衆議院

メインへスキップ



第5号 平成16年5月12日(水曜日)

会議録本文へ
平成十六年五月十二日(水曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 石井  一君

   理事 後藤田正純君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 中野 正志君 理事 平井 卓也君

   理事 奥田  建君 理事 五島 正規君

   理事 今野  東君 理事 山名 靖英君

      岡本 芳郎君    城内  実君

      斉藤斗志二君    柴山 昌彦君

      竹下  亘君    津島 恭一君

      萩生田光一君    早川 忠孝君

      福井  照君    松岡 利勝君

      宮澤 洋一君    武藤 嘉文君

      村上誠一郎君    森田  一君

      谷津 義男君    稲見 哲男君

      内山  晃君    岡島 一正君

      梶原 康弘君    北橋 健治君

      小林 憲司君    都築  譲君

      西村智奈美君    橋本 清仁君

      前田 雄吉君    古屋 範子君

      古賀潤一郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   総務大臣政務官      世耕 弘成君

   厚生労働大臣政務官    竹本 直一君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局次長  重松 博之君

   会計検査院事務総局第二局長            増田 峯明君

   会計検査院事務総局第四局長            友寄 隆信君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  吉武 民樹君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  薄井 康紀君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            田中 潤兒君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   決算行政監視委員会専門員 熊谷 得志君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  橋本龍太郎君     竹下  亘君

  泉  健太君     梶原 康弘君

  岸本  健君     前田 雄吉君

同日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     橋本龍太郎君

  梶原 康弘君     稲見 哲男君

  前田 雄吉君     岸本  健君

同日

 辞任         補欠選任

  稲見 哲男君     泉  健太君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 歳入歳出の実況に関する件

 行政監視に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

石井委員長 これより会議を開きます。

 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として厚生労働省年金局長吉武民樹君、社会保険庁運営部長薄井康紀君、林野庁長官前田直登君、水産庁漁港漁場整備部長田中潤兒君及び環境省地球環境局長小島敏郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

石井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。都築譲君。

都築委員 おはようございます。民主党の都築譲です。

 きょうは、貴重なお時間をいただきましたので、もう既に、年金関連法案がきょうの参議院本会議で、ちょうど同じ時間に審議が始まるということでありますが、会計検査あるいはまた行政監査の観点から、今日の年金の問題についてもう少し掘り下げて議論をしてみたい、こんなふうに思っております。

 私ども民主党は、今の年金制度、国民年金そのものがもう根腐れを起こしてしまって、その根腐れが厚生年金の方にもうつってしまって、そもそも国民皆年金、皆保険という話自体がもう虚構になってしまっているんじゃないか。そんな中で、保険料だけ上げて、あるいはまた給付だけ下げて済むような話ではないんではないか、こんなふうに考えて対案も出させてもらって、抜本改革を、一元化をもとにやっていかなきゃいかぬ、こういうふうに考えておったわけでありますが、残念ながら、数が足りませんので、最後はその数の力に押されて、結局、今参議院に行ってしまったわけであります。

 しかし、十分な審議も尽くせなかった中での問題でありましたから、十分な審議をこれからまた徹底的にやっていくんだという、私どもは、三党合意も随分もめましたが、与党の方からのわび状として受け取って、それで審議をこれからまた厚生労働委員会の小委員会の中で徹底的に尽くしていくんだ、そういう思いであります。だから、その議論の一つの参考としてきょうの議論がなればいい、私自身もこんなふうに思っております。

 今回の年金制度の根腐れの状況について、人口構造の変化とかあるいはまた産業構造、あるいはまた国民の価値観の多様化とか、いろんなものが指摘をされますけれども、しかし、行政の怠慢も相当大きかったんじゃないのか。ここに至るまで、この制度の根幹をほうかったまま、やります、やりますと言いながら、結局、国民の皆さんに、まじめに納める人あるいは取りやすいところから取って、本当に肝心なところをしっかりと対応してこなかった結果が、今日の根腐れが、もう国民年金などは根っこの四割以上、五割ぐらいまでが腐ってしまっている状況を放置してきたんではないか。

 こんなふうに思うと、そうすると、行政をチェックするというのはもちろん国会の重要な機能でありますけれども、内部監査ということでは、行政の中に置かれた行政監査、行政評価、こういったものもありますし、それから、もう少し一線を画して、憲法上の機関として位置づけられた会計検査院、こういったところがもっとしっかりと検査をして、しっかりとした提言をやって、この根腐れの進行をもっと早い段階でとめておったら、こんなに国民の皆さんに不信や不満をばらまいて、だれも信用しなくなって保険料を納めなくなるなんという事態にはならなかったんじゃないかという思いがするわけでありまして、そういう観点から、きょうはちょっとお聞きをしていきたい、こんなふうに思っております。

 いろいろ新聞が取り上げておりまして、まずは厚生年金の保険料の滞納が四千三百三十億円というのが厚労省の調べで出てきたわけで、これは一月の新聞であります。こういう状況、四千三百三十億円というと、国民全体の年金の財源からいったらそれほどという思いはするかもしれません。それから、厚生年金については、ちゃんと徴収率は九九%を超えていますというのがその説明かもしれないけれども、それでも、四千三百三十億といったら一体何人分の保険給付に該当するのか、年金給付に該当するのかということを考えたら、一体何をやっていたんだ、こういう思いがするんですが、この点について、会計検査院は一体どういうふうに検査をし、どういうふうな指摘を今日までしてこられたのか、まずそれをお伺いしたいと思います。

森下会計検査院長 会計検査院は、社会保障関係の経費、予算の大きいことに着目をいたしまして、毎年度重点事項として検査に取り組んでおります。その中でも、今お取り上げになりました厚生年金関係についても、重大な関心を持って検査を進めてきたところであります。

 今のお話に関連します取り上げといたしまして御紹介いたしますと、平成十三年には、政管健保及び厚生年金の適用事業所が解散や休業した場合の全喪処理、これは被保険者全員が資格喪失になるという状態のことでございますけれども、こういった状況について検査をいたしましたところ、全喪の処理の後も事業を継続しているという事態がありまして、一種の加入逃れの事例が多数見受けられたところでございます。こういった事態の改善を図るように、平成十三年の十一月に、会計検査院法三十六条の規定によりまして、社会保険庁長官に対し改善の処置を要求しているものがございます。

 なお、厚生保険の保険料の徴収につきましては、従来から短時間就労者などに係る保険料が徴収不足となっているという事態を決算検査報告に不当事項として掲記してきているという検査実績がございます。

都築委員 今、十三年の十一月に処置要求をしたということでありますけれども、それについて、厚生労働省の方はどういう対応をしてきたのか、どういう返事があったか。会計検査院それから厚労省の方から、それぞれお伺いしたいと思います。まず検査院から。

森下会計検査院長 ただいまの全喪処理の改善の処置の要求につきまして、本院が要求いたしましたのは、全喪届について、法令などで規定しておりますその記載内容を明確に示して、これを確認するための資料を添付させて実態を的確に把握できるようにするということ、それから、全喪届の記載内容について、社会保険事務所などが行う具体的な調査確認方法について定めること、こういった二点を要求したわけでございます。

 社会保険庁においては、この会計検査院の処置要求に対し、平成十五年二月に健康保険法施行規則、それから厚生年金法施行規則を改正して、また同年十一月には全喪届の記載内容の調査確認方法などを定めているということでございます。

 私どもといたしましては、本院の要求に対する所要の処置がとられたものと考えているわけでございます。

竹本大臣政務官 政府管掌健康保険それから厚生年金からの違法な脱退の防止策といたしまして、平成十五年度から、適用事業所に該当しなくなった場合の届け出の受け付けに際しまして、その事実を証明する書類の添付の義務づけ、それから的確な実態の把握を行うよう全国の社会保険事務所を指導するなど、そういった徴収の事務の強化を行ってまいりました。

都築委員 では、ちょっと今のその問題ですが、平成十三年の十一月に指摘を受けて、処置要求を受けて、それで十五年の十一月に通知をしたということでありますが、それは余りにもちょっとお役所仕事ではないのか、何でそんなに時間がかかっているんだというふうな思いがするわけですね。

 それから、その後の実行の状況ですよね。社会保険事務所に通知をしましたで済む話なのかという思いもするわけでありまして、そこのところはどうでしょう。

竹本大臣政務官 政令の公布は十五年四月でございますので、一見ちょっとおくれているように見えますが、それからとなりますと、これぐらいの時間はやはりかかるということでございます。

 それで、実際こういうような努力をいたしておりますけれども、なかなかいろいろな事情といいますか、いろいろなケースがございまして、徹底するのにやはり少し時間がかかっておるというのが現状でございます。

都築委員 今、政令と言われたけれども、施行規則は省令だと思うんですよね。(竹本大臣政務官「省令」と呼ぶ)だから、省令というのは大臣が定める施行規則ですから、十三年の十一月といえば、普通区切りのいいところで四月からやるといったら、それだって四カ月の余裕はあるわけですよ。だから、それぐらいのことを、具体的に検査院の方は項目を指定して、こうこうしなさい、ちゃんと確認のときは添付資料をつけろとか、あるいはまたその記載内容の明確化を図れとかいうことを具体的に言っているわけですから、それを受けてさっと二、三カ月で措置して、すぐ公布して、それで施行規則を変えて、すぐ四月一日で通知をすれば、何もこんな遅くなることはないんじゃないのか。一年待つ必要は別になかった、丸々一年あいてしまった。だから、そこに、お役所と言っちゃいけない、私も役人出身だから、実際に多額のお金の徴収漏れという事態を巻き起こすその怠慢というか、精神の怠惰というものがやはりあるんじゃないか。

 本当に、お役所としては物すごく大きな、何兆という仕組み、年間四十兆円ですか、そういったものを運用しているから、何億程度はと思うかもしれないけれども、しかし、切実な、年金給付が、全喪届という偽りの届けによって年金の資格を失ってしまう人たち、労働者だってたくさんいるわけだから、その人たちの生活のことを、将来のことを考えたら、何でそんなもの二、三カ月でぱっとやらないのか、一年三カ月もかけてやるんだという思いが私はするんですが、どうですか。

竹本大臣政務官 確かに、十三年十一月にそういう御指摘を受けておりますので、先生おっしゃるように、翌年の四月からやればいいじゃないかということもわからぬではないんですが、何しろ膨大な対象を相手にしておりますので、なかなか、政省令、そういった規則の定める決定をし、そしてその周知徹底をするまで、結果としてそれだけの時間がかかったということでございますが、それに至るまで、既に検査院の指摘を受けておりますので、その周知徹底を、いろいろなミーティングとかそういったところで相当密接に図ってまいりましたが、結果としてはおっしゃるように一年余りかかったということでございます。

都築委員 私は、だから、こんな大きな年金の問題を法案として出してくるんだったら、きちっきちっとそういったところもやった上で、どうしても、世の中が変わってしまって、こんなことになってしまって、国会で法律を出したいんですと言うんだったらわかるけれども、やるべきこともやらないでおいて、それで保険料を上げるという話だけ持ってくるなんということじゃ済まないと僕は思うんです。猛省を促したい、こう思うんです。

 もう一つ、徴収の問題で、きょうは総務省にも来ていただいておりますけれども、行政監察、行政評価の関係で、この保険料の滞納の問題あるいはまた加入逃れの問題とか、こういったところで、今までどういう指摘を厚生労働省に対してしてこられたか、ちょっと言っていただけますか。

世耕大臣政務官 先生御指摘のとおり、総務省は、以前は行政監察と言っておりました、今は行政評価・監視という権能を持っているわけでございます。

 御指摘の問題につきましては、一番近いところでは、平成十年の九月十八日に、年金に関する行政監察、厚生年金を中心としての結果に基づく勧告を行わせていただいております。特に、この調査の結果、厚生年金の未加入事業所というのが少なからず見られたわけでございます。特に、我々が調べた範囲でも、四百三十二ほど新設の事業所があったんですけれども、そのうち二百十二が未加入、率としては四九・一%未加入ということになっておりました。

 また、その未加入の事業所を把握するための方法として、当時、厚生労働省は、登記簿を閲覧して、そして新設された法人を把握するという形で、それをやりなさいということで各地方の社会保険事務所を指導しておられたわけですけれども、これが必ずしもきちんと行われていなかったというような実態が見られたわけでございます。

 また、我々としては、社会保険事務所が加入勧奨という形で、入ってくださいという形で事業所へ呼びかけるというやり方、それをやっても加入される事業所が必ずしもふえないという状態の中で、この加入勧奨のやり方自体に限界があるんじゃないかというようなことも考えまして、当時の厚生労働大臣に対しまして、こういう適用漏れ事業所の把握を的確に行うために、まず第一には登記簿閲覧を徹底してやってくださいということをお願いしました。これは都道府県に対して指導してほしいということをお願いしました。また、もう一つ、加入勧奨から一歩踏み込んで、職務権限によって適用するという方法を検討してはどうかということ、この二点を勧告させていただいたわけでございます。

都築委員 そういう勧告を受けて、厚生労働省の方はどういう対応をされましたか。

竹本大臣政務官 今、総務省の方からお話がありましたように、実際は、この社会保険制度に対する理解が乏しい事業主も多々見られるのが現実でございます。そういうことで、我々といたしましては、未適用事業所を把握するために、法務局に行きまして法人登記簿の閲覧や、労働保険の適用事業所に関する情報を活用したり、あるいは、社会保険労務士というのがおりますが、これによる巡回の説明を行ったり、あるいは社会保険事務所の職員による未適用事業所に対する巡回指導、こういったこともやってきておるわけでございます。また、この四月から社会保険庁に、適用、徴収対策を行います適用・徴収対策室を新たに設けたところでございます。

 いずれにいたしましても、現実にこういったものについての理解が十分でない事業所が多々あるのが現実でございますので、それに対する説得と、そして、今御指摘ありましたように、説得の仕方、説明の仕方も多少工夫するところもあるのではないかという思いを抱きながら、一生懸命努力をしてまいった次第でございます。

都築委員 今のお話を聞いていて、制度に対する理解が十分浸透していない、こういうお話ですけれども、でも、厚生年金制度ができたのは、仕組みをさかのぼっていけば、もう戦前からあるわけですよ。そうでしょう。それで、それをずっと、戦後になって、昭和三十六年の国民年金のスタートとか、あるいはまたいろいろな累次の改革を重ねて、国民皆年金という形で、厚生年金と国民年金という形で、厚生年金はもっと古い歴史を持っているわけですから、事業主は、人を雇ったら必ず年金に加入しなきゃいけないんだ、こういう意識をみんな持っているはずですよね。当然、もう五十年以上の経験があるわけですから、それでなおかつこういう状況というのは、一体何なのか。しかも、それを放置していた。

 しかも、平成十年ですよ、今から六年前の勧告ですよ。六年前の勧告を受けて、この四月に適用対策室をつくったというのはどういうことですか。何でその時点でつくらないんですか。何をやっていたんですか。

竹本大臣政務官 実は、制度に対する理解が十分でないということの裏には、この十年間、大変な不況でございました。そして、各事業所は、利益が上がらない中で一三・五八の半分を負担しなきゃいけない。変な話だけれども、それを回避するために何ら方策はないかというようなことを考える事業者もいないわけではない、そういうことが前提でございまして、こういった実効が上がらない事情が非常に顕著になってきました。それで、これはほっておけないということで、おくればせながらということになるかもしれませんけれども、この四月に対策室を設けた、こういうことでございます。

都築委員 その不況というのは理由にならないと僕は思うんですよ。不況で、今までだって何回か不況を経験して、また高度成長というものを経験してやってきているわけで、確かに、今もう右肩上がりではない、バブルがはじけて以降非常に厳しい状況が続いているというのはわかります。それでありながら、では、働く人たちの生活は、老後はどうするんだとか、そういう問題もある。

 それからもう一方で、不況ということで、確かに厚生年金の代行返上なんというのは大問題になった。みんな、企業年金の部分は代行を引き受けてしまって、それで物すごい積み立て不足が生じてしまって、一流会社だったら何千億という負債を抱えてしまって、企業の格付が、ランクづけがどんどん下がってしまうというふうな状況まで起こって、今、代行返上がようやく進んでいるという状況です。

 だから、これも考えてみたら、行政がつくった仕組み、いいときはいいんだけれども、悪いときにぱぱっと対応できない。だから、予想配当率というか、そういったものをさっと切り下げないから、いつまでも五・五%で運用しろというふうな義務をつけたままやっておくから、実際の運用率は一%とか二%だから、どんどん赤字が広がっていってしまって大変なことになってしまったということも、僕は、行政のスピード感というものが今の経済をますます落とし込んでいっているんじゃないかというふうに思うんですよ。だから、何でこんなにかかる。

 しかも、当時総務庁が指摘したのは、新設のうちの四百三十二を検査して二百十二が未加入ということは、半分ですよ、半分が未加入だ。最近の新聞の報道でも、大分よくなったというふうな、逆にすると、印象を受けてしまうんですけれども、総務庁が当時調べたのはもっと悪かったのかもしれないけれども、新設の二割、九万六千のうち一万七千が未加入だ、約二割だ、一八%だ、こんなふうな新聞報道も出ておるわけです。

 しかし、この時点で半分が未加入だったら、これは大変なことだと。こんなことをやっていったら、結局、厚生年金の徴収率九九%です、万歳なんと言っているんじゃなくて、実は、登録している厚生年金の適用企業はいいかもしれないけれども、そこから落っこちていっている、どんどんできる企業の半分が落っこちていっていると思ったら、これは大変な事態じゃないですか。何でこんなに六年間もほうかっておいたのか、私、もう一度聞いてみたい。

竹本大臣政務官 あらゆる法人が厚生年金に入る義務があるわけでございますけれども、その俎上に上ってこない事業所が多々あるのが現実であります。したがいまして、ともかくそういった事業所を探し出してということになるわけでございますが、見つけ出して、それに対し説得し、指導するということでございまして、毎年、我々役所の方でも事業計画をつくりまして、事業計画の重点事項として位置づけまして、説得及び徴収機能の強化ということに努めてきたわけでございます。

 先生おっしゃるように、のろいじゃないかと言われれば、そういうことになるのかもしれませんけれども、精いっぱい努力をして今日の結果だということでございます。しかし、それで十分だと我々思っているわけではございません。きっちりと、より一層職員を督励し、徴収の強化ということに努めなきゃいけない、そのように思っている次第であります。

都築委員 きっちりとやると言うんだったら、今回、こんな年金法案が出てくるとはとても私は思えないですね。

 それで、もう一つ、今度は会計検査院の方にお伺いしますが、保険料の徴収額に過不足があったものということで、今回、二件、四十九億一千三百九十万、指摘をされておられます。これのちょっと概要を説明していただけますでしょうか。

増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。

 最近、短時間就労者が増加傾向にあるということで、検査に当たりましては、短時間就労者を多数使用している事業主を中心に選定いたしまして検査を行ったわけでございます。

 その結果でございますが、全体二十九社会保険事務局の二百四社会保険事務所管内における短時間就労者等、二千七百八十二事業主を調べたわけですけれども、そのうち、千二百八十二事業主につきまして、徴収額が四十五億円、この内訳としましては、健康保険保険料が十億、それから厚生年金保険料が三十四億不足していたというものでございます。

都築委員 結局、また同じことなんですよね。会計検査院の検査、これは、短時間就労者と言っているけれども、実際的には常用的に使用しているということで、本来、ちゃんと適用して保険料を徴収しなきゃいかぬという人、それが二千七百八十二をサンプルで選んだら一千二百八十二、これもやはり半分ぐらいいっているじゃないですか。全く同じ状況が今回また起こっているわけですよね。だから、では、これについてどういうふうにするのかというふうな思いがあるんですが、恐らく厚労省の説明は、また同じようにきっちりやっていきます、こういうふうに言うしかないだろう。

 ただ、では、僕は、これまた会計検査院に飛んじゃって恐縮ですけれども、こういう状況というのはいろいろなところでもう前からわかっていたんじゃないですか。こういう状況をこのままほうかっておいた。会計検査院だって、今回、保険料の、厚生年金とか、あるいはまたほかの社会保険についての適用関係は毎年たしか指摘をいろいろされていると思うんですけれども、そういう状況でありながら、これが半分だということだったら物すごく重大で、僕自身は、このわずか二件、四十九億、社会保険と労働保険、こういうことで二件と言っているからあれですけれども、世の中がこんな状況になってきているというのに、個別の検査項目ということだけで本当にいいんだろうか、こんな思いがするんですが、検査院長、いかがでしょうか。

森下会計検査院長 ただいまのような徴収が不足しているという事態、これにつきましては、従来から引き続き検査をして、毎年度、今回は四十九億でございますが、かなりの額の件数と金額を指摘してきているわけでございます。それの抜本的な改善策というのはないのかというお気持ちからのお尋ねかと思います。

 対象としております事業主あるいは事業所、これは新設やら廃止やらを繰り返しているわけでございまして、なかなかそういう把握が追いついていかないという点が一つあろうかというふうに考えております。

 それから、私どもの検査の指摘率が極めて高いということでございますが、これは、そういう短時間就労者を多く就労させている事業所において、このような間違いあるいは保険料の納め方が少ないという事態が多く見受けられるだろうという想定のもとに、そういう事業所を特に拾い上げて検査をしているということからこのような事態が生じている、このような事態が発見されているということでございます。したがいまして、それ以外の、かなり大企業でありますとか、そういったところになりますと、同じような割合というのはないのではないかというふうに信じたいということでございます。

都築委員 今の検査院長の御指摘は、僕自身、会計検査院に対する期待というものを裏切るものだと正直言うと思います。

 先ほど申し上げたように、行政をどういうふうにチェックしていくのかということで憲法上位置づけられた、国の税金あるいは公的な資金の使い道をしっかりと検査するその立場に置かれている会計検査院として、非常に責任は大きいし、また国民の期待も大きいと思うんです。

 ただ、実際に検査されたところが、例えば今の御説明の中で、調査に入った、検査に入ったところが、そういう短時間就労者が多いと思われるようなところを選んでやったから高い率で徴収不足といったものが生じてきているんじゃないかとか、適用漏れが生じてきているんじゃないか、こういうふうに言われますけれども、しかし、今どこの世の中見たって、どんな大企業だって、実際のところはもう短時間就労者とか外国人労働者とか派遣就労者とか、幾らでも雇用の形態が多様化しているわけですよ。検査院だけ何かちょっと四、五十年前の状況に置かれてしまったような御答弁じゃないのかなと。

 どこ見たって、短時間就労者、とにかくこの年金の問題が今世の中にどういうふうな影響を与えているかといったら、いろいろなところでも議論は出ていますけれども、保険料の負担の増加というものが企業の経営を圧迫する、それはさっきの代行返上の問題だけではなくて、実際に労使折半で健康保険も年金も負担しなきゃいけないということになると、物すごい実は、雇えば雇うほど保険料負担がふえて、結局、厚生年金保険さえなかったら会社はつぶれなかったというふうな事業主だって出てきている状況にあるわけです。

 その中で、何が進んでいるかと言ったら、正社員をパートに変えるとか臨時社員に変えてしまうとか、そういう形で対応している。本当にそれをやっていればいいんだけれども、名前だけパートだ臨時だ、こう変えておいて、それで実際には正社員と同じ扱い方をしていたら、それは実は虚偽の使い方になるわけですよ。適用逃れをやっていることになるわけですよ、そういう状況。

 あるいはまた、賃金も実はそういった中で下げていく。賃金を下げれば、賃金掛ける保険料率ですから、保険料を少しでも節約できる、こういう状況になっている。それでもやり切れなくなったら、今度はさっきの全喪届という形でやってしまう、あるいは本当に倒産してしまう。こういう状況になっているということを思うと、私自身は、だからもっと会計検査院が、一を知って十をぜひ知ってもらって、本当にこんなことでいいのかという観点からの指摘をやるべきじゃないのか。

 私自身、どうも、きのうもいろいろ事務方の人に来ていただいて説明を受けました。もう本当に証拠があるような、検査に入って、実際にどういうデータでどういったことがちゃんと指摘できるということぐらいしか余り指摘できないというふうなことを言われるから、私はちょっとそれは期待外れだ、そんなことで本当に済むものですかと。

 いろいろ会計検査院の検査の観点というものを聞きますと、実際にはその正確性とかあるいは合規性ということで、法律に、ちゃんと適正に処理されているかとか、そういう話もある。ただ、経済性、効率性、本当にこれで効率的にこの制度は運用されているんだろうかという話と、最後に、本当に事業が所期の目的を達成するために効果を上げているか、有効性という観点からの指摘だってあるわけですよ。

 そうすると、じゃ、年金というのはこれで有効なのかといったことを考えたら、私は、ここまで保険料をしょっちゅう繰り返して上げていくような、こんなもので、しかも、脱落者というか、国民年金加入逃れとか、こういったものが起こるような状況の中で、とても国民の老後の安心とかあるいはまた安定とか、こういったものを培っていく仕組みになっていないんじゃないか、こういうところまでの指摘というのはできないものなんですか、会計検査院としては。

森下会計検査院長 私どもの検査というのは、単に正確性、合規性にとどまらず、広く有効性、こういう制度が本当に機能しているのか、それが国民のものになっているのかどうかという観点からの検査を進めてきているところでございます。

 厚生年金の保険制度についても、そのような観点を持ちながら検査に当たっているわけでございますけれども、ただいまのような個別のといいますか、個々の徴収の問題を現在は取り上げておりますけれども、今後はそういった制度全体の問題にも切り込むような形で何か取り上げることができないかということは、日ごろから検査に当たって考えているということでございます。

 そのために、従来から、不当事項とか、そういうものでなくとも重要な問題であるならば、広く国民に問題を提起して、そしてそのあり方について考えていただけるよう、そういった問題提起型の取り上げ方をしてきているものもございますし、それから、非常に国民の関心が集まっている問題については、特にそれに集中して検査を実施して、特定検査状況という形で取り上げるということを近年積極的にやってきているところでございます。

 ただいま先生の御指摘あるいは検査の方向性については、私どもも全くそのような気持ちを持っているところでございます。その成果が上がるように十分な検査を進めてまいりたい、こういうところでございます。

都築委員 ぜひ会計検査院として大胆にいろいろな観点からのまた検査をされて、本当に国民の福利向上という観点を第一に置いて、税金のむだ遣いをなくして、本当に有効に国民、社会が回っていくように、そういう検査をこれから期待したい、こう私は思います。

 それで、何か厚生年金だけでもう半分来てしまいましたが、先ほど政務官が御答弁された中で、労働保険のお話もたしか出ておりました。社労士からいろいろなお話も聞いたり、こういう話も出ておりましたが、実は去年の二月だったか、私も予算委員会で坂口厚生労働大臣に質問する機会がありまして、そのときに、厚生省と労働省が合併をして、それで合併の効果の一つとして、例えば、今までは、労働保険は労働保険で徴収、適用業務をやっていた、それから社会保険は社会保険で適用と徴収の業務をやっていた。そこのところを一本にするような形で、実際に厚生年金の適用事業所は百六十二万ぐらい、ところが、労働保険の場合は、労災保険は一人でも労働者を雇ったら、パートだろうが何だろうが労災事故が起こったら払わないかぬから全部適用だと。労災保険は、それこそ二百六十万以上だろうと思います。雇用保険の方は二百万を超えている適用事業所数を持っているんですね。

 ちょっと定義が、適用事業所として、全部の法人とそれから従業員五人以上の人を雇っている事業所と違うかもしれないけれども、ほぼ重複していると私は思うんです。その中で労働保険と社会保険、それぞれの事務所が一緒になってこうやっていけば、もっとぴっちりとつかまえて、厚生年金の適用事業所だってふえるじゃないですかという指摘を申し上げて、当時渡辺政務官が答えておられましたけれども、本当にその成果は上がってきているんだろうか、今日の数字を見る限りでは、まだ十分数字として成果は上がってきていないんじゃないか、こんな気がします。

 ただ、もう合併して何年ですか、三年たつわけですから、これもまた合併の効果を上げるのに時間がかかり過ぎているんじゃないか、こんな思いがいたしますが、どうでしょうか。

竹本大臣政務官 先生御指摘のとおり、両省が合併したんですから、できるだけ重複部分は省いて一元化をし、効率を上げるというのは当然そのとおりだと思いますし、私も全くお気持ちは賛同いたすところでございますが、ただ、現実に、言いわけに聞こえるかもしれませんが、いろいろ問題がございます。

 ちょっと申し上げますと、社会保険と労働保険の事務の一体化でございますけれども、平成十五年十月から、インターネットによる社会保険と労働保険に係る届け出の一括受け付けというのを開始いたしておりますし、また、社会保険事務所に社会保険・労働保険徴収事務センターを設置いたしまして、保険料算定の基礎となります賃金や保険料額の届け出の受け付けなどの事務を実施しておるわけでございます。

 また、本年四月から、社会保険と労働保険のいずれも滞納している事業所につきましては、差し押さえなどのことも徴収センターを通じて実施をいたしております。

 今後、情報通信技術の発展、経済社会情勢の変化等を踏まえまして、いろいろな見直しを行いながら、事業主の利便性の向上と収納事務の一元化にどういう工夫ができるか、さらに一層工夫を重ねながら、本来の省庁合併の、そして行政効率の向上という目的に沿うような努力はなお一層必要だろうと思って我々努力しておるところでございます。

都築委員 今、大臣のほかに、昔の政務次官にかえて副大臣、政務官という形で、国会議員が各省の幹部になって、そして政策を遂行していく、企画立案をしていく、そういう立場にあるわけですね。僕は役所の経験がありますから、役所というのは、正直言えば、やはり勘弁してもらえるんだったら勘弁してもらって楽をする、これが官僚の体質ですよ。それを、本当に国民の立場に立って、国民の声を聞いて、これで国民はいいんだろうか、何のために自分は信託を受けたんだろうかということも踏まえて、その官僚の皆さんを叱咤激励して、三年かかるというのを一年で何とかならないかとか、そうやって督励していくのがあなたたち幹部に入った人たちの責任じゃないんですか。

 役人の皆さんの説明を受けて、難しい難しいと、難しいに決まっているんですよ。頭のいい人たちというのは難しいということがすぐわかるんです。ところが、本当に世の中を変えていく人というのは、真心を持ってその壁をぶち破っていくんだ。それが政治家の役目じゃないですか。もう一度決意を聞かせてくださいよ。

竹本大臣政務官 全くそのとおりだと私も思っております。私も役人の経験がございますし、そして役所の人々の立場もわかります、気持ちもわかります。しかしながら、我々は、少なくとも選挙を経て国民の代表として国会に上がっておる人間でございます。それが役所の中においてやるべきことは何かとなりますと、私は、国民の声を伝えることだと思っております。常々、うちの職員に対しても、そういうことは強く申しておるところでございます。

 ただ、言ったほどにはなされているかどうかとなると、極めて疑問のところもございますし、本来の政務官という制度そのものが存在価値を発揮するような状況に至ることを私自身も強く望んでおるところでございます。国民の声を行政に反映させる、それが政務官、副大臣の仕事だろうというふうに思います。

都築委員 ぜひ剛腕を振るって役所の督励をしていただきたい、こんなふうに思います。

 それで、今度は国民年金の議論に移っていきたいと思います。

 国民年金について、未納だ、未加入だとかいう議論で沸騰しておりますが、その話はちょっとまた後にするとして、私は、厚生省の皆さん方が六二・八%が納付してますというふうに言っておられるけれども、実際はそんなものじゃないんじゃないか、もっと低いんじゃないか、こんなふうに思うわけで、国民年金納付率六二・八%、平成十四年度、この算定の方法についてちょっと説明をしていただけますでしょうか。

竹本大臣政務官 国民年金におきましては、保険料負担が困難な者につきまして、将来、年金受給権を確保するために免除制度というのを設けております。また、学生については学生納付特例制度を設けておりまして、本人の申し出に基づきまして、保険料納付を要しないものとする仕組みがとられているわけでございます。

 こうした者の人数を含めていいのではないかというふうな意見もあるわけでございますけれども、そもそも、平成九年に基礎年金番号をつけるようにいたしました。ただ、この基礎年金番号を付することのできない人たち、いわゆる未加入者という方がおられます。こういった人の把握が非常に難しいということの中で、六二・八%というのは一見非常に納付率が悪いというふうに聞こえるかもしれませんが、実際は、平成十三年時点の調査によりますと、推計で六十三万人程度の未加入者がいるのも事実でございますが、未納、未加入者を合わせますと三百九十万人程度でございます。これが全体でどの程度かといいますと、約五%でございます。五%だからいいじゃないかと言うつもりは全くないわけでございますが、制度そのものを変える根拠にも必ずしもならないのではないかと。

 私が言いたいのは、要は、社会連帯の輪を広げるという意味で、こういった未納者、未加入者の存在をできるだけ少なくしていかなきゃならないのではないかというふうに思います。

都築委員 連帯の輪を広げると言うけれども、私自身は今なぜ納付率の話を聞いたかというと、国民みんなで支える年金制度だと言いながら、みんなで支えていない。さっきも申し上げたように、まじめに納める人、それから普通の企業に勤めるサラリーマンとか企業自身、そういったところに全部しわ寄せをして、それで何とか今成り立っている。

 ところが、実際には根腐れが、四割だというふうに申し上げたけれども、その納付率六二・八%。資料をいただいたんですよ。さっきの話でいくと、納付対象月数といったものを分母にして、それから国民年金の納付された月数というものを分子に持ってきて、それで算定をしているということですが、納付対象月数の分母というのは、さっきも政務官が言われたように、当該年度分の保険料として納付すべき月数から全額免除者の月数と学生納付特例の月数を引いた数なんです。だから、それが約二億二千万月ぐらい。それに対して、納付の月数というのが一億四千万月数ぐらいですよ。そうすると、大体六二・八になるんです。

 ところが、実際にみんなで支えるというんだったら、未納者とか未加入者とか、そういった人も全部含めて、あるいは、免除されているあるいはまた特例の人たちも含めて、全部をベースにして、じゃ実際に国民年金を納めている人、一号被保険者として対象となる人が何万ですかといったら、二千二百万ですよ。二千二百万のうちにわずか千三百万ぐらいしか、実はもっと少ないかもしれない、千百万ぐらいかもしれない。それぐらいしか納めていないのが現実であるとしたら、六二・八じゃない、恐らく五割ぐらいにしかならないと思うんです。だから、完全に根腐れをしているんです、この保険が。私はそう思うんですよ。どうですか、その点は。

竹本大臣政務官 国民年金の納付率は、一号被保険者が当該年度分の保険料として納付すべき月数のうち、実際に納付された月数の割合を示す指標でございまして、平成十四年度納付率は六二・八%ということになっております。

 この計算におきまして、保険料全額が免除されている月数や学生納付特例月数、未加入の月数は対象から除外されているわけでございます。

 国民年金におきましては、保険料負担が困難な者については、免除制度や学生納付特例制度により、本人の申し出に基づき保険料納付を要しないものとする仕組みがあるわけでございますが、この制度に、保険料納付を要しない者の人数を含めて空洞化しているという議論は必ずしも当たらないのではないかと考えているわけであります。

 要は、納めている人の中でどういう割合になっているかというふうに見た方がいいのではないかと考えております。

都築委員 いや、だから、そういう発想だから、全然国民みんなで支え合っているということにならないじゃないですか、支えない人たちはぱっと抜けてしまって。

 それで、私自身が言いたいのは、みんなで支えると言いながら、実は、今も申し上げたように、免除の人たち、本当に生活保護を受けるような、所得もなくて大変な貧困な状況にいる人たちにではどうするのかという議論はあります。

 もう一つは、学生の皆さん方に、普通は二十歳、大学生の、今それこそまた進学率が向上していますが、ほとんどが学生になっているような状況の中で、所得もないという前提の中で、それを国民年金の一号加入者にすべきだというふうな形にしてしまっている。

 一方で、六十歳を超えたら、それこそ福田長官がテレビでよく言っていましたけれども、小泉総理も自分も六十歳まで、六十歳時点ではちゃんと納めていました、こういうふうなことを言っておられます。六十歳を超えたら、二百二十万円の給料をもらう小泉さんは、国民保険料を納める必要はないのか。月給二百二十万の高額所得者が全然納めていなくて、それで、まじめに働く人、あるいはまた自営業の人たち、あるいは主婦の人たちがこつこつこつこつ毎月のポケットの中から一万三千三百円を納めてですよ、こんな不公平な制度。それから、所得のない学生にもその適用をして、それで、あなた、四十年の加入期間、うち二十五年納めなかったら一銭ももらえませんよと。こういう仕組みでしょう。

 加入さえしていれば、四十年のうち二十五年加入している、二十五年加入して全部免除だったといったら三分の一の税金がもらえるかもしれないけれども、ただ加入していなかったというだけで何にももらえない、あるいは二十五年に足りなかったというだけで何にももらえないというのは、こんな不公平な制度はないじゃないですか。それが今の国民年金の一番の問題。

 皆保険、皆年金でみんなで支えるなんと言いながら、完全なうそっぱち、虚構になってしまっている。それをほうかっておいて保険料を上げようなんてするからおかしいというふうに私は申し上げているんですよ。そこのところ、どうでしょう。

竹本大臣政務官 平成十三年度の調査によりますと、推計で六十三万人程度の未加入者がいるわけで、先ほど申し上げましたとおりでございますが、未納、未加入者を合わせると三百九十万人程度でございます。これが全体に占める割合は、先ほど言いましたように、五%程度でございますが、要は、先生がおっしゃる学生の場合におきましても、学生時代は収入がありませんから、後ほど納めることによって年金の参加者となることもできますし、それから、六十までに納めていなかった人は、六十を超して六十五歳までは、また希望すれば同じように納めることもできるということで、できるだけ参加者をふやす。

 そういう努力をする中で、この国民年金に対する参加メンバーをふやして、みんなで支え合う互助の精神を実現していこうというのが我々の精神でございますが、それが十分じゃないじゃないか、根腐れを起こしているんじゃないかと御指摘がございますけれども、これは、もうあらゆる努力を重ねて全員参加のところに持っていかなきゃいけない、そういう知恵を絞るのが我々の仕事だと思っておる次第であります。

都築委員 一生懸命努力をするというのは、ただ努力を、社会保険事務所、全国それこそ三百十ぐらいあるんですよね。それで、一万何千人と職員がいるわけです。ただ、僕は本当にそうなのかなと。新聞の記事でも、何か適用とか徴収というのは本来業務じゃないような感想を漏らす人たちがいる、ごく例外かもしれないけれども。実際に、本当にそれぞれの世帯を回ってなんという話にはならないんじゃないかというところもあるかもしれない。

 ただ、それでもやっているケースとして、例えば郵便局の簡易保険だって、あれだって何年払う。これも後で、民間商品との比較とかいうところの議論に出てくるけれども、まじめにこつこつやって、ちゃんと簡易保険として保険料を納めている分は必ず返ってくるわけですよ。だから、みんな納めるんです。ところが、二十五年納め続けなければ一銭ももらえませんなんという話になっちゃうと、何で納めなきゃいけないのというふうなことになるかもしれない。そこまでわかっていない人もたくさんいるんだよ、はっきり言えば。

 だから、それだったら、そこまで来たら、僕はもう仕組みを変えなきゃいかぬと。皆保険なんということで、保険をみんなで支えましょうなんと言いながら半分が抜けちゃっているような、そんな仕組みで保険制度が成り立っているわけはないんですよ。これは、総務政務官もおられるから、簡保の話をすると担当が違うかもしれないけれども、そういうふうに僕は思うんです。

 だから、根本のところから変えていかなきゃいかぬ。ただ、今までだって二十から六十の幅を、さっきの小泉総理のお話じゃないけれども、二十五から六十五にしてその二十五年間とか、そういう工夫とかいろいろなことができるだろうと思うんだけれども、そういうのをやってみる。

 あるいはまた四十五年間までやって、加入期間をずっとべたに延ばしておいて、それでその四十年間がマキシマムで、月額六万七千円、一年間で八十万ちょっと、こういうことだったら、それがもらえるのは四十年ですよと。ただ、加入期間は別に十五歳から、これは全労済なんという民間の、連合の関係団体ですが、そこは、十五歳から終身年金保険というのをやっている。十五歳から加入したら毎月三千円ですよ。それで入っていける。それで一年間で六十万円の保障というのを、終身保障すると言っている。それぐらいの民間商品を開発していっているわけですよ。

 そういうことを考えたら、厚生省のやっていることというのは随分と時代遅れ、とにかく権限を持って規制をかけて、それで努力してやればいいんだ、こんなところで終わっちゃっているんじゃないかという気がするんですよね。だから、そこのところを、僕は政治の力でやはり本当に突破していかなきゃいけないというふうに思うんです。

 それで、ちょっともう時間がなくなってしまって、年金未加入、未納の問題が随分と議論をされていました。それで、私が新聞を見る限り、すごく多いのが、歴代の厚生大臣経験者、厚生政務次官、副大臣というのはなかったかな、政務官という方が多いんですよ。だから、ぜひ僕はこれは公表してもらいたいと思う。それで個人情報と言うから、僕は個人情報なんてとても思わない。公的人間の公的義務の履行の状況が個人情報なんかに該当するわけはないと思う。ただ、どうしてもあなたの立場で言えないんだったら、匿名でいいんです。匿名でいい。

 八六年強制適用以降、大臣あるいは政務次官、あるいはまた副大臣、あるいはまた政務官、こういった人たちが一体何期何人いて、その人たちが加入義務があったかなかったか。というのは、それこそ六十歳を超えたら、六十過ぎの大臣は結構多かったですから、そういった人たちは関係ないわけだ、はっきり言えば、強制適用と言いながら。加入義務があった人が何名いて、未加入が何人、加入が何人、それで、加入していながら実は払っていなかったという人が何人、そういう統計的な数字を、大臣と政務次官、副大臣、政務官について、統計的に出してくればいい、それをぜひやってください。

 そうすると、何を言いたいかというと、恐らく国会議員、きょうの新聞報道だと約九十名ぐらいが国会議員として未納か未加入かとかそういった問題、自分で公表しているというふうな話になっていますけれども、ほとんどがまだ公表していないという状況ですよ。ただ、公表していったら、本当にすごく多くなる。それは年金制度に対する物すごい不信を増長することになると思うんです。

 ただ、僕自身は、やはり厚生省本体のところで一体どんなことが起こっているのか。斎藤前議長、あんな立派な方が、あるいはまた、政務次官とか政務官の方たち、橋本さんもたしかきょうの新聞に出ていましたね。だから、そういうことを思うと、一体厚生省さんはどうだったんですかということをちょっとお聞きしたい。だから、ぜひ出してください、その資料。

竹本大臣政務官 先生の御趣旨は十分重く受けとめたいと思いますが、ただ、お話にもありましたように、個人のプライバシーの側面もございます。そういうところも配慮しながら、できるだけの対応をいたしたいと思います。

 なお、私につきましては、今おっしゃったように公表を、別に隠しているわけじゃございませんので、いずれインターネットか何かで公表いたしたいなと思っております。

都築委員 いやいや、個人のプライバシーというか、プライバシーという、僕はそれこそ、この間、田中眞紀子さんのお嬢さんのあれが週刊誌で話題になりました。あのときの議論、結局、いろいろな議論がありますけれども、あの人はもう普通の国会議員になっていたけれども、公の立場に立つ人のプライバシーというのはかなり制限されるんじゃないのか。

 だから、レストランで食事をするとか、洋服を買う、これはみんな個人の出来事かもしれないけれども、ただ、我々がどこのレストランでどういう料理を幾らで食べて、お相手はだれだったですかという話になったら、それこそ歯科医師政治連盟の話じゃないけれども、そうでしょう、実際には中医協の診療報酬改定に当たって接待をしたという疑惑を持たれてしまうケースだってあるわけですよ。洋服を買いました、どこのデパートで、どこのブランドで、どういう色の、どういう仕立ての洋服を買いましたと、洋服お仕立て券三十万円のものをもらっていたなんという話だったら、それだって実はわいろじゃないのかと。

 だから、我々は、政治倫理確立のために資産公開ということで、自分たちの所得も、本来プライバシーだけれども、全部、洗いざらい報告することになっているじゃないですか。それと、もっと進んだ意味ですよ、これは。罰則つきですよ。罰則つきの公的義務を履行しているかしていないのかと。しかも、年金を所管する厚生大臣とか政務次官のお立場である方たちが義務を履行していたかしていなかったかということだ。もう大幅に譲歩して、名前は要らないと言っているんだ。何人いたか、それを聞いている。なぜそれができないんですか。

竹本大臣政務官 先ほど申し上げましたように、個人のプライバシーの問題もあります。それで、みずから進んで該当者が公表していただくのはもちろん一番望ましい形だと思っておりますが、先生の趣旨は十分にお伝えする形をとっていきたいというふうに思っております。

都築委員 いやいや、それは納得できない。プライバシーじゃないと言っているんだ、僕は。こんなものでプライバシーなんと言っていたら、何がプライバシーですかという話なんですよ、本当。何のために、国民の皆さんが納めた税金や保険料でこの国の社会をどう運営していくのかという決定をする立場の人が、その遂行義務の一部を履行しているかしていないかなんというのは、プライバシーじゃない。とんでもない話だ。もう一度それも僕はしっかりと答弁をもらいたいと思います。

竹本大臣政務官 公的年金の加入実績の情報でございますが、これは個人に関する情報でございまして、お尋ねの事項については答弁を差し控えたいと思います。

都築委員 いやいや、そんな話じゃない。プライバシー、個人の情報というのは、情報公開法とかいろいろなのがあります。

 ただ、プライバシーで明らかに個人の権利の侵害になるというものだったら、例えばこの間NHKで、アメリカの大統領のあれを日曜日の夜中か何かにやっていました。あのとき、最後のところは、その当時の大統領が病気を隠していたか隠していなかったかということ。アメリカの大統領の場合は、だから、自分が病気であるということを隠しただけで国民の信頼を失う。というのは、病気になったときに、もし一大事態が起こったら、ちゃんと対応できるのか、そんなことで大統領の職務権限を行使できるのか、こういう話になるから、個人の病気さえ実はプライバシーではない、こういう話になってしまっていたと思うんですね。

 それを思うと、いいですか、罰則つきの義務規定の履行の状況ですよ。だから、本当に病気かとか、あるいは医療に関するものとか、あるいはまた特別の人事の関係とか、人間のおつき合いとか、そんな話だったらプライバシーということはあるかもしれないけれども、法律に基づいた義務の履行を公人たる大臣や政務次官がやっていたかやっていないかということが個人の情報、プライバシーの保護に該当するなんということはとてもあり得ない。ぜひ出してください。

竹本大臣政務官 御趣旨はよくわかりますが、要は、政治家個々人が御自身で判断され、公職にある者としてどこまでの範囲がプライバシーかどうか。そして、政治家にある者として、公表すべきだと思えば公表されるし、公表するのは差し控えたいと思われればその方の御判断でやはり公表されない、そこまで私の方で強制するわけにはいかない問題だと思っております。

都築委員 時間がもうなくなってきましたが、ちょっと、この問題についてはぜひ決算行政監視委員会としてお取り扱いを決めてもらいたい、こんなふうに思います。

 とても私はこんなものプライバシーに関する話じゃない。ぜひこれは堂々と出して、ちゃんと厚生行政としてしっかりやっている、こういう話を示して国民の信頼をかち得ていく、それだったら国民の、この年金改革法案といったものについて、理解が広まっていくかもしれないと私は思います。そういったものを隠ぺいしたまま、自分たちが持っている情報だから自分たちは出せませんなんということをやっていて、自分たち身内だけやっているんだったら、何のために国会議員として皆さんは有権者から信頼を得ているのか、それが問われてしまうと僕は思います。ぜひお取り扱いを委員会、委員長のもとで御議論いただきたいと思います。

 私としては、本当に最後に一言、最後っぺではありませんけれども、今回の年金関連法案、本当に、今まで申し上げたように、適用逃れ、徴収逃れ、いろいろな問題があります。結局のところは、ざるをつくり直して大きくしたってみんな逃げていってしまう、それで残ったまじめな人たちだけが損をするような、そんな年金法案よりは、根本を変えていく、そういうことが大事だということをしっかりと認識してもらって取り組んでもらいたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

石井委員長 ただいまの問題提起は理事会で協議をいたします。

 次に、橋本清仁君。

橋本(清)委員 民主党の橋本清仁です。

 本日、三十分間、持ち時間をいただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、我が国の水産業は、国民の食生活に欠くことのできない多様な水産物を供給する重要な役割を果たしております。また、漁港、漁場、漁村は、漁業活動の基地としての役割のみならず、国土、環境の保全、また住民のレクリエーションの場の提供など、国民の豊かな生活を支える多面的な機能を発揮しております。

 しかしながら、我が国の水産業をめぐる情勢、非常に厳しいものとなっております。水産資源の減少、また輸入水産物の増大、担い手の減少、高齢化の進展によりまして、漁業経営は依然として厳しい状況にありまして、また、漁村の活力が低下するなど大きな問題を抱えております。

 こうした状況に対応するために、水産基本法に基づく水産基本計画や漁港漁場整備法に基づく漁港漁場整備長期計画などがつくられまして、これに基づく対応がなされております。そして、そういった前提をもとにして、平成十六年度の水産基盤整備事業関係予算につきまして、三位一体改革などの対応のために、地方にできることは地方に、その方針のもと、国、地方の役割分担の見直しなどにより、国庫補助負担事業の重点化や採択基準の引き上げなどが行われております。

 三位一体改革によりまして、補助金を縮減し、税源を地方へ移譲し、地方交付税を見直すといったことが当分続けられるということになりますけれども、補助金が縮減されるところと税源移譲などによる金が回るところが違ってくるのではないか、そして漁業地域のようなところは専らこういった補助金が減るだけではないのか、そういった危惧の声が聞かされています。

 平成十六年度の水産基盤整備事業関係予算におきまして、三位一体改革への対応が行われているとお聞きしておりますけれども、その考え方についてお伺いしたいと思います。

田中政府参考人 平成十六年度の水産基盤整備事業につきましては、政府において進めております三位一体改革を踏まえ、国庫補助負担金の縮減を図りまして、対前年比九四・三%の予算規模としたところでございます。

 先生おっしゃいますように、水産基盤整備事業は、水産資源の増殖から陸揚げ、流通に至る一貫した水産物供給システムを総合的かつ計画的に整備する事業といたしまして、我が国の水産業それから漁業地域の振興に大きな役割を担っております。このような役割を的確に果たしていくために、事業実施地区の重点化やコスト縮減等の事業の効率化を図ることによりまして、必要な事業の執行に支障がないよう努めることとしておるところでございます。

橋本(清)委員 そういった重点化、効率化が図られていくということですけれども、やはり現場の声を反映していくことが非常に重要なことでありまして、そして現実に漁業者はどういったことができるかわからないのではないか、また、この点、国が現場とのコミュニケーションをさらに深めていく必要があるのではないかと思っております。

 そして、私も地元に戻りまして、さまざまな場所で国民の皆様の声を伺ったり、そして現場の問題点なんか、そういったところを見させていただいておりますが、漁港に行きましたところ、海岸線の侵食が進んでおるところがございまして、そういったところで、この侵食を防ぐために、ヘッドランド、人口岬ですか、これは海岸線から海に垂直に出たコンクリート製の堤防で、海岸線に沿った砂の移動を食いとめる働きをするものでございます。これは国土交通省の直轄事業でございますけれども、そういったもので砂浜が消えていく、そういったものと同時に、近くの漁港にそういった侵食された砂浜の砂が堆積していって、船の進行に非常に重大な影響を及ぼしている、そういったところが、私の地元の山元にある漁港なんですけれども、そういったところでも見られておるんですね。

 そういったところで、所轄官庁さんは違いますけれども、事業の効率化というところを考えて、どういった連携を国土交通省さんととっていらっしゃるのかということについてお伺いをしたいと思います。

田中政府参考人 これまで海岸事業、例えば水産基盤整備事業におきましては、事業コストの縮減を図りつつ海岸の侵食対策に資する観点から、漁港等のしゅんせつ土砂を活用して、侵食海岸への、養浜といいますか、埋め戻すというようなことをやってきたところでございます。

 さらに、平成九年度からは、水産基盤整備事業だけでなくて、港湾事業、河川事業との連携を強化しまして、余剰に堆積した土砂を侵食海岸に活用する渚の創生事業というものを創設して、総合的な土砂管理対策を推進しているところでございます。

 今後とも、渚の創生事業を初め、土砂の有効利用と連携の取り組みを一層促進しまして、効率的な事業の実施に努めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

橋本(清)委員 先ほども申し上げましたけれども、私の選挙区は、こういった漁港もあるんですけれども、また森というか、山も多いんですね。そういったところで、森林・林業関係の質問に移らせていただきたいと思います。

 地球温暖化、こういった言葉が非常に重要な問題となっておりまして、我々人類の生存基盤にかかわる非常に深刻で重要な問題となっています。我が国におきましては、地球温暖化対策推進大綱に基づきまして、温室効果ガス六%削減に向けて努力している最中でございます。

 そんな中で、農林水産省におきましては、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策を策定いたしまして、森林による吸収量三・九%の確保に向けまして、まず第一に健全な森林の整備、第二に保安林等の適切な管理保全等の推進、三番目に木材及び木質バイオマス利用の推進、四番目に国民参加の森林づくり等の推進、そして五番目に吸収量の報告・検証体制の強化といった取り組みを展開なさっているようでございます。

 しかしながら、こういった取り組み、効果的になされておりません。現在の森林整備、保全の実行量におきましては、先ほど申し上げましたとおり、森林の吸収量三・九%、とてもじゃないけれども確保できない、目標を大きく下回るおそれがあるとされています。このため、国民の深い理解と協力を得て、吸収源対策を着実に推進していく必要があるのではないか。

 森林による二酸化炭素の吸収量三・九%の達成、これは閣議決定されまして、国会に報告された森林・林業基本計画に沿って森林整備などが実施されれば可能と説明されてきました。しかし、現在の森林整備水準では、これが大幅に下回る二・九%。これはなぜなのか。また、三・九%を下回ることは地球温暖化防止にどのような影響をもたらすのか。具体的に例を示していただいた上で、そして反省を踏まえた上で、今後の森林整備の保全の具体的な取り組み方針について伺いたいと思います。

前田政府参考人 ただいま先生お話ございましたように、京都議定書の運用に当たりましては、我が国の温室効果ガス削減目標六%のうち、森林吸収量といたしまして三・九%分計上することが、関係国の間で認められているところでございます。

 ただ、これは、平成十年度から十二年度までの水準で推移した場合で二・九%、さらに最近の十四年度までの水準、五年間の水準を見ますと三・一%ということで、若干ふえてはおりますけれども、三・九に対しましては大幅に下回るというような見込みでございます。

 この森林吸収量につきましては、京都議定書上、持続可能な森林経営が行われた森林、これが算定対象になる、カウントできるということになっておりまして、この三・九%を達成するためには、今お話ございましたように、平成十三年度に策定されました森林・林業基本計画に定められました二十二年度の目標達成に必要な森林整備量、これを確保することが必要でございますが、例えば植栽で見ますと、平成十年度から十四年度までの平均実績が四万ヘクタール、これを例えば七万ヘクタールにふやさなきゃいけない。あるいは、間伐三十四万ヘクタール、これを三十八万ヘクタールにふやす必要があるというふうに考えている次第でございます。

 三・九%の確保を図るためには、コスト縮減なども図りつつも、一般財源はもとより、新たな税財源の確保、こういったものについても取り組んでいくことが必要というように考えておりまして、林野庁といたしましても、昨年来議論されております温暖化対策税が導入された場合には、その税収が森林整備等に活用されますように積極的に対応してまいりたいというように考えている次第でございます。

小島政府参考人 環境への影響についてでございますけれども、森林経営が適切に実施されない場合、森林には、もちろん多面的な機能、水源の涵養とか生物のすみかとか、そういうような機能がございますけれども、温暖化との関係でいいますれば、適切に実施された場合と比較して、二酸化炭素の吸収能力が衰えていく、こういう影響があります。機能、二酸化炭素を吸収する能力と人の手がかかっている森林経営、この二つが要件でございますので、適切な森林経営が実施されない場合には、機能、吸収能力も衰えていく、こういうことを懸念しているわけでございます。

    〔委員長退席、五島委員長代理着席〕

橋本(清)委員 先ほど、三・九%を達成するために新たなる税財源の確保、そういったことはおっしゃられていたと思われるんですけれども、ことしの森林・林業白書におきましては、三・九%を確保するための対策の一つとしまして、温暖化対策税が導入された場合の活用を含めた財源の確保により、森林整備のさらなる推進が重要という趣旨の記述がございました。地球温暖化防止のための森林整備の費用負担のあり方について、平成十五年十二月に内閣府が行った世論調査におきましては、国民全体で負担するが四一%、そして排出割合に応じて企業や国民が負担するが四〇%、そういった報告がなされております。

 しかし、温暖化対策税の導入というのは、エネルギー価格の上昇をもたらしまして、国際競争力を失うとの懸念が強く、また新たな特定財源を創設するといった場合は財政の硬直化を招く、そういった懸念もございます。そしてまた、森林のこういった財源の確保のために新たに国民に負担を求めようとするならば、年金の問題もそうですけれども、国民に負担を求める前に、まず自分たちの事業の効率化とか効果的な実施と必要経費の縮減のさらなる推進が必要と考えられます。

 そういったところで、どのような対策をなさっていらっしゃるかをお聞きしたいと思います。

前田政府参考人 先ほど申し上げましたように、林野庁では、森林によります二酸化炭素吸収目標三・九%を達成するために、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策に基づきまして、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理保全、こういったものに積極的に取り組んでいるわけでございますけれども、これらの取り組みに当たりましては、林野公共事業におきましても、森林整備に係ります事業へ重点化を図るといったことを図りますと同時に、平成十五年度から、より一層効率的かつ効果的な事業の実施を図るというために、平成十九年度までの五カ年間に、十四年度に比べまして一五%の総合的なコスト縮減、これを目標といたします林野公共事業コスト構造改革プログラムを策定いたしまして、その取り組みを進めるなど、コストの縮減に努めているところでございます。

 今後とも、コスト削減などの自助努力を進めながら、効率的かつ効果的な事業の実施を推進いたしますとともに、関係府省との連携を図りつつ、必要な財源の確保に努め、森林吸収源対策の着実な推進に努めてまいりたいというように考えている次第でございます。

橋本(清)委員 次に、緑の雇用、そういったところについてお伺いしたいと思います。

 近年の厳しい雇用環境の中、政府は、総合雇用対策の一環として、森林整備を通じた緊急かつ臨時的な雇用、就業機会の創出に取り組んでいらっしゃいます。

 厚生労働省では、平成十三年度から平成十六年まで緊急地域雇用創出特別交付金事業を実施することとしており、この事業を活用して、各都道府県におきましては、失業者を新たな労働力として森林の整備に振り向けている。

 林野庁におきましても、この事業と連携して、失業者等が森林作業員として円滑に従事できるようにするために、就業相談会の開催、そして就業前研修の実施という新規就業促進・相談対策事業を行っていらっしゃる。そしてさらに、林野庁におきましては、この緊急雇用対策において、森林作業に従事した者を対象に、高性能林業機械による作業、林業の専門的な知識、技能に係る実地研修会などを通じまして、森林整備の新たな担い手として林業事業体への本格的な就業と、地域への定着を促進する緑の雇用担い手対策事業を実施なさっていると思います。

 その中で、こういった取り組みがなされておるわけですけれども、優秀な林業就労者の確保、育成を初め、地球温暖化防止に対してこれは非常に有効だと思うんですね。そしてまた、こういったところに雇用を生むことによって、山村の活性化、特にお子さんとかいらっしゃったら、そういったところに通学なさったりして山村の活性化なども期待される、そういったふうに思います。

 この緑の雇用の推進に向けたことに対して、改めて考え方を明らかにしていただきたいと思います。

前田政府参考人 山村の過疎化と高齢化が進む中で、今後の森林整備を着実に推進していくためには、やはり優秀な森林整備の担い手の確保、育成、これが大変重要だというふうに考えております。

 平成十四年度補正予算から、緊急雇用対策と連携いたしまして、約二千四百人規模の研修生に林業事業体等から最低限求められます技能の習得を図ります緑の雇用担い手育成対策事業、これを実施しているところでございます。本事業の実施によりまして、優秀な林業就労者の確保、育成、森林整備の着実な推進という効果が期待できるほか、先生も御指摘ございましたように、都市部からの人の地域への定住促進によります山村地域の活性化も期待されるところでございまして、地域によりましては、都会から若い御夫婦が子供と一緒に住みついて森林作業に取り組んでいるといったような事例も見られるところでございます。

 本事業につきましては、この十六年度当初予算におきましてもお認めいただいたところでございまして、引き続き、今後とも本事業の着実な推進によりまして、基幹的な林業就業者としての地域への定着を図りますとともに、地球温暖化防止にも資する森林整備の担い手の確保、育成に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

橋本(清)委員 また違う質問をさせていただきたいんですけれども、持続可能な森林経営、そういったものを推進するために、民間で進められていることなんですけれども、森林認証、ラベリングというものが世界的に進んでいると聞いています。これは、持続可能な森林経営が行われている森林を第三者機関が認定しまして、そこから産出された木材を区別することによりまして、消費者が選択的にこれらの木材を選別して購入できるようにする民間主体の制度でございます。国際的には、森林管理協議会、さまざまな複数の制度が存在しまして、ヨーロッパを中心として先進国で認証が進んでおる。

 我が国におきましても、平成十二年度に初めて森林管理協議会の認証がなされて以来、森林認証取得への動きは非常に高まっていると聞いております。

 こうした中、平成十五年六月に発足した緑の循環認証会議、SGECと申しますのは、我が国独自の森林認証制度を創設いたしました。これは、豊富な自然の資源の循環利用の促進、また地域材振興への貢献などの必要性を踏まえた上で、我が国の森林の実情に対応した独自の審査基準、指針を持っていらっしゃいます。こうした認証制度の活用によって、持続可能な森林経営の推進、地球温暖化防止に寄与することが期待されることと考えられております。

 こういった民間主体の森林認証、そしてラベリングの取り組みについて、我が国の森林認証制度の創設をどう評価するか、そして国としてこういった取り組みに対して、どういった関与をしていくのかということをお答えいただきたいと思います。

前田政府参考人 民間によります森林認証、先生今お話ございましたように、世界的なものとしましてはFSC、森林管理協議会ですとか、あるいはISO、国際標準化機構、こういったものがございますし、また、先生からも御指摘ございましたように、我が国の実情に合った認証制度ということで、我が国独自の制度としましてSGEC、緑の循環認証会議、こういったものがございます。

 それで、近年、一部の林業経営者ですとか、森林組合あるいは企業、地方公共団体、こういったところがこれらの認証を取得しつつあるというような状況でございます。

 このように、これらの森林認証につきましては、持続性ですとか環境保全への配慮と、一定の基準を満たします森林経営を評価、認証するものでございまして、持続可能な森林経営を進めていく上で大変有効なものというふうに考えている次第でございます。

 このような森林認証につきましては、民間の自主的な取り組みとして進めていくべきものというように考えているところでございますけれども、林野庁といたしましても、国内外の森林認証に関します情報収集、調査、こういったことを実施して、広く関係者に情報提供を行いますとともに、森林・林業白書での紹介、こういったさまざまな機会を通じましてその普及に努めていきたいというふうに考えている次第でございます。

    〔五島委員長代理退席、委員長着席〕

橋本(清)委員 次に、木材利用の拡大、そういったところについてお伺いしたいと思います。

 私、地元を回っておりますと、木材の消費というのが余り、生産者の声としては、コストがかかって収入が低い、そういったことも伺っております。地球温暖化の防止対策としては、森林の整備や緑の雇用、先ほども申し上げましたけれども、推進が実効あるものとするためには、木材利用の拡大が必要不可欠なものと考えられます。

 農林水産省におきましては、平成十五年八月、農林水産省木材利用拡大行動計画を策定なさっておるようです。これは、平成十五年、十六年度を当面の取り組み期間として、農林水産省が実施する公共土木工事のうち、安全さくや手すりなどはすべて木製にすること、林野公共事業での木材使用を現状の二倍といった具体的な目標を持って木材利用を進めていらっしゃるといったように伺っております。

 まず隗より始めよとの趣旨でございますけれども、行動計画の目標達成は今後の木材利用拡大のバロメーターとも考えられます。農林水産省みずからの取り組みの状況を初めとして、今後の木材利用の拡大の具体的な方策について明らかにしていただきたいと思います。

亀井国務大臣 我が国の森林の健全な育成、またそれを支える、それが林業あるいは木材産業の健全な発展、こういうことが必要なことでありまして、木材の利用促進、このことは重要なことであります。

 今委員からも御指摘がございましたとおり、まず隗より始めよ、こういうことで、我が省いろいろなことをしておるわけでありますが、農林水産省木材利用拡大行動計画、昨年八月に策定をいたしまして、省を挙げて木材利用の拡大に取り組んでおるところでございます。

 その中で、やはり具体的な内容、それは、原則木造、木質化、木製品との考え方におきまして、委員からも御指摘の、公共工事におきます安全さく等はすべて木製に、あるいはまた治山事業などにおける工事費当たり木材使用を現状の二倍程度にする、あるいはまた補助事業対象施設のうち、農林漁業体験施設、交流施設等はすべて木造とすること、あるいは庁舎等の木造化やあるいは内装の木質化を推進しております。また、木製品の備品や間伐材の封筒などの使用を今推進しておるところでございまして、平成十五年及び十六年度を第一ステップといたしまして集中的に取り組み、今後、省を挙げて努力をしてまいりたい。また、あわせて、関係府省等々にも連携をとりまして、木質、木材の利用促進、このこともお願いをしておるところであります。

橋本(清)委員 そういった取り組みを行っていらっしゃるという木材利用の拡大、これはまた、国産材を輸出することによって木材利用の拡大も図られるのではないか。そういった面で、現在、中国では、急速な経済発展に伴いまして木材の需要が増加しております。しかし一方、平成十年の大洪水を契機に天然林の伐採を禁止しているために、木材の輸入量がまたこれが急増しているといった現状がございます。

 こうした中、我が国では、杉を輸出する供給側の動きが見られ、国産材の多方面への利用が期待されております。最初に、宮崎県で十五年四月に杉の丸太が輸出された。そのほかにも、島根県、鹿児島県、さまざまなところで輸出がされている。

 こういった輸出による国産材の需要拡大を目指す取り組みに対して、国は需給動向などを調査して国産材の輸出の可能性について分析を行っているとなされておりますけれども、国産材の海外での需要開拓と供給体制の整備に向けて、さらなる積極的な取り組みが必要であると考えられますけれども、この国産材の輸出に向けた取り組みについての考え方を明らかにしていただきたいと思います。

前田政府参考人 御指摘のように、森林・林業の活性化のためには木材の利用拡大を図っていくことが必要でございまして、このために、国内での利用拡大を進めることはもとより、中国等への木材輸出、こういったものにも取り組んでいくことも必要ではないかというふうに考えております。

 しかしながら、現状におきましては、中国においては、杉等の日本産の木材、まだほとんど認知されておりませんで、まずは日本産木材のよさを積極的にPRしまして、日本の杉材等を認知してもらうということが最も重要ではないかというように考えている次第でございます。

 このため、林野庁におきましては、木材輸出可能性調査事業、これによりまして、一つ目は、中国等におきます住宅建設ですとか木材需給動向等の市場調査、あるいはニーズの把握、こういったものを行いますと同時に、中国での展示会への出展、こういったものを通じまして、日本産木材の普及宣伝、こういったものを実施しているところでございまして、今後とも、関係部局とも連携を図りながら、国産材の円滑な輸出促進、こういったことに努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

橋本(清)委員 どうもありがとうございました。

石井委員長 これにて橋本清仁君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.