も先になってしまうという事態が多々発生するということになると思います。

 そこで、これは大臣にちょっと提案的な質問で恐縮でございますけれども、私としては、やはり、これだけ施設の待機者が多く、またこれからもっとふえる、今局長の方からもいい御発言をいただいて、二十六年までにふやしていくということはあるんですけれども、簡単に言えば、こういうことをやろうとしている方々に対して創業者支援的融資制度の整備があってもいいんじゃないか。

 つまり、例えば空き家になっている民家を改修してグループホームをつくって、ところが金がないし、国の方はさっき言った二分の一負担するけれども、ほかの補助が余り強制力がないような場合は、結局ほかから金を引っ張ってこなきゃいけない、その場合、準備した資金が途中で足らなくなってとんざしてしまうというケースが私の周りでもかなりあるということでございます。

 そこで、私は、二つ今申し上げたいのです。

 一つは、この交付金の県の負担の四分の一部分なんですが、これに対して、そうしなさいよ、国が二分の一負担するから四分の一あなたたち負担しなさいよという話はあるんですが、実際はその強制力というのはどうもそれほど強くないということであれば、これほどまでに県の財政が厳しいときに、これはちょっとここはこうだと言いながら、結局県で負担しないケースが非常に多くなってきてしまっています。ということは、結局、半分近くは自分で負担しなきゃいけない。この強制力をもう少し強く県の方に国から言えないかなというのが一つの質問でございます。

 それからもう一つは、補助金をすぐ出してくれよ、お国さんよというのは私は簡単に言えますけれども、この財政難のときに、私も厚生労働におりましたので皆さんと一緒に仕事をしましたけれども、あのころは本当にいい時代ではありました。ですから、いろいろな意味でいい予算もつけられた。だから逆に言うと、今は物すごく厳しい中で皆さんが汗をかかれておるのは十分わかっております。

 だけれども、それだったら私は絵にかいたもちの質問はしなくて、補助金を出しなさいというより、むしろ創業者支援的な融資を、立ち上がりが、さっき言ったように、最初の月に入っても二カ月先だ、全部満杯になるかどうかわかりません、審査もいろいろある。おくれたらまた三カ月先になってしまうというのであれば、大臣、例えば期限を半年とか一年ぐらい持たせて、必ず返すんだ、返せよと。だから、この負担は国には時限的にしかない。つまり、渡しちゃって戻ってこない交付金や行ったきりじゃなくて、半年か一年の限定で、期限つきで融資を少し補助してあげて、今これだけ待機していて、私も祖母が百一歳でしたからよく知っています。私も厚生省にいたときに随分歩きました。たくさんの人が困っています。

 それで、皆様汗をかかれていますけれども、それだったら、今の緊縮予算の中で、少しそういう方向で、一つは県の方の強制力をもうちょっと国の方が持ってはどうか。もう一つは、創業のときにどうしても金が必要だ、皆さんの御親族もそのうちいつかは西の国に行っちゃうわけですから、そういうときに、自分の母親、父親の身になったときに、そういう体制が整って待機しなくて済むという施設をつくる意味で、やりたい人はたくさんいるんですよ、だけれども、創業のときにどうしても金が入ってくるのが遅くなるということがあるので、その辺を踏まえて、施設拡充という意味でちょっと大臣の御所見をいただきたいというふうに思います。

尾辻国務大臣 二点お尋ねでございました。

 一点は、この交付金の都道府県負担分についてのことでございます。

 これは、私どもの立場からは、都道府県がきっちり負担してくれるはずだということになるわけでございますが、私もまたそう理解をいたしておりますけれども、実態についてまた少し詳しくお答えする方がよければ局長に詳しく実態はお答え申し上げさせ、また、さらなるお答えもさせたいと思います。

 それから、二番目の融資の話でございますが、これは、言っておられるのは、独立行政法人福祉医療機構の福祉医療貸し付けという融資の部分だと存じます。

 これは、もう先生もよく御案内のとおりに、まず、この機構の融資のあり方についてはいろいろな議論がございました。財政投融資の改革が行われるときに、もう御案内のとおりに、まず民業圧迫をしちゃいかぬぞ、民業補完に徹するということと、それから市場原理にのっとった資金調達をやれと言われている中での今融資をやっているという、まず基本にそのことがございますということを申し上げたところでございます。

 そうした中で、今言われたのも運転資金の話でありますから、制度上は運転資金も融資対象にしているんですが、これはもう先生に申し上げれば釈迦に説法みたいな話でありまして、どうしても先ほど申し上げたような事情の中での融資を続けておるものですから、実際に運転資金まで融資できるか、資金枠があるかというと、今極めて厳しい状況にあるということはもう率直に申し上げざるを得ません。

 したがって、今そういう事情にあります、その中で、では我々がどういう努力ができるかということを考えなきゃいかぬのですがという、いささか言いわけみたいなことを申し上げておるわけでありますけれども、確かに、先生おっしゃるように、まだまだ施設を整備しなきゃいかぬということは我々にとって大きな課題でありますから、その中で、今申し上げたような事情にあるということとどううまくかみ合わせていけるか、また我々検討させていただきたいと存じます。

中村政府参考人 先ほど来、委員の方から御紹介いただいております交付金制度、三月三十一日に国会で成立させていただきまして、本年度から各自治体が作成する整備計画に対して一括して交付する地域介護・福祉空間整備等交付金を創設させていただきました。この交付金制度は、委員からお話ございましたように、地域密着型の小規模な多機能サービスは市町村が、また特別養護老人ホームなどの広域的な整備については都道府県が整備していただく交付金でございます。

 補助金から変わりまして交付金になりましたので、国が二分の一、都道府県が四分の一というような従来の負担区分的なものはなくなりましたが、委員から御指摘ございましたように、都道府県がちゃんと従来どおりの負担ができるように、これは総務省の方ともお話をし、地方財政措置、いわば地方財政計画の中で、国の交付金が二分の一分、四分の一分は都道府県の方がいわば負担できるように交付税等の措置を講ずることといたしておりますので、御懸念をいただかないように、きちんと従来どおりのいわば整備費がこれまでどおり確保されるようにというふうに考えております。

下条分科員 ありがとうございます。何とぞよろしく、従来どおりやっていただきますように。

 そしてまた、今、大臣、本当に正直にお答えいただきまして、民業圧迫と言いながら実際出ていないぞというお答えだったと思います。私は、そこが一番、実際、NPOとか女性が中心でやったりとか、空き家になったところに何とか、そこの近くのおじいちゃん、おばあちゃん、世話になった人たちが、では恩返しにという方々の気持ちを酌んだときに、ぜひそれは、私も金融機関に二十年いましたので、どうしても民間の金融機関からすると非常に冷たい対応になるんです。

 ですから、例えば、サラリーマンですから、その部分については、ちょっと返ってくるかわからないとなり、保証もないし、だんなさんも亡くなった人たちが八十歳とか七十歳の人たちを見ているんでは、金融機関としては、お貸しできないか検討中で延ばしていって転勤になってしまうんですよ、大臣。

 ですから、やはり本当に、そここそまさに、涙と心がある厚生労働として、運転資金は大変で、実際、皆さんの耳にも入っていると思いますけれども、たくさんの方がやりたくてもやれない方がいる。

 したがって、そこの部分について、先ほど大臣、検討していただくというお話でございますが、これは民業圧迫というよりも民民圧迫でありまして、その個人の方々が、やはり自分たちが善意のためにやっていることについてなかなかお金が出ないなというところでございますので、ぜひ今後の課題として、前向きに、温かい、これは私は何回も言いますように、貸したものは返すことが前提ですから、返すこと、それについては、例えば国がある程度保証を入れたり、また県の保証を入れたりしながら、金融機関の保証を入れるとまたこれは高い金を、民間ですから、今、民営化と同じで必ず収支が問題になってきます。

 ただ、国の方はそこにやはり心があると私は思いますので、ぜひ、新しい形でも構いませんけれども、借りやすい形で、半年でも期限を切っていただいて、低利で国の方から創業者の部分については補助してあげるような御検討を重ねてお願いしたいというふうに思います。

 時間がどんどんたってしまうので、次にちょっと移らせていただきたいと思いますけれども、今は高齢化の部分のお話だったんですが、今度は少子化の部分についての御質問をさせていただきたいと思います。

 少子化対策というのは、社会全般、職場、保育、地域など、重点的に取り組んでいらっしゃると思いますが、その中でもやはり最も少子化の原点なのは、やはり出生率、子供の出産の部分ではないかと思うんです。

 そこで、今私の手元にあります資料でいくと、不妊で現在悩んでいる夫婦が大体日本の各夫婦の十組に一組いる。実際に不妊治療を受けた夫婦というのは、数でいけば、平成十年では二十八万四千八百人、平成十四年には四十六万六千九百人、倍近くになっています。私は現在の資料はありませんが、現在ではもっとふえているんじゃないかと思います。

 不妊原因を調べる検査を含め、不妊治療のうち、排卵誘発剤の薬物治療、男性不妊における精管形成術等には医療保険の適用です。人工授精や体外受精、顕微授精には適用されず、全額患者負担となっているということであります。特に、体外受精、顕微授精は、病院によってそれぞれ異なりますけれども、一回の治療費が三十万、四十万と高額になったりしていますので、経済的負担が非常に重いという治療である。

 私はよくこの辺はわからないのですが、資料によると、一回で妊娠するという可能性は余り高くないみたいです。ですから、何回か、本当に子供を持ちたいという夫婦が何度となく治療を受けることが必要である。それを少しでも援助する補助金制度が、まさにこの四月から皆さんの御努力によってスタートしたと聞いております。その方々、どのような方々が対象となって、また、その補助金額は一体どのぐらいなのかをちょっとまずお聞かせいただければというふうに思います。

伍藤政府参考人 不妊治療のうち保険が適用されない、今御紹介のありましたような体外受精でありますとか顕微授精、こういったものに対して何らかの支援をということで、昨年度からこの新しい助成制度をスタートしたわけでございます。金額は、体外受精、顕微授精、三十万、四十万、こう言われておりますが、そのうち公費でどこまで支援すべきかということをいろいろ議論いたしましたが、既に都道府県でこういう制度を発足しているところもかなりございましたので、そういう都道府県で既に行っておる助成額を参考にいたしまして、一年度十万円公費で助成をする、これを二年間、二回までということでございますが、二年間まで支援するということで、全体の経費から見ますと少ないではないかという御批判はあろうかと思いますが、保険が適用されないところに初めて公費で支援をする、こういうことでスタートしたものでございます。

 確たる患者数は、初年度でまだ実績が出ておりませんのでわかりませんが、予算上は、五万件ぐらい対象になる方があるんじゃないかなということで推計をしたところでございます。

下条分科員 ありがとうございました。

 助成金については、本当にすばらしい制度をスタートしていただいたというふうに思います。ただ、まさに今おっしゃったとおりで、何回かやはり失敗が続くみたいでございまして、そうすると、大体平均でどのくらい費用がかかるかというと、やはり最終的には何百万単位になっているというのが現実ではないかと思うんですよ。

 そこで、まだスタートしたばかりで本当に今後の話です、この案は私は本当にすばらしいと思っていますので。ただ、現実として、スタートしたはいいけれども、今後ぜひ厚労省の皆さんの頭の中に入れておいていただきたいと思うのは、実際負担がかなりあるということです。ですから、一年間に何回やるか知りませんが、人によっては一回になるかもしれないし、二回になるかもしれない、それによって八十万、百万かかって、二年間、三年間やったら相当な金額になってしまいます。

 そこで、私の案としては、大臣、今十万とおっしゃっていましたけれども、助成金の上限をもうちょっと上げて、そして、年数も二年限りということですけれども、その枠をもうちょっと、今五万件対象者がいらっしゃると言っていました。それは負担が、少し公費がかかると思うんですが、一つは、この期間年数をもう少し、例えば三年とか四年とかにふやしてあげて、結局は男性は楽なんですけれどもね、ここに女性がいらっしゃるか知りませんが、女性の方が精神的な負担も結構あるし、母体もいろいろあります。そういうのを考えたときに、もう少し期間年数もふやしてあげたらなということが一つ目です。

 それからもう一つは、先日私が直接ある方から言われたんですが、今現在はこの制度を使える方が、姻戚というか戸籍上夫婦じゃなきゃ対象になっていません。これは本当にスタートしたばかりですから、やはりこの部分からスタートするのもわかります。ただ、今後の話として、実態は夫婦で、戸籍に入っていないけれども、法的な形式はとられていないけれども夫婦同然に暮らしている人で子供が欲しい人、そしてまた、子供ができないから婚姻に踏み切れないような人たちが私はいると思うんです。

 最初に申し上げましたけれども、あくまでもこれは同情ではなく少子化対策ということの前提で、この辺に対しても、海外と同様に、今後少しずつ枠を広げていっていただけないかなという私の要請でございますが、大臣、いかがでございますか。

尾辻国務大臣 大変御理解いただきながらのお話、御質問でございまして、そうした御理解の上での御質問であるということ、私からもまた大変感謝を申し上げたいと存じます。

 今お話しのとおりでございまして、制度がスタートしたばかりでございますけれども、まずは、対象者というのは法律上の婚姻をしておる夫婦、こういうことになっております。そして、金額が十万円ということでありまして、それぞれについてのまたいろいろな御議論があろうかと思います。

 実は、一つ例えて申し上げますと、厚生科学審議会の専門部会が十五年四月に取りまとめた報告書においては、代理懐胎、すなわち代理母とよく言うものでございますが、これについても、人を専ら生殖の手段として扱うものであることなどからこれを禁止すべきことなどを求めておるといったような、いろいろな御意見がありますということを申し上げたわけであります。何も私どもはその意見にくみしているということではありませんが、一つとってもいろいろな御議論があるわけでございます。

 そうしたものを、制度が始まったばかりでありますからよく議論していただきながら、国民的なコンセンサスを得て、私ども、この制度をさらに進めていきたいと思いますということと、また金額についても、これもお述べいただきましたように、私どもも、体外受精でも一回三十万円だというのも承知しておりますし、それから顕微授精だと一回四十万円かかるというのを承知いたしております。

 そうした中で十万円という話でありますから、委員が言っておられることも、私どももまたそのことを同じように感じる面もあるわけでございまして、今後こうしたものを、まさに少子化対策として考えるのならどうするんだ、これは大きな議論だと思いますので、しっかり議論していただきながら、また私どももその御議論をお聞きして検討してまいりたいと存じます。

下条分科員 大臣、ありがとうございます。

 本当にまだスタートしたばかりで、これは難癖ではなくて、パンをもらったら、その上にきちっとバターが塗られているんだけれども、もうちょっとバターを多くしてくれよという話だと思うので、今後の話として、本当に私の周りにも困っている人がたくさんいます。先ほどの五万件に対して、実際はもっと腹の中で、子供が欲しいんだけれども、どうもできないから結婚できないなという女性もたくさんいますので、ぜひ前向きに、頭の隅に置きながら御検討の課題の中に挙げていっていただきたいと思います。

 あとちょっとしか時間がないので、最後の質問にさせていただきたいと思うんですが、最後は、不妊治療の保険適用についてちょっとお聞きしたいというふうに思います。

 私どもで調べますと、この保険適用については、米国では生殖補助治療として十四州で保険による保障が義務づけられています。それ以外、いろいろ細かい条件的な制約はあるんですが、イギリス、フランス、スウェーデンは保険適用。不妊治療に大変厳しいドイツでさえ、夫婦間の体外受精に関して四回まで保険適用ができる。これは諸外国の、特に私が先進国でいろいろあるところを引っ張り出してきたデータでございます。このようなことで、海外では、少子化対策に対する不妊治療に対して非常に前向きに出てきているというところだと思います。

 そういう意味で、私は、言葉を言いかえると非常にある意味で語弊があるんですが、不妊症ということもある一つの障害であるという認識を社会的にもっともっと日本でも持つべきではないかなと思うんです、これは非常に難しい言い方になるんですが。その障害者の保険適用という認識で、そして少子化対策がこの国を支えていく認識を持って、子供がどんどんたくさんできれば大臣や私の子供たちも多くの負担がなくなるわけです、もっと子供たちがふえれば。

 そういう意味で、今後、先を見たときに、海外の先進国ではこの保険適用部分についてそこまで来ているけれども、ぜひこの枠に対してもう一歩考えていただけないかなというのを最後の御質問にさせていただきたいんです。

尾辻国務大臣 保険適用の話になりますと、いつも疾病であるかないかというのがその議論の対象になってしまうわけでありまして、確かに考え方はいろいろあるだろうと思います。ですから、疾病であるのかないのかということの判断と同時に、きょうの先生の御質問のメーンになっております少子化対策をどうするんだというそのまた判断もあるわけでありますから、これは両面の判断をしながら結論を出さなきゃいかぬ問題だと思っております。

 いずれにいたしましても、十八年の四月に、私ども、医療保険、それから医療提供体制、そうしたことの抜本的な見直しをするべくまた私どもの考え方もお出ししたいと思っておりますから、そうした中での検討事項にさせていただきたいと存じます。

下条分科員 ありがとうございます。

 もう時間が来ておりますので、ほかにも用意していて御準備なさった方がいらっしゃって申しわけございませんが、最後にもう一つ、十八年の四月ですけれども、あと半年ちょっとでございますので、いろいろぜひ御検討いただきながら、前向きに、少子化対策に対して御一緒になってスクラムを組んで進めていきたいというふうに、何とぞよろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。

 以上です。終わります。

菅主査 これにて下条みつ君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十六日午前九時三十分から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十九分散会


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