衆議院

メインへスキップ



第3号 平成16年2月27日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年二月二十七日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 武山百合子君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 上川 陽子君

   理事 小泉 龍司君 理事 河野 太郎君

   理事 石毛えい子君 理事 石田 勝之君

   理事 須藤  浩君 理事 富田 茂之君

      岡本 芳郎君    加藤 勝信君

      北川 知克君    佐藤  錬君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      宮下 一郎君    山際大志郎君

      山下 貴史君    泉  健太君

      小宮山洋子君    肥田美代子君

      水島 広子君    山井 和則君

      高木美智代君    石井 郁子君

    …………………………………

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         小野 清子君

   内閣府副大臣       中島 眞人君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   厚生労働大臣政務官    佐々木知子君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 山下  進君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北井久美子君

   参考人

   (明治学院大学社会学部社会福祉学科教授)     松原 康雄君

   参考人

   (大阪大学大学院人間科学研究科助教授)      西澤  哲君

   参考人

   (弁護士)

   (子どもの虐待防止ネットワーク・あいち(CAPNA)理事長)

   (DV弁護士ネットワーク・あいち代表)      岩城 正光君

   参考人

   (弁護士)        峯本 耕治君

   衆議院調査局第一特別調査室長           高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  島村 宜伸君     山下 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴史君     島村 宜伸君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件(児童虐待問題)

 青少年問題に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

武山委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、明治学院大学社会学部社会福祉学科教授松原康雄さん、大阪大学大学院人間科学研究科助教授西澤哲さん、弁護士、子どもの虐待防止ネットワーク・あいち(CAPNA)理事長、DV弁護士ネットワーク・あいち代表岩城正光さん、弁護士峯本耕治さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位から、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず松原参考人にお願いいたします。

松原参考人 おはようございます。明治学院大学の松原でございます。

 きょうは、参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。いただきました十五分で、少し、児童虐待防止法の改正に向けて、見解を述べさせていただきたいと思います。

 私は、大学で児童福祉論を担当しております。社会福祉の一環ですので、きょうは、人と人、人と社会がかかわる、その支援をするソーシャルワークという立場から幾つかコメントをさせていただきたいというふうに考えております。

 コメントを始める前に、この間、国会でも、それから国の方でも、この法改正に向けてさまざまな努力をされ、きょうを迎えられているということについて、子供にかかわる人間として感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、事前に配付しております資料に基づきまして発言をしていきたいと思います。

 第一に、全体的な枠組みについて、四点、ポイントを用意させていただきました。

 一点目は、子供をめぐる総合的な立法の必要性ということなんですが、これは恐らく中長期的な課題になろうかと思います。この資料には幾つか例示的に法を挙げておきましたけれども、これ以外にもたくさん、子供にかかわる法律がございます。一つ一つ手直しをしていくことも大切なんですが、全般的に、子供をめぐっては、子の法制度というのは総合的なものが長期的には必要ではないかなというふうに思います。もちろん、それには時間がかかりますから、そこにはイギリスの児童法を挙げておきましたけれども、国会等でもたくさんの時間をかけて議論をする必要があろうかと思いますので、この点はこの程度にしておきたいというふうに考えます。

 二番目なんですが、この資料では四番目のところに順序を変えて発言をさせていただきます。やはり、子供の虐待の防止の一番のポイントは予防だというふうに考えております。そういうことで、例えば、私も参画をさせていただきましたが、国の社会保障審議会児童部会の中で、児童虐待の防止等に関する専門委員会、社会的養護のあり方に関する専門委員会、検討会等々でも、この予防ということの大切さが、皆さん、委員の中で確認をされたことです。

 そして、二番目、これは資料の二つ目のポイントになりますが、発見、通告ということも大切でありますけれども、その後、その子供の生命、それから成長発達を守ること、この大切さというのを挙げさせていただきたいと思います。

 同時に、子供の養育に悩んでいる、あるいは孤立をする中で不安が高まっている、さまざまな支援を受けたいと思いながらなかなか地域での支援がない親たちがいる、このことにも着目をしていくべきだろうというふうに思います。すべての虐待事例が、親を何らかの意味で罰するということで済むというふうには考えておりません。早目に発見し、そこから支えていく、そういうことも一方で必要である。もちろん、それだけでは済みませんので、早目に発見をして、すぐ介入をしなきゃいけない、こういう事例もあるかと思いますけれども、これは両方あるんだということをコメントさせていただきたいと思います。

 そういう意味合いの中で、やはり子供の成長発達に応じて子供の意見を尊重していく。諸外国の例を見ましても、子供がこの後どうされたいかということについては子供の意見を聞く場面を設けておりますので、そのことが必要であるということを全体的な枠組みとして発言したいと思います。

 二番目に、個別の課題ということで挙げておきましたけれども、今回の改正、もう既に与党案、それから野党案、民主党案も出ておりますので、そのことにかかわって幾つか発言をさせていただきたいと思います。

 一つ目ですが、与党案の中で、心理的な虐待の中に、ドメスティック・バイオレンス、配偶者による暴力を含められたこと、これは私は非常に大切なポイントだと思って、非常に評価をしております。

 ここには東京都の被害者調査の例を挙げておきましたけれども、これは一般的にも敷衍できるかと思うんですが、一般的に、DV被害者の女性の多くは子供を養育されております。子供から見ますと、お父さんやお母さんが目の前で言い争う、夫が暴言を吐く、あるいはそこに直接的な暴力が及ぶということを目撃している、これは子供にとって重大な心理的な障害になると思いますし、それから、日本でも、それから諸外国の調査を見ましても、そういう家庭内暴力がある世帯のおよそ五割から六割は子供も直接的な被害者であるという結果が出ておりますので、この心理的虐待を入れていただいた、これは非常に大きいと思います。

 ただ、今後、これが現場で実際に生かされていくとしたら、幾つかの課題があるかと思います。

 東京都などで、今、DVの方から見て子供の虐待をどういうふうに考えるかというような委員会にも参加しておりますが、双方がお互いの関心意識が薄いというのが私の正直な感想で、ドメスティック・バイオレンスに関心をお持ちの方はまだまだ児童虐待について関心が薄い、児童虐待を主にされている方はまだDVに関しての関心が薄い、あるいは理解が薄いということで、これは、今後この改正がなされた後、現場で、例えば母子で逃げてこられた方に対して、配偶者暴力相談の方で支援をして、その後、例えば児童相談所につなげていくというような、実際上の連携ということが大きな課題になると思いますし、そういう意味合いでは、相互あるいは分野横断的な研修というのが今後必要になってくるのではないかなというふうに考えております。

 そういう意味合いで、具体的な名称を挙げましたけれども、配偶者暴力相談支援センター、これをやはり虐待対策の中にきちっと位置づけていくということも必要かと思います。

 それから、二番目ですけれども、社会的養護に関する入所施設の役割、それから義務の明確化、そんなことも課題として挙げることができるかと思います。

 お手元の資料には、社会的養護のあり方検討委員会でつくりました図を挙げておきましたので、後ほど見ていただければというふうに思います。

 やはり、親子分離をして、その後、入所施設あるいは小規模の子供の生活する場をどういうふうに保障していくか、このことも非常に大きいと思います。そういう意味合いで、この改正案第十二条で児童を守ることを強化して、十三条の二で自立支援を規定したことというのは、私は積極的に評価をしたいと思います。

 それから三番目に、親子の再統合、これは、分離をしてしまったらそのままということではありませんから、子供が安心して、かつ安定的に生活ができるようにしていくためには、必要に応じて再統合ということを考えていくべきだろうというふうに考えております。

 そのために、やはり実際にそのプログラムをどうするか、そのプログラムを開始するための判断、アセスメントをきちっと強化していかなければいけないだろうというふうに考えております。

 四番目ですけれども、そういう意味合いで、プログラムということでいえば、親子再統合プログラムの策定というのが今後必要になってくると思います。

 主として、三番目、四番目というのは、児童相談所、それからさまざまな施設が核となってこの対策を練られると思いますので、一つにはやはり児童相談所機能の強化、これは人員の確保、専門性を高めるということ、施設職員の労働条件、それから、子供へのサービスのあり方をきちっと問う、こういう検討、研究というのが今後必要になってくるというふうに考えております。

 最後に、五番目なんですけれども、こういった施策については、やはり行政だけということではなかなかうまくいかないと思います。やはり民間団体の協力、NPO等の協力、あるいは地域の、本当に草の根の子育て支援グループの活動というのも大切だろうと思います。

 そういったことで、今回の改正案の中にも含まれておりますけれども、連携を深める、それからこういった人たちと、児童福祉法の方の改正では、要保護児童対策地域協議会というようなことも構想されているようですけれども、やはり公民の協働を推進していくということが大切かと思います。

 子供の虐待については、今後またいろいろなことが明らかにされてくると思いますし、研究が進む中で、もっとこうしたいというようなことが出てくると思います。今回の改正、それの実質的な実施とともに、今後、やはりこういった検証、検討というのはさまざまな場で続けられていくべきだろうというふうに思います。それは、地域でもそうだと思います、民間団体でもそうだと思いますし、行政、それから国会でも、ぜひ、こういった問題を検討する場というのを継続的に設けていっていただきたいというふうに考えております。

 子供の命、それから成長発達を守ること、同時に、子供を育てながらそこに悩んでいる親たち、孤立をしている親たちを支える、その支援の大切さ、この二つを改めて強調させていただいて、ほぼ十五分の時間ということになったと思いますので、発言を終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

武山委員長 ありがとうございました。

 次に、西澤参考人にお願いいたします。

西澤参考人 おはようございます。大阪大学の西澤でございます。

 きょうは、このような発言の機会を与えていただきましたことを本当に感謝いたしたいと思います。

 それと、松原参考人もおっしゃっていましたけれども、今まで、三年前を振り返ると、児童虐待防止法の成立の状況の時期と今回とでは、かなり僕は取り組み方が違うというふうに思います。もちろん、本国会の予算委員会でも、各党から何名もの議員の方々が虐待のことに関して質問をされるというような状況であるとか、あるいは国でも、厚生労働省の予算案を見ましても、今期の三・五倍の予算を主に虐待の対策についてつけられているというような状況は、やはり本当に皆様方の努力のたまものであろうと思い、現場でかかわっている人間としては、まず感謝の意を述べさせていただきたいと思います。

 その上で、さらに私としては意見を述べさせていただきたいと思うのですが、私自身は大阪大学の教員ということで、一つは、心理学の方なんですけれども、研究者という顔を持っています。一方で、ここ二十年間ほど、さまざまな現場で、例えば情緒障害児短期治療施設であるとかあるいは児童養護施設であるとかといった現場で、虐待を受けてすごくダメージを受けた子供たちのケアという仕事もさせてもらっていますので、その両方の面から今回は意見陳述をさせていただきたいと思います。

 まず、こういった議論の一つの象徴的な部分だなと思うのは、今回の岸和田の事件でございますが、あの岸和田の事件をめぐってさまざまな意見が出されているのですが、それを見ましても、どうも岸和田の子ども家庭センター、大阪では児童相談所のことを子ども家庭センターというふうに言っていますが、あの子ども家庭センターひとりの問題であるというような、あそこがミスったんだみたいな、そんなふうな意見というのがかなり多く聞かれていると思うんですけれども、私はそうは思っていません。

 あれは、大阪というのは、御存じだと思いますけれども、一九九〇年に児童虐待防止協会というのが設立され、日本で最初の民間のネットワークでございますが、ある意味、日本の虐待対応の領域をリードしてきたというふうな、トップランナーの位置なんですね。現在でもそれは変わっておりませんで、児童相談所の機能レベルとしても、全国的にも非常に高いというふうに一般には評価されている。

 その地でああいう事件が起こったということは、つまり、どこで起こってもおかしくないということなんですね。いわばあの事件というのは、もちろん、岸和田児相の問題はあるとは思うのですが、それでも、大きな視野で見ると、日本の子供の虐待ということに対応する今までのシステム、児童福祉なり家庭福祉のシステムがいわばもう限界点に来ているということを象徴的にあらわしているんだと思います。

 今申し上げた日本の虐待に対応する児童福祉システム、制度というのは、基本的には、戦後間もなくつくられた児童福祉法によって規定されたシステムなんですね。そのシステムの中で、児童の相談というのは、基本的に親の相談に乗って親を援助するというスタイルをずっと貫いてきているわけです。つまり、一般的に言えば、親が子供の権利の最大の擁護者である、親が一番子供のことを考えているんだという枠組みですべての相談システムはつくられているのです。

 ところが、一九九〇年以降、児童虐待、子供の虐待という問題が非常にふえてきて、社会の注目を浴びるようになったわけですが、子供の虐待というのは、少なくとも当初、介入の当初は、親がさっき申し上げたような子供の最大の権利擁護者ではないんですね。今までは、これまでの児童相談あるいは家庭の福祉というような制度の中に、そういった例外的なケースとして虐待をも対応してきたという歴史が、ずうっと一九九〇年まではあったわけです。

 ところが、さっき申し上げましたように、その後、そういった虐待のケースというのが、例えば一九九〇年には、全国の児童相談所合わせてもせいぜい一千件だった時代です。それが今日では、二万数千件というような件数の伸びを示しておりまして、つまり、例外的に扱っていたケースが例外じゃなくなってきた、そのいわば制度的な枠組みの限界、もしくは言葉はちょっと悪いですけれども、破綻という状況のあらわれが今回の岸和田の事件として表面化したんだろうというふうに私はとらえています。

 ですから、基本的にそういった制度のあり方というのをそもそもで言えば見直していかなきゃいけないというのは、これは松原参考人も言われましたけれども、中長期的な展望だろうというふうに思います。ただ、具体的に今何ができるか、何をしなきゃいけないかというのは、そういった制度の抜本的な改革を見通して、今やれることが何なのかというのは検討していく必要があると思うんですね。

 それで、まず一つ指摘しておきたいのは、例えば今申し上げたような、親が子供の権利の最大の擁護者であるという枠組みでいくと、要は、児童相談所、あるいはその児童相談所の前線で活躍する児童福祉司という立場の人たちがいますが、これは基本的に親のサポーターでよかったわけです。だから、親を援助することによって子供を援助するというようなことで、ベースラインの配置数とか設置数が決められていたんだろう。従来の枠組みであれば、現在の配置数や設置数でもやっていけた。

 ところが、さっき申し上げたように、そういった枠組みでは援助できない親たちがふえてきて、それが二万数千件にもなっているというところで、基本的に児童相談所の数であるとか、あるいはそこで働く児童福祉司、我々はソーシャルワーカーというふうに呼んでいますけれども、そういった人たちの数はもう決定的に不足しているという状況を迎えています。

 例えば、欧米各国を見ると、これはよく出る数字なんですが、私、アメリカでも一時期仕事をしておりましたけれども、アメリカの場合ですと、CPSという機関があって、これはチャイルド・プロテクティブ・サービス、訳すと子供保護機関という公的機関です。

 ここは、よく日本の児童相談所と比較されるのですが、児童相談所と決定的に違うのは、虐待を専門に扱う機関である。一般の援助は別の枠組みで、大体どこでもあるのが社会福祉局。そういった社会福祉局が子供や親の援助を扱うのであって、一方で、CPSは、虐待の通報を受けて、子供を保護して、そして調査してその事件を裁判所に送るというところまでが仕事、そういった初期介入をやる機関がCPSといいますけれども、ここのケースワーカー、ソーシャルワーカーの数というのは、子供の一般人口二千五百人に一人というような配置状況にあります。

 ところが、一方で、では日本の場合はどうかというと、厚労省が一生懸命頑張られて、年々その数はふえていますけれども、現在の状況でも、子供の一般人口一万数千人に一人というのが児童相談所のワーカーの配置数です。一万数千人に一人と、アメリカの場合では二千数百人に一人という、けた違いの配置状況にある。

 もちろん、アメリカは非常に虐待の通報数が突出していますから、そういった状況だということでよく言われるんですけれども、では、日本と比較的似た通報数を持っている、例えばイギリスというところを見ると、イギリスの場合は、大体五千人に一人のソーシャルワーカーの配置がなされております。日本の大体三倍というところでしょうか。

 あるいは、最近伝わってきたデータなんですけれども、びっくりしたのはドイツでございますが、ドイツの場合には、虐待専門のソーシャルワーカーではなくて、日本の児童相談所のワーカーと同じような、いろいろな要保護児童の相談に乗っている、そういうソーシャルワーカーの数というのは、子供人口九百人に一人の配置という非常に突出した数字を示している。というか、日本が突出して少ないと言った方が、こういった諸外国の状況を見たらわかるのではないかなと思います。それがさっき申し上げたような、制度の基本的な枠組みの限界とか破綻というのがそういう形であらわれてきている。

 もう一つは、例えば、親の援助ということに関しても同じでございまして、さっき申し上げたように、親が子供の権利の最大の擁護者であるならば、親とパートナーシップをとって、つまり、協働関係で子供の問題を考えていくというのが基本的なスタイルです。ところが、虐待の場合は、何回も言いますが、それが対立関係になってしまう。つまり、協働関係と対立関係ということを同じ児童相談所が担わなきゃいけないということの問題というのが出てきています。

 今回も、例えば、岸和田の児童相談所が親の話を聞いたら、子供は不登校だから、あるいは摂食障害だからというようなことで断られているというか、子供との面会を拒否されたときに、親の援助者、協働関係を重視する人間としてはそこに踏み込めない。単にそれは児童相談所の判断の甘さと言われますけれども、判断だけではなくて、基本的な枠組みの中で、親を助けなきゃという立場の人間ですから、少なくとも親が疑いを持たれているというような状況になったときに、そこをきちっと、自分たちの仕事と整合性を保ちながら、家庭の中に入っていって子供に対して確認をするとか、そういった仕事ができないというふうな状況になります。

 だから、今回、それぞれの、与党と民主党の改正案を見させていただきましたけれども、やはりそういった部分ではまだまだ子供の保護の位置づけというのが非常に甘い。子供が明らかに虐待を受けているんだということがないと子供は保護しないとか、どうしてもそういうふうな枠組みになっているのは、従来の、親を援助するというスタンスのところに子供を守るという業務を位置づけるからどうしても難しくなってくると思います。

 さらに言えば、今回、改正案の六条で子供の虐待の通告のところが触れられていますけれども、これは、かつては、虐待を受けた子供というふうに規定されていたのが、虐待を受けたと思われるとか、あるいは虐待を受けたと認められる子供を知った場合には通告しなければいけないというふうに、やや広げていただいた。このことはすごく感謝をしたいというか、努力のたまものだろうと思いますが、一方で、受けたと認められるとか受けたと思われるというところになると、やはり現場の人間としては通告がなかなかできないです。

 僕は今、大阪の某学校に月に一度通って、そこで、虐待を受けた子供たちの学校での問題にも取り組んでいるのですが、学校の先生方というのは、こういうふうな事例で、お子さんの状況で通告していいのかどうか悩むというのが一番大きいんですね。

 そういった部分で、本当はそこは児童相談所が判断をしなきゃいけない。この子はこういうふうな状況があって学校の先生から連絡があった、こういったことを総合的に判断したら、児童相談所としてはこれは虐待だろうというふうに判断をするというのが本来のあり方なんですが、さっき申し上げたような児童福祉司の徹底した不足によってそこまで手が回らない。そうなると、学校の先生が判断しなきゃいけないというようなことになってしまって、専門家でない人間が虐待か否かというのを判断するというおかしな状況になってしまうんですね。

 それが通告のおくれとか今回の事件みたいなことにもつながっていくわけで、そういったところで、やはり、虐待を疑ったら通告しましょうというような形に、疑うというところに焦点を、疑ったケースでいいんだ、つまりこれは、疑ったケースでいいということは、間違ってしまった通告もあり得るという、そういったことまで広げておかないと、実際、子供の命は救えないだろうと思います。

 さっき、ちょっと話が横にそれましたけれども、親の援助ということも、やはりさっき申し上げたように、協働関係と対立関係という両方の矛盾した仕事を担わされる児童相談所が、そしてさらに子供の命を守るべしということで、対立関係になった場合の職務を全うしようとしたら、当然、親の援助はできなくなってしまう。

 もっとも、子供が深刻な虐待を受けている場合には、児童福祉法第二十八条という形で、家裁の審判を仰いで子供を親から分離していいというような、そういう措置がとられるわけですけれども、家裁の審判を仰ぐということは、つまり、親とはもう決定的な対立関係になるわけですね。そのような二十八条の措置を受けた親御さんに対して、では、だれがその後援助するのかということになると、それまた児童相談所であるというような、対立関係になった人に援助をさせなさいというようなのが今の枠組みになっているわけです。

 ところが、親の立場からすると、僕は、虐待してしまって子供を取り上げられた親御さんとの援助関係もありますから、話を聞くと、彼女たち、彼らたちにとってみれば、自分たちは何もしていないのにと。虐待をしている親というのは、援助が非常に難しいのは、それに対する少なくとも意識的な自覚が低いということですから、何もしていないのに、あるいはしつけの範囲内のことをしていただけなのに、行政が、国が無理やり自分のもとから子供を奪い去って、じゃ、その後私たちはどうしろというのか、そのときに、児童相談所に援助を受けなさいと言われるけれども、あんな、自分のもとから子供をとり去ってしまったような不条理なことをした人に援助なんか受けられない、どこかほかにないのか、何もないという今の現状です。

 だから、そういう意味では、児童相談所ばかりに一極集中してそういう機能を果たさせようとするのではなくて、親の援助ということを専ら行えるような独立した機関なり専門機関というのがやはり必要になるだろう。それは、今回、改正案を見させてもらいましたが、少なくとも、その部分というのは余り見えてこなかったというふうに思います。

 それからもう一つ、あともう二分しかないので大分はしょりますけれども、今回の、二〇〇〇年以降の動きを見ても、虐待を受けた子供たちの発見、通告ということに関してはかなり力が入ってきて、いい状況になってはきていると思うのですが、一方で、分離された子供のケア、親のことも今言いましたけれども、分離された子供たちが一体、その後どういう状況になっているのか。

 日本の場合は、虐待を受けた子供たちは、特に深刻な虐待で子供を分離しなきゃいけないというケースの場合、その多くは児童養護施設という場所に行きます。九十数%が児童養護施設に行きます。これは、欧米はほとんどの場合里親に行っていますので、そういう意味では、日本は集団養育ということにまだ軸足があるわけですけれども、その中で実は何が起こっているかというと、一つは、施設内虐待という問題が起こってきています。

 施設内虐待、施設の中で子供が暴力を受けたり不適切なかかわりをされるという問題ですけれども、これは、ぱっと外形的に見れば、養護施設の職員は何をやっているんだという話になるんですが、実はこれは、余りにも大変な問題を子供たちがしょっているために、ちゃんとしたケアができない。職員はバーンアウトしていく、どんどんやめていく。一方で、場合によっては、そういった子供たちの状況に振り回されて、最終的には子供に対してどなりつけてしまったり、あるいは暴力を起こしてしまうといったような状況にあるんですね。

 そういったことというのは、要は、子供たちを守るために分離しておきながら、実際に子供たちのその後の、ケアを受ける権利だとか、あるいは教育を受ける権利だとか、そういった子供の人権というのが守られていないという現状、それが施設内虐待という問題としてあらわれているんだろうと思います。

 今、持ち時間が尽きてしまいましたので、言いたいことはもう山ほどあるんですけれども、とりあえずはこういう形で述べさせていただきました。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

武山委員長 ありがとうございました。

 次に、岩城参考人にお願いいたします。

岩城参考人 きょうは、お招き、どうもありがとうございました。

 私は、地元愛知県におきまして、NPO法人であるCAPNA、そしてDV弁護士ネットワーク・あいちという組織の代表をしております。子供の虐待やDV防止に取り組んでいる弁護士の一人であるわけです。

 本日は、市民団体の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 CAPNAの活動につきましては、お手元にCAPNAのリーフレットがあると思いますので、それをごらんください。主な活動としては、電話相談、そして危機介入、それから調査研究、社会啓発、家庭支援などの予防・援助という五つの柱で活動を続けています。

 CAPNAの市民団体としての活動とは別に、CAPNA弁護団という弁護士グループの活動によってもCAPNAは支えられています。虐待を受けた子供たちの救出だけではなく、虐待をして子供を死なせてしまった親についての刑事弁護についても、このCAPNA弁護団は積極的に取り組んでいます。

 虐待によってとうとい命を奪われた子供たち、さらには、命こそ守られたものの、虐待によって人生を大きく狂わされてしまった不幸な子供たちの声なき声を、本日は、できるだけ代弁したいと思っております。

 まず、市民団体としての役割についてお話ししたいと思います。

 虐待防止にとって、行政のみの取り組みでは不十分であるということは、昔から言われております。市民団体との連携は不可欠だと。現行の児童虐待防止法四条も、行政と民間団体の連携強化がうたわれております。しかしながら、法律の文言は、連携とはいうものの、市民団体の役割は具体的にどのようなものが想定されているのか、明らかではありません。その結果、行政の中では、形だけの連携としていって、実質的には市民団体と何も連携しようとしない機関が現実に存在します。

 行政と市民団体とは、もともと、同じ虐待防止という目的を持っていても役割が違います。行政は、国民への均一、平均的なサービスを提供することを目的にしています。これに対し市民団体は、個別的なニードに対して最適利益を提供しようという組織であります。同じ地域に密着した活動であっても、行政にできて市民団体にできないものがある、市民団体にできて行政にできないものがある、ここをきちっと明確に理解しておく必要があると思います。福祉はすべて行政だけが行う施策だという官僚的な体質の強い行政担当者がおられますと、いまだに市民団体との連携がうまくいっておりません。

 次に、子供の権利擁護についてお話ししたいと思います。

 現行の児童虐待防止法一条にも、その目的の定めがあります。今回の改正案はいずれも、虐待は子供の人権の侵害であると明記されておりますが、これは大変評価できることであります。虐待は、子供の視点、SOSをみずから発信できない子供の声なき声を聞き取る細やかな神経がなければ、発見、防止などできません。しかし、虐待のすべてのステージに子供の権利擁護が貫かれなければならないのです。児童虐待のステージについては後でお話しいたしますが、すべての虐待防止の施策に、子供こそが主人公である、子供の権利擁護の思想が貫かれなければ、子供は、仮に施設に入ったとしても、さらに親元に戻されたとしても、子供への支援は中途半端なもので終わってしまいます。

 民主党案は、一条のところに、「もって児童の人権の擁護に資することを目的とする。」と明記されておりまして、子供の人権擁護のためにつくられた法律だということが明らかにされています。これは評価できることだと思います。

 ただ、資するものであるという言葉がちょっと弱いのではないか。むしろ端的に、子供の人権を擁護することが目的なんだというふうに断定的に書いていただくことが、私としては大変うれしいものです。なぜなら、それほど子供の人権というのは無視されやすいものなんだ。子どもの権利条約を我が国は締結いたしておりますが、いまだに我が国は国連から勧告を受けているという現状を見ますと、子供の人権が徹底して擁護されなければならないという姿勢が必要だろうと思います。

 次に、連携についてお話ししたいと思います。

 具体的に子供の虐待の問題を考えるとき、四つのステージがあります。それぞれのステージごとにニードやネットワークが異なってくるわけです。

 まず、第一のステージですけれども、発見・予防のステージです。

 児童虐待の早期発見、予防、子育て支援、ここが第一のステージの重大なテーマです。学校や保育園などの研修が求められるというのも、この第一のステージです。岸和田のケースも、この第一のステージで学校、地域の人たちがもっとこの問題にかかわっておれば、子供を救えたと思うのです。児童虐待は、やはり周りの人のネグレクトによって深刻化している事実は無視できません。

 第二のステージは、いわゆる危機介入、親子分離というステージであります。

 ここでは、子供の命を守るために、親への説得、立入調査、警察活用、裁判所の関与というのが問題になります。最も権力的な作用がこの第二のステージでは要求されているわけです。

 第三のステージは、治療・ケアのステージです。

 虐待された子供、そして虐待せざるを得ない親自身に対して、それぞれ治療がなされるべきです。虐待には厳罰をもって対処すれば予防できるという考え方は、極めて単純な考えです。マスコミは、虐待事件が発生するたびに、虐待する親を、鬼母だ、鬼父だ、鬼畜にももとると非難しております。しかし、私は、刑事弁護人として、虐待してしまった親の弁護を引き受け、面会していますと、マスコミが言うような鬼のような父、鬼のような母は一人も出くわしておりません。

 その意味で、私は、虐待防止活動にとって、この第三のステージこそ大切な部分だと思っています。虐待の再生産を治療でやめさせなければ、子供を幾ら親元から引き離して保護しても、次々と虐待が再生産されてしまうからです。このステージでは、虐待で傷ついた子供をいやす治療、ケアの手だてが児童福祉施設に求められるべきです。そして、親自身を治療へ結びつける契機が必要となってきます。

 第四のステージは、いわゆる親子の再統合と言われるステージであります。児童虐待防止活動の最終ゴールだと言われているようなステージであります。

 今回の改正法案につきましては、いずれも親子の再統合について念頭に置いた法案になっております。しかしながら、親子の再統合は、実際、誤解されやすいです。なぜなら、虐待していた親元に子供を戻すことができたということで、めでたしめでたしと思う人が多いからです。

 家族機能や家族関係は、そんなに単純ではありません。子供を親元に戻すことで解決したと考えるのは、これは錯覚です。親元に子供を戻したとしても、そこで新たな家庭内のストレスが生じ、再虐待に結びつき、その結果、施設から親元に子供を戻したところ、子供が虐待で死亡したという事件が実際に起きております。親元に戻した後も、子供の権利擁護という視点から家族関係を調整、統合していくかかわりこそ大事であります。ここでも、第一ステージで求められた子育て支援が必要となってきます。

 具体的に、各ステージで問題になる点をお話しいたします。

 第一のステージです。

 多くの方は、通報義務の強調を申し上げます。早期に虐待の通報があれば早期に介入ができて予防できるんだという単純な発想です。確かに、それはそのとおりです。しかし、通報をふやして虐待を告げ口する人をふやしたからといって、虐待が防止できると考えるのは早計です。大切なのは、虐待を発見する人も大事ではあるけれども、虐待を発見した後、その虐待が疑われる家庭に対してかかわる支援者をふやすことこそが大事であります。

 そこでは、関係機関が通報後の調査活動に協力する義務が明記されるべきであります。そうでないと、虐待を発見したから通報しておいた、あとは児童相談所の仕事だといって、児童相談所に協力をしない機関が実際に出てまいります。すべて児童相談所に丸投げ、そういう事態が実際に起きています。いわば、児童相談所を通報で屋根の上に上げておきながらはしごを外してしまう、そういう事態が生じます。

 やはり、守秘義務よりも通報義務が優先するんだというのと同じように、守秘義務よりもさらに調査協力義務が優先するんだということを明確にしていただきたいと思います。防止法第六条にその旨を明記していただくことを望みます。

 次に、児童相談所に通報がありながら子供を救えないというケースがあります。死亡までいかなくても、児童相談所が抱えていながらその虐待をそのまま放置してしまう、ネグレクトされてしまうという事態が出ています。なぜでしょうか。

 私は、端的に、ケース検討会議が児童虐待防止法でも明記されるべきだと思っています。児童福祉法の改正案の二十五条二では、市町村に協議会を設けるとなっています。これは市町村レベルでのネットワークだと思います。しかし、児童相談所こそ、ケース検討会議、第三者を含めた会議をして、子供の支援をしていくべきだと思っています。

 次に、警察活動のあり方についてであります。

 第一ステージから第二ステージへのつながりの中で、児童相談所の立入調査の役割は極めて重要であります。児童相談所も丸腰ですから、バイオレンスの吹きすさぶ虐待家庭への立ち入りは危険を伴います。そのために警察を活用したいと考えるのはもっともなことでありますし、警察はそれに積極的にこたえていくべきであります。

 しかし、与党案のような警察主導の立ち入りは問題であると思っています。なぜなら、子供の権利擁護という観点から見るならば、警察の介入には慎重であるべきだと思います。警察は活用すべきですけれども、警察に主導権を与えると、それはやはり刑罰を念頭に置いた介入になってしまいます。子供の権利擁護のためには福祉的視点は極めて重要であって、やはり児童相談所が中心になるべきだと思います。

 具体的には、児童福祉法の十条の二、三項、これは与党案ですけれども、ここの条文について、裁判所の令状なしに関与できるとなっています。しかも、それはそれなりにお考えになられて要件を厳重にされたと思います。

 私は、裁判所の令状を要求することによって、要件はもっと軽くてもいいんじゃないかと思っています。立入調査することぐらい、何でちゅうちょしなければいけないんですか。ただ、プライバシーの問題がありますから、裁判所の令状があれば、長期間にわたり子供の安全が確認できない、そして立入調査しかほかにとる方法がないという事態であれば、子供の生命、身体に危害が加わるかどうかなんという要件がなくたって、児童相談所が警察の援助をもらいながら介入するということは、これは積極的に取り入れていくべきだと思っています。

 時間がありませんので、最後に、司法福祉の充実についてお話しさせていただきます。

 裁判所の許可による立入調査のお話をいたしましたけれども、裁判所の関与する部分をもっともっと広げていくべきだと思います。究極的には、裁判所の治療命令によって親を治療に結びつける契機をつくるべきです。既にアメリカではそれができております。日本の裁判所は、事件が起きて、それを事後的に解決する役割が司法の役割だというふうに考えています。しかし、それでは司法と国民生活はどんどん遠くなるばかりです。もっと法の支配、ルール・オブ・ローといいますけれども、法化社会の実現のためには、裁判所がもっと国民に身近であるべきだと思います。

 市民団体への権限移譲について述べさせていただきます。

 もっと行政は市民団体に権限をゆだねるべきだと思います。例えば電話相談業務、研修、それから家庭支援、子育て支援、親への治療、ケア、これは、現行法の児童福祉法二十七条一項二号の指導措置の委託だってできるはずです。ケース検討会議への参加、それから、CAPの活動に見られるように学校現場における教育プログラムの活用、こういったものも市民団体ならできるはずです。そして、市民団体の方が人材が厚く、費用も安上がりに済むという実態があります。

 最後に、虐待死ケースのお話をさせてください。

 児童虐待で子供の命が奪われたとき、検証手続がとられているところはわずかです。実際のところ、厚生労働省に死亡ケースを報告させるということは行政的な指導としてされているようでありますが、その虐待死ケースの検証についても、児童相談所内部だけでの検証であって、第三者を交えた、第二、第三の悲劇を防ぐためにはどうしたらいいかという視点がなされておりません。

 名古屋市児童相談所は、同じ過ちを三度繰り返しています。三年前の南区の小学校二年生の杏実ちゃんの事件、熱田区の事件、そして最近起きました、昭和区の高校三年生によって虐待死の起きた勇樹ちゃんの事件、いずれも、ケース検討会議が全く開かれておりません。児童相談所は単に相談を受けているだけ、通報を受けて、そして子供を確認しただけという形に終わってしまっています。

 やはり、虐待死の事件が起きた場合には、具体的に第三者を交えた検証手続をとって、それを厚生労働省に報告させるようなことが必要だろうと思います。虐待死データの公的な調査、これも大切だと思います。こういった検証手続をとってこそ、虐待死のデータが生きてくるわけです。

 虐待で亡くなった子供は、虐待されて死ぬために生まれてきたわけではありません。この子の命を、親を刑務所に送ってそれで終わりだというわけじゃありません。第二、第三の悲劇を生み出さないためにこそ、子の親に対する刑事弁護を私たちは積極的に引き受けているんです。その中で見えてくることは、なぜ虐待が起きてしまうのか。それは、親にも問題があるけれども、周りの関係機関、地域住民がネグレクトをしているという事実は避けて通ることができません。

 最後に、親と分離された後の子供の権利擁護についてお話しさせてください。

 親と分離された後、子供たちは児童福祉施設に入ります。しかし、その児童福祉施設がとても貧困な状態であるというのは、さきのお二人の参考人のお話からもうかがえることであります。

 そして、DVで保護命令というのがありますけれども、この保護命令というのを、虐待を受けた子供にも適用できるような法律をつくっていただきたいと思います。子供に接近するな、家に立ち入るな、こういった制度を児童虐待防止法にも置いていただきたいと思っています。

 時間がちょっと延長したみたいです。済みません。終わります。(拍手)

武山委員長 ありがとうございました。

 次に、峯本参考人にお願いいたします。

峯本参考人 峯本です。どうぞよろしくお願いいたします。きょうは、どうもお招きありがとうございます。

 私は、きょうは弁護士ということで来ていますが、大阪から来ました。

 それで、大阪で、今回岸和田のケースというのは、児童相談所、それから教育関係者にとっても非常にショッキングな事件だったわけです。

 私たち弁護士にとっても、実は大阪では、児童相談所との公的な弁護士との連携制度がありまして、児童虐待等危機介入援助チームというのが大阪府知事の委嘱でありまして、そこに弁護士が就任しています。大阪弁護士会で約三十名の弁護士がその委員に就任していまして、絶えず、常時、児童相談所から相談を受け、ケース会議に出席をし、分離のときの代理人になるというような活動で協働してやらせていただいています。ですから、私たちにとっても非常にショッキングな事件で、ある種、ちょっと心の中にトラウマ、先ほど西澤さんのお話にもありましたように、大阪は一番先進的だと言われていましたので、正直言って大変ショックを受けています。

 ただ、やはりあの子自身が乗り越えて、あの子自身が何とか回復してくれたらという思いがありますが、私たちは、やはりそこから教訓を導き出して制度改革につなげていけたらというふうに思っていますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 私がまず最初に申し上げたいのは、今回、岸和田のケースでは、不登校の背景のネグレクト、虐待が問題になりましたが、不登校だけではなくて、子供たちの問題行動、非行であるとか学校における問題行動の背景にあるネグレクト、虐待、それからDVですね、家庭内暴力の問題が実に深刻な状況にあるということをお伝えしたいというふうに思います。

 これは、もう一般的に想像されているよりも、理解されているよりも激しく、大きく深刻な状況にありまして、むしろ、子供の非行の問題、問題行動の問題とかを突っ込んで、きちっと一個一個のケースをアセスメントしていきますと、ほぼ確実に、原則として、そういう不適切な養育環境の問題が見えてくると言っても過言ではないと思います。

 大阪府の教育委員会に、今、子どもサポートグループというのが設置されていまして、どういうことをしているかといいますと、学校で、子供たちの問題行動になかなか学校だけで対応できない重要な状態、状況になったときに、学校からの支援要請を受けて、例えば、子どもサポートグループがアドバイスを与える。それから、学生サポーターを派遣して、実際にクラスに入ってサポートをしてもらう。それから、私たち弁護士とか臨床心理士が実際に学校現場に行って、そこでケース会議を持って、個々のアセスメントをして、対応プランを学校の先生と一緒に考えるというようなことをやっています。

 そこに参加して、実際にケース会議をやって、一個一個の情報を共有して、なぜこの子がこういうあれを示しているのか、この学校はこういう問題を抱えているのかを見たときに、必ず家族の問題が見えてきます。

 典型的なもので言えば、例えば、十五人、学年で非常にしんどい子供がいる。授業をエスケープする、校内暴力をするというような、非常にしんどい子がいるときに、その中で、キーになる子が五人ぐらいいてるとしましょう。それで、その五人の子供たちのバックグラウンドをきちっとアセスメントしていったときには、ほぼ確実と言ってもいいぐらいにネグレクトであるとか虐待、DVの問題が見えてくる。それぐらい厳しい状況にあります。

 それから、不登校の問題につきましても、文部科学省の統計では、家族に起因する不登校というのが、大体二〇%ぐらいの数字が上がっていると思うんですけれども、実感としては、やはりもう少し高い。特に、遊び・非行型と無気力型で、全国平均で三分の一、大阪は二分の一近い割合を占めているんですけれども、大阪が多いのは、多分経済的なしんどさが反映していると思うんですが、遊び・非行型、無気力型のかなりの割合を家族の問題が占めていると考えていいだろうと思います。

 これは、実際にある学校のケースですが、一生懸命虐待の問題にも取り組んで、マスコミでも取り上げられていた学校ですけれども、そこの学校で、不登校になった子供たちの、まあ何とか頑張って別室登校、別室で登校させるというようなところまで持ってきているケースで、八名の子供たちがいて、そのうちの四名は虐待、ネグレクトが原因になっている、そういう例も報告されています。

 ですから、一個一個のケースを本当に真剣に見ていったときには、そういう家族の問題が非常に深刻であるということがわかってきます。もちろん、これは、例えば中学校で突然始まる問題ではありません。乳幼児期、それから小学校期からずっと始まっている問題です。ですから、できるだけ早期に深くかかわってあげる、支援をしてあげる。ですから、もちろん介入が必要なケースもありますが、そこにどう早い段階で支援できるかというのが、本当に問題がエスカレートしていくことを防ぐ上では最大のポイントになってくると思います。

 典型的なパターンとして、やはり家族の中の、簡単に言うと愛情不足といいますか、愛情を十分に受けられていない、それゆえに自尊心も十分に持てていない子供たちが、学校で、愛情要求の裏返しといいますか、居場所探しをするんですね。いびつな居場所探しが問題行動としてあらわれ、それに対して、学校がうまくボタンをかけられなかったら、学校の中でも居場所が見出せず、それらがいろいろな問題行動としてあらわれてくるし、さらに、外での非行につながっていく。

 小学校時代は問題がまだ小さいですけれども、それがだんだん思春期を迎えるにつれて大きくなってきて、中学校になったときには、例えば、学校不信であるとか教師不信とかも重なって、それが激しい問題行動としてあらわれるというのが、今の中学校が抱えている典型的な問題のパターンだというふうに考えていただいていいと思います。ですから、そういう意味では、数としては非常に深刻な状況にあるんですね。

 二番目に申し上げたいのが、では、そういう、例えば学校が福祉的な視点をきちっと持てるようになって、こういうケース、心配なケースを児童相談所に通告していったときに、それにたえられる体制には全くないということです。これまで繰り返しお話に出ていますが、あえて私の方からも申し上げたいというふうに思います。

 イギリスでは、年間、大体十五万件ぐらいの通告が行われています。その中で、いろいろな調査が行われて、最終的に二万件から三万件の子供たちが、毎年、虐待の現実的な危険性がある子供として登録されていく、そういう状況にあります。そこで絞り込みが行われるわけですが、日本の場合も、もし本当に今の子供たちが抱えている問題をきちっとアセスメントしてそれに対応していく、学校が心配に感じているケース、地域が心配に感じているケースを児童相談所に通告したら、その数というのは決して非現実的な数字ではないんですね。

 イギリスと言いましたが、イングランドですけれども、イングランドは五千五百万の人口ですから、日本の半分です。ですから、年間十五万件というと、単純に当てはめると、三十万件の通告があっても不思議ではない。私の実感としては五万件とか十万件ぐらいに、もし本当に本格的に取り組んで、心配なケースを送ってくださいということになると、それぐらいふえても不思議ではないというふうに思います。

 実際に、岸和田の事件以降、大阪府では通告件数がもう三倍になっているんですね。三倍から四倍に近い状態になっていますから、学校の方も、ちょっと心配なケースがあったら送っておかないと後で自分たちが責められると。これはもう当然、各機関の心理なんですね。ですから、そういうことが起こってきたときには、本当に児童相談所は絶対対応できない状況にあります。

 例えば、私は今、吹田市の虐待防止ネットワーク、今考えたら、こんなことを引き受けていていいのかなと思うのですが、その座長をやっているんですが、吹田市で見ましても、吹田の子ども家庭センターというのは、虐待対応課のメンバーは三人で、カバーしている地域は吹田市と高槻市と茨木市と摂津市で、人口合計が百万人を超えるんですね。虐待対応課のメンバーというのは三人です。これは到底対応できないですし、児童相談所全体を見ても、約二十名程度のソーシャルワーカーしかいない。

 この現実がある限りは、ここはやはり今財政難、非常に厳しい状況だというのを私も理解しています。その中で、何とかみんながやりくりをしてやってきているという状況なんですけれども、やはり中長期的な計画に基づいて、確実にソーシャルワーカーの数をふやしていただきたいという思いがあります。

 できましたらといいますか、できましたらという言い方をするよりも、参考人としてははっきりと言った方がいいと思うんですが、法令の中にそういう人口増、中長期的な計画でソーシャルワーカーの数をふやしていける、何かそれなりに縛りのあるものを入れていただきたいというのが、今の強い希望としてあります。

 それからもう一つ。次に、地域関係機関のネットワークの拡充についてお話ししたいと思います。

 これは児童福祉法の改正の中でも言われていますし、恐らく、市町村が中心となったネットワークの確立ということが考えられているのだと思いますが、現実に、先ほど言いましたように、大阪でも各自治体でネットワークがつくられていっています。岸和田でネットワークがなかったことも今回の原因になっているんじゃないかというふうに言われていて、それは恐らくそういう面はあったんだろうと思います。

 ですから、ネットワークの充実というのが不可欠な状況で、特に、児童相談所の機能を重大ケースに限定するという方向が片一方でありますので、もしそうであれば、本当に、それをどこでどういう形で補っていくのか、さらに積極的なものにしていくのかというのは、非常に大きなポイントになると思います。

 ただ、地域ネットワークも、形だけをつくっても、結局、機能しないものになる可能性があります。不可欠な条件がやはり幾つかあるというふうに思います。

 一つは、まず、虐待防止の取り組みというのは、ある意味、単純なところがあると私は思っています。通告をきちっと集中させて、そこでちゃんとケースの見きわめといいますか、ケースの重大性を評価して、例えば緊急の保護が必要なのか、ケース会議を開く必要があるのか、当面、関係機関でしばらく経過観察をすべきなのか、そのときどういうことをしたらいいのかというような最初のアセスメントをして、それから仕分け、振り分けをしていく。そういうコーディネートする機関がしっかりしているかどうかということが一点目。

 もう一点目は、そのコーディネートに基づいて、実際に課題を抱えた家族に対して、具体的にかかわっていけるソーシャルワーカーを確保できるかどうかというところがポイントになると思います。やはり、これは枠組みの問題ではなくて、虐待の防止のためには、その家族に真剣にかかわる、責任を持ってかかわる人間が要るんですね。その人間をどうやって確保できるのかということが非常に大きなポイントです。

 これを、今の市町村を中心とする虐待ネットワークを考えると、恐らく、どこか児童福祉関係の課の中にそういう事務局が置かれることになりますが、今までの仕事にぽんとそれがつけ加えられる形で、仕事がふえるんですね。多くの自治体では専門職採用がされていませんから、そのコーディネートする機関のところには専門職がいないということがあります。では、どこでコーディネートするんだ、アセスメントするんだという問題が生じてきます。

 それから、今のままでぽんとネットワークの事務局を置いてくださいよということを言っても、絶対これは機能しない。ほとんどのところでは機能しないです。ですから、やはりコーディネートする機関のところにきちっと専門性を持ったスタッフを一定人数確保して、かつ、ある程度、すべてその仕事と言わないまでも、かなり専従できるような体制を組まないと、今の期待している効果というのはあらわれてこないと思います。

 もう一点は、ソーシャルワーカーの確保の問題です。

 これは、今の状態でいくと、やはり、市町村自体にソーシャルワーカーが配置される必要があると思います。今、唯一使える資源としては、福祉事務所内の家庭児童相談室の相談員さんがソーシャルワーカー的役割を果たすことができます。ただ、家庭児童相談室も任意設置なんですね。ですから、すべての自治体にあるわけではなくて、大阪でもあるところとないところがあります。しかも、非常勤の問題であるとか専門性の問題とか、いろいろな問題を抱えています。

 ですから、そこに家庭児童相談室を義務的な設置にして、それからそこに専門職をきちっと確保していくということが、一つ、現実的な課題としてあるのではないかなと思います。

 三点目に、学校のサポートシステムが大切だということです。

 これは、虐待、今回の岸和田のケースでいえば、学校として通告していないんじゃないか、相談はしたかもしれないけれども通告になっていないんじゃないか、危機感が足りないんじゃないか、もっと責任を持って最後まで揺さぶって児童相談所を動かすべきだったんじゃないかという批判が当然あると思います。

 ただ、私も学校と一緒に、教育委員会と一緒に仕事をしていく中で、実際にはなかなか、学校の先生方は日々の問題行動に追われる。不登校でかつネグレクト、虐待の問題というのは、家族が積極的に学校に対して要請してきたりすることもありませんから、自分の目の前から子供たちが消えていくわけですね。介入しようとしても拒否されてしまうというようなことがある。

 かつ、ネグレクト、虐待の問題というのは、心配だけれども、じゃ、このケースは一体どれぐらい重大なことなの、これはどうなるの、もし通告したら一体どんなことが起こってくるの、そういうことが学校の先生はわからないわけですね。しかも、もし通告したときとかいうのは、親の反応がどうか、親が非常に攻撃的になるだろうとか、いろいろなことを考えると、なかなか通告するということに踏み切れないわけです。

 ただ、そのときに、ある程度専門的知識を持った人間が、いや、これは先生、非常に重大な、深刻な危険性があるから、このときには必ず児童相談所に連絡してケース会議はまず持ってくださいとか、兄弟がいるのであればほかの関係機関からも情報を収集してくださいとかいうようなことをアドバイスしてあげることによって、これはもう非常に簡単なことになるわけです。ですから、そういう意味での学校のサポーターが大変大切だ。

 それからもう一つ、学校にはある程度、学校のケースにかかわっているとわかるんですけれども、やはり最後、極端な言い方をしますと、家で毎日たたかれている子が学校で暴力的になったりするのはしようがないことなんですね。それが、家でたたかれる回数が、今まで毎日たたかれていた子が週に一回とか二回しかたたかれへんようになったとか、今まで褒められたことが一度もない子が親から優しい言葉を投げかけてもらったということだけで学校の状態も少し落ちつく、こういう傾向がやはりあるんですね。

 そうなると、家庭に何とかかかわりたいと思うのですが、では、親に対して、あなたがやっているのは虐待ですよというようなことをなかなか学校としては言えない。先生はそういうスキルを持っていないわけですよね。中には、さあっと、お母さん、あんまりたたかんようになとか、大変やけどなということで、すうっと入っていく、そういう人もいますけれども、このスキルというのは、非常に高いスキルなんです。ですから、それを一般的に、家庭の指導とかということを先生方に求めるのは、やはり無理があります。ここにも、家庭にかかわる上でも学校へのサポーターが必ず必要なんですね。

 そういう意味では、学校サポートシステムというのが非常に重要だというふうに考えています。その一番の特効薬は、スクールソーシャルワーカーの導入だと私は思います。これは欧米では当たり前の制度になっています。今、スクールカウンセラーが導入されて配置されていっていますが、同じような形で、モデル事業的なものから始めていただいてということになるんだと思いますけれども、やはり五年とか十年ぐらいの計画の中で、スクールソーシャルワーカーをぜひ導入していただきたいと思います。

 大阪ではちょっとずつ、私も、教育委員会とか学校の先生、スクールカウンセラーの方とか児童相談所とかと一緒に研究会をやったりしながら、それをモデル的に取り入れることができないかということで動き始めています。大阪の大東市というところでは、弁護士との連携事業ということで、スクールローヤー、スクールソーシャルワーカーもある程度やりたいというふうに思っているんですが、今、弁護士との連携事業ということでスクールローヤー、それは、いわゆる顧問的なかかわり合いではなくて、子供の最善の利益を実現するための学校のアドバイザー、コンサルタントという形で、そういう制度をモデル的にやり始めたりしています。

 今、なかなか予算が大変だということはわかっていますが、何とか頑張って国の方でも考えていただいて、スクールソーシャルワーカー制度を導入していただきたいと思います。

 あと、少し弁護士らしいお話を幾つか言わなあかん部分がありまして、先ほど岩城先生の方からお話が出ていましたので簡単に言いますが、立ち入り拒否、拒絶の場合に――もう終わります。済みません。

 では、あと、質問のところでまたしていただければ、幾つか具体的なことでお話しさせていただけるだろうと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

武山委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

武山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮下一郎さん。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 先生方、きょうは、貴重な時間を割いての御出席、ありがとうございます。

 この児童虐待防止法、三年前に制定されてから今日に至るまでさまざまな取り組みがなされる中で、やはり先生方がおっしゃるように、まだまだ問題が多いということだと思います。特に、相談処理件数が、かつて千件台だったものが十一年には一万一千件を超え、十四年度にはさらにその二倍、二万三千件を上回るというふうに増加してきている。これは、法制度がきちっと整備されて事態把握が進んだということもあると思いますけれども、一方で、実際に虐待自体もふえてきているのではないかという懸念もございます。

 私、法律を議論するそもそもの前提として、どうしてこんなに児童虐待というのがふえてしまっているんだろうか、そもそものところの疑問に立ち至っているところでございます。

 素人考えでは、やはり、核家族化が進んで育児のサポートがされないような状況が各家庭に起こっているとか、バブル崩壊に伴う経済的不況でなかなか子供まで手が届かない、目が行き届かないような家庭がふえているとか、また、親自体が受けてきた教育とかそうした問題があって、親が持つ力、養育力といいますか、子供を育てる力が低下してきているのではないかとか、いろいろ推測はつくわけでございますけれども、先生方に、今増加しているとすれば何が一番問題なのか、そこら辺の御所見を伺うとともに、それをやはりこの法律における予防措置に生かしていかなければいけないと思っておりますけれども、その原因を踏まえて予防するとしたら、どういったプログラム、どういった形での対策が現実として有効と思われるか、各先生方にお伺いしたいと思います。

松原参考人 御指摘のように、虐待が把握される件数がふえてきております。そのことについては、やはり把握が進んでいる、あるいは地域の発見ということでの意識が高まっているということも寄与していると思います。

 ただ、おっしゃるように、実際に虐待をしている家庭もふえている。その中で、不況という影響も大きいと思います。

 私が強調したいのは、地域の中での家族の孤立という、特に子育てをしている親と子供の孤立というのを挙げたいと思います。

 今、三人の子育てをしているお母さんと話をしたことがあります。一人目のお子さんを産まれて、育児休業をとられて御家庭にいたときに、今の若い方ですから、煮詰まると。ああ、このままじゃ私は子供をぶっちゃうかもしれないと思って、外へ出て公園で、いわゆる公園デビューですね、うまくいかれた方です。友達ができていろいろ話ができて、それで子供をぶたずに済んだ。仲よくなって、そのお母さんたちに話を聞いたら、実は私もそうなのよ、実は私もそうだったと。その中に、やはり家庭で孤立をしているということが大きな要因になっていたんだろうと思います。

 そのために、もし予防ということを考えていくのであれば、やはり子育て支援ということを地域で展開をしていく。よく高齢者の場合には在宅三本柱というふうに言われておりますけれども、子育てを地域で支えるためには何と何が必要なのか。

 例えば、子育てサークルあるいは子育てサロン等、さまざまな活動が地域で展開されておりますから、そういったものを体系的に組み上げていくというようなことが家族の孤立化ということを防いでいく。そして、地域で子育てを応援していこう、そういう風土づくりをしていくことが大切だろうと思いますし、そういう意味合いでは、国の制度の中で主任児童委員という制度がありますので、そういった主任児童委員制度の活用、活動の活性化ということも必要だというふうに私は考えております。

西澤参考人 質問、どうもありがとうございます。

 今、松原先生がおっしゃったことでかぶるところはもう省略して、やはり子育ての問題だという位置づけは非常に重要だろうということであると思います。

 それから、虐待がふえているのかという話はもう水かけ論になっているところがあって、昔のデータがありませんので、ただ、全体の状況を見ると、家族の問題というのが火を噴き始めたのは一九七〇年代、ちょうど高度経済成長が終わったあたりからさまざまな、虐待だけではなくて、家族の問題というのがふえてきたということは言われてきています。

 恐らく、そのあたりをもう少し、社会の中の家族の位置というのを少し文化論も含めて議論しなきゃいけないんでしょうけれども、ここではそういうことをやっている暇はないので、一つだけ申し上げたいのは、やはり虐待、しかも深刻な虐待をしてしまっている、非常に病理性の高いといいますか、非常に精神的に不安定な、病理の深い状況で虐待をしてしまっているような深刻なケースの場合、やはり親御さんも虐待を受けて育ったということが多いわけです。

 これは世代間伝達というふうに言われますけれども、要は、例えば二十年前、三十年前に虐待を受けていたんだけれども、周囲は全くそのことに無関心だった、何の援助もされなかった人がすごく数がふえてきているんですね。そういう人たちがやはり子供に対して暴力を振るってしまうということで、拡大再生産されていく。

 だから、予防という観点、ちょっと長期的な予防ということになりますけれども、そういう親御さんへの支援、援助をどれだけ組んでいくかによって、将来の虐待の減少を期待するというところがあるかと思います。

 この一点だけを指摘させていただきます。どうもありがとうございました。

岩城参考人 もう既に二人の参考人の方が的確な回答をされていますのでつけ加えることはありませんが、私は、最近になって虐待がふえているという認識は全く持ち合わせていません。虐待は、言葉は悪いですけれども、文化であると思っています。

 なぜか。中国の纏足というのがありました。女の子で生まれてきた場合には、足に包帯を巻いて、歩けない女性にする。何のために。あれは、やはり歩けない女性、走れない女性が求められたわけです。それは、女性が、家畜と同様に家事労働に従事させて、そこから逃げ出せないようにするためにそういうふうになったわけです。あれは、今やれば虐待です。しかし、あのときは虐待という意識は全くなくて、纏足にしなければ嫁のもらい手がないという親の愛情の発露で纏足にしていたところがあるわけです。

 このように、虐待というのは文化ととてもデリケートに結びついています。ですから、一概にふえているだとか原因がこれだというふうに求めるのは、なかなか難しいと思います。

 そして、対応としては、私は、家庭が崩壊しているということよりも、むしろ地域の崩壊こそが重大であると思っています。

峯本参考人 私も、ふえているかふえていないかというのは、なかなか断定できない。私の率直な意見としては、ちょっとふえているというふうに感じています。

 やはり、不況の影響はかなり深刻だというふうに感じています。それと、親自身が孤立感を深めているケースが多くて、要するに、子育てスキルが共有されていないし、精神的にも不安定化していると、やはり子供との対応、それから夫婦間の対応とかでストレスがかかったときに、コミュニケーションで解決する力というのが低下していて、どうしても暴力的な形で出てしまうというパターンが多いというふうに思っています。それを子供たち自身がそのまま学びをしてしまって、それがいろいろな形で子供の世界でもあらわれてきているというふうに感じています。

 それから、予防の方法としては、やはり保健師さんの活動が非常に大きな意味を持っているというふうに私は思います。

 ですから、ちょっと不安のある家族について、普通よりもややきめ細やかな家庭訪問なりができるような体制を組めれば、そのことは大分予防につながるということと、それから、松原先生が言っておられた件で、家族の孤立を防ぐという観点では、一例をちょっと、大阪のある区でやっておられる取り組みを簡単に紹介したいと思います。

 それは、児童委員さんが中心に子育てサークルのようなものをつくっておられるんですね。そこにできるだけ積極的に呼びかけて参加してもらうようにする。ただ、本当に孤立している家族というのは、何をやっても来ないんですね。ですから、訪問型、アウトリーチ型のサービスを考えるしかないということなんです。ですから、そこでは、幼稚園とか保育園とかと連携しながら、狭い地域でいきますと、ある程度、幼稚園、保育園、それで子育てサークルにも参加していないというて、子供は確実にいてるんだけれどもどこにも顔が見えてこない家族に対して、児童委員さんが、子育てサークルの紹介を兼ねて家庭訪問をしてはるんですね。

 だから、何か調査しに行ったりというんじゃなくて、子育てサークルみたいなのがありますからまた来てくださいよというようなことを実際に家庭訪問されて、そういう本当に見えない家族というか、それで行ってみたら、実はこうこうこういう事情でこうなんですということがわかれば、それである程度いいわけですから、そういう取り組みをされています。

 ただ、これはやはり地区をかなり狭い範囲でやっていかなあかんということと、もう一つは、プライバシーの情報交換を、まだ虐待の危険性とかが顕在化している以前に情報を共有しないと、その孤立家族というのを特定していくことができないですから、そこの問題が常にあるというところの難しさがありますが、狭い地域だったら何となくそれがやれていくというところがあるのではないかなと思います。

 以上です。

宮下委員 ありがとうございます。

 そういった予防措置をとった上で、できるだけこういった事態を少しでも減らしていく、しかしながら、やはり起こってしまったものについては対応していくという二段構えになろうかと思いますけれども、やはり私も、この前、岸和田のケースについて大阪においてヒアリングをさせていただいたときに実感いたしましたのは、先生方もおっしゃるように、児童相談所の体制が数十万人に一人とか二人とか、そういった相談員の方が対応されているという現実に愕然といたしまして、これではやはり法律を幾ら積み上げて児童相談所の機能を強めても実際にワークしないのではないか、そういった思いを強くいたしました。

 その中で、現実問題として、児童福祉司の皆様を一挙に三倍とか十倍にするというのがなかなかできない現状で、当面どういうふうな対応をしていくかというのが課題かと思います。

 峯本先生は先ほど、市町村にソーシャルワーカーなり児童福祉司を置いて、ないしは相談所のような出先、センターの出先を各地域に配置して、そこで分散型に受け付けをする、そういった御提案もなさったわけですけれども、当面の課題として、体制整備、市町村にそういった機能を任せても、先ほど来お話がございますように、今、市町村財政も厳しい中で、専門の方を新たに加えるということがなかなか難しい状況もございますが、既存の相談員の皆様にソーシャルワーカーとしての資格を取っていただくとか、さまざまな対応も考えられると思いますし、また、児童相談所自体を強化するのが一番よいのだというお考えもあるかと思います。

 そこら辺の、現実的な道筋としてどういったところが有効と考えておられるのか、特に先生方のどなたにということはございませんけれども、御意見ある方はお教えいただければと思います。

岩城参考人 子供の虐待の防止にとって、私は、地域の崩壊が大きな問題だと思っているんです。そのときに、児童相談所に職員を二倍、三倍にしたり、そういうことは現実的ではありません。やはり地域に児童虐待の専門員を置くことが大事だと思っているんです。

 私は、日本全国が、義務教育の、ある意味で学区割りができています。小学校、中学校の学区の単位ごとに児童虐待の専門員を選任する。それは別に公務員である必要はないはずです。CAPNAのような民間団体の人に、学校に張りつくボランティアスタッフをつけて、そして児童相談所との連携を密にしていく。もちろん、そこにおいて大切なことは、プライバシーにかかわりますから、その民間団体のボランティアスタッフは守秘義務を厳格に守るという使命感と法的義務が必要だろうと思いますけれども、そういった各学区において地域に根差した専門員を置いていくことが大事ではないかと思っています。

宮下委員 そうした相談体制、発見体制を組んだ上で、やはり最終的な子供のケア、家族のケアというのが非常に大事かと思っておりますが、きょう松原先生、最後にフローチャートをおつけいただいておりまして、これからのセンターのあり方、センターを一極集中するのではなくて、小規模ホームを組み合わせたようなシステム等々の絵をいただいておるわけですけれども、一方で、今現実には、一時保護をされている子供たち、また養護施設の子供たち、大変厳しい状況の中で暮らしているということでございます。

 これから進むべきその養護のあり方について、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。

松原参考人 御質問、ありがとうございます。

 一つは、この図に示しましたように、子供の生活単位を小さくしていくということで、心身ともに傷を負った子供たちをきちっと治療、ケアをしていく、そういう体制づくりが必要だと思っております。

 同時に、社会的養護というのは、親子分離をしたその子供たちだけのためではなくて、きょう、その他の参考人もおっしゃいましたけれども、やはり地域を支える、それから地域で、在宅で虐待という認定をされながら子供を育てていらっしゃる方もたくさんいらっしゃるわけですから、そういう方たちを支えていく、いわゆるセンター的な機能を持つ本体施設というものが必要になってくると思いますし、これは長期的な課題になると思いますけれども、全体の入所施設のあり方を改めて考えていくということも必要になってくるというふうに考えております。

宮下委員 きょうは先生方、本当に貴重な御意見をありがとうございました。今後とも、ぜひ私どもに御指導をいただきたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。

武山委員長 次に、萩生田光一さん。

萩生田委員 自由民主党の萩生田光一でございます。

 先生方、早朝から、お忙しい中本当にありがとうございます。私からも何点か、専門的な立場で先生方の御所見をいただきたいと思います。

 まず初めに、我が党でお願いしました松原先生に御質問したいのですけれども、今、宮下委員からも、社会的な背景についての質問がありました。先生方の御答弁を聞いていて私が感じますのは、岩城先生おっしゃるように、もう社会、すなわち、社会の制度が崩壊している、あるいは家族が、家族制度が崩壊しているというのは、みんなが気づいていることなんですよね。ですから、じゃ、かつての隣三軒、向こう三軒仲よしの日本を取り戻そうじゃないか、あるいは、お互いに家族同士が交流できるような、そういう学校教育での家族のかかわりというのをもう一回取り戻そうじゃないか、こういう気持ちはあるんですけれども、しかし一方では、そういう社会性を嫌う気風もあるわけですね。

 ですから、その辺のはざまの中で、我々立法府は法律をつくって、そして、この児童虐待というのは何とか我々の時代に食いとめなきゃいけない、こういう決意のもとで取り組んでいるんですけれども、もうその防止で手いっぱいで、その根絶をするためにはどうしたらいいのかというところまで踏み込めない。また、法整備にはその精神がまだ盛り込まれていないというふうに思うのです。

 この際、やはり児童虐待のみならず、今日社会が抱えている、言うなら日本の病的なさまざまな問題がございますよね、これを根本から解決するためには、もう一回、すべてとは言いませんけれども、かつての日本のよさを取り戻すための価値観の見直しというのを、日本人そのものが全員でやっていかないといけないんじゃないかというふうに思いますけれども、御所見をお伺いしたいと思います。

松原参考人 御質問、ありがとうございました。

 おっしゃるように、それから岩城参考人もおっしゃったように、本当に今地域の力というものが弱くなってきているということがあるかと思います。

 私の幾つかの経験をお話ししたいと思うのですが、数年前に、地域でさまざまな子育て支援活動をされているグループに関する調査をしたことがあります。これは意図したわけじゃないんですが、こういう活動をされてどうですかとお聞きをしたときに、新しいコミュニティーづくりがこういう活動から始まった気がするというような回答を複数いただきました。つまり、向こう三軒両隣という関係はもう嫌だ、だけれども、やはり孤立するのも嫌だ、じゃ、子育てを通じて新たな地域関係あるいは近隣関係をつくっていこう、こういうことで新しいコミュニティーづくりというような言葉が出てきたのではないかなと思います。

 実際に、これは栃木の事例なんですけれども、渡良瀬川の堰堤にアンズの木を植えまして、これを、実の収穫とかそういうのは子供たちと一緒にやる。そのアンズを使った和菓子づくりは大人たちがやる。アンズ酒というのもつくっていらっしゃって、これは密造酒じゃなくて、しょうちゅうにつけたものでしたけれども、非常においしいものでした。そういうものは大人たちがつくる。そういうものを地域のお祭りの中で、住民たちが集まって共用しながら、そういう和菓子を食べていくというような形で、子供がかかわることから、大人たちも、それから、場合によっては高齢者たちも含めて、さまざまな世代が交流をしていくということで、やはりかけ声ではなくて実際的な活動を展開している。

 それは、ヒントは、やはりそこに参加して親や子供たちが楽しい、一緒にやっていこうという気持ちになれる。私たちの専門的な用語では、そういうグループを促進していく、ファシリテーターという英語を使いますけれども、そういうファシリテーターというのが地域にいてくれると、そこから新しい地域観、家族観というものがまた形成をしていけると思いますし、地域のきずなというものもそこから改めて結び直していくことができるのではないかなというふうに考えております。

萩生田委員 ありがとうございます。

 西澤先生にお伺いしたいんですが、先ほど、アメリカのCPSの例を示されまして、いろいろ御説明いただきました。ソーシャルワーカーの数が圧倒的に少ない、もっと突き詰めていきますと、まさに日本の児童相談所、児相の現状というのはもう限界に来ているというふうに思うんですね。

 ところが、ああいう事件が起きますと、日本人の感性からしますと、私たちもうこれ以上できなかったんですと、本当は所長が泣いて叫んでくれれば次の一手が打てるんですけれども、必ず、残念なことになってしまいました、我々責任を感じていますと、どこの児童相談所も所長がそういうあいさつをしちゃうから、結局、問題がその場所で完結しちゃうわけです。あそこの児童相談所は力が足りなかったということになって、うちの相談所は今後こういうことのないようにしようという善後策が講じられる、これが日本の繰り返し行われている児童虐待の現状だと思うのです。

 私は率直に申し上げて、マンパワーの補充というのは絶対に必要だと思うのです。ところが、児相が措置権を持っているがゆえに、どうしても正規職員にこだわる、ここに大きな問題があるんじゃないか。すなわち、子育て支援の専門家あるいは児童虐待の専門家というのは日本にいるかといったら、私は、かねや太鼓でたたいてもそんなに大勢いないと思うのです。

 ところが、子育ての経験豊かな人たちというのは、例えば退職をした学校校長だとか、あるいはかつて保育園で働いていた保育士さんですとか、そういうOBマンパワー、もっとはっきり言えばシルバーパワーがまだまだ幸いにして日本の場合はあるんじゃないかというふうに思うのです。それで、この人たちに何とか現場へ入ってきていただいてお手伝いする方法がないかというふうに思うんですけれども、その点について、一点お伺いしたい。

 それから、心理学の専門家として、通報するだけじゃ解決にならないという御指摘もあったんですけれども、都市部の皆さんというのは大概、事件が起きてインタビューをされると、実は隣近所の人が虐待を知っていたあるいは感じていたと必ず言うんですよね。

 では教えてやればいいじゃないか、こう思うんですけれども、結局、地域の、家庭の、家族の希薄なかかわりの中で、万が一違ったらどうしよう、余計なお世話をやいちゃって万が一これが虐待じゃなかったら、あそこの家と家庭がおかしくなっちゃう。あるいは、先ほど峯本先生がおっしゃったように、学校の先生方も薄々は感じているんだけれども、児相へ相談してカードを起こされちゃって、万が一違ったらどうしようという気持ちがいつも表裏であるから、次の一歩が出せない。

 私は、実は、所属する党の部会の中でも、匿名の通報についての尊重をするべきじゃないかということを今主張しているんです。すなわち、違ったら違ったで、ああ、老婆心ながらよかったな、こういうことで終われるような匿名通報を、児相も含めてどこかに集約をして、後ほど岩城先生の実際やっている団体のこともお聞きしたいと思うんですけれども、そこで掘り起こしをしていくということは、現代人の心理からすると、そちらの方が皆さんの協力を仰ぎやすいんじゃないかと思いますけれども、以上二点、お尋ねしたいと思います。

西澤参考人 質問、ありがとうございます。というか、かなり突っ込んだ質問で、非常に答えに窮する部分も多分あるかと思うんですけれども。

 まず、前半の方、シルバーパワーの導入というのは、確かに、今の財政の状況から考えたらそれは一つ考え得るとは思いますが、どういう形でやっていくのか。例えば経験豊かな校長先生がというふうにおっしゃいましたけれども、実は、文部科学省の方の科学研究費の研究班で、私、そういう学校の先生たちの調査をやっているんですけれども、二十年以上経験者というのは、虐待に対して認識が甘いんです。若い人たちはこれは虐待だと思うことも、二十年来教諭をされた方というのは比較的、これはでも虐待じゃないよねとどうしても回答してしまうというような率が、有意差が出ているんですね。

 それはどこから来るかというのは、なかなか指摘が難しいですが、やはり体罰に対して非常に甘い傾向があるみたいな、その当時、今の年配の方々が受けた教育とかそういうところにもやはり問題があるんだと思うのですが、そういう人を利用しようとする、利用といったらおかしな言葉ですけれども、協力いただこうとするならば、相当トレーニングをしていかないといかぬだろうなというふうに今の話を聞いていて思いました。

 それから、通報のことに関しても、そういうふうな仕組みをつくるというのは大事で、今でも通報に関しては匿名性を守るというようなことは言われていますけれども、それは、そういう仕組みをつくっていくことは大事だと思います。

 虐待の問題に関しては、今、何をやっても余り間違うことがないというか、余りにも悲惨な状況なので何をやっても正解みたいな、そういう部分があるので、それも正解だと思いますが、ただ、一つ強調しておきたいのは、やはり専門家、専門職の通報をどれだけ大事にするかということだと思うのです。

 つまり、間違ってもいいというのは、専門的な、合理的な判断があって、それで見て虐待かもしれないと思ったというトレーニングが前提になっていますから。だから、そういうトレーニングを受けているからには、こういう合理的な判断をして虐待だと思った、だけれどもそれが間違っていた、でもそれは仕方のなかったことなんだということで、僕は許容量の範囲内だと思うのですが、一般の人たちの間違いはどこから来るかわからないということもありまして、そういう意味では、そこのところを広げるということはかなり混乱状況を生むのじゃないか。

 だから、専門家の通報をどれだけきちっと上げていく体制をつくるかということの方がやはり大きいだろうし、それに加えて、今の世の中の仕組みは、例えばそういうふうに疑った場合には虐待と通報するんだ、そういうことは前提で、そこの中には誤報も当然あるよということを社会全体が認めるというコンセンサスがないと、その部分も非常に難しい部分はあるかなと思います。

 ちょっと、いろいろ複雑な答えで申しわけございません。

萩生田委員 ありがとうございます。

 私が言っているのは、いたずらな通報じゃなくて、今児相へ通報したとしても、児相は必ず、おたくはどなたですかと。匿名性は守られているんですけれども、いわゆる守秘義務は守られているんですけれども、匿名情報を一々確認するだけの、率直に申し上げてマンパワーもありませんし、また体制もない。要するに、うそか本当かわからない通報を一々確認できないというような、今そういう状況にあるんだと思うんですね。

 ただ、それは、善意でそのことを伝えたい人たちがいるんだとすれば、そのことの確認をするだけの何らかの新しい仕組みをつくっていかないと早期発見、予防にはつながらないんじゃないか、こんな持論を持っていまして、また、いずれの機会かにお話しいただきたいと思います。

 岩城先生にもせっかくおいでいただきました。

 民主党案は、児童施設への送致に当たって家庭裁判所のかかわりというのを非常に強調しておりまして、私は、実は、この点は評価をしたいというふうに思うのです。

 ところが、では家庭裁判所は何を根拠に児童施設送りをするのかといえば、これは現状では児童相談所にヒアリングをするしかないと思うんですね。要するに、客観的な資料が何もない中で家庭裁判所が、裁判所だからといってイエスかノーか、こういうことじゃないから、では、結局どこに帰するかといったら、児相へ戻ってしまうと私は思うんですよ。

 それで、家裁を絡めるという単純なことじゃなくて、おっしゃるように、例えば親子を引き離して、それで問題の解決になるわけじゃないですから、いずれ家庭で一緒に暮らすことができるようなことの前段として、大人である親に緊張感を持たせる意味での家庭裁判所の存在というのは大きな意義があるのかな、こう思っているんですけれども、先生がおっしゃる家庭裁判所の活用方法というのは具体的にどんなことなんでしょうか。

岩城参考人 とても大事な御質問、ありがとうございます。

 私は、家庭裁判所がかかわることによって、行政の担当者が裁判所のお墨つきをもらったということで、自信を持って親とかかわることができると思っているんです。

 それともう一つ大事なことは、裁判所に、福祉という問題に対してもっと身近に考えさせるということが大事だと思っているんです。

 今までの裁判所は、例えば少年法の問題でいえば、子供を少年院送致した場合に、その後、子供がどういう処遇を受けるかということについては、もう送りっ放し。児童養護施設に措置した場合も、後はもう全部福祉行政に任せっ放しでした。もっと家庭裁判所がこの福祉の問題に対してキャリアを積むためには裁判所にかかわらせる、最初は拒絶するかもしれないけれどもかかわらせて、調査官を活用して裁判所を啓発していくということがこれから必要ではないかというふうに私は思っています。

萩生田委員 ありがとうございます。貴重な御意見だと思います。

 峯本参考人にお尋ねしたいんですけれども、特に学校現場とのかかわりを深く持っていらっしゃる、その実態を御承知の上でお伺いしたいと思うのです。

 私どもも、つい先日、岸和田の事件の調査で現場へお邪魔して、関係者からいろいろなヒアリングをしたんです。それで、この児童虐待のいろいろな、先ほどもどなたかがおっしゃったように、検証がきちんとできていない、ケーススタディーができていないから次から次に同じことが起こっているんだけれども、前の事件とその前の事件と今回はどこが違うのかというのがよくわからない。本当は、もっと深く掘り下げていくと、実は、統計だって予防や予期ができるんじゃないかなと素人ながらに感じているんですね。

 これはやはり行政側が今後考えていかなきゃいけないことだと思うんですけれども、一方で、岸和田の事件で、あの当事者の子は、長い間不登校でありました。圧倒的に児童虐待の被害者になるケースで不登校の子供たちが多いですよね。ですから、不登校であるということで、学校現場ではまず第一のチェックをしていかなきゃいけなかったんじゃないかなと思うのです。

 当然、当日出席をされていた市教委の皆さんも、あるいは校長先生も含めてなんですけれども、これまでの取り組みというレポートをいただきました。きめ細かく家庭訪問をして、行ったんだけれども会えなかったからポストに手紙を入れてきた日があったり、インターホンを押したんだけれども会えなかった日があったりするわけですよ。

 それは、ペーパーで渡されますと何日もあるんですけれども、私は地方議会の中で、たまたま、この虐待と不登校のかかわりについて過去に取り組んだ経緯がありまして、ああ、案の定だなと思ったのは、七月二十日から九月の十日ぐらいまで、全く何もしていない。言うならば、夏休みという、岸和田市で四十日間あるこの休みの時間には、担任の先生も校長も、その子の家にはただの一度も訪ねていないわけですよ。これがまさに実態だと思うのです。

 ですから、ちょっと当日も厳しいことを申し上げたんですけれども、本当はもう言いわけづくりのペーパーじゃないか、市教委の方は。やっています、やっています、我々はチェックして本人にも家族にも声をかけたんだけれども、安全が確認できなかったと。ペーパーを見る限りではそれは読み取れるんですけれども、現実問題としては、実際は、一番時間があって、普通の授業もなくて、本当は真正面からそのことに向き合って、なぜ不登校になってしまったのか、あるいは虐待の実態はないのかということを親や子供たちと話ができる夏休みを含めた長期休業中の活用というのが、学校現場で弱過ぎるというように思うのです。

 これは言いかえると、学校の先生方が、そういう責任ある立場にあるという認識がいささか希薄なんじゃないかと私は厳しい意見を持っているわけですけれども、この辺、学校現場とおつき合いの経験のある峯本先生としてどんな御感想を持っていらっしゃるか、お教えいただきたいと思います。

峯本参考人 実際に虐待のケースで、今先生が言われましたように、夏休みとか長期の休みというのは、その間に虐待の状態が悪化するパターンが非常に多いんですね。ネグレクトのケースで言いますと、長期の休み明けになると体重が激減してくるパターンというのが普通にあります。学校給食によって栄養を賄っているというパターンの子供たちというのが、やはりネグレクトの中では一つの典型的なパターンとしてあります。そういう意味では、夏休みの間にどう取り組むのかというのは一つの課題になると思うんですね。

 さらに、より根本的な問題としては、やはり学校がどうしても、そのときそのときに、どうしよう、どうしようというふうに考えて対応して、その範囲でどの先生も非常に一生懸命やってはるんですね。そこで、家庭訪問したけれどもあかんかった、どないしようと言うて、それでまた次考えてということをずっと繰り返して、結局、手を打てないままにこういう事態になってしまうというパターンがやっぱりあります。

 それを防ぐためには、もちろん児童相談所がやるアセスメントとはレベルが違っていいんですけれども、やはりもともとの、学校としてのケースの見きわめを早い段階でやって、対応プランを考えておくということが、非常に重要になると思います。

 ですから、例えば不登校のケースで言いますと、今、恐らくどの学校も、三日間ぐらい休んだら、ちょっと心配やから家庭訪問してみましょうかとかいうようなことで対応されているんだと思いますが、どうしても、その段階でもまだ学校の先生の抱え込み、担任の先生の抱え込みが起こってしまうので、これは不登校に限りません、子供たちの問題行動すべてそうですけれども、やはり早い段階で生徒指導の先生に上げ、学校の問題として、それでまた生徒指導の先生レベルでも抱え込みが起こってしまいますから、学校の問題として、チームとして対応するということを早い段階でやる必要があると思います。

 ですから、その段階で、これはある中学校ですけれども、三日間休んだら、担任の先生はどんな理由があろうとも、とにかく生徒指導の先生に上げる。生徒指導の先生は、ほかの先生とかから、その子にかかわっている先生から情報を収集する。親に連絡して学校に来てもらう、もしくは家庭訪問するというふうなことをやって、これはちょっと心配やなと思ったら、関係する先生方が集まってケース会議を開いて、そこで次の打つ手を考える。そこで、ある程度のプランづくり、みんなで協力してこういうことをやりましょうというようなプランづくりをやってはるんですね。

 ですから、そういう早い段階である程度の情報を集めてアセスメントをして対応プランを考えるという取り組みが、抱え込みを防ぐことになって、同じパターンの繰り返し、家庭訪問ばかりをずっと繰り返してしまうというふうなことを防ぐことになると思います。

 そのプランを定期的に見直していく、今週一週間、家庭訪問してみたけれども、あかんかった、次、どないしようということのプランの見直しをしていく、こういう取り組みが今求められているんではないかなというふうに思います。

萩生田委員 ありがとうございました。

 抱え込みをなくしたり責任を分散するという意味で、我々与党の改正案は、今までは教師とか医師とかと特定をしていたものを、今回、学校とか病院というふうに枠を広げて、すなわち、大きな目で何とか早く見つけていこう、早く救済していこう、こんな法の改正の精神を盛ったところでございます。ぜひ、今後、慎重に取り組んでいきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、最後に松原先生に総じてお伺いしたいんですけれども、どなたもネットワークづくりが急務だとおっしゃいます。そして、厚生労働省は、市町村の力を、こう言っていただくのは大変ありがたいんですが、残念なんですけれども、市町村ごとの力の格差が今は余りにもあり過ぎるというふうに思うのです。

 すなわち、人口やあるいは県の県庁所在地であったりして児相を持っているところもあれば、市や町独自で子供家庭支援センターみたいな小さな施設をつくって頑張っているところもある。しかし、施設はないけれども、地域の児童相談員の皆さんですとか、あるいはさまざまな社会的な立場にある人たちが頑張って目を配っているところもある。言いかえれば、地域がどんなに大事かということを、最初の質問に戻りますけれども、この国でもう一回見直していくことが児童虐待を撲滅することの第一歩じゃないか、こう思うのです。

 そのネットワークづくりのあり方について、これはいずれもんでいかなきゃならないことなんですけれども、今、これから始まるネットワークづくりで一番大切なものはどんなものだというふうにお感じになっていらっしゃるでしょうか。

松原参考人 大切な御質問だと思います。

 ネットワークということで強調して、体制だけでき上がってあとは何も動いていないということが一番大きな問題ですから、これはネットワークを動かしていく、ネットワーキングといいますけれども、そのことが大切だと思います。

 とすると、先ほど、私はファシリテーターと言いましたけれども、虐待対策のネットワークについてもファシリテーターというのは必要だと思いますし、そういう市町村の力の差ということを考えれば、都道府県のサポートということ、特に児童相談所、これは機能拡充しないとそういうことはなかなかできないと思うんですけれども、児童相談所が市町村をサポートしていくということが当面必要だというふうに思いますし民間団体との連携ということも含めて、実際にネットワーキングしていくファシリテーターをこれから育てていくことが大切だというふうに考えております。

萩生田委員 どうも貴重な時間をありがとうございました。

武山委員長 次に、石田勝之さん。

石田(勝)委員 民主党・無所属クラブの石田勝之でございます。

 きょう、参考人の四人の先生方、貴重なお時間、御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。

 実は、私、当委員会の最初の委員長を五年ほど前に務めさせていただきました。当時からかかわっておられるのは、肥田さんあるいは富田さん、石井さん、この委員会に今回も参加されておりますが、当時はこの国会の中でも、児童虐待防止法をつくる、立法化するんだという動きの中で、虐待としつけの違いがわからない議員も正直おられたわけでありまして、なかなか立法化へ結びつけるまで、各党各会派の先生方の御尽力、大変なものがあったというふうに思うわけであります。

 そして、その後成立をしまして、やはり児童虐待に対する世の中の理解とか関心度はかなり高まってきたというふうに思うんですね。それが発生件数というか発見件数、そういったものに結びついてきている部分もあるんじゃないかと思います。

 その不備の点を、三年後の見直しをということで小宮山さんとか各党の委員が中心となって中間取りまとめというのをまとめられて、そして、当委員会でもこの改正案を、現実に対応できる改正案を、自民党もあるいは公明党も、そして我々民主党もつくってでき上がって、これからこの虐待防止法の改正案についていろいろ議論を重ねてよりよいものをつくっていこう、そんな動きであるわけであります。

 そういう中で、この虐待防止法という法律ができるというのは、裏を返せば大変悲しいこと、残念なことであって、私はよく、子供は親を選べない、こういうふうに言うわけでありますが、この世に生を受けて親から虐待を受けたり、あるいは虐待死させられたり、極めて残念なことでありますし、こういったものを、もちろん立法に携わる立場として、また大人の責任として、こういうことの根絶、解決へ向けて、やっぱり大人の責任として取り組んでいかなければいけないというふうに今思っているところでございます。

 そういう中で、先ほど先生方から御意見をお聞かせいただく中で、まず西澤参考人にお尋ねをさせていただきます。

 私は、二月十三日の予算委員会の基本的質疑で、小泉総理やあるいは坂口厚労大臣に、国民に対して児童虐待に対する意識の普及、これに国を挙げて取り組むべきだということを提案いたしました。啓発活動、ある期間、例えば十一月なら十一月、実際に施行されたのが平成十二年の十一月ですから、その十一月を、いわゆる防止月間というふうなものをつくって、国を挙げて取り組む期間をつくるべきだというふうなことを提案いたしまして、それは大変よい提案だというふうなことで、早速そういったものに取り組んでいこうという答弁を受けたわけであります。

 先ほど、西澤先生からのお話がありましたように、子供の虐待は限界点に来ている、そういう御意見がありました。民主党では、首相を議長とする中央児童虐待防止会議を設置するということを盛り込ませていただきました。そして、これを常設の内閣府に置くべきだ、そして、人権を被害から守るために国のプロジェクトとすべきだ、こういう考えのもとに中央児童虐待防止会議というものをこの中に盛り込ませていただいたわけでありますが、まず、先生の御見解を伺いたいと思います。

西澤参考人 御質問、ありがとうございます。

 中央にそういうふうな委員会を置くということに関しては、それも常設委員会を置くということに関しては、我々としてもぜひお願いしたいことだというふうに思います。

 というのは、やはり虐待の問題というのは、これまで厚労省の単独マターという形で来ているんですが、実はそうじゃないんですね。先ほど来あるように、学校の不登校の背景に子供の虐待があるとか、さらに言えば、今、虐待を受けた子供たちがその後遺症としてさまざまな問題を学校で出してしまって学校崩壊、その結果、虐待を受けて養護施設に来ている子供に対して、学校はちょっともう出席してくれるなという、教育権の侵害というのが起こりつつあるんですね。そういう意味で広い問題だし、あるいは、犯罪少年等の背景に虐待があるというのは、法務省の管轄のマターでもあるわけです。

 そういう意味では、各省庁の壁を取っ払ったところでそういう委員会があるというのはとても大事なんですが、さらに、そこにちょっとお願い事項なんですけれども、先ほど来出ている死亡事例の検討とかいったような、あるいは、私が申し上げた、とんでもない問題として施設内虐待という問題が上がってきたりすることがありますが、そういうことに対する調査の権限等の何らかのタスクフォースみたいな、そういった機能も果たせるような、そういう機関であれば非常に、日本の虐待の問題に対しての、前進をしていくための資料を提供できるようなことにもなるんじゃないかと思いますので、その辺も御検討をいただければありがたいと思います。

石田(勝)委員 先ほど、松原参考人から、何より早期発見、介入が大事だ、こういう御意見がありました。私は、あわせて予防も大事だというふうに思っているわけでありますが、とにかく、昨今、養育力のない親が非常に多くなってきている、これがやはり問題だろうと思うわけであります。子育ての能力のない親、そのために、安全確保を優先して、基本的に進めていく施策をやっていかなければならないというふうに私は思っております。

 今度、二月十日に児福法の改正が提出されておりますが、先ほど、西澤参考人の方から、ソーシャルワーカーの数が突出して日本は少ない、こういう諸外国との比較のお話がありました。人口十万から十三万人に一人というこの児童福祉施行令、この見解を、行政指導のあり方について、西澤参考人からちょっとお伺いしたいと思います。

西澤参考人 おっしゃるとおりでございまして、現在、施行令には、十万人から十三万人に一人となっています。実際のところ、厚生省は、地方交付税で大体七万四千人に一人のお金を出しているんですけれども、ただ、自治体によっては、そのお金をソーシャルワーカーの配置に使わないで別のことに使っちゃうみたいなことでありますので、やはり、その十万人から十三万人に一人ということそのものに手をつけないとまずいだろうと思います。

 ちなみに、先ほど来話に出ていますように、少ないのは間違いないので、では、どれぐらい確保すればいいのかということについても私なりの意見を述べさせていただくと、とりあえず、現在、いろいろな今までの調査で、虐待を受けているということでどこかの機関がかかわっている子供たちのうち、児童相談所がそのケースを知っているというのは大体半分だというデータが出ています。これは、厚生労働省の研究班のデータだったり、大阪府の独自の調査の結果だったり。ということは、今、大体二万数千件の通報があるとしたら、その倍には対応していかなきゃいけないということになるので、そういったことを勘案した配置ということを考えざるを得ないだろうと思っています。

石田(勝)委員 あわせて、西澤参考人にお伺いしますが、家族の再統合の話が先ほど来、各委員の先生から出ておりました。安易な判断で被虐待児が家族に返されて、その後死ぬケースが相当ある、先ほど先生の中にも御意見として出ておりましたが、私は、埼玉なんですが、埼玉では朝霞市というところでそういう事件が起きました。

 先ほど、岩城参考人から、親子の再統合というだけでは、単に子供のもとの家庭、家族のカプセルにおさめる、戻すというだけでは、これはそういう意味に受け取られたのでは危険性があるというふうな御指摘もあったわけでありますが、西澤参考人は、この点についての提言とかアイデア、対策等々があればお聞かせいただきたいと思います。

西澤参考人 今の状況では、非常に深刻なケースの場合に、家庭裁判所の審判を経て子供を親元から分離した場合、これは今までの参考人の指摘もありましたが、その時点で家裁の仕事はおしまいで、それで、親が、例えばどうしても返してほしいということで執拗な要求をした場合に、持ちこたえられずにおうちに戻してしまうといったようなケースが多々あります。

 その点、今度、児童福祉法の改正案では、そこに一定の司法の関与を絡めるというようなことで、期限つきの二十八条措置みたいなものが盛り込まれていますけれども、これだけでも不十分だと思うのは、やはり、先ほど申し上げましたように、親に対する援助がなされてないという部分が一番大きいと思うんですね。

 例えば、虐待する親というのは、さっきも申し上げたように、深刻なケースであれば、自分自身も非常に悲惨な育てられ方をしているという場合が多くて、ある意味、被害者なんですね。だから、加害者であると同時に被害者であるという状況をしっかりととらえて、その人たちの援助の枠組みをどうするかということを考えるべきだ。それが、児童相談所に押しつけても、今の状況では当然担えないというのは明らかなので、そういった加害してしまう親の援助をする機関というものをきちっとつくって、そこできめ細やかな援助をして再統合の計画を実行に移さないとだめだろうと思っています。

石田(勝)委員 次に、岩城参考人にお尋ねをしたいと思います。

 発見するのも大事だけれども、虐待にかかわる支持者をふやすのが大事だという御指摘が、先ほど、先生からありました。

 この虐待死のケースについての検証の義務づけということがお話の中であったわけでありますが、国が発表するいわゆる死亡事例、これが各省庁によって違ったり、現場によって少ない。いわゆる厚生省が発表する死亡件数と、NPOとかそういう団体が発見してあれする死亡事例の数がかなり違うんですね。それから、省庁別でも違うし、その省庁でも、例えば年でやっているところがあったり、年度でやっているところがあったり、それぞれ違っている点が見受けられるわけであります。

 この検討委員会を立ち上げるという提案がありましたが、私は、先ほど申し上げましたように、中央児童虐待防止会議というところとリンクさせて、各省庁と同様の把握の中でそういったものを認識させるべきだと思っております。中央児童虐待防止会議ということにリンクさせながら、そういった死亡事例、それらを反省点につなげるためにもやるべきだというふうに考えておりますが、先生の御意見をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

岩城参考人 どこかの機関が虐待死の検証の報告を受ける、そして、正確な虐待についての日本でのデータを集計することはとても大事だと思っています。ただ、それが、中央児童虐待防止会議というところがやるのかどうかについては、ちょっと私としては、まだイメージがわいていません。

 あえて言いますと、恐らく、民主党の方がこの法案をつくられたのは、縦割り行政のもとでは児童虐待はとてもうまくいかないんだ、横断的な行政の連携が必要なんだということでこの会議をつくられているんだと思います。その意味においては、私も賛成でございます。

 ただ、市民活動として私がやっている限りでは、なかなか、上からつくる制度というのは形だけに終わることが非常に多いものですから、私の発想は、いかに下から、市民の側からどうやって虐待防止の連携につなげていくかという視点を持っていまして、上から会議をつくれば虐待防止についてうまくいくんじゃないかというのは、わからないわけではないんですけれども、その実効性はどうかなというふうに感じております。

石田(勝)委員 先ほど、岩城先生の御発言を聞いていまして、学校の学区単位に児童虐待の専門員を配置する、地域に根差した専門員を配置していくんだと。私は、大変貴重な御意見だというふうに思うのです。そういうボトムアップと、やはり縦割り行政は廃止した中で、上から統合する、そういったものが両方あれすることが虐待防止につながってくるんじゃないのかな、私はそういうふうに思っているわけでありますが、時間がありませんから、四人の先生になるべく聞こうと思っていますので、松原先生に御意見をお聞かせいただきたいと思います。

 八条の通告または送致を受けた場合の措置として、我々民主党案は、「安全の確認は、児童虐待を受けた児童に係る通告を受けた時から四十八時間以内に行うよう努めなければならない。」ということを盛り込ませていただきまして、時間を区切った形でやらせていただいたんですが、その点についての御見解を伺いたいと思います。

松原参考人 虐待の場合、子供の生命にかかわるケースというのはたくさんありますから、早急に安否確認等をする必要があると思います。

 ただ、一方で、今の児童相談所、それから、児童相談所をサポートするさまざまな市町村の機関の状況を考えたときに、今、ある具体的な数字をつくることが適当なのかどうかということについてはちょっと疑問がありまして、私も割合とボトムアップ方式を考える方なので、やはり、今の児童相談所でどれだけのことがどういうふうにできるのか、それから、私は、冒頭のところで主張させていただきましたように、やはり機能強化をしていく中で一体どのくらいのことができるのかということをきちっと検証していくことが先かなというふうに考えております。

石田(勝)委員 確かに、先生おっしゃるとおり、検証というのは非常に大事だというふうに私も思っております。

 この四十八時間というのは、私の地元埼玉ではこの四十八時間以内にということを定めさせていただいたんですね。そういったことができる自治体、できない自治体というのは当然出てくるんだろうと思いますが、ある一定の時間を区切ってやるというのはそれなりの効果があるんじゃないかなと私は思っておるわけであります。

 最後に、峯本参考人にお聞きしたいと思います。

 第四条の国及び地方公共団体の責務について、この児童相談体制改善の論議の中で、市町村にも児童福祉司が必要だというふうな指摘があります。国、地方公共団体の責務を定める虐待防止法四条の充実の観点から、私は大事な点だというふうに思っておりますが、その点、峯本参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思っております。

峯本参考人 私も、虐待防止ネットワークにかかわっている者として、そこは非常に重要なポイントだと思っています。

 最初の陳述の際に申しましたように、やはりコーディネートをどこができるのかということと、それから実際に動ける人がいるのかというところが私はすべてだと思っています。岩城さんや松原先生は、地域の中でそれをつくっていくということ、私もまさに両面から必要だと思いますけれども、やはり行政としてきちっと、一定の体制をつくっていくというところが大事だと思います。

 その中で、地域との連携、これは民間のNPOの活用も含めてやっていく必要があると思いますが、そのためにも、やはり行政がきちっと機能する、枠組みだけじゃなくて、その中身をぜひきちっとつくっていただきたい。それは、僕は、お金がかかりそうなんだけれども、ほんまにやる気だったら、そんなにかからなくてできる部分もあるんじゃないかなと思います。

 例えば大阪の中でも、自治体の取り組みというのはいろいろ違っています。堺市であるとか泉大津市というのは、割と進んだネットワークの取り組みをしていると言われている地域ですが、そこは、やはり調整会議とか連絡会議といって、コーディネートする機関がきちっと設けられていて、そこに専門職がきちっといてはるということと、家庭児童相談室の相談員さんがソーシャルワーカー的役割を非常に積極的に果たしてはる、そういう二つの要素をそろえているんですね。

 もちろん不十分なものですけれども、やはり、うまくいっている地域ネットワークというのは、コーディネートする機関と実際に動く人がいるかという二つの要素を備えていますので、その辺は、すごい金がかかるわけではないと私は思いますし、そこに民間の力も活用しながらやっていく工夫というのはいろいろあるんじゃないかなと思っています。

石田(勝)委員 きょうは、四人の参考人の先生方、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。

武山委員長 次に、山井和則さん。

山井委員 本日は、四人の参考人の方々、本当に、恐らく急な御依頼ではなかったかと思います。また、大変お忙しい中、わざわざ国会まで来ていただきまして、ありがとうございました。

 また、限られた時間の中で、本当に思いを込めて話していただきまして、本当にありがとうございます。このことをしっかり児童虐待防止法の改正のために生かさせていただきたいと思います。

 私も、学生時代、母子寮でボランティアを六年間しておりまして、まさに、最初に松原先生がおっしゃった、DVを受けている家庭で子供がどれだけ傷ついているか。親の暴力を見た子供が知らず知らずのうちにまた友達を殴ってしまうという、この本当に、恐ろしいとか悲しいとしか言いようのない現実、これに対して政治が何かせねばならない、子供はどうしようもできないということで、私も実は政治家を志しまして、そういう意味では、この児童虐待防止法の問題というのは、何としてもしっかりとしたものに改正をせねばならないと思っております。

 そこで、私は西澤先生と岩城先生にまずお伺いしたいんですが、お二人のお話の中で、確かに保護をするのは大事だ、ところが、保護をした後の居場所、施設というのが余りにも貧困じゃないかというお話。これは私も、実は、そういう施設でボランティアもしていましたし、先週から今週にかけて七カ所、私は施設に行ってまいりまして、その中で、言ったら悪いですけれども、二次被害とでも言える現状、心の傷ついた子供たちが安心していられる居場所ではまだまだない。これは、現場の職員の方々は精いっぱい努力しておられるわけですけれども、専門職の少なさ、また人員の少なさ、またハードの面とかあるんですね。

 そこで、二つ、西澤先生と岩城先生にお伺いしたいんですが、具体的には、個室の問題と小規模ホーム、グループホームの問題であります。

 まず、個室の問題に関しては、一昨日も私が行った施設で高校生が言っていたのは、進路のこと、将来のことを一人になって考えたい、しかし、一人になれる空間がないと。また、同じ部屋の女の子同士だけれども、仲が悪い、気が合わない。一人が帰ってきたら一人が外に出て行くということで、一緒にいるのはもう寝るときだけ。それが、心の傷ついた子供たちが自立をする場として、それでいいんだろうかという思いがあるんですね。これは小学生の子供でも一緒だと思います。本当に、親からのそういう虐待で傷ついた子供がたとえ短期間でも一人になれる個室というのも、やはり私は必要なのではないかと思ったりもします。

 このような個室の重要性と、それとともに、やはり、欧米では、大規模な施設にそういう子供たちを長期間入所させている例というのはないと思うんですよね。そういう意味で、やはり私は、もし里親さんが無理であっても、グループホーム、小規模ホームというのが筋だと思います。このグループホーム、小規模ホームのことと個室化のことについて、西澤先生と岩城先生にお伺いしたいと思います。

西澤参考人 質問、ありがとうございます。

 基本的におっしゃったとおりで、欧米では、ベースは里親家庭、しかも、そういったとんでもない、いろいろな問題を持った子供たちの里親をやれるのは、専門的な技量を持った里親さんというのがベースです。それでも対応できない場合に限って施設というのが活用されることが多いですが、そのときにはやはり小規模ですね。だから、日本で言うグループホームだとか小規模グループホームみたいな、そういったベースになっています。

 だから、日本の場合も、やはり今は施設で見ていかなきゃいけないのはどうしようもない。今、急に里親さんをふやせと言っても無理ですから、しかも技術を持った人というのは無理だから。そういう意味では、今の養護施設をもっと小規模化していく。業界で言うような小舎制といったような、大きな集団ではなくて、同じキャンパスの上に幾つかの家庭的な建物があって、それが生活の中心になっているというような、そういうふうなものはしていかなきゃいけない。

 もちろん、おっしゃるとおり、さらに個室化の問題もあって、これは年齢とか発達段階にもよりますから、グループで、ある程度の数で一緒に寝起きしていることがいい子供もいれば、もちろん年齢の要素も入って、中高生のように、やはり個室を提供してあげることがいい場合もあるので、そこは柔軟に、個室化ということも視野に入れた、そういったことはしていく必要があると思うんですね。

 ただ、小規模なグループホーム等が何で、福祉関係者はみんな同意するわけです、そっちの方がいいと。では、何でできないかというと、今の人員配置では夜勤が回らない、宿直者が確保できない。

 例えば、私の知っているあるところでは、現在の法律の中での人員配置でやっていますけれども、そこは小舎制といって小さなおうちをつくってやっているんですが、そうすると、一人の職員が月に十六日泊まらなきゃいけないんです。これは常に、そこの園長は労基と対立して、いろいろ指導を受けながらも言い逃れをしてやっている。

 それが今の制度の実態ですから、小規模化を促進するということは、つまり、それだけの人員配置も打たなきゃいけないし、もしくは、そういった子供たちの問題と面と向かって扱っていけるような専門性がなきゃいけないということも意識をしておかなきゃいけないと思っています。

岩城参考人 我が国の福祉の政策は、虐待とか障害とか、そういった問題に対しては、すべて社会の中から施設に入れる。一つの例として、ハンセン病の方々の施設収容も同じでした。戦争孤児になって浮浪者になっている子供たちを施設収容にして、社会の我々の目の見えるところからいなくなってくれ、こんなふうな政策が一貫して、戦後、施設収容ということがとられてきたわけです。その後、施設の中でも、大舎制がいけないんだ、小舎制が必要なんだ、グループホームが必要なんだ、個室が必要なんだという議論が出てきました。さらに、里親が必要だということも出てきています。

 だけれども、なぜ外観ばかりを見るんだろうかというのが私の気持ちです。なぜ当の本人の子供自身を見ないんだ。子供にとって一番大切なのは、個室があるのかどうか、小舎制なのかどうか、グループホームなのかどうか、ここが大事なのではないんです。子供の心にとって大事なのは、安定的な愛着関係が特定の大人との間に築けるかどうかということこそが大事なんです。大舎制であっても、安定的な愛着関係を築くことだってできなくはないんです。

 そこをどうしても安易な発想で、外観だけで見て、欧米では里親だ、日本も里親制度になっていくべきだと。じゃ、里親で虐待される人はいないんですか。私たちは、今ある福祉のものを使いながら、どうやって目の前にいる涙を救っていくかという発想をしなければいかぬのです。

 国会で、できるだけグループホームに、小舎制にという精神は私も全く同感ですし、その問題について異論を持っている人はだれもいないはずです。しかし、一番大事なところは何かというと、虐待を受けた子供と安定的な愛着関係を築かせて、愛着障害を少なくとも軽減できるような施策をどうとるかということこそが大事なんです。

 そのためには何かというと、心理職の配置であるとか、心のケアをどうやって進めていくかということこそがむしろ大事であって、物的なものを大事ではないとは言いませんけれども、そちらの方にこそ私は目を向けたい、NPOといいますか、市民活動をしている私の立場から見ると、目の前にいる子供たちの観点から、そういう発想をもっともっと広げたいというふうに思っています。

山井委員 ありがとうございます。

 次に、松原先生に二点お伺いさせていただきます。

 要は、DVの目撃そのものが児童虐待である、これは私も本当に痛切に、母子寮でのボランティアを通じて痛感したことなんです。そして、今回、児童虐待の定義の中に入ることになると思うんですが、では、そのことを入れることによって、どうやってその被害の子供を救出することにつなげていったらいいのか。先ほど、配偶者暴力相談センターと一緒にするというようなことも提案ありましたけれども、そのことを含めて、このあたりのことについて、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。

 それともう一点が、松原先生がお配りいただいたこの資料、ここにもあるべき姿、本体施設があって小規模ホームということに、こういう模式図が書かれているわけなんですけれども、今の質問と重なるかもしれないんですが、どうすればこれを推進することができるのか。大体、そもそも欧米で日本のような五十人、百人規模の大規模な施設に虐待された子供を長期間、もう五年も十年も十五年も入れているようなケースがあるんだろうか。厚生省に聞いたらわからないということでしたので、そのあたりについて、松原先生、お願いします。

松原参考人 御質問、ありがとうございます。

 一点目なんですけれども、今、余りにもDV対策と児童虐待対策の連携がない。例えば、DVにおけるシェルターというのは、一定の年齢以上の男の子は連れて入れないんですね。ところが、先生がボランティアをされていた母子寮、今、母子生活支援施設といいますが、母子生活支援施設の緊急一時保護を使えば、これは子供の年齢あるいはその性別にかかわりなく、十八歳未満であれば連れて逃げることができる。

 このように、実際に心理的虐待ということを、虐待防止法の中でDVの目撃と入れていただくことの中で、さまざまな制度が、これから実際、運用上どういうふうになっていくんだということが問われてくると思いますので、そういう意味合いでも、あえてここで心理的虐待にDVを入れていただきたい。これは私の切なる思いですし、それを踏まえて、実際運用をしていきますと、さまざまな問題が見えてきますので、そこもぜひまた国会で取り上げていただきたいと思います。

 それから、二点目なんですけれども、やはり子供は、親子分離したら分離しっ放しというわけにいかないと思うんですね。私がお配りしたきょうの改正に向けての資料の二番目の(2)(3)のところを見ていただくと、特に(3)なんですけれども、やはり定期的に子供の状態、親の状態を問い直していくことが必要だと思います。やみくもに再統合はできないと思います。

 ただ、じゃ、預かったらもうこのまま十八歳までいくかということでもないはずなんで、二十八条が、有期限ということがもし児童福祉法の改正で実現するとすれば、では二十七条の方で、同意で入所した方はほっぽり放しでいいか、私はそういうふうにはいかないと思いますので、やはりここについてもきちっと期限を定めて、欧米では九十日とか百二十日とか、いろいろ期日は違いますけれども、必ずそのアセスメントを数回繰り返していくんだということが言われています。

 これも、ただ分析をすればいいということではないですから、その間に、子供に対してどういうケアができたのか、治療ができたのか、親に対してどういうサポートができたのかということを検証する必要がありますので、そういう意味合いで、子供のケア、治療の充実、それから分離後の親への支援、このこともかかわって必要になってくると思います。

 その子供のケア、治療を進めていくために、私がつけた参考資料四枚目は、小規模化を進めていこう、小規模化ということでは、小規模な施設はやはりつぶれていってしまいますから、センター機能を持った基幹施設でこれを支えていこうという発想をしております。

 以上です。

山井委員 それでは、西澤先生にお伺いしたいと思いますが、最初のお話の中で、何か時間がなかったんでちょっと言い尽くせないという部分があったので、その部分についてもし言い残したことがあれば。

西澤参考人 どうもありがとうございます。本当に、このことについてしゃべらせれば、一日でも二日でもしゃべっていますので。

 基本的に、まだ、ケアの部分のことについてやはり十分に論議できていない。今の小規模化もあるんですが、岩城さんがおっしゃったように、小規模化すればいいというものではなくて、そこでどれだけ丁寧なケアを提供していくかということだと思うんですね。

 今の養護施設、余りきょうお話しできませんでしたけれども、基本的な枠組みは、やはり戦後の戦災孤児対策でできた、いわゆる孤児院ということをずっと引きずっています。ですから、職員の配置数を見ても、厚生省の調べでは、大体平均すると子供三・九人、約四人に一人という配置になっているんですね。

 これは、職員の交代勤務を考えると、十二人から十五人ぐらいの子供をいっときに一人の大人が見ているという状況で、それで愛着障害という話が岩城さんの方からも出て、要するに、子供は大人との濃密な関係の中で傷つけられているので、そこから回復していくためには、そういった安定的な愛着を提供するということを要求されるんだけれども、一人に対して十五人の子供の愛着障害を扱えというのは無理な話ですね。

 だから、余りアメリカの例やイギリスの例を出すなと言われますけれども、例えば、イギリスでいくと、一つの施設だったら、五十人定員の施設だったら五十名の配置、一対一という基準がとられています。これは、そのバックグラウンドには、大体、大人が子供に対してちゃんと見ていこうと思えば一人が三人見るのが精いっぱいでしょうというような基準があって、三人の子供を一緒に見るとしたら一対一の配置、三交代で勤務しているとすれば。そういうような、子供の福祉の権利擁護として位置づけた場合の数字なんですね。実際は、イギリスでは、一対一でも無理で、一人の子供に一・五人ぐらいの大人が配置されているのが現状だというふうに聞いていますから、そういう意味では、日本がいかに手薄いか。

 そういった状況の中で、職員たちは、子供が呈する、本当にさまざまな精神科的症状を呈しますから、例えば、小学校低学年の子供でもう既に自傷行為、自分の体をナイフで切り刻むみたいなことが見られる。そういった問題がたくさん出てきていますので、そういったことに対応していけるような専門性を持った職員を重点的に配置するという状況でないと、その結果、さっき申し上げたように、施設内虐待というのも起こってしまうわけです。

 そういったことで、結局、子供を守るために保護しておきながら子供を傷つけてしまうという結果になって、子供たちは繰り返し繰り返し虐待を受けていきますので、それが将来の人格障害という問題へとつながっていく。そういった人格障害になった大人がいろいろな社会的な大きな事件を起こす人たちも含まれてくるというような、そういう形でどんどん虐待の問題が深刻化していくと思いますので、分離後の子供のケアというあたりをどれだけきちっとしていくかというのが大きな問題だと思っています。

 以上です。

    〔委員長退席、石田(勝)委員長代理着席〕

山井委員 その分離後のケアということで、もう一歩踏み込んで西澤先生にお伺いしたいと思います。

 私、考えさせられますのは、進学とか就職のときに、例えば、寮のあるところしか就職できない。要は、家がないからですね。それと、進学するにも学費とか、学費の前に住むところも探さないとだめなわけですから、受験勉強しながらアルバイトをしているというようなことにならざるを得ないわけなんですよね。このあたりで、やはり自立支援ということを目的とする以上は、最終的に、十八歳ではい終わりじゃなくて、その後ちゃんと社会に入っていけるように、そういうフォローもしないとだめだと思うのです。このことについて、西澤先生、いかがですか。

西澤参考人 また発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私がかかわっている子供で、あるおもしろいことを言った子がいまして、その子は、虐待で養護施設で育って、おっしゃるとおり十八で自立ということで、一気にいろいろなことを自立しなきゃいけないんですね。住む場所も職業もあるいはさまざまな面も、すべて一気に十八で自立。その子が僕に聞いたんです。どうして僕たちは、小さいころに大人からちゃんと愛されていなかった子供たち、それだけ心が弱いのに、十八で自立を求められて、一般家庭の子供たちは大学に行って二十二、二十五までいけるのか、世の中というのはそういうものなのと聞かれたことがあります。

 僕は、むしろ彼らに対してこそより長期のサポートが必要で、それを阻んでいるのが十八歳という壁。あるいは、今、厚生省なども自立援助ホームの増設ということを言っていますけれども、それも大事なんだけれども、一方で、養護施設で見ていける年限を、現場の職員たちは大体二十二、三というふうに言っている人たちもいっぱいいますので、その辺は考えていただきたいし、子供の声というものにしっかり耳を傾けていただければなというふうに思います。

山井委員 あと一、二分なんですが、峯本先生にお伺いしたいと思います。

 私、実は、今回の法改正で一番心配していますのが、三年後の見直しでいろいろ変えるのはいいんですけれども、要は、相談員の数もふえない、施設の職員もふえない、予算がないからということでは、本当にそれで実効性はあるのかという気もするのですが、そのあたりについて、この三年後の見直しと予算の関係についてどう思われますでしょうか。

峯本参考人 まさにおっしゃるとおりで、これは多分福祉関係者全員の、虐待の問題にかかわっている者全員の実感だと思いますが、制度の表面的な手直しでは何も変わらなくて、人、マンパワー、しかも、専門性をどうやって確保するのかという、そこはもう全員が必ず共通して言うことだと思いますし、実際にかかわっていると、本当にそのことを強く感じます。

 ですから、予算の問題、壁が非常に高いというのはわかっていますが、ですからこそ、先ほど申しましたように、今だけの計画ではなくて、今どうするかということだけじゃなくて、例えば、五年後、十年後にどういう体制を目指すのかというイメージを具体的に持っていただいて、それに合わせてどう予算をつけていくのかということを、私、予算づけがどういうふうに実際に行われていくのか、システムはわかりませんけれども、ぜひそれをやっていただきたいと思います。きょう皆さんおっしゃられていることも、最後は結局そこに尽きていく。

 それで、法律の改正のレベルで言うと、いろいろなソーシャルワークをするときに、ソーシャルワークというのは、もちろん親との信頼関係が大切ですけれども、やはり厳しい場面がいっぱいあります。

 ですから、その背後に裁判所が関与した権限がきちっとあれば、そこをきちっと示しながら親にもかかわっていって、その中で信頼関係をつくって、在宅支援できちっと済ましていける、分離までいかなくて済むとか、このプランにきちっと応じてもらえなければ、やはり最終的には、ペナルティーというのは言葉が悪いですけれども、子供を分離しなければならないこともあるんですよということを、どこまではっきり言うかは別にしても、ある程度そういうきちっとした腹づもりを持って、そのことも親にも伝えながら対応していく。それによって、ソーシャルワーク自体がもう少しやりやすくなって、親も、やむを得ないということで積極的にその在宅支援のプランに応じていくとか、そういうこともできるようになるんですね。

 だから、確かに、いろいろ司法の関与の問題であるとか警察の関与であるとか、そういう制度の枠組み、具体的な技術面で保障、制度化というのが必要になってきますが、やはり根っことしては、あらゆる施設の問題も含めて、実際に動ける専門性を持ったマンパワーが実際には非常に必要だというふうに思います。ぜひ、よろしくお願いいたします。

山井委員 どうもありがとうございました。

石田(勝)委員長代理 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 四名の先生方、きょうは貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 先ほど、石田委員が初代委員長だとおっしゃっておりましたが、私は、石田委員の後を継いで、この委員会の実は二代目の委員長でございまして、二〇〇〇年に児童虐待防止法を委員長として提案させていただきました。

 先ほど、西澤先生もおっしゃっていましたけれども、本当に四年前と環境ががらっと変わった。予算も昨年度から三・五倍になりました。今、山井委員が心配しておりましたけれども、自民党と公明党に任せていただければしっかり予算をつけていくというふうに決意をしております。

 本当に四年前は、当時の厚生省が、これは児童福祉法の改正でできるんだというふうに言っていたんですが、実は、委員会として、児童相談所、児童養護施設を視察いたしました。何回も参考人の先生方に来ていただいて、現場の意見、また、法律家としての意見、学者の立場からの意見をいただきまして、がらっとムードが変わって、一挙に法律をつくろうというふうになっていきました。ちょっと時間的に無理じゃないかなと思ったんですが、何とか仕上げることができた。

 ただ、緊急避難的に行ったような部分もありましたので、いろいろ三年半の間、各方面で、ここはこういうふうに変えた方がいいんじゃないかというようなことがなされてまいりました。チャイルド議連等でも取り組まれましたし、各党の議員さんが法改正の検討チームをつくってやっていただきました。

 また、きょういらっしゃっている松原先生と西澤先生は、厚生労働省の児童虐待の防止等に関する専門委員会、また、その下に、社会的養護のあり方に関する専門委員会の委員としても報告書を出していただきました。私も読ませていただきましたが、その報告書の中で提言されたことが今回の児童福祉法の改正にも取り入れられておりますし、また、いろいろ予算がつきました。そういった中にもいろいろな形で出てきていると思うんですね。

 そういったことも踏まえまして、この三年後の見直し規定にのっとって、我々はぜひこの国会で法改正をきちんとしたい。委員長提案という形で何とか、いろいろな方の要望があります、きょうも傍聴に来られている方もいらっしゃいますし、自民党、公明党、民主党の案が出たら、それに対して各方面からいろいろな意見がファクスやメールで送られてきております。これを何としてもいい形で、全党協力してこの国会で改正いたしたいと思いますので、ぜひ、それにプラスになるような形で先生方の御意見をいただければと思います。

 児童虐待の事件が起こると、すぐマスコミは、児童虐待防止法が不備なんだというふうに取り上げがちなんですが、実は、ことしの二月二十日の日本教育新聞の社説で、岸和田事件を取り上げられて、法的システムは整っているんだ、運用の問題だということを言われた上で、だれが子供を守るのか、先ほど岩城参考人がおっしゃっていましたけれども、本当に子供の命を守るために全部が取り組んでいかなきゃならないんだというところから、やはり虐待防止の組織体制の整備をすべきじゃないかという提言をこの教育新聞はしておりました。私もそのとおりだなと思うのです。

 そういった中で、各参考人の御意見の中で、ネットワークが大事だと、きょう、それぞれ意見を言っていただきました。特に岩城参考人は、市民団体の役割、関係者の連携義務、この連携義務に関して、協力義務を明記しろという御提言もありましたし、小中学校のそれぞれの学校区に専門員を置くべきだというような御提言もいただきました。また峯本参考人からは、三点、ケースの見きわめをするコーディネーターの機関がしっかりしなきゃだめだということと、家庭にかかわるソーシャルワーカーが必要だ、また学校のサポートシステムが必要だというふうに提言していただきました。また中長期的に、スクールソーシャルワーカーとかスクールローヤー、もうこれは本当にすばらしいことだと思います。

 私も弁護士出身ですので、お二人の弁護士の先生が本当にこんなにかかわっていただいているというのはありがたいなというふうに思うのですが、今回の法改正、児童虐待防止法の改正という点に関して、ネットワーク機能を強化する。あるいは、岩城先生が特にかかわっている市民団体、NPO等をきちんと連携の枠の中に入れてくる。そのために、児童虐待防止法の中にこういう条文があれば、また、こういった形で書き込まれれば自分たちの運動が本当に強力にできるんだとか、そういった提言がございましたら、ぜひ、お二人の弁護士の先生にお伺いしたいのですが。

岩城参考人 先ほど申し上げたんですが、条文としては、調査協力義務、連携義務というような規定を明記してもらうということとか、それからケース検討会議、これも、通報を受けて、そして児童相談所が近隣住民に聞き取り調査をするということが書いてありますが、聞き取り調査だけではなくて、重要な虐待ケースがあった場合には、児童相談所以外の第三者、例えば主任児童委員であるとか保健師だとか、それから警察であるとか学校の関係者とか、こういった人を集めてケース検討会議を開いて、情報を共有化して役割分担をして、危機感を共有化していく、これをやはり求めたいと思います。

 実際には、児童相談所がケース検討会議を開くというのは、余分な仕事を背負い込むということになるんです。ですから、児童相談所は、ケース検討会議が必要であるとしても、大変なんだと言って避けて通ってしまうんですね。そうすると、結局、特定の児童福祉司さんだけが抱え込んでいるだけで、次へのステップに踏み出せないというのが愛知県名古屋市の実情としてあるものですから、これを明文化されるととても助かると思います。

峯本参考人 私も、今岩城さんが言われたこと、それがそのまま当てはまると思います。

 実際に今、連携をしていく上で非常に大きな課題になっているのが、連携のときの情報の共有の問題で、これは非常に厳しい壁があります。今岩城さんが言われた調査協力義務というのをきちっと条文の中に、最初の通告の段階での守秘義務というのは、通告者がだれであるかということは、これは言わないということ、言ってはいけないという、秘密が守られますよということが言われていますけれども、かつ、守秘義務違反にはならないということが言われていますけれども、調査協力の段階で情報を交換することも守秘義務にならないんだということは、やはりはっきり言っていただく必要があるのではないかと思います。

 それから、ネットワーク的なところでは、民間団体との関係強化とかいうようなことはうたわれていたのではないかと思いますので、民間団体もそのネットワークの一員なんだということを示唆する条文の構成にしていただければというふうに考えています。

    〔石田(勝)委員長代理退席、委員長着席〕

富田委員 次に、法第六条の通告義務に関しまして、ちょっと西澤先生にお伺いします。

 先ほど、もっと広げろと。今回の法改正で、「受けたと認める」というのと「受けたと思われる」というように、与党、自民党と公明党は両案で考えているのですが、民主党の案を見ましたら、民主党案の方も「受けたと認める」というふうになっております。

 私も法律家ですので、法律家的に見ると、「受けたと認める」でかなり広がった感じがするのですが、実は、我が党の中で議論したときに、女性議員の皆さん全員が、これでは全然感覚的にわからないと。受けたと思われる、受けたおそれのある場合も含めるべきだという議論になりまして、我が党としては、「受けたと思われる」、ちょっと、客観的なあれだけじゃなくて、主観的な面があってもいいんだ、主観的に判断して通告してもいいんだということで、「受けたと思われる」という規定を両案併記という形でしていただいたんです。

 先生は、もっと広げろという先ほどの御意見でしたけれども、法文の書きぶりとして、どんなふうになれば一般の皆さんが通告しやすくなるというふうにお考えですか。

西澤参考人 その点に関しましては、一般の人たちというのは私は余り念頭に置いていませんで、やはり子供に職業上かかわる、例えば学校の教員であるとか保育士であるとか、あるいは私みたいなカウンセラーであるとか、あるいは医師だとか弁護士もそうですね。そういう形で、業務の中で子供にかかわる者を子供の専門家としておきまして、その人たちへの通告の強化ということをやはり進めていかなきゃいけないと思います。

 そのときに、「認める」となると、認定するというような意味合いが入ってくるので、非常にそこでは判断が問われるということになってくるのです。それよりは、虐待が疑われる、自分の職務上の合理的な判断からして、職務上の権限もしくは職務上の機能の合理的な判断で、虐待を受けたと疑われる子供についてはというふうな形で、アメリカなんかの法律を訳すとそのまま、今言ったような言葉になっていますので、そういったところで、判断するのは児童相談所だということをきちっとわかるようにしていただければありがたい、通告がもっと促進されるんじゃないかなと思います。

富田委員 ありがとうございます。ここはぜひ各党とも参考にさせていただいて、通告がしやすくなるような制度をつくってまいりたいと思います。

 もう一つの論点として、警察官への援助要請規定がなかなか有効に機能しなかったということで、各党ともここは悩んだところなんですが、岸和田の事件を受けまして、厚生労働省から改めて、警察官の援助規定をきちんと運用するようにという通知がありました。その通知の中にも、本当に子供の命を守れるのは我々なんだという思いがすごいこもった、私は、厚生労働省の通知にしてはなかなかの通知だなと思います。

 そこを受けて、私ども与党は、援助を求める規定のところに、十条の一項も少し書きぶりを改めましたけれども、十条の二項に、「児童相談所長又は都道府県知事は、児童虐待を受けた児童の安全の確保に万全を期する観点から、前項の規定を適切に運用しなければならない。」というような規定を置きまして、各機関がきちんと連携できるようにというようなことを考えました。また、民主党さんの案も見せていただきましたら、同様な規定が出ておりますので、ここでもう少し警察への援助がスムーズにいくようになるんじゃないかなというふうに私は今思っているのです。

 そことの絡みで、十条の二ということで新しく規定を入れようということで、立ち入りを拒絶された場合の規定を各党とも考えました。ここで、警察権力の行使にやはり裁判所を関与させるべきだというのが民主党さんの考え方で、適正手続ということを考えますと、裁判所の関与というのは必要だと私も思いますが、現行法の今回の改正にこれが盛り込めるかというと、この三年半、なかなかそういったところを最高裁や法務省と協議してこなかった。まあ、議員立法という枠組みがありますのでなかなかできなかったと思うんですが、今回、急に裁判所を介入させるというのは事実上不可能ではないかなと個人的には思っております。

 また、特に、先ほど岩城参考人が、司法はもっと福祉に目を向けるべきだ、もっと国民のことを本当に一緒になって考えなければいけないと。そのとおりだと思うんですが、現在の家庭裁判所の枠組みを考えてみますと、では、家庭裁判所の調査官が虐待問題に対応できるのか。そういう専門家はいないわけですね。家事事件、少年事件の調査員、調査官という形で心理学を修めた方たちが多く担当されておりますけれども、この児童虐待の問題をきちんと集約して対応できるかというと、現段階ではかなり疑問だなというふうに私自身は思っております。

 ここにきちんとした予算をつけて、しっかりした調査官を養成して、家庭裁判所の裁判官がきちんと判断できるようになった場合には、司法の介入というのがきちんとなされれば警察権力が不当に行使されることはないというふうに思うんですが、現在、この改正が進む中で、ここに司法判断を介入させるということは私は無理だと思うんですが、岩城参考人、その点はいかがですか。

岩城参考人 現在の状況で裁判所の関与が難しいだろうというのは、私もよく実感いたします。

 ただ、実は、何事も社会の問題に対して法をつくっていくときに、底上げができてから法をつくるというのでは、それでは後手後手だと思うのです。特に裁判所というような、私から見て非常に保守的な、医療界では白い巨塔といいますけれども、私は司法を黒い巨塔といって、裁判官は黒い法衣を着ていますので、一般の市民になかなかなじめない、そして門戸が非常にかたい。そこを変えていくためには、むしろ、立法であなたの仕事だよというふうに示していかなければ、裁判所は今までどおりで、裁判所はこうなんですといって終わってしまうと思うんですね。

 ですから、どうかそのあたりのところを、裁判所の関与が必要なんだと。特にアメリカなんかは子供家庭裁判所なんというのがすごい役割を果たしていますので、そういうふうに変わってほしいと思います。

 最後に、この法律ですけれども、今の警職法でも緊急性があれば立ち入りできますので、あえて裁判所の許可なしに、さらに警職法よりも緩い要件にするところにちょっと危惧感があるというところです。

富田委員 最後に、松原参考人にお伺いしたいんですが、松原参考人は、先ほども御紹介しましたように、社会的養護のあり方に関する専門委員会の報告書を取りまとめられました。その中で、ポイントとして、社会的自立までの支援、また、親を含めた家族や地域に対する支援、ここがポイントだというふうにまずまとめのところに書かれておりました。

 その観点から、きょうの御意見の中で親子の再統合に向けたところを強調されておりましたけれども、委員会の中で、いろいろな意見等も踏まえて、今回の児童虐待防止法の改正、また児童福祉法の改正は、予防、早期発見から保護、そして自立支援まで、切れ目のないそういう対応をきちんとしていくんだということで厚生労働省の方もいろいろ協力してくれておりますので、先生はもうそういう御専門ですから、切れ目のない支援という形を考えた場合、この親子の再統合に向けてどういった施策が一番必要なのか。

 また、法改正という意味で、どういった条文があればそのバックアップになるとお考えか。我々は十一条の一項に新たに「親子の再統合の促進に配慮」という規定を入れさせていただいたんですが、それに対する評価も含めまして、最後に御意見をいただければと思います。

松原参考人 切れ目のない援助、これは本当に必要だと思いますし、私たち、社会的養護のあり方の検討委員会でもそこは非常に重要なポイントになっておりました。同時に、やはり子供の自立支援まで考えていけば長期的なかかわりが必要だろうというふうに考えていました。

 その中で、御指摘のことは本当に当たっていると思うのですけれども、今、再統合をしていくのに、例えば外泊をさせる、面会をさせるという形式的なものだけになっていますので、やはり、そのときにどうだったのかということをきちっとチェックできるシステム、それからもうちょっときめ細かな再統合プログラムというのを、例えば、国は子どもの虹という虐待の研究研修センターを持っていらっしゃいますので、そういうところ、あるいは子ども家庭総合研究所といったような研究所等を中心にぜひ開発をしていく必要があると思います。実態的に、やはり再統合できるのかどうかということを判断するアセスメント、それから再統合を促進していくための援助プログラムということをきちっと立てていくことが必要だと思います。

 これはなかなか法に具体的には書き込めないと思いますので、与党がつくっていただいたこの再統合を視野に含めながら促進をしていく、このことで運用上さまざまな施策を図っていただければというふうに考えて、私は、ここは非常にいい改正案を出していただいたというふうに評価をしております。

富田委員 ありがとうございました。これで終わります。

武山委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 きょうは、虐待問題で先ほどからお話を伺いまして、本当に、それぞれの立場で実践的にかかわっていらっしゃる参考人の皆様方においでいただきまして、お話を伺うことができました。私は、大変興味深く伺いました。心からお礼を申し上げたいと思います。

 私、きょうは、参考人の皆さんからできるだけいろいろそういうお話を伺いたいという質問にさせていただこうと思うんですけれども、まず最初に、共通して強調されたと思うんですけれども、やはり虐待をする親、家族への援助や支援が大切だ、そのことが一番将来的にも予防にもつながっていくわけですから、その強調がされたと思うんですね。

 私どもも、現行法をつくるときに、やはり虐待は子供の命にかかわるという問題で、まず早期発見、救済、ここからやらなきゃいけないということで大変議論したということを本当にきのうのように思いますけれども、同時に、その親と子へのケア、とりわけ親へのケアということが必要だということも議論しましたけれども、現行法にとどまったということがあるわけでございます。

 そういうことを振り返りながら、ぜひ、強調されましたが、親の方は本当は支援を求めているんだ、では、一体どんな支援を求めているんだろうか、またどんな指導をしたらいいんだろうかということなんですね。そこをもう少し具体的にお聞かせいただけないかなというふうに思うのです。現行法も十一条に親への指導ということがありますけれども、これは一体どこがどのようにやるのかということではまだまだ手探り状況のところもあると思うんですけれども、本当にどんな支援が必要なのか。その場合に、行政とか、あるいは法体系として、システムとしてどういうことをやっていったらそれができるのかというようなことをお聞かせいただければと思います。

 お一人ずつ、どうぞよろしくお願いします。

松原参考人 虐待そのものはやはり子供の権利侵害ですから、そのことをあいまいにして親への援助、支援というのはできないと思います。

 やはり、これは虐待なんだということをきちっと明らかにしていく、そういう意味ではコンフロンテーション、まずは対峙をすることが必要だと思います。ただ、そのことで親を排除してしまうということではないはずですから、そのことを明らかにした上でどういう支援をしていくか、そこを模索していく必要があると思います。

 そういう意味では、親を全否定するということではなくて、その親が持っているさまざまな生活背景、ニーズというものをきちっと把握ができる専門的な力をまず児童相談所等の関係職員に持っていただくということが必要ですし、先ほども申し上げましたように、さまざまな援助プログラムを形態ではなくて実際に中身を伴って立てて、それについてきちっと検証していく。援助効果の測定というふうに言ってもいいかと思いますが、そういうことをしていく。これからは、中身に入ったことをきちっと問い直していくことが必要ではないかなというふうに考えております。

西澤参考人 今の御質問は、親への援助、家族への援助はどうあるべきかという、ちょっとソフトの面だと思うんですが、なかなか日本ではそこがされていませんので、本当に限られた、個人的な体験というか、私の臨床経験からしかしゃべれないのですが、一つには、やはり、今松原先生がおっしゃったように、自分のしたことが、虐待という言葉を使うか使わないかは別にして、子供にとって有害なことをしてしまったんだということのまず告知、それの認識から入って、一つには、それが子供にどんな悪影響を与えたか。

 実際、虐待をしてしまう親というのは、ある意味、横断的に見ると、子供の万引きがやまないですごく困っている人が多いんですね。そうすると、子供の万引きがやまない、だから自分はそこから被害を受けている親なんだという被害者、むしろ被害感覚を持っているんです。それも、でも、実際にはそういうふうになるに至った経過があるわけで、その経過、子供に対する態度あるいはかかわりが子供にそういう問題行動を持たせたというような悪影響を認識していく。

 一方では、私がそうしちゃったのは、じゃ何でなんだろうと。非常にいろいろなストレスを抱えて、子供に対して暴力を振るっている。例えば夫婦関係の問題、DVの被害者もある、あるいは夫が経済的に全然破綻している、あるいはアルコール依存だ、いろいろなことがそういうふうに出てきて子供に対して暴力を振るっちゃったんだという認識。

 そういったものに対する援助を今度は提供していくみたいな、そういった階層的な援助プログラムというのが必要で、ただ、これは今、松原先生は児童相談所にとおっしゃいましたし、現行ではそうならざるを得ないんだけれども、実際は、さっき述べましたように、それを児童相談所に求めるというのは、ある意味とても残酷なことになって、児童相談所はもう本当につぶれてしまいますから、そういう意味では、それをやれる機関なり職員をどこか別建てで考えていくことも含めて検討をしていかなきゃいけないんだろうなと思っています。

岩城参考人 西澤参考人のお話に続けた話になると思うのです。

 私は、DVにおける暴力と児童虐待における暴力は質が違うと思っています。DVにおける暴力は、相手を支配、コントロールするために使われる暴力です。ですから、その暴力は、あくまで相手を支配する手段としての暴力なんです。これに対して児童虐待の暴力は、子供はもともと支配されていますし、小さい子供であるならなおさら親の言うことを聞かなきゃいけませんから、あえてさらにこの子を支配するという感覚ではないんです。

 では、なぜ子供に対して親は暴力になるのかというと、それは、親自身の持っている自己肯定感が非常に低いからです。それは具体的にどんなことであらわれるかというと、子供のうそが許せない。それから、子供がすぐに謝らない。だから、子供の不祥事に対して、なぜそれを子供が謝らないんだということで怒ってしまうんです。それはどうして怒るかというと、自分がばかにされたというような気持ちになるわけです。親自身が、今まで愛されたことのない、愛着障害を持った状態で大人になっていますから、人を信じることができない。ましてや、子供からうそをつかれる、そういうことがあると、自分がばかにされたような感じになってしまって逆切れをしてしまうんです。

 そうすると、こういった親に対する支援のあり方はとても難しいんです。つまり、親自身の自己肯定感が乏しい人ですから、条文は親に対する指導という言葉を使っていますけれども、その指導という言葉はとても危険です。上から下に向かって物を言われたら、親自身がさらに自己肯定感が破壊されて暴力に出てしまいます。むしろどうするかというと、親の気持ちを受けとめながら、あくまで親支援というのはその意味なんです。親の指導ではなくて支援。そして、そうだね、そうだね、あなたが怒るのももっともだねというふうに聞きながら親の気持ちを引き出していく、そして親の自己肯定感を高めていく心理的なサポートをしていくということがとても大事だというふうに思っています。

峯本参考人 一つは、システム的なことで言うと、今までもう出ておりますが、きちっとプランを早く立てるということ。松原先生は援助プランというふうに言われていましたけれども、援助プランを早い段階で立てて、それに基づいて親に対してサービスを提供していくということが必要だと思います。これも、やはりプランに基づいて計画的に行く。

 ですから、これは再統合のプログラムも全く同じですけれども、裁判所に分離の申し立てをする段階できちっとそのプランを示して、一応裁判所に承認をしてもらうという形、その上で分離の命令を出してもらうということによって、親自身もある程度そのプランに乗っていかないといけないという形をつくるということが一つ必要だと思います。それは分離する場合だけじゃなくて、在宅支援の場合も全部プランづくりが非常に重要になってくると思います。

 それから、これは今まだ日本では非常に難しいんですけれども、欧米の取り組みとしては、そのプランづくりの会議に親自身が参加しています。親自身が一緒にそのプランづくりをして、そこで最終的に契約書として署名するという形をやっています。これは今、日本の文化の中ではまだ非常に抵抗があって、虐待に対する対応、プランを考えるとき、プランづくりに親を一緒に参加させるのは非常に壁が高い感じがしますが、実際にケースによっては、やっている場合もある。わずかな取り組みですが、やっている場合もあります。

 ですから、それによって親自身もある程度、自分が知らないところで決められるよりも自分が参加して決められる方が、最終的には直面させる、コンフロンテーションというふうに松原先生は言われましたけれども、親自身にきちっと、あなたのやっていることは間違いなんですよ、だからこうしたら、こういうことを一緒にやっていきましょうということを出していくことによって、親自身にも責任感を持ってもらって、一緒にそういう虐待を防いでいくという取り組みがやはり必要だと思います。

 それからあと、具体的なサービスを充実させないと、そのプランができないんですね。

 プランづくりのときにいつも第一番目に上がってくるのが、保育所を使いたいということなんですね。保育所の活用というのは非常に大きくて、子供が親から離れて、毎日子供の状態を見ることができて、親も子育てのストレスから解放させてあげることができるという意味で、保育所は非常に重要な意味を持つのですが、実際には各自治体とも待機児童がいっぱいいてますから、虐待を受けた子供、特にネグレクトの子供に対しては、そんな子育てをサボっている親に対して、仕事で働いて一生懸命頑張って、それで保育所に預けたいと思っている人が、待機児童がいっぱいおる中で、何で、そんなネグレクトしている親に優先的に枠を与えなあかんねんという声がやはりどうしても上がってくるんですね。

 ですから、そういうこともあってなかなか優先枠を確保できてないという現実がありますから、そこは、例えば関係機関のケース会議をきちっとやって、やはりそのプランの中で保育所が必要だという場合には優先的に入所を認めてあげることができるというシステムにする必要があるのではないかというのが一点目。

 それから、親のカウンセリングの治療とか精神医学的な治療とか、それからアルコール依存症の問題とか、これは自助グループへの参加とか民間への委託とか、民間の利用とかいうことも含めて、常に問題になるのがお金の問題です。

 その費用はどこから出るんだという問題になって、それをもう少し柔軟に、そういう親へのケアサービスのために公的な費用を出せるような形になれば、大分使い勝手がよくなって、実際に民間レベルでもいろいろなサービスが、使おうと思えば使えるところがあります。その情報がまだ余り一元化されてないというのと、きちっと一元化して、あと、本当に使おうと思ったときに、じゃ、金はだれが出すのという、そんな高いお金ではないですけれども、やはり常に費用の問題が出てきて、その辺を制度的に担保していただければ、親へのサービスのあり方というのも大分変わるのではないかなと思います。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 家族支援、家庭支援ということにやはりどうしても入り込まなければいけないということになりますと、ソーシャルワークとかあるいはスクールソーシャルワークという話もありましたけれども、そういう人も要るんじゃないかという話にもなっていったと思いますが、その点で峯本参考人にちょっと短く、もう時間がないんですけれども。イギリスの例を随分研究されて、イギリスにも行かれたということですので。

 そのイギリスでは日本の十倍、二十倍のソーシャルワーカーがいるという話なんですね。それで、子供会議をしたりして、親子のプラン、保護プランでずっとフォローして援助するということなんですが、日本の場合、何か家庭の援助というのはまだまだ、プライバシーの問題とか、まだまだいろいろな問題があってよく入り込めないという事情のような感じがあるんですね。だから、イギリスでそういうソーシャルワークが機能しているというのはどういうことなんだろうかということで、ちょっと、短くていいんですけれども。

峯本参考人 これは、さっきの人数の問題とソーシャルワークの手法の問題もあって、松原先生が先ほど言われました、まさに、あなたのやっていることは今の状態ではだめですよということをはっきり伝えるところからスタートすることによって、親の側もそれなりの受け皿ができていく。そこで厳しい場面に直面することもありますけれども、受け皿ができていって、それで、あとはケース会議を開く。

 やはり義務化、虐待の手続に乗っかったときには必ずケース会議を開いて、期間、年限のケース会議ですけれども、ケース会議を開いて、そこでプランをつくる。そのプランづくりのときには親も参加する。そういう形で枠組みがしっかりしているというのが非常に大きい。(石井(郁)委員「それは法律にあるわけですか」と呼ぶ)それは、法律の拘束力を持ったガイドラインがあります。社会サービス局といいまして、そういうガイドラインに従わないといけないというルールになっています。

石井(郁)委員 ありがとうございました。

 最後に一点伺いたいのは、いよいよ法改正の話になっているわけでして、今回の岸和田事件からも、やはり立ち入りという権限をもっと強化しないといけないんじゃないかという話になっていますけれども、現行法でも警察官の援助ということがあって、立ち入りの場合は援助を求めることができるようになっているわけですね。そのことでは、やはりどうしても不備だ、それから、どうしてもそこはもう少し強化しなきゃいけないというふうに考えられる根拠。

 それから、私はやはり、児相の判断でそこをすべて行うんですけれども、児相と警察という関係だけでは、非常に何か、果たして本当にそれが機能するのかなという心配もまたあるわけで、やはり何よりも子供の安否の確認、その判断、そういう前提がしっかりしていないとそれは実際に動いていかないわけですから、そういう問題でいうと、ちょっと立ち入りの調査権に、警察官の関与の問題ではどのようにお考えになっていらっしゃるか。これはもう弁護士ですから、岩城参考人と峯本参考人に最後、伺っておきたいと思います。

岩城参考人 私は、警察の活用はとても大事だと思っています。その理由は、児童相談所はあくまで福祉行政を担当している丸腰の方です。虐待の家族というのは非常に暴力性のある方ですし、また、場合によっては精神疾患のある方もいらっしゃいますので、ですから、職員の安全ということを考えれば、警察はそれを援助していくべきだと思っています。

 ただ、それを警察が独自に入っていくとなると、それは危険があるなというふうに思っています。

峯本参考人 二点ありまして、私も、一定の場合、警察の援助が必要で、非常にソーシャルワークをやっていると恐怖を感じるときがあります。それで、私も実際にかかわっているケースで、本当に殺すぞといっておどされて、事務所の周りで見ておくぞとか言われたりするようなケースもやはり現実にあるんですね。ですから、援助が必要だということ。

 ただ、今回の改正法案を見させていただいたときに、警察がかぎを壊してでも入れるようにするための法案になっていて、そのことは私も必要だと思いますが、そのときに、やはり、生命、身体に対する重大なおそれがあると認められるときという要件になっているんですが、それは実際に行ってみないとわからない、調査してみないとわからないということの場合が多い。

 そういう意味では、本来であれば、不当なアクセス拒絶といいますか、不当にアクセスを拒絶されて、例えば長期間にわたって安全の確認ができないような場合にはというような、そういうもう少し事前の段階の要件に変えていただいた方がいいのではないかというふうに感じるのが一点と、もう一つは、やはり裁判所のチェックが欲しいというふうに弁護士としては思います。

石井(郁)委員 以上で終わります。

 どうもありがとうございました。

武山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、休憩いたします。

    午後零時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四十八分開議

武山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、青少年問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎さん、警察庁生活安全局長伊藤哲朗さん、法務省大臣官房審議官山下進さん、文部科学省大臣官房審議官金森越哉さん、文部科学省生涯学習政策局長銭谷眞美さん及び厚生労働省大臣官房審議官北井久美子さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘さん。

葉梨委員 自由民主党の葉梨康弘でございます。

 今回、青少年問題について、大臣の所信について御質問をさせていただきますが、初当選後初めての質問の機会を与えていただきました。理事各位に感謝申し上げたいと思います。

 私、実は、平成九年から警察庁の少年課というところに在籍しておりました。そして、神戸でのあの酒鬼薔薇聖斗の連続児童殺傷事件、その前から、今の少年非行の深刻化、あるいは少年に対する、現在も非常に問題となっていますけれども、加害行為の問題、こういったものについて、当時においても非常に危機的なレベルにあるというような認識を持っておりました。

 そして、神戸の事件の前からいろいろなところで、戦後第四の上昇期にある少年非行の問題、あるいは、今も非常に問題となっておりますけれども、いきなり型の非行の問題、そういったような言葉も、当時は私自身が造語をさせていただきまして、そして、いろいろなところに警鐘を鳴らしたというようなことを記憶しております。

 しかしながら、どうしても、警察サイドから申し上げますと、少年の犯罪の問題、少年の非行の問題について目が行きがちですけれども、午前中の参考人の質疑にもございましたけれども、やはりそれと並んで、そして、それ以上に非常に問題なのが、少年に対する加害行為の問題、あるいは児童虐待の問題、あわせた形で今の子供の問題というのをとらえていかなければいけない、そういうような認識を持って、実は、小野大臣、当時もプロジェクトチームにかかわっておられましたけれども、児童買春、児童ポルノの取締法というか禁止法、これについて、私は当時、官の側からお手伝いをさせていただいておりました。

 ただ、当時も総務庁に青少年対策本部というのがございました。ただし、この問題、特に少年の問題については役所が極めて多岐にまたがっています。そして、どうしても、官僚同士が調整するという形の施策の展開ですと、スピードも遅くなりますし、また、戦略的に全体を見通した形で物を進めていくということがなかなかできなくなる、そういうような考えもありまして、個人的には、私は五年前に役所を退官いたしまして、政治の道を志し、今この場で質問に立たせていただいているということでございます。そして、私、退官してから五年間、いろいろと外からも見てまいりましたけれども、残念ながら、今の子供たちが直面する問題というのはますます深刻になっているなというような認識を持っています。

 例えば、警察庁が発表している資料ですけれども、平成十四年、十五年においては、千人当たりの犯罪少年の検挙人員、補導人員というふうに言っているようですが、人口比では当時戦後最悪であった昭和五十八年に迫る勢いであるというような発表もなされています。しかしながら、昭和五十八年当時は、全刑法犯の、これは大人も含めてですけれども、検挙率は六〇%を超していたわけで、平成十五年ですと、全刑法犯の検挙率は約二〇%という状況になっている。もちろん、その暗数をそのまま掛けるというわけにはいきませんけれども、非常にその深刻な状況はますます推して知るべしであろうというような感じを持っております。

 そして、午前中も参考人の質疑のありました岸和田の事件、これを引くまでもなく、社会全体の問題として子供への加害行為の問題を考えていかなければいけない、そういう状況に来ていると思っております。

 そして、先ほど申し上げましたように、やはり私自身は、このような厳しい情勢に対処するためには、それぞれの役所が別個に施策を考えて、そして必要に応じていろいろな調整を行っていく、そういうようなスタイルではなくて、やはり政治主導といいますか、大臣自身がむしろ各省庁の施策、政策をリードしていく、そういう姿勢が大切ではなかろうかというふうに考えております。

 そこで、現在の危機的とも言える子供を取り巻く現状に対する認識と、それから、各省庁の施策を主体的にリードするための大臣の決意を伺いたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

小野国務大臣 専門的なお話をかえっていろいろと伺った思いがいたしますけれども、御案内のとおり、刑法犯の認知件数、少年の部におきましては四割という、一万四千四百人という大変な数字が出ております。

 私も、何よりも大事なことは健全育成ですから、少年たちに非行あるいは犯罪を起こさせないということ、どうしてそのような条件整備をしていくかということが最も大事であり、もし犯罪を犯してしまったら、その子たちをどう立ち直らせていくかというのがこれまた私どもに課せられた大人の責任ではないか、そんなふうにも考えております。

 昨年の十二月に、御案内のとおり、青少年の基本理念と中長期的ないわゆる方向性を明記いたしました、青少年育成推進本部におきましては青少年育成施策大綱、これを総理をトップにいたしまして作成させていただいたところでございます。

 私は、この大綱はできれば各家庭に一冊ずつ持ってもらいたい、そのように思うほどでございまして、どちらかといいますと、先生今おっしゃいましたように、官が持ち、白書とかいろいろな大綱はあるんですけれども、それが国民の目に入るということはなかなかございません。やはり、国民の目に入り、親や周囲の地域社会やらすべての者が共感を持ってそれを心の中に置きながら、青少年の問題にも、そしてその他の問題にも取り組んでいくことによって私は物事が変わっていくのではないか、そんな気持ちになっている一人でもございますので、その辺を心の中に置きながらやっていかなければならない。

 先ほどの、済みません、私、一万四千と申しましたが、十四万四千でございました。失礼いたしました。訂正をいたします。

 そのように考えていきますと、だれかが、縦割りの中でやるよりは一人が掌握をしてやった方がいいのではないかという先生のお話でございますけれども、やはり教育もあれば、それから福祉もあれば、さまざまな分野にまたがっているということも実際、現状でございますので、つかさつかさにおいて、そのかわり、連絡協議会なるようなものをつくったりとか、さまざまな議論を踏まえるような条件整備をした上で、それぞれの立場の中で連絡をとり合いながら物事の進め方を持っていく。

 青少年に関しましては余りに幅が広うございますので、一つの、例えば責任者がおって、その人間が声を出してというよりは、それぞれの、例えば総理をキャップにいたしまして、あと、副本部長がおります。例えば文科省の大臣、それから私も入らせていただいているわけですけれども、法務大臣もおりという、そういう、委員長そして副委員長なるもの、ちょっと名称が、後でまた訂正かもしれませんけれども、そういうグループ、総理をキャップにして六人のメンバーが一緒になった形の中で総合的につくり上げていって、そしてそれをやっていくのが、今回の大綱をつくらせていただいた基本的な考え方でございます。

 そういった意味においては、一人がやることが効率的である反面、これだけ大きなことになりますと、やはりつかさつかさで専門的な者が知恵を働かせてやっていくということがよりよい結果を生むのではないか、そのように考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 私は、一人が責任を持って全部やれと申し上げているのではなくて、あくまで、つかさつかさは大事だけれども、それをリードしていただきたいというふうに申し上げたつもりでございます。その点をぜひともお酌み取りいただいて、しっかりと主体的にいろいろな各省庁を指導していただきたいと思います。

 今、お話のありました青少年育成大綱、これについて御質問いたします。

 各省庁の施策、これをまとめる形で、非常にいいものができたなというような感じを持っております。中には具体的なアイデアも盛り込まれている。

 そこで、先ほど申し上げましたように、以下、三問ほど質問をさせていただきますが、これについては、政治主導という意味で、副大臣または政務官にお願いをしたいと思います。

 育成大綱に盛り込まれたプログラム、これが、いろいろな形の、いい政策もあるわけですが、絵にかいたもちに終わらせない、そのためにはやはり計画立ててそれを遂行していく、そのためのアクションプログラムといいますか、具体性が必要になってこようかと思います。具体的には、各省庁が内部的にできるということもあるでしょうけれども、やはり私どもは国会という場ですから、法律ないし予算ということが必要だと思います。

 そこで、まず伺いますけれども、育成大綱の中に、例えば触法少年の調査だとかあるいはインターネット上の児童ポルノの問題、これらの法律的な措置が非常に必要である、このように思います。これらの問題について、具体的にどのような日程で政府部内での検討を行っていくのか、見解をお伺いしたいと思います。副大臣または政務官、お願いいたします。

西川大臣政務官 今の大綱の方でありますけれども、昨年の十二月に総理を本部長として組織がえをして発足した、こういうことになるわけですけれども、先生御承知のように、この大綱は、基本的な理念の問題と、あとは中長期的にどんな政策をやっていくか、こういう方向性を示した、こういうことであろうと思います。

 そこで、今まではどうだったということでありますけれども、これがスタートするまでは、結局、局長会議で連携をとろうということでやってきたわけですけれども、なかなか、担当課の皆さんも、ぜひ連携が欲しいと言うし、内閣府の方も、現実に取り組んでいる皆さんとも連携をしたい、こういうことでありましたが、どうも組織立った動きになかなかうまくいかない、こういうことでありまして、そういう中で今度の大綱が置かれまして、本部が設置された。

 そういう中で、課長会議、うまくいっていると私は報告を受けておりますけれども、各省の関係の皆さんがしっかりお互いに連携をとってやっていこう、こういうことでありますから、ここを中心にしっかりした中長期的な対策をやっていきたい、こう考えております。

 問題は、予算の措置等の問題もありますけれども、これは各省で要求したものをやっていただくということになりますので、内閣府の仕事としては、連携をいかにうまく図れるか、こういうことになるのであろうと思いますので、私どもも、大綱の実施状況、しっかりフォローアップをしていく、あるいは白書等を通じて公表していく、こういうことを重ねながら、関係省庁の連絡を密にやって取り組んでまいりたいと考えております。よろしくお願いします。

葉梨委員 先ほど、以下三問ほどというふうに申し上げたんですけれども、予算の関係はちょっと後で聞こうと思っていたんですが、今お答えいただきまして。

 いずれにいたしましても、実際、今現状として、第一線、子供たちに向き合う部署、これは児童相談所にしても、警察もそうですし、あるいは家庭裁判所もそうですけれども、非常に扱いが多くなり過ぎて悲鳴を上げている、そういった状況であります。ですから、大体各省庁の施策を概算要求が終わった後に取りまとめる、それから閣議前に取りまとめるというような形よりも、それもそうですけれども、私たちも頑張らなければいけないんですけれども、もう本当に政府の一つの予算の目玉として、それぐらいの意気込みで今この問題に取り組まなければ、本当に後世に禍根を残してしまうのではないか、そういうことを要望申し上げて、ちょっと先に進ませていただきたいと思います。

 次に、大人社会に対する施策について伺います。

 私自身の印象としては、残念なことながら、今の現状の日本が子供を大切にしない社会になりつつあるのではないか、そういうような印象を持っています。例えば、少年非行などの問題行動についても、言ってみたら、例えば児童ポルノ、児童買春、そういったものがはびこっている。あるいは、児童虐待の問題もあるかもわからない。大人社会に対する子供たちの反乱、そういったものともとらえられなくもないなというような感じを持っています。

 その意味で、私自身は、児童の権利条約、この問題は極めて大切ではないか。すなわち、子供に対して、子供を愛玩物とすることをかわいがる、これは非常な誤解だと思います。あるいは、子供を愛もない形でしかるということをしつけというふうに誤解する。そうではなくて、子供というのは、一つの人格として尊重もされなければいけないし、また、それだけのある程度の責任も持っていただかなければいけない。しかしながら、いずれにしても、権利の主体として認めていく、そういう形で子供たちに接していくということが一つのかぎではないかと思っております。

 そこで、文部科学省に伺います。

 かつて、ちょうど妊娠した母親に対して、子供に対するしつけについて手帳なんかを渡されたことがあったというふうに記憶しているんですけれども、特に子供に対する接し方、あるいは子供を一つの人格として認める、さらには、文部科学省とはちょっと離れるかもわかりませんけれども、児童虐待というのが子供に対して極めて悪い影響があるんだということ、そんなことを、特に母親の世代に対して、生涯学習の観点からどのような取り組みをなされているのか、お伺いしたいと思います。

銭谷政府参考人 お尋ねのありました家庭教育手帳、家庭教育ノートは、子育てのヒント集として文部科学省で作成をして、乳幼児から小中学生を持つすべての親に対して配付をして、活用していただいているものでございます。

 その中で、親の子供に対する接し方やしつけのあり方について、何点か記載をいたしております。例えば、子供を一個の人格として、その成長を見守る上で、その存在に感謝をし、尊敬を払い、愛情を深めていくことの大切さ、あるいは、子供の体や心を傷つけるようなしかり方、これは教育的な効果がないばかりでなく児童虐待につながる可能性もあるといったようなことについて触れております。

 この家庭教育手帳につきましては、厚生労働省とも連携協力しながら、全国的に子育て講座の中などで活用していただけるように配慮しているところでございます。

葉梨委員 よろしく取り組みをお願いいたします。非常にこれは大事な問題であろうかと思います。

 そして、児童虐待、それから小児性愛者の問題について伺います。

 まず一つは、児童虐待をしてしまった親、これに対して、育成大綱の中でも、今後いろいろな形でケアをするということがうたわれていますけれども、どのようなプログラムで、あるいは今後どのような取り組みでカウンセリング等を行うのか、一点、厚生労働省に伺いたいと思います。

 さらにもう一点でございます。児童虐待ではございませんで、子供に対する性犯罪、これはいわゆる小児性愛者、ペドファイルというふうに言われていますけれども、これの矯正、彼らの矯正のためには非常に専門的な知識、経験を要する、そういったことが一般に言われているというふうに聞いております。

 刑務所も非常に今忙しいと聞いていますけれども、具体的にどのようなプログラムをお持ちで、あるいは今後検討されていくのか、この点、法務省に伺いたいと思います。

北井政府参考人 まず、児童虐待対策の保護者に対する支援についてお答えを申し上げます。

 児童虐待対策におきましては、虐待を受けた児童の支援、治療はもとよりでございますが、虐待をしてしまった保護者に対する支援や指導ということが、家族機能の再生や家族再統合を目指します観点から、大変重要な課題であると認識しております。

 こういう取り組みにつきましては、一つは、育児能力が未熟であるなど養育力の不足しております保護者に対しましては、育児の知識や技術の提供を初めとする養育機能を強化するプログラムに基づきました支援やケア、それから、社会的に孤立している保護者に対しましては、子育ての不安感を取り除いて社会との関係を回復するようなグループカウンセリング、それから、精神的治療を必要とする場合につきましては、医療機関の協力を得て治療を実施するといったようなことが推進されているわけでございます。

 ただ、こうした取り組みにつきましては、一部の児童相談所において、独自に開発したプログラムに基づく取り組みが行われておりますけれども、まだまだ汎用性の高いプログラムの開発にはさらなる取り組みが必要であります。

 現在、厚生労働科学研究におきまして、保護者への指導法の開発に関する研究を実施して、プログラムの開発や確立に向けて取り組んでいるところでございまして、こうしたプログラムの確立と普及に向けましてさらに取り組んでまいりたいというふうに考えております。

山下政府参考人 受刑者の処遇は、その改善更生を促進するという観点で行っているわけでございまして、そのためには、受刑者の個々の人格特性について科学的な調査を実施して、その結果を踏まえながら、収容施設、あるいは実施すべき作業、生活指導、教化教育等を決めているところでございます。

 その一環といたしまして、刑務所では、受刑者の罪名、あるいは犯罪原因となった性格、行動の特徴、社会復帰上障害となりそうな要因、これに着目をいたしまして、同じような問題を有する者を小さな一つのグループに編成いたしまして行う処遇類型別指導というものを実施いたしております。

 例えば、覚せい剤の乱用防止教育だとか暴力団の離脱指導だとか、こういったものでございますが、お尋ねのございました小児性愛者、これは受刑中の者はまだそんな大きな数にはなっていないと思いますけれども、いわゆる性犯罪者全般につきまして、性犯罪防止のための処遇類型別指導といたしまして、性、生命の尊厳について考えさせる、あるいは性被害者の心情について考えさせる、あるいは犯罪に至った原因を考えさせる、自己の問題行動に対する認識を強化する、再犯をしないための決意を固めさせる、こういった趣旨の指導を実は行っているところでございます。

 今後につきましては、昨年も年末に行刑改革会議から、教育指導をより充実させるようにという提言をいただいております。性犯罪者に対する教育指導もさらに一層効果的なものを準備いたしたい、そういうふうに考えているところでございます。

葉梨委員 よろしくお願いします。

 質問の持ち時間も終了いたしました。社会に対する問題についても、これだけ多岐にわたる問題がございます。ぜひとも大臣には、各省庁つかさつかさはございますけれども、大きな問題として、政府全体で取り組むような取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武山委員長 次に、加藤勝信さん。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 青少年をめぐっては、本当にいろいろな問題、そして深刻な問題が次から次へと取り上げられる中で、我が国は、ある意味ではここまで経済的中心に豊かになりながら、どうしてそういう問題が起こるのかな、他方で、逆に豊かさと引きかえに何か忘れてきたものがあるのかな、そんな思いを禁じ得ないわけであります。

 特に、私の個人的なことでありますけれども、四人の子供、娘が私のところにもおります。そういう立場から、さまざまな児童虐待あるいは子供が被害者となった本当に残酷な事件の報道を目にし、また耳にするときに、本当に我が事のようにやるせない思い、そして、ある意味では、どうしてかという強い怒りを感じるわけでございます。本当に次の世代を担っていただく青少年、とりわけ子供たちが、まさに被害に遭うという、あるいは道を全うに育っていっていただきたい、そして、まさに次の時代を担うようになってほしいな、そんな思いを持ちながら当委員会に所属をさせていただいているところでございます。

 きょうは、特にクローズアップされております児童虐待の問題を中心にお聞かせいただきたいと思います。

 大臣は所信表明の中で、青少年をめぐっては、少年非行の深刻化や不登校、引きこもり、若者の就労の不安定化などさまざまな問題があること、あるいは親への依存の長期化、そして痛ましい児童虐待事件や連れ去りなど青少年が被害者となる事件、こうしたことを指摘した上で、このような問題は、社会環境の変化の中で生じた大人社会の問題の反映であるという認識を示されております。

 先ほど申し上げました、特に最近においてクローズアップされております児童虐待問題の背景、先ほど参考人からのお話にもいろいろ取り上げられていたわけでございますけれども、御承知のように、児童虐待防止等に関する法律の施行を受けて、児童相談所に対する相談というのが急激に増加してきているわけであります。

 また、私も地元の児童養護施設の方々からのお話を聞きますと、もともと、そこは虚弱児等を受け入れたというところからスタートした、戦後は結核を患った子供さんたちあるいは虚弱児が中心であった、そして、我が国が経済成長に入っていく過程の中で不登校がふえてきた、そして最近では、本当に虐待を受けた子供たちの入所が急増している、こういう話を聞くわけであります。

 しかし、他方で、人間あるいは家族といったものが、この戦後でいえば五十年、六十年、あるいはこの経済成長の過程の中でそんなに急激に変わっていってしまうのかな。逆に、社会が豊かになってきた、あるいは制度がいろいろ完備されてきた。そういう中で、これまで見えてこなかった問題がある意味では見えてきている、こういう部分もあるのではないかなという気がするわけであります。

 そこで最初に、大臣は、青少年に関する多々の問題、特に児童虐待問題について、ここに来て急激に取り上げられております背景として、どのような事情や要因があると見ておられるのか、大臣の御見解をお示しいただきたいと思います。

小野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 児童相談所におきます児童虐待の相談処理の件数が急増している、これは御案内のとおりでございますけれども、その背景には、児童虐待というのは、今まで主に家庭内の問題であったと思います。隠れていたものが社会問題化してくることによりまして、いわば顕在化してきた。そのことが、私も相談しよう、私も相談しよう、あるいは、周りがやっているのか、それならということかどうかわかりませんけれども、何かしら悲しい現状が日常の中に生まれてきてしまったのかな、その辺あたりは大変残念なことだと思います。

 昔は決してなかったわけではありませんけれども、しかし、昔は家族がたくさんおりましたから、抑止力があったと思います。今は、家の中に母一人。お父さんは仕事に行っている。子供一人あるいは二人。そうした子供の人数の少なさ、それから、親類縁者がそばにいない。そういう孤立化の中で、どうしても我慢していたものが虐待というところに走ってしまう等々、やはり社会の変化とかいろんなものがあって、そしてそれが社会問題になってニュースになることで、逆に、今まで隠れていたものが顕在化してしまった、そういうことではないかと思います。

 都市化が進みますと、今申し上げたように、お隣の方とのおつき合いもなくなってきましたし、それからまた、テレビ等のそういうニュースの取り組みも入ってまいりますし、地域とのつながりが乏しいということは、非常に孤立化してしまう。そういうことの中で、養育の仕方がよくわからない。私も、一人目の子供のときは相当慌てました。そのときに相談する者がいるかいないかということで大変違う。その慌て、おののきの中で、何かしら虐待というところに行ってしまうところが悲劇と言えるのかもしれません。

 そういうことにおきましては、残念ながら、社会情勢の違い、家族構成の違い、その他都市化の問題等々で、先生おっしゃったようにふえてきてしまったのかな、そんな認識を持っております。

加藤(勝)委員 先般、当委員会でも、大阪の中学校三年生男子の虐待事件について実情調査が行われたわけでありますけれども、そして、こういう事件をいかにこれから防いでいくかという議論も進んでいるわけであります。

 この児童虐待の問題を今とらえる場合に、まさにそこで虐待が行われている、いかにそれを防いで子供たちを守るか、介入という側面が当然あるわけでありますけれども、そこに至らないように、まさに未然に防止をするということが大変大きなポイントになっていると思います。

 昨年十二月におつくりいただきました青少年育成施策大綱の中におきまして、いわゆる児童虐待防止策という条項がございます。その中で「虐待リスクのある家庭の把握」という言葉が挙げられております。また、大阪における虐待事件を踏まえて、雇用均等・児童家庭局総務課長名で一月三十日に出された、「児童虐待防止対策における適切な対応について」という通達の中では、養育力の不足している家族を早期、確実に把握していくということが指摘をされているわけであります。

 この大綱に言う虐待リスクのある家庭、あるいは通達で言う養育力の不足している家庭、多分同じことではないかと思いますけれども、具体的にどのような家庭をイメージされておるのか、お示しをいただきたいと思います。

小野国務大臣 今先生からお話がございましたように、育児が困難である、そういう家庭の場合に、虐待を起こしやすい要因のある家庭を把握するためには、母子保健事業等の強化を図るということがまず挙げられると思いますし、みずから訴え出ない、実際には過重な育児負担の中で養育者が確実に支援を受けられるような、積極的な働きかけをしていくということが大変重要だと思います。

 また、虐待につながるような危険性を少しでも少なくしていく、低減する。そのためには、訪問指導等を行う保健師の方々の専門職の資質の向上というものも、もっと図られていかなければならないと思います。

 ですから、市町村の相談機能の強化ということと、養育者の孤立を防ぐための専門的な支援などの取り組みを推進していくということが必要欠くべからざることでありまして、厚生労働省を初めとする関係省庁との緊密な連携のもとに、施策の推進を図ってまいりたいと思っております。

加藤(勝)委員 まさにそういう形で、虐待リスクの低減というものを積極的に図っていただきたいと思うのでありますが、この児童虐待に関する、特に新聞、テレビの報道を見ておりますと、前にも聞いたような話じゃないかなという錯覚に陥るように、何かそこに一つのパターンがあるような、言い方をかえると、特別な事情がある家庭において発生している、そんな受けとめられ方もあるように思うわけであります。

 特に、予防という観点から考えたときに、児童虐待の発生している背景がどういうことになっているのか。それぞれ、今相談に来られている事案、あるいは既に事件となってしまった、そういった事件について、やはりそこはしっかりと分析をし、その背景というものをしっかりと認識していく。

 また、虐待を受けておられる子供さんの年齢、あるいは相談に当たっている子供さんの年齢を見ても、非常に小さい子供さんから、小学校、中学校と、かなり幅の広い層にわたってきている。小さいころの要因が中学校になって虐待という形に出ている場合もありましょうし、また、その段階で始まってきたものもあろうかと思います。

 そうした年齢ごとも含めまして、これまでの児童虐待事件あるいは相談事案、こうしたものを分析されているのではないかと思いますけれども、その分析をする中で見えてくるもの、その辺についてお示しをいただきたいと思います。

北井政府参考人 ただいまの御質問につきまして、今般、厚生労働省におきまして、虐待防止法施行後、平成十五年六月末までに新聞報道や自治体からの報告によりまして把握をしております虐待による児童の死亡事例、合わせて百二十五件、百二十七名の方についての調査を行いまして分析をしたものがございますので、御紹介を申し上げたいと思います。

 この調査では、虐待リスクのある家庭あるいは養育力の不足している家庭といいますか、特に児童虐待の背景となった要素、養育支援が必要となる要素につきまして、一番多かったのは養育環境ということでございまして、具体的には、一人親家庭であるとか、内縁関係の家庭であるとか、転居などによりまして地域社会から孤立をした家庭であるとか、経済的な不安がある家庭といったような、環境面が五三・六%ということで、一番高うございました。続きまして、育児不安であるとか、第一次出産時の母親の年齢が十代であるとか、養育者の攻撃的な、衝動的な性格的な問題といったような、養育者の状況が三八・九%でございました。それから、未熟児や子供の障害、発達のおくれといった、子供の状況が七・五%という報告になっております。

 もちろん、こうした要素を多く有しておりましたとしても、これをもって直ちにその御家庭が虐待に至るというわけではないことは言うまでもございませんけれども、やはり、こうした養育力の不足している御家庭を支援していくということが、虐待防止に向けても、早期発見に向けても大変重要な課題であるというふうに考えております。

加藤(勝)委員 今、いろいろと虐待の背景にあるお話を聞かせていただいたわけでありますけれども、私の認識として、確かにいろいろな家庭状況もあるとは思いますけれども、逆に、それぞれの家庭、ある意味では自分の家庭においても、幾つかの誘因が重なったときに、先ほど話がありました、煮詰まってしまう、またそれが虐待につながっていく、そういうプロセスがあるのではないかと思います。

 そうした、だんだん虐待に行く、そのどこかで、やはりそのプロセスを切っていく。そして、まず外からいろいろとアプローチをしていくということもあるんだと思いますけれども、その過程の中の親、父親であり母親というものは、多少自覚する部分もあるんじゃないか。このままじゃいけないぞ、どこかに相談してみたいな、だれかの手をかりたいなといったときに、確かに今いろいろ制度をつくっていただいている、しかし、一般の方から見たときに、ではどこへ相談をすればいいんだろうか、どこへ聞けばいいんだろうか。なかなか、その辺の窓口というものを丹念に調べるほど精神的に余裕があれば、逆にそういうことにはならないんじゃないかなというふうに思います。

 そういう意味で、どこか、ここへ聞けばある程度、どこへ相談すればいいか、あるいは、どういうサポートがあるから、こういうのはどうですか、あるいは、こういうところへ行ってごらんなさい、そういう指示をしてくださるような、よく子供一一九番とか、そういうような決まった窓口というんでしょうか、何かそういうものを一つつくっていただければ、どこかで、最初のつまずきのときに救ってもらえるのではないかなというふうに思いますけれども、その辺の政府における取り組みを教えていただきたいと思います。

北井政府参考人 先ほど、小野大臣からもお話がありましたように、児童虐待というのは、必ずしも特別な御家庭に発生するわけではなく、むしろ、地域社会の孤立感とか育児不安といったような、どこにでも起こり得る問題であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、この子育ての孤立感や負担感を軽減するために、やはり住民に最も身近な市町村において柔軟できめ細かな相談体制を整備していただくことが重要であるというふうに考えております。

 具体的な身近な相談の場といたしましては、保育所などに設置されております地域子育て支援センター、これは育児の相談などに乗るセンターでございます。それから、子育て中の親子が気軽に集って相談や交流を図れる、つどいの広場。それから、地域におけるさまざまな子育て情報を一元的に把握して、住民への情報提供や相談、助言に乗っております子育て支援総合コーディネーターなどが、各市町村の状況に応じて設置されているところでございます。

 御指摘のように、だれにでもわかって、利用しやすいものであることが必要でございまして、国といたしましても、今後とも、先駆的な取り組みの事例を情報収集し、提供してまいりまして、市町村の積極的な対応を促してまいりたいというふうに考えております。

加藤(勝)委員 いずれにしても、役所側から制度を整えたということではなくて、使われる方の立場に立ってひとつ制度をつくっていただき、その周知に努めていただきたいと思います。

 もう時間が参りましたので、最後に大臣にお願いをして終わりたいと思います。

 先ほど葉梨議員からもありましたけれども、この青少年育成施策大綱、本当にいろいろな形の方向をしっかりと入れ込んで、すばらしいものをつくっていただいております。既にこれに基づいて施策が進められている部分、これから施策が進められていく部分、しかも、各関係、多方面においてこれから進んでいくのではないかと思いますけれども、問題は、この最後にも書かれておりますように、一つ一つの施策あるいは全体としての施策がきっちりと効果があらわれているかどうか。

 限られた予算と労力を使っていくわけでありますから、この方向でだめなら、あるいは十分な効果が生まれなければ、違う方へ展開していく。しかも、それを各省単位で切り分けるのではなくて、全体として対応していく。そのいわば中核として、大臣にこれからさらに御活躍をいただかなければいけないと思うわけでありますけれども、そういう意味では、多省庁にわたる部分もしっかりと評価をしていただきながら、常に見直しをしてこの問題に当たっていただきたいと思いますが、最後に大臣の御見解をお聞きして、終わらせていただきたいと思います。

小野国務大臣 大綱に盛り込まれております各省庁にまたがりますさまざまな施策については、便宜フォローアップをしつつ、白書を通して必ず提示させていただいて、今どうなっているんだ、どこがどうだからということをきちんとしてまいりたい、そのように考えております。

 青少年行政を総合調整する立場であります私の責任といたしましても、青少年育成推進本部の枠組みを活用いたしまして、各関係省庁との連絡を密にしながら頑張ってまいりたいと思います。

加藤(勝)委員 大臣の積極的なリーダーシップを期待しております。終わります。

武山委員長 次に、山井和則さん。

山井委員 これから二十五分間、小野清子特命大臣に質問をさせていただきます。

 今、資料を配らせていただいております。五ページまでございます。

 まず、共生社会調査会の会長としてもこの児童虐待の問題に取り組んでこられた小野清子特命大臣のリーダーシップを、児童虐待防止法、三年後の見直しに向かって、ぜひとも発揮していただきたいと思っております。

 きょうの午前中、四人のすばらしい学識経験者の方々から、参考人の方々の御意見もお伺いしました。そのことも踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、私のこの青少年特に入らせていただきました思いを少し話させていただきますと、そもそも私がこういう政治に関心を持ったきっかけが、学生時代、母子寮、今の母子生活支援施設でずっとボランティア活動をしておりました。そこで子供たちと遊ぶボランティアをしておったわけなんですけれども、最初、初めて母子寮に行って、私、びっくりしたのは、おまえ何しに来たんやといって怒られたり、つばをかけられたりしまして、子供というのはもっと温かく迎えてくれるものじゃないかなと思ったり、また、けんかっ早い子供が多いなと思ったりもしました。

 しかし、何年かそこでボランティアをしながら感じましたのは、お父さんがお母さんに暴力を振るって家庭が崩壊して、お母さんと子供が逃げてその母子寮に保護されている、そんな中で、お父さんがお母さんを殴るのを見て育った子供というのは、残念ながら、時には当たり前のように友達を殴ってしまう、そういうふうな連鎖の問題もあるわけなんですね。

 そういう意味で、本当にまたそういう家庭的に御苦労した子供たちの進学、就職というのは、非常に厳しい現実があります。そういう問題、やはりこれは、子供に罪はないんだから大人の責任だ、もっと言えば政治の責任じゃないか、そういう思いで、実は私、学生時代にこういう政治に関心を持って、きょう、こうやって青少年特に立たせていただいております。

 そこで、まず何よりも、この今回の岸和田の痛ましい事件、先日も私、現場に行かせていただきました。そんな中で、このマンションの一画にそのお子さんがずっと監禁されていた。(パネルを示す)それで、もう長らく食事もほとんど与えられていなかった。それでまた、地域では割とそのことが、かなりの方も薄々感じていた。しかし、病院に運び込まれるまでわからなかったという、やはりこの問題の再発は何としても防がねばならないということを強く強く思うわけであります。

 まず、この点について、児童虐待防止法、三年後の見直しを今これから議論するわけですけれども、法の不備なのか、あるいは、法律にはそれほど問題はなかったけれども運用に問題があったのかということを含めて、小野大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

小野国務大臣 お話を伺っていて、改めてまた当時のニュースの思いをめぐらせているところでございます。

 児童虐待の事件につきましては、近年、児童相談所における相談件数は大変多くなっているという、そのこと自身がとにかく憂慮すべき状況にありますけれども、やはり、今先生おっしゃいましたように、核家族になり、あるいは地域社会が弱体化してしまって、大きな声を出してもお隣の方々がそれに何ら対応してもらえなかったというのもその一つかと思います。取り巻く環境というものが大変従前とは変わってしまったというこの現実もあろうかと思います。

 今回の岸和田の事件に関しましては、現時点では、私の知るところでは、児童相談所内の連携というものがどうであったのかという点です。これは、不登校の担当課と虐待の担当課と、二つの担当課があったわけですけれども、その辺の御連絡がとれていなかったようでございます。それから、二点目は、児童相談所と学校との連携がとれていなかったという点でございます。こういう検討すべき課題があったと認識をさせていただいているところですので、そういった意味では運用の面なのかな、そのような感じもなきにしもあらずでございます。

 児童の安全を確保するために、児童のいる場所への立ち入り、これは法的整備の必要性も指摘をされているところでございますし、いろいろ御検討もいただいているところであろうかと思いますけれども、今の法律であっても、実際には、もし児童相談所の方から警察の方が依頼を受けた場合には同行できるわけですので、その辺もやはり残念であったな、そんな認識を持たせていただいております。

 そういった点から考えますと、今回の事案については、大阪府に設置されました検討チームができたそうでございます。この検討チームの状況も踏まえまして、関係省庁と連携をとりながらその背景を十分に検証いたしまして、改善すべきところはきちんと改善を図り、痛ましいこのような事故が二度と起きないようにしていかなければ、そんな気持ちを持たせていただいております。

山井委員 法の問題というより運用の問題が大きいのではないかというこの岸和田事件についての総括であったわけなんですけれども、やはり、このケースに限らず、こういう児童虐待のおそれがあるときに、なかなか児相の方々が情報収集できない、あるいは本人に会えないという現実があると思うんですね。

 そういう意味では、これは再発を防止していこうということにするには、もうちょっとやはり児相が動きやすくするというような改革が私は必要なんではないかと思います。そういう意味では、今の法だけでは私は弱い面があると思うのですが、そのあたりをもうちょっと、虐待のおそれがあるケース、児相がもっと機敏に動けるようにしていく、そのために、小野大臣としてはどういうふうなことをしていく必要があるとお考えでしょうか。もしかしたら質問通告にきっちり入っていなかったかもしれませんが、お感じになられるところで結構ですので、よろしくお願いします。

小野国務大臣 この件に関しましては、担任の者が大変心配をされて、自宅の方に行ったりということはあったようでございますけれども、兄弟の方は学校にいらしていた、そういう観点から、深刻さが少々間違った感じの中でとらえられていたのかな、そういう点が一点ございます。

 それから、児童相談所には行きましたけれども動いてもらえなかったという、この点が何とも……(発言する者あり)それは違いますか、失礼いたしました。私が間違っておりましたら訂正いたしますけれども。児童相談所内の不登校担当課と虐待担当課との意思の疎通が欠けていたということは、これは事実のようでございますから、その担当課のどちらかが欠けていたということは、私は、児童相談所に出かけているという認識で今申し上げたわけでございます。

 ですから、そういった意味での連携の不十分さと、そして、家族である弟さんになる方は学校に出ていたということで、そこまで深刻に学校の方も関知できなかった、こういうことでございますけれども、私は、周囲の者と話をしたときに、なぜここまでほっておいたのかと。ですから、学校を休んで長期化した場合に、担任が自分で行き切らない場合には、校長との相談をする、主任との相談をするという、もう一つ上の者との相談をきちんとして、動きを一つ一つステップを踏むようにやっていったら違っていったのではないかな、そういうような気持ちを私自身は持っております。

 何かしら、自分は動いたけれども周囲が動けなかったということで終わってしまったところがどうなのかなという心配もありますけれども、私自身は現場には行っておりませんから恐縮でございますけれども、私の印象としては、いただいている資料では、意思の疎通を欠いているというところがあったということは事実でございますので、余り予見で物を言うとかえって失礼かと思いますので、その辺でお話はやめますけれども。

 とにかく、こういう事件が起こってしまったということに対しての私自身の気持ちといたしましてはざんきにたえないわけでございますから、どこをどうすればよかったのかということは、今回の点を十分に調査していただきまして、そうした結果をもとにしながら、絶対このようなことが今後起きないようにするためにどうすればいいかということを結論を出していかなければならない、そういうことを考えております。

山井委員 正直言って、ちょっと現状認識が私と違うわけでありますが、そういう連携が悪かっただけで済ませているとこの問題の再発防止はできないと私は思うんですね。

 あと、ちょっと質問中で恐縮ですが、副大臣ですが、ちゃんと私の話を聞いてくださいね。先ほどからずっと目をつぶっておられますが、よろしくお願いいたします。

 それで、この三年後の見直しに向かってどれを変えていくのかということは、やはりこれは担当大臣のリーダーシップにかかっていると思います。やはり、今回の岸和田の事件を、絶対似たようなケースを起こさせてはならない、もうそれは私たち国会議員、この青少年特の委員の最大の使命でありますので、こういう事件を踏まえて、小野大臣としたら、どこをどう変えていったらこの岸和田事件のような問題の再発が防げるのか、大臣の御所見をお聞かせください。

小野国務大臣 平成十二年の十一月の児童虐待防止法の施行を初めといたしまして、さまざまな取り組みがなされてきたにもかかわらず、今回のような岸和田における事案を含め、児童虐待の状況は極めて憂慮すべき現状であるということ、これをまず一つ置かせていただきます。

 私たちは、いま一度、児童虐待が児童に対する重大な人権侵害であるということと同時に、次代を担う日本の大事な青少年たちの育成という観点からも考えますと重大な課題であると同時に、その認識に立った上で、社会全体が児童虐待を見逃すことがないように、早期発見と児童の保護等が適切に行われるようにすることが重要である、そのように感じております。

 結局、早く見出し、保護をすることによって児童は救われたわけですけれども、その辺がきちんとできるように我々は心していかなければならない、そう思っております。

山井委員 何か、ちょっと総論で本当によくわからないんですが。

 例えば、これを改正していっても、この資料にもありますように、二人の虐待担当の方が二百数十件もこの岸和田では担当をされているわけなんですね。もっと早くから介入といっても、なかなか人手が足りないというところもありますし、先ほど、児相の中の連携が不十分だったという話がありましたが、私も現場に行って聞きましたが、本当に少ない人員でやっていて、なかなかこれ以上小まめにといっても限界があるということをそこの方はおっしゃっておられました。そういう意味では、この朝日新聞にも出ておりますように、もっと数、質ともふやしていかねばならないというふうに思います。

 小野大臣、午前中の参考人の方もおっしゃっていたんですが、この事件を契機に、岸和田では虐待のおそれがあるという通告の件数が既に三、四倍になっているというんですよね。そうしたら、どんどんどんどん通告が来たら、ただでさえ相談員さんは今でも対応できないのにもっともっと対応できなくなってくるわけですけれども、このあたりの人をふやす、あるいは専門職をふやすということに関してはいかが思われますか。

小野国務大臣 児童相談所には、児童福祉司、それから精神科医、それから心理判定員等さまざまな専門職の方々が置かれておりまして、困難な問題に対して努力をしていただいていると理解をしております。

 児童虐待の問題に適切に対応していく上で児童相談所の専門的な職員の果たす役割は極めて重要でありまして、この観点から、児童相談所の児童福祉司の皆さんについては毎年増員を図っているところでございます。その数が足らないということであれば、それは今後のまた見直しになろうかと思いますけれども、私も一応数をいただいておりますが。

 そして、先般、国会において出されました児童福祉改正法案におきましては、児童虐待防止対策を充実強化する観点から、児童相談所に関しまして市町村が担います役割、これを法律上明確化すると同時に、児童相談所の役割を要保護性の高い困難な事例への対応や市町村に対する後方支援というところに重点化するということが盛り込まれたところでございまして、このような取り組み、よい取り組みによりまして相談体制を、虐待防止に万全を期していくことが重要であると考えております。

 ですから、市区町村、市町村と、それから県の、児童相談所というのは県の施設でございますから、市町村と県の立場というものを明確にして対応する、事案に応じてきちんと対応していくということで考えております。

山井委員 今の数では本当に全く足りないわけなんですね。

 小野大臣にお願いしたいのは、小野大臣がこの児童虐待防止法三年後の見直しの責任者であるわけですから、その責任者がもっと、こんなことではだめだ、対応できないということで、私たち以上にしっかりとリードしてもらわなかったら、何か頑張ってはいきますけれどもみたいな、そんなことではどんどんどんどんふえていって仕方ないですよ。それに、これから半年、一年議論する見直しではなくて、もうあとしばらくしたらこの三年後の見直しもこの委員会で決めないとだめなんじゃないかというときに、そういう現状認識では私は余りにも甘過ぎるのではないかと思います。

 二番目の資料を見ていただきたいんですが、これはきのう担当課からもらったんですが、児童虐待に対する相談体制の国際比較なんですね。それで、担当件数、それぞれ外国は一人のソーシャルワーカーが何人かということなんですけれども、これは日本だけ抜けているんです。これはもちろん、厚生省の担当課からもらったんですけれども。

 小野大臣、これは日本では大体、虐待、一人のソーシャルケースワーカーが何人ぐらい担当しているんですか。今ちょっとずつふやしているというお話でしたが。

小野国務大臣 済みません。今資料を持ち合わせておりませんので、調べさせます。

山井委員 これは、一人の相談員が何人担当しているかというのは、ある意味で最もベーシックな話ですよ。答えてください。

小野国務大臣 これは厚生省の話でございます。厚生省の担当内容でございますので、御了解ください。(発言する者あり)

山井委員 納得できません。それはだめですよ。ちょっと、ちゃんと答えてください。虐待防止法の議論をしているのに、一人担当何人かもわからないようじゃだめですよ、そんなの。

小野国務大臣 一人の福祉司の担当が七万三千二百三十七人となっております。

山井委員 いやいや、これを見てくださいよ。

 いや、私が聞いているのは、この図にあります、何ケースぐらいかということで、カナダ五ケースなのに日本は七万三千ケースだったら、大変なことになってしまうじゃないですか。

武山委員長 小野国務大臣、よく整理してお答えいただきたいと思います。――答えられますか。

山井委員 いや、でも、僕、政府参考人に指定していないですから、メモを渡すなり何かしてもらったら。――では、ちょっとこれは速記をとめてくださいよ。

武山委員長 これ、通告してあるわけですよね、きちっと。

山井委員 いや、そういう次元の問題じゃないでしょう、これ。ちょっと私の時間も限られているわけですから。ちょっと速記だけとめてくださいよ。私もあと五分しかないですから。(発言する者あり)

武山委員長 はい、それでは調整がつくまで、一たんここで速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武山委員長 速記を起こしてください。

 小野国務大臣。

小野国務大臣 平成十五年の児童虐待の件数が二万四千件でございまして、児童福祉司の数が千七百三十三人でございますので、割り算をしていただきますと、一人の担当が十四人ということになります。

山井委員 ちょっとこれは、虐待に関することですから、そんなのと違うと思いますよ。先ほど言ったように、岸和田では二人の担当者が二百四十件ぐらい虐待の担当をしていたわけですからね。ちょっと、そんないいかげんなことを答弁しないでくださいよ。(発言する者あり)

武山委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武山委員長 それでは、速記を起こしてください。

 小野国務大臣。

小野国務大臣 先ほど申し上げました、平成十五年の福祉司の方が千七百三十三名であるということ、そして、この方々は虐待児だけを取り扱っているのではないということでございます。

山井委員 ですから、虐待担当の方の一人の担当は何ケースぐらいですかということを聞いているわけですよ。

小野国務大臣 それは数字をとっておりませんということでございます。

山井委員 やはりこれは、児童虐待防止法の三年後の見直しをやって、きょう、午前中も参考人質疑で、ケースワーカーさんがもう対応ができないという真剣な議論をしていて、肝心かなめのこの委員会の中で、大臣も、そういう一人のケースワーカーが何人の虐待の子供を担当しているか統計もないと。そんなことで議論できないじゃないですか。(発言する者あり)だからって、それじゃ議論できないわけでしょう。

 それで、これは担当課からもらって、例えば海外では何ケースぐらい担当しているんですかということを、だから私も事前に聞いたわけですよ。そうしたら、この資料にありますように日本だけ空白なんですよ、そのケースの数が。こんなことってありますか。外国のことはわからないけれども日本はわかるんだったらいいけれども、日本がわからないというのは、こういうデータすらないというのは、私は審議の前提が成り立っていないと思うんですよ。

 そこで、ちょっとお願いしたいんですが、せめてこういうデータを、海外と日本ときっちり早急に提出してください、調査して。調査していないじゃ済まないですよ、これ。答弁してください。

小野国務大臣 厚生労働省とよく相談をさせていただきたいと思います。

山井委員 そんな答弁じゃだめでしょう。自分が責任者でしょう。厚生労働省に言って責任持ってやるという答弁をしてくださいよ。そんなデータすら出せるか出せないかわからないんだったら、審議できませんよ。

 ちょっと、大臣、ちゃんとそれは責任持って答弁してください。副大臣は指名していない。大臣、それぐらい約束してくださいよ。すぐ調べられますよ、そんなことは。

小野国務大臣 先ほどお話し申し上げましたように、厚生労働省の方はその数値をとっておらないということでございますので、私も答えようがないわけでございます。

山井委員 そういうことも、データもとっていないのに、一歩一歩ふやしていったら大丈夫だみたいな答弁をさっきされたわけですよね。

 もう一回ちょっと聞きたいんですが、この児童虐待防止法三年後の見直しの責任者は大臣なわけですね。それで、午前中、参考人の中から出た総意の意見は、やはりこういう大きな問題だから、じっくり審議に時間をとって議論してほしいという声が出ておりました。

 その二点について、この見直しの責任者の大臣、最終責任者は小野大臣であるんですねという確認と、それともう一つは、この審議をしっかりやってほしいということ、二点、お答えください。

小野国務大臣 所轄は小野大臣なのかという、こういう御質問でよろしゅうございますね。

 国の行政事務というのは、各大臣が主任の大臣としてそれぞれの事務を分担管理することになっているわけでございますが、児童虐待の防止に関することは厚生労働省の所轄事務でございます。

山井委員 そうしたら、厚生労働委員会で審議したらいいじゃないですか。そんな無責任なことでどうするんですか。これは、責任者は小野大臣じゃないんですか、見直しは。

小野国務大臣 どこでやるのかということは国会の方で決定することだと思います。

山井委員 あともう一つ、審議の時間をとってくれということの質問。(発言する者あり)

武山委員長 では、二番目の質問の方は理事会で諮るということで、山井議員の質問はこれにて終了いたします。

山井委員 やはり、担当大臣として、しっかりリーダーシップをとっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

武山委員長 次に、肥田美代子さん。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。

 小野内閣特命担当大臣の所信表明に関連しまして、私も、子供の虐待問題を中心に質問させていただきます。

 大臣は所信表明で、痛ましい児童虐待や連れ去りなど青少年が被害者となる事件が後を絶たないと、大変憂慮されておりました。私も同じ気持ちでございます。特に子供に対する虐待は、子供の人権侵害であることはもちろんでございますけれども、生存権さえも否定されるという、これは私は、もう犯罪だと言ってもいいというぐらいの思いでございます。

 そこで、児童虐待防止法が施行されまして三年がたちました。全国の虐待件数は十年前の約二十倍でございます。この状況の中で大臣にお尋ねしたいのですが、私は、大臣が青少年対策の最高責任者であると思っております。そして、大臣は子育ての体験者でもございます。大臣が、今この虐待の状態をどのように感じていらっしゃるか、そしてどのように受けとめていらっしゃるか、そのことからまず伺いたいと思います。

小野国務大臣 今お話を伺わせていただいて、まさに私自身も所信で申し上げましたけれども、昨今の相談件数、あるいは著しく増加しております児童虐待の問題というのは、本当に隠れていたケースが顕在化してしまったということに尽きると思います。

 中でも、虐待の加害者が、母親が六三・二%、それから父親の場合が二二・四%、足し算をいたしますと八五・六%が父親、母親なんですね。ですから、本来ですと、命をかけて子供を守るという従来の考え方からいたしますと、加害者と被害者という立場に親子がなっているということ、このことは非常に悲しむべきことである、そういう認識を私自身も持たせていただいております。

 この背景にはやはり、先ほどから申し上げておりますように、核家族化の問題や地域社会の弱体化、それから地域とのつながりが乏しい中における孤立化という問題が、母親になった者の気持ちをより一層閉鎖的にしていっているということ、そうした家族の方々の増加が、地域を取り巻く環境の変化を初めとしてさまざまな要因の中で、虐待という事態が絡み合って、より顕在化してしまっているということが私は現代の悲劇ではないか、そのように思います。

 ですから、だれか一人声をかけてくれる者、だれかに相談に行く場所がわかる等々で相当解決される問題、何でもない問題が、私も時折ラジオを聞いておりますと、こんな問題を相談するのかという問題をラジオの相談で聞きまして、この一言でこの人がどれだけ安心するものかと思うと、専門家の方々の必要も十分ありますけれども、それ以前の方々、向こう三軒両隣の中でも、お友達でも先輩でも、いろいろな方と電話一本でも気持ちがほぐれていくのにと、そうした意味における自分自身を孤立化させているということの悲劇も非常に感じているわけでございます。

 そんなことで、何よりも悲しむべきことは、母親、父親が虐待の子供に対する加害者であるということが何とも悲しい現実であると認識をいたしております。

肥田委員 今、大臣の方から電話の話がございました。子育てを投げ出したいとか、どう育てていいかわからないとか、そういう本当に切実な声がひっきりなしに届くそうでございます。

 そこで、これまでのように相談窓口に来られる人を待つ姿勢じゃなくて、先ほども大臣答えていらっしゃいましたけれども、もうこういう緊迫した親たちにどんなニーズがあるかといいますと、やはり私は、子育て支援の出前サービスだと思うんですね。もう少し積極的に、妊産婦や新生児家庭などに保健師とかホームヘルパー派遣、まだいろいろあると思いますけれども、そのサービスの軸足を家庭訪問の子育て支援に転換する、私は、これは一つの方法じゃないかと思うんですけれども、どうお考えになりますか。

小野国務大臣 新しい言葉で、あったかい言葉で、出前サービスという言葉、大変ほっとさせていただくわけですけれども、ただ、そこのうちがどういう状況になっているかというのは、最初、取りつく島がないわけですね。その辺あたりが、育児手帳を持っていって相談したときに、何かお困りのことはありませんか等々、保健所がそういった意味での言葉を交わす。

 それから、あとは、どうでしょうか。やはりお隣近所の方々とのコミュニケーションをつけるようなキャンペーンか何かを張って、一人で悩まないでくださいなどなど。それから、どうしていいかわからないというのは、私も最初の子のときにはどうしていいかわからないという思いを何遍も経験しました。

 そのときにだれが助け船を出してくれるか、そして出し合うのか、そういうことをもう少し、何でもないことが一番大事なんだということをお互い知り合うということが、予算も要らないし、何も要らないし、だけれども、非常に大きな心のわだかまりを取ってくれるということの中で、今、先生おっしゃってくださいました出前サービスというのを、相手をキャッチするのをどうするかというのが一つ問題かと思いますけれども、大変すばらしいことだと思います。

肥田委員 虐待事件が報道されるたびに、学校との連絡が不十分とか、親との接触の甘さなんかが指摘されるわけでございます。

 他方、やはり考えないといけないのは、非行とか不登校に関する相談に至るまで児童相談所が抱え込んで、年間四十万件近い相談数があるということでございます。

 とりわけ、虐待相談の増加ですけれども、通告への対応だけで追われているとおっしゃる相談員の方がたくさんいらっしゃるわけですね。その上に親子分離や在宅指導があるということになりますと、これはもうパンク寸前、いえ、もうパンクしていると言う方もいらっしゃるわけでございます。

 これは、私も立法府の一人としてみずからを反省することでございますが、人口十万人から十三万人に児童福祉司が一人という、この配置基準は一九五七年につくられたわけですね。それからそのままなんですよ。ですから、今の状況に全くこの制度が合っていないということなんですけれども、この児童福祉司の配置基準、これを見直して、地方交付税の積算基準をもう少し抜本的に変えるときじゃないかと思います。いかがですか。

小野国務大臣 おっしゃることはまことに時を得て、時を得てというのは、その時代にはそれでよかったものが今の時代と合わないということはまことにそのとおりだと思いますけれども、厚生省の管轄でございますので、担当者にお話しさせてください。

北井政府参考人 児童相談所の児童福祉司の充実の問題でございます。

 もう既に午前中から御審議にありますとおり、政令上は人口おおむね十万人から十三万人というのが基準になっておりますが、実際の地方交付税におけます増員の関係では、標準団体、人口百七十万人当たり平成十五年度は二十三名ということで、十一年度の十六名から比べましても七名の増員となっておりますところでございます。さらに、十六年度におきましても増員が認めていただけるものと考えております。

 ただ、いずれにいたしましても、午前中の議論から、そこのところは抜本的に考え直すべきだという御議論がございましたことは、厚生労働省としても重く受けとめたいと思っておりますが、何せ厳しい財政事情でございまして、私どもは総務省の方に、今のところ地方交付税における増員要望を一生懸命やっているという立場でございますので、御理解をお願いしたいと思います。

肥田委員 日本は、児童福祉にかける予算がG8の中でも随分低いんですね。そのことが基本的にずっと来ているものですから、今厚生労働省がおっしゃったような話になるんですけれども、やはりこれは、大臣、私も政治家の一人として大いに反省するんですが、これは政治家が引っ張っていかなきゃいけないことですよね。

 予算が少ないとおっしゃる厚生労働省、気持ちはわかりますが、七人ふやしたからそれでいいのだという話でもないし、どうぞもう一度。

小野国務大臣 人員の問題に関しましては、予算が伴います。予算が伴います中で、昨今の事案というものは各種さまざまにございますし、保護司の方々の不足というのは、この児童虐待の現状を考えましたときに確かに少ない。この実感は、皆さんと共有するところでございます。

 とにかく、その気持ちを持って今後この問題をどういうふうに扱っていくかということの、きょうは出発と申し上げていいのか、今後に対する思いをちょうだいしたということで、厚生労働省といたしまして、今後どのようにこの問題を予算化、あるいは人員問題でやっていけるのかということを、私の方からもそれなりに本日の議論をお伝えさせていただきたいと思います。

肥田委員 児童相談所の職員ももちろんそういうことで痛みを覚えていらっしゃるわけですが、子供たちもやはり大変痛みを背負っているんですね。虐待された子供、親と一緒に暮らせずに養護施設に保護された子供たち、その子供たちが今どういう施設で暮らしているかということは、もう皆さん御存じだと思いますけれども、このままでは決して許されるものではございません。

 全国の五百五十の養護施設で、三万人の子供が暮らしております。定員五十人、百人、それから二百人という大規模施設でございますけれども、集団生活は、やはり家庭の暮らしとは全然違うわけですね。遠いんです、感覚が。

 それで、虐待で心身を傷つけられた子供が、施設に行きましてもまた心をいやすことができない状態で何年もいるということについて私は大変大きな疑問を感じるのですが、いかがですか。

北井政府参考人 議員御指摘のとおり、児童の健やかな成長のためには、養護施設におきましてもケアの形態を小規模化いたしまして、できるだけ家庭的な雰囲気の中で養育をすることが重要であると認識をいたしておりまして、私どもの関係の研究会あるいは部会の報告でも、そういう方向性は出されているところでございます。

 十六年度予算案におきましては、グループホーム型の児童養護施設でございます地域小規模児童養護施設を前年度の四十カ所から百カ所に拡充をさせていただきましたほか、施設において小規模グループによるケアを行う体制を最低一カ所整備いたしまして、必要な職員を配置することにいたしております。これによりまして、すべての児童養護施設に少なくとも一単位の小規模ケアを確保して、ケア形態の小規模化の推進を図っていきたいというふうに考えております。

 また、今後とも、厳しい財政状況のもとではございますけれども、できる限り少人数による家庭的なケアの拡充を目指してまいりたいというふうに考えております。

肥田委員 もう脱施設の時代ですから、今おっしゃったことをぜひ進めていただきたいと思います。予算を取ってこれから進めていくとなれば、はっきりと方向転換をしましたということを大きな声で断言されたらいいと思うんですね。何カ所にふやしましたという話はあるんだけれども、もっと小規模化に向けてどんどんやっていきますという宣言の声が小さいような気がするんですよ。頑張ってやっていただきたいと思います。

 それと関連しますけれども、親と離れた子供たちは、現在、乳児院とか児童養護施設、それから情緒障害児短期治療施設など、年齢とか子供の状態別に分散収容されております。こうした細分化された施設体系を前提に施設の種類別に専門職を配置する現在の施設運営のあり方、これは、子供の成長や発達、それから社会性とか生活技術を身につける上で、私は肯定できるものじゃないと思うのです。

 そこで、再検討をしていただきたいと提案するわけでございますけれども、児童養護の中核となるこれらの施設を、小規模施設化の流れに合わせまして、地域に根差して、地域に解放された子育て家庭の支援サービスを行う子育てステーションのようなものをおつくりになって、再編とか改革を進められたらいかがでしょうね。どういうふうな感想をお持ちになりますか。

北井政府参考人 施設養護におきましては、これまでは、児童の生活の拠点といたしまして、年齢や児童の状況に合わせまして施設の種別を定めて、児童の特性に応じた環境の確保、専門職員を配置して適切なケアに努めてきたということでございます。

 ただ、昨年、当省におきまして設置いたしました専門委員会の提言を受けまして、ケアの連続性の確保をもう少し図るべきという観点から、今国会に提出をさせていただきました児童福祉法の改正案におきましては、乳児院と児童養護施設の年齢要件の緩和をいたしまして、より柔軟な児童の視点に立ったケアの確保を図ることといたしたところでございます。

 それから、児童福祉施設におきましては、その機能やノウハウを生かして地域に密着した子育て支援機能を担っていただくということは非常に有効なことだと考えておりまして、平成九年の児童福祉法の改正によりまして、児童養護施設等に児童家庭支援センターを附置するという形で、地域の住民の方々の相談に応じるセンターを設置したところでございますし、平成十五年の法改正におきましても、児童養護施設の施設の機能として、地域住民に対して子育てに関する相談に応じた助言に努めるべしということを新たに盛り込んだところでございます。

 先生の今の御提案は受けとめてまいりたいと思いますが、なかなか難しい議論もございます。今後とも、施設のあり方について、子供のケアの向上という観点から、さらに議論を深めていきたいと思っております。

肥田委員 次に、警察庁にお伺いしたいと思います。

 福祉職員は、都道府県知事の命で子供の家庭に立入調査ができる権限が与えられておりますが、強制力がないために、保護者に拒否されると立ち入りができない、そういうことになっております。このため、最近の虐待事件を契機に、警察官に強制執行力をゆだねたらどうという意見も出ております。しかし、予断とか偏見を排除するために裁判所の令状を不可欠とする令状主義の原則がございます。また、警察官職務執行法でも、司法判断の例外は、緊急事態のときだけが司法判断は必要ないことになっております。

 微妙な判断をする虐待問題につきまして、裁判所の許可がなくても、警察官職務執行法の六条を越えない範囲で警察官の強制立入調査は現行法において可能でしょうか。可能ならば、どういうケースなのかを承りたいと思います。

伊藤政府参考人 児童が居宅内で児童虐待を受け、その生命、身体に対し危害が切迫した場合において、その危害を予防し、または、被害児童を救助するため、やむを得ないと認めるときは、合理的に必要とされる限度におきまして、警察官職務執行法第六条第一項の規定に基づき、当該被害児童の居宅内に立ち入ることができるものと考えております。

 具体的に申しますと、例えば昨年五月、東京都足立区におきまして、児童相談所の職員などが児童の居宅に立ち入ろうとしたケースがあったわけですが、保護者がドアチェーンをかけて拒否した事案がございました。

 この事案におきまして、児童相談所職員に同行しました警察官は、児童が約一年間不登校であり、親族である祖母すらも安否が確認できない、一年二カ月前から生活保護、児童手当の受給を辞退していて収入がない、さらに、当該居宅の電気、ガスがとめられているなどの状況から、児童の生命、身体に危害が切迫し、やむを得ないと判断しまして、警察官職務執行法第六条第一項に基づきまして、ドアチェーンを切断して居宅に立ち入ったものであります。

 なお、その際、保護されました児童は、救出時、十一歳であったわけでありますが、体重は二十キログラム、血圧五十でございまして、著しく衰弱していたことから、医療施設に入院したとの事例がございます。

肥田委員 警察官はもちろん犯罪捜査の専門家でいらっしゃいますけれども、子供の虐待では、それとは異なる専門性の判断力がまた必要になると思います。

 そこで、これから警察官の関与は大きくなるはずでございますけれども、小さくなることはないと思います。そこで、虐待にかかわる再教育とか再研修とかいうのが警察官にもこれから必要になってくると思うんですけれども、どのようにお考えですか。

伊藤政府参考人 現在、いわゆる生活相談、あるいは少年の相談に従事している職員が各都道府県警察にいるわけでございます。例えば、少年の相談を受け付けている職員というのは、いわゆる心理学や教育学等を学んだ専門の職員でございますけれども、全国に約千百人ございます。

 こうした職員につきましては、さまざまなカウンセリング等につきましても十分配意した教育をしておりまして、また、みずからも研修をしながら、そうした事態に対応しようとしておるところでございます。

肥田委員 昨年、総理大臣のもとに置かれました青少年育成推進本部、これは恐らく、青少年の現状を多くの人が憂いてこれをつくろうということで設置されたと思います。そして、十二月には早速大綱を出されたわけでございます。

 この推進本部には青少年育成に関連する大臣が所属していらっしゃいまして、それぞれが副本部長に任命されています。この推進会議をもう少し、毎月定期的にきっちりと、そして大きなテーマがどんどん出てくるわけでございますから、これを、しっかりとした会議を持っていただきたい。先ほど大臣が六月には白書を出すとおっしゃっていましたが、そういうことでなくて、この推進本部を、私は思いを込めて申し上げるんですけれども、例えば子供庁であるとか子供省であるとか、子供のことを横断的に考えられるようなそういう省庁の一つとして位置づけてしまう、そういうことが本当は子供に対して親切じゃないかと思うんですね。

 今、小野大臣はたくさんの部署を兼轄されておりますけれども、やはり兼轄で今の子供の問題が本当に解決するのか、ちょっと私は疑問を感じるんです。大臣、この推進本部の会議に出ていらっしゃいまして、どういう感じをお持ちになっていらっしゃいますか。

小野国務大臣 それぞれに事案が大変多うございまして、出ているときはそれに集中して、それぞれが意見を持ち寄りまして会議を重ねておりますので、それなりに有効に動いていると私は感じております。

 しかし、専門にすることも大事ですけれども、さまざまな接点を持ちながら、そこからお互いに情報を持ち寄って、集まって、構築をしていく、それから民間の方々の御意見も聞く、そういう形の中で今させていただいているわけでございます。

肥田委員 私がこういうことを申しますのは、この推進本部をつくったときのその気持ちが少し薄れてきているんじゃないかと思うのです。

 今、いろいろなことを持ち寄ってとおっしゃいましたけれども、今回のように虐待の問題が大きくなったならば、この推進本部で虐待の問題についてしっかりと議論して、この推進本部の議事録についてはみんなが見られるようにする、そのぐらいの積極性を子供政策に持っていただかないと、子供たちが省庁間の縄張り争い、また省庁間のすき間から抜け落ちてしまうという不幸を感ずるわけでございますが、いかがですか。私は、子供庁または子供省をつくろうということは省庁再編の中で難しいとは思いますが、大臣、そのような気持ちでこの推進本部を引っ張っていってほしいんです。お願いします。

小野国務大臣 お気持ちを十分ちょうだいして、頑張ってまいりたいと思います。

肥田委員 終わります。

武山委員長 次に、水島広子さん。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 短い時間ではございますけれども、専ら小野大臣に本質的な質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 小野大臣は、青少年育成担当大臣という大変責任の重い仕事をされているわけでございます。本来であれば、この仕事だけをやっていても足りないくらいの、そんな責任の重い仕事だと思いますけれども、今、大臣は、三つでしたでしょうか、三つの分野を兼務されているということでございます。

 私も以前、福田官房長官がまだこの青少年を担当されておりましたときに、きちんと子供省、子供担当大臣というものをつくらなければとても間に合わないではないかということを申しましたところ、官房長官は私が頑張りますとおっしゃって、その直後に青少年担当がかわられたということで、やはり頑張り切れなかったのかなと思っております。

 本日、ぜひ小野大臣には、本当に独立した大臣が必要なんじゃないか、そんな結論が導かれないような答弁をしっかりしていただきたいと思いますし、我々といたしましては、本当に独立した大臣が必要ではないかと思っておりますので、ぜひそちらの方向に向けても御検討いただきたいと思っております。

 さて、子育てというのはそもそも子供の人権の問題であるということは言うまでもないことでございますけれども、実際のところ、子供をどう育てるかということは、結果として、いろいろな社会問題につながっていくわけでございます。

 今、治安が社会問題になっているわけでございますけれども、これも虐待と密接な関係があるということはだんだんと知られてまいりまして、例えば、少年院に収容されているお子さんの多くが、みずからが虐待をされた体験を持っているというようなことも、だんだんと有名なデータとなってきたところであるわけでございます。

 子育てというと関心を持たれない議員の方も多いんですけれども、治安というとにわかに関心を持たれる方も多いようでございますので、ぜひ、こういった側面からも検討していただきたいと思っております。

 イギリスには虐待の経済学の研究があるということも聞いたことがございます。今子供をちゃんと育てておかないと、将来大変なツケを払わなければならないことになる、だから、例えば児童福祉施設などへの投資というのは有意義な先行投資として政策判断されるべきだというような、そんな考え方であるそうです。

 小野大臣が今まさに責任を持っておられる青少年育成というのは、社会の根幹にかかわる問題であって、まさに待ったなしの領域であると言えるわけです。

 そんな中で、まずは、先日、岸和田で起こりました大変悲惨な虐待事件、このことについて質問をさせていただきたいわけですけれども、既にきょうの委員会の中でも、大臣に先ほど山井議員が質問されておりました。そのときには、青少年育成担当大臣としての所感を尋ねられていたわけでございますけれども、私は、あえて、担当大臣としてどのような責任を感じていらっしゃるかということをまず質問させていただきたいと思います。

小野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 岸和田で発生いたしましたいわゆる虐待事件につきましては、まことに残念なことであり、被害者の少年の一日も早い回復を私も心から願っている一人でございます。

 児童虐待事件につきましては、本当に昨今、児童相談所における相談件数が急増するという憂慮すべき状況にございまして、核家族の進行、あるいは地域社会の弱体化、それから、家庭や地域を取り巻きます環境が大変変化をいたしました。そういうさまざまな要因が複雑に絡み合っているものと考えられますし、それゆえに社会全体で早急に取り組まなければならない問題である、深刻な課題であると認識をしているものでもございます。

 児童虐待の背景の解明につきましては、関係省庁と連携をとりながら、十分に検証いたしまして、改善すべきところは改善をさせていただき、痛ましい児童虐待事件の発生防止のために尽力してまいる所存でございます。

 岸和田の件の責任者としてということでございますが、私自身が責任者になるのか、これは厚生労働省が担当なのか、文科省が担当なのか、そしてまた、一人の人間として責任を負うのか、この辺は、責任者という言葉に対して、私自身も、はいと言う責任者なのか、ちょっと返答に困りますけれども、一人の人間としてその問題は感じさせていただいているところでございます。

水島委員 今の答弁は大変悲しく伺いました。

 そもそも、先ほどから大臣の御答弁を伺っておりますと、この岸和田の事件、いろいろな連携の問題があったということは認めていらっしゃるわけです。そして、今も連携という言葉を使っておっしゃっていました。まさに、そのような省庁の縦割りが問題になっているから、内閣府にあえて小野大臣という青少年育成担当の大臣が置かれているんじゃないんでしょうか。その点はいかがなんですか。

小野国務大臣 その認識は、そのように思っております。

水島委員 では、もう一度答弁をやり直していただきたいと思いますけれども、本当に今回の事件、いろいろな意味での連携の問題であったと思います。もし御理解いただけないようであれば、この後また御説明したいと思いますけれども、そのように連携の問題であった。そして、結果として、一人の貴重なお子さんの命、あるいはこれからの貴重な人生、これが本当に大きなダメージを受けているわけです。

 そのような現実を前にして、青少年育成担当大臣として、自分には責任がございましたということをおっしゃれないものなんでしょうか。

小野国務大臣 児童虐待の防止につきましては、青少年育成の観点から、青少年育成担当大臣としても大きな責務は感じておりますけれども、責任者であるかと言われますと、それは責務というものの一端は私自身も担っているという自覚はございますけれども、言葉の問題ではございますけれども。

水島委員 ということは、小野大臣は、青少年育成の中の虐待を除く部分の担当ということなんでしょうか。

小野国務大臣 ですから、申し上げましたとおり、責務は感じております。

水島委員 責務は、例えば厚生労働大臣、文部科学大臣も感じていらっしゃるでしょうし、恐らく、それはすべての国会議員、また政府の皆様も感じていらっしゃることなのではないかなと思っておりますけれども、あえて私は、これは今、小野大臣への意地悪で言っているわけではないんです。今回のケースは本当に縦割り行政の問題点が見事にあらわれた事件だったという点から、今後、ますますその連携をスムーズにしていただきたい、そのために内閣府が省庁再編の中できちんとそのような機能を持たされたわけですから、本当にそれが現実になるように小野大臣に努力をしていただきたいという、これは激励の言葉であるわけでございます。

 そもそも、先ほど小野大臣の御答弁を伺っておりまして、やはり今回の事件についての認識が当初のマスコミ報道のレベルにとどまっていて、その後、我々も委員会で視察もしましたし、またその後、答弁の訂正書などもいただきました。そんな中で、本当に現時点での知識をきちんと小野大臣が持っていらっしゃるかどうかということは、大変首をかしげながら伺っていたわけです。

 大臣は、先ほど、現場に行っていらっしゃらないとおっしゃいましたけれども、なぜ現場にいらっしゃらなかったんでしょうか。また、本当に行くべきだったんじゃないか、特に、現場に行って、どうして各省庁が連携して動けないのかというその実態を現場で見てこられるべきだったのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

小野国務大臣 理由をつけることもないと思いますけれども、とにかく行かなかったということが現状でございます。

水島委員 私は、すべての事件で大臣が現地に行くべきだと申し上げているわけではありませんけれども、今回は本当に象徴的な事件であったし、それは初期の報道からも十分わかったことでございます。

 ですから、今、現地に行かれなかった大臣のかわりに少し説明をさせていただきたいと思いますけれども、大臣、先ほど児童相談所内の連携というふうにおっしゃいましたけれども、私は、それは現実とは随分ずれた御認識だと思います。

 そもそも、虐待ということで通告があれば、今どきの児童相談所が所内の縦割りの前にブロックされてしまって、虐待として扱わないというような時代ではなくなっているはずです。ですから、これはむしろ通告の段階に大きな問題があった事件だと私は思っておりますけれども、その虐待の通告ということを初めといたしまして、今回の事件、学校側の当事者意識の希薄さというものが私には大変気になりました。

 例えば、二〇〇〇年の十一月に改定されております厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」によりますと、立入調査が必要とされる例の第一といたしまして、「学校に行かせないなど、子どもの姿が長期にわたって確認できず、また保護者が関係機関の呼び出しや訪問にも応じないため、接近の手がかりを得ることが困難であるとき。」となっているわけです。

 まさに、岸和田のケースはこれに当たっております。それでも学校側は、積極的に通告して立入調査を求めるということをしていないわけです。つまり、厚生労働省の虐待に対する取り組みが、文部科学省ひいては学校に全く届いていないということになるわけです。

 そもそも、先ほども申しましたけれども、縦割り行政の弊害を克服するために、内閣府に小野大臣という担当大臣がいらっしゃるわけですけれども、二〇〇〇年に厚生労働省でつくられた手引が文部科学省側に、その第一の例というものすら伝わっていないという、こんな基本的な連携もとれていないということについて、小野大臣は、今までどのようなお仕事をその連携のためにされてきたんでしょうか。具体的に言えば、このような虐待という問題について、文部科学省との連携を図るためにどのような作業をされてきたんでしょうか。

小野国務大臣 特段の連携はとっておりません、文科省とは。

水島委員 もう一度確認させていただきますけれども、青少年育成担当大臣が文部科学省と連携をとったことはないという御答弁なんでしょうか。(小野国務大臣「ちょっとお待ちください、今」と呼ぶ)では、とめてください。済みません、時間が限られているので。

武山委員長 それでは、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

武山委員長 速記を起こしてください。

 水島広子さん。

水島委員 済みません。つまり、先ほどの御答弁は、青少年育成担当の大臣が文部科学省と連携をとられたことがないという御答弁なんでしょうかというふうに聞きました。

小野国務大臣 文科省と私とということではなく、各省庁の皆様方との連携は、報告等々はとってお話は聞いておりますけれども、文科省というだけでの話し合いというのはしていないということでございますので、誤解のないようにしていただきたいと思います。

水島委員 では、今極めて消極的な御答弁をいただいたんですけれども、今回の岸和田のような事件が本来は起こってはいけなかった、起こる前に、省庁の連携の悪さということに対してもっと積極的な手を打たなければいけなかったと思います。

 そういう意味で、これからは、単にそうやって報告を聞かれるというのではなく、みずから進んで、この虐待の問題についてきちんと各省庁が連携するように、ある省庁が持っている基本的な知識はちゃんとほかの省にも伝わるように、そのようなことについて行動を起こされる気持ちはおありでしょうか。

小野国務大臣 心してそのようにさせていただきます。

水島委員 それで、昨年十二月に策定されました青少年育成施策大綱なんですけれども、これは私も読ませていただきました。中に書かれていることは、前も、これはたしか審議会の報告書が出たときにもこの委員会でも申し上げましたが、内容は、本当に日本の政府にしては大変いい内容だなと思っているところなんですけれども、この内容を一体どうやって現実のものにしていかれるんでしょうか。

 例えば、虐待の部分につきましても読みましたが、至極もっともなことがさらりと書かれております。これらは、至極もっともなことだとみんなが認めていながら、今までその必要性もずっと叫ばれてきていながら進まなかった領域でございます。どうやって各省庁と連携してこの内容を実現していかれるんでしょうか。その中で、大臣にはどの程度の権限がおありなんでしょうか。

小野国務大臣 今、先生からお話がありましたように、昨年の十二月に青少年育成施策大綱が成立をいたしまして、これは総理を本部長とするわけでございます。各閣僚から成ります青少年育成推進本部におきまして策定したものでありまして、青少年育成にかかわる政府としての基本理念と中長期的な施策の方向性を示すというのがこの大綱でございます。

 内閣といたしましては、大綱の実施状況につきましては随時フォローアップを行いまして、白書等を通じまして公表していくということをまず考えております。昨年十二月、青少年育成推進本部に設置いたしました青少年育成推進課長会議というものを機動的に開催いたしまして、各省庁が綿密な連絡をとりながら協議を行うことによりまして、施策の着実な推進をしていきたい、そういうことで進めさせていただいております。

水島委員 課長会議で、人員配置をふやしていくための調整ですとか、かなり大きな決断が必要とされるようなことが本当にできるんでしょうか。

 私たちは、このたび民主党の案といたしまして、内閣府に児童虐待防止会議を置くということを提案させていただいています。その議長は内閣総理大臣が務めるわけですけれども、そのようなものをきちんとつくって、虐待ということに特化して集中的に進めていかなければ、本当に喫緊の課題であります虐待の問題はきちんと解決していけない、それも省庁の連携も図ることができない、そのように思いますが、そのような必要性、それをつくらなくても進めていけるというお考えでしょうか。

小野国務大臣 青少年を担当いたします私といたしましては、関係大臣からのお話を伺いまして、閣議決定にございますから、そのお話を伺いながら、必要に応じまして青少年育成推進本部あるいは同本部の副本部長、副本部長というのは五大臣たちでございますけれども、総合調整の場を活用しながら、いわゆる児童虐待対策についても施策の着実な推進を進めさせていただいているということでございます。

水島委員 私、今虐待に特化して質問させていただいておりますが、その虐待というテーマで会議をつくらなくて大丈夫ですかということを伺っております。

小野国務大臣 今まで進めてまいりましたそのペースの中で、虐待の問題ももちろんこれからも出てまいると思いますし、きょうの御意見を伺いましたことは、私、十分報告をさせていただきながら、今後に生かしていきたいと思っております。(発言する者あり)

水島委員 どこでという質問が委員から出ておりますので、それも答えていただきたいんですが、そのときにそんなペースで大丈夫かという一つの例といたしまして、これはかなり大きな問題の調整も必要となることでございます。人員をふやすというような、ある方向性に基づいて進めていく作業のほかに、例えば親権の問題などが出てまいります。

 児童虐待防止法では、親権喪失の規定を適切に運用するようにということを定めているわけですけれども、実際には法の施行前後で状況は変わっておりません。親権喪失という規定が適切に運用されていないというよい証拠になっているのではないかと思います。

 子供の安定、安全ということを最優先に考えるのであれば、親権の一部停止、一時停止といったことが必要になってくるわけです。大臣も恐らく、共生調査会の議論の中でこのような話は耳にされていると思いますが、これについては、今回も超党派の議員の中間取りまとめに従って、その中にその論点、途中まで入っていたんですけれども、法務省がかたくなに拒むもので、最終的には取りまとめに入らなかったということでございます。

 こうやって、法務省をも説得して突破をしていくようなエネルギーが必要なんですが、その点はどうなんでしょうか。

小野国務大臣 現行法においては、家庭裁判所によります親権喪失宣告の制度が設けられておりまして、御指摘のように親権を一時停止をする、一時的に、そういう制度は現在のところは設けられていないというのが現状でございます。

 児童虐待の観点から親権の一時停止が必要との議論があることは承知をいたしておりますけれども、一時停止と現行の親権喪失宣言の制度との関連やメリット・デメリットにつきましては、種々考慮をいたしまして検討されるべき問題であると思っております。

水島委員 だれが検討して、そして先ほどの、どこで御報告になるかというのと同じなんですけれども、大臣は、では、きょうこの問題を引き取られて、どこで議論をして、必要があればどうやって法務省と連携していただけるんでしょうか。

小野国務大臣 先ほどの、本部の副本部長会議というのは、大方官邸で行っている会議でございます。

 それから、親権の問題に関しましては、これは法務省の方と話し合うことだと思っております。

水島委員 では、それをやっていただける、議論をしていただけるということで伺わせていただいたんですけれども、先ほどからちょっと、大臣の御答弁がやや受け身であることが大変気になっているんですけれども、青少年育成担当大臣としては、私はやはり子供たちのために先頭を走っていただきたいと思うわけです。

 そもそも、日本で子供の権利を最優先に守っているのはどこになるんでしょうか。

小野国務大臣 まずは文部科学省ではないかと思います。

水島委員 これもまた驚いたわけでございますけれども、ということは、大臣がそういうお考えなら何となくわかります。子供の権利を守っているのは文科省だから法務省は親権の問題について消極的なのかなと、何となく政府内の理解が今わかったんですが。

 国連の子どもの権利委員会からも、独立した監視機構を設置するため、既存の子ども人権専門委員制度を制度的に改善、拡大するか、子どもの権利オンブズパーソンを創設するかのいずれかの手段をとることが勧告されているわけです。そして、どちらの手段をとるにしても、独立性や効果的な権限を保障するための立法措置が求められているわけです。

 これは、私が知る限り、なされていないと思いますけれども、これは小野大臣が担当大臣として汗をかいてくださらなければいけないことだと思いますけれども、いかがでしょうか。

小野国務大臣 青少年行政にかかわりますすべての機関というものは、子供の権利を最優先にと考えて施策に取り組んでいるところだと思います。

 ですから、先ほど文科省であるということを申しましたけれども、文科省でありあるいは厚生省であり、もちろん私も入るわけですけれども、文科省が中心になって子供の問題は進められているものと私は考えております。

 もう少し聞いてください。法務省におきましては子どもの人権専門委員会を設置いたしまして、人権侵犯事件の調査あるいは処理に関しましては、人権相談や子供たちの人権を守るための啓発活動を行いますとともに、子どもの人権一一〇番を設置していることも御案内のとおりでございます。

 児童福祉を担当する児童相談所や児童福祉施設あるいは教育を……(水島委員「時間がないので、国連の勧告の方にお答えいただけますか」と呼ぶ)

 関係機関がそれぞれ力を尽くして子供の権利擁護に努めていると私は認識をいたしております。

水島委員 済みません、国連の勧告についてどうするかということに御答弁いただきたいんですが。

小野国務大臣 児童の権利の勧告の件につきましては、今後、法務省とお話し合いをさせていただきたいと思っております。

水島委員 もう質問の時間が終わるわけですけれども、私、きょうのこの二十五分間の質疑を通しまして、もっと小野大臣に青少年育成担当大臣としての自覚を持っていただきたいと、大変僣越ながら申し上げたいと思います。

 それは、大臣の責任責任というだけではなくて、それだけ期待、本当に多くの子供たち、また子育てに悩む大人たちの期待を大臣は背負っておられるわけですから、その御自身の責務で結構ですから、責務を本当に十分に認識されて、今の子供の権利の問題、私は、子供の権利を現時点で最優先に守らなければいけないのは恐らく小野大臣、政府の中では小野大臣なんだろうと思っております。そんな観点から、ぜひ省庁を束ねていただきたいと思います。

 旧総理府時代には、何やらホチキス官庁などと呼ばれていたという話も聞いておりますけれども、そうやって省庁を束ねるだけの官庁ではなくて、内閣府というのは、内閣の意思を発揮するためのパワフルな内閣府なわけですから、そこの特命大臣として本当に十分なパワーを発揮していただいて、例えば、政府は待機児童ゼロ作戦などと言っておられますけれども、被虐待児ゼロ作戦をきちんと策定して、数値目標を立ててお示しいただきたい。そのことが恐らく虐待防止法の改正案の審議における最低限の条件なんじゃないかなというふうに私は思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

武山委員長 次に、泉健太さん。

泉(健)委員 それでは、質問をさせていただきます。

 先ほど来、私どもの委員の方からいろいろな質疑をさせていただきました。その中で、やはり岸和田の虐待の問題を初めとして、この虐待の問題についてどうしても取り上げなければならないという思いを持っております。

 まず、先ほどから、それぞれの議員、委員の冒頭で御認識をいただいているところですけれども、私は、今回、また児童福祉法と児童虐待防止法の改正が進んでおります、そういった中での担当大臣の御決意をいただきたいと思います。

小野国務大臣 大変痛ましい児童虐待を防止しまして、被害児童を早期に発見、保護する上で、学校、そして児童相談所、児童福祉施設、こういう関係機関が綿密に連携をとりながら真剣に取り組むことが重要であると考えております。

 青少年育成を担当する私といたしましては、関係大臣からお話を伺い、それぞれの関係大臣からもお話をいただき、必要に応じて、青少年育成推進本部やあるいは同本部の副本部長会議などで、総合調整の場を活用しながら、児童虐待について施策の着実な推進を進めてまいりたいと思っております。

泉(健)委員 ただいまの御答弁をいただいて、それぞれの大臣から御意見を伺いというふうに言っておられました。これは、小野大臣がそれぞれの大臣から積極的にお伺いをするというふうにとってよろしいでしょうか。

小野国務大臣 そのとおりでございます。

泉(健)委員 ぜひともお願いいたします。

 まず、先ほど山井議員からも質問がありましたが、岸和田の件について再確認をしなければならないと思います。水島委員からもお話がありましたが、今回のケースでは、認識として、児相内の連携がとれていなかったということではないということで、改めて確認をさせていただきたいと思います。

 学校からの相談が通告と受け取られてなかった、このことについての認識は正しいと思いますが、そもそも、通告と受け取られないものを、どれだけ連携を児相の中で強化していても、これはそのまま虐待の課の方に行くわけがなくて、この件については、児相の方にはもう千件近くの抗議が来ている。これは、初期の報道の誤りからこうなってしまっているわけですが、児相の方の誤解を明確に解くためにも、ぜひとも大臣の御意見を伺いたいと思います。

小野国務大臣 私の方の情報が違っていたということ以外ございません。

泉(健)委員 ありがとうございます。

 そう言っていただけると、児相で頑張っておられる皆さん、あるいは学校で頑張っている皆さんも再認識をしていただく意味で、大変重要なことかというふうに思います。

 私は、こういった問題は、とにかく繰り返してはならない、再発防止が一番大切だと思います。何せ、あの岸和田の事件が起きた後も、小さい子供さん、まだ学校に行ってない子供さんの虐待事件も含めて、引き続き起こっているという状況です。これを何とか、これから私たちが法律を変えていく中で、議員立法でつくっていく中で、繰り返してはならないし、つくった後の運用で、絶対にもう一度穴がありましたなんということがないようにしていかなければならないと思っております。

 そういった中で、幾つか指摘をさせていただきたいところがありますので、細かい話にもなりますが、御協力をいただきたいと思います。

 まず、文部科学省の方なんですが、不登校の数に関しては十四万人ほどの方々がおられると聞いておりますが、現在、その不登校の方々の数、一件一件の不登校のケースについて、児相の方に相談あるいは報告という形のものはとられていますでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 平成十四年度の国公私立の小中学校における不登校児童生徒数は約十三万一千人でございまして、年間三十日以上の欠席者数について調査を開始した平成三年度以来、初めて減少いたしておりますが、依然として相当数に上っており、憂慮すべき状況にあると考えているところでございます。

 各学校現場におきましては、それぞれの状況に応じまして、必要があれば、児相に御相談をし、また御連絡をするということをいたしているものと考えておりますけれども、全国的に見てそれがどのぐらいの数になるのかというところまでは、現在承知しておらないところでございます。

泉(健)委員 早速、こういうことなわけです。必要があれば児童相談所にお話を持っていくということなんですね。

 例えば、岸和田の子ども家庭センターというのは、虐待問題だけを扱っているわけではないわけです。子供たちをサポートするためにあるわけですね。だとしたら、なぜ、不登校のケースに関して、まず児相に、一緒に地域で支えていこうと報告をなさらないんでしょうか。

馳大臣政務官 お答えいたします。

 それぞれのケースにおいて、やはり学校においての対応、そして、学校内の十分な把握がされれば児相に連絡をするという判断が各小中学校においてとられているものというふうに認識をいたしております。

泉(健)委員 厚生労働省の方にお伺いをしたいんですが、児相では、不登校に対して、数の把握あるいは対応というものはなされていますでしょうか。

北井政府参考人 児童相談所で受けた虐待相談のうち、子供が不登校になっているケースの数は、個々の児童相談所におきましては把握しているところでございますけれども、全国的な統計としてはとってございません。

 それから、不登校そのものの児童相談所の相談件数は、全国で一万件ほどでございます。

泉(健)委員 個々の児相の方で確認をされているということですが、これは漏れがないというふうに考えてよろしいでしょうか。

北井政府参考人 虐待の通告がありましたときには、必ず……(泉(健)委員「不登校、不登校ですよ」と呼ぶ)まず、不登校の相談件数は一万件でございますが、虐待と不登校の関係でございますけれども、児童相談所に虐待の通告があったときに、就学状況を確認して、その虐待の通告のあったお子さんが不登校の状況なのか、就学の状況はどうなっているのかということは、手引に基づきまして確認をするということになっております。

泉(健)委員 これは、もちろん、虐待のときには通告という言葉が出てきます。しかし、児相というのは、複合的な、子供たち全般に対する相談も受け付けているわけですね。ただ、残念ながら今、体制が余りに脆弱過ぎるという現状も抱えております。

 そういう中で言いますと、まず大切なのは、児相の体制の強化であると思いますし、そしてまた、不登校に関しても、ぜひとも地域で一緒にサポートしていこうという意味で、学校内で解決をする、スクールカウンセラーがいるからそれでいいんだ、学校内で把握をしていればそれでいいんだ、文部科学省だけで把握をしていればいいんだということであれば、これは解決にならないケースが出てくるんじゃないのかなと思います。

 その意味で、ぜひとも今後、それぞれ連携を強化していただきまして、私は、不登校のケースがあった場合は、不登校全部に対して、児相としっかりと連携をして対応を決めていくというふうになるべきだと考えておりますが、それぞれ、政務官、もしよろしければ御意見をいただきたいと思います。

馳大臣政務官 おっしゃるとおりだと思います。

 今、児童虐待防止法の法律においても、教職員とか病院の先生とか保健師さんなど、いわゆる関係者としてそういった問題に対応するとなっておりますが、今後は、法改正も視野に入れながら、学校であったり児童福祉施設関係機関であったり、組織としてしっかりと対応して、先生おっしゃったように、漏れのない対応ができるような、きめの細かい連携が求められるものと承知いたしております。

佐々木大臣政務官 岸和田事件にとどまらず深刻な虐待事件が頻発していることを踏まえれば、現在の児童虐待防止対策につきましては、運用面のみならず制度面についても課題を抱えており、両面からの対策を講じることが必要と考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、各都道府県に対しまして、今回の事案を踏まえ、組織的かつ迅速な対応、子供の安全確保の優先といった基本に立ち返った取り組み及び児童相談所内の連携体制の再確認、そして、学校等の地域の関係者との協力、連携の確保に遺漏なきを期すよう通知を発出したところでございます。

 また、先日国会に提出しました児童福祉法改正法案におきましても、市町村が中心となって、虐待を受けた児童など要保護児童に対する支援のネットワークの運営等に関する規定を整備し、虐待の予防や早期発見を促進し、それに対して都道府県、児童相談所が連携、後方支援をするという措置を講じようとしておるものでございます。

 このネットワークでございますけれども、これは、警察、それから学校、今委員がおっしゃいましたスクールカウンセラーというのももちろん入ってまいりますが、保健所とかそういった関係機関ということを考えております。及び保護者指導に関する司法関与の強化ということも改正に盛り込んでおりますので、制度的な面からの虐待防止対策の充実を図ることとしており、これらのさまざまな取り組みによって虐待防止に万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。

泉(健)委員 厚生労働政務官に引き続きお伺いしたいんですが、それで実際に、その中には、不登校について児相の中で調査票なりをつくるところまで体制がいっているとお思いでしょうか。

佐々木大臣政務官 残念ながら、今のところでは、もしかしたらいっていないかもしれない、十分ではないかもしれませんので、この点については考えさせていただきたいと思っております。

泉(健)委員 ここで、やはり担当大臣、見ていただいたとおりだと思うんですね。基本的な不登校、今回のケースで言えば、学校に行っていなかったことは確実にだれから見ても明らかだったわけですね。しかし、学校に行っていないことだけをもっては児相に相談しませんよという体制になっていたことが一つ問題だったのじゃないかなと思っております。それを踏まえてこの連携を強化していかなければならないと私は思っておりますので、どうか改めて御認識の方をお願いしたいと思います。

 さらに、文部科学省さんの方にお伺いしたいと思います。

 一週間ほど前の予算委員会で、我々の原口議員が、不登校の児童の安全確認ができているのかということを質問させていただきました。そうしますと、大臣の方は、早急にこの調査をさせていただきますというふうにおっしゃられておりましたが、その後、結果はどうなっておりますでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 児童虐待の早期発見、対応の観点から児童生徒の状況の把握に努めることは重要でございまして、文部科学省におきましては、不登校児童生徒が家庭などにいる場合につきましても、学級担任等の教職員が児童生徒の状況に応じて、家庭の訪問を行うことなどを通じてその状況の把握に努めるよう指導しているところでございます。

 御指摘の不登校児童生徒のうち、安否確認ができていない児童生徒がどのくらいいるかということにつきましては、現在、私どもでは全国的なデータを持っておりませんので、今後、長期間学校を休んでいる児童生徒に関し、学校が把握している状況につきまして都道府県教育委員会を通じて調査することといたしておりまして、その準備を進めているところでございます。

泉(健)委員 河村文部科学大臣が答弁で言っているんですね。状況把握に努めるということで今指導もしていると。そして、具体的な数字、全国的に安否が、状況がはっきりできないという状況をまず数的につかんでいないことがわかったので、これは早急に把握する必要があると私も思っておりますというふうに言っております。早急にとはいつまででしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在、私どもでは、長期間学校を休んでいる児童生徒に関し、学校が把握している状況につきまして調査をする準備を進めているところでございますが、きょうが金曜日でございますけれども、来週早々にもそのための調査を発送したいと思っておりまして、現在、その調査でどういうふうな調査の仕方をすると正確な実態の把握ができるかということで準備をしているところでございます。

泉(健)委員 ちょっとこれはまずいんじゃないかなと思いますね。というのは、やはりその間にも、もしかすると虐待を受け続けているケースがあるかもしれない。もしかすると、文部科学省さんの調査を待ったら一年、二年なんという話になるんじゃないのかなと。じゃなければいいんですけれどもね。

 ただ、香川県は今回の事態を受けて、もう県として動いておられます。そういう状況に対して、なぜ今文部科学省さんが、大臣が早急にやりますと言っていることを、一週間たって、また来週にやります、これはおかしいんじゃないですか。政務官、どうですか。

馳大臣政務官 先般、予算委員会で大臣が、しっかりと実態調査に入ります、児童虐待と認める、あるいは思われる事案について早急にと申しておりますし、それを考えれば、四月にはまた新学期も始まりますし、それを待っておるわけにもまいりません。いつ幾日までとは、具体的な日にちは確かに申し上げることができないのは御理解いただきたいんですが、まさしく、早急にその実態の把握をと。

 要は、私も先生のおっしゃることはわかるんですよ。不登校の実態というのはわかっているわけですね。来てないわけですから。三十日以上、経済的問題ではなく、また精神疾患上、いわゆる病気とかの問題ではなく来てないんですから。

 実際には、福岡市などのようにマンツーマンで、対面で把握しているところもございます。そういったことを考えれば、早急に、要はマンツーマンで本人と面会をして、また御家族に事情をお聞きして、そういった形で速やかに行うということをまず御理解いただきたいと思います。

泉(健)委員 ぜひ、この件については早急に調査をしていただきたいと思いますし、もちろん不登校児というのはいろいろなケースがありますから、その方々に配慮もした上の、ただ、虐待というのは緊急なケースですので、あるいは不登校の中ではすぐ分類が可能なものだというふうに認識をしておりますので、より一層速いスピードでの調査をお願いしたいと思います。

 時間が余りありませんので、もう一つ、先の質問に行かせていただきます。

 文部科学省さんにお伺いをしたいんですが、現在、児童への調査として、虐待を受けたことがあるかということを調査されたことがありますでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 児童生徒に虐待を受けたことがあるかという調査は今まで私どもございませんものですから、このたび、長期間学校を休んでいる児童生徒に関する調査とあわせまして、児童虐待の発見や疑いにより学校が関係機関等へ通告、連絡、相談を行った児童生徒につきましてもあわせて調査をいたしたいと考えております。

泉(健)委員 もう一つ、虐待を受けたと児童から幼稚園、学校に対して申告のあった件数というのは調査をされていますでしょうか。統計があれば教えていただきたいと思います。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 児童から学校に相談のあった件数につきましては、それぞれの学校で、また教育委員会で把握しているところもあるかと存じますが、私どもとして、全国的なデータとしてはそういった数字を把握していないところでございます。

泉(健)委員 これは、厚生労働省の方は、児相に対する通告先というのはいろいろあるわけですが、学校からの件数というのは出ているわけですね。二千八百八十二件、こういうデータが出ている。このデータのとり方一つ、あるいは取り組み一つとっても、やはり文部科学省と厚生労働省の方の連携ができていないのではないか、情報共有ができていないのではないか。言葉で連携と言うのは簡単なんです。情報共有、ネットワーク、すばらしいと思うのです。でも、実際、運用でできていない。これを何とかもう一回再認識をしていただいて、運用がしっかりされなければ、この問題の解決にはならないんだという御認識をもう一度持っていただきたいと思います。

 ほかにもいろいろございます。例えば、実例を挙げると申しわけない部分もあるんですが、ある県の子供虐待防止マニュアル、ホームページが出ております。この中には、子育てに悩む親、子供が夜泣きで困っていますということに対して、QアンドAで書いているわけですね、マニュアルの対応を書いている。そこには、一人で頑張らないで友達に助けを求めましょうと書いてあるんですが、児相に連絡しましょうということが書いてない。それで、虐待をして体罰が繰り返されて、自分に歯どめがきかないようになったら、児相に相談してくださいなんということが出ているわけですよ。こっちにもあります。子供の虐待が深刻な場合には、児相に速やかに連絡をしてくださいとか。

 こっちはまた首都圏の方の別な町ですが、保健婦の児童虐待対応マニュアルですね。虐待の情報を入手したときは、さらに情報を収集し、検討、現状の確認を行い、ランクを決定します。これらのケースは防止ネットワーク会議で協議をされ、児相がかかわったらいいという問題は児相に速やかに連絡されますとなっているわけですね。

 しかし、そもそも保健婦というのは、第五条で、早期発見の努めがあり、そして第六条で、すぐ通告をしなければならないとなっているわけですよね。この現状について、厚生労働政務官、どう思われますか。

佐々木大臣政務官 制度と運用というのがございまして、制度ではそうなっていても、なかなか運用ではうまくいっていないというケースにそれは該当するのではないかと思われますが、通知なり、これから指導なりというのをきっちりと徹底してやっていかねばならないというふうに考えております。

泉(健)委員 これでもう最後にさせていただきますが、今指摘をさせていただきましたのは、とにかく、まず連携が必要です。しかし、連携のみならず対応が現場で必要なわけですね。その対応とは、実際に動かなければこれは対応にならないわけでして、幾ら大人が頭を突き合わせて会議を開いても、実際に子供たちに届かなければ、これは虐待対応したことにはなりません。確実に対応のできる形をとっていただきたい。

 そのために国がやらなければならないのは、まず、縦割りの行政を改めるために、今回、こうして青少年の委員会ができ、我々の議員立法に対して小野大臣がこうして出席をしてくださっているわけですよね。であるならば、小野大臣、やはり、冒頭にも申しましたが、各大臣とお話をしていただく、そしてまた、それぞれの大臣に強く、この運用面も、細部までしっかり押していただきたいということを強く申し入れをしていただきたいと思いますが、最後に一言お願いいたします。

小野国務大臣 さまざまな議論を拝聴させていただきまして、私も、連携、そしてまた運用という言葉を何度も使わせていただきますけれども、改めて、現実をしっかり踏み固めていかなければならないという気持ちを持たせていただきました。ありがとうございました。

泉(健)委員 どうもありがとうございました。

武山委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。昨年初当選をしまして、本日、初めて質問に立たせていただきます。よろしくお願いいたします。

 青少年問題に関するこの特別委員会に入れていただきまして、岸和田の視察や東京の児童相談所の視察を重ねながら、また、この問題に携わる多くの方の御意見を伺ってまいりました。

 現在、児童虐待防止法の改正につきまして論議が進んでいるところでございますが、あくまでも現場で携わってくださる方たちのお声を結集して、よりよい法改正を目指すとともに、予防から社会的自立に至るまでの具体的なシステムづくりに全力を挙げてまいりたいと思っております。

 さて、先日の予算委員会で、我が党の富田議員の質問に対しまして、坂口厚生労働大臣より、虐待予防対策の予算を対前年度比の三・五倍に、そして、新たな施策も数多く整備されるとの答弁をいただきました。私は、この施策を推進する意味から、児童相談所の整備の問題につきまして質問をさせていただきます。

 まず、私はこの機会に、全国の児童相談所の機能と役割及び現状につきまして、まず総点検、見直しをすべきではないかと提案をさせていただきます。

 初めに、何点か確認をさせていただきます。全国に児童相談所は何カ所あるのか、定員はどれくらいなのか、それぞれの相談所で十分対応ができているのか、厚労省の認識を伺います。

北井政府参考人 児童相談所の数は、全国で現在、百八十二カ所ということになっております。

 それから、職員の数でございますが、児童相談所の仕事の中核を担います児童福祉司は、現在、千六百人余りということでございます。

高木(美)委員 定員数を伺いたいと思います。児童を最高何人まで収容することができるのか、定員数でございます。

 また、それにつきましては、それぞれの相談所で十分に対応できているのか、その認識を伺いたいと思います。

北井政府参考人 児童相談所の定員というものは、児童相談所は相談を受ける機関でございますので、定員ということでは決められていないというふうに承知をいたしております。

 ただ、午前中からさまざまな質疑がなされておりますように、虐待相談件数の急増を初めとして、児童相談所の職員が非常にいっぱいいっぱいの仕事をしておられて、本当に肉体的、精神的限界の中で仕事をしていただいているというふうに認識をいたしております。

高木(美)委員 恐れ入ります。一時保護につきましては、定員は何名でしょうか。

北井政府参考人 一時保護所の定員というのは、申しわけございません、これも把握しておりませんが、現在入っております実績で申し上げますと、全国の児童相談所の一時保護所に保護されました児童数は、年間で一万六千八百八十一人、これは平成十四年度の数字でございますが、そのような実績になっております。

高木(美)委員 それでは、児童相談所にはどのような対象の児童が保護されているのか。また、一時保護の期間はどのくらいなのか。また、その中では最長はどのくらいでしょうか。お伺いいたします。

北井政府参考人 児童相談所の一時保護の対象になっておられます児童は、いわゆる触法少年と、それから虐待をされた児童という方々が主なものでございます。

 一時保護の平均の期間は、平成十四年度の数字でございますが、二十・七日ということになっております。それから、一時保護の最長期間でございますけれども、日本子ども家庭総合研究所の調査によりますと、十四カ月というのが最長ということになっております。

高木(美)委員 わかりました。ありがとうございました。

 先ほど、定員数がよくおわかりにならないというお話がございました。今、児童相談所から大変言われますことは、一つは、もう満杯状態である、定員に対して、決してきれいとは言えない古い施設の中で、満杯状態の中で、触法少年と被虐待児、また、中には養育困難で保護された児童も多いと伺っております。そうした人たちが、一日じゅうお互いに顔を合わせながら生活をしているわけです。特に、虐待を受けた子供につきましては、時にはこうした触法少年におびえて生活をしているという話も聞いております。

 あるセンターの精神科医の方は、非行を行った児童と被虐待児のケアの仕方は全く違います、ぜひ生活空間を別にしていただきたい、このように強く訴えておりました。

 こうした生活空間につきまして、別にすべきであると考えますが、見解を伺います。

北井政府参考人 御質問の混合処遇の前に、恐れ入ります、遅まきながら、一時保護所の定員が出てまいりましたので、一言答えさせていただきます。

 平成十五年三月現在の定員が二千二百四十六人に対しまして、現員が一千六十八人ということでございまして、定員と現員の数から見ますと、定員を下回っているということにはなりますけれども、しかしながら、年間を通じて一時的に定員を超えて入所しておられる一時保護所もたくさんございます。ですから、必ずしも、この定員を下回っているから、いっぱいいっぱいでないということではないと思っております。

 大変失礼をいたしました。

 それから、御質問の、虐待を受けた児童と触法少年など、さまざまな異なる背景を有する子供さんが同一の空間において処遇されておるという、いわゆる混合処遇の問題でございますが、私どもも、さまざまな機関の方々からそういうお話を伺っておりまして、その処遇の改善につきましては、大変重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 そうした中で、一時保護所につきましては、平成十三年度から、保護された児童の生活環境改善ということで、補助基準面積を広げまして、子供の居住面積を広げるということにいたしましたほか、児童の心のケアを行う心理療法担当職員の配置、あるいは、虐待を受けました児童への個別的な、一対一の関係での対応を行う主任児童指導員の配置といったようなことで、できるだけきめ細かなケアが行えるよう、体制整備に努めているところでございます。

 また、混合処遇の緩和の観点から、児童福祉施設に一時保護委託をするということで、この一時保護委託の活用ということで混合処遇の緩和について取り組んでいるところでございます。

高木(美)委員 今お話がございました一時保護施設への移行ですけれども、これにつきましてはもう既に始まっているのでしょうか。あるとしたら、その例を教えていただきたいと思います。

北井政府参考人 既に委託の制度は発足をいたしております。

高木(美)委員 具体的にもし県、区等がわかりましたら、教えていただきたいと思います。

北井政府参考人 この委託の制度は、かなり以前から始まっている制度でございまして、具体的には、児童養護施設や乳児院や児童自立支援施設などのさまざまな児童福祉施設に、本来の施設の入所の定員の状況などを勘案しながらお願いをしている制度でございます。

 一時保護委託の実績は、平成十四年度で千七百六十七件ということになっております。それから、恐らくほとんどの県でなされているというふうに考えております。

高木(美)委員 恐らく定員満杯のときにそのような処遇をとられるのかと推察をしております。

 私、一つの提案ですけれども、今、国や自治体で使用していない施設が数多くございます。少子化に伴いまして統廃合されて、学校や幼稚園など、あいているところも多く見受けられます。そうしたものを整備して利用するなどしてはと考えますけれども、その点につきましてはいかがでしょうか。

北井政府参考人 委託の制度におきましては、幼稚園への委託ということも可能であるというふうに考えております。

高木(美)委員 ぜひ推進をお願いしたいと思います。

 もう一つ、児童の心のケアにつきまして質問させていただきます。

 きょう午前中の参考人の中でも、岩城弁護士より、大事なことはやはり子供にとって安定した愛着関係が特定の大人と築けるかどうか、ここが一番の大事なポイントである、そういう意味では心理職の配置が必要であるというお話がございました。

 先ほど、専門的な心理療法職員の配置等努力をしていらっしゃるというお話がございましたが、まだまだ足りないという現状ではないかと思います。特に精神科医、児童福祉司、また今申し上げました心理療法士などの拡充が必要と思われます。

 今、与党で、自民、公明で推進しております児童虐待防止法改正案の第四条三項にも、専門的知識に基づく適切な保護及び自立の支援を行うことができるよう、「児童相談所等関係機関の職員、学校の教職員、児童福祉施設の職員等の人材の確保及び資質の向上を図る」とございます。

 そうした専門家の配置につきまして、今後の展望をお伺いいたします。

北井政府参考人 先生御指摘のとおり、児童相談所の体制の強化と、特に専門性の向上を図るということが大変重要なことであるというふうに認識をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、例えば精神科医の協力を得まして、保護者に対してカウンセリングを行う事業であるとか、あるいは平成十六年度予算におきましては、地域の医療機関や弁護士の御協力を得まして、児童相談所が医療的なケアを必要とするケースや法的な援助を必要とするケースについて、相談機能の強化を図るといったような取り組みもモデル的に行うということを盛り込んでいるところでございます。それから、先ほど御説明申し上げましたとおり、一時保護所における心理職員の配置ということにも配慮してきたところでございます。

 このようなことで、児童相談所におきます専門家の充実、専門性の向上ということにさらに努めてまいりたいと考えておりますが、ただ、児童相談所においてすべての相談に十分に対応し切れていない状況は確かにあるわけでございまして、その意味から、今国会に提出をさせていただきました児童福祉法の改正案におきましては、住民に身近な市町村において、予防や早期発見を中心とした積極的な取り組みと役割を明確化して、児童相談所については、専門性の高い困難な事例への対応に重点化をする、そして全体として、地域における担い手をふやし、相談体制の充実を図るというようなことを考えているところでございます。

高木(美)委員 次に、子供の学習権の問題をお伺いいたします。

 先ほど、児童相談所に保護されている児童は最長で十四カ月というお話がございました。十四カ月、学校に行けないわけでございます。児童の中には、そもそも不登校であったり、勉強のおくれている子供が多く見受けられます。それぞれの児童相談所でも何らかの対応をして、ボランティアの学生等に来てもらいながら学習をさせているようですけれども、教員免許を持たない職員が面倒を見ているのが現状と聞いております。しかも、小学校一年から中学三年というあらゆる学齢期の児童が対象となっております。

 そこで提案ですけれども、例えば教員経験者、定年退職をしたベテランの方々で希望される方、こういう方に協力していただいたらどうかと思います。例えば、都であれば、嘱託の身分等で時間を決めて来ていただくとか、それを国の指導として推進する意思があるかどうか、お伺いをいたします。

 またもう一つ、先ほどの答弁にございましたように、それに合わせた適切な教材も必要かと思います。この教材の充実等を要望いたします。

 以上二点、見解を伺います。

北井政府参考人 一時保護所で生活する学齢児童への教育の件でございますけれども、児童福祉法では、基本的に、この一時保護所の滞在期間というのは、原則二カ月ぐらいまでというか、もちろん、必要に応じて延ばすことができますけれども、そのようなことで考えておりますので、基本的には保護期間がそう長くないということと、それから、生活環境が非常に急変しておりまして、勉強というより生活そのものにまずなれていただく、そして心の安定を取り戻すことが大切であるということから、現在では、生活指導の一環として学習指導を行っているということでございます。

 したがいまして、確かに児童指導員が教育を行うということが一般的でございますけれども、一部の自治体におきましては、異職種の交流ということで、教員が、学校の先生が一時保護所での児童指導員として勤務をされて学習指導を行っているところもあるというふうに聞いております。

 一時保護所に入所している児童に対しましては、何よりもまず心身の安定を図ることが必要であると思いますことから、心理職員の配置などの取り組みをこれまでやってきましたけれども、今後とも、教育を含めたきめ細かな心のケアということに努めてまいりたいと思っております。

 それから、教材の充実ということについての御質問がございました。

 これも、学習指導は児童の学力その他の条件を考慮して行っておりまして、個々の学力に応じた教材を使用されているものと認識しておりますけれども、今後とも、できる限り、学習指導が充実するように、そうした教材の充実ということにも意を用いてまいりたいというふうに考えております。

高木(美)委員 ぜひ推進をお願いいたします。

 先ほどから話題になっておりますが、家族再統合に向けての施策についてお伺いをいたします。

 虐待を行う親の多くが、家庭の中でDV被害者であったり、みずからが子供のころ虐待を受けていたという例が多く見られまして、大変根の深い問題と思っております。

 虐待児のケアといいましても、やはり、まずその虐待の連鎖をとめない限り、解決できません。そうした子供の自立支援、心のケア、これが重要であるとともに、親の心のケア、カウンセリングが欠かせないと思います。そのためにどのような対策が講じられているか、また、これからどのような対策を講じようと思っていらっしゃるのか、お聞かせください。

北井政府参考人 議員御指摘のとおり、児童のケアはもとよりでございますが、保護者に対する支援、指導ということが大変重要な課題だというふうに認識をいたしております。

 そのために、虐待を行った保護者のケアというのは、その保護者の状況、状態を十分に把握し理解した上で、カウンセリングや生活支援など適切な方法を組み合わせて行うことが必要であるというふうに考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、児童相談所におきまして、保護者への指導の体制を強化するという意味で、地域の精神科医の御協力を得まして、保護者に対するカウンセリングの充実を図っているところでございます。

 また、今国会に提出をしております児童福祉法の改正案におきましては、司法的な関与を強化いたしまして、親指導といいますか、保護者のケア機能の充実を図っていく予定でございます。

 それから、さらに、保護者指導や家族再統合に関するプログラムの開発が重要な課題でございまして、これは、さらに汎用性の高いものを開発していかなければいけないと考えております。現在、厚生労働科学研究などを活用して、その開発、確立ということに取り組んでいるところでございまして、これらの施策も充実してまいりたいというふうに考えております。

高木(美)委員 時間が終了いたしました。以上で終わります。ありがとうございました。

武山委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 最後の質問になりました。きょうは大変長時間ですけれども、どうかよろしくお願いします。

 私も、児童虐待問題で質問をさせていただきます。

 初めに、大臣に伺いたいと思うのですが、日本も子どもの権利条約を批准しています。この条約は、実施状況について政府が報告書を出し、国連の子どもの権利委員会が審査をする、こういう仕組みになってございます。ちょうど二回目の審査が先月末ジュネーブで行われたところでございまして、私たち、ホットな勧告、審査状況などを今お聞きしているところでございますので、その点でまず伺いたいのでございます。

 やはり、児童虐待問題もなかなか厳しい勧告をされているんですね。子供の虐待の報告及び調査を促進するためにとられた措置を歓迎すると一定評価をした上で、しかし、子供の虐待を予防するための包括的かつ学際的な戦略が何ら存在していないと、ちょっと、翻訳は厳しい言い方です。

 それで、勧告としては、特に市民社会、ソーシャルワーカー、親及び子供と共同して、子供の虐待を防止するための学際的な国内戦略を開発すること等、a、b、c、dと四点、勧告がございまして、これは政府に対する勧告ですから、私は、政府がどのように受けとめるのかということになると思うんですね。それで、大臣の御所見を伺います。

小野国務大臣 しつけの名のもとに子供に暴力を振るうということは、決して許されないことでございます。

 体罰については、我が国の学校やあるいは児童福祉施設におきまして、学校教育法あるいは児童福祉施設最低基準によりまして禁止されております。関係者に対しましてその趣旨の徹底が図られているところでございますけれども、実効がいま一ついっていないということが、余りいい評価をいただけなかったことではないかと思います。

 それで、家庭におきましては、親権者、親でございますけれども、監護教育の目的のために必要な範囲内で懲戒をすることが認められている民法八百二十二条というのがございますけれども、懲戒の方法、程度が社会通念上相当な範囲を超えるいわゆる体罰に当たるものは、決して許されないものである、こうなっております。

 議員御指摘の児童権利委員会の最終見解におきましても、学校施設及び家庭における体罰についての懸念が表明されたということを私も承知いたしております。

石井(郁)委員 虐待についてと同時に、リンクしている体罰の問題での御見解もいただきました。

 大臣も触れられましたように、やはり日本の民法に懲戒という言葉があって、親が懲戒することができる、これはもう、世界で残っている国はほとんどないと思うんですね。だから、やはりこの懲戒権としつけということで虐待がまかり通ってしまうという、つまり、これは親のしつけだと言われれば、なかなか手が出せないということになりますので、この問題をぜひ、日本のこの虐待がなくならないことの土壌とも言えますので、私はこれからしっかりと対応していかなきゃいけないと思っておりまして、権利条約に沿って、こういう勧告に沿って、しっかりとした対策、対応を政府として考えていただきたいということを申し上げたいと思います。

 それで、あと、文科省、厚労省に伺いたいと思いますが、岸和田の事件は本当に痛ましくて、今真剣に私たちは考えていますけれども、まず行政が、何ができるか、すぐにでもできることはやはり取りかからなくちゃいけないという立場があると思います。

 いろいろ体制など、予算等々ありますけれども、そういう角度で、私は一つ問題にしたいことは、厚労省は、「子ども虐待対応の手引き」、いわゆるガイドラインを出していますよね。こういうときには立ち入りしなければいけませんと、かなり細かなことが出されている。例えば、その中には、学校に行かせないなど子供の姿が長期にわたって確認できない、保護者が関係機関の呼び出しや訪問にも応じないため接近の手がかりを得ることが困難だというときには、もう立入調査はしていいのですということになっていると思うんですね。

 しかし、その点で、これは慎重にしなきゃいけないことでもありますが、今回、岸和田では、本当に長期にわたって救出できなかったという、ここは本当に痛恨の思いなわけですが、文科省は、この岸和田事件の後で通達を出しています。「児童虐待防止に向けた学校における適切な対応について」ということなんです。

 これを見ますと、こういうふうになっているんですね。虐待を受けた幼児児童生徒を発見した場合は、速やかに児相、児童相談所、児童福祉事務所へ通告すること。それから、児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期発見の観点から、連絡、相談するなど、日ごろの連携を行えと。つまり、通告と相談というのを微妙に分けているわけですよね。このことが、実は、今回大変問題になったんじゃないんですか。

 私は、文科省のこうした通告条件というのは、虐待を受けた場合だ、これこそ通告だという点でいうと、子供が見えないというような場合、疑いがあるというような場合は通告に入らないんだということになって、厚労省のガイドラインとちょっと違うんじゃないか、すごく狭く考えているんじゃないかというふうに考えざるを得ないんですが、文科省、いかがですか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘ございましたように、一月三十日付の私どもの通知では、「虐待を受けた幼児児童生徒を発見した場合は、速やかに児童相談所又は児童福祉事務所へ通告すること。児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても、早期発見の観点から、児童相談所等の関係機関へ連絡、相談をするなど、日頃からの連携を十分に行うこと。」としているところでございます。

 こういう内容の通知にいたしましたのは、児童虐待防止法第六条におきまして、児童虐待を受けた児童を発見した場合、児童福祉法第二十五条の要保護児童として通告することを規定していること、また、厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」におきましても、「「虐待かもしれないが迷っている。話を聞いて」というレベルでの相談(通告)が行える関係づくりがとても大切である。」という記載がなされていることなどを踏まえまして、児童虐待の早期発見の観点から、早期の連絡、相談を奨励したものでございます。したがいまして、私どもの通知と「子ども虐待対応の手引き」につきましては、相互にそごはないものと考えているところでございます。

 私どもといたしましては、今後とも、各学校で児童虐待の早期発見や対応のためにより一層適切な対応がなされますよう、この通知の趣旨について各種会議などを通じて周知をいたしますとともに、厚生労働省など関係府省と十分連携しながら、児童虐待防止に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 私は、やはりどうも文科省の解釈というか適用というか、非常にしゃくし定規的で、これでは、学校が本当に虐待を見つけながら、そして関係機関に連絡しようというふうになっていかないんじゃないか、こういう通達では、本当に虐待問題への学校の対応が十分に進まないんじゃないかという懸念を持つわけです。私は、ぜひこれは再検討が必要だと思っていますけれども、きょうはそこまでにしておきます。

 つまり、通告と相談と、こんなふうに厳密に分けているということ自身が、一つはいろいろな誤解を生んでしまう、二の足を踏んでしまう、いろいろなことがあると思います。

 文科省にもう一点伺いますが、不登校問題です。

 今回も、不登校と虐待、ネグレクトというのが非常に関係しているということが浮き彫りになりました。今まで、不登校の原因というと、いろいろ、いじめだとかあるいは学校生活になじめない、あるいは勉強のおくれ等々言われておりました。今回の事件でも、学校は、不登校という認識はあっても、その子供がやはりネグレクトを受けている、虐待だという認識は持てない、兄弟もいたから難しかったということもあるようですけれども、不登校だということで終わりにしてしまうということは、やはり非常に問題を見つけにくくさせているわけですね。

 そこで、伺いますけれども、文科省が出される生徒指導上の諸問題のデータがあります。そして、文科省の施策についてというのもあるんですけれども、その不登校の統計を見ますと、やはり不登校が継続している理由として挙げているのは、学校生活上の影響、遊び・非行の問題、無気力問題、不安など情緒的混乱、意図的な拒否、その他というふうになっているんです。

 それから、学校現場に伺っても、長欠、長期欠席という場合には、病気あるいは不登校とかその他ぐらいの非常に大ざっぱなくくりしかどうもやっていないようだということも聞きました。だから、学校現場では、要するに、ネグレクト、養育放棄というような項目というのは、今のところ立っていないでしょう。私、ここはやはりもう合わなくなっていると思いますよ、子供の実態を見るのに。

 そういう点で、もうこういう項目自身も再検討してはどうか。本当にネグレクト、養育放棄という問題を加えて、子供の長期欠席にきちんと学校が目を向けていく必要があるんじゃないか。いかがでしょうか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 不登校の背景に児童虐待があると疑われる場合は児童相談所へ通告するなど、不登校の要因、背景を把握することは、適切な対応を図る上で重要であると考えております。

 御指摘ございましたように、私どもが実施しております不登校などの生徒指導上の諸問題に関する調査におきましては、不登校となった直接のきっかけといたしまして、例えば、学校生活に起因するもの、家庭生活に起因するもの、本人の問題に起因するものなどの分類がございますが、親子関係をめぐる問題など家庭生活に起因するものの数を調べておりますが、児童虐待を要因とするものもその中に含まれているのではないかとも考えられるわけでございます。

 なお、学校におきまして児童虐待の発見や疑いのあった児童生徒の数につきましては、その状況を把握いたしますために別途調査をいたしたいと考えておりまして、その準備をいたしているところでございます。

石井(郁)委員 ぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 次に、午前中の参考人の質疑の中でも、非常にやはり、虐待問題の背景には家族の問題、家庭の問題があるということが言われておりました。それで、これも文科省、厚労省それぞれに伺いたいんですが、そういう家族の問題に対してどこがどのように今対応というか、行政としてケアをすることができるのかということを伺いたいのです。

 というのは、例えば、現実に日本でも、数が少ないという問題はありますけれども、ソーシャルワーカーがいて、一応ソーシャルワークしている。だけれども、本当に支援を必要とする家庭に対してそういうソーシャルワークがどれほど実を上げているんだろうかというようなことが心配なんですね。

 今後、今の体制でそれがどんなふうにやっていけるだろうかということを考えておりまして、この点で、まず厚労省に伺いたいのは、現在、日本で、一体ソーシャルワーカーというのはどういう人たちが担っているんですか、何人ぐらいいるんですかということをちょっと教えていただきたいと思います。

北井政府参考人 いわゆるソーシャルワーカーでございますが、ソーシャルワーカーの仕事というのは、必ずしも子供だけでなくて、高齢者の方々、障害者の方々あるいは家族も含めて、地域におけるさまざまな相談に適切に対応していくための専門職であるというふうに認識をいたしております。

 具体的には、児童に関する相談に携わるのは児童福祉司ということでございますが、児童福祉司につきましては、地方交付税の規模でいえば、人口百七十万人当たり、平成十五年度は二十三名の配置ということになっているところでございます。ただ、地方自治体によりましては、これを上回って児童福祉司を配置されておる県もあれば、ここに満たない県もあるということでございます。

 それから、福祉に関する相談、援助に携わる専門職でございます社会福祉士でございますが、この社会福祉士につきましては、平成十五年で四万八千四百九人というふうに承知をいたしております。

 それから、保健指導に携わる保健師につきましては、平成十三年から十六年度までに全国で千三百五十五人の増員が行われているというふうに承知をいたしております。

石井(郁)委員 もう一つ、福祉事務所に家庭児童相談員、これは自治体に置いているところと置いていないところがあるというんですけれども、法律で置かなきゃいけないというふうにはなっていないということですか。それはどのぐらいの配置になっているんでしょうか。それはわかりますか。

北井政府参考人 先生今御指摘の福祉事務所内の家庭児童相談室でございますが、現在でその設置箇所数は全国で約千ぐらいであると聞いておりまして、児童福祉司必置ということにはなっておらないというふうに認識をしております。

石井(郁)委員 一応、数はありがとうございました。

 それで、文科省にまた同じように伺いたいのは、文科省は学校にカウンセラーを、これも私たちはずっと要求をして、ようやくかなりの規模で配置がされるようになったということがあるんですが、今出ている状態からいいますと、スクールソーシャルワーカー、こういう人たちが要るんじゃないのか。

 つまり、もう学校では対応できない。学校はなかなか家庭には物が言えないということがあるんです。今回もずっと言われていた、岸和田の事件でもそうですけれども、要するに、親との信頼関係を壊したくないので踏み込めないんだと、非常に親との信頼関係を考慮するんですね。

 学校と親ってそういう関係になるんだと思うんだけれども、やはり第三者がいれば、そこら辺がチームとしてもっと関与できるんじゃないかということがありますし、今の状況からすると、虐待の初期対応、本当にこのケースはどういうケースなのかということを判断する。先ほどは見きわめるとかいろいろ言われましたけれども、どういうケースなのかということを見きわめる、判断するという、その集団というかチームというか専門的な機関というか、そこがすごく要るんだ、それは今学校の中だけじゃできないんじゃないかという話に今だんだんなってきているわけで、文科省としては、そういう動きというか、そういう考え方を何かサポートする気はありますか。あるいは必要性というのを考えていますか。

金森政府参考人 お答えを申し上げます。

 学校の教職員は、職務上、児童虐待を発見しやすい立場にございますことから、学級担任や生徒指導担当教員、養護教諭、スクールカウンセラーらと教職員が協力して、日ごろから児童生徒の状況の把握に努めますとともに、児童生徒がいつでも相談できる雰囲気を醸成することによって児童虐待の早期発見、対応に努めることが重要だと考えております。

 また、スクールカウンセラーの配置の充実を図りますとともに、来年度からは、新たに小学校に子供と親の相談員を配置いたしまして、教育相談体制の充実を図ることにしているところでございます。

 スクールソーシャルワーカーについての御指摘がございましたが、子供たちを取り巻く環境を調整いたしますためには、児童相談所などの関係機関と連携してサポートチームを形成する方法などもございます。どういう取り組みを具体的に図っていくかということにつきましては、各教育委員会が地域の実情に応じて適切に判断していくべきものと考えているところでございます。

石井(郁)委員 もう時間になりましたので。私はやはり、文科省はもっと、学校教師は本当に学校で子供たちと毎日接して、毎時間接して、もっと機敏にいろいろな状況をキャッチしてほしい、SOSをちゃんとキャッチしてほしいという、それはそうなんですけれども、しかし、もう対応できない部分というのはあるわけですから、それはもっともっと学校も門戸を開いて、専門家の力もかりて、そして地域で一緒にやっていくということが必要だと思うんですね。

 私は今すぐこれを何人つけろとか言いませんけれども、そういうスクールソーシャルワークという仕事をもう既に始めている自治体、地域だとかを私も聞いておりますから、外国にも例があるわけですし、ぜひモデル事業ででもそういうことをやってみるということぐらい、この時期だからうんと言ったらどうですか。そう思いますので、そのことを私は主張して、きょうは質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

武山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.