衆議院

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第4号 平成19年4月12日(木曜日)

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平成十九年四月十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 小宮山洋子君

   理事 後藤田正純君 理事 実川 幸夫君

   理事 谷川 弥一君 理事 萩生田光一君

   理事 田嶋  要君 理事 高井 美穂君

   理事 西  博義君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      上野賢一郎君    大塚 高司君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      葉梨 康弘君    古川 禎久君

      松本 洋平君    山内 康一君

      太田 和美君    津村 啓介君

      西村智奈美君    伊藤  渉君

      石井 郁子君

    …………………………………

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)           高市 早苗君

   内閣府副大臣       平沢 勝栄君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 荒木 二郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 雅人君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  片桐  裕君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           中田  徹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西阪  昇君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           鳥生  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           中村 秀一君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件


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     ――――◇―――――

小宮山委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件について調査を進めます。

 お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官荒木二郎さん、内閣府政策統括官柴田雅人さん、警察庁生活安全局長片桐裕さん、文部科学省大臣官房審議官中田徹さん、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦さん、文部科学省大臣官房審議官西阪昇さん、厚生労働省大臣官房審議官村木厚子さん、厚生労働省職業安定局次長鳥生隆さん及び厚生労働省社会・援護局長中村秀一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小宮山委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。

    ―――――――――――――

小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西本勝子さん。

西本委員 自由民主党の西本勝子でございます。

 貴重な質問のお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。私は、当委員会の質問は初めてでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、以前から、青少年問題と向き合うには社会教育という広い土俵で対処していく必要があると考えておりまして、時間をいただきましたので、このような視点から質問をさせていただきます。

 青少年問題はといいますと、青少年を取り巻く家庭や社会の問題でありまして、つまりは大人の問題ということになります。そこで、この問題に取り組む教育行政機関として機能を発揮してほしいのが公民館の活動であります。

 公民館といいますと、前時代の遺物のように忘れられている方もいるかもしれませんが、御承知のように、社会教育法第二十条に設置目的が規定されておりますし、平成十五年六月、当時の遠山文部科学大臣は、公民館の設置及び運営に関する基準を全部改正し、公民館の健全な発達を図ることを目的として、公民館の水準の維持及び向上に努めることとしたのであります。

 この基準では、公民館が、学校、社会教育施設などと共同する地域の学習拠点機能を有すること、地域の家庭教育支援拠点機能を有すること、さらに、公民館に学校、家庭及び地域社会との連携の推進に努力することなどを求めています。

 このことからも、公民館は、社会教育を実施するに当たり、直接住民と接する最重要機関として扱われなくてはならないのですが、近年、どうも存在が薄れているのではないかと感じるのです。

 その原因は幾つかあると考えるのですが、公民館は、けいこごとや習い事の貸し座敷になっていたり、文化サークルの独占使用であったりして、どうも生涯各期の学習の場となっていないことから必要度が薄れているのではないか。また、複雑な社会にあって、多様な価値観を持った人の生き方が、従来実施してきた社会教育では対応できなくなってきているのではないでしょうか。

 また、公民館は基本的に市町村が設置することを法律で定められていますが、自治体は長引く財政難から手厚い職員配置ができないまま放置してきたことから、公民館は施設の管理だけという状況が見受けられることも公民館の必要性を低下させている原因ではないでしょうか。

 文科省は、平成十六年度から、社会教育の全国的な活性化を図る社会教育活性化二十一世紀プランを実施し、地域の課題を解決する先駆的な社会教育事業の普及啓発の努力をされてきているものと承知しております。

 しかし、安倍総理が掲げます教育再生や美しい国づくりを考えるとき、諸課題を個別直接的でなく、大きく包み込むような社会教育が大切ではないかと私は考えております。それには、生涯各期と連動した地域力が必要でありまして、地域に結いの制度が残り、青年団や婦人会が活動を支えてきたころに培った公民館活動から生まれてくるものも参考になるのではないかと考えているのであります。

 このたび、教育基本法が改正され、奨励されなければならない社会教育にあって、文科省は、公民館の役割をどう考えておられるのか、また何を期待しているのか、あわせてお伺いいたします。

中田政府参考人 お答えいたします。

 公民館の役割についてのお尋ねでございますが、公民館は、社会教育施設として教育基本法あるいは社会教育法に位置づけられ、地域における社会教育の中核的施設として大きな役割を果たすことが期待されております。これは先生御指摘のとおりでございます。

 文科省といたしましては、先生も言及いただきましたけれども、十五年の六月に公民館の設置運営に関する基準で示してございますが、地域の学習拠点としての役割や地域の家庭教育支援あるいは奉仕活動、体験活動の推進など、広範囲な役割を担うべきものと考えてございます。

 しかし、公民館の具体的活動内容は、市町村等設置管理者の判断に一義的にはゆだねられるということもございまして、実際には、これも先生御指摘のとおりでございますが、高齢者層に利用者が偏っていたり、学級、講座のうち、学習内容が趣味、教養に関するものが過半数を占めているとの傾向が見られるところでございます。

 文部科学省といたしましては、公民館活動に対しては、昨今の急激な社会変化に伴いまして、地域住民から現代的課題への対応など幅広い事業運営を求められている、そういう意味で、各地の公民館がこれまで行ってきた活動内容や方法にとらわれない新たな発想の事業運営が期待されている、こういうふうに考えてございます。

西本委員 ありがとうございました。

 現場の、そして今の状況のとらえ方は、私と相通ずるものがありました。社会教育では家庭、地域社会が重要な役割を果たしていると私も考えております。それらの調整役ともいうべき公民館について、次の質問に移ります。

 少し公民館の実践例からお伺いいたします。

 私の地元で、ある時期、たび重なる高校生の非行が問題になりました。このとき、何でこの地区だけ非行が多いのかと考えたとき、どうも大人の生活に問題がある、地域の親が変わらないと子供もよくならないということで、公民館が中心になって南地区青少年を守る会という会を立ち上げ、親の行動から改めることを実践して、この地区が生まれ変わったのであります。

 公民館は、小学校、中学校、高校、地域の自治会、各種団体など、地区挙げての組織づくりを手がけ、それぞれの立場でできることから取り組むこととしました。

 何をしたかといいますと、家庭教育学級、青年学級、婦人学級で家庭をテーマに学習をしたのであります。何よりも地域全体で取り組んだのが、飲酒運転をしないことと地区民運動会でした。この地区は漁業の町で飲酒の機会が多い中で、交通安全意識が低く、飲酒運転は日常茶飯事だったので、これをとめることに地区全体の監視のもとで取り組んだ結果、飲酒運転はなくなり、関心の薄かった住民も、公民館や地区の行事に参加してくれるようになったのです。地区民運動会もそうですが、地区住民全体がかかわることが大事だったのです。

 この二つの取り組みができたことから、青少年を守る会も地区挙げての活動となり、この地区での青少年の非行はなくなったのであります。

 次の実践も私の地元です。

 ある時期、宅地開発が進み、人口が二千人規模の町になったのですが、古くから住んでいる住民と新しく移転してきた方たちの混住地区となり、新旧の意思疎通は薄く、自治組織もできない植民地のような状態が続いていました。

 ここで公民館が働きかけたのが、この地区に保育園をつくろうと呼びかけ、その建設資金をつくるため、地域内で廃品回収をすることにしました。最初は古い住民だけで始めたのですが、保育の必要な転入組も参加してくれ出し、やがて廃品回収は町全体に広がり、効率的な展開をするために地区割りの必要が生じてきたため、公民館が町内会の設立を促し、新旧住民の入りまじった自治組織ができ上がりました。その後、約二年間、新設の町内会が手弁当で参加した廃品回収で集めた資金を持って役所に行き、市長に保育園の建設は地区みんなの願いであることを伝えた結果、地区の願いはすぐかない、地域が育成会となった保育園ができたのでした。

 よく、公民館は施設か機能かと問われますが、このような活動を通じて、私は、公民館は地域問題に対処するなど幅広い機能がないといけないと思っているのですが、文科省はどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども平成十五年六月の公民館の設置運営基準について触れましたけれども、公民館は、地域住民の学習活動の拠点として、家庭教育あるいは地域の課題を支援する等、幅広い機能を担うことが期待されておりまして、今、先生が御紹介をいただいた実践例は、まさに私ども文部科学省が今後公民館が重点的に取り組むということを期待している役割でございます。

 私ども文部科学省は、公民館そのものだけを支援するメニューは持ってございませんが、地域の学習活動支援に関しまして、地域や家族のきずなを深める、学び合う、支え合う、そのような住民によるさまざまな活動を支援する予算メニューを用意してございまして、公民館において住民の自主的な活動を支え、公民館活動を活性化するために、このような私どもの制度を大いに活用していただきたいというふうに考えてございます。

西本委員 どうもありがとうございました。

 今お答えをいただいたように、公民館には施設でなくて機能が重視されるところであるということの観点に立って、次の質問に移らせていただきます。

 そうであれば、学社連携を考えるとき、公民館は、何も大きな建物でなくても、学校の空き教室でもいいわけであります。

 平成十九年度は、文科省と厚労省の連携により放課後子どもプランが創設され、約二百二十五億円の予算で実施されます。このプランは、市町村の教育委員会が福祉部局と連携して実施するもので、放課後や週末等に小学校の余裕教室などを活用して、子供たちの安全、安心な活動拠点や、共稼ぎ家庭など親が留守の家庭の子供に対して放課後に適切な遊びや生活の場を設け、さらに地域の方たちも参加ができる取り組みであると承知しております。

 こうした取り組みを社会教育との連携に拡大して、空き教室を利用することはいかがでしょう。もちろん学校施設の社会教育への開放は一定のルールを定めなくてはいけませんが、私は積極的に進めるべきと考えております。

 公民館を考えるとき、学校施設の利用により、新たな用地取得の必要もなく、施設整備の費用もわずかで公民館が設置できることは、地域と協働を目指す自治体にとって歓迎できるものでありまして、生涯学習社会づくりにおいては、一つの教育行政の形として提案するのですが、幼保、小学校、中学校が連携したものに公民館が連携する仕組みができ上がり、この仕組みを通じてお互い密接にかかわっていくことが重要と考えています。

 このように、幼保、小中が連携する中に公民館が必ずセットされている学社連携体制についてどのような感想をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生から放課後子どもプランの御紹介をいただきましたが、この事業は、学校と地域を結ぶ非常に有効な事業だというふうに考えてございますが、この事業に限りませず、学校の余裕教室を社会教育に活用することについては、単に公共施設の有効活用という観点のみならず、児童生徒と地域社会とを自然な形で結びつけ、大人と子供という異なった世代の交流、あるいは子供を通じて大人同士が交流する、こういうことが促進されることによりまして地域の教育力の活性化につながるという意味では極めて有効であり、このような余裕教室の活用というのは積極的に推進すべきものと考えてございます。

 このような学校と社会教育の連携につきまして公民館が果たすべき役割に関しましては、公民館という施設を物理的に学校内に設置するかどうかということにつきましては、そういうことをやっておられる地域もあることは存じてございますが、一義的には設置者が判断すべきものでございますが、公民館という活動を学校の中で行うという点につきましては、文部科学省といたしましても、公民館が地域ネットワークの中心として活動実績を持ち、人材やノウハウを蓄積しておりますので、そういった機能を生かしまして、地域の教育力の再生を図るため、児童生徒あるいは大人との交流や地域社会との交流を深め、学社連携を進める、そういうことを進める上で中核的な役割を果たす、そういうことは公民館として非常に重要であるというふうに考えてございます。

西本委員 ありがとうございました。

 御答弁にあるように、学社の連携体制をどうつくっていくかは自治体の専権事項でありますので、感想程度でお聞きしたのですが、一定の評価をいただきましたので、次の質問に移らせていただきます。

 今申しましたとおり、私が提案しています学社連携の制度は、基本単位となるエリアは小学校区でありまして、この校区に必ず幼稚園か保育園があり、必ず公民館も設置され、そして可能な限り中学校と連結しているのでありますから、校区の広いマンモス小学校より中小規模校の方が、より連携効果の高い社会教育が望めるのです。

 ところが、今の自治体には小規模で非効率な学校を支える体力がないことから統廃合を余儀なくされているのですが、しかし、この小規模校の存続を守らないと地域に根差した教育はできないのであると思います。小規模小学校の存続についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか、お伺いいたします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 公立の学校が地域に根差したものであること、あるいは地域の人々に協力をいただいて支えられることは重要な課題であると認識しております。

 その中で、小規模学校におきましては、先生御指摘のとおり、教職員と児童生徒との人間的な触れ合い、あるいは個別指導の面で教育上の利点が考えられるところでございます。一方、小規模学校につきましては、教員、組織の充実、施設設備の拡充を図る上での困難を伴うところが多いこと、あるいは教育の上では一定の集団の規模というものを確保することも重要な課題でございます。

 こういった意味で、小規模な小学校の存続ということにつきましては、地域の実情を踏まえていただいて、児童生徒の通学に与える影響ですとか、教育の効果等を総合的に勘案して、設置者である各自治体が適切に御判断いただくものというふうに考えているところでございます。

西本委員 ありがとうございました。

 確かに、そういう理念であるということは私も納得できますけれども、現実、やはり小規模校というものは、その地域により密着していると思います。マンモス学校よりも小規模学校の方が地域に密着しております。そういう観点に立っていかないと、子育てというものも、いじめとかいろいろな問題ができて対応していくんじゃなくて、その子供がずっと成長していく過程の中で、地域とか、そういう問題で守っていかなければいけないと思いますので、いろいろ御事情、そしてまた地方の財政難もありますけれども、やはり何事もできてから対処するのじゃなくて、その過程で子供たちを生み育てていくという観点に立って、もう一度御再考いただければありがたいと思います。

 次は、就学前の問題であります。

 私は、地元密着型の小規模保育園を存続させるためには、保育経費と支弁費の差額を圧縮することが懸案であることから、算定基礎となっております児童福祉施設最低基準の改定を強く要望しておりましたが、厚労省は一向に改善しようとしません。

 そこで、少子化が進む中にあっても小学校区に必ず保育園を存続させるには、幼保の完全一元化と無料化の実現が一つの有力な方策ではないかと考えています。認定こども園を利用する中で幼保が一元化され、五歳児の就園率がほぼ一〇〇%になれば、保護者負担をなしにする。そうすれば、幼稚園、保育園の必要度が高まり、ひいては園の存続が可能になるという私の論法ですが、子育て支援策としても効果の大きい就学前教育の無料化について、文科省としてどこまで検討しているのかをお伺いいたします。

布村政府参考人 お答えいたします。

 幼児期の教育の無料化、無償化についてでございますが、この点につきましては、自民党、公明党さんを初め各党で御提言をいただいているところでございます。

 政府といたしましても、昨年の骨太の方針、そしてことしの一月の日本経済の進路と戦略という閣議決定におきまして、幼児教育の将来の無償化について歳入改革にあわせて財源、制度等の問題を総合的に検討しつつ、当面、就学前教育についての保護者負担の軽減策を充実するなど幼児教育の振興を図るという閣議決定をしているところでございます。

 文部科学省におきましても、幼児教育の無償化という方向を目指しまして、有識者の方々からのヒアリングを通じて、あるいはまた諸外国の取り組み状況、そして制度の基本的なあり方につきまして勉強を重ねているところでございます。

 この幼児教育の無償化につきましては、財源の問題を初め、国民の方々の幅広い理解を必要とする重要な課題であると認識しております。今後とも、厚生労働省を初め各関係省庁との連携のもと、幼稚園そして保育所、そして先ほど御指摘いただきました新しく発足した認定こども園制度の拡充ということも含めて、さまざまな角度から総合的に検討し、いい方向を見出していきたいというふうに考えております。

西本委員 ありがとうございました。

 本当に心強い御答弁をいただきまして、ありがとうございました。できるだけ一日も早く実現できることを、ともに努力することをお約束いたします。

 次に、六問目です。

 過日配付いただきました総務省発行の「地方財政の状況」を見て驚いたのですが、この中の主要公共施設整備状況にも、教育施設の状況にも、文化及び体育施設の状況にも、公民館という名称は出てきません。県民会館、市民会館、公会堂、図書館、博物館、青年の家、自然の家、体育館、野球場、プールと出てくるのですが、公民館がないので総務省の発行担当にお聞きしたのですが、公民館が抜けている詳しい経過は不明ですが、公民館の経費は、一応交付税措置はしているということでした。

 交付税は、これから先々新型交付税として改革されていきますので、現時点で公民館の基準財政需要額を増額してほしいという要望はいたしませんが、社会教育の推進施設として主要公共施設に位置づけをして、公民館の重要性、必要性を認識してほしいと思うのであります。

 学校、地域、家庭にかかわっていけるのは公民館であります。今後の必要性を考えても、文科省で公民館の設置及び運営に関する基準を見直し、社会教育に頑張る自治体を文科省として財政面から応援する考えはいかがなものでしょうか、お尋ねいたします。

中田政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、地方財政、大変厳しい中ではございますが、公民館が地域社会において果たす役割の重要性を踏まえまして、公民館活動を支える財政が一層充実されるよう望んでおります。

 文部科学省としては、一般的に、市町村が設置いたします公民館の管理運営を直接財政支援するという立場ではございませんけれども、先ほども社会教育に関していろいろなメニューがあるというお話をさせていただきましたけれども、社会教育に係る先導的な個別的な取り組みに対して支援を行う予算措置を講じてございまして、公民館においてこういう予算措置を積極的に活用することによって、公民館活動の充実が図られるというふうに考えてございます。こういう制度の活用をぜひして、公民館活動を活発に行っていただきたい、そういうふうに考えてございます。

西本委員 ありがとうございます。

 実は、平成十八年の全国の小学校数は二万二千八百七十八校、公民館は類似施設を含めて一万八千百八十二館であります。社会教育を進めるためには、小学校は減らさないで、公民館が小学校数に追いつくよう、自治体の頑張りにも期待したいと思っております。

 次に、社会教育としてのいじめ対策についてであります。

 社会教育とは、学校における活動を除く、主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動でありまして、国と地方公共団体に対しては、社会教育の奨励に必要な施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製などの環境づくりが求められております。

 そこで、この分野でのいじめ対策はといいますと、広くとらえて予防ということで考えたときは、いじめることにはつながらない性格や気性を持った子供を育てることがいいのではないかと思うのですが、そうするためには、相手を思いやる優しさと親切さを心に持ってもらう学習に取り組むことはどうでしょうか。

 昔から、優しい子供に育てるならおじいちゃん、おばあちゃんに育ててもらえと言われたものでした。優しさを持ってもらうには、放課後子どもプランの子ども教室や放課後児童クラブや子育て支援センター、家庭教育支援事業など、幼児や低学年対象の事業に、指導助手として公民館の人材バンクから、おじいちゃん、おばあちゃんを中心としたベテラン子育て経験者にボランティアとして参加していただくことはどうでしょうか。

 また、親切さを持ってもらうには、子供会活動などを通じて、身近にある観光地に出向き観光するのではなく、観光にかかわっている事業所で実際の仕事をして体験してもらい、そこに受け継がれている文化や生き方を学習する。つまり、よその人を迎える気持ちを肌で感じることで親切さを身につけてもらう。よその人を迎えるということは親切さそのものであり、いじめにはつながらないものであるからであります。

 このように、いじめ対策として高齢者の活用や観光地を見習う活動を実践するのも一つの方策ではないかと考えているのですが、高市大臣は、社会教育でのいじめ対策はどのようにお考えでしょうか、御所見をお伺いいたします。

高市国務大臣 西本委員がおっしゃったとおり、思いやり、優しさ、親切心、こういった心を持った子供を育てるというのは、いじめを防ぐための対策になると思います。そして、その役割を担うのは家庭であり学校であり、そしてまた地域社会であるということでございます。

 その中で、今、高齢者の方々の御経験ですとか、お知恵をおかりしてというお話がございましたけれども、そういった形で高齢者の方々に御参加をいただきながら、子供さんの教育、地域社会で子育てをしていくといった体制をつくることはもちろん重要ですし、それから、今、観光産業という御指摘もありましたが、それぞれの地域の実情に合った形で体験活動を充実するということも非常に意義があると思います。

 例えば、今、食育も各地域で推進されつつありますが、地域社会の方が乳牛を連れてきて乳搾りの体験活動をさせたりする中で、何か、命をいただいていることのありがたさ、命の大切さを学んだというような経験談もありますし、家族みんなでそろって御飯を食べる、栄養のバランスをとること、これを地域で大人同士がまた学び合うということによって、食卓で子供さんの変化に気がついてあげる、いじめられているのかな、また人をいじめているんじゃないか、それはまたそれぞれの御家庭にも還元されていく取り組みだと思います。

 先ほどお話のありました放課後子どもプランの中でも、地域社会の協力を、本当に大きな協力を得て、社会教育を充実させていくという方向性で取り組んでおります。御指摘は、正しい方向であると考えております。

西本委員 青少年が心豊かに育つために、非常に高い識見からの御答弁、本当にありがとうございました。

 あと一問用意してたんですが、ちょっと時間が参りましたので、次回にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小宮山委員長 次に、田嶋要さん。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。よろしくお願いいたします。三十分です。

 今回の国会の間は、私も児童虐待防止法の改正に参加をさせていただきまして、やはり多くの子供たちが犠牲になっている中で、大変重要な活動だというふうに思って取り組んでまいりました。

 きょうは所信に対する質疑でございますので、私自身、今思っているのは、これで家庭内における非常に不幸な事件がぜひ減ってくれたらいいなと思うわけですが、さらに、この次にどういったことに自分としても注力していこうかなということを考えているわけでございます。

 昨今よく言われるとおり、子供が大変、あるいは子供や青少年が大変生きにくい時代になったなというのは本当に僕も思いまして、豊かさと反比例のような感じもしているわけです。家の中にあっては児童虐待、学校の中にあっては集団生活の中におけるいじめ、あるいはいじめ自殺の問題、そして登下校の中にあっては犯罪に巻き込まれる、もう本当に子供たちがどこにいても何となく心配。

 実は、私の一番上もことし小学校にこの間入りましたけれども、住むマンションを選ぶのに、目の前に小学校があるということが大変重要な要素でございまして、隣近所の方といろいろ話をしていると、私のマンション、入居を決めた方の多くが、小学校が目の前にあるということが一つの理由になっているんですね。これは、孟母三遷なんという積極的な理由じゃなくて、要するに、心配だから、目の前だったら犯罪に巻き込まれる可能性も少ないだろうという、どちらかというと防衛的な理由でそうなっているということで、今の状況を本当にあらわしているなというふうに痛感をするわけです。

 親として、そういう世代の子供がいるので、本当に、さらに今何をしなきゃいけないかということを日々私も考えているわけでございますが、きょうは、そういう意味で、以前も少し取り上げさせていただきました電話サービスというか、チャイルドラインの関係を質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、新聞にも出ました、こういうものですね。このいじめストップというものですけれども、文部科学省が始められたこのサービスについての概要と、それからことしの予算の規模を教えていただきたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 二十四時間いじめ相談ダイヤルについてでございます。

 昨年秋以来のいじめの問題あるいはいじめを起因とする自殺の問題を踏まえまして、政府として、いじめの問題に悩む子供たちあるいは保護者の方々がいつでも気軽に相談できるように、都道府県・指定都市教育委員会の教育相談体制の整備を図ろうということで、総理からの御指示もいただいて取り組みを始めたところでございます。

 この相談ダイヤルにつきましては、子供たちが全国どこからでも、夜間、休日を含めましていつでもいじめなどの悩みを相談できるよう、全国統一の電話番号を設定し、この電話番号に電話すれば、原則として、電話をかけた所在地の教育委員会の相談窓口につないでいただけるという仕組みになっております。

 予算の面でございますけれども、平成十八年度の緊急の補正予算が、額としては七億二千五百万円でございますけれども、これをお認めいただいて、二月の初旬から試行的に実施をし、二月の二十一日の段階で、すべての都道府県・指定都市教育委員会において二十四時間対応を可能とするという体制の整備が進み、本格的に実施をしているところでございます。

 また、この電話相談窓口の紹介をするために、紹介カードというものを全国の国公私立の小中、また特別支援学校の子供たちに配付をしたところでございます。

 平成十九年度につきましても引き続き取り組むために予算をお認めいただいたところでございますけれども、平成十九年度は九億二千六百万円の予算規模でございます。これは国の補助が三分の一、残り三分の二については地方財政措置によるという形で取り組んでおりますが、この相談ダイヤルがまた有効に活用されるよう取り組みを進めてまいりたいと考えております。

田嶋(要)委員 だから、補正で、二カ月弱で七億で始められ、ことしは三分の一で九億、そういうことですね、二十七億円ということです。私は、安倍総理がどこかの小学校を視察されたときに発表されて、それ自体は迅速に立ち上がったということで、もちろんそれは大変重要な施策だというふうに評価をしております。

 日本の場合、同じようなこういう電話サービスというのは、いのちの電話というのが大変有名でございまして、これは調べると大変古い歴史があって、四十年以上も前に、一九七一年からいのちの電話というのがスタートしておるんですが、それとは若干、やはり対象を分けて、いろいろ振り仮名が振ってあるのを見ても、これは明らかに子供だけ、子供を中心にした活動であるということですね。

 施策としてはいいんですが、一方で、その額を聞いて、私のところにもチャイルドラインの方々から政府の支援が欲しいという相談をずっと受けているんですが、民間のいわゆるボランタリーセクターというんですか、そういう方々が一生懸命そうやって言ってきているのが全然前に進まないのに、あるとき安倍さんが言って、ぱっとこれが政府の、文科省、教育委員会ラインで始まった。いいとも言えるし、なぜかなという感じもあったわけでございます。

 それで、一つその前に、先ほど申し上げたいのちの電話に関しまして、政府は何らかの支援をしているのかどうか。先ほど申し上げた四十年以上の歴史のあるいのちの電話、これは同じ民間セクター、社会福祉法人でございますけれども、これがスタートをして、もう歴史のあるこの活動に対して、支援は何かなされているのか。それから、なされている場合はその理由もお答えいただきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 いのちの電話につきましては、今委員の方から御指摘ございましたように、昭和四十六年に開設されております社会福祉法人いのちの電話が実施されているわけでございますが、その後、全国に展開されまして、現在四十一都道府県、四十九センターにおいて相談事業を実施しているわけでございます。

 精神的危機に直面し、援助と励ましを求めている人たちに主として電話という手段で対応するということでございまして、私ども、自殺防止に向けた相談援助活動の中心を担う団体として大変重要な役割を果たしていただいている、こういうふうに考えております。

 このような観点から、自殺予防に向けた相談を適正かつ効果的に行っていただく、また相談窓口がこういうところにあるということを国民の皆さんにも知っていただく、こういう観点から、平成十三年度より、相談業務に当たる電話相談員の方、これはボランティアの方にやっていただいておりまして、七千二百六十二人の方に活動していただいておりますが、そういった方々、相談員になるための事前の研修、それから、相談業務は大変深刻でございますので、相談員の、相談を受ける方々の事後的な精神的なケアの問題もございます。そういったこと。また、そういった意味で、電話相談員の研修、それから、こういう窓口があるということについての普及啓発事業等についての補助を行っているところでございます。

 平成十三年度より行っておりますが、平成十九年度予算におきましては七千九百九十万円の予算を計上しているところでございます。

田嶋(要)委員 民間セクターのいのちの電話にそういった支援が平成十三年から毎年行われているということが確認されたわけでございます。

 イギリスに、このいのちの電話ももとの発祥があるわけでございますけれども、その同じイギリスで、先ほど申し上げたチャイルドラインというのも十五年ぐらい後にスタートいたしました。一九八六年からイギリスにおいてのチャイルドラインというのがスタートしたわけでございますが、チャイルドラインに関しましても、イギリス政府は額的にはかなり大きい支援、私の調べたところによりますと、年間約五億円の支援をしております。

 私が特に印象を受けたのは、イギリスの文科省というんですか、デパートメント・フォー・エデュケーション・アンド・スキルズというところですけれども、そのホームページのサイトにはチャイルドラインのマークが入っているということですね。つまり、文科省の活動とチャイルドラインの活動はまさに融合一体化しているという、もちろん独自性を維持しながらということでございます。

 そこで、今のいのちの電話に続きまして、日本のチャイルドラインの活動とこれまでの政府とのかかわり方、何らかの財政支援があるのかどうか、そういうことに関してお伺いをしたいと思います。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、厚生労働省とのかかわりの関係からお答えを申し上げます。

 児童虐待の問題でございますとかいじめへの対応が大変急務となっております。こういった中で、子供たちの声に直接耳を傾けてこれを受けとめるということは、私どもも大変大事なことだというふうに認識をしております。その意味で、チャイルドラインの活動も非常に有意義なものと考えているところでございます。

 こうした認識を踏まえまして、厚生労働省の方では、独立行政法人福祉医療機構を通じて助成を行っております。また、チャイルドラインの全国キャンペーンの後援等も役所として行っているところでございます。また、これらに加えまして、平成十九年度、本年度からでございますが、児童虐待といじめで悩む子供たちからの相談体制を強化するという観点から、都道府県等がチャイルドラインなどの民間組織に子供たち本人からの電話相談等を委託した場合に、国の補助の対象とするということにしたところでございます。

 今後とも、こうした取り組みを通じて支援を行ってまいりたいと考えております。

西阪政府参考人 チャイルドラインに関します文部科学省のかかわりでございますが、平成十一年度から平成十四年度に、都道府県に対する調査委託という形で、その立ち上げに際しまして支援を行ってきたところでございます。

 また、先ほど答弁もございましたが、チャイルドラインが実施しております全国キャンペーンにつきましては、毎年後援を行っているところでございます。また、チャイルドラインの取り組みにつきまして、私どもの広報誌でございますとか、ホームページにも掲載をしているところでございます。

 また、チャイルドラインはNPO法人の形態のところが多うございますけれども、認定NPO法人を取得されましたら一定の税制上の優遇措置が受けられるということで、私ども、そういうものの相談にも乗っているところでございます。

田嶋(要)委員 文科省は、毎年幾らとかいう金額はありますか、先ほどのいのちの電話のようなものは。いかがですか。

西阪政府参考人 先ほど御答弁いたしました平成十一年度から平成十四年度の調査委託の予算といたしましては、二十七都道府県に対しまして、約二億六千八百万円の支援ということでございました。現在は、特にございません。

田嶋(要)委員 委託業務としてかつてはありましたということですが、結局、今の時点で、チャイルドラインに関する、イギリスのチャイルドラインに対する政府の支援、先ほど申し上げた五億円程度というような形での財政の支援というのは日本では見られない。一方で、歴史のもっと長いいのちの電話に関しましては、厚労省から毎年八千万ですか、今出ている。かつて一億円ぐらいだったらしいですけれども、そういう状況があるわけでございます。

 いろいろと申し上げましたけれども、そこで大臣に初めてお伺いをさせていただきたいんです。

 私は、ある意味、イギリスのような状況をうらやましいなと思うわけでございますが、あるいは日本もそのような方向に今後向かっていくべきだろうというふうに思っております。例えば、去年始まった市場化テストのようなものも、やはりイギリスあるいはニュージーランド、そういうところをいろいろ参考にしながらという部分があったわけでございます。

 そして、これまで、官、パブリックセクター、それから市場原理にのっとった民間セクター、そういうような見方がされてくる中で、これから第三としての大きな役割を期待されるのがいわゆるボランタリーセクターということで、そのボランタリーセクターをこれからどのように育てていくかというのが大変日本にとっては重要になってくるというふうに私は考えております。

 以前、私、この委員会でも取り上げさせていただいた民生委員、児童委員のこと、それから大変活躍をしている地域の消防団の方々、あるいは防犯パトロールの方々、いろいろな分野でそういうボランタリーな方々がふえているというのは大変望ましいことですけれども、やはりイギリスのチャイルドライン、これももともと児童虐待からスタートしたわけでございますが、このチャイルドラインにしばらくして政府の支援は始まったわけでございます。これも、やはりイギリスも最初は支援がなくて、かなりマスコミ等もキャンペーンを張ったそうです。こういういい活動にもっと支援するべきだというようなことをやったと聞いております。

 そこで、大臣にお伺いしたいのは、こういった民間によるいわゆる電話相談事業に対して、これからどのような財政支援をしていくべきと考えるか。安倍さんの旗振りで今回立ち上がって、全国一斉フリーダイヤル、二十四時間、三百六十五日、こういうのがスタートしておるわけで、それだけ見ていると大変いい活動だとは思うんですよ。ただ、今申し上げたようなパブリックセクターとボランタリーセクターの役割分担、そういうことを考えると、今後どのようにしていくべきと考えられておるか、その点、大臣から御答弁いただきたいと思います。

 もう一点だけ。実は、同じような質問を文部科学大臣に以前させていただきました。それで、そこでいただいた御答弁は、やはり文部科学大臣としては、こういうボランタリーセクターを応援していく形をとるのは勇気が要るということをおっしゃいまして、要するに、やはり文科省、教育委員会というラインでの施策になっていくというようなことをおっしゃっておったんですね。

 勇気が要るというのは、まだまだボランタリーセクターが日本で育っていないという部分も確かにあるのかな、イギリスに比べたらやはりそういう面はあるのかなと思うわけでございますが、特に今回は、大臣は年齢的にももっとお若いし、そして海外暮らしも、私と同じワシントンDCにもおられたわけですし、そういったことも踏まえて、もう少し世界のいろいろな流れを踏まえた中でどんな御意見をお持ちかということをいただきたいというふうに思います。

高市国務大臣 先般、安倍総理の御指示で、二十四時間対応のいじめ相談ダイヤルを一挙に整備した、そして広報も行った、この活動に対しては御評価をいただき感謝をいたしております。

 これはなぜそのように迅速に一斉にやったかということは、やはり行政というものは、特に国の行政というものは国民の安全とか安心に責任を有する、こういった立場から、各教育委員会ですとか都道府県の警察本部、法務局などにおいて、これまでも相談窓口も置いていましたけれども、もっと使いやすくという形で急いで体制を整えました。一方で、民間の活動でありますチャイルドライン、この活動について、非常に重要なものだ、意義があると私は思っております。

 さて、では、そのチャイルドラインに対して新たに財政措置をとっていくか、税金を投入するか。これはなかなか難しい問題で、一つは、特定非営利活動法人という形になっておりますので、民間の活動に対しても財政支援を行っていくべきだというお考えが多くあるということも承知しているんですが、NPOに対しては、やはり一定の独立性、それぞれやはり市民がみずから考え、そしてそれぞれ自分の地域に合った、そしてまた対象に合った活動を展開していく。何かお金で国が管理をしてきちっと縛っていく、こういったことではない制度であると私は考えております。

 だからこそ、では、ぎりぎりどういう支援ができるかということで、先ほど来説明ございましたけれども、キャンペーン活動への後援、文部科学省、厚生労働省でやっていただいたり、やはり税制上の優遇措置も受けていただければということで、認定NPOの法人格の取得に向けての相談を行ったり、こういった支援になると思います。

 これからやはり行政と民間の連携ということは大事ですが、では即刻、財政支援、税金の投入ということになるかというと、NPOに関しては違うんじゃないかと思っております。

田嶋(要)委員 余り文部大臣と変わらない御答弁でちょっと残念でございますが、まず、いのちの電話にはお金を八千万円出しているんですよ、それがあるんですね。では、何が違うのかということなんです。

 どういう御判断の基準でいのちの電話にお金が出たのかということですよね。大変社会的に重要だということなんですよ。それで、先ほど申し上げたように、イギリスは政府として五億円ぐらいですか、額は正確じゃないかもしれませんが、出ている。だから、やはりある程度の時間がたち、その組織が安定して、信用というか、そういうものが高まってこないと踏み切れないのかもしれませんが、目指すべき方向として、私は、将来的には、教育委員会は手を引いてもいいような状況にしていくことが目指すべき方向だと思うんですね。

 だから、規模を調べますと、イギリスのチャイルドラインは日本のチャイルドラインのおよそ十五倍なんですね。今大体十二万ぐらいの電話を日本のチャイルドラインが受けておりますけれども、イギリスはおよそ九十万を超える電話を子供たちから受けております。そこだけだと五・五倍ぐらいですけれども、人口の差がございますので、人口の一対二ということも考慮すると、活動量としては十五倍ぐらいございまして、結局、それだけ、今申し上げたいじめの問題とかあるいは児童虐待の関係で、子供たちから、そういった寄り添ってくれるだれかに話をしたいという、サービスに対するニーズは、この国ではますます広がってくるというふうに私は思うわけです。

 今大臣が検討会の座長をやられております自殺の問題も、いただいた資料を読みますと、日本はほかの先進国と比べて対策を余り打ってこなかった。そして、平成十三年から急激に、三万人を超えて、以来ずっとそういう状況が続いておるというわけで、そのうち約一割ぐらいが青少年の自殺なわけですね。特に、青少年の自殺というのはなかなか原因をつかむのが難しい、そういう中で、やはり予防という観点が大変重要になってくるわけですけれども、そういう意味ではいろいろ、後ろを振り返っておられますが、これからを見据えたら、ぜひもう少し、パブリックセクターだけではなくて、ボランタリーセクターに踏み込んだ支援を検討していくような姿勢を私は御答弁の中でいただきたいと思いますけれども、もう一度いかがでしょうか、大臣。

高市国務大臣 今、自殺対策大綱の取りまとめに向けていろいろ議論している中で、やはりいじめも自殺の要因であるということは当然でございますので、そのための対策として、新たに打てることも含めて考えております。

 ただ、パブリックセクターだけではなくて、プライベートセクターへの財政的な支援ということになりますと、やはりそのプライベートセクターがどういう形態であるか、NPOであるのかそうではない団体であるのか、そういったことによってもまた対応は違ってくると思います。ただ、それぞれの市町村でまたNPOとの連携をしていく、より広く活動していただけるような体制をつくっていく、これは十分に可能だと考えております。

田嶋(要)委員 まだまだ日本はその点はおくれているのかなというのが私の印象でございますが、イギリスのチャイルドラインのホームページを見ても、確かに彼らもこういうことを言っています。政府というか、そういう公的なお金にはわずか一割しか頼っていない、残りは全部寄附金ですよ、篤志家の寄附金ですよ、そういうことをおっしゃっている。

 私も、基本理念は全く大臣と同じでございます。ただ、それでもやはり公的使命を負ったこういう活動は、いのちの電話も八千万でございますけれども、将来はイギリスの何億円というぐらいの支援、それでもそれがわずか五%、一〇%にすぎないぐらい大きな活動になっていくのは、これはもう時間の問題ですから、このチャイルドラインを大きく育てるためにも、ぜひボランタリーセクターの今後の重要性をますます認識していただきたいというふうに申し上げまして、ちょっと早いですけれども、いろいろございますので、私の質問とさせていただきます。

 以上でございます。

小宮山委員長 暫時休憩いたします。

    午前九時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時五十二分開議

小宮山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。津村啓介さん。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、子供の安全、それからいじめ問題、少年非行といったテーマにつきまして、数字的な傾向、あるいは最近の行政のお取り組みをまずお伺いした後で、市町村合併あるいは地方財政の逼迫といった、地域のコミュニティーといいますか、行政のプレゼンスが地域でどうしても限界がある、縮小せざるを得ないという中で、既存の地域コミュニティー、町内会もその一つでしょうし、あるいは、私の地域では婦人会という言い方をしますが、そういう女性の皆さん、あるいは老人クラブ、スポーツ少年団、さまざまな既存の地域コミュニティーというものにどうやって行政を補完する役割を担っていただくか、どれほど意識的にそういう取り組みをしていくかというテーマについて、後段、議論をさせていただきたいというふうに思います。

 それでは、まず最初に高市大臣にお伺いしたいと思いますが、子供の安全、安心の確保に関する大臣の御所見ですけれども、まず数字を少し挙げますと、十三歳未満の少年の犯罪被害の推移ということで、こちらの警察庁の生活安全局さんが取りまとめられている数字では、数字的には、平成十三年、十四年ごろの三万九千九百とか三万九千といった数字をピークにしまして、足元十八年では三万二千、三万三千くらいまで、漸減傾向というふうにも読めます。しかしながら、体感といいますか、国民の多くの皆さんは、やはりこの子供の安全という問題については、引き続きといいますか、場合によってはこれまで以上に非常に関心を持っていらっしゃいまして、そういう中で、この数字をどういうふうに読んでいくのか。

 あるいは、これはあくまでも全国的なマクロ統計ですから、分析をどれだけされているかということもぜひお聞きしたいんですけれども、罪名別の特徴であるとか、あるいは都市部と地方と地域的な分析というものはされているのかされていないのか、あるいは年齢別、あるいは、これは被害者の総数ですけれども、加害者の年齢層はどうなっているかとか。

 ちょっと思いつく限り言ってしまいましたが、もちろん行政のリソースも限られている中ではありますけれども、現状、どういった分析をされて、対策づくりに生かされているのか、そういったことも踏まえて現状認識を問いたいと思います。

高市国務大臣 私どもも、今委員が御指摘になった警察庁の統計の数字を持っているという状況でございます。残念ながら、その年齢別、地域別の細かい分析を内閣府で独自に行っているということではございません。

 ただ、先ほど挙げられた数字を伺いまして、確かに減少傾向にあると数字では出ていますけれども、それでも十三歳未満の少年の犯罪被害が三万件を超えているというのは、これは非常に高い状況であると認識しています。

 それから、類型別ですけれども、性犯罪も、減少傾向にあるといっても千件を超えている、これは非常に高い数字だと思いますし、親御さんの方もかなり強く不安を感じていらっしゃるという状況であると思います。

 内閣府は総合調整機関でございますので、警察庁ですとか、あと文部科学省、そしてまた総務省、それぞれの立場でのお取り組みを注視しながら調整をしていくといった形が私の仕事なんですけれども、政府全体としてやっていることは、一つは「犯罪から子どもを守るための対策」、これは平成十七年の十二月、それから子ども安全・安心加速化プラン、これは十八年の六月ということで、警察庁ですとか文部科学省のお取り組み、非常に項目としては多いんですけれども、各省庁連携して各施策を推進しております。

 私自身はITを担当する大臣でもあります。最近、こういった子供さんが犯罪に巻き込まれる背景の中に、IT社会の匿名性、また子供さんが有害サイト等にアクセスをしてしまうことによって知らない人と出会ってしまう、犯罪に巻き込まれる、こういった問題もあると思います。まだまだ十分な状態とは言えませんので、これから新たに、フィルタリングだけじゃなくて、追加的にできる措置も含めて、現在、諸外国の情報も集めながら研究をしているといったところでございます。

津村委員 ありがとうございます。

 ITのお話も含めて、大臣らしい御答弁をいただいたと思うわけですが、私としては、本日の問題意識は、この後も一貫しているんですけれども、あるとき世間を騒がすような事件が起きた、あるいは継続的に起きたというときに、大変マスコミでは注目を集めるわけですし、国民の関心も沸騰するわけです。そういったときに何らかの対策を政府が打つ、しかし、何年かたつとそれが以前ほどの注目はされなくなるということの繰り返しをしていても、この種の対策というのは、何か物をつくれば、そこはもう道ができてずっとそれが続くというものでもないし、社会のありようであるとか、あるいは国民の意識に対して働きかける種類の施策ですから、ある程度の継続性というか、かつ冷静なものでなければ、中長期的に見た効果が上がらないんだろうというふうに思うんですね。

 そう考えたときに、「犯罪から子どもを守るための対策」というのが一昨年の十二月に取りまとめられて、昨年の十二月にそれが改定されたということで、それも目を通しましたけれども、その細かい項目については後ほど池坊さんに伺おうと思っているんですが、そもそも、数字的に、内閣府さんが、どこまで進んだか、あるいは継続的にできているのかというのをチェックする体制があるのかどうか、かけ声だけに終わっていないかということをお聞きしたいんです。

 文面を見ると、何々を要請したということが書いてあるだけで、要請するのは、口で言うのはだれでもできる話で、その後どうなったのか、それをチェックする体制があるのかないのか、そういうことをお聞きしたいと思います。

高市国務大臣 子ども安全・安心加速化プラン、かなり具体的に子供を守っていく体制、施策が書かれております。スクールガードリーダーによる巡回指導ですとか、ITを活用した不審者情報等の共有システムの導入ですとか、スクールバスの導入ですとか、こういったものの達成状況でございますが、文部科学省でのお取り組み、また警察庁でのお取り組み、達成度合いについては、数字として把握をいたしております。

 そしてまた、この取り組みは、このプランを決定するときに犯罪対策の閣僚会議で決定をいたしておりますし、プランそのものも関係省庁のプロジェクトチームでつくったものでございますので、そしてまた青少年育成推進本部合同会議でも了承をしているといったことから、多くの閣僚によってお互いにチェックがなされている。特に、内閣府の場合は、各省庁の取り組み状況については随時チェックをさせていただいているというところでございます。

津村委員 数字的なものも含めて把握をされているというのはちょっと私の期待以上のお答えだったので、それはすばらしいことなんですけれども、しかし、本当にそうなのかなというところをちょっとお伺いしていきたいと思います。

 基本的には、これは文科省さんにお聞きした方がいいということを事前にお聞きしたものですから、文科省さんにお聞きしますが、把握されているということであれば、補足する必要があれば大臣からもお答えいただければと思います。

 「犯罪から子どもを守るための対策」として、緊急対策が六項目だったかと思います。その中で、国民に広く呼びかけるといった項目もあって、それはさすがに数値的に検証するのは難しいと思いますので、チェックが可能と思われたもの三点、四点について伺っていきます。

 まず第一点目は「全通学路の緊急点検」という部分ですが、これの実施状況につきまして、実は昨年六月一日にというか、これはそもそも昨年の三月までにやるということが決まっていた、それを昨年の六月、つまり三月末からさらに二カ月以上たった時点で、当委員会で泉健太委員から、三月までに本当にできたんですかという質問をしたところ、「学校に関係するものとして、通学路の安全点検でございますが、これは既に、直ちに教育委員会等に要請文書を発出しまして、また、タウンミーティングを開催する等をしてその周知を図っておりまして、」という答えだけでして、要するに、要請文書を発出した、タウンミーティング等で周知を図ったということのみ触れられております。

 そして、その後、十二月にこれが改定された時点で、これは「既に措置した事項」というふうに銘打って、「全通学路の緊急安全点検」というのももう「既に措置した事項」に入っているんですけれども、この文章を少し丁寧に読むと、「全学校区・全通学路の安全点検を行うよう、平成十七年十二月二十二日付の通知及び各種会議において要請した。」と書いてありますし、「また、点検の結果については、警察やボランティアのパトロールに直ちに反映させるほか、子どもが実感を持って危険箇所を認識することができるよう、全国の全ての小学校で通学安全マップを作成するなど子どもへの防犯教育への活用や地域における対策につなげることを要請した。」となっていまして、いずれも要請しただけであって、これは措置したと言えるのか、要請しただけじゃないのか。その後、きちんと行われたことを確認できているのかどうかということをお聞きしたいと思います。池坊さん、お願いします。

池坊副大臣 津村委員のおっしゃいますように、文部科学省は、子供をお預かりいたしておりますから、要請、支援だけではいけないのであって、ちゃんと実数を把握する必要があると思いますから、きちんと、平成十七年度においてこの全通学路の緊急点検というのは二万一千六百三十七校、これは、今、小学校が二万三千三百七十一校ございますから、全国の小学校の九二・六%で実施をいたしております。

津村委員 ありがとうございます。非常に率直な御答弁をいただいたと思うんですが、一つ言えるのは、全通学路の緊急安全点検は、厳密に言えば、九二・六%ですから、できていないんじゃないかなというふうにまず思います。

 そこは、今後どう、それを一〇〇%にしていくのか、それはいつごろしていくのかということを一つお聞きしたいのと、それからもう一つは、この後、これがどういった効果があるのか、そういったことも検証していかないと、次にまた同じことをやるのかやらないのか、そういった現場からのフィードバックを、どのぐらい、どういう効果がありましたよとか、どういう問題がありましたよということはどういうふうに集めているのか、その辺を、継続的にどういう取り組みをされているのかということをお聞きしたいと思います。

池坊副大臣 委員がおっしゃいますように、九二・六%で、では、七・四%の学校はしなくていいのかなどということは決して思っておりませんので、安全のための会議において、全校でするようにという指示をいたしておりますので、すぐにこれは全校でできるようになって数値を上げることができる、お伝えすることができるというふうに思っております。

 では、これをしたからどのような結果が出たのかというのは、これは数字で示しますことは大変難しいですから、これは、安心、安全のための抑止力になると私は信じております。

 今まで一部だけの通学路であったのを全部にいたしましたのは、平成十六年からことしにかけまして二・四%向上しております。ということは、やはり学校も保護者も地域も、この通学路に対する安心、安全に対する意識が高まってきたのではないかというふうに思っております。

 実数としては、これはもちろんおわかりのように出しづらい問題でございます。

津村委員 ありがとうございます。

 大体今どんな状況かということはわかったのですが、例えば、これは私の想像でしかありませんけれども、全通学路の緊急点検をしてみたら、ああ、ここは通学路はこっちじゃなくてこっちの方がいいなとか、そういう何らかの変化が生まれる、あるいは知恵が生まれてくるというのが普通なのかなと思いますので、そういう意味で、通学路を変えることが必ずしもいいこととは限りませんけれども、緊急点検をした結果どうなって、その結果、子供の通学時の事故が減るのか減らないのか、余り効果がなかったのかということも事後的に検証していくことが、これは可能な話だと思いますので、これは内閣府さんにお願いするべきかもしれませんが、ぜひ、これが言いっ放しにならないようにお願いしたいと思います。

 また、あえて申し上げれば、昨年の十二月にまとめたこの改定というか「既に措置した事項」として、すべてのところに要請したということになっていますが、現に九二・六%しか実際にはされていないわけですから、その辺のことも、きちんとわかりやすく公表していただきたいなというふうに思います。

 少し逐条的になりますけれども、幾つかの項目について引き続き御質問します。

 二番目には、「全ての学校における防犯教室の緊急開催」ということがあります。これの実施状況と効果についても同時にお尋ねします。

池坊副大臣 平成十七年度においては、三万九千三百八十六校がきちんと防犯教室の緊急開催をいたしております。学校におけます七四・二%でございます。

 防犯教室というのは何かと申しますと、児童生徒に対して、警察等の協力を得て、不審者に対する具体的な対応等について指導するために実施するものでございます。

 きっと委員は、これも七四・二%は少ないんじゃないか、全校にすべきだとおっしゃると思います。それは全校にすべきだというふうに思いますから、これもきちんと全校、小学校については、全国の小学校の八九・三%実施いたしております。中学生は自主的に防犯、自分の身を守ることができますけれども、小学生はそういう点においてはやはり指導が必要かと思いますので、一〇〇%を目指して頑張ってまいるようにいたします。

津村委員 非常に先取りした御答弁もいただきまして、ありがとうございます。結構だと思うんです。

 私が申し上げたいのは、確かに、おっしゃるように数字を一〇〇%にしていただきたいということもそのとおりですし、あとは、やはり公表される文書が正確であってほしいということで、昨年十二月に公表された「犯罪から子どもを守るための対策」の改定版では、「全ての学校の全児童生徒が」云々というところから書き出しが始まっていまして、「全ての学校の全児童生徒」というのが高校を含めるのかどうか。含めることだそうですけれども、だとすれば、先ほどの率はもう少し低くなるのかもしれませんし、また、昨年、泉委員がやはり同じことを聞いているんですが、そのときの答弁では三百七十万部のリーフレットを配付したというような、とにかく、頼んだ、配付したという話ばかりだったものですから、今、池坊さんからお話があったように、事後的なフォローがされているのであれば、何度も申しますが、それは私が期待した以上の、きちんとされているんだなと思います。引き続き、それは外にも数字を出していただきながら取り組んでいただきたいし、七四・二を上げていっていただきたいというふうに思います。

 同様の趣旨から警察庁の方にも質問させていただきます。

 この緊急対策六項目の三点目に、「全ての地域における情報共有体制の緊急立ち上げ」という文言がございます。ここは、現場に近い方が御答弁くださるそうですから、少し掘り下げてお聞きしたいんですけれども、そもそも情報共有体制というのは一体何を意味するのか。

 これは、すべてのところで情報共有体制の緊急立ち上げとありますけれども、ある地域の方に、あなたのところに情報共有体制ありますかと聞けば、それはだれだってあると答えると思うんですね。これは程度問題なんだと思います。情報共有体制が全くない地域というのもないでしょうし、完璧な地域というのも恐らくなくて、これは程度問題。そもそも問題設定として程度を問われているんだと思うんですけれども、その場合に、「全ての地域における情報共有体制の緊急立ち上げ」、これは、最後の答えは「情報共有体制を構築した。」というこの対策のまとめになっているんですが、一体何をもってこう言えるのか、どういうことを具体的にされたのかということを御答弁ください。

片桐政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁では、御指摘の「犯罪から子どもを守るための対策」を踏まえまして、直ちに各都道府県警察に対して、子供に対する犯罪の前兆と思われる不審者情報について、警察が中心となって、学校それから教育委員会、保護者、児童、地域住民等と連携した情報共有化のためのネットワークを構築するように指示をいたしたところでございます。

 この結果、平成十八年三月までに、今お話ございましたように、管内に小学校がある全国すべての警察署において、ファクスであるとか電話であるとか、また最近は携帯の電子メールとかいうものを用いて、管内の教育委員会とか小学校との間で不審者に関する情報の共有体制を構築したという報告を受けております。

 例えば電子メールのお話をすれば、全国で今三十七の都道府県警察において、警察から保護者等の携帯電話に対して、不審者情報があればそれについての情報提供を行っているという状況でございます。

津村委員 少し時間が足りなくなってきましたので先に進みますが、情報共有体制というのは非常に重要であり、かつ見えにくいものですので、また今後ともフォローアップさせていただきたいと思います。

 次の項目ですが、「学校安全ボランティアの充実」ということが言われておりますけれども、これは文部科学省さんに伺いたいんですが、地域別の実施状況も含めて、少し活発に活動している地域はこうであるとか、そうでないところはこうであるとか、全国的な傾向も含めて、先ほどと同様の趣旨ですが、御質問いたします。

池坊副大臣 学校安全ボランティアは、私が政府に入ります前から一生懸命働きかけてまいりましたものでございます。

 御存じのように、スクールガード、スクールガードリーダー、リーダーというのは、警察官のOBとかそれから警備会社の方にお願いして、一人が十校を持っていただく。ということは全部で三万校持っていただけるということになって、今、十四億、三千人のスクールガードリーダーを養成いたしております。これは全国の小学校の八六・七%、一万九千四百九十二校、三万校と言いましたのは中学校も入れましたから、大体二万三千校が小学校ですから、これだけが今きちんとされております。

 地域別にはどうなっているのかといいますと、実施の高い県は鹿児島県の九四・七%、長崎県九四・三%、福島県八八・八%。とともに、実施の低い県、岩手県の四八・九%というのが一番低いんですね。高知県も五三・四%、島根県も五七・五%で、これは大変ばらつきがございますことは残念だというふうに思っておりますので、全国一律にきちんと学校安全ボランティアの充実を図っていきたいと思います。

 委員がおっしゃいましたように、先ほどの防犯教室にしても、それから通学路の問題にいたしましても、教育委員会を通して学校にみんな要請をいたしております。地方分権、地方分権とおっしゃいますね。地方によってばらつきがあるんです。こういうことを文部科学省が一斉に、これは絶対しなければいけないと指示することができるならば、全校すべてに一〇〇%というのは結構迅速にすることができると私は思います。ただし、地方分権ですから、その地方の首長さんとか教育委員会とか、それから市会、県会議員、いろいろな方々、議会のあり方とかそういうものにも関係してまいります。

 でも、子供の命を守るということは大変大切なことですので、私どもはしっかりと、全国一〇〇%になるようにこれからも要請、支援してまいりたいと思っております。要請、支援というのが、私どもにいたしますと、もうちょっと強く言えないのかという思いもございます。

津村委員 最後に池坊副大臣がおっしゃったことは非常に本質的な問題でして、民主主義のあり方とまでは申しませんが、地方分権ということと、こういうナショナルミニマムといいますか、全国一律に最低限の施策を打っていくこととのバランスをどう担保していくかという、本当に深遠なテーマをおっしゃったわけですけれども、私は、情報公開というか、例えばこの議会の国会審議でもそうですけれども、情報をきちんとつまびらかにすることがそれを補完する一つの側面的な材料なのかなと思いますし、だからこそこの種の御質問をしているわけです。

 確かに、今、島根県がどうのとか何県はどうという数字が出ました。それに対して文部科学省さんなり内閣府さんが、あなたのところはだめだからもっとやれという命令はできないかもしれませんけれども、こういう場でそういう名前が具体的に出たり数字が上がれば、もしその都道府県にこの問題に関心がある方がいたら、国会答弁でこう言われているじゃないか、うちの県がおくれているじゃないか、やろうということを、これは側面的に促すことになるでしょうし、必ずしも命令関係がなくても、地方分権ということと、それから中央においてある種の施策を慫慂するということは両立するわけで、情報公開なり国会審議の深まりというものがそれを促すということだと思います。自明のことを申し上げて申しわけありませんが、池坊副大臣の御答弁が非常にすばらしいと思ったものですから、つけ加えさせていただきました。

 次の質問に移らせていただきます。

 もう時間が余りなくなってきたんですけれども、高市大臣に、冒頭私が大きなテーマを申し上げました。青少年育成だけではありませんが、行政が、非常に環境が苦しくなっていく、お金がない、あるいは過疎化が進むという中、あるいは市町村合併というのも地域のコミュニティーにプラスマイナスさまざまな影響を与えていると思います。

 そうした中で、既存の地域コミュニティーの核を構成している、例えば町内会であるとか老人クラブであるとか婦人会、交通安全母の会、あるいはスポーツ少年団、いろいろなものが、物によってはそれは公的な位置づけをされているものもありますし、中には完全な任意団体であって所管官庁も特にない、伺ったところでは婦人会というのは任意団体であって所管官庁はないというふうに伺いましたけれども、現実にはそういうものが地域において相当パブリックな、ボランティアであるかもしれないけれども、非常に公的な存在感も持っている。

 そういったことを行政としてある程度トータルに見ていかないと、それは厚生労働省さんの御担当ですね、それは文科さんですね、それは任意団体ですからということで、みすみす地域コミュニティーのそういう重要なアセットを、これからの行政スリム化という流れの中でその役割を見失ってしまっては、それは国全体として失うものが多いのかなというふうに思うものですから、必ずしも締めつけろとかそういう話ではなくて、さっきの話じゃありませんけれども、位置づけを確認して、あるいは社会の実態として、老人クラブはどういう活動をしているのか、あるいは婦人会はどういう活動をしているのかということを中央でも把握しながら、情報公開しながら、社会の新しい成り立ちというものを促していく、そういう営みをぜひ国会の審議でやっていきたい。大きなことを申しますけれども、そんなことを思うわけです。

 少し具体的に伺いますけれども、高市大臣は、青少年育成も含めた地域コミュニティーの今後の役割について、今私が申し上げたことへの感想でも結構ですが、御所見を伺いたいと思います。

高市国務大臣 非常に地域に根差した団体の役割がこれからますます重要になると思います。行政だけじゃなくて、御家庭、地域そして学校、一体となってやはり青少年育成をしなきゃいけない。

 そしてまた、都市化によって、非常に地域のつながりが希薄になっている、そういったところもありますので、今、内閣府では、非常に長年にわたって地域活動に貢献されたり顕著な功績があった個人や団体に対する表彰を実施しまして、地域活動に対します社会の意識、これを盛り上げる活動を行いましたり、それから青少年育成国民会議というものがございまして、これは民間団体なんですけれども、ここと連携しながら、地域指導者の養成事業ですとか意識啓発事業をいたしております。

 この国民運動を推進していただいている青少年育成国民運動ネットワークの市区町村の段階になりますと、市区町村民会議といったものがあるんですが、これは自由に組織をしていただけるんですが、例えばこの中で、親子会ですとか子供会ですとか、それからまたPTAの協議会ですとか交通安全母の会ですとか、非常に多様な団体が協力をし合って青少年育成に資する活動をしていくというような体制になっております。

津村委員 時間が押してまいりましたので、本当は一つ一つについて伺っていきたいんですが、厚生労働省さんに一つ、もう繰り返しません、先ほどのような質問の趣旨ですけれども、老人クラブというものが、今どのような活動状況、役割を担っているのか、今後の課題も含めて、教えてください。

菅原大臣政務官 御指摘の老人クラブにつきましては、戦後の混乱期から自然発生的にできた組織でございまして、老人福祉法の昭和三十八年の制定を契機に、今全国で十二万六千、八百万人以上の方が加入されていらっしゃいます。

 きょうのいろいろな御議論を聞いておりまして、やはりこの老人クラブも地域コミュニティーの大きな核として既に生々発展をしてきているわけでございまして、高齢者同士の活動の場のみならず、子供たちの安心、安全のために、一昨年、広島や栃木の大変凄惨な、子供が殺害される事件が起こりましたが、こうしたことを踏まえまして、厚生労働省として、全国老人クラブ連合会や都道府県等に、地域見守り活動等をしっかりお願いさせていただいております。

 あわせて、平成十九年度、ことし、約三十億円、老人クラブ連合会に対する助成等を行いまして、さらに実を上げていただくように取り組みを進めているところでございます。

津村委員 時間が参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、太田和美さん。

太田(和)委員 民主党の太田和美でございます。

 先日、私、若者の就労支援の現状がどうなっているのかということで、現場を見てみたいと思い、千葉県の船橋市にあるジョブカフェに視察に行ってまいりました。千葉のジョブカフェは、ヤングハローワークと併設されておりまして、お互いの垣根を取り払ってうまく連携をしております。平成十六年度からことし二月まで、来場者が約十万人、三万二千人が登録をして、うち一万六千人、登録者の半分が、就職したり就職先が決まったりしたそうで、大変実績を上げております。

 すいている午前中に行ったのですが、責任者の方が言うには、午後は病院の待合室みたいに込み合うということでした。宣伝に一銭もかけていないのに込んでいるそうです。もっと広範な若者に宣伝をしたら、スペースやスタッフが足りないのは目に見えています。責任者の方は、経済産業省からの補助が打ち切りになり、その穴埋めに四苦八苦しているともおっしゃっていました。

 私は、政府の若年就労支援策の問題点は、結局自治体任せであり、約二百万人のニート、フリーターに十分届くものになっていないことだと痛感した次第であります。この点は、後日、厚生労働委員会の方でも質問させていただきたいと思います。

 ジョブカフェの責任者の方は、そのとき、川下の就労支援だけではなく、川上のキャリア教育、これを一体としてもっともっと充実させるのが行政の責任だということもおっしゃっていたのですが、まさにそのとおりだなと感じました。

 きょうは、大臣が所信表明の中でも触れておられた若者のキャリア教育についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、フリーターの若者、これは三十五歳未満に限ってですが、総務省が三月に発表した〇六年労働力調査で、二百万人を下回ったという結果が出ております。〇三年の二百十七万人がピークだったのが、百八十七万人になったということです。ニートも、六十四万人いたのが二万人減ったということです。

 この数字、景気がよくなったからなのか、それとも政府や自治体の対策がきいてきたのかどうなのか、まず大臣の感想からお尋ねをしていきたいと思います。

平沢副大臣 御指摘のように、平成十八年は、前年に比べまして、ニートそしてフリーターも、今御指摘の数字のとおり減少しているわけでございます。

 その理由でございますけれども、今委員が御指摘のとおりでございまして、景気が回復基調にある、これも一つの原因だと思っておりますし、もう一つは、政府や各自治体の積極的な取り組み、常用雇用化に向けましてハローワーク等が積極的に働きかけをしている、こういったこともあって数が減ったのではないかなと思っております。

太田(和)委員 副大臣、ありがとうございました。

 統計を詳しく見てみますと、十五歳から二十四歳までのフリーターは昨年調査から九万人減る一方、二十五歳から三十四歳までのフリーターは五万人しか減っておりません。しかも、三十五歳以上は統計に載ってこないんですね。また、ニートも、十五歳から十九歳、二十歳から二十四歳の層では、逆にそれぞれ一万人ずつふえております。

 景気がよくなっているにもかかわらず、若者の中でも十五歳から二十四歳までの層でニートがふえている、あるいは年長フリーターがなかなか減らない。この事実は、私は、若者の雇用問題が、景気の循環によるものではなく構造的な問題であることの証拠だと思います。だからこそ、川上から川下までの一貫した若年就労支援策、小中高、そして大学も含めたそれぞれの発達段階に応じたキャリア教育の充実が必要だと思っております。

 従来は、学校における狭い意味での進路指導しかありませんでした。そこで、社会に出て初めて職業の現実に触れるという若者がふえております。学校教育の中で多種多様な職業について理解を深めるということは、将来の職業のミスマッチを防ぐという意味で重要だと思います。ただ、それが、単に職業体験をすればというような一過性のものであってはなりません。

 そこで、大臣は、キャリア教育推進会議を立ち上げたわけですが、キャリア教育の現状をどのようにとらえておられるのか、まず現状認識についてお尋ねをいたします。

高市国務大臣 恐らく、私がキャリア教育等推進会議を立ち上げようと思い立って総理の御許可をいただきに行ったときの問題意識は、太田委員と同じだろうと思います。

 これまでも、文部科学省で、教育という観点からキャリア教育も支援しておられましたし、厚生労働省では、失業率を下げる、就労支援という形でやっておられた。そしてまた、経済産業省では、産業界が求めるニーズと人材能力が食い違っているといった問題意識でキャリア教育を支援されてきた。ところが、すべての省庁の政策が必ずしも効果的に一体感を持ってかみ合っていたどうか、これは疑問だと考えたこと。

 それからもう一つは、小学校から大学まで、一体化してキャリアを積んでいける、キャリア教育の機会を得ていける、こういう形にはなっていなかった。

 そしてまた、それぞれの学校現場でどうなっているのかなと考えてみたときに、まず学習指導要領にきちっと位置づけられていて、何か教材があってきっちりと授業時間が確保されているというならまだしも、そうじゃなければ、同僚教員の理解も得られないとか、それから保護者の理解も得られない、こういった状況がある。それから、教員の方々が教え方がわからない、教材が不足している。そして、何か社会体験をさせようと思っても、地域社会ですとか企業の御協力が得られない、どうアプローチしていいかわからない。つまり、一部の熱心な教員の方々の御努力に頼った形でしか進んでこなかったんじゃないか。

 こういった問題意識から、厚生労働大臣、そして文部科学大臣、経済産業大臣にも入っていただいて推進会議を立ち上げました。うまく進んでこなかった原因はというお尋ねでしたので、今私が申し上げたような問題意識でございます。

 そしてまた、先ほど、すぐに仕事をやめてしまうというお話もありましたが、これも、職業観、勤労観、こういうものをしっかりと身につける機会に恵まれなかった、そして職業に対して必要な技能がまだ十分備わっていないといった原因もあるんじゃないかなと考えます。

太田(和)委員 ありがとうございます。

 キャリア教育推進会議では、キャリア教育の推進方策についてまとめるとしておりますが、推進方策とは一体どのようなことを考えておられるのか。まだまだ議論の途中ということだと思うんですけれども、五月に取りまとめると伺っておりまして、もうそろそろ方向性が見えてきているのではないかなと思っております。

 この数年、ようやく、今大臣の方からもお話がありましたが、文部科学省、経済産業省、厚生労働省でキャリア教育に取り組み始めたわけですが、やはりやっていることとか目的はばらばらではないかなと思っております。

 経済産業省は、社会人の基礎力をつけるとして、国際競争力を支える人材育成をするという、能力開発という立場に立ったキャリア教育をうたっております。また、厚生労働省は、就労対策として、就職するための基礎能力、つまり、企業が求める人材を育成しようという立場です。一方、文部科学省は、キャリア教育の定義では、勤労観とか職業観の育成だと言っています。このように、三省の目的は異なっているわけです。どうも、これらを一つのキャリア教育という言葉でくくるのは乱暴かなと思っております。

 まず、この違いについて大臣は御認識されているようでしたので、そこで大臣にお伺いしたいのが、これを統一的に整理し直すのか、または新たな枠組みを考えているのか、どういったイメージになるのか、教えていただければと思います。

高市国務大臣 五月末を目標に今取りまとめていますので、今具体的に結論を申し上げられる状況にはないんですが、ただ、私が考えておりますのは、また委員の皆様にもお願いしておりますのは、今までの各省がやっていた施策の単なる組み合わせではないということです。

 つまり、イメージとしては、やはり学校、企業、保護者等が共通の認識のもとで連携協力する、これが一つ大事なポイント。そしてもう一つは、小学校から大学まで、各学校段階を通じてキャリア教育を体系的に行うといったこと。それから、先ほど申し上げましたような地域社会や企業側の協力体制、これも構築していくし、最初の段階ではやはり行政のサポートといったことも重要になってくるんだろうと思っております。

 ですから、かなり新しい考え方で、今までとは違った取り組み、当然いいものは残していきますけれども、それも政府一体となって進んでいく形をつくりたいと強く希望して、今一生懸命議論を続けているところです。

太田(和)委員 私は、今の若い世代にとって最も欠けているのは、働くことの意義、目標を見失っていることだと思っております。早期離職にしても、フリーターや無業者の増加にしても、根底にあるものは、この目標を失っているという点だと思っております。

 働くことの目的は、収入であったり、生きがいであったり、その先には人生設計であったり、家庭の問題であったりいたします。本来、こういうことは教えることではなく、個々人が気づいていくこと、また家庭の中で考えられてきたことだったかもしれません。しかし、今の時代では、学校の中で考える時間を与え、働くことの意義に気づかせてあげることが必要になってきたのかもしれません。こうした機会をつくっていくことがキャリア教育の中に必要ではないかと私は思っております。

 さて、これは現状認識の話になりますが、文部科学省、厚生労働省、経済産業省からそれぞれ今取り組んでいるキャリア教育について説明をしていただきました。それぞれもっともな事業をされておりますが、ただ、予算も小さいんですね。

 十九年度は、文部科学省においては、中学校を中心に五日間以上の職場体験やインターンシップを行うキャリア教育実践プロジェクトに二億三千万、これは二百九地域で実施し、一校当たり五万円から七万円です。高等学校におけるキャリア教育の在り方に関する調査研究費二億一千万、目指せスペシャリスト一・八億円、ものづくり人材育成のための専門高校・地域産業連携事業三・八億円、その他まだまだありますが、省略をいたします。

 厚生労働省においては、インターンシップ受け入れ企業開拓事業四・七億円、キャリア探索プログラム、ジュニアインターンシップに二億円、高校生に対する就職ガイダンスに四・九億円。

 経済産業省は、地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクトが四億円、十九年度は二十九件の指定を予定しております。

 これらの大半はモデル事業のようなものであり、キャリア教育を受けた生徒と受けていない生徒が出てしまうという問題点があります。この辺も踏まえて、質と量ともに充実したキャリア教育をできるだけ網羅的に進めていく必要があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

高市国務大臣 御指摘のとおりだと思います。

 今は、やはり地域によっても取り組みに差がありますし、学校によっても差があります。同じ学校の中でも、担当される先生によって差がある。ですから、もう実際にはごくごく一部の児童、学生しかこのキャリア教育を受ける機会に恵まれていない。

 そうすると、やはりモデル事業的なイメージということで、予算額も小さくなっている。これはもう国全体、すべての子供たちがキャリア教育を受ける機会に恵まれる体系をつくらなければならないと考えております。

太田(和)委員 今までの質問は、キャリア教育を推進することの重要性についてお尋ねをしてきました。キャリア教育を通じて若者が成長することはもちろん必要ですが、私は、一方で、企業の側ももっと成長してほしいと願っております。

 それは、インターンシップを受け入れるとかキャリア教育に協力するかという話とは別に、雇用の質を改善するという話であります。

 文科省のキャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議の報告書を見ますと、働くことの意義についての総合的理解を推進することで、働くことは、報酬を得て生計を維持するだけではなく、体を動かして汗する苦労や厳しさを通してしか味わうことのできない成就感や自己実現の喜びがあると述べております。全くそのとおりだと思うわけですが、一方で、現実の働き方はそのようになっているのか。

 今、派遣、請負、パート、アルバイト、非正規雇用がふえております。若者は半分近くがそうした形で働いております。そして、国際競争力の維持という御旗のもとに、企業は、コア業務は長期安定雇用の正社員に任せて、定型的な業務は派遣や請負、アルバイトなど、外部に仕事を出す。その外部への出し方がこれからどんどんふえていく。これは経済団体が提唱している新たな雇用モデルであり、経産省や政府の新成長戦略、経済成長戦略大綱もそうした考えを下敷きにしているのではないかと私は思っております。立派なキャリア教育を受け、勤労観を身につけても、条件の悪い非正規雇用が現実の大半であれば、若者はどこに行けばいいのか。

 ですから、キャリア教育が川上だとしたら、就労支援は川下ではなく川中、そして川下は雇用の質の改善だと私は思っております。正規社員をふやす、非正規社員は待遇改善した上で限定する、そのような経済成長のあり方が求められていると思っております。そうでないと、構造的になっている若者の雇用問題は解決しません。この点について大臣の所感をお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。

高市国務大臣 就職氷河期と言われる時期に就職された方、この方々は、特に今フリーター、ニートといった形になっているケースが多く認められますけれども、まずはこれを解消しようということで、政府の再チャレンジ支援総合プランでこれは第一番目の重点課題として位置づけられています。ですから、平成十九年度予算におきましては、フリーター二十五万人常用雇用化プランの推進、それから非正規労働者の正社員化の機会確保の促進、そして国家公務員の中途採用の拡大といった施策を盛り込んでおります。

 それから、法律案なんですけれども、雇用対策法の改正法案、これが閣議決定されまして今国会に提出されております。内容的には、青少年の応募機会の拡大ですとか、募集、採用に係る年齢制限の禁止の義務化、こういったところでございますけれども、とにかく能力に応じて平等な、均等な評価を受ける、報酬を受ける、これは大事だと思います。

 一方で、派遣社員がふえているということに関しましては、正社員になりたいんだけれども派遣でしか対応できないというケースと、そして、御本人が、自分の時間の使い方ですとか、いろいろな職業を経験したいということで派遣社員という道を選ばれている、二通りあるんだろうと思うんですけれども、やはり御本人の希望と能力に応じて正社員への道が開かれていくように、これは努力をしてまいりたいと思っております。

太田(和)委員 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、伊藤渉さん。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 今国会、超党派の勉強会を通して児童虐待防止法の改正が進められている関係で、私は、毎回この青少年特委では児童虐待に関する質問をさせていただいてまいりました。きょうもまた改めて、この法改正は、最近の社会の情勢も踏まえて、特に児童虐待防止の入り口のところに当たる子供の安全をいかに確保するか、そういったところに議論が集中をしてきたというような印象を私は持っておりますので、特にこの委員会の質問では、その後の子供たちの養護体制等について繰り返し御質問を申し上げているところでございます。

 そこで、まず、児童虐待を受けた子供たちの安全が確認をされた後、こうした保護された子供たちがどのような支援を受けていくのか、厚生労働省にお伺いをいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 虐待を受けた子供たちの保護でございますが、虐待により家庭での養育が困難な子供たちにつきましては、里親への委託あるいは児童養護施設や乳児院への入所といった社会的養護の仕組みの中で子供を養育し、自立へ向けた支援を行っているところでございます。特に、心に非常に深い傷を持つ子供たちでございますので、できる限り家庭的な環境の中で、子供の個々の状況に応じた支援を行うことが必要であるというふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。改めて確認ということで聞かせていただきました。

 今御答弁いただいたように、子供を養護する仕組みとしては、児童養護施設や乳児院に入所する場合と里親の委託という場合がございます。保護される子供たちのうち、では里親委託についてどの程度の割合であるのか、割合と、できればその分母、分子の数字みたいなものも教えていただけると助かります。

村木政府参考人 里親でございますが、里親、児童養護施設、乳児院に保護される子供を分母といたしまして、このうちで里親に委託されている子供の割合、里親委託率でございますが、これは平成十七年度末で九・一%でございます。

 実際の数字を申し上げますと、全体の分母の数が三万六千百五十一人、これに対しまして里親で委託をしている児童数が三千二百九十三名でございます。

伊藤(渉)委員 この保護された子供たち、できるだけ家庭的な環境の中で養護を行っていく制度として里親制度があるわけですが、今の数字、九・一%ということで、まだまだ少ないという印象を持ちますけれども、この里親制度が普及をしていかない要因について御教示をいただきたいと思います。

村木政府参考人 委員御指摘のように、特に子供の成長、発達においては愛着関係の形成が大変重要であるというふうに考えております。そういう意味で、温かい愛情と家庭的な環境の中で養育する里親制度というのは大変有意義な制度と私どもも考えておりますが、先ほど申し上げたとおり、今、里親委託率九・一%ということでございます。平成十二年度以降、少しずつは増加をしてきているわけでございますが、まだ十分とは言えないというふうに私どもも考えているところでございます。

 里親制度が普及しない要因でございますが、関係者の方々からいろいろ御指摘をいただいておりまして、私どもも勉強しておりますが、よく挙げられますのは、一つは、我が国においては血縁を重んじる親子観や子育て観が非常に強いこと、それから二つ目には、子供のニーズとそれに適合した里親とのマッチングが十分に行われていないこと、三つ目には、実親の承諾を得ることが難しいことなどが挙げられるというふうに思っております。

 このような御指摘を踏まえまして、特に児童相談所における子供と里親のマッチング機能の強化をやっていきたいということで、平成十八年度から、児童相談所に里親委託推進員というものを配置いたしまして、里親への委託を推進しているところであります。

 今後とも、里親制度の普及に努めてまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 今、三つ御答弁いただきました。血縁関係を重んじるというこの国の文化、また、若干矛盾を感じるんですけれども、子供を養育できないにもかかわらず実親が里親を拒絶する、なかなかこの二点については、行政府として取り組むのは非常に難しいと思いますので、今真ん中に御答弁いただいたマッチングについては、行政としてしっかり取り組んでいっていただきたいと思います。

 この里親制度を進めるに当たって、里親の家庭、まさに親がわりをするわけで、大変なお仕事と言っていいのか、ボランティアと言っていいのか、今、日本ではその位置づけが難しいところですが、これへの支援が重要であるという声を私もお聞きしますが、この点はどうなっているのか、御答弁をお願いします。

村木政府参考人 委員御指摘のように、里親の仕事は大変重要な仕事、また重い仕事であると思います。その意味で、私どもも、里親をしっかり支援して、里親の方が養育をしやすい環境を整備するということが大事であるというふうに思っております。

 このため、今行っております里親への支援としましては、まず一つには、子供の養育についての知識や技術の習得を図るための研修の実施、二つ目といたしまして、児童相談所等において子供の養育や里親自身に関する里親からの御相談をお受けするということ、それから三つ目でございますが、里親の養育負担を軽減するため、里親の求めに応じて家事や養育を補助する者を派遣すること、四つ目でございますが、情報交換等により里親自身の養育技術の向上を図るため、里親相互の交流の機会を設置すること、それから五つ目でございますが、里親の休息のために一時的に子供を施設等で預かるレスパイトケア、こういったものの実施をしているところでございます。

 今後とも、このような取り組みの拡大により、里親に対する支援の充実を図ってまいりたいと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 では続いて、もう一つの保護、養護の方法として存在をする児童養護施設についてお伺いをします。

 先ほど里親制度について御答弁いただいたときに、里親が九・一%ということは、裏を返せば、養護施設には九割程度の方が入所をされるということだろうと思います。しかし、この児童養護施設において、あってはならないことですが、施設内の虐待というものも存在をする、これも社会的な問題になりつつあると認識をしております。

 子供がやっと実の親からの虐待等の危険から免れたその施設の中でまた虐待を受けてしまうという、非常にゆゆしき問題でございますけれども、施設内の虐待防止に向けてどのような取り組みをされているのか、御答弁をお願いします。

村木政府参考人 御指摘のとおり、児童養護施設等々には、保護者のいないお子さんですとか、保護者から虐待を受けた子供さんがたくさんいらっしゃるわけでございまして、そういった子供たちが信頼を寄せるべき立場にある施設職員が入所中の子供たちに対して虐待を行うということは、本当に、子供の心身をさらに傷つけ、また大人への不信感につながるものでもありますので、絶対にあってはならないというふうに私どもも思っております。

 これまでも、施設に入所している子供の権利擁護につきましては、都道府県等に対しまして積極的に取り組みをお願いしてきたところではありますが、さらに、先生御指摘もありましたように、幾つかの事件もございましたので、徹底を図りたいということで、昨年の十月に都道府県等に対して通知を発出したところでございます。

 この通知で、かなり細かく、いろいろなことをお願いしているわけでございますが、特に施設内での虐待の未然防止と早期発見という観点から、これは人事体制等々も含めましてでございますが、職員の資質向上と子供の意見表明の機会の確保等について、施設を運営する法人への指導の徹底をお願いしたところでございます。

 今後とも、あってはならないことでございますので、さまざまな機会を通じまして、この問題の周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 この問題については、非常に閉ざされた空間での問題でもございます。加えて、虐待そのものが、子供という弱い立場の人間に加えられる行為でございますので、この改善に向けては全力を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 また一方で、この施設、一人一人の子供の状況もさまざまであり、普通の子供たちよりも心に傷を負った子供たちのケアをしていかなければならない、スタッフの方も大変な仕事だろうと思います。そういう意味で、こうした心のケアを行う専門性を持った職員、こういった体制の強化ということも重要だと思いますけれども、厚生労働省のお考えをお伺いします。

村木政府参考人 御指摘のとおり、施設でのケアは、できるだけ個々のお子さんの状況に応じて、専門的で、きめ細かな、手厚い支援が必要というふうに考えております。こうした意味で、職員の配置ということは非常に大事だと思っております。

 これまでに、職員配置につきましては、虐待を受けたお子さんに個別に対応する職員の配置でございますとか、それから総合的な家族調整を行いますファミリーソーシャルワーカーの配置でございますとか、あるいは、施設に被虐待児を受け入れる場合に、その受け入れ数に応じて職員の増加が可能になるような加算の仕組みでございますとか、あるいはできるだけ小規模のケアをしていきたいというふうに思っておりますが、その場合の必要な職員の配置でございますとか、それから特に重要な心理療法を担当する職員を常勤化するとか、こういった職員体制の充実に努めてきたところでございます。

 また、十九年度、本年度でございますが、先ほど申し上げました虐待を受けた子供に個別に対応する職員の常勤化を図ったところでございます。

 こういった施策、さらに充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 児童養護施設というもの、そのものに余り光が当たってこなかったというのも事実だと思いますし、我々も、今、児童虐待という問題がクローズアップをされ、その保護に法改正を含めて力を入れている中で、継続をして子供たちが再び社会に戻っていく、この流れをしっかりと強化していきたい、そういう意味で、しっかり応援をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 この児童養護施設、先ほどから聞いている里親、大きいところで子供たちを養育していった方がいいのか、小さな家庭で養育していった方がいいのか。基本的には小さい方がいいんじゃないかと私も思いますけれども、それはきっと一人一人の子供、また子供の年齢に応じても変化をするものであると思いますので、さまざまなパターンが存在をするのが最終的にはいいんじゃないかなと私は思っております。

 先ほども答弁で言っていただいた愛着関係、愛情を十分に注ぐという意味では、可能な限り小さい方がいい、そういった方向を目指すべきと私は考えますけれども、施設の小規模化、こういったことについてはどのような取り組みをされているのか、御答弁をお願いします。

村木政府参考人 委員御指摘のとおり、こういった子供たちにとっては愛着関係の形成が非常に重要でございますので、私どもとしましても、できる限り家庭的な環境の中で、職員との個別的な関係を重視したきめ細かなケアを提供したいと思っております。そのためには、やはりケアを行う単位をできる限り小規模化するということが重要だというふうに思っております。

 具体的には、児童養護施設や乳児院等において、施設の中で小規模なグループを形成して、それをケアの単位としていくというようなやり方ですとか、児童養護施設において、本施設とは別に、地域の住宅等、家庭に近い環境、こういったものを利用して、地域小規模児童養護施設を設置するといったような方策を進めているところでございます。

 これにつきましては、平成十六年に決定をされました子ども・子育て応援プランの中でも、平成二十一年度までにすべての児童養護施設、乳児院等で一施設当たり一カ所程度の実施をするという目標を掲げているところでございまして、この目標を目指して、今後とも積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 こうした養護施設、質的にも量的にも向上させていかなければならない。量的に向上させる場合に、こうした児童虐待の防止、その保護、こういった総論に反対する人はいないと思いますけれども、いよいよ養護施設が自分の地域に来る、そうした家が来る、それを受け入れなきゃいけない学校がある、こうなってきたときには、各論として反対ということもあり得ると思います。そういう意味では、社会全体の認識も高めていかなければならない、これも大事な仕事だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 こうした養護施設等で無事に育ち、また再度社会に出る、このときも実は非常に問題があるということが勉強会の中でもるる指摘をされているところでございます。

 この施設を退所した後についても、退所後のアフターケア、こういった意味で、家庭で生活をしてきた子供たちとできる限り差が生じないように、特に進学、就職に当たっては支援を行うべきだと考えます。そのために、今、行政としてどのような取り組みをされているのか、御答弁をお願いします。

村木政府参考人 退所後のアフターケアは非常に重要な課題でございます。

 施設に入所している子供が就職する場合でございますが、これを支援するために、就職に際し必要な被服費等の購入等に充てるために、就職支度費を支給しているところでございます。また、大学や専門学校に進学する場合でございますが、これは平成十八年度からでございますが、進学に際し必要な学用品等の購入に充てるために、大学進学等自立生活支度費を支給しているところでございます。さらに、本年度からでございますが、就職やそれから住居を借りるということが非常に難しいわけでございますので、こういった際に不利にならないように、身元保証人を確保するための事業を実施することとしたところでございます。

伊藤(渉)委員 時間も残り少なくなってきましたので、最後に行きます。

 虐待についても、ここまでるるやりとりさせていただいたとおり、社会全体でその防止に努め、家庭を地域で、社会で支えていかなければならないということを考えております。子供たちの養育についても、子供は社会の宝であり、未来からの使者であるというような認識のもとで、社会全体で支えていくという考え方、これは共通であるとも考えておりますし、家庭での養護がさまざまな事情によりできない場合は、これを社会で養護していく、こうした仕組みを整えていくことは、今後非常に大きな課題になってくるだろうと思います。

 このため、今後、虐待を受けた子供などが増加していく可能性に対応して、里親の拡充や小規模施設の整備など、養護体制を量的にしっかり確保するとともに、質の向上をしていくということを、今、現状を確認しながら答弁をいただいたところでございます。こうしたさまざまな制度そのものについても、課題があればそれを解決し、子供たちが健やかに成長をしながら安心して暮らせる、そのための取り組みを一層推進することが重要であると考えます。

 現在、ここまでの答弁をトータルして、厚生労働省としてはどのような課題があると認識をし、そのために今後どのような解決策を講じようとされているのか。あわせて、高市大臣には、ここまでのやりとりをお聞きいただきまして、青少年の健全育成という観点から、政府全体の取り組みとして社会養護体制の充実についてどのようにお考えか、最後にお聞きをして、私の質問を終わります。

村木政府参考人 御指摘のように、社会的養護の問題は非常に重要でございまして、次世代を担う子供の健全育成を図る次世代支援体制全体の中でも、特にやはり重要な柱として位置づけていくべきものというふうに私ども考えております。

 実は、そうしたこともございまして、本年の二月に、今後目指すべき児童の社会的養護体制に関する構想検討会という検討会を設置いたしまして、検討を進めているところでございます。具体的に検討課題として挙げられておりますのは、要保護児童がふえていることに対応して社会的な養護体制をどう拡充していくかという問題、それから、先ほど来出ております養護ニーズの多様化、高度化に対応して質をどう高めていくかということで、例えば、里親制度の話でございますとか、施設における小規模形態のケアの推進でございますとか、あるいは人材の確保や資質の向上といった問題、それから、これも先ほどお話に出ましたが、児童の権利擁護をどう強化していくか、こういった項目について現在議論を進めているところでございます。

 来月には何とか検討会の中間取りまとめをいただきたいというふうに考えておりまして、こうした検討会の議論も踏まえて、社会的養護体制の拡充のための方策について検討を進めてまいりたいと考えております。

高市国務大臣 安倍総理が、子どもと家族を応援する日本重点戦略会議の立ち上げを決められたときに、すべての子供、すべての家族を社会全体、国民全体で応援するような、そういう仕組み、社会をつくっていこうということが非常に大きな総理の思いであり、私たちもそのとおりだと考えて、今議論を進めております。

 その中で、この重点戦略検討会議の中でも、児童虐待対策ですとか母子家庭対策、それから要援護児童支援など、非常に困難な状況にある御家族や子供を支える地域の取り組み、これを強化しようというのがこれまた主要な検討課題の一つとなっております。そして、あわせて、点検、評価のための分科会もありますから、これまでの取り組みで不十分なところがあったり運用で改善すべき点があったりした場合には、こちらからの指摘もまたフィードバックされていくということでございますので、引き続き、困難な状況にあるお子さんであっても、この世に生をうけた限りは、未来に夢を持って、そして安心に、安全に生きていけるという状況をつくるために努力をしてまいりたいと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 まさに大人の今の社会の問題が未来を担うべき子供にしわ寄せされているという印象を私は持ちますので、今大臣から御答弁いただいたとおり、すべての子供、すべての家庭が同じ状態で子供たちが社会に巣立っていくような体制を整えていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

小宮山委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 フリーター、ニート等が社会問題となってかなりになるわけですけれども、きょう私は、若年層の雇用環境、またそれに関する施策の一端について質問させていただきたいと思います。

 総務省の労働力調査によれば、十五歳から三十四歳の若者においては、正社員の割合が減り続けて、非正社員の割合が一貫してふえているわけであります。フリーターも、二〇〇五年で二百一万人、二〇〇六年でも百八十七万人と依然として多いわけですね。そのフリーターの年収が百五十万から二百万がほとんどだというところも、大変指摘されているところであります。

 それで、最初に、高市大臣にちょっと御認識を伺いたいと思っているんですが、若年男性の結婚率と年収の関係の調査がございますけれども、それによりますと、年収百五十万から二百万までの層では結婚率は一七・四%です。年収六百万から六百九十万までの層になると結婚率は五七・六%になるんですね。年収一千万円以上の層では結婚率が七〇%と。だから、明らかにやはり年収と結婚率とが関係しているということになるわけですね。これは普通に考えても、やはり年収百五十万、二百万では、結婚すると出産ということが出てくるわけですから、ためらうということはあると思うんですね。

 今、これは一つの例ということなんですが、だから、私が言いたいのは、フリーターの状態にいる若者たちのこういう年収そして雇用の不安定という問題は少子化の克服にとっても放置できない問題だということで、特に少子化担当の大臣でもございますので、青年層全体の雇用の状況についてどういう御認識をお持ちでいらっしゃるか、最初にお聞きしたいと思います。

高市国務大臣 確かに、結婚したくてもできないとか、子供を産みたくても産めないという大きな要因の一つに、経済的な困窮ですとか、それから経済的にも精神的にも自立ができていないといった状況というのはあると思います。

 ですから、これは、政府が十九年度予算でフリーター二十五万人常用雇用化プラン、これを推進しようということで、各項目、各政策に対して予算手当てをいたしておりますし、また、若い人たちで、せっかく就職したのに三年以内にやめてしまう、短期間でやめてしまわれるような方の率も高うございますので、マッチングというものもしっかり行っていって、職場に定着をしていただく、経済的に自立をしていただく、こういった取り組みというのは非常に重要だと思います。

石井(郁)委員 厚生労働省、政府としても、若年者対策としての、今大臣御答弁ありましたけれども、フリーター二十五万人常用雇用化プランというのが確かにあるわけです。

 そこで、この点について伺いますが、これは具体的にはどういう施策として展開して、それで、十八年度の結果もあると思いますので、どんな結果が出ているのかということと、それからまた、今年度もこれは二十五万人のフリーター常用雇用化というプランを掲げていますけれども、二十五万人という根拠は何なんでしょうか。

鳥生政府参考人 今お話がございましたように、厚生労働省におきましては、これは平成十七年の五月から、フリーターの増加傾向の転換を図ろうということで、フリーター二十万人常用雇用化プランということで開始をいたしまして、それを平成十八年度においてその目標を二十五万人まで引き上げるとともに、本年度においても、改善がおくれている年長フリーターの常用雇用化の支援に重点を置いて、フリーター二十五万人常用雇用化プランを推進しているところでございます。

 施策の具体的な内容といたしましては、ハローワークあるいはジョブカフェ等による常用就職の支援、これはハローワークでフリーター向けの窓口を設けまして、常用就職に向けたセミナー、合同選考会の開催、あるいは専任職員による一対一の相談、助言、求人開拓等でございます。就職後の職場定着指導等も行うということで、一貫した支援を実施する、あるいはジョブカフェでのカウンセリング、適性判断等の就職関連サービスをワンストップで提供する、あるいはトライアル雇用による就職支援といったことを内容とするものでございます。

 平成十七年度におきまして二十万人常用化プランを掲げておりましたが、平成十七年五月から十八年四月で二十三・二万人の常用雇用を達成している。それから、平成十八年度でございますが、現在、十二月末現在の実績を集計しておりますが、速報的な数字ですが、二十五・二万人ということになってございます。

 この目標につきましては、平成十五年まで年十万人程度フリーターが増加傾向にございまして、その反転を図る、増加傾向を転換させるということを目指しまして、十七年度は二十万人、それから十八年度については二十五万人という目標を掲げてございまして、これは、二十五万人にとどまることなく、もちろん上積みをどんどん図っていくべく努力していくということでございますが、一つの政策の達成目標として、取り組みの目標として二十五万人という数値を掲げて推進しているということでございます。

石井(郁)委員 一定の実績もあったので二十五万人とされたというふうに伺ったんですが、なぜ二十五万人なんですかという根拠は要するにちょっと御答弁されませんでしたよね。それは無理ですか、無理だったら、それはそれで結構ですけれども。

鳥生政府参考人 先ほど、平成十五年度までに年間十万人程度のフリーターが傾向的に増加していたということを申し上げました。その十万人程度のフリーターの増加ということを見まして、それがずっと増加しているのを、増加傾向をとどめた上で反転させていこうということで、それまで施策を講じている中で、常用化というのは十万人程度は実現できておったわけですが、増加傾向を反転させることができていなかったという中で、それをさらに上積みするということで数値目標を掲げてこうなっているということでございまして、その数値しかやらないという意味ではございませんが、政策推進上の努力目標として掲げているということでございます。

石井(郁)委員 政府は、昨年の十二月だと思いますが、再チャレンジ支援総合プランというのをまとめられたと思います。そのプランによって達成すべき一次目標の中に、二〇一〇年までにフリーターをピーク時の八割に減少というふうにあるんですね。このピーク時というのはいつのことで、何万人のフリーターがいたことなのか。そして、八割に減少させるというのはどういうことなんですか。

鳥生政府参考人 御指摘のとおり、二〇一〇年までにピーク時の八割に減少させるということでございます。

 ピーク時と申しますのは、平成十五年の二百十七万人というのがピーク時でございまして、それの八割の水準ということでございますので、これは計算すると百七十四万人ということになるわけでございますが、そういう目標でございます。

石井(郁)委員 私はどうも理解ができなくて困っていたんですけれども、フリーターは年十万人ずつふえている、そして、二〇一〇年になっても要するに百七十四万人のフリーターがあるということですよね。八割に減少するというのは、フリーターは百七十四万人がいますよという理解なんですよね。八割に減少するという意味が、私はフリーターが八割減るのかなとすっと早のみ込みしたんですけれども、そうじゃないんでしょう。ちょっとはっきりさせてください。

鳥生政府参考人 八割に減少させると先ほど申しましたように、二〇一〇年に八割というのを計算しますと百七十四万人という水準でございます。

 平成十五年まで、先ほど申しましたように、年十万人程度ずつフリーターというのは増加傾向にございまして、新たに流入してくるというフリーターの数というのはかなりございます。その中で、常用化を図ることによってフリーターの数を増加傾向から減少に転ずるということで今施策を進めているということでございまして、それで、二〇一〇年につきまして百七十四万人、ピーク時の八割の水準にまで低下させるという目標を掲げて今推進しているというところでございます。

石井(郁)委員 私は何かとても、こういうことでしかないのかということでは本当にびっくりしているんですね。つまり、ピーク時、二百十七万人のフリーターがありました、努力をして少しずつ、二十五万人常用化プランとかやっているけれども、二〇一〇年には百七十四万人になりますよ、そのぐらい、つまり二割程度が減少しましたよというプランなんですよね。それが二十五万人常用化プランなんですよ。それを、十七年、十八年、十九年、これからさらに、また三年後もやっていくんですけれども。

 結局、どうなんですか。私は、この計算というのはどうしてもちょっとけげんなんですけれども、これは政府の決定、再チャレンジ支援総合プランですから、高市大臣も、こういうことがフリーター問題、フリーターのいわば対策というか、若年雇用対策として掲げている中身なんだということを大臣としても当然御理解の上でお出しになっていらっしゃると思うんですが、ちょっと大臣の御見解、ぜひお聞かせください。

高市国務大臣 莫大な数のフリーターであります上に、非常に長期資産デフレが続きましたから、就職氷河期に就職時期が当たっちゃった人というのは、三十を超えてまだ正規雇用でないといった状態もあると思います。

 ですから、一番望ましいのはフリーターがゼロになるといったことなんでございましょうけれども、政府の中でも、景気の状況に応じて生み出される職業、雇用の数というのは変わってくるわけでございますので、精いっぱい景気も底上げしながら、ある程度数値目標というものも立てなければ努力できませんので、これは数値目標という形で、恐らく今、石井委員が御質問になった趣旨というのは、こんなんじゃ全然足りないじゃないか、もっとピッチアップして、もっとたくさんの方を正規雇用にしてくれという思いでの御質問だと思うんですけれども、とりあえずは今こういった形で数値目標を立てているということでございます。

 だから、ふだんでも正規雇用に変わっているのが大体十万人、そしてまた新規に十万人発生している、でも、この状況をとめよう、反転させようというので、プラス五万人というような形で目標を決めて取り組んでいるということでございます。

石井(郁)委員 これは内閣府が出している調査ですから、国民生活調査、白書等々を見ておりまして、いろいろ若年層の意識なども出ておりますよね。そういう中で見ますと、パートやアルバイトで働いている二十代、三十代の男性の七割強、あるいは女性の約七割は正社員になりたいと望んでいる。みんな正社員になりたいと望んでいる、それは、当たり前だといえば当たり前だと思うんです。

 そういうことからすると、そしてまた冒頭申し上げたパートやアルバイト、あるいはフリーターの賃金水準というのが本当に生活に困難を来しているということから考えますと、厚労省が行っているフリーター二十五万人常用雇用化プランとか、そのほかにもいろいろ若年層の雇用のメニューはありますよ。私は、メニューは幾つかあると思うんですけれども、しかし、このメニューというのは本当にごく一部の人たちに向けてのものでしかない。圧倒的な二百万近いフリーターの層はとてもかかってこない、その恩恵にはかかわれないということで、このメニュー、厚労省がやっているやっていると言うメニューというのは、本当にごく一部のことにとどまっている、これが私は非常に大事な、大問題でないかということが一つ言いたかったことであります。

 それともう一つは、大臣が、景気、経済成長等々の関連の中でも見なきゃいけないという話もありましたけれども、それから、フリーター、ニートの場合は、若者の意識自身、やはり就職してもやめるんじゃないかというような話もありましたけれども、そういう論調も一つはありますよ。ありますけれども、もっと大きな要因としての正社員の採用、これを企業自身が抑制している、この問題がありますよね。

 これもデータでありますけれども、一九九二年のときには、大学卒で正社員の方は八八・六%ですよ。それが、二〇〇二年、十年後には六六・七%。だから、二割はもう正社員にならなくなっている。高卒で見ましても、一九九二年には正社員、六四・八%あったんですね。それが、十年後、二〇〇二年には四〇・四%です。高卒の場合はもっと低い比率になっていますよね。

 だから、企業自身が、要するに、就職、採用時、学生や若者からするとまさに就職時、そこで門戸自身が、正社員の口はもう大幅に減らされている、この問題がありますね。こういう実態はどのようにごらんになっていますか。

高市国務大臣 特に九〇年代は、過剰雇用、過剰設備、過剰債務ということで、本当に三つの過剰があって、企業は倒産を免れるために、また競争力を取り戻すために、そういったぜい肉を落とすための努力を一生懸命されました。その中で、大量の失業者も出ましたし、厳しい時代、新規雇用がないという状況が続いてまいりましたけれども、徐々に景気はよくなってきて、特にことしなどは新規雇用がふえております。非常に数がふえている。そういう意味では、やはり景気の底上げというのは私は必要だ。ぜい肉を落とし切った企業がこれからますます発展をして、もっと、人手が足りないから新しい人を欲しい、まずはこう思ってもらえる状況をつくらなきゃいけない。

 一方で、本人の能力に応じて、今はパートだけれども、またアルバイトだけれども、正規社員に登用していくといった形の取り組みが進むこと、これも私は非常に重要だと思います。

 先ほどおっしゃった少子化対策についても、経済的な安定というのが必要ですので、十九年度予算は特に、先ほど来出ています二十五万人の常用雇用プランのほかにも、非正規労働者の正社員化の機会確保の促進、国家公務員の中途採用の拡大、これも盛り込んでおりますし、閣議決定されて今国会に提出されている雇用対策法、この改正法案、ここでは企業、雇用主の方の責務というものを定めておりますので、こういった議論が進むことで私は改善されていくものと考えております。

石井(郁)委員 私は、やはり社会に出る最初のスタートのところで、本当に正社員の口がこんなにどんどん減らされてきている。これは単なる自然成長的に任せるのじゃなくて、今おっしゃったように、やはり企業の戦略として出ている部分があるわけですから、政府としては、やはりそこはきちんと一定の指導力も発揮していただくということが大変大事じゃないのかな。企業の言うままで進むわけじゃないわけですよね。若者の雇用をいかに確保していくかという問題として対応していただきたいということがあるわけです。

 今お話しのフリーターから正社員になる道という、これはこれとしてあると思うんですけれども、しかし、これもなかなか大変なんですよ。というのは、企業の方で正社員として採用したところでは、能力開発としては事業所は大変努力します、正社員には努力しますと。しかし、契約社員だとかあるいはパートタイマーなどではそれほど力を入れない。だから、ずっとアルバイト、フリーターをしていれば、そういう能力を身につける機会はないですよね、現実に。

 先ほど、政府がやっている日本版デュアルシステムに少し行くとか、そういう方は少しあるかもしれないけれども、圧倒的にはずっとフリーター、これは長いわけですから、その過程で職業体験あるいは専門的な知識を身につけるということが非常にできない。正社員になった人たちは能力が開発されていく。企業が準備します。しかし、そのほかは、そういう機会が置かれる。では、なおのこと正社員になる道というのは少なくなるじゃないですか、閉ざされるということになるじゃないですか。

小宮山委員長 済みません、申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

石井(郁)委員 済みません。この問題は大変重要な問題だということを指摘させていただきまして、時間を過ぎましたけれども、ぜひ高市大臣には、青少年の担当大臣としても、この問題に取り組んでいただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小宮山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これで散会いたします。

    午後零時二十五分散会


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