衆議院

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第3号 平成17年3月15日(火曜日)

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平成十七年三月十五日(火曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 藤村  修君

   理事 江崎 鐵磨君 理事 上川 陽子君

   理事 小泉 龍司君 理事 河野 太郎君

   理事 大島  敦君 理事 古賀 一成君

   理事 水島 広子君 理事 池坊 保子君

      岡本 芳郎君    加藤 勝信君

      北川 知克君    小林 興起君

      佐藤  錬君    谷川 弥一君

      葉梨 康弘君    萩生田光一君

      山際大志郎君    石田 勝之君

      泉  健太君    梶原 康弘君

      小宮山洋子君    西村智奈美君

      和田 隆志君    高木美智代君

      石井 郁子君

    …………………………………

   国務大臣

   (青少年育成及び少子化対策担当)         南野知惠子君

   内閣府副大臣       林田  彪君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    麻生 光洋君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北井久美子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    塩田 幸雄君

   衆議院調査局第一特別調査室長           田中 啓史君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  小宮山泰子君     和田 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  和田 隆志君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     小宮山泰子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件


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     ――――◇―――――

藤村委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官山本信一郎君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、法務省保護局長麻生光洋君、厚生労働省大臣官房審議官北井久美子君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

藤村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

藤村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤錬君。

佐藤(錬)委員 おはようございます。自由民主党の佐藤錬でございます。

 南野知惠子法務大臣兼青少年育成及び少子化対策内閣府特命担当大臣に率直にお尋ねをしますので、ちょっと遠く離れておって寂しいですけれども、大臣と私の間柄ですから、どうぞ、ざっくばらんに率直に御答弁を賜れれば幸甚に存じます。

 さて、我が国はことし、さきの大戦、すなわち大東亜戦争、太平洋戦争に敗れてから六十年。まさに戦後還暦。重要な時代の節目であり、原点に返る年であります。

 きょうは二〇〇五年三月十五日であります。まことに平和で豊か、穏やかであります。

 顧みれば、わずか六十年前の一九四五年同じ三月十日、午前零時過ぎから約二時間半にわたり、上野、浅草、本所、深川など隅田川を挟む下町一帯を目がけて、多数の米軍爆撃機B29が大量の爆弾を無差別に投下。この東京大空襲によって、一晩で約十万人もの日本人が熱い炎の海の中を逃げ惑い、黒焦げの焼死体となって亡くなられたのであります。残るは焼け野原であります。

 この後も東京への空襲は続き、三月十二日に名古屋、十三、十四日には大阪でも大空襲があり、終戦までに百五十前後の都市が空襲されました。さらに、八月六日には広島、九日には長崎に原子爆弾が投下され、その犠牲者は五十万人に上りました。そして八月十五日の終戦を迎えたのであります。

 初めから一般市民を無差別標的とする大量虐殺作戦であったこの大空襲は、明白な国際法違反であり、戦争犯罪に当たるものであります。戦後、戦勝国連合軍が敗戦国日本の政治・軍事指導者を戦争犯罪人として裁いた極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判というものは一体何だったのでありましょうか。改めて考えさせられるのであります。

 今日に至るも、あの東京裁判史観の呪縛が、靖国神社参拝問題や歴史教科書問題を初め、いかに強く日本社会の歴史認識をゆがめているか。日本の未来を担う青少年に余りにも過度な自虐史観を教えてきた戦後、日本民族の歴史、伝統、文化に自信と誇りを持たせないように教えてきた戦後、先祖、先達に感謝と敬意を持たせないように教えてきた戦後、もうそろそろ、ことしこそ、戦後の終わり、そして日本再生のきっかけをつかみたいものだ、本当にそう思っております。

 さて、これらのB29は日本のはるか南方にあるグアムやサイパン島の米軍基地から飛び立ったのでありますが、日本本土を空襲する際の中継基地として、ちょうど中間に位置する、東京から約千二百キロメートルの硫黄島を占領する必要が米国にありました。そこで、米軍二十五万人の兵士が集結し、一九四五年二月十六日から三日間、米国海空軍による熾烈な艦砲射撃や豪雨のような爆撃が硫黄島に加えられました。

 さらに、二月十九日午前九時、米軍の南海岸上陸に始まり、三月二十六日までの三十六日間にわたり、はるか南海の孤島において、日本軍二万一千人と、まさに地獄絵のごとき死闘が繰り広げられたのであります。水や食糧、弾薬は既に断たれてしまい、硫黄と塩の責め苦、地熱と太陽の燃えるような乾き、激しい下痢と高熱に冒され、飲まず、食わず、眠らず、死の恐怖と家族を思いながら、飢えと栄養失調で、立ち木が枯れるように日本の兵士が次々と米軍上陸を前にして既に死んでいったのであります。

 そして、やせさらばえて生き残った集団が、生還の望みなく、あえて本土防衛の一石たらんと、皆靖国神社に祭ってもらえることを信じて、不屈の気概ですさまじい火力と鋼鉄に激突して玉砕、全滅したのであります。万歳突撃や自決もあったと聞きます。

 戦死者は、日本軍約二万人、米軍約七千人。その御遺骨はいまだ四割しか収集されておりません。嵐が過ぎて六十年、約一万三千のみたまが硫黄島でいまださまよっているのであります。天皇陛下が平成六年二月に硫黄島にお出ましくだされ、歌を詠まれています。「精魂を込め戦ひし人未だ地下に眠りて島は悲しき」

 実は、先週の土曜日、三月十二日、東京都小笠原村硫黄島にて、戦没者を悼む日米合同慰霊追悼式が行われました。航空自衛隊入間基地から空自輸送機C1に乗り、二時間余りかけて、元兵士や御遺族とともに現地入りしました。米国の退役軍人や現役の米海兵隊総司令官初め多くの海兵隊員も参加し、六十年前、集団的勇気と個人的武勇の画期的で歴史に残る戦いを展開した日米の敵同士が名誉の再会を果たし、手を握り合ったのであります。また、戦後御苦労をなされた御遺族は、いつまでも慰霊碑にぬかずき、水やお茶をかけながらお参りをしておられました。

 二度と戦争をしてはなりません。しかし、わずか六十年前の戦争であえて犠牲になった方々の気持ち、その心、霊魂を忘れてはならないと思います。特に、我々政治家たるものは、国家の危急に殉じた英霊の魂を肝に銘じ、その御遺志を受け継いで国政を担う姿勢が必要だと信じます。

 私も毎朝、靖国神社に参拝してから国会に臨んでいますが、今回硫黄島に出向いたのも、霊魂の叫びを聞くためであります。我が国民は、多くの戦没者の犠牲の上に、平和で豊かな繁栄を築き上げました。復興から高度成長へと経済至上主義、モノ・カネ文明の開化、そして経済大国からバブルへと続いた時代に、何か大切なものを、すなわち私たちの祖先がはぐくんできた大切な伝統や価値観、これを失ってきたのではないでしょうか。それは、武士道などの日本精神の崩壊であり、損得そろばん勘定を超える価値や生きざまの軽視なのだろうと思います。さらに、家族のきずなや地域社会の触れ合い、祖先を敬う心や郷土と国を愛する気持ち、そして、その愛するものを守るために自分は戦うという気概と覚悟などであります。

 今日、日本の有事や危機への対応が論議されております。確かに、戦略的な外交防衛の安全保障、少子高齢化に対応する社会保障、大きな赤字の国家財政、官公庁の行政改革や地方分権など、国民の安全、安心と豊かさを保守するための改革断行が求められております。小泉改革が目指す究極の目的も、国民意識の改革、特に将来を担う青少年の意識改革、また健全育成にあるのではないかと思います。

 日本の危機は外にあるのではなく内にあるのではないか。日本の真の敵は戦後日本人の心の中にあるのではないか。獅子身中の虫という言葉がありますが、それは何なのか。

 南野大臣は基本的に、この戦後精神、戦後教育の面での反省点、すなわち今の日本人に決定的に足りないものは何なのか、大臣のお考えをまず承りたいと思います。

南野国務大臣 先生の歴史観、さらにまた六十年間にわたる先生の本当に多くの思い入れ、戦争は嫌だ、平和だ、そして家族のあり方ということについてのお話が今ございました。

 先生が戦火にまみれておられるころ、私は満州という地域で戦争を迎えておりました。(佐藤(錬)委員「私は戦後ですよ、戦後生まれです」と呼ぶ)戦後生まれでしたか。戦後生まれにしては、御両親から代々とその心を伝えられたということであろうかというふうに思いまして、先生の大和魂がそこに育っているのかな、そのようにも思っております。そういうところで、人それぞれに人生観があり、人それぞれに行動があろうかというふうに思っております。

 御遺骨のお話でございますが、その件につきましても、私もモンゴルに参らせていただいたことがあります。慰霊塔の建立のときでございましたが、多くの方々の犠牲の上に今の平和な日本があるというふうな先生の御感想、全くそのとおりだというふうにも思っております。

 国民の心のありようについてのお話であったかなと思っております。このような問題は、青少年のみならず、大人を含めた我々が、国全体で考えなければいけない問題ではないかなと思っております。

 御指摘のように、戦後の我が国は、経済のお話が出ましたが、経済的価値観を追求する余りに家庭や地域を顧みないことがあったように思われるというお話でございました。また、経済的豊かさが達成される中で、画一的な形で都市が形成され、また、同じようなものを消費する大衆消費社会が展開するという変化も見られたと思います。その中で、自分の育った地域や郷土を大切なものと思う機会が少なくなっているのではないかなというお話でございました。

 しかしながら、もっと家庭を大切にしていく、親、兄弟、家族のきずなという問題に私たちはもっと目を向けなければいけないのではないかなと思います。さらに、地域や郷土、その国の歴史、文化を大切にしたいという気持ちは、この国をもっとよくしたいという気持ちにつながっていくというふうに思っております。その気持ちはこれからも引き継ぎ、代々伝えていかなければならないものであろうかと思っております。

 悪い面だけじゃなく、今でもいい面がいっぱいあるかなと。その中の一つに、若者の中には、さきの新潟県中越地震などの災害時には献身的にボランティアをして取り組んでおられました。社会に向かってひたむきに頑張っている青少年もたくさんおられる。この前のオリンピックでも我々に感動を与えてくれました。いろいろな面での子供たちの頑張りようがそこにあるのかなと思っております。

 私といたしましては、社会として青少年を守り育てていくために、青少年育成施策を推進するとともに、青少年がこの国や社会を大切に思い行動していくことができるような環境整備を進めてまいりたいと思っております。

佐藤(錬)委員 ありがとうございました。

 私はやはり愛国心と宗教心が今足りないのではないかと思っておりますが、これは後日また議論をします。

 時間がありません。次に行きます。児童虐待問題。

 今、合計特殊出生率は一・二九と言われておりますが、これを一・三と計算しても、日本の人口は今一億二千万人ですが、今から四十五年後、すなわち二〇五〇年には九千万人、九十五年後、二一〇〇年には四千万人、そして四百九十五年後、二五〇〇年には、縄文時代、十三万人になるという計算になるそうであります。恐ろしい数字ですが、この急激な下降カーブを緩やかにすることがもちろん重要でありますが、少ない子供をいかに育てるかが日本の将来を決すると思います。

 その深刻な少子化問題の中にある中で、苦労して産んだ子供を虐待により死亡させる事件が相次いでおります。その原因についてどのように分析し、どのように対策を講じているのでしょうか。予防の胎教と母親教育、出産と子育て支援、少ない産婦人科医や小児科医の診療技術点数を上げるなど、医療、看護、保育面でのいろいろな対策もあろうと思いますが、これは大臣が権威者でありますので、ぜひ大臣のお考えを承りたいと思います。

 続いて、関係ですから、児童虐待問題を続けます。

 改正児童福祉法、これで四月一日から児童虐待の相談窓口が、児童相談所に加えて市町村も児童虐待の相談業務を担うこととなりますが、児童相談所と市町村の谷間に虐待事件が埋もれてしまわないように役割分担や連携を明確にしておく必要がありますが、そのことはいかに取り組んでおられますか。

 一つ、ちょうど私にいただいた手紙というか、ラブレターがあります。一主婦の声です。

 小さな虐待は家庭の中にたくさんあります、でもそれが虐待と気づいていない親がたくさんいます、どうしていいかわからないのです、テレビのニュースを見て児童相談所という施設があることはわかっていても、秘密は守られるのかどうかなど不安と心配で、その扉は重く閉ざされた環境の中にあるように思う、もっと開かれた身近な施設、児童相談所になってほしいと思いますという意見もあります。

 以上、大臣の御答弁をお願いします。

南野国務大臣 先生の御発言、本当にそのとおりだと思います。今、一・二九という合計特殊出生率でありますが、皆さんに産んでいただきたいという心はありますが、これは個々の価値観でございます。そういう中で、一・二九という数字のもとで産まれてくる子供の数というのは百十二万人おられるわけです。その方に対して、虐待ゼロでどのように大人に向かって育てていくかということは、我々大人の課題であろうかというふうに思います。

 今先生が最後におっしゃられました児童相談所、これは秘密が守られているのかどうかということでございます。

 そこら辺も含めまして、児童相談所の問題でございますけれども、児童の健全育成を進めていくためには、御指摘の児童相談所の果たす役割は大きいというふうに思っております。

 今後とも、その機能を充実して利用しやすいものにしていくということについては、敷居が高いというようなことは取っ払っていかなければならないというふうにも思っております。また、その場合には市町村との連携も強めていかなければならないというふうに思っております。

 そのような観点から、平成十六年十一月に児童福祉法が改正されまして、この四月から施行されることとなっております。

 これの内容につきましては、児童相談所についての体制の充実を図るため、住民に身近な市町村が児童相談に応じる、その業務をすることを明確化するということと同時に、児童相談所の役割を、専門的な知識及び技術を必要とする事例への対応や、市町村に対する後方支援に重点化したということでもございます。

 これと同時に、児童相談所、関係機関やNPO法人の方々、また民間団体を含めた方々と連携を図っていくということも必要であり、市町村に、保護を要する児童の状況の把握や情報交換ということも行い、ネットワークを設置できることとするとともに、先生が一番気にしておられるネットワーク参加者の守秘義務ということについては、必要な規定を整備したところでございます。すなわち、このネットワークの参加者は、お互いに情報を共有することとされる一方で、部外にはその秘密を漏らすことができないとしたところでございます。

 児童福祉法の一部改正の趣旨は、厚生労働省とも関連いたしておりますので、児童相談所と市町村が十分連携を図りながら協力、支援していくことの重要性も指摘されているところでございます。

 さらに、先生から児童虐待のお話もございました。

 児童虐待の問題に関連してでございますが、おっしゃるとおり、本当に深刻な虐待が今頻発いたしております。児童相談所における相談処理件数が急増しているということも事実でございまして、極めて深刻な状態にあることは、社会全体で早急にこれを改善していかなければならない重要な課題であると認識いたしております。

 青少年育成大綱にも児童虐待防止対策について盛り込んでいるところでございますが、児童虐待対策においては、関係機関が緊密に連絡し、発生予防から早期発見、早期対応、保護、支援、アフターケアに至るまでの切れ目のない総合的な施策を講じていくことが極めて重要であろうと思っております。

 そういう意味では、内閣府といたしましては、青少年施策の総合調整を担う立場から、青少年育成推進課長会議において関係省庁の取り組み及び今後の方針について情報、意見交換を行うなど、関係省庁の連携を図っているところでございます。

 今後は、児童虐待防止法及び児童福祉法の改正も踏まえまして、関係省庁の連携を一層密にし、青少年の最重要課題として、児童虐待の防止に向けた施策の推進を図ってまいりたいというふうに思っております。

 さらに、最後に医療とか看護関係の課題というふうなお話がございましたが、子供の誕生前から誕生後、その生育過程において切れ目のない支援、環境づくりというのが一番大切なことではないかなと。妊婦さんから始まって乳幼児、それから幼稚園、保育所、学校というような形での課題がありますが、その中で虐待や非行の予防というものにもつなげていかなければならないと思っております。

 子ども・子育て応援プランでは、いいお産ということの普及も始めながら、周産期の医療ネットワークの調整、または小児救急医療体制の推進、児童虐待防止対策の推進など、妊娠、出産、育児の安心、安全を確保するとともに、子供の健やかな育ちを支援することといたしており、言うまでもなく、妊娠、出産、子供の成長に当たって助産師の役割は大変重要であるとも思っておりますし、プランの中では母乳育児の推進、そういう細かいところにまで手を出していかなければいけないのではないかな、そのように思っております。

 いずれにしても、医療機関それぞれのネットワークが必要であるというふうに思っております。

佐藤(錬)委員 続いて、少年非行問題をお聞きします。

 少年非行の凶悪化や低年齢化を受けて、十四歳未満で罪を犯した触法少年について、警察に調査権を与え、少年院への送致もできるように少年法改正案が今提出されております。

 少年犯罪を抑止するために、厳罰化をもって対応しようとする動きがある一方、少年法の理念である福祉的保護で立ち直りを援助すべきであるとの慎重論もあります。非行少年の処遇、更生に対する政府の基本的なお考えを承りたいと思います。

 また同じく手紙を紹介します。

 虐待を受けた経験を持つ子供は非行に走りやすいと言われます、青少年の犯罪で、裁かれるのは子供だけというのはおかしいのではないでしょうか、どうしてそんな罪を犯す子供になってしまったのか、その子供の両親はどんな子育てをしてきたのか、子育ての中に何か大きな問題があったから子供は罪を犯してしまったのではないでしょうか、なのに裁かれるのは子供だけで、その子供を育てた両親の再教育の場がないのはおかしいと思いますと。

 もう一点。犯罪を犯した子供の家庭環境がどんなものであったのか、法務省や内閣府の広報などで多くの人に知らせることで犯罪も減少するのではないでしょうか、例えば、あなたの家庭は大丈夫ですか、こんな子育てをしていませんかなど、犯罪を犯した子供の家庭環境を一般国民へ周知することによって対応することが大事だと思いますと。親の再教育や指導の問題と、政府広報についての意見であります。

 ついでにもう一つ追加しますが、テレビ、パソコンなどの情報メディアの影響が大きいのではないかという気がします。ドラマを見ても、殺人を題材にしたドラマが大変多い。それから、お色気番組も深夜放送しておるようですし、これに類するような、有名人、タレントや芸能人がコメンテーターと称して政治、社会評論をしていますね。こんなことをされると政治が軽くなっちゃう。真剣に政治に取り組んでいる我々から見ても聞きづらくてならないんですよ、これは余談ですが。それから、出会い系サイトの事件も多い。携帯電話を含めて、これら情報メディアの規制はできないんでしょうか。御意見を承りたいと思います。

 以上、御答弁願います。

南野国務大臣 先生のお話の中には大きく分けて四点あったかと思います。そういう意味では、なるべく速く答弁させていただきたいと思っております。

 今、テレビ、パソコン、そういうメディアのことに関連しては、青少年を取り巻く社会環境は発展途上にある青少年の人格形成に影響を及ぼしている、先生のおっしゃっているとおりだと思っております。とりわけ、青少年の健全な育成に有害な影響を与える情報があふれていることは極めて憂慮すべきものである、これも同感だと思っております。

 このような環境に対して適切に対応することが必要であり、昨年の十二月、青少年育成推進本部におきまして決定された青少年育成施策大綱では、情報化の進展や青少年を取り巻く有害環境への対応といたしまして、メディアを活用する能力の向上、各種メディア等を通じた有害情報対策、インターネット上の違法または有害情報への対応などの施策が盛り込まれております。

 政府といたしましても、これまでも関係省庁で連携しつつ有害環境対策を行っており、メディア等の関係業界に対しましても、自主規制を促す、そのような要請を行ってきたところでございます。最近では、平成十六年四月に関係業界団体等へ自主的な取り組みを要請いたしましたが、その内容としましては、例えばテレビジョン放送については、暴力、性に関する内容について放送時間帯を配慮することなど、インターネットに関しては、フィルタリングの普及促進と新たな技術開発に努めること等を盛り込んでおります。

 今後とも、地方公共団体や関係業界に対しましても、青少年を取り巻く環境の整備に関し適切な対応をしていこうという取り組みを推進してまいりたいと考えております。

 それと、もう一つの点は、先生がおっしゃっておられた、厳罰化なのか福祉的保護をもって対処すべきか。これには、両方相まった形がいろいろととられており、人によっての感覚としてはいろいろな御意見があろうかと思っております。

 少年非行の背景にはさまざまな要因がございます。子供の規範意識が弱まっているとの先生の御指摘もございましたが、子育ての放棄や児童虐待といった家庭自体の問題、または地域社会のつながりが弱まり子育てを支えられなくなっているという現況など、子供を取り巻く厳しい環境があろうかと思っております。また、少年の、成長途上にあります人格の可塑性に富むという特色があることを踏まえてみれば、一たん非行に走った少年をいかに立ち直らせ、その健全な育成を図るかという視点が根本にあることの重要性ということがうかがえます。このような観点からは、厳罰化か福祉的な保護かということではなく、個々の少年の状況に応じた最も適切な対応をとることが肝要であろうというふうに思っております。

 また、家庭環境の問題も先生御指摘されました。それから、非行少年についての、問題を起こした子供だけが裁かれているというお話もございました。これは親に対する再教育が必要だと先生言及されておられます。

 少年非行など青少年をめぐる諸問題については、家庭、学校、警察、地域社会、関係機関等が連携して的確な対応を図り、社会全体が一丸となって取り組むことが不可欠であるというふうに認識いたしております。非行に陥った少年の立ち直りには、少年が帰っていくべき家庭、とりわけ親の役割が重要でありますが、残念ながら、家庭が十分な役割を果たしていない現場が見られているのは事実かな、そのことに胸を痛めております。

 御指摘のような、少年が立ち直るために、いろいろな関係機関、家族関係の調整や相談、指導、または保護者の再教育などに取り組むことが必要であろうと思っておりますので、青少年育成施策大綱にもその旨を取り込んでいるところでございます。

 そういうような形の中で、少年が非行に陥らないようにという観点のもとに、家庭環境など条件や環境に恵まれない、特に困難を抱える青少年に対しましては、その環境や条件が改善されるよう特別の支援を行うことが必要であるというふうに考えております。

 私といたしましても、非行を起こしやすい状況としてはどのようなものがあり、それに対する対策としてはどのようなことが考えられるかということを調査研究することが必要であると考えますが、非行を起こしやすい状況にある青少年にとって、大半は健全に成長しているということもまた事実であろうか、支援に当たりまして、対象となる個人や個々の家庭への差別意識というものを生じないように十分留意することも必要であろうかと思っております。そのようなことを考えながら、今仕事をさせていただいております。

佐藤(錬)委員 時間が迫ってきましたので、端的に質問しますので、端的にお答えいただければと思います。

 非行に走り、家に寄りつかなくなる少年がふえる一方で、逆に、家に閉じこもって社会から孤立する若者、定職につかない若者もふえております。ニートやフリーターの増加は大きな社会問題であります。その背景には、企業の雇用や若者の社会参加意識、コミュニケーション能力の低下等々ありますし、不登校や引きこもりの問題とも関連があると思います。

 ちょうど今やっておる最中ですが、畜産対策の陳情に養豚の会長が来まして、自分で経験したことなんですが、いわゆる引きこもって不登校な子供に豚の世話をさせると、だんだんだんだん明るくなってきて、意欲、やる気が出てきて、見違えるように明るい子になったといいますし、逆に今度、暴力事件を起こしてきた子供を預かってしばらく置いておいたら、豚はたたくしいじめるし、しばらくは大変だったらしいんですが、そのうちに、非常に優しい愛情あふれる子供に変わっていったというんですね。これは現実、経験者の話ですから、そのとおり私も聞いたんですが、そういうこともあるのでしょう。

 そういう意味では農水省と文部科学省の連携の話ですが、こういったことを考えているときに、この厳しい青少年環境問題を考えれば、問題山積の中で、政府が青少年健全育成施策大綱に基づいて総合的に各種施策を連携、推進していく、特に青少年担当大臣は、青少年行政全般を総合調整するという重要な役割を担っています。日本の将来は青少年対策が決すると言ってもいいと思います。

 そういう意味で、大臣の責任は重かつ大。しかし、歴代の青少年担当大臣はもとより、現在の南野大臣も法務大臣と兼職であります。日本の将来を担う子供たちをどう育成していくかという重要な問題に専任の青少年担当大臣というのを置いてこれからやらなきゃいかぬのじゃないか。小泉総理と一遍相談してみてくれませんか。

 話を聞きますと、青少年育成推進本部というのがあって、本部長は総理大臣が務めている。しかし、大臣が就任して、去年の九月ですから半年間、この推進本部会議は一遍も開かれていないようじゃないですか。それから、副本部長会議というのは、関係閣僚が集まってやるのは十二月に開かれたということですが、ここら辺はもう少し真剣に取り組むべきだと思いますが、いかがですか。

南野国務大臣 先生から三点の御質問があったかと思います。ちょっと時間はかかるかもわかりませんが。

 先ほど豚さんのお話がございました。そういう、土に親しみ、動物に親しむ方々、それによって自分のあれを取り戻したというような子供のお話、これは本当に大切なことであり、そういう環境を整えることが大切なことになってくるだろうと思っております。少子高齢化の中、情報化の中、価値観の多様化する家庭生活の中でも、社会生活の中でも、厳しい雇用問題のもとで、青少年をめぐっては雇用の不安化ということにもつながっていく、そういったもろもろの課題がその中に包含されているというふうにも思っております。

 いわゆるフリーター、ニートと呼ばれる課題については、また話せばこれもたくさん、長いお話になろうかと思います。社会的自立の支援、これを重点課題として取り扱っていかなければならない。

 この問題をめぐって考えるならば、例えば、若者の就業支援のために関係府省が連携した若者自立・挑戦プランに基づきまして、平成十六年度から、若者のためのワンストップサービス、ジョブカフェのサービスをスタートするなど、さまざまな施策を推進しております。また、中にはこのジョブカフェにたどり着けない若者も多いということから、内閣府におきましては、このような若者も含めた自立支援方策を検討することとし、有識者から成る検討会を開催いたしております。

 いわゆるフリーターやニートと呼ばれる若者の中には、コミュニケーション能力の不足から、人間関係を築いたりまたは修復したりする力が弱い若者、また、自然との触れ合いや実体験が乏しい、職業に対するイメージを描きにくい、そういう若者がおられることも先生の御指摘のとおりであろうかというふうに思っております。そういったところでは、厚生労働省、文部科学省と真剣に検討をしながら、青少年の社会的自立の支援に努めているところでございます。

 もう一つの課題は、青少年育成は将来を決するぐらいなので専任の大臣にすればいいのじゃないかというお話がございますが、内閣府特命担当大臣として、青少年育成のほかに少子化対策を担当しております。また法務大臣を拝命しており、それぞれの所管行政においてさまざまな課題がありますが、その時々の状況において、どの課題も常に全力で取り組んでいるということは御理解いただきたい。サボったりしてはいないということも申し上げたい。どれが従でどれが主だということも申し上げたくないと思っております。

 青少年育成につきましては、御指摘のとおり、我が国の将来を左右する大事な課題であると認識しておりますので、専任の担当大臣を置くことも一つのお考えかなと思いますが、いずれにしても、今後とも、青少年育成の特命担当大臣として、与えられた職務を精いっぱい頑張っていきたいというふうに思っております。

 もう一つの点で、もっと積極的に行うべきじゃないかというお話がございました。

 政府全体の青少年育成課題を総合的に推進するための仕組みとしては、総理を本部長として、全閣僚から成る青少年育成推進本部がございます。そのもとに、青少年担当大臣であるという形で私が主宰する副本部長会議が設置されております。

 先生おっしゃるとおり、九月に青少年育成担当大臣を拝命した際に、青少年をめぐる現下の厳しい状況にかんがみまして、新たに就任された各大臣との間で主要施策等に関して協議を行うことが必要と考えまして、十月二十五日に副本部長会議を開催したところでございます。同会議では、少年非行、児童虐待の問題、青少年の体験活動について取り上げ、現在の取り組み及び今後の方針について情報交換を行い、今後一層の連携を行っていくことをお互い確認し合ったところでございます。

 その後も、こうした関係閣僚の間の共通認識を踏まえて、同本部のもとに置かれました青少年育成推進課長会議を随時開催するなど連携を図っており、必要に応じその状況の報告を受けているところでございまして、今後なお一層、副本部長会議を積極的に開催し、関係省庁の施策の密接な連携を図ってまいりたいと思っておりますので、御了解いただきたいというふうに思っております。

 以上です。

佐藤(錬)委員 済みません、質疑時間が終了しましたのでもうこれで終わりたいと思いますが、どうぞ南野大臣、自信を持って、大活躍を祈念しております。

 一つ、ちょっと法務大臣としての質問を。もう答弁はいいです。

 最近、中立公正であるべき公務員が、国も地方も教育公務員も、労働組合による政治活動、選挙活動、目に余ります。これは法律違反であります。その法律違反を堂々とやりっ放しでやっておる。これは何としても、法務大臣、厳密に全国的に調査をして公表、そして、いろいろ職員の厚遇問題もありますから、ここら辺も透明化されて、対処してもらいたい。優しいだけが政治じゃありません。厳格に、強く厳しく対処することがやはり国民の信頼を取り戻すことになりますので、どうぞ法務大臣、期待しておりますから、お願いします。

 以上で終わります。

藤村委員長 次に、水島広子君。

水島委員 民主党の水島広子でございます。

 きょうは、本会議を挟みまして午前と午後とに二分割されておりますけれども、専ら南野大臣に質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 南野大臣、この青少年担当の大臣になられてかなり日がたつわけですけれども、きょう、こうして初めて質問をこの委員会でさせていただくことになりまして、今国会はぜひ、足しげくこの委員会に足をお運びいただきまして、この青少年のことについてしっかりと審議をしていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、ちょっと時のテーマでございます中西一善自民党の衆議院議員の強制わいせつ事件について、冒頭に大臣のコメントをいただきたいと思うんです。

 性犯罪というのは、政治的に現在大きなテーマとなっておりまして、今国会でも大臣は、法務大臣として法案の審議にも当たることになっているわけでございます。そんな中このような事件が起こったということも大問題ですけれども、私がきょう問題にしたいのは、それに対するいろいろな方たちの反応の中にも問題を感じるものがあるということでございます。

 酒の勢いというふうに同情するような声が主に男性から上がっているというふうにも聞きますけれども、例えば三月十一日の朝日新聞を見ますと、石原慎太郎都知事は、「お酒の飲み方を知らないんだね。飲み過ぎたんだよ。」というふうに発言をしています。

 ここに決定的に欠けているのは、やはり被害者側の視点だと思うんです。道に立っていたら突然性犯罪の被害者になった、それは長期にわたって心の傷を残し得る。これは大臣も女性であるのでおわかりいただけると思うんですけれども、このような性犯罪、これは明らかな性犯罪ですが、これを文化の一部のようにしてお酒の勢いとして許容しようとするような姿勢や、また被害者側の受けとめとの温度差というものが今まで性犯罪を生んできた温床ではないかと私は思っております。また、これだけ注目される事件ということになりますと、子供たちに与える影響というのも無視できないわけでございます。

 こういう点も踏まえまして、今回の事件の位置づけを青少年担当大臣といたしまして総括をしていただいて、子供たちにメッセージを発していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

南野国務大臣 本当に、性犯罪、被害者の人権を踏みにじるようなものであり、決して許されるものではないと思っております。その点、先生のお考えと同感であります。また、お酒をたしなむ上では、お酒の勢いでという話もありましたが、やはり他人に迷惑をかけるというのはいけない行為であります。お酒に飲まれてはいけないということであり、ちゃんと節度を持つというものも、人間であれば、大人であれば考えていかなければならないことだろう、そのように思っております。

 私の立場としての見解ということでございます。

 青少年の問題は大人社会の問題の反映であるということを踏まえまして、大人は、青少年の健全な育成を図る上で望ましいものとなるよう、絶えず自分自身の生き方や大人社会のあり方について見直していく必要があるだろうというふうに思っております。

 私たち大人一人一人が青少年のよい見本となるように努力しなければならない、我々の歩き方が子供にとって後ろ姿を見せているというような形になるのではないかな、一人一人が健全に歩いていかなければいけない課題であろう、男性も女性も同じであると思っております。

水島委員 ぜひ、これから青少年に関する施策を講じられる上では、今の視点を本当に大切にしていただきたいと思うんです。

 私も、以前からこの委員会におきましても、子供たちにとって重要なのは一貫性だということを訴えてきたわけでございます。大人社会から一貫性のない気まぐれなメッセージを受け取るということは、子供たちを混乱させることになりますし、それがひいては子供たちの倫理観や規範意識を養っていく上でも問題となるわけです。片方ではこれはいけないことと言いながら、自分の仲間のことになるとそれをひいき目で見てしまったりと、そういう大人の一貫性のなさというものについては子供たちはしっかりと見ております。

 今回の事件につきましても、被害者側の視点というものをきちんと、常に、バランスをそこで欠くことがないように、きちんと被害者側がどんな目に遭ったのかということを忘れられないように、このようにお酒の勢いといって許容するような発言が出ましたときには、しっかりと、南野大臣としましても、そのような発言はちょっと被害者側の視点を欠くのではないか、そのようなことを必ず申し添えていただきたいと思っておりますけれども、よろしいでしょうか。

南野国務大臣 大変難しい課題といいますのは、いろいろなところで起こっているところに、すべてに対応というのはなかなか難しい問題であろうかと思っておりますので、私のスタンスは変えないで生きていこうということで御了解いただきたいと思います。

水島委員 もちろん、すべての人がいろいろなところで発言していることに対して抗議をしろと言っているわけではなくて、少なくとも南野大臣の目の前でそのような発言がなされたときにはきちんと対応していただきたいということでございますので、今深くうなずいていらっしゃいますのでお約束いただけたと思います。よろしくお願いいたします。

 さて、民主党では、子ども家庭省を設置することをマニフェストに掲げております。子供についての政策や家族政策に包括的に取り組むための省庁として提案をしているわけでございますけれども、これは縦割り行政から子供を守るために必要だと思って考えさせていただいております。

 この子ども家庭省を設置することの必要性について、まず大臣の御意見を伺いたいと思います。

南野国務大臣 我が国の将来について、子供たちを立派な大人に育てていくというような観点からは、健康の確保だとか教育の充実、就業の支援、非行対策などさまざまな分野の施策について、まさに省庁を挙げて取り組む必要があるというふうに思っております。

 このために、全閣僚が参加する青少年育成推進本部、また少子化社会対策会議におきまして、青少年育成施策大綱や少子化社会対策大綱を推進し、関係行政機関の各種施策の調整を図っているものでもございます。

 子ども家庭省を設立するという先生の御提案がございましたが、私といたしましては、青少年育成及び少子化対策を担当する特命担当大臣として、このような仕組みも活用し、関係省庁の総合調整を図りながら、子育てや青少年の健全育成の総合的推進に今全力を注いでいるところでございます。

 先生のおっしゃっておられる家庭省の設置というようなことについて、現在、関係省庁のもとにある子供や家庭に関する諸施策を所管する部局を切り出して統合し、子供や家庭の問題に対する観点から新たな省を設けるということの御提案と思いますけれども、例えば、これらの諸施策を社会保障制度全体や教育制度全体の中でどのように位置づけていくのかといった調整の必要もあり、御提案がうまく機能するかどうかについては、私としては慎重に検討すべき問題と考えております。

 ノルウェーの子ども家庭省という図式を見させていただいておりますが、これにつきましても、私は、今内閣府の中で取りまとめてやっている課題と似ている、またはこの中身を今精いっぱいやらせていただいているというふうに理解したいと思っております。

水島委員 今、関係する省庁から子供の部分を切り出してというふうに大臣はおっしゃったのですが、ちょっとそれは答弁書をつくられた官僚の方がよく理解されていないのではないかなと思うのです。

 あくまでもそれぞれの、教育にしろ社会保障にしろ、もともとの役所の中に当然子供を担当する部署というのは残った上で、子ども家庭省というのがそれを統括するためにございまして、もともと原省との連携なくしてそんなものが進められるわけはございませんので、そんなとっぴなことを申し上げているわけではないのです。

 ぜひ、もう一度お持ち帰りいただいて、お勉強いただければと思うのですけれども、例えば、これは子供だけではなくて、男女平等担当大臣なんというのがいるようなところでも、あるいは韓国にできました女性部なんかもそうなんですが、本当に省庁そのものは非常にスリムな、スタッフだけを抱えていて、ただ、それが、例えばスウェーデンなんかですと男女平等の担当大臣というのはいるのですけれども、そのほかに各省庁に、例えば、私、この前、法務副大臣で男女平等担当の方というのにお会いしましたが、そうやって今度は、各省庁にきちんと連携する人を配置して、そして全体の行政のレベルを上げていくというふうにやっていきますので、日本で子ども家庭省をつくるときにも当然そういうスタイルになってくると思います。

 子供に関するところをほかの省庁から全部切り取って一カ所に集めようなどという、そんなことを考えているわけではございませんので、そこは御心配をいただかなくていいと思うのです。

 その上で、ちょっと前提をきちんとした上でもう一度伺いますが、大臣今おっしゃったように、青少年と少子化というのを担当されていますので、所管する範囲としては私たちが考えている子ども家庭大臣に近いと思います。ですから、大臣は、今ある資源の中で何とかできるのじゃないかというふうにおっしゃっているわけですけれども、これは、本当に今の大臣のお立場で、子ども家庭省というものをきちんとつくらずに成果を上げられるというふうに今大臣は考えておられるというふうに考えてよろしいのでしょうか。

南野国務大臣 先生がおっしゃったように、それだけでというようなことではなく、今のこのあり方、このシステムの中におきましても、ちゃんと関連する大臣、閣僚とはしっかりと検討し、その各省庁がその必要な分野に応じてはちゃんと行動をともにし、施策をつくっているところでございますので、今これで十分やっていけるのではないかな、またシステムが変わります場合にはそのようなことを考えられてもいいのかなと思っておりますが、今精力を上げて今のシステムでやっていこうとしているところでございます。

水島委員 それでは、例えば二〇〇五年度の予算で、各省庁がどのような予算を子供のために組んでいるか把握をしていらっしゃるでしょうか。そして、青少年と少子化を担当する大臣として、各省庁にその予算についての要望や注文というのは出しておられるのでしょうか。

南野国務大臣 その予算に関連してでございますが、平成十七年度の政府予算案における青少年関係予算及び少子化社会対策関係予算につきましては、各省庁の御協力のもと取りまとめ、関係省庁相互の情報の共有を図り、連携して取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

 昨年十月二十五日に私が主宰させていただいた青少年育成推進本部の副本部長会議におきましても、各省の概算要求を踏まえながら、主要課題である児童虐待、少年非行、若者の社会的自立について、関係大臣の間で情報、意見交換を行い、関係省庁が全力で取り組んでいくことを確認したというところでございます。

 また、事務レベルでは、青少年育成推進本部のもとに設けられた青少年育成推進課長会議等の場におきまして、概算要求やら予算案について情報交換を行い、予算の確保を含め、関係省庁が連携して着実な施策の推進に取り組んでいくことを確認したところでございます。

 また、各省庁におきましては、厳しい財政状況のもと、青少年育成と少子化対策の重要性にかんがみ、予算額の充実に尽力いただいたものと考えております。

 私といたしましては、青少年育成と少子化対策の重要性にかんがみ、さらに平成十八年度の概算要求におきましても、青少年育成施策大綱と少子化社会対策大綱をさらに推進するため、関係閣僚からもよく御意見を伺いながら、関係施策の充実に向けた予算の確保に努めたいと思っております。

 先生が幾らかとお話しになられましたので、青少年関係予算は、予算額が特定できるもののみを合計した総額でございますが、約四兆四千五百十七億円であり、対前年度約三千百九十五億円の減額とはなっておりますものの、一方、少子化社会対策関係予算は約一兆三千百二十五億円であり、前年度約六百八億円の増額となっております。

水島委員 今、大臣は、きちんと連携をしている、予算についても承知をしている、要望もしているという御答弁でございましたので、それがきちんと成果を上げられたかどうかというのを、またぜひ後日伺いたいと思っております。

 御承知のように、ノルウェーの子ども家庭大臣というのは、独自の予算を持つとともに、各省庁の子供関連の予算を掌握して、この省庁では子供に使っているお金が少な過ぎるとか、ここはもっとこういうふうに使うべきだというようなことを、かなり強力に注文をつけたりしているということでございます。そのようにして、そのくらい強力に進めていかないと、実際には縦割り省庁をきちんと統合して包括的な取り組みをしていくということは難しい。ただ単に内閣府に青少年担当の特命大臣を置いたからといって、この縦割り行政が打破できるわけではございません。

 これは実は、今までも南野大臣と同じ職に当たられた方たちが、私もこの委員会でずっと質問をしてきましたけれども、最終的には、これは厚生労働省だから、これは文部科学省だからという形で、結局なかなか打破してくることができなかったところでございますので、今、南野大臣がかなり自信を持ったお答えをしてくださいましたから、今回はでは期待をさせていただいてよろしいのかな、きょうのところはそのように伺っておきたいと思います。

 ぜひこれから、例えば幼稚園と保育園の問題など、そういうことも含めまして、ぜひ、縦割り行政、省庁のどこが担当だからということが言いわけとなって子供の視点が置き去りとされないように、その点については南野大臣が責任を持って省庁との連携を図っていただけるということでございますので、ぜひ、これからも個別のテーマについてまた伺ってまいりたいと思っております。

 そして、そのようにして包括してやっていくときには、当然、予算のチェックということも必要なんですけれども、やはり先ほども申しましたように一貫性というのがとても重要だと思っております。

 各省庁が全く逆方向を向いたような施策を考えているようでは、本当に子供の体は一つですから、子供は大変混乱した育ち方をしてしまうわけなんです。大臣は、青少年育成と少子化対策を担当されているわけでございますけれども、この青少年育成、そして少子化対策というのは、私はこれにあえて児童虐待防止も含めさせていただきたいのですけれども、この三つはいずれも同じことを扱っているというような御認識を大臣はお持ちでしょうか。

南野国務大臣 当然持たせていただいております。

水島委員 それは大変心強い御答弁なんですが、何か、健全育成というと全く違う方向を向いてしまったり、虐待防止というとまた違う方向を向いてしまったりという政治家の方が多いように思いますけれども、結局、扱っているところは全く同じというところだと思います。

 今の社会は、もう皆さんも御承知のように、地域の子育て力というのが落ちておりまして、私はこれは、家庭の子育て力が落ちているんじゃなくて、地域の子育て力が落ちているから、その地域の中における家庭の子育ても難しくなっているんだと思っております。例えば、そんな中では、テレビを長時間見ると暴力的になるという、これはかなり信頼できるデータもございますけれども、密室育児で、あるいは近くに頼れる大人がいなくて、親が忙し過ぎて、そして地域に家庭が開かれていなくて、そしてテレビの前に子供が放置されているというのは、これは一種のネグレクトと言ってよい状況だと思います。そのような状況に置かれている子供が、現実には大変多くなっていると思います。

 地域においてどれだけいろいろな大人が子供にかかわれるかということが子育てにおいて一番重要なことだと私は考えておりますけれども、この地域の子育て力を高めるということが、実は子育て、また少子化、虐待防止、いずれにとっても重要であって、すべてに対する解決策ということになるわけでございますので、結局、その基盤は同じということだと思います。このためには何が必要かというと、これは男女を問わず、大人がもっと自分の地域に帰れるようにしなければいけないということでございます。

 きょう、この部屋にいらっしゃる方も皆さん仕事が忙しい方ばかりですので、地域にどれだけ帰られているかというと、多分一番帰られていないんじゃないかなと、官僚の方も含めてそのように思いますけれども、つまり、そういう状況を変えていかなければいけないわけであるわけです。いわゆるワーク・ライフ・バランス、つまり仕事と生活の調和というものをすべての人が図っていくということが重要であって、そこを突破することなくして子供たちだけ健康に育ってもらいましょうというのは、余りにも一貫性のない、手前勝手な希望だと思うわけです。

 このような目で各国のデータを見てみますと、男女共同参画と子供への支援の両輪、つまり、男女共同参画というのは、男性にとっても女性にとってもワーク・ライフ・バランスをきちんととっていくということを意味するわけですけれども、その男女共同参画と子供そのものへの支援というものの両輪を強力に進めてきた北欧のモデルというのが最も少子化抑制効果が高いということになっているわけです。

 南野大臣も、この少子化というものに取り組む上で、また青少年の育成、虐待防止、こういったところ全部考えていく上で、基本的には、男女共同参画と子供への支援を両輪で進めていく、このようなスタンスに立っておられるということでよろしいでしょうか。

南野国務大臣 ぜひそのようにお考えいただきたいと思っております。

 先ほど、保育園と幼稚園のお話も先生されました。今のように、男女共同参画社会のあり方ということもお話しになられました。先ほど佐藤先生の御質問にも答えさせていただいた中には、やはり切れ目のない社会的な環境づくり、応援というのが必要だ。

 そのために、昨年の十二月に、これは副本部長会議で決めたネーミングでありますが、私、厚生労働大臣といろいろと話をしながら決めたものの中に、テーマとして子ども・子育て応援プランという形で今展開していこうと思っています。子供だけを育てるんじゃない、支援するんじゃない、子育ても支援していかなければいけないという形の中には、やはり大人が子供をどのように身近に感じてくれるかということであり、子供は親を選べないわけであります。選ばれる親になっていただくために、どのような自分の身の振り方があるのか、子育てができるのかということも真剣に考えていただきたい。子供、親とのきずなが一番大切な問題になるのではなかろうかな。

 子供さんの育っていく変化を確かめたい、自分のこの手でそれを育てたいと思われる方は、どんなに職場が忙しくても、やはり寝ている顔だけを見るんじゃなく、子供が起きているときに少しは帰られる、ともに食事をされる、そういった環境を自分の職業を通しながらみんな考えてくださっているのが親業であろうと思っております。

水島委員 今、子ども・子育て応援プランのことを大臣はおっしゃったわけですけれども、その思想そのものは全く私も異存はないんですが、ただ、この子ども・子育て応援プラン、全体を見ますと、事業主の理解が得られないことには進まないものばかりが実は一番重要な部分を占めておりまして、ここが私が実は一貫性というふうに申し上げたいところなんです。片方ではもっと親はうちに帰らなきゃいけませんと言いながら、もう片方ではこの不景気のときに何を言っていると言う大人がいる。この一貫性のなさから子供は一体何を受け取るかというと、ああ、やはり子育てというのは二の次の問題なんだな、そういうふうに感じ取ったり、あるいは、混乱したメッセージの中で自分がどれほど大切な存在かがわからなくなってしまったりというようなことにもなっていくわけなんです。

 実際には、今また南野大臣は親業という言葉でおっしゃったんですが、これは実は子供を持つ親だけの問題ではなくて、子供を持たない方も、地域でぜひ御自分のお子さん以外の方とかかわってほしい。先ほど私、地域でどれだけいろいろな大人とかかわれるかというふうに申し上げましたのは、家庭で自分の親とだけかかわっていればいいというわけではない。地域で自分の親以外の大人とどれだけかかわれるかということが、例えば南野大臣のお子さんだった時代のことを思い出していただいても、それはかなり人間性を養っていく上で重要なところだったと思っております。

 そのことを確保していくためには、子供がいるいないという、今までの仕事と家庭の両立、仕事と育児の両立というその狭い枠にとどまることなく、すべての人が本当に仕事と生活を調和させるという、このワーク・ライフ・バランスの考え方が非常に重要なのだと思っております。

 そのときに、ただ、そうはいっても、なかなかちぐはぐになってしまって、常に子供の視点から見ている人からすれば、もっと親はうちに帰るべきだ、大人は地域に帰るべきだと言う。もう片方は、いやいや、経済のためにはそんなことは言っていられないと。ここを何とかしていくのが実は南野大臣に要求されている仕事なんだと私は思っております。

 例えば、男女共同参画との連携ということでいえば、男女共同参画は、今所管されているのは官房長官ということになっています。これは、ノルウェーの子ども家庭省では両方同じ大臣がやっているんですけれども、日本の場合には官房長官と南野大臣というふうにそれぞれ担当が分かれていますので、ここできちんと連携をしていただくことも必要ですし、また、実は子育てというのは、今まで厚生労働とか文部科学の枠だけで語られてきましたけれども、実際は私は経済産業とか総務とか、そちらの担当している領域の方がずっと大きいんじゃないかと思っております。そういったところにも体当たりでぶつかっていって、子供のために何とかしてくれというふうにやっていくのが南野大臣の職責ではないかと思っているんですけれども、そのあたりについては、ちょっと一言御決意をいただけますでしょうか。

南野国務大臣 先ほども申しました、それについて全力で取り組んでいるわけでございまして、副本部長会議が一回あったから、それだけで私の役割は終わりということではありません。閣僚とは火、金会っておりますし、閣僚懇談会の中でもそういうテーマを投げることもございます。そういう形の中で、全閣僚が取り組んでいただきたい課題であるということでございますので、また先生からいろいろ御指導いただきながら、どういうことを取り上げていくかということも踏まえまして、しっかりと自分なりの職責を果たしていこうと思っております。

水島委員 実は、私、十二月に韓国に行ってまいりまして、韓国では子供ではなくて女性部、女性省ができたので、そこも見てきたんですけれども、その女性部の大臣が、結局、閣議で各省庁の男女共同参画にかかわるところを常にチェックしていて、いろいろとかみつくもので、もうそろそろ女性部の影響から逃れることが各省庁ともできなくなってしまったということなんです。

 ですから、ぜひ南野大臣には、閣議におきまして、子供のための番犬としての役割ですね、子供にとって子供を後回しにするようなものを出してしまうと、南野大臣といううるさい人がいていつも何かかみつかれるから、これからは子供のことを真っ先に配慮して考えようと、各大臣がちょっと震え上がっていただくような、そんな大臣として御活躍をいただきたいと思いますし、南野大臣ならそれができるんじゃないかと思いますので、ぜひ、これはこれからまたおいおいその成果を伺ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、子供を中心に据えて行政を進めていくというのが子ども家庭省として私たちが提案をしているものなんですけれども、もう一つ、子供の代弁者として、行政をチェックしたり提案をしたりしていくというものとして、子どもオンブードが必要だということも提案をしております。子どもオンブードを設置する必要性については、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

南野国務大臣 先生がおっしゃっている子どもオンブードの問題については、ノルウェーのことがお考えの中にあるのかなと……(水島委員「ノルウェーだけじゃなくて、あちこちあります」と呼ぶ)あちこちございますか。

 ノルウェーの問題であるならば、国の機関として設置された、児童の権利にかかわる事項として、議員が提出する法案についての意見具申や新たな法案の必要性の提案、また、政府に対しては子供の権利擁護の観点から必要な意見を述べること、または児童及びその親権者等からの情報に対して返答することなどの機能を持っていると承知しておりますが、こういうような観点で、我が国ではそのような意味での子どもオンブードということはわざわざつくってはおりませんが、私といたしましても、いろいろな場面において、青少年に携わる人々を初め、多くの御意見をちょうだいし、政策への反映に努めてきておりますし、子供の観点を重視した取り組みを進めていきたいと思ってもおります。

 また、政府におきましても、子供の人権侵害の調査、または処理及び人権相談などの活動を行う子どもの人権専門委員の仕組みを活用し、子供の人権を守っていくとともに、諸外国の例も踏まえ、我が国に適した子供の人権を守る仕組みについて絶えず検討してまいりたいと思っております。

 さらに、子どもの人権委員会というのがあるのは先生も御存じだろうと思っておりますが、法務省では、平成六年度から、子供の人権にかかわる問題を専門に行う子どもの人権委員を設置しております。この子ども専門委員は、法務大臣から委嘱された人権擁護委員の中から選任されております。子供の人権相談所や子どもの人権一一〇番等を通じて、常に子供の人権に関する情報の収集に努めているとともに、PTA、子供会、民生児童委員等との連携を深めながら、子供が発する信号を早くキャッチして、その問題の解決に努めていこうということでございまして、これは平成十六年四月一日現在で、今全国で六百九十人が配置されております。

 そのような観点で、縦割りでなく横で、いろいろな、協力できる省庁は協力していこうという形の中で展開しておりますので、御理解いただきたいと思っております。

水島委員 人権相談という観点からいえば、今の機能を充実させていけば何とかなるのかもしれないんですけれども、この子どもオンブードに期待されている役割というのは、個別の相談に応じるということだけではございません。

 私も、二〇〇三年にこの委員会の派遣でノルウェーに行かせていただきまして、またその翌年には、ノルウェーから子どもオンブード御本人にも日本に訪ねてきていただいたりいたしましたけれども、例えばノルウェーでは、前にこんなことがございました。

 政府が、子供に対して性的虐待を加えた者は五年間は保育園等で働くことができないという法律改正案を国会に提出いたしました。オンブードはこれに反対をいたしまして、五年間ではなく永久に働くことができないようにすべきだというふうにさらに厳しい提案をいたしました。これについては、民主主義の根幹に反するなどという反対意見も強かったそうですけれども、オンブードは子供の権利が優先されるべきだというふうに考えまして、その修正意見というものを主張したそうです。結局、そのオンブードの熱意にも突き動かされまして、世論も動いたんだと思いますけれども、国会はオンブードの意見を採用して、現在の法律は、子供に対して性的虐待を加えた者は保育園等で働くことができない、そのようになっているそうでございます。子どもオンブードが子供の代弁者としてどれほど大きな力を持っているか象徴する出来事だと思います。

 法案提出権はオンブードにはないんですけれども、ただ、国会に提出された法案についてこれだけ強力に意見を言うことができる、そういう存在が、日本政府に対してもきちんと独立して意見が言える強力な子どもオンブードが必要だと思うんですけれども、もう一度そういう観点からお答えいただけますでしょうか。

南野国務大臣 その観点からでございますが、政府の法律や施策におきましては、子供の観点を重視して取り組んでいくことについては、すべての府省庁において心していくべきものである、これはまず最初にお答えしたいと思っております。

 我が国には今先生がおっしゃったオンブードの仕組みはございませんが、青少年育成に携わる方々から御意見を伺ったり、パブリックコメントや青少年電子モニターの仕組みを活用して、子供の観点を重視する立場から御意見を多くの方々から聞きながら、青少年育成施策の推進に努めてまいる所存でございます。

水島委員 多分それでは全く足りないと思いますので、私たちはさらに子どもオンブードが必要だということを訴え続けてまいりたいと思っております。

 きょう午後にももう少し個別のテーマを伺おうと思いますが、これからいろいろと個別のテーマを議論していく中で、だれがちゃんと子供の代弁者として意見を言えているのかということをきちんとチェックさせていただきたいと思いますし、今の御答弁でいけば、南野大臣が恐らく子どもオンブードの役割も同時に果たしてくださるというような感じですが、政権の一員であって、またその影響下にある南野大臣がどこまで独立して子供のために機能できるのかというあたりはお手並みを本当に拝見したいところだという、大変失礼ながらそんな言い方をとりあえずさせていただきます。

 なぜかというと、私たちは、幾ら南野大臣が有能な方であっても、やはり、これは第三者機関として独立していなければ、政権の影響下にある人にそこまでの仕事を期待することはできないのではないかというふうに考えているから子どもオンブードが必要だというふうに提案しているわけでございますので、そこの趣旨をよくお酌み取りいただいて、また御検討いただきたいと思います。

 また、前の小野清子大臣のときからですか、ずっと同じ質問を続けているんですけれども、その都度、日本にとって一番適切な子供の人権を守る仕組みを考えたいというふうな御答弁で、この辺でそろそろ結論をきちんと出していただいて、一度お示しいただいた方がいいんじゃないかなというふうに思っておりますので、子どもオンブードをつくるということをちょっと優先課題として頭に置きながら、先ほど言ったような、国会に提出されている法案に意見を述べるくらいの強力な力を持った存在として何がつくれるのかということは、ぜひお考えをいただきたいと思います。

 そして、午前中の最後の質問にさせていただきたいと思いますが、大臣は、今回、法務大臣と、また青少年担当と、それから少子化対策というものを兼任されているわけでございますけれども、実は、法務大臣と子供関係の大臣というものの兼任はこれが初めてということになります。南野大臣がやっておられる仕事は、最初は官房長官がされていて、官房長官が官房長官と青少年担当というのは、両方だと忙し過ぎて委員会に来られないんじゃないんですかなんて私が質問しましたら、官房長官はそのときは大丈夫ですとお答えだったのに、その後、今度特命大臣になって、鴻池大臣になりまして、それであの暴言がございまして、その後、今度小野清子大臣になりまして、そして今度南野大臣になったというような、そんな歴史的な変遷を経てきていると思うんですけれども、そんな中で、法務大臣が兼任されるというのは初めてのことでございます。

 これで、日本でもようやく法務行政を子供の視点から見ていただけるのかなというふうに私たちは期待してよろしいんでしょうか。それとも、法務大臣というのは本当に忙しい仕事ですから、法務大臣などという忙しい大臣が片手間にやるのだから余り期待できないというふうに失望すべきなんでしょうか。どちらなんでしょうか。

南野国務大臣 先生からいろいろお話しでございますが、片手間でやっていると言われる私はどんな顔をすればいいのかなというふうに思います。

 一つ一つが大切でございますし、問題としてはオーバーラップしているものもございますし、どちらがどちらで優先ということは申し上げられない。すべてこれは人にかかわる課題でございます。国にかかわる課題でございます。そういう意味では全力を挙げてやっているわけでございまして、といっても、私一人で何ができるかわからない、全閣僚とともにこれは歩いていかなければならない分野もあるということでございます。

 特に、関係する省庁とは連携を密にしていかなければならないということでございますが、法務大臣の所掌事務については、人権の擁護、青少年の保護矯正、親子の関係に関する法制など、青少年にかかわる重要な事項が多く含まれております。御存じのとおりだと思います。法務大臣とあわせ、内閣府の特命担当大臣として青少年育成及び少子化対策を担当しておりまして、私といたしましては、法務大臣としての職務を遂行するに当たっても、青少年の育成という観点を十分に踏まえながら、少子化ということも念頭に置きながら取り組んでいっているところでございますので、どうぞ御了解いただきたいと思っております。頑張ります。

水島委員 何となく少しわかった気もしますけれども、元来というか、今まで法務大臣というのは法務大臣職に専念されてきておられまして、それはそれで本当に忙しい仕事だなと、私も前、法務委員会にいましたのでよくわかっているつもりなんです。

 あえてその忙しい法務大臣にプラスアルファでこういう仕事が兼務されるということになったのは、これは最終的には任命権者の小泉総理大臣に伺わなければいけないのかもしれませんけれども、やはり南野大臣としては、法務行政というものにも、青少年の観点とかあるいは今日本が抱えている家族政策の全体の観点とか、そういった観点をもっと盛り込んでほしいというような期待も込めて南野大臣がこのたび兼任ということになられたというふうにとらえていらっしゃるんでしょうか。

南野国務大臣 最初からそう思ってこの仕事につかせていただいたわけではありませんし、歩いていきながら、いろいろな問題点をとらえていく姿勢というものを自分なりにつくっていこうと思っているところでございます。

水島委員 そうすると、任命された時点では、特に小泉さんの方から、南野さんはこのために兼任にしているんだというような、そういう説明とか注文は何もなかった、ただぽろぽろと個別に任命されたというふうに考えてよろしいでしょうか。

南野国務大臣 それはどうお答えしていいのかは私もわかりませんが、最初には法務大臣ということで認証をさせていただいたわけですが、それから、内閣の役割として、内閣府にある特命担当という形を仰せつかったということでございますので、それはころころ方針が変わったとかそういうことではない、総理の頭の中には一貫したものがあったのだろう、今から推察すればそのようにも思います。

水島委員 あったのだろうということなんですけれども、今までの法務大臣は、法務大臣ということで任命されてそこでおしまいだったわけで、その次の、内閣の中の仕事としてというそこが追加されなかったわけなんですけれども、南野大臣の場合にはそれが追加されている。

 ちょっとこの点、しつこく質問していて申しわけないんですけれども、やはり法務大臣というのは今まで本当にずっと法務大臣だけをされてきた。そこに、今回こうやって新たに、内閣の中の、今度は内閣府の特命大臣としての役割が追加されたということは、やはりちょっと注目に値すべきことだと思っておりますので、その点について、それを拝命されるに当たって何か事情を聞かれたりということは特になかった、またその法務大臣の職責とどのようにバランスをとっていくかというようなことについても特に何もお話はされていないというふうに理解してよろしいんでしょうか。

南野国務大臣 我々の仕事の中にはあうんの呼吸というものもあろうかと思います。こういう問題点についてはこのような対策を立てるという気持ちも、これがなければ議員として務まらない部分もございます。

 そういう意味で、総理の任命をいただいたその問題について、私なりに真剣に考えて今歩いているところでございます。そういうところでございますので。

水島委員 では、また午後に質問を続けさせていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

藤村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。水島広子君。

水島委員 それでは、午前に引き続きまして質問をさせていただきたいと思いますので、南野大臣、よろしくお願いいたします。

 午後は少し各論について伺いたいと思います。まず、児童ポルノについて伺いたいと思います。

 先日、ヨーロッパにおけるペドファイル情報ネットワーク根絶プロジェクトであるコピンプロジェクトの副代表のクエール博士が、外務省のオピニオン招聘プログラムで来日され、お話を伺う機会がございました。内閣府からも法務省からもいらしていたので、よく御存じだと思います。

 まず、児童ポルノの規制についての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

南野国務大臣 児童ポルノにつきましては、そこに描写されております児童の尊厳を害しているばかりではなく、児童を性の対象としてとらえる風潮がある、そういうことについては非常に有害なものであるというふうに思っております。

 警察当局におきましても、平成十一年に制定され昨年改正された児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律を厳正に運用するなどして、児童ポルノに係る行為の規制を行っているものと承知しておりまして、私としても児童ポルノが一日も早くなくなることを望んでおります。

水島委員 今、そこで描写されている子供本人の人権ということのほかに、子供を性の対象として見る風潮というふうにおっしゃったわけですが、そういう観点からいきますと、議員立法では見送りになっております漫画とか疑似ポルノなどについては、大臣はどうお考えになりますでしょうか。

南野国務大臣 現行でありますいわゆる児童買春、児童ポルノの禁止法、これは児童を性的描写の対象とした表現物のうち、実在する児童を描写したもののみを規制対象としているということでございます。

 実在する児童を描写したものでないポルノの規制、それの要否につきましては、平成十一年に同法が制定された際及び昨年に同法が改正された際にも、児童の保護や表現の自由との関係などから法案を提出する議員の間でさまざまな議論があったと承知いたしておりますので、今後ともこのような議論を踏まえながら規制の要否が決せられる問題であると考えております。

 なお、漫画でありましても、刑法のわいせつ物に当たるものとして、その販売をした者を起訴し、第一審において有罪判決が言い渡された事例があるとも承知いたしております。

水島委員 今の御答弁では、とても午前中、子供の利益を代弁して大臣みずからが子どもオンブードのように活躍してくださるというのからは、ちょっと違うのではないかというふうに思います。

 あくまでも子供の利益を代弁して発言していただくのであれば、いろいろな議論があるうちのやはり子供の視点に立った方の観点から御答弁なさるべきではないかと思うんですけれども、きょうは、ここへ青少年担当の大臣として来られているわけですから、その点についてもう一度答弁をし直していただきたいと思うんですね。

 といいますのが、今、子供を性の対象として見るような風潮というふうにおっしゃいましたけれども、そういう雰囲気だけではなく、実はこの児童ポルノを規制しなければいけない理由の一つとして、これはきちんとしたデータがございますが、一部の人にとっては児童ポルノに触れる機会が多ければ多いほど性犯罪に至る可能性が高くなるというデータがございます。

 日本ではいまだに、児童ポルノがあるおかげで犯罪が減っているんじゃないかなどという意見を堂々と主張する人もいるようですけれども、これは基本的にきちんとしたデータに基づいて考えれば、一部の人にとってですけれども、そういう児童ポルノに触れる機会が多ければ多いほど性犯罪を起こす確立が高くなる。

 そのようなことを考えますと、児童ポルノを、これは漫画や疑似ポルノであっても規制しないでおくということは、当然それらに触れる機会を一部の人たちにとってふやすことになって、結果として子供を対象とした性犯罪をふやすということにもなるわけで、これは青少年担当の大臣としてはきちんと規制の対象としてその可能性を検討していただかなければいけないと思うんですけれども、もう一度御答弁いただけますでしょうか。

南野国務大臣 子供の利益というのは、それはもう本当に重要なものであると思いますけれども、いろいろな課題について、自分の立場ということについても、これはバランスをとって考えないといけないということになってまいりますので、そのような形で答弁させていただきます。

水島委員 バランスをとってというのは、最終的に政治決着の場でバランスをとればいいわけであって、やはりまず提案する人がいなければ議論にならないわけなんです。

 ちょっとまた午前中の質問みたいになりますけれども、そうすると、大臣は、青少年担当の大臣としては子供の利益を代弁してきちんとやってくださると先ほど御答弁を下さったので、この場合は、子供の利益を考えれば、児童ポルノ、それは漫画や疑似ポルノであっても根絶に向けて規制をすべきである、そのように大臣は答弁されるべきだと思うんですが、もう一方では恐らく法務大臣としての頭があって、そちらではバランスをとらなければいけない、表現の自由云々ということを考えられる。

 一人の人格でそのように二つの違うものの利益を代弁するという場合に、これはどういうふうになるんでしょうか、この児童ポルノの問題などはどうなるかというのをもう少しきちんと御答弁いただけますか。

南野国務大臣 児童ポルノ、そういう問題についてはこれは余り好ましくない、いけないことだと思いますけれども、それを法的にどうするかというと、それはまた別問題という形になります。

水島委員 そうすると、大臣は、青少年担当大臣というそのような立場をもっても、この児童ポルノ、子供をそういう性の対象として見るようなものとして、漫画とか疑似ポルノとかそういうものについても、何とかこれを根絶できるように工夫をしたいというふうには御発言いただけないということなんでしょうか。

南野国務大臣 そういうことではなく、それを御議論していただきながらということで、それを加味して考えを整理していくということでございます。

水島委員 この表現の自由と、実際に、ただ子供の権利を優先させなければいけないということについては、きちんと議論をして法的な整理が必要だと思うんですけれども、その議論を始めることができない状況にあるわけでございます。

 そのときに、やはり子供の権利から考えるとこうだということ、きょう午前中に私、ノルウェーの子どもオンブードが性的虐待の加害者が保育所などで働けないようにする、その期限を五年ではなくて一生働けないようにするんだというふうに子どもオンブードが意見を言ったということを御紹介しましたけれども、やはりそのような意見を言ってくださる方が必要だと思うんです。

 南野大臣がそういうふうに今の児童ポルノのことについてもおっしゃっていただけないということであれば、やはり子どもオンブードというものをつくらなきゃいけないという結論になると思うんですけれども、それでよろしいんでしょうか。

南野国務大臣 それを言っていないということではないということでございます。

水島委員 大変わかりにくいですね。

 法的にどうこうというと議論があると言って、でもそれを言っていないわけではないということなので、そういう単純な法律をつくるかどうかは別として、今すぐ法規制の対象にするかどうかは別として、何とか子供が、漫画であっても疑似ポルノであってもそういうものの対象として描かれないようにしていくために何か工夫を講じていただく、そのための努力をしていただけるということなら多分御答弁いただけると思うんですけれども、いかがですか。

南野国務大臣 悪は悪という形に対して努力していく、行動を努力していくということは当然だと思います。

水島委員 何かだんだん珍問答になってきてしまいましたので、ちょっと先に行きたいと思うんですけれども、そのようなお気持ちがあるということは今伺わせていただいたつもりですので、この点についてまた個別の議論のときにもう少し伺いたいと思います。

 先ほど言ったように、日本は、児童ポルノに触れる機会が多ければ多いほど一部の人にとっては性犯罪に至る可能性が高くなる、そのような当たり前のデータも案外知られていなくて、どうも議論のレベルが低いように私は感じております。

 先日も東京拘置所に行ってまいりましたけれども、東京拘置所では、所内で服役している既決囚の処遇類型別指導の一つとして、性犯罪者に対して異性問題教育指導というのを行っております。現場の刑務官の方の熱意には大変感銘を受けましたけれども、その内容といえば、現場の手探りで試行錯誤的に行っているという感じでございました。

 カナダやヨーロッパなど性犯罪問題についての先進国では、認知行動療法を中心に行動コントロールに効果のある治療法の研究がずっと進んでいるわけでございますけれども、こうした世界の流れとは、この東京拘置所で行われていることというのは、かなり隔絶された感がございました。難しい領域だからこそ、専門的知見に裏打ちされた処遇が必要であると思っております。

 例えば、そのコピンプロジェクトは、EUなどの財政支援のもと、この専門分野での世界的に主要な機関として知られ、インターポールともそのデータベースを共有しているということでございますけれども、日本は、このような国際的な活動にきちんとアクセスできているんでしょうか。

南野国務大臣 青少年に関する施策の立案のためには、青少年の現状と問題の所在ということを的確に把握する必要があるということはもちろんであります。

 委員の御指摘の研究や外国との情報交換は非常に意義が大きいものと考えておりますし、性犯罪に対する研究につきましても、青少年の育成といった観点から見た場合、青少年が加害者となる性犯罪と被害者となる性犯罪の両面があると思います。それぞれ異なるアプローチが必要になるものと考えております。そして、それぞれにつきまして、いわゆる刑事の側面からの研究、医療や環境的側面からの研究などさまざまなものが考えられ、必要に応じて担当府省で実施することが適当と思われております。

 私としましても、研究や外国との情報交換の点を含めまして、関係府省の調査研究が円滑になされるよう問題意識を持って見守ってまいりたいと考えております。

 なお、法務省について申し上げるならば、これまで複数回にわたりまして強姦事犯等の調査研究を行った例がございます。また現在も、職員を米国等に派遣しながら、性犯罪者に対する施策や処遇について情報の収集に努めているものと承知しており、先ほど先生がおっしゃられた類型別の処遇についてもこれから検討が進んでいきますので、そのことも申し上げておきたいんですが、エテル・クエール博士、この方の講演については法務省も協賛させていただいております。

水島委員 ここから先、どれだけ国際的な知見を取り入れて政府が工夫してくださるかというのは、これからは法務委員会の審議になってくると思いますので、ぜひ、またそちらできちんと御披露いただきたいと思っております。

 次に、子供の立場からまた御答弁をいただきたい問題といたしまして、懲戒権のことについて質問させていただきます。

 日本も子どもの権利条約の批准国ですけれども、国連子どもの権利委員会は、子供に対する暴力についての勧告を、二〇〇〇年、二〇〇一年と二年続けて採択をしておりまして、二〇〇一年の勧告では、従来からの委員会の姿勢を反映して、家庭及び学校におけるあらゆる形態の暴力、しつけ及び規律の維持の形をとるものも含むとされておりますけれども、たとえ軽いものであっても禁じるということが勧告をされております。

 ところが、日本の民法では、親の懲戒権について何の制約原理もございません。このようなむき出しの懲戒権というのは、少なくとも先進国では珍しくなっていると言ってもよいと思います。

 例えばドイツのような国では、一九七九年の民法改正によって、従来の親権概念を廃止して監護という概念を採用して、そこに始まりまして、一九九七年九月、二〇〇〇年七月の改正を経て、現在は、身上監護は、子を世話し、教育し、かつ居所を指定する義務と権利を包含する、子供は、暴力を行使しない教育を受ける権利を有する、体罰、精神的に傷つけること及びその他の屈辱的な手段は許されないなどとされているわけでございます。ドイツでは二十年の間にこれだけの法改正が行われまして、親子の関係が根本から問い直されていると言えますけれども、ほかの国でも、親子の関係は、法律上、さまざまな形で見直されてきております。

 ところが、日本の民法は明治以来手つかずで、親子関係について真剣に検討されてこなかったと言えるのではないかと思います。そもそも、親権者として子供に対して何をすべきであり、何をしてはならないのかという点の社会全体の検討が進んでいないために、家庭内虐待も施設内虐待も起こってきていると私は思っておりますので、そろそろきちんと整理すべきだと思いますけれども、この懲戒ということについての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

南野国務大臣 民法では、親権者は必要な範囲で懲戒することができるというふうになっているわけでございます。何が必要な範囲の懲戒かにつきましては、これは健全な常識によって判断されるべきものであるというふうに思いますが、児童虐待と言えるようなものまで懲戒権の行使として許されることはないというふうに考えております。

 したがいまして、児童虐待を防止すべきであること自体には全く異論はなく、このための施策を広く検討したいとは思いますが、現在のところ、このために、民法上の懲戒権についての規定、その見直しを検討するというところまでには至っていないというふうに考えております。

 児童虐待という問題につきましても、DV法それ自身、夫婦の、両親のけんかというもの自身も、DVということも、児童にとっては虐待のものであるということについては、もう改正の段階で入れさせていただいている課題であります。

水島委員 今のが従来の政府答弁だと思うんです。ただ、常識的な範囲で懲戒と虐待というのは区別すべきだ、虐待防止法で定められている虐待の定義でないものが正常な懲戒だ、そのようなことをおっしゃっているんですけれども、実際に虐待防止法の定義している虐待であったかどうかというのは、どれほどその人格形成に著しい傷を残したかということは、後になってみないとわからないというところもありまして、ちょっとその定義だけでは不親切だと思います。

 また、虐待をした親の少なからぬ数が、しつけのつもりでやったという事実がございます。しつけを言いわけにしているという事例もあると思いますけれども、本当にしつけと虐待の違いがわからないという不安を訴えてくる親御さんも少なくないわけでございます。

 懲戒のことに触れずして、虐待防止を本当の意味で行うことはできないと私は思っているわけですけれども、例えば、常識的な範囲という不親切な言い方ではなく、もう少しきちんとした原則論、例えばドイツのように、親権者は必要な範囲で懲戒することができる、ただし、体罰、精神的に傷つけること及びその他の屈辱的な手段は許されない、そのように書き込むということは決して難しいことではないと思うんです。虐待と懲戒とのわかりにくい関係を考えれば、そのくらいの踏み込んだ表現が必要ではないかと思いますけれども、そのように書き加えることはできないでしょうか。

南野国務大臣 先ほど申し上げましたように、私個人が法律を書きかえる、これはできないと思います。これはいろいろな方々の検討が必要であろうかと思っておりますので、どうぞ大きなお声を出して、その方向で先生の御意見も出していただきたいと思っております。

水島委員 何か、民法を所管している法務大臣である南野大臣が法律の改正案を出せないというのは、内閣には法案提出権があるのかないのか、ちょっと心配になってきましたけれども、何か、政権かわりましょうという声も今上がっていたようですが、本当にそのときには、政府提出でこの懲戒権をきちんと変えていけるんじゃないかと思うんです。

 これはぜひ、議論していくためにも、きちんと、これは南野大臣個人がというよりも、今まで法務省に繰り返し質問してきて、結局それを踏み越えることができなかったわけですから、これは大臣として、特に青少年も担当していらっしゃる法務大臣として、ぜひ乗り越えていただきたい一線なので、ここはきちんと御検討いただきたいと思っております。

 私、南野大臣に大変期待をしているんですけれども、なぜ期待しているかといえば、何といってもDV防止法の成立に向けての御尽力者であるわけでございますし、この家庭内の暴力ということについては第一人者であるわけでございますから、そもそも、では大臣は、家庭における暴力、子供に対して、しつけという名前であったとしても暴力を加えるということについては、大臣はどのようにお考えになっているんでしょうか。

南野国務大臣 何が虐待であり、何がしつけであるかというのは、まさしくそれは親の感覚でありまして、その親がどのように育てられたかというような問題点も考慮しなければならないというふうに思っております。

水島委員 今、すごいことをおっしゃったんですけれども、何が虐待で、何がしつけであるかというのは、その親の感覚であるというふうに御答弁くださって、それはだめ。それは違う。それはちょっと大変な発言をされてしまったわけなんですが、ちょっとこれは、今までの虐待の議論を一からやり直さなければならないんじゃないんでしょうか。もう一度、どうぞ。

南野国務大臣 先ほどのは取り消させていただきたいわけでございますけれども、親がどのようにしつけをするかというのが基本でありということを申し上げたかったわけであります。

水島委員 いや、まだ言い直していないですね。親がどのようにしつけをするかというのは親の問題ということだと、客観的に見て明らかに虐待であるようなものでも、親がしつけと言うのであればそれはこの親がそうやってしつけていることというふうに今のだと理解できてしまいますけれども、南野大臣はそういうお考えなんでしょうか。

南野国務大臣 先ほどお話ししましたように、しつけにとって何が必要な範囲なのかというのは、それはおのずから親の愛情で決めるものであろうというふうに思いますが、それが虐待的な方向に行くという、それはもうだめなことは決まっております。

水島委員 まだきちんと御答弁いただいていないんですが、それが虐待的な方向に行くのはいけないと。今、私はずっと懲戒と虐待の違いということについて質問をしてきているわけなんですけれども、今のような答弁をされてしまうと、ますます懲戒と虐待が一体化したものになってきてしまうんですけれども、きちんとそこを、一般国民がわかるようにもう一度きちんと説明していただけますか。

南野国務大臣 お答えすると、何が必要な範囲の懲戒かにつきましては健全な常識によって判断されるものでありますが、児童虐待と言えるようなものまで懲戒権の行使として許されることはないと考えておりますということでございます。

水島委員 だんだんわからなくなってきましたけれども、例えば、では、私が法務大臣に、法務大臣じゃなくても内閣の大臣、国務大臣でいいんですけれども、質問するとして、私は自分の子供はたたいて育てておりませんけれども、仮に私が子供を持つ母親で、大臣、私はしつけのつもりで、毎日、子供が悪いことをすると顔を五十発ぐらいたたいています、これは私は必要なしつけだと思っているんですけれども、私は非常に子供を愛しているんですけれども、これはしつけですよねと言ったら、どうですか。

南野国務大臣 それは、その行動を客観的に観察できると思います。

水島委員 客観的に観察すると、五十発はたたき過ぎ。それでは、例えば、悪いことをするので、大体毎晩一回は顔をひっぱたいていますと。これはどうなんでしょうか。

南野国務大臣 そういう問題点について個別のことになろうかと、もし何かの問題点があれば。

 でも、一般論として言うならば、何が虐待で何がしつけかということは、その親の常識、親の愛情がどのようにその子供に向かっているかということになろうかと思います。社会通念によって判断されるものであろうと思っております。

 私は、親の主観によって決まると申し上げたわけではございませんが、社会的通念でどのようになるのかということになろうと思います。

水島委員 本当にきょうの御答弁では、せっかく虐待の防止に向けて動き始めている現場が、また何かスタート地点に戻されてしまうんじゃないかというふうに大変心配になるわけなんです。

 やはりこれは、そのような個別の、そこに込められている愛情がとか、例えば、先ほど自民党席の方から、感情に任せてやるのが虐待なんだ、そういう声も出ていたんですけれども、懲戒と虐待というのは、懲戒権で暴力を認めてしまう限り、そこに感情がこもっていたかどうかとか、判断が物すごく難しくなって、グレーゾーンがかなり広くなってしまって、その結果として、虐待を防ぐことができないということになってしまう領域なんだと思いますので、ここはきちんと、大臣なんですから、子供に対する暴力はいけない、そして、子供はたたかなくてもちゃんと育てられるんです、そういうやり方を私は教えてあげますと、本来の大臣の専門分野を考えれば、そのようなことをきちんと教えていただけるお立場なんじゃないかとも思うんですけれども、そのくらい毅然とした態度を示していただくことはできませんか。

 大臣は、例えばDVのことについては、どんな暴力であっても暴力はいけないと多分言ってくださると思うんです。それが、相手が配偶者だったらどんな暴力でもいけない、でも、子供の場合にはそのグレーゾーンが無限に広がりますよという答弁を今されているわけで、本当にそんなことでいいんでしょうか。

南野国務大臣 子供の人権を尊重するという前提のもとに、社会的一般常識に照らして判断するべきものであり、私の気持ちはそのような観点でありますけれども、先生がおっしゃるように、たたくとか罰を加えるとかいう、社会常識から外れるような問題、これは許してはいけないのではないかと思っております。

水島委員 今のような御答弁を続けなければならないのは、これは懲戒権のところに手を加えない限り、多分大臣は何度聞かれてもそういうあいまいな答弁を繰り返していく運命にあるんだと思いますし、大臣御本人もそんなことが言いたいわけではないので、今非常に不愉快な思いだと思うんですね。

 ですから、ぜひ法務大臣在任中にこの懲戒権のところをきちんと手を加えていただいて、しつけは、もちろん一貫性のあるしつけというのはとても重要だと思います。でも、それが絶対に虐待の言いわけになってはいけない。やはりどんなに小さな子供であっても、屈辱的な手段でしつけを受けるということは私はいけないと思っておりますので、常に人間としての尊厳、子供としての権利を尊重されて育っていけるような子育てがきちんと日本で法律上認められるようにしていただきたいと思いますので、ぜひ今のその不愉快なお気持ちを法改正へとつなげていただきたいと思っております。

 もっといろいろ聞きたかったんですが、何かここで紛糾して時間がなくなってきましたので、最後にちょっと非嫡出子の差別のことだけ。

 これも子供の立場から御答弁をいただきたい問題なんですけれども、民法上の非嫡出子の差別については、選択的夫婦別姓と並んでかなり議論が長い歴史になってしまっているわけですけれども、本当にそろそろこれもきちんと終止符を打たなければいけない議論だというふうに思っております。

 まず、この非嫡出子の差別の撤廃をしていただけるかどうかについて、大臣のお考えをお願いいたします。

南野国務大臣 民法第九百条第四号ただし書きにおきまして、嫡出でない子供の相続分は、嫡出である子供の二分の一ということで定められております。この規定につきましては、嫡出でない子供を差別するものであり、相続分を同じにすべきであるという御意見が今あることは十分承知いたしております。

 しかしながら、この問題につきましては、国民の間でいろいろな御意見があります。これが多くの意見ですよということになるまで、我々はしっかりと論議しなければならないと思っておりますが、各方面での御議論が一層深められるようになればいい、そういう方向の必要性があるということを思っております。

水島委員 そういうふうになればいいと今他人事のように答えられたんですけれども、大臣が青少年担当の大臣で、先ほど子どもオンブードとしての機能も持ってくださると言ったわけですから、子供の立場から、この議論をもっともっと巻き起こさなければいけない立場なんです。議会を説得しなければいけない立場なわけです。

 これは、今まで従来の政府答弁では、婚姻制度を守るための合理的な区別ではないかというようなことを答弁されてきているんですが、婚姻制度を守るのは結構なんですけれども、それはあくまでも大人の責任においてすべきことであって、子供にそのツケを回すような問題ではないわけです。ですから、これは青少年担当大臣として、子供の立場に立って考えていただきたいわけです。

 無国籍児などの問題もそうですけれども、自分には何の責任もないことによって生まれながらにして差別されるということを、子供にどうやって説明することができるのか。大人社会の不始末を子供に押しつけているだけではないかというふうに私は考えております。これは本当に、国会の議論とか世論調査とかそういうことに逃げずに、その議論をきちんと変えていけるように、それこそ子供の代弁者として、南野大臣に体当たりで説得の努力をしていただきたいというふうに思っております。

 やはり、先ほども申しましたけれども、ここでも一貫性ということが問題なのだと思いますけれども、今必要なのは、子供たちを健康に育てていくために大人社会がしっかりと決意を持って、一貫性を持って取り組んでいるという姿勢なのだと思います。自分たちの都合に合わせて一貫性のないメッセージを送る大人が子供たちの成長を損ねているのだという事実を見据えなければいけないと思います。

 児童ポルノはいけない、子供を性的な対象にしてはいけないといいながら、一方では子供の目に触れるようなところにそういうものを垂れ流しているような現状があったり、あるいは、すべての子供は平等だ、みんなひがんではいけないといいながら、生まれながらにして、みずからの努力で乗り越えられない差別の壁を最初から持って生まれてくる子供がいたり、それをまた、これはいろいろな議論がありましてねと言っているのでは、とても子供は救われないと思うわけなんです。

 ぜひ、これは、大臣が青少年問題を担当されているわけでございますので、子供の立場に立って、大人社会の一貫した決意というものをきちんと示していただかなければいけないと思いますし、それをすることが、南野大臣が青少年担当大臣という特命を受けたということにつきまして南野大臣に要求されていることなのではないかと思いますけれども、それをきちんと、最後に、この点も含めまして御決意をお聞かせいただけますでしょうか。

南野国務大臣 法務省といたしましては、民法などの基本法を所管しております。これはもう当然御存じだと思いますが、国民のだれもがかかわりを持つ重要な法律であります。今のテーマも同じくそのとおりでございます。こういった法制度は国民意識に支えられて初めて成り立つものでありまして、法改正のためには国民の議論が必要だと申し上げているわけであり、どうぞ御議論をしてくださいという意味でお願いしているところであります。

 我々の社会には、いろいろな大切にすべき価値観というものがあります。価値もあります。これらの価値をどのようにバランスをとって、そして制度をつくり上げていくのかが大事な課題であろうかと思っております。

 子供は大人のつくった社会の中で生きていくしかありません。この子供が次の社会の担い手なのであります。そういった意味で、子供の人権が社会のあらゆる場で取り入れられ、子供が尊重される社会であるべきことは、これは当然だというふうに思います。

 ただ、法制度といったものを考えた場合には、これが国民生活に深いかかわり合いがある問題であるだけに、子供の法定相続分、それから法律婚という婚姻制度、家族のあり方などなど、そういうさまざまな価値をどう考えて、どういうバランスをとって制度設計をしていくのか、国民の間で議論を深めてもらいたいと思っているわけでありまして、嫡出でない子の相続分の問題については、これを同等とすべきとの法制審議会の答申が出された後も、これは御存じですね、出されたこと。その後も、なお国民の中に反対意見も強い状況にあります。

 各方面での議論が深まりまして、国民の理解が得られるような状況になることを切に願っております。

水島委員 また他人事のような御答弁をいただいてしまったんですが、この問題も、大人の問題が子供にツケ回しされているという構造をきちんと説明すれば、直接お話しした方はほとんど、それはやはり変な法律だというふうにおっしゃるわけです。だから、やはりきちんと子供の権利を代弁する、あるいは法の正義を実現する立場にある大臣としての説得の量の問題というのがあると思うんですね。この世論調査を受けている国民の側も、本当にその辺のことを正確に知って、子供の立場がわかった上で答えているかといえば、それよりも、漠然と婚姻制度を守っていきたいということで答えている人も多いわけですから、そこをきちんと区別してほしいというのを私は歴代の法務大臣に申し上げてきているんです。

 今回、こうして青少年担当と法務大臣兼任というのは本当に初めてのことですので、この法務の領域には、今の非嫡出子のことだけでなく、また懲戒権だけでなく、無国籍児の問題、また親権の問題、本当に、子どもの権利条約に反するようなことがそのまま放置されているというものが実は結構ございますので、これは、南野大臣が両方兼務されている間に一度きちんと総点検をしていただいて、子供に堂々と説明できるような形にしていただきたいと思います。

 冒頭に大臣が言ってくださいましたように、子供というのは大人を見て育っていくわけですから、まずは大人が正しい姿を見せていかなければいけない。ぜひ、子供のための議論を逃げない大臣の姿を子供たちにしっかりと見せてあげていただきたいということを最後にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、泉健太君。

泉(健)委員 よろしくお願いいたします。京都三区の泉健太でございます。

 去年の通常国会のときにもこの青少年の特別委員会に入らせていただきました。ちょうど児童虐待防止法の改正にも携わらせていただいて、そしてまた、地元でも大変問題になっていました、全国でも問題になっていましたけれども、ピンクチラシの問題についてもずっと取り組みをさせていただいて、おかげさまで、京都府でも条例が変わり、そして今回、内閣委員会の方で風営法の改正も行っていただくということで、いよいよ、ようやくこうして国の政策も前進をしてきたなという気もしております。そして、訴えればやはりそれは必ず変わっていくものなんだということを実感しながら国会活動をさせていただいています。

 きょうは、大臣にお越しをいただいているということで、次世代育成支援全般を統括されているということで、まずは大まかな見解をお伺いしたいというふうに思います。

 私たち民主党は、男女共同参画、そして若者が子供たちを育てやすい、そして若者たちがこの世の中で生きていきやすいようにということで、いろいろな政策を、今こういったパンフレットもつくらせていただいて訴えさせていただいていますけれども、その中というか、民主党のマニフェストに入っていることも含めてお伺いをしたいと思います。

 私たち自身は、かねてから十八歳選挙権ということを訴えさせていただいていました。これは私自身も当選以前から主張していたんですけれども、やはり今の低投票率、政治に対する無関心というのは、高校の公民教育を終わって社会人になるまでの空白の二年間というものが存在をしているわけですね。その間にどうも社会意識というものが薄れてしまっているという懸念を持っておりまして、教育で学んだ選挙権、その選挙権を社会に出たらすぐ行使できるような形があっていいのではないかというような思いを持っております。

 全国的にも、ライツという市民団体なんかが十八歳選挙権の普及を訴えて、全国の小学校なんかで子供たちの模擬投票を行ったりしているわけですけれども、こういった十八歳選挙権について大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。

南野国務大臣 今先生がおっしゃられた、学校を卒業して二十までの空白の二年間という、その空白という意味を私まだちょっと理解いたしかねておりますけれども、先生の御質問に対しまして、十八歳の選挙権ということの導入を考えることにつきましては、選挙権の付与年齢につきましては、これもまた、民法の成人年齢や少年法の適用年齢など、年齢について規定している他の法律との整合性をも考慮しながら、青少年をめぐる社会環境全般の関連の中で慎重に検討していくべき事項であると認識いたしております。

 この点につきまして、当時の官房長官が主宰し、平成十五年四月に出されました青少年の育成に関する有識者懇談会報告書では、「若者の公共への関心を高め自立を促すためには、欧米諸国のように法的成人年齢を二十歳から十八歳に引き下げることを検討するのも一案である。しかし、一方で社会的に自立する年齢の遅れは社会構造の変化等によるものであり法的成人年齢の引下げが適切かどうか疑問視する声もあるので、多角的な国民的議論を行うことが適切である。」とされているところであります。

 本件は基本的な問題でありますので、この報告書にもありますとおり、国民各界各層の幅広い議論を踏まえて検討すべきものであると考えております。

泉(健)委員 大臣御自身は、私見で結構ですが、賛成、反対はございますか。

南野国務大臣 賛成、反対という前に、これは議論が必要であろうと思いますし、今、私の立場では、法を守るというのが立場でございます。

泉(健)委員 いや、何も未成年に法律を破って投票に行けと言っているわけじゃなくて、単純に、大臣が政治家としてこれはどう思われているかというお話をさせていただいたわけなんです。

 もう一つお伺いをしたいと思うんですけれども、今、私も去年子供が生まれたばかりなんですけれども、いろいろな仲間たちに聞いてみますと、やはり、妊娠がわかって、そして子供を産むまでにいろいろな医療費、診察ですとか検査がかかるわけですね。そういった状況からいいますと、平均的な子供を産むために必要な分娩費用も含めると四十八万円ぐらいだという調査結果も出ておりますけれども、現在、国の方から給付を受けるのは三十万ということになっているわけです。

 そういう中で、この出産一時金が足りているのかという問題がやはりあると思うんですけれども、この点について大臣がどうお考えになられているのか。そして、私たち民主党は、さらにそこから二十万円ほどの助成金というものをプラスして支給をしていってもいいのではないかというふうに思っているわけですが、大臣の御見解をお願いしたいと思います。

南野国務大臣 出産費用の問題につきましては、私も助産婦でありますのでいろいろ考えているところでございますが、負担軽減につきましては、現在、医療保険から出産育児一時金、これは三十万、これについては後で述べさせていただきますが、給付されております。

 三十万円というのは、国立病院での出産費用の平均値をとったものと厚生労働大臣から伺っておりますが、今後の出産費用の状況などもよく踏まえて対応されるべきものではないかと考えております。

 いずれにしましても、出産一時金につきましては、予算委員会で尾辻厚生労働大臣が答弁されておりましたように、十八年度の医療制度改革全体の中で検討されていくものと承知いたしておりますので、状況をよく考慮しながらぜひ適切な検討がなされるべきものと考えております。

泉(健)委員 大臣は、次世代育成なり少子化の統括をされている立場として、このことについては閣内で御意見を述べられたりしたことがございますか。

南野国務大臣 大臣就任前はいろいろと検討いたしておりました。

泉(健)委員 そのときはどのような御見識、御見解を持たれていましたか。

南野国務大臣 それは、妊産婦さんまたはその御家族に優しい形での法律を考えておりました。

泉(健)委員 ちょっとよくわかりませんでしたが、ぜひ出産一時金、そしてまた助成についても、子供たちを産みやすい環境づくりということでお願いをしたいというふうに思います。

 そして、私たち民主党がもう一つ訴えているのは、私も訴えていながら多分自分がそれを実現できるかというと非常に難しいところもあるかもしれませんが、育児休業の話だというふうに思っています。女性の方だけが育児休業をとるような社会ではなくて、やはり男性も育児に積極的に参加をしていくというか、当然それは短い時期であっても男性自身もちゃんと育児にかかわるべきだというふうに思っておりまして、そういう意味で、私たち民主党は、十八カ月の育児休業のうち一カ月は私たち男性も、男性もというか両性のうちどちらかが必ず義務としてとっていいんじゃないかというようなパパクオータ制という制度を、私たち水島座長を先頭にいろいろと考えているわけですけれども、そういった、育児休業を両性が義務的にある一定の期間とるという考え方については、いかがお考えでしょうか。

南野国務大臣 名前は別にパパクオータ制と言わなくても、いろいろな方策が今厚生労働省の方でなされておりますし、働く男女あわせてそういう適切な施策を受けるようなところにもなっております。

 ところで、先生、お産に立ち会われましたか。(泉(健)委員「答えていいんですか」と呼ぶ)はい、お答えください。

泉(健)委員 立ち会わせていただきました。

南野国務大臣 御感想はいかがでしたか。

藤村委員長 発言は、委員長の許可を得てしてください。

南野国務大臣 それは大変いいことだと思っておりますので、次のお子様のときにもお立ち会いいただきたいと思っております。

 男性の育児休業につきましては、職場の理解不足や法制度に関する理解不足等を背景として、取得が進んでいないことと思われております。御提案のパパクオータ制のように法的に割り当てることも一つの手法だと思いますが、まずは現行の法制度の周知、また社会全体の機運の醸成等に取り組んでいくこと、これも重要なことであります。

 こうした観点から、地方自治体や事業主が次世代育成支援対策推進法に基づきまして策定する行動計画は大きな推進材料になるものと考えております。

泉(健)委員 本当に、立ち会わせていただいたときというのは、自分にとって初めての光景でしたけれども、非常に心に残っていますし、本当に女性の大変さもわかりましたし、すぐそのまま抱いてお湯につけて体を洗わせていただく大変貴重な体験もさせていただきましたが、実は、この後、その立ち会いの関係というか助産師の関係についても後で質問させていただきますので、またお答えをいただきたいというふうに思います。ありがとうございます。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先日、新聞報道でなんですけれども、私は去年児童虐待の問題をさせていただきましたが、それ以降もその問題について追いかけさせていただいていますけれども、児童養護施設やさまざまな施設に対して自立支援計画の作成を義務づけるという新聞報道がなされました。

 この件について厚生労働省の方にちょっと確認をしましたら、ちょっと新聞報道とは違って、今回は乳児院のみ義務化になった、それ以外の施設はすべて義務化が既になされているという説明がありましたが、厚生労働省、もう一度その確認をお願いしたいと思います。

北井政府参考人 自立支援計画のことでございますが、乳児院を除きますその他の児童福祉施設の自立支援計画につきましては、実は平成十年から、これまでは通達の形でやっていたものがございます。しかし、今回の四月から策定を義務づけます自立支援計画は、そうした通達レベルでやっていた施設も含めて、そしてさらに乳児院も含めてすべての児童福祉施設の施設長に自立支援計画の策定を、これは省令でございますところの児童福祉施設最低基準というものを改正いたしまして義務づけることにしたものでございます。

泉(健)委員 そうしますと、実はこの質問の前に厚生労働省にも何度か確認をしたんですが、いや、ほかの施設は既に義務づけがなされていますというような説明もあったわけですが、もう一回確認をしますと、以前は通達だったけれども今度は最低基準をちゃんと変えて義務づけ、これは、ですから、児童自立支援施設や情緒障害児短期治療施設、そういったところも、児童養護施設も含めて、義務づけを今回新たにするということでよろしいですか。

北井政府参考人 省令によりましてきちんと義務づけるという点において、そのような認識と思っております。

泉(健)委員 この義務づけに際してなんですけれども、何か例えばガイドラインですとかプログラム、その支援の中身について国の方から既に出されているというものはございますか。

北井政府参考人 ただいまその自立支援計画の必要な通達を出すためのガイドラインの研究会を行っておりまして、近々これをまとめる予定でございます。そして、その研究会の成果を踏まえまして、必要な通達をなるべく早く出していきたいというふうに思っております。

泉(健)委員 その研究会の、済みません、もう一回具体的にちょっとお伺いしたいんですが、大体どれぐらいに出る予定になっていますでしょうか。

北井政府参考人 これは三月中を目指しております。

泉(健)委員 自立支援計画の作成を義務づけるということですけれども、特に、例えばこの業務に携わることについて、新たに施設に対しての支援というものは考えられておりますでしょうか。

 例えば、その業務に携わる支援計画をつくるに当たって何かしらの補助金ですとかあるいは人員の新たな配置、そういったものについてはいかがでしょうか。

北井政府参考人 既に措置費の中に関係の職員経費を盛り込んでいるということでございまして、今回新たにつけ加えるということになったものはないと承知しております。

泉(健)委員 その自立支援計画については、全国の乳児院を初め多くの施設が厚生労働省の中身を待っているという状態ですので、できるだけ早く、またオープンな形で、そして、今後もいろいろなメニューが現場から上がってきたときにそれにこたえるような柔軟なシステムを持っていただきたいというふうにも思っております。

 ちょっと時間がありませんので、また次の問題に行かせていただきたいと思います。

 きょうは、特に里親のことについて少しさせていただきたいというふうに思っています。

 これも児童虐待防止法の中で、去年改正をされた中で、これまでは家族の再統合という言葉が主に使われていたわけですけれども、それだけではなくして、家族がただ再統合することだけが子供、親にとって幸福だということではなくして、特に子供にとっては家庭的環境を再生させること、どんな施設に、あるいはどんな里親のところにいようとも、家庭的な良好な環境を再生させることが必要だ、大切だということが去年議論をされ、言葉が変わってまいりました。

 そういう中で、この里親制度というものはある意味非常に大きな役割の一つを担っているというふうに思います。施設よりもさらに小さなコミュニティーの中で、そしてまさに家庭的な環境で子供を育てるという意味では大切な制度かと思うんですが、残念ながら、この里親制度、戦後間もなくのころに比べると、利用件数なり登録件数がどんどん減ってきているという現状があります。

 私は、先日、全国幾つかの里親会にお伺いをしてお話を聞いてまいりました。たまたまほかの視察の関係もあって沖縄の方にも行ってまいったんですけれども、実は沖縄の方は里親の率というのがかなり高くて、二〇%ぐらいですね。かなり高い率、そういった養護が必要な子供のうちの二〇%ぐらいが里親を利用しているということです。また一方の都道府県では、〇・何%ですとか一・何%というところもある。かなりばらつきがあるわけなんですね。このばらつきがなぜ生まれるのかということについて、厚生労働省の方、何か御見解がありましたら、よろしくお願いします。

北井政府参考人 地域ばらつきの詳細な分析については、申しわけございませんが、そう知見として述べられるものを持ってございません。

 ただ、一般的に、里親制度というものが、まだまだ社会的な重要性であるとか意義であるとかが全国的に理解をされていないという認識を持っているところでございます。

泉(健)委員 地域に何か特性があるのかなと思ったんですが、例えば二〇%を超えているのが北海道、新潟、沖縄、川崎市なんですね。逆に、〇%台、一%台というところが石川県、長野県、愛媛県、佐賀県、大分県、鹿児島県という形になっていまして、奈良県もそうですね。

 例えば、鹿児島で一・二%で沖縄で二〇・二%ということで、別にその気候が関係があるとかそういうわけでもなく、その地域の特性が関係があるとかそういうわけでもなくて、これは恐らくいろいろな、これまで施設主義を重点に置いてきた県政であったり、あるいは里親制度に重点を置いてきたという、そのばらつきもあるというふうには思うんですけれども、少しここは国としてもしっかりと調査研究をしていただきたいなという思いを持っております。ぜひそちらの方、お願いをしたいと思います。

 いろいろその里親会の方々からもお話をお伺いしてきました。すべてではありませんが、幾つか、その方々の要望点も含めてお話をさせていただきたいと思います。

 一つは、そもそものこの里親というものの名称について、実は多くの方々が御意見を述べられています。といいますのも、里親、苦しい思い、つらい思いをしてようやく落ちつき場所としてのこの里子であり里親家庭ということになるわけですが、一方で、例えば私もインターネットをはじきますと、里親という言葉がいろいろな場所で使われているわけですね。例えば、国土交通省に問い合わせてみたら河川里親というのがあったりですとか、あるいは農水省だと立ち木里親とか、あるいは、もちろん皆さん御存じのとおり、ペットの里親というものも通常使われているわけです。

 特にこのペットの里親ということに関しては、やはり実際に里親、里子の皆さんは大変つらい思いをしているところがあります。同じ名称で扱われるのはいかがなものだろうかというような御意見も多く出ておりまして、そういった中で先日も、厚生労働省が例えば痴呆という言葉を認知症に変えられたということもあります。そういったことで、この里親という名前の名称独占というものができないのかなということを考えております。

 これは、児童福祉法なんかでも里親というものがしっかりとこうして定義をされてきているわけですから、可能性としてはあり得ると思うんですね。こういったことについてどうか御検討いただきたいという思いを持っているわけですが、厚生労働省、いかがでしょうか。

北井政府参考人 私もインターネットを検索いたしまして、犬猫の里親募集であるとかペットの里親募集という形で大変出てきたのをびっくりいたしまして、そういう実態があることを承知したわけでございます。

 今のところは、里親は、いわゆる名称独占の資格制度とは異なりまして、里親という言葉の使用そのものを規制することは現行法制では困難でございますけれども、今のような御指摘を踏まえまして、厚生労働省としてももう少し検討してみたいというふうに考えております。

泉(健)委員 もちろん、そういう名称独占の資格ではないとおっしゃられるかもしれませんけれども、そこはぜひ一度御検討をいただきたいというふうに思います。

 この名前でいろいろと苦しんでいられる方もおられますし、現に、いろいろな都道府県単位では通知を出されているというところもあるんですね。保健福祉部ですとかが、例えばそういったペットの関係を扱われるところ、あるいはほかの部署等々に、こういった里親という名前を使うときには注意をするようにというような通達、指示を出しているところもありまして、そういったことをひとつ厚生労働省にもお願いをできないのかなというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。

北井政府参考人 直ちに今、一般的に里親という言葉を児童福祉法の里親制度以外に使ってはならないという趣旨の通達が出せるかどうかについては、正直なところ、現行法制のもとではなかなか難しいのではないかと思っております。私どもとしては、むしろ、児童福祉法に基づく里親制度そのものをきちんと、意義、重要性についてしっかりと理解をしていただくべく、その周知、啓発について努力をしていきたいというふうに思っております。

泉(健)委員 ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 次に、里親さんが、特に、新しく平成十四年にできました専門里親ということについてお伺いをしたいと思います。

 これは、虐待児を専門的に扱うということでの専門里親という制度ですけれども、これが実は研修が特別に必要ということになっているわけです。その研修は、ある財団法人が引き受けて、委託を受けて、東日本、西日本、この二カ所で研修を行っているわけなんですが、里親、それぞれの皆さん、全国各地におられます。そういう意味では、大変つらい思いをしながらというか、毎日が大変な中でこの里親の業務を引き受けていられるわけですけれども、研修にわざわざ出向いていかなければならないという現状があります。

 北海道や埼玉は都道府県そのものがこの研修業務を行っているんですけれども、それ以外の都道府県はこの財団法人に委託をして行っているということで、例えば極端な例でいうと、石垣島からわざわざ大阪にまで渡航をして、そして研修を受けなきゃならない。実地研修の部分ですね、通信教育じゃない部分の研修を受ける。宿泊をして研修を受けなきゃならないけれども、その旅費等が出ないということで大変な費用がかかる、これがその研修を受けることの抑制につながっているというようなことも言われております。

 例えばこの研修費用について、何か行政の方から助成をしていただくことができないのかなということも思うわけですけれども、いかがでしょうか。

北井政府参考人 専門里親研修の実施につきましては基本的に都道府県にお願いしているわけでございますが、都道府県の行います研修の実施費用につきましては国庫補助がございます。しかしながら、先生御指摘のように、国庫補助の対象外にその交通費というものがなっておりまして、その意味では、国庫補助の対象外でございますので、各自治体によりましても、その御判断によって、その交通費については受講する里親に御負担いただいている場合もあるというふうに認識をいたしております。

 したがいまして、私どもとしては、この国庫補助の対象についてもう一度、財政面、財源面がございますけれども、少し考えてみたいというふうに考えております。

泉(健)委員 私の地元の京都の里親会にもお伺いをしましたら、京都の場合は、すぐ近くで、同志社大学で研修があるものですから、宿泊も何も必要ないわけですね。でも、沖縄から来られる方々は数万円必要だということで、同じ里親でありながらそこは随分と違う部分がありますので、どうか御配慮をお願いしたいというふうに思います。

 さらに二つお伺いをしたいんですけれども、一つは十八歳未満の里子についての留学、そして十八歳を超えた里子の進学についてです。

 一つは、留学をする場合に、今、措置が解除になるんじゃないかという話がよく出てきております。そして、幾つかの都道府県では現在も措置を解除してしまっているケースがあるというんですね。これを厚生労働省にお伺いしてみましたら、いや、実はそれは、お問い合わせがある分にはもうそういう方針はとっていないということを説明していると言っていまして、では、これは都道府県によってばらばらな対応をされているのかということで、大変な問題だというふうに思っております。厚生労働省の御見解を、まずこの一点お願いしたいと思います。

 そしてもう一つが、二十までの措置延長について、条件が厳しいんじゃないかというふうに思っていまして、要は、専門学校や短大に進学する場合には措置の延長が認められないということもお伺いをしておりますけれども、この点についてお願いいたします。

北井政府参考人 一点目の十八歳未満の児童が海外に留学する場合の措置の継続か否かという御質問でございますが、この件につきましては、児童相談所において里親からの支援が引き続き必要であると判断される場合には、海外留学に当たっても措置は継続されるという見解でございます。

 それから、二点目の十八歳以上の子供さんの進学の件でございますが、その場合は、原則として児童福祉法が十八歳未満の児童を対象としているということから、それについては措置は継続しないということでございます。

泉(健)委員 留学の場合は、それの再確認ということで、ぜひ各都道府県にもしっかりと流していただきたいと思います。そして、この措置延長に関しては、やはり今自立支援ということを特に力を入れられているはずですから、まさに今の時代、高校を卒業してそのまま社会に出るという方もたくさんおりますけれども、それ以上にさらに向学心を持って自分の自立をする能力を身につけたいという方々に対して、どうかお力をいただきたいというふうに思います。

 最後に大臣に、先ほど質問すると言ってしまっていたので、また御質問させていただきたいと思います。

 実は、産婦人科のことでございます。助産婦のことですね。私も立ち会わせていただいたんですが、私は、そのとき、その立ち会った女性の方がどういった方だったかはよくわかっていません、実は。ただ、いろいろと調査をしますと、大臣も以前御質問をなされたとおりでして、助産行為について助産師さん以外が携わってよいのかどうかという問題については、これまでもずっと議論がなされてきたかというふうに思います。そして、去年の秋、国の方は違法だということを明確にし、産婦人科医会は合法だ、これは解釈が間違っているんだというようなところで、そのまま対立が続いているように思うんです。

 実は、三月の十九日から、また京都で助産師学会が開催をされます。大臣がお伺いをされるのかもしれないな、もし来られるのであれば非常にうれしいことだというふうにも思っているわけですが、ここについて、現在どのようになっているか、そして、今後大臣の方針としてはどのように考えられているか、最後にお答えをお伺いして、終わりたいと思います。

南野国務大臣 助産師の業務、これは保助看法というところに規定されております。厚生労働省によりますと、保健師助産師看護師法の解釈上、助産師または医師の資格のない者は助産業務を行えないもの、これはもう保助看法に明記されているとおりでございますので、それを守っていただきたい。看護師など、医師または助産師の資格のない者による助産業務の実施という事例が発生しないように、厚生労働省において都道府県に対し指導を要請しているものとお聞きいたしております。

泉(健)委員 終わります。どうもありがとうございました。

藤村委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 平成十一年三月、青少年特別委員会が設立されましてから、私は理事としてこの委員会に力を注いでまいりました。平成十二年に、特別委員会は法律をつくる委員会ではないと言われておりましたけれども、ここにも何名かがいらっしゃいますけれども、みんなが心を合わせながら次の世代の子供たちを守らなければいけない、その熱い思いの中で児童虐待防止法を成立させました。私にとっては、大変に有意義な委員会、そこに再び戻ってまいりましたことを大変うれしく思っております。

 今、子供たちを取り巻く環境は決して良好ではございません。核家族、少子化、地域社会の連帯の希薄化、ディスプレー症候群、その中にあって、子供たちにあらゆる手だてをして環境整備をしていくのは、先を歩む人間の使命と責任ではないかというふうに思っております。

 私たち公明党は、あれをしちゃいけない、これをしちゃいけないというのではなくて、そうやって抑圧したら、なおさら子供たちはしたくなります。そうではなくて、もっと夢と希望を与えるようなことをしてまいりましょうということで、子ども読書運動プロジェクトチームを立ち上げました。私は、その座長として、三つのことを提案してまいりました。

 一つは、朝の十分間の読書運動です。これは、今、小中高合わせて一万七千校になりました。学級崩壊やいじめがなくなった、静かに授業に移行できる、そのようないい点がたくさんございます。また、今、七百十六市町村がやっておりますブックスタートです。これは、お母様方に母子手帳をお渡しするときに、どういう本を読んだらいいか、絵本を差し上げるのです。子供たちにどんな本を読んでいいかわからないお母様に、絵本の本を読むことのきっかけをつくっております。そしてまた、読み聞かせです。これは、子供たちだけでなくて、お年寄りにも、生きる希望が生まれたぞ、大変喜んでいただいております。

 それ以外にもさまざまな、子供たちに手を差し伸べる方法があると私は思います。例えば、声をかけ合う。もしかしたら、だれも認めてくれない、いじめに遭って死にたい、そう思っているような子供でも、行ってらっしゃい、お帰りなさい、元気、そう声をかけてもらえるだけで、いじめを踏みとどまろう、そういう気持ちになるのではないかと思っております。

 私は、この間、「夜回り先生」という著書で有名な水谷修先生にお目にかかりました。この先生は、渋谷とか新宿の夜の町を徘回している子供たちに声をかけて、おうちに帰りなさい、あるいは麻薬に手を染めた子供たちに、立ち直らせる、そのような力を与えていらっしゃいます。今度、「ゴッド・ブレス・ユー「夜回り先生」〜悲しみのHERO」というミュージカルができます。私もお手伝いしておりますので、大臣、御一緒に見に参りましょう。

 こういう方々がたくさんいらっしゃれば、七百四十万の中学、高校生の中の不良行為少年というのが百四十万でございます。この子供たちは決して犯罪に手を染めているわけではないのです。ただ、夜の町を徘回したり、喫煙をしたりしている。でも、私は、危ない橋を渡りつつある子ではないかと思います。手を差し伸べ優しく指導することによって、健全な大人の社会に移行していくことができる。ですから、こうやって手を差し伸べる大人たちがたくさんいなければいけないのだと思います。

 夜回り先生のような先生がたくさんふえたらいいのですが、先生というのは多忙ですから、ここまでできません。こういうお役をしてくださるのが、私は、警察の五万一千人の少年補導員、そして市町村の少年補導センターで活躍していただいている七万二千人の少年指導委員、補導委員、そして法務省の四万九千人の保護司の方ではないかと思っております。

 こういう方々がどういう活動をしていただいているのか、そしてどのように政府は支援をしているのか。限られた時間でございますので、ちょっと簡潔にお知らせいただけたらと思います。――では、大臣。

藤村委員長 南野国務大臣。――委員長が指名しましたので、南野国務大臣。

池坊委員 もし大臣にお答えいただけたら幸せでございますが、きょうは、警察にも、それから法務省にも来てもらっておりますから、せっかく来てくださったんですものね。どうぞおっしゃってください。

藤村委員長 発言者の意図によりまして、警察庁伊藤生活安全局長。

伊藤政府参考人 それでは、お答え申し上げます。

 少年の非行防止、健全育成のためには、警察等の行政機関のみならず、地域住民みずからが、みずからの地域の少年はみずからが育てるという意識を持って自発的な取り組みを行うことが大事だと考えております。

 警察では、民間ボランティアといたしまして、平成十六年四月現在、全国で約五万三千人の少年補導員を委嘱しているところでございます。具体的には、これらの方々は、街頭補導活動のほか、社会奉仕体験やスポーツを通じた少年の居場所づくり、さらに、関係機関、団体と連携した就労、就学活動の立ち直り支援など、少年の非行防止及び健全育成のための活動に従事いただいているところであります。

 警察といたしましては、こうした少年補導員を初めとする少年警察ボランティアの方々に対しまして、警察との合同街頭補導や研修会の実施、また、最近の犯罪情勢や少年非行情勢などの必要な情報を的確に提供するなどして、その活動がより充実するように努めているところでございます。

麻生政府参考人 保護司の関係についてお答えいたします。

 保護司の方々には、保護観察官とともに、保護観察の担当者として、犯罪や非行を行った者の社会復帰を図る活動を行っていただいているところでございます。それに加えまして、地域におきまして、各種機関、団体と連携して犯罪や非行の防止活動を推進していただいております。

 特に最近の少年を取り巻く状況にかんがみまして、保護司の地域活動の一つの形態といたしまして、中学生の問題行動への対応や中学生の非行防止のための取り組みを家庭、学校、地域社会が一体となって推進する中学生サポート・アクションプランを実施いたしております。

 これは、具体的には、保護司が学校に参りまして、総合的な学習の時間を利用いたしましてシンナー等薬物乱用防止に関する授業を行いましたり、あるいは教師との合同事例研究会を開催いたしまして、問題行動への取り組みを研究するなどして、学校との連携強化に努めているところでございます。

 今後とも、地域社会におきまして、保護司と学校等が連携した非行防止活動の推進に努力をしてまいりたいと考えております。

池坊委員 今度は南野大臣に伺いたいと思います。

 今伺ったように、保護司、少年補導員の方々はそれぞれ青少年問題に対して大変力を尽くしていただいております。現在、青少年育成施策大綱というのも策定されております。私は、それぞれの警察庁、法務省という所管ではなくて、横断的に情報を交換したり、活動したり、そうやって連携し合うことが必要なのではないかと思っております。特に保護者とか地域社会とか。

 それから、もうこれは、子供の問題というのはそれぞれの省庁の問題ではないからこそ、この青少年特別委員会ができたのだというふうに思っておりますので、この横断的な場というのを、きちんとした何かということではなくても、せめて情報を交換し合ったりすることが必要だというふうに思っておりますけれども、それについては南野大臣はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。

南野国務大臣 本当に、先生の優しい心が子供たちの心に響いて、いい大人に育っていってほしいものと思っておりますが、政府におきましては、青少年育成推進本部のもとに関係省庁の課長で構成する少年非行対策課長会議を設置するなどして、各省庁が連携した少年非行対策の推進に努めているところでございます。

 また、少年補導に関しましては、青少年育成施策大綱に、関係機関が連携して行う街頭補導活動、それを強化するなどの文言を盛り込みまして、関係機関の連携した対策を推進しているところでございます。

 また、地方におきましては、青少年補導を直接の業務としている機関としまして、都道府県警察の少年部門、市町村に置かれている少年補導センターがございますが、この少年補導センターの中には、警察や教育委員会など、関係する機関の職員が配置されているものがございます。

 さらに、都道府県警察の本部に設置されている少年サポートセンターや警察署と少年補導センターは日常的に協力しております。例えば、多くの少年補導センターにあっては、警察署や少年サポートセンターと合同の街頭補導活動を行ったり、連絡会議を開催するなどしているものと承知いたしております。

 また、少年補導活動を推進するためにはボランティアの方々の御協力が重要であるとも考えております。少年補導にかかわるボランティアとして、少年補導センターが委嘱する少年補導委員、警察が委嘱する少年警察ボランティア等がございますが、その中には保護司が委嘱されている例もあり、これらの方々が協力して街頭補導活動や環境浄化活動等を行っております。

 以上申し上げましたように、政府や地方におきまして、関係機関、ボランティアが連携して少年補導活動に取り組んでおります。

池坊委員 大臣は御存じだと思いますけれども、学校や警察等の担当者から構成する少年サポートチームというのは確かに編成されておりますけれども、これは五百七十七件が平成十五年に結成されております。でも、三百八十一件が解散されておりまして、これは百九十七件が今継続的に活動を行っているところでございます。私は、常時こういうところが継続的にいろいろな問題を処理していくことが必要だというふうに思っておりますので、ぜひこれから南野大臣、現場の声をお聞きになって、それが強化されますようにお力をいただきたいと思っております。

 私は、この担当大臣に南野大臣がなっていらっしゃることを大変頼もしく思っております。なぜかと申しますと、女性というのは、女性の特性の中には、やはり現在も大切だけれども、次の命を紡ぐ、次の命を慈しんで育てる、そういうすばらしい特性があるのではないかと思っておりますので、ぜひこれはしっかりと活動していただきたいというふうに思っております。

 次は、今おっしゃいました保護司と少年補導員の人材確保とその構成についてお願いしたいのです。

 御存じのように、大体、保護司は六十三歳が平均年齢でございます。少年補導員は五十七歳という、五十代、六十代で占められております。私は、この先どうなっていくのだろうかと大変心配しているわけでございます。人材確保に対して何か手だてを打っていらっしゃるのかということを伺いたいと思います。

 私は、公明党として、学校の警備をいたしますスクールガードというのを提唱いたしまして、これは文部科学省から予算もとっておりますけれども、今、団塊の世代と言われている方々が、警察官の方が数年後には何千人とOBになられます。ですから、こういう方々にもぜひ少年補導員などで活躍していただきたいというふうに思っておりますが、そういう御努力をしていらっしゃるのかどうか。それから、若い人が少ないということに対してもどんなふうに考えていらっしゃるんでしょうか。

 文部科学省は、学校は、スクールカウンセラーというのが全中学校にことしの四月から配置されます。それとともに、メンタルフレンドといって、心理学を勉強したりあるいは学校の先生になりたいという人たちが、今、引きこもりとか不登校の子供たちと接触をして、立ち直りに大きな力をかしております。ですから、やはり年が若いということは心を開く大きな要因になっていくと思っておりますので、その辺をお考えの上、どんな対策を講じていらっしゃるかを伺いたいと思います。

麻生政府参考人 保護司の高齢化の関係についてまずお答えいたしたいと思います……(池坊委員「委員長」と呼ぶ)

池坊委員 保護司だけでなくて、全体についてということでございますので、法務省じゃなくて、大臣、お考えがきっとおありだと思いますので、大臣から答えていただけたらと思います。決して難しい問題ではございませんので、お答えいただきとうございます。

南野国務大臣 先生がおっしゃっておられましたサポートチームの問題点についてでございますが、多くの地域では、多様化、深刻化する少年非行等の少年の不適応に対処するため、地域の実情に応じ、学校、警察、児童相談所等の関係機関等が構成員となってネットワークを形成して取り組んでいるところでございます。

 しかしながら、地域に既に存在するネットワークの機能によっては、きめ細かな対応が難しい場合もあります。そのような場合には、少年一人一人の問題点に着目したサポートチームの形成をすることがあります。

 したがいまして、保護者等から相談に応じる常設のネットワーク、青少年の個別の問題点に着目して結成するサポートチームの両方をあわせて活用し、効果的な取り組みをしていくことが大切だというふうに思っております。

 いろいろ申し上げましたが、その趣旨が末端まで行くように積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

池坊委員 ちょっと質問と答弁が違ったように思います。

 私が伺いましたのは、人材確保をどのように御努力していらっしゃるのかということと、あと、若い人の構成がないんですけれども、その構成は今後どういうふうな手だてをしようと考えていらっしゃるかを伺いたかったので、私の質問のそれについて御答弁いただけたらと思います。

南野国務大臣 こういう難しい問題につきましては、若い方がますます必要になってまいりますので、若い方の参加、それが得られることが大事だというふうに思っておりますけれども、近時、保護観察事件が本当に複雑多様化いたしておるとともに、地域社会の変動、国民の意識の変化等も受けまして、保護司の活動はこれまでよりも困難になってきております。

 保護活動を一層推進するためには、保護司に一人でも多くの適任者を確保すること、保護司の能力の向上を図ることが何よりも重要な課題であると認識いたしております。

 保護司適任者の確保につきましては、ますます困難になっているのが現状でありますことから、各界各層から保護司の適任者を得ることができるよう、地域の関係機関、団体と連携して、保護司にふさわしい候補者を開拓する方向への実施を検討してまいりたいと思っております。また、保護司の能力向上につきましては、保護観察処遇に必要な知識、技術を身につけていただくための保護司研修を一層強化することといたしております。

 さらに、保護司活動に対する支援の強化として、実費弁償金の充実などにも努めているところです。

池坊委員 課題の認識の上に立ってどういうことをしたらいいとお考えですかという質問でございますので、認識していらっしゃるということは重々わかって、私がそれを問題提起しているわけです。何か具体的な――はい、そちらの方。

山本政府参考人 池坊委員の問題意識は私どもも非常に強く持っております。

 地域に密着した、例えば市町村にあります補導センターですと、七万人のいろいろな地域の方に応援していただいているんですね。この方々が非常に高齢化をしているというのは非常に大きな問題だと思っています。要するに、先ほど夜回り先生のお話をされましたように、いかに活動できる人を確保して中身を充実していくかということがポイントだと思います。

 私どもといたしましては、この七百の補導センターの所長さんに研修をしたりあるいは職員の方に研修をして、そういった中身をしっかりと確保していただくように、そして、いろいろな地域に、いろいろな人たちに声をかけていただくということをお願いしておりますし、都道府県の担当部長、課長にもそういう旨を、強く県としてバックアップをするようにお願いをしているところでございます。これからも力いっぱいそういう努力をしていきたいと思います。

池坊委員 いろいろなPRの方法があると思います。例えばホームページを使ってもいいと思いますので、それは英知ある皆様方ですから、ぜひそのようなことを工夫していただけたらと思います。

 最後に、少年警察ボランティアですけれども、平成十五年度、社団法人全国少年補導員協会が行った調査によりますと、これは、補導しながら、法律では何の権限もございませんよね。ですから、たばこを捨てさせるときとか、あるいは不良行為の少年を見つけて注意、指導するとき、少年の名前など人定事項を確認するときなどに、やはり一定の限界を感じるという調査が出ております。これは五〇%近いんですね。

 こういうことに対して、きちんと認識し、何かの手を打とうというふうに考えていらっしゃるかを最後に伺いたいと思います。

伊藤政府参考人 今御指摘がございましたように、全国の少年警察ボランティアの方々の意識や活動実態、要望等についてアンケート調査をいたしたものがございまして、これについては、平成十六年三月に調査報告書として取りまとめられたものがございます。

 この調査結果によりますと、相当数の少年警察ボランティアの方々が、若年層ボランティアの育成が必要だというようなことであるとか、あるいは、具体的な法律上の権限がないことから、今御指摘があったように、喫煙等の不良行為少年に注意するとき、あるいは深夜徘回する少年を呼びとめ声をかけるときに、いろいろな活動の限界を感じるということを挙げておられます。

 このため、警察庁といたしましては、今般、今国会で御審議をお願いしております風俗営業法の一部を改正する法律案におきまして、少年指導委員の職務の明確化や風俗営業所等への立ち入りに関する規定等について整備してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 このほか、少年の補導に関する手続等の明確化等につきましても、さらに検討を加えてまいりたいと考えているところでございます。

池坊委員 質問を終わらせていただきます。

 南野大臣には、ぜひ青少年問題に対して力を注いでいただきたいというふうに思っております。児童虐待防止法も、ぜひどういうものかを知っていただけたらというふうに願って、終わります。

 ありがとうございました。

藤村委員長 次に、石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 きょう、私は、社会問題となっている引きこもりの問題についてお聞きをしたいと思います。

 南野大臣は所信の中で、「引きこもり等が深刻化するとともに、」「青少年をめぐる状況には大変厳しいものがあると認識しております。」と述べられています。引きこもりが深刻化している、青少年の状況は大変厳しい、こういう指摘をされたということを私は評価したいと思っております。

 そこで、最初に、どういう実態を踏まえてそういう認識をしていらっしゃるのか、深刻だという認識をもう少し披瀝いただきたいと思います。

南野国務大臣 青少年の引きこもり、これは最近の青少年を取り巻く環境の変化により深刻化している問題の一つであり、各種の調査によりますと、例えば、何が根拠で私がそう申し上げているかといいますのは、厚生労働省の研究班の調査によりますと、平成十五年度におきまして、二十歳から四十九歳の引きこもりの状態にある者が約二十四万人に上ると推計されている。また、二番目といたしましては、厚生労働省の別の研究班の調査によりますと、平成十四年度におきまして、引きこもり状態である子供が存在する家庭は、世帯といいますか、これが四十一万世帯に上るとも推計されております。

 政府におきましては、早急な取り組みが求められているものと認識いたしております。

石井(郁)委員 引きこもり体験者の体験談などいろいろありますけれども、それを見ますと、受験、いじめなど、学校生活に疲れている、また人間関係に苦しんでいるということがきっかけになったり、そこからなかなか立ち直れないということが言われています。

 引きこもりについて、これは厚生労働省のガイドラインですけれども、ストレスでひどく消耗した心身を守るための対処の一つだ、多様な人々がストレスに対する一種の反応として引きこもりという状態を呈する、狭義の精神疾患の有無にかかわらず長期化するというふうに言われています。こう見ますと、私は、今の青少年の状況からして、本当にだれもがと言ってもいいぐらいこういう状況になり得るということを示していると思うんですね。

 そういう意味で、この引きこもりへの政府の対応というか政治の課題というのは、私は大変重要だというふうに考えているわけですが、こういう問題に対して、この間、政府としてどのような対応をされてきたんでしょうか。どういう施策を講じてこられたのか、教えてください。

南野国務大臣 内閣府が中心となって取りまとめました政府の青少年育成施策大綱におきましては、引きこもりへの対策を盛り込んでおりまして、諸施策を推進することといたしております。

 具体的には、厚生労働省におきまして、地方自治体が行う引きこもり等児童の児童福祉施設等での宿泊指導事業への補助、また精神保健福祉の観点からは、保健所及び精神保健福祉センターにおける相談支援、対応ガイドラインの作成、配付などのさまざまな取り組みを行っているものと承知いたしております。

 また、不登校の問題につきましては、文部科学省におきまして、地域ぐるみの支援ネットワークを整備する事業や、学校等におきます取り組みの参考とするための指導資料の作成などを行っているものと承知いたしております。

 引きこもりへの対応は、家族やその支援者に対しまして、根気や我慢を必要といたします。非常に難しい問題でございますけれども、政府といたしましては、引き続きこのような施策の充実を図りまして、関係省庁で緊密に連携しながら、引きこもり等の問題に取り組んでいきたいと考えております。

石井(郁)委員 いろいろな形での取り組みがあるというお話なんですけれども、精神保健の立場からは保健センターなどでの相談窓口も開設されていらっしゃるということなんですが、その相談窓口ではどのぐらいの件数が寄せられているのか、あるいは全国に何カ所あるのか、ちょっとこの数字だけお示しください。昨年度に限ってでも結構です。つまり、相談窓口というところには一体何件、何人ぐらいいらっしゃるのか。

塩田政府参考人 全国の保健所、精神保健福祉センターでいろいろな引きこもりの御相談に応じているということでございます。

 厚生労働省におきましても、先ほど大臣御答弁ありましたように、大変深刻な社会問題でありますし、理由がさまざまで対応が大変難しいという点はありますが、省内関係局連絡をとりながらいろいろ取り組みたいと思っております。

 それで、まず、保健所がたしか五百八十カ所で、精神保健福祉センターが七十カ所だったと思いますけれども、電話の総延べ件数、これは平成十四年の数値ですけれども、電話相談延べ件数が九千九百八十六件、それから、来所で相談された実数が四千八十三件という数値になっております。

石井(郁)委員 私、最初にお伺いした深刻な実態からしますと、相談においでになる方の数というのはまだ本当に一部じゃないのかなというふうに今の数からも思うし、また開設状況というのも非常に少ないというふうに思うんですね。

 それで、先ほど大臣からは深刻な実態としての数字を示されましたけれども、今私は社会問題となっているというふうに冒頭申し上げましたように、本当に残念なことに、子供が親を殺すとか、また親が子供を殺すとか、それが引きこもっている子供をめぐって起こっているだとか、あるいは子供同士の犯罪もそういうことがかかわっているだとか、こういうことになっているわけですから、そういう点で、今本当に急がなければいけない問題だというふうに考えているんですね。だから、その深刻さというのは政府も指摘したとおりなんです。

 それでは伺いますけれども、非常に引きこもりというのは長引いている、長期化しているということで、今ではもう三十代、四十代の方もいらっしゃるわけですよね。そういう意味で、青年期の引きこもり対策ということは重要だというふうに私は思うんですけれども、政府としては、どの省庁、どの部局でこれを担当しているんでしょうか。

南野国務大臣 具体的に見ましたら、厚生労働省におきまして、地方自治体が行う引きこもり等児童の児童福祉施設等での宿泊指導、そういった事業への補助、また、精神保健福祉の観点から、保健所及び精神保健福祉センターにおける相談支援、対応ガイドラインの作成、配付、そういったことが行われているということでございます。

石井(郁)委員 私は、政府としてなんですよ、中央省庁として。だから、これは厚労省が行っている、内閣は何を行っているのか、その区分けがちょっとはっきりわからなかったものですから。わからないというのは変ですけれども。要するに、引きこもり対策は厚労省が行っているということでよろしいですか。

山本政府参考人 今大臣お答えいたしましたように、これは非常に多岐にわたるものでございますので、厚労省、文部科学省等を中心に具体的に取り組んでいる。そして、総合という立場から、青少年対策推進本部、これは総理ヘッドの全体の会議でございますが、こういうところで総合的に調整をし、大綱にも盛り込んで、関係省庁連携して、政府一体となって取り組むという姿勢で推進をいたしております。

石井(郁)委員 それで、少し具体的な支援の方に移ってお聞きしたいんですけれども、要するに、引きこもりの状態というのは、コミュニケーションがとれない、悩んでいる、苦しんでいる。だから、この状態だったらやはり社会生活ができないわけですから、社会生活ができるための訓練の期間というのが要るわけでしょう。そういう準備期間というのも要るわけです。

 そこで、私は、社会や集団になじむ点でも、やはり社会復帰をするという過程では居場所づくりというのが大変重要な意味を持ってくるわけですよ。先ほど宿泊施設という話もありましたけれども。

 先ほど来御紹介している、厚労省の研究として出された「十代・二十代を中心とした「社会的引きこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン」というのがございますけれども、そこでも、デイケアとかグループ活動への参加というのは大変大事だということで、そのためには居場所が大事だという指摘があるかというふうに思うんですね。

 この居場所ということについての必要性、重要性についてはどのような認識をお持ちですか。

塩田政府参考人 委員から御指摘がありましたように、平成十五年七月に発表しました社会的引きこもり対応ガイドラインの中でも、引きこもりの状態から社会復帰する上で、そのステップとして本人の居場所が必要だという御指摘がなされているところでございます。社会のいろいろなところで居場所ということをつくっていく必要があると思いますし、公的なところがつくる居場所もあるでしょうが、最も自然な形は、NPOとか地域の人たちで、自然な形の居場所というのができればと思います。

 引きこもりを真っ正面からとらえた施策ではありませんけれども、例えば障害福祉の分野では、地域に小規模作業所というのがNPOを中心にいっぱいやられていますけれども、そういうところもこういう方が社会に復帰する一つのステップになると思っています。

 従来、小規模作業所には国の施策というのは、全国で六千カ所あるんですが、そのうちの二千カ所ぐらいに一カ所百十万円という助成をしておりましたが、今度の通常国会に法案を提出しておりまして、そういう小規模作業所に対する国の支援を高めるということ。従来は、法定施設になるためには社会福祉法人でなければいけないという規制があったんですが、NPOでもそういう小規模作業所をしていいということで、そういうものを法律の制度として位置づけることにしておりますので、そういったことも引きこもりの方が社会復帰する上の一つのステップになると思いますし、いろいろな角度でそういう場づくりには努力したいと思っております。

石井(郁)委員 今御答弁いただいたんですけれども、政府の見解としても、そして実際に、現実に引きこもっている青年たちを本当に何とかしなければということで民間の人たちが取り組んでいるということでも、随分居場所づくりというのは進んでいるわけですね。これが必要だということになっていると思います。

 私も、この問題については二〇〇二年に当委員会で質問したところなんですね。だから、ガイドラインに沿ってやはりこういう施策が要るんじゃないかということなんです。ちょっと紹介しますけれども、そのときの政府の答弁でもこういうふうに言っておられました。

 引きこもりの状態から回復しまして社会に再参加するためのステップといたしまして、仲間であるとか、本人の居場所であるとか、仕事場であるとか、こういうふうなものが極めて重要でございます、こういうこともガイドラインの中に記載しておるわけでございますが、こういった機能を果たすものとして、民間団体や、引きこもりから立ち直った人たちのサポートとか、そういうふうな団体が、例えば、類型的に言いますと、精神障害者の社会復帰施設、グループホームなどの経営も可能であるし、国庫補助の対象にもなるわけでございます、また、作業所とかそういうふうな形で考えてみても、小規模作業所のうち一定の要件を満たす場合には、運営費に対して助成を行っておりますと。財政的なサポートにつきましては、一定の要件に該当するものについては積極的に進めてまいりたいと。また、地域保健でも、市町村ないしは地方公共団体のメニュー事業として、一定の範囲で国費を支出していますと。

 だから、二〇〇二年の段階で国費を支出しているというふうに御答弁いただいているんですが、どうもその後、本当に財政的支援というのがどれほどあるのかということになると、何か心もとないんですよ。ちょっと伝わってこないんですね。

 もう一度、具体的にどのくらいの予算規模でこの財政的支援を行っているのか、この御答弁に即してちょっとお答えいただきたいと思います。

塩田政府参考人 先ほどの御質問にお答えした答弁と繰り返しになるんですけれども、地域地域でいろいろなステップとなるような居場所が必要だということで、作業所とかいったものは非常に有効だと思っています。

 今度の障害者自立支援法、いろいろな御意見があることは承知しておりますが、その中で、市町村が地域生活支援事業というのを必ず行うということを規定しております。その中で、いろいろな障害を持つ人たちが軽い作業とか創作活動とか、いろいろな活動をするようなことを市町村が必ず行わなければいけないということにしておりまして、そういう場が広がれば、多分引きこもりの方もそういう場で社会復帰のステップになると思っております。

 これは、支出はまず市町村が行いますが、国が法律に基づいて二分の一の補助を行うという仕組みにしておりますので、具体的な額がどのぐらいになるか申し上げることはできませんが、数年前の国会のやりとりを踏まえて、一つの答えであろうと思っております。

 よろしくお願い申し上げます。

石井(郁)委員 先ほど、小規模作業所にも予算措置はしている、できるということもあったと思うんですが、それを確認したいのは、実は引きこもりの青年の場合には、まだ引きこもりの青年の居場所としてのところに支援措置というのは国からはないと思うんですよ。公的な機関であれ、民間、NPOがやっているものであれ、いろいろあるかと思うんですが、とりわけ民間がしている、NPOなどがしているところについての国からの支援というのはありますか。

塩田政府参考人 引きこもりという概念自体は、理由も多種多様ですし、置かれている実態も多様であるということで、引きこもりということで真正面からとらえた施策としての補助制度がないのはおっしゃるとおりでありますが、精神障害に該当する引きこもりの方もいらっしゃいますし、そういう方々がいらっしゃる小規模作業所であれば、法律の精神障害でない方であっても当然利用していただけると思いますので、広い意味ではそういう場に対して国の助成はあるという理解をしておるところでございますが、不十分であることはおっしゃるとおりだと思います。

石井(郁)委員 今の御答弁のように、まだ精神障害者の施設、精神疾患の方々の作業所とかいうところについての補助はあるんですよ。そこに入った子供についてはその中で見ていただけるということ、見ていただくというか補助を受けられるということになるんですが、やはりそれではちょっと違うんですよ。

 ガイドライン自身だって、御紹介しましたように、引きこもりの症状というか子供たちというのは、精神疾患を持っている方もあるでしょうけれども、それに含まれない、もっと広いんだということですから、やはり今そういう引きこもっている青年に対する社会復帰のための居場所、グループ、援助、そういうことが必要なんですよね。そこにやはり踏み込まないと、引きこもり対策をしているとはとても言えませんよ、精神障害者の施策の一環としてしかやっていないということなんですから。そのことはやはり、はっきりしていただかなくちゃいけないというふうに思うんですね。

 再度伺いますが、やはり実際に居場所をつくって、地域でいろいろな形でしていらっしゃるのはNPOであり、民間の取り組みなんですよ。私は、二〇〇二年のときも全国のいろいろなことを調べました。各地で取り組んでいるとこんなにあるんだ、そこをもっと支援すべきだということを申し上げたわけですけれども、そういうNPO、民間に対して支援をしていくというお考えはありますか。

塩田政府参考人 引きこもりが社会的に大きな問題で、いろいろな角度から対策、アプローチをしなければいけないというのはおっしゃるとおりだと思っております。

 例えば、就労であれば省内の職業安定局というところが対応することになりますが、引きこもりという観点から真正面から取り組んではおりませんが、若者の仕事の場とか働くことに対するいろいろな応援措置とかいうことも始めておりますし、いろいろなことをする中で、地道な積み上げの中でとりあえずは対応していくことだろうと思っています。

 とにかく、いろいろな局とも連携をして、きょうの御議論はしっかり受けとめたいと思います。

石井(郁)委員 もう時間ですけれども、やはり心もとないんですね、今の答弁を聞いても。だから、厚労省として就労支援、就労のためのいろいろな施策はそれなりにとっていらっしゃる、この子ども・子育て応援プランの中でもその辺は、若者の自立ということをうたって幾つかメニューはありますけれども、しかし、そこに行けない子供たちがいるわけですよ。あるいは、ちょっと行ったってそれではもう後が続かない、そういう子供たちなんですよ。そこをどうするんですか。やはり、そこをきちっと見ていただかなくちゃいけない。

 実際に、各自治体、民間も取り組んでいますけれども、各自治体も予算措置をしながらいろいろなことでやっています。自治体で既にNPOとの連携協力を開始しているところはあります。和歌山県では県が助成をしています。六百五十万円を計上したりして、引きこもり社会参加促進事業という形でやっています。各自治体、いろいろなところでこういう取り組みは既に始まっているじゃないですか。

 私は、やはり政府がもっと真剣にこの問題に取り組むべきだということで、そのことを強調いたしまして、きょうの質問を終わりたいと思います。

藤村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十五分散会


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