衆議院

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第3号 平成19年3月23日(金曜日)

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平成十九年三月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小宮山洋子君

   理事 実川 幸夫君 理事 萩生田光一君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 田嶋  要君

   理事 高井 美穂君 理事 西  博義君

      井澤 京子君    上野賢一郎君

      大塚 高司君    中森ふくよ君

      西本 勝子君    葉梨 康弘君

      福岡 資麿君    藤田 幹雄君

      古川 禎久君    牧原 秀樹君

      松本 洋平君    山内 康一君

      太田 和美君    津村 啓介君

      西村智奈美君    伊藤  渉君

      石井 郁子君

    …………………………………

   参考人

   (弁護士)

   (日本子ども虐待防止学会制度検討委員会副委員長) 平湯 真人君

   参考人

   (さいたま市児童相談所長)            栗原 直樹君

   参考人

   (沼津市役所子育て支援課こども相談係長兼主任社会福祉主事)        笹井 康治君

   参考人

   (淑徳大学総合福祉学部教授)           柏女 霊峰君

   衆議院調査局第一特別調査室長           佐藤 宏尚君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     藤田 幹雄君

同日

 辞任         補欠選任

  藤田 幹雄君     牧原 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     井脇ノブ子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 青少年問題に関する件(児童虐待問題)


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     ――――◇―――――

小宮山委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、弁護士・日本子ども虐待防止学会制度検討委員会副委員長平湯真人さん、さいたま市児童相談所長栗原直樹さん、沼津市役所子育て支援課こども相談係長兼主任社会福祉主事笹井康治さん、淑徳大学総合福祉学部教授柏女霊峰さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。参考人の皆様には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人の皆様から、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと思います。

 念のために申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承ください。

 それでは、まず平湯参考人にお願いいたします。

平湯参考人 おはようございます。弁護士の平湯でございます。日弁連の子どもの権利委員会福祉小委員会、あるいは日本子ども虐待防止学会の制度検討委員会の仕事などにかかわっております。

 座って発言させていただきます。

小宮山委員長 どうぞ。

平湯参考人 本日は、意見を述べる機会を与えていただいてありがとう存じます。青特委の先生方には、平成十二年の防止法制定以来、子供虐待防止について一貫して関心をお寄せいただき、感謝申し上げます。

 本日は、今回の改正について、民間の立場から、また法律家の立場から幾つかの期待を申し上げたいと思います。

 まず前提としまして、僣越ながら前回改正の到達点について私見を述べたいと思います。

 しばしば言われますように、平成十二年の防止法は、虐待ケースの発見、通告を促して、児童相談所が早期に保護を加える、そういういわゆる初期介入をやりやすくする規定が主になっておりました。それをさらに広げ、保護した子供の自立支援、それから虐待した親の指導、支援、さらには、そもそもの虐待の発生予防、そういう子供と家族に対する総合的なかかわりの中で虐待防止活動を進めていくという観点を確認したのが、前回の平成十六年改正であったと思います。その趣旨は、国と自治体の責務を定めた防止法四条などにあらわれております。

 特に、私として重視したいのは、虐待した親に対して指導、支援をする。つまり、指導だけでなくて支援、サービス提供の対象としてかかわる、もう少しつけ加えれば、親を監視や取り締まりの対象とするのではなく、支援の対象とするということでありまして、これは虐待防止のシステムとしてより成熟した段階に入ったというふうに理解しております。

 それとともに、前回改正では、改正附則として、安全確認、安全確保の方法、それから親権の制限についての検討が次の宿題として残されました。これらはいずれも、児童相談所を初めとする社会的な介入を拒否する親への法的対応、より正確に言えば、公権的あるいは権力的対応の問題であります。

 親への対応は支援的、サービス的なものが基本ですが、公権的対応も状況によっては必要になります。安全確認に協力しない親、子供への接し方について助言や指導を受け入れない親、児童相談所に押しかけてくる親、子供を施設に入れた後も一方的な手紙や電話をよこしたり、あるいは施設から一方的に引き取ってしまう親がいます。問題は、このような親に対する公権的な対応を、防止システム全体の中でどのように位置づけることが成熟したシステムとしてふさわしいかということだと思います。

 そのかぎの一つは、行政権と司法権をどのようにかみ合わせるかということだと思います。

 親が子供を育てる自然の義務ないし権利と子供の健全成長の権利とが相反するというのは、極めて深刻な利害対立の場面であり、司法の基本的な役割が要請されると考えます。前回の改正附則は、そのような問題意識を踏まえながら、司法権が具体的にどのように関与できるのか、どのように関与するのが適切かということを次の段階の改正の宿題にしたものと言うことができると思います。

 今回の改正の内容につきましては、既に、この委員会の先生方を中心とする超党派議員の先生方の勉強会でおおよその方向が固まったように伺っております。

 まず、子供の安全確認の方法として、直接に物理力を行使する立入調査を、児童相談所が裁判所の令状のもとに、福祉的手法として、福祉行政の作用として実施できるという制度も新設することで固まったようで、ありがたいことと思います。

 現在でも、立ち入りを正当な理由なく拒否した場合には、立ち入り拒否罪に当たるとして警察が裁判所の捜索令状をとって直接に立ち入ることが可能ですが、これは親を犯罪被疑者として扱うことを意味します。この方法を活用せざるを得ないケースもあり得るとは思いますが、一般に、親がかたくなに立ち入りを拒否する背景には、公的機関への不信あるいは精神疾患などもしばしばありますので、このような親を犯罪被疑者として扱うのでなしに、児童相談所が福祉行政の作用として立ち入る方法もぜひ設けていただきたいというのが、福祉現場や法律家の大方の希望でありました。このような制度設計は、前回、平成十六年改正の趣旨にも合致すると思います。

 なお、福祉的手法による場合の具体的な要件についてですが、JaSPCAN、先ほど申しました子ども虐待防止学会や弁護士有志の意見としましては、資料として配らせていただいておりますけれども、ネグレクト的な虐待ケースにも実効性があるような要件がふさわしいと考えております。

 また、運用の問題として、どのようなレベルの証拠を要求するかということが問題になりますが、刑事事件の有罪判決に要求されるハイレベルのものではなくて、伝聞証拠、例えば児童福祉司が近隣住民の供述、説明を聞き取った記録なども許容されることになると思います。なお、伝聞証拠自体については、刑事事件の令状の審査でも許容されております。いずれにしても、虐待事件では、情況証拠の積み重ねに基づいて裁判官が総合的に判断することになると思われます。

 次に、親権制限についてですが、これは、親権の喪失、剥奪の規定しかない現在の民法を改正して、司法の判断で親権の一時もしくは一部の停止の規定を盛り込むかどうかということでしたが、今回改正では見送りという方向と伺っております。社会的な論議が進んでいませんのでやむを得ないという御判断と思います。

 もう一つ、親権制限に関して申し上げておきたいことがあります。

 現在の民法の親権法の部分は、明治以来の旧態依然とした内容です。懲戒権など親の子供に対する支配的な立場を規定していると言っても言い過ぎではないと思います。

 ドイツでは、早くに懲戒権規定をなくして、そのかわりに、子供は暴力によらないで教育される権利を有する、体罰、精神的侵害及びその他の屈辱的な処置は許されないという規定を民法に設けております。親権をどの程度いわば量的に制限するかというだけでなくて、親権の質的な制限、すなわち親に対する子供の権利を民法の親権法に明記するということは、親権というものについての社会の認識を変え、虐待の発生予防に役立つ大切なことであると思います。

 以上、前回改正以来の課題について述べましたが、これらはまとめると、親に対する働きかけの枠組み、あるいはハード部分の強化という問題です。

 これに対して、次に、親に対して働きかける側のレベルアップ、つまりソフト部分の強化について述べたいと思います。別な言い方をすれば、親に対して指導、支援する態勢の充実強化の問題です。

 親を指導しようとするからには、それだけの人とプログラムを用意する必要があります。プログラムについては、現在、各地各機関で工夫や研究がされていますが、基本的には、親に接する人の問題であると思います。このことはこの後の参考人の方の話に詳しいと思いますが、私からも少しだけ述べたいと思います。

 ぜひ御紹介したいのが、青森県の例であります。配らせていただいた中に研究論文の体裁になっているものがございます。青森県は思い切って児童福祉司を増員したということで知られておりますが、その結果、一時保護の件数が減ったという研究分析です。お配りした資料は安部計彦さんとおっしゃる、もと北九州市児相に長くおられた方の論文ですが、一ページ目に要約があります。

 平成十二年以来、児童福祉司が三倍にふえ、これによって勤務に余裕ができたため、任命後の研修時間をふやすことが可能になり、また親と話す時間をふやすことが可能になったということが指摘されています。親に対する指導といい、支援といっても、つまるところ、時間をとってじっくりと話し合うことが基本であって、その結果として、福祉司の指導に乗るようになった、したがって一時保護をせずに済む、あるいは一時保護を長くせずに済んだという、平凡なようですが貴重な指摘であろうと思います。

 また、人数だけでなく、福祉司の経験年数も重要です。同じ数の児童福祉司がいたとしても、短期間で入れかわる県では常に経験不足の福祉司が主体となり、県全体の指導、支援レベルは低下していきます。児童福祉司は、少なくとも五年、できれば十年間は続ける必要があるとも指摘されています。人事方針は自治体の所管だから法律では触れられないというのではなく、最低限度の方向性を示す必要があると思います。

 それから、市町村による児童福祉への対応の態勢について、詳細は申しませんが、都道府県によるバックアップは緊急の課題の一つと思います。

 また、支援の内容にしても、具体的な当該の親子、家族のニーズにこたえるものでなければなりませんが、そのためには、その家庭でなぜ虐待が起きたのかという点が十分に把握される必要があります。経済的苦境が親のストレスや不安を累積させ、夫婦関係を悪化させ、生活サイクルを悪化させて子供への態度を余裕のないものにしてしまうという場合も多いと指摘されています。生活保護や扶養手当の適切な実施や就労支援、保育支援が必要な場合も多いと思います。また、その家族特有の人間関係が背景にある場合にはカウンセリングなどが必要であり、そのためのカウンセラーの確保や受診費用の負担も含めた受け入れ態勢がなければ、指導といっても絵にかいたもちになってしまいます。

 以上、親との関係で問題になることについて申し上げました。

 子供の保護や自立支援についてもお話ししたいことが多いのですが、時間不足と思いますので、少しだけお話しします。

 最近、児童相談所の一時保護所が満杯で一時保護もできないという声があちこちで上がっています。厚労省が各県ごとに整備計画を立てるように促して、また一定の予算手当てがされています。子供が虐待された家庭から保護されて最初に来る、本当に安心のできる空間であるために、さまざまな配慮が必要と思います。

 先日、ある県に講演で伺い、児童相談所の所長さんの案内で一時保護所を見学させていただきました。所長さんが書道の先生で、保護所の壁に子供たちに好きな文章や好きな字を書かせた作品が張ってありました。一文字「絆」という字を書いただけのものもありました。それから、「つないだ手を離さないで」という文章もありました。どの子供も自分の気持ちにぴったりの字や文章を選ぶようですねと所長さんはおっしゃっていました。また、保護所スタッフの女性は、子供が一人で泣くところがないので、廊下の隅っこのすき間に頭を突っ込んで泣くんですよともおっしゃっていました。

 一時保護所は公設の子供シェルターですが、どこもかなり大世帯です。最初に安心できる空間としては余り適切ではありません。もっと丁寧なケアをしたいということで、民間の子供シェルターがつくられるようになりました。私も関係している東京のカリヨン、名古屋のパオ、横浜の「てんぽ」などがあります。心に傷を抱えた子供のケアは本当に大変です。

 このほか、児童養護施設の問題や自立援助ホームの問題もありますが、この程度とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

小宮山委員長 ありがとうございました。

 次に、栗原参考人、お願いいたします。

栗原参考人 おはようございます。さいたま市児童相談所長の栗原でございます。本日は、お招きくださいまして、まことにありがとうございます。

 私は、さいたま市児童相談所に勤めております。政令さいたま市ができまして四年たっておりますけれども、児童相談所設置に当たりまして、県の方から派遣されて、今、児童相談所長をやっております。

小宮山委員長 どうぞおかけください。

栗原参考人 私は、県の児童相談所の児童福祉司、あと心理判定員、一時保護所の指導員と、児童相談所の機能の措置、一時保護、心理判定と三つの機能の業種を経験しておりまして、長らく現場の仕事をしておりました。そういった立場から、本日、二点に関して意見を述べさせていただきたいと思います。

 今回、法律改正について御検討がなされていると伺っております。この法律ができまして、児童相談所は、ある意味では非常にやりやすくなり、ある意味ではかなり注目されて責任が重くなっているという状況ですけれども、一つのエピソードとして、新聞等で児相、児相と書いてくれるんですけれども、この法律ができる以前は、児相って何だということで、ワープロやパソコンでも児相などという言葉は出てこないわけですね。児童相談所と打とうとしても、自動車相談所とか、児童と相談所を別々に打たないとなかなか児童相談所にならないという非常に寂しい状況だったんですけれども、この法律によりましてかなりメジャーな立場になってきたということでございます。

 今回の法律の改正と、また、私は埼玉県の相談所に長くかかわっておりましたので、今回四十八時間ルールと児相運営指針にうたわれましたけれども、実践してきた状況について振り返ってみたいということでございます。

 まず、今回の法律に関してでございますけれども、立入調査について司法関与を持たせ、今まで対応できなかった、いわゆるかぎのかかったケースの対応ができるような仕組みが検討されているというふうに聞いておりますが、これは非常に結構なことだと考えております。

 ただし、司法が関与することによってより厳密な証拠が求められるということになりますと、実際の情報収集が困難になるおそれがあると考えております。

 今、平湯弁護士さんがコメントなされた、裁判所に提出する証拠に関してですけれども、例えばネグレクトケース等で、近隣住民の方々の証言を証拠とするために、裁判所に提出するので署名捺印が必要であるというようなことでありますと、協力を求めるのが困難になるだろうということは容易に想像できます。そこから先になかなか進めないのではなかろうかというふうに考えております。匿名で通報するということはかなり件数が多いわけですけれども、そういった方々も、こうやって直接業務としてかかわる人間でない限り、通報することで住所、氏名の確認を求められ、署名捺印を求められるのではなかろうかという誤解を生じるような事例もあるのではなかろうかというふうなおそれも考えられます。そのため、運用に当たりましては、現場の実情に配慮していただき、柔軟な対応ができるように御検討をしていただきたいという希望を持っております。

 次に、検討なされていらっしゃるということで、接近禁止命令に関してでございます。

 児童相談所職員が一時保護や施設入所している児童の保護者から暴行を受けることが時としてございますけれども、結果として刑事事件になるということもごく一部ございます。あくまで結果ということでございますけれども、そのようなケースは、当初から行政指導ではなかなか対応できないケースでございまして、事件になる前に、早い段階における司法関与が必要ではなかろうかというふうに考えております。

 施設入所と一時保護を比べますと、やはり一時保護が、身柄を預かった直後でございますので、分離直後というのはいろいろとトラブルが多くございます。司法関与は、そういった早期の段階で関与できるような仕組みの構築をお願いしたいというふうに考えております。

 いずれにしましても、虐待事例で、相談所では非常に対応が困難なタイプの保護者という方がおりまして、言動が非常に自己中心的で、日々周囲に迷惑をかけても平気な人でございます。経験なんですけれども、こういう方々は、接近禁止命令とか立入調査に従わない場合、罰則規定がかなり厳しくなりますよということで、具体的に、法律でこうなっています、罰金がありますよ、お金を取られますよ、損しますよというような損得の話になりますと、案外そういうタイプの方は態度を変えるというようなことも経験的にはございますので、かなり有効な手段ではなかろうかというふうに考えております。

 次に、埼玉県における四十八時間対応ルールを実施してまいりましたことについて、振り返って考えを述べさせていただきたいと思います。

 まず、実施を始めた経緯でございます。

 現在もそうですけれども、埼玉県の児童相談所の職員はいわゆる福祉職採用ということで、社会福祉、教育心理等々の学部を卒業した方々が、福祉職という一般行政と並んだ採用枠試験を受けて入庁しております。実際、社会福祉士、国家資格を持っている職員もその中では多数おりまして、かなり専門的には資質が確保されているというような流れがございました。

 その中で、一九九〇年には虐待について、その当時統計は、虐待と、あと保護者の死亡とか家出とか、そういった大きなくくりだったんですけれども、虐待の下位分類、現在四種類の分類ですね、それをその当時から統計をとっておりまして、一九九五年ごろから、いわゆる児童相談所の突撃訪問というアポなし訪問を実践しておりました。実際、これは児童虐待の有無を確認させていただきますということで急に行くわけで、なかなか大変なものなんです。当然、事前には周辺の調査を行いますけれども、やはり初対面の方々ですから、保護者、児童と会って何が起こるかわからないということですけれども、ともかく顔を見なくては話にならないということで実践しておりました。

 一方、このころからマスコミによって児童虐待が取り上げられ始めまして、その内容、切り口は、児童相談所職員の専門性が低くて十分に機能していないというものであり、なかなか厳しいものでした。実際、埼玉県におきましても、このような突撃訪問を試みてはおったんですけれども、死亡事例の発生もありまして、これは人手が不十分なままでも何とか最悪の事態だけは避けられるような手法を考えるべきであるということで、結論として、県内の児童相談所長会の申し合わせ事項ということで、一九九九年の六月、防止法が施行される前の年ですね、平成十一年になりますけれども、通告受理後四十八時間以内に児童相談所職員等が複数で直接当該児童を目視するというルールを作成いたしました。

 ルールですので原則なんですけれども、安全性、公平性、網羅性、客観性という四つの視点の確保ということでございます。これは、間接的な情報で虐待内容、程度を判断することは非常に困難であるという認識に立ちまして、安全性の確保が当然第一でありますけれども、即要保護状況か否かを通告内容のみで判断することなく、特定できた事例は直接目視する、直接目で見る。この場合、基本的には通告のあったものから順番に網羅的に対応することで公平性をも確保しようという考えに立ちました。

 さらに、関係機関の方々にいろいろな依頼、調査事をお願いするのに自分のところは動かないということでは信頼を受けられない、関係機関に調査を依頼するという間接的な方法では児童相談所としての責任ある判断が十分にできない、また、通告者側の虐待の認識にも相当の幅があるので、通告内容との検証を通告を受理した機関、児童相談所が直接行わないと誤解が生じるという立場に立ちまして、虐待通報への対応については児童相談所が率先して行うべきであるというふうな判断に立ちました。

 四十八時間とした理由は、アメリカ等の機関では手続に時間的な制限があるということを参考にしまして、理由として、土日には何があるかわからない。結局、土曜、日曜になると休みですので家族が集まって、いわゆるストレスがより高くなる状態になりまして、事件が発生するということがあり得るということですね。あと、幼児の傷はすぐに消えるということです。あと、三日ぐらいたちますと、通告者や関係者の記憶とか認識がややあいまいになってくるというような経験則からこういったルールをつくりました。そして、職員にとって、さらに関係機関にとってもわかりやすい指標となったということでございます。

 その後でございますけれども、かなりいろいろと苦労はございましたが、結果として大きなトラブルもなく現在に至っております。これは、最初に申し上げたところでございますけれども、相談所職員が専門職採用であることなどが功を奏したのではなかろうかというふうに考えております。事前に子供、家庭の状況把握をしまして、それでも、突然の家庭訪問であってどういう方がどういう反応をするかわかりませんけれども、相手に合わせながら子供の問題についてきちんと話をするには、それ相応の知識経験が必要なことがわかったわけでございます。さらに、実績の積み重ねから、市町村の方々の児童虐待に対する理解、協力も徐々に深まってきた状況でございます。

 職員の専門性と関係機関との連携、この二点がこのルールを維持できた背景かと思っております。今後、この手法が効果的に機能するためには、担当職員が社会福祉士等の資格を持つ職員であることがより重要と考えております。

 以上でございます。御清聴を感謝いたします。(拍手)

小宮山委員長 ありがとうございました。

 次に、笹井参考人、お願いいたします。

笹井参考人 おはようございます。沼津市役所子育て支援課で子供の相談を担当しています笹井と申します。

 私からは、市町村で児童虐待に当たっている立場から、恐らく全国千八百余りの市町村のほとんどが共通に抱えていると思われる現状と課題について、お手元のレジュメに沿ってお話をさせていただきます。

小宮山委員長 どうぞおかけください。

笹井参考人 では、座らせていただきます。

 報告の要点としてレジュメに書かせていただきましたけれども、きょう私がお話しさせていただきたいことがその二点です。一つが、虐待を含めた児童相談の第一義的な役割を市町村が担うことについて、その意味は、身近な市町村がやるということはよく理解できるんですけれども、市町村体制は余りにも脆弱で、早急な体制整備が必要だということ。それからもう一つ、今、必要な、児童相談所と市町村の役割の明確化をしなきゃいけない。この二点です。

 最初に、恐縮なんですけれども、レジュメの後ろに三角形の図を、かかせていただいたというか、千葉県でつくられたものを持ってきたんですけれども、今回、児童虐待防止法改正の論議は、立入調査のことであったり親の呼び出しのことであったり、どちらかというと、児相とか警察が関与する、この三角形の頂点にあるレッドゾーンと言われるところのケースについてどのように対応するかということになろうと思います。

 ただ、市町村が主体になってかかわる虐待は、むしろ、その下にあるイエローとかグレーとか、まださらにその下にある育児支援というか虐待予防的な層のかかわりという形になります。これは、図でわかりますように、深刻ではないかもしれませんけれども、数は圧倒的に多くなりますし、それから、手を打たないとどんどん上の方に上がっていってしまうという形のものですので、この部分が、ちょっと今までの論議と違う、市町村の主な支援対象が少し、下と言ったら申しわけないんですけれども、どちらかというとイエローとかグレーだとかというところを踏まえて話を聞いていただければと思います。

 レジュメに戻りまして、きょうなぜ私がここで話をさせていただくことになったかを考えたときに、私が所属する沼津市というのは、静岡県にある、あの伊豆半島のつけ根にある二十一万の都市です。実は、平成十二年の児童虐待防止法施行のときに、今回の、十六年の児童福祉法改正に対応できるような体制整備をしたという形で取り組んできたからということだろうと思うんですけれども、沼津市の状況を少しお話しさせていただきたいと思います。

 沼津市で虐待防止ネットワークを十二年に立ち上げてきて、その特徴としては、トップダウンじゃなくてとにかく現場から声が上がってつくってきたネットワークだということが一つと、それから、かなり児童相談所の援助を受けながらつくってきました。これは、ほかの研究の方から、さっき言ったような形で、児童福祉法の改正を先取りしたような形でできているシステムだよという評価も得ています。

 その中で取り組んでわかってきたこととして、一つは、やはり虐待防止の基本は関係者の連携にあるということ。それからもう一つ、関係者が集まるだけでは連携はできないんだ、やはり顔のつながりと相互理解が本当に不可欠だと。ここのところに来て、厚労省の方から、要保護地域協議会をとにかく立ち上げなさい、十九年には市全部ですよという形で来ているわけですけれども、形としてできても実体が伴わなければ、本当に機能するのかどうなのかなということについては少し疑問を感じます。

 それから、連携ができると何が変わるのか。これは、児童の虐待相談なり通告がふえるという形です。やはり虐待は発見しないと援助が始まらないという部分で、それだけネットワークをつくって、逆に言えば発見のシステムですので、ふえていく。

 それから、虐待がない自治体、何年か前までは、うちの町は虐待がないんだと平気でおっしゃるところがたくさんありました、ここのところ最近はないんですけれども。虐待がない町というのは、ただ虐待を発見するシステムがないということであって、虐待だけは本当にどこに行ってもあるということについては、申しわけないですけれども、もうそれは自信を持って言えるという感じです。

 一般的に、行政で自分たちが評価をされるときというのは、虐待の件数がいかに減るかということを評価されるんですけれども、本当は、虐待の件数、いかに通告なり相談の件数がふえるかということで評価していただかないと、やはり虐待の防止というのは間違った方向に行くんじゃないのかということです。

 それから二番目として、機関が虐待を発見できると、発見と同時に援助が始まるということです。平成十二年の虐待防止法が始まったときには、相談なり通告の五割は近隣からでした。それが今は二割ぐらいに減っていて、残りの七割は関係機関からの通告という形になっています。すなわち、関係機関である程度つかみながら、通告をしながら援助が始まっていくという形になろうかと思います。

 ページが飛びまして済みません、二ページの方なんですけれども、相談とか援助を繰り返しいろいろな形で行ってネットワークをつくっていく中では、ただ相談とか訪問だけしていてもだめなんだという形で、いろいろな事業が、これは厚労省の方でもいろいろ進めていただいているわけですけれども、児童のショートステイだとか親子の虐待防止教室だとか、産後うつの方への取り組みだとか新生児全世帯訪問、育児支援家庭訪問事業という形で、国の施策としてやられていることなんですけれども、やはり必要だなという形でできてきました。

 それから、最大の成果というか、これは本当に幸いだと思っていますが、いつ起こるかわからないんですけれども、この事業開始以降、深刻な事案が出ていないということについては、三角形の頂点が出ていないという意味で、少しありがたいことだと思っています。

 課題としては、やはり増加する相談にどう対応するのか、それから要保護協議会に課せられたケース管理という形のたくさんの実務をどのようにやっていくのかということになろうかと思います。

 周りから見ると連携がうまくいったと言われるんですけれども、なぜうまくいったのかというと、一つは、やはりネットワークの事務局となる機関が明確で、それを担える人的な体制が確保できていたこと、それからもう一つが、参加機関が、虐待を児相とか福祉事務所の問題という視点でなくて、各機関がそれぞれの機関で何に取り組めばいいか前向きに考えてもらえたこと、それから最後に、児童相談所が市を支える形でバックアップしていただいたこと、このことが非常に大きかったと思います。

 こういう状況の中で、では、市町村の児童相談体制について少し意見を述べさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げたような形で、法の流れとして市町村がやるという形については理解ができるということ、ただ正直、現場から見ていると、余りにも急ピッチで児童福祉法が改正されてしまって、何の体制整備もない中で十七年四月を迎えてしまったという感が強いです。

 市町村ネットから見た課題として、一つがやはり市町村の児童相談体制の整備、沼津市は比較的恵まれています。今うちは、家庭児童相談室、これは市の福祉事務所に設置する児童相談窓口なんですけれども、これが一応相談係という形で市の福祉行政と直結できているということと、係員が八名いるんです。ただ、全部が虐待対応ではありません、大体四・五名ぐらいだというふうに考えていただければと思うんですけれども、これは非常に恵まれている方だと思います。

 近隣他市町村の状況、これは自分たちの周りもそうですし、それから、いろいろなところでお話を伺ってくると、人口十万程度の市の多くが、職員が一名、家庭相談員さんが二名というような形が一般的です。それから、社会福祉主事という、家庭児童相談室に一応置かなきゃいけない、その任用もされていない市も非常に多いです。それから、家庭相談員さんが週に三、四日の勤務で、一日六時間で非常勤というような形で、これは常勤が一応通達なんかは出ているんですけれども、そういう形ですので、三時にはもう帰ってしまうので四時の通告は受けられないよというところも平気であるという形です。それから、福祉事務所未設置の町村については、児童相談は初めての体験だということで、本当に戸惑っておられるところが多いです。

 市町村については、配置基準もありません。それから、専門職もいません。研修体制も未整備です。一応、児童相談所の児童福祉司さんは、多分五・五万人から八万人に一人という形での配置基準があろうかと思いますけれども、市町村の担当者の配置基準はありません。それから、児童相談所には、埼玉の方は福祉職で採っておられるということですが、心理職は大体専門で採っていますけれども、そういう専門職はやはり市町村にはなかなか置けていません。それから、研修も、やっと児相の後方支援という形で始まったばかりというような形です。

 さらに、市町村の業務内容なんですけれども、非常に脆弱な体制なんです。市町村の家庭相談指針というのが厚生労働省から出されているんですけれども、そこに市町村がやらなきゃいけないことが掲げてあります。それを引っ張り出してきても、こういう形で、保護者からの相談対応、虐待通告の受け付けと対応、要保護協議会の運営、それから育児支援などを念頭に置いた事業という形、それから施設の退所児の児相とか施設のアフターケアへの協力なんかも求められています。

 さらに、ことしの一月の二十三日に改正されているんですけれども、そこのところで、安全確認が必要と判断する場合は、市町村職員かそれを依頼した者が、先ほどありました目視という形でいきなさいよということについても明記されていたり、要保護協議会の中で判定をして児相長に立入調査とか一時保護についての意見具申が可能になったというのですけれども、本当にこれがちゃんと判断できるのかどうか、そういう体制がとれているかどうかということを非常に危惧します。

 最後になりますけれども、この場で、もしこんな形のことでという要望としてちょっと挙げさせていただきたいのが、一つは、市町村体制の整備ということで、最近、いろいろな市町村の方に状況を伺う機会が何度かありました。さっき言ったような形で、非常に市町村はお粗末な形の体制です。実態調査は厚労省の方でもされているのでつかんでおられると思うんですけれども、担当者がいても、実は他事業と兼務であって実質的には動けないとか、どのように動いていいかわからないというようなことも聞いています。まずはやはり、全市町村に児童虐待の対応に専任で当たれる職員の配置をぜひお願いしたいということ、それからその職員が何をすればいいのかというマニュアルと、やはり研修を実施していただきたいということ。

 もう一つが、市町村は、どんどんいろいろな形でおりてきても、やはりミニ児相にはなれないということで、児童相談所の役割、機能が、今、困難事例への対応と市町村支援というふうに変わったわけですけれども、現場レベルではまだその変化がよく伝わってきていません。児相が市町村支援に特化するのであれば、保護者からの直接の相談を市町村に任せるとか、市町村支援のために一定の間でも職員を出向させて市町村の指導を行うなど、かなり思い切った施策の転換が必要じゃないかなというふうに思っています。

 それから、市町村のかかわりは、さまざまなサービスを組み合わせながら援助していく形が主で、親や子供を指導していく側面は十分でないですし、本当に住民と近いので、何か対立的なことを起こしてしまったら、その後、その方たちになかなかいろいろなサービスが届かないという部分も持っています。専門的な機能を持っていて保護者に対して指導や勧告的な機能を持ち得るというのが児相であると思いますし、市町村はやはりサービス提供という形で世帯を支援していくという形での役割分担が必要ではないかと思います。

 いろいろなことを申し上げたんですけれども、こういった形で現場の職員の声を聞いていただくという委員さんの御配慮について、本当にありがたく思っています。どうもありがとうございました。(拍手)

小宮山委員長 ありがとうございました。

 次に、柏女参考人、お願いいたします。

柏女参考人 淑徳大学の柏女と申します。

 お声をかけていただきましてありがとうございました。

 私自身は、子供家庭福祉を専門にしております。また、東京都で二十八条ケースについて八年間事例検討を行い、また千葉県では虐待死の検証委員会の委員長として、また、先ほど笹井さんから御紹介がありましたが、千葉県の市町村マニュアルづくり、あるいは都道府県のマニュアルづくりなどを担当してまいりました。さらに、石川県で少子化対策の担当顧問をしております関係上、そうした行政の視点からも含めまして、子供家庭福祉のことについてお話をさせていただきたいと思います。

小宮山委員長 どうぞおかけください。

柏女参考人 それでは、座らせていただきます。

 お手元にレジュメを用意させていただきました。既に三人の参考人の方々からお話がございますので、重複する部分はできるだけ省略をさせていただきまして私の意見を述べさせていただきます。特に、虐待で保護された子供たちの受け皿の問題、それから子供たちがまた家庭に戻ったときの子育て支援、見守りのネットワークの問題、そこに焦点を当ててお話をさせていただきたいと思います。

 一番のところに、「児童虐待防止制度、援助の宿命と使命」というふうに書かせていただきました。私の住んでいる千葉県松戸市で二歳の女の子が内縁の夫によって身体的な虐待を受けて命を失うという事件がございました。担当者は、恐らく、この一番にあります親の権利と子供の命、権利という谷の狭い尾根の上で呻吟されていたことではないかと思います。虐待防止に携わる者というのは、親の権利と子供の命そして権利という谷の間の狭い尾根を歩く登山家ということになるかと思います。

 それは、政策担当者も同じだろうというふうに思います。その中で政策も援助者も揺れ動いていくというのは、これは日本だけではなく洋の東西を問わず共通したことではないかと思います。

 この尾根をどう広げていくのか、整備していくのか。そしてこの尾根を歩く登山家をどうふやしていくのか。さらに登山家が登山技術を磨いていくのか、そしてそれを開発していくのか。それから世論がそれをどう納得するのか。この四つがとても大切なことではないかと思います。

 さらにもう一点、もう皆さん御案内のことと思いますが、社会全体の人と人とのつながりが弱体化してきております。そうした中で虐待がふえているわけでありますけれども、それをどう制度として補うのか、あるいは制度を入れることによってどう新しい形のつながりをつくっていくのか。ここが虐待防止の一番大切な点ではないかというふうに思っております。

 虐待防止の死亡事例の検証結果から、国の方の検証にもかかわっておりますが、その中から言えることはここにあります六点ということになるかと思います。児童相談所の運営体制強化、市町村の強化、そして市町村と児童相談所の連携強化、それからその連携をするための共通の物差しを開発すること、この四つは既にお話がございました。さらに、子育て支援サービスがないということ、それから社会的養護サービスの質と量が非常に貧弱であるという、この二点になるかと思います。

 特に、最後の二点でありますが、子育て支援サービスの整備は市町村の責任であります。交付金制度のもとで、県は費用負担をいたしません、市町村が負担をして整備していきます。逆に、社会的養護、児童養護施設や里親などの整備拡充は都道府県の責任であって、市町村はお金を一銭も出していません。このように、両方のサービスにいわばそごが生じていて、ここに断絶が生じているわけであります。これが大きな構造的な原因になっている、つまり子供家庭福祉のシステムというのは二元行政になっている。これが間に落ちてしまう子供を生み出している一番大きな構造的な問題ではないかというふうに私は感じております。

 そのことを踏まえた上で、三番に、「検討すべき五つの大きな課題」というふうに書きました。介入、保護の問題につきましては三人の参考人の方からお話がございましたので、特に子育て支援、社会的養護の問題に限定をいたしますと、ここの五つの点が指摘できるかと思います。

 一点は、子育てに対する在宅サービスが乏しい、しかもその担い手のほとんどがボランティアやNPOである。高齢者や障害者の在宅福祉サービスは介護福祉士といったプロが担っていますが、子育て支援につきましてはほとんどがNPOやボランティアです。これが子育て支援サービスが広がらない一つの大きな原因になっているかと思います。

 続きまして、子育ち、子育て支援における市町村と都道府県の分断です。これは今私が申し上げたところです。

 それから三点目は、年金、医療、介護というふうによくマスコミで言われておりますが、実は育児をここに入れていかなければならないのではないか。実は、そうなっていなくて、年金、医療、介護は主として社会保険で、支え合いのシステムで担われているのですが、それを下支えする少子化対策は、いわば税金で下支えする政策としてつくられています。つまり、年金、医療、介護という橋が壊れてしまわないための、それを下支えする陸橋のような役割を少子化対策がしていて、その橋の上に乗っかっていないということが大きな問題ではないかと私は感じています。

 それから四番目が、社会的養護の量と質の整備ということでございます。

 それから、青年の自立に係る公平なスタートということで、フェアスタートというふうに私は呼んでおりますけれども、社会的養護の児童養護施設にいた子供たちが社会に巣立つときに、もう既に公平なスタートを切れない、つまりずっと後ろの方からスタートしなければいけない、この現実に目を向けていかなければならないのではないかと感じております。

 四番目として、「児童虐待防止制度の近未来」ということで、三つの点で考えてみました。一つは法改正をめぐる主たる論点ということですが、これにつきましては三人の参考人の方からるるお話がございましたので、これは意見陳述のところでは省略をさせていただきたいと思います。

 次のページをおめくりいただきたいと思います。

 二ページの真ん中よりちょっと下の五のところでございます。「児童虐待防止制度の近未来」ですが、ここのところで幾つか申し上げたいと思います。

 一つは、「発見・通告・介入体制の強化」のところですが、三つ目のポツをごらんいただきたいと思います。

 先ほど笹井さんの方からもお話がありましたが、充実すべきことは、市町村の充実の方も急ぐべきではないだろうかというふうに私は思っています。

 特に、児童養護施設に入所した子供たちが、例えば帰省をします。お盆とかお正月に帰ってきます。それは、児童相談所はいつ幾日帰っているということは、施設も知っておりますが、しかし、市町村がそれを知らないわけです。ですから、市町村は、家庭に戻ったときに訪問のしようがありません。児童相談所から市町村に伝えるという仕組みができておりません。

 市町村の人が、例えばそこに子供が夏の帰省で帰ったときに、一学期の成績上がったんだってね、あるいは逆上がりができるようになったんだねというふうに、そうしたことを施設から聞いていて、そして訪問した保健師がそこで声かけをする、こうしたことを積み重ねていくこと。あるいは、帰省したときに、自分が前に通っていた学校に行き、そして学校の担任の先生と会う。そうしたことが行われていくならば、児童養護施設で他の市に入所している子供たちもいるわけですが、その子たちのことを自分の市は忘れないでいてくれたんだということが理解していただけるのではないかと思います。

 そういう意味では、市町村がそういう体制をとり得ることを充実していくことが大事ではないかと思います。

 それから、(二)の「子育て支援体制の充実」というところです。

 既に述べましたが、特に在宅福祉サービスを格段に充実していくことが必要です。平成十五年に児童福祉法に在宅福祉三本柱子育て版を法定化いたしましたが、それがふえておりません。ショートステイ、デイサービス、ホームヘルプサービスを格段にふやしていく、そしてそれをプロが担っていくということが必要になるかと思います。

 二番目が、これは石川県でモデル事業として実施をしていることですが、子育て支援プランを作成していくということをもう進めてもいいのではないかと思っています。

 石川県では、赤ちゃんの妊娠がわかりますと、いわばかかりつけ保育園ということで、自分の近くの保育園に登録をいたします。そして、ここで、赤ちゃんが生まれたときの沐浴の仕方とか、幾つかのことを教えていただきます。そして、赤ちゃんが生まれますと、そこで一時保育切符が配られます。その一時保育切符を使いながら、子供を保育園の方にお願いをして若干リフレッシュをしたり、あるいは体験保育で保育の仕方を学んだり、そうしたマイ保育園登録事業というのを実施しておりますが、これに昨年の十月から子育て支援プランを作成するということをつけさせていただきました。

 そして、保育に欠ける子供には保育所があり、そして保育士が子供を保育してくれるわけですが、保育に欠けない子供は家庭で親がすべてを担わなければいけない。そうではなく、保育に欠けない子供にも、例えば石川県では、零歳児の子供は二週間に一回一時保育が使える、あるいは一歳児、二歳児は一週間に一回半日ずつ一時保育切符が配られるというような仕組みをつくって、そしてすべての子供たちに保育を保障していこう、私はこれを基本保育というふうに申し上げておりますが、そうした仕組みをつくって、そして、親とともに子育てをどのように行っていくかという計画をつくってみる、短期計画、長期計画を一緒に立てていく、そういうコーディネーターを養成するモデル事業を今実施しております。こうしたことを少しずつ進めていく必要があるのではないかと思います。

 それから、三番目の「構造的課題」ということですが、これも先ほど来るる述べてきておりますが、都道府県と市町村が分断されているということと同時に、子供の問題は、成人の仕組みと児童の仕組みが非常に分断されております。成人の仕組みは、障害者もそれから高齢者の方もほとんど直接契約で、いわば個人給付の仕組みになっているわけですけれども、児童の分野については、事業主に、施設に補助が行くという仕組みになっています。また、措置制度が残っております。それから、障害児とそれ以外の児童でも違います。それから、首長部局と教育委員会、公安委員会、この断絶も起こっております。

 子供家庭福祉はこうしたさまざまなところで分断が起こっており、この分断の一つ一つの間に子供が落ちてしまうということが起こっているわけです。これを是正していくことが大切だと思います。

 最後に、社会的養護の問題について申し上げたいと思います。

 まず一番で、社会的養護の需要予測と整備計画を立てる必要がある。先ほど一時保護所についての整備計画の話がありましたが、児童養護施設あるいは里親、乳児院といった社会的養護を担う社会資源の需要予測と整備計画をぜひ立てていく必要があるだろうというふうに思っています。

 ちなみに、イングランドですが、イングランドでは、たしか人口五千五百万だと思いますが、社会的養護のもとにある子供たちが約五万人です。そうしますと、日本に当てはめますと、五千五百万人で五万人ということは、それで考えますと、日本は約一億二千数百万ということでいえば、十二万人ということになるかと思います。英国と同じくらいの状況で社会的養護が必要になるとすれば、日本の社会的養護のキャパは十二万人必要。しかし、今は現状は四万人です。そうしますと、あと三倍が必要になるということになります。

 ぜひ、そうしたことも考えながら、社会的養護の需要予測を立て、そして整備計画を立てていくことが大事だろうと思います。

 (二)として、家庭的養護、地域化、施設の専門機能の強化ということを進めていくべきだろうと思います。

 もう一つ、三つ目のポツにありますが、施設の再編成も考えていく必要があるだろう。

 どの施設も今は、虐待を受けて心のケアを必要としている子供たちが入所をしています。しかしながら、社会的養護のための施設は、年齢によって分断されています。二歳になると乳児院から児童養護施設に移ることになります。そういう年齢や、それから子供の問題、アクトアウトすれば非行になるし、アクトインすれば情緒障害になったりするわけですが、それは行動のあらわれ方の違いでしかないのに、そうなりますと別の施設に入らなければならない。

 こんなふうに、子供の問題や年齢によって区分けがなされていますが、そうではなく、機能別に養護体系を転換していくことが大切なのではないかというふうに思っています。

 それから三番目です。サービス間の格差是正が必要だと思います。

 例えば、社会的養護のサービスとしては、里親、自立援助ホーム、それから乳児院や児童養護施設などの施設があります。ここに一体幾らぐらいのお金がかかっているのかということでありますが、私は今千葉県で社会的養護のあり方についての検討を進めておりますが、例えば里親については、子供一人当たり年間百四十万から百五十万です。それから、自立援助ホームは百十五万です。地域小規模児童養護施設は三百四十万です。このように、同じようなことをしているにもかかわらず、財政投入の格差が見られています。これらを是正していくことが大事だと思います。

 それから、(四)ですが、特に三つ目のポツです。社会的養護を必要とされている子供たち、その子供たちが大学に、専門学校に、短大に行けるようにしていくことが必要だろうと思います。

 専門学校を入れますと、あるいは予備校なども入れますと、今は高校を出た子供たちの約七〇%近くがその上の学校に行っています。それなのに、児童養護施設の子供たちで大学に行ける子供たちは、きのう伺った話では五十人程度です。本当に少ない、数少ない子供たちしか上の学校に行けないわけです。

 上の学校に行けるという希望が出てきますと、高校生活が変わります。児童養護施設の子供たちが高校進学ができるようになったときに、中学生活が変わりました。同じように、大学進学を保障していくべきだと思います。

 それから、「(七)家庭的養護の拡充」ですが、里親ファミリーホームというものがございますけれども、国の制度として制度化されておりません。プロ中のプロの里親が行っておりますが、これを制度化していくことが大切なのではないかと思います。

 それから、次のページ、最後で申しわけございませんが、(十)です。「専門職の再検討」というふうに挙げさせていただきました。

 保育士の資格を再検討しなければならない。保育士の資格は、いわば幼稚園教諭と一緒に二年間で取得をしておりますので、就学前の集団保育の勉強しかほとんどしておりません。しかしながら、児童養護施設の主力部隊は保育士です。虐待で心の傷を受けた思春期の子供たちが不満をぶつけてきます。それに対応できる技術を学んでいないために、保育士がつぶれてしまうわけです。そのためには、保育士資格を再編成し、例えば、その次にある養育福祉士といったような新たな専門職をつくっていくことも大事だろうと思います。

 (十二)です。「自立支援」です。

 児童養護施設に入所している子供たちの、そこにあります、フェアスタート、リスタート、デュアルスタートというふうに私は申し上げておりますけれども、ほかの家庭の子供たちと同じようなスタートができるように、それから、失敗してももう一度スタートができるように、それから、社会訓練と学びの場が行ったり来たりできる、そんなことが大事なのではないかと思っております。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

小宮山委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小宮山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。やまぎわ大志郎さん。

やまぎわ委員 おはようございます。自由民主党のやまぎわ大志郎と申します。

 本当に四参考人の皆様には、貴重な現場の御意見、あるいはまた微に入り細にわたった細かい点から網羅的なお話までお話しいただきまして、ありがとうございました。

 今御指摘がございましたとおりに、この児童虐待防止法、平成十六年に改正されて、また三年後の見直しということで、必死になって鋭意やっているところでございますが、今皆さんからお話を伺っておりますと、積み残しというかやり残したことだけを議論すればいいんじゃないんだな、まだまだやらなきゃいけないことが山ほどあるなということを実感として思った次第でございます。

 そこで、私はきょう質問に立たせていただいている先頭バッターでございますので、少し総論的なお話をお聞きしたいと思います。

 というのは、私、日々この議論に参加をしていて思うんですが、児童虐待と言われる言葉が、先ほどお話がございましたとおりに、児童相談所というものが社会的に認知されてまだ間もないぐらいの話でありますから、社会の中でこの児童虐待と呼ばれるものがしっかりと注目されるようになってから、まだ日が浅いと思うんですね。

 そのときに、社会のトレンド、傾向として見たときに、本当に児童虐待というものが増加傾向にあるものなのか。それとも、今まで、日本の社会というものが成熟をしていなかったということによって気づかれないままであっただけの話で、実は、かなり前というか、あるいは日本の社会ができ上がってからずっとかもしれませんけれども、ずっと我々の社会においてはこの児童虐待の問題というものはあって、それは傾向としてはふえもしないし減りもしないという考えに基づいて私たちは議論をしていくべきなのか。

 もちろん、社会がここまで成熟をしてくれば、一人として子供が命をなくしちゃいけないという観点に立って私たちは制度をつくっていくということをやるわけではありますけれども、社会の傾向として、ともすると、マスコミ等々によると、今の日本の社会というもので非常に残虐な犯罪が多くなっているとか、児童の虐待が多くなっているとかということがわあわあわあっと言われると、本当にそんなにひどい世の中になってきてしまったのかというおそれを抱くんですけれども、そこは私たちは一歩冷静になって、実際にはどうなんだろうかということを、議論する前段階として踏まえておかなくてはいけないと思うんです。

 まず、このことについて御意見を四参考人から伺いたいと思います。

平湯参考人 座ったまま発言させていただきます。

 今のお二つの果たしてどちらであろうかということは、私どももといいますか、直接近いところでかかわっている者にとっても根源的な御質問であります。やはり、どちらでもある、両方言える、両方があるというのが正解だというふうに思っております。

 歴史的に見てもまさに、気がつかなかったものが気がつかれるようになる、これははっきり言えると思います。それから、通報の活発化によって数字がふえる。

 ただ同時に、やはり、虐待の単純な原因ではありませんが幾つかの要素になり得るもの、それ自体はふえているという面もあるというふうに思っております。経済的な原因というのもその一つで、それ独自で虐待の発生に直結するわけではありませんけれども、さまざまな形で家族の暮らしというものを損なっていく。その中で、人間関係、家族関係、あるいはそのほかの地域的要因などによってそれを悪化させない力が足りないときには、やはりそれが大きな比重を持っていくと思います。

 そのように理解しております。

栗原参考人 私も、基準、ルールが明確になったということで、以前見逃されていたような事例が発見されるようになったということと、絶対数がふえている、両方だと思います。

 と申しますのは、子供の数は減っているわけですけれども、児童相談所に係属する子供の割合が高いわけですね。相談件数は横ばいということですから、相対的にはふえている。

 翻って、死亡事例を見ますと、いわゆる一歳未満の子供が半数、なおかつ、そのうち四カ月未満のお子さんが約六六%であるということは、いわゆる未熟児とか重度の障害児の養育が大変なお子さんが相当いらっしゃるということで、これは、かつてはもしかしたら生まれてこなかったのかもしれないような大変なハンディを負ったお子さんが今は生まれている、養育もそういった体制をとらなくてはいけないということで、非常に結構なことではあるんですけれども、一保護者がどこまでできるかということになるとなかなか大変であるということで、結果として小さいお子さんの死亡事例が多いということで、育てづらいいろいろなハンディを負ったお子さんが、これは疫学的にきちんと調べなくてはならないと思うんですが、もしかしたら相対的にふえているのではなかろうかということです。

 社会的な認知の問題と絶対数がふえているのかということは、両方だというのが今のところ私の見方でございます。

笹井参考人 私は現場で見ているだけなんですけれども、現場で見ていてまず多くなっているのは、ネグレクトという養育放棄なり養育ができないというところが多くなっているということで、それを見ているときに、どうも家族なりというところが、今までだったら、親ができなければきっとだれかが、おじいちゃん、おばあちゃんが支援したり近所の人が支援したりみたいな形のことがあったのかもしれないんですけれども、そういう周りの力がかりられなくなっています。

 それから、非常に少子高齢化、うちは出生数が千六百なんですけれども、八十歳の方が千六百人だったんですよ。それと同じ数ぐらいしか子供ができていない。やはり、非常に子育てが難しくなってきている、そこに支援が入らないから、結果として虐待になっているみたいな形の方もおられますし、社会的な要因というか、なかなか子育てが文化伝承できていないみたいなところも強く感じます。

 それから、虐待に対してもやはりかなり目が厳しくなっていますので、昔は泣くのは子供の仕事だったんですけれども、今は泣くと通告される、泣くとすぐ飛んでくるみたいな形になっていて、少し異常さもあるような気もするんですけれども、支援のためにはやはり、さっき申し上げたように、そういう支援のバロメーターとしては虐待という形で通告されることは決して悪いことではないと思うんですけれども、比較的虐待件数が、実感としては、やはりここ五、六年私が見ていてもふえているんじゃないのかなというふうに思います。

柏女参考人 もう同じような意見なので、ちょっと違うところを申し上げたいと思います。

 昔の虐待は、子供の売買とか年少児童労働とか、あるいは間引きとか、いわば貧困を背景にした虐待だったんだろうと思います。それが戦前に多くて、そして、たしか昭和八年だったと思いますが最初の児童虐待防止法ができた。その間、戦後の高度経済成長期を経て、そうした貧困を背景にした虐待は少しずつなくなっていく。

 しかしながら、最近ふえてきたのは、今度は家族病理に基づくもの、あるいは、社会全体で人と人とが分断されてしまっているために孤立化してしまう、あるいは、もともとソーシャルキャピタルとしてあいさつをするとかそういうことがすごく財産になっていたのですが、そういうものがどんどんなくなってしまって、人と人とが孤立化してしまった結果、それから、世の中が便利になって手間暇かけることをいとう、そんな社会状況が出てきて、虐待が大きく顕在化してきているのだろうというふうに思っています。

やまぎわ委員 今のお話を伺うのが実は本当に重要だろうと私は思っておりまして、社会で起きていることが、傾向として、大きな枠組みとしてどういうものなのかということを、大づかみでもいいから、少なくとも国民全体で意識の共有ができていないと、児童虐待というものに対するきちんとした対策というのは打てないんだろうと思っております。

 そういう意味では、今、期せずして四人の参考人の皆さんからほとんど変わらない見解が述べられたということは、まず間違いなく、社会で今起きているのは、トレンドとしても、質は変わってきているかもしれないけれども、児童虐待の問題というのは大変な問題になってきているんだという理解でいいんだろう、このように思います。

 この後に、我が党の井澤さんの方からその点についても詳しく聞かれると思いますので、この点はそれだけにいたしまして、時間があと十分しかないので、もう一問だけ、本当に総論的なお話をさせていただきたいと思うんです。

 次に、今るるお話があったとおりに、我々は、法律をつくる、制度をつくる人間の側におりますから、さまざま、問題がこれなんですよという話を伺ったときに、法律、制度というものにおいてそれを何とかしようという枠組みをつくるわけですね。その枠組みそのものがまだ不十分だよという御指摘も今なされましたが、恐らく、しかしその枠組みだけをつくっても運用面でしっかりされないとうまくいかないんだよということも、また同時に皆さんから今述べられたと思うんです。

 これは何の制度をつくるときでも全く同じだろうと思っておりまして、結局私たちはそこでいつも歯がゆい思いをするんですね。私自身が、今回、児童虐待防止法の改正を行うというときに議論に参加していて、一番問題意識として持っていたことは、第一にお伺いしたことと、第二に、今お聞きしている運用面において、やれることがいっぱいあるはずなんだけれども、だけれども実際にはまだそれがうまく運用されていないという現状、これは一体なぜなんだろうなと私なりに思いますと、それは、ハードとソフトという言葉が先ほど出ましたが、ハードの部分も確かにそうなんですけれども、私は圧倒的にマンパワーの問題なんだろうと思うんです。

 それで、マンパワーというのは質、量ともにマンパワーだろうと思うんですが、今、国の政治そのもの、あるいは公の部門というのはどんどんどんどん縮小化していこうよという流れの中において、児童虐待の分野にかかわる人たちだけをふやすというのは、これはどう考えても、流れから見ると逆行していることになってしまうので、現実問題としてはとてつもなく大変な話だと思うんですよ。これを、ではトレンドと逆行してふやしていくという努力も当然必要だと思いますけれども、そうではない、公の部分だけではない部分で何か工夫することによって、でき上がった制度をうまく機能させることはできないか。これについての、非常に大まかな私の質問ですけれども、どうすればいいんだろうかという大きな方向性を四人の方から聞いて、私の質問は多分終わりになると思います。

平湯参考人 最後のお話の、マンパワーを公務員の増加という形でなしに補うという努力は、各自治体でも現にされていると思います。

 私の事務所は東京の立川にありまして、立川の市の子ども家庭支援センターの活動に参加しておりますが、そこでは、一般市民の中から、いわば若手の民生委員みたいな形で、年に十二回の講習会をやって、そういう感覚を持っていただく、まさに、最初申し上げたようなことを、関係する市民、それを理解する市民をふやしていきながらふやしていくということもございます。

 それから、全体の公務員削減という問題になりますと、私も何とも申し上げようがありませんが、そもそも子供にかかわる公務員というのはスタートから少な過ぎた、一律減らされては困りますということだけ申し上げたいと思います。

栗原参考人 質と量の問題で、量の方はいじれないということであれば、質をどう変えるかということになるかと思うんですけれども、専門性が期待されるいわゆる有資格者が現場に余りにも少な過ぎるということですので、確保する手だてをお考えいただきたいと思います。

 公務員試験で入ってくる方々はそれなりに勉強してきますけれども、先ほどもお話ししましたように、専門職採用が都道府県によって非常にまちまちであるということと、あと年齢の問題もあります。そこら辺で柔軟に、この資格を持っている方は年齢がもう少し高くても採用しますよとか、別枠で、専門職で採用しますというような柔軟な採用制度、専門職の採用制度があれば、質の確保はできるのではなかろうかというふうに考えます。

笹井参考人 一つは、家庭というかなり個人のところに入っていくという形がありますので、その部分で、公務員でないとできないこととそうでなくてもできることをやはりきちっと分けないと、本当は地域の力をうんとかりたいんですけれども、逆にその地域でいろいろな形の悪い影響が出てしまう可能性が高いので、そこのところを少し整理する必要があるのではないか。

 私たち、今、主任児童委員さん、地域におられるので、かなりいろいろな形で協力をしていただいているんですけれども、半分公務員で半分民間みたいな立場だと思うんですが、そこら辺の方をきちっと養成しなきゃいけないんだろうなと思っています。

 それともう一つ、公の方でいくと養成が、現場に来てしまうと仕事に追われて研修とかもできないので、さっきおっしゃっていたような形で、やはり採るときというか採用するときに、きちっとした専門職を採用できることを市町村レベルにおいても何か考えていただければ本当にありがたいなというふうに思います。

柏女参考人 一つは、やはり民間のサービスをもう少し行政が購入するということを考えてもいいのではないか。ボランティアの方が、例えば子どもの虐待防止センターなどが非常にいいプログラムを展開しているわけですが、それにお金が一銭も払われていないので、児童福祉司が足りない中で親指導をしている。もっとそのサービスを購入する、民間の施設のサービスは行政は購入しているわけですから、親に対する支援のサービスも行政が購入すればいい。出来高払いでもいいと思いますので、それをやればいいというふうに思っています。

 それからもう一つ、二点目は、サービスをもっと有効活用、いろいろな人たちが寄ってたかってこの社会的養護や虐待の分野に注目してもらうようにする。例えば、ジョブカフェの人たちに児童養護施設に訪問してもらって、児童養護施設の子供たちの就職支援をしてもらう。これはすごく大事なことで、石川県でそれを制度化しましたけれども、そうしたことが必要ではないか。

 あるいは、公立学校、公立の保育専門学院とかあるいは看護学校とか、そうしたところに児童養護施設の子供たちが入学すればその学費は減免するとか、いろいろなところで応援しているよというのをやればいいのではないかというふうに思っています。

 そして最後は、特に民間の施設職員の待遇向上の問題です。それをしていかない限り、学生たちは就職してもどんどんどんどんやめていくことになります。それを改善していくことが大事だろうというふうに思っています。

 以上です。

やまぎわ委員 どうもありがとうございました。

 本当に示唆に富んだ御答弁をいただきまして、今おっしゃっていただいたようなことを一つ一つやはり我々が重たく受けとめて、制度化をできるところはしていくという努力が必要かなと思います。

 また、世の中で起きていることというのはとてつもなくたくさんあるわけですね。たくさん起きている中で、青少年の問題に対して光をきちんと当てていくというのが、まさに、私たちがこの特別委員会をつくって国会という場において議論をしていることで、私たちは国民に対してそれを示しているのかな、私はそういう自負を持ってやっているものですから、ここでの議論が実りのあるものになって、これがまた適切な形で世の中の皆さんに広がるように我々としても努力していきたいな、そんなことを思いました。

 時間が参りましたので、これで終了させていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

小宮山委員長 次に、井澤京子さん。

井澤委員 おはようございます。自由民主党の井澤京子でございます。本日は、初めてこの青少年特別委員会で質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、本日、参考人の皆様におかれましては、お忙しい中委員会に御出席いただきまして、先ほどもお話をいただきまして、本当にありがとうございます。

 実は、私の地元は京都府南部でございまして、隣には長岡京市があります。昨年の十月二十二日には、三歳児が虐待をされ餓死し、父親と同居女性が逮捕されるという大変痛ましい事件が起きたばかりでございます。先日、一月には京都地裁で判決があり、父親には懲役五年六カ月、同居女性には懲役六年の実刑判決が言い渡されました。そして、現在は控訴中でございます。

 この特別委員会では、小宮山委員長を初め委員の皆様と十一月の六日に長岡京市へ視察に行き、関係者から報告や対応状況についてヒアリングを行いました。私は、その視察に先立ち、事件が起こった自宅前で手を合わせ、自治会館に設けられました祭壇に献花をいたしました。たくさんのお菓子やおもちゃなどとともに添えられたメッセージにこんな言葉がありました。「子どもたちが生きにくい殺伐とした世の中にしたのは、大人です」「そばにいて助けられずにいてごめんね」と書かれてあり、私は涙で読めなくなりました。

 このようなことが二度と起きない、起こさせないためにも、現場でどのような御苦労をされているのか、それに対して私たちはまず何ができるのか、そうした観点からきょうは質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど既に各参考人からお話しいただいた点と重なることがあるかと思いますが、お話しし切れない部分があったかと思います。また再度重なるかと思いますが、できるだけお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、児童虐待、死亡事故の増加傾向など、その背景についてお伺いしたいと思います。

 先日成立した平成十八年度の補正予算では、早急に取り組むべき課題として、児童虐待緊急対策関連に十二億六千九百万円が盛り込まれ、また、平成十九年度の予算案では、児童虐待防止対策関係として、昨年の一九%増に当たる百四十億八千九百万円が計上されております。また、私の地元京都でも、長岡京市の事件を受け、検証委員会による報告の結果、平成十九年度予算案に児童虐待対応強化事業費として一億二千三百三十万、また家庭支援総合センターをつくるためにその予算として新規に計上するなど、地方自治体においても児童虐待に対する施策の推進が大変緊急な課題になっております。

 そのような中、先日警察庁が公表している児童虐待の事件の検挙状況や被害児童数の数は年々増加傾向にあり、特に死亡児童数は、平成十七年度、十八年度だけでも三十八人から五十九人にもふえております。

 そこでまず、参考人の皆様全員にお伺いしたいのは、なぜこのような児童虐待の事件が年々増加傾向にあるのか、その背景にどのような問題があるのか、また再度重なるかもしれませんが、少し大きな視点でお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

平湯参考人 例えば、従来あったものが見えるようになったというような分析は、虐待件数、いわゆる通報件数の増加についてはそういう観点が十分言えると思いますが、その中で、個別の結果の死亡ケースということになりますと、たくさんあったものが見えるようになったというのとはやはり違う、一つ一つのケースがどうして起きたのかをきっちりつかむことによって、さらにその防止対策、施策全体を深めていくという指標になるものだろうと思います。そういう意味で、数が例えば一けたであろうと二けたであろうと、それは、死亡事故の件数というものについての見方として、おろそかにしてはいけないことだとは思っております。

 ただ、その上で申しますと、ここ数年の増加ということ自体が、何か特殊な原因が付加されてあるというわけではないのだろうと。ですから、ここ数年、特に死亡事故を促すような深刻な変化が起きていると見る必要はないのではないか。むしろ、繰り返しになりますけれども、数の変化よりも、一つ一つのケースの原因を探っていくというふうに受けとめるのがよろしいのではないかと思っております。

栗原参考人 私も平湯弁護士と同じ見解でして、確かに件数は、その年その年、具体的、客観的に出てくるわけですけれども、先ほどお話ししたように、実際に死亡しているお子さんというのは一歳未満のお子さんが多い、なおかつ生後間もないお子さんが多いということでは、いわゆる児童福祉分野、行政がかかわる前に、もっと医療、母子保健の分野でのかかわりがあったのではなかろうかということと、繰り返しになりますけれども、育てづらいお子さんがふえているということ、あと、保護者の側から、やはり個々の事例で考えなくてはいけないんですけれども、若い保護者となりますと、十代の妊娠、出産、性教育、そういったところまでさかのぼって対策を講じる必要があるのではなかろうか。

 ただ、件数がふえているから今どうなのかということについては確かに、今何とも言えないんですけれども、もう少しこの数字については様子を見たいなという状況です。

 以上です。

笹井参考人 今お二人の方から述べられたことがすべてかなと思うんですけれども、一つだけ、ずっと現場でやっていて、なかなか所在がわからないお子さん、住民登録時にはいないよというようなお子さん、それから、赤ちゃんが生まれたよとわかっているんだけれども、それを捜しに行ってもなかなか見つからないという方がふえている。母子保健でもなかなか把握し切れない。そうすると、どこかで漏れてしまうようなお子さんがふえている。あと、外国人の方もしかりなんですけれども、そういう形で、現場で見ていると、ちょっと本当に大丈夫かな、はらはらどきどきという形の体感はここ数年ちょっと増しています。

柏女参考人 ちょっと別の視点からお話をさせていただきたいと思いますが、私自身は、実態に対応が追いついていない、その一言に尽きるだろうと。

 特に、職員の方の意識の問題ですね、これが昔と変わってきている。私も児童相談所にかつて十年勤務をしたことがありますが、児童相談所というのは、親と子供をペアにして、そしてどうやったら子供の福祉が図れるのか、そういう視点でずっと援助をしてきましたし、そういうアイデンティティーを持って私も児童相談所の現場に入りました。

 しかし、今、児童相談所で求められているのは、通告があると、その親が否定をしても虐待をしたというエビデンスを見つけ出していく、そして子供を保護する、こういう仕事をしなければいけない。ですから、二人で訪問をして、そして、例えば電柱の陰であんパンと牛乳を飲みながら張り込みをするといったようなことも行われるわけですし、親が子供を骨折させて入院して、そして親が子供のためにジュースを買いに行っている間にその子供を一時保護所に連れ去っていく、そういう仕事を児童相談所の職員がしなければいけない。それに疲れ果てている、そしてそこに対応できていない、そういう問題があるのではないだろうかというふうに私は思っています。

 そういう意味では、業務のあり方そのものを変えていかなければならない。そこに、体制が、意識が追いついていない、それが介入の手ぬるさということを招いてしまって死亡事故につながってしまう、そんなふうに私は感じています。

井澤委員 ありがとうございました。各参考人のそれぞれの現状について大変よくわかりました。

 では次に、先ほどのお話を踏まえまして、少し具体的な御意見を再度伺いたいと思います。

 まず、実際に現場に携わっておられます栗原参考人の方から。

 先ほどのお話では、一九九九年から四十八時間のルールを四つの要件で実践されているということでございましたが、実践された中でのケース、少し具体的な御紹介をいただいたりしながら、次なる課題というんでしょうか、その四つの要件でいいのか、あるいはもう少し、四十八時間以内、すぐという緊急性を要した場合、どのように今後対応が必要になっていくのか、お伺いしたいと思います。

 それに関しまして、今お話しいただきました柏女参考人から次にお伺いしたいのが、お話の中で、いろいろ幾つかの課題がありました。構造的課題についてや施設の再編成、また市町村の役割の充実、あるいは保育士の資格の再編成についてなどのお話もありました。柏女参考人は福祉の視点というところからいろいろな課題に取り組んでいらっしゃいますが、私が行きました長岡京市の事件では、福祉の視点ではなく、今後は、疑惑というんでしょうか、疑問を持った視点がさらに福祉の視点以上に重要になっていくというようなお話もヒアリング等からありました。

 柏女参考人の方から、福祉プラスほかにまだ課題があるのか、先ほどお話しし切れなかったのではないかと思いますので、具体的にさらにお話を伺いたいと思います。

 両参考人、お願いします。

栗原参考人 私の所属しているさいたま市児童相談所は四年目ですけれども、一応、児童相談所がかかわった死亡事例がない。県の児童相談所は、最後の死亡事例が平成十六年だったかと思います。

 こういった四十八時間対応が行われているからよろしいかどうかということにはならないと思うんですけれども、個々の問題から考えますと、本当に緊急なものは、まず病院に救急搬送された子供がこれは重症であるということで通報を受けた場合は、病院に身柄が確保されておりますので、それほどこちらは慌てないということですね。それと、かなり重篤な状況で保護者がもう逮捕されましたということになれば、これも子供の面倒だけ見ればよろしいということで、相当大変な状況のお子さんというのは、ほかの公的な機関とのかかわりの中で対応できるということで、時としてそのすき間から落ちてしまうようなこともありますけれども、大多数はそれで対応できている。

 四十八時間対応の中で一番強調したいところは網羅性ということで、近隣の方々が自分は虐待だと思うということで匿名で通報してくるわけですけれども、断片的な情報なわけですね。アパート、マンションの上、下、横で、夕方になると子供が走り回っているけれども、泣き声も聞こえる、ドンドンドンドン音がする、お母さんのどなり声も長い、これは虐待ではなかろうかというような断片的な情報で、結果として虐待ではなく、知的障害を持っているお子さんがうちの中で夏とか走り回って、お母さんもその都度対応しているんだけれども疲れ果てている、どなってしまったというような事例は結構あるんですね。

 そうしますと、専門家としては、お邪魔して、そこで、虐待じゃないですね、さようならというわけにはいかないわけで、お子さんの年齢からしてどういう対応ができるのか、お子さんの状況はどうなのかということで、いわゆる障害相談につなげるというようなことにも、最初は虐待通報でありますけれども、障害相談、子育て相談等々広がってくるわけですね。

 ですから、件数の増加そのものは今のところ気にはしておりませんけれども、その網羅性ということで、そこで母子が何とか助かる手だてが発見できたというあたりでは、児童相談所としては非常に役に立ったということになるかと思います。

 そういった虐待ではない周辺のものも拾えるということが、この網羅性ということでは、実施する相談所は結構大変なんですけれども、よかったのかなということと、本当に百に一つ、二百に一つぐらい、軽そうな話だったけれども実は行ってみたらとんでもない状況だったということもございます。

 そういったことで、やはり結局必要なのは人手ではあるんですけれども、人手プラスその現場で判断、対応できる専門職ということになるかと思います。

 以上です。

柏女参考人 福祉の視点というのを虐待の問題にどう生かしていったらいいのかという点と、それからもう一つは、全体的に社会福祉をどう考えたらいいのかという御質問だったかと思います。

 一点目でいえば、私は、児童相談所などいわば福祉ユニット、単位と警察部門がもう少しつながってもいいのではないかと思っています。アメリカなどでは、一部の事例しか知りませんが、いわば福祉、警察ユニットができて、通告があった段階からペアを組んで動き出していく。そして、エビデンスをつかんだりしていくのは警察、そして福祉の方は、いわば寄り添う視点で、子供へのしっかりとした面接をする、あるいは子供を保護する。そういうふうな役割分担をしながら、もう少し組んでやっていくべきではないだろうかというふうに思っています。

 福祉の視点というのは寄り添う視点だろうというふうに私は思っていまして、親に対してもやはり寄り添っていかなければならない。しっかりとエビデンスを、虐待の事実を見つけていくことも大事、そしてそこから指摘をしていくことも大切ですけれども、その親がそうせざるを得なかった人生というものに共感をしていく、そういう姿勢も大事だろうと思っています。

 そういう点で、やはり福祉の視点と、それからエビデンスをしっかりと見つけ出すという視点が、いわばユニットを組んでやっていく方向が将来的には必要なのかなというふうに思ったりもしています。

 それからもう一つ、言い足りなかった点ということですが、お配りをさせていただいたレジュメの最後の点なんですけれども、四ページ、七番のところに「子ども家庭サービス供給体制の再構築を」ということで書かせていただいておりますが、サービスの利用に関して社会的養護の分野だけがいわば孤立をしてしまっているということが言えると思います。高齢者や障害者の問題などと比べても、あるいは障害児の問題と比べても、都道府県が中心となった職権保護の仕組みで、いわば待機児童問題も発生しない、職権保護ですからいわば待機児童という概念は発生しないわけでありまして、そうした問題が生じているということがあります。

 それを変えて、二つ目にあります、人間の一生を同じような仕組みで保障していく。それを私どもは、年金、医療、育児、介護の四つ葉のクローバーで人間の幸せを考えていかなければならない、今のように年金、医療、介護を下支えする少子化対策ではもうだめなのではないか、国民のみんながそこに違和感を持っている、それを改善していかなければならないのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

井澤委員 ありがとうございました。

 最後に一つだけ平湯参考人にお伺いいたします。

 今回の法改正の中で、優先順位といいますか、長期的、短期的という取り組みができるかと思うんですけれども、何か平湯参考人の方で、現場を通して、幾つかちょっと法改正についてのポイントを、議論のポイントというんでしょうか、お伺いできればと思います。お願いいたします。

平湯参考人 突然で、ちょっと困っております。幾つかあるというのは、いろいろもう出ておると思いますけれども。

 ただ、一つ申し上げると、十六年改正のときに、親に対する指導、支援という観点が明記されて、同時に、児童相談所なりの活動を進めていくと、それに乗ってこない親というのが非常に目につくようになってきて、困った親、親が困っているのでなくて周りから見て困った親に対してどうしたらいいかというのが一つの焦点になってきていると思いますが、それはそれで一つ押さえながら、成熟した防止システムというのが一体何なのだろうか、こういう見方が必要かなと。

 済みません、はぐらかしたようなお答えで。

井澤委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、高井美穂さん。

高井委員 民主党の高井美穂と申します。

 本日は、参考人の皆様、本当にお忙しい中、そして、それぞれのお立場から大変貴重な御意見を賜りました。法改正に向けて、大変参考になりましたので、引き続き私どもも頑張ってまいりたいというふうに思っています。

 私は、より具体的なことをお聞きしたいんですが、大まかに三点きょうの質問の中でお聞きしたいと思っています。まず第一点に司法関与のあり方について、それから親指導、子供のケアについて、それから親権制限について、大きく分けたらこの三点から、それぞれの参考人の方々の意見陳述をもとに、もうちょっと具体的にお聞きをしてみたいというふうに思っております。

 まず平湯参考人からは、司法関与の必要性について冒頭意見が述べられました。そして栗原参考人から、現場の意見からも、より初期の段階での司法関与が必要というお話もございました。そしてその際に、裁判所に提出するものがより厳密な証拠が必要になるのではないかということに対して懸念が少し表明されたと思います。

 今回、法改正において、我々どもも前向きに司法関与の部分を入れていこうというふうなことになっておりますけれども、平湯先生が今まで取り組んできた立場で、裁判所が判断する要件になり得るもの、児童相談所の現場が懸念しているようなことがないような形で、できるだけわかりやすく、何をそろえれば司法に判断してもらえるのか、そういう点から少し、平湯先生の御意見として今思っていることを、できるだけ現場が混乱しないようにという意味からも、どういうものが必要なのかということを、提案があれば教えていただきたいと思います。

平湯参考人 立入調査に即して申し上げたいと思います。

 立入調査の司法関与というのは、もともと、憲法三十五条の住居の不可侵ということが一つ背景にあって、それは裁判所の令状が必要であるという要請がありました。この立入調査というのを刑事事件として進める場合に、まさにその憲法三十五条が直接かぶってくるわけですが、福祉の手続としてやる場合にでもやはりその趣旨は大事であるということについて、大方御一致はあると思います。

 その上で、裁判所が判断するというのはどういう目的が、子供の虐待の場合にどういう意味があるかといいますと、それは単に住居の不可侵一般の話ではなくて、子供が育てられている場所であり、特にネグレクトの場合でいいますと、そこでどのように育っているかがつかめない、安全確認ができないという場面で、子供がどう育っているかわからないということ自体がネグレクトの徴憑として非常に重要なものであるという観点に立ちますと、親と子供の大きな利害の衝突ということになりますから、そこに裁判所が特に入ってくる意味というのが強まるということになると思います。要するに、単なる住居への侵入ということだけでなくて、そういう意味が入ってくる、そこに基本的に裁判所の関与が必要であるというふうに考えるわけです。

 具体的な要件、先ほどもちょっと申しましたけれども、裁判所のかかわりというのはいろいろありまして、例えば、ちょっと話がずれますけれども、立入調査でなくて一時保護についても、これは親からの分離であって、本来司法が関与すべきではないかというのが子ども権利条約の観点からも言われるわけですけれども、ただ、そのような場合であっても、事前に一時保護を許可するのと、事後に許可する、いわゆる事前審査と事後審査というのが司法関与の形としてはあり得るわけです。立入調査の場合にもそれは両方あり得るわけですけれども、しかし、先に立ち入りを実施して、それを後から裁判所が承認するという形ではやはりふさわしくないのではないか、事前に裁判所の許可なり承認なりを得て入るということが立入調査の場合には望ましいのではないかということになってくると思います。

 そういうふうに絞っていきますと、実は、裁判所の審査というのは、行政機関の行動の適法性をチェックするというところが主になりますので、児童相談所がこういう理由でこういうふうに判断しているということが一般的に、つまり、その段階で必ず、これはなるほど虐待が既に発生しているということまで裁判所が認識できるようなものでなくともよろしいわけで、刑事事件的に言いますと疑いといいますか嫌疑といいますか、そういうものによって児童相談所が立ち入ることが業務として適法であるという判断が得られるものであればよろしいのではないかということになります。

 そうなってくると、その材料というのは、今まで児童相談所が、立ち入りたいけれども規定がなくて入れないというときに集めてきた資料、そういうものでよろしいのではないか。さっき申し上げましたけれども、児童相談所が近隣住民の方から材料を集めて、それをきちんとした形で裁判所に提出できるのであれば、住民の署名までなくたってそれはできる。それは実際にも、刑事裁判の逮捕状や何かの請求のときにもみんなそうやっていることでして、警察官がいろいろな近所からの聞き取りをすればそれも立派に証拠として役に立っているわけですので、そういうような児童相談所の実際の業務をベースにしてそれをチェックできればいいのではないかというふうに思っております。

 あと、細かいこともあるかもしれませんが、基本はそういうふうに考えております。

高井委員 ありがとうございました。

 私も平湯参考人の御意見に大変強く賛同するものでございまして、やはり裁判所にきちんと関与していただく、そして、現状、子供の身体の危険がある場合は警察とともに立ち入りができる仕組みになっておりますので、やはりそれ以外のところをできるだけ抑制的に、子供を助ける、また立ち入るという観点から、児相と警察がより連携して協力してやっていけるような仕組みをつくるために、できるだけ児童相談所の現場にも負担がかからない形で、これから法改正に向けても運用についてもいろいろと検討してまいりたいと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思っています。

 そして、栗原参考人にこれに関連してちょっとお聞きしたいんですけれども、実際に今、警察と連携しながら、関係各機関との連携というのが大事だと参考人もおっしゃっておりましたし、現実にやっておられることだろうというふうに思います。

 そういう中で、勝手な親というか暴力を振るう親がいるというお話もございまして、よりみずからが、児相が先頭に立って踏み込む、立入調査をするときに、本当に率直な御意見で結構なんですが、前に警察に立っていただきたいと思うのか、それとも一緒に連携した形で、児相の側が責任を持って入って、それで現場を確かめるということをすべきと考えておられるのか。御意見があれば教えていただきたいと思います。

栗原参考人 なかなか難しい内容かと思います。

 といいますのは、まさにケース・バイ・ケースでして、警察の方を先に立ててしまうとかなりこじれてしまうような場合もあるし、最初から敵対関係でもうこの保護者とは平行線であるということであれば警察官の方に前に立っていただくことがありますけれども、今まで顔が見え、話ができていたけれども、そのときそのときの状況によって立ち入りをせざるを得ないような保護者とは、かかわりのあった児童相談所の職員が先に立って話をすることによってうまくいく場合、その現場の判断というのがまた一つあるわけですね。

 我々のような立場が後ろから指示しただけでは動けないような、現場の判断もまた一つ出てくるということですので、お巡りさんが先に立ってくれますよというシステムがあれば、その中で、お互い話し合いによって、相談所の方からの提案によって両方とれるというシステムが、こちらの勝手なんですけれども一番都合がよろしいのかなというふうに考えております。

高井委員 まさに現場で頑張っていただいている皆さんに対して一番やりやすい方法をできるように、我々も努力して、法改正や制度運用に対して一緒に協力してまいりたいと思いますので、今のは大変貴重な御意見でございました。ありがとうございました。

 続いて、親指導と子供のケアについて、実は今、今回立ち入り拒否罪について罰則を重くするということも検討に入れて法改正をしているんですが、もう一度、栗原参考人と笹井参考人、両参考人にお伺いしたいんですけれども、この立ち入り拒否罪を、今罰則三十万でございますが、例えば五十万にする、百万にするなど、あと極端なことでは禁錮刑まで入れるということは、効果が実際にあるかどうか。感覚的なもので結構でございますので、御意見をいただけたらと思います。

栗原参考人 これは効果があるかと思います。

 先ほどお話ししたように、実際そういうような状況にならなくとも、相談所が一番困るタイプの保護者は、きょう言ったことを次の日忘れているし、自分の都合勝手を言いますので、そういう人に一番効果的なのは、先ほどもお話しして繰り返しになりますが、損得勘定が一番その行動を変えてもらうのに有効であるというのは経験的にわかっておりますので、三十万より、百万と聞けば向こうも自分を抑えることができるかなというのが現場からの経験でございます。

笹井参考人 私も同感でして、それは効果があると思います。それで、できるだけ早くそういう形で親が自分の問題に直面をしてもらえるという意味でも効果があるのじゃないのかなというふうに思います。

高井委員 やはり金銭的な罰則を少し上げることをまさに視野に入れて法改正を進めてまいりたいというふうに感じています。

 そして、最後の質問になると思うんですが、親権制限についてお伺いしたいと思います。

 これは平湯参考人にまずお伺いしたいんですけれども、先ほどの意見陳述の中で、親権の量的制限と質的制限というお話がございました。もう少し詳しく親権制限のあり方について、今後の改正に向けて、今回大変踏み込んだ親権制限の改正までは民法全体を含むことで急には無理かと思いますけれども、行く行く、また先々のことを考えて、ぜひ親権制限のあり方についてもう少し詳しく御意見を伺いたいと思います。

平湯参考人 量的制限といいますのは、特にわかりやすく言えば、一時制限する、一定期間制限するという場合には、それは親権の中身まで入らずに全部を一時的に停止、制限することになります。それから、一部の制限ということであれば、例えば、これも議論されていると思いますけれども、医療に関する親の監護権を停止するということになりまして、これも親権全体の一部という意味では量的な一部という言い方をいたしました。

 もう少し突っ込んで質的というふうに申し上げたのは、そもそも親権というのは何だろう、親と子供がどういう関係に立つことを考えているのか。そこのことを申し上げたくてドイツ民法も引用いたしましたけれども、親が子供を養育する権利、これは非常に大事な権利ではありますけれども、それが子供の人格、人権とかみ合うような、本来そうあるべきものであるということが、現在の民法の表現ではとてもそうなっていない。

 親は子供を監護、教育する権利及び義務を有するというふうにはなっておりますけれども、具体的な中身はほとんど、親の懲戒権であるとか居所指定権が書かれております。そういうものが社会の中で理解されるときには、子供は基本的にはやはり親の言うことを聞かなくちゃいけないんだというところが前面に出てしまって、先ほど申し上げたような、例えば屈辱的な処置が子供に対して許されない、そういう社会的観念、親の観念が形成されないのではないか、そこをきちっと入れていく必要があるという意味で申し上げました。

高井委員 本当にこれは、根本的なというか大きなことにかかわる問題なので、ぜひ私たちも、司法制度審議会であるとかで、きちんとした形で、親権のあり方をどうするかというのは長い徹底的な議論が必要であるというふうに考えています。少し長期の考えを持って、この問題にも取り組んでまいりたいと思います。

 もう一問質問できそうな時間が余りましたので、柏女参考人に、ぜひ一つ、最後にお伺いしたいと思っています。

 私、参考人がおっしゃった、介護、医療、年金だけじゃなくて育児そのものを社会化する。御承知のように、介護保険は、介護も育児も家庭で行われていたものがそれだけでは成り立っていかないということで介護保険制度が導入されました。育児においても、まさに、こういういろいろな問題が明らかになってきているということは、家庭だけでやっていくことに限界がさまざまな要因からできてしまったということのあらわれだろうと皆さんの御意見を聞いていて強く感じているところであります。

 そして、とりわけお伺いしたいのは、親指導のあり方の中で、自発的ニーズの乏しい親子をきちんとした回復のプログラムに乗せていくことは大変難しいということを、先般いただいた資料の中にも柏女参考人の御意見として書いておられましたけれども、親指導のプログラムのあり方について、その中でも専門職の問題等も御指摘がありましたが、どういうふうにしていくのがいいのか、大変難しい問題ですが、提言があればぜひ教えていただきたいと思います。

柏女参考人 ありがとうございます。

 自発的ニーズの乏しい親には、二つのタイプがあるだろうと思います。

 一つは、強力に働きかけることによって御理解をしていただけるというタイプのもの、しかしながら家に引っ込んでいる。もう一つは、行政や制度や社会に対して大きな不信を感じていて、それはその方の生い立ちによるんだろうと思いますが、なかなか外には出ない。この二つのタイプがあるんだろうと思います。

 前者の方につきましては、例えば、厚労省が今回、こんにちは赤ちゃん事業というのを始められて、生後四カ月までにすべての家庭を訪問する。あるいは、私ども石川県でやっているマイ保育園登録制度ですが、必ず登録をしていただく。登録しない方もいらっしゃるし、登録をしてもマイ保育園においでにならない方がいらっしゃる。そういう方に強力に御訪問をして、そしてその方の御理解を得ていく。こういうアウトリーチ型の援助が考えられるんだろうというふうに思います。それをしていくことで親御さんの間に入っていくという点が一つ言えるだろう。

 それからもう一つは、不信を感じていらっしゃる方、そういう方にはかなり強制的にでも出てきていただかないといけないので、これは平湯さんがおっしゃったようないわば二十八条の問題などを通じて、やはり司法の手もかりて強力に介入をしていく。二十八条で申し立てをして、親の意に反して裁判所のお白州で議論をしていただくことによって、親が、二年間たったら帰れるよとかと言うと、二年の間に何をしようか、二十八条を申し立てることによって親子関係がよりよくなるケースもあるわけですね。それを考えると、そういう場合には司法の関与が必要なんだろうというふうに思っています。

 以上でございます。

高井委員 各参考人の皆様、ありがとうございました。大変参考になりました。

小宮山委員長 次に、西村智奈美さん。

西村(智)委員 民主党の西村智奈美と申します。

 きょうは、四人の参考人の方々、この委員会にお越しいただいて、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。今回の法改正にしっかりと生かしていけるように、私たちもまた、きょういただいた御意見を整理し直しまして取り組んでいきたいと思っております。本当にありがとうございます。

 先ほど民主党の高井委員の方から、法改正についての大きな論点と言われておりました立ち入りの問題とかについては質問がありましたので、私はそれ以外の部分で、少し大きな話になるかもしれませんけれども、幾つか質問をさせていただきたいと思っております。

 先ほどの高井委員の最後の方の親権のお話のときに、これは私も実は常々感じておったところなんですけれども、いわゆる親権というものの質でありますが、やはり日本では、民法の規定も非常に古いということもありまして、子どもの権利条約の視点からしても、少し見直しの時期に来ているのではないか、こういうふうに感じております。

 親と子の関係というのは、時代によってもその意味合いは変わってくるものだろうというふうに思いますけれども、互いに尊重し合いながら子供が親から監護される、そういう関係だけではなくて、例えば、子供が意見を表明することができる、そういう関係でもあってほしいと思うわけなんですけれども、平湯参考人、最後の方でそのような親権の話について御意見を述べてくださいました。今後、この親権の質的な転換と申しますか、これを少しやはり日本でも議論として起こしていく必要があるのではないかと思うんですけれども、平湯参考人の質的転換に向けての、具体的なイメージと申しますか、御意見などありましたらお伺いしたいと思います。

平湯参考人 今の点について思っていることを申しますと、民法の親権の条文だけを眺めていじくっていても、なかなか生産的ではないなということも思っております。

 民法の表現をまず離れて、子供が親あるいは周りの大人に対して何を求めることができるのか、周りの大人は何をしなくちゃいけないのかということで考えていったときに、一つのキーワードになるかと思いますけれども、子供の成長発達権。子供の基本的な権利といいますか、いろいろ権利があるという言い方はできると思いますけれども、一番基本的なものは、この社会の中で自立していけるように成長していく、発達していく権利というのがある。その権利というのは、自分一人でできるわけじゃなくて、周りの大人に援助してもらうことが予定されている。子供は成長発達していくことを援助してもらえる権利があるというふうに考えるべきではないだろうかと思っております。

 この自立というのは、ふだんの普通の家庭では、なかなか、子供が二十を過ぎても家にごろごろしていることもあるわけでございますけれども、私のうちもそうなんですが、これが例えば養護施設の子供たちということになりますと、もう十五で高校に入れなければ出ていかなきゃならない。あるいは、高校に入れても中退してしまう。卒業しても大学には行く保証はない。こういうことで、経済的な自立の困難というのが非常にまずあるわけですけれども、経済だけに限らないで、小さいときから周りの大人と信頼関係を持てるような、愛着関係と申しますか、そういうものがなかなかできないために、人生に自信がない、肯定感が持てない。この辺はさっきの柏女先生の方で社会的養護の問題として口述されたところではありますけれども、自分が尊重されたという実感が持てない。

 逆に言いますと、これは、侮辱といいますか、例えば、おまえは施設の子なんだから高校に行けないのはしようがないんだと言われることによって非常に傷つく、そういう傷つき体験というものが、子供の成長にとって、自立の気持ちをつくっていく上で非常にマイナスになる。そういうところで、実は本質的に大人が子供にしなくちゃいけないのは何なのか、子供にとって生きていく自信をつけることではないのか。

 そうなってくると、これが一般家庭の中でも、例えば、あんたは百点をとってこれなかったじゃないかと言って、ふんと無視するというふうなこともあるわけですが、そういうことが実は一番親としてやってはいけないことをやっているのだ、殴ることはもちろんとして。

 今子供の自立の成長のために何をやらなきゃいけないかということを、広く社会の中で、そういうところから議論していくことによって、実は、親子関係ひいては親権というのは何なんだろうかという議論ができていくのではないかと期待しております。

 長くなりまして済みません。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 それでは、続きまして栗原参考人にお伺いしたいんですけれども、埼玉県では非常に先駆的にいろいろなお取り組みをしておられますが、いわゆる四十八時間ルールですけれども、これはやはり、手厚いスタッフ体制と申しますか、それがあって初めて生かされる、そういう仕組みなのではないかと思っております。

 私たちの方でヒアリングをしておりましたときに、例えばこの四十八時間ルールをすべての自治体で導入することの有用性ということについて議論があったときに、四十八時間という制限が決められると、御承知のとおり各自治体では非常にばらつきがあるわけでありまして、むしろそのことが仕事のさらなる多忙につながっていったり、職員の方々のオーバーワークにつながっていく、そしてまた本当に必要なところに手が回らない、そういうおそれが生じるのではないか、こういうお話が実はありました。

 栗原参考人に、自分で答えがわかっているようなことで質問しているような気もするんですけれども、この四十八時間ルールが本当にきちんとワークするための条件、それは何なのか、実際に携わっているお立場から御意見を聞かせていただければと思います。

栗原参考人 確かに、導入した直後は、児童相談所の職員は疲弊しました。相当大変だったわけです。二人の職員が出かけている間、上の管理職も相談所で待っている、当然ですけれども、そういうことの繰り返しで相当疲れましたが、繰り返していきますと、まさにケース・バイ・ケースで、ちっちゃい子ですから、この場合には市町村の保健センターの保健師さんと行ってみようとか、保育所、学校に所属している子供であれば、当然、真っ先に連絡して、状況がわかりますので、対応の仕方も出てくるということです。

 逆に大変だったのは、市町村等の関係機関の方々に児童相談所がそういう動きをしますよということを御理解いただくのが、先に大変であったということを覚えております。

 相当年数を重ねて、件数もいわゆる数をこなしてきたという結果、各市町村の方々も、児童虐待といったら児童相談所はこういう動きをする、ではうちの方もこういった協力ができるでしょうということで、地域によっては若干のずれはありますけれども、御理解いただくことによって、相談所だけで動くのではなしに、大体二年目、三年目以降は、一緒に動くということで、結局人手は、相談所が二人でなしに、相談所は一人、まあ二人の場合もありますけれども、市町村の方と一緒に行くとか、保育所であれば保育所の方に直接見てもらって、すぐ相談所が行くにしても一人で間に合う場合があるとか、相談所がフルに稼働しなくても、御理解いただくことによって、情報共有から同じ動きができる。次には、当然、民間の民生児童委員さんとかそういった方々にも、情報提供をいただいたり、いわゆる見守り等協力いただくというふうに、だんだん現場のネットワークが広がってきた。

 そういうことで、ある意味では、実践を重ねることによってそういったものができ上がったということで、それをうまく調整する児童相談所の児童福祉司、また話が戻ってきますけれども、社会福祉士とか、そういったいわゆる福祉の専門職であった方が、やはりそういった知識を持ち、地域コーディネートをするということでは、結果としてうまくいったのではなかろうかなと。

 あと、ややずれますけれども、埼玉県の特徴として、できませんという自治体の方もいらっしゃるんですけれども、埼玉県は、どんなところでも、不便なところでも、一番遠いところで車で二時間ですね。秩父の山奥でもしそういったことがあっても、担当している熊谷の相談所は、車で二時間で行けるということで日帰りができるというような、秩父の山間地以外は大体平らなところですから、実際の活動がしやすかったということも、一つほかの地域と違っていたのかもしれません。

 以上です。

西村(智)委員 ありがとうございます。やはり実践を通じて連携を深めていくということなんだろうとお伺いをいたしました。

 笹井参考人にお伺いをいたしたいんですけれども、この間、公務員制度改革の中で、いわゆる現場の公務員削減がかなり起こっているというふうに承知をしております。これまでも減らされてきたし、恐らくこれからも減らされていくだろうというときに、やはり私としては、事子供のことに関しては、ここは効率ではかるのではなくて、きちんとその十分な量かつ質を確保していく必要があるんだろうと考えております。

 ですが、今公務員制度改革の方で議論されておりますのは、とにかく総額、総定員数の削減ということで、この中で、要するにどうめり張りをつけていくか。どこを重点に地方行政というのはこれから進んでいくのか。法律はこうやって、市町村の責任というものが非常に重くなってきているんですけれども、現場でそういった公務サービスに対応する人員というのは逆に絞られてきている。このことについて、笹井参考人は現場からどのようにごらんになっておられますか。御意見がありましたら伺います。

笹井参考人 件数は増加しているわけですから、当然、対人サービスなので、人がいないと対処していけないという問題はあります。

 それと、今、この間の施策が、児相がやっていることと市町村がやっていることが、何か非常に二重というかダブっている部分があったり、やはり、初期調査を市町村がやったり、通告も受けて調査をしたりという形で、一つは、人が減ってくるであろう中で、いわゆる調査だとか、それからリスクアセスメントだとか、そういったところをきちっとやる専門の機関があって、市町村の部分は、例えば処方せんがあれば、そこに応じた形でのサービスを入れていくような形について、やはり考えていかなきゃいけないんだろうなというふうに思います。

 人の問題については、減らすどころの問題じゃなくて、本当にその専任、自分は児童虐待に対応しているんだと自覚している人が市町村の中にどれだけいるかということ。その人をまず一人は絶対やはり確保しないと、これだけ仕事をおろしてきても難しいと思うので、その中核になる人が、足らない部分を、要保護協議会だとかネットワークを使って、どんなふうに考えていくのかということはあろうかと思うんですけれども、本当に、今はまだ核になる部分がなかなかでき切っていないので、そこの確保は逆に絶対必要じゃないのかなというふうに思います。

西村(智)委員 特に小規模の自治体になりますと、ほとんど兼務ですよね。それこそ、すき間とは余り言いたくありませんが、新しく出てきた、例えば男女共同参画ですとか児童虐待ですとか、そういった担当というのを置きなさいと言われても、結局みんな一人の人のところに集中してしまって、身動きがとれなくなっているという状況は、私も時々目にいたしますけれども、まさにその問題にしっかりと対応して、専任の職員を置くということの重要性、必要性を今御指摘いただいたというふうに考えております。

 幾つかまだ聞きたいことはあるんですけれども、柏女参考人に今の流れでお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど平湯参考人が、例えば、条例でこういった児童虐待に対しての支援体制、これについては定められておるし、また青森県で非常に先駆的な取り組みがされている、そういうお話がありました。しかし、一方で、いわゆるナショナルミニマムと申しますか、やはりきちんと最低限の基準を定める必要はあるのではないか。

 これは、今地方分権といいますと、何から何まで地方に責任をおっかぶせるという形で進んでいる。それは、私は、自治体にそれなりに責任感を持ってもらうということは非常に重要なことだと思っておりますし、また、地域のことは地域で決めるというのは非常に大事な原則だと思っておりますけれども、しかし、この児童虐待防止という点については、日本ではまだ取り組みの歴史が浅い、しかも、スタートラインから非常におくれていたものにとにかく対応をということで進んでいかざるを得ないわけでありまして、そこはやはりしっかりと、いわゆるナショナルミニマム的な基準なりをつくる必要があるのではないかと考えておりますけれども、このあたりについての参考人の御意見を伺います。

柏女参考人 ありがとうございます。

 ナショナルミニマムをつくることは非常に大事なんですが、その前に、虐待防止のための全体のグランドデザインがまだできていないのです。できていない段階でナショナルミニマムをつくっていくということは、例えば、児童相談所は今非常な肥大化を招いています。児童福祉司をどんどんふやしていって、児童相談所という県の行政が肥大化をしていっているというような形で本当にいいのだろうか。市町村は何をすべきなのか、県は何をすべきなのか、公務員は何をすべきなのか、そして民間は何をすべきなのか。その全体のグランドデザインを描いた上でナショナルミニマムを定めていくべきではないだろうかというふうに私自身は感じています。

 それから、もう一つ、介入サービスの話ですが、介入サービスは、やはりこれは公務員が担っていかなければならないので、市町村が立入調査、介入をしていく場合には、これは公務員を確保していくということは、私はそれも大事なことだと思うんですが、小さい町村ではなかなか難しいという場合がありますので、そういう場合には、例えばの話ですが、消防署などのように幾つかの自治体が集まって、いわば子供介入隊みたいなものをつくって、そしてそこがやっていくというような仕組みなども検討されていいのではないかというふうに思っています。

 以上でございます。

西村(智)委員 もう少し時間があるようでありますので、分権とのかかわりで、平湯参考人に、柏女参考人と同じ趣旨の質問になりますけれども、このナショナルミニマムの点について御意見があればお伺いいたします。

平湯参考人 ナショナルミニマムも非常に大事だ、グランドデザインも大事ですがナショナルミニマムも大事だということであると思います。

 五万ないし八万人に一人という児童福祉司の数も、長い間いろいろな声が実って、やっとそこまでいったわけですけれども、まだこれで足りるわけではないということ。それで、青森県の事例を紹介しましたのは、自治体であってもここまでできる、ここまでやることによって、防止という活動の到達目標といいますか、例えば一時保護を減らすことができるというような材料として申し上げましたので、ナショナルミニマムはまだまだ必要であるというふうには思います。

西村(智)委員 終わります。ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、伊藤渉さん。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 本日は、大変お忙しい中、当委員会のためにお時間をいただきまして、ありがとうございます。また、長くなってきておりますので、若干お疲れのことと思いますが、いましばらくおつき合いをいただきたいと思います。

 まず初めに、今超党派で行われております法改正の論点について二点ほどお伺いをしたいと思います。

 先ほど高井委員からも御質問がありました。この点については、栗原参考人と平湯参考人にお伺いをしますけれども、まさに児童虐待、子供の命を守るために、立入調査制度、これに対しての司法の関与というものが今検討をされております。その立入調査に当たっては、児童虐待の疑いがあり、そのために子供の安全の確認の必要性があるということをもって司法が判断を下し住居へ立ち入る、大まかに言うとそういう制度だと思います。この憲法三十五条の住居不可侵は、従来、犯罪の捜査、こういったこと以外では乗り越えることができなかった条文でございます。これを、いわば児童虐待、これはもちろん犯罪ではございません、しかし、子供の命を守るという一点において、立ち入りいかにすべきかということを調整してきているわけでございます。

 私が勉強会その他でも一貫して懸念事項として申し上げてきたのは、これは児童の虐待ということであるからこそ国民も含めて理解が得られるわけですけれども、例えば、テロの準備行為、その疑いがあるというだけで仮に住居に入るということを国会で議論したら、これは相当な反対をいただく内容だろうということで、この法改正に当たっては、これは児童虐待の防止だからこそこういったことを検討しているんだということが法文上読めるようにしっかり書き込んでいただきたいということを常に申し上げてまいりました。

 その上で、今後きっと議論になるのは、まさに立ち入るための要件、先ほど平湯先生からもありました、今まで集めてきたもの、確かに、一たび司法を関与させて住居に立ち入って安全を確認するというのであれば、これはスピードも求められますし、要件が余り高く実効性が落ちてしまえば意味がない、私も当然そのように思います。

 その上で、今平湯先生がおっしゃっていただいた、今まで児相が集めてきたものでいいんじゃないか、さらに何かバーを上げるようなことというのはどうなんだというような御意見だと賜りましたので、栗原参考人、実際の現場所長として、今集められるものというものは何か、これをちょっとお伺いして、それをお聞きいただいた上で、平湯参考人の御意見、改めて、具体的に何が集められるという上で、平湯参考人、それをお聞きになってどういうイメージをお持ちになるか、それについてちょっとお伺いをいたします。

栗原参考人 いわゆるネグレクトケースで、日常的に閉じこもっているようなタイプがこういった場合に当たるかと思うんですけれども、やはり、相談所にどこから通告が来たのかというところから始まると思います。近隣の方々、もしくは子供が幼稚園に行っている、もしくは学籍がある場合、そちらの機関の方々が、来ない、おかしいということで連絡が来る場合、あと、民生児童委員さん、主任児童委員さん等々が、近隣の方々の断片的な情報で、これは相談所に伝えておこうというようなもろもろのルートがあるかと思うんですけれども、我々は、大体、その情報の発信源といいますか、通告した方々からのお話を再度確認し、疑いがだんだん高まってくれば当然家庭訪問しますけれども、それが実施できない場合ということが今回のテーマかと思います。

 ですから、どういう場所に住んでいるのか。山の中の一軒家だとちょっと困ってしまうんですけれども、大体が都市部で、集合住宅なり借家なりということで、こういう方々は経験的には結構転居している場合がありますので、その前後の関係等々、前の住所地も含めてお話を伺い、基本的には、やはり近隣の方々、主にそういったことについて意識的にかかわりを持ってくださる民生児童委員、主任児童委員さん等々にお話を聞いて、経過を見ながら具体的な情報をいただく、それを総合的に判断して、当然家庭訪問も並行しますけれども、最終的に立ち入りも判断し、それが何回やってもできないということになりますと、そういう判断をするということになるかと思います。現場ではそういうことだろうと思います。

 以上です。

平湯参考人 私ども弁護士として、児童相談所から、これはもう実力の立ち入りもやむを得ぬのではないかと相談される場合がございます。そういうときに、もちろん一件一件違うわけでございますけれども、最終的に緊急避難でやるしかない、つまり、現行法では壊して入っていいという規定はない以上、国家賠償の対象になるわけですけれども、その場合でも、緊急避難ということで裁判所に勝たせてもらえるだけの材料があるというふうに判断して、実際に試みたというケースもございます。

 今の場合には、まさに裁判所が事後的に司法審査をして、そのときにはまたたっぷりした材料があると思いますけれども、今想定されているような場面では、得られるものはもっと手前の材料だ、こういうことにもちろんなりますが、例えば、近隣の方の情報というのが、これは最終的に国家賠償の裁判の法廷にも出せる、出せるというのは、その方が、現在はサインして書面にすることをちゅうちょしているけれども、この後、協力を得てサインがいただけるだろうというふうに考えれば、それは今のままでも材料になるというふうな意味でございます。

 ちなみに、ちょっとだけ、さっき刑事事件の令状のことを申しましたけれども、刑事事件の令状というのは、例えば、少なくとも窃盗罪であれば被害者の署名したものはあります。傷害罪でもそうです。被害者がはっきりしていればですね。そういうものは別として、それ以外の周辺情報というのは、逮捕状の場合でも、いわゆる伝聞のままでいいという扱いだという意味で申し上げました。そのようなことで、現在、今の栗原さんのお話の中にあるものがそれになると思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、この辺をできる限りはっきりさせてあげないと、先ほど来笹井さんもおっしゃっているように、ちょっと市町村とは別ですけれども、最終的に現場がなかなか困ることにならないように、とにかく今後これはポイントになってきますので、またお力添えをいただきたいと思います。

 その上で、こういった制度が仮にできたという想定でお聞きしたいんですが、これは栗原参考人にお伺いしますけれども、一つのツールとして今考えているのは、いわゆる間接強制力を強化しよう。多分、これをすると、まず最初に、口頭でのそういったものの伝達というのが出てくるんだろう。次に、司法を関与させての福祉行政の一環としての立ち入りというのが来るんだろう。最後に、どうしようもない事例については、いわゆる従来あった立ち入り拒否、これを断ることの罪によって告発で警察が入る。我々、今立法を検討する中でそういったイメージを頭の中に描いていますけれども、所長から見られて、その点に相違があるかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。

栗原参考人 経験的には、間接的な効果が一番期待できるのではなかろうか。

 先ほどもお話ししたように、いわゆる一般的な常識が通用しない自己中心的な保護者、幾ら話してもその日その日で言うことが変わってしまうような保護者に効果的なのは、やはり現実的な罰金とか処罰がありますよという話が態度を変えるために一番効果的であるということで、この点は一番期待しております。次のステップはまさにケース・バイ・ケースで、それでもだめならばという次があって、そのまた次がありますという話は、非常に保護者に対しては効果があるのかなと思います。

伊藤(渉)委員 もう一点、法改正に関連して、いわゆる接近禁止命令というようなことも議論をされていて、今の子供の保護の仕方というのは三つあると私の頭の中に入っていまして、一つは一時保護、もう一つがその後の同意入所、そして、それにさらに強くなって強制入所。この強制入所には司法の関与があり、強制入所の場合に面会、通信の制限が発生するというのが今の保護だと思っています。

 接近禁止については、私の考え方は、一時保護、同意入所、強制入所、最終的には強制入所の面会、通信制限があって、それでも従わない場合はそこに罰則があるとか、それでも従わない場合はそこに接近禁止命令をかけるとか。要するに、一時保護と同意入所が功を奏さなかった場合はすべて強制入所に切りかえて、強制入所のバックにそういった強制力をさらに強化するというのがいいんじゃないかというのが私の考え方なんですね。ただ、これは賛否両論があって、まさに議論がされている。もう一方の意見というのは何かというと、一時保護であれ、同意入所であれ、強制入所であれ、時と状況を選ばずに接近禁止命令が随時かけられるという意見なんです。

 これは、現場の意見として、どちらの方が所長の立場からするとありがたいか、お聞かせください。

栗原参考人 一時保護、同意入所、二十八条による入所、三種類のうち一番緊張するのは一時保護ですね。

 めったにないんですけれども、訪問して、子供を見て、即連れてきて職権保護したというような事例もございます。当然、保護者に、おたくのお子さんについて相談所が保護して、これこれこうですから来てくださいということで、その後保護者がどなり込んで、大体がそういうパターンがあるんですけれども、先ほどお話ししたように、自己中心的で、暴力的で、実際の暴力までは振るわないんですけれども暴言を吐くという保護者は、同じことの繰り返しをずっと言って居座るようなこともありますし、たまたま私の属している相談所は一時保護所が離れておりますので大丈夫なんですけれども、大体が付設している一時保護所ですから、どなり込んできたときに、相談所の事務所に入るのではなしに、真っ先に保護所に行って子供に会ってしまうような保護者もおりますので、一時保護というのは、即日の職権保護というのは非常に緊張しますし、対応が大変なわけですね。ですから、その一時保護の段階で接近禁止命令が司法関与でなされれば、次にその枠の中で話し合いをするということが可能かと思います。一日、二日、中には一週間ぐらい時間がたってから冷静になれる保護者もおりますし、そうでない場合には、それなりの対応がまた引き続きできるということになるかと思います。一番大変なのは一時保護です。

 あと、同意入所というのが、いわゆる食わせものといいますか、結構大変なんですね。

 といいますのは、二十八条について結構知識が、それぞれ承知するところで、どうせ反対しても裁判所の方に持っていって施設に入れられてしまうなら判こを押しますと、本音は不同意の同意のケースですので、結構、施設入所した後いろいろな勝手な言動が出てくるということで、二十八条も同意入所もほぼ近い状況であるというふうに考えております。

 以上です。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 ここまで、法改正の議論についてちょっとお伺いをいたしました。

 冒頭に笹井参考人からありましたとおり、まさに今の法改正の議論というのは、この資料でいうレッドゾーンのところに本当に突き詰めた議論をしているわけですけれども、一方で、柏女参考人からもおっしゃっていただいたように、養護体制の確立、フェアスタートという言葉も御紹介をいただきましたけれども、子供の安全を確保して、それからその子がまた再び世の中に帰る、社会に巣立つ、そこまでの体制を本当に確立していかなければいけない、そういうふうに我々も考えていますし、今回の法改正でもそういったことをどこかに盛り込めないかということも検討をさせていただいています。

 まず笹井参考人にお伺いをしますけれども、市町村の体制が非常に脆弱である、繰り返しこのお話もお聞かせをいただいております。平成十九年度の、まだ参議院を通過しておりませんので予算案の中では、交付金の措置として、百七十万人基数ですか、のうち三名増というような、児童虐待にかかわる人員の人件費相当の交付税も盛り込まれていると聞いておりますけれども、笹井さんの目から見て、この予算が成立すれば大変現場にとってありがたいものなのか、まだまだ焼け石に水の状態なのか、ざっくばらんな御意見をお聞かせいただきたいと思います。

笹井参考人 交付税ですので、それをどういうふうに使うかが市町村の裁量になってきます。明確な基準というか、さっき言った、どこに住んでいても同じサービスが受けられるという形の中では、やはりそこを定めていただかないと、そこのトップだとか上の考えによってそれを何に使われるかというところが、私たちは非常にざっくばらんに言うと、一番、本当にそこに来るのかなということが。うちは来ていますので、あれですけれども。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 我が党は、地方とのネットワーク、ネットワーク政党とよく申し上げますけれども、その辺が非常に大きなポイントである政党だと思っていますので、地方議員の皆さんと協力して、各市町村のトップがこの交付金を児虐に使っていただけるように我々も応援をしていきたいと思います。

 時間がなくなってきて恐縮ですが、柏女先生にお伺いをいたします。

 社会的な養護体制の確立ということで、お聞きしたいことはたくさんあるんですが、ちょっと時間の関係で。まず、意見陳述の中でおっしゃっておりました大学への進学。以前、資料でお見かけしたときには、一般の高校生が七割進学するのに対して、施設の方は二%程度なんだというようなことをお伺いしました。さまざまな要素、原因があるんだろうと思うんですけれども、例えば、我々は国会ですので、国として手を打つべき具体的な方策、何かあればぜひアドバイスをいただきたいと思います。

柏女参考人 ありがとうございます。

 まずは、児童福祉法ですから十八歳なんですが、児童福祉法では二十歳まで措置の延長ができることになっておりますけれども、児童相談所が認めた場合ということになっておりますが、極めてこれが限定的に使われているということが言えるかと思います。そういう意味では、措置費という財源が必要になりますけれども、二十歳まで、例えば高等教育に進学した場合、特に短大、専門学校、いわゆる四大も含めてですが、措置が何らかの形で継続できるようなそういう仕組みをつくっていただけることがとても大切なことではないだろうかというふうに一点は思っています。

伊藤(渉)委員 続いて、先ほどの冒頭の意見陳述の中で、里親ファミリー制度というようなお話をしていただいたかと思います。

 これも、里親制度の推進、子供のことを考えた場合に、養護施設で生活を送るよりも、できるだけ小さなところで、できるだけ家庭的なところで生活をできることが望ましいというようなことを、以前も柏女先生にお伺いしました。

 里親ファミリー制度を推進していく上で、まだ要するに民間の取り組みとして行われている。これをやはり、行政もかかわって推進していくために、乗り越えなければならない今の壁ですとか問題点、これについてお伺いをいたします。

柏女参考人 里親ファミリーホームは、まだ国の制度になっておりません。現在、十一自治体で、都道府県、指定都市で制度化されていて、約四十ホーム程度が活動をしています。

 里親ファミリーホームというのは、小規模児童養護施設のいわば里親版でありまして、四人から六人ぐらいの子供たちを里親として受託して、そして、大家族の中で、お互いの助け合いの中で応援していく経験の深い里親さんということになるわけですが、それが国の中でまだ制度化されておりません。

 地方自治体は、それに対して、里親手当の加算ですとか、あるいは、四人、六人となりますと介助員が必要になったりとかいたしますので、そうした財源について独自に補助をしておりますけれども、こうしたものを一つの仕組みとして、例えばその里親ファミリーホーム、それから、里親のものとしては専門里親とか親族里親とか、そうした里親が制度化されておりますので、その中の一つのメニューとして里親ファミリーホームというようなものが国の中で制度化されていくことがとても大切なことではないかというふうに思っています。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 いずれにしても、大人の世界のさまざまなひずみが最終的に子供にしわ寄せられた結果として起こっている現象の一つが児童虐待だと思います。これは、大人の責任において、その解決の方向に我々も全力を尽くしてまいりたいと思いますので、今後とも御意見を賜れることをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 以上です。

小宮山委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。時間も押してまいりましたが、最後の質問でございますので、よろしくお願いをいたします。

 参考人として当委員会においでいただき、本当に貴重な御意見を開陳いただきまして、ありがとうございます。

 児童虐待防止法成立以降、前回の改正を踏まえて、さまざまな問題、課題が出ていると思いますけれども、きょうは本当に四人の皆さんから、やはりある意味で全体的な状況といいますか包括的な状況といいますか、そういうことでお話をいただいた、また具体的な事実を踏まえながらお話をいただいたというふうに思います。

 そういう意味で、私も、きょうの質問は、その立場で幾つか御質問をさせていただこうと思うんです。私自身も成立にかかわり今日まで来ておりますので、本当に皆さんのお話、ある意味で感慨を持ってお聞きをしたところでございます。

 それで、まず平湯参考人が、特に前回の改正で四条が改正されまして親を支援の対象にした、これは成熟した段階に入ったと見ることができるという評価をいただいたと思うんですが、この四条では、国及び地方公共団体の責務ということで書いてあるところなんですね。そういう意味で、国と地方公共団体、やはり非常に大事だと思うんですが、「保護者の指導及び支援」とありますけれども、それは、今後「必要な事項についての調査研究及び検証を行うもの」、ここではそういうふうに位置づけていたわけですね。

 もちろん、この四条の第五項、親だけでなくて、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、また児童のケア、そして保護者の指導、支援ということなんですが、三年で検証しようというのもまだ無理かなという気もするけれども、しかし、国と地方公共団体が調査研究及び検証を行うという点につきましては今の状況をどのように判断していらっしゃるのかな。この点では平湯参考人と栗原参考人に伺いたいと思いますが、いかがでございますか。

平湯参考人 先ほど四条を申し上げたのは、四条の一項で基本的な体制整備を求める、その一項の中に虐待を行った保護者に対する支援も入ったということを特に感じて申し上げたわけです。

 これについて二項以下の流れを申しますと、今御指摘のように、調査研究、検証の段階だということで三年前にこういう表現になったと思うわけです。その点、今どこまでいっているのかということについて申し上げれば、いろいろな自治体やあるいは機関の試みというのがされつつあって、それが、例えば厚労省なりあるいは研究団体の研究報告書として集約されつつあるということではあろうと思いますけれども、まだまだ調査研究としても足りていないというふうに思います。

    〔委員長退席、田嶋(要)委員長代理着席〕

栗原参考人 さいたま市におきましては、事例検証会を十八年度から実施しておりまして、おかげさまで死亡事例は発生しておらないものですから、いわゆる重篤な事例について、相談所、保健所等が事例を出し、要保護児童対策の委員さんに議論をしていただくということを、十八年度は三回実施しました。

 死亡事例が発生した事後処理的な検証会というのもあることはあるんですけれども、やはり先回りしての予防的な、重篤事例を見ながら、そこからいろいろな予防対策がとれるような議論をしていただき、実際に現場で応用できるというような、先回りした検証会が非常に有効かなと。

 まださいたま市の場合も始まったばかりでありますので、どこまで影響を及ぼせるかわかりませんけれども、ともかく動き出している状況です。

石井(郁)委員 二点目なんですけれども、本当に今、虐待の問題、法改正と同時に行政ができること、そのほか、社会的な世論として、あるいはさまざまな取り組みの中で解決していけること、いろいろあるかというふうに思うんです。

 私はきょう、共通して、やはり子育て、家庭における子供の養育が非常に困難だというのは、きょうだけじゃなくて、これはもうずっと虐待防止の議論の中で一貫して出されてはきていたんですけれども、改めて非常にきょうは教えられた気がするんです。

 私も、虐待のケースで、これは新聞報道で見る限りですけれども、やはり大抵が家庭の何らかの経済的な困難、あるいは家族関係、それから親自身が本当に子育てのいわば基本的な知識も身についていないのじゃないかというような問題等々が感じられるんです。

 私なんかいつも、個人的なことで申しますと、その子供たちは大体家にいるというのが前提ですけれども、もし保育園に行っていたら発見がされるだろうと思うんですよ。だから、やはり、家庭の中で孤立して、閉じこもって子育てをしている状況の中で深刻な事態が進行していると思いますので、きょうは柏女先生のお話を私大変共感を持ってお聞きしたんですね。子育てのサービス、社会的な支援ということを言われたと思います。子育て支援サービスの整備、社会的養護サービスの整備、そして子育てに関する在宅福祉サービス、こういう指摘というのは本当にはっとするような指摘だというふうに思うんです。その点できょうはさまざまな御提案もいただいたと思いますけれども、優先順位としてはまずどこからやるべきなのかということがもしおありでしたら、伺いたいと思います。

    〔田嶋(要)委員長代理退席、委員長着席〕

柏女参考人 私は、特にゼロから三歳未満の在宅の子育て家庭に対する在宅福祉サービスの支援ということが必要だろうと思います。特に必要なのは、特に親の子育て支援ということで言われておりますが、実は、それより加えて大事なのは、子供の支援だろうというふうに思います。

 子供がほかの子供と手をつなげない、ほかの大人にだっこしてもらえない、そういう状況がゼロから三歳未満の家庭で育てられている子供の中に起こっています。その子供たちに一定時間の保育を保障してあげるということが私はとても大切なことではないかというふうに思っています。

 そういう意味では、親の子育て支援がたくさん言われますけれども、ゼロから二歳までの子供の支援ということが大事だろうというふうに思っています。

石井(郁)委員 それを本当に政治のレベルで、あるいは行政のレベルで実現しようといったら、大変な問題だなというふうに思うんですね。しかし、そういうことがやはり必要になっているという日本の状況だということは、私も深く認識をしているところです。

 私は、最初に親の支援のことから始まったのは、児童虐待というのは主として親がしているわけですから、その親の問題というのはやはり外せないということがあると思うんですね。それから、虐待は、起きてからではなくて、防止をする、児童虐待防止法ですから、いかに防止をするかということを考えても、本当に親の指導と子供の保護と両面があるんだろうというふうに思うんですね。

 そういう意味で、親と子供の問題なんですが、その延長でどうしても考えなきゃいけないのは、家庭、親に対して行政あるいは国がどういうふうにかかわっていけるのかという問題が一つ大きな問題としてあると思うんですね。家庭に一切関与すべきでないという考え方から、一定の原則を持っての対応は必要だということがあると思うんですが、この点で、親とか家庭に対しての国とか行政の関与のあり方という問題をどう考えたらいいのかという、ちょっと大きな問題なんですが、これも柏女参考人、そして笹井参考人に伺いたいと思います。

柏女参考人 ありがとうございます。

 私自身は、国や行政のかかわりは比較的抑制的にならなければならない。そういう意味では、子供の権利や生命のために親の権利を制限する、公権介入がそういう場合には行われる必要があるだろうというふうに思います。

 もう一つは、社会がみんなで子育てをしていくべきだろうと思っています。それは、高齢者もそうだと思いますが、社会でみんなでお金を出し合って、そして子育てについての一定のサービスを保障していくということは、これは行政や国家の介入ではなくて、社会の役割だろうと思っていますので、そういうことをもう少しふやしていかなければいけないのではないかというふうに思っています。

笹井参考人 市町村がいろいろな形で子育て支援センターをたくさんつくってやってくる中で、そこにつながってくる親御さんについてはある程度の支援ができるようになったんです。その支援をしている中で、やはりそこに出てこられない、そこに到達しない親御さんがだんだん見えてきて、これは、厚労省がおっしゃるこんにちは赤ちゃんなり育児支援だと思うんですけれども、まさに社会と孤立すると虐待というのは起きてくる。

 行政の責任としては、もちろん行政がどたどたと職権で踏み込んでいくわけではないんですけれども、やはりそこを上手に受けとめて、社会に出してきてあげるということをしていかないと、なかなか援助が届かない層があるというのがだんだん見えてきたのじゃないのかなと思っています。

石井(郁)委員 この問題は大変慎重に考えなきゃいけない部分を含んでおりますので、ちょっとお聞きしたところでございました。ありがとうございました。

 あと、私、最後に平湯参考人に伺いたいんですけれども、これもある面では新聞報道の限りなんですが、先ほど来、虐待のケースで拒否をするという一部の親が出てきているという話がありましたけれども、そういうところから出てくる話として、虐待はしつけだと。日本の中ではまだまだしつけというのが気楽に出てくるんですね。私は、ある意味では、体罰とかネグレクト、放棄等々も含めてしつけだと言い張って通るというような社会の常識的な部分、受け入れると社会が思っているというような部分があるのかなと感じてしまうんですね。

 これは、私ども最初に虐待防止法をつくるときに、民法にある親の懲戒権、こういう法律があるということがしつけと懲戒とをわかりにくくさせているんじゃないかと。だから、やはり民法自身もきちんとさわらなきゃこの問題は解決できないんじゃないかというようなことを大分議論いたしましたけれども、やはり親の懲戒権という思想が法的にもまだ残っているという問題が、虐待をして深刻なケースを惹起させているということにもなりはしないかということがありますので、先ほど、これは平湯参考人も御指摘ありましたけれども、民法の懲戒権とのかかわり、そして、なぜ日本でこれほど虐待をしつけと称してまかり通ってしまうのかという問題についてどのようにお考えでしょうか。

平湯参考人 既に申し上げてしまったような気もしますけれども、残っているのはなぜなのかというのは、それは子供の人格、人権、権利というものの理解がまだ確立していないからだと思います。

 そういう意味で、先ほど申し上げたような子供の成長発達権というのを軸にして考えていくことによって、懲戒権というもののおかしさといいますか、今のこの社会で残しておくことのおかしさというのがだんだんはっきりしてくるのではないか、こういうような、戦略と言うと変ですけれども、考えで、かなり長期間かかることだと思っております。

石井(郁)委員 どうもいろいろありがとうございました。

 まだ時間はあるんですけれども、きょうはいろいろと後が詰まっているようなことも伺っておりますので、私、ちょっと協力したいと思っておりますので、以上で終わりたいと思います。きょうは本当にありがとうございました。

小宮山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、本当に貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。いただきました御意見を委員会での審議の参考にさせていただきたいと思いますし、また法改正にもしっかり生かしていきたいというふうに思っております。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これで散会いたします。

    午前十一時五十八分散会


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