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第7号 平成15年5月15日(木曜日)

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平成十五年五月十五日(木曜日)
    午後三時開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 水島 広子君 理事 山口  壯君
   理事 福島  豊君 理事 達増 拓也君
      小野 晋也君    小渕 優子君
      太田 誠一君    岡下 信子君
      川崎 二郎君    河野 太郎君
      左藤  章君    阪上 善秀君
      保利 耕輔君    石毛えい子君
      大石 尚子君    鎌田さゆり君
      小宮山洋子君    肥田美代子君
      石井 郁子君    保坂 展人君
      山谷えり子君
    …………………………………
   国務大臣
   (国家公安委員会委員長) 谷垣 禎一君
   政府参考人
   (警察庁生活安全局長)  瀬川 勝久君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局長
   )            有冨寛一郎君
   政府参考人
   (総務省政策統括官)   清水 英雄君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月十五日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
  小宮山洋子君     石毛えい子君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     上川 陽子君
  石毛えい子君     小宮山洋子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案(内閣提出第一〇三号)


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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長瀬川勝久さん、総務省総合通信基盤局長有冨寛一郎さん、総務省政策統括官清水英雄さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
青山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日も、谷垣大臣に質問をさせていただきます。きょうは二十五分間という限られた時間でございます。聞きたいことはまだまだたくさんございますので、ぜひ大臣も、多くのことを聞けますように御協力をいただければ幸いでございます。
 さて、この法案では、もちろんここは青少年問題特別委員会ということでございますし、やはり子供たちが、実際にこの法案が成立していったときにどのように扱われるかということをきちんと検証しておかなければいけないと思います。
 この法案の六条に違反した子供たちは、実際に、具体的にどういう経路をたどっていくことになりますでしょうか。簡単にお答えいただければと思います。
谷垣国務大臣 まず、この六条の規定に違反しますと、少年警察活動規則というのをつくっていまして、「少年の健全な育成を期する精神をもって当たるとともに、その規範意識の向上及び立直りに資するよう配意すること。」これがまず捜査の基本でありますね。そして、身柄の拘束につきましては、犯罪捜査規範において、少年についてはなるべくこれを避けることと規定されておりまして、やむを得ない場合を除いて、任意捜査の方法によるというふうにしております。
 それから、この法案第六条違反は罰金以下の刑に当たりますので、少年法でも、それ以上重くなりますと検察官のところに送致するということになるわけですが、家庭裁判所に直接送致されるということであります。
 そこで、事件を受理した家庭裁判所では、調査、審判が行われまして、保護処分あるいは児童福祉法の措置などが行われるということになります。それで、保護処分の中には、保護観察とか、児童自立支援施設または児童養護施設へ送致する、それから少年院送致というのも含まれております。なお、家庭裁判所において、審判不開始とか不処分ということもあるわけでありますが、こういう場合でも、訓戒とか保護者との面接、進路指導といった保護的措置が適宜行われることになるわけです。
 いずれにせよ、少年の処遇について専門的な知見を有します家庭裁判所が、当該児童の状況に応じた適切な保護処遇のための措置をとる、こういうことになっております。
水島委員 子供が問題行動を起こしますときには、生育環境の問題だけではなく、精神障害などの可能性も当然考えなければならないわけでございますし、精神障害のときのその発現の方法、表現方法というのが大人の場合と随分違っていることもございますので、特に専門的な知識を持って注意をしていなければいけないと思いますけれども、子供の問題行動の裏に精神障害などの可能性が考えられますときには、どういう対応がなされますでしょうか。
谷垣国務大臣 先ほども申しましたように、まず、少年法の規定で家庭裁判所に送致されるわけですが、精神障害等がある場合には、これを受けた家庭裁判所の調査、審判の過程においてこのことが勘案される。例えば医療措置を行うことが適当であるとして審判不開始とするというようなことも含めまして、裁判所で適切な措置、処遇を判断していただくということになります。
水島委員 本当はそれが家庭裁判所で実際どういうふうに行われているか、本当に今の人員でできるのか、また、このたび人事訴訟法も成立するでありましょうし、家庭裁判所の仕事も本当にふえてくるわけでございますけれども、そんな中、家庭裁判所でちゃんとこの法案に対応できるのかということをいろいろ質問したいと思っていたところではございますが、裁判所、司法の独立ということで、この委員会には答弁に来ていただけないということでございました。
 本来、私も理事会で当初求めておりましたように、法務委員会との連合審査を行いまして、きちんと裁判所の現状を伺うべきだったなと思っているところではございます。
 本来、家庭裁判所におきまして、本当にこれだけのことをきちんとやっていただかなければならないけれども、実際のところは、かなり人員の大変さですとかいろいろな問題がございまして、どうも現場では必ずしも理想的に対応できていないというような情報も得ておりますので、そんな中、このような法案を提案される以上は、きちんとそのあたりまでぜひ話し合っていただきまして、連携をとっていただきたいと思っております。
 さて、先日の委員会で、大臣は、書き込んではいけないという規範を示すことは間違っていないと答弁をされております。私も、規範を示すことは結構だと思いますし、だからこそ、この法案の第六条で、誘引行為をしてはいけないということが法律上明確に禁止されているわけでございます。これについては、内容、細かな点はございますけれども、こういった規範を示すということは、私は結構なことだと思います。
 それであれば、第十六条の罰則規定について、児童を適用除外としてもよいのではないかと思います。個別のケースによっては、第六条の違反行為を繰り返すなどによって、少年法第三条の虞犯少年として家庭裁判所の審判に付されて保護処分の対象となることもあり得るわけでございます。
 ストックホルム宣言の精神を生かすのであれば、個々のケースによって現状に合った多様な対応をすることができるように、むしろ第十六条を児童に対して適用除外として、第六条の違反行為をした児童については、関係行政機関の連携のもとでの適切な指導等を行うとした方がよいのではないでしょうか。そのように法案を修正することはできませんか。
谷垣国務大臣 できるだけ簡潔にお答えいたしますが、要するに、今まで出会い系サイトの危険性等につきましては、警察でも広報啓発、あるいは事業者もいろいろ自主規制をやってきたんですけれども、にもかかわらず、いわゆるここで言う不正誘引がはんらんしまして、結果としていろいろな児童が危害、犯罪に巻き込まれる、被害者になるというケースが多くて、また児童の健全な育成にも重大な障害となっている。
 それで、先ほど申し上げたような規範を定立したわけですが、委員の御批判のポイントですが、これまでの広報啓発あるいは自主規制というようなものの経緯からしまして、どうも、単に罰則なしで禁止するだけで実効が上がるとは考えられない。やはり実効性を考えますと、こういう手段が必要なのではないか。
 それから、もう一つ、今おっしゃった家庭裁判所の機能が十分かどうかという御議論は別途あるのかもしれませんが、これでほっておきますと、では、いわば法的な仕組みとして、あるいは行政として、書き込みをしてこういう場に巻き込まれていく子供たちに何をし得るかという手段がなかなかないということが現実にございます。やはりこういう手段を講じますと、家庭裁判所は、陣容が十分かどうかはまた別の議論でございますが、心理学を専攻した調査官などのシステムをあそこは持っておりますので、やはりそういう仕組みで立ち直りの機会を与えることができるのじゃないか。
 それから、虞犯とかそういうものを使えるのではないかというお考えをおっしゃいましたけれども、実はこれも、実務的に申しますとなかなか簡単ではございません。
 と申しますのは、名古屋高裁の判例がありまして、一般的、抽象的に刑罰法令に触れるおそれがあるというだけでは実は虞犯少年の扱いができませんで、ある程度具体性を持った犯罪の蓋然性があることが必要だとされております。ということは、つまり、児童の不正誘引をするということが犯罪化されていて初めて、その犯罪を犯すおそれがあるから虞犯ということが出てくるわけでありまして、そういう刑罰なしに、不正誘引行為のみをとらえて虞犯少年として扱うことは、実は、実際上できない仕組みになっているというふうに理解しております。
水島委員 ちょっと、私、法律が専門でないので、一つだけ確認させていただきたいんですが、罰則があって、大人の場合には適用となる、ただし児童は除くというような構成になっていても、その蓋然性が高いという場合に虞犯という扱いはできないんでしょうか。これは局長でも結構ですけれども。
瀬川政府参考人 現実に少年の当該行為についてそれが犯罪になっていないということであれば、今大臣の答弁のとおり、これが犯罪を起こすおそれがあるということにはならないだろうというふうに考えられます。
水島委員 今の御答弁につきましては、私はまた研究させていただきたいと思いますけれども、質問を続けさせていただきます。
 確かに、大臣がおっしゃるように、現状で子供が問題を抱えているというときに、本当にそれをトータルに受け入れるような、ある程度専門的な知見を持ったところで、人員がきちんと豊富にある、そんなところがないというのは、私もかねてから問題に思ってまいりまして、もちろん、先ほど私が提案を申しました関係行政機関の連携のもとでと、そのようなとき頭にございますのは、児童相談所とかそういったところがあるわけですけれども、では、現状、児童相談所が人員が十分にいるかというと、とてもそんな状態ではないということです。
 継続したケアが必要な子供たちの場合、むしろ、その本人に非があるか否かを問わずに、確かに、本人が悪いことをしていない、虐待の被害者であってケアを受けに通わなければいけないのに親がなかなかそれをさせないとか、子供の場合、かなり親子の力関係の中で、子供には意思があってもなかなか行けなかったりということもございますから、むしろその受け入れ体制をどこかにきちんとつくっていく。今大臣の頭にあります家裁をむしろそういう子供の権利を守るセンターとして、それは罪を犯した犯していないにかかわらず、子供をきちんと支えていくような場所として活用していくというように根本的に政策転換をしてもよいのではないかと、今大臣の御答弁を伺っていて思ったわけでございますけれども、そういったことに関してはいかがですか。
谷垣国務大臣 裁判所の仕組みのあり方まで行政府にいる私が今御答弁をするのはちょっと出過ぎたことで、むしろ国会等で仕組みのあり方として御議論をいただくべきことかと思いますが、もともと、家庭裁判所ができましたのは、私も深く承知してはおりませんが、子供の人格というのはまだ固まったものではありませんので、可塑的なものでございますから、大人と同じように、犯罪を犯したからすぐ刑罰にかけるというようなことではよくない。もう少し総合的に、子供を保護し、育成していくためにどうあるべきかという観点からつくられた組織でございますので、そのあたりはまたいろいろ国会の方で御議論をいただければと思います。
水島委員 今、また改めて思っておりますけれども、結局、今のままでは、罪を犯す、十分に悪いことをした子供であれば家裁でトータルなケアが専門家のもとで受けられるけれども、自分が虐待の被害者になった程度の子供であれば、いつまで通い続けられるかわからない、専門家がどれだけいるかわからないような、そんなきちんとした法的仕組みを伴わないところにゆだねられてしまう。それは子供の権利から考えると非常におかしいのではないかと、今大臣の御答弁を伺っておりまして、また新たに私は認識を持ちました。
 子供が結果的に何をするか、どういう被害に遭うかというのは、もちろん、子供それぞれの環境によるわけですけれども、どの子供も何らかの援助を必要としているということでは同じなわけですから、罪を犯せば、悪いことをすれば家庭裁判所ですばらしいケアが受けられます、まあそれが今回のこの法案の言いたいことだと思うんですけれども、罪を犯さない子供はそういうケアは受けられません、そういうことはちょっとおかしいのではないかなと今伺っていて思いました。
 そのことを突き詰めてまいりますとまた時間がなくなってしまいますので、意見として述べさせていただきます。
 先ほど、大臣は、今まで広報啓発に努めてきたけれどもだめだ、だから罰則をつけないと実効性がないんじゃないかとおっしゃいました。ところが、私は、この広報啓発が十分だとはとても思えません。
 例えば、学校分野で出会い系サイトについてちゃんと教育されているかというと、全然足りないというような意見がたくさん寄せられているわけです。教育しているところがあるとしても、それは、出会い系サイトには行かないようにしましょうと先生がどこかで述べた、子供たちは、一体出会い系サイトってどういうものなんだろう、行かないって何だろう、それにぶつかっちゃったとき、どうしたらいいかも教えてくれない。そんなことで、一体、子供に対する教育として十分なんだろうかと。
 これは、実は、親たちのいろいろなメーリングリスト、それこそ、このインターネットという手段を使ったメーリングリストの中などで、かなり学校現場におけるこういった教育の貧困さというのは既に話題になっているところでございます。
 私は、教育というのは非常に重要だと思っておりますし、このインターネットリテラシーを初めとする教育問題というものは、この法案を構成する上で非常に重要なポイントだと思います。悪いと知らされていないで突然罰せられるなんということは、あっていいわけはないわけでありまして、悪いということを繰り返し繰り返し教えられて、そしてその意味を知っていくということが子育ての基本にあると思いますけれども、今回この法案を提出されるに当たって、文部科学省との連携はいかがだったんでしょうか。
谷垣国務大臣 この法案の検討段階そのものでは、委員のおっしゃったインターネットリテラシーということの関係で文部科学省から特段の御意見をいただいたわけではありません。
 ただ、警察と文部科学省の間で、今おっしゃったインターネットリテラシーというんでしょうか、その重要性がありますので、インターネット上の少年に有害なコンテンツ対策研究会というのを設けまして、そこで議論をしているところでありますので、今後とも、そこで積極的な御議論をお願いしたいと思っております。
水島委員 これはインターネットに限らず、メディアリテラシーというのは日本の教育に決定的に欠けているポイントであるということを前から私も主張しておりますけれども、ぜひ、適宜その御議論の経緯をまた御説明いただけますように、警察庁の皆様にはお願いを申し上げたいと思います。
 また、他省庁との連携という意味では、実は、厚生労働省などとの連携も、この問題を考えるに当たって極めて重要でございます。いろいろと子供がその後どういうところに行くかという中で、例えば自立援助ホームなどというところは非常に重要な役割を担っているところでございます。
 大臣は、いろいろ子供の問題にお詳しい大臣でございますので、十分な知識をお持ちだとは思いますけれども、実際、自立援助ホームというのは、本当に善意の人間が、例えば自分の自宅などで本当に行き場のない子供たちを引き取って、そこで生活の場を与えている。
 それまで、一度も大人を信頼したこともない、一度も家族で一緒に食事をとったことがない、あるいは虐待をされ続けてきた子供、行ってらっしゃいと言ってうちを送り出された記憶もない子供、そういった子供を最初引き取りまして、さまざまな問題行動を繰り返し、殴られたりけられたりすることもありながら、そんな中で、それこそ規範を教え、愛情を与え、人を信頼するという気持ちをきちんと植えつけていくという、それが自立援助ホームの役割であるわけです。
 私の身近にも、大変よい自立援助ホームがございます。一生懸命やっていらっしゃいます。でも、子供たちは大きくなりますし、人数もふえてきますので、建物が手狭になって、もうちょっとちゃんとした建物に移りたいと思っても、寄附金が思うように集まらなくて、大変な苦労をして運営をされているわけでございます。
 これから新たに子供たちに新しい罪を科していくということでございますから、法律をつくるのは簡単ですけれども、実際にそこを通ってくる子供たちを支えていく場所を充実させていかないと、先ほど家庭裁判所のことは申しましたけれども、こういう自立援助ホームのようなところに関しましても抜本的に拡充していくという覚悟がなければ、私はこんな法律はつくってはいけないと思います。そのような議論は厚生労働省とはなさいましたでしょうか。
谷垣国務大臣 厚生労働省とは、事前に、この法案を準備しますときに、自立支援施設の収容能力とか今の環境等については必ずしも議論があったわけではありません。また、私も、今の職責から児童自立支援施設の収容能力等についてお答えする立場でもないわけですが、今問題としているネットを利用したものではなく、いわゆる非行少年が保護処分になった後どこで面倒を見てもらっているかという場合には、今委員がおっしゃった児童自立支援施設等は必ずしも十分でないのかもしれません。多くは、保護観察というのが非常にウエートが多くなっている、私の手元の資料ではそうなっております。
水島委員 虐待を受けた子供ですとか、いろいろと家に問題があって問題行動を繰り返してしまう子供ですとか、一度引き離してその後もう一度ちゃんと親子関係をきちんとして家に戻すんだとか、保護観察しながらであればそこの家で暮らせるんだとか、いろいろ考えがちなんですけれども、実際にはそんなふうにも機能できない親がかなりたくさんいますので、そういった受け皿は本当にきちんと充実させていかなければいけないということを、ぜひ、この法案の審議を機に谷垣大臣にも御関心を持っていただきまして、その実態がどうなっているかということを厚生労働省、また法務省などとも力を合わせて御検討をいただければとお願い申し上げます。
 さて、時間もなくなってまいりましたけれども、この法案の中で、ちょっと根本的な質問になりますけれども、ここで、そもそもなぜ書き込みを罰するのか、書き込みがいけないとされるのかということを改めて御答弁いただけますでしょうか。
谷垣国務大臣 法案では不正誘引と言っておりますけれども、これは大体三通りぐらいあると思うんですね。
 一つは、不正誘引を行う、書き込む、またはその書き込みに応じた子供たちが児童買春とかそのほかの犯罪の被害者となる直接のきっかけとなっている。その中には、随分悲惨な事件に巻き込まれてしまう危険性があるということですね。二番目は、不正な誘引が出会い系サイトで公然と行われているということで、児童の性の商品化を助長する非常に大きな要素になっているということが言えると思います。それから三番目に、子供の側から、書き込みを見た子供が出ますと、何だ、みんなやっているんだというような、ちょっと言葉は悪いかもしれないけれども、ほかの子供たちを巻き込む、助長するといいますか、そういうおそれがある。要するに、不正誘引が公然と行われることに問題があるというふうに考えております。
水島委員 今の、性の商品化を助長するとか、ほかの子供を巻き込む可能性があるとか、そういったことは理解できます。ただ、最初におっしゃった、それが被害者となる直接のきっかけになるということ、これは前から私もどういう理屈だろう、おっしゃっていることはわかるんですけれども、法的にどうなんだろうかということをずっと頭をひねってきたところなんです。
 前回の審議で確かに大臣がそのようなことをおっしゃっておりまして、それに関して、先日来ていただきました法務省の刑事局長が、この委員会におきまして、「大臣がそこまでおっしゃっているかどうか、ちょっとよく、そういうことではないのではないかという気もいたしますが、本法案におきましては、インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等を罪としておりますのは、当該児童についての犯罪被害を防止することを一義的に考えているのではなく、児童一般を性的行為の対象とする社会的風潮を助長し、ひいては児童一般が児童買春等の犯罪に巻き込まれることを防止するためであると承知しておりまして、」と答弁をされております。
 恐らく、今大臣がおっしゃった三点のうち後の二点の方だけを刑事局長が答弁されているようでございますけれども、今回の、この書き込むことを罰するということ、その根拠に関しまして、警察庁と法務省との間でもしかしたらずれがあるのではないかと私、前から感じてきたんですけれども、確かに、警察庁は事前に私たちのところに来て説明してくださったときにも、保護法益はと聞きますと、子供が殺人事件など凶悪犯罪に巻き込まれないようにと説明してこられました。
 実は、今大臣がおっしゃった二点目と三点目に関しましては、御説明がありましたのは、私は、この審議が始まってからにわかに出てきたように記憶しておりますが、最初から、とにかく子供がこういう事件に巻き込まれないようにということを一貫して説明されてきました。より大きな被害を防ぐために事前の段階で罰則をかけるのだ、そういうことも説明してこられていました。
 本当に法務省との間に立法の根拠といいますか、こういった保護法益に関しての見解の相違はないんでしょうか。
谷垣国務大臣 この間は樋渡刑事局長が答弁されたと思いますが、直接私自身が法務省と議論をしたわけではありませんので、議論の経過は事務当局の方がよくわかると思いますが、私は、法務大臣とは本会議場の議席が隣でございますので、よくこの問題はかなり議論をいたしておりまして、そごがあるというふうには考えておりません。
 要は、多分樋渡刑事局長のおっしゃったことも、個々の児童の生命とか性的な自由とかいうものが保護法益というのではなくて、要するに、インターネットを利用する子供たちが先ほど申し上げたような危険に引きずり込まれていく一般的なおそれといいますか、そういうものを今回の法律によって守ろうとしているところだろうと思います。
 樋渡さんは、そのことを少し私よりも強調されたのか、あるいは、もっとよく言えば私よりもはっきりおっしゃったのかなというふうに思います。
水島委員 この点については、本当はもっと審議時間を確保していただいて、もう少しきちんと大臣と検討させていただきたいところではございましたけれども、質問時間が終わってしまいましたので、とりあえず、きょうは以上とさせていただきますが、実は、先日、この委員会の中で指摘をさせていただきました警察庁の事前説明とこの委員会での答弁の食い違いということに関しまして、政府見解を求めましたところ、警察庁の方から、確かにその説明を事前に行っていなかったということは事実であって、二度とこのようなことが生ずることのないよう、十分に言葉を尽くした事前説明に努めてまいりたい、そのような文書での回答をいただいております。
 こうやって非を認められたというのは、私は警察庁の態度として大変御立派であったと思いますけれども、ちょっと予想外のことでございました。
 ただ、やはりこういう重要な法案を審議するに当たっての準備状況としては、余りにもそれは足りなかったのではないかと私は思いますし、今後、この法案がそんなふうに、きのうときょうと運用状況が全然違うとか、担当者によって全然違って恣意的になるとか、そんなことがあるのではないかと、この一件でもかなり不安を感じたということを最後に申し添えまして、質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。
青山委員長 次に、達増拓也さん。
達増委員 本法案の第三章第七条のところで、インターネット異性紹介事業者に対して児童による利用の禁止の明示等ということが規定されております。
 実は、第六条やその罰則等との関係で、不正誘引行為に当たる一定の誘引について、児童も含めて禁止するということが審議の中で特に取り上げてきているんですが、実は、児童による利用そのものが禁止される法律なわけですね。その場合に、そもそも、こういうインターネット異性紹介事業というものを児童が利用してはならない、そういう禁止を事業者がきちっと明示していくことは当然必要なわけですけれども、やはり、なぜだめなのかということも説明する必要があると思うのです。
 これは、今までの審議や参考人質疑の中でも、なぜだめなのかを児童がきちっと自覚すること、わかった上でやらない、単に禁止されているからやらないというだけではなく、わかった上でないと実効性が上がらないのではないかという議論もありました。
 ですから、インターネット異性紹介事業者は、インターネット異性紹介事業を利用することで児童買春その他の犯罪につながる危険性もあるんだ、そういう危険性についても明示させることが必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
瀬川政府参考人 お答えいたします。
 インターネット異性紹介事業の危険性についてでございますけれども、この法律の三条、四条、五条で、それぞれ、事業者でありますとか保護者でありますとか、国、地方公共団体の責務規定を置いておりまして、ここにおいて、このインターネット異性紹介事業を利用することの危険性ということについては、それぞれの立場で、児童に対してしっかり広報なり教育なり啓発を行っていくということだろうというふうに思います。
 その事業者につきましても、ただいま申し上げましたように、三条に、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資するよう努めるという責務が決められておりますので、この範囲内において各事業者が取り組んでいただけるものというふうに期待をしておりますし、また、私どもとしましても、関係省庁とも連携をいたしまして、関係事業者のこの点についての協力、努力というものをお願いしてまいりたいと考えております。
達増委員 第六条に規定されているような不正誘引行為を児童がしたときどうするか、罰則を科すのかどうかという議論、これは、そもそも児童がインターネット異性紹介事業を利用しないという部分が徹底されればそれほど問題にならないわけでありまして、およそインターネット異性紹介事業というものを児童が利用してはならないという、ここをいかに徹底させていくかということが非常に重要だと思うんですね。
 今の答弁にもありましたが、第三条、四条、五条のところで、事業者や保護者、そして国や地方公共団体に責務を設けているわけですけれども、特に第五条では、国と地方公共団体は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に関する教育及び啓発に努めるということが書かれております。この教育啓発がどれだけ効果的に行われるかというのが、この立法目的達成、どのくらいできるかに大きくかかわってくると思うんですけれども、具体的にどのような施策を想定しているんでしょうか。
瀬川政府参考人 第五条の、国、地方公共団体の教育啓発の具体的内容についてのお尋ねでございます。
 具体的に例を挙げて御説明をさせていただきますと、例えば、警察といたしましては、出会い系サイトを利用した犯罪の被害実態を取りまとめまして、各種のメディアを通じて情報発信をする。そのことによって、出会い系サイトの危険性について周知をしてまいるということを考えております。
 それから、出会い系サイトを利用した児童の犯罪被害の実態に関して広報啓発の資料を作成いたしました。私ども、少年問題に取り組む中で、例えば非行防止教室といったものを各学校等に赴いてやっておりますけれども、こういった中で、児童に対しても、こういったものを活用しながら、具体的に、教育といいますか、広報といいますか、啓発をしてまいりたいと考えております。
 それから、先ほどの水島議員の御議論の中にもございましたが、関係省庁、文科省等でございますけれども、協力いたしまして、子供たちがインターネットを適切に利用、活用していくための必要な情報モラルとでもいいましょうか、そういったものの育成についての指導内容、方法について、各種の指導資料をつくりまして、これを普及することによって子供たちのそういったリテラシーといいますか、その向上に努めていく、こういったことを考えております。
達増委員 この教育及び啓発ということ、先ほども水島委員の質問の中で広報啓発ということについて議論がありましたけれども、非常に決定的に重要なんだと思います。
 ですから、実効が上がるような教育及び啓発ということを、これは警察庁のみならず、文部科学省でありますとか、IT推進本部でしたか、こういう高度情報通信社会のあり方について取り組んでいる中でも、いわば総理を先頭にして、内閣を挙げてこういう教育啓発に取り組んでいかなければならないんだと思います。
 私は反対しているわけですけれども、仮に、この国会でこの法律が児童に対する罰則というのも含めて成立した場合を考えますと、法の不知、違法だということを知らないことはその罪を免れる理由にはならないというのは、これは法律の基本なんですけれども、児童でありますから、十八歳未満の児童の場合、官報を読んだりはまずしないと思いますし、新聞も、きちんと読む人もいれば全然読まない人もいるでしょう。テレビのニュースすら見ない人たちもいると思います。そういう中で、何をしたら罰せられるかということについて、この法律は、やはりかなりややこしくなっていると思うんですね。
 そもそも、やってはいけないこととして、およそインターネット異性紹介事業、いわゆる出会い系サイトを児童は利用してはいけないわけでありますけれども、それが不正誘引行為に当たらなければ罰は受けないというような、じゃ、不正誘引行為は何かというと、かなりややこしい構成になっていますので、もし児童を罰するというのであれば、それはかなり徹底的に、どういうときに罰せられるかを児童に対しても、すべての児童がわかるような、まさにそういう広報啓発をやらないと、これはやはり法の運用としてフェアでない、法治主義のあり方としてフェアでないと思うのです。
 もし、それだけ徹底して、こういうことをしたら罰せられるというのを広報啓発あるいは教育啓発していくだけのエネルギーを割くのであれば、そもそも、およそインターネット異性紹介事業を利用してはならないということで、徹底的に教育啓発をしていくことで、その危険性も含めて、児童が利用してはいけないのだと。これは違法じゃないからやるんだ、みんながやっているからやるんだ、こういったことを防ぐことができると思うのです。
 そのような教育啓発の効果ということと、また、事業者に対してこの法律はかなり規制を設け、罰則も設けているわけでありますし、また、この第六条の不正誘引行為の禁止規定、児童に対しても当てはまるわけでありますけれども、この禁止規定というものがあれば、児童に対する刑罰を設けなくてもかなりの効果が期待されると思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 今、達増さんがおっしゃいましたように、教育啓発は基本的に大事だと思います。五条の規定はそこにあるわけですけれども、特に子供に対して、子供ですからまさか官報を読むわけもないわけで、この法律の内容が理解を得られるような工夫が基本的に必要だと私は思います。
 しかし、私、警察を所管する大臣になりまして、教育啓発だけで犯罪が防げれば本当にうれしいんですけれども、なかなかそうはまいりません。
 そこで、もう一つは、事業者規制みたいなもので、子供がそういう場に巻き込まれないようにできるだけしていこうということで事業者規制をしているわけですが、これは、先ほども委員がおっしゃいましたように、この表示といいますか、危険性まで全部周知徹底するようにさせろとか、いろいろな手段はあり得ると思いますし、工夫の余地もあると思うんですが、結局、利用者の自主申告に基づく年齢確認措置を超えるということは、ちょっと不可能なわけですね。そうしますと、児童の利用を完全に防止するということまでは、なかなか期しがたいということがあろうかと思います。そういうことで、不正誘引を禁止する利用者規制を設けたわけであります。
 それから、先ほど水島委員にもお答えいたしましたけれども、いろいろ今までも教育啓発とか自主規制をやってきたわけですが、結果として、出会い系サイトの利用を機に凶悪な犯罪に巻き込まれるという事例もふえてきている。そうすると、やはりそこは、単に禁止ということだけではなくて、これは子供だけを罰しようというわけではもちろんございません。だれもがこういう危険性のある行為をしてはならぬということで、一般的な禁止を定立して、そこに一般的な形で刑罰を科していこう。子供の保護というのは、先ほどから御議論になっておりますように、別途、少年法等の適用によってやっていこう。こういう仕組みになっておりますので、御理解を賜りたいと思っております。
達増委員 私の今の質問は、児童に対しては罰則を設けなくても十分効果があるんじゃないかという質問だったんですが、効果の問題よりも、根本的には筋論として、いわば知らない人についていってはいけませんよということなんだと思います。そういう、知らない人についていってはいけないよというときに、知らない人についていくこと自体を罰するということはやはりおかしいのではないか。知らない人についていった結果、児童買春その他の犯罪が発生し得るので、そこから児童を保護することが目的であります。
 凶悪犯罪につながる可能性もあるんですが、例として多いのは児童買春そのものですね。であれば、やはり児童買春をする側、買う側に対する取り締まり、罰則、そういったところを中心に、さらには社会全体の、あるいは地域の環境、そういった総合的な施策によって、そういう事件に至らないように政府を挙げて取り組んでいくことが筋であって、教育啓発というのがその中でも非常に重要だと思うのです。
 大人たちがさまざまな形で努力と工夫を重ねて児童を保護していかなければならない。それがうまくいかないときの責任を、大人たちが一部責任を放棄して児童に対して責任を負わせる形、罰則を与えるということで児童に対して責任を問うというのは、大人社会の責任放棄じゃないかと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 確かに、そういういろいろな他の手段、刑罰に至らない、よりいわば間接的な手法で子供をこういう場に近づけないことに成功すれば私はそれはいいんだろうと思うのです。
 ただ、今、児童買春そのものを取り締まるということをおっしゃいましたけれども、この強烈な手法は、児童買春、児童ポルノ法というのをやっていただきましたね。あれはやはり日本の法律の中では画期的な法律だと思うのです。
 つまり、子供をいわゆる買う方、管理売春や何かは今までいろいろあれされておりましたが、買う方、買うことそのものが犯罪であるという法律を、子供の場合にはそうだという規範を定立して、実際それで取り締まられている人がたくさん出ているわけですから、相当強烈な手段を用意した。まだ十分取り締まれているかどうかは私もわかりません。暗数も随分あるんでしょう。
 しかし、相当な手段をつくっていただいたし、また今も議員立法で改正の議論をだんだんしていただくことになるんだろうと思いますが、他方で、こういう問題が、ああいう法律ができてからもふえてきているという現状ですね。やはり私は、そういうことを考えると、筋論として委員のおっしゃる理想はわからないわけではありませんけれども、なかなかそれだけでは隔靴掻痒なんじゃないかという思いがするわけであります。
達増委員 では、時間ですので終わります。
青山委員長 次に、石井郁子さん。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 私は、この法案の質疑に当たりまして、子供の権利、子供の保護という観点からずっとただしてまいりました。これまでも政府からいろいろ御説明、大臣の御答弁もいただいておりますので、きょうは、確認的な質問ということで何問かさせていただきたいと思っています。
 もう既に今お話がありましたように、児童買春禁止法では、子供は被害者である、買う大人の側が問題であるということで、子供には加罰されないということで、子供の権利がちゃんと明記されるということだったと思うのです。
 問題は、この法案は、要するに書き込みのサイトに大変ないろいろな不正なというような書き込みがあるということで、買春等の犯罪被害から児童を防止するために、サイトの書き込みというその段階で規制をするという御説明だと思うんですね。
 私は、まだ行為に及んでいない、要するに書き込みをしただけ、実際そこから何が起こるか全然まだわからない、いたずら心で書いている子もあるかもしれないというようなことを含めまして、御説明で、前段行為の段階で規制をする、処罰の対象にするというのは、いかにも過剰規制ではないのかということはずっとぬぐえないわけです。改めてこの問題、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。
谷垣国務大臣 先ほど水島委員にお答えしたことと重複しますけれども、私は三つ申し上げているんですね。一つは、そこに自分が書き込んでいく、あるいは、だれかがこういう子がいますよといって書き込んでいく。それは、児童買春だけではなくて、場合によれば殺人に至るような危険性をはらんでいる行為であるということ。それから第二番目に、性の商品化を助長するおそれが非常に高い。それから三番目に、あの子もやっているんだからというようないわば誘引になる。こういう三つを挙げておりますけれども、インターネットを利用する子供たち一般に対して、私はこれは危険性をはらむ行為だと思います。
 今委員がおっしゃったことは、児童との性交とかあるいは対価を伴う交際というのは、それ自体は犯罪ではないじゃないか、だけれども、そのいわば前段階みたいなものを罰するのは投網をかけ過ぎじゃないかということであろうかと思いますが、前段階ということではなくて、インターネットを利用する子供たちに対する危険性ということに私は着目しているわけであります。
石井(郁)委員 そういう御説明なんですけれども、しかし、いかにも、誘引行為、一行か二行かの書き込みで処罰、加罰ということはちょっとやり過ぎではないかというのはどうしたって、これは平行線かもしれませんけれども、私はやはりやるべきではないという立場でございます。
 具体的な例で一つ伺っておきたいんですけれども、二〇〇一年九月に中国自動車道での少女監禁致死事件がございました。その判決ですけれども、ここでは、被害者である少女が出会い系サービスであるツーショットダイヤルに電話をしたということの落ち度というのが問われているようなんですね。それで、この少女は死んでいるわけですけれども、被告は懲役十二年の求刑が六年に減じられている。
 だから、少女側も落ち度があるんじゃないかということでこういう判決だということが言われているわけですが、今回、こういう加罰の法律がない段階でも、既に通話とか書き込みをもって児童の側が問題ありということでこんな判決になっているということがありますので、私は、この法律ができれば一層こうした傾向が進みやしないかという危惧を持っておりますので、これはぜひ大臣から、しかるべく御答弁いただければと思います。
谷垣国務大臣 今お引きになった判決、これは裁判所が出された判決ですから、警察を管理する立場にいる私が、判決がいいとか悪いとかコメントするのはよくないんだろうと思います。
 しかし、この法律ができますと、いわゆる事業者、インターネット異性紹介事業の利用を防止する措置がつくられているわけですね。だから、そもそも児童がこういう場に、出会い系サイトに接触していく、接近していく機会そのものが減少するんだろうと思います。
 それから、この法律では、事業者や児童の保護者、それから国とか地方公共団体に対しても、それぞれ、その立場に応じた責務というものを規定しておりますので、先ほどから御議論のような広報啓発とかあるいは保護者の指導といった取り組みで、児童の側も、こういうインターネット異性紹介事業を利用してはならない、不正誘引をしてはならないという規範が少しずつ定着していくことを私は期待をしております。
 この法律によって御懸念のような事件が大幅に減少することが期待できるのじゃないかと思っておりますので、先ほどおっしゃったような御懸念はむしろ減っていくんじゃないかなと私は思うのです。
石井(郁)委員 そこまでにしておきますけれども、この法案の前提に、要するに、書き込みをするのは圧倒的に子供の側だ、少女の側ですということがずっと言われましたよね。これは「「出会い系サイト」を利用した児童買春事件の状況」という中で、きっかけの圧倒的多数は女子児童からの勧誘です、九割ですということがずっと根拠にされてきたんですけれども、私は、この問題はもう少し立ち入って見る必要があるんじゃないかと。
 例えば、よく言われるように、女子中高生が書き込みをしているけれども、それは本当に本人が自発的というか、本人の意思からやったものか、それとも第三者がバックにいて書き込ませているかもしれないとか、今の社会でいえばそこまであるでしょうということが一つ。
 それから、書き込みをする子供自身が本当にどんな心理、あるいはどういう背景から、どんな要因、環境からそういう書き込みという行為に走っているのか。子供の側の書き込みの状況というか、これ自身は調べられたことがあるんだろうかということが一つ。いろいろ調査を見ても出てこないんですね。結果として、圧倒的に女の子です、女子がやっています、これだけでは余りにも表面的過ぎると言わなければなりません。
谷垣国務大臣 ちょっと、今委員のおっしゃったことで私の認識と違いますのは、九十一・何%がむしろ子供の側から書き込んでいるといいますのは、いわゆる出会い系サイトを利用した書き込みといいますか、利用のパーセンテージを申しているわけではありませんで、これをきっかけに犯罪に巻き込まれた件がございます。そういう場合にどっちから書き込んでいるかという調査で、九割以上が子供の側から書き込んでいた。
 一般の利用から見ますと、そんなに、子供の側の書き込みが九十何%に及ぶわけではありません。むしろ、子供の側から書き込むと危険性が高かったことに私は衝撃を受けたというふうにこれまでの委員会でも答弁させていただいているわけです。
 それから、あとは何でしたか。(石井(郁)委員「書き込みをする子供の心理」と呼ぶ)これは、実はこの間も、多分水島委員でしたか、その答弁で申し上げたことでありますけれども、警察も、これはなかなか、網羅的に調べると申しましても、警察のようなところにそういう子供たちが通常接触してくれることも必ずしも多くないんですが、実際に子供と、そういうことで困った子供たち、いろいろな困った状況に巻き込まれている子供たちの接触、指導、こういう少年係の活動というのは随分警察も蓄積がございますので、その辺の、どこまで子供たちの心理に肉薄できているかということはございますけれども、やはり日本の組織の中では、大きな経験を持っているところは警察なのではないかなと思っております。
石井(郁)委員 私がこの質問をしましたのは、この法案提出の経緯ともちょっと関係しているんです。
 言われますように、少年有害環境対策研究会の研究を経て法案提出に至ったということがあるかと思うんですが、どうもこの研究会では、有識者の方が構成メンバーとなって、特に大学の先生方等々いらっしゃいますけれども、一つは、その中で、こういう事件はどのくらいあったかという状況はありますけれども、本当に子供がなぜこういうインターネットのサイトに書き込むのかとか、その書き込んだ子供たちは一体どういう子供たちなのかとか、何がこういうことをさせているのかとか、そのあたりのことがどうも見えないんですね。
 だから、もっと、今の子供たちが大変そういう書き込みが多い、多いと言う前に、本当に今、子供の中にそういうことをめぐってどういうことが起きているのか、なぜ書き込むのか。これも最初から、禁止をする、規制をするときに、公然としたサイトがあるとそれに引き込まれてというか、誘われてどんどん書く子がふえるからだ、こう言われるんですけれども、今そういうことがなぜ起こっているのかということをちゃんと子供の側からつかまないと、本当にその子供に有効なメッセージを送っていくことができるのかというのが一つあると思うんですよ。
 どうも私は、大人の側から、今こんな大変なことが起こっている、これは規制しなければいけないということから始まっているようなことがうかがえてなりませんので、一つ言いたいのは、この法案の作成でも、やはりもっと子供の側の意見を聞くことが必要ではなかったのかということ。
 それから、特にNGOですね、こういう問題を取り組んでいらっしゃるNGOあるいは民間の団体、そういう団体からの意見がもっと反映されれば、この法案がもう少し、まあ私たちは後で反対をしますので、違ったものになりはしないかということがありますので、そこを一つお尋ねをしておきたかったわけでございます。
谷垣国務大臣 去年十二月に、先ほど引かれました中間検討案を公表しまして、それから、国民の意見を幅広く募集いたしまして、四百二十九件意見が寄せられたところであります。
 これらの意見の中で、中学生、高校生と明記している、あるいはこれに相当する年齢を書いて出てきた意見は十九件ありました。その中で否定的な意見は八件、その多くは、趣味の仲間とか相談相手を探すサイトが利用できなくなることは困る、こういうことでした。この点については、インターネット異性紹介事業の定義に反映させて、趣味のインターネットサイトを利用できなくなるなんということはないようにしているわけです。
 このほか、NGOとか学校関係者、それから民間インターネット事業者、こういった方々からも随分意見を寄せていただいております。
 それから、去年十一月に、NGOとかPTA、ボランティアあるいは関係業界、そのほか有識者に参加をしていただいて、出会い系サイト問題に関するシンポジウムというのをやりまして、そこで、児童買春の防止に取り組むNGOとかPTAからいろいろ意見もいただいて、そういうのも、及ばずながら我々としては酌み取らせていただいているつもりでございます。
石井(郁)委員 私も、この提言のパンフの中で、中学生、高校生の意見の状況というのは見ております。
 しかし、どうもこれは子供の一面ではないのかという気がしてならない。つまり、書き込みをする子供というのはこういう意見も出せない子供ではないのかということもありまして、何かそういう形で、もっと私たちが子供の声を酌み取るような努力をしなければいけなかったのじゃないかという思いが、これを読んでなおさら思っておりますので、そのことを申し上げました。
 時間が参りましたので、以上で終わります。
青山委員長 次に、保坂展人さん。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 まず、谷垣大臣に伺いたいんですが、本当に簡単なことなんで、事実を確認したいんです。
 さきの委員会で、さまざまなウエブ上の三つだとか、あるいはメールを利用した場合はどうかとか質問したところ、答弁がちょっと混乱しているように思いました。そこで、野党全体で政府に統一した見解を求めたいということで、きょう、こちらの方をいただいたんですが、これは政府の統一した見解というふうに受けとめてよろしいですか。大臣、説明を受けていますか。
谷垣国務大臣 はい、説明を受けております。
保坂(展)委員 つまり、政府見解と受けとめていいんですか。
谷垣国務大臣 政府見解といいますか、この問題に関する政府は警察がやっておりますので、警察で議論した見解でございます。
保坂(展)委員 政府見解を求めたのですが、警察庁の見解が来たので、そのあたりをどう整理されているのかなということをちょっと疑問に思いますね。
 質問時間が限られていますので、この事業の定義について問題にしたわけですけれども、では、局長の方にお聞きしていきます。
 定義については、一番で、異性交際希望者が、二番目に、公衆の閲覧できる状態でその情報を伝達して、三番目に、その異性交際希望者がメールや電気通信を利用して相互に連絡がとれるような形態をとり、四番目に、それが事業としてあるかどうかというのが、この四つの条件であるということですね。
 それで、一覧表で見せていただいた中には、単純BBS方式の場合について、例えば、注がありまして、これは「通常該当しない」というふうに書いてあります。つまり、相互に連絡がとれるというふうには受けとめられないということなので、しかし、そこに、レス方式は該当しないんですということをわざわざ書いてあるんですね。
 それなら、どういう要件を満たせば該当するのか。例えば、電話番号やメールアドレスを示していたらこれは該当するのかというあたりは、いかがですか。
瀬川政府参考人 この資料におきます単純BBSというのは、相互に連絡する機能をそもそも持っていないものを前提として単純BBS型というふうにして置いているものでございまして、相互に連絡ができるような機能を持たせるというようなものがもしあったとすれば、それは、この表に従って言いますと、メッセージ取次型というふうに理解される形となり、該当するということになるだろうと思います。
保坂(展)委員 ツーショット・チャット型については、私が尋ねたとおり、それ自体ではこの事業者ということにはならないけれども、まず、公衆の閲覧というところで、ウエブページなどに掲載されていればこれは入るということなんですが、それはメールマガジン方式やメーリングリストなど、ほかの方式でも同じでしょうか。
瀬川政府参考人 同様に考えられると思います。
保坂(展)委員 この警察庁の見解の中に、会員制のものについてはこの法律に規定するところの事業者に該当しないんだというふうに書いてありますが、いわゆる出会い系サイトの場合、非常に簡単に、クリックすると、そこから会員に登録をしてという、形状は会員制なんですね。この辺の概念はどう整理されていますか。会員制のものは、公衆の閲覧にという部分でそごを来さないでしょうか。
瀬川政府参考人 御指摘のその部分といいますのは、「メールマガジン、メーリングリストの会員にあてられたメール自体は、異性交際希望者が相互に連絡するメールには該当しない。」という部分のことに関する御質問だと思いますが、これは、要するに会員にあてられたメールでございますので、会員相互の連絡というものではないという意味で、相互に連絡するメールに該当しないというふうに御説明を申し上げたところでございます。
保坂(展)委員 ちょっとまだ答弁が足らないように思います。
 これは、出会い系サイトが、いわゆる通常の形で会員制をとっている、それは、いわゆる会員制といっても非常に幅広い枠なんですけれども、そこと矛盾しないかどうかということを聞いたんです。
 もう一つ聞きますけれども、今度は、メールマガジン、メーリングリストでは、どういう形状だったら該当するということになるんでしょうか。「通常該当しない」というふうにみんな書いてありますけれども、通常じゃないものというのはどういうことを要件としているんですか。
瀬川政府参考人 メールマガジンやメーリングリストの中の個々のメールをだれもが閲覧できるようにしているもので、その書き込みを公衆が閲覧することができる状態に置いてこれを伝達するものであるというふうに評価できるようなものであること、そして、こうしたメールマガジンやメーリングリストの共通の掲示板上に部外者が書き込みをしている場合であって、そのメーリングリスト等に参加している者や部外者が相互に連絡できるようなものという場合であれば、これは、ほかの要件、異性紹介事業かどうかというような要件もございますが、インターネット異性紹介事業に該当し得る場合も考えられるということでございます。
保坂(展)委員 やはり、水島さんのお話もありましたけれども、メールマガジンやメーリングリストは入りませんというふうに私どもは説明を受けてきまして、入らないのかと、普通はそれ以上のことは考えないわけですね、いろいろな法案がありますから。しかし、よくよく、細かく見ていくと、今言われたように、入る場合もあるということがこの見解でもやはり明らかになったと思うのです。
 さて、さきの質問で、私自身も、どうなっているのかなと非常に驚いたのは、例の結婚の話なんですよ。十七歳の女の子と結婚したい三十歳男ということについては不正誘引に当たらないということでしたけれども、逆に、僕と結婚を前提につき合ってくれる女の子を探したいと言えば、これは対償性があるだろうというふうにお答えになった。
 それで、隠語的なものを、サイトなどで結婚がそういうことをあらわしているということであれば、これは状況を見てというようなことでありました。その後、年収を示したり、金融業で離婚歴があるけれども、そういう条件をつけた場合にどうかと言ったら、これは当たらないと言われたり、ちょっと答弁がおかしかったなと思うんですが、整理されましたでしょうか。
瀬川政府参考人 前回の委員会におきまして、結婚しようという誘引につきましては、その結婚というのは、社会通念上の結婚を意味するということを前提に、通常は不正誘引に該当するものではないというふうにお答えをいたしました。それから、結婚を前提としてつき合おうという誘引につきましても、通常の社会通念で判断いたしますれば、それは不正誘引に該当するものではございません。
 説明が不十分だったかもしれませんが、私がそのとき御説明申し上げたかったのは、いずれの場合にも共通だろうと思いますけれども、このような文言が、例えば結婚という言葉がそのサイトにおいて特別な意味を持つ、例えば児童を性交等の相手方とするようなことを意味するというふうな使われ方をしているようなものであれば、その全体の状況から判断して、それは不正誘引に該当する可能性もあるということを申し上げたわけであります。
 いずれにいたしましても、この六条の要件に該当するかどうかというのは、その際にも御答弁申し上げたと思いますが、そのサイトの全体の状況や書き込みの状況等の事実関係を見きわめた上で、個別の事例に即して具体的に判断されるべきものと考えております。
保坂(展)委員 重要なところで、時間が非常に限られてまいりましたので、三人の方にぜひ続けて答弁をいただきたいんですね。
 これは、私、もう指摘だけになると思いますが、隠語というのはまずいと思います、隠語というのは。というのは、これは外形的な事実、つまり書き込みですから、行為を処罰じゃなくて、不正誘引は書き込みですから、文章です。文章の中に、例えば、結婚あるいは交際あるいはモデル募集とか、そういうさまざまなものが隠語的に響くかどうかということまで問題にすると、外形的な事実かどうかが処罰対象じゃなくて、いわゆる心の中の本音、どういう心を持っていたかということが処罰対象になりかねないということで、例えばモデル募集、十代の女の子とやっただけでも引っかかるのかというような誤解、私は、それはこの法律を逸脱していると考えているんです。
 ということで、この法律については、立法意図はしっかりわかります。わかりますけれども、しかし、かなりかちっとしたガイドラインをつくってもらわないといろいろな混乱が起きるんじゃないかということで、これは、最後に大臣にお願いしたいんですけれども、総務省にせっかく来ていただいているので統括官と、そしてまた、通信の秘密という部分で局長にも来ていただいていますので、続けてお答えいただいた上で、大臣の見解を伺って終わりたいと思います。
清水政府参考人 法案の趣旨が、いわゆる出会い系サイトを利用して児童を性交等の相手にするように誘引することを禁止する目的でございます。
 したがって、そうした行為が行われているサイト以外に、当然、健全なサイトというものがあるわけでございまして、それを運営している事業者と申しますか、それを運営している人が、いわば無用な混乱を起こしたり、あるいは無用に腰が引けたりというようなことがあってはいけないわけでして、それぞれの事業者から見て、その個々のサービスが今回の法案のケースの場合にどう当たるのかということが、まず第一にわかりやすくなっていなければいけないということ。
 それから、このガイドライン作成のときには、当然、総務省としても、やはりその事例が具体的になっておりませんと、これもまたむしろ無用な混乱を引き起こしかねませんので、そのあたり、わかりやすいこと、それから具体的であることというような点を中心に協議を行ってまいる所存でございます。
有冨政府参考人 今、先生から通信の秘密の関係について御質問がありましたけれども、通信の秘密もたびたびのお話でございますが、個人の私生活の自由を保護し、個人生活の安寧を保障する。通信が人間の社会生活にとって必要不可欠なコミュニケーション手段であるというようなことで、思想、表現の自由や、あるいは憲法においても基本的人権として保障されている。
 これにつきまして、この法案の関係で言いますと、捜査機関がサイトを見るというようなことが多々あるわけでありますけれども、一般に、インターネットの中のサイトについて、不特定の者が受信できる、こういうオープンな状態に置かれているものにつきまして、その表示内容を捜査機関が一般の受信者と同じような立場で単に受信をして見ているだけというのであれば、これは通信の秘密あるいは通信の自由を侵害することにならない、こういうようなことで、警察当局にも意思疎通を図っているところでございます。
保坂(展)委員 先ほどの件、外形的な事実、大臣に伺いたいんですけれども、これは誘引行為という行為に至る呼びかけですから、いわゆる街頭で声を出したということですね。そこの中に、確かに対償を示して、そういうのはいけないし、それに近いものもいけないけれども、幅広いんですね。隠語とか、そういうふうにやっちゃうと、これは少し広過ぎるんじゃないかという点についてと、もう一つ、重要な件、成り済ましというのがあります。
 例えば、私の電話番号あるいはだれかの電話番号を勝手に変えちゃった場合、そうすると、これは社会的な制裁が重いわけですね。しかし、やっていない。あるいは、携帯電話が盗まれてしまった、それでやられちゃった、こういう場合のいわゆる冤罪などの危険もやはり一応考えておかなきゃいけないと思いますが、いかがでしょうか。
谷垣国務大臣 今の保坂さんがおっしゃった隠語はいかぬというのは、私はちょっと違うと思うのです。
 というのは、例えば薬物をやる場合でも、ヤクというのは隠語なのか通常使われる言葉なのかわかりませんが、かつては、ヤクというのは隠語だったと思うんですね。ヤクをくれ、よしわかったと……(保坂(展)委員「結婚ですよ」と呼ぶ)いや、ですから、つまり、その場合も、隠語というのは、それがどういう意味を持っているのかというのは、内心の意思に即して考えるというよりも、その社会でその言葉がどういう意味を持っているのかということで判断していくわけですから、私は、構成要件の明確性というのは損なわれないというふうに解釈しております。もちろん、刑事法ですから、そういう当てはめが不明確にならないように厳正に捜査を遂げるということは当然ですけれども、その点は、私は御心配ないのじゃないかと思います。
 それからもう一つ、成り済ましというのは、この場合だけではなく、いろいろな犯罪にもそれはあるわけでありまして、いわば、この場合で特に考えなきゃならないのは、人の携帯電話なんかを利用したらだれが実際にメールを出したのかわかりにくいというところにあるわけでありまして、これはしかし、成り済まされた人が犯罪者になるわけではないことは明々白々であります。成り済まされた、つまり、名前をかたられた方が……(保坂(展)委員「疑われます」と呼ぶ)疑われる。
 だから、問題は、つまり、あとは捜査の手法ということになるわけであります。その疑われた人に無用な負担をかけることがないようにしていくとか、いろいろなことを考えながらやっていかなければならないと思いますが、これは、どういう犯罪にも場合によってはあることでありますから、その辺は捜査の手法を磨いていくということだろうと思います。
保坂(展)委員 時間ですので終わります。
青山委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
青山委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石毛えい子さん。
石毛委員 民主党・無所属クラブの石毛えい子です。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出のインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制に関する法律案に反対する立場から討論を行います。
 近年、少年犯罪被害が急増し、少年犯罪も深刻化しています。そして、携帯電話やインターネットなどが、生活利便の向上に役立つのみならず、犯罪などに悪用される側面も、残念ながら事実として存在します。特に、いわゆる出会い系サイトに係る事件は急増しています。児童の犯罪被害が増加し、大人社会のモラル低下が子供たちにも影響しつつあることに対して、国政の立場にある者として、また、大人の一人として、私は強い責任を感じます。
 私たちは、出会い系サイトを媒介にしたものを含め、異性交際に係る犯罪を防ぐためには、売買春を行う者、そのあっせんや管理を行う者、誘引や勧誘の媒体を提供する者等に対する規制を強化することが必要だと考えます。また、児童保護の観点からも、子供たちに対して、社会的規範が存在し、行った行為に対して一定の措置があり得ることを示す必要性も認識しています。しかし、その規制は、有効性、透明性、明快性を兼ね備えて初めて意味を持ちます。政府提出法案は、まさにこの点で難点があり、欠陥や弊害の方が多いと言わざるを得ません。
 以下、政府案に反対する理由を具体的に申し述べます。
 第一は、政府案では、警察がインターネット異性紹介事業者等を規制するスキームがあいまい、不透明であることです。本法案では、インターネット異性紹介事業等の定義が不明確であることから、どのような事業形態、機能、利用方法が本法の規制対象に該当するかは、事実上、警察の裁量に大きく任されます。その結果、事業者に対して警察が恣意的かつ過剰に介入したり、逆に、警察と業界のなれ合いで運用が決まったりするという懸念がぬぐえません。また、警察当局による誤用や乱用の危険が大きいという弊害も指摘できます。例えば、成り済ましによって、実際には関係ない人の個人情報が当局に把握される可能性や過剰捜査の危険性があります。
 第二は、本来必要であるべきインターネット異性紹介事業者等に対する規制が、実効性の乏しいものになっていることです。例えば、悪質なサイトを排除したり、子供の利用を防止したりすることに対して、事業者に努力義務規定を課すにとどまっていること、児童ではないことの確認方法が甘いこと、IT技術の高度利用を念頭に置いて規制する観点が弱いこと等です。本法案の不十分な規制が既成事実化すれば、抜け穴利用の横行を見る危険性は決して小さくありません。
 第三は、児童買春、児童ポルノ法の改正という抜本的な対策を怠っていることです。出会い系サイトのみに対象を絞って本法案のような中途半端な規制案を導入しても、効果は少なく、弊害の方が大きいと考えます。
 第四に、本法案には児童の保護育成や教育という観点が極めて弱いことです。インターネット異性紹介事業を利用した児童買春その他の犯罪行為によって児童が受けるおそれのある心身の被害に関する教育やケアが余りに不足しています。
 第五に、政府の準備不足と無責任な姿勢を指摘しておかなければなりません。本委員会を含め、さまざまな機会でなされた政府側の答弁、説明は二転三転したものが多々あり、今現在に至っても、解釈等が不明確な項目も残っています。法律家や研究者を初め、多くの有識者の間からも、本法案の問題点を指摘する声が上がっているにもかかわらず、このようなありさまでは、法の適正な執行にも懸念が残ります。政府には猛省を促したいと思います。
 以上述べました理由により、また、野党四党の共同議論を通じて共通の認識を深めた結果、私たちは、政府案には反対いたします。
 最後に、未成年者の犯罪被害や犯罪への関与を減らし、大人社会も含めて日本にモラルを回復するために、私たちは、児童買春、児童ポルノ法の罰則強化等、法の実効性を高めるための抜本的な対策に着手することを約束し、私の討論を終わります。(拍手)
青山委員長 達増拓也さん。
達増委員 自由党を代表して、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案に反対の討論を行います。
 コンピューター、インターネット、そして携帯電話等の高度情報通信技術の発達は、個人の能力を無限に向かって高める可能性と、社会を大きく改革する可能性を開きました。高度情報通信技術は、善用されれば、個人に高度な自己実現をもたらし、社会の発展や成熟を可能にしますが、悪用されれば、個人に堕落と破滅をもたらし、社会を混乱に陥れます。
 一方、古今東西、性、セクシュアリティーは、個人と社会に対し、善悪双方への無限の可能性を開くものとして、人類の諸文明あるいは諸国民の文化の中で、あこがれや尊敬、あるいは嫌悪や恐怖の対象でありました。
 これら二種類の善悪双方に対する無限の可能性が交錯するところに立たせられた児童の健全育成をいかにして実現するか。それが、本法案に関し、当委員会に課せられた課題であります。
 本法案は、いわゆる出会い系サイトの児童による利用について、児童の保護のために、一定の誘引行為を行った児童本人にも刑罰を科することとしていますが、これは、新しい可能性を前に、新しい自己規律を個人的にも社会的にも工夫していかなければならない大人たちが、その責任を一部放棄して児童に過大な責任を求めるものであり、賛成できません。
 高度情報通信社会において個人や社会を守るには、個人に対してより高い倫理性とより強い精神力が求められるのであり、罰則で縛ることよりも教育啓発こそが重要であること、児童に対しては特にそうであることを指摘し、私の反対討論を終わります。(拍手)
青山委員長 石井郁子さん。
石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案に反対の討論を行います。
 本法案によって、出会い系サイトで売買春等の誘引の書き込みをしただけで児童に罰則が科せられるのは、児童を保護するという法案の目的に矛盾すると言わざるを得ません。児童買春など本来児童が被害者として扱われるべき諸犯罪において、誘引行為を切り離して児童を処罰の対象にすることは、犯罪に巻き込まれるのは児童にも落ち度があると、児童にも責任をかぶせようとするものです。これは、児童売買春はあくまで児童を買った大人の責任とする児童買春禁止法や子どもの権利条約、ストックホルム宣言などの画期的な精神を後退させるものであり、容認できません。本来は児童を問題行動に追い込んでいる環境や風潮をつくり出している大人の責任こそが問われるべきであり、本法案第九条で事業者に対しては児童の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止措置を努力義務にとどめているのは、大人の責任をあいまいにしていると言わざるを得ません。
 また、規制対象の定義は範囲が広過ぎるのではないか、捜査方法など警察の職権が不明確で、サイト開設者や児童のプライバシー・通信の秘密が不当に侵され、市民生活への過剰規制につながるのではないかという不安もぬぐえません。犯罪被害の防止と捜査の効率性を対立的な構図として解決せず、国民の諸権利と調和した適切な規制方法のためにも、定義や職権について一層の明確化が求められることを指摘して、反対討論を終わります。(拍手)
青山委員長 保坂展人さん。
保坂(展)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案について反対の討論を行います。
 いわゆる出会い系サイトを利用した児童犯罪被害の現状や、これを利用した児童が被害者となる事件の状況、あるいは携帯電話から簡単にアクセスできるこれらの現状には看過できないものがあると考えております。したがって、このような出会い系サイトを利用した子供の売買春の勧誘行為をしない、させないという取り組みは必要なことと考えております。しかし、今回の法律案では、児童を加罰の対象といたしました。
 日本は、九六年の第一回の子供の商業的性的搾取に反対する世界会議に参加をし、ストックホルム宣言、行動綱領に賛同し、九九年には児童買春禁止法を施行し、二〇〇一年に国内行動計画を策定、そして第二回世界会議を横浜において主催しております。
 これらの歩みの中では、子供の買春が子供の人権侵害として許されないものであり、子供の性を買う大人の側の意識を変革することによってその根絶が早急に図られなければならない、このような理念に基づいて、買春者の処罰の強化、子供の非処罰化、被害者としての保護制度の創設、これらをうたっております。今回の法律は、これを大幅に逸脱するものでございます。
 しかし、今回の政府案は、さらに出会い系サイトの定義が非常に広く、ユーザーの書き込みの内容によって過剰な規制になるおそれがあります。プライバシーの権利を不当に侵害し、表現の自由、通信の秘密の保障に反するおそれがあり、示された警察庁作成の見解を見ても、まだなお政府部内の議論が整っていないということを感じさせます。ぜひ、このような法律が、インターネット社会のいわば過剰な規制と萎縮をもたらさないようにするべきだと考えます。
 十分な世論形成、大人の側の意識改革、各省庁の取り組みの強化、本来であれば、ガイドラインなどが作成をされて、本委員会に提出をして、十分な議論をした上で、ここが取り締まり対象であるということを明示された上での審議であれば、なお一層の理解が得られたものと思いますが、残念ながら、そのようなことにはなっておりませんでした。
 したがって、子供を加罰対象にしたこと、ネット社会の進展を妨げる危険があることなどから反対の意思を表明し、私の討論を終わります。(拍手)
青山委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
青山委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
青山委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
青山委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、馳浩さん外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 ただいま議題となりましたインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。
    インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。
 一 児童が保護育成の対象であることにかんがみ、その生育環境及び発達の状況を十分に考慮するとともに、児童の権利に関する条約に基づき、児童の最善の利益が図られるよう努めること。
 一 本来、児童買春とは、買春する側の大人の責任であることを強く認識し、本法第六条に違反した児童の処遇にあっては、児童の心身の状況、その置かれている環境等に応じた相談、指導等必要な保護のための体制の充実強化に努めること。
 一 本法による規制が、憲法に保障されている通信の秘密等の基本的人権を侵害することのないよう十分に配慮するとともに、その運用に当たっては、職権が濫用されることのないよう厳に留意し、IT社会の進展の妨げとならないよう努めること。
 一 インターネット異性紹介事業者に対して、インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪行為により児童が心身の被害を受けるおそれがあることを明示するよう指導すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
青山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
青山委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、谷垣国家公安委員会委員長から発言を求められておりますので、これを許します。谷垣国家公安委員会委員長。
谷垣国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重して努力してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
青山委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
青山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十一分散会


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