衆議院

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第8号 平成28年4月26日(火曜日)

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平成二十八年四月二十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 公一君

   理事 大塚  拓君 理事 奥野 信亮君

   理事 田中 良生君 理事 中川 俊直君

   理事 平沢 勝栄君 理事 落合 貴之君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    井野 俊郎君

      伊藤 忠彦君    今枝宗一郎君

      岩田 和親君   うえの賢一郎君

      小田原 潔君    大串 正樹君

      門山 宏哲君    神田 憲次君

      木村 弥生君    佐々木 紀君

      白須賀貴樹君    田野瀬太道君

      長尾  敬君    長坂 康正君

      藤井比早之君    古川  康君

      山下 貴司君    山本  拓君

      若狭  勝君    大西 健介君

      篠原  孝君    鈴木 義弘君

      玉木雄一郎君    初鹿 明博君

      馬淵 澄夫君    本村賢太郎君

      岡本 三成君    角田 秀穂君

      笠井  亮君    穀田 恵二君

      塩川 鉄也君    浦野 靖人君

    …………………………………

   参考人

   (元衆議院選挙制度に関する調査会座長)      佐々木 毅君

   参考人

   (弁護士)

   (自由法曹団常任幹事)  田中  隆君

   衆議院調査局第二特別調査室長           荒川  敦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     木村 弥生君

  井野 俊郎君     青山 周平君

  坂本 哲志君     田野瀬太道君

  助田 重義君     佐々木 紀君

  國重  徹君     岡本 三成君

  塩川 鉄也君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     井野 俊郎君

  木村 弥生君     岩田 和親君

  佐々木 紀君     助田 重義君

  田野瀬太道君     坂本 哲志君

  岡本 三成君     國重  徹君

  笠井  亮君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     あべ 俊子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(細田博之君外四名提出、衆法第二六号)

 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案(今井雅人君外二名提出、衆法第二五号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 細田博之君外四名提出、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案及び今井雅人君外二名提出、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として元衆議院選挙制度に関する調査会座長佐々木毅君及び弁護士・自由法曹団常任幹事田中隆君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 佐々木参考人、田中参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 念のため申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。

 それでは、まず佐々木参考人にお願いいたします。

佐々木参考人 衆議院選挙制度に関する調査会の座長を務めました佐々木でございます。

 本日は、調査会が本年一月十四日に大島議長に提出しました答申につきまして、お手元に答申をお配りしておりますので、まず、それに沿って概略御説明し、また、調査会の座長として御質問に答えさせていただきたいと存じます。

 調査会は、平成二十六年九月十一日に第一回の会議を開き、答申を決定しました本年一月十四日までの間、全部で十七回の会議を開きました。

 議長からの諮問事項は、答申の一ページにありますように四項目で、それら四つにつきまして一つ一つお答えをしたという形で答申をつくらせていただきました。

 答申本体の二ページ目の次に、水色の紙を挟んで、オレンジの枠がついているものが説明文になりますが、オレンジの枠の中は答申そのものですので、この説明文に沿って御説明をいたします。

 一番目が「衆議院議員の選挙制度の在り方」でございます。

 そこにありますように、「現行の小選挙区比例代表並立制を維持する。」ということとあわせて、「ただし、制度の信頼性を確保するため、人口動態に合わせて、選挙区間の一票の較差、選挙区の区割りなどを定期的に見直す仕組みとする必要がある。その点からして、較差是正は喫緊の最重要課題である。」というのが答申の本文でございます。

 それに至る議論の経過、理由につきましては、一ページの下から二つ目の丸に、「本調査会としては、ようやく国民の間に定着した現行制度の信頼性を確保するため、客観性のある制度の運用原則を定めるとともに、とくに小選挙区選挙については衆議院議員選挙区画定審議会という独自の機関の機能を高めることによって、安定した透明性のある制度運営に努めるのが適切であると考える。」そのような文言をつけ加えました。

 あわせて、次の丸で、「なお、制度の根幹である二つの機能の確保のため、民意の集約機能と民意の反映機能とのバランスには今後とも十分な配慮が必要である。」ということを述べさせていただきました。

 次に、二ページの「定数削減」でございます。

 「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」というのが(1)でございます。

 (2)としまして、「一方、衆議院議員の定数削減は多くの政党の選挙公約であり、主権者たる国民との約束である。」ということがございます。

 (3)として、「このことから、削減案を求められるとするならば、以下の案が考えられる。」といたしまして、1として、「衆議院議員の定数を十人削減して四百六十五人とする。」二つ目として、「小選挙区選挙と比例代表選挙のそれぞれの定数は、小選挙区選挙の定数を六人削減して二百八十九人とし、比例代表選挙の定数を四人削減して百七十六人とする。」ということを本文で答申いたしました。

 結論に至った理由は、いろいろ書いてございますが、一つ目の丸の「衆議院議員の定数を何人とするかについて、絶対的基準があるわけではない。歴史的経緯、政治体制、統治構造、選挙制度や国会運営など様々な要素に基づき決定されることとなる。」というのが委員の大宗の意見でございました。

 それから、衆議院議員の定数を国際比較するということが二つ目の丸でございますが、諸外国の下院と我が国の衆議院とを比べると、衆議院の場合は議員一人当たりの人口が他の国と比べて非常に多いということを改めて確認したわけでございます。

 そして、三ページの一つ目の丸、「小選挙区比例代表並立制の下では、小選挙区選挙と比例代表選挙は別々に行われるものであり、小選挙区選挙及び比例代表選挙がそれぞれの意義をもち、有効に機能するためには、相応の定数が必要とされる。」ということでございます。

 さらに、その下にありますように、「小選挙区選挙において、都道府県を単位に議席配分することを前提として大幅に定数を削減すると、都道府県間の一票の較差、ひいては選挙区間の一票の較差の縮小は難しくなる。定数の大幅削減と議席の比例配分及び較差の最小化という要請を同時に達成することは困難である。」という意見が非常に繰り返し述べられまして、これをここに記したところでございます。

 議員数を考えるに際しましては、調査会の委員の中にもいろいろなお考えがあり、議席は有権者にとっては選ぶ権利であるという視点、いわば代表者を派遣する権利を有権者が持っているというのが、議席が削減されることによって事実上弱体化するというか削減されるというような観点、それから、有為な人材を集めることによる国民の代表議会としての国会の機能強化、その他、行政府との緊張関係の維持等々、削減するということについてはいろいろな要素を考えなければいけないので、増税と削減の組み合わせというものを一度慎重に検討し直す必要があるという意見も多くありまして、そういう意味で、大幅に定数を削減することは適当であるとは言えないということが調査会の大体の意見になったわけでございます。

 そういうことで、「大幅に定数を削減することは適当であるとはいえない。」ということになりましたが、下から三つ目の丸にあるとおり、「しかしながら、定数の削減は、ヒアリングを実施した政党のうち日本共産党及び社会民主党を除くすべての政党の選挙公約であり、多くの政党の選挙公約は、いわば公党の国民との約束として、できる限り尊重されなければならない。」という意見も多く、さらに、具体の削減数につきましては、調査会の中でも、一桁でよい、やはり二桁という意見もございまして、最後の最後になりまして、先ほど申し上げたような結論になったわけでございます。大正十四年に男子による普通選挙が実現して以降、四百六十五人は最も少ない数になるということを確認させていただいたところでございます。

 次に、四ページの「一票の較差是正」でございます。

 まず、小選挙区選挙につきましては、「選挙区間の一票の較差を二倍未満とする。」ということを大原則としてまず掲げ、そして、「小選挙区選挙の定数を、各都道府県に人口に比例して配分する。」ということでございます。

 その都道府県への議席配分方式については、いろいろな条件を満たしてもらわなければ困るという観点から、(ア)比例性のある配分方式に基づいて都道府県に配分すること、(イ)選挙区間の一票の格差を小さくするために、都道府県間の一票の格差をできるだけ少なくすること、(ウ)都道府県の配分議席の増減幅が小さいこと、すなわち変動幅が小さいことということでございます。(エ)として、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であること、これらの条件を加味しながら、実は議席の配分方式についてたくさんの方式がありますので、これを比較考量しました。答申の参考資料の5にも、いろいろな方式の差異について表が掲げてございますので、御参考にしていただければと思います。

 このような諸条件に照らした結果、都道府県への議席配分の方式として、いわゆるアダムズ方式を提案させていただいたところでございます。

 それと同時に、これも実は調査会の当初からいろいろ話題になっておりましたが、制度の安定性という問題をどういうふうに考えるかということでございます。

 そこで、5といたしまして、「都道府県への議席配分の見直しは、制度の安定性を勘案し、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行う。」といたしました。

 これは、現在の制度の基本的な骨格を継承したものであると私は認識しておりますが、その意味で十年ごとということであり、また、国勢調査に基づくこと、有権者数ではなく人口というものを基準に見るということでございます。

 ただ、よく指摘されますように、十年の間に起こる変化をどう考えるかという問題もありますので、6といたしまして、大規模国勢調査の中間年に実施される簡易国勢調査の結果、格差二倍以上の選挙区が生じたときは、区画審は、各選挙区間の格差が二倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとし、この見直しについては、本来の選挙区の区割りの見直しが十年ごとに行われることを踏まえ、必要最小限のものとし、都道府県への議席配分の変更を行わないとしたところでございます。

 都道府県への議席配分は変更せず、その内部の区割りの見直しによって格差を縮小するような努力、これはかなり義務づけ的な規定を調査会としてはできればお願いしたいというふうに思ったわけでございます。

 この意味は、できればそのようなことが起こらないように最初に区割りをしてもらうと大変ありがたいという気持ちも背後にありまして、そのような選挙区の改定案を区画審に作成してもらいたいというのが我々の期待でありますので、必ず五年ごとに大規模な区割りの見直しを行うことをアプリオリに義務づけるという趣旨ではないことを御理解賜りたいと思っております。

 次に、比例代表選挙につきましては、「現行の十一ブロックを維持する。」と。

 これは、比例代表の議席を大幅に減らさなければ、現行の十一ブロックを維持することができるということでございます。

 それから、各ブロックへの議席配分も、アダムズ方式により行うこととしました。これは、現行の配分方式では変動が激しく、そうしますと、比例区が比例区の名に値しないような小さな議席数になってしまうということは、できれば避けたいという気持ちもありまして、アダムズ方式により行うということにしました。

 また、「各ブロックへの議席配分の見直しは、十年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行う。」としました。

 小選挙区の方が専らの関心事になっておりますが、比例区の人口変動に伴う議席配分の見直しについても一緒に行っていただくようにルール化していただきたいと思い、ここに一項をつけ加えたところでございます。

 最後に、九ページが四番目の諮問事項「現行憲法下での衆参両議院選挙制度の在り方」であり、正直なところ、大変難しかったところでございますが、ただ、「公正かつ効果的な代表という目的を具現化するために適切な制度を実現するよう、不断に見直していく」ことはお願いしたいということでございます。

 そして、「憲法の定める二院制の下において、衆参両議院にはそれぞれ期待される役割や機能があり、今後も、将来における我が国の代表民主制のあるべき姿を念頭に、「国権の最高機関」としての国会の在り方や「全国民を代表する」議員を選出するための望ましい選挙制度の在り方を、広く国民の意見を踏まえ、明治以来長い歴史とともに発展してきた我が国民主政治における意思決定過程の制度と運用を見据えて、国会として継続的に考えていくべきである。」としたところでございます。

 つまり、やはり国会として考えていただく、国民目線からするとそういうことになるのではないかということでございます。

 ここについては、実は、さまざまな国会にかかわる議論が委員から述べられまして、それをできるだけ記すように努力したところでございます。

 「結論に至った経緯・理由」の二つ目に、「もとより、選挙制度の在り方は、代表民主制の根幹にかかわるものであって、」云々と書いてありまして、「本調査会において検討した議員定数と一票の較差のそれに尽きるものではなく、選挙人・被選挙人の資格から、立候補制度、代表方法又は選出方法、選挙区の区分と画定、投票方式、選挙争訟の在り方などにいたるまで、多岐にわたり慎重な検討を要する多くの事項を含んでいる。」ということでございます。

 定数削減と一票の格差にとどまらない形での国会の御努力を期待したいということも込めて、僣越ではありますが、こういった事項も挙げさせていただいたところでございます。

 そこに、十八歳選挙についてもこういう一つの制度の見直しの結果として出てきたのだろうということで、その意味では、本調査会の検討事項はこういう不断の見直しの諸課題の一部にすぎないという認識を我々としては持っているということを申し上げたところでございます。

 また、最高裁との関係についても少し言及させていただきました。

 十ページの二つ目、「今日、日本の社会は、人口動態を含め少子高齢化やグローバル化などの要因により大きな変動期に入っている。こうした中で、国会には、「国権の最高機関」として、種々の重要な政策課題に対する基本的な道筋を示すことが求められており、将来における我が国の代表民主制のあるべき姿を展望し、「国権の最高機関」としての国会の権限・手続や「全国民を代表する」議員を選出するための国会両議院の望ましい選挙制度の在り方に」云々、こういうことを書いてございます。

 委員の間からも、格差の問題を扱う過程で、今までなかったような非常に大きな変化がこれから起こっていくことは間違いないという認識がございますので、格差の問題を超えて代表民主制のあり方について国会においてお考えいただき、その結果として選挙制度のあり方をどうするかというお話もしていただくようにお願いできないかという気持ちを込めて、こういうことを書かせていただいたところでございます。

 もちろん、そうはいうものの、政治制度には完全というものがないということ、そういう中で我々にできることは、引き続き検討を繰り返し重ねていくということが取り組むべき態度だろうということを最後に述べまして、報告書を結んでいるところでございます。

 以上、私の陳述でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 弁護士の田中と申します。

 陳述の機会を与えていただいたことに感謝いたします。

 おおむね骨子に沿ってお話をさせていただきます。

 全国二千百名の弁護士で構成する自由法曹団という団体で活動をしております。

 自由法曹団は、政治改革が提起されたときから、選挙制度などについて検討を行って意見書を発表し、二〇〇九年から始まりました第二次の改革問題でも意見書等を発表してきました。

 今回は、今お話があった調査会答申を検討させていただいた最新の意見書だけを配付させていただきました。その余の意見書はホームページに掲載していますので、御参照いただければ幸いです。

 そうした経緯を踏まえて、幾つかお話をさせていただきます。

 まず、調査会答申と法案についてです。

 二〇一四年の三月、与党と当時の野党五党が衆議院議長のもとの第三者機関設置で合意されたのが発端でした。

 メディアなどには、諮問する以上、何らかの拘束力をとの主張もありました。

 自由法曹団は、「「第三者機関への丸投げ」は許されない」と題する長文の声明を発表させていただきました。選挙制度の問題は国会で国民的な議論が行われるべきで、国会の上位に立つかのような諮問機関を認めることは、憲法上の問題も引き起こすためです。この見地は現在も変わっておりません。

 調査会が設置されたときは、第二次政治改革段階での全ての意見書を送付させていただきました。そして、並立制の二十年間がもたらした問題を正しく総括して、国民の声が反映して議会制民主主義が再生できる選挙制度を模索していただきたいと要望しました。

 諮問事項には、定数削減や格差の是正とともに、現行制度を含めた選挙制度の評価や、衆参議院選挙制度のあり方が掲げられていました。また、一三年六月には、並立制の功罪の検証が与野党で合意されておりました。決して自由法曹団だけの注文ではなかったと思っています。

 答申を拝見いたしました。今伺って、佐々木座長の御苦労や御尽力には心から敬意を表します。しかし、まことに失礼な言い方になるんですが、肩透かしを食らった思いを禁じ得ませんでした。

 選挙制度では、多くの政党が現行制度でいいというので現行の並立制を維持する。定数削減では、削減する理由はないけれども、多くの政党が公約しているので、比例代表を四議席、小選挙区を六議席削減する。格差是正では、一人別枠方式とドント式をやめて、アダムズ方式を採用する。衆参両院の選挙制度は、国会として継続的に考えていくべき。こういう趣向でした。

 国会では結論が出せないからとして専門家に審議してもらうために設置された第三者機関が、諮問した側の政党の意向をもって答申にかえ、あるいは国会に投げ返したのでは、問いをもって問いに答えたことにしかなりません。

 アダムズ方式は、国会や選挙制度のあり方という基本の問題をさておいて配分だけを調整するもので、問われている問題を解決するものにはならないと思います。

 一人別枠方式を違憲とする最高裁がアダムズ方式を合憲とするかの問題もあるんですが、最大の問題は、どれだけ人口が流動しても定数ゼロ配分を生み出せない、小選挙区の都道府県への配分に収れんさせてしまっているところにあります。投票価値の平等を実現するのであれば、もっと広い単位で選挙を行う制度にすれば、格差の問題はたちどころに解消できます。ちなみに、お配りした意見書で提案している十七ブロックの比例代表制では、最大格差は一・〇三五倍にすぎません。

 今回二つの法案が提出されていますが、いずれも、現行の並立制を前提にアダムズ方式を採用するとともに、議会の役割や議員定数のあり方の明示もないまま、答申だけを理由に定数を十削減しようとするものです。また、緊急だからと言われていますが、時限法でも特別措置法でもない恒久法として提案されており、このまま並立制を固定化させる機能を営む危険は甚大です。抜本的な再検討が必要と考えます。

 次の問題は、二〇〇九年からの検討の意味なんです。

 二〇〇九年と二〇一二年の総選挙で、並立制の問題が露呈しました。

 民主党への政権交代が起こった総選挙では、比例代表で四二%の得票の民主党が六四%の議席、自民党への逆政権交代が起こった総選挙では、比例代表で二八%弱の自民党が六一%の議席を獲得しました。その結果、民意を反映する選挙制度であれば議席につながるはずの第二党以下の得票が、制度的に死票にされました。いずれの選挙でも第一党の得票が移動しましたから、どんな選挙でも政権交代は起こったことになります。問題は、オセロゲームのような議席の雪崩現象が起こってしまったことです。

 私たちが第二次政治改革と言う議論や検討はこうした中で進みました。

 最初の議論は、一層小選挙区制に傾斜させようとする方向で起こりました。民主党が、マニフェストで比例定数八十削減を掲げ、官僚答弁の禁止などを含めた国会改革を叫んで、政権と政権党への権限の集中を図ろうとされたためです。英国のモデルがウエストミンスター・モデルとしてそのまま持ち込まれようとしました。自由法曹団は、英国に調査団を派遣して、小選挙区制の機能不全が叫ばれていた英国の動きを紹介いたしました。

 二〇一一年三月、最高裁が一人別枠方式を違憲とする判決を言い渡し、同趣旨の判決が続きました。定数格差違憲状態判決は、一票の価値の平等という側面から選挙制度のあり方を問いかけたもので、配分方法を変えればいいという問題にとどまらない意味と射程を持っていると思います。

 二〇一一年八月、自由法曹団は、意見書「わたしたちの声をとどけよう」を発表して、民意が反映する選挙制度への転換を求めました。その後の検討を経て、参議院は大選挙区制、衆議院はブロック単位の比例代表制というのが現在の私たちの提案です。小選挙区制の廃止を求める国民運動も展開され、大阪や東京では一千名規模の集会が行われ、院内での集会や議員要請、懇談も繰り返されました。

 国会の中でも見直しの動きが強まって、同じ二〇一一年には、超党派のいわゆる中選挙区議連がつくられました。ムード主体の選挙による地すべり的勝利が多い、信念に基づいた思い切った政策を打ち出しにくい、専門性を持った議員が生まれにくい、これは、私たちが言っているのではなく、議連の準備会で配付された資料の一節です。

 二〇一二年の総選挙を機に、それまで政治改革推進一辺倒だった財界やメディアからも見直しの声が起こりました。大衆迎合主義、ポピュリズムの弊害を指摘して、「中選挙区制の復活を求める声も出ている。それも排除すべきではない」とした一二年十二月の読売新聞の社説や、中選挙区制におけるメリットの再評価とあるべき選挙制度の検討を提起した翌一三年一月の経団連の政治改革提言が代表的なものでした。

 この衆議院でも、抜本改革案が検討され、発表され続けられました。

 連用制は、公明党さんが三案の一つとして提示されたもので、二〇一二年には焦点の一つでした。二〇一二年七月には、民主党が並立制と連用制を組み合わせた一部連用制案を提出され、一三年三月には、自民党の検討の中から、比例代表議席を比例枠と優遇枠に二分する優遇枠案が浮上しました。

 その都度、自由法曹団は意見書を提出して、検討、批判しましたが、問題はあるとはいえ、全体としては、民意の反映を拡大しようとする方向を共有したものでありました。

 こうした模索は、並立制が生み出すものが明らかになるもとで選挙制度について検討を行った貴重な機会であり、見直しは、院内の皆さんからも起こり、国民の中、市民の中からも起こり、そして現在も続いています。その見直しの動きが、過剰な民意の集約に着目して、民意の反映を強めようという方向に発展していったことも重要な意味を持っていると考えます。

 調査会は、残念ながら、こうした動きに対して、問いには答えられませんでした。だからといって、それでこの問題が終わったことにはなりません。終わらせることは、会派や議員の皆さん自身が模索してこられた道筋を無にすることを意味しております。そのことを重ねて強調しておきたいと思います。

 最後の問題は、やはり政治改革です。

 並立制や政党助成などを導入した政治改革は、五年にわたる激しい議論や攻防を経て、一九九四年に強行されました。国際競争力のための新自由主義的な構造改革や、国際貢献を掲げた自衛隊の海外派遣と同時並行のものでもありました。

 並立制による最初の総選挙が行われたのは九六年十月、ちょうど二十年になります。中選挙区制のもとでほぼ対応していた国会外の民意と国会内の議席が大きく食い違うようになっていって、国民の多くが反対する法案も強行されていきました。その二十年が生み出したものがどんなものだったのかは、あえて指摘いたしません。

 政治改革のあのとき、選挙による政権の直接選択が主張され、政治における意思決定と責任の帰属の明確化が言われました。総選挙で政権を選んだんだから白紙委任しろ、文句があったら次の選挙で政権をかえろということでもあります。そのために、小選挙区制が選挙制度の中心に据えられ、政党執行部に権限集中を図るさまざまなシステムが導入されました。

 自由法曹団は、こうした政治像に真っ向から反対しました。これは形を変えた大統領制だ、大統領選挙人のかわりに国会議員を選び、国会議員は内閣総理大臣を選出すれば本来の役割は終わる、そして、大統領選挙人団にすぎない国会には内閣へのコントロール機能は期待できない、一九九〇年九月に発表した自由法曹団の最初の意見書「小選挙区制・政党法を斬る」の一節です。

 民意を日常不断に政治に結びつけ、みずから立法に当たり、行政権の監視を続ける国会の役割を自己否定するに等しい、こんな政治像では、国民の期待や信頼はつなぎとめられないと思います。最後の二〇一四年十二月の総選挙で投票率が戦後最低の五二・六%を記録したのは、その結果と言うほかはございません。

 主権者を国民とし、国会を国権の最高機関とし、国会議員を全国民の代表者とする日本国憲法の求める政治像は、決してそんなものではありません。現代の国民主権は、多様化している民意を可能な限りそのまま国会に反映し、議会の中での熟議を通じて国政の方向を決めるというものであり、これが世界の趨勢だと思います。

 政治改革は、民意の反映こそが基本という大原則を踏み外し、政権の直接選択を掲げて、議会の自己否定に等しい道を歩みました。大変失礼な表現ながら、巷間言われる政治の劣化や歴史的な低投票率は、その結果生み出されたものと言わざるを得ません。政治改革からの二十年は、政治改革そのものの抜本的な見直しを要求していると考えます。

 最後に、もう一度調査会答申に戻します。

 答申は、アダムズ方式を提案された以外は、さっき申し上げたように、問いをもって問いに答えられました。しかし、考えようによっては、これが正しかったのかもしれないと思います。

 声明で指摘したとおり、憲法的な課題であり、政治のあり方や主権者国民の権利に深くかかわる選挙制度の問題は、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会が、国民の参加と監視のもとで議論を行って結論を導かなければならないものだからです。その意味では、問いは投げ返されるべくして投げ返されたとも言えると思います。

 衆議院には、投げ返された問いに答えていただく責任がございます。今度こそ国会は、政治改革の二十年を真摯に総括されて、民意を反映する選挙制度の実現のために邁進していただきたい。

 二つの法案にはいずれも、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙のあり方についての不断の見直しも行われるものとするとの附則がつけられています。本来なら、この部分こそ、まさしく本則として行われるべきものでした。

 この附則に盛り込んだ決意を何としても実行に移していただきたい、そのことを心からお願いをして、陳述といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。

 佐々木参考人、そして田中参考人のお二人には、大変お忙しい中おいでくださいまして、貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 それでは、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、今回の答申が出されたいきさつはもう御案内のとおりでございまして、過去三回の総選挙に対しまして、最高裁が三回続けて、一票の格差の点で違憲状態にあるといった判決が下されたわけでございます。

 そうした中で、何とかこれを是正しなきゃならないということで、政党間で二十九回にわたり協議がなされたわけですけれども、まとまることができないということで、議長のもとに調査会を設置しまして、その座長に佐々木先生をお願いしました。

 そして、調査会の方では十七回にわたって議論を重ねられて、そしてことしの一月十四日にこの答申が出されて、その中身については今、佐々木参考人が御説明されたとおりでございまして、私なんかは非常によくできているなと思ったところでございます。

 その答申に基づきまして自公案と民進案が出されているわけでございまして、共通している点もございます。どちらも、答申にありますように、衆議院の定数を十削減する、それから、都道府県別の定数の配分につきましてはアダムズ方式を適用する、それから、都道府県別の定数配分は十年に一度の大規模国勢調査のみで行うといったような点は共通しているわけでございます。

 自公案と民進案の大きな違いの一つは、このアダムズ方式をいつから適用するかということでございまして、自公案につきましては、平成三十二年の大規模国勢調査からアダムズ方式を適用する、対しまして民進案は、それではちょっと遅過ぎるということで、過去にさかのぼって平成二十二年の大規模国勢調査からアダムズ方式を適用する、これが大きな違いであるわけでございます。

 そこで、まず佐々木参考人にお聞きしたいと思いますけれども、今回の自公案と民進案につきまして、答申の趣旨をよく踏まえた形でできているかどうか、この自公案と民進案についてどういう御所見をお持ちか、お願いいたします。

佐々木参考人 お答えいたします。

 この答申をごらんいただきますと、答申は、最後の出口をどういうふうにすればいろいろな問題をクリアできるかということについての回答をお書きしたという性格のものでございまして、そこまでどういう経過をたどってたどり着くのかということにつきましては、実は委員会の中で、これは政治のお話ですので我々がいろいろなことを申し上げるのはふさわしくないというのが共通了解なものですから、今議員が言われましたようなタイプの話、移行期をどうするかということについては、実は何も書いていないわけでございます。それこそ国会の裁量にお任せをすべきだろうということでございます。

 実は、委員会として、こういう出てきた案は、それぞれユニークで、恐らく、議論は全くしていませんし、こうなったらどうだろう、そういう話も一切しておりませんので、少なくとも委員長として、何か委員会でその移行経過についての議論があったかのような答弁をするのはいささか職務上適切さを欠くところがございますので、そこはもう国会の裁量にお任せをするということで、立ち入った評価というものは、委員会が何かやったかのような印象を与えるのは非常に実態とかけ離れておりますので、コメントはちょっと御遠慮させていただきたいと思います。

 そういうある種の切り分けをしながら実はこの答申ができているという点について、御理解を賜れればありがたいと思います。

 以上でございます。

平沢委員 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお聞きしたいと思いますけれども、今の選挙制度について抜本的な改革が必要だ、これについては皆共通しているわけでございまして、だから答申の中でも不断の見直しということがうたわれていますし、今回は、自公案も民進案も、不断の見直しということをうたっているわけでございます。今回は、最高裁が違憲状態という判決を下しているということで、ある意味では緊急避難的にまずこれを直そうということでやったということだろうと思います。

 そういった中で、こういう違憲状態の解消を図るため、差し当たって、今回の案はよくできているんじゃないかなと思いますけれども、特に自公案はできているんじゃないかなと思いますけれども、田中参考人はどうお考えでしょうか。

田中参考人 田中でございます。

 なかなか、法案の比較を私に聞かれるのは大変悩ましいんですが、まず、緊急事態だからという点については一点申し上げておきます。

 確かに、重要で急ぐ課題だったんですよ。それだから私どもは、実は、失礼ですが、第三者機関ではなく、議会で優先順位を決めて議論されるべきだというふうに申し上げました。ただし、基底になる選挙制度問題は絶対に外せない。しかし、それが簡単に結論が出ない中で、緊急の格差是正だけ要るというんだったら、それを臨時的に、時限法でもつくってやろうというのならまだしも私どもは理解できたんです。

 ただ、今度の答申と、それから法制は、実は、並立制の枠組みのもとでアダムズ方式を適用して、かつ、この後、長期的にもこの形で計算していきますよという、このシステム構築では実によくできているんです、はっきり申し上げまして。ですから、そういう限度でいいますと、法律家から見ても法案のできは大変完成度が高いと思います。

 ただし、申しわけありませんが、私どもはそれが解決ではないと考えますから、批判をしています。

 そして、あえて申し上げますと、暫定的にとりあえず緊急でやろう、そしてこれから抜本的に解決をやろうというときに、率直に言って、そこだけ取り上げたら、将来までずっと通用する恒久法をつくることに力を入れられることは、実は力点が間違っていやしないかというのがさっき申し上げた点です。この点はやはり、皆さんが本当に抜本改革においては異論がないというんだったら、今すぐにでもそれを始めていただきたいと思いますし、そのためのある期間、この方法でやるというなら、あえて私は異論は申し上げません。

 それから、私も、自公案と、それから民進案のどちらがというのを言う立場にはございません。ただ一点、確かに、一票の価値の平等が憲法的要請ですから、それは可能な限り早い方がいいということはあるだろうという点だけ指摘をしておきます。

 以上です。

平沢委員 ありがとうございました。

 次に、佐々木参考人にお聞きしたいと思いますけれども、定数の削減についてでございます。

 先ほど佐々木参考人が言われましたように、国際的には必ずしも日本は多いとは言えないわけですけれども、各政党が身を切る改革といったことで、公約として国民の皆さんに削減を訴えておられるわけでございます。そういった中で、今回の答申の中では、削減する積極的理由とか理論的根拠は乏しいというようなことが書かれているわけでございますけれども、公約として政党が訴えているから、十人削減ということを答申の中に書かれているわけでございます。

 今のように、要するに、ある意味選挙公約として国民の皆さんに、ただ定数の削減を何かどんどんどんどん多くすれば多くするほどいいような形で訴える今のやり方、これについて、その風潮みたいなことについて佐々木参考人はどうお考えでしょうか。

佐々木参考人 お答えいたします。

 この調査会の答申にも書いておりますように、身を切る改革というのがなぜ議員定数の問題にいきなりなるのかというようなことについては、委員会の中でも繰り返し繰り返し問題が出されまして、もっといろいろな説明が必要なんじゃないかということでございまして、委員の中にも実は結構それなりに多様性がございまして、どちらかというと、私のような古い世代は、余り減らすなという感じがなかったわけではございません。

 ただ、一つ複雑なのは、二院制をとっているということをどういうふうに組み込んで考えるかというようなことも含めて、やはりかなり全体的な問題ではないかなというので、結局、話が四番目の項目のところにずれ込んだところが実はございます。

 ですから、議員定数の問題というのにつきましては、確かにわかりやすい話といえばわかりやすい話ですけれども、素朴な疑問を持っている人もいるかもしれないし、なぜすぐそこなのかということもあるし、それから、特に格差の是正ということと議席の削減という問題はある意味バッティングする側面を持ちますので、この問題についてやはり頭の整理を有権者にもしてもらわないといけない。

 ということで、非常に多々進むべきステップがあるような感じを、今回の調査会の議論を聞きながら、改めて勉強させていただいたところでございます。

 以上でございます。

平沢委員 ありがとうございました。

 次に、また佐々木参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、アダムズ方式なんですけれども、いろいろな制度の中で、よりベターだということでアダムズ方式を採用されたと。

 先ほどそのメリットについてもお話がございましたけれども、このアダムズ方式についてはデメリットもあるということも言われているわけでございまして、中には、どんなに人口が少なくても、端数を切り上げるということで、最低一人は定数が確保されるということで、形を変えた一人別枠方式じゃないかなんということを言う方もおられるわけでございます。

 一人別枠方式とは全然違いますけれども、結果としてそうなるんじゃないかということを言われる方もおられるわけですけれども、このアダムズ方式、いろいろな制度の中で、今考えられる一番ベストな制度ということで導入されたと思いますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

佐々木参考人 お答えいたします。

 結局、いろいろな方式を横に並べてみまして、無前提にこれでいこうという議論はなかなか成り立たないわけでございまして、日本の実情に鑑みた形で、いろいろなその効果というものを比較した結果としてアダムズ方式を選んだということでございます。ですから、比較考量という面が入っていると思います。

 ですから、これも、もし何か非常に不都合なことが起こるということであれば、いずれまた考えなきゃいかぬかもしれませんが、しかし、少なくとも選挙区間の格差の問題じゃないものですから、選挙区間の格差は、これは区割りの問題になってしまいますので、アダムズ方式で都道府県への配分はコントロールする、その上で、さらに選挙区間の区割りをきちっとやるということが行われる限りにおきましては、私は、ある程度の時間は維持できるものではないかと考えたわけでございます。

 いずれにしても、予想していた以上に実は人口の変動が激しい。ですから、昨年の簡易国調と我々が想定した三十二年の国調と比較してみますと、速いスピードで変化が起こっておりますので、国会におかれましては、注意深く動向をウオッチされて、しかるべき形での対応をこれからもお考えいただく必要はあるかなというふうに思っております。

 以上でございます。

平沢委員 ありがとうございました。

 引き続き佐々木参考人にお聞きしたいと思いますけれども、この定数の配分、今、これは人口比に基づいて行われているわけで、最高裁判決も人口比に基づいて出されているわけでございますけれども、党の中には人口比だけでいいのかどうかという声が一部あることも事実でございまして、私たち、改正憲法草案というのを出していますけれども、その改正憲法草案の中では、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して決めなければならない、こういった形で出させていただいているところでございます。

 要するに、人口比だけでやると、都会の方が圧倒的に、今回のアダムズ方式でも、差し当たって衆議院が三名、東京はふえる、それで地方がどんどん減っていくということになってしまうわけで、地方の声が国政に反映しにくくなってしまうんじゃないか、どんどんどんどん加速度的にそうなっていくんじゃないかという心配もあるわけでございますけれども、人口比だけで定数を決めるというやり方について、佐々木参考人の御所見はいかがでしょうか。

佐々木参考人 お答えいたします。

 議員がおっしゃるようなことは、我々委員もみんな感じたところでございます。しかし、国民代表という以上は、やはり人口比を抜きにした議論はできないということは、これはいわばグローバルスタンダードみたいなものだろうと私は思っております。

 そうしますと、多様な地域の国民の意向をどのように国会に反映するかということになりますと、今議員がおっしゃられたことも含めて複雑な対応が必要になりますけれども、制度としてどういうふうな客観性を持って運用できるかということはなかなか難しい問題を含むだろうと思いますが、国会全体としてどういうふうに御心配を受けとめるのかということについては、大きな課題としてぜひお考えいただきたい。ただし、人口の問題をどけるわけには絶対にいかないことだろうと思って我々は作業をいたしたところでございます。

 ですから、ほかの要件をどういうふうな形で何を重視するのか、恐らくそれをめぐってもいろいろな議論が起こってくると思います。それからまた、国会のさまざまな権限の問題その他とも絡む問題にもなるかと思いますが、その辺も含めて、第四項目でこれからの検討をお願いしたところでございます。

 以上でございます。

平沢委員 ありがとうございました。

 次に、選挙制度の問題なんです。

 今は小選挙区比例代表並立制で行われているわけで、私は、第一回の一九九六年からずっとこの選挙制度のもとで、七回、国会に送っていただいたわけでございますけれども、その前の中選挙区の制度もずっと見ていまして、私個人的には、今の小選挙区比例代表並立制の制度がいいのかどうかということについてはいろいろ問題もあるなと。

 いろいろなことが指摘されていますけれども、例えば直接地元で聞く声の中には、私は江戸川区も入っているんですけれども、江戸川区は、国会議員の選挙区が区議会や都議会議員より狭いんですよね。それで、住民の感情としては何となく違和感を感じるという声をよく聞くわけでございます。

 そのほかいろいろな点がありますけれども、今の制度について、答申の中には、新たな制度の導入を検討せざるを得ないほど深刻な事態にあるとは思えないということが書かれていますけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。

佐々木参考人 答申の話とこれからの話と、ちょっと違う問題かなと思っておりまして、先ほどお話もございましたように、我々の作業の第一項目、選挙制度にかかわるところは、何か新しい選挙制度をどんどん考えてください、全く更地の上で考えてくださいということを御依頼いただいたとは思っておりませんので、したがって、おのずから話の範囲が限られたような答申になりましたということでございます。

 それと全然関係なく、更地の上で選挙制度の議論をするということであるならば、これはおのずからいろいろな議論があり得るかなというふうには思いますが、今回のこの答申は、少なくとも、ある種、選挙制度審議会を皆様におつくりいただいて我々がその議論を受けたということではないと思っておりましたので、そういう了解ではなく進めたものですから、当然、出てきたものの範囲も、おのずからその範囲のものを中心にして考察を加えたことになったということで、答申の問題とそもそも論というのはちょっと分けて議論する必要があるかと思っております。

 以上でございます。

平沢委員 時間がありませんので、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 これは答申とはちょっと関係ありませんけれども、今回の自公案にしろ民進案にしろ、これが通ったとしても、実際に施行されるまでは、きのうも質疑に出ていましたけれども、最低一年はかかるわけですね。区割りをしなきゃならないし、区割りの法案を国会を通さなきゃならない、周知期間もある。そうすると、一年は最低かかります。その間に万が一選挙が行われたとすると、これはどうなるんだ、違憲状態と指摘されている中で選挙が行われた場合にどうなるんだという疑問が起こるわけでございますけれども、これについて御所見がもしありましたら、お二人、一言ずつ、どうお考えになるか。まず、佐々木参考人。

佐々木参考人 お答え申し上げますが、ちょっと私自身も予測がつきません。どういう判断を司法がするかということについては、ちょっとはっきりしたことは申し上げにくいというのが本当だと思います。

 以上でございます。

田中参考人 私もわかりません。ですから急ぐ必要があったんだろうとは思います。しかし、年内、総選挙がなおかつ言われております。それは、実は総理の判断にかかるんじゃないでしょうか。最高裁の判断までは、私、保証はできないというのは、異論はございません。

平沢委員 時間が来たので終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、両名の参考人の方々、佐々木元座長、また田中参考人、冒頭、貴重な御意見の陳述をしていただきまして、大変にありがとうございました。

 私は、実は、先ほどの自民党の平沢委員より少し古くて、前の中選挙区制度で選挙を経て通ってきて、今の小選挙区比例代表並立制のもとでも議員をさせていただいておりまして、そういう変化も踏まえた上で、後ほどお聞きをしたいと思うんです。

 特に、今回、衆議院の選挙制度に関する調査会答申を、十七回にわたって、佐々木元座長には御苦労いただいて取りまとめいただきましたので、きょうは主に佐々木元座長を中心に御質問をさせていただきたいと思うんです。

 一月の十四日に取りまとめられた後に、余りマスコミの前には佐々木元座長も登場されていなかったんですけれども、二月の十六日の共同通信の配信の記事がございまして、そのときに、佐々木座長がインタビューに応じておられるわけですね。

 当時、これは報道で知るところで、自民党内の議論はそのとおりだったかどうかわかりませんが、二月十日に、答申を尊重するとして定数十削減を了承した。報道によると、自民案では、当時では、削減は二〇年の国勢調査に基づくとした上、削減を必ず実施する内容を、関連法案の主要部分に当たる本則ではなく、本則を補う附則に記す方向だと。これは途中の話ですけれども、そのときに、佐々木元座長は、自民党案のまま各党議論が進んだ場合について、本則にきちんと書かず、曖昧なまま二〇年以降に頑張りましょうという話で終わるならば、何もやらないことに限りなく近い、事実上の棚上げだ、そういうふうに指摘した、そういうように記事が出ているわけでございます。

 結果として、自民党さんの中でもさまざまに御議論があったと思うんですが、私は、今回の、これは民進党案もそうなんですけれども、この調査会の答申で議論されたアダムズ方式というものをしっかりと本則にきちっと書き込むのかどうかというのは一つの大きな肝であったと思うんです。私ども公明党のもともとの案は今回は法案になりませんでしたけれども、しかし、自民党案に我々が最終的に賛成する一つのポイントというのは、アダムズ方式というものが本則にきちっと明記されるかどうか、そういう判断を一つの大きなポイントに私どももしておりました。

 今回、対立はしておりますが、自公案も民進案も、答申にのっとってアダムズ方式を本則にきちっと明記することになったということについて、取りまとめに当たられた佐々木元座長としてはどのように評価されているのか、まずお答えいただければありがたいと思います。

佐々木参考人 お答え申し上げます。

 都道府県への議席の配分という問題は、ずっと司法の世界でやはり問題になってきたポイントだったろうと思っておりまして、緊急是正についても、それ以前の配分が生きている、つまり、廃止された条項に基づく、平成十二年のいわば根っこがまだ生きているということが問題になってきたという意味では、一度更地にするという原則を、新しい原則に基づいてし直すというのを入れていただかないと、格差是正問題はいつまでも尾を引くのではないかということを大変心配していたものですので、これが延びるようだと困るなと。余り周りでいろいろなことをささやく人がいるものですから、ちょっと警告を発しようと思ってしゃべったのかもしれませんが、これはゆるがせにできないポイントである。

 司法部にとっては、定数削減はどうでもいいと言っちゃ悪いけれども、基本的には問題ではございませんので、その根っこの部分の整理をやはりやる覚悟を国会の側に示してもらいたいという気持ちでおりましたので、その後の推移というものは、それなりのスピード感を持って、答申の実現に向けて皆様に進めていただいているのではないかという認識を持っております。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 そこで、今回まさに九方式の中からさまざまに検討されて、最終的にアダムズ方式でいこう、そういう答申の取りまとめ、これが今、国会で、この委員会で議論している両案にも大きく影響を与えているわけですが、そのアダムズ方式にした場合の、もともと考え方として、四条件に一番ふさわしいのがアダムズ方式だ、そういう考え方だということが、例えば答申の結論のところでも、満たすべき条件として、一つは、比例性のある配分方式に基づいて都道府県に配分すること、二つ目が、選挙区間の一票の格差を小さくするために、都道府県間の一票の格差をできるだけ小さくすること、三番目に、都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、四つ目に、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であること、こういう観点からアダムズ方式が一番ベターではないか、そういう選択をされたということに結論としてなっているわけです。

 ぜひ、佐々木元座長には、アダムズ方式のメリット、ここを一番評価して、小選挙区並びに今回は比例代表の方もアダムズ方式を採用すべきだと、最初の冒頭のところでも少し触れられていて、重なる質問になるのかもわかりませんが、アダムズ方式がこういう点ですぐれているので、今回、答申の肝にこういう方式を採用するようにしたんだ、その理由について改めてお述べいただければありがたいと思います。

佐々木参考人 お答えいたします。

 ただいま議員からもお話ございましたように、さまざまな観点がございますので、委員それぞれにおかれましても、注目点が少しずつ違っていたのかもしれません。

 私らが議論する中で一つやはり念頭にありましたのは、何増何減という変動ですね。これがやはり大きいというのは非常に難しいだろう。採用するに当たっては少し大きな困難で、もちろん一票の格差も基本でありますけれども。

 ですから、そういう意味での、言葉が不適切かどうかわかりませんけれども、適用可能性というものが、政治的に余りハードルが高くない可能性は頭の中にあったというのは本当のところでございます。

 その意味でいうと、いろいろな方式の中で、何を優先順位に置けばこの方式という面もないわけではございませんが、増減幅の比較的穏やかなものというものも、結構、皆さんの頭の中には、これを賛成だという意見を決めさせた原因の一つではなかったかというふうに思っております。

 これは各委員の意見に対する私の推測でございますので、その限りにおいてちょっと過ぎた話かもしれませんが、そういうふうに考えております。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 それで、アダムズ方式については、先ほど平沢委員も質問の中で少し触れられておりましたけれども、答申の中にも少し同じ意見を言われた方がいらっしゃるみたいですが、二〇一一年に最高裁が一票の格差の原因だと指摘した一人別枠方式に似ている、そういう指摘がございます。現に、例えば私がこの前質問に立った本会議でも、一人別枠方式と大差ないものがアダムズ方式であるということを言われた政党もございます。

 ですから、今回やはりアダムズ方式を採用されて、これから司法の判断にも影響を与えていくのではないかと思うんですが、アダムズ方式と一人別枠方式では考え方も方式も根本的に異なる、そのように私自身は認識しているんですけれども、ぜひ、取りまとめでアダムズ方式を採用しようということを決められた佐々木元座長の方から、アダムズ方式と一人別枠方式の両者の違いについてどのように考えておられるのか、わかりやすく御答弁いただければありがたいと思います。

佐々木参考人 お答えいたします。

 一人別枠方式というのは、いわば旧来の法律に書いてあったものでございまして、また、私たちの理解では、あれ自身がやはり大きな不均衡というか格差を広げる原因になったという認識でもってマイナスの評価を与えられたのではないかというふうに思っております。つまり、比例性に乏しいということだろうというふうに思っております。それを法から削除されたというのが、緊急是正のときに皆さんがおやりになったことでございます。

 したがって、それと今度のアダムズ方式を比較してどうだこうだということをおっしゃるのは、いろいろな反応はできるんですけれども、余り議論のための議論をしても仕方ありません。少なくとも、アダムズ方式というのは比例性を持った配分方式として認められた方式であるということでございまして、それとは全く異質の、別枠をつくるというような議論ではないというふうに我々は考えて、この方式、中でもいろいろな議論はありましたけれども、司法の判断も、結局は、格差是正という方向へ向かう制度なのかそうでない制度なのかということが一番肝心な問題であるということで、いろいろ議論の経緯がありましたけれども、最後は皆さん同意してくださったというのが委員会としての実情でございます。

 ですから、過程においては、いろいろな論文その他もございますものですから、いろいろな議論があったことは否定するものではございませんが、最後はこの比例方式としてこれで大丈夫、いけるという共通理解に皆さん最後に立ち至ったということでございます。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 それで、先ほど平沢委員の冒頭の話、質問に答えたことにも関係するんですけれども、今回、我々が議論している自公の与党案と民進党案では、違いがあるということでいうならば、同じように答申に沿って、大規模国勢調査に基づいてということは同じなんですが、いつの大規模国勢調査から見直しを始めるのか。自公案は平成三十二年、民進党案は平成二十二年の大規模国勢調査から。もう一つの違いは、定数削減の仕方。これは、定数削減も答申で議論されているんですが、両方、実は、いつの国勢調査からこの見直しを始めるべし、また定数削減についてはどういうやり方でやるべしということについては、答申では、実は結論としては明記されておりません。

 これはなぜ、そういう開始時期や定数削減の仕方について明らかにされてこられなかったのか。さまざまな議論はあったかと思うんですけれども、最終取りまとめの答申のところではそういうことが明記されなかったのは、何ゆえされなかったのか、改めてお述べいただいたらありがたいと思います。

佐々木参考人 お答えいたします。

 議論はしたんだけれども取りまとめに反映されなかったということではございません。かなり早い段階で、この問題は我々の答申の範囲に入れるべきか入れざるべきかということにつきまして私から提案を申し上げて、これは皆様方にお任せすべき問題だろうということでよろしいかということで、皆さんそれで納得されて、それ以後、議論はほとんどございませんでした。したがって、今回出ております両案にかかわるような議論は、委員会の中では一切しておりません。

 したがって、切り分けをしたという形になるのかもしれませんが、我々第三者委員会としてできること、すべきことについては、削減の問題でも迷いましたけれども、これについても結構、議論をやりましたら大変なことになったんだろうと思うのでありますが、これは我々の手に余る問題であって、政治家の皆さんにお決めいただく以外に道はないということで、委員会としては統一見解をもってこういう形にさせていただいたところでございます。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 ちょっと大きな話をさせていただきます。

 冒頭申し上げましたように、私は前の制度でも一度、中選挙区時代に、ここでいうと、ばっと見渡すと穀田委員なんかもそういう仲間なんですが、古い制度を経験し、さらに小選挙区比例代表並立制というこの制度でも今議員をさせていただいているわけでございますが、そのことについて答申では、「現行制度の運用についていくつかの問題点が指摘されていることは事実であるが、新たな制度の導入を検討せざるを得ないほど深刻な事態にあるとは考えられない。」というように明確に言われているわけです。

 さまざまな指摘というのは、例えば、よく言われるのは非常に死に票が多いとか、あるいは得票数と議席数が相当格差がある、そういうような指摘もございます。

 その中で私が、きょう改めて、議論がどういうことがあったのか、ぜひ佐々木元座長にお聞きをしたいのは、昨年の七月の十三日、これは第何回だったかわかりませんが、その中でも特に重複立候補制度のあり方について相当さまざまな現行制度について御議論があり、その調査会の後の記者会見の場でも佐々木元座長の方から、これはやはり整理した方がいい、そういうコメントが出されているというように報道で知ったわけでございますが、どのようにこの問題点について御認識されているのか、お答えいただければありがたいと思います。

佐々木参考人 お答え申し上げます。

 重複立候補制と同一順位の比例名簿というのはかなり異様な感じがしないでもないものですから、これもこの制度の枠内でやはり一度議論しておかなければいけないだろうということで問題を提起したのでありますが、実は委員会では非常に盛り上がりに欠けまして、結局、私の思い込み、ちょっと問題を出そうと思ったんですけれども、反応が余りなくて、今の国会議員の先生方に重複でも何でもやっていただくということでいいんじゃないのというような感じの話になって、そのこと自体はいろいろ議論があるんですけれども。

 ですから、結局、比例制の運用の仕方について、小選挙区と事実上連動させてみたり、それから重複させてみたりというようなことについては、正直期待したような議論の盛り上がりにはならなかった、したがって残っていないというのが実情でございます。

 以上、お答えいたしました。

佐藤(茂)委員 るるお聞きをしてまいりました。

 時間の関係で田中参考人には質問できなかったことをお許しいただきたいと思うんですが、いずれにしても、答申の最後のところにも書かれていますように、私どもは、今回は、一票の格差の問題と定数削減の問題に重点化した、そういう法改正でございますけれども、やはり我々立法府の立場にある者が不断の見直しをこれからもしっかりとさまざま超党派で議論していかなければいけない、そのように決意を表明いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 民進党の鈴木義弘です。

 私は県会議員の出身なんです。地方議会で、市町村議会議員というのは大選挙区制なんですね。二十人の定数があったり二十五があったり三十があったり、選挙区は全部一緒なんです。今度、県会議員の選挙になると、小選挙区である一人区があったり二人区があったり三人区、五人区、多いところは六人、七人区、もっと多いところもあると思うんです。

 今回は、国政の方の、なおかつ衆議院の方だけは小選挙区比例代表制という、ある意味では特異な制度になっているんだと思うんです。

 今回、答申に盛り込まれている十の削減という身を切る改革というのは、やはり昭和の大合併があって、平成の大合併があって、それで行財政改革をしていこうというのが一つあったんだと思うんです。国ももう地方にお金を回すだけの余力がない、だからリストラしてくれという意味で合併を推進した時期があったわけですね。それに伴って地方はそういった議員の定数をどんどんどんどん下げてきたんだから、国会議員は何やっているんだというところから、この身を切る改革というのは端を発していると私は思うんです。

 それで、なおかつ、ではどのぐらいの定数を削減していけばいいのかという話になるんです。

 ある地元でお世話になっている人が、いや、鈴木さん、市議会議員の数が多いよ、もっと減らせ、こういうふうに尋ねてきたんです。その方に問いかけたんです。では、何人にすれば納得していただけるんですかということなんです。

 二十人の定員があって、では、十五にしました、十三にしました、十二にしました、十にしました、そのときの社会情勢によって、多いの少ないのというのは感覚的なものだと思うんですね、では日本はどのぐらいまで定数を下げていったらいいだろうかという。

 今回は十人の削減で答申を出されたんですけれども、何年か先にまたお願いをするという形になったときに、では何人下げる、こういう話になっていくと思うんですけれども、その辺のお考えをまずお聞かせいただきたいと思うんです。お二人に。

佐々木参考人 お答えいたします。

 私自身は、これ以上、どう削減するかについて、正直なところ、委員会では議論がなかった。ただ、各党からは非常に複雑な形での御提案があった。削減案と制度を組み合わせるというような御提案もありましたので、なかなか単純に、各党の御意思も実はなかなか確認が難しかったなという感想を持っております。

 その意味で、委員会の中での意見の分布を申し上げれば、そして私自身の感じも申し上げれば、この十削減というのはぎりぎりまとまったなと。最後の委員会の最後の一時間で辛うじてまとまったということでございまして、議員御存じのように、同じ数を減らすにしても、比例で減らすのかこっちで減らすのかでは全然持っている意味合いが違うということでございますので、数という問題を相当にブレークダウンして細かく落とし込んでいく議論をするように、議論の質をよくした議論が国民の中で行われた上で初めて削減論というものが出てくることが本当は望ましいのであって、いきなり何十名削減とか何名削減という議論というものは非常に粗っぽい議論になるのではないか。

 それと、地方は、首長選挙と、まあ二元代表制ですから、ここの制度の違いをどういうふうに説明するかということについては、おのずから違うというのが我々の委員会の中での議論でございました。

 御参考まで。

田中参考人 お答えいたします。

 私は、削減そのものが、はっきり言って妥当ではないと考えています。多くの政党が公約されているのはそのとおりなんですが、私はその公約を支持できません。答申もこの点では同じ意見で、明らかにされているように、同じような国家との比較で決して多くはないんです。

 皆さん自身がもう実感されているはずで、この間、国政課題がふえていますし、複雑になっている。ですから、専門性を持った議員が必要だと議論すらされています。そして、十八歳選挙権で有権者がふえるわけです。若者との対話がますます必要になります。そして、行政権が拡大するような国家では議会による監視機能が必要で、民意が多様化すれば多様化するほど、政治と市民をつなぐという意味での媒介としての議員の役割は大きくなっていると思っています。

 こういう国会活動に限定しても、委員会には、皆さん、一定の数の議員さんが必ず必要なはずで、これを少なくすれば、今度は逆に小会派が派遣できないので、反映できない。つまり、政治家の数というのは、いることによって国政を活性化させていく、そのことにまず自信を持っていただきたいと思います。

 自由法曹団は、かつて、変な話なんですが、「誤りです!国会議員ムダ論」という意見書を皆さんに配ったことがあります。弁護士が、誤りです、弁護士無駄論などと反論するのはまだいいんですが、何で国会議員弁護論を展開したか。本質的に言いますと、そこで言われている無駄というのは、行政監視機能が無駄だ、民意との媒介機能が無駄だと言っているのに等しくなりまして、ますます国会と国民の間を乖離させてしまう。

 そのことをぜひ受けとめていただいて、私は、自信を持って、もちろん研さん、修養に励んでいただきたいですが、減員論や無駄論を皆さんに克服していただくことを心からお願いいたします。

 以上です。

鈴木(義)委員 これは定数の話から横道にそれちゃうと思うんですけれども、日本は議院内閣制を取り入れている国です。ですから、議員から内閣に大臣や副大臣を出すわけですね。おのずと、やはり下限値というのはあるんだと思うんです。

 例えば、今内閣に何人出されているか、ちょっと私も数字を正確には覚えていないんですけれども、百人とか、それではきかないぐらい出ているんだと思うんですね、補佐官だとかなんとかを入れていけば。そうすると、百人よりは定数を割り込めないよね、当たり前の話です。では、残った百人で国会が運営できるのかという話になってきますから、おのずと、やはり最小の下限値というのはあるような気がするんです、もし削減をするということであれば。

 それと、あと三十年たつと、団塊の世代の先輩方が他界をしていきます。一千万人を超える方です。そうすると、日本の人口は極端に少なくなります。地方で議員の定数をどんどん減らしていく、アダムズ方式でやっていって、先ほどもいろいろ議論があったと思うんですけれども、では国会の機能として、議員がいなければ国民の声が反映できないのかというのは、違うシステムをつくるという考え方も必要なんだと思うんです。

 ですから、きょうみたいな、参考人の御意見を頂戴する、地方公聴会もやる、中央公聴会もやる。特定の、自分たちの会派の方から選任をお願いした方に参考人でお見えをいただいてお話を聞くわけなんですけれども、もっともっと公聴会を頻繁にやるような形をとったっていいわけです、民意の反映ということであれば。議員が代弁をするばかりじゃなくて、直接国民の声を聞くという仕組みがあってもいいと思うんです。今回の選挙制度とは全然かけ離れちゃうんですけれども、その辺はどうお考えになりますか。

 ですから、削減をするという、先ほど、田中参考人の方は、削減する必要はないよと言う。佐々木参考人の方は、削減をした方がいいという考え方で話をまとめていただいて、答申書としてお出しをいただいたわけですから、少なくしていこうということに関しては御賛同いただいていると思うんですけれども、では、そのかわりの制度というのはどういうふうにお考えになるか、お聞かせをいただきたいと思います。お二人で。

佐々木参考人 お答えいたします。

 答申の範囲を外れる問題かと思いますが、国民の一人として、やはり国会議員の方々の活動が目に見える局面で、大変多くの拘束時間の中で活動しているなということが見える場面をどんどんつくっていただくということについては、一工夫、二工夫必要かなというふうに思っております。

 例えば、私が知っている限りにおきましても、とにかく本会議の時間が世界一短いというようなことは、単純な話のように見えますけれども、本会議をやっていれば、皆さんが出ておられるという感じで素直に受けとめられるわけでありますけれども、委員会や、あるいは公開でないところでの御活動といったようなものは国民には見えません。ですから、どのような形で活動を国民に伝えていくかという、公聴会に限らず、いろいろな国会運営の仕方につきましても一工夫、二工夫していただく時期が来ているということについては田中さんとそんなに立場は違わないですけれども、私もある種の危機感を持っているものですから、ぜひ工夫をしていただくということは必要だろうというふうに思っております。

 以上でございます。

田中参考人 お答えさせていただきます。

 公聴会あるいは参考人含めて、国民の国政に対する参加の機会あるいは関与の機会をふやしていただくことは、ぜひお願いをしたいと思います。

 この間、いろいろな問題で、自由法曹団の団員、例えば、安保法制の問題であったり、震災の問題であったり、原発関係、地域に入って活動しています。はっきり言って、国民の方々の政治に対する関心は高まっていると思いますし、批判や不満もあると思います。そのことをいろいろな格好で国政に反映させる、発言できる道筋をつくることは、皆さん方の責任だと思うんです。これはぜひお願いしたい。

 ただ、そのことと、だから議員の定数を減らすこととがバーターなんだという理解は、私は余り賛成しないんです。それができるんだったら、逆に議員の皆さんの姿が見えます。

 それから、皆さんにはぜひもっと透明度をふやしていただきたい。つまり、国会が国民の多様な声を理解して、そして、それこそ佐々木先生の意見と同じです、国民に議員の姿が見える形にすることが、議員が多くても理解ができるようになる。いや、もっとふやせよという声が出てくるぐらいにぜひ奮闘をお願いしたいというのが、私の意見です。

鈴木(義)委員 ここは衆議院なんですけれども、私は常々疑問に思っておりまして、衆議院と参議院でなぜ同じ法案を審議しなくちゃいけないのかといつも思うんです。

 だから、地方の声が届かなくなるから定数を削減していくのはどんなものでしょうかという話になると、では、なぜ、衆議院で定数を減らす、参議院も同じような考え方で定数を減らしていくわけですね、全体的な定数を減らしていこうと。地方の声を国政に届けてもらうんだということであれば、その役割は衆議院が担うのか、参議院が担うのかというのを議論してもいいんじゃないかと思うんですね。

 衆議院で法案の審査をしたら参議院に送って、今度は参議院から衆議院に法案が来るわけです。同じ法案を審議している。附帯決議がついたり、修正が時にはなされるときもありますから、二院制でやっていくのは、一つのメリット、デメリットがあるんだと思うんです。

 でも、そういったことも含めて、今回は衆議院の小選挙区の定数の見直しと選挙制度の改正になるんですけれども、もうちょっと、参議院と衆議院の役割だとか、選挙制度自体のあり方も視野に入れてこの衆議院の答申をお出しになっているのか、そこのもとのところを、もし差し支えなければ、お二人の参考人、まあ答申は佐々木参考人で、もしお考えをお述べいただけたらありがたいと思うんです。

佐々木参考人 お答えをいたします。

 衆議院の議長のもとに設けられました委員会でございますので、もう一つの院のことについていろいろなことを申し上げるというのは、初めから制限がございます。

 ただ、この最後のところに国会、国会という言葉を使ったのは、今議員がおっしゃられたような気持ちを少なからず込めて、この中では衆議院、参議院という話になるけれども、国民から見れば、全体として国会がどうなっているかということを、メッセージが伝わるようにしてもらわないと困る。もっといろいろな、そういう意味では、これからも継続的に御努力をしていただきたい、このような気持ちで書かせていただいたところでございますので、ちょっと具体論は差し控えさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

田中参考人 私なりにお答えいたします。

 憲法が二院制を採用し、かつ、憲法上はかなり同質的な地位を与えてしまっている。これは、憲法を変えない以上、これを前提として両院の関係を考えるしかないと思っています。

 その上で、合理的な調整をどうするかという議論はあるとは思っているんですが、しかし、衆議院と参議院、やはり、選ばれる時期が違う、あるいは選挙制度も選挙区も違う中で選ばれた二つの院が同じ問題について違った角度から議論することについて、一般的には意味はあると思っています。

 特に、重大な問題になった法案について、参議院での議論がかなり決定的に前に進めたというようなことも、率直に言ってございます。ちょっとこれを言うと衆議院の皆さんに怒られるかもしれませんが、昨年の安保法制の議論について、参議院に行ってからのいろいろな議論を随分参考にさせていただきました。これは事実です。

 それから、さっき政治改革という話が出ましたけれども、衆議院の政治改革に関する法案が参議院に行って否決されるんですね。私も反対運動をやっていましたから、参議院は関係ないんやという議論から始まって、実はこれは議会のあり方に関する議論なんだというところに参議院がいって、いわば国会や政治や議会のあり方が何だというところまでいって、一遍ひっくり返るんです。まあ、またひっくり返りますが。

 そういう役割を参議院が果たしてきた、ないしは衆議院と参議院が二つあることによって果たしてきたことは、決して無視すべきじゃないと思います。

 あわせて、それを有効に機能させるために、衆議院と参議院の二つの選挙制度の総体的な調整もしておくべきだと思います。さっきちらっと言いましたが、自由法曹団は、衆議院については、一層政党化が進んでいるだろうから比例代表制を提唱し、参議院については、人を選べることを重視した大選挙区制を提唱するというふうに考えているのが、その一つのプランです。

 いろいろなことが考えられると思いますが、やはり衆参をにらみ合わせた議論が今の憲法のもとでも必要になっているとは思っております。

 以上です。

鈴木(義)委員 そこで、明治維新が起きて百六十年ぐらいたっているんですけれども、四十七都道府県は、百六十年間、全然変わっていないんですね。

 参議院の話をここの場で申し上げるのは失礼かもしれませんけれども、県をまたいで一つの一人区に、二人区というんですか、選挙区をくっつけているんですけれども、これは、ずっと先に行っても、必ず一票の格差という話になって、都道府県単位で見ていくと限界値が必ずやはり来ると思うんですね、四十七都道府県で物事を見ようとすると。東京は今度のこの衆議院の定数の見直しをすれば三つふえますよとか、どこそこの県は一つ減ります、どこは一つ減ります、こういう話になってくるんですけれども、そうすると、どうしてもぎりぎりのところで、そこのところの壁が、やはり四十七都道府県というものの考え方についてくるんじゃないかと思うんです。

 その辺の、ことしとか来年とか、そういう話じゃないので、将来にわたっての考え方をもしお二人からお示しいただけたらありがたいんですけれども、ちょっと質問の趣旨がわからなければ、また尋ねてください。

佐々木参考人 お答えになるかどうかわかりませんけれども、実は、我々の委員会でも、やはり都道府県に議席を配分するという方式をどうするかということが議論になったわけであります。

 しかし、ブロック単位で選挙をやっているということでいえば、もはや都道府県の上に選挙区ができているという理解もできるのではないかという議論を展開された委員もいらっしゃいました。そうすると、各都道府県へ議席を配分するアダムズだ何だということをやる必要はないんじゃないか、県境をまたいで選挙区を設定すれば、ブロック制的小選挙区制というんでしょうか、ブロックの中に小選挙区を入れ込むというようなことはどうだろうかというような議論を出した委員もいましたが、なかなか、まだ都道府県という枠はそう簡単に、我々の委員会がどうできる制度でもございませんので、結局は引っ込められたのですけれども。

 今の枠でも、いろいろな議論の推移によっては、いろいろなことを考えなきゃいかぬということが出てくるかもしれません。一つの可能性の問題として、例を挙げさせていただきました。

 以上でございます。

田中参考人 私からもお答えさせていただきます。

 大変大事な御指摘だと思っています。

 私たちはもともと、お話ししましたように、広い選挙区から多様な代表を選べ、こういう考え方をとります。そういう考え方では、どうしても、都道府県単位ということにこだわらない方向に行くんです。その問題は、さっきどなたかも御指摘になった、地元から代表を送り出すという問題と、地方の利益、地方の課題にどう国政が応えるかという問題をどう調整するかという問題に行くんだと思うんです。

 当然ながら、一方で、地方分権あるいは地方の衰退等が言われる中で、どのような選挙制度をとろうとも、国会議員の皆さんには、地方の問題に重点的な配慮が必要だと思います。

 そうだけれども、御指摘になったように、都道府県という単位だけに最後までこだわってやっていくことが長くいけるとは思いません。さっきのアダムズ方式の最終的な矛盾は、本当に人口が流動化していったときに、それでも一議席だけ残すのか、そのことと最高裁が言っている投票価値平等をどう調整するのかという問題が起こりまして、そこまで行けば、やはり違憲論が出てくるんですよ。そうすると、どこかで越えられるしかないと思います。

 さらに、私はあえて申し上げておきますが、その場合の平等というのは、ただ単に地域的な平等だけを言っているのではなくて、投票価値の平等まで本来考えるべきことを提起しているのではなかろうかという点も申し上げておきます。

 私からは以上です。

鈴木(義)委員 時間が参りましたので。

 制度の安定性というのがきのうの委員会でも議論になったんですね。ですから、限界値を超えちゃうと制度の安定性は担保できない、そういうお考えなのかなというふうに今お聞きしたんですけれども、以上で、時間が参りましたので終わりにしたいと思います。参考人の皆様方には、ありがとうございました。

 終わります。

山本委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 お二方の参考人、陳述ありがとうございました。

 私は、まず佐々木参考人にお聞きしたいと思います。

 衆議院選挙制度調査会は十七回開催し、その答申を受けて、実はこの国会に二つの法案が提出されました。その答申を出された調査会は非公開で行われ、議事録も一切公開されていません。どういう議論があったのかは国民は知りようもありません。したがって、きょうは、どんな議論を経て結論が出されたかなど、その座長であった佐々木参考人に最初にお聞きしたいと思います。

 まず最初に、定数削減についてです。

 調査会答申は、「現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えず、これを削減する積極的な理由や理論的根拠は見出し難い。」と述べています。

 私は、各党のヒアリングの中で、二〇一五年十二月七日に、定数削減の根拠は何かということを問いました。それはないじゃないかということを述べたわけであります。

 ことし一月の答申説明会並びに本日の陳述で、佐々木参考人は、調査会の多くの委員は慎重な意見を述べられた、客観的な根拠と言われるとなかなか難しい、大幅な削減はないということに皆さんが合意したと明らかにしています。これは、調査会の有識者の委員の大方が定数削減に慎重な意見であって、客観的な根拠は難しいということが理論的な結論だったということと理解してよろしいですね。

佐々木参考人 お答えいたします。

 客観的根拠を挙げることは難しいというのは、皆さんの御意見でございました。

 以上でございます。

穀田委員 その点では、安倍総理も、調査会における結論としては定数削減をする必要がないとなっているというふうに発言されたことは正鵠を得ていると私も思います。

 そこで、佐々木参考人は、説明会で、実は、まとまらなかったという報告も出しかねないところまで行き、最後まで苦慮したと述べておられます。そして、定数削減を諮問された以上、答えを出さざるを得ないという義務感みたいなものによって、定数十削減で奇跡的に意見の集約ができたと説明しています。覚えておいでだと思います。

 奇跡的にというのはどういうことか、どういう議論があって、結果的には奇跡的にまとまったのか。ちょっとお話しいただければ幸いです。

佐々木参考人 お答えいたします。

 実は、この削減問題のもう一つのファクターとして、緊急是正において五議席、既に削減されているということがございまして、それを頭の中に入れて御提案なさる方と、それは別個に、これから何議席削減するということを提案するべきだという人とで、まず出発点がちょっと微妙に違っていたということがございます。

 それで、私は、各党ヒアリングの際に、皆さんは削減の場合の出発点にあの〇増五減を入れて、その上での削減を御主張なさるのか、あれも加えて御主張なさるのかということをかなりしつこく聞きました。そうしましたら、皆さん、あれは別だ、新たに考えてくれという御意見だったものですから、一応、我々としてはそういう認識を踏まえて活動したわけでございます。

 実際の数としましては、数の問題ですから、五が減ったことは確かでございますので、そこで、小規模案と二桁に近い案とで、最後まで議論が、両案、最後の日まで、実は起草委員会の方で案を出そうということになったんですけれども、起草委員会の中からも、一つの案では難しいなということで、二つの案が出たというようなぐあいでございます。

 私が、奇跡的というか、どうなるかわからないと思ったのは、そういう状況を踏まえた上での発言だったと記憶しております。

 それで、さらに問題は、減らすにしても、どっちで減らすのかということについて、小選挙区で減らすのか、比例区の方で減らすのかということについて、同じ数を挙げられる方の中でも実はかなり方向が違っている可能性がございましたものですから、そこがさらに、例えば三議席とか四議席ということであればどっちにしろそんなに大きな振れはないんですけれども、二桁に近くなりますと、特に格差是正を重視する方の中には、これは可能性としてですけれども、小選挙区は減らさないで、比例を専ら減らして、小選挙区は今のままにしておくべきだという議論だってあり得たわけであります。あるいは、その反対に、民意の集約が強過ぎるということで、今度は小選挙区の方に減らしてもらおう、比例の方はそういうことにしないようにしよう、比重を変えようという議論もあったわけでございます。

 その意味で、数の問題の下に、どっちの制度に軸足を置いて減らすかという問題が一緒に絡み合っていたものですから、先ほど議員がおっしゃられたように、連立方程式がだんだんややこしくなってきまして、はっきり申し上げますと、委員会は、いわば議論の中でしか結論を生み出すという作業をいたしませんものですから、まとまるかどうかについて最後の最後まで予断を許さなかったというのは、もう少し立ち入った説明をしますと、そういう状況の中で、最後に、十で、しかも三対二ということでもって皆さん合意されたということでございまして、あと残り時間約一時間なかったぐらいのところでそういう結論になったというのが実態でございます。

 経過説明しろということだったものですから、少々細かく説明させていただきました。

 以上でございます。

穀田委員 そういう結果、先ほど公明党の議員にお話がありましたけれども、定数削減というのは余り重要でなかったという旨の発言も若干ありましたけれども、そういう前提があったのかと思い知った次第です。

 いずれにしても、さほど大きく減らすという意見はなかったということだけは確かと。最高でも、今あれしましたように、十というふうなことしかなかったということは、よくわかりました。

 佐々木参考人は、説明会で、議席は有権者にとっては選ぶ権利である、代表者を派遣する権利を有権者が持っているということが、議席が削減されることによって事実上弱体化する、削減される、有為な人材を集めることによる国民の代表議会としての国会の機能強化、行政府との緊張関係の維持等の要素を考慮する必要がある等々の意見が出され、先ほど私が指摘しましたけれども、大幅に定数削減することは適当であるとは言えないということが調査会の大体の意見だったとわざわざ説明をされていました。

 これは、先ほど理論的根拠を見出しがたいと述べた中身の一つとして理解してよろしゅうございますね。

佐々木参考人 お答えいたします。

 つまり、何か明確な、数的な基準でもって議員の数の問題を議論するということは困難であると。

 実は、いろいろな仮定の議論はありました。例えば、この十年間で人口の減少を基準にして考えたらどうかとかいうようなこと、いろいろな、学者さんが集まっていますものですから、そういうのはどうだろうかとかという話もありましたけれども、逆に言えば、動きがとれなくなってしまうし、事柄自体がそういう議論で割り切れるものでもないだろうということもあったものですから、数値的な意味での客観的な基準を出すということは難しいだろう。

 ただし、先ほど鈴木議員からもお話があったように、国会で、例えば、政権を担って、政権を担当している政党がどれぐらいの議員が絶対に必要なものかというようなことは、一応、我々もそれなりに研究はしました。ただし、いろいろな人の意見を聞きますと、委員の中から、それでも運営を変えれば何とかなるじゃないかとかいうような話もなかったわけでもないし、そういう意味では、かたい数字で議論を立てることは難しいという意味では、客観的基準が見出しがたいというのはそのとおりでございます。

 以上でございます。

穀田委員 だから、そういう意味での、今お話があった理論的根拠を見出しがたいというのは、そういう点もあったということだと思うんですね。

 私は、議員定数のあり方というのはどこから出発するかということでいうと、数の基準というのをどこに求めるべきかというのは、減らせばいいというものではないというのは明らかだと思うんですね。

 問題は、この定数削減の出発は何だったかというと、身を切る改革と称して始まったわけですよね。これは、民主党野田政権が、国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る改革が必要だと言って、比例八十削減を持ち出したことがきっかけであります。

 よく考えますと、増税をお願いすることと、国民の代表である議員定数を削減するというのは、次元が違う話なんですよ、もともと。だから、調査会の議論でも、増税と削減の組み合わせを一度慎重に検討し直す必要があるとの意見があったと、佐々木参考人は説明会で紹介していたわけですね。

 しかも、きょうもありましたけれども、いきなり定数になるのはいかがなものかという話がありましたけれども、言い得て妙といいますか、その辺の、この議論というのはすりかえとちゃうのかという考え方については、参考人、ぜひ御意見を伺いたいと思います。簡単でいいです。

佐々木参考人 お答えいたします。

 先ほど来、議員からも御紹介ございましたような形で、幾つかの段階がございました。

 そもそも、第三者委員会が国会の人数を決めるということ自体あり得る話かというのがそもそも論としてありました。幾ら何でもこれは国会が決めることでしょう、それはまあ決めるんでしょうけれども、我々のところにボールを持ってこられても、なすべき仕事なのかどうかという大原則論から始まって、穀田議員が言われたようないろいろな問題がさらに提起されたということでございます。

 その意味でいえば、問題の性質上、やはり第一義的には、ですから、我々の答申でも、もしどうしても聞かれればこう答えますというような、文章の据わりもちょっとトーンが、報告書のトーンも少し違っているというのは、客観的基準に基づいて第三者委員会が何か言うことができないという気持ちと、それはそちらの決めることじゃないですかねという気持ちも幾らか入っているということで、御理解いただければありがたいと思います。

 以上でございます。

穀田委員 はしなくもという言い方はちょっと悪いんですが、今参考人がお話あったように、定数削減しろという諮問だったからしたよというのがにじみ出たのがよくわかりました。

 それで、一つだけ聞いておきたいんですけれども、先ほど参考人は、アダムズ方式を比例のところにも導入するという問題についてもお話ありました。こう言っていますよね。今の制度でいうと、小選挙区のドント方式というのは、現行制度は比例性に乏しいという話があってアダムズ方式を入れたという話がありましたけれども、比例代表の制度というのは、現行の制度は最も比例に近い制度だと言われるのが常識です。そうすると、なぜ、比例代表の制度を変える、その問題についてもアダムズ方式を入れるのかというのは、理屈が合わぬと思うんですが、いかがですか。

佐々木参考人 お答えいたします。

 実は、議論の過程で、合区といいましょうか、ブロックをつなげるという案を出された政党がございまして、それはもちろん、比例定数の大幅削減とセットで出されていたという記憶がございます。ですから、例えば三十減らすとかいうような話になれば、そういうことも考えなければいかぬかなということが実は我々の頭にございました。

 しかし、ブロックを一つにするということは非常に大きな出来事でございますので、できるだけ今の十一ブロックというのは、将来のことはわかりませんけれども、まだ存続の余地があるのではないか。特に、議席の数が四とか三とかいうことになりますと、ちょっと比例制としての役割を果たせなくなっていく可能性があるということが非常に気になったわけでございます。

 そういう意味では、我々としましては、今の十一ブロック、結果として四議席ですから、そのこともあったんですけれども、十一ブロックはやはり維持した方がいいだろうというのが、裏を返せば、比例の削減はその程度にとどめるという意味合いと、さらに、その上で十一ブロックを存続させるというためには、最大剰余法ですか、今の方式よりもアダムズの方がいいではないか。そういう意味では、十一ブロックというものを応援するための意図も、正直なところ、なかったわけではございません。

 以上でございます。

穀田委員 今もお話ありましたけれども、比例十一ブロックを維持するということを前提に考えたという筋の方が見てとれるというふうに思いますよね。私はそういうふうに見ました。だから、アダムズ方式を比例のところに入れるという根拠は、その場合だったら、では十一ブロックを動かしたらいいのじゃないかというふうに発展するわけですから、それはそれであり得たと思うんですね。

 最後に、では、恐れ入ります、田中参考人に二、三お聞きしたいと思います。

 私は、先ほどお話をお伺いしていて、特に今度の答申に当たっての諮問という最初の第一項は何だったか。それは、皆さん、二十九回の各党協議会でいろいろなことがまとまらなかったと、そればかり話します。

 しかし、まとまった話はあったんですよ。それは、今の現行制度が国民の民意を集約するということに大きく偏り過ぎていて、民意をゆがめているということについては一致したんですね。それが唯一の一致事項で、しかもなおかつ、そのことによって現行制度を評価、検討しようじゃないかということになったわけですよね。それが調査会で十分やられていないという問題があるということなんですけれども、現行制度の弊害は何かということを端的にお答えください。

田中参考人 お答えいたします。

 言い古された話だと思っているんですが、中心になっている小選挙区制の機能そのものなんです。

 要するに、一つの議席しか選びませんから、その選挙区への第二党以下の投票は全て制度的な死票になります。政権党になった第一党は、得票率に比べてはるかに多くの議席が確保できる。政権にとっては大変都合がいいんです。ただ、第二党以下は何を考えるかといえば、政権党に対抗する政党をと考えざるを得ないから、離合集散が起こり、二大政党になるかと思ったら結果的に溶解する、これを繰り返すことになります。

 そんなことは、実は、二大政党制といういわば制度前提がないこの国に小選挙区制を持ってきたらそうなることは当然わかっていまして、何度も警告しました。残念ながら当たってしまったと思わざるを得ません。

 このことは有権者の側からいうと、最高裁も指摘している投票価値の平等が、自分が投票する一票の値打ちの点で保障されぬことを意味しています。さっき、アダムズ方式というか、地域的な平等なんですよ。しかし、有権者は何のために投票するかというと、自分の一票を託した議員を当選させたいためです。それを最大限保障するのが投票価値の平等のはず。

 自治体の首長や大統領のように当選者が一人だったら、落選者に対する投票が全て死票になるのは当たり前なんです。議会、衆議院は何百人も選出するわけですよ。何百人も選出する議会において何で選挙区やブロックの当選者を一人にしなきゃならないのかという問題、これは必然性は全くありません。これを一定の人数にすれば、第二党以下の候補や政党の投票も議席に結びつくんです。

 一つ例を出せば、今参議院の方で何とか野党が一つの候補者を擁立して頑張ろうとされています。今の一人区のもとで国民の意思を何とか反映しようという努力は大変高く評価します。ただ、えらく苦労をされていますよね。だって、たしか提携されている民進党さんと共産党さん、政策はかなり違うわけです。同じであるなら一つの政党にまとまるんですから。それをやろうとするから苦労をする。

 だったら、それぞれがそれぞれのビジョンを掲げて選挙をやって、それぞれの得票率に合わせて当選者の数を決めて、課題については一致するところで共闘するというような方向にどうして行かれないか。本来、議会制民主主義というのはそうじゃなかったのか、中選挙区制の時代にそれをやってきたんじゃないですかということが小選挙区制の問題であり、私が申し上げる政治改革の見直しの基本課題じゃないかと思っております。

穀田委員 最後に一言、田中さん、二十年前に政治改革があったわけですよね。それを振り返って、どう評価し、現在何を求めるかということについて簡潔にお答えいただきたいと思います。

田中参考人 お答えします。

 端的に申し上げます。

 全くの間違ったことをやってしまったと思っています。

 何が基本だったかというと、政権を選ぶための総選挙だと考えたことが間違いなんです。全国民の代表を選ぶのが総選挙であったし、その全国民が集まったのが国会議員だったんです。政権選択にしたら、必然的に小選挙区制にいかないんです。

 あの議論の中では、それこそが最大の価値のように言われました。ところが、憲法を見ても世界の政治制度を見ても、そんなことはどこにもない。アメリカとイギリスだけは確かにありましたけれども。しかも、議論の中で、さっき参議院の話もしましたけれども、その辺のことは随分明らかになっていって、党派を問わず、国会の中では、おかしいんじゃないのかという議論が起こりました。

 ところが、あのとき、むしろ外から、財界や連合やメディアやあるいは学者の皆さんが、とにかく改革だと叫ばれた。一種の改革の暴風が起こりました。反対したら、守旧派だと。我々自由法曹団の弁護士は守旧派と言われたって別に食うに困りませんからやりましたけれども、反対するのが大変難しいような、冷静な議論ができないような状況にされてしまった。その中で一番根幹の問題が強行されたこと、当時かかわった人間として非常に残念です。

 その思いのあるうちに見直しをし、冷静な議論をする必要がある、こう思っております。

穀田委員 ありがとうございました。

山本委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 おおさか維新の会の浦野です。

 本日は、佐々木参考人、田中参考人、どうもありがとうございます。朝からの議論で、本当に大変勉強になる部分もあります。

 私も、民進党の鈴木委員と同じく、都道府県議会出身の議員です。大阪府議会の出身です。

 きょうもずっと定数の問題で議論がありました。

 おおさか維新の会は、参考人の皆さんも御存じのとおり、唯一、大幅削減ということをずっと掲げている政党になるわけですけれども、単純に議員の数だけで議論をしているわけでは我々はないんですね。なぜ国会議員の数を減らすか。それは、やはり地方分権をしていくと、道州制、地方分権、そういうことを実行していけば、必ず国会での議論されるべき政策というのは減っていくだろう、その中で議員の数を必ず減らすことになるだろうという前提のもとで我々は議員定数の削減も言っているわけですね。だから、ただ単純に削減しろ、削減しろと言っているわけではないです。

 ただ、私も政治の世界に入って今で十三年になります。この十三年間で、そのうちの十年は地方議会でずっと、当時はほとんどの時期を自民党の府会議員として過ごしました。その中で、国政の先生を見る中で、本当にこの人いるのかなというふうに思ったのは事実です。誰かすぐわかっちゃいますけれども、私の選挙区の方で、自民党の方々も思い当たるとは思います。

 私たちは、別に、ただ単純に減らすんじゃなくて、やはり政治家の活動を見てきて、見てきた上でそう思っているわけです。私も、今は国会議員ですけれども一国民でもあるわけですから、我々自身が政治を見てきて、議員の数が多過ぎるんちゃうかという思いに至るのは、やはり目の前の現象があるからだと思っているんですね。

 例えば、今ここにいらっしゃる先生方は皆さん立派な、私も含めて立派な人だとは思っている、自分で自分のことを言うのもどうかと思いますけれども。でも、中には、飲酒で捕まったりする方もいらっしゃる、賄賂を受け取って捕まる方もいらっしゃる、交通事故を起こす方もいるし、暴言を吐く人もいる。いろいろな人がいてる。その中で、やはり政治不信というのが実際に国民の皆さんの中にあって、それはごく一部の方々ですよ、そういうことを起こしているのは。ですけれども、やはり政治家になる人はみんな清廉潔白でなければいけないしというのは誰もが思っていることだと思うんです。

 そういった部分で、やはり、先ほどの穀田委員のお話の中にもありましたように、田中参考人もおっしゃいましたけれども、有為な人材を集めて議員の数をふやせばもっといい議論になるというんですけれども、有為な人材が集まればいいですよ、でも、そうじゃないというふうになっているのが今の世の中の、国民の皆さんの御意見だと思うんですね。だから、そこは私は非常に難しいかなと思うんですね、今。

 我々は、もちろん、今ここにそういう人材が集まってさまざまな議論をさせていただいていると思うんですね。でも、やはりその辺は、定数削減がなぜ議論として出てくるかというのは単純な問題ではないということを私は常々思っています。

 例えば報酬だとかも、議員の数が多い国はもちろんたくさんあります。ですけれども、そういった国々で、日本の国会議員より給料が高いところの方が断然少ないですよね、実際は。報酬が少ない国会議員の方々のところの方が多いわけですよね。そういった部分を含めて、そういう定数のあり方の議論はしていかないとだめだと思っているんです。

 そういう意味では、佐々木参考人も、今回の議論の中で、いろいろと会議の中でお話があったと思うんですけれども、定数のあり方だけじゃなくて報酬とかそういう部分にも言及があったのかどうかということをお答えいただきたいのと、田中参考人には、今私が言わせていただいたことについての感想をちょっといただけたらと思います。

佐々木参考人 お答えいたします。

 やはり委員会の中でも、身を切る改革イコール定数削減ということになる前に、議員が今おっしゃられましたようないろいろな事柄についての説明を、確かに、歳費を一時カットするとかいろいろなことがなされたような記憶がございますけれども、その辺の説明というものが、説明の道具といいましょうか、テーマというのはもっともっとたくさんあるのではないか、政党助成金も含めて、どうなんだというような話がもっとあった上で定数の問題も出てくるというような話の進め方、進み方というのが国民に伝わってきているのかなということについては、いろいろ率直な意見がございました。

 ただ、委員の中にもいろいろな考えの方がやはりおりますので、どちらかというと多目に削減すべきだろう、ありていに申せば、そんなに削減したいならそういうことかなという議論ももちろんなかったわけではございませんが、もっとやはりそこへ行く道筋を丁寧に踏んだ形で、国民とのコミュニケーションでもって定数の問題を理解してもらうというようなことをお願いしたかったなという意見は結構たくさんあったと思いますので、今後の御参考になればと思って申し上げさせていただいたところでございます。

 以上、お答えいたしました。

田中参考人 お答えいたします。

 さっきもちらっと触れたんですが、自由法曹団が「誤りです!国会議員ムダ論」という意見書をなぜ出さざるを得なかったか。

 逆に言います。無駄じゃないのかという声が、これは国会の中じゃなくて国民の中にあったんです。あの当時、メール等で見ると、無駄な議員は減らせという国民がどうやら七、八割いると言われていました。

 確かに、失礼ですが、こんなのじゃと言われる映像も随分ありました。本会議で寝ているとか、本会議でメールを飛ばしているとか。失礼ですが、昔はそうだったかどうかは私は知りません。ただ、今は、それこそインターネットで広がっていますし、逆に国民の関心も監視も強まっていますから、皆さん方もいわば露出度が強いんです。そこはやはり代表としての緊張感を持っていただかないと、こんな声を生んでしまう。それだけじゃないよという意味で弁護したのがあの意見書でした。

 もう一つ、お金の問題はあると思います。確かに、今庶民の生活は苦しいですから。その意味では、言われている政務活動費の問題とか、あるいは政党助成金、これはそもそも自由法曹団は反対ですけれども、そういうことが本当に妥当なのかどうかということを見直される必要はあると思います。その透明性を強めること。

 ただ、あえてちょっと申し上げますと、私は政治には一定のお金はかかるんだと思っているんです。それを、金かけなきゃいいんだという議論だと、実はまともな政治ができない。金かけてでもいい政治をしてくれというところに持っていく必要がある。

 最後に一点だけ。これを申し上げるのは本当に失礼なことになるんですが、有為な人材を議会に送り出す上で今の制度が本当に適切かどうかだけ、これも検証いただきたいと思います。

 私は若かったからそう思ったのかもしれません。私も中選挙区制のころから、私の地元は十区でしたけれども、大体各党の議員を皆さん存じ上げています。仰ぎ見るような感じがありました。要するに、大物というのかな。何となくその感が薄れた感が私自身もあります。時々そういうことがメディアでも言われ、議会でも言われます。小選挙区制が、そういう弊害が中心とは言えませんが、やはりその点を含めて、逆に御検討いただきたいと思っております。

 以上です。

浦野委員 済みません、小物で。失礼いたします。

 その当時は、中選挙区時代のことは、私もまだそんなに政治の世界をしっかり見ていたわけではありません。父親も政治家でしたけれども、私は子供のときは、政治家なんか絶対なりたくないと思っている側だったので、余り見ていませんでした。でも、私の選挙区は、中選挙区時代は塩川正十郎なんですね。それは本当に、我々でも、政治にほとんどかかわっていない世代でも、やはり塩川正十郎といえば偉大な政治家だった。まさに田中参考人がおっしゃるような、代表するような政治家だったと思いますね。

 ただ、中選挙区になると、かえって、大物政治家と言われるような人が、もしかしたらそういう人がまた出てくるかもしれないですけれども、実際、本当にそういう人たちが、中選挙区の制度をまた採用すると、自分たちの声をほんまにどれぐらい聞いてくれるのかなということも我々はちょっと思ったりするんですね。今の制度の方が実際に皆さんの意見を細かく聞く機会が多いというのは、私は制度上あるんじゃないかなと思っていますけれども、その点はどうですか、田中参考人は。

田中参考人 小選挙区で小さい選挙区になる、しかも、ただ一人の議員か、次にただ一人の議員になろうと思っている候補者の皆さんが、地元の声をとにかく聞かなきゃならない、その長所をあの政治改革ではある部分強調されましたし、その一点に限って言えば、そういうインパクトはあるとは思います。

 ただ、では、大選挙区あるいは中選挙区だったら、本当にそういうことをやらなくて政治活動をやられたんだろうかということも再検証が要ると思います。

 政治改革のときは、とにかく中選挙区はぬるま湯だから、自民党さんだったら、五つだったら二つは必ずとれるよ、社会党だって、何もしなくても一つとれるよ、こう言われました。議員にもお会いしたんですが、皆さん、そんなものじゃないというふうにおっしゃっていましたし、私が見ていても、よくやっておられましたよ。

 例えば、東京十区で、名前は挙げませんけれども、ある方は足立が中心で、ある方は江戸川中心で、しのぎを削っておられた。それが政治だったと思うんです。そして、それで後援会を鍛えて、政治家になって活躍された。

 これは弁護士が言うせりふじゃないんですが、もちろん小選挙区にそういう機能があることは認めますが、政治家を志して、そして、この時代に政治をやろうと思った場合には、どの選挙制度も、本来そのことは必要だし、それをしなければ、さっきの無駄論じゃないですけれども、サボっているよという非難がすぐ来るというような状況になっているのではなかろうかという気がしております。

浦野委員 聞いていると、何か中選挙区の方がいいかなと自分でも思ったりもしますけれども。

 ただ、選挙制度というのは、要は、そのときそのときの政権与党、多数を占める人たちが主導して決めるというのは、どの国でも恐らく一緒だと思うんですね。やはりその時々の政権の都合のいいように選挙制度をいじってきている。これは、別に日本に限らず、恐らく世界じゅうの選挙制度はそうだと私は思っているんですね。

 では、国民何人につき国会議員が一人であれば民意を反映しているんだと言える数字なのかという確たる数字というのが、実は、私が調べた中ではないんですね。学術的にも、数字を根拠として、これぐらいの割合で議員が一人いれば国民の意見をしっかりと反映できているんだという論文なりなんなりというのは、私も余り、僕がまだ調べ切れていないだけかもしれませんけれども、実際なかったように記憶しています。

 そういう意味では、定数というのは本当に、減らすという議論はもちろんですし、ふやすという議論も、私は、ふやすのであれば、議員報酬を削減して、そのかわりスタッフの予算をもっとふやしてほしい、議員本人の予算よりも、政策秘書だとか秘書とかの、そういうスタッフの予算をふやすべきだというふうに思っている人間なんですけれども、ふやすというときでもそれは考えたらいいと思うんです。それはそれで、今の予算の範囲内で、今かかっている範囲内で、議員をふやすんだったら、では、議員の数をふやす分、皆さんの報酬はこれだけ下げますよ、総量は一緒で、中で調節するというやり方をしてもいいんじゃないかと私は実際思っているんですね。民主主義にコストがかかるというのはわかるんですけれども、実際、でも、それが青天井でどれだけかけられるかという話にもやはりなりますので、私はそういうふうにすればいいというふうに思っています。

 そういういろいろなことも含めて、今の国会で継続的に立法府のあり方についていろいろと議論をする場というのが実はないというのが、今、現状なんですね。議院運営委員会の中にそういう小委員会があるという話はありますけれども、でも、実際、その場で参議院の議論までできるのかというと、参議院は参議院です、衆議院は衆議院ですという議論で終わってしまいます、必ず。衆議院が参議院に口出しすることもできない。それが今の二院制なので。

 ということは、やはりどこかでそういう立法府のあり方を、明治以来の国会のあり方をしっかりと議論する場というのは私は必要だと思うんですけれども、そのことについてお二人の意見をお聞きしたいと思います。

佐々木参考人 最後のところでも、そういうような観点が、衆議院、参議院だけの観点というのは、国民の目線からすると、なかなか、打った球が戻ってくるという感じがしなくなっているんじゃないか。

 そういう意味では、全体としてそろそろ考えるべき、そして、客観情勢も非常に激しく動いているという中で、そういうことも含めて、今度の見直しはほんのその一部のものにしかすぎないわけでありまして、これからの日本の代表民主制の将来を考えますと、立法府のあり方というものを全体として継続的に検討していっていただくとありがたいという気持ちは随分込めたつもりでございますので、その意味でいえば、これからの皆様方の取り組みというものの責任は大変重いと私が申し上げるのは口幅ったいですけれども、重いものがあるというふうに個人としても認識しております。

 以上でございます。

田中参考人 私からも一言だけお答え申し上げます。

 全く同意見でございます。私は、二十年前の政治改革からというふうに申し上げましたので、その意味では、やはり二十年の区切りで二十年間をきちっと検証する、そういう機会はぜひ持っていただきたい。

 ただ、同時に、私はあの改革は間違いだったと言いますが、では、二十年前に戻せば事が済むかといったら、二十年間ずっと時代は転換しているわけです。今から問うていただかなきゃならないのは、では、これからの国会をどうつくるのかという議論を二十年間の検証の上に立ってやっていただかなければならない。その場が国会の中でどうつくられるかは申しません、これはちょっと一介の弁護士が議論できる話ではないので。ただ、それを断ち切らずに、ぜひ続けていただきたい。

 繰り返しになります。民主党政権の比例八十議席削減は私は反対しましたけれども、それと、最高裁判所のあの違憲状態判決を契機に、衆議院の中で、そうはいっても五年間検討を続けられたではないですか。全く無駄じゃなかったと思うんです。それをぜひ発展させていただきたいということをお願いいたします。

 以上です。

浦野委員 どうもありがとうございました。終わります。

山本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと存じます。

 次回は、明二十七日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十三分散会


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