衆議院

メインへスキップ



第6号 平成16年6月3日(木曜日)

会議録本文へ
平成十六年六月三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 武山百合子君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 上川 陽子君

   理事 小泉 龍司君 理事 石毛えい子君

   理事 石田 勝之君 理事 須藤  浩君

   理事 富田 茂之君

      岡本 芳郎君    加藤 勝信君

      北川 知克君    佐藤  錬君

      中山 泰秀君    葉梨 康弘君

      萩生田光一君    宮下 一郎君

      山際大志郎君    泉  健太君

      小宮山洋子君    肥田美代子君

      水島 広子君    山井 和則君

      高木美智代君    石井 郁子君

    …………………………………

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         小野 清子君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          高杉 重夫君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   衆議院調査局第一特別調査室長           高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     中山 泰秀君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 泰秀君     宮下 一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

武山委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎さん、警察庁生活安全局長伊藤哲朗さん、法務省刑事局長樋渡利秋さん、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫さん、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官高杉重夫さん及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

武山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

武山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上川陽子さん。

上川委員 おはようございます。

 小野大臣には、早朝より御出席をいただきましてありがとうございます。

 一昨日起きました佐世保女児殺害事件、大変大きな衝撃を与えました。犠牲になられました御手洗怜美さんに、心から御冥福を申し上げるところでございます。

 この二日間に、この事件の背景ということで、インターネットによるチャットという形で、エスカレートした言葉で、友達を殺害するまでに至るというような、原因が次第に明らかになってまいりました。コンピューターによるコミュニケーションの持つすさまじい力と、そして、この分野におきましては、法整備も含めまして秩序がまだしっかりと確立していないということでございます。そうしたバーチャルな世界に子供たちが巻き込まれている。本当にすさまじい現実を見せつけられたわけでございます。

 私も、子供を持つ親としまして、親の知らない世界で子供たちがどんな体験をしているのか、新たな不安にどう取り組むのかということを、大人としての本当に真摯な対応を迫られているというふうに思っているところでございます。

 さて、本題に入らせていただきます。

 先週、当委員会におきまして、また、衆議院の本会議におきまして、児童買春、児童ポルノの禁止法の改正案が採択されたわけでございます。この法律は、四年前に成立したわけでありますが、議員立法という形で成立したものであります。その背景には、国際社会からの日本に対する強い批判があったものと聞いております。

 具体的に申し上げますと、一九九六年にストックホルムで児童の性的商業的搾取に関する世界会議が開催されまして、そこで、日本が、東南アジアの買春ツアーも含めまして、児童の性的商業的搾取の加害国であるというような状況にもかかわらず、この問題に対しましての取り組みが極めておくれている、こうした強い国際社会からの批判を受けたわけでございます。当時、この会議に参加をされました議員団は、帰国されましてから、みずからの責任で立法化に取り組んで、その結果、一九九九年に成立したものというふうに承っております。

 そこで、この法律が施行されて以降、この間の取り組みの状況につきましてお尋ねさせていただきたいと存じます。

 この法律で検挙された買春、ポルノ犯罪、それぞれの件数も含め、国外犯の検挙の状況、また、取り締まり上の問題点とそれに対する警察の対応、また今後の取り組みなどにつきまして、今回、改正案ということで出させていただきましたので、その新しい課題も含めましての取り組みの方針等につきまして、警察庁の方からお願いを申し上げます。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 平成十一年十一月の児童買春、児童ポルノ禁止法施行後、平成十五年末までに検挙しました児童買春事件は、六千四十八件、三千九百十四人に上っております。また、児童ポルノ事件では、七百四十三件、六百七十一人を検挙したところでございます。また、国外犯の事件につきましては、児童買春事件が三件三名、児童ポルノ事件が二件八名の、計五件十一名を検挙しているところでございます。

 最近検挙しました国外犯事件といたしましては、昨年八月、当時、都立高校の教諭であった四十八歳の男性が、カンボジア王国プノンペン市内の風俗店におきまして、十六歳のベトナム人児童二名を買春したとして、本年二月に児童買春事件として検挙したところでございます。

 しかし、最近におきます児童買春事案や児童ポルノ事案は、IT技術や出会い系サイトなどを利用した新しい形態の犯罪が発生しているという状況にありますことから、警察といたしましては、これらのITあるいは出会い系サイトといった問題に対しまして、サイバーパトロールの強化や捜査技術の向上に努めているところでございます。

 また、警察庁におきましては、本年四月、情報技術犯罪対策課を新設いたしまして、ネット社会における児童買春、児童ポルノ事案の捜査体制を強化し、取り締まりの徹底と児童の保護に努めているところでございます。

上川委員 サイバー犯罪、とりわけ児童をめぐる問題につきましては、これからもっともっとふえていくということでありまして、犯罪と捜査とのイタチごっこというような形にもなろうかと思うんですが、ぜひ、この問題につきましては、子供の人権ということに深くかかわるということでございますので、取り組みの強化ということにつきまして、よろしくお願いをいたしたいと存じます。

 続きまして、今回の改正の背景の一つに、児童の権利の擁護に関します世界的な取り組みの状況というのが言われているわけでございます。

 私は、ことし四月にメキシコで開催されましたIPU、列国議会同盟の総会に出席をさせていただきました。女性会議の第一副委員長として二年間任期を全うさせていただいておりましたけれども、女性会議の主催のパネルのテーマとしまして、この二年間の間に、女性と児童の人権問題という問題が取り上げられて、取り組ませていただいております。具体的には、最悪の状態の児童労働、また人身売買、また児童の性的商業的搾取と、このメキシコの会議では、児童の性的商業的搾取という問題をテーマに議論をさせていただきました。

 日本は、人身売買につきましては世界有数の輸入国であるということの事実につきまして、世界じゅうで知れ渡っているということでございます。私も、国際会議で大変肩身の狭い思いをさせていただきながらも、この問題につきましての取り組みについて、例えば、カンボジアあるいはベトナムでのコミュニティーレベルでの貧困撲滅も含めましての対応ということについて、緒方貞子さんの、人間の安全保障基金というところから支援をするということにつきましての、議会人としての応援もさせていただいてきたところでございます。

 児童にかかわる問題に取り組むには、政府、議会による法整備のほかに、国や国際機関、さらにはNGOとの連携協力ということが不可欠である、これが、この国際会議の中での私どもの結論の一つでございます。

 こうしたことから、今の現状につきまして、政府としての取り組み状況、さらには今後の方針ということにつきまして、外務省の方から御回答をお願いいたします。

石川政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員御指摘の児童の権利に関する条約、これを内外に周知することは極めて重要であると私ども認識しております。

 このため、例えば、ことしの四月には、政府は、ユニセフ、国際連合児童基金との共催により、東京におきまして、児童の権利に関する条約を日本が批准してから十年がたった、その十周年記念シンポジウムを開催いたしました。このシンポジウムでは、児童の権利条約の意義について広く内外の有識者による議論が行われ、この条約に関する理解を深める一助になったものと存じます。

 これまでも、我が国といたしましては、例えば、二〇〇一年の十二月に、ユニセフ、国際NGOグループとの共催で、第二回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議を横浜で開催し、また、この会議も踏まえまして、二〇〇二年の五月には、ニューヨークで国連子ども特別総会が開催されました。

 今後とも、国連等の場を通じまして、児童の権利の保護と促進のために一層取り組んでまいりたいと存じております。

上川委員 今、部長がお答えになりましたそのユニセフという国際組織、NGOにつきましては、本当に一生懸命この問題に取り組んでおりまして、全世界の中でも、また、日本人のスタッフも大変大活躍をしていらっしゃって、一生懸命取り組まれているわけであります。それに、日本のいろいろな募金、基金が援助という形で送られている、こういう実態につきましても、私も現場で見させていただきまして、本当に頭の下がる思いをさせていただきました。

 また、ニューヨークの子ども特総にも私も行かせていただきまして、特に印象深かったのは、子供さんたちがこの会議に参加し、自分たちの言葉でこの問題について語っている、また、非常に大人を動かしている、こういう実態がございます。こういった子供の声がこれから非常に大きな力になっていくというふうに思うわけでありまして、私たちは、子供を保護の対象ととらえるばかりではなくて、一人の人間としてしっかりとその発言に耳を傾けるという姿勢も非常に大事ではないかということを痛切に感じて帰ってまいりました。

 そういう中で、人身売買ということにちょっと触れさせていただきますが、今回の法律の中でも、八条に、児童の買春を目的とした人身売買につきましての条文があるわけでございますが、今、世界の中では、この人身売買につきまして、児童買春、児童ポルノの奥にある問題として、人身売買の問題が大変大きなテーマになっているところであります。

 国際犯罪の部分、やみのビジネスの中に商品としての人間というのが取り扱われているという、しかも、その人身売買の目的は、児童買春、あるいは女性の買春、性的搾取の問題のみならず、臓器の売買というところまで及んでいるという実態を見るにつけまして、この問題につきましても、日本はある意味では非常にその受け入れ側の国であるというような批判も耳にするところでございますので、そういった面で、この問題につきましてこれから真剣に取り組んでいかなければいけないということを感じるところでございます。

 実は、超党派で、先日、ヒューマントラフィッキングの勉強会を立ち上げさせていただきまして、今、実態の問題、あるいは人身売買で被害を受けた方々、あるいはその支援の団体の皆さんからの生の声も聞かせていただきながら取り組ませていただきたい、こんなふうに思っているわけでございますが、政府の側でも、この人身売買、ヒューマントラフィッキングの問題につきまして取り組みを開始したというようなお話もございます。

 そこで、現在、人身売買の処罰に関する法整備に関しまして、条約上、処罰が必要とする行為の内容、また現在の検討状況、また法案提出の目標時期につきましてお答えいただきたい、こんなふうに思います。

 あわせて、人身売買につきましては、特に処罰、あるいは摘発、処罰というための法案だけではなくて、被害者の方の保護、支援という視点を織り込んだ形の包括的な対応が非常に大事になる、その意味では、基本法の制定のようなものも必要ではないか、こんなふうに思って、この勉強会でも取り組ませていただきたいと思っているところでございますので、その辺の現状の取り組み、また今後の見通し等につきましても、あわせてよろしくお願いを申し上げます。

樋渡政府参考人 人身取引につきましては、国際組織犯罪防止条約の人身取引補足議定書がこれを犯罪として処罰することを締約国に義務づけておりまして、我が国も、平成十四年十二月に同議定書に署名しますとともに、現在、その締結に向けた作業を行っているところでございます。

 同議定書におきまして、人身取引とは、性的搾取、強制労働、臓器摘出等を対象とする目的で、暴行、脅迫、欺罔や、子を支配する親などに対する金銭の授受等の手段を用いて、対象者を採用、運搬、移送、蔵匿、収受する行為とされております。同議定書の締結のためには、このような行為の処罰の確保が必要になるわけでございます。

 これらの行為につきましては、現在、刑法、出入国管理及び難民認定法、職業安定法、売春防止法、児童福祉法、いわゆる児童買春、児童ポルノ禁止法等により対処しているところでございますが、同議定書の要請するところを漏れなく処罰することができますよう、次期通常国会に所要の法律案を提出することを目標といたしまして、現在、検討を進めているところでございます。法整備の内容等に関しましては、現在検討中でございまして、まだこれを具体的に申し上げる段階にはないことを御理解いただければと思います。

 なお、特に、児童を対象とした人身取引につきましては、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書におきましても、これを犯罪として処罰することが要請されておりまして、その締結のために必要な法整備として、内閣から今国会に、児童福祉法の一部を改正する法律案が提出されているところでございます。

上川委員 ありがとうございました。

 もう時間なんですけれども、大臣から一言、こうした問題につきましてのこれからの取り組みということについて、一言だけ御所見をいただきたいと存じます。

小野国務大臣 先生から今御指摘をいただきました各般の問題につきましては、まことにゆゆしき問題であり、また、児童の権利、この条約に反する点に関しましては、早急に各省庁と連携をとりながら改めて進めてまいりたい、そのように考えております。

上川委員 ありがとうございました。

武山委員長 次に、葉梨康弘さん。

葉梨委員 おはようございます。自由民主党の葉梨康弘です。

 十分しか時間がありませんので、早速質問をさせていただきます。

 六月一日に、長崎県の佐世保で、小六の女子が同級生をあやめるという痛ましい事件が発生いたしました。私も、小六の女子の父親として、人ごとではないなというふうに思います。実は、これは昨年も長崎ですけれども、十四歳未満の中学生でしたけれども、凶悪事件が発生した。

 このような触法少年の事件が発生した場合に問題となる論点ですけれども、一つは、触法少年に対する調査の問題があります。それからもう一つは、親の責任という問題があろうかと思います。

 それで、十四歳に満たない触法少年がこういった凶悪事件を起こした場合の調査の仕組みを検討することについては、昨年十二月の青少年育成施策大綱、これに記載されて、現在、法務省を中心にプロジェクトチームが設けられると聞いております。これについては、きょうは質問はいたしません。

 ただ、この問題というのは、単に刑事責任年齢を引き下げればそれで済むという問題ではなくて、やはり、私個人的には、多方面からの検討が必要だろうというふうに思っています。

 もう一つの、保護者の責任の問題があるんです。これは、親の責任という論点について、実は、昨年、鴻池大臣が非常に過激な発言をされたものですから、逆に誤解をされてしまった面があろうかと思います。

 ただ、私個人的に考えているのは、親を罰するということじゃなくて、例えば親としても被害者に対して謝罪をする、あるいは、これまでの家庭教育のあり方について真摯に反省する。場合によっては、イギリスみたいに、親に対してカウンセリングをさせるという仕組みもあるやに聞いているんですけれども、これについて、昨年の青少年育成施策大綱では、「非行少年の家族への働きかけ」として、保護者の再教育等を念頭に、実効性を確保するための介入などの仕組みについて検討すると書いてあります。

 ここに言う非行少年には、当然触法少年が含まれると考えますし、また、具体的なその仕組みの検討状況について今どうなっているのか、お聞かせ願いたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今、先生御指摘のように、非行少年には触法少年が含まれるというところでございます。

 それから、保護者に対する指導、働きかけにつきましては、平成十二年の少年法の改正で、家庭裁判所の調査、審判の過程において、保護者に対しまして、訓戒、指導その他の適当な措置をとることができるという旨が定められたところでございますし、また、各種施設等におきまして、非行少年の処遇の各段階で取り組みがなされておるところでございます。

 今御指摘の、保護者が働きかけに応じない場合における取り組みということについてでございますが、まず、運用のさらなる充実を図って、これを検証しながらさらに検討をしていくということで、程度によりまして、先生今御指摘のように、指導、あるいは教育プログラムの導入、カウンセリング、いろいろなものが考えられると思います。こういった介入等の仕組み、それから、それらのそれぞれの是非につきまして、今後、法務省、厚生労働省等、十分連携をとりながら検討していきたいというぐあいに考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 それと、私自身が警察庁の少年課に在籍していた当時なんですけれども、例えば、警察官が学校に出向いて非行防止教室というのをやっています。そのときに、子供たちに人を殺すな、泥棒をするなと言っても、なかなか効果がないわけです。ただし、凶悪犯罪の被害者となったその家族が感じた痛みですとか悲しみを子供たちに伝えていくというのは、非常に効果があります。あるいは矯正教育の場でも、当時、アメリカでも取り組まれていましたけれども、加害少年が被害者と直接接することによって矯正を図る、そういった取り組みもなされておる。

 ですから、関係省庁というのは警察、法務、文部科学、厚生労働、いろいろ多岐にわたると思うんですけれども、いわゆる被害者対策と言ったときに、被害者に対するケア、それから、被害者の感情を満たすための司法的な取り組みだけじゃなくて、被害者の生の声、これが少年犯罪の予防あるいは非行少年の更生に資するというような感じがいたします。

 そこで、その施策の検討をお願いしたいと思うんですけれども、その点、一点お聞かせ願いたいと思います。

山本政府参考人 今、委員御指摘のとおり、被害者あるいはその家族の生の声を聞く、そしてその思いを知るということは、いわゆる少年犯罪の予防、あるいは非行を犯してしまった少年が更生を図っていく、そして社会に復帰して戻っていく、そういった上で非常に重要なことであるというぐあいに考えております。現在でも、そういう観点から、例えば、少年院におきましても、収容されている少年に対しまして被害者あるいはその支援者等がお話をするといったような取り組みも行われているところでございます。

 今後とも、そういう非行少年の立ち直り、更生、あるいは少年犯罪の予防といったような面から、被害者の声をさまざまな施策に反映していくということを関係する省庁と協議をしながら進めてまいりたいと考えます。

葉梨委員 北朝鮮の拉致の問題もこれだけ大きくなったというのは、拉致家族の声というのがやはり私たち日本国民の心を打ったということだろうと思います。取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 あと、時間がございませんので、資料をお配りしていますけれども、先ほど、上川委員からもトラフィッキングの話がありましたが、児童の権利を侵害する諸形態という中で、大体、私もいろいろな国際会議、トラフィッキングの国際会議、あるいはペドファイルの国際会議というのも出させていただきましたけれども、そんなような形があろうかと思います。

 ですから、先般の児童買春の法律の改正、これについては非常に時宜にかなったものであるというふうに思っています。ただし、何せ日本人になかなかなじみがないんです。それで、さらに急激にIT社会化しているということで、その運用について一部国民に不安があるのも事実でございます。

 時間がないので一例だけ。法案では、電磁的方法による児童ポルノの提供、いわゆる送信が禁止されていますけれども、例えば、送られたメールの添付ファイルの中身をよく確認しないで転送した、そうした添付ファイルの中身が児童ポルノだったような場合、取り締まりの対象となるのかどうか、簡潔にお答えください、警察庁。

伊藤政府参考人 添付ファイルの中身について、送信者の認識というものが出てくるだろうと思いますけれども、場合によっては犯罪成立の判断あるいは立証といった問題で難しい場合も出てくるであろうというふうに予想されるところでございますけれども、警察といたしましては、法の規定を厳正かつ適正に運用いたしまして、児童ポルノによる児童の性的搾取を可能な限り防止してまいりたいと考えているところでございます。

葉梨委員 新しい改正法、これについては児童の権利の擁護のための大きな武器になるものと考えています。ぜひ活用をお願いしたいんですが、新しい分野でもあります。ですから、広報をしっかり徹底すること、さらに運用をしっかり積み上げていくこと、これが大事だと思います。このような点を踏まえてぜひ適切な運用をお願いしたいということで、小野大臣から最後に御所見をお願いしたいと思います。

小野国務大臣 児童買春、児童ポルノ禁止法につきましては、平成十一年に法施行がなされたわけでございますけれども、関係省庁が適切な運用に努めてきたものと承知をいたしております。

 児童の権利の擁護を目的といたしまして明記されました改正法の趣旨を踏まえまして、政府といたしましては、児童が性的搾取の被害に遭わないための今先生おっしゃいました広報活動、こういうものを通し、関係省庁並びに関係団体とも連携をいたしまして、今後とも児童の権利擁護と健全育成に努めてまいりたいと考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 青少年の問題、大変多岐にわたっております、大変重要な問題でございます。一生懸命頑張っていただきたいということを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

武山委員長 次に、石毛えい子さん。

石毛委員 おはようございます。民主党の石毛えい子でございます。

 先ほど、前二人の委員からも触れられましたけれども、長崎の佐世保市で、小学校六年生の少女が仲のいいお友達の命をあやめるという大変痛ましい事件が起こりました。御手洗怜美さんの御冥福を心からお祈りするものですけれども、時間がまだほとんどたっていないきょうでございますが、小野大臣、どのようなお気持ちでいらっしゃいますでしょうか、どう受けとめられましたかという点と、それから、特命大臣としてどう対応されるのか、あるいは政府としてどのような対応に留意をしていくのか、どう対応するのかということをまず最初にお尋ねしたいと思います。

小野国務大臣 答弁に先立ちまして、亡くなられました御手洗怜美さんの御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。

 今回の佐世保の小学生死亡事件に関しましては、まことに痛ましく、心痛にたえないと感じている一人でございます。小学校内で、最も仲よしであった同級生、その子によりましてとうとい命が失われたというこの事件というものの発生につき、私も非常に強い衝撃を受けているものでございます。

 事件、事実の関係や経緯を明らかにすることが大切でありますけれども、一連の状況を把握した上で、十分に検証し、対応していくことが必要である、そのように考えております。

 昨年十二月に策定をいたしました青少年育成施策大綱におきましては、青少年の成長段階におけるいわゆる規範意識の醸成とか、あるいは心の健康に関する指導、相談に取り組むこととしているわけでございます。これらの施策につきましては、関係省庁間で十分に連携を図りながら推進してまいりたい、そのように考えております。

石毛委員 インターネットの普及という現代的な状況もございますし、それから、少年少女の成長期に出会う大変大きな心の葛藤を抱える時期ということもありますでしょうし、家庭や社会の環境もさまざまにかかわっているかとも思います。

 ぜひとも、事件の当事者になりました少女が社会的な自立をこれから、ちょうど青少年の育成に関する有識者懇談会も、今とそれから将来に向けた自立ということを展望して、長いスパンで社会的に施策を充実していくということがこの有識者懇談会報告のコンセプトになっているというふうにも思いますし、ぜひとも少女が社会的自立に向けて成長していけますように、そしてまたそのことが亡くなられた御手洗怜美さんの命にこたえられるように、政府として十分に丁寧な対応をしていただきたいということをまず申し上げたいと思います。

 それでは、所管されている青少年育成施策大綱につきまして、お伺いいたします。

 私は、これは当時といいますか、後ほどちょっと触れることになろうかと思いますが、その当時も注目されたところでございますけれども、最初に二〇〇三年の四月に出されました青少年の育成に関する有識者懇談会報告書と、それから同年の十二月に作成されました青少年育成施策大綱の中で、とりわけ少年非行に対する記述が大きく変化をしているということに驚きを禁じ得ないというのが私の率直な受けとめ方でございます。

 有識者懇談会の方は、「少年犯罪の予防」ということで補論が設けられておりまして、「少年犯罪について」というような記述もございますけれども、十二月の施策大綱になりますと、「少年非行対策」ということで、具体的な記述がかなりのボリュームで記されてございます。

 この変化につきまして、この分野を所管されております特命大臣としてどのように認識をされて、そしてどのような見解を持たれていらっしゃいますか、そのことについてお尋ねいたします。

小野国務大臣 青少年育成施策大綱というのは、先生今お話しくださいましたように、平成十五年の四月に内閣官房長官により提出をされました青少年の育成に関する有識者懇談会報告を踏まえまして同年の九月に取りまとめられました、鴻池前国務大臣によります「少年非行対策のための提案」を反映させまして、昨年の十二月に策定されたものでございます。

 少年非行対策につきましては、沖縄あるいは長崎の少年によります重大事件の発生にかんがみまして、福祉あるいは矯正等の分野の有識者の方々にも参加をしていただいた検討会で議論を行ったところでございます。

 「少年非行対策のための提案」に盛り込まれました具体的な事項につきましては、少年の非行防止、それから立ち直り支援の観点から、関係省庁間で十分に協議を行いまして、触法少年の事件に関する警察の調査権限、この明確化のための法整備の検討など、可能なものを大綱に盛り込んでいるものであり、少年非行に対する社会の関心にもこたえたものとなっているものと考えております。

 なお、大綱全体の基本的考え方や構成につきましては、当初の基本方針どおり、有識者懇談会報告を踏まえたものとなっているものと承知をいたしておるところでございます。

石毛委員 確かに、おっしゃられましたように、沖縄や長崎で少年が生じさせた事件がございましたし、鴻池当時の国務大臣の大変過激な発言を伴った新しい検討会の設置、これは私的な検討会だと思いますけれども、設置がされたという経緯もございます。

 六月十日に、鴻池国務大臣が本部長として総理によって指名をされ、就任をされて検討会をつくり、小野大臣が特命大臣として就任されます直前かと思いますけれども、鴻池大臣のお名前で「少年非行対策のための提案」が出されております。この九月に出されました提案が十二月の施策大綱に、ほぼ、ほとんど一〇〇%に近くと言ってよろしいかと思いますけれども、同じ内容で記載されているというふうに私は読み取りました。

 九月に鴻池当時の国務大臣が出されましたこの提案は、「おわりに」の部分で、これは私の考えに基づき整理して取りまとめたものであって、「検討会の委員の総意を取りまとめたものでもないし、まして政府の見解でもない。」というふうに断りの記載がございます。しかしながら、十二月に閣議決定されました青少年育成施策大綱というのは、繰り返しになりますが、ほとんど同じ内容でございます。

 小野大臣は、この提案を受けて十二月に施策大綱がまとめられるまさにこの経緯、プロセスにおきまして、特命大臣としてこれを総括されたわけでございますけれども、そこのあたりを振り返りまして、もう一度、どのように、確かにほかのところ、全体的な色調といいますか、トーンとしましては、有識者懇談会報告書のトーンを受けておりますけれども、この部分は極めて特段に変化をしているというふうに言わざるを得ないと思います。

 そして、もう一点、もしお答えいただけますればと思いますが、懇談会の報告書というのは、これは規制力があるわけではなくて、参考に資する、そういう性格のものだと理解をしております。

 しかしながら、やはり懇談会の委員の方々は、御自分たちが出された報告書の内容と、それから十二月に向かってまとまりました施策の大綱の内容とが大変な変化をしているということに恐らく驚きを持たれたでございましょうし、これは実務を担当されている方にお伺いしなければ、大臣はきっとおわかりにならないかもしれませんけれども、十二月の大綱にまとめ上げるまでの間に、有識者の方々とここの部分に対してもう一度意見交換をする機会をお持ちになられたのかどうかというようなことなど、お教えいただければと存じます。

山本政府参考人 今、石毛先生御指摘のとおり、懇談会報告書が四月に出まして、そして大綱づくりに取り組んでいたわけでございますが、長崎、沖縄の事件が発生して、そして少年非行対策についてさらに議論、検討をする必要があるということで、鴻池大臣のもとで検討会が開かれて、そして九月に、今おっしゃったような、いわゆる鴻池私案という格好でまとめられたわけでございます。

 そして、この内容につきましては、いろいろな観点のものがございます。先生御指摘のように、例えば裁判所の保護審判の運用等に係るものにつきましては、これは司法権の問題でございますので、そういった事項は盛り込んでいないわけでございますが、その他の事項については、関係省庁と協議をいたしまして、先ほど大臣の答弁がございましたけれども、触法少年の、例えば少年院に十四歳未満でも収容できるような選択肢を設けることの検討でございますとか、あるいは触法少年の事件についての調査権限の法的明確化の検討、こういう事項を中心に盛り込んでございます。

 おっしゃいましたように、懇談会報告書、これは官房長官の私的懇談会でございます。それから、検討会の方も、鴻池大臣のもとで集められた検討会でございます。そういうことで、それぞれを反映していくということで取り組んだところでございます。

 検討会のペーパーが鴻池大臣の名前で取りまとめられましたときには、もちろん、これを懇談会の先生方にもお送りをしております。特段、会を開いて改めて協議をするということはやっておりませんけれども、そういう経緯でございます。

 そして、先生御指摘のように、この大綱は、社会的自立の支援を初めとしました四つの重点課題、それから、乳幼児期、学童期、思春期、青年期といった、年齢期ごとにきっちりと施策を組んでいく必要があるという基本的な考え方、スケールというもの、それから障害のある青少年の支援ですとか、一人親家庭の支援、今の非行対策、それから青少年の被害防止、保護の問題、こういった特定の困難な状況にある青少年に関する施策の基本的方向を盛り込むということで、全体の青少年の育成に係ります基本的な理念、考え方、スケールというものは、懇談会報告書をベースに、それをしっかり踏まえたものにしている。

 ただ、少年非行の部分については、そういう事件のことを契機に、おっしゃいますように、内容を具体的なものを盛り込んで充実したものにしているというぐあいに御理解いただきたいと思います。

石毛委員 政府には公式な審議会もございますし、それから、各大臣あるいは所管されます局長ですとか、さまざまなレベルの私的懇談会というのがございますし、それぞれがどのような法的な、制度的な機能を持つかというのは、それぞれに違うかと思います。

 では、大方、大宗では、今統括官がおっしゃられましたように、報告書を受けているというふうに私も認識はいたしますけれども、このような懇談会報告と、それから、沖縄や長崎で事件が生じたとはいいながら、その事件の受けとめ方をめぐりましても多様な見解がございますでしょうし、懇談会は補論のところで、「少年犯罪について」という記述は、その見方につきまして、一律的な見方はできないというような記載になっております。

 懇談会の性格づけ、あるいは機能についての規定ということからいえば、わざわざもう一度懇談会を開いて確認をしていただくという必要もないのかもしれませんけれども、私から見ますと、さまざまな部分で、懇談会がある種、いわば意見の開陳の場だけれども、そのまま終わっているというように受けとめられる場合が少なくないように私は思われます。

 もう一度、懇談会に関して、きちっと意見を伺うべきではなかったのか。特に、触法少年の警察における調査ということに関しましては、少年に対する社会的なケア、フォローの大転換になるようなところでございますから、私は、ここの部分がまさに懇談会の報告と異質なものになっているということに対して、大変奇異な思いをいたします。できましたら、もう一言御答弁をいただければと思います。

山本政府参考人 今おっしゃいました手続的なことから言いますと、昨年の六月に総理をヘッドといたします青少年育成推進本部というものをつくりまして、ここでこの大綱を決めるということで、これは公式な、公的な、閣僚による検討の場でございます、その検討の場において、懇談会報告書をベースに、そして非行対策の検討会というものも可能なものは盛り込むということで、この推進本部で御審議いただいて決定したものでございます。

 それから、少年の非行対策につきましては、この大綱、懇談会の報告書もそうでございますが、基本的には、非行を犯した時点での種々の対策、少年法制を中心とした種々の対策というものも必要である。しかしながら、乳幼児期から学童期、思春期、青年期という段階に応じて、乳幼児から大人になるまで、それぞれの段階に応じて、家庭も地域も学校も中心にしましてきっちり育成を図っていく。そういうことによって初めて、非行というものに対する抵抗というか、非行というものが防止されるという基本的な考え方に立っているわけでございます。

 非行防止のところは、そういった非行を犯した場合のケアだとか立ち直りだとか、あるいは事実のきっちりした解明だとか、そういったことについての検討というものがやはり必要だろうということで、あくまでもここでは結論は出していないわけです。

 触法少年の調査についての検討、それから、少年院に入っていただくことの選択肢を広げることの検討というようなことで、そういった問題についてもさまざまな観点からきっちり検討するという趣旨で入っておりまして、非行に対するこの青少年大綱の考え方といいますものは、全体的には基本的認識は変更していないというぐあいに我々も考えているところでございます。

石毛委員 私は、もう一度懇談会を開催して、きちっとそこで御意見を伺うべきではなかったのかということを申し上げたのですが、そこに対する御答弁はなかったと思います。

 小野大臣にお伺いいたしますけれども、大臣は、九月に特命大臣としてこの担当になられて、この経緯、とりわけ、鴻池当時の国務大臣が出されてから大綱にまとめられるこの内容を御了解されたというふうに確認させていただきたいのですけれども、そのように受けとめてよろしいということでしょうか。

小野国務大臣 そのように了解していただいて結構でございます。

石毛委員 山本統括官に簡単に御答弁いただければと思います、時間がなくなってまいりましたので。

 大綱策定後、関係省庁の少年非行対策課長会議が設けられて、検討が進められているというふうに伺っておりますけれども、その検討状況につきまして、今までお述べいただきましたことは省いていただきまして、つけ加えることがありましたらお願いいたします。

山本政府参考人 大綱を推進していくということで、今我々、実務的には二つチームをつくっております。

 一つは、全省庁の関係課長さんから成ります推進会議というものをつくりまして、これは二回、児童の権利条約の委員会の最終見解についての外務省の各省への報告だとか、児童虐待法の改正の趣旨の徹底とか、そういったものをこの全省庁の課長をメンバーとする会でやっております。

 それから、もう一つは、今、石毛先生御指摘のように、警察、法務、文科、厚労、内閣官房、内閣府の六省庁、それからオブザーバーとして最高裁判所の方に入っていただきまして、非行対策会議というものをつくっております。

 これにつきましては、まだ開催しておりませんが、今、種々関係省庁と協議をしておるところでございまして、でき得れば、できるだけ早く開きまして、例えば、関係者、いろいろな機関の連携したサポート体制の検討、構築といったようなことを一つまず取り上げてやっていきたい。その他の事項についても、引き続き進めていきたいというぐあいに考えております。

石毛委員 きょうは、法務省からもおいでいただきました。

 六月二日の新聞報道ですけれども、法務省は少年法、少年院法の改正作業を進めているというふうに伝えられております。施策大綱では、先ほど統括官が御答弁くださいましたように、触法少年の警察における調査について検討というふうに、確かに全部「検討」と記載されておりますけれども、法務省の方は実際の作業に入っているように新聞等で理解をしておりますけれども、その改正作業の内容、それから進捗状況等についてお教えください。

樋渡政府参考人 ただいま御指摘のありました青少年育成施策大綱におきまして、いわゆる触法少年の事案について、事案解明のために必要な調査権限を明確化するための法整備について検討すること、早期の矯正教育が必要かつ相当と認められる場合に少年院送致の保護処分を選択できるよう少年院法の改正を検討すること、保護観察中の少年について、遵守事項の遵守を確保し、指導を一層効果的にするための制度的措置について検討することが盛り込まれましたことを受けまして、現在、法務省におきまして、少年法等の法改正の要否を含め、検討を進めているところでございます。

 これらの大綱で盛り込まれました検討事項については、かねてから実務上問題とされてきたものでありますが、青少年育成大綱に具体的に盛り込まれ、政府の施策として推進することとなったことを踏まえまして、法務省といたしましても、刑事局内にプロジェクトチームを設け、具体的な検討作業に入ったものでございます。

 具体的な作業の進捗状況についてのお尋ねでございますが、現在、刑事局内のプロジェクトチームにおいて、関係機関と連携をとりながら、触法少年の事案の動向や現行制度下における取り扱いの実情について調査を進めますとともに、法改正の要否及び内容等について検討を進めているところでございまして、今後少年法等の改正が必要となれば、法制審議会に諮問することも考えております。

石毛委員 要否を含めという大変重要な御答弁を伺ったと思いますけれども、その要否を含めてという作業が大体社会的に明らかになりますのはいつごろでしょうか。

樋渡政府参考人 これらの先ほど申しました事項につきましては、いずれも十分な検討が必要でございまして、結論を出す時期やその内容について現時点で何とも申し上げられませんが、いずれにしましても、できるだけ早く必要な検討を行って、適切な対応を図っていきたいと考えております。

石毛委員 厚生労働省からおいでいただきました。

 児童相談所の機能にかかわる重要な案件だというふうに認識をしております。このことに関しまして、厚生労働省としてどのような認識をされているかということをお尋ねいたします。

伍藤政府参考人 この問題につきましては、私ども、児童相談所でありますとか直接少年を処遇する児童自立支援施設、こういったものを担当しておりますので、大変大きな関心を持って検討しておるところでございます。具体的に、今法務省から説明がありましたような、まだ内部の検討でありますので、その過程で必要に応じて、私どもも情報提供など必要な連携協力を進めておるところでございます。

 今後、もう少し具体的な議論が進展するものと思われますので、そういった過程で、私どもが今まで進めております福祉あるいは子供の自立支援、そういった観点から、どういった制度が望ましいのか、私どもなりに十分検討を進めていきたいというふうに考えております。

石毛委員 一問質問を割愛しますことをお許しください。

 大臣にお尋ねいたします。

 ことし一月の国連子どもの権利委員会が、日本に対する総括所見を出しております。その中で、少年司法につきましても触れられております。

 時間がございませんから、どのようなことが触れられているかということは割愛いたしますけれども、私は、この勧告をされました内容と、それから大綱に盛られております少年非行対策につきましては、基本的に相違しているというふうに認識をしているものでございますけれども、大臣は、この勧告に対しましてどのような御見解をお持ちでしょうか、お尋ねします。

小野国務大臣 児童の権利委員会によります第二回政府報告審査の最終見解におきまして、少年司法関係における、少年法改正が実施されたことに留意をしつつ、刑事裁判に付される少年がふえつつあることに対する懸念や、それから審判前の身柄拘束などについての勧告などの指摘がなされたものと承知をいたしております。

 政府といたしましては、今後とも、その内容や趣旨、あるいはそういうものをよく精査いたしまして、児童の権利条約の趣旨を踏まえまして、少年の権利の擁護と立ち直りの支援、こういったものを念頭に置きながら対応を検討してまいりたい、そのように考えております。

石毛委員 ここでは、少年司法の運営に関する国連最低基準規則の全面的実施の確保をするようにという勧告を子どもの権利委員会は行っております。それの一条の基本的展望は、加盟国は少年とその家族の福祉の増進に努めなければならないというのが基本的な考え方として置かれているところでございます。そして、今大臣が触れられましたけれども、十六歳という年齢の問題、あるいは刑事罰の問題、さまざまな問題が勧告されているところでございます。

 この勧告の内容は、繰り返しになりますが、私は、施策大綱の少年非行対策とは、特に触法少年についての大綱に盛られている内容などはそごしているというふうに認識をしております。

 大臣は先ほどの答弁で、大綱の責任者は、この経緯を、変化の経緯を踏まえた上で、御自分でございますというふうに答弁をされました。そして、今の御答弁では、勧告の趣旨を十分に踏まえるというふうに御答弁くださいました。

 時間がありませんので、その間の関係につきましてこれ以上質問することはできませんけれども、勧告の趣旨を踏まえるというふうに大臣が御答弁されましたということをここで確認させていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

武山委員長 次に、水島広子さん。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 本日も、小野大臣に青少年施策の基本的な点について御質問させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 質問に先立ちまして、もう既に本日もこの委員会で委員の皆さんが取り上げてこられましたけれども、私も、長崎県でこのたび起こりました事件につきまして、大変大きな衝撃を受けております。

 あんな形で突然絶たれてしまった御手洗怜美さんの貴重な命を思いますと、また残された御家族、親しい方たちのお気持ちを思いますと、本当に胸がつぶされそうな思いでございます。私自身も、小学生の子供がおります母親といたしましても、また子供たちの心の問題に取り組んできた立場といたしましても、大変大きな衝撃を受けているわけでございます。

 もちろん、この事件そのものにつきましては、既にいろいろなことをおっしゃっている方もいるようでございますけれども、私は、こういった事件については、詳細がわからないうちから先入観に基づいて物を言うべきではないと思っておりますし、大臣にもぜひそのようなお立場をとっていただきたいと思っております。

 それでも、やはりこの事件、特に学校現場、子育ての現場に非常に大きな衝撃を投げかけていて、今多くの子供たち、親たちが、どうしたらよいのだろうかというような、そんな状況にあると思います。そういった子供たち、親たちに対して、青少年担当大臣として何か一言いただければと思います。

小野国務大臣 小学校内で同級生によります女の子のとうとい命が失われたという事件はまことに痛ましい事件でございまして、深い衝撃を受けておりますし、また、遺族の方々の無念は想像を絶するものがある、そのように私も深く心を痛めているものでございます。

 政府といたしましては、まず、事件の経緯や事実関係というものを、状況の把握に努めているところでございまして、子供たち一人一人が命の大切さというものや他人への思いやり、人を傷つけることは絶対に許されないことであることなどの基本的な倫理観や規範意識などを身につけながら健やかに成長していくために、家庭、学校、地域初めとする社会全体が総力を挙げて取り組み、青少年の育成に取り組んでいかなければならないということを改めて認識させていただいていることでございまして、ここで御冥福をお祈りしながら力を尽くしてまいりたい、そのような気持ちいっぱいでおります。

水島委員 そして、今大臣からコメントをいただいたわけでございますけれども、私が見ました新聞によりますと、早速、自民党の安倍幹事長は、教育基本法の改正が必要というようなことをおっしゃっているそうでございますけれども、私は、もうそのような底の浅い議論はいいかげんにしてもらいたい、本当にそんな思いでございます。子供たちというのは、教育基本法だけで生きているわけではございません。

 私も昨年の夏、この委員会の派遣でヨーロッパ諸国を視察させていただきまして、こちらにございますけれども、報告書もつくっていただいているわけでございますけれども、どこでも地域を基盤にした地道な取り組みが効果を上げているわけでございます。私は、日本の政治に欠けているのはこの地道な努力なのではないかと思います。何か事が起こると、やれ少年法の改正だ、教育基本法の改正だというような、そういう単発的なテーマに飛びつきまして、それをやってしまうと、後はまたもうしらっと忘れたような顔をしている、そのような一貫性のなさが現状をつくってきているのではないかと思っております。

 オリンピックの選手を務められた大臣のことでございますので、地道な努力の重要性ということはだれよりもよく御存じではないかと思いますから、そのようなお立場に立ってここからの御答弁をいただければと思っております。

 まず、大臣は、一九九〇年に決議されました少年非行の防止に関する国際連合指針、いわゆるリヤド・ガイドラインを御存じでいらっしゃいますでしょうか。

小野国務大臣 先生今おっしゃいましたリヤド・ガイドラインというのは、少年が犯罪を生み出さないような態度をはぐくむように、幼児期から人格を尊重し、向上させ、調和のとれた思春期の成長を確保するために社会全体が努力することを基本原則といたしまして、そのもとに一般的な防止策、家庭の教育あるいはコミュニティーなどのさまざまな社会化の過程の中で、青少年を対象といたしました社会政策及び立法、少年司法運営といったさまざまな分野に指針を定めているものでございまして、このガイドラインは、少年非行の効果的な防止を図る観点から、専門的見地からも含めて幅広く検討されて策定されたものと受けとめているところでございます。

水島委員 では、大臣といたしましては、今かなりこのリヤド・ガイドラインを御評価いただいているというような御答弁でございましたけれども、これが少年非行の防止のための指針といたしまして、一〇〇%というのは難しいかもしれませんが、とりあえず必要十分なものだというような御認識をお持ちでしょうか。

小野国務大臣 認識といたしましては、十分にそれを心しているものでございます。

水島委員 先ほど大臣が御紹介くださいましたように、非行の防止と簡単に言いましても、これだけ多くの取り組みが必要とされるわけでございまして、ということは、それだけ子供たちが複雑な要因の影響を受けて育っているということであると思います。

 このガイドラインを見ましても、いろいろな方面にわたって書かれてはおりますけれども、私は、そこに感じられるのは一貫性ということだと思います。大人社会から一貫性のない気まぐれなメッセージを受け取るということは子供たちを混乱させることになりますし、それこそ、大臣がおっしゃった子供たちの倫理観や規範意識というものをまた混乱させていくことになるのではないかと思っております。

 ですから、私は、このリヤド・ガイドラインに従ってきちんと国内のいろいろな制度を整えていくということが政治に問われている責任ではないかと思っておりますけれども、この国連の子どもの権利委員会でことしの一月三十日に開かれました第九百四十六回の会合で、日本の第二回定期報告書への総括所見を採択しているわけでございますけれども、この総括所見の中でも、リヤド・ガイドラインの全面的実施を確保することが勧告をされているわけでございます。

 つまり、日本はまだこれをきちんと全面的に実施していないということが言われているわけでございますけれども、この必要性を十分認識してくださっている小野大臣といたしまして、どうやってこれを進めていかれるおつもりか、お聞かせください。

小野国務大臣 水島議員御指摘のとおり、児童の権利委員会の最終見解におきまして、少年司法の分野におきまして、リヤド・ガイドラインの完全な実施を確保することが求められているわけでございます。

 このガイドラインの理念というのは、少年の保護、健全育成という我が国の少年司法と相通ずるものであると考えられておりますので、今後、最終見解やこのガイドラインの内容を、よく趣旨を精査いたしまして対応を検討してまいりたい、そのように考えているところでございます。

水島委員 ということは、小野大臣がその作業をしてくださるということの確認でよろしいんでしょうか。

小野国務大臣 つかさつかさの者と検討しながら、もちろん、私も全力を尽くしてまいりたいと思っております。

水島委員 ちょっとここで確認としての質問になりますけれども、そもそも、日本において子どもの権利条約の遂行状況を監視している、その一番の責任主体はどこになっているんでしょうか。

小野国務大臣 児童の権利条約の実施状況、このフォローアップにつきましては、条約の解釈、実施等、条約全般を担当するのは外務省でございまして、それと、青少年育成施策につきましては、企画立案、総合調整、こういうものを内閣府が連携をして行っているわけでございまして、今後ともこの連携を密にいたしまして、他の関係省庁との協力を得ながら対応してまいる所存でございます。

水島委員 何か今のお答えだと、その担当は外務省というように聞こえますし、実際に、私もいつも、この子どもの権利条約に関していろいろなことを省庁に伺おうとしますと、それは外務省ですということで外務省の方がいらっしゃるわけでございます。外務省が日本においては子供の権利を守っていく主体なんだろうか、外務というのは本来違う仕事なんじゃないだろうかと、非常に疑問に思うわけですけれども、ことしのその総括所見の中でも、やはり「委員会は、条約の実施を監視する独立したシステムが全国規模で存在しないことを懸念する。」と書かれております。

 つまり、外務省がその条約の実施を監視する独立したシステムと言ってしまうのは余りにもおかしいのではないかと思うんですけれども、そういう趣旨での質問でございますので、もう一度お答えいただけますか。

小野国務大臣 これは国際条約でございますから外務省という言葉が前面に出てまいりますけれども、青少年育成施策についての企画立案とか総合調整を行うのは内閣府の私どもでございますから、それは外務省が一、私たちが二ということではなく、世界の連携の中で外務省が窓口にはなりますけれども、実動いたしますのは私どもでございます。

水島委員 ということは、日本で子どもの権利条約の遂行状況を監視していく一番の主体は小野大臣ということでよろしいんでしょうか。

小野国務大臣 結構でございます。

水島委員 大変心強い御答弁をいただきましたので進ませていただきますけれども、それでは、例えば今回の総括所見の中でも、非嫡出子の差別の問題ですとか、また男女で最低婚姻年齢が異なることも含めまして、私たちがかねてから法案を繰り返し提出して指摘した内容も含まれているわけでございます。

 子どもの権利条約の遂行状況を監視する責任者としての小野大臣といたしましては、例えば、この非嫡出子の差別という問題についてどのようにお考えで、どうやっていこうとされておりますでしょうか。

小野国務大臣 民法上、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一であるとの規定になっているわけでございます。

 この規定は、法律上の婚姻関係から生ずる家族を保護する目的で設けられたものでありまして、児童の権利条約第二条が禁ずる児童に対する不合理な差別には当たらないと考えているわけでございます。

 また、最高裁は、この規定について、憲法第十四条第一項に反しないと判断していると承知をいたしております。

 立法政策の問題といたしましては、一九九六年の二月に法制審議会から、法務大臣に対しまして、民法改正事項の一つとして、嫡出でない子の相続分の同等化が提言されているものと承知をいたしております。

 この民法改正の問題は、婚姻制度や家族のあり方にかかわる重要な問題でございまして、国民各層あるいは関係方面でさまざまな議論がある件でもございまして、この問題につきましては、国会における議論、関係する裁判における最高裁判決、あるいは児童の権利委員会からの勧告、そして国際的動向を通じまして、各界各層における議論が深められ、大方の国民の理解を得ることができるような状況で見直しが行われることが適当である、そのように考えているわけでございます。

水島委員 やはり今のような御答弁では、とても子供の権利の代弁者としてはふさわしくないというふうに思います。どちらかというと、何か法務省よりもちょっと後ろなんじゃないかなと思うくらいでございますけれども。

 例えば、この非嫡出子の問題、もちろん大臣は、政府の見解といたしまして、家族の何やら、いろいろな事情を見て考えなければいけないとおっしゃるわけですけれども、これは、突然大臣がその立場の子供として生まれてきたことを想像していただければ簡単なことなんです。

 自分がある日この世の中に生まれ落ちてみたら、自分には何の責任もないことで差別を受けているというような構造になっている。これを差別じゃないと言うのは、差別している側からすれば、あなたが受けているのは差別じゃありませんよと言うのは簡単なんですけれども、受けている側からすれば、今の日本の社会の諸状況を考えましても、これはやはり差別なんです。

 自分がほかの子供に比べると半分しか価値がないというふうにその子がとったとしても、それは全く言いわけできないような状況であるわけでございます。これは、完全に自分には何の責任もないことで自分がその責任をとらされている、親の方はとらされておりませんので、子供だけがとらされているという構造でございます。あるいは、無国籍児の問題なんかを見ましてもそうでございます。子供は何も責任がないところにただ生まれてきてみた、そうしたら、きちんと国籍も与えられていないというような状況に巻き込まれている。

 そのように、大人社会のツケが子供に回されているという構造が今の日本の社会には歴然と存在をしていて、そのことに対して、全体のバランスが云々というような大人側の理屈ではなく、子供の立場に立ってこれはおかしいじゃないかと声を上げていくべきだというのが子どもの権利条約の精神でもあり、また、それをきちんとチェックしていく立場の人には、そのような代弁者として機能してもらわなければいけないわけでございます。

 そもそも、このような問題を政府の一省庁がやっていくということはやはり無理があるんじゃないかと私は思いますし、本来、そういう役割を担わされているのが子どもオンブードということだと思います。

 先日、日本にもノルウェーの子どもオンブードの方がいらっしゃいまして、私もお会いしましたし、また昨年、私自身もノルウェーに行きまして、子どもオンブードについていろいろと学ばせていただきました。この当委員会の派遣でございますので、報告書をごらんいただければと思っております。

 そのノルウェーの子どもオンブードなどの場合には、子供の権利が守られることを監視するだけではなく、例えば子ども家族大臣をつくるようなことも提案して実現をしてきた。つまり、一つの省庁をもつくってしまうほどの力を持っていたということであるわけでございます。

 私は、この日本にも子どもオンブードをつくらなければならないと思ってまいりましたし、今の大臣の御答弁を伺うと、とてもこれでは日本に子供の権利を最優先に考えてくれるところが全国規模でないということもわかりましたし、政府に一定程度の影響力を持つ独立した機関である子どもオンブードというものをきちんとつくっていかなければいけないと、きょうまた改めて強く思いました。

 また、これは国連の委員会からも勧告されているということを二月二十七日のこの委員会でも大臣に申し上げたわけでございますけれども、その後、大臣は、まずこの子どもオンブードについて御研究いただけましたでしょうか。いかに多くの国にあって、いかに重要な役割を果たしているかということを御研究いただければ、その必要性ということを御認識いただけると思いますけれども、その御認識はいかがでしょうか。

小野国務大臣 議員御指摘の子どもオンブードにつきましては、例えばノルウェーでは、国の機関として設置をされまして、児童の権利にかかわる事項につきまして、おっしゃいましたように、国会に対して議員が提出する法案についての意見具申や新たな法案の必要性の提案、それから、政府に対して子供の権利擁護の観点から必要な意見を述べること、さらには、児童及びその親権者等からの情報に対して返答することなどの機能を持っているものと承知をいたしているところでございます。

 我が国におきましては、そのような意味での子どもオンブードというものはございませんけれども、子供の人権にかかわる問題を専門に扱う行政上の措置の一つといたしまして、子どもの人権専門委員会というものが現在全国に七百名実は配置されておりまして、子供の人権侵犯事件の調査、処理及び人権相談などの活動を行っており、子供の人権が侵害されるおそれがある場合には、法務局と連携をいたしまして適切な処理をしていると承知をいたしております。

 形は違いますけれども、いわゆる子どもの人権専門委員会というものが日本にあって、七百名という配置がなされ、そういう方々が活動しているという、またオンブードとは違った形が存在しているということが一つございます。

 我が国におきましては、児童の人権を守るためにどのような仕組みがよりふさわしいかにつきましては、議員の御指摘も踏まえまして、今後とも研究をさせていただきたいと考えております。

水島委員 そのような地域レベルの活動ですとか、そういったことについては、国連の委員会でもきちんと知っているわけでございます。それでもやはり、この条約の監視する独立したシステムが全国規模で存在しないということを問題にしているわけです。

 また、私が今子どもオンブードを日本でもつくる必要があると言ったのは、例えば、今どういう文脈でその話が出てきたのかといいますと、先ほどの非嫡出子の問題、これは民法の問題でございますけれども、今ある日本の法律について、その法律議論として、つまり立法の議論として、政府と同等の立場でそうやって子供の権利をきちんと主張できるようなものが必要じゃないかということを申し上げているわけです。

 きょう、最初の方の御答弁では、小野大臣がそれをやってくださるのかなと思ってちょっと期待をしていたわけでございますけれども、例えば一つ例を挙げてみたところの非嫡出子の問題にいたしましても、特にあの中で青少年の担当の大臣だからというような姿勢が全くない御答弁だったわけでございますけれども、もしもいただけるのであれば、もう一度その点について答弁し直していただけますでしょうか。

小野国務大臣 それぞれの国のよって立つ歴史というものとその時代の流れの背景というものがございますし、法律上の婚姻関係から生ずる家族というものを保護するということもやはり一つあろうかと思いますし、この民法改正の問題というのは、いわゆる婚姻制度とか家族のあり方にかかわる重要な問題でありますので、私個人が突然この問題に関しまして大なたを振りおろすということは、やはり国民全体の認識の醸成というものが何よりも必要であろう、そのように考えているわけでございます。

水島委員 まず、小野大臣は、子どもの権利条約の趣旨には、当然その批准国の大臣として賛同されておりますでしょうか。

小野国務大臣 それは了解しているつもりでございます。

水島委員 そして、その子どもの権利条約の遂行状況を監視する責任が小野大臣にあるという御答弁も先ほどいただいたわけですけれども、この非嫡出子の問題、本当に子供の立場に立って考えてみていただければ、これは明らかに子どもの権利条約の精神に反しているわけでございますし、だからこそ、この委員会からもそのような意見が出されているわけだと思いますけれども、この点については、大臣はどういう御見解なんでしょうか。

小野国務大臣 子どもの権利条約ということで、嫡出、そうである者、ない者、両方の立場があるわけでございますので、そういった面におきまして、いつ双方が同じ気持ちの場に立つのか、そして、法律上その家族構成や家族のありようというものがどういう形に進んでいくのかというのは、私が先ほどから申し上げておりますように、それぞれのよって立つ歴史的な流れというものもあるということを申し上げているわけでございます。

水島委員 その歴史的な流れとか、社会的な状況とか、いろいろな大人の立場とか、いろいろな大人の身勝手とか、そういう中で子供たちが犠牲になってきたのを何とかしようということで、こうやって子どもの権利条約もできたわけですし、今、世界各地でいろいろな人たちが努力をしているわけでございます。

 今の御答弁は、やはり青少年担当というふうに名乗られるのであれば、余りにもその責任を自覚していらっしゃらないと言われても仕方がないことだと思いますし、少なくとも、それが認められる、認められないは別としても、大臣はちゃんと子供の立場に立って、こういうことを直していかなければいけないんだということを訴えるべき立場にあると思っております。

 そのようなお気持ちをもう一度きちんと持っていただきたいと思っておりますけれども、本日は、それを詰めておりますと時間がなくなりますので、もう少し、今本当に大臣がどのようなお仕事をされているのかということをちょっと伺いたいと思うわけです。

 例えば、このリヤド・ガイドラインもコミュニティーに重きを置いているものと私も認識をしております。また、日本もまさにコミュニティーを基盤にした努力が必要な状態にございます。以前から少子化が進んでおりまして、子供にとって親戚や地域の大人たちという身近な大人が減っておりますし、昔の地域社会では、いろいろな大人がいろいろな形で子供たちとかかわってバランスをとっていたわけでございます。その機能を今は別の形で補完しなければならないわけでございまして、そこに政治の役割があるわけです。私が見てきた国々では、そうした努力を本当に地道に続けて、成果を上げてきていたわけです。

 本当に、先ほど申しましたように、日本の政治は、こうした一貫した努力を怠って、何か事が起こると少年法改正、教育基本法改正という単発のテーマに気まぐれに飛びついて、大騒ぎをして終わってしまう。そういうことを繰り返した罪というのは極めて重いと思っております。

 子供たちのための地道で一貫性のある省庁横断的な取り組みの必要性は、大臣、きちんと感じられていらっしゃるでしょうか。例えば一貫性ということで言えば、すべての子供が同じように価値があるんですよということを片方で言いながら、もう片方では、ちょっといろいろ歴史の事情もあるし社会の状況もあるから、非嫡出子の人は我慢してねというようなことを言ってみたり、これは私は一貫性を欠くことだと思います。

 また、この非嫡出子の問題については、大人がその責任を負わされるのではなくて、子供が負わされる形になっているというのがおかしいというのは、たしか昔、高村法務大臣の時代にも、きちんと法務大臣として答弁していただいていることがございまして、そのようないろいろな議論を見てまいりましても、本当に一貫性というのは非常に重要なことだと思っております。

 そのような省庁横断的な取り組みをきちんと力を持って進めていくためには、これは本当に大きな仕事だと思っておりますけれども、大臣が今そのお仕事が果たして物理的にできているのか。そもそも小野大臣は、全執務時間のどの程度を青少年のことに費やしていらっしゃるのか、大臣になってから子供たちのために具体的にどういう仕事をされてきたのか、失礼な質問かもしれませんけれども、実態を知るために御答弁をお願いいたします。

小野国務大臣 長い時間をかけたから物事が解決するとも思っておりませんし、一人の強力な意見でもって物事を強引に進めていくということもいかがかと思いますし、子供の立場も、それぞれの子供の立場があるということも認識をしながら醸成していかなければならない。そこは、ある意味での慎重さを私は持っているものと思っております。

 特命担当大臣といたしましては、青少年の育成と、それから少子化対策、これはもう少しで大綱ができますけれども、それから食品安全を担当ということで、国家公安委員会委員長としての四つの仕事をしておりますので、執務時間につきましては、それぞれの課題に応じて、私もそのときの状況に最もふさわしい使い方を心がけてさせていただいているものと思っております。

 青少年育成につきましては、とりわけ大変広い、広範囲な部分に当たりますので、我が国のあり方にかかわります、未来の日本の方向づけを担う大事な宝でございますから、重要な課題と認識をいたしておりますし、青少年担当大臣として与えられた職務というものは、心して精いっぱい遂行しているところでございます。

水島委員 何か小泉首相のような答弁を最初いただいたような気がしましたけれども、慎重であるということと何もしないということは全然違うことであると思いますし、どれだけ時間をかけたかということではなくて、私は、この青少年問題というのは、本当に一人の大臣が専念してもやり切れないくらいの仕事があると思っているわけですけれども、ほかの責任まで持たれている小野大臣として、本当に今、御自身のやらなければいけない仕事の中、この青少年問題について十分だと感じていらっしゃいますでしょうか。それとも、やはりこれは一人の大臣が独立してやった方がいいと感じておられますか。

小野国務大臣 それにお答えするというよりは、誠心誠意、上がってきている問題について朝から晩まで孤軍奮闘しております。

水島委員 その孤軍奮闘もちょっと気になるところでして、実は、例えばこの質問の事前通告をしましたときにも、子どもオンブードの話なんかを内閣府の方にしても、何か余りよくわかっていらっしゃらないような、それは何ですかというようなところもあって、青少年担当、大臣はいるけれども、どういうふうに機能しているんだろうというのは、きのう、大変心配になりました。本当に孤軍奮闘されているのかもしれないなとそのとき思ったわけでございます。

 ただ、これは大臣、やはり一人の大臣がきちんとした仕組みを持ってやっていかなければいけないんだということを今認めていただければ、それは子供たちにとってもとてもいいことになるんじゃないかと思いますけれども、もしも、それでも小野大臣が孤軍奮闘してでも頑張っていくということであれば、今後も、実際にどれだけの省庁と連絡をとって、そしてどれだけの縦割りを打破して、どれだけの実績を上げられたのかということをきちんと明確に示していっていただかないと。

 そもそも、内閣府というものを省庁再編のときに特別な立場でつくって、そしてそこに省庁横断的にこの問題をやっていくための青少年担当の特命大臣を置いたということの意味がもう今危うくなっているんじゃないかと思いますので、その点について、きちんとこれから、何をやったかということを、実績をきちんと示していかれるおつもりがあるか、それとも、これは独立した一人の大臣にゆだねていくほど大きな仕事だと感じているか、どちらか、御答弁を最後にいただけますでしょうか。

小野国務大臣 青少年の問題というのは、今は嫡出子の問題を先生とお話ししているわけでございますけれども、少子化の問題も根はそこから始まっていきますし、そしてまた、健康な子供たちというと食の安全もかかわりますし、そして国家公安委員長といたしましては、まさに刑法犯認知件数の四割が青少年だということになりますと、この犯罪の抑止をどうしていったらいいのかということで、これから夏に向かいまして、子供たちにそのような犯罪を起こさせないこと、起こした者を逮捕するのではなくて、起こさせないようにするためにはどうしたらいいかなどなど、今、全国展開に向けてやっておりますので、どの分野がどのようにということも含めますけれども、概して、私が担当させていただいている問題は非常に多岐にわたって絡んでおります。

 そういった意味におきましては、常に、青少年たちが本当に健全育成していくために、それぞれの担当させていただいている分野の中で何をどうしていくべきかということを日夜私なりに検討させていただき、具体的な効果を上げていきたい、そのような気持ちで取り組んでいるところでございます。

水島委員 孤軍奮闘されている大臣には本当に大変なお仕事だとは思いますけれども、ぜひ、これは本当に一日もサボっていられない領域でございますし、ほかのことの後回しにしてはいけない領域だと思いますので、これからなさるお仕事に関して、例えば数値目標を立てられるものであればきちんと立てて、どこの部分がどれだけ進んだか、どれだけの縦割りが打破されたか、それがきちんとわかるような形でお示しいただけますようにお願いを申し上げまして、また、その点について後日御質問させていただく機会があればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

武山委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 先ほど来、長崎の痛ましい事件のお話がございました。御手洗さんの御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、やはりこの再発防止のために、調査、解明が待たれるところでございます。

 先ほどもお話がございましたが、ともすれば教育基本法の改正等に一気に流れをつくりたい、そういう方もいらっしゃるようですが、私は、むしろ教育現場で子供に対してどういう施策が届いているのか、このことの方が大事であると思っております。スクールカウンセラーであるとか、子供の居場所づくりであるとか、子ども読書運動であるとか、こうした具体的なものを大人のメッセージとしてどう伝えていくか、ここをさらに具体的に考えてまいりたいと思っております。

 そうした意味から、その思いを込めまして、私は、思春期の予防教育につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 実は、このほど与党で、この先十年間の健康フロンティア戦略、これを厚生労働省で取りまとめまして、骨太方針に盛り込まれる予定になっております。私も、そのPTのメンバーとして携わらせていただきました。女性の生涯を通じた健康のために、女性のがん緊急対策を講ずると。また、その項目の中に「予防のための意識啓発の推進」と挙げられております。これを検討しましたときに、座長より、やはりこの予防については、特に今十代の女性に性感染症などがふえている、こういうことを聞いている、やはりこうしたことは学校教育にまつところが大きいという御指摘がございました。私も全く同感ですと意見を述べたところでございます。

 今、性感染症になった人は、とかく二十代の女性に増加傾向の子宮頸がんであるとか、またHIV感染者になりやすい、こういう報告もございます。また、御存じのとおり、十代の妊娠、中絶も増加しておりますし、エイズは、アジア、アフリカから流行の大きな波を目前にしております。そういう中で、我が国の置かれておりますところは、やはり十代の性意識が大きく変化をしている。そういう中で、エイズであるとか性感染症、また、たばこ、薬害、人工中絶等を含めまして、子供たちの体と健康を守るための正しい性知識を与えていくことが大事だと思っております。

 そこで、まず性教育につきまして、小学校、中学校、高校の学校教育の中でどのように行われているか、文部科学省にお伺いしたいと思います。簡潔にお願いいたします。

高杉政府参考人 学校における性教育、これは学習指導要領にのっとりまして、人間尊重ということを基盤に、児童生徒の発達段階、それから児童生徒の受容能力を適切に考慮して、性に関する科学的知識を理解させる、それとともに望ましい行動をとれるということをねらいとして、体育でございますとか保健体育、それから特別活動、道徳を中心に実施しているところでございます。

 具体的には、小学校では、主に体の発達、発育ということについて学び、中学校では、妊娠が可能になる生殖機能の成熟についての正しい理解とか、それから異性の尊重、性情報への適切な対処というようなことについて学ぶことになっております。ここで感染症の予防としてのエイズ及び性感染症についても取り扱うということになっております。

 それから、高校生になりますと、また異性を尊重する態度や性に関する情報への対処などの適切な意志決定、それから行動選択、これが必要であるということ、それから受精とか妊娠、出産、それに伴う健康問題、それから家族計画、妊娠中絶というようなことについて理解をし、指導をするということになっておりまして、小中高全体を通じて、学校教育また全体を通じて性教育を行っているという現状にございます。

高木(美)委員 それでは、皆様にお配りしました資料を少しごらんいただきたいと思うのですが、当然皆さんはもう十分御認識かと思いますが、まず、左上にあります、これは「現代高校生の生活と性行動」でございます。B校といいますのはいわゆる学力上位校、C校というのは普通校といったデータでございます。この一番下のところに「性経験者」もしくは「現在交際中」、女子を見ていただきますと、一年生は、B校、成績のいい学校で三〇・八、C校で五〇%、三年になりますと、C校に至っては、現在交際中、そういう方は一〇〇%、こういうデータでございます。これは私も親として大変衝撃を受けました。

 そして、左下にございますが、いわゆる「性交経験時期」、これが右の棒グラフにございますが、「高校入学後」というのは、女性はこの中で七〇%という状況でございます。これは、いわゆる経験者の中でいつかということでございます。

 その左下に、これは有名なデータでございますが、高校生の生活と意識に関する調査、二〇〇四年二月発表になりました各国の比較でございます。日本は、「結婚前は純潔を守るべきである」、この下の「あまりそう思わない」「全くそう思わない」、合計しますと六六%、それに比べて、アメリカは、「全くそう思う」「まあそう思う」、守るべきであるというのが、合計しまして五二%、中国で七五%、韓国は七四%、こういう状況でございます。

 しかも、右のところに行きますが、「これまでの相手が五人以上の人の割合」、こういう内容でございます。特に左側の十八歳から二十四歳、女性で約四〇%近く、男性では四〇%を超えている、こういう状況です。特に、こうした同世代の人たちが見知らぬ人と性交渉を持つことも容認している、こういうことについても高いデータが示されております。

 右下のところに、二十歳未満の人工妊娠中絶実施率でございますが、これが千人に対しまして、これはちょっと古いデータですけれども、平成九年で七・九人、件数でいきますと今四万件を超えている、こういうデータで、ますます増加傾向にある、これが今の実態でございます。

 果たして、こうしたいわゆる教育がどこまでこうしたことに歯どめをかけていられるか、現実に実効性が出ているか、こういうことを考えますと、やはり、子供たちが何を求めているか、こういったことにもう一回着目をしながら、さらにこれを検討し直して推進をしなければいけないのではないかと思います。

 こうした若者の今の性行動の特徴を、活発化、ネットワーク化、無防備化、このように表現する学者もおります。当然、この傾向に歯どめをかけるという大人側からの努力も必要ですけれども、ただ、もう今、小学生のころから性に関する情報がはんらんをしておりまして、その中にほうり込まれながら荒波の中で育っている、こういう状況です。

 したがいまして、それはもう都会でも地方でも同じ状況でございまして、地方高校生の意識調査によりますと、性交渉を受容しているという高校生は約八割近く、中学生も五、六割の生徒が構わない、こういうふうに答えているということもデータでございます。しかし、そうした彼らも、一番興味深いのは、九割の高校生が、そうしたことについて危ないことは危ないとはっきり教えてほしいというメッセージを出していることでございます。

 こうした子供たちの側からの意識を大人がしっかりと受けとめて、やはり自然に覚えるだろうとか、また当然、興味本位というのは最近は少なくなりましたが、そういうあいまいな認識では大きなすれ違いになってしまうと思います。もはや、性教育として性を教える教育といいましても、大体細かい仕組み以外のことは、子供たちはもう既に小学校ぐらいからわかっている。むしろそれよりも、中学、高校生の段階になりますと、どうやって自分自身の身を守るか、健康な体を守るか、そういった意味で予防のための教育へと視点を変える必要があると思います。

 ですから、名称も、私は、性教育という、性自体を教えるといったような名称よりも、もう少し、例えば思春期のための予防教育とか、何かもう一歩、名称の検討からお願いしたいと思います。やはり、そういう一回のつまずきが後でどれだけ人生に大きな影を落とすのかとか、そういうことも含めまして、子供自身の生涯にわたる健康のために、あなた自身の幸福のためにというメッセージを込めまして正確な予防知識を与えておく、そのことが思春期を乗り越える一つの力になるのではないかと思います。

 これが何のためなのか、そういう視点がはっきり定まっていないということから、自治体によりましては行き過ぎた性教育が後を絶たない、そのためにまたいつも文部科学省さんが謝罪をしなければいけないような、そんなこともいつも報道されておりますけれども、やはりこうした名称の検討、また視点を変えていく、このことにつきまして、文部科学省の見解をお伺いしたいと思います。

高杉政府参考人 性教育につきまして、これは先生御指摘のとおり、やはり私どもも、子供たちが生涯にわたって健康に生活をするという観点から、自分たちの身をきちっと守り、健康を維持するということをきちっと理解し、身につけさせる、そういう目的、ねらいを持って行っているということでございます。

 ただ、具体的には、性教育、これは非常に幅広い教育でございまして、男と女、それぞれの違いを認め合って尊重し合うというところからスタートするものであるということから、内容といたしましては、やはり将来にわたって健康を維持するということはきちっと踏まえながら、全体として幅広い教育というのを目指していきたいと思っております。

高木(美)委員 全体として幅広いというのはよく理解できるんですが、ただ、もうこれだけの子供たちの意識の大きな変化、こういったことをもう少し鋭く受け取っていただきながら、また検討をお願いしたいと思います。

 特に、予防教育の時期は高校では遅いというふうに思います。少なくとも、中学の二、三年くらいに明確に行っていただきたいと思います。先ほど大臣が、間もなく夏ですとおっしゃっていらっしゃいましたが、やはりそうしたときに知識をちゃんと与え、確実にそれぞれが、エイズにかからない、性感染症にならない、そういう予防行動がとれるようになる、また、妊娠中絶であるとか、現実に数字としてあらわれるような、実効性のある努力をお願いしたいと思います。

 そこで、厚生労働省にお伺いしたいと思いますが、思春期の健康支援につきまして、取り組みを教えていただきたいと思います。

伍藤政府参考人 女性の生涯を通じた健康支援という観点から、思春期における保健対策、こういったことは非常に重要な問題であるというふうに考えておりまして、いろいろな取り組みをしております。

 まず、エイズを初めといたします性感染症、これは母子感染による次世代への影響ということもありますので大変重要な問題だと思っておりますが、これが性的接触によるものがほとんどであるというようなことでございますので、こういった観点からの普及啓発、政府広報とか学校との連携、こういったことで、今幅広く進めておるところでございます。

 それから、母子保健分野の国民運動といたしまして健やか親子21というのを進めておりますが、こういったところでも、十代の人工妊娠中絶あるいは性感染症罹患率、こういったものを低減するための具体的目標を掲げて、今活動を進めておるところでございます。

 それから、研究面では、厚生労働科学研究というような研究費を活用いたしまして、特にこれはエイズなんかに有効だというふうに聞いておりますが、同年代の仲間による解決ということで、ピアカウンセリング、こういったものの研究、それから普及といったようなものにも取り組んでおるところでございます。

 それからさらに、薬物乱用も非常に大きなテーマでございますが、こういったものにつきましても、薬物乱用防止五カ年計画という中で、薬物乱用防止キャラバンカーを活用して学校等への巡回、こういった活動を進めておるところでございますし、さらに、健康日本21という幅広い国民運動の中でも、思春期の若者の喫煙とか飲酒、こういったものの危険性についての知識の普及啓発、こういったことにいろいろ取り組んでおるのが現状でございます。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 私、子供が高一、高三、女の子二人おりまして、中学校のときに「家庭教育ノート」をいただきました。ここに、例えば、性について親御さんにどういうふうに教えていらっしゃるのかと思いまして、この中に「「援助交際」なんて言葉にはだまされない。」という項目がありまして、毅然としていけないと言わなければいけませんと。この下のところに、こうしたことは違法であること、犯罪に巻き込まれる危険があること、望まない妊娠や性感染症を招くおそれがあること、将来の人生の心の重荷になることなど、気づくように働きかけましょうというふうにあるんです。

 やはり、もう一歩中身の、例えば今エイズ、性感染症、また喫煙防止など、こうした細かいパンフレットがずっと配られております。これも大事なんですが、私は、むしろ予防のためにといったような、こういう内容を一冊の資料にまとめていただきまして、その中にやはり女性の生涯にわたる健康を確保する、産みたいときにちゃんと産める体を確保しておいてあげる、こういったことも全部含めまして、証言なども入れていただいて、先ほど申し上げたそのような視点で、中学生、高校生用に作成をお願いできればと思っております。

 できましたら、その作成に当たりましては、トップダウンで、学者の方であるとか、また皆様が御自分たちでというのではなくて、当然現場の中学生、高校生の意見も取り入れていただいて、ボトムアップという方法でまとめていただければと思っております。

 そうしたパンフ、また資料がありましたら、それをそのまま保護者にも渡してあげることができる。それを保護者会で、例えば夏の前にこういうことに気をつけてください、要するに一〇〇%の交際率ですよ、そういうことを親御さんが知った上で、見守ってあげていただきたい。やはりこういう同様の知識があれば、親も自信を持って子供に伝えることができる。

 やはりこういう学校と、それから保護者と、また保健所等の医療機関の連携、ここが大変重要である、こういう観点から、こうしたパンフの資料作成をお願いしたいと思いますが、この点についての御見解を伺いたいと思います。

高杉政府参考人 今、先生から貴重な御指摘をいただきました。

 私どもも、学校だけということではなくて、やはり社会、家庭、それが一体となって取り組むということが非常に重要であるということから、今先生御紹介いただきましたような、エイズに関しますとパンフレットとかポスター、それから薬物乱用、喫煙というようなパンフレットをそれぞれ、例えば中学校になりますと中学校一年全員がもらう、高校生になりますと高校一年全員がもらうという形にしておるわけでございます。

 それで、学校におきましても、そういういろいろな情報、それは地域の差とかいろいろありますので、それについて学校便りとかPTAで取り上げるとか、そういうことをやってくださいということで指導しております。

 それとともに、今先生貴重な御指摘をいただきました資料のつくり方、それについては、私どもも、先生の御意見を十分踏まえて、今後その改善、より明確に、先生に御指摘いただいた問題について児童生徒がわかるということを、今後の教材作成について工夫をしていきたい、こう思っております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 やはり生涯にわたる女性の健康を確保する、そういう意味で、私は、本当に意識を持っている、特にこういう性というものに目覚める、目覚めるのはもっと早いわけですけれども、一番大事な予防行動をとらなければいけない、そういう中学生という年代、ここの教育がやはり生涯健康の出発点であるという、こうした視点をお持ちいただきたいと思っております。

 そのために、やはり授業をだれが行うかという、このことも大事でございまして、学校の養護教諭の方であるとか、もしくは保健所の方、また、婦人科の医師等に行っていただく。その際に、できれば、もし親にも言えない心配なことがあったら私のところにいらっしゃい、こういうメッセージを、また、スクールカウンセラーの先生でもいいですよと、やはり何かあったときにどう対応するかという、ここまでメッセージを伝えておいていただきたいと思います。

 集団的な、総合的な取り組みと、あと個別のカウンセリング、この両方をしっかり取り組んでいただきたいことを最後にお願いいたしまして、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

武山委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 今国会の青少年特別委員会では、児童虐待防止法の改正、また、児童買春、児童ポルノの処罰法の改正という重大な法律、その成立を見ることができました。この二つの法律とも、虐待とか買春という問題で、やはりこれらが子供の権利の侵害であるという子どもの権利条約の精神を盛り込んだこと、これは私は大変評価をしているところであります。この立場を貫いて、あらゆる場でこの法律が実効性を上げること、そして行政の取り組み、また一層の施策の充実が求められているというふうに考えているところでございます。

 そういう立場で、ちょっとホットな話題になるんですけれども、いろいろ事件が相次いでおりますので、それにかかわってきょうは御質問をさせていただきます。

 一つは、先月二十七日の新聞報道でございましたけれども、本法八条「児童買春等目的人身売買等」がありますが、その罰則規定でありますけれども、この八条適用初の事件というのが兵庫で起きました。これは児童買春、児童ポルノ法施行後初の適用ということでありました。どういう事件であったのか。あわせて、今逮捕という段階でありますけれども、どのような形で逮捕に踏み切ったのかということをお知らせください。

伊藤政府参考人 本事件は、ホストクラブの経営者が売春業者に児童二名をそれぞれ現金五十万円で売り渡した人身売買事件でございます。

 このホストクラブの経営者は、ホストを使いまして被害児童二名を勧誘いたしまして、児童を自己が経営するホストクラブで遊興させまして、回数を重ねさせることによりまして多額の飲食代金を債務として負わせました。また、被害児童らに債務の返済を迫りまして、返済に窮した被害児童らに対して売春宿で稼働することを強要したものでございます。

 また、買い手側であります売春業者は、被害児童の年齢が十八歳未満であることを知りながら、それぞれ現金五十万円で売春婦として買い受け、飲食店内において売春婦として稼働させていたものでございます。

 そうした極めて悪質な事案でございまして、この事件で児童買春、児童ポルノ禁止法の児童買春等目的人身売買等の罪を初めて適用いたしまして、売り手側と買い手側を検挙したという事案でございます。

石井(郁)委員 繰り返す必要もないと思いますけれども、驚くような事案なんですね。十八歳未満といいますけれども、十五歳と十六歳です。この少女たちに、まず酒を飲ませているということもあります。そして、最初はそういう形で大いに接待をしながら、その子供たちに四百万から八百万の支払いを要求する。こんなにかかったんだ、だからそれを返しなさいという形でやるわけですね。それで子供たちは、それを返す方法というのは、子供からすると売春だけれども、大人は買春するということになっていく。マンションに軟禁をして、これは本当に驚くんですけれども、二カ月間で計二百人以上に買春させていたというのが新聞報道であります。

 これが保護されたというか、どうして発覚したのかということを明確におっしゃらなかったんですけれども、その端緒ですね、どうですか。

伊藤政府参考人 発覚した端緒でございますけれども、この児童らはマンションに軟禁されたような状態にあったというふうに聞いておりますけれども、いわゆる待機所みたいな形で使われておったわけですが、そこから逃げ出してきまして、保護者に伴われて出頭してきたということで、一人の少女が来たわけですけれども、それで発覚したという状況でございます。

石井(郁)委員 また後で私はお尋ねしたいと思いますけれども、大臣に伺いたいと思います。

 現代の日本でこうした形での人身売買があったという事実、そして買春を強要したという重大な犯罪がありました。こんな形でいわば人身売買が起きている、子供や少女が犯罪に巻き込まれているという事態、このことについて、この重大性について、大臣はどのように御認識をしていらっしゃるでしょうか。

小野国務大臣 先般、兵庫県におきまして、少女を売春目的で、買春目的で売買したとして容疑者が逮捕された事案につきましては、児童買春、児童ポルノ禁止法の児童買春等目的人身売買等の規定が初めて適用された例でございまして、まことに大人としても本当に悲しい事案と申し上げてよろしいのかと思います。

 捜査中でありますので、事案の詳細は差し控えさせていただきますけれども、少女に売春を強要させておりました行為というのは、まずは大変著しい人権侵害である、到底許されるものではないというふうなものでございますから、このような犯罪が起きたことを非常に深刻に私どもも受けとめているところでございます。

 事案を解明いたしまして厳正に対処いたしますとともに、被害者の保護や、社会としてもこのような行為を許さないという機運の醸成に取り組んでいかなければならない、そういう気持ちになっているところでございます。

石井(郁)委員 法律ができて四年の間で初めてこれが適用されたということなんですけれども、どう見ても、私としては、率直に申し上げてこういう事案というのはかなりあるんじゃないか。つまり、ホストクラブというのがまずある。そこで子供たちがいろいろな形で引き込まれている。そして借金を背負わされるんですね。そうしたらどうやって返すか。脅迫されて、買春しかないという形になっていくわけです。なぜこれが初適用なのかということが一つ私は疑問としてあるんですが、相当数こういう事案がやはり今の日本の社会の中にあるのではないかと考えざるを得ないわけです。

 そこで、伺いますけれども、児童買春、児童ポルノ法では、周旋、このことも規定されておりますけれども、周旋、あっせんによる児童買春ということもあり、そしてこの検挙数などもあると思いますけれども、昨年は検挙数というのはどのくらいあるんでしょうか。また、どういうケースでこれが検挙になっているのかということもちょっとお答えください。

伊藤政府参考人 まず、周旋罪というものでございますけれども、児童買春、児童ポルノ禁止法における児童買春の周旋は、例えば、児童買春しようとする者とその相手方となろうとする児童との間に立って、児童買春が行われるように仲介するような行為を言うわけでございます。

 昨年の検挙状況でございますけれども、平成十五年は八十一件の検挙でございますが、平成十一年の法施行から昨年末までには、合計三百八十一件、二百四十人を検挙しているところであります。

 また、こうした児童買春、児童ポルノ禁止法の周旋罪と似ておりますけれども、違う態様のものとしまして、児童福祉法の方でも、法第三十四条第一項第六号で児童に淫行させる行為を禁止しているところであります。例えば、児童を支配下に置いて性交類似行為等を行わせた場合には同号違反になりまして、児童買春、児童ポルノ禁止法の周旋罪よりも重い刑が科せられるところでございます。

 同法の児童に淫行させる行為としての検挙は、平成十一年から平成十五年末までに、これは児童買春、児童ポルノ禁止法の施行後の時期とほぼ一致しますけれども、この五年間で合計二千二百九十七件、千八百八十九人を検挙しているところでございます。

石井(郁)委員 最近、聞きますと、出張とか出前などと銘打って、女性を相手の自宅などに行かせて性行為をする風俗業、そういうこともかなり広がっているというふうに聞いています。子供であるということを知りながら登録させているということも聞いています。

 私は端緒を伺いましたけれども、やはり子供から駆け込んで、逃げ出して訴えてこういうことがわかる、それはなかなか、やはりそういうケースというのは本当に、全部ができるわけじゃないですから、だから、そこら辺がすごく問題じゃないのかなと思うんですね。

 この児童買春の背景は、言うまでもなく、子供を性的搾取の対象とするということで、子供を買うという大人があるという問題、そして、それを業的に行っている、組織的に行っているという部分がやはりこの社会にあるのではないかということもあります。

 ですから、本当にその実態を把握したり、その対処をきちんと考えるということを政府がやらなければ、やはりつかみ切れないということになっていくわけでありまして、私は、この法律にのっとって、本当に実効性のある対策を政府としてぜひ上げていただきたい。そのためにも、大臣のその点の取り組みの御決意をぜひ、どういうふうにやっていくのかということを伺いたいと思います。

小野国務大臣 本当は、法律はつくりましたけれども、こういう法律に絡む事件の実態が起きようなどというのは思いたくもない、そんな思いでございましたが、現実的にそういうことが現実の姿になってしまったということ、これは、子供たちを守る子どもの権利条約から照らし合わせても、国際的見地から考えましても、あってはならないことでございます。

 各般のそれぞれの対応の中で、子供たちにも、例えば学校教育の中、それから家庭教育の中、さまざまな折々に、そういう買春、売春に関する話題というものも、日常生活の中でだれが承知をさせていくかということもあわせて、そういう業者に対する警察のありようも毅然としたものを持っていかなければならない。それぞれのつかさつかさによる今後の対応というものをより一層しっかりしていかなければならないということを認識させていただいております。

石井(郁)委員 アメリカの国務省が毎年、人身売買についての国別報告書というのを出しているんです。昨年六月の報告書で私は見ているわけですけれども、日本は人身売買の数が多いにもかかわらず、処罰が弱い、訴追の件数が少ない、そういう問題点が指摘されているんですね。

 政府も署名している国連の児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書、この議定書には、国境を越えた形態を含めてあらゆる子供の人身売買を禁止する、締約各国に防止と処罰の義務を課している、こういうものですけれども、やはりその立場で本当に実効性のある施策を行う必要があるんじゃないかという点で、この点でも、アメリカの国務省のそういう報告書で指摘されているという点について、大臣としての御認識も再度伺っておきたいと思います。

小野国務大臣 今、議員御指摘のとおり、米国国務省の報告書によりますと、人身取引を特別に禁止する法律がない、また、実務上適用されている出入国管理法等において科される刑罰が軽いということの指摘がなされているものと承知をいたしております。

 また、児童の権利条約選択議定書におきましては、締約国に対し児童を対象とする人身取引を犯罪として処罰することを求めているわけでございます。

 児童を性的に搾取するために取引するなどという行為は、児童の権利を著しく侵害するものでございまして、先ほども申し上げましたけれども、許されざる行為である。このような行為に対しましてはやはり厳しい態度で臨むことが必要でありまして、今回の法改正の趣旨に沿うものと考えており、今後とも、国際的な動向を踏まえつつ、児童の権利を最優先に対応していくことが必要であると考えているわけでございます。

石井(郁)委員 あっという間に時間になってしまいまして、私は最後に、この選択議定書を政府はまだ批准しておりませんから、やはり一日も早く批准するように求めたいと思います。

 そして、済みません、ちょっと下さい。児童虐待でも、この法改正を見た後で、これはまた新聞報道です。実際の事件は昨年の十二月なんですけれども、大阪では、母親が障害児を抱えて孤立して、六歳の子供を死なせてしまった、そのときには一歳の体重しかなかったということなんです。だから、乳幼児健診とか保健所での健診とか就学前の健診だとか受けていない家庭でこういう悲惨な事件が起きるんですね。

 私は、そういう点でも、残念ながら、きょうおいでいただいて、御答弁を用意していただいたと思うんですけれども、質問時間がなくなりました。私は、今本当に行政がきちんとこの虐待、買春問題に取り組まなければいけないんだ、やることはたくさんあるということを強調させていただきまして、きょうは質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

武山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.