衆議院

メインへスキップ



第3号 平成20年4月10日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十年四月十日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 玄葉光一郎君

   理事 江崎洋一郎君 理事 後藤田正純君

   理事 実川 幸夫君 理事 萩生田光一君

   理事 笹木 竜三君 理事 吉田  泉君

   理事 古屋 範子君

      井澤 京子君    井脇ノブ子君

      岩屋  毅君    上野賢一郎君

      大塚 高司君    中森ふくよ君

      西本 勝子君    馳   浩君

      福岡 資麿君    松本 洋平君

      武藤 容治君    山内 康一君

      泉  健太君    菊田真紀子君

      田名部匡代君    石井 啓一君

      石井 郁子君

    …………………………………

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   上川 陽子君

   内閣府副大臣       中川 義雄君

   内閣府大臣政務官     西村 明宏君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   柴田 雅人君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 井上 美昭君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     武内 信博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 秋元 義孝君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           布村 幸彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中  敏君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中尾 昭弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           村木 厚子君

   衆議院調査局第一特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     武藤 容治君

同日

 辞任         補欠選任

  武藤 容治君     中森ふくよ君

    ―――――――――――――

四月二日

 子供が使用する携帯電話への法規制に関する請願(井澤京子君紹介)(第八一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 青少年問題に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

玄葉委員長 これより会議を開きます。

 青少年問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官柴田雅人君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長武内信博君、外務省大臣官房審議官秋元義孝君、文部科学省大臣官房審議官布村幸彦君、文部科学省大臣官房審議官田中敏君、厚生労働省大臣官房審議官中尾昭弘君及び厚生労働省大臣官房審議官村木厚子さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玄葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上野賢一郎君。

上野委員 自由民主党の上野賢一郎です。

 きょうは、青少年問題に関しまして、質問をさせていただく機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。時間が二十分ということでございますので、簡潔に、スピーディーに進めていきたいと思います。

 昨年の十一月に、子どもとインターネットをめぐる諸問題に関しまして、参考人質疑が行われました。尾木法政大学教授を初めといたしまして、参考人の皆さんの意見陳述をお伺いしました。その中で、子供と携帯電話を取り巻く状況について、私ども大変な衝撃を受けたわけでございます。学校裏サイト、プロフ、そうした当時の我々にとっては耳なれない言葉の裏側で、子供たちがいじめや犯罪に巻き込まれる。言ってみれば、ウエブ汚染と言われるような、そうした危険性に満ちた現状というものを深く認識したところでもございます。

 本日は、この青少年と携帯電話の問題につきまして、今さまざまな課題が噴出をしているその状況を再度確認する中で、政府としての取り組みについて的確な対応を求めていきたい、そういった観点から質問をさせていただきたいと思います。

 この問題に関しましては、大きく言って二つの流れがあると思います。一つは、出会い系サイトを初めとするいろいろな有害なサイトがある。その有害情報から子供たちを遮断していく、そうした観点が一つあると思いますし、もう一つは、携帯電話を使ったいじめの問題、メールあるいは掲示板を利用したいじめの問題でございますが、そうした問題に対して対応をしていく、その二つの大きな問題があるだろうと思います。

 まず、一点目の出会い系サイトに関します青少年の問題ですが、これは、今、一体どれぐらいの被害の状況があるのか。その中で、特に携帯電話を利用した出会い系サイトについて、子供たちが犯罪に巻き込まれるどういった状況があるのかということにつきまして、まずお伺いをしたいと思います。

井上政府参考人 平成十九年の出会い系サイトに関係した事件における被害児童数は千百人でありました。前年と比べて五十三人減少しておりますが、依然として高水準で推移しておりまして、平成十四年以降、一貫して年間千人を超えている状況にございます。

 ちなみに、被害児童のうち、出会い系サイトへのアクセス手段として携帯電話を利用したものの割合は、平成十六年以降、毎年九六%を超えておる状況でございます。被害の多い罪種は、児童の性的被害に係る事犯であり、被害児童千百人のうち、児童買春が五百五十九人、青少年保護育成条例が三百八十八人で、その大半を占めております。また、被害児童を年齢層別に見ますと、十二歳未満が一人、十二歳以上十五歳未満が二百二十四人、十五歳以上十八歳未満が八百七十五人、約八割弱となっておるところでございます。

 このような状況を踏まえまして、警察としては、児童買春、児童ポルノ法違反、青少年保護育成条例違反、出会い系サイト規制法の不正誘引事犯等の取り締まりの推進、フィルタリングの普及促進に向けた政府広報等各種メディアの活用、学校等と連携した出会い系サイトの危険性及び児童の利用防止等についての周知、指導等の取り組みを推進しておるところでございます。さらに、児童被害の防止を図るため、出会い系サイト事業者に対する規制の強化を初めとする、いわゆる出会い系サイト規制法の改正法案を今国会に提出しているところでございます。

上野委員 今の御説明の中にもありましたとおり、千件を超える子供たちが被害に遭っている。そのうちの九六%以上は携帯電話を利用して犯罪に巻き込まれるというわけでございまして、いかにこの携帯電話の状況というのがひどいものかということがわかろうかと思います。

 今、警察庁の方から御説明がありましたとおり、さまざまな法律、特に今国会では規制法の強化という観点から改正の法案を提出いただいているところでございますが、そうしたものを通じまして、できるだけ子供たちをこの有害情報から遮断していくための法規制について、当委員会でも前向きに議論を進めていくべきだろうと思います。

 もう一つのネットを使ったいじめの問題でございますが、これは、今現在、一年間で約五千件のネットによるいじめが報告されているという話を聞いたことがあります。こうした状況につきまして、これは文部科学省になるかと思いますが、どのように把握をされているのでしょうか、その実態についてお伺いをします。

 それと同時に、学校裏サイト、そういったものの状況についてもあわせて把握をされているのかどうかにつきまして、お伺いをしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 新しい形のいじめになりますネットいじめについて、例年、問題行動調査を実施してきておりましたけれども、平成十八年度分の調査から、いじめの態様に、パソコンや携帯電話等で嫌なことをされるという項目を追加いたしました。その調査の結果は、先生御指摘のとおり、約四千九百件ございまして、全体のいじめの件数の三・九%、小学校で四百六十六件、〇・八%、中学校で二千六百九十一件、五・二%、高等学校で一千六百九十九件、一三・八%、特にパソコン、携帯を利用する割合が高い高等学校において高い割合が出たという実態でございました。

 それからもう一つ、青少年が利用する非公式サイト、匿名掲示板、いわゆる学校裏サイトにつきましては、現在、実態調査を進めているところでございます。ことしの一月から実施しておりまして、三月の段階では、約三万八千件のサイトの確認がされたところでございまして、現在、その内容等について専門家による分析を行っておりまして、できれば今月中には取りまとめたいという状況でございます。

上野委員 今、学校裏サイトの問題につきましては、今月中、四月中に取りまとめをするということでございます。また、当委員会あるいは当委員会所属の委員に対しまして、情報提供等ぜひお願いをしたいと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。

 年間五千件に上るいじめの実態があるというわけでございますが、これはどういったことが多いんでしょうか。新聞報道によりますと、最近は、メールを使ったいじめとか、あるいは恐喝に発展するとか、そうしたこともふえているというような記事を読んだことがありますし、また、そうしたことの結果として、うつ病になったり不登校になったり、そうしたことがあろうかと思います。その詳細な分析というのはどれほどやられているんでしょうか。

布村政府参考人 先ほど申し上げました調査の結果では、件数を学校の方から報告いただいておりますけれども、その個別の実態については、逐一は承知できないところでございますけれども、誹謗中傷ですとか、嫌なことを書き込まれる、あるいはそれがチェーン的につながってどんどん誹謗中傷が激しくなる、そういう実態があるというふうには承知しているところでございます。

上野委員 そういった調査をされているのであれば、その実態について分析をした上で、どういった対策をするのが有効かどうかということについてぜひ議論を深めていただきたいと思いますので、そうした調査の分析等につきましても、これからの課題となろうかと思いますが、ぜひお願いをしたいと思います。

 その上でお伺いをしたいんですが、前回お話をお伺いした尾木教授は、こんな話をされています。車の運転、これは十八歳以上で学科あるいは実技試験に受からないと公道を運転できないわけですが、インターネットの世界もこれと似ているところがある、インターネットの技術についていかに子供にその技術があったとしても、社会性あるいは公共性、そうしたものを身につけていない子供たちがインターネットの渦の中に入っていくというのは、まさに子供が運転をするのと同じで非常に危険だというようなお話をされているのを聞いたことがございます。私も全くそのとおりだと思います。

 現在の携帯電話を利用するということは、大人と全くボーダーレスの社会の中で、ボーダーレスの環境の中で子供たちが利用しているわけでありますから、そうしたことにつきまして、やはり子供ということを焦点に置いてこの携帯電話の利用ということを考えていくことが必要だろうと思います。

 私ども自由民主党の中で、先ほどの最初の観点からですが、有害情報から青少年を守るための法律について今議論を進めているところでございます。これは民主党さんの方でも同様の議論が進んでいるというふうに聞いておりますが、この問題、特にフィルタリング機能の徹底、いろいろ表現の自由等の問題があるかもしれませんが、やはり子供を守るという観点から、あるいは子供が被害者になり得る、加害者にもなり得る、そういった観点からこうした議論を前向きに進めていくことが必要だろうと思います。この点に関しましては、与野党を問わず進めていくことが必要だと思いますので、ぜひ、この青少年特でも前向きな議論が進むことを期待しますし、進めていかなければいけないというふうに思います。

 新しい法律で有害情報の関係、子供を遮断するというのは必要なんですが、恐らく現在の法体系においてもできることはたくさんあると思います。例えばプロバイダー有限責任法、この法律を活用すれば、不適切な書き込みについてはプロバイダー事業者を通じて削除することが可能であります。

 こうした現場サイドで対応が可能な場合というのもたくさん現行の法体系の中であると思いますので、学校サイドはそれこそアンテナを高くして、学校裏サイトやさまざまな掲示板でどういったいじめが行われているのか、どういったことが行われているのかということについてぜひアンテナを高くしていただきたいと思いますし、そうした観点から各学校に対してさまざまな情報提供をするというのも文部科学省の大きな仕事だと思いますが、その点に関してどういった取り組みをされているのか、お伺いをしたいと思います。

布村政府参考人 お答えいたします。

 四点ほど具体的に取り組んでおります。

 一つは、いじめ問題に関する取組事例集の作成ということで、学校の現場に対しまして、インターネットの掲示板上等での誹謗中傷に対して解決を図った事例を紹介してございます。

 また、二点目として、情報モラル指導カリキュラムの作成ということで、こちらは、教員が情報モラル教育というものにしっかり取り組めるように、モデルカリキュラムの解説、また研修ができるようなガイドブックの作成を行っております。

 三点目として、子供向けの啓発リーフレットの作成、配付ということで、「ちょっと待って、ケータイ」ということで、子供にわかりやすいように、「キケンゾーン」ですとか「やめようゾーン」とか「無視しようゾーン」、そういった形でパンフレットをつくってございます。

 また、総務省、関係省庁とも連携をして、保護者、教職員を対象としたインターネットの安全、安心な利用に向けた啓発講座、いわゆるe―ネットキャラバンというものを全国で実施しているところでございますし、また、あわせまして、池坊副大臣のもとで設置しております有識者会議におきましても、現在、ネットいじめを中心に集中的に審議、議論を重ねていただいておりまして、特に、保護者、家庭との連携を図るべく、パンフレットを配付して、学校、家庭、地域の連携を進めていきたいと考えているところでございます。

上野委員 いろいろな事例集をつくったり、カリキュラムを作成されているということでございますが、今、小学校、中学校で、こういったさまざまな情報の教育というか、情報モラルについての教育、どれぐらいの割合の学校で行われていると考えていらっしゃいますか。

布村政府参考人 情報モラルあるいは情報リテラシーを育成するというのは、小学校、中学校、高校を通じまして、技術・家庭科の情報の分野、あるいは道徳の分野、社会科などを通じて、すべての学校で情報モラルあるいは情報リテラシーをはぐくむという教育はなされているものと考えております。

上野委員 今、技術・家庭の話ですが、そうすると、中学校では各学校で行われているということなんでしょうか。

 それから、技術・家庭の中で情報モラル教育というお話がありましたが、それはパソコンを前提にしているんではないでしょうか。携帯電話の利用、先ほど申し上げましたような環境、状況を踏まえた上で、携帯電話の利用についてもその中で行われているんでしょうか。

 あるいは、今、小学生は三割、中学生六割、小学生でも三割の子供たちが携帯電話を持っています。小学校の段階においても、情報モラル教育については携帯電話について取り組むべきだと思いますが、それについてはいかがでしょうか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学習指導要領につきましては、先生御指摘のとおり、技術・家庭科の情報の分野であれば、コンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切に活用するための学習活動の充実という中で、携帯電話の用い方も、中学校、高校であれば必要に応じて指導があるものではないかと思っております。

 また、情報モラルという観点からは、特に中学校、高校において、道徳の指導の中で、携帯電話の活用の仕方あるいはそのルールについても取り上げているものと考えております。

上野委員 今の答えでわかるとおり、学校の現場で今携帯電話の利用に関してどういった教育が行われているかというのは、恐らく詳細にはまだ把握されていないんだろうと思います。

 技術・家庭科の中で確かに情報リテラシーの教育というのはやられているんだと思いますが、より突っ込んだ形で、携帯電話の利用に関して、これは小学校も含めてどういった形で子供たちに教えていくか、教育を行うかということは非常に重要だと思いますので、今小学生の三割が持っていますから、そのことを十分踏まえた上で、これから携帯電話の利用に関しても学校現場できちんと行われるような形になるように、文科省の方で適切に対応をお願いしたいと思いますし、まずどういうふうな状況になっているかというのをきちんと把握してもらえるようなことをぜひお願いしたいと思いますが、どうですか。

布村政府参考人 お答えいたします。

 学校における情報モラル教育の取り組みに向けまして、情報モラル指導モデルカリキュラムというものを作成してございます。小中高の連携を図りながら、技術・家庭科を初め道徳、各教科を通じて情報モラル教育に取り組めるような体系的なカリキュラムを作成してございます。それを教職員の方にしっかりと周知徹底を図り、その実態についても、できるだけ適切に実施されるよう促してまいりたいと思っております。

上野委員 ぜひお願いをしたいと思います。

 今、私の地元の大津もそうですが、お隣の京都市なんかですと、PTAの方が携帯電話の利用に関して非常に意識を持って、しかも行動もされていまして、そういった会議をPTAの方中心に設けられています。そうした動きがこれから広がると思いますので、学校、それからPTA、家庭が連携をした中でこの問題が取り扱われますようにぜひお願いをしたいと思います。

 最後に、上川大臣にぜひお願いをしたいと思います。

 日本は今、この携帯の文化というのは恐らく世界でもトップレベルを走っているだろうと思います。携帯の文化、情報産業、そうしたものをこれから育成していくことは我が国にとっても非常に重要な戦略的な課題だと思いますが、それと同時に、そうした先進国であるからこそ、この携帯電話の適切な利用といいますか、青少年についてはしっかりと守るんだ、そうしたルールなり基準、そうしたものをこれからしっかりとつくっていくことが必要だろうと思います。

 きのうも、きょうの質問、四問ですが、通告をしたんですが、実に六つの省庁から約二十人ぐらいの方がいらっしゃって、部屋じゅうがあふれ返ってしまうという状況なんですね。つまり、それだけこの問題は縦割りでは対応できないということだと思うんです。ぜひ上川大臣にはリーダーシップを発揮していただいて、この問題、横ぐしで突き抜けていく、そうした役割をお願いしたいと思います。

 具体的には、二〇〇三年の十二月に青少年育成施策大綱が制定をされました。ことしはその見直しに当たっているということを聞いておりますので、この大綱の中でしっかりと位置づけをしてもらって、青少年の携帯電話等の問題、ぜひリーダーシップを発揮してやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 インターネット社会の中で有害情報から子供を守るという観点から、特に有害情報を子供の目に触れさせないようにしていくということは大変大事だというふうに思っております。先ほどフィルタリングのお話がありましたけれども、このフィルタリングの普及促進ということについては大変有効な手段であるというふうに考えているところでございます。

 政府としましては、昨年の末に、有害情報から子どもを守るための検討会の中間報告を取りまとめたところでございまして、それと同時に、総務大臣からも、昨年の十二月に携帯電話の事業者等に対してさまざまな普及促進のための要請事項ということで、現実的な取り組みに協力していただくべく取り組んでいるところでございます。

 御指摘の青少年育成施策大綱の見直しということでございまして、今見直し作業をしておりますけれども、本年じゅうをめどということで、新たな大綱策定に向けての検討に、この項目の一つとして携帯電話のフィルタリングの普及促進も含めまして、包括的な政策を、各省庁、先ほど御指摘があった横ぐしということでありますので、そうした視点から取り組んでまいりたいと改めて覚悟しているところでございます。

上野委員 よろしくお願いします。

 ありがとうございます。終わります。

玄葉委員長 次に、松本洋平君。

松本(洋)委員 自由民主党の松本洋平でございます。

 本日は、質問の機会をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。

 青少年問題に関する件ということでございまして、私は、本日は、日ごろ思っていること、考えていることをちょっと幾つか質問させていただきたいと思います。

 しかしながら、その質問の冒頭に、最近大変ショッキングな事件が相次いでおります。茨城におきましては、二十四歳の若者が駅におきまして八人を死傷させるというような痛ましい事件が起きました。また、岡山におきましては、十八歳の少年が電車を待っていた方をホームから突き落としてしまうというような痛ましい事件が報道されまして、国民の間にも大変な不安とショックが広がっている、そんな状況だと思っております。私自身も、この報道に接したときに、一体これはどうなってしまっているんだろうという大変ショックな、なかなか理解をすることすら困難なほどショックな事件だったというふうに私自身は思っているところでございます。

 ですので、まず冒頭、こうした犯罪につきまして、ぜひ大臣に所感をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

上川国務大臣 委員から御指摘がございました、最近の茨城県と岡山県でそれぞれ発生した事件につきましては、私も大変ショッキングな事件であるというふうに思っておりまして、非常に重く受けとめているところでございます。

 捜査が今進行中ということでございますので、また経緯と事実関係などの詳細については明らかになろうかというふうに思っておりますが、今件で犠牲になられた方たちの一日も早い回復と、また御冥福を心からお祈りしたいというふうに思っております。

 青少年を担当する大臣として、このような事件が二度と起こらないようにしていくということで、社会を挙げて取り組まなければいけないというふうに思っておりますし、また、青年の健やかな成長というこの時期にあって、こうした事件が起こるということ自体が大変あってはならないことだというふうに思っております。

 人の痛み、あるいは命の大切さということについてのしっかりとした力を身につけるということ、そして同時に、健やかな成長を社会全体として応援していくということについては、これまで以上にしっかりと取り組まなければいけないというふうに思っております。

松本(洋)委員 先ほどの携帯のフィルタリングの話ではないですけれども、子供の育ち、学びという問題は、当然、各省庁にまたがる、またこれからの日本の根幹を支える最も重要な部分と言っても過言ではございません。ぜひ上川大臣にはリーダーシップを発揮していただいて、二度とこうしたことが起きないように取り組んでいただきたいと思います。

 子供たちの学びの話ですから、もちろん今やらなければならないこともありますけれども、当然、効果が十年後、二十年後、三十年後になって初めてわかるような対策というものもあると思います。そういう意味におきましては、ぜひそうした将来ビジョンみたいなものをしっかりとお示ししていただいて取り組んでいただければと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 そんな子供の学び、育ちという観点で、私が日ごろ思っていることをちょっと御質問させていただきたいと思います。

 子供たちの育ち、学びの環境の中で、さまざまなことが、社会の変化とともに子供たちの周囲の環境というものも変わってきていると思います。その中で、私は、一つ大きく変わったのかなと思っているのは、やはり核家族化の進展というもので子供たちの環境にとって大きな違いが出てきているんじゃないかと思っております。

 昔は三世代同居するというようなことがございまして、子供たちとお年寄り、おじいちゃん、おばあちゃんとの触れ合いというものも大変多かったのが、残念ながら、核家族化の進展の中で、子供たちが、お父さん、お母さんとはもちろん接しますけれども、おじいちゃん、おばあちゃん、いわゆる接する範囲が大変狭まってきたのかな、またその密度も薄くなってきたのかなということを私自身大変感じているところでございます。

 しかしながら、子供たちの学びの中で、育ちの中で、お年寄りの方々と接するということは、実は私は大変重要な要素ではないかと思っております。お年寄りをいたわるような気持ちが、やはり子供の育ちに対してさまざまな影響というものがあると思います。

 同時に、私大変強く思うのは、今の社会というのは当たり前にあるものじゃないんですよね。当然、先人たちがさまざまな、血の、汗のにじむような努力をし、また、自分たちの苦労を子供たちにはさせちゃいけないという思いで、何とかいい社会をつくっていこうということで、それこそ先人たちが一生懸命努力をし、そして頑張ってきてくださった結果というものが今の社会なんだと私は思っております。

 そういう意味におきましても、やはりその先人たちの経験談とか苦労話とか、そうしたことを子供のころからちゃんと聞かせていく、そして子供たちに先人たちに対する感謝の気持ちというものをしっかりと持ってもらって、今を生きる喜びというものを感じてもらって、そして、今度は、私たちが大人になったときには次の世代にさらにさらにいい社会を残していかなければいけないんだという、そういう感覚というものを子供たちに身につけてもらうということは大変重要なことではないかと私は思っておりますし、そのためには、やはり御苦労をされた、お父さん、お母さんはもちろんですけれども、おじいちゃん、おばあちゃん、そうしたお年寄りの方々の生の声というものを聞くのはすごく大切な事柄なのではないかと私自身は思っておりますし、それが一つの信念にもなっているわけでございます。

 そういう意味におきまして、ぜひ、子供たちの成長の場、学びの場というようなところにお年寄りのお力というものをもっともっとおかりするような、そんな仕組みづくりというのもやっていくことは極めて重要ではないかと思っております。その点に関して大臣に質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

上川国務大臣 子供の健やかな育ちにとって、高齢の皆さんの体験あるいはその後ろ姿の軌跡というものから学ぶということについては大変大事なものであるという委員の御指摘と、私は問題意識を共有するものでございます。

 積極的に子育てに高齢者の方にかかわっていただくということになりますと、子育てを地域全体で支えていくという、そうした力がより高まるというふうに思います。また同時に、先ほど御指摘がありましたけれども、高齢者の皆さんの知恵や経験を子供たちみずからが学んでいくという、そうした機会が生まれてくるものというふうに思っておりまして、そういう意味で、これからの少子高齢化、とりわけ核家族化が進み、家族のきずなというのが薄れている昨今の状況の中で、より一層大事な取り組みになろうかというふうに思っております。

 既に、ファミリー・サポート・センター事業、こうした事業の中でも、地域において、例えば育児の手助けが必要な方とお手伝いをしようという方たちがあらかじめ登録をして、そしてそうした急なときに預かっていただくという形で、こうした支え合いが地域の中でも芽生えています。

 また同時に、放課後やまた週末等の小学校の空き教室を利用しまして、子供たちの安全や安心の活動の拠点を設けて、さまざまな高齢者の皆様とのかかわりを深めていただくという形での事業も起こっているところでございます。

 また、保育所等につきましても、地域の高齢者の皆さんに、伝承の遊びや昔話をみずからの声で聞かせていただくという形で、世代間の違いの中でたくさんの学びがあるというふうに思っております。

 また、内閣府の中でも、昨年度、全国四カ所で、子育てを支える「家族・地域のきずな」フォーラムという形で開催をいたしました。その中では、例えば紙芝居でありますとか、あるいはお話の広場といった遊びなどを通じて、幅広い世代の皆さんと子供たちが触れ合う、こうした各地のコーナーということを設けておりまして、このコーナーに参加していただく方たちは、日ごろ地域の中でそうした活動を草の根的に展開していただいている皆さんであるということであります。

 こうした事業がさらに進展できるように、また、そういう中でどんどん高齢者の皆様にも積極的にかかわっていただくようにしていくということが大変大事だというふうに思っておりますし、また、これからは団塊の世代が社会に幅広く活躍していただく時期でもございますので、そういう意味で、高齢者の皆さん挙げて子育ての支援に参画しやすい環境づくりを目指してまいりたいというふうに思っております。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 さまざまな事業に取り組まれているということ、評価をさせていただきたいと思いますし、そうした思いを大臣も共有してくださって、何とかしていこうというふうにおっしゃってくださいました。ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 また、これは子供たちだけのためでもなくて、やはりお年寄りの方々がそうした事業を通して一つの生きがいづくりみたいなものにもつながっていくことではないかと私は思っておりまして、そういう意味では、そうした心の触れ合いが、実は子供たちを取り巻く社会の環境にも影響を与え、コミュニティーの創設というようなことにもつながっていく事業ではないかと私は思います。そういう意味におきましては、ぜひ大臣にリーダーシップをこれまた発揮していただきまして、お取り組みをいただきたいと思います。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 やはり子供たちを育てるということからすると、今大変問題になっているのが待機児童という話、保育または学童保育等々における待機児童という話は大変大きな話題になっております。私の地元でも、そうした子供たちが大変多くなっておりまして、悲鳴にも似た声が私のところにも届いてまいります。

 そんな中、この通常国会の福田総理の所信表明演説におきまして、ちょっと読ませていただきます。

  少子化は、我が国の活力にもかかわる問題であり、社会全体で取り組み、着実な効果を上げる必要があります。その一環として、保護者それぞれの事情に応じた多様な保育サービスを充実し、保育所での受け入れ児童数を拡大するなど、質と量の両面から取り組む新待機児童ゼロ作戦を展開します。あわせて、車の両輪として、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章の行動指針で示された残業削減等の数値目標の達成や育児休業制度の拡充など、働き方の改革に向けて取り組みます。

というようなことが、所信表明で福田総理の口からも力強く述べられたわけでございます。

 そこで、お伺いをしたいのは、新待機児童ゼロ作戦ということで、大変大きく宣言がされまして、そういう意味では、国民のこの政策に対する期待も関心も大変高いのではないかと思っております。そこで、この新待機児童ゼロ作戦について、今後どのように取り組んでいくおつもりなのか、具体的に教えていただければと思います。よろしくお願いします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど委員からも御紹介がございました福田総理の施政方針演説を踏まえまして、本年二月末に、希望するすべての人が安心して子供を預けて働くことができるためのサービスの受け皿を確保し、待機児童をゼロにするという目標を掲げまして、新待機児童ゼロ作戦を策定したところでございます。

 具体的には、十年後の目標数値を視野に入れながら、今後三年間を集中重点期間といたしまして、柱として四つございます。

 まず一つは、保育サービスを量的に拡充する。それとともに、家庭的保育、保育ママと申し上げた方がなじみがあるかと思いますが、こういった保育の提供手段の多様化を図るということ。それから二つ目といたしまして、学校に上がるまでではなくて、小学校に上がってからも非常に重要でございますので、放課後児童クラブも施策の対象とする。それから三つ目といたしまして、これから女性の就業率も高まっていくことが予想されております。そういった中長期的な需要も勘案をしまして、そのサービスの絶対量を計画的に拡大するということ。四つ目といたしまして、質の確保された保育サービスの提供を保障するということ。量だけではないということでございます。

 こういう四つの基本方針のもとで、関連する施策をしっかり展開していこうというふうに考えております。特に、集中重点期間における取り組みに関しましては、東京等の待機児童の多い地域に対する重点的な支援でございますとか、認定こども園に対する支援などについて、本年の夏ごろを目途に対策を検討することにしております。

 こうした取り組みを通じまして、保育施策や放課後児童対策を質量ともに充実強化してまいりたいと考えているところでございます。

松本(洋)委員 ありがとうございます。

 三年間重点、十年間でというようなことでございますけれども、これはなかなか大変なことだと思っております。もちろん、人員の確保ということもあるでしょう。同時に、やはり子供たちが過ごすそうしたインフラの整備というのも大変大きな課題だと思っておりまして、例えば学童保育なんかにしてみれば、私どもの地元なんかは、空き教室を利用してやっているケースがあるんですけれども、本当に手狭で、それこそ大変な状況に陥っているわけでございまして、そうしたことも含めて考えれば、しっかりと予算をつけて、そして対応していく、やはりそういうことをやっていかなければいけないと思っております。

 そういう意味におきまして、ぜひこれからも積極的にお取り組みをいただきまして、福田総理が施政方針演説でここまでしっかりと言い切っていることなんですから、ぜひこれを着実に進めていただきたいと思いますし、ぜひ計画と目標というものがちゃんと国民にも見える形でやっていっていただきたいと私自身思っているところでございます。

 同時に、子供たちを育てるという環境におきまして、もう一つ、保育園だとか学童保育とかと同様に考えていかなければならない、両輪で考えていかなければならないのは、福田総理の場合は、例えば残業をなくしましょうとか育児休暇の拡充というようなことが施政方針演説の中には書いてあるんですけれども、私は、もう一歩踏み込んで、子供たちを育てているお父さん、お母さんに関しては、短時間労働制度というんですかね、そういう制度というものをぜひもっとしっかりと進めてもらうべきではないかと思っております。

 そういう意味では、子供たちが学校に行くときには見送って、帰ってくるときにはちゃんと迎えてあげられる、でも、その間はちゃんと仕事をするというような短時間労働制度というものも同時に進めていって、子供たちを預ける保育の制度もしっかりと進めていく、私は、この両立がこれからの子育てにとっては大変重要なことだと思っております。

 子供を持つお父さん、お母さんのニーズというのも多様化しておりますし、それにしっかりとこたえていく、そして、子供たちとお父さん、お母さん、そして社会というものがしっかりと連携をとっていくためには、この短時間労働制度というものをもっともっとしっかりと普及させるべきではないかと思っておりますが、残念ながら、そこまで踏み込んだことは福田総理もおっしゃっていなかったのかなと私自身は思っております。

 そんなことで、ぜひ短時間労働制度をもっともっと普及させるために何かやられていること、そういったことがあれば教えていただきたいと思います。

村木政府参考人 御指摘のとおり、これから少子化が進む中で、男性も女性も、仕事も家庭も両方をきちんとやっていけるという社会を実現するというのは非常に大事なことだというふうに思っております。

 そのために、総理の御指摘もありましたように、残業をなくすとか育児休業制度を普及する、これはもちろんでございますが、委員がおっしゃいましたとおり、一日当たりの労働時間を短くするとか、あるいは週当たりの労働をする日数を少なくするといった、こういう勤務時間の短縮、短時間勤務制度というふうに私ども呼んでおりますが、この普及が非常に大事だろうというふうに思っております。

 現在、短時間勤務制度を導入している企業の割合はまだ三一・四%という状況でございます。私どもも、この割合をさらに高めたいということで、平成二十年度の予算におきまして、企業における短時間勤務制度の導入、定着を支援する助成制度を強化したところでございます。

 こうした取り組みによりまして、男女ともに働きながら、かつ、子育てに自分が実際に時間をかけられる、手をかけられるという環境整備をやっていきたいというふうに考えております。

松本(洋)委員 ぜひしっかりとお願いをいたしたいと思います。

 最後に、通告はしていないんですけれども、大臣、今の保育の問題、また短時間労働制度に関しまして、何か大臣なりの思いとかお考えがあったらぜひお伺いをしたいと思うんですけれども、よろしいですか。

上川国務大臣 これからの少子高齢社会の中で、昨年の末に決められました仕事と生活の調和を図る憲章と行動指針、そして、さまざまな働き方に応じて子育ての支援の施策につきましても再構築をしようということで、両輪としてこれらを進めていくという、こうして国民運動としてことし一年スタートさせていただいているところでございます。

 短時間の正社員制度あるいはテレワーク、いろいろな働き方について、これからもっともっと、企業の中の取り組みと同時に、働く側の皆さんからの要望も踏まえて、きめ細かく対応していくということが大変大事じゃないかなというふうに思っておりまして、そうした柔軟な働き方を受け入れることができれば、子育てということにつきましても、家族で過ごす時間をたっぷりとって、また子育ての環境と子供の育ちということについても、いい条件、いい環境がつくられていくというふうに思っております。

 すべてのことがつながっていますので、施策の連携、そして各省庁の力を合わせてやっていくことが大切ですし、また、民間の取り組み、先ほどおっしゃったような、高齢の皆さんにもどんどん積極的に参加をしていただき、国全体として子育てに優しい、またワーク・ライフ・バランスもしっかりと充実させていくということを積み上げていくことが大切であるというふうに私も思っております。

松本(洋)委員 済みません、通告していませんで大変恐縮でございますけれども、大臣にかかる国民の期待は大きいと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、私どものこの委員会にかかる期待というのも大変大きいものがあると思っております。

 私も一生懸命頑張らせていただくことをお約束しまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、菊田真紀子さん。

菊田委員 おはようございます。民主党の菊田真紀子でございます。

 きょうは、限られた時間でありますけれども、主に二つのことについてお伺いをしたいと思っております。

 まず、一つ目でありますけれども、今ほど松本委員もお話しされておられましたけれども、青少年の凶悪事件が大変ふえているということで質問させていただきます。

 子供が親に殺意を向けて、そして残虐な親殺しが頻発しているということでありますけれども、昨年、福島県の会津若松市で、県立高校三年生、十七歳の男の子が母親を殺害しました。この少年は、県内屈指の伝統校に通っておられて、親御さんも大変教育に熱心だったというふうに伺っておりますけれども、お母さんを殺害して、その頭部を学校指定のバッグに入れて警察に自首した、こういう事件でありました。また、山口県の熊毛郡の県立高校一年生、十六歳でありますけれども、同居していたおじいちゃんの首を電気コードで絞めて殺害するということでありました。また、京都府の京田辺市で、専門学校に通う少女、十六歳が、警察官であるお父さんをおので切りつけて殺害したということでございます。また、昨日も、愛知県の東海市で、二十六歳の長男が母親を殺害したという事件も起こっております。

 このように、青少年による親殺しということが連続して起こっているわけでありまして、一九九〇年代の少年犯罪というのは、ほとんどが非行からの延長ということで、恐喝あるいは傷害などが多く、肉親を殺害するという事件は統計的に見ても少なかったということでありますが、近年、非常にこれが多くなってきているということであります。

 警察庁の調べによりますと、十四歳以上の子供による実父母の殺害、これは未遂も含みますけれども、一九九七年から二〇〇四年までには平均して年に三件から九件程度であったものが、二〇〇五年には十七件、大変多く起こりました。また、二〇〇六年も二けたに達しているということであります。

 なぜこのような事件がふえているのか、大臣はどのように分析をされているか、お伺いいたします。

上川国務大臣 少年による重大事犯ということについて、発生件数そのもので見ますと、必ずしも増加しているということは言えない状況にありますけれども、今委員が御指摘になりました、子供が親という形でとか、いろいろそうした事件については少しずつふえているということについて、大変深刻に私自身受けとめているところでございます。

 最近の社会状況を見ますと、家族をめぐる問題や、あるいはさまざまな情報のはんらんなどによりまして、子供の健やかな成長を妨げるおそれのある要因というのがふえてきているように思っております。

 少年非行を分析する際におきましては、発達のプロセスによって背景や原因を丁寧に解きほぐしていくということが大変重要であるというふうに思っておりまして、その点から見ますと、結果の重大な事件につきましては、幼少時からさまざまな問題が重なり合って、適切な対応がとられなかったために大変不幸でまた悲惨な結果をもたらしている場合が多いのではないかというふうに思っております。

 子供の健やかな成長のためには、発達の各ステージで出会うさまざまな課題を乗り越えていくということが大変大事であるというふうに思っておりますが、そうしたさまざまな事情から、その困難な環境にある子供につきましては、なかなか乗り越えられないということで、それが重なり合って犯罪につながっていく。そういう意味では、早い段階から適切な支援によって、問題が小さな芽のうちから対処することが大変大事ではないかというふうに思っております。

 内閣府では、約二年前から少年非行事例に関する調査研究を行っているところでございまして、少年非行の原因、背景を成育の過程に沿って時系列的に整理をしていく、そしてそれぞれの時期における効果的な対処方法について検討しているということでございます。

 また、今後、これといった非行歴のない少年におきましての重大事犯の事例につきましても、そうした成長の段階をきめ細かく解きほぐしながら、その原因を探っていくことを丁寧にしていく。そして、それによって子供たちが健やかに成長していくことが周りの社会の中でどこまで応援ができるのか、そうした対応が非常に大事であるということでありまして、きめ細かな調査研究につきましても、今後とも、さまざまな視点から積み上げていきたいというふうに思っております。

菊田委員 こうした凶悪事件を起こす少年が、これまでであれば、割と、学校あるいは親の目から見ても、子供の変化、例えば服装が変わったり言葉遣いが変わったり態度が変わったり、あるいは小さな窃盗とか万引き、犯罪を起こすようなことが見られてきて、そして、この子はちょっと注意をしていかなきゃいけないなということを周りが注意深く見守ることができたわけですけれども、昨今の凶悪事件を見たときに、大体、事件が起こった後皆さんがおっしゃるのは、信じられない、とてもそんなふうな子供には見えなかった、非常におとなしくて、まじめで、普通の少年だったというふうに言われるケースがふえているわけでありまして、私は、少年犯罪、特にこういう親を殺すというような凶悪事件にこのような特徴が出てきているからこそ、本当に、先ほど大臣がおっしゃったように、背景や原因を丁寧に解いていくということが大切だというふうに思っております。

 今ほど、大臣、答弁の中で、少年非行事例等に関する調査研究を行っていますというふうにおっしゃられました。しかし、これを調べてみますと、平成十七年は四回しか開かれておりません。そして、十八年は三回であります。十九年は一回も開かれていないんですね。

 先ほど私申し上げましたように、十九年は、昨年は相次いでこういう事件が起こったわけですから、こういう特殊な事件、重大な社会的影響を及ぼした特定の事件が起こったときに、大臣がおっしゃったとおり、原因を解いていかなければならないというのであれば、私は、もう少し今言ったこの調査研究企画分析会議が開かれて、そして大いに分析され、検証され、議論されるべきだというふうに思うんですが、このような究明を行っているんでしょうか。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 少年事犯、今先生が御指摘あったような事案も含めてでございますけれども、少年は普通、家庭裁判所の審判に付されるとかいうこともございます。そういう手続が終わってある程度事実がはっきりしてくるということでございますから、すぐに着手するというのはなかなか難しいところがございます。しかしながら、そういういろいろな事例というのは、既に、先ほど大臣も御答弁申し上げましたけれども、私どもの研究でも行っておりますし、あるいは法務省、あるいは家庭裁判所の調査官がいろいろと分析調査したものもございます。

 そういうものをできるだけ、要するに青少年を支援する関係者が情報を共有する、情報を共有して、そしてまた現場にフィードバックするというようなことをこれからもやっていきたいというふうに考えております。

菊田委員 それでは、犯罪防止、こういう事件を繰り返さないために、具体的にどのような対策を行っているのか、改めてお伺いします。

上川国務大臣 先ほど委員から十九年は行われていないという御指摘がございましたが、四回ほど実施をしているということがございまして、私の方も、もう少し丁寧に、またそうした事例等につきましても分析を深めていきたいというふうに思っております。

 重大事犯を犯した少年の多くが多種多様な問題を背景に抱えていたことがうかがわれるということでありまして、まずは保護者の皆さん、学校の先生等、周囲の大人がこうした問題に早い段階で気づいて適切に対処していくことが大変大事ではないかというふうに思っております。

 このような観点から、政府におきましては、少年の悩みに早期に相談に応じていくことができるようにするための体制の整備でありますとか、あるいは少年にとって安心できる居場所の確保、あるいは少年犯罪等の防止のための御家族の方への支援、こういったことに対して、関係機関や学校、地域の皆さんが連携して取り組んでいくというところでございます。

 少年犯罪等の防止など、子供の安全、安心の確保をめぐっての問題につきましては、まことに政府としても取り組むべき大事な課題であるというふうに思っておりまして、今後とも担当大臣としてしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

菊田委員 私が昨日内閣府の方にお尋ねをしたときには、十九年、この会議が開かれたという報告はいただいておりません。今度は資料を正確にいただきたいと思います。

 警察庁は、こういう事件が起こった後に捜査をやっていくわけですね。その捜査の中で、事件の背景とか原因というのはある程度つかめてくると思います。少年はどんな生い立ちだったのか、家庭環境はどうだったのか、どんな葛藤を持っていたのか、こういった情報を、私は各省庁が横断的に把握をして、そして一元化して、教訓として生かしていくことがとても大事だというふうに思っておりますので、ぜひ今後こういったことに取り組んでいただきたいと思っております。

 それから、平成十五年の閣議決定で、政府においては青少年育成推進本部というものが設置をされたわけでありますけれども、どうもこの青少年育成推進本部、何をやっているのかなと見てみましたらば、大体が青少年育成施策大綱の策定といったものの検討とか議論ということが中心のようでありまして、こういう極めて社会的な大きな影響を与えた個別のことについて議論をするような機会がないのではないかというふうに見ているんですけれども、大臣もこの推進本部の副本部長ですか、お務めだと思いますが、一体何をされているのか、少し御紹介いただきたいと思います。

上川国務大臣 ただいま青少年の施策の中で取り組んでいる最大のテーマの一つは、施策大綱の見直しということでございます。その施策大綱見直しに当たりましては、今、青少年が置かれているさまざまな環境、そして現場の中での取り組みをどう実施しているのか、今御指摘にあったような犯罪に係る事例につきましての原因あるいはその背景についての状況、あるいは社会的な全体の背景、そういったことにつきまして、現場の皆様から精力的に声を聞かせていただきながら、施策の見直しに向けて全力で取り組んでいるところでございます。

 また、今取り組んでおりますことにつきましての取りまとめにつきましては、なるべく早い時期にというふうに思っておりまして、その作業を今精力的に取り組んでいるところでございます。

菊田委員 この推進本部も平成十五年は二回だけですか、開かれたのが。十六年、十七年は一度も開かれていませんよね。平成十八年は一回開かれています。平成十九年は二回開かれているということで、余り活発に開かれているというような感じではないようでありますけれども、ぜひ、少年犯罪の中身が変わってきているということを、大臣を先頭にしてしっかりと把握をして、分析をしながら、このようなことが二度と起こらないように、全力で取り組んでいただきたいと要望したいと思います。

 引き続きまして、性感染症の問題についてお伺いいたします。

 厚生労働省の性感染症の報告数を見ますと、性器クラミジア、性器ヘルペスウイルス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症、そして梅毒に感染している十代、二十代の若者は、平成十二年から十七年で全体としては減少傾向にあると報告をされておりますけれども、しかし、大きくは減少しておりません。依然としてこの十代、二十代の性感染症の問題は大変大きい問題であります。

 そして、特に、尖圭コンジローマと性器ヘルペスウイルスに感染している十代、二十代はむしろ増加しているということで報告がなされているわけですが、政府としても、これまで厚生労働省、内閣府、文部科学省など、さまざまな対策に取り組んでこられたことは承知をしておりますけれども、さらにこれからどういう取り組みをされていくのか、成果を上げていかなければならないと思っております。

 この問題は青少年の健康に大変大きくかかわっておりますし、何といってもこの性感染症について知らない、自分とは関係ないと思っている児童や生徒を一人でも減らしていかなければならないと思っております。自分の体を守るにはどうしたらいいのか、自分でよく考えて行動していかないと、特に女の子は将来不妊症につながる可能性があることもしっかりと教えていかなければなりません。

 そこで、お伺いしますが、学校で性感染症についての授業はどれだけ行われているのでしょうか。

田中政府参考人 御説明を申し上げます。

 学校における性教育ということにつきましては、性に関する健康問題について正しく理解し、適切な行動をとれることを目的に実施されているというふうに認識しておりまして、学習指導要領にのっとり、児童生徒の発達段階に即した時期と内容で実施すること等が重要だというふうに考えてございます。

 学習指導要領におきましては、中学校保健体育科の標準時数は、三学年間で二百七十時間でございます。そのうち保健分野の授業時間数は四十八時間程度を配当することとしております。また、高等学校保健体育科の標準単位時間数は三学年間で約三百五十時間でございまして、保健の時間数は約七十時間程度ということでございます。

 具体的にそれぞれどんな内容というのは、各学校ごとにはございますけれども、性感染症の授業ということにつきましては、中学校保健体育科の三学年及び高等学校保健体育科保健の第一学年におきまして、性感染症を含む感染症の予防について、それぞれ三時間程度行われているというふうに承知してございます。

菊田委員 学校で言えば、保健体育とかあるいは総合学習のようなところでやっている学校もあるのかもしれませんけれども、例えば保健体育といいますと、どうしても体育の授業が中心になりがちだと思っております。どちらかというと、保健というのは、雨が降ったりして急遽変更してやるというようなことがある学校も聞いておりますし、また、熱心に取り組んでいるところとそうでないところ、あるいは教師の知識や意識、そしてまた熱意にも差があるのではないかと思っております。

 また、性教育と一言で言いましても実に幅広いわけでありまして、HIVのことも学んでいかなければならない、あるいは妊娠や出産、健康や命といったことも学んでいく必要があるわけでありまして、私は、この性感染症については、どちらかというと後回しにされているところもあるのではないかと心配をいたしているわけでございます。

 そこで、先ほどもお話がありましたけれども、やはりそれぞれの学校の裁量に任せていくということでは不十分ではないのかということを指摘させていただきたいと思います。性感染症については、最低でも一年間の授業日数、何時間はやらなければならない、何時間以上はやろうというふうに決めていくべきではないか、これぐらい熱心にやらないとこの性感染症の問題というのはなくならないと私は思っておりますが、この点についてのお考えはいかがでしょうか。

田中政府参考人 御説明を申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、各学校におきまして、学習指導要領にのっとり、それぞれ適切な授業が行われてございます。

 先生御指摘のとおり、性感染症、性教育の問題につきましては、保健体育科のみならず、特別活動、道徳、関連教科を含めて、学校全体で計画的に取り組むということにしてございますけれども、それぞれの授業をどれぐらいずつやっていくのかということにつきましても、ある程度の学校の自由裁量というところがございます。

 しかしながら、感染症につきましては、中学校では約三時間程度、高校につきましても、性感染症につきましては約三時間程度というようなことが、これは実績として上がってきてございます。

 以上でございます。

菊田委員 時間が参りましたので、また次の機会をいただいて質問させていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。

 私の方からは、最近、議論が始まりました児童買春、児童ポルノ禁止法、これに関連してお伺いをいたします。

 この法律は、制定されたのが平成の十一年、その後、平成十六年に改正をされました。それからもう四年が経過しましたので、いわゆる予定された見直しの時期に来ているという段階であります。

 そうしたところ、去る一月三十日、アメリカのシーファー駐日大使が、読売新聞でしたが、この件で投稿をされました。そして、そこで、日本の児童ポルノ法の所有を非合法化する方向で法改正をすべきだと。ここで大使が言っている所有というのはいわゆる単純所持ということだと思いますが、そういう方向で日本の法律を改正すべきだ、こういう主張をされたわけであります。それが一つのきっかけになったと思いますが、法改正の検討が始まっているという段階だと思います。

 私は、これは大変異例の展開だ、外国の大使から指摘を受けて法改正というのは異例の展開だなと思っているわけでございます。本格的な法改正論議はいずれされるわけですが、きょうはその前段ということで、いわゆる現状認識、特に日本はいまだに児童買春、児童ポルノ大国であるのか、もしそうだとしたら、我々は今すぐ何をやらなければならないのか、そういう問題意識から質疑をしていきたいというふうに思います。

 まず、全体の状況ですけれども、この問題に関して国際的な動きを振り返りますと、平成十二年、いわゆる議定書というものがニューヨークで策定されました。これは児童の売買、買春、ポルノに関する児童の権利条約の選択議定書という議定書であります。それによって、各国の法整備に関する共通の目標ができたということだと思います。それから八年たったわけでありますが、各国ともこの法整備に、そしてそれに基づく取り締まりに努力をしてまいりました。

 そこで、まず、八年たって、その間、児童の売買、買春、ポルノに関して、国内、海外ともにこの状況というのがどういうふうに改善されてきたのでしょうか。特に、日本はかつては、法の制定時には、児童ポルノ製造、販売の輸出国である、もしくは児童買春ツアーをアジアに送り出している加害国である、さらには、世界に出回っている児童ポルノの八〇%が日本製だ、そういう指摘を受けておりました。また、国内でも援助交際というのが大変大きな社会問題になっていた時期でありますが、十年近くたって、それらの状況は今全体としてどうなっているのか、お伺いいたします。

井上政府参考人 お答えいたします。

 平成十一年十一月の児童買春、児童ポルノ禁止法施行後、平成十九年末までに検挙いたしました児童買春事件の検挙件数及び検挙人員は、一万二千二百三十五件、八千百三十七人、児童ポルノ事件の検挙件数及び検挙人員は、二千五百五十五件、千八百二十五人となっております。

 特に、児童ポルノ事件につきましては、平成十七年から検挙件数、検挙人員とも大幅に増加をし、現在まで高水準で推移をしております。この増加につきましては、平成十六年の同法の改正による取り締まりの強化などが要因の一つとして挙げられるものと認識をしております。

 また、国外犯の検挙状況につきましては、これまで、タイ、カンボジア、フィリピンでの日本人による児童買春、児童ポルノ禁止法違反事件で十件、十六名を検挙しております。その内訳は、児童買春事件が六件、六名、児童ポルノ事件が四件、十名となっております。

吉田(泉)委員 できたら、世界全体の児童売買、買春の状況もお聞きしたかったんですが、手元のデータがないということであります。ことしはブラジルでまたこの国際会議があるということですから、何か世界全体の被害状況というのはあるんじゃないかとは思うんですが、きょうは残念ながらいただけませんでした。全体として世界の状況はよくわからない、日本については、取り締まりの強化もあって児童ポルノの検挙件数が高水準にある、そういうお話でした。

 次の質問ですけれども、この申し上げた選択議定書を日本は四年前に締結したわけであります。締結したということは、この議定書が要求している法整備を完了したという意味であります。よく議論になります日本のアニメーションについても、現行の法律では「その他の物」ということで、一応法の対象にした。そこまで日本は法整備をしたわけであります。

 一方、世界全体を見ますと、児童の権利条約に参加している国というのは百九十四カ国あるわけですが、この選択議定書を締結している国というのは今のところ百二十六カ国だそうであります。ということは、全体で六五%ぐらいの国しかまだこの法整備が済んでいないということだと思います。特に、G8の中でも、ドイツ、イギリス、こういう国がまだ締結をしていない、ロシアに至ってはまだその議定書に署名もしていない、こういう状況であります。

 外務省は、よその国のことですけれども、何か事情があると思うんですが、そういう事情をどう見ておられるのか、お伺いします。

秋元政府参考人 委員御指摘の選択議定書は、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに係る一定の行為の犯罪化、それから裁判権の設定をすること等を規定しているわけでございます。

 委員御指摘のとおり、現在百二十六カ国が締結しておりますけれども、この議定書をより多くの国が締結することは、議定書の実効性を高めていくという観点から大変望ましいことだというふうに考えております。

 ただ、個々の国がこれを締結するかどうかにつきましては、この議定書の意義と国内実施の可能性につきそれぞれの国が判断するということになっておりますために、委員がおっしゃいましたドイツそれから英国、ロシア、こういう国がこの議定書をなぜこれまで締結してこなかったのか、そういう具体的な理由は承知しておりません。

吉田(泉)委員 事情はわからないということですね。

 各国いろいろな事情があるということしかわかりませんが、例えばアメリカも、この議定書の親条約というんですか、上位の条約である児童の権利条約、こちらに実はまだ参加していない。その中で、G8の中で日本とロシアだけが単純所持を禁じていない、大変この二つの国が法整備がおくれている、こういう印象を世界から持たれているんじゃないかということを、私、客観的に見て、日本はそれなりにきちんとやっておるんだというところをもう少しはっきりさせる必要があるんじゃないか、そんなふうに思っているところです。

 さらに、私の手元にある幾つかのデータを挙げてみたいんですが、各国の比較の数字ですね。一つは強姦数であります。これは児童も含めた、十八歳以上の人も含めた数字ではございますけれども、国連の犯罪統計によると、十万人当たりの強姦認知件数、一番多いのがカナダ七十八人、次がアメリカ三十二人。一方、日本は二人弱だというわけですね。G8の中で一番低い。しかも、日本の場合は四十年前と比べて十分の一ぐらいに減っているという数字が一つあります。

 それから、二つ目の数字は、児童ポルノの利用度。これの各国比較ですが、これはイタリアの児童保護団体の数字ですが、アメリカが全体の二三%を占める、ドイツが一五%、ロシアは八%。それに対して、日本は二%弱。これもまたG8で一番低い、児童ポルノの利用度ですね。

 三番目の数字は、今度は児童ポルノの発信度です。これは、英国のインターネット監視財団という半官半民の財団、これの数字によると、アメリカが全体の五四%、ロシアが二八%、ヨーロッパが八%、アジアが七%。日本はそのアジアの中に入っているわけですから、これも日本はせいぜい数%というデータがあります。

 何かこういう数字を見ますと、私は、日本は、性犯罪、そして児童ポルノの利用さらには発信、いずれもG8の中では一番低いレベルにあるんじゃないかというふうに推測したわけであります。ところが、シーファー大使の御発言に戻りますけれども、この新聞の投稿文の中で大使は、日本とアメリカが児童ポルノの二大消費国である、こういうふうに言っているわけであります。

 外務省に、これをどう見たらいいのか、一体、大使はどういう事実に基づいてこういうことを言っておられると推測されるのか、お伺いします。

秋元政府参考人 委員御指摘のとおり、いろいろなNGOが出しています統計というのはありますけれども、国際的に認知された公的な統計というのは、残念ながらない。したがいまして、正確な国別の比較を行うことは難しいんだろうと思います。そういうことで、シーファー大使がいかなる統計に基づいて日米は児童ポルノの二大消費国だと述べているかということは、わかりません。

 他方、児童ポルノというのは、今日、インターネットの普及によりまして、国境に制約されることなく発信、流通されております。したがいまして、多くの国が協力して取り組むべきだということは言うまでもないことなんだと思います。

 シーファー大使の発言を私どもが解釈する立場にはございませんけれども、恐らくこの問題は、供給の側のみならず、需要の面からも取り組む必要があり、したがいまして、児童ポルノの国内での消費という問題を抱える日米両国が協力して取り組むべきだという考え方を述べたものだと理解しております。

吉田(泉)委員 共通で取り組むべき課題であることは間違いないんですが、世界で二大消費国だ、こう言われたからには、やはりこちら側も、もし反論が必要なら反論する必要があるんじゃないか、そこだけ申し上げたいと思います。

 それから、シーファー大使の投稿文の中で、こういうことも言っているんですね。成人ポルノと違って、子供は自発的に当事者となったのではない、報酬も得ていない、児童ポルノの多くの被害者は十二歳未満である、小学生である、こう言っているんです。

 ただ、日本で一番問題になっているのは、中学校、高校生の援助交際ですよね。そういう意味では、この大使の指摘、大半が十二歳以下だという指摘は、日本ではちょっと事実と言えないのではないかと思うんですが、これは警察庁の方に国内の事情を伺います。

井上政府参考人 平成十九年中に検挙いたしました児童ポルノ事件で保護した児童は三百四名であります。被害児童の年齢別の統計はとっておりませんが、学職別では、未就学が六名、小学生二十七名、中学生百七名、高校生百四十六名、有職少年六名、無職少年十二名となっております。

 お尋ねの十二歳未満の被害児童数は、最大限で、未就学に小学生を加えた三十三名、一〇・九%というふうな数字になっております。

 以上であります。

吉田(泉)委員 そうしますと、日本の国内の状況には大使のこの発言はそぐわないんじゃないかと思うんですが、なぜこうなるかというと、やはり大使が考えている児童ポルノというものと我々が法律で考えている児童ポルノの何か定義の食い違いというようなものが背景にあるんじゃないか、そこをこれからの法改正論議の中でもう少しはっきりさせる必要があるんじゃないか、こんなふうに思うところであります。

 最後になりますけれども、上川大臣に最後に御所見をちょうだいしたいんですが、このシーファー大使の御発言の中にこういう言い方があるんですね。児童ポルノを見ることと子供への性的虐待というのは大きく関係しているんだと。見ること自体が虐待につながりやすいんだ、こういう発言があります。いわば、大使の主張である単純所持というのを禁止すれば性的虐待というのも減るはずだ、こういう大使の持論でありますが、実は、その両方の関係、根拠というのは、余り科学的に明らかにされていない、統計学的に明らかにされていないという指摘もございます。それから、先ほどから申し上げている国際的な議定書でも、この単純所持というのを禁止しなくちゃいけないということにはなっていないと私は思います。

 今後、この単純所持というものをどう扱うか、大きな議論になっていくと思いますが、上川大臣、青少年の健全育成担当大臣として、この児童買春、児童ポルノの問題に関して、今まで出たような被害の状況等を踏まえて、御所見をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 児童買春そして児童ポルノにつきましては、児童の心身の健やかな成長を阻害するという意味で、極めて重大な問題であるというふうに思っております。大人が児童に対し性的な搾取やまた性的な虐待を行うという意味で、断じて許しがたいものであるというふうに認識をいたしております。

 児童買春や児童ポルノの被害の現状につきましては先ほど報告がありましたが、私は、数ということ、量ということではなくて、やはり質的な意味で、このことが起きているということ自体は大変許しがたいというふうに思っております。

 また同時に、海外からインターネットで情報が流通していくグローバルなネット社会でありまして、そういう中で、子供たちがその意味での犠牲になっていくということについては、やはり国際的な連携の中でしっかりと取り組んでいくべきことではないかというふうに思っております。

 この問題につきましては、先ほど委員からの御指摘のとおり、児童ポルノの単純所持の規制等につきまして、議員立法によっての改正ということで議論がされていると承知しておりまして、こうした議論の動向をしっかりと見守りたいというふうに思っております。

 また、児童買春、児童ポルノ法、この法律を所管する各関係の省庁が力を合わせて取り締まりや保護等の取り組みが行われている、このことがやはり青少年の健全な育成ということについて大変大事なことでございますので、こうした取り組みについての一層の連携をとって子供を守っていきたいというふうに思っております。

 世界的な子供をめぐる問題につきましては、最悪の状態の児童労働ということの中の一つとしてこの問題を取り上げられ、また、人身取引の一つの大きな消費というか、人身取引の目的がこの児童ポルノの問題にもかかわってくるということであります。そういう意味では、それにかかわる需要側のところを取り締まることによって供給のところの根をとめることができる、こういう相互の連関があるというふうに考えておりますので、そういった点もまず議論をしっかりとしていただきたいと思いますし、また、そういう中で、子供たちをしっかりと育てていく環境整備ということについてはさらに心を尽くしていきたいというふうに思っております。

吉田(泉)委員 終わります。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、古屋範子さん。

古屋(範)委員 公明党の古屋範子でございます。

 本日は、この四月から改正法が施行されました、子供を守る取り組みが期待をされております児童虐待防止対策について質問をしてまいります。

 子供を取り巻く状況は、年々厳しさを増しております。その根底には、少子社会、子供が少ないということがあろうかと思います。少年非行、いじめ、不登校、校内暴力、引きこもり、また児童虐待、ニート、フリーター、格差問題のほか、新たな問題も生じております。

 携帯電話やインターネット利用の急速な普及によりまして、生活環境の変化は子供の行動にも影響を及ぼしております。例えばいじめにいたしましても、新たにネット上のいじめが社会問題化をしております。また、携帯サイトから犯罪に巻き込まれる例も後を絶たないという状況でございます。その中でも、児童虐待の問題は深刻さを増していると考えております。

 中でも、平成十八年度の児童相談所が対応した虐待相談件数は三万七千三百二十三件に上っておりまして、十年前に比べますと、何と十三倍近くもふえております。絶対数そのものもふえているかと思いますし、また、児童虐待防止法ができたことによりまして、水面下にあったものが顕在化をしてきたということも言えるかと思います。

 その内訳でございますけれども、全体の四一・二%が身体的虐待、次いでネグレクトが三八・五%、心理的虐待が一七・二%、性的虐待も三・二%に上っております。被害児童の年齢は、全体の半数近くが就学前の乳幼児、小さな子供でありまして、小学生が三八・八%、中学生では一三・九%となっております。

 さらに、昨年一年間に全国の警察が摘発をいたしました児童虐待事件は、前年比一%増の三百件、統計を取り始めた平成十一年以降でも最も多いことが報告をされております。

 また、「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」という報告がこの三月二十七日にされておりますけれども、平成十八年一年間で、児童虐待で死亡した子供は百件、百二十六人に上る、心中以外では五十二例、六十一人、心中では四十八例、六十五人、心中が非常に多いという印象でございますけれども、このような調査結果が発表をされております。

 大臣に、初めにこうした児童虐待についての御認識をお伺いいたします。

 そして、児童虐待撲滅を目指しまして、公明党は平成十二年四月に七十四万人の署名を行いました。虐待防止に向けて法整備や市町村での防止ネットワークづくりなどを首相に要望するなど、虐待防止法の成立に一貫して取り組んでまいりました。また、通告義務の適用範囲の拡大、警察の関与を強化した平成十六年の法改正にも取り組んでまいりました。

 昨年五月に成立し、この四月から施行となりました改正児童虐待防止法では、児童虐待への対応で中心的な役割を担う児童相談所の権限が大幅に強化をされております。この新制度が迅速また効果的に運用できますよう、児童虐待の防止が図られる取り組みがさらに強化されることが重要であると考えております。

 ここで、大臣に、児童虐待撲滅に向けての御決意もお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 子供が最も安らぐ場所であります家庭の中で虐待が行われているということについては、大変深刻であるというふうに受けとめております。特に、そのお子さんの心の中の傷ということについては、成長の過程の中では大変深刻でございまして、そういう意味では、虐待はあってはならないことだというふうに思っております。

 特に、先ほど古屋委員からの御指摘がございます、社会がなかなか複雑な状況にあるということでありまして、地域での家庭の孤立化、あるいは家族関係が大変複雑になっている、そういう意味では、虐待が起こるおそれということについてはこれまで以上に高まっているのではないかと大変厳しく受けとめているところでございます。

 今月から施行されました改正児童虐待防止法等につきましては、先ほど委員からの御指摘のとおり、委員も含めまして党派を超えて熱心に御議論をいただきました。この委員会を中心の議論でございました。そして、その結果としまして、児童の安全確認のための立ち入りの調査、つまり家庭の中に入っていくということについて、従来に比べて保護者、家庭へのアプローチをより強く制度の中に位置づけていただいたところでございます。

 子供を虐待から守るためには、まずは子育て家庭が孤立しないようにしていくということ、そして地域において支援するさまざまな仕組みを整備していくということ、そして虐待が起きた場合には、早期にそれを発見し、また関係の地域の機関とよく連携をとりながら意思疎通を図って適宜適切に対応していくということにつきましては、委員御指摘のとおりでございます。

 この改正法の趣旨にのっとって、各地域の中で行動が的確にとれるように、私といたしましても、関係省庁、地域とよく連携をとりながら、しっかりとフォローしてまいりたいというふうに思っております。

古屋(範)委員 ありがとうございました。

 私も大臣と共通の考えを持っております。やはり今まで家庭の中で解決をされてきたような問題も、悲しいことではありますけれども、家庭の複雑さ、社会の複雑さの中で、虐待のおそれが高まっているという御見識でございました。悲しいことではございますけれども、やはりそれにかわるといいますか、それを補強するような社会全体、地域全体での仕組みづくり、あるいは国における法制度のさらなる拡充というものがどうしても必要になるんだろうというふうに考えております。

 そこで、このたび機能強化をいたしました児童相談所についてお伺いをしてまいります。

 改正児童虐待防止法では、児童相談所の安全確認義務が盛り込まれ、通告を放置したり、なおざりな対応で済ませたりしないために、ちゅうちょする担当者の背中を押す効果が大いに期待できると考えております。

 このように、虐待から子供を守る法律の整備は確実に進みまして、子供の安全確認の迅速化に向けた環境は整いましたけれども、一方で、児童相談所の現場が追いつかないというのが現状であろうかと思います。私も幾つか児童相談所にお伺いをいたしましたけれども、圧倒的にマンパワーが足りない、たくさんの案件を抱えていらっしゃるというのが現状だと思います。この実務の中心となります全国約二百カ所の児童相談所、質的なレベルアップと、また体制の強化が課題となっております。

 児童虐待防止法が制定をされました平成十二年以降、各自治体では児童福祉司を増員するなど体制強化を図っておりますけれども、実際には、相談件数が急増しておりまして人員不足の状態が続いております。虐待の通報を受けたとき、四十八時間以内に安否の確認をする、児童相談所がこのように素早く動いて子供を救う、そのために職員をふやし、またその職員の専門性というものも高めていかなければならないと思います。

 厚生労働省の調査によりますと、一人当たりの児童福祉司が扱う件数は、欧米では約二十件前後と少ないのですが、日本では百件前後ということでございます。この適正と思われる二十件前後の担当件数になるように、そのためには人員をふやさなければいけない、またより深刻なケースに対応する体制をとるべきと考えております。

 私は、この新たな制度を運用していく上で、児童福祉司のさらなる増員、また福祉専門職員の配置、また異動年数の改善、これもどんどん異動していってしまうという現状もございますし、専門性の蓄積も必要である、職員不足の改善など、質とまた量の両面のマンパワーの充実が必要であると考えております。

 自治体の取り組みを支援し、児童相談所の体制をさらに充実させることが大変重要であるわけですが、これについて、厚労省の取り組みをお伺いいたします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘がありましたように、改正児童虐待防止法におきましては、児童相談所が虐待通告を受けた際の児童の安全確認を義務化していただく、それから児童相談所の職員等による強制的な立ち入り制度の創設など、法律の強化を図っていただきました。こうしたことを迅速かつ適切に対応するためには、それを担う児童相談所、とりわけ先生御指摘の児童福祉司の量、質両面での充実が非常に大事だというふうに思っております。

 平成二十年度、本年度におきましては、まず、地方交付税措置におきまして、児童相談所における児童福祉司の数でございますが、昨年度の標準人口百七十万人当たり三名の増員に引き続きまして、さらに一名の増員をいただいたところでございます。先生がおっしゃるような欧米のレベルというところからいうとまだまだという部分もあろうかと思いますが、大変厳しい財政事情の中で御配慮をいただいて、一歩ずつ増員を図っているところでございます。また、職員の質の向上という面で、児童相談所において指導的立場にある者の研修の追加など研修体制の充実を図っているところでございます。

 こうしたことを通じまして、児童相談所の体制強化への支援をさらに充実していきたいと思っております。また、現場の方々、関係者の方々の御意見をよく聞きながら、これからも施策の充実を考えてまいりたいと思っているところでございます。

古屋(範)委員 厳しい財政状況の中、大変御努力をされているということはよくわかりますけれども、非常に微々たる増員であると思います。来年度に向けて、私たちもしっかりと、この観点は子供の命を守るというところから、さらに増員に向けて取り組まなければいけないというふうに決意をいたしております。

 次に、住民に身近な市町村の体制強化についてお伺いをしてまいります。

 住民から虐待の通報を受ける機会が多いのは、やはり身近な市町村であると思います。市町村などの機関がかかわりながら死亡するケースがふえているという現状もございます。また、年間三万七千件に上る児童虐待に、児童相談所だけでは対応していくことも難しいのが現実でございます。そこで、住民に身近な市町村の体制強化が重要となってまいります。関係機関がネットワークを組み、的確、迅速に対応することが期待をされているわけでございます。

 私の地元の横須賀市、中核市でありますけれども、児童虐待に関しましては非常に積極的に取り組んでいる市でございます。特に、この四月、平仮名で「はぐくみかん」と書きますけれども、オープンいたしまして、ここには児童相談所機能もございます。また、障害を持ったお子さんの相談、療育相談センター、また子育て支援の総合窓口もございまして、児童手当の支給から保育まですべて子供に関することはここに行けば答えてもらえる、そういう非常にすばらしい施設がスタートしたところでございます。市民からも非常に期待をされている機関でございます。

 十六年改正の際に、市町村の関係機関が連携して、虐待などに対応する要保護児童対策地域協議会、いわゆる子どもを守る地域ネットワークの設置が進められております。これは、市町村が児童相談所、警察、医療機関、学校、教育委員会、民間団体などに参加を呼びかけて設置し、定期的に会議を開いて情報を共有する、要保護児童の早期発見や適切な保護に努めるものでございます。

 厚労省によりますと、この地域協議会、児童虐待防止ネットワークを含めますと、全国で約八五%まで広がっております。しかし、市町村によっては具体的な運営方法がわからないというような声も聞かれます。今後、こうしたネットワークの設置促進とともに、どう機能させるか、コーディネーターの専門性の向上と運営のノウハウをアドバイスするなど、中身の充実が問われております。

 そこで、子どもを守る地域ネットワークの設置促進など市町村レベルの体制強化について、お考えをお伺いします。

村木政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、虐待防止には、住民に身近な市町村の取り組みが非常に大事でございますし、とりわけ学校や警察なども入って、地域の構成メンバーがしっかりとネットワークを組むということは非常に大事で、御指摘の子どもを守る地域ネットワーク、これを全市町村に設置していただくというのは非常に大事なことだというふうに考えております。

 私ども、この設置、運営のノウハウをまとめました市町村向けのマニュアルの作成、配付などを通じまして、できるだけすべての市町村にこのネットワークを設置していただこうということで努力をしております。

 また、十九年の児童福祉法の改正で、ネットワークの設置が市町村の努力義務というふうに法律に位置づけられました。そうしたこともありまして、先生が御指摘をされましたように、大体八五%ほどの市町村で今このネットワークがあるという状況でございます。これをできるだけ早く一〇〇%に近づけるということと、さらに、このネットワークの機能そのものを強化していくということがこれからの課題だろうというふうに思っております。

 そうしたことから、二十年度予算でございますが、ネットワークのコーディネーターやネットワークの構成員の専門性を高めるための事業として、子どもを守る地域ネットワーク機能強化事業というのを創設いたしました。また、児童福祉司の任用資格取得のための研修につきまして、これまでは都道府県職員を対象としておりましたが、これに市町村職員も受講対象にするというような施策も新たに取り組むところでございます。

 また、今の国会に提出をさせていただいておりますが、児童福祉法等の一部を改正する法律案におきまして、ネットワークの調整機関に一定の専門性を持っている者を置く、そういったことを努力義務として法律に規定をしたいということで、法律を提出しているところでございます。

 今後、こうした取り組みを通じまして、国はもとよりでございますが、住民に一番身近な市町村の体制強化をしっかりと応援してまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 では、最後に、虐待防止に大きな役割を果たしますこんにちは赤ちゃん事業について質問してまいります。

 虐待死の約四割がゼロ歳児ということから、昨年度スタートいたしましたこんにちは赤ちゃん事業、これも、私たちも地方議員とともに推進をしてまいりました。この一年間に実施した市町村はまだ六割弱にとどまっているということでございます。児童福祉法改正案が今国会に提出されておりまして、この中で、子育て支援に関する基本的サービスの一環として、このこんにちは赤ちゃん事業が明確に位置づけられることとなりました。一刻も早い法律の成立が望まれるところでございます。

 そこで、法制化されることで、この事業に対して国民の広い理解が得られ、全国で導入が進むことが期待をされているところでございますけれども、こんにちは赤ちゃん事業へのさらなる普及の取り組みにつきまして、厚労省にお伺いいたします。

村木政府参考人 生まれて間もない赤ちゃん、乳児がいる家庭は、大変親御さんは苦労をされております。特に、核家族化が進む中で、お母さん方が周囲から大変孤立をしているというような指摘もございます。また、先生御指摘になられましたように、虐待による死亡事例の中でゼロ歳児のウエートが非常に高いという状況もございまして、虐待防止の観点からも、産後間もない家庭への支援というのが非常に重要だと考えているところでございます。

 このため、平成十九年度からでございますが、生後四カ月までの乳児がいるすべての家庭を訪問して、子育て支援に関する情報提供等を行い、また、サポートが必要な家庭を発見し、具体的な支援につなげていくという事業、通称こんにちは赤ちゃん事業でございますが、これを開始したところでございます。

 こうした事業、私どもが制度化をする前に、既に先進的な市町村で取り組まれておりまして、そういった事例をしっかり集めて、その事例集を自治体に配付したりということで周知、普及を図ってまいりました。

 先生御指摘になられましたとおり、十九年度の普及割合、まだ六割ということでございます。これを踏まえまして、この事業、非常に大事だということで、ぜひすべての市町村でやっていただきたいということで、児童福祉法等の一部を改正する法律案、今国会に提出をしておりますこの法律案に、乳児家庭全戸訪問事業として法律上位置づけをしまして、市町村にその実施について努力義務を課すということにしたところでございます。

 また、予算面でございますが、本年度の予算におきまして、先ほど御指摘をいただきました子どもを守る地域ネットワークの事業とこのこんにちは赤ちゃん事業を上手に連携を図って実施していただきますと、次世代育成支援対策交付金の加算ポイントの配分があるというような工夫もいたしまして、この事業の普及に努めているところでございます。

 また、自治体の意見も聞きながら、この事業がしっかりと普及をして、また皆さんにも知っていただけるようにさらに努力をしてまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 以上で質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 所信の中で、青少年育成施策大綱について述べられましたので、今後のいろいろな施策、各種施策がそれに基づいて推進されていくというような趣旨だったと思いますので、この施策と子どもの権利条約との関係についてきょうは質問したいと思っております。

 青少年育成施策大綱にも、子どもの権利条約の観点を踏まえることが重要というか、踏まえなければいけないということはあると思いますけれども、これは国際条約でありまして、政府としては、五年に一度、国連に対する報告義務が課せられているわけですね。それとの関係で、きょうは何点かお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 まず、基本認識として、やはり青少年の担当大臣として、子どもの権利条約についてどのような意義があるとお考えになっていらっしゃるのか、また、施策を生かす上ではどのように生かしていくのかというようなことについて伺いたいと思います。

上川国務大臣 児童を含みます青少年の人権を尊重し、またこれを擁護していくということは、青少年行政の根幹をなすものというふうに思っております。

 委員からも御指摘がございました現行の青少年育成施策大綱におきましても、条約の観点も踏まえまして、施策を推進していく必要があるということを冒頭に明記しているところでございます。このような趣旨は、児童虐待の対応策あるいはさまざまな問題を抱える青少年に対する支援策等の施策の方にも反映をさせていくべき趣旨のものというふうに考えておりまして、連携を持っての取り組みが必要だというふうに思っております。

石井(郁)委員 子どもの権利条約に基づく政府の報告書、第二回報告書が国連に出されたのは二〇〇一年十一月なんですね。国連は、それに基づいて審査をされ、最終見解を発表されております。たまたまこの最終見解は二〇〇四年の二月なので、青少年育成の施策大綱は二〇〇三年の十二月に出されておりますから、大綱が出されると、その直後に最終見解が出されたという時系列になっているんです。

 そういうことなんですけれども、ちょっと私は二つばかり、その最終見解の青少年育成施策にかかわって述べられていることについて、懸念事項として出されておりますので、政府としてはどのようにこれを受けとめていらっしゃるか、まずお聞きしたいと思っているわけです。

 この国連の最終見解の十二番目にこういうふうにあるわけです。「委員会は、」というのは、国連の子どもの権利委員会なんですが、「内閣府における、児童及び青少年に関する諸施策の調整を行う権限を持つ青少年育成推進本部の設立及び、上述の青少年育成施策大綱の策定を留意する。しかしながら、委員会は、同大綱が包括的な国内行動計画ではないこと、及び同大綱の作成及び実施において児童及び市民社会の参加が不十分であったことを懸念する。」というふうにあるんですね。こういう懸念を述べられたということについては、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

上川国務大臣 委員が御指摘いただきました最終見解ということでございますけれども、現大綱が包括的な国内行動計画ではないという点につきましては、この大綱は、教育や保健、福祉、また就労、非行対策等、青少年にかかわる行政分野全般を網羅したものであるということでございますし、また、その確実な推進を図るための施策の進捗状況を取りまとめるとともに、また、この間、子供の安全、安心の確保などの課題につきましては取り組みを加速する等のプランを策定するなどの対応をとっているところでございます。

 また、大綱の作成過程、実施過程の中で児童及び市民の参加が不十分であったという点につきましては、平成十五年に策定した現大綱の作成過程におきましては、懇談会を開催して、青少年の育成の基本的な方向につきまして有識者の御意見を聴取するとともに、広く国民の声を聞くためのパブリックコメントという形で意見を聴取しているということでございまして、そういう意味では、この二つの動きというか、取り組みの状況についての懸念ということについて、多分、直後ということもあって、その内容について十分に御理解いただいていなかったかもしれないなという思いはしております。

 そういうことで、今、現大綱を見直す作業をいたしておりますけれども、そうした御指摘もございまして、見直しの作業のところには、とりわけ青少年から直接お話を聞くというような機会を積極的に設けたいということで取り組みをいたしているところでございます。

 私自身、大臣就任以来、「オープン!子ども・家庭大臣室」ということの事業をいたしておるところでございまして、若者の皆さんとの直接対話ということについては、特に行政への要望等も含めまして、声を最大限生かしてまいりたいというふうに思っております。

石井(郁)委員 大臣の意欲というか、御決意というか、その辺はよく伝わりましたけれども、もう一点、この最終見解ではこのようなことが述べられています。「締約国が、」「市民社会や青少年組織との協力により、青少年育成施策大綱が権利に基づいたものであり、条約の全ての分野を包含し、かつ、国連子ども特別総会の成果文書である「子どもにふさわしい世界」におけるコミットメントを考慮に入れたものであるよう確保すべく同大綱を強化すること、」とあるんですね。

 つまり、やはりもっと大綱を強化せよと言っているわけでありまして、その背景に、国連子ども特別総会の成果文書をもっと生かすべきじゃないかということがあるように私は受けとめたんですけれども、この国連子ども特別総会というのは二〇〇二年の五月に開かれているものでありまして、この「子どもにふさわしい世界」という文書、これについてはどのように受けとめていらっしゃるんでしょう。

上川国務大臣 国連におきまして特別総会が開かれて、子供に係るさまざまな課題につきまして、各国が、あるいはNGOも含めまして参加をし、この問題を全体としても取り組もう、こういう意思を明確にしたということについては、私はとても大切なことだと思っております。

 また、先ほどおっしゃった子供のためのということでの、とりわけメッセージということでありますけれども、そうしたステートメントで書かれていることについて、一つずつ、それぞれの国の中でよく吟味をしながら、子供の視点に立った施策への反映ということについては、大事にしていくべきことというふうに思っております。

石井(郁)委員 その「子どもにふさわしい世界」という文書を私もちょっと読みまして、なるほどと思ったことがあるんですけれども、やはり子供の権利を本当に十分に生かしていくために特に留意している点がありまして、その「パートナーシップと参加」という項目のところなんですよね。ちょっと読みますけれども、このように書いていました。

 若者を含む子供は、その能力の発達に応じて自分の意見を自由に表明する権利を行使する、それが自尊心を高め、紛争の解決や意思決定、意思疎通などのための知識や技能を身につけて、暮らしの課題に取り組む力を持たなきゃいけないと。だから、子供たち自身が今起きているさまざまな問題にみずから取り組む力を持つんだと。そのためには、若者を含む子供の自由に自己を表現する権利が尊重される、強化される、子供に影響するすべての事柄でその意見が考慮され、年齢や成熟度に応じて子供の意見がしかるべく重視されなければいけないということがあるんですね。

 私は、日本の社会の中で、この部分というのはやはりもっともっと強化されなければいけないことなんだというふうに思うんですね。大変いい文章がいろいろあるんですけれども、それで、「我々は」という文章の中で、家族、学校、地域、国のレベルでの意思決定の過程への若者を含む子供の有意義な参加を促進するためのプログラムを立案しなさい、あるいは実施するために努力をするということが書かれておりました。

 こういう点で、私は、青少年の育成施策大綱、その作成過程、そしてまた作成して実施に移しているわけですから、そういう中で、本当にこういう見解がどのように尊重されているんだろうか、あるいは今後も重視されていくんだろうかということについて、もう一歩御見解を伺いたいと思います。

上川国務大臣 ただいま先生が読み上げられたことも含めまして、勧告及びこのメッセージは、現大綱に基づく施策の実施状況の検証、またその内容の見直しの過程において、国民や青少年自身の意見に耳を傾けるとともに、条約等の趣旨を十分踏まえた大綱とするよう求めているものというふうに思っております。

 現在、新たな大綱策定の作業をしているわけでございますが、施策の対象となります青少年の視点というのに立った見直しを行う必要があるのではないかという観点から、青少年の思いや実態を把握していこうということで、青少年をめぐる幅広い分野で御活躍をされていらっしゃる現場の皆様と直接懇談をする機会をこれまで九回開催させていただいております。その中では、児童の権利条約の重要性等につきましても御意見もいただいているところでございます。

 またさらに、青少年の子供たちと直接会って、彼らの現在の気持ち、また将来への夢や思い、そして社会に対してのなかなか厳しい指摘、意見もございましたけれども、そうした話を聞く機会もこれまで持ったところでございます。

 今後、条約の趣旨、またこうした懇談の場でお聞きをいたしました意見ということについて十分踏まえた形で、新たな大綱の策定に努力してまいりたいと思っております。

石井(郁)委員 私も、この質問に当たりまして、今年度というか、新たな施策大綱をつくられるということでもありますから、これまでがどういう施策の進行状況、実施状況だったかと言って、これをただいたんですけれども、これだけ、これだけというのは失礼ですけれども、こんなふうに見ますと、各省庁にまたがってかなりなことがいろいろあるなということは感じるんですね。青少年の社会的自立を支援するだとか、それから、特別に困難を抱えている、そういう子供たちへの支援だとか、幾つかやはり重要なポイントがありまして、施策が進められてきたというふうに思うんですね。

 しかし、その施策が本当に有効かどうかということについては、やはり当の子供たちの意見を聞かなきゃいけない。それから、子どもの権利条約では、やはり子供にかかわる問題、児童に影響を与える問題はその子供に聞きなさいという立場なんですよ。だから、そういうことがどうやってここには反映されているんだろうか、それがちょっと見えないんですよね。

 上川大臣は積極的に子供たちからいろいろ意見を聴取されているということは私伺っておりますけれども、それをもっと制度的に、きちんとプロセスに反映させる、そういうことももう考えるときではないのかなというふうに思っておりまして、それをぜひ今後検討していただきたいなというふうに思います。

 それで、実は、権利条約の問題でいいますと、もう一つ、条約の四十二条には広報の義務というのがありますよね。つまり、こういう条約、これはまだ新しい条約ですから、やはり国民にも、それから当の児童というか、子供たちに知らせなければいけないということがあるわけですけれども、そういう広報というのは、内閣府としてはどのようにこれまで取り組まれたんでしょうか。

柴田政府参考人 児童の権利条約をお知らせするという、その内閣府の取り組みということでまず申し上げたいと思います。

 内閣府は、毎年十一月を全国青少年健全育成強調月間というふうにしております。その月間をやるときに、毎年、実施要綱というのを決めておりますけれども、要するに、こういうことをやってくださいという実施要綱を決めているんですが、その中で「児童の権利に関する条約に係る広報啓発活動の推進」というのも明示してやっていただくような形にしております。これを受けまして、自治体において各種啓発行事が実施されているというふうに承知をしております。

 例えば、日本の子供、世界の子供というのをテーマに講演会をするとか、あるいは子供たちからの人権メッセージの発表というような取り組みとか、あるいは小中学生の人権に関する意見発表、関連講演会、こういうものを、具体的な例としては取り組んでいる例ということで私どもも承知をしております。

 それから、この児童の権利条約そのものについての紹介でございますけれども、毎年白書を出しておりますけれども、その中でこの条約の概要を掲載する、そしてそれをホームページに載せるというようなことに今取り組んでいるところでございます。

石井(郁)委員 青少年白書にもきちんと載っていることは私も承知しておりますけれども、しかし、それは大体大人が見るものですよね。私はやはり今、子供たちにこれを知らせる、ここが大事だというふうに思うんですよ。それから、日本は子どもの権利条約を批准していますよ、こういうものがありますよということをただ書いただけでは、この内容はつかまれませんよね。

 きょう申し上げたように、例えば十二条、何度も申し上げますけれども、子供がその子に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の見解を表明する権利がありますよ。そういう場面は、だから、子供の施策ですから、やっている場面で、本当に子供が意見を自由に述べる権利があるんですと、またそういう場を私たちが保障しなければいけないということだと思うんですけれども、そういうものとして、この条約をやはり子供たちにどう広報するのかということが問われていると思うんですね。それはいかがですか。

柴田政府参考人 先ほど先生のお話にもございましたように、条約の四十二条では、成人、児童のいずれにも条約の内容を広く知らしめろということを国の責務として書いてございます。

 そういうことで、文部科学省におきましては、教育活動全体の中で子供の権利や義務について正しい理解をはぐくんでいくということの重要性について各教育委員会等に周知をしているということでございますが、もう一つ、教科指導では、小中学校の社会科あるいは高等学校の現代社会とか政治経済、そういうところで基本的人権の尊重や人権に関する国際法の意義について取り扱うこととされておりまして、中学校、高校のこれらの教科の教科書の多くで児童の権利条約が取り上げられている。

 それから、各教育委員会では、人権教育用の教材として、児童の権利条約を、子供に向け、わかりやすく要約した資料を作成するなどの取り組みも行われていると承知しております。

 それから、法務省でございますけれども、平成十七年に、条約の内容を、子供にも理解できるような、わかりやすく説明したパンフレットをつくっておりまして、これが学校などを通じて児童、保護者などの手に届くような取り組みを行っているというふうに承知しております。

石井(郁)委員 恐らく、子供たちに聞いたら、この権利条約の中身はこういうものですよと知っている子供たちはどれだけいるだろうかと。私はそれを尋ねたデータを持っていませんけれども、それほど周知されていないというふうに思うんですよね。

 それで、これは北欧諸国だとかヨーロッパの諸国の例なんですけれども、やはり子供向けにいろいろなパンフレットをつくっているんですよね。例えば、条約ですから、この条文そのものだったらなかなか高校生だってすぐわからないとかいうことはありますから、小学生向けとか、中学生向けとか、高校生向けだとか、そういうパンフレットをきちんと子供たちに渡している、そういう取り組みがあるわけですから、私は、本当に日本の子供たちの今の状況を変えていく一歩となるためにも、子供みずから、自分は尊重されている人間、また社会にこうやって参加ができる権利もあるし、また、そのために自己を形成しなければいけないだとかというようなあたりがもっとあってもいいんじゃないかと。

 ぜひ、見直しの機会にもなるわけですから、そういう子どもたちに、本当に社会の中にかかわって生きていく力をつけてやるという意味で、この条約の普及啓発ということについて内閣府として力を入れていただきたいということをきょうはお願いして、質問を終わりたいと思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

玄葉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.