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第1号 平成19年4月23日(月曜日)

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本分科会は平成十九年四月十日(火曜日)委員会において、設置することに決した。

四月二十日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      江藤  拓君    北村 誠吾君

      杉村 太蔵君    渡海紀三朗君

      中山 成彬君    藤井 勇治君

      矢野 隆司君    金田 誠一君

      武正 公一君    松本  龍君

四月二十日

 渡海紀三朗君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成十九年四月二十三日(月曜日)

    午前十一時四十分開議

 出席分科員

   主査 渡海紀三朗君

      北村 誠吾君    藤井 勇治君

      矢野 隆司君    市村浩一郎君

      田嶋  要君    武正 公一君

      長妻  昭君    西村智奈美君

      松本  龍君

   兼務 岩國 哲人君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   藤岡  博君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            青木  豊君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           和泉 洋人君

   参考人

   (独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構理事長)           水島藤一郎君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  金田 誠一君     市村浩一郎君

  武正 公一君     西村智奈美君

  松本  龍君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  市村浩一郎君     田嶋  要君

  長妻  昭君     松本  龍君

  西村智奈美君     武正 公一君

同日

 辞任         補欠選任

  田嶋  要君     金田 誠一君

同日

 第二分科員岩國哲人君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計歳入歳出決算

 平成十七年度特別会計歳入歳出決算

 平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十七年度政府関係機関決算書

 平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

渡海主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管及び中小企業金融公庫についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十七年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 平成十七年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。

 まず、一般会計につきましては、歳出予算現額二十一兆四千八百八億円余に対して、支出済み歳出額二十一兆千七百二十八億円余、翌年度繰越額千五百四億円余、不用額千五百七十四億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして申し上げます。

 第一に、厚生保険特別会計につきましては、収納済み歳入額五十二兆五千九百三十一億円余、支出済み歳出額五十一兆四千四百六十九億円余、翌年度繰越額七千七百八十七万円余であり、差し引き一兆一千四百六十億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 第二に、船員保険特別会計につきましては、収納済み歳入額七百十三億円余、支出済み歳出額六百三十六億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き七十三億円余をこの会計の積立金として積み立てて、決算をいたしました。

 第三に、国立高度専門医療センター特別会計につきましては、収納済み歳入額千六百五十二億円余、支出済み歳出額千六百四十二億円余であり、差し引き九億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 第四に、国民年金特別会計につきましては、収納済み歳入額二十四兆九千九百三十九億円余、支出済み歳出額二十三兆六千六百八十三億円余であり、差し引き一兆三千二百五十五億円余を翌年度の歳入に繰り入れるなどとして、決算をいたしました。

 最後に、労働保険特別会計につきましては、収納済み歳入額八兆九千七十二億円余、支出済み歳出額七兆六百五十八億円余、翌年度繰越額十五億円余、未経過保険料相当額二百三十二億円余、支払備金相当額千八百五十七億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差し引き一兆四千二百八十八億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどとして、決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する平成十七年度の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

渡海主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院千坂第二局長。

千坂会計検査院当局者 平成十七年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二百六十六件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一九号から九九号までの八十一件は、会計経理が適正を欠いているものであります。

 同一〇〇号から一一七号までの十八件は、会計経理が適正を欠いているもの及び現金が領得されたものであります。

 同一一八号は、委託費の支払いが過大となっているものであります。

 同一一九号及び一二〇号は、保険料の徴収が適正でなかったものであります。

 同一二一号から一二四号までの四件は、保険の給付が適正でなかったものであります。

 同一二五号及び一二六号は、医療費の支払いが適切でなかったものであります。

 同一二七号から二八二号までの百五十六件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 同二八三号及び二八四号は、職員の不正行為により現金が領得されたものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された国有の物品の時価評価額の算定に関するものであります。

 社会保険庁では、年金の福祉施設及び政府管掌健康保険の保健福祉施設を設置、運営してまいりました。これら年金・健康保険福祉施設については、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況等にかんがみ整理合理化を行うこととされ、十七年十月に設立された独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構において譲渡等を行うため、機構へ出資することとされました。そして、機構成立時において政府から出資される政府出資金の額は、機構設立の日現在の時価評価額とするとされております。しかし、機構へ出資される国有の物品の時価評価額を算定するに当たり、減価償却を行わない資産に該当するとしていた美術品等について、耐用年数を経過したものとして、残存価格までの減価償却の計算が行われたため、時価評価額が過小となっており、機構に対する政府出資金の額及び機構の財務諸表等における資本金等の額が正しく表示されていないなどの事態が生じておりました。したがって、社会保険庁に対し、本院の指摘により判明した時価評価額に係る誤りを修正して適正なものとするとともに、修正した時価評価額をもとに評価委員による再評価を受けるなどして、今後、同様の事態が生じないよう算定方法を改善するとともに、美術品等の適切な評価について周知徹底を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、生活保護における他法他施策の活用に関するもの、その二は、独立行政法人労働者健康福祉機構が受け入れた貸付金の回収金等に関するもの、その三は、港湾EDIシステムの稼働に必要な設備の提供等のサービスを受けるための費用の積算に関するものであります。これら三件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十六年度決算検査報告に掲記いたしましたように、データ通信サービス契約に係るソフトウエア使用料のうちの利子相当額及び国民健康保険組合の組合員の被保険者資格手続の適正化について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する厚生労働省の処置状況についても掲記いたしました。

 以上をもって概要の説明を終わります。

渡海主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。柳澤厚生労働大臣。

柳澤国務大臣 平成十七年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾であります。

 指摘を受けました事項につきましては、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一層厳正な態度をもって事務の執行の適正を期する所存であります。

渡海主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡海主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡海主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡海主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市村浩一郎君。

市村分科員 民主党の市村でございます。質問させていただきます。

 今、こうして冒頭に会計検査院また大臣のいろいろ御発言があったわけでありますけれども、もちろん決算行政委員会、本委員会できちっとこうした細かい議論はされると思いますが、何といいましても大切な税金をお預かりしているわけでありますから、そのことだけはやはり私たちはきちっと持って、こうした議論、またきちっとした監査というものをしていかなくちゃならないというふうに思います。

 それで、きょうは二点について御質問させていただきます。まず一点がジェネリック医薬品のことについて、もう一点はいわゆるついの住みかということについての質問をさせていただきたいと思います。

 まず、実は私はもともと、今現在、内閣委員会所属であります。なぜかといいますと、民の公のセクターをつくりたいという志で、当選以来ずっと内閣委員会に所属しているわけでございますけれども、しかし、もう一方で力を入れて取り組んでいるのが社会保障の問題ということです。それで、いつも、予算委員会の分科会、決算委員会の分科会、こうした分科会の場をおかりして、特にこの場では厚生労働大臣と議論をさせていただけるという場でもありますので、必ず手を挙げてお時間をいただいているということでございます。私にとっても貴重な機会ということになりますので、また大臣、いろいろいい議論をさせていただきたいと思います。

 私は、ここまでこの社会保障の問題、とりわけ介護や医療の問題に力を入れているわけでありますが、なぜそうしたものに力を入れさせていただいているかと申しますと、この一月の二十日に滝上宗次郎さんという方が五十四歳の若さでお亡くなりになられました。私はこの方を、橋本内閣の経済審議会でしたでしょうか、その福祉部会長もお務めになられたような方でありますし、有料老人ホームのグリーン東京という、本当に有料老人ホームの世界ではモデルとされるような有料老人ホームの経営者ということでもあられました。また、大学でも教えられたりということもされておりました。

 まさにこれからの問題について大変大きな提言をされた方でありましたし、本当に高齢者の皆さんのために自分の時間とかまた資金も使って、この厚生行政にしっかり取り組んでいた方でありました。ある意味でいえば、国会議員よりも国のことを思っていたのかもしれないというぐらいに、その言動というのは、そばでいろいろ親しく御指導いただいて、心から尊敬を申し上げておりました。

 その方が、何と御自分がまさに高齢者になる前に、五十四歳の若さで逝かれたということでございます。私は、本当に日本にとって大きな損失だというふうに思っています。その滝上さんの思いにどこまで私がこたえられるかわかりませんが、その遺志を継いでまいりたいということを誓っておりますので、その思いも込めてきょうは質問をさせていただきます。

 まず一点目でございますが、ジェネリック医薬品のことでございます。

 ジェネリック医薬品のことを最近、後発医薬品ということでマスコミ、メディアには出ているんですが、大臣、この後発医薬品という言い方、いかがでしょうか。私は、やはり余りいいイメージを与えないと思います。言葉というのは大変重要でありまして、やはりどういう呼び名をするかによって、全然人々が受け取るイメージが違います。やはり後発医薬品と言われると、何か劣っているのかなというように、おくれをとっているんじゃないかというようなイメージを持たれる方もあって、何かそんなおくれをとっているような薬なんか飲みたくないというのがあると思います。

 私はやはり、ジェネリックがいいかどうかは別として、何か呼び名自体もしっかり考えておかないといけないと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。

柳澤国務大臣 今、市村委員の方から、後発医薬品という言い方が本来もっと普及、利用されるべき医薬品に抑制的な影響を与えているのではないかと。まことに私はうかつで、つい当然のことというふうに考えておりましたけれども、そう言われてみますと、なるほどそういうことが一つあるのかなという感じも率直に言っていたしました。

 しかし、医薬品というものにつきましては、現実にお医者さんが処方されるときに問題であるわけでございます。それぞれ医薬品には名前がついているわけでございますので、処方としては、実際に医薬分業になりまして、後発医薬品、当該の、処方されたもののほかにこういう医薬品があるということで指示をされるということでありますれば、後発医薬品という言い方で患者というか処方を受ける対象者がそういう意識をするかどうかというのまで私はちょっとつまびらかに今明確な認識をいたさないのでございますけれども、ただ実際、有名な女優さんが出てやっていらっしゃるテレビのコマーシャルではジェネリックという言葉を使われております。

 あるいは、そういうジェネリックという言葉を使われているのも今市村委員が御指摘になるようなことがむしろ基礎にあるのかなとも思いますので、大事な指摘だと思いますけれども、今すぐここで私がどうこう申し上げる準備はありませんので、感想だけ申し上げさせて御答弁とさせていただきます。

市村分科員 大臣、ありがとうございます。

 繰り返しになりますが、やはり物の、言葉のイメージというのは大変重要だと思います。

 せっかくジェネリックという言葉で今大臣おっしゃったように、CMも打たれておりますし、また日本ジェネリック医薬品学会というのも既にあるわけです。ここでも、本当にまさに有識者の皆さんが貴重な時間をとって集まっていただいて、そしてさまざまにいい議論をされていると思っています。

 だから、ジェネリックが本当にいいのかどうかは別として、少なくとも後発という言葉が持つイメージはよくないということだけ、まず冒頭に御指摘をさせていただきたいと存じます。

 それで、きょうは公取にもいらっしゃっていただいているんですが、実は私は委員会の場でもこのジェネリックの問題を取り上げまして、やはりこれで最低でも一兆円ぐらいは国民の懐から出ていくお金が節約されるということを御指摘申し上げたことがあります。その後、CMでもそれこそ一兆円ぐらいは浮くだろうとか、四月二十二日、まさにきのうの読売新聞の一面もそのような趣旨のことが書かれてある記事がトップになっているということであります。そのときに、公取がやはりこのジェネリック医薬品について独禁法の観点からもしっかりと調査等、また何かしらのアクションを起こしてほしいということを申し上げたことがあります。

 その後の対応というのはいかがでしょうか。また、簡潔に教えていただければ幸いでございます。

鵜瀞政府参考人 公正取引委員会では、医療費削減に資するとされる後発医薬品の取引の実態等について調査を実施いたしまして、平成十八年九月二十七日に報告書を公表してございます。調査の結果、後発医薬品の取引について、次のような事実が認められたところでございます。

 まず、医療機関におきましては、後発医薬品の使用に当たり、後発医薬品自体の安全性、安定供給、情報量等が不安だという医療機関が多数でございました。また、先発医薬品メーカーにおいては、特定の後発医薬品についての情報、例えば製造上の欠陥などでございますけれども、それが後発医薬品一般についての情報であるかのように医療機関に説明するなど、後発医薬品に関する医療機関への不適切な情報提供事例がございました。また、消費者におきましては、先発医薬品と後発医薬品の選択が可能な場合、必ず後発医薬品を選ぶ、または、場合によっては後発医薬品を選ぶという意見が多数でございました。

 このような調査結果を踏まえまして、報告書では、次のように独占禁止法上、競争政策上の考え方を示してございます。

 まず、厚生労働省におかれましては、引き続き、後発医薬品の品質再評価の取り組みなど、後発医薬品の使用促進のための取り組みが進められることが望ましいということ、また、後発医薬品メーカーにおいては、後発医薬品の安定供給、情報提供、品質確保に関して医療機関の懸念を払拭し、これらについて理解を得られるような取り組みを行うことが望ましい、また、先発医薬品メーカーにおいては、後発医薬品取引の妨害は独占禁止法上の問題となり得るものでございますので、医療機関に対し医薬品に関する不適切な情報提供を行ってはならないということ、医師または薬剤師におかれましては、患者に後発医薬品を処方または調剤するに当たり、後発医薬品の安全性や有効性について先発医薬品と同等であるとの説明を行うことが望ましいという考え方を示してございます。

 公正取引委員会としましては、このような実態及び問題点を踏まえ、関係事業者が適切に対応することを望みますとともに、独占禁止法上問題となる行為が行われないよう、引き続き注視していく考えでございます。

市村分科員 ありがとうございます。

 それで、大臣、今、ジェネリック医薬品を処方してもらおうと思ったら、処方せんに患者がサインしなくちゃいけないようになっているんですね。実はこれがどうも普及をおくらせている。つまり、そんなサインなんかしなくても、お医者さんが説明して、これは実はジェネリック医薬品がありますからそちらでもいいでしょうかというふうに、ある意味でその患者にちゃんと説明をし、効能は同じです、安いということであれば、それで患者がオーケーを出せば、ああわかりました、ではそれを処方しましょう、こういうふうになったらいいと私は思うんです。

 今、たしか処方せんの下の方に欄があって、そこに何かチェックをしなくちゃいけないようになっているんですね。実は今ジェネリックの普及率が一%、つまり、その利用率が一%なんです。だから、これではやはり、なかなかジェネリック医薬品は普及していないと思いますが、これについて大臣の御認識をちょっといただけたらと思いますし、お考えをいただければと思うんです。

柳澤国務大臣 後発医薬品とあえて申させていただきます。余り片仮名、横文字を使うのもどうかというような、そういう考え方もございますので、本日は後発医薬品ということで御説明をさせていただきたいと思います。

 これを普及させることというのは、今委員も御指摘になられたように、患者の負担の軽減、また医療保険財政の改善、こういったことからも非常に大事だというように考えております。私どもといたしましては、医療、薬事、医療保険等のあらゆる施策と連携をとりながら、より効率的な医療提供がされるよう、その使用について積極的に推進する考え方を基本的にとっているわけでございます。

 これまで講じてまいりました後発医薬品の使用促進策の効果や厳しい医療保険財政等を踏まえまして、さらにこの後発医薬品が使用を促進されるようにいろいろ方策を検討しているところでございます。

 そうした中に、実際に医薬品を処方される先生とそれからまた患者さんと、あるいは薬局との関係をどうするかということにつきましても、そうしたことの一環としていろいろ工夫をしていかなければならないかと考えておりますが、いずれにいたしましても、私どもは、その使用促進のための方策を検討していきたい、このように考えているところでございます。

市村分科員 私としては、一つきょう具体的な提案をさせていただきたいなと思っているんですが、大切なのはやはり患者の方の意思確認だと思うんですね。だから、いわゆるジェネリック、済みません、私はあえてジェネリックと言わせていただきますが、ジェネリック医薬品について、まだ認知度が低いということもありますから、突然知らないうちに処方されていてというのでは、患者の方としても、何でそんな勝手にやるんだということになるかもしれません。であれば、患者の意思確認をどこかでするということが必要だと。

 そのときに、処方せんということもありましたけれども、例えば、私たち初診で行くと必ず問診票を書くわけですね。最近入院しましたかとか、妊娠中ですかとか、お薬に対するアレルギーがありますかと、いろいろこうあるわけです。そういうときに、問診票の中に、ジェネリック医薬品を希望しますかとか、後発医薬品は括弧できょうはあえてしますが、ジェネリック医薬品を希望しますかということがもしあれば、患者の方がチェックを、はい、いいですと言えば、そこでの患者確認をとったという形にしていけるんじゃないかという気もします。そうしたら簡単だと思うんですけれども、大臣、この考えはいかがでしょうか。問診票です。

柳澤国務大臣 患者さんの意思が、そこで何か、非常にそのプロセスにおいて重要視されているかというと、実は必ずしもそうではありません。

 先ほどちょっとおっしゃられた処方せんへの署名というのは、お医者さんの方がなさるということが今の制度の枠組みだというふうに承知をいたしております。では患者の方はどうするかといえば、これは、患者が薬剤師さんに向けてそういうことを選択すると言えば、それはそういうふうに処方されるという仕組みになっているものと承知をいたしております。

 今、問診票での患者の意思の表明というか確認というか、そういうようなことはいかがかというお話でございましたけれども、いずれにせよ、私ども、この使用促進のための仕組みというのが、今言われるような面も含めてどうあるべきかということを今検討してまいりたい、こう考えておりますので、ぜひ今の委員の御指摘もまた一つの御意見として参考にさせていただいて、その検討を進めたい、このように考えております。

市村分科員 ありがとうございます。

 私としましては、医薬品業界全体が、やはり日本人に対して医薬品の安定供給を、いいものを安定的に供給していくということを全体としてやっていただきたい、その立場はもちろん持った上で、このジェネリック医薬品についてもということを申し上げておるつもりでございます。

 ですから、今、新薬については、過去と比べてまたさらに初期投資が必要だということも世界との競争の中では言われております。だから、そういったことを含めて、新薬開発についてもやはり僕は、日本政府としても、特に鳥インフルエンザの問題とか、タミフルの備蓄量が少ないとか、これは新薬とはちょっと違いますけれども、言われているわけでありますから、そういったことも全体的な流れの中でもとらえていただきたいというのがもちろん思いでありますので、そのことをきょうはまたお願いして、とりあえずこのジェネリックの問題はこれで終わらせていただきます。

 次に、ついの住みかということについて、残りの時間議論をさせていただきたいと思うわけであります。

 それで、この問題も、私ももう三年ぐらいにわたりまして、この委員会、さまざまな委員会の場で議論させていただいております。大臣、率直に、これから大先輩方の世代は一体どこに住むのが、つまり、どこをついの住みかにするのが一番安心なんでしょうか。安全なんでしょうか。大臣はどういう御見解を持っていらっしゃいますか。

柳澤国務大臣 どこをついの住みかにするか、これはもう人間は必ず死を迎えるわけでございますので、この問題はそれぞれについて非常に切実な問題でありますし、また、それぞれについてみずからの生き方というか、そういうことの中で選択をされるということが基本だろう、こういうように考えております。

 ただ、そうは申しましても、いろいろな施策を講じているというのが私どもの役所の立場でございまして、それがどういう方向に向かわんとしているかということで、あえて申し上げますと、今、日本では病院でそういうことを迎えるということの比重が少し高過ぎるのではないか、これが正しいのかどうか、これが一つあろうかと思います。

 その次に、施設の中でのことはどうかといいますと、これについてもいろいろと考え方があるんだろう、こういうように思いますが、全体として、施設の中でついのときを迎える、こういうことも十分考えられるということであろうと思います。

 それから、最近それが非常に少なくなってきたんじゃないかと申し上げたいのは、実は、みずからの、本当に長年住みなれた自宅でもってついのときを迎えるということをどう考えるべきかというようなことがありまして、現在、私どもといたしましても、それを総合的に考えて、もう少し在宅での終末期というものを増加させる傾向、そういうことを進めていくべきではないか、こんなことも率直に言って考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、最終的には人それぞれが選択をする、あるいは、もはや自分の判断もなかなかおぼつかなくなってくる中で、家族の方々が選択をするということであろうと思いますけれども、施策をする側から申しますと、今言ったようなことが我々の問題意識として考えられているということを御答弁申し上げる次第です。

市村分科員 大臣もおっしゃられた中で、確かに一番いいのは、素直に考えれば、住みなれた自宅で最期のときを迎える、これが多分多くの方が望むところかもしれません。しかし、現状は、前もこの委員会の場でもほかの委員会の場でも議論しましたけれども、例えば昔の介護期間というのは、本当に数週間から数カ月だったんです。ところが、医療の発展のおかげで、今は二年、三年、長い場合は十年にわたりまして家族が介護に当たらなくちゃならない、こういうケースも出てくる。そうすると、悲劇が起こる可能性が高まっているということなんですね。

 だから、もちろん住みなれた自宅で最期をという希望を持っていられる方、また家族の方も、いや、何年かかろうが、二年かかろうが三年かかろうが十年かかろうが、やはり親をみとりたいというような、また長い間連れ添った方をみとりたいというのは、その御希望を一切ノーと言うわけではありませんが、しかし、一般的には、介護期間が長くなってくるにつれて、家族介護では多分もう無理だという現状が出てきていると思います。結果、それが行き着くところは、介護心中、介護殺人というような状況になってくる。

 そうなると、そもそも介護保険ができたときの議論は何だったかというと、そうしたいわゆる介護の社会化ですね、介護はみんなでやりましょうということにやはり戻らないと、私は、多分、これから特に、ますます悲劇を生み出す可能性は高まってくるだろう、こう思っています。

 それで、私の思いでは、やはり施設介護ということも念頭に置いて考えていかなくちゃならないんだろうなと思います。やはり施設だと、スタッフの方は休みもとれます。三交代制ぐらいになれば、その間も休養がとれる。一人に過度な負担がないようなやり方をしながら、しかも、多くの方が一緒の場所にいらっしゃいますから、これを効率と言ったら悪いんですけれども、大先輩方の面倒を見るのに効率性をと言ったら大変失礼なんですけれども、やはり効率性というのはあるんですね。介護についても、在宅介護だと、ヘルパーの方が一軒一軒回っている、その移動時間だけで大変大きな時間がかかりますし、負担がかかります。施設だと、本当に廊下を平行移動していけばということになりますし、やはり、そうした施設介護というものを充実させていかなきゃならない。

 ただ一方で、いわゆる特養とかも、公的なそうした巨大なお金をつぎ込んで、さあそれをということもこれは無理だろう。そうすると、今の政府の方針ではありませんが、民間の力をかりなくちゃいけないということになるわけです。そうなると、やはり、いわゆる有料老人ホームと言われるものがこれからのついの住みかの中心にならざるを得ない、こう私は思っているんです。

 ところが、ここで問題なんです。

 この有料老人ホームに何の規制もないんですね。ルールづくりがされていないんです。だから、この間も、埼玉でしたか、報道によると、有料老人ホームという報道もあれば介護施設という報道もありますけれども、その辺はまだ定義がなされていないということもあって、しかも、有料老人ホームの場合は、これは株式会社です。いわゆる営利企業です。ですから、一時金をたくさん集めて、さあ一年後、二年後、経営がおかしくなりました、倒産しました、さようならと言われたら、住んでいる人をどうするのかという問題も出てきます。恐らくこれからどんどんふえてくると思います、この問題が。今でもありますから。

 だから、こうしたことについて、私はやはりルールづくりを進めなくちゃならないと思います。特に、有料老人ホーム法みたいなものをつくって、ニーズがあるわけですから、そうしたニーズがあるものに対して、きちっとルールづくりを進めていくということが必要だ、私はこう思っておるわけですが、大臣の御見解はいかがでしょうか。

柳澤国務大臣 有料老人ホームというのがついの住みかとして重要な役割を担っていくということは、我々としても想定をしておかなければならないことであろう、このように考えております。その場合に、健全経営それから入居者の保護ということが極めて重要な課題になるわけでございます。

 私どもといたしましては、今委員は、業法というようなことをひとつ考えたらいかがかという御提案をいただいているわけでございますけれども、平成十七年に老人福祉法を改正いたしまして、有料老人ホームの設置者に対しまして、まず第一に、契約時におきまして、重要事項説明書を交付するということを義務化いたしました。これは、一般の不動産取引でも、不動産の取引に当たっては重要事項説明書を交付しなさいというのは当然のことでございますが、これを義務化したということでございます。

 それから、第二番目に、一時金の保全措置というものを義務化いたしております。このようなことによって、今、多額の一時金を支払って入居をした、間もなく相手が倒産をするというようなことで多額の一時金がどこかに消失してしまうというようなことは防ぐということを措置いたしたところでございます。

 さらに、実際の行政の衝に当たります都道府県におきます立入検査権というものを付与いたしております。さらに、立入検査に基づいて処分を行う、そして処分を行った場合にはこれを公表するというような措置を可能とするような、そういう見直しを行ったところでございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、委員の御心配というのはよくわかっておりまして、そういったことにこたえる法改正を行ったという立場でございます。

 現在のところ、業法の制定ということまでは必要というふうには思っておりませんで、当面、とにかくこの新たな制度を的確に運用することによりまして、先ほど、冒頭申した、経営の健全性の維持それから入居者の保護という所期の目的が達成されることを考えてまいりたい、このように考えております。

市村分科員 たくさん議論したいことがあるんですが、もう時間がないので、今の大臣がおっしゃった中で、一時金の保全措置がありました。これは最高五百万までなんです。場合によっては何千万というお金を払って、でも一時金五百万しか返ってこないんですね。これは五百万が最高ですから。しかも、老人ホームと損保会社が契約しているものですから、これは単年度契約なんですね。これは、もし倒産がふえてきて一時金の支払いがふえてきたら、結局、次のときから多分損保はもう動かなくなります。そうすると、有料老人ホーム協会がこのお金を全部持たなくちゃいけないんです。そうしたらもう無理です、積立金がありませんから。

 ということで、これは今はまだ問題が表面化してないから何とかもっているだけの話であって、これからふえてきたら大きな問題になりますので、そのことをぜひともお考えいただきたい。今はまだいいんです。でもこれから特におかしくなるということをずっと申し上げているんですね。だから、本当にちゃんと用意をしておかないと、問題が大きくなってから取り組んでも遅いという状況にありますので。いつも日本はそうですけれども、被害者が出てから何かという話になります。ですから、そうならないようにぜひとも大臣には督励を、特段のお願いをさせていただきたい。

 それから、きょう、もう一点だけ、済みません、国土交通省さんに来ていただいています。例の今いろいろ進めていらっしゃる高専賃の問題、あれがどうなったかだけ一言最後にお聞きして、きょうはもう時間がないので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。大臣、どうもありがとうございました。

渡海主査 簡潔にお願いします。

和泉政府参考人 御指摘の高専賃でございますが、平成十七年十二月に制度開始以来、今月時点で四百二十八件、一万五百四戸の住宅が都道府県に登録されております。

市村分科員 どうもありがとうございました。

渡海主査 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村智奈美君。

西村(智)分科員 民主党の西村智奈美でございます。

 私は、きょうは、主に働く女性の問題、そしてまた、そこの先にあるワークライフバランスという観点から、昨年改正になりました男女雇用機会均等法の点から質問に入りたいというふうに思っております。

 昨年の男女雇用機会均等法改正は、非常に大がかりなものだということで多くの女性たちが期待をしておりました。幾つか評価される点があるということはもう大臣も御承知のとおりでして、女性のみならず男性に対しても性を理由とした差別が禁止されたこと、あるいは妊娠、出産を理由とした不利益取り扱いが禁止になったこと、いろいろ評価される点はあるんですけれども、実は、昨年の法改正のときに一番大きな論点になったのは間接差別についてでありました。ILOの方からも何度となく勧告を受けてきたこの間接性差別について、昨年のこの均等法改正の中でしっかりと明記をされることが多くの働く人たちの希望であったわけなんですけれども、残念ながらこれは限定列挙ということになってしまった。

 私たち民主党は、野党と一緒に修正案を提出いたしました。この中では、限定列挙にとどまらず、その考え方をしっかりと書き記すことによって、いわば職場の中で埋もれている間接差別をその法理を使って浮き彫りにしていくということを目指したものであったんですけれども、残念ながら賛成少数でこれは否決されております。

 その過程の中で、いろいろな審議に対して答弁をいただきました。きょうは、まず、その均等法、一年前の改正のときに確認的に答弁をいただいた、その点が、一年たってみて実際どういうふうに取り組んでいただいてきたのかということから質問をしたいというふうに思っております。

 まず第一点目は、間接差別の定義や法理について、これは当時の川崎厚生労働大臣から答弁をいただいているんですけれども、その定義や法理について指針に盛り込むとともに、均等法改正法案の第七条の内容とあわせてパンフレット等において周知を図ってまいりたいというふうに御答弁をいただいております。

 これはどうなんでしょうかということで、私も伺いました。そうしたら、このように大変立派なパンフレット、緑色と赤色と二種類ありまして、これは改正前と改正後で違うんですと。どこが違うのかと言いましたら、「施行されました。」というところと「施行されます。」というこの文言の違いだということなんですね。非常に御苦労なことだったと思いますが、いずれにしても立派なパンフレットが作成されております。

 これはどういうふうに作成されたのか、その中身はどうなっているか、また、作成部数、配付先などについても答弁をいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 間接差別を含みます改正均等法の内容につきまして、今お示しいただきましたが、「改正男女雇用機会均等法のポイント」というパンフレットあるいはリーフレット、これを二十八万一千二百部作成いたしまして、各都道府県の労働局の雇用均等室を通じて事業主あるいは事業主団体等に配付して、周知を行っているところでございます。

 それから、その中身のことでありますけれども、例えばパンフレットにおきましては、「省令で定めるもの以外については、均等法違反ではありませんが、裁判において、間接差別として違法と判断される可能性があります。」ということを書いておりまして、雇用管理に当たりましては、採用、募集とか配置、昇進などに当たり「不必要な要件を課して労働者の能力発揮を阻害していないか改めて見直しましょう。」こういったことも記載して、周知徹底を図っているところでございます。

 なお、このパンフレット等の内容につきましては厚生労働省のホームページにも掲載しておりまして、パンフレット等の配付先のみに限らず、幅広く周知に努めているところでございます。

西村(智)分科員 二十八万部つくっていただいた。その数字だけ伺うと、ちょっと多目につくっていただいたかなという気がしないでもないのですけれども、しかし、日本全国にある全事業所数の中では、二十八万部というのは非常に少ないわけですね。大海の中に石を一つ投げ込むような話だと思います。もう少し厚生労働省としてもしっかりとこの点のPR、ホームページに掲載しているからということで済む話ではないと思います、いろいろな関係団体を含めて、より一層積極的なPR活動に取り組んでいただけるように、ここは強く要望したいと思います。

 あわせて、均等法の議論の中で、コース別雇用管理以外にも存在する不合理な雇用管理制度の存在について指摘をさせていただきました。これは今回のパート労働法の改正ともかかわってくる部分ではあるんですけれども、この点、同様のガイドラインをつくるべきだという私の問いかけに対して、審議会にそのことは意見として伝えたいという答弁をいただいておりますけれども、この点についてはどうなったでしょうか。

大谷政府参考人 今御指摘の件でありますけれども、平成十八年の七月二十日に開催されました労働政策審議会の雇用均等分科会におきまして、衆議院の御審議の中で、コース別雇用管理以外にも男女均等の趣旨に反する不合理な雇用管理制度が存在するので、これについてもコース別雇用管理と同様のガイドラインをつくるべきという御質問があったということについて明快に御報告を申し上げた経緯がございます。

西村(智)分科員 次に、同じく確認答弁についての確認でありますけれども、コース別雇用管理に関する留意事項、これについて、見直す必要があるという答弁をいただいております。このことについて、実際に見直しが行われたのかどうか、その内容いかんについて伺います。

大谷政府参考人 コース別雇用管理に関する留意事項でありますけれども、この留意事項につきましては、間接差別の禁止等が盛り込まれた今回の改正均等法の内容に合わせまして改定して、平成十九年の一月二十二日の労働政策審議会雇用均等分科会に御報告し、この四月一日より適用しているところでございます。

 その改定の具体的な内容でありますけれども、まず、総合職の募集、採用に当たって合理的な理由なく転居等を伴う転勤に応じることができることを要件とすることを、均等法等に照らし男女労働者の能力発揮のために行うことが望ましい事項から、均等法に違反しないために留意すべき事項に格上げする。また、次のポイントとして、募集、採用時に転居転勤要件を設けるに当たりまして留意すべき事項として、転勤の期間、場所、それから頻度、実績等の情報提供を行うことが望まれるというふうに規定した等の見直しを行ったところであります。

西村(智)分科員 続いて、附帯決議に関連して伺いたいと思います。

 先ほどの間接差別についてですが、研究会報告にありました七つの事例も、解説本で紹介をいただけるという話ですし、また、パンフレットの方にはこの三つ以外にも間接差別というのは存在するというふうに明記をいただいたことは評価したいと思うんですが、やはりここが限定列挙であるということから生じる懸念というのはぬぐい去れないんだと思っています。

 間接差別の見直しについて、附帯決議の中で、法律施行の五年後の見直しを待たずに、対象事項の追加及び見直しを図ることというふうに記載されておりますけれども、これは具体的にどのように見直すことになるのでしょうか。実際、各都道府県の均等室などにもいろいろな相談が行っているかと思うんですけれども、そこから拾い上げることになるのか、あるいは審議会の議論を経て、恐らくそうなるんだと思いますけれども、一体どのような手続で見直すことになるのか、そこを伺いたいと思います。

大谷政府参考人 均等法上の間接差別となります措置について定めている厚生労働省令については、判例の動向等を見ながら適時適切に見直しを行うこととしておりますが、新たな判例が出されたといったような場合、また関係審議会において間接差別の対象の追加の提議がなされたような場合、こういったもののほか、今ちょっと御指摘にもありましたが、雇用均等室への相談事案等について、間接差別の対象とすることが適当な事案が把握された場合も見直しの契機となる、これは考えられるわけであります。このため、雇用均等室に対しまして、そのような事案が把握された場合には本省に報告するよう指示を行っているところであります。

 いずれにしましても、この法律、まだ四月一日より施行されたばかりのものでありまして、今後の施行状況を見守らなければなりませんけれども、この附帯決議の御趣旨を踏まえて適切に対処していきたいと思います。

西村(智)分科員 ぜひ、この間接差別の対象事項の追加、見直しに当たっては、広く働く人たちからの声を聞き入れてくれるように要望したいと思います。

 つまり、裁判にまで持ち込まれるケースというのは、これは山でいきますと本当にてっぺんのところだけで、そこに至るまでに均等室などに相談に行くということが、事例としてたくさんあればいいんですけれども、現実には、この均等室も、相談に行きましても人員不足などでなかなかうまく対応されないというケースがどうもあるように拝見しております。

 そういったことからいたしますと、審議会の議論でいろいろな事例が挙げられるということは期待するんですけれども、これはやはり働く人たちの問題でありますから、働く人たちの声をより広く聞き入れるように、そこはぜひ工夫をお願いしたいというふうに思っております。

 続きまして、この附帯決議の第九の項目なんですけれども、ここで、ワークライフバランス、仕事と生活の調和ということが明記をされております。今回パート労働法の議論をしているときにも感じたんですけれども、ワークライフバランス、仕事と生活の調和がこれからより一層重要になる、恐らく大臣も同じ御認識でいらっしゃると思います。そうおっしゃっていただいている割には、実は、改正される法律の中にそのことは全くと言っていいほど反映されていないというふうに感じております。

 この附帯決議の第九で、長くなりますが、ちょっと読み上げます、「男女労働者双方の仕事と生活の調和の実現に向け、仕事と家庭の両立がしやすい職場環境の整備を進めるとともに、特に男性労働者の所定外労働時間の抑制及び年次有給休暇の取得を一層促進するなど、長時間労働の抑制に取り組むこと。また、労働時間法制の見直しに際しても、男女労働者双方の仕事と生活の調和の実現に留意すること。」これは全党一致で採択されている附帯決議でありますけれども、これが一体どの法律の見直しに際して留意されているのか。これは、私、今回パート労働法の審議に当たっても非常に疑問に思う点でありました。

 私たちは、パート労働法の見直しに当たっては、やはりこれまで男性はこういう働き方、女性はこういう働き方ということで枠が当てはめられてきた、その延長線上にパート労働の問題というのができ上がってきているんだというふうに考えております。ですので、そこを解消していくためには、もちろん差別そのものを見直していくということは必要なんですけれども、やはり、どちらの性の労働者もそれぞれがそれぞれの仕事と生活のバランスをとりながら働いていける、そういう法律が必要だ。

 ところが、この間見ておりましても、残念ながら、労働契約法案の中にもそういった文言というのは見られない。大臣、このワークライフバランス、労働法制の中で、一体どこでどう担保していただけるんでしょうか。

    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕

柳澤国務大臣 ワークライフバランスをどの法律でうたい上げるか、またそれを実現するための実定法的な条文を置くかということでございます。

 今委員は労働契約法の中にもないじゃないかというふうに仰せられましたけれども、私どもとしては、雇用管理の改善ということを書いた項目の中にはそれは含まれておりますよということを、あれは四条の一項の、ずっと十何項目にわたって号を立てまして、そうしたことをうたわせていただいておりますが、その中でも、その点はそうしたことを念頭に置かないでもないということであります。こういうことを、せんだって、西村委員は御在席ではありませんでしたけれども、私からは答弁したといういきさつがありましたので、そのことをちょっと触れておく次第でございます。

 このワークライフバランスが大事だということは私もよく承知をいたしておりますが、同時に、うたい上げということもさることながら、実定法の中でそうしたことが実現できるような、そういう条文を置くということが非常に大事だというふうに考えているわけでございます。

 そういう観点から、御質問でございますのであえて触れさせていただきますと、まず、今度の労基法における法定割り増し賃金率につきまして、そうしたことを念頭に置いた改正を考えているということでございます。

 特に、限度基準告示におきまして、一定時間を超える時間外労働をできるだけ短くするよう努めることを労使双方に求めるということがこの法規の趣旨でございますけれども、そうしたことによって、具体的にワークライフバランスが実現するような、そういう時間外労働の抑制を図っていきたいということを考えているということが第一点でございます。

 それから第二点目は、これは法規というより予算上の措置でございますが、時間外労働の削減に積極的に取り組む中小企業に対して助成金を創設する。

 それからまた、先ほど第一に申したようなことにつきまして、労基監督署における重点的な監督指導の強化というようなこともあわせて行うことといたしているわけでございまして、私どもとしては、長時間労働の抑制の実効を上げましてワークライフバランスを実現させていきたい、このように考えているということであります。

西村(智)分科員 長時間労働の抑制という、その問題意識は共有していただいているというふうに今お伺いをいたしました。

 ですけれども、今雇用の現場で実際に起こっていることというのは、言ってみれば雇用の二極化ですね。長時間労働をする人は、もうとことん長く働く。しかし一方で、短時間で、まあ長時間という方も多くいらっしゃいますが、安い賃金で、低い労働条件で働いている人がいるというその二極化の状況というのは、今大臣がおっしゃった労基法の見直しで果たして本当に対応できるのかどうか、私は大いに疑問なところだと思います。ですので、パート法においても同様の課題が言えますが、やはり今回の労働契約法の中でも、いわゆる均等待遇原則、これはしっかりと打ち立てるべきではなかったのかというふうに考えているんです。

 なぜ、政府の中で共有されているはずのこのワークライフバランスという考え方が法律の中で立法の趣旨としてはっきり出てこないのか、私は疑問ではあるんですけれども、その点についてはまたこれから私たちも議員立法という形でいろいろな提案をさせていただきたいと思っております。

 質問を続けたいと思います。

 ILOの百号条約及び百五十六号条約の中で、均等待遇の問題、パート労働の問題に関して、パート労働の問題は性差別の問題であるというふうにはっきりと指摘をされているわけでありますけれども、近々ILOの総会が開かれまして、日本政府に対して幾つか、資料を提出しろとか報告をしろとかいうことが言われております。実際に、これは今どのように報告をするということで準備中であるのか、伺います。

大谷政府参考人 ただいまの件につきましては、今回、パート労働法の改正について取り組んでおるところでありますが、そういったものとか、諸般の現在の制度の状況について今取りまとめをしておりまして、まだちょっと準備中でありまして、どういう形で整理するかは固まっておりませんけれども、六月の総会に向けて政府の考え方を準備している。

 その中では、今回のパート労働法についても、これは性差別の問題として扱うというよりも、労働の実態の中で均衡待遇を行っていく、こういった整理で検討しているところであります。

    〔北村(誠)主査代理退席、主査着席〕

西村(智)分科員 ぜひ、ILOが納得できるような報告ができるように、そこのところはきちんと準備をしていただきたい。その前提として、やはり日本の国内法ではっきりとした規定が必要なわけでありますけれども、私も今後の動きについて注意深く見ていきたいと思っています。

 最後に、公務員の非常勤職員及び臨時職員の問題について伺いたいと思います。

 育児・介護休業法が制定されて、三年前でしたでしょうか、見直しが行われました。この中で、いわゆる期間の定めのある労働者も、一定の条件を満たせば育児休業が取得できるということになったわけなんです。

 ところが、いわゆる公務員の世界でいいますと、ここも非常に臨時職員、非常勤職員の方が多いんだそうです。この前、委員会で伺いましたら、地方自治体で四十五万人、そして国家公務員で十何万人というような数でありました。恐らく、私、いろいろなところで拝見する限り、そのほとんどは女性なんだろうというふうに思います。この臨時職員、非常勤職員の方々で、一年以上の雇用が見込め、そしてまた週二十時間以上の勤務である方は、いわゆる雇用保険に入っているんですね。雇用保険に入っているんだけれども、実は育児休業法の適用除外になっておりまして、育児休業そのものを取得することができない。しかし、その雇用保険の保険料が原資となって、そこから育児休業期間中の給与補てんというのが行われている。こういう非常に大きな制度の矛盾があるというふうに思うんです。

 これは、公務員という身分の特殊性もさることながら、やはり制度としてほったらかしにするのはいかがなものかというふうに考えております。この点について改めて伺いたいと思いますが、どうでしょうか。

大谷政府参考人 平成十七年の四月より施行になりました改正育児・介護休業法におきましては、一定の期間雇用者を対象として育児休業の取得を可能としたところでございます。これは、考え方でありますけれども、期間雇用者であっても、育児休業を可能とすることにより雇用の継続が見込まれると考えられる労働者につきましては、休業の対象とするという考え方であります。

 一方で、今委員からも御指摘ありました、地方公務員それから国家公務員の臨時職員、非常勤職員の育児休業について、これをどうするかということでありますけれども、これは、国家公務員あるいは地方公務員のさまざまな特殊性を勘案して、公務員法制における取り扱いの中で検討されるべきものというふうに考えておりまして、今お話にありました雇用保険制度との関連を含めて、厚生労働省としてその処遇についてお答えを申し上げる立場にないということを御理解賜りたいと思います。これは、前回関係の委員会で申し上げた答弁と同じでございます。

西村(智)分科員 私、この点について質問いたしましたら、与党の皆さんからも、それはもっともな話だというふうなお声はたくさんちょうだいしているんですよ。これはやはり制度の大きな問題点だと思います。そこのところを踏まえて、公務員制度改革の中で議論されるべきだ、そう言って突き放してしまいたくなるお気持ちもわかるんですけれども、そこのところは厚生労働省としてやはり何がしかの一定の見解を示す必要があると私は思っています。強く申し上げたいと思います。

 まだちょっと時間がありますので最後にもう一点伺いたいと思いますが、先ほどの話に戻りまして、労働契約法案についてであります。

 この労働契約法の八条、九条、十条、このあたりを眺めておりますと、やはり就業規則に非常にウエートが置かれているなというふうに感じるわけなんです。

 実際に就業規則をとらえて考えるときには、私は、就業規則による労働条件の一方的な変更は直ちに合意とは言えないという考え方を明らかにすることですとか、あるいは、労働契約変更請求権などというものを盛り込むべきだというふうに考えておりますけれども、質問は、この就業規則に関して現在存在している問題点についてであります。

 これは民間団体が行ったある調査でありますけれども、実は、就業規則を見たことがないという人たちがかなりの割合でいるということなんです。就業規則を見たことがないという人たちがかなりの割合でいるというその現状において、労働契約法、言ってみれば就業規則万能主義とでもいいましょうか、それで本当に公正な働きが確保されるのかどうかという懸念を私は持っておるんですけれども、この点について、政府の答弁はいかがなものになるでしょうか。

渡海主査 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

青木政府参考人 就業規則につきましては、お話ありましたように、労働契約法案において画一的、集団的に労働条件を変更するという一つのやり方を明らかにしようということでいたしておるわけでありますが、今の就業規則につきましては、現行法におきましても、使用者が就業規則の周知手続を、きちんと周知しなければならないということで労働基準法にも規定されているところでございまして、まずもってきちんと就業規則を周知していただいて、そして、そういったことをしっかりと認識していただいて働く場に労働契約が適用されていくというのが正しい姿だろうというふうに思っております。

西村(智)分科員 時間になっておりますので短くしますが、そうなれば、それは正しい姿だと思います。ですけれども、現状見ていないという人たちがたくさんいるという中で、この労働契約法が就業規則万能主義になっているということに私は大きな問題を持っておりますので、また今後の質疑で見解を伺っていきたいと思います。

 終わります。

渡海主査 これにて西村智奈美君の質疑は終了いたしました。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時七分開議

渡海主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 厚生労働省所管について質疑を続行いたします。岩國哲人君。

岩國分科員 民主党の岩國哲人でございます。

 この決算行政監視委員会におきまして、我が国の厚生労働関係の行政の実態とこれからの方向について柳澤大臣に質問したいと思います。

 まず最初に、国民の関心事でナンバーワンに挙げられておりますのは年金であります。私も、いろいろな国に住み、生活し、また保険料も払ってまいりました。我が国の少子高齢化、これがヨーロッパに比べて四倍の速さ、アメリカに比べて二倍の速さで進んでいるという実態にかんがみまして、これはもう、よその国の年金制度をあれこれ研究しているというよりは、我が国独自のものを、しかも、将来どうなるかということも考えながら進めていかなければならないときに来ておると思います。

 そこでお伺いいたしますけれども、今後の少子高齢化に伴い、五年後、十年後に企業が負担しなければならない厚生年金の負担金額について厚生省の中ではどのような試算をしていらっしゃるのか、試算があるとすれば、どういう前提において試算を進めていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 企業が二分の一、労使折半ルールのもとで負担する保険料でございますが、厚生年金については、平成十七年度決算で年間十・〇兆円となっておりますが、将来の厚生年金の保険料につきましては、平成十六年の年金制度改正によりまして、保険料を極力抑制するという観点に立ち、毎年度の保険料率を法律で具体的に定めて、二〇一七年以降の厚生年金の保険料率を一八・三%に法律上固定するということを行っておりますので、そこを踏まえた見通しをお答え申し上げたいと思います。

 現在から五年後の二〇一二年度、平成二十四年度には、この年度で企業が負担する保険料は、十六年の制度改正の際の年金財政再計算見通しによりますと、平成二十四年度、名目額で十三・八兆円と見積もっております。

 十年後でございます平成二十九年度、二〇一七年度には保険料率は上限の一八・三%に達しておりますので、この年度に企業が負担する保険料は、名目額で十六・五兆円と見積もっております。

岩國分科員 ありがとうございました。

 私は、先ほど申し上げましたように、これからの企業の行動形態あるいは経営形態も、国境を越えてますますグローバル化し、またいろいろな政治的、社会的、経済的要件の変動を受けやすい、ある意味では普通の給与所得者以上に利益が変動しやすい環境の中で企業に負担をさせるということは、これは暴論だとおっしゃるかもしれませんけれども、もう時代おくれになっているんじゃないか。

 企業にいつまでもこういう大切な国民の厚生年金、年金制度の根幹をおんぶにだっこするというのではなくて、むしろ企業負担というものを全部取り払って、そして、それぞれの企業の責任に応じて、負担すべきものはすべて賃金として、労働分配率としてしっかりとそこへ返していく。また、それぞれの被雇用者は、自分の資産状態と将来の生活設計に基づいて、自分の選択に応じて自分で積み立てていく。

 自己選択、自己積み立て、そして自分で受け取るということの方が、雇用形態においても被雇用形態においても、国境がほとんどないような形でもって今経営されている、企業のあり方そのものもそうですから、私は、以前からの持論でございますけれども、企業の年金負担額はすべて支払い給与に充当させる。受け取った被雇用者が自分の選択に応じて、毎月一万円、毎月二万円、毎月三万円。四十年間払えば十倍の十万円、二十万円、三十万円、途中の乗りかえあり。自分が選択して、自分で計算できて、自分が幾ら受け取れるかがわかって、そういう生活設計をさせる、そのような時代に来ているんじゃないかと思うんです。

 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、仮にこのような考え方をとった場合に、今の十三・八兆円あるいは十年後に十六・五兆円、こういう金額を給与所得として全額充当した場合には、今の給与所得は何%上がることになりますか。お答えいただけませんか。

渡辺政府参考人 恐れ入ります、今の最後のお尋ねの数字の点についてだけお答え申し上げます。

 例えば、今現在、厚生年金の保険料率は一四・六四二%と法定されております。企業負担分は、その半分でございますので七・三二一%、これが企業負担分でございます。これを、企業が持つのではなく、当該労働者、働いている人が給与の中で見ていくということになりますと、賃金の七・三二一%に相当する額が賃金に上乗せされるという状態のもとで決済されていかなければならない、それだけの賃金上昇というものを見込まなければいけないわけでございますが、実際問題としてそういうようなメカニズムで賃金が動くものかというのは、これは経済の問題だというふうに思いますし、制度論的に言うと、私どもは、諸外国でも、先進国では皆やはり事業主負担分というものを込みにして、その多寡はございますけれども、設計されているという中で初めて、幅広く年金保険の傘をかけて将来の負担に耐えていけるのではないか、こういう理解をしておるところでございます。

岩國分科員 大ざっぱに言って、十年後には給与所得の約一〇%を企業が負担する、それを給与に振りかえる。ただし、被雇用者が、その分を今と同じ年金に積み立てるかどうかは本人の自由裁量、自由選択に任せる。したがって、企業としてはそれだけの年金負担がなくなり、いわゆる年金リストラという嫌な言葉がありますけれども、人を幸せにするものが人を不幸せにする原因となっている一つの理由が、この年金の企業負担分にあるのではないかと思うんです。正規社員を減らす、そして雇用をできるだけふやさないようにする。そういう、人を幸せにしなければならない年金の考え方が、人の不幸せをふやすようなことになってしまう。この辺は発想の転換が必要ではないか、そのように思って今のようなことを私はお伺いしたわけです。

 次に、国民年金の納付率についてお伺いいたします。

 納付率が非常に低下しておるということは再三国会でも議論され、そして新聞等でも報道されておりますけれども、この県別の納付率のばらつきが非常に拡大しているんじゃないかと思うんです。

 今から二十年前は、大体各県とも納付率八〇から九〇%。ばらつきはせいぜい五から一〇%でした。二十年後、全体の水準が低下する中で、この格差拡大、格差国会と言われるぐらいに、いろいろな意味で負担やあるいはメリットの格差というのが拡大していると問題になっております。

 こういう大切な国民年金の納付率そのものが県別で非常に拡大している。しかも、この拡大傾向が固定化しているということ。これについては当然そういう認識は持っておられると思いますけれども、二十年前に比べて、十年前に比べて、現在のこの格差拡大について、特にこれがもう定着しておって、非常に低いところは、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京あるいは大阪。東京、大阪に至っては六割の人しか納付しない。それに比べて、島根県、鳥取県あるいは長野、福井、石川、富山、こういったところは七五%以上。島根県の場合には八〇%を維持しておる。二十年間に納付率の低下が一〇%でとどまっている。他の県では二〇%も低下している。

 これは、単に県民性ということだけで片づけていいものか、どういうところに原因があるという認識を持っておられるのか、それについてお伺いしたいと思います。

青柳政府参考人 国民年金の納付率についてのお尋ねがございました。

 ただいま議員の方からもお示しがございましたように、全体の納付率が、二十年前あるいは十年前と比較した場合に低下する傾向の中で、これが固定化しておるのではないかという御指摘でございました。

 確かに、特に最後の方で触れられましたように、東京、大阪を中心とする大都市圏、これが非常に納付率が低くて、しかも、それは十年前、二十年前においても同じような傾向があったというのは御指摘のとおりかと存じます。

 大都市圏において納付率が低いことの主な要因といたしましては、御存じのように、他の年齢層よりも全体として納付率が低い若年層の方の割合が非常に高いということが一つ。それから、就業異動率が高くて、失業等によりまして国民年金の中でも第二号から第一号に移るというような形で移動が非常に多いために、こういう方の納付率が下がっていること。それから、実際に国民年金の指導員等、推進員等が戸別訪問して納付勧奨をする場合にも、面談できない場合が非常に多いというようなことなどが一つの要因ではないかというふうに考えております。

岩國分科員 国民年金の根幹をなす納付、国民の一番大切な義務を実行しない、そして、実行させることに非常に無理があるというのは、今のような形態そのものが一つの壁にぶち当たっているということじゃないでしょうか。

 例えば、一つの解決方法としては、消費税ですべて納付させるという形で納付コストを下げる、納付の時間も節約する、これも私は一つの考え方だと思います。こういった県別の格差が拡大し、一向に縮小しないということは、年金制度そのものの大きな障害になるし、また、それぞれに納付させるという今のやり方が根本的な改革を迫られているということになるんじゃないかと思うんです。

 一生懸命努力しろ努力しろ、ピンポン、ピンポン。しかし、おっしゃるように、異動率が高い、不在率が高い。異動率と不在率の高い大都市においてはこうやって納付率が低下している。異動率と不在率の高い東京、大阪、そういったところの納付率の低さを、いわゆる地方という島根県、鳥取県、こういうところの納付率で全体をカバーしている。これはおかしいんじゃありませんか。所得の高いところの人たちが、所得の低い人たちが払っていないそれをカバーするという現象が起きているならともかく、これは逆現象でしょう。

 資料一を見てください。二十年前、十年前、そして現在、どんどんこうして下がっていって、東京は六一・三%、大阪五七・九%、こういうところにそれは象徴されていますね、低いところ。高いところは、島根県八〇%、鳥取県七六・一%あるいは長野県七八・一%。こういうところはみんな、東京、大阪の所得に対して、六〇%、五五%、五〇%の一人当たり県民所得しか持っていないところなんです。収入の半分のところが、収入の倍もある東京、大阪の人たちの納付していないものを肩がわりしている。この現象について、柳澤大臣、どうお考えになりますか。

 これは正義という観点からも私はおかしいと思うんですね。所得の多い人たちが所得の少ないところの納付率の低さというものをカバーするような仕組みならともかく、こうした所得水準が低いところほどまじめに、これは県民性もあるかもしれませんよ。東京、大阪の人に対しては失礼な話かもしれません。しかし、長野県とか島根県とか、そういう純朴な人たちが、給料、平均所得五割か六割の所得の中からまじめにこうして日本の納付率を支えている、この現象についてどうお考えになりますか。それが一つ。

 資料の二をごらんください。さらに格差の問題はどんどん広がりを見せています。これは代表的な県を取り上げただけですから、ほかにも同じような現象が起きております。

 高校生が十八歳になってどこへ進学するか。県外にどんどん出かけていって、県内に残るのは四五とか五三とか、ほとんど半分は若い人がいなくなっていくんです。

 次に、預けたお金はどうなのか。預けたお金も約五割ぐらいしか地元の企業への貸し出しとして返ってこない。

 人も出ていく、金も出ていく。しかし、国民年金の納付率はこのように非常に高いんです。若い人を奪われ、お金も、奪われると言うと表現はおかしいんですけれども、人は出ていく、金は出ていく。納付率はしっかりとこういうところが支えている。

 柳澤大臣、この現象をどういうふうにお考えになりますか。国民年金という老後の安心を支える大切な仕組みが、こういう格差拡大の今の現象、日本の現状の中で、これ以上こうした地方の所得の少ないところに負担をさせる仕組みというのはもう変えるべきじゃないかと私は思います。どうぞ、お答えいただけませんか。

柳澤国務大臣 今の岩國委員の御質問は、まず、納付率について不公平が生ずるのではないかという観点からの御質問が一つあったかと思います。

 つまり、非常に所得等が高い東京だとかいうようなところ、あるいは愛知県も六〇%台と言えばそうなんですが、そういうようなところで非常に納付率が低い。それに反して、所得が比較的厳しい状況にある島根県とかそういうようなところの国民年金の納付率が高い。これはいわば、所得の低いところが所得の高いところに内部補助をしているような不公平が生じるのではないか、こういう御指摘が一つあったかと思います。

 これについては、実は納付をしない人は国民年金の受給権もまた持たないわけでございまして、そういう意味では、そのような内部補助というか、そういうようなことを通じての不公平というのは生じないということであろうと思います。

 しかしながら、それでは、そういう未納付の人は受給権も持たないということでいいのかと言えば、それはやはりそうではないわけでございまして、私どもとしては、納付する義務のある人にはできるだけ納付をしていただいて、それで受給権もしっかりと持っていただく。もちろん、保険料の納付が難しいという方には段階的な納付の免除というような措置も講じておりまして、できる限りの納付をお願いするという制度も持っておりますので、そういう形でできるだけ納付の義務を果たしていただくということに実は努めていかなければならない、このように考えているわけでございます。

 しかしながら、岩國委員の御質問は、そういうような状況であればそこにはおのずから限界があるのであって、そもそも国民年金の保険料をこうした形で納めてもらうというそのシステム自体が問題なのではないか、そういう意味では、国民年金の保険料というものを例えば税でもって全額負担してしまうというようなことがとれないのかということでございます。

 これに対しては、私どもは、年金というのは、そうした公助と申しますか、そういう形に一度に飛躍するということはやはり望ましくない。やはり年金は、基本的には自助、共助というようなことでこれを維持していくのが正しい。それは他の諸国においても同様な考え方を基本的にとっているのであって、私どもも同じような考え方で今後とも進んでいくべきであるというふうに考えておるわけでございます。

 民主党の年金制度の改革案というのは、これまで数年の間にも幾つか変遷を経ておりますので、私どもも、どういうところに民主党の考え方の基本があるかということについてよくわからない面もあるわけですが、例えば、全部所得比例のものを基本的に置いて、そうして低所得の者には最低保障年金のようなものを、これは税で賄って支給すべきであるというような考え方もあったかと思いますけれども、いずれにいたしましても、その場合でも、やはり報酬比例あるいは所得比例の部分については、自助、共助の考え方で保険料の徴収が必要になるというように考えられるのではないか、こういうように思って、見ておったわけでございます。

 全額税金でやってしまう場合には、これはもう全くの福祉政策ということになるはずでありまして、そうなると、生活保護との分界というもの、考え方の区分というものをどこで立てていくのかというようなこともございまして、私どもとしては、まだまだ考えなければならない問題点が非常に大きい、このように考えております。

岩國分科員 御丁寧に御答弁いただいて感謝いたします。

 私は、大臣がおっしゃった自助、共助の精神というものは、もう既に、国民年金の納付状況を見ますと、崩れつつあると思います。いわゆる人口の多いところほど納付率がどんどん下がっているということは、全国押しなべて見れば、加重平均すれば、納付率は低い方へ低い方へと流れていっておりますから、自助、共助の精神を欲する人、認識する人、尊重する人はどんどん少なくなるばかり。

 ならば、思い切って、基礎年金の部分は税で、大臣がおっしゃった福祉政策という観点で一階部分は塗りかえる。二階部分は自助、共助。私が申し上げましたように、企業負担をなくして賃金に転嫁して、賃金の中から自分で選択し、自分で積み立てて、自分で責任をとる、そういう自助、共助型に組みかえる。これは民主党の基本的な考え方がありますけれども、ぜひそういう方向でもまたさらに御検討を進めていただくことを要望し、次の質問に移ります。

 国の資産の売却を社会保険庁等がやっておりますけれども、太宰府の物件について、一番札を入札したところが公正取引委員会から排除命令を受けた。いわば入札する資格がないところが入札しておったのではないかという疑問が関係者の一部から提起されております。

 これについて、排除命令についてもいろいろな内容があろうかと思いますけれども、排除命令を受けたばかりの民間企業がなぜ一番札、入札資格を認められたのか。

 二番目に、仮にその資格がないためにやり直しということになった場合に、二番札に落ちるのかやり直しをするのか、そのときの運用基準というものはどのようになっているのか。

 三番目に、二番札、三番札あるいはすべての入札価格というのは公表した方がいいのではないかという意見がありますけれども、これについて今現在どういう考え方をとっていらっしゃるのか。

 以上、まとめて御担当の方からお答えいただけませんか。

水島参考人 お答えを申し上げます。

 私どもの入札参加基準に関しましては、二つの考え方でまず作成をいたしております。

 まず第一は、私どもの第一の目的でございます高い譲渡価格を実現するとの観点から、幅広い入札参加者を募るという観点が一つでございます。もう一つは、公的財産の譲渡対象者及び購入目的としての適格性の二点でございます。

 その観点から、現在の規定では、不適格な参加者といたしましては、未成年者、未復権破産者等のほか、暴力団及び談合を行った者等を規定いたしております。また、不適格な購入目的といたしましては、風俗営業、性風俗関連特殊営業等を規定いたしております。

 お尋ねの太宰府に関しましては、景表法上の排除命令が出ていたということは承知をいたしております。

 私どもといたしましては、この点に関しましては景表法上の対処で行われるべきでありまして、私どもの入札参加資格に関しては抵触をしないというふうに基本的に考えております。

 次に、落札者が辞退をした場合、やり直しをするのかという御質問でございます。

 これに関しましては、落札者が契約時点までに落札を辞退した場合には、次順位者にその落札者の権利が移動いたします。それから、契約後に契約者が辞退をいたした場合、落札は有効に成立をいたしているというふうに考えておりまして、これは入札のやり直しということにいたしております。

 第三点目は、落札者以外の入札金額を公表するのかということに関してでございますが、現在これは公表いたしておりません。

 その基本的な考え方は、第二順位者以下について公表いたした場合、談合あるいは辞退等のおそれが発生するというふうに考えておりまして、現在、私どもといたしましては、公表する考えはございません。

 以上、お答え申し上げます。

岩國分科員 こういう国民の資産の売却については最大限の配慮、注意、慎重さが必要だと私は思いますけれども、今の、抵触しないと考えておりますとは、だれが、いつ、どういうふうに判断されたのか。

 二番目に、二番札以降を公表しないというやり方は、おっしゃったようなメリットはあるかもしれませんけれども、談合とか、やらせ入札。十億で入札して一番札、そしてそれが辞退した、次の七億。これは例えばの話ですけれども、その差額の三億というのを裏で折半する。このようなやらせ談合の温床になるのは、二番札、三番札を一切公表していないからではないですか。

 結局、そういう二社、三社が連携して談合的なことをやろうとするのは、その情報を限られた人間だけが持っているからこそそれは可能になるのであって、はっきりと公表した方が、やらせ談合的な、あるいは談合的入札というものを排除することができるのではないか、そのように思いますけれども、これはどういうふうにお考えになりますか。

水島参考人 お答えを申し上げます。

 景表法上の排除勧告を受けた者について落札を認めたということに関しましては、理事長である私が判断をいたしました。

 次に、二番札以降について公表した方が談合等の懸念が排除できるのではないかという御指摘でございます。

 これに関しまして、私自身もよく考えてみたいというふうに思いますが、私どもが確認をいたしていない情報といたしましては、実態上、二番札、三番札に該当なさっている方から、権利を譲ってくれというような話があったというような話も仄聞をいたしております。

 これはやはり、二番札以降について開示をいたしますと、その時点から、既に、だれがどういうふうにすれば有利になるかというのがわかるわけでございまして、そのことを開示することは、むしろそのような懸念をさらに助長することになるのではないかなというふうに考えております。

 以上、お答え申し上げました。

岩國分科員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、二番札以降を非公開にするということのメリットともう一つはデメリット。特に、一部のこういう入札に常時参加されるような人は独特のネットワークか何かをお持ちになって、国民の資産がかなり広範囲に価値の上で侵食を受けている、大きな温床にこれがなっているのではないかということを指摘して、また別の機会に質問したいと思います。

 どうもありがとうございました。

渡海主査 これにて岩國哲人君の質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭君。

長妻分科員 民主党の長妻昭でございます。本日は、質問の機会を賜りまして、ありがとうございます。

 年金保険料の納付記録が消える、こういうような問題に関して、きょう、柳澤大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。

 最近ちょっと気になりますのは、社会保険庁のある課長さんが、マスコミを初めいろいろなところに行って、火消し役というか、この問題というのは、基本的には、いずれは年金をもらうまでには名寄せができて問題はありませんと、非常に誤解を与えるような説明をしているというようなことがございまして、この問題の本質のポイントというのを二つ申し上げたいと思うんです。

 例えば、実際に社会保険庁の中に記録が全くない、けれども、自分は払ったんだという方がいらっしゃる。そういう方に関しては、門前払いというか、調べても調べても、なければお帰りいただくということになるわけです。ところが、八十六人の方が、社保庁の中には記録がないけれども、本人が本物の領収書を持っていた。これはもう確実にどこかで消えているわけです。ですから、社会保険庁も、そういう問題は本当に存在するんだというのもきちっとやはりお認めをいただくというところで、そういう意味では、消えた事実があるというのが一つの問題であります。

 もう一点は、社会保険庁の姿勢といたしましては、本人、被保険者から申し出がある、ここの記録が抜けていますからちょっと訂正してください、こういう申し出がないと訂正がなされない。あるいは、基礎年金番号を平成九年に統合したときに、統合漏れがあるんじゃないかということで、さらに九百万人ぐらいの方に、統合漏れの可能性がある方に社会保険庁から通知を出して、確認してくださいという作業もされているんですけれども、それでも御本人が忘れている場合、いや、これで正しいと思うけれどもということで忘れている場合は、実際に統合すべき情報でも統合がされないということで、申請主義である。今申し上げたこの二点が大きな問題だ。

 柳澤大臣は金融担当大臣もされておられました。例えば銀行が合併して統合するときに、A銀行、B銀行に預金があったときに、統合した銀行に対して、私はAとB両方に預金がありますからよろしくね、こういうふうに預金者が言わなくても、その統合した主体の銀行は、A銀行、B銀行の預金を足し算して、いろいろな統合をされた銀行はありますけれども、申請するしないにかかわらず、自動的に名寄せして、預金を足し算して口座に入れる。

 こういうような形で、その二つに関して大きく国民の常識と社保庁の姿勢の乖離があって、非常に社保庁は楽観的、私は非常に大きな問題というようなことがあるというふうに考えております。

 その意味で、冒頭申し上げました八十六件。昨年の八月二十一日から十二月二十八日まで、国民年金に関しては社会保険庁の中には記録が全くないけれども、本人が本物の領収書を持っていた。では、本物だから、記録を訂正して、払ったことにしてあげましょうというのが八十六人あったんですが、これの原因究明、どこで消えたのかを調査いただきたいということで、前回、予算委員会の分科会等で御要請したんですが、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 衆議院の予備的調査に係る回答につきまして、昨年八月から十二月までに、私ども、被保険者等が保有する領収書等の資料によりまして保険料の納付を確認して、記録の訂正等の対応をしたというものが八十六件あったということは御報告いたしました。

 これを今回、詳細調査を行ったわけでございますが、このうち、社会保険庁及び市町村の資料に納付記録が記載されていないということが確認されて、まあ確定されたと申してよろしいかと思うんですが、そういう事例は、結局のところ、五十五件でございました。

 その他残りの三十一件につきましては、社会保険庁または市町村の資料におきまして最終的に納付記録が確認できたということでございます。

 まず、八十六件はそういうことで、もう何よりも確かな証拠がありましたので、とりあえずすぐに訂正をしたのでございますけれども、それを改めて、今回、院の御指示、御指摘もありまして、私ども調査をしたところ、本当になかったものは五十五件、とりあえず対応したが、我が方の資料にもあったというふうに確認できたものが三十一件でございました。

長妻分科員 その五十五件に関してはどの過程で消えたのかというのは、どんな調査の進捗状況でございますか。

柳澤国務大臣 これはもう推定ということになるわけでございますけれども、当時、市町村に保険料を納付しましたけれども、保険料納付に係る期間が誤って未加入期間というふうにされていたものが十件ということでございます。

 それから、国民年金手帳、当時は印紙検認というような手法で納付の手続が進められておりましたけれども、通常でございますと、台紙の方は、印紙の張られているものは社会保険庁に送付されるものでありますけれども、それが送付されていなかったものが六件ということでございます。

 それから、そもそも納付書の記号番号が国民年金手帳の記号番号と異なっていた、一番イージーな、一種のミスでございますけれども、こういうものが原因していたというものが三件というふうに考えておりまして、その他の事案については、その原因を推定することもできないという状況でございます。

長妻分科員 今、口頭で言われたわけでございますけれども、これは詳細な報告書として提出いただきたいということを要望いたします。いかがでございますか。

柳澤国務大臣 資料につきましては整理中であるという報告を私自身受けておりまして、これは、取りまとまり次第、明らかにしなければならない、このように考えております。

長妻分科員 そして、もう一点、今、非常に重要なお話をされたと思うんですが、八十六件のうち三十一件は社保庁あるいは市町村に資料があった、こういうようなお話でございますが、これは調査姿勢に大変問題があるということだと思うんです。

 つまり、当初は、社会保険庁は、八十六件はすべてが社会保険庁及び市町村に資料が全くなかった、本人が本物の領収書を持っていたから訂正したんです、こういう説明をしていたわけですよ。ところが、国会でこういうふうに問題になって、八十六件を一件一件つぶさに調べたら、三十一件は資料があったということですね、社保庁とか市町村に。そういうことですか、資料、納付情報が発見できたのが三十一件ということでございますか。

柳澤国務大臣 基本的にそういうことでございます。

長妻分科員 とすると、これまで社会保険庁が、本当に誠心誠意記録を調べているんだ、自分は払ったはずだという方を、実は八十六人は領収書を持っていたから認められたんですが、同時期に、一万八百五十八人の方は要請が却下されているんですね。つまり、自分はこの時期払ったよ、ところが、一万八百五十八人の人は、いや、あなたは領収書を持っていないんだから認めないよということで、断られているわけです。ということは、約百三十人に一人しか救済されなかったということなんですね、領収書を八十六人しか持っていなかったわけでございまして。

 そういう意味では、ほかの三十一件は、国会で問題になって綿密に探したら、何のことはない、社保庁あるいは市町村に納付資料があったということは、今までの調査というのがいいかげんだったということじゃないですか。国会で問題になったら厳密に一件一件探す。しかし、この三十一件の方は、領収書を持っていなければ門前払いされた方ですよ。ないということでしたから。これは比率にしたら八十六件中三十一件も、私に言わせたら、調査がずさんだった、国会で問題になって一件一件精査して、やっと三十一件出てきたというか、まじめに調べたら出てきた、こういうような位置づけに私は感じるんですけれども、そうしたらば、今まで門前払いした一万八百五十八人をもう一回やはり調査しなきゃいけないんじゃないですかね。

 軽い調査で、あなたは領収書もないね、では帰ってください、こういうふうな調査姿勢だと私は言わざるを得ないんですけれども、大臣、この三十一件というのはどこで見つかったんですか。社保庁あるいは市町村の記録ということですけれども、内訳的にはどんな状況なんですか。

柳澤国務大臣 これは、今手元にそうした資料を持ち合わせておりませんので、後でまたそれが区分できましたら御報告を申し上げたいと思います。

長妻分科員 そうすると、先ほど一万八百五十八人に対して要求を却下したと申し上げましたけれども、これは、八十六人が真正の領収書を持ってきて、認めたと同時期の話でございます。

 さらに最新の数字をいただいていますのは、昨年の八月二十一日からことしの三月二日まででは、自分はこの期間は年金保険料を払ったはずだ、認めてくれと言った一万七千二百四人の方に対して、認めてくれと言ったんだけれども、証拠を持っていないのでお帰りいただいた、却下したということでございますから、この一万七千二百四人の人も、八十六件を調べたのと同じぐらいの綿密度を持って調べたら、かなりの方が、数千人の方が発見されるんじゃないんですか、これはひょっとしたら。

 大臣、一万七千二百四人の却下された方に対して、八十六件を調べたようにきちっともう一回精査していただくということをお約束いただけませんか。

柳澤国務大臣 私どもといたしましては、照会申出書に対して、一部判明または記録なしの回答をいたしました一万七千二百四件につきまして、これは被保険者等が領収書の資料をお持ちにならなかったことから、社会保険オンラインシステムの記録の調査、被保険者台帳の調査あるいは市町村の被保険者名簿等の調査等を実施した上で回答したものでございます。そういう意味では、私どもとしては、既にできる限りの調査をいたしたということを申し上げたいと思います。

 したがいまして、もう既に、一部判明または記録なしと回答申し上げたこの件について、改めて調査をすることは必要ないということでございます。

 つまり、八十六件の方々というのは、御自身が、何よりも動かない領収書等あるいは検認のされた手帳を持ってこられたことによって、全くノー文句で私どもとしてはこれを記録として承認したということでありまして、その後において院の方から御指摘をいただいたので改めてそれを調査したということで、その調査から、実は三十一件が明らかになったということでございます。

 だからといって、すべてについてもう一度やり直すということはなくて、それと同じようなことは既にその一万七千何がしのものについては行っているということであります。

長妻分科員 でも、大臣、前回の分科会で、八十六件は社保庁及び市町村には記録がない、こういうふうに御答弁されなかったでしたか。

柳澤国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、被保険者の方が領収書等によって確認されたということで記録の訂正を行ったものでありまして、こういう対応をとりましたものが八十六件でありましたということを申し上げたということでございます。

 先ほどの繰り返しになりますが、したがいまして、私どもとして、もう一度それを詳細調査しろという院の御指摘によって調査をいたしたということでございまして、八十六件は、何よりも被保険者の提出された資料でもってすぐさまの対応をしたということを申し上げたつもりでございます。

長妻分科員 いや、私の記憶では、前回の予算委員会の分科会で、大臣が後ろのお役人からメモとかいろいろ耳打ちされて、八十六件は基本的には社保庁には記録がありません、こういうふうに御答弁されたと思うんですけれども、これは議事録を見ていただいて、どういう経緯なのか、ちょっと事務方の方。

柳澤国務大臣 この八十六件につきましては、被保険者の側にそういう領収書等が保有されておったということで訂正をさせていただいた。社保庁の中で、お申し立ての記録を即座の対応としては確認できなかったということではありますけれども、そういう何よりも動かない領収書等をお持ちになったということで訂正させていただいたということを申し上げたつもりでございます。

長妻分科員 今の話というのは、八十六件は社保庁の中に記録がなかった、しかし、領収書があるから訂正した、こういう御答弁だったわけですね。これは、ですから、国会で問題になって、件数が少ないと一生懸命まじめに調査する、しかし、領収書を持っていなければ確認のしようもないので、一生懸命この中を精査するのも、表面的に調べて断る、こういう非常にずさんな対応に思えるような御答弁や社保庁の姿勢だというふうに思うんです。

 これは一万七千二百四件をもう一度調査して、私は記録が出てくると思うんですが、記録が出てくると社会保険庁にとっては恥かもしれませんけれども、しかし、国民の皆さんにとっては救済ですから、恥を忍んでというか、一万七千二百四件をもう一度、これは我々の側からすると、データは皆さん以外はアクセスできないわけですね。そういう意味では、一万七千二百四件、大臣、もう一回精査させるということをぜひ政治家として御答弁いただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 これは非常に丁寧なことをやっているわけでございまして、年金記録相談の特別強化ということで、窓口で申し出られた方あるいは郵送で申し出られた方につきまして、その申出書に基づきまして、私どもとしては、先ほど申したように、社会保険オンラインシステムの記録それから社保庁の被保険者台帳あるいは市町村の被保険者名簿等の調査を実施いたしました上でお答えを申し上げているということでございます。

 したがいまして、そういうことをまた重ねて行うということは、事務の通常の処理プロセスからいうと、なかなかそれは考えづらいということでございます。

長妻分科員 どうしてもぜひ調査していただきたいというのはまた別の機会に強く申し上げますけれども、これは納得できません。

 そして、この八十六件と同じような件数というのは、これは昨年の八月二十一日から十二月二十八日までの数字ですが、ことしに入って最新の数字というのは何件でございますか。

柳澤国務大臣 一月から二月までの事例につきましては、現在、社保庁、市町村の資料におきます納付記録の有無について、整理をして確認する作業を実施中でございます。三月の事例につきましては、二月までの事例についての作業終了後、作業に入るという手順で今進めているところでございます。

長妻分科員 件数だけ何で即座にやらないのか。

柳澤国務大臣 個別具体的な事案の件数につきましては今確認作業を行っているところでありまして、現時点では申し上げられないということでございますので、できる限り作業を進めた上で御報告できようかと思います。

長妻分科員 そしてもう一つ、今、八十六件の内訳で、五十五件記録にないものの中で、ある意味では番号の入力ミスといいますか、番号のミスが三件あったというふうに大臣から御答弁がございました。

 これは、我々が予備的調査を要求して、約五千万件が宙に浮いた年金情報だ、年金の納付記録はあるけれども、それが基礎年金番号に統合されていない、五千万件ある、こういうふうに申し上げましたら、その中のうち、死亡者の方の納付情報は基礎年金番号に統合するという必要はないんだと。これは私もそうだと思います。ところが、やはり名寄せということで実際に統合されないと年金受給額が減ってしまう、そういう情報は統合しなきゃいけない。これは、冒頭申し上げましたように、社保庁の課長さんがいろいろなところで、五千万件は全然問題ないんですよ、こういうふうに火消しをしているんですが、私はそうじゃないと思っておりまして、先ほどの三件という番号のミス。ということは、その五千万件の中にも、番号が異なる形でお金を受け取ったらば、どこのどなたかわからなくなっている、こういう記録もあると思うんですが、大臣、いかがでございますか。

柳澤国務大臣 五千万件の年金手帳記号番号には、今委員もお触れになりましたように、死亡した方など、基礎年金番号に統合する必要がない方々もおられるわけでございます。

 それともう一つは、今後、いろいろな手だてを講じておりまして、例えば年金裁定時が最終的なそうした確認のプロセスになるわけですが、その前に、五十八歳通知であるとか、あるいはこれから進めるそういうことを通じてだんだん統合できる方々もいらっしゃるわけでございます。

 そして、今委員がおっしゃられるように、本来統合をすべきなのに既にスタートしてしまっている、それで結果において受給不足が起こっているというような方々については、私ども、窓口はオープンにしているわけでございまして、裁定後についても、変更と申しますか、そういう申し出は受け付けますし、それから、今後もいろいろな機会を通じまして、そうした場合についてはぜひお申し出いただきたいということを慫慂していく。そういうことの中で補正が行われていくということを期待できる、このように考えております。

長妻分科員 いや、大臣、ちょっとそれは違うので。

 今申し上げたのは、大臣が、番号ミスで記録が確認できなかったものが三件あったということですね。この三件というのは、本人が領収書を持っていなければ、違う番号に納付されたので、わからなかったわけですね。ですから、そういうものもこれは入っていますので、全部安心だという説明は問題でありまして、本当に統合できないような番号ミスのものがどれだけあるのか、それは確認する方法はありますので、ぜひ確認をしていただきたいと思います。

 もう一点、最後に、国民年金の納付記録が書いてある手書き台帳、この手書き台帳をマイクロフィルム化しないまま、コンピューターに入力したということで捨ててしまったという問題があるんですが、追跡調査できない。

 お配りした資料の一ページ目に、こういう通達があって、つまり、マイクロフィルム化が完了していなくても、コンピューターに記録を入力すれば手書き台帳を捨てていいです、こういう通達を出しているんですが、これは今から考えると、まずい通達だったと思いますか。

柳澤国務大臣 このときに国民年金被保険者について行ったことは、要は、いわゆる電磁ファイル化をしたということでございまして、基本的には、その期間を通じて全部納付記録があるというもの、あるいは、逆に全く納付の記録がないというようなものについては廃棄をしてよろしいですよ、しかし、いろいろとまだらで、納付記録がかなり個性を持っているというものについては念のためマイクロフィルム化をしておくように、こういうことになっているわけでありまして、事務処理としては合理的な事務処理であったと私は考えるわけでございます。

長妻分科員 もう時間が来たので質問は終わりますけれども、基本的には合理的な事務処理ということでありますが、私のところにもいろいろな方から御相談が来て、そして、自分は絶対払っているはずだ、手書き台帳を確認してほしいと言ったらば、いや、マイクロフィルム化していないし、手書き台帳は捨てました、こういう回答というのがたくさんありまして、これは人間のやることですから、コンピューターに入力漏れというのがあるんですね。そのときに、何で、まだ御存命で年金をもらっていない方の台帳まで捨ててしまうのか、こういうようなことが問題だというふうに私は思います。

 では、大臣、最後、今マイクロフィルム化されている手書き台帳、マイクロフィルム化されている特殊台帳はありますね、そことサンプル調査で、そこの手書き台帳がコンピューターの中のデータと本当に同じなのかどうか、サンプル調査していただきたいと思うんですが、いかがですか。

柳澤国務大臣 サンプル調査ということでございますから、どのくらいのことを考えるかということはあろうかと思うんですけれども、私は、国民年金保険上、一つの立場をずっと維持されていたという方々については、電磁ファイルに移したときに、これをまたさらにマイクロフィルム化しておくというのは、そもそも……(長妻分科員「いやいや、質問はそうじゃないんですよ。マイクロフィルムとデータの照合」と呼ぶ)いや、そういうものについて廃棄の処理をしたというのは、通常は合理的なもの。それで、いろいろ個性を持ったそういうものについては念のためマイクロフィルム化したということでございまして……(長妻分科員「それをコンピューターのデータと合っているか、サンプル調査」と呼ぶ)それらについて、どの程度のサンプル調査をするかということについては、検討はさせていただきたいと思います。

長妻分科員 ぜひ、本当に前向きにお願いします。隠ぺいしても問題が大きくなるだけですので、よろしくお願いします。

渡海主査 これにて長妻昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、田嶋要君。

田嶋(要)分科員 民主党の田嶋要です。どうぞよろしくお願いします。

 私は千葉県の方が選挙区でございまして、地元に成田空港がある関係で、昨年は前任の厚生労働大臣にBSEの関係、いろいろ質問させていただきました。成田空港で違反ケースが見つかったということでございますが、若干類似のケースとして、私、当時から、BSEよりさらに将来深刻になるのかなと思っていた鳥インフルエンザの関係がございました。これは、地元に帰ると、時々聞かれることがございます。加えて、私のまさに選挙区にP3の施設もございまして、そういったことから、時々地元の有権者の皆様方と話題になるわけですね。

 これは、私も私なりに専門家のいろいろなお話とかを聞く機会が幾つかありまして、大変深刻だなというふうに考えていいのかどうか、その辺がちょっとまだよくわからないところがございまして、これはだれにとっても見たこともないようなもので、大臣は首を振っておられますけれども、しかし、わからないからといってわからないというままじゃまずいわけで、手を打たなきゃいけないんですが。

 片っ方で、専門家の方に言わせれば、二十世紀初頭のスペイン風邪のときに、関東大震災で十五万人ぐらいの方が亡くなった、その三倍ぐらいの方が実際には亡くなっているにもかかわらず、人の記憶には関東大震災がどっちかというと強く残り、スペイン風邪でそれだけ多くの方が亡くなったというのはないと。一気にやってくる自然災害とはちょっと違う性格で、その辺がやはり油断もさせるのかなという感じがするんですね。

 それでは、今盛んに言われている、弱毒性から強毒性に変わってきたという話があるんですけれども、これ、どういうふうに一般の人は認識したらいいのか。まだ多くの人がインフルエンザだと思っているんじゃないか、ちょっとした怖い風邪というぐらいのことで。私が報告を受けたいろいろな方々のお話では、やはりまず死亡率のけたが全然違うということで、半分とか七割とかという話もある。そしてまた、さらに、若年層に対するダメージが大きいという話も聞いております。

 そういったことから、地域に帰ると、全くそういうところの深刻さというのはまだまだ一般の人々の間で認識がないと思いますが、今厚生労働省の方で、大臣にお伺いしたいんですけれども、一体、この鳥インフルエンザは、現時点のベストな評価として、どのぐらい恐ろしい病気で、そしてどのような被害規模を考えられておるかということをお伺いしたいと思います。

柳澤国務大臣 新型インフルエンザにつきましては、いつ発生するか予断を許さない、WHO等では、もういつ変異が起こってヒト・ヒト感染が起こるかわからないんだということで、大変な切迫感を持って、また危機感を持ってこれに対応すべきことを注意を促されているということでございます。

 私どもといたしましては、非常な危機感を持って臨んで、いろいろ対策も講じているわけでございますが、他方、今委員が御指摘のように、国民一般はどうかといいますと、これはまたリスクコミュニケーションの難しさというか、余りおどかすようなことも言えないという面もありまして、非常にそこのところは、私も先般、韓国それから中国との三国の保健相会議でも申し上げたわけですけれども、まだ一般の国民というのは、迫りくる危機に対して心構えを持って備えているという状況はなかなかできていないということを率直に申し上げたわけでございます。

 現在の被害想定ということでございますけれども、私どもといたしましては、医療機関を受診する患者の数は最大で二千五百万人に上るであろう、そして、そのうち、入院をしなくてはならない患者の数は五十三万ないし二百万人に上るであろう、それから死亡者数は十七万ないし六十四万人に上るであろう、こういうことを被害の想定として考えているわけでございます。

田嶋(要)分科員 今の数字ですと、先ほど私が申し上げた二十世紀初頭の関東大震災、それとスペイン風邪ということでいえば、まさに、大分時間もたってしまいましたけれども、神戸の大震災に比較をしても、恐らくその百倍ぐらいの方が亡くなる可能性もある、そういうことですよね。ただ、どうもやはり世の中そういう認識は全くゼロじゃないかなと思うんですね。

 私、専門家のいろいろな話を聞いていても、ある専門家は、これは全身感染なので広がらないという意見もあるんですね。全身感染なので、その場ですぐその方自身が亡くなってしまって、広がるためには、その人が元気に動き回るからすごい感染力があるんだ、だけれどもそうじゃないんだということを主張される専門家もおるわけなんです。その方は結論として、タミフルじゃなくて、全国民にマスクを配るのが一番いい、そういう専門家もおるんですね。

 要するに、どういう前提に立つかによって、もちろんそれは恐怖感だけ広がる必要もないんですが、冷静に考えて、どういう前提に立って国が、あるいは地方自治体が対策をとるべきかということによっては、かかるお金も一けたも二けたも違ってくるかもしれない、私はそのように思っておるわけです。

 そういたしますと、今厚生労働省あるいは国としては、今の想定数字を前提とした国としての対策、すなわち今私が申し上げた、ある専門家のような主張にはくみしないというか、そういう前提に立って動いておるというふうに理解してよろしいですか、大臣。

    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕

外口政府参考人 委員御指摘のように、新型インフルエンザにつきましては、これは鳥インフルエンザのH5N1がどういう形で遺伝子変異を起こして病原性あるいは感染性が変化してくるかということがまだこれから変わり得る状況でございますので、確かに専門家の間でいろいろな意見がございます。

 そして、病毒性が大変強ければ、これは感染力を広める前にその方がお亡くなりになるということも多いわけでございますので、確かにそういった場合には対応は違うかと思いますけれども、今一般に、WHO等を含めて国際的なコンセンサスとして専門家の間で考えられておりますのは、やはり今のH5N1型がより感染性を獲得してくるだろう、その場合に、ある一定の病毒性は持って、そのまま感染力を強めてくるだろうという想定で考えられております。

 その点で、確かにマスクも大変重要でございますけれども、今はマスク、抗インフルエンザウイルス薬、ワクチン、物理的な隔離、それから行動の自粛とか、そういったいろいろな施策を組み合わせて行うことが、それをベストミックスの形にしていくことが大事だろうということが考えられております。

田嶋(要)分科員 そういうことでございまして、やはりかなりこれは国民、市民が一人一人覚悟をしておかないといけない。そしてまた、日本に起きる可能性というのも、これはもう、時間は来年か五年後かわからないけれども、起きると思っていた方がいいんですよね。どうですか。

外口政府参考人 いつ起きてもおかしくない状況だと考えております。

田嶋(要)分科員 そうすると、首都圏の大地震と同じように、あとは時間の問題。そうすると、そういう意識は、地域に帰ると余り張り紙も見たことがございませんし、先ほど大臣がおっしゃられたリスクコミュニケーションはまだまだ足りないのではないかな、そういうような危機感を私は持っております。

 ぜひその辺を、これまでもやってこられたと思うんですが、タミフルの備蓄とかいろいろな新聞記事は見るわけでございますけれども、最後は、最後の最後のところで一人一人の、人によってはこれを知識のワクチンという言い方をされていたと思うんですが、とにかく理解しなきゃいけないということで、病名のつけ方自体も問題だという指摘もかなりありますけれども、こういうことも含めて、さらに時間との闘いという部分もございますので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思っております。

 アメリカの事例で、かつてセントルイスとフィラデルフィアか何かのがございまして、大臣、ごらんになったことがあるかもしれませんが、いざというときに、どういうタイミングで首長さんが人の集まるところへ行くことをストップするかということによって犠牲の数が大きく変わった、そういうデータもございました。

 そういう意味で、本当に最後は、末端のというか、それぞれの現場の方々の危機感の認識がすごく人命を左右するのではないかなというふうに私は思っております。

 それで、続きまして、一つの事例として、人の非常に集まるところということで、若干こじつけでありますけれども、学校の後の子供がいっぱい集まるところということで、放課後子どもプランの質問をさせていただきたいんです。

 これは、実際に余り侮れないのは、私もそういう世代の子供が三人もおるんですけれども、いろいろうつってくるんですね、子供たちというのは。リンゴ病だとかインフルエンザだとか、やはり抵抗力が弱いんでしょうか、何でも子供の幼稚園や小学校から持って帰ってくるケースが多くて、そういう点からしても、職場とか小学校とかと同じように、さらに小学校よりも子供たちが長い時間を今過ごしているのがここですから、そういう意味では、決して侮ることができないなというふうに思うわけでございます。

 それで、この放課後子どもプラン、厚生労働省の学童保育に関してお伺いしたいわけですが、これもどんどんニーズが広がってきておるというのはもう周知のとおりでございます。十七年度の決算ということでお伺いしたいんですが、十七年度は幾らの予算、それに対してどのぐらいの決算数値で施策が行われたかをまず報告していただきたいんです。

大谷政府参考人 平成十七年度におきます放課後児童健全育成事業、この予算額は九十五億一千百万円でございまして、決算額が九十三億三百万円でございました。

田嶋(要)分科員 決算額九十三億幾らとおっしゃいましたけれども、大臣、これは、先週、この質問をするということを事前に申し上げたときに、厚生労働省からは、決算の数字は出ないと言われたんですね。九十五億の予算に対して幾らの数字か、決算の数字はわかりませんということだったんです。

 少し計算されてきょう出てきたわけでしょうけれども、これは、この問題に限らず、日本の予算、決算の一つの問題なんですけれども、苦労して出せないわけはないんですが、ぱっと比較できるように予算数値と決算数値が並んでいないようなんですね、どうもお伺いしていると。こっちにも少し入り、こっちにも少し入るというか、それを引っ張り出してこないといけないということで現場の方々のお手も煩わせたのかもしれませんが、この問題に関して、これからやはり、一個の施策が幾らの予算で最初計画されて、実際にはどのぐらい使ったのかということがわからないと議論が先に進まないなという感じがございますので、あえてその点を指摘させていただきたいというふうに思います。

 それで、そういう金額が使われて、そして今年度は、それに対して、およそ百六十億円ぐらいということで大幅な伸びを示していると思うわけですが、そこで大臣、お伺いしたいんです。

 今、教育特の方では学校の議論もしていますけれども、一部の子供たちが小学校よりも長い時間過ごすことになる学童保育の施策は、今どういうステージにあるというふうに評価をされておりますか。この施策を毎年お金をかけてやっておられるわけなんですが、あとどのぐらいの期間をやることによって政府として当面目指している状況が達成される、今、その中においてどういう時点にあるというふうに評価されておりますか。

柳澤国務大臣 先ほど申しましたように、放課後児童クラブ、学童保育と言われているところですけれども、十七年五月現在で一万五千百八十四カ所ということでございます。そういうものにつきまして、今私どもは、原則として必要なすべての小学校区、これは二万カ所というふうに置いておりまして、これを今申した放課後児童健全育成事業でもって実現したい、こういうことでございます。

 そういう意味合いで、この厳しい財政状況の中でも三〇%増の、先ほど委員がおっしゃった約百六十億円の予算を計上したということでございまして、ぜひ今年度中に二万カ所の設置を目指してまいりたい、こういうふうに考えている、それが現状でございます。

田嶋(要)分科員 そういたしますと、今年度のその百六十億をもって、大体、政府として考える、目指すべき学童保育というのは目標が達成される、そういう理解でしょうか。

柳澤国務大臣 そのように御理解いただいて結構でございます。

田嶋(要)分科員 さらにさらに上を目指せば切りがないわけでございますが、量と質という観点からいたしますと、今大臣がおっしゃられた二万カ所というのは、量の意味での、量的拡大ということだと思います。

 しかし、現場からいろいろ聞こえてくる声は、七十名を超えるような大変大規模な施設が多い。特に、この近年のデータを見ましても、七十名以上とか、四十名から七十名という大規模な施設がふえる傾向にあるということで、まずは面的に広げていく、ただ、子供たちの生活空間として、質はむしろ劣化している部分もあるのではないかな、そんな心配もあるわけでございます。

 そこで、今年度から放課後子どもプランというものがスタートいたしまして、少し変化が見えるわけでございますが、この放課後子どもプラン、これまでの厚生労働省の全児童対策というのと文部科学省の施策がセットになって行われておるわけでございます。

 まず最初に、ちょっとデータをお伺いしますが、文部科学省の方の施策というのは今どういうような実施箇所数になっておりますか。

池坊副大臣 文部科学省の放課後子どもプラン、十九年度は六十八億二千万円を計上しております。これは、小学校が二万校でございますから、ことしは一万校、来年は二万校、私は中学校も入れたいというふうに思っておりますが、現在は五千五百二十九カ所です。

 これは十割負担ではございませんで、都道府県が二分の一、市町村が二分の一ですので、なかなか手を挙げてくれるところが少ない。これはぜひ田嶋委員にも、千葉県でいらっしゃいますので、首長とか地方議会の問題にもなってくると思いますから、教育委員会を通して、私どもは一生懸命これからも、年度の途中でも取り組み可というふうにいたしておりますので、これは一万カ所にふやしたいというふうに思っております。

田嶋(要)分科員 三分の一ですよね。二分の一ですか。

池坊副大臣 二分の一ずつです。

 ごめんなさい。今申し上げましたように、都道府県、市町村、それから国ですから、三分の一ずつです。

田嶋(要)分科員 それで、現在の箇所数、一万カ所程度ということで、そういたしますと、どちらも子供に関する放課後の施策ですが、文部科学省の施策が量的拡大という意味では少しおくれている、そういう理解でよろしゅうございますか。

池坊副大臣 放課後子どもプランの前は、御存じのように、地域子ども教室ということで、私が政務官時代から尽力してまいりましたので、私は思い入れが強いのですけれども、いわゆる放課後クラブですか、それがございますので、積極的にこれを取り入れないところもあるんですね。私どもは積極的にこれを取り入れてほしいというふうに思っておりますので、いろいろなところを通じて、これはもう地域くまなく、全小学校にという気持ちでおります。

田嶋(要)分科員 私自身も、もう一年以上前に本件に関して一度質問をさせていただいたことがあるんですが、その際に、全児童向けの厚生労働省の施策と文部科学省の施策が一見すると似ているような感じがしまして、私としても、これはかなり重複、無駄があるんじゃないかな、そういう一つのちょっとした思い込みというか先入観で見ておったわけです。

 以来、いろいろな現場を見させていただく中で、それぞれの立場の方がそれぞれの施策のユニーク性というか、強調されていく中で、やはりこれは、そんな安易に一本化というのはなかなか困難なのかなということで、それ以後ずっと様子を見ている状況でございますけれども、今回、一本化というか、両方をセットにして政策として打ち出しているというふうな印象があるわけで、それが逆に現場の方々にとっては新たな不安材料になっている、そういう側面もございます。

 そこで、もう一つ文部科学省にお伺いしたいんですが、今回、今年度からスタートした放課後子どもプランは、教育委員会が主導というふうにはっきり打ち出されておるわけで、これはこれまでの、それぞれの役所で独自の政策としてやっていた時代とはかなり様子が違うのかな。教育委員会が主導するというふうに打ち出されておるわけですが、このことの真意を教えていただきたいなと思います。

    〔北村(誠)主査代理退席、主査着席〕

池坊副大臣 教育委員会が福祉部局と連携をとりながら、主として小学校の空き教室などを使っておりますし、今、教育再生会議でも、社会総がかりということですから、学校を中心として教育委員会が主導しながら、地域の方々との連携の中でこのようなことをしていきたいという気持ちを強く私は持っております。特に、この放課後子どもプランは、民間の方々のお力をいただくんですね、そこが私は新たな取り組みではないかと思います。

 社会総がかりということは、学校だけじゃないのだ、あるいは常勤の先生やそれをつかさどっている方だけじゃないのだ。ボランティアの方々のお力をいただきながら、みんなが、算数が得意な人、スポーツが得意な人はそれを教える、あるいは編み物だとか料理だとか読書とか、そういうことの上手な方は子供たちにそれを教えるということで、多くの方々のお力をいただくということですし、また、編み物を通しても、それは一つの健全育成の、教育の一こまではないかというふうに思っております。これは教育の一環と位置づけたいというふうに思いますので、教育委員会の主導のもとにということにさせていただきたいと思っております。

田嶋(要)分科員 そこだけを見ていれば、もちろん私も全く問題ない、いい政策だというふうに思います。

 それで、学童保育との関係でやはり懸念ということが少しございまして、教育委員会が主導、例えば、当然ですけれども、先ほど二万対一万ということで、数的に、面的な先行ということでは全児童の方が先行しておるわけですね。私の地元なんかでも、学校と道を隔てた外のビルの一階に学童保育があるなんという、そういうケースがかなりあると思います。必ずしも校庭の中にあるわけじゃなくて、もちろん、プレハブか何かが校庭の隅っこにあるケースもあるわけですが。

 そういった前者のようなケースの場合に、こういった方向性が打ち出されますと、教育委員会ということで、学校内の空き教室というようなことを最優先にして、これまで学校外で学童保育が行われていたようなケースがこれからむしろ校内に取り込まれていく、そういうようなことになっていくのかどうか。学童保育というのは、畳の部屋をつくったり、まさに明確に生活空間として、なるべく子供たちが落ちついて暮らせるというか、そういうような意図があるわけですが、その辺が犠牲になっていく可能性はないのかという点が一つ指摘されるんです。

 これは厚生労働大臣、今後の学童保育が、教育委員会主導という中で、本来持っていたこれまでの物理的な場所あるいは環境、そういうものが犠牲になるということはあるのかないのか、御答弁をいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 放課後子どもプランの趣旨ですけれども、これは両省が今まで行ってきた事業を充実、発展させるという方向でございます。

 そのため、一律に小学校内へ移転を目指すものではございませんで、地域の実情、利用者のニーズ、それからこれまで実施してきた事業との継続性なども十分勘案をして取り組んでいくという考え方でございます。

 したがって、学童保育で今きちっとやっていらっしゃるという場合には、むしろ、学校の余裕教室で今度は放課後子どもプランが行われるということであれば、その時間に学童保育の方からそこに参加させていただく、そしてまたそこのプランが済めば、そうすればまた学童保育の方へ戻ってくるというようなことも考えられるというふうに感じておりまして、いずれにいたしましても、実施主体である市町村等において最も効果的な場所で実施をされるということで御判断をされるのではないか、また御判断をいただきたい、このように考えているわけでございます。

田嶋(要)分科員 現場の方々の懸念として、具体的に川崎市と品川区で独自の取り組みが始まりましたね。学童保育の方々はそれを不安がってごらんになっておるわけで、彼らの主張としては、学童保育を必要としている子供たちの行き場がなくなるというような御主張なわけでございます。

 私、まだ残念ながら川崎、品川、見には行っておらないんですが、厚生労働省さんは、この二つの自治体で取り組まれている行いをどのように評価されているか。独自な取り組みなので、どの程度把握されておるのかわかりませんけれども、本当に学童の方々が懸念されているような、行き場がなくなるような事態になっているのか、それとも杞憂に終わっているのか、その辺の状況というのはどの程度把握されていますか。

大谷政府参考人 川崎市や品川区におきまして、自治体独自の事業として、すべてのお子さんを対象とした事業を実施しておられるということを私どもも承知しております。

 こうした各自治体の独自の事業でございますので、地域のニーズに応じて実施されるということが重要であります。放課後児童クラブは市町村が実施主体となっている事業でありますから、厚生労働省が基準に適合するものに国庫補助を行っていることで、独自のものにつきましては個別に評価する立場にはないわけでありますけれども、しかし、地域の実情については我々も情報収集しながら、私どもの行っている事業との連携や整合性も考えながら適切に対応していきたいと考えております。

田嶋(要)分科員 あと、地元から聞こえてくる声でちょっと私の予想と逆の声もありまして、あるとき、子供たちを大勢連れた女の方が、指導の方が近くにいたものですから、学童保育ですねという話をしていたんですが、複数の方から言われたのは、こんな方向性の政策をいつまで続けているんですかという意見もあるんですね。

 つまり、親が遅くまで働きたいというニーズにどんどんどんどん引っ張られて、子供がいつまでもいつまでも親と離れた状態で長時間暮らす、こんなことをやっていていいのかという意見もあって、片っ方で本当にこのニーズがどんどん大きくなっている、それにこたえてあげなきゃいけない。片っ方で、では子供の立場から考えてみると、親との時間はすごく減っていっているというような感じがあって、私も何とも複雑な心境だったわけです。

 これは、ワークライフバランスとか、もちろん厚生労働省のさまざまな点と絡んでくる話でございますけれども、まさにこれは、目先、お金を何十億とかけて拡充、質、量の充実ということをやるのは大変いいことだと思うんですが、最後に、この点に関して、こういう声も片っ方ではあるんだよということに関して、厚生労働大臣はどのようにごらんになっていますか。これはほかの、例えば北欧諸国のように男性、女性がどんどん社会で働いているところでは、学童保育とかいうものがどの程度充実しているのか、それとも余り充実させちゃいけないんだよという社会の空気があるのか、その辺は私よくわからないんですが、大臣、この点はどのようにごらんになっていますか。

柳澤国務大臣 基本的には、今、女性の社会進出の中で具体的なニーズがあるわけですから、それに対して厚生労働省としてはきちっとした取り組みをしていくということは、これはもう待ったなしに必要でありました。そういうことで、私ども、学童保育というものについては、先ほど委員が御指摘のように、面的にはなおまだ拡充をしなければいけないということでございまして、十九年度予算もその意味で拡充の取り組みをさせていただいた、こういうことでございます。

 将来方向として、ではこれはもうニーズがある限りとことんやっていくのか、子供と家庭との関係というのは希薄になる一方ではないかという御懸念については、私どももそのとおりだというふうに考えるわけでございまして、やはりこうしたことから、この放課後児童クラブの整備とあわせて、長時間労働の是正など、ワークライフバランスの実現に向けて取り組む必要がある、このように考えております。

 現在、内閣で子どもと家族を応援する日本重点戦略というものを策定する途上にございます。この場合には、まさに働き方の見直し、それから諸外国の家族政策のレビュー、こういったものを踏まえて、これから日本の子育てというものが間違いのない方向に進むように私どももいろいろ意見を申し出ていきたい、このように考えております。

田嶋(要)分科員 理想と現実、なかなか埋まらないので、目先の対策も重要だと思うんですが、地元のこういった学童保育の指導員の女性の方からもそんな懸念も出ているということをお伝え申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

渡海主査 これにて田嶋要君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十四日午前十時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十三分散会


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