衆議院

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第1号 平成15年10月2日(木曜日)

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本国会召集日(平成十五年九月二十六日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   会長 中山 太郎君

   幹事 杉浦 正健君 幹事 葉梨 信行君

   幹事 平林 鴻三君 幹事 保岡 興治君

   幹事 大出  彰君 幹事 仙谷 由人君

   幹事 古川 元久君 幹事 赤松 正雄君

      伊藤 公介君    奥野 誠亮君

      川崎 二郎君    倉田 雅年君

      河野 太郎君    近藤 基彦君

      佐藤  勉君    下地 幹郎君

      谷川 和穗君    谷本 龍哉君

      中曽根康弘君    中山 正暉君

      長勢 甚遠君    額賀福志郎君

      野田 聖子君    野田  毅君

      平井 卓也君    福井  照君

      水野 賢一君    森岡 正宏君

      山口 泰明君    大畠 章宏君

      桑原  豊君    小林 憲司君

      今野  東君    島   聡君

      首藤 信彦君    末松 義規君

      武山百合子君    中川 正春君

      中野 寛成君    藤島 正之君

      水島 広子君    遠藤 和良君

      太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君

      春名 直章君    山口 富男君

      金子 哲夫君    北川れん子君

      西川太一郎君

平成十五年十月二日(木曜日)会長の指名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。

 最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員

      奥野 誠亮君    近藤 基彦君

      中曽根康弘君    葉梨 信行君

      平井 卓也君    森岡 正宏君

      保岡 興治君    大畠 章宏君

      島   聡君    中川 正春君

      中野 寛成君    藤島 正之君

      遠藤 和良君    山口 富男君

      北川れん子君    西川太一郎君

 最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長            保岡 興治君

 安全保障及び国際協力等に関する調査小委員

      河野 太郎君    近藤 基彦君

      下地 幹郎君    谷本 龍哉君

      中山 正暉君    水野 賢一君

      山口 泰明君    桑原  豊君

      今野  東君    首藤 信彦君

      中野 寛成君    藤島 正之君

      赤松 正雄君    春名 直章君

      金子 哲夫君    西川太一郎君

 安全保障及び国際協力等に関する調査小委員長                中山 正暉君

 基本的人権の保障に関する調査小委員

      倉田 雅年君    谷本 龍哉君

      長勢 甚遠君    野田 聖子君

      野田  毅君    葉梨 信行君

      平林 鴻三君    大出  彰君

      小林 憲司君    今野  東君

      武山百合子君    水島 広子君

      太田 昭宏君    春名 直章君

      北川れん子君    西川太一郎君

 基本的人権の保障に関する調査小委員長                大出  彰君

 統治機構のあり方に関する調査小委員

      伊藤 公介君    佐藤  勉君

      杉浦 正健君    谷川 和穗君

      額賀福志郎君    葉梨 信行君

      福井  照君    島   聡君

      末松 義規君    武山百合子君

      中川 正春君    古川 元久君

      斉藤 鉄夫君    山口 富男君

      金子 哲夫君    西川太一郎君

 統治機構のあり方に関する調査小委員長                杉浦 正健君

平成十五年十月二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   会長 中山 太郎君

   幹事 杉浦 正健君 幹事 中山 正暉君

   幹事 平林 鴻三君 幹事 保岡 興治君

   幹事 大出  彰君 幹事 仙谷 由人君

   幹事 古川 元久君 幹事 赤松 正雄君

      伊藤 公介君    小渕 優子君

      奥野 誠亮君    金子 恭之君

      倉田 雅年君    近藤 基彦君

      佐藤  勉君    谷川 和穗君

      谷本 龍哉君    中曽根康弘君

      長勢 甚遠君    福井  照君

      水野 賢一君    森岡 正宏君

      山口 泰明君    大畠 章宏君

      桑原  豊君    小林 憲司君

      今野  東君    首藤 信彦君

      武山百合子君    中川 正春君

      平岡 秀夫君    太田 昭宏君

      斉藤 鉄夫君    春名 直章君

      山口 富男君    金子 哲夫君

      北川れん子君    西川太一郎君

    …………………………………

   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二日

 辞任         補欠選任

  野田 聖子君     小渕 優子君

  平井 卓也君     金子 恭之君

  島   聡君     平岡 秀夫君

同日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     野田 聖子君

  金子 恭之君     平井 卓也君

  平岡 秀夫君     島   聡君

同日

 幹事中川昭一君九月二十二日委員辞任につき、その補欠として中山正暉君が幹事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 幹事の補欠選任

 小委員会設置に関する件

 小委員会における参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法に関する件


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     ――――◇―――――

中山会長 これより会議を開きます。

 幹事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在幹事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、幹事に中山正暉君を指名いたします。

     ――――◇―――――

中山会長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。

 最高法規としての憲法のあり方について調査するため小委員十六名からなる最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会

 安全保障及び国際協力等について調査するため小委員十六名からなる安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会

 基本的人権の保障について調査するため小委員十六名からなる基本的人権の保障に関する調査小委員会

及び

 統治機構のあり方について調査するため小委員十六名からなる統治機構のあり方に関する調査小委員会

をそれぞれ設置いたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山会長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。

 なお、先例により、会長及び会長代理につきましては、小委員会に出席できることといたしたいと存じますので、御了承願います。

 次に、小委員及び小委員長の辞任の許可及び補欠選任につきましては、あらかじめ会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、小委員会におきまして参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

中山会長 次に、日本国憲法に関する件について調査を進めます。

 この際、米国、カナダ及びメキシコ憲法調査議員団を代表いたしまして、御報告を申し上げます。

 私どもは、去る八月三十一日から九月十三日まで、アメリカ合衆国のカリフォルニア州及び首都ワシントンDC、メキシコ並びにカナダにおいて、その憲法事情について調査をいたしてまいりましたので、その概要につきまして口頭で御報告をし、調査の参考に供したいと存じます。

 この調査議員団は、私を団長に、会長代理の仙谷由人君を副団長といたしまして、中川昭一君、山口富男君の四名をもって構成されました。なお、この議員団には、憲法調査会事務局及び国立国会図書館の職員のほか、二名の記者団が同行いたしました。

 私ども一行は、九月一日、最初の訪問地であるカリフォルニア州の州都サクラメントにおいて、州議会議事堂を視察の後、カリフォルニア州の上下両院議員を経験した後、州政府の総務庁長官を務められたバリー・キーン氏及びカリフォルニア州議会ロビイストであるスコット・キーン氏と懇談し、州知事のリコール及びそれが成立した場合の州知事選挙が行われている最中のカリフォルニア州の政治状況、そしてそれに大きな影響を与える住民参加規定を有するカリフォルニア州憲法の意義と課題について意見の交換を行いました。

 また、翌二日には、全米の中でも日本研究で名高いUCバークレー校におきまして、「衆議院憲法調査会の活動と二十一世紀の日本の憲法」と題する私の講演及び会場参加者との間での質疑応答を行い、その後、場所を移して、スティーブン・ヴォーゲル准教授ら政治学者との懇談、そしてバーネット教授ら憲法学者との懇談を相次いで行いました。

 私は、講演の中で、日本国憲法の制定経緯にGHQが深く関与したこと。戦後半世紀の間における国内外の諸情勢の変化を受けて現行憲法のままで本当によいのかどうか、今まさしくそこが問われていること。そのような観点から、憲法調査会では、象徴天皇制の維持に関しては各会派が合意したものの、九条や憲法裁判所の導入の是非などについては精力的に議論されていることなどを述べました。これに対する質疑応答では、会場関係者から、憲法裁判所を導入した場合の判事の任命の政治性についてどのように考えているのか、九条改正が近隣諸国に与える影響についてはどうか、天皇制維持の理由は何かなどに関する質問が出されました。

 最後に、ヴォーゲル准教授の指名により、仙谷会長代理、山口議員が発言されましたが、仙谷会長代理は、我が国が戦後とり続けてきた軽武装・経済成長路線はもはや通用しなくなってきていることを指摘された上で、安全保障を初めとする国際関係の考慮、これまでの統治の基本システムであった中央集権体制の転換、民主主義の豊富化としての人権保障の仕組み、具体的には、憲法裁判所、人権委員会やGAOなどの仕組みの構築の必要性といった三つの課題を挙げ、さらに、法治国家としてこれ以上の解釈改憲は行うべきではないと述べられました。

 また、山口議員は、日本国憲法の制定過程は、各党の憲法草案の提示、制憲議会での議論、国民の圧倒的な支持など、実に豊かなものであった。天皇制は国民主権と矛盾するものであり、やがて解決されるものとは思うが、現時点では、象徴天皇制にかかわる憲法条項を厳格に運用していくべきである。憲法九条はアジアと世界の平和、安定にとって重要であり、これを守ること、我が国では、日米安保からの離脱を主張する意見こそ多数派であるとする世論調査もあるとの意見を述べられました。

 他方、政治学者及び憲法学者らとの懇談においては、イラク戦争、北朝鮮情勢などをめぐる現在の日米関係に対する認識と評価、頻繁な修正がなされているカリフォルニア州憲法の特徴とこれに対する評価など、実に広範なテーマをめぐって意見交換を行いました。特に、民主党勢力が強いカリフォルニアという土地柄もあってか、ユニラテラリズムの傾向を強める現在のブッシュ政権の対外政策に批判的な意見が相次ぎましたが、憲法の観点から個人的に印象に残ったのは、カリフォルニア州憲法の最大の特徴とされる住民参加規定の運用実態に対する消極的評価でした。

 すなわち、カリフォルニア州憲法においては、一九一一年改正によって導入されたイニシアチブ、住民発案による憲法修正が頻繁に行われており、この制度を利用して行われてきた数々の憲法修正、例えば、固定資産税の上限税率を憲法に定めたり、また、増税法案や予算案の議決には議会の三分の二の特別多数を要するとしたこと。知事、議員の任期を制限し、知事及び上院議員は二期八年まで、下院議員は三期六年までとしたこと。不法移民への福祉制限やアファーマティブアクションの廃止などが次々と行われてきましたが、これらは、州知事及び議会に対する住民の不信感に根差したものであると同時に、少数派政党が州政府、議会に対抗する形でこの住民発案を政治的に利用する傾向が見てとれるといった指摘であります。このような指摘は、前日のサクラメントでの懇談において、バリー・キーン前総務庁長官も指摘したところで、同氏は、このような現象を指して、カリフォルニア州における憲法の危機とまで言い放っておられました。

 我が国でも、特に地方自治レベルにおいて住民参加の主張がなされておりますが、住民自治の観点から仮にこれを導入するという立場に立った場合でも、このような直接民主制の妥当領域はどこか、これと議会への委任を中心とした間接民主制とのベストミックスをどのように図るべきか、さらには憲法裁判所のようなチェック機構をどのように組み合わせて制度設計をするか等々といった観点が重要になってくると痛感した次第であります。

 メキシコでは、その首都メキシコシティーにおいて、九月四日、午前中からお昼を挟んで夕方の午後八時近くまで、セラーノ・メキシコ国立自治大学法学部長、ブルゴア同大学名誉教授、ゴンゴラ最高裁判所判事、前最高裁判所長官、ソラーナ元外務大臣との懇談を相次いで、かつ精力的に行いました。

 セラーノ教授との懇談においては、中央集権派対連邦派、保守派対自由派の相互の対立、変遷を繰り返した十九世紀のメキシコ憲法の歴史を振り返った後、二十世紀初頭のメキシコ革命の後に定められた現行一九一七年憲法の意義について、また、保護請求裁判制度の生みの親と言われるブルゴア名誉教授との懇談においては、この制度の沿革及び意義について、実に熱のこもった詳細な説明を伺いました。

 ブルゴア名誉教授は、この保護請求裁判制度は、1.どのような当局の憲法違反と思われる行為であっても対象となること、2.個人、法人を問わず、権利侵害をなされたと主張するいかなる人も提訴権を有すること、3.したがって、それは各人の権利保護にとどまらず、憲法全体を保障する制度として位置づけられていることという点で特筆すべき制度であることを強調されていたのが印象的でした。

 また、ゴンゴラ最高裁判事との懇談でも、憲法システムを保障する制度として、各人が権利侵害を理由として裁判所に提訴するこの保護請求裁判制度が話題になりましたが、このほかにも、メキシコ憲法においては、最高裁によって抽象的な法令審査権が行使されるものとして、憲法紛争や違憲申し立ての手続が用意されているとの説明もありました。

 衆議院憲法調査会においても、裁判所の違憲審査制度については、我が国の最高裁の違憲審査権行使の消極的姿勢にかんがみて、憲法裁判所制度の導入の是非も含めて、これまで活発な議論がなされてきておりますが、このメキシコの制度の詳細については、後ほど御報告するアメリカ及びカナダの制度ともあわせて、もう少し調査する必要があると感じられました。

 最後に、ソラーナ元外相との懇談では、さきのセラーノ教授との懇談でも話題となったのですが、メキシコのPKO不参加の哲学、アメリカとの対等なパートナーとしての共存にかける基本姿勢が主な話題となりました。セラーノ教授は、メキシコは、国家の安全に関して主権制限にかかわるようないかなる国際条約にも加入していない。したがって、国際連合の枠内であろうと、メキシコの兵士が他国の指揮下で行動するようなことは行わないとの観点から、PKOにも一人の兵士も出していない。その理由は、アメリカという超大国を隣人として、これと三千キロメートルに及ぶ国境線を接している我が国が対等な関係を保とうとすれば、これしか方法はないからだという趣旨のことを述べておられたので、このことについて、私が外務大臣を務めていたときのカウンターパートであったソラーナ元外相に改めて伺いたかったからであります。

 ソラーナ元外相は、1.現在の世界情勢は、アメリカのイラク戦争に象徴される一国のヘゲモニー体制に傾いており、これに対する各国の意思決定はそれぞれに尊重されるべきであるが、我がメキシコは、アメリカに対しても、ノーと言わなければならないときはノーと言うべきであると考えている、2.我が国と日本との間では、現在、FTAの締結交渉が進められているが、今後は、太平洋を挟んだアジア太平洋地域のFTAが現実味を帯びてくるだろうし、日本との関係は政治的にもますます重要なものとなってくるだろう、3.そのようなことを背景にして、国会議員レベルでの恒常的な会合を日本、メキシコの二国間で持つことを提案したいとの趣旨の発言をしておられました。

 次の訪問地ワシントンDCにおいては、九月八日、九日の二日間にかけて、連邦議会、大統領府、司法府それぞれの関係者と精力的に懇談をいたしました。すなわち、連邦議会関係では、その附属機関である会計検査院、GAOのウォーカー院長、議会予算局、CBOのホルツイーキン局長、いずれも下院議員である、レイノルズ共和党選挙対策委員長、チャボット司法委員会憲法小委員長、ネイ議院管理委員長の三人の議員、大統領府関係では国務省のアーミテージ国務副長官、そして、司法府関係では最高裁判所のスカリア判事の計七名の高官、議員であります。

 まず、ウォーカー会計検査院長及びホルツイーキン議会予算局長との懇談では、大統領府に対抗し得る情報を議会に提供し、連邦議会の調査及び立法活動を補佐する組織運営の実態について説明を聴取いたしましたが、その中で、それぞれの組織において、1.客観的かつ的確な情報を提供するよう腐心していること、2.特に、法律によって義務づけられているのは委員会や小委員会からの正規の要請だけであるが、慣例上、少数会派の調査の充実に資するために個々の議員からの調査依頼にもこたえており、これが年々多くなりつつあること、3.ただし、複数の依頼が重複した場合には、法律上の要請を優先することになることなどの説明を受けました。我が国における議院法制局や調査局・調査室、国立国会図書館の調査及び立法考査局などをいかにして充実強化するかを考えたとき、興味を引かれました。

 また、ウォーカー院長は、GAOの独立的かつ効率的な職務の遂行を担保するために、GAOの院長の任期は十五年というかなり長いものとされていること、ちなみに、FRB議長の任期の十四年、FBI長官の任期の十年と比較しても長いことについて付言されましたが、連邦最高裁判事の任期は終身とされていることなどを考えると、議会の補佐機関の独立性確保をどうするかといった点もさることながら、その任期の異常なまでの長さには驚かされました。

 次いで、レイノルズ共和党選挙対策委員長、チャボット司法委員会憲法小委員長、及びネイ議院管理委員長の三人の下院議員と懇談いたしました。

 レイノルズ委員長との懇談では、来年の大統領選挙では景気、経済が最大の争点となるだろうとの意見が述べられ、アメリカの有権者は自分の懐ぐあいで投票するとの発言が印象に残りましたし、また、チャボット小委員長との懇談では、成立に至る憲法修正は極めて少ないが、恒常的に憲法修正案は提案され、審議されていること、現在でも、予算の均衡に関する修正案、犯罪被害者の保護に関する修正案が議論されていること。ネイ委員長との懇談では、下院議員には公設秘書が全部で二十二名いることや、二年間の下院議員の任期の間には秘書の人件費も含め議員一人当たり平均百万ドルの活動費が支給されていることなどが話題になりました。

 アーミテージ国務副長官との懇談においては、同副長官は、訪問の歓迎のあいさつの中で、共産党の山口議員も含めた日本の憲法調査会の議員団にお会いできたことは、私にとって大変に意義深い日であると同時に、このような調査団の構成は憲法調査会の重要性を示すものであり、私は、その設置のときから関心を持って眺めてきたし、その調査結果をとても注目している旨述べられました。

 引き続き、懇談に入りましたが、専らアーミテージ副長官と団を代表して私との間で、日本国憲法九条を中心とした日米関係のあり方、北朝鮮問題に関する六カ国協議の評価と今後の見通し、総裁選挙及び衆議院の解散・総選挙が取りざたされている日本の政局などについて、友好的かつ活発な意見交換が行われましたが、その中で、アーミテージ副長官は、大要、次のようなことを述べられました。

 まず、アーミテージ副長官は、日米関係は、現在、最も良好な関係にあり、また、低迷していた日本経済も徐々に回復しつつあるが、しかし、両国間には、北朝鮮問題も含めて、余りにも多くのしなければならないことがあることを指摘した上で、日米関係については、日本が二十一世紀の日米関係を始めた方法であるショーイング・ザ・フラッグとブーツ・オン・ザ・グラウンドは大変にすばらしい。イラク戦争で日本はアメリカを支持してくれたが、アメリカも、日本が安保理の常任理事国の席を得られるよういろいろな面で日本を支持している。ただし、安保理常任理事国の問題は、集団的自衛権の問題について日本が根本的な決断をしないと難しいであろう。私は、長い間、日本の内閣法制局の憲法九条解釈はもっと柔軟であってもよいのではないかと思ってきた。日本は、主権国家として有している集団的自衛権をみずから制限しているだけであり、その制限解除に関する議論が日本で起きていることは、大変に重要であり、歓迎している。ただし、それはあくまでも日本と日本国民が決定すべき問題であり、どのような決定をしようが、日本とアメリカは同盟国であり、友人であるといった趣旨のことが述べられました。

 さらに、用意していたペーパーに基づき、二〇〇〇年に発表された、いわゆるアーミテージ・ナイ・レポートの次の一節を読み上げられました。

 日本による集団的自衛の禁止は、米日間同盟協力にとって束縛となっている。この禁止を取り払えば、もっと密接で、もっと有効な安保同盟になるだろう。ただし、その決定は日本国民にだけできることである。米国は、日本の安全保障政策を特徴づけている内政上の諸決定を尊重してきたし、今後もそうしなければならない。しかし、ワシントンは、日本がさらに大きな貢献をし、もっと対等な同盟のパートナーになることを歓迎することを明確にしておくべきである。

 また、北朝鮮問題については、先日の北朝鮮の核開発問題に関する六カ国協議では、日米韓ロが協力して、それぞれが確固たる使命を果たしたが、特に、中国がふさわしい役割を果たしつつあり、今後とも、その地位にふさわしい役割を果たすように促していかなければならないだろう。北朝鮮も、五カ国の現実がわかりつつあるのではないか。先日の五十五周年のパレードで新たなミサイルがあらわれなかったのは象徴的な出来事である。しかし、北朝鮮に関しては、何事も確実に言うことはできず、今後の六カ国協議に期待していきたいとの趣旨のことを述べておりました。

 最後に、私から、衆議院憲法調査会を運営するに当たっての中山三原則ともいうべき私自身の心構え、すなわち、この調査会でもたびたび申し上げておりますが、民主主義の堅持、基本的人権の保障、再び侵略国家とはならないことを宣明した就任あいさつを在京の大使あてに英訳して送付したことを披露したところ、アーミテージ副長官は、これに深い理解を示されました。

 また、山口議員から、集団的自衛権の問題など、アーミテージ副長官とは異なる見解を持つが、それは今後の交流の妨げにはならない旨の意見表明がありました。

 スカリア判事との懇談においては、専ら、具体的な事件を前提としてのみ憲法判断をするアメリカ型の付随的違憲審査制度と、具体的な事件と離れて憲法判断を行い得るドイツ型の憲法裁判所制度との比較が話題となりました。

 スカリア判事は、徹頭徹尾、アメリカ型の制度の方がよいとの立場から、ドイツのような憲法裁判所制度においては、裁判所は、法律の解釈を専門とする法律家の領域でなくて立法者の領域に踏み込んでしまうばかりか、政治家同士のホットな議論に巻き込まれることになってしまいかねないこと、また、そもそも司法府の憲法、法律解釈は、原告、被告間の訴訟についての最終的解決ではあっても、決して、合衆国における最高かつ最終的な権威なのではなく、大統領府や議会が、我々の示した解釈を尊重せずに、同じ誤りを犯した別の法律をつくることだって理論的にはできるのであり、これが三権分立なのであるとの趣旨を力説されました。

 この発言の真意を理解するには、大統領制のもと、厳格な三権分立がとられ、かつ、極めて積極的に違憲審査権を行使している連邦最高裁の事情を割り引いて考えなければならないと存じますが、一つの見識であるとは言えましょう。

 なお、最後に、連邦最高裁判所判事の任期が終身であることについては、一たん任命された以上、死ぬか自分でやめるかしない限りその職にあり続けるということは、独立性確保のための極端な制度であるが、そのかわり、その任命のプロセスにおいて、大統領の任命と上院の同意といった形でかなり政治的色彩が強くなっており、これによってバランスがとれているとの趣旨のことを述べておられたのは印象的でした。

 カナダのオタワにおいては、九月十一日に、まず、最高裁判所においてマクラクラン長官及びバスタラシェ判事と、国防省においてロバートソン国際安全保障政策局長らと、連邦議会においてブードリア下院政府総務と、そして枢密院においてクリスティー事務総長補とそれぞれ懇談を行いました。

 マクラクラン最高裁長官及びバスタラシェ判事との懇談においては、特に、カナダにおける違憲審査権行使の実態について話題となりましたが、連邦最高裁の有する独特な権限である参照意見(勧告的意見)制度が印象的でした。

 これは、具体的な訴訟の提起を待つことなく、しかも、法律が制定される前の法律案の段階においても、連邦政府からの諮問、照会に対して、憲法解釈、連邦法、州法の解釈、合憲性等について、最高裁が意見を表明するという制度であります。具体的事例として著名なものとしては、一九九五年実施のケベック州独立の可否に関する住民投票に関して、一九九八年、最高裁が示した、州の一方的独立は認められないとする意見があるとのことでしたが、現在も、同性愛者の結婚を認める法律案に関する諮問、照会があり、検討中とのことでした。ただし、いかなる諮問、照会にも回答を行うのではなくて、最高裁として回答するにふさわしいものにのみ回答することとしている、したがって、政治的問題については回答を拒否するとも述べておられました。

 具体的訴訟を所管する最高裁判所に、一部、憲法裁判所的な機能を付与したものであり、政府部内に置かれた内閣法制局のような組織による憲法解釈よりは透明性が高いと言えそうですが、運用の困難さはひしひしと感じました。

 なお、質疑応答の中では、マクラクラン長官を初め最高裁判事九人中三人の判事が女性であることに関連して、裁判所における女性の割合が話題となりましたが、一般に裁判官で三分の一、裁判所事務官ではその割合はもっと高いとの発言には驚かされました。

 国防省においては、制服組であるロバートソン国際安全保障政策局長と、背広組であるキャロライン・キーラー女史から、カナダにおける国防軍の活動及びPKO等への参加の基準についてそれぞれ説明を聴取した後、質疑応答を行いました。

 ロバートソン局長らからは、カナダの国防軍は六万人と非常に小さいので、PKO等への派遣人数は多くはないが、その比率は米国に次いでかなり大きなものとなっていることなどについて説明を受けましたが、私が特に印象に残ったのは、最後に、私から、制服組として日本の自衛隊と共同行動をした経験のあるロバートソン局長に対し、次のような質問をしたときの局長の発言です。

 私は、日本の海上自衛隊のことをネービーと見ているのか、あくまでもセルフディフェンスフォースと見ているのかとの質問をしたのですが、ロバートソン局長は、海軍士官として答えれば、我々の活動は公海で行われているが、そこでは、どこの国の海軍であろうと自衛隊であろうと、そこで活動するに足りる能力が必要だということだけだ、私の経験から言えば、日本のネービーのような能力を持つ組織と一緒に行動したいとする趣旨の発言をされたからです。

 ブードリア下院政府総務との懇談では、一九八二年憲法改正による憲法のカナダ化の意義、一九九三年発足の現政権の成果である財政改革と議会の近代化(議会の民主化と選挙方法、選挙資金の改革など)について説明を受けました。また、質疑応答の中では、カナダにおける電子政府の進展に関連して、オンブズマンの一種であるプライバシーコミッショナーなる制度が法律上設けられていることにも興味を引かれました。

 しかし、何といっても中心的な話題となったのは、カナダの議院内閣制における政府と与党の関係でした。ブードリア氏のついている下院政府総務という国務大臣の名称が端的にそれをあらわしているとおり、これは、我が国における国務大臣たる内閣官房長官と、与党の国対委員長あるいは幹事長とが一つの職に凝縮しているようなものだからであります。

 なお、これに関する説明の中で特に印象に残ったのは、カナダでも民間人が国務大臣になることは別段禁止されていないが、しかし、その場合には、慣行上、直近の総選挙あるいは補欠選挙に立候補して議員となることが必要とされており、一般には、首相のリーダーシップによって与党議員のだれかを引退させ、その補欠選挙に立候補させることが行われているということでありました。引退させられる与党議員には首相任命の上院議員や大使の職が用意されているのが一般的なようですが、他方、選挙に立候補した民間人の国務大臣が落選した場合には、即大臣を辞任するのが通例とのことでありました。

 最後の訪問先となった枢密院では、クリスティー事務総長補との懇談を行いましたが、そこでは、同氏の職責である枢密院の政府間関係部の業務概要のほか、カナダという国を特徴づける多様性について説明を受けました。カナダの多様性は、よく知られているような言語の多様性、文化的、民族的な多様性だけでなく、人口的な多様性もあり、どこか一極に人口が偏っているということがないこと、同時に、カナダは地方分権・分散の非常に進んだ国であることなどについて、具体的な数字を挙げながら、詳細な実態説明を受けた次第であります。

 以上のような極めて多忙な日程ではございましたが、私ども議員団は無事これを消化し、去る九月十三日帰国いたしました。

 ごく短期間の調査でありましたし、また、各訪問国における調査事項が極めて多岐な問題に及びましたので、ここから何がしか結論めいたことを抽出することはできませんが、しかし、この調査の詳細をまとめた調査報告書は、議長に提出し次第、過去三回の海外調査と同様に、委員各位のお手元にも配付いたす所存でございますので、残すところあと一年余りとなりました本調査会の今後の議論の参考に供していただければと存じます。

 今回を含めて四回の海外調査を合わせると、これまで合計二十七カ国の憲法事情を調査いたしたことになりますが、いずれの国においても、憲法のありようが国のありように直結して国民的な議論がなされていることを、私自身、改めて認識させられた次第です。

 最後に、今回の調査に当たり、種々御協力をいただきました各位に心から感謝を申し上げますとともに、充実した調査日程を消化することができましたことに心から御礼を申し上げたいと思います。まことにありがとうございました。

 以上、簡単ではありますが、このたびの海外調査の概要を御報告させていただきました。

 引き続きまして、派遣議員から海外派遣報告に関連しての発言を認めます。

 なお、御発言は五分以内にまとめていただき、自席から着席のままお願いをいたします。

 仙谷由人君。

仙谷委員 私の方から、会長のただいまの報告に追加をして、感じたことを若干申し上げたいと存じます。

 先ほど会長の方から、アメリカの憲法事情調査の中で、スカリア最高裁判事との懇談の概要の項がございました。つまり、具体的な事件を前提にしてのみ憲法判断をするのがアメリカ型の付随的違憲審査制度であって、その方が好ましいといいましょうか、いいんだという趣旨の発言がスカリア最高裁判事との間であったわけですが、実は、先ほどのチャボットさん、それからレイノルズ委員長との懇談の中で出てまいりましたのが、現在、アメリカの連邦最高裁に、選挙資金改革法が違憲判断を求められて係属しているということでございました。私どもが行った前日だったんでしょうか、弁論が開かれたということでございました。

 ちょっと興味がございましたので、どういう裁判なのかということを大使館の担当者に調べてほしいということを申し上げまして、その結果、帰国後、私のところへ到着しましたのが、お配りしております「選挙資金改革法違憲訴訟について」という用紙でございまして、ここで「原告・被告」をごらんいただき、なおかつ「2.訴訟物」というところに書いてございますものをごらんいただきますと、明らかにこれは、具体的な事件ではなくして、法律そのものを、つまり制定された法律そのものの違憲性を争う裁判という構造になっております。宣言的判決を求めるということのようでございます。

 そのようなことがなぜできるのかというのは、この二枚目の(2)に書いてございますが、「二〇〇二年選挙資金改革法では、第四百三条に同法の憲法適合性を争うための宣言的判決又は差止命令に関する手続を定めており、これが本件訴訟の制定法上の根拠となります。」つまり、建前上は具体的な事件がなければ、具体的な争訟の中で憲法判断が行われるんだということになっておるわけでありますが、具体的な事件が起こる前に、この一枚目の、「主な原告」「連邦議員」というふうに書いてございますが、法律そのものを、議員やあるいはそれに影響を受ける政党組織、各種団体が、法律の違憲的な、違憲であるという宣言を求めて争訟を提起できる、そこで連邦最高裁判所がその争点について判断する、こういう構造でございますし、それを法律の中に書き込めばそういう裁判ができる、つまり抽象的な違憲訴訟ができる、こういうことになっているというのがアメリカの実態であるということがわかって、ある種の驚きとともに興味を抱いたわけでございます。

 ちょっと資料を皆さん方にお配りしてございませんが、メキシコ憲法にも百五条の二項というのがございまして、一般的な性格を有する規範と憲法との間に、抵触を訴えることを目的とする違憲の訴訟を、例えば連邦議会によって制定された法律について、連邦議会下院の構成員の三三%が賛成すれば法律の違憲性そのものを提起できるというふうな規定があるようでございます。

 したがいまして、各国とも、ある種でき上がった法律そのものの違憲性を争うということがやはりどこかで行われなければならないということが、どうも現代社会では築かれているようであります。

 それからもう一つ、先ほど会長の報告にもございました、カナダのいわゆる最高裁判所の参照制度、これは、法律ができる前段階でも最高裁判所の憲法判断を求めることができるということでありますが、これは非常に詳しい論文を憲法調査会の事務局の方で探していただきましたので、それも資料としてつけてあるわけであります。

 この一連のこの種のものを拝見いたしまして、私はやはり、そろそろ、日本の内閣法制局があたかも憲法の公権的解釈権を持つかのような、そしてそれが国民の目に見えないところで行われるような仕組みというのはどうしても考え直さなければならない。つまり、カナダのようなオープンな形で公権的なある種の解釈が立法時に示されるか、あるいは、法律がつくられた後に議員や政党の申し立てによってその違憲性が、抽象的なレベル、つまり法律のレベル、法律が適用される前段階で合憲性の判断が行われる、いわば憲法裁判所的な機能なわけでありますが、それを最高裁判所なり司法の中なりに、あるいは別の格好でつくっていくということも甚だ重要なんではないかということを感じた次第でございまして、そのことを重ねて御報告申し上げておきたいと存じます。

 以上でございます。

中山会長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 私は、アメリカとメキシコでの調査に参加しましたので、感想の一端として二点述べたいと思います。

 まず第一点なんですが、今回の調査は、アメリカの先制攻撃戦略がイラク戦争という形で発動された直後でしたから、日本でも世界でも、憲法や国連憲章など基本法とのかかわりが非常に鋭く問われる中での調査になったと思います。そのために意見交換の主題の一つも、ごく自然な形で、アメリカの単独行動主義に対して世界はどう臨むのか、その際、各国は、法規範としての足場をどこに見出すのかなどに置かれるようになったと思います。

 カリフォルニア州立大学バークレー校での懇談では、ブッシュ政権の対外政策への批判が相次いで出されましたし、メキシコでは、ソラーナ元外相がアメリカの一国主義への強い懸念を表明されていました。また、メキシコですけれども、セラーノ教授からは、ヘゲモニー主義に同調しないメキシコの憲法原則と同国を取り巻く歴史状況について説明を受けました。

 先ごろの国連総会で、アナン事務総長や各国からの批判の言明に見られますように、アメリカの先制攻撃戦略は国連憲章に反しており、国際協調を揺るがすものになっております。

 日本は憲法で恒久平和の原則を打ち立て、九条では、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」した国として、国連憲章に反する事態を黙視しない明確な立場を持っております。この原則からいっても、私は、イラク戦争への自衛隊の派遣は行うべきではないと考えております。

 先ほどの会長の報告でも紹介されましたが、私は、バークレー校での発言で、憲法九条を守り抜くことが世界とアジアの平和と安定にとって極めて重要だという意見を述べました。あの会場ではアジアの留学生たちから、意見表明後、憲法九条を大事にしていただきたいという激励を多数私はいただきました。このことは私にとって、世界とアジアの願いを実感する得がたい経験になりました。

 以上が感想の第一です。

 感想の第二ですが、各国の憲法は、当たり前のことですけれども、その国の歴史と文化、政治的経験を踏まえたものであると同時に、二十一世紀に通用する国際的な普遍性を持っています。このことも今回の調査で認識を新たにいたしました。

 アメリカでは、議会でも司法でも、徹底した三権分立の生きた姿を、短期間ではありましたけれどもかいま見ることができましたし、またカリフォルニアでは、あの州が独立後、連邦に参加したということを背景にして、州憲法の独自の意義が強調されていたように思います。

 また、メキシコでは、ワイマール憲法に先駆けて社会権、労働権の保障が明記されましたが、これを生み出すには二十世紀初頭のメキシコ革命に至る波乱の歴史があったと、詳しい説明を受けました。またセラーノ教授からは、メキシコでは、憲法で定められた法規範が実現していない場合も、規範を変えるのではなく、そこに近づく努力をすることが憲法に対する態度だということが述べられたことも大変印象的でした。

 このように、私としましては、今回の調査では、それぞれの国が憲法と向き合い、また世界と自国の現実と向き合いながら憲法問題について考えている、また事に当たっている、そのことを痛感させられる調査になったというふうに思います。

 以上二点、感想を述べまして、私の報告としたいと思います。

中山会長 これにて派遣議員の発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中山会長 次に、委員各位による自由な討議を行います。

 本日は、日本国憲法について、委員各位からの自由濶達な御意見を拝聴したいと存じます。

 議事の進め方でありますが、まず、各会派一名ずつ大会派順に五分ずつ発言していただき、その後、順序を定めず自由討議を行いたいと思います。

 御発言は、自席から着席のままお願いいたします。

 発言時間の経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、保岡興治君。

保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。

 憲法調査会は、平成十二年一月二十日の設置以来、調査会や小委員会での議論、地方公聴会、海外調査などを精力的に行い、第百五十五国会においては、「概ね五年程度を目途とする。」とされている本調査会の調査期間のおよそ半分が経過したこと等から、国民に対し調査会の活動内容を明らかにし、国民の間でさらに憲法論議を喚起するため、中間報告を取りまとめたところでございます。

 私も、この間、地方自治に関する調査小委員長、最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員長を務めさせていただき、委員各位と真摯な議論を行ってまいりました。ここで、これまでの調査会での議論等を通じて、私なりの感想を幾つか申し上げさせていただきます。

 憲法を論議することは、まさにあるべき国家の姿を考えることであり、現在の我が国に求められているのは、西洋に追いつき追い越せという明治以来の欧米モデルによるのではなく、新たな国の形を定める独自モデルを構築することであります。その際、遠くは明治憲法制定過程における朝野の幅広い議論、範を欧米に求め成案を得た先人の労苦に思いをいたすことも必要かと思います。

 新しい国の形を考えるに当たっては、そのような観点から、地方自治のあり方についても抜本的に見直す必要があると感じています。とりわけ、中央官僚主導体制の見直し、道州制の導入の総合的、体系的検討は喫緊の課題であると認識しております。

 さらに、この独自モデルを構築するに当たっては、日本のよさを振り返る、すなわち日本国の歴史、伝統、文化を踏まえるべきであり、その意味でも、権利のみを主張し、国家、社会、家族への責任と義務を軽視する風潮を改め、国民一人一人が自己責任原則に基づいてみずからの自由を実現する社会を目指すべきであります。そのためにも、我が党の山崎副総裁が主張されているように一人幸せ主義を改め、もう一度、国家や社会、家族という共同体における義務、責任について考えてみる必要を強く感じています。

 また、グローバル化が進展し、国際関係が緊密になっている現代では、日本の平和と繁栄が近隣諸国と無関係には成立し得ないこと、緊迫度を増している国際情勢を踏まえ、平和と安全を武力により担保することもあり得ることを認識した上、一国平和主義を改め、憲法九条二項の削除、個別的、集団的自衛権の権利及び自衛隊の存在、並びに国際秩序の形成や平和の維持への貢献の憲法への明記を真剣に検討すべきであると考えています。

 さらに、統治機構の問題に関しては、国内外の新たな課題に対して迅速な対応が必要とされる現代社会において、政治主導という観点から、両院制、議院内閣制、政党のあり方等について議論を深め、明確かつ迅速な憲法判断を行い、国民の規範意識をさらに向上させるため、何らかの形で憲法裁判所的機能を創設することを検討する必要性を強く感じました。

 本調査会においては、憲法九条に関する問題や象徴天皇制に関する問題等、かつては議論することすらもタブー視されていた問題についても、各会派の委員の方々と有意義な議論を重ねてくることができました。これは大変すばらしいことだと思います。

 本調査会の調査期間は、設置時の申し合わせにより、おおむね五年程度をめどとされており、平成十七年一月にはその五年となります。調査も最終段階に入りつつあると感じておりますが、我が党としても、近く予想される総選挙において政権公約に、平成十七年秋の立党五十周年までに、二十一世紀の憲法を制定すべく、平易で格調高く表現された憲法改正案を取りまとめ、内外に法としての国のあり方を明確に示すことを掲げることにしております。また、憲法改正の国民投票法についても、それまでに各党の協力を得て成立を目指したいと思っております。

 そのためにも、中山会長を初め委員各位とともに全力を尽くし、日本のあるべき姿、すなわち、憲法はどうあるべきかを考えていきたいということを申し上げ、私の意見表明とさせていただきます。

 ありがとうございました。

中山会長 次に、古川元久君。

古川委員 民主党の古川元久でございます。

 私ども民主党の中で、この調査会の会長代理でもあります仙谷議員を会長にいたしまして政権準備委員会というものを設けまして、そこで私ども民主党が政権をとった場合にどのような政府をつくるのか、「国民と共に行動する「新しい政府」の確立に向けて」という報告書を先日発表いたしました。これは私、憲法に規定する行政権、内閣のあり方ともかかわる話だというふうに思いますので、本日は、その報告書をベースにして、ここで一言意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 まず、憲法六十五条における行政権は、さきの国会の中での統治小委員会でも少し私、述べましたけれども、本来、英語で言えばエグゼクティブパワー、日本語にすれば執行権と言うべきそういうものを意味しているのではないか。ですから、これは英語で言うアドミニストレーティブパワーであります行政権とは本来区別して認識されるものであり、内閣が行使するのはこのエグゼクティブパワー、執行権であるというそうした視点から、私どもは、内閣が構成されて、そしてその内閣が政府を運営していくべきというふうに考えております。これは、イギリスやドイツのような、いわゆる宰相システムという立場に立つものであります。

 この宰相システムとは、例えばイギリスの首相のように、他の閣僚の上に立つ。イギリスの首相は、他の閣僚たちの上に立つ第一人者でありまして、与党議員の投票によって辞任に追い込まれることはありませんから、こうした仕組みの中では、閣議で首相の権限を制約するシステムではないため、首相主導の内閣運営が可能になっております。私どもは、この日本でも、このようなイギリスやドイツのような宰相システム型の議院内閣制を日本の政治に開花させるべきだというふうに考えております。

 そうした視点から、日本の首相というものも、内閣の首相を第一人者としてみずから政府を運営し、部下としての大臣を自由に指名し、また自由に罷免する、そういう能力を持たせるべきである。首相に問われる最大の資質は、政府を運営し、強い力でリードするにふさわしい施策を確保するというすぐれたチーム編成能力が求められる、そして、このみずから編成したチームのリーダーとしてイニシアチブを発揮し行動する、そのことができることによって、私どもは、政府が行動力と変革力を持つことができるというふうに考えております。

 こうした視点から、これまでの自民党中心の政権の運営のあり方というものを検証してまいりますと、なぜ、従来の政権の中では現在の日本に必要な改革がなかなか実現できないかというところが明らかになってまいります。

 これまでの自民党中心の政権の中では、権力の二重構造が存在をしてまいりました。その権力の二重構造とは、第一に、政府と与党の二元体制であります。政府の方針と与党の方針の相違がこれほどまでに頻繁に起こって、それを容認するような政府は、世界じゅう見渡しても存在いたしません。

 また第二に、首相と各大臣の二重構造というものもあります。建前として、内閣は連帯して責任を負うということになっておりますけれども、現実には、各大臣は、首相や同僚閣僚との一体性などよりも、それぞれの代表する役所の官僚機構の利害を明らかに優先させるようなそういう傾向があります。

 そして第三には、政と官の分離、官僚主導の政策運営であります。相変わらず、官僚機構は政治の意思あるいは国民の意思とかけ離れた行政を行い、残念ながら、政策立案や予算策定を霞が関、とりわけ行政各部、すなわち各府省庁に依存する官僚主導の政治運営が続いております。

 こうした状況の中、三つの権力の二重構造がある中では、政策決定の責任の所在はことごとくあいまいなものとなり、それがまた族議員と天下り官僚の暗躍を許す、いわゆる政官業癒着の構造が放置される、そうした原因になっております。

 したがいまして、私ども民主党は、こうした政府のあり方を変えることなくして本当に政治や政策を変えることはできない。そうした視点に立ちまして、私ども民主党が政権をとった場合には、与党と内閣の意思決定の一元化を図り、国民が選出した政治主導の政府運営を確立することができる、そうした新しい政府というものを実現していきたい。そのことを、私ども政策として掲げるマニフェストとともに、これも政府の形、新しい政府の形も私どもが掲げる政権公約として、来るべき総選挙を戦っていきたいということを申し上げて、私の意見表明とさせていただきます。

 ありがとうございました。

中山会長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 イラク事態を前にしまして、自衛隊の派遣というものをどうするつもりかということを防衛庁の幹部と話した際に、私は聞いてみました。その際に、その幹部は、政治が行くと決めたのだから、行かないと、諸外国からは、危なくなったから日本は来ないと見られて、日本は臆病でありひきょうだと言われるとの発言がありました。非常にある意味正直な発言だったと思います。一般的に、今回の事態を前に、行かせるな、行くべきではないという声は強いと思います。私自身も、危ないところに行くのは、臆病、ひきょうの次元ではなくて、無謀だと言っております。

 ただ、それでもなお、それでいいのかという思いが残ります。今回のケースをまたずとも、外国からは、日本は、いわゆる危ないことをやらないために憲法を口実に使っているのではないかとの疑いの目で見られかねないとの指摘が常になされます。危ないところに行かないというよりも、武力行使との一体化と見られることはしてはいけないという旧来の日本の平和主義というのは、それでいいのだろうかという思いは私にも強くあります。

 先ほどの会長からの海外の視察報告にもありましたが、アメリカのアーミテージ氏が、長い間、日本の内閣法制局の憲法九条解釈はもっと柔軟であってもいいのではないかと思ってきたというくだりがありました。これは別に、アーミテージさんのこういう発言をまたずとも、日本の中でもそういう指摘はかなりいろいろな場面でよく指摘をされていることであります。

 私は、そういう意味で、憲法九条についての改正云々を言う前に、憲法九条についての現時点の正確なる解釈というものをしっかりと、内閣法制局だけに任せないで、みんながきちっとこれについて取り組むべきではないのか。その際に、いわゆる縮小解釈的解釈というもの、もちろん拡大解釈もいけませんけれども、そういった拡大、縮小双方からの解釈ではなくて、適正なる解釈というものをしっかりこの際確立する必要がある、そんなふうに思います。

 そういう観点から、昨今、いろいろな議論が論壇でもなされておりますけれども、大変興味深い指摘がありました。それは、元駐米大使の栗山さんが、「外交フォーラム」あるいは読売新聞等に発表していた論稿でありますけれども、一言で言うと、憲法九条と常識というものを両立させるべきである、こういうふうな指摘であります。例えば、自衛権とは、領域防衛に限定された権利ではないんだ。自衛権とは、領域防衛に限定された権利ではないといった主張の中で、PKO協力法のもとで停戦監視のために紛争地域に派遣された国際平和協力隊が、ゲリラに襲われた近くの第三国の部隊を救助する目的で武器を使用することなど正当な自衛行為だというのが国際社会では当然だけれども、それが日本では通じないということをどう乗り越えるかが問われている、こんなふうな指摘がありました。

 私も極めて、このことだけではありませんけれども、一般的に日本が今直面している課題、いわゆる憲法をもとにそれをどう解釈するかということと、世界における、国際社会におけるいわゆる常識というものとの乖離があるな、そのことをどう乗り越えていくかというのは、真正面から憲法改正というのではなくて、憲法九条のもとできちっとした解釈を今の時点で確立する必要があるな、そんなふうなことを痛感している次第でございます。

 以上です。

中山会長 次に、春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章でございます。

 本調査会でも繰り返し議論となりました、イラク戦争と世界の平和秩序、世界の激動の中での日本国憲法九条の値打ちについて発言をいたします。

 日本共産党は、イラク戦争に対して、これが国連憲章の平和のルールをじゅうりんする不法不当な戦争であると一貫して批判してまいりました。

 米英が戦争の大義とした大量破壊兵器は六カ月たった今も見つからず、五月から捜索に当たってきたアメリカの調査団すら、その存在を確認できないとの中間報告をまとめると報じられています。六千人以上のイラクの市民を殺した戦争の最大の大義が崩れているのであります。

 不法な戦争の上に不法な占領を続ける米英軍に襲撃が続き、大規模な戦闘が終結したとされる五月一日以降の米軍死者がそれ以前より多数に上るなど、泥沼状態が一層深刻化しているのであります。

 一方、世界の流れはどうでしょうか。世界の政府の約七割が公然とイラク戦争反対の声を上げ、戦争開始前から、数千万という空前の規模で戦争を食いとめる諸国民の運動が広がりました。

 九月二十三日に開かれた国連総会で、アナン事務総長は、国連憲章五十一条は、攻撃された場合、すべての国が自衛の固有の権利を有することを規定している。しかし、これまでは、国家がそれを超えて、国際の平和と安全へのより幅広い脅威に対処するために武力の行使を決定するには、国連が与える特別の正当性が必要だと理解されてきたと述べ、続けて、こうした理解はもはや通用しないと唱えている国がある。国家には先制的に武力を行使する権利と義務があり、国家は安保理での合意を待つ義務はなく、かわりに、単独で、あるいは臨時の連合を組んで行動する権利を保持しているということになる。この論理は、たとえ完全でないにしても、過去五十八年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則、これは国連憲章の原則ですが、に対する根本的な挑戦であると批判しました。もしこれが受け入れられるなら、それが先例となって、正当性のいかんにかかわらず、単独行動主義による不法な武力行使の拡散を招く結果になることを懸念すると重大な言明を行いました。

 アメリカの先制攻撃は国連憲章への根本的な挑戦である、このアナン氏の演説を深く受けとめる必要があります。

 また、合法的、集団的な意思で答えを出さない限り解決策は困難、南アフリカ・ムベキ大統領。多国間システムは民主主義の実践に必要、ブラジル・ルラ大統領。開かれた世界では、どの国も孤立してはならないし、全員の名で単独行動を行うことはできない、フランス・シラク大統領など、批判が相次いだのであります。

 アメリカの国連憲章無視の先制攻撃戦略、単独行動主義は許されない、国連憲章に基づく平和のルールを、ここに今世界の大きな流れがあるのであります。

 この国連憲章の精神を軍隊を持たないところまで推し進めたのが日本国憲法九条であります。日本がやるべきことは、今こそ、九条に沿って、世界の平和秩序を守り、構築する先頭に立つことであります。無法な戦争をいち早く支持し、世界の流れの逆流となっているその恥ずべき姿勢を反省し、戦争支持の撤回、自衛隊派兵計画の中止、イラク特別措置法廃止に踏み出すべきであります。米英軍の占領支配から、国連中心のイラク人の手による復興へと道を切りかえるために力を尽くし、非軍事の人道支援に全力を挙げることが必要であります。

 ところが、この時期に小泉首相は、二〇〇五年十一月の自民党結党五十周年の大会までに自民党としての改憲案をまとめることを指示し、本調査会でも多くの議員から、九条を変えよという発言が相次いでいます。世界の流れを見ないものであります。

 歴代自民党政権は、後方地域支援だから武力行使と一体にならない、憲法違反ではないとの詭弁を弄し、周辺事態法、テロ特別措置法、有事法制、イラク特措法など、米軍とともに自衛隊が海外で行動する法律を既に次々強行してまいりました。

 今、九条を変えようという最大の動機は、その一線をも踏み越え、集団的自衛権を行使し、米軍が地球的規模で行う戦争に自衛隊が何の制約も歯どめもなく参加できるようにすることにあると言わざるを得ません。先制攻撃、単独行動主義を戦略にするアメリカにつき従うための憲法改悪は、日本の平和を脅かすとともに、アナン事務総長の言葉をかりますと、国連憲章の原則に対する根本的挑戦とならざるを得ないことを胸に刻むべきであります。

 日本共産党は、憲法九条を守り抜き、今こそ、この九条を持つ国として、世界に生まれている平和のルールを守れとの流れの先頭に立つことを改めて表明いたしまして、私の発言といたします。

中山会長 次に、北川れん子君。

北川(れ)委員 社民党・市民連合の北川れん子です。

 アフガニスタン戦やイラク戦はまだ終了しておらず、しかも、反テロ世界戦争は北朝鮮やイラン、シリアなどに拡大する危険性を残しています。

 イラクに駐留するアメリカ兵、イギリス兵の犠牲者が毎日のようにふえています。兵隊だけが犠牲になっているのではなく、それを上回るイラクの一般市民が犠牲になっています。報道では少なくとも七千人以上との数字が出されており、軍事力という力だけを振りかざした結果が対立を生み出しているイラクの現状を見ると、軍事力だけでは、イラクの一般市民どころか、治安のためだとイラクに駐留する諸外国の兵士の安全すらも確保できないのが現実です。やはり、軍事力だけでは決着がつかないことを世界に発信した戦争であり、一方的な襲撃であったと思います。

 現在、日本の自衛隊は、地震や台風などの災害緊急出動や国土保安のために人々に必要な存在として認識されています。他方では、近年、平和憲法の理念からかけ離れ、軍隊としての色彩を強めつつもあります。

 小泉総理の改憲発言を初め、雰囲気的反護憲論が蔓延している中、平和主義を弱体させるような改憲を行うことは、日本が反テロ世界戦争にさらに本格的に参戦したり、その戦場となったりする危険を著しく高めていくと思います。だからこそ、平和憲法の理念のもとで、今ある問題をどう解決に向けるのかについて、政治の場で議論することが必要ではないでしょうか。

 阪神大震災直後、被災地に来られた自衛隊の方々や消防隊の方々の働きを見て、違いを確認しました。消防隊の方々はみずから判断し救助活動に取りかかるのに、自衛隊の方々は命令がないと動きません、動けないのです。被災者の目から見ても、両者の違いが鮮明に浮かび上がってきました。それに、最も大きな違いは、消防隊は地域密着型であるため、路地裏までも知り尽くしているということです。身近な存在としての安心感は、あのような折、とても大切なものでした。

 九条を使命とするのか、破壊や敵を想定しての行動を使命とするのかでは、大きな開きがあります。自衛隊の武器がどちらに向けられるのかという点もあり、関係において緊張感が強いられます。命令口調であることも気になる点です。

 小泉総理は、二十九日の本会議で、イラクへの自衛隊の派遣については、自衛隊を戦闘地域に派遣せず、また、派遣された自衛隊が戦闘行為に参加しないというイラク復興支援法の原則を堅持しながら、現地情勢の調査結果などを踏まえて派遣の可能性、時期などを判断する、イラク復興支援は国際社会の重要課題であり、国際協調のもと、我が国にふさわしい貢献を行ってまいりますと答弁されていますが、今のイラクの情勢の中でイラクに自衛隊を派遣することが我が国にふさわしい貢献なのでしょうか。

 大量破壊兵器は見つからず、イラク戦は違法であり、人道に反した侵略戦争以外の何物でもありません。イラク市民、医療関係者が求めているのは、医療貢献、殊に、劣化ウラン弾に汚染されているため、被曝治療、小児がん、白血病治療など、いち早く日本は名乗りを上げるべきです。

 国民は、専守防衛、軍事大国化しない、非核三原則、文民統制などの理念のもとで自衛隊という存在を認識しています。しかし、他方では、専守防衛の枠を超え、クラスター爆弾の存在などが示すように、私には踏み外しているとしか思えません。クラスター爆弾は、十六年間で百四十八億円を使い、現在、国会に報告のないまま保有していることもわかりました。

 また、ストックホルム国際平和研究所がことし六月に出した二〇〇二年の各国の防衛支出費を比較した資料では、日本は、一位アメリカの七分の一で、世界の六%を占める世界第二位の軍事大国になっています。国民一人当たりの国防費、日本は四万二千百二十円、アメリカは十四万四千六百八十円で、軍事大国が何かについて定義が難しいことは承知をしていますが、現実にも日本の防衛支出費は国際的に非常に大きいということを考えれば、何の歯どめもないことが気にかかります。

 私は、去年一月、テロ特措法によりインド洋に派遣された自衛隊への視察をみずからしたいと防衛庁に申し込みましたが、自衛艦の位置がわかるから、防衛上、軍事上の機密だという理由で拒否された経験を持っています。自衛隊は、軍事機密という言葉一つで情報公開が当たり前のようになされていません。自衛隊員一人一人の人権が自衛隊の中でどう守られているのかを検証するためにも、情報公開の徹底は可及的速やかにされなければいけない課題だと思っています。年間六十人もの自殺者がなぜ出るのかも追及しなければならない問題です。

 テロの温床となる貧困などの構造的に根深い問題に対して、とりわけ中東諸国との友好な関係をこれまで築き続けてきた我が国の役割を打ち捨て、単純な対立の図式を国際関係の中に固定化することに寄与する必要は全くないと考えます。

 もはや、現在において一国の問題が世界的な問題になることは、イラクの問題だけに限らないことは明らかです。だからこそ、一つの国の問題にすぎないとしても、一つの国の問題だからと切り捨てることなく、国際協調の枠の中で慎重に取り上げるべきです。大国が軍事力を振りかざしたり、対立の図式の中に問題を矮小化することは、問題を解決への道から遠ざけるばかりです。

 日本は、ASEAN地域フォーラム、ASEANプラス3における安全保障面での情報の交換や対話を重ね、アジア地域において具体的な信頼醸成措置や予防外交に向けた取り組みなど、協力が着実に進展してきました。国際協調のもとで……

中山会長 北川れん子君に申し上げます。

 申し合わせの時間が相当経過しておりますので、結論をお願いいたします。

北川(れ)委員 申しわけありません。

 二国間のみでなく、あるいは多国間という重層的な対話の窓口を築きつつ、懸念の解決に向けてはさまざまな道筋を模索し、着実に進展させることが、今のような状況であるからこそ、遠いようで唯一進むべき道ではないでしょうか。北東アジアの非核宣言をさらに推し進めてまいります。

 平和憲法を持つ日本、平和憲法の理念を生かすことを課せられた日本として、日本がこれまで積み重ねてきた先見的な努力こそが今生かされるべきと考えます。

 長くなり、申しわけありませんでした。

中山会長 次に、西川太一郎君。

西川(太)委員 私は、先ほど中山会長、仙谷会長代理、山口委員からの御視察の御報告を拝聴して、まことに御苦労さまでございましたとまず御礼を申し上げたいと存じます。

 現在の日本国憲法が日本にほとんど発言権のない状態でつくられたことが、日本の独立自主の精神を弱め、日本のあり方をあいまいにし、日本人としてのアイデンティティーの喪失にもつながっておると私は嘆いております。

 二十一世紀、日本の国づくりを進めていくには、広く国民各層の参加のもとに、日本の歴史、伝統、文化を改めて踏まえつつ、みずからの国を守り、国際社会の責任ある一員として行動できる国づくりの根幹をなす憲法の制定、改正、不可欠だというふうに考えております。

 私は、二〇一〇年くらいまでに、二十一世紀日本の国づくりの根幹をなす新しい憲法の制定を目指していったらどうかと考えております。これは、単なる部分的な憲法の現在の精神を丸取りしてそして改正をするというびほう策ではなく、根本的に新しい憲法を制定するべきだという意見であります。

 ただ、その中で、現行憲法の中でも、私どもが考えております、維持発展をさせなければならない主義、原理、こういうものは当然ございます。例えば、言うまでもなく、国民主権、そして恒久平和主義、国際協調主義というものは、これは不磨の大典にふさわしく維持発展させるべきと思っております。

 ただ、新憲法の中で、私は、例えば緊急事態に対する国家的危機管理体制の明確化というもの、自衛隊の憲法上の明確な位置づけ、集団的自衛権を国家に生得のものとして、ギブンのものとして与えられているという姿勢を明確にすることが必要であるというふうに考えます。

 同時に、環境でございますとかプライバシーの保護の問題、また私どもは、若干今元気がありませんけれども、しかし、依然として世界で指折りの経済の力を持っているわけであります。こういう力を国際社会における責任の面でどのように活用し、その役割を果たしていくかということを明確にするべきだというふうに考えております。

 新しい憲法を制定するために、現在の方式ではなくて、新たな憲法改正国民投票法のような手続を決定する法律を私は考えておりまして、これをいずれ明確にしていかなければならないと思っております。

 最後に、先ほど会長がサクラメントでカリフォルニア州の有力な方とお話をされたということを伺いました。アメリカ合衆国におけるカリフォルニア州は、仮に独立をすれば世界で十番目の国に匹敵する経済的力を持っています。それに比肩して我が国の首都東京は、独立すれば世界で七番目の経済的な力を持ちながら、地方分権上いろいろな制約があります。

 私は、十六年間の都議会議員の経験を持つものでありますが、東京のその力が実に十分に発揮されていない。これはひとり東京のみならず、各道府県同じくであろうと存じております。

 例えばカリフォルニアなどでは、銀行を設置することも州の権限で自由にできます。また、産業を興す際のいろいろな手だても、国に一々許可をとるという方式なく産業を興しております。

 そのようなことを考えたときに、地方分権というものの必要性を、そんな切り口から改めて見てみる必要もあるのかなというふうに今の段階では考えております。

 以上でございます。

    ―――――――――――――

中山会長 次に、委員各位からの御発言に入ります。

 一回の御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、会長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 それでは、ただいまから御発言をお願いいたしたいと存じます。御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。

大出委員 民主党の大出彰でございます。

 私は、基本的人権の調査小委員会の小委員長ということで、委員会の交通整理をさせていただいてまいりました。御協力をいただきました皆様には感謝を申し上げます。

 それで、委員長でしたので、余り発言の機会は多くなかったんですけれども、やっていまして、委員長をやると何となく憲法の番人的な感覚になるんですね、これが。

 基本的人権のところを見ていて、どうも条文に書いてあることが本当にそのとおり人権として守られるといいますか、普遍化されているか、あるいは皆さんにとっていいようになっているのかというと、必ずしも書いてあることが実行されていない。金子委員がよく前に、運用の実態を調査すべきだとおっしゃっていましたけれども、本当に実際は、書いてあるのに現実にはなっていないというのは結構あるわけですね。私も質問したときに、二十八条なんかのいわゆる労働基本権なんかでも、消防職員の団結権がなかったりとかしていますからね。そういうのがありまして、基本的人権でもかなりあるわけです。

 逆に、新しい人権みたいなものの場合は、参考人の先生方などはそんなものは要らないと言う人もおられたりしましたけれども、新しい人権、環境権とか知る権利という、解釈では認められていますが条文に書かれていないようなものは、むしろ書いた方が裁判規範になるんだろうというような感じは受けるんですね。

 基本的人権だけじゃなく言いますが、九条なんかはまさに憲法条文と違う解釈がされているという、読んだだけで言えばそういうことですね。

 私が委員長をやりながら思ったのは、政治の部分と憲法の部分が大変ぶつかるわけですね。例えば、国内政治であれば人を殺せば殺人罪になるんだけれども、国際政治の場面になるとそれもありというのが今現実になっていることなんですね。だけれども、こういうのは、国際政治の国内政治化といいますか、それをやはりやるべきで、国際刑事裁判所というようなものがやはり重要なことになるんだろうと思うんですね。人権だ環境だと言いながら、戦争というのは一番の環境破壊だったり人権破壊だったりするので、非常に矛盾するんですね。そういう意味では、国際政治の国内政治化ということがやはり重要なんだなとつくづく思うんですね。

 そして、今度は財政の方に参りますけれども、八十三条に日本では財政が憲法で規定されているんですが、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、」こうなっているんですね。一般予算は今七十八兆円あるんですね。これは議決しているんですよ。ところが、この国の本当の予算は何かというと、特別会計から始まって、財投から始まって、補助金から始まって、帳簿上を行ったり来たりしますから、大体二百六十兆から二百七十兆というのが本当の財政なんですね。これの国会の議決はやっていないということがあるんですね。要するに、形骸化。このとおりやっていないということですね。

 そのことがありながら、特殊法人と独立行政法人とあるわけですが、その部分に要するに補給金という形でお金が出ていたりしているわけです。独立行政法人や特殊法人がすべて悪いと言っているわけじゃないんですが、その下に財団をつくったり、あるいは株式会社をつくったりしていて、何らかの形でお金がここに流れていくんですね。それを見ていると、八十九条の公の財産の用途制限という、「公金その他の公の財産は、」というものですが、この部分に公の支配でないのにお金が出ているような、憲法違反ではないのかなと思ったりもするんですね。

 だから、意外と実態が明らかにされていなくて、条文と比べてみるとおかしな部分がかなりあるということを感じました。

 以上でございます。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 この憲法調査会に参加をさせていただき、いろいろと学ばせていただきまして、ありがとうございます。また、先ほど中山会長から調査団の報告がございましたが、大変率直な報告内容でありまして、大変参考になりました。

 私は、この調査会に出席させていただき、いろいろなことを学ばせていただきましたが、どうも今、地域における国民の皆さんの声を聞きますと、私たちがこの憲法について議論をしている状況とはかなり違う状況が地域社会に生まれているんではないかと危惧しています。

 一言で言いますと、自暴自棄になり始めている。私たちはいろいろやったとしてももうどうにもならないんだと。子供たちは学校を出ても就職できないし、中央商店の方ではシャッター通りだし、跡は子供が継がないと言っているし、これから日本はどうなっちゃうんだろうと。非常に地域社会の実態は悲嘆に暮れているといいますか、一方では元気な人もいるかもしれませんが、地域社会の方では、市民の皆さん、もう大変、子供たちもお年寄りも商店主も未来に希望を失い始めている、そんな感じを持つところであります。

 同時に、目をイラクに転じますと、アメリカとイギリスが武力をもって国を制圧し、その後新しいイラクをつくろうとしていますが、なかなかうまくいっていないというのが実態であります。

 そこで、会長にも申し上げさせていただきたいんですが、この憲法調査会の中でいろいろ論議をしてまいりましたけれども、一体、アメリカという国あるいは第二次世界大戦の戦勝国側は、どういう意図を持って戦後の日本を統治しようとしたのか。いわゆる日本国憲法の非常に輝かしいといいますか明るいといいますか、非常にきれいな部分があるんですが、一体どういう意図を持って戦後の日本を統治しようとしたのか、その背景をかなり探っていかないと本当の姿が見えないんじゃないか。日本国憲法は非常にすばらしい憲法だと私も思いますが、単なるそういう善意、あるいはそういうものだけで日本国憲法がつくられたんじゃないんじゃないかという危惧を私は持っているわけであります。

 イラクを今アメリカ軍とイギリス軍がどういう意図を持って統治しようとしているのか。多分、日本と同じように、イラクの新憲法をつくって民主主義国家をつくりたいというんですが、単純な正義感、あるいはそういうものだけでイラクを統治しようとしているんじゃないんじゃないかと私は感ずるんですね。

 したがって、この憲法調査会も、ずっと私も参加させていただきまして、マッカーサーが日本に上陸をし、日本の未来を考えながら英文で憲法をつくり、それを吉田茂首相と談判しながら今日の憲法をつくったという話なんですが、イラク戦争の場合には百人を超え、今は三百人ぐらいになっているんでしょうか、アメリカ、イギリスの兵士が命を失っているわけですが、この第二次世界大戦の場合にはけた違いのアメリカ兵の犠牲を出し、そしてアジアでは二千万人と言われていますが、そういう形の犠牲を出しているわけですね。

 したがって、かなり私は、日本の戦後の統治については、私たちが考えている以上に複雑な背景を持って今日の憲法をつくったんじゃないか、そんな危惧すらいたします。したがって、そういう観点からも、この日本の現状を考え、将来はどうあるべきか、世界の平和と日本の平和はどうあるべきか、日本の国民はどうあるべきか、そんな観点から、ぜひ憲法調査会としても新たな視点で御検討をいただければということを感じた次第であります。

 以上で終わります。

平岡委員 先ほど、憲法調査議員団の調査報告を聞かせていただきまして、大変参考になりました。調査団の方々、大変御苦労さまでございました。

 この調査報告書を、今報告を伺いまして、ちょっと私にとってみて理解が少ししにくかったのかな、もう少し丁寧に説明していただけたら、あるいは、丁寧に説明できるだけの情報がないのであれば、これからもう少し検討したらいいんではないかな、そういう点について発言させていただきたいというふうに思います。

 中身は、アーミテージ国務副長官との懇談のところで、例の日本が安保理の常任理事国になるかという点についてのところでございます。

 確かに、アーミテージ・ナイ・レポートの中で、米日間同盟協力にとって日本による集団的自衛の禁止は束縛となっているというような位置づけになっているということで、典型的に考えている集団的自衛権というものが日米間の同盟協力においてはいろいろ問題があるから、アメリカとしては、これについて、日本の主体的な考え方であろうけれども、何らかの決断をしてほしい、そういう意向を持っているということはわかるのでありますけれども、安保理常任理事国の問題について、アーミテージ副長官が、集団的自衛権の問題について日本が根本的な決断をしないと難しいであろうと言っているところの趣旨がどうも不明ではないかというふうにちょっと思うんです。

 まず一つは、これは、アメリカが日本にこの決断をしないとだめだというふうな姿勢を持っているのか、それとも、国連の加盟国全体としてそういう状況になっているということをアメリカとして認識しているということなのかという、手続的な問題も含め、そして、その集団的自衛権をアーミテージが具体的にはどのようなものとしてとらえてこの発言をしているのかというところもはっきりしないような気がいたします。

 例えば、集団的自衛権というのは、英語とかフランス語に訳してしまうと、集団的自衛権も集団的安全保障もそれほど明確な区別がないままに使われているというような、そういう論文を書かれている学者もおられまして、この集団的自衛権、アーミテージが言っている集団的自衛権というのは一体どんなものであり、日本が安保理常任理事国になるために必要とされている、日本が求められているものというのは一体具体的にどんなものなのかということについてしっかりと詰めた議論をしておかないと、ここだけを見ると、典型的に言っている、日米間同盟協力をしていくための集団的自衛権が解決されない、日本が根本的な決断をしないと安保理には入れないぞと言っているようにどうも見えてしまうというふうに思うので、この点について、もし調査団の方々で詳しくアーミテージとの間で議論された方がおられたら、紹介していただきたいと思いますし、もしそうでないのならば、この辺については当調査会においてもしっかりとした議論をしておく必要があるのではないかというふうに思います。

中山会長 アーミテージ副長官との懇談の席におられました仙谷代理から御発言を求められておりますので、これを許します。

仙谷委員 平岡議員の問題提起はまことにもっともでございまして、実は私も、その場で、これは概念の混同があるのか、それとも、アメリカ流集団的自衛権と国連による集団安全保障、この概念が余り区別をつけないで議論をしていらっしゃるのか、聞いておかなければならないなと、その時点で思いました。思いましたけれども、時間がなかったものですから、そこはお伺いできなかったということでございます。そして、カリフォルニアの大学の教授の方々に対しても、それを意識して質問をしてみたんですが、明確な論理的な回答がなかったという実態でございます。

 もう一つ申し上げておきたいのは、どうも、アメリカの最近の考え方を論理的に、一九四五年の国連憲章作成時まで一方でさかのぼり、一方で、今のブッシュ政権のユニラテラリズム、あるいはネオコンと言われている人たちの論理を考えて整合性をとろうとしますと、ユナイテッドネーションズを国際連合というふうに訳しているのはどうも日本だけではないかという事実もまた一方で考える必要があるのではないか。つまり、ユナイテッドネーションズというのは、今ネオコンが言っている有志国連合、有志国同盟ということをある意味で意味していて、そこに入っていない敵であった旧枢軸国、つまり、日本、ドイツ、イタリアは敵国条項で縛られている。

 したがって、その時点での有志国連合である、四十数カ国か六十数カ国だったのかもわかりませんが、米英を中心としてこの指とまれというふうに言ったときに、そこにロシアが加入し、蒋介石の政権である中国が加盟し、そしてフランスも一緒にやろうということで、今のP5ができた。こういう歴史から見ると、どうも、いわゆる軍事同盟あるいはその他の同盟でもいいわけでありますが、バイでつくられたものの拡大版が有志国同盟であって、あたかもそういうバイの関係とは全く別個の何か国際機構、つまり、世界政府をイメージするような国際機構の、つまり、国連憲章から我々が読み取るようなものではないという理解が、そもそもアメリカの一部、二部の方々にはあるのではないか。

 だから、論理展開としては、集団的自衛権の行使も、集団安全、国連による集団的取り決め、あるいはその措置というのも、それほど概念的な区別をつけないで議論をする向きも相当あるのではないかという気がいたしました。

 そういう点からいいますと、カナダの国際局長とお話をしたその状況から見ますと、カナダは、PKOであれば、あるいは国連の権威、あるいは国連の決定であれば我が国は幾らでも協力する、しかし、今回のイラク戦争は、これは国連の決定とは全く関係ないので我々はこれに協力しないんだ。つまり、中立的態度もしくは批判的な態度をとっている。メキシコはもう少し抑制的な態度でありましたが。

 そういう議論をされておりまして、国際的にもまだまだ、今平岡さんが提起された、集団的自衛権の行使と国連による集団安全保障の問題の混同あるいは重複といいましょうか、ここは整理がついていないんじゃないか。日本も議論をする場合に、相当気をつけて、あるいは区別して、意識して議論をしなければならないんじゃないかなと、そのとき思った次第です。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子哲夫であります。

 私は、特にことしのこの調査会で多く論議になってまいりましたイラクの問題について、少しお話をさせていただきたいと思います。

 といいますのは、最近の世論調査を見てみますと、イラクへの自衛隊派遣に反対だという意見が非常に多数を占めているというのが、今世論の調査で出ております。先ほど来の意見の中にも、イラクへ危ないから派遣をしないという、それはもちろん国民感情としてそういうものもあるかもわかりませんけれども、しかし、同時に、私は、今国民の中にそういう意見が広がっているのは、実はあのイラク戦争とは一体何であったかということが問われているからではないかと思います。

 しかし、残念ながら、我が国の政府は、この国会におけるテロ特の委員会でも、相も変わらず三月二十日の時点の答弁を繰り返す、その根拠を繰り返すという、全くお粗末としか言いようがない状況であります。

 既に、イギリス、アメリカの国内においても、この主張していた根拠そのものがもう否定をされざるを得ない状況にまで追い込まれている。そして、国連の中でも、先ほど来発言がありましたように、アナン事務総長自身が、名指しではありませんけれども、明らかに、今回のイラク攻撃にかかわっての先制攻撃、そして、単独行動主義といいますか一国行動主義というものを、国連の中で相入れないものであるということを明確に示しております。

 にもかかわらず、そうしたことがなぜ我が国においては冷静に検討されないのだろうか。あれから半年たって、今の今日的な状況の中にあって、このことをしっかりと私は検証していくような、やはり我が国の外交や防衛の考え方でなければならないと思うんです。それをあいまいにしたまま、ただいたずらに従来の、これだけ国際関係の中にあって、根拠がもう否定をされている状況の中にあって、相も変わらず従来の見解を繰り返している。

 憲法調査会というのは、そういう意味では、この憲法調査会でもう何度も論議をしてまいりましたけれども、当時さまざまな意見の対立もありましたけれども、今まさに冷静になってこの問題についてしっかりとした判断を下していく、また調査をしていく、これは私は憲法調査会の主要な役割だというふうに思うんです。それとの関係で憲法の問題をしっかりと論議していくということが重要ではないかということを申し上げたいと思います。

 こうして考えてみますと、私は、むしろ、国民の意見、先ほど申し上げましたように、意見というのは、やはりこのイラクへの米英両軍の軍事行動そのものについての評価というものが大きく変更されている。今日、事実が明らかになるに従って明らかになってきていると思います。私は、戦争というものが、過去の戦争も含めて、いかにデマゴーグの中によって戦争が引き起こされてきたのか、このことをもう一度検証しなきゃならない。これは我が国にとっても重要なことだと思います。私たちは、ですからこそ、戦争というものに対して厳しい目を向け、そして、再びそのような戦争を起こさないという決意の中に憲法第九条というものは私はあるというふうに思っております。

 拡大解釈の問題が盛んに指摘をされておりますけれども、そもそもそのような拡大解釈を行い、今回のイラクの問題でも、従来、占領地域に自衛隊を派遣できないということを言ってきた政府がそれを変える。憲法とのかかわりで考えると、そのようなことはあり得てならないことをやってきた政治というものに大きな問題があると私は考えております。

 さらに、今や集団的自衛権の問題まで、解釈を変えてやればいいというような発言まで飛び出しておりますけれども、立憲主義の国であれば憲法を大前提として活動する、当然のことでありまして、これを憲法の枠を超えて解釈を広げていくということ自身を、今まで日本の国が歩んできたことをいま一度憲法調査会が調査をする。今度のイラクの問題にかかわっていえば、まさに今そのことを検証していく絶好のチャンスではないかというふうに私は思っております。

 恒久平和主義ということが言われておりますけれども、私たちは、今度の北朝鮮の問題を見ても、確かにこの核兵器の問題を解決しなければなりませんけれども、大事なことは、今行われている六者協議のような、話し合いによって解決をしていく、そして、国際協調主義によって解決をしていく、これが私は、憲法にうたわれた基本的な考え方であり、そして、その道を歩むことが、日本にとって、日本の恒久平和と安全にとって極めて重要なことであり、そのことが憲法が示す道だということを、そういうことを憲法調査会として改めてこの時期、調査をする必要がある。

 あと一年ちょっとの期間でありますけれども、そこらは重要な観点として、さらに引き続いて調査をすべきだということを申し上げて、私の発言を終わります。

平林委員 いささか感想めいたことを申し上げて恐縮ですが、お許しを願いたいと思います。といいますのは、今までの各委員のお考えに対して、私の感想めいた考えを申し上げようと思うからであります。

 古川委員が宰相論をおっしゃいましたが、強い総理大臣を求めるか、弱い総理大臣といいますか、国会との関係において、そういうものを求めるかというようなことは、やはりその時代の環境に即応して求めるものが変わってくるのではないかという気がいたします。例えば、イギリスの戦時宰相であったチャーチルなんというのは強い宰相であったかと思いますし、そういう強い宰相でないイギリスの政治が行われたこともあるかと思います。ですから、弾力的に考えてしかるべきであって、憲法の規定からいえば、一応、今の憲法の規定で差し支えはないのではないかという気がいたしております。

 それから、これは念のためでございますが、大出委員が労働基本権のことに触れられましたが、これは私は過去の小委員会で申し上げましたので、改めて詳しくは申し上げませんが、公務員に労働基本権の制限を設け、代償を設けるということは、これは各国の法律による、各国の法律が、各国の国会が責任を持って決めるべきだと思っております。

 それから、他国からの実力による主権侵害や、あるいは無差別テロ、あるいは大規模災害というような場合の危機管理あるいは自衛権の具体的行使については、おおむね西川委員の御意見に賛成でございます。やはりその時代に応じ、また、日本の国力に応じた自衛力を持って危機に備えるべきであろうと思うのでございます。この点に関しては、憲法改正も視野に入れて論議をさらに深めていってはどうかと思います。

 以上でございます。

谷川委員 海外視察団の報告、まことに御苦労でございましたし、ありがとうございました。大変に重大な指摘を何点もしていただいておるように思います。

 私は、特にバークレー校でのヴォーゲル准教授に促されて御発言なさったんじゃないかと思うんですが、仙谷委員の御発言についてちょっとお尋ねしたかったんですが、今席を離れておられますので、先に、古川委員が先ほど御発言なさったことについて、ちょっと全然別の角度で、この報告書とは離れてお尋ねをさせておいていただきたいと思います。

 古川委員は、憲法六十五条について触れられましたが、行政権と執行権を二つに分けて考えた方がわかりやすいんじゃないかと。実は私は、明治憲法と、それから現行憲法の中で、整理がつかないまま明治憲法の発想といいますか、考え方が入ってきてしまっておる、いわばそれによって混乱が起こっているんじゃないか、あるいは、混乱までいかなくても、そこはちょっと現行を改めておいた方がいいんじゃないかというのが幾つかあると思っておったんです。一つが七十六条の第二項でもございますし、もう一つが六十八条、七十二条、七十三条、このあたりの行政と執行との関係なんです。

 そこで、古川委員にちょっとお尋ねしたいんです。

 先ほど古川委員は、我が党としてはということで、民主党の内部の憲法に対する議論のことをお触れになられましたが、ということは、これからの政治日程の中に、少なくとも、古川委員が指摘された六十五条以下の問題については触れていかれるお考えであろう、こう思いますが、政治的にはどのくらいのテンポといいますかを考えながら進めようとしておられるのか。それから、当然、これに触れると、現行その他の法律、いろいろかかわってまいりますが、そういう問題について相当積み上げた議論があっての御発言であったのかどうか、それをお尋ねいたしたいと思います。

 ちょうど今、ここへ仙谷委員がお帰りになられましたから、ひとつ、まとめて一緒にお尋ねしてしまいます。仙谷委員、お帰りになられて恐縮でございます。

 海外視察団の副団長として本当にお疲れさまでした。私がお尋ねしたいと思っておりましたのは、仙谷委員が、バークレー校でヴォーゲル准教授の指名によって三点について触れられた。その後に、団長の御報告では、法治国家として、これ以上の解釈改憲は行うべきではないと触れられた、こうございますが、それは恐らく私の判断では、この1.の安全保障を初めとする国際関係の考慮に関連しての御発言だったんではなかろうかと思うんですが、法治国家として、これ以上の解釈改憲は行うべきではないということを触れられたとすれば、どういう、何といいますか、その場の雰囲気、背景があって、御発言があったのか。まず、それをお尋ねさせていただければありがたいと思います。

中山会長 ただいまの谷川委員からの御質問に対して、古川委員からお答え、議論をお願いいたします。

古川委員 今、谷川委員からの御指摘がありましたけれども、先ほど私が申し上げた分については、今の憲法上の考え方からしても、先ほど私が申し上げたような、民主党の政権準備委員会で考えた形の宰相型システムをとることはできるだろうというふうに考えております。ですから、そこは別に、憲法を改正しなければそういう宰相型システムがとれぬとか、そういう発想じゃなくて、先ほど申し上げたように、六十五条で言う「行政権」というのは、もともとは執行権という意味で原文の英語などは書かれていたということも考えれば、そういうように解釈をして、そしてそういう内閣のつくり方というものをしていくべきではないかという視点から、先ほどの考え方で、私どもが政権をとった場合にはそういう形の政府というものをつくらせていただくということを申し述べたわけであります。

 また、先日も、これは谷川委員もいらっしゃったところの統治小委員会でもう私述べましたから、そこは委員も御承知かと思いますけれども、民主党の中での憲法調査会の中で、こうした今の内閣をめぐる、行政権をめぐるところの今の憲法上の規定というものはもう少しやはり整理をしなければいけないんだ、そういう議論は既にされて、報告も出しておりますので、ではそれを具体的にどうするかということについては、今後とも、我が党は論憲、創憲という立場で議論をしておりますから、そういう中で検討していく問題だというふうに認識をしております。

仙谷委員 法治国家、あるいは法治主義の問題と憲法の関係でありますが、今度、北中米を回りまして、特にアメリカとカナダは、もともとの制定法主義の国ではないという事情もございますので、私の想像していた以上に、ある種の憲法解釈の柔軟性というふうにも感じたところでございます。

 ただ、日本の場合には、先ほどの集団的自衛権の行使の問題、あるいは国連による集団安全保障の問題、憲法九条の問題ということになるわけでありますが、その他、私どもが今どうしてもやらなければならない、特に抽象的なレベルでは与野党ともほとんど一致しておることの一つに、地方分権といいましょうか、分権改革というふうなこともございます。こういうものを実施しようとするときに、憲法的な規定、諸原則というものを改めて明確に憲法上規定をした方がいい。しなくて、ある種解釈改憲的といいましょうか、解釈の応用によって何でもできるということは、大変憲法論的にもこれは無理があるのではないかという趣旨でお話をしました。

 とりわけ、今度カリフォルニアでそういう発言をしたわけでありますが、その後、ニューヨーク、それからワシントンできょう報告にない方にも私的にもお会いをして、きょうここで改めて追加してお話ししなければいけないと思っておりますのは、北朝鮮問題、核開発問題をめぐる六カ国協議を、アメリカの現政府担当者も含めて、これは地域的な安全保障の行使となるということをおっしゃっておりました。中国の成熟化、そしてそのことが六カ国協議をいわば一対五の構造にして、そしてなお、北朝鮮がこの六カ国協議からも抜けられない状況をつくり出している、そしてまた暴走もできない構造もつくりつつあるのではないか。そういう現在の時点から、この六カ国協議は必ず成功させるし、地域的な安全保障の行使になるということを言っておりまして、私は、日本がこの方向で主導的な努力をしなければならないと改めて思ったわけであります。

 これを上部構造の問題といたしますと、下部構造は、メキシコへ行きましてもカナダへ行きましても、当然のことながら実感するのは、北米三国、あるいはメキシコの場合はもっとはるかに多くの国との自由貿易協定という、いわば経済社会の統合化、あるいは一体化、共通化と言われる事態でございます。アメリカ大リーグの監督はスペイン語ができなければもう監督は務まらないと言われるような、人の往来、あるいは移民、移籍というふうなことまでもが統合が進んでいる。

 その上で、アジアに置きかえますと、私は、日本も、受け身でアジアの自由貿易協定なり経済の一体化というのを、嫌々とか、いかんともしがたくなって受け入れるということではなくて、日本がこれは主導的な立場で進めていかざるを得ないと思いますし、その上部構造として乗る軍事も含めて、軍事の共同管理も含めた集団安全保障、地域的な安全保障という機構を進めるべきだ。

 そのときに、今の日本国憲法でそういうことができるのか。金子さんがおっしゃったように、今の憲法からするとやってはいけないんだ。つまり憲法から戦略的政策すべてが制限されるというか規定されるというのは、いかに考えてもまずいのではないだろうかな。憲法は大事でありますけれども、時代とともにそこは、変えなければならないところは憲法議論をし、国家主権の主権議論をして変えていくべきだというふうに私は考えております。そういう旨の発言をしたつもりでございました。

大出委員 二回目の発言でございますが、先ほど、平林元郵政大臣が労働基本権のことについておっしゃったから、それに反論しようというわけじゃないんです。というのは、この憲法調査会でもその議論をかなりやっておりますし、総務委員会で、私、総務委員でもございますので、そこでも消防職員の議論をやっておりますので、そうではなくて、選挙が近くて、次ここにいるかどうかわかりませんので、しゃべりだめをしておこうかと思っているわけでございます。

 実は、憲法的な興味の部分で、先ほど仙谷会長代理の方から司法権の話の中で、でき上がった法律について違憲性を争える手段というのはやはり必要になってくるんだろうという話で、まさにそうだと思うんですね。今はできませんからね、事件性がないと。

 そこを認めてくると、これは司法がやるとは限らないわけならほかでやってもいいのでしょうけれども、司法の幅が広がるというところで興味があるのは、つまり司法の問題解決能力といいますか、守備範囲といいますか、それについて考えるところがあります。

 というのは、十八世紀に「ファニー・ヒル」という小説がございまして、これはいわゆるわいせつ本なんですね、当時は。そのファニー・ヒル裁判というのがありまして、十八世紀のときに、裁判長は、その本はわいせつ本であるということを認定するわけですね。ところが、それを認定するだけではなくて、「ファニー・ヒル」を書いた人に、中の文章は大変美文ですばらしい能力があるという評価をするんです。それで、お金がないからそういうのを書いたわけですね。そしたら裁判長は、それはわいせつ本だけれども、君は能力があって優秀なんだから、もっとまともな小説を書きなさいということで、ここで終われば今の裁判と同じなんですが、お金を上げるんですね、お金を。要するに、貧乏をしていますから、少しは食べながら書けるようにということでしょうね、お金を支給するんです。

 この行為なんですね。これは、今我々が考えている裁判をするという行為のほかに、お金を上げるとき行政執行をしているわけですよね。なかなかいきな計らいだと思うでしょう。これが現代だったら、どうやったらこの二つをセットでできるのかなと実は思いまして、これは、片や司法権でやっておいて片方行政権でというと、必ず、もし今の日本でそんなことをやろうとしたら、時間がかかるでしょうし、そういう法律制度をつくっておかなきゃと考え始めたら何年かかるかわからないような話になるんだと思うんですが。

 ここで、だから、司法の守備範囲という意味、あるいは、そのころは確かに、勝手に司法権に権限が多かったから、まあ王様がするわけじゃありませんけれども、だと言えば言えるんですが、三権分立の中で非効率になっているようなこともあるのではないか、単純に考えると。

 そんな問題提起といいますか憲法的興味で物を言わせていただきました。

 大出彰でした。以上です。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。二点お話をさせていただきたいと思います。

 一点は、イラクの問題が議論になっておりますので、私自身、六月にイラクに与党調査団の一員として行ってまいりましたので、その感想も含めて発言させていただきたいと思います。

 結論から申し上げますと、日本は自衛隊派遣の可能性も含めてイラク支援に貢献をすべきだというのが結論でございます。

 イラク戦争の是非については、これはいろいろな意見があろうかと思います。そのことと無関係とは言いませんけれども、そのことは百歩譲って一時おくとして、しかし、現実問題としてイラクの国民が今非常に苦しんでいる。その苦しみは戦争からきた苦しみではなくて、フセイン政権下での二十数年間の結果として、一例を挙げれば、例えば下水道も全く整備されていない、電気等のインフラも全く整備されていない、そういう中で大変国民の皆さんが苦しんでいる。そういう状況を、やはり日本として復興に協力すべきだというのを痛感して帰ってまいりました。

 日本の第一次エネルギーに占める石油の割合は五二%です。第一次オイルショック当時は八〇%近かったわけですが、日本が純国産エネルギーともいうべき原子力発電を推進することによって、石油の占める割合は五〇%まで低下しました。しかしながら、中東石油に対する依存はふえまして、八〇%を超える依存度でございます。その地域の安定と平和は、日本の経済そして日本の安定、平和に直接結びついている。そういう意味でも、私はあのイラク支援法、もちろんイラク支援法は憲法九条の枠内でございますし、いろいろな自衛隊の活動について制約を設けているわけですけれども、その制約の範囲内で努力をすべきだということを痛感してまいりました。

 現地で活躍するNGOの日本人の方々とも懇談してまいりましたけれども、自己完結性を持った組織が必要だということをおっしゃっていたということをつけ加えさせていただきます。

 それから、二点目ですけれども、全然違う話ですが、日本の安全保障についてです。

 一般に、宇宙技術とその国の持っている軍事力というのはほぼ比例すると言われております。日本の宇宙開発予算はここ数年減少を続けておりまして、今、日本の宇宙開発の技術は、無人衛星をも発射できるかどうかはらはらしながら見ているというのが現状でございます。片や、お隣の中国は、もうじき神舟号によって有人宇宙を実現する、ほぼ一年以内に実現することは間違いない、そこまでの高いレベルに入りました。また、日本は今、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、カナダと一緒に宇宙ステーション計画に入っておりますが、中国は独自の宇宙ステーション計画を持って、ある意味で宇宙の制空権というところまで行きつつございます。

 そういう状況の中で、日本の安全保障をどう考えるか、科学技術の進展によって安全保障というものの概念も大きく変わってきている、そういう中でどう考えていくかということも、この憲法調査会で今後議論していくべきだ、このように感じております。

 以上です。

今野委員 民主党の今野東でございます。

 私は、若干きょうのこれまでの会議の流れと違うんですけれども、イラクに自衛隊を派遣するかどうかという話がよく出ておりますが、これはもちろん私は反対でありますが、ただ、今国会で、委員会で審議されておりますこのテロ特措法について、憲法調査会のメンバーとしても、どういうふうに見るかということを表明しておきたいと思います。

 このテロ特措法というのは、あの九月十一日のアメリカ合衆国でのテロに基づいてつくられたわけでありまして、今国会でその二年の期限が切れて、延長をどうかということで話し合われているわけです。

 実は、テロ特措法という法律はこの国にはありませんで、あれは余りにも長いのでテロ特措法と便宜上言っているんですね。法律のどこにも書かれておりませんで、非常に長い長い法律名で、正式には、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法という大変長い法律でありまして、これだけ長い法律をさらに延長しようという、これに改正案がつくわけですけれども。

 これは、実際に今延長をしようという動きがあるわけなんですが、我が国として、そして我々が持っている憲法としてどうなのかということを考えますと、この法律はもともと、法律の最初にありますように「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる」とあって、極めて限定的な法律なはずなんです。

 しかし、本当にあの九月十一日のアメリカの同時多発テロに対応してのみその措置をされているのだろうかというと、これは何度も何度も委員会でさまざまな委員の方々が聞かれておりますけれども、明確な答えは出てきません。そして、あれを行った結果、どうなったら終了と見るのかということも政府は何ら見解を述べておりませんし、そして、その効果についても、アルカイダの幹部、オサマ・ビンラーディンとかオマルとか、捕捉されていないから継続をする必要があるというような説明も聞くんですけれども、それでは、一体幹部というのはどういう人たちがいて、これまでにこれ以外の人たちでどういう人が捕捉されて、そしてこれからどういう人たちを捕捉の対象としていくのかというようなことも、果たしてアメリカから情報をもらっているのかどうかわかりませんけれども、どうももらっていないようでありますが、わからない。

 こんなにあいまいなところに、我が国は百二十億もの油を、インド洋にただのガソリンスタンドを浮かべて流している。もちろん何も効果がないとは言いませんけれども、これだけ情報がわからないものについて、さらに継続をする必要があるのだろうかという疑問があります。

 そもそも我が党は、テロ特措法については、国会の事前承認がない、入れるべきだという点から二年前には反対をいたしましたが、今回もこれがないままに、そのまま延長されようとしております。

 そもそも、テロというのはどこから生まれてくるかということを考えれば、市民の不満が地下にたまり、そしてそれがテロとして、これは悲しい結果ではありますけれども、出てくるのではないかと思います。

 私は去年の九月にアフガニスタンに行ってみましたけれども、日本のNGOで母と子のメディカルセンターという医療センターをつくって、医師や看護師たちが一生懸命やっておりました。ここには一日千人以上のブルカを着たお母さんたちが栄養失調の子供たちを抱いてやってきます。私は、泊まったホテルで、ほとんど何も売店には売っていないんですけれども、ちょっと記念に小さなものを買おうと思って行ったら、そのホテルの売店の方から、日本人か、日本は医療等の施設を、設備をここにつくってくれて大変いい、お土産をおまけしてやろうといっておまけをしてもらったということがあるんです。この一方の、日本のアメリカの後方支援については、アフガニスタンの人たちは知っているかというと、この間NGOの方の話を聞いたんですけれども、現地で活躍している方です、全く知らないということでありました。

 むしろ、アフガニスタンの市民の方々に私たちはどのように支援をしていくかということを第一義に考えてすべきだと思っておりまして、この憲法調査会から見ても、あれは、四十一条に「国の唯一の立法機関である。」というふうにも書かれておりまして、国会軽視なのではないかという意見をこの憲法調査会から述べておきたいと思います。

 以上でございます。

中山会長 他に御発言はございませんか。

 それでは、発言も尽きたようでございますので、これにて自由討議を終了いたします。

    ―――――――――――――

中山会長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 日本国憲法に関する広範かつ総合的な調査を行うものとして平成十二年一月二十日に設置された本調査会は、日本国憲法の制定経緯から調査を開始し、戦後の主な違憲判決、次いで、二十一世紀の日本のあるべき姿に関する調査を遂げ、第百五十四回国会からは四つの小委員会を設置して個別論点の調査に入り、現在、日本国憲法の前文及び百三カ条の網羅的な調査を行っているところであります。

 日本国憲法の制定経緯に関する調査においては、その制定にまつわる一連の客観的な歴史的事実について、その評価は別として、各委員の共通認識は持つことができたものと考えます。戦後の主な違憲判決に関する調査では、我が国の違憲審査制及びその運用実態を明らかにしましたが、違憲審査制度のあり方については検討すべき点が多いと感じられました。二十一世紀の日本のあるべき姿に関する骨太な調査、及び小委員会における専門的かつ効果的な議論においては、我が国の安全保障や国際協力のあり方に大きなかかわりを持つ国内外の情勢の変化や、基本的人権の保障のあり方に影響を与えるものとなってきている科学技術の進展等について、多様な観点から議論をいたしました。

 また、第百五十六回国会以降、各小委員会では、調査の内容の豊富化はもとより、討議の過程を重視した調査方法の導入など手法にも工夫を凝らして精力的な調査を実施し、調査会においては、小委員会における調査の成果を踏まえ全体で討議を行うほか、時事的な問題について憲法的見地からの自由討議を行う等、調査をより一層充実させているところであります。

 この間、第百五十五回国会においては、おおむね五年程度を目途とする本調査会の調査期間のおよそ半分が経過したこと等から、調査会の活動経緯、調査会における議論の憲法の各条章に沿った形での客観的な整理を内容とする中間報告をまとめ、平成十四年十一月一日に衆議院議長に提出をいたしました。

 本調査会は、天皇制や憲法九条の問題などこれまで議論をすること自体が避けられてきた分野についても調査を行ってまいりました。このような分野における調査においても、終始冷静かつ熱心に討議が行われてきたと理解しております。議論を積み重ねる中で、象徴天皇制の存続など各党の考え方の集約が見られる分野がある一方、意見の対立がある分野も残されていると承知しておりますが、いずれにしても、憲法に関する議論が格段に深まってきたことは大変喜ばしいことだと考えております。

 調査会及び小委員会における調査と並行して、諸外国の憲法事情を調査するため、憲法調査議員団による海外調査を毎年、都合四回にわたって行っております。王室制度を有する国や中立政策を維持してきたスイス等を含む西欧各国、ロシアを初め旧共産圏に属する東欧各国、中東に位置するイスラエル、東南アジア各国、我が国の隣国である中華人民共和国及び大韓民国、そして先ほど概要を報告いたしました北米各国等、計十七カ国を訪問し、合計二十七カ国の憲法事情について調査をいたしました。

 各国で、国際社会の変化やそれぞれの国が抱える国内的事情を背景としながら、それらの諸事情の変化に対応して憲法改正に係る論議が国民に提示され、その国民的な論議を通じて随時憲法改正が行われているという点が印象に残りました。

 また、多くの国々で導入されている憲法裁判所において、法令の合憲性審査を行うことによって権力相互の抑制に資しているだけでなく、直接に国民からの権利救済申し立てを受けるなど人権保障のとりでとしての機能をも果たしている点についても、大いに考えさせられるものがありました。

 さらに、海外調査事項の一つとして、イスラエルの首相公選制がありました。首相公選制の導入及び廃止の経緯、これに対する評価等についての同国での調査を踏まえ、本調査会において活発な議論が行われましたが、国会との関係、天皇制との関係など統治機構に関する広範な論点について十分な検討を要する問題であり、慎重あるいは消極的な意見が多数を占めてきたように思います。

 また、国内においても、憲法に関し広く国民各層の意見を聴取すべく既に八カ所で地方公聴会を実施し、中国地方での開催を残すのみとなりました。

 申し上げるまでもなく、憲法は国民のものであります。しかし、我が国では、自衛隊と憲法九条との関係、戦後間もなく始められた私学助成と憲法八十九条の公の支配に属さない団体への公的資金の支出禁止規定との関係、裁判官報酬引き下げと憲法七十九条、八十条の裁判官報酬の減額禁止規定との関係といった憲法上の問題が指摘される事項について、解釈を通して問題の解決を図るという対応がなされてきたことは否めないのではないかと存じます。憲法に対する国民の信頼を確保するという観点を踏まえ、憲法の規定を正面から十分に検討、議論をすることが必要であります。

 国権の最高機関に設置された憲法調査会は、こういった諸問題について、憲法的観点から大所高所の議論を行うことができる唯一の最適機関であります。国民の代表である国会議員が憲法に関しさまざまな立場から討論し一致点を見出していくという作業は、非常に重要な意義を持つものと思います。

 本調査会では、人権の尊重、主権在民、再び侵略国家とはならないという三つの原則を堅持しつつ、日本国憲法に関する広範かつ総合的な調査を三年九カ月にわたって行ってまいりました。

 これまでの総調査時間は小委員会を含めますと三百十時間を超え、この間に招致した参考人等は延べ八十九名に上ります。おおむね五年程度をめどとすることとされている調査期間も、あと一年三カ月を残すだけとなっております。

 現在、国民的関心の高い社会保障と国民負担率の問題、法律構築が進められている電子政府の導入に伴って生ずるプライバシーの憲法上の保護の問題など残された課題も多く、また、きょうの議論にもございましたように、自由貿易協定の締結と地域安全保障の問題等、今後議論をしなければならない多くの問題が残されており、幹事会にて御相談の上、さらに充実した調査を行ってまいりたいと存じます。

 会長代理を初め、小委員長、幹事、オブザーバーの方々、そして委員各位の御指導と御協力により、これまで公平かつ円滑な運営ができましたことを厚く御礼申し上げるとともに、改めてさらなる御協力をお願い申し上げて、私のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十九分散会


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