衆議院

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第1号 平成20年4月21日(月曜日)

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本分科会は平成二十年四月九日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

四月十八日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      浮島 敏男君    坂本 哲志君

      杉村 太蔵君    林   潤君

      安井潤一郎君    高山 智司君

      松本 大輔君    上田  勇君

      鈴木 宗男君

四月十八日

 上田勇君が委員長の指名で、主査に選任された。

平成二十年四月二十一日(月曜日)

    午前九時三十分開議

 出席分科員

   主査 上田  勇君

      坂本 哲志君    福田 峰之君

      安井潤一郎君    大串 博志君

      階   猛君    神風 英男君

      高山 智司君    松原  仁君

      鈴木 宗男君

   兼務 松本  龍君

    …………………………………

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   国土交通副大臣      松島みどり君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       川滝  豊君

   会計検査院事務総局第三局長            真島 審一君

   政府参考人

   (国土交通省河川局長)  甲村 謙友君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  宮田 年耕君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  和泉 洋人君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  大口 清一君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  鈴木 久泰君

   参考人

   (独立行政法人住宅金融支援機構理事長)      島田 精一君

   国土交通委員会専門員   亀井 爲幸君

   決算行政監視委員会専門員 菅谷  治君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     福田 峰之君

  高山 智司君     松原  仁君

  松本 大輔君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 峰之君     浮島 敏男君

  大串 博志君     階   猛君

  松原  仁君     神風 英男君

同日

 辞任         補欠選任

  階   猛君     松本 大輔君

  神風 英男君     高山 智司君

同日

 第二分科員松本龍君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計歳入歳出決算

 平成十八年度特別会計歳入歳出決算

 平成十八年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成十八年度政府関係機関決算書

 平成十八年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成十八年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (国土交通省所管及び住宅金融公庫)


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     ――――◇―――――

上田主査 これより決算行政監視委員会第四分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。よろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省所管、国土交通省所管及び住宅金融公庫についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成十八年度決算外二件中、本日は、国土交通省所管及び住宅金融公庫について審査を行います。

 これより国土交通省所管及び住宅金融公庫について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。冬柴国土交通大臣。

冬柴国務大臣 国土交通省所管の平成十八年度歳入歳出決算につきまして、概要を御説明申し上げます。

 まず、一般会計につきまして申し上げます。

 収納済み歳入額は四百九十九億一千九百万円余であります。支出済み歳出額は六兆七千三百八十一億五千三百万円余であります。

 次に、特別会計につきまして申し上げます。

 まず、自動車損害賠償保障事業特別会計でありますが、保障勘定、自動車事故対策勘定及び保険料等充当交付金勘定の三勘定を合わせて申し上げますと、収納済み歳入額は一千六百八十二億五千二百万円余であります。支出済み歳出額は一千三十七億六千万円余であります。

 このほか、道路整備特別会計、治水特別会計、港湾整備特別会計、自動車検査登録特別会計、都市開発資金融通特別会計並びに空港整備特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要及び各事業の詳細につきましては、お手元に配付いたしました平成十八年度決算概要説明書をごらんいただきたいと存じます。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

上田主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院真島第三局長。

真島会計検査院当局者 平成十八年度国土交通省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二十九件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項十一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号二五六号、二五七号、二六二号、二六三号、二七一号、二七二号、二七四号、二七五号、二七九号及び二八〇号の十件は、工事の設計が適切でないものであります。

 同二五八号から二六一号まで、二七七号及び二八一号の六件は、補償費の算定が適切でないものであります。

 同二六四号から二六八号まで及び二七六号の六件は、補助金の交付額の算定が適切でないものであります。

 同二六九号は、工事の設計及び施工が適切でないものであります。

 同二七〇号は、補助の目的を達していないものであります。

 同二七三号は、工事の設計及び管理が適切でないものであります。

 同二七八号は、補助対象施設の管理が適切でないものであります。

 同二八二号は、補助対象事業費を過大に積算しているもの及び補助対象施設の管理が適切でないものであります。

 同二八三号は、補助対象事業費を過大に積算しているものであります。

 同二八四号は、補助の対象とならないものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、河川区域の一部が廃止されるなどして普通財産となった土地の管理等に関するもの。

 その二は、鉄道駅総合改善事業のうち移動円滑化事業における補償金工事費の取り扱いに関するもの。

 その三は、スマートインターチェンジの社会実験のために整備した設備の取り扱いに関するもの。

 その四は、管路敷設工事における埋め戻し材の選定に関するもの。

 その五は、談合等があった場合の違約金等に係る国庫補助金相当額の取り扱いに関するもの。

 その六は、地方整備局等の職員が着用する作業服の調達に関するもの。

 その七は、河川高潮対策区間における間接工事費の算定に当たっての工種区分の選定に関するもの。

 その八は、港湾施設の整備工事における潜水士船を用いた捨て石ならし等工費の積算に関するもの。

 その九は、トンネル整備事業の事業実施の効果の早期発現に関するもの。

 その十は、浸水想定区域図の作成に必要な調査の実施に関するもの。

 その十一は、漁業権等の先行補償に係る利子支払い相当額の算定に関するものであります。

 これら十一件について指摘したところ、それぞれ改善の処置がとられたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

上田主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。冬柴国土交通大臣。

冬柴国務大臣 平成十八年度決算における会計検査院の御指摘に対しまして国土交通省のとった措置について御説明申し上げます。

 所管事業に係る予算につきましては、その適正な執行を図るよう常に努力しているところでありますが、平成十八年度の決算検査報告におきまして、工事の設計が適切でないものなど、御指摘を受ける事態を生じましたことは、まことに遺憾であります。

 御指摘を受けました事項につきましては、国庫補助金を返還させ、または事業の目的を達成するよう手直し工事を施工させるなどの措置を講じたところであります。さらに、関係機関等に対しましては、法令の遵守、設計審査の徹底、施工の厳正な監督・検査の実施等になお一層努めるよう通達を発するなど、注意を喚起したところであります。

 今後とも、このような御指摘を受けることのないよう指導を一層徹底し、事業の適正かつ効率的な執行を図ってまいる所存であります。

上田主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上田主査 以上をもちまして国土交通省所管及び住宅金融公庫についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

上田主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松原仁君。

松原分科員 民主党の松原仁でございます。

 きょうは、大崎短絡線と羽田空港の拡張に関してお伺いいたします。

 前回、昨年の四月二十三日に、JR東日本を監督する立場として、十分な説明等を行うよう指導するよう大臣に対して御要請をいたしました。そのときも冬柴大臣でありましたが、その後の対応状況はいかがなっておられるか、お伺いいたします。

冬柴国務大臣 前回御答弁申し上げた後、早速、鉄道局長に指示し、JR東日本に対して、地元住民に丁寧に説明した上で御理解をいただくよう指導をさせたところでございます。

 これを受けて、JR東日本は、地元住民に対して、本計画に関する説明会や意見交換会を開催してきたところでありますが、いまだ十分な御理解が得られていない状況にあることから、引き続き、地元住民の御理解が得られるよう、地元からの要望に対するJR東日本の考え方等を丁寧に御説明している旨であると聞いております。

松原分科員 JR東日本の計画している大崎短絡線、前回質問時、四月二十三日から一年経過しておりますが、これに関する地元との話し合いの進捗状況は、鉄道局長、いかがなっておられますか。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの大崎短絡線に関する地元との話し合いの進捗状況でございますけれども、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、その指示に基づきまして、当方からJR東日本に対しまして御要請申し上げております。その事業に対して地元によくよく説明をし理解を得るべく、都条例の手続に基づくアセスに位置づけられております説明会に先立ちまして、任意で地元の説明会を開催しているというふうに聞いております。

 具体的には、前回の御質問以降、平成十九年の八月に地元で結成されました大崎短絡線連絡協議会との意見交換会の開催に向けて事前説明会を開催しましたほか、十月には当該連絡協議会との意見交換会の開催、そしてまた十一月には町会に対しての説明会を開催しているというふうに聞いております。

 残念でございますけれども、現時点では、地元の方々にまだ十分な御理解を得られている状況にはないというふうに聞いておりますけれども、現在も、地元の御理解を得るべく、次回意見交換会に向けまして連絡協議会事務局と調整を行っているというふうに聞いております。

松原分科員 鋭意頑張ってほしいわけでありますが、実は、四月二日付で、大崎短絡線連絡協議会の中村会長から東日本鉄道株式会社東京工事事務所の佐藤課長にあてて、「大崎短絡線その後の状況についてのお尋ねとお願い」という文書が出ております。これは、地元何十町会も集まった協議会、ごく地元は十町会ぐらいでありますが、広がりを持っております。

 この中で中村会長が書いておりますのが、「議事録の作成が出来ない旨連絡がありましたが、以降音沙汰がありません。貴社の諸事情があることと思いますが、このまま無しくずしに事を運ばれない様確認の意味をこめて、本文を記しました。」

 だから、地元としては、十分に誠意を持ってやっているという認識をまだ持っていないということであります。

 貴社の事業目的の中には、本事業は、この平面交差を解消することを目的としてと明示されている。「この目的が崩れた原因は、短絡線が右カーブから左カーブへ、急斜面・急勾配の危険な路線であることから、特に貨物輸送は無理と判断されたからでしょう。この事業目的が崩れた時点で計画の全面変更をすべきでなかったかと思います。」

 全国にこのような路線があるのか。「客車はATS―Pで制御するから心配ないと言われますが、何か無理がある様に思われます。」「危険なことを承知しながら住宅地の中を通そうとする無神経さは、」というふうな文書が出ております。これは四月二日の文書です。

 その後、この文書が出た後に、JR側からもう一回やりましょうという話が行っていますが、住民から促されてこういうのをやるようではいけないということを、きょうは時間がありませんから突っ込んだ議論はいたしませんが、もう一回はっきりさせておきたいと思います。私は、誠意を持ってやるというのは、住民側からしびれを切らしてこういう文書が出る前にやるということが誠意を持ってやるということになると思うんですね。

 それでは、次の質問に移ります。

 そうした中で、特に、今の中村会長の文書の中にありました、このような急勾配かつ急カーブの箇所は旧国鉄時代においてあったのか、JRにおいてほかに例があるのか、時間の都合上ちょっと質問を二つ飛ばしますが、これをお伺いいたします、鉄道局長。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、急勾配かつ急カーブの箇所はJRにおいて他に例があるのかということでございますが、JR東日本においては、湘南新宿ラインそれから横須賀線の輸送力増強のため、大崎駅付近において短絡線を設ける計画でございまして、現在、先生がおっしゃるようにさまざまな手続を進めております。

 一般的に、急勾配、急曲線の区間については、勾配の緩やかな区間、曲線半径の大きい区間に比べ、列車の運転速度が制限されることになります。また、速度制限機能つきのATSの設置などの所要の安全対策も講じられることから、安全性についてはまず問題ないというふうに考えております。

 それで、大崎短絡線と同様の急カーブあるいは急勾配の区間について、JRには今現在はございません。ただ、他の事業者におきましては、東京地下鉄を初め四事業者におきまして、合わせて十三カ所、そうした例がございます。

 これらの箇所につきましては、運転速度が時速四十キロから五十キロに制限されるとともに、すべての箇所に、制限速度以下に減速させるための装置、いわゆるATSまたはATCが設置されております。

 国交省といたしましても、今後、大崎短絡線の整備が行われる場合においては、線路の勾配とか曲線半径に応じた運転速度の制限の設定、あるいはATSなどの整備が適切に行われますように、JR東日本に対してしっかりと指導してまいりたいと考えております。

松原分科員 今答弁にあったように、この場所は、急勾配かつ急カーブという点において、かつての国鉄時代というか、現状のJRにおいてもそういった箇所がほかにないということなんであります。私鉄においては、民間鉄道についてはそれがある、こういうふうな御説明があったわけでありますが、本数が非常に多くなるということも指摘をされておりまして、多くなるからこれをつくるわけですよ。

 そうした中で、本当にどうなるのか。地元住民の納得を得られる状況には今全然なっていないというのが率直なところだろうと思っております。今、技術的根拠、法的根拠をおっしゃいましたけれども、法的根拠、技術的根拠を示すだけでは地元はなかなか納得できない部分があろうかと私は思っております。

 さて、今回の鉄道施設の変更手続というものは、いわゆる新線ではなかった、新線手続ではなくて行った、この理由に関してお伺いいたしたいと思います。

大口政府参考人 一般に、線路を増設する場合、その長さなどが一定の要件に該当するものにつきましては、鉄道事業法に基づく鉄道施設の変更に係る手続が必要となりますが、鉄道事業法十四条第一項に定めます認定鉄道事業者の認定を受けている場合におきましては、一キロメートル未満の線路の増設などにつきましては、事業者において鉄道の技術基準との適合を確認することで手続を省略することになっております。

 東日本はこの認定事業者でございまして、また、短絡線の整備は〇・六キロメートルでございますので、一キロメートル未満ということで、鉄道施設の変更に係る手続は発生しないというふうに考えております。

松原分科員 認定鉄道事業者は一キロメートル未満はということで、この認定鉄道事業者というのはJRだけですよね。お伺いします。

大口政府参考人 JR以外にも、民鉄事業者十三事業者、JRは七事業者、それから公営、三セクにつきましては三事業者、合計しますと、二十三事業者、六十二事業所が認定されております。

松原分科員 わかりました。

 どちらにしても、そういう状況で、今、民間においてこれだけの急勾配や急カーブがあるというふうな御指摘がありました。それぞれがあるということなのか、それとも同時に急勾配、急カーブがあるのか、お伺いしたい。

大口政府参考人 先ほど申し上げました例につきましては、同時にあるということでございます。

松原分科員 そういう中で、最終的には、アセスの問題も含め、地元の了解を得るということが極めて大事になると思っております。これは技術的なものは私もまだ十分に知悉しておりませんから、おっしゃっていることを一応前提にしての話ですよ。

 ただ、問題は、地元の不信感というのが何でそうやって増幅するかといえば、例えば、そういう地元との協議が行われている段階において、その協議の一つの結論が出る前に土地収用がどんどん進んでいる。この土地収用と地元との話し合い、つまり、右手で握手をしながら左手でぼこぼこぶん殴っているような、こういうふうな認識を地元が持っても当たり前であって、不信感は増幅すると思うんです。

 なぜ土地収用を同時に行うんですか。

大口政府参考人 土地収用問題につきましては、それぞれ事業者の責任において判断されながらなされるものというふうに考えております。

松原分科員 一緒に話し合いをして、しかも話し合いも、中村会長からのさっきの文書を見ればわかるように、「以降音沙汰がありません。貴社の諸事情があることと思いますが、このまま無しくずしに」、こういうふうな文書が来るような頻度で、やはり、正しいことを正しい、本当にそうだったら、そうだということをきちっと納得してもらわないといかぬわけですよ。にもかかわらず、一方で土地収用が進んでいる。

 私は、やはり土地収用を同時にやるというのはいかがなものかという指導をするべきだと思うんですが、いかがでしょう。

大口政府参考人 繰り返しになりますけれども、これは事業者の判断においてなされるものというふうに考えております。

松原分科員 これは質問に入っていなかったんですが、大臣、いかがですか。

冬柴国務大臣 反対は反対として、事業を所要の時期に完成しなければならない事業者の責任からいえば、そういう反対については十分説明をして御納得をいただくという努力は物すごく誠意を尽くしてやらなければならないと私は思いますけれども、しかしながら、全部話し合いがつくまで工事を進捗させることができないということになりますと、これを行うことには公共的な利益も伴うわけです。決してJRの利益だけでやっているとは私は思いません。

 したがいまして、このようにすると確かにその周辺は危険を覚えるようなものがあると思われますので、私は、十分に御納得いただくように誠心誠意やれということを言いますよ。言いますけれども、しかしその反面、大きく違うところで今のようにやりますと非常に危険がそこで伴うということを回避するために、やむことを得ずこれを進めようとしている公益的な理由も私はあると思われますので、そこのところは、誠意を持ってこちらも進めさせますけれども、しかしながら、そのために工事の着手が遅延するということも回避しなければならないと思いますので、その点をJRとも私もよく話し合いたいと思います。

松原分科員 実際はアセスとかも既におくれております。それは、地元協議がおくれているから私はおくれているんだと思うんです。予定はおくれていますね。

 私は、予定どおりというよりは、予定がおくれても地域の納得と本当の安全を確保するということが大事だと思うので、そのためには、やはりこういう文書が地元の協議会会長からあるということ自体、はっきり言ってちょっと何とかしろよと。その一方で収用を進めるというのは、私は、客観的に見て、どうも地域としてはどうなっているのかと。実際既におくれているわけですから。

 その辺は、大臣としては、これは先に通告しておりませんでしたからこれ以上聞きませんが、こういった部分に関してはやはりきちっと指導を、いいですよ、この場でお答えいただかなくても。鉄道局を通して内々指示していただければ私は結構ですから。そうやって、握手も十分し切っていない、向こうから手が伸びないと出てこないみたいな、それでもってこっちは収用するぞ、これはやはりちょっと乱暴ではないか。先般の質問でうちは民鉄とは違うという発言があったとかなかったとかという議論がありますが、ちょっと乱暴だと思うので、そこは御配慮いただきたいと思います。

 それで、最後にこの問題に関してお伺いしたいことは、今回の計画が、これまでのやりとりを聞いて、今お話ししましたJRの対応、この事業の安全性など含めて、今言った部分、細かくあえて言うとお立場があるかもしれません。あえて、とにかく、工事を進める、収用を進めるにおいても慎重に地元が了解できるようにやってくれ、こう一言言っていただけますか。

冬柴国務大臣 そのとおりに申しましょう。

松原分科員 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 次は、羽田空港の拡張工事であります。

 実は、多摩川河口に羽田空港の新滑走路をつくる、当初は何か三年とかという話で進んできた。この海域が赤褐色を呈している情報があります。このことに関して事実認識があるかどうか、お伺いいたします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 羽田空港D滑走路の工事区域内におきまして、局所的に海域が赤褐色を呈しているということは聞いておりますけれども、毎日実施しております環境モニタリングにおきまして、基準値をクリアしているという報告を受けております。

松原分科員 この赤褐色になっているということが、地元の漁協としては非常に大きな問題になっているわけであります。

 具体的に、私も昨日朝、船に乗って現場を見てまいりました。きのうは赤褐色になっておりませんでしたが、現場を現認した二人の若い漁師の方に話を聞きながら、その人たちと一緒に参りました。十四日の夜から十五日にかけて、十五日の夜から十六日にかけて、十七日の夜から十八日にかけて、夜発生して昼ぐらいになくなる、こういう状況であります。

 夜の作業でやられているんだろうということになりますが、具体的には、ブイがあります、入っちゃいけないよという黄色いブイですね。そのブイとブイとの間が三百メートルぐらいあると。もっとあるかもしれません。そのブイとブイの間ぐらいの帯状に、日本に中国の黄河が現出したのかと思われるような赤く黄色い水が帯のように、海の中には潮目に沿って海流が流れていますから、そこに沿って流れている、こういうふうなお話となっております。

 このことでお伺いしたいわけでありますが、これは、羽田空港D滑走路工事に用いる西伊豆産岩ずりや岩ずりに混入した土砂による可能性が高いというふうに現場の漁師は言っておりますが、いかがになっておられますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 羽田のD滑走路の工事、特に埋め立て部の工事につきましては、今、地盤改良を終えまして、護岸の築堤作業に入っております。この護岸の土台となりますところに、委員御指摘の岩ずりというのを投入して土台をつくっておるところでありますが、そこで用いております西伊豆産の岩ずりにつきまして、すべてというわけではございませんが、輝石安山岩でありまして、岩そのものに鉄分が含まれておりますことから、岩に付着している鉄分が海水投入時に赤褐色を呈しているというケースもあると考えております。

松原分科員 私も、羽田はこの間、質問が決まってから三回ぐらい通っているんですが、きのうの、実際それを現認した漁師さんと一緒に船に乗りながらの話では、それは明らかに泥であろう、それもかなり黄色いと。Feは赤褐色に出るんですが、かなり黄色いというふうなことを彼らは言っているわけであります。現状では、こういったことの影響かどうか、大体冬にとれるマコガレイが全くとれないというふうな状況になって、これは私は伝聞でありますが、マコガレイがとれないと。これはその二人の漁師も言っておりましたが、別の幹部も言っておりました。

 最近は赤褐色を呈しているというこういう事実に関して、冒頭大臣に聞く予定でありましたので、大臣、このことを御存じでいらっしゃいますか。

冬柴国務大臣 質問通告を受けましてから、昼と夜の写真とを徴求しまして、そのような事実があることは存じております。

 ただ、その周辺に監視区域を全部設けまして、そこで定時的に海水の採取を行っておりますが、それは埋め立てをやっている局地でありまして、それがそれ以外の外に広がっているという事実は見当たらない、こういうことでございます。

松原分科員 少なくとも、漁師さんが言うには帯状に流れていると。図面を今持ってきていないので図示できませんが、三百メートルの幅のものが潮目に沿ってぐうっと流れている、大変にそれは異様な光景であると。ただ、それは出るときと出ないときがあって、出るときも昼ぐらいに大体消滅する、こういうことであります。それは恐らく岩ずりの泥の部分が流れているんだろうと、現場の漁師はもうほとんど一〇〇%の確信を込めて言っていました。私自身は現認をしたりしておりませんけれども、いずれ現認をしたいと思っております。

 そういったことでありますが、さて、これは中部、関空では、汚濁防止膜を用いてこういったものが出ないようにしております。羽田でも、かつては汚濁防止膜を使った工事も羽田空港拡張で行われておりました。今回はなぜ使っていないのか、お伺いします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの汚濁防止膜につきましては、工事海域は東京港の入り口にある船舶のふくそうエリアでございまして、工事区域の外周に汚濁防止膜を展張した場合に、近接航行する船舶の接触等の危険がございます。また、多摩川の河口域への汚濁防止膜の展張は、河川の流れを阻害するおそれがありますし、また出水時などに汚濁防止膜自体が流出して二次災害も懸念されることから、汚濁防止膜の使用はしてございません。

松原分科員 質問通告のときの議論と違うお話をなさるので。

 私が聞いたのは、トレミー船を使うことによって汚濁防止膜は使わなくていい、こういうことですが、それはどうなっていますか。

鈴木政府参考人 失礼いたしました。

 したがいまして、東京国際空港再拡張事業に係る環境影響評価書でも、濁りを極力発生させない作業船、トレミー船というものでありますが、これを用いることによって濁りの拡散を防止することは可能とされておりますので、その作業船を用いまして工事を実施しておるところでございます。

松原分科員 現場では、汚濁防止膜をぜひ使ってくれ、こういう声がやはりマコガレイがとれなくなったりして出ているわけであります。トレミー船を使用して汚濁防止膜を使えば、これが一番いいわけだと思うんですよね。これも漁師さんから聞いた話ですから、私は現認したわけではありません。トレミー船を使って下に出すことによって汚濁防止膜を使わなくてもいいという環境省の文書もある。この文書自体が国土交通省側からの要請でつくられたのかもしれないと私は若干認識しておりますが。

 問題は、トレミー船を使ってやれば、普通はそうはならないんですよ。だから、憶測ですよ、これは。現場で、昼間はトレミー船を使ってやったりする。石も、私きのう見に行ったら、白い石も使っているんですよ。だからケース・バイ・ケースなんです。泥を入れている場合とそうじゃない場合と、いろいろとあるんですよ。ずっと泥を入れているわけじゃないです。泥を入れた後白い石を入れたり、それはうまいことやっているわけですよ、恐らく。わからないですよ、憶測ですよ。

 そこで、大事なことは、トレミー船で下までやらないで、面倒くさいからトレミー船を使わないで、人が見ていない夜はそのまま船から海面に落としているんではないかというのが、これが現場の漁師の憶測であります。現場を見ておりません、離れていますから。しかし、そういう憶測が出るということ自体問題だし、きっとトレミー船があるけれども使っていないんだと私は思います。きのうもトレミー船はありました。

 しかし、我々が見ているときは、昼間は下までトレミー船を使いますよ。でも、見ていないときは、わからないからやっちまえと。しかし、わかるんですよ、帯でずっと行きますから。こういうことではないかと思うんですが、これは現実のところがわかりませんから、答弁は結構であります。

 そうした中で、地元からは、予算が少ないから土砂が多くまじった岩ずりが出ていると。一〇%までいいというんだけれども、実際はそんなものじゃないだろう、こういう話であります。

 こういう、予算が少なくて期間が少ないということからさまざまな問題が発生していると思いますが、そういったことを調べる必要はないでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 岩ずりの使用に当たりましては、出荷前の土源チェック、現場搬入時の品質チェック等を確実に実施しているところでありまして、引き続き品質管理の徹底を図ってまいりたいと思っております。

松原分科員 抜き取り調査があったり事前のそれがあったりするんですが、そのことを調べる組織が、業者サイドの組織なのかどっちサイドの組織なのか、僕はわかりませんよ。どうもそこも、本当にそうなのかという不信感を地元では持っております。例えば、抜き取り調査があるということが事前に伝われば最初の上澄みだけいい石を持ってくるんじゃないかとか、ここまで言っていますよ。きょうはしょっぱなですが、これからかなり深い問題がこの問題にはあるような気がしてなりません。その点は調査をさらにしてまいります。

 予算が少ない、急いでいる、そういったこともあって、この工事が始まって既に死者が二人発生しているということでありますが、お伺いしたい。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 工事中の事故で二人の死者が出ておるというのは承知しております。

松原分科員 一人は、御案内のとおり、ガット船の船長がクレーンに挟まれて死んだ、これは当時新聞に出ました。それからもう一人は、沖縄から来た潜水士がくいの下でおぼれまして、一週間植物人間で亡くなった、これは余り報道されておりません。こういう事故がどうもほかにもあるんじゃないかといううわさすらあるわけであります。まあ、ないとは思いますが。

 そういった部分を含めると、なぜそういう事故が起こったのか。そして、今みたいな赤い、黄河の流域がそこに出てきたようなものが流れている。何かその辺、隠ぺいとは言いませんが、地域の人が一番その辺を不審がっているので、このことを再調査する意思はありませんか。どうですか、大臣。

冬柴国務大臣 無事故で期限にしゅんせつできるように十分に注意をしてまいりたいと思いますし、必要であれば調査もしていきたいと思います。

松原分科員 ぜひ調査をしていただきたい、このように思うわけであります。

 その赤黄色の石というのは西伊豆の産でありますが、これをどうしても使わなければいけないという理由は何かあるんでしょうか、お伺いしたい。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 現在やっておりますのは、埋め立て部の一番大事な護岸の築堤工事でありまして、その護岸の基礎となる部分については、それに適した岩ずりというのを用いる必要がございます。

松原分科員 私が言っているのは、宇久須の岩ずりを使わなければいけないだけ、そこの産品というのは優秀なのか。つまり、地元は、あそこは石もあるけれども土の山じゃないか、こういうふうに思っている人もいるわけですよ。どうしてもそこを使わなきゃいけないのかということを聞いているんです。

鈴木政府参考人 品質もさることながら、安定的に供給ができるかという点も勘案して、西伊豆の岩ずりを使っております。

松原分科員 品質について地元的には若干疑義があるということですから、疑義は晴らした方がいいですよ。それがいいんだったら、いいということをはっきりとわかりやすく。

 あと、トレミー船を使っていると言うんだけれども、それは使ってないんじゃないかと言われている。これもはっきりとウオッチする。それを調べるのが、どっちかというと業者とも関連しているような者が調べたりしちゃいかぬわけですよ、そういうことはないと思いますけれども。

 では、最後に、そうはいっても、実際に濁っているという地元の声がある。不安を払拭するためにさらなる環境対策を実施すべきだ。これは、松島さんにお伺いします。

松島副大臣 確かに、委員がおっしゃいますように、この場所は、多摩川河口域という真水と海水がまじる汽水域でもございます。東京湾の水環境を考える上で非常に重要な地点でございます。こういったところで工事を進めているわけでございますから、環境や安全面に十分配慮して工事を進めるとともに、おっしゃいますように、必要に応じて環境監視をこれまで以上に充実させるように検討していきたいと思っております。

 先ほどから御説明しているとおり、トレミー船という濁りを極力発生させない作業船を使う、そしてその使い方も、必ずこれをきちっと使うということを点検して、さらに、環境モニタリングも毎日六カ所で実施しておりますので、濁りについて基準値をクリアしていることを確認して、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

松原分科員 我々がこういう質問をする場合は、やはり机上ではなくて現場なんですよ。現場に行って現地の声、それも、一人では間違えるかもしれない。四、五人聞けば大体間違いないなという一つの結論になるんですよ。

 短絡線も、短絡線は技術的な問題がありますよ。だから、これはきちっと現地と、中村会長のああいう文書をもらってから急いで持っていって、では、やりましょうみたいな、こういう不誠実なことではいけないので、既におくれているんだから、おくれを早く取り戻すために本気でやっているのかという議論ですよ、これは。

 だから、私は、用地買収等の議論はそこそこにしながら、だって、片っ方をどんどんやりながら、片っ方は向こうから言われるまで説明会をやらないなんて、そんなのははっきり言って自己撞着ですよ。大臣も首を振っておりますが。縦にですよ、横じゃなくて。

 私は、それは本当に大変な問題だと思うんだよね。やはり鉄道事業者に対してきちっと指導してほしいし、羽田に関しては現物の黄色い帯が流れている。中一日置いて十八日の朝も流れる。恐らく今後も流れるかもしれない。漁師が言っているのは、六月になって赤潮がやってきたらもっとやるだろう、赤潮とその色がまざって、赤潮だというふうに抗弁するんじゃないか、ここまで彼らは言っているんですよ。

 私は、そういったことを考えると、本当に、国というのは権力を持っているがゆえに、やはりそこに住む一人一人の一般の生活者や大衆の声に耳を傾ける。耳を傾けてやったっていいじゃないですか。いいことをやっているんだったら、もっと耳を傾けて説得すればいいじゃないですか。

 そういったことをお伺いしたいと思いますが、この点に関しての大臣の御決意を聞いて、質問を終えたいと思います。

冬柴国務大臣 そのとおりでございまして、行政は、国民の目線に立って納得できるように進めるのが肝要であります。私はそのように指導いたします。

松原分科員 ありがとうございました。終わります。

上田主査 これにて松原仁君の質疑は終了いたしました。

 次に、松本龍君。

松本(龍)分科員 おはようございます。松本龍です。

 昨年の六月二十日に、改正建築基準法が施行されました。確認申請が大幅におくれるなど、多くの問題が発生をしてまいりました。耐震偽装を発端として、建築物の安全性の確保を図るという視点は理解できるのですけれども、いろいろな人の話を聞いてみても、今各地域で悲鳴が上がっている、あるいは青息吐息で頑張っておられる、そういう声をずっと聞いております。

 去年の後半、日本のGDPのマイナスに少なからず影響してきたこの問題について、まず、大臣の御所見をお聞きしたいというふうに思います。

冬柴国務大臣 建築行政を所管する者としまして、いろいろ一生懸命やっているにしても、このようなことが起こったことに対しましては国民に対して心からおわびを申し上げなければならない、このような気分でいっぱいでございます。

 こういうものを一日も早く取り戻すべく現在も努力をしているところでございますが、その過程で中小企業者が資金繰りに、我々もいろいろ手当てはさせていただきましたけれども、倒産した方々も出ているということを知るにつけ、これは本当に心からおわびを申し上げなければならないというふうに思っております。

松本(龍)分科員 今、おわびをされました。また、私も中小零細企業の皆さんに友達が多いんですけれども、いろいろな話を聞いて、もう建設業をやめようかな、しばらく不動産で食べていこうかなという人たちも結構おられました。とりわけ体力の弱い中小零細企業に今深刻な打撃を与えています。住宅着工戸数は少しずつ回復をしているというふうに言いますけれども、とりわけ去年の六月から十月、十一月にかけての四カ月間、五カ月間のおくれは、これは一つの会社としては取り戻すことができません。そういう意味ではしっかり目配りをして、冬柴大臣は現場主義をとられておりますので、現場の声をしっかり聞いて、これから速やかにさまざまな問題に対処をしていただきたいというふうにまず冒頭お願いをしたいと思います。

 具体的にお伺いをいたします。

 確認申請が滞っている原因の適合性判定機関、いわゆる適判でありますけれども、このピアチェックは、建築士事務所協会の調査では、構造設計適合性判定のうち五二%が二階建て以下の低層建築物であり、三階から五階建ての中高層建築物が三一%、六階建て以上の高層建築物が一七%だったとあります。この導入のきっかけとなった構造計算書偽造は主に高層建築物で起こったのでありますけれども、このパーセントを住宅局はどのように思われているか、想定の範囲内だったかということをお聞きしたいというふうに思います。

和泉政府参考人 今委員御指摘のように、もともとこの構造計算適合性判定は、例の構造計算書偽装事件を受けて、大規模な建物をダブルチェックしようといった趣旨でございました。

 その際、当時の議論でございますが、いわゆる難しい構造計算、こういったことで切り分けよう。その結果、専門用語で恐縮でございますが、いわゆるルート二、ルート三、こういった計算を要する建築物を対象にしよう。その結果、今委員御指摘のように、いわゆる四階建て以下の鉄骨造あるいは二十メートル以下のRC造であっても、例えば鉄骨造ですと非常にスパンが長い、あるいはRC造ですと一階にピロティーを持っている、こういったものは結果としてルート二、ルート三に入ってしまう関係上、そういった数字が実態として起きておる、こういった状況でございます。ただ、ルート二、ルート三を入れることに伴って小さなものでも適判の対象になるものがあるということは、当然、当初から想定してございました。

松本(龍)分科員 半分以上が例えば一戸建てだったということは想定しておられましたか。

和泉政府参考人 その典型が沖縄でございまして、沖縄県の場合には気候の関係もございまして、ほとんどの住宅がRC造でございました。しかも、ああいった気候風土でございますので、ほとんどの住宅が一階はピロティーといった構造でございまして、これがすべて結果としてピアチェックに行ってしまった。これは率直に言って、当時そこまで行くかということについては想定してございませんでした。

 これにつきましては、いわゆるピアチェックをしなくて済む方法として大臣の図書省略認定という制度がございまして、沖縄県の県庁、あるいは沖縄県の事務所協会等と相談しまして、過日、そういった小規模な二階建て以下のRC造でいわゆるピロティーを持っているものについての手続の円滑化を図ってまいった、こういった状況でございます。

松本(龍)分科員 今、少しずつ改善をされているというふうに私は理解をしました。

 しかし、本当に体力の弱いところほどこういう問題が深刻になってきている。沖縄では、設計士の数も少ない、あるいは工務店とかいっても二、三人でやっておられる中小零細企業であります。そういったところにこの問題のしわ寄せが行っているということに大きな問題がある。あるいはピロティー形式、RC造ということでありますから、台風が来る、雨が多い中でこういう建物ができている、そういう意味では伝統構法であるというふうに思います。そういったところにしわ寄せが来ているのが一番の問題だろう。これをしっかり現場の状況を聞きながら、緩和措置なりさまざまな対応をとっていただきたいというふうに思います。

 つまり、この問題は、施工業者が言っているんですけれども、最終的には建て主がきつい思いをするんだ。つまり、工期がおくれる、あるいはコストが高くなる、そういう意味では最終的に施主さんにかかってくる、エンドユーザーにかかってくる。つまり、日本経済に対して大きなマイナス要因になってきている。このことをしっかり、流れを速やかにしていくのが私は今の国土交通省の責任だろうというふうに思っております。

 適判の関係でいえば、例えば構造設計者が、今まで月に三、四件仕事をしていた人たちが、一、二件になってしまう。つまり、減収になるわけですから、その減収分をどこで補うかというと、単価を高くしなければならない。平米四百五十円だったのが平米千円になってくる。つまり、それが今度は設計元請にかかり、施工業者にかかり、施主さんにかかり、エンドユーザーにかかってくる。つまり、こういう仕組みをやはりどこかで断ち切っていかなければならない、このことを鋭意お願いしたいというふうに思います。

 そういう意味では、去年の六月二十日から始まっておりますから、エンドユーザーはまだコストの問題に気がついていないと思うんですね。ですから、そういう問題がこれから出てくる。そういったところに対処をしていただきたいというふうに思います。

 参考でありますけれども、いろいろなシンポジウムとかがあって、ある人は、建築基準法が日本の木造建築をだめにしている、書類の厳格化は構造設計の自由度を奪うとか、伝統構法の木造住宅や混構造の建物、あるいは今、Rをつけたりセットバックしたり、さまざまなことをやると物すごく時間がかかる、物すごく困難である、だから左右対称の四角い建物しかこれから日本では建てられないんじゃないかというふうな懸念を持っている人たちもたくさんおられます。そういう意味では、そういうことも含めて、日本の伝統あるいは町並み、こういったものを守るための作業をどんどん現場の声を聞きながら進めていただきたいと思いますけれども、もう一度御答弁を願います。

和泉政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、今回の事件に伴って構造基準を明確化しました。

 これは、本来ならば適切な設計をしている構造設計士であれば当然やったことをやらないでなるべく経済設計する、その結果として、基準法上は適法なんですが、普通に考えるのはなかなか厳しい。そういったものについて明確化した結果、やはり躯体のコストが若干上がってございます。ただし、当時の経済設計と比較してどのくらい上がるのか私ども試算しましたが、一定程度上がるわけでございますが、躯体の全体に占めるパーセンテージは二%ぐらいかなと踏んでおります。

 加えて、委員御指摘のように、今回の改正でやはり作業がふえました。これについては、現在、社会資本整備審議会において、建築設計事務所の業務報酬基準の見直しをしてございます。従来は、簡単に言うと建物の総金額に合わせて全く設計なり区分しないで何人日としておったわけでございますが、今後は、建物の用途の区分と床面積に応じて、意匠、設備、構造、統括と分けまして、そのおのおのについて必要な人日を出すというような形で適正な設計業務報酬が払われるように措置してまいりたい、こう思っております。

 また、木造建築の問題も問題でございますが、これは、私どもは一生懸命やるつもりでございまして、平成十八年の住生活基本法の中でも、あえて、先生方の御指摘も踏まえて日本の伝統的な木造建築技術の継承といったことは国の責務である、こういった言い方をしております。

 ただし、従来の建築基準法は仕様規定なものですから、おっしゃるように伝統的な構法の木造建築はつくりにくい。逆に、しっかりとした支援をすれば、現在は性能規定化でさまざまな古来の技術等をちゃんと受けとめられるような仕組みになっておりますので、今そういったデータベースづくりもしております。そういった意味でしっかりと取り組んでまいる所存でございます。

松本(龍)分科員 私もいろいろな人の話を聞いて、少しずつ改善はされているという話も聞いております。住宅着工戸数も少しずつ伸びてきているという話も聞いている。ただ、基本的に、去年のおくれた四カ月、五カ月は取り戻せないということを前提に、そこから今滞っているんだ、この流れを速やかにして、現場の声を聞きながら鋭意作業をやっていただきたいというお願いであります。

 それと、私もこれはなかなか難しくていまだに理解できないでいるんですけれども、平成十九年国土交通省告示五百九十四号第一の二に、状況に応じて適切な組み合わせが複数存在するときは、それらすべての仮定に基づき構造計算をして安全性を確かめなくてはならないと。よくわかりません、これは物すごく抽象的な表現で。この文言について、判定員の考えでどうとでもとれるような状況が今発生をしているという話を聞いてまいりました。もっと具体的な表示をしてほしい、具体的な表現にしてほしいという要望を各地で聞いているんですけれども、この件についてお答えを願いたいと思います。

和泉政府参考人 そもそも基準法は非常に技術的な分野でございますので、もともとはもっとアローアンスがある規定ぶりだったわけでございます。今回はそれをかなり明確化した。そうはいっても、現在、今委員御指摘のようになかなか明確化し切れない部分がある。

 今委員が読み上げた部分というのは、その趣旨は、例えば構造計算をするときに構造部材をモデル化するわけでございます。モデル化しないと計算できない。そのときに、そのモデル化する方法として、例えば垂れ壁みたいな非耐力部分を構造部材に取り込んでモデル化する場合とそういうものを全部捨象してモデル化する場合、どっちが安全かというのは必ずしも甲乙つけられないという力学的な問題がございます。そこで、そういった状況を踏まえて、そういう垂れ壁等の非構造部材を入れる場合のモデル化と一切捨象するモデル化と両方ある場合については、両方チェックしてほしい、こういった趣旨でございます。

 ただ、いわゆる適判がスタートしたばかりでございますし、判定員もなれておりませんので、現場で委員御指摘のような混乱が、もっと加えて言えば、本来の趣旨は建築基準法に合うかどうかだけを見るのが趣旨でございますが、適判員がいわゆる推奨基準をお勧めしたりする、こういった混乱がございました。これにつきましては、現在、国土技術政策総合研究所並びに建築研究所で適判機関から疑義があるときには全部メールサービスで逐一回答する体制を整えまして、加えて言うと、そういった積み重ねを一種の範例集として取りまとめて各適判機関に交付する、こういった作業をしようとしております。

 いずれにしましても、メールでのやりとりは今既にオンラインでやっておりますので、そういったことを通じて委員御指摘のような混乱が最小限になるように引き続き努力してまいりたい、こう考えております。

松本(龍)分科員 適判については、各県さまざま違います。さらに、適判をされる方の力量あるいは個人差によってさまざま変わってくる。いずれにしましても、決まっているのはしっかり守らなければならないということで自分には厳しく厳しく今やっているのが現状で、つまり、その厳しさが全部業者の方にはね返ってきている。そういう意味で、これはたまらぬなという声が結構聞こえてきているんです。ですから、そこのところも勘案していただいて、鋭意取り組んでいただきたいなというふうに思うわけであります。

 それともう一点、増築の問題があるんですが、この問題でいろいろなことを聞いてまいりました。

 この新建築基準法で増築が非常に難しくなった。増築工事で確認申請をする場合は、既存の建物の検査済証がなければ受け付けてもらえない審査機関があって、増築を断念することが多い。あるいは、増築工事をする場合には、エキスパンションジョイントで既存の建物と構造上の接合がない増築の場合であっても、耐震性能上の安全を確かめるか、現行建築基準法に適合しているかを検討しなくてはならない場合があって、これも現行建築基準法をクリアできない場合が多い。つまり、既存の建物の審査をしなければならない。

 そういう意味では、病院の増築とか店舗の増築とか、そういったものが物すごくできにくくなっているという話を聞いているんですけれども、この点についてはどうですか。

和泉政府参考人 委員御指摘の問題は、まず、本質的には、建築基準法の中にある既存不適格という概念に根差してございます。

 従来は、その既存不適格部分については、増改築しなければそのままでいいですよ、適法ですよ、そのかわり増改築した瞬間に全部直せといった規定でございました。それは委員御案内のように、平成十六年に全体計画認定で、段階的にやってもよろしいということとか、あるいは特に構造に関して言うと、エキスパンションジョイントで区切られている場合については、一定範囲でございますけれどもその増築をやりやすくするとか、そういった規定を導入したわけでございますが、今回の混乱は、いわゆる構造基準を明確化した結果、新耐震基準以降につくられた建物でも、子細に見ると一部合わない、こういったことが出てしまった結果回らない、こういった問題だと思います。

 これにつきましては、大臣の指示を得まして、今般、既に技術的助言を出しまして、従来は全体計画五年でやりなさいよと言っておりましたが、これを最長二十年までかけて順番にやればいいとか、あるいはエキスパンションジョイントで切っておって本体が新耐震基準以降であれば、細かい基準は合わない部分もあるかもしれないけれども、本体部分についての詳細な図書については一緒に出さなくてもいい、こういった通達を、過日、四月十七日でございますが、大臣の指示を得て出しました。これは現場の方にしっかりと周知徹底してまいりたいと思います。

 特に、現場では審査機関といわゆる設計、事業側とが協議会を設けておりますので、そういう協議会の場を通じて、私ども、そういった趣旨をしっかりと伝えてまいりたいと思っております。

松本(龍)分科員 いずれにしても、例えば三十年前にできた公団とか、あるいは六月二十日以前に建てられた郡部の方の建物とかというと、ほとんどが建築基準法違反なわけですよね。ですから、そういうことを勘案していきながら、そこのところで何をしなければならない、この町をどうしていかなければならないということを、やはりしっかり現場を見ながら判断していただきたい、このことは強く要望したいというふうに思っております。

 それと、先ほども申し上げましたけれども、いろいろな意味で、この柱を大きくしろ、このはりを強くしろ、こういったことが出てきています。つまり、建物の安全性を守るためには、当然はりが大きくなったり柱が大きくなったりするわけですけれども、今びっくりするぐらいの柱の大きさになってきている。つまり、それはある意味ではコストアップにつながっている。

 あるいは、こういう話も聞きました。ある自動車会社では、はりの位置を変えるたびに設計変更、やり直しで、これを断念したというふうな話があります。つまり、工場とかというのは、つくりながらここをこうしよう、ああしようと言いながらいろいろつくるわけですけれども、それもできなくなった。設計をやり直せということになって、何かフレキシブルさがなくなってきて、本当の使い勝手のよさがなくなってきているという話も聞いています。

 つまり、コストアップすれば、賃貸物件であれば家賃が高くなりますし、分譲マンションであれば売り値が高くなります。コストアップは最終的に一般消費者に負担が行きます。そういう意味では、部材が大きくなることは、ある意味では、国土交通大臣もよく言われるように、製造過程においてCO2の排出量もふえることになり、環境問題にも逆行しているのではないか。まだこれから出てくる問題に対しても、やはり速やかに対処をしていくことが必要だと思うんです。そういうコスト高、これはタイトな建物をつくるためにはコスト高は仕方がないんですけれども、必要以上のコスト高みたいなことに今さらされている。

 そういった現場の声を大臣にお届けしたいんですけれども、そういう話を今まで聞かれてきて、そういう状況を見て、大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。

冬柴国務大臣 私は阪神・淡路大震災を経験しているものですから、そういうことが再び日本で起こることがないように、しかし、天災は避けることができません。したがいまして、天災を受けたときに、その被害を最小限に抑えるためには、平素から多くの犠牲と申しますか、そういうものも払わなきゃならない。既存不適格建築物についても、それがある限り、これをどうこうせいということは言えませんけれども、一たん震災が起こればそういうところから崩れるわけですね。そういうことを考えますと、それに手をつける場合には少なくともそれは直してもらいたい、新しい建築基準の耐震構造を備えたものにしてほしい、これは我々も思うところでございます。

 しかし、反面、それが国民に負担をかけることにもなります。また、意匠から見ていかがかと思うようなものもお願いしなきゃならない部分もあります。したがいまして、ここはどういうふうな兼ね合いでいくのか。

 ただ、我々としては、安全で安心な町をつくっていくということを最優先させながら調和を図っていかなければならない。非常に難しい作業ですけれども、そういうことを一生懸命やらせていただきたいと思っております。

松本(龍)分科員 十三年前の一月十七日、私も当時与党でありましたから、阪神淡路震災復興のプロジェクトの座長を務めさせていただきました。村岡先生と谷先生と私の三人でやったんですけれども、本当に、そのときの国土交通省は住宅局も都市局も、みんなそれぞれ下着を霞が関に届けてもらったりしながら、昼夜を分かたず頑張っておられた姿を私は目の当たりにしております。そういうときの努力を私は知っておりますから、そういう意味では、今のこういった新建築基準法に対する悲鳴みたいなものもしっかり聞いていただきたい。

 私は十数年ぶりに国土交通省に対して質問をしました。それだけ現場の声が悲痛になってきている。ある意味では、不良不適格業者も排除していかなければならない、しかし、やはりこういう過剰な厳格化もどこかで見直していかなければならない、そういうお願いをさらに強くしておきたいというふうに思っております。

 それと、ちょっと頭の体操といいますかブレーンストーミングですけれども、高速道路の料金システムについてお伺いをしたいんですが、恐らく費用対効果あるいはコストに対する関係で料金が設定をされていると思うのですが、どんな方法で今高速道路料金は設定をされているんですか。

宮田政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的には、四十五年間でかかった費用を償還するということでございまして、その前提には大きな要素が二つあろうかと思います。

 一つは料金をどういう設定にするかということと、もう一つは将来も含めた交通量をどういうふうに設定するかということでございますが、かかった費用と維持管理に要する費用を今申し上げたような要素を含めて四十五年間で償還するということで料金を定めてございます。

松本(龍)分科員 恐らくそういう答えだというふうに思いましたけれども、私は、大臣、お聞きになっていただきたいんですが、今、深夜割引、通勤割引とかいろいろな細かな割引があります。一つ、ブレーンストーミングじゃないですけれども、ちょっと大胆に発想して、ある地域だけで高速道路料金を半年間ぐらい半額にしたらどうですか。荒唐無稽な話と思われて一笑に付されてもいいんですけれども、私は、そのくらい大胆な料金設定のシステムをしていった方がいいと思います。

 これは三つあるんですけれども、一つは、今おっしゃったように四十五年間の、今までの積み重ねで来たということは官が定めた料金でありますけれども、官が定めた料金を市場原理にさらしてしまうんです。半額にして、例えば二千円が千円になる。それで通行量が二〇%ふえれば、料金を、これは大ざっぱな言い方ですけれども、二〇%減らしていいわけで、つまり、半年間ぐらいじっくり、官が決めている料金を市場原理にさらしていきながら損益分岐点を見つけていく。これはある意味では新しい料金システムを見つけていく作業が実験的にできる。

 もう一点は、渋滞の問題がどのくらい深刻になるのか、無料にすれば、それこそ昔自民党さんが言っていたように、これは混乱を起こすという話があるかもしれませんけれども、ある意味では半額にすることによってそこのところが流れが見えてくる。

 三点目は、当然、料金が安くなるわけですから、そこで運ばれているものも安くなる。したがって、物流コストが安くなってさまざまな経済効果が上がってくる。

 この三つの効果を考えたときに、やはり半年間ぐらいモニターをして料金を半額にするというふうなやり方が、私はある意味では必要じゃないかと思うんです。そして、このことは全国一斉にはやれませんから、例えば北海道とか九州とか、地方に持ってきて半年間やる。そういう作業を一回やっていただくのも私は一つの考えではないかと思います。

 私は、冬柴大臣は、昔から永住外国人の参政権の問題であるとかさまざまな問題で、非常に頭の聡明な方だと思っております。そういう意味では、今、道路の問題でちょっとお顔も暗いなというふうに思いますけれども、ちょっと明るい話題を検討していただいたらどうですか。そうやって半年間ぐらい大胆にモニターをして、そこの地域を活性化させてやるというシステムを私は考えているんですけれども、このことに対するお答えを聞いて、終わりたいと思います。

冬柴国務大臣 私も、一昨年ですかね、年末に、当時、どういうふうにこの道路施策をするかというときに、国民のニーズの高い高速道路料金の引き下げを行う、ただ、これは道路会社というところに経営をゆだねていますから、そこが主体的に判断するわけですが。そして、先ほど局長も言いましたように四十五年の間に債務を完済するというスキームもあります。したがいまして、政策的に、今おっしゃったような道路料金を引き下げることにより既存の道路の有効活用を図っていく、また住民のニーズの高いその引き下げを実現するためにはどうあるべきかということから、やはり道路保有・債務返済機構の債務を、国家がずっと先の分の債務を一部引き受けることにより、我々の政策的な減額というものを実現しようという結論にしまして、そこへそういうことが可能とするような法律を提案する、今回出しておりますが、そういう思想につながるわけです。

 どこでどれぐらい引き下げるかということにつきましては、通勤だけ割引しても、年間千三百七十億円の減収になってしまうんですね。そういうことを考えますと、今委員が御提案のようにもし半額としますと、自動車がそれによって通行量が倍にふえればこれはイーブンですけれども、それはとても考えられません。そういうことから、社会実験を今一生懸命やっているわけでございまして、その結果を分析しながら、できるだけ大胆に、住民のニーズにこたえられるような料金体系がつくられることを私としては期待をしているところでございます。

松本(龍)分科員 社会実験をしていると言われました。でも、ちまちまとやるんじゃなくて、積み重ねてきたコストじゃなくて、今、市場に一回その料金をさらしてみることが大事だろう。

 例えば倍にふえるということはありませんよ、当然。ですから、そこは二〇%ふえたら二〇%減らしましょうという一つのモデルができるわけですから、そのモデルをつくるのは非常に大事だなということを申し上げたので、誤解のないようにしてください。

 きょうは、ありがとうございました。

上田主査 これにて松本龍君の質疑は終了いたしました。

 次に、大串博志君。

大串分科員 おはようございます。衆議院議員の大串博志でございます。

 きょうは、冬柴大臣の時間をいただきまして、議論をさせていただきたいと思います。

 私はきょう取り上げたいと思いますのは、九州新幹線長崎ルートの問題と城原川ダムの問題、そういう公共事業のあり方に関する問題に関して議論をさせていただければというふうに思う次第でございます。よろしくお願いいたします。

 時間が三十分しかありませんので、手際よく質問していきたいと思いますけれども、まず九州新幹線長崎ルートでございます。

 この路線は十六年の十二月に政府・与党申し合わせができまして、調整が整ったところで着工するという形になっておりました。これに関しまして、並行在来線の経営分離区間の県における調整に非常に時間がかかりまして、着工が延び延びになっていたわけでございますけれども、昨年の十二月の佐賀県、長崎県、そしてJR九州の三者合意というものを経て、これが動き出したというのが事実関係でございます。

 その中で、ことし二月には、地元の江北町におきまして町長選が行われ、新幹線の建設は大きな争点となりました。結局は、新幹線の建設に反対を唱える現職町長さんが当選されたわけでありまして、町の声としては、新幹線反対という声が非常に大きかったということが如実にあらわれたわけでございます。

 ただ一方で、昨年十二月の三者合意を受けた形で、この江北町より南の、江北そして白石、鹿島、太良、そこに向けての路線は経営分離路線じゃないんだという決めでございましたので、江北町のこの声は新幹線の着工には結局影響を及ぼさないという形に整理され、着工認可という形になっているわけでございます。

 この一連の経過、町の声が出ているにもかかわらず着工認可という形になっている、これに関して、冬柴大臣、御所見をまずいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 ここは、決定をしながら、予算も計上していたんですけれども、地元の調整ができないということで、並行在来線ができた場合に、その利害関係を有する地方公共団体の同意が必要であるということを我々政府・与党合意の中に入れたものですから、それを墨守いたしまして、当時は江北町だけではなしに鹿島市も反対をされました。そういうことから着工が延び延びになって、予算は計上するけれども着工ができないという状況が続いておりました。その一市一町を除くところは、利害関係度は違うとしても、大変これについての要望が強かったわけでございます。

 私の方へも、毎年というよりも年に何回も長崎県知事及び佐賀県知事がお見えになるんですね、早くやってほしいと。早くやってほしいと言ったって、反対を無視してするわけにいかないじゃないですかということでやりとりがあったわけでございますが、JR九州が、引き続いて、現在と同じように営業を続けるということを決断してくれました、これには大変な犠牲も払うことになるんだろうと思うんですけれども。そしてまた、それに対して両県も協力をしていくという話になったようでございます。そういたしますと、現在までの鉄道が現状で経営が続けられるということになれば並行在来線ということの概念が変わってまいります。したがって、利害関係を有する市町村という範囲も変わってくるわけでございまして、そういう意味では、江北町も鹿島市も鉄道に関する利害関係者ではなくなったわけでございます。

 しかしながら、私は、こういうふうになったとしても、ぜひ皆様方の祝福をいただきながら、この新幹線が無事でき上がって、そして、多くの方々がそれによって多くの利便と安全性を確保できるようなことになるように、心から期待しているというのが現状の気持ちでございます。

大串分科員 きょうは委員長の御了解をいただきまして資料を配らせていただいておりますけれども、ポイントは、肥前山口駅から諫早に向かう路線が経営分離対象であるかどうか。ここが、反対をしておった市町においては、意見を物申す機会があるのかどうか、その立場を与えられるのかどうかという非常に大きな分水嶺だったわけでございます。

 その経営分離に当たるのかどうかというところをきちんと検証しなきゃいけないと思いますけれども、資料の五ページにありますが、十九年十二月十六日にいわゆる三者合意というのが成りまして、両県及びJR九州の合意の中で、一にございますけれども、「肥前山口―諫早間全区間を経営分離せず、」こういうふうに書いてあります。「経営分離せず、」とここにある三者は合意しているわけでございますけれども、当然、国の方は十六年の十二月の政府・与党合意の中で並行在来線、経営分離に当たるところに関しては了解を得て進めなければならない、そういうスキームがあるわけでございますので、国の方としても、この三者合意の中に経営分離でないと書かれていることが本当に経営分離でないのかということはちゃんと認定する必要が私はあろうかと思うのです。

 国の方にお尋ねしますけれども、なぜ、今回、この三者合意に決められたことをもってして、肥前山口から諫早においては経営分離でないという判断ができるのかどうか、そこのところを詳しく教えてください。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 先生がお配りいただいた資料を参考にしながら御説明申し上げたいと思います。

 まず、御指摘の九州新幹線長崎ルートに関する三者合意、これは、先生が今御指摘いただいたページの中にも書いてございますように、JR九州が、並行在来線である「肥前山口―諫早間全区間を経営分離せず、上下分離方式により運行することとし、開業後二十年間運行を維持する。」ということを内容とするものでございます。

 新幹線開業後の並行在来線区間の運行形態につきましては、JR九州は、普通列車を運行し、運行本数は現行程度とするということ、そしてまた、運賃はJR九州の運賃体系をそのまま適用するということが、これまた三者で合意されているところと承知しているところであります。

 整備新幹線に関する累次の政府・与党の申し合わせにおいて、並行在来線の経営分離についての沿線地方公共団体の同意が着工の基本条件とされておりますが、その趣旨というものは、地方公共団体が、新幹線の整備に伴う費用を負担するということ、そしてまた、いわゆる新幹線が開業後の地域公共交通の確保に責任を持つお立場にあるということであるというふうに考えております。

 したがいまして、今回、JRが引き続き運行し、それから、地域における公共交通が確保されるというふうになると考えられることから、沿線地方公共団体の同意を必要とする並行在来線の経営分離というものには当たらないというふうに解釈し、同意は不要というふうに判断したものでございます。

大串分科員 先ほどから繰り返し申しておりますけれども、該当する江北町、鹿島市においては、もちろん白石町そして太良町もそうですけれども、経営分離路線に当たるかどうかというのは、この市町が新幹線建設に関してちょっと待ってくださいということを言える権利、立場を持つかどうかという非常に大きな、いわゆる地方自治という観点からすると、大きな大きな分水嶺でございます。

 ですから、経営分離に当たるかどうかという判断も、漠とした判断基準ではなくて、きちっとした理屈、理由そして正当性、合理性を持って判断されなければならないと思います。先ほどおっしゃったような、JRが引き続き肥前山口から諫早まで運行するんです、運行形態も同じです、こういうふうなことが経営分離でないということの理由であるならば、私がさらに疑問に思うのは、この三者合意が成る前、十六年の十二月に政府合意ができたあたりからそれ以降、その段階で計画されていたスキームは、江北町から鹿島までは、今回、三者合意でなされたスキームと同じなんです。

 すなわち、運行はJRが行う、軌道等の施設に関しては自治体が保有、管理する。江北町から鹿島までのところは、以前のスキームとこの三者合意のスキームは全く同じなんです。それが資料の五ページと六ページのところに書いてあります。

 六ページにおいて、いわゆる十六年の政府・与党合意のときのJRの考え方、すなわち、肥前山口から肥前鹿島までは、どう書いてあるかというと、上下分離し、インフラに関しては佐賀県、長崎県が保有し維持管理を行う、運行はJR九州が行い、特急、ローカル列車を運行すると書いてあります。

 五ページに戻っていただくと、この三者合意に書かれていることも、肥前山口―諫早間全区間において、経営分離せず上下分離方式、これは全く同じでございます。運行形態に関しても、先ほど局長がまさにおっしゃった、同じでございます。

 なぜなんでしょうか。なぜ、江北町から鹿島に関しては、以前は経営分離であるというふうに認定されていたにもかかわらず、今回は経営分離でないというふうに認定されるのか。この辺が県の皆さんの非常な納得のいかない感を醸し出しているわけでございます。ぜひ明確な答弁をお願いしたいと思います。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 九州新幹線の長崎ルート武雄温泉―諫早間の並行在来線区間の運営のあり方、これにつきましては、先生おっしゃるように、平成十六年の政府・与党申し合わせにおいて、「長崎県の協力を得ながら佐賀県において検討を行う」というふうにされておりまして、昨年十二月の三者基本合意までの間は地元で調整中であったというふうにとらえてきたところでございます。その調整を、国としても、地元の調整として見守ってきたという状況でございました。

 ちょっと言葉をかえて申し上げるならば、三者合意以前におきましては、肥前山口―肥前鹿島間を含めまして、並行在来線の取り扱いについて、いわゆる、地元においてすべて合意した、確定した枠組みはなかったというふうに承知しているところでございます。

 そういうことから、国交省といたしましても、これまで累次の答弁におきまして、一般論としてでございますけれども、並行在来線が経営分離される場合について、政府・与党申し合わせの着工基本条件の一つである「並行在来線の経営分離についての沿線地方公共団体の同意」に言う「沿線地方公共団体」には、道府県のみならず市町村も含まれるという趣旨のことは毎度申し上げてきたことでございますけれども、これが直ちに、並行在来線の取り扱いについて地元で調整中の段階の中で、経営分離について江北町の同意が必要であるというような具体的な判断をしたということを意味していたわけではございません。

 したがいまして、先生の御指摘はちょっと当たらないのかなというふうに思っております。

大串分科員 大臣、今鉄道局長がおっしゃったことは極めて佐賀県としては衝撃的なステートメントでございます。

 なぜならば、今おっしゃいました、三者合意の前の段階においては国として地方の地元調整を見守る段階にあったので、その段階における、どこが経営分離区間であって、どこが経営分離区間でないということに関しては見守っていた段階、要するに、うちとしては判定していなかったというふうなステートメントでございます。ところが、県で何が行われていたか。江北町、白石、鹿島、太良、この区間において、これがみんな、佐賀県、全県民と言っていいと思います、ここが経営分離区間に当たるというふうに認識し、実際、県もこの四市町に対して、同意をしてもらえないかという働きかけを一生懸命行っていた。事実として行われていたんです。それを、今になって、いえいえ、三者合意前はこれらの地元調整を見守っていた段階なので、国としては、ここが経営分離かどうかは、私たちとしては手を離しておりました、知りませんでした、関与しておりません、判断しておりませんというのは、佐賀県民にとってみれば非常に衝撃的なステートメントでございますし、私は今のステートメントも何となく納得がいかない感じがします。

 なぜならば、実際、国会答弁において、平成十八年三月一日、前の鉄道局長の梅田局長、これは資料の八ページでございます。私の質問に対してこう答えていらっしゃいます。下線の部分でございますけれども、「長崎ルートでございます。地元では、最近、西九州ルートというふうに呼んでいるようでございますが、現在も、佐賀県が、並行在来線の経営分離についての地元調整に鋭意努力していただいております。最近も、反対していた沿線一市二町のうち」、これは一市が鹿島市、二町というのは江北町、太良町でございます、「うちの一町」、これは太良町でございます、「が同意に転じるなどの動きが見られているところでございます。」と言って、国はこれを認め、明らかに是認されている。このような発言。

 そして、大臣御自身も、その次の資料、九ページでございますけれども、同じように述べていらっしゃいます。これは昨年十二月十八日の大臣の記者会見でございますけれども、質疑応答と書かれているところの問い、答えとある中の答えの上から五行目でございますけれども、「一市一町」、これは江北町、鹿島市ですね、「それは納得できない、受け入れることはできないということなので、今まで着工することができずにいる」と認めていらっしゃいます。

 このような中で、今の鉄道局長の発言は大いに矛盾もしますし、県民にとってはどうかなという思いを招来せざるを得ない。どうですか、大臣。どういうふうな御所見をお持ちですか。

冬柴国務大臣 従来から、武雄温泉―諫早というところへフリーゲージトレーンという新しい線を引きますと、そこをJR九州が経営することになります。したがって、現在、江北町あるいは今の鹿島市を通っている長崎本線、そういうところは廃止せざるを得ない、もうJR九州としては両方ともやるわけにいかないということから、このフリーゲージトレーンをそちらの方へ、武雄温泉―諫早というところへ回すのであれば、こちらの方は、地元でやられるのであればやってください、もうJR九州としてはできません、こういう立場で、したがって、それが並行在来線ということになるわけです。(大串分科員「の経営分離ですね」と呼ぶ)ええ。

 ところが、今回、武雄温泉―諫早をつくりますが、今までの長崎本線もJR九州が従来どおり運行いたしますと変更されたわけですよ。そうすると、これはいわゆる新幹線を敷設することにより廃止される線ということでなくなります。したがいまして、そこの地方公共団体は、在来線の経営を負担をしながらこれを運行するという責めを免れるわけですね。したがって利害関係はなくなる、そういう関係であろうというふうに私は思いますよ。

大串分科員 大臣、ぜひ深く町の現状を御理解いただきたいと思います。

 四ページの資料でございますけれども、これは国土交通省の方からいただいた資料でございます。見ていただきますと、今回の並行在来線を経営分離するか否かという区間は、ここにもございますように肥前山口から諫早まででございます。先ほど大臣おっしゃいました、今回はJRが肥前山口から諫早まで運行する、もちろん鉄路の部分、資産等に関しては両県で保有するけれども、運行はJRがするんだ、だからこれは経営分離じゃないんだとおっしゃいました。

 それに対して私が申し上げているのは、以前のスキームにおいても、この肥前山口から肥前鹿島までは同じくJRが運行するということになっていたんです。江北町の方々にしてみると、以前と今は全く何も変わらないんです。にもかかわらず、以前は意見を言わせてもらえる立場にあった。先ほど局長は、その辺に関しては国は関与しないとおっしゃっていますけれども、国会答弁では明らかに矛盾する答えが行われている。江北町の方々はそれを信じて、私たちは意見が言えるんだというふうに思っていらっしゃった。三者合意において何らスキームは、江北町の方々にしてみると変わらない。ということは、鹿島以降の方々に関しても、実は余り変わったスキームにはなっていない。すなわち、将来の、いわゆる鉄路の利便性といいますか、生活の足としてしっかり存続してくれるかという思いに関してこたえるという観点からすると、余り変わっていないんです。

 大臣、いかがでしょうか。JRが運行するというその一言をもってして片づけるには、以前と今、肥前山口から鹿島まで何にも変わらないんです。ここに対して、住民の皆さんにぜひ思いをいたしていただきたいと私は思います。

 住民の皆さんがここまできちっと内容を見て、そして選挙でもその声を投じて、鹿島市の皆さんも、その前にも市長選もありました。そこでも新幹線反対の市長さんが当選されて、市民の声が出ておるわけでございますけれども、なぜここまで市民、町民の方々が一生懸命考えるかというと、大臣も恐らく御理解になると思います。やはり地元の交通の足でございますので、それを確保してもらいたいという真摯な地元の声でございます。

 新幹線、今回認可されております。今後の動きに関して見守っていきたいと私も思いますけれども、新幹線ができる、その中で、住民の皆さんがなぜこんなにそれを注意して真剣に見られるかというと、自分たちの生活の足が確保されるのか、交通の利便性から、そしてそれが地域に与える影響等々、長い将来に思いをいたし、自分たちの町が今後も交通の利便性を得て、そして発展していきたいという思いからだと思うんですね。

 そういう思いを踏まえるならば、そして、大臣は先ほど答弁の中でも言っていただきました、祝福された形で新幹線は進められるべきだと。私もそう思います。そういう思いからすると、地元の交通の利便性を確保するというこの大目標に関して、国土交通大臣として日本全国に対して大きな責任をお持ちでございます。これに関して、この地域に関して、交通の利便性をきちっと確保していただける、そういうふうな思いを皆さん求めていらっしゃるわけです。その辺に関して、大臣、地方の皆さんへかける言葉、御所見、いかがでございますでしょうか。

冬柴国務大臣 私は決して利便性を奪うような鉄道経営を行うことを是認するものではございません。

 この問題につきましては、佐賀県知事は再三私の方にも来られまして、そして、こういうふうに決定したということについても、私が決定するというよりは、政府・与党でその要件には十分充足したという判断をしていただきまして、そして、三者でこのような確認をされましたから、我々は、それではこれでやっていただきましょうということをしたわけでありまして、別に礼を言ってもらうものは何物もないんですけれども、皆さんから物すごく感謝の言葉を、わざわざ東京までお見えになりまして、そのようなお話もございました。

 ですから、鹿島の市長さんも、随分これは長い間、江北町の町長さんと反対しておられましたけれども、この決定は是認をいただきまして祝福をいただいた、これは御存じのとおりだと思います。

 したがいまして、私どもは、こういうふうになったからといって決して利便性が害されるとかいうことにならないように、今後も努力をしていきたいというふうに思っております。

大串分科員 ありがとうございます。

 地域の皆さんは、新幹線が認可されて、それを受けて、もし新幹線がこのまま認可されてでき得るという流れになっていくのであれば、それを踏まえた上での考えをしていかなければならないという、ある意味で苦渋の決断といいますか、市民、町民の将来を考えて、乗り越えて考えていこうという心をあえてつくっていこうとされているところなんです。

 ですから、大臣、地域の皆さんの思いも踏まえていただいて、最後に大臣もおっしゃいましたけれども、交通の利便性が、交通というといろいろあります、もちろん鉄道もありますし、それ以外の交通もいろいろございますけれども、大臣が所管されている交通の利便性が将来もきちっと維持されるようにしっかり取り組んでいただきたいというふうに思う次第でございます。

 その中で、大臣にまた一つ御所見をお尋ねしておきたいんですけれども、その後に、資料の一番最後のページなんですけれども、認可をとった後に与党の方々から、今フリーゲージトレーンというもので計画されているこの計画に対して、ミニ新幹線方式でやるべきでないかとか、あるいは、今踏切の高架というものは計画に入っていないわけでございますけれども、踏切の高架というものも考えた方がいいんじゃないか。当然費用が上がるわけでございます。

 こういうふうなことも踏まえて、後出しのような意見が出されておりますが、いいものはどんどん取り込んでいっていただきたいと思うんです。これが後から後から、いいものはどんどん取り込んでいただきたいと思うんですけれども、まさか佐賀県にまた新たな負担を取り込むようなものにならないか非常に懸念する声もございます。

 大臣、後からいろいろな声が出てくることに関してどういうふうな御所見をお持ちか、いただければと思います。

冬柴国務大臣 それが地域全体の完全な望みであれば考えなきゃいけませんけれども、我々は、せっかく今までやってきたフリーゲージトレーンということで考えているわけでございまして、どんな政治家が何を言おうと、それはその方の御意見でありましょうけれども、私どもはそれによって左右されることはございません。

大串分科員 ぜひ佐賀県全体の、県地域全体の声を聞いていただければというふうに思う次第でございます。

 次の議題に移らせていただきます。城原川ダムでございます。

 城原川についても、過去何回か取り上げさせていただきました。これも、地域の皆さんが本当に必要なんだろうかという声を上げていらっしゃる、また署名活動も続いている、そういうふうな事業でございます。現在、調査事業が行われておって、調査事業の結果を踏まえてどうするか考える、そういうふうなダムの事業でございます。これに関して、現在の進捗状況を、局長で結構でございますので、よろしくお願いします。

甲村政府参考人 城原川ダムについてのお尋ねでございます。

 城原川ダムにつきましては、昭和五十四年度に実施計画調査に着手いたしまして、それ以降、城原川流域委員会、城原川首長会議、あるいは佐賀県知事等の御意見をお伺いいたしまして、平成十八年の七月に筑後川水系河川整備計画が策定されまして、治水対策の一環として城原川ダムを建設することとしております。

 城原川ダムの現在でございますが、事業計画の策定に必要な調査、水理水文調査、環境調査、水源地対策調査等を実施しているところでございます。今後とも、関係者と十分協議しながら、建設へ向けての調査の促進を図ってまいりたいと考えております。

大串分科員 これまで取り上げさせていただきまして、住民の皆さんからいろいろな声が出ていることに関して、住民の皆さんの声を丁寧に伺いながら進めてまいりたいというふうに大臣にはこれまで言っていただいているところでございます。ぜひそうしていただきたいと思います。

 なぜならば、これは、県議会においても何度も取り上げられておりまして、今示されている最大災害時には、毎秒六百九十立方メートルのかさの水が流れるということに関して、本当にこれで正しいのか、いろいろな研究結果も考えると、もう少し低い水かさで考えていいんじゃないか、その場合にはダムの建設をまた一から考えてもいいんじゃないか。いろいろな事実、検証等が県議会でも示され、そういう中で、もう一回考え直してみようかという声も上がっています。

 実際、先般の県議会においても、その点を指摘され、知事の方も、お答えの中で、これまでもさまざまな数字や事実の積み重ねで現在の判断をしているところでございますけれども、議員からもさまざま新しい事実の指摘があります、そうしたものの確認をこれからもやっていかなければならないということを改めて感じております、たくさんの人の声もあれば自然の声もあるというふうなことも伺いました、そうしたいろんな声を今後ともこちらとしても拾い続けていきたいと思いますというふうに、県知事さん自身が、地元の皆さんの声を拾い続けていきたいというようなことも述べていらっしゃいます。

 そういうふうないろいろな声がまだまだある状況でございますので、地元の皆さんの声を丁寧に聞きながら進めていただけるということに関して、大臣の御所見を伺いたいと思います。

冬柴国務大臣 前回から申し上げておりますように、地元の住民の方々の御意見は丁寧に伺っていかなければならない、そのように思いますし、そのようにしていただくことにいたしております。

 この筑後川水系河川整備計画の策定に当たりましては、学識経験者や地元の自治体の推薦委員、それから公募委員などから成る城原川流域委員会を平成十五年十一月から一年間かけて十三回開催し、城原川の河川整備にダムは有効であるという提案をちょうだいいたしました。また、流域委員会からの提案を受けて、佐賀県知事は城原川首長会議というものを組織されまして、十一回に及ぶ検討を経て、「城原川の河川整備についての佐賀県の方向性」というものを取りまとめられて、御提案をいただいたところでございます。知事や関係市町村の意見を踏まえまして、筑後川水系河川整備計画の原案を策定し、地元説明会及びホームページなど、さまざまな手段によりさまざまな御意見をお伺いした上で、城原川ダムを含む筑後川水系河川整備計画を策定したところでございます。

 このように、これまでも佐賀県知事や関係市町村及び地域の皆様の御意見をお聞きしながら進めてきたところである、私はそのように確信をいたしております。

 引き続き、城原川ダムの事業実施に当たりましては、佐賀県知事あるいは関係市町村及び地域の皆様の意見を、冒頭申し上げましたように、丁寧にお伺いしながら進めていくという、その姿勢にはいささかの変わりもないということを申し上げておきたいと思います。

大串分科員 今、繰り返し、丁寧に聞きながら進めていくというお言葉をいただきました。ぜひお願いします。

 先ほど申しましたように、いろいろな流域委員会等の議論があった後でも、新たな事実等が提示され、新たな考え方の進み方もございます。そういうものも含めながら、ぜひそれらを踏まえながら進めていただけたらというふうに思う次第でございます。

 ありがとうございました。

上田主査 これにて大串博志君の質疑は終了いたしました。

 次に、神風英男君。

神風分科員 民主党の神風英男でございます。

 本日は、改正建築基準法についてお伺いをしたいと思っておりますが、いわゆる姉歯事件を発端に建築基準法が改正をされました。そして、昨年の六月二十日に施行になったわけでありますが、結果としては官製不況とも言われるような状況に陥っているわけでございます。

 そこで、まず、改正建築基準法施行の影響で、新たな着工ができずに資金繰りがショートしたというような理由によって、いわゆる改正法関連の倒産というのは一体どのぐらいになっているのか、特に、ことしの三月にかけて、その倒産件数が増加するのではないかという懸念が昨年来あったところでありますが、どのように推移をしているのか、まずその点からお伺いしたいと思います。

和泉政府参考人 二つデータがございまして、一つは株式会社東京商工リサーチ、もう一点が帝国データバンクでございます。ともに、破産等の後に、経営者なりあるいは破産管財人が破産等の理由として、改正建築基準法が原因である、あるいは改正建築基準法施行が一部原因である、こういって答えた数字でございます。

 東京商工リサーチの数字でございますが、九月に二件、十月四件、十一月九件、十二月九件、一月十一件、二月九件、三月九件の累計で五十三件でございます。一方、若干対象が違うわけでございますが、帝国データバンクの数字でございますが、十月五件、十一月四件、十二月五件、一月八件、二月十三件、三月十七件、合計五十二件でございます。

神風分科員 こうした状況に対する大臣の見解をまずお伺いしたいと思います。

冬柴国務大臣 今回の建築基準法改正、これは姉歯事件というような衝撃的なことが起こりまして、震度五強で建物が崩壊してしまう、そのような衝撃的なものが発覚をいたしました。それによって、当時は中小企業の建築業者が建てた建物は全く売れなくなりました。

 そういうことから、これに対する国民の安全、安心というものを担保するために手を打つべきであるという声が、当然の話でございますがほうはいとして起こりまして、我々もそれに向けて、多くの学者、経験者あるいは業界の方々の御意見を伺いながら改正法の内容を詰めたわけでございます。民主党におかれましても、これに対して、同じような観点から、むしろ我々がつくったよりももっときつい、もっと厳しい案を御提示いただいたところでございます。

 審議の結果、これは一昨年の六月の十四日に成立をいたしました。その施行期日を一年以内にやるべきである、そうでなければもっと不況になってしまう、そういうようなことからこの施行が急がれたわけでございまして、成立後一年後にということで、昨年の六月二十日に施行をさせていただくことになりました。

 しかしながら、これは大きな法律でございますので、関係する政令あるいは通知というものも六本もありまして、これをつくるにも一々手続が要りますし、そしてまた国民の声も全部聞かなきゃいけないというようなことで、それには一年というのは大変厳しかったんですけれども、しかしながら、国民の要望にこたえるために、本当にほとんど昼夜兼行で作業を進めて施行にこぎつけたわけでございます。

 四月には、全国の都道府県で約一万名規模の説明会もやりました。しかしながら、ダブルチェックというようなものについては、今まで申請後三週間、二十一日で確認をするということが原則であったわけですけれども、ピアチェックという制度を導入したがゆえに七十日間というふうにしたわけでございます。ただし、大臣認定プログラムというものを使った場合にはそれは三十五日でいいということにしましたけれども、これがなかなか開発ができませんでした。大変申しわけないと思っております。

 そういうことから、六月から七月、八月、九月、大変落ち込みました。ところが、十月から十一月、十二月にかけてどんどん回復しまして、ことしに入りますと、一月、二月、幸いなことに前年度比でほぼイーブンのところまで回復をしてきております。

 それは、申請それから確認、着工、いずれについても、対前年度比でほぼ回復を遂げつつあります。対前年は、最近では最高の年間百二十九万戸着工というものでございましたので、それと比較しますと、今年度がマイナスになるということはやむを得ないのかなと思いますけれども、ほぼ一けた台、三・五%とか、今そこまで回復をしております。

 しかしながら、この落ち込んだ間のダメージというものは非常に大きくて、先ほど局長から報告をいたしましたように、多くの中小企業の方々の倒産の原因になったということは、住宅政策を担当する私にとりましては甚だ遺憾であり、国民に、またそのような業界の方々に心からおわびを申し上げなければならない、そのように思っているところでありまして、再々おわびも申し上げているところでございます。

 しかしながら、これを一時的な現象にとどめて、再びああいう姉歯事件が起こることのないような建築法体系をつくりたい、また実務もそうしたいという思いを今も持っているところでございまして、努力をし、これが経済に与える影響というものを最小限に抑えようということで、今、国土交通省挙げてこれに対して取り組んでいるところでございます。

 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、このようにしたことによって、特に、大臣認定プログラムが非常におくれたということが確認期間を非常に長くしてしまっているという原因になりましたので、おわびを申し上げたいと思いますが、これについても、三月二十五日に正式の大臣認定プログラムが発売をされまして、ほぼ、これによって、従来七十日でありましたものが三十五日と短縮をされることにもなりました。

 いろいろなことがありますけれども、今後もそのような業界の方々に御迷惑をかけることを極力少なくするように努力してまいらなければならないという決意でございます。

神風分科員 実は私も、昨年の十二月の二十四日でありましたが、この改正建築基準法の実情あるいは問題点について、地元の建設関係の二十数名の皆さん方にお集まりをいただいて、いろいろ意見交換をさせていただく機会を持ちました。

 その中で、さまざまに、いろいろな具体的な疑問点あるいは不満点というものがありましたので、きょうはそれに基づいて質問をさせていただきたいと思っております。ですから、かなり実務的な内容も多いのかなと思いますが、よろしくお願いをしたいと思うわけでございます。

 まず、最初から実務的な質問をしたいと思いますが、よく傾斜地に地下一階、地上二階の混構造の物件がある。この地下部分というのは、鉄筋コンクリートや鉄骨によってこれまでごく普通に建設、建築をされてきたわけでありますが、この改正建築基準法施行以降、混構造だからなかなか認められない、あるいは判断がつかないという状況が続いていたという話がありました。

 現状、今この木造プラス鉄骨づくりのような混構造の扱いというのはどういうふうになっているのか、まずその点からお伺いをしたいと思います。

和泉政府参考人 御指摘のとおり、当初、地下一階が鉄筋コンクリート造で一、二階木造、これがピアチェックの対象なんじゃないか、こういった誤解があったように聞いております。しかしながら、初めからこの物件はいわゆる適判の対象でないというようなことについては、終始一貫、いろいろ説明会で言ってきたわけでございます。

 ただ、委員の質問通告があってから、どういった点で誤解が生じたんだろうと、つらつら告示をもう一回見てみましたら、確かにちょっと不親切な書きっぷりでございました。したがって、従来も、すべての説明会で、地下一階が鉄筋コンクリート造で一、二階が木造、この混構造はピアチェックの対象じゃないよと言ってまいりましたが、そのことがもっと告示上明確になるように、その部分について見直しをしたい、こう思っております。

神風分科員 それはもう見直しをされたわけですか、それとも、これからやられるということですか。

和泉政府参考人 従来もそういったことで説明してきておったんですが、これから告示の部分について見直しをしたいと思います。

神風分科員 まず、現場の皆さん方は、そこら辺の判断がつかないというか混乱している状況でありますので、それは早目に対応していただきたいと思うわけでございます。

 また、財団法人の建築行政情報センターのホームページにおいてワンストップサービスが開設をされ、いわゆる改正建築基準法に係る質疑応答、QアンドAが公開されている。ただ、このQアンドAの中身が、時間が経過をするあるいは数週間たつと、その中身あるいは基準、法律の解釈が変わっていくという指摘がございます。

 結局、それをもとにしながらいろいろ判断をしてやっていて、計算のときにはこれでいいんだなと思って計算をしていると、いざ提出のときになると、アンサーの方が、回答が変わっていて、それでまたやり直しという状況が結構あったということでありますが、この状況というのは今改善をされているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。

和泉政府参考人 そもそもこのQアンドAでございますが、六月二十日の施行以降、さまざまな疑義が設計者、申請者からあったというようなことで始めました。

 当然、当初はいろいろ膨大な質疑があった関係上、一部回答についてその修正というのがあったこともございます。ただし、いわゆる逆転して、結果として手戻りを起こしたというようなことは多分なかったんじゃないか、こう思っております。

 一例を挙げますと、どういった例があったかというと、構造設計業務を一括して下請していいのか、こんな質問がございまして、当時の建築基準法、建築士法ではいいので、いいとだけ答えた。これは余りにも不親切だと、その後に補足して、現行の規定はいいけれども、建築士法の改正があっていついつまでに施行される、その際は、例えば共同住宅の一括下請はだめですよというようなことを追加したとか、こういった修正は適宜やりました。

 いずれにしましても、修正や追加の経過を明記しながら補足してきたわけでございまして、極端な手戻りになるようなミスというんですか、そういったものはなかったというふうに理解しております。

神風分科員 次に、今回の改正建築基準法の目玉ともいえます構造計算適合性判定、いわゆるピアチェックについてお伺いをしたいんですが、判定員の目標の総数というのはどれぐらいなのか。また、それに対して現状どのぐらい充足をされているというか、どのぐらいの人数になっているのか。あるいは、常勤、非常勤の割合は現状どうなっているのか、その点をお伺いしたいと思います。

和泉政府参考人 まず、構造計算適合判定の判定員の数でございますが、当初、私どもの試算で、おおむね週一日御担当いただいて八時間審査いただく。そういうことを考えると、想定したピアチェック対象の建物、並びに、建物の規模に応じてかかるであろう判定の時間等を考えますと、約千五百名程度の判定員が必要だと考えておりました。

 改正法施行時点で、千五百三十八名の判定員を認定した。昨年十月に三百九十一名追加して、この時点で累計千九百二十九名でありまして、そのうちの千六百名が判定機関と契約して、ピアチェックに従事してもらいました。加えて、二月にさらに再度講習しまして三百四十六名が追加されまして、いわゆる判定員として認定された方の数は二千二百七十五名に達しております。

 現時点で、最新データが十一月で大変恐縮でございますが、判定機関に常勤が百十八名、非常勤が千四百八十三名、総枠千六百名の方がこの判定機関の判定員として仕事に従事してもらっている、こういった状況がございます。

神風分科員 皆さん方から地元の御意見を伺った中で、判定員がプロではないというような御指摘が結構ありました。特に、構造設計者の方がこういった判定員の方と話をしていると、判定員の方が専門的なことがなかなかわかっていないケースが多いという御指摘があって、その能力に疑問を感じるというようなお話が随分あったんですが、判定員になるための条件というのはどういう条件があるんですか。

和泉政府参考人 当然、構造計算の判定員でございますから、建築構造に関する専門知識を持っている方でございます。

 類型が三つございまして、一つは、建築の構造設計に関する業務の実務経験をしっかりやり、かつ、構造計算適合性判定に関する講習会を受講して、その修了考査に受かった方、これが第一類型でございます。第二類型は、大学において建築物の構造に関する科目を担当する教授、准教授。第三類型が、建築物の構造に関する分野の試験研究機関において、試験研究の業務に従事している、こういった分野の方々が判定員になることができるわけでございます。

 ちなみに、先ほど数字を申し上げましたが、構造計算適合性判定に関する講習会、並びにその講習考査のいわゆる合格率でございますが、一回目が三九%、二回目が三二%、三回目が二四%でございますので、それなりに厳しく考査しているのかなと。

 ただ、委員御指摘のように、当初、スタート段階では、判定員の本来の仕事というのは、基準に合っているかどうかを見ることも最大の使命なんですが、例えば今言った第二類型の大学の先生なんかになると、ついつい基準法の基準じゃなくて、基準は基準で一応クリアした上で、学会の推奨値というんですか、こういったものをお勧めしてしまうような混乱がありまして、そういったことが設計実務者の方と判定員の方との間でそごを来した部分があったかと思います。

 これについては、三十万部配布したリーフレットの中で、判定員の本来のミッションを明確に規定して、それ以上のことをしてはだめなんですよといったことも規定して、そういった理解を求めている、こんな状況でございます。

神風分科員 今、実務経験が必要だというお話がありましたが、これは何年以上という規定があるのかどうか。

 それと、今、第一、第二、三つぐらいのルートをお示しになりましたけれども、それぞれ比率的にどのぐらいになるのか、ちょっとそれを教えていただけますか。

和泉政府参考人 これはもう、いわゆるゼネコンさんや設計事務所で構造設計の実務に携わっている方が圧倒的でございます。

 ちなみに、今御指摘の年数でございますが、通例の構造設計者であれば、十年間の実務経験があって、ただ単に構造に従事しているだけだというのでは危ないものですから、いわゆる今回のピアチェック対象になっているような建物について、自分が責任者で最低二棟以上ちゃんとなし遂げた、こういったことをチェックした上で、かつ講習をして、最後の修了考査を受けて受かった方、こういった方を判定員として認定している、こういった状況でございます。

神風分科員 こういう、十年以上というのは決まっているわけですね。

 それと、圧倒的というのは、どのぐらい、何割ぐらいというのは、わかればちょっと数字で教えていただきたいんですが。

和泉政府参考人 ちょっとうろ覚えですが、九五%ぐらいはそういった実務者でございます。

神風分科員 いろいろ意見を伺った中でも、判定員に対しての不満がありまして、それと同時に、一体この判定員の方がどれくらい時間を費やして構造計算書をチェックしているのかということに対しては、結構皆さん方、疑問があるということでございました。

 場合によっては、概要書とチェックリストだけしか見ていないのではないかというような不信を持たれている方も相当いらっしゃるわけでありまして、逆に、構造計算書と同じ内容をいわば概要書、チェックリストで出すわけでありますから、きちんと構造計算書さえ見てもらえればいいのではないか、何で改めて概要書あるいはチェックリストを提出させるのかという御意見もあったんですが、これについてはどうなんでしょうか。

和泉政府参考人 お答え申します。

 概要書、チェックリストは、適判資格者が構造計算書を見るときになるべく効率的に見れるように、入り口の部分でございますので、それを求めてございます。

 また、どのくらいしっかり見ているのかと。今回、ある意味では姉歯事件の反省を踏まえて、今回の改正基準法の基本としてつくった制度でもございますので、適判機関も相当な緊張感を持ってやっていただいていると思います。

 逆に、長過ぎるというおしかりを受けてもおりますが、ちなみに、平成二十年二月にサンプル調査をしました。そこで、どのくらいの時間を適判にかけているのか、その結果の数字でございますが、これは申請者の修正時間も含めてでございますけれども、平均で三十九・六日、通例申請者の修正が半分ぐらいを占めていますので、二十日ぐらいはかけて適判機関でチェックを行っている、こういった状況でございます。

神風分科員 ある意味で、判定員、一つのプロ集団として独立するような形が必要なのかなと思いますが、これは将来的に常勤ですべて賄うようなお考えというのはないんですか。

和泉政府参考人 現在のマンパワーとか、あるいは将来構造設計一級建築士、こういったニーズもあるというようなことを考えると、すべて常勤でやる必要はなくて、やはり適時的確にマンパワーが確保できるように、常勤を核にしながら、そして契約での判定員を使う、こういうことかと思いますが、今後、その辺でもし常勤でないがゆえに問題があるみたいなことがあれば、それはその時点でしっかりと注視しながら必要な対応をしてまいりたい、こう考えております。

神風分科員 次に、確認申請の流れの中で、お客様というか施主の方が住宅を建てるに当たって、それぞれいろいろイメージがあると思うんですが、設計図を見るだけの段階では、なかなか御自身でもイメージがわかない。ただ、それが次第に、柱が立ち出すようになって、ここをこうしたい、あそこをこうしたいという御要望がそれぞれその後に出てくる。

 ただ、それが実際に軽微な変更に当たるのかどうかというのが皆さん方が混乱している最大の原因であるわけでありまして、そういう意味でお客様のニーズに設計の段階でもなかなかこたえられないという御意見が相当ありました。

 実際に、そこに出席をされていたお一人の方は御自身で現在御自宅を建設中であるということであって、ここに新しいドアをつけたい、ただ、ドアをつけられるかどうか、そうするとまたそれが軽微な変更に当たるかどうかチェックをしなければいけないので、とりあえず工事を中断してください、中断すればまた時間がかかる、それであればもういいわという形で、そのまま設計どおりになってしまったというお話もありましたが、そういった問題は今どういう状況にありますか。

和泉政府参考人 まず初めに、過去の建築行政の現場で、委員御指摘のように、差しかえ差しかえが頻発して、結果として非常に不正確な図面あるいは設計が横行した、こういった反省がございました関係上、今回はそういったことについては原則は厳しくやっていくんだといった方針を出したわけでございます。

 ただし、スタート時点で、今まさに委員が御指摘になったように、戸建て住宅の塀の入り口の位置が変わったら変更申請だ、こういった非常にプリミティブなミスがございまして、スタート時点で建築基準に関係のない変更というのはそもそも関係ないところでございます。その辺の誤解も、スタート時点ではございますが、ありました。

 その後、例えば間仕切りとか開口部、仮に建築基準に関係があったとしても、安全側にいくのでいいじゃないか、こういったいろいろな議論を現場としまして、昨年の十一月十四日に、そういった安全側にいくというものについては、ちゃんと事例を列挙しまして、こういったものについては軽微な変更で変更申請は要らないんだ、こういったことについても周知徹底をしてまいりました。こういったものについて、いわゆるリーフレットをつくりまして、現場に一生懸命浸透させてきたところでございます。

 ただ、これは我々の反省でございますが、そうして三十万部刷った、あるいはありとあらゆる業界団体や公共団体を通じて話をしたわけでございますが、結果として現場に十分浸透していないという弱みがございましたので、冒頭大臣が御説明しましたように、引き続き、そういった努力については最大限の努力をして、正しい情報がしっかりと現場に伝わるように努力してまいりたいと考えております。

神風分科員 その点、まだまだ現場の方では混乱が続いていると思いますので、ぜひきちんとした対応をしていただきたいなと思います。

 次に、改正建築基準法四号特例の見直し問題についてお伺いをしたいと思います。

 これは、改正建築士法に基づいて新たに創設をされる専門資格、構造設計一級建築士が構造計算をした四号建築物は、従来どおり構造計算書の審査を免除するという方向であるというお話を伺うわけでありますが、これはそういう状況でよろしいんでしょうか。

和泉政府参考人 この問題は、例の構造計算書偽装事件以降に、今委員御指摘の、審査の省略される四号特例を受けた分譲住宅で、約二千棟近くですか、壁量が足りなくて問題になった。その結果、一級建築士等の処分もしました。

 それを踏まえて、そういった審査省略について、今委員御指摘のように、構造設計一級建築士がやったのならいいけれども、一般の一級建築士がやったものについてはやはり見るべきじゃないか、こういう議論もございまして、そういった見直しをするとすればやれるように法律は変えました。変えたという意味は、従来は審査省略の対象は建物規模だけで区分する、それに対して、建物区分と設計者のマトリックスで省略するかどうか決めることができる、こういうふうにしました。

 しかしながら、その後、中小工務店の現場を中心に、一気にそういった審査を廃して細かい設計書を後続者によこせということになるとかなり現場が混乱する、こういった御指摘もございました。

 そこで、現時点では、こういった審査省略の四号特例の見直しについては、中小工務店あるいは大工さんたちの習熟度、そういったものを慎重によく見きわめて、ちゃんと受けとめる基盤が整った後でそういったことについて踏み込もうというようなことで、大臣からも委員会等で答弁してございますけれども、相当慎重に、現場の習熟度を見ながら検証してまいりたい、こう考えております。

神風分科員 来年の五月の末から、一定規模以上の建築物には、構造設計一級建築士とまた今度新たに創設をされる設備設計一級建築士による法適合チェックが義務づけをされることになるわけであります。

 この資格にも一級建築士としての実務が要求されるわけでありますが、設備設計者のうち一級建築士の資格を持つ者は非常に少ないというお話を伺うわけでございまして、構造設計一級建築士以上に資格者不足というものがいろいろ業界の皆さん方が懸念をされているところでございます。

 このままでは、ある意味では、建築確認審査に続きまた法適合チェックでも停滞が生じる可能性があるという御指摘がかなりありましたが、この設備設計一級建築士に該当するような人というのは今何人ぐらいいらっしゃるのか、また、将来的にというか、もう来年五月にできるわけでありますが、何人ぐらい誕生することを想定されているのか、その点を教えていただきたいと思います。

和泉政府参考人 設備設計一級建築士が関与すべき建物というのは、三階建て以上でかつ五千平米以上、こういった区分でございます。大体、新築で年間三千棟ぐらい。大規模な設備設計ですと一人がやれる数が限られますので、大体千五百人程度は必要かな、こう考えております。

 現時点で、委員御指摘の、建築設備士でかつ一級建築士は何人いるか、人数だけは四千人いるんです。ただし、かなり高齢化が進んでいるものですから、若い人だけに限定すると二千人余でございます。

 したがって、こういった方々が今やっておりますみなし講習等で設備設計一級建築士に移行していただければ、ボリューム的にはオーケーなわけでございますが、次の問題は地域偏在が心配でございまして、大都市にはいらっしゃる、だけれども田舎にはいらっしゃらない、こういった問題について、現時点から地域偏在を調べながら、仮に地方圏で足りないようなことがあった場合に大都市圏の設備設計一級建築士の方々を御紹介するような、そういったネットワークもこういった技術者協会の方々と今相談している最中でございまして、この問題が契機となってまた建築確認の停滞がないようにしっかりと取り組んでまいりたい、こう考えております。

神風分科員 最後に、大臣認定構造計算プログラムについてお伺いをしたいと思います。

 これは、NTTデータが本認定になったというお話を伺っておりますけれども、ただ、シェアでいくと、ユニオンシステムが三八%、構造ソフトが三〇%、構造システムが二三%、この大手三社で大体九〇%近くを占めている。そういう状況の中で、なぜシェア的にはわずか二%にすぎないNTTデータが大臣認定になったのか、その背景というか理由を教えていただきたいと思います。

和泉政府参考人 委員御指摘の三社が業界でメジャーだったことは事実でございます。しかしながら、いわゆる大臣認定プログラムの進捗状況を考えるとNTTデータが一番進んでおった。片方で、確かに、これは本来、民間から申請を受けて国土交通大臣が認定するものですから、進んで国が関与するということだとは思っておりませんが、しかし、実務界から非常に強い要望があったというようなことがございまして、委員御案内のような体制のもとで早期認定に努力した。

 ただし、これは、新しいものが認定されるというメリット以外に、その過程で、審査側、設計側から、本来そういった大臣認定プログラムが持つべきいろいろなさまざまな改善点、そういったものについての情報をもらっております。これは、整理して、後続の方々が利用できるように今オープンにしております。

 加えて、この過程で、設計者、審査者について一連の講習会もしました。この講習会は、大臣認定プログラムを使った場合の基本的な操作、あるいは審査における留意事項を講習してございますので、後続の方々がもし本認定になれば、当然その方々の認定プログラムについても有効である、そういった二つの公益性のもとに、国が関与したということでございます。

 今委員御指摘のメーカーも含めて、現時点で四社が正式申請をしてございます。今、評定機関で鋭意審査を行っておりますので、評定機関の審査が済めば、私どもとして可及的速やかに大臣認定をしていきたい、こう考えております。

神風分科員 時間が参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

上田主査 これにて神風英男君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階分科員 民主党の階猛でございます。

 きょうは、新幹線ができたことに伴う並行在来線の問題についてお聞かせ願えればと思っております。

 まず、お手元に資料を何枚かお配りしておりますが、資料一というのをごらんになっていただければと思います。並行在来線のうち、今現在経営分離されているものが四区間、それぞれ第三セクターが経営しております。ただし、青い森鉄道というところだけは上下分離ということで、施設の方は青森県が持っているということでございます。

 資料一でいいますと、左側、九州新幹線でいえば肥薩おれんじ鉄道、右上、北海道新幹線、東北新幹線でいえば、今現在開業しておりますのが、右下の方に見えます、先ほど申し上げた青い森鉄道、また私の地元であります岩手ではIGRいわて銀河鉄道というものがあります。また、一番下、北陸新幹線では、しなの鉄道、こういった第三セクターがあります。

 一枚めくっていただいて、資料二なんでございますが、今後このように、整備新幹線はどんどん延びていくわけでございます。それに伴って、並行在来線もふえて経営分離される区間も多くなる、そういう理解をしておりますが、基本的なことですが、この点、いかがでしょうか。

大口政府参考人 先生御指摘のとおり、現在、整備新幹線、着工部分がございます。その並行在として、これから並行在来線問題というものもまた、政府・与党で現在議論がありますけれども、いろいろと整理されていくべき問題だと考えております。

階分科員 その並行在来線の中でも、資料一を子細に見ていただきますと、第三セクターが経営している部分と、従来どおりJRが経営を維持している部分とがあるわけでございます。例えば九州新幹線でいいますと、博多―八代間は「JR九州が経営維持」などと書いております。

 これもそもそもの話なんですが、並行在来線を経営分離する理由、あるいは経営分離しない理由とはどういうものなのか、お聞かせ願えますか。

大口政府参考人 整備新幹線を建設するに当たりまして、従来からの当該地域を運行しているJR各会社に負担をかけないということから、並行している部分につきましては、いわゆる並行在来線として議論を整理するというふうになっております。

階分科員 済みません、今ちょっと説明がよくわからなかったんですが、経営分離するかしないかというのは、どういう基準で分かれるんでしょうか。

大口政府参考人 これは、当該JRの判断によるものというふうに考えております。

階分科員 つまり、採算が合う路線は経営分離されずに引き続きJRが経営するというふうに、当然、経営でありますから合理的な判断をされるということだと思います。

 また、並行在来線といっても、旅客だけではなく貨物の輸送もあるわけでございます。そういった中で、なぜ貨物の輸送は、JR貨物から並行在来線を経営する第三セクターの方に経営分離されないのか、この点についてもお聞かせ願えますか。

大口政府参考人 並行在問題を含めまして整理して申し上げますと、整備新幹線の並行在来線につきましては従来から、新幹線開業時に旅客鉄道会社の経営から分離することとされていて、その具体的な分離区間については、整備法に基づく新幹線の工事実施計画の認可前に、新幹線沿線の公共団体とJRとが合意した上で確定している、まずこういう流れになります。

 そして、経営分離された並行在につきましては、鉄道事業法の三条に基づきまして、第一種鉄道事業者として第三セクターが旅客輸送を運営している。また、貨物輸送については、同じく並行在来線上を、第三セクターとしての施設を借りて、鉄道事業法に基づき、JR貨物が第二種鉄道事業者として貨物輸送を運営しているというような整理になります。

 国は、この鉄道事業法の規定に基づきまして、それぞれ事業者について、鉄道事業の許可のほか、事業基本計画の変更認可、あるいは工事施工認可、線路使用条件の認可、あるいは旅客運賃・料金の上限認可等を通じまして、事業面あるいは安全面において監督しておりますけれども、沿線自治体については鉄道事業法上の特段の規定はないという整理になっております。

 このほか、国は、JR貨物が安定した経営を継続し得るような体制を定着させるという観点から、JR会社法に基づいて、事業計画に関する認可、あるいは代表取締役等の選定等の決議に係る認可、それから定款の変更認可などを通じて、後見的に必要な監督を行ってきているというような整理になります。

階分科員 今、国の責任についていろいろおっしゃられましたけれども、経営分離した並行在来線を走行する、ここでは鉄道貨物輸送についてお聞かせ願いたいのですが、この貨物の維持管理について、旅客運送部門をJR東日本などから引き継いだ第三セクター、あるいはそれを支援する沿線自治体、こういったところは、JR貨物との関係ではどのような責任を負っているのでしょうか。

 法的に言いますと、JR貨物とJRの旅客会社との費用負担ルールというものが並行在来線前にはあったわけでございます。これは、きょう最後にお配りした資料でございますが、この資料五で、アボイダブルコストルールという図があります。このアボイダブルコストルールというものがあって、これは言うなれば、強者、強い者であるJR旅客会社が、弱い立場といいますか、経営が必ずしもよくないJR貨物の負担を軽減すべく、ほとんど費用は旅客会社の方で見てあげる、そういうものでございます。

 ですから、JR貨物の負担部分というのは、このアボイダブルコストルールのバーになっているところのシャドーがかかっているごくごく一部、言うならば原則無料みたいな形でJR旅客会社はJR貨物の貨物輸送に協力しているということでございますが、そういったアボイダブルコストルールは第三セクターなどにも適用されるべきものなのかどうか。法的な観点からいうと、従来の事業を承継したということでこれをこのまま適用されるべきなのかどうか。

 私は前提が違うと思いますので、つまり、JRの旅客会社と違って第三セクターは非常に経営も脆弱であります。強い者ではなくて、むしろ弱い者であります。ですから、アボイダブルコストルールというのは前提を失って、第三セクターは全く拘束されないんだというふうに考えますが、法的にはどのような整理になりますでしょうか。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる、先生おっしゃる貨物調整金制度、これは平成十二年の十二月の政府・与党申し合わせに基づきまして……(階分科員「済みません。今、調整金制度について聞いてはおりませんので、アボイダブルコストの話を」と呼ぶ)はい。

 アボイダブルコストにつきましては、これはJRの旅客会社と貨物会社の間で取り交わされている契約に基づいて実行されているものでございます。

 まさに、そのアボイダブルコストをひとつ、何というんでしょうか、貨物側と旅客側で整理したそのルールを、第三セクターにつきましても、いかにして貨物調整金制度というもので実行していけるかという観点から、貨物調整金制度が政府・与党申し合わせの中で位置づけられる、そしてその財源が手当てされたというふうに理解しております。

階分科員 つまり、従来のアボイダブルコストルール、それはそれとして踏まえた上で、第三セクターの経営をどう面倒を見ていくかということで調整金制度が生まれてきたということだと思います。

 ただ、もとをただしてみますと、アボイダブルコストルールというのは、先ほども言ったように、原則無料で旅客会社が貨物の方に施設を利用させるものでして、対等の当事者間の契約としてはあり得ないと思うんですね。仮に、民間企業がこのような契約を行えば、株主代表訴訟などの対象になると思うんですよ。

 大臣、このアボイダブルコストルールというのをどのようにお考えになりますか。

大口政府参考人 アボイダブルコスト、先ほど申しましたように、国鉄改革と同時に発足した制度でございまして、言うなれば、旅客鉄道会社が一種事業として事業を行う中で、施設を持たずに運営会社として全国のいわゆる貨物輸送を行うということから位置づけられている制度だということでございます。したがいまして、最終的に本当にアディショナルな、避けられない費用としてお支払いする、コストを負担するというルールだというふうに承知しております。

階分科員 冬柴大臣、私が思うに、JR貨物というのは、第三セクターとの間で本来負担すべきコストは負担していないと思うんですね。アボイダブルコストというのは、資料五にも書いていますけれども、レール交換、軌道つき固めなど貨物列車の走行に直接影響される経費ということで、本来JR貨物が事業を行っていれば負担すべきところには全然負担が及んでいない。

 そういうことで、本来負担すべきものを負担していないんじゃないかというふうに思うんですけれども、そういう御認識というかアボイダブルコストの問題点というのは、政府の中では認識はあるんでしょうか。

大口政府参考人 先ほども申し上げましたように、旅客会社がみずからの運営の中で、少なくとも最終的に貨物が通ることによって負担が必要だという部分については、アボイダブルコストということで整理されているわけです。

階分科員 アボイダブルコストというものがあって、それだけだと当然、負担を過大に背負うことになる第三セクターは経営をやっていけないということで、調整金制度というものが生まれたわけです。

 その調整金制度の法的根拠あるいは財源、そういったものについて教えていただけますか。

大口政府参考人 先ほども申し上げました平成十二年十二月の政府・与党申し合わせに基づきまして、JR貨物が従来からJR旅客会社に支払っていた線路使用料と実質的に同等の負担で並行在来線上を走行することを可能にするために、財源として新幹線貸付料収入の一部を活用して創設したものということでございます。

階分科員 十九年度の財源の規模は幾らになりますか。

大口政府参考人 新幹線貸付料収入は十九年度で二百七十五億、うち貨物調整金に充てられた額は十七億円でございます。

階分科員 十七億とか非常に小さい金額しかこの調整金に充てられていない、しかも新幹線の貸付料ということで、JRが払うものが前提になっておるということで、非常に財源として額が少ないだけではなくて不安定である、そういう問題意識があるわけでございます。

 また、資料三を見ていただきたいんですが、並行在来線、先ほど四社あると申し上げました。一番下の段、累積損益を見ていただくと、全部累積損失を抱えております。またこれからも、新たなそういった同様の境遇の第三セクターも生まれるということ。

 その一方で、政府は、「鉄道関係予算主要事項の概要」というものを今年度の予算の策定に対して出しておりますが、そういったものを見ると、「国際競争力の強化と地域の活性化」あるいは「地球環境問題と少子高齢化への対応」といった表題のもとで、鉄道貨物輸送に対しても予算措置を講じています。そういったことで、国は、並行在来線による鉄道貨物輸送の重要性についてもしっかり認識しているはずであるというふうに理解しております。

 第三セクターを守り、また、鉄道貨物輸送を分断しないようにするのが国としての責務だと考えております。大臣の御所見はいかがでしょうか。

冬柴国務大臣 鉄道による貨物輸送というものは、CO2排出量が営業用トラックの七分の一であるなど、地球温暖化対策の観点からも、また構造的な原油高や少子化による若年労働者の減少対策の観点からも、トラックの場合は、貨物量は些少でも一人の運転手が要りますけれども、鉄道輸送の場合には多くの貨物を、一人か複数かはわかりませんけれども、数の少ない運転手で運ぶことができるわけでございます。そういうことから、若年労働者の減少対策の観点からも、モーダルシフトの担い手として重要な役割を果たすことが期待されているわけでございます。また、国全体のみならず、地域の産業を支える物資や農作物などの重要な輸送を担い、地域経済にも大きく貢献をしています。

 したがいまして、国としては、鉄道事業者がこれらの環境面や地域経済面における重要な役割を十分発揮し得るように、必要な環境整備を行い、事業者が主体となって取り組む施策を後押ししていくことが重要であると考えております。

 こうした観点から、国はこれまでも、JR貨物や沿線地方公共団体等と一緒になって、必要な貨物鉄道のネットワークが適切に維持されるように、貨物調整金制度を創設するなど適切に対処してきたところであるというふうに思っております。

 今後も、必要な貨物鉄道ネットワークが適切に維持されるように、JR貨物やあるいは沿線地方公共団体とともに適切に対処していかなければならないと思います。その意味で、きょうの御質疑など一つの参考として考えていかなきゃならないと思います。

階分科員 ありがとうございます。

 それで、お配りしている資料四を見ていただきたいんですが、「政府・与党整備新幹線検討委員会における合意事項」ということで、この中の項目二番で末尾の方に「並行在来線等の諸課題について検討を開始」とあります。この「並行在来線等の諸課題」という中には、今大臣は調整金のことについてもいろいろ検討するというお話でございましたけれども、この項目二の「並行在来線等の諸課題」については、調整金の制度を拡充する方向での検討というものも含まれるのかどうか、御答弁をお願いします。

冬柴国務大臣 その観点からアボイダブルコストという大変技術的な制度が考慮されているわけでございまして、新幹線を利用する、その貸付料が機構に支払われる、機構から貨物会社にそのうちのごく一部ですけれどもアボイダブルコストに相当するもの以外が払われる、それがまたこちらの第三セクターに払われるというような、いわゆる線路使用料のような形でやっているわけでございます。

 それについて、きょういろいろな資料を見せていただきました。こういうものも考えながら、現在までのこれでいいのかどうか、考えなければならないと思います。

階分科員 ありがとうございます。

 そういう中で、時間まで、ちょっと個別的な話を進めていきたいんです。

 私の地元のいわて銀河鉄道というところも、今まさに負担にあえいでおるところでございます。具体的に言いますと、今度新幹線が青森まで延びることに伴って、新指令システムの整備というのが必要になってきます。これは二十数億かかるわけでございますが、先ほども見ていただいたように、資料三のいわて銀河鉄道の経営状況を見ますと、これは平成十八年度でございますが、経常損益で赤字であり、また累積損益も多額の赤字でございます。

 そういった中で、私は、アボイダブルコストという中でJR貨物の負担は非常に少なくなってございますけれども、本来こういった新指令システムの整備などというものは、JR貨物も応分の負担をすべきではないかと思うわけでございます。JR貨物を監督する国として、費用負担するよう何か指導のようなことは考えていらっしゃいますか。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 新指令システムの整備に要する費用に関しましては、IGRいわて銀河鉄道とJR貨物との間で、その負担のあり方について現在協議が継続しているというふうに認識しております。この両者間における協議を十分に尽くしていただきたいというのが、まず私どもとしての現在の考え方でございます。

階分科員 協議を待つだけではなくて、先ほど大臣からも御答弁いただきました、調整金を拡充する方向での検討も考えられるということでしたので、そこは民間同士の議論を待つだけではなくて、国としても積極的に関与すべきではないかと思うわけでございますが、いかがでしょうか。

大口政府参考人 仮に、貨物調整金の制度を変更すべきということでございますと、その制度変更の議論は、先ほど大臣の方からも申し上げましたように、現在進められている政府・与党の議論を経まして、整備新幹線の全体の枠組みの中で御議論いただくものというふうに考えております。

 また、国はこれまでも、並行在の維持と貨物ネットワークの維持の両立を図るという観点からさまざまな支援策を講じてきたところでございますけれども、階先生の御意見も含めまして、さまざまな御意見があるということも承知しております。政府・与党の議論の場で、そうした議論も含めまして、私どもとしても適切に対応してまいりたいと考えております。

階分科員 最悪のケースを想定するわけでございますけれども、仮にJR貨物の方が今の協議に応じなくて、負担はしません、あるいは調整金の検討も進まないといった場合、当社ないし沿線の自治体が負担することにならざるを得ないのでしょうか。もし仮にそうだとすると、国の物流政策に要する費用を地方に押しつけるものだというふうに思われて、到底容認できないと思うんですけれども、最悪のケース、どうなるのかということについてお聞かせ願えますか。

大口政府参考人 最悪のケース云々ということにつきましては、この場で答弁することは差し控えますが、JR貨物から、現在の段階の報告として、負担についてはまだすべて決まっているわけではないということを聞いております。

 具体的に、JR貨物は、新指令システムの詳細設計もまだ終わっておらず、具体的な所要額も確定していないなど不確定な要素が多い状況の中で、民間企業として負担について確定的なことは言及できないというふうに聞いております。そうした状況の中でございますが、当該システムの整備に係る二十年度の所要額の半額を融資するというようなことを含めまして、現時点ででき得る最大の協力をしていきたいと考えているというふうに聞いております。

階分科員 今の指令システムの問題も非常に重要なんですが、もう一つ、このいわて銀河鉄道が抱えている問題として、今まで調整金が必ずしも十分でなかったということで、何か当初、JRの並行在来線を引き継ぐに当たって、JR東日本が運行する寝台特急の旅客収入の一部もいわて銀河鉄道が受け取って、それで経営を何とか成り立たせてきたという事情があるわけでございます。

 この寝台特急に係る旅客収入というのは、今申し上げたような経緯で認められたということでよろしいですか。

大口政府参考人 お答え申し上げます。

 並行在来線経営分離後の寝台列車の運行につきましては、当時、JR東日本が第二種鉄道事業者として、第三セクターに線路使用料を支払って運営する方式をとるか、当該区間を第三セクターが運営し旅客収入も第三セクターに入る、いわゆる直通運転方式をとるかにつき議論があり、岩手県、青森県とJR東日本との協議の結果、直通運転方式を採用することで合意したものというふうに聞いております。岩手県、青森県とJR東日本との間の協議の過程において、私ども鉄道局が相談を受けたという経緯はあったというふうに聞いております。

 いずれにしましても、岩手県、青森県の両県としての御判断、JR東日本としての経営判断のもとに、双方によって合意されたスキームだというふうに理解しております。

階分科員 線路使用料だけでは経営が成り立たない、そこで寝台特急による旅客収入も銀河鉄道が受け取るようにしていただいたということだと思っておりますが、そうだとすると、この寝台特急が近時廃止になっているわけでございます。この三月末で廃止されて、当社にとって年間一億二千万円の減益要因となっておりまして、そこの部分については、先ほどの指令システムとは別個に早急に手当てをしないと、経営の前提が崩れるわけでございますから大変な問題であるというふうに私は認識しております。

 国としては、本来調整金で負担しておくべきものを寝台特急で賄ってきた、その結果、寝台特急がなくなって今後どうするのかということについてどういう方針でいらっしゃるのか、教えていただけますか。

大口政府参考人 地元の同意を得て経営分離をした後の並行在来線は、鉄道事業者の経営努力を基本にしまして、地域全体として利用促進に取り組み、新幹線効果を波及することなどを含めまして、地域の足として、基本的には地域の力で維持していただきたいというふうに考えております。

 並行在来線の分離に際しまして岩手県知事からも、代替輸送機関により経営が行われる場合には、その設立、運営等に関し、県が中心になって対処するというような同意文書をいただいているところでもございます。

冬柴国務大臣 第二の国鉄をつくらないという趣旨で、新幹線の経営その他については大変心を配っているわけでございますが、だからといって、第三セクターにその損失を押しつけるわけにはいかない、これはもう当然の話です。十分に調整をしてやらなければならない。

 ただ、第三セクターは、我々押しつけたわけではなしに、今局長が言いましたように、自後の代替輸送機関、第三セクター等のことでございますが、経営が行われる場合には、その設立、運営等に関しては県が中心になって対処するという約束を書面でいただいていることもかんがみますと、地元もこれについて、経営が成り立つようないろいろな努力をしていただく必要があるのではないかと思います。

 それにおいても非常に大きな赤字が出るということになれば、ここはどういうふうに調整したらいいのか、これはできれば、東日本と第三セクターとの協議ということが非常に大事になると思いますけれども、国としても、大きな赤字が生ずることによって地域の足を失ってしまうというようなことになれば、これは大変な話でございます。人流だけではなしに物流もあるわけです。そういう意味で、私どももその点は十分に注視しながら、誤りなきようにやっていかなければならない、このようには思っております。

 しかしながら、しんは、やはり第三セクターが引き受けた以上は、民間の力を結集して、赤字が出ないようにあらゆる努力をされるということが一番目に肝要だと思いますし、その過程でJR東日本との協議も誠実に重ねられるということが次に必要であろう、こういうふうに思います。

階分科員 今のJR東日本とおっしゃっているのは、JR貨物では……(冬柴国務大臣「貨物です、ごめんなさい」と呼ぶ)はい、ありがとうございます。

 そういうことで、確かに基本的には、県も努力する、自治体も努力する、第三セクターも努力するということでございますが、私が申し上げたかったことは、物流という国の政策にかかわることでございますので、地方だけにそれを任せておいていいのかという問題意識があります。人流だけではなくて、まさに物流。しかも、岩手の場合ですと東北本線は、北海道までつながる非常に骨格をなす路線ですので、そこについては、地方の問題だということで片づけないでいただいて、国としても今後十分よく検討していただいて、調整金の拡充なり対応をしていただければなと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

上田主査 これにて階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田峰之君。

福田(峰)分科員 よろしくお願いします。

 きょうは、都市の鉄道についての質問をさせていただきたいと思います。

 都市生活者の視点に立ちますと、求められるインフラ整備の種類も当然異なってまいります。都市近郊から、多くの住民が東京に通勤や通学をしています。快適な通勤により、快適に働いてもらって、そして労働生産性を上げる。あるいは、快適に通学してもらって、そして勉学にいそしんでもらって、将来の人材が育つ。鉄道による移動は一日の初めと終わりですから、ここが不快であると満足感を得ることは大変に厳しいと思います。

 私の実感を申し上げれば、朝のラッシュだけではなくて、帰宅も、遅くなればなるほど実際は混雑を来しています。最終電車近くになりますと、朝と同じようなラッシュが実際に生じているのが現実なんですね。

 そこで、大臣、国民生活を豊かに、そして幸せにすることが目的である政治家として、鉄道利用者にどんな環境を提供していきたいとお考えでしょうか。

冬柴国務大臣 これは、大都市機能を支える都市の装置であり、通勤通学輸送のみならず、豊かで快適な都市生活を営む上で欠かすことのできない、基幹的かつ必須の交通機関でございます。

 このような都市鉄道の意義にかんがみ、私は、まずは事故のない、安全で信頼できる輸送サービスを利用者に提供しなければならない。我々も、運輸安全マネジメント制度を採用いたしまして、上は社長から、下の職員一人一人に至るまで、毎日毎日、安全安全ということをやっていただく。この二十五日には福知山線事故から三周年になりますが、まずは、本当に安全ということが大事だというふうに思います。

 それからまた、利便性の確保も大事でございます。これは、すべての人が好むと好まざるとにかかわらず利用しなければならない公共交通機関でございますから、女性がその中で不快な思いをしてはいけない、これは女性専用の車両。あるいは身体に障害のある方々も、やはりその応分の扱いを受けなければならないというふうに思いますし、それからまた妊産婦、こういう方々も、外からは、まだおなかの中が膨れていなくてわからないけれども、もう妊娠しておられる方にはそれ相応の扱いがされるべきであると思います。

 そういうことで、私どもは、きめ細かく、いろいろ配慮することはたくさんあるわけですけれども、おっしゃるように、朝夕のラッシュというのは大変なものであるということの認識も当然ございます。したがいまして、こういうものの改善のために、我々、輸送を担当する者として、世界に誇れる都市鉄道というものをつくっていかなければならないというふうに考えております。

福田(峰)分科員 安全は当然最優先でしかるべきだと私も思います。

 その上でなんですが、やはり豊かさというものを実感するということは、政策を遂行する上で大切な指標だと思うんですね。最近、インターネット上で、多くのアンケートとかデータというのがいろいろなものが出ています。

 例えば、私は最近よく見るんですけれども、駅探というサイトがあるんですけれども、ここには、通勤通学電車の中の過ごし方のアンケートについてとかも出ていまして、この中ですと、理想的な過ごし方、一位読書、二位寝る、三位新聞、雑誌の情報収集、これでほぼ六、七割になっているんですね。ただ一方で、現実はどうかというと、一位は寝る、二位つらさに耐えている、三位が立っている、こういうのが現実だということを答えているんですね。

 一方でゆったりと過ごしたいという理想があるんだけれども、現実は、込んでいて読書もできなきゃ、情報収集もできない、相当なストレスを抱えているんだということが、例えば、一つのアンケートかもしれませんが、こうしたデータにも出ているんですね。

 こうした中で、鉄道利用者、特に通勤者に求められる快適性というのは、例えばどういうものだと考えるのか、あるいは、だれがその快適性を担保するのかということを伺いたいと思います。

大口政府参考人 先生お尋ねの快適性につきましては、ただいま大臣の申し上げたことの中に尽くされているかと思いますが、基本的に、鉄道利用者、特に通勤通学者に求められる快適性は、最混雑時間帯における混雑の中で乗車いただくわけでございますので、なるべく早くそうした快適な状況に持っていくというのが、私ども鉄道行政の基本であるというふうに考えております。

 安全行政に加えて、これが大きな政策の柱でございますが、その達成の手段というんでしょうか、それにつきましては、例えば、もっと早く目的のターミナル駅に着くというような速達性の向上とか、乗りかえ駅をなるべく少なくしまして、相互直通運転化によって利用者の利便を向上させるとか、あるいは、都市鉄道のネットワークをシームレスにすることによって、さらに最終駅までそのまま乗っていけるというようなことも含めまして、さまざまな快適性の実現についての御要望があるというふうに承知しております。

 私どもは、安全と同時に、こうした利用者からのいわゆる快適性に対するニーズ、これによくよく対応するために、都市鉄道の果たすそうした役割の重要性にかんがみまして、これまでも財政上あるいは税制上の支援措置をさまざまに講じてきているところでございます。

福田(峰)分科員 これは実際、例えば東京圏の平均混雑率を見ますと、資料によりますと、これは国交省のホームページですけれども、昭和五十年は二〇〇%、現在は大体一七〇%に下がっている。確かに混雑率は下がっていますね。しかし、これは東京圏の平均ですし、地域によっては依然として混雑率が下がっていない路線は残されていると思います。例えば、少子高齢化社会が進んで人口が減るだとか、働き手もあるいは子供も減るとか、こういうことを言われていますけれども、この推計は全国的に見れば正しいと思うんですけれども、地域ごとに見ていくと、異なる地域も実際は存在するんですね。

 例えば、実体験から申しますと、私は小学校のころから、東急田園都市線のたまプラーザ駅というところから電車に乗って、東京の小学校に通っていたんです。それで、このころ、当然、子供だから背が低くて、電車に乗るととにかく真っ暗になるんですよ、大人ばかりですからね。あのときも本当に込んでいた印象があるし、そして国会議員になった今も、実際、私はこの田園都市線に乗って永田町まで来ているんですけれども、変わらないですね。

 ちなみに、きょうは電車で来たのですが、七時三十九分発たまプラーザ駅の準急は混雑して乗れなかったんですね。一台待って、七時四十二分の各駅停車に乗ったんですけれども、いわゆる混雑の目安というものがよくデータで出ていますけれども、乗ったときは大体一八〇%ぐらい、折り畳めば新聞が読めるぐらいだったんですよ。ところが、五つぐらい駅が過ぎると、もう二〇〇%近くなって、圧迫感ができる状態になって、そして渋谷駅に近づくと、それ以上の混雑ぶりになっていくんですよ。これが今もそうですし、私が小学校のころと何ら変わらないというのが私の実感です。

 人というのは、何年も何年も乗っていると、だんだん慢性化してきてこれが当たり前のものと思ってしまうんですね。そうすると、怒りがあきらめになってきて、何も反応しなくなるんですよ。これが当たり前だと思ってしまうんですね。ですから、データでは混雑率が緩和されていても、多分私だけじゃなくて多くの人が同じような実感を持っているでしょうし、東京に小学校とか中学校とかで通った人が大人になって通う、ずっと長い間同じ状況だと私は思います。

 これは、福田総理が生活者重視の政治を目指しているわけですから、改善されたことを実感してもらわないと、変わったなというふうに思ってもらえないと思うんですね。データが二〇〇から一七〇になったからどうだといっても、やはり実感を伴うことが大切だと私は思うんですね。

 そこで、この混雑の問題というのは、今一七〇になっていますけれども、これはおおむね解決された課題ととらえておられるのか、また、どれぐらいの混雑状態までは、鉄道利用者にあなたたち我慢しなさいと言うべきなのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。

冬柴国務大臣 平成十二年八月、運輸政策審議会、現在の交通政策審議会でございますが、答申をいただきました。答申十九号です。東京圏につきましては、当面、主要区間の平均混雑率を全体として一五〇%以内とするとともに、すべての区間それぞれの混雑率を一八〇%以内とする旨の答申がなされておりまして、この答申を踏まえて対応を急いでいるところでございますけれども、今のお話のように、子供のころから今まで改善が見えないということは、甚だ残念でございます。

 ただ、これは、この狭い東京に一極集中している、それが過密を生んでいるわけでございまして、地方の過疎と、非常に大きな社会問題、喫緊の政治課題を生んでいるわけですね。問題は、やはりいろいろな面で地方分権というものが進むことによりこの一極集中を何とかしなければ、これはイタチごっこのように、鉄道は巨額の費用がかかりますよ、そういうものについて、我々も融資の方法とか返済の方法とかいろいろな面で考慮はしていますけれども、これはなかなか急には解決することができない問題だろうと思います。

 東京には他の首都と違う特徴がありますね。鉄道が平面を走っている。ほかの、パリとかロンドンでは全部地下鉄ですよね。したがいまして、東京には二十三区だけでも六百七十三の踏切があるんですね。これももう大変なことでして、ですから、この混雑を解決するということとともに、連続立体とかあるいは地下鉄とか、巨額の費用が要るわけです。

 私は、そこに暮らす人々が、今おっしゃります豊かさというものをあらゆるところで感じるためには、やはり、地方分権とか、もっと根本的な国の形、こういうものが進まなければこれは難しいというふうに感じざるを得ないわけでございます。

 しかし、難しいからといって放てきするわけにいきませんので、我々鉄道を所管する者としては、改善のためには、少なくともこの答申を守るような政策を早急にとらなければならない、このように思っております。

福田(峰)分科員 一八〇%という当面の目標達成と、あと一五〇という数字。少なくとも、まだ一五〇には至っていないところがたくさんあると思いますので、急にこれを、本当に全員が座れるまでにしろというのは、こんなことはできるわけがありませんし、先ほどのアンケート調査もそこは望んでいないんですね。ただ、新聞とか本が読めたりとか、情報収集ができる状態、これは立っていてもということですから、少なくともそういう状態までは持っていくということは、生活実感を上げるという上においてすごく大切だと私は思うんですね。

 確かに、これは多額のお金がかかります。ただし、だからといって、大臣がおっしゃったように、そのままというわけにはいかないから、一歩一歩着実に前に進んでいくということだと思うんです。

 ところで、民間鉄道会社が混雑緩和のために行う事業、この支援をする仕組みというのは現在どんなものがあるのか、教えてください。

大口政府参考人 民間鉄道会社が混雑緩和のために行う事業に対する支援制度についてのお尋ねでございます。

 新線建設あるいは輸送力増強工事などがこれに該当するものと考えておりますが、これらの工事については多額の投資を要するということは先生御指摘のとおりでございます。その資本費負担分を軽減し投資を促進するというのが政策としてやはり必要であろうというところでございます。

 このため、鉄道事業者におけるそのような資本費負担を軽減するということを目的といたしまして、鉄道・運輸機構が建設を行った上で事業者に長期割賦払いで譲渡するいわゆるP線制度というものがございまして、それにおいて、機構の借入金利に対して国が利子補給を行うというような、これは正確に申し上げますと譲渡線建設費等利子補給金制度、まずこういうものがございます。

 それから、鉄道事業者が運賃に上乗せした資金を特定都市鉄道整備事業に充当することにより、負担を長期にわたり平準化して軽減するという特定都市鉄道整備費積立金制度、これも現在使われております。

 それから、第三セクター等が整備する地下鉄とかニュータウン鉄道に対しまして、地下高速鉄道整備事業費補助及び空港アクセス鉄道等整備事業費補助、こうしたものもございます。

 こうしたさまざまな財政上あるいは税制上の支援制度を設けまして、結果としての混雑緩和対策に資するように政策をフル回転させているところでございます。

福田(峰)分科員 今幾つか制度のことを御説明いただきましたけれども、これは例えば、いろいろな補助の仕組みとかがありましても、民間鉄道会社は基本的にはみずからの事業費で混雑緩和に対する整備を行っているわけですね。混雑緩和イコール事業収益の向上につながらないと思うんですね、これはやったからといって急に何か利益が上がるわけではありませんから。ということは、やはり投資するには限界があると思うんですね。民間鉄道会社みずからが、開発を含めて、自分たちの事業だから、自分たちがつくった路線だから対処は自分でやってくださいということも、私はちょっとおかしいんじゃないかなと思うんですね。

 例えば、先ほど御説明いただきました特定都市鉄道整備積立金制度、これはあくまで、工事費用の一部を利用者から前払いしていただいて補っているわけですから、別に、例えば国からの補助が入ってきてという大がかりなことになっているわけではないと思うんですね。これは結果的に利用者が負担すればいいということなんでしょうか。

 本来、混雑緩和というのは、例えば利用者に上乗せをして提供してもらって解決すべき課題なのか、あるいは、混雑緩和事業の投資そのものを民間鉄道に対してもっと直接的に、例えば、何か事業費等に補助金等を出してやっていくのがいいのか、インセンティブについてはどういうふうなお考えがあるんでしょうか。

大口政府参考人 混雑緩和の解消につきましては、都市鉄道サービスが鉄道事業者によって輸送事業という形で提供されているということでございますから、その受益者である鉄道利用者の応分の負担により行われることがまず基本であるというふうに考えております。

 しかしながら、混雑緩和対策については、輸送力増強工事など多大な設備投資を伴うというようなことから、その資本費負担を軽減して投資を促進するという観点から、私どもとしても、財政上あるいは税制上の支援を先ほど申し上げましたような形で展開しているところでございます。

 先生お尋ねの、民間鉄道事業者の設備投資に対するインセンティブを高めるという意味においては、私どもが今展開しているそうした施策もインセンティブを高める一つの大きなツールになっているというふうに考えております。

 いずれにしましても、鉄道事業者あるいは地域の関係している自治体あるいは私ども国を含めまして、さまざまな合力をして、支援制度を設けながら混雑緩和に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

福田(峰)分科員 民間鉄道への資金援助というのは、例えばP線方式とかいろいろなことにしても、新線建設に対するものというのが私は聞いていてやはり多いんじゃないかなと思うんですね、あるいはいろいろなバリアフリー対策等で駅舎の整備だとか、そういったところに公的な補助の仕組みというのはあるのかなというふうに思っていまして、混雑緩和に対するものというのはまだまだ十分じゃないというように私は思います。

 逆に言えば、込んだ沿線に住んでしまったら、それは自分たちがそこに住んでいるんだから自分たちの責任でしょうということになってしまっても、私はそれは違うんじゃないかと思うんですね。

 例えば、先ほど大臣が、地方分権をやっていって分散させる。確かにそのとおりですし、私も地方分権国家をつくっていくというのは大賛成なんですけれども、でもそこは、私もそうですけれども、ずっとそこに住んでいるわけであって、引っ越してきてそこに来たわけじゃないんですよ。だから、分散化させるといって、では私がどこかに引っ越すんですかというと、そうじゃないと思うので、ここは、現実問題、住んでしまったら多少我慢してくださいというようなことは、私はちょっとどうかなというふうに思います。

 では、例えば都心部で新線を新たに引いて利用者を分散しようといっても、新しいものを引く、全く違うところに引くというのは、やはり現実的ではないと私は思うんですね。

 こうした中で、結局、既存のものを利用して複々線にするとか、既存のものを利用していかに知恵を出すかというところがこれからの勝負だと思うんですね。そうした意味では、今度、私は横浜ですけれども、JR東日本だとか相鉄、東急電鉄が協力し合って、横浜から東京で都市鉄道利便増進事業で路線が整備されてくる、こういうスキームは、本当に都市生活者にとっては大切なスキームだと私も思っています。

 この都市鉄道の利便増進事業というのは、先ほどから局長もお話しされていますように、速達性の向上だということがもう何度も答弁に出てきていると思うんですけれども、速達性が向上されても、それは三分、四分、五分は短くなっても、さっき言ったように、実質的に込んだ電車に乗る時間というのは全体の比率からすると余り多くないんですよね。

 ということを考えたときに、この速達性の向上がメーンだとは思うんですが、混雑緩和というところもこの仕組みをうまく使って、混雑緩和の解消というところもこのスキームをうまく使いこなすという考えは、これからどういう方向性で考えているのか、伺いたいと思います。

大口政府参考人 先生御指摘の都市鉄道利便増進事業は、連絡線あるいは追い越し設備等の整備によりまして、都市鉄道の速達性の向上などを主な目的として発足させた制度でございます。連絡線の整備あるいは追い越し線の整備、これによりまして速達性が向上した結果、周辺の混雑した路線からの旅客を分散させるという効果もあわせて期待できます。こんなことから、混雑緩和にも対応する制度ということで私どもも認識をしておるところでございます。

 いずれにしましても、混雑緩和につきましては重要な課題と認識しておりまして、新線建設あるいは輸送力増強工事に対するさまざまな支援措置に加え、御指摘の都市鉄道利便増進事業も適切に活用しながら取り組んでまいりたいと考えております。

福田(峰)分科員 これは一方で、基本はやはり、それでも事業者のお金の負担というのは当然出てくるわけですよね。

 そこで、先ほどちょっとお話ししましたけれども、鉄道関連施設は一方ではバリアフリーをしっかりやれということが求められていまして、当然そこにも事業者の収益はかかっているんですよね。

 当然それもやらなきゃいけないと思うんですけれども、例えば各鉄道の快適性・安全性評価指標、これがすごく参考になるんですけれども、いろいろな鉄道会社が、例えばLEDの設置率だとか、あるいは段差の解消が年々どのぐらい向上していったかという、これを見るとよくわかるんです。段差解消だとかLEDの設置率とか、どちらかというとバリアフリーに近いところは毎年飛躍的に数字が上がっていくんですよ。これはいいことだと思うんです。でも一方で、しつこいようですけれども、混雑緩和の率はほとんど変わらないんですよね。

 どっちが大切かということは非常に難しいと思うんです。例えば、同じお金があったとしたら、どっちに割り向けなさいということは言いづらいのかもしれないけれども、これはバリアフリーに対する投資と混雑緩和に対する投資、鉄道事業者はどちらを優先するべきだということを、お考えがあれば教えてください。

大口政府参考人 私ども鉄道事業を所管する行政を担当する者として、先生御指摘のどの事業も私どもにとっては大変重要な事業であるというふうにとらえております。

 それで、先生御指摘のように、混雑緩和につきましては、確かに一部路線でまだ相当混雑があることは事実でございます。先生が御指摘なさった東急田園都市線につきましても、今さまざまな、新線部分も含めて、あるいは並行の複々線化も含めて事業が進んでおりまして、来年の六月には溝の口と二子玉川の間も複々線化になります。そうしたことから、多分、多分というか、しっかりとその辺は効果が出てくるんだろうというふうにとらえております。

福田(峰)分科員 これは出てこないと困るんですけれども、先ほど言った実感が伴うかどうかがポイントで、そこはなかなか難しいんじゃないかなと私は思います。この混雑緩和は、確かにお金がかかるし、大変だというけれども、交通インフラ整備としては、都市生活者の視点に立ったときに、納税している額も多いわけですから、もっと私は温かくサポートしていいんじゃないかと思うんですね。

 特に、鉄道で通勤する人というのはどんな人かというと、会社員の方なんですよ。この方々はいわゆる源泉徴収の対象者ですから、例えば農業だとか商工業の従事者の方というのは、制度融資があったりあるいは振興政策があったりするから、納税した税金が自分の関連した部分に使われているというのをある程度実感できるんですよね。でも、会社員の方々というのは、残念ながら、納税したもので納得感を得るというのが現実的にすごく難しいと思うんですね。例えば、通勤時に快適な環境を提供するということができたら、これは飛躍的に納得感が得られるんだと私は思うんですね。

 ましてや、この間私も映画を見たんですけれども、「それでもボクはやってない」という映画があるんですよ。痴漢の冤罪の映画なんですけれども、最近は意図的に痴漢の犯人にでっち上げられるケースも出てきているわけですよね。こうした冤罪を証明するのは、映画を見てもわかるように、難しいばかりか時間がすごくかかるんです。そうすると、会社に勤めていた人の社会的な被害というのもはかり知れないものがありますし、私も、もしでっち上げされたら次の選挙は多分勝てないなとか、これは本当にそういうふうな話になっていってしまうので。

 地方分権を踏まえて地方都市を再生していくということも大切ですが、ぜひ、都市生活者の視点に立って、特に源泉徴収の会社員の方たちがどうやったら生活実感が上げられるかということを考えていただいて、この都市鉄道の混雑緩和事業をさらに何かいろいろな知恵を出して積極的に取り組んでいただきたいなというふうに思います。最後に大臣、何か感想があれば。

冬柴国務大臣 タックスペイヤーが、その払った税金がこういうふうに自分に便益が返ってきたんだという実感が必要であることはもう言うまでもないことだと思います。

 その意味で、私どもも、この混雑緩和というのは言うべくしてなかなかできないというふうに思うんですけれども、しかし、挑戦しなきゃならない非常に大事な視点だということも、きょうの福田さんの質問によっても非常に鮮明になったというふうに思います。我々も頑張らなきゃならないと思います。

福田(峰)分科員 ありがとうございました。

上田主査 これにて福田峰之君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十二日午前九時から本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十九分散会


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