衆議院

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第2号 平成18年11月8日(水曜日)

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平成十八年十一月八日(水曜日)

   午後三時開会

    ─────────────

 出席委員

  衆議院

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 臼井日出男君 理事 小坂 憲次君

   理事 船田  元君 理事 宮路 和明君

   理事 奥村 展三君 理事 川端 達夫君

   理事 斉藤 鉄夫君

      愛知 和男君    海部 俊樹君

      岸田 文雄君    武部  勤君

      津島 雄二君    冨岡  勉君

      中川 昭一君    中川 秀直君

      中山 太郎君    二階 俊博君

      丹羽 雄哉君   山本ともひろ君

      小沢 一郎君    高木 義明君

      羽田  孜君    鳩山由紀夫君

      山岡 賢次君    北側 一雄君

      志位 和夫君    保利 耕輔君

  参議院

   委員長 前田 武志君

   理事 木村  仁君 理事 小泉 顕雄君

   理事 北澤 俊美君 理事 円 より子君

      岡田 直樹君    河合 常則君

      北川イッセイ君    椎名 一保君

      世耕 弘成君    関口 昌一君

      藤野 公孝君    今泉  昭君

      郡司  彰君    輿石  東君

      西岡 武夫君    荒木 清寛君

      魚住裕一郎君    井上 哲士君

      田村 秀昭君

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       総務大臣     菅  義偉君

       法務大臣     長勢 甚遠君

       外務大臣     麻生 太郎君

       財務大臣     尾身 幸次君

       文部科学大臣   伊吹 文明君

       厚生労働大臣

       農林水産大臣臨時代理      柳澤 伯夫君

       経済産業大臣   甘利  明君

       環境大臣     若林 正俊君

       国務大臣

       (内閣官房長官) 塩崎 恭久君

       国務大臣

       (国家公安委員会委員長)

       (内閣府特命担当大臣(防災))        溝手 顕正君

       国務大臣

       (防衛庁長官)  久間 章生君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、イノベーション、少子化・男女共同参画、食品安全))      高市 早苗君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(金融))        山本 有二君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(経済財政政策))    大田 弘子君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(規制改革))      佐田玄一郎君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  鈴木 政二君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君

 委員外の出席者

  衆議院事務局

       国家基本政策委員会専門員    杉山 博之君

  参議院事務局

       常任委員会専門員        大場 敏彦君

    ─────────────

  本日の会議に付した案件

国家の基本政策に関する調査


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    ─────────────

   〔前田武志君会長席に着く〕

会長(前田武志君) ただいまから国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参議院国家基本政策委員長に就任いたしました前田武志でございます。

 衆議院の衛藤委員長とともに、衆参両院の皆様方の御協力を賜って、その職責を全うしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)

 この際、本合同審査会における発言に関して申し上げます。

 野党党首及び内閣総理大臣には、申合せの時間内で活発な討議が行われるようにするため、御発言はそれぞれ簡潔にされるようお願い申し上げます。また、本日は時間表示装置を使用いたします。表示装置は発言者の持ち時間を示します。持ち時間が終了したときは赤色のランプが点灯しますので、御承知願います。

 それでは、国家の基本政策に関する調査を議題とし、討議を行います。民主党代表小沢一郎君。(拍手)

小沢一郎君 総理にお伺いする前に、昨日北海道で大きな竜巻が発生し、九人の方がお亡くなりになったと、心から御冥福をお祈りいたします。また、けがをなさった方、そして被害を受けられた方、一日も早い回復をお祈りいたします。

 そこで、総理にお伺いいたしますけれども、総理は最近、フィナンシャル・タイムズですか、外国のメディアとインタビューなさったと聞いております。

 その中で、総理の持論であります憲法につきまして、やはり国民の手で作り直さなきゃならないと、そういう前提でお話しなさり、そして中身についても憲法九条ということを具体的に例を挙げてインタビューに答えられたというふうに聞いておりますけれども、若干前回の繰り返しになりますが、そのインタビューにおきましてもやはり憲法が独立前、すなわち占領下において作られたということを第一の理由に挙げておられるようであります。

 私が総理の真意をお聞きしたかったのは、で、前回いろいろ申し上げたのも、要するに今日の日本、戦後体制と言ってもいいですが、今日の日本の政治や行政や経済やいろんな仕組みの多くは占領下において占領政策の一環としてなされたものなわけでありまして、それが占領下だったから、少なくとも総理の言葉をかりれば占領軍の深い関与によって作られたものだということを強調しますと、結局それは法律論でいえば無効論につながりますし、占領政策として占領下に行われたいろいろな今日まで生きている仕組みの否定につながってしまいます。

 私は、その考え方がいい悪いということを言っているんじゃなくて、そういう考え方に立つと、やはり政治家として政治を行っていく上において、占領下でもいいものはいいんだと、今都合が悪くなったもの、そぐわないものは直せばいいんだという考え方と基本的に違うんじゃないかというふうに私は思うものですから、そして総理がその第一に占領下ということを挙げて、第二に不都合なもの、そぐわないものはというふうにお話しなさるのは、その意味では私は、論理的にちょっと整合性が取れないんじゃないかというふうに私は思ったものですから総理の真意をお伺いしたわけですが、今日はそれはそれといたしまして、総理のインタビューの中身について、今日の時代にそぐわないものとして憲法九条を挙げられました。この九条を変えなくてはいけないというお話をそのインタビューでなさっていますけれども、総理の頭の中にある、考えの中にある、その九条をどのように変えるべきだと、そう思っておられるか、お聞きしたいと思います。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 先般、ファイナンシャル・タイムズ、あるいはまたウォール・ストリート・ジャーナルやCNN等のインタビューを受けまして、様々な問題についてインタビューに答えました。この憲法の問題もそうでございます。

 自由民主党は、既に昨年、自由民主党の憲法改正草案を提出をしています。この改正案を出すということについては、私が三年前、幹事長に就任をいたしましたときに、自由民主党の立党五十年の記念に際して、その際、我が党の改正案を提出をするということを決定をいたしました。自来、この改正について党内で活発な議論、幾つかの小委員会に分かれて各逐条ごとに議論を重ねた成果が昨年のこの自民党案となったわけでございます。この自民党案を基に各党で更に議論を深めていただきたいというのが私の考え方であります。

 また、いわゆる外国のプレスの方々に対しましては、なぜ我々がこの憲法を改正するべきと考えているかということについてお話をするということについては初めての機会でございました。

 日本国内、また日本のプレスに対しましては、既に私が幹事長時代あるいは幹事長代理時代にその理由等について話をし、事実、党内において活発な議論を経て、成果物としてこの改正案が出ているわけでございます。それが自由民主党の案であるということでありますが、さらに私は、海外に対して余計な誤解、間違った誤解、いわゆる誤解がないように、なぜ我々がこの改正をしようとしているのか、あるいはまた今ある憲法の主権在民あるいは基本的な人権、そして平和主義、こうした基本的な考え方は変えないということも申し上げているわけでございます。その中で、初めて海外、世界に向かって説明をするということにおいて、やや、まあ総理ではございますが、私が自民党のときにこの自民党草案にかかわった者としての考えを述べさしていただいたと、こういうことでございます。

 この九条の改正については、自民党としては既にこの改正案でお出しをしているとおりでございます。

小沢一郎君 そこで、こういう場でございますので、改めて現在の憲法九条、これをどのように総理としては、あのインタビューでも自衛権の問題とか国際貢献の問題とかというふうに触れられておりましたけれども、その条文を述べてもらうと、改正案の条文述べてもらうという意味ではなくして、そういうたぐいの考え方、それをもう一度総理、お聞かせいただけないでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) つまり私が述べましたのは、自由民主党としては既に改正案を出しておりますから、それを読んでいただければ御理解がいただけると、このように思うわけでありますが、私は、この改正案を作るに際しまして、戦後六十年経過をし、そして自衛隊も五兆円近い予算を使っている、この実力部隊であります。その中で、やはりこの存在を明記するべきであると、こう考えました。そしてまた、国際貢献という新たな役割についても書くべきではないかというふうに私も考えたわけでありまして、おおむね自民党の中でもそういう考え方にまとまったと、こういうことでございます。

小沢一郎君 自衛権を条文として明記する、あるいは国際貢献ということ、これまたきちんと明記するということは私もそれなりに理解できるわけでありますけれども、今の憲法九条の条項については、条文については、総理はどのようにお考えですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、私は総理としてこの憲法の尊重義務が課せられているわけであります。その上で申し上げますと、この憲法の九条の中において、いわゆる自衛隊の存在について、この存在が、もちろん私は自衛隊は合憲であるという立場でありますし、政府でももちろんそうであります。しかし、この条文の中に明示的に書かれていないということで、その存在について分かりにくいではないかという議論もあるのも事実だろうと、このように思います。そこで、自由民主党が提出したこの改正案の中ではこの存在を明記したわけであります。

小沢一郎君 それは、その明示したということ自体は、さっきから申し上げているとおりに分かりますし、私も一定の理解はいたしておりますけれども、今の九条の文言という、条文ですね、に書かれているその意味について、総理はどうとらえておられるかということをちょっとお聞きしたいんですが。

内閣総理大臣(安倍晋三君) この条文の中において、いろいろなこれは解釈があるわけでございますが、言わば、自衛隊という実力組織を保持し、そして国際貢献の中で我々はもう既にこの自衛隊を活用しているわけでございます。そうしたことをやはり、それもやはり明示的に書く必要があるのではないだろうか。そしてまた、あるいはまた、この交戦権についてこれを認めないと、こう書いてあるわけでありまして、これについては我が党の中で種々議論があったところでございます。

 そういう中において、今我々は、この所与の条件の中で、憲法の下で我々は国際貢献も果たしているわけでありますし、日米同盟で我が国の安全を確保しているわけでありますが、しかし我々としては、さらに、この国際情勢の変化の中で、我が党が変えた案によって更に日本の安全は確保され、そしてまた世界での貢献においても十分な貢献も果たしていくことができるし、また憲法の中に明示的に書くことがやはり活躍する自衛隊の人たちにとってもそれは大切なことではないかと、こう考えています。

小沢一郎君 そのことは総理の意見として重ねて聞かしていただいて分かりました。

 ただ、九条に、要するに正義と秩序を希求し云々、国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇、武力の行使はいけないという趣旨のことが書かれておりますが、この条文の意味するもの、そしてそれをどのように総理が言う国民の手によって作り直すという憲法に反映されるのかということを、総理のお考えをお聞きしたかったんですけれども、私は、この現在の九条の条文というのも、そのこと自体が時代にそぐわないものになったとは考えておりません。同じような条文が国連憲章二条に、国際問題に関連して、武力による威嚇、武力の行使というのは駄目だということがちゃんと明記されておりまして、国連憲章のこの条文を時代にそぐわないという意見は私はないのではないかと思いますので、それをお伺いしたわけですが。

 これ以上あれしても繰り返しになりますので、この問題に関連いたしまして、最近いわゆる閣僚の方、そしてまた与党の政策責任者の方の口から核武装に関する発言が出されておりますけれども、このことにつきましては総理はどのようにお考えでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) この問題については、私がもうはっきり申し上げておりますように、非核三原則という政府の原則は今後とも維持をしていく、このことにおいては全くいささかの変更もないということであります。

小沢一郎君 非核三原則を守っていくと、堅持すると、それ変わりないという総理の今の答弁でしたけれども、私は、議員それぞれも同じ政党の中にあってもいろいろな意見ありますし、みんなそれぞれ意見を持っていることは当たり前のことですから、いろんな議論がなされること自体がいけないと言っているわけじゃないんです。

 ただ、総理が今答弁されたように、政府は、安倍内閣としては非核三原則を堅持するんだと言っておりながら、その内閣の一員があるいは議院内閣制における与党の政策最高責任者が核武装の論議ぐらいはしたっていいじゃないかという話を度々やるということになりますと、それは、総理があるいは御本人が幾ら非核三原則を堅持するんだと言っても、一方において核武装そのものの論議はいいじゃないかという話になってしまったらば、その非核三原則を守るというその言葉も、国民にとってもあるいは国際社会にとっても素直にそれを受け入れられないような、そういう私は受け止め方をされると思うんです。

 ですから、現実問題として、総理にもう一度お尋ねしますが、非核三原則守る、それは分かりました。しかし、それさえ言えば、閣僚であろうがどなたであろうが自由に議論してもいいと総理はお考えなのでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) その自由に議論という意味もいろいろとあると思うんですが、私が申し上げたのは、非核三原則というのは、政策論として、核を持たず、作らず、持ち込ませずと、この政策論として我々はこうしたことは永久に放棄をするということを宣言をしているわけであります。その中でNPTに加盟をしている。このNPTにおいても、我々は核保有については、これはこの手段として永久にこれを放棄をしています。そして、国内の法律としては原子力の基本法があるわけでありますから、この政策論としてこの問題について、いや私は違う考えだということになれば、これは閣内において不一致ですし、大きな問題と言ってもいいでしょう。

 しかし、それぞれの方々の発言というのは、基本的にこの政府の基本的な方針と私も同じ考えであるということを言った上において、例えば北朝鮮が核実験を行った中で抑止力をどう考えるべきだということについて議論をする。これを、例えば閣内において、また政府において、あるいは党の正式な機関において、核を保有するということの可能性の上において議論することは我々はもちろん一切しないということははっきり申し上げているとおりであります。

 その上において、安全保障の議論としてそういうことに触れたからといって、それが大問題であるかのごとくすぐに言うのは、それはおかしいのではないか。もちろん、それが誤解を、誤解を与えることがあっては立場立場でならないのは当たり前であろうと、このように思います。

 一方、それは小沢党首も、小沢党首も、日本は数千発の核弾頭を造る能力を有しているということをおっしゃったことがあります。また、鳩山幹事長もかつて、こういうことを国会で議論できないことはおかしいという発言もしておられるわけでございます。

 外務大臣がおっしゃっていることは、核保有をすべきだという基本的な考え方でおっしゃっているのではなくて、核をめぐる議論についての評論をしたということではないかと思います。

小沢一郎君 そうしますと、非核三原則を堅持すると、その方針は変わりないんだと、閣僚もみんなそういうことを前提の上で言っているんだと。

 そうすると、そういうことを言いながら、核武装の論議は自由にしていいじゃないかというような、言葉の、言葉のあやは別として、そういう趣旨の、核武装そのものの論議はしていいんじゃないかというふうに言っておりますけれども、総理もそういうお考えですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、核武装をするという議論を自由にしていいということは一言も申し上げておりません。いわゆるこの核を、核をめぐる議論について、抑止はどうあるべきかという議論をまたする、またそういう議論に対する論評というのはあり得るだろうということを申し上げているわけであります。

 その中で、例えばすべての議論をこれはなくしてしまうということであれば、核をめぐる議論は全くできないということになれば、では例えばこの北朝鮮の核実験を受けて、アメリカと日本の同盟関係における抑止力は揺るぎないものであるということにやはりこれは我々確信を持たなければいけない。実際米側は、日米のこの抑止力は揺るぎないものであると、大統領も私に電話会談で言っているわけであります。

 こうした議論そのものもこれはできなくなってしまうということになるわけでございまして、ですからこれは、言わば抑止力をめぐる議論あるいは核をめぐる議論というのと、これは核武装をするということについての議論ということは、またこれは別の議論ではないかと、このように思います。

小沢一郎君 私が申し上げたのは、別に核武装をするということで議論するというんじゃないんです。核武装に関する議論をいろいろしていいんだと、賛成、反対含めて核武装に関する議論をそれは個人の意見としてやっていいんだと。閣僚がそういう発言をすること自体にそれは私は問題だと思うんですけれども、総理はそれはいいというふうにお思いですかという質問です。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 私がもう先ほどから申し上げておりますように、核のこの政策については、先ほど来はっきりしているわけでございまして、この政策については外務大臣も全く同じ考え方であると、これはもう、これは当たり前のことであります。そして、外務大臣が発言したのは、質問に答えて、言わば議論についてどう考えるかということで論評をしたということではないかと思います。

小沢一郎君 私は、非核三原則ということを貫くということであれば、総理以下国務大臣もやはりそういう誤解を与えるような、あるいは内外の信用、信頼を失墜するような形の発言は慎むべきである。というのは、閣僚がそれに関する議論はしてもいいじゃないかということは、国際社会、ほかの人から見れば、三原則堅持とは言うけれども、本音はどうなんだという話に私はなりがちだと思いますし、それは日本にとって非常にマイナスだと思っております。

 私自身の考えを申し上げれば、核武装ということは政治的にも軍事的にも決して日本にプラスではないというふうに思っておりますけれども、いずれにしても、私は本当に非核三原則ということを堅持するのであれば、それは本当に唯一の被爆国としてこの核の問題については慎重に、注意深く、私は特に、我々野党と違いまして、総理大臣始め国務大臣は日本の国政を現実に担っているわけですから、ですから、そういうことに思いをはせてやっぱり慎重に発言しなきゃいけない。そして、逆に僕は本当に核武装の必要だと言う人も、もちろんそういう議論の人もいるでしょう。(発言する者あり)だから、いや、総理がと言っているんじゃないですよ、閣内にと言っているんでもないですけれども、そういう議論をするならばするで、私は正々堂々と議論を展開すべきだと私は思っておりますが。

 いずれにいたしましても、私は、こういうような政策責任者やあるいは閣僚の中でもそういった核武装に関するいろいろな発言が出されるということは私は決してよくないと。したがって、総理はその点についてきちんと慎むように指示すべきだと、私はそのように思いますが、いかがですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、小沢代表は、核を保有する、あるいは武装するということは、日本がですね、政治的にも軍事的にも意味がないと、ということをおっしゃった。それに近いことをもう恐らくおっしゃったんだろうと、例えば政調会長はですね。政治的にも軍事的にも意味がない、しかし、政治的に軍事的に意味がないということ自体もそれは議論といえば議論になるわけですね。そうじゃないですか。つまり、政治的に意味がないというのはなぜ政治的に意味がないのかと聞かれれば、それは政治的に意味がないということについて答える、軍事的に意味がないということについて言えば軍事的に意味がないということについて答えるということになるわけでありまして、その議論すらしてはいけないというのは、これはやはり私は行き過ぎではないか。

 大切なことは、政策論として、先ほど申し上げましたように、非核三原則について、国是と言われているこの原則を守るかどうかということについて完全に我々と同じ考えであれば、これは正に我々と同じ考えであり、意見は一致をしているということではないかと思います。

小沢一郎君 総理自身が同じような考えだということであればそれ以上の議論にならないんですけれども、やっぱり私は本当に、総理始め国務大臣は国益をしょって日本を代表して政治を行っているんですから、そこは本当によく考え、慎重に言動をしてもらいたいというふうに私は思っております。特に、こういう問題がすっきりしないままに、今、国会に防衛庁の省の昇格ですか、を中心とする法案が出されている。これは、そのこと自体に私は異論を唱えるわけじゃないんですけれども、核の問題ということになりますと、これは日本の安全保障政策、防衛政策の根本にかかわる話ですから、そこを是非総理としても各閣僚に、あるいは党幹部にきちんとした指示をしていただいた上でないと、私はこういった防衛庁を防衛省にする、体裁を整えるということの論議の前にそういうことをきちんと明らかに是非してもらいたいと、そのように思います。

 時間も経過しましたので、次の問題に、お伺いしたいと思いますけれども、最近、いじめの問題、あるいは特に今学校の未履修の、必修科目の未履修の問題が大きくクローズアップされております。こういうことがどうしてこの今の日本の社会に起きてくるんだろうと。総理の思いといいますか、それを、なぜそうなんだろうと、どう考えておられるか、お聞かせください。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 未履修の問題は大変残念な問題だと思っています。やはり高校で達成すべき人格の形成、あるいは高校生に対して高校修了ということで卒業証書を渡すという意味について十分自覚をし使命感を持っていれば、このようなことは起こらなかったのだろうと。

 つまり、大学に、いかにこれは受験において効率的に勉強をした方がいいのかどうかというところに関心が移ってしまったところに大きな問題があるわけでありまして、子供たちに規範意識を身に付けさせなければいけない学校側がこの規範を逸脱したということは極めて大きな問題であろうと、このように認識をしています。

小沢一郎君 そうしますと、そういう問題を解決していくために、あるいはゆがみを是正していくために、どのような政治として施策を講じていったらいいとお思いでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず未履修の問題、またいじめの問題もそうでありますが、こうした問題については、学校もあるいは教育委員会も、こうした問題が発生した段階で隠ぺいしようとしたり隠したりしようとするのではなくて、まずしっかりと当事者意識を持って対処することが必要であろうと、このように思いますし、また、先ほど申し上げましたように、学校側も先生も使命感を持っていただくことが重要であろうと。我々の、政府の教育基本法の改正案においても崇高な使命をこれは自覚しということを書き込んでいるわけでございまして、つまり、このいじめの兆候に対して敏感に、これはそういう兆候がないかどうか対応していく必要もあるでしょうし、また学校、教育委員会、家庭が一体となってこうしたいじめに対応していくことも必要ではないかと、このように考えています。

 また、いじめの問題において、悩んでいる子供たちが相談しやすい、スクールカウンセリングを始めそういう相談しやすい体制をこれはいち早く構築をしなければならないと、このように思います。

 その意味におきましても、政府としても指導、助言をしていかなければならないと、こう考えております。

小沢一郎君 今総理の御答弁で学校現場や教育委員会云々というお話が出ましたが、現在、国会において教育基本法、私どもは日本国教育基本法という案を出しておりますが、総理も政府案、教育基本法の政府案を一日も早く通過さしたいという思いでおられると思いますけれども、今お話し、総理から指摘があったようなことですね、この政府案を成立させますと、そういうことがどこにどういうふうになってくるんでしょうか。私はそのところがよく分からないんですが、御説明いただきたいと思います。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 教育基本法のこの改正案でありますが、教育基本法は理念であり、また原則でありますから、それは直ちにそうした未履修の問題あるいはいじめの問題といった種々の学校で起こっている問題に対処するためのこれはものではないわけであります。

 この法案を通す、改正案を通し、そして様々なこの施策を通じてそうした問題に対応していかなければならないと考えておりますが、しかし、例えばいじめの問題でありますが、政府の改正案におきましては、自らを律することの重要性について書いてあります。これはやはり、だれかをいじめたいというよこしまな気持ちを抑えなければいけない、あるいは道徳心についても、これは教えていく必要について書いてあります。そしてまた、あるいは豊かな情操をこれは養っていくということについても書いてあります。そしてまた、やはり家庭が、お父さん、お母さんあるいは保護者が教育においては一義的な責任を負っていると、そして子供たちに対して調和の取れた生育を目指して、これはその責任を果たしていくべきであるという趣旨のことが書いてありますし、またさらには、家庭に対して、家庭がこうした教育力を養っていくために国や地方自治体が支援をしていくということも書いてあります。

 また、先ほど私が申し上げましたいじめ等への対応については、やはり教育委員会や学校やあるいはまた地域が一体となって対処していくことが大切でありますが、そのことの必要性についてもこの政府案には書き込んでいるわけでありまして、現在、核家族化が進んでいる中にあって、また地域コミュニティーが、その関係、きずなが希薄になる中で、やはり大切な要素についてはこの改正案の中には書き込んであると、このように思いますので、速やかなる成立のほどよろしくお願いを申し上げます。

小沢一郎君 今日の教育の問題というのは、いろいろな要素があると思いますし、日本社会全体としてみんなでそこを正していかなければならないと思うんですけれども、政治の役割としては、やはり教育行政という観点から制度的なものにも踏み込んでいかないと私はならないんじゃないかと思うんです。

 今総理は、先ほどの答弁、今の答弁でも、教育委員会ということを重ねて使っておられましたけれども、そしてまた文部省は、文科省ですか、指導、助言ということをお話ししていましたけれども、今のこの教育委員会制度、これは正に憲法のとき総理がおっしゃるように、占領下においてこの教育制度というのもつくられたものなんですね。ですから、そういう意味において、この制度論にやはり踏み込んでいく必要が私はあるんじゃないかと。学校現場がどうだ、教育委員会がどうだと言っていたんではいけないんじゃないでしょうか。

 私どもの日本国教育基本法には、第七条に、教育の最終責任は国が持つんだということを明記してあります。これは、更に敷衍して言えば、戦後ずっと占領下においてつくられて維持されてきた教育委員会制度そのものを改変しなくてはならないということに行き当たるわけでありますけれども、それからまた、十八条におきましては、学校あるいは地域の人、教育の関係の人等でもって理事会をつくって、自主的、自律的な学校の新しい運営をしていこうということも私どもの案には書き込まれております。

 私は、そういう意味において、今議論を、総理の答弁を聞いておりますと、どちらかというと教育委員会しっかりせにゃいかぬ、学校現場しっかりせにゃいかぬというお話でありましたけれども、一番の問題は、結局制度的には今教育委員会に、地方教育行政のいろいろな権限は教育委員会で持っておる、文部省は、文科省は指導、助言という仕組みに制度的になっているんです。ですから、今回も、何か起きると責任の所在がはっきりしない。結局、国は教育委員会や地方がしっかりせいという話で終わってしまう。

 私は、そういう意味において、私どもの日本国教育基本法案には、そのことの今後の大きな教育行政の改革についての条文上の論拠をきちんと示しております。私は、政府案については、いろいろ言葉は、総理が今いろいろお話ししたような言葉がつづられておるようでありますけれども、そういった基本の問題に思いを致して大きな改革をしようというような意気込みが法案の上では全く示されていないと。

 したがいまして、私は教育基本法、総理の思い、私、総理の本も読ませていただきました。教員資格の問題とか、あるいは学校評価制度ですか、監察官の制度も設けたらいいんじゃないかというようなお話書いてありました。私は、我々の考えは我々の考えでありますけれども、総理がもしそういうお考えを教育の問題として本当に真剣にとらえているならば、もう一度総理のお考えもそこに加味した新たなる教育基本法の政府案を提出し直したらいいんじゃないかと思いますけど、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 教育基本法は正に理念法、原則を書き込んでいくわけでありまして、先ほど申し上げましたように、今日起こっている問題に対応していくために必要な理念、原則は政府の改正案にはすべて私は書き込んであると、このように思っているわけであります。

 そこで、先ほど代表が引用されたような教員の免許制度、あるいは教育委員会に対して国がどう関与していくか、あるいはまた全く関与していくべきでないかということも含めて、それは、この教育基本法の改正案を成立をさせていただき、その精神の下にしっかりと教育再生を行っていく中で、この教育にかかわる法律改正の中で実現をしていくべきであろうと。そのための今議論を深めているわけであります。

小沢一郎君 今総理が政府の教育基本法の政府案には原則を書いておるんだというふうに御答弁でしたけれども、私は、教育行政の戦後ずっと続いてきた、それこそ占領下から、これは正に根本の問題であり、大きな原則的な問題だと思うんです。ですから、私どもはそれを改革していく根拠になる規定を第七条に置いたわけであります。私は、政府案においてはそういう根拠になるような、あるいは原則をきちんと示すような規定は全く見当たらないというふうに思います。

 私は、そういう意味において、いずれにしろ教育というのは正に国家百年どころか国家千年の大計でありますから、これは本当に真剣に、思い切ってお互いに真剣に考えて踏み込んで、特に、総理が占領政策下で憲法がという趣旨のお話をなさるならば、教育制度もまた本当に私はそこに大きな改革の目を向けなければならない。そういう意味において、今回の政府案というものは現状の、いわゆる占領下からずっと続いている現状の制度、仕組みを前提とした上での政府案でしかないと、私はそう思っております。

 我々も、我々の案に基づきまして真剣にこの議論をしていきたいと思っておりますが、どうか政府も、ただ先を急ぐのではなくて、本当に教育の中身について真剣な与野党の議論を時間を十分に取りながらやっていただけるように要望いたしまして、終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

内閣総理大臣(安倍晋三君) 我々は、正に今起こっているいろいろな問題に対応するためには、やはり新しい理念とこれは基本的な原則を示すべきであろうと、こう考え、政府の改正案を提出をしたところであります。

 例えば、海水浴に行った子供が平気で空き缶を捨てる、その子に対してこれは注意をするわけでありますが、しかし、その子に対して、これはやはりそういうことをしてはいけないんだという規範を身に付けさせる必要があります。その中で、例えば私たちが出した基本法の改正案の中には公共の精神を培っていく、あるいはまた社会に参画する、そして社会に参画するという意識の中で貢献をしていくという態度を養っていく、また道徳、自律の精神、そうしたものをやはり今の子供たちにはしっかりと教えていく必要があるだろう。そして、それは現在の、現行の教育基本法には欠けているものであるという認識の下に我々はこの改正案を提出をしたわけでございますので、よろしくその成立に向かって更に議論を深めていただきたいと、このように思います。(拍手)

会長(前田武志君) 以上で小沢一郎君の発言は終了いたしました。

 本日の合同審査会はこれにて散会いたします。

   午後三時四十七分散会


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