衆議院

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第2号 平成19年4月24日(火曜日)

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平成十九年四月二十四日(火曜日)

    午前十時開議

 出席分科員

   主査 渡海紀三朗君

      阿部 俊子君    飯島 夕雁君

      北村 誠吾君    藤井 勇治君

      矢野 隆司君    川内 博史君

      近藤 洋介君    田島 一成君

      武正 公一君    松本  龍君

      森本 哲生君

   兼務 冨岡  勉君 兼務 保坂  武君

   兼務 古本伸一郎君 兼務 福島  豊君

    …………………………………

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   厚生労働副大臣      石田 祝稔君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       大濱 正俊君

   会計検査院事務総局第二局長            千坂 正志君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   会計検査院事務総局第五局長            増田 峯明君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊藤 秀樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中田  徹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           辰野 裕一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           藤木 完治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           御園慎一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  外口  崇君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局長)            高橋 直人君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  阿曽沼慎司君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  水田 邦雄君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  山田 修路君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (林野庁長官)      辻  健治君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西川 泰藏君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           谷 みどり君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            細野 哲弘君

   政府参考人

   (農林漁業金融公庫総裁) 高木 勇樹君

   政府参考人

   (中小企業金融公庫総裁) 安居 祥策君

   厚生労働委員会専門員   榊原 志俊君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

   決算行政監視委員会専門員 藤野  進君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     阿部 俊子君

  杉村 太蔵君     飯島 夕雁君

  金田 誠一君     川内 博史君

  武正 公一君     森本 哲生君

  松本  龍君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     江藤  拓君

  飯島 夕雁君     杉村 太蔵君

  川内 博史君     小川 淳也君

  篠原  孝君     田島 一成君

  森本 哲生君     武正 公一君

同日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     金田 誠一君

  田島 一成君     長妻  昭君

同日

 辞任         補欠選任

  長妻  昭君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 洋介君     松本  龍君

同日

 第一分科員保坂武君、古本伸一郎君、福島豊君及び第二分科員冨岡勉君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十七年度一般会計歳入歳出決算

 平成十七年度特別会計歳入歳出決算

 平成十七年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十七年度政府関係機関決算書

 平成十七年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十七年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管及び中小企業金融公庫)


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     ――――◇―――――

渡海主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 平成十七年度決算外二件中、本日は、厚生労働省所管、農林水産省所管、農林漁業金融公庫、経済産業省所管及び中小企業金融公庫について審査を行います。

 昨日に引き続き、厚生労働省所管について審査を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部俊子君。

阿部(俊)分科員 おはようございます。自由民主党の阿部俊子でございます。

 本日は、このような貴重なお時間をいただきましたことに感謝を申し上げ、三十分間、質問させていただきます。

 まず初めに、現在、我が国の医療制度改革において最も重要な柱の一つである在宅医療の推進について質問をいたします。

 昨年の診療報酬改定では、がんの末期などの医療のニーズの高い在宅療養者の支援、自宅以外の多様な居住の場での医療、みとりに加え、在宅療養支援診療所が新たに評価されるなど、在宅医療を推進する方針が打ち出されました。

 病院での過剰な医療や、本人の意思でない最期のあり方に多額の医療費が費やされている現状を考えますと、入院から在宅、あるいはそれに準ずるさまざまな居住の場でのみとりを進めていくことは、年間の死亡者が百万人から百七十万人という多死時代にとっては不可欠でございます。

 そこで、今後、在宅医療を進めるに当たり、患者さんの退院日の訪問看護についてお尋ねいたします。

 入院医療から在宅医療を考える際に最も重要なのは、いかに入院医療から円滑に在宅医療に移っていただくかということです。そこでかなめとなるのが、医療機関から在宅に退院した退院当日、この日に訪問看護師が訪問を行うことは、スムーズな在宅医療への移行に最も重要であります。

 病院では退院指導が行われており、それに対して、訪問看護がなくても大丈夫という御見解も聞かれますけれども、やはり在宅には在宅の事情がございますので、在宅でどのように療養生活を続けていくかということが非常に大切になると思っています。

 特に、平均在院日数が短縮しましたことで、がんの末期の患者さんなどは、さまざまな医療器具をつけたまま、在宅医療に移っていくことになります。しかしながら、現行制度では、患者さんが医療機関から自宅に退院する際に、訪問看護師が退院当日に自宅を訪問しても、それを診療報酬として算定することができない仕組みになっています。

 これは実際にお伺いした例ですが、あるがんの末期の患者さんが、全身に転移をして、痛みも強くて、注射で持続的にモルヒネを使いながら、これは麻薬ですが、自宅へ退院されました。家族の方は、入院中に病棟の看護師からいろいろな手技の指導を受けてきたのですが、自宅に帰るなり、点滴のポンプのアラームが鳴り出して、患者さんも家族もパニック状態になりました。それで、緊急で再入院になる寸前の状態だったそうです。

 この患者さんの場合は、電話連絡を受けた訪問看護師が電話で家族にすぐお話をいたしまして、自宅を訪問して事なきを得ましたが、在宅療養へ移行する患者さんにとっては、退院当日というのは、ベッドや点滴台の高さを調整することから医療器具の配置まで、これまで病院で行ってきたことすべてを、家族や家庭の状況に合わせて在宅での生活モデルに変えていく必要があります。

 こういう中で、最も重要な退院当日の訪問看護が認められないということは、在宅ケアを推し進める政府の施策として大きな矛盾であるというふうに考えますが、これに関してぜひともお考えをお伺いしたいと思います。

水田政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、入院から在宅への円滑な移行を促進するということは、私どもも重要なことであると認識をしてございます。

 それで、平成十八年度の診療報酬改定におきましても、入院機関の医師等々、退院後の療養を支援する医師、あるいは訪問看護ステーションの訪問看護師等が共同して説明、指導を行った場合の評価を重点的に行ったところでございます。

 御指摘の退院日の訪問看護につきましては、退院日における患者の医学管理は退院する医療機関において行われるべきものと考えられておりますので、退院日について訪問看護に係る費用を算定することはできない、今先生御指摘のとおり、こういう整理になっているところでございます。訪問看護をするかしないかということと訪問看護に係る費用を算定するかどうかというのは、これはまた別問題と考えておりますけれども、費用上はそういう整理になっているということでございます。

 いずれにしましても、患者が居宅で安心して療養できる環境整備ということは重要でございますので、在宅医療の推進の観点からどのようなことをなすべきか、引き続き検討すべき課題であると考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 退院時訪問というのは、在宅医療が成功するための大きなかぎであるというふうに思います。これに関しては、ぜひとも御検討を続けていただき、前向きの結果が出ることに対しまして、よろしくお願いいたします。

 次に、訪問看護ステーションにおける衛生材料等の取り扱いについてお伺いいたします。

 衛生材料というのは、いわゆるガーゼ、脱脂綿、消毒液、生理食塩水や、在宅療養の患者さんに必要なチューブやカテーテルなどのことでございますが、現在、訪問看護ステーションでは、これらの衛生材料の取り扱いは薬事法上認められておりません。これに対して、医療機関が訪問看護の利用者に必要十分な衛生材料を提供することとし、平成十五年三月に保険局医療課長通知で周知がなされたところであります。

 しかしながら、ある調査によりますと、在宅で使用する衛生材料のうち、医療機関の支給している割合は三一・九%、患者さん家族が実際購入している割合が三六・二%、訪問看護ステーションが調達している割合が三一%と報告されています。

 実際には、衛生材料の供給は徹底されておらず、主治医によって取り扱いに大きな差があることが明らかにされています。たとえ主治医から必要量が供給された場合であっても、夜間に急にカテーテルや点滴のチューブが詰まるなどのトラブルが発生したり、非常事態に対応しなければいけない場合もあります。しかしながら、訪問看護ステーションではこれらの衛生材料を常備することができないため、速やかに対応を行うことができず、結局、夜間に救急車で病院に搬送する例もあると聞いています。

 看護師が薬事法により衛生材料を管理できないことは、患者さんの自己負担がふえるだけではなく、看護師が患者さんの状態に迅速に対応できないこととなり、これでは在宅医療の質を担保することはできません。衛生材料の取り扱いを緩和し、例えば、一定の範囲内であれば、処置の実施者である訪問看護師が必要な衛生材料を請求できたり、訪問看護ステーションに一定程度を常備できるようにする必要があると考えますが、これについてのお考えをお聞きしたいと思います。

高橋(直)政府参考人 お答え申し上げます。

 訪問看護の場で使用されますさまざまな材料、今先生いろいろお挙げになりましたけれども、今のお話ですと、医薬品と医療機械に分類されるもの、あるいは医薬部外品、いろいろなものがまじっているような感じがいたしますけれども、局所麻酔剤や消毒液などは、人の疾病の治療または予防に使用されることが目的とされているものであって、機械器具ではないということで、これは薬事法上の医薬品に該当するわけでございます。

 医薬品につきましては、薬事法上はその管理などについて規制をかけているわけでございまして、一般論で言えば、訪問看護ステーションなどがそういったものを貯蔵しておくというのは、薬事法の通常の規制の中ではこれはできないということでございます。ただ、業務のやり方とか、いろいろな行為の形態もございます。その辺は、私ども、ちょっとまだつぶさに、その辺の十分な解析が私どもとしてできていないので、わかりません。

 それから、今お話の中で、そもそも訪問看護ステーション自体ができる行為なのかどうか、その辺がまず、別の検討があると思いますけれども、そういうものが仮にクリアできたとして、医薬品の適切な貯蔵、管理とかそういったものがきちんとできれば、そういった方向も、訪問看護ステーションでの衛生材料の備えつけというものはもしかしたらあり得るのかもしれないというふうに考えています。そういう意味では、私どもとしても十分研究をさせていただきたい、かように考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 ぜひとも御検討を進めていただき、患者さんたちの立場が非常に安全で安心な在宅療養ができるという形で、その衛生材料に関しても御検討いただきたいというふうに思っています。

 次に、二十四時間訪問看護の推進についてお尋ねいたします。

 多死時代の到来を前にいたしまして、政府は、在宅でのみとり率を二割から四割にという方向性を打ち出されていますが、今後、在宅医療を進めるために不可欠である訪問看護をどのように推進していくか、今後の方向性をお伺いしたいと思います。

 現在、在宅では、二十四時間三百六十五日の訪問看護が求められていますが、これからの訪問看護師は、病院に勤務する看護師のように夜勤ができるような体制を組んでいき、夜間病棟でケアをするように、夜間在宅へ訪問するという夜間対応型のイメージで考えていく必要があると思っています。

 しかしながら、現在の診療報酬では、夜間の訪問看護に関して、二十四時間連絡体制加算という評価はあるものの、患者さん一人当たり月二千五百円と、とても二十四時間体制をとるだけのサービスに見合った報酬が行われていません。

 さらに、在宅でのみとりに関しては、昨年の診療報酬改定で新たに評価された在宅療養支援診療所では、医師がみとりに立ち会うと在宅ターミナルケア加算十万円という評価がされていますが、同じように訪問看護が在宅でみとりを行った場合のターミナルケア加算は、わずか一万五千円という評価になっています。このような評価では、訪問看護師の夜間手当を確保できないため、経営上二十四時間体制をとることはできず、一年三百六十五日、常にケアを必要とする患者の在宅でのみとりを進めることができない状態であります。

 国が平成十二年に作成いたしましたゴールドプラン21では、訪問看護ステーションの目標数は九千九百カ所でありました。この数年間ほとんど訪問看護ステーションが増加することなく、現在、わずか五千三百カ所と一向に達成されていません。現在、訪問看護の利用者は、毎年約一万から二万人増加し、平成十七年では約二十八万人の人が訪問看護を利用しています。これに対して、訪問看護師の数は、准看護師を含めて二万三千人程度と、横ばいで推移しています。

 今後、在宅医療を進めるに不可欠である訪問看護にもっと財政的なバックアップがなければ、在宅でのみとりを進めることは不可能であると思います。

 二十四時間体制、ターミナルケアを提供する訪問看護ステーションには、ぜひともそのサービスの実態に見合った評価をしていただきたい。それがなければ、在宅でのみとり率を二倍にという政府の方向性は、絵にかいたもちにすぎないというふうに思います。これについてお考えをお聞かせください。

水田政府参考人 在宅医療の推進に向けまして、二十四時間の訪問看護体制の構築ということは、委員御指摘のとおり重要なことである、そのように認識をしております。

 従来から、これは御指摘ございましたけれども、二十四時間体制で訪問看護利用者及びその家族に対応する場合の加算を設ける等の評価を行ってきたところでございます。さらに、平成十八年度の診療報酬、介護報酬改定におきましては、特別な管理を要する利用者に対しまして、二十四時間体制で訪問看護に当たった場合の評価の充実を行いました。また、利用者またはその家族の求めに応じて緊急に訪問看護を提供した場合につきまして、新たに診療報酬上の評価を行ったところでございます。

 今後とも、実態を踏まえつつ、患者、家族が安心して在宅で療養できる訪問看護の体制の構築に努めていきたいと考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 二十四時間体制で訪問看護ステーションの制度を整えるためには、やはり安定的な収入源がないことには不可能であるというふうに考えますので、引き続き前向きの御検討をよろしくお願いいたします。

 引き続きまして、医療従事者の確保定着について質問をさせていただきます。

 特に、七対一の入院基本料と看護職員の確保定着対策に関してでございますが、昨年の診療報酬改定で、実に十二年ぶりに、新たに七対一という急性期医療の手厚い人員配置を実現していただきました。

 しかしながら、この制度導入後、当初想定した以上の早さで、短期間に中小病院を中心に数多くの届け出が行われました。一部の大病院による新卒看護師の大量採用、さらには中小病院からの看護師の引き抜きなどが大きく報道され、現場で混乱を生じましたため、その見直しを求める建議書が厚生労働大臣に提出されたところであります。

 先般、実際に七対一を算定した病院を対象に、患者の状態像に関する調査が行われたと聞いておりますので、今後はその結果を踏まえて、事実上、来年の診療報酬改定においては、七対一入院基本料の算定要件の変更が検討されることになると思います。

 私の地元の岡山県で七対一を算定している病院がございますが、七対一の配置が実現して、働きやすくなった、患者さんのベッドサイドにいられる時間がふえたという非常にいい評価が聞かれていますので、ぜひとも多くの施設でこの七対一を算定していただきたいところです。

 しかしながら、やはり患者さんの重症度にかかわらず高い入院料が算定できるということは問題であると思っておりますので、今後、人員配置をさらに手厚いものとしていくためには、重症度に応じた手厚い配置について評価が必要であると思っています。

 ただ、この七対一の問題については、看護職が大病院に引き抜かれた、地方からいなくなったというのは必ずしも正しい評価ではなく、実際には看護師が労働条件のよいところに移っていっただけであります。これからは、各医療機関が自助努力で魅力ある病院づくりをし、看護師が定着する、看護師が離職しない、看護師にとって魅力のある病院づくりが進められていくことが重要だと思っています。

 また、現在、潜在看護職員が五十五万人と推計されています。この方たちをいかに発掘し再就業させるかということも重要ですが、一たん資格を取った看護師を潜在化させない取り組みこそ重要であると思っています。

 日本看護協会では、看護職員確保定着対策として、具体的な数値を挙げてこの問題に取り組みを開始したと聞いています。厚生労働省では、数年ごとに看護職員需給見通しを立てて基礎資料は作成されていますが、これをもとに、どのような理念で、ゴール、ビジョンを持って、そして具体的な行動計画を考えていらっしゃるのか、お考えを聞きたいと思います。

松谷政府参考人 御指摘の看護師の確保対策ということは、医療はマンパワーで成り立っているということから、大変大事なことであると私どもも考えておるところでございます。

 委員御指摘の、魅力ある職場づくりというのがその一番の基本であろうかと思いますが、あわせて、退職された方の復職、そのための研修、また、今働いている方が職場で定着をして離職しないような離職防止策ということは、先生御指摘のとおり、大変重要な施策であるというふうに考えております。

 未就業の看護職員の就業あっせん、あるいは再就業を後押しするための臨床実務研修も行っているわけでございますが、職場への定着を促すよう、離職防止策という観点から、出産、育児、子供のためを理由に離職する看護職員が多いということにかんがみまして、病院内保育所の運営に対する補助を従前より行っているところでございまして、その充実に努めているところでございます。

 また、看護職員が業務を継続、あるいは復職しやすい勤務環境を広めるために、今年度予算におきまして、多様な勤務形態で看護職員を雇用する医療機関の事例を収集、分析いたしまして、そのノウハウを普及することで看護職員の出産や育児等の生活環境に応じた就業の支援をすることといたしておりまして、引き続き看護職員の確保対策をいろいろな面から進めていきたいと思っております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。

 やはり安全で質の高い看護を提供するためには、私は、手厚い看護配置というのは非常に大切なことであると思っています。また、労働条件の改善というのは、看護職の離職防止の上では非常に大切なことであると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 また、急性期病院に関しましては、七対一というのは人員配置としては最低基準であると思っています。必ずしも適正人員を意味しているわけではないということ、さらには、どのぐらいの重症度があれば何人の看護師の適正人員配置が必要かという視点で人員配置を見ていく必要がこれからもあると思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 医療療養型病床についての質問をさせていただきます。

 昨年の診療報酬改定で、医療療養病床の入院基本料については、これまでの看護師の人員配置によって病棟単位で設定する方法から、入院患者の医療必要度とADLの状態の組み合わせによって入院基本料の点数をそれぞれの患者に当てはめて算定する仕組みに改められました。

 現行の支払い方式では、それぞれのケアにかかる時間をもとにした評価ですが、一番軽いとされる医療区分一の患者さんの七割が介護保険の要介護度では五に該当しまして、要介護度の高い患者さんが集中しているということも報告されています。

 この医療区分について、現場では、医療区分一に該当する処置が二つあれば医療二と判断してほしいという希望なども現場から多く出されているところでございますが、実態に合わせた形で早期に見直しがされることを期待しています。

 また、現行の支払い方式では、患者さんの医療区分が上がると、いわゆる状態が悪くなると診療報酬が上がる、もうかるという仕組みになっていますが、一部の施設では、患者さんの医療区分を上げるために、酸素を一リットル持続的に、必要もないのに流しているということもうわさに聞いています。

 先日、この件で、原医療課長のところにお願いに参りましたが、状態が悪化しやすい患者さんに対してはそのリスク評価はできるところでありまして、例えば成果報酬という、患者さんの状態を維持するには非常に看護の手がかかるところも考えて、患者さんの状態が悪くならない、そのことに関して成果報酬の仕組みを入れていただくことも検討していただけたらと思っています。

 特に、例えば糖尿病、肥満の患者さん、ADLが低い、自分で動けない患者さんなどはやはり病状が悪化するリスクが高いと判断されるわけでありますが、予防のケアを重視して、患者さんの悪化を防いだ場合、成果報酬を入れるという仕組み、このようなことが海外では行われております。

 日本でもこの視点を持っていくということは、医療費の適正化、特に中長期的な医療費の適正化や削減につながる重要な点であると思いますが、これについてお考えをお聞かせください。

水田政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、平成十八年度の診療報酬改定におきまして、医療療養病床につきまして、患者の医療の必要性等に応じた評価を導入したところでございます。

 ただいま委員から、さらに踏み込んだ御提案、すなわち成果に着目した評価ということを提案されたわけでございます。これも御指摘のとおり、これまでの診療報酬におきましては、患者の病態の改善を指標として評価を行ったことはないわけでございますが、ただいまの御提案は、医療の質の確保、向上のための一つの手法であろうかと考えております。

 ただし、このためには、まず患者の病態の改善等につきましてどのように医療の質を評価するのか等の問題がございます。さまざまな調査あるいは研究を行う必要があると考えてございまして、中医協での御議論を踏まえながら今後研究をしていきたいと考えております。

阿部(俊)分科員 ありがとうございました。ぜひともそのような視点で検討を進めていただきたく、よろしくお願いいたします。

 ここで、看護職員の確保定着という観点から、介護福祉士の労働環境について、少し意見だけを述べさせていただきたいと思います。

 高齢社会の進展とともに、介護職の需要は一層高まって、さらには、コミュニケーション能力や利用者本位の尊厳を支えるケアなど、介護職の資質の向上が大きな課題となっています。

 そういう中で、介護福祉士を専門職として位置づけ、資質の向上を図るために、教育課程の見直し及び二〇一二年からすべての養成者に国家試験を課すことなどが盛り込まれた改正案である社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律案が今国会で審議され、介護職の資質の向上が図られることは、大変意義のあることだと思っています。

 しかしながら、現在の介護の現場では、高齢者の虐待などの人権侵害問題、さらには外国人介護士の受け入れ問題などの問題が注目をされています。これは、介護現場の慢性的な人手不足が要因であるというふうに言われています。

 介護職の離職率は、就職して一年以内に三五%、三年以内には八〇%が離職していくという、他産業に比べても高い率であると聞いております。また、実際の介護現場では七十六万人が働いていますが、そのうち二九%、十九・九万人が介護福祉士資格者ですが、資格取得者の三六%しか実際に働いていません。

 平成十七年度の厚生労働省の調査によると、施設で働く介護福祉士の平均収入は、男性が約三百十五万円、女性が約二百八十一万円で、全労働者平均の約四百五十二万円を大きく下回っています。さらに、介護職員の離職率は二二・六%で、全労働者の一七・五%を上回っておりまして、業務内容に比べて賃金水準が低いとの指摘が出されているところで、この労働条件の悪さが、介護現場での人手不足にほかなりません。

 実際に、若い方々が介護の世界に魅力を感じ、介護福祉士として就職をしても、賃金が余りに安いことから、将来結婚したり子供を持つことができないという理由で、介護の世界に未練を残しつつも、志半ばで介護の世界から去っていくということは大変多く聞かれるところであります。

 介護福祉士の資質の向上を目指すことは大変すばらしいことですが、介護福祉士に限らず、現在の介護職の現場での離職率の高さを考えると、介護を担う人材の処遇の改善なくしては介護職の資質の向上はあり得ないと思いますので、ぜひともしっかりとした取り組みのもと、介護福祉士の処遇の改善をお願いいたします。

 ところで、すべての介護福祉士が国家試験の合格者であることは、介護職の社会的地位や専門性の向上のためには不可欠でありますが、法改正では、養成施設を卒業したけれども国家試験に失敗した人や国家試験を受験しない人を対象に、准介護福祉士という新たな職種を設けることが盛り込まれています。

 これは、フィリピンとのFTAで浮上した外国人介護労働者の受け入れのための政治的判断によるものと思われますが、これが介護現場に混乱を招き、介護福祉士の資格の社会的評価を下げることにならないように十分な管理監督を行っていただきたいと思います。

 また、私どもにとっては、准介護福祉士の准という名称が准看護師をほうふつさせるものであり、今後、この資格が設けられたということで、いまだに決着のつかない准看護師問題の二の舞にならないことを切に願っています。名称の再検討や准介護福祉士制度に一定の期間を限定するなど、ぜひそのような検討もいただけますと幸いであります。

 少し早いですが、質問を終わらせていただきます。

渡海主査 これにて阿部俊子君の質疑は終了いたしました。

 次に、矢野隆司君。

矢野分科員 自由民主党の矢野隆司でございます。

 きょうは、石田副大臣、どうもありがとうございます。

 厚生労働省の所管の中でも、水道という分野について幾つか質問をしたいと思います。

 何といっても日本は地震大国でございまして、何かあるとすぐに水道が被害を受け、それが国民生活に直結して大きなダメージを与える、こういう宿命的なこの国の位置づけ。そういう中で、我々はどうやって地震というものから国民生活を守っていくか、このことをやはり真剣に考えねばならないと思うのであります。

 まず、昨年一年間で、人災あるいは天災といったもので、断水や水質汚濁に伴う給水停止など、そういった水道被害の件数がトータルでわかれば教えていただきたいと思います。

外口政府参考人 平成十八年度に発生いたしました地震や水害など自然災害による断水は、延べ百三市町村で発生し、被害を受けた世帯数は約五万二千四百世帯でありました。

 一方、漏水などの事故、これは人災の方でございますけれども、これによる断水は十の市町で発生し、被害があった世帯数は約四万四千四百世帯でありました。

 このうち、昨年八月二十五日に広島県で発生いたしました送水施設隧道崩落事故では、呉市、江田島市で最大三万二千五十世帯、七万二千百人が断水被害を受け、完全に復旧するまで十七日を要しております。

 また、水質汚濁によって給水停止や飲用制限が必要となった水質事故は、昨年度十三件発生しております。

矢野分科員 昨年一年間の数字をお述べいただきましたが、ことしに入りましても、能登半島で大変大きな被害の出る地震、それから今月も三重で大きな地震が相次ぎました。こちらの方の被害状況を水道に関して教えていただければと思います。

外口政府参考人 本年三月二十五日に発生いたしました能登半島地震におきましては、水道施設の破損等によりまして、石川県の七市町を中心に約一万三千三百世帯で断水被害があり、三日後には約九割の世帯で解消されましたが、応急復旧の完了までには十三日を要したところであります。

 他方、四月十五日に発生しました三重県中部を震源とする地震におきましては、津市において二世帯で断水被害があり、これはその日のうちに復旧しております。

矢野分科員 ここからちょっと核心に入った質問をいたしますけれども、被害の大変大きかった能登の地震を含めまして、明らかに国が、あるいは地方自治体が事前に整備をしておけば防げた水道の被害といったものがあったのかどうか。

 また、広島での、導水管ですか、管渠の崩落事故ですけれども、同種の施設は日本にもたくさんあると思うんですけれども、その被害を踏まえて、その後、厚生労働省として何らかの対応をされたのかどうか。

 それから、今健康局長がお述べになりました復旧の日数ですが、これは、要するに支援体制も含めて想定の範囲、想定の範囲というのもおかしな話かもしれませんが、範囲であったのかということを伺いたいと思います。

 ちなみに、東京都の場合ですが、相当大きな地震でも、政府、国会それから医療機関、大使館、区役所等三百六十五カ所を指定しまして、発生後三日以内に全面復旧する、こういう計画で現在二〇一六年整備完了に向けてやっておられるということを聞いておりますので、そういった観点からお答えをいただければと思います。

外口政府参考人 能登半島地震の被害につきましては、コンクリート製の導水管などが破損いたしまして大きな被害が発生しておりますことから、管路施設の耐震性が十分でなかったと考えております。

 一方、広島県の送水トンネル事故は、県が設置した送水施設事故調査委員会の報告書によりますと、突発性崩落による事故であって、一般的な点検ではその兆候を確認することは困難であったと考えられると報告されております。

 厚生労働省では、この広島の事故を受けまして、全国の大臣認可の水道事業者等に対し調査を行った結果、一部の事業者において改善が必要となる事項が見受けられましたことから、維持管理の適正化や事故時の応急給水及び復旧体制を確保するよう通知したところであります。

 なお、これらに対します応急給水や応急復旧は、過去の災害の経験を踏まえ、日本水道協会を中心とした水道事業者間の協力体制や自衛隊など各機関との連携が機能して迅速に対応がなされ、必要な応急給水を行いつつ、比較的短期間に復旧が図られたものと考えております。

矢野分科員 今、突発性で想定が不可能なものもある、こういうお答えでございました。要は、常にメンテナンスといいますか、維持管理に心を配っておかねばならない宿命なのかな、こういうふうにお答えを聞いておりました。

 ちょっと視点を変えまして、先般、私、東京都水道局の水運用センターというところへ同僚議員とともに視察へ参りました。大変びっくりしたのは、よく、被災しますとポリタンクに水を詰めて両手で抱えて御自宅や避難所へ持っていかれる姿を見るわけですが、東京都水道局の場合は、リュックサックの形にした、非常に強力なビニールでできた担ぐものをつくっておられて、それを配られる。ということは、両手があくわけですから、安全性もすぐれている。こういうものを配布しておられる実物を見まして、大変感銘を受けた次第です。あるいは、お米の袋詰めのような、お水をパックする機械もお持ちでして、一分間にたくさんの水がパックされて、かなりの大きな袋でしたけれども、それを配布できる体制を整えておられる。こういうものを拝見して、さあ、日本でこれだけの設備を整えている自治体はどれだけあるのかな、こう思いながら見ておったわけです。

 ちなみに、こういう水道のセルフケアといいますか、各自治体が最低限用意しなければならない、あるいは用意しておいてくださいよと国といいますか厚生労働省が要請をしている、あるいは期待をしているような指針のようなものがあるのかどうか。例えば、飲用水でいいますと何日分であるとか、あるいは水道に絡めた防災のグッズとか、そういったものがあるのかないのかということをまず伺いたいと思います。

外口政府参考人 災害時に必要となります応急給水量につきましては、最初は、震災直後の段階で最低限の飲料水の確保が必要となります。続いて、炊事用水、トイレ用水、洗濯、避難所等での入浴と、日数の経過とともにこれが拡大してまいります。

 実際には、その拡大に合わせまして、給水の必要なエリアをだんだん復旧とともに狭くしていくということになるわけでございますけれども、指針といたしましては、水道の耐震化計画策定指針というものを策定してございまして、地震発生時から三日間は一人一日三リッター程度、これはタンク車とか耐震貯水槽で給水することになります。それから、地震発生時から十日間は一人一日二十リッター程度を目安にしておりまして、これにつきましては、配水幹線付近の仮設給水栓等を想定しております。さらには、二十一日からは一人一日百リッター、これは配水支線上の仮設給水栓。

 次第に水の一人当たり必要な量はふえていくけれども、給水方法を改善しながら必要な範囲を狭めていく、そういった目標になってございまして、それを目標にいたしまして、応急給水拠点の配置や応急給水量の確保を図るよう、具体的な案をつくっていくよう水道事業者に求めているところでございます。

矢野分科員 ありがとうございます。

 それから、これに関連するかどうかちょっとわかりませんが、厚生労働省は国土交通省とともに緊急時水循環機能障害リスク検討委員会という委員会をつくっておられて、ことしの三月三十日にその報告書を発表されたと聞いております。この検討会はどういう組織で、具体的にどういう提言があり、今後どうそれを生かしていくおつもりなのか、伺いたいと思います。

外口政府参考人 緊急時水循環リスク検討委員会は、大地震等に起因いたしまして上下水道等の水循環システム機能に重大な障害が発生した場合に公衆衛生や市民生活等に及ぼす影響リスクを分析、評価するために、平成十七年度に国土交通省と厚生労働省が共同で設置いたしまして、東京大学教授の大垣眞一郎委員長を初めとする有識者の方に御検討をいただいた委員会でございます。

 報告書では、委員会で御意見をいただきながら、東京都区部で地震が発生した場合に避難者や帰宅困難者が遭遇する都市内の水に関するリスクと、淀川水系の上流部で地震が発生した場合に下流側の都市が遭遇する流域内における水系リスク、これをそれぞれのシミュレーション結果を踏まえて整理した上で、その対応策及び対応策を実施する上での課題を取りまとめたものでございます。

 具体的には、都市内の水に関するリスクとして、生活用水の不足が生じる可能性があることから、浄水場や水道管路の耐震化を図ることが必要であるという御意見をいただいております。また、流域内における水系リスクとしては、上流域からの有機汚濁等の流出により下流側の都市の水道の給水に支障が生じる可能性がありますことから、この場合は連絡体制の強化や情報の共有化等を図ることが必要であるという御意見をいただいております。

 今後は、この委員会からの御意見を踏まえまして、都市内の水に関するリスクの低減のために、水道施設の耐震化のより一層の推進を図るとともに、流域内における水系リスク低減のために、河川管理者や下水道管理者等の関係者の方々と水道事業者の方との連携方策の検討を進めていきたいと考えております。

矢野分科員 大変有意義な検討委員会なのかなと思いますが、これは東京と大阪と二つをモデルケースにして検討されたということですけれども、地方の検討はされるのか、あるいはされないのか。東京と大阪のモデルケースを検討すれば十分地方の場合も当てはまるのでいいのかどうか。そのあたりをちょっと教えていただきたいと思います。

外口政府参考人 このモデルケースにつきましては、東京と大阪という代表的なところを想定したわけでございますけれども、東京と大阪、どちらもかなり人口の多いところで、また対応もその意味で難しいところでございますので、ここのモデルケースをしっかりつくっておけば地方にも応用はできると思います。

 他方、地方には地方のそれぞれの事情もありますので、それは、そのモデルケースをそれぞれの場合に当てはめてどう考えるかということを、それぞれの水道事業者の方にまたよく御研究いただきたいと考えております。

矢野分科員 そういったことをなぜ伺ったかといいますと、実はこの報告書の三十四ページに、「対応策を実施する上での課題」ということで、要するに、この検討結果を踏まえて実施するにも大きな五つの課題があるということが示されておりまして、わけて重要だなと思うのは、震災時に建物が破損しない場合であっても、要は建物に被害が余りなくても、停電等で水道水の確保ができなくなるおそれがあるとして、中高層マンション住民への対応、これにやはり取り組まねばならぬ、トイレも使えなくなる事態も十分想定されるわけで、その応急給水体制について早急に検討していこう、こういうふうな文言がございます。

 これは何も東京や大阪に限らず、地方にも最近では相当高い高層マンションもできておりますし、いわんや都心では、五十階建てなんというマンションもできておりまして、いざ地震が起きて、停電が発生し、ポンプアップによって水道が送れなくなる、あるいはタンクの水道が空になったときに、一体、五十階に住んでいる人は一階まで一々おりてどうして生活していくのかということ。これは本当に喫緊の課題ではないかと私は思っておりますので、ここでお答えは結構でございますが、ぜひ、この検討会で指摘されている事項について、厚生労働省としても何か抜本的に、安心して高層住宅に住める体制に取り組んでいただきたいな、こう思っております。

 ところで、地方自治体の合併が大変推進されまして、そういう自治体の合併による水の供給体制、あるいは料金統合それから料金を徴収する徴収体制というものは円滑に進んでいるのかどうか、お尋ねしたいと思います。

外口政府参考人 市町村の合併によりまして水道事業も統合されてまいりますけれども、その統合された水道事業におきましては、これは広域的に水供給を行うことができますことから、水供給の安定性が高まるという利点がございます。また、料金統合とか徴収体制の統一によりまして、事務事業の効率性が高まるといった効果も見られるところであります。

 また一方で、水道事業の統合に当たりましては、水道施設の統廃合といった施設の最適配置や事業の経営方針の決定、また、特に水道料金の統一などに、これは合意形成ということに関しまして一定の期間が必要でございますので、その点で、市町村合併後もまだ水道事業を統合していない市町村も少なからず存在しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、水供給の安定性を高めるということが大変重要でございますので、そういった観点から、各市町村が行います地域水道ビジョンの策定や簡易水道統合計画策定を推進いたしますとともに、簡易水道を統合する場合の水道施設整備に国庫補助を行うことにより、水道事業の統合を推進してまいりたいと考えております。

矢野分科員 水道事業の統合を推進していかれる、こういうことでございますが、一方で、水道の広域化が進んでいるというふうに聞いております。

 これも東京都の事例で申し上げますと、都知事の提唱で、広域連絡管による相互融通機能というんですか、埼玉県の浄水場や川崎市の浄水場などから連絡管をつなげて水の安定供給を行うんだ、こういう施策のようでございますが、こういう広域化、国全体として把握されておられる現在の取り組み状況といいますか、あるいは今後の目標、そういったものをちょっと教えてください。

外口政府参考人 水道の広域化につきましては、今、全国の七十一の地域で広域的水道整備計画が策定され、これに基づきまして、広域的な水道施設の整備が進められております。これによりまして、安定した水源の確保や水の広域的な融通を目指しているところでございます。

 一方、平成十六年六月に公表された水道ビジョンでは、人口の減少や施設更新需要の増加に対応するために事業運営基盤の一層の強化が必要となっていきますことから、経営の一元化や管理の一体化、施設の共有化などを新たな概念の水道の広域化として位置づけて推進していくこととしております。これは、単にハード面での広域化、統合というだけではなくてソフト面での統合による工夫も進めていこうという方針でございます。

 今後とも、水道事業者の事業運営基盤を強化していくために、地域の実情に即した広域化が進展するよう指導、応援していきたいと考えております。

矢野分科員 料金統合や徴収体制に絡めた質問になるかもしれませんが、各地で各自治体が独自の、いわゆる水道水をボトルに詰めて売っているという動きが目立っております。私の地元の大阪でも、大阪市水道局がきき水をしましたところ、市販の民間のお水よりも大変評価が高かったという統計が出ております。

 一方で、水道局が水をボトルに詰めて売るということが、要するに、料金会計、企業会計に結果としては余り貢献していないにもかかわらず進めているのは、料金値上げへの環境整備じゃないか、あるいはそういったものへの理屈づくりじゃないかという批判が一部にございます。

 各自治体がボトル水をどんどん売っていく、広めていこう、こういう取り組みに対しまして、厚生労働省の評価といいますか、所見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。これは副大臣にお願いします。

石田副大臣 今、各地でそういう水道水がパックして売られている、こういうことであります。

 実は、私も東京都に勤めたことがありまして、最初に職員研修で連れていかれたところが、金町の浄水場へ行きまして、入ってくる水と、こういうものを飲んでいるのかというぐらい大変、びっくりするぐらい、はっきり言えば汚かった水だったんですけれども、それからだんだんと、いろいろな意味で、高度浄水処理の導入等によって安全でおいしくなってきているということが私はあるかと思います。

 ですから、一つは、水道水をそのまま飲むのが、いろいろなことで、余りおいしくないということもありましたけれども、ある意味でいえば、販売することによって、ペットボトルで今まで売られていたほかのものと同等以上の安全性とおいしさがあるんだ、こういうPRにもなっているのではないかというふうに思います。また、料金収入によって水道事業は成り立っておりますので、利用者の理解を得る。

 こうしたさまざまな取り組みというのは私は意義があるというふうに考えておりまして、厚生労働省としましても、水道事業が国民の評価を受け、安全でおいしい水道水を飲んでいただけるよう、これはまた引き続きそういう点も今まで以上に努力をしていかなければいけない、このように思っております。

矢野分科員 副大臣、ありがとうございました。

 ちょっと視点を国内から海外へ向けてみたいと思いますが、日本を標的にといいますか、足がかりに、いわゆる世界の大きな水の企業グループが今我が国にどんどん進出してきております。日本の水道の民営化あるいは民間委託といったものをにらむ者、あるいは日本を拠点にアジアへ仕組みを売り込もうとしているグループ、さまざまだと思います。

 折しもサミットの開催地が昨日北海道に決まったということですけれども、フランスでは、水に関する最高の営業部長というのがシラク大統領だ、こういう位置づけもあると聞いております。大統領みずから水に関するものを売り込んでいこう、こういうお国柄なんだそうです。

 加えて、ことしは我が国でいろいろと国際的な水道に関するといいますか水に関するイベントもたくさんあると聞いておりますけれども、そういった欧米企業の日本の水道に対する関心の高さに対してどういう認識か、お聞かせいただきたいと思います。

外口政府参考人 世界の水産業といたしましては、民間企業の形態で水道事業の経営実績を有する議員御指摘のフランスや英国などの欧州系の企業が世界各国で積極的な事業展開を行っておりまして、世界でも高いシェアを占めているのが現状でございます。これらの企業の中には、アジアを巨大な市場としてとらえて日本に営業拠点を設けたり、日本の国内市場に着目して積極的な営業展開を図っているものもあると認識しております。

 一方で、国内の水道関係者は、安全で安心な水が全国的に安定的に供給され、諸外国からも高い評価を受けている高いレベルの水道の実現に努力してきたところであります。

 水道事業の使命は、住民に対して安全、安心な水道水を持続的に供給することにありますので、厚生労働省としても、こうした観点から、欧米企業等の動向について注視してまいりたいと考えております。

矢野分科員 余り時間がありませんので、はしょってお尋ねいたします。

 国際協力銀行の円借款事業評価報告書二〇〇六というものを拝見しますと、我が国が大変あちこちで水道事業に関して資金供与をしているということがわかります。外国から企業が日本に来る、一方、日本はいろいろ資金を援助して外国での水道整備に尽力している、こういう図式でございます。

 先般、水道国際貢献推進協議会というものが設立されたというふうに聞いておりますけれども、どういう組織で、何を目指しておられるのか、教えていただきたいと思います。

外口政府参考人 水道国際貢献推進協議会は、アジアを中心とする開発途上国への水道分野の協力について、我が国の水道関係者が一丸となって推進するために、水道事業者の組織である日本水道協会、水道関係企業の組織である日本水道工業団体連合会、水道の技術開発促進、普及の組織である水道技術研究センターの三者が中心となって設置された協議会であります。

 アジア各国等の実情に即した水道事業の運営に当たって、我が国の有する水道経営のノウハウやすぐれた技術を初め、長年にわたってはぐくんできた日本の水道のよい面を生かしていくという視点も大変重要であります。

 なお、ISOにおける水道サービスの国際規格の検討に我が国は積極的に参加しておりまして、本年中にISO24510シリーズとして取りまとめられることとなっております。

 今後、この規格を開発途上国に適用するための技術協力活動が活発化することが課題となっており、こうした活動に対し、我が国が積極的に参加していくためにこの協議会が取り組んでいくことを期待しております。

矢野分科員 最後に、これは副大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、昭和三十二年六月の水道法の施行以来、ことしで五十年でございまして、この間、幾たびも歴史的な渇水や断水がございまして、量そして質をどうするかということをテーマにいろいろと施策をされてきたと思います。しかしながら、平成七年の阪神・淡路大震災では、改めて量の確保というものもクローズアップされて、耐震化というものが重要テーマになったと思っております。

 安心してという言葉は、中身の安心もございますが、確保に心配しなくてもよいという意味の安心も私はあると思っておりまして、そういう意味も込めまして、現在は高普及率といえども、やはり維持管理という観点からは水道の使命は終わっていない、まだまだこれからなんだという思いを強くいたしております。

 地震国日本においては、常に冒頭申し上げましたような宿命もあると思いますので、そういったことを踏まえて、ことしの水道施設整備費の予算配分、事業のねらいとするところ、特徴といったものがあれば、ぜひ副大臣のお口からお述べいただきたいと思います。

石田副大臣 確かに、今委員がお述べになったとおり、おいしい水とかいろいろありますけれども、まず水そのものを確保しなきゃならぬということはそのとおりでございまして、地震等の災害時におきましても断水が生じることがないようにしていくのがまず第一だろうというふうに私は思います。

 そういう意味で、ことし、厳しい財政事情ではありますけれども、対前年度比で全体的には九二・六%、地震等の災害対策関連につきましては前年度予算に対して八・一%の増額、こういうことで予算の重点配分を行っております。また、浄水場等につきましても耐震補強事業、耐震性が弱い石綿セメント管の更新事業、こういうものを重点的に十九年度に講じたところでございます。

 これらの補助制度を活用して水道の災害対策の強化を図る、そして、災害時において安定した水道水が供給できる水道づくり、こういうものの一層の推進をしていかなければいけない、このように考えております。

矢野分科員 終わります。ありがとうございました。

渡海主査 これにて矢野隆司君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島豊君。

福島分科員 大変御苦労さまでございます。

 本日は、日本の医療の将来ビジョンについてということでお尋ねいたしたいと思っております。

 現在、日本は急速な人口構造の変化の中にございます。今後、後期高齢者の増加、またそれに伴う認知症の増加が予定されておりますし、また、生活習慣病を中心といたしまして、疾病構造も大きく変化をしております。要介護者数の増加、また死亡者数の増加も今後の強いトレンドとなっております。

 こうした中で、一方では経済自体が低成長経済に移行している、また財政再建もこれは進めなきゃいけない。非常に財政的な制約の中で、こうした人口構造の大きな変化がもたらす医療ニーズの増大また変化というものに対して対応していかなければいけない、これが我々の直面する課題であるというふうに思います。

 この数年間、医療制度改革、医療保険制度改革を推し進めてまいりました。それは、こうした変化に対応ができるように、社会保障制度としての医療の持続可能性を確保していくと同時に、その質的な転換を図る、こういったことが主眼であったことは間違いございません。

 しかしながら、こうした改革によりまして、一方では医療費の抑制政策によって医療の崩壊がもたらされているのではないか、日本の医療はまさに崩壊の危機にあるんじゃないか、こういう指摘があることも事実であります。

 それは、例えば小児科でありますとか産婦人科でありますとか、そうした科目ごとの医師不足、そしてまた、地方における医師不足、こうした問題に顕著にあらわれてきている。また、地方だけではなく、都市部におきましても病院等の勤務医が不足しつつある、こういう指摘もあるわけであります。

 私どもは、医療が危機的状態にあるんじゃないか、こういう認識も同時に持ちながら、そしてまた、人口構造の変化や財政的な制約、こういうものに対してどうこたえていくのか、大変難しい問題を解決していかなきゃいけない、こういうところにあるんではないかと思います。

 そしてまた、今までの医療では十分に注意が払われていなかったといいますか、光が当たっていなかった、例えば患者の権利をいかに強化していくのか、エンパワーメントの問題もございますし、また、質と安全といったものについて今まで以上に配慮していかなきゃいけない、こういった要素についても、日本の今後の医療ビジョンを考えるときに、同時に注意しなければいけない大事な点だと思っております。

 先般、日本医師会は、グランドデザイン二〇〇七ということで、三月に、日本の医療の将来ビジョンについて取りまとめをいたしました。この点について、これは必ずしも政府の考えている将来ビジョンと合致するわけではありません。さまざまな違いが指摘できると言った方がいいわけであります。私は、こうした違いについても客観的に、できるだけ事実に基づいて分析をしていく、こういう議論が国会の場において積み重ねられることが必要ではないかというふうに思っております。

 今まで、医療費の抑制が必要だ、こういう話があったわけであります。これは、ある意味で医療保険という財政的な制約からの議論ばかりでありまして、果たしてそうしたことによって日本の医療がどうなっているのか、そしてまた日本の医療を一定の水準に支えていくためにはどの程度の医療費が必要なのか、そういうことについて、客観的な事実に基づいて、合理的な推計の積み重ねの上に議論をされてきたわけでは必ずしもないんじゃないか、こういう思いがいたしております。

 私は、率直に申しまして、日本の医療費の水準というものは、より高い水準にあってしかるべきだというふうに思います。逆に、日本の医療費の水準というのは、諸外国から比べると甚だ低い水準にとどめおかれている。

 今までは、医療費をふやすべきだ、こういう議論をいたしますと、非常に政治的な話にしかすぎないんじゃないか、こういうふうに思われていたわけでありますけれども、医療の崩壊、こういうことが指摘される中で、なぜ日本の医療費は低い水準にとどめおかれてきたのか、それについての客観的な分析をするということが必要だと思います。

 そしてまた、日本の医療を望ましい水準に維持していくためには果たしてどれだけの医療費が必要なのか、こういうことについても、政治的な駆け引きという話ではなくて、客観的な事実に基づいて国民に理解をしていただく、こういうことが私は必要なんじゃないかというふうに思っております。そうした観点から、きょうはお尋ねをしたいと思います。

 お手元に、こういうたぐいの話ですから余り抽象的な話をしてはいけませんので、日医のグランドデザイン二〇〇七に盛り込まれた、さまざまな数値的なグラフでありますとか表を資料としてお配りさせていただきました。

 まず初めに、日本の医療費の水準をどう考えるか。この問題でございます。

 世界的に見て、日本の医療費の水準はどのような状態にあるのか、どのような位置づけができるのか。そしてもう一つは、今後、医療費の変化にどのような推計がなされるべきであるか。こういう二つの論点があると思います。

 我が国の医療費の水準、国際的に比較する場合にいろいろと問題になりますのは、医療制度自体が国ごとによって異なっているという指摘があります。一概に医療費の高低によって医療の水準を推定することは私も適切ではないというふうに思いますけれども、一般的に、医療経済的な研究で共通に確認されていることは、経済成長によって医療費が増加する、これが一番基本的なファクターだ。そして、その国の医療費の水準というのは、その国の経済規模、こういうものに一番相関している、こういう話があるというふうに思います。

 これは、言ってみれば、その社会がどの程度医療に資源を配分することができるのか、それは経済の規模に直結する、こういう話なんだろうと私は想像いたしておりますけれども、こういうことが言われている。

 ただ、それだけではありませんで、疾病の発生状況でありますとか、そしてまた疾病構造、こういうものが医療費に影響を与えるということも容易に想像できるわけであります。衛生環境でありますとか、栄養環境でありますとか、自然環境、また人口構造、疾病予防の取り組み、こういう複数の要素が同時にまた医療費に影響を与えるだろうというふうに私は思います。

 しかし、先進諸国において、衛生環境でありますとか栄養環境、自然環境、こういった点については、恐らくもう大きな差異がないんではないかと私は個人的に思っておりますけれども、そのように考えれば、国際的な枠組みの中で医療費を比較する、特に先進国の中で医療費を比較するというのは、そこに差異があった場合に、医療制度そのものの何か課題がそこから抽出されるという意味で大事ではないかというふうに思っております。

 まず一番目の、これは日本の医療費の対GDP比に占める比率を示したものでございますが、これは、左側の表ですと九五年、これはOECDの統計でありますけれども、二十九カ国中二十三番目が日本の水準でございます。六・八%。右側が、これは二〇〇三年、八年たってからのものでございますが、高齢化もこの間進行いたしましたけれども、それでも日本は十八位にとどまっている。こうした低い水準にあるということが言える。平均よりも低いということが具体的な、客観的な事実だと思います。

 また、右の2の方へ行っていただきますと、一人当たりGDPと一人当たり総医療費支出、この相関をとった資料でございます。

 真ん中に直線が引いてありますけれども、その直線を引いた意義というのは、一人当たりGDPが平均を超えている国において、一人当たりの医療費が平均以下の国というのは一体どのくらいかということで、日本とそれからイギリス、そしてまたフィンランド、イタリア、この四カ国にとどまりますよ、こういう指摘なんであります。

 また、三番目のグラフを見ていただきますと、一人当たりGDPと一床当たりの総医療費の支出でございますけれども、日本は病床数が非常に過剰だ、こういうふうに指摘されております。そしてまた、そのことが医療費の高い水準に直結するとも言われているわけですが、一床当たりの総医療費の支出を見ると十五・八万ドル、これは、一人当たりGDPが二万米ドル未満のグループと同等の水準にとどまっている。非常に低いところにあるというのは一目瞭然だというふうに思います。

 こうした数値を見ますと、日本の医療費というのは諸外国と比べると非常に低い水準にある、こういうことを指摘する、そしてまた、そのように言明することは正しいのではないかと私は思いますけれども、政府としては、これをどのように受けとめておられますでしょうか。

水田政府参考人 お答えいたします。

 医療費の増加を招く要因といたしましては、委員も御指摘のとおり、高齢化の状況、疾病構造、あるいは医療技術の水準など、さまざまな要因があるわけでございます。

 各国を横並びで見た上でのOECDの報告書によりますと、一つは予防、診断、それから治療を行うための医療能力の進歩、これは医療の担い手側の問題がここはある。もう一つは、医療の受け手の問題として、肥満の増加ということが挙げられているわけでございます。

 その一方で、我が国は、WHOによりますと健康寿命は世界一、平成十四年時点でございますけれども、そういう評価を受けておりますし、また、OECDによりますと、肥満人口の割合が少なく、虚血性心疾患の人口十万当たりの死亡率は極めて低い、こういった特徴が挙げられているわけでございます。

 このように、一般に、健康水準が向上すれば、高い水準の健康水準が維持されていれば医療費が抑制されている、こういう面もあるわけでございます。ただ、そうはいいましても、これも委員繰り返し御指摘になりましたとおり、医療費の水準自体につきまして、制度や社会的背景の違いがございますので、単純に国際比較を行うことは困難であると考えているところでございます。

 ただ、我が国におきましては、今後、これも御指摘のとおり、急速な高齢化が進展するわけでございますので、一人当たり医療費の高い高齢者がふえていくということ自体は確かでございます。

 経済の伸びを上回って医療費が増大することが見込まれているところでございますので、皆保険制度を堅持し、これを持続可能なものとしていくためには、引き続き改革の努力というものは必要である、このように認識をしております。

福島分科員 今、御答弁いただきまして、理解はできるわけでありますが、今御指摘があったのは、日本というのは非常に健康水準が高いので医療費が少なくて済んでいるのではないでしょうかという御指摘ではないかというふうに思います。

 ただ、この御指摘も、多分に私は、きちっと調査して評価すべきじゃないかというふうに思います。非常にありふれた話で恐縮ですが、肥満等に基づいて、心血管疾患が欧米では多い、日本では少ない。しかし、日本は、裏返して言えば、脳血管疾患が多かったわけですよ。また、今問題になっておりますウイルス性肝炎ですね、B型肝炎にしてもC型肝炎にしましても、欧米よりもはるかに高い水準の感染者がいる。こういうことも一方ではある。また、胃がんもアメリカ等に比べて日本ははるかに高い。

 日本の食生活、メタボリック症候群の予防という意味では非常に意味があったかもしれませんけれども、一方で、それはすべてよかったかというと、別の疾病も惹起させているという話も当然あるわけで、それぞれが長所短所といいますか、医療費に与える効果は、プラスマイナスのファクターはいろいろとあると思います。それをすべて包括的な議論で済ませてしまうということでなくて、より厳密な、きちっと私は評価をすべきだというふうに思うんです。でないと、日本の医療が抱えている今の危機状態というものについての本当の評価といいますか判断が出てこないということじゃないかと私は思っています。

 きょうは、端的に言うと、やはり医師数が少ない、医療提供体制が非常に薄いという話が一つ、もう一つは、医療の価格そのものが諸外国に比べると安いという話、こういった二つのファクターがかなり意味があるといいますか、影響を与えているんじゃないかというふうに私は感じます。

 ただ、これはあくまで客観的な話ではありませんので、政府の御見解をお聞きしたいのでありますが、グラフの4、それから5ですね、一人当たりGDPと人口千人当たりの医師数ということでございますが、日本は、人口千人当たりの医師数は二人です。そして、平均値は横棒が、破線でありますけれども、三・一人。所得について言えば、一人当たりGDP、平均が二万八千四百六十五米ドルでありますけれども、日本はそれを超えている。それを超えている縦の線がありますね。その右側のグループの中で、日本というのは実は一番低いんですね、二人しかいない。ですから、経済の規模でいえば、本来はその国の医療というのはもう少し医師を抱えていてもおかしくはないんですけれども、こういう数にとどまっている。

 これはある意味では、医師の養成に関して、長年非常に抑制的なスタンスを我が国がとってきたということの帰結であろうというふうに思いますけれども、ただ、そのこと自体が、今是非を論じるわけではありませんで、こういう事実がやはり日本の医療費の水準に影響を与えているんじゃないですかというふうに考えるのが非常に自然だと思います。

 5の方は、高齢化がこれからも進むので、医療費の増嵩が当然考えられますね、今こういう御指摘が一つありました。ただ、5を見ていただきますと、高齢化が日本は九六年から進んだ、九六年と二〇〇四年とこれは八年間の比較ですけれども、その中で日本の医師数というのは一・八人から二・〇人、たった一割変化しただけです。この間、イギリスですと一・八人から二・三人、またドイツ、フランス、それぞれ、もともと高い水準でありますけれども、変化をしている。

 こうした変化を比べてみると、日本というのは、高齢化が進行しても極めて低い水準に抑制されている。このことは、逆に言いますと、医療ニーズがふえるわけですから、例えば一人当たりの医師の労働といいますか医療提供については、より過重な労働が、負担を押しつけられるといいますか、そういう付与されるようなことが想像されるわけでありますけれども、こういった状況をどう考えるかという問題なんですね。

 私は、率直に言いまして、日本の医師数というのは諸外国に比べると低い水準にとどまっているというのが正しいんじゃないか。そしてまた、先ほども言いましたように、日本の医療費というのは諸外国の水準から比べると低い。この二つはやはり関係がないというよりも、日本の医療費が少ない理由の一つは、医師数を非常に抑制してきた、こういうところにあるんじゃないですかと私は思いますけれども、政府の御見解をお聞きしたいと思います。

水田政府参考人 医師数と医療費の相関についてのお尋ねでございます。

 これも、我が国内部におきましても、都道府県別に一人当たり老人医療費と人口当たりの医師数の間には一定の相関があるということが知られておりますし、また、我が国の医療費について言いますと、五割は、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の医療サービス従事者に対する人件費でございます。こういうことを考えますと、人口当たりの医師数と医療費の水準にはある程度の関係はあるというふうに考えられます。

 ただ、この点だけに今着目して、この医療費の国際比較という点でこれを使えるかといいますと、なかなか、先ほども申しましたとおり、医療費そのものにつきまして、制度や社会的背景の違い、ほかの要因も考慮することもございますので、これだけですべて説明をするということは難しいんじゃなかろうかと考えております。

福島分科員 そうなんですね。これだけで説明は当然できません。できませんが、先ほども言いましたように、日本の医療費のあるべき水準ということを考えたときに、幾つかの要因に分けていかなきゃいけないと私は思っているんです。

 国民の皆さんに、医療費の水準はいかにあるべきか、仮に、医療の危機だということで、もう少し高い水準の医療費が必要ですよ、こういうふうに御説明する場合にも、では、その仕分けは何ですか、具体的な根拠は何ですか、こういうことがやはり説得力を持って語られる必要がある。ただ、そこのところのデータが余りにも実は不足している。日医がこうした形でデータを示していただいておりますけれども、私は、より詳細な検討をしていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つは、医師数が低い、これは人件費の部分ですけれども、そしてまた、ダンピングというと非常に聞こえが悪いんですけれども、医療サービスの価格自体も安いんじゃないですか、こういうお話でございます。

 これは7の表でございますけれども、盲腸手術入院にかかる費用の都市別比較ということであります。これも、医療保険制度等々は国によって違いますから、どの程度がどうだ、一概にこういうふうに言いにくいんですけれども、全部ひっくるめた額ということで、これは本田先生が本で紹介しておりました。AIU保険会社が調べたものを改変した、こういうことでございます。本田先生は済生会栗橋病院の副院長でありますので、埼玉県だと幾らか、盲腸の手術をしたときに三十四・六万円プラス個室代、ですから、多床室でしたら三十四・六万円で済む、こういうことなんでしょう。

 一方で、お隣のといいますか、中国・北京では四十七・八万円、中国でも日本より高いんですね。また、ソウル、これは十番目、五十一万二千円、日本よりも大分高くなっています。もっと高くなっているのが香港で、百五十二万六千円、ニューヨークに行くと二百四十三万九千円、大変な格差があるわけであります。中国なんかは、北京だと四十七万八千円で上海だと二十三万四千円で、地域差があって、もっと地方に行くともっと安いのかなという気もいたしますけれども、ただ、非常に大きな差がある。また、アメリカも、ホノルルとニューヨークでは大分違うじゃないかと。このあたりも、均一の保険でやっているわけじゃありませんのでいろいろな違いがあると思うんですが、評価の仕方はいろいろとあると思います。

 しかし、相対的に言えることは、やはり日本の医療サービスというのは経済的評価が低い水準にあると言えるんじゃないかというふうに私は思います。これは盲腸手術だけの話でありますけれども、基本的に、外科の手術の点数はそれぞれが連動しながら重みづけして評価されていますから、相対として比べるとそういうことがあり得るんじゃないかと思います。

 この点については、中医協がこうした診療報酬の点数を決めるわけでありますけれども、より客観的な評価をしていただく必要があるんじゃないか、私はこんなふうにも思うわけでありますが、この点についての政府の見解をお聞きしたいと思います。

水田政府参考人 医療費の水準についてどう考えるかということでございますけれども、盲腸手術の都市別比較から結論を得るというのはなかなか難しいわけでございます。どう評価していいか、内容についても調べなきゃいけないと思います。

 ただ、我が国の医療費の水準、これはただいま委員御指摘のとおりでございまして、診療報酬につきましては、物価、賃金の動向、医療機関の経営状況、保険者の財政状況、医療を取り巻く諸状況を勘案して、診療側、支払い側、公益側、三者で議論を行いまして適切に決定されている、私どもとしては、そういうことを言う立場にあるわけでございます。まさにそこでの三者による協議を踏まえて診療報酬は設定されておりますので、私どもは、これが適切である、このように考えているわけでございます。

 医療費の水準、国際比較ということはなかなか難しいわけでありますが、私どもとしては、その中でも、冒頭お話ありました、マイナス改定という十八年度診療報酬改定でございましたけれども、産科、小児科など必要な分野には重点的な措置を講ずるということによりまして、良質な医療を効率的に提供できる医療体制を構築していく。結果として、投入面でいろいろお話がございますけれども、歳出面でいいますとWHO等においても高い評価を得ているところでございまして、今後こういった全体状況をどういうふうに判断するのか、また御指導を仰ぎながら考えていきたいと思います。

福島分科員 アウトプットにおいて大変高い評価をいただいている。これは先ほどもありましたように、一つは日本人の生活習慣、こういったものも背景にありますし、また医療自体も、非常に献身的な医療従事者の努力というものもやはり私はベースにあるというふうに思います。

 これは国会でもるる指摘されておりますが、最近の医療現場の状況の中では、立ち去り型サボタージュという言葉がありますように、そうした献身的な努力自体が途中で燃え尽きるといいますか、そういう事態が起こっているということも否定のできないことではないかと思っております。

 このように申し上げますのは、今まで、例えば小児科でありますとか産科でありますとか、非常に深刻度が高いところは何とかしなきゃいけない、こういう話だったんですが、そのときにどうしても全体の枠の問題が、例えばマイナスの改定ということになりますと、どこかまたよそのところを削らないとその費用は出てこないんですね。ただこれは、やり方によりますと、いろいろなまた副作用といいますか、それはそれで、そこにまた問題を起こすということが起こってくる。

 どうも私は、イタチごっこのような話があって、そこで最初にまた戻りまして、果たして日本の医療費の水準というのはこの水準でいいんだろうか。もちろん財政制約はあります。財政制約もありますし、そしてまた、御負担ということになりますと、国民の方々にやはり御理解をいただかなきゃいけないという話もあります。単に医療費をふやしなさいということで、はい、そうですかということでなかなか理解を得られるというわけではないと私は思っています。

 そうではなくて、現にこういうふうな客観的な話があって、そしてその中で、国民のために必要な医療サービスというものをしっかりと守っていくためには何が必要なのか。こういう政策的な議論のプロセスが私は要るんだろうというふうに思っておりますので、国会の場でこうした細かい点をお聞きするのはいかがなものかなと思いつつ、しかしあえて、やはりこうした議論をきちっとやっておくということが必要だと思ってやらせていただいておりますので、御容赦いただければと私は思っております。

 そして、世界的な水準に日本の医療を引き上げた場合の医療費は一体幾らになるか、こういう指摘もグランドデザインの中ではなされております。

 一人当たりのGDPに見合ったOECD平均の医療費の水準への引き上げ、一人当たりのGDPは二千五百八十六米ドル、現在二千二百四十九米ドルが平均ですね。一五%引き上げる必要がある。対GDPに占める総医療費支出は、日本は八・〇%、OECD平均は八・八%ですから、これを仮にOECD平均にそろえるとなると、これも九・九%ふやさなきゃいけない、こういう話になります。

 医師の水準でいうと、先ほども言いましたように、千人当たり日本は二・〇だ、OECD平均は三・一だ、五五%増加させる必要がある。医師の給与比率というのは、医療費に占める割合は一四・七%ですから、医業収入を八・一%引き上げる必要がある。大体一割方引き上げるというのが平均に並ぶ水準になる、こういう御指摘がなされております。

 ただ、やみくもにふやすという話にはならないのは、そういった資源をどこにどうするかという客観的な話がありませんと、なかなかこれは納得のいただける話ではないと思うのでありますけれども、現在の日本の医療は崩壊の危機にある、こういうふうに言われているわけでありまして、こうした試算も一つの前提として、一つの考慮の対象としながら、ぜひ考えていただきたい、このように思うわけでありますけれども、政府の見解をお聞きしたいと思います。

水田政府参考人 この場におきまして、ただいまの御提案といいますか御提言にお答えするのはなかなか難しいわけでございます。

 これも委員御指摘のとおり、高齢化の状況ということを考えますと、やはり医療費の伸びにつきましては抑制するという努力はしていかなきゃならない、医療構造を効率化することによって医療の伸びを抑制するという必要性自体は基調的にあるかと思います。

 ただ他方、御指摘のとおり、一部の診療科あるいは地域におきます医療現場において非常に厳しい状況にある、こういう声も聞いているところでございます。今後の診療報酬改定に当たって、どういうことを考慮するのかということでございますが、まだこれにつきましては、今後の議論になるわけでございます。

 私どもとしては、制度を維持可能なものとするための不断の改革努力を継続しながら、現場の実態もよく把握した上で、適正化すべきは適正化し、重点化すべきは重点化する。十八年度には、先ほど申しましたとおり、小児科、産科医療を重点評価したわけでございます。

 そういう意味で、めり張りのきいた改定を実施することによりまして、国民にとって安心で信頼できる医療をつくり上げていくように努めてまいりたいと考えております。

 これ以上詳細については、今ここでお触れすることはなかなか難しいところでございます。

福島分科員 経済財政諮問会議では、日本の医療、介護というのは高コスト構造である、見直しをすべきだ、こういう指摘を大臣がなされております。しかし、高コスト構造というのは一体何を指しているのか、ここのところは余り明らかではありません。

 先日、大阪のバス会社が事故を起こしました。本来であれば二人ドライバーを乗せなければいけないところ、一人のドライバーで運行していた。ですから、二人のものを一人でやるんですから、ある意味で生産性が倍になるという話なんだと思いますね。

 私は、日本の医療というのは、OECD平均だと千人当たり三人の医者でやっている、それを二人の医者でやれ、これはほとんど大阪の某バス会社と同じ話でして、二人でやるところを一人でやると生産性が倍になるよ、三人でやるところを二人でやると生産性は五割増しになるよ、こういう議論をベースにしていたのでは、やはり医療を守る、医療の質を守る、こういう話にはならないというふうに思うわけであります。

 この点は、厚生労働省としても財政的に大変厳しい中で、また今後も高齢化が進んでいく、それに対してどのように制度を維持していくのか。大変難しい立場にあるということはよくよく承知をいたしております。

 ただ一方で、また、日本の医療が置かれている現状ということもよく踏まえながら、あるべき姿というものをしっかりとかく努力をしていただきたい、そのように思うわけであります。私どもも、そういった方向でしっかりと頑張らせていただきたいと思います。

 残余の質問、たくさんございましたが、時間の関係で、質疑時間が終了しましたということですので割愛させていただきますので、また機会を見てお聞きいたしたい。

 大変ありがとうございました。

渡海主査 これにて福島豊君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕

北村(誠)主査代理 次に、飯島夕雁君。

飯島分科員 飯島でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。本日は、深刻化しております高齢者医療と地域医療についてお伺いをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 早速なんですけれども、振り返りまして、平成十七年末、平成二十三年をもって、現在ある療養病床を十五万床にまで削減するという新聞報道が一斉になされました。以来、入院患者さんや御家族、介護療養型医療施設自体、それから、それを取り巻く一般病院や老人保健施設、特別養護老人ホーム、こういったところまでどんどん不安が広がっている現状が現在もとまっておりません。

 この不安の要因となっているものを考えるんですけれども、まず、いろいろマスコミ報道などを見ておりますと、療養病床廃止論ありきで、在宅療養への早急なシフトといったそういう提案の感があるのではないかということで不安が増強していること、また、患者さんや介護者の深刻な実態がそれを超えてあるということ、また、その中で、介護療養型医療施設の果たしてきた役割というのも少なからずあるのではないかというように私なりには分析をしています。

 そこで、現在、高齢化が深刻化し、在宅介護疲れによる心中事件もついせんだっても起きました。こういう悲惨な事故が後を絶たない現在で、改めてお伺いをしたいのですけれども、療養病床の整備に取り組んできたというこれまでの経過にもかかわらず、今回、その方針を転換して療養病床の再編成を行うことにした理由というのを副大臣にお尋ねさせていただきます。

石田副大臣 療養病床につきましては、昭和四十八年の老人医療費の無料化以降、三十年来の懸案でありますいわゆる社会的入院の問題、それを中に抱えておりまして、医師による指示の見直しがほとんど行われていない方も利用しているという実態があるわけでございます。

 介護保険も施行後六年を経まして、介護基盤の整備も一定進んでまいりました。今般の医療制度改革の中で、入院していただいている方々の医療の必要性に応じ、施設の機能に応じた再編成を行う、こういうことにしたところでございます。

 療養病床の再編成に当たっては、患者の状態に応じた施設の適切な機能分担を推進するということを考えておりまして、具体的には、医療の必要性の高い方々については医療保険で、そして、医療の必要性の低い方々については、こういう方々が利用している療養病床を平成二十三年度末までの間に、より居住環境のよい老健施設等に転換してその受け皿とすること、こういうことを考えております。

 そして、療養病床の再編成によりまして、患者さんのニーズに即した適切なサービスの提供、医師、看護師など限られた人材の効率的な活用、医療保険や介護保険の財源の効率的な活用による安定的な制度の運営、こういうものを図っていきたいと考えております。

 決して患者の追い出しといったことにつながらないような、そういうこともしっかり留意しながら再編成の推進を行ってまいりたいと考えております。

飯島分科員 ありがとうございます。

 不安が連鎖してしまっている状態については、今この五年をかけて受け皿づくりをしますよということについて、どのように取り組んでいるかということをやはりもっとどんどん発信していくことが不安を取り除く要因になっていくと思いますので、今取り組んでいる状況、療養病床の見直しというのは、利用者さんや患者さんやその御家族にとって前向きな、さまざまな改革なんですよということが発信できるようなメッセージ性をぜひ備えていっていただきたいと思います。

 今、副大臣から社会的入院という言葉がありました。私も社会的入院という言葉については非常に嫌悪感を持っております。しかしながら、これは非常に難しい定義でありまして、例えば、介護ができなくなりましたという介護者がいた場合に、特養ホームに入りました、これは社会的介護なわけですけれども、これを責める人はいないわけですね。在宅介護が無理になりました、特養入所しました。これは一般常識になっております。ところが、医療が必要になった人、これは特養や老健でなかなか受け入れてくれない、そこで病院で長期間入院している。これもまた社会的入院の中に含まれてしまっているケースもございます。

 ですので、医療を伴う場合の社会的入院という言葉がいいのかどうかわかりませんが、そういった方々に対しては、一部で本当に病院の乱用というものが強く指摘されなければいけない事実がある一方で、医療を必要とし、なおかつ老健や福祉現場では入所を拒否されるというケースについては、やはり柔軟な温かい姿勢を持って臨んでいただきたいというふうに感じておりますので、よろしくお願いいたします。

 そして、本年の四月に、厚生労働省医療構造改革推進本部がまとめられた「医療政策の経緯、現状及び今後の課題について」という冊子がありまして、拝見させていただきました。この中には、さきに副大臣からお話がありましたように、さまざまな見直しをしていくんだということがありまして、在宅療養というものにも多く触れておられました。在宅療養など高齢者の生活を支援する医療の推進という項目もありまして、在宅療養、在宅介護への転換について、たくさん触れられております。

 一方で、高齢者というのは、複数の疾病を抱えていたり、また加齢に伴うADLの低下、抵抗力の低下など高齢者ならではの難しさや、認知症状の高齢者に対する家族支援のあり方、終末期医療のあり方など、まだまだ手探りである部分の課題にも触れていらっしゃいます。こういったことで、この冊子の中には、在宅療養の必要性、それと相反する、非常に難しいということが両方書かれているわけであります。

 今まで介護療養型医療施設というのは、単純に考えれば、一つの医療現場の中に医師がおり、看護師がおり、ケアワーカーがおり、リハビリスタッフがおり、ケアマネジャーがいる、まとまった中に患者さんが一つにまとまってくださっていたので、いろいろなチームケア、チーム医療ができた。ですけれども、今度在宅になりますと、さまざまなサービスやさまざまな家庭を点と点で結ぶ大変難しい作業というか、単純に考えれば、病院よりもはるかに手間のかかる作業になるかと思います。

 そうした中で、在宅療養をこれから普及させていこうということが書いてあるわけですけれども、地方におきましては、本当に慢性的に医師不足という状況が続いています。もう高齢者医療のみならず、さまざまな医療現場において慢性的に医者がいない、そういった地方においても、日本じゅう津々浦々に本当に真の在宅療養ができるようにしていくには、それを実現可能としていけるのかというような方向性をどういうふうに考えていらっしゃるかというのを、政府参考人の方で結構なのですが、お尋ねさせていただきたいと思います。

松谷政府参考人 在宅での療養の体制でございますが、患者さんのQOLの向上という観点から、できるだけ住みなれた家庭や地域で生活を送れるよう、患者さんが希望する場合に、必要な在宅医療、介護が受けられる体制の構築を一層推進する必要があるという点でございます。今般の冊子でも、その点があちこちで触れられているということだと思います。

 このため、今般の医療制度改革におきましては、一つには、新たな医療計画におきまして、居宅等における医療の確保に関する事項を明記するとともに、がん、脳卒中、糖尿病あるいは急性心筋梗塞といった疾患について、在宅医療を含めた連携体制を医療計画の中で明示すること、また二つには、医療機関におきまして、退院した患者さんに対して、保健医療サービスあるいは福祉サービス、その地域でのサービスとの連携を図りながら、在宅等での適切な療養を継続できる環境を確保する努力義務を課すといったようなことを医療法の改正で規定したところでございます。

 また、昨年、平成十八年度の診療報酬改定におきましても、新たに二十四時間の往診及び訪問看護の提供体制が確保された診療所を在宅療養支援診療所として位置づけるとともに、あわせて行われました介護報酬の改定におきましても、退院時等に早期に在宅における日常生活活動の自立を向上させるための短期集中リハビリテーション加算の創設、あるいは、中重度となりましても住みなれた自宅や地域で生活を維持できるようにするために、新たに地域密着型サービスを創設するなど、さまざまな措置が講じられたところでございます。

 さらに、在宅サービスを提供する人材育成につきましても、在宅医療に従事する医師、看護師、薬剤師あるいは介護関係者等に対しまして、それぞれの業務内容に応じた専門的な研修や、将来、在宅医療のネットワークづくりのかなめとなることが期待されております、総合的な診療能力を有する医師の育成等に関する早期の検討を実施することといたしておりまして、厚生労働省といたしまして、今後とも、安心して在宅医療を受けられる体制が構築されるように努めてまいりたいと考えております。

飯島分科員 ありがとうございます。

 私自身も、在宅療養を希望する方にはそれがかなうようにして差し上げたい、そういうふうにできる制度をつくっていくことは大事だと思います。

 やはり私自身、根幹で思うのは、在宅医療にチャレンジしても難しいときにはまた病院で受け入れてもらえる、そしてまた、それが励みとなって在宅療養にチャレンジしてみる、これが本来の、本当に地に足のついた在宅療養の実現ではないかと思うのです。

 ですから、そういった意味でも、在宅療養の方がいいとか介護療養型医療施設の方が悪いとか、そういうことでなくて、百人いれば百通りの病状や症例があるわけですから、それぞれの段階、それぞれの時期に応じて、病院を使うこともあり、また在宅に行くこともある、それを選べるということができることが大事なんじゃないかというふうに感じています。それがひいては、在宅療養を本当に一件、二件と実現化させていくものになるんじゃないかと思いますので、ぜひそういう目線で在宅療養についての整備を進めていただきたいと思うんです。

 今現在の在宅療養診療所というのは、昨年の医療保険制度改革によって開始されたばかりでいらっしゃいます。そういう施設基準を取得する病院はふえているということは確認していますけれども、現在、二十四時間にフル稼働している医院はまだ極めて少ないという現状なわけです。少数の医師が現在本当に奮起して持続しているような、そういった状況にもございます。

 それから、医学教育上も、その活動を前提としたゼネラルな医師の養成については、これまで重きを置いてきていません。そういう中で、まだまだ本当に在宅診療、在宅医療というのはこれからの状態でもありますし、それから医師の養成を考えれば、これが本格的に始動していくには十年ぐらいは少なくともかかるんじゃないかというような心配も私個人は持っております。では、この十年をどうするのかといって、長期的な課題だということで目の前の問題を対応しないわけにはいかないので、この間の死のみとり場所について無策でないようにしなければいけないのではないかと思っております。

 これまで、先ほどの話と重複になりますけれども、施設ケア、とりわけ老人病院というものが否定的なニュアンスで語られたり、また受けとめられてきたのは、利用者の意にそぐわないプライバシーのない環境であったり、集団的な処遇をされてしまったり、権力的な対応をされてしまったり、一方的な患者、提供者の関係、それからそれらに伴う治療行為による側面が大変大きいと思うんです。これらの弊害はしっかりと除去しながら、療養病床の本来のあり方に戻しながら、これまで療養病床が培ってきたよい面は残していくということがやはり大切なんではないかと思います。

 そういった中で、療養病床の一つの取り組みとして、ユニット型医療施設というものに取り組んでいる例があるんですけれども、これは、今挙げてみました老人病院の否定的なニュアンスを少し変えてくれるきっかけになるんではないかというふうに考えまして、ユニットケアについてちょっと触れさせていただきます。

 厚生労働省では、平成十八年度から二十年度までの間の介護保険事業計画策定について、市町村及び都道府県に、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を示しておられます。この中では、平成二十六年度において、介護療養病床を含めた介護保険三施設のユニット型施設の合計定員を全体の五〇%以上とすることを目標とされています。

 この療養病床の再編成に対しては、単に受け皿を確保してほしいということだけを言っているのではありませんで、ユニット型施設のように、そういったものの増加というような形で、利用者の居住環境の確保にももっときちんと配慮して、尊厳のあるケアができるよう、終末期にふさわしいケアができるようにこれからも継続をしていっていただきたいと願うわけなので、こういった視点を持ち続けながら療養病床の再編についてもとらえていただきたいのですが、副大臣の見解をお伺いいたします。

石田副大臣 委員の御指摘のとおり、療養病床の再編成に際しましては、単に受け皿という数だけということではなくて、やはり利用者の居住環境、こういうことはどうしても大事にしていかなきゃいけないというふうに思います。ですから、特に患者の状態に応じた施設の適切な機能分担を推進する、こういうことで取り組んでまいりたいと思っております。

 委員の御指摘のとおり、居住環境の確保、こういう点を配慮しながらこれを進めていく、こういうことで考えております。

飯島分科員 ありがとうございます。

 そういった居住環境というところを一つの視点に据えたときに、医療保険下に療養病床があることが望ましいのか、それとも介護保険下に療養病床を残すことが望ましいのか、これはさらなる議論がなされる必要もまたあるのではないかと感じています。一年たってしまいましたけれども、まだ四年ある、逆に考えればそうもとらえられるわけで、ぜひ国民の多くの理解が得られるような受け皿づくりのために努力をしてほしいということをお願いさせていただきます。

 今回の療養病床の再編成に当たっては、その議論の最初の段階から私自身もいろいろな意見を言わせていただいて、厚生労働委員会でも発言させていただきましたり、いろいろな経過の中で本当に申しわけないと思っているんですけれども、やはり元現場にいた者としても、私の選挙区を歩いても、とにかくいろいろな状況が目についてくるんです。例えば、本当にいまだに療養病床の受け皿すらないところもありまして、そういうところは救急医療病院が、このまま帰すわけにもいかないということでお年寄りをそのまま入院ケアでお世話をしているという、本当に救急医療一本で進みたいところを、さらに手間をかけてお年寄りの世話を数少ないスタッフの中でやっている現状もあります。

 また一方では、胃瘻という、チューブをつけたり、気管切開をしたり、それから、微熱が続いている、感染症にかかっている、そういった状態があれば、老健施設や特養では相談の段階からぴしゃっとお断りされてしまうというケースもあって、医療度が少なければこちらにシフト、こちらにシフトというように、なかなか絵にかいたように、図式に書いたようにいかないという現状があることも、いまだにやはり、どんなに確認しても、そこの中で当てはまらない人たちがどうしてもいるという現状がございます。

 これを、今回質問の時間がいただけましたので、ぜひ、改めてこの場で副大臣にお話を申し上げさせていただいて、そういったさまざまな現状があるということを御理解いただいて、そしてこれからの制度の最後の取りまとめに臨んでいただきたいと思うんです。

 附則というものがつきまして、ここには、療養病床を減らすということに対しては、しかしながら、高齢者にふさわしい受け皿づくりをしますよ、五年間の間にそれをしますよという附則がついて初めてみんなの了解が得られているものと思いますから、どうかこの附則の部分を十二分に生かしていただきたい。そして、先ほどのユニットケアもありますけれども、より幅広い意見の聴取や斬新な見直しあるいは加えていくこと、そういったことも含めて、十分にその附則にたえ得る受け皿づくりの議論を進めさせてもいただきたいし、またその進捗状況もお知らせいただきたい、多く広めていただきたいというふうにお願いさせていただきます。

 療養病床の件はここまでにいたしまして、今度、一般医療全般についてでございます。地方の医療の状況でございます。

 現在、日本じゅうの各地で医師の偏在が深刻な問題になっております。私の選挙区は本当に地方なものですから、特に高齢化が進んでおります。そういった中でも、医師不足が非常に顕著な状況がございまして、受け入れる病院がなかったために妊婦さんが搬送に間に合わず死産になったケースもございました。また、開放骨折した患者さんが、その自治体内に日赤病院があるんですけれども、天下の日赤なのに整形外科医の先生がいないという状況で、何十キロも離れた別の病院に再搬送したというようなケースもせんだって出ております。

 そういうことで、北海道なんですけれども、札幌にはお医者さんはいっぱいいるんです。病院もいっぱいあるんです。ところが、ちょっと地方に行ったらもうない。お医者さんがいない、病院がないという現状でございまして、医師の偏在というのは人の生き死ににも直結する問題でもありますし、また、その地域で住めるのか住めないのかという根幹的な選択にまで迫られる問題でもありますので、この切迫した地方の状況を、御理解を十分いただいていると思うんですが、早急な対応策をとっていただきたいというふうに強く願っています。

 地方、過疎地、離島、こういった医療確保についての具体的な対応を副大臣にお伺いさせてください。

石田副大臣 今、委員の選挙区というんでしょうか、御地元の事情等も聞かせていただきました。私のところも、高知県というところで大変横に長くて過疎地の地域なわけですけれども、やはりいろいろな医師不足の問題等も直接いろいろお聞きするところでございます。

 それで、特に医師の偏在が問題になっております小児科、産科の分野におきましては、限られた医療資源を重点的かつ効率的に配置し、医療機関相互の連携体制を構築することによりまして、個々の医師の勤務状況の改善や医療の安全性の確保を図ることが重要だ、このように考えております。その際には、都道府県が中心となって、医療関係者、住民の意見を踏まえて、地域の病院の外来機能と拠点病院との連携を図る等、患者のアクセスに十分配慮した上で対応していかなければいけない、このように考えております。

 このような配慮を行った場合であっても、なお地域によっては患者の病院へのアクセスが懸念される場合もあると考えられますので、厚生労働省としましても、これまでも救命救急センターや周産期母子医療センターにおけるドクターカーの配備、ITを活用した遠隔医療の実施、平成十八年度の補正予算におきましては、医療機関まで相当の時間を要し、容易に利用できない地域の患者及び家族を対象とした宿泊施設の整備のほか、平成十九年度予算におきましては、複数の離島が点在する地域等におけるヘリコプターを活用した巡回診療の実施への支援等を盛り込んでいるところでございます。

 これは離島等ということでございますが、離島が点在する地域等ということですから必ずしも島ということではありませんので、今委員がお触れになったアクセス、すぐ隣の病院とも、先ほどお話にあったように数十キロも走らなきゃならない、そういうところも当然私は御利用いただけるだろうというふうに思っておりますが、こうした各般の施策を着実に推進してまいりたいと考えております。

飯島分科員 ありがとうございます。

 今、地元を思い浮かべながら副大臣のお話を伺っておりました。私の選挙区は、全体の広さが新潟県一個分とちょうど同じぐらいあります。一つの自治体から隣町に行くのに、五十キロ、六十キロはざらにございます。そして、豪雪地帯ですので、冬の凍結バーンでは本当に搬送時間に一時間も一時間半もかかる、また、離島も抱えていますから、悪天候になれば今度はヘリは飛ばないという、命がけの地域が本当にございます。

 都市は民間の病院がまた進出するんですね。今本当に問題なのは、医療過疎地という中に含まれる本当の過疎地なんだと思います。過疎地や離島でも恵まれている、長崎のように成功している例もありますので一概に離島のことを言えませんけれども、やはり過疎地においては民間も進出しない、そうなると自治体病院が何とかそれを支えるんだけれども、自治体も地方の場合はなかなか財政的に緩くないので、赤字を抱えているという悪循環の中で医師確保も十二分にいかない、お医者さんの方も最新技術を身につけたいという中で老朽化した自治体病院には行きたくない、いろいろな悪循環がございます。

 今、副大臣からいろいろ具体例をお示しいただきましたので、少し希望を持ちながら、しかし、これがまた実現可能なように、早急にそういったサービスが使えるように、それぞれの自治体や都道府県レベルにも御支援の輪をまた引き続きいただけますよう、よろしくお願いいたします。

 きょうは、高齢化社会への対応が日本の最も重要な課題であると私自身は認識していまして、療養病床のこと、それから医療過疎地についてのこと、これを中心に二つ質問させていただいたんですけれども、正直、三十分の質問時間で足りる内容でもございません。そういう中で、本当にピックアップした質問なので十分にはできませんし、これからそれぞれの委員会やそれぞれの関係者の方が誠心誠意を尽くしてさまざまな議論をしてくださる中で結果が見えてくるんだと思いますけれども、その中でどうしてもお伝えしておきたいことを今申し上げさせていただきたいと思います。

 日本の場合は、国民皆保険ということで本当にすばらしい制度があります。先ほど質問者の方が日本の医療費を客観的に分析するデータを出しておられましたが、これらもこういった日本の保険制度のすばらしさを裏づけるものでもあるかと思います。

 それを維持するための、もちろん財政的な制約は十分に理解しています。これから高齢化社会がさらに進んで、うちの地元でも四割ぐらいのところはしょっちゅうございますので、これがどんどん日本じゅうにふえていく、長寿社会になって、当然高齢化社会になっていくというときに、財政状況を考えたときには、幾らでもお金を使うわけにはいかないということは十二分に理解しております。しかしながら、その一方で、せっかく国民皆保険がある、その中で、それを使って国民が医療や介護をちゃんと購入できる価格であること、そういう報酬は定額制であるということがやはり必要なんだろうと思います。

 今、いろいろな形で高齢者を取り巻くビジネス産業がたくさん進出しておりますけれども、高齢者のターミナル医療の役割を有料老人ホームにゆだねている現状も多く見られます。大変優良な有料老人ホームもありますけれども、例えば、厚生省の補助金を全く使わないというような場合にはチェックが全然働かなくて、玄関を一歩入って、車いすはここを通れないぞというような建物もたくさん平気で運営されている。医療や福祉に全く縁のなかった人がそういった分野に進出してきていて、入居したばかりのときはみんなお元気だからいいんですけれども、これからそこへ終身で入った人が寝たきりになったらどういうふうにするんだろうと首をかしげるような施設もたくさん出てきていることも事実であります。

 そういう中で、何らかの、国や地域、自治体やそういったものが、医療や保健や福祉、そういったサービスを提供するに当たっては、どこかがやはりきちんと監督したり指導したりというものを民間であってもしっかり守っていくことが必要なんじゃないかなという危惧を少し感じています。

 それから、一方で、大変いいサービスなんだけれども何千万もする、下手したら億もするというようなところもたくさんあるわけで、これらで余りに高額なものになってしまうと、高額所得者以外の人は購入できないということになってしまいます。では、低価格でどのような高齢者の状態にも対応しますよという施設は、今度は施設水準が非常に低くなってしまうという矛盾を感じております。それは、今の診療報酬体系の中ではやむを得ない現実なのであろうということも感じております。ですので、患者さんや利用者さんのためにも、サービス提供者側を、しっかりそれが日々運営できるように守っていくこともサービスを維持する上で必要なのではないかと思っています。

 ちなみに、都内や千葉県では有料老人ホームの施設で虐待が報道されているところがありますけれども、現在、千葉県内では医療福祉制度のすき間をついて無届けの施設が百五施設、これが大きな問題を呼んでいます。

 私自身考えるに、人は経済活動においてその合理性に基づく活動を要求されることは当然ですし、また、その厳しさに耐えることが現在の日本人に要求されているということは当然あると思います。そして、多くの国民はそれをちゃんと是としていて、自由主義経済による活性化された社会、その方向への改革を望んでいることは、私自身のさきの衆議院選挙においても明確になったというふうに感じています。しかし、一方で、医療や介護あるいは死に方といった根本の足元のところに不安を抱えることはやはり望まないと思います。これはまた、今回のさまざまな統一地方選挙、こういうことをこの質問の場で言っていいのかどうかは別ですが、ということで、いろいろと感じ取った次第でございます。

 特に、人が死に臨む場所、その場では相互扶助の行動や平等の原則というものは最低限確保されるべきであって、この基本的な感情に反すれば、やはりこの国の行く末というのは殺伐としたものになってしまうのではないかなという気がしています。そのためにも、私たちは、ぜひとも、理想的な後期高齢者のケアのあり方、死のみとり場所、こういったものを社会保険の中に構築しなければならないということを強くお願い申し上げまして、私の質問時間を終わらせていただきたいと思います。

 どうか、限られた残りの数年の間に、受け皿についてもわかりやすい説明と、それから納得のいく受け皿づくりに向けて御尽力いただけますようお願い申し上げて、質問とさせていただきます。ありがとうございました。

北村(誠)主査代理 これにて飯島夕雁君の質疑は終了いたしました。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

北村(誠)主査代理 速記を起こしてください。

 次に、森本哲生君。

森本分科員 民主党の森本哲生でございます。

 大臣、大変ハードスケジュールの中、御出席ありがとうございます。きょうは、介護保険の問題、それとフィリピンのEPAに関することについて質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず初めに、平成十八年四月の介護保険制度の改正以降の利用者の状況、介護保険施設の経営状況及び介護療養型医療施設の利用者の人数とか施設数がどのような状況で動いておるのかということについて御説明をよろしくお願いいたします。

阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。

 介護保険制度が改正をされました昨年四月以降の、在宅あるいは施設サービスを含めたすべての介護サービスの利用者の数でございますけれども、平成十八年の四月におきまして約三百四十八万人、十八年の十月現在で三百五十四万人となっております。これは、制度が発足いたしました平成十二年四月の利用者数が百四十九万人であったことを考えますと、昨年の十月の利用者数は約二・四倍という形で拡大をいたしております。

 それから、昨年四月以降の介護保険施設の経営状況でございますが、本年度中に事業者の経営実態等を把握するための調査を実施するということにいたしております。

 それから、もう一つお尋ねがございました介護療養型医療施設の利用者数でございますけれども、十八年四月におきまして約十一万九千人、十八年十一月におきましても約十一万九千人ということになっております。

 また、介護療養型医療施設の請求事業所数でございますが、平成十八年四月におきまして二千八百八十六施設、十八年十一月現在で二千七百五十二施設と相なっております。

森本分科員 ありがとうございました。

 これで局長、例えば三重県下、私、三重県出身でございますので、三重県下の動きを見ておりますと、医療関係が特養とか老健の方へ移る、案外これが低調だというふうに聞いておるんですが、今後そういう動きが激しくなってくるという予想でございますか。今の段階ではこの移行の方向が薄いのではないかと私は個人としては思っておるんですけれども、その見解についていかがですか。

阿曽沼政府参考人 先般の法律で、平成二十四年三月までに療養病床の再編を行うということになっておりまして、あと五年弱あるわけでございますけれども、まだ、どういうふうに転換するかということについて決めておられない医療施設もかなりございますので、十分転換が進んでいないということがございます。

 私どもとしては、後でも申し上げたいと思っておりましたが、転換の支援策を打ち出しておりますし、いろいろな形で、療養病床が老健施設なりあるいは特養なりに転換しやすいような環境を整えて転換を支援していきたいというふうに考えております。

森本分科員 それと、大臣、この法改正を含めて、介護、社会福祉全体の問題になると思うんですが、大臣として、主に今の地域課題、その御見解がございましたら、今こういうことが非常に問題にもなっておるし、将来考えていかなければならないんだということがございましたら簡単に触れていただきたいと思うんです。

柳澤国務大臣 今、まず療養型の病床についての転換の問題が一つございます。これが介護のシステムの中で私どもが取り組まなければならない問題、このように考えております。

 それから、この前の介護保険制度の改正以降、大きな転換を私どもいたしたわけでございますが、その一つは予防重視型のシステムへの転換、それともう一つは地域密着型のサービスの創設、こういったことを主な柱とする抜本改正を行いました。

 その中で、地域包括支援センターというものの整備をするということが非常に喫緊の課題になっているんですが、この体制整備についてはやや立ち上げがおくれているという面もあったわけでございます。これは、各市町村の努力によりまして軌道に乗りつつあるというふうな状況が今やあまねく認められるようになってまいりまして、この面では大過なく事態が推移している、このように考えております。

 それから、三つ目に申し上げなきゃならないのは、昨今の介護の事業会社をめぐるいろいろな問題が露見いたしておりまして、これらについて、これから私どもとしては適切にいかに対応していくかということが課題かというふうに思っております。

森本分科員 ありがとうございました。

 それでは、局長、今のお話の中で、この法改正の後、介護施設から追い出されるとか、ちょっと表現は悪いですが、そういったことが顕著に見られておるということは今のところないと理解してよろしいんでございますね。

 それでは、また戻らせていただく場合もあるかもわかりませんが、EPAの方へ少し話題を移させていただきます。

 介護士が日本で働く場合、日本国内の介護施設で、雇用契約に基づく就労、研修、最大四年を経て介護福祉士の国家試験に合格するか、または介護福祉士養成施設で二年から四年を卒業することによって介護福祉士を取得する必要があるというふうにされておるわけでございますが、経済連携協定に基づく介護福祉士候補者を受け入れることのできる施設には、定員規模とか施設種類、常勤介護職員に対する介護福祉士比率等の要件を課すとのことでございます。このことについて少し具体的にお伺いをさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 私、この要件のうちの定員三十人以上の入所施設、しかし通所を含まないということでございます。これは中小零細の施設でも受け入れられることがクリアできていくのかなというふうに思っておるわけでございますが、例えば、常勤介護士の四割以上が介護福祉士を有していること。私の見解では大体二割ぐらいというふうな現場でのお声を伺っておるわけでございますが、その見解が少し国の方の厚生労働省との差があるのかなとは思っておるんです。少しハードルが高いのではないかというふうに思っておるわけでございますが、この点についてはいかがでございますか。

中村政府参考人 日本とフィリピンの経済連携協定にかかわる点で、まず、受け入れる施設の基準ということでございました。

 委員から今お話がございましたように、施設の規模ということになりますと三十人以上とさせていただいておりますが、これは特別養護老人ホームなどでは施設規模が六、七十人というのが平均でございますので、大体クリアしていただけるのではないかというふうに考えております。

 次に、介護職員の方のうち介護福祉士さんが従事する割合でございますが、介護保険の施設サービスで就労されております介護職員さんの四割が介護福祉士さんというのが全国平均でございまして、そういった意味では、平均的な介護福祉士さんを持っていただければ受け入れ施設になる、こういうふうに考えております。

 理由は、介護福祉士の資格を取って働いていただくために、まず、国家試験を受ける準備として、施設で働きながら受験資格、三年の実務経験を持っていただくということでございますので、やはり、目指す介護福祉士さんが平均的な数はいていただきたい、そういうことでこのような基準を設けさせていただいております。

森本分科員 局長、四割が全国平均ということは、これは間違いないですね。そうしますと私の見解がかなり違うんですが、ある程度多いところと少ないところの平均ですから、少ないところもある。たまたま私が聞き取りを行ったところは低い。これは、かなり優秀だと思っているところから聞き取りを行いましたので、この見解は私も意外なんですが、データとして自信を持って言われておりますから、これはこれでもう私の方は、二割ぐらいかなというのは訂正するところは訂正しなければならないわけですが、少し私の調査とはギャップがありますので。

 この点については、国は、介護福祉士、現在で平均四割以上はあるんだということでございますね。わかりました。それで結構です。

 それはそれでいいんですけれども、次に、一定要件を満たした研修責任者の配置と研修計画策定それから実施義務ということなんですが、国家試験の受験に配慮した研修計画ということになりますと、この責任者の資格というものはかなり重いと思うんですが、その見解についてお伺いいたします。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の方でも、働きながら試験を受けていただく、こういう場合には、三年の実務経験を経ながら、試験に合格していただくように努めていかなければならない、こういうことでございます。

 そういった意味で、特にフィリピンから来られている方については、最初、来られてから半年は日本語の研修などを統一的にしていただいて、今度施設に配属されたときに施設の中で研修担当の方を決めていただいて、とにかく三年後には試験に合格していただかないと、御本人は日本で働き続けたいという御希望を持っていても、協定で、合格しないと帰らなければならない、こういうことになるわけでございますので、国家試験の試験科目なり実技、そういったことを念頭に置きながら、同僚として、また先輩として、試験に受かるように職員の方はやっていただく。

 その職員の方については、先ほど申し上げましたように、基本的には介護福祉士さんの資格を持っておられる方。看護師さんの資格を持っておられる方などはそういうことに十分通用すると思いますので、そういう方で五年以上実務経験がある方といったことを念頭に置いて、教員というか実習担当者ということで考えております。

森本分科員 先ほどの要件が責任者の資格というふうに解釈してよろしいですね。

 あと、これは雇用契約という問題ではいろいろなお考えがあろうかと思いますが、日本の従事者と同等の報酬の確保、これは当然なことでございます。

 もう一つ、この受け入れられた方は施設の人員配置基準に含まないとされておるんです。現在一対三の人員配置を特養でされておるんですが、これはかなり人件費としての圧迫になって大変だということにはなりませんか。その見解。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の研修について、研修生として来られる方を職員配置基準に入れるかどうかという問題でございますが、これは、働きながらではありますけれども研修中の方であるということで、この議論をしたときに、そういう方々を受け入れるということはサービスを利用されている方のサービス低下につながるのではないかというもう一方の議論もありますことから、この場合については、まずは国家試験に受かるまでの研修期間中については職員配置の基準には入れない、こういう整理をさせていただいたところでございます。

 その分、施設においては、例えば国の決めている基準を上回ることになるので大変ではないかということでございます。

 確かに基準以上に上回っていることはそのとおりでございますが、現に、こういう言い方はなんでございますが、実際、施設の方では、大体、国の最低基準と申しますか、事業所の満たさなければならない基準をかなり上回る職員の方を配置されてサービスに当たられているというのが実態でございますので、先ほど申し上げました一定の規模以上の施設であれば、この点については、施設の方の御工夫ということにはなりますけれども、クリアしていただけるのではないかと考えている次第でございます。

森本分科員 経営上ぎりぎりの人数で対応されているところが多いというふうに私は個人的に思っておるんですけれども、局長の今のお話では、ある程度余裕を持って人員配置をされておる施設が多いというふうに解釈してよろしいのですか。

中村政府参考人 私はそのように認識いたしております。

 もちろん、そうは申しましても、施設の方、在宅サービスの方、受け入れるのは施設でございますが、経営は今大変御苦労されております。しかも、施設は夜勤もあり、二十四時間三百六十五日、入所されている方のお世話をしなければなりませんし、それから、働く方の御都合もありますので、施設の方は中核としてのいわゆる正規職員を持ちながら、二十四時間三百六十五日の対応という意味ではさまざまな時間帯での職員を抱えておられるということで、ですから、施設施設でかなり御工夫されて経営されていることは確かでございます。

 そういった場合に、もちろん、人員カウントとしては常勤換算して一対三という基準がございますので、それを満たしていることは当然のことでございます。

森本分科員 局長、これは恐らく、今の要件からいきますと、小規模の、一番初めに言われました特養六十人、七十人ぐらいの施設ですと、この研修受け入れをやっていくということは非常に難しいというふうに私考えるんですが、その点についてもお伺いいたしますのと、今地方では、人員不足のために、できたら受け入れを希望されておるところもあるんですね。ただ、この条件でいくと、私は、ある程度の規模を有しておらないとこの受け入れはできないというふうに思うわけでございますが、その見解はいかがですか。

中村政府参考人 受け入れる際に、まず国家資格を取っていただく、そういった意味では、最初の三年間というものにつきましては特に研修的な就労の色彩が実際問題として強いということでございます。そういった意味で最初の就労先についてはただいま申し上げましたような基準を持っているところでございますが、資格取得後につきましては、例えば認知症対応のグループホーム、これは大規模な施設ではございませんで、入所者の方がむしろ十八人以下原則というような施設でございますので、資格取得後はそういった施設で受け入れ可能になっております。

 今申し上げていますのは、入ってきたときのまず国家資格を取るまでの受け入れ施設の話でございますので、資格を取っていただきましたらば、かなり小規模な施設でも働いていただけるようなことになっておりますので、そういった意味では、最初の資格を取るまでのお話と資格取得後のお話と分けて考えていただいた方がよろしいのではないかと思っております。

森本分科員 そうしますと、局長、資格を取るまでは大規模なところでしか受け入れは難しい、逆にそのように解釈してよろしいですか、今のお答えは。

中村政府参考人 はい。資格取得前に受け入れ可能な施設は、特別養護老人ホーム、老人保健施設それから介護療養型医療施設、先ほど御質問にありまして、また、ここについては今後の制度としての取り扱いが課題になっているところでございますが、養護老人ホームそれから障害者支援施設等々になっております。

 これは委員のおっしゃっている小規模、大規模のイメージが私と違うのかもしれませんが、我々の感じでは、これらの施設は社会福祉関係の施設の中ではかなり大きな施設ということになっておりまして、その中で三十人以上、三十人というのは大きな施設の小ささの限界みたいなところでございますので、つまり、三十人以上と申し上げているのは、こういう施設の小さいところから大体すべて受け入れ施設になれる、こういうふうに考えております。

森本分科員 これ以上議論しませんが、例えば一法人一施設で大体百人程度の規模でやれば、なかなかこの受け入れは難しい。しかし、そういうところがむしろ受け入れたいという希望もあるんですが、なかなかそれはできにくいという判断を私はしておりますので、そうしたことも今後頭に入れていただいて対応していただくようにお願いをさせていただきます。

 そして、今、国家試験の話が出ましたが、六百人で果たしてそれは可能でございますか。ほとんど残っていただかぬとやはり効果がないと思うんですが、非常に私は難しいのではないかなというような気持ちを持っておるんですが、いかがでございますか。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 この受け入れ枠でございますが、これは日比経済連携協定でフィリピン側ともお話ししている際にそういう枠組みが決まり、受け入れ枠を設定し、これも当初二年、まだ実はフィリピンの方がこれを批准しておりませんのでこの枠組みは動いておりませんので、動き出したときから最初の二年間は千人、看護が四百人、介護が六百人をまずその上限として二年間やってみよう、最初の二年間はそういう枠になっているところでございます。

 そこで、介護福祉士さんの資格を取っていただくまでに入られてから三年かかり、それで国家試験を受けということになりますが、委員の御懸念は、当初二年間の六百人の方を例にとると、六百人のうち、どの程度国家試験で合格していただけるか、こういうことではないかと思います。

 それはそのとおりでございまして、そういうふうに日本で働くことを目指し、相当フィリピンでも介護なり教育を受けた方がこちらに来られるものでありますので、我々としても、受け入れの際に六カ月間の日本語研修を行った上、三年間実務経験を積んで試験を受けていただくわけですので、ぜひ試験でよい結果を出していただくことを希望しますが、しかし、残念ながらだめな場合には協定に従って帰っていただくということになりますので、その点については、試験でございますので、なかなか予想は難しいと考えております。

森本分科員 それでは、大臣、この件で、今お話を聞いていただいておりまして、フィリピン政府との関係で、国家資格の問題については十分詰めがなされておらない中でこういう事態が今あるというようなことも聞いておるんです。これは円滑にある程度進められるように努力はしていただかなければならぬですけれども、そのあたりについての御見解を大臣からお聞かせいただけませんでしょうか。

柳澤国務大臣 日比経済連携協定によりますフィリピン人介護福祉士候補者の受け入れスキームの創設に当たりましては、候補者の要件、入国後の活動内容等の制度全体のあり方につきましてフィリピン政府と十分に協議を行った上で、昨年九月に、両国首脳間で協定の署名を行ったところでございます。

 このフィリピン人介護福祉士候補者の受け入れにつきましては、EPAによる初めての取り組みでもあることから、今後、円滑かつ適切な受け入れができるように必要な受け入れ体制の整備に取り組んでまいらなければならない、私どももそのように考えておりまして、鋭意、協定発効の暁にはこれがスムーズにまいりますように努めてまいりたいと考えております。

森本分科員 ぜひ、小さな田舎の町にもこうした輪が広がって、そして介護関係が、地域こぞって不安感に、皆さんが心配されないような制度をつくっていただくことを特にお願いさせていただきたいわけでございます。

 最後に申し上げますが、全体の動きを見て、国の方は感じておられないと思うんですが、やはり田舎部分、三重県は極端に南北格差がある県でございます。全国のいいところと北西部が非常に発達しておる、南西部はやはり人口減というような、ある面では山村と都市のモデルのような現実で、どうしても私は山村部分に、農山村、漁村については、介護施設の経営が非常に厳しい現実に動いていくんじゃないか。

 そこで、いい人材をどう確保するかという問題もあります。この問題については、特にこうした過疎地域を含めた全体的な地域ケアもこれから行われていく、この計画もされているわけでございますが、理論上はできます。しかし、現実としっかりマッチしたものにしていただきませんと、これはますます地域格差が拡大していくということになりますので、そのことにつきましては、いろいろな細かいところの現場をしっかり見詰めていただいて、いいところ、モデルのような事例を発表していただくとか、施設ごとに、百人規模、二百人規模というような施設のモデルケースを発表していただくなり、そうしたことを国の方でもぜひお進めいただくことをお願い申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 きょうはどうもありがとうございました。

北村(誠)主査代理 これにて森本哲生君の質疑は終了いたしました。

 午後三時三十分から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十分開議

渡海主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 厚生労働省所管について質疑を続行いたします。田島一成君。

田島(一)分科員 民主党の田島一成でございます。

 決算行政監視委員会第三分科会で三十分時間をいただきましたので、きょうは大臣はいらっしゃいませんけれども、武見副大臣の方に御答弁をお願いしたいと思います。

 私、過日、質問主意書も提出をさせていただいた社会保険健康センターの処分、そして、その方向についての引き続いての質問でございます。

 私、地元は滋賀県の彦根市でございます。実は、この彦根市の方にも、この社会保険健康センター、ペアーレ彦根と称する施設がございました。残念なことに廃止、それから売却ということで、地元で利用されていた方々がその存続を求めて署名活動をなさったりと、地域においては、社会運動的な形で随分世論を喚起してきたところでありました。残念なことに、ことし一月、売却ということでありましたけれども、売却先は、市内に大きな工場を持つ企業の関連会社に売却をされ、今、フィットウィル彦根という名称で新たにスタートを切り、かかわりを持たせていただいた私としても、実は胸をなでおろしているところでもあります。

 当時、このペアーレ彦根が建設されるという折、私は、当時まだ市会議員でございまして、このプールの施設であるとか中身についていろいろと提言もし、お願いをしてきたことがありました。当初は、二十メートル、五コースのプールだったんですけれども、水泳をやっている者からすると、この二十メートルのプールというのは非常に活用がしにくいんですね。やはり、二十五メートルないし五十メートルという、泳ぐ者にしてみれば計算のしやすい、そういう規定が必要だというようなことから、地元の水泳連盟等々も一緒になりまして、社会保険庁の方にお願いをして、コースを減らしてでもいいから二十五メートルにしてくれということで、結果的に二十五メートルの四コースと、一コース減ったんですけれども、コースを二十五メートルに直していただいた。

 そういうことで、水泳競技の専門的な知識をお持ちでない当時の社会保険庁にしてみれば、ある意味、私たちの地域の声ではありましたけれども、しっかりと聞き入れていただいたということから、その当時は大変感謝もし、また、その柔軟な対応に対して敬意を表したりもしてきたところでありました。

 残念なことに、今回のこの社会保険健康センター等の廃止、売却は、厚労省所管の健康保険福祉施設整理機構の方針に基づいてなされたことでありますけれども、もう一度、当時のペアーレ彦根の運営状態についてお尋ねをしたいんですけれども、実際、どんな状況でこのペアーレ彦根自体が経営をされてきたのか。私が聞き及んでいるところでは、黒字経営だというふうに地元では聞いているんですけれども、本当にうまくいっていなかったのかどうか、そのあたりの概要を説明いただきたいと思います。

青柳政府参考人 ただいま、ペアーレ彦根につきましての経営状況についてのお尋ねがございました。

 直近の決算が出ております、平成十七年度の決算数字をまずは申し上げますと、収入が一億二千三百万円余、そして、支出が一億二千二百万円余ということでございますので、差し引きの単年度収支差は百万円ぐらいということでございます。この間の、十七年度の延べ利用者数は、十万五千人程度の方々ということでございましたので、経営状況そのものからいえば、一応黒字の状況であったというふうに御報告できるかと思います。

田島(一)分科員 今回の廃止、売却に至る過程で、地元の住民であるとか自治体に対しては、一体どのような説明をされてきたのか、その経緯を教えていただけますか。

青柳政府参考人 この社会保険健康センターを含みます年金・健康保険福祉施設につきましては、議員御承知のように、平成十七年に独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法案を成立させていただきまして、その年の十月に整理機構を設立して、整理合理化を進めているという経緯がございます。

 その際に、施設の所在地の自治体への整理合理化に当たっての説明という点につきましては、この整理機構法案を御議論いただきました際に、平成十七年の六月十五日に、衆議院の厚生労働委員会におきまして附帯決議をしていただきました。その一項目の中に、「機構は、各種施設の売却に当たっては、地元自治体とも事前に相談すること。」という一項がございました。

 この一項に基づきまして、まずは、十七年十月の独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構の発足に際しまして、社会保険庁長官より、この彦根の場合には彦根市長あてでございますが、その施設の譲渡または廃止に関する経緯を御説明し、これまでのさまざまな御協力に感謝申し上げるとともに、今後の譲渡等に当たって、機構が事前に御相談を行う旨の文書を発出させていただいております。これを受けまして、機構におきましては、同年の十一月に、彦根市に対しまして、施設の譲渡に関する意向確認を行わせていただきました。

 こういう形で、とりあえず地元とは意向確認をさせていただくということで接触をさせていただきましたが、地域住民の方々に対します個別の説明は特段行っておりませんけれども、施設の譲渡等に関しまして、社会保険庁あるいは機構のホームページにより広く公表させていただいたところでございます。

田島(一)分科員 今、彦根市への意向確認を十月になさったということですけれども、彦根市としては、この廃止、売却については了とするという回答であったのかどうか、それだけ確認させてください。

青柳政府参考人 十月の意向確認の後も、さまざまな形で彦根市の方に接触をさせていただきました。その過程の中では、彦根市から特段の意向は示されなかったものというふうに聞き及んでおります。

田島(一)分科員 御存じかどうかわかりませんが、実は、このペアーレ彦根の用地は、市の方で用意をしていただいた土地であります。ペアーレ彦根の周辺一帯を含んで、私ども地元では、福祉ゾーンというふうに呼んでおります。すぐ隣には屋内ゲートボール場、そして、反対側には特別養護老人ホームがあり、お向かいにはシルバー人材センターがあるといったような形で、市内の福祉施設を一挙にその一カ所に集中させてきたというゾーンでありました。

 その一角の中に、当初の福祉ゾーン計画の中にはなかったこのペアーレ彦根を、無理やりと言うのは語弊があるかもしれませんけれども、ねじ込ませたという経緯がありまして、私ども、実は市議会の中ででも、当時、その施設を入れることがこのゾーンの全体計画を壊したりしないかどうかというようなことも随分議論をしてきたところでありました。まさかこれが、十数年経過をして廃止、売却になるということはゆめゆめ思いも寄らなかったことでもありましたし、当時、十数年間の存続をした後は廃止するかもしれないなんということを御説明されたとも思ってはおりません。

 当時、これが売却をされるといううわさが市民の中を駆けめぐったとき、いろいろな方々から、この施設の跡地の買収についてのうわさが出ました。お隣の社会福祉法人、いわゆる特別養護老人ホームが買収をして施設を拡充するというようなうわさもありましたし、もう一方では、福祉ゾーンの延長線で、いわゆる冠婚葬祭、とりわけ葬祭用の用地としてこの用地が使われるんじゃないかというようなうわさすら出てきたわけであります。

 流れとして、彦根市の場合は、うまく民間企業が形態と名前を変えて、また存続した事業展開をしていただいているからよかったようなものの、場合によっては、地域住民の方々が望まない施設へと転売をされる可能性も十分にあったのではないかと、振り返らせてもらうところであります。

 そんな中で、今回の入札についてどのような条件をつけられたのか。私どもも、この整理機構の方が発行していらっしゃる入札に関する心得であるとか実施要項もくまなく拝見をさせていただきましたが、どこをどう見ても、落札後の用地、建物の使用条件というものが何一つ付されていませんでした。何でもいいから、とにかく高く買ってくれればいいんだという考え方での入札だったのか、これまでペアーレ彦根を運営されてきた経緯等も踏まえて、売却すれば全く縁がなくなっても仕方がない、もうそれが今回の機構の方針だというふうにお考えになってこの入札というものに取り組まれたのか、そのことについて、ぜひ経緯をあわせてお聞かせいただきたいと思います。

青柳政府参考人 今回のペアーレ彦根を含む年金・健康保険福祉施設の整理合理化に当たりましては、近年の年金制度を取り巻く社会環境あるいは国民のニーズの変化を踏まえまして、今後は、年金の、あるいは健康保険の保険料をこうした年金・健康保険福祉施設に投入しないこととするとともに、年金資金等の損失を最小化するという考え方のもとに、民間への譲渡等による整理合理化を進める、これがそもそもの大方針でございました。

 そういう状況の中で、入札に当たりましては、ただいま申し上げた年金資金への損失の最小化という観点からは、原則一般競争入札による、したがって必要以上に何か条件を付さないということが大方針として打ち立てられたわけでございます。

 ただ、地元の自治体には、私どもとしては、ただいま議員の方からも個別の御紹介ございましたように、これまで施設の設置、運営に当たりましては多大な御協力をいただいた、あるいは御支援をいただいたという経緯については十分に存じ上げているつもりでございますので、先ほども申し上げましたように、社会保険庁長官から、まずはお礼とあわせて今回の経緯を御説明するとともに、また、自治体と事前に相談して、その際に、例えば自治体の方として、こういう用途に使ってもらえればこういう条件を付すことはできる、一例を挙げますと、例えば地方税の減免みたいなことも含めてでございますけれども、そういった情報提供を、もししていただけるものがあれば幅広に情報提供させていただくということで、そういうことを踏まえて、なるべく地元の意向も反映できるようにということで努めさせていただいております。

 繰り返しになりますけれども、そもそもの今回のこの施設の整理合理化の大方針は、先ほども申し上げましたように、年金資金への損失の最小化ということがございましたので、そういう点を踏まえての原則一般競争入札というルールであることを、ぜひとも御理解賜りたいと存じます。

田島(一)分科員 そもそも、負担を極力少なくしていきたいという社会保険庁の考え方と、何のためにこのセンターという施設をつくったのかという目的が、当初の目的と随分大きな違いが出てきているわけですね。そのことについては、お認めいただいていますか。

青柳政府参考人 平成十六年の年金制度改革の際に、私どもの従来の福祉施設を含むさまざまな事業執行についての不適切な点を、各方面から御批判いただきました。

 私どもとしては、年金の、あるいは健康保険の福祉施設は、これまで被保険者の方々への福祉という観点から一定の役割を果たしてきたということは十分理解をしておるつもりでございます。しかし、それを今後とも続けることについてはいかがかということから、先ほど御紹介をさせていただきました機構の法案というものもでき、国会でこれを成立させていただいたという経緯がございますので、私どもとしては、現時点においては、このような形で福祉施設といったようなものの運営を継続するということは、やはり不適切なのではないかというふうに判断した次第でございます。

田島(一)分科員 今回、私がこの問題をあえて決算行政監視委員会で取り上げたのは、地元の問題だからというだけではございません。昨年十月、日経新聞で、「肥満 成人男性の三割」そして「国の健康運動実らず」という大変ショッキングなタイトルの新聞記事を拝見したのがまずそもそもの最初でした。

 これは、実は厚労省が進めていらっしゃる国の健康づくり運動、健康日本21で掲げている目標値に対する中間実績値を公表した結果の新聞記事であります。成人男性の三割が肥満だ、しかも、国の健康運動が実らないとまで新聞に評されてしまった厚生労働省が中心となってやっているこの健康づくり運動、健康日本21、こういったことが起こらないようにということで、被保険者の福祉の一環としてこうしたペアーレ彦根などの社会保険健康センター等が運営されてきたことは紛れもない事実だというふうに思うわけであります。

 今、いみじくも運営部長が、一定の成果が上がったというふうに堂々とおっしゃいましたけれども、一定の成果が上がりながら、どうして国の健康運動が実らずというふうに新聞で評されてしまうのか。私は、どう考えても成果が上がったとは思えないわけであります。当初策定されてきた健康日本21の目標値、この目標値に達していないということが判明したこの中間実績値ですけれども、果たして、国民の健康づくりという観点から見たとき、この運動推進をするステージとして社会保険健康センター等々があったはずであるにもかかわらず、このような形で、一定の成果があったというふうにして廃止していく。

 そもそも、この健康日本21という国民運動自体がまだまだ国民には広く認知をされていないというふうに私も感じているわけですけれども、副大臣、いかがお考えですか。厚生労働省で進めていらっしゃることと、社会保険庁がそれに反して、もう成果が上がったからといって切り捨てていこうとしているこの状況、厚生労働省の副大臣というお立場からすると、この健康日本21が本当にここまで進んできているのか。また、国民の健康づくり運動として展開されてきているけれども、それの成果が上がっていないことを考えると、そのステージが廃止されるということは、事業展開をする側としては大変矛盾をしていると私は思うんですけれども、所感としてぜひお聞かせいただきたいと思います。

武見副大臣 この健康日本21については、つい最近に中間評価というものもまとめられて、その中で、実際、御指摘のとおり、三十一項目については好転していないということがはっきりと指摘をされました。

 その理由として、総花主義的でターゲットが不明確であったこと、それから、目標達成に向けた効果的なプログラムやツールの展開が不十分であったことといったようなことが挙げられておりまして、これはもう当然、行政を先頭に、そうした指摘を受けて、克服のための努力というものは徹底的にこれからやり直さなければいけないだろうというふうに思っております。

 こうした中で、例えば歯の健康とか、それから女性の肥満については、実は好転した指標も出ておりますので、そういった点はさらに取り組みを推進していきたいというふうに思っているところであります。

 それを受けて、これは最終年度二〇一〇年でございますので、まず、二〇一〇年に向けて、さらなる取り組みを全般的に改めて強化をしていかなければならないという基本的な考え方がございます。

 その上で、ペアーレ彦根でございますか、社会保険庁が委託運営していた施設という点についてでございますけれども、これはもう今まで青柳部長が説明してきているとおりでございまして、まず基本的に、こうした年金財政及び健康保険の財政といったような極めて厳しい財政状況のもとにおいて、その保険料というものについては、やはりそれを年金及び健康保険といったものの所期の目的のために本来充てるべきであって、それ以外の目的のためにこうした保険料財源を使うということについては、もはや国民の理解が得られなくなった。

 そして、特にそのきっかけとなったのが、いわゆる社会保険庁のさまざまな不祥事であって、かつまた、特別会計の財源の中からこうした施設を実際に全国各地さまざまなところに設立をした、しかし、その多くが実は赤字になり、かつまた持続可能性を失うような状況下に陥っていったこと、そして、そうした状況下というものの中で、実際に社会保険庁全体に対する国民の信頼感が失われてしまった。

 そして、社会保険庁という役所自体が、いよいよこれは解体すべき対象だということでこの法案の御議論をいただくという状況になった今日において、改めて、こうした施設というもののあり方についても、やはり、もはやこれを保険料というものを財源として運営するというようなことは国民の理解は得られないというふうに私ども今考えているところであります。

 その上で、実際にこうした施設というものについて、そうした彦根等、お地元でも実際にスポーツ施設等で活用されてきたという経緯があったということであれば、それができる限り活用されるような形で実際にそうした施設の整備というものが行われることが、これが好ましいということになっていくのではないかというふうに私は思います。

田島(一)分科員 副大臣、私が冒頭にお尋ねして御回答いただいたとおり、例えばこのペアーレ彦根についての決算状況をごらんいただいても、赤字は出ていないんですね。非常に健全に、また利用者も彦根市民の人口とほぼ同じ数の利用者を誇るぐらい、そういう意味では非常に地域では愛されてきた施設であります。

 赤字が出ている施設ならばまだしも、黒字である地、その施設まで、運営不可能というふうにして、社保庁のさまざまな問題のしわ寄せを押しつける、これは余りに不平等な印象を私は持ちました。赤字である施設ならば、その進退として廃止、売却は筋が通る、納得もしてもらえると思います。しかし、赤字も出していない、健全に経営をしてきた、運営してきた施設にまでその飛び火が行くということはいかがなものかというのが一点。

 それともう一つは、とにかく赤字を解消するために売却していくというのに百歩譲ってうなずくとするならば、例えば、せめて健康日本21の国民運動に少しでも寄与するように、売却に関しては、一般競争入札に付するにしても、やはり一定の条件をつけて、同じようにその施設が持つ機能をそのまま存続していくという条件をつけるべきではなかったかな、そうすることによって、健康日本21の国民運動と社保庁の問題とを一緒に、納得していただける展開ができたんじゃないかなというふうに私は思うんです。

 あちらを立てればこちらが立たない、こちらを立てればあちらが立たない、これは政治の課題ではよくあることでありますが、その両方のいいところをとって、地域の人にも理解をしてもらえる三方よしの政治決断をするべきではなかったかなということを今回どうしても私は申し上げたかったんですが、副大臣、いかがですか。私の言っていることは間違っているでしょうか。

青柳政府参考人 収支の点についてだけまず私の方からお答えしますが、先ほど確かに、単年度の収支、百万円程度というふうに、黒であると申し上げたんですが、これは議員も御承知のように、これらの施設は、建物を更新するための費用というものはすべて年金なり健康保険の保険料から捻出をするということになりますので、単年度の収支だけ例えば黒字であったとしても、ではこの施設を、将来に向かって、更新を含めて維持できるかということになると、残念ながらこの程度の黒字ではこれは不可能であるということだけひとつ御理解を賜りたいと存じます。

武見副大臣 実際、私も政治家として、社会保険庁の改革、解体に一貫して取り組んできました。

 この経緯の中で、特に私が問題だなと思った点は、社会保険庁とこうした施設、すなわちこれは国有財産でありますが、これを委託契約しているさまざまな巨大な公益法人が実はつくられております、そして、これらの公益法人というものがそうした国有財産の施設を委託を受けて運営するという形になっています、実際にその運営の仕方が果たして適切であり国民の理解が得られるようなものであったかどうか、これは私は相当に疑問があると思います。よく言われるような、いわゆる天下り先というような形になって、それがまたさまざまな不信感をも国民の間から持たれるような運営のされ方をしてきていた、そういった実態もあったというふうに私は思います。

 したがって、このような、実際に、社会保険庁が保険料を財源として本来の趣旨とは異なるような目的のためにお金を使って、しかもいろいろな箱物の施設をつくって、それを公益法人である財団法人や社団法人といったようなところに委託して運営させるということ自体が、もはや年金財政、さらに医療保険にかかわる深刻な財政状況というものを見たときに、国民の理解が得られないというのは、私としては、政治家としては今この時点においても正しい判断であったと思います。

 その中で、実際にやはり年金財政についても、極力、その施設等を整理するときにはその負担を少なくさせて、そして年金財政あるいは医療保険財政を改善するための努力というものは最大限図らなければならない。この点は、やはり国民の皆さん方にも御理解のいただける基本的な考え方である。

 ただ、その場合に、個別具体的なケースという点の整理の仕方の中で、御指摘のようなジレンマが生ずるということが出てきたことは大変残念であります。

 ただ、その中でも、やはり大きな、マクロの視点から見て、こうした年金財政及び医療保険財政というものに損害を与えるというようなことがないよう、その負担は最小限にするという原則をやはり優先して考えなければならなかったというふうに私は考えます。

田島(一)分科員 社保庁改革の話をすれば、社保庁改革だけにどっぷり皆さん目を向けてしまうんですね。

 ただ、今回、私が申し上げている、この社会保険健康センター等々は、一方で厚生労働省が進めている国民の健康づくり運動にも大きな寄与をしてきたという点であります。

 健康日本21の運動目標の一つ、生活習慣病の発生予防のための身体活動、それから運動というものも挙げていらっしゃいます。その身体活動、運動を進めていく施設ということで、厚生労働大臣が実は健康増進施設であるとかを認定したり、また、指定運動療法施設を使いなさいということで、具体的な地域の施設の名前まで列記をして皆さんに示していらっしゃるわけですね。これは非常に重いことであります。

 その認定をされた健康増進施設の大半が、社会保険健康センターであったり、社会保険センターであるわけであります。ほとんどの施設がと言っても構わないです。それだけに、私どもは、この健康日本21の運動展開をしていくにもかかわらず、その主体的なステージとして認定をされた健康増進施設や指定運動療法施設が売却をされる、なくなってしまう、ゼロになってしまうということは、運動を展開していくに当たって、それを阻害しているということになる、そのことを申し上げているんですね。

 だから、被保険者の権限、権利を守るという、社保庁改革の主義主張を私はもちろん否定はいたしません。大事なことであります。しかし、そのことによって、今回の、社会保険健康センター等が廃止をされることによって、この健康日本21運動がより後退していくということになっているわけなんですね。

 では、副大臣として、この穴をどのように埋めていこうとお考えですか。

武見副大臣 穴を埋めるという点に関して御議論をさせていただく前に、こうした一つの流れの中で、社保庁改革というものを全体的に進める基本、原理原則というものをまず踏まえなければなりません。その基本、原理原則というのは、繰り返しになって恐縮でありますけれども、年金財政、医療保険財政というものを一刻も早く改善するということがあります。

 したがって、御指摘の点と矛盾するジレンマというものが生ずるということも私は認めているわけであります。

 しかし、それを認めた上で、どちらに優先順位を置いて解決を図らなければならないかという政治判断をやはり私たちは下さなければなりません。お地元の立場で、大変苦しいお立場ではあるかと思いますけれども、私どもとしては、やはり全体の原理原則に優先順位を置いて、このような判断をさせていただいたということで御理解をいただければというふうに思います。

田島(一)分科員 地元の立場としてはうまくいったので、決して私はそれを背負って質問しているわけでもありません。たまたまうまくいっただけなんですね。しかしながら、民間企業がこれまでと同じように健康増進のメニューをきちっと提供してくれるかどうかという保証は何一つないわけであります。

 残念なことに、体格指数のBMIなんかも減らさなきゃいけないというふうに目標値が設定されたけれども、減らすどころか、中間報告ではふえています。いわゆるメタボリックというキーワードが世間一般に認知をされて、飲むだけで体脂肪が燃えるなんというような健康飲料まで出てくるようになりました。そういう飲み物だとかダイエットだとかに頼っていては、この健康日本21というのは推進できない話なんですよ。もちろん、先生にそんなことを言うのは大変失礼なことでありますけれども。

 私どもも、そういうことを考えると、いかに体を動かすか、自分で脂肪を燃焼させるような努力をしていくかというためにやはりこういう施設があったわけであります。これをなくすのであるならば、この健康日本21の中間報告から最終報告に持っていくまでに、きちんとした、やはりそれに見合う施設をつくるであるとか、もしくは、その後、残った施設に対して、何らかの担保といいますか、助成とかというのはすごく嫌らしい言い方になりますけれども、やはりきちっと続けてもらうような手だてというものを厚生労働省からしていかないと、この目標値到達の二十二年まではとてもとても遠い道のり、険しい道のりだというふうに私は考えるんですね。

 その点、最後に御答弁をいただいて、終わりたいと思います。

武見副大臣 目指そうとする方向は、大体私と同じですよ、先生。

 それで、私自身、こうした健康な社会づくりというものを進めるための健康日本21という目標、これに到達するための最大限の努力を行政が常にしなければならないということは、もう当たり前のことだと思います。ただ、その過程で、こうした施設があるということが、それぞれの施設のある地域社会においては、こうした運動を進めていく上で大変役に立つということは事実でしょう。しかし、残念ながら、そうした施設というものを今までつくってきた経緯というものの中で、ほかの優先順位が働かざるを得なかったという経緯があったわけであります。

 しかし、そうしたことも踏まえた上で、実際にお地元のように、うまいぐあいに民営化が進み、その機能が維持されたということは、一つの大切な成功例であったかと思います。

 実際、そうしたことをやはり十分考えながら、こうした整理というものを進めていくことが適切なんだろうというふうに思います。その中で、できる限りのこういったジレンマを克服していくことができればというふうに思うものでございます。

田島(一)分科員 ジレンマの克服に最大限の努力をぜひ発揮していただくことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

渡海主査 これにて田島一成君の質疑は終了いたしました。

 次に、冨岡勉君。

冨岡分科員 長時間、お疲れさまでございます。

 私は、きょうは分科会ということで、最初の三つは、医師不足対策という観点から質問をさせていただきます。

 現在、御案内のように、厚生労働行政の大きなキーワードは少子化対策、医師不足、それと再チャレンジ、そういった点がすぐ言葉としては出てくるわけでございます。それで、そういうのを急に対策を練ろといっても、いろいろな分析をしていくわけなんですが、女医さんの対策、あるいは看護師さんも不足していますので、きょうは、その中で一つ話題を限って、保育所ということ、特に大学病院での保育所の整備について、まずお尋ねをしたいと思います。

 今申しましたように、大学病院というところは、常にベット数が大体八百から千ぐらいありまして、女性が働く場所としてはよく挙げられる代表格の施設でございます。そこで、大学病院における保育所の整備状況について、現況としては大体六〇%ぐらいだと聞いていますけれども、その数値を挙げて、現在までの政策等についてのお話をまず説明いただきたいと思っております。

辰野政府参考人 国立大学病院におきます保育所につきましては、各大学は、みずから保育所を設置したり近隣の保育所と連携するなど、必要な措置を講じているところでございまして、その数につきましては、平成十八年七月時点での調査では、全四十二大学中二十四病院、約六割に設置をされているところでございます。

 ただ、これ以降、東京大学、筑波大学など、新たにこのような取り組みをするところも出てきておりまして、感じとしては、着実にそれはふえていっているというふうに考えております。

 基本的には、これは各大学の御判断によってやっていただくということでございますけれども、私どもは、平成十九年度からでございますけれども、医療人育成GP、グッドプラクティスという中で、女性医師、看護師の臨床現場定着及び復帰支援というテーマを設けまして、ここで保育所との連携を含めて大学の意欲的な取り組みに対して財政支援を行って、これを後押ししていきたい、こういうふうに考えております。

冨岡分科員 現況は六割という数字を、五七%だったと思いますけれども、どういうふうに考えるかということもありますけれども、私自身は、現在顕在化している少子化、あるいは女医さん、看護師さん不足に対して十分な数字ではないのではないかというふうに思っているんですよ。思っているので、きょう質問をさせていただいているわけなんですけれども。

 当局として、この数値自体の評価と、それから、今、新プログラム、政策をちょっとおっしゃいましたけれども、大体どういうふうな数値が出てくれば、例えば五年以内にこうしたい、そういう具体的な施策あるいは数値目標というのを設定されているのかどうか、もう一度お聞きしたいと思います。

辰野政府参考人 大学病院における保育所の設置それから保育所との連携ということにつきましては、やはり最近の少子化対策でありますとか、それから医師不足の中で、例えば小児科とか産婦人科等を中心に、女性医師の役割また看護師の役割というものが非常に大切だという流れの中で、これは着実にふえていっているというふうに思っております。

 これについて、当面、いつまでにどれぐらいという目標はあるのかということなんですが、これは実は、特に数値目標としては今持っておりませんけれども、今の傾向を見ておりますと、やはり各大学で実際にそういうニーズが生じてきている、それからまた、そういう声にこたえていかなければならない。場合によっては、立地によりましては、近隣の方々にも利用していただけるようにというような発想から、むしろ前向きにこれは進んでいく状態であろう。

 我々といたしましては、先ほどのプログラムを、あれはモデル的なものでございますけれども、それを契機にしますとか、そのようなつくり方の情報といいますか、例えば、最近できたところというのは大体、これは厚生労働省の方の所管の財団法人でございますけれども、二十一世紀職業財団の育児・介護雇用安定等助成金というものを活用いたしましてつくっている、こういうつくり方もあるよとか、それからまた、特に病院の場合、保育所は開設時間が非常に重要なファクターになりまして、なるべく遅くまで開設していく、そういう病院も幾つか出てきておりますので、その辺のノウハウを提供したりして、これは後押しをして進めていけば、相当のところまで進んでいくのではなかろうかというふうに思っているところでございます。

冨岡分科員 今お答えにあったように、夜間の保育とか、もちろん深夜まで、朝方までというのが、看護師さんの勤務あるいは女医さんの勤務ではそういうことが再三、日常的に起こっているわけなので、その既存の施設においてはそういった時間に対する対応がまだうまくいっていない、あるいは病児保育、病気になられた場合のお子さんを預かるような体制がとられていないということがよく指摘されるわけなんです。

 そういった観点から、四割近くの大学でまだ整備がされていないということになりますと、やはり何らかの対策が、二十一世紀プログラムというか、支援プログラムというのがあるのはあるんですけれども、どうしても大学当局というのはそういった保育所の運営ノウハウなんというのは持っておりません。今言ったような病児保育とかは、ようやく始まりつつある、普及しつつあるようなことなんです。

 そこで、文科省になるのか、厚生労働省になるのか、両方の政策を合体されるというのか、いわゆる大学、きょうは卑近な例として大学病院の保育所というものにターゲットを絞っていますけれども、これは大きな会社にも通用することであり、大きな国立病院、独立行政法人化した病院にも当てはまることなのでお尋ねしているわけなんです。

 いわゆるノウハウのない団体、独立行政法人、旧大学病院に対して、支援プログラム、つまりワンストップオフィスみたいにチームが出かけていって、よくあるいわゆる派遣をして、そこで支援プログラムを遂行するようなプログラムが必要ではないかというふうに私は感じておるわけなんですが、きょうは、この見解につきましての当局のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

辰野政府参考人 支援のためのプログラムとしてはいろいろな要素があるんでしょうけれども、今まで六割というのが多いか少ないかというのがありますが、これはまさに先生おっしゃったように、平成十六年に国立大学が法人化して、その中でいろいろな工夫ができるようになった、それでこの六割のところでやってきたわけでありますので、これはそういうニーズに応じながら、各大学でさまざまな工夫の中でやっていただくというのが基本にはあると思います。

 ただ、今御指摘ありましたように、国立大学病院に必要な保育所の特質というものがこれまた明らかにあるわけで、また、そういう特質を発揮させるためのいろいろな工夫というものも現実にあるわけで、我々はそれを全部把握しておりますから、それらを相談体制という形で、これは我々の医学教育課の中に附属病院の支援室等もございますので、そこで御相談いただきたいし、また、定期的に国立大学の病院長からのヒアリングを行う意見交換の場があるんですけれども、そういう場の中でもこのことも話題に取り上げながら、先生の御指摘のような方向で進むように、我々としても努めてまいりたいと思っております。

冨岡分科員 エンゼルプランとか、何回も、何次も改正してやっているんですが、どうしても少子化対策というのは明らかな改善が見られない。したがって、こういう大学というのは、キャンパスがありますよ、そして地域住民も安心して見ている特殊な場所だと私自身は思います。そこにおいて、数値目標九十何%でいいじゃないですか、そこの整備をして、大学のみならず、地域の人たちにも安心してそういった子育てをしていただく。病院ですから、病気になった病児保育というのは、やはり特色が出せるんじゃないかと私自身は思っているんですよ。

 だから、いわゆる少子化対策の目玉とは言いませんけれども、そういったかなり実現性の高い部分に対しては積極的なプログラムをつくって国民にアピールをして、これは具体的にやれるんだと。政府は本気になってくれているんだなという格好な題材ではないか。比較的予算づけも少なくて遂行できるような施策というんでしょうか、政策じゃないかと思っていますけれども、その考え方はどうですか。

辰野政府参考人 これは先ほども触れましたけれども、六割近くはもう既に整備をしておりまして、それにまた先ほどの補助金等も活用しながらやっていこうというところも出てきている。こういう状況に今ありますので、逆にここで、それでは新しく補助金です、やっていないところは全部というのが、果たして今までの流れの中からして、既に整備しているところとの関係から見てどうかというのはあろうかと思います。

 ただし、こういう状況というのをなるべく早く進めていきたい、それからまた、病院の特質に応じた形での設置、運営というものを進めていきたいという考え方は全くそのとおりでございますので、先生の御指摘を受けながら、また、各大学と相談して前へ進めていくというふうにしたいと思っております。

冨岡分科員 ありがとうございます。

 これは国民がわかりやすい形で実感できるものの一つじゃないかと思っています。漠然としていないから、病児保育というので、ぴっとキーワードがひっつきますからね。ぜひ御検討いただければと思っております。

 それから、同じような観点から、助産師さんの養成についてもう一度ちょっと、これは厚生労働委員会でも再三問題になっている部分でございますが、これも医師不足、特に産婦人科医の過重な労働、それを緩和するというんでしょうか、拠点病院をつくって産婦人科医さんを集めて、そこで出産していただくという政府の方針に対しまして、私もそのような方向で検討されるのはよろしいかと思います。

 ただ、地域におきましては、現在、人口十万ぐらいのエリアで、私の県では人口十万エリアでも産婦人科医がいないという状態がもう出現しています、現実的に全国津々浦々でそういうものが。したがって、ここで助産師さんに登場していただいて、ノーマルなというんですか、正常分娩は扱っていただきたいというふうに思っているんですが、国策として、今のような医師不足が顕在化した原因というもの、そしてなおかつ助産師さんに対して今後どのような対策、あるいは活用という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、参加していただくのか。まずはゼネラルな大きな流れについて簡単に御説明していただきたいと思います。

白石政府参考人 助産師、お産に関連してゼネラルな形での状況という御質問だったかと思います。

 おっしゃいますように、いろいろ地域において産科医不足というのが顕在化しているということで、今お話しいただきましたような集中、集約化みたいな対策をとっておるわけでございますけれども、また御指摘ありましたように、地域で安心、安全なお産の体制ということであるならば、やはり産科のお医者さんとの適切な役割分担、連携のもとではございますけれども、正常なお産を扱うことができる助産師さんというものの役割は大変大事でございます。

 今、実働で二万七千人ほどの助産師さんが全国で活躍しておられますけれども、病院で活動しておられる方がそのうちの一万八千人ぐらいということでございますし、また助産所というものをつくっておられる方もいらっしゃるわけでございます。こういった方たちをより養成しやすくなるようにというふうなことは大変大事だということで、養成所の運営の補助それから施設整備の補助ということをやっておりますが、特に働いておられる看護師さんが夜間定時制の助産師の養成所に通いやすいようにということで、教員の人件費の補助等々も今年度からスタートをさせていただくことにしております。

 また、社会人の入学の枠であるとか、あるいは養成所の定員の枠というものもふやす方向でいろいろ働きかけをしておりまして、助産師さんの活用ということは非常に大事なことだというふうに考えて、その施策を講じております。

冨岡分科員 この質問も、結局は助産師さんも女性なんですね、だから出産されるわけで、これも自分の子供を自分でするわけにはいかぬわけなんです。要は、女性に対してのいろいろな政策というのがほとんどリンクし合っているのが今の医療の医師不足あるいは少子化の現況じゃないかと思っています。これは、今からお尋ねする過重労働の解消に対しても、この助産師対策というのは非常に重要な意味を持ってくると思っています。

 それで、制度についてちょっと触れたいんですけれども、大きな課題ですので、私見としてちょっと述べさせていただきたいんです。

 准看護師さんというのは、中学を卒業して出られるわけですね、高等看護学校というのがありますけれども、これを大体三年間で出ても、助産師さんと保健師さんにはなれません。一年間修学しなくちゃいけないんです。四年制大学が出てきていますが、ところが、この四年制大学を出ても助産師さんと保健師さんにはなれない、こういう現況があるわけなんです。そういう制度自体が助産師さんと保健師さんを不足させている原因になっているんじゃないかなと思います。

 つまり、医師は六年間でどのような科も開業するとか名乗ることができます。わずか一年間勉強して保健師さんと助産師さんを取れるなら、四年制の学校はその履修科目を工夫して、そういったもので助産師さんを増加させるというんでしょうか、育成するような政策がとれないかどうか。

 これは大変大きな問題なのですぐにお答えできないかもしれませんけれども、何らかの対策をしないと、数自体が足りなくなっているという状態がもう現実的に起こっているわけなので、その点につきまして、当局のお考えが何かございましたら、教えていただきたいと思います。

白石政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、養成のシステムは今おっしゃったような形になっております。

 そうすると、やはり志、助産師さんになりたいという気持ちがあっても、ああ、もう一年か、友達、同級生は看護師の試験を受けてもう巣立っていく。もう一年ということになりますと、それじゃ自分もこのまま志半ばにして看護師で社会に出るかというふうな方もいらっしゃいますでしょう。助産師になるための養成課程をどうするかということは、実はいろいろな意見がございます。

 確かに、例えば大学で四年間やっても、もう一年ということになれば、それはまた別のもう一年を自分の同級生は皆卒業した後で暮らさなければならない、そういったこともございますので、なかなか難しい点はあるんですけれども、例えば、社会人の入学枠であるとか、あるいは、そもそも定数をふやして五年間行く仲間がもっとふえるということもまた大事な要素でもございますので、そういうこともいろいろ考えてやっていかなければならないということはまさにおっしゃるとおりでございます。

 これは厚生労働省のみならず、文部科学省ともよく相談をさせていただきながら、養成のあり方、特に大学教育とのうまい連携のあり方、これを考えていかなきゃならないと思います。またいろいろ御指導ください。

冨岡分科員 ありがとうございます。そういうことで、どうも議論を聞いていると、やはりそこの部分を扱わないと、医師会さんがいろいろな専門校をつくって運営していても、制度がだんだん複雑になって、わかりにくくなっている。ぜひ検討課題として挙げていただきたいと思います。

 さて、次の質問に行きますが、次は、皆さん記憶に新しい長崎市長の伊藤一長氏が銃撃によって倒れられた事件に関してでございます。

 その詳細につきましては、私の知るところによりますと、七時五十二分に暴力団員から銃撃を受けて、救急車で搬送され、大学病院で手術を受けたにもかかわらず亡くなられたわけです。

 きょうは、その暴力行為とかそういう観点じゃなくて、そこに従事した医療従事者の勤務状況について、過重労働という観点からお尋ねしたいと思います。

 実際、私も手術を担当した江石教授、インタビューに答えられた江石教授とお話ししまして、当日の状況についてお話を聞いたんですが、今申しましたように、八時十分ぐらいに大学病院に着いて、それから緊急処置、手術が始まっています。

 ちょっとイメージしてください。その日、教授は、恐らく朝の八時ぐらいに出てこられて、十二時間働いて、帰られようかなというときに連絡を受けて、手術に入っています。そして、その手術にかかわらず亡くなられたのが二時二十八分です。緊急記者会見が四時半です。そして、霊安室に運ばれます。これは主治医がついていかなくちゃ法医解剖できませんので。全部処置をして、私が霊安室に行ったときが十時二十分ぐらいだった。

 つまり、その間、医療従事者は、看護師さんたちは違いますけれども、主治医となったグループはずっとつきっきりになります。なおかつ、いろいろな整理。そして、幸いなことにその日は手術日じゃなくて外来日だった、だから教授は一時間ぐらい仮眠されたと聞きましたけれども、それから教授も外来に出ています。そして、それが終わって夜すぐ帰ったかというと、そうじゃない。会議とかずっと組んであったので、帰ったのが九時か十時ぐらい。

 要は、三十七、八時間ずっといろいろなことをやっている。これは教授だけじゃないわけなんです。そのスタッフが全部。こういうことがあっていいのかどうかわかりませんが、その日の外来はやったんですが、次の日の手術はどうしても難しいんじゃないかということで延期されたというふうに、自分自身は出なかったというふうに聞きました。

 ここで問題にしたいのは、これが特殊な例ではないんですね。特殊な例ではない。三次救急病院というのは、毎日じゃないんですけれども、これがしょっちゅうに近い状態である。昔は消化管出血なんか月に一、二例は必ず来ていた時代がありました。これに対して制度的に問題があるんじゃないかと常々言われているんですが、ただ、残念なことに、何ら改善も施されないまま今もって続けられています。

 そこで、今のお話を聞いて、これはしようがないじゃないかというお考えなのか。一体この辺はどこに問題があって、どうすればいいのか。よく指摘されるのは、次の日、当直勤務があった次の日なんかは勤務を午後からでも解除しようとかそういう話があるわけなんですが、全体の流れの今の話をお聞きになられて、どのように感じ、またどういう点が問題なのか、ちょっと整理をしていただきたいと思います。

白石政府参考人 まず、亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、その命を救おうとして一生懸命御尽力されたお医者さん初め医療スタッフに本当に頭が下がる思いでございます。

 特に今のことで問題だなというふうに思っておりますのは、そういう特別なケースだけではなくて、一般的にも病院勤務医は大変労働時間が長いというデータがございます。医師需給のための勤務状況調査というのも行っておりましたが、その際にわかってきたのが、病院の常勤のお医者さんの平均従業時間、週四十八時間が平均でございます。これは平均でございますので、お若い方はもっと長いというデータもありますし、また、あくまでも平均でございますので、もっと長い方もいらっしゃる。

 それに比較するというわけではございませんけれども、診療所の常勤のお医者さんの平均従業時間というのは四十時間を下回る状況にあります。

 何を申し上げたいかといいますと、やはり今特に問題になっておりますのが、病院の勤務医さんの長時間の勤務がある、これは何とかしなければならないということは私どもも感じておりまして、まず病院と診療所のいろいろな連携をとることによって、もう少し病院の勤務医さんに過度な負担が寄らないようなことをすべきではないかということを考えております。

 また、先ほどの御質問の中にもありましたように、今お医者さんのうち、特に最近国家試験に合格される方は女性のお医者さんが三分の一でございます。先ほど御指摘いただきました産科医さんの場合ですと、二十代のお医者さんは半分が女性というふうなことになります。やはりそれは、女性の働きやすい職場環境というものもつくらなければいけないということがあります。

 そういうことなどを通じて、病院の勤務医さんに過重な負担がかかり過ぎるという状況を何とかしていきたいということを考えております。

冨岡分科員 何とかしたいということで、何十年かたったような気がするんですね。だから、結果的には踏み出していないんですね、制度を扱うということはどうしても嫌というような意味がちょっとあるのかなと思いますけれども。

 私自身は、これは欠陥制度だと思っております。つまり、看護師さんとか警察官とか、社会を維持するために必要な制度というのがあるじゃないですか。それはやはりきちんと保障されたり、あるいは勤務がきちんきちんと交代できるような制度になっていますね。ところが、何年たっても、これは何十年前から我々も言っているわけなんですけれども、何ら対策がないですね。特に大学。私立病院に至ってはもっとひどいです、経営的に大変ですから。本当に三十六時間をしょっちゅうやっているというような状態が続いています。その中で、先般の小児科医の自殺問題とか過労死というのが、もっともっとおられると思いますけれども、出てきています。

 したがって、結論的に申し上げたいのは、これは制度に欠陥があるということで、定員増を含めた、当直後の勤務体制に対する、どのようにするかはお任せしますけれども、制度を扱うんだ、それも大学病院からでいいじゃないですか、それをぜひやはりやるべきだ。これは喫緊の課題になっていると思いますよ、何年待っても変わらないわけだから。ここまで来て腰を上げないなら、これはやはり政府として責任を放棄しているような状態だと私自身は思います。

 この見解についてはどうですか。

渡海主査 質疑時間が過ぎておりますので、簡単にお願いします。

白石政府参考人 おしかり、ごもっともだと思います。いろいろ努力してまいりたいと思います。

冨岡分科員 質問を終わります。

渡海主査 これにて冨岡勉君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

渡海主査 これより農林水産省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。松岡農林水産大臣。

松岡国務大臣 平成十七年度における農林水産省の決算の概要を御説明申し上げます。

 最初に、一般会計について申し上げます。

 まず、一般会計の歳入につきましては、歳入予算額は三千五百六十七億三千七百七十九万円余に対しまして、収納済み歳入額は三千六百六十億九千六百六十四万円余であり、差し引きいたしますと、九十三億五千八百八十四万円余の増加となっております。

 次に、一般会計の歳出につきましては、歳出予算現額は三兆五千四百六十一億四千七百三十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は三兆九百二十一億三千四百七十九万円余、翌年度繰越額は三千七百九十六億二千三十五万円余、不用額は七百四十三億九千二百二十一万円余となっております。

 次に、各特別会計の決算について御説明申し上げます。

 まず、食糧管理特別会計につきましては、国内米管理勘定等の七勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は二兆三千三百七十四億三千三百九十六万円余、支出済み歳出額は二兆三千二百五十六億四千七百二十三万円余でありまして、歳入歳出差し引き百十七億八千六百七十二万円余の剰余を生じました。この剰余金は、法律の定めるところにより、翌年度の歳入に繰り入れることといたしました。また、食糧管理勘定の損益計算上の損失は千二百二十億三千二百四十六万円余でありまして、この損失は、法律の定めるところにより調整勘定に移し、調整資金を減額して整理することといたしました。

 このほか、農業共済再保険特別会計、森林保険特別会計、漁船再保険及漁業共済保険特別会計、農業経営基盤強化措置特別会計、国有林野事業特別会計及び国営土地改良事業特別会計がございますが、これらの特別会計の概要につきましては、お手元の資料に掲載いたしましたとおりであります。

 以上をもちまして、平成十七年度における農林水産省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

渡海主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院鵜飼第四局長。

鵜飼会計検査院当局者 平成十七年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十八件、意見を表示しまたは処置を要求した事項一件、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項六件及び意見を表示しまたは処置を要求した事項に対する処置状況二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二八五号は、会計経理が適正を欠いているものであります。

 同二八六号は、委託費の支払いが過大となっているものであります。

 同二八七号は、工事の施工が適切でないものであります。

 同二八八号は、委託費の積算が過大となっているものであります。

 同二八九号から二九一号まで、二九五号及び二九七号の五件は、補助の目的を達していないものであります。

 同二九二号、二九六号、三〇一号の三件は、補助の対象とならないものであります。

 同二九三号、二九四号、二九九号の三件は、工事の設計が適切でないものであります。

 同二九八号は、補助金を過大に受給しているものであります。

 同三〇〇号は、補助対象事業費を過大に精算しているものであります。

 同三〇二号は、補助金の交付額の算定が適切でないものであります。

 次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、土地改良負担金総合償還対策事業における土地改良負担金対策資金の資金規模に関するものであります。

 農林水産省では、二年度から、国庫補助事業により、土地改良負担金総合償還対策事業を実施することとし、財団法人全国土地改良資金協会を事業主体として、資金協会に土地改良負担金対策資金を造成し、土地改良負担金に係る借入金の償還が困難な土地改良区を対象に、借りかえ資金に係る利子補給を行うなどすることといたしました。

 そして、二年度から十二年度までの間において資金協会に対して計二千億円の国庫補助金を交付しており、十六年度末における対策資金の資金残高は千六百五十八億余円となっております。

 しかし、総合償還対策事業の今後の実施については、把握が可能なものとなっていることから、十七年度以降に資金協会から交付されることとなる利子補給金等について推計するなどしたところ、三百三十億余円と推計され、また、仮に対策資金の保有規模を相当程度縮小したとしても、今後の金利動向が資金協会の事業の遂行に大きな影響を及ぼすおそれは少ないものと見込まれます。

 したがいまして、農林水産省に対し、資金需要に対応した対策資金の資金規模の把握を行い、多額の余裕資金の発生が想定される場合には、対策資金の資金規模の縮小を図るなどするよう改善の処置を要求いたしたものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、中山間地域等直接支払い制度の実施に関するもの、その二は、農村総合整備事業等により整備した施設用地に関するもの、その三は、圃場整備事業等により整備された農地の維持・保全等に関するもの、その四は、緑の雇用担い手育成対策事業における委託事業費の算定及び物品・役務調達の契約手続に関するもの、その五は、農地情報管理システム整備事業等の実施及び農地情報管理システムの活用を図るための情報の更新に関するもの、その六は、学校給食用食肉流通・消費改善対策事業の実施に関するものであります。これら六件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 なお、以上のほか、平成十四年度決算検査報告に掲記いたしましたように、一般国道の道路敷となっている国有林野の取り扱いについて、及び平成十六年度決算検査報告に掲記いたしましたように、沖縄の復帰に伴う国有林野に係る国有財産台帳の整備について、それぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する農林水産省の処置状況についても掲記いたしました。

 引き続きまして、平成十七年度農林漁業金融公庫の決算について検査いたしました結果を御説明いたします。

 平成十七年度農林漁業金融公庫の決算について検査しました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

 以上をもって概要の説明を終わります。

渡海主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。松岡農林水産大臣。

松岡国務大臣 会計検査院から御報告のありました平成十七年度決算検査報告に対しまして、農林水産省が講じた措置を御説明申し上げます。

 予算の執行に当たりましては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、会計検査院の平成十七年度決算検査報告におきまして、不当事項等として指摘を受けるような事態が生じましたことは、まことに遺憾であります。

 御指摘を受けた事項につきましては、直ちに是正措置を講じておりますが、今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、より一層予算の適切な執行に努めてまいる所存であります。

渡海主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡海主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

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渡海主査 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡海主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保坂武君。

保坂(武)分科員 私は、自由民主党の保坂武であります。

 本日は、松岡大臣初め執行部の皆さんには、時間をいただきましてありがとうございます。近年の予算執行は大変厳しい歳入状況にもあるわけでありまして、特に農林水産費につきましても大変ではなかろうかと思いますが、質問をさせていただきます。

 我が党は一昨年に立党五十年を迎えておるわけでありますが、昨年九月、安倍総裁を選出して、国民の信頼と期待にこたえる新しい体制で動き出したところであります。

 安倍総理には、成長なくして日本の未来はなしの基本方針のもとに、その基礎の炎を国民とともに燃やし続けていく熱意であるわけであります。そして、「美しい国、日本」の実現に向けて全力を傾注し、美しい国づくりに必要なものは、活力に満ちた経済、再チャレンジへの支援、あるいは頑張る地方応援プログラムや日本型の社会保障制度、そして少子化、高齢化対策、教育再生など、多方面にわたっているところであります。

 さて、松岡農林水産大臣には、本年が我が国農林水産業の新生元年となるよう、諸施策の取り組みを果敢に進めていると大臣所信を語っておられました。

 私は、農業者の立場に立って何点か質問させていただきますが、衆参国会議員の七百二十二名のうち、農業を実体験された方は少ないかと存じます。恐らく私を含め十数名かと思いますが。しかも、農業高校が最終学歴で、衆参の中では私を含め三名ぐらいしかいないのではないかな、こんなふうに思うわけであります。

 総理は、地方の発展なくして日本の発展なしと言われますが、地方は厳しく、中でも、農業は今非常に厳しい時代を迎えていると感じるわけであります。かつて、士農工商と言われた時代がありましたが、現在では、士工商農と、農が最後になっているような思いがするわけであります。今ある日本をつくったものは農業であり、日本が農耕民族と言われるゆえんでもあったかと存じます。

 さて、質問に入ります。

 農林水産省では、将来、十年後の平成二十七年度の食料自給率の目標として四五%を設定しておりますが、これまでの推移を考えると、年々低下の方向にあると心配をするわけであります。近い将来、三〇%程度に落ち込んでしまうのではないかな、こう危惧をいたしております。食料自給率の向上のための施策としてどういった取り組みを行っているか、そして、行っていくというふうなことについて大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。

    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕

松岡国務大臣 保坂先生御指摘のとおりでございまして、食料自給率、今は四〇%、こういうような状況でございます。これは、昭和三十五年には七九%あったわけでありますが、いろいろな原因がございましてこのような状況にまで落ち込んでしまった、先進国の中では最低である、このように指摘をされております。

 そこで、何でこうなったかという一番大きな理由は、米の需要というのが、三十五年当時は一人当たり百十四キログラムぐらいあった、それが今現在は六十一キロ程度にまで落ち込んでいる。言ってみれば、ほぼ二分の一になってしまった。また一方では、肉類が五倍、それから油脂が三倍、こういうふうに食料需要の構造の変化というのがございまして、そういったことからこのような事態になったわけであります。

 国民の皆様は、内閣府の世論調査によりますと、八割の方が不安を感じておられる。また、これからのいろいろな状況、温暖化の問題や人口増加の問題や、そういったいろいろを考えますと、これは本当に自給率を上げていかないと大変なことになる。

 そこで、どういう取り組みをするか。まずは四五%を設定し、そしてそれに向かってどういう取り組みをするか。生産面、消費面、両方からしっかりした取り組みをやっていこう。こういうことでございます。

 消費面では、食事バランスガイド、健康の面も考えましたいわゆるバランスのとれた食事のとり方、こういったものの設計を示しまして、食育ということを中心に消費面の取り組みを強化していく。

 それからまた、生産面ということにつきましては、ミスマッチをなくしまして、そして需要に見合った生産、こういったものをしっかりと進めていく。それから、食品産業と農業の連携強化、また、経営感覚にすぐれた、やる気、意欲と能力のある方々に、担い手として、そこに農地が集約化できるような、そういう取り組みをいたしまして、そういった消費面、生産面、両面からしっかりとした取り組みをすることによって、この四五%を達成してまいりたい。

 それから、ことしになりまして、今月の四日に決定されました二十一世紀新農政二〇〇七を踏まえつつ、工程管理をしっかりと行いまして、そして、工程管理に基づきまして、一つずつ着実、確実な施策の推進と実行を確保して取り組んでまいりたい、このように考えております。

保坂(武)分科員 大臣の決意、我々も歓迎し、ぜひ努力をなお進めていただきたいと思うわけであります。

 そこで、食料自給率の確保ということには農業が非常に重要ではないかな、こう思うわけであります。生産のための農機具などの資材の購入や農産物の運送など、生産者が発展することが、他産業への貢献度から農業は重要であるというふうに思うわけであります。

 特に、農業後継者づくりのために農林水産省としてはどのような取り組みを行っているのか伺うわけでありますが、農業専門学校は、昭和五十年度に四百九十六校、十七万九千人がいたわけでありますが、平成元年になりますと、四百二十一校というふうに減少し、十五万二千となるわけであります。そして、近年になりますと、三百八十九校と非常に学校数が少なくなり、生徒数も十七万九千から九万六千というふうに減少してきているのが現状であります。

 農林水産業は国づくりの基幹というもとで考えますと、一歩踏み込んで、農業高校への支援を、当省としても文科省に支援すべきである。特に、農業クラブ活動なども、予算が少なく、生徒から会費を集めて運営しているのが現状であります。そういった面でお尋ねをさせていただきます。

高橋(博)政府参考人 将来の農業を担います人材の確保、農業後継者の確保につきまして、農業教育の果たす役割は極めて重要であるということは、委員御指摘のとおりでございます。

 この関係で、農業高校につきましても、従来から、農業分野におけます教育という観点で非常に重大な役割を果たしているところでございまして、道府県の農業大学校等におけます実践的な研修教育とあわせまして、この振興を図ってきているところでございます。

 特に、食料自給率の向上等に向けまして、今後、経営感覚にすぐれた担い手の育成ということがこれまでにも増して急務となっている中で、農業生産、経営に関します高度な知識、技術あるいは経営感覚、食の安全、安心の確保、あるいは国際化、情報化、環境保全等の我が国の農業が抱えます諸課題に柔軟に適応できるような能力といったものを培うような研修教育、こういうもののさらなる充実を図っていくことが重要であると考えております。

 また、このため、平成二十年には、最先端の農業技術等を教授いたします教育機関といたしまして、新農業者大学校というものを茨城県のつくば市に開校するということにしておるわけでございますけれども、このような最先端の機関に対しまして、農業高校あるいは農業者大学校におけます取り組み、特に農業高校と大学校間におけます研修の連携等といったものも重要であるというふうに認識しております。

 所管の文部科学省とも今後とも密接に連携、協調いたしまして、若者の就農促進あるいは新規就農者の育成に農林水産省としても努めてまいりたいというふうに思っております。

    〔北村(誠)主査代理退席、主査着席〕

保坂(武)分科員 特に、専門学校となりますと文科省との関係が出てきてしまうわけでありますが、ちょっと関連して、今農業高校では農業技術検定という事業が計画されておりまして、ことしの場合も七月三十一日に予定をされているようであります。

 これは、農林水産省も力を入れていると伺いますけれども、昨年のトライアルで一万人の参加があったと聞くわけでありますから、ぜひ、こういった経済的なサポートやバックアップをするという方向で、農林水産省も、農業高校にやはり必要だという観点のもとに援助できるような方策というものを、一言お尋ねしておきます。

高橋(博)政府参考人 御指摘の農業技術検定でございますけれども、これは、新規就農あるいは農業法人等への就業促進を目的といたしまして、就農希望者の農業知識あるいは技術レベルを客観的に評価する試験システムでございます。これにつきましては、現在本格的創設に向けまして、これは実は、農林水産省の助成によりまして、全国農業会議所が平成十七年度からこの創設に向けた検討を進めてきたものでございます。

 今お話のございました、ことしの夏にも予定しております、これは農業高校の在学生等を主な対象といたします農業知識に関する入門レベルの試験ということでございますけれども、これまでも、制度設計、試験内容について、試行試験等も実施しながら検討してきたところでございまして、これの適切な実施ということを私どもとしてもきちんと進めてまいりたいと思っております。

 また、この関係では、当然のことながら、農業高校を所管いたします文部科学省など、関係機関とも十分に連携をとって進めてまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、この入門レベルの試験を発端といたしまして、さらに、基本レベルあるいは実践レベルのような上位レベルでの試験につきましても、段階的に、スケジュール観を持ちまして、順次本格的実施に向けて検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

保坂(武)分科員 さて次に、新たな品目横断経営安定対策について今実施されておりますが、認定農業者が四ヘクタール以上、集落営農組織が二十ヘクタールというふうに規定要件があるわけでありますが、地元の後継者からは、大変大き過ぎるのではないかというふうな状況を耳にいたします。

 政府としてのこの規模要件についてのお考えをお尋ねするわけでありますが、実態は、日本の農業基盤は非常に小さい面積で行われておりますので、四ヘクタールが二・六ヘクタールとか、あるいは中山間地域で十ヘクタールの要件というふうになっておりますが、もっと具体的に明確に下げて、二分の一とかいうふうな規模にならないか、お尋ねをさせていただきます。

高橋(博)政府参考人 品目横断的経営安定対策に関します要件でございますけれども、基本的には、今後、将来的に他産業並みに所得を確保し得るような農業経営を育成していくという観点から、現状でおおむねそのような所得を確保し得る面積の半分程度の要件、都府県四ヘクタール、北海道十ヘクタール、あるいは集落営農組織で二十ヘクタールということで、これを基本要件としているところでございます。

 しかしながら、委員の御出身地でございます山梨等のような場合、当然のことながら、地形条件等、あるいは、このような土地利用型だけではなくて、果樹とか野菜とか、そういう他の高所得の作目といったものを経営しているというような、それぞれの条件ごとに特別の基準、地域の状況にも配慮した基準を設けたところでございます。

 また、この集落営農組織につきましては、個別ではこのような担い手になり得ない場合でありましても、集落営農に参加する形で担い手というようなこともなれるということでございます。

 いずれにいたしましても、このような品目横断の要件あるいは内容等につきましては、この四月からいよいよ制度を本格実施しておるわけでございますけれども、これまでも、国あるいは都道府県、市町村、JA等の関係団体、あらゆるルートを通じまして、生産現場に対して説明を重ねてきているところでございます。

 この制度の周知徹底、そしてこれに基づく取り組みということは極めて重要であることは言をまちませんものでございます。今後とも、引き続きそういう生産現場に対する周知徹底をきちんと図ってまいりたいというふうに思っております。

保坂(武)分科員 次に、鳥獣害被害は、全国における被害額が二百億円とか、面積においても十二万ヘクタールなどと、非常に大きな被害となっております。防護さくの整備や、その整備に必要な地域に対する支援を充実するなど、鳥獣害被害の対策を徹底して行わないと、金額だけではなくて、また農業者の意欲をそぎ、耕作放棄地も増加するようになってしまうのではないかと心配をするわけであります。

 現実に、地元で皆さんから声が聞かれますことにも、びっくりしたのは、リンゴあるいはカキなどの果樹の被害では、栽培をもうやめて、そして桜の木を植えて、畑で桜を見るようにしなければならぬと。猿も桜を見に来たり、猿と一緒に農家が桜を見なきゃならない現実になっているわけであります。

 そういう意味で、ぜひ、こういった対策についての具体策をお尋ねさせていただきます。

山田政府参考人 鳥獣害の被害防止対策についてでございますが、今委員からお話がありましたように、近年、中山間地域を中心にいたしまして、野生鳥獣による農林業被害が深刻化しております。また、耕作放棄地の発生要因の一つになっているということもございますので、被害防止対策の充実が極めて重要であると認識しております。

 農林水産省といたしましては、関係省庁とも連携しつつ、特に被害の防除や野生鳥獣の生息環境の管理の観点から、次に言いますような措置を幅広く講じております。

 まず第一に、強い農業づくり交付金等の事業によりまして、農地への侵入防止さくの設置等に対する支援を行っております。また第二に、里地里山の管理の促進など、野生鳥獣の生息環境に配慮した取り組みを推進しております。第三に、鳥獣の生態や行動特性を踏まえた効果的な防除技術の開発、また現場で技術指導に当たる人材の育成という対策でございます。このような鳥獣害対策として、ここ数年、毎年二十億前後の事業を実施しているところでございます。

 特に、十九年度におきましては、予算の拡充強化を図ったところでございます。これまで、有害鳥獣の捕獲は、主に狩猟者団体に依頼して行ってきたところでございます。しかしながら、狩猟者の高齢化、減少という状況がございますので、今後は、市町村あるいは農業団体の職員等による新たな体制を整備して対応するということが一つでございます。それから、第二番目の措置といたしまして、被害の発生していない周辺地域と被害地域との連携による被害防止の取り組みを推進していくということでございます。

 今後とも、関係省庁と連携しつつ、鳥獣害対策の充実に努めてまいりたいと考えております。

保坂(武)分科員 鳥獣被害については、非常に私どもも心配をしているところです。自民党でも農林漁業有害鳥獣対策議員連盟を、宮路和明先生のもとで今検討しているところであります。そういう意味で、ぜひ省庁の横断的な御協力をいただいて、具体的な法的整備もつくれればなというふうに思うわけでありますが、ぜひ大臣には率先して、この面に当たってもお願いをしておきたいと思います。

 次に、美しい森林づくりについて質問をさせていただきます。

 松岡大臣の所信では、森林整備や保全、国産材の利用拡大等による美しい森林づくりを展開することが美しい国づくり、日本につながり、地球温暖化防止に向けた努力と、人間生活に欠くことのできない重要施策ともあるわけであります。

 日本の森林は国土の三分の二以上を占めるという状況の中で、その森林の保全、そして水源の涵養など多様な機能を果たしていくということであります。特に、安倍総理が言う美しい国づくりのために美しい森林づくりが非常に重要であるという立場に立って、国民的な運動を展開していくというふうにお聞きをいたしておりますので、お尋ねさせていただきます。

松岡国務大臣 保坂先生の御指摘のとおりでございまして、安倍総理は、美しい国づくり、こういったことを大きな大きな目標として掲げておられるわけでありますが、その美しい国づくりの礎としても、美しい森林づくりをしっかり進めろ、実はこのような御指示をいただいております。

 そこで、このことについてでございますけれども、今先生から御指摘ございましたように、森林はいろいろな役割を果たしております。国民生活の安心、安全、また産業活動、経済活動の上からも必要な役割を果たしている、こういうわけでございます。

 ところが、一方で、木材の価格が低迷したことによりまして、また外材との関係におきましても、なかなか国産材は厳しい状況がございまして、そういった中で、森林経営が大変打撃を受けている。そして、山の手入れが滞っておった。

 そういった中で、京都議定書の問題、また災害対策の問題といったことから、今回、この十九年度の予算措置で、いまだかつてない、七百六十五億円というような大きな大きな財政措置をいただいたわけでございます。そういったことで、今後六年間にわたりまして、京都議定書の約束達成に向けましてしっかりとした森林づくりを進めていこう、こういうことでございます。

 そこで、具体的には、まず、安倍総理の御指示もございまして、関係閣僚会合を二月に設置、開催していただいたところでございまして、三月に関係省庁の局長級から成る連絡会議を開催し、各省庁間の具体的な取り組みについて取りまとめ、さらにまた、民間の立場から、経済界、NPO、地方自治体、農林水産業界、各界の代表を構成員としていただきまして、民間主導の推進会議を六月中を目途に設置すべく今準備を進めているところでございます。

 このようなことで、それこそ、官民挙げてといいますか、国民挙げてこのような取り組みに御参加をいただくような、そういうしっかりした取り組みをお願いして進めてまいりたい。これは本当に国会の方からも与野党を超えて御支援を賜りたいと思っておりますし、ぜひとも御協力をいただいてしっかりと進めていきたい、こう思っているところでございます。

保坂(武)分科員 ありがとうございます。

 そういう意味では、取り組みの中で、特に、地域の森林整備の担い手というふうなことも考えられますが、実際に体験をされている森林組合、全国に八百四十組合あろうかと思います。そして、百六十万人の組合員が活動しているわけでありますが、そういった方たちを有効に、協力していただくということも森林づくりに必要ではなかろうかと思うわけでありますので、その点についてもぜひお尋ねをさせていただきます。

辻政府参考人 美しい森林づくり推進国民運動によりまして、平成十九年度から二十四年度までの六年間で毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐等の森林整備を着実に実施するためには、先生御指摘のように、我が国の森林整備の担い手でございます森林組合の能力を高めることが必要でございます。

 このため、林野庁といたしましては、平成十九年度予算におきまして、一つは、森林組合等が組合員から森林施業の集約化を行うため、森林整備の内容、経費などを明確にした施業の提案を森林所有者に行うことができる人材育成のための研修、それから二点目といたしまして、高性能林業機械の導入や低コスト作業路の整備による森林組合の施業能力の向上、三点目が、緑の雇用担い手対策事業による森林組合等の新規林業就業者の確保、育成、こういった取り組みに対し重点的に支援を行っているところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを通じ、森林組合の育成を図りながら、美しい森林づくり推進国民運動の推進に努めてまいりたいと思います。

保坂(武)分科員 森林づくりには非常に期待をするわけでありますが、美しい日本であります、松くい虫の防除、被害等についてもお尋ねをしておきたいと存じます。

 北海道、青森を除く全国で、この被害の増加は非常にひどいものがあるかと存じます。総理が北海道に先進国サミットをお決めになられたように、松くい虫に侵されることは非常に心配をするわけであります。

 そういった意味で、現状は高緯度、標高地域が順に被害に遭っているという現実を見ますと、緑が失われるようなことを心配するわけであります。その辺の対策についても、今まで補助金になっていたのが交付金化されて、市町村あるいは地方が補助金を非常に抑えてしまうようなことを危惧するわけです。どうぞお答え願いたいと思います。

辻政府参考人 全国の松くい虫被害量につきましては、昭和五十四年度の二百四十三万立方をピークに減少傾向で推移をいたしてございまして、近年はピーク時の三割程度というふうになっているところでございます。平成十七年度の被害量は六十九万立方ということで、三年連続で減少しているところでございます。

 しかしながら、今先生の御指摘のように、東北地方や山梨県、長野県等の高緯度、高標高地域において、新たな区域で被害が発生している。このほか、一たん被害が軽微になった地域におきましても、高温少雨等の気象要因の変化によって再び被害を受けるといったような状況も見られるところでございます。

 今後とも、都府県と密接に連携しながら、公益的機能の高い保全すべき松林を対象といたしまして、各地域の被害状況に応じ、特別防除や伐倒駆除等による的確な防除、その周辺における松林を対象として、樹種転換による保護樹林帯の造成等の総合的な被害対策を実施してまいりたいと思います。

保坂(武)分科員 時間ですので質問を終わりますが、いずれにいたしましても、農林水産省には非常に期待をするところ大でありまして、衆議院の委員の中にも、予算は大変出しているけれども税収が少ないじゃないかというふうに言われておりますけれども、農業が発展することは他の産業、日本が活性化していく上に非常に大切だ、こういうふうに思うものであります。どうか、以上質問した点については最大の御努力をお願いしまして、質問を閉じたいと思います。

 ありがとうございました。

渡海主査 これにて保坂武君の質疑は終了いたしました。

 次に、川内博史君。

川内分科員 川内でございます。

 明後日、四月二十六日、二十七日、安倍総理が訪米をされ、ブッシュ大統領との日米首脳会談が行われるというふうに聞いております。ブッシュさんもジョハンズさんも、米国産牛肉、自国の牛肉について、輸入条件の規制の緩和を強く求めるというふうに報道をされておりますし、実際に、ブッシュ大統領が米国の食肉生産者の方々の寄り合いに出席をされて、日本に牛肉を買わせるぞという演説をされているニュースも拝見をさせていただきました。

 そこで、まず外務省にお尋ねをいたしますが、日米首脳会談で米国産牛肉の輸入条件の規制の緩和が議題になるのかどうかということについて教えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日米首脳会談の議題につきましては、何ら決定されていないというのが現状でございます。

 いずれにいたしましても、米国産牛肉の輸入問題につきましては、国民の食の安全と消費者の信頼確保を大前提といたしまして、適切に対応してまいる所存でございます。

川内分科員 何ら決定をされていないというのはどういうことなんですか。おととい、総理は拉致被害者の皆さんの集会に参加をされて、拉致問題は日米首脳会談の議題であるというふうに御発言をしていらっしゃいます。議題はあるわけですから、何ら決定をされていないというのは、その場にならなければわからないことなのだという意味なのか、ちょっと教えていただけますか。

伊藤政府参考人 首脳会談につきましては、その場でのやりとりもあろうかと思いますし、かちっとした形での議題といったようなものにつきましては、現在の段階で決定されていないという趣旨でございます。

川内分科員 恐らく、ブッシュさんの方がそれを持ち出されてくるであろうということでございます。

 では、きょう、実は松岡農水大臣とジョハンズ農務長官との間で合意が取り交わされたということで、農水省の方からプレスリリースがされておりますが、これを読みますと、十九日夜と二十日の朝、松岡大臣とジョハンズ長官との間で、米国産牛肉問題に関して電話会談が行われた。結果の概要が四項目書いてございます。発表の日付は四月二十四日、きょうでございます。

 十九日と二十日に行われた会談の内容がきょうになって発表される、これはタイムラグがあるのはなぜですか、まず御説明ください。

松岡国務大臣 川内先生のお尋ねでございます。

 十九日の夜と二十日の午前中、二回にわたってジョハンズ長官と私の間で電話会談を行いました。いろいろなやりとりはございましたが、私どもが求めております査察、第二回目の検証期間を終了するに当たっては、このシステムが十分機能しているかどうか、そのことを確認する査察が必要である、それを両者でもって評価をする、そして確認をする、こういったような取り決めといいますか、お互いの合意があったわけであります。

 これが、アメリカの方では、査察は受け入れられないということだったものですから、ずっと暗礁に乗り上げておったわけであります。そのことについて、私どもといたしましては、やはり取り決めをしっかりと守っていただく、したがって、それであるなら査察を受け入れていただく、こういうことを申し上げたわけでありますが、先方は先方のお立場でいろいろ言われるわけでありまして、二回にわたってやった。

 それで、二回目のときに、一応方向としてはそれを受け入れるとして、じゃ、当然、一方の約束である、もし査察をして何も問題がないということになれば、全箱開梱というのは一般のもとの検査に戻していただけるか、こういうふうな話がありました。そこで、その前に、機能が確認されれば、もう施設ごとの確認はいいじゃないか、こういう話もあったので、いや、それはだめだ、やはり施設ごとの確認が大事なんだということで、それは向こうも受け入れてくれた。

 あと、全箱の開梱を一般検査に戻すということについては、これは一義的には厚生労働省所管ですね。したがって、そういったことについては、なお私のこの電話会談をもって了解というわけにはいかない、そういう方向として要請があったことを政府内でこちらは調整をする、こういったことで、日本政府の調整ということもございました。

 それから、私も金曜日はそこまでで帰りましたが、あと、うちの農水審と向こうのキーナムという次官との間で、土曜、日曜にかけて、今度はそのことにまつわって、厚生労働省との関係も含めて調整が行われた、こういうことでございます。そして最終的に、では、まあ、お互い大臣同士がやった方向で、そういった厚生労働省の関係も含めてよかろうということの調整が土日あった。

 きのうの二時半過ぎにシーファー大使から私に電話がございまして、そして、向こうはジョハンズ長官からシーファー大使に、これこれこういう内容であるという意が伝えられた。シーファー大使から私に、それでいいかどうか確認をさせてほしい、こんなようなわけでありまして、したがって、その確認をいたした。そして、お互いそこで、それならこれで一致ですなということで、査察を受け入れ、かつ、全箱開梱については、合格をした施設については一般検査に戻すということで、微妙なものですから、お互いに確認に確実性を期したということで、そのとき、約束として、ではあす、あすというのはきのうのあすなんですが、閣議後記者会見をする、そのときをもって公表ということにしたい、こういうことなものですから、十八、十九がちょっと先にあって、えらい飛んで二十四日というふうになったんですが、その間は事務的なそういう調整が厚生労働省の分も含めてあった、こういうことでございますので御理解いただきたいと思います。

川内分科員 そこで、この結果の概要というものを読みますと、「輸入手続再開後の検証期間の終了に向け、」ということが書いてあります。この検証期間というのは一体何ですか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの検証期間でございますが、昨年の七月二十七日に輸入再開をいたしまして、そのときから六カ月間、これにつきましては、米国側の対日プログラムの実施状況を検証する期間というふうにされておりまして、日本側は、この手続の再開後に、通常の査察あるいは抜き打ち査察への同行ということで、このプログラムの遵守状況を検証するということになっているところでございます。

川内分科員 済みません、昨年の七月二十七日からの六カ月は検証期間であるというのは、どこに文書があるんですか。

町田政府参考人 七月二十七日に輸入再開を決定したわけでございますが、その際、私ども農林水産省のBSE対策本部、この決定事項でございます。

川内分科員 BSE対策本部の決定事項として六カ月を検証期間とした、ウエブ上にアップされていますか。

町田政府参考人 公表資料としてアップされております。

川内分科員 「日本政府及び米国政府による米国産牛肉の輸入手続の再開に向けた措置についての共同記者発表」、平成十八年六月二十一日付のこの書類には検証期間なる言葉は出てこないし、日米両国政府の間で、その六カ月間を検証期間とするということは全く合意されていない、話し合われていないということでよろしいですか。

町田政府参考人 御指摘の昨年の六月二十一日の日米共同記者発表におきましては、このように書かれております。「日本政府は、日本側が行う通常の査察に加えて、AMSやFSISが行う抜打ち査察に同行し、」「対日輸出プログラムの遵守状況等を検証する。」ということで、対日輸出プログラムの遵守状況、これはきちっと書いてございます。

 その後、再開に向けて三十五施設の事前調査を行いまして、その出口調査等において米国側と話をして、この六カ月間を検証期間とするということになっておりまして、米国側とこれについては理解は共有されております。

川内分科員 いや、私が聞いたのは、日米両国政府で、六カ月などということは別に合意事項でもなければ何でもないですよねということを聞いているんです。

町田政府参考人 出口会合、昨年の三十五施設事前調査の際の、出口と言いましたが、終わったときのエグジットミーティングでございますが、その際に先方とその話をして、そこについては合意をしているということでございます。

川内分科員 それでは、六カ月のこの検証期間の間に、これらのことがきちんと行われたかどうかということをお聞きいたしますが、我が国の政府は米国農務省による抜き打ち査察に同行できることになっています。同行したことがありますか、抜き打ち査察に。

町田政府参考人 昨年の第一回目の査察におきまして、抜き打ち査察に同行させていただいております。

川内分科員 昨年の第一回目の査察は抜き打ち査察じゃないでしょう。

町田政府参考人 査察は八カ所ありまして、そのうち二カ所、これを抜き打ち査察として実施しております。

川内分科員 抜き打ち査察として実施しているだけであって、抜き打ち査察に同行したかと聞いているんです。

町田政府参考人 抜き打ち査察に同行いたしました。

川内分科員 その二カ所というのはどことどこですか。教えてください。

町田政府参考人 済みません。直ちに、ちょっと今資料を持っておりませんので。

川内分科員 後で教えていただけますか。

町田政府参考人 そのようにさせていただきます。

川内分科員 私は、大臣、みずから検証期間を設けて、検証期間が終わりました、では新しいフェーズに入りましょうというような状況では、とてもないと思いますよ。なぜかならば、この間、輸入条件に違反する品物が入ってきているという事例などがここに来て頻発をしているわけですよね。そういう状況で米国産牛肉の輸入条件の規制を緩和するというのは、とてもとても、はい、そうですかという状況ではないし、そもそも、この日米の合意事項によれば、日本は抜き打ち査察に同行できるわけですから、二回目の査察をさせてくださいなんて、向こうにお願いする必要もないわけですよ。査察に同行できると書いてあるわけですから。それはまた、今度農水委員会の一般質疑でちょっとやらせていただきます。

 きょうはちょっと事実関係だけいろいろ確認をさせていただきたいと思いますけれども、大臣がジョハンズさんとお会いになられ、あるいは電話会談をされて、その中で、食品安全委員会の答申の中の結論における附帯事項で大変重要であるというふうにされている飼料規制の問題あるいはサーベイランスの問題について、大臣はジョハンズ農務長官に対して、いや、おたくの国はこれをやらなければ、とてもとても新しいフェーズに入れる状況にはなりませんよということをおっしゃられたことがありますか。

松岡国務大臣 今、川内先生の御指摘のお尋ねですけれども、例えば具体的に言いますと、米国の強化されたサーベイランスの結果、それから米国の飼料規制を強化する、要はサーベイランスを拡充する、こういったことについて、直接、その言葉どおり言ったか、こういうことでは、その言葉どおりは言っていないんですけれども、日米共同記者発表という中にこれはきちんとあるわけです。

 したがって、私は、一月に会談したときも、いわゆる共同記者発表において示されているとおりのような趣旨のことで、そのことを含む内容としてはしっかり申し上げておる、こういうことでございます。

 ただ、これからも場面はありますから、川内先生の御指摘は私もよくわかりますので、そのときはいろいろなやりとりの中でそこまで言及しなかったんですが、これはしっかり、一番重要なことでありますから、飼料規制の問題、サーベイランスの強化、拡充の問題、こういったことは、ここで川内先生の御指摘をいただきましたので、しっかり伝えてまいりたいと思っております。

川内分科員 恐らくブッシュさんは知らないと思うんですよ。牛が肉骨粉になり、それが鶏や豚に回り、そしてまたその鶏や豚から牛に戻っているという交差汚染の可能性が、米国内における現在の飼料規制の状況では、食品安全委員会の答申でも、米国内におけるBSEリスクは低下しない、本当は増大すると書きたかったんでしょうけれども、低下しないと書いているわけです。

 さらに、ジョハンズさんが今後の日米の牛肉の輸入条件の規制緩和の論理的な根拠にしようとしているOIEのステータス評価の中でも、ただし書きに、米国の飼料規制そしてサーベイランスの問題はしっかりしてもらわなければならないと。「科学委員会から各国へのコメント」という形で「動物用飼料からSRMを除去することについて注意深く検討すべきであることを助言する。」動物用飼料として、要するに、感染力を持つ可能性のある原料、これは肉骨粉ですね、肉骨粉が動物用飼料として利用され続ける限り、鶏や豚に与えられ続ける限り、交差汚染の可能性が存在する、さらには、サーベイランスのデータについても報告を求めるという形で、OIEの科学委員会も指摘をしているわけですね。

 そこでお尋ねをいたしますが、私は、この五月に行われるであろうOIEの総会における米国のステータス評価に、日本としては、政府としては反対をすべきである、米国はとてもとてもそのようなステータス評価をできるレベルではないということをはっきり意思表示すべきであるというふうに思いますが、農水省のお考えを聞かせていただけますか。

町田政府参考人 本年の三月でございますが、OIEの科学委員会から米国を含みます十二カ国のBSEステータスの評価案が示されたところでございまして、この中で米国は管理されたリスクの国として位置づけられているところでございます。

 この米国を含みます十二カ国のBSEステータスの評価案に対しては、現在専門家の御意見をお聞きしているところであります。農林水産省といたしましては、米国のステータス評価案に対する賛否については、こうした専門家の御意見も踏まえつつ、厚生労働省とも協議した上で決定してまいりたいというふうに考えております。

川内分科員 厚生労働省とも協議して検討してまいりたいということですが、米国がOIEのステータス評価をにしきの御旗にして迫ってくるわけですよね。これに対して、一体農水省と厚労省のだれが協議するのか、どの場で協議するのか、全く今明確な説明がなかったわけでございまして、そういう意味では、客観的なあるいは科学的知見に基づいた議論というものが国民にしっかりわかる形で行われなければならないというふうに私は思います。

 今の御答弁ではなく、農水省、厚労省でだれが決めたのかわからない形で賛否を決めるのではなくて、しっかり国民にわかる形で決めるというふうに大臣から御答弁をいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

松岡国務大臣 まず、具体的な協議のあり方、進め方等につきましては、事務方の方から答えさせたいと思います。

 先ほどのお話でございますけれども、飼料規制の強化、それから強化されたサーベイランス、いわゆるサーベイランスの拡充、こういったことについては、もうこれはアメリカ自身もそれがOIEにおいても一番必要な基礎要件だということについては理解しているからこそ、OIEでの審議に彼らは臨んでいるし、OIEもまた、それを一番科学的な根拠といいますか問題として、そのことが一番ポイントであるということをちゃんときちんとわかった上で受けているわけでありますから、私は、ジョハンズ長官におきましても十分我々の意図は伝わっておる、それは、私とだけでなくても、事務方におきましても、向こうの大使とか、うちの次官級でやるときも十分伝えておりますから伝わっていると思っております。

 それから、先ほど川内先生が、ブッシュ大統領は知らないんじゃないか、知らないと思うよとおっしゃいました。ブッシュ大統領がどこまで知っておられるのか、知っておられないのか、ひょっとしたら知っておられるかもしれませんし、これはちょっと私どもが何とも言いかねるわけでありますが、日本側としてはそれを強く、間違いなく求めていくということについては、私は当然、今後ともしっかりそれは求めていく。

 ただ、日本側としても、当然のことながら、これは科学的な問題ですから、私ども何度も言っていますが、これは科学的な問題なので科学的なプロセスをもって処理したい、対応したい、こういうことなので、それは私ども、国民には、当然のことながら、そういう科学的な問題としてきちんと御説明をし、理解をしてもらう。その上でないと、安心ということが、安全ということがしっかりと認められるということにならないと思うので、そのような姿勢で取り組みたいと思っております。

 今ちょっと、具体的な協議等については事務方の方から答弁させたいと思います。

町田政府参考人 先ほど申しましたように、専門家の御意見をお聞きして、厚生労働省と協議した上ということで、具体的な協議は、私ども消費・安全局と厚生労働省の食品安全部において実施をするということでございます。

 その際、科学委員会による管理されたリスクの国という評価案があるわけでございますが、これがOIEの基準に照らして妥当かどうか、この科学的な基準に照らして妥当かどうか、これに基づいて、決定自体は私ども農林水産省として協議の上決定をしたいというふうに考えております。

川内分科員 十分に批判に耐え得る行政手続をとっていただかなければならないというふうに思います。

 大臣は、ブッシュさんは恐らく知っているんじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども……(松岡国務大臣「知らないかもしれない、知っているかもしれない」と呼ぶ)知っているかもしれないとおっしゃいました。私は御存じないと思うんですね。だから、松岡大臣は、安倍総理が訪米をされる前に、この飼料規制の問題とサーベイランスの問題は非常に重大な問題であるということを安倍総理に言わなきゃいけないと思うんですね。ブッシュさんが安倍さんにこの牛肉のことで何か言ったときに、いやブッシュさん、おたくの国は、牛の肉骨粉を回り回ってまた牛が食っていますよ、そういう状況ですよということをやはり言ってあげないといけないと思う。

 今のところ、日米両国政府は年次改革要望書を取り交わす中で、日本からアメリカに対する年次改革要望書に、農水省として、飼料規制の問題、サーベイランスの強化の問題、これは、アメリカ政府に対して、要望書の中で要望を昨年からしているという状況ですね。その政府として文書でしっかり要望していることをやはり総理が大統領にしっかり言うということが私は大事だと。去年、年次改革要望書は局長が交換したわけで、やはり首脳会談でそれをしっかり議論するということが大事だというふうに思うので、松岡大臣から総理に、米国内における牛は、回り回ってまた牛の肉骨粉を食べている可能性があるということをブッシュさんに伝えなさいと。そういう状況の中で我々はいろいろなことをやっているんですよということをやはりしっかり言うべきだというふうに思うんです。

 これは何でこんなことを言うかというと、OECDの加盟国の中で強毒性の鳥インフルエンザで亡くなられた方々というのは、トルコにおける四名です。ところが、BSE由来の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、vCJDで亡くなられたOECD加盟国における死亡者数というのは二百名です。鳥インフルエンザも注意しなければならないが、BSEもまだまだ注意しなければならない。

 イギリスにおいては、vCJDに感染をした方が感染したことをわからずに輸血をし、それが血液製剤になって一万人以上の人に輸血をされて、それが今英国内で大きな問題になっているという事例も起きています。

 そういう中でこの牛肉問題を取り扱う。食の安心、安全に注意しながらやりますと言うのは、言葉としては簡単だけれども、その食の安心と安全に留意しながらこれを取り運ぶには、本当にさまざまな御努力をしていただかなければならない。そういう意味で、松岡大臣が食の安心、安全を守るというお立場から安倍総理に、重要な情報として、これをブッシュさんから言われたらこう言うべきであるということを情報としてインプットしておくべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

松岡国務大臣 まず、この問題の重要性、そういった観点からいたしまして、私は、川内先生の御指摘はしっかり受けとめたいと思っております。

 そこで、今外務省が答えましたように、日米首脳会談で、例えばこの問題が議題になるのかならぬのか、これはまだ、全く今調整中と。なるのかならぬのかも私ども具体的なことは聞いておりませんが、仮にそういったことがあるとすれば、これは総理自身がいろいろ応答され、また御判断もされて応答されるわけでありますが、その際、もしそういうことの議題があるとすれば、農林水産省からも同行しておりますから、その場合には、今先生が御指摘のような情報も含めて、しっかり私どもは総理の方にも情報を供給しておかなければならない、このように思っております。

川内分科員 情報を含めて供給しておくというのは、言うか言わないかは総理がその場で御判断されるのであろうということだと思いますが、松岡大臣も、飼料規制の問題、それからサーベイランスを強化していく、維持拡大するということは非常に大事であるということは認識を共有している。しかし、米国内における状況はそうはなっていないということも認識を共有している。OIEのステータス評価案でもそのことがきちっと書いてある。日本政府は米国政府にそれを年次改革要望書で要望しているという事実がある。

 そういうものを踏まえた上で、日米首脳会談で米国産牛肉のことをブッシュさんが持ち出したら、総理がそれに対する応答として、お気持ちはわかるが、しかし、飼料規制の問題、サーベイランスの問題に米国内には大変大きな問題がある、肉骨粉をまだ牛が食べている可能性があるということは、やはりしっかり言うべきなんですよ。情報として伝えるだけではだめなんですよ。言うべきなんですよ。言わなければ相手に伝わらないし、わからないと思うんですよ。

 松岡大臣、もう一回ちょっと答弁していただけますか。

松岡国務大臣 川内先生の御指摘の御趣旨もよく理解ができます。

 そこで、今私が申し上げておりますのは、アメリカがどこまで規制をしているか、例えばサーベイランスをどこまで拡充しているか。飼料規制、サーベイランスの拡充ですね。こういったことについてはやらなきゃならぬということは、お互いでもう確認しているわけですよ。ただそれが、事実はどこまで進んでいるのか、どういう実態になっているのかということについては、これはアメリカ側の説明等を待たなきゃならぬし、OIEにおいても、またそれはアメリカがきちんと答えるんでしょう。もう説明もしているんでしょう。

 そういったことを我々は踏まえた上で、今先生のおっしゃった、していないだろうという前提に立ってということで、決めつけてやるということは……(川内分科員「していないんですよ」と呼ぶ)私は、だからそこの点については、両国の信頼関係からいっても、また相互の関係からいっても、そういうことが必要だということは確認してきた。そういったこれまでのいきさつに立って、プロセスに立って、総理の方にもしっかりと、情報として必要なものはお伝えをしておく。あとは総理が御判断されて、どういう応答になるか、また議題になるかということも含めて、私どもは、御趣旨はしっかり受けとめながら、体してまいりたいと思っています。

川内分科員 日米両国政府の御関係というのもおありになるのでしょうが、しかし、事は国民の命、食の安心、安全という部分にかかわることでございますので、まあ大丈夫だろうとか、そういうことではなく、しっかりとした御対応をしていただきたいというふうに思いますし、またこの問題は二十六日の農水委員会でやらせていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

渡海主査 これにて川内博史君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、北村(誠)主査代理着席〕

北村(誠)主査代理 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)分科員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、決算行政監視委員会の分科会で農業政策に関する質問の機会をいただきまして、感謝申し上げたいと思います。

 限られた時間ですので、早速質問に入りたいと思うわけでありますが、まず最初に、いわゆるFTA、自由貿易協定、EPA、経済連携協定につきましてお伺いをしていきたいと思います。

 新聞報道でも出ておりますが、日豪のEPA交渉がいよいよ始まった、こういうことであります。日豪の関係を考えますと、私は、基本的には日豪関係というのは非常に重要だと思っておりますし、確かにエネルギーの大半を豪州から輸入している。かつ、資源獲得競争が大変激しくなる中で、ウランにしろ鉄鉱石にしろ、また天然ガスにしろ、非常に大事な国柄であります。また、ある意味で、同じ価値観というと言葉はどうかですけれども、基本的には同じ思いで話ができる国であろう。こういう意味から、日豪関係というのは極めて大事でありますし、経済連携を深めること自体については、私は否定するものではないわけであります。

 同時に、農業分野につきまして、農林水産省みずからが公表されています試算によると、豪州産の農産物の関税が撤廃された場合の影響額ということで約七千九百億円、さまざまな品目を足すとこれだけの国内生産が減少するという、大変衝撃的な試算も出されているわけであります。この数字が、ある意味で、ややひとり歩きしている部分もあるのかなという気はしているんです。私も地元に帰ると、まず農協関係者の方にお会いすると、近藤さん、日豪のEPAだけは体を張って阻止してくださいよ、こういうお話を受けるわけであります。

 この試算が本当に正しいかどうかというのは、まだ冷静に議論する部分もあるかとは思うのです。ただ、いずれにしろ、関税が撤廃された影響というのは、この七千九百億円が正しいかどうかは別にして大変大きなものがあるだろう、これは容易に想像できるわけであります。

 そこで、大臣にまず冒頭お伺いしたいのですが、大臣も衆議院の農林水産委員会の中で御発言もされております、昨年の段階でしょうか。また、農林水産委員会の方で決議もしておりますが、この農産品について、再協議の対象にするんだ、例外扱いにするんだ、このことは本当に可能なのかどうか。交渉が始まって、いよいよ本格化するわけでありますが、本当に可能なのかどうかということをまずお伺いしたいと思います。

松岡国務大臣 近藤先生が地元に帰って、これだけは体を張って守ってくれとお触れになった点だけは、私も同じようにそう言われておりまして、恐らく、日本全国みんな政治家は、この日豪のEPAにつきましては、農業関係者としては、そのような本当に強い思いで、強い気持ちで政治に対してそれを求めておられるんだろう、このように思っております。

 したがって、そのような日本全国の農業関係者の方々の思いを、求めを、どう私どもは実現していくか、そういう責任を背負っておる、このように思っております。

 そこで、昨年、ずっとそれ以前から、この日豪間のEPAに向けた共同研究というのは進んできておったわけでありまして、最終報告書の段階というところで私は直接担当いたしたわけであります。

 その際、最終報告書を合意するに当たりまして、私は麻生外務大臣に直接個別に会談を申し入れまして、そしてお願いしたことは、今までのEPA交渉をしてきた国々との場合とは違うと。オーストラリアは、何といっても世界に冠たる農業大国である。したがって、日本に対してその影響は大変なものがある、はかり知れないものがある。それがもし今までどおりになるとすれば、それは大変なことである。七千九百億とか、そういういろいろな試算もございますが、これはもう大変なことになると。

 したがって、今までの他国の場合との共同研究とは異なりまして、日豪政府間共同研究の最終報告書におきましては、関税の段階的撤廃のみならず、除外及び再協議、言ってみれば、守りということに関して言えば、守る場合のあらゆる手段を、武器と言っていいのかどうか、まあ戦いというふうに言うのはちょっと語弊があるかもしれませんが、その場合のあらゆる武器をすべて、考えられる可能なものはすべて取りそろえて実は報告書に盛り込んだ。そして、そういったものをお互いの共通の合意した確認として、このことをもって交渉に臨む、こういうことでございます。

 一方、先方も、あらゆるものを対象に協議する、こう言っていますから、それはなかなか、最初から除外とか、最初から再協議とかいったことにはならないわけでありますが、今先生の、可能かどうかということにつきましては、私どもは、これが可能となるように全力を尽くして交渉に臨んでいく、これが今、政府の私どもの責任であろう、与えられた立場であろう。また、その際には、国会の方からも決議もいただいているわけであります、衆参において。ひとつ、国会の決議に基づいて、国会の方からも全力をもって後押しをお願いしたい、こう思っております。

近藤(洋)分科員 まさに交渉というのは、国益のぶつかり合いでありますから、それはすべてこちらの思うとおりにはならないというのは百も承知で伺っているわけでありますけれども、もちろん日豪関係の連携を深めるということは前提としながらも、ぜひそこは、安易な妥協はしてほしくない、こう思うわけであります。

 また、EPA、FTAについては、これは後で伺いますけれども、特に日豪については、これまで研究をしてきた。もっと前にこの交渉が進むのかなと思っていましたが、しばらく、この数年間、日豪関係はちょっと後ずさりしていたわけですけれども、安倍内閣になって急に浮上したという感じがするわけであります。率直なところを言えば、この一年間急浮上したなという気がしまして、日豪関係のことを考えると、もっと段階を踏んで、順番を進んでもいいのかなという気はしておったんですが、やや急に浮上した感があるものですから、やはり戸惑いを多くの方が持っているのではないか、こういうことは指摘だけはさせていただきたいと思います。

 また、EPA交渉につきましては、日本とASEANでありますが、こちらの方は、報道によると、五月にも基本合意という報道がなされておって、ブルネイで会議が行われる。経済産業大臣はこのブルネイの会議には出席をされるわけでありまして、伺ったところ、松岡大臣は出席する御予定はないということでありますけれども、この日本とASEANの協定、五月にも基本合意というのは、そのとおり話が進んでいるのかどうか、現時点での感触をお教えいただきたいのですが。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、日本とASEANとのEPA交渉におきまして、我が国の基幹作物や地域の農林水産業における重要品目につきまして関税撤廃の例外扱いを確保するとの基本的考え方により交渉に臨んでいるところでございます。

 予定につきましては、ただいまお話がございましたように、五月の四日に日・ASEAN経済閣僚会合がございます。また、その先にはさまざまな首脳会合とかがございます。そういう重要な節目を使いまして、本年中の可能な限り早期に実質的な妥結を目指すということで、まだ、五月に物が決まるとかいうような段階にはないというふうに承知しているところでございます。

近藤(洋)分科員 やはり関税の例外扱いというのはそう簡単に決まるものではない、こういうことだと思うんですね。いずれにしろ、国益のぶつかり合いでありますから、基本線は守りながら交渉していただきたい、こう思うわけであります。

 そういう中で、米国と韓国がEPAで基本合意した。ちょっと私は衝撃を受けてこのニュースを聞いたわけでありますが、米については例外扱いしたものの、ほかの農産品については、段階的ではあるものの撤廃の方向で話をすると。

 韓国というのは、日本と国情も似ておって、かつ、逆に農業に対する思い入れは、またその運動は日本以上に激しい部分があるわけであります。その韓国にして米国と踏み切ったというのは、ある意味で、もちろん農業分野というのは極めて重要ではあるけれども、同時に、世界経済の中でどうやって韓国が生き残っていくのかというのも真剣に考えて、韓国もこの基本合意に踏み切ったんだなというふうに私は受けとめたわけであります。

 そこでお伺いしたいのですが、日米の交渉について、大臣はその必要性についてどのように考えるかというのが一点。あわせて、もう一つは、日・EUであります。EUについては、私はむしろ、米国と進めるよりも、まだEUの方がある意味で話し合いの土壌になり得る部分もあるのかなという気がしておるわけでありますが、このEUについてはどのように検討をすべきか、その可能性についても大臣の現在のお考えをお伺いしたい。

松岡国務大臣 一言で言うと、近藤先生、これは非常に答えの難しい問題でございまして、どう答えるかというのは本当になかなか困難なことなんですが、まず、今、WTOという世界全体の貿易の仕組みの問題がある。それが一方でありながら、一方では二国間とか地域間のこういうEPA、経済連携協定というのがどんどん進んでおる。お互いに国益を目指しながら、そしてまた相手に負けないようにお互いに競争をしながら、例えば隣同士でいえば、隣に負けないようによその国と手を結ぶといったような、そういう中で複雑に絡み合ってどう判断していくかということが今求められているんだろう、こう思います。

 私もWTO交渉に携わって長いんですけれども、そういう状況の中で、ラミーさんも、話をしたときに、韓国とアメリカのFTAがもし決まったら、そのことがどうWTOに影響してくるだろうか、もうWTOは要らないとなるのか、やはりそれをてこにしてWTOもというふうにくるのか、アメリカがどう読むか読めない、私もなかなか読みづらい、どうなんでしょうねと。逆に、韓国と決まったのなら、これはもうそういう二国間とか地域間を進めていった方が手っ取り早いと思うのか、やはり世界全体はどうしても必要だ、グローバルだ、こういうふうにしていくのかどうか。

 本当にわからないんですが、いずれにいたしましても、それはわからないと言っていてはどうしようもないので、私は、やはり日米については、何よりも世界経済全体の四割をこの両国で占める経済的な関係、EUとの関係もこれまた四割を占める。したがって、アメリカとEUと両方結んでしまえば、もう七割ですからね。ほぼこの三つでもって全体を占めてしまう。こういうようなことになってくることと、世界全体の貿易の枠組みというものとの両立をどう考えるのか、こういった点もやはり慎重に検討しなきゃならないと思います。

 それから、近藤先生が言われた、どっちと結んだ方がいい、こういう取捨選択というか、どっちが日本に合うのかということの判断もやはり必要なんだろうと思いますので、いずれにしても、いろいろな要因をしっかり私どもは分析しながら、この対応については慎重に、そしてまた、今衝撃だとおっしゃった意味というのは、乗りおくれていいのか、こういう意味も含めてなんだろうと思うんですが、そういった観点も含めて、私どもは、慎重にかつ間違いなく判断していかなきゃならない、こういうふうに思っております。

 今は、このような形で一般的にお答えするという以上に、なかなかお答えしづらいということでお許しをいただきたいと思います。

近藤(洋)分科員 お答えしにくいとは思いますし、大臣がここで発言するとまた騒ぎも起こすかもしれませんから。それは、ある意味では、ちょっと失礼ですけれども、水の問題よりよっぽど大事だと思っています、大変影響があると思っておりますから。水も大事でありますが。

 ただ、一つしっかり申し上げておきたいのは、各国、生き馬の目を抜くような形で戦略を立てている。もちろん、日本にその戦略がないとは言いませんが、しかし、WTOの交渉に全部任せていいわけでもなくて、このEPAの二国間の話とWTOは密接不可分で、もうこれも釈迦に説法だと思いますけれども、WTOの交渉をどう動かすかということの材料にもやはりEPAというのは使われて、一種の仲間づくりの議論だと思うんですね。そういう戦略的な姿というのが、大臣、大変失礼かもしれませんけれども、なかなか日本の政府全体としては見えないという感じがするわけです。

 農業生産者にしろ消費者にしろ一般の産業界にしろ、何でもいいんですが、ある程度、やはり予測が、こういう手順で、こういう形で進むんだな、こういうものが見えるということがやはり必要でしょうし、もちろん秘中の秘だから言えない、ある日突然合意されるんだよと、こういう話もあるかもしれませんけれども、そうはいっても、日本としてどういった仲間づくりをしていくんだということも含めて、残念ながら、それは農林水産省も経済産業省も外務省も、このWTOとEPAをどう連携して戦略を立てているかという姿がやはり見えない。大臣がお話しできないということに、残念ながら、端的にあらわれているんじゃないのかなという感想だけ、ほかの質問もあるので申し上げておきたい、こう思います。

 話はがらっと変わって、ちょっと国内の話を伺いたいんですが、松岡大臣、ちょうど二年前の今ごろ、郵政民営化法案が衆議院の方で議論が始まったころでしょうか。小泉総理は、時の総理は、郵政民営化で日本が変わる、改革なくして成長なしなんだ、こういうふうにある意味で絶叫をされて、総選挙で見事に勝利をされたわけであります。

 そこで、松岡農林大臣にお伺いしたいんですが、我が国の農林水産業、そして農村に対して、郵政民営化によってどんなメリットが起きたのか。二年間たったわけですけれども、郵政民営化で日本が変わると小泉総理は内閣を代表しておっしゃったし、皆さんも魂を込めて賛成票を投じられたと思うんですが、我が国の農林水産業、農村にとって、郵政民営化によって一体どんなメリットがあったのか。具体的な成果をお答えいただきたいのですが。

松岡国務大臣 近藤先生御指摘のとおり、小泉内閣は、まさに郵政改革が改革の本丸だ、こういうことでそれを進められて、それこそ、今までは間違ってもできないだろうと言われたことが本当に実現ができた、こういうことで、やはり大変大きな改革だったと私は思います。

 そこで、今先生お尋ねの、民営化がどのように日本の農林水産業に、効果といいますか、いい面なんでしょう、それがあったのか、こういうことなんですが、ことしの十月一日が民営化の実際の実施ですね。そこで、具体的に民営化が実施されて、その上でそのことはあらわれてくるんだろうと思うんですが、私が現場の農協担当者とか、いろいろ、どう思うか、こう言いながら、当時から話しておったことですが、いろいろな意見がありました。

 そういう中で、やはり積極的な人は、郵便局が持っているネットワークまたは伝達力、こういったものを通じて、地域の特産物がいろいろな形で効果的に販売できるとか、またはそれによって農村のいろいろな情報が発信できる、ここにはこういうすばらしい、郷土芸能も含めた、みんなが興味を引くような、関心を引くような、そういう地域もあると。

 だから、農協の役員の中でも、先駆的、非常に斬新的な人は、郵便局のネットワークや、郵便局というか郵政全体が持っている、そういう情報発信力というか、こういったものとタイアップすることによって大きく進むぞ、こういったようなことをやはり期待している人も、随分意見を聞きましたね。したがって、やはりこれから具体的に、例えば農協と郵便局のタイアップとか、農業者と民営化された郵便局との連携とか、そういったことも期待ができるんじゃないかな、そう思っております。

 ですから、これから民営化された中で、そういったことが本当にどういうふうに現実になっていくか、我々もよく見きわめながら、それをどう生かしていくかという観点から、私どもも農政の観点からもそういうふうに取り組んでいきたいなと思っております。

近藤(洋)分科員 大臣、結局のところ、まだないということだと思うんですね、現時点では。

 ただ、問題は、大臣も御地元は農山村が多いでしょうから、私も農山村、中山間地を歩くと、少なくとも弊害しか出てないですね。

 先ほど、情報発信ができるとおっしゃいましたけれども、郵便局の人員がどんどん今、この四月一日で減らされているわけであります。情報を収集する人も減らされておって、だんだん郵便局がなくなるという状況の中で、情報を収集する人もいなくなっているわけでありますから、果たして、大臣がおっしゃったような、相乗効果がどこまで成るのかな、こういう気がいたしますし、少なくとも、十月一日からとおっしゃるけれども、現時点では、そのデメリットや不安感のみが顕在化しておって、そして、では効率的な資金配分ができたかと。これはまた別のところかもしれませんけれども、政府系金融機関の統合において、効率的な資金配分が行われるような新しい公庫の改革ができたのかというと、これまた大変疑問が残るところであります。

 両方とも不安は膨らむわ、効率化といいますか、適正な資金配分もまだ絵姿が見えないとなると、郵政民営化というのは、少なくとも日本の農村にとっては何のいいことも今の時点では見えていないのではないか、こう私は思わざるを得ませんし、そこはそろそろ大臣も非を認めた方がいいのではないかな、こう思います。

 天地神明に誓って、郵政民営化というのは、農業政策にとっては余りメリットがなかったと本当に思いませんか。そんなことはないですか。では結構です。

 ではそうだとすると、それにしても、今農村が疲弊しているというのはお認めになると思うんです。限界集落という言葉があるとおり、大変な悲惨な状況になっておる。今の日本の農村が、本当に限界集落がたくさんある、あと十年したら消滅するような集落が大変出ているという、この現状は多分お認めになると思うんです。お認めになっているから、今回も、衆議院の方は通過いたしましたが、活性化定住法案というのを農水省は出されたわけだと思うんですね。この限界集落を何とかしなきゃいかぬという問題意識を持っているからこの法律を出された、こう思うのですね。

 だけれども、この法律をよくよく見ると、今ある補助金を、これは無駄だとは言いません、無駄だとは言いませんけれども、今まで農水省がさまざま持っていた補助金を、ずばり言うと、法律の裏書きがなかった補助金制度を法律に書き込みました、こういう話であります。日本の農村が、この法律で政策目標としている、定住人口が百五十万人ですか、ふえるということが本当にこれでできるのかというと、私は、大臣だって本当はそう思っていらっしゃると思うんですけれども、これは心もとないな、この法律だけで日本の農山村が生き返るというのはまだまだ心もとないんだろうと思うんです。

 せめて、大臣が本当に思うのであれば、もうちょっとしっかりした農村対策を、郵政民営化で迷惑をかけたんですから、今かかっているわけですから、農村に対して何か抜本策を考える、頭出しする、省庁連携でするということでもしないと、日本の農村に対して申しわけが立たないんじゃないですか。いかがですか。

松岡国務大臣 近藤先生の雄弁、熱弁ですけれども、先ほどから御指摘をお聞きいたしておりまして、何か、郵政民営化改革は農山村にとっては百害あって一利なしみたいにおっしゃっていますが、先ほど言いましたように、私はそうじゃないと思っているんですよ。

 それは、農協の先駆的な人は、郵便局と農協が、郵便局が民営化することによって、まさにいろいろな仕事ができるようになる。それと農協が大事。これは、連携、提携することによって、販売面でも、いろいろな情報の面でも、いろいろな展開ができる。そういうメリットというのはこれからです、まだ民営化は十月一日からですから。そういう点をどうして生かしていくか、それこそがまさにこれからの創意工夫が求められているところで、どう生かし切るかというのが発展のもとであって、したがって、私は、郵政民営化というのは、農山村にとってこれからどう生かし切るかだと。

 また、山村振興法とか離島振興法とかそういった、いわゆる地域立法のあるところからしますと、そういったところは、通常でいけば、単に経済的な効率性、経営的効率性だけでいけばなくなるかもしれなかったところが、それは逆にちゃんと残しますよということで、ちゃんとそこに情報の核基地として残ることになったんですから、黙っていけばなくなるかもしれなかったのが、郵政民営化の改革によって逆に残ることになったんですから、地域にとってみれば、これは安心とか安全とかいうもとが一つ確保できた、プラスであった、こう思っています。

 したがって、これからはこれをどう生かし切るかがお互いの、だから私も、農政の観点からもそういう意識で取り組んでいきたい。

 それと、今先生おっしゃいました限界集落の問題。これはもう世界的に見ましても、どこも過疎化なんですよ、特に先進国は。それはヨーロッパもみんな過疎化です。しかし、私は、農村は、過疎化の中でも、農村工業導入促進法という、やはり地域に所得の場をつくっていく、そういう立法をしたことによって、同じ過疎化のところの農家所得、農業所得じゃない、他の所得を求めたという、トータルとしての農家所得、地域所得、これはやはりきちんと政策としては効果を上げてきた。したがって、そういった意味では、もちろんまだ過疎化がとまっていない、限界集落というのもありますけれども、今後、そういったことをどうクリアして、乗り越えて、活性化を図っていくか。

 今回、私どもが出しました農山漁村活性化法案というのは、もちろんその一つだけではまだまだ足りない点はあると思います。しかし、地域には、八本、九本でしたか、今、甘利大臣がお見えですけれども、地域活性化法案、いろいろ相まって効果を上げていくことによって、地域全体の活性化になる。もちろん我々も、農山漁村という観点から、この活性化法案をお願いし、お出しをしたわけでございます。これ一本だけではそれは確かにできないかもしれませんが、これも大きなてことして、そして、これによって今までにない、団塊の世代の人たちをどう受け入れていくか、受け皿づくりも含めて効果は必ず大きなものがある、私はそういう確信を持って進めているところでありますし、ぜひ近藤先生にも御理解いただいて、山形でもぜひお進めいただきたい、こう思っているので、よろしくお願いいたします。

近藤(洋)分科員 大臣、私は、日本の農村の状況というのはそう楽観できるものではないということを重ねて指摘したいと思います。

 時間がもう間もなくなので、ちょっとここは指摘だけにしたいんですが、林野庁長官には来ていただいておりますが、ナラ枯れの問題をぜひ、これは温暖化の影響も、因果関係はよくわかりませんが、どんどん北上しております。松くい虫の問題もございますけれども、いよいよ新潟の県境を越えて、山形県でも発生している、こういうことでありますから、ぜひこの対策を、予防策も含めて行っていただきたいということを申し上げ、あわせて、最後に松岡大臣に、このナラ枯れの原因とも、まあこれは因果関係はわかりませんが、温暖化対策全体の中で、バイオエタノールのエネルギーの活用策について、最後にお伺いしたいと思います。

 甘利大臣もお見えなので、あえて御指摘したいと思うんですが、エタノールの混合率は三%ですね、今現在認められているのが。世界の常識を考えると、既に一〇%、ブラジルなり米国なり、これはできているわけです。ところが、日本の状況を見ると、ETBEですか、混合剤を入れていくということで、日本側のスタンダードが今起きようとしている。ただ、これは、自動車メーカーはいろいろなことを、もう既にアメリカで自動車を売っているわけですから、技術的には一〇%でも十分可能なんだろう、こう私は思うんですね。ところが、日本の場合はどうもそこが、いろいろな利害が錯綜しているのかどうかわかりませんが、そこが一〇%に踏み切れていない、こういうことであります。

 ここが非常にちぐはぐな対応になっているのではないか。大臣は大変意欲的に、二〇三〇年に六百万キロリットルを国産化できるという農水省の試算、生産可能だ、こういうこともおっしゃっていますが、果たしてこれも含めて本当に可能なのかというのもありますし、大臣と経済産業省と農林水産省のちぐはぐが、どうもはっきり足並みがそろっていないんじゃないかという気がしてなりません。ここでおっしゃっている目標が本当に可能なのかということが一つ。

 あともう一つ、冷静に、本当に国産の農作物だけでこれがいいのかという議論も一つあると思うんですね。あえて言えば、そこは何も、海外からトウモロコシから出るエタノールを輸入して、海外の飢餓というか食糧不足を加速させて日本が輸入するというのも、これまたあべこべな話でありますし、国産の部分、もう時間ですので、その辺の政府の統一についての戦略をもう一度練る必要があるんじゃないか、仕切り直す必要があるかと思いますが、大臣の最後の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。

北村(誠)主査代理 簡潔に御答弁願います。

松岡国務大臣 一言で言いますと、きょうは、近藤先生、最後に、今までもよかったんですが、最後に大変いい御質問をしていただいた。というのは、甘利大臣もちょうどおられるときに今御質問いただいたので。

 まず、ちょっと短くということでありますから、先生のおっしゃったとおりでありまして、ブラジルは二五%がスタンダードなんです。そして、一〇%というのは、もう先進国では、先進国というのはいわゆるエタノール先進国では、それが普通の姿になっておる。日本は、おっしゃいましたように三%、これもまだ、実用というのも試験的でありまして、そういった面では、まだこれからという取り組みだったので、いろいろ行き違いや思い違いもあったと思いますが、甘利大臣の大変な御協力、御指導もいただきまして、大体今、一つの方向に向かって進みつつあるというのが現状だと思います。

 まだまだ、税制の問題、それから今おっしゃいましたような混合率の問題、さらには車のメーカーの問題、条件整備をしなきゃなりませんが、そういった条件整備を整えた上で、今国内にあるいろいろな資源等を、技術開発等を含めまして、技術開発をしっかりやって、そしてそれをきちんと整えていけば、この六百万キロリットルというのは可能だ、これが私どもの判断でございます。

 それから、先生おっしゃいましたように、では、日本の国内だけでかということにつきましては、それにこだわることなく、やはり温暖化対策やエネルギー確保という観点からも、また世界全体のバランスという観点からも、それは必要なものは当然あり得るのだろう、こう思っております。

 いずれにいたしましても、きょうは、ちょうど甘利大臣もおられる場で御指摘をいただきましたので、非常にありがたかったと思っております。ありがとうございました。

近藤(洋)分科員 終わります。

北村(誠)主査代理 これにて近藤洋介君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

    〔北村(誠)主査代理退席、主査着席〕

    ―――――――――――――

渡海主査 これより経済産業省所管及び中小企業金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。甘利経済産業大臣。

甘利国務大臣 平成十七年度経済産業省所管の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。

 経済産業省主管の歳入でありますが、歳入予算額百九十五億円余に対し、収納済み歳入額は三百三十億円余であり、差し引き百三十四億円余の増加となっております。

 次に、経済産業省所管の歳出でありますが、歳出予算現額八千四百十六億円余に対し、支出済み歳出額は八千百七十五億円余でありまして、その差額二百四十一億円余のうち、翌年度への繰越額は七十八億円余、不用額は百六十三億円余であります。

 次に、特別会計について申し上げます。

 まず、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計でありますが、収納済み歳入額は二兆六千七百四億円余、支出済み歳出額は二兆二千三百二十億円余であり、その差額四千三百八十三億円余のうち、翌年度への繰越額は千百三億円余、十八年度予算に歳入計上した剰余金は二千五百九十九億円余、これらを除いた純剰余金は六百八十一億円余であります。

 このほか、電源開発促進対策特別会計、貿易再保険特別会計及び特許特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載いたしたとおりであります。

 以上をもちまして、平成十七年度における経済産業省所管の一般会計及び特別会計の決算の概要に関する御説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。

渡海主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院増田第五局長。

増田会計検査院当局者 平成十七年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号三〇三号は、賃貸借、保守等の契約において支払いが適切でないものであります。

 同三〇四号から三一五号までの十二件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、調査・研究等に係る委託事業の委託費の算定に関するもの。

 その二は、貿易再保険事業における外貨建回収金等を邦貨建てにする際の外国為替取引手数料に関するものであります。

 これら二件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

 引き続きまして、平成十七年度中小企業金融公庫の決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。

渡海主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。甘利経済産業大臣。

甘利国務大臣 平成十七年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。

 これらの指摘事項につきましては、直ちにその是正の措置を講じたところであり、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。

渡海主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡海主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡海主査 以上をもちまして経済産業省所管及び中小企業金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

渡海主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。古本伸一郎君。

古本分科員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、連日の御対応、お疲れさまでございます。また、きょうは役所の方も、文科省、経産省、それぞれお越しをいただいております。ありがとうございます。

 ただいま議題となりました経済産業省所管の決算に関連して、二、三お尋ねしてまいりたいと思っております。

 今、同僚議員がエタノールの話をしておりましたが、まさに技術開発は我が国の経済産業振興発展の根幹でありますし、そのために政府を挙げてさまざまな面で支援していっていただきたいし、そのための予算ならどんどんつけていただきたい、これは、恐らく党派を超えて同じ思いではなかろうかと思います。

 その前提に立ちまして、きょうお尋ねしたいのは、まず宇宙空間の利用についてでございます。

 今、この地球、小さな星に数十億の人が暮らし、資源が枯渇してくる中で、環境問題もあるわけでございまして、いかにして新たな資源あるいはエネルギーを開発していくかということで、例えば、月に行けば物すごいエネルギーがあるという一説もNASAなんかでは発表なさっておられます。

 そういったことを考えたときに、我が国のロケット開発さらには人工衛星が今後どういうふうな目標、目的を持って開発されていくかということについて、これはNASAの技術がいろいろ民生転用されている事例をかんがみても、恐らく、我が国の宇宙開発技術が進んでいけば、これはすぐれて民生転用されて、いろいろな面で国民生活の便益にも資する話であるというふうに理解をいたしております。

 そういうことから、大臣に、宇宙開発に対する情熱とか御決意とか、そこら辺の大きな話をまずお尋ねしたいと思います。

甘利国務大臣 まさに御指摘のとおり、宇宙というのは新たなフロンティアだというふうに思っておりまして、これに係る技術開発が国民生活の向上に還元される、そういう素地が極めて高いところだというふうに思っております。

 ロケットや衛星に係る宇宙開発技術というのは、通信や放送や資源探査あるいは環境監視や災害監視や情報収集、いろいろな分野、エリアがあるわけでありまして、それらの技術開発が今日の経済社会の向上に関して大変な便益をもたらすというふうに思っております。

 日本国として、人工衛星やロケット等の宇宙産業の自立性を確保するということがまず大事だと思います。自分の技術でどこまで開発ができるか、これは極めて重要な課題でありまして、これらの健全な発展を図ることが必要であります。

 それから、宇宙というのは厳しい環境にありますから、その厳しい環境下での技術開発というのは他分野への波及効果が大きいんだと思います。放射線の強度であるとか、温度変化が大変な宇宙空間という世界でありますから、それに対処するような宇宙技術というのは、宇宙の困難を克服する技術というのは、地上での研究以上に大きな技術のブレークスルーが必要ですから、その波及効果は極めて大きいというふうに認識をいたしております。

 これには、政府がまず一体となって取り組む、それから官民が協力をしっかりして推進していく、国際競争力強化を図っていく、極めて大事なことであります。

 では、具体的に何をしているんだという話になりますけれども、経済産業省では、ロケット打ち上げに係る消費税の軽減等の事業環境整備、ちょっと突然変な話ですけれども、消費税です。輸出品には消費税がかかりません。宇宙ですから、もっと遠くに出すような話ですから、これを準用していいのではないか、こういう解釈であります。

 それから、衛星への民生用電子部品の利用拡大のための実証開発。特殊部品でみんな組み立てているわけでありますからコストが高くなる。しかし、中には汎用部品の中で流用が可能なものというのはあるはずでありますし、その方がコストが下がりますから、その実証開発。

 あるいは、衛星に搭載する先端的なセンサーの開発等に取り組んでいるところでございまして、いろいろな場面で政策効果を最大限上げていきたいというふうに思っております。

古本分科員 といいますのも、実は、与党の議員立法で出てきているというふうに伺っておりますが、例の地理空間情報活用の所管が内閣府になっているんですよね、内閣官房。

 他方、例えば、今あまねく国民に、一家に一台あるでしょう車。その国民の皆様が持っておられる車に、大体、今正確な数字は持っていませんが、GPS、いわゆる位置情報システムを装着しておられる車は多いと思うんです。これは、もともといえば、アメリカ空軍の位置情報システムを転用しているわけであります。

 日本がこれだけ高度な技術先進国であれば、ヨーロッパでガリレオシステムを飛ばすときに、それに相乗りをするかどうかのお誘いがあったかどうかもよく承知しておりませんが、少なくとも、引き続きアメリカ軍が専らとしておる今のGPSシステムに、共架、乗せてもらうものを継続していく中で、本当に今のGPSシステムが遮断される心配はないんだろうかとか、あるいは、不測の事態に、安定的にその衛星情報、位置情報をもらえるんだろうか。これは、日本が本当に自立した国家となっていく上で、この宇宙空間を利用していく上での、身近に、かつ私たち国民が触れることのある専らの代表選手が例えばGPSではなかろうかと思っているんです。

 ですから、今回の地理空間情報の問題が残念ながら経産主導で議論されていないということを少し残念に思いますとともに、関係する産業に対してのエールなり御所見なりあれば承りたいと思います。

甘利国務大臣 GPSに関しては、次世代のものに関して言いますと、この種のことは関係する省庁がまたがっていますので、そういうときには内閣府がその全体の取りまとめ事務局的なことをやるのであります。もちろん、我が省に担当させていただいている部分については精力的に取り組んでいるわけであります。

 今、アメリカのGPSシステムは、オープンサービス、広くあまねくみんな利用できるというふうになっています。ガリレオ計画の御指摘が今先生からありました。これもそれに準ずるようなプランが進んでいるわけでありますけれども、いずれにしても、これに参加するには結構な資金負担があります。

 米国のGPSシステムの信頼性が心もとないということであれば、バックアップの意味もあって、何か考えなきゃ、ガリレオ計画参加も検討しなきゃならなかったんだと思いますが、かなり安定的に米国のシステムが運営をされているということが一つあります。それから、ガリレオ計画に参加するのに相当お金を取られるということ。それからもう一つは、日本で今、準天頂衛星、衛星が三つで常に必ずカバーしているという仕組みがスタートをしようとしていますから、それらを合わせますと、ガリレオ計画に力をかりるまでもなく安定性と安全性が担保されるんじゃないかなというふうに思って、政府として参加していないということだと思っております。

古本分科員 ありがとうございました。ぜひ今後、内閣全体を挙げて宇宙空間開発、衛星開発、少なくとも中国におくれをとるようなことのないようにお願いをしたいと思っております。

 そして、きょう二点目のお尋ねに入りたいと思うんですが、まさにこういう宇宙開発の先頭に立つようなエンジニアを将来夢見るお子様たちが今どういう教育を受けているのかという問題に少し入っていきたいわけであります。

 なぜ教育の話を経済産業省所管でするかというと、これは、実は私もこの立場になるまで余り詳しく調べたこともなかったんですが、世の中で、公教育である初等教育、小中学校、それから高等教育である大学を初め、いわゆる公の教育である小中高大学校それぞれに入学するための予備的な学校、すなわち予備校、あるいは、今や小学校の受験もあるそうですから、お受験のための塾、これらは経済産業省の所管になっておるということなんですね。

 なぜ経済産業省の所管になっているか。これは、実はかつて当委員会でお尋ねしたことがあるんですが、いまだ腑に落ちないわけでありまして、これは二年越しで少しお尋ねしたいと思っています。

 公教育である学校教育の入学の試験、そこに入らないことには公教育を受けられないわけですから、その教育を受ける前提となる塾とか予備校をなぜ経済産業大臣が見ておられるのか。役所でもいいですよ。ぜひ簡潔にお願いします。

甘利国務大臣 もちろん、文科省さんの所管の専修学校や各種学校としての予備校というのもあります。それは大規模なところです。

 小さいところについては、考え方は、教育にまつわる各種サービスを提供するサービス産業としての位置づけとして我が省が所管をしている。株式会社何々というところで教育にまつわる各種サービスを行うということでの仕分けだと思っております。

 申し上げた大規模予備校の中には、学校教育法に基づいているもの、それから、それ以外のものについて、サービス産業としての位置づけというのはどういう法文のもとに設置されているかといいますと、経済産業省設置法の第四条第三十一号に規定する商鉱工業の発達及び改善に関すること、及び経済産業省組織令第八十六条第一号に規定する経済産業省の所管に係るサービス業の発達、改善及び調整に関することに該当するということで我が省の所管となっております。

 さらに何か説明することがあったら事務方からさせます。

古本分科員 サービス業である、わかりました。

 そうしますと、サービスに過大広告があったり、あるいは期待したサービスが得られない場合は、これは法律的にどういう処罰がありますか。役所でいいですよ。

谷政府参考人 学習塾につきましては、二カ月を超える期間について五万円を超える金額の契約が行われるようなものにつきましては、特定商取引法の規制対象となります。

 特定商取引法では、サービスの提供条件について広告をするときに、著しく事実に相違する表示をしたり、実際のものよりも著しく優良、有利であると誤認するような表示をすることが禁止されております。

 また、公正取引委員会が所管する不当景品類及び不当表示防止法においても、学習塾一般の虚偽、誇大な広告について規制が行われていると承知しております。

古本分科員 今審議官がおっしゃった、著しく有利であると誤認するとか云々のくだり、今、受験シーズンはほぼ終わったでしょうね、もう入学式が終わっていますから。終わったこの時期にまさに聞いているわけなんですが、全国で何万人、何十万人といる受験生を持っておられた親御さんの気持ちがどんなものかということなんですよ。

 わらをもすがる思いで、一生懸命勉強している我が子に、恐らく親御さんは、パートに出て塾代を捻出し、それでできるだけいい教育をつけてあげたい、そのためのできるだけいい塾を探してこようということで努力なさって、それで通塾をされていたんでしょう。

 ところが、結果、夢がかなった方あるいはかなわなかった方、これは第一義的にはその受験生の責任に帰するところ大であり、これは私もそう思います。

 ただ、何せサービス業ですから、例えば、例え話をするとややこしくなりますけれども、こういうサービスをしますと言って掲示をし、お客を呼び、そしてそのお客さんにサービスを提供し、満足いただけなければ料金を返しますなんという商売も中にはありますよね。そのくらいサービス業というのは、塾がサービス業だというのであれば、少なくとも広告した内容にたがわぬ内容でやらなければいけないし、それを監督しなければいけませんよね。

 そういう意味で役所に少しお尋ねしますが、今、都内に何十校、何百校と塾だ予備校だというのがあるんでしょうが、そういった塾の講師の先生は、何か資格試験でもあるんですか。

西川政府参考人 塾の講師の資格についてのお尋ねでございますが、少なくとも公的な資格制度その他はないと承知いたしております。

古本分科員 では、新聞にチラシがよく入っていますね。何とか合格率ナンバーワンとか、何とか中学、何とか高校、何とか大学に多数の合格実績とか、よく表示されていますね。ああいったものが事実に合っているかどうかというのは御省で調べておられますか。

西川政府参考人 広告の中で合格率ナンバーワンといったような広告をしているところがあるんじゃなかろうかと。

 基本的には、そういった広告は当該塾の過去の合格実績などに基づいた数字を広告として使っているものであって、いわゆる将来の、そこの塾の授業を受けたことによって将来確実に合格できますよといったようなことを広告、PRするものではないのではなかろうかというふうに考えております。

 ちなみに、学習塾の業界団体といたしまして、私ども経済産業省が認可いたしました全国学習塾協会というものがございます。ここは、広告表示について生徒あるいは保護者に誤解を与えないようにということで自主基準を定めておりまして、その中でも、例えば先生御指摘のナンバーワンだとかいったような用語については、客観的な事実に基づく数値だとか明確な根拠なしには使わないといったようなことがその自主基準の中にも書かれておりますし、また、受けた生徒の将来を保証するような、例えば、確実に何点以上成績が上がりますよといった保証するかのような表示を行わない、こういったことが定められているところでございます。

古本分科員 では、その自主基準は自主規制ですから、その協会は業界の自主規制団体になるんですか。位置づけはどうですか。

西川政府参考人 これは、自主規制団体というよりは、いわゆる塾の業界団体でございます。経済産業省が昭和六十一年に認可した社団法人でございます。

古本分科員 御省が、御局が所管される認可団体である。

 そうすると、その自主規制に基づいて運用されているかどうかは随時チェックされていますか。

西川政府参考人 これはまさに当該社団法人が自主的に決めた基準でございまして、社団法人の責任において自主基準そのものを適宜見直しておりますし、また、見直した自主基準を会員各社に、各社というか各塾に周知徹底を図ってその遵守を促している、そういうことでございます。

古本分科員 つまり、丸投げでその機関に任せているということですね。少なくとも、御省の担当官が立入調査したり、定点で観測して、そういう業者さんがどういう広告を打っているのか、いわんや、どういう授業の内容で品質を維持しているのか、広告で打った内容のサービスを提供しているかどうかの確認をとっていないということですね。御省としてそういう、立入検査という言い方がいいのかどうかわかりませんが、やっていない、これでいいですね。

西川政府参考人 この業界が定めた自主基準の遵守状況等について経済産業省が立入検査するとかいったようなことは特に行っておりませんが、いわゆる法令、例えば特定商取引に関する法律、特商法と呼んでおりますけれども、そういった消費者の安心、安全を確保するような法令に基づき、不適当と思われるような事態があれば、もちろん当該法令に基づきしかるべき対応をとるというのは当然のことでございますが、当該自主ガイドラインについての定期的なチェックだとかいったようなことは行っておりません。

古本分科員 いや、自主規制ルールが運用されているかどうかを逐次確認に行ったら自主規制になりませんから。そんなことはわかっているんですが、先ほど谷審議官がお答えいただいたように、これは特定商取法という法律に基づいて、著しく有利であると誤認をするような広告を打ったり、あるいはそういう募集をしてはいけない、こういう法律なんでしょう。それをやっているかどうかを確認するのは行政の責務なんじゃないですか。そういう意味でちゃんと確認していますか、検査していますか。

谷政府参考人 全国の消費生活センターに寄せられました苦情を例えば国民生活センターが取りまとめておりまして、苦情が多いものにつきまして、立入検査などの形で取り締まった事例はございます。

古本分科員 二年前にもお尋ねしたのではっきり覚えていますが、苦情の専らは、例のクーリングオフとかそういうことでしょう。つまり、契約が少し乱暴に契約された、それを解除したいと言ったんだけれどもやめさせてもらえない、そういうケースですよね。

 それ以外に、塾の先生の授業が、言っていたサービスの内容と全然違うとか、そういうことも含めてきちっとフォローされていますか。

谷政府参考人 ことし三月二日に、六カ月間の業務停止命令を出した事例がございます。株式会社学研ジー・アイ・シーというところが、役務つき、学習塾つきの教材販売を行っておりました。ここは、例えば、わからないところは一対一の個別でつきっきりで教えてもらえるとか、あるいは、担任制をとっていないにもかかわらず、お子さんに合わせた細かいカリキュラムをつくって指導しますとか、こういう虚偽の勧誘を行っておりました。

 これにつきまして、消費者聴取を広く行いまして、立入検査も行った上で、虚偽のことを言っていたということで、六カ月の業務停止命令を出したところでございます。

古本分科員 少しは前進をしてくれたのかなと、今うれしく思っています。

 きょうは文科省も来ていただいていますが、今、通塾率というのはどのぐらいなんですか。知らなきゃいいですよ。

中田政府参考人 申しわけございません。今、数字を持ち合わせておりません。

古本分科員 皆さんの隣近所のお子さんに聞けば大体わかりますよ。中学だと大体七割を超えているんじゃないですか。二年前はそういうデータをもらったように記憶していますけれども。

 入学試験に受かるというためだけならまだ百歩譲って、より上を目指した個人的な嗜好によって選んだ結果、受験に至った、そのための予備的な塾とかに行った、これは極めて個人的な問題だと多分文科省は言うし、そう聞きました。

 一方、公教育の授業についていけないとか、授業の補完的な部分で行っている生徒さんはどのくらいおられますか。

中田政府参考人 先ほど、通塾率について数字を持ち合わせていないとお答えいたしましたが、塾へ行っている人間がどういう理由で行っているかについても、まことに申しわけございませんが、ただいま数字を持ち合わせておりません。

古本分科員 大臣、まさにこのていたらくなんですよ。大臣も子育てされておられますので、塾に行ったかどうかは存じ上げませんが、甘利家の中までの話は。

 ごくごく一般的に言えば、今は塾に行かないとなかなか受験も厳しいですよ。さらに、学校の授業にもなかなか追いついていけない。中には立派な公立学校とか完結している学校もありますけれども。

 一方で、公教育を担っておられる文科省は、塾は知らないと。知る必要がないんですよ、所管じゃないですから。これは審議官が悪いんじゃないんですよ。そういうルールになっていますから。

 片や、どういう授業内容をしているのか。もっと言えば、すし詰めのような教室に小さな子供を押し込んで、高額な授業料を取って、ろくにトレーニングも受けていないような講師が授業をしているかもしれない。そういうところに、もっと授業の質を上げなさい、あるいは、先生はせめて教職課程を取ったぐらいの、少なくとも心得のある人をせめて登用しなさいとか、そういう指導は経産省になっています。

 このあべこべを直すためには、思い切って塾の所管を文科省に渡したらどうかということを私は提案するわけなんです。

 これはサービス業というのりを越えていますね。片や肩もみのエステサロンとかそういう教室と塾が同列で扱われているんです。そこに行ってサービスを受けて肩凝りがとれなきゃ、そこは人気がなくなりますよね。だって、もめば大体わかりますから。

 片や塾というのは少し時間がかかりますね。しかも、子供の夢を親がしょって、大変高額なお金をお母さんたちはパートに出て稼いできているわけですから、それを塾代に充てているわけですから。等々を考えますと、サービス業とはもう言えない時代に社会的なニーズも含めて来ていると思うんです。

 わかりました、文科省に渡しますとは言えないことは重々承知ですが、ただ、この塾の問題は根深いものがあります。今後ともサービス業として扱っていくのかどうか、最後に大臣の御決意なり御所見を承って、終わりたいと思います。

渡海主査 時間が過ぎていますから、簡潔に。

甘利国務大臣 規模もいろいろあると思うんですね、大きいものから小さいものまで。それから、教える方式のノウハウもいろいろあると思うんです。

 教員資格を持っていた人が、では教え方がうまいかというと、実はそうじゃなくて、むしろ会社で何か仕事をしていた人の方が、こう言う方がわかりやすいということもあります。先生もお感じになっていらっしゃると思うんですけれども、役所の話で役人が言うこと、自分だったらもっと易しく半分の時間で説明できることというのはいっぱいあると思うんですね。政治家の方が説明の仕方がうまいとか。

 そういうのがあると思いますので、文部省所管できっちり資格検定とか設立要件とかをがちがちに決めちゃうと、小さいけれども非常に教え方がうまいところがあるとか、そういうのがふるわれちゃうおそれがある。

 ただ、御指摘のように、誇大広告とか違法表示というか、受かってもいないのに受かっていますとか、あるいは個別指導で全部やっていますと言って実はやっていないとか、そういうのはぴしっと取り締まる。

 その上で競争が働くように、あそこの塾は、言っている割に教え方がうまくなくて余り受からないんだって、こっちのものは、小さいけれどもなかなかいい人が集まっているらしいよ、そういう顧客満足度をできるだけサービス産業もはかれるようにしたい。

 今、サービス産業の改革と申しますか、生産性向上というのをやっているんですが、生産性向上というのは工業の世界の生産性向上と違って、実はどれだけ満足度が高いかという基準もあるわけです。そういったものをあわせていって、うたっている成果が上がっていくように取り組んでいきたいというふうに思っております。

 かなり大どころの予備校は、事実、文部省所管にもなっています。そこはいろいろがちがちの制約が我が省よりはあるはずであります。うちの方は、もっとフレキシブルに対応できるようなサービスを提供できる、そういう視点からいろいろと改善を図っていきたいというふうに思っております。

古本分科員 教育、わけてもその入り口である受験という一家にとっての琴線に触れる部分をつかさどっておられる経産省、今の法律のたてつけになるとそうなりますので、ぜひ今後とも省を挙げてこの塾の問題をフォローしていただきますよう強く要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡海主査 これにて古本伸一郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして経済産業省所管及び中小企業金融公庫についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後六時五十八分散会


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