衆議院

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第4号 平成18年12月7日(木曜日)

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平成十八年十二月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小宮山洋子君

   理事 後藤田正純君 理事 実川 幸夫君

   理事 谷川 弥一君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 田嶋  要君

   理事 高井 美穂君 理事 伊藤  渉君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      上野賢一郎君    大塚 高司君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      葉梨 康弘君    福岡 資麿君

      松本 洋平君    山内 康一君

      太田 和美君    津村 啓介君

      西村智奈美君    石井 郁子君

      保坂 展人君

    …………………………………

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)           高市 早苗君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   厚生労働副大臣      武見 敬三君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  竹花  豊君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 深山 卓也君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中田  徹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       大谷 泰夫君

   衆議院調査局第一特別調査室長           佐藤 宏尚君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件(児童虐待問題について)


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     ――――◇―――――

小宮山委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。

 お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長竹花豊さん、法務省大臣官房審議官深山卓也さん、文部科学省大臣官房審議官中田徹さん、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦さん及び厚生労働省雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小宮山委員長 まず、政府参考人から順次説明を聴取いたします。警察庁生活安全局長竹花豊さん。

竹花政府参考人 御説明を申し上げます。

 児童虐待は、弱い立場の子供たちが、本来子供たちを保護すべき保護者から心身に大きな被害を受け、場合によっては死亡という重大な結果に至る極めて重大な行為であり、警察といたしましては、最重要課題の一つとして位置づけまして、児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした児童虐待への対応を強化しているところでございます。

 そこで、警察における児童虐待の取り扱いの現状と取り組みに当たり留意している事項につきまして、資料に基づきまして御説明をさせていただきます。

 まず、児童虐待事件の検挙状況でございます。

 都道府県警察で検挙いたしました児童虐待事件の状況、配付資料の一ページをごらんいただきたく存じますけれども、平成十六年は二百二十九件、これは児童虐待の統計をとり始めた平成十一年以降最高でございますが、平成十七年も二百二十二件と高い水準で推移をしております。被害児童数につきましても、平成十六年は二百三十九人と平成十一年以降最高となり、平成十七年も二百二十九人と高い水準で推移しております。本年上半期を見ますと、検挙件数は百二十件で、昨年同期と比べ十五件、一四・三%増加し、被害児童数も百二十八人で、二十人、一八・五%増加をしており、深刻な状況になっております。

 次に、平成十七年中の児童虐待事件の検挙状況について少し詳しく申し上げます。

 二ページ目の第二表をごらんいただきますと、罪種別の検挙状況がございます。傷害が、傷害致死を含めて百二十五件と最も多く、続いて児童福祉法違反が三十一件、殺人が、未遂も含めまして二十四件、強姦が十六件という順番になっております。前年と比較いたしますと、児童福祉法違反が十六件の増加と約二倍になっております。

 また、死亡事件、これは三ページの第四表をごらんいただきたく存じますが、平成十七年に三十八人の児童が死亡しておりますけれども、その死亡事件の加害者を罪種別、そして被害者との関係別の状況、これは第七表をごらんいただきますと、実母が二十六名、六三・四%で最も多く、次いで実父が九人、実母と内縁関係にある者が三人、養父または継父が二人という順番になっております。

 次に、死亡児童の年齢別を見てみますと、これは五ページの第八表でございますけれども、一歳未満が十三人、三四・二%で最も多くなっております。次いで、三歳が七人、一八・四%、一歳が六人、一五・八%となっており、六歳までの被害児童が三十四人で約九割を占めているところでございます。

 次に、児童虐待に対する取り組みに当たりまして警察において留意している事項について申し上げます。

 警察といたしましては、先ほど申し上げました昨今の児童虐待事案の発生状況等にかんがみまして、都道府県警察に対して改めて、この種の事案に対する取り組みの強化を指示する通達を発しております。

 お手元の資料に、本年の九月二十六日付で「児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした児童虐待への対応について」という通達をつけておりますけれども、以下に述べますような諸点に留意しつつ、児童虐待に対する対応をさらに徹底してまいりたいということでございます。

 その一つは、通達の表題でもございますけれども、児童の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応の徹底でございます。

 児童虐待の抑止は、児童の生命、身体の保護という、これはもう警察本来の責務でもございます。そうしたことを改めて認識をしまして、児童の安全の確認と確保を最優先とした対応の徹底を図ることが必要であり、特に、児童の安全が疑われる事案につきましては、警察職員みずからが児童の安全を直接確認することが重要であるため、警察といたしましては、法律にのっとりできる限りの措置を講ずるとともに、児童相談所に対しましても、立入調査や一時保護など、児童の安全確認及び安全確保を最優先とした対応をとるよう働きかけを行うことといたしております。

 その二は、児童の保護に向けた関係機関との連携の強化でございます。

 警察におきましては、従来からさまざまな連携の強化に努めてきたわけでございますが、さらにその連携を実効あるものにするため、警察署と児童相談所、都道府県警察本部と都道府県の児童福祉担当部局等と重層的な連携体制を構築いたしまして、この種児童虐待の個別事案の情報入手に努めますとともに、これを入手いたしました場合には早期の段階でお互いの情報を共有する、そしてそれに基づいて衆知を集めた対応の検討が行えるように連携を強化することといたしております。

 その三は、厳正な捜査と被害児童の支援でございます。

 児童虐待の端緒を得た場合におきましては、警察における少年、刑事等各部門が連携の上、取り扱うべき事案につきましては、機を失することなく必要な捜査を行い、その捜査を契機といたしまして、児童の死亡等事態が深刻化する前に児童の救出、保護を図ることといたしております。

 また、事情聴取に当たりましては、被害児童の心情に十分配慮いたしますとともに、関係機関との連携を緊密に行いまして、当該児童に対するカウンセリングを実施するなど被害児童の立ち直りに向けたきめ細かな支援も警察として実施することといたしております。

 その四は、情報の集約と組織としての的確な対応でございます。

 各種警察活動に際して児童虐待についての情報把握に努めるとともに、把握した情報を少年警察部門へ情報集約、分析し、事案の危険度や緊急度の判断を適切に行うこととしているところでございます。

 警察といたしましては、以上のような取り組みの徹底を図ることにより、今後とも、児童虐待問題に対し適切な対応に努めていく所存でございます。

 以上でございます。

小宮山委員長 次に、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫さん。

大谷政府参考人 児童虐待問題は、現在の児童家庭行政の最も重要な課題と認識しておりまして、近年、その政策の拡充に全力を挙げているところでございます。本日は、状況につきまして、この資料に基づいて御説明を申し上げます。こういう冊子がありますので、ごらんいただきたいと思います。

 まず、「児童虐待防止対策の経緯」ということで、近年の取り組みの拡充の状況について御説明を申し上げたいと思います。

 特に、平成十二年までは、児童福祉法の中で要保護児童対策として一般対策の中で取り組んできたわけでありますが、そういう社会の児童虐待の事例といったものの重要性にかんがみ、平成十二年には児童虐待防止法が制定され、また十六年には児童虐待防止法が改正、またあわせて児童福祉法も改正されるということで、体制整備が図られてきているわけであります。

 その中身といたしましては、オレンジ色で書いておりますけれども、定義の見直しであるとか通告義務の範囲の拡大、あるいは市町村の役割を強化する、特に相談対応を義務化して虐待通告先に市町村を追加する、また児童虐待防止ネットワークの法定化、司法関与の強化、こういったものが盛り込まれたところでございます。

 そういったものをバックに、児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会というものを設置いたしまして、事例について検証してその取り組みに生かすということ。また、子ども・子育て応援プランということで、これは児童、少子化について全般のプランでありますけれども、その中でも、虐待防止ネットワークの全市町村設置等々、虐待防止に重点を置いて取り組んでまいったところであります。

 また、平成十七年には、児童相談所の児童福祉司の配置基準の見直しということで、人口当たりの配置する標準を、おおむね人口十万から十三万といったものを、おおむね五万から八万に改めまして、配置を強化したといった経緯でございます。また、十八年には、ここに書いてありますような研究会の報告が出ておるところであります。

 それで、児童虐待の防止対策はどういうふうに進めているかということが二ページでございますけれども、これは、基本的には大きく分けて、発生の予防、それから早期発見、早期の対応ということ、それから後は保護、支援と、大きな三つの流れになるわけでございます。

 最初の段階としては、孤立をさせない、あるいは虐待を認めない社会をつくるという、原因のところでの対応。それから、事態が出た場合に、通告を受けて安全を確認する、場合によっては立入調査を行う、一時保護をするケースもございます。それから、そのプロセスの中では、市町村との連携をしながら児童相談所が対応していくわけでありますけれども、関係機関とも連携しながら進めるということがポイントであります。そして今度、保護、支援という段階になりますと、施設に入所する場合、あるいは里親の方にその保護をお願いするケース、あるいはその後の自立支援、保護者の指導、こういった流れでございまして、右の方に具体的な取り組みの政策の例が列挙されているところでございます。

 先を急ぎまして、三ページでございますが、地域において児童虐待の防止がどのようにシステム化されているかということで、これは先ほど申し上げましたような法律改正を受けまして、現在、市町村あるいは児童相談所で体制をつくっているところでありますが、従来の児童虐待防止対策は、児童相談所のみで対応する、こういった仕組みであったわけでありますが、前回の改正によりまして、市町村も虐待通告の通告先となりまして、いわば市町村、それから専門機関として後方支援という役割も帯びた児童相談所が二重構造で対応する、こういった仕組みになっております。

 現在、各市町村の単位で、要保護児童対策地域協議会、いわゆる虐待防止ネットワークでありますが、こういったものの設置が進められているところでありまして、平成十八年四月一日現在では約七割が設置済みということで、これは急速に今整備がされているという状態であります。これにつきましては、後ほど数字の資料で御説明申し上げます。

 この資料をごらんいただきますように、まず左の隅の方にございますけれども、通告等いろいろな関係の機関で見つかった場合、あるいは御家庭から相談があった場合に、まず市町村が受ける、直接福祉事務所にお見えになる場合もありますし、児童相談所に見える場合もございますが、そういった窓口を置いたところでまずは対応をとり、また、必要に応じて児童相談所が乗り出す、こういった流れでありまして、最終的には、児童相談所の判断によりまして措置をして、児童養護施設に入所になるケース、あるいは里親委託、あるいは家庭裁判所に送致される、いろいろな流れになるわけでございます。

 四ページでありますけれども、児童虐待防止対策がどんな現状にあるかということでございます。

 児童虐待防止法の制定以来、児童福祉司あるいは要保護児童対策地域協議会など、徐々にその充実が図られてきたということで、左側にそのペースが図示されておるところでありますけれども、オレンジで、児童福祉司の数につきましても、十二年以降、急速に都道府県でお取り組みをいただいて、運営、整備されてきております。また、地域協議会も、先ほど申しましたように、七割のところまで今整備が進んできておりますが、これを何とか早く全国で整備されるということを、我々も今お願いしておるところでございます。

 あと、右側の図でありますけれども、相談の件数であります。これは、近年、こういった体制が整備され、いろいろな関係機関の御活躍もあるということで報告、相談の件数も伸びているという面もありますが、社会実態としてもやはり事例がふえているという、二重の意味でこういった相談件数がまたふえておるということで、また、一時保護の件数もそれに応じてふえてきている実態でございます。

 それから、五ページでありますが、市町村による児童家庭相談体制の概況ということで、これは、市町村がいわば虐待の責任ある機関として法定化されたことに伴いまして、非常に体制整備を進めてきていただいているわけでありますけれども、なお地域格差は大きいというのが現状でございます。青線で、先ほど申しました要保護児童の協議会を設置している設置の率、またオレンジの線で、夜間、休日体制がどのようにとられているかという、これをごらんいただきますと、福井県のように、ほとんどのところで両方が満たされているケースもありますが、一方でまだその整備が低いという地域もありまして、その整備の低い地域に非常に望ましくない事例が発生したとか、こういうことも出ているわけで、今、各県でも大いに市町村を指導して御努力いただいておるところということでございます。

 それから、六ページにその関連の、いわゆる行政の体制整備の数字がございます。法律改正以降の流れを表現しておりますけれども、平成十二年度以降、児童相談所の数というものにつきましても百七十四から百九十一にと、これは一・一倍の伸び。児童福祉司の数につきましては、これは各地方、行政改革で、定数について非常に厳しい削減も行われている中で大変御努力いただいておりまして、平成十二年度の千三百十三から、ことしの段階で、十八年度で二千百四十七まで今数字がふえており、一・六倍ということではございますが、まだまだ、これで対応し切れているかと申しますと、後ほど申しますような相談事例の増大に応じ切れていないということで、福祉司数をさらに拡充していく必要があるというところでございます。

 それから、要保護児童対策地域協議会でありますけれども、この設置状況を見ますと、平成十三年度から立ち上がったところでありますけれども、急速に今整備が進みまして、ことしの四月で六九%、約七割弱まで来ておりますが、何とか早く全市町村に設置されるようお願いしてまいりたいと考えております。

 あと、休日、夜間の相談体制割合、これが今のところ約六割弱。それから右端は、市町村の相談従事職員のうち何らかの資格を保有する方の割合、専門家が配置されているかどうかにつきましては、市町村ではまだまだこういった意味で配置の数が少ないということで、これについても御努力を賜りたいと考えているところであります。

 それから、七ページに参りますが、今度は虐待防止、虐待事例でございます。虐待相談に対応した件数、これは児童相談所が対応した件数でありますが、対策は講じているものの、事例はふえ続けておりまして、相談が多くなってきておるということで、十二年度に比べまして約一・九四倍ということになってきておるところでございます。また、立ち入りを行ったという件数につきましても、平成十二年度に比べますと九十六から二百四十三と二・五倍。また、一時保護の件数につきましては六千百六十八から九千四十三と一・四七倍、こういった増加の状況でございます。

 その他、強制入所措置のために家庭裁判所へ申し立て、承認した件数につきましてこういった数字。あるいは児童養護施設、これは先ほど申しましたように、そういう虐待を受けたお子さんが入所されているというケースが多いわけでありますが、今養護施設がどれぐらいの入所率かということになりますと、約九割ぐらいの入所率でございますが、これも、満杯のところ、あるいは余裕のあるところ、地域差があるところでございます。また、養護施設の中で、虐待ということで入所されたという方の割合を見ますと、これはふえておりまして、六二%ということでありますから、やはり、養護施設に入っておられるお子さんのかなりの方が虐待を理由に入所しておられるという実態が読み取れるところでございます。

 それから、八ページに参りますけれども、児童虐待につきましてはかなり切迫した事例が多くなっているということで、警察庁の方でも大変御努力いただいておりますが、それに対応いたしまして、私どもの方も、ことしの九月に総務課長通知を発して、警察との連携についても各担当にお願いをしているところでありますけれども、大きく三つございます。

 「警察に対する援助要請について」、そういった援助要請を行って相互連携を行う。また、二つ目として「警察との情報交換等について」ということで、これは、要保護児童対策地域協議会にも構成員として参加していただき、また、個々の局面局面で綿密な情報交換をする。また、三つ目として「警察の事情聴取における児童相談所の対応について」ということで、警察が事情聴取を求めてきた場合には児童相談所も適切に協力を行う。こういった協力関係について、各児童相談所で取り組みを強化しているところでございます。

 次に、九ページに参りますが、最近の、十五年七月から平成十六年十二月までに起きました死亡事例七十七事例、八十三人における、どういう属性があったかというデータでございます。

 まず、「年齢構成」を見ますと、これは圧倒的にゼロ歳のところで事件が起こっておりまして、特にゼロ歳で四二%、また四カ月未満という非常に乳児のところで、またその中でも約半分が起きているということで、やはり、集中的に起きているのはこういった低年齢のところであろうということでございます。

 それから、「主たる加害者」ということになりますが、これは複数回答でありますけれども、約半数が実母、あと四分の一が実の父、こういった割合であります。

 それから、「虐待の種類」でありますけれども、やはり一番多いのは、ほとんどが身体的な虐待、八四・五%でありますが、それ以外に、「ネグレクト」と書いておりますけれども、いわゆる養育を拒否する、こういった形で虐待が行われているケースが約一割強見られるところであります。

 それから、「家族形態」を見ますと、やはり、一人親、未婚というのが四割、それから内縁関係が一四・二%、その他、こういうような形でありまして、一人親、未婚のケースに事例が発生しておる割合が高いことが見てとれるわけであります。

 それから、特に「地域社会との接触」という項目をごらんいただきますと、やはり、孤立というものが言われるわけでありますが、接触がほとんどない、四一%、あるいは乏しいということで、地域社会との孤立がこの死亡事例に結びついていることもうかがい知ることができるところでございます。

 こういったものが、特に死亡事例の状況でございます。

 十ページでありますが、そういったことで、近年、予算あるいは人員等、整備に努めているところでありますけれども、十九年度、今予算要求を行っている概要を掲げておりますが、昨年の百十八億に対して百三十九億と、厳しいシーリングの中で大幅な今要求をしておりまして、現在、財政当局と最終的な折衝中でありまして、その獲得に努めているところであります。

 一つ、「発生予防対策の充実」というところでは、今年、新規事業として、太字で書いてございますが、生後四カ月までに全戸を訪問するこんにちは赤ちゃん事業というもの、これは先ほどの特に乳児、ゼロ歳あるいは四カ月未満に重症な事例が多いということもありまして、こういった新規の事業を取り組むべく、現在予算要求をしております。

 それから、早期発見、早期対応につきましては、そういった要保護児童対策地域協議会、こういったものの設置の促進。

 それから、三の「自立に向けた保護・支援・アフターケアの充実」ということで、施設についての取り組み、あるいは児童福祉施設における支援体制の強化、里親。それから、(四)のところで太字で書いておりますが、身元保証人の確保対策。これが、自立支援する場合に、その辺がなかなか、身元保証人を得ることが難しいというのが障害になっているということから、そういった確保事業についても新規事業を今要求しておりまして、こういった中身について、今後も政策を進めてまいりたいと考えております。

 それから、十一ページ以降、ちょっと文章で書いた資料が四枚ございますが、これは、実は児童虐待の防止等に関する制度の施行状況の把握についてという、現在の法施行状態の調査というものを緊急に行っておりまして、十八年の六月に、各都道府県や指定都市、あるいは児童相談所設置市に調査をお願いしたものでありまして、現在、最終集計中のものであります。したがいまして、完全な数値等がまだ整っておりませんが、本日は、その中でもちょっと抜粋をさせていただきまして、特に事例について資料をつくらせていただきました。ですから、集計中のこれは抜粋というふうに御理解賜りたいと思います。

 大きく四つのグループに分けております。一つ目が「立入調査を執行した事例」、それから次のページが「立入調査の執行に困難を伴った事例」、それから三つ目が十三ページの「面会又は通信の制限を行った事例」、それから次が「親権者が医学的治療に同意せず親権喪失宣告請求で対応した事例」。それぞれ、うまくいったもの、非常に困難があったものを表現しております。

 十一ページにつきましては、事例一々は読み上げませんけれども、やはり警察官が内縁の夫を説得して、引き渡しに応じた、こういう執行した事例であります。また、事例の二は、児童相談所職員が踏み込んだところ、危害が切迫して警察官が制止をした、こういった事例。

 それから、十二ページに参りますと、これは「立入調査の執行に困難を伴った事例」でありますけれども、四つのかぎがあって、説得してもなかなかうまくいかないということで断念したケース、後日、これは児童相談所が一時保護しております。その他、呼びかけたけれども反応がなくて、無理な立入調査はしないということで立ち入りは断念したけれども、その後も呼びかけを継続しているというような事例、そういったものがございます。

 それから、十三ページは「面会又は通信の制限を行った事例」ということで、こういった二つの例を掲げてございます。

 最後、十四ページでありますが、「親権者が医学的治療に同意せず親権喪失宣告請求で対応した事例」ということで、重篤な心臓の疾患があって、なかなか保護者が必要な治療を受け入れなかった場合に、手術を何とかできたような事例など、三例がございます。

 こういった事例につきましては、今後のまた虐待対策の拡充、あるいは改正についての重要な示唆になるものも含まれているのではないかというふうに考えております。

 以上、資料で説明申し上げましたけれども、こういった虐待防止対策につきまして全力で取り組んでまいる所存でございますので、どうぞよろしく御指導賜りたいと思います。

小宮山委員長 以上で政府参考人からの説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷川弥一さん。

谷川委員 自由民主党の谷川弥一です。

 長崎の代表であり、長崎は過去二件、全国民の胸を痛める悲惨な出来事を起こし、関係各位に大変な御迷惑をかけておりまして、そういう意味で、私に子供に関していろいろ述べる資格はありません。ですが、そのときの言いようのない気持ち、悲しさ、もうあんなことがあってはならぬよという思いを込めて、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 日々、いろいろな出来事が起き、それがいろいろな情報機関によって流され、それについていろいろな人がいろいろなことを話しておりますが、それらの中で、目を覆い、耳をふさぎ、本当に見たくも聞きたくもないということに、親殺しであり、児童虐待であり、また、海鳥が海に漂うプラスチックの小さなものを食べてもがき苦しんでいる、そういう出来事があります。それらに共通するのは、当事者の努力によって防ぐことができない、ただひたすら耐え、苦しみ、もがくしかないということだと思うんです。

 今るるお話を聞きまして、私が今まで考えてきたこととまた違うなという気もして、実は困っております。こういうふうに聞こうと思ったのが、今聞いているうちに、あれ、これは違うこともあるぞというふうなこともあって、非常に困っているんですが、何はともあれ、今お聞きしたことで計画としてほぼ完璧じゃないかなと。これだけのことをやって、なおかつこれが解決できないということは、これは全く視点を変えなければいかぬのじゃないかなという気もしております。

 何はともあれ、これはことしの十一月十一日の朝日新聞なんですが、役所は完璧でしょう、やろうとしていることは。しかし、実際は児童相談所が立ちすくんでいるよとか、それから連携づくりに問題があるぞとか、分離か再統合か板挟みだとか、親の硬化を懸念する警察介入は二の足を踏んでいるとか、そういう記事があります。そして、なおかつ膨大な数でふえておりますね。

 そこで、お尋ねですが、まず警察庁の方にお尋ねしたいんですが、二つ考えられますね。一つは、起きた後、限りなく努力して理想的な対応をする。それから、起きかかっているときに、他の役所と話しながら何としてもこれを防ぐ。

 この中で、僕が本当に聞きたいことは、そういったって、人の子だし、その親にも独立した生活があるし、個人的人権もあるわけだし、役所といえどもなかなか踏み込めないよなという、ここが一番僕は問題だと思うんです。そういったって、子供が死ぬじゃないか、人権もへったくれもあるか、わあっと行けという、この板挟みが実は現実問題としては容易ならぬのだろうと思っているんですが、その辺の御苦心、もしくは、そういってもこうして防がぬといかぬというような思いがあったら、お聞かせください。

竹花政府参考人 お答え申し上げます。

 従来、家庭内の問題に警察が立ち入ることについて、警察は基本的に慎重な対応をとってきたというふうに私は思います。しかしながら、昨今の家庭内の状況はそれを許さない、すなわち、放置しておけば取り返しのつかない事態が生じる例が非常にふえてきている。例えば、いわゆるドメスティック・バイオレンスという夫婦間の問題についても、やはり法律が定められて警察に一定の役割を負わせよう、そういう時代になってきたのだというふうに思います。

 子供の問題は、とりわけ全く抵抗のしようのない子供、助けを求めることすら難しい子供にかかわる案件でありますので、しかも、それがかなり早い段階で取り返しのつかない状況になる、そういう性質のものだというふうに私どもは考えております。

 今委員御指摘のように、二つの側面で警察は関与することが必要だ。それは、この児童虐待が犯罪であるというときに、犯罪としてしっかり対処をするという側面もございますれば、やはりそうした取り返しのつかない事態になる前に、警察としてもできる限りのことを法令の範囲内でやるように努力をするという、二つの側面があろうかというふうに思います。

 こうした問題について、現場においても、家庭内の問題であるだけに、児童虐待の問題はまず児童相談所に先頭に立ってやってもらいたい、私たち警察としてはそれを後押しするよという基本的なスタンスというものも、また一部の警察官の思いの中にはあるわけでありますが、それだけでは、現下の状況では、重大な事態を防止し切れないという思いもまた現場にはあるわけでございます。

 今回の通達というのは、そういう現場においてもそれぞれ戸惑いがある中で、現下の状況の中で、取り返しのつかない状態を招かないように、警察としてもできる限りのことをしようと。それは、警職法という法律を活用することもあれば、犯罪捜査についての警察の権限もあるだろう。そうした権限もできる限り活用して、とにかく当座の安全を守ることについて警察はもう少し役割を果たそうよということで通達を発したものでございます。

 今後、さまざまな現場における難しい対応が迫られる事例があろうかと思いますけれども、そうした問題について、しっかりとそれぞれの経験を積み重ねる中で、問題の起こらないように、しかしまた子供たちの安全が守られるようにしっかり対処したいというふうに考えているところでございます。

谷川委員 次は、厚労省の関係者にお尋ねしたいんですが、まず、本当に言いにくいですが、親になる資格がないような感じの人が子供を産んだとき。それが、いわば、原体験という言葉で僕は言っているんですが、原体験に問題がある場合。それから、いろいろな苦難なこと、耐えられないことを耐えていく訓練に関すること。それから、親とか関係者がいろいろ教えてだんだんにしていく、いわばシステムというのかな、そういうことに分けてお尋ねしたいんです。

 僕らは、特に私の場合、長崎の五島列島というとんでもない田舎で生まれ育っているので、ただ、いいところは、まさに夏の夜空に満天の星というのが強烈な印象として残っているんですよ、子供のときにキャンプファイアとかに行ったときに。それとか、春は、芽吹いてくる草の雪を押しのけていく、あれに対する感動とか、秋のコスモスが揺れる、ああ、秋の空というのはやはり夏と違うんだなというような、そういうのを経験した人間と、それから東京の、マンションというのかアパートというのか、十階とか二十階に生まれ育って、完全な冷暖房で育って、そういうのが余りなくて、パソコンをして、ゲームをして、テレビを見て、余り本も読まないで漫画ばかり読んでおって大人になった。ここに実は大きなヒントがあるような気がしてなりません。何としても、親が親になる仕組みというか、ここら辺に手を打たないと、余りそういう分析がないから僕は言っているんですよ。

 もっとわかりやすく言います。私は住宅会社をやっているんです。営業の連中に、お客さんの気持ちのつかみ方はこうだぞとか、こういう身ぶり手ぶりのときは大体人間は傾向としてこういうことを考えているんだぞとか、全く知らない人が来たときにはこう警戒して心をふさぐんだとか、そういう場合にはああせいこうせいとか、こういうことを黒板に書いてるる教えますが、そんなのでは一件も契約できません。そんなことではできないんです。

 やはり、自分が行って、けられ、踏まれ、ばあんとドアを閉められ、そして何とかその経験の中からお客さんにぶつかっていくようなことを何回も何回も何回も経験せぬとだめなんですよ、現実は。失礼ですけれども、そういう気がしてならないんですよね。ゴルフというのは、こういうふうに握って、こういう目をして、こうして打ったら上手になるんだよと黒板に、朝から晩まで、毎日、一年二年三年やっても少しも上達しない。そういうふうに感じてなりません。

 だから、言いたいことは、二つに分けていただきたいと僕は言っているんです。児童相談所というところでしょうから、私が言う営業に相当するところは。そこの人たちがやっていることを綿密に時系列でとらえて、どこに問題があるか、もうちょっときちっととらえていただきたい。そして、こういうケースの場合はこうだ、こうだ、こうだというのを、起こった事例に沿って分析して対策を打っていただきたい。私は、どうも黒板に書いたゴルフの上達法のような気がしてならないんです。まずこれが一つ。要するに、もう一遍根本的に、全く別の次元から分析し直して手を打つべきじゃないのかということを僕は言っているというのが一点。まずここをお答えください。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生がおっしゃったみたいに、原因として、大人がどういう環境で育ち、そしてどういう家庭を持っているか、こういったことが実は大変重要でございまして、結局、そういった社会の変化というものが極端な事例として虐待という方に反映してきている。社会変化がそういう形で凝縮してあらわれている面があるのではないかというふうに思います。御指摘のとおりでございます。

 そして、その対応としまして、児童相談所がどう対応するかということで、これにつきましては、研修あるいは事例の蓄積を行い、現在も、研究会でまた新しい死亡事例等を蓄積して、どこに、どういう指導が問題であったかということについては分析し、それを今後の検討に生かそうということもやっているところであります。

 例えば、最近、京都でやはり虐待の事例がございました。これにつきましても、実際に現場としては、本来行うべきマニュアルどおりやっていれば起こらなかったのではないかと。ですから、そこに、先ほどおっしゃったみたいに、現場の徹底といいますか、トレーニングというものがどこか抜けていた、あるいは組織的な対応としての指導管理が甘かった点があるんじゃないか、こんなこともありまして、現在、京都府におきましても、今回の事例を徹底検証して職としての事例に生かそうということで、今検証会がもうそろそろ結審が近づいているというふうに聞いております。

 私どもも、こういった事例、あるいは全国で行われた行政の対応について問題がなかったか、あるいは特殊事例については特殊な対応があったか、そういったことについて状況を見きわめながら、児童相談所運営指針と申しておりますが、児童相談所の職員がどういうふうにして対応するかという指針でありますが、この見直しをして、関係者に徹底をしてまいりたいと考えております。

谷川委員 時間がないので弱っているんですが、あと二つお尋ねします。

 一つは、こういうことが起こりそうだというような情報が隣近所を含めて入ってくると思うんですね。そのときに、ある線引きを通達して、ここら辺まで来たら人権も何もないんだ、踏み込むんだ、強制的にその子は連れてきて、こういうふうな育て方をするんだとか、少子化で各地域にいっぱい廃校がありますよ。田舎だけかな、もしかしたら、東京はないのかな。そういうのを使ってでも、なかったらつくればいいんです。やはり各県にぴしっとした施設を私はつくるべきだと思うんです。

 要するに、人権というのに余りとらわれるなということを言いたいんです。そんなのより、今から生まれて育っていく人の権利が強いんだよ、こっちの人権よりも。だからこれを、なかなか難しいと言わないで、強引に線引きする、許容範囲はここら辺までだと。いかがですか。

大谷政府参考人 現在、通告あるいは連絡があった場合、これはすべて受けとめるということにしております。その受けとめたものに対して、まず市町村の現場も判断し、それから専門機関である児童相談所にも相談し、児童相談所が直ちに現地に向かって親に会い、そして、まして親だけではなくてお子さんにも面会してその状況を判断する、これが今のルールでございます。

 その中で、会おうにも会えないとか、それから立入調査ができないというケースも出てくるわけであります。それについても、切迫度はいろいろあると思うわけでありますけれども、御指摘のように、従来は親の権利とか親の立場というものを非常に尊重され、立ち入りについてはなかなか難しい面がございましたが、結局、それにちゅうちょすることが子供の命を損なうということも近年の事例で反省されているところでありまして、現在の児童相談所の取り組みも、むしろ子供の命を優先して取り組もうということで、いわゆる踏み込むという言い方はどうでありますか、できるだけ現地で立ち入って調査しという方向を今進めているところであります。ただ、執行については、現場で権限等困難な問題がありますので、慎重な手続はやはり相談所の判断とかを踏んで行っておるということでございます。

谷川委員 もう一つは、これは十二月三日の記事ですが、情報が入って担当者、関係者が現場に行った、現場では幼児が大泣きし若い母親が取り乱していた、こういうふうな記事なんですが、子供が大騒ぎ、泣いたときに、冷静に、どんなふうな対応をしていいか、こういう経験がないですよね。があっとなってしまうんですね、母親が。

 これはまさに訓練の問題ですが、善意に解釈すると、そういう場合、昔はおばあちゃんとか隣近所の人がさっと来て応援しているんですよね。今は孤立してしまってそれができない、こういうことなので、孤立を防ぐ何かを考えないといかぬ。親であり隣近所のおばあちゃんのかわりに何か、ボタンを押したらだれがどうするとか、お金はかかっても、これは時代の流れですから。ここら辺に踏み込まないと手が打てないのに、しかしそれが、いや、そんなのは個人がやるべきだというような、いわば対応し切れていない部分があると思うんです。いかがでしょうか。

大谷政府参考人 非常に切迫した、今にも踏み込まなければいけないというようなケースにつきましては、先ほど御答弁申し上げたようなことになりますが、おっしゃったとおり、今の特に都会などの環境におきましては、家庭が孤立し、特に子育てをしているお母さんが孤立して、育児のストレスからお子さんの虐待に向かったというような事例も報告されているところでございまして、これについて、さっき申しました、今、予算要求をしている中では、ゼロ歳児のうちに、四カ月までの全戸を、すべての家を専門家が訪問して母子の状況を確認するというようなことも何とか推進したいと考えております。

 さらに、お母さんが地域の中で孤立しないように、ふだんの子育ての中で、つどいの広場とか、児童福祉施設の一部を使ってお母さん方がふだんから集まって、お母さん同士が顔合わせして情報交換あるいは育児の知識を得、またお母さん同士の支援なり専門家がサポートする、こんな対策も現在しているところであります。

 そういう意味で、ふだんからのあらゆる対策を講じ、また地域で情報を把握し、切迫した事案についてはすぐ飛んでいけるような体制、そういう全般的なものが必要であるということを考えていまして、御指摘のとおりだと思います。

谷川委員 もう時間がなくなったので、最後は、二、三、意見を述べてみたいと思うんです。

 根本的な問題は、時代が進めば進むほど、文化が進めば進むほど、豊かになるほどテクニックに走って、人間としての大きなものを忘れてきたというのが僕は一番あると思うんです。

 どこでも言っているんですが、端的に言って、こんなのがあるでしょう。

  春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり

  見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕ぐれ

  東の野にかきろひの立つ見えてかへりみすれば月西渡きぬ

こういうことが全く理解できない、関心がない、聞いたことも見たこともないという人が親になっていく。そして、最近の出来事については、あの有名な人が、あの金持ちがひっくり返って沈んだよ、やったと喜ぶ。

 要するに、人の家庭をのぞき見て、きゃっきゃ、きゃっきゃといって喜ぶという、限りなく豚に近い生活をしている人たち。それを恥ずかしいと思わない、いい悪いの区別もつかない、こういう大人がどんどんどんどんできてきているのはなぜか。これは非常に難しいですよね、役所としては。難しいんですが、社会を挙げて、そういうことをもう一回取り返すという何らかの手を打っていかぬ限り、根本的解決になりませんよ。

 きょう、今るる聞いた数字というのは、日本の社会としてはしようがないのかな、これだけのことぐらいはやはり起こるのかな、その程度しかない人間というのはこれ以上減らぬぞと。変な言い方で、最後に。そういう、むなしさというのか、そういうのも若干感じるんですね、さっき説明を聞いておって。

 しかし、許容するわけにはいかぬ。本当に、生まれて半年かそこらの子がえらい目に遭うのは何としても許容はできない。ここに実は、自分自身が当事者になった気持ちでじっと僕はさっき聞いておった。しかし、これは本当にくどいけれども、一〇〇%できないと仮に統計学上は思っても、それで引き下がるわけにいかないという気持ちで最後に僕は聞いているんですが、非常に質問しづらいし答えづらいとは思うんですが、人間か、親じゃないよ、もしくはけものだぞ、こういう気持ちで最後の部分を非情な気持ちで手を打つべきだと僕は思っているので、答えにくいでしょうけれども、何か、関係者で協議してみるとか、やはりこれは目をそらしちゃいけないんだということを、許せる範囲で、答えられる範囲で答えてください。

大谷政府参考人 御指摘のように、親をどういうふうに把握しどう指導するか、これは非常に重要な問題でございまして、今お話ありました極端な事例でお答え申し上げますと、例えば、児童虐待に至ったケースを分析してみますと、保護者自身が子供のころに虐待を受けたというケースが多いとか、こういうような統計もあるわけでございます。

 そういう意味で、虐待事例が少しでも判明した段階で、やはりその親の生育歴がどうだったかということも、児童相談所がまずこれは取り組んで把握しているわけでありますが、そこにリスクがある場合にはさらに突っ込んだ指導が必要だということで、そこは私どもも取り組んでまいりたいと思います。そういう中で、切迫した事例がないように努力したいと考えております。

谷川委員 どうもありがとうございました。

小宮山委員長 次に、大塚高司さん。

大塚(高)委員 自由民主党の大塚高司でございます。

 先般、京都の長岡京市で起きた三歳児餓死事件で、この青少年問題特別委員会でも視察に行き、現地でいろいろな意見を聞くことができました。そこで聞いた中で、地域の民生委員が何回も異常を感じ、児童相談所に通報したわけでございますけれども、その際、専属の担当者は通告としなくて受理せず、このような事件になってしまったことを聞いて、私は実に残念でなりません。私の子供も同じ年でございまして、本当に言いようもないぐらい悲しい気持ちになりまして、何とかならなかったのだろうかという思いでいっぱいでありました。

 そこで、本日は、お忙しい中お越しをいただいております高市大臣に、児童虐待問題について本当に率直な大臣のお気持ちをちょうだいしたいというふうに思います。

高市国務大臣 ここで申し述べたいことは山のようにありますけれども、御視察に行かれたケースでは、恐らく児童相談所が適切な対応を行い得なかった、そしてまた、適切な実態把握、実際にそちらの家に行ったとしても、親と話して正しい実態把握ができないというケースもあるんじゃないかと思います。それから、一時保護した後に、その後のフォローアップ、この体制というのも今の社会にまだ欠けている、まだまだ強化しなきゃいけない点じゃないかなと思います。

 いずれにしましても、今地域で、それぞれの市町村で児童虐待防止ネットワーク、この整備が進んでおります。ただ、まだ七割ということですから、まずこれを一〇〇%にすること、そして、今ある体制の中で、先ほど申し上げましたような、やはり適切な対応、そして適切なフォローアップ、きちっとした実態把握、まずはここからのスタートじゃないかなと思います。

大塚(高)委員 それでは、近隣住民などから電話や来所などで児童相談所に受けた事例というのは、一昨年、そして昨年ではどれぐらいあったんだろうかということをお尋ねいたします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 全国の児童相談所におきます児童虐待に関する相談の対応件数ということでございますが、平成十六年度におきましては三万三千四百八件、また平成十七年度におきましては三万四千四百七十二件ということでございます。これは、児童虐待防止法が制定されました平成十二年度と比べますと、先ほどの十六年度のケースでは一・八八倍、また十七年度のケースでは一・九四倍、こういう数字でございます。

大塚(高)委員 それでは、ここで私がお聞きしたいのは、そのときの通告というのと相談、そしてそれ以外の情報提供との違いは何であったのかということでございます。そしてそれは、だれがどのような判断基準で判断するのかということをお聞きします。

大谷政府参考人 通告あるいは相談、そういった用語があるわけでありますが、京都の事例でも、そういった表現について議論があったと聞いております。しかし、私どもの整理では、このように考えております。児童相談所に寄せられます情報は、これはすべて相談として対応することになりますが、虐待が疑われる事例とか、将来虐待に至る可能性の高い事例などの情報が含まれている場合には、これはすべて通告として受理するという取り扱いでございまして、そのようにこれまでも徹底してきたところでございます。

 京都の長岡京市の事件では、残念ながら、こうした取り扱いとは異なった扱いがなされていたということを承知しているところでありまして、現在、京都府でも、児童虐待検証委員会が事件の検証を行っておられるところでありますが、その結果を踏まえながら、こういったことが再発しないように、私どもとしても必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

大塚(高)委員 お話ありましたように、高市大臣の方からもお話ありました京都の事例に関しましては、本当に適切な処理ができなかったということでああいった事件になったわけでございますから、そういうことを踏まえて、これからもいろいろな案件が来ると思います、しかし、その中で、やはりすべてが一応通告というような形にして判断をしていただいて、各都道府県等の児童福祉担当の箇所にチェックをしてもらえるような、そんな形で取り組んでいってもらわなければああいう事件になっていくんだというふうに私は思いますので、再度よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 そこで、現在、児童福祉法施行令第二条では、児童福祉司の担当区域はおおむね人口五万人から八万人というふうに定められておるわけでございます。しかし、人口に基づく基準ではなく、職員一人当たりの担当相談数を基礎とするなど、職員配置基準を今見直していかなければならないときにもう来ているのではないかなというふうに思いますが、いかがでしょう。

大谷政府参考人 児童相談所におきます児童福祉司の配置基準ということでございますけれども、これは、児童虐待防止に関しまして中核的な役割を担っている児童相談所につきましての児童福祉司は、平成十七年度より基準を見直しておりまして、それまでの、おおむね人口十万人から十三万人に一人ということであったものを、おおむね人口五万人から八万人に一人というふうに改めたところであります。

 現時点で、まだその水準に至っていない地域もあるわけでありますけれども、そういったことについて、これは各都道府県の対応をさらに求めながら、また、その地方交付税の中の数字の見直しにつきましても検討していかなければならないというふうに考えております。

大塚(高)委員 今のお話にありましたように、やはり各都道府県も、このままではどうしても足りないというのが実情でございますので、そういった配置の件に関してもよろしくお願いを申し上げます。

 児童虐待事案が今本当に急増しております。これまでの児童相談所が蓄積をしてきたノウハウでは対応ができないような事案が、今本当に多く発生をしてきております。その体制強化に伴い、経験の浅い専門職員も今ふえてきております。専門研修の充実や育成プログラムの開発なども必要であるというふうに私は考えます。その中で、国における実施、開発が不可欠であるというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

大谷政府参考人 児童福祉司を初めといたします児童虐待防止にかかわる職員は、その多くが地方自治体の職員であります。その資質の向上につきましては、各自治体がそれぞれ、さまざまな研修プログラムを工夫して実施していただいているのが実情でございます。

 しかしながら、その専門性をより一層高めるとともに、全国の児童虐待防止にかかわるスタッフの水準の底上げを図るという観点から、国におきましても、名前をちょっと申しますと、子どもの虹情報センターというセンター、あるいは国立保健医療科学院、また国立武蔵野学院、こういった機関を活用して、さらにレベルの高い研修を今行っております。

 また、その研修プログラムにつきましても、これは毎年度、事例等を踏まえながら見直しを絶えず行っているところでありますけれども、来年度におきましては、死亡事例をケースに取り上げるなど、より実践的な内容にするということ、また市町村職員の資質の向上のために全国各ブロックでの開催をする、こういったことなど新たな工夫を行ってまいりたいと考えております。

大塚(高)委員 ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

 児童虐待事案においては、まず子供の安全を確保することが最も重要であるわけであります。その後、再発を防止し、家族の再統合を図るためには、虐待を受けた子供への心理的なケアや虐待を行った親への支援、指導等が重要であると考えますが、いかがお考えでしょうか。

大谷政府参考人 児童虐待の発生の要因でありますけれども、幾つか挙げられるわけでありますが、やはり一人親の家庭であるケース、あるいは地域から孤立している、あるいは養育者が育児の不安を抱えている、またそのお子さんが未熟児である、いろいろなケースが指摘されているわけでございます。こうした要因を把握しまして支援や治療を行っていくことは、児童虐待の減少に向けまして大きな効果があるものと考えております。

 ちょっと事例を申し上げますと、東京都では平成十四年から家族再統合のための援助事業というものを実施しておりますが、その事業を見てみますと、一つは親子がお互いを肯定的に眺めることができるようになってコミュニケーションがスムーズになる、また親が子供の気持ちを正しく察知できていなかったことへの気づきを促す、また親としての自信回復が図れる、こんな効果が期待されるとされておりまして、虐待の再発を防止する観点から有効な手段の一つと考えているところでございます。

 厚生労働省といたしましても、平成十八年度予算によりまして、児童相談所と精神科医あるいは小児科医や大学等の専門機関が共同いたしまして、虐待を受けた、またはそのおそれのあるお子さんや家族に対しまして、家族再統合や家族の養育機能の再生強化に向けたこういう取り組みを盛り込んだところでありますが、今後ともあらゆる方法でこういった家族統合あるいは親支援を充実したいと考えております。

大塚(高)委員 今、児童福祉法や児童虐待防止法の改正により、平成十七年四月から市町村においても児童家庭相談の窓口の設置や児童虐待通知の受理を行うことというふうになりましたが、児童虐待対策に万全を期する上からも、各市町村の人員体制の整備や人材養成を図っていくことが本当に今必要であるというふうに考えております。これは本当に地域の要望が多いわけでございます。いかがお考えでしょうか。

大谷政府参考人 住民に身近な市町村におきまして虐待の未然防止あるいは早期発見を中心に積極的な取り組みを求めるために、平成十六年の児童福祉法改正におきましては、児童家庭相談に応じるということを市町村の業務として法律上明確化し、児童相談体制の充実強化を図ったところでございます。その結果、昨年度におきまして、市町村においては約四万件の児童虐待への対応が行われるなど、重要な役割を果たしていただいているところであります。

 しかしながら、市町村において相談受理する職員の状況を調べますと、一つは、何らかの専門資格を持たない方、こういった方が三割おられる、あるいは資質向上のための職員の研修につきまして、まだ実施をしていないという市町村が約二割ある、こういった状況も見てとれるところでございます。

 この市町村の家庭児童相談を担うスタッフの充実は非常に重要な課題と認識しておりまして、都道府県が行う研修を通じてこれを補助していくとか、こういった支援を図っていきたいというふうに考えております。

大塚(高)委員 時間の関係で、次は、いじめの方の問題について質問させていただきます。

 すべての子供たちにとって、学校は安心、安全で楽しい場所でなければなりません。今、いじめによって子供が命を絶つという痛ましい事件を何としても食いとめるために、学校のみに任せず、教育関係者、保護者、そして地域を含むすべての人々が社会総がかりで早急に取り組む必要があります。

 先日の参考人の陳述で、私は、小学校の校長先生のお話をお聞きしまして、本当に勇気づけられたなという件が一点ございました。それは、毎朝校門の前に立って生徒におはようという声をかけたときに、生徒が、先生おはよう、おはようございますというふうに声をかけ返してくれた生徒は必ずいじめに遭ったりいじめをしたりしないというふうに先生はおっしゃられました。そういった言葉が、私には本当に強く印象が残りました。

 それは、加えてみれば、家庭の教育がいかに大事であるかということをよく思ったわけでございます。家で朝起きて、お父さん、お母さんにおはようというふうな言葉をかけ返す、そういう家族のコミュニケーション、家族のきずなというのがいかに大切であるかということを学んだわけでございます。

 そこで、学校現場では、授業を持ちながらでは信頼を得られる対応や指導が十分にできない状況であり、保護者対応、そして地域との信頼関係構築についても指導総合コーディネーターのような人的配置が必要というふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のいじめの問題は、虐待も含めて子供たちの心に深くかかわる問題でございます。学校におきましては、まず教員がしっかりと子供たちを受けとめるということが重要でございますし、また、学校と家庭、地域社会、福祉機関を初めとした関係機関が適切に連携を図り、学校、地域の信頼を得ながら、早期発見、早期対応を図ることが重要であると考えております。

 その際、子供一人一人の状況を適切に把握いたしまして、個々のニーズに応じてきめ細かく対応するためには、まず学校として生徒指導主任あるいは学年主任などの教員が中心となって教員チームを形成いたしまして対応することが大切と考えております。

 その上で、先生御指摘のとおり、コーディネーター役を果たされる専門の方あるいはスクールソーシャルワーカーという専門の職員を配置している自治体も出てきております。そういった専門家を活用させていただくことも重要な課題と思っております。

 そのため、文部科学省におきましては、来年度の予算要求の中でも、問題を抱える子供等の自立支援事業を要求させていただいております。これを通しまして、地域において人材、多様な専門家の方々を活用できるシステムをモデル的に展開していただいて全国に広める、そういう取り組みをしたいと考えているところでございまして、子供一人一人を地域の関係者とともに一丸となって守り育てていくための取り組みが進められますよう、国としても努力をしてまいりたいと考えております。

大塚(高)委員 今お話ありましたように、そういった意味で最善の取り組み、本当に今、急を要することでございますので、改めてよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、子供を取り巻く状況の厳しさ、本当に、今お話ありましたように、今大変な状況でございます。そのとき、子供の思いをしっかりと受けとめ、そして理解を示す人がいたならば、子供は自分の力で歩いていけるというふうに私は今も信じております。

 そこで、いじめのSOS相談等身近な相談機関など、スクールカウンセラー等の充実が今本当に必要不可欠だというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。

布村政府参考人 子供たちの相談についてのお尋ねでございます。

 いじめの問題を解決するためには、子供が安心して悩みや不安を打ち明けるための大人がいること、またその相談体制を整備することが重要な課題だと思っております。

 現在、子供の悩みや不安を受けとめるための相談機関は、教育委員会において教育相談の場を設けておりますほか、法務局での子ども人権一一〇番、また各都道府県の警察における少年相談、全国の児童相談所や民間機関によるものがございます。これらの多様な相談窓口が相談相手を必要とする子供たちに幾つも開かれていることは、望ましいことと考えているところでございます。

 また、学校におきましては、心の専門家としてスクールカウンセラーを、現在、公立の中学校を中心に約一万校に配置しているところでございまして、各学校において、養護教諭を初めとした教職員と連携しながら子供たちの思いをしっかり受けとめるという取り組みを進めているところでございます。

 さらに、文部科学省におきましては、今年度の補正予算としてでございますけれども、都道府県の教育委員会などで行っております電話相談を夜間、休日も行い、二十四時間体制での相談という形での強化を図るのに必要な経費、また、あわせまして、各学校におけるスクールカウンセラー等による小中学校を中心とした児童生徒に対する集中的な教育相談を実施するための必要な経費について、補正予算として要望をさせていただきたいと考えているところでございます。

大塚(高)委員 今ありましたように、本当にしっかりと受けとめてくれる、身内ではなく他人の方にそういったことを全部心の中から打ち明けて話を聞いてもらいたいという生徒が本当にふえておるのが実情でございます。そういったことに関しましてのケアもよろしくお願い申し上げたいというふうに思っております。

 それから、いじめの問題に関して、本当に今いろいろな対策を講じていただいておるのはありがたいわけでございますけれども、そういったことが、一過性の問題だけではなく、これから永遠にこの問題が続いていくわけでございます。社会がどんどんとよくなっていく、その中で小さいお子さんの心が貧しくなっていく、これでは全然だめなわけでございますので、そういった取り組み、我々大人がしっかりとこれからもいろいろな問題について取り組むことが一番大切であるというふうに思っておりますので、これからも多大なる御尽力を賜りますようによろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

小宮山委員長 次に、田嶋要さん。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。二十五分、よろしくお願いいたします。

 先ほど参考人のお話をお伺いしておりまして、警察庁ですね、おっしゃった点、家庭内においては警察は今まで大変慎重であったというお話を伺って、本当に、まさにそれができなくなってきた時代なんだなということを痛感いたしております。家庭であれ学校であれ、そういった気持ちをずっと当たり前というふうに持っていたし、まさに昨今のような異常事態が本来はなくてしかるべきところが、もう今至るところで問題が起きてきている、もはや待ったなし、そういう実感を私も強く持っております。そういった時代になったからには、家庭の中だからとか学校の中だからというふうに例外扱いをするのは、こういった時代、子供たちの命を守っていくためにはやむを得ないこととして、やはり例外扱いはできないというのは仕方がないことだなということを、お話をお伺いして、実感として持っております。

 さて、先ほど別の委員からございましたが、私も、せんだって京都の方に長岡京市の児童虐待のケースで現地の調査に参加をさせていただきました。そこで、関係者とのお話、いろいろ思いもありますが、特に二つ、きょうはその関連で質問をさせていただきたいと思います。

 一点目でございますが、数多くの児童虐待、そして死亡に至る例がございます。もちろん、その中には、一人の子供あるいは一番目の子供というケースが一番多いわけでございますが、それと同時に兄弟というケースも散見をされ、兄弟二人とも殺されてしまうケースや、殺されるに至ってしまうケースはお一人であっても、もう一人の方も一時保護されるというような感じのケースがございます。

 この京都の長岡京市の場合にも、残念な結果になった一つの事由として、お姉さんの虐待のことと弟の関係があったわけでございますが、私は、まだ日本の児童虐待防止法でもそういった点に関しては着目をしておらないんだと思うんですが、こういった同じ家庭の中で一件問題が起きた場合は、やはりその家庭は、言ってみれば児童虐待のハイリスク家庭であるというようにみなすべきであると思いますし、そういった形での何らかの法的整備、あるいは現場の行政における対応の仕方も、ほかの多くの家庭とは違うふうに見ざるを得ないのではないかなというふうに私は思っております。また、ほかの先進国でもそのようにやっておるというふうな話も新聞情報等では聞いておるわけでございますが、その点に関しましてどのようなお考えをお持ちかということを、厚生労働省の方からお伺いしたいと思います。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、兄弟のいずれかが虐待を受けたような場合には他の兄弟にも同様のリスクが生じる可能性が高いというふうに言われておりまして、児童虐待対応のガイドラインを私ども出しておりますが、「子ども虐待対応の手引き」の中でも、一つは、虐待が判明した場合、他の兄弟も虐待を受けているおそれがあることにも留意する必要があるということ、それから二つ目として、ハイリスク家庭として、現在養育している者全員への面接を行うこと、こういうことは既に定めているところでございます。

 今回の京都府長岡京市の事件では、今おっしゃったとおり、お姉さんの方が既に虐待を理由に施設入所されていた、こういったハイリスク家庭に該当していたわけでありまして、弟である被害者に対する虐待に、より注意深い対応がこれは求められたケースではなかったかというふうに私どもも考えております。

 今お話ありましたが、諸外国にはこういった制度化している例があるかということで、これはまだ全世界のを持っているわけではありませんが、やはりアメリカの州であるとか国によっては、そういったものを制度的に定めているものもあるということを私どもも承知しているわけであります。京都府は、今京都府で児童虐待検証委員会を開いておられまして、この検証結果を踏まえて御対応があるというふうに聞いておりますが、私どもといたしましても、今後、今申しました「子ども虐待対応の手引き」の中で、こういったことについてさらに突っ込んだ記述をすることも考えてまいりたいと考えております。

田嶋(要)委員 ありがとうございます。

 残念ながら、京都長岡京市の場合には、そういった行政の中でのハイリスク家庭の認識があるにもかかわらず、長岡京市のケースは、むしろ、お姉さんに虐待が起きていたがゆえに弟の虐待の認識が足りなかったという、片っ方の虐待に目を奪われてしまっていたような、大変皮肉な結果になったというような話もお伺いをいたしました。本当に、本来、より注意をしなければいけないケースが逆になってしまっているということで、さらなるそういったハイリスク家庭への対応を、法律改正の可能性も含めて考えていかなければならないというふうに私は考えております。

 それから、もう一点、長岡京市に参りまして感じたことでございますが、先ほども別の委員からございました、親になる資格がないという、なかなかそういうのははっきり言うのはつらいものがありますけれども、やはり現実には、そういった現実は確かに広がっているのではないかなということを私も考えております。

 そういった中で、児童相談所の方々も大変御苦労されておりますが、私が児童相談所の関係者からお伺いをした中で大変ある意味驚いたというか愕然としたのは、やはり保護と再統合の両立あるいは組織使命の矛盾という部分だと思っております。

 要するに、児童相談所というのはさまざまな児童に関する福祉目的のいろいろな対応をされておるということで、基本的には、当然家族が幸せになることを望み、そして統合あるいは再統合というところが頭の中にあっての活動でございます。現に、児童相談所にさまざま寄せられる通告の中で虐待はおよそ一割でございますので、残りの九割は虐待とは違うさまざまな相談がやってくるということで、相談所の活動の中で児童虐待にかかわることが過半数を占めているとか、そういうことは必ずしもないわけでございます。

 そういった中で児童虐待に関してだけは、統合や再統合とは逆方向の、疑いの目で親を見て、子供と親を引き離すというようなことをしていかなければいけないという、その辺が大変大きな課題になっているのかなということを実感いたしました。つまり、一つの児童相談所の中で、ベクトルとして逆を向いた、ミッションに若干ぶつかり合いのあるような役割が期待をされておるというところが一つ大きな課題ではないかなということです。

 では、それに対してどうするべきかということを考えたときに、児童虐待に関しては違う組織でやる、あるいは、もう専門分野を分けて、それ専属の人がより一層行っていって役割分担を進めていく、いろいろなやり方があるというふうに私は思っております。

 そこでお伺いいたしますが、私が今申し上げたような、ミッション、組織使命のぶつかり合い、そういうところに関してどのように御認識をされておるか、厚労省の方から御答弁をいただきたいと思います。

大谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま先生お話のありましたように、家族を再統合し、あるいは親の権利というものを尊重する立場、一方で、その中で子供の権利がどう守られていくか、これはなかなか両立しがたい難しい問題でありまして、現場でも大変御苦労いただいておるということは、私どもも、いろいろな研修会や相談なり行政の接触の場でも聞くところでございます。

 しかしながら、これは専門家等の意見もいろいろ聞きますが、現在の流れは、確かに従来の再統合とか親の権利というものを非常に慎重に尊重しながらやった立場もありますけれども、子供の命を守るということについては最優先だということで、そこを虐待の切迫した事例では重要視して取り組むべきだという流れが来ておるというふうに専門家からも言われております。

 その場合、組織の中でどう取り組むかということでありますが、虐待というのは、相談の件数はシェアは一割かもしれませんが、それは児童を取り巻く環境の全体の、要はその象徴的、一番凝縮した形で出てくるわけでありまして、それは、児相の中でそれを別のグループでやるというのではなくて、地域の児童の福祉の中の一環として、今度は最も子供の権利を尊重すべき事例として取り組んでいくというのが方向ではなかろうかというふうに考えております。

田嶋(要)委員 背に腹はかえられない現状に関しての御認識は私と一緒でございますが、最後の方の御答弁で、とはいっても分けてやるということは難しいというお話、これも理解はできます。

 そうなってきますと、児童相談所自体にも、そういったなかなか難しい課題を抱えながら今後も拡充の方向を進めていくしかない。現に、最近の法律改正で、お役所、児童相談所とそれから市町村の窓口の拡充、そして虐待防止ネットワークという相互の連携の部分、この辺をこれまで拡充し、児童福祉司もふやしたということですが、しかし実態には追いついていない。

 ではそこでどうするかということでございますが、これは私のきょうのメーンに入りますけれども、私は、これまでやられてきた法律改正ないしは体制の強化というのは、言ってみれば公助の部分の体制強化、よく自助、共助、公助という言われ方がされますが、まさに、児童福祉司をふやし、市町村にも窓口をつくって二層構造にし、そしてそれぞれの連携を図っていく、そういった中で、長岡京市のようなボールが真ん中に落ちるというかそういったケースをなくしていくというのは、これは正しい方向だと思います。そこで、さらに考えるべきではないかと思っておりますのが、では、自助、共助の部分に関して一体何ができるかということです。

 そこで、私も地元でもいろいろお話を聞いていますと、これは長岡京市の場合にも、民生委員という方が通告をいたしました。三度か五度か何か通告をしたけれども全然だめだったという非常に残念なケースですが、では、その民生委員の方々が例えばどのような役割をするべきかということに私は注目をしておるわけでございます。

 つまり、お役所に頼るといっても、財政的な制約もあり、これ以上にこれから福祉司をふやしていくというのも、これは現実にはなかなか追いつかない。となれば、やはり自助、共助の部分を拡大していく。これは地域の消防活動を見ても、あるいは地域の防犯パトロールを見ても、大きな流れとしてそれが当たり前になっている。そういった中で、子供たちを見守る、もちろんお年寄りを見守る、そういった活動も、やはりその主体というのは徐々に公助から自助、共助の方に広がっていかなければいけないと思います。

 この民生委員制度というのは来年で九十周年らしいんですが、大変長い間定着をしている制度ということで、私は、ぜひこの古きよきものを、形骸化はしていないと思うんですが、地域でも、かなり多くの方に私もお会いして、民生委員をやっておりますという方にはよくお会いしますが、この今あるよき制度をさらに充実して活性化していただけないかなということが私のきょうのメーンテーマでございます。

 特に、法律も変わりまして、民生委員が児童委員ももちろん兼ねておるわけでございますが、それに加えて、平成に入りまして主任児童委員という新しい役職も加わりました。そういったことで、少しずつ子供たちに目を向ける役割がふえてきているというふうに思っておるところでございます。

 そこでお伺いをいたしますが、現在、民生児童委員、あるいは主任児童委員でございますが、一人当たり大体何世帯の家庭を見守っていただいておるのかということに関して御答弁ください。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の民生委員、児童委員の配置でございますけれども、現在の基準で申しますと、民生児童委員につきましては、これは都市の規模によって違いますけれども、東京都区部や指定都市であれば、これは二百二十世帯から四百四十世帯の幅はありますが、その中で一人、あるいは中核市、人口十万人以上の市では、百七十世帯から三百六十世帯の幅で民生委員さんお一人、また人口十万未満の市では、これは百二十から二百八十世帯の幅の中で民生委員さん一人、こういった規模になっているところであります。

 その中で主任の児童委員につきましては、民生委員の定数の範囲内で、例えば三十九人以下のところであればお二人、また四十人以上民生児童委員がおられるところでは三人、こういうことで今配置基準を定めているところでございます。

田嶋(要)委員 続きまして、民生委員の活動の中でお年寄りに対しての活動、子供たちに対する活動、それぞれの割合はおわかりですか。

大谷政府参考人 これは特にルール、区分があるわけではございませんので、私ども、活動の中で仕事のシェアがどうかというところは把握しておらないところでありますが、近年の行政の流れからいたしまして、特に高齢者を中心とした在宅対策等が進んでおりますので、仕事の相当部分が高齢者対策の方に傾いておるというのは承知しているところでございます。

田嶋(要)委員 児童虐待の通告件数の中に占める民生児童委員による通告というのはどのぐらいの割合でございますか。

大谷政府参考人 平成十七年度において、児童相談所における児童虐待相談件数は、これは全部で三万四千四百七十二件となっておりますが、このうちの五百三十八件、二%が児童委員を経由したものということでございます。

田嶋(要)委員 そうですね。ありがとうございます。私は、これは非常にまだまだ低いと思います。

 そして、通告件数で最も多いのは、これはいただいた資料にもございました、隣近所でございますね。要するに、隣近所で子供の泣き声が聞こえる、特にネグレクトにはほとんど無力でございますが、身体的暴力などでは、それがやはり大変多い通告の事例。

 つまり、私は、その統計を見ていて思うのは、極めて偶然に頼るしかないということですね。そういった中において、隣近所がたまたま聞いたというケースとは違って、プロが見回る、要するにこちらからそれぞれを回るということができるのは、例えば一つの事例として、ボランティアでありますところの民生児童委員ではないかなというふうな感じがいたしております。今おっしゃった二%程度のケースでございますが、京都長岡京はたまたまその二%のケースの一つだったというふうに理解をいたしますが、ぜひそこを強化していただきたい。

 そして、もう一つ、これはチャイルドラインのときにもございましたけれども、役所には、やはりいろいろな理由で敷居が高い。子供たちが電話をかける、なぜチャイルドラインにかけるか、法務局や警察署の電話番号をわかっていたって、なかなかこれは受話器が上がらないけれども、チャイルドラインだったら気楽にという話もあります。同じような理由で、やはり民生児童委員がボランティアであるということ、町の、近所に住んでいるおばちゃんとかだということ、おばあさんあるいはおじいさんだということ、それが私は大変重要なのではないかなと思います。

 しかし、ここで問題を指摘申し上げたいのは、先ほど、お年寄り中心の活動だと。実際に人口面で見ても、お年寄りに偏るのは、これはやむなしという部分があります。しかし、では民生児童委員が子供たちにもっと活動を、力を入れるような体制が地域にできているかということでございます。

 私も少しヒアリングをいたしましたが、例えばの事例でございますが、高齢者ですと、例えばある町では、六十歳になると、新たに六十歳になった高齢者の一覧表は民生委員に毎年五月に手渡される、しかし子供に関しては、どこの家で新たに子供ができたという情報は一切ないという話を聞きました。これは、以前災害の関係でも、災害時にひとり暮らしのお年寄りの情報が出てこないという個人情報保護法の誤解に基づく現場での混乱があったわけでございますが、これは、同じような問題が一つは民生児童委員の壁になっているのではないか。

 もちろん、これまでのお年寄り中心というのはわかるんですが、主任児童委員という制度もつくって、一応は形上は子供たちにもっと目を向けようというふうになっておるわけでございますが、現実に市町村からのそういった支援がないケースがあるのではないかと思っておりますが、その現状に関しまして、厚生労働省、どのように把握をされておりますでしょうか。

大谷政府参考人 御指摘のとおり、老人、高齢者関係の施策につきましては、いろいろな給付金とのパイプがある、いろいろな形で各家庭につながる情報が民生委員に流されているということはあるところでありますが、確かに児童の関係につきましては、虐待というような問題が生じるまでは、そういった日々の活動の中で行政が能動的に情報を提供するという局面はなかなかなかったというふうな実態でございます。

 最近のネットワークの中に民生児童委員さん、参画いただくというようなことで取り組みが始まっているわけでありますけれども、今後とも、そういった意味で、都道府県、市町村にお願いしまして、いろいろな形で民生児童委員さんに児童情報を流していただく、こういう取り組みについては検証やいろいろな指導の中で進めてまいりたいと考えております。

田嶋(要)委員 ぜひもう少し実態把握をまず進めていただきたいと思います。

 私が直接お伺いした民生委員さんも、お年寄りは、そういった意味で、自分の割り当てられた三百世帯、どこにお年寄りがいるか、六十歳以上、全部わかっている。子供さんは何もわからない。どうやって調べているか、おむつを見る。しかし、布おむつも最近減ってきている。調べようがない、だから行けないということをおっしゃっているんですね。あるいは、自治体にも問い合わせをすると、何も自治体としては民生委員に子供のことを頼んでいないから情報は出していません、こういうような回答があったりもするわけでございます。

 民生委員は児童委員でもあるというところに関しての十分な理解がされているのか、あるいは災害のときにもありました個人情報保護に関する誤解の問題も含めて、もう少し現状を把握していただきたいと思います。

 そして、では民生児童委員あるいは主任児童委員に関しまして、私の提言も含めて申しますと、先ほどもございましたが、数をもう少し充実させるべきではないかとか、あるいは全戸に回るということも考えていったらいいのではないかというふうに思います。

 ちなみに、児童福祉法の十七条を拝見いたしますと、児童委員に関して、どういう職務を行うかのその一番に「児童及び妊産婦につき、その生活及び取り巻く環境の状況を適切に把握しておくこと。」というふうに読みます。ということは、これは、何かがあったときに受け身で相談に乗る、そういうことじゃないわけですね。これは、同じような話としては民生委員法の一条でございますが、民生委員法の一条、民生委員は「常に住民の立場に立つて相談に応じ、」というふうに書いてありますが、児童委員の職務としては、「児童及び妊産婦につき、その生活及び取り巻く環境の状況を適切に把握しておく」。

 つまり、自分の割り当てが三百世帯だったら、どこに新生児がいるか、どこに二歳児がいるかは、本来、法律上はそう書いてあるんですが、多分実態はそんなことはとてもやれていないのが現実、しかもそういう支援も行政からないのが現実だと思います。

 そこで、厚労省からの通知を出す、その通知の中で今大体の地域における民生委員の割り当てが決まっておると思いますが、一つには、その通知を変えることによって、もちろん予算の問題もございますが、民生委員あるいは主任児童委員をふやしていく可能性。そして、あるいは、こんにちは赤ちゃん事業の話がございましたけれども、あれですと、すべての家庭を回る。要するに、すべてのといった途端に、それはボランティア活動じゃある意味ないわけですね。ないわけなんですが、私は、こういった御時世でございますので、ぜひともそこは民生委員さん、主任児童委員さんに少し役割の拡大というか意識をさらに持っていただいて、その地域の子供のいる家庭はくまなく見ていただくというような何か役割の拡充というものをお願いしたいと思っておるわけでございますが、その点に関して御答弁をお願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今、こんにちは赤ちゃん事業ということをお話がありましたが、当面、施策としては、現在予算要求中のものでありますけれども、生後四カ月までの乳児がいる家庭全戸訪問をするということでありまして、その担っていく役割、民生児童委員さんにもこの全戸訪問に参画いただきまして、その担当地区の実情把握にも努めていただく、こういった流れは一つは考えているところでございます。

 ただし、全体のこれから民生委員さんの数あるいは配置をどうするかということでありますけれども、現在の民生委員それから児童委員の定数は、全国的に一定規模を確保して、地域に著しい不均衡が生じることのないように、厚生労働大臣が定める基準に従いまして、都道府県知事が市町村の区域ごとに定めることとしております。現在の基準でありますけれども、これは、都道府県知事が地域の実情に配慮しまして定数決定を行えるよう基準の幅を持たせて、弾力的なものとしております。また主任児童委員につきましても、これは地域の実情に配慮しまして弾力的な配置をするということになっておりまして、今後とも、都道府県に対しまして、各地域の実情に応じて必要とされる民生委員、児童委員や主任児童委員の定数を定めて、すぐれた人材の確保に努めるよう周知してまいりたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 そうですね。実態把握をさらに進めていただきたい。

 例えば地域によって、何も問題がない地域とかなり問題の多い地域がやはり混在しているらしいんですね。一例で聞きました。昔ながらのネットワークというか、昔ながらの地域ですか、古い村とかは何もないんですって。ところが、新しい、いろいろな住民が入っているところはさまざま問題がある。要するに、同じ民生委員も仕事に多寡とか、内容に大変バラエティー、むらもあるというふうに伺っておりますので、まずその実態把握を進めていただきたいと思います。

 それから、もう一つ思うのは、児童福祉司のようなより専門性の高いお役人さんは、残念ながら、これは人事ローテーションもあって、なかなか何十年も同じというわけにはいかないんではないかなと思うんですが、一方で民生委員の方、直接お話しすると、やはり個人のプライバシーにもかかわるものがありますので、その地域にお住まいで、本来は二十年とか同じ人がやるのが理想である、現実は、約三期ですから九年程度だと。それでも、大変長い時間にわたって同じ地域、同じ家々、同じ子供たちを気にすることができる。そういった意味で、ぜひ、まあ、一遍に人をふやすわけにはいかないかもしれませんが、現状を把握していただいて、より効果的な自助、共助の、民の力を引き出すような、そういう仕組みを強化していただきたいということを最後に申し上げて、大臣に質問する時間がなくなってしまいましたが、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

小宮山委員長 次に、高井美穂さん。

高井委員 民主党の高井美穂と申します。

 本日は忙しい中、各大臣初め、ありがとうございます。先ほど来からさまざまな論点が出ておりますが、重複するところは、通告をしておりましたけれども避けて、せっかく大臣、副大臣等お見えですので、中心に御質問をしてまいりたいというふうに思っています。

 私もこの間、児童相談所を幾つか視察に行きましたり、超党派を含めて勉強会をするに当たって、さまざまな本を読んだりしてみました。その中で、私が児童虐待の問題で、岸和田もそうですけれども、長岡京でも、子供が死んだことに対して、何という親だというふうに感じた、当然怒りを当初は感じました。しかしながら、だんだんだんだん、さまざまな本を読んだりさまざまなことを調べるにつけ、怒りよりもむしろ悲しみの方が強くわいてまいりました。

 なぜかといいますと、虐待を受けた子供を保護するというのは、もちろん大事なというか、それが一番であろうと思います。この間、その議論はたくさんされてまいりました。しかしながら、虐待を受けて、仮に安全に適切に保護できた子供がいて、やはり報道とかはまだそこでとまっている。その次がいよいよ大変なんだなということを、さまざまな実際の児童相談所のお話を聞く中でも感じました。

 つまり、適切に子供を保護できたとしても、それは児童虐待問題の解決ではありません。むしろ、そこからがスタートであって、児童虐待問題を実際になくす、減らすにはどうすればいいのかということに日々、今頭の中をめぐらせております。

 その中で、とりわけ私が印象に残った本の中に、椎名篤子さんという方の本で、「親になるほど難しいことはない」という本がございまして、これは、ユーというレディースコミック、漫画化された本の原作だそうです。漫画化された本のタイトルは「凍りついた瞳」という本なんですけれども、これを何冊も読みました。実際にさまざまな取り組みを初め、書かれているんですが、とりわけその中でも「凍りついた瞳が見つめるもの」という、被虐待の親になった方からのメッセージを、手紙を一冊の本にまとめたものがあります。

 これはまさにいろいろなことを示唆していまして、この中の言葉の中に、実際に受けて、それから子供から大人になる過程の中で、怒りを押し殺しながら、抑圧して生きる凍りついた人間になってしまっていた、それから、人への憎しみだけで生きていた、生き地獄の中をさまよい続けていたという言葉が出てまいりました。私も、これを読むにつけ、執拗に繰り返される虐待の中で、子供がどんな思いで生き延びようと努力していたのかを、恐怖を想像するだに、もう本当に何と言っていいのか、人間そのものの罪の重さというか、さまざまなものを感じました。

 そして、実際に、被虐待児になっている人の何割かは、また自分の子供に虐待を起こすということも、いろいろな症例から聞かれております。そして、性的虐待や虐待を受けた子供の約八割ぐらいは、やはり行く行くは人格障害、境界例人格障害、多重人格障害になるという例も、何かアメリカでは研究されているようでございます。それだけ、虐待という問題は一人の人間を長く苦しめ、縛り、人格までも破壊してしまう問題であるというふうに痛切に感じました。そして、だからこそ、減らす、なくすにはどうすればいいか。虐待する親に対して怒りを持って罰を下す、それも必要かもしれません。しかし、それだけでは解決にならないんだという点からも少し、これからの、来年度改正へ向けても、さまざまな取り組み、ぜひ、政治家の方々に前向きな御答弁をちょうだいできたらというふうに思っています。

 それより先に、せっかく総務省の方から土屋政務官に来ていただいておりますので、先にこちらの方、質問させていただきたいと思います。

 来られてすぐで大変申しわけないんですが、先ほど来ほかの委員の先生方からも、児童相談所の運営の見直しや配置基準の見直し等必要ではないか、児童福祉司、児童心理司の人数が足りていないんではないか、さまざまな児童相談所の機能を補強するために、ぜひ、財政支援、人をふやすことが必要ではないかというようなことが出てまいりました。

 そこで、今現在、我が国は、小泉前内閣の行革方針にのっとりまして、公務員の大量削減を進めております。児童福祉司は、児童相談所の性格や公権力を行使するという立場にあることから、地方公務員であるということが前提となっておるというふうに法案に書かれております。そして、今、行革の公務員削減の中で、これらの必要な地方公務員をふやすためには、地方交付税の増額並びに人件費の総枠の引き上げ等がどうしても必要になってくるんではないかというふうに思うんですが、政府の考え方を含め、政治家としてももちろん、土屋政務官は武蔵野市長などしておられて、地方行政にも大変詳しいわけでございますから、ぜひ、市町村の取り組みをサポートするべく人員を増員することを検討していただきたいというふうに思うんですが、いかがでございますでしょうか。

土屋大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、御質問の趣旨は二つかと存じますが、一つは、児童相談所の児童福祉司をどのように配置し、どのように増員していくかということが一つと、それ以外の問題と二つあると存じます。

 一点目についてお答え申し上げますれば、もう既に委員も御承知のとおり、この根拠法となっているのは児童福祉法でございまして、第十三条に、「児童相談所に、児童福祉司を置かなければならない。」こうなっておりまして、施行令でもって標準的な人数が決められております。「人口おおむね五万から八万までを標準」ということになっていて、都道府県の地方交付税の算定の標準は百七十万人でありますから、人口百七十万人の都道府県を想定して置きますと、現行では二十五人ということになるわけであります。五万人から八万人という幅があるわけでございますが、仮に五万人だとすると三十四人、八万人だとすると二十一人置く、こういうことになり、現行の二十五人というのはそこそこの配置の数なのかな、このように考えております。

 なお、過去の配置の状況を申し上げますと、平成十一年は十六人だったものを現行二十五人でございますので、この間九人ほど増員をしている、これが実態であります。したがって、地方交付税措置として、今後とも、児童福祉司を何名置くかということにつきましては、実態、実数等見ながら、この標準の枠の中で考えていくべきものと存じます。

 それに関連した前提の御質問として、現場で児童福祉司等が必要ではないか、こういうことについて、全体の公務員削減の話も含めてでございますが、全体の公務員削減等については一定の枠が決まっており、行政改革推進法等でもって既に地方公務員は四・六%削減、こういうことが法律の中で明示されているわけであります。しかし、それは大枠でそうなっているわけでありまして、どこをどう減らして、どこをどうふやすかということは、それぞれの首長、都道府県知事や市町村長の裁量の中にあるわけでございますし、また地方交付税措置をしていない、自主的な例えば税財源をもとにした配置もできるわけであります。

 したがって、全国の四十七都道府県並びに千八百の市町村においては、それぞれ工夫をしながら、大枠は四・六%の減だけれども、どこを効率化し、へずって、どこに人を充てるかということは、まさに地方自治そのものの問題ではなかろうかと思っております。

 なお、総務省としても、今後注意深く見詰めていきたい、このように考えておるところでございます。

高井委員 ありがとうございます。

 今の土屋政務官のお話を聞いておりまして、まさに市町村の取り組みで、ぜひふやすところをふやしてほしいというようなことを私も感じてはおりますが、ただ、そうなる上には、なかなか財政が厳しいという現実があります。

 そういう中で、設置基準の見直し等も先ほど来お話が出ましたけれども、せっかく武見厚生労働副大臣お見えでございますから、児童相談所そのものの設置基準、それから職員配置の基準等についての見直し等の御検討はいかがでございましょうか。つまり、柳澤大臣が、先月たしか十四日の記者会見の中で、児童相談所の運営指針の見直しが必要というふうに発言をされておるようでございます。

 そこで、先に、確認でもいいんですけれども、現状の問題点をどのように認識して見直すことを検討されているのか、この中にはまた職員配置基準等の見直し等も入っているのか、お答えをいただきたいと思います。

武見副大臣 御指摘の点でございますけれども、現在では、児童相談所運営指針に基づいて、人口五十万人に最低一カ所程度が必要とした上で、各自治体の地理的条件、利用者の利便、特殊事情といった自治体の実情に応じて設置されることが適当ということで、先ほど土屋政務官からもそうした趣旨の御説明があったわけであります。

 ただ、現状の中で、改めて充実強化の必要性というものは私どもも認識しておりまして、平成十八年の四月からは、人口三十万人以上の中核市程度の規模の都市についても児童相談所の設置の道を開いております。そして、御指摘のように、設置基準上の管轄人口を縮小すべきという考え方があることも、私ども実は十分承知をしているところです。

 この管轄人口の縮小は、児童相談所をより身近な機関とすることは確かなんですけれども、他方において、一つの児童相談所の職員数が総勢で十名を下回るといった小規模化が避けられないという問題、ジレンマが実はございます。合併によって市町村の規模が拡大する中で、強制力を有する児童相談所とサービス支援を行う市町村との区域に違いがなくなります。こういった事情もありまして、今後、自治体の御意見などを伺いながら、その是非について研究してまいりたい、かように考えておるところでございます。

高井委員 ありがとうございます。ぜひ進めていただきたいというふうに思います。

 三十万で約一児童相談所というと小選挙区一つぐらいの数になると思いますけれども、今、それすら満たされていないというのは、私はある意味で愕然といたしまして、この間の相談件数の増加ぐあい、それから、私なんかの徳島県でも、人口が八十万の割に三つ児童相談所をつくっておりまして、さっき武見副大臣がおっしゃったように、十人以下の児童相談所がございます。ただ、面積がいかんせん広いもので、何かあったときにすぐに駆けつけるというのは大変難しいというふうに、やはり、行って私も思いました。

 ぜひとも、この分野の、児童虐待防止法ができてから、なお相談件数がどんどんふえていて、児童虐待が、通告がふえていることは必ずしも虐待自体がふえているということを意味しないのかもしれませんけれども、早急に、人間そのものの、人格破壊まで及ぼすような子供への虐待というのを減らすために、御検討の方、引き続きよろしくお願いしたいというふうに思っています。

 そこで、強制立ち入りの件も少し問題になっていましたけれども、立入調査まで行きながら子供を死なせてしまったケースがあるんでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省では、児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会というものを今開催中でありますが、そこにおきまして、平成十五年七月以降に発生いたしました全国の児童虐待による死亡事例について、各自治体からの報告をもとに検証を行っておりますが、これまでに立入調査まで行ったケースにおける死亡事例というものは承知していないところでございます。

 それから、さっきちょっと御質問をいただいて、私立てなかったもので、補足申し上げますけれども、柳澤大臣の児童相談所運営指針の見直しの関係でございます。これについて補足をさせていただきますが、これは長岡京市の事例でも、地域から寄せられた情報を虐待情報としてとらえていなかったこと、あるいは組織的対応がなされていなかった、こういった指摘を受けておりまして、京都での検証委員会の検証も踏まえ、また私どもも今後の運営指針の改善には生かしてまいりたいということでありますが、この運営指針の中身といいますのは、まさに職員がどういうふうに行動するかという指針でありまして、先ほどお話のありました組織の定数とかそういったものはこの中には含んでいないところでございます。ですから、それはそれでまた別に、予算であるとか財政的な折衝の中で実現していくものというふうに考えております。

高井委員 まさに政治家ベースで折衝してほしいというお話ではないかと思います。ぜひ、武見副大臣、土屋政務官、よろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 立ち入りまで行って子供を死なせたケースはないということでございましたが、死亡事例の数を見るだけでも、平成十一年からの累積は三百件を超えていますし、それに比べて、立ち入り件数は平成十二年以降、きょういただいた資料の中では千件を超えています。だから、立ち入りに至るまでに未然に発見するということが大事だというふうに、この数から見ても、さっきの御答弁から聞いても、そういうふうになるんだろうと思うんです。

 先ほど来、さきに自民党の先生の質問の中でも、相談所に、通告、連絡を通告として全部受理して、ちゃんと適切な対応をするというお話も、きちんと答弁がございましたので、そのように受けとめたいというふうに思っています。

 長岡京でも、虐待の検証チームというのをつくって、原因なりさまざまな、次にこういうのを起こさないためにどうすればいいかということを、厳正にというか、今、一生懸命検証中だということで、十二月末にその検証結果が出されるということですので、またそれを受けて、さまざまに、そこに至るまでの、立ち入りに至るまでの過程で何が改善できるのかということを一生懸命私も勉強して、研究してみたいというふうに思っています。

 そこで、冒頭申し上げた、立ち入りに至る、虐待に至るまでのことはさまざまに質疑がありましたが、今度はその後のこと、一時保護された後、並びにその後の子供たち、親たちのケアをどうするかということの質疑に移りたいと思っているんです。

 先ほど、冒頭紹介した、「凍りついた瞳が見つめるもの」という、被虐待児からのメッセージ、手紙を集約した本の中に、一つ印象に残った言葉がありまして、虐待を受けている子供のころ、どこに行ってだれに言えば助かるのかわからなかった、知っていたら逃げ込んでいただろう、幼い子供にもわかるように虐待を逃れる方法と窓口を教えてほしいという一文がございました。

 これは大事なことだと思います。すぐにでも取り組みができるのではないか。例えば私が考えましたのは、学校に何かメッセージなりポスターを張る。あとは、学校の保健婦の方、先生方にも児童虐待に関する知識も一緒に理解してもらう。どういうふうに子供の心に寄り添えばいいのかということを、やはり多くの人が理解することが必要だと思います。

 この本の中にも、子供は、虐待を受けたときに、嫌と言って逃げる方法を自分で見つけていいんだ、逃げていいんだ、だれか助けてくれるんだということを子供にわかってもらうところを見つけなきゃいけないというふうに書いてありました。

 それに対して、通告はないんですけれども、大臣、いかがでしょうか。虐待を受けている子供に対して、君は悪くないんだ、どこに行けば助かるんだというふうなメッセージをどこかで、学校なりに発信する。虐待を受けている子供、ゼロ歳児―三歳児であるならば家庭にずっといることも多いんだろうと思いますが、ただ、三歳でも四歳でも外に出ればわかります。行く場がなくて、だれも助けてくれなくて、また家に戻るということを繰り返しているようなケースもあるようでございますので、子供に向けて何か、こういう場所が助けられるんだということを、キャンペーンなり、何か手段は検討していただければというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。

高市国務大臣 ちょっと、まだ文部科学省と相談をしてみなきゃいけないと思います。

 例えば学校の場で、スクールカウンセラーが、今でしたら中学校の方を重点的に整備していっていますよね。これが、またさらに小学校でもスクールカウンセラーが隅々まで行き渡るような状態になったときに、子供さんはまたそれを、ちょっと担任の先生には相談しにくいんだけれども相談しやすいという状況ができたり、また、養護教員の先生に相談をするというような状況もあるんでしょうけれども、今の状態で、親からこういう目に遭ったような場合に、子供さんがそれを表で言えるという権利があるんだというようなことをどう伝えていくかというのは、今御指摘をいただきましたけれども、ちょっと文部科学省とも相談して、方法があるかないか考えてみたいと思います。

高井委員 ありがとうございます。

 とりわけ、やはり性的虐待の件なんか、大人の方が隠したがり、大人の方が子供に、これはだれにも言うなよと言いながら続けているような感じが多いということを聞きます。だからこそ子供は、黙ってしまったり、どこに言っていいのか。この手紙の中に、毎晩同じ時間に忍んでくる階段のきしむ音を聞きながら、恐怖に毎晩おびえて、またあの儀式が始まる。そういう、もう本当に、私も人間として背筋が凍るほど恐ろしい描写だなと。そういう思いを耐え忍んできた女性、子供たちが何人か、一人でもいるということだけでも、怒りというか悲しみというか、本当に胸が苦しくなる思いでございました。

 そして、虐待を生き延びた子供たちは、その虐待の事実自体を意識の中から無意識下におさめてしまうというふうなことが、ある専門家の本の中に書かれていました。

 少し引用させていただきますと、人格障害のほとんどの研究されているケースで、重症の心の病気に関するものは、性的虐待を初めとする外傷体験、心の深い傷が人格の深部にまで長年にわたる影響を及ぼすということがあると。さまざまな自己破壊行動、かんしゃくや発作的怒りなどの症状が、時を隔てた後に生じる。実際、うつ病、心身症、多重人格障害、境界例人格障害、薬物乱用などの病態において、虐待という過去の傷とこれらの病態との間に関連があることが確認されてきたと。

 時を隔てた後にいきなり生じるというのは、やはり忘れたい。人間というのは、嫌な思い出、本当に自分の中で記憶に残したくない思い出というのは、無意識下におさめるというようなことがあるそうでございます。虐待を受けてきた子供たちがそうやって無意識下におさめてはいても、しかし、それは消えてなくなる記憶ではなくて、ずっと記憶の底に、人間の心の中に押し込められたまま、その傷からはずっと血が流れ続けていて、いつかその血は吹き出したり、何らかの形で外に出てくる、それが怒りの行動であったり破壊的な行動であったりするというようなことがあるようでございます。

 実際、ある児童相談所に行って聞いてみますに、被虐待と非行の問題は密接に関連していて、虐待を受けた子供が、今度は入ってきた子供をいじめたり殴ったりしていると。私はこんなことを我慢してきたんだから、あなたはこれぐらい我慢しなさいといって殴っているというケースも実際にお聞きをしました。

 これは本当に根の深い問題で、まさに虐待を減らす、なくす、再発を防止するために、被虐待児をいかに丁寧に心をケアして、カウンセリングして、生きることに喜びを見出してもらうか。そして、それとともに、虐待をしてきた親自身も被虐待児であるケースがありますから、その親自身も同じようにカウンセリング、ケアする。これは、大変な長い、大変な試みでございますけれども、少しずつというか、丁寧に丁寧に時間をかけてしていく必要があるというふうに思います。

 児童相談所はまさにそれをわかっていて、その機能を一生懸命しているからこそ人手もなく、本当にさまざまな相談ケースを福祉司さんも迷いながら多分受けておられるんだろうなという、その児童相談所の努力自体も、私は本当に感銘を受けました。

 そこで、もう一つ申し上げたいんですけれども、虐待の被害者が加害者となりやすいということは事実であるけれども、しかしながら、それでも三分の二は虐待を繰り返さないということです。これは、杉山登志郎さんという静岡大学の教授で児童精神科医の先生が書かれた文章の中に出てきているんですけれども、では、どのような要因が、虐待を受けた人の中で虐待を繰り返す人と繰り返さない人と分けるのだろうかと。

 ここは大変重要なポイントなので、少し引用したいと思うんです。なぜ虐待を繰り返さないか。それは、虐待について語ることができるか否かによって、虐待を次、ほかにしてしまうかどうか、大きな分かれ目となるということです。虐待を繰り返さない親は、みずからの虐待の経験をより詳細に語ることができる。また虐待をみずからが繰り返すかもしれないというおそれをより意識している。親になる不安や困惑、おそれをより言葉にすることができる。したがって、繰り返さない者の方が、育児に対する不安や、自分が育児に対して重大な欠陥がある可能性を強く感じている。母親としても何となくわかります。

 それに対し、繰り返してしまう親はどうか。自己の被虐待の記憶があいまいなままであることが少なくない、そしてまた、自分の親としての機能に対する不安がむしろ少ない、だそうです。つまり、無意識下におさめてしまった傷、それを本当に意識下に出さないようにずっと押し込め続けたことが、あるときにふっと行動になって出てしまう、そういうことを示唆しているんだろうというふうに思います。

 そして、もう一つポイントがあるようです。虐待を繰り返さない親には、他人に対する信頼の有無によって虐待を繰り返さないようになるようです。つまり、逆境の中に育っても、そこにだれかしら支える人、祖父母であったり、隣人であったり、先生、友人などがいて、人に頼ることができる者は、人の支えを一度も知らなかった者よりも悪循環を断ち切る可能性が高いということでございました。

 大変これは示唆に富むお言葉でありまして、虐待をしたくないのにしてしまう親、虐待と意識せずにしてしまう親、さまざまな児童虐待のケースの中に、親の中も十人十色、本当に苦しみながら、泣きながら、それでも虐待をしている親もいるという実際の経験の中身を読みながら、この悪循環を断ち切るにはどうすればいいのか。そこには一つの……

小宮山委員長 高井さん、質問時間が終了していますので、御協力をお願いします。

高井委員 済みません。

 では、ということを申し上げて、最後に高市大臣に、こういう後のプログラムのケースもぜひ御検証いただければと思いますが、一言、御感想を兼ねてお願いを申し上げます。

高市国務大臣 済みません、ちょっと、さっき御答弁申し上げた内容の補足もさせてください。

 子供さんたちに虐待を受けた場合に言っていくところがあるんだよということを伝えるということなんですが、今確認いたしました。文部科学省と厚生労働省で児童虐待防止のための啓発ポスター、これはすべての学校に行き渡るように配付されているようです。ただ、お子さん向けじゃないんですが、廊下に見えやすいところに張ってある。私から文部科学省にリクエストを申し上げますとすれば、やはり学校の校長先生にも、そういうポスターが来たときに朝礼の機会等でそういった呼びかけを子供さんにしていただきたい、そういった御指導をお願いしたいと思います。

 それから、今おっしゃいました、これは非常に多様な取り組みをしなきゃいけないと思います。まずは虐待を受けて保護された時点で、お子様の時期に、やはり精神科医との連携ですとか、福祉施設におきましても心理療法担当職員をきちっと配置する。こういった心のケアももちろん必要だと思いますし、あと、来年予算要求いたしております、ゼロ歳児に関しましてはこんにちは赤ちゃん事業、ここを本当にきめ細かくやっていくこと。本当につらい思いをしているお母さんの相談相手、お父さんの相談相手にもなってあげる、聞き取ってあげる、それぞれの家庭の状況を把握して相談窓口とつないでいく、これが目的でございます。

 それからもう一つは、先ほど民生児童委員の話がございました。地域社会の方々にも、児童委員の職務内容はこういうことなんだよと。それぞれの家庭の子供を取り巻く環境を児童委員が把握していなきゃいけないわけですね。ところが、訪ねてこられた、プライバシーの侵害よ、こう押し返してしまう。また、児童委員に守秘義務があるということもなかなか理解されない。こういったことの広報周知、それからまた民生児童委員の研修の充実、こういったことも含めて、今ある体制の中でできるベストを尽くしていくことだと思います。

高井委員 済みません、十分までと勘違いしていて長くなりました。失礼しました。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、伊藤渉さん。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 ここまでもるるありましたとおり、現代のやみの部分が、一つは児童虐待という形で未来を担うはずの子供たちにしわ寄せをされてしまっている、本当に早急に解決をしていかなければならない喫緊の課題の一つでございます。

 冒頭の厚生労働省の御説明にもありましたとおり、児童虐待の相談件数は約三万四千件。もちろん、虐待そのものの増加というものもあると思いますけれども、二〇〇四年度に改正をした法改正によりまして通告がしやすくなっているというプラスの側面もあるんだろうと思います。早期発見ということからは、これはよいことだと私は考えております。

 一方で、法律に規定された内容を実行する体制がなかなか十分にとられていないのではないかということが、私自身の市町村や児童相談所の視察、ヒアリングを重ねる中で見えてまいりました。例えば町村に至っては、常勤の方が一名、非常勤の方が二名程度というのが実情で、加えて、常勤の方も別の職務を兼務されている、これが大体平均的な町村の体制だというようなこともお聞きをしました。

 また、被虐待児童を通告を受けて何とか無事に保護できた後でも課題は山積みでございまして、例えばいわゆる一時保護所というところです。私は、東京都の足立区の児相を視察させていただきました。板間を合わせて十畳程度、こういった部屋に、下は幼稚園から上は高校生まで、この子たちが平均六名程度一室で生活をされておりました。

 この児相に併設をした一時保護所、定員は二十四名ということでございましたけれども、実際にはそのとき三十一名の方が保護されておりました。衣食住すべてを建物の二階のワンフロアで実施されていました。また職員の方も、もちろん交代制とはいうものの、二十四時間体制で対応をされております。また、この視察をした足立の児童相談所はセキュリティーという意味ではオートロックになっておりましたけれども、大半の施設では十分なセキュリティーの確保ができていないというような事情もお聞きをしました。

 まずは、ここまでの同僚の委員の方の質問にもございました、根本的な問題の解決を図っていくのと並行して、今起こっている実際の問題に対して対症療法として応じていかなければならないのも事実でございます。こうした児童虐待の相談件数が増加をする中で、るるございました児童福祉司や心理司の人員不足、今申し上げたとおり、施設のセキュリティーの問題、一時保護所の定員の超過など、児童相談所や一時保護所の体制が十分でないことは、ヒアリングや視察、ここまでの同僚委員からの御質問の中でも明らかでございます。

 これは早急に何らかのインセンティブを設けて、都道府県に、例えば一時保護所の定員の超過の解消計画を作成させて具体的な対策を立てさせるべきでもございますし、また定員の超過という問題からいけば、定員が超過しているということは、推測をすれば、本来であれば一時保護したいけれどもできない、要するにハイリスクの状況のまま自宅で放置をされてしまっている子供もいるという可能性も否定できないわけでございまして、特に一時保護所については急を要する問題だと現場を見て私は思いました。

 そういう意味で、今年度補正予算の編成もございます、この中できちっと対応していくべきではないかと思いますけれども、まず厚生労働省の御答弁をお願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 児童虐待の対応の中核となります児童相談所の機能強化、これは重要な課題と認識しております。特に児童福祉司あるいは児童心理司につきましては、児童虐待防止法施行以降、その充実が図られてきておりますが、児童虐待の対応件数はそのスピードを上回って増加しております。なお職員体制の強化が必要と考えております。

 それから、厚生労働省といたしましても、児童福祉司の配置を含めた財政面でのさらなる充実に向けまして、関係省庁と協議しつつ努力してまいりたい、これも考えております。

 最後に、一時保護所の関係でございます。これは一部地域で見られておりますが、一時保護所の定員超過の問題あるいはセキュリティーの問題は、御指摘のとおり、大変緊急に対応すべき問題と考えております。ただいまお話がありましたが、補正予算ということの対応も含めまして、具体的な対応を検討していきたいと考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 この件につきましては、党のプロジェクトチームの方でも関係省庁に申し入れをさせていただくことも検討しております。そういった後押しもしっかりさせていただきますので、本当に速やかな対応をお願いしたいと思います。

 今申し上げたとおり、児童相談所、一時保護所、これも都道府県の問題ですけれども、市町村の体制も非常に厳しいわけです。さっき言ったとおり、常勤が一人に非常勤が二人、常勤は兼務をしているという状況で、私は具体的には静岡県の沼津市の方のお話を聞きましたけれども、沼津から出張いただいてお話しいただいているときも、通告であったり、そういったいわゆる市役所にかかってくる電話の転送を今持っている携帯にしていますというようなことをおっしゃっていました。それぐらい体制は厳しいということでございます。

 そんな中で、きょうの厚生労働省の説明にもありましたが、まず要保護児童対策協議会の設置、これは全国で七割という御説明がありました。この児童虐待の対策、都道府県の対応とあわせて市町村についてもやはり具体的なインセンティブを設けて、まずは要保護児童対策協議会を一〇〇%に持っていくべきだと考えますけれども、厚生労働省のお考えをお聞きいたします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 年々増加いたします児童虐待に対応していきますためには、児童相談所のみならず、御指摘の市町村の取り組みが不可欠であります。特に、警察、教育委員会等も参加する要保護児童対策地域協議会、この役割が極めて重要であると考えております。

 子ども・子育て応援プランにおきましては、平成二十一年度までにすべての市町村において協議会等のネットワークの設置を実現するとしてきたところでございますが、昨今の児童虐待の現状を踏まえまして、これは一日も早く前倒しで設置を進めたいというふうに考えております。

 この協議会等の設置促進につきましては、運営経費について補助を行いますとともに、本年秋には、すべての都道府県に担当者を派遣しまして、市町村担当課長会議を開催して、設置の前倒しを要請したところでございます。

 今後、さらにさまざまな手段を通じまして、協議会の設置促進を初めとした市町村の体制整備に向けて力を尽くしてまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 限られた財政の中で、先ほど高井委員も総務省の方に質問されておりましたけれども、選択と集中という言葉がよく使われます。今何が大切なのか。一番大切なのは、やはり子供たちの命を守ること、これも一つの大きな課題であると思いますので、その点も踏まえて、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、きょうの厚生労働省の説明でも、立入調査の話が出てまいりました。この点についてお伺いをします。

 まず、通告を受けたときに、面会その他の手段により児童の安全の確認をするよう努める、これが法律に明記をされている内容でございます。この安全確認については、例えば時限化、これは超党派のプロジェクトチームでもさまざま議論になっています。例えば、通告を受けたら四十八時間以内に確認をするというようなことも、実際に行っている自治体もありますし、議論もされております。しかし、私は、今ここまで申し上げたとおり、それが実現できる体制をまず整えることが先決だろうと思って、さきの二問を具体的に御質問させていただきました。

 現場に足を運ばせていただく中で感じることは、やはり現場に近ければ近いほど子供たちに対する思いは強く、だれもが子供たちを守りたいという情熱を持っていらっしゃいます。また、その思いとは裏腹に、虐待により子供たちの命が失われるという悲しい事件もまだ根絶はできていないわけです。

 現行法では、安全確認の最終手段として、立入調査という強制措置、これが規定をされています。きょうも、立入調査をした事例とか、その調査の執行に困難を伴った事例というのを御紹介されておりました。しかし、これもここまでの質問の中で出ていましたが、最終的には、家族との再統合、こういったものを目指す関係者の立場からすると、できるだけこうした強制力の発動を避けたい、また一方で、強制力を発動しなければならないような親の場合に対しては、立入調査という強制力があっても、なかなか簡単に立ち入りができないというようなお話もお聞きをしております。この立入調査の実効性をどう上げていくのかというのは、これは前回の法改正からずっと議論になっている内容でございます。

 もう強制的に立ち入るしかない、そう決断するに至るプロセスをさらに細かく規定をする、例えば立入調査の前に呼び出し行為みたいなものを設けまして、これに従わない場合は、例えばそこに司法の判断というものもいただいて立入調査を行うといったようなことが考えられるのではないかということが、この問題にかかわってきたそれぞれの議員の方々からも出ている議論でございます。

 この司法判断を得ることは非常に難しいと。児童相談所でも判断できない、要するに専門家でも判断ができないような内容を裁判所に判断をゆだねるということは、また非常に難しいんだというような議論がずっとあったことも承知をしております。

 そこで、今るる申し上げたように、例えば呼び出し、立入調査の前に呼び出しというようなプロセスをきちっと規定して、これに従わないことをもって立入調査という強制力の発動を、その判断をまた司法の方に求める、こういうような制度を設けることについて、これは法務当局にお伺いをしますが、御所見をお伺いしたいと思います。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 児童の安全の確認を行うために、裁判所が関与することによって住居への強制立ち入りを認めることが必要な場合がある、こういう御指摘が既にあるわけですが、今のお話は、保護者が児童相談所長による呼び出しに応じなかったことを要件とするような制度を設けるのであれば、裁判所にとっても、関与の前提となる住居への強制立ち入りを認めるか否かという判断が容易な形の制度が構築できるのではないか、こういう御指摘だと理解いたしました。

 確かに、保護者が児童相談所長の呼び出しに応じなかったということは児童の安全確認を行う必要性を裏づける一つの資料になるということは、そのように思います。ただ、そのこと自体、その事実自体によって直ちに住居への強制立ち入りが認められる根拠事実になるかということになりますと、そういうことも難しいのではないかと思います。

 もう御案内のとおりですが、憲法三十五条は国民の基本的人権として住居への不可侵というものを規定しておりまして、住居への強制立ち入りというのは、憲法上その例外として認められている正当な理由がある場合、この場合に即していえば、住居への強制立ち入りを肯定するだけの必要性と合理性が認められる場合にしか憲法上許されない、こういう仕組みになっております。

 そういう状況のもとで強制立ち入りを認めるに当たって、刑事手続で捜索・差し押さえ許可状というものがありますけれども、これが発付されるのと同様の厳しい要件を設けたのでは児童の安全確認のために迅速な強制立ち入りを可能とすることにはつながりませんで、このような強制立ち入りを可能にするには、刑事手続の令状発付よりは緩やかな要件にしなくちゃいけないというふうに思われるわけですけれども、他方で、そのような緩和された要件で住居への強制立ち入りを認めることが憲法三十五条の保障する住居への不可侵に抵触しないかといった、原理的に非常に難しい問題があるということを御理解いただきたいと思います。

 また、この点をひとまず置くといたしましても、強制立ち入りを裁判所が許可するという方策を実務上機能させるためには、その許可の要件が裁判所にとって明確で、かつその判断を、令状ですので、比較的短時間に行うことができる仕組みを構築しなくちゃいけないと考えられますが、そういった要件の設定あるいは仕組みの構築というのには相当な困難があるのではないかと思われます。

 法務省としては、今後、この強制立ち入りについて、憲法で許容されている正当な理由が認められるのは具体的にどのような事案であるのか、また、強制立ち入りを可能にする要件をどのように設定するのか、さらに、設定した要件の該当性を比較的短時間に判断する仕組みというのをどのようにつくるのかといった諸点につきまして、厚生労働省等の関係省庁とも十分に協議しながら検討していく必要があると考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 困難があることは、これは前回の法改正のときからずっと議論されている内容ですので、十分承知をしております。しかし、前向きな答弁をいただきました。困難を乗り越えてこそ守れるものがあると思いますので、その点を踏まえて、よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、親権の一時停止というような観点で御質問をしたいと思います。

 これは、十一月十五日に、法務委員会の一般質疑でも私御質問させていただきました。ちょうどそのときに取り上げた事例がきょうの厚生労働省の資料の十四ページにあるんですけれども、若干御紹介をすると、「出生した医療機関において、生まれつき脳に病気があるために速やかに手術を行わないと生命に関わると判断されたが、宗教上の理由から保護者が手術を拒否。」と。子供が死ぬかもしれませんが、宗教上の理由から手術は親が拒否をしたというようなケースで、児童相談所が一時的に保護をして、医療機関に入院したままで親権の喪失及び保全処分の申し立てを行って、要するに、無事に手術をして命が助かった、こういう事例なんです。

 このとき、法務委員会でも質問をしましたけれども、今の日本の制度というのは、どこまで行っても、親権の喪失の申し立てプラス保全処分という方法しかないと。要するに、児童相談所の人も、子供の命を守りたいということはあっても、今みたいに、宗教上の理由から手術を拒んでいる親、この一点だけですから、そもそも親と子の関係を完全に切り離してしまう、いわゆる親権の喪失には至らせることは避けたいと思っている場合でも、今の制度は、喪失の宣告と保全処分というこのセットしかないので、厳密に言えば、親権が喪失してしまうというリスクを回避できないという問題があります。そのようなことで、この点について検討をお願いして、長勢法務大臣からも引き続き検討するというような御答弁をいただいたところでございます。

 きょうは、配付をさせていただいた、表紙は「ドイツ・フランスの児童虐待防止制度の視察報告書」ということになっていますが、二枚目をめくっていただくとドイツの事例が書いてありまして、下線部だけ読みますが、「裁判官は特定の治療や診断目的のためだけの身上配慮権の剥奪や居所指定権の剥奪、子どもとの接触の禁止など、裁量による様々な処置を取り得る。剥奪の範囲に対応して、裁判官から保護人が任命される。一定期間の剥奪という処置はない。」というドイツの事例です。

 下にフロー図があって、一番下に「家庭裁判所」という四角があって、「危険除去のための必要な措置決定」ということで右に矢印が出て、「監護権停止」「監護権剥奪」「養子縁組」というようなことが書いてある。これも今文章で読んだとおり、一時停止ということはないんですね。一定期間の剥奪ということはないけれども、完全に法律によって親を親でなくしてしまうというところまで踏み込まずに、いろいろなバラエティーを用意している。これはドイツの事例だということでちょっと御紹介をさせていただきます。

 そういう意味で、今の日本の児童虐待防止法、これは、面会、通信の制限という形で、事実上子供の権利を守り、健全な育成に資するために親権が一部制限されているものの、今紹介したドイツの事例のように、法律で完全に親を親でなくするまでもないけれども部分的に剥奪するとか、そういったことは日本の制度では今ない。一番いいのは、一時停止ということができればいいと思います。これも非常に難しい問題だということも、さまざまお話を聞く中で私も理解してまいりました。

 一方で、先ほども言った十一月十五日法務委員会での質問で、大臣の答弁では、親権の喪失制度と保全処分制度のあり方、あるいは一時停止のあり方というものを少し検討していきたいと若干前向きな答弁をいただいています。

 この発言も踏まえ、またきょう御紹介したドイツの事例も踏まえまして、今後の検討の方向性について、いま一度法務当局に御答弁をお願いします。

深山政府参考人 御紹介のようにドイツでは、子の福祉に危険があるときに、裁判所が行政機関からの要請を受けて危険防止のために必要なさまざまな措置をとることができるとされております。これに対して日本では、ドイツで裁判所がとることができるとされている措置のうち一部のもの、御紹介がありました親権の喪失の宣告、施設入所等の措置の承認や、これらに関係する審判前の保全処分について裁判所の関与のもとで行うことが認められているものの、それ以外の措置について裁判所の関与のもとに行う制度は存在しておりません。

 そこで、日本において、裁判所が関与していない措置についても、ドイツにおけるように裁判所の関与のもとで行えるようにする必要があるのではないかというのが先生の問題意識だろうと御理解いたしました。

 言うまでもなく、児童虐待を防止し、虐待をされている子供を保護するということは極めて重要な課題であると考えておりますけれども、現在、厚生労働省において、改正児童虐待防止法等の施行状況について実態調査の結果の取りまとめを行っているところであると聞いております。したがって、児童虐待に適切に対処するという観点から裁判所が関与する措置の範囲を広げるべきかどうかという点の検討に当たっては、厚生労働省の実態調査の結果も踏まえて、児童相談所等がとる措置で裁判所の関与が必要とされるのは具体的にどのようなものなのかということを把握し、そのような措置に関連して裁判所が司法機関の立場でどんな形で関与すべきなのか、裁判所がそういった措置を認めるか否かについて的確に判断が可能となるような明確な要件を設定することができるのかといった点について、厚生労働省等の関係省庁とも十分に協議しつつ検討してまいりたいと考えております。

 先日の法務大臣の御答弁も、児童虐待をめぐる諸制度をより一層充実させる方策を検討したいということを述べたもので、ただいまやや詳細に御説明したところと同旨であると思っております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 まだ質問したい内容はありますが、時間が来ましたので最後に一点だけ申し上げて終わりたいと思います。

 ここまでは、虐待を受けた子供たちを保護して命の安全を守るということが報道も含めてクローズアップをされていますが、以前から社民党の保坂委員もるる申し上げているとおり、実際に養護施設でずっと生活をして、また社会への復帰を図っていくという子供たちもたくさんいらっしゃいます。現在の施設入所、これは入所が十八歳未満、退所が二十となっています。現実には、とても長い期間ネグレクトを受けてきた子供たちは十八歳以上でも入所による手当てを必要としているケースもありますし、また大学への進学ということを考えると、何の経済力もない子供たちが二十で施設から出されてしまうと、事実上大学への進学ということが非常に難しいという現実もお聞きをしました。どのような環境に置かれても社会でのスタートは公正であるべきだという観点から、こういったところへの行政の取り組みもぜひともお願いをして、私の御質問を終わりたいと思います。

小宮山委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 虐待問題では、これまでもさまざまな取り組みをしてきたところです。発生予防、それから早期発見、早期対応、また保護、支援という全体のサイクルが大事だ、そういう取り組みを行ってきたというふうに私は理解しておりますが、このところ頻発する虐待事件の深刻さを見ますと、私は、ますますこういう全体のサイクルでこの問題をとらえていくということが大事ではないかというふうに考えているところです。

 それは、虐待の件数が増大しているというだけじゃなくて、やはり中身が何かもう余りにも悲惨というか悲劇的というか、本当に親と子双方がいわば被害者であるという意味で、私は今発生予防というところにももっと目を向けなきゃいけないんじゃないかという問題意識を持っているということを最初に申し上げた上で、厚労省にひとつ伺ってまいりたいというふうに思います。

 これは最近なんですけれども、兵庫県の中央こども家庭センターが、二〇〇四年度に県内四つのこども家庭センターが受理した児童虐待の通告と相談、千十四件あったそうですが、虐待と認定したのが八百十七件あった、その家庭背景について調べているんですね。それを見ますと、虐待家庭のうち生活保護受給家庭や経済的に困窮しているなどの家庭が約四割ある。約半数弱のケースの虐待者が何らかの障害などで心身にハンディキャップを負っているということで、虐待者に対する指導だけじゃなくて治療や支援が必要とされるケースが多いという指摘なんです。私は、これは大変深く受けとめました。ほかにも、一人親家庭、特に母子家庭が三割を超えているという問題もあるわけです。これは後でもお示しいただけるかと思うんですけれども。

 だから、経済的に苦しい家庭や一人親家庭、あるいは心身にそういうハンディキャップあるいは障害を抱えている、そういう家庭ですべて虐待が行われているというわけでは決してありませんけれども、ここ数年、こういう形で社会的に弱い立場に置かれている方々、そういう家庭でやはり虐待が起きているんじゃないか、こういう実態というものについてはどのような把握あるいは認識をお持ちでしょうか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 虐待事件が生じました家庭の状況を見ますと、何らかの支援を必要とするケースが多いと言われておりまして、例えば、平成十六年中に発生いたしました子供虐待による死亡事例五十三例を検証した報告書によりますと、養育者に明らかな精神障害がある割合が一三・二%、また知的障害がある割合は三・八%などとなっておりました。また、家族の経済状態を見ますと、生活保護世帯が一三・三%、また市町村民税非課税世帯三〇・〇%、こういった状態でございます。

 児童虐待防止を進めていくに当たりましては、こうした虐待した保護者の状況の分析も有効であると考えておりまして、今後ともこういった事例の検証を通じて把握に努めてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 そこまでの一定の把握がされているということですけれども、今の社会状況、子育て状況の中で虐待が起きているということについて見ますと、やはり継続的に、もっときちんとした、広範囲に客観的な事態を把握する必要があるのではないかというふうに思いますが、そういった調査に取りかかることについてはいかがですか。

大谷政府参考人 こういった保護者の状況を事細かに知るというのは大変大切なことでありますが、これは各児童相談所、そういった個々のケースを受けとめているところで、そういった生育歴や背景も含めて対応しているというふうに理解をしておりまして、それぞれの取り組みでこれは対応すべきものかなと。特に、今、そのために親の状態の調査を全国でやるということは当面考えておらないところでございます。

石井(郁)委員 やはり子育てというのは大変、一定の知識も要りますし、技術も要りますし、経験も継承されなきゃいけないものです。ですから、子育て不安の中で虐待が起きているということはずっと言われました。しかし、本当に子育ての不安にこたえるためにも、特に子育てに困難を抱えている家庭に目を向けなければ、やはりこれは虐待の対策にならないですよね。

 厚生労働省も、そういう意味では、二〇〇〇年に「健やか親子21」検討会の報告書も出しておりまして、やはり母子保健という視点で取り組みも一定されてきているというか、提言もされてきているというふうに思うんです。だから、児童虐待対策を母子保健の主要事業の一つとして位置づける、育児不安をやはり取り除かなきゃいけない。だけれども、どういう人たちが最も育児不安を抱えているかといえば、やはり心身にハンディキャップを負っている方々、障害者の方々というのはとりわけ困難ですよね、育児そのものが。そういうところはどうするのかと。

 だから、ハイリスク問題というのもずっと言われてきました。ハイリスク家庭に対する対応と言われてきました。その点でいいますと、今回出されている全戸訪問ですか、何か四カ月時までの全戸訪問というのは、私はこれはなかなかいい取り組みだなというふうに思っているんですけれども、それはどういう予算でもってどのように実施されるおつもりですか。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 生後四カ月までの全戸訪問、いわゆるこんにちは赤ちゃん事業という名前で現在予算を要求、折衝しているところでございますけれども、これは、全戸に、例えば民生委員さんであるとか、先ほどお話しの児童委員さん、あるいは母子相談員、いろいろな専門家にお願いして、生まれてから一年の間に全戸を回っていただくということで、またその結果が児童相談所なり必要な機関にフィードバックされて必要な対応を行う、こういった事業でありまして、まだ予算が固まっていないので、これ以上確たるものはなかなか申し上げられませんが、そういった方向で何とか新規事業を立ち上げたいと考えているところでございます。

石井(郁)委員 どのぐらいの予算の計上なのか、それはお示しいただけないんでしょうか。それと、本当にこれは全戸訪問ということをやれるんでしょうか。そのためにはどんな体制、どんな人員が必要なのかというのはやはり心配ですから、ぜひやってもらいたいと思いますし、これは本当に新規事業だったらやはりきちんと予算を確保して進めていただきたいと思いますけれども、十分な予算がなくて、ただやれやれといって押しつけられても、それはまた現場が大変だろうというふうにも思いますので、本当にこれは必要なことだと思いますし、やれるような体制を確保したいなと思いますので、今考えていらっしゃるその予算、言っていただけませんか。

大谷政府参考人 予算要求中の中身ではございますけれども、実は、今こういった児童福祉対策の予算というのは、次世代育成支援対策交付金ということで、これは国と地方との関係で、零細補助金や個々の補助金は全部束ねまして、大きな交付金という中身の中の一部として構成しております。これも、いろいろな要素の中を含めて、各都道府県、市町村で実施していただくということになりますので、これは四百四十億の中の一部ということで、金額までは固まっていないところでございます。

石井(郁)委員 私は、この新規事業を伺ったときに、今行政に求められていることの一つに、困ったら言ってきなさい、窓口は開いていますと。しかし、本当に困っている人はなかなか言ってこない、行けない、もう考える力もない、出ていく力もないということを言われているんですね。だから、日本の厚生事業、厚生労働関係のこういう福祉事業では、やはり出向いていく、本当に地域住民のところに出ていく行政というのが求められているんです。

 そういうふうに考えてきましたので、全戸訪問ということを聞いて、ああ、そういうふうに踏み切っていけるのかというふうに思って、大変今後期待をしたいと思うんですけれども、それが本当に実施できるというためには、ぜひ十分な体制を考えていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 それで、もう一つの問題は、前回の改正によって、児童相談所はどうしても量的にも限られるということで、地域に窓口が欲しい、やはり市町村にということで、先ほど来出ている要保護児童対策地域協議会、児童虐待防止のネットワークというものがつくられるようになりました。でも私は、きょう厚労省の報告を伺いまして、地域格差が大きいという指摘があるんですけれども、何か余りにも大き過ぎる。例えば、ある県では二十数%の設置率だが、ある県では九〇%ぐらいいっている、こういう違いというのはどこから出てくるんでしょうか。それからまた、この児童虐待防止のネットワークに振り向けられる予算、そういうことも影響していないのかどうかというようなことも何か気になりますので、それを一点伺いたい。

 そして、あわせて、まだここ数年だと思いますけれども、この虐待防止のネットワーク、市町村の窓口、先ほど何か四万件くらいの相談があったというふうに伺ったんですけれども、そういう相談の窓口として、あるいは早期対応としてここがどういう役割、機能を果たしたのかというようなことについて、何か教えていただければというふうに思います。

大谷政府参考人 まず、地域差でございますけれども、私どもとしては、これは全国一律にぜひ早期にお願いしたいということで進めているところでありまして、ある意味では、虐待事例が発生したり、あるいは従来から児童福祉の伝統のあるところについては早目に対応が進み、しかし、地域によっては、まだうちの地域ではこういう事件はなかなかないというふうにちょっとたかをくくられたところでは遅い、こういった要素はあると思いますが、現時点において、例えば郡部でも非常に事例等が発生しているわけでありますから、これはそういうことのないように、一刻も早く全国一〇〇%実施をお願いしたいというふうに考えております。

 それから、要保護児童対策地域協議会でありますけれども、これは十六年の福祉法の改正によって法定化して以来成果を上げていただいているというふうに考えておりますけれども、虐待の早期発見や早期対応が進んだとか、他自治体からの転入ケースについて迅速な情報共有が可能になったとか、あるいは関係機関との調整、連携がスムーズになった、こういった効果も言われているところでありまして、これはぜひ推進していきたいと考えております。

石井(郁)委員 もう一点伺ったんですけれども、地域間のそういうアンバランスというのは、ただ取り組む側の何か姿勢の問題だけなのかどうか、それとも予算的な措置あるいは人員の配置等々での困難を抱えているのかどうか、やはりそういう点も見る必要があるのではないかというふうに思って伺っているわけなんです。

 言われたように、この間の虐待を見ますと、むしろ地方都市というか、地方で、昔だったら牧歌的な農村とか言われたところで大変残虐な事件が起きるという、本来、地域の中の人のつながりも深いだろうと思われているところで非常に深刻な事件が起きている。ちょっと県名を挙げるのは私は遠慮しますけれども、そういう意味でも、やはりきちんと目配りをしてほしいなと思うんですが、その点、一点いかがですか。

大谷政府参考人 予算についてちょっと御説明を怠り、失礼いたしました。

 この要保護児童対策地域協議会につきましても、これは予算の中では、先ほど申しました次世代育成支援対策交付金の中で運営されておりまして、実施されたところにはこういったものが手当てされるという形にはなっていると思うわけであります。

 ただ、この協議会につきましては、実際には、金額的にそういう大きなお金が要るというような集まりではありませんで、むしろ行政のニーズといいますか必要性においてこれはぜひ進めていただくものというふうに考えておりますので、ぜひ各地域で主体的に、緊急に取り組んでいただきたいと期待しているところでございます。

石井(郁)委員 時間が参りましたので以上で終わりますけれども、この深刻な児童虐待、法の整備とともにやはり行政の施策としてきちんと取り組まなければこれは解決できないだろうというふうに思いますので、今後とも一層の充実をお願いしたいと思います。

 終わります。

小宮山委員長 次に、保坂展人さん。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 厚生労働省にまず数字について伺いたいんですが、児童虐待防止法が施行されて以降、先ほど報告にあったように、通報件数が急上昇しているということなんですが、子供自身からの通報、これは、通報件数自体がぐっとふえていますから子供からの通報もどうもふえていたかのように思うんですが、比率でいうとどうでしょうか。つまり、全体の通報件数の中で子供自身からの通報の率は上がってきているのかどうか、お願いします。

大谷政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所にお子さんが虐待に関する相談に見えた、こういう場合には児童福祉司等が対応を行っているところでありまして、秘密を守りながらその具体的な取り組みを進めるわけであります。この数でありますが、全国の児童相談所が受け付けた相談件数の合計が約三十五万件、このうち児童本人がお見えになったのは一万件、二・六%、また、児童虐待に関する相談を受け対応を行った件数が三万四千件でありますが、そのうち児童本人がお見えになったのは四百五十五件、一%というところでございます。

保坂(展)委員 ちょっと順番を変えたのがよくなかったのか、それは次に聞こうと思ったことへの答弁だったんですね。困りました。

 要するに、児童相談所に子供自身が相談に余り来ないということが今の答弁で明らかになったんですが、もう一回聞きます。児童虐待の子供自身からの通報が全体件数の中の比率で上がっているかどうかというのが最初の質問です。

大谷政府参考人 失礼しました。

 全国の児童相談所における児童虐待に関する相談の推移でありますけれども、二〇〇〇年、平成十二年度は、相談対応件数一万七千七百二十五のうち児童本人からのものは二百九十四件、二%、それから二〇〇三年で見ますと、二万六千五百六十九件のうち子供本人からのものは三百五十一件、約一%、また二〇〇五年、平成十七年度で見ますと、三万四千四百七十二件のうちの四百五十五件、一%ということでありまして、全体には下降か横ばいという状態であります。

保坂(展)委員 子供のことは子供に聞けという言葉もありまして、子供自身の相談が少ないというのがちょっと私、気になるわけです。兄弟がいれば、友達の妹の様子がおかしいとか、そういう子供自身のネットワークもとてもあるわけです。

 ちょっと文科省に伺いますけれども、学校に子供向けの児童虐待防止のポスターというのが張られているのか。子供が見て、虐待というのはやはり言っていかなきゃいけないんだなというような、何か子供に対する告知というのはされているんですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止のポスターについてでございますが、厚生労働省との連携のもとに学校における掲示を進めているところでございます。例年児童虐待防止月間の前に全国の学校に配付をしてございまして、十七、十八年度には約二十六万九千枚を学校に配付をし掲示をしているところでございます。いずれの掲示も廊下あるいは職員室の近くの掲示板に掲げられておりまして、ことしのポスターは、特に子供向けという形でつくられたものではございませんけれども、虐待防止月間の標語として「あなたの「もしや?」が子どもを救う。」という標語を強調しておりますとともに、虐待を受けている子供のサインに気づいたときは積極的な通報を行うということを呼びかけているところでございます。

保坂(展)委員 「あなたの「もしや?」が子どもを救う。」というのは、これは子供向けではないんですよね、私も見ましたけれども。前には、厚生労働省は子供向けのポスターをつくったこともあるんです、虐待に関して。

 今厚労省がお答えになったように、一%ですよね、子供自身からの通報が。だから、やはり子供自身が一番メーンとしてというのですか、地域の接点として、小学校、中学校、そういうところで子供自身に向けたポスター等の広報がやはり必要なんじゃないかということと、文科省の中にも虐待対策室をつくったらいいんじゃないですか。何でないんでしょうか。

中田政府参考人 今議員から、文科省に虐待対策室をつくるべきではないかという御質問がございましたが、児童虐待防止のためには、虐待を受けたと思われる児童の早期発見、対応、あるいは虐待を受けた児童生徒に対する支援など、学校、家庭、地域社会が密接に連携して対応する必要があるというふうに考えてございます。これらに関する文科省としての取り組みは、家庭教育の支援、地域教育力の向上など社会教育関係施策、それから生徒指導、教員研修など学校教育関係施策、児童生徒の心と体の健康の増進や青少年の健全育成に関する施策など密接に関係してございまして、これら一体的に多岐にわたる施策を推進することが必要だというふうに考えてございます。

 そこで、文部科学省として、児童虐待防止ということを一元的に実施することを名乗った組織はございませんが、生涯学習局が、関係する初等中等教育局、スポーツ・青少年局など関係局課と密接に連携して児童虐待防止に取り組んでいるというところでございます。

保坂(展)委員 密接に連携するためには、やはり部屋ぐらいつくって、それぞれの局に上がってくる情報と厚労省との関係の結合点をつくるべきなんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。

 警察庁に伺いますけれども、この秋のいじめ自殺ゼロという文科省の統計で、このゼロというのはちょっとおかしいんじゃないかということで、警察庁の統計の方を見ますと、遺書が残されている子供の自殺ということで、ある年はたしか中高生で三十人ぐらいになっている。同じ年、文科省の方を見ると六人。これは同じ学校問題で亡くなった子供の数の比較なんです。今文科省でも、当然、今までのいじめあるいは学校問題の自殺の統計のとり方じゃだめだということで検討が始まっていると思うんですが、やはり警察の中で、遺書がある、なぜこの子供が死んだんだろうかということで、その原因をある程度押さえてそういう統計を出しておられるという作業と文科省との連携、教育現場で今何が起こっているのか、もっと強めていただきたいと思うんですが、その辺どうでしょう。

竹花政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、警察庁におきましては、子供が亡くなった場合に、その死因が何であるのか、犯罪によるものでないのかどうかということをかなり精緻に調べるわけでございまして、したがいまして、私どもの持っております数字というのはかなり実質に近いものであろうというふうに思っているわけでございます。

 その原因がいじめによるものであるかどうかということについては、今の警察統計上はとっておりませんで、学校問題で遺書があって亡くなったということが明らかなものとして、今、統計数字をとっているわけで、そういう統計数字について文科省に御連絡をいたすことについては、公刊資料でございますので、私ども、そういう協力は十分これからもやってまいりたい。ただ、個々の事案については、亡くなった子供のプライバシーの問題、あるいは御遺族の方の心情もございますので、これについて個別的に学校の側に御連絡する、それは僕は難しいだろうと思うんですが、上がってきた数値について文科省にこれを説明することについては、文科省とも今後さらに連携を強めたいと考えます。

保坂(展)委員 これは、警察庁で発表している遺書があるものについての、子供が学校問題でみずから亡くなるという悲劇を、当然、文科省も見て、これからの統計の仕方をもう一回つくり直しをしているというふうに聞いていますので、お願いをしたいと強く指摘をしておきたいと思います。

 先ほど、別の委員からも出たんですが、大学あるいは専門学校への進学が、児童虐待を受けた当事者がなかなか巣立っていけないという問題がございます。

 こちらに「平成十九年度児童虐待防止対策関係予算概算要求の概要」というものを出していただきましたが、この中に「大学進学等自立生活支度費の改善」とありますよね。これは、現段階、初めてことしついたのかと思いますが、非常にわずかでしたね。たしか二十五万円、一回限り出るぐらいの形であって、改善と言うからには、どのくらい改善するということを厚労省は要求しているのか。

大谷政府参考人 現在の金額が、これは十八年度からスタートしたものでありますけれども、児童一人当たり六万九千円プラス、保護者がいない場合や、保護者からの経済的な援助が見込めない方に十三万七千五百十円という加算をしております。あと、これに対しましては、物価等を加味した加算を今考えておりますが、ちょっと今手持ちに要求額の加算額がありませんので、後ほどお答え申し上げたいと思います。

保坂(展)委員 ちょっと谷本政務官にも、平沢副大臣にも聞きますけれども、今、この額ですよね。二十万とかこういう額で、到底、下宿も借りられないわけですし、施設の中で育って、今、六割以上の方が虐待で長期にわたって施設にいるんで、これは抜本的に後押しが必要じゃないかと思うんですが、政治家として、お二人にちょっと聞きたいと思います。

平沢副大臣 今お聞きしましたので、よくこれから関係省庁から事情を聞きまして、検討させていただきたいと思います。

谷本大臣政務官 平沢副大臣と同じでありますが、今御指摘をいただきましたので、前向きに検討できるように取り組みたいと思います。

保坂(展)委員 もう一つ、虐待といじめ対策で補正予算に抜本的に、今大変だということはもう国民的な認識なわけで、補正予算の中で、例えば子供の声を受けとめていく。先ほどドイツの例にもありましたよね、民間のヘルプラインからと。こういうようなことで何か支援をするようなことを厚労省あるいは文科省の方で考えていらっしゃるかどうかという点について、お答えいただけますでしょうか。

布村政府参考人 いじめの相談体制の充実という観点から、本年度の補正予算の要望をさせていただいているところでございます。

 具体的には、一つは、都道府県教育委員会等で行っております電話相談が現在ございますけれども、夜間それから休日も含めて二十四時間体制で電話相談が受けられるようにするというための人件費の措置、もう一点は、スクールカウンセラー等の配置を拡充いたしまして、小中学校を中心に、児童生徒に対して集中的に教育相談が受けられるような体制を組むという観点からの補正をさせていただいているところでございます。

保坂(展)委員 ということは、民間の電話相談機関への補正で緊急にというのは残念ながらないということだそうですが、厚労省の方でも特にありませんか。

大谷政府参考人 補正の中では、現在、電話相談に関するものは検討しておりませんけれども、むしろ、これからの予算の編成の中では、このチャイルドラインに対する財政支援について、独立行政法人福祉医療機構を通じた助成を行っているものと、あとは、それに加えまして、同様の助成措置、あるいは、国として地方と相談しながら、どういう地方を通じた支援が可能か、こういうことは検討していきたいと考えております。

保坂(展)委員 済みません、先ほどの数字はわかりましたでしょうか。もしわかっていたら、概算要求で大学進学への支援というのが少し手厚くなったのか、ほんの微々たるものなのかだけはちょっと答えていただきたいと思うんですが、わからないですか。

大谷政府参考人 まことに申しわけありません。至急調べて、また御報告に参ります。

保坂(展)委員 では、終わります。ありがとうございました。

小宮山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これで散会いたします。

    午後零時六分散会


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