衆議院

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第1号 平成16年10月14日(木曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十六年十月十二日)(火曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   会長 中山 太郎君

   幹事 近藤 基彦君 幹事 福田 康夫君

   幹事 船田  元君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 保岡 興治君 幹事 枝野 幸男君

   幹事 鈴木 克昌君 幹事 山花 郁夫君

   幹事 赤松 正雄君

      伊藤 公介君    大村 秀章君

      河野 太郎君    佐田玄一郎君

      坂本 剛二君    柴山 昌彦君

      渡海紀三朗君    中谷  元君

      永岡 洋治君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    萩野 浩基君

      平井 卓也君    平沼 赳夫君

      二田 孝治君    松野 博一君

      三原 朝彦君    森山 眞弓君

      渡辺 博道君    青木  愛君

      稲見 哲男君    大出  彰君

      鹿野 道彦君    園田 康博君

      田中眞紀子君    辻   惠君

      中川 正春君    中根 康浩君

      長島 昭久君    計屋 圭宏君

      古川 元久君    馬淵 澄夫君

      笠  浩史君    和田 隆志君

      渡部 恒三君    太田 昭宏君

      佐藤 茂樹君    福島  豊君

      山口 富男君    土井たか子君

平成十六年十月十四日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 中山 太郎君

   幹事 近藤 基彦君 幹事 福田 康夫君

   幹事 船田  元君 幹事 古屋 圭司君

   幹事 保岡 興治君 幹事 枝野 幸男君

   幹事 鈴木 克昌君 幹事 中川 正春君

   幹事 山花 郁夫君 幹事 赤松 正雄君

      伊藤 公介君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    河野 太郎君

      坂本 剛二君    柴山 昌彦君

      渡海紀三朗君    中谷  元君

      永岡 洋治君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    平井 卓也君

      平沼 赳夫君    二田 孝治君

      松野 博一君    三原 朝彦君

      森山 眞弓君    渡辺 博道君

      青木  愛君    稲見 哲男君

      大出  彰君    鹿野 道彦君

      仙谷 由人君    園田 康博君

      田中眞紀子君    辻   惠君

      中根 康浩君    長島 昭久君

      計屋 圭宏君    古川 元久君

      馬淵 澄夫君    笠  浩史君

      和田 隆志君    渡部 恒三君

      太田 昭宏君    佐藤 茂樹君

      福島  豊君    山口 富男君

      土井たか子君

    …………………………………

   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十二日

 辞任         補欠選任

  萩野 浩基君     加藤 勝信君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  古川 元久君     仙谷 由人君

同日

 辞任         補欠選任

  仙谷 由人君     古川 元久君

同日

 幹事鈴木克昌君同日幹事辞任につき、その補欠として中川正春君が幹事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 幹事の辞任及び補欠選任

 公聴会開会承認要求に関する件

 日本国憲法に関する件


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     ――――◇―――――

中山会長 これより会議を開きます。

 幹事の辞任及び補欠選任についてお諮りいたします。

 幹事鈴木克昌君から、幹事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 ただいまの幹事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 それでは、幹事に中川正春君を指名いたします。

     ――――◇―――――

中山会長 日本国憲法に関する件について調査を進めます。

 この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 日本国憲法に関する件について、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、公聴会は、来る十一月十一日木曜日、十八日木曜日及び二十五日木曜日に開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山会長 この際、EU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団を代表いたしまして、御報告を申し上げます。

 私どもは、去る九月五日から十七日まで、スウェーデン及びフィンランドにおいて両国の憲法事情について、また、ベルギーのブラッセル及びフランスのストラスブールにおいてEU憲法条約等について調査をいたしてまいりましたので、その概要につきまして口頭で御報告をし、委員各位の調査の参考に供したいと存じます。

 議員団の構成は、私を団長に、自由民主党から船田元君、保岡興治君、中谷元君、近藤基彦君が、また、民主党から枝野幸男君及び仙谷由人君がそれぞれ参加され、合計七名の議員をもって構成されました。なお、この議員団には、憲法調査会事務局、衆議院法制局及び国立国会図書館の職員のほか、三名の記者団が同行いたしました。

 私ども一行は、最初の訪問地であるスウェーデンのストックホルムにおいて、調査初日の九月六日に、世界の平和、安全保障に関する国際的な研究機関として有名なストックホルム国際平和研究所のベイルズ所長初め四人の研究員から、最近の安全保障をめぐる諸問題について、国会のEU諮問委員会のヴァイデリッヒ委員長から、スウェーデンから見たEU拡大、EU憲法条約の意義と問題点について、また、ヴェステルベリ国会第一副議長から、二院制から一院制に移行した背景等について、そして、元国会オンブズマンで現在も副国会オンブズマンを務めているペンレヴ氏から、スウェーデンにおける国会オンブズマンの権限と機能等について、それぞれ説明を聴取するとともに、意見の交換を行いました。

 また、翌七日は、ケンベリ元保健・社会保障大臣及びヴァルストローム議員から、スウェーデンの社会保障制度、特に年金制度及び移民政策の概要について、また、スウェーデンの憲法に当たる四つの基本法を所管するボードストローム法務大臣から、女性の王位継承問題などをめぐる議論等について、それぞれ説明を聴取するとともに、意見の交換を行いました。

 以下、その調査の概要について御報告をいたしますと、まず、SIPRIにおきましては、冒頭、ベイルズ所長から、SIPRIは、一九六六年にスウェーデン政府が世界平和のために設立した独立した研究機関であるが、スウェーデン政府は金は出すが口は出さないとの原則のもと、独立した理事会において研究テーマを設定しながら調査研究を進めていること。その調査研究は、単に理論的な研究にとどまらず、具体的、実際的な政治的テーマにも及んでおり、その成果はSIPRI年鑑として公表されていること。また、研究員の構成も国際的で、現にベイルズ所長御本人はイギリス人であることなど、組織及び活動の概要について説明を受けた後、同席した他の研究員の説明も交えながら、安全保障に関する諸問題について、予定の時間を超えて実に熱心な意見の交換が行われました。

 その意見交換の中で私が特に印象に残っている幾つかの発言を挙げれば、次のようなものでございます。

 その意見交換の中で、一つは、中谷議員の問題提起に関する応答ですが、中谷議員は、テロや少数民族に対する国家の態度、例えばチェチェンに対するロシアの態度、パレスチナに対するイスラエルの態度、イラクに対するアメリカの態度、チベットに対する中国の態度などについてどのような見解をお持ちかとの質問をされました。

 これに対してベイルズ所長は、九・一一以後、テロリズムの国際化やイデオロギー化の中でアメリカがこれに強い態度をとろうとしていることを指摘された上で、大部分のテロや地域紛争はそれぞれ社会的、政治的、経済的背景を持っているものであり、その解決はその社会的、政治的、経済的状況の改善によってのみ可能となるものである、イギリス人の私からいえば、北アイルランドの問題の解決は、テロリストを殺すことによってではなく、北アイルランドに対してより一層の政治的権利の付与や経済状況の改善によって得られるものであるとの意見を述べられました。

 もう一つは、船田議員の問題提起に関する応答ですが、船田議員は、EUへのトルコの加盟問題とイスラム世界に対する理解についてどのような見解をお持ちかとの質問をされました。

 これに対してベイルズ所長は、EUはキリスト教文化を基盤にするものであり、トルコ加盟問題はそれを一歩踏み出すものだと言われることがあるが、私は決してそうではないと考えている、なぜならば、現在EU内には三千万人のイスラム教徒がいると報じられており、既に現時点において、EUは、キリスト教徒、ギリシャ正教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒などが混在する地域になっているからであるとの意見を述べられました。

 さらに、保岡議員の日本国憲法第九条に関するヨーロッパ人の見方に関する質問に対する応答も興味深いものでございました。保岡議員は、集団的自衛権の行使を認めないなど非常に抑制的に解釈されてきた日本国憲法の第九条について、国際安全保障と平和構築の観点からどのように考えるかとの質問をされました。

 これに対してベイルズ所長は、非常にデリケートな質問であると断りながらも、抽象的にお答えをすれば幾つかの違った方向から議論ができるとして、まず、日本が過去六十年にわたってとってきた抑制的な政策は地域の安定と平和に貢献してきたと評価できること、しかし、それは同時に、この地域にアメリカを導き入れるという間接的な影響をももたらしたこと、そして、この日本の抑制的な政策がもし変更されるのであれば、それは単なる国内的な問題ではなく、アジア地域全体の問題であり、かつ、全世界的な問題と考えるべきであろうと述べられました。

 他方、最近の国際情勢のもとにおける各国の防衛政策を見ると、幾つかの一般的な変化が生じており、中立国であるスウェーデンですらその中立政策を再考しなければならなくなってきていることに象徴されるように、国境を越えて発生するテロなど内外を問わない新しい敵に対抗するためには、軍隊は国境を守るものという従来の観念では対処できなくなっていること、すなわち、軍事力の持つ役割として、紛争をとめるだけではなくて、平和を構築するという役割があるのではないか、もちろん、平和構築の努力は、軍事的なものだけではなくて、日本が行ってきたような経済的、政治的援助と組み合わせることが必要であると述べられました。

 さらには、アメリカは、機動性を重視する観点からもはや友好国や同盟国の領土を守ることにはそれほど関心はなくなってきており、軍事力を次々とヨーロッパから引き揚げている、これはアジアにおいても同様であること、したがって、ヨーロッパやアジアの民主主義国家は、もはや今までのようにアメリカに頼ることはできず、自分たちの安全保障政策を再構築しなければならないとも述べられました。

 ヨーロッパ人から見た一つの貴重な御意見として、深く印象に残った次第であります。

 次に、国会EU諮問委員会のヴァイデリッヒ委員長と懇談いたしました。

 ヴァイデリッヒ委員長は、長らく中立政策を堅持してきたスウェーデンがEUに加盟した理由について、一九九〇年前後のワルシャワ条約機構の崩壊とベルリンの壁の崩壊によって安全保障の状況は一変し、もはやEUは西側陣営の組織ではなくなったことを挙げておられました。しかし、他方では、スウェーデンとEUの関係は複雑で、御承知のように、いまだ欧州通貨連盟には加盟しておらず統一通貨は採用していない、これは、余りに急速にスウェーデン国会の持つ権限がEUに移譲されることに対して国民の懸念があるからであり、当分はユーロには移行しないだろうとも述べておられたのが印象的でした。

 また、EU憲法条約については、従来のさまざまなEU、EC条約を整理したものであり、また、その政策決定過程をよりオープンなものにしようとするものであるから、国民投票に付することなく国会の議決のみで批准する予定であるとも述べておられました。

 次に、ヴェステルベリ国会第一副議長及びペンレヴ元国会オンブズマンとの懇談の概要ですが、まず、ヴェステルベリ国会第一副議長との懇談では、同氏から、スウェーデン議会の歴史にさかのぼって国会の組織について説明を伺いました。そして、かつての二院制のもとでは、国民の直接選挙で選ばれる下院に対して、上院は県議会による間接選挙であり、また、任期八年の議員を毎年八分の一ずつ改選するという制度であったことから、民主主義を徹底し、民意の変化がすぐに議会の構成に反映するような制度にするため、一九七一年に一院制に移行しましたと述べられました。

 なお、一院制にしたことで議案審査の時間が短縮したかとの質問に対して、二院制のときでも議案は両院で並行して審査してきたので特に短縮したということではないが、二院制下での多数派形成の複雑さがなくなったことから議案の議決は容易になったとのことでした。

 次いで懇談した元国会オンブズマンのペンレヴ氏からは、二百年に及ぶ長い伝統を有するスウェーデンの国会オンブズマン制度について説明を伺いました。

 スウェーデンでは、行政に対する監視はこの国会オンブズマンと国会の憲法委員会がそれぞれ担当しているが、憲法委員会は専ら内閣や大臣に対する監視を、また、国会オンブズマンは地方自治体を含むありとあらゆる行政機関の職員、裁判所や軍事関係の機関の職員への監視を行っていること。国会オンブズマンは四人いるが、分担を決めながらもそれぞれに独立して職務を執行し、一般国民からの不服申し立てを契機とした調査のほか、みずから地方に出向いて地方自治体の職務の適正さを監査するようなことも行っていること。監視の結果、不当な業務執行を発見したときは、これに対して是正勧告をするほか、検察官と同様の起訴権限をも認められているとのことでした。

 ケンベリ元保健・社会保障大臣及びヴァルストローム議員との懇談においては、年金制度を中心とするスウェーデンの社会保障制度の具体的な仕組み、及び外国人の移民に対する教育や犯罪率などを含めた移民政策について説明を伺いました。また、私からは、平均寿命や出生率の変遷、国民負担率の問題などに関して具体的なデータを挙げながら我が国の社会保障を取り巻く諸問題についても説明し、両国に共通する諸問題について意見の交換を行いました。

 さらには、短時間ではありましたが、スウェーデンの憲法に当たる四つの基本法を所管するボードストローム法務大臣とも懇談し、同大臣及び同席した政府高官との間で、女性の王位継承問題をめぐる議論やインターネット犯罪などが話題になりました。

 そのうち、女性の王位継承の問題については、スウェーデンでは、一九七七年誕生した現国王の第一子が女子であったという事情や両性の平等等の観点から、一九七九年に王位継承法が改正され、欧州の王制諸国で初めて男性、女性を問わず第一子優先の王位継承が定められております。その後王子が誕生してもヴィクトリア王女が王位継承権を有しているのですが、その継承順位や女王の夫の法的地位に関して、ボードストローム大臣と近藤議員及び枝野議員との間で若干突っ込んだ意見交換が行われました。

 特に、当方の、日本では女性の天皇を認めた場合その夫になる人はなかなかいないのではないだろうかというようなことも議論になっているが、スウェーデンではどうであったかとの発言に対して、そんなことはない、スウェーデンでは多くの人が女王の夫という地位に興味を持っており、なりたい人はたくさんいるとの答えが返ってきたのは驚きました。

 改めて、皇室というものはその国の歴史や伝統の中で位置づけられていくものだと痛感した次第です。

 次に訪れたフィンランドのヘルシンキでは、九月八日、国会行政委員会のヴァイスト委員長及びポフヨ副委員長から、フィンランドにおける情報公開、個人情報の保護に絡む諸問題について説明を聴取するとともに、意見の交換を行いました。

 また、翌九日は、国会雇用・男女平等委員会のグスタフソン委員長ほか三名の委員から、フィンランドにおける男女共同参画社会の実情等について、また、国会憲法委員会のサトネン議員らから、憲法委員会の役割について、そして、EU憲法条約の草案を作成したコンベンションという特別の会議、これは御承知のようにジスカールデスタン元フランス大統領が議長をされた会議ですが、この会議にフィンランド国会の代表として参加されたキルユネン議員から、フィンランドから見たEUの拡大、EU憲法条約の意義と課題についてそれぞれ説明を聴取するとともに、意見の交換を行いました。

 以下、その調査の概要について御報告をいたしますと、まず、国会行政委員会のヴァイスト委員長及びポフヨ副委員長との懇談では、二〇〇〇年に全面改定されたフィンランド憲法の中には、公共機関の有する情報に対するアクセス権の規定とともに、青少年の健全育成のために必要な映像番組の規制に関する規定が設けられていることや、携帯電話で世界最大のシェアを有するノキア社などのハイテク産業の国であることなどを念頭に、情報公開の基本的な制度の概要から凶悪犯罪等の捜査のための通信傍受に至るまで、幅広い意見交換を行いました。

 次いで行われた国会雇用・男女平等委員会のグスタフソン委員長ほか三名の委員との昼食会を兼ねた懇談では、少子高齢化の問題から男女共同参画社会の実情、そして教育問題に至るまで、和やかな、かつ熱心な意見交換が行われました。

 その中で特に印象に残ったものは、OECDが行った学力の国際比較でフィンランドが国語と数学で世界一位を達成したとの発言をめぐる質疑応答でした。私どもの、その成功の理由は何だと考えているかとの質問に対して、グスタフソン委員長らは、教師を目指す人間に優秀な学生が多く、また教員育成の面もすぐれていることを挙げ、その背景には、子供に対する教育についてはあらゆる事項に優先して努力していこうといった与野党を超えた国民的なコンセンサスがあることだという趣旨の発言をされたことでした。

 教育問題は国家のありようの根本問題であることを改めて痛感した次第であります。

 国会憲法委員会におけるサトネン議員ら三人の議員及び同席した二人の国会職員との懇談では、まず、憲法委員会の役割について、同委員会は法律が憲法に適合するかどうかを議会内で審査する機関であると同時に、行政府の行為に対する監視、そして、同じく行政監視機関である司法長官や議会オンブズマンに対するチェックも行っている等の説明を伺いました。

 引き続く質疑応答では、司法長官と議会オンブズマンの相違点やフィンランド憲法における国会の位置づけなどが話題になりましたが、特に司法長官と議会オンブズマンの相違に関しては、司法長官は閣議にも出席して内閣の内部から行政執行の合法性等を独立して監視、監督する機関であるのに対し、議会オンブズマンは議会の側から行政執行の合法性や人権の遵守状況を監視する機関であり、両者の権限は重なり合うところもあるが、長い歴史の中でうまく機能しているとのことでした。

 また、この懇談の際に、フィンランドには国家の将来について常に大所高所から考える未来委員会なる委員会があるとのことで、その詳細な権限と組織について伺う時間的な余裕はありませんでしたが、興味深く感じた次第であります。

 EU憲法条約の草案を作成したコンベンションにフィンランド国会の代表として参加したキルユネン議員との懇談において、同議員は、まず、フィンランドと比較して隣国のスウェーデンはEUに対してやや慎重な人々が多いことを指摘し、その理由として、スウェーデン人はEUを経済的な機関として損得勘定で見ているのに対し、フィンランド人はEUは経済的な機関であると同時に安全保障の機関としても重視していること。これは、日本と同様に第二次世界大戦はフィンランドにとってもトラウマになっており、東の大国であるロシアの存在が大きい、その意味でも今回の旧東欧へのEUの拡大の意義は大変に大きいといった趣旨の発言がなされました。

 また、キルユネン議員は、EU憲法条約の意義について、その政策決定過程の透明化、強化によってEUの民主化が進むものと積極的に評価した上で、今後EUがどのような方向に進んでいくのかについて、次のような興味深い発言をされました。すなわち、自分の理解では、EU憲法条約はアメリカのような連邦国家を目指そうとするものではない、ヨーロッパはアメリカ合衆国から二百年おくれて進んでいるわけではないのであり、我々はヨーロッパのアメリカをつくろうとしているわけではなく、新しい問題に対して新しいやり方で解決していこうとしているのだということを繰り返し強調されておられた点であります。

 今回の大きな調査のテーマの一つであるEU憲法条約に関しましては、九月十日から土日を除いた十六日までの五日間にわたって、EU憲法条約の草案を作成した特別の会議であるコンベンションの関係者のほか、EU理事会、欧州委員会、欧州議会というEUの三つの枢要な機関と、EUの特別の機関の一つである欧州オンブズマン、そして、EUとは別個の機関ではありますが、欧州における人権保障に関して重要な役割を果たしている欧州人権裁判所を訪問して、それぞれの関係者合計十三人及び同席した事務局の方々と精力的に懇談をし、説明聴取及び意見交換を行いました。

 すなわち、コンベンション関係では、元フランス大統領であるジスカールデスタン議長を補佐した元ベルギー首相でもあるデハーネ副議長と、EU理事会関係では、その法律顧問であるピーリス氏と、欧州委員会関係では、司法内務担当のヴィトリーノ欧州委員会委員及びEU憲法条約の作成過程に欧州委員会の事務局高官として深く関与されたバレンズエラ対外関係総局次長、欧州の将来タスクフォースのファン・ヌッフェル課長と、欧州議会関係では、さきに述べたコンベンションに欧州議会代表団として参加されたメンデス団長及びヘンシュ、ダフの両副団長のほか、欧州議会の憲法問題委員会のライネン委員長、外交委員会のブローク委員長、そして対日交流議員団のヤルツェンボウスキー団長、そして、欧州オンブズマンのディアマンドロス氏と、欧州人権裁判所のヴィルトハーバー長官であります。

 それぞれの関係者との懇談時間が三十分から一時間と若干細切れであったため、突っ込んだ意見交換ができた懇談と表敬的な意味合いにとどまった懇談とが混在することになってしまいましたが、しかし、EU憲法条約の憲法的、政治的意味という一つのテーマに絞って多数の関係者からヒアリングをしたので、かえって、EU憲法条約の持つ意味合いやEU統合の今後の姿などが、関係者の発言の微妙なニュアンスの違いとともに、陰影を持って立体的に浮かび上がってきたようにも思います。

 そのすべてをここで御報告することはできませんので、以下では私が特に印象に残った点をかいつまんで御報告し、足らざるところは、後ほどの各派遣議員からの御発言で補充していただくとともに、詳細は後日配付させていただく調査報告書を御参照していただければと存じます。

 まず、何といっても最大の関心事項は、このEU憲法条約は憲法なのか条約なのかという点であります。

 この点については、懇談した関係者は口をそろえて、EU憲法条約は各主権国家によって締結される国際条約であると言っておられました。しかしながら、同時に、その内容はとなると、従来の国際条約とは異なり、EUの専管的領域とされる分野、具体的には共通通商政策の分野等において、EUの特定多数決による決定が各国政府の政策を拘束するとか、一国の憲法の人権宣言に当たる基本権憲章がこの憲法条約に盛り込まれ法的拘束力を持つようになったとか、通常の国際条約と異なる特徴を有することを強調されておりました。

 この問題は、EU統合の将来像として、連邦制国家を目指すのか、それともあくまでも主権国家の連合体を目指すのかという点とも関連するものであります。

 この点についても、前述したフィンランドのキルユネン議員が、ヨーロッパはアメリカ合衆国から二百年おくれて進んでいるわけではないと述べたのと同じように、多くの関係者が、欧州連合は国家ではなく、将来においても国家というステータスを用いることにはならないと断言される一方、EU内部には、できるだけ早く連邦制的枠組みをつくるべきであるとするフェデラリストと、あくまでも政府間の関係の枠内で連携を密接にしていくべきであるとするインターガバメンタリストの二つの思想があり、憲法条約を積極的に推進してきたのはフェデラリストたちであったことを率直に認める発言もされていました。

 ちなみに、EU憲法条約によってEUは独立した法人格を有することになり、また常設のEU大統領とEU外務大臣を持つことになっています。

 他方、コンベンションに欧州議会代表団の副団長として参加されたイギリスのダフ副団長によれば、イギリス議会の立場は、EUの拡大には賛成だが、その深化には反対だというものであると述べられておりましたが、これなどはさまざまな意見があることを示唆するものであろうと思います。

 昨年、ロンドンで、EUは連邦国家的なものになるかどうかを議論する会議があったようでありますが、そこで報告をしたEU理事会のピーリス法律顧問は、EUは連邦国家になるとは思わないが、連邦的な要素を持つものとなっていくのではないかとの報告をしたそうであります。

 もう一つ、従来のEU、ECに関連する諸条約を一本化したEU憲法条約という形をとることになった最大の理由は何か。別の言葉で言えば、なぜ今、EU憲法条約を制定するのかということも関心事項の一つでした。

 それについて、EU拡大に伴って今後生ずるであろうEU内の政策決定過程の困難性を事前に回避するために、それを透明化し強化するためであるといったことが一般的に言われている点ですが、懇談したすべての関係者が強調された点は、欧州市民にわかりやすいものにするためということでした。憲法は国民のものであり、国民にわかりやすい憲法論議を心がけてきた私どもにとっても、共感できる考え方であったと思います。

 このEU憲法条約草案を作成する手法についても、貴重な御意見を伺うことができました。それは、政府間の会合に付される草案を作成したコンベンションという手法であります。

 特に特徴的なのは、このコンベンションのメンバー構成のあり方です。各国の政府代表だけではなくそれぞれの国の議会代表も参加したこと、それだけではなくて、EU全体の利益代表ともいうべき欧州議会の代表や欧州委員会からも代表が参加したことであります。さらには、オブザーバーとして大小のNPOやNGOも参加されたとのことです。

 コンベンションの副議長を務められたデハーネ元ベルギー首相は、このような構成をとることによって、この新しいコンベンションは欧州全体の健全な基盤に基づくものとなり、その結果、さまざまな課題に直面して活動することが可能になった、特に、その審議プロセスの中で、欧州議会議員と各国議会の代表との関係が密接化し、共通精神に立って物事を進めることができたと述べておられました。

 このような手法は、歴史も伝統も文化も異にし、そして経済的な格差も存在する中で、各国の利害が錯綜する地域において共通の理想を実現していこうとすることを考えるとき、私どもにとって大いに参考になるものと存じました。

 以上のEU憲法の内容及び手続に関連して、派遣議員のお一人である仙谷議員が、今回のEU憲法条約の採択は、人類の知恵と理性の結晶と評価してもいいのではないか。国境をなくして、ネーションステート相互間で国防軍を廃止しようという理想を、ヨーロッパという部分的な地域であれ実現しようとしていることは、実にすばらしい。そのために、国家主権の移譲とか共同行使という新しい概念をつくり出していることに敬意を表する。そして、民主主義はここまで発展、進化してきたのかと思うと感慨無量のものを覚える旨の発言をされたことは、私どもの認識を端的に表現した発言であったと思います。

 しかしながら、同時に、そのような理想に燃えたEU憲法条約の趣旨とその全体像をどのようにして欧州市民に提示、説明し、理解を求めるか、欧州市民の実質的な政治選択を求めるのかという困難が次にやってまいります。

 特に、関係者が一同に指摘しておられたことは、今後二年内に各国の批准手続を経なければならないが、二十五カ国のうち国民投票に付するものと見られている国が八、九カ国あり、例えば、ヴィトリーノ欧州委員会委員によれば、フランス、イギリス、アイルランド、デンマーク、スペイン、ポルトガル、オランダなどがあり、その結果は予断を許さない、特に、フランスとイギリスが含まれていることは重要だということです。なぜならば、国民投票となると、EU憲法条約の是非だけではなく、その時々の内政的な問題も含めて、国民はその国の政府に対する賛成、反対を表明することになるのが通例だからとも述べておられました。

 政治家として長い経験と高い識見を有するヤルツェンボウスキー議員、彼は対日交流議員団の団長でもありますが、同議員は、国民投票では、EU憲法条約の特徴やその目標とするところを平易にわかりやすく国民に説明する努力を政府が行うことが重要だ、専門家が条文を審査するときのような説明では国民には理解してもらえない。マーストリヒト条約批准の国民投票の際にデンマーク政府は条約の草案そのものを全世帯に配付したというが、そのようなことは全く間違いだ、法律家でも理解できないような生の条文を送りつけて、それで理解を得ようとすることなど不可能であるということを力説しておられました。将来、我が国も憲法を改正しようとするときには、必ず国民投票を経なければならないわけでありますが、参考になる御意見であろうと思います。

 以上、EU憲法条約を中心とした調査の概要を御報告いたしましたが、最後に、欧州オンブズマン及び欧州人権裁判所長官を訪問した際の意見交換の概要について簡単に御報告させていただきます。

 まず、ディアマンドロス欧州オンブズマンとの懇談では、各国のオンブズマンと欧州オンブズマンとの連携や欧州オンブズマンの活動状況などについて質疑応答及び意見交換がなされましたが、そこでディアマンドロス氏が強調されたのは、オンブズマン制度は、法の支配と民主主義の両方が確立した国家において存在するものであり、国民の遵法精神と独立した強力な司法制度のもとにおいて、それを補完するものとして設置されるということ。そして、司法制度とともに、オンブズマンのような制度を設けることは、ますます多様化していく紛争や不服申し立てに対して、その解決策を多様化することであり、市民の選択権を広げるものであること。そして、オンブズマン制度というのは、必ずしも法的強制力のない勧告をするにとどまるのが通例であるが、だからこそ、その職務の独立性は名目上も実質上も不可欠なものとなります、それは市民の目から見ても独立性が明確に認識されるようになっていて初めて、権威も備わり、かつ、実効的に機能するようになるのであって、その意味からも、オンブズマンのような制度は、国内の上位法、すなわち憲法の中に明文化されていることが望ましいことといった点でございました。

 また、欧州人権裁判所のヴィルトハーバー長官との懇談では、各国の裁判所と欧州人権裁判所との関係、欧州人権裁判所の下した判決の実効性、特に各国政府による遵守の状況、さらにはEU司法裁判所と欧州人権裁判所との関係などについて、質疑応答及び意見の交換がなされました。

 以上のような極めて多忙な日程ではございましたが、私ども議員団は、無事にこれを消化し、去る九月十七日帰国いたしました。ごく短期間の調査でありましたし、また、各訪問国における調査事項が極めて多岐な問題に及びましたので、ここから何がしか結論めいたことを抽出することはできませんが、しかし、この調査の詳細をまとめた調査報告書は、議長に提出し次第、過去四回の海外調査と同様に、委員各位のお手元にも配付をいたす所存でございますので、残すところわずかとなりました本調査会の今後の議論及び最終報告書の取りまとめに当たっての御参考に供していただければと存じております。

 今回を含め五回の海外調査を合わせると、これまでに合計二十八カ国及び国際機関の憲法事情を調査したことになりますが、いずれの国においても、憲法のありようが国のありように直結して国民的な論議がなされていること、しかも、そのような広範な議論は、EUにおいては国を越えた欧州市民の立場、全欧州的な立場からなされていることを、私自身、改めて認識させられた次第であります。

 最後に、今回の調査に当たり、種々御協力をいただきました各位に心から感謝を申し上げますとともに、充実した調査日程を消化することができましたことに心からお礼を申し上げたいと思います。特に、三月に本調査会に招致した、EU憲法条約について御意見をお述べいただきました駐日欧州委員会代表部のベルンハルド・ツェプター大使閣下には、先方要人とのアポイントのアレンジを含めて、大変御尽力をいただきました。改めて、厚く御礼申し上げたいと存じます。まことにありがとうございました。

 以上、簡単ではありますが、このたびの海外調査の概要を御報告させていただきました。

 引き続きまして、調査に参加された委員から海外派遣報告に関連しての発言を認めます。

 なお、御発言は、五分以内におまとめをいただくこととし、会長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らさせていただきます。

 それでは、ただいまから御発言をお願いしたいと思います。御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。

 仙谷由人君。

仙谷委員 お許しをいただいて、発言をさせていただきたいと存じます。

 民主党の仙谷由人でございます。

 このたびのEU憲法及びスウェーデン・フィンランド憲法調査議員団に参加をお許しいただきました本憲法調査会の委員の皆様方に改めて感謝を申し上げたいと存じます。そしてまた、今回の憲法調査に関して、当委員会の事務局を初め関係者の皆様方に大変大きな御尽力をいただきましたことを心から感謝申し上げます。

 そこで、先ほど会長の御報告の中に私の発言を記載していただきました。恐縮でございましたが、私のEU憲法条約関連の調査に関する感想は十三ページに記載されたところに尽きるわけでございます。

 さらに、あと、もう少し具体的になりますが、二点だけ、各委員の皆様方に御報告を申し上げたいと思います。

 一つは、EUの緊急展開部隊に関する件でございます。

 EU憲法の四十条には、軍備の強化という条項がございます。しかし、EUの私どもとお会いをしましたコンベンション参加者あるいはEU議会の議員等々の方々、異口同音におっしゃっておりましたのは、EUは軍事的な超大国にならない、平和大国になりたいんだ、そして、当然のことながら国連憲章には従う、この前提のもとで、一つは、外務大臣を創設し、そして、かつまた緊急展開部隊をつくって、既に動き出しているということでございます。

 彼らのおっしゃることによりますれば、NATOは非常に大きな紛争の処理をする、そしてEU緊急展開部隊は地域的な平和づくりのために活動をするんだということをおっしゃっておりました。つまり、和平づくり、和平の維持、平和のための予防、近隣の紛争防止、このためにEU展開部隊がつくられているということでございます。

 そして、何よりも私がある種の感動を持ってお伺いしましたのは、現在ポーランド領になっております、旧ドイツ領であったということのようですが、シュチェチンというところには、ドイツ軍とデンマーク軍とポーランド軍の共同の部隊が今置かれて活動をしているという事実でございました。

 つまり、第二次世界大戦のナチスによる、あるいはファシズムによる近隣諸国への侵略問題をある種歴史的な和解ということで解決したドイツは、ヨーロッパ域内においては、このような旧被侵略国とも共同の安全保障の平和づくりに参加をしているという事実でございます。

 もう一つは、このEU憲法条約というものが採択されたその目的及びこれからの機能というものについては、彼らは異口同音に、やはり法の支配が重要なんだということをおっしゃっていたことであります。そしてまた、このEU憲法条約の発効によって法の支配がますます豊富化するという意味のことをおっしゃっておりました。

 それで、オンブズマンについてでありますが、一つは、実際的に何をやっているんだという話をお伺いしたわけでありますが、行政機関が反応しない場合の苦情処理、それからEUの職員採用の仕方に対する苦情処理、それから入札、公共調達に関する苦情処理、それからEUの一般市民の情報開示についての苦情処理というふうなことがなされているということでございました。

 私どもも、民主主義のために、人権保障あるいは民主主義的な諸制度を担保するためにいろいろな工夫が必要だなと改めて考えた次第でございます。

 以上であります。どうもありがとうございました。

中山会長 次に、船田元君。

船田委員 今回の私どものEU調査議員団でありますが、二つの意味で、まさにグッドタイミングであったというふうに感じております。一つは、加盟国が拡大をいたしました。二〇〇四年五月に、ポーランド、チェコなど、東欧諸国を初めとして十カ国が新規に加盟をして、二十五カ国体制、総人口で四億五千万人、各国のGDPを合わせますと世界のほぼ四分の一に当たる巨大な経済圏が形成された、その直後に訪問したということ。もう一つのタイミングは、今もお話が出ましたが、EUが一つの共同体として憲法の必要性を感じて、二〇〇四年六月のブリュッセル欧州理事会においてEU憲法条約が採択をされ、今後二年間、各国での批准を待つこととなる、そのまさに真っただ中に行った。この二つのグッドタイミングであったと思っております。

 私は特に、EU加盟国の憲法とEU憲法条約をどう調整しようとしているのか、あるいはEU拡大の今後の方針、その機能の強化がどのようになっていくのか、そういったことに関心を持って見てきたわけでございます。

 そこで、まずEU憲法条約でありますが、これも今まで話が出ましたように、EU大統領それからEU外務大臣を任命して、共通の外交・安保政策を進めることとしておりますので、当然これは、各国の主権の一部をEUに移譲するという行為になるわけであります。

 これは、言うまでもなく、従来の経済統合から政治的な連邦制、連邦ではないという御意見も出ましたが、一部連邦制に発展する、そういうことを私は意味しているんだと思います。これは民主主義の新たな挑戦だと思います。このことが成功するかしないか、大いに注目するところでございます。また、加盟各国の批准には国民投票をやらなければいけない、そういう国々も少なからずありまして、一定の時間と非常に労力がかかるであろう、このように推察をいたしました。

 しかし、そういう中で、私どもが訪問したスウェーデンとフィンランドにおいては、EU憲法と自国の憲法との使い分けという知恵も働かせようとしているんではないかと考えております。国民投票を経ずして批准をする可能性が両国においては大きい。これはまさに大人の対応ではないかと考えています。

 なお、この北欧二カ国におきましては、NATOとは微妙な間合いをとっている。例えば、平和のためのパートナーシップ協約、いわゆるPFP協約ということで、NATOと両国軍との協力関係を保ちながら、しかしNATOには加盟しない。あるいは、NATOとは別に危機管理を行うEU独自の緊急対応部隊、いわゆるRRF、これには積極的に参加する、そういった独特の立場をとるということについて理解を深めることができました。

 もう一つのEUの拡大につきましてですが、この二〇〇四年五月の十カ国の新規加盟は、独自の安全保障政策や経済水準が他に比べて低いということなどから、先行きを心配する声が出始めていることは事実であります。特に、二〇〇七年に予定されておりますルーマニアとブルガリアの加盟、これは、面積で三〇%ふえ、人口でも一億人ふえるということになりますが、単に量的な変化だけではなくて、EUそのものが変質をしてしまうんではないか、このような懸念があり、これをEUがいかに克服していくか、注目すべき部分だと思います。

 一方、従来から加盟申請をしておりますトルコに対しては、域内国において、やや否定的な意見を多く聞いたところでありました。従来のEUはキリスト教文化圏とオーバーラップしておりますが、イスラム文化圏であるトルコにその点での抵抗感があるのかもしれません。しかし、EUがイスラム世界あるいはイスラム精神を知り、より多様で柔軟な組織となるためには、あえてその加盟基準、クライテリアを下げてでもトルコをやはり将来において入れるべきではないか、このような私見も持った次第でございます。

 EUのこれからのさまざまな試みあるいは挑戦というものを非常に私たちもこれからも注目をしていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

中山会長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 今回、大変貴重な経験をさせていただきましたこと、関係者の皆さんにまずは冒頭御礼を申し上げます。

 まず、私は、EUにつきまして、感想として受けとめましたこととして、二重の意味で肩に力が入っていないと、いい意味で受けとめて帰ってまいりました。

 先ほど来お話がありますとおり、主権の一部移譲という大変画期的なプロセスを歩んでいる途中であるという意味で、肩に力が入ってもおかしくない状況だと思いますし、また一方で、各国での批准の手続の困難性がある、これを乗り越えなければならないという意味でも、肩に力が入ってもおかしくない状況だと思いますけれども、私が受けとめた範囲では、どちらの意味でも、いい意味で肩に力を入れることなく、ある意味では大きな歴史の流れに対する確信を持ってこのプロセスに臨んでいるという印象を受けてまいりました。

 そして、EU統合に向けて、やはりその背景として二つの点がヒアリングの中で印象に残っております。

 一つは、テロ等の問題に関して、もはや一国単位では対応することが困難になっている、そのことがEUの統合を前進させる一つのエネルギーになっている、こういう認識が示されたことであります。

 それからもう一点は、これはあえて固有名詞を挙げない方がいいと思いますけれども、EU議会の関係者の方からは、また複数から、今回のEU統合に向けた動きというものは、アメリカ帝国主義という言葉も使っておりました、あるいはアメリカ一国主義という言葉も使っておりました、こうしたものに対するフラストレーション、あるいはこうしたものに対する対抗であるということを堂々とはっきりとおっしゃった方が複数いらっしゃいますし、全体として、やはりアメリカにどうヨーロッパが対抗していくのかという視点というものは強く受けとめることができました。

 翻って私どもの国を考えたときに、一点目のテロ等との対抗という意味では、幸いにして我が国は島国でありますけれども、交通機関等の発達によって、そのことによって、単独でテロと闘い得るか、テロが国内に入ってくることを防ぎ得るかといえば、それはかなり困難な状況に入っているという意味で、EUと同じような立場に立った物の見方をしなければならないだろう。

 もう一点は、短期的に見れば東アジアでは残念ながらまだ冷戦の名残が残っておりますが、憲法という国家の大きなビジョンを考える、つまり、三年、五年の話ではなくて、五十年、百年と変わらない憲法をというのは難しいし適切ではないかもしれませんが、せめて十年、二十年をにらんだ視野で物事を構築していかなければならないとすれば、ちょうど、ヨーロッパがロシアとアメリカという二つの大国に挟まれた中で、面積や人口で劣る国が共同歩調をとることで対抗していこうというプロセスをとっているのと同様に、日本の置かれている地理的な状況も、海を挟んでアメリカ合衆国、そして近いところには二十一世紀の超大国になるであろうと予想される中国という二つの大国に挟まれて、残念ながら、面積や人口という意味ではこの二つの国とは到底比較にならない状況にある、同じような状況にあると言わざるを得ないと思っています。

 そうした中では、ヨーロッパの歩みを、アジアにはアジアのやり方がある、同じことをやる必要はないと思いますけれども、この両超大国に挟まれた日本の立場として、韓国であるとかモンゴルであるとか台湾であるとか、あるいはASEAN諸国との連携というものをさらに重視し、また、そこを見据えたこの国の将来ビジョンというものを考えていかなければならないのではないかということを、改めて強く認識させられてまいりました。

 最後に、憲法委員会の話とオンブズマンの話について簡単に触れさせていただきたいと思います。

 一つには、スウェーデンだったと思いますが、オンブズマンの選任は国会全会一致で選んでいる、だから非常に権威があるし、事実上の政治的な力も影響力も大きいというお話がございました。

 また、フィンランドの憲法委員会、ここは法律等の合憲性の審査を議会の委員会できちっと行う、そして、そこでの審査は、いわゆる多数決原理以上に論理性を重視して、国会で法律の憲法適合性をきちっと行うというお話がございました。

 特に、小選挙区制度を採用して二大政党化をしている日本の政治状況は、一般的には、与野党の妥協の余地のない、真正面から衝突するということが前提となっている政治システムだと思いますけれども、行政との関係で議会の権威を背景に権限を行使すべきオンブズマンと、憲法について、従来の行政的、法制局的な立場でなくそれに対してコミットする憲法委員会というものを多数決原理そして二大政党の対決とは違う視点から組み立てていくことが、我が国の法の支配を確立していく上で必要ではないかというふうに感じてまいりました。

 以上でございます。ありがとうございました。

中山会長 次に、保岡興治君。

保岡委員 私も、今度の海外視察は大変貴重な経験でございました。中山団長を初め同僚議員、この視察をお支えいただいて頑張っていただいた関係の皆様に心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 団長が触れていただきましたように、私は、SIPRIのベイルズ所長の、ヨーロッパ人から見た、アジアの安全保障における、あるいは世界の安全保障に関する我が国の立場についての見解に、非常に強い印象を受けました。

 これは、御報告にもございますとおり、我が国が平和憲法という平和主義を堅持して軍事的な安全保障の対応を抑制的に非常に考えてきたことについては高い評価をされておりましたし、日本がこのところ世界で行っております、自衛隊等による平和維持活動などに見られる、その他、紛争の予防あるいは平和の回復、確保についての貢献を非常に高く評価されておられました。せんだって公述人の猪口邦子さんから伺ったことともあわせて、我が国の平和主義を今後やはり充実発展させる形で憲法改正を考えていかなきゃならないと、強い印象を持った次第でございます。

 さらに、そのときに述べられました、世界の安全保障の環境が大きく変わってきている、特にアメリカが、他の国の領土を守るというようなことから、国際的な広がりを持つ、内外を問わず危機にさらされる可能性のあるテロに対して機動的に対応するという点を重視した世界の軍事展開の考え方を変えてきていることについての意見に触れて、ヨーロッパでもそうであるが、アジアにおいても同じではないか。したがって、ヨーロッパやアジアの民主主義国家は、もはや今までのようにアメリカに頼ることはできず、自分たちの安全保障政策を再構築しなきゃならないということが、非常に私は大事だなと、同感の思いをいたしました。

 もちろん、我が国は当然のことながら、自衛のために軍事力を持つというのは、これはもう当然のことだと私は思っておりますが、それも、専守防衛ということであれば、すきのない、しっかり自国で防衛できる体制というものはどうあるべきかというのをしっかり議論するということが大前提であり、さらに、仙谷議員が触れられましたように、主権の移譲や共同行使という形で地域の安全保障システムをつくるというようなことに関して、将来、発展的に将来像を描いて進んでいくためには、やはり自国のしっかりした防衛体制というものをきちっとするということが大前提。さらに、世界の平和を守り、回復し、あるいは紛争の予防をするために危険が伴う、実力によるそういったものに対する侵害がある。この危機管理に対して、我が国が自衛隊等の実力行使によってどうこれを管理し、対応するかということの基本をしっかりしなければならないということを強く感じました。

 アジアの将来像についてしっかり議論をして、アジアの国民のために何が大事かということを考えて、あるいは世界の人々に対して何が大切かを考えて、将来像に沿った、しっかりした危機管理の構想を我が国が憲法にうたうことは必然のことだ。

 そのことは、EU憲法条約を構築した際に一番その原動力になったのは、EU市民のための幸福増進、恒久平和、フランスとドイツがあれだけ戦いを繰り返し、いろいろ大陸で繰り広げた過去の戦争を乗り越えて、このEUの平和構築を最高の理念にして、あるいはEU市民の人権を守るために新たなこういった条約を結んだという歴史的な事実については、大変我々も、将来、我が国のあり方として参考にしていかなければならないと強く感じた次第であります。

中山会長 これにて調査に参加された委員からの発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中山会長 次に、御意見のある委員から御発言いただきたいと存じます。

 なお、御発言は、五分以内におまとめいただくこととし、会長の指名に基づいて、所属会派及び氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 発言時間の経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせします。

 それでは、ただいまから御発言をお願いいたします。御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。

柴山委員 柴山でございます。

 大変有意義な視察だったと思います。参加された先生方の熱意に改めて敬意を表するものであります。

 私から若干申し上げたいのは、まず一点は、オンブズマン制度についてでございます。

 かなり欧州では機能しているというような御意見がありましたが、我が国の憲法下でこれを明文の法制化、位置づけるということが本当に現実的かどうかというのは、いささか、やはり国情の違いがあるのかなというふうに思います。

 北欧におきましては、言うまでもなく、国民負担率が七割、八割を超える超福祉国家、行政国家というところで、その適正化ということが非常に重要な課題となっております。また、その中で、憲法的統制というものが、国民一般の統制ということが求められているというのもやはり理解できる。また、議会、スウェーデンにおいては全会一致の選任、フィンランドにおいては多数決での選任というような基盤もあり、それに選ばれた方々の意識というものも相当程度高いのではないかと思っております。

 翻って、これを日本に導入した場合に、やはりその質の確保というものについて若干の疑念があるほか、どのような性質のものを想定するのか、既存の違憲審査制度、行政監視制度等の関係をどのように考えていくのか、さまざまな難しい問題が出てくるものと考えております。

 私は、このような観点から、オンブズマン制度を憲法上位置づけるということには、やはり相当な議論が必要になってくるのではないかなというふうに思っておりますし、また、憲法上明定することによって、そうした今活動している私的な団体というものに対して、保護以外に、何らかの規制的な側面というものも出てくるのではないかなというように考えております。

 防衛、安保の観点について申し上げたいと思います。

 先ほど保岡先生から御指摘のありましたとおり、これから日本も平和のために貢献をしていかなければならないという問題意識、このEUの視察からも大変強くうかがえるところでございます。今、日本が、やはり自分たちの国あるいは世界の平和をしっかりと自分たちのリスクを持って維持していかなければいけない、守っていかなければいけない、そのような共通認識を持つということは大変重要なことだと考えておりますし、そのために兵力、そのようなものを整えていかなければいけないという事情も私は賛成でございます。

 ただ、やはり、そういった国民的なコンセンサス、また自国の憲法の改正ということになりますと、当然のことながら三分の二以上の発議ということが必要になってくるわけでございまして、当面は、やはり自衛権の明定、そして平和的な分野における国際貢献という、最大公約数的なものに現実的には落ちつかざるを得ないのかな。長期的に、それを超えた部分、国際的な貢献というものは、国民的なコンセンサスを我々政治家が主体的につくり上げてから改めて議論をする、一度に五十年もつような制度というものを、あるいは憲法というものをこの数年間の短期的なスパンで構築するということはなかなか難しい側面があるのではないかなというように考える次第でございます。

 以上です。

辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。

 会長の御報告及び参加された方々の御報告を聞くに及んで、私もぜひこういう機会に参加したかったなという思いが非常に強くあります。希望をとっていただければ参加できたのになという。憲法調査会、時限立法で、来年までで、もうこういう機会はないのかもしれませんが、もしあるとすれば、ぜひそういう機会を与えていただきたいな、こういうふうにまず思います。

 御報告を伺っていて、やはりヨーロッパというのは、民主主義の歴史と文化ということが非常に根づいていて、非常に深さがあるなというふうに感銘を受けたというか、やはり学んでいかなきゃならないものがいっぱいあるな、こういうふうに思います。とりわけ、民主主義の国の代表と言われたアメリカが、今、民主主義のみずからの浅さを露呈している現状において、やはりヨーロッパの知恵、仙谷議員がおっしゃっているように、人類の知恵と理性の結晶としてのこのEU憲法条約というものを、やはり日本が今この憲法問題を考えるに当たっても非常に踏まえなければいけない、このような思いを強くいたしました。

 やはり安全保障を考える場合においても、国民国家という従来の枠組みを超えて、地域のそういう共同体の中で、地域の安全保障をしっかりと考えていくという視点が重要であろうと。これは、振り返ってみれば、日本においても、東アジアの地域における安全保障というのをどのように考えていくのかという観点で、日本が独自に軍備力を強化するとかいうことで物事が解決する問題ではないんだなという思いをいたしました。

 そして、今、憲法問題を考えるときに一番重要なのは、やはり法の支配の貫徹ということであって、法の支配というのは法治主義というのとは異なるわけでありまして、憲法の基本原理がきちっと司法、行政、立法の隅々にまで貫かれるというのがやはり法の支配の本来の理念でありますから、とりわけ今の行政権が肥大化した現状の中で、行政機能、行政の執行をどうチェックしていくのか、そこに法の支配をどう貫いていくのかということがやはり重要なのだろうと。その点において、オンブズマン制度というのが一つ重要でありますし、司法権の権能というのがもっと十全に機能するように考えるのがこれまた重要なんだなというふうに思います。

 そして、とりわけ、EUというそういう広がりの中で、これは会長の御報告の最後の方にもありましたけれども、欧州人権裁判所の下した判決の実効性云々というくだりがありました。これは例えば、集団的自衛権の行使等につきまして、従前、アメリカのニカラグアへのコントラに対するいろんな援助の問題をめぐって国際司法裁判所が一つの考え方を示している。やはりこういう国際的な基準に照らして日本も考えていかなければいけない。日本のいろんな問題を考えていくときに、そういう人類の知恵と理性の結晶であるEU憲法条約にあらわされた理念、そして、国連憲章なり国際司法裁判所が積み重ねてきたそういうものをしっかりと踏まえていく必要があるという思いを新たにいたしました。

 以上でございます。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうの調査会では、海外調査の概要の報告と、派遣された四人の委員の方からの発言を受けたんですけれども、どうもお疲れさまでした。

 私は、私自身が二回海外調査に行ってまいりまして、その経験からいきましても、この海外調査というのは、貴重な経験があると同時に、時間的な点でも内容的な点でもいろんな制約もあったなということを感じています。同時に、世界の政治的、社会的な動向をきちんと押さえるということは、その目でもって日本国憲法の諸原則の値打ちというものをとらえ直すことになりますから、非常に大きな意味がある、そういう絶好の機会になると思うんです。

 その際に大事なのは、やはり、世界に対するさめた目といいますか、冷静な目と、日本国憲法が本来持っている諸原則の値打ちを、普遍的な性格と日本的条件を押さえておくことが大事になるんじゃないかというふうに思うんです。

 まず、世界の動向なんですけれども、イラク戦争をめぐっては、世界とアジアでアメリカのやり方に批判が集中して、あのイラク戦争が国際法にも国連憲章にも反したものだということで、世界の多数の国と国民がこれに反対を貫きました。最近も、アナン国連事務総長がイラク戦争は国際社会の立場にも国連憲章にも反した違法なものだったと言明したことは、日本でも広く報じられたところです。

 そして、九月の国連総会の各国演説を見ましても、国連憲章に基づく平和のルールを守ろうというのが世界の多数派であって、これに対して、先制攻撃戦略を持って現実にイラク戦争を実行したアメリカなどの主張と行動は、やはりこれに反する流れになっている。これが、私、今回の海外調査でもそのさまざまなあらわれが各所にあった、きょう発言を聞きまして、そのことを改めて感じました。

 そして、ヨーロッパ諸国が目指している方向というのは、アメリカの一国主義、単独行動主義の危険に対して、国連のもとでの多国間主義、これを目指すものです。イラク戦争をめぐっては、その対応をめぐっては、EUの中で対立が生まれましたけれども、基本的に、EUが国連を中心とする国際秩序を守って強めることを志向しているということは、この調査会でのツェプターEU大使の発言でも確認されたことだというふうに思うんです。

 私が重要だと思いますのは、こうした動向が、ヨーロッパだけでなくて、アジアやラテンアメリカでも共通に確認されているということだと思います。

 例えば、昨年十一月に開かれたラテンアメリカ会議でサンタクルス宣言というものが出されておりますが、これを見ましても、国連憲章で確立された国際法の目的と原則、主権の尊重、国家間の法的平等、不干渉の原則、国際関係における武力による威嚇や武力行使の禁止、領土保全の尊重、紛争の平和的解決、人権の擁護と促進を支持する、この立場をうたっています。

 そして、ことし九月に中国の北京で、アジア三十五カ国、八十三の政党が参加して第三回アジア政党国際会議が開かれました。ここで採択された北京宣言を見ますと、国連憲章、平和五原則及びバンドン精神十原則の目的と精神に従い、対話と協議を通じて相違点を解決することを主張する、また、我々は、戦争、侵略、覇権に反対する、我々は多国間協力に尽力し、正義によって平和が確保されると信じるというふうにしています。

 このように、テロも無法な戦争も許さない、世界の平和秩序を求める流れが二十一世紀に広がっているということを確認できると思うんです。

 もともと国連憲章は、個々の国が勝手にやる戦争を認めないし、各国の自主、協調によって平和と安定をつくるということをうたったわけですけれども、日本国憲法は、この立場を日本で具体化したものです。そして、特に日本国憲法は、戦争放棄をさらに進めて、第二項で戦力の不保持と交戦権を放棄したわけですけれども、ここに、世界の平和の流れの中で先端を行くと評価されている憲法の大事な到達点があると思います。

 来年の夏に、国連のアナン事務総長の呼びかけで大規模な国連NGO会議がニューヨークで開かれますけれども、これは武力紛争予防のための市民社会の役割をテーマにしていますが、この中では、東北アジアの紛争防止装置としての憲法九条の役割を強調し、それを課題として考えるという準備が進められていると報じられております。

 このように、二十一世紀の世界という大きな視野から見たときに、私は、九条の掲げる方向が、国連憲章に基づく世界の平和秩序の確立という点で新しい意義と力強さを持ってきているということを感じているという点で、発言にかえたいと思います。

田中(眞)委員 無所属、民主党会派、田中眞紀子でございます。

 このたびの調査団の皆様のレポート、大変克明に書いてくださったので、非常に臨場感があって、よく理解できました。

 その中で私は、今回のアメリカのブッシュ政権の非常な、極端な一国主義、国連を無視しているような行動、そういう中での、ヨーロッパはヨーロッパでの、今回は通貨の問題等もありますけれども、欧州が独自に平和それから国際秩序というものをどうやって構築していくべきかということに大変なエネルギーと知恵を割いているということが、このレポートからよく伝わってきました。

 このことは、北東アジアの安定を将来展望するべき立場にある私たち日本国民が、国連での役割と同時に、やはりアジアの中でどのような手法、手段を用いることによって、平和と安全をもたらすために、紛争予防といいますか、人間の安全保障のためにいかなる英知を働かすことができるかということに大変大きな、示唆に富んだ行動を彼らがしているということをレポートされていると感じました。

 その中で、私が一番問題意識として持っておりますのは、国民投票、これを日本ももっとしっかりと制度化していく必要があるというふうにずっと感じております。なぜかと申しますと、例えばこの憲法調査会一つにしましても、その設立の趣旨は、私は一回目のときからずっとメンバーにしていただいておりますが、いろいろな提言はしてまとめる、しかし決定権はないというのがこの憲法調査会であります。しかし、メディアの影響等もあるのかもしれませんが、かなり結論的なものを導き出さんというふうな方向に行っているように私は感じておりまして、危機感も持っております。

 したがって、国民投票という制度を日本が制定するにはどのようにすればいいかということについて、このレポートは大変具体的な、示唆に富んだポイントを持っているというふうに感じます。

 例えば、二十五カ国中で、イギリス、フランスを含めた八から九カ国が、これは国民投票に付するべきか、中身はEU憲法条約の批准に向けての課題でありましたけれども、そういうことを国民投票に付する。片や、前の方のページで、スウェーデンだと思いますけれども、国民投票に付す必要がないのだと。それは、国民の利益を守るため、国民の認識がそうである。これはEUの、ユーロの通貨の問題だと思いますが。

 国民投票に付す、あるいは付さないというような判断基準がそれぞれの国によって違うと思うんですが、議会の役目と国民投票の結果のウエートの置き方、それぞれどのような印象を持たれたのか、会長からでも、あるいは今回の視察団に同行なさったメンバーからでも結構ですが、御披瀝いただければ大変参考になるというふうに思います。

 以上です。

中山会長 国民投票について田中委員からお尋ねがございました。

 国民投票についての各国の状況は、非常に、国民の権利というものを基本的に、最大限に重視しているというあらわれであろうと私は思います。だから、国会議員を国民が選ぶ、同時に国民は、国の形とか憲法とか、ヨーロッパは憲法、条約といったようなものに対する投票、こういうことを権利として認められている。ここに民主主義の一つの原点があるんだろうと思って私は聞いておりました。

 こういうことで、国民投票についてのこの調査会を、けさの理事会で二十八日に行うことに各党合意をいたしましたので、その点、御報告申し上げ、その機会にまた御発言をいただければありがたいと思います。

保岡委員 再び発言をお許しいただいてありがとうございました。

 私は、フィンランドの調査で、会長からも御報告がありましたが、国会の憲法委員会というのが常設されている、あるいはヨーロッパの国には、その他、スウェーデンでもそうでしたが、同様な委員会がある、それから欧州議会にもあるというような、憲法を常時議論する委員会に非常に注目しました。特にフィンランドでは、憲法委員会の役割が、法律が憲法に適合するかどうかを議会内で審査する機関になっているようでございます。また、行政府の行為に対する、憲法適合性など、その他、監視も、しょっちゅう議論しているようでございます。

 私は、あわせて、国家の将来について常に大所高所から議論する未来委員会があるということも、大変興味を持ちました。

 この衆議院の憲法調査会も、最初、二十一世紀の日本のあるべき姿というものを一年余り調査して、それが、みんなが憲法を論議する非常に重要な基礎になった。EU憲法条約もまた、EUの将来像というものをしっかり議論して、その価値観は何だということを議論した上、条約のいろいろな調整に入っているということなどを考えた場合、私は、この憲法調査会が終わった後、我が国にも両院にしっかりした常設の憲法を論ずる機関を直ちに継続して起こすことが適当ではないかと。そして、日本の将来を、世界の中でどうあるべきか、アジアでどうあるべきか。そして、憲法はあるいは国のあり方につながると言いますが、国民のあり方につながると言いますが、国のあり方、国民のあり方について十分に論ずるという常設委員会が必要だなということを強く感じました。

 与党では、今、国民投票法というものをどうするかという憲法改正の手続法と同時に、国会法一部改正によるポスト両院の調査会の問題について与党で議論をして、できれば来年、この調査会が報告を出すまでにその手当てをして、引き続き憲法を論ずる場を国会に設けるということを議論しているところでございますが、また、その点について、海外調査を一緒にした民主党の先生方ともお話ししましたが、やっぱり常設の憲法委員会は必要だなというのが率直な皆様の御意見だったように受けとめました。

 そういうことで、私たち与党でもそういう点を踏まえて協議を続けてまいりたいと思いますが、これからも、この調査会でもその点をまたいろいろ委員の皆様方で御議論を賜れればありがたいと思いました。

 なお、国民投票について、今、田中議員からのお話でございましたが、欧州議会の日本交流委員会の団長さんですか、ヤルツェンボウスキーさんが、憲法を、条文の生を国民に示してもしようがないと言っていました。やはりその理念とか趣旨とか、これが何を変えるものであるかということをはっきりさせて国民にわかりやすく問うべきであるということを言っておられましたが、これは、国民投票法の手続に、どういう形で発議するかということに非常に参考になる意見と私は強く感じました。

葉梨委員 会長、発言の機会を与えていただきましてありがとうございました。

 また、委員の皆様には、EUの外縁部の国、非常に注目すべきところ、すばらしい選択で、ハードスケジュールの中、調査を行われたことに敬意を表します。

 ただ、この調査で私が感じましたこと、意見を申させていただきますが、アメリカの一国主義に対応するEUの多国間主義である、あるいは世界市民主義につながるようなものであるというような形でこの調査を解釈することは、私は妥当ではないだろうというふうに思います。

 といいますのは、先ほどEUの外縁部と申しましたけれども、EU自体が、文明あるいは文化の統一性の中に打ち立てられた概念であるということを私たちは認識しなければいけないだろうと思います。

 九月の末から十月の頭、私は列国議会同盟に参加してまいりまして、イギリスの議員団と懇談する機会がありました。トルコがEUに対する加盟申請を行っている、これは当分できないだろう、なぜできないかということを聞きましたところ、経済の問題ではない、文化の問題である、そういうような答えが返ってまいりました。

 これを東アジアに置きかえた場合、東アジア、我が国の場合は特に、一国家一文明ということです。ですから、他国とのいろいろな形での文化の共有、そういったことの努力はしていかなければいけませんけれども、EUの英知にしっかり学ぶということは片っ方の問題として、やはり我が国の文化を大切にすること、そして我が国の安全保障、我が国独自の安全保障を大切にすること、これについてもおろそかにはできないというような考えを持っております。

 以上でございます。

枝野委員 二度目になって恐縮でございますが、保岡先生から憲法委員会の御発言がございましたので、念のために発言をさせていただきたいというふうに思います。

 EUの、特にフィンランドあるいはEU議会の憲法委員会についてお話を伺ってまいりまして、大変いい制度であると私は個人的には受けとめてまいりました。

 何がいい制度であるかというと、行政に憲法解釈の権限、事実上の権限を持たせずに、議会がしっかりと憲法についての一次的な判断をしている。いずれも最終的には裁判所が憲法判断の最終決定機関であるのは、どういった制度であれ、立憲主義のもとでは変わりありませんけれども、裁判所が判断をするのは事後的でありますので、法律制定に当たって、あるいは行政行為がなされるに当たって憲法の適合性をどこがチェックをするのか。

 残念ながら、日本は、行政の内部である内閣法制局が事実上、憲法判断の場になってしまっておりまして、内閣法制局判断が、一行政機関の判断でありながら、にすぎないにもかかわらず、金科玉条のように使われてしまっているというゆがんだ状況にあります。それに比べて、民主的なコントロールを受けている議会の中に憲法の一次的な判断の部局を置くということの意味で、フィンランド、あるいはEUの憲法委員会もそうした側面を持っているかというふうに、ここは追加、補充調査を現地の高官の方にお願いをしてきておりますが、少なくともフィンランドではそうした機能を果たしている。こうした役割というのは、我が国の、特に戦後五十年間の憲法議論、憲法解釈のゆがみであるとか行き詰まりというものを考える上で大変重要であるというふうに感じてまいりました。

 したがいまして、憲法の常設委員会を置くのであるならば、何よりもまず、内閣法制局から議会が憲法判断の一次チェック機能を奪うということが主たる目的にならなければいけないということを強調しておきたいというふうに思います。

 それから、せっかく発言の機会をいただきましたので、重ねて、先ほど田中議員の方から、会長からもお話がありましたけれども、国民投票について私の受けた印象を申し上げますと、EU憲法に対する国民投票をするかしないかということの各国の判断は、各国の法制とのかかわりと、それからもう一つは、EU憲法の意味づけを国内政治的にどういうふうに置くことがいいのかということで国によって分かれているのかなという印象を受けました。フィンランドとスウェーデンはいずれも国民投票をしませんが、会長の最初の御報告にもあったとおり、それぞれ、位置づけ、国内的な受けとめ方が違っているようでありまして、そうしたことが各国間にあって、それが国民投票をする、しないという判断につながっているのかなというふうに私は理解をしてまいりました。

 ちょっと別の視点から、国民投票について気になりましたのは、EU憲法の国民投票が行われる国々で、いずれも、他の内政問題、特に現状の政府に対する批判でEU憲法に対して否定的な票がふえるのではないか、そういう心配を複数の方がしておられました。つまり、提案をするのは事実上、政府になりますから、その政府が信任を受けていない政府であると、EU憲法自体はいいものであると思っていても否定的な票がたくさん出て否決されるリスクがあるという危惧を複数の方がおっしゃっておりまして、これは、将来的に我が国でさまざまな、憲法を含めて国民投票制度を入れるに当たって、国民投票をするときに、その個別のテーマについての国民の意思を問うということと、政府に、政権に対する信任を問うということとが混在化しないように、ごちゃごちゃにならないような仕組みをつくりませんと、いろいろややこしいことが起こるのかなという、直観的な印象ですけれども、受けて帰ってまいりました。

 以上でございます。

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょう私、冒頭で海外調査について発言しましたのは、海外調査をやった場合に、そこでの見聞きしたことや学んだことというものを直接的な形で日本国憲法を検討する際の足場に持ってくることについては、やはり抑制的であるべきだということを考えて、まず冒頭にそのことを申し上げたんです。先ほど保岡委員の発言を聞きまして、私はその点を改めて発言しておいてよかったなと思ったわけです。といいますのは、憲法委員会のことでヨーロッパの動向と結びつけて今お話しになったからです。

 その際に、今回の海外調査で、自民党と民主党で憲法委員会の常設化の方向でお話があったということだったんですけれども、私、先ほど皆さんの海外調査の活動に対してお疲れさまと申し上げましたが、その中にはそのお疲れさまは含まれておりません。それは、文字どおり、海外調査のいわば場外部分の話であって、それを調査会に持ち込むということは、私は間違っていると思うんです。

 そして、憲法委員会について言いますと、日本国憲法の場合は、先ほど辻委員の発言もありましたけれども、憲法の諸原則をそれぞれの分野に隅々に行き渡らせていくという立場をとるわけですから、国会でいいますと、各ある委員会が常時憲法の立場からの立法、それから法案の審議、行政の監視、こういうものをやっていくわけですから、特段の、私は委員会を設置する必要を感じておりませんし、それからまた、今の各党の主張の流れからいきますと、これは憲法の改定という問題に絡んでくる話になりますから、これは、当然院の構成として別のところで議論すべきことであって、もちろん調査会の最終報告とは関係ありませんし、そういうものとして私は理解しております。

土井委員 私、大体申し上げようと思っていた大筋のところは今山口委員が言われてしまっているわけですけれども、今回の海外視察、大変有意義だったというふうに認識をしてきょうの御報告も承っておりますが、しかし、本来、海外視察、今回の海外視察は特にそうですけれども、日本国憲法を改憲せんがために視察をしたという視察ではないはずであって、そこのところが、どのように生かしていくかというと、やはり日本の憲政のためにとか日本国憲法というのを実際問題として生かしていくことのためにというところが、やはり抜き差しならない大事な問題ではないかということを思うわけです。したがって、先ほど保岡議員がおっしゃった憲法委員会というのを常設の委員会の一つにとおっしゃっている意味が、もう一つはっきりいたしません。

 それは、今までなかった憲法委員会を急に特設する必要があるというふうにおっしゃる理由というのがはっきりしないからです。憲法を改憲せんがためにその準備として一つの委員会を設ける必要があるとおっしゃるのなら、それをはっきりおっしゃった上での委員会特設でないと、この説はどうも解せないなと私は、実は思って承っておりました。枝野議員がおっしゃったとおりで、やはり日本国憲法に対しての解釈というのは、有権解釈といって行政権が今まで行うというのが大体通常考えられる大半の問題であったと。

 だけれども、国会で審議しております法案というのは、憲法では唯一の立法機関として、また国権の最高機関としてある国会がしなければならない問題でございまして、内閣が提案をしてくる法案が、その中では法案の数では圧倒的に多い。しかも、その法案というのは、内閣側の、いわば行政府側の、憲法に違反しているか違反していないかという問題も含めて、憲法解釈によってパスした中身が国会に出されてくるという格好で法案というのが審議の俎上にのるわけですね。したがって、そこからして、私は、四十一条から考えたら、これはおかしい現象だと思っているわけですから、一つや二つ今の問題に対して変えてみたからといって体制ががらり変わるわけではないと私は実は思うので、変えようとするならば、憲法から考えて、憲法に合致して事が行われているか行われていないかということに対して、基本的な姿勢を見失わないで、しっかりそれに対して対応していくということこそ大事でしょう。

 そうすると、特設する委員会でなくて、今常置されている委員会の中で、憲法問題について、それぞれの法案を通じて、法案審議の中でも、当然あるべき姿として審議の中身としてあるわけですし、それから外務委員会だったら外交関係、わけても条約審議に対して憲法から考えてどうかという審議がもっとなされてしかるべきだと私は常に思い続けてきたんです。

 だから、現在ある委員会の中でも憲法問題、十分に取り上げて論議をしていかなければならない、それが十分に尽くされていない中で特設するという新たな委員会はどういう意味を持つかということをむしろ私はお尋ねしたい、そのように思います。

保岡委員 先ほど枝野議員が発言されたことに、私も非常に同感でございます。戦後間もない破綻した国家の中で、占領下のGHQ原案に基づくあっという間の憲法の制定、これは確かに、当時の理想や国際情勢を反映した非戦の思想など、私はすぐれたいろいろな原理も含まれていることは認めますし、その後の日本の発展に、あるいは世界の平和にも貢献した、そう思います。

 しかし私は、これだけの今日六十年間の変化を、最高法規であって法の支配の頂点にあるその解釈を政府の解釈だけにゆだねてそれで糊塗してきたことに、日本のあり方に大変な疑問を持っております。これは、世界各国、例がありません。みんな憲法を見直し、状況に合わせて議論し、それは確かに、先生が言われるように、いろんな分野で憲法の適合性や問題点を議論するのは結構だと思いますが、やはり憲法そのものに特化したしっかりした議論をしていくためには、私は国会に憲法の常設委員会があってしかるべきと思いますし、先生のお立場からいくと改憲しないというお立場でしょうし、山口先生もそうでございましょうが、我々は憲法を見直すべきだという立場で考えながら、いろいろ視察をしたりそれを参考に意見を言っているわけでありまして、それは私たちの立場からすると当然の意見というふうに受けとめていただきたいと思います。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 先ほど来の若干のやりとりを聞いておりまして、多少、ちょっと公明党の立場も申し上げないといけないな。保岡幹事が与党ということを非常に強調されまして、あと社民、共産のお二人が先ほどのような発言をされた、ちょっと順序がこういう順番になってあれですけれども。

 今、与党の中で、さまざまな事務的な部分で、保岡幹事、私とか太田委員とかでいろいろ、船田幹事もそうですけれども、議論はさせていただいておりますけれども、この憲法常任委員会というものについて、私たちは今の時点でもっと慎重でなければいけない、まだそういう段階には来っていない。むしろ、この憲法調査会でさまざまな、まさに百家争鳴というか百花繚乱というか、いろんな意見が今日まで五年近くの流れの中で出されてきておりますけれども、それをしっかり吟味するということが非常に重要なわけであって、先ほど来、保岡委員が一生懸命高揚された感じでおっしゃっていたのは、いささかちょっと、もう少し足取りをゆっくりされた方がいいんじゃないのかという感じがしないわけではございません。

 それで、そのことについて、若干今のようなことをお話しさせていただきたいということとは別の問題で、中谷委員がいらっしゃらないんですけれども、先ほど会長が、非常にわかりやすいというか、大変に参考になるEUを中心とした今回の調査について報告がありましたけれども、その中で、私は、ここに取り上げられた背景というものをもうちょっとお聞きしたいなと思ったことが一つあります。

 それは冒頭の部分で、いわゆるテロ、少数民族に対する国家の態度をめぐってのこのSIPRIのベイルズ所長のお話について、その後、ここに挙げてあることの後でもう少し議論が深まったのかどうかということを一つ、もしおわかりの方がいらしたらお聞きしたいんです。

 要するに、ここではテロというものを、今回の九・一一以降の国際テロというものと、それからそれまでの、歴史上テロは随分、そんな今に始まったことではなくて、さまざまなテロがあるわけですけれども、ここで先ほどの会長の報告によりますと、このベイルズ所長は、いわゆる北アイルランドの問題に事寄せられて、要するに、一層の政治的権利の付与や経済状況の改善によって解決するんだ、こういうふうな言い方をされておりますけれども、これは要するに、押しなべて九・一一以降もそれ以前も、テロ全体がこういう角度で解決するんだということを言われて、参加された皆さんもそうですねというふうになっていったのかどうか。いわゆる今の九・一一以降の国際テロリズム、これについての認識は、私は以前のものと今のものとかなり性格が違うというふうに思うんですけれども、その点について、もしここで挙げられている以上の展開があったということであるならば、後で結構でございますから、触れていただければありがたいなと思います。

 あと、EUのことが、日本にとって、アジアにとってどう参考になるのかということにつきまして、私は極めて悲観的でありまして、アジアは、やはり日本も韓国も中国もそれぞれ、いわゆる中華思想、我のみたっとしというか、そういう中華思想的部分が非常に強いということで、そう簡単にはアジアの地域、北東アジアというものはEUを参考にするということは非常に難しいなというふうな、非常に概括的な印象でありますけれども感じている次第でございます。

 以上です。

枝野委員 先ほど来、憲法委員会についてがいろいろと議論になっていますので、確認的に何点か申し上げさせていただきたいと思いますが、先ほど来申し上げておりますのは私の私見でございますので、民主党としてこの問題について公式な立場を決めたり、それについて他の党の皆さんと協議をしている状況ではございませんので、そのことは念のため申し上げておきたいというふうに思っております。

 その上で、憲法委員会を常設の委員会として置くのであればということで、先ほど申し上げたことにどういう意味があるかということですけれども、もし普通の法案と同じように、憲法についてだけ先に一つ議論をしておいて各委員会におろすとかということであるならば、屋上屋では意味がないことだというふうに思います。

 しかし、本当の意味で憲法の有権解釈、一次的なチェック機能を議会が持つということであるならば、憲法適合性というような問題は条文から判断できることだと思いますので、政府関係者を全部外して、まさにこの調査会のように、政府関係者や、ましてや内閣法制局など全部外して、議員同士、そしてサポートは院の法制局にサポートしていただくというような形で、憲法適合性に疑義のあるような法案、あるいは行政行為については、議員同士だけで、あるいは議会だけでしっかりと議論をする場を持つということは、これは建設的な意味があるし、従来の各委員会で、対政府質疑で物事が進んでいくという中で、議員同士で本当にこれは憲法適合性があるんだろうかというようなことをしっかりディスカッションした上で具体的な法案審査に入っていく、こういうプロセスというのは建設的な意味があるのではないか。

 こういうことを背景にして、もし置くのであるならば、そうした機能を、まずは最優先というか一つの大きな柱としなければならないだろう、こういう私見を申し上げさせていただきました。

 以上でございます。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 先ほど来の法制局の問題について発言がされておりますので、関連をして発言させていただきたいと思います。

 私も以前、内閣法制局という制度について、こんな制度はほかの国では聞いたことがないということを申し上げて、中山会長からも貴重な意見だというふうに言っていただいたことがございますけれども、今の枝野委員の発言と重複するところもあるんですけれども、憲法の問題だけではなくて、法律の執行に当たってある特定の行政行為が合法なのか違法なのか、あるいは、特に憲法の問題としてとらえたときに、土井委員が御指摘のとおり、唯一の立法機関である国会が立法機関であって、内閣はそれを執行する機関でありますから、法律を制定するときに、その合憲性の判定というものは、本来的には一次的には立法機関が行うべきものである、こういうことが恐らく憲法の構造からは言えるのではないかと思っております。

 ですから、そういう意味において、これは特に与党の先生方は、特定の案件ではなくてニュートラルな話だと思って例え話を聞いていただきたいんですけれども、ある法律に対して、議会、例えば予算委員会の中で、その法律は憲法違反じゃないかという指摘に対して、本来、内閣法制局が出てきて、いやいや、合憲ですなんというのはおかしな話であって、例えば、衆議院なり参議院の法制局が出てきて、これは合憲だと思う、違憲だと思うという話があってしかるべきではないかというのが私の個人的な見解であります。その上で、ただ、それを法制局という立場の人がやるのがいいのか、今枝野委員が私見としてという話でありましたけれども、選挙を受けたメンバーがやるのがいいのか、そこは議論の余地のあるところではないのかなと思います。

 せっかくこれだけいろいろ議論が出たので、幹事という立場ではなくて、平のメンバーの立場から会長に御提案させていただきたいんですけれども、こういった、例えば合憲性の判定のあり方、特に内閣法制局のあり方ということについて、こういう憲法調査会の中でフリーな議論が行われる機会があってもいいのではないかと思いますので、幹事会なり懇談会なりで議題にしていただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

中山会長 貴重な御意見をいただきましたので、幹事会でまず協議をして、決定がされれば、この調査会で議論をさせていただきます。

船田委員 先ほど赤松委員から御指摘をいただいたスウェーデンのSIPRIにおけるやりとりについてのお話でありますが、私もつまびらかにはしていない部分もございますけれども、当時の印象を申し上げたいと思います。

 ベイルズ所長はこのテロリズムにつきまして、非常に普遍的なお話をされたというふうに理解をしております。それは、この報告書、きょうの会長のお話にもありましたように、テロの大部分におきましては、これは対症療法的に力でねじ伏せる、あるいは押さえつけるというだけで根本的に解決する問題ではない、やはりそのテロが発生する、あるいは地域紛争が発生する背景にある社会的、政治的、経済的な部分を見なければいけない、その解決はまさに今のような背景の改善によってのみ可能である、こういう非常に普遍的なお話をされたと理解します。

 九・一一テロのそれ以前と以後との関係ということについて、特にベイルズ所長は意識してお話しになったことではない、以前であっても以後であってもその普遍的な対応については変わりがないというふうに印象を持ちました。ただ、九・一一以後においてはテロリズムそのものが国際化しているということ、あるいはイデオロギー化している、先鋭化しているということについての指摘はございまして、それはその後の私どもとの会談の中でも、このような国際的なテロなどに対しては、やはり一国で対応できるものではなくて、各国で協力をし合って対応すべきものである、このような結論に導かれたと認識をしております。

 以上でございます。

渡海委員 大変中身の濃い視察をされたことに敬意をまず表したいと思います。

 きょうの議論の中で一つ先ほどから気になっておりますのは、憲法委員会をどうするかというふうな議論がされているようでございますが、私は、従来からも申し上げているように、例えば国民投票の問題も含めて憲法の問題というものがしっかりと国会で議論をされ、しかも発議をしっかりする場所がないことそのものが国民に対する憲法に対する意見を言う機会を奪っているということにつながるのではないか。要するに国民投票法をつくることそのものも、例えば抵抗があるというのは不思議で仕方がないんですね。

 これは、最終的には主権在民で、いわゆる日本は民主主義国家でありますから、国民に審判をゆだねるというルールが現行憲法にもあるわけでございますから、そのことを考えれば、憲法委員会というものがあってそこで憲法の判定をするしないという、これは一つの考え方でもありますし、また、例えば当調査会でも議論がありましたように、憲法裁判所的なものを考えるという議論になるのか、ここはいろいろな意見の分かれるところでありますが、しかし、そういった場所をしっかりとつくっておくというのは、私は立法府として当然の義務だというふうに思っております。

 以前に発言しましたときに勘違いをいたしておりまして、中山会長から、当調査会には発議権はありませんということを言われたことを今思い出したわけでありますが、ぜひそういった場所を国会につくるという意味のおまとめをお願いしていただきたい。これは発議権とはちょっと違うと私は思いますが、そういうことをきょうの議論を聞いていて感じましたので、よろしく御検討をお願いしたいというふうに思っております。

中山会長 貴重な御意見、ありがとうございました。

 他に御発言はございませんか。

 それでは、発言も尽きたようでございますので、これにて委員からの発言を終了いたします。

 次回は、来る二十一日木曜日午前八時五十分幹事会、午前九時調査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十二分散会


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