衆議院

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第1号 平成19年5月16日(水曜日)

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平成十九年五月十六日(水曜日)

   午後三時開会

    ─────────────

 委員氏名

  衆議院

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 臼井日出男君 理事 小坂 憲次君

   理事 船田  元君 理事 宮路 和明君

   理事 村田 吉隆君 理事 奥村 展三君

   理事 川端 達夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      愛知 和男君    稲葉 大和君

      海部 俊樹君    古賀  誠君

      武部  勤君    津島 雄二君

      中川 昭一君    中川 秀直君

      中山 太郎君    二階 俊博君

      丹羽 雄哉君    保利 耕輔君

      町村 信孝君    谷津 義男君

      小沢 一郎君    高木 義明君

      羽田  孜君    鳩山由紀夫君

      山岡 賢次君    北側 一雄君

      志位 和夫君

  参議院

   委員長 前田 武志君

   理事 木村  仁君 理事 小泉 顕雄君

   理事 北澤 俊美君 理事 円 より子君

      荻原 健司君    河合 常則君

      北川イッセイ君    椎名 一保君

      世耕 弘成君    関口 昌一君

      松山 政司君    小川 敏夫君

      郡司  彰君    輿石  東君

      西岡 武夫君    荒木 清寛君

      魚住裕一郎君    井上 哲士君

      田村 秀昭君

    ─────────────

 出席委員

  衆議院

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 臼井日出男君 理事 小坂 憲次君

   理事 船田  元君 理事 宮路 和明君

   理事 村田 吉隆君 理事 奥村 展三君

   理事 川端 達夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      愛知 和男君    稲葉 大和君

      江崎 鐵磨君    小野 次郎君

      小野寺五典君    武部  勤君

      津島 雄二君    中川 秀直君

      中山 太郎君    二階 俊博君

      丹羽 雄哉君    保利 耕輔君

      谷津 義男君    小沢 一郎君

      高木 義明君    羽田  孜君

      鳩山由紀夫君    山岡 賢次君

      北側 一雄君    志位 和夫君

  参議院

   委員長 前田 武志君

   理事 木村  仁君 理事 小泉 顕雄君

   理事 北澤 俊美君 理事 円 より子君

      荻原 健司君    河合 常則君

      北川イッセイ君    椎名 一保君

      世耕 弘成君    関口 昌一君

      松山 政司君    小川 敏夫君

      郡司  彰君    輿石  東君

      西岡 武夫君    荒木 清寛君

      魚住裕一郎君    井上 哲士君

      田村 秀昭君

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       総務大臣

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(地方分権改革))    菅  義偉君

       法務大臣     長勢 甚遠君

       外務大臣     麻生 太郎君

       財務大臣     尾身 幸次君

       文部科学大臣   伊吹 文明君

       厚生労働大臣   柳澤 伯夫君

       農林水産大臣臨時代理環境大臣     若林 正俊君

       経済産業大臣臨時代理国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(金融))        山本 有二君

       国土交通大臣   冬柴 鐵三君

       防衛大臣     久間 章生君

       国務大臣

       (内閣官房長官) 塩崎 恭久君

       国務大臣

       (国家公安委員会委員長)

       (内閣府特命担当大臣(防災))        溝手 顕正君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、科学技術政策、イノベーション、少子化・男女共同参画、食品安全))      高市 早苗君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(経済財政政策))    大田 弘子君

       国務大臣

       (内閣府特命担当大臣(規制改革))      渡辺 喜美君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  下村 博文君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君

 委員外の出席者

  衆議院事務局

       国家基本政策委員会専門員    杉山 博之君

  参議院事務局

       常任委員会専門員        大場 敏彦君

    ─────────────

  本日の会議に付した案件

国家の基本政策に関する件


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    ─────────────

   〔衛藤征士郎君会長席に着く〕

会長(衛藤征士郎君) これより国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。

 本日は、私が会長を務めさせていただきます。

 国家の基本政策に関する件について調査を進めます。

 これより討議を行います。

 討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び内閣総理大臣は、決められた時間を厳守し、簡潔に発言を行うよう、お願い申し上げます。

 また、委員各位におかれましても、議事の妨げとなるような言動のなきよう、御協力をお願いいたします。

 発言の申出がありますので、これを許します。民主党代表小沢一郎君。(拍手)

小沢一郎君 総理に御意見を伺う機会を得まして、さて何をお尋ねしようかなと思って考えたんですけれども、やはり一番は、総理御自身が書かれました、出版された「美しい国へ」という本にもう一度目を通すのが一番よかろうと、そう思いまして、「美しい国へ」の本を目を通してまいりました。

 最初読ませていただいたときには、総理の美しい国というのが、どういうイメージで、どういう国を想定しておられるのか、字面は全部きちんと読んだつもりなんですけれども、よく分からなかったんですが、久しぶりに改めて見まして、何となく分かったような気がいたしたんですけれども。

 総理は、あの「美しい国へ」という本の中で、日本の国柄の表す根幹は天皇制であるというふうに述べておられます。また、日本の歴史は天皇を中心としてすべて組み立てられてきたというふうに述べておられます。そして、さらには戦後の経済復興、これは他の人の言葉をかりてですけれども、日本が戦後の奇跡の復興を成し遂げられたのも天皇制があったからだと、それが社会の安定、国の統一、その中で復興というものが成し遂げられたんだと、こういうふうに述べておられます。

 そういうことを改めて見てみまして、総理の描いておられる美しい国のそれこそ根幹に天皇制というものがあるんだなというふうに思いました。それが敗戦によって、占領軍によって、憲法を始め教育制度、みんな改変されたと、ある意味で美しくない国になったということかもしれませんけれども。

 そこで、これらは自分たちの手でつくり直さなきゃいけないと。特に憲法につきましては、この本でかなり厳しいというか、激しい文言で言っておられる。日本国憲法はGHQでわずか十日間ぐらいで書かれたものだと。それから、日本国憲法の前文は正に連合国に対するわび証文みたいなものだという言葉まで使われて述べておられると。だからこそ、我々は白地からこれをつくり直さなければならないと、こういう結論になっているんだと思います。

 私も、もちろん天皇制を否定するものではありませんし、天皇制については、勤王の志士とまでは言えませんけれども、勤王の志は人並みに持っているつもりであります。ただ、国や社会の仕組み、あるいはいろんな価値判断の基準をすべて天皇制というところに求めるというのは、私はそういう考えは持っておりません。

 そういうことで、美しい国というのを読み直させていただきましたが、具体的に総理に事例を挙げてちょっとお考えをお聞きしたいと思います。

 その一つは、防衛大学校の卒業式で総理の訓示を読ませてもらいました。その中で、いわゆる自衛隊の幹部になる、制服の言わば一番若い将校さんたちに、諸君が将来直面するであろう危機は右と左を足して二で割る、そのような結論では到底対応できないと、そういう事態には自らの信念に基づいて的確な判断でもって行動をすべしという趣旨の発言がありました。

 これは、総理が若い政治家やあるいは一般の青年たちに訓示するということであるならば私も理解できるんですけれども、いわゆる防衛大学、制服の軍人、自衛隊の幹部になる人たちに対しまして、自らの信念に基づいて的確に判断して行動せいという訓示は、私はどうしても理解ができないんです。

 どうしてこのような言葉になり、あえて防衛大学校の卒業式で総理が訓示としてなされたか、その総理のお考え、真意についてまずお聞きしたいと思います。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今日、こうして久々に小沢党首とクエスチョンタイムでお互いの考え、ぶつけ合う機会を得たことは大変うれしく思います。

 このいわゆるクエスチョンタイム、党首討論自体、小沢党首が自由党の代表でおられたときにつくった制度であると、このように承知をしております。そのときには、国会においてルールを決めて党首同士がお互いに理念、政策をぶつけ合う、これは民主主義の発展にも資する、私もこのように思ったようなところでございます。

 その中で、総理は本会議、委員会に出席する週以外において野党の党首と討論をすると、そういうルールが決まっていたわけでありますが、そのルール上党首討論ができるときにはこの党首討論を申し込まれずに、今週は月曜日に委員会、火曜日に本会議があったわけでありますが、この週にどうしてまた申し込まれたんだろうと。(発言する者あり)私は、別にそのルールがあってもお受けをしたわけでありますが、なぜ、では以前やらなかったのかなと……(発言する者あり)

会長(衛藤征士郎君) 御静粛にお願いします。

内閣総理大臣(安倍晋三君) こんな思いもあることは申し上げておきたいと思うわけであります。

 そして、その上で、私の本を再び引用していただいたことは有り難い、このように思うわけでありまして、また多くの国民の方々が私の著書に対して興味を持っていただければいいな、こんなように思ったところでございますが、すべて天皇を中心に考えているということは全くございません。

 私の本をよく読んでいただければお分かりいただけると、このように思うわけでありますが、私が目指す美しい国について、一つはやはりこの美しい日本の自然、そして長い文化、歴史、そして世界に誇るべきこの文化また伝統、こうしたものを大切にする国でありたい、このように申し上げているわけであります。その中から培われてきた家族の価値やそして地域のぬくもり、こういうものも守っていく、そういう国こそ美しい国である、こう申し上げてきたところであります。そして、日本人が織りなしてきたこの長い歴史、伝統、文化と言ってもいいかもしれません。それはある意味では、もし一つのタペストリーだとすると、その一本のたて糸の糸はこれは天皇であろうと、このように申し上げたわけであります。

 そして、日本の経済発展について、そして日本の戦後の発展について、マンスフィールド大使と私の父、安倍晋太郎との会話の中で、マンスフィールド大使が、日本の発展、どうして日本がこうして発展してきたんだと思いますかと父に質問をした際に、マンスフィールド大使が私の父の質問を受けた後、私はその秘密はやはり日本に天皇がおられたこと、その安定感だと思います、このようにおっしゃった。このことを紹介をしたわけでありまして、それが私は、一つのエピソードとして紹介をした日本のある意味のこの伝統、文化ということにおいて日本が誇るべきこの日本のやはり国柄ではないか、こんなように思い、それを書いたわけでございます。

 いずれにせよ、私の本の中で天皇陛下、またいわゆる天皇制についての記述というのはそんなに多くの量ではないということは申し上げておきたい、こう思うところでございます。

 そして、その上で先ほどの質問でございます。防衛大学校における私の訓示でございますが、言わば防大を卒業され自衛隊の幹部になられる方は、国民の生命と財産を守る、こういう崇高な使命を持っています。事に当たって、危険を顧みず彼らは行動をしなければいけない。そして、それによって、もって国民の負託にこたえていくという宣誓をするわけであります。言わば机上の論理ですべて片が付くわけではない。その時々いかに行動すべきか、それは右と左、意見を聞いて足して二で割って判断ができるという時間的な猶予を与えられているとは考えられないわけであります。時には瞬時に判断をしなければいけない、そのときにはこう判断すべきだという確固たる考え方、そして自分の行動の基準を持っていなければいけない、このように私は申し上げたわけでございます。

 そして、それがシビリアンコントロールに反するわけがないわけでありまして、私は正に最高指揮官、国民の代表である国会の代表として選ばれた私は総理として訓示をした、そして最高指揮官として訓示をしたわけでございます。

小沢一郎君 委員会の運営は私や総理が直接やっているわけじゃありませんので、それは委員会の自主的な委員会設定に任せてきたところでございます。

 それから、今、天皇制だけを中心にして考えているわけではないという総理のお話ありまして、そして、その日本の伝統とか文化とか自然とかというお話ありました。しかし、総理のこの著書には、そういう日本の歴史とか伝統、文化のその中心を成してきたのが天皇制だというふうに書かれておると、私はそういうふうに解釈いたしたものですから、そのように申し上げました。

 そこで、私が質問した防大の訓示ですけれども、今の総理のお話をお聞きしますと、そうすると、内閣総理大臣たる最高司令官が個別の戦闘についての心構えを訓示したということになるんでしょうか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) それはいろいろな場面での判断があると、このように申し上げたわけでございます。そして、世の中においては正によく話を聞いて、その中で調整をしながら中庸を取って進んでいく。そういう判断が大切なときもあります。これはもう党首も御存じのとおりだろうと思いますが。

 しかし、それと同時に、やはりそのときに正に人の命が懸かっているかもしれないという判断を彼らはしなければいけないという心構えを私が述べたわけでございます。それが正に戦闘場面という、それは彼らの使命からいって、もし万が一外国から侵略された際には、そういう判断を彼らがしなければならないこともあるわけでございます。

小沢一郎君 ちょっと今の総理の二度目の御説明もよく分からないんですけれども、もちろんいろいろな場面で人の命が懸かって……(発言する者あり)

会長(衛藤征士郎君) 与野党とも御静粛にお願いいたします。声が聞き取れませんので、御静粛に。

小沢一郎君 そこに直面する隊員の、あるいは将校の皆さんがそれなりの行動を取らなくちゃならないと、それは分かりますけれども、総理の「美しい国へ」という本は、その前段において、第二次大戦前のチェンバレン内閣そして引き続くチャーチル内閣、その言葉を引用しながら、いわゆる危機というのは、そういう国家的な、今侵略された場合と使われましたけれども、国家的な危機に当たってのことだというふうに取るのが私は自然だと思うんです。

 それを、個々の戦闘で国民の命を守るためにそのときはそのときでちゃんと判断しなさいよということと、大きな侵略、いわゆる戦争、そういうときの危機に当たっての判断は正に内閣総理大臣、政治家のやるべき判断であって、一人一人の制服の将校が言う判断ではないんじゃないかというふうに私思いましたものですから、重ねてお伺いします。

内閣総理大臣(安倍晋三君) それは、私は、内閣総理大臣は当然自衛隊の最高指揮官であります。それこそ正に文民の統制の象徴でもあろうと、このように思うわけでありまして、大きな判断というのはもちろん私がするわけであります。

 憲法があって自衛隊法があります。個別の法の支配の下において彼らが判断をするわけであります。そして、その判断は瞬時に判断をしなければならないことが多々ある。この心構えを説いたわけでありますが、この心構えがそんなにおかしいんでしょうかね、皆さん。どうでしょうか。

 災害のときの、彼らは災害の救助にも出ていかなければならない。そのときに、自ら一歩前に出るかどうか、そういう判断をしなければいけない。それこそが正に彼らに求められている判断であって、そのときに迷ってはならない、迷わなくとも済むようにあらかじめしっかりとそれに備えておかなければならないという私は訓示をしたわけでございます。

小沢一郎君 総理の趣旨は分かりました。別に言葉じりつかまえているわけでも揚げ足取っているわけでもありません。私は、総理の、最高司令官の防大卒業生に対する訓示が個別の戦闘状態についての訓示というのではちょっと余りふさわしくないのではないかと、そう感じたので御質問をさせていただきました。

 それでは、次の質問をさせてもらいます。

 総理は、憲法と同様に教育制度、占領政策下のこの教育制度もまた取り上げて、正に自分たちの手でつくり直さなきゃならないというところの考えに挙げておる一つでありますけれども、今、教育関連三法ですか、政府から提案されておりますけれども、総理が、占領下において教育制度も改変させられたと、その現在の教育制度の制度的な柱は何だとお考えでありますか。

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず、私が、戦後のこの六十年の制度を見直していこうと、こう申し上げましたのは、戦後にできた体制を原点としてこの六十年間に積み重ねられてきたこの仕組みそのものを変えていく、時代に合ったものに変えていくということでございます。これは、六十年前にできたものがすべてではなくて、その後、その上に積み上がってきたものをもう一度、今の日本と六十年前の日本は違うわけでありますから、この違いを見て、時代に合った、そして未来にふさわしいものに変えていくということでございます。

 例えば、六十年前、大家族であって、兄弟もたくさんいて、地域はみんな顔見知りであった。子供たちを家族で、そして地域で教育をしていく、そういう仕組みが整っていたのも事実でございます。そして、それと同時に、この六十年、教育基本法、前の教育基本法ができ上がっての六十年、日本は経済成長してきたわけでございます。

 しかし、その中において、やはり価値の基準を損得だけに置いていたのではないだろうか。この損得を超える価値、例えば家族の価値であるとか、地域を大切にしたり国を愛する気持ち、こういう価値をやっぱり子供たちに教えていく必要があるのではないだろうか。公共の精神もそうです。道徳もそうです。こういうものを変えていこうということで、正に私たちは昨年、六十年ぶりに教育基本法を改正をして、そして新教育基本法を作ったわけであります。

 新しくできたこの改正教育基本法にのっとって私たちは三本の改正案を出しています。学校教育法においては、新しくできたこの教育基本法の理念にのっとって学習指導要領等々を変えていくわけでございます。

小沢一郎君 私が今御質問いたしましたのは、総理が今お答えになったことではありませんで、戦後、占領政策の下で教育制度も全く変えられたと、そしてそれが今日まで続いているわけですけれども、そういう教育行政の戦後の柱となったものはどういう仕組みだとお考えですかということをお聞きいたしました。

内閣総理大臣(安倍晋三君) その仕組みの一つが、例えば現在の教育委員会でございます。そして、国と地方がそれぞれ役割を分担をしていく中において、そして地方において教育委員会が教育において責任を持っていくわけでございますが、私たちは、やはり国の責任も明確化する必要があるだろう、そして教育委員会そのものにもいろんな問題があるという中において私たちは大改革を行ったわけでございます。

 教育委員会の皆様には自覚を持っていただく、新しい法律において、新しい仕組みにおいて教育委員会の皆さんにも研修をしていただく、そして保護者の方に必ず教育委員会の中にも入っていただくわけであります。そして、法令に反して、例えば子供たちの命にかかわるようなことにつきましては、国が指示をすることができます。また、あるいは法令違反が行われている場合には是正の要求もすることができる。そして、それによって国は責任を持つ、その責任に対する担保も持つと、こういう仕組みによって、正に国と教育委員会、そして地方公共団体の責任も明確化された。これが今までと大きく違うところであります。

小沢一郎君 現行、すなわち戦後つくられました教育制度が、教育行政に関しましては教育委員会が責任を持つと、しかし、それと同時に文部省が指導、助言できるというような、その意味で私はゆがんだ形になっていると思っているんです。

 実質的に文部省、金と権限を持っている文部省が、正面の責任ではなくして、教育委員会に対しまして指導、助言という形でやられていると。そして、それが正に戦後、占領政策の中で教育委員会制度というものができたわけですけれども、この教育委員会制度そのものを見直すということにならないと総理の論理としてはつじつまが合わないんじゃないかというふうに私は思うんです。

 今度の改正は、さらに、今お話しのとおり文部省が指示できると、文部省が正面からではなくして、そういう教育委員会に対していろんなことを、まあ悪い言葉で言えば干渉できる、文部省の権限を、口出しする根拠を与えるということに、まあ言葉は悪いですがなるだけであって、本当に総理が言うような戦後の改変された、占領軍下で行われた教育制度そのものを白地から直さなくちゃならないということであるならば、今回の政府提案というのはそういう趣旨に沿うものではないというふうに私は思います。

 この問題はこれぐらいにいたしまして、次に、総理に具体的なまた例でお聞きしたいんですが。

 私、民主党の代表になりましてから全国あちこち回って国民皆さんの意見を聴いておりますけれども、本当にこういう中で、個人の所得の格差あるいは企業間の格差あるいは地域間の格差、それが非常に広がっていると。そして、特に地方の県庁所在地必ず訪ねますけれども、そこでも商店街でシャッターを下ろしているようなところが多く見掛けられる。郡部に行きますと、本当に過疎化がどんどん進んじゃって、そしてさらに今の新農政と言われる農業の大規模化、小さい農家はやめなさいと言わんばかりの大規模化のやり方がますます私は農村を混乱させているんじゃないかというふうに思いました。

 さらに、国民生活に追い打ちを掛けているのが、この五、六年の間に八兆円から九兆円に上ると言われる増税、社会保険料の負担も入れまして、消費税でいうと三%以上の負担が既に国民の肩にかぶさっているわけであります。こういうことが、いわゆる財政上の、最大の理由は財政上の理由でしょうけれども、そういうことで国民の負担はますます重くなっていると。私も、もちろん財政が大変厳しい状況にあるということは認識しております。しかし、そうであればあるほど、やはり行政の税金の無駄遣いを、これをなくすということをまず第一に政府としては心掛けなければいけない問題じゃないかと思います。

 一つの例を申し上げます。

 福井県の美山町というところ、今合併して福井市になっております。これはテレビやメディアでも報道されましたけれども、ここで、雪国なものですから冬場に道路の通行が非常に困難になるということで、この雪を除去する、融雪というんですか、その装置を付けたいということで国に対してお願いをしたと。そしたら、たまたま国土省に雪国快適環境整備事業とかというのがありまして、そこにその道路の雪を解かす、除去する補助金の項目があると。そういうことでそれをお願いいたしましたところ、役所から、いや、それだけじゃ補助金出せない、スキー場も一緒に造れと、こういうことがあって、これは事実でございます。そのときの時の町長もテレビで証言されておりました。

 そこで、地元は何もスキー場欲しいと言っているわけじゃないんです、冬場の道路の雪を除去できればいいんですと、こう言ったんですけれども、いや、両方造らなきゃ駄目だということで、泣く泣くその事業を受け入れて町で事業として行ったというんです。

 ところが、その補助金の額は、本来の道路の雪を消す事業に三千八百万から九百万の補助金が国から出ました。スキー場の設備の方には四千万ちょっと、合計八千万ほどの補助金出たんですけれども、そのスキー場は本来要らないといっているやつですから、十二年間、今日まで何にも、一人も使用しないでそのまんまに野ざらしになっておりまして、そして、これは福井市でもスキー場はもうやめちゃおうという決定をしたんですけれども、そうすると補助金を返せと言われるんじゃないかということで、今それで頭を悩ませているという事例があります。

 私は、この細かい具体的事例を総理が知っておれということで申し上げているんじゃなくて、そういう本来の住民の必要となるもの、それだけでならば半分以下の補助金、国の補助金でよかったわけですよ。それからさらに、裏負担、地方の負担というのはスキー場に一億円、それはほとんど借金ですね、それを掛けて、だれもずっと使わないスキー場を造らせられちゃった、そういう事例があるんです。

 これは本当に私は、そういったたぐいのことは、ほかのいろいろな事業、ハードの面もソフトの面も含めましてあると思うんです。ですから、そういうものをまずは総理が、この事例を知らなかったって別にそれを責めるわけじゃありません。こういうような無駄遣いがたくさんあると、まずそういったことを洗いざらい調査して、そしてその仕組みを変えるなりなんなりするのが、まずは政府として取るべき役目ではないでしょうか。そう思いまして、お伺いいたしました。

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず、最初の議論の教育の問題でありますが、教育の骨格については、その基盤は教育基本法でありますから、この教育基本法を六十年ぶりに変えた、これこそが正に戦後レジームからの脱却であります。そして、その上に立って私たちは、新たに学校教育法、そして地教行法と教員免許の更新制度、これ、それぞれ今までなかなかできなかったことを新たに私たちは取り組んでいるわけでありまして、教育の現場を刷新していく、このことをお約束をしたい、このように思う次第でございます。

 そして、先ほど、この六年間の間に税金あるいは保険料の形で国民に九兆円の負担を強いたではないか、こういうお話がございました。しかし、この六年間、社会保障の給付自体も実は十一兆円増えております。そして、それと同時に、この三年間におきましても、私たちは新規国債の発行枠十兆円減額をいたしております。我々は、やるべきことはきっちりとやっているということをまず申し上げておきたいと思います。

 そして、その上で、今、小沢代表は個別具体例を挙げられました。直ちに私たちもその個別具体例については精査をしてみたいと、このように思うわけでございますが、我々は、無駄ゼロ、一切無駄を省いていく、筋肉質の政府をつくっていくということを既にお約束をしているわけでございます。

 公務員につきましても、公務員を五・七%削減をしていく、一万九千人減らしていくということもお約束をしているわけでありまして、その中におきまして公務員制度改革法も昨日国会に出させていただいたわけでありまして、我々は政府として、与党として、きっちりとその責任を言うだけではなくて果たしていきたいと、このように考えております。

小沢一郎君 教育基本法については、私、触れなかったんですけれども。私がお尋ねしたのは、教育行政の制度についてという面でお尋ねしましたので。

 教育基本法について申し上げれば、今総理は、大改正といいますか大改革をなしたとおっしゃいましたけれども、私はそうとは思えない。総理の言う戦後体制そのもの、占領軍によってつくられたものを白地から自分たちの手でつくり直さなきゃならないというお考えからはほど遠いものではないかと私は思っております。

 私ども民主党といたしましては、日本国教育基本法というものを提案さしていただきました。その中身は全く違います。教育委員会制度の改革をその根拠となる条項まで入れまして我々の考えを示したところであります。

 それはそれといたしまして、質問の補助金の無駄遣い、税金の無駄遣いですが、私は今の補助金というのが、いわゆる各行政省庁ですべて補助金の箇所付けがなされて、本当に五十万、百万のお金まで全部中央省庁で箇所付けをして、その中央省庁で作ったメニューでなければ補助金はもらえないと、こういうところから今申し上げましたような無駄遣いが起きてくると、私はそう思います。

 ですから、我々は、こういった地方の身の回りに使うお金については、その補助金を一括して、そして地方に自主財源として自由に自分たちのことについては使えるように権限も与える、そういうことで本当に地方分権というのが実現するんじゃないだろうかと、私はそういうことを主張しております。

 今、役所のいろいろな行政について、それにいろんな矛盾や何かがあるとすれば、やっぱりそれを正すのは政治以外ないわけでありまして、そして今、総理がおまえたちは口だけだと言わんばかりのお話なさいましたが、それは政権を持っている人たちが第一義的に責任を持つんでありまして、私どもに政権を渡していただければ我々の主張を実現してみせると、そういう趣旨で申し上げているわけでありまして、口だけで別に政府を批判しているということではございませんので、そこは御認識を改めていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、私は、まずは行政経費あるいは補助金等々、そういった無駄を極力、まずはその作業をやって、その上でなおかつという場合に国民に負担を求めるというのが私は政府としての国民に対するやり方だというふうに思っております。

 もう時間がないというので、最後に一点だけお聞かせください。

 この間、薬害エイズと同じように薬害肝炎の裁判が判決が下りました。ここで国の責任が裁判で明確に判決で出されたわけであります。今、肝炎やあるいは肝臓がんになって苦労しておられる方、あるいは亡くなる方も最近増えてきたと言われております。このことにつきまして、政府は、司法の上でも責任が明確になったわけですので、早急にこの対応策を取るべきだと思いますけれども、お考えをお聞かせください。

内閣総理大臣(安倍晋三君) 今の質問にお答えをする前に、この地方と国の関係、補助金についてお話がございました。私の施政方針演説におきましても、国がメニューを決めて、このメニューでやりたい地域はどこですかといって手を挙げさせて、その地域に補助金を充てていくというやり方はもう一切今後は取らない。これからは地域の皆さんに、地域の皆さんに考えていただいて、こういう地域にしていきたい、こういうところをもっと生かしていきたい、こういう良さをもっと発掘をして育てていきたいというところについて国が支援をしていくという、新しい地域再生に取り組んでいくということを既に宣言をいたしているわけでございます。

 そして、それと同時に、今行っている十九兆円の言わば補助金のうち、民主党は三割カットすると、このようにおっしゃっているわけでありますが、しかしこの十九兆円のうち約十四兆円ぐらいは社会保障と教育なんですね。では、そこからどれぐらい三割カットするのか、こういうことも誠実に言っていただかなければ責任ある態度ではない、このように思う次第でございます。

 そしてまた、教育基本法につきましても、教育基本法に戻りますが、小沢党首は自由民主党の幹事長であった、しかしそのときの自由民主党も、この教育基本法の改正には残念ながら全く取り組んでいなかったというのも事実でございます。そして、六十年たって昨年の国会で、私の内閣においてこの教育基本法の改正がなされたということは申し添えておきたいと、こう思うところでございます。

 そして、薬害肝炎の方々についてでございます。

 この皆様が大変な御苦労をされている、苦しんでおられるということを私も十分に承知をいたしております。そして、その中で高い医療費がある。そういう中において我々、国として何ができるか検討していかなければならないと、このように考えているところでございます。

小沢一郎君 もう考えて検討している間にどんどん病気は進行し、また亡くなる方も増えているわけですので、これは考えている時間を省略いたしまして、是非、対応策をきちんとすぐ打ち出していただけるように要請、お願いをいたします。

 それから、今、補助金のことをおっしゃいましたけれども、私どもは、別に補助金をカットすると言っているわけではありません。それからまた、総理は、地方の要望に応じて補助金を出すことということで宣言したというふうにおっしゃいましたけれども、まだその宣言は具体的な行政の中に実行されていないように思います。

 そういう意味におきまして、私は本当に、現在のすべて中央集権的な国家のシステムを、やはり本当の意味での地方分権、そして国は国の根幹のことにつきまして取り組んでいくと。そういう国の在り方を描いておりますので、今さっきのような補助金にかかわることについても、制度を根本的に変えることによってそういった国費の無駄もなくなるのではないかと、そういうことを申し上げた次第でございますので、現状を前提にしてどうのこうのと言っておるわけではありません。今の現状ではなかなか、そういった無駄省くについても何するにしても、地方分権にしても、実際にはそれを実効を上げられない、だから今の仕組みそのものを変えなくてはいけないんじゃないかと、そういうことを申し上げた次第であります。

 終わります。(拍手)

内閣総理大臣(安倍晋三君) 正に私たちは今の仕組みを変えているんでありまして、今まで国が押し付け的にやってきたメニュー、それはもう今後はそれから決別をする、このように宣言をしているわけであって、補助金の改革、交付税の改革は既にやっております。その改革の加速をこれから更に進めてまいりますことを宣言をいたします。(拍手)

会長(衛藤征士郎君) これにて民主党代表小沢一郎君の発言は終了いたしました。

 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。

 次回は、衆議院、参議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。

   午後三時四十六分散会


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