衆議院

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第8号 平成13年3月16日(金曜日)

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平成十三年三月十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 佐藤  勉君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 荒井  聰君 理事 田並 胤明君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      河野 太郎君    左藤  章君

      佐田玄一郎君    阪上 善秀君

      滝   実君    橘 康太郎君

      谷  洋一君    中野  清君

      野中 広務君    林  幹雄君

      菱田 嘉明君    平井 卓也君

      宮路 和明君    山本 明彦君

      山本 公一君    伊藤 忠治君

      大出  彰君    玄葉光一郎君

      城島 正光君    武正 公一君

      手塚 仁雄君    中村 哲治君

      松原  仁君    山井 和則君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

      野田  毅君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   総務大臣政務官      滝   実君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   総務大臣政務官      景山俊太郎君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長

   )            鍋倉 真一君

   参考人

   (日本放送協会会長)   海老沢勝二君

   参考人

   (日本放送協会専務理事・

   技師長)         中村  宏君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 松尾  武君

   参考人

   (日本放送協会理事)   芳賀  譲君

   参考人

   (日本放送協会理事)   山村 裕義君

   参考人

   (日本放送協会理事)   笠井 鉄夫君

   参考人

   (日本放送協会理事)   山田 勝美君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     山本 明彦君

  谷  洋一君     中野  清君

  野中 広務君     林  幹雄君

  伊藤 忠治君     手塚 仁雄君

  松崎 公昭君     城島 正光君

同日

 辞任         補欠選任

  中野  清君     谷  洋一君

  林  幹雄君     野中 広務君

  山本 明彦君     左藤  章君

  城島 正光君     松崎 公昭君

  手塚 仁雄君     伊藤 忠治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長鍋倉真一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 まず、趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。

    ―――――――――――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

片山国務大臣 ただいま議題となりました日本放送協会平成十三年度収支予算、事業計画及び資金計画の提案理由につきまして、御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算につきまして、その概略を申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入は六千六百三十億円、事業支出は六千五百二億円となっており、事業収支差金百二十七億円は、全額を建設積立資産繰り入れ及び債務償還に使用することとしております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出とも千十三億円となっており、放送設備の整備など建設費に七百七十七億円を計上しております。

 次に、事業計画につきましては、公共放送の使命と責任を深く認識し、視聴者の要望にこたえ、社会のよりどころとなる公正な報道と多様で質の高い放送番組の放送を行うとともに、衛星デジタル放送の普及促進や新しい放送技術の研究開発等に積極的に取り組み、新たな放送文化の創造を目指すこととしています。

 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の負担する受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革とその実行を一層推進し、効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ信頼される公共放送を実現していくこととしております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 総務大臣の意見といたしましては、これらの収支予算等につきまして、適当なものと認めた上で、デジタル化により放送を取り巻く環境が大きく変化する中、受信料により維持運営される協会は、公共放送の使命を積極的に果たすとともに、受信料の公平負担を一層徹底することが必要であり、また、事業計画等の実施に当たり、特に配意すべき事項を付しております。

 具体的には、受信契約締結等の徹底、情報公開制度の適切な運用、地上放送のデジタル化の速やかな実施に向けた取り組み、青少年や視聴覚障害者等に対する放送の充実等の六項目であります。

 以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどをお願い申し上げます。

 以上であります。

御法川委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長海老沢勝二君。

海老沢参考人 ただいま議題となっております日本放送協会の平成十三年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。

 平成十三年度の事業運営に当たりましては、公共放送の使命と責任を深く認識し、視聴者の要望にこたえ、社会のよりどころとなる公正な報道と多様で質の高い放送番組の放送を行うとともに、衛星デジタル放送の普及促進や新しい放送技術の研究開発などに積極的に取り組み、新たな放送文化の創造を目指してまいります。

 あわせて、協会の主たる経営財源が視聴者の負担する受信料であることを深く認識し、業務全般にわたる改革とその実行を一層推進し、効率的な業務運営を徹底するとともに、受信契約の増加と受信料の確実な収納に努め、視聴者に理解され、かつ信頼される公共放送を実現してまいります。

 主な事業計画について申し上げますと、まず、建設計画におきまして、緊急報道体制強化のための設備やハイビジョン放送充実のための設備の整備を行うとともに、放送会館の整備などを実施いたします。

 事業運営計画につきましては、国内放送及び国際放送の充実を図るとともに、放送技術などの調査研究を積極的に推進いたします。

 以上の事業計画に対応する収支予算につきましては、一般勘定の事業収支におきまして、受信料などの収入六千六百三十億一千万円、国内放送費などの支出六千五百二億九千万円を計上しております。事業収支差金百二十七億二千万円につきましては、八十九億八千万円を債務償還に使用し、三十七億四千万円を建設積立資産に繰り入れることとしております。

 また、資本収支につきましては、支出において、建設費など総額千十三億七千万円を計上し、収入には、それに必要な財源として、減価償却資金など総額千十三億七千万円を計上しております。

 なお、受託業務等勘定におきましては、収入七億八千万円、支出六億九千万円を計上しております。

 最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金の需要及び調達を見込んだものであります。

 以上、日本放送協会の平成十三年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、一層効率的な業務運営を徹底し、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。

 委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡海紀三朗君。

渡海委員 自由民主党の渡海紀三朗でございます。

 海老沢参考人以下参考人の皆さん、本日は早朝より御苦労さまでございます。

 それでは、平成十三年度NHK予算並びにNHK万般にわたる問題について御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 我が国の放送の歴史を振り返ってみますと、主にNHKと民間放送といった二元体制のもとで、地上波によるラジオやテレビ、こういった時代が随分長く続いてきたというふうに思っております。

 しかし、近年、大変な技術革新が進みまして、そういう中で、今や衛星、またインターネット、こういった新たな伝達手段がそれに加わりました。加えて、運営形態といいますか経営形態といいますか、そういうことを考えましても、CATVとか有料放送といった新たな事業者が加わってきているのが現状でございます。

 このような状況の中にあって、NHKとしてはどんな考え方を持って事業を運営されているのか、こういった基本的なことをまずちょっとお伺いをさせていただきたいと思っております。

 NHKは日ごろから、先ほど大臣のごあいさつにも公共放送としてのNHKという言葉があったわけでありますが、みずからも公共放送としての使命等々の発言をされておるわけであります。海老沢会長自身も「デジタル公共放送論」という本をお書きになっておりますが、放送ということを考えましたときに、経営形態で考えてみますと、日本にはありませんけれども、国営放送といった放送がまず考えられますね。それから、広告料収入等でやっている民間放送、いわゆる民放がある。また、先ほども申し上げましたように、有料放送といったような視聴者との契約関係によって行われている放送もございます。先ほども申し上げましたように、NHKは公共放送というふうに言われています。主にこの四つの形態が考えられると思います。

 国営、民放、そして有料放送というのは概念は割とはっきりしているような気がするのですが、公共放送というのはもうひとつちょっとわかりにくい響きがあるな、私はそんなふうに感じます。

 中には、NHKは公共放送と言っているのだから、もちろん受信料で運営をされている、受信料を我々も取られているということはわかっているけれども、税金の中から随分支出がされているのではないか、要するに国からお金が随分出ているのではないか、こんなふうに思っている方がいらっしゃるのではないか。恥ずかしい話ですが、私も、予算の中身をしっかり見るまでは、大分税金が出ているのだろうなと、まだ国会に出てくる前でありますけれども、そんなことも考えていた一人でありますから、率直にそういうふうに申し上げたい。

 そこで、この公共放送ということについて、言葉の定義といいますか、公共放送というのは一体どういうものであるというふうに考えておられるか、海老沢会長のお考えをまず聞かせていただきたいと思います。

海老沢参考人 公共放送という定義でございますけれども、放送を含め、法律上の明確な定義は今ありません。ただ、かつて郵政大臣のもとに設けられました放送政策懇談会で、放送事業者の経営形態を三つに分類したものがあります。その一つは、国によって直接管理運営される国営放送。それから、法律等に直接その存立の基盤を置いて設立された公共的事業体により、営利を目的とすることなく、主として受信料等を財源として運営される公共放送。三つ目として、営利を目的とする私企業により、広告収入等を財源として運営される民間放送。こういう三つの分類がされたことがあります。

 私ども、放送法に基づいて事業を運営しているわけでありますけれども、この放送法に沿って言いますと、営利を目的とすることなく、財源を含め広く国民に存立基盤を置いて、放送サービスの面では、言論報道の多元性の確保、放送番組の質的水準の確保、過去のすぐれた日本の文化の保存や新しい文化を創造する、障害者向けの番組などによる公共の福祉の実現、災害時のライフライン機能としての役割を全うしていくのが公共放送だろう、そういうふうに意義づけているわけであります。

 言いかえれば、いつでもどこでもだれでもが、安い料金で必要な情報、質の高い番組が、全国くまなく、全国津々浦々にあまねく行きわたるということです。つまり、情報に格差なく、そして情報弱者をつくらないようにするというのが公共放送の使命であろう、私どもはそう考えております。

 ただ、電波、放送というものは、非常に有限、希少価値でありますし、国民共有の財産と言われております。その国民の財産を使うわけでありますから、そういう面では、すべての放送事業者は、放送の公共性が求められているだろうと思っております。そういう面では、我々は、有効な電波という資源を国民視聴者のために使っていく、そういう姿勢で臨むべきだろうと思っております。

渡海委員 定義ということで、もう少し浅い意味で御質問したのですが、使命なり役割についても今お答えをいただいたというふうに思っております。どうか、その趣旨をこれからも守っていただいて、国民の利益になる、そういった立場に立って事業を運営していただきたいというふうに要望させていただきたいと思います。

 ちょっと急に振りますが、せっかく副大臣が御出席でございますので、今の海老沢参考人の御意見を聞かれまして、副大臣の感想を。

小坂副大臣 今海老沢会長がお答えをされましたように、放送法の趣旨も、NHKの公共放送としての使命は、公共の福祉に着目をして、そしてあまねく受信をされ、必要な情報をいつでもどこでも入手していただけるようなサービスを心がけなさい、こういうふうに規定しているわけですね。

 公共放送のあり方というのは、国営放送でないその最大の違いは、国営放送は政府が運営をするということになって、政府の意思に基づいてその放送内容が一つの方向性を持つという可能性がある。しかし、公共放送の場合には、幅広い受信者によって負担をされて、そして受信料、いわゆる負担金に基づいて運営をされているということから中立性が担保できる、この辺が大きな違いだと思うのです。そういう意味で、公共放送の使命に今後とも着目をしながら、節度ある運営の中で国民に愛される良質な番組を提供してもらえれば私どもは大変にありがたい。

 そういう意味で、ただいまの会長の趣旨にのっとって今後とも運営されることを期待しております。

渡海委員 ありがとうございました。

 それでは、そのような考え方のもと、今回このNHKの平成十三年度の事業運営計画とか、最近新たにまとめられておりました「IT時代のNHKビジョン」というものがございますけれども、それらのことを、先ほどのような役割といいますか使命といいますか、具体的にどのように反映をされているのか、参考人の御意見を聞かせていただきたいと思います。

海老沢参考人 NHKの使命、役割はいつの時代でも変わらないものだろう。今、IT革命の時代になり、いわゆる多メディア・多チャンネルの時代と言われております。私どもは、そういう新しい技術開発の成果というものを取り入れながら、それを活用しながら、視聴者に質の高い、心を豊かにするような番組を提供するのが使命だろうと思っております。

 そういう面で、この三カ年の事業運営指針というものをまとめたわけでありますけれども、基本は、やはり一つは受信料を値上げしない。つまり、視聴者国民に新たな負担をかけない、いわゆる効率のいい事業運営をして新たな負担をかけないように努力することが一点であります。

 そういう面で、私は、向こう三年間は受信料の値上げをしないように努力するということを公約しているわけであります。その上に立って、それならば、受信料を値上げしない中でどのように番組の質を向上させるかということであります。できるだけ経費の節減を図りながら、そして職員の士気を高め、そういう中で、我々はあくまでも視聴者国民にサービスするんだ、そういう高い志を持っていい番組をつくろうということで今呼びかけております。

 そういう中で、今世界の共通の課題になっております人口、食料問題、エネルギー資源、環境問題、あるいは青少年の健全な育成をどう図るか、そういう世界的な課題をできるだけわかりやすく国民にその材料を提供し、そして心と物の調和ある発展といいますか、そういうことを目指しながらいい番組を提供する、それが我々の使命だろうと思っております。

渡海委員 今、番組の質の向上というお言葉がございましたが、NHKの番組の中には、これは私見でございますが、確かに私も非常に興味を持っている番組もあります。NHKの応援をするわけではありませんけれども、ぜひ視聴者のニーズとか反応、そういうことに、これまでも十分注意はされていると思いますが、やはり敏感にそのことを感じていただきたい。そして、先ほど多数の人にあまねくという話がございました。偏った報道とか、偏った意見にならないように注意をしていただいて、これからもいい番組を供給するようにしていただきたいというふうに要望させていただきたいと思います。

 そういった一方、最近の新聞等で、実はNHKに対して、どことは言いませんが、NHKが肥大化しているではないか、このままでいいのかというふうな記事もございます。そして、先ほども冒頭に申し上げましたように、通信の手段、放送の手段というものもやはり随分変わってまいりました。通信と放送というものの境界も非常にあいまいになってきた。こういう時代にあって、NHKの位置づけというものを明確にしなければいけない、こういう意見もあるわけでございます。

 当委員会でも過去においてそういう議論もなされたようでございますけれども、要は、安定した収入、受信料収入というもので運営をされているということになれば、やはりそのベースに立ってNHKのやるべき使命もあるし、同時に、その範囲もある程度、足かせとは言わないまでも、やり過ぎてはいけない部分というのが出てくるのではないかという意見がございます。ある意味で非常に大きな組織でもありますし、肥大化すれば、他の放送なり他の分野なりにさまざまな影響が及ぶのではないかというふうに危惧をされている声も聞かれるわけでございます。

 例えば、インターネットでニュースを配信されている。私もじっと考えてみて、見たい人にとってみればこれは非常にいいことなんですね。必ずしもこの行為そのものが悪いというふうには思わないわけであります。しかし、先ほど来の放送の趣旨等からこういう意見があるわけでございます。

 そういう巨大化とか肥大化とかいう批判に対して、公共放送のNHKとしてはどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。

海老沢参考人 NHKに対して、NHKが巨大化、肥大化するのではなかろうかという意見については、私も聞いておりますけれども、NHKが、今の組織といいますか運営の中では、そういう巨大化、肥大化になりようがないというのが私どもの率直な感想でございます。

 といいますのは、NHKの予算、決算、受信料を値上げするかどうかにつきましては、すべて国民の代表でありますこの国会で承認されるということになっております。そういう面で、この十一年間、受信料は値上げしないで我々は努力してきているわけであります。そういう受信料の枠の中でいろいろ創意工夫をしながら、視聴者国民にとってのサービスを展開しているわけであります。それは、放送というものは技術の歴史と言われてもおります。つまり、常に新しい技術開発の成果を取り入れて、そしてそれを視聴者に提供する、我々は、放送は技術を活用した文化だというふうに言っております。そういう中での事業運営でございます。

 そういう面で、NHKの放送界に占めるシェアというのも年々低下しております。平成五年では、NHKのシェアは一九・六%ありました。現在、平成十一年度では、これがマイナス二・一%、つまり一七・五%まで減ってきております。というのは、ほかの民間放送なり、あるいはCSなりCATV等がだんだん大きくなってきているということであります。

 そういう中で、私どもは、あくまでも視聴者国民に対して質のいい番組を提供する。つまり、視聴率の競争とか市場原理だけにとらわれることなく、やはり障害者への福祉番組とか、いわゆる学校放送なり、あるいは教育とか教養番組に力を入れるとか、そういう面で、マイノリティーへのサービスも十分やっているわけであります。報道、教育、娯楽という四つの分野をバランスよく提供しながら、国民の文化水準の向上に役立てる、そういう姿勢でやっておりますので、今後とも肥大化、巨大化するわけではありませんし、我々は、あくまでも節度を持って取り組んでいくということを改めて表明しておきたいと思います。

渡海委員 その件については、やはりそういう声が余り起こってこないように、今お話しになりましたように、ぜひ注意をしていただきたいというふうに思います。

 余り時間がありませんが、実はあるところで、今から十年たったらテレビは全体の五%ぐらいの情報提供しかできないのではないか、こんな御意見も聞いたのですね。今すぐそういう時代が来ようとしている。

 例えば、我が党のことで恐縮でありますが、たしか先日の党大会は、インターネットで動画で配信をされておりましたね。これがますます、例えばインターネットの情報量が技術革新によって大容量のものが送れるということになれば、今のテレビという衛星と地上波、これはNHKの場合は衛星、地上波、今全部で五波持っておられるのですかね、その手段ではないような方法でどんどんと配信をされるような時代が来る。

 通信と放送の整理というのは、これは単にNHKがどうのこうのということだけではなくて、電波行政も含め、もっともっと整理をしていかなければいけない時代に入ったとは思っておるわけでありますが、そういった場合に、常に今までの考え方だけではやっていけない時代が必ず来るのではないかな、私はそんな懸念をいたしております。そういう中で、先ほどのような良質な情報を提供していく、良質な番組を提供していくという使命を果たすためには、ただ単にここだけでとどまっているということでは、実はNHKの使命を果たせないかもしれないという逆の問題も出てくるような心配を私はいたしております。

 どうかそういう点を視点に入れて、これからもそういった批判の問題、逆に言うとあるところにとどまっていたら使命が果たせないという問題をどのように解決していくかということを常に議論として、テーマとして考えていただいて、今後とも公共放送としての役割を果たしていただきますようにお願いを申し上げまして、もうちょっとだけ時間がありますから、最後に、もし会長の感想がありましたら、お聞かせをいただきたい。

海老沢参考人 今、渡海先生御指摘のように、IT時代に入りまして、インターネットが世界的に普及されてきております。今後とも、新しい伝送路といいますか、道具がどんどん開発、普及してくるだろうと思っております。

 そういう面で、我々は、情報格差あるいは情報格差を出さないようにするためには、いろいろな伝送路、道具、そういう手段を使わなければ、すべての国民に情報が行き渡らないという時代になってきたのだろうと思います。新しい手段、道具というものも活用しなければ公共放送の使命が全うできない、今そういう時代だろうと思います。そういう面で、我々はできるだけ視聴者国民の理解を得ながら、そういう情報を端末に向けて発信していく姿勢をこれから考えなきゃならぬだろう、そういう第一歩を踏み出したということであります。

 ただ、我々、いたずらに民業圧迫とか巨大化ということではなくて、視聴者のニーズに十分こたえる中で、いろいろまた皆さんの意見を聞きながら対応していきたい、そう思っているところであります。

渡海委員 これで終わります。

御法川委員長 次に、阪上善秀君。

阪上委員 自民党の阪上善秀でございます。

 NHKの巨大化、肥大化について、違った観点から質問をしていきたいと思います。海老沢会長の雄弁家はよく存じ上げておりますので、答弁はなるべく簡潔にお願いをいたしたいとまず要望いたしておきたいと思います。

 先日、新聞の社説で「このままでいいのか」という大きな見出しで、NHKの肥大化の問題を取り上げておりました。この問題につきましては、私もかねがね気になっておったところでございます。詳細に内容を読んでみますと、NHKが昨年の暮れから始めたインターネットを通じたニュース提供は通信事業への参入であり、放送法にも反すると指摘をしておりました。また、こうした取り組みが法改正をきちんとしたことでもなしに、議論がないまま行われていることに問題があるのではないかと指摘をしております。

 議論につきましては、昨年の通常国会のNHK予算の審議の際にも、NHKがインターネットを通して情報を提供することについて議論が行われたように記憶をいたしております。当時の八代郵政大臣も、この件に触れた答弁をされていたと思います。

 そこで、総務省に確認したいのですが、現在NHKが行っているインターネットを通じたニュース等の提供は放送法に違反しているという考え方もございます。新聞では、当時大臣はこうした事業展開に否定的な答弁をしたと書かれておりますが、この確認をいたしておきたいと思います。

小坂副大臣 阪上議員御指摘のように、新聞にそのようなことが記事で出ておりました。NHKは、昨年十二月末から、インターネットを利用して、BS放送の番組でございます「いつでもニュース」等を提供いたしております。

 八代大臣の答弁ということが御指摘ありましたが、当時私も同じ委員会に出ておりまして答弁に携わっておりましたが、八代大臣は当時「NHKがこのようなサービスを本来業務として行うことにつきましては、」という形で見解を述べまして、インターネットを使ったような事業も、これをあくまでも本来業務としてやる場合には放送法の改正が必要であろう、こういう見解を述べております。

 私どもは、現在行われておりますインターネットの提供は、放送番組を単純に二次利用するものであって、かつ、NHKの本来業務である国内放送、また放送及び受信の進歩発展に必要な調査研究、そしてまた国際放送等の業務、これは放送法の九条第一項でございますが、それに比べて規模、態様においても非常にわずか、僅少であって、そして放送法の第九条の二項に規定しております附帯業務の範囲内にとどまっているという認識を持っておりまして、この範囲内である限り、これは放送法の改正を要しないで提供が可能であろう、こう考えております。

 しかしながら、将来にわたって、品質等で、内容が放送と同等のものと認定されるような状況に変化してくる場合には、また放送法の問題というのは考えていかなきゃいけない、このように考えているところでございます。

阪上委員 NHKは放送法に基づく特殊法人であり、その業務範囲は放送法に規定されております。インターネットは通信手段であり、これを放送に活用していくことは放送本来の役割を超えるおそれがあるとも指摘されておりました。

 私は、よりよい放送を実現するために通信を手段として活用することは、これからもっともっと検討すべきものであると考えております。あくまでも放送を充実させるという観点こそが重要ではないかと思います。このような指摘に対するNHKの見解をお伺いいたします。

海老沢参考人 技術の革新によりましてインターネットが世界的に普及をしてきておるということは、もう御存じのとおりでございます。そういう中で、こういう新しい、放送と通信の融合といいますか、垣根が低くなってくる。新しい道具といいますか伝送路を使わないと、大災害が起こった場合、例えば阪神・淡路大震災が起こった場合に、携帯端末を持って避難した人たちに的確に情報を伝えなければならないということなど、私ども、ラジオなりいろいろ使ってきましたけれども、インターネット時代になりますと、今度は新しいいろいろな使い方がまた出てくると思います。

 そういうところに正確な情報を伝えたい、そのために放送を補完するといいますか、そういう道具も使わなければ視聴者のニーズにこたえることができないだろう。そういう意味で、去年の十二月の末からインターネットにニュースを提供する、これもあくまでも放送したものを単純に二次利用したもの、つまり放送を補完する意味合いで、今やっているところであります。

 そういう面で、これから将来どこまでそれが発展するか、放送と同じような画面なり音声デジタル時代になれば、またその時点でいろいろ法の整備等を考えなければならないだろう、そう思っているところであります。

阪上委員 また、この社説では同時に、NHKの関連団体について、全体の規模も大手民放に匹敵するほどになり、他の特殊法人と同様にOBの天下り先になっているとも指摘をいたしております。このような関連団体を隠れみのに、NHKは、回線リセールなど放送法の制約でみずからはできない通信事業への進出を模索しているという指摘も聞きますが、事実はどうでしょうか。

 関連団体の実態と、NHK本体が通信事業へ進出する意思があるかどうか、考えをお聞きいたします。

山村参考人 お答えいたします。

 まず最初にNHKの関連団体でございますが、平成十一年度の売り上げが二千五百九億円でございます。ただ、このうちNHKの関連団体相互の取引を除いて、NHK及び関連団体以外との取引は千百五十八億円であります。一方、在京の民放キー局でございますが、多いところは三千億円を超え、少ないところでも二千億円を超えるというのが現状でございまして、私どもとしては、大手民放に匹敵するほどであるという指摘は当たらないというふうに考えております。

 また、OBの天下り先云々の件でございますが、NHKの関連団体につきましては、もう御案内のとおり、NHK業務の効率的な運営とかノウハウの社会還元、そういったものを目的としたものでありまして、NHKの退職者のうち、ノウハウを生かして、しかも専門能力それから技術力というものを持った人たちのみを関連団体の役員、従業員に雇用して、その人材を活用しているということでございまして、いわゆる天下りの指摘は当たらないというふうに考えます。

 回線リセールにつきましては、これはあくまでもNHKの経費の節減が目的でありまして、これによって約二億円の経費節減を見込んでおりまして、NHKグループが通信事業に進出をするという考えは、今のところございません。

 ちょっと長くなって、恐縮でございます。

阪上委員 NHKに対するさまざまな批判の中に、こうした関連団体を隠れみのに使ってNHKが業務の拡大を図っているのではないかという指摘もございます。

 NHKは、本来、こうした関連団体が適切に業務を行うよう指導するのがあるべき姿であると思います。NHKは、NHKの出資を受ける関連団体がその出資目的に沿った事業を行うように指導監督する責任があると思いますが、そうした指導や監督は具体的にどのようにされておりますのか、お伺いをいたします。

山村参考人 今御指摘のように、私どもは指導監督する責任があるし、それを今きっちりやっているというふうに考えております。

 NHKの関連団体は、当然のことでございますが、公共放送NHKの信頼を失ってはならないというふうに考えておりまして、関連団体にふさわしい節度と適正さを持って運営されるよう、日常的に必要な管理指導を行っております。

 具体的には、例えば、NHKとの協議事項なども含めまして、関連団体の運営に関する共通基準、これは関連団体運営基準と申しますが、これをつくったり、NHKの役職員が団体に非常勤で役員に就任をしたり、関連団体との話し合い、協議会等を通じてNHKの経営意思の徹底でありますとか必要な指導管理を行っているところであります。

阪上委員 次に、関連団体が適切な業務運営を行っているかどうかを確認するためには、関連団体に関する情報がきちんと公開されていることが重要だと考えます。

 NHKは、日本のマスメディアとして初めて、ことしの七月から自主的な基準に基づく独自の情報公開を始めると聞いております。関連団体に関する情報の公開についてはどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。

山村参考人 NHKの関連団体につきましても、NHKに準じた情報公開が必要であると考えております。

 御案内のように、業務報告書には、子会社、関連会社、関連公益法人等の概要の記載が義務づけられておりまして、NHKでは、これに該当するすべての団体を業務報告書に記載しております。このほか、NHK年鑑でありますとか、関連団体の側でもインターネットによるホームページとか、官報などで経営に関する基本情報を掲載しておりまして、これからもNHK情報公開基準の趣旨を踏まえまして、NHKの関連事業に関するより一層の情報の提供や開示に意を用いていきたいというふうに考えております。

阪上委員 質問を終わります。

御法川委員長 次に、浅野勝人君。

浅野委員 私は、これからの時代の方向を、奪い合った二十世紀から分かち合う二十一世紀への転換と表現をしています。最近の日米同時株安に見られるように、人類は、経済を初め人口、エネルギー、環境といった世界的な課題を共有する時代を迎えております。

 NHKは、公共放送としてこれらの問題と果敢に取り組んでいく責務があると存じますが、その決意を海老沢会長に伺っておきます。

海老沢参考人 二十世紀は戦争と対決の世紀と言われました。二十一世紀は真の平和と対話の世紀へ持っていこうというのが世界的な共通した方向だろうと思っております。

 そういう中で、やはり世界に共通した課題というのは、今浅野委員御指摘のように、人口あるいは食料、エネルギー問題、いろいろあります。私どもは、そういう世界的な共通の課題について、日本だけでなくて世界的な視点、地球的視点に立って番組をつくって、国民とともに考えていこう。そういう視点で、NHKスペシャルなり「クローズアップ現代」なり、あるいはまた特別番組等で、これからもさらにこれを充実させていこう、そう思っております。

 特に、ことしは食料と教育問題に力点を置こうと思っております。

 特に食料は、御承知のように、日本の食料自給率がいわゆるカロリーベースで四〇%台、先進国では最も低い自給率が続いております。そういう中で、やはりこの食料というのは、農業問題あるいは環境問題、いろいろな問題に関連した国民の基本的な課題だろう。そういう視点で、これから数年かけてこれを取り上げていく。

 それと同時に、また教育問題、これも国家百年の大計と言われるほど国民の関心の高い課題でありますので、去年のNHK教育フェア二〇〇〇を通じて、これも、継続は力なりという言葉がありますように、継続していろいろな課題を取り上げていきたい、そう思っております。

浅野委員 放送と通信の融合が本格化するにつれて、ユーザーが情報を手に入れる手段がこれまで以上に多様化してきております。先ほどから渡海、阪上両委員も指摘をしておりましたけれども、中でも飛躍的な伸びを示しているのがインターネットです。多量の情報を扱う放送事業者にとっても無視できない広がりを見せてきております。

 NHKは、インターネットの存在をどのように認識し、位置づけているのか。それから、これからの時代の中で、視聴者の期待にこたえてより豊かな放送をしていくために、インターネットの活用をどのように展開していこうと考えているのか。改めて伺っておきます。

海老沢参考人 インターネットは、世界どこでもだれでもが自由に使える新しい道具、手段になってまいりました。そういう中で、このインターネットを我々は無視できない世の中だろう。そういう新しい伝送路、道具というのも、放送を補完する、サービスを高度化するための一つの手段として我々は使っていかなければならない時代だ、そういうふうに認識しております。

 ただ、私は、これからインターネットがブロードバンド化してこようとも、やはり基本は放送は変わらないだろう。私どもが推進してまいりましたHDTV、いわゆるハイビジョンが中心となって、それにいろいろなものが付随してくるというふうに考えております。

 そういう面で、あくまでも放送が中心になり、それをインターネットなり情報端末が補完していく、そういうふうに今思っております。

浅野委員 NHKは放送法で規定された業務を行う特殊法人ですから、通信事業者が扱うインターネットの展開について、当然放送法の制約を受けます。

 そこで、さまざまな制約を受ける状態のままで、NHKが果たしてマルチメディア時代の中で本来の公共性を十分果たしていけると思っているのか。もし放送法の解釈でカバーできない分野が次々に出てきた場合、そのことを想定して考えてみますと、早晩放送法の改正を視野に入れた検討をする時期は避けられないと予測をいたしますけれども、総務省はどうお考えでございますか。

景山大臣政務官 お答えをいたします。

 近年、放送のデジタル化、多チャンネル化、インターネットの普及、高度化、放送を取り巻きます環境は急速に大きな変化をいたしております。公共放送を行うNHKのあり方につきましても、検討することは必要と認識をいたしております。

 こうした中におきまして、NHKにおけるインターネットを利用いたしました情報提供につきましては、先ほど小坂副大臣もおっしゃいましたように、現行放送法の範囲内、放送法九条第二項附帯業務で行われているところでございます。今後、当該範囲を超えて行う場合におきましては、当然のことながら放送法の改正が必要であると認識をいたしております。

 こうした点につきましては、今後放送政策研究会で御議論いただくとともに、国民の皆様方の御意見を伺いながら、デジタル化社会の中での公共放送の役割、受信料負担の公平性、通信と放送の融合等、さまざまな観点から慎重に検討をしていく必要があろうと思っております。

浅野委員 景山政務官の歯切れのいい答弁で、私が何となく、これは避けて通れない問題であると同時に、かなりのさまざまな分野のメディアから議論を呼ぶことになるだろうなと思っていたことを、政府がきちんと認識をしておられるということがよくわかりました。

 BSデジタル放送が去年の十二月にスタートをして、放送のデジタル化はいよいよ地上デジタル放送に移ってまいりました。焦点が地上波に移ってまいりました。アナログ放送からデジタル放送へ変えるには膨大な経費がかかることでもありますから、その転換がユーザーにとって、視聴者にとってメリットのあるものでなければ意味がありません。

 地上デジタル放送は、これまで広域放送しかできなかった地域に対して、各県ごとの県域放送ができる、技術的にはそれが可能だというふうに聞いております。関東地域の人たちは現在広域放送しか受信することができませんから、栃木や群馬の山間部の人たちは東京のニュースを見せられる機会が多いわけで、ほかの地方の人たちと比べて放送サービスが不公平だと言えなくもないわけですね。

 そこで、この地上波のデジタル化を実現する機会に、関東地域でも他府県と同じように各県ごとのローカル放送ができるようにする。デジタル化のメリットを生かすという観点からも、それはぜひ実現すべきことだと思っております。これは私のかねてからの主張でもあります。

 まず、NHK、その考え方についてはっきり姿勢を示してみてください。

山田参考人 お答えします。

 NHKは、この問題については長年の懸案ということで、放送のデジタル化に合わせて、ぜひ県域放送を実現したいというふうに思っております。これまで、県域放送のない関東各県に対しましては、首都圏の広域放送の枠内でそれぞれ各県にふさわしいサービス、努力はしてきたのですけれども、ほかの地域のローカルサービスと比較した場合に、先生御指摘のような不公平感の解消には至っていないという認識は持っております。

 こうした中で、平成十一年の六月に関東地方知事会議、それから十一年の九月に関東甲信越一都九県の県議会議長会から、県域放送実現を求める要望も受けております。また、視聴者からも同様な趣旨の強い要望を受けております。NHKとしましては、こうした要望にこたえるために、提示されたせっかくのデジタル化を機会に、関東地域での県単位のローカル放送をぜひ実現したいということで、公共放送としての使命を果たしたいと考えております。

 それで、具体的には現在、総務省、NHK、民放の三者でつくっております地上デジタル放送に関する共同検討委員会、ここで、チャンネルプランの検討の中で、関東地域でのNHKの県単位のローカル放送チャンネルも含めて技術的な検討が進められているところであります。

浅野委員 方向がはっきりわかりましたけれども、これは私どもが大学生、ウン十年昔からの課題であって、それがやっとデジタル化の機会に実現の方向だということのようでありますけれども、総務省、政府は、今回はそれは間違いないでしょうね。

景山大臣政務官 お答えをいたします。

 先生おっしゃいますように、現在、関東ローカル圏におきましては首都圏放送というのが行われております。そして、先ほどお話がありますように、知事会、都県議会議長会等からもこの点につきましては強い要望が上がっております。しかし、茨城を除きまして、どの県にも民間放送もございます。そういった点を考えますと、地域住民のサービス向上につながる反面、関東広域圏の県域放送事業者の経営基盤にも大きな影響を及ぼすと思っております。この点も検討の考慮に入れながら、今後十二分に検討を進めていかなくてはいけないと思います。

 したがいまして、本件につきましては、周波数の検討と並行いたしまして、地元の意見、要望、NHK及び県域放送事業者からの意見等も踏まえまして、具体的に今後どういうふうにやっていくか、このことを適切にまた具体的に検討を進めていかなくてはならないと考えております。

 以上であります。

浅野委員 ぜひ実現に向けて努力をお願いしたいと存じます。

 それでは、これで終わります。

御法川委員長 次に、左藤章君。

左藤委員 自由民主党の左藤でございます。

 まず、NHKさんにお伺いをさせていただきたいと思います。

 最近、地上放送のデジタル化に当たって、テレビだけではなくラジオの音声放送のデジタル化も話題になっています。この音声放送のデジタル化について、NHKはどのような方針を持っておられますか。

 また、BSデジタルの普及の決め手は放送内容だと思います。地上放送と違う、魅力にあふれた番組を放送しなければなりません。しかし、BSデジタルはソフトの魅力に乏しいという声もよく耳にします。また、データ放送も、画面の反応が遅くていらいらするとも聞いております。NHKは、新しい年度にBSデジタルの編成のキラーコンテンツにどのような番組を予定しておられるか。二点、御質問をさせていただきたいと思います。

海老沢参考人 ラジオのデジタル化の問題でありますけれども、その前に、ラジオは今から七十六年前から放送を始めて、ラジオの役割といいますかラジオの効用というものは、私、いつの時代でも今でも変わらない、国民にとっては、これを利用、活用、そして非常に親しみを持って使われているだろうと思っております。そういう面で、ラジオの意義というものを我々十分認識しております。そういう中で、これを、今、中波、短波ありますけれども、今度はデジタル化しようという問題であります。

 これにつきましては、郵政省、今の総務省でありますけれども、去年の十一月に、東京、大阪の二つの地区で実用化試験局を開設するための免許方針案をつくりました。そして電監審にこれを諮問し、答申を得たということになっております。それによりますと、地上デジタル音声放送の参入希望者が幅広く参加が可能なコンソーシアム形式の団体をつくって、その団体に優先して免許を与えるということになりました。私どもNHKも、東京と大阪の二つの地区の実用化試験放送に参画しようと思って、今いろいろ準備をしているところであります。

 そういう面で、東京、大阪の実験、視聴者の反応あるいは技術的なものをつかみながら、これから具体的に考えをまとめていきたい、そう思っているところであります。

 それからもう一つ、BSデジタル放送、去年の十二月一日から始めました。今、私どもNHK、民放、八社体制で十チャンネルでやっております。一応順調にスタートが切れて、今は、はっきり言ってこれから弾みをつけていこうという段階であります。私どもは一千日で一千万世帯に普及させようということで、番組の内容の充実等も図ってきております。

 御承知のように、こういうものを普及するためには、ソフトとハードが車の両輪としてうまく回っていきませんと普及しませんので、つまり、我々放送事業者としてはやはり質のいい番組をつくっていく、それと同時に受信機が安くなり、使いやすくなりませんと視聴者は購入してくれないというふうに思っております。そういう面で、我々はいいものをつくる、そしてメーカーはこれを安く提供する、そういうふうにやっていきたいということを今希望しております。

 いずれにしても、私ども、今二十四時間の放送をしております。ハイビジョンの映像の鮮明さ、臨場感を持った質の高いものをいろいろな面で提供しておりますし、これからは野球シーズンになりますので、イチロー選手が参加したマリナーズを中心に、アメリカの大リーグの迫力ある野球の試合を生中継する、あるいは日本のプロ野球につきましてもできるだけハイビジョンで視聴者に提供しよう、いろいろなことを今考えておるところでございます。

左藤委員 今、会長からお話がありましたように、一千日一千万普及の努力とともに、ハイビジョンのすばらしい画像をしっかりと我々視聴者に普及をしていただければありがたいな、このように思います。

 先ほど浅野委員が御質問しましたのでダブりますので、ちょっとインターネットの放送配信についてお願いをしようと思いましたけれども、NHKさんはよろしいのですが、ちょっと副大臣にお願いをしたいと思います。

 先ほど景山政務官からお話がありました放送法、映像をどんどん送るということになると、今の放送法では附帯事項になっておるはずです。この放送法の改正というものは早急に検討しなければならないと思いますけれども、副大臣の御見解をひとつお願い申し上げたいと思います。

小坂副大臣 左藤委員御指摘のように、インターネットによるニュースの提供がいわゆる放送番組のような様相を呈してきたとき、あるいは、その品質等において、規模において、現在の本来業務の範疇に入るのではないか、こう解されるような状況になったときには放送法の改正が必要だろうという見解を、昨年の大臣答弁からずっと提示をしておるところでございます。

 現在、その検討に関しましては、放送政策研究会というのがございますが、放送政策研究会を通じまして、広く国民の皆さんの御意見も聞きながら、公共放送の役割、あるいは受信料負担との関係から公平性を欠かないかどうか、さまざまな観点で慎重に検討することが必要だろう、このように考えておるわけでございます。

 今現在は、先ほどほかの委員の答弁に申し上げましたように、本来業務が規定されております放送法の九条一項、これではなくて、附帯業務として九条二項の範囲内でとどまる限り、こう言っておりますので、今委員御指摘のような状況になりましたときは、ただいま申し上げた手法に従って、これを早急に結論を得るべくもう既に用意をしておるところでございまして、なお一層努力をいたしたいと思います。

左藤委員 わかりました。

 次に、デジタルの技術は、放送画面の質を落とさずに、実は何度もコピーができるわけであります。インターネットを行うパソコンには蓄積機能がありまして、テレビそのものにもサーバーがついております。受信機にそれがついているものも売り出されているようです。このようなことになりますと、個人がBSデジタル放送を勝手に録画して、インターネットで世界じゅうに発信、売り出すことも可能であります。

 このようなことになると、著作権の問題も含めて大変なことになるんだろうと思います。NHKは、このようなことに対してどのような対応策をお考えになっておられますか、ひとつお答えをお願い申し上げます。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

松尾参考人 先生御指摘のように、コピーされて権利が侵害されるという事実は現に起きておりまして、今後大きな問題になろうということはNHKも予見をしております。

 現在、コピーガードについての技術的な問題はほぼ完了をしております。しかしながら、放送機器と受信機、これがコピーガードの一つのシステムを持っていないと成り立ちません。それで、現在、製造する受信機メーカーは、電波産業会、ARIBという機構で定められていまして、その規格を定めつつあるということでございます。放送業者は、そういう受信機が定められた暁には、放送発信の段階でコピーガードを含ませて発信をしていくことになろうというふうに思います。

 権利侵害については、このデジタル時代、他に累を及ぼさないような形での管理ということをきちっとしていきたいというふうに思っております。

左藤委員 わかりました。

 次に、アーカイブスとコンテンツ保存、流通の件について御質問をさせていただきたいと思います。

 NHKは、これまでの歴史の中で莫大な映像資料や番組をたくさん保存しております。これらは、NHKの財産ではありますけれども、受信料で制作された、集められたものでありますので、いわば国民の財産と言ってもいいと思います。

 川口市にアーカイブスを建設中だと聞いております。このアーカイブスでは、どんな映像資料をどのようなルールで公表しようとしているのでしょうか。それと、映像資料は保存と活用という両面から押さえていく必要もあると思います。映像資料の活用面では、著作権の問題もありますが、アーカイブス等でNHKの映像財産をNHK以外のところも利用できるような道を実現してほしいものだと思います。

 もう一つの保存面ですが、私たちの子供たちの時代に、子孫のために今を映像で残しておくことは、映像の活用以上に重要な仕事だとも思います。NHKの場合、映像の保存はどのような基準や仕組みで行っているのか、また、過去のテレビ放送の映像はいつごろからのものがきちんと保存をされているのか、教えていただきたいと思います。

松尾参考人 まず、番組の活用について申し上げます。

 番組の活用は、放送事業の成果を広く社会に還元するということで、結果的にはNHKの副次収入に入ってまいりますけれども、ビデオであるとか本であるとか、それから取材のための写真集であるとか、そういうものを社会に還元して御利用いただいているということでございます。私どもは、これをトータルで二次利用という形で呼んでおります。川口のアーカイブスには、そういう基本的な番組が保存されていくということでございます。

 保存がいつからということでございますが、一九八一年から、約二十年前から保存が開始されました。それ以前は、保存すること自体、テープが大変高かったので、テープを何回も使い回すというような状態で、一部フィルムは残っておりますけれども、テープの番組は残っておりません。したがって、この一九八〇年以降の番組から現在に至るまで、アーカイブスで保管をする対象ということになります。現在では、一年間に約一万五千番組が保存をされております。これは、ニュースは当然のことながら、各番組もそういうことでございます。

 このアーカイブスの利用方法でございますが、一つは個人閲覧という、要するに図書館が持っている一つの機能でございます。これをきちっと定めていきたい。したがって、そこには権利処理というものも映像の場合は派生してきておりますので、個人がライブラリーへ来て視聴して帰るという一つの事業、それからホール等で公開をしていく、要するに、不特定多数の人たちを集めて、そこでイベントをしてNHKの番組を公開する、こういうことも含めながら、それぞれ権利処理の仕方が違いますので、今現在、そういうトータルなプランニングをしているということでございます。

 以上でございます。

左藤委員 やはり、保存もしっかりとしていただいて、また我々も見たり、次世代の子供たちが、ある面で歴史にもなりますし、勉強にもなることですから、しっかりと保存をお願い申し上げたいと思います。

 最後に、時間がありませんので、ちょっとお願いがございまして、実は「ニュース7」というニュース番組があります。最後に町の表情が、今ですと夜景ですね、映されるわけであります。残念ながら、ほとんど東京中心でありまして、我々、大阪に住んでいますと、寂しいなと実は思うわけであります。大阪だけではなくて、多分よその地区も同じだろうと思いますので、ぜひそれぞれの、大阪以外にも福岡とか名古屋、そういうものも全国発信をしていただければ非常にありがたいと思います。

 もう時間がありませんので、質疑の時間を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

渡海委員長代理 次に、菱田嘉明君。

菱田委員 自由民主党の菱田嘉明でございます。

 私は、特にNHKと地方とのかかわり、また高齢化への対応、こういう面から、要望も含めて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、地域放送の充実という面でお尋ねをいたしたいと思います。

 御承知のとおり、地方分権推進一括法が施行されまして、ほぼ一年が経過をしようといたしております。この法律の目的の大きな一つは、それぞれの地域の歴史、文化あるいは気候、風土、こういうものを踏まえて、個性と魅力のある地域をつくっていくということにあるわけでございます。特色ある町づくりは、やはりその地域の伝統文化を守っていく中でそれをしっかりと生かしていく、それに加えまして、独自の新しい文化をはぐくんでいく、このことが基本にあるというふうに考えるわけでございます。

 一方、放送の分野では、CSデジタル放送に続きまして、昨年の十二月からはBSデジタル放送がスタートいたしたわけでございます。つまりこれは、衛星から同じ内容の放送を一律に流す形態がふえてきておる、こういうことになるわけでございますけれども、こうした放送が多くなりますと、放送内容も、ともすれば全国的な興味を集めやすい、あるいは刺激的で目立つイベントなどの放送がふえてまいりまして、逆に地域に密着した地道な営みが放送の対象から落ちてくる、こういうおそれがあるわけでございます。

 つまり、町づくりの方はより地域化へ、このように進んでおるわけでございますし、逆に放送の方は、ある一面ではよりグローバル化、こういう方向に向かって進んでいるように思うわけでございます。

 日本国内の至るところで伝統的な文化が崩れようといたしておりますし、貴重な地域文化が失われつつあるわけであります。今こそ放送が、地域の文化を守るために、またひいては個性と魅力のある町づくりを実現していく上で大きな役割を果たしていただかなければならない、このように考えるわけでございますけれども、海老沢会長の御所見をお伺いいたしたいと思います。

海老沢参考人 日本にはそれぞれの地方にそれぞれすぐれた文化が根づいております。私どもは、そういう地方の伝統文化を守り、それを保存し、その地方の文化の上にまた新しい文化を創造していくというのが我々放送業界の一つの使命だろうとも思っております。

 そういう面で、最近でも「ふるさとの伝承」、いわゆるふるさとに伝わる、各地域に伝わるお祭りとかあるいは日常行事とかそういうものを映像で残しておこうということで、かなりのものを放送し、これを保存しております。いつでもこれを見られるようにしております。

 それと同時に、二十世紀は映像の世紀と言われました。いろいろな映像が散逸しないように、二十世紀の映像各県版というものをつくって、今でも総合テレビで放送しております。そういう事業も展開をしてまいりました。

 最近は、地方の方言といいますか、地方の方言も文化であります。そういう面で、ふるさとの日本の言葉というものも保存していこうということで、今その保存作業をし、それをまた番組化しつつあるところであります。

 そのように、我々は、先人が築いてきた文化というものを大事にする、そういう面での放送の役割はますます高まるだろう、そう思っております。今、各県に放送局を置かせていただき、そして、五十四局の体制で地方の生活あるいは文化、伝統というものを全国に発信させる、それが世界にも伝わっていく、そういう中でまた新しい文化を育てていこう、そういう姿勢で取り組んでいるところであります。

菱田委員 どうもありがとうございます。

 どこへ行っても同じような町並み、いわゆる金太郎あめのような町づくりは避けていこうとするのがこれからの町づくりでございますけれども、同じように、個性ある文化を守り、そしてまた新しく育てていく、こういう面でNHKの大きな御貢献を期待いたすものでございます。

 私は、京都府の八幡市という町の市長を六年間務めさせていただきました。この間、地元には、「のど自慢」とか「ふたりのビッグショー」、こうした幾つかのNHKの公開派遣番組に来ていただいたわけでございます。そのときには、文字どおり会場に入り切れないほどの応募がございまして、地元の皆さん方に大変喜んでいただきました。ビッグショーの場合は、千名ほど募集をしたわけでございますけれども、これに対して実に一万人以上の応募者があったわけでございまして、地元ではそうした生の大きなショーに接する機会がなかなかない、こういうことで大変楽しみにしておった面もあったわけでございます。

 ところで、長引く経済不況の中で、このところ地方には元気がなくなってきておるわけでございます。これは住民もそうでございますし、行政機関も同じことが言えるわけでございまして、元気がないわけでございます。このことは、地方の力だけで先ほど申しましたような大きなイベントを催すことがなかなか難しくなってきておる、こういうことでございまして、そういう面では非常に残念に思いますし、寂しくも思うわけでございます。

 政府も景気浮揚を最大の政策課題として懸命にこれに取り組んでおるところでございますけれども、国が活力を取り戻すためには、やはり地方も元気にならなければならない。そうした意味で、NHKが行う公開派遣番組は地方にとりましてもいい刺激になりますし、地方の人たちにも元気を出してもらうことができる、このように思うわけでございます。NHKがこうした公開派遣番組を各地域でもっとたくさん実施していただければ、それは地域の活性化にもつながるというふうに思うわけでございます。

 公開派遣番組を今後さらに充実していただきたいと思いますけれども、どのようにお考えをいただいておるのか、また、公開派遣番組の来年度の計画はどのようになっておるのか、お伺いをしておきたいと思います。

海老沢参考人 私どもは、公開派遣番組ということで、各地方に「のど自慢」を初めいろいろな番組を派遣して、視聴者参加番組といいますか、地域の人たちと一緒に番組をつくろう、そういうことで、年々これをふやしてきております。平成十三年度は、今、地方分だけで四百二十七本を考えております。去年より十本程度ふやしました。それと同時に、NHKホールなり、また、仮設でありますけれども、新しくテント二〇〇一というところでも公開番組をやります。合わせますと千百四十六本、対前年より二十数本ふやしました。

 そういうことで、できるだけ皆さんと一緒につくろう、そういう姿勢でこれからも充実強化していきたいと思っております。ただ、やはり資金の面とかいろいろな面で制約もありますけれども、できるだけ工夫を凝らしながらやっていきたいと思っております。

 それと同時に、BSで毎月、「おーい、ニッポン とことん○○県」ということで十数時間にわたって放送しておりますけれども、これも今、各地から非常に好評をいただいております。そういう面で、視聴者のニーズにこたえるようにさらに努力していきたいと思っております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

菱田委員 どうもありがとうございます。

 自治体とか地方の団体がこうした大型のショーを実施したいと思っておりましても、今日のような経済状況あるいは財政状況でございまして、なかなか難しい面もあるわけでございます。ただ、幸いにいたしまして、地方でも文化センターとか文化会館、こういった施設の整備が非常に進んでおります。大都市に負けないような立派な施設を持っておるわけでございまして、むしろ運営面で若干もてあましぎみ、こういうこともあるわけでございます。NHKとしても、ぜひとも積極的な姿勢でこういう面を活用いただくようにお願いをいたしたいというふうに思います。

 次に、高齢化に対しての対応ということでお伺いをいたしたいと思うわけでございますけれども、お年寄り向けの番組の充実ということでございます。

 年をとってくると、どうしても体も弱くなってまいりますし、レジャー等で外出をするということも機会が少なくなってくるわけでございますけれども、そうしたお年寄りにとりましては、やはりテレビというのは最大の楽しみの一つではなかろうかというふうに思います。

 しかし、最近のテレビの番組を見ておりますと、若者向けのにぎやかな番組ばかりが目立ちまして、お年寄りが落ちついて、また静かに楽しむことができるような番組が少なくなっておるように思うわけでございます。聞くところによりますと、これは当然のことでございますけれども、民放はコマーシャルを重視する、そのために購買力のある若者向けの番組ばかりがふえていって、高齢者向けの番組が全体として減る傾向になっておる、このように言われておるわけでございます。

 デジタル化の進展によりまして、多メディア時代あるいはまた多チャンネル時代を迎えてはおりますけれども、お年寄りが期待するような番組は決してふえておらないのではなかろうか、これが実態ではないかというふうに思うわけでございます。

 先ほども議論が出ておりましたけれども、NHKはすべての人たちに支えられる公共放送として、こうしたお年寄りの期待にもしっかりとこたえていただきたい、このように思うわけでございます。お年寄りも楽しめる、そしてまた人々の心が豊かになるような番組を一層充実していただきたいと思うわけでございますけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

松尾参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のように、NHKは、どちらかといえば、視聴者は五十歳以降のお年寄りの方が大変にNHKの番組を見ていただけるというデータもございます。NHKは、全体的に高齢者に向けての優しいテレビということで心遣いをしているつもりでございますが、中でも、教育テレビ等々を通して介護の問題などを、「にんげんゆうゆう」という毎日夜七時半からの番組でございますが、お年寄りのために必要な知識というものをお伝えしているような番組もございます。

 また、これは多く投書が寄せられてまいるのですけれども「ラジオ深夜便」、寝ながら聞く状況としては大変にいいのではないかというふうに私ども思っておりまして、これもお年寄りの方々を意識して構成しております。

 そういうことを含めて、全体的な、字幕サービスであるとか解説サービスであるとか、高齢者向けの番組の充実を図っているということでございます。

 以上でございます。

菱田委員 どうもありがとうございました。

 それでは最後に、人に優しい、特に高齢者に優しい放送技術の開発についてお尋ねをいたしたいと思います。

 今日はIT時代である、そしてまた一方では少子高齢化の時代でもあるわけでございまして、お年寄りの多くは、パソコンはもちろんでございますけれども、携帯電話の取り扱いにも苦労しておる、こういうことをよく聞くわけでございます。テレビのリモコンの扱いも最近特に難しくなってきた、こういう声も聞くわけでございます。

 BSデジタル放送あるいはインターネットなど、放送とか情報通信に絡む新しい技術が次々と登場しておるわけでございますけれども、お年寄りはどうしてもそうした技術の進歩からは取り残されるばかり、こういうことになるかもわからないわけでございまして、お年寄りを中心に、いわゆるデジタルデバイドが拡大をしていくことが懸念されるわけでございます。

 NHKには、こうした技術の進歩がもたらすメリットをすべての人が享受できるように努めていく、そういう大きな役割も果たしていただかなければならないわけでございますけれども、日本におけるIT革命が本当に意味のあるものになるかどうか、これはまた、ある意味ではNHKによるところが大きいというふうにも思うわけでございます。

 NHKさんは、新しい技術を積極的に活用して、人に優しい放送の実現を目指しておる、このようにされておられるわけでございますけれども、お年寄りを中心とした多くの人たちのデジタルデバイドの解消に向け、今後どのように取り組んでいこうとしていただいておるのか、お伺いをしておきたいと思います。

松尾参考人 BS時代にもお年寄りの方々が使いやすいチャンネル選択のあり方ということで、プッシュ式の、つまりチャンネル切りかえが複雑にならない一つの要素を取り込んでおります。

 機器的なもので申し上げますと、話速変換装置というようなことがございまして、一定の、スピードを少し落としてお伝えするということが今技術開発をされております。これがどういう形で使えていけるのか。技術的な問題点も多少クリアしなければいけないのでまだ具体的に放送では使用しておりませんけれども、そういうことを含めながら、デジタル化時代に一つのツールが、音声ツールというところに多少余裕が出てきますので、そういうものを、話速変換装置などを使って放送することも、将来は十分検討できるのではないか。

 一方、字幕放送というのも、これはNHKは群を抜いて民放よりも充実、先行させております。

 例えば手話ニュースというのがございますが、これは、本当は障害者の方のニュース番組なのでございますけれども、文字がついて健常者の高齢者の方々が大変見やすい、文字も一緒に入ってくることによって大変見やすいというようなことで、喜んでいただいております。

 そういういろいろな視聴者の反応、反響を見ながら、できるだけの表現方法を駆使して、今後とも高齢者の方に優しい心遣いのある内容をつくっていきたいというふうに思っております。

菱田委員 どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、佐藤勉君。

佐藤(勉)委員 質問の機会をいただきまして、まず御礼を申し上げたいと思います。

 早速質問に入らせていただきたいと存じますが、私は、去年、逓信委員会のメンバーといたしまして、ヨーロッパの通信・放送の現状を視察させていただきました。その際、イギリスでBBCを訪問する機会をいただいたわけであります。NHKとBBCというところでありますけれども、受信料によって運営されているということなど、非常に似た組織であるというのはもう御認識のとおりだと思います。BBCの視察の際に、私は、大変強い衝撃と言えば大げさなのかもしれませんが、大変感銘を受けさせていただいた事柄がございました。

 それは、私たちに説明をしていただいているBBCの幹部いずれも、BBCはイギリス国内はもちろんのこと、ヨーロッパ、さらには世界の中でも最も権威のある放送であるという自信と誇りを全面に打ち出し、新たな分野にも積極的に乗り出していこうという、かつての大英帝国の気概というべき迫力にあふれた御説明をいただいたわけであります。NHKにないということではないことをまずもって申し上げておきたいと思いますが。

 そこで、先ほど来からお話をいただいておりますいろいろクリアしなければいけない点は重々にわかっての話になるとは思いますけれども、特にインターネットの部門について、ラジオ、テレビに次ぐ第三のメディアと位置づけて積極的に取り組んでおりました。BBCのインターネットの利用は、ニュースを初め、教育、医療、項目数で三百サイトと多岐にわたっておりまして、またページ数では七十万ページという膨大なページ数を持っておりました。そして、BBCは、インターネットの事業を進めるために年間四十億円の予算をつぎ込んでおるという話、五百人がインターネット事業に専門に携わっているという話とか、アクセス数もヨーロッパではトップというふうな話を聞かせていただきました。

 BBCを視察した際に、インターネットの部門のニュースルームというところに入ることを許され、拝見をさせていただいたわけでありますけれども、総勢二百人近くの職員が大変けんけんがくがくと、熱気に満ちた現場を見せていただきました。今から七年前の一九九四年、平成六年にインターネットの取り組みを開始したと聞き、いかにBBCが早い段階からインターネットの重要性を認識していたかのあらわれを目の当たりにしたわけであります。

 そこで、NHKも昨年の暮れからインターネットによるニュースの配信を始めておりますし、インターネットによる配信から間もなく三カ月になろうとしておりますが、インターネットによるニュースの配信を始めた経緯と現在の状況についてお伺いをしたいと思います。

海老沢参考人 インターネットに提供するニュースでありますけれども、これは世界すべてと言っていいほど、ほとんどの報道機関がインターネットにニュースを提供しております。

 そういう中で、私どもも、一九九五年にホームページで、放送番組のPRとか経営の実態とかの周知徹底あるいは番組をつくるための情報提供とか、今ホームページを百七十ページほど持っておりますけれども、なぜNHKはほかの国のように、ほかの報道機関のようにニュースを提供しないのか、そういう要望がかなり出てまいりました。そういう中で、NHKのニュース配信についていろいろな意見がありましたものですから、慎重に検討してまいりました。NHKの放送法上のいわゆる業務範囲の中で、二次利用、つまり、今の放送を補完するという意味合いでやってみようということで、去年の十二月二十六日から踏み切ったというのが実情でございます。

 これに対して視聴者の方からは、見たいときにいつでもニュースが見られる、そして、見落としたものは改めて見ることができるということで、非常に好評を寄せられております。今、一日二百万ヒット前後のアクセスがあります。

 私どもは、あくまでも今の放送法の枠の中で、業務範囲の中で二次利用し、放送を補完する、そういう立場で始まったわけであります。今後、新しくブロードバンド時代になれば、また法の整備なりいろいろなことを要望しなきゃならぬと思いますけれども、今はそういう状態でやっているところでございます。

佐藤(勉)委員 またまたBBCの話で大変恐縮なんですけれども、インターネットを使った海外への情報発信についても極めて熱心に取り組んでいるという印象を受けさせていただきました。母国語が英語か日本語かという言葉の問題はあると思います。しかしながら、NHKも去年の二月からラジオ日本の二十二言語によるニュースや情報番組を、ラジオだけではなくてインターネットでもほぼ同時に配信しているというお話を聞かせていただいております。

 これはまだ調査研究という位置づけで行われているわけでありますが、これだけの視聴者の期待に十分こたえていると言えるのかどうか、現在、NHKの海外への情報発信に関するインターネットの調査研究の状況はどうなっているのか、その結果を踏まえて今後、短波放送との関係についてどのように考えていくのか、お伺いをしたいと思います。

松尾参考人 インターネットの調査研究については、特別プロジェクト、この七月からは組織改正して組織の中で位置づけますが、専門的に今後も開発をしていきたい、研究をしていきたいというふうに思っています。

 国際放送の二十二言語は、ストリーミングで始めまして、それを現在はオン・ディマンド方式で、アクセスすれば聞くことができるということで、充実を図っております。

 あと、他の、インターネットのホームページ等々、それからホームページの中のニュースページの項目等々については、それぞれユーザーのいろいろな意見が参りますので、その都度ユーザーの意見を聞きながら充実に努め、見やすい状況というものを再現しております。

 以上でございます。

佐藤(勉)委員 望んでいる方々がたくさんいらっしゃるわけでありますから、わかりやすい情報の提供をぜひともお願い申し上げたいと思います。

 またまた繰り返しで恐縮でございますけれども、BBCの担当者の話であったわけでありますけれども、やる以上はヨーロッパのトップ、世界のトップになろうという気概を感じさせていただきました。そして、意気込みだけではなくて、BBCが実際にヨーロッパでだけではなくて世界に強い影響力を持っているという事実を見たときに、挑発をするわけではございませんが、BBCにできてなぜ日本のNHKでできないかという思いを強く感じさせていただきました。

 そこで、日本語と英語という言葉の違いを乗り越えて、世界とは言わないまでも、私は、アジアの中のNHKとしてヨーロッパやアメリカなどから一目も二目も置かれる存在になってほしいと思っている一人でございまして、また、それくらいの気概を持って取り組んでほしいと思いますが、会長の意気込みをお伺いしたいと思います。答弁は長くなっても結構でございますので、よろしくお願いします。

海老沢参考人 今、佐藤先生から励ましのお言葉を受けて、光栄に、と同時にまた、我々、身の引き締まる思いであります。

 御承知のように、放送の分野では私どもNHKは、技術的にも、放送時間、内容についても、やはり世界の最先端をいっているものと自負しております。特にハイビジョンの普及につきましては、やはり世界からも国際基準として認められましたし、そういう面では、去年の国連のミレニアムサミットで、私ども国連テレビと一緒になってハイビジョンで放送し、それをVTRで保存する、そういう事業も展開し、アナン事務総長から感謝の意を表されたというようなことで、このハイビジョンを中心としたNHKの技術力等については世界から高く評価されているところであります。

 それと同時に、問題は、やはり、放送番組が質が高く、そして心豊かになるようなものでなければならないことは言うまでもありません。そういう面で、私どももできるだけ私どもの番組を世界に配信する、あるいは世界に提供していく、そういうことでいろいろやっております。

 御承知のように、アジアを中心とした開発途上国に対しましては、これまでも二万七千本のものを外務省あるいは国際交流基金等の資金で改編して提供してもおりますし、それからまた、一般の放送事業者にもいろいろな面で売却しているということで、日本の実情、文化を普及させる意味からも努力しているところであります。

 そういう中で、インターネットの分野でどうも我々がBBC等よりおくれをとってしまったということは、私は全くそのとおりだと思っております。それは、いろいろ日本国内の事情もあり、そういう結果になったとは思いますけれども、いずれにしても、放送分野ではNHKが先頭を切り、先導的役割を果たしてきたということは紛れもない事実でありますので、今後ともいろいろな面で努力していきたいと思っております。

佐藤(勉)委員 いずれにいたしましても、BBCがあり、形態は違いますけれども、アメリカにはCNNという世界に発信をする情報発信源があるわけであります。私はやはり、位置関係からいっても、そのちょうど真ん中に日本は位置づけをするんではないかというふうな思いがあって、本当に私はカルチャーショックを受けたような感じで帰ってきて、この質問をずっとしようと思ってここまで温めてきたわけでありますけれども、会長にはその辺の思いをぜひともなし遂げていただきたいということでお願いを申し上げたいと思います。

 会長に大変心強い決意を聞かせていただきました。国際放送の番組の内容の充実に関しましては、NHK予算に対する総務大臣意見のみならず、過去にも多くの同僚議員から指摘をされているわけであります。国際放送にはNHK自己の業務として行う国際放送と、総務大臣がNHKに命令し、国が全額を負担して行う国際放送の二種類があることは御存じのとおりだと思います。これらを一体として放送がなされております。

 先ほど述べられましたとおり、国際放送は重要でありますし、我が国の文化や産業などの実情を海外に情報発信していくということも、私は必要ではないかと思います。我が国の国際放送の役割が一層重要になってくると思いますが、そこで、総務省にお伺いをしたいと思います。NHK国際放送について、今後とも積極的に展開をすべきものと思いますが、総務省の見解をお伺いしたいと思います。

景山大臣政務官 お答えをいたします。

 先生おっしゃるとおり、国際放送により海外に情報を発信することは、極めて重要なことであります。その第一点は、対日理解や国際的な相互理解を促進させていかなくてはいけません。第二点として、海外在留邦人に必要な情報の提供を行っていかなくてはいけないと思います。また第三点として、国際社会における我が国の立場を積極的に主張していかなくてはいけないと思います。こういった点を考えますと、極めて重要かつ有効であると認識をいたしております。

 総務省といたしましては、我が国唯一、海外に向けて放送による情報発信を行っているNHKが、世界の視聴者から信頼され、その役割を十分に果たしていくことを期待いたしますと同時に、放送法第三十三条、命令放送にかかわる交付金の確保に努めるなど、最大限の努力を行っていきたいと思います。

 また、本年、十三年度政府予算案におきます総務省の予算措置を申し上げたいと思います。

 一つは、短波国際放送につきましては、総務大臣の命令に基づく放送、放送法第三十三条、これを実施いたしまして、その費用をNHKに交付、十九億七千三百万円。

 第二点として、映像番組の海外への発信強化につきましては、次のとおり九千九百万円の措置をお願いしているところであります。その一点は、番組制作能力が不十分な開発途上国に提供する目的で我が国の教育番組の翻訳、編集を行う事業に対しまして、七千二百万円の補助金の交付をお願いいたしております。またその二点として、アジア地域で役に立ち、受け入れられやすい教育・教養番組の制作、発信の方策等の調査研究費といたしまして、二千七百万円をお願いしているところでございます。

佐藤(勉)委員 ぜひとも、そういう趣旨の中で、世界に冠たる日本というものをPRしていただきたいというふうに思います。

 若干時間がございますので、ちょっと立ち入った話をさせていただきたいと思います。

 インターネットによるニュース配信と相前後いたしまして、去年の十二月に衛星デジタル放送が始まったことは御存じのとおりだと思います。BSデジタル放送はハイビジョンとデータ放送が車の両輪だと、海老沢会長も常日ごろ述べているところだと思います。確かに、鮮明な映像のハイビジョンで見るニュースやスポーツの映像は、これまでのテレビにない、大変臨場感の迫力を感じさせていただくということになっていると思います。

 しかし、新たに始まったデータ放送について、不満の声を耳にすることがございます。「いつでもニュース」やいつでも天気、それに番組関連情報などの情報を呼び出すのに思った以上に時間がかかるという声をよく聞くことがございます。見たいと思った情報が欲しいときに手に入らないという、いらいら感と申しましょうか、募ってしまうのではないかと思いますし、情報は欲しいときにすぐ手に入ってこそ価値があるものだと思いますが、何らかの改善策をお示ししていただければありがたいと思います。

中村参考人 お答えします。

 BSデジタル放送の中で、データ放送につきましては、便利だという御意見をいただきますとともに、今先生お話しのように、もう少し反応の速度を速くできないかという御意見もあります。データ放送につきましては、目的の内容を見たいというときには、受信機のリモコンのボタンを押しまして求める画面が表示されるまでに反応の速度は二つございまして、一つは受信機の性能、もう一つはデータの送り側といいますか、送り方に関係がございます。

 受信機の反応速度の性能につきましては、その受信機が持っておりますコンピューターの能力、それからメモリーの容量などによります。これは、メーカーの受信機の仕様によりまして、反応の速度が速いとか遅いとかということがございます。

 それから、データの送り方でございますけれども、一般的には使用する伝送の帯域が一定に限られております。これは、NHKの場合は、今現在、二スロットでございます。この場合、伝える情報が多いほど、またサービスのプログラムが、記述が複雑であれば、要するに、それに時間がかかる。処理のデータがふえればふえるほど、反応の速度が遅くなるということがございます。

 そういうことで、私どもNHKは、送り方の工夫といたしまして、一つのサービスに必要な情報をできるだけ簡素化する、絞り込むということとか、サービスの内容を整理してプログラムの書き方の簡素化を行う。それからまた、システムの開発も行う、改善も行うということで、処理するデータ量の削減に努めて、反応速度の改善を図っております。

 限られたスロットの中でございますので、データ放送の実施につきましては、データの送り方、それからまた、受信機の側の改善ということに一層努めてまいりたいと思っています。

佐藤(勉)委員 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、山村健君。

山村委員 おはようございます。民主党の山村健と申します。

 私は常々、片山総務大臣の答弁をお聞きしておりまして、原稿読みでなく、本当に、時にはウイットに富んだアドリブの答弁をいただいて、非常に楽しみにしておったのですが、一体この国会中に総務大臣、片山大臣あてに私も質問できるのかということを非常に危惧しておった次第です。できましたら今国会中ずっと、片山大臣のままいろいろと論戦したいと思う次第なんですが、さて、きょうは平成十三年度のNHKの予算審議についてということで、短い時間ではございますが、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、NHKさんのこの資料をいろいろと目を通させていただきますと、衛星デジタル放送と地上デジタル放送というのが混在したような形で、何かデジタルになれば非常に夢がある社会がやってくるというような言葉が、ある種の思惑を持って書いていただいているのじゃないかなというふうに思います。といいますのも、まず第一点に、既得権益者重視というような視点が、私は非常に気になって仕方がございません。

 そこで、まず小坂副大臣に、自民党の中でもデジタルに関しては非常に詳しい先生とお伺いしていますし、発言等々を聞かせていただいているのですが、十二月一日にBSのデジタル放送が始まりましてから、約三カ月たちました。副大臣はBS放送というのを、ごらんになられているとは思うのですけれども、その意見と、今後のBSデジタルに対してどのような展開を図っていかれるのかということを、ちょっとお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 山村委員にお答え申し上げます。

 大臣でなくて恐縮でございますが、後ほど大臣の方からもお答えをさせていただきたいと思います。

 御指摘のように、昨年十二月にBSデジタル放送が始まりました。BSデジタル放送は、ただいま別の委員の御指摘もありましたけれども、まだまだスタートでございますので、リモコンのボタンを押したけれども、なかなかデータが出てくるのが遅いとか、いろいろな御指摘もあるかと思いますし、また、受信機の販売体制も、中のチップの供給体制によって若干おくれぎみであったということから、普及が当初若干停滞ぎみであったという御指摘もありました。

 そういう中で、BSデジタル放送は、高画質そして双方向という特色にあわせて、新たな番組構成がしやすい形になっております。また、研究もこれからいろいろなことがなされていくと思います。例えば、番組で放送する内容の中で、データの部分と画像の部分のデータ領域を変化させて送っていくという方式も今研究をされて、実現に近づいてはいる、ほぼ実現できております。こういうことになりますと、先ほど御指摘のありましたようなデータの内容も、非常に幅広いものが出てまいります。

 したがって、BSデジタル放送の未来を考えますと、今の状況で判断をしていただくよりも、もっと明るい未来がある。すなわち、まだまだ研究して新しいサービスを付加する余地がある、こういうふうに考えております。

 また、BSデジタル放送そのものがここに至りました経緯等も、御必要があればお答えをしたいと思いますけれども、その中で検討されてまいりました一番の理由は、私は、いずれにしても、デジタル放送にすることによって周波数の有効活用が図られる、これが一番大きなところだと思うのですね。デジタル化する最大のメリットは、やはり国民の限られた財産であります周波数を有効活用するというところにあろうかと思っております。

 またほかに御質問がありましたら、御指摘をいただきたいと思います。

山村委員 まさに私も衛星デジタル放送に対しては非常に期待をしておるんですけれども、今、国の予算といいますか債務というのは非常に大きな課題を抱えております。六百六十六兆円という数字が上がっているわけなんです。

 IT基本戦略といいますかe―Japanも含めまして、放送の領域に関しての記述というのが非常に少ないと思うんですけれども、その中で、今小坂副大臣に御答弁をいただきましたけれども、衛星デジタルというものがあるのにもかかわらず、なぜ地上デジタルというものを二〇一一年というような期限を切ってまで導入しなければならないのか、その辺についてお伺いしたいんです。

小坂副大臣 地上放送のデジタル化は、御指摘のように、二〇〇三年に三大広域圏で始まりまして、二〇〇六年からはその他の地域に広がり、そして二〇一〇年にアナログ周波数で送っている放送を停波する、すなわち、やめるということになっておりまして、一一年以降は地上波はデジタルのみ、こういうことになるということでございます。

 その経緯でございますけれども、まず地上放送のデジタル化、先ほどメリットを申し上げましたが、高品質の画像が送れるということ、それから高品質の音声がある、またデータ放送が可能になること、通信網と連携した高度な双方向のサービスが提供でき、そして自動車等の受信、いわゆる移動体による受信も安定して行える。バスなんかでテレビを見ますと、途中ざわざわいいますけれども、こういうことがなくなるということ、そういうメリットがありますので、これを導入すべきかどうか。

 平成十年十月に報告を受けた地上デジタル放送懇談会というのがございました。この懇談会には、学識経験者、本日もおいででございますが、NHKの会長、また民放連の会長等もお入りをいただき検討をいたしまして、チャンネルプランといいますか、どういう周波数帯を使って、どのようなチャンネル構成でやるかということも、皆さんに検討をしていただいた結果として、やはり地上デジタル放送はやるべきだという結論を十年の十月にいただいたところでございます。

 そして、さらにそれを進めるために、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法並びに放送法の一部を改正する法律案を一昨年提出いたしました。これは、内容としては、テレビ、ラジオというものの定義を変換いたしまして、今までの内容に加えて、データも送ってもよろしい、こういうような内容をそこで規定いたしました。

 そして、その法律が成立した後に、平成十一年の九月に、NHKと民法と当時の郵政省でございますが、その三者から成ります地上デジタル放送に関する共同検討委員会というのを設置いたしまして、実施までにどのようなステップを踏んでいったらいいのか。例えば、アンテナはどういうふうになって、そのためにはアナログの周波数のどこをあけて、そこのアナログの周波数に移転をしてもらうためにどういうことが必要なのか、アンテナの方向を変えたり、受信者対策が必要だ、送信側の経費はどのくらいかかる、こういうことを検討していただきました。

 そういうことで、アナログの周波数を移転してでもそこに新しい周波数を確保する。アナログ放送で使う帯域というのは、一つの放送局が使う帯域が非常に幅広いんです。ですので、デジタル化しますと、そこをもっと何局にも使えますので、そういう効率的な利用のためにどうしてもやはりこれはやるべきだ、こういうことで、その段取りを踏んで今日に至っているわけでございます。

 今回、地上デジタル放送への移行に先立ちまして、このアナログ周波数の変換のために必要な経費を予算計上いたしておりまして、この国会においてこの経費についてお認めをいただき、また電波法の一部を改正する法律案を提出させていただきますが、これを御承認いただく中でこの実施に踏み込んでいきたい、こういうステップでございます。

山村委員 まことに今までの経緯をありがとうございます。

 ただ、私は、衛星デジタル放送には期待している、地上放送は今は要らないんじゃないかというような観点から、ちょっとお話しさせていただきたいと思うんです。

 なぜかといいますと、単なる予算措置、お金の問題だけではなく、アナ・アナ変換という作業がどうしてもついて回るわけです。衛星デジタル放送が、機材の投入といいますか、メーカーサイドの問題もあるんだとは思うんですけれども、いわゆる国民の側、視聴者の側から見て今すぐに踏み切れないというところは、マスコミ等々で、地上デジタルにいずれは買いかえなければならないじゃないかというような危惧する気持ちもあると思うんです。

 そういった観点から考えたときに、地上デジタル放送を導入されてしまいますと、昔、白黒テレビからカラーテレビ、カラー放送へ変わったときというのは、従来、家にあった白黒テレビでも見られたわけですよね。カラーでは映らないけれども放送は見られた。ただ、今のアナログ放送が地上波デジタルに変わったら、まるっきり機材そのものをかえなければ見られない。一億台ですか、今、日本全国に隅々まで行き渡っているテレビを全部二〇一〇年までに買いかえなければならないというようなことがあるわけです。

 それは、いわゆる個人消費というような立場から見たら、それには経済的にも効果をなすのかもわからないんですが、ただ、二十一世紀という世紀で一番忘れてはならないのは環境という問題がございます。今度、日本に一億台のテレビという廃棄物が出てくる問題もあるわけです。そういうコストも考えたときに、あえてなぜ今地上波というのをこれだけ急がなければならないのかということに関しては非常に疑問点が残るんですが、衛星デジタルの普及も含めて、もう一度副大臣にお願いしたいんです。

小坂副大臣 委員の御質問の観点は二つあると思うんですね。一つは環境問題、もう一つは、衛星があるのに地上が必要かというこの二つでございます。

 まず、環境問題について申し上げますと、テレビの耐用年数は大体十年と言われております。大体十年のサイクルで買いかえが起こる。したがって、二〇一〇年にアナログの停波をするというのは、一つの根拠がそこにあるわけでございまして、受像機の買いかえが、サイクルからして大体二〇一〇年には今のアナログテレビを買いかえる需要の最後のものが来るであろう、こういうことですね。

 それまでの間は、それではデジタル放送をどうやって受信するかといいますと、アダプターというものがくっつけられれば、これで見られるわけですね。BS放送が始まったときにも皆さんお買いになったと思うんですが。そういったアナログのテレビにつけるセットトップボックスと言われているアダプターが、たくさん需要が出れば価格が急激に低下をいたします。今一万とか二万とかするものが、二〇〇六年ごろになりますと、恐らく一万円をはるか下回って提供されるような状況になっていると思いますが、そういうことになりますと、それをつけるだけで見ることができる。

 そういったメリットがありますので、環境問題からいえば、いずれにしろ、廃棄物として出てくるものが、その耐用年数のうちにも、さらにアダプターをつければ使うことができて、なおかつ、その時点には今度はデジタルテレビ、もう最初からその規格でつくったテレビも今のテレビと同じ価格に下がっているだろうという読みがあるわけですね。そういった検討委員会での結論等も踏まえた上で踏み切る方がいいだろう、こういうことであります。

 一方、BSデジタルの方は全国あまねく同じ放送を受信できるわけです。このメリットはありますが、逆に、局地的な受信ができないというデメリットがございます。地域に密着した放送を実施するためには、どうしても地上放送でこれを行っていくことが必要でございます。また、ケーブルテレビ等あるいは光ファイバーによる放送のようなサービスが提供されるということもあると思います。しかし、放送が一括に提供できるというものと、回路を伝わって必要なものだけに送られるという今の伝送系の問題というのは、やはり放送のメリットというのは、一回上から地上波で送ればどの家庭、どこにいても同じように受信できるというメリットがありますので、この放送の必要性というのはあるだろう。

 したがって、世界の流れの中で、地上放送をデジタル化して、ほかのコンテンツ、いわゆるインターネットその他のコンテンツと合体をして、受信機で合成をすることもできるというようなデジタル化のメリットは、周波数の有効活用に加えてそのメリットを考えれば、産業の投資効果も十分にあるし、また世界の流れの中でおくれをとらない意味でも、やはり地上放送も含めてデジタル化をして、そして、すべてのメディアがデジタル化という中で一体化をしてIT革命が進んでいく、これが必要だというのが私どもの結論でございます。

山村委員 時間も限られておりますので、またこの後、電波法の問題等を含めて、副大臣とはいろいろと議論をさせていただきたいと思うのです。

 先ほども、ちらっと私も出させていただきました。大臣にお伺いしたいのですけれども、IT、e―Japan構想等、総務省の方で重点課題として進めていかなければならない部分が多々あるわけなのですけれども、その中のプライオリティーといいますか、優先順位を問うたときに、今、衛星デジタル放送、地上波のデジタル放送、そして光ファイバーケーブル、ラストワンマイルの問題であるとか、いろいろ多種多様にわたる中で、非常にわかりにくいのが優先順位、何から手をつけていいのだということが非常に見えてこない。そういう点、大臣の方のお考えはいかがなものでしょうか。

片山国務大臣 e―Japan戦略は、今月中にというか、今年度中にアクションプランである重点計画をつくろうと今、各省でやっております。これの一つは、二〇〇五年までに日本を最先端のIT国家にする。具体的には、三千万世帯は高速ネットワークのインフラの恩恵が受けられる。一千万世帯は超高速ネットワークの恩恵が受けられる。こういうことなのですね。そこで、我々は、ネットワークインフラの整備に全力を挙げようと、これは通信の方ですよね。

 放送の方は、今、小坂副大臣が言いましたように、二〇〇三年から大きいところが始まって、二〇〇六年からローカルが始まって、二〇一〇年ぐらいまでには終了しよう、こういうことですから、おのずからそこに優先順位があると思います。

 山村委員御承知のように、通信と放送は違うのですね。通信は一対一ですよね。放送は一対不特定多数で、そういう意味で、放送というのも大変重要なので、そこのところは相互乗り入れでだんだん融合してきますけれども、やはり放送と通信は違うので、全体としての投資のプライオリティーや何かがあるかもしれぬけれども、私は、同時に放送の方のデジタル化も進めていくべきだと。こういうことで、すぐデジタル化できませんから、アナ・アナをまず五年ぐらいでやらなければいかぬ。アナ・アナをやりながら、アナ・アナが終わったら、今度デジタル化を順次やっていただく。それで二〇一〇年ぐらいだと。

 それで、e―Japan戦略の方は、とにかく二〇〇五年までで今のネットワークインフラをきちっとやろう、こういうふうに考えておるわけですが、地上波のデジタルというのは、四千八百万世帯ぐらい地上ですよね。本当にデジタルの恩恵を与えるためには、やはり地上波のデジタルをやらなければしようがないと私は思うので、どうやってうまくソフトランディングをしていくかということが大きな課題ではなかろうか、こういうふうに思っております。

山村委員 どうもありがとうございます。

 まだまだ未消化の部分も非常に多いのですけれども、最後に、海老沢会長にお伺いしたいのです。

 今まで、七十三年前にラジオ放送が始まって、ラジオもテレビも普及するのに三十年ほど時間がかかったというように先日お伺いしたのですけれども、その件が一点と、あと今年度の予算で二十三億円という予算がアナ・アナ変換にあったと思うのですが、具体的にどのように使われるのかということ、その二点だけ最後にお伺いしたいと思います。

海老沢参考人 放送の普及、今先生御承知のように、ラジオは三十年、テレビも、昭和二十八年から五十八年まで、三十年の月日を要しました。今度、デジタル放送、地上はどうなるのだということで、我々もいろいろな角度から検討しております。

 そういう中で、今法案が審議されております中で、二〇一一年までにアナログ放送を停波させたいという方針を国の方が打ち出しました。私どもも、できるだけその方針に沿って努力したいと思っております。ただ、現実的にそれが達成できるかどうかは、これからの経済情勢、社会情勢によって変わってくると思いますけれども、いずれにしても、そういう方針が示された以上は、それに向かって努力しなければならぬだろうというふうに思っております。

 ただ、日本の場合は、山が多い、離島が散在しているという、地形上非常に複雑、ですから、電波が込んでいるという事情がありますので、我々の計画どおりいくかどうかは、これからの努力次第だろうと思っております。

 それと、問題は、そういう中でこれからアナ・アナ変換をやるわけでありますけれども、アナ・アナ変換は二百四十六万世帯しか対象になりません。御承知のように、地上デジタル放送をするためには、今四千七百万世帯日本にはあると言われます全世帯を、アナログからデジタルに変えるという大きな国家的事業だろうと思っております。

 そのためには視聴者国民の理解と協力がなければできない事業だということで、この地上デジタル放送の成果といいますか、メリットがどこにあるのだということをやはり十分説明し、納得をいただきたい。これからその努力をしなければならぬだろうということで、本当にこれから大変な事業に取りかかる、今そういう心境でございます。

 そういう中で、このアナ・アナ変換は国の、政府の責任と権限でやる事業でありまして、私どもはそれを後で使わせてもらうという態度であります。今度の予算で二十三億ほど送出設備についての金が入ってきますけれども、それはそのまま使うということで、NHKとしては、それをアナ・アナ変換のための送出のときに使わせてもらうという予算になっているところであります。

山村委員 どうもありがとうございました。よろしくお願いします。

御法川委員長 次に、大出彰君。

大出委員 民主党の大出彰でございます。

 本日は、参考人の皆様、御苦労さまでございます。きょうはNHKの方々だけに質問をする予定でございます。

 きょうの質問の内容は、NHKが「ETV2001」、シリーズ「戦争をどう裁くか」という放送をいたしまして、四回の放送を行ったわけです。その放送がなされた前後に、放送の前にはいろいろな意味で抗議があったりとか、放送が終わってからも取材協力関係者から抗議を受けたというような報道がなされておりまして、私は、事件といいますか、問題について、NHKの報道の自由が、あるいは企画担当者の表現の自由、NHKの編集権の独立というのが侵害をされたのではないかという観点と、もう一つは、こういう問題が起こりますと、チリングエフェクトと言いまして、萎縮効果、縮こまる効果、国民の中に議論があるような報道をすると、いろいろうるさいとか面倒くさい、そういうことがあるから、そういう企画はやめてしまおうというような効果が生じたりすると、企画に影響が出てしまうものですから、そういうことがないようにということも込めまして、受信者の皆さんのかわりにちょっと検証をさせていただきたいということで、質問をさせていただきます。

 問題が一個ですので、時系列で少ししゃべらせていただきます。

 問題となった放送が行われたのは一月二十九日から二月一日なんです。その前後でいろいろ問題がありまして、報道されておるのですが、教養番組部長あてに放送するなという団体からの抗議のファクスが送られたというのが、一月二十日にございます。その際に、プロデューサーの責任者に対して、自宅にも抗議や脅迫の電話がかかっていたという報道がございます。それから一月二十七日になると、その放送に反対の団体がNHKに抗議に来た、こういうふうになっております。

 そして、いよいよ一月二十九日に第一回の報道が行われまして、その題名が「人道に対する罪」、放送時間四十四分。一月三十日火曜日でございますが、第二回目「問われる戦時性暴力」というタイトルで、これが四十分だったのだそうです。一月三十一日、第三回「いまも続く戦時性暴力」、これも四十四分。それから二月一日、第四回「和解は可能か」という題名の放送、これも四十四分。

 それで一応放送が終わりまして、放送した後に、今度は二月六日になりまして、取材協力をしたところの団体からNHKに公開質問状の提出があった。NHKは、二月十四日が期限でしたので、第一回の回答をしているはずなのです。さらに今度は、二月十六日になりますと、出演者、取材協力者の方から申し入れ書というのが、抗議なんでしょうね、申し入れ書が送付された。実はこういう問題なんです。

 NHKというのは、私も昨年、質問をさせていただきましたが、受信者が受信料を支払って支えておるわけです。その目的というのは、NHKの放送が国や財界あるいは政治勢力から干渉されて独立性がないとすると、報道の自由や表現の自由が侵害されて、ひいては受信者の利益も害されてしまう、それを防ごうということなわけです。

 そうだとしますと、一部の政治勢力に屈したり、あるいはそれに配慮する形で自主規制したりするというようなことがあってはならないと思うわけですが、まずこの点にお答えをいただきたいと思います。

海老沢参考人 この「ETV2001」の番組につきまして、いろいろな意見が寄せられております。しかし私どもは、放送に出たものがすべてであるという立場をとっております。つまり、その制作の過程、プロセスにはいろいろな編集権の問題があります。そういう面で、私どもは一日百数十本の番組をつくり、何百本の番組を放送しております。そういう中で、視聴者に提供したものが我々の責任を持って対応する問題だろうと思っております。

 出た番組について、いろいろな意見が出てくるのは当然であります。その意見については我々は真摯に受けとめて、その中でいろいろ対応していかなければならぬと思っております。今度の問題につきましても、そういう立場をとっております。

 これは新聞でも雑誌でも、いわゆるジャーナリズムの世界ではすべて、出たものが責任を問うものであって、我々が原稿を書き、また番組をつくった場合にはいろいろな、デスクから、責任者からそれを直される、あるいはどうしてもこれは、情報が不足しているものは補足すべきだ、そして、だめなものは没になる、いろいろな編集のプロセスはどこの世界でも私はあると思います。そういう中で、この番組についても制作意図なり、公平性が保たれない、あるいはまたこういう意見も入れなければいけないのではないかと、いろいろな意見が出たと私は聞いております。編集に当たった責任者が、そういう中で公平を期して番組を放送したということであります。

 そういう面ではそれが我々はすべてであって、そういうプロセスについてああだこうだと言っては言葉が過ぎますが、いろいろな過程について、いろいろな問いがありますけれども、それについては我々はコメントする立場ではないということで、今進んでいるということであります。

 いずれにしても、私ども公共放送でありますので、できるだけ公平を期し、我々の自主性、自律性を守りながら質のいいものを出していく、その精神にはいささかも変わりありませんし、今後とも、公平公正、不偏不党の立場に立った番組づくりに努力するというのは当然であります。その方向でやっていきたいと思っております。

大出委員 ありがとうございます。

 その関連でまたお聞きをしたいのですが、ただいま、報道の自由あるいは編集権が侵害されていないのだという認識だったと思います。そこで一つお聞きいたしますが、報道によりますと、番組制作局長が大物議員に呼び出されたという報道が実は出ているんですね。こういう事実があったかどうかお答えください。

松尾参考人 番制局長がこの件で呼び出されたという事実はございません。

大出委員 もう一つは、先ほどもちょっとお話ししましたけれども、制作関係者に抗議や脅迫の電話が殺到したというんですね。抗議はいろいろな抗議があるでしょうけれども、脅迫の電話というのは穏当でございませんので、そういう場合だったらしかるべき手段をとらなければいけませんね、表現の自由の国ですから。そういう意味で、そういう事実があったのかどうか、お答えください。

松尾参考人 放送前と放送後との、中での違いはあります。

 放送前というのは、言ってみると、さまざまな意見がやや高圧的に出てくるということはいつもあります。これは紅白歌合戦でも同じです。ある歌手についてとめようと思ったら、そういう形で出てまいります。したがって、これは視聴者センターがきちっと対応して、現場にプレッシャーがかからない形というので私どもは対応しております。

 番組が終わった後、これは絶えず私ども、番組のつくり方、表現の仕方、内容等について反省すべきは反省して次のステップに向けていくわけですから、これについては約五百本近い、さまざまな形での、再放送してくれということも含めて御要望は聞いており、それはいろいろな意味で分析しながら、担当者は勉強しているということでございます。

大出委員 それではもう一つ、放送時間を短縮したと、実は批判の中で言われたりもしております。放送時間短縮というのは、問題になっているのは二回目の、一月三十日の「問われる戦時性暴力」のところなんですが、四十分になっております。いろいろな報道の中で、最初は四十三分版をつくらされて、さらに上層部の指示で四十分になったのだというようなことが書いてあるんですね。そういう問題があるのだということが言われております。

 あとはタイトルの変更もあった。最初は「日本軍による戦時性暴力」から「問われる戦時性暴力」に変わったのじゃないかというようなこととか、あるいは、取材者が加害兵士に取材をしたらしいのですが、使われていないという事実について、多分横やりが入ったのではないかと思いますが、編集権の独立という観点から、どのようなお考えでしょうか。

松尾参考人 まず放送時間の問題でございます。

 これは一つの時間帯の目標、例えば四十四分、これは決めてございます。ですが、いろいろな事情で、内容がそれだけのものを持っていないとか場合によっては延びてしまうというのは、日常茶飯で起こっております。そのときには、例えば一分の広報番組をやめたり、視聴者の方はほとんど気づいてはおられないと思いますけれども、さまざまなそういう手だてをとっていくのが編成でございます。

 したがって、今回、現場からは短いという情報を得たので、編成は、それでいいですよ、それでは、違う広報番組をそこにちょうど入れるのがあるから、どうぞその範囲で結構ですという返事をしたということが事実でございます。

 それから、タイトルでありますが、これにつきましても、私ども、毎日朝、編集会議をしておりまして、一週間のタイトル、それからその翌日のタイトル、当日のタイトルということで、各局長が全員集まって、さまざまな角度から意見を出しています。それで、その都度、やはりこれは内容をよく伝えていないな等々のことがあれば、絶えず放送ぎりぎりまで変えることは多々あります。

 したがって、この番組だけが突然変えたということでは決してありませんので、他の番組も、わかりやすい、それから内容を誤解されない、そういうことも含めての一番いいタイトルへ絶えず持っていっているというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

 以上です。

大出委員 だんだん時間がなくなってしまいました。

 この関連の中で、いわゆる放送総局長がこういうのは編集しなきゃいけないと言って指示をしたのではないかというような報道が出ておりまして、その放送総局長が取材に応じて、私ではない、こう答えているんですね。ところが、ほかの報道では、こんな番組をつくっていたとは知らなかった、しかも大事な予算の時期にと会長が発言したと実はあるんですが、このような事実があるのか、あるいはこのような指示を出したことがあるのかという点について、会長、お答えいただけますか。

海老沢参考人 そのような事実はありません。

大出委員 実は、私も周りから考えていくよりも仕方がないわけで、今みたいに答えられますと。見たわけではございませんしね。

 実は、ある本で会長がこういうことをおっしゃっているんですね。会長は早起きなようでございまして、四時に起きて、それで本当ならば六時ぐらいに出社したいらしいんですが、秘書に迷惑がかかるからもっと遅く行っているというようなことが書いてありまして、その後にこういうのがあるんですね。私は、会議の中で、疑問があればすぐ聞きますし、気になることがあると、内線電話で担当者を呼んで、徹底的に話をします、これは「NHKの知力」という本でございまして、片山修さん著と書いてありまして、小学館文庫、ページ三百四十二、会長の題は、「デジタル時代の公共放送を目指して」という中にあるんです。

 これは会長の御性格だと思うので、今回の問題が起こったときに当然のことながら何らかの指示をお出しになったのではないか、そして、当然NHK本体に編集権があるわけでございまして、そのトップでございますから、そういうことがあったのではないかと推測をしたんですが、もう一度お答えいただけますか。

海老沢参考人 私どもNHKには小休止はありません。二十四時間、放送でぶっ通し業務を展開しております。そういう中で、いろいろな問題が出てくるのはもう当然であります。私がすべてそれに応ずるわけにいきませんし、いろいろな電話もかかってきております。やはり大事なものについてはいろいろやりますけれども、この「ETV2001」の問題については、私のところにそういう情報は上がってきておりませんでした。

大出委員 会長は御指示をしていないということだと思います。

 それでは、放送が終わりまして、いわゆる取材関係者その他の方々から、出演者も含めて、抗議があったわけなんですが、それは、その人たちの考えをそのまま伝えていないことから生じたのではないかと思うんですが、その辺は会長、どのようにお考えでしょうか。

海老沢参考人 先ほども申しましたように、私どもは出た番組がすべてであって、それについてのいろいろな意見については、これを我々は真摯に受けとめにゃならぬと思います。

 そういういろいろなプロセスは当然あると思いますが、それについて、編集権にかかわる問題でもありますし、また、それぞれの業務はそれぞれの現場で責任を持ってやっているわけであります、最終責任は私にありますけれども。いずれにしても、いろいろな問題があれば、我々としては、そういう問題をきちっとクリアしながら、とにかく視聴者国民のためにいいものを出していくというのが基本でありますから、そういう方向で我々はまた指導していかにゃならぬだろうとは思います。

大出委員 ただいま私が視聴者の考えをそのまま伝えてと、そのままという言葉を使ったんですが、実はこれは、昨年十一月十六日に私が海老沢会長に質問をいたしました。そのときに会長がこのようにお答えになっているんですね。「そういう面で、我々は、先ほどからるるありますように、NHKの存立の基盤は、政治的に公平であること、」政治的公平についてのお話だったものですから、「そして中立を保つこと、そして、お互いいろいろな意見があるものはそのまま伝えて、できるだけ視聴者国民の判断の材料にするというのが基本だろうと思っております。」こうおっしゃっているものですから、基本線としては、そのままお出しをして、視聴者の皆さんに判断を仰ごうというお考えだったのだと思うんですが、先ほどの発言を変えることはございませんか。

海老沢参考人 さきに答弁したものは、そのまま受け取ってもらって結構でございます。

大出委員 もう時間がありませんので、最後にいたします。

 実は、私も、今回この問題を扱うに当たってインターネットのメールを、いわゆるウエブサイトに入りましていろいろなメールを探すと、簡単に今の時代は出てくるんですね。これに関するリアルなメール等がございまして、情報に戸は立てられないなと。ただ、その情報が正しいかどうかはわかりませんけれども、かなり当事者でなければ言えないような情報が実はあったんです。

 それはおいておきまして、その中にこういうのがありました。

 NHKに励ましを言おうと思った人もいましたし、意見を言おうと思ったらしいんですね。それで電話をしたんだそうです。そうしたところ、そういうのはメールに送ってくださいと言われたというんですね。これが大変困ったことで、インターネットをやっておられない方だっておられるわけですので、その辺についてどのような今後のお考えがあるのかを会長にお伺いしたいんです。

松尾参考人 視聴者の御意見をインターネットだけじゃなくてということだと思うので、これはNTTの深夜の録音も含めて、電話は視聴者のために全部開放してございますので、そのダイヤルをしていただければ対応するということでございます。それから、ファクスについてもPRをしておりまして、ファクスによる御意見というのも収集しております。インターネットだけではございません。

大出委員 時間になりましたので、ありがとうございました。

御法川委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。幾つかの質問を海老沢会長、時間がなくならなければ、ぜひまた大臣にもお伺いしたいと思っております。

 一つは、NHKの使命という問題があると思うんです。

 きょうも朝からの議論で、NHKが放送文化をつくる、こういう議論がありました。私は、この放送文化というものが二十世紀の人間の社会を大きく色づけることだっただろうというふうに思っております。その放送文化というものを考えたときに、確かに今議論がありますように、いろいろな、インターネットが使われたり、もしくは放送がデジタル化するという中で、新しい放送文化の時代に我々が入っていることは間違いないわけでありますが、実は、その放送文化というものも、文化を享受する一人一人がそれだけのいろいろな技術を身につけなければ、せんないものになってしまうと思うわけであります。

 通告には入っていなかったわけでありますが、先ほどからの議論を聞いていて非常に感じたことは、例えば、笑い話でありますが、私と同世代のサラリーマンが電話を買ったわけであります。iモードというのは広い画面の電話でありますが、これを買って、いじりながら人に電話しようとしたら、電話できなかったというんですよね。いじっているうちに電話できなくなっちゃったという、どういうふうなことでどうなったのかわからないけれども、笑い話みたいなものがあって、機能が非常に多様化し充実しているだけに、逆に単純な部分でもわからなくなってしまう、これはある種のデジタルデバイドというふうに言っていいのかもしれないわけであります。

 そういった意味では、私は、NHKというものが、国営放送でもなく、また民間放送でもなく、公共放送であると会長はおっしゃいましたが、その非常に重要な部分としては、公共放送であるがゆえに、NHKの使命というのは、一面においては、そういったソフトを配信する、これは大事だと思うのです。まさに戦後五十年の間、六十年ですか、大きな使命を担ってきたと思っております。もう一方においては、やはり、放送文化を享受する人たちもしくは一般の日本の国民が、新しく行われるインターネット時代を含むデジタル文化を享受し得るような啓蒙を、NHKという媒体を使って大いにやるべきではないかと私は思うのです。

 例えば、今、BSデジタルも大分普及をしているわけであります。現在三分の一弱、四分の一ぐらいですか、どれぐらいの世帯数かわかりませんが、普及していると言われているけれども、それは、デジタルデバイドにならない人たちがそれぐらいいるわけですから、すぐにそこに行く。しかし、残りの半分を超える部分の方々がそこに乗るというのは、今言ったNHKなんかが、公共放送という使命から、今言ったような多くの人たちに、こういうふうなことができるのですよと。我々は知っているとみんな思うかもしれないけれども、知らない人がたくさんいるのですよ。例えば、コピーなんというのはどこでも今使われていますが、日本の国民でコピーを使ったことのない人というのはたくさんいると思いますよ、ボタンを押せばわっと出てくるのですが。

 そういうことも含めて、こういった部分の啓蒙に関して取り組むのはNHKだと私は思う。その辺についての御所見をお伺いしたいと思います。

海老沢参考人 IT革命によってデジタル技術等も進歩してまいりました。技術革新の成果というものを視聴者国民に知らせる、こういう成果、メリットがあると言うことは、我々の使命の一つだろうと思っております。

 そういう面で、このBSデジタル放送に当たっても、私どもNHKが先導的役割ということで、いろいろなPR活動といいますか、周知を図ってきております。NHK、やり過ぎるんじゃないかと言われるほど、いろいろな面でやっております。それでもやはり、こういう多メディア・多チャンネル、情報過剰時代とも言えるほどいろいろなツールが出てきますと、それをすべての人たちに知らせることが非常に手間暇かかる時代だろうと思っています。つまり、このIT革命の光と影の部分があるとよく言われます。ですから、光の部分はありますけれども、なかなか伝わりにくくなる。いわば、選択の幅ができたために、いろいろなメディアを使って情報を提供しないと、末端まで行き届かないという時代でもあろうかと思います。

 そういう中で、我々はできるだけいろいろな伝送路、ツールを使って、そういう周知徹底といいますか、PR活動なり、デジタルの意味合いというものを伝えなければならぬだろうという認識は十分持っておりますけれども、またそういう面で努力はしておりますけれども、なかなかそういう周知徹底も大変な時代になってきたという感想を持っているところであります。

松原委員 やり過ぎるぐらいやっておられるということですから、さらにもっとやり過ぎるぐらいやっていただきたいと思うわけであります。

 実際、私が地域のいろいろな人たちと接すると、デジタル化されるということを知らない人も多いのです。するのだよということを知っている人も、では、それによってどう変わるのかというのは、まあいろいろな冊子も、我々は資料を今回いただきましたが、そういったことも含めて、十分に認識をしていないのが現状であります。

 まさに取り残された層というのは、今回BSが三分の一ぐらいだあっといく、しかしながら、残りはいつまでたってもなかなかそこに踏み込まないという、この部分が、やはり公共放送という使命からいけば、国民の三分の一だけそこに持っていけばいいという議論は、公共放送であるがゆえに、これはあってはいかぬと思うわけです。

 私は、そのためには、非常にわかりやすいキャッチフレーズなり、わかりやすい極めて単純なシンボルなり、そういったものを使って、デジタル放送がどうなるのか、そして、その中ではどういうものがあるのかということをNHKとしては啓蒙していただきたいと思うのですが、これに関して何か感想があったら、会長、お願いします。

海老沢参考人 こういうデジタル革命時代に、それの恩恵にあずからない、いわゆるデジタルデバイドといいますか、情報に格差が出たり、あるいは情報のための弱者が出ては何の意味もありませんので、我々は、できるだけ多くの視聴者国民に、デジタルのメリット、成果というものがわかるように一層努力するのが使命だと思っております。

 そういう面で、今後一層わかりやすい形でデジタルの成果というものをひとつわかってもらうように、一層努力したいと思います。

松原委員 これだけ会長の御決意を聞いたわけですから十分でありますが、私は、日本におけるデジタルデバイド、さまざまな部分があるけれども、今言った技術、そういったものについて先ほども質問がありました。テレビの、これも難しくなってきたとか、いろいろとあります。そういう中で、やはりこの部分に関しては、最低限、中にはインターネットが十分使えなくても、少なくとも公共放送についてのデジタル放送になったメリットは絶対生かせるんだ、一億人に生かせるんだ、これは最低限の防衛ラインだと私は思っているのですよ。インターネットまでいけるかどうか、それも、できればそこまでいきたいけれども。

 そういった意味で、私は、日本が一人一人のユーザー側のデジタルデバイドを解消できるかどうか、そのかぎはNHKが握っている、公共放送であるがゆえにその責任があるということを強く御認識いただき、これは全力をかけて、ほかのいろいろな議論もあるけれども、これにさらに力を入れていただきたいというふうに要望したいと思います。

 次に、アナ・アナ変換あり、またデジタルの送信設備等ありで、いろいろな設備費用等を含めて、莫大なお金がかかるわけであります。そういったお金がかかる中において、結果として、そのしわ寄せがどこにいくのか。しわ寄せがどこかにいかないというのであればそれは別ですが、私はこれが非常に心配であります。一つは、番組の制作費にしわ寄せがいってしまったら困るな、また一つは、受信料の部分でどんどんと値上げをするんだという議論になっても困るな、こう思っているわけですが、会長の御所見をお伺いいたします。

海老沢参考人 私ども公共放送は、いつの時代でもやはり番組の質が問われるだろうと思っております。

 そういう面で、番組の制作につきましても、今度の、今予算審議をいただいておりますけれども、十三年度予算の中でも、対前年比二・二%、二千百七億円を計上しております。番組制作直接経費であります。先ほど説明しましたように、事業支出の三二%を番組直接経費に充てようということであります。

 そして、事業運営費の全体の伸びは、受信料収入の伸びと同じ一・六%であります。それに比べて、番組制作費は二・二%、二千百七億円を計上しているということで、番組の質の向上を図るためにそれだけの予算をつぎ込んでいるということであります。

 それと同時に、番組の制作、質の問題というものは、やはり個性豊かで専門性を持った人材を一人でも多く育成するのが大事だと思います。そういう面で、NHKの職員はNHKの財産であると私は言っております。やはり、いい人材を育て、これにいい仕事をしてもらわなければ質のいい番組はできませんので、そういう面で、経費の面でも、また人材育成の面でも、さらに力を入れなければならないと思っています。

 そして、デジタル化するための設備施設に対する投資はだんだんふえてくると思いますけれども、経費の節減を図りながら、また、民放さんと一緒になって、鉄塔なり送信設備の経費の節減なり、あるいは共同開発によって、そういう経費をできるだけ少なくするように努力して、効率のいい設備投資をしていきたい。そういう中で、今、先生御指摘のように、番組の質は低下させないように一層努力していきたいと思っています。

松原委員 今、既に会長の御発言の中にちょっとあったわけでありますが、この中で、鉄塔というのですか、送信設備でNHKが三千五百億、民放は五千六百億、一つの推量の数字かもしれませんがございます。合わせて一兆円ということでありますが、これは、官民共用というよりは、N民共用というのですかね、NHKと民放で共用するという形で、聞くところによりますと、かなりの削減ができるというふうに聞いているわけであります。それは恐らく、やはり音頭をとるのはNHKしかないだろうというふうに思っておりますので、これが三〇%削減できるのか、五〇%削減できるのか、そういったことも含め、会長の御決意をお伺いしたいと思います。

海老沢参考人 この地上デジタル放送の設備投資につきましては、今、先生御指摘のように、NHK、民放合わせて一兆円前後の莫大な経費がかかるというふうに我々は試算しております。そういうことではお互いに経営を圧迫してしまうという危機感を持っております。

 そういう中で、去年、札幌で開かれました民放連大会の席上で、私の方から民放各社に対して、できるだけ共同建設なり、共同研究開発によって経費の削減を図っていこうということを呼びかけました。今、民放連ともそういう方向でいろいろ協力関係を強化しているところであります。一層そういう努力をしていきたいと思っております。

松原委員 今の御決意ですから、恐らく大変な削減ができるんだろう、血を流すそういう姿勢がやはりまた公共放送の一つの姿になるのかな、こんなふうに認識をしております。

 先ほどの質問の続きになりますが、ゆえに、デジタル放送文化という言葉が言われておりますが、このデジタル放送、文化でありますから、そういった技術はこれで大変に進んでいくわけであります。しかし、その技術がそこまであっても、例えば、大変なコンピューターがあっても、それを使いこなせない人というのがたくさんいるのと同じように、技術がそこまで来て、それを使いこなすだけの情報の中身が、質の高い番組をつくり得るかどうかということが大いに問われているわけであります。現在、例えば自然紀行みたいなものをハイビジョンでやろうとか、いろいろなのはありますが、いま一つ、これという胸をときめかせるようなものがまだちょっと、構想の段階でしょうから、ないような気もするわけでありますが、この部分に関しての会長の御所見をお伺いいたします。

海老沢参考人 ハイビジョンは、昭和三十九年、一九六四年の東京オリンピックのときから開発を進めてまいりました。その間、私どももいろいろな番組制作のノウハウなり技術の開発を進めて、ようやくここまで来たわけでありますけれども、まだまだ開発途上だろうと思っております。

 そういう面で、さらに技術の開発を進めると同時に、これまでの番組のいろいろなノウハウを蓄積しておりますので、その蓄積を生かしながら、そしてまたノウハウを生かしながら、質の高い番組づくりに努力しなければならぬと思っております。

 そういう面で、今、ハイビジョンのプラス面、メリットの面をさらに我々は追求しながら、それぞれの現場で、これがハイビジョンだ、これが新しい技術を生かした文化だ、そういうふうに胸を張れるような番組をさらに一本でも多くつくるよう努力していきたいと決意を新たにしておるところであります。

松原委員 最後に大臣にお伺いして終わりますが、地上デジタル放送懇談会の報告書によれば、十年間で約二百十二兆の経済波及効果がある、そして七百十一万人の雇用創出効果を生むとされております、根拠はまた別の機会に聞くといたしまして。

 仮にそうなる場合には、私が先ほど会長に申し上げたように、結局、ユーザー側のそれだけのポテンシャルを高める、要はデジタルデバイドをなくしていくということが絶対必要なことでありますし、もう一方においては、情報の中身がそれなりのものになる、これは局の中でまた議論することかもしれません。しかしながら、今言った、ユーザーがそれだけのものに、例えばBSをやっても、三分の一はすぐついてくるけれども、残りの半分はなかなかついてこられない、こういう部分に関して、公共放送のNHKは、今、会長は決意を表明なさいましたが、これについて、総務大臣としての強い決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

片山国務大臣 松原委員が言われましたように、デジタル化が進んでも、それをみんなが利用せにゃだめですね。

 そこで、今本当に、パソコンなんかを見ましても、お年寄りの方が多いのですよ、IT講習なんかを見に行きますと。お年寄りと専業主婦の方が多いと思いますよ。そこでマウスを持ってクリックを大変苦労されてやっているのを見ると、やはりそういう機器の開発をやって、例えばワンタッチでいろいろなことができる、そのうち音声でできる、そういうふうなことも考えなければいかぬと私は思いますし、そういう意味での情報バリアフリーというのを大いにやらなければいかぬと思いますね。

 それから、そういうことを含めまして、デジタルデバイドそのものを地域的にも全部解消していくことが必要だと思いまして、今、私の方でIT有識者会議をつくりまして、その問題を中心に議論してもらっているのですよ。海老沢会長もその一員でございまして、できるだけ盛れるものはアクションプランの中に盛り込んでいきたい、こういうふうに思っておりますから、ぜひひとつよろしくお願いいたしたいと思います。

松原委員 終わります。

御法川委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十一分開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中村哲治君。

中村(哲)委員 盛り上がった本会議の後ですから頑張っていこうと思います。民主党・無所属クラブ、中村哲治です。

 さて、午前に引き続きまして、質問させていただきます。私は、きょうは地上波デジタルの移行についての質問をさせていただきます。

 地上波放送について、政府の方針としては、アナログからデジタルへの切りかえというのは放送事業者の方でやっていただく、そういう方針だと聞いております。つまり、総務省の方針でNHKが、二〇〇三年から三大都市圏、大阪、名古屋、東京、そして、二〇〇六年からは全国で地上波のデジタル放送をしなくてはならないということだと私は認識しております。

 しかし、どうもお話を伺っていると、NHKの皆さんとしては、BSデジタルの契約を千日で一千万件という目標を達成しなくてはならない、だから、人材や資金などの経営リソースというものをBSデジタルに集中したいとお考えになっているのが私は本音だと思うんです。

 しかし、先日、海老沢会長からお話を伺いました。いや、国の押しつけではありません、一緒にやっていこうという話ですというお話でした。しかし、一方で、先ほど山村委員への御答弁にもありましたように、そのときにお話しになられましたのは、ラジオの普及も三十年かかりました、そしてテレビの普及も三十年かかりました、今度地上波デジタルを二〇一一年まで十年でやるというと、並大抵のことではない、だから、何らかの地方振興策というものが必要じゃないかというお話だったと私は認識しておるんですね。

 そこで、海老沢会長に改めてこの場で伺いたいのですけれども、今、私が申し上げたこの内容でよろしいのかどうか、そして、それを前提として、何らかの地方振興策として具体的にどういうものをお考えになられているのか、その二点、お聞きいたします。

海老沢参考人 今委員から指摘がありましたけれども、ラジオ、テレビとも三十年の月日を要して全国に普及したという歴史を持っております。そういう中で、地上デジタル放送をやる場合には、これから十年でやらなきゃならぬということになりますと、非常にこれは常識で考えても大変な作業であることは言うまでもありません。

 今、この国会に電波法の改正案が提出され、審議されております。これが成立しますと、二〇一一年にはアナログからデジタルに完全に転換するということになります。私どもは、そういう法律ができ上がりますれば、これに向けてNHK、民放とも最大の努力をしなきゃならぬということは言うまでもありません。

 ただ、やはり、世の中計画どおりいくかどうかは、歴史が示すように難しい面もあります。しかし、そういう法律ができた以上は、それに向かって努力をするよう、さらにいろいろな面での準備を進めたいというふうに思っております。

 御承知のように、この四千七百万世帯を全部やるということは非常に大変、つまり、日本は、先ほど申しましたように、山間辺地が非常に多い、そして、離島もたくさんあるということになりますと、これも都市と違って非常に経費がかかることは言うまでもありません。私どもの資金力だけで十分これが達成できるかどうかは非常に難しい面もあろうかと思います。

 そういう面で、それがうまくいけばいいんですけれども、経済の変動等によってできなければ、やはり何らかの措置、いわゆる地方を振興させるというような意味合いを含めて何らかの措置が必要になるのではなかろうかという、今、漠然とした一つの考えといいますか、それを持っているということを述べたわけであります。

 いずれにしても、我々はあくまでもやはり目標がなければ前に進みませんので、目標に向かって着実に進めていきたいというのが今の私の気持ちでございます。

中村(哲)委員 非常にわかりやすい答弁をしていただきましてありがとうございました。

 私なりにまとめさせていただくと、二〇一一年までNHKとしては最大の努力をしていく、国家の目標に向かって最大限の努力をしていくけれども、自分たちの資金ではそれが最終的にできるかどうかわからない、だから、そのときには何らかの措置を考えてほしいというのが、今の会長の、私なりに受け取った内容です。

 しかし、それを前提としますと、総務省様の今の方針とはちょっと違うような気がしますよね。大臣、この点についてどのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 今、海老沢会長からお話しのように、今回、この国会に電波法の改正案を出させていただいておりますけれども、それは、今言いましたように、二〇一〇年までにデジタル移行を完了させたい、こういうことであの法案の中身ができているわけでありまして、我々はそういうことでやっていきたい。

 こういう考え方をまとめますまでには、NHKを含めまして民放、総務省と三者の相談の場をつくりまして、どうだろうかということを相談しての上の結論であるわけでありますが、とりあえずはアナ・アナをしっかりやる、それから、デジタルの方の投資に移っていく、こういうことでございます。

 NHKさんは特殊法人ですから、一番体力もある、技術的にも一番すぐれている、こういうことなんでしょうが、例えばローカル局やなんかはデジタル投資が大変だという話は、私も公式、非公式に耳にいたしますので、何らかの対応ということは既に言われております。だから、もう少し様子を見ながら、何らかのいい知恵が出るのかどうか、こういうことでございますが、いずれにせよ、NHKさんには全体の機関車として先導的に引っ張っていっていただきたい、こう思っておりますので、海老沢会長初めNHKの皆さんとは十分意見交換してまいりたい、こういうように思っております。

中村(哲)委員 いつものわかりやすい大臣の答弁とはちょっと違うような気がするんですよね。措置が必要になるかもしれないと、大臣の今の答弁では、そういう声も聞いているけれども、頑張っていくという、そこまでだと思うんですよ。

 措置が必要だという現実問題が起きたときに、いや、もうそれは民間業者なりNHKでやってもらうんだ、公的資金は投入しないんだというお考えなのか、いや、やはりそういうときには措置が必要になるよねとお感じになっているのか、どちらでしょうか、お答えください。

片山国務大臣 まあ、これは、今回のデジタル化移行は順序がありますから、まず我々は五年かかってきっちりアナ・アナ変換をやりたい。それからデジタルに入るわけで、まだ相当のロングスパンですから、その間に、状況を見ながら私は考えていきたい。今必ず何らかの対応をとるということも言えないし、全くとりません、こういうことも言えないと思います。

中村(哲)委員 状況を見ながら変えていくということですから、それは措置をする可能性があるということだと受け取っていいのですね。

片山国務大臣 いや、可能性が何かということですけれども、今の段階では決めていない、今の段階では、今までのやり方のように頑張っていただく、こういうことでございますけれども、状況の変化に応じて対応は変えていくというのがあれですが、ラジオやテレビは三十年かかったかもしれませんが、中村委員、最近はドッグイヤーですから、やはり十年ぐらいでということは一つの考え方で、関係の方の御同意も得ておりますから、そういう中で、今あなたみたいに、右か左かどっちかと言われてもなかなか、真理は中間にありとひとつお考え賜りたいと思います。

中村(哲)委員 私は、右か左かどっちかやといっていることを聞いているわけじゃないのですよ。最終的に、もしそうなった場合に、措置をすることがあり得るのかどうかということをお聞きしているのです。もう一度お答えください。

片山国務大臣 委員のお気持ちはよくわかりますので、状況を見ながら、よく検討して結論を出したいと。

中村(哲)委員 状況を見ながら検討するということは、措置の可能性があると言っているのと私は一緒やと思いますけれども、その点についてどうお考えでしょうか。

片山国務大臣 同じことをお答えして恐縮になりますけれども、前後の状況で御勘案賜りますようにお願いします、賢明なる委員として。

中村(哲)委員 では、次の関連した質問に移らせていただきます。

 今までの御答弁の方針から聞いておりますと、今後、市場に出てくるテレビというのは、アナログとデジタルの両方の受信機能を持ったテレビが主流になってくると思います。少なくとも、二〇〇三年から二〇〇六年、三大都市圏は始まって全国にはまだ始まらない、その移行期にはそういうことになることは明らかでしょう。

 そうすると、なぜ国はアナログの廃止を急ぐのかなという疑問が出てくるわけです。国策として一律に推進していくというのではなく、地上波放送をデジタルにするかどうかというのは、各放送局に地域ごとで任せたらいかがでしょうか。デジタル化を選択するところは、デジタル化に伴うすばらしいサービスを提供できることになるわけです。一方、設備投資が大変だからアナログでやるというところも、それはそれでいいじゃないですか。そして、国全体として、デジタル化したところから周波数を有効に利用していく、そういうふうな段階を踏んだ移行措置というのがあった方がいいと思うのですよ。

 大臣はさっき私に、右か左かじゃない、中間をとった方がいいとおっしゃいましたけれども、まさに私は今回そのことを言わせていただきたい。二〇一一年にぱんとやめてしまうようなことをせずに、段階を踏んだ措置を考えてもいいのじゃないでしょうか。その点について、海老沢会長と大臣と、お答えください。よろしくお願いします。大臣にお願いします。

小坂副大臣 ぜひとも大臣に答えていただきたいところもあるのですが、私の方から、若干これは技術的な問題もかんできてしまうと思うのですね。委員のお考えとして、物の考え方としては、そういう考え方が確かにあると思うのです。

 しかしながら、デジタル化におきましては、放送局の電波はどういうふうに出てくるかといいますと、放送局の本体から出る電波だけでなく、中継局というのが、あちこちにアンテナが立つわけですね。その中継局が、アナログの場合には全部周波数が違います。ですから、放送局がそれぞれ独自に、デジタル化をいつやるかというのをばらばらに決めますと、実際には周波数がいろいろなところで占有されてしまいまして、この帯域を全部あけようと思っても、虫食い状態になってしまう。それで、アナログの電波が残っているところは幅を広くとってしまいますので、その周辺部分でデジタル化というのはなかなかできなくなってしまいます。そういうことから、デジタル化を志向するのであれば一斉にやらないと、電波の空きチャンネルを確保することはできないのですね。それが一つの理由として、一斉にやっていただかなきゃいけないということにもなります。

 それから、地上波のデジタル放送を実施するメリットは、電波の有効活用と同時に、先ほども別の委員の方に申し上げましたけれども、デジタル化の信号によって、インターネットあるいはデジタルBS放送、そういったほかのメディアとの融合が図れるようになる。いわゆる通信と放送の融合と言われるように、その信号の内容の、コンテンツの相互乗り入れがしやすくなるわけですね。そういうことによって、電話も将来また、デジタルの電話にどんどん変わってくるかもしれない、今もほとんど変わっておりますけれども。携帯のデジタルですね。

 そういうようなことで、全部融合できるというメリットがありますので、そういった意味で、ぜひとも地上波は一斉にデジタル化をして、そのメリットを享受したい。それが国民全体の利益につながることだ。そういうことで私どもは考えております。

海老沢参考人 私どもとしては、公共放送として全国あまねく情報が行き渡るようにするのが使命でありますので、そういう面で、情報に格差がないようにする意味合いからも、できるだけ早くやりたい。それが我々の使命だと思っておりますので、始めた以上は、今全国五十四の放送局がありますけれども、できるだけ早く円滑に普及をさせたい、そういう方針で臨みたいと思っております。

中村(哲)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、この続きは電波法のときにやらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、山井和則君。

山井委員 民主党の山井和則でございます。

 まず、海老沢会長を初め参考人の方々に、お忙しい中、お越しをいただいたことに心より御礼申し上げます。また、社会をよくするために、そのよりどころとなる公共放送として、日々社会的価値のある番組をつくっていただいておりますNHKさんにも御礼申し上げます。そのようなNHKファンの一人として、今後もよりよい番組をつくっていただくために、やはり健全な公共放送というのは、健全な放送労働あるいは放送労働環境から生まれるというような思いで、以下四つ、十五分で欲張りなんですが、質問をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、NHKに働く方々の労働条件についてであります。

 私は昔、大学の講師で福祉を教えておりましたので、「あすの福祉」を初めとする幾つかの福祉の番組に出演をさせてもらったことがあります。その関係で、多くの福祉担当のディレクターさんと親交があるのですが、非常に気になりますのは、そのディレクターさんの中で体を壊される方が非常に多い。あるときも、私も出演させてもらった番組を、三日徹夜で編集作業とかをされたそうです。その後、続いてまた仕事をされて、新たな取材先で倒れて、そのまま即入院になったという話も聞きました。あの方、それから連絡がないけれども、どうしていたのかなと思ったら、入院していましたというわけですね。また、私の知り合いの、NHKに勤めるお父さんを持つ娘さんのお話では、子供のころからお父さんと遊んでもらった思い出がほとんどないということをおっしゃっておられました。

 そういう意味では、例えば三日徹夜をすれば二日丸々休むとか、やはり優しい労働環境をつくっていく必要があると思います。確かに、ある程度の業務の効率化ということは、私も必要であるとは認めますが、それによって体を壊して、いい仕事ができなくなってしまっては困ります。昭和五十八年には一万六千人だった職員が、今では一万二千人に減り、これから一万一千人体制になっていくと聞いております。一方で、衛星放送、ハイビジョン放送等、放送の波、仕事量は拡大する一方であります。

 放送労働の特徴というのは、やり出せば切りがない、緊急事態もある。そういうことで、本当にどうしても、気がつけば体を壊してしまう部分があると思います。実際、NHKの方の年間労働時間は二千七十九時間を超え、一般の千八百四十八時間よりも二百時間以上も長いわけです。これについては、放送労働は長時間でやむを得ないという意見もあります。しかし、疲れ切って自分の時間も持てない、家庭も大事にできないというのであれば、放送労働者はよい仕事もできないのではないでしょうか。これから生活感のある、人間を大切にする番組をつくってもらう上でも、そのような労働条件の向上が必要だと思います。

 御答弁をお願いいたします。

山田参考人 お答えします。

 先生御指摘の制作、放送現場につきましては、放送事業者ということで、一定の時間外勤務などが発生することについてはやむを得ないんじゃないかという気がしますけれども、NHKとしても、休日の確保、休暇の取得などめり張りのついた勤務をするようにということで、一生懸命指導なりをしているところでございます。

 それから、全体的な労働時間の短縮という社会動向も踏まえつつ、平成五年度から業務の仕組みあるいは仕事の進め方の改革に取り組んでいるところでありますが、今後ともよりよい職場環境の整備に努めてまいろうというふうに思っております。

山井委員 放送業務だから長時間は仕方がないというのは、ある意味で言いわけにすぎないと思います。やはり、時代に先駆けて、公共性の強いNHKさんにその辺、率先垂範をしていただきたいと思います。

 そのような過重な労働環境の被害を一番受けているのが女性の方だと私は思います。

 実際、現時点においては、トータル一万二千四百六十一人のお勤めになっている方の中で女性が千百三十五人、九・一%、十人に一人にも満たないわけです。そして、大学卒の新規採用を見てみますと、三百十人に対して女性の方は六十三人と二割です。これからNHKさんも命を大切にする番組をふやしていくということを聞いておりますが、やはり生活感のある女性が、もちろん、男性も含めて、働きやすい環境が必要だと思っております。ぜひ女性の方の採用というのを二割から三割にふやしていただきたいと思います。

 しかし、幾ら採用をふやしても、途中でやめてしまっては意味がありません。私の知り合いの女性の方でも、NHKに勤めておられる方で、結婚のことや子育てのことで悩んでおられる方が非常に多くおられます。ところが、実際、女性の比率を見てみますと、管理職では二・四%、役員さんに至っては一人も女性がおられません。経営陣に一人も女性がいない状況では、幾ら女性に働きやすい職場をつくるということを言っても、できないのではないでしょうか。

 具体的に、役員さんに女性を入れる計画があるのか、女性の採用をふやす方向があるのか、あるいは働きやすい環境、仕事を続けることができるようにするために何をしているのか、お答えください。

海老沢参考人 女性の採用につきましては、年々ふやしていく方向へ今来ております。今お話にありましたように、全体では千人ちょっと、九・一%でありますけれども、今、新しい採用者については二〇%を超えようと。そして、今御指摘のように、二〇%を三〇%にふやす方向で採用しようと思っております。

 御承知のように、我々放送事業者というものは、番組をつくる、ニュースを取材、送出する、ある面ではいわゆる創造的な仕事をしております。そういう面で、職場によってはかなりの時間差がありますし、二十四時間放送しているために、労働条件的にいろいろな差が出てきております。そういう中で過重な労働があるのではなかろうかという指摘もありますけれども、できるだけやはり我々は、人材が宝でありますし、いい人材を育成しない限りはいい番組はできません、やはり健全な肉体でなければ健全な精神で仕事ができませんものですから、そういう面では、十分御指摘の点は配慮しながら、職場環境を改善しながらやっていきたいと思っております。

 私ども、女性の処遇につきましては、前にもNHKは、女性にとっては最も働きやすい職場として表彰されたこともあります。そういう面で、女性の昇進とか処遇につきましては、私は、ほかの企業と比べて見劣りするといいますか、最先端をいっていると思っております。今のところ、まだ女性の役員が一人もおりませんけれども、これから役員になる女性も出てくるだろうと私は期待しております。できるだけ男女の格差とかそういうものがないように努力しておりますし、もちろん、女性がふえて多彩な番組ができるように、さらに努力していきたいと思っております。

山井委員 会長さんから前向きな答弁をいただきまして、非常にうれしく思っておりますが、男女共同参画社会、二十一世紀のモデルとなる取り組みを期待したいと思っております。

 もう一つ厳しい御指摘をさせていただいて恐縮なんですが、「あすの福祉」など福祉の番組、私もNHKさんであるたびにビデオに撮って、非常に参考にさせていただいております。そのような福祉の世論形成でもリーダー役を果たしておられるNHKさん、残念ながら、調べてみますと、国が定めた障害者の法定の雇用率を満たしておられないわけなんです。何か私も非常にショックを受けました。民間の雇用率が一・八%、しかし、残念ながら一・七三%で、つまり、数でいいますと、二百四十二人雇わないとだめなところが、二百三十二人と十人足りないわけです。

 しかし、実際に、これは民間だったら一・八%なんですが、本当はこれ、公的機関だったら二・一%という基準があるんです。私は、やはり公共放送という役割から考えても、ぜひとも二・一%、つまり、二百八十二人雇っていただくということを一日も早く実現していただきたいと思っております。

 このことに関して、言い方はきついかもしれませんが、福祉の番組で福祉の世論をリードしながら、自分のところの法人は障害者は十分雇いませんよというのでは、言行不一致じゃないかということを言われても仕方ないのではないでしょうか。御答弁をお願いいたします。

山田参考人 御指摘の点については、NHKとしてもよくわかっております。障害のある方の雇用につきましては、先ほど先生が御指摘されたように一・七三%、二百三十二人にとどまっております。

 ただ、平成十年七月からNHKに適用される法定雇用率が一・六%から一・八%に上がりまして、公共放送事業者として、この法律の改正の趣旨を十分踏まえて、引き続き最大限の努力をしていく考えでございます。どうかよろしくお願いします。

山井委員 引き続き努力はお願いしたいんですが、毎年このようなことが取り上げられて、そのまま放置されるというのでは、やはり公共放送とは一体何なのかということになると思いますので、同じような質問が今後、毎年続かないように、ぜひともお願いしたいと思います。

 四つ目の質問でありますが、今回の事業計画の中に障害者や高齢者に優しい放送ということが書いてありますが、私は、その中にぜひとも外国人、特に英語圏以外の外国人にも優しい放送を心がけていただきたいと思います。

 実際、今回調べてみましたら、英語以外では放送としてラジオしかないんですね。外国語のニュースでは、ラジオの第二放送でポルトガル語、ハングル語、中国語ニュースがありますが、テレビにはありません。昨今、多くの若い留学生が中国や韓国、アジアの国々から来ているわけですから、やはりそのような英語圏以外の外国人の方々にも優しい番組というのを実現していただきたいと思います。そのことについて、御答弁をお願いいたします。

松尾参考人 先生御指摘のように、ラジオでは第二放送で四カ国語によるニュースをお伝えしています。BS1、世界のニュースというのが、BS1はほとんど世界からのニュースを発信しているわけですが、これは二カ国語でやっておりまして、日本語と現地語を同時に流しております。

 したがって、映像では、BS1の、世界から流れてくる、これは大体アジアで八カ国ぐらい、アメリカ、ヨーロッパを含めますと、十四、五カ国のニュースを絶えず、ニュース時間として放送しております。これを御利用いただくということにさせていただいて、今現在でも二カ国語の英語ニュースは万全ではございません。大変お金がかかるということが一方にございます。したがって、この二カ国語による英語ニュースの充実というところに当面、的を絞らせていただきたいというふうに思っております。

山井委員 そういう意味では、これから高齢社会とともに国際化社会でありますので、そのような、だれにでも優しいNHK番組ということを心がけていただきたいと思います。

 そして、今回、私がこのような労働条件や障害者雇用の問題を取り上げさせていただいたのは、あくまでもNHKさんが日本の法人の一つのモデルとなっていただきたい、IT産業のまたリーダー、モデルとなっておられる法人さんがそういう状況ではよくないと思ったからであります。

 最後に、監督官庁の片山大臣、このようなことについて、一言御意見をお伺いできればと思います。

片山国務大臣 委員からいろいろ重要な点の御指摘がありまして、NHK側の答弁も大変前向きで誠意があると私は思いますので、今後とも、我々も関係するところとして、十分見守っていきたいと思います。

山井委員 どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、武正公一君。

武正委員 それでは、順次御質問をさせていただきます。

 過日、NHKと全民放テレビ局により運営されている財団法人放送番組センターが運営する、昨年十月、横浜にオープンした放送ライブラリーを見てまいりました。DVD四千四百十枚をストックできる自動送出カートと、百時間容量のVODサーバーを連動させたものであり、導入したDVD、デジタルビデオディスクは、運用効率がよく、ランダムアクセスが可能で巻き戻しが不要、高画質で劣化がほとんどなく、サイズもコンパクトでスペース効率がよいと放送ライブラリーさんのパンフレットに出ておりました。また、大阪の放送ライブラリー、先ほど同僚委員から提言もありましたが、大阪の方とギガネットワークで結びまして、伝送によって番組を瞬時に送ることで現地で、大阪で見られるということもやっておられるということでありました。

 現在、放送ライブラリーは、六千五百タイトルを保存、うちDVD化したものは二千本であります。一本DVD化するのに、著作権の処理料も含めると六万円から八万円、SVHSを同じように処理するのが八万円から十万円ということで、費用も安いということがあります。ただ、そうはいっても、六万円から八万円でありますし、さまざまな権利処理で要する時間もかかりますということで、年間に五百本のペースでDVD化しているというお話でございました。

 フランスでは、INA、国立視聴覚研究所が百万本以上のテレビ番組を保存、アメリカのテレビ・ラジオ博物館では十万件の番組、これはラジオを合わせてでありますが、というようなことで、欧米で大変映像ソフトの保存、活用並びに公開ということを進めているわけでございます。

 そういった観点から、また今回、NHKさんが川口アーカイブスということで事業を進められるにつきましては、今の映像ソフトの保存、活用、公開という観点から、大変歓迎すべきものと考えるところであります。

 私も埼玉出身でありますので、県議会当時からこの事業についていろいろと関心を持っておりましたところでありますが、当時そのお話が出たときに、やはりデジタルと言われてもなかなかまだぴんとこなかったのが、デジタルとはこういうものなのかな、どういう形で、相互利用だったり、読み出しが可能だったり、保存のスペースが要らなかったりとか、だんだんわかってはきているのですが、まだまだ未知なところが多々あるのかなというふうに思っております。

 そういった意味で、川口では、ビデオテープで百八十万本収容能力があるということでございますが、公開用は三千本足らずということでございます。これはやはりもっともっと多くしてほしいというふうに切実に思うわけでありますが、まずこれが第一点。

 それと、保存を含めて、デジタルといってもビデオテープで行うということが、このビデオアーカイブス、NHKさんの方針だそうでございますが、これはやはり横浜の例を見習うまでもなく、素人考えでありますが、DVD化の方がスペースも要らないし、いろいろなこれからの利活用を考えたときに、こちらの方がいいのではないかなというふうに思うわけですね。もしこれができれば、先ほどの横浜の放送ライブラリーとの相互連携も可能であるということでございますが、これについて御答弁をお願いしたいのです。

松尾参考人 先生御指摘のように、NHKに今、百五十五万本に及ぶテープがあります。この中に、もう既にデジタル化されたテープ、言ってみればそのままデジタルとして収録されているテープが十五万本ございます。この中で、アナログであったものを徐々にデジタルに変えていくという作業を一方ではやっております。これからの収録は全部デジタルになっておりますので、自動的にデジタルになる。

 それで、公開できる三千本、これがもっと数がふえないかということでございますが、公開というものにはいろいろな種類がございまして、一般公開、要するに、ホール等で見せるためには、それなりの権利処理をきちっとしておかなければなりません。そういうことも含めて、今現在アーカイブスができる二〇〇三年の二月に向けて、三千本のソフトを用意しておるということでございます。

 それから、二点目のDVDでございますが、それは確かにDVDで保存することも大変重要なのでありますけれども、原テープというのは普通のVTRテープでございますから、このテープをまず保管いたします。そして、閲覧する場合に一番いいのが、先生の御指摘のようにDVDでございます。したがって、保存そのものはビデオでいたしますけれども、閲覧をする分についてはDVD、またはそれよりもさらにいい技術がもう開発されておりまして、ハードディスクというさらに容量が大きいディスクが開発されております。二〇〇三年までにその一番いいハードディスクを使用して、検索しやすい状況も一方にはつくっていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

武正委員 ビデオテープは劣化をするということでDVDの優位性が指摘をされているわけでありますので、ハードディスクを利用してというお話でありましたが、では、全部ハードディスクにぶち込んで原テープは劣化してもいいのかということがございますので、やはり保存もDVDでやるべきではないか。まして、これから公開という方向にいきますので、公開に向けて、デジタルビデオテープにしてからまたDVDにすると二度手間になりますから、もし原テープをデジタル化するのであれば、最初からDVD化した方がいいのではないか、これは私からの意見でございます。

 そして、今、権利処理についてお話がございましたが、INAでは三年で所有権は譲渡されるようになっておりまして、日本の著作権法では五十年たたないと権利は失効しないということでありますが、映像の二次使用に、著作権処理に大変な労力を要す。ただ、映像文化の記録、保存、例えば、限定した公開などに限って言えば、何かこの権利処理をもうちょっと簡単にできないのかなというふうに思うわけであります。これについて、大臣の方の御所見をお伺いしたいのでございます。

小坂副大臣 放送に使用したコンテンツあるいは映画のようなコンテンツ、こういったものの二次利用は、今後のデジタルによるコンテンツ流通の上で大変重要な課題でございます。

 そこで問題になってくるのが、御指摘の著作権を初めとした権利処理でございますけれども、今、総務省の方でこのコンテンツの流通に向けた研究会を立ち上げておりまして、どのような形でやれば権利処理が一番うまくいくのかという仕組みを考えて、著作権者、著作権団体あるいは著作権の所在を示す、デジタル的に処理をしてそれをコピーすると、その著作権の所在が明らかになるようなマーキングの技術とか、そういうものをあわせて今、研究中でございまして、御指摘のような迅速な処理を目指して私どもも研究中でございますので、お時間をいただく中で処理をしていきたいと思っております。

 また、放送事業者も、新たな二次利用を含めて、新しい番組制作に当たっては出演者あるいは原作者等に著作権のそういった処理も含めた契約書をつくって、二次利用がしやすい体制を整えている、このように理解しております。

武正委員 文化庁の方に聞きましたら、例えば研究のための公開ということでありますが、記録保存所における保存を認める趣旨からして、学術研究を目的とする部外者の求めに応じ一時的固定物を再生、視聴させることは、権利者の許諾を受けなくても可能との見解もある。これは文化庁の方の見解でありますが、まあ研究用ということでありますけれども、いろいろと工夫が可能ではないかなということですので、ぜひ積極的なお取り組みをお願いします。

 さて、次に話題を移しますが、今月十日にNHKスペシャル「原潜衝突の謎 徹底検証・ハワイ査問会議」ということで放映がございました。私もつぶさに拝見をし、大変感銘深く見た次第でございます。

 過去幾つかの交通上の大規模事故に関するNHKの検証番組を探してみますと、大体、日航機なり「なだしお」なり信楽高原鉄道あるいは昨年の日比谷線、いずれもが、事故が起きたらすぐに、NスペかNHK特集などで番組がある。大変機敏に報道されているということで、大変効果があるなというふうに思っているわけですね。

 問題は、その後の中間報告、あるいは事故の報告ということでの二回目、三回目といったところの取り組みでございまして、私がこの三月十日の原潜のことを取り上げたのは、これは二回目なんですね。二月十三日に「クローズアップ現代」であって、今回二回目、わずか一カ月間ですぐまた中間で報告をいただいている。過去の例を見ますと、先ほどの「なだしお」あるいはまた信楽高原鉄道、そして昨年の日比谷線、いずれもその場で一回やって、その後はそういった特集番組はなかったわけです。昭和六十年の日航機は、やはり、その後二回目が四カ月後、そしてまた平成六年ということで三回目がありました。

 私は、こういった交通上の大規模事故は、その再発防止の観点から、あるいはこの痛ましい事故を国民の皆さんが風化させないように、そういった意味では、なぜ事故が起きたのか、しばらくたってからその検証なり、新しい事実が発覚した時点でNHKとしてそれを放映するということは大変な効果があるというふうに考えるわけでございますが、海老沢会長にこの点について御所見をお伺いします。

海老沢参考人 本当に痛ましい事件、事故が続いております。そういう面で、再発防止に役立つような番組をつくるのも我々の使命だと思っております。

 今度のアメリカの原子力潜水艦との衝突事故、我々もこれは非常に大変な事故だという認識のもとに、特派員あるいは番組制作者を現地に派遣しております。そういう中で、この原因究明につきましては、いろいろな角度から取り上げるということで、二回ほど取り上げたわけであります。引き続きフォローもしております。

 また、節目節目には、事故の原因なり背景なり、これからの対応なりについて検証的な番組をさらに強化していきたいと思っておりますし、また、いろいろな面で我々は、国民の生命財産を守るという放送の推進をライフラインとして持っていると思います。できるだけ災害防止とか、大事件、大事故の再発防止についても、いろいろな面で予防的な番組もつくらなければならぬだろうと思っております。いずれにしても、検証番組につきましては引き続き努力していきたいと思っております。

武正委員 これについては、今回やはりアメリカの報道がかなり細かくやられている、あるいはアメリカのNTSBが絶えず情報公開、これがかなり番組制作に寄与しているのかなというふうに拝察するわけです。

 時間も限られておりますので、最後の質問とさせていただきますが、地上波デジタルに関しましては、東京、名古屋そして大阪と、それぞれ二〇〇三年、三大広域圏で本放送開始ということでございまして、私は埼玉でございますので、東京圏について話を絞ります。いわゆる東京タワーの代替ということで、埼玉タワーを初めいろいろと今までお話がございました。そういった中で、この二〇〇三年に向けて、地上波デジタルに関してのタワーの構想、あるいは、やがて新しいものに建てかえるというのであれば、どんなスケジュールになっているのか。

 これは、まず大臣の方からよろしくお願いいたします。

片山国務大臣 私もこの前、大宮と浦和と与野が合併するという話もありまして、知事さんのお招きでちょっと行ってまいりましたが、そのときお話は聞きました。

 基本的には、今、武正委員が言われたタワーの話は民間事業者の方が一義的にはどうやるかという話であろう、こういうふうに私は思っておりますが、関心だけは持ちまして状況を見守りたい、こういうふうに思っております。

武正委員 では、最後でございますが、放送事業者として、海老沢会長、この点について御所見をお伺いしたいと思います。

海老沢参考人 地上デジタル放送を立ち上げるためには、やはりそれだけの鉄塔といいますか、施設が必要であります。そういう面で今、技術的にどこが一番適当なのか、NHK、民放あわせて検討していると聞いております。これはあくまでもやはり技術的な視点から考えるべきものだろうと思っております。

 そういう中で、いろいろな案が出ていることは私も承知しております。埼玉なり多摩なり、あるいは新宿とか秋葉原とか、いろいろありますけれども、どれが一番適当なのか、技術的な面を含めて今検討しておりますので、その技術的な検討を私は待っているところであります。

 いずれにしても、だんだん時間が切迫してきておりますので、できるだけ早く技術的な結論を得たいと思っているところであります。

武正委員 これで終わります。どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、若松謙維君。

若松委員 公明党の若松謙維です。私は、NHKの業務内容、受信料の透明性の確保について質問をさせていただきます。

 まず、NHKを含むいわゆる特殊法人改革につきましては、政府として、昨年の十二月一日に、行政改革大綱というものに、いわゆる特殊法人すべて、今後、整理合理化計画を策定して事業及び経営形態について講ずべき措置を定める、こう決められました。

 そこで、NHKについてですが、今の経営形態は恐らく維持していく方向で検討を進められると聞いているわけですが、国民に広く負担を求めるいわゆる受信料、この受信料によって財源を賄う以上、国民視聴者の理解を得られるように、受信料の使い道や業務内容について透明性がしっかり確保されることが必要であろうと思います。さらには、一層の効率的な経営に努めることも重要だと考えます。

 また、さらに関連して、視聴者の放送に対するニーズや、そもそもNHKを国民が必要としているかどうか、こういった点も含めて、国民の意向調査とかパブリックオピニオンといったことを求める試みも行っていると聞いているのですけれども、今どういう状況になっているのか、NHKの取り組みをお伺いいたします。

海老沢参考人 受信料制度で運営されている私どもNHKといたしましては、やはり視聴者国民との信頼関係がなければ成り立ちません。そういう面で、できるだけ我々の業務内容、経営の実態というものを国民にわかりやすく知らせるのが我々の義務だろうと思っております。

 そういう意味で、情報公開指針というものを去年の暮れにつくりました。そして、私ども、自主的に、そういう情報公開の基準に基づいて、ことしの七月一日から情報公開に踏み出すということを決断いたしました。できるだけオープンな形、開かれた形、つまり、透明度をますます増していこう、そういう姿勢で情報公開に踏み切ったわけであります。現在でも、業務報告書なり経営委員会の議事録等も、インターネット等でも去年から公開しております。時代の流れに沿って、ますます情報公開というものが要望されている時代でありますので、そういう方向でさらに努力を重ねていきたい、こう思っております。

 それと同時に、今、受信料制度、世帯別で見ますと、八二%の世帯から受信料をいただいております。罰則規定のない中で、NHKと受信者、視聴者との信頼関係でそれを維持できていると思っております。

 NHKと視聴者国民との信頼関係を築くためには、やはり視聴者のニーズにこたえるような質の高い、心豊かにする番組を提供すること、それと同時にまた、それに伴うイベントなり公開番組なりを通じながら理解を深めていくことが大事だろう、そう思っております。我々も視聴者の意向というものを十分に酌み取らなければなりません。

 そういう面で、今、平成十一年度でも、視聴者の方々から、電話なりはがきなりファクスなどで、一年間で六百万件を超える意向が寄せられております。視聴者の意向、あるいは番組審議会、視聴者会議、いろいろな方々の意見を聞きながら番組に反映させていっているのが現状でございます。

若松委員 同じく海老沢会長にお聞きしたいのですけれども、ちょうどことしの一月ですか、連立与党の若手議員四人が、アメリカの郵便公社、USPSに行ってまいりました。アメリカのUSPSですけれども、料金委員会というのがありまして、いわゆる切手代、まさに切手代が国民にとっては最大の関心事ですから、これが果たして適正な値段かどうか、この一点のために料金委員会というものがつくられております。一年のうち十カ月間ずっと毎日議論をして、百二十人ぐらいいわゆる公述人を呼んで、議事録が千ページ、そこで、では、ことしは一円上げましょうとか、一円下げましょうとか、議論がなされるわけです。

 ですから、NHKも、先ほどの情報公開制度をスタートされるのですけれども、基本的に国民にとって何が関心があるかというと、受信料は高過ぎるのか、安過ぎるのか、やはりその一点だと思うのです。そういった点で、料金委員会とか受信料金委員会、そういったものをつくって、国民に、しっかりと議論しているといったことを伝えることが大事じゃないかと思うのですけれども、会長、いかがですか。

海老沢参考人 NHKの受信料は、私どもが提案し、今の総務省を通じて国会に提出される、そして受信料の料額改定、受信料の設定というものは、国民の代表であるこの国会で決めていただいております。ですから、そういう面で、この国会の場というのを我々は非常に、最重要視しているわけであります。国会のそういう決定のもとにNHKが成り立っているということでありますので、受信料制度のあり方あるいは受信料額の設定については、この国会の意思を尊重するのが我々の使命である、そう思っております。

若松委員 会長のお話を延長しますと、かつ、先ほどのUSPSの制度を重複いたしますと、このNHKの予算審議なりを年に十カ月開けということなんですよ。ただ、国会、さまざまな議論をしますから、私たち国会議員が、受信料も含めて、適切かどうかという情報を具体的にいただきたい。この決算書自体も、後で質問しますが、決算制度改革も、企業会計からすれば、これはまだまだ非常に雑というか、幼稚な面があるわけなんですね。

 ですから、お約束いただきたいのは、これからの国会審議に当たって、少なくとも受信料についてどんな議論があって、その結果、維持しているとかという一つの報告書をいただきたいと思うのですけれども、それについてはいかがですか。

海老沢参考人 今の受信料が本当に適正かどうか、これはいろいろな意見があろうと思いますし、どれを基準にしてそういう判断をするのか、私も今非常に、どうしたらいいか、これから慎重に考えなければならない課題だろうというふうには受けとめます。

 ただ、アメリカは、御承知のように、テレビの放送会社はほとんどが民間であります。広告収入によって成り立っている民間でありまして、商業放送、いわゆる民間放送の中で、今公共放送というのはPBSという形で、これは受信料でなくて、有識者からの寄附とか、州政府なり国の交付金から成り立つわけであって、いわゆるNHK的な受信料制度というのは、世界でNHKしかありません。そういう面では、いろいろ検討する課題だと思いますけれども、今ここで私が、どうしたらいいのか、明確な答弁はできません。いろいろ検討させてもらいます。

若松委員 ということで、ぜひ、このUSPSの料金委員会、これを参考にして、私もこの場で、受信料金委員会の設置を提言して、ほかの質問に移らせていただきます。

 続きまして、先ほどちょっと触れましたが、NHKとして、情報公開の一環として、業務内容の透明性を高めようとして、民間企業と同様に、関連会社との連結決算の導入とか、外部監査人を任命して監査を実施していく、こう聞いておりますけれども、具体的にどのようなスケジュールでどのように改革していこうとされるのか、御説明いただきたいと思います。

笠井参考人 お答えいたします。

 連結決算につきましては、平成十一年度決算におきまして、主要関連団体二十社を対象にいたしまして、これは外部監査法人の指導を受けまして、連結財務諸表原則に準拠した形で試行を行っております。

 NHK及び関連団体は、特殊法人、株式会社、公益法人など企業形態に違いがございますので、連結決算を行う上で、会計基準の統一やコンピューターシステムの構築など、解消すべき課題が多くございます。今後三年間程度の試行の中でさまざまな課題を解決しつつ、本格的な導入に向けて行っていきたいというふうに考えております。

 また、外部監査法人の監査の導入につきましては、十二年度決算から監査法人による予備調査を行いまして、十三年度からの試行に向けまして、現在、準備を進めているところでございます。試行を続ける中で、これは新会計基準などさまざまな課題の検討が必要になってくると思います。また、独立行政法人の外部監査状況、特殊法人等会計基準の見直しなど、外部の動きもございますので、本格的な導入に当たっては、これらを見ながら行っていきたいというふうに考えております。

若松委員 ぜひよろしくお願いいたします。特に、国会決議でも、これは附帯決議で触れられると思いますので、しっかりと御努力をお願い申し上げます。

 時間の関係上、最後の質問になろうかと思いますが、御存じのように、本日ここにいらっしゃいます国会議員全員に関心のある、七月の参議院選挙があります。

 そこで、政見放送についてお聞きしたいのですけれども、これは遠藤副大臣でしょうか、視聴覚障害者向けに字幕放送または手話放送実施の要望が私のところにも多数寄せられております。ですから、政見放送に一斉に字幕放送をつけるというのはやや技術的に難しい面もあるわけですけれども、参議院選というのは既に、放送局でしっかりつくるということですから、実際に放映まで時間がある。そういうことで、次の参議院選におきましては、視聴覚障害者向けの字幕放送をぜひやっていただきたいと思いますが、総務省のお考えを聞きたいと思います。

遠藤副大臣 総務省は選挙制度並びに選挙の執行を所管いたしておりますので、大変よい質問をしていただきまして、ありがとうございます。

 政見放送にいわゆる手話放送、そして字幕放送を一斉につけたらどうかという御提案でございますけれども、総務省といたしましても、これは自治省時代から随分努力をしてまいりまして、現在のところは、参議院の比例代表選挙に手話放送が導入されています。

 それから、衆議院の小選挙区の方はいわゆる持ち込みビデオ方式でございまして、この中で、手話それから字幕放送の入ったビデオを持ち込めることになっているわけでございます。

 ただ、全部の候補者に対してそれができるようにするというのは、大変、一つは技術的な困難がございます。手話通訳の資格を持っている方が全国に大変偏在をしているということがあります。それから、時間的な制約がございまして、全候補者の分を一挙にやるというのは大変時間的に難しい、こういう問題があります。あるいは、選挙の公平を期する意味でも、希望者全員に対してそれを措置できるようにするというのは大変難しい、こういう側面があります。

 ただ、きょうも御議論があったと思いますけれども、放送がデジタル化いたしますと、手話放送そのものがデジタルの画像でできるというふうなこともございますし、あるいは、字幕放送がデータ通信で行える、データ放送で行える、こういうような利点もございますものですから、放送の技術の革新に伴いましてそうしたことが可能な状況がさらに広がっていくのではないか、このように期待しているところでございます。

若松委員 ぜひ、七月の参議院選挙に向けた最大の努力を要望して、質問を終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。午前中から長時間にわたって、海老沢会長、御苦労さまでございます。また、きょうは短時間でございますので、端的にお答えをいただければと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、NHKの業務範囲の問題についてちょっとお伺いをしたいと思うんです。

 これは午前中にもちょっと質問があったかと思うんですけれども、通信と放送の融合の関連で、NHKがホームページ等を開き、インターネットでニュースを配信するみたいな形になっている。そもそも、NHKの業務というのは受信料収入で成り立っている、そのために本委員会で審議をしているわけでございますけれども、受信料を払った人がNHKの放送サービスを受けられないということは理に合わないことであり、また逆に、受信料を払っていない人に受信料収入で行うサービスを提供するというのも、またこれは理に合わないことではないか。受信料を払っていなくても、NHKのサービスをインターネットを利用して見られるわけですから、これについて、放送法九条との兼ね合いということで、まず、総務省はどういうふうに考えておられるか、お答えいただきたいと思います。

小坂副大臣 高木委員の御質問の趣旨は、大変に、裏と表の両面からごらんになって御指摘をいただいております。

 委員も御指摘のように、放送法九条第一項で本来業務を定めてございます。この本来業務の中には、国内放送、放送及び受信の進歩発展に必要な調査研究、そして国際放送等とされておりまして、インターネットによる放送番組の一部を提供することは含まれておりません。したがって、今、インターネットによるニュース番組内容の提供は附帯業務ということでやっておるわけでございます。

 他の特殊法人と同様、NHKも、法律上、本来業務に附帯する業務は可能とされているところでございまして、これが九条二項に規定されていることは御存じのとおりでございます。

 しからば、受信料を払っていない人がインターネットの放送を見られるのは不公平ではないかという指摘もございますが、NHKは、国際放送やラジオ放送のように、受信料の対象となっていない業務をあわせて行っているわけでございます。この附帯する業務が本来の業務に比して非常にわずかなものであれば、受信料を払っていらっしゃる方から見ても不公平感を生じないものと考えておりまして、それが限度であろうか、こう考えております。

高木(陽)委員 新聞は、見そびれても後から読み直せる。テレビのニュースというのは、見そびれてしまうと、わざわざビデオを撮っている人もいませんので、私もインターネットを開いてそれをちょっと見直すということもありますし、そういう部分では便利だなと思います。もちろん、受信料はしっかり払っているんですけれども。

 今の段階では附帯業務ということでごくわずかな部分で、それはそれで納得はするんですけれども、今後、まさに放送と通信の融合、光ファイバーが普及していく中で、e―Japan戦略にも、二〇〇五年にはもうアメリカに追いつき追い越せというような形となってまいりますから、そうなった場合のインターネットとNHKのあり方、または通信と放送との関連ということで、NHKとしてどういうふうに考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。

海老沢参考人 今の受信料制度は、世帯ごとから受信料をいただいているということになっております。個人別でなくて世帯ごとの受信料、要するに、一つの家庭からいただいている、そういうシステムになっております。家族の中で、インターネットで見る人、いろいろあろうかと思います。その意味で、私どもは、できるだけ公平負担ということで、NHKの事業運営を支える負担金として、受信料をひとつお払い願いたいという活動はさらに進めなければならぬと思います。そういう中で、あなたは払っていないからだめですよというのは、なかなか難しい問題があろうかと思います。

 それはさておき、次のブロードバンド時代になったらどうするんだというのは大きな課題であります。これにつきましては、そういう時代が五年先か十年先か来ると思います。そういう中で、視聴者の要望なりあるいは社会経済情勢を見ながら、我々、検討しなければならない大きな課題だというふうに受けとめております。

 当面は、今の附帯業務の範囲の中でインターネットによるニュース提供をさせていただきたいというのが現状であります。その時期になりますれば、またいろいろな、国会等の審議の場で議論をお願いすることが出てくるかと思います。

 我々としては、いずれにしても、的確なニュースなり質のいい番組が、情報に格差なく、いつでもどこでもだれでもが、それを見られるようにするのが使命でありますので、そういう段階でさらに検討していきたいと思っています。

高木(陽)委員 続きまして、先ほど同僚議員の方から情報公開のお話がございました。まさに今国会で、特殊法人の情報公開法という形で提案をされます。その中でNHKがそれを外されている。国からお金をもらっているわけではございませんので、そういった意味では、その法律に当てはまらない。もちろん、そうだとは思うのですけれども、ただ、受信料収入で行われているということで、情報公開の問題はかなり重要な問題であると思います。

 そんな中で、朝、新聞を読んでいて、これはきょう、総務委員会が開かれるということで意識的に書かれたのかなとちょっと思ったのですけれども、「NHK、七十社に間接出資」という新聞記事ですね、「業務報告書に記載なし」と。ただ、これは記事を読んでみますと、子会社のさらにその先になりますから、そこまで全部やるのかやらないのか。ここら辺のところ、法的にはそういう規制はございませんけれども、ただ、こういうふうに書かれるということが、NHKが情報公開にどういうふうに取り組むのかということが今問われているのではないか、そのように思います。

 そういった意味では、これまで、そして今後の情報公開への取り組みについて、特に受信料収入でやっているという原点に立ち返って、どのように考えているか、お聞かせ願えればと思います。

海老沢参考人 私どもは、やはり視聴者国民あっての公共放送、NHKでございますので、そういう面では、できるだけ経営についてはガラス張り、透明度を増すのが当然であります。

 去年、情報公開の基準を我々は自主的につくりまして、それに基づいて、ことしの七月一日から情報公開に踏み出すことを決めたわけであります。守秘義務とかニュース関係とかいろいろ、個人情報とか、そういうものは難しいわけでありますけれども、できるだけ情報を公開して視聴者の信頼を得るというのが我々の使命だろうと思っております。

 そういう中で、関連会社につきましても、十分やはり国民に説明し、納得を得て、国民のコンセンサスの上に立って業務を進めるのが我々の基本的な考えであります。公開と参加という言葉を私、使っておりますけれども、できるだけ情報を視聴者の皆さんに共有してもらうというのが基本的な考えであります。そういう面では、この関連会社のあり方などにつきましても、これからさらにいろいろ勉強しながら、十分納得を得られるような対応をしていきたいと思っております。

高木(陽)委員 これまた新聞記事でちょっと気になったことなんですけれども、衛星の契約はどんどんしっかりとやってもらいたいなとは思うのですけれども、電器店で契約してもらうと、その契約の謝礼というような形で受信料から支出されている、これが果たして適当なのかどうかという新聞記事なんです。

 聞くところによると、前々からこういうのがあったというような流れの中で、だからといって、BSがどんどん普及する中で、受信料が払われない、これはこれでまた問題があるなと。そういう意味では、これは必要なものなのかなと思うのですけれども、そこら辺のところで、受信料収入の使途として、特に、民業圧迫だ、こういうような記事の書かれ方もしていますけれども、そのところのお考えをちょっとお聞かせ願えればと思います。

芳賀参考人 お答えいたします。

 NHKは、受信契約の取り次ぎそれから受信料の収納に関する業務を、委託取次収納員、それから郵便局、銀行等に委託をしてきております。電器店につきましてもこの業務委託先の一つでありまして、古くを申しますと、昭和三年からこのことは始めてきておりまして、衛星につきましては平成三年から実施をしてきているところでございます。

 業務を委託した、その取次手数料として、一件当たり三千円をお払いする、こういうことでございますので、このことは社会常識の範囲だというふうにも思っていますし、実は、電器店でお買いになった方がその場で御契約をいただくということは、タイムラグがございませんから、非常に有効な手段だというふうに考えておりまして、今後とも引き続きお願いをしたいというふうに思っています。

 でありますから、受信料の公平負担のために、社会常識の範囲で取次手数料をお払いするということは問題はないのじゃないか。

 また、民業圧迫というふうに記事は書いてあるわけでありますが、これは放送法で締結義務を定められている受信契約の取り次ぎをお願いしているということでありますので、民業圧迫には当たらないのではないかと私どもは考えています。

 以上です。

高木(陽)委員 今御説明がありましたように、前からやっていた、こういう問題が、やはり情報公開の問題とも絡んでくるんだろうなと。知らないから、マスコミ的には何か大変なことだみたいな書き方をされますので、逆に、情報公開がされていれば、いつもやっていることなんですということでみんなに周知していれば、当たり前という問題が、逆に、今まで知らなかったから、急に知ったみたいな書き方をされますと、かなり誤解を生むなということで、こういう意味でも、情報公開の問題は真剣に取り組んでいただきたいなと思います。

 時間も参りましたので、最後に一つ、これは決算のときにも会長にお伺いしたと思うのですけれども、個人情報の保護の問題と、いわゆる報道と人権の問題。

 今現在、政府の方では、個人情報保護法を最後、詰めているというような段階であります。それとともに、これは与党友党でもある自民党の中、または野党の民主党の中にも、青少年社会環境育成基本法という、ある意味では有害情報を取り締まろうという問題が論議されているように聞きます。

 もちろん、マスコミ、報道、いろいろな分け方があるのですけれども、そんな中で、やはり民主主義の一番の根幹というのは報道、表現の自由があって初めて成り立ってくるなというふうに、私個人は思っております。

 そんな中で、逆に、公権力が報道、ジャーナリズムを規制していくような流れというのは、何としても排除しなければならない。ただ、そうは言っても、個人の人権が侵害されるようなそういったものに対しては、やはり何らかの歯どめをかけなければいけない。ここはすごく悩むところなんです。逆に、報道機関またはジャーナリズムが自主規制をしっかりやる。もちろん、BROみたいなものもあるのですけれども、国民全般にこのBROが知られているかというと、そうでもない。

 そういった中でのNHKの今後の、報道機関として、言論の自由を守るその中心として、こういった問題への取り組みをちょっとお聞かせ願えればと思いますので、よろしくお願いいたします。

海老沢参考人 私ども報道機関として、表現の自由、言論の自由を守るのは当然のことであります。そういう面で、私どもは、放送法と番組基準にのっとって、自主、自律の立場でやっていっているわけであります。そういう面で、いろいろな法律ができ、それによって規制されていくことはいかがなものかというのが我々の基本的な立場であります。

 いずれにしても、私ども公共放送としては、個人の人権あるいはプライバシーというものを守るのは当然でありますし、そういうことを侵してはなりません。放送法なり番組基準にのっとって、あくまでも我々の自主的な判断、自律性をきちんとしながらやっていく方針にいささかも変わりありません。

 我々としては、常に視聴者国民の立場を十分に配慮しながら、今後ともいい番組づくりに前向きに邁進したいと思います。

高木(陽)委員 今の会長のお話、しっかりと実現、実行していただきたいと思うとともに、報道被害を受けている人もいるという現実、その中で、報道被害を受けている方々、そういうものを守るのが本来のジャーナリズムであるんだというところを、うちのところはしっかりやっていて、ほかのジャーナリズムがおかしいんだよ、こういうような立て分けじゃなくて、そういうものを本当にリードしていくような報道を心がけていただきたいなということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。よろしくお願いいたします。

 今、メディアをめぐる状況が大きく変化しております。インターネットが世界じゅうで爆発的に普及し、だれでも自由に世界に向かって情報を発信したり、受信したりできるようになってきております。

 また、急激な勢いで普及した携帯電話は、iモードからさらに進化し、ことし五月には次世代携帯電話であるIMT二〇〇〇が登場する予定であります。そうなると、伝送速度は飛躍的に高まり、携帯電話で動画が送れるようになると言われております。将来は、写真のみではなく、映画やテレビが携帯電話で見ることもできるようになります。

 また、放送界でも、十年余り前にNHKが始めた衛星放送によるBS放送は、受信機が一千五百万台近くに達し、去年の十二月からはデジタル放送が開始されました。さらに、通信衛星を使ったCS放送も現在見られますが、近々、BS、CS両放送を同じアンテナ、同じチューナーで見られるようになると聞いております。放送による情報が洪水のように発信される状況が今まさに生まれようとしております。

 しかしながら、目を毎日の放送やインターネットの内容に転じれば、そこには青少年への影響が心配される番組、コンテンツがあふれております。また、二十一世紀の新しい時代に国際舞台で活躍しようとする日本人が、日本人としての誇りを持てる番組や、この不況を克服して新しい社会を築こうとする人のためのヒントを提供する番組などは、残念ながらそう多くはありません。

 そこで、通信と放送が融合し、営利を目的とした競争が激化する中で、公共放送NHKが何を考え、時代の流れにどう対処しようとしているのかという観点から、幾つかお尋ねしたいと思います。

 まず、公共放送の性格にかかわる本質的な点からお伺いいたします。

 公共放送としての最も大切な役割は、公正、中立な報道、多様で質の高い番組を提供すること、放送界をリードする先端技術の開発などにあります。これらの重要な役割を実現していく上で必要不可欠なのが自主性であり、自律性だと私は思っております。

 そうした自主性を重んずるという立場から見ると、NHKの予算を本当に国会の場で毎年審議する必要があるのかどうか、少しく疑問を感じるところもございます。受信料を払ってもらっている以上、視聴者がその使われ方に対して何らかのチェックをすることは当然必要でありますけれども、それはNHKみずからが徹底した情報公開を行うことで十分達成できるのではないでしょうか。こうした自主的、自律的経営を認めていくことが時代の流れではないかと私は思うわけであります。

 一方、中央省庁等改革基本法において、郵政三事業の公社化に際し、第三十三条では「郵政公社の経営については、独立採算制の下、自律的かつ弾力的な経営を可能とすること。」及び「予算及び決算は、企業会計原則に基づき処理するものとし、その予算について毎年度の国会の議決を要しないものとするほか、」などなど、統制を最小限のものとすると規定されております。

 このような状況を勘案いたしまして、放送法の改正などを踏まえ、この基本問題にどう対処されるか、大臣の御見解はいかがでしょうか。

片山国務大臣 御承知のように、NHKは、特殊法人という建前で昭和二十五年に制度ができて以来、見ようが見まいが、視聴の有無にかかわらず受信契約を締結して国民から受信料をいただく、こういうことになっておりますから、私は、やはりそのチェック機能をどこか制度的に担保する必要はある、ただ、それを役所でやるのはやはり問題だ。

 そこで、公共放送を守っていかなければいけませんね、そういう意味で、役所でなくて、国民の代表のお集まりの国会でそのチェックをやっていただく。私は、この仕組みはそれはそれで意味があるのではなかろうかと。国会がチェックするから、それでは番組は報道の自由が侵されているかというと、それはそうでないので、放送法の中で表現の自由をもとにした放送番組編集の自由を確保しておりますから、それはそっちで確保されている。私は、今の制度は一つの知恵だな、こういうふうに思っている次第でございます。

 郵政公社は、これは御承知のように、ある意味では事業をやる、営業をやるのですね、郵便事業、貯金事業あるいは簡保事業。これとは、特殊法人であるNHKは報道ですから、違うのではなかろうか、こういうふうに思っておりますが、これから郵政国営公社の製図を設計していくわけでありまして、基本法に書いてあることは大きなフレームとして守りながら、できるだけ新しい公社にふさわしい制度を考えていきたい、こっちの方はそう思っております。

黄川田委員 NHKのこれまで果たしてこられた役割は大いなるものがあると認めるわけでありますけれども、国の省庁再編あるいは公社公団の見直し等々、時代は大きく変化しておりますので、このような問題についても深く議論を深めていただきたいと思っております。

 次に、放送とインターネットのかかわりについてお伺いいたします。

 最初に、青少年に与える有害情報についてお尋ねいたしたいと思います。最近、青少年による残虐な犯行や子供たちの間の陰湿ないじめなどのニュースに接しない日はないと言ってもよいほどであります。もとより、この背景にはさまざまな社会状況や経済状況がありますが、その一つに、放送やインターネットのあり方も影響していると思います。テレビは、深夜には若者に安易に迎合するかのような番組を放送し、パソコンでは、子供でも簡単にポルノなどを手に入れられます。NHKは、こうした現状をどう見ているのか、また、どう対処していこうとしているのでしょうか。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

海老沢参考人 三、四年前に、青少年の凶悪犯罪が相次ぎました。そういう中で、テレビの子供たちに与える影響が非常に大きいのではなかろうか、テレビは青少年の健全育成にどう取り組むのかというのが大きな問題になりました。私どもも、テレビの社会的影響力が大きいという認識のもとに、青少年に悪い影響を及ぼさないような番組をつくるのが我々の使命であろう、そういう方針で取り組んできております。

 しかし、やはり我々もそういう指摘をきっかけに一層前向きに取り組んでいこうということで、平成十年の初めに部内に横断的な組織として、少年少女プロジェクトというものをつくって、子供たち向けの質の高い番組を一本でも多くつくろうということで、これまでいろいろな取り組みをしてまいりました。二十一世紀、これからを担う子供たちの健全な育成というものはやはり非常に大事なことでありますので、そういう面で、一家で見て恥ずかしくないような番組を我々は提供していこうということで、いろいろな取り組みをし、それなりに成果を上げてきていると自負しているところであります。

 いずれにしても、これはただNHKだけでなくて、民間放送、放送界全体の課題として、私どもNHKと民放が一緒になってつくっております放送番組向上委員会というものがあります、この中に、自主的機関として青少年委員会というものを設けて、これは第三者機関でありますが、いろいろな識者の先生方にメンバーに加わってもらって、この青少年委員会で番組への取り組み等について意見を賜っているわけであります。

 そういう取り組みもしておりますし、青少年向けの番組制作についてはいろいろな形で工夫をしているところでありますし、今後とも、NHK、民放ともどもいい番組をつくるようにさらに努力を重ねなければならぬだろうというふうに思っているところであります。

黄川田委員 引き続き、青少年の健全育成に配慮した番組の提供を求めておきたいと思います。

 次に、さきに質問がありましたけれども、確認の意味で私の方からも質問させていただきます。

 NHKは、昨年暮れから、放送したニュースをインターネットのホームページ上でも見られるようにされました。ニュースを見逃したという視聴者には便利なことであり、通信白書によると、日本のインターネット利用者が平成十一年度末で二千七百万人を超えている時代、これは当たり前のこととも言えるような気がいたします。

 そこで、一部の新聞では、放送法の枠を超えるものだとか、民業を圧迫するとかの批判も出ております。総務省はこの批判をどうとらえているでしょうか。

小坂副大臣 インターネットによる番組の一部提供に関しましては、現在、昨年十二月よりBSデータ放送の番組であります「いつでもニュース」、文字数にして百五文字の内容を提供いたしているわけでございます。これは、NHKの本来業務を規定しております第九条一項ではなくて、第九条二項二号にあります附帯業務であるということで認定をいたしているわけでございます。この内容も、番組の単純な二次利用でありますし、費用の面から見ましても、年間総支出の〇・一%未満というわずかなものであります。そういうような意味で、また同時に、受信料の負担の公平性という観点からも問題がないというふうに認定をいたしております。

 しかしながら、今後、インターネットとNHKのあり方という問題につきましては、放送政策研究会におきまして、今後のインターネットの普及、そして、NHKのあり方という点を踏まえて今後とも検討してまいりたいと存じます。

黄川田委員 また、インターネットは情報の宝庫だとも言われております。確かに、そこには膨大な量の情報があり、利用者は自宅あるいはオフィス、そこにいながらにして世界じゅうの情報にアクセスできるわけであります。そこで問題となるのが、得られた情報がどこまで信用できるのかという点であります。どこの国のどのような組織が発信した情報であるかが重要な判断基準の一つになります。

 そこで、NHKという名前を国際的に通用するブランドにしていくため、どのような取り組みをしておられるでしょうか。

松尾参考人 NHKは、十年ほど前から、国際共同制作ということに対して積極的に取り組んでいこうということで、それまで以上の努力をしてまいりました。多くの作品が国際共同制作をすることによってクオリティーのアップが図られていくわけでございます。

 それとともに、国際コンクールというものもまた重要な市場でございまして、信頼を得るための要素でございます。現在でも三十に及ぶ映像コンクールがございまして、この中で、NHKは昨年度十四の番組の賞をいただきました。

 したがって、BBCとかTF1とかそういうことを含めて競争をしていくわけでございまして、私どもは、国際発信をしている国際放送の映像及び音声を含めて、世界的には、NHK三文字のクオリティーというのは、大変に高い質を持っている放送局として評価されているというふうに思っております。

 それから、それとは別に、世界の放送機関と協力協定というのを結んでおります。これは、基本的に発展途上国を含めての協定でございますが、ニュース取材等を含めて勉強をお互いし合うということでのネットワークでございますので、このネットワークも十分に機能していますし、さらに充実をさせていきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

黄川田委員 NHKにおきましては、海外発信も重要な役割があります。そこで、協会は、国際放送に当たっては、日本の動きを二十四時間発信し、そしてまた、我が国の実情を的確に海外に伝えていただきたいと思っております。

 それでは、続いて、放送の内容についての問題に移りたいと思います。

 今、企業の間ではあらゆる業種で国境を越えた合併や提携が進んでおりまして、情報通信の世界でも同じであります。その核にあるのは、良質のコンテンツをだれがいかに早く手中におさめるかにあると私は思っております。そのような観点で、NHKはソフト開発にどのような方針で臨み、そしてまた、どのぐらいの予算を見ているのでしょうか。

松尾参考人 NHKはソフト開発そのものに別建ての予算を設定はしておりません。国内放送費中の約二千百億を十三年度予算に今計上してございますけれども、その中に、編成上、新しいトライであるとか、これは事前に視聴者の方々に見ていただいて御批判を受けた上で定時番組に展開させていこうとか、そういう一つの長期計画を持ちながら、コンテンツの新しい開発をしております。

 例えば「プロジェクトX」、今九時十五分から定着しておりますけれども、この番組も、夏季特集とか春の特集期間という臨時編成のときに定時化のための開発をいたしまして、視聴者の意向等々を踏まえて現在の定時番組になっているということで、特別の予算は持っておりません。

 しかしながら、ソフトの開発は、ソフト制作集団の命でございますので、ソフト開発という部も存在しているほど、積極的に次世代のソフト開発をしていきたいというふうに思っております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

黄川田委員 いろいろお話を伺いましたけれども、良質なコンテンツを提供する観点から見ますと、昨年から始まったBSデジタル放送の番組がいま一つ魅力に欠けるという声が聞かれます。また、BSデジタル放送の魅力の一つである双方向性を売り物にしたデータ放送も、データのやりとりに時間がかかるということであります。

 したがって、NHKスペシャルや先ほどお話のありました「プロジェクトX」等はよい番組だと思いますけれども、こうしたNHKの特徴を生かした番組をもっとデジタルハイビジョン放送でふやす工夫はいかがでしょうか。

松尾参考人 ハイビジョンの持っている特色というのは、やはり一種のスケール感でございます。

 それで、今ハイビジョンでの定時番組としてとられておるのは、夜の七時半から九時半までの二時間、一つの作品を見せていこうという、「ハイビジョンスペシャル」という番組を組んでおります。これは世界に例を見ない大型企画の連続でございます。これがソフトとしてきちっと定着をしてくれば、NHKのハイビジョンソフトとしての、またはデジタル時代のソフトとしての意味というのは十分に発揮できるであろう。

 今御指摘の双方向とかデータ放送を含めての要素は、まだまだデジタル技術が完全に我々のプロデューサー及びディレクターの手のうちに入っていない、大変難しい技術である。したがって、双方向も、一遍に視聴者からアクセスが来た場合にどのぐらいのサーバーがどういう働きをしながら整理できるのだろうかという、試行錯誤を繰り返しながら現在、BSデジタルでやっているのが実情でございます。

 もうあと一年ほどしますと、そういうことがすべて定着化してきて、そのためのハードであれソフトであれというものがきちっと固定化されるだろうというふうに思っていますので、今現在、先生御指摘のように、多少いらいらしたり、双方向といいながら答えがなかなか返ってこないというようなのは事実申しわけないと思いますけれども、デジタル技術の難しさ、と同時に、技術とともに歩んでおりますので、もうしばらく時間をいただければ完全なソフトになるというふうに私は思っております。

黄川田委員 時間が残り少なくなってまいりましたので、次に、技術開発についてお尋ねいたしたいと思います。

 NHKの技術開発は世界の最高水準にあり、ハイビジョンはNHKの提唱してきた方式が世界標準に採用されたと聞いております。その中核となっているNHKの放送技術研究所は現在、建てかえ中でありますが、今後の技術開発はどのような方向を目指していくのか、これについてお伺いいたしたいと思います。

中村参考人 お答えします。

 NHK放送技術研究所では、今後三つの柱を中心に研究を行っていきたいと思っております。一つの柱は、統合デジタル放送、ISDBの高度化を目指した研究でございます。それから二つ目の柱は、コンテンツ制作技術の研究です。三つ目の柱は、将来の放送サービスと、これを支えます基盤技術の研究でございます。

 ISDBの高度化を目指します研究は、いつでもどこでも見たい番組が見られる放送サービスの実現に向けまして、より使い勝手のよいホームサーバーの研究、人に優しいバリアフリーを目指した研究などでございます。

 コンテンツ制作技術の研究といたしましては、災害、事件、事故、このようなときの緊急報道、また、深い海、深海などの光の少ないところでの番組制作などに威力を発揮します超高感度カメラや光ディスクカメラの研究、それから、コンテンツのセキュリティー技術の研究などでございます。

 三つ目の将来の放送サービスといたしましては、走査線が四千本級の超高精細テレビや眼鏡なしの立体テレビ、このような研究に取り組みたいと思います。これらを支えます基盤の撮像、表示、記録のデバイスや、大容量伝送路の基盤の技術も研究していきたいと思っています。

黄川田委員 それでは、時間ですので、最後に、経費節減など経理の面についてお伺いいたしたいと思います。

 長引く不況の中、日本じゅうの企業は厳しい経費節減、合理化に努めております。NHKは経費節減にどのように取り組んでおるのでしょうか、まずお伺いいたします。

 特に、平成十三年度予算を見ますと、受信料を集めるための経費として一三%近くが計上されておりますが、多過ぎるのではないでしょうか。銀行振り込みなどをふやしていろいろやっておると思うのですけれども、民間の新聞あるいはガス、電気などの料金徴収の経費率と比較してどうでありましょうか。

芳賀参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、営業経費率の抑制につきましては、非常に重要な経営課題の一つだというふうに考えておりまして、平成元年度、実は一七・八%ございました。毎年削減をしてきまして、十三年度予算では一二・八%までやってきたところであります。

 単身世帯など面接困難な世帯が非常に多くなっているとか、あるいは対価意識が多くなっている等々、営業活動を取り巻く環境というのは年々厳しくなっているところでございますが、十三年度につきましても可能な限りの措置を講じました。例えば、営業職員でおよそ六十人ほど削減してまいりますし、それから先生御指摘のような口座振替、継続振り込み、いわゆる間接化集金を促進しているところでございます。これも、平成元年度は七五・四%でありましたが、一一・八%改善をしてまいっております。口座振替を比べますと、例えば電気、ガス、水道に比べてみますと、二%あるいは三%ほど高くなっているところでございます。

 それから、他の公共料金の徴収経費との比較でございますが、これはNHKの方が高うございます。三つほど理由がございまして、ガスとか電気につきましては、契約はお客様からの自主的な届け出でございます。それから、原則的に訪問集金を行っていません。それから、月額いただく料金でございますが、私どもの料金に比べますと、例えば、電力さんだとおよそ十一倍ほど、ガスですと四・四倍ほど、こういうことがございます。そういう意味で、どうしても私どもの営業経費率は高くなっているところでございます。

 しかしながら、今後ともNHKは、この経費の節減あるいは効果的、効率的な運用を図るということは大変重要だというふうに考えておりまして、この努力を重ねてまいりたいと思っています。

 しかしながら一方、受信料制度を守るという観点から、一定の要員体制あるいは経費というものはまた必要である、こういうふうに考えているところでございます。

黄川田委員 NHKの業務運営の一層の効率化を強く求めまして、私の質問を終わります。

 以上であります。

御法川委員長 次に、春名直章君。

春名委員 日本共産党の春名直章です。

 海老沢会長初め参考人の皆さんには本当に御苦労さまです。

 私は、字幕放送の推進について伺います。

 九六年に旧逓信委員会で、放送事業者に字幕放送を義務づける請願が採択されました。旧郵政省はそれを受けて、義務ではなくて努力義務ということを規定した放送法の改正を提案し、九七年にこれが採択をされました。その際、義務にすべきではないかという議論も随分あったということをお聞きしております。

 会長に、まず基本的御認識を伺いたいと思います。

 情報へのアクセス権、これは基本的人権の重要な内容の一つで、そして権利である。したがって、障害者の皆さんが番組を楽しむことが入り口でシャットアウトされている、こういう事態は一刻も猶予ならない問題として解決をしなければならない、こういう認識をぜひ共有していきたいと思っています。いかがでしょうか。

海老沢参考人 私どもは公共放送として、全国あまねく、いつでもどこでも、だれでもが簡単な操作で、安い料金で情報を享受できるように努めるのが使命だと思っております。

 そういう観点から、障害者サービスあるいは高齢者向けの番組の強化等につきましては、我々の最大重点項目として挙げているところであります。障害者向けの福祉番組なり字幕放送、解説放送なり、いろいろな面で年々これを充実、拡充してきております。今後とも、さらに努力を重ねていきたいと思っております。

春名委員 特に、デジタルデバイドという考え方が出てきた今日は、一層そのことが重要になっていると思います。

 昨年末からBSデジタル放送が開始されて、地上放送もデジタル化されようとしています。これらのデジタル放送は、これまでの放送よりもさまざまなメリットをもたらす可能性があります。そのメリットとして、字幕放送などの技術的可能性も挙げられると思うんですね。つまり、別途のデコーダーなどがなくても字幕放送が見られるようになる。ところが、放送局から送られる電波に字幕放送が乗っていないと、見られる技術があっても宝の持ちぐされになる。字幕放送の割合を抜本的に高める努力をしないと、逆に、技術の進歩が一層デジタルデバイドを広げてしまうというようなことにもなりかねない、こういう問題が今起こってきている。

 交通の分野ではバリアフリーという考え方が常識になった。さらに進んで、ユニバーサルデザインという考え方が今広がっている。移動の自由が人権の内実をなしている、こういう思想だと思います。これを放送の分野に当てはめますと、字幕放送や解説放送がまさにそれに当たるものだと思います。ここから必然的に出てくる考え方というのは、私はこう思います。字幕放送や解説放送は本放送の附録的な存在ではない、まさしく放送に不可分な構成要素なんだ、こういう認識で当たる必要がやはりあると思うのです。

 そこで、片山総務大臣にもお聞きをしておきたいと思います。

 こういう根本的な考え方、思想ですね、情報アクセス権が人権の重要な一部で、権利であるということ、したがって、字幕放送は決して附属ではなくて、不可分の構成要素であるべきであるということ、こういう認識についてどうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。

片山国務大臣 今、春名委員御指摘のように、情報アクセス機会の均等化というのは大変重要なことだと思いますね。委員が言われるほど基本的人権として成熟しているかどうかは、まだ情報化の進展を見ながら考えなければいけませんけれども、そういう機会を均等にするということは大変私も重要だ、こう思っております。

 これも委員のお話にありましたように、平成九年度に放送法等を改正しまして、字幕放送や解説放送の努力義務化を図ったところでございます。平成九年十一月に、字幕放送の普及目標というのを掲げまして、二〇〇七年までには全部やる、こういうことにいたしているのも、そういう認識でございます。今後とも、我々としては、関係の方の御協力を仰ぎながら、さらに強力に推進してまいりたいと思っております。

春名委員 その点なんですが、今のままいきますと、二〇〇七年度までに字幕可能番組、これは全放送時間のわずか四割なんですが、字幕可能番組への一〇〇%達成はおぼつかないという事態に、率直に言ってなっているわけなんですね。

 海老沢会長がおっしゃったように、NHKは大変努力もされていまして、字幕付与可能な放送番組の中で字幕放送の占める割合は六〇・九%、総放送時間に占める割合は一七・九%という状況だというのをお聞きしておりますが、民放キー五局でいいますと、わずか九%、総放送時間の二・九%、全然進んでいないんですね。二〇〇七年までにできるという見通しが全く、私自身は確信が持てないわけであります。

 そこで、そういう状況になっているから、きょう質問を私はしているわけでありまして、デジタルデバイドという考え方、バリアフリーという考え方、ユニバーサルサービスという考え方が、九六年に請願が採択されてからもずっと発展してきたわけです、この五年間。ですから、この考え方に沿って推進しようと思ったときに、今の到達点を考えたら、この努力義務規定というのをぜひ義務化する、当時から議論されましたけれども、義務規定に一層前進させて推進していくということが、今もういよいよ時期的に問われる段階に入ったというふうに私は認識をしているわけです。この点、片山総務大臣、どうお考えでしょう。

片山国務大臣 なるほど、今、数字を私も見てみましたら、委員が言われるように、NHKと民放キー局の数字はかなり開いていますね。やはりそこはいろいろな困難な事情があるかもしれませんし、認識の差があるかもしれませんが、これはできるだけNHKさんの方にそろえてもらうように今後とも要請いたしたいと思います。

 そこで、デジタルデバイドの解消というのは大きな情報化社会のテーマですよ。先ほど申し上げましたが、我が総務省でIT有識者会議というのをつくりましたのも、デジタルデバイドの解消と情報のバリアフリーなんですよ。そういうことの中で私はしっかり議論していきたい。それは、一遍に金がかかって、手間がかかって、何がかかってという議論があるかもしれませんが、何がこれがなかなか進まない原因なのか、それを除去するのはどうすることか、そういうことを含めて、民間の放送事業者の代表の方も入っておりますから、有識者会議で大いに議論をして問題を前進させるように努力いたしたい、こう思います。

春名委員 では、最後に一点お伺いしておきます。

 当時の議論で小坂副大臣も、義務化すべきではないかという議論もされたと思うんですね。例えば、チャンネルごとに目標と期日を決めて、放送局の免許要件にさえしているイギリスではどうかといいますと、公共放送であるBBCで約五〇%の番組に字幕が付与されている。民間放送でも、チャンネル3で約六一%、4で約六〇%、5で約二七%番組に付与されていて、これは字幕付与可能番組ではなく総番組数比ですから、大変な努力をして、全く差が開いているわけですね、日本と比べたら。

 この経験から学んでも、私は、ぜひ義務化をするということをやはり前提にして考えてもらいたい。そして、そのことを通じて困難も打開していく、推進をしていく、二〇〇七年を目指して達成していく、展望を切り開いていくということがいよいよ今問われているんじゃないでしょうか。その点、もう一点お聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思いますので、総務大臣、どうぞ。

片山国務大臣 今も言いましたように、IT有識者会議でデジタルデバイドの解消を最大のテーマとして議論しておりますから、その中で一定の方向づけをするよう努力いたしたいと思います。

春名委員 ぜひ議論していただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

御法川委員長 次に、矢島恒夫君。

矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。

 提出されておりますNHKの来年度予算に関して、特に、きょうは同僚議員からもいろいろ出ておりますけれども、地上波デジタル化の問題を中心にお尋ねしたいと思います。

 いよいよ地上波デジタル化が日程に上ってまいりました。政府は、二〇一〇年という一つの区切りをつけてアナログ放送を終了するというスケジュールを立てております。

 NHKがことしの一月出しました「新たな放送文化と公共性のさらなる追求をめざして IT時代のNHKビジョン」、この本の中で、「地上テレビ放送のデジタル化には、設備整備の経費負担の問題もあります。NHKの場合、全国の放送局の制作設備や送出設備、送信設備をデジタル放送用に変更しなければならないなど、多額な経費を必要とします。」こういうことが述べられております。

 これまで私もこの問題を何回か取り上げてきているわけですけれども、NHKとしては、地上放送のデジタル化のための経費については、総額でおおよそ五千億円、その中で、送信設備については三千億、送出設備については五百億円、それから番組制作設備に千五百億円、こういう数値を出していらっしゃいます。

 そこでお尋ねしたいのは、いよいよ地上波デジタル化が日程に上って、三大広域圏では二〇〇三年だ、それから、その他の地域では二〇〇六年からデジタル放送を開始する、こうなっていくわけです。そうしますと、五千億円のうちのとりわけ送信と送出の設備にかかわるところの投資、これをいつまでやるのかというのがいろいろ問題になってくると思います。私は、二〇〇六年までこの送信設備と送出設備の費用については投資するんだろうな、こう思うんですが、NHKとして、この二〇〇六年までにその部分についてはやり切るのか、あるいは二〇一〇年までにやるのか、あるいは二〇一〇年を越してしまってもやむを得ないんだとお考えなのか。その辺についてお考えがありましたら、お聞かせいただきたい。

海老沢参考人 私どもが今、計画を立てております、送信施設三千億、送出五百億、この三千五百億は、全国あまねく普及といいますか、見られるようにするための経費というふうに見積もっています。

 この三千五百億というのは、非常に大変なお金でございます。そういう面で、できるだけこれを削減できないかということで、先ほども御答弁申しましたように、民放各社に対して、できれば共同建設なり共同研究によってかなりの経費節減を図っていきましょうということで、今具体的な話を進めているところであります。ですから、かなりこれが節約できると見るべきだろうと思っております。

 そういう中で、番組制作の施設千五百億とあります。これは、放送設備を今デジタル化にかえてきております。そのために、いわゆる老朽更新という形でやっていきますので、これは財政を圧迫するのではなくて、今の予算の中で処理できるだろうと思っています。そういう面で、これから十年をかけて、年次計画を立てながらやっていかなきゃいかぬと思っています。

 そういう中で、本当にこれをNHKが負担し切れるのかどうか、私も、それはいろいろな面で大変な時代だろうという認識を持っております。そういう中で、今、平成二年度以来、財政安定化資金ということで五百三十三億の積み立てがあります。これを将来、デジタル化するための施設費に割り当てなきゃならぬだろうとも思っておりますし、そういう面で、できるだけ効率的に仕事をしながらやっていかなきゃならぬと思います。

 ただ、本当に、経済がこれから大きな変動があれば大変だろうと思いますし、これからの経済情勢を見ながら、また計画を練り直すなり、いろいろな手だてをしなきゃならぬのではないかというふうには考えております。

矢島委員 具体的に、送信と送出の部分について、何年をめどに投資していくかということについてはお答えがなかったようです。

 例えば、非常に膨大な額になるわけですから、来年度の予算を見ますと、この部分については一千万円の計上になっていると思います。ですから、この三千五百億円の大部分は二〇〇二年から例えば二〇〇六年までに全部投資してつくっていこうということになれば、五年間でやるわけですから、平均しますと、年間七百億円近いことになります。そうすると、現在の建設費とほぼ同額、ですから、建設費が倍増するという事態がある。例えば、二〇一〇年にやり切っていこうということになりましても、九年間でやるわけですから、結局、年平均ですと、三百八十八億円ぐらいになりますか、これまた現在の建設費の約一・五倍の投資が必要になってくる。もちろん、経費を削減する、いろいろなことで工夫されるという前提の上に立ってですけれども。

 そこで、私、視聴者としては、この莫大な投資が受信料にはね返るのではないかという重大な関心を持っているというのが今日の状況だと思います。会長、このデジタル化の問題が受信料の値上げの理由になる、このようにお考えになっていらっしゃるかどうかをお尋ねしたい。

海老沢参考人 私どもは、できるだけ視聴者国民に新たな負担をかけないようにするというのが基本的な考え方であります。そういう面で、私、三年数カ月前に会長に就任して以来、できるだけ受信料を値上げしないように努力しようということで、この平成九年度、十年度、十一年度、三年間でも、合わせて四百億の経費節減を果たしてまいりました。そういう面で、今非常に財政的には安定化の方向へ向かっております。これからも、平成十三年度、十四年度、十五年度、あと三カ年間は、歯を食いしばっても努力して受信料を値上げしないという決意表明をしたところであります。

 そういう新しいデジタル化の方へ設備投資を傾斜しなければならないという時代でありますが、いずれにしても、二〇一一年までに今目標を立てて、できるだけ新たな負担をかけないように努力していくというのが我々の役割だろう、そういう気持ちでこれからもやはり努力を重ねていきたいと思っております。

矢島委員 ぜひいろいろな面での御努力をお願いしたいと思います。

 別の問題、アナログ放送の終了の問題でお尋ねしたいと思います。

 この問題も、デジタルテレビの普及が十分でない段階でアナログ放送を終了したということになりますと、デジタルテレビを持っていない人はテレビが見られなくなるということが起こるわけです。これも視聴者にとっては重大な関心事に今なってきているわけです。

 そこで、会長にお尋ねしたいのは、デジタルテレビがどれくらい普及した段階でアナログ放送を終了したらいいか、これについてはどんなふうなお考えでしょうか。

海老沢参考人 地上デジタル放送は、本当に全世帯ができるだけ早くアナログからデジタル化へ進んでもらいたいというのが私の気持ちであります。それにはやはり、視聴者国民に、デジタルの成果といいますかメリットを十分理解してもらわなければ、なかなか納得してくれないと思います。そういう面で、我々は、今後とも民放、総務省とも連絡を緊密にしながら、地上デジタル放送のメリットというものをできるだけわかりやすく説明し、御理解を得る努力を重ねなければならぬだろうと思っております。

 そういう中で、やはり地上波というものは本当に国民の生活にとって不可欠のメディアでありますから、一〇〇%まで持っていかなければ意味はないだろう、そう私は認識しております。

矢島委員 いわゆる地上放送デジタル懇が、先ほど小坂副大臣が同僚の質問の答弁の中で、二千何年三大広域圏、二〇〇六年全国、これはいいのですが、二〇一〇年に終了するというところまで答弁なされた。ここでなかなか論議する時間がありませんので、後で議事録を精査した上で、またの機会にお尋ねしますが、このときにも、いわゆるデジタル懇は、カバー率一〇〇%、普及率八五%という条件がついた上でのこととしてあるので、後ろを取ってしまうと、何だか、何でも構わず、ここになったら切るんだと、私に対する先日の答弁と同じような形になるのじゃないかなと思いました。またこの問題は、後で機会がありましたら論議するとして。

 今、会長から、できるだけ一〇〇%というのが、すべての人たちに見ていただく公共放送としての役割からしても必要だというお話がありました。そこで、もちろん、二〇一一年の時点でデジタルテレビの普及が一〇〇%、こうなることを目指してやっていくということはわかるのですが、もし、一〇〇%に遠く及ばなかった、それでもやはりアナログ放送は終了してもやむを得ないな、このようにお考えでしょうか。

海老沢参考人 十年先はなかなか予測が難しいわけでありますが、私の気持ちとしてはやはり地上波一〇〇%を達成するように努力する、それ以上、本当に予測がつかないものを、無責任なことを申し上げても失礼でありますので、そういう努力をしていきたいという決意表明にかえさせてもらいます。

矢島委員 この問題で、NHKとして、例えばアナログ放送の終了時期の問題やそのときの条件について、視聴者の意見を聞かれたことが今まであるのかということと、これから聞く気持ちがおありかどうか、その辺をお聞きしたいのです。

海老沢参考人 地上デジタルはこれからの課題であります。私ども、当面は、地上デジタル放送への移行をやる前に、まず、BSデジタル放送の普及に、今、力を注いでおります。これをきちっとした形で軌道に乗せ、成功させませんと、次の地上デジタルの方へもスムーズに、円滑にいきませんので、今その努力をしております。

 そういう面で、これから電波法の改正案が成立し、そしてアナ・アナ変更が具体的に始まる、そういう段階で、視聴者国民に詳しく説明し、意向を聞かなければならぬだろう、そう思っております。

矢島委員 来年度の予算を見ますと、衛星収支が九十四億円の赤字になっております。三年ないし五年ぐらいで黒字にするんだということを聞いておるのですけれども、黒字に転化するためにはどれぐらい、何百万世帯に普及を増加させることが必要なんでしょうか。数字だけ教えてください。

山田参考人 お答えします。

 先生御指摘のように、十三年度衛星収支というのが九十四億円のマイナスになっております。これは、去年の十二月に始まりましたBSデジタル放送の経費、とりわけハイビジョン番組の充実経費というのがありまして、九十四億のマイナスになっています。ただ、これまでの衛星収支トータルの累計では、二十一億円のプラスになっております。

 それで、いつごろ黒字に転化するのか、今のところ明言はできないのですけれども、とにかくBSデジタル放送の契約率の向上に努めて引き続き増収を図っていく、それでできるだけ早く赤字を解消するべく努力するというところまでしか、今の段階では言えません。

矢島委員 会長にちょっとお聞きしたいのですが、今まで、これは九八年の「より豊かな公共放送のために デジタル時代へのNHKビジョン」に、衛星デジタル事業の進捗状況を十分見きわめながら地上放送のデジタル化について検討を進めていきます、こういう文言があるわけですけれども、今度は、BSのデジタル化の普及ぐあいと無関係に地上デジタル放送を開始していくんだ、こういうお考えなんでしょうか。

海老沢参考人 BSデジタル放送を十二月一日に立ち上げて、非常に順調にスタートを切れたと思っております。そういう中で、一つの大きな目標といいますか、これを推進すれば、私は、BSデジタル放送はかなりの普及が達成できるだろうと見ております。やはり地上デジタル放送というのは世界の大きな流れでありますし、新しい技術を活用するのも我々の使命だろうと思っております。

 そういう面で、BSデジタル放送をさらに普及させ、やはり地上デジタルの方も取りかかっていきませんと、視聴者のニーズにこたえることができない、そういう考えで、これからも、総務省、民放ともどもいろいろ協議をしながら円滑に着実に進めていきたい、そう思っております。

矢島委員 時間になりましたので、大臣に質問する予定でございましたが、またの機会に、電波法か何かのときにやらせていただきます。

御法川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問させていただきます。

 平成十二年十二月十二日、十二、十二、十二と並んでごろ合わせのような日ですが、昨年の暮れですけれども、行革推進本部規制改革委員会から「規制改革についての見解」というものが発表されました。この中で公共放送NHKの業務のあり方などについても言及されているわけでございます。つまり、BSデジタル放送の有料スクランブル化を検討すべき、こうあるのですね。

 その理由として、BS受信料の不払い者を減らすという、いわゆる不公平性の格差を是正するための有効措置として考慮すべきだとか、あるいはBSアナログ放送のサイマル放送期間を考慮しながら検討すべき、こういうふうに指摘があるわけでございます。

 御案内のように、民放と違って、受信料で成り立っております公共放送に有料化の概念を取り入れることになりますこのスクランブル化の是非について、郵政省にかわって管轄となりました総務省はどのようにお考えなのか、大臣にお尋ねいたしたいと思います。

片山国務大臣 委員御指摘のように、規制改革委員会の見解には、そういう趣旨のことが確かに載ったわけでありますけれども、我々は、NHKのBSデジタル放送のスクランブル化については、今、受信料制度というものがあるわけでありますから、その上に、それにかえて料金制度を導入する、有料放送としての性格を持ち込むということは、NHKに期待されている公共放送としての役割を維持することに、大変な困難を生ずるのではなかろうかということが一点。

 それから、御承知のように、BSのアナログ放送も二〇〇七年ごろまでは実施されるわけですから、デジタル放送のみにスクランブルを導入すれば、アナログの方に返るというのでしょうかね、アナログの方をむしろ見るというようなことになることは、今進めているデジタル化にとって大きな障害になる、そういう点の問題がございますので、この問題は、今後ともNHKに期待される役割、他の民間放送事業者との公正、有効な競争の確保の観点、あるいはサイマル放送期間の状況等を勘案しながら慎重に検討してまいりたい、こういうことでございます。

横光委員 昨年の末は見解でございましたが、間もなく推進三カ年計画が発表されると思います。その中にもこういったことが恐らく盛り込まれるかと思いますが、今、総務大臣のお話では、NHKのあり方から考えて、いろいろな状況を踏まえながら非常に慎重に検討するというお答えでございました。

 有料スクランブル化の一つの理由として言われております、いわゆる受信料の不払い者を減らすとか、不公平性の格差を是正するための有効措置であるということが言われておるのですが、私は、この受信料の不払い問題と有料スクランブル化の問題というのは全く別な問題ととらえているのですね。もちろん、地上波テレビで一八%、あるいはBSで二八%という未契約世帯があるというふうに言われております。これは大きな問題です。確かに受信料の不公平の格差が激しい。NHKは、この問題を解消するために全力で取り組んでいかなければならない。これに取り組まなければ、スクランブル化という問題が浮上してくるのです。ここのところを別な問題として、まずこのことは考えていきたいと私は思うわけですね。

 そしていま一つ、この理由として、BSアナログ放送では困難ではあるが、BSデジタル放送については技術的にはスクランブル化に関する障害はなくなった、これも理由の一つに挙げられております。

 これはつまり、技術的に可能だからスクランブル化導入を検討すべきという発想は、極論からいえば、いわゆる倫理観とか文化論、そういった問題よりも、科学技術の進歩とか競争促進のもとからの経済的な活動とか、そっちの方が優位である、優位にあるべきだということを言っているようなものだと私は思うのですね。

 今よく教育改革、教育改革と、心の問題とか言われておりますが、放送の分野においても、こういったことが進めば、ますます倫理観や文化論というのはどんどん圧縮されていく可能性もあるわけでございます。

 こういった状況がもし始まってしまいますと、どうしても商業的な色彩が強くなりまして、民間放送と変わらないような状況になってくる。いわゆる視聴率を優先し過ぎる余り、多様な視聴者のニーズにこたえることが非常に難しくなる。つまり、NHKが誇りとしてきた良質の番組制作を追求することが難しくなるおそれがあるわけでございます。

 また、対価意識が助長されますと、先ほど大臣がおっしゃいましたように、本当に結果的には、いずれ、地上放送においてもスクランブル化をという議論が生じ、受信料制度そのものの崩壊を招くおそれも否定できない。こういった多くの問題点があるということを、慎重に踏まえて検討していただきたい。

 確かに、有料スクランブル化というのはわかりやすいと思うのですね。見たから払う、あるいは見ないから払わない、確かに合理性はあります。しかし、先ほどからお話がございますように、受信機があるだけで見る人も見ない人も受信料を払う制度、このことによって、視聴者の多面的なニーズにこたえられる良質な番組がつくられてきたわけですから、そういった意味で、この問題は慎重に考えていただきたい。受信料というのは基本料金である、そういった感覚を私は持っております。

 大臣、会長から先ほど今やこの受信料制度は世界で日本だけだというお話がございました。私はBBCが同じ制度だと思っていたのですが、BBCもだんだんといろいろな議論が始まっているわけで、そういった意味では、世界でもまれというより、たった一つしか残っていない受信料制度、それだけに非常に貴重な仕組みだと思うのですね。これは大げさでなく、文化的な遺産である、このようにさえ私は思うわけでございます。

 こういった仕組みは、一度壊すと二度と戻りません。アフガニスタンのバーミヤンの石仏の破壊を見ると、本当に人間の愚かさと同時に、膨大なる、人類の世界遺産の喪失でございます。そういったこともふと感じているわけでございます。

 民放があるからNHKの存在価値があり、またNHKがあるから民放が光る、こういうふうに相乗効果のもとに放送という分野で国民に寄与してきたわけでございます。

 ただ、先ほどからきょうもお話がございますように、放送と通信の融合という時代が始まりまして、どこまでが放送でどこからが通信なのか、非常にわかりにくい、線引きが難しい時代になってきました。大変大きな転換期だと思っております。こういった大きな流れに乗ることも大切ですが、この大きな流れにのみ込まれないようにすることも、これまた大切でございます。大きな流れであるからこそ、守っていかなければならないことはしっかりと守っていかなければならないと思うのですね。ただ、そのためには、国民の信頼と理解がなくてはなりません。

 そこで、ころっと話が変わりまして、今度はNHKに苦言を呈したいと思っております。

 今言いましたように、先ほど会長も言われました、この制度を維持するためには国民の信頼がなければだめなんだというお話がございました。ところが、今、その信頼がちょっと揺らぎかねないような事態が起きたわけでしょう。先ほど同僚議員から質問がございました、いわゆる「ETV2001」のあのシリーズの問題ですね。

 これは、私は、非常にいい、NHKでなければできないなというような、いわゆる挑戦的な、意欲が感じられる企画だと思っておるのです。民放では、ああいう番組はやはり制作できません。しかし、残念ながらその二話のところで、いろいろな、報道では疑問が生じてしまったのですね。

 これは言うまでもありません。放送や番組内容は自主、自律の上に成り立つものであります。ですから、報道で言われているようなことが、たとえ片りんであっても事実であったとしたら、これはNHKにとりましては、NHKだけでなく、放送界全体にとりまして大変大きな信頼失墜につながりますし、大変な影響を与えかねない問題でございます。

 本委員会はそういった個別の番組の内容を取り上げる場ではありませんが、放送の表現と自由あるいは放送の自主、自律という観点から、ちょっと一、二確認をさせていただきたいと思います。

 この前、一月三十日にオンエアされた番組内容について、外部からの圧力を受け、その結果、内容が変更されたという、この事実はあるのかないのか、ここではっきりと、端的にお答えください。

松尾参考人 番組の放送予定がテレビ雑誌等で掲載されてから、さまざまな立場の方から御意見はいただきました。それのみです。

横光委員 そういったことがあったかどうかということを聞いておるので、御意見があったとかじゃなくて、そういった圧力によって番組が変えられたことは事実かどうかと言っているだけです。これが事実であったかどうか、答えるだけでいいんです。

松尾参考人 事実ではございません。

横光委員 その言葉は信じたいと思いますし、毅然と答えていただきたいと思います。私は、この問題は本当に、視聴者の皆様方がそれなりに記事を見て不信感や疑惑を持ったんですから、そういった人たちに説明あるいは理解を得るためには毅然と、そんな事実はありませんと答えていただきたい。

 この問題がなぜ発生したか、私なりに考えますと、いわゆるこの作品は外注であった。NHK本体でもない、エンタープライズでもない、さらに外の会社に委託した。つまり、業界でいう孫請ですね。こういった場合、その企画、意図そのものの現場の思いと、制作するサイドがいかに密接に思いをすり合わせていかなきゃいけないか。これを怠ると、ただつくった、納入した、オンエアする、こういったことでは、いろいろなところに委託されていることと思いますが、非常に議論を招く内容においては、とりわけ現場の制作サイドと委託先の会社との企画、意図の意思の疎通というのは、これまで以上にしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 ただ、私は、こういった問題を踏まえて、NHKに改めて強く要請をしたい、お願いをしたい。

 それは、今回取り上げたようなテーマは、議論が分かれるであろうということは、ある程度想定されていたと思うんですね。そういった難しいテーマに取り組んだ、これが、先ほど私が言うように、非常に挑戦的な意欲が感じられる企画の取り上げ方だと思うんですよ。本当にNHKしかできないんですから。そういったことで、放送を通じて国民の皆様方に深く考えていただき、そしてまた、論議を招くことを提供したわけで、これはすばらしいことだと思うんです。

 ただ、こういった問題が浮上したために、議論を招くような問題はもう避けようとか、あるいはこういったテーマにアプローチすることに現場が萎縮する、このようなことがあっては決してならないと思うんですね。こういうことが起きてしまったら、もう民放と変わらなくなるんですから。

 こういったことがあったとしても、本当に私は毅然と、先ほど言いましたように、自信を持ってこれからも公共放送の使命感を果敢に達成するために取り組んでいただきたい、このことを強く申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

御法川委員長 次に、重野安正君。

重野委員 それでは、最後の質問者となりました。大変お疲れのところ、ひとつ、最後、気合いを入れて答弁していただきたいと思います。

 まず、デジタル化についてでありますが、今までも多くの方から質問がありました。私、やはり気になるのは、二〇一一年という一つの区切りをくくっておるわけですね。八五%以上という数字も言われております。

 私が申し上げたいのは、私は九州の大分県というところから出ているんですが、過疎地に行きますと、老夫婦、お年寄りが非常に多いんです。お年寄りのテレビに対する嗜好というのは若者と違います。デジタル放送になって、いろいろな番組が見られるじゃないかという主張があるわけですが、いや、もうそれは必要ないよという部分というのがあることも事実なんですね。しかも、受信機を切りかえるとなると、金がかかるんです。

 しかし、NHKとしても、国としてもそういう方向で走っていくという、やはりここの格差をどうして埋めるのかというのが、私は大変大事と思うんですね。だから、これを一〇〇%にする誘導策というのを具体的に考えていかなきゃならぬと思うんですよ、中身はわかりませんけれども。その点について考える余地があるのかどうか、そういうことについて方向として考えるということを私はお聞きしたいと思うんですよ。

海老沢参考人 今先生御指摘のように、デジタル化を推進するためには、やはり視聴者国民の理解が得られなければ、いわゆる合意が得られなければ、なかなか達成は難しいだろうという認識は、私も持っております。そういう面で、できるだけ視聴者国民の方々には、このデジタル化の成果、メリットというものを詳しく説明して、こういう利点があります、こういうサービスができますということを、我々がこれから本当に真剣に対応していかなければならないだろうというふうに思っております。

 そういう中で、一〇〇%この十年間でやるという作業は、非常に私は大変な難事業だろうと思っております。地上デジタル化は、私はやはり国家的な大事業というふうに位置づけて、NHK、民放、総務省が一体となって取りかからなければならない事業という認識を持っております。できるだけ一〇〇%達成するように、そういう目標を掲げながらも、いろいろな工夫なり、手だてをまたこれから考えなければならないときも来るのではなかろうか、そういう気持ちも持っております。

 いずれにしても、あくまでもこれは視聴者国民のためになるんだという視点に立って取り組んでいこう、今そういう段階でございます。

重野委員 このデジタル放送に対応する受像機を買うとすれば三十万円だとか、チューナーで十万円とかいう話を聞くのでありますが、我々若者にとっては、将来がありますから、この額というのは大した額じゃない。しかし、先のないおじいさんやおばあさんにとって、この三十万とか十万という金は大変な金なんですよ。だから、そういう現実というものをやはりもっと細かく分析して、二〇一一年にスムーズに転換ができるように、やはりもっともっと検討する余地がある、その点についてはどうですか。

海老沢参考人 我々としては、できるだけ安い負担でこれを享受できなければ意味がありません。何のためのデジタル技術の開発なのかということになります。そういう面で、大量生産になり、そして、技術開発によって値段は急激にこれから下がってくるだろうと私は見ております。今三十万とか四十万、五十万、非常に私はまだ高いと思います。メーカー等には、もっと値が下がるようにひとつ経営努力をお願いしたいということを、私からもお願いをしているところであります。

 そういう面で、これから大量生産になり、そしてまた技術を開発すれば、私は、急激に値が下がり、十年後の買いかえ時期には手ごろな値段でそれを購入できる時代になるだろう。そのために我々も、いろいろな面でメーカーに対して協力をし、一体となって、すべての家庭で、お年寄りでもだれでもが、簡単な操作で、安い値段でこれが楽しめるようにすることに我々も一層努力していきたいと思っております。

重野委員 それでは、そういう点については、想定される事態というものをあらゆる角度から想定しながら検討を続けていただきたいことを要請しておきます。

 次に、デジタル化がどんどん進んでいくわけですが、そのことによって大量な、多種多様な情報を提供できる、それは結構なことでありますが、一つの絶対的前提条件として、この国はどんどん高齢化が進んでいくという実態がありますね。高齢化が進んでいくという現実にあわせて、テレビあるいはデジタル放送がそういう状況にどう対応していくのかということが一つの大きな課題としてあると思うんですが、そういうことについて総務省並びにNHK、どのように考えているか、ひとつお願いしたい。

 ですから、多様な番組を提供していかなきゃならぬということ、それを実現するためには相当なエネルギーを要すると私は思うんです。技術員の確保であるとか、あるいはそういう放送システムを定着させていくための努力、営業努力もしていかなきゃならぬだろう。なのに、百九十人、人を減らしますという内容ですが、これは私は相当に無理があるのではないかというふうな感じがするんです。確かに、この間、経営努力によって受信料はずっと据え置かれてきているということはいいことでありますけれども、それもやはり度合いもので、その点について、今、アナログからデジタルというふうに劇的に転換するわけでしょう、そういうときにこういうふうなことでいけるのかどうなのかという点を私は危惧するんですが、これについてはNHKの方の見解をお願いします。

片山国務大臣 今、海老沢会長から委員にお答えがありましたように、高齢化が進みますから、デジタル化に伴ってどうだと。海老沢会長も言われましたけれども、私は、できるだけ安く、あるいは操作が簡単、こういうふうな機器の開発が行われると思いますし、さらに、デジタル化をしますと、高齢者や障害者なんかも含めまして、優しいサービスができる。例えば視聴者の好みに応じた字幕の文字の色や大きさ、それから解説音声のスピード、音質の選択や、アニメーションによる手話の表示などができるようになるわけです。現に、NHKの技術研究所はそういう開発を盛んにやっておりますから、私はこれはだんだんしっかりしたものになると思います。それから、文字データを自動的に点字に変換できる、置きかえる受信機の開発等が現に行われておりますし、もっとしっかりしたものになることが期待されます。そのためのいろいろな助成も今考えております。

 やはりデジタル化にふさわしい、しかし同時に、高齢者の方にぴしっと合った、そういう全体の仕組みを、システムを考えていくべき時期に来ている、こういうふうに思っております。

海老沢参考人 私どもも、デジタル技術の成果をいろいろな番組の制作に活用していくのが我々の使命だと思っています。

 そういう面で、人に優しい放送ということも大きな項目として挙げております。つまり、高齢化社会を迎えて、高齢者の方々の目に優しいといいますか、目が疲れないような高画質、あるいは高音質のハイビジョンに持ってきたわけでありますし、また、デジタル技術を使っていろいろな、自動認識装置といいますか、字幕を自動化するとか、あるいは話速を少しゆっくりさせるという技術もかなり進んできております。そういうメリットを多くの人たちに享受してもらいたいと思っております。

 それから、番組の質の低下を招いては何の意味もありません。今、百九十人、十三年度、削減するわけでありますけれども、これは間接部門を削減して、やはり番組制作が我々の命でありますから、番組の質の向上、番組制作については人も予算もつけて、NHKの公共放送としての使命を達成するための要員は確保しながら、そして、予算もつけながらいい放送をしていく、そういう努力は今後も続けていきたいと思っております。

重野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。

 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、渡海紀三朗君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。荒井聰君。

荒井(聰)委員 私は、民主党の荒井聰でございます。

 この際、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の七会派を代表し、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対しまして次の附帯決議を付したいと思います。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)

  政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。

 一 放送が社会に及ぼす影響の重大性を深く認識し、放送の不偏不党と表現の自由をより一層確保するとともに、公正な報道と青少年の健全育成に配慮した豊かな情操を養う放送番組の提供に努めること。

 二 協会は、業務運営の一層の効率化を推進するほか、視聴者の十分な理解が得られるよう平成十二年十二月に定めた情報公開基準を適切に運用するとともに、放送法の趣旨に照らし、関連団体等の業務の在り方について検討すること。また、協会は、事業内容の透明性を高めるため、関連団体等との連結決算の導入に向けた検討を進めること。

 三 協会は、その経営基盤が受信料であることにかんがみ、受信料の公平負担の観点から、未契約世帯解消に向けた特段の取組みを行い、衛星契約を含む受信契約の確実な締結と受信料の収納を徹底するとともに、デジタル放送の普及状況等を勘案しつつ、受信料体系の在り方について検討を進めること。

 四 デジタル化やインターネットの高度化の進展等放送を取り巻く環境の変化にかんがみ、公共放送の使命・役割等について検討を進めること。

 五 地上放送のデジタル化については、視聴者に対し周知・徹底を図るほか、デジタル化の円滑な導入に向けた取組みを着実に推進し、アナログ周波数の変更対策については視聴者の理解と協力の下に実施すること。

 六 視聴覚障害者や高齢者に対する情報提供の重要性にかんがみ、字幕放送、解説放送等の更なる拡充と番組内容の充実を図ること。

 七 協会は、地域放送について、地域の実情にあった放送番組の充実・強化を図るとともに、地域から全国へ向けた放送番組の拡充に努めること。

 八 協会は、国際放送について、我が国の実情を的確に海外に伝えるとともに、海外在留日本人をはじめとする視聴者の期待にこたえるため、番組内容の充実に努めること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。(拍手)

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立総員。よって、本件に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、片山総務大臣及び日本放送協会会長海老沢勝二君から発言を求められておりますので、これを許します。片山総務大臣。

片山国務大臣 日本放送協会の平成十三年度収支予算等につきましては、慎重なる御審議の上、御承認をいただき、厚くお礼を申し上げます。

 御審議を通じた貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきましては、今後の放送行政を進めるに当たり、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

 まことにありがとうございました。(拍手)

御法川委員長 日本放送協会会長海老沢勝二君。

海老沢参考人 日本放送協会の平成十三年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして、厚く御礼申し上げます。

 本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程でいろいろいただきました御意見並びに総務大臣の意見書の趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。

 また、ただいまの附帯決議につきましては、協会運営の根幹をなすものでございますので、これを体しまして、執行に万全を期したいと考えている次第でございます。

 まことにありがとうございました。お礼申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

御法川委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

御法川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二分散会




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