衆議院

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第2号 平成14年11月1日(金曜日)

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平成十四年十一月一日(金曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   会長 中山 太郎君
   幹事 杉浦 正健君 幹事 中川 昭一君
   幹事 西田  司君 幹事 葉梨 信行君
   幹事 保岡 興治君 幹事 大出  彰君
   幹事 仙谷 由人君 幹事 中川 正春君
   幹事 赤松 正雄君
      伊藤 公介君    石川 要三君
      奥野 誠亮君    倉田 雅年君
      近藤 基彦君    佐藤  勉君
      下地 幹郎君    砂田 圭佑君
      谷川 和穗君    谷本 龍哉君
      中曽根康弘君    中山 正暉君
      長勢 甚遠君    額賀福志郎君
      平井 卓也君    福井  照君
      森岡 正宏君    山口 泰明君
      枝野 幸男君    小林 憲司君
      今野  東君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    中村 哲治君
      永井 英慈君    永田 寿康君
      伴野  豊君    松沢 成文君
      山内  功君    江田 康幸君
      太田 昭宏君    西  博義君
      山名 靖英君    武山百合子君
      藤島 正之君    春名 直章君
      山口 富男君    金子 哲夫君
      原  陽子君    井上 喜一君
    …………………………………
   衆議院憲法調査会事務局長 坂本 一洋君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十五日
 辞任         補欠選任
  中山 成彬君     谷本 龍哉君
十一月一日
 辞任         補欠選任
  野田 聖子君     砂田 圭佑君
  首藤 信彦君     山内  功君
  中野 寛成君     永田 寿康君
  山田 敏雅君     津川 祥吾君
  江田 康幸君     山名 靖英君
  斉藤 鉄夫君     西  博義君
  土井たか子君     原  陽子君
同日
 辞任         補欠選任
  砂田 圭佑君     野田 聖子君
  津川 祥吾君     山田 敏雅君
  永田 寿康君     中野 寛成君
  山内  功君     首藤 信彦君
  西  博義君     斉藤 鉄夫君
  山名 靖英君     江田 康幸君
  原  陽子君     土井たか子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 中間報告書に関する件

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     ――――◇―――――
中山会長 これより会議を開きます。
 中間報告書に関する件について議事を進めます。
 御承知のとおり、憲法調査会は、衆議院憲法調査会規程第二条第二項に基づきまして、調査の経過を記載した中間報告書を作成し、会長からこれを議長に提出することができるものとされております。
 本件につきましては、先般来の幹事会における御協議に基づきまして、お手元に配付のとおりの中間報告書案を作成いたしました。
 この際、本中間報告書案を議題といたします。
 本中間報告書案の趣旨及び内容について御説明を申し上げます。
 憲法調査会は、日本国憲法について広範かつ総合的な調査を行うため、第百四十七回国会召集日に本院に設置されました。本調査会の任務は、この設置目的に従ってその調査を行い、調査の経過及び結果を記載した報告書を作成し、議長に提出することであります。
 本調査会は、設置された平成十二年一月二十日当日に初回の会議を開き、その活動を開始して以来、本日に至るまでの間、日本国憲法に関する調査を着実に進めてまいりました。
 まず、日本国憲法の制定経緯に関する調査から開始し、次いで、戦後の主な違憲判決に関する調査、二十一世紀の日本のあるべき姿に関する調査を行い、本年一月からの第百五十四回国会においては、その間に浮かび上がってまいりましたさまざまな論点について、より具体的な調査を行うため、本調査会のもとに四つの小委員会を設置して、専門的かつ効果的な調査を行ってまいりました。
 これらの調査活動の中では、憲法学、政治学を初めとする社会諸科学はもとより、人口論、ゲノム、ITなどの自然科学分野の有識者をも参考人として招致し、意見聴取、質疑応答を行うとともに、委員間での活発な自由討議も行っております。
 他方、この間、国民各層の御意見を聴取するため各地で地方公聴会を開催し、国民の憲法に関する生の声を現場で伺うとともに、憲法調査会委員で構成された憲法調査議員団による海外調査を行い、比較憲法的な観点から諸外国の憲法事情について調査を行っており、本調査会では、これらの調査の成果をも踏まえながら、調査を進めているところであります。
 本調査会の調査期間は「概ね五年程度を目途とする。」こととされておりますが、第百五十四回国会をもちまして、その調査期間の折り返し点となる二年半が経過いたしました。そこで、本調査会として、これまでの調査の経過及びその内容を取りまとめた中間報告書を作成し、議長に提出しようとするものであります。
 本中間報告書案には、第百五十四回国会閉会中の海外調査の成果なども可能な限り取り込むように努めながら、最終的には、第百四十七回国会から第百五十五回国会の平成十四年十月二十四日までの本調査会の活動について収録いたしました。その構成は、第一編「憲法調査会の設置の経緯」、第二編「憲法調査会の設置の趣旨とその組織及び運営」、第三編「憲法調査会の調査の経過及びその内容」及び第四編「資料」から成っております。調査の内容をまとめました第三編第二章及び第三章がその中核的な内容をなしております。
 第三編第二章では、調査会及び小委員会での議論の概要はもとより、地方公聴会や海外調査の概要についても掲載し、また、本中間報告書案のかなりの部分を占める同編第三章においては、約二年半の本調査会での委員及び参考人等の多様な発言を、日本国憲法の各条章に沿いながらそれぞれの論点ごとに分類して整理いたしました。そこでの主な議論を私なりに総括すれば、次のとおりであります。
 まず、日本国憲法の制定経緯に関する調査では、現行憲法制定にまつわる歴史的事実の検証を行いました。
 日本は、昭和十六年十二月に第二次世界大戦に参戦いたしましたが、昭和二十年八月にポツダム宣言を受諾することによって連合国側に降伏いたしました。これにより、日本占領に関して実質的に最高権限を有するGHQによる間接統治を受けることになり、この間接統治下で、昭和二十一年三月にGHQの起草に係る総司令部案をもとにした「憲法改正草案要綱」が政府案として発表され、同年四月、衆議院議員総選挙が行われました。総選挙後に召集された第九十回帝国議会において、この「憲法改正草案要綱」を条文化した「帝国憲法改正案」が提出され、審議された結果、同年十一月に日本国憲法が公布されたのであります。
 このような制定経緯に関する調査を通じまして、これに対する評価は別といたしましても、日本国憲法の制定にまつわる一連の客観的な歴史的事実については、各委員がおおむね共通認識を持つことができたものと存じます。
 なお、先般地方公聴会を開催いたしました沖縄では、昭和四十七年の本土復帰を迎えるまで、この日本国憲法の実効的な適用がなされてまいりませんでした。この事実を私たちは忘れてはなりません。
 次に、戦後の主な違憲判決に関する調査では、日本国憲法制定以来、今日に至るまでの憲法の歩みについて、最高裁判所の下した違憲判決を検証することを通じて、我が国の違憲立法審査制及びその運用実態を明らかにしたところでありますが、海外調査の結果明らかとなってまいりました諸外国の憲法裁判所の活動実態と比較するとき、今後検討しなければならない課題は多いように思われます。
 また、二十一世紀の日本のあるべき姿についての骨太な議論、さらには小委員会での専門的かつ効果的な議論におきましては、日本国憲法をめぐるさまざまなテーマについて、多様な観点から議論が行われました。
 このような観点の一つに、日本国憲法制定後五十有余年を経た今日、我が国を取り巻く国内外の情勢が制定当時には想像もつかないほど大きく変化しており、これを憲法にどのように反映させるべきかどうかという観点があります。これらの変化の中には、国家の枠組みや人権保障のあり方といった、憲法を支える基本的な考え方に影響を与えるものも少なくないと思われます。
 例えば、安全保障に関する概念は、国家の安全保障から地域の安全保障、そして人間の安全保障へと大きく変化してまいりましたが、これは我が国の安全保障のあり方、国際協力のあり方に大きくかかわるものであります。
 また、科学技術の発展に関しまして申し上げますと、情報技術の革新は高度情報化社会をもたらしましたが、その反面、個人のプライバシーを大きく脅かす側面も有するようになり、さらに、生命科学や医療の分野での技術革新は人間の尊厳や生命倫理の根幹を揺るがしかねないところまで進展しており、人権保障のあり方に大きな影響を与えるものとなっております。
 これらの論点については、本調査会において多くの委員、参考人によって指摘されているところであります。
 また、これまで三度にわたり実施いたしました海外調査では、王室制度を有する国や中立政策を維持してきた国を含む西欧各国、ロシアを初め旧共産圏に属する東欧各国、中東に位置するイスラエル、東南アジア各国、我が国の隣国である中華人民共和国及び大韓民国などの憲法事情について調査を行いました。
 印象的でありましたのは、これらのいずれの国におきましても、国際社会の変化やそれぞれの国が抱える国内的事情を背景としながら、それらの諸事情の変化に対応して憲法改正に係る論議が国民に提示され、その国民的な論議を通じて、随時、憲法改正が行われているという点であります。
 また、多くの国々で導入されている憲法裁判所において、法律、行政命令を含む法令の合憲性審査を行うことによって、権力相互の抑制に資するところだけではなく、直接に国民からの権利救済申し立てを受けるなどの人権保障のとりでとしての機能をも果たしている点についても、大いに考えさせられました。
 さらに、小泉政権の誕生により注目を浴びた首相公選制についても、イスラエルを訪問して、政府及び議会の要人、学者等と会談し、その導入及び廃止の経緯、これに対する評価等について詳細な調査を行いました。その調査結果を踏まえて、本調査会において種々の観点から活発な議論が行われましたが、首相公選制の導入については、慎重あるいは消極的な意見が多数を占めたように思われます。
 以上、本中間報告書案の趣旨及びその内容を御説明申し上げましたが、今後とも、人権の尊重、主権在民、そして、再び侵略国家とはならないとの理念を堅持しつつ、新しい日本の国家像について、全国民的見地に立って、広範かつ総合的な調査を進めていかなければならないと感じる次第であります。
 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
中山会長 この際、発言を求められておりますので、順次これを許します。保岡興治君。
保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。
 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております中間報告書案について、賛成の立場から意見を表明いたします。
 憲法調査会は、日本国憲法下において国会に初めて設置された調査会であり、平成十二年一月二十日の設置以来、日本国憲法の制定経緯、戦後の主な違憲判決、二十一世紀の日本のあるべき姿について調査を行い、さらに第百五十四回国会からは、四つの小委員会を設置して個別論点の調査に入り、精力的に調査を進めてまいりました。
 私も、地方自治に関する調査小委員長を務めさせていただき、委員各位と真摯な議論を行ってまいりましたが、憲法において制度的に保障されている地方自治を今後さらに充実させるためには、現在進められている地方分権改革を一層推進し、道州制などを視野に入れた新しい国の形を検討する必要があることを強く感じました。
 また、国民各層から幅広く意見を聴取し、国民とともに憲法論議を行っていくとの観点から、地方公聴会を実施するとともに、諸外国の憲法事情を調査するために、憲法調査会委員で構成された憲法調査議員団による海外調査も行ってまいりました。私も、議員団の一員として調査に参加いたしましたが、首相公選制の導入に失敗したイスラエルで、その経験を踏まえた首相公選制に対する消極的な評価や、多くの訪問国で憲法裁判所の実態を伺ったことは、とりわけ強く印象に残っております。
 本調査会の調査期間はおおむね五年をめどとされておりますが、現在、およそその半分が経過したところであり、この時点で中間報告書を取りまとめることは、国民に対し調査会の活動内容を明らかにし、国民の間で憲法論議が活発に行われることに資するとともに、今後、調査会においてさらなる調査を進めていく上でも大きなステップになるものであると確信しております。
 このような中間報告書の取りまとめの趣旨にかんがみれば、この中間報告書案の内容は、調査会の活動経過を明らかにするとともに、調査会における多様な憲法論議の内容を憲法の各条章に沿った形で客観的に整理しており、調査会における論議を国民にもわかりやすい形で示すものとして、非常にすぐれた資料になっていると思います。
 ここで、今回取りまとめた中間報告書の内容、また調査会での論議等を通じて、私なりの感想を幾つか申し上げさせていただきます。
 第一に、権利のみを主張し、国家、社会、家族への責任と義務を軽視する風潮を改め、国民一人一人が、自己責任原則に基づいてみずからの自由を実現する社会を目指すため、もう一度国家や社会、家族という共同体における義務、責任について考えてみる必要性を強く感じました。
 第二に、グローバル化が進展し国際関係が緊密になっている現代では、日本の平和と繁栄が近隣諸国と無関係には成立し得ないことを認識した上で、多極化時代にふさわしい安全保障の確立を図るべきであることを改めて感じました。
 第三に、統治機構の問題に関しては、国内外の新たな課題に対して迅速な対応が必要とされている現代社会において、政治主導という観点から、両院制のあり方について見直す必要性を強く感じました。すなわち、安定した政権運営の確保という要請にこたえるとともに、国会が国民代表機関として国政を推進し、監視していくという責務を十分に果たすために、衆議院と参議院の的確な機能分担を考慮した見直しが必要であると考えております。
 最後に、私は、憲法を論議することは、まさにあるべき国家の姿を考えることであると思っております。現在の我が国に求められているのは、西洋に追いつき追い越せという欧米モデルから脱却し、新たな国家目標を求める独自モデルを構築することであり、その意味においても、憲法を考えるに当たって、日本のよさを振り返る、すなわち日本国の歴史、伝統、文化を踏まえることは当然であります。
 その上で、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という憲法の三原則を踏まえ、我が国が国際社会の一員として、直面する国際平和への協力、地球環境、遺伝子解明に伴う生命倫理、インターネット時代のプライバシーの保護など、未経験の諸課題を考慮しながら、調和のとれた国民の権利と義務を規定するなど、二十一世紀日本の目指すべき指針とあるべき国の姿を国民の前に明らかにし、国民とともにオープンに議論をしていく、そして、国民参画の上で国民の憲法をつくっていくことが重要であると考えています。
 その意味から、今後、本調査会が果たすべき役割は極めて重要なものであると考えております。
 私は、憲法調査会において、二十一世紀の日本、そこで活躍する次世代の日本国民のための憲法論議という大きな目標を見据えて、着実に、何のタブーもなく、自由濶達な憲法論議を行っていく、そして、日本のあるべき姿、すなわち憲法はどうあるべきかを考えていくように、中山会長を初め、委員各位とともに全力を尽くしてまいることを申し上げ、私の意見表明とさせていただきます。ありがとうございます。(拍手)
中山会長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 民主党は、本憲法調査会に臨むに際して、初めに改憲ありきあるいは護憲ありきということではなくて、まず、憲法と現代社会の現実に関する冷静で自由濶達な議論を進めていくことが極めて大切なことだと提案し、論憲の立場で参加をしてまいりました。
 この観点からも、二年半に及ぶ調査活動や論議を通じて、ここに、広く論点を網羅した中間報告を取りまとめることができたことは、本憲法調査会における論議の成果であり、この報告を土台に、さらに濶達な憲法論議を展開していくことが必要だと受けとめております。
 わけても、委員各位の議論はもとより、いわば外に向かって調査活動を開き、公聴会を開催し、海外調査に取り組み、あるいは有識者の意見を数多く聴取してきたことは、我が国の憲法調査史に確かな足跡となるものだと思っております。また、四つの小委員会の設置とその活動は、憲法に関する議論をより具体的で入念なものにしていくために不可欠なものであり、これをさらに充実させていくことが必要だと考えております。
 しかし、私は、憲法が国の枠組みを決定づけるものであることを考慮するに、幾つかの点で今後の論議に課題を残していると感じております。
 第一は、二十一世紀のグローバル時代にふさわしい論議を進めるために必要不可欠と思われる、国際法体系もしくは国際政治や国際機構と日本及び日本国憲法との関係に関する論議、検討があります。
 例えば、我が国の安全保障問題と憲法との関係を検討するに際しても、国連憲章と憲法との関係を掘り下げて検討、吟味していくことは避けられないことであり、ましてや、現実の国際安全保障協力と我が国の安全保障のあり方という問題も論議の俎上にのせていく必要があると思うのであります。世界人権宣言や国際人権条約、あるいは国際司法裁判所や国際刑事裁判所と国内法及び憲法との関係も、当然に議論されるべきものと考えます。
 第二は、現代憲法に関する比較検討を着実に行うことであります。
 例えば、本調査会においても重要なテーマの一つとされてきた、環境を新しい時代の憲法にふさわしい基本コンセプトとして位置づけるという作業は、既に二十世紀終盤の憲法論議として幾つかの国で取り組まれているものであります。そうした成果を生かす意味でも、比較憲法学的な検討作業を十分に行うことは、大いに私たちの憲法論議に寄与するものと思われるのであります。
 第三は、本調査会の活動及びその成果を活気ある国民的な議論に付することについてであります。
 憲法は、一編の法律にとどまるものではありません。それは、国民意識の中に深く根づいてこそ、国の形を支える文字どおりの基本法として役割を果たすものであります。その意味からしても、本調査会の憲法論議の中に、多様な国民参加の機会を存分に広げていくことが極めて重要かつ意義のあることだと考えるのであります。既に取り組まれている公聴会をより国民参加の実を伴うものへと改善するとともに、広報活動の充実や公開シンポジウムの計画など、多くの工夫が本調査会に求められていると思うのであります。
 以上の考えに基づき、私は、今後の本調査会の活動として、いきなり個々の条文の解釈や論議に入るのではなくて、その前提となる重要な問題について、小委員会をベースにテーマ別論議を推し進め、その成果を取りまとめていくことも大切なことだと思っております。しかも、それはより国民的な議論を巻き起こす方向での改善、工夫を伴うものでなければならないことを申し添えて、私の提案とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
中山会長 次に、太田昭宏君。
太田(昭)委員 憲法調査会が発足して二年半余が経過をいたしました。まず、この間、中山会長を初めとして、各党の幹事がその運営を極めて丁寧に持続的に今日に至るまで進められてきたことに対しまして、敬意を表したいと思います。
 初めに、こうした中間報告書がまとめられた、この点について触れたいと思います。
 憲法調査会が、五年間の調査期間を掲げた、五合目に来たので今回まとめるというわけでありますけれども、さまざまな議論もあり、意見も聴取したということからいきまして、中間報告書をまとめるのは極めて妥当であるというふうに考えます。同時に、その内容におきましても、調査の経緯を一定の方向を示さないで要約するという形でまとめられたということも、私は妥当であろうというふうに思います。
 ただ、発言した者からいたしますと、読みますと、要約が少し簡単過ぎまして、意を尽くしていないという思いがあるということは付言をしておきたいというふうに思います。
 いよいよ折り返し点になるわけでありますけれども、中間報告書をまとめることは、今後の論議の参考になるというふうに思いますし、同時に、二、三年で結論を得るとか、あるいは、いつまで調査をしているのかという意見がこの間寄せられました。私は、当初方針どおり、広範かつ総合的な調査を五年間行う、この方針どおり、今後も、拙速にならずに、しっかり調査を行うという基本に徹すべきであろうということを申し上げたいと思います。
 同時に、この委員会だけでなくて、やはり国民的論議をどう起こすかということがこの憲法調査会の大きな役割であろうというふうに思いますので、後半におきましては、国民的論議を起こす憲法調査会としての役割を果たすべきであるということを申し上げたいと思います。
 何点か論議の方向性、内容について述べたいと思います。
 私は、憲法は国の骨格であり、憲法を論ずることは国家のあり方を論ずることだと思いますし、この調査会でもそうした方向での論議が重ねられてきました。その意味で、第一に、論議の背景に横たわる思想、哲学性をより重視しなくてはならないと考えております。
 この憲法調査会でも、二十一世紀日本のあるべき姿、国家像が数々論じられました。大変いいことだと思います。国家像、国家論が極めて大事だというふうに認識しておりますが、日本という国家とは一体何かという、いわゆるナショナルアイデンティティーの確立という意味での国家論、また、安全保障という観点からの国家論、また、国土のグランドデザインという観点での国家論、あるいはまた、経済システムとして、市場主義というものに立つか、あるいは環境とか福祉ということを制度的にビルトインした形での経済というもののシステムを考える、そうした国家論、さらに言うならば、グローバリゼーションの中での日本の新たな産業国家論、こうしたことを一つ一つ練り上げていくという作業が私たちは必要かと思います。
 しかし、今申し上げた中でも、憲法論議ということからいきますと、私は、ナショナルアイデンティティーの論議を深めるべきであるという感じを持っております。
 民族、あるいは精神性としてのいわゆるネーションというものと機能国家的なステーツというものが、ネーションステーツという形で二十世紀は当たり前の言葉として来ておりますが、これからは、ネーションの内実をもっと深めていくことが大事であろうというふうに思っております。二十一世紀は文化の衝突、ネーションの中身のそうした衝突というものが行われるのではないかという観点からでございます。その意味で、私は、国家主義的方向ではなくて、ネーションの内実を地域・共同性からくみ上げる観点というものから国家論が論じられるべきであると考えております。
 同時に、基本的人権をアプリオリにスタートする前に、どのような人間観、自然観に立脚して論ずるかということが大事であろうと思います。
 それは、例えば、自主憲法制定を希求するという声の裏には、西欧の文明、文化と日本の文化の違いという問題意識、つまり、ヨーロッパ近代の人間観と、日本人とは何かという、そうした人間観との対立というか問題提起がされているということで、その点を整理する必要があろうかと思います。
 また、別の観点からいきますと、環境権ということが新たに提起されたりするわけでありますけれども、いわゆる人間中心主義としての人間観に立つか、エコロジカルな人間主義という観点に立つかということで、この環境権というものに別項を立ててやるべきだということの観点が、私は大きな違いが出てくるんだと考えております。
 論議の方向性の第二に、未来志向の憲法論議でなくてはならないと思っております。
 確かに、憲法が制定されて五十年、もう時代と合わない部分ができてきたということが言われるわけでありますけれども、それ以上に、五年かけての調査というならば、過去から今を照射するというのではなくて、未来から今を照射するということが大事だと思います。その意味で、キーワードとして私は四つよく述べたわけでありますが、IT、ゲノム、環境、住民参加の観点が憲法論議で大切だと主張させていただいたわけでございます。
 第三に、論議の性格の問題であります。
 我が党は、憲法について、我が国の平和憲法の象徴である憲法第九条は堅持し、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の三原則は不変のものと確認した上で、論憲をするということを基本にしております。その上で、調査会の論議の中でも、環境権や人格権の確立、あるいは地方主権をより鮮明にすべきだという声も出ており、私どもも賛意を表してまいりました。
 明治憲法が欽定憲法、現憲法が平和憲法、このように呼ばれるならば、私は、より国民主権を実現するとともに、環境や人権や地方主権を重視する方向が望まれていると考えております。
 その意味で、論議の性格として、国民憲法、環境憲法、人権憲法の方向での大いなる論議が今後大事であるというふうに申し上げまして、主張を終わらせていただきます。(拍手)
中山会長 次に、武山百合子君。
武山委員 私は、自由党を代表して、憲法調査会中間報告書を議決して議長に報告する件につき、賛成の発言を行います。
 平成十二年の一月におおむね五年程度を目途として設置された憲法調査会の調査開始から、半ばが過ぎました。この間、調査会におきましては、参考人としての有識者からの意見聴取と質疑応答を初め、地方公聴会の開催による国民各層からの意見聴取、海外の憲法事情の調査など、精力的に調査を進めてまいりました。国家存立の基盤である憲法を改正する発議権が国会にあることを考えれば、国会に憲法調査会が設置され、広範かつ総合的、専門的な調査が多岐にわたって行われてきたことの意義は大変に大きいと言わなければなりません。
 この間、自由党は、この調査会において、我が国の将来を見据えつつ、あるべき憲法の姿について真剣に発言し、さまざまな意見に真摯に耳を傾けてまいりました。そして、憲法調査会での議論も踏まえつつ、平成十二年十二月には、自由党の「新しい憲法を創る基本方針」を決定、発表いたしました。今後とも、この提言を国民に説明して、御理解いただき、新しい憲法をつくるための国民合意の形成に努めてまいりたいと考えております。
 このような認識のもとに、中間報告の議決に賛成する理由を以下申し述べます。
 まず第一に、五年を目途とした憲法調査会設置から半ばが経過したこの時期に中間報告を取りまとめることは、残り半ばの調査をさらに精力的に進めるためにも、まことに時宜を得たものであります。作成された中間報告をたたき台として、あるべき憲法論についてさらに濃密な調査を進めることができると考えております。
 第二に、調査の内容を条文ごとに客観的、公正に論点整理しておくことは、中間整理として必要であり、憲法論議をより深めていくための有効な材料になると考えるものであります。
 第三に、国会での調査状況を中間的に公表し、国民に対して発信することは、憲法論議に関する国民の関心を高め、あるべき新しい憲法について国民の世論を起こし、合意を形成していく上で極めて意義のあることであると考えます。また、国会でどのような調査がなされたのかを明らかにし、これを後世に残すことは、国会の歴史的な使命でもあると考えるものであります。
 第四に、この調査会の調査が、学者、文化人を初めとする国民各界各層の方々の御協力に支えられ初めてなし得るものであるとの認識に立てば、中間報告の取りまとめと公表は、御協力をいただいた方々への当然の責務であり、今後さらに調査会の調査に御理解、御協力をいただくための区切りとなるものであると考えております。
 また、さきに述べましたように、私ども自由党は、平成十二年十二月十三日に「新しい憲法を創る基本方針」を策定いたしました。その「基本方針」には、国及び国民のあり方、天皇、国民の権利と義務、安全保障、立法権、行政権、司法権、地方自治、財政、教育及び文化、環境・社会保障、改正手続のそれぞれについて、具体的にそのあり方を記述しております。
 今後、当憲法調査会の調査を通じて、自由党の方針が調査に反映され、二十一世紀の日本を担うにふさわしい、新しい立派な憲法が制定されますよう努力していくことを申し上げて、私の発言を終わります。(拍手)
中山会長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党は、今提案されました中間報告書案に反対であります。
 第一に、何のために中間報告書をまとめるのか、その趣旨が明らかではありません。
 言うまでもなく、憲法調査会は、日本国憲法の広範かつ総合的な調査を行うことを目的にしたものでありまして、改憲のための調査会ではありません。したがって、この目的に照らして、調査会がやるべき調査活動は、まず憲法の運用状況がどうなっているのか、主権在民、恒久平和主義、基本的人権の尊重という憲法の理念と原則が、立法、行政、司法の現場で実現されているかどうか、できていないとすればどこに問題があるのかなどを深く調査すること、そして、憲法を現実の政治と社会に生かす方法を調査することであります。
 しかし、これまでこうした調査はほとんどなされておりません。日本国憲法の制定経緯、二十一世紀の日本のあるべき姿、四つの小委員会による調査は、運用の実態を調査することに主眼は置かれず、むしろ改憲を志向される委員からは、安保条約や自衛隊など、憲法違反の現実にいかに憲法を合わせるかとの主張が繰り返しなされてきたのであります。
 また、調査の進め方も、参考人などから意見を聴取し、質疑を行うことが中心で、それを調査会としてどう扱うのか、何を生かすのかという角度での議論、調査は行われておりません。
 調査期間の折り返し点となる二年半が経過したことが報告書作成の唯一の理由となっておりますが、大切なのは、期間ではなく、調査の内実ではないでしょうか。今日までの調査会の調査実態は、何か報告書を出せるような段階ではないと考えます。国民に調査の内容を知らせる必要があるというのであれば、会議録などで十分であると考えます。にもかかわらず、あえて中間報告書をまとめるのは、調査会の目的を離れた政治的な意図があるのではないかと思わざるを得ません。
 第二に、中間報告書案は、内容の点でも看過できない問題があり、承服できません。とりわけ、本報告書のかなりの部分を占める第三編第三章の論点整理は問題です。
 中山会長は、公正中立な事務局が、委員及び参考人の発言を、日本国憲法の各条章に沿いながら、それぞれ論点ごとに分類して整理したとおっしゃっておられます。そもそも本調査会は、日本国憲法の各条章に沿った論点ごとの調査などは行っておりません。にもかかわらず、二十一世紀のあるべき姿など、漠然としたテーマのもとでの参考人や委員の発言を、調査テーマとしていない、憲法は改正すべき、自衛隊の憲法への明文化などの論点に沿って整理することが、どうして調査の経過を記載した報告書と言えるのでしょうか。
 その整理の手法は、単に発言回数の多いキーワードに着目して項目を立て、その項目に沿って参考人や委員の意見を並べるというものであります。調査の流れ、参考人と委員との質疑のやりとりなど、発言の背景が一切捨象されていることから、真意が伝わらず、発言の主眼からずれているものも少なくありません。論点整理は、調査会の実際の調査内容を公正に反映したものとなっているとは言えません。結局、改憲を志向した編集意図で論点が整理されていると言われても仕方がないものであります。
 ある参考人は、自分の発言がどう扱われているのか、了解をとる手続をとってほしいとの要請がありました。ところが、こうした参考人の要請すら考慮されませんでした。これでは参考人の憲法調査会に対する信頼が失われ、今後の調査に支障を来しかねません。
 この間五カ所で開催された地方公聴会では、憲法改正の論議ではなく、日本の国づくりの指針として憲法を守り生かしてほしい、そのための調査をとの声が大勢を占めました。
 また、私も参加したアジア各国での海外調査でも、中国、韓国から九条への信頼が寄せられ、それが戦後の平和と発展の礎になったとの表明もありました。そして、日本国憲法の先駆的な内容を一層花開かせることこそ、今、日本に問われていることだと痛感してまいりました。
 こうした国民の声、アジア各国の声にこたえ、広範かつ総合的な調査という憲法調査会の目的に今こそしっかり立ち返って、憲法政治の実態、憲法の運用実態を深く調査することを改めて強く申し上げまして、意見表明といたします。(拍手)
中山会長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合を代表して、憲法調査会中間報告書案に対して、次のとおり意見を述べたいと思います。
 御承知のように、これまでの調査会は、憲法の制定経緯、戦後の主な違憲審査、さらに二十一世紀の日本のあるべき姿に関する調査が行われました。残念ながら、私たちがかねてから要望してまいりました、憲法の持つ理念、原則が現実の政治の中でどのように生かされ、実践されているのか、また守られてきたのか、そして、憲法と現実の政治との乖離はなかったのか、また、あるとしたらその原因は何かという、最初に調査会が取り上げるべき課題がいまだ調査されておりません。そのような重要な調査活動すら行われていない現状で、ただ調査会の調査期間の折り返し点に来たからというだけで中間報告を行うことには、反対であることをまず表明いたします。
 さらに、その編集内容についても大きな問題があると考えております。
 御承知のとおり、これまでの調査会の調査方法は、その大半が、各分野の参考人を招致し、意見を聴取、質疑応答という形で行われてまいりました。本年一月の第百五十四回通常国会から行っている小委員会でも、若干の委員間での自由討議も行われていますが、その多くの時間は、全体での調査会とほぼ同様に、参考人の意見を聴取し、質疑応答という方式で行われてきました。
 つまり、これまでの調査会は、そのほとんどが参考人の意見に対して質問するということであり、憲法の条文に沿って委員自身の意見を述べるということはほとんどなかったということであります。重ねて申し上げれば、あくまでも参考人の意見開陳を中心に論議され、その参考人の皆さんに対して各委員の意見を述べられたということであります。
 それにもかかわらず、本中間報告書案における第三編第三章の「憲法調査会における委員及び参考人等の発言に関する論点整理」では、今述べました調査会の論議状況にもかかわらず、その時々の発言のある一部が、極めて短い文章で、各項目に沿いながら切り張り的に寄せ集められているという編集になっており、到底、委員、発言者の全体的な意図を正確に集約しているとは言いがたいと言わざるを得ません。
 既に私は、こうした編集方法については、地方公聴会での配布資料「衆議院憲法調査会」の内容をめぐる論議の際にも指摘してきたところですけれども、地方公聴会の配布資料では、その部分は削除することになっておるということも付言しておきたいと思います。その意味でも、中間報告書案では、とても容認できる内容とは言えません。
 仮に、どうしても各委員の発言を載せるとすれば、調査会の開催日ごとに、しかも発言順に沿いながら、時系列的に編集することが発言の内容をより正確に報告することになると言えます。そうした編集にすることが、「まえがき」にも言われておりますように、「本調査会はこれまでの調査の経過及びその内容を取りまとめた中間報告書を作成し、議長に提出することとした」という、本中間報告書の趣旨に沿うものと言えます。したがって、本中間報告書案の第三編第三章は、時系列的に再編集するか、それができない場合には削除されるべきであることを強く主張いたしたいと思います。
 また、中間報告書案では、五回にわたる地方公聴会についての記載が余りにも簡略過ぎ、その論議内容を十分に報告しているとは言いがたいということについてもつけ加えておきたいと思います。
 私は、以上述べましたような観点から、本中間報告書案が原案のまま議長に提出されることは反対であることを改めて申し上げ、私の意見を終わります。(拍手)
中山会長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 憲法調査会が設置をされまして約二年半、いろいろな議論がされてまいりまして、私個人としては、この憲法についての議論が相当深まってきたというふうに思います。あと二年半ぐらいありますけれども、この二年半は、これまでの議論を土台にいたしまして、さらに意見を集約するような方向で議論をしていくべきだ、そんなふうに考えます。したがいまして、これまでの議論を中間報告としてまとめていくのは当然のことでありますし、その中身につきましてもおおむね公正に編集されている、こういうように考えまして、私は、この衆議院憲法調査会中間報告書案に賛成でございます。
 これからの議論としましては、単に項目を平面的に羅列してそれを議論していくということではなしに、意見を集約していくという方向で、議論を質量ともに高めていく必要があるんじゃないか、こんなふうに思います。それとあわせまして、やはり国民的な理解を求めるような、そういったことも憲法調査会としてはやっていくべきじゃないか、こんなふうに思います。
 我が党の憲法についての考え方は、憲法調査会が設置されました当初申し上げたとおりでございまして、二十一世紀の日本の憲法、これは、国際国家にふさわしい日本の憲法をつくる、改正をする、こういう立場で取り組んでまいりたいと思います。
 以上、御意見を申し上げまして、意見表明を終わります。(拍手)
中山会長 以上で発言は終わりました。
    ―――――――――――――
中山会長 これより採決に入ります。
 中間報告書案について採決いたします。
 お手元に配付いたしております案を衆議院憲法調査会規程第二条第二項に基づく中間報告書とすることに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
中山会長 起立多数。よって、そのように決しました。
 それでは、ただいま議決いただきました中間報告書を私から議長に提出いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十時十九分散会

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