衆議院

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第3号 平成19年11月6日(火曜日)

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平成十九年十一月六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 玄葉光一郎君

   理事 江崎洋一郎君 理事 後藤田正純君

   理事 実川 幸夫君 理事 菅原 一秀君

   理事 萩生田光一君 理事 笹木 竜三君

   理事 吉田  泉君 理事 古屋 範子君

      安次富 修君    井澤 京子君

      岩屋  毅君    上野賢一郎君

      大塚 高司君    佐藤ゆかり君

      西本 勝子君    馳   浩君

      福岡 資麿君    松本 洋平君

      山内 康一君    菊田真紀子君

      田名部匡代君    石井 啓一君

      石井 郁子君

    …………………………………

   参考人

   (教育評論家)

   (法政大学キャリアデザイン学部教授)       尾木 直樹君

   参考人

   (NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事)  小森美登里君

   参考人

   (財団法人インターネット協会副理事長)      国分 明男君

   参考人

   (“ののいちっ子を育てる”町民会議事務局)    桝谷 泰裕君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  井脇ノブ子君     佐藤ゆかり君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     安次富 修君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     井脇ノブ子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 青少年問題に関する件(子どもとインターネットをめぐる諸問題)


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     ――――◇―――――

玄葉委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件、特に子どもとインターネットをめぐる諸問題について調査を進めます。

 本日は、参考人として、教育評論家・法政大学キャリアデザイン学部教授尾木直樹君、NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事小森美登里さん、財団法人インターネット協会副理事長国分明男君、“ののいちっ子を育てる”町民会議事務局桝谷泰裕君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 それぞれの参考人の皆さん、本日は、御出席を賜りまして、心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 特に、尾木参考人におかれましては、昨日まで、夕刻まで出席を予定していた参考人がやむを得ない事情で出席できなくなりまして、急遽お願いをさせていただいて、御快諾をいただいたということでございまして、特に御礼を申し上げたいと思います。

 参考人の皆様には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただいて、私たちの参考にさせていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人の皆様からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと思います。

 なお、念のため申し上げますけれども、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようにお願いをいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承いただきたいと思います。

 それでは、まず尾木参考人にお願いをいたします。

尾木参考人 おはようございます。法政大学のキャリアデザイン学部の尾木直樹です。

 急遽立ちましたので、ふだん教育評論活動とか、私の専門は臨床教育学ですので、そこの領域からお話をしていくということしかできませんので、よろしくお願いいたします。

 実は、お手元に資料があると思いますけれども、「ウエブ汚染社会と子どもの発達」ということで、ウエブ汚染の問題が子供の発達にどうかかわっているのかというところを重点的にお話ししていきたいというふうに思っています。

 一つは、「ウエブ汚染の現状と特徴」というので、直接的な影響がどう及んでいるのかという問題と、それから間接的な影響、実は、僕の専門領域からいうとここが重要なんですけれども、子供の成長、発達、人格の成長にとってどんなにダメージが大きいのかという問題を二つ目でお話ししようと思っています。それから三つ目は、ではどういうふうにしてその環境整備を整えていけばいいのか、家庭生活や学校や社会全体でという具体的な展望についてお話ししようと思っています。

 ただ、これが、時間が十五分ということですので、いつも僕、講演は二時間ぐらいいただいていますので、とても無理だとわかっていますので、きょうは一番と二番のところ、特に重点を二番に置かせていただいて御報告したいというふうに思います。

 まず、「ウエブ汚染の現状と特徴」というところなんですけれども、まず一番目の国民的な普及の中での影響の問題ですね。

 最新のデータをちょっと掲げておきましたけれども、小学生の三一・三%、中学生の五七・六%、高校生の九六・〇%が今携帯を持っています。これは、ことしの三月、総務省が調査された数字ですね。ここまで多くなってしまっているということですね。これは、単純に電話の機能ではなくてインターネットへ全部アクセスできているということ、ここが大きな影響を持ってきます。

 二番目のところですけれども、子供をねらうサイバー犯罪の急増ということで、二〇〇七年二月の警察庁発表の資料もずっと大量に資料編後半に入れてありますけれども、ごらんいただくとわかるとおり、ネット利用の子供の性的被害なんというのは前年度の一・五倍になっています。

 それから、名誉毀損だとか誹謗中傷等に関する相談も、前年比でいうと三九%増というので、大変激しい増加率を示しています。それから、子供たちのところでいいますと、ブログに、死ねとか、うざいとか、きもいとか、添付写真が流出したり、そういういじめとの関連というのも、今、この二、三年来急激な変化を示しています。

 それから、出会い系サイトに関する事件というのは、何と八三・一%の子供たちが被害に遭っている。ほとんどが子供がねらわれてしまっています。

 それから、出会い系サイトへのアクセス手段として、携帯の使用は九六・六%ですね。ほとんどが携帯だというふうに思っていただいていいんです、パソコンの方ではなくて。

 それから、ワンクリック詐欺の巧妙化と被害の急増の問題、これも地下に潜ってしまっていて、実際どれぐらいの子供たちが被害を受けているのかというのは見えてきませんけれども、恐らく数億単位で出てくる数字だと思っています。

 それから、迷惑メールの問題ですね。

 それから、盗撮される問題だとか、あるいは子供たちが自殺サイトとか暴力、薬物サイトに入っていって、実際に命を絶ってしまった子供も一人、二人ではありません。こういう状況があります。

 それから第三番目には、サイバー犯罪といじめに活用する子供たちの問題ですね。

 ここが、きょうも朝の七時にNHKのニュースを聞いていましたら、いじめの件数が前年比六倍になった、十二万五千件というふうに出ていました。だけれども、実数は全く反映されていないな、ゼロが一つぐらい少ないだろうというふうに思いましたけれども、また話題になるんじゃないかと思います。

 いじめの蔓延ということでいいますと、いじめ自殺予告が伊吹文科大臣のところに出て、大変な大騒ぎになったりしたのが去年でしたけれども、去年、二〇〇六年からことしにかけてを、僕はいじめの第三のピーク期と呼んでいます。いじめを文科省がカウントされ始めたのは一九八五年からですけれども、八五年から八七年、第一のピーク期を迎えます。九四年から九六年が第二のピーク期を迎えて、今回、二〇〇六年、去年から第三のピーク期を迎えましたけれども、この第三のピーク期の大きな特徴は三つあるんです。

 第一点は、極めて量が膨大な数になってしまった。けさのNHKの発表どころではない実数になってしまっているという問題ですね。

 それから二つ目は、高学年化してしまった問題です。いじめというのは、ほとんどが中学校が現場だったんですね。ですから、十年前、二十年前のいじめのドラマとかいろいろなのは、全部中学校が舞台です。ところが、皆さん御承知のとおり、フジテレビが最近まで放送していた「ライフ」といういじめの番組、ドラマですね、あれは高校が舞台になりましたよね。あれ、ドラマの舞台が変わったことに端的にあらわされるように、今、高校生がもう本当に苦しんでいます。

 それからもう一つは、いじめる手段のほとんどがメールになってしまった、携帯になってしまったということですね。だから、学校の先生たちはますますつかめませんし、きょうのいじめのデータが全然実数に合っていないというのも、とらえることができないんですよね、メールですから。

 こういうふうにして、実はメールが、インターネットがいじめの質を変えてしまったという問題、量的な増大と高学年化と、それからメールによる陰湿さを持ってしまった。ここのところを見落としては、現在のいじめも語れませんし、メールと子供の成長ということを語ることもできないというふうに思っています。

 ちょうど去年の六月段階で、京都大学大学院の木原雅子准教授が、日本PTA全国協議会とP連、高校の方のP連ですけれども、そちらと共同して、六千四百人余りの高校二年生を対象にアンケート調査をされましたけれども、その中で、驚くべきことに、高校の一年生、四月に入学して、高校二年生の六月になるまでに自分がいじめを受けた、高校生になっていじめを受けたと答えた男子高校生についていいますと、三八・〇%ですね。四割近い高校生が、いじめをわずか一年ちょっとで受けているわけですよ。こういうふうにして、急激に変化しているんですね。

 これを引き起こしているのは何かといいますと、子供たちが未熟になったという問題じゃなくて、高校生は九六・〇%、ほとんど全員が携帯を持っているわけですよね。その携帯で、簡単にいじめ返すことができるわけです。ですから、小中学校でいじめの被害者だったけれども、高校になっていじめをするようになった、つまり、携帯で授業中でもどこでもやれるわけですね。そういうふうに切りかわった子は、もともといじめを昔からやっているよという子に比べて、木原准教授の調査では、何と十七倍多いという状況ですね。ですから、小中でいじめられた子がぱっといじめっ子に簡単に変わることができるのが携帯だということですね。だから、いじめの様相も急変してしまっています。

 それから、学校現場関係でいいますと、学校裏サイト、これが今大変先生方や子供たちを苦しめています。最近の調査、ことしの二月のメディアシークの調査では、六八%の学校に学校裏サイト、公式の表のサイトではなくて裏サイトがある。ここで書きたい放題が語られていまして、先生も集中砲火を浴びて、本当にデマと嫌がらせみたいなのでノイローゼになっている先生も多数おられます。

 それから、「YouTube」、動画投稿の無料のサイトですね。ここで、いじめを自分たちの携帯で録画したのを流すというような事件が去年の十一月ぐらいから起きて、ことしも六月、埼玉でもありましたけれども、そういう状況。

 それから、今、プロフが大変流行しています。ほんの四、五日前も、あるところで女子中学生に聞いたんですけれども、やはり女子中学生の半分ぐらいはプロフをやっていますね。これが残虐ないじめにつながっています。だけれども、学校の現場の先生方にプロフを知っていますかと聞きます。そうすると、一割から二割しか手が上がらないんです。つまり、今のインターネットの問題というのは、私たち大人の方が知らないうちに、どんどん現場というか、子供たちのところで進んでしまっていて、すべてが後手後手になっているということですね。

 それから、SNSのミクシィなどの中でのいじめというのは、これはもう言うまでもありませんけれども、極めて閉鎖的ですから残忍ないじめになっていますし、それから、ネットオークションなんかでの加害、被害、どちら側にも立っている。加害者側にも子供たちがなっているという事態。

 それから、不正なアクセスの問題というのでありますね。

 それから四番目には、経済的な負担。

 私の法政大学のゼミの学生と全国四千人調査というのを、去年、おととし、やってみました。その中で、大体携帯の料金を五千円から八千円払っているんですね。そのお金を払うために高校生がバイトをしているとか、本末転倒しているような状況もあります。

 では、こういう中で、「メール依存と子どもの発達不全の広がり」というので、実は間接的な影響、ここが極めて深刻です。

 臨床の我々の現場からいいますと、大変な事態になっていて、一つ目は、いわゆる携帯というのがかつての通信手段からコミュニケーションツールへ変質してしまっている問題ですね。

 その中では、メール依存症と言いますけれども、朝起きて顔を洗うときも、それからおふろへ入浴しているときも携帯を離せなくなってしまっている中学生、高校生が今大量に出ています。だから、携帯の会社の方は、おふろの中にぽちゃっと落としても大丈夫なような、ことしの八月に開発されました。そういう開発はやめてほしいなと思いますけれども、そんな状況ですね。多分、売れていると思います。

 それから、あと、コミュニケーション不全の問題でいいますと、そこにも書きましたけれども、女子中学生の四〇%が、面と向かって言えないことを言えるというふうに答えているんですね。これは、私ども法政のゼミの学生の調査ですが。それから、三〇%が、本当の自分を出せる、そんなことはないんですが、錯覚を起こしているわけですね。それから、違うキャラクターを演じることができるというのが一〇%います。

 これが、バーチャルなコミュニケーションが対面コミュニケーションスキルとか非言語的表現読み取り能力を低下させていくという問題、本当のコミュニケーションスキルが落ちていくわけですね。それは、学生たちがアンケートを四千人とった中で、この後も、大学生になると自分が持っていなかった小中学生時代と比較することができますので、コミュニケーションのあり方の変化というのを鋭く指摘しています。

 それから、次のページをめくっていただきますと、携帯が友達関係をグルーピングしていくという問題ですね。今、中学生の間で友達をつくっていく手段になっているのが携帯です。

 これは、一つは、レスポンス速度の強迫観念というふうに書きましたけれども、携帯にメールが入ってきたら、レスポンスするのはどんなに最大待っても十五分というのが全国の標準です。十五分以上たって返信をしなかったら、アドレス帳からぱっと消されます。友達というのはなくなるんですよ。それで、僕も信じられなくて子供たちに取材したんだけれども、そんなの常識でしょうと言いまして、なぜ聞くのかというようなけげんな顔をするぐらいな状況ですね。だから、依存症も余計ひどくなってくるというふうに思います。

 それから、家族のきずなを分断しているんじゃないか。よく、お母さん方は、安心できるから、いつもつながっていられるからとおっしゃるんですけれども、これは逆であって、今、プチ家出というのも実際に消滅している状況ですね。警察の発表なんかでいいましても、家出というのは昔言われましたが、今、家出と言わなくてプチ家出と言うようになりましたが、今、プチ家出というのもはやらなくなってしまいました。

 なぜかというと、お母さん、友達のところへ泊まるねとか、ぴっと一本メールを入れておきますよね。メールが入っちゃったら、警察に届けを出したりしないんです、連絡があったというので。どういう事態でどういう状況で入れているのか、何もわからなくても、親も大きな錯覚に陥っているというので、断絶しているというふうに思いますね。つながっているつもりなんだろうという感じがあります。

 それから、時間が来ていますので急ぎます。

 人間不信だとか大人不信、あるいはゆがんだ男性観が形成されていくという問題です。これは、メールによる一種のカルティベーション効果じゃないかなというふうに私は思っています。人間というのはこんなものじゃないかとか、汚い社会だなとか、男の人というのは怖いなとか、だますのが人間の本性だとか、そういう環境に置かれているわけですから、そういう錯覚を起こしていくんじゃないかというのが、教育関係からいうと非常に怖いです。

 それから三番目のところ、情報の海におぼれる子供たちということで、知らなくてもよい情報にいっぱいさらされているという問題ですね。その中では、社会的なモラルの崩壊というのも、今学校で道徳教育というのが強調されていますけれども、足元を崩していく現象じゃないかなということを思っています。

 それからもう一つは、四番目です、匿名性とか感情露出による攻撃的人格の形成。これも、メールをたくさん使っている子ほど言葉の攻撃性が強いということも、相関関係はいろいろ出ています、データ的に。ここのところも、今、中教審では言語教育を重視しようという方向に行っているわけですけれども、このメールの問題を語らずに、言葉の教育というのは成り立たないんじゃないかなと思っています。

 それから五番目のところ、ブログだとかホームページが奪う思春期の自我発達の保障というふうに書きました。これは、自己形成が非常に不全の状況に陥ってくる。つまり、思春期というのは第二の自分を見詰め始めるわけですね。葛藤します。その葛藤を全部ブログに書いちゃうわけですね。

 昔、我々のころは、特に女子中学生なんかは大学ノートなんかに書いていたんですね。四、五日たって見ると、もう恥ずかしいようなことを書いているわけですよね。ひょっとしたら、破り捨てていたかもわかりませんが、それを、まるで大学ノートを一ページずつ、毎日、朝、自分のうちのブロック塀に張るような行為なわけですよね。世界に発信するわけですから、書き込みも当然あります。

 そうすると、せっかく、例えばダーティーな自分だとかいろいろな自分と向き合っているのが、全部はぐらかされていくんですね。そして、読まれるということを意識しながら日記を書くものですから、本当の思春期の葛藤と向き合うという作業ができないんです。深い心の営みというのが阻害されます。これが、僕は非常に怖いなというふうに思います。

 ここらへんのことは、本当に脳科学者は、いろいろな英知を集めて研究しなきゃいけないんだろうというふうに思っています。

 あと、では具体的にどうすればいいのかということは、ちょうど時間が来てしまいましたので、一応ここで報告を終わりますけれども、質疑応答の中でなるべく言えるようにしたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 言い足りなかった部分については、どうぞ質疑で補っていただければと思います。

 次に、小森参考人にお願いをいたします。

小森参考人 私は、NPO法人ジェントルハートプロジェクトの小森美登里と申します。

 本日は、お招きくださいましてありがとうございました。本日は、活動の中で感じたことなどをお話しさせていただこうと思っております。

 私たちの活動は、講演を中心に、いじめによって死へと追い詰められた天国の子供たちのメッセージなどを展示会という形で発信しており、教育委員会なども含め、多くの自治体の皆様にも私たちの活動を御利用いただいています。本日も、実は福島市の方で別の理事が、青少年育成活動推進指導者研修会というものに出向いております。私もあした、会津若松というところで同研修会にお招きいただいているんですけれども、この活動を始めて五年目になります。

 その間、多くの学校の先生、児童生徒の皆さん、そしてまた高校生なども含め、多くの出会いを重ねてまいりました。全国で今、約四百五十カ所のところで講演をさせていただいたので、その活動の中で感じたことなどの視点も含めてお話しさせていただこうと思います。

 また、もう一つあるんですけれども、きょう、参考人の皆様の中で、私は唯一、いじめ自殺の遺族であると思います。その経験をしましたのは今から九年前です。この九年間の中で感じたことなども遺族の立場として少し織り込ませていただこうと思っております。

 私にとってジェントルハートプロジェクトの活動は、我が子を亡くした後、我が子のその苦しみを改めて検証する作業で、本当につらいものになりました。いじめ問題の勉強をすればするほど、自分は親として言ってはいけないことを言っていた、してはいけないことをしていたと多くの発見があったからです。私は、多くの大人の方に、私と同じとまでは言いませんけれども、毎年六百人以上の子供たちが死に続けているこの問題に、この視点を持っていただければなと思っています。

 守れるはずの命が守れなかった、そしてそのことに私は罪を感じています。この九年間、いじめで亡くなる子供たちの人数を減らすことができなかった、守れない命がきょうもまた、一日に約二名ですけれども、生まれ続けているという事実に、胸が締めつけられることがあります。そして、こんな状況を見ていて、自分は生きていていいんだろうかとつい思ってしまうことも正直あります。

 しかし、この苦しい作業は、この経験は、逆に、子供たちの苦しみにより近づくことができたというふうにもなっています。

 インターネットのいじめについては、まだまだ勉強不足のところがあり、どこまで皆様の御質問にお答えできるか、正直自信がありませんので、後ほどの質問には、我が子の苦しみから、今生きて苦しみ続けている子供たちの立場を知った遺族として、また先生方の生の声を日々聞いている立場として答えさせていただければなと思っております。

 私は、この活動の中でさまざまないじめの形態を知ることになりました。その数ある中の一つが、本日のテーマのインターネットを使ってのいじめです。このいじめに対しては、数人の学校の先生から全く同じ発言を聞いて、驚いています。それは、携帯なんかなければいいと思っているという発言です。

 子供が小学生のときに、子供の安全と親の安心のために、キッズホンのような携帯を親の方から持たせました。そして、中学校になったときに、自然と子供たちは機種を変えたりします。小学生まで持っていたものを中学生で取り上げるということは、親にとっても子供にとっても、私は非常に難しいことではないかなと思っています。与えた側の大人である学校の先生方が携帯なんかなければいいと言うのは、矛盾といえば矛盾ですが、この言葉に先生方の苦しみが集約されているように感じます。

 このように、ネットのいじめは、被害を受けている子供たちだけが苦しんでいるのではなく、先生方もそのいじめ対策に非常に苦慮され、解決の糸口はなかなか見つからないというのが現状です。

 そして、ネットを含めるいじめ問題では、先生方も精神的にかなり追い詰められています。ある学校では、先生の二割に当たる人数が精神科へ通院されているという驚愕の事実を耳にしたこともありました。子供たちのうつ病が非常にふえていることが話題になっていますが、先生と生徒の両方がうつ病の学校を、どうぞ一度皆様も想像していただきたいと思います。

 実は、それに加え、いじめで苦しんでいる子供がうつ病になり、その母親もうつ病になって、解決できない学校を責め立てるという現場を何度か目にしています。先生方は、その母親といじめ問題の対応で追われ、学校に行きたくないと言っているのです。そのいじめには、ネットいじめも一つの手段として用いられていました。確実にいじめ問題でうつ病の連鎖が生まれています。解決には、先生方に時間と心の余裕をつくることが必要です。

 ネットいじめには幾つかのパターンがあるようですが、この先また新しいものがどんどんと出てくるのではないかという恐ろしい予想もできます。

 携帯での死ねや消えろの連呼、まだ生きているのか、または死ぬ勇気もないのかという言葉で死へとどんどん追い詰めることもありますが、それ以外にも卑劣な使い方はいろいろあります。

 まず、プロフというものについてお話ししたいと思います。

 これは、仲のよいお友達同士や出会った人がお互いを知るために情報を交換するためのものですが、仲のよいうちはよい形で機能すると思います。フォーマットが用意されていますので、子供のころから機械になれている子供たちにとっては、情報を入れるだけで簡単につくれてしまいます。写真も入れることができます。しかし、一たび人間関係に亀裂などが入ってしまったとき、この情報をいじめのために利用するわけです。

 言うまでもなく、これはとても詳細な個人情報ですから、本来なら大切に扱われなければならないはずですが、これを出会い系サイトに援交希望としてメッセージが載せられてしまうわけです。もちろん、現存するデータを送るだけですから、ワンクリックで済んでしまう簡単な作業で、手間は全くかかりません。その後、被害者には連日携帯に何百というメールが届くだけでなく、個人情報が流されていますので、身の危険が生じることも十分考えられます。

 被害が拡大した一つの要因として、子供にとって操作がすべて簡単なものになっているということも関係していると思います。逆に、大人たちが変化や情報になかなか追いつけない実情が問題の深刻化に拍車をかけていると感じています。

 昔のように、写真を撮って現像して、それをチラシに刷って、近所じゅうに配り歩かなくてもよいわけです。ですから、配っている姿をだれかに目撃される危険もありません。メッセージでもつけて、すべてワンクリックです。面倒なことは一切なく、簡単な作業で人の心をずたずたにすることができるのがこのネットいじめです。

 皆さんはいかがでしょうか。きょうじゅうに自分のプロフをつくって知り合いに送る、そう言われたときに、その操作、それがすぐにイメージできたり、理解できるでしょうか。しかし、ほとんどの子供たちはすぐに理解できるのです。

 ネットでのいじめの特徴としては、匿名性を生かせるということがありますので、ふだん弱い立場の人が強い人へも攻撃ができます。生徒が先生へ、部活の後輩が先輩へ、また、年齢や性別を偽って、架空の人物を装ってこれらのことをすることもできます。そうなれば、個人での発信者の特定はますます難しくなります。

 よく大人は、被害を受けているのにどうして子供たちは被害を先生や大人に相談しないのかとか、勇気を持って相談しなさいと言います。しかし、残念ながら、大人たちが解決の糸口やそれらを持っていないのが現状で、それを知っている子供たちは、これからも大人には相談しないと思います。まして、そのいじめが性的なものだとしたらどうでしょう、より言えないのではないでしょうか。

 ネットいじめにかかわらず、これはすべてのいじめに対して共通に言えることで、子供たちは、言えば大人は解決してくれるとは思っていません。とはいっても、相談している子供はいます。大人の方で解決能力をつけたいと思います。また、打ち明けるときは苦しみの限界を超えそうなときではないでしょうか。

 ほかにも、大人に言えない理由として、子供たちにとってメールやパソコンは欠かすことができない存在になっていることを確認しなければなりません。大切なものを親から取り上げられることは非常につらく、なかなか告白できないという心理が働くと考えられます。被害防止のために、部屋でインターネットはさせないと親が決め、パソコンを居間に置いたとしても、携帯やゲーム機からどこへでもアクセスはできます。子供にとって携帯が非常に大切なものであるという認識からいいますと、その大切な携帯に反応しなくなる、つまり、鳴ってもすぐに出ないというのは、いじめを受けているサインの一つと思ってもよいかもしれません。

 また、もう一つ、傍観者でいるしかない子供たちがたくさんいます。この子供たちの苦しさを御理解いただきたいのです。

 インターネットのいじめは、一斉配信ができますので、いじめられている子はすぐにわかります。例えば、だれかがそのいじめられている子に対し、正義感からその子を守ろうとしたとします。ところが、そのことによってターゲットが守ろうとしていたその子にかわり、帰りにみんなに羽交い締めにされ、裸の写真を撮られてしまったらどうでしょう。その写真を一斉配信されたら、次の日から学校に行くことはよほどの勇気がない限りできません。

 このような事件は、親へもなかなか相談ができないのです。プライドも生きる力も奪い取られた心は、体も動かなくなってしまいます。そして、そのままうつ病を発症することも少なくありません。大人たちも、それを想像すれば、いじめられている子を助けずに苦しい気持ちを抱えている傍観者と呼ばれている子供たちの痛みを御想像いただけると思います。傍観者も加害者と言っている大人にもう一度現実を直視していただきたいと思います。

 このような形で学校に戻れなくなってしまった子供はたくさんいます。飛躍してお感じになる方もいるかもしれませんが、実は引きこもりや不登校やニートはいじめ問題と深くかかわっています。将来起こるこれらの数字を減らすには、いじめ問題を解決しなければならなかったのです。子供たちにとって、ネットいじめは大人が想像する以上の恐怖です。

 発信者が特定できないとされているネットいじめですが、実は、子供たちの中では大体だれがやっているか想像がついている場合も少なくないようです。また、ネットいじめには実は証拠が残っています。警察への通報の結果、管理者から情報を聞き出し発信者が特定できたり、悪質なサイトの管理人への削除を求めることもできるわけです。発信者が実は特定できるということを周知することも大切な気がしています。

 残念ながら、これらのことは一時的な抑止力で、対症療法にしかならず、小手先だけでは解決しないというのがいじめ問題の現実だと思います。幾らさまざまなフィルターを駆使しネットのいじめを減らすことができたとしても、加害行為をしているその人の行為はとまらないと思います。なぜなら、相手を傷つけたいという、そんな心は、インターネットの中でまた必ず抜け道を探します。理屈ではなく、どんな理不尽なことでも自分の中に理由を探し、相手を傷つける道を探します。完全にインターネットがなくなったとしても、残念ながらいじめはなくなりません。

 その意味からいいますと、究極は、心についてもう一度子供と大人が一緒に探求する作業ではないかなというふうに私は感じています。子供たちの心が十年後の日本をつくる、二十年後の日本をつくると想像したとき、今私たちは子供の心に真正面から向き合わなければならないときが来ていると思います。遅過ぎると思っています。十歳の子供は十年後二十、二十の人たちは十年後三十歳、十年後の日本を変えることはできます。

 いじめを減らすことはできます。子供たちの心と命を救いたいと私は思っています。大人が子供たちの考える力を奪っているのではないか、子供が、子供たちを信じる心が今とても希薄になってしまって、何か教えようとしているのではないかと思います。一緒に心と命について考える、そんなプログラムを提供することによって、私は、きっといじめ問題は解決できると信じて今の活動をやっています。

 ありがとうございました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 次に、国分参考人にお願いをいたします。

国分参考人 インターネット協会の国分明男です。

 私は、インターネットの始まりのころは、つくばの国立研究所に勤めておりまして、コンピューターシステムの研究開発をしておりましたので、インターネットとは随分長いおつき合いになるわけでございます。

 誹謗中傷というような問題については本当のインターネットの初期のころから存在しておりましたが、昔は、今日のような社会的な問題になるような事件もなく、比較的インターネットの光の部分が前面に出て、平和な時代であったかなというふうに思う次第でございます。

 今日、先ほどからお話がありますように、ネットいじめでありますとか、このところいろいろマスコミの方々に取り上げていただいておりますというか、我々も取材で非常に大変な思いをしている、やみサイトの問題でありますとか、自殺サイトといった影の問題がこのところ前面に出てきて、私どもとしては、問題解決をどんどんしていかなければならないなというふうに考えております。

 ただ、物事のとらえ方として、インターネットあるいは携帯の利用が、問題解決をしなければいけないわけでございますが、やはり光の部分といいますか、それを正しく活用するという考え方も必要であろうかというふうに思っております。

 そういうわけで、インターネット協会がこのところずっとやっておりますいろいろな活動について、まず御紹介をさせていただきたいと思います。

 お手元のこの一枚の資料をごらんいただきたいと思いますが、右斜め上の「インターネット上の違法・有害情報対策の包括的枠組み」という図がございます。

 これは、こういうインターネットのいろいろな問題を解決する際に、何か一つの特効薬で問題が解決するというわけではなくて、一つは、インターネット業界として、インターネット上のいろいろな問題に対してどういうふうに対処するかというガイドラインをつくるでありますとか、利用者への普及啓発をするというのがまずございまして、それから技術的な対策としてフィルタリングというものがあります。それから、当然やはり違法な行為に対しては法執行機関が対処するという部分がありまして、それから四番目として、ホットラインというものの存在があります。真ん中に「利用者のメディアリテラシー」と書いてある部分がございますが、ここがやはり一番コアな部分かなというふうに思っております。

 それで、左の下の方の絵にありますように、「インターネットを利用するためのルールとマナー集こどもばん」というのを、まず一九九九年十二月に初版をつくりまして、二〇〇四年八月に改訂版を公表いたしました。これは、一番最初につくったときは、まだパソコン通信からインターネットに切りかわるころでしたが、いろいろな事業者のノウハウといいますか、ユーザーサポートのところで、ユーザーからのいろいろな問い合わせ、クレーム、その他問題解決をしなければいけない部分に対してどういうふうに対処していったかというのを持ち寄りまして、それを整理して、やはりユーザーのレベルが上がれば事業者も非常にその分だけ助かるわけでございますので、インターネットを利用するためのルールとマナー集という形でまず大人向けのものをまとめまして、それを子供版というふうにリライトしたわけでございます。

 この中身は余り深く立ち入りませんけれども、ポイントは二つありまして、一つは自分の身は自分で守る、それから相手のことを思いやるという原則のもとに、インターネットの利用について、子供が使うときのよりどころになるようにまとめたものでございます。

 それから、それだけじゃなくて、右の方に「インターネットにおけるインターネットルール&マナー検定」というのがありますが、実際にオンラインで、これは無料でネット上で提供しているものであります。一番最初のころは期間限定でやっておりましたが、昨年から通年で、いつでも子供たちが学校の中で、あるいは家庭で実際に受検できるようにということで通年にしまして、現在四万人を超えておりまして、主に中学校で、最近は学校の中で、正規の授業ではないと思いますが、こういうものを受検するというケースが非常に多くなってきております。

 それから、そういう子供たちのメディアリテラシーへの取り組みのほかに、フィルタリングの技術開発について、かれこれ十年ぐらい前になりますが、まず技術開発をいたしまして、現在普及をいろいろ試みている取り組みがございます。

 お手元の資料の裏側に「フィルタリング」と書いてある部分がありますが、方式はいろいろありまして、パソコンですと、手元で、パソコンの中にフィルタリングソフトを購入していただいて入れる、それから携帯ですと、携帯事業者のところでフィルタリングする、そういう仕組みのものでございます。

 「ケータイのフィルタリング」は右の方に書いてありまして、携帯電話事業者のネットワークからインターネットにつながるところにフィルタリングの機能があって、そこで子供ごとのカスタマイズといいますか、それができないんですが、とにかく出会い系サイト等はブロックできるようになっております。

 そういうメディアリテラシーあるいはフィルタリングの取り組みのほかに、昨年の六月からインターネット・ホットラインセンターという組織をインターネット協会の中につくりまして、警察庁からの業務委託という形で、インターネット上に存在する違法・有害情報を広く国民から受け付けて、それを分析して、違法なものであれば警察庁にそれをレポートする。警察庁が直接捜査に入らないようなものについては、四十八時間後にインターネットの事業者の方に削除要請をする。それから、犯罪の一歩手前になるような有害情報については、直接そういうインターネットの事業者のところへ削除要請をする。

 インターネット事業者にとっては、削除要請をインターネット・ホットラインセンターから受けると、自分たちはユーザーとの間で利用約款、契約がありますので、ほとんどの契約の中には、公序良俗に反する行為は契約を解除するとか、除名するとか、そういうような規定が含まれておりますので、それに基づいて削除要請にこたえる、そういう形になっております。

 スタート前は、そんなにたくさん通報が来ないだろうというふうに思っていたわけでございますが、実際にスタートしてしばらくしてからどんどん通報がふえまして、昨年の六月からことしの五月までの丸一年の統計では、お手元にありますように、通報件数が六万十件、この中には重複して通報されるものとか、違法でないものとかが含まれておりますが、その中でも違法情報としては九千四百三十九件、それを警察庁に通報して、その結果として警察庁からいただいた数字では検挙件数十八件、捜査中四百件ということで、これはことしの五月までのデータですが、その後、六、七、八とずっと少しずつふえておりまして、なかなか体制的にもきついものがあります。

 ただ、インターネット上にそれだけ違法なもの、有害なものがたくさんあるという現実をあらわしているわけだというふうに思っております。

 今後どんどんどんどんそういうものがふえるに従って体制を強化していくだけだと、何かいろいろな、費用的な面でも限界にぶち当たるというふうに考えておりますので、できるだけ、コンピューターソフトとかそういうサポートのいろいろ道具立てを整備して、少ない人数の中で、どんどん増大する違法・有害情報への対処を進めていきたいというふうに思っております。

 大体、インターネット協会としての取り組みは以上でございます。

 どうも、御清聴、ありがとうございました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 次に、桝谷参考人にお願いいたします。

桝谷参考人 石川県野々市町から来ました桝谷と申します。よろしくお願いします。

 私どもの取り組みにつきましては、お手元にこういったパワーポイントのプリント、それとA3二つ折りのプリントが行っているかと思いますが、それをもとにお話をさせていただきます。

 まず、石川県野々市町でございますが、そこの一ページ目の下に世代別人口が載っておりますが、非常に若い町でございまして、金沢市の南部に位置しまして、ベッドタウンでございます。青少年人口が石川県一の町でございます。団塊の世代、六十歳前後の方よりも三十歳前後の方が多く、いまだに小学校の増築等を行っているような町でございまして、町内に金沢工業大学及び石川県立大学と二つの大学も抱えております。

 そうした町ですので、当然、青少年健全育成活動というものを町づくりの核にしなければ、町全体の教育、文化の質の低下を招くということで、二ページ目に移りますが、町ぐるみで青少年健全育成活動は昭和の終わりぐらいから積極的にやってまいりました。

 そういう中で、どこの町でもございますように、愛と和の一声運動とか、町内一斉美化清掃等の通常的な活動のほかに、下にございますように、住民運動として、町内が交通の要衝でございますので、ラブホテル建設の反対の運動とか、ゲームセンター出店阻止運動とかというような住民運動も町全体で行っております。これが、“ののいちっ子を育てる”町民会議という団体でございます。町内のPTA、学校、その他子供にかかわる団体六十団体が加盟して、一つの大きな町民運動として行っております。教育委員会の絡みとしては、私も教育委員会職員でございますが、事務局の一翼を担いながら、町全体での運動を進めているわけでございます。

 そこで、平成十二年ごろから、我々は、実は携帯電話の問題に気づき始めました。子供たちが少しずつ校内に持ってきたり、町の中で、特に大学生あたりが大学生狩りというような犯罪に巻き込まれたり、そのときにはよく、有職青年等が携帯を使って集団で大学生を暴行し、お金を奪うというような事件も町の中に入ってまいりました。そういうことで、平成十二年ぐらいから、特に携帯電話の問題について、二ページの下にございますような学習会を進めてまいりました。

 そうこうしているうちに、平成十四年に、いよいよ携帯が大人から子供へのツールというようなことが顕著になってまいりまして、特に学校内において着信音が鳴ったとか、メールで少しずついじめのようなものが始まりました。

 そういう中で、特に学校サイド、中学校の先生方から、もう学校だけではこの問題は対処できない、町全体で、町の大人皆さんでこの問題に対処していただかないと学校だけでは負い切れないという声が上がりまして、町の生徒指導連絡協議会で協議をいたしまして、そこに、町づくり運動を今までやってまいりました町民会議がその運動の主体となって、携帯電話を小中学生に持たせないという運動を平成十五年度からスタートいたしました。

 その背景となりましたのは、まだ十四年度の末の段階で、町内において小学生が七・一%、中学生で一四・四%と、今考えれば低い数字でございますが、そういった数字でございましたので、まだこれは持たせないということが有効に働くのではないだろうかと。

 そしてもう一つは、先ほどからいろいろな先生方がおっしゃっておるとおり、思春期、小学生等にこの携帯電話というものが本当に必要なのかどうか、その便利さよりも弊害の方が大きいのではないか、社会性の未熟な子供たちがこういったものを本当に持っていいのかという論議を我々はいたしまして、持たせないというような運動を提起したわけでございます。

 これが三ページの下にございますように、「プロジェクトK(携)」と。その当時、NHKさんがプロジェクトXというものを大々的にやっておりまして、ぱくりました。Kというのは、地域の連携の携と携帯電話の携でございます。あくまでも、地域の連携がないとこの運動は推進できないというもとで、この「プロジェクトK(携)」というものを行いました。

 それで、表紙にございますように、一番先にやったのは、こういうロゴマークを最初につくらせていただきました。町内随所にこのロゴマークを張っております。また、学校の先生方が出すプリント、教育委員会の封筒、その他ありとあらゆるものにこういったロゴマークを使って、携帯は危ないんだぞと、まあ、業者からすれば鬼のような取り組みでございますが、こういった取り組みを進めておるわけです。

 それで、実際、子供の実態はどうかというふうなことですが、こちらのプリントをごらんください。最初のページのところに、昨年度末の実態が出ております。携帯電話の所持率でございますが、中学二年生、これは町内全体の保護者アンケートでございます、一二・三%です。先ほどの尾木先生の発表に比べますと非常に低い数字になっております。

 また、その運動に対して保護者がどう支持しているか、右下にございますが、八六・三%の保護者が積極的に支持、または必要な運動というふうに認識をしております。保護者の認識は、ほとんどが連れ買いです。A子ちゃん、B子ちゃんが持っているから私も欲しいわお母さんというのが、子供が携帯を持つ取っかかりでございます。ですから、二〇%を超えてから、本当に必要な子供が持っているのではなくて、いじめに遭わないために携帯を持つ、友達と仲よくするために携帯を持つというのが実態ではないかなというふうに考えております。

 続いて、少し中のページに移りますが、ここは携帯と少し離れますが、子供の生活実態調査でございますので、そこで明らかになったことを、少し脱線いたしますが、御報告いたします。

 ここで注視すべきところは、保育園児の方が小学生よりも平均の就寝時間が遅いということです。今、文部科学省は「早寝早起き朝ごはん」運動を展開しておりますが、この実態をいかが見るか。特に、なぜ我々がこの世代に注目をしたかと申しますと、まさしく、この保護者の世代が携帯初期世代でございます。この方々がどういう教育をこれからしていくかということが非常に大きな注目を集めなければならない世代だと思っておりまして、この保育園の保護者の世代の子供たちの就寝時間が遅い、これは非常に注視すべき結果ではないかなというふうに思っております。

 続いて、三ページ目の中の右下の方に、パソコンの使用の状況ですが、携帯だけではなくてパソコンの実態を調べました。それで、中学生の家庭では、八三・二%の家庭に、インターネットに接続したパソコンが町内にございます。それで、子供たちが使っているのは実際に九五・九%ですので、ほとんどの子供が、八〇%近くの子供が家庭でインターネットに接続したパソコンを使える状態にあります。

 ところが、次の最後のページをめくってください。実際にフィルタリングをかけている家庭は一八%しかございません。つまり、我々は携帯を持たせないという運動をしておりますが、家庭ではフィルタリングがかかっていないパソコンが既に八〇%以上子供たちが使える状態になっているという実態も我々は把握しております。

 そういう状況でございますが、本論のページに戻らせていただきます。四ページ目をごらんになってください。

 我々の運動ですが、別に法規制するわけでもございませんし、条例をつくるわけでもございません。携帯電話の会社に圧力をかけるわけでもありません。こつこつと、保護者や子供、住民の皆さんで学習を積み重ねながら、学習をベースに、携帯を持たないということを町ぐるみで行っております。

 四ページには、小中学生への学習機会の提供ということで、小学校五年生から中学校三年生まで、毎年のように、このような形で、町民会議のつくったプログラムをもとに、学校の先生方や保護者の皆さんに協力いただいて、こういった教室を開いております。また、保護者への学習機会ということで、PTAの皆さんを中心にこういった教室等も行っております。

 五ページ目をお開きください。

 何分、こういった問題を学習しようにも、はっきり申しまして、我々のもとには情報がございません。要するに、学習する教材がないんです。いろいろ国の方では、いろいろな協会等も含めまして、教材をつくっておりますが、実際に地方の末端までに、インターネットで見ようと思えば見れるんですが、そういった教材がないというのが実態でございまして、我々は手づくりで、うちの町の子供たちに合う教材ということで、こういった教材をつくりました。これが中学生向けのプログラムでございますが、こういった学習教材等を自分らでつくっております。

 また、五ページの中ほどに写真がございますが、子供たちに標語を考えていただいて、携帯は要らないんだよという標語を立て看板にし、こういった立て看板を公共施設や学校の前に張っております。ですから、子供たちは、携帯の危険性を、あえて難しい文章を読むわけでもなく、学校の校門をくぐれば、携帯は要らないんだよというようなことを毎日見たり聞いたりしておるわけでございます。

 また、この運動が我々の市町村だけにとどまってはいけないだろうということで、近隣の市町村にも呼びかけをして、五ページの下にございますのは、能美市のプログラムでございますが、我々が協力しながら、能美市さんにおいてもこういった学習プログラムをつくっております。また、いろいろな交流事業を行いまして、群馬大学の下田先生等の御協力もいただいております。

 続いて六ページ目でございます。

 六ページ目には、先ほど、携帯初期世代の三十歳から三十五歳前後の保護者に対してどうこれから提供していこうか、特に中学生の携帯が非常に問題が多うございますが、では、小学生や保育園の保護者にどう啓発をしていくかということを考えましたところ、この携帯の問題の背景にテレビやゲームがあるのではないかと。我々の学習の積み重ねの中で、携帯にすっと入っていくとき、子供たちはゲームから入っているんじゃないかということで、実は、メディア全体の問題を考えようということで、昨年度からこういったテレビやゲームを含めたメディアの学習会を行っております。

 というのが我々のおおむねの活動でございますが、そこで、六ページの下に、布水中学校、町内に二校中学校がございますが、そのうち一校の携帯電話の所持率の推移の表を載せてございます。当初、平成十五年前後は二〇%ございましたが、現在は一〇%前後になっております。全国平均から見るとかなり低い数値となっております。

 そこで、七ページをごらんください。

 管内でございます松任警察署の不良行為の件数の推移を載せてございます。赤いラインが私どもの町のラインでございます。管内的には数値が低くなっているのでございますが、特に野々市町の数字が低くなっている。携帯を持たないからイコールではございませんが、携帯がこういった不良行為に及ぼす影響を考えますと、決して関係なくはないだろうというふうに考えておりますので、我々も時々こういったデータを注視しながら運動を進めておるわけでございます。

 同じように、松任と書いてあるのが旧松任市でございますが、松任市については携帯を持たせない運動はしておりません。ということで、逆に、不良行為等は松任市においては上がっているという状況も片一方にございます。

 そこで、運動の成果と課題でございますが、先ほど申しましたように、八ページ目に移ります、成果で申しますと、保護者はやはり八五%以上の方がこの運動を支持しております。と申しますのは、不必要なものを買わなくてもいいという消費者の視点でこの運動がまず成立しております。また、こういった危険性のあるものを持つことによるいじめ等のこういったトラブルからも回避できるということもあって、保護者自身にすれば非常に助かった運動となっております。そういう中で、子供たちへの浸透ということで、非常に低い所持率となっております。

 それで、次に行きます。

 九ページ目に移らさせていただきます。本年度につきましては、携帯電話対策事業のほかに、特に我々は、WEBチェッカーズというものを町でつくりまして、大人たちが余りにも子供たちのインターネットや携帯の使い方がわからないということで、実は、我々の有志の仲間でこういったWEBチェッカーズという、十ページの中ほどでございますが、こういったロゴマークも入っておりますが、みずからウエブ巡視を行って、今まで五回ほど定例会を開いておりますが、地元の中学生のいじめにつながるような書き込み等を見つけております。やはり大人たちが子供たちの世界もしっかり見ているんだぞというメッセージを子供たちに送ることも、これから非常に重要な課題ではないかなというふうに思っております。

 また、十一ページ目をお開きください。

 先ほどメディア全体の問題を町ぐるみで行っているというふうな話をいたしましたが、十一ページ目にございますように、ノーテレビ・ノーゲームデーというものを本年度から実施しております。ことしの九月から実施いたしました。やはり、携帯電話を持たない、テレビを見ないだけではなく、家庭の中でこういったテレビやゲームを消して親子で話し合う時間が必要ではないかという運動の提起も片一方でやっております。

 そういう中で我々が気づいたことは、下に書いてありますように、情報化が進んでも大切なことは変わらないということです。ゲームより、テレビより、携帯よりも楽しいことを知っている子供を育てようということです。また、大人の役割というのは、大切なことを子供にしっかり伝えるということ、不必要なものは買わないということです。それで、生身の人同士のぬくもりを持っていこうということです。

 また、次の、運動の気づきですが、子供の携帯の使い方と大人の携帯の使い方は決定的に違います。大人は仕事のために使います。子供は楽しむために使います。ですから、大人から幾ら見ても子供の世界は見えません。そしてもう一つは、ネット社会は決して安全なコミュニティーではないということです。コミュニティーの原則は、信頼と秩序です。今のネット社会には、二つがあるんでしょうかということです。

 最後でございますが、携帯電話の所持は自己責任とか家庭の問題というふうにおっしゃいますが、実は、このネット社会、我々大人は通ったことがないんです。子供たちの手を引いて横断歩道を渡して、自転車を買ったとき危ないよと注意をして、免許証を取ったとき注意をするようなことは、だれも通っていないんです、このネット社会は。そういう意味で、子供たちにこの道の歩き方を教える大人は非常に少ないんです。そうなってくると、だれが子供たちに伝えていくのかということがこれから大きな課題ではないかなということで、我々は町ぐるみで子供たちに伝えようとしております。

 最後でございますが、携帯電話、こんな便利な道具を子供が肌身離さず持ってもいいのですかと書きましたが、電話機とファクスとテレビとゲームをベッドの中に入れて子供を寝かすのですか、一昔前で考えれば、そういったことを我々はやっておるわけです。

 そして最後に、私たちは、指先一寸の子供を育てるのですかと。指先一寸です。口先三寸という言葉もございますが、今の子供は指先一寸だけでコミュニケーションをしようとしています。そういった子供たちを我々日本人は育てるかどうか、再度考える時期に来たのではないかと思いまして、私の発表を終わらさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上野賢一郎君。

上野委員 自由民主党の上野賢一郎です。

 四名の参考人の皆さん、大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。きょうは四十分時間をいただきまして、ほかの委員会ではおよそ考えられないことでございまして、非常に感謝をしておりますが、やや戸惑っております。

 今のお話を聞かせていただきまして、私もこの問題、いろいろと調べたり勉強したりしておりますが、本当に、今政治あるいは教育の改革の中で一番力を入れていかないといけない問題ではないかという、そんな認識を新たにいたしました。この問題、私ども与党だけではなく野党の皆さんも含めて、あたかも大連立をするかのごとくこの問題に取り組んでいく必要があるのではないか、そんなことを考えたところでございます。

 そんなことで、各参考人の皆さんにお話を伺わせていただきました。尾木先生におかれましては、急なあれということで、ありがとうございました。実は、プロフィール、プロフというのですか、調べさせていただくと、私の隣町の伊吹町の御出身ということで、私は長浜市なもので、またこれを御縁によろしくお願いしたいと思います。関係ないので、済みません。

 それで、きょうのお話の中で私が思いましたのは、私は昭和四十年の生まれでして、今四十二歳。インターネットをやるようになったのは当然仕事をしてからということでありまして、そのイメージで世の中を見ているわけでございますが、今の子供たち、特に平成の生まれの人たちからすると、世の中の見え方が全然違うんじゃないかな、そんなことを思いました。

 物心がついたときからもう既に携帯はある、あるいはパソコン、インターネットができる、そういう環境が整っている中でこれまでの暮らしを生きてきたわけでありまして、先ほど桝谷さんもおっしゃられましたように、子供たちがどういう文化というか、携帯なりパソコンの環境にいるのかなかなかわからないという話、これは私も実感としてそう思います。いろいろ調べたんですけれども、裏サイト何とかとありますが、よくわからないというのが実態でございます。

 まず最初に、きょうの議論の前提といたしまして、携帯を取り巻く文化というのを、我々大人が見ているのと子供たちが感じているのとどのぐらいギャップがあるのか、ちょっと抽象的な質問で恐縮ですが、その印象というものをぜひ四名の方にまず簡単にお話をいただきたいと思います。

尾木参考人 子供たちがとらえているネットと私たち大人との違いで決定的なところは、私の専門領域からいいますと、メール依存、ネット依存です。これは、大人はそれになっている人はほとんどいないだろうと思います。

 先ほども言いましたけれども、思春期の発達の大きな特性というのがありまして、大人とかあるいは学校の先生の権威から離れて、自分壊しをして、新しい自分をつくり始める時期、いわゆる反抗期があります。そこの段階で、子供たちは今までのよりどころをなくしてしまうわけです。親とか先生の権威というのをみずから捨てるわけですね。そして、悪戦苦闘しながら自分をまた形成していくわけですけれども、自分づくりといいますが、それをしていきます。そのときに、かつては本当に対面のコミュニケーションで、けんかをしたりあるいは仲よくなったり、いろいろな、実際にリアリティーのある世界で思春期というのを友達関係の中で乗り越えていきました。

 ところが、今、ほかの先生方もおっしゃったように、非常にバーチャルな世界でのつながり、本当は疑似体験にしか過ぎない人間関係の中でそれをやっていこうとするわけです。そして、簡単に裏切られるというようなこともありますし、しかも、一番重要なことは、自分の心の内を全部オープンにしてしまうということです。これはあり得ないことなんですね。だから、本当の意味で自分をしっかりと見詰めるという作業ができなくなってしまって、思春期の成長、発達とかいうプロセスを歩めなくなってくる。

 だから、これは僕の私見ですけれども、二〇〇四年に佐世保で大変不幸な、小学校六年生の女の子がお友達の命を奪ってしまうという事件がありました。これなんかも、やはりインターネットの自分のホームページに、アバターを消されたりとか、侵入されてきたのがきっかけなんですね。

 つまり、彼女にとっては、ホームページというのは自分そのものなんだろう、第二の自分だったんだと思うんですが、お互いそういうことは認識していませんので、軽い気持ちでそこに侵入してきたり、友達関係ですから簡単に入っていけますね。そして、それをいじってしまったりするものですから、自己否定されたのと同じで、現実の世界でお友達の命を奪ってしまうというようなこと。

 もちろん、精神的にはいろいろな問題点が背景にありますけれども、インターネットがなければ、ホームページをあんなに開いていなければそういうことは起きなかったんじゃないかなというふうに、僕はすごく、いまだに思っているんですけれども、そういう成長をとめてしまう、ゆがめてしまう問題、これが決定的に大きい。

 それから、インターネットというのは非常に公共性が高いということですね、発信力は。公共性が高いんですが、私たち大人は社会的責任をとれます。大人ですから、自分のミスに対してはとっていきますけれども、子供たちはその能力もないのに、何で小学一年生と六十歳が同じなんだろうと、基本的に僕はおかしいと思いますね。本当に守ってやれていないという状況だと思います。

 以上です。

小森参考人 私は、もう体の一部のようになっているんじゃないかなと思っています。これを奪われるということは、自分の体の大切な一部分を奪われるようなことというふうに感じていると思います。

 普通、私たちが、昔、時間をかけて人とのコミュニケーションの中でやっていたことが一瞬にしてできてしまったり、本当だったら、考えて考えて、勇気を持ってやっと相手に伝えることが、何かぽんと、ワンクリックでできてしまうという中で、考える力とか、あとコミュニケーション能力にまで、ですから、尾木先生がおっしゃったように、成長する部分を奪っているものではないかなというふうに思っています。

国分参考人 私は、子供の心の中の問題とかは専門じゃありませんので、余り的確にお答えできないかもわかりませんが、慶応大学の湘南藤沢キャンパス、SFCというところの学生に対してアンケートをとったことがありまして、学部の学生ですから、自分が中学生か高校生ぐらいのころには携帯を実際に持った経験がある人たちで、そういう人たちに対して、自分が親になったときに子供に対してどういうふうに対応するのかということを聞いたことがあります。それに対して、今の親よりもうんと厳しい感じの、自分の経験からいってかなり厳しい答えが多かったように記憶しております。

 それからもう一つは、ネット依存でありますとかというのは、実は、今の子供だけじゃなくて、少し若い世代といいますか、もう大分、きのうきょういろいろな問題が始まったわけではありませんので、だんだん年代が少し上の方まで来ている。韓国なんかは、オンラインゲームというのが盛んですから、ゲーム依存ということがある種の社会問題になっているというふうに理解をしております。

桝谷参考人 実際に我々がネット巡視をしてコミュニケーションサイト等を見ますと、果たしてこれが会話なのかなというのが実感でございます。あれを果たして文化と言っていいのかというような思いもいたしております。

 また、実は我々、教材をつくる際に、地元の大学院生や大学生の御協力もいただいておるんですが、彼らも中学生や高校生の時代から携帯を持っております。そうした彼らに聞くと、冷静に考えるとあの時代は携帯は要らなかったんじゃないかと。今は、彼らは非常に正常に使える。ということは、逆に言いますと、思春期のあの時期この時期に、携帯というツールは非常に罪なツールではないか。

 ある部分、自己判断ができる大学生以上になると一定程度良識ある使い方もできますが、この思春期の時期、十歳から十七、十八ぐらいまで、本当に、今の携帯を子供たちに与えたときにどうなるかということは、逆に、大学生や大学院生がみずから振り返りながら、自分のやってきたことを少し悔いたり、今なら正常に使えるというようなことを言っているのが実態でございます。

 以上です。

上野委員 今、それぞれのお話を聞きまして、なるほどと思いました。メール依存とかそうしたものの中で子供たちが生きているわけでして、我々大人が、やはりその実態というか、それをしっかりと見据えて、理解をした上で対策を考えていかないと、全然的外れなことをやってしまっている、その危険性が非常に高い問題だろうということだと思います。

 それで、尾木先生にお伺いをしたいんですが、先ほどいろいろな実例をやや省略してお話しいただきましたので、ちょっと最近話題になっております学校裏サイトの話と、あとプロフの話、これで、一体、具体的にどういった問題が今起こっているのかということにつきまして、少しお話をいただければと思います。

尾木参考人 学校裏サイトの問題ですけれども、これは大体六割ぐらいと言われていたんですが、最新のデータでは先ほど言いましたように六八%ぐらいという調査の結果も出ていまして、これは地域間の格差がかなりあるなというふうに僕は率直に感じています。

 ただ、東京なんかは比較的学校裏サイトが少ない方だと思っていたんですけれども、僕の身近なところでも次々と話題になって、削除させたという話を校長さんなんかから聞きますので、急速に広がっているというふうに思います。

 この裏サイトは、公式サイトとは違って完全に裏サイトなんですね。それで、どんなことが書かれているかというと、学校の教師たちが一番最初に参ってしまったんですけれども、例えば、二十年前の卒業生だけれども、私は××先生にセクハラを受けたとかいうことを書き込むわけですね。それは、男性であるか女性であるか、あるいは現役の中学生なのかもわからないわけですよ、匿名性が非常に高くて。そういうのを書き込んでしまうと、実は私も受けたとか、そういうでたらめな情報がいっぱい書き込まれていくわけですね。

 そうすると、それは、子供たちの世界では、アクセスの仕方を知っていますから、どんどん見て、うわさは広がっていくわけですね。そうすると、根も葉もないうわさであってもその教師にとっては否定することもできないし、闘う相手というか、告訴もできないという状況の中で、本当に、僕も相談を何人か受けましたけれども、ぱっと見て、あっ、これはもう精神的に病んでおられるなというほどお気の毒な状態でしたね。そういうようなのを今度は子供たちは喜んでしまうというようなところもあります。それを今度は、子供同士でまた、さっき小森参考人からもありましたけれども、お互いにやりっこをしてしまうわけですね。それが学校裏サイトですね。

 それから、プロフの方は、これもさっき小森さんがちょっと報告されましたけれども、実際に援助交際を求めていますみたいなのを入れるのが一番残酷ないじめ方ですね。前略プロフィールというんですけれども、御存じですか、これは。御存じないですか。こんなことを聞いていいのかわかりませんが、先生方の中でプロフを御存じの方、ちょっとお手を挙げてください。(発言する者あり)ああ、そうですか。ほら、二人しかおられないんですもの。こういうのを、我々の、政治家のところでこういう状況でしょう。

 でも、女子中学生の少なくとも五割、多いところは八〇%に達しています。皆、これで自己紹介を楽しんで、それが、例えば、成り済ましと言うんですけれども、本人ではない、A子ちゃんをいじめたいと思ったらB子さんが、A君でもいいんです、だれであってもいいんですけれども、A子さんをいじめようと思ったら、その子に成り済まして、その子の顔写真を入れて、援助交際を求めていますとか、二万円ですとかいうのを入れちゃうわけです、自己紹介で。そうすると、どんなに少なくても一日数十件、ばっとアクセスが来てしまって、もう本人はノイローゼぎみになりますし、そういううわさがだっとまた流れるわけですね。流れるというのも、全部メールで流すわけですね。

 今そういう状況で、だから、よくうざいとか、きもいとか、死ねとか、メールで嫌がらせをされて、そして亡くなったというニュースが流れますと、大人たちは何でそれぐらいで命を絶つのかと思われるかわかりませんが、それは僕は想像を絶すると思いますよ。

 それから、「YouTube」というのは御存じですか。「YouTube」を御存じの方、ちょっとお手を挙げてください。ああ、そうですか。「YouTube」なんかも、実はいじめている映像を流すわけですね。こんなに屈辱的なことはないですね。しかも、やっている方は、ほとんどいじめているつもりなんかないんですよ、ふざけのつもりで楽しんでいるだけですから。これもつらいと思いますね。

 そういうふうにして、実は我々が全然知らないところで多数派になってしまっているんですね。だから、一度、野々市町ではありませんけれども、子供たちのところに、実際に調査をしてみたり、どんなのかといって見せてもらうと、びっくり仰天します。

 中学生、高校生に、今のこのプロフのこととかあるいは学校裏サイトのことを聞いて、知らない子はほとんどいないと思ってください。会うと僕は聞くんですけれども、みんな悩んでいますし、それから、チェーンメールで今悩んでいる高校生、中学生が多いですね。昔、不幸の手紙と言いましたけれども、だれかの悪口を書いて、これを一日五人以上にきょうじゅうに流さないと不幸がやってくると書いてあるから、みんな流すわけですよ。一日にして悪口が全校に広がる、七百人、八百人にですね。そういう、本当に不幸の手紙のメール版だというのも行われていて、これでは人間への信頼とか友達づくりがゆがんでしまいます。

上野委員 ありがとうございます。

 ちょっと具体的に、恐らく私も含めてイメージがまだよくわかないと思うんですが、プロフというのは掲示板と考えていいんでしょうか、掲示板に何かを載せるというイメージで考えてよろしいんでしょうか。

尾木参考人 掲示板ではなくて、簡単につくれるんですよ。サイトがありまして、そこに自分で打ち込んでやっていけば、あっという間にできます。

上野委員 ありがとうございます。

 今の例でもわかりますように、私たちがよくわからないことに取り組もうとしているわけでありまして、やはり先ほど申しましたように、まず、実態はどうなのかと子供たちのところに行って、そうしたことを勉強する。プロフというのは、調べると、平成生まれは当たり前で、名刺がわりみたいなイメージだというふうに聞いたことがあるんですが、やっていかなければいけないというふうに思います。

 それで、野々市町では携帯をそもそも持たせないことにしましょうということで、先ほどの数字を拝見させていただきますと、ある意味、奇跡的な数字を出されているような気がしますが、それをほかの地域でも実際にやれるんでしょうか。そもそも携帯を持たせないという運動が成り立ち得るのか。もしそれができるのであれば、今お話しいただいたようなことはおおむね解決してしまうような気がするんですが、それをちょっと教えていただきたい。

 桝谷参考人と尾木参考人にお伺いをしたいと思います。

桝谷参考人 非常に難しいと思います。我々の運動のスタートが一五%前後という数字でございました。我々の感覚で、二〇%以下なら抑え込めるだろうというのが我々の当初の考えでしたので。

 ただ、実際に我々の運動を広めていって、いろいろな地域で見てみますと、やはり皆さんどうにかしたいという声が全国的に非常に高うございますので、持たさないという取り組みと持ってからどうこうしようという取り組みと二つ手段があると思うんですが、我々の考え方は、持ってからどうこうしようという取り組みは成立しないと思っております。

 というのは、こんな楽しいツールを一回持ってしまったら、先ほどの話にもありましたが、子供たちは離しません。そして、一回ネットにつないだ携帯を持って、それをネットから外すことも子供たちは拒否します、そしていじめに遭います。

 というふうになってくると、今、これから我々も少し考えていかなければならないのは、所持率が、うちの町も含めて、四〇%、倍ぐらいになったときにどういう取り組みが必要なのかということは考える必要があると思うんですが、実際、私の経験的な感覚からすれば、三〇%前後の都市ならば、町ならば、この携帯電話を持たさない取り組みはまだできるかなというふうに思っておりますので、そういう市町村があればぜひ行って、また、いろいろ我々の取り組みを紹介したいなというふうに思っております。

尾木参考人 野々市町の取り組みというのは、僕は非常に面白いなと思っています。ニュースで聞いたときにはそんな強制的なやり方というのがうまくいくのかなというふうに思ったんですが、今伺ってみて認識を大分改めたんですけれども、ただ、やはり広がっていくのは難しいだろうなというふうに思いますね。

 ただ、子供たちのネットの被害、ウエブ汚染の問題でいいますと、ちょっと九月から十月にかけて僕はフィンランドとかノルウェーとかスウェーデンの方にずっと視察に回りまして、そしてこのメールの問題というのを調査してきたんですけれども、やはり北欧諸国でもほとんどみんな持っているわけですね。

 例えば、サウジアラビアなんかは一〇〇%、小学生で持っているというんですね。ただ、あそこは王様の国家ですから、フィルタリングを国家でかけていますから、大丈夫だと言っていましたけれども、本当かわかりませんけれども、その裏をいくのを楽しんでいるとかおっしゃっていました。サウジは行ったんじゃなくて、あそこの大使館で講演したときの話なんですけれども。

 フィンランドとかスウェーデンなんかへ行ってみて、やはり同じように被害はあるんですけれども、僕は質が違うなと思ったんですよ。数的に非常に汚染度が低いんですよね。低いんです。そして、特定の子供たちなんですよ、どうも様子を聞くと。つまり、非行問題やいろいろなのでいっぱい問題を抱えていて、あちこちで先生方やお巡りさんにお世話になっているというレベルの子がやはりネットのところも侵されている、一般の子はそれほど侵されていないという状況がわかって、例えばフィルタリングの問題なんかも、驚いたんですけれども、かけていない国もあるんですね、子供たちに勧めていないと。

 そんなことってあるのかなと思って非常に僕は理解に苦しんだんですけれども、例えば私の法政のゼミの学生たちが、三時間以上ネットに毎日向き合っている子の家庭生活はどうなっているのかというクロッシングをやってみたんですね。そうしたら、家族が好きだという子で三時間以上ネットをやっている子は一〇%しかいないんですよ。ところが、家族が嫌いだと答えた子は一〇〇%三時間以上なんです。

 もちろん、フィルタリングをやっていくとかいろいろな機械的なところが私たちに非常に重要だと僕は思っています。だけれども、その土台の土台を言えば、親子関係とか家族のあり方とか、学校生活が本当に楽しくて充実しているのかとか、いじめがないのかとか、そういう土台のところが極めて重要だというのは、北欧に視察に行ってそこのところがかなり見えてきました。

 だから、具体的にどう手を打っていくのかという対症療法的なところと、根っこの本当の日常の生活のところ、家族関係なんかをどう豊かにしていくのか、そのためのサポートをどういうふうに私たち大人ができるのかというのが、両面が問われているなという感じがしますね。だから、単純に、野々市町はうまくいっていますけれども、果たしてどうかというのはまだ確信ができません、また学ぼうと思っていますけれども。

上野委員 確かに、野々市町の取り組みというのは本当にすばらしいと思います。

 ただ、先ほどお話を聞いていて思いましたのは、やはりそれなりに町づくりの土壌というか、そうしたものがあって、では、みんなでやっていきましょうというところがあるので、ある程度それに対応できているのかなという気がしますし、客観的にも、数字が低いということで、発射台が低いので抑えることも可能だったということではないかなと、私なりにそういうふうに理解をさせてもらったわけです。

 そうした中で、もし仮に野々市町のようにできるところはそういった方策をやっていって、できるだけ携帯を持たないような運動を進めていきましょうということは一つのあり方としてあると思うんですが、一方で、それとあわせて、そうしたことが仮にできない地域も多いだろうという前提に立った場合に、では具体的にどういうことができていくのか。

 今の尾木参考人は、家庭との問題、家庭の関係のお話をされました。これは非常に重要な話だと思います。そもそも、メール依存症になるということは、楽しいからということもあるんでしょうけれども、その背景に、家族の問題とか友達関係とか、やはりそうした何かの要因があってメールに頼るというか、そういうことも実はあるのではないかなというふうに直観的にそう思うわけでございますが、そうしたことを踏まえてお伺いをしたいことは、特に携帯を持たすと、携帯のメールでいろいろなよくないことが発生している、そうしたことに対して家庭の役割というのはまずどういったことが考えられるのかということをお伺いしたいと思います。

 先ほど小森参考人は、まず親は子供の安全あるいは親の安心で携帯を持たせるというお話をされました。確かにそうなんでしょうが、子供たちの受け取り方というのは全く違うんだろうと思うんですね、先ほどの一番最初の御質問の中にもあったように。そうした中で、今、親、特に若い世代のお父さん、お母さん方がどういったことを家庭でやっていかなければいけないのかということにつきましてお伺いをしたいと思います。

 これは小森参考人と尾木参考人にお伺いをしたいと思います。

小森参考人 親の役割というのは、とにかく非常に重要であると思っています。それが事実だと思います。ところが、残念ながら、この親の役割がどんどん機能を失っていっているというのが現実です。その中で、やはり愛されていない、守られているという実感を持てない子供たちの心が、またはどこかで暴力を受けている子供たちの心が、次の、やり返さないというターゲットを見つけて自分の心に受けたストレスを発散しているんですね。

 ですから、携帯がいじめの中の一つの形ではありますけれども、携帯だけの問題ではなくて、だれかを傷つけなければ自分の心の安定が保てない心を育ててしまっているということが一番根本的な問題ではないかと思っています。

 ですから、携帯にフィルタリングをかけるとか、そういうふうなことが仮にできたとしても、現存する機能だけで十分人は傷つけられるんですね。人を傷つけたいという心がある限り、携帯を使った、インターネットを使ったいじめというのはなくならないというのが現実だと思います。

 そこで、加害行為をしてしまう子供たちの心にどうやってこれから大人が寄り添うのか。その心に対して反省を促す方法とか、自分自身が今受けている傷に気づいてもらう、そして、その同じ傷をほかのお友達にも与えているということを気づいてもらうためにはどんな対策があるのか、大人は今その子供たちとどう寄り添うのかという、そこが根本ではないかなと思っています。

尾木参考人 家庭でできることというのを対症療法的なことでまず言いますと、先ほどは基本的な親子の関係のあり方で言いましたけれども、僕は五つは最低やってほしいなと思っています。

 そのまず第一は、子供だけでホームページなんかを開設させないということですね。ブログなんかも、できればノートに書くように、その方が表現力もつくし、考える力もつきますから、ノートで書くように勧めた方がいいと思います。その危険性をちゃんと教えるべきだと思います。

 それから二つ目は、先ほどから皆さんから出ていますけれども、フィルタリングをきっちりとかけるということですね。これは日Pの調査でも、中学生では二三%、それから高校生で一七・九%しかかかっていません。だけれども、ついこの間発表になりました総務省の調査では、何と七%にしかすぎないんですね。大きな差が出ていますけれども、僕はひょっとしたら七%の方が実態に近いかなというふうに思います。

 それから、履歴チェックもしてほしいと思います。最低、中学の一、二年生ぐらいまでは履歴チェックをするのはアメリカなんかでは常識ですけれども、やはりそれは、お父さん、お母さんはちゃんと見ているんだよというのは、メッセージを伝えるという意味でも履歴チェックをするというのは、指導権として持っているべきだろうと。これを子供のプライバシーとの問題で取り違える必要は僕はないと思っています。ただ、高校生、大学生は全然違いますけれども。それが二つ目の問題ですね。

 それから三つ目は、利用時間をきちっと制限するということです。データによると、三時間以上やっている高校生が三割、四割に達しているというデータも出てくるんですね。もうメール漬けになっているわけですね。これはやはり避ける。そのために、例えば三十分以内だとか、やはり時間制限をきちっと設けるというようなことも家庭では大事だと思います。

 それから四つ目、うんとこれは厳しいハードルなんですけれども、親も初歩的でもいいからパソコンスキルを身につけるということです。これはスピード遅くていいです、人差し指でぽつんぽつんぽつんとやっていてもいいし、親指でなくても、何本指使ってもいいですから、親の方も最低できる。それは子供に教えてもらえばわかるわけですから、それは親子のコミュニケーションもできますし、お母さん、お父さんが自分のことを心配して、帰ってきて疲れた体にむち打ってパソコンスキルを習得しようとしている、メールを打とうとしているというのが僕はすごく重要だろうと思います。だから、そこはやはり知るということが大事です。

 それから五番目には、パスワードとかIDというのは絶対友達にも教えないというのを徹底させるという、ここら辺も親ができることだろうと思います。

 また、学校のできることもまた幾つかあると思いますけれども、まず親が最低そこは責任を持たなきゃいけないと思います。

 以上です。

上野委員 ありがとうございます。

 対症療法的なお話もありますし、先ほど本質的な解決が必要だと、両方必要だろうと思います。

 最後、お話ありました、学校なりあるいは事業者ができる方法について、簡単にお話を尾木参考人にお願いします。

尾木参考人 学校ができることというのは、これがかなり僕は大きいと思います。

 一つは、学校ができることといいますと、今文科省もすごく力を入れておられますけれども、情報モラル教育といいます。二〇〇四年の夏あたりはネチケット、ネチケットという言い方で、インターネットエチケットの省略ですけれども、ネチケットという言い方をされていましたけれども、今もうちょっと包括的になってきて、情報モラル教育という言い方でいろいろな開発、この七月ですとか六月なんかも、いろいろなホームページをごらんいただくと、随分開発されてきました。それから、民間のNPOの団体も、たくさんいろいろな啓発の小さなパンフレットとかリーフレットをつくってくださっていますけれども、そこのところをしっかり活用するということが、学習するということが僕は極めて重要だと思います。

 大きな意味では、メディアリテラシーのところをどう強化するのか。カナダなんか非常に進んでいますけれども、日本の教師というのは、教職課程でもメディアリテラシーの講義単位なんかないんですね。あんなのはやはりこれからの時代は必修化する必要が僕はあると思います。

 教員免許を持つからには、二十一世紀、今日の時代を生きていく子供たちにとっての一つの、メディアリテラシーというのはパソコンスキルも含めてですけれども、生きる一つの権利というか、いい意味で力になるんだろうと、今は悪い方ばっかりが出ていますけれども。そういう意味では、きちっとした教員の研修というのも必要だろうと思います。

 それから、学校ができることで、いろいろな取り組み、全国で学校現場も悪戦苦闘されているんですけれども、おもしろいと思うのは、やはり子供が主役になるということですね。ある神奈川の私立の学校なんかは、メールに関する三原則というので、学校ではメールを出さない、電源を切る、使わないとかいうのを三原則として生徒会が取り組んで、お互いに自己チェックをしている。

 そして、それはなぜかというと、せっかく学校生活というのは六百人、七百人、面と向かって友達と接しているときに、携帯の電源が入っていて、ぶるぶるっと鳴ったり着メロが鳴れば、すぐにそっちを見ちゃうわけです。しゃべっていても、携帯が鳴るとそっちを見ちゃうわけですね、メールが送られてくると。それってないだろう、面と向かった生活、せめて学校生活の時間帯ぐらいは大事にしたい、そういう願いからつくっていて、僕は非常におもしろいなと思いました。

 あるいは、校内放送で、お昼休みごとにメールでのいじめはやめましょうとか、メールの使い方に気をつけましょう、送信のボタンを押すときには相手の顔を思い浮かべましょうというのを放送部が毎日放送を入れているところとか、ちょっとしたところで意識は変わってきます。

 やはり文化の問題ですから、そういういかにすぐれた質の高い携帯文化といいますか、それを学校でつくるかということ、規制も含めてですけれども、僕は重要だと思います。

 それから、業者の方は、今忘れましたけれども、一つは、やはりペナルティーを強化するということが僕は重要だと思います。公共性が非常に高い、社会的責任を負っているわけですから、それに対して政府の方もだんだん取り締まりが厳しくなってきていますけれども、でもペナルティーをきちっと科して、罰を受けるというふうにしていただければありがたいなというふうに思います。

上野委員 今のお話、学校現場でもいろいろな取り組みの例があるということで、大変参考になりました。それをもう少し情報の共有化をしつつ、全国的な運動というか、そういう形で進めていくべきかなと今思ったところであります。

 そこで、先ほどからフィルタリングというお話が何度か出ております。これにつきましては国分参考人にお伺いをしたいんですが、その効果というか、効果もあるでしょうし、あるいは限界もあると思うんですが、それについて教えていただけますでしょうか。

国分参考人 フィルタリングにつきましては、子供の成長に非常に妨げになるような、親の立場から見せたくないものをブロックするということで、もう大分前からいろいろ私ども努力しておりますが、フィルタリングの認知率、普及率とも非常に低い状況で、まずそれを高めていくということが必要ですが、そういうものが高くなったときに、フィルタリングだけに問題解決を頼ってはいけないと。

 先ほど私御説明しましたように、業界としてのいろいろ、ガイドラインとか普及啓発、メディアリテラシーを高めるためのいろいろな努力があるわけですが、子供のそういうメディアリテラシーを高める、親のメディアリテラシーを高めるということとあわせて、携帯あるいはPCでフィルタリングの機能を入れたからといって、それで問題解決とするのは非常に危ないというふうに考えております。

 フィルタリングの普及率向上につきましてはちょっとおもしろいデータがあるんですが、NTT系のあるプロバイダーが、新しく契約するユーザーに対しては、デフォルトオン、フィルタリングの機能がかかった状態で提供をする。これを外したければ、ユーザーのところで外せるようになっている。その結果、フィルタリングの利用率が五十数%という数字が出ております。

 そのプロバイダーの担当の方が言われるには、それを外せる人というのは、それなりにリテラシーが高いから多分外しても問題はないんだろう、そういうことが外せないといいますか、初期設定のままで使っているような人たちは、やはりフィルタリングがきいた状態で使っていただくのがよろしいだろうというとらえ方をして、インターネットの業界の中では非常にまだ珍しい例ですが、そういうことがあります。

 それから、フィルタリングを入れれば問題解決する部分もありますが、全面的に問題解決しないわけで、セミナーを開催するとかいろいろ努力をいたしまして、総務省と文部科学省がある程度後援をして、業界全体でe―ネットキャラバンという、年間千回、全国的に普及啓発するセミナーを開催するという努力とか、また、携帯電話会社のNTTドコモも同じく、全国的に千回、学校等から申し込みがあれば行ってそういうセミナーを開催するというような努力もあります。私どもインターネット協会も年間百回ぐらいはあちこちから要請があるところに対して講師を派遣してセミナーを開催しております。

 以上です。

上野委員 少し確認だけなんですが、フィルタリングをすると、先ほど言った裏サイトとかプロフの問題、これは関係ないですよね。ちょっとよくわからないんですが、それとも、何らかの役割を果たせるのでしょうか。

国分参考人 携帯電話で学校裏サイト等は、子供たちが利用する例が非常に多いのですが、それをブロックするブラックリストにそういうところが載っていればアクセスできなくなります。ただ、裏サイトというのはどんどんできていくものですから、完全にリアルタイムでブロックできるというものではありません。

上野委員 ありがとうございます。

 対症療法的にいろいろな手段があるんだろうと思いますし、フィルタリングというのも一つの有害サイトへのアクセスを禁ずるということでは、もっと普及をさせていかなければいけないということだろうと思います。

 きょうは、もう時間になりましたが、お話をお伺いいたしまして、本当に勉強になりました。まだまだ知識が私自身は欠如している部分があるので、もう少しそうした部分を高めつつやっていかなければいけないと思いますが、全体として、実態を知るというのは一つですが、それとあわせて、先ほどの石川県の野々市町のお話のようなそうした国民的な運動を、やはり政府というか、国を挙げてやっていくことが必要ではないかなというのが正直な感想でありまして、携帯のいじめにしろ、あるいは有害サイトを通じた犯罪に巻き込まれる事例、こうしたものが後を絶たないわけでございますから、そうした運動をやはり政府が力を挙げてやっていくことがまず必要ではないかなというふうに思います。

 その上で、先ほど尾木参考人の方からお話がありました事業者へのペナルティーの強化ですとか、あるいは、そうした方、もし何か特定をされた場合に何らかの罰則を個人であってもかけていくとか、そうしたことが方策として考えられるのかなという気がしますし、学校現場でもいろいろな取り組みがもちろん必要だろうと思います。

 また、本質的な話ももっとやっていかなければいけないと思いますが、当面、政府としてやるべきこと、何かもし御示唆いただけるようなことがあれば、尾木参考人、お願いをしたいと思います。

尾木参考人 政府としてやっていただきたいのは、やはり今、きょうも会場の実態を見てもわかるとおり、我々がまだ熟知できていないんですよね、子供が先行しちゃっていて。こういうことは、子育てと教育の歴史の中では初めての現象だと思います、これまで。オーバーに言えば、人類史始まって以来と言ってもいいぐらい、何で子供の方が先に行っているのかという。

 だから、やはりこれは縄張り、文科省だとか総務省だとか何やら省とかではなくて、きちっとした何かプロジェクトチームでもつくって、そこでまず現状を把握し、私たちが学習しながら、子供たちの進んだ声なんかを取り込みながら対策を練っていくということ、そういう機関をつくってほしいなというふうに思いますね。それが拠点になって、そしてまたそれの各地方版もできていけば、認識がずれないでやっていけるんじゃないかというので、お願いしたいと思います。

上野委員 時間が来ました。

 きょうはどうも本当にありがとうございました。

玄葉委員長 次に、菊田真紀子さん。

菊田委員 民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、四名の参考人の皆様から御出席をいただきまして、それぞれの立場で大変具体的なお話をいただきまして、まことにありがとうございました。

 限られた時間でありますので、言葉足らずの面もあるかと思いますけれども、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、本当に今、子供たちをめぐる問題、インターネットによるいじめや犯罪がいかに深刻であるかということ、私も、きょうお話を聞きまして、正直、これほどまでにひどいということを、大変ショッキングに、深刻に受けとめたわけであります。

 その中で、まず桝谷参考人にお伺いしたいと思いますが、“ののいちっ子を育てる”町民会議ということで、町ぐるみで大変すばらしい取り組みをされているということで、感激をさせていただいたところでありますけれども、今や携帯電話の所持率も、全国的にもかなり低いということでありますし、保護者の理解も大変深まっているということであります。しかも、私が驚きましたのは、これは法規制や条例をつくるわけでもなく、あるいは事業者に圧力をかけるということもなく、本当に自主的な、主に啓発活動でこの取り組みを進められたということで、大変驚いたわけであります。

 その中で、幾つかお伺いしたいことがありますけれども、いただいた資料の中に、不良行為の件数の推移を見ましても、この野々市の数は非常に低いということでありました。中学生の方でも同じようなデータが出ております。この運動の対象が、小学生と中学生が対象のようでありますけれども、高校生への取り組みというものがどうなっているのか。

 いただいた資料を見ますと、保護者の約八五%がこの運動を支持しておられるけれども、高校、大学生で携帯を持たせたいと考えている人も約八五%あるということでありますし、先ほど尾木参考人からも、いじめの高学年化、特に高校生でいじめが増大し激化しているというお話もありましたが、さらに高校生を対象としてこれから取り組んでいかれるのかどうか、取り組むことが今現状どうなっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

桝谷参考人 まず、御質問の答えからなんですが、地元には野々市明倫高等学校という高校が一校ございますが、非常に広域なわけです、石川県内でほかからも来ておりますので。もし高校生への取り組みを強化するとなると、市町村レベルと申しますよりも、どちらかといえば全県的な取り組みが必要かと思います。

 あと、我々がやっている小中学生という限定は、どちらかといえば、我々の運動の中で、中学生までは要らないだろうという話の中で、我々の取り組みで、サイトへのフィルタリングではなくて年齢的なフィルタリングをかけたということでやっております。ただ、高校生以上になってきますと、実態は、全国的な平均と変わりません。九〇%以上、九五%以上が町内の高校生も持っているというふうに認識しております。

 ただ、今後の取り組みですが、これから冬に向けまして、我々、小中学生の間に、野々市町で学んだ子供たちが高校生になってどういうリテラシーを身につけているかという実態調査を地元の高校を中心にかけて、我々の事業の効果が高校生以降どう及ぶか、調査研究したいというふうに考えております。

 以上です。

菊田委員 なるほど、市町村にまたがってくる、より広域的になってくるということであれば、やはりなかなか難しい面もあるのかと思いますけれども、また、子供たちが小学校、中学校で携帯を持たなかった効果がどのような形であらわれていくのか、期待感を持って、これからまた別の機会にもお話を承りたいと思っております。

 次に、小森参考人にお聞きをしたいと思いますけれども、以前、民主党のいじめ問題の勉強会にもお越しをいただいたことがあったというふうに思います。きょうは二度目のお話を聞かせていただきました。お嬢様を亡くされて、本当に深い悲しみの中から、またこのようなことがないように、学校に足を運ばれて、本当に年間、たくさんの講演をされているということで、その取り組みに心から敬意を申し上げたいと思います。

 私は、小森参考人のお話を聞きまして一番印象に残りましたのは、インターネットがなくなってもいじめはなくならないというお言葉でございました。心と命について真剣に考えていくことが大事だというふうにお話をされたわけですけれども、小森参考人は、講演を約七十分ぐらいされても子供たちが非常に静かに最後まで聞いているということで、学校の先生が驚かれるというようなお話を聞いたことがありますし、また、講演の中で、命が大切なんだよということは一度もおっしゃらないけれども、しかし、講演の後、子供たちに感想を聞くと、命の大切さがわかりましたというような感想文が寄せられるということでありました。子供たちが心と命の話を待っているんだということを参考人はおっしゃっているわけでありますけれども、まさに、大人や教師や親がこの子供たちの待っているところに優しくボールを投げ返してあげることが今求められていると思います。

 このような講演活動を通して、先ほどのお話の中には言い足りなかったところがありましたら、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

小森参考人 まず、この活動をして一番強く思っていますのは、先ほどもおっしゃっていただいたんですけれども、子供たちは命や心の話を待っているということと、あと、考える力、感じる力を、とても大きなそういう力を持っているということを実感しています。

 私たちの講演をつくるときに、命が大切と言ってはいけない、いじめはだめだよと言ってはいけないということを決めて、講演をそれぞれがつくっているんですけれども、なぜかというと、子供たちにそんなことを暗記してもらうのではなくて、そう感じてもらうための講演というのは一体何なんだろうかということが、これは私たち大人すべてに投げかけられている問題ではないかと思うんです。いじめはだめだというキャンペーンを張って、あちこちに例えば何枚ポスターを張っても、いじめがなくならないと思うんですね。命は大切だと言っても、それも同じことだと思います。本当に子供と一緒に命や心について考える、そういう機会を、例えば総合学習の時間などでプログラムみたいなものを提供できたらどんな結果が生まれるんだろうというふうに私は思っています。

 子供たちの感性を信じること、それは本当に重要なことだと思います。私たち大人はついあきらめてしまうんですけれども、子供たちは、いじめの問題、ネットの問題は今学校の中で自分の身に起きていることですので、本当に真剣に話を聞いてくれる。その真剣さは、本当につらいんだなというそのあらわれでもありますので、そこに私たちはこたえていきたいと思っています。

 そして、インターネットでのいじめというのは、一つの形なんですね。ですから、たくさんあるいじめの中のたった一つでしかないということ、そして、その一つのいじめが、実は、今までいっぱいあったいじめとリンクし始めているということがとても恐ろしいことではないかと思いますので、子供たちの恐怖心みたいなものをまず大人が実感したいと思います。

菊田委員 ありがとうございました。

 文部科学省の二〇〇五年度の調査では、一校当たりのいじめは、小学校で〇・二件、そして中学校で一・二件、高校で〇・五件と報告をされました。いじめによる自殺者も、一九九九年度以降ゼロが続いているという報告があったんですけれども、私は、これは果たしていじめの実態、学校の実態をどのように正確に反映されているのかということで、大変疑問を感じていたわけでありますけれども、先ほど尾木参考人もおっしゃっておられましたけれども、きょうのNHKのニュースでもありましたけれども、文部科学省がいじめの定義を見直したことによりまして、このたびの報告では六倍か七倍かの数字が出ているといじめ件数が報告されたということであります。

 先ほど尾木参考人が、いじめはますます蔓延していて、第三のピーク期を迎えている、実態はこんなものじゃないんだというお話でございました。そしてまた、非常に陰湿になっているので、学校も親もなかなか気づかない。私も、先ほどの皆さんのお話を聞くまでは、こんなにひどい状況になっているということを実感として持っていなかったわけでありますけれども、恐らく多くの大人がそうだというふうに思っております。

 そこで、親や学校、教育委員会、さらには文科省がこうしたいじめの実態や子供たちの本音を正確に把握するには一体どうしたらいいのかということが大きなテーマだというふうに思うんですが、このことについて、尾木参考人、そして小森参考人にお聞きをしたいと思います。

尾木参考人 本当に、いじめの実態というのは非常につかみにくいんですね。いじめというのは、本質的に、先生にわからないようにやるのがいじめなんです。それから二つ目には、君、いじめているんじゃないかというので現場を押さえても、ふざけですと言うわけです。被害者に聞いても、先生、これはいじめではありません、ふざけているだけですというふうにして、自分のプライドがありますから、なかなか教えてくれないんですね。

 この一月十九日ですけれども、文科省はいじめの定義を変えられました。これまでは三つの条件がありまして、強い者が弱い者を一方的に、二番目に、継続的に身体的、精神的ないじめをし、三番目には、被害者が苦痛に感じているもの、そういう定義だったんですけれども、これががらっと変わりまして、いじめられたと思ったらいじめなんだというふうに、いじめられる子の方に立ってくれたんですね。僕は本当に喜びました。これだったら正確に出てくるだろうなというふうに思ったわけですね。

 そして、現に北海道の教育委員会が、去年の四月から十二月までという九カ月間にわたってだけなんですが、だから正規の年間データではありませんけれども、滝川市で大変不幸な事件がありまして、道の教育委員会も本気になって調査をしたわけですね。そのときの基準が、一月十九日の文科省の定義とほとんど同じ、いじめられたと思ったかという調査をやったわけですね。

 札幌市の子供たちは参加していません。札幌は参加しませんでしたので、北海道の子供たち、小中高生の約八四%が参加しました。その中で出てきた数字が、去年の四月から十二月までの間にいじめを受けたというふうに答えた子が五万八千人なんですよ。そして、現在いじめられていると言った子が二万四千人いました。そして、現在いじめをしていると正直に答えた子が五千人いたんですね。たった九カ月で、札幌を除いてですよ、五万八千も出たわけです。今回、去年のデータ、けさのニュースでいいますと十二万五千なわけですよね。明らかに実態に合っていないというのはおわかりだと思うんですね。

 これはどこに原因があるのかというのを、僕もきょう、ニュースを見ながら唖然としたんですけれども、実は、僕は講演に、本当に二、三日に一回ぐらい全国を歩いています。そうして、先生方に会ったときに、ことしの一月十九日にいじめの定義がすっかり変わって、今までのような発生件数ではなくて認知件数に変わったということを御存じですかと手を挙げてもらうんですね。一割から二割です、手が挙がるのは。大体、五百人いたら、多くても五十人ですね、手が挙がるのが。少ないところでは数人しか挙がりません。ただ、教育委員会の指導主事の先生方はさすがに皆さん手を挙げてくれるんですが、現場はわかっていないんです。

 ところが、今度は認知件数ですから、子供本人でなければわからないわけですよ、いじめられたのかというのは実感ですから。だから、文科省は、それを調べる手法として、子供たちに調査をしてくださいなんというのもちゃんと入っているんですよね。子供たちに調査をするんだったら、すべての担任が知っていなきゃおかしいんですよ、変わったぞというのを。ところが、手がほとんど挙がらないというのは、全然現場の段階で、教室段階におりていないということです。だから、あんな十二万五千なんという本当に微々たる数字しか出てこないということなんだろう。これはやはり子供の命にかかわるところを、せっかくのすばらしい定義に変えてくれたわけですから、文科省もそういうところで頑張って徹底させてほしいなというのをすごく思いますね。

 それから、やはりそういうニュースは、文科省から言われなくたって、先生方は現場で、こう変わったんだからというので、調査しないで報告を出そうとしたら、ちょっとこれはおかしいんじゃない、変わっているはずだよというのを何で言わないんだろうというのも、僕にとっては大変不思議な感じがします。

小森参考人 まず、簡単に言いますと、子供に聞けばいいと思っています。今のやり方ですと、学校の先生が子供たちの現場を把握してその数字を上に上げるというふうになっていますけれども、また、その数字にもちょっと難しい点がありまして、目標数値というものを立てられていますので、その数値内におさめなければ自分たちの学校の個人の評価に響いてしまうというのがあって、実態は明らかになっていません。

 今挙がっている数字というのは、先ほどおっしゃった〇・何件とか一・何件というのは全く真実ではありません。私たちは、当法人として子供たち一万四千人にアンケートをとらせてもらったんですけれども、六割以上の子供たちがいじめがあると言っている。その子供の声と一校当たり〇・何件というのはちょっと余りにもけたが違い過ぎていますので、まず、私たち大人が真実を見る勇気というものを持たなければいけないと思います。そして、真実が上がりにくいシステムがあるのであれば、それはどんどんどんどん排除していかなければいけない、真実を見るために、まず、今どこをどう変えなければいけないのかというところをしっかり見なければいけないと思います。

 あと、統計学からいいましても、日本じゅうの学校をなぜ調べなければいけないのか。調べるだけでどれぐらい予算を使わなければいけないか。それをまた本にして全部配る、それはどれぐらいの予算がかかるのかとか、手間がかかるのか。それらのものを別の形で利用してほしいなというのは、私は前から思っていました。

菊田委員 非常に参考になる御意見をいただきました。ありがとうございました。

 少し話は変わりますが、尾木参考人にお聞かせをいただきたいと思いますけれども、教育再生会議の第一次報告に関連しまして、いじめを繰り返す児童生徒に対する出席停止措置などの、現在の法律でできることは教育委員会に通知するようにということで、当時、二〇〇七年一月二十二日、安倍晋三首相が伊吹文科大臣に指示をしたわけですが、このようなやり方について何か御意見があればお聞きをしたいと思います。

尾木参考人 これは僕も大変注目しました。去年の十一月二十九日でしたか、緊急提言というのをお出しになって、それで一月に、出席停止というもう一歩踏み込んだ提言に変わっていくわけですけれども、現場の先生方が一体どう受けとめているのかというのを講演に行くたびに、挙手でですけれども、先生方、どうでしょう、いじめをする子を出席停止というのでうまくいきますかというふうに聞いてみたんですね。そうしたら、うまくいきますというふうに答える方は一割いないですね、〇・五%ぐらい。それで、かえってこじれますかというふうに、僕は現場の教師だったものですから、そういう直感的な聞き方をしたんですが、かえってこじれると思う人というのが七割から八割です。どっと手が挙がります、会場全体が。あとは、変わらないんじゃないかという方ですね。

 これはひとつ、なぜいじめをしてしまうのかという心理だとか背景だとか、きちっととらえなければならないわけですね。誤解を恐れずに言えば、実は、いじめられる子には、人間的な問題とか性格的な問題はだれでも、百人が百人抱えていますけれども、いじめられなければならないという問題点は何も持っていないんです。だから、いじめられる側には問題は何もなくて、むしろいじめる子が、人が苦しんでいるのを見て楽しいと思えるような心のあり方、人格そのものが問題なわけですね。非常に寂しいものを持っていたり、ストレスをため込んでいたり、あるいは違うところで何か違ういじめを受けていたりしているということは構造的に明らかなわけです。

 だから、いじめている子を出席停止にして直るんだったら、全国の教師がとっくにやっていると思います、何万、何十万とやっていると思うんです。ところが、いじめで実際に一年間で出席停止にするというのは数人なんですね、文科省のデータを見ましても。それは、効果がないということは現場が一番わかっているからなわけであって、いじめている子を救済するということがいじめ問題で一番重要です。いじめている子の心のありよう、人間のありようというのをどういうふうに救済してまろやかな人格にしていくのか。そうしたら、いじめられている子はその日からいじめを受けなくなるわけですよね。だから、そこのところへどういうふうに、いじめっ子対策というか、いじめっ子をたくさん生まないように、いじめっ子が優しい心を持てるようにどういうふうに私たち大人や教育関係者がかかわっていくのかというのが求められているというふうに思います。

 だから、停止とか、一見毅然としているように思うんですけれども、背景に対して毅然とすべきだろうと。当人に対してするのではちょっと違うと思いますね。非常に表面的だろうというふうに考えています。

 以上です。

菊田委員 ありがとうございました。

 それでは、最後に国分参考人にお聞かせをいただきたいと思います。

 フィルタリングについてでございますけれども、諸外国の例を見ましても、日本ほど規制が緩い国はないというふうに思っております。当然、事業者からすれば、もう既に自主的な取り組みをしていますということになるかもしれませんけれども、事業者の立場でいえば、本音を言えば、フィルタリングなんかしないでいろいろなサイトと自由にアクセスしてもらった方がもうかるわけですから、これ以上規制をさらに強めることには恐らく反発されるというふうに思っています。

 しかし、私は現状でいいとは思っておりません。今後、より実効性が上がるフィルタリングのあり方について国分参考人の御意見をお伺いして、私の最後の質問としたいと思います。

国分参考人 フィルタリングをかけるべきではないというふうに事業者が考えているわけではありませんで、やはり最近は、各事業者も社会的責任というのを非常に感じるようになってきておりますので、大部分の、比較的大きいインターネットの事業者のところでは、そういうもうかればいいという立場ではないというふうに考えております。

 フィルタリングも、携帯事業者も数年前までは非常にブロッキング、フィルタリングをかけることに対して消極的だったんですが、ここ二年、おととしぐらいから非常にそこは変わってきて、携帯の大手三社ともフィルタリングのサービスは無料で実施をしている。

 ただ、認知率といいますか、申し込まれる際に親御さんが契約して後で子供に渡すというのもありますので、必ずしもフィルタリングがかかっていないというので、先ほど御紹介したように、デフォルトでフィルタリングがオンになって、ユーザーの段階で外せるようにすると、大分そこら辺の状況は変わるのではないかというふうに考えております。

 例えばイギリスでは、ボーダフォンという会社が、携帯を契約する際には、十八禁、十八と格付されているサイトにはアクセスできないようになっております。それを、アクセスブロック、禁止を解除するためには、ちゃんと販売店のところへ行って自分が大人であるということを証明する。会社によって、証明書を提出させるところもありますし、実際に販売店の店頭で顔を見れば大人ということがわかるということで済ませているところもありますが、そこの段階で初めて解除されるというふうになっておりますので、何らかの、今後、いろいろ事業者のところでも、その辺の考え方なりなんなりをやはり整理していっていただく必要があろうかというふうに思っております。

 それでお答えになりましたでしょうか。

菊田委員 終わります。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。

 私の方からも、子供とインターネットの問題、四人の参考人の方に質疑をさせていただきます。

 きょう四人の方のお話をお伺いして、ウエブ汚染社会と尾木先生おっしゃいますが、その実態の大事なところを教えていただけたというふうに思います。

 私も、先日ですが、友人のコンピューターの専門家にこの問題をちょっとざっくばらんに聞いたことがあるんですが、彼が言うには、やはりインターネットの世界というのは半分は悪の世界だ、これは子供たちをむやみに近づけるわけにはいきませんよというのが彼の話でございました。

 アンケートをとると、これは内閣府が十月の二十五日に発表した世論調査ですけれども、子供たちに悪影響を及ぼすおそれのあるインターネット上の有害情報、これはもう少し国の規制を強めたらどうだということに賛成の方が約九割だというんですね。そういう意味では、私は、この問題、規制強化の方向で考えようということについては国民的な合意ができつつあるのではないか、そんなふうに思っております。

 そこで、私の方からも、この規制のあり方について何点か具体的にお伺いしたいと思います。先ほどの尾木先生のレジュメの方にも六つほど対策が書かれてありますが、それも含めてお伺いしたいと思います。

 私は、規制には三つの面があるのではないかというふうに思います。一つは、受信するもしくは利用する子供の側をどうやって規制するか。それから二つ目は、情報を発信する側、これは子供の場合もあるでしょうし、大人の場合もあるでしょうが、それをどう規制するか。そして三番目は、サイトを運営する会社なり個人、これはほとんど大人でしょうが、それをどうやって規制していくか。それぞれについて御意見を伺いたいと思います。

 最初は、これは尾木先生にお伺いしますが、受信する側、つまり子供たちの特に年齢制限の問題です。

 先ほど、野々市町の桝谷さんの方からは、年齢フィルタリングというのもかけるべきだ、中学生までは必要ないというようなずばっとした御見解も出されました。きょう欠席ですけれども、群馬大学の下田先生は、インターネット機能つきの携帯電話を子供に持たせているのは世界じゅうでも日本だけだということを明言されております。

 よその国の例を見たら、アメリカでは、これは業界の自主規制ですけれども、十八歳以上でなければ携帯電話の契約はできないことになっているという話です。一方、日本では、未成年でも親の同意書というのがあれば契約はできる、親がお金を払ってくれるんだということが確認できれば携帯電話の会社の方では子供の契約を認める、こういうことになっております。

 一方で、日本でも、卑近な例では、成人映画については、映倫とかビデ倫とか、こういう自主規制で、いわゆる十八歳未満お断りという例もあります。オートバイも、十六歳以下はだめだ、こういう例もあります。

 それで、質問は、私はインターネットを利用する子供たちの年齢制限を何らかの方法で強化した方がいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。尾木先生は六つの対策の中で、フィルタリングの強化を徹底すべきだ、こういう利用時の制限をおっしゃっておりますけれども、契約の制限まで進むべきなのかどうか。例えば親の同意の手続をもっと厳密にするとか、インターネットの機能は契約から外すとか、何かそういう考え方はいかがなものでしょうか。

尾木参考人 僕は、そこら辺はかなり慎重を期する問題かなというふうに思いますけれども、国際的な比較でいいますと、おっしゃるとおり、我が国は非常におくれています。子供の人権の尊重ということは極めて重要なテーマなんですけれども、子供たちの発達が阻害される自由まで認めていいのかというのは、僕は非常にひっかかっています、このインターネットに関しては。

 だから、今おっしゃられたように、年齢的な何らかの制限をかけていくということは、どういう制限をかけるかというのは、ハードルは、こういうプロセス、研修を受けたらとか認定が終わったらとか、いろいろなものもあるかもわかりませんけれども、今のような何にも規制がないに等しいというのは、あり得ない話だと思っています。

 これがこんなに通用してきてしまったのは、私たちの委員会の実態にもありますように、実態を知らないから見過ごしているだけであって、知れば知るほど焦ってくるだろうと思うんですよね。だから、何らかの規制というか、幅広い意味での規制というのは絶対的に必要だと思っています。

吉田(泉)委員 青少年健全育成条例というのがほとんどの都道府県にあります。私は福島県なんですが、その条例をのぞいたら、インターネットの有害情報を青少年が閲覧し、または視聴することがないよう関係者は努めなければならないという規定は、もう数年前からちゃんと入っているんですね。

 野々市町の桝谷さんにお聞きしたいと思いますが、そういう都道府県の条例等を踏まえて非常に骨太な町の運動をされている。WEBチェッカーズというお仕事も始めたということで、大変な御苦労だと思って敬意を表するところでございます。

 先ほどのお話によると、小中学生の親御さんも、もうほとんど、八五%の方が町の運動に賛成しているということですが、実は、中学校二年生でも一二・三%の方が携帯を持っているということでございました。町の運動として、見方によっては非常に少ない数字だとは思いますが、その一二・三%、持っている方の実態といいますか、これは強制はできない運動でしょうから、どういう方が持っておられるのか、教えていただきたいと思います。

桝谷参考人 御質問の一二・三%の内訳ですが、我々も詳しくチェックはしておりませんが、アンケート調査の筆記等から読み取りますと、本当に必要だと思っていらっしゃる方、例えば親と子供が連絡をとる必要があるから持たせたとか、小学校のときから子供にしっかりと教えて持たせているという方が大体五、六%いるというふうに認識しております。あと残りの一〇%は、やはり親の言うことを聞かない非行系の子供たちです。

 ですから、我々の運動は、要するに小中学生の間は携帯は要らないんだ、そういう中で子供の安全や安心や子育てをしっかりやっていくんだという良識派を多数派として町の中に位置づけるのが我々の運動の主眼です。ですから、ゼロになる運動だとは思っておりません。

 今日的な課題というのは、携帯の所持率が五〇%、七〇%になっていくということは、そういった部分が多数派になってきたというところです。そういった部分では、いろいろな面で教育的な問題が起こってくるであろうということは我々もわかっておるわけで、その辺は、持たせた親の大半は、お友達が持っているから買わせてしまったような、携帯を持っていれば、当然、いじめやそれにまつわるような問題は起こり得るのが現状ではないかなというふうに思っております。

 以上です。

吉田(泉)委員 よくわかりました。

 次に、発信する側をどうやって規制するかという問題について、特に匿名性の問題についてお伺いしたいと思います。

 先ほど尾木先生の具体的なお話で、学校の先生がでたらめなセクハラ情報を流されて参ってしまった、発信者が特定できないので告訴することも難しいという実例を御紹介されました。

 ただ、これはもう六年前になるようですが、新しい法律ができました。プロバイダー責任制限法という大変わかりにくい名前の法律なんですが、ここでは、発信者、だれがこのでたらめな情報を発信したのか、それを開示を請求することができるようになりました。名誉毀損を受けたという被害者が請求すれば開示をしてもらえる。実際に、六年たって、一定程度の開示が実現しているということであります。

 読んだ新聞の記事によりますと、専門の弁護士さんのお話ですが、そういう電子掲示板への書き込み等、大変匿名性が高いと一般には思われているけれども、実際には、通信記録というのが大半残っているんだと。ですから、最終的には、必要があれば発信者を特定できる、手紙なんかの手製の脅迫状の方がよほど匿名性は高いんだと。問題は、そういう有害な情報を起こすもしくは犯罪を起こす側が、実は匿名性は高くないんだということを余り理解していないことが問題なんだということを、弁護士さん、岡本さんという方だったと思いますが、言っておられて、なるほどというふうに思います。

 そこで、これはいじめの問題で小森さんにお伺いしたいと思いますが、私は、いざとなれば、いじめのような情報をだれが発信したのかというのは結局はわかってしまうんだよということをもっと広く知らしめる必要があるのではないか、それが有害情報発信の一つの抑制装置になるのではないか。

 一方で、そのためには、プロバイダー等の会社にそういう発信情報、だれが、いつ、どういう情報を出したということを、一定期間保存を義務づける。今は実は義務づけられていないそうなんですが、これも義務づけるということを検討したらどうかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

小森参考人 最初の陳述の際にも申し上げたとおり、私は、その部分を周知することも抑止力の一つになるというふうに考えています。

 ただ、それだけではやはり足りないというふうに思っているのは、ばれるとやばい、そういう発想でやらないということは、その人は、この携帯以外別のものを探して、また相手を傷つけるわけですね。ですから、そういうところの解決方法だと、やはり根本解決にはならないのではないかというふうに感じています。

吉田(泉)委員 同じ問題で、尾木先生、いかがでしょうか。匿名性の問題ですね。

尾木参考人 おっしゃるとおりだと思います。

 この間、十一月に入ってすぐ、メールでいじめてうつ病になった子を特定して指導したという記事が載っていますけれども、最近ちらちらと報道でも、特定してやってきたというのがあります。そういうニュースなんかも、事件なんかも、学校で教材として、こうして捕まるんだよ、完璧な匿名性じゃないんだよ、たどっていけるんですよと。さっきおっしゃったように変わっているわけですから、それはできるんだということは理論的にそのとおりだと思います。

 ただし、ほかの人のを使ったり、どんどん変えていったり、どうにでもできちゃうというところがありますから、それだけでは推していけないなというふうに、現場感覚でいいますと非常に難しいと思います。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 それでは、三つ目の面ですが、サイトの運営者、いわゆるプロバイダーとか電子掲示板の管理者、こちら側はどうやって規制するかということについて、これは主として、有害情報の削除という問題について国分さんの方にお伺いしたいと思います。

 先ほどのお話ですと、一年前から協会の方でインターネット・ホットラインセンターというサービスをやっておられる。一年間で六万件ぐらい情報が寄せられたということであります。

 一つは、そのうち、いただいた資料によりますと、違法情報というのが九千件余りあったということであります。違法情報ですから、恐らくこのほとんどは警察に通報されたんだろうというふうに思います。ところが、一年たって、では、そのうち幾ら検挙されたのかというと十八件ということだそうですね、このデータによりますと。それから、捜査中が四百件あるということであります。

 国分さんの方でこれだけの情報を警察に流して、警察の対応が今言ったような状態だということですが、通報された情報への警察の対処を協会としてはどう評価されているんでしょうか。もうちょっと人手をふやして一生懸命対処してくれ、こういう気持ちなのかどうか、お伺いしたいと思います。

国分参考人 警察の中の捜査状況というのは、私どもに対してもいろいろ説明はありませんので、よくわかりませんが、いろいろお聞きするところによりますと、警察、各県警の体制といいますか、こういうサイバー犯罪に対する体制というのがまだ弱いというようなことを聞いております。したがいまして、割と違法情報の掲載等を頻繁に繰り返しているような、比較的大きいといいますか、影響力のあるサイトに対しては重点的に摘発をされているように見受けられます。

 私どものインターネット・ホットラインセンター自身もなかなか体制的に厳しいものがありますが、警察におかれましても、そういう状況は、特に従来の犯罪ではなくて新しい分野ですから、いろいろとあろうかと思います。

 それで、ここには書いてありませんが、私どもの使命としましては、警察へ通報すると同時に、そういう違法・有害情報がネット上に掲載されているものを削除していただくということもありますので、それにつきましては、国内に存在するプロバイダーといいますか、運営者に対しては、比較的、一〇〇%とまではいきませんが、八〇%なり、かなり高い数字になっております。

 あと、もう一つの問題は、インターネットというのは国際的なネットワークでありますので、違法情報が、国内だけじゃなくて海外にある、特に児童ポルノとかわいせつないろいろな画像等が、しかもそれは日本人向けにつくられているサイトであったりしまして、それは国際的なレベルで解決していかなければいけないような状況にあります。

吉田(泉)委員 そろそろ時間ですので、最後になると思いますが、今、削除の要請も随分やっておられるということでした。それで、八割近い方が削除をしてくれているんだということでしたが、別途資料を見ると、例えば、自殺関係のサイトに限ると二割しか協会が要請しても削除してくれないというようなデータもあります。

 それで、韓国では、要請しても削除しないという場合は行政処分の対象としている。非常に踏み込んだ国もあるわけであります。日本は、要請して削除してくれなかったらどうしようもないという段階ですが、この削除義務というのをもう少しはっきりさせた方がいいと思うんですが、いかがでしょうか、国分さん。

国分参考人 インターネット協会はあくまでも民間の組織でありますので、インターネット協会のホットラインセンターが削除要請をするというのは、私どものところで違法であるかどうかをちゃんと分析しまして、法律のアドバイザー、特に刑事畑の弁護士の方々にお願いしておりますが、そういうところでちゃんと検討した上で、これは違法ですよ、ですから削除してくださいということをお願いしているので、それなりに尊重していただけるのではないかと思っておりますが、それをやっていただけないとなると、やはり警察の方にお願いをして、刑事事件として対応をしていただくということになろうかと思います。

吉田(泉)委員 終わります。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一です。

 参考人の皆様方には、本日は、早朝からお越しをいただきまして、大変ありがとうございます。今までの質問と重なる部分もあろうかと思いますけれども、よろしくお願い申し上げます。

 きょうの参考人の皆様方の意見陳述を聞いておりまして、携帯のインターネットで進行している事態にいかに大人がついていけなくなっているかということを改めて実感いたしました。私も、恥ずかしながら、プロフだとか、どういうものかは知っていましたけれども、実際に見たことはございませんし、学校裏サイトというのも見たこともありませんで、なかなか本当に、激しいこの変化の状況についていけなくなっているなということを実感いたしました。

 それで、パソコンのインターネットは、子供たちがどういうサイトを見ているかというのは大人も結構注意しているとは思うんですけれども、携帯電話になると、どうしても、何かやはり緊急時に子供に連絡するということで持たせるという動機の親御さんが多いでしょうから、モバイルインターネット端末であるという警戒心が非常に弱いんじゃないかというふうに思っております。

 そこで、携帯からアクセスするインターネットの有害情報、危険情報から子供たちを守るためには、まず親やあるいは教師の意識改革といいますか、啓発といいますか、それが非常に重要なんではないかというふうに、きょうお話を伺って、思いました。そこで、親や教師にどのように啓発していったらいいのか、これは四人の参考人の皆様にそれぞれアドバイスをいただければと存じます。

玄葉委員長 それでは、それぞれの参考人の方々からお願いしたいと思いますけれども、尾木参考人、最初にお願いします。

尾木参考人 まず、親の方は、身近なところでPTAとか、あるいはNPOのいろいろな団体が今すごく奮闘し始めてくださっていますけれども、そういうところとPTAが一体になって、実際に、インストラクターというか、それを知っていて、こうなっているんですよというのを見せられる人が非常に少ないわけで、その人たちとの提携とか、そこをふやすとかいう社会的な支援も必要だ。僕はNPOに対する支援はもっと必要だと思っていますけれども、そういうところと提携して、教育委員会なりあるいは学校現場なりが先生方に徹底していくという、事実認識をちゃんとしてもらうということが、これは絶対的に必要だと思います。

 本当に先生方は知らなくて、「YouTube」といっても自転車のチューブかと思っているぐらいずれておられますので、そんなことに気を配っているほどゆとりもないんですよね、現場の先生方は。だから、ここのところを何とかしないといけないなというふうに思います。だから、PTAと学校がやはり組織的に動くということがポイントになってくるかなというふうに思いますね。

 僕も、年間、本当にたくさんの講演であちこちに出かけているんですけれども、この一年間を振り返って、インターネットのことをテーマに講演依頼を受けたのはたった一回です。そこまでおくれています。きょうも、この午後、文科省の研究指定校に講演に伺いますけれども、それは人権問題で、これまた大事ですけれども、インターネットに特化した講演会というのは、下田先生あたりは多いんだと思いますけれども、僕なんかのところには本当に少なくて、まだまだおくれているなということを思います。

小森参考人 大人たちに、危険性と、子供たちがいかに緊張感の中でこの問題によってつらい思いをしているかということを知ってもらいたいというふうに思っています。しかし、大人にとっては、幾ら説明しても、遠い別の世界の話をしているようなことというふうにとらえられてしまって、我が子が今大変なんだというふうに思っていただけないんですね。

 私も、尾木先生と同じように年間約二百件近くの講演をさせていただいて、大人の方にも何度も話をしていますけれども、それでも、おうちの方は、興味を深くは示してくださいません。何人かがやっとヒットしてくれるという、そこをわずかな望みとして私はやっているんですけれども。

 では、日本の子供をこの問題からどう守ったらいいかといったら、本当に、今ここにいらっしゃる先生方に、何か繰り返しになってしまいますけれども、子供たちの恐怖感、緊張感というものをまずしっかり想像していただきたいと思っています。そして、できる対策はありますので、もう着手していただきたいというふうに心から思っています。

    〔委員長退席、笹木委員長代理着席〕

国分参考人 私どものところは、インターネットという看板を掲げているせいもありまして、このところ、実は、子供によるインターネットの利用に関してのセミナーの講演依頼は非常に多い状況にあります。もう既に五十数回、講演に対して講師を派遣したりしております。

 それで、やはり全国的に、このところいろいろインターネット上で事件が起こったりしますものですから、学校でありますとか、PTAでありますとか、あるいは地域のNPO的なところから、やはりインターネット上の安心、安全ということについて講演依頼がふえたということは、それだけ皆さんの関心が少しずつ高まりつつあるのではないかなというふうに思っております。

 ただ、実際にそういうPTAなり学校なりで、子供を対象とする場合もありますし、子供と保護者と一緒ということもありますし、保護者だけの場合もあるんですが、どちらかというとお母さんが多いんですね。お母さんに、母親にいろいろインターネット上の問題を御説明するということはそれなりに有効なんですが、私の私見ですけれども、やはりお父さんといいますか、父親の方にもそれなりに、例えば会社なんかでパソコンを普段から使っているような、オフィスで仕事をされている父親であれば、母親よりも少しはこういう状況が理解しやすいのではないかというふうに思っております。

 現に、韓国では、会社にそういうセミナー、出前の講師派遣をする。会社がそういう機会を設けてインターネットの安心、安全に協力をするということをやられていますので、日本でもそういうことはいろいろ参考にしていいのではないかというふうに思っております。

 以上です。

桝谷参考人 今の御質問は非常に重要なことではないかなというふうに考えております。

 私の発言の中にもありましたように、親や教師は学ぶ時間がないんです、知らないんです。先ほどからいろいろな形で、国でいろいろなプログラムや、つくられていらっしゃいます。協会等でもつくっていらっしゃいますが、我々の事務所の周りにもいろいろなペーパーが回ってきています。だけれども、紙としてみんな埋もれているのが現状です、情報として。

 では、それを伝える人間は一体だれが伝えるの、どの時間に伝えるの。では、ここにいらっしゃるような先生方が、全国の学校に行ったときにどれぐらい時間が、人が要るの、どれだけ金がかかるのかというふうなところが全く論議されておりません。おっしゃるとおりなんです。

 ですから、うちの町では、ことしから、メディアリテラシーに関する学習プログラム、学校の先生方と、地域のPTAの保護者の代表の皆さんと、学識者と、そして社会教育に携わる者と、四者が連携いたしまして、単に学校のプログラムだけではなくて、保護者が子供の発育にあわせて一体どういった問題を学び取らなければならないのかという学習プログラムづくりに着手いたしました。また、地域のおじいちゃんやおばあちゃん方もどういう問題を理解しなければいけないのかというふうなことも含めたプログラムづくりを早急に、それぞれの地域で、それぞれの実態に合わせて、自分らで教える人材、教材を前にしながら論議するときが来たのではないかなというのが我々の考え方であります。

 ただし、そうなってきますと、財源がございません。それをどう確保していくかが大きな課題ではないかなというふうに思っております。我々の活動は、野々市町から百万円、そして文科省の方から再委託事業費として約百万円、二百万円で運動しておりますが、百万円あればこの活動はできると思っております。そういった面も含めまして、人材確保、財源確保、教材確保をどうしていくか、それらを体系的に実施するため、今のようなネットワーク型の線でたくさん結んでいくのか、それとも地域を塗りつぶすような形で広げていくのかというようなことは、一つの戦略としてこれから考えるべき時期に来たかと思っております。

 また、この情報化の問題は、先ほどから論議されておりますように、単にネットトラブルだけではなくて、いじめの問題だけではなくて、消費者としての視点、家族の問題、そして子供の表現力、そういった問題を含めながら総合的に子供を教えられる、これからの時代、非常に重要な学習課題だというふうに認識しております。

 補足いたしますが、地上デジタル放送等の学習会も、実は私の町であす行います。子供たちがテレビの前に一番たくさん座っております。双方向型のテレビがもう既にやってきています、パソコンと同じようなこともできる機能もついております。さあ、そうなった場合、そういったことを知らない子供たち、そしてテレビの前に長時間いる高齢者の方々がそういったトラブルを生じることがあるのかないのかということも含めて学習する時期に来たのではないかな。余りにも情報化というものを安易に家庭に、生活に入れていいのかということを、我々消費者として考える時期に来たように思っております。

 以上です。

石井(啓)委員 それでは、続きまして、尾木参考人と桝谷参考人にお伺いしたいと思うんです。

 桝谷参考人の野々市町のように、携帯を持たない子供さんが多いところはそれでいいと思うんですね、持っていない子供さんは。ただ、持ってしまった子供さんにどう対応するのか。

 さっき桝谷参考人もおっしゃったように、持ってから制限しようとしても、これはなかなか難しい。恐らく子供に言っても聞かないでしょうね。そういう子供たちにどういうふうにアドバイスしていったらいいのか。賢い利用方法、あるいは、子供たちもみずから危険な目に遭いたいとは思っていないでしょうから、こういうサイトにアクセスするとちょっと危ないよとか、そういう危険に陥らないような利用方法を教えていくといいますか、アドバイスしていくというか、そういうことが大切なのかなというふうに思いましたけれども、なかなか親や教師では教える能力もありませんから、子供たちにだれがどのようにこれを教えていったらいいのか、御意見を伺わせていただければと思います。

尾木参考人 子供たちに教えるときに、我々の側の知識不足だとか、学校側のというのは、今大きなネックになっているわけですよね。だけれども、一番知っているのは子供たち自身なんですよ、子供たちの問題のスペシャリストは子供というふうによく言われますけれども。

 だから、例えば各学校ごとにネットの委員会とかプロジェクトをつくるというようなことは、僕は組織的にも必要だと思うんです。その中によくわかっている教師だけが入っていくとかいうことじゃなくて、子供たちにやはり入ってもらって、子供たちが運動として、さっきもちょっと意見陳述で言いましたけれども、どうやっていけるのか。その学校の中で、本当に高い質のネット文化というのを自分たちの中学校ではこういうふうに確立するんだというのを生徒会として持つだとかということが僕は重要で、日本では岐阜県が非常にネット関係で進んでいる県ですけれども、あそこなんかではおもしろい生徒会の取り組みがありまして、インターネットの憲法まで決めて、子供たちが生徒会ぐるみで取り組んでいる実例なんかがあるんです。

 そういう子供たちの認識力というのか、そこを高めていくということが僕はすごく重要で、もちろん、具体的にこういう害があるよ、こんな怖いのもあるよ、そういうことも知らせていく、知識を与えるということも重要ですけれども、子供たちの感性が高まっていけば、それは、どんな新手のものが出てきても受け付けないような教育、完璧にやるのは難しいんですが、やはりそれを目指していきたいなということは思いますね、現場の教師というか、学校の教育の視点としては。

 そこら辺の開発もやはりまだまだおくれています。僕も今全国を見ておるんですが、そんな数多くありませんので、そこら辺の交流をしていくというようなことも極めて重要だと思いますね。

    〔笹木委員長代理退席、委員長着席〕

桝谷参考人 我々の活動で今、先ほどちょっと紹介いたしましたが、WEBチェッカーズという活動をやっております。これは、十人余りの大人が、特にうちの町は、携帯は持っておりませんが、インターネットは子供たちはやれる環境にございますので、そこでいろいろな書き込みもございます。また、一部の子供は携帯を持っておりますので、ネットを使ったいじめ等もあります。我々も実際に削除依頼したこともございます。

 ということで、やはりその世界を大人が見ているぞ、子供だけの世界ではないんだよと。君たちはネットで、自分たちでコミュニティーサイトでいろいろやりとりをしているけれども、あくまでも大人がつくったサイトでやらされているという認識を子供たちに持たすことは、非常に大事かというふうに思っております。

 そういう面でいいますと、持ってしまったところについても、大人が組織的にそういった巡視活動、パトロール等をしていくことも重要、そして、結果ではなくて、していることを子供たちに伝えていくことが非常にこれから大切なのではないかなというふうに思っております。よく、どこの市町村でも補導員とかという方々がいらっしゃいますが、単にスーパーやお店や駅を回るんじゃなくて、ネットの中も回る補導員の体制づくりというのは、これから急務の課題だというふうに考えております。

 また、持っていないところなんですが、持たせてしまって五〇%、四〇%になっても、我々も実は多いときは三〇%近いところがありました。ある部分、集団で持ちますので、ある学年が、学校ぐるみでも、二、三年していけば、きちっと親に伝えていけば、親さえ変えていけば、二〇%ぐらい、四〇%のところも落ちるというふうに考えておりますので、我々のような取り組みもこれから各地域で広がっていただきたいなというふうに願っております。

石井(啓)委員 それでは、時間的に最後の質問になると思いますが、尾木参考人と小森参考人にお伺いしたいと思います。

 ネットでのいじめですね。匿名のいじめというのは、いじめている相手がわからないだけに、非常にたちが悪い。今は発信者も特定できるようですけれども、いじめをとめてほしいと相手に直接訴えることもそう容易ではないでしょうし、学校に行かなくてもいじめは続いているということですから、こういったいじめにはどういうふうに対処していったらいいのか、御意見を伺わせていただきたいと思います。

尾木参考人 本当に今おっしゃるとおりなんですよね。例えば不登校をして昔は守ったりとかできましたけれども、不登校をしていたって来るわけですし、金曜日の夜から昔は元気になったんですけれども、いじめられている子とかは。ところが、土曜日、日曜日、逆に暇に飽かせていっぱい嫌がらせのメールが入ってしまって、地獄だ、逃げ場がないというのが実態ですよね、携帯を持たなければいいですけれども。

 そういう中で、どういうふうにしてこのいじめの問題に対応していくのかというのは、やはり規制的なところで、持たせないというのも一つでしょうし、それから、子供たちのメール文化というか、メールリテラシー、大きく言えばメディアリテラシーをどういうふうにして高めていくのか、培っていくのかというのが、僕は、本筋は本筋だろうと思います。そこのところが今ないのと同じ状況ですよね。

 だから、せめて文科省が進めておられる情報モラル教育、これは本当に徹底しなきゃいけないというふうに思います。それこそ、そこはチェックしながらでも、どこまで進んだのか点検してほしいなと思っています。

 以上です。

小森参考人 本当に、まさにそこがわからないんですけれども、一つのやり方として、やはりみんなで情報を共有するということが大切かなと思います。

 ある中学校で、一年、二年、三年生がある問題の委員会をつくり、そして、もう一つ先生方にもその委員会をつくってもらって、そこはいつもつながって、情報を共有し合う中で解決していくというようなやり方を考えた学校もありました。

 あと、最初は、言っている言葉が、消えろとか死ねとかということから始まったとしても、そのうちその言葉がどんどんヒートアップするわけですよね。まだ死んでないのかになって、死ぬ勇気がないのかというふうになって、どんどんどんどん心理的に追い詰めていくというのは、やはり大人たちが、最初に言った話に戻っちゃうんですけれども、そこまでしなければならないその心というのは一体今どんな苦しみを抱えているのかというところに向き合うということではないかなと、やはりそこへ私は戻ってしまうんですけれども。

石井(啓)委員 大変ありがとうございました。

 以上で終わります。

玄葉委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 携帯、インターネットを通じて、子供たちに何が起こっているのか。本当に、どういう状況にあるのかということについて、きょうは四人の参考人の皆様から、大変リアルな実態、そして考え方もお示しをいただいたというふうに思います。本当に、お忙しい中、ありがとうございます。

 私は、最初に、携帯電話といっても、私たちが使っているとか認識の範囲では、通話あるいはメールという範囲なんですよね。しかし、今は子供たちがまさにネットに接続している、しかも、さまざまな機能を持った携帯電話になっている。このことが、いろいろな問題を一つは引き起こしているのではないのかというふうにちょっと思っておりまして、率直なところを伺いたいんですけれども、こういう機能を持った携帯は本当に子供たちに必要なのかどうかというふうに伺いたいと思うんですが、お聞かせいただきたいと思います。それぞれ、四人の方々から。

尾木参考人 結論から言いますと、僕はそういう高機能の携帯は必要ではないと思います、固定したパソコンで十分だろうと。

 以上です。

小森参考人 私は、一定の年齢まで持つ必要はないと思っています。

国分参考人 携帯電話会社あるいはメーカーはどんどん新しい機能を開発して、これでもかこれでもかとやっているわけですが、極端なことを言えば、電話としての機能であれば、インターネットに接続できない携帯電話機というのも既にありますので、親御さんがそういうものを選択されればいいかというふうに思っております。

桝谷参考人 私も、子供には必要ないと思っております。生身の人間同士の触れ合いをもっと子供に大切にさせたいと思っております。

石井(郁)委員 今、子供たち、小学生で三一・三%、中学生で五七・六%、約六割ですよね、高校生で九六%ですからほぼ一〇〇%と。この携帯がどういう携帯なのかということは、案外親はわかっていないんじゃないでしょうか。先生方もそうだと思うんですね。

 それで私は大変気にしているわけですけれども、やはり一つは、携帯がこれほど急速に普及しているのは、私の聞いたところによりますと、ただで買える、ただで買えるというのはどうなのかと思いますけれども、ただですということがあったようにも思いましたし、そして、中身が本当にさまざまな機能がついている、私はとてもわからないわけですけれども、そういうことなので、私は、そういう携帯を子供たちに売る、これは親の同意があるんですけれども、しかし、親もそこを知っていて子供たちに与えているのかが大事だと思うんですけれども、そういう点では、子供たちに売っていいよ、売れるんだという意味での携帯会社あるいは事業者の社会的責任というものについては、どのようにお考えになっていらっしゃるのか。これも一言ずつお聞かせいただければと思います。

尾木参考人 この事業者の責任は僕は極めて重大だと思います。生産事業者というか、つくる大もとのところの問題もあると思うんですよ。

 ただ、さっきおっしゃったように、子供専用のもありますから、それは事業者としての責任を果たしているといえば果たしているのかわかりませんけれども、重要なのは、販売店のところの問題がすごくありまして、これは東京都が去年、二〇〇六年の二月から三月に東京都内の携帯電話の量販店千七百店舗へのアンケート調査をしたんですけれども、その中で、例えば、フィルタリングの問題、機能を伝えていないお店が四六・九%ですね、子供に売るときにですよ。そして、子供への通知義務条例というのがあるわけですけれども、それを知らないと答えた量販店が四八・七%に達していますし、フィルタリングの機能の存在すら知らなかった販売店ですよ、これが六六・〇%なんですよね。販売店がまず知っていない。そして、恐るべきなのは、今後も積極的にお客さんに周知するつもりがないとする店舗が一〇・五%もあってという、これは東京都の実態調査ですけれども、これではもう販売する資格もないというふうに僕は思います。

 だから、やはり社会的に、子供の教育というのは学校と家庭だけでなくて社会全体が責任を負っているわけですから、そこのところの責任はしっかり持ってもらわなきゃいけないし、その啓発活動からペナルティー、僕は余り好きじゃありませんけれども、でも、それができなかったらやはり処罰も受けるみたいな、特に子供の成長に関しては社会がしっかり責任を持つんだという国の考みたいなのをつくっていただきたいというように思います。

 以上です。

小森参考人 あと、やはり親の責任というものも非常に私は大きいと思っています。

 利便性とか、あと子供の安全のために、親の方が、小学生の場合は多く持たせたりしているわけですね。子供の方から積極的に買ってと言う場合だけではないわけですね。

 その安全性という面からいいますと、一年間にどれぐらいの子供が、例えば不審者によって殺されているかという人数を見ますと、一けた二けたの人数が実際にやはり殺されています。ところが、この携帯というものによって心を傷つけられたりとか、いろいろなことでみずから命を絶っている子供の人数というのは、それはもうずっと多いわけですね。

 ですから、命というものを考えたときにも、親は、この携帯というものの機能を知って安全なものとして与えられるのであればいいけれども、一度与えてしまったものを奪うということはもうできないわけですから、小学校のときに与えて、その利便性を子供にも教えてしまった大人というのにも責任があると思っています。

国分参考人 携帯電話会社の社会的責任ということにつきましては、三、四年前は非常に腰が引けておりましたので、私も個人的には非常につらい思いをいたしましたが、ここ一、二年は、ちゃんとそういうものを理解して、ちゃんと活動してくれているものだというふうに思っております。

 ただ、先ほど尾木先生が御指摘されたように、販売店の問題というのは非常にありまして、なかなか理解が進まないというか、まだまだそこら辺はもっと努力が必要だというふうに思っております。

桝谷参考人 私も、事業者の責任は非常に大きいと思っております。

 小さい子供へのおもちゃは、本当に細部にわたって安全点検はされているはずです、売り出す際には。携帯電話は、これだけ子供たちがお互いにいじめ合っているのに、そういうことも点検されずに売られていることは、非常に大人として無責任な状態になっているのではないかなというふうに危惧もしております。

 ということで、売る方、つくる方も含めて、こういった販売にかかわっては、僕は、やはり青少年健全育成税のようなものをきちっと取って、先ほどから論議されておりますような、地域における学習活動とか、学校のリテラシー教育とか、交通社会においては各地域に安全協会等がございますように、そういったものを普及啓発する組織体をつくる活動資金にするとかいうふうなものを早急に立ち上げる必要があるのではないかなというふうに、事業者からある程度、一定程度吸い上げる必要もあるというふうに考えております。

 以上です。

石井(郁)委員 それぞれの立場でのそれぞれのお考えがあると思いますけれども、どうもありがとうございました。

 今の子供たちというのは、やはりまずゲーム世代ですよね。ゲーム機でもうほとんどなれている。バーチャルな世界に生きているとよく言われますけれども、それに加えて、今度はこういうネット機能つきの携帯でいろいろなことができる。だから、携帯が今や玩具になっているというのは、きょう本当はおいでいただく予定だった下田先生の言葉だったかと思いますけれども、そういう、言ってみれば危ない玩具を与えていいのかということになると思うんですけれども、非常にいろいろな問題を考えなきゃいけないというふうに考えております。

 それで、一体日本でなぜこんな状態が蔓延しちゃったのかという問題ですよね。どうしていったらいいのかというのがあるんですけれども、先ほど尾木参考人から海外の状況もちょっと紹介されたと思うんですけれども、こういうネット機能つきの携帯を、言ってみれば、小学生は今三割がもう持っていますから、その中にも持っていないとは言えないわけですよね。

 だから、こういう携帯の普及というのは一体世界にあるんでしょうか。また、こういうことに対して学校や親や社会的にどういう教育をしているのかという問題で、ちょっと二、三、例がございましたら教えていただきたいと思います。

尾木参考人 いわゆる電話機能としてのは持っていますよね。この間視察に行ったときも、持っていますけれども、やはりネット機能のこれだけ高機能のは持っていませんね。それでも持つ子はもちろんいるわけです。商品として持つ子はいるようですけれども、その子たちの数が、先ほども申し上げましたけれども、限定されているんですよ。

 つまり、非行で、先生方が大変気にしている子、親御さんも心配している子が、あるいは親の指導が入らない子が持っているという状況ですね。だから、その子たちに対しては、いわゆるネットの教育というよりも心のケアをしていっているんですね、カウンセラーがくっついたりして。そして、心が充実してくると、そこのところを脱出していけるという、かなり正当なアプローチの方法で、我が国でやれるかなというようなことを思ったんですけれども、そんなことですね。

 それと、サウジアラビアなんかは、もう国家として携帯の電話機能しか持たせていない。フィルタリングを上でかけちゃって、機能ができないようにしてあるとか、そこら辺はやはり考えておられるなというふうには思いましたね。

 それから、アメリカなんかにしても、会社そのものが、変なのが入っていかないように規制をされていたりとか、やはり日本の場合、スタート地点から何か規制のない状況で、あれよあれよといっている間に広がっていってしまったというふうな感覚を僕は持っています。

 だから、今ちょうどここでみんなで振り返って、さてというので考えるのにいいんじゃないかと思います。

石井(郁)委員 私たちももっと研究をしなきゃいけないとは思うんですけれども、一定の法規制だってあると思うんですよね。しかし、それも、大人も十分知らないし、ましてや子供たちは知識としても持っていないという状況もあるかと思いますし、また、これからあるいは政治の上で、あるいは行政の上で取り組めることは何なのかというようなことについても考えていきたいというふうに思っているところです。

 最後になりますけれども、きょうはやはりネット犯罪というか、ネット上のいじめというのが今深刻だということが共通して出されましたので、そのことで特に小森参考人に伺いたいと思うんです。

 私たちも、いじめが日本社会の深刻な病理であり、やはり子供たちが命を奪われるというか、そういう意味では本当に教育の世界にあってはならないことだということで、いろいろな取り組みをしてきたつもりなんですけれども、しかし、今ネット上ということで新たな展開というか、陰湿さ、広がり等々を持っているということで、先ほど小森参考人からは、子供も先生も、もううつ病にまでなってしまっているということも言われました。

 だから、今ネット上のいじめをどうするかということは一つあるんですけれども、きょうはちょっとそこはもう時間ですのでおきまして、小森参考人が御自身の大変本当に悲しい体験から今立ち上がっていろいろ講演をしていただいているわけですけれども、その中で、私、大変印象深く思ったんですけれども、いじめはしちゃいけないとか、命は大切にとか、そういう言葉は使わないとおっしゃったことは、私、とても重要な御指摘だなと思ったんですよね。

 というのは、私、文部科学の委員会の中に長くいますけれども、大体、政府、文部科学省はいつも、いじめはしちゃいけない、命を大切に、そういうペーパーを乱発してきましたから、そういうことを幾ら言っても子供の心に響いていなかったんですよね、きっと。という意味で、このあたりのことをもう少し、なぜ、命を大切に、そういう言葉を繰り返すことがいじめをなくすことにつながらないんだというあたりを少し教えていただければと思いました。

小森参考人 私は、講演という形態と、あと展示会という形態で活動しているんですけれども、その講演を聞いた後、あと展示を見た後、子供たちが、もしかして命って大切かもしれないとか、人を傷つける行為は本当は人としてすごく卑劣な行為だったのではないかとか、あと、もしかして自分もやっていたのではないかということを本人に気づいてもらうためには、どんな話を、どんなプログラムを提供したらいいのかなというところがこの問題のポイントだと思うんですね。

 子供たちに最終的に感じてもらうためには、私たちが答えを言ってはならなくて、私たちが思っているお仕着せのようなものを子供にぽんとはめ込むのではなく、一人一人、同じ話を聞いても感じることが全部違ってもいいしという、そんな基本的なところなんですけれども。

 ちょっとうまく言えないんですけれども、お互いが違っていて、そのお互いを認めることができたときに解決するのではないかと思っているのと、あと決定的にわかったのは、やはり大人が子供にいじめちゃだめと教えながら、その先に、でもやられたらやり返してもいいのよと教えてしまっているんですね。そして、やり返すぐらいの強さが大切だまで教え込んでしまっている中で、本当にたくさんのいじめが生まれている。いじめが行われているのは学校という現場だけれども、いじめを生んでいるのは私たち大人だったんだということにはっきり気づいたんです。

 その中で、子供たちと一緒に考えながら、子供たちも答えを探す、大人も答えを探す、命って何なんだろう、心って何なんだろうと問われたときに、私たち大人自身も答えを持っている人は少ないので、一緒に考える中で解決策をお互いが見つけるというふうなプログラムというか、プロセスを今たどってやっています。

石井(郁)委員 少し時間が押していますから、協力したいと思っておりまして、本当に、教育の原点というか、教育というのはそうなんだろうなというふうに思うんですよね。だから、百遍お説教する、携帯でこういうことをしちゃいけないよ、ああしちゃいけないよと、大体、いけない、いけないというのが日本の伝統的な教育かな、こういうふうに思うんです。

 しかし、おっしゃいましたように、本当に子供たちも心を開ける、こっちも通じ合えるような関係をつくる、そこが非常に大事だなというふうに思っておりまして、きょうはそれぞれの立場から、今の日本の社会と、そして子供が抱えている問題についてお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。私たちも、立法府にいる者として、いろいろこれから取り組んでいきたいと思っております。

 本当にありがとうございました。

玄葉委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の皆様に一言御礼を申し上げたいと思います。

 参考人の皆様、本日は大変貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。いただきました御意見、委員会での審議の参考にさせていただきたいというふうに考えております。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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