衆議院

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第9号 平成15年5月29日(木曜日)

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平成十五年五月二十九日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 青山 二三君
   理事 馳   浩君 理事 林田  彪君
   理事 松宮  勲君 理事 森田 健作君
   理事 水島 広子君 理事 山口  壯君
   理事 福島  豊君
      小渕 優子君    岡下 信子君
      上川 陽子君    河野 太郎君
      左藤  章君    保利 耕輔君
      大石 尚子君    鎌田さゆり君
      小宮山洋子君    肥田美代子君
      佐藤 公治君    石井 郁子君
      保坂 展人君    山谷えり子君
    …………………………………
   参考人
   (全国児童相談所長会会長
   )
   (東京都児童相談センター
   所長)          金内 善健君
   参考人
   (全国児童養護施設協議会
   会長)
   (共生会希望の家施設長) 福島 一雄君
   参考人
   (アン基金プロジェクト事
   務局長)
   (東京都養育家庭)    坂本 和子君
   参考人
   (日本子どもの虐待防止研
   究会理事(制度検討委員長
   ))
   (日本弁護士連合会子ども
   の権利委員会委員(福祉小
   委員長))        平湯 真人君
   衆議院調査局青少年問題に
   関する特別調査室長    石田 俊彦君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十九日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     左藤  章君
  達増 拓也君     佐藤 公治君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     上川 陽子君
  佐藤 公治君     達増 拓也君
同日
 理事達増拓也君同日委員辞任につき、その補欠として達増拓也君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 青少年問題に関する件(児童虐待問題)

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     ――――◇―――――
青山委員長 これより会議を開きます。
 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。
 本日は、参考人として、全国児童相談所長会会長・東京都児童相談センター所長金内善健さん、全国児童養護施設協議会会長・共生会希望の家施設長福島一雄さん、アン基金プロジェクト事務局長・東京都養育家庭坂本和子さん、日本子どもの虐待防止研究会理事(制度検討委員長)・日本弁護士連合会子どもの権利委員会委員(福祉小委員長)平湯真人さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、参考人各位から、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず金内参考人にお願いいたします。
金内参考人 今、御紹介をいただきました金内でございます。私は、全国児童相談所所長会の会長をしております。本来は東京都児童相談センターの所長でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は、このような発言の場を与えていただき、厚く御礼を申し上げます。
 私からは、全国の児童相談所における虐待相談の処理状況や東京都の実態調査結果などを通じまして、児童虐待の実情を報告いたします。
 あわせまして、防止法等に関して、現場の私どもが感じております必要な改善点につきましても、お話しさせていただきたいと存じます。
 恐れ入りますが、資料に沿って説明をさせていただきます。まず、一ページをお開きいただきたいと思います。
 平成九年度から十三年度までの、全国の児童相談所で処理をしました件数の推移を示したものでございます。十年ほど前から児童虐待の件数が増加してきましたが、国会における防止法制定に関する論議が活発になる十一年度には特に大きく増加しており、最近五年間で四倍強の増加となっております。
 二ページをお開き願います。
 まず、上段は、経路別の件数でございますが、網かけをしてあります「近隣知人」の件数が特に伸びております。防止法制定の動きの中で、世間一般の虐待防止への理解が高まったことを示すものと思われます。
 その下の表は、虐待の種類別の件数でございます。全体の件数がふえる中でも、特に「ネグレクト」「心理的虐待」が増加傾向を示しております。これらの虐待は外見からは判断が難しいため、潜在化する可能性が大きいものですが、これらの増加傾向から、表面化していないケースへの対応策や親の虐待への理解・指導の面での対策を充実する必要があると考えております。
 次に、三ページをお開き願います。
 上の表は、虐待を受けた児童の年齢別の状況でございます。小学生以下の児童で八五%を占めており、安定した養育環境が特に大切な時期の子供たちに対して重大な影響が懸念され、精神的なケアを含む対策の拡充が求められております。
 また、下のグラフで示されておりますように、実の父母による虐待件数を合わせますと八五%、特に、実母のみで六三%を占めておりまして、子育て家庭に対する育児支援の必要性が認められます。
 四ページをお開き願います。ここから九ページまでの資料は、東京都が、平成十二年度に都内十一の児童相談所で扱ったすべての虐待相談事例を独自に調査分析してまとめた虐待白書からの数字でございます。
 四ページの上段のグラフは、虐待の重症度の分布を示したものでございます。
 生命の危機にかかわる傷害を受けるなどの「生命の危機あり」という区分から、たたいてしまいそう、世話をしたくないなどの虐待を危惧する訴え等がありまして助言などが必要という「虐待の危惧あり」の区分まで、五つの区分に分類をしたものです。子供への暴力等が一時的であったり親子関係に重篤の病理が認められない「軽度虐待」、それから、それより軽度の「虐待の危惧あり」の両者を合わせますと五四%で、全体の半数を超えています。
 これらのことからは、地域を中心とした子育て支援が虐待の予防や重症化の防止に効果が上がると考えられます。
 また、四ページ下の図は、通告されるまでどのくらいの虐待期間があったのかを調べた結果です。一年以上のケースが四三%もあります。虐待を受けた期間が長期化すると、子供の心身への影響が深刻になってまいります。早期発見のための取り組みの充実が必要であると思います。
 続いて、五ページをお開きください。
 虐待を受けた子供の認識や意向を示した図表でございます。
 上の8は、虐待自体を子供がどのように理解しているかについて示したものですが、棒グラフの一番下の部分が「自分は悪くないのに不当にひどいことをされた」と認識している区分で、全体で二一%しかいないことを示しております。一方、「虐待を受けたと感じていない」子供が全体で二九%もいますし、虐待の種類が「ネグレクトのみ」の区分に該当する児童では、五一%もの児童が虐待を受けているとは感じていないという結果でした。
 その下の図表9は、親との同居に対する意向についてでございます。低年齢の子供ほど、親との同居の意向が強くなっています。小学校高学年でも、同居の希望が拒否しているものの約二倍になっております。親子分離を考える場合でも、また、家族関係の再構築を検討する上でも、こうした子供の心情に対する配慮が必要です。
 続いて、六ページをお開きください。
 上は、虐待者の意識に関する調査結果です。実母、継母等が虐待を認めて援助を求めている率が高い反面、実父、継父等の男性の方は、虐待の行為を認めない、行為を認めてもしつけと主張している、この二つの率が高くなっておりまして、指導上の困難さを裏づける結果となっております。
 その下の表でございます。虐待につながると思われる家庭の主たる要因と従たる要因とを示したものです。「経済的困難」とともに「孤立」がすべての項目について示されており、周囲との関係がとれない家庭に虐待が起こりやすいことがうかがわれます。
 七ページをお開きください。
 児童虐待の相談対応の一般的な流れを示しております。
 家庭や関係機関から虐待の相談や通告があると、まず緊急会議を招集し、直面している状況判断と当面の対処方針を立てた上で、必要な調査を開始いたします。調査で得られました情報に基づき、適宜、対処方針の検証を行いながら、さまざまな面からの診断を行っていきます。
 この間、地域の関係機関とも連携しながら、状況に応じた対応を進めます。必要に応じて、立入調査を実施したり、児童を緊急に一時保護するケースもあります。判断材料がそろったところで、所内の処遇会議で最終方針を決定いたします。処遇の決定の段階でも、児童相談所と親の意向が対立したり複雑困難な事例の場合には、児童福祉審議会の意見を求める手順を踏みます。
 また、児童を親から分離して施設入所や里親委託が必要であると児童相談所が判断しても、それについて親がどうしても承諾しない場合は、家庭裁判所の承認を得て、施設入所や里親委託を進めます。その後、親子分離をしたケース、在宅で指導するケース、いずれの場合も、児童にとってより望ましい家族関係の再構築に向けて、関係機関が連携して対応することになります。
 次の八ページをごらんください。
 ただいま御説明しましたような対応の結果、相談事例の状況によりさまざまな援助の形態が生じますが、その内容を整理したものでございます。
 続いて、九ページをごらんいただきたいと思います。
 虐待を行った保護者の児童相談所に対する反応についてでございます。児童相談所の指導に応じる者は四割にすぎません。明確に拒否する者が一八%います。
 その下の図表は、虐待者の施設入所に対する同意の状況を示したものです。比較的簡単に同意したのは三三%で、同意がとれず在宅のままの指導を続けているケースが二九%あります。
 同意が得られない場合でも、児相が施設入所の必要性が高いと判断する場合は、児童福祉法二十八条を根拠に、家庭裁判所の承認を得て施設入所措置を行っております。ちなみに、東京都では、十三年度、十七件の請求を家裁に対して行っておりますが、審判が出るまで平均二、三カ月を要します。この間、子供たちが不安定な立場に置かれますので、保全処分をつけていただくことが要望されます。
 次に、十ページをお開き願います。
 この表は、私ども全国児童相談所長会として検討した事項ごとに、法律への反映状況に対する各児童相談所長の評価を調査いたしまして、平成十四年六月にまとめたものでございます。
 ここの表には示しておりませんが、この調査の際には、防止法の総合的な評価についても聞いております。そこでは、評価をしながらも不十分さを指摘するという回答が大半でございました。
 個別の事項に関する評価がこの表に示されているわけでございますけれども、「評価しない」とする率が高いのは、6の後見人選任制度についてです。児童相談所長が個人として後見人になる現行制度について、機関として対応できるように要望したところですが、改善されなかった点には六割が批判的でございました。
 また、7の親権停止につきましては、児童福祉法二十八条に基づく家庭裁判所の承認による施設入所の場合に限っており、しかも面会、通信の制限のみにとどまっていることに四割が批判的であるという結果でした。
 続きまして、十一ページをお開き願います。
 ここからは、東京都の児童相談所が対応しました具体的な事例を三点紹介しております。
 まず、十一ページの事例1についてでございます。
 実母と養父が三年余にわたり、子供を施錠した部屋に閉じ込め、食事も十分に与えず、児相が立入調査をして一時保護した事例でございます。本児は五歳でしたが、生後九カ月程度の発育状態であり、やせ細り、みずから排便する体力もない状態でした。
 近隣住民が、妹たちは見かけるが、本児の姿をずっと見ていないと通報してきたケースです。サラ金等の問題から居どころを隠すなど、社会との関係を避けている家庭であり、発見がおくれるとともに、通告後の接触も困難であった事例です。
 ハイリスク家庭を把握する手法の確立や、身近な区市町村の役割の強化を図り、地域での早期発見から早期支援につなげるシステムの構築が求められております。そうした視点からの法整備が必要であると思います。
 次の事例2をごらんいただきたいと思います。
 母子世帯で、母親が育児に関して極端な偏りがあり、外出もしないで引きこもってしまった家庭です。母親から育児上の相談が電話で保健所に寄せられましたので、養育内容が察知され、保健所も児相も再三接触を試みましたが、拒否され続けたケースです。
 問題がある家庭と認識しつつも、約一年間有効な手だてを講じることができず、すきをとらえて強制立ち入りを行いました。その結果、児童相談所と母親とは対立関係になり、児童相談所に連日押しかけ、引き取り要求をし、それ以上の話し合いが全くできませんでした。その後、保健所を中心に親への支援を続け、ようやく一年後に児童相談所の指導にも応じるようになり、現在は、家族再統合プログラムにのせて支援をしております。
 このようなハイリスク家庭への有効な支援策が必要な事例は多いと思われます。そのほか、立入調査権の内容を明確化し、タイミングを失せず立入調査ができるようにすること、また、介入と支援との機能を分離し、関係機関の役割分担を明確にするなどの仕組みが求められております。
 続いて十三ページ、事例3をお開き願います。
 この事例は、施設入所後の保護者からの強引な行動に児童相談所が対抗できず、家庭に引き取られた事例です。
 児童相談所の指導に拒否的であり、当初反対していた施設入所について、一たんは承諾し、施設に入所いたしましたが、その後すぐ、学校からの下校時に強引に児童を連れ去ってしまいました。
 現在の法律では、親権の効力が強大なため、このような場合、迅速かつ有効な手段がありません。同意による入所や一時保護の場合などにおいても、必要な場合は親権を一時的に制限できる規定の整備が必要と考えられます。
 なお、全国児童相談所長会といたしましては、現在、防止法の見直しに関して意見を取りまとめているところでございます。
 以上で私の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、福島参考人にお願いいたします。
福島参考人 御紹介いただきました全国児童養護施設協議会の会長の福島と申します。都内葛飾区で定員四十名という小さな児童養護施設の長をしております。
 今回、青少年特委でまた、三年後の見直しということで虐待防止法を取り上げていただきまして、本当に感謝申し上げておりますと同時に、御期待を申し上げております。
 御案内のとおり、児童養護施設は、全国に五百五十カ所、約三万名の子供たちが入所しておりまして、今、金内参考人の方からお話がございましたように、早期発見、早期対応ということも非常に大切ですし、それを受けて、親子分離したお子さんを施設に入所させて心のケアを図っていくということも非常に大切な問題だということで、我々児童養護施設としましては、本当に今、子供にとっての心の居場所づくりに懸命に努力をしている最中でございます。
 虐待防止法の制定後、大きく変わったのは、今も説明がありましたとおり、児童養護施設にも年々虐待を受けた子供たちが多く入ってきておりまして、東京都はもちろんですけれども、首都圏を初め都市部はほとんど、昨年は年度途中でいっぱいになりまして、もう入れない、それほど定員がいっぱいになってきたというような状況でございます。私の施設も、昨年度もそうでしたし、この四月も定員がいっぱいでして、出ない限りは一人も入れないという状況でございます。
 そういうことで、全体的に児童養護施設が満杯状況になってきて、これからどうするかというようなことも大きな問題になっておりますけれども、虐待を受けた子供たちが、今説明があったように、全部が施設に入ってくるわけではなくて、一七%ほどしか入ってこない。そのうち、相談の件数のうちの二〇%程度が事実ではなかったということ、それを差し引いても六〇%程度がまた家に戻ってしまうということで、その後のケアをどうしているのかというのは非常にまた問題だというふうに、大きな課題になっているということでございます。
 児童養護施設も、入所してくる子供たちの過半数が虐待を受けた子供たちでございまして、それについては、この「もっと、もっと知ってほしい児童養護施設」という資料をごらんいただければと思います。
 虐待を受けた子供たちの多くの特徴が、親から虐待を受けた子供なので、最も愛されて依存していた親から、本来は愛されなければならないのにもかかわらず虐待を受けるということで、子供は本当に大きな深い傷を負っておりまして、その中で、虐待を受けた多くの子供たちが大人をあるいは他人を信頼できなくなっている、そういった状況にあります。自分以外は全部敵というような子供もいたりしまして、お医者さんなんかは、これはコミュニケーション障害だねと、そういう医療用語があるのかよくわかりませんけれども、そういうふうに診断されたということでございます。
 そのほかに、感情のコントロールがきかなくて、物を投げたり、あるいは他人をたたいたり、暴言を吐いたりというような状況で、その対応に大変な思いをしているわけですけれども、これから夏に向かっていくわけですが、職員は、特に女性の職員は、半そでにはなれない。半そでですと、かみつかれたり、つねられたり、たたかれたりして、それで、その傷を見せるわけにいかなくて、長そでになって仕事をするというのが大体の傾向でございます。
 施設としては、心の居場所のために、生活を通して子供との関係を、一度愛着関係が壊れたところをもう一回立て直しをしてということで、職員もそういった子供たちとの信頼関係をつくるのに努力を図っているわけです。
 基本的には、職員の数も少ないですけれども、生活を援助する職員のケアだけでは十分ではないということで、国の方では、法制定後、対応として、虐待を受けた子供が各施設に対して十人を超えれば、非常勤の専門職員、つまり心理治療の職員を置ける、そういう制度をつくっていただきました。でも、十人を超えなければだめということで、今設置されているのは、多分、五百五十カ所のうち三百人を超える程度だというふうに思っております。それも非常勤でして、それで十分なのか。
 私どもの施設は四十名という小さな施設ですけれども、十九名ほど心理治療を受けております。そういう意味で、今非常勤を四人抱えておりまして、その四人が回していかないと本当のケアにならないということで、カウンセリングあるいはプレーセラピーを中心にということです。心理治療だけでは不十分な子供については、近く、近くといっても車で三十分ぐらいのところの専門の医師のところに行きまして、治療を受けております。性的な加害を受けた小学校三年生ぐらいの女の子は、やはりその後遺症が激しくて、専門的な治療を必要とするというような状況になっております。
 そんなことで、子供たちは、虐待を受けた当初は、面会に来るよと親が付き添ってきても固まってしまって、親が帰った後、僕は、私は来ても会わないよというふうなことで面会拒否をするんですけれども、一年ぐらいたちますと、やはり親を求めていく。
 例えば、三階から、虐待されて都営住宅の小さなベランダのところに押し込められて、食事も与えられなくて、寒くて、そこから飛びおりちゃった子がいるんですけれども、その子供も、当初は絶対会わないと言っていた。そういう子供が、一年後には、お母さんに会いたいと。
 それは、自分が飛びおりたときにお母さんは自分を病院に連れていってくれた、だから僕のことを見捨ててはいないというような、そういう期待を込めているわけですし、ほとんどの子供が、うちには「こころのぽすと」という投書箱があるんですが、そこに、虐待を受けた子供が親に会いたいという訴えをする投書も入ってきているわけです。
 そういうことで、虐待を受けて分離した子供も、ほかの子供たちには面会とか、時には一時帰省で戻っていくときもあるんですけれども、そういうことがなくて、やはり親を求めていくというようなことなんです。
 でも、基本的には、今うちに高校生が八人いるんですけれども、その子たちの半分は虐待を受けた子供で、当初、入ってきたときは、幼児期に入ってきたあるいは小学校の低学年時期でということで、家族の再統合と簡単に言いますけれども、なかなか再統合ができないということで、子供は必死になって求めていく。
 今高校二年生の女の子なんですけれども、この子は、排せつの自立に失敗して、親からせっかんを受けて、虐待されて、それで親子分離して私どもの施設に入ったのが幼児期、小学校に上がる直前だったんですが、その子は、虐待された子供に似合わず非常に優しい子でして、その親を待ち受けて今まで来たんですけれども、再統合しそうだなと思うとまただめになったりしていた。
 でも、その親がこの間事故に遭いまして、お母さんはその事故でほとんど自立できなくて車いすの生活になってしまっている。その高校生の女の子は、学校が終わるとせっせと見舞いに行って、それこそ毎日行って洗濯をしてということで、それがその子にとって生きがいになっているというほど、親に対する思いも非常に強い。
 そういうことで、ケアをしていくということは非常に大切なことで、と同時に、やはり親へのケアが非常に抜けちゃっていて、それで子供のケアが、年数はかかっても改善されるんですけれども、肝心の親のケアが十分じゃないもので、それで再統合ができないというような状況になっております。
 ともかく、我々の方としましては、この「近未来像2」というのが手元にございますとおり、児童養護施設自体も、ただ問題が発生してその子供たちのケアで終わるということじゃなくて、基本的には、やはり児童虐待防止法の名前のとおり、いかに子供の虐待を防ぐか、そういうための子育て支援を児童養護施設もやっていかなきゃいけないということで、本来は入所サービス専門だったのを、在宅サービスもしたらどうかとか、あるいは通所サービスも子育て支援もしていこう、それによって虐待を防いでいこう、そういうことで、児童養護施設のあり方を抜本的に見直していこう、そういう動きまで来ております。
 いずれにしましても、児童養護施設も一生懸命心の居場所をつくるための努力をしておりますけれども、まだまだ行政的な施策が十分じゃないということで、本当の居場所づくりができておりません。
 そんなことで、どうぞ、先生方のお力添えで、見直しを図っていただければと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、坂本参考人にお願いいたします。
坂本参考人 私は二十年前に、東京都の制度である養育家庭制度と申しまして、お間違えがあってはいけないので、ちょっとそこのところを御説明しますが、養子縁組とは違う、養育の専任の里親になりまして、三人の子供とかかわりました。
 そして今、一応、アン基金プロジェクトの事務局長をしておりますが、五年前に、養育家庭をしている者たち及び経験した者たちで、どうしても、児童福祉法によって、十八歳になりますと里親制度から切れていきますので、その後も、どうしてもこういう子供たちは社会に出ていくところに問題がございますので、そこを自分一人で里親として見ていくのが非常に重いということを里親会でも議論いたしまして、それで、二十五人の経験者たち及び現役の里親さんたちで、主に子供の自立支援ということを目的としたアン基金プロジェクトという市民の活動を始めております。
 そして、きょうはこのようなところに呼んでいただきましたことを大変うれしく思っておりますが、三年前に、児童虐待の防止等に関する法律をつくっていただきましたことに心より感謝申し上げたいと思っております。
 それで、私どもも、非常に意識がなかったということを反省している者たちなんですね。虐待防止法と簡単に言わせていただきますが、あの虐待防止法ができましたときに、きょういらしていらっしゃる児童相談所の方も、それから養護施設の方も自治体の方も、さまざまな波紋が広がったと思いますが、何より、この里親たちの世界の中で衝撃が走りました。
 というのは、あそこに虐待の定義が書いてございますよね。えっ、私たちが今まで何にも知らないで一生懸命育ててきた子たち、あの方のおうちのお子さんも、この方のおうちのお子さんも、私のところの子供も、この虐待に入っているんだということに、もう本当にびっくりして、愕然としたというところが本当なのでございます。
 勉強不足と言われれば本当に反省の一途なんですけれども、えっ、これは大変だ、こんなにすごいことを私たちは任されていたのかという、その思いで、三年前の、虐待防止法が施行されたのが忘れもしない十一月の二十日ですが、一カ月後の十二月十七日に緊急集会を、学者の方とかジャーナリストの方たちと御一緒に立ち上げまして、里親制度はこのままでいいのかという会をいたしました。
 そこから、私どもアン基金は、実は自立支援の団体のはずだったんですけれども、この虐待の防止法ができたおかげといったらよろしいかわからないのですけれども、もう、余儀なく走り回るような状況になりまして、さまざまなところに訴えていっているような状況でございます。
 ですから、このようなところにまで本当にずうずうしく、しゃしゃり出てといったらおかしいのですけれども、そのような事態になっているわけなんですが、これからお話ししますのは、アン基金のメンバーの者たちが経験したこと、それは全員東京都の養育家庭の方たちでございます。プライバシーのことがありますので仮名を使わせていただきますが、お話しすることはすべて真実でございます。
 私どもの主要なメンバーで、イソさんという方がいらっしゃるのですが、その方は、小学生の二人のお姉ちゃんと弟さんを、きょうだいとして一度に引き受けました。
 そのときに、引き受けて、行ったときの状態は、親御さんに放置された状態が長く続いておりまして、アパートに行ったらば、足の踏み場もないほどにカップラーメンだのいろいろなのが散乱しておりまして、弟の方はどうにかちょっと元気でいたんですね。でも、お姉ちゃんは、もう十歳だったんですけれども、横たわって全然動けないんですね。餓死寸前という状態だったのです。それでも、その方は、とにかく自分に御縁のあった子供たちだからということで、その二人を、児童相談所の方から委託をされまして、育て始めました。
 今、福島先生の方からも、本当に養護施設の指導員の先生たちも同じ御苦労をなさっているんだなということがよくわかりますが、何しろ、その子たちが来てから、ちょっとでも気に入らないことがあると非常に爆発的に、パニックというんでしょうか、お姉ちゃんなんかはいすを投げたり、おうちの中が本当に人に見られないぐらいに、壁に穴があいたり、そういう状態になる。物だけだったらいいのですけれども、里親さんに向かってくるんですね。
 それで、その方は何カ所も骨折をなさって、それから、その経験から、子供が来ると、まずぎゅっと親指を握って握りこぶしをつくって、身構えてその子に対応しなきゃいけないというようなことが一年以上続いたんです。
 私どもの中でもこの里親さんは非常に私どもが尊敬する里親さんなんですけれども、ナポレオンじゃありませんが、私の辞書に子供を返すという言葉はないんだと。とにかくこの子たちをこの家庭で守り抜くんだ、育て続けるんだということでずっとやっていらっしゃいました。
 今は、二人とも三十歳前後になっておりまして、弟さんの方はちゃんと大学も行かれまして、お仕事をしていらっしゃるし、お姉ちゃんの方は、やはりこういう子供の事件というのはどうしても年長の子に非常に重い深刻な影響がありまして、お姉ちゃんの方が非常に難しいんですね。それで、今でもなかなか人とよくお話ができなかったりしますが、一応、弟さんと同じ公団に、お部屋は別ですけれども住んで、どうにか、アルバイト的なお仕事ですけれども、することができるようになっております。
 そして、その里親さんはずっと見守っております。それはやはり、人の子供にはそういう人間がいませんと生きていかれないということが私どもにわかっておりますので、それを担うということで続けております。そこのところが養護施設と違うかなと思っております。
 それから、次の方はキタさんという方で、幼稚園前の女の子をお引き受けになったんですね。そして、初めての日に一緒におふろに入りましたらば、首から上の見えるところじゃなくて、体のところ、それから手の甲とかにも、どう見てもたばこの火を押しつけたのがそこらじゅうにいっぱいあったお子さんだそうです。
 小さいですから、そういうことは自分では気がつかないでいるんですけれども、小学校ぐらいになって、やはり手の甲にありますので、友達から聞かれるんですね、その傷はなあにって。それで、その子は帰ってきて、お母さん、ほかの子にはないのに、私はどうしてこういう丸いあざがあるんだろうねと。
 里親さんも、それを聞かれても、それがたばこの火をつけられたのよなんということは答えられない。ですから、どうしてだろうかねとしてきたのですが、高校生ぐらいになってきますと、もうわかるんですね、いろいろな状況を判断できますから。お母さん、これは絶対たばこの火だよねって。でも、それでも里親さんはそうだと言えない。
 この間のお話では、その方は二十三歳になって、今ちゃんと特別養護老人ホームの介護職のお仕事をしていらっしゃるんですけれども、お母さん、この傷を自分は治したいんだ、そして、自分がいろいろ調べたら、形成外科というお医者さんのところで皮膚を移植することができるからやりたいんだけれども、すごくお金がかかるんだよという相談を受けたそうです。それで、その方も、そこまで子供が思っているんだったらば、お母さんたちもその費用を助けるから、それを受けようねというふうに今なっております。
 もう時間が来てしまっているんですけれども、そのほか、虐待によるPTSDだと思うんですけれども、現象としては注意欠陥多動性というお医者様の診断をいただいて、現在、その子を、幼稚園から小学校に入学したところまで育てていらっしゃる方もおります。
 それで、私どもは、みずから手を挙げて里親になりますというふうに言っている者ですので、こういうお子さんたちも、喜んでとまではいかないんですけれども、現に受けておりますし、頑張って育てております。
 それで、ぜひお願いしたいのは、養育をしているときに、一体この子をいつの期間まで育てればいいのかとかいう養育の方針が決まらないと心が定まらないんですね。それで、ぜひ、虐待をしている親御さんの立ち直りのプログラムというのを親御さんにちゃんと受けていただけるような、そういう法的な整備をしていただく。
 現在の親御さんたちは、しつけでやっているんだとか、あるいは御自分で気がつかないで、パニックで子供を虐待してしまっているというような状況の方が多いので、そこのところが、ただいまお話があった、児童相談所の先生方も御苦労していらっしゃるところかと思うんですけれども、ぜひ議員の皆様方のお力によって、この法律の部分のところをよく検討していただいて、親たちが立ち直りのプログラムを受けられるような、その土壌に上がってくるようなシステムをつくっていただきたいんです。今上がってこないわけなんです、親御さんたちもその手前で拒否していますので。
 そういうふうになりましたら、私どもは、私どもが親御さんに言いたい言葉は、里親としてあなたの子供を引き受けて、私もここの家庭で頑張る、だから、あなたもどうか親として踏ん張ってちょうだい、そして、いつかあなたの子供さんがあなたのおうちに帰れるようにずっと応援しているからねというふうに言いたいんです。
 でも、今、それを聞く耳も持っていません方がほとんどですので、そこのところを本当に御議論していただいて、それは多分、司法に介入していただかなきゃいけないんじゃないかなと素人判断で思っているのですが、そこら辺はとても難しいということもお聞きしていますので、どうぞよく御議論していただいて、いい改正をしていただきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 次に、平湯参考人にお願いいたします。
平湯参考人 平湯でございます。
 三年前にこの青少年問題特別委員会の先生方の御尽力によって防止法が制定されましたこと、改めてありがたく思います。そしてまた、見直しの審議をお始めいただいたことについて、大変ありがたく思っております。
 三年前、あるいはそれに先立つ時期と申しますのは、ちょうどさまざまな虐待の事例が新聞、テレビで報道されまして、そしてまた、その直接の行政責任を負った児童相談所が、幾つかの地域を転々とした子供について、連係プレーができなくてみすみす死なせてしまったケースとか、そういう幾つかのケースが報道されて、早期発見、そして児童相談所が早期に介入する、そして子供を保護するということの大事さというのが非常に鮮明に出ていた時期だと思います。
 この防止法もそういう目的に沿って必要な規定を盛り込んでいただいたわけでございますけれども、それによって社会の関心が非常に広まって、通告件数も急増いたしました。また、それに伴っていろいろな問題がまた見えてきたというふうなこの三年間だったと思うわけであります。
 私がかかわっております日本子どもの虐待防止研究会といいますのは、虐待に関するさまざまな分野、福祉、医療、保健、教育、そういうさまざまな分野の専門家を中心にした広い研究団体でありまして、そちらでこの見直しに向けての提言を取りまとめて、ことしの二月に発表させていただいたわけであります。きょうの資料として配っていただいたのがこの四枚つづりのものでございます。
 これは前文の後、1から20まで番号が振ってありまして、そのうちの1と2が総論ということになります。1として、防止法の一条に、虐待が子供の人権の侵害であるということと、それから家族への支援、これを目的として明記していただきたいということであります。
 2は、それを受けまして、虐待防止法の四条、国及び自治体の責務のところでありますけれども、これを大きく拡充していただきたいということであります。
 それから、3以下は各論でありまして、各論のどれが大事でどれが大事でないという優先順位はつけているわけではございませんけれども、それでも、この各論の最初の3のところでございますが、これだけは各論の中でも緊急にやはり重視していただきたいのが3であります。
 先に3を申し上げますと、平たく言いますと、児童相談所の充実強化、特に福祉司の増員、それから児童養護施設などの施設の職員の増員を含めた充実。この児童相談所と児童養護施設がもう大変な事態になっているというのは、きょうのお二人の参考人が既に述べられているわけですけれども、全体的な課題の中でもこれはやはり非常に重要な課題だというふうに言うべきであろうかと思います。
 それから、あと各論の中にはいろいろございます。その中で、司法、裁判所の関与が必要な部分というのが幾つかございます。それについてもきょうはお話しさせていただきたいと思います。
 以下、二点に絞りたいと思いますが、一つは、児童虐待防止法の四条の拡充強化と申しましたけれども、例えばどういうふうにしていただきたいかということを、きょうのもう二枚のペーパーの中の一つでありますが、四条の改正私案というペーパーに即してお話しさせていただきたいと思います。
 現在の四条というのは右の欄にございます。一項、二項、三項。それに対して、希望します改正というのは一項から七項までございます。
 一項でまず何を希望するかと申しますと、児童虐待についてどういうことが課題になるかということを書いたものであります。
 これはいろいろな機会に言われておりますので御理解いただけると思いますが、まず発生予防が大事である、それから早期発見、そして虐待児童の保護、その後の心身の回復、親への援助、それから啓発はもちろんでありますけれども、こういうものが課題になるということです。
 これは当たり前のようでありますけれども、三年前の現行防止法の重点が、先ほど申しましたように、早期発見と保護というところがポイントになっているために、その後の、子供を施設や里親家庭でどう心身の回復を目指すか、あるいは親に対してどのように援助するかというところがやはり足りないといいますか、それがまだ十分でないということを意味しておりますし、もう一つは、早期発見以前の、そもそもの発生予防ということに対しても、大きな施策の重点になるということを強調したいためであります。言いかえますと、全般的な課題を同時並行して推進していかないと、いろいろ足りない点、無理が出てくるということでございます。
 そして、2、3、4、5は、それぞれの課題について項目ごとに設けて、その課題のために必要な方向を書いていただきたい。
 2のところは、発生予防という課題のために、医療機関や母子保健の充実、それから学校などの人権教育、これは、やがて親になる子供のためにも必要ですし、現に家庭で育っている子供のためにも必要でありますが、そのような人権教育というのも発生予防という観点からはやはり必要であろうということであります。
 それから、3のところは、早期発見という課題のためにこのようなことが必要だ。この3というのは、現行の規定の中にもう既に盛り込んであると思います。
 それから、4でありますけれども、これも、被虐待児童の迅速な保護とその後の適切な回復、こういう課題のために、児童相談所や施設などの職員の確保、里親等の充実、こういう施策が必要だということであります。
 この4も現行規定である程度書いてございますが、右の方に書いてございますけれども、児童の保護という言葉だけでは、最初の、危険な子供を急いでとりあえず保護するというニュアンスがありまして、その後の長期にわたる施設や里親家庭での心身の回復ということまで十分出ておりませんので、その点を課題として、適切な回復という課題をきちんと書いた上で、かつ、このような児相職員や施設、里親の充実ということをまた明記していただきたいと思うものであります。
 それから、5について、親への援助ですが、これは現行法ではございません。それに関連する規定は幾つかございますけれども、課題としては明記されておりませんが、虐待防止というのが家族への援助ということであるとするならば、これはぜひ入れていただきたいというのが各方面の希望であります。
 それで、この課題のために具体的に何が必要かということも少し挙げましたけれども、親への援助というのはさまざまございます。経済的な援助、教育的な援助、それから福祉的な援助、あるいは、観点を変えまして、在宅の育児の援助、これは広い意味での子育て支援と通ずるところでありますけれども、そういう幅広い、親へのあるいは家族への援助というのが土台になって、予防にも有効であり、かつ、その後の親への援助でも必要になってくるということであります。
 6と7はこれに関連したことでありますけれども、6というのは、いろいろな機関の連携が必要なんですが、その機関同士の連携がまだまだ十分でないということがございます。
 例えば、学校や保育所が児童相談所に通告まではするけれども、その後の子供の心身の回復や親への援助のためにはまだ十分連携ができないということもありますので、そういうことを明記し、かつ、その連携の軸になる民間団体、例えばきょうおいでのアン基金プロジェクトなどもそうでありますけれども、そういうものの充実に努める必要があるということを特にうたっていただきたいということであります。
 それから、7というのは、地域間格差その他の格差のことであります。
 これは、虐待防止のために何が必要かということを議論するときに常に出てくることでありますけれども、同じ名前を使った機関でも、地域によっていろいろ違う、人によっても違う。違うといいますのは、残念ながら、レベルとして違うということが非常に多々ございます。例えば、児童福祉司の専門職としての採用制度がきちんとできている自治体とそうでない自治体というふうな差もありますし、それから、市町村の対応にしても、これまたいろいろ違うために、児童相談所と市町村の連携ということを議論してもまた違う。そういうことがございますので、この格差是正というのは常に頭に入れていく必要があると思っているわけでございます。
 二点目の話に移らせていただきたいと思います。
 二点目の各論の中で、裁判所の関与が必要な場合ということが幾つかございます。弁護士としていろいろかかわっていることもございますので、この点を特に一項目申し上げさせていただきたいと思いますが、もう一枚のペーパーで、1、2、3と、三つの場合を書きました。この中には、先ほどの児相のお話にありましたようなケースも含んでおります。急ぎ足ですが、申し上げたいと思います。
 1について言いますと、子供を外に出さないで長期間いわば閉じ込めているような場合に、やっと保護したときには体重が標準の半分であったとか、先ほどは、もっとひどい、シビアな例も話に出ました。こういう場合に、中で子供がもう息も絶え絶えというふうな現状がわかっていれば、緊急事態ということで警察官の職務執行法でも対応できますし、あるいは児相自体が玄関のかぎを壊して入るということも、必ずしも違法とは言えない場合もあると思います。
 しかし、そのことがあらかじめ明らかでないときに、つまり、緊急性ということが明らかでないときに、別な言い方をしますと、例えば半年間閉じ込めてあるわけですから、あと一カ月放置したって同じではないか、二カ月だってそんな大して違わないじゃないかという意味で、緊急性が必ずしもわからないときに、じゃ、どうしたらいいのかという問題でございます。このことについては、ひとつ社会的な検討の必要があると思います。
 それから、2については、これは医療拒否であります。このような場合でも現行法では十分な対応ができず、お医者さんが非常に困っているということがしばしば報道されております。きょうの朝日新聞でも、ちょっと場面は違いますけれども、新生児の治療を親が拒んだときに、お医者さんがどうしたらいいか非常に悩んでいるという記事もございました。
 それから、3については、これも先ほどから児相や里親家庭の関係の話がありました。このままでは親が児童相談所のアドバイスや指導に乗らない、これに対してやはり裁判所の関与が必要ではないかというのが、現在、各方面の共通の願いであります。
 以上、まとまりませんでしたが、お話しさせていただきました。(拍手)
青山委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
青山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福島豊さん。
福島委員 おはようございます。
 参考人の皆様には大変貴重な御意見を御開陳いただきまして、心より御礼を申し上げる次第でございます。
 また、平素から児童虐待と児童福祉に関しまして積極的に御貢献いただいておりますことに関しても、心より敬意を表する次第でございます。
 与党三党を代表しまして、質問させていただきたいと思っております。
 まず初めに、金内参考人にお尋ねをいたします。
 幾つも論点がございましたけれども、平湯参考人からお話がございましたように、司法がもっと積極的に関与すべきであると。先ほど、金内参考人からちょうだいしました資料で、家庭裁判所というのはこの七ページのプロセスの中で最後の方に出てくるわけでございます。もう少し家庭裁判所の関与のあり方をさまざまな局面において緊密にすべきだという御指摘だと思いますけれども、児童相談所の立場から考えると、どういうふうな形が望まれるのか、この点について御意見をお聞きしたいと思います。
金内参考人 まず、いろいろな場面で家裁といいますか、司法の関与が必要だろうと思うのです。
 一つは、施設入所等への親の同意がない場合に、やはり今のような審判で行われておりますけれども、平均二、三カ月かかります。したがって、その間、子供が一時保護所という非常に不安定な状態に置かれますので、仮処分等の保全処分を出していただきたいというのがあります。
 それから、先ほど立入調査の話をいたしましたけれども、立入調査の権限が児童相談所にあるわけでございますが、その内容が不明確なために、しかも、先ほど平湯先生の方からもお話がありましたが、我々は危惧があるから入るのであって、裁判の場合は証拠が明確だからできるんでしょうけれども、危惧があるから、虐待のおそれがあるから立入調査をしたいということなんですね。したがって、そういう場合に、やはり立入調査の内容といいますか、もう少し明確な権限を与えていただけたらというふうに思うのです。
 先ほどの事例でもありましたように、逡巡をして強硬に入れない、すきをとらえてというのは、ずっと我々は見ているんです、そこに行って。こういうときに、親がちょっと子供のところから離れる、あるいはうちから出てくる、そういうすきをとらえて立入調査をしているんです。そういう実態を踏まえて、立入調査権について、もう少し明確にしていただきたいということがあります。
 それからもう一つは、先ほどからも出ておりますけれども、施設入所をしたり里親委託をしたら終わりというのが従前の考え方でした。今はそれでは済まないんですね。当然だと思います。子供はやはり実の家庭で育てられるのが一番だと思うのです。それに向けての手だてが何もないんです。
 今、私どもでは家族再統合事業といって、心理療法を中心としたものを行っていますし、それから、いろいろな機関とケースカンファレンスを通じて、支援の具体的な方法について協議をして、家庭に帰した場合の対応を考えています。特に、親に対してどうするか。それについてのやはり法的なバックアップが欲しいというふうに思います。
 大きく分けてあれですけれども、まだ細かいことはありますが、以上を御検討願いたいと思います。
福島委員 時間も限られておりますので、もっといろいろとお聞きしたいんですが、まず親のケアということ、先ほど福島参考人もおっしゃっておられましたが、これをどこがきちっと担うのかという問題だと思うんです。
 先ほど金内参考人のお話にありましたように、児相と親の関係というのは、どちらかというと敵対関係になり得る可能性が高いということになりますね。ですから、親に対してカウンセリングを受けたりとかというさまざまな指示は出すにしても、そこをどういうところが担っていくのか。そしてまた、これはなかなか一朝一夕でうまくいく話ではないのだろうというふうに私は思うんですけれども、そうなると、先ほど坂本参考人がおっしゃられましたように、いつになったらどうなるのかということも見えてこない。
 ですから、一つのプランならプランをつくって進めていく必要がある。そしてまた、そのプランの継続的な実施ということを保証する機関も要るだろう。そこは児相が担うべきなのか、それとも何らかの別の施設、機能を想定すべきなのか。ここのところはどんなお考えか、金内参考人、そしてまた福島参考人にお聞きしたいと思います。
金内参考人 お答えします。
 やはり総合的なコーディネートといいますか、それは私ども児童相談所でなければできないというふうに思います。
 ただ、その支援のやり方というのは、家庭だとか親だとか、あるいは子供の状況によってさまざまでございますので、それについては、我々のコーディネートのもとに適切な機関、それは一つとは限りません。いろいろな機関が連携して行う場合もあろうかと思いますが、そういうような連携の仕組みというのがやはり必要だろう、特に地域レベルでの連携の仕組みが必要だろうというふうに思います。
福島参考人 お答えさせていただきます。
 基本的には児童相談所と児童養護施設とが連携をしながらというふうに思っていますけれども、今一番欠けているのはアセスメントの問題です。このケースをどういうふうに事前に評価をして、それに対して計画をつくりながら、どこがどういうふうな役割を担っていくか、そういうアセスメントをやる機関が本来は児童相談所だと思うんですけれども、児童相談所の機能も今、大変忙しくて、そこまで、十分なところまで踏み込めていない。
 我々の方は、そこのアセスメントの大切さというのをかなり指摘しておりまして、これはどの機関がやるのかということにつきましては、やはり専門的な、比較的自由にというようなことでは、いろいろな人たち、機関を動員しながらやっていくことが必要なのかなというふうに思っております。
 実際にこの子供は施設に入れてどうするつもりなのか、どの期間ぐらいまでの間対応するのかということも、やっと先般の児童福祉法の改正によって、自立支援計画というような意味合いでつくりましたけれども、それも、つくってはみたものの、ある期間、例えば半年後、一年後、ケースは動いていますので、それについての再評価みたいなものができていないというのが実態なので、今先生が御指摘のとおりで、そこら辺はやはり今後十分に考えて、そういうものをつくっていく必要があると思います。
福島委員 今、自立のお話が出ましたが、自立まで持っていくということは非常に大切だと思うんですね。先日も、ある本に書いてありましたけれども、施設から学校に通う、高校に通っても途中で学校に行かなくなる、そしてまた卒業もできない、そうこうしているうちに施設から出なければいけないというようなことで、必ずしも自立に向けてのコースというのは平たんではなくて、そしてまた、子供さんが大きくなると、なかなか内面的なところまで施設の職員の方も十分かかわれるというわけでもない。
 本当に自立した社会人としてしっかりしていくところまで支援するということは必要なんだけれども、どうも途中で、しり切れトンボと言うと言葉が非常に悪くなりますけれども、そういう嫌いもあるのではないか。ここのところもきちっと手当てをしなければいけない大切な課題だと思いますが、福島参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
福島参考人 お答えいたします。
 確かに児童養護施設は、かつての児童福祉法の場合には、親から離れて入所させて養護する、そういう目的だったんですけれども、そこに新しい児童福祉法、数年前の改正によって、自立を目的とするというふうにうたわれました。
 そのとおりでございまして、基本的には自立を支援するためのプログラムを施設がどういうふうに整備していくかということで、私どもの施設の例でいいますと、やはり十八歳で自立をさせるということ自体が非常に今の世の中で本当にできるのかどうなのか、そういう意味では、せめて二十ぐらいまではと。私も大学で授業を持っていますけれども、今の大学生で自立しているようなのが全然見受けられませんけれども。
 ともかく、それでも十八歳で社会に出ていかなきゃいけない子供たちなわけでして、今御指摘のように、途中で中退しちゃうというような例も全体的に、一般の家庭のお子さんと比べて多いのか少ないのかというのはまだ十分に把握しておりませんけれども、そういうのを防ぐためにも、私どもの施設では、もう二十年近く前から自立援助のためのプログラムを用意いたしました。
 例えば、卒園していった子供たちを呼んで、それで、今何が必要なのかという、自立の準備のためのいろいろな提言をしていただいて、それを中学生から高校生まで合宿をして研修をしますので、長い子は六回聞くわけで、そういうところから見ると、自立に対する力というのは、施設ですからいろいろな実習生が来ますけれども、それに比べても随分高いなというふうに思っておりまして、高校を中退する子供はほとんどいない。
 それは、卒業生が、絶対学校だけは何が何でもいいから出ておけというような、そういう指導をしてくれますので、職員が言ってもなかなか聞きませんけれども、自分たちと一緒に生活していった先輩の人たちの話はよく聞いてくれますので、そういうプログラムをつくりながらということで、先般、ことしの三月も、あれだけ虐待を受けて、さまざまな行動をずっと見ていた高校生の子が、自分も児童養護施設の職員をやるんだということで短大に進んでいきました。
 そういうことで、確かに先生の御指摘のようなこともあるわけですけれども、ただ、十八歳以降の問題については、今、民間団体で自立援助ホームという、そういったプログラムを持った施設がありますけれども、やはりそれを拡大していくようなことをやっていくべきだと考えております。
福島委員 次に、坂本参考人にお尋ねしたいんですが、大変とうといお仕事をしておられるなと思ってお伺いいたしておりました。
 先ほど、きょうだいの事例がございましたけれども、児童虐待がさまざまな形で傷を残すということなんだろうと思いますが、となると、養育家庭だけでそういう個々のさまざまなケースに対応するというのがなかなか困難な場合もあると思うんですね。ですから、そこをまたさらに、医学的なケアということもあるでしょうし、バックアップする体制をもっと強化しなきゃいかぬのだろうと思うんですが、この点についてお考えをお聞きしたいと思います。
坂本参考人 今、先生がおっしゃったとおりで、先ほど時間が来てしまったのでなかなかそこまで申し上げられなかったんですが、東京には今、三百家庭ちょっとの養育家庭がございます。詳しいことは児相の先生に聞いていただきたいんですが、養育家庭と申しましても、先ほど私がお話ししているような意識が持てている里親さんというのは、やはり五年以上の、言ってみればベテラン里親さんたちなんですね。初めてなられた里親さんとかまだ一、二年の里親さんは、なかなかそこまで経験がまだ積み重なりません。
 そして、その中には、東京都にも私どもは一生懸命言っているんですが、登録をしていただく里親さんは、それこそさまざまな理由で登録されるんですよ。決まっておりません。例えば私の場合は、自分に子供がいませんでしたので、子供たちを育てたいという理由だった。それから、御自分が子供さんがいらっしゃっても、自分は子育てがとても好きなのでぜひやりたいという方もいらっしゃいますし、本当にその理由はどんな理由でもよろしいんです、里親になっていただければ。
 なっていただいて、登録が済みましたら、理想の里親像というのがあるわけですよね、その方向に向かっての研修というものが始まっていかなければおかしいんですが、それが今なされていないんですね。最初の、私は子供がいないから子供を育てたいという、ただその気持ちのままで子供さんを受けているような状態ですので、やはりこれからは、養育里親はそれではならぬと思います。ですから、学者の先生も初め、ちゃんと里親の像というものをきちっと議論していただいて、そこに向かっての研修を登録直後からぜひ進めていただきたいというのが、私たち里親の願いです。
 それともう一つは、今、専門里親ということも国の方でおっしゃっていますが、私ども一般の里親からいっても、こんなことを言ったら語弊があるんですが、専門里親をつくって、ああ、あの人たちは専門なんだから全部また彼らに任せればいいやとなるんじゃないかしらというふうに非常に恐れているんです。ですから、たとえ専門里親をつくっても、その専門里親さんにも、後ろにお医者様、児童精神科医のお医者様、臨床心理士、ケースワーカー、さまざまな方たちの御支援をつくっていただけなければ、この子供さんたちの幸せが来ないんじゃないかと思っておりますので、その二点は本当によろしくお願いいたします。
福島委員 最後に、平湯参考人にお尋ねをしたいんですが、予防ということが大事だと。先ほど、金内参考人が幾つかのケースを出していただきましたけれども、例えば経済的な問題というのがベースになっている。サラ金に追われてもうにっちもさっちもいかないと。ですから、非常に複雑な家庭というのを背景にしているケースがあるわけですね。
 これを一体どうするんだろうかという話になると、従来、家庭福祉とか、日本の福祉制度の中では十分光が当たっていない分野、開発されていない分野だと私は思うんですが、そういうものを一つのフィールドとしてきちっと築いていかないと、こういう複合的な問題についてはなかなか対応できないんじゃないか。
 もちろん、もう少しマイルドなといいますか、育児不安とかそういうものにつながったようなところは母子保健の中の対応をもうちょっと充実させるということもあると思うんですけれども、複雑な事例に対してまで対応できるような、また、その際にはケースマネジメントということが非常に大切になりますが、なかなか市町村の福祉の現場でそこまで対応できるだろうかという話になると、これもまだ心もとないような気がいたします。
 こういった点について、参考人のお考えをお聞きしたいと思います。
平湯参考人 御指摘のように、この予防という段階は非常に幅が広いし、かつ、虐待防止だけに特化できないいろいろな目的のために必要なことだと思います。
 ただ、こういうことは申し上げられるかと思うんですが、今の家族、家庭がさまざまな困難を抱えて困っているんだ、そういう実態を踏まえて、例えば、社会福祉というのがそれを踏まえて十分機能しているかというところが問われているんだと思います。
 例えば、福祉事務所は生活保護について扱っている。そうしますと、家計、経済のことについてはお詳しいかもしれません。場合によったら、自己破産を申し立てたらどうかというふうなアドバイスもこのごろはされております。弁護士会のサラ金破産相談にも、福祉事務所から勧められて来た、あるいは福祉事務所の方が付き添って来たということもございます。そういう前進はありますし、そういう配慮を家族にかかわるいろいろな関係のお仕事をされる方が考えるようになるということがまず必要だと思うんですね。
 例えば少子化対策というふうな別の切り口からいろいろな関係機関が協力するということも指摘されております。それも大事だと思います。この防止法の中にも、家族支援というのはさまざまなことが必要なんだということをまずは書いていただく、それはいろいろな関係行政の方がそういう認識を持つためにも必要なのではないかというふうにちょっと思っております。
 各論のことは、また別にさせていただきたいと思います。
福島委員 以上で終わります。ありがとうございました。
青山委員長 次に、水島広子さん。
水島委員 民主党の水島広子でございます。
 本日は、参考人の皆様、お忙しい中、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。また、本当に平素より子供たちのために全力でお取り組みをいただいておりますことに、改めて心より感謝を申し上げたいと思います。
 本日、各立場を代表してくださる皆様にお集まりいただいておりますけれども、これで、あとは自立援助ホームの方などの御意見も伺えると、大体トータルに様子を見ることができるのではないかと思っておりまして、またそれは今後の委員会の視察などを利用いたしまして、知識の収集に努めてまいりたいと思っているところでございます。
 私自身も、精神科医として働いてきた立場でございまして、小さなころにさまざまな形で虐待を受けてきた子供たちが、思春期になって、そこでいろいろ心の問題を抱えたあたりを主に診ていた者でございます。
 その虐待は、精神的虐待、また性的虐待はもちろんのこと、ひどい例になりますと、殴られ、けられたあげくに水ぶろに入れられて、上からガムテープで丁寧にふたまでされたというような、そんな体験を持つ子供が、何とか思春期まで生き延びてきてくれて、そしてようやく私のもとに来てくれたなどというようなケースとも直接かかわってまいりました。
 また、もう一方では、子供を虐待してしまう親、虐待してしまいそうな親にもかかわってまいりまして、それは本当に普通に子育てをしている私のような人間とも紙一重のところの話なんだなということを痛感してきた立場でございます。
 中には、本当に確信犯的に、サディスティックに虐待をしている親もごく一部にいることは事実だと思いますけれども、そうでない親も非常に多いのだということから、この問題の解決の手がかりを見つけていかなければいけないと思いましたことも、私が政治の世界に参りました一つの大きな動機でございましたので、ぜひ、今回の審議の中で、本当にしっかりとした議論を尽くしていかなければいけないという責任を強く感じております。
 きょうは、四名の皆様からお話しをいただきまして、ほとんど同じような改正のポイントをおっしゃっていらっしゃったと思います。
 その一つは、親権の柔軟で多様な制約ということでありますし、またもう一つは、虐待した親に対する心理的援助の必要性、また、児童相談所、児童養護施設、また、里親を初めとする関係する方たちの人員をもっと充実させていくということ、それから、この基盤にあります発生予防とそのためのいろいろな施策を講じるという、そのあたりに大体今回の改正のポイントが絞られてくるし、これを一つも落とすことなくきちんと改正しなければいけないんだろうと思っているところでございます。
 そんな中で、少し、これらの必要性、本当に我が事として感じないとなかなか改正というものに全力で取り組んでいくこともできませんので、少し実例をこの場で御紹介いただければと思います。
 まず親権の問題なんですが、先ほどから、親権をちゃんと部分的にあるいは一時的に停止していかないと子供を救えないんだというような趣旨でのお話は実例として挙げていただきましたけれども、もう一つ、現実的な問題といたしまして、私は、虐待される子供たちにかかわっていらっしゃる皆様、身の危険を感じられたことは一度や二度ではないんじゃないかと思います。それは子供から攻撃されるというのではなくて、引き離された親によって命の危険すら感じさせられるようなことがあると思います。
 子供を虐待している親の中には、当然、飲酒をしてめちゃくちゃな暴行を働くような人もいます。子供を取り上げられたことによってパニックになって、また自分が親として否定されたようなことで、その自尊心の傷つきでさらにパニックになって、子供を取り返しに押しかけてくるというようなことは日常的なことだと思うのです。
 そんな中で、分離されてしまった親との関係でいろいろと苦労されること、特に身の危険を感じるとか、本当に自分がこの仕事を続けていけるだろうかというような、そんな不安すら感じるようなこともあるかもしれないんですが、そんな実例をもしも教えていただければ教えていただきたく、これは金内参考人、そして福島参考人、坂本参考人、それぞれのお立場であると思います。また、お仲間の方からお聞きになった話でも結構でございますけれども、ぜひ委員の皆さんにお話しいただけますようお願いいたします。
金内参考人 先ほど御紹介しました事例というのはポイントをちょっと絞っておりますので、もう少し詳しく申し上げたいということと、そのほかのケースにありました事例も含めて申し上げたいと思います。
 先ほど、閉じこもってなかなか中に入れなかったというケースがありました、精神的なものもありまして。その場合に、やはり親がそういう錯乱状態に陥っちゃまずいというので、親を保護すると同時に、我々もその暴力に対して身を守るということで、非常に身構えて複数の人数で行ったりしたこともあります。それから、実際にゴルフクラブだとかそういうものを持ち出して殴りかからんばかりというときもございましたので、立入調査のときには身の危険を感じることというのは、もうほとんどの場合、ございます。
 そういうときに、我々の立場もそうですけれども、何より子供を安全に確保する、それから、親をそういう状態から切り離して落ちつかせるということで我々対応しております。
福島参考人 お答えします。
 いろいろとケースがあるんですけれども、基本的には、虐待をした親たちというのは、いろいろその方の生育歴、背景を探ると、やはり加害者であると同時に被害者でもあるんだなと。やはり、その人たちとの関係をどうつくっていくかというのは、まさに、カウンセリングの手法ではないんですけれども、その人たちの気持ちにどこまで接近できるか、そこのところも一つなんですね。
 なかなか難しくて、どなられたり殴られそうになったり、そういう場面というのもやはりあるんですけれども、すべての人というのじゃなくて、この人にはこの職員がというような形で対応させる。そうすると、意外に自分の気持ちもわかってくれる、自分が虐待をしたということを悪いとは思っているけれども、なぜしたのかという気持ちも理解してくれるというようなところがどうも糸口になっているなということで、要するに、それから関係づくりが始まる。
 そこら辺が我々としては一番気をつけている点だというふうに思っておりまして、それがいい方向に進める一歩かなと思って、職員にはそういうふうな形で対応させております。
坂本参考人 私ども養育家庭は、やはり児童相談所のもとにやっておりますので、児童相談所が専門的なお立場から、身の危険を感じるような事態になりそうであれば、その前にもう児相がきちっと手を打っていただいているということがほとんどでございます。
 その一つの例ですが、幼稚園のときから女の子さんを受けまして、それで小学校六年生までずっと、とてもかわいがって育てられていたんですね。里親会にいつもその子を連れていらしていたんですけれども、あるとき、突然そのお母さんだけがいらしたので、何々ちゃんはどうしたのと聞きましたら、お父さんがずっと刑務所に入っていてもうすぐ出てくるので、子供を養育家庭の方に預けていたとは何事だというような、何かその親の方からのいろいろな連絡があって、それで子供さんも里親さんも泣く泣く別れて、児童養護施設の方に行きました。
 それで、先ほども自立支援というお話が出ましたが、自画自賛じゃいけませんが、ここが里親のすごいところじゃないかなと思いますが、そういうふうになった子供にも、児童養護施設に面会をきちっと申し込んで時々会いに行ったり、いつもあなたを見守っているんだよという信号を送っておりました。
 そして、やはりそのお父さんが連絡を入れてきまして、結局、その子がその園から高校卒業ができまして、水商売のような方に行ってお父さんにお金を、お父さんからおどされていたのかわからないのですけれども、とにかく自分が働いた分の何がしかをお父さんの方に毎月出していた。その間も里親さんは、そういうことを見守りながら、とにかく元気で生きていってほしいという信号を送っておりました。
 それで、やはり子供もだんだんわかってくるんですね。お父さんが出てきてくれたときはすごくうれしいのです。生みの親、自分の親というものをすごく大切にしておりますから。でも、実際にお父さんとつき合ってみると、自分の描いていたお父さんと違うじゃないかということがわかってまいりまして、それで今はちゃんとお父さんと離れて、お仕事もそういう水商売じゃなくて幼稚園の保母さんの方のお手伝い。資格がありませんので、まだお手伝いしかできませんが。
 そうしてお父さんの方から離れてくると、これは本当に不思議なことに、里親さんの方に近づいてくるんですね。それで、今は里親さんのおうちに土日泊まったりとか、そういうふうにして交流を続けている、そのような例がございます。
水島委員 ありがとうございました。
 本当に子供を守るということを最優先に考えるのはもちろんのことなんですけれども、子供を守るために働いていらっしゃる皆様がきちんと守られた中で仕事ができるような体制をつくるためにも、司法の介入というのはやはり必要なことだと思いますし、何といっても、児童相談所がトータルなコーディネートをしているといっても、恐らく、相談所長さんにすべての権限があると、そこに親が押しかけてきて、何とかしろということになって、非常に難しい。かえって児童相談所はケアのコーディネートをする立場であって、親に対する何か命令をする立場というのではないというふうに、それは裁判所がやるというふうにきちんと切り離して位置づけていかないと、恐らくお仕事をしにくいのではないかと推察をしております。
 そんな中で、親権の停止のあり方なんですけれども、これは平湯参考人にお伺いしたいと思います。
 本日、資料としていただきましたものの中に、きちんとそのようなことを書いていただいているわけですけれども、その中で、実際に私もこれをこうしなければいけないと思うんですけれども、具体的にどのようにやっていくかということについては本当に検討をしなければいけないと思っております。
 この平湯参考人の資料の中で、「停止の要件や代行者の権限など具体的な内容についてはさらに検討を要する。なおこれらの制限の戸籍記載についても再検討すべきである。」というようなことを書いていただいております。この文章ではここまでですが、この後、平湯参考人として、御自身の私案でも結構ですけれども、こんなふうにするとうまくいくんじゃないかというようなことがもしございましたら、教えていただけますでしょうか。
平湯参考人 今御指摘いただいたものは、先ほどの二十項目の提言の中の九項めでございますけれども、親権の制限というのは、広い意味で申し上げると、さまざまな規定の仕方がございます。
 そもそも、親権とは何ができる権利なのかということを規定し直すというのもその一つですし、その場合に、親権という言葉そのものも残すかどうかという大きな問題がございますけれども、親権という言葉を維持するとしても、今申し上げたようなその中身。それから次に、そういう親権を停止あるいは喪失するという形で規定するというのが二番目。それから三番目には、親権を喪失もしくは停止という形の規定ではなくて、裁判所が、実質的には制約に当たるけれども、それ以外の決定を出すことによって制約するというのが三つ目にあると思います。
 一については、例えば懲戒権をどうするか。あるいは、例えば懲戒という言葉を残すにしても、どういう中身を盛り込むかということもございますが、ここでは触れませんで、二番目と三番目について申し上げますと、この二番目に当たるのは、現在、親権の喪失というものしかないというのがございます。それから、三つ目の分野でいきますと、児童相談所が子供を施設に入れるのについて裁判所が承認するという児童福祉法二十八条の規定がその三つ目になります。
 二番目の親権自体をいじくるということは民法の改正になるということで、これはなかなか、法務省にしましても非常に腰が重いということもございまして、三番目の方法をもっと考えたらいいのではないかという意見もございます。
 例えば、先ほどの医療拒否の場合について言う場合には、医療に関する親権を一時停止するということによって、その停止中の職務代行者を決めて、その方の判断で医療に同意するかどうかを決めればよろしいというのがそうですし、三つ目のやり方にするとすれば、裁判所は、医療を妨害してはならないというような、保護者に対する、親権者に対する命令を出す、決定を出すというふうなやり方もございます。その辺の方法については、いろいろな先進国の立法などを参考にしながら、十分な議論が必要だと。
 今必要なのは、こういう方法がいいとか悪いとかというだけじゃなくて、こういう事態が実際にある、それについて、それは児童相談所に任せればいいじゃないかというのではなくて、あるいは、お医者さんの判断に任せればいいというのではなくて、例えば法務省なら法務省が、民法を変えるかどうかということも含めて、どうしたらいいのか、どういう制度がこれに対して必要なのかという議論を始める前提としての認識、つまり、これは何らかの制度を変えないといけないという、そういう共通認識をつくるというのが今一番必要なのではないかと思っております。
水島委員 ありがとうございます。全く同感でございます。また、虐待の問題に対して恐らく皆様も同じような認識をお持ちだと思うんですけれども、今の親権の問題も含めまして、本当にトータルに、どういうふうにしていくのが一番効率的に虐待の問題に対応していけるかということを今回本当に真剣に議論しなければいけないと思っております。
 そんな中で、私は、主に虐待の問題を取り巻く、そういう中での子供の人権を守るためのセンターがやはり各地域に必要だと思っております。
 そこは恐らく、児童相談所が今やっていらっしゃるような機能を持って、さらに裁判所ときちんと連携をして、司法の関与のもと、親には加害者に対するケアのプログラムを受けることを義務づけたり、きちんと子供と親とを分けることができたり、また、一生懸命養育をされている里親さん、あるいは虐待に関する知識が欲しい人は、そこに聞けばいろいろと虐待に関する専門的な知識を聞くことができる。
 そのようなセンターをきちんとつくって、虐待というものにむしろ特化してつくっていくことによって、ほかの子供の全般的な福祉の向上につながっていくのではないかという気もしているわけでございます。
 もう質問時間が終わりますけれども、最後に、一市民として、また一里親としてこの問題に本当に熱意を持ってかかわってこられた坂本参考人にお伺いしたいんですけれども、全国のあちこちの方たちとかかわっていらっしゃって、やはり各地域にそういうセンターのようなものがあると随分事態はよくなるんじゃないかというような印象をお持ちかどうか、お知らせいただければと思います。
坂本参考人 ただいま東京都では、子ども家庭支援センターですか、そういう名前ですね、それは二十三区とか市につくるということになっていますし、厚生労働省の方では児童家庭支援センターという名前で、これは全国にある児童養護施設がその地域の中心になって子育てを支援しなさい、そういうことと聞いております。
 それで、私ども里親から理想のお願いを申し述べますと、平湯先生もさっき言ってくださいましたが、日本には母子保健法というすばらしい、よその国にない法律がございまして、保健師さんという職業の方がいらっしゃるんですよね。
 それで、去年の九月に、私どもアン基金からアメリカの里親制度を視察に行きましたときに言われたんですね。よその国から言われて本当に私も恥ずかしいなと思いましたが、三十年ずっと虐待問題をアメリカの国として試行錯誤しながら対応してきた、今三十年たって何に気がついたかというと、発生予防なんだ、それが一番大事なんだ、日本には保健師さんがいるじゃないの、もっとその人たちの数をふやし、その人たちに新生児のお母さんのところを訪問してもらって、特に孤立しがちなお母さん、その条件がきっといろいろあるんだろうと思うんですね。
 そのインタビュー用紙みたいなものもきちっと学者さんたちが工夫なさってつくっていらっしゃるそうです。最初から疑いのまなざしで言っちゃいけませんので、赤ちゃんお誕生おめでとうございます、お母さん何か困っていらっしゃることありませんかというようなインタビューで導入されるそうですが、日本でも、本当にこの母子保健法を大きく活用していただいて、そうしますと、保健師さんがいらっしゃるところというのは保健所なんですよね。
 ですから、私も頭がなかなか、自分は整理がつかないんですが、その子ども家庭支援センターみたいなところと、保健センターとかと言ってやっているところもありますが、できましたら警察の駐在所の出張所みたいなものを一緒にそこにつけていただいたり、それから、これは本当に夢のようなお話ですが、家庭裁判所が、ああいう立派なところというんじゃなくて、何かそこの地域の、家庭裁判所の出張所みたいなものもそこのセンターにあるというような、複合的なセンターを各地域につくっていただいたらと。
 虐待防止法といいますと、虐待を受けた子供さんのことだけを問題にしていると一般的に思われるんですが、私はそうじゃないと思っているんですね。このような突出した問題を持っている子供たちの対処ができるような国であれば、今、引きこもりのこととか不登校とかいじめとか、本当に子供たちはいろいろと苦しい思いをしている、その子供たちの助けもそこでできると思っているんです。
 ですから、どうか、その法律の整備をよろしくお願いいたします。
水島委員 どうも、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
青山委員長 次に、佐藤公治さん。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 きょうは、お忙しい中、こういった時間をいただきましたことを心より感謝を申し上げ、日ごろの皆さん方の活動に対して心から敬意を表したいと思います。
 今までお二方の委員が質問されたことに極力ダブらないようにしたいと思いますが、専門的ないろいろな話も出ました。いろいろなことで参考人の皆さん方としている間に整理がついている部分もあるのかなというふうにも思います。
 そういう中で、ちょっと大きい観点から聞かせていただきたいと思いますけれども、今お話を聞いていると、どうも都市部に関しての話というものが非常に多かったように思いますし、私はそうとらえられる部分が多かったと思います。
 地方と都市部、私などは地方の人間でございまして、地方の現状、これは里親関係の方々ともお話をしたりする中、いろいろなことを感じるわけでございますけれども、皆さん方の都市部と地方部のやはり違いというか問題点というものがあれば、そこの違いを少し御説明願えればありがたいかなと思います。皆さん、各分野が違いますので、金内参考人からお一人ずつ簡単に、地方の都市部との違いといったものを教えていただけたらありがたいと思います。
金内参考人 先ほどの私どもの調査の結果でお話をいたしましたけれども、経済的困難な家庭で、かつ、孤立している家庭が多いというふうに申し上げました。
 これは、特徴的といいますか、一般的な傾向だと思うんですが、やはり都市部であると、匿名性といいますか、そういうものがありますし、例えば先ほどの事例の中でも、サラ金から逃げてきて、都市部の方が逃げやすいというようなこともありましたけれども、隣近所とのつき合い、地域の中でのコミュニティー、そういうものが都市部では崩壊しております。そういうことから、相対的な問題ですが、やはり虐待の発生の土壌というのは都市部の方に強いのかなというふうには思います。
 したがいまして、先ほどから発生予防の問題がありますけれども、例えば発生予防の中に二つあると思うんですね。虐待の予防に二つありまして、一般的な予防と特定的な予防とあると思うのです。
 例えば、ハイリスク家庭。例えば健康診断を受けていないというのは、要するに虐待予備軍をどうやって見つけるかという話なんです。それに対して、もう一つの、我々が今感じている予防というのは、都市部におけるそういう孤立した状況を一般的にどうやって解消していくか。他人の子供に声をかけよう、あるいは声をかけられた方は、うちの子だからほっといてちょうだいというような風潮にしないような社会的な認識といいますか、そういうものも必要だと感じております。
福島参考人 お答え申し上げます。
 都市部と地方との違いということに関しては、虐待の発生は、私もあちこち呼ばれて地方に行くのですけれども、どの県も軒並み虐待がふえたというような報告を県の方から、それこそあいさつをするときに、児童虐待がふえまして、今までにないような件数というふうなことがまくら言葉のように使われてきております。
 ただ、違うなと思うのは、都市部の場合には、確かに虐待件数は多いのだろうと思うんですけれども、それだけ顕在化しやすい。
 私どもは東京ですから、ケースとしては東京のケースですけれども、東京も広くて、それこそ小笠原の方まで東京。島でこういう事例があったのですけれども、やはりそういうことをやると村八分みたいな、島八分ですか、そういうことになりかねないようなことがあって、発見してもなかなか通報しない。
 生まれる前から問題が起きて、夫婦の不和の問題で、それで、生まれてきた子供に対してお母さんの方が思いが移らなくて、きょうだいがいるのですけれども、その子だけ徹底的に差別されたんですね。その差別の仕方がまた非常に大変な差別の仕方で、食べ物の内容も違えば食器も違う。お風呂の入れ方も違って、湯舟の中には汚いから入れない。寝るところも違う。そういう差別のされ方をして、それで、発見して児童相談所の方に通報が来るまで、それこそ生まれて六年ぐらいかかったというようなこと。
 そういう意味合いで、違うなというふうな見方をしております。
 また、地方の人たちからの話も聞くのですけれども、都市の場合には余り近所づき合いとかそういうものがないようなんですけれども、だんだん地方においても都市化されてきているようなところもある、小さな村はともかくとして。そういう話はよく聞くわけでして、こんなところでは虐待問題なんかないんじゃないかと思っても、意外にそうではない。ただ、発見されにくいというか、通報する人が遠慮しちゃってというふうな、そういうところが違うのかなと思っております。
坂本参考人 私は、養育家庭というか里親ですので、地方の里親さんたちのことでお答えしようと思っているんです。
 行政の制度として養育家庭というのを打ち出しているのは、東京都だけです。それで、ほかの県、府、道は、里親制度というのは一つしかないんですね。養子縁組を希望の里親さんも養育の里親さん。ですから、地方に行けば行くほど、養育専任の里親さんは少ないと思います。都市部は、やはり養育家庭が多くなっていると思います。
 ですが、私どもが五年間このアン基金プロジェクトという活動をしまして、何がモットーかというと、人様の子供さんを自分の家庭に入れて、家庭をオープンにして、地域の皆さんのお力もかりながら、あるいは行政機関やさまざまなところの方のお力をかりながらオープンに子育てをしていく、そういう養育、養育里親が理想だと思っております。
 それで、こういう団体につながっていらっしゃる方は、現在、私どもの仲間でも北海道から九州までいらっしゃいます。各県にいぶし銀のように、埋もれて見えないけれども、きちっと養育里親ということで頑張っていらっしゃる里親さんがおられますので、どうか議員さん方も、御自分の地元に帰られたときにそういう方が必ず一人、二人いらっしゃいますので、お話を聞いていただけたらと願っております。
平湯参考人 今の御指摘の点は、虐待の発生状況なりあるいは発見がされた場合の対処の仕方についてさまざまな人間関係や連携のあり方が違ってくるという意味で、恐らく本質的なことを御指摘なのだろうと思います。ただ、私自身が直接その辺について余り詳しくございませんので。
 ただ、一つ申し上げるとすれば、先ほど申し上げた地域格差ということについて申しますと、対応の仕方でいろいろ児童相談所のレベル等が違うと申しました。それから、発生の通告件数についても、都道府県によって非常に違うというのもよく指摘されております。
 そういうものは、必ずしも都市部とそうでないところの違いとは限らないように思われます。むしろ、まだまだ、その県全体あるいは地域全体の中に熱心な方はおられるのだけれども、その自治体の首長さんの姿勢の問題とか、その県での医療関係者の関心の持ち方にまで差があるとか、それから、最初に申しましたような福祉司の任用制度の違いとか、そういうものがいろいろ絡んで地域の格差があるというふうに思います。
 例えば、弁護士について申しますと、弁護士が各県に必ず何人か、複数関心を持っている弁護士がいて、児童相談所などのお役に立てるというのが目標なのでございますけれども、なかなかそこまでできていないところがあり、それはやはり、いわゆる弁護士過疎の県でそこまでなかなか手が回らないということも一つございますけれども、かなりの数がいてもそこまでなっていないところもあり、いろいろそういう違いがあって、関係各分野がその格差を埋めていかなければいけないなと思っております。
 どうも、余りお答えにならず、済みません。
佐藤(公)委員 まさに、今おっしゃられるようなことを私も感じます。
 まさに、地方というのは、地域性とかローカル性で、非常にコミュニケーションが地域でとれる。でも、習慣、慣習、風習で、やはり虐待をしていてもそれを訴えるということが、ほかの家庭のことだから立ち入るべきじゃない、そういった古い意識を非常にお持ちになられている。意識が低かったり、やはり里親制度に関しての認識が低かったりする部分が、大変失礼ですけれども、ある。また、養子縁組を前提とした問題というのが地方にはたくさんある。そして、非常に高齢化が進んでしまって、若い方々がなかなか里親でいていただけない。こういった地方と都市部との格差というのが、現実、かなりあるのかなという気がいたします。
 そういう中で、やはりそういったことも踏まえて法律改正はしていかなきゃいけないというふうにも思いますが、もっと大きい観点からいうと、この法律というのは、私が見るに、まさに早期発見と保護ということで、対症的療法、一時的療法にしかすぎないのではないかなと思います。まさに、予防ということを考えていくと、やはりそこが一番大事だということを議論し、考えていかなきゃいけない。
 もう時間がないんですけれども、皆さん、一分ぐらいずつで。まさに、目の前にある問題という問題点じゃなくて、社会全体の中で根本的な予防の問題点はどこにあるか。
 例えば、「月刊世論調査」、これは内閣府が出しているものですけれども、ついこの前、子育てのつらさ、苦しさというのが、調査データが出ていました。そういう中では、「子どもの将来の教育にお金がかかること」、これは五一%。「自分の自由な時間がなくなること」「子どもの相手は体力や根気がいること」、ちょっと下の方へ行くと、「子どもにどのように接すればよいか分からない」「住居が手狭になり」と、本当にいろいろな要因があると思います。
 目先と言っては失礼ですけれども、目の前だけじゃなくて、社会全体のどこに予防における問題点があるのか、一言、二言で。
 これは、いろいろな発想、また見方はあると思います。この国に哲学がないとか、学校の問題だとか、テレビの問題だとか、ゲーム機が進んでいるからとか、またお酒の問題とか、いろいろな問題があると思います。現場に皆さん方がいらっしゃって、社会的予防において一番、ここが直ればかなり大きな影響を及ぼすんじゃないかというようなところの指摘があったら、一点ずつ。
 大変難しい質問かもしれませんが、いや、官僚が悪い、政治が悪いというのも、これも一つの答えだと思います。政治家が悪い、国会が悪いというのもあるかもしれません。何か一点、社会の大きな柱の問題点を御指摘願えればありがたいと思います。
金内参考人 ありがとうございます。
 私ども、常に思っておりますのは、対症療法に追われて、どんどんどんどん、次から次から虐待が出ている、これをどうやったら食いとめることができるのかということを考えております。
 私、これは個人的な考えですが、やはり子供に対する社会の認識。子供は、どこの子供でも、親のない子供でも親のある子でも、社会みんなで育てるんだという認識を普及していくべきだ、強力なキャンペーンを張って普及していくべきだと思います。
福島参考人 私の法人では千代田区の周辺の学童保育も任されてやっているんですけれども、これは虐待を受けた子供たちだけの問題じゃなくて、日本全体の子供の問題だと。やはり育ち方が悪いというような、昔は、私が子供時代には、親だけで育てられたんじゃなくて、おじいちゃん、おばあちゃん、そして隣近所の人たち、そういうシステムが自然発生的にあったわけでして、それが今なくなってしまっている。
 だから、今、国会で御審議いただいている次世代育成を推進する法律、まさに、現代の日本の家庭は、家庭の中だけで子育てを全うすることができない。だから、そのための子育て推進、地域における子育て支援のシステムをつくっていかないと、これは無理だというふうに思っております。
坂本参考人 先ほども申し上げたんですけれども、こういう突出した形で出てきている子供たちの問題ということは、社会全体の問題がここに、一番弱いところにあらわれている。ですから、目の前のとおっしゃるんですけれども、ここのところをきちっと対応できるような施策がされれば、それが日本国じゅうに普及したときに、一般のお子さん方にも必ずいい影響に作用していきますので、大丈夫だと私は思っております。
平湯参考人 一言で申し上げれば、子供も家族も苦しんでいるんだということを社会全体で考えるということが大事かなと思います。
佐藤(公)委員 大変大事な御指摘をいただきました。皆さんのおっしゃられることは、まさにそうだと思います。
 もう時間があと一分ぐらいですか。では、最後の質問とさせていただきます。聞きたいことは本当に山のようにあるんですけれども、金内参考人に最後にお聞きしたいと思います。
 先ほど、発見、予防の、ハイリスク家庭を把握する手法というような御指摘が資料の中であったと思います。先ほど坂本参考人の方からも、いろいろないいアイデアというか話があったと思いますけれども、この把握する方法論というのはどういったものがあり得るのか、具体的にあれば一言、二言でお願いいたします。
金内参考人 今、私どもが考えておりますのは、保健所と連携をいたしまして、乳幼児の健診、それの未受診のところはリスクが高い可能性があるということで、例えば今、町田市の方でも、それを調べて具体的に生かそうとしています。
 それから、まだ確立されているとは言えないんですが、例えば、この前、私どもと歯科医師と連携をいたしまして、やはり虐待の子供は虫歯も多いというようなこともございました。
 だから、虐待の子供や家庭に関する特徴をとらえまして、それからハイリスク家庭を追っかけていくという手法をきちんと調べて、確立していかなきゃならないと思っていますが、例を二つだけ申し上げました。
佐藤(公)委員 どうもありがとうございました。
青山委員長 次に、石井郁子さん。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 児童虐待防止法の見直しということで、こうして衆議院でも議論が始まりました。この問題では、本当にその渦中で、いわば第一線で御苦労されていらっしゃる皆様方に参考人としておいでいただきまして、本当にありがとうございます。
 せっかくの機会ですから、私は、きょうは多くのことを皆様方から教えていただいて、そして、これからの国会での審議に大いに生かしていきたいというふうに考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それぞれの皆さんから、いろいろな角度から、現状、見直しの観点、必要性等々も言われたと思います。私の方から、まず大づかみでございますけれども、各参考人に一言ずつ、あるいはまた二言、三言でも結構でございますけれども、改めてお聞かせいただきたいのは、第一点は、三年前にこうした法律ができた。児童虐待という問題で、その現状にどういう改善に役立ったのか、どういう効果があったのかということを簡潔にお述べいただけたらというのが一点。
 それから、次には、今、共通して法の見直しということが言われているんですけれども、法整備として見直さなければいけない部分と、現行法でも一定対応できる部分というのはあるわけで、しかも、現行法の場合は、何よりも人的、物的な整備が求められていると思うんですね。そのことは、私たちも、法律をつくったときにいろいろ附帯決議に盛り込んだりしたことでもあります。
 そして、その後、実際に、この法施行後、本当に児童相談所、養護施設等々はもうパンク状態になっている。特に福祉司さんなどバーンアウトということが言われたり、それから、施設そのものがもう手いっぱいというか満杯状態だということが言われておりますので、かなり予想されたことでもありますし、また一定、それは政府としても人の配置などを進めてきたと思います。
 しかし、それはまだまだ足りないということで、現行法のもとで、もっと人的、物的に、あるいはいろいろな、この法律を全面的に実施する中でもっと取り組んでいかなければいけない面というのは何なのかというあたりを、それぞれのお立場から教えていただければと思います。
金内参考人 まず一点目は、虐待防止法ができてどういう改善があったかという点だと思います。
 先ほどから数値あるいは事例等で申し上げておりますけれども、虐待に対する関心が一般的に高まって、通告あるいは発見の努力をしてもらえるようになった。実際に、一般の近隣知人の方もそうですし、それから学校関係等も対応が変わってきました。それまでは関係ないと言っていたのが、随分こちらの対応に協力をしてくれるようになりました。そういう点が一つありまして、早期発見、早期対応に結びついたのかなというのがあります。
 それからもう一つは、先ほど、まだ不十分だというふうに申し上げましたけれども、我々の立場からしますと、一点だけ申し上げますと、児童相談所の立ち入りが認められたんですね。それまでは、二十八条、施設入所を、家裁の承認を得て行うことを前提にしなければ立ち入りできなかったんです。それが、その前提なしに立ち入りが認められた。確かに問題はありますけれども、この点は非常に大きいというふうに思います。二つ、特に申し上げました。
 それから、今後の防止法に盛り込んでほしいということですが、それは、今の防止法については、先ほどからお話がありましたように、早期発見、早期対応というところに重点が置かれているんですね。やはり予防から最後の根本的な解決まで、これを視野に入れた総合的なものにしていただきたいというのが一番大きいと思います。
 それから、先ほどからるるお話があるような、一時保護なりあるいは立入調査なり保全処分なり、そういう司法の関与を認めるような規定をつくっていただきたい。
 それから、もっと言わせてもらうと、やはり地域的なレベルでの対応というのが非常に重要なんですね。これが今のところまだ不十分というふうに思いますので、区市町村だとか関係機関の役割の明確化、あるいはその連携といいますか、全体的なシステムづくり、そういうようなものについて根拠を与えていただければと思います。
 以上です。
福島参考人 お答えいたします。
 基本的に、先ほどもお話しさせていただいたように、児童虐待防止法制定後の状況ということでは、虐待の子供の数が施設にもふえまして、大体五割を超えるともう職員の方が大変だ、六割を超えるとそれであっぷあっぷしちゃって、七割を超えると施設は崩壊するというのが学者の調査研究で報告されておりまして、そういう実態でございまして、今がまさにそういう方向に来ている状況なわけです。
 おかげさまでというか、施設がいっぱいになってしまいまして、改めて施設のあり方そのものを根本的に見直さないとだめだろう、そういうところに来ておりまして、我々にとっては、それが非常に大きなきっかけになっている。
 先生御指摘のように、この虐待防止法ですべてを解決するということは不可能でして、やはり児童福祉法の中で、現行法で対応するところ、あるいは改正していかなきゃいけないというようなことで、特に里親さん、坂本参考人の話をいろいろ聞いていて、社会的養護を担うのは別に児童養護施設だけじゃなくて、やはり里親さんと一緒になって、特に小さいお子さん、うちにも六、七人いるんですけれども、そこはやはり個別的な対応が必要なので、そこの部分については里親でやれるような仕組みを考えていくべきだというようなこと。
 あとは、児童養護施設が本当に子供の心のケアが十分に、あるいは生活とか治療とかができるような仕組みにするには、今みたいな大規模な施設はだめ、やはり小規模で地域に分散した形での、グループホームと言ったらよろしいんですか、小規模の施設にしていかなきゃいけないというようなこと。
 あるいは、先ほども述べさせていただきましたけれども、ただ問題が発生してから対応するだけじゃなくて、在宅サービスも提供できる、あるいは通所サービスも提供していこう、老人のケアの問題と全く同じようにショートステイもありで、そういう形でいろいろな仕組みを考えていかないと、本当の家族支援にはならないだろう。そんな思いに到達しまして、児童養護施設あるいは社会的養護全体の見直しをしていくべきだ、そういう考え方に至りました。
 そういう意味では、虐待がふえて大変だというふうなことだけでとどまってはいけないという思いで、そういう方向に向かって努力をしていきたいと思っています。
坂本参考人 この法律ができましてから変わりましたところといいますと、私どもは地域社会に生きておりますので、普通のお母さん方は、ニュースや何かで報道関係の方たちが一生懸命虐待死などの事件を報道していただきました大体翌日ぐらいには、お母さんと会いますと、やはりどのお母さんも、子供さんを持っていらっしゃったらば、人ごとではないということを必ずおっしゃいます。ですから、そういう普通のお母さんたちに虐待というものがどんなに子供にひどいことになるのかという意識に目覚めていただいたということがとても大きかったと思います。
 そして、これは本当は余り申し上げたくなかったんですけれども、そのことが世の中に広まったがために、手を挙げて、私、里親になりましょうと直前まで思っていた方も、あらまあ、こんなに大変なことなのねと思って、その手を引っ込めている状況が、今、里親の数の減少というところにあらわれております。
 その代替案と言ったらいけないんですけれども、それは本当に市民としての人間性から手を挙げるわけですよね。でも、それが今非常に難しい状況に、どうしてもマイナスの方向に行っておりますが、厚生労働省の方が、親族里親ということを打ち出されたんですね。
 それで、私は、日本の家族というのはすごく核家族化になったんですけれども、親族の方たちの気持ちというのは非常にまだ強くあると思っているんです。ですから、親族の方でも里親に認めていただいて、そして、厚生省は親族里親には里親手当は出さないんですね、そういうふうに打ち出されたんです。養育費はつけてくださる。でも、私は普通の一般の里親ですけれども、親族里親さんにも里親手当をそれなりに出していただいて、これは国の税金から出ているあなたに対する里親手当なので、きちっと里親研修を受けなさい、受ける義務があるんですよというぐらいに国の側が強く出ていただいて、そうでないと、親族里親をつくってもなあなあになっちゃうと思うんですね。
 その理想とする里親さんの道に親族として入ったんだから、そういう勉強をきちっとして親戚の子を育てましょう、あるいはおじいちゃま、おばあちゃまだったら、孫の子を育てましょうというふうな方向に持っていっていただけたらなと。それは運用の面でできると思いますので、よろしくお願いします。
平湯参考人 この法律ができたことによる改善というのは、今まで三人の方がおっしゃったとおりだと思います。社会的な関心が広がって、早期発見、早期保護がしやすくなったということだと思います。
 なお足りないというのは、先ほどから申し上げている発生予防、それから事後のケア、援助、それからもう一つ言えば、早期発見、早期保護自体も、もっとそれをやりやすくしていただきたいということもございます。先ほどから申し上げている法的な裁判所の関与というのは、その早期発見、早期保護をもっとしやすくするということと、その後の子供、親への援助をやりやすくする法的枠組みというふうな位置づけになると思います。
 以上です。
石井(郁)委員 それでもう一点、きょうお話をそれぞれ伺いまして、この問題で、本当に最初から、予防、救済、そして事後のケアというトータルが必要だという話なんですけれども、子供の支援もそうですが、特に、やはり親をどう支援していくかということが非常に重要になっているというお話が強調されたように思いまして、私は大変印象深く受けとめたんです。
 そのことで伺いたいと思うんですけれども、これは金内参考人のデータの中にございましたけれども、親がなかなか指導に応じないという話の数字が出されまして、指導に応じた方が四割ですから、応じない方も含めてあと六割の方がつかめない状態だというのは、かなり重大な問題だなというふうに受けとめたんですね。他の方も共通しまして、坂本参考人からもその点が出されました。なかなか親が言うことを聞いてくれない、聞く耳を持たないという話がありましたから。
 一つ最初に金内参考人に、この実態ですね。虐待者への指導、援助でなかなか応じないケースというのは、中身として、その親にはどういう事情なり考えなりがあってそうなのか、それはまたどういう説得をして応じるように変わるのかとか、そういうあたりで具体例がございましたら、ちょっと教えてください。
金内参考人 先ほど申し上げましたが、私ども、親子をもとに戻す家族再統合ということをやっておりますが、そういう中の事例で申しわけないんですが、まず最初に、虐待と認めない親というのが一番、これなんですね。指導に応じない。だから、虐待を認めるとその後が楽といいますか、早くなるんです。例えば、今、五、六ケースやっていますけれども、はっきり申し上げまして、虐待を認めるまでに半年以上かかるというケースが多いです。
 ちょっと事例を申し上げますと、先に認めちゃって家庭に入っている人と新たに入ってきた親御さん同士が発言しているのを聞いたことがあるんですね。認めちゃった後ですね、両方の話を。私も認めるまで大分かかったのよ、認めたら気が楽になったというふうに言っていました。やはりそこへの努力というのは、先ほど、簡単に親の虐待に対する理解なんというふうに申し上げましたけれども、生易しいことではないと思います。
石井(郁)委員 その点で重ねて、どういうふうにそれをしていったらいいのか、そういうマンツーマン的な説得状況で変えていくのか。言われましたように、親へのカウンセリングのプログラムみたいなものもまだ日本にはないんじゃないか。それから、だれがそういうことに当たるのかというところもはっきりしていないという問題がいろいろあると思うんですね。その辺で共通して出されていましたので。家裁が親権の一時停止をするという問題も絡んでくるでしょうし。
 それから、私は、やはり最終的には家族再統合という方向に行かなきゃいけないわけですから、施設に置いておけばいいということじゃ済まないという意味でも、家族、家庭への支援というのは本当に大事だと思うんですね。
 そのことで、福島参考人、坂本参考人、平湯参考人に一言ずつお話しいただければと思います。どういうことをもっときちっとしたらいいのかという問題ですね。
福島参考人 基本的には、これは突き詰めていきますと、今我々が日本の国で行っているのは行政対応でやっているわけでして、行政対応でやったときに限界がある、やはり特にアメリカ等の欧米のように司法対応でやらないとどうにもいかないだろうというふうに、そこのところはそう思いますね。
 ただ、やはり、親子の同意をできるだけとってというようなことをやることが、その後のいろいろなかかわりが容易になるということもあってそうしているわけでして、あるいは、日本人の心情として、法律でばさばさやっちゃっていいのかというふうな話もあるわけでして、そういう意味合いでは、なかなか……。
 児童養護施設の親御さんというのは、やはり基本的には経済的な基盤が弱いというところで、余り強く指導すると、自分から親権を放棄するといって裁判所に行っちゃったのがいるんですよね。それで、慌てて調査官が来て、親の方から家裁へ親権放棄の願いを出してきたというのは初めてなんですね。そんなこととか、あるいは、新法ができて最初に電話相談で受けた話は、虐待をしたら施設に入れられるんですかというふうな、そういうケースもあったりして驚いたわけですけれども、ともかく、本当に再統合するという手だては行政の力だけでは難しいなと、現場サイドで見ていてそんな感じがいたします。
坂本参考人 私ども、いつも、ついアメリカの話を引き合いに出して申しわけないんですけれども、その里親制度を視察してきた中に、里親会の会長さんや何かともお話をさせていただきました。それでつくづく思いましたのは、ああ、日本でよかったなと思ったんです。
 それは、今こうやって虐待の問題でいろいろ議論がされてはいましても、日本の大人の方たちの中には、やはり自分の子供がかわいい、そういう非常に情が厚いというところはアメリカ人とは違います。それで、私はそこにすごく救いを求めているんですが、虐待をしてしまっている親御さんも、したくてしているんじゃないと思っているんですね。ですから、そこに気づいていただくためのプログラムを受けていただきさえすればと。
 実は、アメリカで聞いてがっかりしたんですけれども、アメリカでは、虐待をする親は全員プログラムを受けなきゃいけないんです。強制になっているわけなんですね、裁判所の命令で。でも、立ち直れる親は三割に満たないという結論がもうずっと統計で出ているわけなんです。それを聞いたときに、私は、日本では、その立ち直りのプログラムさえその親御さんが受けてくだされば、絶対に五割以上はいくというふうに思っているんです。それはやはり日本人のよさだと思うんですね。
 だから、そこのところをどうかお考えいただいて、親御さんがそのプログラムに乗ってくださるような、そこのきっかけというか基盤をつくっていただければ、きっとこの子たちは救われると思っております。
平湯参考人 先ほどから裁判所の関与ということを申し上げておりますけれども、これがあれば万能だということでは決してないことはおわかりいただけると思います。日本にはそれがなさ過ぎるので必要だということと、その場合に、つまり、行政よりもさらに司法というものが関与することの重要性も、今施設の方からも、福島参考人からも出ましたけれども、そういう枠組みを強化するということに伴って、当然に個別の親への援助、教育的な、あるいは心理的、医療的な援助が必要だということは申し上げるまでもございせん。
 その点について、実は、ちょっとお許しいただきますと、冒頭にお話ししたときに、親への支援の中で心理的、医療的支援というのを落としましたので、これをぜひつけ加えさせていただきたいと思います。
 では、それをどこが担うかということについて言いますと、今でもゼロではなくて、お聞きになったことがあるかと思いますが、MCG作業というのがございます。マザー・アンド・チャイルド・グループというふうなものを、児童相談所あるいは保健所がかかわりながら、民間のNGOの関係者がそれにかかわって、親への個別的な対応をしているという例が各地で出ております。
 最初に福島先生がおっしゃられた、どこがやるのかということについても、既にある芽を育てていくというようなことが大事かと思います。
 よろしくお願いします。
石井(郁)委員 時間が参りました。
 きょうは、本当に貴重な御意見、どうもありがとうございました。私たちもしっかり取り組んでまいります。
青山委員長 次に、保坂展人さん。
保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。
 記録を振り返りましたら、この青少年の特別委員会で、九九年の七月二十二日に、初めて参考人質疑をやっております。そこが国会での法制定の議論の一番最初だったわけですけれども、その場で、いかに一人の被虐待児を救出するのが、あるいは寸前で間に合わなかった体験など、大変厳しい取り組みを語っていただいた祖父江文宏さんが、六十二歳にして、二〇〇二年の六月に亡くなられているんですね。
 その委員会での参考人の発言に、国会議員の皆さんも責任を感じてほしい、児童養護施設の現状だとかあるいは法制定がないということもしっかりと指摘をしていただきまして、そこからきちっとした取り組みが始まったということを改めて振り返りつつ、お話を聞かせていただきたいと思います。
 私も、ジャーナリストとして活動していた時代に、東京世田谷にある子どもの虐待防止センター、そちらの方に行きまして、かかってくる電話の内容ですとか虐待の実例というのをいろいろ聞いて、大変衝撃を受けたということもございました。
 今回、見直しを迎えている虐待防止法は、二〇〇〇年の五月に、本当に連日連夜、各党の議員が、ついには党派も超えて連日連夜の作業ということで、どうにか当時の衆議院の解散の前に提出をすることができて成立を見たということで、ある面では、不備である点、あるいは及んでいないところがある点は、申しわけありませんけれども、御承知おきの上で、三年の見直しの中でその議論をしっかりやっていこうじゃないかというような形でスタートした議論で、先ほど坂本さんから、法律ができたことをきっかけに動き出していただいたことを聞くと、非常にそこは、ぜひいい見直しをやっていけるといいなというふうに思います。
 まず、福島参考人に伺いたいんですけれども、私たち、一時保護施設を見に行ったりとか、養護施設も見に行きました。その当時は、今からもう四年ぐらい前になりましょうか、そのときでも、施設はほぼ満杯に近くなっているというお話で、先ほどのお話だと、もう既に満杯になったということですけれども、これらの施設が大幅に増設される見込みであるとか、これはもちろん予算も伴いますけれども、あるいは、今言われているような小規模の自立援助ホームなどをあちこちにつくっていこう、あるいは民間の手もかりて、民間のNPOなどを中心にというようなことも言われています。
 そういうニーズはあると思うんですけれども、現実の計画だとか見通しという点で、今はどうでしょうか。その辺の受け皿がだんだん広がっていくなというふうな実感をお持ちなのか、いや、これはなかなか、パンク状態で膠着しているなという実感なのか、いかがでしょうか。
福島参考人 お答えいたします。
 確かに、児童養護施設はいっぱいになってきまして、地域差は若干ありますけれども、基本的に、ただ受け皿だけを大きくすればいいというような話でもなさそうでして、今、我々の方としては、もっと子供にとって本当に心の安定が図れるような、あるいは生活がしやすいような、そういう場づくりをしていこうということで、そういう意味で、小規模児童養護施設を地域の中で多くつくっていこうというような動きがあるわけです。
 実際に、沖縄県とかあるいは埼玉、千葉等はそういう施設を増設しておりますけれども、そこの知事さんがどういうふうにお考えになるのかというのは、あるいは東京のように、里親を拡大してやっていくんだというようなことなんですけれども、基本的には、全体で、昨年度は九〇%を超えたんですね。九〇%を超えるというのは、やはりもういっぱいだということなんですけれども、そこら辺はそれぞれの地方自治体がどう考えるかという話で、ふえるところもあったりするだろう。
 ただ、ふえ方の問題としては、我々の方の願いとしては、やはり小規模児童養護施設をいっぱいつくっていく、そういう方向でいきたい。ただし、考え方としてはそうですけれども、手だてとしては、もっと具体的な方策を考えなきゃいけないだろうというふうに思っております。
 基本的には、ただ入所させてケアをするということ以外に、在宅でやっていく方法とか通所でやっていく方法とか、そういうサービスメニューをふやしていくという方策で考えたいと思っております。
保坂(展)委員 イタリアにテレホノ・アズーロという電話相談組織、イギリスでやっているチャイルドライン、日本でも広がっていますけれども、これは電話相談の組織なんですけれども、私が四年前に行ったときには、電話相談は、やはり虐待が物すごく多いので、ローマ市から委託を受けて、小学校丸ごと一つ運営を任されて、工事中だったですね。
 それで、居室を見せてもらいましたが、その居室はすばらしい、学生寮みたいな感じですけれども、清潔な部屋で、一人一人の少年少女の安心してきょう寝れるスペースだよという居室が三階、四階、五階にあって、一階が電話センター、二階には、それこそカウンセリングルーム、それから医者が対面する、そして検察官や裁判官が来てマジックミラー越しに、再統合していいかどうかとか、世界でもかなり先進的な試みだと思いますけれども、そういう施設も見てまいりました。
 そういうところからいうと、今、まだ、一時保護施設の現場は大変だと思いますけれども、施設の設置基準自体がまだまだ非常に古いものですから、もう少し子供さんが、特に、そういう非常に不安状態の中で保護されてくる子供が安心して熟睡できるというか、そういう環境にぜひ我々も変えていきたいというふうに思っていますけれども、そのあたり、一言、いかがでしょうか。
福島参考人 私の法人で、特別養護老人ホームを四年前に区から委託されまして、時には厚生労働省あるいは財務省からも私どもの施設に見学に来るんですけれども、いかに老人と子供との格差がひどいかというようなことで、そこの特別養護老人ホームを見せて、それで私どもの施設を見せる。そうすると、いかに設備が悪くて狭くてひどいかということがよくわかっていただけるんですけれども、わかっただけ、子供たちの方に投資をしていただければありがたいんですけれども、やはりそこまでには至らない。
 きょうの新聞にも出ていましたけれども、やはり子育ては大変なんですね。したがって、子育て支援をすること自体にももっとお金を投資して、先行投資をしないと、将来の日本が成り立たないんじゃないかというふうな考え方で、ぜひそこら辺のことをお力添えいただきたいというふうに思っております。
保坂(展)委員 ありがとうございました。
 金内参考人に伺いたいと思います。
 児相の所長さんのこのアンケートを非常に興味深く見せていただいているわけですけれども、この中に、総論の1のところは評価をしていただいている方が大変多くいらっしゃるんですけれども、二つに分けて4、5のところの立ち入りの部分について、警察官の援助ということで、それもなかなかケース・バイ・ケースで難しいというお話を聞いていたものですから、警察官の援助、実態としては、何かあったときに、やはり一緒に暴力など起きた場合には制止をしていただいたりとか、立ち入りをされる職員の方の安全も考えてということだったんですが、ここについてもまだちょっと不足感があるという数字です。
 もう一つ、後見人を団体に、要するに、児相の所長の個人のお名前になってしまうというところを変えられないかというのもなお要望が強いようですけれども、その二点について現状をお聞かせいただきたいと思います。
金内参考人 まず一点目の警察官の援助の関係ですが、従前から協力はしていただいておりましたけれども、この規定ができたおかげで、より組織的にといいますか、支援、援助してくれることがスムーズになりました。
 ただ、ここに若干、評価しないという要素があるのは、もう少し、何といいますか、我々の具体的な行動を手伝ってくれるというふうに思っていたんですけれども、やはり警察官の立場で、どちらかというと客観的な第三者といいますか、そういうことで、我々の行動は見守ってくれて、いざというときには出てくるんでしょうけれども、それぐらいにならないとなかなか手をかしてくれないというようなことが出ているのかなという感じはいたします。
 それから、もう一つ、後見人の関係でございますけれども、やはり私どもは、児童相談所も行政の一端ですので、異動も多いです。したがいまして、個人的に後見人になってしまいますと、本当にいわゆる一般の親といいますか、親のかわりをするわけですよね。仕事としているにもかかわらず親の仕事をしなきゃいけないというのは非常に厳しいですし、もう一つは、やはりその職を離れた場合に、また改めて後見人を選ばなきゃいけないということ、後任の方に任せるときにそういうようなことが起きてきます。
 やはり我々は行政マンの仕事としてやっているわけですので、そういう機関としての後見人にしていただければもっとスムーズにいくだろうと思いますし、広がってくると思います。今、そういうような個人的な後見人になってしまうので、余りこれが活用されていないという実態がありますので、機関的な後見人にしていただければもっと広がってくると思います。
保坂(展)委員 それでは、坂本参考人と平湯参考人に続けてお願いをしたいんですけれども、この法律ができてきたのは、第一に児童虐待の深刻な実態があったからだ、そしてまた、それを放置できないとして、本当に志で動いた、無我夢中で取り組んだ、しかし、なかなか親権の壁が厚かったり、大変な思いで動いてきたグループの活動があった、弁護士さんの活動もあった、あるいは新聞記事などに書いてくれる記者もいたというような、いろいろな複合的な要素で世論が起きてきたと思うのです。
 まず、坂本さんにお聞きしたいのは、三年前の法律制定からそうやって動かれているということで、今日に至って、三年後の見直しを迎える直前の時期に当たっているわけですけれども、民間の皆さんの動きあるいは声が今どういうところに来ているのかということをお聞きしたいのと、平湯参考人にも、同じなんですけれども、法律家として、日弁連など法律家の中で虐待防止法についてのさらなる要望であるとかあるいは動きということについて、お二人に続けてお願いをしたいと思います。
坂本参考人 きょうの参考人というのも、本来でしたらば、里親たちの仲間の会として、東京都にも里親会というのがありますし、神奈川、各県にございますし、それからまた、関東ブロックといいまして、幾つかのブロックに分かれてまたちゃんと会がございます。
 それで、私が把握している範囲では、特に東京都の里親会、東京都養育家庭連絡会と呼んでおりますが、そこが厚生省とか議員さんのところにも訴えていったりということで、この改正をぜひしていただきたいというので、要望も二十八項目ぐらい細かく書き出しましてやっております。それから、関東ブロックとしても非常に、東京都が入っておりますので、新潟県まで入っているんですけれども、かなり里親たちはそのように動いております。
 そして、やはり全国を見渡しますと、熱心な県と熱心な県じゃないというのがどうしてもございます。北海道、それから関西、九州、そこはほとんどこの関東ブロックと同じぐらいの意識があると思います。
 里親会についてはそういうことです。
平湯参考人 御指摘のように、いろいろな団体がこの三年間で提言を出したりしておりまして、それからそういうものを網羅した全体的な動きもございます。
 個別の方で申し上げますと、先ほども御紹介したJaSPCANという、略称ですけれども、子どもの虐待防止全国研究団体の提言もございます。それから、これはあるいはお手元に届いているようでありますけれども、日本臨床心理士会の改正提言というのがことしの四月に出まして、この提言の中でも、家族の支援とケアも盛り込んだ総合的な法律にしていただきたいというふうなものになっているようです。それから、弁護士の方でいいますと、日弁連の方で今提言を検討しておりまして、あすの理事会でそれを審議するということになっております。
 そして、全体的なことで申し上げますと、おととしから関係のネットワーク、全国ネットワークというものができまして、去年の十二月に日比谷公会堂での集会、それから銀座のパレードというのをいたしまして世論に訴えました。そしてまた、近いところでございますけれども、あすの三十日にも、昼にここの議員会館の中で秘書の集まりを持たせていただくことになっております。
 そのほか、この時期に、いろいろなところからいろいろな形での要望というのが出ております。
保坂(展)委員 今、平湯参考人がおっしゃった、十二月に開かれた日比谷公会堂での集会という場に足を運んだんですが、大変大勢の方がいらっしゃって、約五千人近い方が見えたということで、それだけの関心の高まりに私も驚いたわけです。
 平湯参考人にちょっと一点伺いたいんですけれども、子供自身が通報するというのは、やはり非常に少ないんですね。自分は言えないんですね。パーセンテージでいうとかえって減っちゃって、全体がふえていますから数はふえていますけれども。
 そうするとやはり、周りの、近所の人がいよいよおかしいなんと言うのは、相当ひどい状態になってきたときでしょうから、子供たち自身がノーと言える、あるいはどこかに相談できる、その回路もやはり急務だと思いますし、また、そこがなぜなかなか広がっていかないんだろうかという理由についてお述べいただけますか。
平湯参考人 例えば、弁護士会では、子どもの人権一一〇番というのをやっておりますけれども、学校の相談とかいじめとか、いろいろあります。親からのことについても連絡があります。ただ、それはやはりおっしゃるように、ある程度年齢がいった、小学校の高学年、中学生ぐらいにならないと来ません。
 それで、そのほか、各地でいろいろな、保坂先生なんかもやっておられますチャイルドラインとか、それから、例えば法務省の人権擁護委員の子ども専門委員の方が、その地域で自分の名刺を広く配って、校区内の子供全員に配ったというふうな熱心な方もいらして、子供へのそういう情報提供、知らせて連絡してくれればいいんだよというのをやっておられますけれども、これがまだまだ足りないと思います。学校教育というのが予防の関係でも非常に大事だと思いますけれども、そういう点も含めまして、いろいろ足りないところがあると思います。
保坂(展)委員 大変ありがとうございました。終わります。
青山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
     ――――◇―――――
青山委員長 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
青山委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、理事に達増拓也さんを指名いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十二分散会

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