衆議院

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第3号 平成14年4月11日(木曜日)

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平成十四年四月十一日(木曜日)
    午後二時十八分開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 高橋 一郎君 理事 土屋 品子君
   理事 林田  彪君 理事 森田 健作君
   理事 肥田美代子君 理事 山口  壯君
   理事 丸谷 佳織君 理事 黄川田 徹君
      小野 晋也君    小渕 優子君
      大野 松茂君    岡下 信子君
      阪上 善秀君    鈴木 俊一君
      谷川 和穗君    保利 耕輔君
      増原 義剛君    石毛えい子君
      鍵田 節哉君    今田 保典君
      武正 公一君    水島 広子君
      山谷えり子君    石井 郁子君
      原  陽子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   内閣府副大臣       松下 忠洋君
   法務副大臣        横内 正明君
   厚生労働副大臣      狩野  安君
   内閣府大臣政務官     奥山 茂彦君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   江崎 芳雄君
   政府参考人
   (内閣府男女共同参画局長
   )            坂東眞理子君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     高橋 恒一君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 飯島 健司君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           玉井日出夫君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  下田 智久君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   長)           真野  章君
   政府参考人
   (厚生労働省社会・援護局
   障害保健福祉部長)    高原 亮治君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十一日
 辞任         補欠選任
  鍵田 節哉君     今田 保典君
同日
 辞任         補欠選任
  今田 保典君     鍵田 節哉君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 青少年問題に関する件


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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官江崎芳雄さん、内閣府男女共同参画局長坂東眞理子さん、法務省民事局長房村精一さん、外務省総合外交政策局国際社会協力部長高橋恒一さん、財務省大臣官房審議官飯島健司さん、文部科学省大臣官房審議官玉井日出夫さん、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司さん、文部科学省初等中等教育局長矢野重典さん、文部科学省スポーツ・青少年局長遠藤純一郎さん、厚生労働省健康局長下田智久さん、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝さん、厚生労働省社会・援護局長真野章さん、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長高原亮治さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
青山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山谷えり子さん。
山谷委員 民主党の山谷えり子でございます。
 きょうは、ジェンダー教育、そして青少年健全育成の観点で御質問させていただきたいと思います。
 一九九九年施行されました男女共同参画社会基本法、男女が、社会の対等な構成員として、みずからの意思によりさまざまな分野で活動に参画し、政治的、経済的、社会的、文化的利益を享受することができる法律ができたことを喜ぶ者の一人でございます。ジェンダー教育も進んできております。しかしながら、違和感を覚えるところもございます。
 その点についてなんですが、例えば、文科省の委嘱事業で、子育て支援のリーダーたちに主に配られているという「未来を育てる基本のき」というような小冊子の中では、「押しつけるような子育てをしていませんか?」ということで、女の子だったらおひな祭りのおひな様、男の子だったらこいのぼりと武者人形、女の子は言葉遣いは丁寧に、男の子はガッツがあって責任感のある子にとか、そのようなことを押しつけてはいけないというようにも読み取れるような構成になっているような書き方があるんです。
 今、教育の現場を見ますと、女の子が乱暴な言葉遣いをしたり、運動会で男女混合で騎馬戦とか駆けっこなんかをする。女の子を守ろうとか、女の子が弱いということが余りよくわかっていない男の子がいて、殴る、けるの物すごい乱暴を男の子が女の子に働くというような現状を見ると、これはいささかいかがなものだろうかというふうな気も私はいたしております。制服も男女同じにしていこうかとか、それから、靴の裏にげんこつをつけてみよう、女の子はスカートをはいているから足が余り開かないね、どういうことか考えてみようって、何をどう考えるのか、私にはちょっと解答が見つからないようなゲームの勧めがあったりということがございます。
 例えば、今回検定が出ました「現代社会」の教科書なんですけれども、ジェンダーについて、「日本では伝統的に、日本女性を「大和撫子」、「たおやめ」といったり、日本男児を「ますらお」とよんだりしている。こうした表現には、そこに込められている文化的な意味がある。」云々とありまして、「歴史的・文化的・社会的につくられた性の違いによる認識である。これをジェンダーという。」コラムで、「ジェンダーに基づいた偏見を取り払い、真の男女平等社会(ジェンダー・フリー)の実現が求められている。」何か、大和撫子とか、たおやめとか、ますらおという言葉はよくないよというふうにも読めるような構成になっております。
 文化芸術振興基本法、さきの国会で成立いたしましたけれども、そのときの議論の中でも、歌舞伎とか落語に廓話があるのはけしからぬとか、夫婦茶碗はおかしいというような議論がございまして、私は、経済的あるいは社会慣習の面で障害がある部分は見直していく、あるいは、性による差別というのはあってはならないことだと思いますけれども、驚くほど一方的に、多様性といいながら、何かステレオタイプを押しつけて画一的な考え方の押しつけをつくっているようなことがあるような印象を受けるのでございます。
 このようなジェンダーフリー教育の現状を福田官房長官は御存じでしょうか。御存じだとすれば、どのような御感想をお持ちでございましょうか。
福田国務大臣 私は、男女共同参画担当大臣、男女共同参画社会をつくらなきゃいかぬ、そういう責任のある立場にあるんですけれども、御指摘の問題もありますけれども、要するに、社会的活動においてジェンダーの差別があってはいけないということはそのとおりだと思いますね。ですから、今、公務員も女性をふやそうというようなことで努力しておりますし、また、政府関係の審議会委員なんかも三〇%目標、三〇%は平成十七年に達成しようということで、今二十何%まで行きましたけれども、そういう努力はしているわけであります。
 それで、最初に御指摘になったのは、これをつくっているのは文科省ですか、要するに、育てるときの段階からの話とかいうことになりますと、社会的活動をしているということではないんですが、そのころから、将来のことを考えて、余りそういうことを意識しないようにということはいいんですけれども、小さいころの教育なんかのことを考えますと、男と女というのは、社会生活したって男女は違うんですね。違うんです。これはもう歴然たる違いがあるので、それぞれの役割というのは、それはそれで持っているわけでございまして、その部分を無視するわけにはいかないというように私は思っております。ですから、そういうことをわきまえた上で子供の教育をしなければいけない。
 しかし、社会生活で影響を与えないような、幼児からの教育という面についてどういうものがあるかということになりますけれども、実は、御指摘があったので、この「未来を育てる基本のき」というものをちょっとさっき見てきたんだけれども、要するに、将来のために、基本を形成する幼児期からこういうふうなことでやりなさい、男女を意識しないようにというようなことでもって、いろいろな例示もございました。
 例示を見てみましたら、正直言って、私も余りこれは賛成しません。役所がつくってきのかもしれませんけれども、賛成しません。やはり、男は男であり、女は女であるというものはあるんだろうと思う。また、それが人間社会だと思うし、人間そのものだと思いますね。将来、人間社会が存続するための大事な秩序を維持していくための工夫だろうというふうに私は思いますので、そんなことも考えながら、複雑な思いもしながら今この問題に取り組んでいる、こういうことであります。
山谷委員 ありがとうございました。
 平成九年に、東京女性財団がチェックリストというようなものをつくりまして、それもやはり、今のような、本当に分けてしまうんですね。文化的なものとか歴史的なものとか、さまざまなものをもう少し複眼的に教えていくというまなざしが必要だというふうに私は考えているんですが、その平成九年の女性財団のチェックリストでは、イエス、ノーで答えられていて、冬眠型とか生きる化石型とか、そういうふうにラベリングされてしまうような分け方をしていく。そのときは、たしかマスコミで取り上げられて、こういうようなステレオタイプな押しつけの画一的な、ジェンダーフリーという名前をかりてのものはいかがなものかという声が少し上がったんですが、しかしながら、その後の総括が多分なされなかったと思うんです。いまだにこういうものが出ている。そして、教科書にもこのような形で書かれている。
 あのときの総括はなさったのか、そしてその後、どういうふうにしてここまで進んできたのかをお教えいただければ幸いでございます。
坂東政府参考人 お答えいたします。
 実は、その件に関しましては、御質問があるということを知らなかったものですから、まだ十分に情報を集めておりませんけれども、東京都の外郭団体で行われたものですので、私どもが直接どう総括をしたかということについては恐らく何もお答えできないと思いますが、そういったことも含めまして、ジェンダー、男らしさ、女らしさも含めて、どういうことなんだろうかということは、私どもの男女共同参画会議の専門調査会の方の基本問題を扱っていただいているところで少し議論をしていただこうかと思っております。
 一方的な女らしさ、男らしさで個性を抑圧するのは悪いのですけれども、例えば優しさですとか勇気ですとか責任感ですとかいうのはどちらにも必要なことですし、そういったようなことも含めて十分議論をしていただくこととしております。
山谷委員 先日、福田官房長官の所信の中で、この委員会で、「二十一世紀を迎え、少子化、都市化、情報化等の進展や価値観の多様化など、我が国社会は大きな変革の時期にございます。」私も同様に思っております。
 しかしながら、価値観の多様化というのがまた問題になる部分もありまして、例えば、内閣府が青少年を対象とする調査を去年の十一月に行っているんですけれども、「男性も介護を積極的に行うべきだ」とか「困っている人を見たら、頼まれなくても助けてあげるべきだ」とか、いろいろあるんですが、「結婚して子どもを育てることだけが幸せな人生ではない」とか「結婚しても、女性は夫の姓に改姓する必要はない」とか「自分の考えが違うからといって、その人が幸せになろうとするのを妨げるのは良くない」とか「どうしてもやりたいことがあるのに、無理にがまんしてやらないのは間違いだ」、ちょっとどう答えていいのかわからないようなクエスチョンが並ぶんです。
 今の教育を見ておりますと、自己の権利、決定権を大切なことと教えても、自律、セルフディシプリンとか献身という、人としての生きる形、愛の形というのを教えない、教えにくいことでございますから、教えない傾向にございます。
 私、民間におりましたときに、財団法人日本青少年研究所の理事をしておりました。本人の自由でしていいことというのを聞きますと、例えば、売春など性を売り物にしてもいいという答え、イエスという答えをする子が二五%いるんですね。総務庁の覚せい剤に関する調査では、覚せい剤は法律違反だと知っている子は九割、しかしながら、使用は個人の自由であるというふうに答える男子高校生が二七%いる。これはもうほとんど考えられないような自由のはき違えですね。それから、売春など性を売り物にするのも、友達がしているんだったら、それはその子の自由だから、おかしいと言うのは僣越なんじゃないかとか、やはり非常にゆがめられている。多様な価値観というもとに、そのような現状がございます。
 そのようなことについて、やはり普遍的な価値を教えていくというのは非常に教育の背骨でございますし、自由というのは、人間の成熟あるいは神というか超越せる存在との緊張関係の中で、そういう縦軸があってこそだというふうに思いますけれども、青少年健全育成のメニュー、たくさんあるんですが、いわゆる多様な価値、価値、価値、価値という形のメニューで、本当に背骨になるような普遍的なものをきちんと教えたり、それをはぐくむようなメニューというのは非常に少ないということを、私も教育委員をやったりPTAの会長をやったりしながら感じております。
 その辺、現実の社会の実態分析をして健全育成をやっていらっしゃるのか、それから、決定権、権利ということは教えても義務と普遍性を教えないとか、その辺の現状というのは、官房長官、どういうふうに把握していらっしゃいますでしょうか。
福田国務大臣 価値観の多様化というのが、これは誤解がありますね。何でもやってもいいということじゃないんだろうと思いますね。やはり、人間として一人一人がやるべきこと、やっていいこと、やってはいけないことというのはあるんだろうと思いますね。また、伝統的な考え方というのは、これはやはり、人間社会を維持するためにも、また、国家を維持するためにも、大変大事なことだというように思っておりますので、そのことはこれからも大事にしていかなきゃいけないというように思います。
 男女関係にしても、いろいろな変化はありますけれども、これも、許容される範囲というのはおのずからあるんだろうというように思います。何でもいいということでは、その部分においても、ないんだろうというように私は思います。
 しかし、時代が変わりますと、その辺、変化することはあり得るかと思いますけれども、基本は基本できちんと守っていかなければいけない、そのように思っております。
山谷委員 いろいろ教育の現場を取材したり、また、自分の子供を教育の現場で、いろいろな形で、保護者会とかに行って驚いたことがあるんですが、小学生の夏休みの前のお知らせという中に、早寝早起きしましょうとか、暴飲暴食やめましょうとか、宿題を早目に片づけましょうという中に、薬に手を出すのはやめましょうということが書いてあったんです。
 私は非常にびっくりいたしまして、先生に、小学生の夏休みの前のお知らせになぜこのようなことを書くのでしょうと言いましたらば、そのような薬の売買、あるいは中学生、高校生のお兄ちゃんがもっと上の人から小遣い稼ぎに言われて、それをもっと弱い小学生に売りつけるとか、あるいは最初はただでジュースに混ぜて飲ませてみたり、そのようなことが近所であるということでこのような一行を書かせていただきましたと言われまして、私は非常にショックを受けました。それがもう数年前のことでございます。
 例えば、私なんかは、「身体髪膚これを父母に受く。敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり。」とか、あるいは聖書の中では、あなた方の肉体は神の宿る神殿ですなんというふうに教わるわけですね。そういうきちんとした普遍性を教われば、自分の肉体をそのように傷つけるということが自由であるわけがないという、やはりその辺にいくんだろうと思うんですが、お知らせでは、薬に手を出すのはやめましょうと書いても、本当に普遍を教えていないというように感じておりまして、なかなか教育の成果が上がってこないのではないかというふうに思っております。
 四月九日に公表になりました教科書なんですけれども、やはりこの普遍と多様性という意味で、幾つかの疑問点を感じております。もちろん、検定に合格した教科書だということは踏まえているわけですけれども、あるいは私のような違和感を感じている人もあるのかもしれません。
 例えば家族形態、多様化、シングルマザーとか事実婚、ペットも家族など、多様な家族像が取り上げられております。
 戦後間もないころ、家族制度というのは民主化を妨げるものとして、家族より個人が尊重されなければならないという思いはあったと思います。また、現行憲法には、家庭、家族という言葉がない。教育基本法第七条、「社会教育」の項にも、「家庭教育」という言葉はありますけれども、社会の構成単位としての家庭の意義とか重さを述べているわけではなくて、立法と家族の現状あるいはその倫理のある種の体系というものが非常にばらばらになっている中でこのような記述も生まれてきたのかなというような感じが私はするんですけれども、命をはぐくむ共同体というような視点が欠けているのではないかというようなことを思っております。
 結婚するもしないも自由、子供を産むも産まないも自由というようなことは教えても、命をはぐくむ共同体だというような普遍的なものは抜け落ちてしまっている。アメリカなんかは、中高校生に結婚の意味を教える結婚講座なんというのを州によっては義務づけているというところもあって、夫婦げんかしたとき、どうやって仲直りしたらいいかとか、そんなことを教えているわけですね。
 ある教科書では、日本は欧米先進国と比較しても離婚率は余り高くない、では日本の夫婦関係は良好かといえばそうとも言えない、離婚後の経済事情を考えれば結婚生活を続けざるを得ないケースもあるからであるとか、いろいろ書いてあるわけです。
 私、中教審の少子化問題を考える委員をしておりましたときに、資料として渡されたのが、非嫡出子の割合が、日本はたしか一、二%、スウェーデンとかフランスは五〇%前後ということで、日本は非常にデプレッシブな社会だから非嫡出が少ないんだ、これをもっと自由化というか多様化しなければいけないというような雰囲気の資料の提出なんですね。
 私は、それは非常に違和感を覚えました。もちろん、非嫡出子とか離婚された方を応援していくということは大切だというふうに思っておりますけれども、先回りして、多様化させよう、ばらばらにさせようという、そのような違和感を感じられた方も、この家庭科の教科書を見て、いらっしゃるのではないかというふうに思います。
 夫婦別姓に対しても、「現実には大半は妻が自分の姓を改めている。このことが、社会で活動する女性に不利益をもたらしているということから、一九九六年にまとめられた民法改正案で、選択的夫婦別姓の規定が設けられた。」というような形で、何か夫婦別姓を暗に推奨しているような書き方が今回の検定教科書の中には見られておりますし、それから、「事実婚」というので詳しい説明があって、「婚姻届を出すという法律上の手続きはしていないが、事実上夫婦として生活している関係」であるというような説明があったり、「法律から描く家族のイメージ」というページでは、「明治民法」「現行民法」そして「今後の姿は?」という形で、あたかも夫婦別姓を進めた方がより進歩的だというようなページが既に設けられたりしているわけでございます。
 これは、きのう、自民党の法務部会でももめたようでございますけれども、多様な生き方、男女平等、共同参画の視点、それから仕事をしている女性が便利とか不便とか、不便を感じているなら、そういう弱者を大切にしたいという視点はあると思います。私も、通称使用をして働いておりますので、そのことは非常によくわかっているんですけれども、ただ、その視点を否定しているわけではないんですが、命をはぐくむ生命共同体、あるいは継承の重要さ、それから、宗教的なある種の情操心の中で結婚を考えるという視点もまたあるというふうに思うんですね。ですから、これは、どちらがどうという、選択だからいいじゃないかという問題ではなくて、日本の家族とか文化の枠組みに関する問題で、教科書の書き方は、検定に合格はしているのですが、ちょっといかがなものかなというふうに私は感じております。
 法律婚と事実婚の垣根をさらに低くしていって、結婚と家族の意味を外側からも内側からも不明にしていくというようなことが進むと、今、必ず結婚しなければいけないと考える日本の若者は二〇%、アメリカは七九%いるんですね。これも日本青少年研究所なんですが、非常にいびつな形で日本の子供たちは結婚を考えている。
 そうすると、今、事実婚はさまざまな権利が既にあるわけです。同居、扶養の義務、貞操の義務、社会保障の権利、財産分与権、慰謝料請求権、いろいろある。そうすると、事実婚した方が、月に四万二千三百七十円の児童扶養手当をもらえたら、そっちの方が得かななんて考える若者も、もしかしたらいるかもしれません、それはどうかわかりませんが。
 とにかく、いろいろ教え方を考える場合には、現代の若者気質と、それから、どういうふうに教育の場でそれが教えられているかというような分析をしないと、意図しない方向に流れていくような思いを今私は抱いております。
 この問題は、復古的な反対論とも家族の解体というような極端な個人主義とも距離を置きつつ、家族や子供にとって最も望ましい制度は何か、日本最大の温かいセーフティーネットの問題でございますので慎重に考える必要があると思うのですが、この教科書、「誤解するおそれのある表現はないこと」という検定基準にかなうのかというような意見もあるかもしれません。
 私は、今回、家庭科の教科書だけではなくて、国語とか音楽とか、いろいろな問題点があるように思いまして、ぜひすべての教科書を地元の図書館に置いていただきたいというふうに考えているんです。そして、国民各層、多様な人の、子供たちがどういう形で教えられているのか、それから、現代の日本社会において普遍性と多様性のバランスはどうあったらいいのだろうか、いろいろな声を集めながら考えていくということが子供たちの健全育成につながっていくというふうに考えておりますが、福田官房長官、いかがでございましょうか。
玉井政府参考人 教科書についてのさまざまな御指摘をいただきました。
 御案内のとおり、教科用図書調査審議会において、専門家によって厳正に検定が行われて、いずれも合格したものでございまして、検定基準に照らして、問題のところについてはそれぞれ意見をつけて、そして、修正がなされたものでございます。
 ただ、先ほど来お話のございます家族観等につきましては、それぞれいろいろな考え方があることもこれまた事実でございますので、そこで、私どもの検定の基本的なスタンスというのは、学習指導要領では、家族については、夫婦関係だとか親子関係、居住関係、生計などの家族の要素についてきちんと記述するということがございますので、それに照らして、それが不足している場合には、当然、修正を求めるわけでございますが、その上で、なお、多様な、いろいろな家族観があるということの記述については、これは許容されるということでございます。
 いろいろ御指摘になったわけでございますけれども、例えば家族についても、まず基本的には、ある例で申しますと、「家族とは、長期間にわたって経済的なつながりを持ち、お互いに愛情を持って支え合う関係であり、生活文化を継承していくかけがえのない存在である。」と書いた上で、多様な、今いろいろなものが生じているふうに書かれておりますし、また、結婚についても、「相手を互いに選ぶことから始まる関係であり、家庭生活全般にわたり夫と妻が協力して生活をつくる努力をし、認め合い、支え合うことが、自分らしさを尊重し、夫婦関係を発展させていくことにつながる。」と書いた上で、またいろいろ書かれているということでございます。
 同時に、先生御指摘になった、いわば普遍的な価値、まさに道徳ではないか、こう思っております。
 私どもとしても、道徳教育の充実は非常に重要だと思っております。思いやりの心だとか、あるいは美しいものを美しく感じる心、御指摘になった自由と責任、権利と義務、こういったところがきちんと子供たちに身につくようにということで、つい先般、「心のノート」を作成し、すべての小学生、中学生にそれを渡し、子供たちがいろいろな価値について気づく、そういうことを進めてまいりたい、かように思っております。
 それから、教科書につきましては、できるだけ多くの方々がごらんいただいて、さまざまな意見をいただくことは大変重要だ、かように思っておりますので、教科書についての意見をいただく窓口を文部科学省の教科書課というところに設けましたし、今後、いろいろな形で教科書についてさまざまごらんいただけるような方策についてはさらに検討させていただきたい、かように考えております。
山谷委員 それほどお金はかからないと思いますので、ぜひ各地元の図書館に置く方向でお考えいただきたいというふうに思っております。
 青少年育成は、社会の責務であり、大人の責務でございます。青少年健全育成に悪影響を及ぼす社会風潮、社会環境の見直し、さまざまな活動の連携とパワーアップが必要だというふうに思っておりますけれども、青少年育成推進要綱、平成十三年十月十九日、内閣府から関係業界等に対して要請文書を出されておりますけれども、大した効果が上がっているというふうにも思えません。
 今、基本法なるものが二十二本できているわけですね。水産基本法、文化芸術振興基本法、高齢社会対策基本法、科学技術基本法、環境基本法、障害者基本法。これだけ青少年の問題が深刻になってきているときに、青少年健全育成基本法なるものがあってもいいのではないか。有害情報への対応、有害環境対策のための法整備、青少年健全育成のための協力体制づくり、青少年自身が力を発揮する場づくり、総合的政策の推進、国と地方の責務のあり方、家庭の価値の基本的理念の確立、こういうものが基本法として、枠組みとしてできれば、自治体も、条例づくり、行動計画、推進事業、さまざまな展開ができるというふうに考えておりますが、福田官房長官、そのような考え方に対して御所見をいただければ幸いでございます。
福田国務大臣 御指摘のとおり、青少年の健全育成を含めて、青少年問題というのは幅広く、いろいろな省庁が関係していろいろな施策を行っている、こういうことでございます。
 今般、中央省庁の再編によりまして、青少年の健全育成に関する施策が内閣の重要課題の一つと、そのような背景を持って位置づけられたところでございまして、各省、緊密な連携を持ちながら、必要な企画立案、総合調整を行うということになって、この仕事は内閣府が責任を持って行うということになりました。
 そのために、内閣府として、ただいま御指摘のありましたことでございますけれども、青少年育成推進会議というもの、これは関係省庁の局長クラスが集まってやる会議でございますけれども、そこでもって、基本方針となります青少年育成推進要綱、この策定などを初めとして、いろいろな政策を総合的に推進しよう、そして、今後は、中長期を見据えた骨太のビジョンを示す青少年プラン、これはまだ仮称でございますけれども、この策定を進めるというようなことも考えておるわけでございまして、力を入れてやらなければいけない。そのために、また国会の方もこの委員会を立ち上げていただいたということでございますので、張り切ってやらせていただきたいと思います。
山谷委員 どうもありがとうございました。
 推進会議というのは、各省の局長クラスたち、開かれているのがたしか二年に一回くらいなんですね。黒磯でナイフで女性教師が刺されたというナイフ事件が起きたときに、町村文部大臣でございました。各青少年関係の審議会の会長たちが集まって、本当にしょっちゅう官邸で会議を開いていたということがございました、私も参加させていただいていたのですけれども。今の状況では、そのぐらい回数もふやしてきちんとやる、それから、基本法制定まで視野に入れながらやっていくというようなパワーアップを考えて、ぜひお進めいただきたいというふうに思います。
 どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日は、子供に対する暴力についてお伺いいたします。
 日本も批准している子どもの権利条約では、子供に対するさまざまな形態の暴力を禁止しております。にもかかわらず、いまだに、日本を含めて多くの国では、子供への暴力が公然と行われているのが現状です。こうした状況を前に、国連子どもの権利委員会は、子供に対する暴力についての勧告を、二〇〇〇年、二〇〇一年と二年続けて採択しました。これは、委員会が毎年一回開いている一般的討議で交わされた議論をもとにまとめられたものです。
 二〇〇〇年十月の勧告は、子供に対する国家の暴力がテーマとされ、主に児童福祉施設における暴力の問題が取り上げられました。日本では、昨年末に子どもの権利条約に関しての第二回の政府報告書が出されましたが、二〇〇〇年十月の勧告の内容が反映されておりません。なぜ反映されていないのか、まずその理由をお聞かせください。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 今御指摘のございました、児童の権利委員会が採択いたしました児童に対する暴力に関する一般的な勧告につきましては、法的拘束力を有するものではありませんが、児童の権利の保護促進のための取り組みにおいて一つの参考になるものと考えております。
 昨年十一月に、私ども、児童の権利に関する条約の第二回政府報告書を国連に提出いたしましたけれども、児童の権利委員会の作成いたしました報告書作成ガイドラインにおきましては、同委員会の採択する一般的な報告というものについては必ずしも含めるように求められていないという事情がございましたので、二〇〇〇年のものについては含まれていない、そういうことでございます。
水島委員 ガイドラインの中に含まれていないから反映されなかったのか、あるいは時間が間に合わなかったから反映されなかったのか、あるいは尊重すべきものでないと考えたので反映されなかったのか、どれでしょうか。
高橋政府参考人 二〇〇〇年の児童に対する暴力に関する一般的な勧告ということだけの御質問でしたので先ほど申し上げましたが、二〇〇一年の児童に対する暴力に関する一般的な勧告につきましては、実は、その中で、このような児童に対する暴力に関する詳細な情報を政府報告に含めるよう求める勧告がございました。これは、二〇〇一年九月に採択されました、家庭、学校における児童に対する暴力に関する一般的な報告に関するものでございます。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、私どもの第二回の政府報告書は昨年の十一月に国連に提出したということでございますので、九月に採択されたものを入手した時点ではもうほとんど完成しておりましたので、そういうことで、これにつきましては、今先生御指摘のように、時間的な余裕がなくて含めることができなかったということでございます。
 いずれにいたしましても、私ども、政府報告書におきましては、先ほど申しました一般的な報告書の作成ガイドラインの次第がございますので、私どもといたしましては、逐一、すべての勧告につきまして反映するという形にはなっておりませんけれども、一般的な報告書の内容につきましては、今後ともできるだけ参考にしていきたいというふうに考えております。
水島委員 そうしますと、確認させていただきたいのは、その勧告の内容については尊重すべきものだと考えられているのかどうか、また、今後、各省庁とどのように連絡をとられてその内容を周知徹底されていくつもりであるか、お聞かせいただきたいと思います。
高橋政府参考人 外務省といたしましては、関係各省庁と協力、調整いたしながら、児童の権利条約の実施に努めております。児童の権利委員会の一般的な勧告につきましても、できる限り、関係各省に周知をさせていただいて、適切な対応がとれるように努めてまいりたいというふうに考えております。
水島委員 それでは、その委員会勧告の内容を踏まえながら、日本の施設の現状についてお伺いいたします。
 日本の子供の施設というと、少年院や教護院、児童養護施設が挙げられます。残念なことに、どの施設にも体罰、虐待事例は発生しております。
 まず、法務省にお伺いいたしますが、少年院の中で少年が教官から暴力的な処遇を受けた場合、どういう申し立て、救済手段があるのか、教えていただきたいと思います。
横内副大臣 少年院というのは少年の再教育の場でございまして、少年院の職員はいわば親がわりで子供たちの再教育に当たっているわけでございます。したがいまして、通常は、子供たちをよく行動観察をしたり、非常に親密に接触したりしまして少年の心身の状況を把握する、そういう中で少年が自由に意見表明ができるような所内の運営をしているわけでございます。
 したがいまして、万が一、その施設でそういう暴力行為等があった場合にも、その少年院の中で職員が探知するという場合がほとんどでございますし、また、その方が望ましいのじゃないかというふうに我々としては考えております。
 いずれにしましても、そういった暴行等の不適切な処遇があった場合には、上級庁に報告して、場合によっては捜査機関に通報するとか、あるいは関係職員に対する処分を行いまして、厳正な措置をとっております。
 そこで、御指摘の、少年自身がそういう不適切な措置を受けた場合に外部に申し出る方法があるかどうかということでございますけれども、いわゆる人権擁護機関や弁護士会に対する人権侵犯申告とか民事訴訟あるいは告訴、告発というような救済手段は利用することはできるわけでございます。ただ、少年でございますから、実際上は、家族との面会というのは自由でありますから、その家族との面会だとか、あるいは部外の民間の篤志家が面接を行いますので、そういった場で、少年がそういったことに遭ったということを話すという場合もあると思います。そして、その家族がそれに対して対応していくというようなことになるというふうに思います。
水島委員 もちろん、少年院の大多数の教官の方が本当に家族のように子供たちの矯正に一生懸命努められているということは私も十分承知しておりますけれども、すべての教官がそういう方で、また、今おっしゃったような仕組みが、内部で何とか見つけていくというようなことがうまく機能しているのであれば、時々報道されるような不幸な事件というのは起こり得ないのではないかと思っておりますので、やはり制度上の欠陥があると考えてよいのではないかと思っております。
 また、民事訴訟のこともおっしゃっていましたけれども、二十歳未満の子供であれば、御承知のとおり、親権者の同意がなければ訴訟を起こすこともできないわけでございますので、今の御答弁では不十分ではないかと私は思っております。
 いずれにいたしましても、今回の勧告の中には、これは少年院ももちろん該当するわけですけれども、設備及び記録への全面的アクセスや査察の確保ですとか、また抜き打ちの訪問、かつ子供及び職員との秘密の話し合いを持つこと、また苦情の申し立ての手段が確保されていること、そして、子供がその存在及び運用について十分に情報を提供され、かつ承知していること、このような内容が盛り込まれているわけですけれども、この勧告の内容も踏まえまして、今後の検討の必要性をどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
横内副大臣 先ほども申し上げましたように、人権侵犯の申告とか民事訴訟あるいは告訴、告発という手段は、当然、利用することは可能でございます。少年自身が利用しなくても、家族とは頻繁に接触いたしますから、家族を通じて、あるいは民間の篤志家を通じて、そういうものを利用するということは現在でもできるわけでございます。
 ただ、繰り返しになりますが、少年院というのは子供を再教育して健全な社会人として送り出す場でございますから、子供が何でもしゃべれるような雰囲気をつくっていくというのがまず第一だと思っておりまして、そういうような事案に遭遇した子供については、他の教員にそういうことがあったのだということをフリーにしゃべれるような、そして、院の中でそういうことが発見されるような、そういう仕組みあるいは雰囲気をつくっていくということが一番大事じゃないかというふうに我々は考えておりまして、そういう努力をしていきたいと思っております。
水島委員 副大臣が今おっしゃったことはもちろん私も賛成でございますし、まずは、そういった本当に矯正のためによい環境がつくられるべきだと思っております。
 ただ、家族がいるというようなことを今おっしゃいましたけれども、子供に何か暴力があったときに一緒になって親身になって訴えてくれるような家族がいれば、そもそもこんな少年院に収容されるような事態に巻き込まれないというような事例が実際には多いわけですので、やはり今の答弁は不完全だと私は思っております。ぜひ、今後、この勧告の内容を踏まえまして前向きに御検討いただけますように、改めてお願い申し上げます。
 次に、児童養護施設についてお伺いいたします。
 社会福祉法の対象となっている児童福祉施設については、都道府県社会福祉協議会に運営適正化委員会が置かれるということが二〇〇〇年に制定されました。
 社会福祉法上の条文は極めて簡単なもので、例えば八十五条では、「運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するものとする。」とされております。
 ところが、この調査に関しては、施設が拒否した場合の規定がございませんので、任意の調査しかできないという実態になっております。調査に応じることを法律上義務づける必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
真野政府参考人 苦情の対応ということになっておりますが、三段階の対応を私どもは考えておるわけでございます。まず第一義的には、社会福祉事業の事業者みずからがその解決に努める。それから、今先生からお話がございました、都道府県の社会福祉協議会に運営適正化委員会を設けまして、いわば当事者間では解決が困難な事例に対応するために、公正中立な第三者機関としての対応を行う。さらに、行政権限を持っております都道府県がそれに対応する。そういう三層構造を持っております。
 運営適正化委員会は、どちらかといいますと、そういう意味では、事業者との対応によって対応しようということでございまして、今御指摘のございますような、虐待などの不当な行為を行っているおそれがあると認められる場合で、運営適正化委員会が調査を施設側から拒否されるというような場合には、これは速やかに都道府県知事に通報していただきまして、都道府県知事は、社会福祉法及び児童福祉法、その他の個別法に基づきまして立入調査を行い、そして、必要に応じて行政処分を行うという役割分担をしているということでございます。
水島委員 今おっしゃった内容でございますけれども、確かに、厚生労働省の局長通知、運営適正化委員会における福祉サービスに関する苦情解決事業実施要綱によりますと、「虐待や法令違反など明らかに改善を要する内容の苦情を受けた場合には、都道府県知事に対し、速やかに通知すること。」とあります。今の内容の部分だと思います。
 ただ、ここで、「明らかに」という表現が多少気になるわけでございますので、具体的にお伺いしたいと思いますけれども、例えば、その施設の職員が子供をけったとか、ごみ箱を子供に投げつけた、このようなことの内部告発がその施設の他の職員からあったというような場合などはこれに該当するのでしょうか。
真野政府参考人 今申し上げましたように、虐待等の「不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。」というふうに、社会福祉法上、八十六条でそうなっておりまして、今のは個別事案になりますので、なかなかずばりお答えは難しいかと思いますけれども、内部告発で、不当な行為が行われているおそれがあると、どういう状況かというのは個別の事案になりますけれども、十分それに該当するわけでございますので、適正化委員会としては通知をしなければならないということになろうと思います。
水島委員 個別の事例で、どういう状況でとおっしゃいましたけれども、子供をけるとか、ごみ箱を投げつけるというのは、どういう状況で行われたとしても、虐待に相当すると思います。その点、そうですとお答えいただけますでしょうか。
真野政府参考人 当然、そういうふうに該当すると思っております。
水島委員 そして、そのような児童養護施設での体罰や虐待の事例の場合、被害に遭った子供はもちろんのこと、証言をする子供たちから事情聴取をする必要があるわけでございます。施設内の虐待などの事例で子供から事情を聞くときには、施設側、つまりサービス提供者側が同席しない環境でその事情聴取が行われるのが制度の趣旨からいっても当然であると思いますけれども、これはそれでよろしいでしょうか。
真野政府参考人 当然、両当事者からお話を聞くということになりますけれども、虐待を受けた、または受けたおそれのある子供から話を聞くときに、一方の当事者を置いて両方の当事者から聞くということはないわけでございますので、当然、そういうプライバシーに配慮し、児童の保護に配慮した調査が行われるというふうに思っております。
水島委員 また、被害を受けた当事者でない子供から証言を得るという場合にも、当然、そこで施設側にとって不利な証言をすれば処遇に直接かかわってくる問題でありますので、証言の匿名性は確保されるべきだと思いますけれども、こちらもそれでよろしいでしょうか。
真野政府参考人 調査を行うのは、合議体が行うということになっておりますので、そういうことも含めまして、別々に話を聞く、そして、保護されるべき子供の保護が欠けるようなことがあっては、これはもともと調査の趣旨に反するわけですので、当然、そういうことに配慮した調査が行われるということでございます。
水島委員 今の事情聴取について、ちょっと教育現場のことをお伺いしたいと思うんです。
 教師による体罰が発生した場合、その事実確認がどのように行われているのか。その事実確認の方法というのはどこかで明文化されているのか。また、教育委員会が聞き取りを行うと思いますけれども、そのときに、当事者の体罰教師あるいは校長などを同席させないというようなことは確保されているのでしょうか。
矢野政府参考人 学校教育法におきまして、体罰は厳に禁止されているものでございます。児童生徒が体罰を受けたとされる場合には、事実関係を正確に把握すると同時に、当該児童生徒に対する教育上の十分な配慮が必要なわけでございます。
 したがいまして、体罰の事実確認手続につきまして、明文で定められた制度があるわけではございませんけれども、このような観点に立ちまして、御指摘のように、体罰を行ったとされる教員及び当該児童生徒から事情を分けて聞くことを含めまして、各教育委員会や学校において、適切な配慮、対応がなされることが大切であろうと考えるものでございます。
水島委員 そのときに、学校事故報告書に子供の言い分を記入することは義務づけられているのでしょうか。
矢野政府参考人 先ほど申し上げましたように、そういう事実確認等について、明文で制度というものがあるわけではございませんけれども、当然のことながら、そういう事実確認を行う場合には、子供の言い分をちゃんと聞くということは必要なことだと考えます。
水島委員 改めてお伺いします。その言い分を聞くのは重要だというところはいいんですけれども、その聞いた言い分をどこにも記入しないということになりますと、実際、機能していないというふうにも考えられるんですが、この学校事故報告書にも子供の言い分というものを記入すべきであるとお考えになりますでしょうか。
矢野政府参考人 学校事故報告書なるものが恐らくそれぞれ学校でさまざまだと思いますから、一概にどうだこうだということは申し上げにくいと思いますけれども、きちんとした事実確認をするという意味において、そうした聴取したことをきちんと文書として記録し報告することは大事だと思っております。
水島委員 今の点は現場では実はかなり問題になっている点であると思っておりますので、後でその保護者がさかのぼってそのことを問題にしようとしたときに、その事故報告書にどのように書かれているかということがやはり重要になってくると思います。そこに子供の言い分を記入することの義務についても、今後ぜひ御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、再び児童養護施設についてお伺いいたします。
 この委員会勧告では、あらゆる施設の設備及び記録への全面的アクセス、また抜き打ちの訪問、かつ子供及び職員と秘密の話し合いを持つ、また職員による暴力の事件に関する義務的通報など、さまざまな内容が盛り込まれております。これらは主として児童福祉施設を対象とした勧告であり、当然、厚生労働省は担当省庁として既にその内容を承知されていると思いますけれども、内容をどう受けとめ、どのように取り組んでいこうと思われているか、お聞かせください。
狩野副大臣 児童福祉施設に入所している子供たちに虐待を与えるということは、本当にあってはならないことだというふうに考えております。
 このためにも、児童福祉施設最低基準に懲戒権の濫用禁止を明記いたしましてその徹底を図るということと、児童福祉法等の規定に基づき都道府県において立入検査等を適切に実施する、また、社会福祉法に基づく運営適正化委員会を初めとする児童のプライバシーにも十分配慮した苦情解決システムを整備すること、そして、児童や保護者に苦情解決システムに関するパンフレットを配付して説明するなど、児童相談所や運営適正化委員会などに苦情を伝えやすい環境整備を図るように指導をしております。
 一昨年秋に児童の権利委員会から勧告された事項については、こうした取り組みによって対応しているというふうに考えておりますので、今後とも、この勧告の内容を尊重しながら、我が国の将来を担う子供たちの幸せを第一に考えて、児童福祉施設における良質かつ適正なサービスの確保に取り組んでいきたいと思っております。
水島委員 ぜひそのようにお願いしたいですし、またどこかの時点でお伺いしたいと思っております。
 この児童養護施設というのは、既に自分の家庭で虐待を受けた子供たちも当然入る場所でございまして、一度虐待を受けて施設に入ったのに、その施設でまた虐待を受けるということになりますと、もう本当にその子供たちにとってはそれ以上の不幸はないというようなことだと思いますので、ぜひ力を入れてしっかりと取り組んでいただきますようにお願い申し上げます。
 さて、先ほど外務省からも御報告がございましたけれども、二〇〇一年の勧告では、従来からの委員会の姿勢を反映して、家庭及び学校におけるあらゆる形態の暴力、しつけ及び規律の維持の形をとるものも含むとされておりますけれども、たとえ軽いものであっても禁じることが勧告されております。
 ところが、日本の民法では、親の懲戒権について何の制約原理もございません。このようなむき出しの懲戒権というのは、少なくとも先進国では珍しくなっていると言ってもよいと思います。そして、日本では、親の懲戒権が前提となって、教師の懲戒権、児童福祉施設長の懲戒権が法律で認められておりますので、これらが家庭内虐待、学校での教師による暴力、施設内での虐待などの正当化の根拠に使われてしまっております。もちろん法的には体罰が禁止されているわけですけれども、国民の意識としては、いまだに、子供が悪いことをしたのなら学校の先生が殴った方がよいのではないかというようなものがございます。私も、実際に、そのようなことを有権者の方から言われることもございます。
 このような状況を踏まえまして、官房長官にお伺いしたいんですけれども、まず、官房長官は子供への暴力の是非についてどうお考えになりますでしょうか。
福田国務大臣 子供への暴力は、これはいけませんよ。特に、先ほど来いろいろ議論されていますような、公的施設において、しつけという名目でもって暴力を振るうということは、これはあってはならぬことだと思っています。
水島委員 子供への暴力というのはもちろん公的施設だけで行われるわけではございませんで、今ちょっと家庭での暴力についてお伺いしたいわけですけれども、よく、暴力にはよい暴力と悪い暴力があるというようなことをおっしゃる方が政治家の中にもいらっしゃいます。最近の子供はたるんでいるからびしっと殴って育てた方がいいなどと言う方もいらっしゃいますけれども、官房長官はどういうお立場でしょうか。
福田国務大臣 ですから、今申し上げましたように、子供に対する暴力というものは許されないことだと。これは家庭でも公的施設でも同じことだと思います。
 ただ、公的施設というのは、子供をお預かりしている立場ですね。それだけに、注意を払わなきゃいけないということであります。家庭の場合には、我が子に対する責任を持つという意味において、多少その程度については、多少の違いがあるのかなというようには思いますけれども、いずれにしても、暴力ということであってはいけないと思います。
水島委員 今、家庭においてはある程度はとおっしゃった。そこの部分が非常に微妙で、重要なところなのではないかと私は思うんです。その、このくらいが、例えば虐待をする親たちは、これは必要な体罰だと大体言うわけでございます。今、官房長官は、このくらいと、議事録に載せるために、三センチぐらいとおっしゃったわけでございますけれども、それはかなり主観的に変化し得るものでございます。
 確かに、殴れば、その場では子供は大体黙ります。育児はその方が楽だと言えると思います。でも、殴らずにじっくりと子供に言い聞かせる、コミュニケーションすることが、私は、今まで子供の心の問題に取り組んできた経験からも、今の親子関係には何よりも必要とされているのではないかと思っております。
 殴って黙らされた子は、他人との意見対立を暴力で解決しようとしがちでございます。そして、子供の問題を解決していくには、やはりコミュニケーションの手段としての暴力というものは、子供に対して肯定すべきではないと思っております。
 このような状況を踏まえまして、私は、親がするものであっても、子供に対するあらゆる暴力を禁止することが必要なのではないかと思いますけれども、官房長官はいかがお考えになりますでしょうか。
福田国務大臣 先ほどから私が申し上げているのは、暴力はいけないと言っているんですよ。しつけを目的とする、暴力に至らない程度のもの、アメリカの子供たちは自分が何か悪いことをしたということを自覚した場合には自分からおしりを出してスパンクを受ける態勢をとる、こういうふうなこともありますけれども、その程度のものである。暴力であってはいけない。程度の問題ですね。その、程度というのは、どこで分かれるかというのはわからないでしょう。いずれにしても、傷がつくようなことはいかぬですね。
水島委員 私の娘は、四歳でございますが、悪いことをしたと思ったときには、おしりを出さないで、ごめんなさいと謝ります。それが正しい姿だと思います。
 例えばドイツのような国では、一九七九年の民法改正によって、従来の親権概念を廃止して、監護という概念を採用して、そこに始まりまして、一九九七年九月、二〇〇〇年七月の改正を経て、現在は、身上監護は、子を世話し、教育し、かつ居所を指定する義務と権利を包含する、子供は、暴力を行使しない教育を受ける権利を有する、体罰、精神的に傷つけること及びその他の屈辱的な手段は許されないなどとされているわけでございます。ドイツでは二十年の間にこれだけの法改正が行われまして、親子の関係が根本から問い直されていると言えます。ほかの国でも、親子の関係は、法律上、さまざまな形で見直されております。
 ところが、日本の民法は明治以来手つかずで、親子関係について真剣に検討されてこなかったと言えるのではないかと思います。私は、この際、官房長官にもしっかりと御検討いただきまして、その懲戒権のあり方についても、日本でもきちんと検討すべきではないかと思います。
 また、体罰をしている親に聞きますと、悪いとは思うけれども仕方がなくというふうに言ったり、また、しつけのためには必要なことだと言いわけしながらやっているわけでございます。たたかれて、私もそうですけれども、自分自身が子供のころ多少たたかれて育った親は、たたく以外の危機管理方法をなかなか知らないということがございます。
 言うことを聞かない子供とどう話し合うか、暴力を使わずにどうしつけるか、親に知識を与えることが重要だと思いますが、子育て支援の中で、このような知識を与えていくことの重要性をどのように認識し、今後どのように取り組んでいかれるか、また、現状はどうなっているか、最後に、厚生労働副大臣にお伺いしたいと思います。
狩野副大臣 委員がいろいろと専門的な立場でございますけれども、たたかれて育った子供というのは自分が親になったときにも同じようなことをするということで、次の世代にも大変影響を与えるというふうに考えております。先ほど、体罰とかいろいろありましたけれども、やはり感情に走ったしつけというのはいけないような感じがいたします。
 厚生労働省といたしましては、児童虐待防止対策を推進するためにも、児童相談所等における相談機能の強化、それから、妊娠している方、育児中のお母さんに対しても、母子健康手帳、両親学級とも言いますけれども母親学級、乳幼児健康診査などを活用した子育て支援、子育て相談などを行う地域子育て支援センターの整備、そういうことをやっていきたいと思っておりますし、また、平成十四年度からは、育児に不安や悩みを抱える親などが気軽に集い、交流できる場を提供する、つどいの広場事業の創設をいたしております。
 子育て家庭の相談支援体制の強化を図っていくことが大変大事だというふうに思っておりますので、また委員のいろいろ御指導をお願いしたいと思います。
水島委員 ぜひ力を入れていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、原陽子さん。
原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 今、福田官房長官が退席してしまって、ちょっと残念と思いながら、質問させていただきたいと思います。
 私も先ほどの水島委員と重なる質問が多くなると思います。児童虐待防止に関して幾つか御質問させてください。
 児童虐待防止法が施行されて一年半を迎えました。この間も、児童相談所がその虐待の事実を知っていながら死亡させてしまったなど、痛ましい事件は後を絶ちません。厚生労働省がまとめた児童相談所における児童虐待相談処理件数の報告を見ますと、平成十二年度の児童虐待の相談は、平成二年度を一とすると十六倍にふえていて、前年度比較で一・五倍の一万七千七百二十五件の相談が寄せられているそうです。その中で、子供の死亡件数も、平成十一年度が五件、平成十二年度が十一件と、単純に数だけ見ても増加しています。
 専門家の方のお話によると、隠れていた児童虐待の事例が表に出るようになっただけだという御指摘もありますが、まず最初に、内閣官房として、こうした児童虐待が増加しているというこの現状についてどう思われるか、お聞かせください。
松下副大臣 官房長官が定例の記者会見で席を外されましたので、私の方からお答えさせてもらいます。
 官房長官の口をかりるまでもなく、これは大変重要な課題でありまして、国を挙げて取り組むべきことだ、社会全体のテーマだというふうにも認識しております。
 今、原委員からお話がありましたけれども、この十年間、平成十二年度までで統計を見てみますと、児童相談所における相談処理件数が約十六倍になっております。平成二年は千百一件でありましたけれども、今、一万七千七百二十五件ということでございますし、警察庁が平成十三年に虐待事件で検挙した件数も百八十九件、死亡した被害児童数は六十一人、大変深刻だと受けとめております。
 こういう相談処理件数が著しく増加しているというのは、この児童虐待防止法の施行に伴って、従来は表面化していなかった事案が適切に把握されるようになってきたのじゃないかなという側面もあると思います。これは委員が御指摘のとおりであります。
 いずれにしましても、この児童虐待は人格形成期にある児童の心身に深刻な影響を及ぼす重大な問題だというふうに認識しておりますし、これは、子供の問題というよりも大人の問題であるし、社会全体で取り組むべき課題だというふうに認識しております。そういう意味で、国を挙げて取り組んでいかないかぬと思っておりますし、また、関係各省庁、それぞれ真剣に取り組んでおるということでございます。
原委員 内閣としての積極的な御答弁、本当にありがとうございます。
 要するに、この防止法ができて、隠れていたものが表に出てきたというのも一つあると思うのですが、制度が施行されたにもかかわらず現状が悪化しているということは、やはり制度自体にも欠陥があるということを物語っていると私は思います。
 厚生労働省さんにお聞きしたいのですが、現時点の段階で結構なので、現状と照らし合わせてどのあたりに問題があると認識されているか、教えてください。
岩田政府参考人 先ほど松下副大臣が言われましたように、虐待防止法の施行によりまして虐待という概念が国民によく理解されるようになって、しつけとは違う、あってはならないことという理解が進んだことは大変大きな効果だったと思いますし、国民の通告義務についての理解も進んだということも大きな効果だったと思います。
 私ども、児童福祉行政を担当している立場から申し上げますと、児童虐待の問題は三段階あると思います。第一段階は、いかにしてこういう不幸な事態に至らしめないような予防の対策が講じられるか、二番目には、虐待があったときにいかに早期に発見して早期に適切な措置を講ずることができるか、三番目には、心身ともに傷ついた子供をどういうふうにいやすことができるか、そして、親に対して適切な指導やカウンセリングができるかということではないかというふうに思います。
 虐待防止法施行後のこの短期間の効果を総括的に申し上げれば、第二段階であります早期発見、早期対応、ここのところは、地方自治体、随分経験を積んでいただいて前進したというふうに思いますけれども、第一段階の予防、そして第三段階のケアあるいはフォローアップのところについてはまだまだ大きな課題が残っているというふうに思っております。
原委員 私がお聞きしたかったことをいろいろお答えいただけたと思うので、ひとつ児童相談所のことについて聞かせてください。
 現在、児童相談所の方のお話によると、業務の九割がこの児童虐待に関することになっているそうです。そのために仕事がとても過重となって、おっしゃられたように、求められている早期発見とか早期の速やかな措置というものがなかなかできないというような状況にあるそうです。
 そこで、現在人口十万人から十三万人に一人という児童福祉司の配置基準を見直したらどうかというような意見が現場から上げられているのですが、そのことに関してはどうでしょうか。
岩田政府参考人 児童福祉法の施行令で、児童福祉司を配置するときの児童福祉司の担当区域の考え方を示しておりますが、それは、今先生おっしゃったような、子供の数とか交通事情なども勘案する必要がありますが、おおむね人口十万から十三万人程度を標準とするという考え方をお示ししております。
 これは標準でございますので、例えば保護を要する子供の数などから勘案しまして、これを上回る措置をするということは当然あっていいし、現にそういう措置がなされているというふうに思います。
 一方で、地方財政措置がありますけれども、地方財政措置では、先ほどの標準的な基準を上回るような措置ができるような手当てを講じていただいております。
 児童福祉司については、標準的な団体で児童福祉司の数が十六人という体制でいこうということが水準として昭和三十年代から長らく続いておりましたけれども、平成十一年に十六人ということだったのですが、その後、十二年、十三年、十四年度と、毎年一人、二人というような形で増員していただいております。
 そういうことで、厚生労働省といたしましては、引き続き、この児童福祉司の配置の充実を図っていきたいというふうに思っております。
 中には、この標準的な基準にもまだ到達していない自治体もありますので、そういう自治体の事情をお聞きしながら、一方では、児童相談所の業務の増加の状況なども勘案しながら、先生御指摘の基準のあり方については今後検討していきたいというふうに思います。
原委員 この児童相談所での仕事というのは人相手の仕事になってくるわけですので、こうした基準の見直しや増員というものもぜひ積極的に進めていっていただきたいと思います。
 そしてもう一つ、虐待防止法の中で、民間の団体との協力というものを定めているのですが、東京都では協定を結ぶなどの取り組みをしていると聞いておりますけれども、全国的に見て、施行後、現段階でどのような状況になっているか、お聞かせください。
岩田政府参考人 児童虐待の予防、そして早期の対応、その後のアフターケア、これらを実施するためには、さまざまな機関、団体、個人の御経験、そういうものを総動員して解決していかなければいけないというふうに思います。そういうことで、市町村レベルで、関係機関、団体が問題解決のためのネットワークをつくっていただくように、今、指導、支援いたしております。
 全国で、昨年度の途中の状況だったんですが、五百の地域でネットワークができましたし、三百数十の地域でその準備の段階であるというふうに報告を受けております。そういったネットワークの中に、民間の団体や民間の有識者が個人でどんどん入っていただいているという状況が生まれてきていると思います。
 具体的に、自治体と市民団体が協定を結んで協力関係を進めているというのは、私ども承知しているのは二例だけでありまして、東京都と子どもの虐待防止センター、名古屋市と子どもの虐待防止ネットワーク・あいち、この二つについては、文書で協定を結んで協力関係をつくっているというふうに聞いております。
原委員 引き続いて厚生労働省さんにお聞きしたいのですが、先ほどから何度も、ケアという言葉が答弁の中にあったと思います。
 私も、虐待を防止するには、もちろん予防をしていくことも大切だけれども、やはりケアをしていくということは大切だと思います。もちろん子供のケアも大切ですし、その親のケアというものも同時に大切になってきていると思いますので、特にここでは、法改正とかそういうことではなくて、今の運用の枠内で親のケアについてどのような対策をとっているのかということを教えてください。
岩田政府参考人 虐待の原因、背景を探りますと、保護者あるいはその家族の関係のさまざまな問題が複合的に絡み合っているということがございます。
 例えば、保護者の性格といいましょうか、パーソナリティーに問題があったり、夫婦の関係、その他家族の関係に問題があったり、仕事がないといったような経済的な事情が影響していたり、さまざまでございますので、実態がどうかというのをケースごとに十分理解した上で、カウンセリングや生活の支援や、そういうことをやっていく必要があるのではないかと思っております。
 現行の児童虐待防止法では、虐待を行った保護者は児童福祉司などから指導を受ける義務が書かれております。そういうことで、児童相談所の方で保護者に対して指導をやっているわけでございますが、三点お話ししたいと思います。
 一点目は、児童相談所が保護者の指導をやるその体制をいかに強化できるか、専門性をいかに高められるかということでございますが、児童福祉司が中心になってやるとしても、地域の精神科医の力をおかりして保護者に対するカウンセリングができるように、こういう体制を平成十三年度からとっております。
 二点目は、保護者に対して指導を行う児童相談所の職員の研修といいましょうか、職員の専門性を一層高めるために研修の体制を整備しておりまして、虐待・思春期問題情報研修センターを今年度中に立ち上げるべく、今、建設中でございますが、このセンターが児童相談所の職員などに対して、専門的な研修、親に対する指導、カウンセリングのあり方も含めて、専門的な指導をやっていく。今、こういう体制を急いで準備しております。
 三点目は、保護者に対する指導や支援のこの分野は、冒頭答弁申し上げましたように、対応が比較的おくれているというか、これからの分野でございまして、プログラムの確立といった点もまだできていないというふうに思っております。そういうことで、厚生科学研究という調査研究の枠組みがありますので、その大変重要なテーマの一つとして、保護者への指導、支援のプログラムの開発を現在進めているようなところでございます。
 そういうようなことを通じまして、親に対するケアをしっかりやっていきたいというふうに思います。
原委員 ありがとうございます。
 次は、親権の一時停止ということについて質問させてください。
 今回の法案ができるまでの審議の中で、親権の一時停止というものがずっと議論に上がってきたということを、前の議事録を読んでいて知りました。
 その中で、現場の声としても、虐待のある子供を一時保護したいけれども、親には親権があるので、なかなか早期に子供を保護することができないという声が上がっていて、やはり親権の一時停止というものが必要だという声が切実に現場から上げられてきているのは事実だと思います。
 現在は、一時保護か親権を略奪かの両極端の制度があるだけです。私が思うには、親権一時停止というか、親権をとってしまうというのは親にとってもすごく抵抗のあることだと思うので、これは民法にかかわることなので法務省にぜひお聞きしたいと思うのですが、親権を全部奪うのではなくて、もちろん親権というものはもともとはその親にあるんだけれども、虐待でお互いが心のケアが終わるまで、親権の一部をいっときだけ奪うというか、切り離すということは今の運用では可能なのでしょうか。
房村政府参考人 子供の保護と親権の停止の関係でなかなか難しい問題ではありますが、現行法上、児童福祉法で一時保護がされますと、その一時保護という行政処分の効果によって、その限度で親権の行使が制限される、したがって、一部の親権は行使できなくなるということが解釈で認められております。
 また、児童福祉法二十七条一項三号、里親であるとか施設等へ入所させる措置をとる、この場合に、親権者の意に反しているときには家庭裁判所の承認を得て行うということが二十八条一項一号に規定されております。この施設入所等に対する家庭裁判所の承認がなされますと、この家庭裁判所の承認の効果として親権の行使が制限される、したがって、取り戻すというようなことは制限されるということになっております。
 それとまた、御指摘の、親権喪失の宣告ということはあるわけですが、児童相談所長に申し立て権がございます。親権喪失というと、未来永劫、奪ってしまうかのようにも思えるわけですが、民法の規定では、親権喪失の状況が回復される、行使させてもいい状態になれば親権喪失宣告を取り消すことができるように法律上規定されておりますので、これはもちろん運用いかんにもよりますが、緊急に喪失して、その後、親の方で十分な監護をするという体制になれば、その喪失宣告を取り消して戻すという、運用として一定期間の停止に近いことを行うことは可能な仕組みになっております。
 さらに、親権喪失の審判をして、その審判が出る前に緊急の必要がある場合には、親権者の職務執行の停止あるいは職務代行者の選任という仕組みも用意されております。
 したがって、審判の申し立てを行うと同時に保全の申し立てをして、停止を申し立てる、そして職務執行停止期間内に適切な措置がとられれば、あえて親権喪失の宣告までいかなくても済むということもあり得るだろうと思いますが、そういう現行法の仕組みをさまざま活用すれば、児童の保護という点では相当の効果があるのではないかと思っております。
 また、こういう親権喪失の制度については、児童虐待防止法においても、児童虐待防止及び児童虐待を受けた児童の保護の観点からも適切に運用されなければならないとされているところでございますので、今言ったような諸方策を積極的に活用していただければ、相当の効果があるというぐあいには考えております。
原委員 私、法律のことは余り詳しくないので、ちょっとだけ確認させてください。
 先ほど監護権ということをおっしゃったと思うのですが、そうすると、運用の中で、親が持っている監護権というものを一時的にとってしまうということは可能だということでいいですか。ちょっと私の解釈が間違っているかもしれないのですけれども。
房村政府参考人 申し上げましたのは、一時保護の場合には、行政処分の効力として親権の効果が一部制限されるということですね、親権そのものがなくなるわけじゃありませんから。それから、家裁の承認がある場合も、この承認の効果としてやはり制限されるということになります。ですから、客観的に見れば、取り戻すというようなことは親権の行使としてはできなくなりますので、親権の一部がその間停止されているのと同じことになります。
 それから、保全処分として行う場合には、裁判の効力として職務執行停止ですから、これはまさに停止、親権を停止してしまうということになっています。
原委員 まだまだ聞きたいことはいっぱいあるのですが、時間が来たので、終わらせていただきたいと思います。
 この児童虐待防止法は、三年後に見直しをするということが盛り込まれています。これは議員立法としてつくられた法律だと聞いておりますので、もしも法律の運用の点で見直していくところがあるのであれば、そこは私たちが積極的に見直しに向けて頑張っていかなくてはいけないと思いますので、よろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、大野松茂さん。
大野(松)委員 自由民主党の大野松茂でございます。
 初めに、青少年行政の総合的推進を担う機構についてお伺いいたします。
 御案内のように、今日、青少年をめぐるさまざまな問題や状況は、極めて広範多岐にわたって、広がりを見せますと同時に、普遍化する傾向にございます。このため、非行防止や問題行動が見られる青少年の対策から、青少年全体の健全な育成環境を整備するという観点をより重視して、総合的施策を展開していくことが必要でございます。いわゆる青少年対策から、青少年の自律的自己実現を支援する青少年政策へと目指すことが望まれているところであります。
 昨年の中央省庁再編を機会に、なじみ深かった、かつての総理府の青少年局、また総務庁の青少年対策本部から、内閣府に、政策統括官へ機構が改編されて、関係省庁の緊密な連携のもとに青少年政策を総合的に推進する組織とされまして、青少年健全育成に関して、内閣の重要政策とこの青少年政策を位置づけられました。
 新しい組織として既に一年が経過するわけでありますけれども、新しい組織、新しい取り組みに対しまして、今日までの利点と申しますか、あるいは成果と申しますか、あるいはまた新しい組織の中で問題点がもしあるとするならば、お伺いいたしたいと思います。
松下副大臣 今までの議論も通してでございますけれども、この青少年の育成の問題、次代を担う青少年、二十一世紀の我が国社会のあり方にかかわる国政上の最も重要な課題だ、こう認識しております。
 これまでは、総務庁の青少年対策本部において青少年行政の総合的推進を担ってまいりましたけれども、昨年の中央省庁等の改革によりまして、行政を分担管理する各省よりも一段高い立場からやるべきだと、内閣の重要政策に関する企画立案それから総合調整等の機能を担う内閣府が設置されたわけでありまして、そのときに、この青少年行政、これは大変重要だということで、青少年の健全育成に関する企画立案それから総合調整、これは内閣府が一段高いところからきちっと所管していくんだというふうになったわけであります。
 これに伴いまして、個別の実施事務のうち、一部は文部科学省あるいは警察庁の方に引き継がれております。例えば、体力づくりの国民運動でありますとか青少年健全育成フォーラムの開催事業でありますとか、そういうものは文部科学省の方にいったり、警察庁の方には、非行防止ポスターの作成等をしていくというようなことが移管されてきているわけであります。
 このように、中央省庁等の改革の趣旨を踏まえて、内閣府としては、青少年の健全育成に関する企画立案、総合調整機能、これは一段高いところから国全体が取り組むべきことだということで取り組んでいくというふうにしておるわけでございます。
大野(松)委員 ぜひ効果的な対応をお願いしたいと思っております。
 さきの当委員会における福田内閣官房長官の所信表明の中で、内閣府が中心となって、関係省庁によって推進される施策の体系的な整備を進めて、青少年育成の基本理念や国の政策推進の基本方針となる骨太のビジョンづくりを進めるとされております。
 これはいわゆる青少年プランのことと思料するわけでありますけれども、この青少年プランなるもののねらうべき方向、あるいはまた現在までの取り組みの状況について、お聞かせいただきたいと思います。
松下副大臣 現在、青少年行政の基本方針等を定めた青少年育成推進要綱に基づきまして、関係施策の総合的な推進に努めております。
 内閣府では、変革期にある我が国社会の現状等を踏まえて、青少年の育成のあり方を改めて問い直して、中長期を見据えた骨太のビジョンを示す青少年プラン、仮称でございますけれども、今、その策定を真剣に進めております。
 このプランの作成に資するために、青少年の育成に関する有識者懇談会、これを今月の下旬から開催したい、こういうように準備しておりまして、有識者からの青少年育成の基本的な方向等について幅広く意見を聴取してまとめていきたい、こういうふうに考えております。
 少子化、都市化、情報化等の社会環境の変化にどう対応していくか、それから、未来を担う人づくりと現在生じている問題への対応をどういうふうにしていくのか。それから、青少年の年齢期ごとの特性をどうとらえていくか、やはり社会全体で取り組むべきことで、ある断面だけでの切り口では説明できないということで幅広くやっていきたい、こう思っておりまして、おおむね一年間程度かけてまとめて、また皆さん方にもお示ししたい、こう思っております。
大野(松)委員 大きな期待をいたしておりますので、くれぐれもよろしくお取り組みをお願いしたいと思います。
 次に、当面する教育問題について、文部科学省から何点かお聞かせいただきたいと思います。
 学校完全週五日制がいよいよスタートいたしました。平成四年九月から第二土曜日の月一回、平成七年四月から第二、第四土曜日の月二回が実施され、本年四月からは完全週五日制となりました。
 学校、家庭、地域社会が一体となってそれぞれの教育機能を発揮する中で、子供たちが自然体験や社会体験などを行う場や機会をふやして豊かな心やたくましさを育てることを目的にこの週休二日としたものと理解いたしております。
 改めて、スタートに際しまして、文部科学省の所見をお伺いいたしたいと思います。
池坊大臣政務官 大野委員が今おっしゃいましたように、四月一日から学校完全週五日制になりました。保護者の中には、学力の低下を呼ぶのではないかと心配していらっしゃる方もございますけれども、私は、そんなことはない、文部科学省も、学校だけで学べるものではなくて、人間形成には学校と地域社会の連携の中で学ぶことが多くあるのではないかと思います。
 ただ知識を詰め込みましても、知識をどのように使っていくかは、その人間に課せられました生きる力だと私は思っております。二十一世紀、国際社会の中で生きていくためには、ただ知識があるだけでなく、生きる力がなければなりません。そのためにも、新学習指導要領では、基礎、基本をしっかりと身につけるということを願っております。その上で、家庭と地域社会とが連携をとりながら、本当の意味での生きる力を身につけてほしい、そのことのための学校完全週五日制でございます。
 平成十三年から三カ年戦略で、全国子どもプランというのをいたしました。これは、地域社会と連携をとりながらボランティア活動、あるいは地域の人たちの人材を活用しながら支援体制をしたものでございます。それらのものを踏まえまして、私どもは、新子どもプランというものを策定いたしました。これを活用しながら、さらに本当の意味での教育力を植えつけたいというふうに願っております。
大野(松)委員 子供たちにとりましては、ふえた休日、この土曜日をいかに有効に過ごすかが問題であります。子供の生活時間のうち、家庭や地域社会での比重を高めることになるわけでありますが、遊びや自然体験、生活体験をふやすことが何よりも必要だと思っております。休日、土曜日にそうした活動の舞台となるよう、積極的な学校開放や地域活動、ボランティア活動のための児童生徒の参加促進といった受け皿づくりが極めて重要であろうと思っております。
 今まで、月一回、月二回の週休五日制を経験しながら今日を迎えたわけでありますけれども、現場では、その対応について、学校差や地域差があるように見受けます。この点についてはいかが御認識でしょうか。
池坊大臣政務官 委員が今おっしゃいましたように、学校がまず中心になることが必要ではないかと思います。学校は、ただ児童に勉学を教えるだけでなく、コミュニティーの場でございます。ですから、そこが中心となっていろいろな活動ができるように、これは、学校の教育現場もそのような理解を深めますとともに、地域の連帯の中心的立場に立つようにということで、私どももそのような指導をしていきたいというふうに思っております。
 そして、子ども放課後・週末活動等についても支援事業をいたしておりまして、ことしも十億九千万ほどの予算を計上いたしております。
 これからも、学校現場にそのような指導をさらに深めていきたいというふうに願っております。
大野(松)委員 先ほど政務官からもございましたが、完全五日制を実施するに際しまして、もう既に、学力の低下を心配する声や、休みに子供の世話のできない家庭があるとか、否定的な声も多数に上っております。殊に、私立校の中には五日制導入に難色を示す動きがあるなどいたしまして、私立校と公立校との学力格差を広げたり、あるいはまた塾通いの過熱をもたらすとの指摘も多いように思います。
 これらについての考え方、また、どのように学校を指導されるか、お尋ねいたします。
矢野政府参考人 新しい学習指導要領は、先ほど政務官から御説明申し上げましたように、基礎、基本を確実に身につけさせ、それをもとに、みずから学び、みずから考える力など、生きる力をはぐくむことを基本的なねらいといたしているところでございます。
 こうしたねらいを実現するために、すべての子供が一律に学ぶ教育内容、これは厳選いたしまして、あわせて、子供一人一人の理解や習熟の程度に応じたきめ細かな指導を充実させますとともに、子供の個性を生かすことができますように、中学校、高等学校におきまして、選択学習の幅を拡大したところでございます。
 また、先ほど公私間の格差についての御指摘がございましたけれども、特に公立学校に対しましては、各学校におきまして少人数授業や習熟度別指導などのきめ細かな指導を行うことができますように、昨平成十三年度から、新たな教職員定数改善計画を推進いたしているところでございますし、さらに、本年度からは、学力の向上を目指す学力向上フロンティア事業を実施しているところでございまして、今後とも、新しい学習指導要領のもとで、児童生徒の確かな学力の向上に努力してまいりたいと考えているところでございます。
大野(松)委員 今、ちょっと答弁が違う分野に及んでいるような気がするのですけれども、また後ほどお伺いします。
 学校完全週五日制を円滑に進めていく上で、平成十二年四月から発足いたしました、校長が保護者や地域住民から意見を聞くための仕組みとして生まれました学校評議員制度、これは極めて大事な制度だと思うのです。
 この役割を果たしていただく上で、学校評議員制度というものが改めて認識されることも大事でありますし、もう発足して二年たっております。これらを振り返りながら、この制度の今後の充実策もこの際考えるべきだと思うのですが、それはいかがですか。
矢野政府参考人 文部科学省といたしましては、御指摘のように、平成十二年四月から、保護者や地域住民を学校評議員として委嘱し校長が学校運営について意見を聞く、いわゆる学校評議員制度を導入したところでございます。
 学校評議員制度は、学校が、一つには、保護者や地域住民の意向を把握して学校運営にこれを反映すること、二つには、保護者や地域住民等の協力を得ること、さらには、学校としての説明責任を果たしていくことができるようにするものでございまして、平成十三年四月現在で、制度が発足して一年たった、そういう状況でございますが、その時点での設置の状況は、都道府県、指定都市の約九割が、市町村の約四割が学校評議員を設置したり、あるいは設置を決定しているところでございます。
 学校評議員制度の成果としては、例えば、学校評議員の意見を踏まえて地域に密着した課題を取り上げるよう教育課程を編成したといったようなこと、さらには、学校行事等においてボランティアの協力を得ることができたといったような、学校教育活動の充実に資する取り組みが進んでいるというふうに聞いているところでございます。
 また、今後の課題といたしましては、先ほど申し上げましたように、まだまだ学校評議員の導入が、特に市町村ではまだ不十分でございますので、その導入をさらに進めること、さらには、学校評議員の人選あるいは意見の聴取方法などにつきまして、具体的な運用方法の改善を図ることなどが課題としてあろうかと思うわけでございます。
 文部科学省といたしましては、今後とも、学校評議員制度の趣旨や効果等を積極的に周知することなどによりまして、制度の導入とその効果的な活用を指導してまいりたいと考えているところでございます。
大野(松)委員 学校評議員制度をうまく運用することによって、地域において五日制というものがより充実したものになろうと思っておりますので、一層の対応をひとつお願いしたいと思っております。
 ところで、この学校完全五日制は、児童生徒が週のうち二日間、地域に戻っていくということであります。しかし、それだけではなくて、教師自身も地域の構成員の一人として地域にかかわる、まことにいい機会であります。教師の地域参加、ボランティア活動への参加体験は、教師の資質や人格あるいはまた信頼を高めるものになるはずであります。
 本来、積極的にこうした地域の活動に参加させるということを奨励すべきだと私は思っておりますが、これについていかがですか。
池坊大臣政務官 地域社会で子供たちが土日、週末にボランティア活動あるいは体験活動、自然体験をいたしますことは、大変大切なことだと思っております。学校の先生方も、土日お休みということではなくて、そのようなことを積極的に、地域に任せるのではなくて、地域と連携をとりながらやっていただけたらと思っておりますので、それらのことを踏まえまして、昨年の教育改革の中で、学校教育法、社会教育法などを改正いたしました。これからも積極的にその連携を図っていきたいというふうに願っております。
 先ほど申しましたように、子ども放課後・週末活動等支援事業にも予算をとっておりますし、また、学校内外を通じた奉仕活動・体験活動推進事業にも八億四千万ほどの予算をとって、積極的に推進しているところでございます。
大野(松)委員 実は私、スポーツ少年団の育成会長を三十年やっているのですが、教員の子供がスポーツ少年団に参加していても、親の立場でありながらなかなか教師が参加しないというのは、どこに行ってもあるんですよ。ですから、そういう子供が地域に参加するきっかけとして、親であるところの先生も地域に大いに加わっていただきたい、こんな願いもありますものですから、どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
 ところで、今年度から新学習指導要領がスタートいたします。新しい学習指導要領は、その基本的ねらいを、ゆとりの中で生きる力をはぐくむ、こうしております。小学校六年間の主要四教科の総授業時間数は、三千四百五十二時間から二千九百四十一時間に短縮される、こう言われております。昭和五十五年から実施されている現在の学習指導要領は既に三割減らしていますから、都合五割減るということになるように思います。
 ある学習塾が、新学習指導要領の問題点をポスターにして電車の中に掲示しておりました。昭和五十五年以前に学んだお父さんの世代の教科書とこの四月から使われる教科書をそれぞれ積み上げている構図で、絵になっております。それによりますと、一目瞭然なんですが、これから使われる教科書はお父さん世代の半分のページしかない、こうそのポスターは訴えております。
 子供にゆとりとはいいますものの、本当にこれで大丈夫なのかという不安の声が、既に親からも出ているわけであります。この不安、心配について、先ほど局長からも一部お答えありましたけれども、この不安を解消するということが新学習指導要領を進めていく上で最大の課題だろうと思うんですが、もうちょっと詳しくお話し願います。
池坊大臣政務官 今、三割削減だとおっしゃいましたけれども、これは間違いでございまして、七%の削減でございます。
 先ほど申し上げましたように、確かに、理科、算数などは授業数は減りますけれども、総合時間というのが今度はふえてまいります。総合時間の中でどのような教育をしていくかということは先生方の自主判断によりますけれども、これをしっかりといたしますことも必要で、全体から見ますと七%の削減でしかないということをここではっきり申し上げておきたいというふうに思っております。
 先ほども申し上げましたので重複いたしますけれども、まず大切なことは、基礎、基本を身につけることだと思います。その上に立ちまして、わからない子供には少人数学級できちんと教える、あるいは、すぐれて突出した能力のある子供にはさらにまたきめ細かな指導をしていくということが大切だと私は思っております。
 今までは画一的な教育でございました。そのことのために、七五三と言われますように、高校で七割、中学で五割、小学校で三割、理解できない子供がいると言われております。今度は、そういうことではなくて、まず基礎、基本は一〇〇%できるような指導でありたいと思います。そして、その後は、もっと進んで勉学したい人には、それの方法を講じて、少人数学級できちんとやっていきたいというふうに思っております。
 マスコミの報道は間違っている部分もございますので、文部科学省といたしましても、そういうことをきちんと説明する義務があると思いますので、してまいりたいと思っております。
大野(松)委員 今お答えがありましたように、正確にこのことを父兄が認識していないと、それだけで不安になるということもありますから、引き続きお願いしたいと思います。
 私は、機会あるごとに、子供たちと接するときに、皆さんの学校の自慢を聞かせてくださいという問いかけをいたします。問いかけますと、子供たちからは意外と返事が返ってこないものです。私たちの時代だったらば、学校を愛することのゆえから、いい先生がいますよとか、こんなほかの学校にないいい点がありますよとか、こういう自慢話を必ずしたものですけれども、なかなかそういうことがありません。
 今度、文部科学省が「心のノート」、これは中学生用ですが、これを発刊されました。この中に、「自分の学校・仲間に誇りをもって」「学校を愛しよりよい校風をつくる」、「郷土をもっと好きになろう」「地域社会の一員として郷土を愛しその発展に寄与する」、こうしたことが書いてあります。絵や写真が実に豊富です。
 これは大事なことをこの中でいろいろ指摘していると思うのですが、この「心のノート」の制作のねらいと、これをどのようにこれから利用していくのか、実践していくのか、その点についてお尋ねします。
池坊大臣政務官 委員がおっしゃいましたように、大変にいい「心のノート」ができたのではないかというふうにちょっと自画自賛いたしております。
 小学校では、これが一、二年に一冊、三、四年一冊ということで三冊ございまして、中学校は一冊でございます。児童生徒が身につける道徳の内容を、児童生徒にとってわかりやすく書きあらわしたものでございます。
 これは、読みまして、みずから問題提起し、問題解決できる、自分で考えることができるようにというような趣旨でございまして、家庭と学校現場、地域社会とのかけ橋になったらいいのではないかというふうに願っております。
 これを読みまして、自分たちが書く場というのもございます。これを、悩んでいるとき、あるいは一人でおりますときにも広げて書いてとっておけば、成長いたしましたときに、その人の心の軌跡、よい思い出になるのではないかというふうに私は思っております。
 ねらいは、そういうものでございます。
 どのように活用するかということでございますが、道徳の時間において、副教本などとともに使ったらというふうに願っております。それからまた、総合学習時間などもございますので、その時間においても、あるいはほかの教科においても、これを自由に使って、ともに考え、でも自分もまた考えるということが大切でございますので、フルにいろいろな教科で使っていこうと考えております。
大野(松)委員 せっかくこういういい企画を実施されたわけですから、この趣旨が徹底いたしますように、上手にこれから御利用願うようにお進めをいただきます。
 最後になりましたが、ことしは、先ほど来申し上げていますように、学校完全五日制、また新学習指導要領のスタート、こういう教育にとりましては格別大切な年、このように言えるように思います。殊に、学校完全五日制は大きな試練でもあります。地域社会の教育力が問われると同時に、家庭、学校、地域社会の連携が求められます。
 内閣府の青少年政策に取り組む立場で、改めて、こうした新しい教育の取り組みの中で青少年政策への取り組みの御決意をお聞かせいただきます。
松下副大臣 国づくりは言うまでもなく人づくりに尽きる、このように考えております。国家百年の大計のもとで、人づくりに本当に真剣に取り組まなきゃいかぬ、こう思っておりますし、次代の国づくりを担うのは青少年でありますから、これは本当に社会全体の問題として国を挙げて真剣に取り組んでいかなきゃいかぬ、こう思っております。
 万葉集の中に、山上憶良の詠んだ歌があります。「しろがねもくがねも玉も何せむにまされる宝子にしかめやも」、これに尽きると思います。真剣に取り組んでいかなきゃいかぬ、こう思っております。
大野(松)委員 ちょうど時間が参りました。ただいま皆さん方から大変懇切な御答弁をいただいたところでございますが、それぞれ、そのような御決意を持ちまして一層これらに邁進していただきますようにお願い申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
青山委員長 次に、丸谷佳織さん。
丸谷委員 公明党の丸谷でございます。
 私は、青少年と喫煙の問題にテーマを絞りまして、きょうは皆さんにお伺いしたいと思っております。また、今、二〇〇三年の発効を目途に交渉されていますたばこ規制枠組み条約についてもお話をお伺いしたいと思っていますので、多省庁にわたりますけれども、どうか答弁の方、よろしくお願い申し上げます。
 まず最初に、青少年と喫煙の問題について、日本政府としてどのような問題意識があるのかというところをお伺いさせていただきたいと思うんです。
 昭和四十年生まれの私でございますけれども、私たちがちょうど中学校、高校の時代というのは非常に学校が荒れた時代でありまして、学級崩壊、先生を殴ったり、教室でたばこを吸ったりといったような事例もありました。ただ、それが、日常、学校の中であるんだけれども、さほど罪の意識がない、特に喫煙に関しては罪の意識がなかったんじゃないかという気もします。
 平成十二年に、未成年者喫煙禁止法が改正されました。この改正によりまして、たばこ等販売禁止の違反をした場合、罰則の強化というものがようやく行われたという感じがするんですけれども、この法律、どちらかというと、私たちの学校が、ちょうど青春時代、荒れた世代からしますと、たばこを吸えるのは二十歳からですよという、吸える年齢が書かれたような法律という感覚が割とありまして、平成十二年に改正されたことによって、逆に、二十歳以下はやはり吸っちゃ絶対いけませんよ、そういうメッセージ性が込められた法律の改正だったのかなという気もしますし、実際、喫煙自体が入門薬物とも言われているように、例えばそれがシンナーとか薬物に発展していくような可能性もあるということも指摘されています。
 また、最近、池坊政務官も少年問題に一生懸命取り組まれていらっしゃいますし、政府としても頑張っていらっしゃいますけれども、特に少年犯罪が凶悪化している。調べてみますと、飲酒とか喫煙とか深夜徘回等、犯罪には至らないんだけれども、いわゆる不良行為を行っているとして警察が補導して家庭に連絡を行った問題行動の少年というのは、依然として高水準にある状態ですし、また、多くの場合において、重大な非行に至るまでに、喫煙とか飲酒、深夜徘回等の問題行動があるというふうにも指摘されている現状でございます。
 こういったことも踏まえまして、政府としてこの青少年と喫煙の問題をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いします。
奥山大臣政務官 松下副大臣がおられますけれども、御指名いただきましたので、私からお答えさせていただきたいと思います。
 御案内のように、今、中学、高校生の喫煙はごく当然のようにずっと広がっておるわけであります。喫煙は子供の成長にとっては支障があるということは、言うまでもないわけでありまして、青少年の健全育成を図る上で未成年の喫煙防止を図ることは極めて重要であるということは、改めて言うまでもないと思います。
 この観点から、政府といたしましても、従前より、業界に対する販売方法の改善の働きかけ、学校における喫煙防止教育の推進や法令に基づく指導取り締まりなど、未成年の喫煙防止のための各種施策を進めてきたところであります。
 また、大人にとっても、喫煙するということは場所によっては周囲に迷惑をかけることでもありますし、また、大人はやはり子供のモデルにならなければならないわけでありますので、大人が余りにもどこでも堂々と吸っておるということは、子供に悪い見本を示すようなことになるわけでありますから、これは大人としても十分心していかなければならないかと思います。
 ちなみに、私も、家族から嫌がられて、十数年前にたばこをやめたわけであります。
 これからも、政府としては、ひとつ十分力を入れて取り組んでいきたいと思います。
丸谷委員 今までも、子供たちあるいは世間的な、青少年と喫煙ということに対する受けとめ方が、余りそんなに悪くはないのじゃないか、法律を犯しているという意識はないのじゃないかという反面、恐らく政府としては、一貫して青少年の喫煙問題に真剣に取り組んでこられたんだというふうに思います。また、政務官が今御指摘してくださいましたように、社会においても、青少年が喫煙に至らないような環境づくりというものも必要だ、その意味で徹底的な分煙というものも必要だというお話をいただいたんですが、では、次に厚生労働省にお伺いしたいんですけれども、青少年の喫煙率と、いつ吸い始めたのかといった一番新しい調査の数をいただきたいと思います。
下田政府参考人 お尋ねの青少年の喫煙問題につきましては、平成十二年度、国立公衆衛生院において調査を行っております。
 その調査では、調査直近の三十日間に一日以上喫煙した者の割合は、男子で、中学一年で五・九%、高校三年で三六・九%、女子では、中学一年で四・三%、高校三年で一五・八%という報告がなされておるところでございます。
 また、喫煙開始の時期、いつから吸い始めたかということでございますが、同調査によりますと、喫煙経験のある高校三年生の男子の場合でございますけれども、小学校時代から吸い始めたという者が二四・七%、中学時代に始めた者が四四・三%、高校生になってからという者が二四・五%という報告になっておるところでございます。
丸谷委員 ありがとうございます。
 今、厚生労働省の方の一番新しい調査の数を示していただきました。中学生から始めて喫煙という習慣をつけた子供たちが四四・三%と一番多いわけなんですけれども、高校生になって喫煙の習慣を身につける生徒より、小学校のときに身につける児童の方が多いというような調査結果も出ておりまして、習慣性の非常に高いものですから、これは何としても小学生のころに喫煙という習慣を身につけさせない学校教育というのが非常に必要で、今までも先生はいろいろ注意とかしてきたんだと思うんですけれども、今までの方法では多分もう功を奏しないんだろうというふうに思うんですね。
 そこで、文部科学省の方にお伺いしたいというふうに思うんです。
 平成十四年度の学習指導要領を見させていただきまして、児童生徒の喫煙、飲酒及び薬物乱用防止に関する新旧学習指導要領の比較というものを、資料をいただきまして見ました。そうしますと、小学校では五年生と六年生の保健体育の授業で行って、中学校、高校は三年生からの保健体育で行われているようなんですけれども、健康の被害をただ知識として教え込むだけではなく、ホームルームとか生活指導の時間に、子供たち自体でグループディスカッションをさせて、なぜ吸い始めたのか、どうやったらやめられるのか、小学生が話し合っているところを想像するのは非常に悲しいものがあるんですけれども、実際に、自分たちがどうやって喫煙習慣をやめていくかといったことを自発的に話し合わせる、そういった方法も有効ではないかというふうに思うんですが、喫煙防止の学校での教育のあり方について、どのようにお考えですか。
池坊大臣政務官 丸谷委員が今おっしゃいましたのは全くそのとおりでございまして、学校教育の中で、未成年で喫煙することがどんなに人体に悪影響を及ぼすかということをきちんと教育してまいりますことは、大変重要だと思っております。そのような観点から、私どもは、小学校では保健体育の五年、六年のときに、中学では三年生のときに、人体への害、また、吸わないこと等を教えております。
 でも、もっと大切なことは、そうやってただ教えるだけでなくて、今私どもも、調べ学習とかディスカッションをしながら、みんながどれだけそういうことに対しての関心を持っていくか、そして、自分の体は自分で守らなければいけないのだということを自分でわかるような教育を、さまざまな教科を通じてやっているところでございます。
 そしてまた、小学校においても、パンフレット等をつくっておりまして、このような「ストップ・ザ・薬物」という中にも、たばこを吸うことがどれだけ危険かということなども知らせております。それから、教師用にもビデオ等をつくっておりまして、教師がきちんと教えられるようにということもいたしているところでございます。
 本当におっしゃるとおりだと思いますので、さらに強化していきたいと思っております。
丸谷委員 政務官がおっしゃってくださいました強化の部分で、ぜひこれは政務官にお願いさせていただきたいと思うんです。
 今、小学校五年生、六年生、中学校三年、高校三年という中で教えていらっしゃるんですけれども、例えば小学校から中学校に行くときは、そこの地域を離れて、また新しい友達と出会ったりして、友達づくりが始まる時期なんですね。そのときに、多分、何人かのグループで、みんな、たばこを吸っていた、吸っていない子がいて、何だ、吸わないのは友達じゃないんじゃないかみたいな、そういう誘惑もあったりする時期だと思うんです。
 ですから、中学校一年、二年、高校一年、二年も何らかの形で、学校教育の場でグループセッションをするなり授業をするなり、毎年の教育の場をぜひ設けていただきたい。これは大臣政務官にぜひリードをとっていただいて実現していただきたいと思うんですが、いかがですか。
池坊大臣政務官 そのとおりでございまして、保健体育では五年と六年、中学では三年となっておりますが、それぞれの段階で、学年ごとに、保健体育以外のところでも、そのようなディスカッションとか調べ学習をいたしております。でも、丸谷委員がおっしゃるように、さらにさらに強化していきたいと思います。薬物は「ストップ・ザ・薬物」、丸谷委員、ずっとやっていらっしゃいますので、私も同じ考えでございます。
丸谷委員 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 もう一点、学校という場でぜひお願いしたい点は、やはり教師の皆さんも見本を見せていただくことが重要だと思うんですね。
 和歌山県の例があるんですけれども、これは去年の十一月の新聞記事なんですが、和歌山県内の公立学校において、学校敷地内すべて禁煙にしようということを決めまして、ことしから恐らく実施されているというふうにお伺いしております。これは県の教育委員会がリードをとりまして、教職員室だけではなくて、すべての公立学校を対象に敷地内をノー・スモーキング・エリアとして設定された。分煙というものも、こちらでは原則認めていらっしゃらないそうです。
 たばこは健康を害するというこの禁煙教育について、教職員ですとか、来校する大人自体にも禁煙を迫った、非常に画期的な、また、モデルとなるようなケースなんですけれども、このような各自治体の取り組み、教育委員会の取り組みをぜひ紹介して、これは恐らく強制するのは難しいのかなと思うんですけれども、紹介しつつ奨励していくような、そういった学校という場はノー・スモーキング・エリアだということを奨励していただくような取り組みも必要かと思いますが、いかがでしょうか。
遠藤政府参考人 指導に当たる教員が子供たちの前ですぱすぱ吸っていたら、やはり教育の実が上がらないということもございます。職業上のモラルとして、当然、先生方に自覚してもらうということと、多くの公共施設では禁煙というのがだんだん常識になってきているわけでございますから、学校もまた公共の場でございますので、そういったような形でということで、実は平成七年に通知で指導もしておるわけでございます。
 徐々にそういうようなこともふえてきておりまして、例えば、和歌山の例が今お話にございましたが、東京都立の学校でも、平成十二年度から、すべての学校で禁煙、分煙ということをしているという例もございます。そういったような形でこれからも指導していきたい、こう考えております。
丸谷委員 ありがとうございます。
 最近の国会の中とか、あるいは世論を見ていても、中傷とか、人の足を引っ張るようなところが非常にあるんですけれども、こういういいことこそ競い合って実施していけるような環境づくりというのも、ぜひまた情報の提供も含めてお願いしていきたいと思います。
 次に、たばこ規制枠組み条約についてお伺いしたいと思います。
 これは、自動販売機とか広告とか課税の問題とか、それぞれかなり多くの省庁にわたっておりまして、調整役が外務省ということを聞いておりますので、主に外務省ということになると思います。
 先月、たばこ規制枠組み条約の第四回交渉が行われました。今までかなりの議論がなされてきたというふうに聞いておりますけれども、WHOを舞台にしまして、今回、第四回目の交渉では合意が得られず、そして、もう間近に迫っていると思うんですが、ことし十月に第五回目の交渉をされる、そして翌年、二〇〇三年五月にこの枠組み条約自体を発効させていこうという状況になっていると思うんですが、この条約の中で、交渉を見てみますと、我が国の態度というのは非常に苦しいところにいるんだなというふうに感じます。
 というのは、この第四回のたばこ規制枠組み条約交渉が行われます直前になるんですが、WHOの方から、世界八十カ国を対象にしました、たばこの価格と課税制度に関する調査報告というのが発表されているわけですね。その調査報告の中で、名指しで日本が批判されている。どの面で批判されたかというと、たばこ規制政策が不十分であるという点と、低価格にとどまっている国としましてスイスと並んで日本が、たばこ政策がおくれているという非難をWHOから受けました。
 また、日本のたばこの自動販売機数というのは、世界一多く自動販売機を保有しているということもあります。北欧なんかは、禁煙に向けて、たばこ規制に対して非常に積極的に取り組んでいる、逆に、日本やアメリカあるいは一部のアジア、アフリカの国は、なかなか積極的に取り組めないという、コンセンサスも得られない中、特に日本が厳しい状況に置かれているというふうに思うんですけれども、一回目から今回の交渉まで、日本政府としてどのような主張をされてきたのか、お伺いします。
高橋政府参考人 お答え申し上げます。
 御質問のございましたたばこ対策枠組み条約でございますけれども、喫煙の健康に及ぼす影響を減らし、健康増進を図ろうとする目的のものでございますが、我が国といたしましても、こうしたたばこ対策枠組み条約の目的につきましては、これを共有いたしておりまして、可能な限り積極的に同条約の策定に向けて協力してまいりたいというふうに考えております。
 具体的な考え方でございますが、我が国といたしましては、喫煙による健康への影響の重要性を認識し、実効性を備え、かつ、できるだけ多くの国が参加できる条約とするため、各国の法制度、経済的、社会的、文化的背景を考慮して、規制措置の実施方法や実施スケジュール等の面で柔軟性を持たせた内容とするという方針のもとに、これまで、財務省、厚生労働省、農林水産省などの関係省庁及び関係方面とも調整を図りながら適切に対応してまいりましたが、先ほど委員から指摘がございましたように、十月には第五回の交渉が開かれる予定でございますので、この方針を踏まえまして、今後とも適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
丸谷委員 議長草案、これは事実上の条約の草案と言ってもいいと思うんですけれども、見ましたら、例えば、全たばこ製品への課税を義務づけ、免税販売も禁止、それから、自動販売機や広告規制のほか、マイルドとかライトといった商品名も禁止させる、それから、たばこ商品に関する国際的な監視システムを構築する、それから、たばこ栽培や製品生産への政府の補助金を削減し、転作を奨励する等という内容になっているわけです。
 価格面というのは、これは税制改革にかかわってきますから、国会の場で、政治という場でしっかりとこのたばこの課税については話し合って、議論を醸成させていかなければいけないというふうに思いますので、一概に今ああだこうだと言うことは、意見は控えさせていただきたいというふうに思うんですけれども、先ほども言いました自動販売機の件ですね。これは、きついきついというものの、何か知恵はないんだろうかと私も考えてみました。
 自動販売機の規制に関しては、アメリカも条件つきで賛成ということになっていますね。今、外務省の方から答弁をいただきました、幅広いというところが一つポイントになるのかなと思いまして、完全撤廃でなければいけないのか。
 今は基本的にそういうラインでいっているわけですけれども、完全撤廃ではなく、例えば、今、日本が実施しているような、ICカードを用いて年齢の確認をする自販機というのがことし四月から千葉県の方で運用実験されていますけれども、業界の方では、二〇〇八年までに全国六十三万台のすべてを年齢識別式にかえる予定である。こういったことも、台を完全撤廃にさせるのではないけれども、決して日本は消極的じゃないんですよと一つのメッセージを送るためにも、こういったICカードを利用した自動販売機の設置を加速させて、それを条約の中で、例えば今から意見を述べていくといったような方法もあるのではないかというふうに思ったんですが、これについてはいかがでしょうか。
飯島政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま御指摘ございましたように、たばこ規制枠組み条約におきまして、個別具体的な論点として、自販機の規制といったことも取り上げられているわけでございます。
 これにつきましては、基本的なスタンスといたしましては、これは条約の中で非常に具体的な提案がなされているわけで、そういう規制の目的に対して手段として適切かどうか、そういった点をまず議論すべきであろうというふうに考えておるわけでございます。例えば、この自動販売機の問題につきましては、未成年者の喫煙を防止するためにはどのような具体的措置を講じていけばいいのか、こういったことをまず検討すべきではないか。
 今御指摘ございましたように、我が国におきましては、この自動販売機、かねてから深夜稼働の停止とか、そういったことについて業界の取り組みをいろいろ進めてまいったわけでございますが、さらにそれに加えまして、御指摘ございましたように、ICカード等によります成人識別機能、こういうふうに呼んでおりますが、こういった機能が搭載されました自動販売機、これを本年四月から千葉県八日市場市におきまして稼働させて、実際にうまく運営できるかどうかといった技術面、運営面の検証を行うこととしておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、この未成年者喫煙防止の問題につきまして、引き続き財務省としては積極的に取り組んでまいりたいと思っているわけでございまして、また、さらにこういった中の具体的な成果につきましてこの条約交渉等の場でも主張してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
丸谷委員 ありがとうございました。
 引き続き財務省さんにお伺いしたいと思うんですけれども、マイルド、ライトという商品名の禁止、この点については、どのような議論があって、どういった見通しになりそうですか。
飯島政府参考人 この商品名の問題につきましては、問題といたしまして、マイルド、ライト、こういった言葉が誤解を生ずるのではないか。すなわち、健康への影響が軽いか重いか、それがマイルド、ライトというような言葉にあらわれているんじゃないかというふうな誤解を与えないようにするためにはどういうふうに具体的に考えていくか、こういった観点からいろいろ論議を深めるべきではないか。そういった言葉は、例えば、これは喫味と申しますか、たばこを吸ったときの味わいを示す言葉であるとか、そういったふうなことを表示すれば足りるのではないかとか、そういったことも含めまして、これもかねてからいろいろな場で議論されてきたことでございますけれども、こういった議論を踏まえまして、またそういう条約交渉の場でも主張してまいりたい、こういうふうに思っております。
丸谷委員 ちょっと今の答弁に不満が残ってしまうんです。今まで四回繰り返されてきたじゃないですか。その中で、そういったことはもうおっしゃっているんだというふうに思うんですよ。日本には日本独自の問題点があって、このマイルド、ライト、マイルド何とかとかは、吸わない人でも割と知っているような有名な商品があったりして、そういった現実的な対応としてはどういうふうにしていくのかということで、見通しと現状をもうちょっとお答えください。
飯島政府参考人 お答えいたします。
 この商品名の用語の規制につきましては、まずは、そういった誤解を防ぐというようなことになってくるのかと思うのでありますが、さらにそれに加えまして、いわゆる商品名、商標として定着しているかどうかとか、そういった観点もあろうかと存じます。
 そういった点も含めまして、誤解を防ぎつつ、そういう定着した名称であるというようなことも含めまして、いろいろな角度から検討の上、主張してまいるというようなことも一つの考え方かな、こんなふうに思っております。
丸谷委員 では、端的にお伺いしますけれども、ライト、マイルド等のラベリングに関する規制があった場合、これはもう全く日本としてはのめないとするのか、あるいは、商品名ということでマイルド何とかということを一つの例外として主張していくのか、交渉術としてどうしていくんですかというところを教えてください。
飯島政府参考人 これは、今後の交渉にもかかわってくることでございますし、また、相手方の出方といったこともあろうと思いますので、なかなかちょっとこの場ではお答えしにくいわけでございますが、今言ったような論点を引き続きよく御理解いただくというようなことかと存じます。
丸谷委員 答弁には全く不満の意を表させていただきたいというふうに思うわけです。
 というのは、国際条約というのは、例えば、この条約が締結されても、我が国の国会として本当に批准するのかという問題がありまして、我が国が好まないような条約の場合というのは、これは締結できないし、また、問題があると、締結すればいいのだろうなというふうにわかっていても、なかなか現実の問題として、締結するまで時間がかかるといったようなことが今まで数多くあったんだというふうに思うわけですね。
 ですから、この条約というものが成文化されるまで、しっかりとした条約という結論が出るまでに、どこの点が日本としてのめないのかというところを、しっかり意見を反映させて、その条約ができ上がったときには日本の国会で速やかに批准できるような、そういった条約をつくるところからの関与というものが外交舞台で求められているんじゃないかというふうに私は思います。
 ですから、今こういったような意見を言わせていただいたわけなんですけれども、もう時間が参りました。今後、もう十月が最終、十月に山場を迎えるわけですから、二〇〇三年の五月、このときには、しっかりと日本の意見も反映されて、そして、すぐ批准できるような条約になったと言えるようなところまで、各省庁、しっかり頑張っていただきたいというふうにお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、石井郁子さん。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 青少年の引きこもりが深刻な社会問題となっております。私、きょうは、この問題で質問させていただきます。
 引きこもり親の会がございまして、KHJ親の会というのですけれども、そこによりますと、現在八十万人くらいいるのではないかというふうに言われています。また、引きこもり年数も、三年、五年、十五年を超える人も出ているということですね。
 こうした引きこもり青少年の社会参加、社会復帰のために、民間組織や地方自治体がいろいろな取り組みを始めているところだと思います。激しい親への暴力で家庭崩壊のケースも出ているのに社会的救済は皆無に近いという親の声、また、この問題に専ら取り組んでいるNPOの皆さんの痛切な声がいろいろございますけれども、今、行政はこうした声に積極的にこたえるときだというふうに私は考えています。
 そこで、まず長官に伺いたいのですけれども、先般、官房長官の所信表明がございました。そこで、青少年の深刻な状況に触れられていたと思いますけれども、引きこもりということには言及がございませんでした。また、内閣としても青少年育成推進要綱を発表してございますけれども、これを見ましても、引きこもりということが全然出てこないのですね。私は、これほどの社会問題になっている中で、大変奇異に感じたわけでございます。そこで、長官に、この引きこもりという問題をどのように御認識していらっしゃるのか、ぜひ伺いたいと思います。
福田国務大臣 近年、引きこもりというのが大変大きな問題になってきておるということは承知しております。特に、十代、二十代の青少年ですね。この問題は、家族らを含めた支援が必要な重要な課題だというように思っております。
 青少年育成推進要綱において、引きこもり問題対策を直接には取り上げておりません。けれども、不登校とかいわゆる学校不適応の問題とともに、より広い問題として、「社会生活への積極的な適応ができなかったり、その努力を避けたりする内面的な問題行動についても、注視していく必要がある。」というような認識は、この要綱の中に示されておるところでございます。
石井(郁)委員 厚生労働省が昨年五月に、社会的引きこもり対応ガイドラインをまとめました。そこで、今後、全国の保健所や精神保健福祉センターを家族の相談窓口とするように都道府県に指示しているというふうに思います。このこと自体、ようやく行政として一定の対策というか、対応をし出したかなというふうに思うんですけれども、親の会からも大変歓迎されていますし、もっと充実してほしいということになっていくかというふうに思うんですね。
 そのガイドラインを見ますと、調査に回答があった精神保健福祉センター五十カ所、保健所六百二十三カ所、保健所は六百四十一カ所ありますから回答があったのはその数だということですけれども、そこで、引きこもりというのは増加傾向にあるというふうに答えていらっしゃった方が約六割ですね。ですから、ずっとこれからふえていくだろうということです。
 しかし、保健所やセンターがどういう活動をしているのかというふうに見ますと、引きこもりを対象としたデイケアグループ活動を行っていないと。だから、親の相談窓口となるようにといっても、デイケアグループ活動が行われていない。その保健所は三百六十八カ所、センターは二十九カ所ございます。また、引きこもり家族の交流会や家族向け学習会を開いていないという保健所は百四十六カ所ございます。ですから、私は、せいぜいこの半数程度しか、何らかの窓口としての対応あるいは受け入れができていないのかなというふうに思います。
 まず、厚生労働省、この調査をどのように受けとめていらっしゃるのか、お聞かせください。
高原政府参考人 従来から、思春期精神保健業務といたしまして、引きこもりの相談を受けてきたところでございます。
 しかしながら、残念なことに、どういうふうにやったらいいのか、援助手法が必ずしも普及していなかったのかなと思うわけでございまして、そういうことで必ずしも十分な対応をとられてこなかったと考えておりまして、先生御指摘の平成十三年五月に、「十代・二十代を中心とした「社会的引きこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン」、これを二万部作成いたしまして、児童相談所、保健所、精神保健福祉センターなどの相談機関や、文化庁、警察庁等の関係機関にお配りいたしましたとともに、十三年度から、これはモデル事業でございますが、引きこもりを含む思春期の問題行動に的確な支援を行うために、思春期精神保健ケースマネジメントを全国七都県で開始しております。また、これは先ほど来いろいろ御指摘ございますが、引きこもりを含む思春期精神保健に関する専門家、これは必ずしも多くございません。そこに着目いたしまして、平成十三年度より、思春期精神保健対策専門研修を開始したところでございます。
 今後とも、関係部局間で十分連携いたしまして、適切な対応を進めていきたいと考えています。
石井(郁)委員 調査報告書を見ますと、保健所やセンターが指摘していますのは、相談支援上の問題点という中に、専門家の不足、治療相談体制の未整備ということだろうと思うんですね。だから、ほとんど、こういう分野はこれからの課題であるわけです。
 私も、この質問に当たって、新聞報道なども見ますと、いろいろな声や取り組みがなされつつあるという中で、東京都の精神保健福祉センターの地域援助医長の方は、専門的な医師や臨床心理士の養成が必要だということとか、また、同じ都の中部総合精神保健福祉センターの計画調査係長さんも、最も難しいのは引きこもりの原因の見きわめ、また、見きわめるには相談員の教育を充実する必要があると。やはり専門家、相談員の養成ということが今欠かせないという指摘かというふうに思うんですね。
 そこで、今もお話ありましたが、専門家の養成あるいは相談員の養成というか、質あるいは量の充実というようなことについて、厚生労働省としてもっと具体的に計画をお持ちかどうか、お尋ねします。
高原政府参考人 ただいまお答え申し上げたとおり、平成十三年から、専門家の養成を図るため、医師、看護士、精神保健福祉士などを対象に、思春期精神保健対策専門研修会を実施しております。平成十三年度におきましては、合計四百三十一名が研修を修了したところでございます。
 厚生労働省といたしましては、研修修了者の名簿を作成いたしまして、それを各方面に配付することによりまして、引きこもりを含みます思春期精神保健の専門家の効果的な活用を図るとともに、関係機関相互の連携をより一層推進してまいりたいと考えております。また、この研修会の事業につきましても、ちゃんと継続するつもりでございます。
石井(郁)委員 このガイドラインでは、社会的引きこもりという定義づけですね、さまざまな要因によって社会的な参加の場面が狭まっている、自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態ということかと思うんですね。
 大変な苦労の中での研究の一つの到達点だろうと私も思いますけれども、ここにあるように、引きこもりを克服していくには、労働への参加あるいは社会的な参加の場面をたくさんつくらなきゃいけない、また、人間関係をつくり上げていく、その共同生活が大事だと。そういう意味で、子供たちにいろいろな意味での教育訓練の場をその子供に合わせてつくっていかなくちゃいけないというふうに考えるわけです。
 それで、こうした取り組みをしているのが、今のところ、専ら民間のNPO組織だというふうに思うんですね。例えば、引きこもりの青年の自立支援、社会復帰を促すための職業体験の取り組みなど、いろいろしておられます。
 これは、千葉のNPOニュースタート事務局で見たんですけれども、高齢者向けのデイサービスセンターと託児所を合体させて福祉コンビニを運営する、それで、お年寄りとか幼児の世話などの職業体験を一緒に取り組んでいるとか、そういう例がこの間いろいろ出ているかというふうに思うんです。
 その辺でいいますと、政府としてこういう取り組み、あるいは公的な機関でやっているところというのは、今、何があるんでしょう。あるいは、公的にそういう機関をつくろうというお考えがおありかどうか、お聞かせください。
高原政府参考人 御案内のとおり、引きこもりの状態から回復しまして社会に再参加するためのステップといたしまして、仲間であるとか、本人の居場所であるとか、仕事場であるとか、こういうふうなものが極めて重要でございます。こういうこともガイドラインの中に記載しておるわけでございますが、こういった機能を果たすものとして、民間団体や、引きこもりから立ち直った人たちのサポートとか、そういうふうな団体が、例えば、類型的に言いますと、精神障害者社会復帰施設、グループホームなどの経営も可能でございますし、国庫補助の対象にもなるわけでございます。また、作業所とかそういうふうな形で考えてみましても、小規模作業所のうち一定の要件を満たす場合には、運営費に対して助成を行っております。
石井(郁)委員 私は、十代から二十代という大変大事な時期に、いろいろな意味で人間形成の時期でもあり、社会参加を準備する時期ですから、今、これは日本の社会が生み出している一つの現象なわけですから、その子供たちに対して、やはり特別な公的な機関というのは独自に要るんだろうというふうに思うんですね。
 このことはもっと今後も提起していきたいというふうに思うんですが、今、とりあえずいろいろな形で民間の方々が取り組んでいらっしゃるということですから、このNPOへの財政的支援というのはすぐにも政府としてやるべきではないのかということを強調したいというふうに思います。
 これは一つの例ですが、岩手県盛岡にNPOポランの広場というのがあるそうですが、毎週火曜、金曜の二回、相談業務を行う、家庭訪問もしている、経費は一カ月で二十五万から三十万かかってしまう、寄附収入だけでは到底足らない、だから利用者に初回のみ三千円の相談料ですよということですけれども、その利用者が相談に来るのも大変だ、交通費もかかるというようなこと、いろいろございますね。また、いろいろなイベントを行ったら、それの費用もまたかかる、足が出る。そういう例というのは各地にあるわけですよ。
 私は、このガイドラインでも、こういうNPOへの援助、民間への援助というのは公的機関の今後の課題だということも書かれているかと思うんですが、民間、NPOへの財政的支援をもっと強めるべきだというふうに思いますが、その辺のお考えはいかがですか。
高原政府参考人 財政的なサポートにつきましては、一定の要件に該当するものについては積極的に進めてまいりたいと考えております。
石井(郁)委員 その一定の要件というのはどういう要件ですか。先ほどの、何か精神障害者の施設等という話ですか。一定の要件というのを簡単に教えてください。
高原政府参考人 一つは、精神保健という切り口でございます。もう一つは、地域保健というふうな切り口でございまして、地域保健の方は、市町村ないしは地方公共団体のメニュー事業といたしまして、一定の範囲で国費を支出しております。
石井(郁)委員 詳しくはまたこの後でも伺いたいというふうに思いますけれども、そこまでにしておきます。
 次に、文部科学省にお尋ねしますけれども、高等学校における中途退学者の問題です。
 文科省初中局として、「生徒指導上の諸問題の現状と文部省の施策について」というのをいつも年末に発表されまして、そこでは、いじめや自殺や不登校の生徒数がどうなのかという状況が出されるわけでして、その中に、高校の中退者数が毎年発表されます。近年では十一万でしょう。在学者数の二・六%ぐらいです。これは相当な数ですね。これは減らないんですから。毎年毎年なんですから。
 私がきょう伺いたいのは、高校の中退者の中に不登校問題というのを含んで考えているのかどうかということなんですよ。高校における不登校の実態というのはどういうふうにつかんでいらっしゃるのか、お答えください。
矢野政府参考人 高校の中退者と不登校あるいは引きこもりとの関係についてのお尋ねでございます。
 社団法人青少年健康センターというところの調査では、全国の精神保健福祉センター及び保健所におきます引きこもりの相談件数約六千のうち、小中高等学校での不登校経験ありという者が四〇・七%、そういう結果がございます。また、旧文部省が研究グループに委嘱した調査結果によりますと、中学三年次に不登校であって、卒業後、高校等へ進学した者のうち、約三八%が中途退学を経験している、そういう調査結果もあるわけでございます。
 こうした調査結果から考えますと、不登校や引きこもりと高校中退者との関係については、一定の関係があるというふうに考えられるわけでございますけれども、このことにつきましては、今後、さらなる専門的な分析や研究が必要であろうかと考えているところでございます。
石井(郁)委員 先ほどの親の会のアンケートによりますと、引きこもりの発生時代の四五%というのは高校時代なんですよ。だから、そういう視点で高校中退をとらえないといけないということだ思うんですが、文部科学省の施策の中には、この調査という項目の中にはこれもまた全然出てこないんですね。だから、一体、高校の実態というのは本当につかむ気があるのかないのか。私は、そういう目で実態をきちっと把握しなきゃいけないというふうに思いますし、それを強く要望しておきたいと思います。
 時間が参りましたので、最後に、長官にもう一度御決意を伺っておきたいと思うんです。
 きょう、本当にわずかな時間ですけれども、十代から二十代にかけて、日本の青少年のある部分が引きこもりという深刻な状態に遭っているということですね。それについて、私は、本当に一人一人の人生の問題、かけがえのないその子供たちの人生の問題であると同時に、日本の将来にとっての大問題だというふうに思うんですね。そういうことで、政府として積極的に取り組むべきだ、この施策は端緒についたばかりですから。
 そして、私は、もう一点、各省庁がどういう連携のもとに、どういう方向で進んでいるのかというのがもう一つ見えないんですね。そういう点でも、全体を統括する立場の内閣府でございますので、ぜひこの機会に、長官としてどういう姿勢と決意で今後臨んでいかれるのか、最後にお聞かせいただきたいと思います。
福田国務大臣 内閣府では、変革期にある我が国社会の現状等を踏まえまして、青少年の育成のあり方を改めて問い直して、中長期を見据えた骨太のビジョン、すなわち青少年プラン、これは仮称でございますけれども、これの策定を進めていこうというように考えております。
 このプランの作成のために役立つように、青少年の育成に関する有識者懇談会というものをつくりまして、今月の下旬からこの懇談会を開催し、有識者から青少年の育成の基本的な方向などについて幅広い意見を聴取していこうといたしております。この中で、青少年に関する問題状況の一つとしての引きこもり問題についても御議論を十分していただこうと思っているところでございます。
石井(郁)委員 時間が参りました。以上で終わります。
青山委員長 次に、黄川田徹さん。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 大変お疲れのところでありますけれども、最後の質問者でありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 さて、この特別委員会でありますけれども、青山委員長のもと、担当の福田官房長官を迎えまして、一年ぶりに開催されるということになりました。そこで、国際化が進展しまして、日本の役割がますます重要視される中にあって、我が国の将来を担う青少年の健全な育成を目指す上で、このところ、少年の凶悪犯罪が多発し、しかも、それが低年齢化するということは極めて憂慮されるところであります。きょうは、例の、東村山市で起きた中学生によるホームレスの暴行死事件を通じて、最近の青少年の凶悪事件の背後に潜む意識構造の変化を掘り下げていきたいと思っております。
 そこで、最初に福田官房長官に伺います。
 青少年対策は、昨年一月の省庁再編以前は、総務庁で、定員が三十六名体制の青少年対策本部で扱われておりましたけれども、現在は、内閣府で、定員三十二名で横断的な政策調整や調査等を行っていると聞いております。また、総務庁時代の青少年問題審議会では、先ほど質問がありまして関連するところでありますけれども、青少年プランの作成など、積み残しの課題が少なくありませんが、内閣府に移行後は、同審議会にかわって、先ほどお話があった青少年の育成に関する有識者懇談会ですか、これを新たに近々立ち上げる予定と耳にしております。先ほど、引きこもりの方も議論の対象だとお話しされておりましたけれども、この懇談会では具体的にどのような課題を議論される方向であるのか、長官に伺いたいと思います。
福田国務大臣 委員御指摘のとおり、青少年の育成に関する有識者懇談会を今月下旬から開催したいと思っております。本田和子さん、お茶の水女子大学の学長を座長といたしまして、十数名の人数、こういうことでありますけれども、この中でもって、有識者から、青少年の育成の基本的な方向などについて幅広い議論をしていただこう、こういうふうに思っております。
 どんなふうなことを青少年の育成の基本的な方向というのかと申しますと、少子化、都市化、情報化などの社会環境の変化や、生活スタイルなどに関する価値観の多様化などの社会全体の変化を踏まえて取り組むという視点、それから、未来を担う人づくりと、現在生じております問題状況への対応の両面を含めて総合的に取り組むという視点、それからまた、青少年の年齢期ごとの特性をとらえて取り組むこと、また、社会全体の取り組みへと広げていくこと、そういうような視点からさまざまな問題を検討してまいりたい、そのように考えているところでございます。
黄川田委員 省庁再編によりまして、青少年対策、その取り組みが見劣りがしないように指摘させていただきますとともに、この有識者懇談会の成果を本当に期待したいと思っております。
 さて、昨年秋、筑波大の遠藤教授らが行った日中韓三カ国の中学三年生の意識調査によりますと、日本では、世界情勢を知りたいとは思わないが中韓の二倍もあるなど、熱中する対象やチャレンジ精神に乏しく、無気力な日本の中学生像が浮かび上がってきておると思っております。
 また、東京成徳短大の深谷教授も、日米韓台の四カ国の小学五、六年生に対し、将来なりたい職業あるいは自分の未来予測などの国際比較調査を行っておりますけれども、ほとんどの項目で日本は最下位でありまして、そして、日本の子供の夢は、外国と比べて、どちらかというと小ぢんまりしているという状況であります。
 そこで、これらの調査結果を文部科学省はどう認識しておるのでしょうか。そしてまた、この四月から公立学校が土曜休校になったということでありまして、それによってどのような改善あるいは対応策を図っていくおつもりでしょうか。伺います。
池坊大臣政務官 私も、この調査をちょっと驚きを持って、複雑な思いで拝見いたしました。
 ただ、いつも思いますのは、国際調査になりますと、日本人の国民性でしょうか、割と日本人は消極的な発言が多いのではないかというふうに思ったりいたしておりますが、今の児童たちにチャレンジ精神や夢や希望が失われつつあることは確かではないかと思っております。学校教育の中で、そういうものを植えつけなければいけないと思います。
 特に、次代を担います子供たちが国際社会の中で日本人としての誇りと使命とを持ち、そして、社会貢献していくことは大変必要であると思っておりますので、このたびの学校五日制のもとで、学校、地域社会、そして家庭とが連携をとりながら、そのようなものを養っていきたいというふうに願っております。
 学校教育におきましては、新しい学習指導要領のもと、総合的な学習の時間というのがございます。先ほどから申し上げておりますとおり、基礎、基本をしっかりと身につけながらも、かつ、みずから意欲を持って学び、そして考え、よりよく問題解決する能力を養うよう指導しております。
 また、先ほど御説明いたしました「心のノート」の中学生の部門でも、人生で目標を持ちましょうというようなことも書いてございます。みずから人生をどういうふうに切り開いていくのかということにも内容で触れております。
 また、地域で子供を育てるための支援体制整備として、新子どもプランなども策定いたしております。
 文部科学省といたしましては、学校現場だけでなく、家庭、地域連携の中で、そのような意欲的な、そして、夢と希望を持って社会貢献できる子供の育成に積極的に努めてまいりたいと思っております。
黄川田委員 本来、子供は、実現できるかどうかは別にして、大きな夢を抱くものであります。しかしながら、現実は冷めておるという状況であります。これは大人の社会をむしろ映し出しているのではないか。大人自身が夢を持てずして、何で子供が夢を持てるのかという状況もあると思います。
 私、学生時代、児童生徒も含めまして、ろくな子供じゃなかったものですから、子供はやはり元気が大事であります。ですから、文部省というと、どちらかというと活字、熟語、片仮名という気がしまして、紋切り型の答弁が多いというわけで、きょうは、政務官の服装、そのとおりでありますから、血の通った、血沸き肉躍るような、そういう答弁をよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、本題であります。
 去る一月二十五日、東京・東村山市で、十四歳の中学二年生たちがホームレスの男性を集団で暴行して、死亡させました。事件の詳細は皆さん御承知のとおりであります。
 この事件は、それほどの非行歴もない、普通の家庭の少年たちによって引き起こされたこと、そしてまた、昨年四月の改正少年法施行で刑事処分可能年齢が十六歳以上から十四歳以上に引き下げられ、改正後初めて家裁が刑事処分相当として逆送、すなわち検察官送致するかの二点で世間の大きな注目を浴びたところであります。
 市教育長や中学校長など、教育関係者は今回の事件をどれだけ深刻に受けとめているのでしょうか。大変遺憾で再発防止に最善を尽くすとか、二度と起きないよう人権尊重の精神の涵養に最善を尽くすなどと謝罪はするのでありますけれども、事の本質を本当に理解できているのかなと私自身は思っております。
 そこで、福田官房長官、子を持つ親として、大変難しい質問でありますけれども、この事件の根底、そしてまた再発を防止する上で何が重要か、所見を伺いたいと思います。
福田国務大臣 この事件の内容につきましては、個別の案件でございますのでお答えは差し控えさせていただきますけれども、一般的に、少年が重大な犯罪を引き起こすということが最近相次いでおりますことは、本当に憂慮にたえないことでございます。
 少年犯罪などの青少年にかかわる問題は、社会風潮や社会状況、家庭、学校、地域社会など広範な領域にわたるさまざまな要因が相互に絡み合った問題と考えておりますので、社会を挙げて取り組んでいく必要があると認識しております。社会を挙げてと申しますか、国を挙げてということになるんだろうと思います。そういう問題で、個別の対応で済む問題ではないと思っております。
 したがいまして、今後とも、少年犯罪を未然に防止するために、青少年育成推進要綱を踏まえた取り組みを総合的に推進してまいりたいと思っております。
黄川田委員 事件の直後、マスコミ各社はこの事件を一斉に大きく取り上げております。「大人の責任こそ重大」「しかる教育を怠った悲劇」「普通の子が暴走」「非行を芽で摘むのが先決」などと見出しは躍っておるのでありますが、そして、もっともらしいのでありますけれども、この原因を深く究明しているところは少ないのではないかと思っております。
 私は、この種の少年事件を目にするとき、精神科医でもある土居健郎氏の著書「「甘え」の構造」の「甘えと現代社会」の父なき社会を思い出すところであります。事件を起こした十四歳の少年たちの心の奥には、まさに土居健郎氏が三十年前に主張した、価値観の喪失、世代間の断絶、そしてまた父権の喪失等が大きく横たわっているというふうに思っているわけであります。
 そこで、世代間の断絶や父権喪失などは、現在でも青少年の健全な育成の根底において大きく失われている要素であると思っておりますが、長官の所見をまたお尋ねいたしたいと思います。
福田国務大臣 土居健郎さんのベストセラー、当時ベストセラーでありまして、もう三十年たったんですね、内容を私はすっかり忘れましたけれども。
 要するに、世代間の価値の継承が弱いということは、先ほど委員の御指摘がありましたが、何か統計によるとそういうようなこともあるということで、これは事実として認めなきゃいけないというふうに私は思っています。そういうことがまた青少年問題を論ずる場合に欠くことのできない点であろうというふうに思っています。
 そういうような社会情勢を踏まえた青少年の育成のあり方につきましては、これは各方面での議論を踏まえて十分に検討していく価値があるものと考えております。
黄川田委員 森内閣時代、文部科学省は、教育改革国民会議の提言を踏まえまして、「学校、家庭、地域の新生〜学校が良くなる、教育が変わる〜 二十一世紀教育新生プラン」を大々的に掲げまして、「多様な奉仕・体験活動で心豊かな日本人を育みます」など七つの重点戦略から成るレインボープランを昨年一月に発表しております。しかしながら、その内容は、教育基本法の改正というような大きな問題は別にしまして、小泉内閣にどのように承継されているのか、最近、どうもよくわからないような気がしております。
 そこで、二十一世紀教育新生プランでは、青少年の健全な育成及び不良化防止などにかかわる施策はどのように盛り込まれて、そして現在、どのように生かされておるのか、文部科学省にお伺いいたします。
池坊大臣政務官 先ほど委員が要望なさいましたような血沸き肉躍るような答弁ができなくて大変申しわけございませんけれども、今、二十一世紀教育新生プランは余りわからないということで、ぜひ御理解いただけたらと思っております。
 昨年一月にできましたこの二十一世紀教育新生プランは、人間性豊かな日本人を育成するということで、具体的な主要施策や課題及びこれからのタイムスケジュールを明らかにしたものでございます。このプランに沿って私どもはさまざまな施策を講じておりまして、また、全国において少しでも多くの方に理解していただけたらと思って、教育改革キャラバン隊で私ども副大臣や政務官が説明したりいたしております。
 この中で、昨年は、学校内外の体験活動の促進を図るために、学校教育法並びに社会教育法を改正いたしました。また、民間の活力に対して私どもは助成したいという願いのもとで、子どもゆめ基金というものをつくりました。これは、読書活動とかスポーツに力を注いでいらっしゃる民間の方々を手助けするものでございます。
 また、平成十四年度においては、家庭、地域の教育力が低下してまいりまして、この再生を図ることなくして二十一世紀の教育新生プランはないと思っておりますので、私どもは、家庭教育支援の充実のために新子どもプランを策定いたしまして、体験活動また奉仕活動を週末などにするようにいたしております。
 また、不良を防止するにはどうするのかという御指摘でございましたけれども、問題を起こします子供たちに対しては、学校と関係機関から成るサポートチームをつくっておりまして、そういう体制の中で、子供たちの話を聞いたり、家庭と連絡をとりまして、そういう子供たちが少なくなるよう努めております。
黄川田委員 通告はあと二問なんですけれども、厚生労働省の方は後で質問いたしますので、最後の質問であります。
 この教育改革国民会議で、曽野綾子さんは、青少年の健全な育成のため、小中学校は約二週間、高校生は最低一カ月間の奉仕活動を提唱しておりました。これは前にお話しした土居健郎氏の「「甘え」の構造」と同様、私は深く共鳴するものでありますが、これまた官房長官の所見をいただきたいと思います。
福田国務大臣 教育改革国民会議で、御指摘のとおりのような提言がまとめられました。政府におきましても、青少年が社会性や思いやりの心など豊かな人間性をはぐくんでいくためには、成長段階に応じて、社会奉仕体験活動、自然体験活動などのさまざまな体験活動を行うということは極めて有意義であるというふうに認識いたしております。
 そういうことですから、学校内外を通じまして、社会奉仕体験活動とか自然体験活動などの一層の充実を図るために、昨年七月に社会教育法、学校教育法の一部改正を行いました。そして、現在、国、地方公共団体における推進体制の整備やモデル事業の実施など、具体的な施策を進めております。
 いずれにしましても、今後とも、青少年の健全な育成に向けて施策の充実を図ってまいりたいと思っております。
黄川田委員 私の所属する自由党は、暮らしを一新する五つの具体策の一つとして、毎週土曜日は家族で道徳と集団生活のルールを学ぶ日というふうな形で主張しておりますので、一つ紹介させていただきまして、質問を終わります。
 以上で終わります。
青山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十九分散会


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