衆議院

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第1号 平成18年10月18日(水曜日)

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平成十八年十月十八日(水曜日)

    午後三時開議

    ―――――――――――――

委員氏名

  衆議院

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 臼井日出男君 理事 小坂 憲次君

   理事 船田  元君 理事 宮路 和明君

   理事 村田 吉隆君 理事 奥村 展三君

   理事 川端 達夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      愛知 和男君    稲葉 大和君

      海部 俊樹君    古賀  誠君

      武部  勤君    津島 雄二君

      中川 昭一君    中川 秀直君

      中山 太郎君    二階 俊博君

      丹羽 雄哉君    町村 信孝君

      谷津 義男君    小沢 一郎君

      高木 義明君    羽田  孜君

      鳩山由紀夫君    山岡 賢次君

      北側 一雄君    志位 和夫君

      保利 耕輔君

  参議院

   委員長 前田 武志君

   理事 木村  仁君 理事 小泉 顕雄君

   理事 北澤 俊美君 理事 円 より子君

      河合 常則君    岸  信夫君

      椎名 一保君    世耕 弘成君

      関口 昌一君    藤野 公孝君

      松山 政司君    今泉  昭君

      郡司  彰君    輿石  東君

      西岡 武夫君    荒木 清寛君

      魚住裕一郎君    井上 哲士君

      田村 秀昭君

    ―――――――――――――

 出席委員

  衆議院

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 臼井日出男君 理事 小坂 憲次君

   理事 船田  元君 理事 宮路 和明君

   理事 村田 吉隆君 理事 奥村 展三君

   理事 川端 達夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      愛知 和男君    井上 喜一君

      稲葉 大和君    岸田 文雄君

      武部  勤君    津島 雄二君

      中川 昭一君    中川 秀直君

      中山 太郎君    二階 俊博君

      丹羽 雄哉君    町村 信孝君

      谷津 義男君    小沢 一郎君

      小沢 鋭仁君    高木 義明君

      羽田  孜君    山岡 賢次君

      北側 一雄君    志位 和夫君

      保利 耕輔君

  参議院

   委員長 前田 武志君

   理事 木村  仁君 理事 小泉 顕雄君

   理事 北澤 俊美君 理事 円 より子君

      河合 常則君    岸  信夫君

      椎名 一保君    世耕 弘成君

      関口 昌一君    松山 政司君

      今泉  昭君    郡司  彰君

      輿石  東君    西岡 武夫君

      荒木 清寛君    魚住裕一郎君

      井上 哲士君    田村 秀昭君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   総務大臣         菅  義偉君

   法務大臣         長勢 甚遠君

   外務大臣         麻生 太郎君

   財務大臣         尾身 幸次君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   厚生労働大臣       柳澤 伯夫君

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   経済産業大臣       甘利  明君

   国土交通大臣       冬柴 鐵三君

   環境大臣         若林 正俊君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       溝手 顕正君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      久間 章生君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (科学技術政策担当)

   (イノベーション担当)

   (少子化・男女共同参画担当)

   (食品安全担当)     高市 早苗君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   大田 弘子君

   国務大臣

   (規制改革担当)     佐田玄一郎君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   衆議院国家基本政策委員会専門員          杉山 博之君

   参議院常任委員会専門員  大場 敏彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国家の基本政策に関する件


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     ――――◇―――――

    〔衛藤征士郎君会長席に着く〕

会長(衛藤征士郎君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。

 本日は、私が会長を務めさせていただきます。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 このたび、衆議院の国家基本政策委員長に就任いたしました衛藤征士郎でございます。

 参議院の前田委員長を初め、衆参両院の委員の皆様方の御指導、御協力を賜りまして、その職責を全うしてまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。(拍手)

 国家の基本政策に関する件について調査を進めます。

 これより討議を行います。

 討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び内閣総理大臣は、決められた時間を厳守し、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。

 また、委員各位におかれましても、議事の妨げとなるような言動のなきよう、御協力をお願いいたします。

 発言の申し出がありますので、これを許します。小沢一郎君。

小沢一郎君 民主党の小沢一郎でございます。

 まず、安倍総理に対しまして、このたびの御就任、お祝いを申し上げます。

 私は、総理の御尊父であられます安倍晋太郎先生に大変御指導いただいた一人でございます。私は先輩として非常に尊敬しておりました。立派な方でありましたし、この次には間違いなく総理・総裁だと多くの人が認めておられた方であります。その安倍晋太郎先生が、総理就任目前にして病に倒れられて、御本人の無念ももちろんでありますけれども、私自身も大変残念に思っておったところであります。

 しかし、このたび御子息の安倍晋三さんが総理大臣に就任された。大変晋太郎先生ももちろんお喜びのことと思いますし、私自身も、そういう関係にありましたものですから、個人的心情としては喜んでお祝いを申し上げたい、そう思っております。

 ただ、その一方で、こんな大変なときに大変な役をお引き受けになったなという感じも持っております。しかし、なった以上は、日本の最高の権力者であり、政治の最終、最高の責任者ですから、どうかそういう意味において、政治は国民のためにある、政治は国民の生活そのものであるという政治の原点を肝に銘じながら、総理の職務に対応していただきたいと思います。

 お祝いと激励はこのぐらいにいたしまして、今度は、お祝いを申し上げました安倍内閣を打倒して民主党の政権をつくらなければならないという民主党の党首の、代表の立場で総理にお考えをお聞きしたいと思います。

 きょう、最初の議論でありますので、まず総理が就任になる前から強く主張しておられました憲法改正の問題、そして、時間があれば、教育の問題、それから、北朝鮮の核実験にかかわる国連の決議、特に日本の政府の対応等についての関連した総理の認識を一、二点ずつ伺いたいと思っております。

 総理は、就任なされる前は、その御自分の思いを、内容についてのよしあしや賛否は別にいたしまして、素直に、率直に語られてこられたように思います。しかし、就任されてからは、何となく御自分の思いを、何か、包んでいるような印象を持っております。

 言語明瞭意味不明瞭ということが言われたことがありますけれども、どうか、せっかく総理大臣になられたんですから、いろいろな、もちろん現実的な問題はあっても、御自分の従来からの主張、それをきちんとやはり国民に説明し、そしてリーダーシップを発揮してもらいたいと、そのように思っております。

 まず、憲法改正についての総理のお考えをお聞きいたします。

 就任されてから余り憲法改正という言葉を聞かないんですけれども、改正しなくちゃならぬというそのお考えは多分一貫してお持ちのことと思います。そういう前提で、総理の従来からの発言を聞いておりますと、憲法改正のその理由ですね、どういう理由で日本国憲法を改正しなきゃいかぬのか、その点について総理は、第一義的に、第一の理由として、就任前は、この日本国憲法はGHQの中で、占領軍の司令部の中で一週間余りの検討の末に日本の政府に付与されたものだというたぐいの御発言があったように記憶しています。

 総理になられてからは、委員会の質問等に関しては、占領軍の、深いというか、深いでしたか、大きいでしたか、関与のもとでこの日本国憲法が制定されたというふうに、多少マイルドにお話しされておりますけれども、総理が日本国憲法を改正しなくちゃならないという最大の理由は今申し上げた点にあるというふうにまず理解してよろしいでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず初めに、小沢党首より、私の総理就任に対してお祝いのお言葉をいただきましたことに対しまして、お礼を申し上げたいと思います。

 言及をいただきました私の父が、恐らく小沢さんと私が与野党の党首として論戦を闘わせるとは想像だにしていなかったのではないか、このように思うわけでございますが、国民の目の前で政策論争を闘わせ、私がどういう国づくりをしていきたいか、率直に述べていきたいと思っております。

 まず、憲法について私がどのように考えているか、御質問をいただきました。

 憲法につきましては、総理として憲法尊重義務があるということの上で申し上げれば、私は従来から憲法を改正するべきであると述べてまいりました。その理由として三点挙げてきたわけでございます。

 まず第一点は、今、小沢党首が触れました現行憲法の制定過程でございます。もちろん最終的には国会の議決により制定されたわけでございますが、しかし、占領下にあって、そしてやはり占領軍の影響下の中において憲法が制定されたのは間違いのない事実であります。中身がよければいいではないかという人もいるわけでありますが、何といっても憲法でありますし、基本法である以上、その制定過程にこだわらざるを得ないと私は考えたのでございます。やはり私たち自身の手でつくっていく必要があるのではないか。

 第二点目でありますが、憲法が制定されて半世紀以上の年月を経た中において、時代にそぐわなくなってきた条文もあるのではないか、あるいはまた新たな価値、書き込むべき価値、権利も生じてきたのではないか、つまり新しい時代にふさわしい憲法にしていく必要があるであろう。

 そして三点目でございますが、まさに憲法というのは国の形であり、理想を示すものであります。この理想と形を私たち自身が議論し、書き上げていくことが新しい時代を切り開いていく精神に、これはつながっていくのではないか。

 以上の三点から、私は憲法を改正するべきである、こう述べてまいりました。

 現在、私は自由民主党の総裁であると同時に行政府の長でございます。自由民主党の総裁として、党首として、この憲法改正を政治スケジュールにのせていくためのリーダーシップを発揮してまいりたいと思っております。他方、これは解釈はいろいろあるわけでありますが、国会の三分の二の発議によって憲法は改正されるわけでございまして、まずは党同士が議論を深めていく、まさに議員同士が議論を深めていくべきであると考えているところから、行政府の長としては、さらにこの議論が広がり深まっていくことを見守っていくべきである、こう考えているところでございます。

小沢一郎君 今、憲法改正の必要性、根拠について、理由について、三点、総理からお話がありました。一点目が私申し上げたところですが、二点目、三点目といいますのは、それは日本国憲法に固有の問題ではないのではないか、他の法律であれ制度であれ何であれ、それは時代の変遷に伴って、国民のためにこういう方がいいということであれば、あるいはまた他にもっと理想的な考え方があるとなれば、それはもう日本国憲法だけではない、一般的に論ぜられる原理だろうと思います。

 日本国憲法でやはり一番のいろいろと議論のあるところ、また今総理自身も言ったように、自分自身の手で、国民自身の手で、こういう新たなる時代に新たに理想的なものをつくり上げたいというお考えであるとするならば、やはり第一点の問題点というのは、その意味においては最大の理由と言っていいのじゃないかというふうに私は思っております。

 そして、これはただ単なる憲法の立法技術の問題やら何やらだけじゃなくて、いろいろな戦後体制あるいは歴史観にまでその根っこは関連してくる問題だと私は思っているんですよ。ですから、このことをお聞きしておるんですが。

 したがって、この第一点が一番大きな理由となると思うんですが、これについて、安倍総理と同じような考え方あるいは主張を憲法の条文そのものに明文化して書いてある国、そういう憲法を持っている国があるんですけれども、総理はその点は御承知でしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) ドイツにおいて基本法が制定されたわけであります。既に何回も法律を、憲法を変えていると思いますが、ドイツにおいてはどのように明文化されているかということは私はよく承知はしておりませんが、ドイツにおいては、まさに占領下において制定をされたという認識のもとでこの基本法をつくったというふうに承知をしております。

小沢一郎君 ドイツ基本法にも、明確にではないですけれども、そういった趣旨、思想があらわれた規定がありますけれども、総理のおっしゃるような考え方をストレートに条文化している憲法を持っている国、私も別に世界じゅうの憲法を調べたわけじゃありませんから、そんな大きなことは言えませんけれども、市民社会の、いわゆる民主主義の最初に発展してきたヨーロッパの諸国をちょっと見てみますと、一番明確に書いてあるのがフランス憲法であります。それから、ベルギー、スペインの憲法にも同様なことが書いてあります。

 今のフランス憲法、第五共和制ですが、これには、領土の一体性が侵害された場合には憲法の改正等はできないというふうに書いてありますし、それから、ベルギーの憲法にも、戦時下等について、国民が自由な意思の表明をできないような状況の中ではそういう改正なんかできない、そういう趣旨のことが書いてあります。

 スペインでも、非常時、戦時についてそのような憲法条項があるんですが、一番はっきり書いてありますのが第四共和制のフランス憲法で、領土の一部もしくは全部が外国の軍隊に占領されている場合には、憲法の改正等のことは一切、やってはならないではなくて、できないと書いてあるんですね。

 ですから、そういう意味で、できないということの、裏返して言いますと、事実行為として、占領中に、そのときの権力による影響を受けた憲法ができたとしても、それは無効であるということに規定してあるわけであります。

 そうしますと、今総理も、やはり占領中に占領軍の少なくとも深い影響、関与のもとになされた日本国憲法であるという考え方から推し進めますと、フランス憲法に書かれておりますように、論理の一貫性からいえば、そういう状態においてつくられた憲法は無効だということになるわけであります。

 これは、ほかの国にそういう憲法があるという例だけではなくて、議論としてそういう議論が、一方の、有効だという議論もありますけれども、そういう議論が当然あるわけです。

 そうしますと、総理の主張を推し進めると、日本国憲法は本来無効だという方が論理としては一貫しているように思うんですけれども、その点についてはいかがですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま小沢さんが言われた議論については、この憲法の議論の中で、例えばハーグ陸戦協定を挙げて、占領下にあるときに基本法を変えることについての法的な根拠について議論がなされたというふうに思います。今例に挙げられましたフランスの例は、恐らくナチス・ドイツに占領されたフランスの経験から書き込まれたのではないか、このように思うわけでございます。しかし、日本は昭和二十七年に講和条約が発効し独立を回復した後も、基本的に現行憲法のもとにおいて今日までの道のりを歩いてきたわけでございます。ですから、現在、であるからそれが無効だという議論は、私はもう既に意味はないのではないだろうか、このように思っています。

 私も、現行憲法の意義をすべて否定しているわけではありません。現行憲法の持っている主権在民、自由と民主主義、そして基本的な人権、平和主義、この原則は、私は、世界的な、普遍的な価値であろう、このように思っておりますし、自民党の憲法改正草案においても、憲法草案におきましても、この価値について書き込まれているところでございます。

 私は、基本的には先ほど申し上げました三点について申し上げたわけでありまして、どれが一番大切かということではなくて、この三つについて申し上げているわけでございまして、ですから、あとは、中身についてはいろいろな議論があるところでありますから、しっかりと議論を深めてもらいたい。

 さらに言えば、現行の憲法の中にも改正の条項が入っていて、その法的な整備を進めていく上においては、国民投票法案は、ぜひこれは当然、現行憲法の中においての、これは改正のための法的整備でもあるんだろう、このように思います。ですから、まずは現実的な視点から見て、この国民投票法案についてしっかりと議論をしていただきたい、このように思います。

 基本的には、私は、認識としては、既に国民の中で事実として定着し、それを我が国国民も選んだのも私は事実であろう、こう考えています。

小沢一郎君 今、安倍総理が、日本国憲法の基本的な民主主義やら基本的人権やらそういったいろいろないいところがたくさんある、そしてまた既にもう定着している、そういうことをお話しになりました。事実そのとおりだと私自身は思っております。

 そうしますと、結局、さっき言ったように、三つのうちの二番目と三番目というのは、それは日本国憲法に固有の理由ではないわけで、一番の理由として、占領下でつくられた、GHQの影響でつくられた憲法である、だから我々の手で新しいものをつくりかえなきゃならないという論理は、私は、必ずしも、ちょっと矛盾しているんじゃないかというふうに思って……(発言する者あり)私の考えを述べておりますので。と思っております。

 それともう一つは、さっき申し上げましたように、今さら無効だ、有効だという議論が六十年もたってということは私ももちろんわかっております。ただ、この問題は、この考え方は、いわゆる戦後体制、そういう戦後体制の持つ、あるいは歴史認識にかかわる、それに究極的には、底辺で同じように重なり合う部分があるというふうに私は思っているんです。

 ですから、それを一方において、我々の手でつくらなきゃだめだ、占領下でつくられた憲法じゃないかと言って、一方では、戦後体制はよかったじゃないかと。それはもちろんいいところもあり、悪いところもあるというのはいいんですけれども、いわゆる基本的な考え方として、総理として、基本的認識として、そういう問題についてきちんとした考え方をやはり示さないといけないんじゃないかなというふうに私は思っております。

 時間もありませんので、次に、北朝鮮の核実験に関する、それをめぐる問題について総理のお考えをお聞きしたいと思います。

 北朝鮮の核実験は、国際社会の平和に対する希求を踏みにじるものであり、挑戦的な行為でありますから、このような行為に対して、毅然とした、きつい、厳しい態度を、対応をしていくということについては、私も何の異論もありません。

 ただ、そういう中で、国連決議、制裁の決議がなされました。国によって、どういう具体的な措置を講ずるかということはそれぞれ差異があるようですけれども、アメリカは船舶の検査もやりたいというふうに報道では聞いております、そして、日本も手伝ってほしいというような意向を持っておるというふうに聞いておりますが。

 そういう状況の中で、今までは報道でしか私は知るすべもありませんけれども、きょうちょっと総理と直接のお話ができますのでお聞きしたいんですけれども、そういうような現実のアメリカからの要請やら、もちろん日本自身の拉致問題等々のこともあり、核実験の問題ですから、それはできるだけのことをするのはいいんですけれども、今の政府の状況を見ておりますと、やれ周辺事態法で周辺事態の認定がどうとかこうとかとか、あるいは、そうしないと船舶の検査が云々とかという議論がなされているやに報道からは伺っております。

 しかし、このような、総理もまだそこまでは考えていないとかいるとかという御答弁が何かあったようですけれども、そういう政府部内の、いかにも私から言わせれば場当たりな、その場しのぎのやり方が余計日本の政府の対応に混乱を来しているのではないかという気が私はいたしております。

 総理は、この際お聞きしたいんですが、周辺事態法の想定している事態、あるいは対応する行為と、今回の決議がありましたが、国連、国際社会の合意のもとに行われる制裁行為とは、その両者は基本的にどういう性格を持ったものだとお考えですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 周辺事態安全確保法においては、それがどういう事態かということについて言えば、そのまま放置すれば我が国への武力行使につながるおそれのある事態等ということになっておりまして、それはどういう事態かということについては、さらに政府は六つの類型を示していると思います。この周辺事態安全確保法においては、日米の同盟という我が国の基本的な安全保障、外交の基本的な基盤の上に立って、周辺事態にどう対応することができるかということを定めたものである、このように考えているわけでございます。

 また、と同時に、現在、国際社会において、北朝鮮の挑戦的な行動に対して国連決議を行い、厳しい措置を伴う強制力のある決議がなされたわけでありまして、この決議を実効たらしめるために国際社会の中で協力をしていく、日本も何ができるかを関係国と連携、協議しながら現在検討をしているわけでございます。

 その中にありまして、当然、関係各国が対応していくわけでございますが、その中でも、例えば日米同盟の関係と国際社会の取り組みを、これは切り分けるということではなくて、まさに日米同盟を国際社会の中での協力にさらに生かしていくということも私は必要ではないだろうか、このように思います。

 今、小沢さんが質問された、どう性格が違うかということでありますが、国際社会の一致した取り組みの中で、この問題を、とにかく北朝鮮に対して、このまま国際社会の懸念にこたえずに、さらに挑発的な、脅威を与える行動をとっていくのであれば、事態は北朝鮮にとってもっともっと悪い方向に向かっていくということを理解させる必要があるわけでありまして、そこで、国際社会で今協力をしているわけでございます。その中で、当然、日本は同盟国である米国と緊密に連携をとりながら、国際社会でも対応するし、また日米でも対応していくことも求められているのではないかと思っております。

小沢一郎君 今の総理のお話も、要するに、安保条約、日米同盟、これは日本の安全保障にかかわるお互いの同盟、取り決めですよね。そして、周辺事態法というのも、そのまま放置すれば武力攻撃のおそれがあるようなことなど日本の平和と安全に大変重要な影響を持つ事態というふうに第一条で説明してあるんです。それは、要するに、日本の安全、日本への武力攻撃のおそれがあるという、いわば有事の事態を想定した法律なんですよ。

 そして、国連で決議が行われたのは、別に日本の有事という前提で国連決議が行われたわけじゃないわけですよ。国際社会の平和を乱す行為、それに挑戦する、みんなの意見を聞かない、そういう行為に対して、国際社会がそれじゃ制裁しようということになったわけで、今私が申し上げているのは、日本の有事に関する、いわゆる直接攻撃を受けるかもしれないという事態を想定した法律を、国際社会のそういった、いわゆる第七章の四十一条、この一般的な制裁行為に適用しようとするのが、それは無理なんじゃないですかということを言っているんです。

 そうすると、ではどうするんだというふうに言う人がおります。どうするんだというのは、簡単明瞭なことでありまして、国際社会のそういった共同作業に日本がきちんと参加するという政府の原則をつくれば、打ち立てればそれでいいわけでありまして、もちろんその中身はいろいろ考えはあるとしても、そこが全くないから、結局、アメリカから要求された、どうしようどうしようという、では周辺事態でも援用するかという話になっちゃうと思うんですよ。

 ですから、あくまでも日米同盟はもちろん大事ですし、これがあって日本の安全保障が全うされるということも、私もそう思っています。しかし、日米だけで世界全体の平和を守る話ではありません。安保条約も、大きく地域を言っても極東の平和がその限界であります。これはずっと長年政府がいろいろと言ってきたことでありますが、論理的にも、日本の安全に直接かかわる、そのための日米安保条約である。日本と全く、地球の裏側の問題にも、アメリカが行くから日本も一緒に行くんだという趣旨の安保条約、日米同盟ではないと私は思います。

 そういう問題に、世界のいろいろな紛争については、国際社会、国連の合意のもとで、加盟国がそれぞれの事情に応じてそこにできるだけ参加して、そして平和を守っていこうというのが日本国憲法のそれこそ論理、考え方であろうと私は思いますし、国連憲章も、それぞれの国の自衛権、個別的、集団的両方含めて、これは自然権として認めるよ、しかし、地球全体、国際社会全体としては、みんなで合意した上で、平和に対する挑戦あるいは平和を乱す行為を鎮圧するという論理構成になっておるわけです。

 安保条約自体もそうです。国連憲章の枠内なんですよ。だから、国連で決定するまでの時間的なタイムラグがあるから、要するに、もし日本が攻撃を受けたときは、日米で、共同作業でそれに反撃する、守る。しかし、国連の決定があったときには日米の共同作業は終了することになる。安保条約にもう書いてあるんです。

 ですから、そこをきちんと政府が、国際社会の一般的な平和、大きな平和、全体の平和を守る、紛争をなくする、そういうときに、日本は国際社会にどういう役割を果たしていくのか。そして、もちろん日本国憲法の範囲内で、日本国憲法に抵触することのないきちっとした枠内でもってそれに参加していくという原則をきちんと立てることが大事だと思うんです。

 ですから、何かあったから、アメリカから言われたから、まあ、とにかくこの辺で適当に当面はやろうという考え方は、その場当たり場当たりのやり方が、結局国を誤ることに、大きく誤ることになると私は思います。

 ですから、どうかそういう意味で、安倍総理も……(発言する者あり)それはもう既に何度も言っております。

会長(衛藤征士郎君) 静粛に。静粛にお願いします。

小沢一郎君 ちょっと、静かにしてください。

 私はあらゆる機会で自分の考えを申しておりますから。

 ですから、国際社会への協力作業は、国際の要請があれば日本は全面的に参加するべきだと私は思っております。だから、そういう考え方が政府でもって、安倍総理自身も、それだけ日本の自立と日本人自身の憲法も必要だ、こう言っておられるんですから、そういうきちんとした日本全体の国民の国益に関する問題については、ぜひそういうことについて総理自身の見解をきちんと聞かせていただきたいと思って質問させていただいたんです。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 大分、小沢代表は、私の言っていないことまで含めて、想像で私の考えをいろいろと述べておられるわけでありますが、私は何も米軍が言われるからやるということでもありませんし、米軍について地球の果てまで……(発言する者あり)済みません、静かにしていただけますか、少しは。

会長(衛藤征士郎君) 静粛に。静粛にお願いします。静粛にお願いします。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今私が小沢党首から質問されているんですから。

 私は、何も地球の裏側まで行くということを一言も言ったこともございませんし、米軍に言われたから、米国に言われたからやらなければならないということを一言も言っておりません。

 要は、国連の場において全会一致で決議がなされた、その中でまさに我が国は我が国としてできること、そしてまた、我が国は当事者でもあります。その当事者でもある我が国が、また国際社会の責任ある立場の我が国が、また国連安保理の議長国であり、この決議案の取りまとめに当たった責任ある我が国として、何ができるかを考えるのは当然のことであります。その中で、同盟国である米軍と緊密に連携をするのも、これもまた当然のことではないでしょうか。その中で何ができるかを今検討しているわけでありまして、私は、直ちにこの周辺事態安全確保法を適用するということは申し上げていません。

 しかし、我が国が何ができるか。そして、事態は瞬時瞬時に推移をしているわけでございます。国連決議も行われました。この周辺事態安全確保法について政府が見解を述べましたときには、この国連決議があり、経済制裁がなされた状況についての言及もあるわけでございます。

 今後、日本として何をすべきか。大切なことは、今、北朝鮮がミサイルの発射を行い、そして核実験を行った、こう言われ、その事実も大分可能性が高まっている中にあって、我が国へのこの脅威の中で、私たちは国民の生命と財産を守る大切な責務があるわけでございます。その責務を果たすために我々は、あらゆる法令を検討するのは、私は当然のことではないだろうかと考えています。

小沢一郎君 日本としてやれることをいろいろ考えることは、それは結構なことであります。

 ただ、四十一条の経済制裁ということをみんな簡単に口に出しますけれども、経済制裁というのは、最終的には強制力を伴うものなんですよ。そうでしょう、海上の臨検であれ、陸上の封鎖であれ。ですから、そういう国連の行動で、四十一条とはいえ、最終的にだんだんだんだんなっていけば強制力を伴う。

 例えば、臨検といったって、漁船を持っていってやるわけじゃないでしょう、軍艦を持っていって、とまれ、積み荷見せろと言うわけでしょう。それに対しては、ではどうするんだと、国連の行動の場合ですよ。周辺事態法に関連の船舶検査では、相手の同意を得てとか、いろいろ言っていますけれども、結局それは周辺事態の、私は論理的におかしいと思っていますけれども、いずれにしても、経済制裁は平和的な手段の範疇だというふうな前提で考えていたのでは、私はそれは最終的に間違うと。

 ですから、そういう国連の決定に基づく行動が強制力を伴う結果になった場合には、では、日本は国連の行動といってもどうするのかということを、それはもう絶対やらないんだというのか、あるいは、国連の行動であるならばそれに参加するんだということを、少なくとも政府としてきちっとした原則をつくっておかないと、その場その場でそのときの状況を糊塗するための、打開するためだけのことに終わってしまって、それは日本の将来にとって決していいことではない、私はそのことを申し上げたいと思っておりました。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 原則は非常にはっきりいたしております。この決議については、日本もこの決議の発議に対して責任を持ったわけであります。この決議を実効たらしめるために、日本は日本の法令の中においてできる限りのことをやるのは当然のことであり、それぞれの加盟国がそのことを求められているわけでございます。我が国の現在の法令の範囲内の中でできる限りのことをやっていく、これは当然のことではないでしょうか。

 そして、今小沢党首がいろいろとおっしゃっているわけでありますが、これは全部、例えば全くやらないのか、あるいは、まるでこの強制力のあるものを、非常に強いことを日本がすべてやらなければいけないのか、そういう選択肢ではないわけでありまして、日本ができる限りのことをしっかりと責任を持って果たしていくことが大切であり、日本が最も今脅威を感じている中において、これは最初から考えるべきでないということは、私は言うべきではないのではないかと思います。

会長(衛藤征士郎君) 小沢一郎君、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

小沢一郎君 はい、わかりました。

 法令の範囲内、範囲内とおっしゃいますけれども、日本の安全保障で最大の問題は憲法なんですよ。安倍総理……(発言する者あり)いや、安倍総理のおっしゃる憲法論議が、いつもいろいろな問題のときに出されるわけです。ですから、そういう意味において、何でもかんでもやれと言っているんじゃないんですよ。憲法上それが可能かどうかということを、きちっと政府としては国民に知らしむべきだということを、私、申し上げているわけです。

 終わります。(拍手)

会長(衛藤征士郎君) これにて小沢君の発言は終了いたしました。

 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。

 次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十七分散会


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