衆議院

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第1号 平成16年8月5日(木曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十六年七月三十日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   会長 中山 太郎君

   幹事 近藤 基彦君 幹事 福田 康夫君

   幹事 船田  元君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 保岡 興治君 幹事 枝野 幸男君

   幹事 鈴木 克昌君 幹事 山花 郁夫君

   幹事 赤松 正雄君

      伊藤 公介君    岩永 峯一君

      大村 秀章君    倉田 雅年君

      河野 太郎君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    棚橋 泰文君

      渡海紀三朗君    中谷  元君

      永岡 洋治君    野田  毅君

      平井 卓也君    平沼 赳夫君

      二田 孝治君    松野 博一君

      森岡 正宏君    森山 眞弓君

      綿貫 民輔君    伊藤 忠治君

      大出  彰君    鹿野 道彦君

      楠田 大蔵君    玄葉光一郎君

      小林 憲司君    園田 康博君

      田中眞紀子君    武正 公一君

      辻   惠君    計屋 圭宏君

      古川 元久君    馬淵 澄夫君

      増子 輝彦君    村越 祐民君

      笠  浩史君    太田 昭宏君

      斉藤 鉄夫君    福島  豊君

      山口 富男君    土井たか子君

平成十六年八月五日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   会長 中山 太郎君

   幹事 近藤 基彦君 幹事 福田 康夫君

   幹事 船田  元君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 保岡 興治君 幹事 枝野 幸男君

   幹事 鈴木 克昌君 幹事 山花 郁夫君

   幹事 赤松 正雄君

      伊藤 公介君    岩永 峯一君

      大村 秀章君    倉田 雅年君

      河野 太郎君    柴山 昌彦君

      下村 博文君    棚橋 泰文君

      渡海紀三朗君    中谷  元君

      永岡 洋治君    野田  毅君

      平井 卓也君    二田 孝治君

      松野 博一君    森岡 正宏君

      森山 眞弓君    大出  彰君

      鹿野 道彦君    楠田 大蔵君

      玄葉光一郎君    小林 憲司君

      園田 康博君    田中眞紀子君

      武正 公一君    辻   惠君

      計屋 圭宏君    古川 元久君

      馬淵 澄夫君    増子 輝彦君

      村越 祐民君    笠  浩史君

      太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君

      福島  豊君    山口 富男君

      土井たか子君

    …………………………………

   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法に関する件


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     ――――◇―――――

中山会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法に関する件について調査を進めます。

 本日は、本年六月の常会終了日前後に相次いで公表された、自由民主党、民主党及び公明党、この三党の憲法調査会の論点整理あるいは憲法提言に関して、それぞれ発言を聴取した上で、議論を進めてまいることになりました。

 憲法施行後約六十年を経て行われている現下の各党における憲法論議の概要を本調査会において聴取し、及びその論議を会議録にとどめることは、今後の憲法論議にとってまことに意義深いものであると考えまして、これまで四年半にわたって精力的に進めてまいりましたこの憲法調査会の調査が、本日の調査を踏まえましてますます充実したものとなっていくことになるわけでございます。

 幹事会での申し合わせに従って、調査に先立って、会長として一言ごあいさつを申し上げます。

 本調査会は、平成十二年一月に設置されてから今日に至るまで、基本的人権の尊重、主権在民、再び侵略国家にならないという三つの原則を堅持しつつ、日本国憲法の制定経緯、戦後の主な違憲判決及び二十一世紀の日本のあるべき姿に関する調査を経て、平成十四年二月からは四つの小委員会を設けて、個別論点の調査、憲法の全条章についての網羅的な調査を行うとともに、全国九ブロックにおける地方公聴会及び二日間にわたる中央公聴会を開催して、国民各層から日本国憲法に関する意見を聴取いたしてまいりました。

 また、平成十四年十一月一日には、この間の調査の経過及びその内容を取りまとめた中間報告書を作成し、議長に提出するとともに、同月二十九日には、本会議においてその経緯及び概要を報告した次第でございます。

 この間、衆議院より派遣された議員団による諸外国の憲法事情に関する調査も四回行われております。

 本調査会において、天皇制や九条の問題など、これまで議論をすること自体が避けられてきた分野、あるいは強いイデオロギー対立のあった分野のほか、科学技術の進歩と憲法の問題、少子化、高齢化社会における社会保障のあり方と憲法の問題、高度情報化社会におけるプライバシーの憲法上の保護の問題、首相公選制の是非、両院制の是非及び衆参両院議員の選出方法及び権限の問題、課税自主権、道州制を初めとする地方自治のあり方の問題等、人権、統治の両面について真摯な議論がされてまいりました。

 昨日、東京で憲法裁判制度に関する国際シンポジウムが行われたようでございますが、本調査会における調査の中でも、最高裁判所の違憲判断への極めて消極的な姿勢、特に統治行為や行政機関の行為などに関して憲法判断を避ける傾向があることなど、憲法の運用実態における問題点なども明らかになってまいりました。

 これらの諸問題に関する広範かつ総合的な調査を通じ、私たちは、改めて、憲法に基づく政治という立憲民主主義の重要性に対する認識を共有してまいった次第でございます。

 このように進めてまいった本調査会の調査ですが、その調査期間は、衆議院議院運営委員会理事会の申し合わせにより、おおむね五年程度を目途とするとされており、我々に残された時間はわずかとなってまいりました。

 今後は、最終報告書の作成に向けて、これまでの議論の中で相互に共通の認識が醸成された論点を見出すとともに、委員間で意見の相違が見られる分野については、それを尊重しつつ、その議論の状況を整理しながら必要な調査を行うという作業が必要になってくるものと存じます。これは大変困難な作業であると存じますが、我々国会議員がこの困難を乗り越え、その成果を国民に提示できてこそ、職責を全うすることができるものと存じます。

 本日の調査をきっかけとして、衆議院憲法調査会における調査が最終報告書の取りまとめに向けて一層充実したものになるとともに、各党における憲法論議もこれまで以上に活性化され、さらには、国民の間における憲法論議の機運も高まっていくことを心から期待いたしております。そして、それが回り回ってこの衆議院憲法調査会にフィードバックして、さらに憲法論議を深めていく、本日の調査は、その第一歩であり、今後の憲法論議にとって意義深い調査となるものと確信をいたします。

    ―――――――――――――

中山会長 この際、保岡興治君、枝野幸男君及び太田昭宏君から発言を求められておりますので、順次これを許します。

 なお、御発言は二十分以内にまとめていただくようお願いいたします。

 それでは、まず、保岡興治君。

保岡委員 私は、冒頭、この衆議院憲法調査会におきまして、我が党の憲法調査会が本年六月に公表いたしました憲法改正プロジェクトチーム論点整理の内容を御説明申し上げる機会を得たことを大変うれしく思うとともに、中山会長のごあいさつにもありましたように、このような場で、院を構成する主要三党が党内の憲法論議の現況を報告し合うことが、極めて大きな意義を持つものであることを重ねて表明したいと存じます。

 我が党は、さきの総選挙の政権公約において、立党五十年を迎える平成十七年十一月までに新しい憲法草案をつくることを国民に対し約束し、総選挙で示された国民の負託にこたえるため、党の憲法調査会に憲法改正プロジェクトチームを設置いたしまして、日本国憲法百三カ条の全条文、前文を含みますが、これに関して、各条章ごとに審議、検討を行いました。これらの会合の大半は、国民投票によって憲法制定権を行使することとなる国民の理解を得、その議論を喚起することの重要性にかんがみ、報道各社に公開の会合とするとともに、その議事録をインターネットで全国民に公開することといたしました。

 本年六月、この審議、検討の内容を党の総務会に報告し、その了承を得て、憲法改正プロジェクトチームの議論を論点整理という形で公表することとなった次第であります。

 それでは、以下、論点整理の内容を御説明申し上げることといたします。

 まず、新憲法が目指すべき国家像は何かということでございます。

 新憲法が目指すのは、国民だれもがみずから誇りにし、国際社会から尊敬される品格ある国家であります。また、新憲法では、基本的に国というものはどういうものであるかをしっかり書き、国と国民の関係をはっきりさせるべきです。そうすることによって、国民の中に自然と愛国心が芽生えてくるものと考えます。

 その際、第一に確認しておきたいことは、新憲法は、戦後我が国に定着した国民主権主義、基本的人権の尊重、決して侵略国家とならないという平和主義の三原則を高く評価し、かかる人類普遍の価値を維持し、さらに発展させるものでなければならないということです。

 その上で、新憲法は、現憲法が制定されたときに置き去りにされた歴史、伝統、文化に根差した我が国固有の価値、すなわち国柄や、日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識に基づいたものでなければならないということです。せんじ詰めれば、人類普遍の価値を重んじつつ日本国、日本人のアイデンティティーを憲法の中に見出すことができる、そういう新憲法でなければならないということです。

 次に、新憲法は、二十一世紀の新しい日本にふさわしいものであるとともに、科学技術の進歩、少子高齢化の進展等新たに直面することとなった課題に的確に対応するものでなければならないことは当然です。同時に、人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える器であることを踏まえ、家族や共同体が、公共の基本をなすものとして、新憲法において重要な位置を占めなければならないという意見が強く主張されたところであります。

 各論部分の説明に入らせていただきます。

 まず、現行憲法の前文については、これを全面的に書きかえるものとすることで、異論はございませんでした。

 前文に盛り込むべき内容に関しては、1.現行憲法の基本原則の堅持を明記し、2.ただし、基本的人権の尊重については行き過ぎた利己主義的風潮を戒める必要がある、3.また、平和主義についても、現行憲法九条の見直しを反映させ一国平和主義の誤りを正すとともに、我が国の平和主義が世界の平和構築に寄与し、国を挙げて国際平和を推し進める姿勢を強調するなど修正が必要である、4.その上で、新しい時代に向かって目指すべき国家像やその基本的なあり方などを規定すべきなどの意見がございました。

 前文の文章表現に関しましても、1.翻訳調の現行の前文の表現を改め、前文の文章は、平易でわかりやすいものとし、模範的な日本語の表現を用いるべきである、2.一つの文章が冗長にならないようにすべきであるとの意見がございました。

 次に、天皇についてでありますが、共通認識として、象徴天皇制については、今後ともこれを維持すべきものであることについては、異論がございませんでした。

 これに加えて、我が国において、天皇が我が国の文化、伝統と密接不可分な存在となっていることを踏まえ、現在の象徴的地位を実質的に位置づけることや、皇室祭祀を公式行事化することなどの意見が出されました。

 なお、女帝問題については、皇室典範の改正という観点から今後検討すべき論点であるとの意見が多数を占めた次第であります。

 次に、安全保障についてでありますが、新憲法には、自衛のための戦力の保持を明記することについて、大多数の同意が得られました。

 また、1.戦後日本の平和国家としての国際的信頼と実績を高く評価し、これを今後とも重視すること、2.我が国の平和主義の原則が不変のものであり、決して侵略国家とならないことを明確にすること、3.個別的、集団的自衛権の行使に関する規定を置くべきであること、4.内閣総理大臣の最高指揮権及びシビリアンコントロールの原則に関する規定を置くべきであること、5.非常事態全般、すなわち有事、テロ、大規模暴動などの治安的緊急事態、自然災害の場合に関する規定を置くべきであることなどの意見が出されました。

 今後の議論の方向性としては、二十一世紀において、我が国は、国力に見合った防衛力を保有し、平和への貢献を行う国家となるべきであります。こういう観点から、自衛権や国際貢献のルールをどこまで新憲法に書き込むか、検討することとしております。

 次に、国民の権利及び義務については、現憲法の定める基本的人権が、人類の普遍的な価値で、我が国が永久にこれを尊重することを基本としつつ、時代の変化に対応して新たな権利、新たな義務を規定するとともに、国民の健全な常識感覚から乖離した規定を見直すべきであるということについて、異論はございませんでした。

 その上で、いわゆる新しい人権に関しまして、1.環境権、2.IT社会の進展に対応した情報開示請求権やプライバシー権、3.科学技術の進歩に対応した生命倫理に関する規定、4.現憲法は被告人や加害者の人権に偏しているので、犯罪被害者の権利に関する規定を設けるべきであるとの意見、さらに、5.政教分離の規定を我が国の歴史と伝統を踏まえたものにすべきであるとの意見が出されました。

 一方、公共の責務に関しまして、1.社会連帯・共助の観点からの公共的な責務、例えば国の防衛及び非常事態における国民の協力義務や社会保障制度を支える義務、責務を設けるべきである、また、2.家族を扶助する義務に関する規定を設けるべきであるとの意見が出されました。

 次に、国会及び内閣の政治部門については、1.戦後の国民主権主義、民主主義が我が国の国家社会の発展に大きく寄与したことを評価し、この原則をさらに充実させるために、政治主導の政策決定システムをより強化するとともに、そのプロセスを大胆に合理化し、時代の変化に即応してスピーディーに政治判断を実行に移せるシステムとすべきであること、2.現在の二院制については、両院の権限や選挙制度が似通ったものになっている現状のまま維持すべきではないことにつきましては、大多数の同意が得られました。

 その上で、1.国会の議事の定足数は削除すべきである、2.総理大臣以下の国務大臣の国会への出席義務を緩和し、副大臣などの代理出席でよいとするべきである、3.法律案の提案権は、国会議員、これには国務大臣たる国会議員を含みますが、これに限定すべきである、4.首相の権限を強化すべきであるなどの意見が出されました。

 次に、司法につきましては、1.最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には不満があること、2.民主的統制を確保しつつも政治部門が行う政策決定・執行に対する第三者的な立場から、例えば憲法裁判所制度あるいは最高裁判所の改組などについて検討すべきであること、3.裁判官の身分保障のあり方について見直すべきであること、4.民事、刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきであることの点につきましては、異論がございませんでした。

 その上で、1.最高裁判所裁判官の国民審査の制度は廃止し、廃止後の適格性審査の制度についてはさらに検討を行うべきこと、2.一定の場合には裁判官の報酬を減額することができる旨の規定を置くべきこと、3.国民の司法参加に関する規定を置くべきであることなどの意見が出されました。

 次に、財政につきましては、財政民主主義をより実質の伴うものにする方向で見直すべきであるということについては、異論がございませんでした。

 その上で、1.現憲法八十九条を書き直し、私学助成に関する規定を置くべき、2.決算に関する国会の権能に関する規定を置くべきなどの意見が出されました。

 今後の議論の方向性といたしましては、1.健全な財政規律に関する規定を置くべきか、2.後年度負担を伴う財政支出に関する情報開示の規定を置くべきかについて検討することとしております。

 次に、地方自治につきましては、地方分権をより一層推進し、また、地方分権の基本的な考え方や理念を憲法に書き込む必要があるという点で、大多数の同意が得られました。

 その上で、いわゆる道州制を含めた新しい地方自治のあり方について、1.法律の範囲内での課税自主権の付与など自主財源の確保、2.自己決定権と自己責任の原則、3.補完性の原則など、その基本的事項を明示すべきである、その際には、住民による自発的な自治、必要最小限度の行政サービスの保障などの観点に留意すべきであるとの意見が出されました。

 次に、憲法改正手続についてですが、現憲法の改正要件は、比較憲法的に見てもかなり厳格であり、これが時代の趨勢に合った憲法改正を妨げる一因になっているのではないかとの意見が強く主張されました。例えば、憲法改正の発議の要件である各議院の総議員の三分の二以上の賛成を、各議院の総議員の過半数とする等の憲法改正を行うべきではないかという具体的な提案もあり、これについても今後慎重に検討をすることといたしております。

 以上が、論点整理の概要であります。

 いずれにいたしましても、新しい憲法をつくるには、冒頭に触れましたように、しっかりした国家像や哲学ともいうべき基本的な考え方が必要であります。

 我が党がつくる憲法草案の基本的な考え方を私なりに理解したところを述べさせていただきますと、究極にある価値は生命の尊重ということではなかろうかと思います。和をとうとび、命を慈しむ我が国古来の伝統に根差した国柄や、他者の生命、尊厳を尊重し、公正な社会の形成に貢献するという公共の考え方も、実は生命の尊重という同じ価値から発しているように思うのであります。そして、近代立憲主義の基本的価値である個人の尊厳と生命の尊重は、いささかも矛盾いたしません。おのれの幸せも大事だが、おのれも他も幸せにという考え方こそ重要ではないかと思います。

 国際貢献のルールづくりに当たりましても、私個人としては、実力行使の原理が、命を慈しむ我が国古来の伝統と、二度と繰り返してはならない悲惨な戦争の教訓にあることを踏まえて、得意とし、積極的な対応をする分野と限定的な対応にとどめる分野を明確にしつつ、国際平和に積極的、能動的に貢献する姿勢をきちっと位置づけるべきではないかと思います。

 ここで、我が党と同時期に出されました公明党の論点整理及び民主党の中間報告につきまして、その内容については後で各党の責任者からお話があろうかと思いますが、これを読ませていただいた感想を最後に申し述べたいと思います。

 結論を先にしますと、率直に申しまして、自民党、公明党及び民主党で大まかな方向性が一致する論点がたくさんあると思います。

 焦点になっております安全保障の問題についても、現行憲法の平和主義の理念を基本的に堅持しつつ、国際協力、国際貢献に関する規定を盛り込むことには三党に異論がないように思います。特に公明党におかれましては、党内におきまして、国の自衛に不可欠な要素を憲法に書き込む余地があるとの意見が出されているということに、私としては大変心強く感じるところであります。また、民主党は、他の手段をもってしては対処し得ない国家的脅威を受けた場合には、制約された自衛権を行使する要件となるといたしております。この見解が、政府のこれまでの九条解釈から一歩踏み出し、他国に対する武力の行使を自国に対する国家的脅威と見て自衛権による反撃を認めたものと受け取っていいものであるならば、その考え方には、私たちの目指す方向と基本的に同じである、私としても共鳴できる部分があるということを申し上げたいと思います。

 時間が参りましたので、私の発言は以上とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

中山会長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 まず初めに、民主党は、本年一月の党大会における代表あいさつにおいて、二〇〇六年までに党としての憲法改正草案を提示することといたしております。また、本調査会初め衆参両院の憲法調査会は、来年一月をもって当初の申し合わせである丸五年を迎えます。こうした状況に対応をいたしまして、民主党憲法調査会としましては、本年末ごろを一つのめどとして、民主党の憲法提案を取りまとめることといたしております。

 今回まとめました中間報告、中間提言は、こうした展望のもとに準備され、取りまとめられたものでございます。課題のすべてを網羅しているわけではありませんが、およそ憲法問題の主要な課題について党内議論の成果を紹介いたしております。お手元に配付されているものは、その要約バージョンでございます。私どもは、今後、これを一つのベースとして、国民的な議論を沸き起こしていくことが重要であると考えております。

 さて、民主党は、一九九九年十一月に党の憲法調査会を立ち上げ、その際、論憲という立場を明確に掲げました。すなわち、民主党は、二十一世紀のこの国の形を構想する立場から、あらゆる問題について自由濶達に議論する論憲の立場に立つ、その議論は、従来の改憲、護憲の論議にとらわれぬ幅広い、開かれたものとすべきであるというものであります。

 また、二〇〇一年十二月に取りまとめた中間報告では、新しい憲法を打ち立てるという決意で憲法論議を進めていくことを高らかに掲げております。すなわち、「そもそも、国のかたちの骨格をなす憲法は、世界の変化にも動じない普遍的な原理をうち立てるとともに、新しい課題にも対応できる優れた対応力・包容力も持っていなければならない。常に歴史を振り返り、新しい課題に挑戦する進取の気風をもって憲法をも議論のテーブルにのせる能動的な姿勢が、いま必要だ」と呼びかけたものであります。

 民主党は、単なる護憲、改憲の枠を超えて、歴史の変化を踏まえたスケールの大きな憲法論議を沸き起こしたいと考えております。本日お配りさせていただいた中間提言も、こうした観点から取りまとめたものでございます。

 ここで、改めて、民主党が取り組んでいる憲法調査会の活動と議論の基本的方向性について、この中間提言の内容に沿って、特に七つの点について報告をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、過去に向かって古きよき日本を求めて議論をするのではなく、未来に向かって新しい日本の姿を構想し、その上で憲法のあり方を検討するということが重要だということです。これが我が党の譲れない基本的な立場であります。従来までの護憲、改憲論議は、ややもすると、過去の歴史に足をとどめたまま、五十年前の戦後憲法は一言一句変えたくない、あるいは、百年前の懐かしき時代をゆがめた戦後憲法こそ世の中の元凶といった議論を繰り返してきたのではないでしょうか。中間提言にも触れているとおり、私たちは、そのいずれにもくみせず、歴史の前に向かって大いなる憲法構想を打ち立てたいと考えております。

 こうした正面からの憲法論議を避け、その場しのぎの憲法解釈で既成事実を積み重ねる政府のやり方は、憲法の空洞化、形骸化を招くものであり、ひいては国民の憲法に対する信頼を損ねるものであります。場当たり的で、その場しのぎのやり方で事を済ませるのではなく、スケールの大きな構想力に裏づけられた憲法論議が、今この国の政治に求められている第一のポイントであると考えます。

 第二に、民主党は、現在の日本国憲法の根本規範であります国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義については、これを尊重し、その深化を図ることを基本としております。憲法は、長い時間とともに深く国民生活の中に浸透し、いわば社会規範としても定着するものであることが望ましいと思われます。この考え方に立って、戦後日本においてあまねく定着してきた憲法の根本規範については、これを最大限尊重し、それに基づいて、以下のような憲法論議を推進していくというのが我が党の基本的な姿勢です。

 すなわち、中間提言では、一つ、世界に対して国のあり方を示す宣言、二つ、未来に向けた日本国民の意思や精神の明示、そして三つ目に、国の活動を律する枠組み、こうした三つの性格をあわせ持つ新しいタイプの憲法を構想したいと提案しております。これは、押しつけ憲法論を振りかざして、国民の間に蓄積された憲法に対する信頼を押し流すような暴論は、我々の選択する道ではないということであります。また、米国に気兼ねし、おもねり、日米関係のために憲法条文を改正するというこそくな憲法論議にもくみしないということを意味しております。

 第三に、現行の日本国憲法にもうたわれている国際主義の立場をさらに鮮明にするということであります。

 二十一世紀初頭の世界の大きな流れを受けとめ、例えば、現在のEUが典型的な動きを示しているとおり、主権の移譲もしくは主権の共有といった考え方を含めた大胆な議論を進めていくということであります。この姿勢の裏には、戦後、日本国憲法の基本精神の重要な柱の一つとして、世界とともに生きるという国際協調主義の精神があるとの認識があります。民主党は、これをさらに進めて、この国を国際社会とともに行動する日本へと転換させていきたいと考えております。

 中間提言では、安全保障についても、一国の枠組みで自己完結的に考えるのではなく、何よりもまず、国際社会との協調を前面に押し立ててそのあり方を検討すべきだとしております。より具体的には、なし崩し的な自衛隊の海外派遣を放置することなく、一つに、国際協調主義の立場に立って、国連の集団安全保障活動に積極的に関与できることを明確にし、二つに、専守防衛に徹した限定された自衛権についても明記することを提案しております。

 第四に、この国の統治システムを二重の意味で変革するということを考えております。

 二重というのは、一つには国民主権の徹底であります。あらゆる場面で国民の意思が自由に率直に反映される仕組みを追求することが必要であると考えています。例えば、提言では、司法制度改革における国民参加の促進や、あるいは国民投票制度の検討、さらにはオンブズマン制度の整備など、国民一人一人の声を尊重する、そしてそれを国政に反映させていく仕組みの確立を盛り込んでおります。

 いま一つは、政治主導の内閣、総理主導の政府の確立であります。

 激動する世界に対応する迅速で指導力ある政府をどのように実現するかは統治の基本問題であります。しかし、今日のような、政官業癒着の構造そのままに総理大臣のリーダーシップを拘束するようなシステムが続いている限り、改革は望めません。

 提言では、内閣総理大臣の執行権を明確にするとともに、政治と官僚システムとの関係についても大胆に見直して、利益誘導政治の弊害を除去できる仕組みへと転換するよう提言をいたしております。また、現行の二院制の見直し、あるいは政党を憲法上の存在として位置づけることなどについても触れております。

 第五に、この国の形に直結する大きなテーマとしての分権社会の形成について述べさせていただいております。

 民主党は、どの党よりも、これからの日本は国民のエネルギーに信頼を置いた自律社会の実現を目指すべきであると強い思いを持って政治に取り組んでおります。それは、一方では市場における自由な企業活動の促進であると同時に、地域に根差し、地域で自己決定する自治の力を開花させることによって初めて可能となるものであります。

 中間提言では、現行憲法の第八章に掲げる地方自治の本旨のより具体化を提言しております。例えば、一つには、中央政府と地方政府とが対等であるとの原則を憲法上明記すること。あるいは、二つ目には補完性の原理、つまり、中央政府は地方政府ではどうしてもなしえない業務を補完するというのが役割であるということをしっかりと憲法上採用し明記すること、あるいは課税自主権を明記することなどを提案しております。

 第六に、人権については、二つの視点から議論を進めています。

 一つは、国際的な視点であります。人権は、既に世界人権宣言や国際人権条約を初めとして国際法秩序が成熟しつつある分野であり、我が国の憲法についても、この国際社会の水準に合わせた人権保障のレベルを確立することが必要であると考えています。提言は、こうした観点に立って、環境権、知る権利、自己決定権など、諸外国の事例も参考にしつつ、国際スタンダードに見合った新しい権利の具体化を提示しています。

 もう一つは、憲法の根本原理でもある個人の尊厳を守り抜くため、公正で独立性の高い、憲法上の位置づけを持った人権保障・救済機関の設置を検討すると提起しています。具体的に、独立した第三者機関としての人権委員会の創設を提言し、それを、例えば現行の会計検査院の場合に倣って、憲法上の機関として位置づけるべきであるとしております。

 最後、七番目に、私たちは、従来の護憲とか改憲、右とか左、保守とか革新、こうしたことの前に、この国のすばらしい憲法を国民生活の中に生かすということに戦後政治は余りにもむとんちゃくではなかったか、反省してみる必要があると考えております。

 それは、一つには、我が国の司法制度の中で、いわゆる違憲審査機能が十分に備わらず、機能していないのではないかという疑問であり、もう一つ、初めに行政ありきの風潮によって国民の生活や権利がともすれば二の次にされるという戦前からのお上意識を克服することなく過ごしてきたのではないか。そして、こうした事態は、私たち政治家にその責任の一端があるというべきではないかと位置づけております。

 こうした反省に立ち、提言の中では、人権保障や憲法秩序の保護、そのもとでの法の支配を確立するため、我が国においても、ヨーロッパや韓国のように、違憲審査を担う憲法裁判所の創設を行うべきであるのではないかといったことを提案いたしております。

 私どもは、こうした多くの具体的な提案とともに、さらに大いなる憲法議論を党内的にも進めてまいりたいと思っておりますが、特にこの憲法議論を進めるに当たって重要なことは、政治家やあるいは一部の識者によってこの議論が進んでいくのではなくて、国民各界各層において共通の認識のもとの議論が展開をされ、そして、その国民的な議論に基づいて我が国の憲法の今後のあり方が決められていくということであると考えております。

 こうした国民的な議論を展開していく上で、この調査会の議論はもとより、我が党の憲法調査会の今回の中間報告が一つの議論のたたき台あるいは出発点となることを期待するものであります。

 以上、御報告申し上げます。

中山会長 次に、太田昭宏君。

太田委員 公明党の現憲法に対する姿勢は、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の憲法三原則は不変のものとしてこれを堅持し、さらに、憲法第九条を堅持した上で、時代の大きな変貌の中で新しく提起された環境権やプライバシー権等の新しい人権を加えるという加憲という立場をとっております。

 特に、党の憲法調査会の姿勢としまして、二十一世紀の日本をどうするかという未来志向の憲法論議が大事であるという観点に立っておりまして、明治憲法が欽定憲法、そして現憲法が平和憲法というならば、国民主権をより明確にするという国民憲法の視点、国際貢献を進めるための安全保障ということからいきますと、平和憲法をさらに拡充をしていくという視点、さらにまた、激動する社会の中で人権を確立するという人権憲法の視点、環境を重視する二十一世紀という観点から環境憲法の視点という形で議論を深めていきたいと思っております。

 自由な論議をしてまいりましたけれども、今回、六月に論点整理をさせていただいたというのは、論点とか意見の集約というよりも、自由な論議をまずしっかりして、幅広い論議を供したいというようなことでやったものをまとめたというのが今回の論点整理でございます。

 前文でありますが、現憲法の前文につきましては、平和主義などの理念を高らかにうたっているということがあるわけですが、一方、敗戦直後の歴史的背景を色濃く反映し過ぎているという意見もございましたり、あるいは、日本語らしからぬ表現も多いのではないかという意見も出されました。その際に、明確に人権尊重の理念というのが三原則の中でも書かれていないということもありまして、改めて憲法全体を貫く三原則を整足して明確に盛り込むべきだという主張がございました。

 二十一世紀の国際社会は、一段と相互協力関係の構築が求められているわけですが、その点で、国際社会で名誉ある地位を占めたいとの記述が、これまでの人道復興支援などいわゆる国際貢献の根拠とされてきたわけですが、それでは不十分であるということから、もっと明確に打ち出すことが大事であるという指摘が多くございました。また、その際に、人間の安全保障についての理念をさらに一層強く反映すべきだとの主張がございました。

 また、日本人のアイデンティティーあるいは日本固有の歴史や伝統や文化に根差した理念を出せというような意見がこの衆議院の憲法調査会でも出ているわけでありますが、我々もそうした観点は持つわけです。しかし、我々の観点というのは日本人のアイデンティティー、つまり、人間主義とか、先ほど保岡先生もおっしゃいましたが、生命尊重というような哲学というものをしっかり踏まえていくということが大事なんであって、国家主義的なそうしたものではないという意味での日本人のアイデンティティーというものについて考えるというような必要、そうした議論があったということを御報告させていただきます。

 天皇制につきましては、象徴天皇とは、権力なき権威としての存在を示し、象徴天皇制は定着しているし、的確であり、維持していくべきだという意見が強くありました。

 あくまで象徴天皇であるとした上で、それを表現として元首と呼んでもいいのではないかという意見もあるわけですが、我が党のかなり強い意見としまして、国政に関する権能を与えるなどの強いものにしない方がいい、あるいはまた、象徴天皇における国事行為については現行ということについてほとんど異論はないという状況でございます。

 象徴天皇制と国民主権をよりクリアにした方がよいという意見は、第一条に絡んであるわけですが、これは今後の検討課題としていきたい、このように思っております。

 女性天皇については、皇室典範の改正論議にゆだねていくということで、方向性としては認める方向で検討したいというのが我が党の姿勢として確認をされました。

 第二章「戦争の放棄」でございます。

 戦後の日本の平和と繁栄を築く上で憲法九条の果たしてきた役割は極めて大きいという上で、九条についてはさまざまな論議をしてきたわけでありますけれども、現行規定を堅持すべきだという姿勢を今とっているわけですが、これを変える、覆すという議論にはまだ至っていない状況でございます。

 その上で、論点整理としての議論の所在を述べますと、次のようになります。

 個別的自衛権の行使は現行憲法でも認められているとの解釈が主流であるわけですが、集団的自衛権の行使は認めるべきではないとの意見が我が党においては大勢でございました。ただ、個別的自衛権の行使についてはあえて明確に、これは当然のことであるということからいきますと、明確に示さなくていいのではないかという意見も一方ではございました。

 専守防衛、個別的自衛権の行使主体としての自衛隊の存在を認める記述を置くべきではないかとの意見がございました。第一項の戦争放棄、第二項の戦力不保持は、上記の目的をも否定したものではないとの観点からでございます。ただ、既に実態として合憲の自衛隊というものは定着しているということがありまして、あえて書き込む必要はないのではないかという意見が出されたということも付言をしておきます。

 国連の集団安全保障の問題であります。国家の自己利益追求のための武力行使は認められないが、国連による国際公共価値を追求するための集団安全保障は違う概念ということで認められるべきではないかという指摘がございます。ただ、その場合でも、我が党の議論の中では、武力の行使は認められない、あくまで後方からの人道復興支援に徹すべきだという意見がございました。それゆえに、憲法上あえて書き込む必要はなく、法律対応でいいとの主張もございました。

 国際貢献につきましては、明確化を望む指摘がございまして、かなり積極的な国際貢献という表現が大事ではないかということがあったわけです。ただし、この扱いということにつきましては、九条ということに書き加えるか、前文に盛り込むか、あるいは別建て、別条にするか、あるいは、憲法ということではなく、法律で対応すれば済むのではないかというようないろいろな形がありますが、何らかの形で国際貢献ということを打ち出すという必要性についてはかなりの共通項があったのではないかというふうに思っております。

 第三章の「国民の権利及び義務」でございます。

 新しい人権は、十三条の個人の尊重あるいは幸福追求権、二十一条の表現の自由、二十五条の生存権を初めとする憲法条文の解釈によって導かれる、こういうふうに憲法学者等の皆さんからは指摘があるわけですが、憲法が二十一世紀日本の骨格をなすべきである、また未来志向の骨格であるということからいきますと、より積極的に明示すべきだという考え方がありまして、加憲として環境権やプライバシー権を我が党がうたっておりますのは、そうした二十一世紀日本の骨格をこうすべきだということの主張でございます。

 ただし、新しい人権を、この憲法調査会でも触れられたわけですが、あの権利も大事だ、この権利も大事だということで、憲法という形の上でどこまでそれを書くのか、あるいはそれは法律事項ではないのか、あるいは裁判的なそうした権利の問題ではないか、いろいろなことについてのバランスというのが非常に大事だというふうに考えておりまして、この衆議院の憲法調査会でもありましたが、権利のインフレという形を招くべきではないという指摘もあったわけですが、それらの観点というのはやはり踏まえておく必要があるということが意見として出されました。

 しかし、時代の変化は極めて激しいし、迫られる課題も多いわけでありまして、二十一世紀の日本をいかに築くかという未来志向の憲法論議に立ちますと、むしろ憲法にこれらの新しい権利を明記することによりまして事前の人権保障を可能とし、時代の変化に対応した積極的な立法措置を可能にするというようなことが望ましいのではないかという主張がされました。

 環境権につきまして申し上げますと、良好な環境を享受し、国家及び国民が環境保護に努めるといった趣旨の権利であるわけですが、十三条や二十五条によって読めるという解釈があるわけですが、そうした解釈だけでなく、かつての人間中心主義的ではない自然との共生ということをも含んだエコロジカルな、哲学的視点に立って環境権というものを打ち出すということが大事なのではないかという主張でございます。

 IT社会の進展する中でのプライバシーの権利を守ることが必要になっているわけですが、私事に属する個人情報を保護するということは当然として、より積極的に、表現として、プライバシー権というかあるいは自己情報コントロール権といいますか、そうしたことを確保する検討をしていくということは意義があるという主張がございました。知る権利が二十一条の表現の自由から導かれるとの主張があるわけですが、自由権から発している表現の自由と、政府などの情報開示を求める知る権利とは異なるという意見もございまして、今後の検討課題になっております。

 なお、私もここで主張させていただいたことが何度もあるわけですが、現憲法が権利と義務ということで構成されていて義務が少ないというような指摘が随分されたりしたわけですが、私は、権利と義務というこの憲法ということに新しく責任という概念を入れて、権利、義務、責任。環境の保護や国民への情報開示は国などの責任として考えるという新しい視点というものを導入するということは大事だということを思っておりますが、学者の皆さんからもこうした指摘もありまして、注目されるという論議に我が党ではなりました。

 十三条の個人の尊重、幸福追求権、公共の福祉の中でも、生命倫理の問題、生殖医学、遺伝子技術の発展に伴う生命倫理のあり方について、現憲法には条文はないわけでありますが、これから十分検討していかなくてはいけないという意見が出されました。

 二十六条に教育を受ける権利、受けさせる義務というのがあるわけですが、やはり戦後の状況というものを色濃く反映しているということからいきまして、大学、高校への進学率が大きく変化しているということもあったりしましたり、あるいは生涯教育ということが大事だということからいきますと、これは、憲法の上にどう表現するかということも含めて、もう少し積極的な教育ということについての主張ということが大事ではないかという主張がなされて、大いに検討しなくてはいけないというふうに思っております。

 三十二条に裁判を受ける権利があるわけですが、資力に欠ける国民が民事法律扶助を受ける権利を追加することによって、条項をさらに強化する必要があるという強い主張もございました。あるいはまた、犯罪被害者の人権について触れる必要があるということも指摘をされました。

 第四章の「国会」であります。

 二院制の堅持について議論がかなり集中をしたわけであります。議論の中では、衆議院と参議院とを合わせて一院とすべきであるという意見もわずかでありましたがありましたが、二院制を堅持すべきであるということでほぼ意見が一致をいたしました。その上で、両議院の役割分担を明確にして、特に、参議院の良識の府、再考の府としての位置づけを明らかにする必要があるということが確認をされました。

 衆議院と参議院とで任期、定数、選出方法など議院の組織、構成を変えるという意見もあったわけです。両議院間の役割分担として、予算と決算というような分け方とか、さまざまな改革案も議論をされました。

 選挙制度につきましては、両院は異なる制度で行われるべきものであり、衆議院は中選挙区制、参議院は個人を選ぶ大選挙区制であるべきだという強い主張がございました。

 我が党の議論では、特に二院制の問題とかこうした問題が話し合われたわけでありますが、参議院の影響力を弱める改革には賛同しがたいということがかなりの意見として強うございました。

 第五章の「内閣」については、やはりリーダーシップの問題、そして政治のリーダーシップということがかなり強く出されました。同時に、イギリスの議院内閣制では政府、与党が一体化するものでありますけれども、連立政権というものの中での議院内閣制のあり方というものは、イギリス型とは違って、新しい検討をしなくてはならないという指摘がなされました。

 議院内閣制をより実効的に機能させるために、内閣機能の強化ということは大きな課題になっておりますが、内閣総理大臣個人のリーダーシップというよりも、合議体としての内閣の機能強化という方向での内閣機能の強化を図るべきだという声が強く出されました。

 首相公選制については、議論がされて、五年間に随分議論はいろいろ、熱くなったり冷めたりということがありましたが、現時点では首相公選制を支持するという主張が少なくなっているということを御報告させていただきます。

 第六章の「司法」でございます。

 司法消極主義に傾いている現在の最高裁判所のあり方を改善していくことが重要であるという指摘がなされ、憲法裁判所の設置までは必要ないのではないかという指摘がございました。

 国民の司法参加は重要であり、裁判官と裁判員とで共同決定する裁判員制度は、国民的基盤の上に確立されるべきものであるということが指摘をされました。

 第七章「財政」につきまして、財政における地方自主権のあり方について、地方分権の議論とも絡み、自立できるだけの財源確保が必要であるという指摘がなされたり、課税自主権を憲法上に明記すべきとの意見も出されました。

 私学助成と憲法との関係について、条文の文言と運用の実態とが遊離しているという指摘がなされ、私学助成の必要性については実務、学説とも肯定しているところであるので、憲法上の表現についてはその重要性を踏まえて検討すべきであるという意見が出されました。

 第八章「地方自治」につきましては、地方自治が重要性から見てわずか四条しかないということについて、しかも、これが極めて抽象的で脆弱な規定であるという指摘がなされまして、これを強く強化していく必要がある、また明確にしていくことが必要であるとの意見が多く出されました。

 市町村合併が進む中で、住民の声が届く基礎的自治体の機能強化を図ることが主要であるとの指摘が大半でありまして、道州制を初めとする二層制の中身については、その上で、広域的な一体性や歴史性を踏まえて検討を進めることになりました。なお、連邦制については否定的であったことを御報告します。

 第九章「改正」の九十六条であります。

 総議員の三分の二以上の賛成の規定については、改正そのものを厳しくしているとの指摘も、少数でありましたがそうした意見も出されましたが、憲法改正の重さから妥当であるとの意見が大勢であったことを指摘しておきます。

 第十章の「最高法規」の項でございますけれども、憲法尊重擁護義務について、国会の憲法調査会などで、天皇、国務大臣を初めとする公務員の憲法尊重擁護義務に加えて、国民の憲法尊重擁護義務を定めるべきではないかという主張があるわけでありますけれども、党の論議としては否定的であったことを御報告させていただきます。

 以上でございます。

中山会長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

中山会長 次に、各会派を代表して一名ずつ大会派順に十分以内で発言していただきます。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、近藤基彦君。

近藤(基)委員 自由民主党の近藤基彦でございます。

 ただいま三党の代表者からの論点整理の御説明を受けて、若干の感想及び意見を申し述べたいと存じますが、時間が限られておりますので、論点を絞って申し述べたいと思います。

 まず、何といっても最初に指摘しなければならないのは、憲法九条についてであります。

 近年、国際情勢は緊迫度を増しており、二〇〇一年の九・一一同時多発テロの発生や、その後のアフガンやイラクにおける現状などを見ますとき、国際的なテロリズムとの非対称的な戦争の中に世界がいや応なく巻き込まれているという感じがいたします。我が国周辺におきましても、北朝鮮による拉致問題、ミサイル発射問題、核兵器開発問題等が引き起こされてきていることも周知のとおりであります。

 このような現実の脅威と対面しつつ、国の主権を守り、国民の生命、財産を守ることが政治の責務であることにかんがみれば、万が一の事態が生じた場合においても、万全の対処を行うことができるような防衛体制を整備することは、リスク管理の観点からも、また国民の不安を取り除くためにも当然のことであります。

 このような観点からは、国の基本法である憲法に、我が国が自衛権を保持していること、そして、その行使の主体として自衛隊を明確に位置づけること、そういった必要があると考えます。これが第一点であります。

 他方、憲法九条を自衛や防衛の観点のみから眺めるのでは狭過ぎます。すなわち、国際貢献の推進という観点から憲法九条の問題点について考えてみたいと思います。

 今日、世界で生じている紛争の多くは、民族、宗教、貧困等に起因するものであって、主権国家という枠組みでとらえ切ることができません。これらの事態に対処するためには、個々の人間に着目した人間の安全保障に基づく国際貢献が必要になってきていることは多くの論者が指摘しているところであります。

 ここで言う人間の安全保障に基づく国際貢献とは、一人一人の人間の豊かな可能性を引き出し、意義ある生活を送ることができるように、政府、NGO、国際機関等が連携して基本的支援を行うというヒューマンエンパワーメントの側面とともに、その支援が実施される地域での社会秩序の維持に関し第一義的な責任を負う国家が、その機能を発揮する十分な能力と意思を有しない場合において、その支援について正当性が担保されるときには、軍事力の提供をも含む支援を行うことによりヒューマンエンパワーメントを実現するというプロテクションの側面も有するものであります。

 この後者の側面を考えるとき、一九四〇年代の国際情勢を反映して制定された憲法九条は、そのような行動の制約になってしまうものであり、我が国が積極的に人間の安全保障に基づく国際貢献を実践しようとすれば、やはり憲法改正は不可欠のものとなると考えます。

 以上、二つの側面から現行の九条の問題点について述べさせていただきましたけれども、先ほど保岡自民党憲法調査会長が述べられた我が党の論点整理は、それに対して明確に一つの答えを出しているものであります。しかも、命を慈しむ平和愛好国民であるという我が国の国柄を踏まえつつ、安全保障政策をリスク管理の問題としてとらえるべきだという基本姿勢は、国民の生命、財産を守る政治のありようとしても実に真っ当なものと存じます。

 他方、公明党の論点整理及び民主党の中間報告においては、これらの点について必ずしもはっきりした物の言い方をされていないような気がいたします。

 例えば、民主党の中間報告に言う「憲法の中に、国連の集団安全保障活動を明確に位置づける。」ことによって、具体的に我が国はどのような役割を担うことになるのでしょうか。

 また、「国連憲章上の「制約された自衛権」について明記する。」という場合の「制約された自衛権」とは何か。国の自衛権については、個別的にせよ集団的にせよ、行使できると書くのか書かないのかはっきりしないと、これまでのような神学論争がいつまでも続いていくのではないでしょうか。また、自衛隊を憲法上も明確に位置づけることも必要なのではないでしょうか。

 また、「「武力の行使」については最大限抑制的であることを宣言し、書き入れる。」ということについては、保岡自民党憲法調査会長の発言にもありましたように、我が国の国柄ともいうべきものであり、基本的に賛成ですが、しかし、専守防衛に徹するという表現は少し気になるところであります。専守防衛という表現は安易に使われがちな表現でありますけれども、ちょっと考えればすぐに御理解いただけるように、我が国が一国で専守防衛体制を完備すること、すなわち、どこから攻められても完璧にこれを撃退するなどということは、まさしく横綱相撲以外の何物でもなく、このようなことができる防衛力を一国で整備することは至難のわざだと思います。

 憲法九条は日米安保とセットだったからこそ、戦後日本は安定した中で未曾有の経済発展と繁栄を遂げたのではないでしょうか。国の防衛のような国家の基本的事項については憲法に明記するべきです。そうでないと、またかつての非生産的な堂々めぐりの水かけ論が繰り返されることになりかねないと思います。

 さて本日は、衆議院の四百八十議席のうち四百六十一議席、実に九六%を占める主要三党の代表者から、それぞれの党内における憲法論議の現状について御説明をちょうだいしたわけですが、そこには確かに今申し述べたような違いが散見されることは事実であります。しかし他方で、具体的な政策が一致しているか、あるいはその基本的な方向性が一致している部分が相当数あります。むしろ、そのような部分の方が多いようにも思われます。それぞれの党内にさまざまな御意見はございましょうが、憲法改正の発議要件の三分の二をはるかに超える数の議員を擁する会派間において、憲法に関する共通理解ができつつあると存じます。

 例えば、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三大原則については、これを堅持することについて完璧に一致しております。また、今申し述べた憲法九条に関する論点の中でも、国際協力、国際貢献に関する規定を盛り込むべきことなどについては基本的に一致していると思います。このほかにも、象徴天皇制を維持しつつ、女帝問題については皇室典範の改正という観点で今後検討すること、環境権、プライバシー権、情報開示請求権等の新しい権利を明記すること、政治主導の政策決定システムを構築すること、特に現在の二院制については、両院の権限や選挙制度が似通ったものとなっている現状をそのまま維持すべきではないこと、地方自治については、その基本的な考え方や理念をより具体的に書き込むことなど、かなりの論点において一致点が見受けられると思います。

 このようなことを改めて確認できたという意味においても、冒頭中山会長からごあいさつがあったとおり、非常に意義深いことであり、本調査会の調査が新たなステージに入ったことを実感しております。来年には、本調査会は五年の調査期間を終了し、最終報告書の作成に向けて最後の段階に入るわけですが、今後は、各党から出されたもろもろの憲法上の各論点について、それぞれの党内の見解を取りまとめる一方、相互にすり合わせもし、できれば一致できるぎりぎりの到達点を示すことができるよう努めることが重要だと思います。

 締めくくりとして、先国会において与党内では相当議論をいたしましたが、日本国憲法改正国民投票法案及び国会法の一部を改正する法律案を早急に整備する必要があるということを強く申し述べたいと思います。本日の三党の御報告を拝聴すれば、ますますその感を強くいたします。最近の調査を見ても、国民と衆議院議員の八割以上が憲法改正に賛成であるとの結果が出ております。こういう状況下で憲法改正の手続整備がおくれているということは、私としては立法の不作為として批判を浴びても仕方のないことではないかと思っております。

 以上をもちまして、私の発言とさせていただきます。御拝聴ありがとうございました。

中山会長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 自民党さん、公明党さんの意見なども聞かせていただいて、共感できる部分もありましたが、若干我が党とはスタンスが違うのかなと思う部分もございました。

 まず、人権の分野について申し上げたいと思います。

 保岡委員から、我が国固有の価値であるとか日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識に基づかなければならないという御発言がございました。そのこと自体は決して否定するものではありませんけれども、ただ、人権について、当委員会でも、特に自民党の委員の方から、現行憲法は個人主義に傾き過ぎているのではないかというような発言があったこととあわせて考えてみますと、また、御発言の中にも、国民の健全な常識感覚から乖離した規定を見直すべきであるという御発言もございましたけれども、必ずしもそうではないのではないかというのが私どもの基本的な考え方であります。

 もともと、そうした趣旨、つまり、個人主義的な発想では、それが乱用にわたってはならないということは既に十二条、十三条にも記述をされているところでございますし、個人主義という言葉は、いわば人間が人格として尊重される、個人として尊重される、政治はそれに奉仕すべきであるという考え方のはずでありまして、利己主義ということとはやはり区別されるべきと考えますので、その点、利己主義的であってはいけないという趣旨であれば理解はできるのでありますけれども、個人主義的なことがいけないという趣旨であるとすると、少し違和感を覚える次第であります。

 また、太田委員から当委員会でもしばしば、責任という言葉で考えたらどうかという御発言もございましたし、ただいまもお話がありました。自民党さんの報告の中でも、環境権などについて国の責任という形でとらえるというような記述もございますけれども、その点については、私どもといたしましても、そういった考え方も検討されてよいのではないかと思います。

 いわゆる新しい人権と言われて久しいわけでありますけれども、既に規定されている人権カタログに比べますと、この環境にかかわる事柄で主張される中身というものは、必ずしも、人権の主体であるとかあるいは法律効果であるとか、そういったことが憲法上の権利として一義的に確定できるかということについては若干まだ疑問の余地がないではないわけでありまして、こういったことについて、国の責任という言い方がよろしいのか、あるいは国の責務という言い方がよろしいのかはまだ検討の余地があろうかと思いますけれども、その点については、そういう考え方もあるのではないかと思っております。

 次に、安全保障のことについて申し上げたいと思います。

 枝野委員から既に我が党の考え方については発表させていただきましたが、近藤委員からの御指摘もございますので、その点について補足をし、またお答えできる部分についてはお答えをしてまいりたいと思います。

 日本における安全保障の問題を展望したときに最も危険なことは、憲法の空洞化ということではないかと認識をいたしております。つまり、時々の状況によって、政府が行う憲法解釈がいわば恣意的にこの国の安全保障のあり方を動かしているのではないかということであります。

 つまり、従来やらないと言っていたことをやるというふうになったりであるとか、あるいは憲法上できないとされていたことについて、解釈技術を施すことによってできるということを行うことによって、憲法の規範的価値が麻痺してしまっているのではないかという懸念があるわけであります。

 つまり、憲法というのは、現実政治に生かされるものでなければならないのはもちろんでありますし、憲法の条文を固持することにきゅうきゅうとして、その形骸化、空洞化を放置するということがいいとは思っておりません。つまり、国家権力の恣意的な解釈を許さない基本法としての構図を確立することが必要ではないかという立場であります。

 ただ、先ほど御指摘もありましたけれども、ポスト冷戦構造という中で、古いタイプの脅威と国家間紛争にかわりまして、新しいタイプの脅威が地球規模で覆いつつあります。これに対応し得る新たな安全保障と国際協調主義の確立というものが求められているわけであります。

 私たちは、これまでの日米関係一辺倒の外交と安全保障政策ということではなくて、二十一世紀の新時代にふさわしいアジアの中の日本の実現に向かって歩み出すべき時期を迎えていると思います。

 また、国際協調主義の立場に立って、国連中心の国際秩序の形成に向けた積極的な役割を果たしていくべきだろう。そのためには、例えばEUの発展過程に見られるような主権の移譲であるとかあるいは主権の共有ということも含めたよりグローバルな視点からの憲法の組み直しということにもあえて挑戦する気概というものが必要ではなかろうかと考えております。

 そこで、私どもが申し上げているその国連の集団的安全保障活動を明確に憲法上位置づけることはどうだろうかということについてですけれども、国連安保理もしくは国連総会の決議による正統性を有する集団的安全保障活動についてはこれに関与できるということを明確にすることによって、地球規模の脅威と国際人権保障のために日本が責任を持ってその役割を果たすことを鮮明にするということであります。

 また、制約された自衛権についての御指摘がございました。

 ここに言う制約というものは、緊急やむを得ない場合に限り、つまり、他の手段をもってしては対処し得ない国家的脅威を受けた場合において、国連の集団的安全保障が作動するまでの間の活動であり、かつ、その活動の展開に際しては国連に報告すること、この三点を基本要件とするということを意味するものであります。

 いずれにいたしましても、憲法については、改正するしない、あるいは現行憲法についても基本的には守っていくという、守っていくというのは、その規範を、仮に改正されたとしてもそれをしっかりと守っていくということが必要なわけでありまして、自民党さんからの御指摘にもありましたように、一つの条項が全く違う形で解釈されて、それが政治的な争いの具になるというのは、必ずしも健全な憲法の姿であるとは思っておりません。

 その意味で、これも自民党さん、公明党さんは、必ずしもそこまでは必要ないのではないかという御意見だったようでありますけれども、私どもといたしましては、日本における違憲審査制、これについては憲法裁判所というものをつくりまして、もちろん安全保障のためだけの課題を解決するということではありません、ほかの人権条項、その他の条項もございますけれども、こういったことを主張させていただいております。

 従来からも指摘がありますし、また自民党さん、公明党さんからもそのような御意見があったかと思いますけれども、従前より日本の最高裁判所の違憲審査権の行使というのは決して活発ではありませんでして、いわゆる司法消極主義というふうに呼ばれていることがあります。これは、主義、ポリシーというよりも、ある意味、政治文化の産物のようなところがあるのではないかと思っております。

 一つは、理論的には米国型の違憲審査制、付随的違憲審査制を導入しているという解釈を前提といたしまして、司法的解決による司法審査を抑制するということが行われているということ、また行政優位の思想が影響しているのではないかということ、また戦後日本では憲法改正に関する自由な論議が行われることなく、仮に最高裁が高度な統治問題について憲法判断を示したならば、それは政治問題として一気にクローズアップされるおそれがあったことなどが司法としての消極姿勢をもたらしたのではないかと思っております。

 こういった法の支配という観点からは、憲法の規定、それを規範としての価値を守っていくために、法の支配の観点から憲法裁判所というものも検討されるべきではないかということを申し上げたいと思います。

 以上です。

中山会長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 先ほど我が党の論点整理につきましては、太田昭宏さんの方から述べられました。私の方からは、いささか重複をするかもしれませんが、若干恣意的になることを恐れずに、個人的なとらえ方を補足的に申し述べたいと思います。

 今、自民党また民主党の委員の方から相互の見解についてのとらえ方がありましたが、私にはそのゆとりがありませんので、我が党の物の考え方についての補足的なお話をさせていただきたいと思います。

 まず、公明党は、昭和三十九年に結党されましたから、この秋で四十年の歴史を刻むことになります。ちょっと蛇足っぽい話になりますが、四十年という歳月につきましては、私には特別な思いがあります。

 それは、日本の近代を振り返ったときに、四十年が重要な転換点であったということであります。すなわち、明治維新から四十年後が日露戦争の勝利であり、さらにそれから四十年後はアジア太平洋戦争、大東亜戦争の敗戦であり、またその後の四十年で高度経済成長をなし遂げ、バブル経済にまで至ったということであります。

 つまり、四十年という歳月は、個人の人生においても歴史においても、さらに政党にとっても大変大きな節目である。蘇生するかそれとも惰性のままに終わるか、そういった非常に大きな分岐点であろうかということを想起、思い起こすわけであります。

 憲法についての態度ということで申し上げますと、公明党は、この間、国民主権、基本的人権、恒久平和主義という三つの原理原則を守る、いわゆる護憲の立場に徹してまいりました。私のように大変長い間党人として生きてきた人間にとりまして、今なお改憲という言葉が持つ響きにどちらかというと身構えてしまうということは否定し得ない事実であります。つまり、護憲にプラスイメージを、改憲にマイナスイメージを持ってしまうということがあるわけであります。

 ただ、一方で、時代の変化というものは抗することができない流れとして押し寄せてきております。

 去る六月に政府の税制調査会基礎問題小委員会がまとめられました「わが国経済社会の構造変化の「実像」について」、サブタイトルは「「量」から「質」へ、そして「標準」から「多様」へ」とサブタイトルがついておりますけれども、この報告書は、大変に示唆に富む内容を提示しております。

 これは、高度経済成長期及び一九七〇年代半ば以降の我が国の経済社会の構造変化の実像把握を実施しようというものでありまして、一言で、少子高齢社会の到来とかあるいはグローバル社会の到来といったことで片づけるには余りにも惜しい多義的な意味を持った分析であります。

 私たちは、こうした時代の変化を見据えて、それに対応しながら、より憲法三原理原則を深める方向で改革することに決して憶病であってはならないと考えております。その意味では、護憲的改革論とでも言うべき立場に深化してきているのではないかと私には思われます。

 一昨年十一月の党大会で、先ほど太田委員からも話がありましたけれども、憲法三原理は不変のものとし、九条は堅持するとの基本姿勢に立った上で、時代の変化に呼応する観点から、環境権やプライバシー権といった新しい人権、さらには地方分権の明確化などを加えていく方向での党内意見集約に乗り出すことを決めました。いわゆる加憲であります。ここでの態度をあえて新聞の見出し風に言いますれば、加憲で護憲的改革を目指すということになろうかと思います。

 ところで、九条と恒久平和主義の問題につきましての議論に絞って若干触れてみたいと思います。

 九条一項の戦争放棄の規定については、議論の余地がなく、一〇〇%そのままでいいという考え方であります。

 第二項の戦力不保持については、大きく二つに分かれているのではないかと思います。一つは、自衛のためのものまで否定したものではないとの解釈から、既に合憲の自衛隊が既成の事実として定着をしており、あえてこの項目にさわる必要はないという態度が一つであります。もう一つは、そうではあっても、やはり自衛をめぐっての解釈が分かれるという現実がある限り、その意味内容を明確に、第三項を仮に新たに設けてでも確定するとか、あるいは自衛隊の存在を明確化すべきではないかというものであります。ここでも、一、二項をそのままにすることでいわば激変緩和をし、加憲すればいいのではという主張であると言えると思います。

 ただし、自衛隊の存在を認める規定を加えるにしても、そのありようにつきましては、専守防御に徹して、海外派兵は一切認められないことを明確にすべきだという点では一致をしております。

 つまり、集団的自衛権、これは、私はこの調査会の場でも何回か申し上げたと思いますが、定義の明確化、集団的自衛権もという定義の明確化が急がれるとは思いますけれども、この集団的自衛権については認めるべきではないとの主張が支配的であります。

 また、集団安全保障については、国連決議に基づくものであっても、日本は直接的な武力行使に手を染めるべきではない、あくまで非軍事、後方支援に限定されるべきだとの考え方が強いように思われます。

 一方、PKOなど国際貢献、国際協力活動を積極的に展開するべきだとの点については、前文に明確に規定するべしといったものや、新しい条項としてつけ加えるべきだといったように、積極的に書き加えることで合意が得られていると思われます。

 今、かいつまんで申し上げましたような議論の背景には、世界に向かって憲法九条が今日まで発信してきた意味合いを損なってはならないとの強い合意が横たわっていると思います。と同時に、現在までの日本政府が展開してきた解釈に基づく行動をも最大限に生かそうという判断が働いております。これは、この五年近く、公明党が連立政権に参画して以来の安全保障分野におけるかじ取りへの参画の自負心が裏づけになっているという側面も無視できないと私には思われる次第でございます。

 九条を仮に全面的に変えるということがもたらす内外への影響というのは、はかることが知れないほど大きいものがあります。また、全く現状のままで変えないということがもたらす問題も少なからぬものがあると思います。それを勘案するならば、まずは現状追認的九条加憲ということでいこうということもあり得るのではないかと思われるわけでございます。

 もちろん、一方で、今申し上げたようなことは、加憲といえども、別に明文を改定するわけだから、やはりその影響は少なくない。それならば、そういうことはしないで、いわゆる安全保障基本法といった法律の成立をまずは急いで、その中で懸案を規定すればいいのではないかとの主張があるわけであります。

 そのほか、多様な意見が錯綜していることは言うまでもありませんが、つづめてこれらをあえて結論づければ、タブーを設けぬ議論の結果でも、九条の現行規定を堅持すべきだとの姿勢を覆すだけの議論に至っていないということになるわけでございます。

 以上です。

中山会長 次に、山口富男君。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 初めに、憲法調査会の調査の進め方について一言述べておきます。

 本調査会は、調査会規程第一条にあるように、日本国憲法についての広範かつ総合的な調査を行うことを掲げて設置されたものです。憲法改定案をまとめたり、まして案のすり合わせですとか改定の調査を進めるものではありません。

 本日の調査会では、自民党、民主党、公明党の三党から、六月にそれぞれ公表されました憲法の論点整理、提言についての発言がありました。これらはいずれも憲法改定を目的としてまとめられた文書です。こうした文書を特段の枠を設けて本調査会の調査対象であるかのように扱うということは調査会の目的を逸脱するものだ。私はこの点について幹事懇談会でも述べてまいりましたけれども、改めてこの点を初めに厳しく指摘しておきたいと思います。

 日本共産党は、改憲ではなく、憲法を守り、生かす立場に立っていますが、本日の三党の発言が九条の改定に焦点を当てていたことを踏まえまして、日本国憲法の中でもかなめをなします憲法九条の現代的意義について、幾つかの角度から以下述べてみたいと思います。

 第一に注目すべきなのは、九条が、世界戦争の深刻な反省を背景にして、戦争のない世界を目指す世界の大きな流れの中で生み出されたという点です。

 九条が戦争放棄という形をとったのは、国際連合と国連憲章を支えにしながら、当時国連が、個々の国が勝手にやる戦争は認めないし、平和のルールが守られる世界秩序をつくり上げる、こういう強い意思と希望を表明して出発したこともあったと思います。戦争のない世界を目指す世界の流れは、同じ時期につくられたイタリアの憲法に戦争放棄条項が盛り込まれたことからもうかがわれます。

 こうして、憲法九条には、侵略戦争への反省にとどまらず、戦争のない新しい世界を展望し、その先駆けになるという決意が込められました。これは、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」こういう形で表明されました。単に、再び侵略国家にならないと言ったわけでもありませんし、まして一国平和主義でもありません。

 さらに、九条二項では、戦争放棄条項を進めて、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」こういう形で何重にも、戦争放棄を実効あるものにするための縛りをかけました。ここに、他国に例を見ない日本国憲法の平和主義の先駆的な到達点があるとともに、国家権力を制約するという立憲主義の真髄も示されていると考えます。

 国連での活動と平和の貢献でも日本は非軍事の立場に徹するというのが、憲法制定議会でも確認された九条の基本的考え方です。日本国憲法のかなめをなす九条のもとでは、どういう建前をとろうが、多国籍軍への参加や海外での武力行使など到底認められません。

 もともと国連自身が、国際紛争をあくまで平和的手段で解決する、そして正義と国際法に基づいて道理ある解決を図るということを基本に置いている点を銘記すべきです。

 なお、国連憲章には、「国連総会の決議による正統性を有する集団安全保障活動」というあいまいな規定はないことを指摘しておきたいと思います。

 第二に、二十一世紀を迎えて世界平和秩序を求める流れが新たな段階に入り、九条もまた、今こそしゅんだと言われる新たな力を持ってきている点に注目すべきだと思います。

 イラク戦争をめぐって、これが国連憲章と国際法に反し、安保理決議にも根拠を持たない無法な戦争であったこと、最大の口実とされた大量破壊兵器もなかったことが明らかになりました。あの戦争に賛成した国は、アメリカ政府の発表でも四十九カ国、戦争に反対し同意しなかった国は百四十二カ国を数えます。そして、戦争前からその是非が国際社会で突っ込んで議論され、多くの国々で戦争に反対する国民的な運動が大規模に起こりました。

 ヨーロッパでは、フランス、ドイツがイラク攻撃に公然と反対し、昨年の十二月、EUは、国連を中心とした世界の平和秩序を打ち立てる姿勢を明確にする安全保障戦略を決めたところです。アメリカの先制攻撃戦略を批判し、国連憲章、平和のルールを守るという流れがはっきりした形をとってきたことは、かつてないもので、世界の平和を求める確固とした流れを示したものだと思います。

 この北東アジアでも、北朝鮮の核問題などを解決するために六カ国協議の枠組みがつくられました。問題解決には曲折もあると思いますが、この協議が北東アジアの国際関係と安定の仕組みに前進する可能性がある、この点にも注目する必要があります。

 また、イラク戦争ではテロとの闘いも口実とされましたが、イラクでは現実に、抵抗と憎悪の連鎖によって事態は混迷の度を深めております。国際社会は戦争によってテロを根絶できない、このことを知ったとも言えます。

 こうした経験があるからこそ、国連ミレニアムサミットのNGO会議でも、すべての国が日本国憲法第九条に述べられる戦争放棄の原則を自国の憲法において採択する、こういうことが提案されたのだと思います。戦争のない世界を目指した憲法九条の存在意義が二十一世紀を迎えた世界のこうした流れの中で改めて明らかになっている。

 さらに、九条の存在意義は日本政治の中でも確認できます。

 自民党・政府は、九条に反して、アメリカとの軍事同盟を結び、自衛隊をつくり、一九九〇年代からは海外への派兵にも踏み出しました。同時に、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法などをつくる際には、後方地域支援、非戦闘地域など、世界では通用しない言葉を駆使してつじつま合わせを行わざるを得ませんでした。九条が存在していることが自衛隊の海外での武力行使に歯どめをかけてきたことは明白であり、そのことがアジア諸国民からの日本への信頼の基盤をつくってきたことも冷厳な事実です。

 日本は、新しい平和の国際秩序が切望され、展望されている世界の中で、憲法九条を持つ国として平和の力を発揮すべきです。九条を打ち壊す改憲論議の競い合いはこうした二十一世紀の世界の平和の流れにも反するものだ、この点を厳しく指摘せざるを得ません。

 九条の改定は、もともとアーミテージ米国務副長官が憲法九条は日米同盟の妨げと述べたように、米国側からの強い要求です。そして、集団的自衛権の容認などの九条改定は、結局、日本を戦争のできる国に導くものとなります。この間の世論調査を見ても、九条の改正に反対を表明する国民の声は引き続き多数を占めており、国民の中には、九条の改定と戦争のできる国になることを望む声はありません。

 最近、ノーベル賞作家の大江健三郎さんや、評論家の加藤周一さんたちが呼びかけまして、九条の会が発足しました。この会は、「平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条を激動する世界に輝かせたい」、こういうアピールを発表し、今、賛同の声と運動が広がっております。

 憲法九条の立場を日本の政治と社会にしっかり据えてこそ、国際社会において名誉ある地位を占めることができますし、世界の平和に貢献する道となる、このことを申し述べまして、私の発言といたします。

中山会長 次に、土井たか子君。

土井委員 私は、きょうは一点に絞ります。そして、中山会長の御意見もこれは必ずお聞かせいただきたいと思っております。

 もう既に、各党の改憲論を議論するというよりも、絞り込んで、自民党と、そして民主党と公明党、きょうは、この三党の提言をこの場所で公にされたわけでありますけれども、本来、各党の改憲論を議論するというのは憲法調査会の趣旨とは違うと私は思っております。

 少なくとも、きょうお聞かせいただいたのは、それぞれ改憲論に対しての大体論点整理をされた中身だと思いますし、それぞれ三党ともこの六月にこの中身については既に公にされております。新聞を通じてそうです。テレビを通じてもそうです。マニフェストにもその中身が出ております。既に公にされている中身なんですね。

 そもそもこれは、それぞれの党が考えてお出しになるのはこれは自由ですけれども、その中身をすなわち憲法調査会の中に持ってきて、そして、それを調査対象としたり、論議の対象にするということ自身が、私は調査会の趣旨と違うというふうに思うわけです。

 もう申し上げるまでもないことではございますけれども、この憲法調査会はなぜつくられたかといえば、衆議院の憲法調査会規程の中に「設置の趣旨」というのがございまして、そこに書いてあるのは、「憲法調査会は、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うものとする。」とございます。第一条です。この第一条の中にあるのは、「日本国憲法について」でありまして、この憲法改定についてでもなければ、新憲法についてなんてどこにも書いてないわけですから、それに対して検討を進めるなんということは場違いだということにもなるわけなんですね。

 この憲法調査会を設置するのに当たって論議された衆議院での場所というと、これはもう御存じのとおり、議院運営委員会の場所です。一九九九年、始まりは三月ごろ、自民党、民主党、公明党、当時の自由党、改革クラブ、各幹事長からの要請がありまして、そして、憲法調査会を設置するという協議を議会制度協議会という場所でまず問題にしております。

 しかし、そのときから、衆議院において憲法調査会を設置するに当たって、この調査会は議案提出権はないということを前提に問題にしているんですね。この憲法調査会設置に当たって、議会制度協議会では協議が調わず、引き継いで、五月、六月、七月、わけても六月、七月、この間五回を重ねる論議がなされたのは議院運営委員会の場所でございます。

 そこで、熱心にこの協議が進められている会議録を、今回、私はもう一度精査してみましたけれども、これを読んでみても、その中にございますのは、議会において議案提出権というのが、本来は、各委員会、当然のことながらこれは認められて委員会は形成されているわけですが、この憲法調査会においては、議案提出権がない、決議権もないということをはっきり前提として討議が行われているという格好なんですね。このことは、前提としているというのはお互いがはっきり認識し合っている問題ではあるけれども、法文上これをはっきりすることができないかというので、このことに対して討議がかなり熱心に繰り返し繰り返し行われています。

 しかし、法文といえば国会法ですが、この国会法でこのことを法文化するということが実は適切ではない、経緯がいろいろこれは討議の中で繰り返しあるわけですけれども、適切でないということの上に立って、法文上、これを明らかにすることができないのならば、しかし、文書化して、これを確認した形で、はっきり、客観的にわかるようにすることが大事というのでなされたのが、各党の間で一致している問題として、この衆議院議院運営委員会理事会での申し合わせ、「憲法調査会は、議案提出権がないことを確認する。」という中身でございます。これは一九九九年七月六日の日付がございます。

 先ほど申し上げた第一条の、衆議院憲法調査会規程の中身と、後で申しました一九九九年七月六日の議院運営委員会理事会での申し合わせと、この二つを総合して考えましたら、この調査会は、日本国憲法について広範かつ総合的に調査をして、それを議長に報告するというのが目的であって設置されたということは明々白々でございまして、もともと改憲を前提としていないということは、これぐらいはっきりした話はないと思うんですね。そしてまた、改憲を前提として、それに対する布石を問題にしていく場所でもないということも、これまたはっきりしていると思うんですね。

 したがって、そういう憶測やそういうふうなことに対しての危惧を感じさせるような、むしろ疑問視されるようなやり方というのは、私は適切なやり方と思わないんです。

 きょうは、私どもではありません、自由民主党と民主党と公明党に限って、提言をここの場所でされた。しかも、提言の中身というのは、改憲ということを問題にされている提言ですよ。したがって、改憲を問題にした提言をこの調査会で調査対象にするというのはこの憲法調査会にはそぐわないということを私ははっきりさせなきゃならないと思います。

 本調査会は、議長に向けて公平で公正な調査報告書をつくるということが使命ですから、そのことに対して、公平で公正なということを考えると、三党だけに発言をきょうは提言として求めるというのも、どうも公平公正とは言いかねる。私は、外部の方からなぜ三党だけですかと聞かれたときにどう答えたらいいのか、その答えも一つは教えていただきたいということでもあります。

 したがって、まるで報告書というのが改憲を前提として考えられるものであってはならないということもはっきりしているわけですから、そういうことからいたしますと、きょうのこのようなこの調査会のありよう、このありように対して、私は当初から、きょうのこの運営を問題にされたときに反対の意見を申し上げましたけれども、重ねてきょうは、記録として残るこの場所での発言として反対を再度申し上げます。

 そこで、会長に申し上げたい。

 このきょうの提言は調査対象とはしない、提言は調査対象とするものではない、このことを一つ御認識いただけますかということです。そしてまた、しかし提言は出してしまわれているんですから、会長の指示に従って当調査会に出されてしまっているんですから、参考資料の一つということであって、調査対象ではないということを重ねて会長の方からはっきり御発言としていただきたいと思います。

 いかがでございますか。

中山会長 今、土井委員からの御発言がございました。私は、当調査会の設置された当時、議院運営委員会において、この調査会には議決権はない、また、広範かつ総合的な調査を行うのを目的とするということが各党で合意されたものとよく承知しております。

 私どもが日本の憲法を調査するに当たってまず最初に行ったことは、現行憲法の制定時の議事録を読むことから始まったわけでございまして、私どもは、これから十年、二十年先のこの国会の場で国民の、主権者の権利を守るために国会議員が議論をする、そういった場合に、このきょうの議論はどうであったかということも大いに参考になるものと考えております。

 そういう意味で、土井先生から御指摘がございましたように、各党の御意見はまだ固まったものではございません、党内でいろいろ議論されていることがマスコミを通じて報道されているだけでございまして、私は、公式の場で議事録に残すことによって、後世の日本の憲法を勉強する主権者の代表たちにいささか資料として確立されたものが残されるべきだという認識に立ってこのような運営をさせていただいた、このように申し上げておきたいと思います。

土井委員 会長、ありがとうございました。

 しかし、ただいまの御発言、感謝しながらも、申し上げていた、三党のきょうここで発言された提言は参考資料の一つであって、簡単に言えば、当憲法調査会が調査対象として考えるものではない、そのように考えておいていいのですね。

中山会長 申し上げます。

 重ねての御確認でございますが、私は、先般の幹事会におきましても、三党の各党の憲法の御議論をお出しいただくということと同時に、土井先生のところ、あるいは山口先生のところからも御意見を御発言いただいたらどうかということを申し上げたはずであります。特に、山口委員にはまことに失礼でございましたけれども、現憲法制定時に日本共産党の六人の議員が、自衛権のない憲法には我々は賛成しがたいということを帝国議会の議事録に残されております。

 私も議事録を読んで初めてその当時の詳しい事情を知ったわけでありますが、このようなことが広く、今日のようなインターネットの発達した時代において、衆議院の憲法調査会のホームページに記録されることは後世の日本のために大いに役立つものと考えております。

土井委員 会長、会長、まだ十分以内、まだ、十分間ですから。会長、会長。

山口(富)委員 会長、みずから失礼とおっしゃったんですから。会長。

中山会長 もう発言時間が終了いたしましたので。

山口(富)委員 じゃ、一分下さい。会長はみずから失礼とおっしゃったんですから。

土井委員 いやいや、ちょっと、ちょっと、会長、ちょっと、もう一度会長。

 この調査会ではそもそも変える変えないという議論をしないのが原則なんじゃないですか。議案提出権がないと決められているわけですから、この調査会には。

 したがって、この憲法に対して改憲のための提言をされることを調査対象にして調査をするという委員会ではないはずですよ。改憲のための委員会じゃないんだから、ここ、調査会じゃないんだから。

中山会長 討議時間が終了しておりますので、幹事会の申し合わせにより、これにて当調査会は、本日、閉会をさせていただきます。

    午前十時四十七分散会


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