衆議院

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第12号 平成13年4月10日(火曜日)

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平成十三年四月十日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 佐藤  勉君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 荒井  聰君 理事 田並 胤明君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    浅野 勝人君

      河野 太郎君    左藤  章君

      佐田玄一郎君    阪上 善秀君

      滝   実君    橘 康太郎君

      西川 京子君    野中 広務君

      菱田 嘉明君    平井 卓也君

      宮路 和明君    山本 公一君

      生方 幸夫君    大出  彰君

      玄葉光一郎君    武正 公一君

      中村 哲治君    松崎 公昭君

      松野 頼久君    松原  仁君

      山井 和則君    山村  健君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        小坂 憲次君

   総務大臣政務官      滝   実君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長

   )            鍋倉 真一君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長

   )            金澤  薫君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   高原 耕三君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  谷  洋一君     西川 京子君

  伊藤 忠治君     生方 幸夫君

同日

 辞任         補欠選任

  西川 京子君     谷  洋一君

  生方 幸夫君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  松野 頼久君     伊藤 忠治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省情報通信政策局長鍋倉真一君、総務省総合通信基盤局長金澤薫君、総務省政策統括官高原耕三君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平井卓也君。

平井委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の平井卓也でございます。

 きょうは、電波法の一部改正に関する法律案につきまして質問させていただきます。本法案に関して、余り細かい技術論は避けまして、国民の視点に立ったわかりやすい本質的な質問に終始させていただこうと思っておりますが、場合によっては一歩踏み込んだ質問になろうかと思いまして、きょうは参考人の方にお願いをしております。

 まず、電波法の一部改正の趣旨ということについてお伺いをいたしますが、今回の電波法の改正というのは、法改正の前提として、国民の公共の福祉に資する電波の有効利用を国策として実行するという考えがあると私は考えています。そのために、当然アナログからデジタルへの変更、アナログ・アナログの変更があるという理解をしておるわけでありまして、電波の適正な利用を確保するための周波数変更対策を行うこと、そういうふうに理解をしておりますが、改めて、今回の法律改正の趣旨及び内容を簡単に御説明いただきたいと思います。

片山国務大臣 平井委員がもう既に申されたとおり、今回の法改正は、電波利用の増加に伴う周波数逼迫の状況に対応して、電波の適正な利用の促進を図るために、円滑な周波数移行を実現することを念頭に置いて必要な措置を講ずるものでございまして、アナログからデジタル放送への早期移行を図る、その前提としてのアナログ周波数変更対策について、給付金の支給等をやってそれを促進する、こういうのが大きな改正目的であります。

 さらに、規制緩和三カ年計画に基づきます無線設備の技術基準適合証明制度において、指定証明機関等に関する制度を合理化するということもその中にあわせて含まれております。

 これも平井委員言われましたが、このことは国民視聴者に大きなメリットを与えるとともに、我が国経済の新生にもいい刺激を与えるわけでありまして、我々としては、国策として所要措置をとった、こういうふうに理解しております。

平井委員 大臣から、国策としてという言葉をいただきました。もう一度確認いたしますが、地上波のデジタル化も、つまり国策としてお進めになるということでよろしいんですね。

片山国務大臣 まさにそのとおりでございます。地上波を含むデジタル化の推進でございます。

平井委員 このことは、国民に一番身近なメディアであるテレビですから、やはりどうしても、国策でやるということを通じて、また国民にも理解をしていただかなきゃならないことだと考えております。

 そこで、先ほど大臣も御答弁なさいましたが、地上波のデジタル化のメリットというもの、これは意外と国民が理解していないわけです。私もこの土日、きょう質問に立つということで、地元の若い人たち、また老人ホームのお年寄り等とも、デジタル化をわかっているかどうか、いろいろ聞いて回りましたが、ほとんどの方々は理解していません。しかし一方で、これは今までの郵政省の指導というものが非常にすぐれていたのだと思いますが、テレビというものはあまねく、くまなく日本全国に普及しておりまして、多くの国民の一番の娯楽になっているということも事実であります。

 そこで、今回の法改正の前提となるアナログ・デジタルの変更というものに関して、このメリットがやはり国民に理解をされなければならないというふうに思っています。

 過去の話をしてちょっと恐縮ですが、NHKのアナログハイビジョンというのは、開発から三十年間かかって十五万台しか普及しなかった。一方、例えばNTTドコモさんのiモードというのは、サービス開始一年で三百万人の方々がサービスを享受するようになった。いわばそこにニーズがあったといいますか国民のニーズにマッチしたというふうなこともあるかと思いますが、何せこのデジタル化というのは膨大なコストがかかるものでありまして、費用便益分析という考えからいってもこれは非常に大胆な政策だと私は思っています。

 その意味で、ここは、今回の質問を通して国民にできるだけデジタルのメリットというものをわかりやすく理解してもらうために、あえてもう一度デジタル化のメリットというものに関してお聞きしたいと思います。

小坂副大臣 平井委員の御指摘の点は非常にポイントだと思うんですね。消費者のニーズのないところにサービスの普及なしというのはおっしゃるとおりでございますし、今回の改革が非常に大胆かつ大規模な、また革命的な改革であるという点におきましても、いわゆるIT改革が農業革命、産業革命に次ぐ第三の革命と言われるように、それを支えるのがやはりデジタル技術だと思いますし、そのデジタルのサービス、いろいろな複合的な分野の中で放送のデジタル化というのは不可欠な分野でございますので、そういった意味においても大変大きな変革でございます。

 御指摘のように、一般の視聴者の皆さんあるいは利用者の皆さんがデジタル化のメリットを十分に御理解いただかなければ、この計画は進んでいかないことでございます。今、デジタル化はどういうメリットがあるかという点におきまして、まず第一は、高品質な映像、音声サービスが実施可能になるということであります。

 第二に、データ放送が同じように、画像だけでなくこういったものもあわせて送ることができるようになります。

 第三番目に、通信網と連携した高度な双方向のサービスが実施できるようになって、いわゆるショッピングやいろいろなことが可能になります。

 また、四番目に、安定した移動受信ができるようになります。今、バスの中でテレビを積んでいるものも多いわけですが、実際に見ておりますと、途中で画像が乱れたり急に見えなくなったりしますが、これが、安定した受信が可能になってまいります。

 五番目に、話速変換等の高齢者、障害者に優しいサービスの充実が図れます。すなわち、お年寄りが聞いている上で聞きやすいパターンというのがあるようでございまして、デジタルで放送することによって、話している速度を変換して聞くことができるようになる、こういった技術も開発されまして、そういったものがデジタルによって可能になってまいります。

 こういった多くのメリットが視聴者国民の皆さんにもたらされるんですということを周知していかなければなりません。

 また、アナログ放送と比較いたしまして使用周波数を大幅に削減することができまして、次世代の情報通信基盤として、電波需要が大幅に増大するというふうに考えられております、例えば移動体分野の電波が逼迫をしているという状況がございます。また、さまざまな電波利用の新しい分野が開発されてまいりますので、そういった周波数の再配分を可能とするための周波数をあけてくる必要性もあるわけでございまして、こういった周波数の有効活用の分野。

 さらに申し上げますと、大手家電メーカーの試算によりますと、家庭におけるIT基盤の形成を通じまして、今後十年間で四十兆円にも及ぶ端末、放送機器の市場を創設するというふうに言われております。この新たな市場創造によりまして、情報家電産業の発展に大きく寄与できる、また、日本経済の持続的な発展にも寄与できるだろう、こういうふうに考えておりまして、これらのメリットを総合的に視聴者国民の皆さんに御理解いただくことが大変必要でございます。

 過日の、委員にも御質問いただいておりますNHKの予算のときにおきましても指摘されたことでございましたが、NHKがデジタル化のメリットを放送したところ、視聴者から大変大きな反応があって、その放送によって初めてデジタル化というものが少し理解できたような気がする、こういうコメントも多かったと聞いております。

 今後、このような機会をあらゆる機会を通じてつくってまいりまして、普及に努めてまいりたいと考えております。

平井委員 今、小坂副大臣の方からお話がありましたとおり、まさにNHKこそが今回のデジタル化に先導役を果たさなければならないというふうに思います。

 今月の記者会見で海老沢会長が、民放とのシェアについて、独占、肥大化していないというようなことを申されましたが、シェアを気にするのではなくて、国策会社として、デジタル化というものにNHKが本当に先導的な役割をやらなければならない、ちょっと話が横道にそれましたが、そのように大臣はお考えだと私は思っております。

 今言われたデジタル化のメリットの中で、現行のテレビを見ている方々にとっての直接のメリットと、次の世代に対する、要するに未来の人間に対する、電波の有効利用という考え方における一つの公共投資というか、新しいメリットを創出する考え方も大きいように思っています。

 今のテレビを楽しんでいる特に若い方々に私が独自にいろいろ聞いてみたら、移動体受信というものに対するニーズが非常に大きい。これは、一部で報道されておりますように、次世代、W―CDMAで例えば低画質のテレビを見られる可能性があるかもしれないということに関心を持たれている方もいらっしゃいます。ここで、国民に対するすぐにわかりやすいメリットとして、移動体受信は地上波デジタルということで国民が享受できるサービスの一つになるというふうにおっしゃったと思いますが、それでよろしいんでしょうか。

小坂副大臣 結論から申し上げるとそのとおりでございまして、私も個人的には、そのサービスを非常に待望している一人でございます。

 携帯電話のような小さな画面ではございますけれども、テレビが受信できて、どこでもニュースその他、あるいは、時間の都合でうちへ帰れない、ビデオをセットしてこなかった、しかし見続けているドラマの大体のストーリーが確認できるとか、そういったメリットは非常に大きいと思うんですね。

 そういう意味で、移動体で安定した受信ができる。しかしこれは、今委員が御指摘のように、いわゆるハイビジョンと言われるような高品位のテレビではなくて、現在のいわゆる標準な画面のテレビぐらいの品質、あるいはそれより若干落ちるけれども受信しやすい形態をとっていく、モバイル受信にはちょうど適した品質というようなものを考えておるわけでございます。

平井委員 非常に高画質、高精細なテレビというもののニーズが一体どのぐらいあるのか、新たなお金を払ってまであるかどうかということになると、これはいささか自信がないところであります。

 そこで、海外の例を考えてみますと、アメリカではなかなかHDTVなんかが普及しない。イギリスの場合は、考えてみると、これはSDTVでしたが、既存の放送が余りにもつまらないものだから、新しいソフトを持っているデジタル放送というものが普及しやすかったと思うわけであります。

 ですから、ここで私は、ニーズを見合いながら柔軟に、HDTVであれ移動体であれ、国民のニーズのあるサービスを提供するように、弾力的に考えて今後検討をいただきたいということをお願いさせていただきたいと思っております。

 この法案の中身に一部入らせていただきます。

 今回の法案では、周波数変更を伴う免許人に対し給付金の支給を行うことを内容としていますが、その場合、周波数割り当て計画等の変更が一定の要件を満たさなければならないというふうになっております。その要件としてどのようなものを定めておられますか、御説明をお願いしたいと思います。

小坂副大臣 委員御指摘のように、周波数変更を行う免許人等に対しまして給付金を支給することを内容といたしておりまして、その要件といたしましては、第一に、アナログ放送による周波数の使用を周波数割り当て計画等の変更の公示の日から十年以内に停止すること、第二番目に、デジタルテレビジョン放送が使用する周波数の割合はアナログ放送が使用している周波数の四分の三以下にすること、第三に、アナログ周波数変更を五年以内に完了すること、以上の三つを要件として定めているわけでございます。

 具体的に申し上げますと、デジタル放送が使用する周波数の割合は、現在アナログで使っております周波数が三百七十メガヘルツ帯、これだけの帯域を全部で使っているわけでございますが、その四分の一、九十二・五メガヘルツは他用途に提供できるようにしていく、こういうことを考えているわけでございます。

平井委員 先ほど要件を御説明いただきましたけれども、今回、この要件というものの中には一つの大きな意味があるように私は考えています。特定周波数変更対策に国費負担をする、その場合、給付金の支給がされるわけだけれども、一定の要件、この要件の一番大切なところは、古い無線システムによる周波数を変更後十年以内の期間限定の条件つきで使用許可するということは、この十年でデジタル化、アナログをやめるということを大きな目安というか努力目標なのか、その十年で区切るということが、この法律では、この要件においては非常に重要なポイントではないかと思います。このことを地上波テレビ放送のデジタル化に当てはめますと、十年後のアナログ放送の停止と言いかえてもいいと私は思います。

 もちろん、国の予算を使うわけですから、いついつまでに幾ら使うという期限がなければ国民の受益にならないという、努力目標としての期限は必要だと私は思いますが、例えばアメリカでは、同じように二〇〇六年のアナログ放送停止と決めていますが、そこには見直しの要件を三つつけております。地域において四大ネットワークの一つ以上がデジタル放送を行っていない場合、またデジタル・アナログ変換の機器の入手が困難な場合、世帯の一五%以上がデジタル放送を受信できない場合は見直しをするといった条件がついているわけです。私は、アナログ放送停止の時期を決めずとも対策費の国費負担は可能ではないかと考えますし、一定の見直し条件をつけてそれを法律に加えるという考えももしかしたらあるのではないかと思います。

 それを今回検討はされたと思いますが、あえて加えていないということですから、その加えていない理由はなぜなのかということ、さらに、十年後にアナログの放送停止は本当に可能か否か、そのことについて御所見を伺いたいと思います。

小坂副大臣 まず、十年という期間でございますけれども、期間を定めてやる場合、やらない場合、私は、今回は政策的にも一定の期間を設けて誘導するということを申し上げているわけでございますが、それだけではなくて、デジタル化を実施するメリットと同時に、実施しない場合の不利益というものをやはり考えざるを得ない。

 世界の流れの中で、通信と放送が融合していくだろうという一つの大きな流れがございます。その根底にあるものは、現在使っておりますインターネット時代の中での放送それから通信、これらがいずれもデジタル化をされるということが一つの要件になってきております。その点から、放送のデジタル化というものはその流れの中での一つの重要な要件であると考えていまして、それを実施しない場合のデメリットをやはり考えて、一定の期間を考えていく必要がある。

 その期間が十年ということについてはどうかということになりますと、一昨年の九月から、NHK、民放と共同で地上デジタル放送に関する共同検討委員会というものを開催いたしまして、専門的な知見を有する方とチャンネル案の作成等デジタル放送の実現方策について検討を重ねてまいりました。こうした検討を通じまして、今後十年間でデジタル放送への全面移行が十分可能であるという共通の認識が出てきました。

 それから、ただいま御指摘をいただきました懇談会におきましても、消費者の皆さんの御意見も賜る中で、やはりデジタル化というものをしていく必要がある、そしてそれは一定の方向の中で、当時は八五%ぐらい普及したところをめどに考えたらどうだということがございました。

 しかし、十年という期間を見て今の共同検討委員会で検討してまいりますと、技術的にも、あるいは一つのメーカー、業界のそういった対応についても、これだけの期間があれば十分に消費者の皆さんにも無理なく御理解をいただき、そしてテレビの買いかえサイクル、いわゆる八年から十年と考えられておりますが、これらを勘案しても、十年あれば無理ない形で十分に導入が可能であろう、こう見られているところでございまして、以上の点から、十年という期間を、法律の上でも十年以内にアナログを停波することを前提とした書きぶりになっているわけでございます。

平井委員 十年でアナログ放送をやめるということになるわけですが、そのときにはデジタル受信が一〇〇%のカバレッジがなければならないということと、アナログ受信を楽しんでいる特に低所得者の方々とか多くの方々がそれまでに買いかえなければならないという問題があろうかと思います。まず、その点についてどのようにお考えになるか。

 もう一つ、今後これはどういう形になるか、私の想像ですが、これからのテレビの受像機を生産していく場合、確かに今のアナログのテレビというのは安いです。本当に低価格になっています。海外で生産をしていますし、そういうところで、非常に安いアナログテレビをどんどん今後とも売ってしまいますと、最終的にアナログ受信者というものがなかなか消えていかない。そこで考えるのは、例えば、メーカーにお願いしてデジタルも見られるような装置をこれから何年以降はその中に組み込んでおく、そのようにすればメーカーにとってもある程度のメリットがあるというような誘導措置みたいなものも検討できる。

 今回十年というふうに区切ってしまえば、各省庁またがって全力で取り組まないとなかなかできることではないと思うんです。恐らく世界で唯一日本だけが取り組む大胆な決断でありますから、そのためには、ただ総務省だけが何となく一般的なガイドラインを示すのではなくて、もっと国として全力を挙げてデジタルへの移行というものに取り組む、そういう意味で、もう少し何か、先ほど私が御提案申し上げましたように立体的な政策というものがほかに検討できるかどうか、ちょっと御所見を伺いたいと思います。

小坂副大臣 委員の御指摘は大変に重要な、また貴重な御指摘だと思います。各省連携をして、国の政策として全力で取り組んでいって初めてそういう意味では計画どおりの実施ができると思います。

 外国においては期間を定めないでやっておりますが、そうしますと、期間を定めない場合のデメリットとして考えられることは、今おっしゃいましたように、今売っているテレビが安いのだからこれをもっと買っておこう、多分これがある限りはずっとやってくれるのだろうという期待の方が優先してしまいまして、買いかえがなかなか進まないという結果に終わってしまう可能性があります。そういう意味で、十年という一つの期間を明示して流れの方向性を国民に御理解いただくことによって、そうか、十年か、テレビを買ったって十年ぐらいしかもたないだろうから、あと八年、ではそろそろデジタルのくっついたものにしようか、こういうふうにその気持ちがだんだん強くなっていくということを想定して期間を定めているわけです。

 そういう意味で、私は、欧米における現在の状況を見ますと、イギリスの一番大きな問題点は、受信のアダプターを無料で配布している企業もありまして、そういう意味では普及がうんと進むと思っていたところが、いわゆる高品位ではない、そのメリットが余り認識されていない、この結果十分に進んでいない、こういう嫌いがございます。

 それに関して、日本は先ほど申し上げたようなメリットがあるわけで、大きなインセンティブが働いていると思います。そこに期間の明示がありますので、国民も迷うことなく一つの方向性を認識することができる、そういうことで一つの流れをつくっていけると思います。それにさらに加えて、委員御指摘のような立体的なメリット、政策を実施して、各省と連携をとりながら、この期間内の完全実施へ向けて努力をしてまいりたいと存じます。

平井委員 小坂副大臣のおっしゃるとおりで、これは国民とメーカーと政府、三位一体となって、お互いの理解のもとに進めていかなければ、なかなかこのようなことにはならないというふうに考えております。

 また、一部では、家電リサイクル法の問題とか、いろいろ指摘される方も恐らくいらっしゃるとは思いますが、そんなふうにならないようにするためには、ある程度今回はメーカーの理解、生産者の理解というものも非常に重要だと思います。ただ売れるテレビをその場だけでつくっていくということではなくて、国策にのっとって、これは国が押しつけるものではないと思いますが、将来的にこれは四十兆のマーケットがあるということを見越したら、多少過去のものを見切ってでもシフトしていただけるような、これはどのように言うのでしょうか、国としてもそういう働きかけをお願いさせていただきたいというふうに思っております。

 それで、実際の今のアナログ周波数変更の実施に向けた取り組みにつきまして、現況をちょっと御報告願いたいと思っております。

片山国務大臣 平井委員からいろいろお話がございました。

 今、アナログ周波数変更の実施に向けて現在の取り組み状況、こういうことでございますけれども、まず、今もお話がありました、国民の皆さんに十分御理解をいただくということで周知活動を懸命に取り組んでおります。

 リーフレットやポスターの作成、頒布、ホームページへの掲載、それから普及啓発用のビデオソフトをつくりまして配ったり展示したりする、政府広報の活用、新聞等への広告等で周知を図っております。また、関係の方では、民放、NHK、総務省に加えて、地元の自治体の関係者の方にも入っていただきまして協議会をつくりまして、今全国レベルでいろいろな協議を進めております。

 また、平成十三年度のアナ・アナ対策につきましては、特に効率的に、一番急を要するところからやっていこう、こういうことでございまして、例えば三大都市圏は二〇〇三年からデジタル放送を開始していただくこともありますので、首都圏、中京圏、近畿圏の広域圏からまず始める。また、地域でも局の多いところ、例えば岡山、香川、それから福岡、長崎、熊本、鹿児島等からまず始めようではないか、こういうことで、今関係のところといろいろ精査、検討いたしておりまして、ぜひ効率的な実施に取りかかりたい、こういうふうに思っております。

平井委員 この周波数の変換というものに関しては、常に混信という問題が出てくるわけであります。

 デジタル先行地域と後発地域、特に先行地域に隣接する地域は、現在の慣例では、後から電波を出した者による先発者に対する電波障害は後発者の責任において対策することになっています。この論をデジタル化にも適用するのでしたら、東阪名の先発者に対して、そのほか、二〇〇六年と言われる地域の中でも先発地域に隣接する地域はもしかしたら多額の対策費を余儀なくされるおそれも出てきます。

 特に、先発地域と同一チャンネルを割り当てられている隣接地域の事業者にとってはこれは非常に大きな問題がある。これもやってみなきゃわからないところがありますので、あえて先回りしてこのような問題を指摘するのはどうかと思いますが、そのような場合には国策としてぜひ何らかの対応をお願いしたい。

 この混信に関していいますと、デジタル放送開始に伴う障害対策費、アナログ変更のみが国費対象で進められていますが、相互にデジタル電波を出し始めると、アナログ・デジタルのサイマル期間で、アナログへの障害、デジタル波への障害が相互に発生する可能性があるということは間違いないことだと思います。その対策に関しまして、総務省のお考えをお聞きしたいと思います。

小坂副大臣 混信の問題でございますが、その前に、先ほどの質問の中にございました欧米の地上アナログ放送の終了時期でございますが、米国におきましては、一九九七年、予算均衡法というのにおいて、地上アナログ放送の終了時期を二〇〇六年末というふうに規定をしているという形になっております。これを言い忘れましたので、補完をさせていただきます。

 また、ただいまの御質問につきましては、アナログ放送の変更先の周波数、それからデジタル放送用の周波数等につきましては、先ほど申し上げたNHK、民放、総務省から成る共同検討委員会におきまして、平成十一年より混信等の問題のないチャンネル案というものを検討してまいりました。そしてまた、アナログとデジタルの混信というのは、デジタルの方が非常に狭い帯域でこれを使いますので、そんなに心配をしなくても済んでいるわけでございます。それから、デジタル・デジタルの混信というものについては、日本独特のシングル・フリーケンシー・ネットワークというものを開発しておりまして、これも欧米とは違う形になっております。

 以上のようないろいろな観点から検討しまして、これに基づいた今回の変更対策を確実に実施することによりまして、今御懸念なさいましたような有害な混信というものは起こらないだろう、このように想定をされております。もし仮に実施をしていく中でそのような状況が若干でも見られましたら、それに対応してこの共同検討委員会の枠組みをまた使いまして、その対策を講じてまいりたいと存じます。

平井委員 これでもう質問の時間が終了してしまいましたが、最後にお願いをさせていただきたいのは、この法案というのは、今すぐ大きなニーズがあるからそれに対応するというものではなくて、どちらかといえば、未来の世代の生活に対する想像力とか責任感が問われる大きな決断であろうと思います。まさに政治の決断という意味が大きいので、先ほど申し上げましたとおり、省庁をわたり、全力で取り組まれることをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、生方幸夫君。

生方委員 民主党の生方でございます。

 まず、片山総務大臣にお伺いしたいのですが、省庁が統合されて三カ月たったわけです。総務省の場合ですと、旧の自治省、郵政省、総務庁、この三つの、私から言うと、まことに性格が違う省庁が一緒になって一つの省が形成をされているわけです。

 三カ月たちまして、まだそれほど大きな効果というのは出てこないでしょうけれども、実際運営をしてみてどういうプラスマイナス効果があったのか。自治省と郵政省が結びついたことによるプラス効果、また、予想もしていなかったマイナス効果が出ているのであればマイナス効果、それから今度は、自治省と総務庁が結びついたことによる同じような効果、それと、郵政省と総務庁が結びついたことによるプラスマイナス、それぞれを、大臣、三カ月間運営をされてきてどのように感じているか、そこからまずお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 今お話しのように、一月六日に新しい総務省が発足しまして約三カ月たちました。私も三つの融和ということは大変心配いたしましたが、おもしろいもので、同じところにいて毎日顔を合わせて、いろいろな会議をしたり、相談しておりますと、だんだん打ち解けてくるのではないか、こう思っております。最高幹部会議、省議その他も、局ごとの会議もやっておりますし、それから若い人中心にPT、ワーキンググループをつくりまして、特定のテーマで三省庁の中堅、若手の方に一緒にいろいろな作業をしてもらっておりまして、きのうもそういう会合をいたしましたが、雰囲気としては大変よくなっている、だからそれをさらに助長していくのが私の役目かな、こういうふうに思っております。

 そこで、今委員からお話がありましたが、それでは具体的に三つの省庁でどういう統合のメリットが出ているか、こういうことでございますが、まず郵政省と自治省は、この国会でもう法案を出させていただいてこれから御審議をお願いするのですけれども、郵便局と市町村行政との連携ですね。市町村が今後合併をしていくことになりますと、コミュニティーと市町村の間にかなり距離ができる。そこで、郵便局にコミュニティーのケアといいますか、センター的なことをやっていただくというようなことを含めまして、郵便局で住民票の写しでございますとか、いろいろな証明書の交付だとか、戸籍謄本、抄本だとか、そういうことのワンストップサービスができるようにしよう。あるいは、地域のIT化も郵便局と市町村と相談してやってもらおうということを一つ考えております。

 それから、郵政省と総務庁では、これは電子政府の実現ということが大きなテーマでございまして、国民の皆さんが政府に対します申請や届け出をインターネット等でオンラインでやる、あるいは、いろいろな手続を、今はもう何カ所も窓口に行っていろいろな書類を出して、こういうのも、一カ所に行けばそこが総合的な窓口で引き受けて、あとは内部関係で連絡をして処理してもらえる、こういうふうな電子政府を旧郵政省と旧総務庁の統合によって行おうと考えております。

 それから、旧自治省と旧総務庁は、国の行革というのは総務庁、地方の行革は自治省でございましたが、今度は、国、地方を通じる行政改革、行政の簡素効率化をこの旧二省庁の連携によってやっていただこう、こう思っております。当面、これもこの国会で御審議をお願いしますけれども、行政評価、政策評価の法案を出させていただきますが、これは法案自身は国、政府の方のそういう評価法でございますが、私は、地方団体も一緒に国とはずを合わせて地方における政策評価、行政評価をやってもらおう、これも旧総務庁と自治省の連携でやってもらおう、こういうふうに思っております。

 さらに、三省庁でIT化、情報化を、官民あわせて、中央、地方あわせてできるのは総務省だけではないか。国も地方も、官も民も、こういうトータルでの情報化戦略を私どものところでやろうと。

 こういうことでメリットを積み重ねていけば、なるほど三つは性格が違うような感じもあったけれども、一緒になってみればよかったなと。結婚でもそうですよね。あの二人、うまくいくかと思ったら、結婚してみると大変うまくいくという例もありますので、ぜひ国民の皆さんにそういう御評価を賜るように頑張ってまいろう、こう思っております。

生方委員 三つの省庁が結びついて効果が出ているという話はわかりましたけれども、三つ結びついて思わぬデメリットがあったということも、三カ月ですから少しはあると思うのですけれども、それはいかがでございますか。

片山国務大臣 そうですね、デメリットというのではありませんが、三省庁がそれぞれの歴史と文化と伝統を持っているのですね。そこのところで、私はいいところを残さなければいかぬと思いますけれども、悪いところはなくしていこうということですが、これはなかなか一遍にいきません。やはり私は、人事を総合的にやるようになれば統合のメリットがもっと出ると思いますけれども、まだ今はやや縦割りで物を処理したり人事なんかの配置も考えるというところがデメリットなんでしょうかね。ただ、これはもう少し時間がかかる、こういうふうに思っております。

生方委員 まだ具体的な人員削減とかいうことは、官房なんかはもちろん統合するという格好になるのでしょうけれども、将来の話になると思うのですが、実際三カ月運営をしてみて、これから当然省庁をスリム化していかなければいけないわけですけれども、どの程度スリム化ができるという見通しが立ったのか。三カ月の時点で見通せる範囲で結構なんですけれども、いかがでございましょうか。

片山国務大臣 今申し上げましたように、それから今委員が御指摘になったように、官房は、昔は三つあったのですけれども、今は官房長は一人、それから人事をやる秘書課も、いろいろなことの調整をやる総務課も一つ、こういうことであります。

 しかし、それでは秘書課で全部人事ができるかというと、なかなかそれは、三十万四千人おりますからそうはいかないので、やはり旧省庁体制である程度やらざるを得ない。だから、これを今後は一体的にやって、今暫定的なポストも幾つかありますから、そういうものはなくしていく、本当の一つの秘書課だけでやる、総務課だけでやる、こういうことにしたい、私はこう考えておりますが、私自身の秘書官がまだ三人おるのですよ、政務以外に事務の秘書官が。これも本来は一人でいいのですね。だから、過渡的には三人で私がいろいろお世話してもらっているから大変便利ですけれども、将来的にはそういうことで効率化していく、こういうことになると思います。

生方委員 もう一点だけお伺いしたいのですけれども、商社なんかですと、配属された部によって背番号がついているような格好で、ずっとそれが商社にいる間、鉄鋼本部にいるなら鉄鋼本部の背番号がついていくという格好になるのですけれども、今度の省庁統合の場合は、例えば旧郵政省という背番号がずっと残っていくのか、それとも、もうそれは一たん総務省の職員で廃止をされて、人事の交流やら何やら全く前の本籍と関係なく配置をするのか。その辺、もちろん専門家というのがありますから全部が全部交流しちゃ困るんでしょうけれども、そうじゃない部分についての交流はどの程度のことをお考えになっているのか、お伺いしたいんですが。

片山国務大臣 正直言いまして、三省庁が一緒になっての人事交流は、課長クラスは行いました。ただ、それから上はまだこれからなんですね、やはりやや専門性がありますから。だから、私は、なかなか一遍にいかないと思いますが、人事配置を変えるたびに次第に交流の幅をふやしていこう。背番号はちょっと外していただかにゃいかぬかもしれませんが、ユニホームはしばらくは前のユニホームでもしようがないかな、こういうふうに思っております。

 今回、総務省になりまして事務だけで上級職を五十三人採りました。それから、技術の方も入れると約百人。こういう今度新しく採用しました方は、私は、全部一体的に、十年間全く平等に人事で扱ってほしい。十年たてば、適性、不適性がありますし努力の多寡もありますから、それはそれから考えていけばいいんだけれども、この四月から採用した新人は全く一体である。それから、今までの方は次第に時間をかけてやっていく、こういうことになろうと思います。

生方委員 全体的に見れば背番号はなくしていく方向にしたいということでよろしいのですね。わかりました。

 それでは、次に電波法の一部を改正する法律案についてお伺いしたいんですが、大きな流れとしてはアナログ放送をデジタル放送に変えていくということで、これについて地方局に対して国からその費用を負担しようというのが今度の法律案の概要だと思います。

 アナログ放送をデジタル放送に変えることによってどんなメリットがあるのか、一言でお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 端的にお答えをいたしたいと思います。

 大きく分けて五つのメリットがいわゆる利用者側にあると思います。一つは高品質な映像、音声サービスが提供できる、またデータ放送をあわせて行うことができる、通信網と連携した高度な双方向サービスが実施できる、そして安定した移動受信が可能となり、また高齢者、障害者に優しい話速変換等の高度な技術を駆使した新たなサービスが充実できる、以上の五つのメリットがあると考えられております。

 また、周波数の有効活用という面からも、非常に増大しております電波需要に対応するための新たな周波数の再配分計画というものが実施できるようになってまいります。こういったメリットが考えられますし、市場の活性化といいますか、メーカーそれから業界等にとりましても、また日本経済全般にとりましても、家庭におけるIT基盤の形成を通じまして今後十年間で約四十兆円にも及ぶ端末、放送機器市場を創造する、こういうふうに言われておりまして、これらの各方面にわたるメリットが考えられるわけでございます。

生方委員 国が主導してデジタル化を進める。別に民間の自主性に任せてデジタル化を進めてもいいと思うんですけれども、国が主導するというのはどういう意図なのでございましょうか。

小坂副大臣 国が主導するという理由をお尋ねいただきましたけれども、デジタル化によりましていろいろな経費が必要となっております。

 設備投資に関しましては、NHK、民放合わせまして一兆六百億円に達すると言われております。これは、基本的にはローカル局を含む放送事業者がみずから負担すべきものという原則的な考え方はございます。さらに、デジタル放送への移行に際しまして、同一の番組をデジタル放送とアナログ放送両方で送信するといういわゆるサイマル放送と言われる方式で送信を続けなきゃいけない結果、放送事業者の負担は新たなものが加わってまいります。これに加えまして、そのことによりますアナログ放送終了後にあく周波数は、当該地上テレビジョン放送がそのまま使用することができるわけではなくて、移動体受信分野等新たなテレビジョン放送以外の分野の電波の有効活用のための再配分が行われるわけですね。

 したがって、放送事業者の方といたしましては、デジタル化に必要な全体の費用について応分な負担は行うけれども、それ以外の部分、いわゆる自分が将来にわたってメリットを享受できない部分、例えば今回のアナ・アナ変換と呼ばれる、あけるために移動していただく経費なんですが、この部分については、周波数の変更対策という観点から、言ってみれば一部の者にしわ寄せがいくような形で新たに生ずるものでありまして、これはアナログの設備に対する新たな投資が必要になってしまうわけですね、周波数が変わりますので。そういった部分はデジタル放送へ移行した後は全く不要になってしまう部分でありまして、それを新たな投資として行うということになりますと、この部分は限られた資本力でありますローカル放送局にとりまして過大な負担になりかねない。

 こういうことが考えられるので、キー局の場合は自主的な対応を独自で行っていただく、しかし、ローカル局につきましては国が対応することとして全額国費で負担することとして、円滑な周波数移行を図るという観点からこのようにさせていただくわけでございます。

生方委員 重ねてのお尋ねで申しわけないんですが、国が主導する、国がお金を出してアナ・アナ転換と呼ばれる、まさにそれはローカル局にとっては全く余分な負担にはなるんですけれども、国がデジタル化を主導するというところの意味は本当はどこにあるのかというのを大臣にお伺いしたいんですが。

片山国務大臣 今小坂副大臣からも話がありましたが、デジタル化は世界の大勢だと私は思っています。それから、私は、将来の国民のことを考えれば、やはりここでデジタル化に踏み切ることが豊かな国民生活の上でも、ニュービジネスを含めて経済に新しい刺激を与えるためでも正しいと。

 ただ、それを一応十年という期間を限ってデジタル化をやる、その前に五年間でアナ・アナ変換する、こういうことでございまして、それには大変な、キー局だけじゃなくてローカル局の負担になるから給付金を出そう、こういうことでございます。そのことが将来の電波需要にも対応できる、こういうもろもろの観点から、やはりこの際は国主導で、国主導といいましてもやっていただくのは放送事業者でございますから、放送事業者の皆さんと連携をとりながら進めていこう、あるいは地方自治体とも連携をとりながら進めていこう、こういうふうに考えた次第でございます。

生方委員 もちろんデジタル化そのものに私は反対しているわけじゃなくて、早くデジタル化をした方がいいとは思うんですけれども、国が主導するということの意味がいまいちよくわからなかったということでございます。

 あと、アメリカとか英国とかスウェーデンなんかはもう既にデジタル放送が始まっているわけですね。この三国の場合はアナ・アナ変換というのがあったんだかどうだか私もよく知らないんですけれども、国が何かお金を出してデジタル化を進めたということはあるんですか。

小坂副大臣 実際には、日本は山が多くて、電波障害等がありまして中継局をたくさんつくらなきゃいけなかった、そのために多くの周波数を使っているという結果、逼迫した周波数の再割り当てが必要になっておりますが、今御指摘のような欧米の各国においては、地形的な問題、局数の問題等から、日本のような大幅な周波数の対策は必要になっておりません。アナ・アナ変更というのはごく限られた一部で行われておりますが、御指摘のような意味でのアナ・アナ変換は行われておりません。

 また、そういった中で国が何か出しているかということでありますが、デジタル化を促進するために企業が受信のための変換ボックス、セットトップボックスを無料で配布しているというようなところはありますが、国が具体的にそのための支出を何かしているというのは、今ちょっと私の手元に資料がございませんので後ほど調べて詳細を答弁したいと思いますが、今私の知る限りではないというふうに思っております。

生方委員 ローカル局が経営が大変だというのは、私もこの間話を聞きましてよくわかっているんですけれども、デジタル化によって大変な部分もあるでしょうけれども、ニュービジネスを展開する余地というのが出てくるわけですね。今、我々はデジタル放送をやっているわけじゃないですから、具体的にどんな新しいビジネスが出てくるかわかりませんけれども、放送局にとってみれば、それなりの負担はあるけれども可能性としては開けるわけです。アナ・アナ変換というのはもちろん放送局にとってはデジタル放送が始まれば何の意味もないものには違いないんですけれども、地方ローカル局にとってもニュービジネスによって新しいビジネスチャンスが広がるということの多少のリスクは、費用の負担として負ってもらってもいいのではないかという考え方もあると思うんですけれども、いかがでございましょうか。

片山国務大臣 生方委員、国主導の意味を最前からお聞きですが、やはり国が主導して旗を振らないと、なかなかローカル局で踏み切れないところもあるんですね。それを、あるところは踏み切る、あるところは踏み切らない、ばらばらならデジタル化の効果がないですし、将来の電波需要に対応もできないので、そこは今回は体力がないところには給付金を出してということなんです。

 ローカル局にもメリットがあるじゃないか、こういうことなんですけれども、このメリットは、やってみないとわからないところは確かにあるんですよ。ただ、私は、これをやることによって電子商取引なんというのは進みますし、テレビショッピングみたいなこともできるようになるし、あるいは地方の場合には電子自治体ということにも大変効果がある、こう思います。ただ、今のことを考えるとデジタル化に相当の投資が要りますから、その前のアナ・アナについては、ローカル局についてはある程度面倒を見よう、キー局は勘弁していただこう、こういうことが我々の考えでございます。

生方委員 一番大きなデジタル化の目的というのは、周波数が逼迫をしている、これは限られたものであるから、その中のある部分をデジタル化によってあけようと。具体的には、デジタル化することによって四分の一程度周波数があくということなんですけれども、四分の一程度あいた周波数は、何がどのように使うんですか。

小坂副大臣 まず、先ほどの御質問の答えを申し上げたいと思います。

 英国におけるアナ・アナ変更については公的な支援は一切ございません。それから、豪州、オーストラリアにおきましては、アナ・アナ変更については、ローカル局についてデジタル化経費の五〇%を支援する、こういう規定はあるようでございますが、それがすなわちアナ・アナ変換にかかわる部分が含まれているのかどうかについては不明なのでございます。以上で先ほどの回答にさせていただきます。

 今御指摘の、あく分ですが、四分の一というのは一つの目安なんですね。ですから、実際にはそれよりもさらに多くの周波数が再配分可能になるというふうに考えられております。

 その分を何に使うかということでございますが、いわゆる携帯電話、それから、フィクスド・ワイヤレス・アクセスというふうに呼んでおりますが、固定無線加入者回線とでもいいましょうか、加入者の近くまで光ファイバー等で引っ張っていって最後の部分を電波で飛ばすようなサービスとか、いろいろなものが考えられるんですね。携帯だけでないいろいろな新たな電波需要が想定をされますので、そういったものに対する利用ということを全体的に考えております。今すぐに目標として挙げるとすれば、携帯は少なくとも利益をこうむることができる、こう考えております。

生方委員 恐らく四分の一全部を携帯電話で利用するわけじゃないと思うんですけれども、ただ、アナ・アナ転換の費用については携帯電話の電波使用料が充てられるというふうになっているんです。そうなりますと、ほかの使っているところは負担しないで、携帯電話だけがアナ・アナ転換に関する費用を負担するというのはやや不公平だというふうに思うんですが、いかがでございましょうか。

小坂副大臣 アナ・アナ変換に対する費用を負担するのが携帯電話だけということではございませんで、電波利用料全体の中からこれを出してくるわけですね。今携帯電話が支払っているのは、電波利用料の中のいわゆる基礎的な負担部分を五百四十円という形で支払っておりますので、その部分が携帯電話の支払う部分にはなりますが、それからまた、今後増収を見込んだ部分では、かなり携帯の普及が急速でございますので、その部分が増収につながっていく形の収入構造はありますけれども、決して携帯が負担するわけではございません。

生方委員 携帯電話の電波使用料が五百四十円、テレビ局は、これは一中継局についてなんですか、二万三千八百円というので、常識的に考えて、テレビ局が使っている電波と携帯電話で、五百四十円と二万三千八百円では余りに近過ぎるというのか、余り適当な値段設定ではないというふうに思うんです。その点が一点と、電波使用料というのはどのようにして算定をされているのか、その二点をお伺いしたいと思います。

小坂副大臣 電波利用料の制度は、無線局全体のための共益的な行政事務の費用、共益費用とでも申し上げましょうか、それをその受益者であります無線局の免許人の方々に応分に負担をしていただくという形になっております。具体的には、電波利用料の料額については、電波監視などすべての無線局に共通に必要な費用について全無線局で均等に負担をしていただく、そしてもう一つの無線局データベース作成等に関する費用については、免許申請書類のデータ量に比例して、これは均等でなくて応分の負担になってまいります。

 この構造でございますけれども、今の二番目の部分ですが、総合無線局管理ファイルと呼ばれるところに具体的に申し上げますと百九十三億円、無線局のデータ量に比例配分をしてまいります。それからもう一つの部分であります、電波監視、技術的な試験事務、電波遮へいのための対策費、安全性の研究、あるいは電波料を徴収するための費用、こういったいわゆる共益的な部分に九百八億円かかっております。

 これらを、先ほど申し上げました共益的な部分の均等割が、九百八億円を割りますと大体五百四十円近くなります。五百三十五円ちょっとですけれども、五百四十円という形で全部に均等負担をしていただいております。放送局の場合にはデータ量比例分としてそれに追加の部分がありまして、合わせて二万三千二百七十四円というものを負担していただいて、携帯電話の場合には共益部分だけですので五百四十円という差が出てくることになっております。

 この部分については、放送局というのは公益的な観点が非常に強い、一方、携帯電話は個人的な利用目的がほとんどでございます。そういう意味で、放送局の負担分というのはそういう比較からすれば総じて適切なものと考えております。

生方委員 今のお話を聞いていますと、電波使用料の算定根拠というのは主に行政費用を負担するという考え方のようですけれども、これから情報化時代になって、まさに周波数というのは資源として位置づけられなきゃいけないんじゃないか。デジタル化するということも、まさにその新しい資源を生み出していくのも大きな目的の一つだと思うんですけれども、このような行政費用の負担という考え方で電波というのを考えていいものかどうか。

 諸外国では入札制度を取り入れるなど電波を確実に資源として考えている。アメリカなんかですと二兆円、イギリスでは三兆円、ドイツに至っては五兆円とかというような落札価格が出ている。

 そうなりますと、日本が持っている電波そのものの資源的な価値というのはかなり大きなものがあるし、これを仮に国が今持っているというふうに考えると、財政逼迫の折、これを、売るというわけにはきっといかないと思うんですけれども、何年間か貸すというような形で、民間からその費用をいただくということによって財政の改善にも寄与するんじゃないかというふうに思いますが、将来的に電波の資源としての価値というものをどのように考えるのか、これは大臣からちょっとお伺いしたいんですが。

片山国務大臣 電波利用料は、先ほども小坂副大臣が申しましたように、無線局全体のための共益的な行政事務の費用を受益者である無線局の免許人の方に負担していただこう、こういうものでございまして、データ量比例分と均等割と、これは法律で根拠が書いてあるんです。テレビ局の方が二万幾らで無線局五百四十円はバランスを失するじゃないかということなんですが、それは一定の根拠のもとにそういうことをやっておりますので、ぜひ御理解賜りたいと思います。

 そこで、電波は資源ではないか、こういうことなんですが、電波の経済的価値は、周波数資源であるということは私も認めざるを得ませんけれども、今、資源として着目して例えば電波利用料を払っていただくという思想ではないことをぜひ御理解賜りたい、こういうふうに思います。

 そこで、入札制度についてのお尋ねがございましたが、これは総務省の前の郵政省で、平成八年度、十一年度の二回にわたりまして有識者の方の懇談会を開催して、入札制度を含む周波数の割り当て方法について検討していただいたわけでありますが、簡単に言いますと、入札制度を採用するといいますか導入するとの結論はなかなか出にくいと。

 入札制度は、外国等でやっておりますけれども、落札金のサービス料金への転嫁の懸念、資金の豊富な者による周波数の独占の懸念等、いろいろ問題がありまして、うまくいっていないようなことも私どもは聞いておりますので、これは引き続いて検討いたしたい、こういうことで、e―Japanアクションプランの中でも、引き続いて検討、二〇〇五年ぐらいまでに方向づけをしたい、こういうふうにいたしている次第であります。

生方委員 電波使用料の算定根拠は法律によって決められているということはよくわかるのですけれども、これから情報化時代になって、情報も電波も非常に重要なものであるという位置づけになりますので、国としても今のその法律で決められている電波使用料でいいのかどうか。これを資源として位置づけて、法律を変えて、制度は入札がいいのか何がいいのか、それは販売方法についてはいろいろな方法があると思うのですけれども、その基本的な考え方、電波そのものをこれから将来的に資源として位置づけていくのか、それとも、行政費用の負担を受益者負担で行っていくという今の考え方をそのまま維持していくのかどうか、その点についてお伺いしたいのです。

片山国務大臣 私は、この問題は今の入札制度等を含めましてさらに検討いたしたい、委員の言われることも一つの御意見だと思いますので、御意見を受けとめて、さらに検討を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。

生方委員 検討というより、具体的に今デジタル化が進められることによって周波数があくわけですよね。あいたところをまだだれか新しく使いたいという人が来た場合は、これと同じ算定で、ではお貸ししましょうというふうになってしまうのか、あるいは、電波というものはこれから将来的にはこういうふうに考えますよという形で新しい販売方法をとるのか、これは今の時点でやはり検討しておかなければいけない課題だと思うのですよ。

 だから、例えば今の周波数の使用料を全体として国としては大体幾らぐらいの価値があるというふうに見積もっているとかいうことは、これはもう事前に、本来はもっと前から検討しておかなければいけなかった課題ではないかと思うのですけれども、これまで省内においてそういう検討というのは全くなされていなかったのですか。

片山国務大臣 先ほども言いましたように、平成八年度と十一年度に有識者の懇談会をつくりまして、周波数割り当て方法についての御検討を賜ったわけですよ。その中には周波数についての入札制度も当然含まれておったわけですが……(生方委員「入札制度の問題ではなくて、価値の問題」と呼ぶ)価値の問題もそのときに議論したのですよ。そういうことを含めて、これからアナ・アナをやって、さらにデジタル化に移行するのは二〇一一年です。だから、二〇〇五年までにアナ・アナを終わるものですから、当面は二〇〇五年ぐらいまでに今委員が言われた問題を含めて方向づけをしたいというのが今当省の基本的な考え方で、いろいろな検討や研究は続けております。

 ただ、今すぐ結論というわけには、検討は急がなければいけませんが、私は、二〇〇五年の方向づけということでも十分間に合うのではないかということで、e―Japanのアクションプランにも入れたわけであります。そこは御理解をいただきたいと思います。

生方委員 大臣としての所見があるのかどうか、大臣はどう考えるのかということを、重ねて失礼なんですけれども、大臣は、やはり今までの考え方でいくべきなのか、あるいは、これはきちんと資源として位置づけるべきなのか、どちらのお考えをお持ちでございましょうか。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

片山国務大臣 電波利用料そのものは、先ほども答弁いたしたと思いますが、三年ごとに見直しているわけでありまして、その見直しの時期に、それまでの三年の検討を踏まえて、方向づけというのでしょうか結論を出したいと思います。

 個人の意見というのは、大臣の場合にはないのですね。そういうことでひとつ御理解賜りたいと思います。

生方委員 個人の意見がないということではなくて、よく個人の意見を述べている大臣もいっぱいおられますので、これは御意見をお持ちであれば本当はぜひとも聞かせていただきたいのですけれども、お持ちかお持ちでないかわからないので、これ以上の質問は避けます。

 私は、基本的に電波というのは非常に大事な資源だというふうにきちんと国の方で位置づけをして、例えばテレビ局だって、これは現実に今視聴者に向かって放送を流していますので、二万三千八百円を急に二億円にするからといって、それでは放送できないということになってしまえば視聴者にも迷惑がかかりますので、これは既得権は既得権として考慮はしなければいけないと思うのですけれども、新しいビジネスをこれから生み出していく可能性が非常に高い分野だけに、そのルールをはっきりさせてほしいというふうに思っております。したがって、それはちゃんと検討をして、これこれこういう基準でこうなんだということをなるべく早くに私は出していただきたいというふうに思います。

 それから、入札制度に関していろいろな問題点があるということは総務省の方の説明でも聞いておるのですけれども、入札制度に問題点があるというふうに考えれば、入札制度以外にどのような形で電波の公平な配分をやろうというふうにお考えになっているのかを聞きたいと思います。

小坂副大臣 まず最後の、入札制度以外に何が考えられるか、これはいろいろな方法が考えられます。例えば、抽せんというような方法とか、あるいは免許料というような形の新たな制度を導入する、それも考えられると思います。欧米における入札制度のデメリットというのは、先ほど大臣の話させていただいたとおりでございますが、余りに高い落札料で落札してしまった結果不払いが生じて、結局また電波を返還して再入札を行うというようなことがアメリカでも起こっておりまして、これによると、その期間は電波が利用できないという不都合が起こります。また、イギリスにおける例のように、余りに高い価格で落札したために事業化の見通しがつかない。したがって、株価が暴落するとか、関連の同じ業界の株価全体に悪影響を及ぼすといったデメリットが指摘をされておりますので、そういった部分を慎重に検討させていただきたい。

 それから、電波は以前は有限だと言われておったのですね。ところが、デジタル化等の技術の進歩によりまして有限の先がだんだん拡大してきて、どこまで拡大するかはっきりわからない部分があるのですね。そういう意味で、もうこれだけしかないとなるとその評価というのはある程度時間的経過とともに定まってくると思うのですが、それが可変でだんだん広がってしまうものですから、幾らぐらいが適当かと言われたときになかなかその評価というのは難しい。では、利用価値の低いものには電波をやらないのかというと、これもまた不公平でございます。

 電波の利用価値というものに着目して料金を決めるというのではなくて、行政的な経費の方から、いろいろなサービスに利用していただいて、その中で行政経費を賄って、電波の有効利用対策の経費も賄って、そして国民全体でそれをうまく利用していこうというのが現在の制度の枠組みでございますので、大臣から先ほどお話がありましたように、価値を今決めろと言われても、私見といってもなかなか出てこないだろうというのが現実だと思っております。

生方委員 例えば、通信衛星なんかの場合は、もう通信衛星を配置できる場所が決まっていますね。だから、これは昔聞いた話なんですけれども、ある国は、自分では幾つも上げる能力がないから、その場所の権限をどこかの国に売ることがあり得るというふうなことを聞いております。

 電波の場合も、日本は島国でそれほど隣国に接していないですから、でもそれは、韓半島なんかはかなりオーバーラップしているところがあると思うのですけれども、そういう国際的な取り決めというのですか、これも当然出てくると思うのですね。日本国内だけで済む話ではなくて、日本はこういう考え方だ、ところが、例えばお隣の韓国はこういう考え方だ、中国はこういう考え方だと。もっと電波の出力が大きくなれば当然ほかのところからも干渉し合うようなことにもなってくると思うので、その辺で日本の考え方をはっきりしておいた方がいいのではないかなということで私は申し上げた次第でございます。

 最後にもう一点でございますが、国からアナ・アナ転換に対してお金が出るということで、これはきのうのニュース等でも報道されておりましたが、自民党さんの方で放送局の番組内容についていろいろチェックをしなければいけないというような意見も出ているやに聞いております。お金を出すのだから当然一緒に口も出すのだというようなことで、放送内容そのものについて、お金を出すということの引きかえに干渉するというようなことがあっては困るなと思っておりますが、最後にその点だけ一点お伺いしたいと思います。

片山国務大臣 私も党でいろいろな議論があることは報道等で承知いたしておりますが、総務省としてあるいは総務大臣としての党の方からのお話は全くありません。

 ただ、有害なテレビ放送等について今のままでいいのかなという問題意識はありまして、現に参議院の方では、与党の方も民主党さんの方も、議員立法でございますけれども、何らかの法案の動きがございます。我々の方としては、基本的には放送事業者の方のセルフコントロール、自律だ、こう思っておりますので、各党だとかの動きについては十分な関心を持ってウオッチしていきたい、こういうふうに思っております。

生方委員 私も今のテレビ番組の内容について問題なしとしないわけではありません。ただ、お金を出すんだから口も出すよということだけはぜひ避けていただきたい、このことだけ申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

渡海委員長代理 次に、松原仁君。

松原委員 民主党・無所属クラブの松原仁であります。

 今、生方委員からの質問もありました、また、先ほど自民党の平井さんからも話がありましたが、今回のさまざまなデジタル化というのは、まさに国策で行う、ある意味ではこの十年、二十年の日本国内における最大の国策の事業ではないかなというふうに思っております。このことによって日本が二十一世紀のIT社会にきちっと立ち向かっていけるのかということも含めて、大きな問題を今回実行していくわけであります。

 そういう中で、今の生方さんの話にもありましたが、一つは、今まである意味で逆に自由に過ぎたという議論もあるかもしれませんが、放送は極めて自由に放送番組や内容を決めてきたわけであります。確かに、私が見ても幾ばくかまゆをしかめるものがなきにしもあらずということでありますが、何がとうといか、私たちはこの日本の文化という中において何を尊重するべきかということになれば、やはり放送がそういった自由を、もちろん自律性のある自由でありますが、きちっと担保していくというふうなことが大変重要だと思うわけであります。

 今回のこのデジタル化の中で、さまざまな国策という中で、そういったものに対して国がやはり一定のチェックをするようになってしまうということは非常に危険を伴っているのではないかと思っておりまして、このことについてちょっと大臣の御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 生方委員にもお答えいたしましたが、放送法を所管する総務省の基本的立場は、憲法に基づく表現の自由、放送法に基づく番組制作の自由、これはしっかり守っていきたい。基本的には、確かにいろいろな議論があることは私も承知しておりますが、それは放送事業者の方の良識と自律、セルフコントロールでやっていただきたい。そこで、放送事業者のそれぞれに私はその辺を強く期待いたしているわけでありまして、法律をもって直ちにということは我が省は全く考えておりません。

松原委員 これから質問を始めてまいりたいと思いますが、地上放送デジタル化の意義ということであります。

 昨年十二月にBSデジタル放送が開始されていますが、BSデジタル放送については、放送の高度化に先駆的な役割を担うメディアとしてさまざまなメリットが言われているわけであります。さらに、千日千万世帯という目標の普及に取り組んでいるというふうにも喧伝をされているわけであります。

 そういう中で、諸外国のデジタル放送の普及状況がどのようになっているか、また、それに対して我が国のデジタル放送の普及状況、これからおくれを取り戻すということで頑張っているわけでありまして、私もそのこと自体は極めて意義深いものだと思っておりますが、この普及状況についてお伺いをいたします。

鍋倉政府参考人 お答えいたします。

 諸外国、アメリカとイギリスについて申したいと思いますが、アメリカにおきましては、一九九四年から衛星デジタル放送、一九九八年から地上デジタル放送が開始をされております。普及状況でございますけれども、衛星放送の加入件数が約千六百五十万件、これは直接衛星から受信をするというもので、CATVを介してというのは調べてみましたがちょっとわかりませんので、直接受信ということでございます。それから、地上放送についても全世帯の六七%以上が受信可能になっているということでございますが、ただ、受信機の普及は約七十八万台ということでございます。

 それからイギリスでございますが、衛星放送、地上放送とも一九九八年からデジタル放送が開始をされておりまして、普及状況は、衛星放送の加入件数が四百六十万件、地上放送につきましては全世帯の七〇%が受信可能というエリアになっておりますけれども、加入件数は百万件ということでございます。

 一方、我が国でございますが、CSのデジタル放送の加入件数が約二百五十二万世帯、それからBSのデジタルにつきましては受信機のものが約五十三万台で、CATVを経由したものを合わせますと約百五十万世帯がBSデジタルを受信している、こういう状況でございます。

松原委員 今そういったお答えがあったわけであります。

 続きまして、BSデジタル放送対応の機種で地上デジタル放送は、多くの国民の方の思いもあるのであえて聞かせていただきますが、基本的には見られるのか。見られないとした場合に、アダプター等をつけるということでありますが、これがどれぐらいの価格になるのかをお伺いいたします。

小坂副大臣 BSデジタル放送は昨年の十二月に始まりまして、今既にそれを買ってお持ちの方が、地上デジタル放送、二〇〇三年に始まるときにそのまま見られるかということでございますが、これは周波数帯も違いますものですからそのままでは見ることができません。セットトップボックスと言われるようなアダプターをつけて、その周波数部分をマッチングさせて見るというようなことができると思っております。また、そうでないアナログテレビをお持ちの方もやはり同じようなセットトップボックスをつけて見る、こういうことになってまいります。

 そのセットトップボックスと呼ばれるものが一体どのくらいの価格か。現在の時点で業界の試算は、まあ二〇〇三年ぐらいになると大体一千万台程度普及した時点で二万円程度であろう、こう言われております。私は個人的には若干違う道筋をたどるかなとも思っておりますが、現在の試算ではそのようになっております。

松原委員 BSデジタル放送が始まったばかりでありますが、なぜそれだけ多額の費用をかけて地上放送をデジタル化するのか、政府としての意義、また国民のメリットは一体何なのかということでありまして、かつて白黒テレビからカラーテレビにかわったときというのは極めて明快な変化というものがわかったわけでありますが、こういった意義とメリットをわかりやすくおっしゃっていただきたいと思います。

片山国務大臣 この地上放送のデジタル化のメリットは、既に小坂副大臣が何回も御答弁させていただいておりますが、非常に高品質な映像、音声サービスができる、データ放送ができる、通信網と結びまして双方向のサービスができる、それから、例えば自動車テレビだとか将来は携帯電話にも安定した受信ができるようになる、さらには話すスピードを変換ができたりする等の高齢者や障害者に優しいサービスの充実もできる、こういうことでございます。

 ただ、今局長が申し上げましたように、現在CSのデジタルやBSのデジタルを見ている方がまだ少ないのですね。CSの方は二百五十万世帯と言いましたか、それからケーブルテレビと合わせてBSの方は百五十万ということは、今テレビの大部分はやはり地上放送を見ているわけでして、五千万台とか六千万台とか言われます中で、まだまだデジタルの恩恵を受けているのは限られておりますから、結局、地上放送のデジタル化を行わなければ、先ほど私が言いましたようなメリットが国民の皆さんに行き届かない、こういうことでございます。

 また、何度も申し上げますように、デジタル化をすることによって周波数逼迫の事情を緩和して新しい電波需要にこたえることができる。将来の国民のために、そういうことはぜひこの際電波の効率的利用ということからもやっておきたい。

 もう一つは、これから放送と通信が近寄ってきますから、そういう場合にデジタルでなければ対応できないということもありますし、あるいは、先ほどから何度も御答弁をさせていただきましたが、世界の潮流がデジタル化の方向でございますから、国際的なつながりから見てもこの際デジタル化に踏み切るべきだというのが我々の認識でございます。

松原委員 まさに国全体の産業構造としての、周波数帯があくであるとか、もしくは国際化社会においてデジタル化がおくれるということは二十一世紀のIT社会に乗りおくれるとか、そういった部分におけるメリットというのは私も非常に痛切に感じるわけなんであります、後の質問でもそれは指摘したいと思っておりますが。ただ、一般の消費者というかユーザーにしてみれば、今、夜テレビをつけて野球放送を見たり普通に生活をやっていく上で何ら支障は生じていないわけでありますから、そういった意味では、格段にそこに理解と配慮を求めることを、我田引水ではなく、説得力のある手法でやっていかなければ、これはなかなか難しい問題だろうというふうに思うわけであります。

 地上デジタル化によるさまざまな副産物というんですか、メリットがあるというふうに言われております。今回の地上デジタル化による経済波及効果というものは極めて大きくなるだろうということも言われておりますし、さまざまな雇用効果もあるというふうに言われております。そういった意味では、ここはこの構想そのもののプラスの評価の側面になると思いますが、具体的にどれぐらいの経済波及効果または雇用創出効果があるのか。ただ、その算定基準が、行政がする場合しばしば非常に読みの甘いものになってしまうという嫌いもありまして、そういったことも含めて御所見をお伺いしたいと思います。これは局長になっていますか。大臣でも結構ですが、局長にしますか。では、大臣にもその後ちょっと一言。

鍋倉政府参考人 先生お尋ねの経済効果につきましては、今回のデジタル化を検討する前提になりました地上デジタル放送懇談会がございまして、ここの報告書が平成十年の十月に出ております。その中で、地上放送のデジタル化によりまして、当然、放送の送信設備の投資ですとか、受信機の買いかえですとか、放送事業者のいろいろな収入ですとか、あるいは新しい放送のサービスが始まりますので、例えばデータ放送、そういった新規放送サービス等がもたらす経済波及効果は、これは産業連関分析によりまして試算をしておりますが、十年間で総額約二百十二兆円という試算を行っております。

 また、雇用創出効果でございますけれども、算出しました二百十二兆円をもとにしまして各部門ごとの一人当たりの年間の生産額というもので割り算をしてみますと、十年間で総計約七百十一万人という試算がなされているところでございます。

片山国務大臣 今、情報通信政策局長から答弁いたしましたが、十年間で経済波及効果は二百十二兆円、雇用創出効果は七百十一万人。これは仮定計算ですから、私はこのとおりになるかならないかということはあると思いますけれども、間接的な波及効果まで含めれば、デジタル化の経済に及ぼすインパクトは大変大きいものがあろう、我々が予測しないような大きなものがあるんじゃなかろうか。これは一定の計算で出した数字でございますので、私はこれ以上じゃなかろうかと実は考えておりまして、そういうことからも、やはり二十一世紀の我が国経済のためにも、あるいは雇用のためにも、ぜひデジタル化に踏み切って、これをできるだけ早く導入していくことが必要だ、こういうふうに思っております。

松原委員 そういう議論になってくると、さきの問いで私が申し上げたように、デジタル化が日本より先行しているところにおいて実際どれぐらい波及効果があったのかということを聞きたくなるわけでありますが、質問にのせておりませんので、あえてきょうは質問いたしません。答弁できますか。できないですよね。(鍋倉政府参考人「ちょっと資料を持ち合わせておりませんので」と呼ぶ)はい、わかりました。

 次に、放送のデジタル化を進めていく上で、アナログ周波数帯変更に伴うアンテナ交換作業や受信機の買いかえ等が発生するわけであります。現在の予想ですと、御案内のとおり、二〇一一年ぐらいまでに完全にアナログ放送廃止というふうな議論もなされているわけであります。

 確かに、一方においては日本の社会をデジタルにするというのは国策としても極めて重要でありますが、一方において、ユーザー側からいいますと、今何不自由なく見ているテレビをかえていかなきゃいかぬ。特に、ある程度資力がある家は別でありますが、極めて、生活というんですか、そういった部分でお金を出せない家、そういった家を含めて、高齢者の世帯でも本当にお金が余りないところとかあると思うんですが、そういうところを考えたときに、二〇一一年という期限をきちっと切ってしまうことが、一面いいという議論は先ほどから行われておりますが、本当にいいのかどうかということについて、お答えいただきたいというふうに思います。

小坂副大臣 期間を切るメリットでございますが、先ほども一部答弁をいたしましたが、期間を切らない場合を想定してみますと、消費者、視聴者にとってみれば、一体いつごろまでに買いかえたらいいのか、自分でも計算ができないわけですね。ほかの人がみんな買ってきたら自分もやろうかなと思っていても、一体どのぐらい普及しているかもなかなかつかみにくい。それよりは、世界の流れの中で利用者国民にとってメリットは何かというと、デジタル化するメリット、乗りおくれないメリット、経済的なメリットその他が享受できるようにすることが国としてやはり必要なこと、国としてやるべきことだ、こう考えて、一定の目標を定めて、そこまでに買いかえてくださいとお願いをし、またそれに従って多くの方々が動いていただくとほぼそのスケジュールが達成できる。

 そういった中で、今御指摘の高齢者あるいは低所得層の皆さんの中でそういった負担にたえられないという方が出てくるかどうか、それをじっくり慎重に見ながら、そういった面での対策が必要であれば、やはりデジタルデバイドを起こさないという形で、国民の合意の中で何らかの対策も必要になってくると思いますが、現状においては、そういうスケジュールの中で無理なく移行していただけるだろう。すなわち、普及の度合いに従って受信機の価格、アダプターの価格というのは格段の低下が見込まれるということ。受信機の価格の大きな部分はセントラルの、中心の演算装置でありますが、このワンチップ化によって飛躍的な価格低下というのはほかの機器で起こっておりますので、同じようなことが期待できるということから、無理なく移行できるものと考えて、現在のところは低所得者層に対する支援の具体策は考えておりません。

松原委員 今、副大臣の御答弁がございましたが、まさに高齢者、低所得者層等の、そういった本当に対応に戸惑う部分が極めて明らかになった場合においては、二〇一〇年、一一年のアナログ放送の打ち切りの期限は守るというふうな観点から、逆にそういった部分での配慮をする可能性がある、こういうふうな認識でよろしゅうございますでしょうか。

小坂副大臣 私は、可能性は否定しないというふうに思っております。しかしながら、今そういうものが何か想定できるかと言われれば、皆さんがそれを期待されたらこれは実際にはできなくなってしまう。むしろ、皆さんに無理なく移行できる期間を算定したのが十年であって、これはその計画どおりに進めさせていただいて、今のような、デジタルデバイドが起こらないでできる期間として定めさせていただきましたので、その形の中で無理なく進む、このように理解をいたしております。

松原委員 そういう中で、デジタル放送が普及しますと、一億台と言われるアナログの受信機、テレビでありますが、これが不要になるわけであります。説明の中では、八年から十年がテレビの買いかえサイクルであるということで、自然の中でこういった買いかえが行われるだろうというふうな議論がありますが、私は必ずしもそうなるとは思っていない。これは極めて理屈の上での理屈であって、現実にデジタル放送がある程度進んでくれば、最初の第一グループというのですか、デジタルデバイドの逆に、デジタルのそれを強く享受するグループ、先進的なグループはかなり早期に買いかえをするだろうし、デジタルデバイドというか、そういった格差で後から追っていく側は、かなり二〇一〇年の最後の最終段階になるのではないかと私は思っているわけであります。

 もちろん毎年の買いかえがあるという中においてでありますが、やはりテレビの値段も違うということもあるわけでありますから、そういう中で、現実に廃棄物というのはある時期に集中的にふえる可能性が極めて高いというふうに思っておりまして、こういう事態が発生した場合、発生しないだろうというよりも発生するだろうというふうにして考えるべきが政治の歩むべき道だと思いますので、その場合にどういうふうな対応、対策をお考えか、お伺いいたします。

小坂副大臣 私どもは発生しないと考えておりまして、するしないで議論をしても、これは結論が出てまいりません。

 今、家電リサイクル法が施行されまして、テレビに関しては回収に経費がかかってまいります。その負担の問題とデジタル化によって廃棄物がふえるという問題は別にして考えたい、こう思っております。

 デジタル化による買いかえサイクルから発生する一時的な廃棄物の増加、これは松原委員とは若干見解を異にしておりますので御理解いただけるかどうかあれですが、デジタル化のメリットというのは順々に広がっていくのですね。ある日突然皆さんが理解してくれるというわけには多分いかないのだと思うのです。それに従って、今おっしゃったように、早い者といいますか、割と先行的に新しいものを買っていただく層と、ある一定のところで理解したら先を見て買いかえていただく方と、あくまでも今のでいいのだと考えつつ最後はしようがないかと言って買いかえられる層と段階があると思うのです。

 これは、言ってみれば、十年の中にある意味で平準化して存在してくるだろう、こういう想定でございまして、そういう中で理解の度合いに従って買いかえていく。もうそろそろテレビが古くなった、隣のうちもあれだし、うちの中が広ければともかく、日本の住宅環境ですとそう幾つもテレビを一つの部屋に置いておくわけにもいきませんし、また各部屋にアンテナを全部設置してというのもなかなかあれでございますので、そういった点で順々に買いかえられていくだろう、こう想定をいたしているわけでございます。

松原委員 副大臣のおっしゃるのはよくわかるのです。ただ、私は、それはそうなるだろうという読みもあるし、そうならないだろうという読みもあるという場合に、そうなったらそれはそれで一番いいわけでありますが、ならなかったときにどうするかというのは、一応、国策でやるわけですから、これだけの大事業をやる上で、そうなりますと言ったって、それはそうなるだろう、私もそうなるのかもしれないと六割くらい思うけれども、そうならなかったらどうするのだということで、そこは押さえておかなければいけない部分だと思うのです。ちょっとお答えください。

小坂副大臣 それでは処理はどういうふうに行われるかといえば、家電リサイクル法に従って、この処理経費は、生産者の側で施設を整備して、そして販売店の皆さんにも集荷をしていただいて、そういった一つの、家電リサイクル法の中で、再利用をされる部分は再利用され、また廃棄するのに必要な費用負担は消費者と応分に分割して負担をしていただく形でこれが維持されるという枠組みをつくったわけでございます。

 それがどのような量が出てきても、基本的にはその枠組みで消化ができるというものを今回のリサイクル法ではつくっておるわけでございますので、それが機能しないということは、すなわち負担割合が適切でないということになるのかもしれませんが、そういう事態は今のところ生じておりませんので、この新しいシステムの中で無理なく消化をされてリサイクル環境が整うもの、こう理解をしているわけでございます。もしそうならない場合どうするかということは、また各省との協議の中で適切な対応を考えていく、こういうことになるのだと思っております。

松原委員 そういった家電リサイクル法もできているわけでありますが、実際は処分場の問題とかさまざまあるわけでありますから、簡単にそれだけのお金をとってやればいけるというふうな議論にはならないと思うわけであります。

 したがいまして、私は、先ほど大臣の話にもありましたように、これだけの経済波及効果を持ち、さらにはおびただしいモデルチェンジをする、怒濤のごとく当初の段階においてなさらなければこのデジタル革命はいかぬと思うのですよ、逆に言えば。徐々にではなく、それなりに加速度的に最初の第一集団は買いかえるということが、さっき言った経済波及効果等を考えれば、むしろ非常にインパクトになる。

 徐々にではなくて、ある程度だんごのようにいく、こう思っておりますので、この廃棄物の議論というのは、実は私の後でまた中村委員もさらに続けるようでありますが、ぜひ総務省が各省庁との関連を持って、そうなったときにはということではなく、そうなる可能性を踏まえて、相互連携をとり対応するべき課題だろうというふうに思っております。

 次に、電波利用料の問題であります。

 これまで電波利用料は三年に一回か何か見直しをされてきているようでありますが、この料額の算定等についてのお考えをお伺いいたします。

小坂副大臣 電波利用料の算定根拠でございますけれども、この電波利用料は、行政経費といいますか、共通に負担していただく共益的な部分と、それからデータベースといいますか、総合無線局管理ファイルと呼んでおりますが、そういったものを整備するための費用、こちらの部分は比例配分なんですが、そういった二つの部分に分かれております。

 まず、共益的な部分でございますが、ここに入っておりますのは、電波監視、それから電波試験事務、また新たな利用技術の開発等の経費、それから電波の干渉を遮へいする必要が出た場合のその遮へいの経費、あるいは電波料を徴収する徴収経費、こういったものが全部含まれて算定をされておりまして、総額で九百八億円でございます。また、総合無線局管理ファイルは、データ量に比例してお願いをするわけですが、トータルで百九十三億円かかっておりまして、以上の部分をそれぞれ分担をしていただくという形をとっております。

松原委員 先ほど生方委員の質問にもありましたが、そういう中で、携帯電話端末の電波利用料が五百四十円、放送局の電波利用料は二万三千八百円というふうなこともあって、どうも値段がちょっとちぐはぐなのではないかというふうな議論があるわけであります。

 もっと簡単に言えば、携帯電話事業者もしくは個々のユーザーは放送局に比べて割高な負担をしているのではないかというふうな声が、それだけ携帯電話は普及しているわけでありますから、国民の広範な、フェアかアンフェアかということも含めて、そういった意識もあるので、これに対してどういうふうな説明をしていくのか、どうお考えなのか、お伺いいたします。

小坂副大臣 共通的な経費というのは電波を利用する方全部で賄っていただいて支えていただく。すなわち、携帯電話の利用者であっても、新たな電波の利用方法の開発とかそういうものはお互いに電波利用者としてそのメリットを享受していただくわけでございます。また、電波の遮へいの問題につきましても、ほかの電波によって邪魔されることを防ぐという観点からすれば、どの無線機器にも対応するものでございます。また、電波料の料金の徴収経費というのも共通している。したがって、そういう部分のみを負担していただいて、それ以外の比例部分がないのが携帯電話でございまして、そういう意味では、全体から見れば応分の負担として適切であろうと私どもは考えておるわけでございます。

 放送局との価値からいうと、その帯域を占有するための占有料みたいな形で考えますと、それは差があるのではないかというような考え方も出てくるのかもしれませんが、そういう考え方をとっておりませんで、みんなで支え合う電波監理の費用、こういうことで応分の負担をしていただいている、こう考えておりますので、適切と思っております。

松原委員 先ほどの生方さんの話も、ここの部分が大分大臣との間でも議論、やりとりがあったわけでありまして、電波利用料についての考え方になってくるのですね。

 今、小坂副大臣の話は、監理料だということでありまして、例えて言えば、電波の周波数帯そのものの使用価値というんですか、これは空気のようなものだ。これは空気というのは一番大事なんですよ、空気がないと我々は死んでしまうわけですから。しかし、空気みたいなものだから、それに対してどのようにこれを監理するか、そういった部分の費用として考えるということでありますが、私は、電波はその周波数帯自体が利用価値を持っているという認識をやはりするべきだと思うんですよ。その価値に着目して携帯電話やテレビ局の費用負担というものを考えていくべきだろうというふうに思っているんですが、大臣にお答えいただく前に、このあたりについて、既にデジタル化が進んでいる他の先進国についてはどういうふうな考え方をしているのか、何か答弁できれば、御答弁をお願いします。

鍋倉政府参考人 電波利用料につきまして諸外国の資料をちょっときょうは持ち合わせておりませんので、恐縮でございます。

片山国務大臣 生方委員とも、いろいろ御質問があり、御答弁をさせていただいたんですが、今、共同にかかる費用を一定の考え方で割り振って電波利用料をもらっておりますけれども、資源というのか資産というのか、そういう価値に着目してお金をもらう、こういう思想を入れたらどうか、私もそれは一つの考え方だと思います。

 電波というもののとらえ方をどうするかというのが一つありますが、国民共通の資産であるという点は私は確かにあると思いますので、電波というものは、先ほど小坂副大臣が言いましたように、広がっていきますから、そういう意味では、今後の動向等を見きわめながら、生方委員それから松原委員が言われましたような点を含めて、今後十分考えてまいりたい。いわば電波利用料そのものに対する性格変更、そういうことも検討いたしたいと思います。

松原委員 電波というのは恐らく二十一世紀に残された最後の数少ないフロンティアの一つだろうというふうに思っておりまして、そういった意味では、やはり日本人に残された最後の資産として、どういうふうにこれを有効に活用するかという問題は極めて大きな命題だと思っております。今回、例えば地上放送のデジタル化というものも、私は、ある意味では、移動体通信に周波数をあけ、もしくはさまざまなほかの新しい時代のIT関係の領域の生存空間を拡大するということも大きな目的だったと思うんですよ。

 ただ、そこで問題なのは、やはり国際的に見てどうなのか。電波というのは、それは微弱な電波であるうちは別でありますが、先ほどの生方さんのお話にあったように、それが強い電波になってくれば地球全体において一つの取り決めというものは必ず生まれてくるわけでありますので、そういった意味では、その物の考え方が、電波にはいわゆる価値がある、電波の周波数帯そのものが利用価値があるという強い認識を国際的にコンセンサスとして持っているのであれば、我々はやはりその考え方をある程度入れて判断をしていかなければいけないというふうに思うわけであります。

 そういう中で、欧米は電波の利用に対しての入札制度というものを導入しているわけであります。諸外国における入札制度の導入状況を、ちょっとダブるかもしれませんが、お伺いいたしたいと思います。

小坂副大臣 諸外国における入札制度でございますが、米国では一九九四年に携帯電話、衛星放送等の周波数を入札で決定いたしております。また、欧州諸国におきましては、英国、ドイツ、オランダ、イタリア、スイス、ベルギーにおきまして、第三世代の携帯電話の事業者選定方式として入札制度を導入いたしております。また、同じ欧州の中におきましても、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧諸国や、フランス、スペイン、ポーランド等におきましては、同じ第三世代の携帯電話の事業者選定に当たって比較審査方式を導入いたしております。

 こういった導入状況でございますが、それぞれの入札価格等々、細かいことにつきましては、もし御質問があればお答えをいたしたいと思います。

松原委員 この入札制度というのはまだまだこれからのあり方だろうと思っておりますが、欧米における入札制度において、いい点もあっただろうし、悪い点もあっただろうというふうに思っております。さまざまな課題も残されているというふうに私も聞いているわけであります。

 そういう中で、我が国においてもこういった入札制度を導入するべきだろうというふうな議論もありますし、私も基本的には、どのような形が一番現実的なのか、どのような形であれば入札をした中において問題が残らないのかということの研究は必要だと思いますが、入札制度を導入することを検討すべきだと思いますが、これについての大臣の御所見をお伺いいたします。

片山国務大臣 これも既にお答えしたことに重なるかもしれませんけれども、なるほど入札制度は手続の透明度が高い、こういう利点がある一方で、先ほども申し上げましたが、落札金のサービス料金への転嫁が行われるおそれがある、資金の豊富な者が独占してしまうおそれもある、それからまた資金を準備できない新規参入者が排除されるおそれがある等が指摘されておりまして、アメリカにおいてもいろいろ問題が生じている。また、イギリスやドイツの次世代携帯電話の入札でも、落札価格が大変高額でございまして、これまた問題が生じておる。

 こういうことで、利害得失があるものですから、これも先ほど申し上げましたが、e―Japanアクションプランにおきましては、既に周波数入札制度を導入している諸外国の状況を参考にしつつ、入札制度を含めて、我が国における最適な周波数割り当て制度は何か、こういう検討を行い、二〇〇五年度までには結論を得たい、こういうふうなことをせんだって決めたわけでございます。特に平成十年七月に、IMT二〇〇〇、次世代携帯電話の導入に当たり基本的な考え方についてパブリックコメントをとりましたところ、周波数入札制度の導入についてはほとんど反対一色でございましたので、そういうことも参考にしながら考えてまいりたいと思っております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

松原委員 確かに、電波というのは極めて公共性が高いものでありますから、それこそ、その電波をお金を持っているところが買い占めて、何か偏向した放送を朝から晩まで流し続けるというふうなことは、これは一番危惧しなければいけないことだろうというふうに思っております。

 したがって、入札制度をとる場合も、すべてのエリアというのではなく、例えば公共的な放送についてはまたおのずから別の議論があり、そしていわゆる通常の移動体通信においてはまたおのずから別の議論があるというふうに、全部を一括してということではなく、そこは細かくいろいろな状況の中で個別に判断をしていくべきだと思うんですね。

 それから、あと、やはりそういった場合に、例えばテレビ等の放送ではない、別の部分で電波のエリアを使おうという場合、ある程度入札にかなうだろう、その得失の中において。問題は、その金の部分であります。

 金の部分に関しては、私は、例えばだれかが家を買う場合にローンを組むのと同じように、それをきちっと売るようにするとか、二年ごとに見直すとか、今ここでは時間がないので詳しく話しませんが、いろいろなバリエーションを組むことによって、より民間が、新しい民間も参入できる。一回決まってしまったら永遠じゃありませんよ、常にこれは流動的にいくんですよ、そういうふうな知恵を絞った、全部をいわゆる入札でというふうな議論ではなく、部分的なエリアは入札でいこう、それもこの周波数帯からここまではこういうふうに売却しようとか、ここからここは二年ごとの例えば家賃収入的なもので、そのときの一番高値に落札させようとか、そういう幾つかのバリエーションを組んでやる。民間では不動産の世界とかそういうところでこういったものは随分と新しいあり方が議論されているわけで、そういった発想をぜひ入れてこの入札制度というのを、単に全部が一括入札だとリスクがあるとか支払いができないとかいうことではなくて、お考えをいただきたいというふうにお願いをする次第であります。

 次に進みます。

 地上デジタル放送を実施するには全国で数千カ所の送信設備の改修が必要と言われております。NHKは五千億円の設備投資、民放で五千六百億円、こう言われておりまして、こういう中で、地上ローカル局というのは、実際はなかなか財政的にも厳しい中で運営をしているということを我々は承知をしているわけであります。

 地上ローカル放送事業者は、このデジタル化の投資負担に本当にたえられるのか、そのことが同時に、番組制作費や視聴者、番組の質とかにしわ寄せが来るのではないか、こんなふうな思いもあるんですが、副大臣の御答弁をお願いいたします。

小坂副大臣 今入札制度の議論もありました。私も、入札制度については、委員が御指摘のように、上限を設けて入札をするとか、あるいは、すべての利用者に対して入札を一括してかけるというのではなくて、一つのカテゴリーをつくってその枠の中で入札をするというような、いろいろな工夫があると思うんですね。ですから、そういった面で、大臣も御答弁申し上げているような形で将来的に幅広く検討してまいりたい、こう考えております。

 ローカル放送事業者のデジタル化の投資、これはデジタル化をするだけでも大変なわけですね。そこにアナログの対策経費までかかってくるとなると大変だということで、アナログの対策経費は国の方で面倒を見る、こうなったわけです。しかし、デジタル化そのものに対しては、これは事業者としてのメリットも当然あるわけですので、基本的には事業者の自助努力でやっていただく。しかし、それでもなかなかデジタル化が進みにくいと、これは国全体としてやはり問題が出てくる。

 そういう点から、国税に関しまして法人税の特別償却一五%とか所得税の特別償却、地方税におきましては固定資産税の軽減化、また財投の機関による低利融資というようなものを考えたり、あるいは政策金融機関による無利子、低利融資等を考えたり、いろいろな支援策を考えてこれを進めてまいりたい、こう考えております。

 ローカル局のデジタル化がスムーズにいかないとデジタル化全体の計画が狂ってしまうわけでございますので、できる限り無理なくやっていただけるような支援策を今後とも考えてまいりたいと考えております。

松原委員 そういう中で、可能性の問題でありますが、地上ローカル放送事業者がデジタル化の投資負担にたえられなくなる場合、業界の方から、系列内における資本関係の強化に対するニーズが高まってくる、可能性ですが、あるのではないか。法制度でマスメディア集中排除原則というものを見直すこともあるのかどうかということでありますが、この辺についての副大臣の御所見をお伺いいたします。

小坂副大臣 実際には、まだローカル局の意見聴取を行っていないんですね。今までキー局を中心とした民間放送事業者の団体からの意見聴取あるいはNHKの聴取を行っておりまして、四月にローカル局の意見聴取を行う予定でございますので、その中のいろいろな御意見を参考にして考えてまいりたいと思いますが、民間放送事業者の団体であります民放連の方からは、マスメディアの集中排除を緩和してほしい、こういう要望をいただいているところでございます。今後、そういった御意見を踏まえながらあり方について検討してまいりたいと考えております。

松原委員 そういうふうなさまざまな多くの事柄がデジタル化の中で起こってくるわけでありますから、ぜひ、一方においては、自由な放送というものは、そういう中で逆に担保されていかなければいけないのかなというふうにも思っております。

 デジタル放送の送信設備の整備に当たっては、コスト削減の観点から、NHKの方で一緒になって鉄塔等を共用することによって二、三〇%の経費が削減できるんじゃないかというふうに言われているわけであります。やはり結果として、お金が高くかかればそれは視聴者に来るわけでありますから、これは非常に重要なことだと思うんですが、こういったNHK、民放の鉄塔共用等について、行政として、コーディネートする等何か考え方、思いがあるかどうか、副大臣にお伺いいたします。

小坂副大臣 もう既にNHKと民間放送事業者団体の間ではそういった話し合いが行われているようでございまして、スムーズにそのような話し合いが進むものと期待をいたしております。もし必要であればそのコーディネーター役を務めろということであります。今のところその必要もなくそういった協調が進んでいくものと考えておりますが、必要があれば、そういったものを十分に注視しながら検討してまいりたいと存じます。

松原委員 そういう中で、本当に二十一世紀というのは、新しいIT社会、情報革命の社会がやってくるだろうというふうに言われているわけであります。インターネット網も整備をされる、光ファイバーもできればこっちもできるということで、さまざまなものがどんどんと生まれていくわけであります。

 昔、私が大学時代に、「グローバル・ブレイン」という書物がありました。「グローバル・ブレイン」というのは何かというと、人間一人一人が脳細胞のようなもので、それがシナプスというんですか神経細胞、神経網でくっつくことによって、ちょうど地球を人間の一つの大脳、頭蓋骨に見立てると、それが発達段階を踏んで、ゼロ歳の子供が三歳になればそれなりのシナプスを持つように非常に変わっていく。そういう中で、実は人間のあり方も変わっていくだろうというふうに思っているわけであります。人間のあり方が変わり、今までの一人一人の個の存在というのも、この大きなIT社会では、従来の個人という意識がまた違うものに変わっていくかもしれない、それほどの大きな時代の転換がこれから来るだろうと言われているわけであります。

 そういう中で、今後インターネット網の整備が進展する中、インターネット放送がブロードバンド化することにより主流になるわけであります。地上放送はインターネット放送と競合して生き残っていけるのかということも含め、さらには二十一世紀の我々の社会がどうなるのかというのを、質問の最後でありますから、このデジタル革命、やはり大所高所から気宇壮大に夢を語らなければこの国策は失敗するわけであります。夢を大きく語ることがこれを成功させるわけでありますから、今言ったようなインターネットとの共存がどうできるのかというふうなことは現実的な部分の議論でありますが、含めて二十一世紀への大きな夢を大臣に語っていただきたいと思います。

片山国務大臣 松原委員言われますように、私は、二十一世紀にとってIT革命の成功、デジタル革命の成功は不可欠な課題ではないか、そのために全力を挙げたい、こう思っております。

 今お話しのように、インターネット網の整備がさらに進んだ段階で放送が果たして生き残れるか、こういうことでありますけれども、私は、放送ネットワークには大変な特徴があると。多くの人に一度に大量の情報を安く送ることができる、災害時等において通信が途絶えても放送は機能できる、あるいは、一度に多くの人に情報を送ってそれを受ける場合に、それが途絶えたり品質が悪くなるということはない、また、視聴者の方は簡便な受信機でも受信できる等の特性があります。私は、放送と通信は、お互いの距離がなくなって融合してくると思いますけれども、通信は通信、放送は放送として十分生き残れるし、お互いのそれぞれの特性をより発揮して共存共栄ができるんではないか、こういうふうに考えております。

 インターネットを中心としたIT時代、デジタル時代は、個人が生かされる、マスでなくて個々の個人のそれぞれの考え方、生き方が生かされる時代になるんではなかろうか、そういう意味では、二十世紀とはまた違ういろいろなものが出てくるんではなかろうか、私はこう思っております。

 ただ、怖いのは、パソコンとだけとか携帯電話だけとか、そういう自閉症的な人がふえてくるおそれもあるので、ハイテク、ハイタッチといいますけれども、ITが進めば進むほど、生の人間の心の交流だとか触れ合い、そういうものをどうやってちゃんと残していくか、それを位置づけていくかということがやはりもう一つ大きな課題になるんではなかろうか、こういうふうに思っております。

 いずれにせよ、急速に変化し発展するIT化、デジタル化を、国民経済の中であるいはそれぞれの国民生活の中でしっかりとして活用していくということが必要だろう、こういう認識を持っておりまして、そのために総務省挙げて努力いたしたいと思います。

松原委員 最後に、今総務省の大きな課題は、地方分権というのがずっと課題としてあるわけでありまして、そういう二十一世紀の新しい地方のあり方というのは、例えば、特定郵便局を一つの地方のキーステーションにして、そこを一つの分権のよりどころにしようなんという議論もあるわけでありますが、実は、地方分権とデジタル革命というのは有効に結びつく可能性が極めてあると僕は思うんですね。

 そういった意味で、生方さんの質問に、総務省というのは、自治省また郵政省、こういったものが一緒になったという議論がありましたが、総務省としてのメリットを生かして、地方分権とデジタルというものについて、御感想で結構でありますので、お伺いをいたしたいと思います。

片山国務大臣 地方分権ということは、一口で言えば、地方に権限を与え、事務を与え、財源を与えて、意思決定は地方限りでやって、しかもそれが実行できることだと思いますね。

 それで、私は、適切な意思決定をするためにはしっかりした情報をたくさん把握するということが必要だと思いますので、本当に有効なる地方分権のためには地方の情報化ということがこれまた不可欠ではなかろうか、こういうふうに思っているわけであります。

 だから、一つは、地方側がいろいろな情報を、例えば、インターネットというのは時間と距離をなくするところに特徴がありますから、しっかりした情報をとって、しっかりした判断、決定をしていく。もう一つは、同時に、地方からの情報が発信できる。こういう意味がありますので、このIT革命、デジタル化を、デジタルデバイドがないように、どんな地域でも同じように進むことを地方分権のためにも考えていかなければならない、こう思っております。

 また、今、地方の中ではイントラネットということを一生懸命やっておりますけれども、地方の拠点をLANで結んで、情報のアクセスやいろいろなことが、住民の皆さんに恩恵が行き渡るようなことも努力しております。そういう中で、役場が一つの中心になる、郵便局も一つの中心になる、こういうふうに考えておりますので、どうか総務委員会の諸先生の御支援を賜りたい、こういうふうに思っております。

松原委員 終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、中村哲治君。

中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治です。

 まず、いわゆるIT革命に対して森政権が果たしてきた役割について、私なりに意見を述べさせていただいた上で質問に入りたいと思います。

 今回の電波法の改正というものは、森政権が取り組んできたいわゆるIT革命のための環境整備の一環だと位置づけられると思います。私は、一般論として、このIT革命の名のもとにデジタル化を進めていく政策というのは、大変よいことだと思います。

 まず、国全体の情報の流通が本当に円滑になります。そうすると、生産性も向上しますし、経済も上向いてくる。先ほども話がありましたように、個人の生き方も変わってくる。情報の共有により、あらゆる分野で社会参加が進むことになるでしょう。先ほども地方分権に非常に役に立つという御意見がありましたけれども、本当にそういうことだと思います。ひいては、日本の民主主義というものも成熟化していく、そういうふうにつながることになっていくんだと考えております。

 しかし、何事にも、光の部分があれば影の部分があると思います。IT革命も、何も考えずに推し進めていけば、影の部分が非常に多くなってしまう、かえってIT革命なんかなかった方がいいんじゃないかというような人がたくさん出てくることになると思います。私たち政治に携わる者の使命というものは、その影の部分をできるだけ取り除いていく、そのことなのではないかと思います。

 森政権の一年間の特色として、私たちは不十分だと思いますけれども、不十分とはいえ、このIT革命に取り組んできたこと、これが挙げられると思います。しかし、残念ながら、森政権というのは余命幾ばくもないようです。片山大臣、小坂副大臣、本日はこのIT革命に取り組んできた森政権の最後の置き土産として、IT革命に対する影の部分を解消する方針についてはっきり示していただきたいと思います。

 三月十六日、NHK予算の審議のときに、私は、「この続きは電波法のときにやらせていただきます。」と申させていただきました。早速続きの質問をさせていただきます。

 まず、アナログテレビが使えなくなることについてお聞きします。

 電波法改正案の七十一条の二によれば、二〇一一年には今あるアナログテレビはそのままでは使えなくなるということです。この影響を最小限にするためには、デジタル地上波をアナログテレビで見られるようにするアダプター、いわゆるセットトップボックスが二〇一一年に幾らぐらいの値段になっているのかということを今のうちから想定しておく必要があると思います。

 小坂副大臣は、三月十六日の総務委員会で、山村委員の質問に対して次のようにお答えになっています。

 アナログのテレビにつけるセットトップボックスと言われているアダプターが、たくさん需要が出れば価格が急激に低下をいたします。今一万とか二万とかするものが、二〇〇六年ごろになりますと、恐らく一万円をはるか下回って提供されるような状況になっていると思いますが、そういうことになりますと、それをつけるだけで見ることができる。

このように小坂副大臣はおっしゃっております。

 しかし、今、BSデジタル放送を受信するためのセットトップボックスは大体十万円前後と言われております。それを、今一万円とか二万円とかするものだとおっしゃっているのは、どうも事実を誤って認識されているのではないかというふうな印象を受けます。もちろん、現時点でこのようなアダプターは販売しておりませんので、今一万円とか二万円ということはあり得ないんですね。

 先ほど、小坂副大臣は、二〇〇三年に二万円ぐらいになっているだろうと試算がある、そういう御答弁だったのですけれども、このあたりのところの御認識をもう一度確認しておきたいと思うんです。いかがでしょうか。

小坂副大臣 今の、最後のセットトップボックスの部分だけ、まず答弁させていただきたいと思います。

 私が過日の委員会におきまして一万円を切るだろうと申し上げました根拠は、一つは、今パーソナルコンピューターでアナログの信号をデジタルに読みかえてビデオ録画するような装置、ボードといいますか、そういうものが発売をされております。従来は三万から五万ぐらいしておりましたけれども、今一万五千円から、安い物は一万円を切っております。それがデジタル変換の部分の一つの参考になるものとして、自分なりの資料として頭に置いたことでございます。

 二〇〇三年に一千万台普及している時点で大体二万円ぐらい、これはメーカー等の試算でございまして、それなりにマーケットを知っていらっしゃる皆さんの意見として価値があると思っております。

 その後、二〇〇六年ぐらいに本格的な、地方も含めた放送が開始される時点で幾らぐらいか、こう試算したときに、私は、その一番心臓部の、一番金のかかる部分がワンチップ化されることが価格低下の大きなかぎを握っていると思いますが、そこまでにはIMT二〇〇〇が普及をいたしまして、携帯電話も動画像、またその中でデジタル放送を受信できるような機能を備えたものも発売されてくることが想定をされます。そうしますと、ワンチップ化されたチップは共用部品として幅広く利用され、そのための生産体制が十分に整ってくる、こう考えられますので、そういった時代には一万円を切るようなものが出てくるだろう。

 また、デジタル放送のフル機能をコンバートするセットトップボックスの値段と、もう一つは、今あるアナログテレビでともかくデジタル放送の絵だけでも見たいというような要望にこたえるセットトップボックスも出てくるんではないか。その場合には、多機能ではないものですから、非常に単純化された機能で大変低廉なものが出てくるだろう、私はこのように想像をいたしております。あながち単なる空想を言ったわけではないつもりでございまして、御理解をいただければと思っております。

片山国務大臣 冒頭に、中村委員からいろいろなお話がございました。

 森内閣はIT革命を最大の課題にいたしております。御承知のように、昨年の臨時国会でIT基本法を通していただいて、年末にIT戦略会議がその戦略の提言をいたしまして、一月六日に新しい省庁体制が発足すると同時に総理を本部長にします新IT戦略本部を立ち上げまして、私も副本部長の一人にしていただきましたが、一月二十二日に年末の民間の戦略会議御提言のものを中心にe―Japan戦略という国家戦略を決めまして、三月末までにe―Japan戦略に基づくアクションプランを決めた、こういうことで推移いたしておりまして、その相当部分は我が総務省が担う、こういうふうに私は考えております。

 そこで、IT革命というのは経済的な効果も雇用的な効果も大変大きゅうございますし、また国民生活にも大変いい影響を与えるということでございますが、委員言われましたように、光だけではなくて影があるよ、こういうことでございまして、当面の影といたしましてはいわゆるデジタルデバイドがあるのではなかろうか、地域的に、年齢的に、所得的に。

 地域を見ますと、大都市圏が一番進んでおりまして、インターネットの普及、携帯電話の普及、その他ですね。その次が中小都市で、地方の市町村は大変おくれている。それから年齢的に見ると、若い人が大変利用されておって、高年齢になるほど利用率が低い。所得的には、所得の高い人がやはりITに一番なじんでおられて、所得が低い方がもう一つである。また、障害者の方が今のIT機器等になかなかおなれになれないというようなことがあります。私は、この情報格差、デジタルデバイドを解消することが当面の一番大きな課題ではなかろうか、こう思っておりますし、情報バリアフリーということで、障害者の方や高齢者の方でも手軽に簡易に利用できるような機器の開発も必要だ、こう思っております。

 これも既に答弁させていただきましたが、総務省ができましてから、総務省にIT有識者会議というのをつくりまして、ここではデジタルデバイドの解消を中心に議論していただいております。メーカーの社長さん、あるいは地方団体の代表、情報通信事業に携わっている方、障害者の代表の方、高齢者の代表の方、いろいろ入っていただいておりまして、これは六月中ぐらいまでには結論を得たい、こう思っております。

 そういうことで総務省の取り組むべき大きなテーマとしてIT革命、デジタルデバイドの解消を今後とも十分にしっかりと取り組んでまいりたい、こう思っております。

中村(哲)委員 片山大臣の御答弁で、デジタルデバイドの解消というのが今当面の一番の課題だということを聞かせていただきまして、本当に私もそうだと思います。その点についてこれからも強力に取り組んでいただきたい、そういうふうに強く思います。

 小坂副大臣の御答弁をいただきまして、二〇〇六年のころには一万円を切るだろう、そういう見通しでやっていく、そのことの説得力も非常にあるのかなと思いました。そして、先ほどの松原委員の質問に対する御答弁で、もし下がらなかった場合には何らかの対策も考えていかなくてはならないということもお聞かせいただきましたので、その点だけ御確認はさせていただきます。

 次に、いわゆる共聴についてお聞きいたします。

 山間部など電波が届きにくい地域が我が国は多いということで、一カ所で電波を受けてそれを増幅するなどして有線で各家庭に放送を届けるという共同受信のための施設、いわゆる共聴施設がこの国には設けられていることが多いです。また、共聴施設というのは、そのような山間部などだけではなく、ビル陰などで都市部でもマンションなどに設けられているところも多い。しかし、このような共同受信のための共聴施設というのがデジタル化によって大きな影響を受けるのではないか。その点についての議論なりが余りなされていないように私は感じております。

 そこで伺うのですけれども、デジタル放送受信のために共聴施設を全国でつくりかえるコストとしては、日本全体で幾らぐらいになっていると御試算しておられるのでしょうか。

小坂副大臣 いわゆる共聴施設という中には幾つかのパターンがあるのかと思うんです。一つは、アンテナを高いところに立てて、そして受信した電波をケーブルを通じてアンテナ線として各戸のテレビに配給をして、そこで見ていただくという形のもの、これが一般的だと思います。

 デジタル化に際して必要な設備というものを考えますと、一つは、同じような、アンテナはそのままなんですけれども、デジタル電波が受けられる方向性等を全部修正した後、それで受けていただいたものを流すと、デジタルのテレビをお持ちの方はデジタルで受信をする、アナログのテレビをお持ちの方はその中からアナログの電波を拾って受信する、こういう形態が出てくる。また、その中で、いわゆるアナログテレビでデジタル放送を受信するために協調的に何かできないかということも考えられると思うんです。

 ただ、いわゆる受信対策としての部分だけを考えますと、共聴施設はそのままの形で、周波数の適正等のデジタル化へのアンテナの施設の整備等を行っていただいて、それぞれの施設の所有者または利用者の負担においてこの対策をとっていただく、これが原則でございまして、これ以外のことは今考えてございません。

 また、責任を持って取り組む主体者というのは、今申し上げた共聴施設を、例えば協同組合のようなもので運営をしていれば、その組合の出資の中でやっていただく、出資者のそれぞれの分担でお願いをする、こういうことでございます。

 今御質問はなかったのですが、今の私が申し上げた三番目の形、いわゆるアナログのテレビでデジタル放送を受信するように協調して何かできないか、こういうことになりますと、これはチャンネルがたくさんある場合にはなかなか難しいですね。ですが、一つの形に大もとで変換したものだけを受信するという形にすれば、そのチャンネルだけならば共聴することが可能かもしれません。

 ちょっと余計なことを申し上げましたが、基本的には、そういった主体としては利用者の負担でお願いをするということを考えております。

中村(哲)委員 利用者負担でやられるということで、その点は御確認させていただきましたけれども、メタル線では帯域の問題で非常に難しいのじゃないかという議論もあると思うんです。線そのものを光ファイバー化する必要があるのではないかという意見もあります。

 そうすると、非常に大きなお金がかかることになると思うんですけれども、その点に対しての事実の確認をさせてください。

小坂副大臣 いわゆるケーブルテレビのようなものを想定した場合、いわゆる共聴受信というよりはむしろフルサービスをケーブルで行っていく場合、これは情報量が非常に多くなってまいりますので、通常のメタルケーブルだけでは賄い切れないのではないかということも想定される部分が出てくると思います。また、帯域的にカバーし切れないのではないか。

 これは、技術的にいろいろまだ対応可能ではないかというふうに私も考えています。そういった趣旨であれば、これはちょっと研究をしてみないとわかりませんが、何か具体的な事例があれば、こういった部分、こういうことでどうなるのだ、こう聞かれればまたそれを研究してみたいと思っておりますが、今御指摘の質問の部分が、カバーできるのかということであれば、基本的にはカバーできる、こう考えております。

中村(哲)委員 御確認させていただきたいのですけれども、山間部で今メタル線を使って共聴施設をつくっているところがある。そこがデジタル放送になってフルサービスを受けるときに、今のメタル線で可能だというふうに総務省は認識されているということでよろしいのでしょうね。

小坂副大臣 いわゆるケーブルテレビの場合、単にアンテナから電波を流して送るというのじゃなくて、ケーブルテレビで放送するという場合に、いわゆるヘッドエンドと言われて受信したものをデジタルに変換してケーブルに送り込んでいく部分、この部分は幾つかの方式があるようなのですが、今は三十チャンネル分ぐらいはそのまま送れますので、これはパススルー方式、ただ通すだけですね、この方式であれば技術的には問題がない、このように聞いております。

 それから、ちょっと私も余りこの部分には詳しくないのですが、トランスモジュレーションという方式があるのだそうですが、これですと経費が数千万円かかって、八チャンネル分しか送れないというようなことがあるようでございます。これはあくまでもBSデジタル放送のケーブル伝送方式として試算をしたときのものだそうでして、ちょっと御質問がそういう具体的なものでなかったものですから資料を整備しておりませんが、いろいろなパターンが考えられる、こう思います。具体的なものをいただければ後日資料をお届けしたいと思っております。

中村(哲)委員 金曜日のときに具体的な質問をすると言っていたのですけれども、うまく伝わっていなかったようで、済みません。

 ここが日本の場合は非常に大きな意味を持ってくると思うのですね。今の放送でも、最終的に入らない、見られないから共聴施設をつくったという地域が多いのだと思います。そこに対する配慮というものをしなければ、デジタルデバイドというのは解消しないと思うのです。ここに対して私たち政治家は一番心を配っていかなくちゃいけないのじゃないかなと思っているのですね。

 これは関連してなんですけれども、共聴設備とは直接は関係しないかもしれませんけれども、例えば山間部などでは、今は事実上受信できているという運用がなされているところもあると思うのです。V局の場合は、波長が長いですから回折などして電波が届きやすい。しかしデジタル化するとなると、今の総務省の方針ではU局を使うということになりますから、回折がV局に比べれば少ないわけですよね。そうすると、同じところから同じ出力で送ったとしても届かない可能性があります。それに対してどういうふうな配慮をしていくのか、そういうことも考えていかないといけないと思います。その点についてはいかがお考えでしょうか。

小坂副大臣 中村委員も大変勉強されて、専門的な質問が多いようでございます。

 おっしゃるとおり、周波数が短くなれば直線性が高くなって障害物によって遮へいされる可能性がふえてまいりますので届きにくい。その意味で、UHF対応を使った今度の新たな地上波のデジタル放送の到達のパターンは、現在のVHF対応を使ったものよりはより限られた形になって、受信しにくい地域がふえる可能性がある、こうなってまいります。

 そこで開発されたのが日本流のシングル・フリーケンシー・ネットワークシステムという形でございまして、今は送信のもとがありますと、中継局は全部そこのもととは違う周波数を使って送っていかないと、干渉し合ってしまうのですね。それを、同じ周波数を使っても干渉しない方式が開発されておりまして、それによって電波を中継する中継点を細かくつくっても干渉しないでできるようになっているのですね。したがって、そういった山間部にも民放とNHKとが協調して鉄塔を建てて不感地域を解消する努力をすることによって、今よりもむしろそういう意味では対策がとりやすくなってくる可能性はあります。

 今までは、中継局をつくりたいけれども周波数があいていないのでつくれないという状況がよくあったわけですが、その部分はなくなってくるということで、今度は経済的な問題にもなってまいりますので、その部分で協調していただいて、経費を下げて対応をとっていただきたい。その上で、私どもはその範囲内で十分やっていけると考えておりますが、いずれにしても、デジタルデバイドを起こさないというのは、大臣からいつも私ども言われております至上命題でございますので、その点に注目しながら慎重に検討してまいりたいと思います。

中村(哲)委員 御答弁をまとめさせていただきますと、デジタルデバイド解消のためには何らかの措置が最終的には必要になるというふうにお考えだと思うのですけれども、その点についてもう一度御確認をお願いいたします。

小坂副大臣 もっと具体的に言えば、今まで中継局というのは大電力で中継していたのですが、今回は小さな、いわゆるデジタルデバイド解消のためだけの小電力のアンテナで済むということで、経費的にも非常に軽いのですね、比較的ですよ、比較の話でございますが。そういう意味で、ローカル局は事業メリットの中から対策を十分講じていただけると思っているわけでございます。

 しかしながら、どのような形であっても、結果としてならないように、やはり政治の役割としてそういうものを注目していく必要があるという政治的な考え方を私は答弁させていただいたつもりでございますが、現在はそういった対策は、経費的なものに政府側で対応する必要はない、このままの計画で十分進んでいく、こういう認識で進んでいるわけでございます。

中村(哲)委員 放送局には、東京のいわゆるキー局と言われる大きな局から、独立U局みたいな小さな局まであると思います。アンテナの方向というものが地上波にとっては非常に大きな意味を持ってきますから、共同で鉄塔を建てるというのは非常に大きな意味を持ってくると思います。そこで、旧郵政省、現在の総務省が果たすべき役割というのは非常に大きいと思いますので、その点については主導的な役割を果たしていっていただきたいなと思います。

 関連することになるのですけれども、次に、放送局のデジタル化に対する投資について、改めてお伺いしたいと思います。

 東京の民放キー局や大阪の準キー局、そのような大きな放送局を除くと、地上波放送のデジタル化については、放送局にとっては設備投資の負担が非常に大きいことになってしまうと考えられます。例えば、今までは曲がりなりにも黒字で健全経営をしてきたような放送局が、デジタル化のために設備投資が追いつかなくなって、また、この不況で増資もままならなくなって、立ち行かなくなってしまうというローカル局が出てこないとも限りません。私は、これは一つの考え方だと思うのですけれども、民間金融機関が貸せないような低利で長期の融資というものを政府として整備していかなくてはならないというふうに考えております。

 そこで、政府としては、このようなローカル局に対してどのような支援策を考えておられるのか、先ほども御答弁がありましたけれども、御確認をもう一度よろしくお願いいたします。

小坂副大臣 ローカル局に対する支援は、まず、地上放送のデジタル化に関する設備投資について、第百四十五国会におきまして成立させていただきました高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法等によりまして、税制面、金融面での支援を講じております。

 具体的な手続といたしましては、財政投融資を除いて、NTTのいわゆる売却益のCといいますか、それによる無利子あるいは低利融資を考えるということ、それから通信・放送機構による債務保証を行い、あるいは国税、地方税の特例措置を受けるために、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の第四条に基づく実施計画の認定をさせていただいて、それによってこれを実施していくという方法等が考えられております。

 この中で、ローカル局においても、デジタル化の投資によりまして新たなサービスが実施をできる。すなわち、地域の情報に密着したサービスを活用した通信・放送の融合形態のサービスとか、あるいはeコマース、今でいえばいわゆるテレビショッピングみたいなものが、双方向が機能することによってより幅広い新たなビジネスパターンというものが出てくる。そういったようなものによってローカル放送の収入源を確保していただきながら、負担は今申し上げたような融資策あるいは税制措置によって支援をしていく、このような中で乗り切っていただけるものと考えております。

中村(哲)委員 今の御議論をお聞きしていて、もう一方で考えなくちゃいけないのは、モラルハザードが起きないような形でやっていくということだと思うんですね。さきの総務委員会で通信・放送機構に対してまた仕事が付される、追加される法案が通りましたけれども、債務を保証するときのコストとか、無利子、低利融資をするときの、日本政策投資銀行などいわゆる政策金融機関によって支援策がとられるときのスキームというのをもう一度きちんと考えていく必要があると思います。

 その支援策のための費用というのは恐らく一般財源から出ることになると思うんですけれども、一般会計から総額幾らぐらいのものが出るというふうにお考えなのでしょうか。

小坂副大臣 基本的には、法人税の特別償却とか、あるいは地方税におきましては固定資産税の軽減とかという形のものでございますので、補助金を出すというような形になっておりませんので、そういった意味の予算が支出されるという形ではないわけでございます。

中村(哲)委員 ちょっと聞き方が悪かったようなんですけれども、具体的に幾ら補助金を出すという形でないとしても、本来なら入ってくるべきお金が入ってこないということになりますから、財政を考える上では同じだと思うんです。

 この支援策をとるにおいて国家がどれぐらい負担をするのか、そのことについて試算はどれぐらいあるのかということをお聞かせいただきたいということです。

小坂副大臣 支援するとしたらどのくらいの分の経費になるのか、逆にそういうものを想定してみろというお話でございますが、現在そういう資料を持ち合わせておりません。また、試算のやり方でございますけれども、基本的には、それぞれの努力によって新しいビジネスを創出する中で経営的な判断で対応していただくのが基本線なんですね。その上で国税等の減免措置もとっていく。したがって、投資額がどのくらいになるか、各局で個別に試算をしていただいたものの積み上げになると思うので、そういった資料、本日は用意しておりませんけれども、ちょっと調べまして答弁させていただきたいと思います。

中村(哲)委員 非常に細かい話になりがちなものなんですけれども、こういう細かい配慮をとっていく必要がこの問題としてはあるのかなというふうな感じがしております。

 そこで、融資とか支援策なんですけれども、融資をしてもらいたい、支援をしてもらいたいというときになると、ほぼ無条件で支援はしてもらえるというふうに考えてよろしいのでしょうか。

小坂副大臣 ローカル局が必要というふうに思って申請をしていただければ、前向きに適用してまいります。

 しかしながら、試算が難しい一つの理由は、経営的な判断でございますので、その支援をどの分野でどのくらい申請してくるかが申請を待ってみないとわからないということがございます。それでも何らか資料はあるんじゃないかと私も考えて今ちょっと資料要求をしているんですが、そういう形では今のところ資料を持ち合わせておりませんので、今おっしゃったような形で、どの分野でどのくらいというのは現在わかりません。

中村(哲)委員 どの分野でどれぐらいということがわからないというのはわかるんです。それをお聞きしているのではなくて、一般的にローカル局などが、自分たちが設備投資するお金が自分たちの資金ではなかなか賄えないから何か支援策が欲しいというときに、どういう、ローカル局であればお金が貸してもらえたり支援策を受けられるのか、ほぼ無条件で受けられるのかどうか、そこは非常に不安に感じておられると思うんですよ。そこについてのお考えをお聞かせください。

小坂副大臣 経営的な状況がどうであるかということが指標になるのかどうかということかもしれません。それにつきまして、債務保証をしていただくわけでございますので、機構によって債務保証等をする、その部分で判断をされるものと思っております。

 基本的には、ローカル局として、地域の放送局として皆さんに支援をされている放送局であれば、申請をしていただければちゃんとした制度上の融資、減免措置は受けられるというふうに考えていただいて結構だと思います。

中村(哲)委員 確認なんですけれども、少々赤字が出ていてもというぐらいなのかどうかというのはいかがでしょうか。

小坂副大臣 赤字の多寡でいきなり判断するというようなことではございません。あくまでも存続をするという放送局であれば基本的には支援をしていく。

 しかし、そこには債務保証をお願いしたりする審査の部分がございますので、そういう中で判断をされることでございますが、通常の放送局で健全な営業を行っている放送局であれば、若干の負債を抱えていることは当然あるわけでございますので、そういう中で、あるからいきなりだめだというようなことは決してないということでございます。

中村(哲)委員 負債を申しているんじゃなくて、毎年毎年の赤字の問題なんですけれども、裏返して考えると、少しでも黒字が出ているような放送局であれば、その黒字を、長期間にわたって返していけるような範囲だというふうに考えていただけるのならば融資は受けられるということで考えてよろしいのですね。

小坂副大臣 はい。実施計画をつくって申請をしていただくわけですね。一つは、その実施計画を総務大臣が認定をして、実施計画の実施確実性というものを評価の判断基準にさせていただきます。

 ですから、今後こういう形で事業を拡張したいのでこれだけ全部認めろといって、それがすんなり通らないということでいろいろ言われるということじゃなくて、適切な範囲内で、地域を支える放送局として今までやっていらっしゃった範囲内のそういうものに基づいた計画の中で適切と思われるものは基本的には認可されるという方向でございますけれども、そこに審査が入りますので、今申し上げたような経営の健全性とか実施計画の具体性とかあるいは規模における適切性、そういったものが審査の判断基準になってまいります。

 黒字があって累積でどうなる、あるいは赤字があってそれの今後の見通しがどうだ、そういう部分は、全体の中の一部として審査の判断基準にはなりますけれども、それがすなわち認めない原因にはならないということでございます。

中村(哲)委員 非常にわかりやすい答弁をしていただいたと思います。

 支援策はどうしても、これから二〇〇六年に向けて利用されるピークが来ると思います。今はまだまだ少ないのではないでしょうか。そうしたときに、今は制度はできているけれども使わないからその枠が縮小されるとかいうことが非常に危惧されると思います。

 確認なんですけれども、財務省に対しては、今はこういうふうに利用が少ないけれども、二〇〇四年、五年ぐらいにピークが来るだろうからこの枠は残していっていただかなくては困るとか、そういうふうなことを力強く説明されるということでよろしいのでしょうか。

小坂副大臣 時限的なものはございませんので、存続すると考えていただいて結構でございます。

中村(哲)委員 非常に利用度の高い制度をこれからも維持していくということを御確認させていただいたと思います。

 やはり地上波デジタルというのはかなりの負担を民間に求めるということがわかってきたと思います。言うまでもなく、テレビというものは大部分の国民にとって毎日の生活になくてはならないものだということは言えると思います。ほかのメディアに比べて国民生活に非常に大きなウエートを占めているということを考えても、国策で地上波デジタル化を推し進めるのであれば、これは重点的に投資をするというぐらいの覚悟を持ってもいいのではないかと思います。

 国、地方を合わせた借金が六百六十六兆円という財政難ですから、広い意味で公共投資の優先順位をつけるときに、IT革命を唱えてきた森政権としては、政権の最後にこの方針、つまり、他の公共投資をセーブしてでもこの分野には重点的に投資をしていくんだというような方針を明確に打ち出すことも必要なのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

片山国務大臣 小坂副大臣から詳細に御答弁させていただきましたように、アナ・アナはデジタルの前提として、しかも今何不自由なくアナログ放送をやっているものを変換してもらうわけですからこれは公費を出そう、電波利用料ですけれども公費を出そう、こういうことでございますが、本番のデジタルの方は基本的には放送事業者の方に行ってもらう。しかし、大変大きな投資だから、例えば長期低利の融資をしますよ、税制上の特別の措置をとりますよ、場合によっては債務保証も考えますよ、こういう措置をやってきておるわけでありまして、そういうことで今、NHK初め放送事業者の方の一応の納得は得ているわけであります。

 ただ、御承知のように、一兆六百億円という巨額な投資ですから、やる過程ではさらにいろいろな議論が出てくると私は思います。例えば、ローカル局の中には、今の長期低利の融資はありがたいけれども、もう少し優遇された融資制度は考えられないかとか、今我々の方にもいろいろ御要請が来ておりますから、我々は、アナ・アナをやり、デジタルが始まっていきましたら、どういう優遇措置がさらにとれるかは検討してまいりたい、こう思います。

 ただ、基本的には放送事業者の仕事ですから、それを公費で負担するということは、例えば直接それに助成金を出すとか財政支援を直接やるということはなかなか問題があろう、こういうふうに私は思いますけれども、例えば融資や税制やその他の便宜供与でどこまで応援できるかは、さらに状況を見ながら検討させていただきたい、こういうふうに思っております。

中村(哲)委員 大臣の御答弁を私なりにまとめますと、自助努力にまずは任せるべきだということだと思います。それは本当にこれからのこの国にとって一番必要なことだと考えておりますから、私も同感でございます。

 ただ、思いますのは、三月十六日の大臣の私への御答弁の中で、状況の変化に応じて対応は変えていく、また、状況を見ながら、よく検討して結論を出していきたいということをおっしゃっていました。状況の変化への対応を検討するときには方針が必要だと思うんですね。その方針を今の段階からはっきりおっしゃっていただいた方がいいと思うんですよ。それが政治家の務めなんじゃないかなと思います。

 状況に対応して見てから行動するというのではなく、状況に対応するときにどういうふうな方針でやっていくのかということに関して、十年間という長いスパンを見ながらの話ですから非常に難しいことはわかるんですけれども、その点に関してもう一度答弁をいただきたいんですね。大臣は私への答弁で、「前後の状況で御勘案賜りますようにお願いします、賢明なる委員として。」と最後におっしゃっているんですけれども、私は大臣が思っておられるような賢明な委員ではないのかもしれません。政治家として、大臣として、この方針というものをいま一度お示しくださいますようお願い申し上げます。

片山国務大臣 今の法律で出しております優遇措置はもちろん続けていきます。これは一番大きな方針です。ただ、大きな投資ですから、アナ・アナをやりデジタルに入るわけですから、その場合に、特に体力が乏しいと言われるローカル局にとって困難な状況が出てきた場合には、さらなる優遇措置がとれるかどうかを検討していきたい、こういうのが大方針であります。

 そこで、今いろいろな共同の検討会、協議会をつくりまして、まず、とりあえずアナ・アナから始めなければいけませんからアナ・アナの協議会でございますけれども、共同の大きな委員会を民放の事業者の方とNHKさんと総務省の方でつくっておりますから、そういう中でも検討していきたいと思いますし、個々のローカル局の御意向も聴取しながら方針をさらに固めていきたい、こういうふうに思っております。今それをやっておりませんから、今の段階でどうだというのは、現在の法律上の優遇措置は続ける、こういうことでございます。

中村(哲)委員 今の大臣の御答弁をお伺いして、三月十六日の御答弁からはかなり前進したというふうに私は感じさせていただいております。前回ではそのときの状況に応じて判断するけれども、今御答弁いただいたのは何らかの措置をとっていくというふうなことで御答弁なされたというふうに私は感じておりますけれども、それでよろしいでしょうか。

片山国務大臣 いや、措置をとるとまでは言っていないですよ。措置をとるかどうかを検討いたしたい、こう言っておりますから、気持ちは前進しておりますけれども中身は同じでございますので、ひとつよろしく御理解を賜りたい。またこういうことを言うと、賢明なる中村委員、よろしくお願いいたしたいと思います。

中村(哲)委員 前進のお気持ちというのは議事録に載っておりますから、もう一度議事録を読ませていただきまして判断させていただきます。

 先ほどからの私ども民主党の委員の質問の中でいろいろとありまして、それを私も確認させていただくんですけれども、このようなことを進めていくときに、やはりお金の使い方というのをきちんとチェックしていかないといけないというのは非常にあると思います。つけ加えにもなりますけれども、アナ・アナ変換それからアナ・デジ変換、いろいろ経費がかかる中で、ここの積算根拠とか、そういうものを明確にしていく必要がある、厳しくチェックしていく必要があると思いますけれども、その点についての意気込みをお聞かせください。

小坂副大臣 恐縮でございます、もう一度質問の趣旨をお願いできますか。

中村(哲)委員 アナ・アナ変換とかにかかる費用に関して、補助金を出していくとか措置をしていく、支援策をとっていくということになると、きちんとした情報開示といいますか情報の認識というのが必要になってくると思います。透明性の確保も必要になってくると思います。行政としていかにかかわっていくのか、その点について意気込みをお聞かせください。

片山国務大臣 アナ・アナにつきましては五カ年計画でやっていく、初年度、本年度が百二十三億円の公費を出す、これは五カ年計画を続ける、もう既に答弁しておりますけれども総額は八百億程度でございましょうか、この方針は固めておりますし、具体にどうするかというのは、情報公開法の施行が四月一日から始まりましたので、基本的にはできるだけ情報開示をしていきたい、そのように考えております。

中村(哲)委員 それとともに、放送事業者に対して過度な干渉にならないようにということも同時に両立しなくちゃいけない課題だと思います。それに対してもう一度確認をよろしくお願いいたします。

小坂副大臣 先ほどほかの委員からもありました、いわゆるお金は出すけれども口も出す、そういうことでは困るよ、こういう御趣旨かと思いますが、支援すべきものは支援の枠組みの中で支援してまいりますが、放送の事業者の報道の自由また番組編成の自由等を阻害することのないようにしてまいりたいと思いますし、御指摘の情報公開につきましても的確に行ってまいりたいと存じます。

 また、先ほど委員の方の御指摘にありました高度テレビジョン放送施設整備事業に関しても、ローカル局に対する国税の支援措置等、財政当局とも積極的に話し合って、ローカル局の負担が急変急変にならないように対応してまいる、そのための努力を一生懸命やっていきたい、このように考えております。

中村(哲)委員 御答弁をいただきまして、まとめさせていただきますと、放送事業者に対する支援というものは、公的機関が報道機関に関与するということですから表現の自由との関係で非常に大きな難しい問題はある、自律性をできるだけ配慮しながら、しかし経営が成り立たないようなことになっても困るから最大限の努力をしていく。その難しい両立に取り組んでいかれるということを御確認させていただいてよろしいんでしょうか。

小坂副大臣 あくまでも原則は、資金調達等はローカル局といえども独自の経営判断また経営の責任において推し進めていただく、しかしながら、低利融資あるいは法人税等の軽減措置、こういったものについては、国としてできる限りの、支援措置として決めましたものですから、それの維持に努めてまいります。こういう枠組みでございます。

中村(哲)委員 ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。

御法川委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三分開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。若松謙維君。

若松委員 公明党の若松謙維です。

 電波法改正につきまして何点か質問をさせていただきます。

 今回のこのアナ・アナ転換でいよいよ二〇一〇年から現在のアナログテレビが使えなくなる、こういう状況になるわけです。これはぜひ大臣にお聞きしたいんですけれども、当然あと十年間あるわけですから、私は現在あるいわゆるアナログテレビは九九・九%恐らく買いかえられるのではないか、そういうふうに思っております。また、そういうふうにも期待しております。

 しかし、当然、大事に使われる方もいらっしゃるし、また、経済的に買いかえられないという方も出てくると思いますので、そういう生活困窮世帯とか老齢世帯、いわゆる経済弱者に対する配慮というものをやはり必要なときには検討すべきではないか、そう思うんですけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

片山国務大臣 今、若松委員言われましたように、テレビのサイクルというのは八年ないし十年という議論がここでも盛んに言われておりますけれども、我が国の国民の皆さん、大変適応力、対応力がある方が多うございますので、うまくデジタル化の進行に合わせて私は買いかえられるんじゃなかろうかと思いますし、その時点では、何度も申し上げておりますように、相当価格も安くなる、買いやすい水準の価格になるのではなかろうか、こう思っておりますが、それでもなお生活困窮者、老齢世帯は、こういうことでございまして、今の段階では私はまだそこまでいろいろ考えて対応を検討する必要はないと思います。しかし、どういう状況になるかわかりませんから、今の委員の御意見はしっかりと受けとめまして今後の推移を見たい、こういうふうに思っております。

若松委員 今、テレビというのは、もうまさに基礎的な生活関連機材でもありますので、そういう状況が必要になったときには、ここに我々、何人そのとき残っているかわかりませんけれども、総務省は恐らく残ると思いますので、ぜひ検討をお願いしたいということで、次の質問に移らせていただきます。

 そこで、まず小坂副大臣にお聞きしたいんですけれども、一部の委員の先生方からも御質問がありました、いわゆるアナ・アナ転換を今回やるわけですけれども、オーストラリアかどこかの例がありました。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、そういった国はアナ・アナ転換をやってきたのか、少なくともなぜ日本がアナ・アナ転換をしなければいけないのか、そういったところの事情についてまずお聞きしたいわけですけれども、いかがでしょうか。

小坂副大臣 先ほど別の委員の方の御質問にお答えした中で、豪州、オーストラリアは公的支援を行っています。それは、すなわち、デジタル化の経費の五〇%を支援するという形になっています。しかし、その中にアナ・アナ変換の経費が含まれているかどうかは不明と申し上げたんですが、さらに問い合わせをしてみましたところ、それは含まれていないということでございます。

 英国におけるアナ・アナ変換というものも、影響世帯、約十五局で一万四千世帯、非常に数としては日本に比較して少ないわけでありますけれども、影響が出ている。ごく一部であるということですね。これに対しての公的支援は一切行っていない、こういうことでございます。

 しかしながら、我が国におきましては、地形が非常に急峻に富んだ地形等あったり、あるいは隣接局が、圏域の境目が非常に近くてお互いに周波数干渉が起こるので、違った周波数の割り当てをしなきゃいけないということで、テレビ局全体として他の国に比して密度が非常に高く、多くの周波数を使っているという状況から、逼迫していて、空き家がないということですね、一回、家を改築するためにしばらくどこかに住んでいようと思っても、住む場所がない、そういうところで、住む空き家をつくってそこへ引っ越していただいてというような余計な作業が必要になる、こういうことで、アナ・アナ変換が他の国に比して非常に広範にわたる、こういう結果になっております。

若松委員 先ほどのイギリスとアメリカと日本のいわゆる中継局数ですか、これを比較しますと、もし副大臣がおわかりにならなければ局長でもいいんですけれども、中継局数を比較しますと、アメリカはあれだけ広大な土地で五千百八十四局ありまして、イギリスが四千八十五局。それに対して、日本が一万四千九百二十五局、アメリカの三倍ぐらいなんですね。地域地域の中継、それだけチャンネルを使っているということになろうかと思うんですけれども、反対にアメリカの場合は、中継局が少ないかわりに見えないところも多かった、電波が届かないところが多い、それをケーブルTVですか、それで代替したということになったと思うんです。

 いざこの時代になって総括的に考えると、戦後五十年、日本の中継局一万五千、そしてケーブルTV、最近になってキャッチアップしているという形の方が、アメリカの五千局、そしてケーブルTV、かなり発達しております、六千万世帯とか七千万、どちらが戦略的にはよかったんでしょうか、それについてのコメントはいかがですか。

小坂副大臣 なかなか難しい御質問でございますが、それぞれテレビの発展過程、それから国の特色というものが出てきていると思うんですね。

 私ども、結論から申し上げれば、日本型の発展を遂げて、これからもこの発展過程において蓄積された資産を有効活用して世界のトップに躍り出ることができる、こう確信を持っております。

 アメリカの場合、ケーブルテレビの普及が促進されたのは、おっしゃるように、マンハッタン等を想像してみればわかるわけでございますが、電波が届かない谷間が非常にたくさんある、こういう状況ですから、狭い地域に、電波を受信できない地域がこれまた密集している、これをつなぐにはケーブルテレビが最適である、こういうことになります。

 一方、広大な地形の中で遠くにぽつんと離れた家があって、そこに電波が届かない、これをケーブルテレビでやろうと思ってもちょっと難しいわけですね。経費的に折り合いません。したがって、何が起こっているかというと、そういった部分は衛星受信しかできないという地域も中にはあるわけでございますね。

 そういうものに比して、日本の場合には受信対策も進んできておりますし、また、その分、ケーブルテレビについては、先ほど質問のあった共聴受信、あるいはケーブルによる各テレビ局の再放送、こういうものが行われて発展をしております。

 これをケーブルテレビのケーブルを使った新たな別のサービスという観点から見れば、また別の意見も出るかもしれませんが、テレビのこれからのデジタル化等を考えたときには、私は、日本の発展過程が、今日の形態の中でこれを克服するにもある意味では容易であって、迅速に対応できるというふうに逆に考えております。

若松委員 正直言って、私もよくわかりません。もっと勉強して明確な解答を自分なりに持ちたいと思っています。

 それでは、今回のいわゆるアナ・アナ転換をするために百二十三億お金を使うわけですけれども、その財源となるのが電波利用料ですね。これは、平成十三年度の予算ですと、四百五十一億の歳入に対しまして、このアナ・アナ転換を入れますと五百二十四億ということで、七十三億不足するんです。

 この不足をどうするか。では税金を使って穴埋めするかというと、そうじゃなくて、現在、この電波利用料の剰余金が平成十二年三月末で百八十一億あるということなんですけれども、このアナ・アナ転換は約六年ぐらいかかるんでしょうか。そうしますと、五年間で、かつ剰余金百八十一億で足りるのかな、いずれは足りなくなってアナ・アナ転換に税金が使われるんではないかという指摘もあるわけですけれども、そういう可能性はございますか。

小坂副大臣 おっしゃるように、電波利用料の収入を使って共益費に充てて、なおかつ残った分を積み立ててきて、ここへ来てアナ・アナ変換という新たな資金需要が発生したために、それに支出をすると残りが、今おっしゃいましたように、十一年度末で百八十一億二千万、こうなる。これでは足りないではないか、こういうふうな計算をされるのもごもっともと思います。

 しかし一方、デジタル移行のためのアナ・アナの支出というのは、今おっしゃったように、基本的には五年に分けて支出して、五年で終わってしまうわけですね。電波料全体は、収入が増加している傾向にあります。

 また、電波法の第百三条の三の第一項のただし書きに、一会計年度における電波利用料の収入額の予算額が当該年度において必要とされる電波利用共益費用に充てることなく、他の目的にも使用することができる。それに加えて、このただし書きの規定は、決算の結果、当該年度の電波利用共益費用に充てられなかった部分については、同条第二項により、次年度以降の電波利用共益費用の財源に充当する旨の過年度調整条項が定められておりました。

 すなわち、先に使って足りなくなった分は、その年で全部やらないでも、マイナスのまま繰り越して、その先の年の収入で埋め合わせてもよろしいという規定があるものですから、この対策が終わった後の収入でこれを消すことができる、したがって、税金は使う予定はありません、こういうことでございます。

若松委員 そうすると、今の説明ですと、ある単年度で電波利用料でアナ・アナ転換できなかったら借金ですね。借金ができるということを法律で担保したわけですけれども、今度はその借金を返す財源がなくなったと仮定した場合にどうなんですか。ここまで詰めさせていただければ完璧だと思うんです。

小坂副大臣 基本的に借金を予定しているわけではなくて、各年の負担は受信料の増加によって消化できるという基本的な考え方があって、その上で、なおかつ仮にマイナスになっても先の収入でこれを消すことができる、こうなっているわけですが、その足りない分をもし借金が出るような状態になったらどうするか、こういうことでございます。それが生じないようにまずもって支出を切り詰めるとか、いろいろな形での合理化を図って、決してそういう状態にならないというふうに努力をすることが第一。それでもなおかつという場合には、財政当局との相談でありますが、そういうことは起こらないということを、今この法律の審議の過程では私どもは認識をいたしております。

若松委員 もうちょっと詰めさせてください。

 これは局長でもいいんですけれども、何かちょっと使いそうな感じもするので、やはり、基本的には民営の話なので、これははっきりしておいた方がいいと思いますよ。ですから、少なくとも平成十三年から十五年ぐらいですか、歳入増をどのくらい見込めるのか、また歳出でも、同じ期間、十三年から十五年ぐらいでどんなところが詰められるのか、そういったビジネスプランをお伺いしたいんです。

鍋倉政府参考人 予測をした十八年度までの数字がございますけれども、歳入は十三年度では四百五十一億円ということを予定しておりますが、十四年、十五年、十六年とだんだんふえてまいりまして、十六年には五百九十八億円ぐらいいくのではないかなという予測をいたしております。

 一方、歳出の方でございますけれども、例えば平成十六年では五百二十三億ということで、この時点で単黒ということでございますので、副大臣が申し上げましたように、アナ・アナの変更の費用を使ったとしましても大丈夫という見込みを立てているところでございます。

若松委員 では、最後の詰めで、基本的に大丈夫ということですけれども、足りなくなった場合どうするかということですが、税金を使うかもしれないという意思はあるんですか。この際、ないということで頑張った方がいい仕事ができるんじゃないですか。

鍋倉政府参考人 法律で、電波利用料を使うということでこの体系ができておりますので、税金を使わないで電波利用料でいくという制度をお願いしておりますので、そこでやっていきたいというふうに思っております。

若松委員 大臣、それでよろしいんですね。

片山国務大臣 こういうことなんですね。今、電波法の中には、過年度の調整規定があるんです。先食いして後で埋めるということもできるんですね。基本的には税金は使わないで電波利用料の枠内で処理したい。また、その見通しも十分数字的に立っている、こういうことでございますので、御理解賜りたいと思います。

若松委員 わかりました。とりあえず私の答えはわかりましたということです。

 それでは、次の質問に移りまして、これも多くの先生方が質問されましたが、今回、特に五月から、G3ですか、ドコモ等の携帯の三世代のサービスが始まるわけですけれども、これも当然デジタルベースということで、これはもったいないんですね。もったいないというか、私はどうしても会計士、税理士だからお金のことを気にしちゃうのか、何でこのときにオークションしなかったのかなと、大勢の先生方も聞かれましたけれども。

 もう一度、今回のドコモ、少なくとも携帯の三世代ですね、そのときになぜしなかったのかという理由と、あと、これからのデジタル化、今まさにアナ・アナ転換で、そのチャンネルのあいた部分をデジタル化するわけですけれども、デジタル化するときに、アナログの実際のコンテンツというんですか、情報量よりもやはりデジタルの方が多いわけですから、電波料も当然、デジタルの方が電波としては価値があるわけなんですね。技術によってでしょうけれども、ある意味では十倍、百倍、だからこそ、同じ電波料を取るということはちょっと不都合じゃないか、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。

小坂副大臣 電波利用料を資源の利用対価として規定しているならば、今の若松委員の御指摘のとおりなんでございますが、我が国においてはそういう体制をとっておりません。これについて、平成八年の電波資源の有効活用方策に関する懇談会並びに平成十一年の電波法制の在り方に関する懇談会等でも、オークションというものが外国では考えられているようだが、我が国ではどうかという点で、詳細検討していただいたわけでございます。また、意見を広く求めたときにも、事業者、メーカーそして業界団体からの意見も、いずれもオークションは導入すべきでないということでございました。

 IMT二〇〇〇導入のときがいいチャンスだったではないか、こういうことでございますが、外国の例を見ても、英国やドイツの次世代携帯電話の入札が行われたわけですが、落札価格の合計が、これは換算レート、当時ということだと思いますが、英国が三兆八千億円、ドイツが五兆円に達しまして、サービス料金への転嫁が懸念され、また既に、落札企業の債券の格付が低下したり、あるいは電気通信事業全体の株価が下落するというような事態を招いておりまして、過大な落札価格が過大な負担を事業経営に及ぼすんではないか、こういう観点も指摘をされております。

 また、米国においては、落札価格の高騰によって、当初予定よりもえらく高くなってしまったものですから、落札金の不払いが発生して、落札された免許が返却されて再度入札が行われるなど、混乱を来すということもありまして、そういった状況を見ますと、我が国において、同じような形での入札というのはやはり慎重にした方がいい。

 しかしながら、では、入札制度は全くとらないのかということでありますが、それはある程度枠をはめて、例えば、放送に利用するという前提のもとに上限の価格を定めてオークションをやるとか、共益的な部分が非常に大きい、あるいはもっと個人的なユースである、そういったカテゴリーに合わせて一定の枠内でのルールを定めてオークションをするとか、いろいろな方法はあるんだろうと思うんですね。

 いずれにしても、実際に、オークションのように再配分が実施できるのは、二〇一一年の、デジタル化が完成をいたしまして、アナログの停波というものが起こって周波数に余裕が出た時点でございますので、それまでの間に慎重に日本としての最適の分配方法を検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

若松委員 今、いわゆるオークションですかね、周波数オークションもしくはデジタル化に際してのオークション、ここで必ず議論としてあるのは、要は今副大臣が、さまざまな関係者と議論してオークションは実施しなかったと。やはり業界の意見を聞けば、当然、負担料がふえるわけですから、やらないでくれという意見に収れんするわけですね。

 ただ、電波というのは、先ほど言いましたように、では、だれの財産かという議論にもなるわけなんですけれども、結局、天然資源というか地球資源、宇宙資源なんですね。それをだれが共有するかというと、人類、地球人、そして日本人。そういうことになると、やはり日本人としての権利ではないかな。そうすると、所有する権利者としての国民とそれを使う側のユーザー、そのやりとりというのは、必然的に価値がやはり見出せるんではないか。

 そういう意味では、海外ではオークションを行って、いわゆるその価値を市場で試したわけです。その結果、投機的に価格をつり上げたところとか、そういったところを参考にしてかなり渋目に決まったところ、いろいろあるわけですけれども、日本の場合には、何かそういう議論もかなり先送りしちゃって、ほとんどギブアップしちゃって、やはりどう考えてもこれは業界擁護というか既得権益、こういう批判は、批判できないんで、私もそういう指摘を受けた場合に、どう返そうかなと思っても返せないんですよ。ちょっと返せる答えをいただけますか。

小坂副大臣 委員がおっしゃいますように、電波の資源性という観点、財産的な価値といいますか、そういった経済的な価値があるではないか、これは否定できないと思いますね。

 先ほども大臣が答弁で申し上げておりましたが、国民共有の財産であるという問題はそのとおりである。しかし、しからばどのくらいな価値をそれに期待をして、どのように再配分していくか、こういう行政的な面から考えて今までの手法が行われてきた。

 しかし、国の財政という観点から、今後、その方式を見直して、何らか、欧米等でとられているような方式も考えに入れるべきではないか、こういう御指摘はそのとおりだと思いますので、今後、そういった観点も踏まえながら、この再配分についての方式を慎重に検討していく、こういうことでありまして、決して否定をしているものではないわけでございます。

若松委員 大臣に質問してよろしいでしょうか。

 とりあえず、e―Japan重点計画の中で、二〇〇五年までにこのオークション制度を検討すると。ところが、御存じのように、大都市では二〇〇三年に一つのデジタル放送が可能になるというと、ちょっと二〇〇五年と二〇〇三年のタイムラグとしてミスマッチがあろうかと思います。ですから、この議論の結論は早目に出すべきだと思うんですけれども、大臣、いかがお考えですか。

片山国務大臣 デジタル化の移行用の周波数は、これは既得権ということもないんですけれども、既存の、今までアナログをやっている方にお渡しする、それを新たにオークションということはなかなか難しいんではなかろうかと思うし、よその国もデジタル化移行の場合の周波数のオークションはやっておりません。

 ただ、今の小坂副大臣と若松委員とのやりとりを聞いていまして、オークションもよさはあるんですね。デメリットもある。だから、デメリットをできるだけ抑えて、オークションの持つメリットというか、よさを何か入れ込むような方式は将来、検討し得るな、私はこう思っておりまして、そういうことを含めて二〇〇五年までに結論を出したい。ただ、二〇〇三年のキー局等のデジタル移行は、これはオークションでなくて既存の割り当てでやらせていただこう、こういうことであります。

若松委員 二〇〇三年、あと二、三年あるわけですけれども、例えば、いわゆる新規デジタルを活用したテレビ放送局ですか、そういったものが立ち上がった場合には、その人たちに対しては参加料というか、エントランスフィーというんですか、それをどう求めていくんですか。これはどうですか。

鍋倉政府参考人 先生、デジタル化の移行過程におきまして、既存の事業者以外に、例えばオークションにして、新規に割り当てて、新規事業者にもというお話だろうと思うんですが、移行過程においてそういう波というのがございません。ということで、オークションもできない状況にあるということでございます。既存の事業者に割り当ててしまえばそれでおしまいということで、二〇一一年のアナログからデジタルへの変更が済みますと、そこで最終的に四分の一以上の部分が出てくるわけでございますが、移行過程においてはそれがございません。

 それから、諸外国におきましても、アナログからデジタルへの変更で、アメリカ、イギリス等含めまして、既存のアナログ事業者がデジタルに変更する場合にオークションをやっている例はございません。

若松委員 そうですね。では、この辺で、いずれにしても、環境が変わって、恐らくまた四分の一という枠が出てくるかもしれませんから、そのときに、今の、例えば八チャンネルとか六チャンネルとか、そういったところが別に子会社をつくるとか、結局は新規参入がしにくくなるようなことはぜひ避けていただきたい、そういう趣旨で今、質問しているわけでありますので、またそのときに至っての、入札制度の透明化とか、そこら辺はしっかりと今から準備していただきたいと思います。

 それでは、今度このアナ・アナ転換を行うに際して、いわゆる公益法人の名前が出てくるわけですけれども、ちょうど、公益法人改革につきましては、昨年十二月一日の行革大綱でいわゆる公益法人をしっかりやっていこう、さらに、予算委員会での特にKSD問題に端を発して、与党三党として五月中にでも公益法人改革法案をつくっていこう、公益法人運営適正化法、これは実は私が提案させていただいたのですけれども、こういった動きで、一方、規制緩和の動きもあるわけです。

 特に今回の指定証明機関への民間業者参入、これは規制緩和ということでいい流れではないかと思いますけれども、反対に、このアナ・アナ転換を行うために、ちょっと法律用語で言いますと、指定周波数変更対策機関ということで、二つの公益法人、電波産業会と電波技術協会、ここにオークションの分配ですか、例えば給付金、先ほど百二十三億とか、その給付金の支給、査定事務、または委託者が適正かどうかという立証、こういったところを指定しているわけです。なぜこの二法人になったのか、民間ではなぜだめだったのか、それもやはり批判の対象となりますので、この委員会で明らかにしたいと思います。

小坂副大臣 指定機関でございますけれども、まだ決めたわけではございません。

 指定周波数変更対策の機関は、特定周波数変更対策業務について国の予算を財源とする給付金の支給業務が含まれておりまして、その業務を公正に実施するためには公益性と中立性、信頼性が担保されることが必要でございます。そのようなことから、行政との一体性を保ちながら、全国一律の基準で適正かつ確実に行うことにより給付金支給の公平性を担保する必要があると考えて、公益法人に限定するというふうに考えておるわけですが、その機関に対しましては、既存のものの中から申請を待って選定をするというふうに考えておりまして、今お申しになりましたような電波産業会等の既存の団体を特に指定して決めてあるという状態ではございません。

若松委員 そうすると、これからいわゆる公募みたいなこともあり得るということですか。

鍋倉政府参考人 今、副大臣の方が申し上げましたように、この法律が通りましてから申請を受け付けるということでございます。ですから、まだどこにも決めたわけでもございませんし、決められる権限もまだないわけでございます。

若松委員 申し込みも、民間会社も入札できるということですね。

鍋倉政府参考人 今度の電波法の改正で公益法人というふうに定めさせていただいておりますので、通りますれば、純粋の民間はできません。

若松委員 そこでもう一度、民間ではなぜだめだったのですか、今それが議論になっているのですけれども。

鍋倉政府参考人 要するに、国の予算を分配するといいますか給付をするという業務を、国にかわって行っていただくことになりますし、それからもう一つは、全国一律、公平に中立にやっていただかなければいけないということで、やはり公益法人が適当ではないかということで、電波法の改正をお願いしているというものでございます。

若松委員 わかりました。では、これはまた公益法人改革の流れで議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 それで、最後の質問ですけれども、ちょっとこのアナ・アナ転換とは異なるのですけれども、なかなか取り上げる機会もないということで、私がこの場をおかりして残りの時間で質問させていただきたいのです。

 いわゆる地域にFMコミュニティー放送がありまして、ちょうど私の選挙区、上尾から鴻巣、吹上の地域ですけれども、特に鴻巣にFM鴻巣というのがあります。大体十五万世帯を対象としております。

 ここで、私も勉強したのですけれども、潜在電界強度というような言葉がありまして、この数値は昭和四十三年につくったものだそうですね。さらにこの数値に基づいた実効輻射電力、ERP、私もわかったようでわかっていない形で言っているのですけれども、このERPですけれども、例えば、鴻巣にあるフラワーラジオというのは四ワット。埼玉全域をカバーするNACK5というのがありまして、これは結構人気があるのですけれども、四キロワット、千倍ですね。

 ということで、全埼玉をカバーすると千倍の強さ、何というのですか、量というのですか、それで、その地域の十五万世帯ですと、その千分の一、四ワット、こんなことですけれども、では鴻巣に限りますと、この四ワットというのはどういう放送地域を前提にしているかというと、最も雑音の少ない、低雑音地域に指定されている。例えば秋田市、新潟県六日町ですか、と同じ地域だということなんですけれども、実は私の選挙区の鴻巣市は新幹線が通っていまして、かつ高圧線も結構ありまして、都市の雑音も多いのです。ということで、この四十三年当時のルールというものを、時代の流れで大きく変化したからもうちょっと変えてくださいと。

 一方、埼玉ですと、埼玉県入間市とか群馬県太田市、これは大変雑音の多い地域に指定されて、いわゆる雑音が多くて聞こえない地域が多い、そういう面、弱い、今、鴻巣では大変不利なんですね。そういったところを改善してくれないかという話が今あったわけですが、それについてはいかがでしょうか。

小坂副大臣 専門的な、技術的な面につきましては、また後ほど情報通信政策局長の方から答弁させていただきますが、委員御指摘のように、コミュニティー放送というのは大変に最近人気がありまして、各地で盛んになってまいりました。地域密着型の放送として大変愛されておるわけでございます。

 この空中線電力の限界は、従来は十ワットということで規定しておりまして、四ワットで送信をしているというのはその会社の事情によると思うわけでございまして、制限的には十ワットまで拡大することが従来でも可能でございました。なおかつ、もっと広いところで受信したいという方が多いという話も出まして、平成十一年にこれを倍の二十ワットまで拡大をいたしております。十ワットから二十ワットの送信電力というと、大体一般の放送局の中継塔の送信電力がやはり十ワットから二十ワットでございますので、そのぐらいの出力がある、かなりのところが届くのですね。

 それで、雑音の多い地域においては、それをもっと強くして、雑音に負けないようにしたらどうだ、こういう御指摘と思いますが、雑音対策の基本は雑音源の対策をするという形で対策をとっていくのが原則なのでございまして、それを上回る電力で送信するということになりますと、またそれが妨害になっている部分でさらに大きなものをと、どんどんエスカレートしてしまうことになりますので、基本方針は受信に障害のある地域から雑音源を遮断する、あるいはスパーク等が出て雑音のもとになっているものをコンデンサー等を入れてそれを防止するとか、そういう対策をとってきております。

 そんなことで基本方針をそのようにしておりまして、また、四キロワットのFM放送局とミニFM、いわゆる地域コミュニティー放送が対抗するというのも、これはなかなか難しい話でございますので、コミュニティー放送としての基本的なニーズに合ったものを二十ワットの範囲内でやっていただければ大変にスムーズに、皆さんに喜んでいただける、こう理解をいたしているところでございます。

若松委員 大体わけはわかりました。

 ある意味では、弱い電力で効率よく電波を届けるというと、雑音源対策が必要だと。そうすると、先ほどの新幹線とか高圧線、そういった雑音源の対策費はだれが持つのですか。これはルール化されているのですか。

鍋倉政府参考人 雑音源は、例えば関東でしたら、今でいうと総合通信局というのがございますので、そこに御依頼していただければ雑音源というのを測定することができます。

 ちょっとつけ加えさせていただきますと、雑音も二種類ございまして、先生今御指摘になりましたような新幹線ですとか高圧線というものの雑音というのは、いわゆる都市雑音とは違いまして原因がはっきりしておりますので、副大臣が答弁されましたように、その雑音の源をはかって、そこを断っていただく。例えば高圧線ですと、碍子が緩んでいると雑音が起こります。そういうものを電力会社に申し入れて直していただくということが必要ではないか。そうしませんと、幾らパワーをアップしましても、この雑音にまさるパワーというのはなかなかできない、余りパワーをアップしましても効果がないというふうに聞いております。ただ、原因が都市雑音ということになりますと、パワーアップをすると非常に効果がございます。

 今、先生、四ワットと申されましたけれども、私どもが調べてみますと、鴻巣は十ワットでたしか送信をしているようでございまして、副大臣が言われましたように、二十ワットまで増力が可能でございますから、もし仮に雑音が都市雑音ということであれば、パワーアップをすることによって非常に解消されるのではないかなというふうに思います。

若松委員 大分わかってきました。

 そしてもう一つ、今度は今のアナ・アナ転換じゃないのですけれども、これはいわゆるデジタル化に対応した話ですよね。そうすると、FMの世界もデジタル化していくということですよね。ところが、今、全国でこのコミュニティー放送局は百四十局あるのですけれども、そのうち七割近くが赤字だということですね。ですから、鴻巣、失礼しました、何か利益誘導みたいな質問ですけれども、全国に散らばるコミュニティー放送局に対するデジタル転換に際しての支援とか、やはりコミュニティー放送というのは緊急災害のかなり有効な情報提供の役割なんです。

 ところが、お話を聞きますと、県とか地域からそういう、例えば九月一日、防災の日がありますよね、そこで何時から何時まで防災訓練をやります、市民の皆様協力してくださいということを放送してくださいと要請されるわけです。これは実質ただなんですよね。何か特にこの防災に関して、たしか防災行政無線の際の予算的な措置があると思うのですけれども、それを例えばこういうコミュニティー放送にも活用するとか、そういう道を検討されてはいかがかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。

鍋倉政府参考人 ちょっと不確かな答弁で恐縮でございますけれども、放送局に、防災のために防災の放送をしてそのかわりに対価を払うということは、たしかやっていなかったと思いますので、御理解をいただきたいと思います。

若松委員 ただ、コミュニティー放送の防災、災害時の情報源として大変重要なものだ、それは御認識なされるわけですよね。ですから、やはりそういったことに対して、百四十局、いざというときに大事なところに対して、七割が赤字ということですから、別にここで結論を出せというわけじゃないのですが、やはり何らかの検討をしていただきたいということですけれども、そういった面で、今後どうしていただけますか。

小坂副大臣 コミュニティー放送の地域における有効性というのは、地域から愛されるFMとしても定着してきていると思いますので、地方自治体とのいろいろな関係の中で地方自治体の広報をそういったミニFMが担当していただくというような部分で、いろいろな契約関係も生じることができるというふうにも思います。その辺は地域地域の知恵を出し合ってということでございます。

 また、FM放送そのものは、デジタル化が義務づけられておりませんので、アナログ放送とまたデジタル放送、双方がまだ今後とも続くわけでございます。また、デジタル化によりまして画像も送れる等のメリットもありますので、基本的にはFM放送も含めてデジタル化が進んでいくものと思いますけれども、安価な施設で地域に密着したミニFMがその特性を生かす、そういう行き方がまだまだあるだろう、このように考えております。

若松委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 これまでの質疑で私の質問に重複するところがあるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 私は前回、融合法と基盤法の質疑において、通信・放送機構法及びそれを根拠とする多くの特例法が、激しい技術革新の後追い的な改正、追加になっていることにかんがみ、それらを抜本的に改正する必要があることを要望いたしました。

 技術の進歩と社会のかかわりを考えるとき、私は、アーノルド・トインビーの有名な大著「歴史の研究」を思い起こします。トインビーの初期の歴史観では、すなわち、第二次世界大戦直前のヨーロッパを鳥瞰したとき、文明は国家国民を超越するとの考えに凝縮されるのであります。大戦後、博士は訪日の際、歴史の教訓にのっとり、原子力時代の文明の危機を訴えたところであります。

 今まさにIT革命が始まろうとしております。私は、IT革命という言葉は余り好きではありませんが、大きな文明革命であることは確かでありまして、グローバルな国境を越えた潮流であると思っております。大臣の所信表明でも、この流れが中核を占めていると思います。その中で、今回の電波法の改正は、我が国の通信・放送の将来を大きく左右する、地上テレビジョン放送のデジタル化の技術基盤を改めることであり、慎重な議論が求められると思っております。

 そこで最初に、このような認識のもと、大臣の基本的な考えはいかがでしょうか。

片山国務大臣 IT革命という言葉の是非は一つあると思いますけれども、このIT化を進めることによって、単に当面の、インターネット利用のことだけじゃなくて、それによって産業構造も変えていく、生活様式も変わるだろう、あるいは意識ですね、すべての人々の意識も変えていくというような意味で、革命という言葉を私は使ったのだろうと思います。いずれにせよ、この二十一世紀の我が国でIT社会を構築していくということは不可欠の課題ではなかろうか、私はこういうふうに思っております。

 午前中の議論にもありましたが、IT革命には光と影がありますから、光はより輝かさなければいけませんけれども、影の方はできるだけ、デジタルデバイド等を含めて是正、解消していって、すべての国民がIT化の恩恵を受ける、また大変産業や経済にもいい影響がある、こういうふうに持っていかなければならないのではなかろうかと私は思っております。e―Japan戦略もあるいはそれに基づくアクションプランも、そういうことで我々は参加して、そういう計画をつくり上げたわけでありますので、その計画にのっとって総務省の行政も対応をしてまいろう、こういうふうに思っております。

黄川田委員 今、大臣が影の部分を言われましたけれども、私も地方からやってきた者でありますので、情報格差はできるだけないように、国の根本的な取り組みをよろしくお願いいたしたいと思っております。

 私は、通信あるいは放送技術の素人でありまして、かつ昨年五月まで、先ほどお話ししましたとおり、住民の目線で物事を見詰める地方自治にかかわってきた者であり、今回付託されましたけれども、これまでの電波法の経緯について不案内であります。

 そこで、今回の重要な電波法の改正案に対しては、今まで広く審議会などの意見を聞くとか関連法案の準備をするとか、周到な用意がされてきたことと思います。その経緯を改めて大臣にお伺いしたいと思います。

片山国務大臣 地上放送のデジタル化につきましては、もう何度も御答弁申し上げているように、国民生活にもあるいは経済にも多くのメリットを与える世界的な潮流でございますので、ぜひこれを進めたい、こう思っております。

 そのために、学識経験者やNHKの会長、民放連会長という放送事業関係者、その他、消費者団体や労働組合の代表者の方々にも御参加いただきまして、地上デジタル放送懇談会、こういうものをつくりまして、平成十年十月に御結論をいただいております。そこにおいても、我が国において地上デジタル放送に全面的に移行すべきである、こういう結論をいただいております。そのために、もう既にこれも御答弁申し上げておりますけれども、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法、あるいは放送法の一部改正を国会に出させていただいて、御可決いただいているわけであります。

 また、平成十一年九月には、NHK、民放、当時の郵政省の三者による地上デジタル放送に関する共同検討委員会を設置して、全面的デジタルに移行するための具体的な実行方策等を検討してまいったところでございます。この過程におきまして、考え方等について電波監理審議会に御議論いただきまして、そこの報告もいただいております。

 こういうことの中で、今回、電波法を出させていただいて、この中で地上デジタル放送への移行を徹底していただこう、国家の意思としてこの法律によって明らかにさせていただこう、こういうことで御提案申し上げているわけでございます。

 若干の経過を御説明申し上げました。

黄川田委員 日本電子機械工業会の一九九九年の予測では、BSデジタル放送は放送開始初年は七十万台、二〇一〇年には約六千三百四十万台に達すると言われております。国内のテレビ出荷台数は年間約一千万台、テレビの普及台数は約一億台でありますので、十年で買いかえられることになります。この膨大な買いかえ需要を考えますと、旧郵政省、NHK、民放連、受信機メーカー等で構成するBSデジタル放送普及促進連絡会の予測による千日で一千万台のデジタルテレビ需要があるとの目標も、夢ではないようにも思えます。

 しかし、現実のBSアナログ放送は、先行したNHKのBS1、BS2やWOWOWなど四局を合計しても、この十年でやっと一千五百万台に達した程度であります。昨今の景気動向と二千万台にも及ぶiモードの爆発的普及を考えますと、この予測に疑問を感じるところもありますが、総務省の見解はいかがでしょうか。

小坂副大臣 委員御指摘のように、一千日一千万の目標は何とか達成できそうだ、しかし、二〇一〇年に六千三百四十万台というのはちょっと多過ぎやしないか、こういう御指摘だと思います。

 このデジタル化のメリットは、CS放送が実施されたときには、自分の希望する番組を自分で選んで見ることができる、既存の、従来の地上局とは違った形のバラエティーに富んだ放送がCS放送で受信できる。しかしながら、機能的に見ると、そんなに多機能ではなかったし、画質的に見ると、高画質とはなっていなかったわけでございます。

 今回のBSデジタルによりまして、衛星放送も高画質、双方向、また、地上放送が入りますと、さらに地域に密着した内容、バラエティーに富んだ編成、そしてデータ等の複合的なサービスの実施、インターネットとの融合、こういったことが出てまいりまして飛躍的なサービスの向上が図られると思っております。

 また、技術基準をCS、BS、地上放送の受信機の部品に対して行うことによりまして、共通化が進んでくると思うんですね。また、IMT二〇〇〇で導入をされます新たな携帯電話も動画等が受信できるようになりますが、これもデジタルのメリットでございまして、こういった受信機等の部品の共有化もさらに図られる可能性がある。

 そういったものを踏まえていきますと、二〇一〇年に六千三百四十万台に達するという予測は必ずしも過大なものではなくて、むしろ携帯電話による受信のようなものも加えれば数はもっと上にいくかもしれない、そういう可能性すらある、こういうふうに私は考えておりまして、これは一つの見解でございますが、そのように思っております。

黄川田委員 それでは次に、ローカル局を主体に、デジタル化設備投資に対する具体的支援策について、幾つかお尋ねいたしたいと思います。

 地上放送は県域放送、いわゆるローカル放送を基本としており、そのデジタル化は、地域の暮らしに密着したきめ細かい情報提供が可能となる、さらには移動受信に適しているなど多くのメリットを地域にもたらすものであり、地上放送の役割はますます重要になるものと思われます。

 一方、デジタル化による高度なサービスを地域格差なく実現するには、デジタル放送化の設備投資が必要となります。その投資額は、民放連の調査によりますと、民放全体で五千六百億円、一社平均四十五億円に及ぶと聞いております。

 民放キー局は一社当たりの売り上げが約二千二百億円であり、二、三年で投資の元が取れるかもしれませんが、私の地元岩手県においては民放の放送局が四社あり、中継局まで含めると、総計で約二百七十局の放送局、一社平均当たり七十局を新たに整備しなければなりません。昨今の景気動向下でのデジタル設備投資は大変ではないかと私は思っております。

 このような状況下、民間放送事業者の経営全般について、今後の見通しを総務省はどのようにとらえておるでしょうか。

小坂副大臣 現在の民間テレビジョン放送局の経営状況は、キー局、準キー局、またいわゆる地域局、ローカル局のそれぞれ、平成十一年度の経営状況で見ますと、増益になっております。

 デジタル化に当たっての多額の投資が必要であることも事実でございまして、その結果どうなるかということでございます。

 地上デジタル放送におきましては、多チャンネル化が行われ、また双方向を生かしたデータ放送等による地域密着型の番組が充実する結果、新たなスポンサー需要等も発生いたしまして、事業収入もそこに確保ができる可能性がある。そういうことから、経営センスを生かした新しいビジネスチャンスを十分に生かして、ローカル放送局におきましても健全な経営を維持していただけるものと思っているところでございます。

 それに対して国としての支援策といたしまして、法人税の特別償却、国税関係ではローカル局を対象といたしまして特別償却を導入いたします。もうしております。また、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法によりましてこれは実施しているわけでございますが、キー局も含めて、地方税におきましては固定資産税の軽減が行われております。

 金融上の支援策といたしまして、全国の局が対象になっておりますが、日本政策投資銀行からの安い金利による長期低利融資が可能になっております。また、無利子、低利融資につきまして、これはローカル局を対象といたしておりますが、同じく日本政策投資銀行からの無利子ないしは市中金利よりも安く、なおかつ財政投融資の、前述の、今申し上げた金利よりもさらに安い長期間融資というものをローカル局に導入しております。

 債務保証の面におきましても、市中銀行から融資を受けることが困難な事業者に対しまして、通信・放送機構がその債務を保証することによりまして市中銀行からの借り入れを容易にする制度等もございまして、こういった支援策をもって、ローカル局も円滑にデジタル化へ移行していただけるものと思っているところでございます。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

黄川田委員 特に、衛星放送の増加などを考えますと、今後の経営環境はますます厳しくなると予想されるところであります。デジタル投資がローカル局の経営の限界を超えれば、本来、地域の発展に大きく寄与する地上放送のデジタル化が、かえって地域間の情報格差を拡大し、デジタルデバイドが生じることが懸念されるわけであります。今後、デジタル化を進めていく上で地域間のデジタルデバイドの発生を防止することが重要だと思っておりますが、この点について総務省は今どのような基本構想といいますか、新たな考え方を持っておられるか、改めてお伺いいたします。

小坂副大臣 ローカル局がデジタル投資にたえられなくなればデジタルデバイドが起こるではないか、こういうことでございます。

 地上デジタル放送につきましては、関東、近畿、中京の三大広域圏では二〇〇三年まで、また、その他の地域も二〇〇六年までに放送を開始してもらいたい、こういうことでお願いをしております。今後十年以内にアナログ放送からデジタル放送への全面移行を計画的に進めていくということにしているわけでございますが、この点につきましては、NHK、民放、国の三者が共通の認識に立っているというふうに考えております。

 総務省といたしましては、このようなスケジュールに従いまして、放送事業者による円滑なデジタル化への取り組みが行われますように、先ほど申し上げた税制、金融面での支援策を講じると同時に、ローカル局、キー局等の御意見をこれからも聴取して、そういった御意見を参考にしながらさらなる支援策を決定してまいりたい、こう考えておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、地上放送のデジタル化を推進していく上で、先生が御指摘になりましたような地域間のデジタルデバイドが生じることがあってはならないというのは、本当に根本原則でございますので、大臣もその点に特に留意するように関係の部署に対して指示を出しております。

 そういうことで、委員の御指摘のようなデジタルデバイドが生じないように、今後とも精力的に検討を進めてまいりたいと存じます。

黄川田委員 体力の弱い地方局を中心に業界の再編が起こる可能性もあると思います。どうか特段の御配慮をよろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは次に、電波利用料などについてお尋ねいたしたいと思います。

 最初に、通常、年間の電波利用料収入はどの程度なのでしょうか、また、それが主にどのような事業や業務に支出されておるのでしょうか。改めてお伺いいたします。

金澤政府参考人 平成十二年度の電波利用料の歳入決算額でございますけれども、現時点では確定しておりませんが、歳入予算としては、約四百四億円を計上いたしております。なお、平成十一年度の歳入決算額は約三百五十七億円というふうになっております。

 電波利用料は、電波法第百三条の二に基づきまして、電波監視施設の整備、それから無線局の申請書類の記載内容をデータベース化いたしました総合無線局管理ファイルの作成及び管理、無線設備の技術基準を定めるために必要な技術試験事務、その他電波の適正な利用の確保に関し、総務大臣が無線局全体の受益を直接の目的として行う業務、このための費用に充てられているところでございます。

 以上でございます。

黄川田委員 ただいまお話がありましたとおり、電波利用料は、電波法に基づき、「電波の適正な利用の確保に関し総務大臣が無線局全体の受益を直接の目的として行う事務の処理に要する費用」に充てるため、無線局の免許人が負担するとされています。

 本法案では、電波利用料の使途として、特定周波数変更対策業務が追加されており、関連した予算措置として、地上放送のデジタル化に伴うアナログ周波数変更対策経費が計上されていると聞いておりますが、おのおのどの程度なのでしょうか。

 また、放送局の電波利用料は、電波法第百三条で年間一局当たり二万三千八百円と定められておりますが、放送事業者、例えばキー局では一社当たりどの程度の電波利用料を納めているのでしょうか。また、ローカル局ではどの程度でしょうか。

金澤政府参考人 平成十三年度の電波利用料の歳出予算でございますが、五百二十四億四千万でございます。その内訳は、電波監視体制の整備が八十億九千万、総合無線局管理ファイルの作成、管理が百十二億一千万、無線設備の技術基準を定めるために必要な技術試験事務でございますが、百二十三億一千万、それから、今回、対象となっておりますアナログ周波数変更対策に百二十三億三千万、その他経費八十四億九千万というふうになっているところでございます。

 放送事業者につきましては、平成十一年度において、キー局、準キー局クラスで一社当たり大体三百万から五百万の間ということでございます。具体的な社名を挙げて、これは平成十年の概数でございますけれども、例えばTBSは四百十五万払っております。それから、テレビ東京のように中継局の少ないところは三百四十二万、その程度の数字でございます。

 また、ローカル局では中継局の数によって大きく異なりますので、平均的な数値を申し上げることは非常に難しいわけでございますが、一社当たり大体五十万から三百万程度の電波利用料を納めております。

 以上でございます。

黄川田委員 電波利用料は、携帯無線を主とする電気通信事業者から約九割が支払われ、アマチュア無線等の自営業者、船舶や航空機等の無線事業者から一割弱、放送事業者からは一%強しか支払われていないと耳にしております。これでは既得権益の踏襲であり、テレビ局の電波利用料は安過ぎるのではないでしょうか。

 具体的には、放送局の電波利用料が二万三千八百円であるのに対し、携帯電話端末の電波利用料は五百四十円であります。

 したがって、携帯電話端末の電波利用料は相対的に高く、さらに引き下げられるべきではないかとも思われます。

 電波利用料額の積算の基本的考え方は、どのようになっておるのでしょうか。先ほど来、電波は国民の資産であるという見方もありますが、私からも確認の意味で改めてお伺いいたします。

金澤政府参考人 電波利用料制度でございますけれども、これは、無線局全体のための共益的な行政事務の費用、いわゆる電波利用共益費用をその受益者である無線局の免許人の方々に負担していただくものでございまして、電波の持ちます経済的価値、その他の価値、使用価値等々に着目して課すものではございません。

 具体的な電波利用料の料額でございますけれども、電波監視などすべての無線局に共通に必要な費用につきましては、全無線局で均等に負担いたしているところでございます。また、無線局データベース作成に関する費用につきましては、免許申請書類のいわゆるデータ量に比例して負担することとして算定いたしているところでございます。

 携帯電話端末でございますけれども、これは包括免許という制度を導入いたしまして、この包括免許の対象であることから、無線局データベースに記録する一局当たりのデータ量は非常に小さいということもございまして、均等割の負担額のみで料額を算定しているということで五百四十円というふうになっております。

 したがって、現在、各種無線局の中で、この携帯電話端末についての電波利用料額は最も低い水準となっているわけでございますけれども、次回、平成十四年度の料額改定の際、これは三年ごとに電波利用料について見直しておりますので、この見直しのときにも、この考え方に基づきまして適正に算定してまいりたいというふうに考えております。

黄川田委員 電波利用料については将来の検討課題であると思います。大いに議論されることをこの場では指摘しておきたいと思います。

 次に、高齢者等情報弱者への対応についてお尋ねいたします。

 今後、アナログ放送からデジタル放送への移行に伴い、視聴者側でも受信機の買いかえが必要となります。厳しい経済状況が今後も続くと考えられる中、視聴者に買いかえの負担をかけないようにするには、地上デジタル放送がコンテンツの充実を図るなどして、そのよさを発揮するとともに、受信機の普及を加速させ、手ごろな価格で受信機を入手できる環境を整えることが重要であります。

 そこで、BSデジタル放送受信機は、現在のアナログ放送も受信可能でありますが、将来、地上デジタル放送の受信が可能な共用受信機が低価格で発売されれば、地上デジタル放送の普及にも弾みがつくと考えられますが、その開発状況はどのようになっておるでしょうか。

鍋倉政府参考人 先生おっしゃいましたように、BSデジタル放送、百十度CSデジタル放送、それから地上放送、この三つのデジタルの受信機の共用化が可能になるような送信側の技術基準をできる限り共通化するということを私ども総務省でやっておりまして、それとともに、受信機の共用化を図ることができるような民間標準基準の策定を民間団体あるいは放送事業者、メーカー等に依頼をしているところでございます。

 現在、これらを踏まえまして、民間団体におきまして、この三者の共用受信機の民間標準基準の検討が進められているところでございます。もうしばらくででき上がると思いますので、この民間標準基準に基づきました共用受信機が製品化されますと、部品の共通化等により低価格で販売される受信機が可能になるのだろうというふうに思っております。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

黄川田委員 受信機の価格が大幅に下がって視聴者のだれもが購入しやすい価格になるといっても、高齢者や障害者が買いかえるのは大変なことだと思います。また、受信機の操作性という点は忘れてはならない点でもあります。情報弱者に使いやすい端末の開発について、総務省はこれまでどのような取り組みを行ってきたのかをお伺いいたします。

 加えて、デジタル放送の成果をすべての人が分かち合えるよう、デジタル技術を活用して字幕や解説放送など、高齢者や障害者向けの放送をもっと拡充する必要があると私は考えますが、総務省は現在どのような将来計画を立てておられるでしょうか、あわせてお伺いいたします。

鍋倉政府参考人 済みません、先生、二つお尋ねでございますが、担当が分かれておりますので、私はまず前半の方だけお答えさせていただきたいと思いますが、高齢者や障害者に優しいサービスということで、デジタル化によりまして、そういう受信機の対応が進むものというふうに思っております。

 具体的には、視聴者の好みに応じた字幕の文字の色ですとか大きさあるいは解説音声の速さ、そういったものの選択ができるとか、あるいはアニメーションによる手話の表示といったものも可能な受信機が開発されることになるだろうというふうに思っております。また、文字データを自動的に点字に変換できるような受信機の開発というものも期待されているところでございます。

 総務省としましては、従前から、手話のコミュニケーション放送システムの研究開発等の技術開発の支援を行ってきたところでございまして、今後とも、こういった高齢者、視聴覚障害者向けの放送技術の発展に積極的に支援をしてまいりたいというふうに思っております。

高原政府参考人 先生の御質問の後半の部分にお答えをいたします。

 総務省といたしましても、放送のデジタル化によりまして、字幕放送、解説放送あるいは手話放送等の多様化が非常に可能となるというふうに考えております。

 それに伴いまして、字幕や解説放送等の充実のために、平成九年度に放送法等を改正いたしまして、字幕放送等の努力義務化を図っております。また、行政上の目標として、平成九年十一月に字幕放送の普及目標を策定いたしまして、二〇〇七年までに、NHK及び地上民放は、現在の技術では字幕を付与することが技術的に困難な番組等を除いた午前七時から午後十二時までに新たに放送される放送番組すべてに字幕を付与することを目的といたしておるところでございます。現在、各放送事業者においても努力をいただいておるところでございますが、今後ともさらなる拡充が望まれるところでございます。

 総務省といたしましても、努力義務規定を踏まえて、放送事業者に対して引き続き要請を行うとともに、字幕番組等の制作費用に対する助成、字幕番組自動制作技術の研究開発を推進する等支援策を講じているところでございます。

 以上でございます。

黄川田委員 今般の電波法の改正は、放送局のデジタル対応と一般視聴者のテレビの買いかえを促すことになるわけでありますけれども、まだまだデジタルに対する国民の認識は低いと言わざるを得ない状況であります。

 アナログ放送に親しんできた視聴者は、テレビの買いかえなどで新たな負担を迫られます。問題は普及のさせ方だと思います。過去において、アナログのハイビジョンテレビ、横長のワイドテレビなど、先を急ぎ、消費者の購買をあおってきたのであります。中途半端な製品やサービスを視聴者に押しつけることのないよう強く求めまして、時間でありますので、終わります。

御法川委員長 次に、矢島恒夫君。

矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。

 今回、提案されております電波法一部改正案というのは、読んでみますと、いわゆる一般的な法形式をとっているわけです。例えば、特定周波数変更対策業務、その第七十一条などを読んでみますと、一般的に「周波数又は空中線電力の変更」、こういうような言い方です。特に地上波テレビの周波数の変更と限定しているわけではありませんけれども、しかし、実際には、二〇〇三年の三大広域圏、それから、二〇〇六年にはその他の地域での地上デジタル放送を開始するためのアナログ周波数の移動、いわゆるアナ・アナ変換、このことを支援するための法整備だというように言えるのだと思います。

 この地上放送のデジタル化というのは、国民視聴者にとって大変大きな問題であろうと思うのです。これまで、白黒テレビからカラーテレビへという大転換がありました。しかし、この地上放送のデジタル化というのは、白黒からカラーへ移ったのとは大きな相違点があると思うのですね。

 というのは、白黒のカラー化の問題のときには、白黒テレビでも、色はつきませんけれども、カラー放送は映ったわけであります。今度の地上放送のデジタル化の場合には、現在使っている、見ているアナログテレビではデジタル放送は映らないわけです。つまり、地上放送のデジタル化ということを受けて、国民視聴者は全員がテレビをアナログからデジタルに買いかえなきゃならない、あるいは、少なくともデジタルチューナーを追加購入するということが必要になるわけです。

 私は、この移行というのがスムーズに行われないと、今や基本的な情報獲得手段となっておりますテレビ放送を視聴することができなくなる事態も生まれることを懸念するわけであります。

 そこで、基本的な問題で大臣にお聞きしたいのですが、NHKはいわゆるあまねく普及が義務づけられております。民放もそうした努力をしているわけであります。地上放送というのは、やはりユニバーサルサービスというものであり、とりわけ緊急時にはライフラインとしての性格を持っているものだと思うのです。そこで、地上放送のデジタル化の過程において、まず何よりも、こうした現在の地上放送が持っているユニバーサルサービスだとかライフラインとしての性格、こういうものが後退してしまったり、あるいは失われるというようなことがあってはならないと私は思うのですが、この点について、大臣の基本的な考え方をお尋ねします。

片山国務大臣 矢島委員が言われますように、地上放送は基幹的な放送メディアですね。全世帯に普及している。一億台に近い数字があるのかもしれませんけれども、国民にとって最も身近で必要不可欠な情報入手手段でございますので、アナログからデジタルに移行しましても、ユニバーサルサービスとしての性格、あるいは災害時等におけるライフラインとしての性格はしっかりと残していかなければならないと私も考えております。

矢島委員 そのとおりにぜひお願いしたいと思います。

 今回のこの電波法改正案が成立いたしますと、二〇一一年にはもうアナログ放送というのは終了いたします。そこで、これは確認ということでお聞きしたいのですけれども、九八年の地上デジタル放送懇談会が、デジタル放送の一〇〇%カバーと世帯普及率八五%、この要件達成を条件に終了時期を決定するという提言をしているわけですが、当時の郵政省は、ガイドラインとして尊重すると言っていました。

 今回の電波法改正案を見ますと、要件なしにこの二〇一一年終了という方針だと思うのです。ですから、これまでのアナログ放送終了方法のいわゆる政府方針というものを変更するものである、そう理解してよろしいですか。

片山国務大臣 いや、それは基本的には方針変更ではございませんで、先ほども申し上げましたが、一昨年の九月から、NHK、民放と共同で共同検討委員会、総務省も入りましていろいろな検討を重ねまして、今後十年間で全面的なデジタル放送への移行が可能であるという一つの認識に立っております。また、受信機の普及につきましても、何度もここで議論いたしましたけれども、低廉になる、これは数字はいろいろありますけれども、相当程度デジタル受信機が普及する、こういう考えでございまして、一〇〇%、八五%という数字は出しておりませんけれども、基本的な考え方は変更いたしておりませんので、御理解を賜りたいと思います。

矢島委員 私はそうは思わないのです。というのは、この九八年のデジタル懇、ここで出したときには、数字はともかくも、八五%の普及率、一〇〇%のカバー率というものを前提にして、そういう事態のときに、では、いつ終了するかというのを決めましょう、これが基本的な提言の中身なんですね。

 今度の場合には、二〇一一年になりましたら、もうアナログ放送はいたしませんと、その普及率だとか、あるいは希望的に一〇〇%カバー、普及率も大きくなるとかそういう数字はなしで、要するに、後ろを切った。まだ、デジタル懇のときには、こういう状況になったら、そのときにひとつ終了時期を決めましょう、こういうものだったのが、今度は、今の時点で最終的な打ち切りの時期を決めた、これは大きな方針転換だろうと私は思うのです。

 このことについては、副大臣も前に、私、確認と言ったのはその答弁を確認したかったという意味で言ったわけなんですが、副大臣で結構ですが、ひとつ。

小坂副大臣 大臣が申し上げましたように、方針というものは、正式な方針といえば今回が正式な方針なんですね。

 デジタル懇のあれは、意見を聞いて、そういう方法でどうだろう、こういうことでありまして、その後の外国の動向だとか、技術的な検討、周波数の再割り当ての方法から始まって、シングル・フリークエンシー・ネットワークが構築できるのかどうか、あるいは再配分についてどうだろうか、チャネルプランについてどうだろうか、こういうものを検討した結果、共同検討委員会の結論が出てきまして、大丈夫だと、むしろ年限を明確にして、そこへ向かって皆さんに理解を得ておくことが必要だということで、方針として初めてこういう形を提示しているわけでありまして、以前何か別の方針があって、それを変更したというものではないということを今、大臣から御答弁いただいたところでございます。

矢島委員 私、実はこの問題、九九年の四月の逓信委員会で、当時は野田聖子郵政大臣ですが、お尋ねしましたら、当時の郵政大臣が答弁なさったのが、八五%はゴールではないんだ、終了するというのは、その時点、八五%普及になったときに考えるんだという答弁があったのですね、もちろん一〇〇%を目指すという御意見もありましたけれども。ですから、大臣が言ったことですから、これは政府の一つの方針だったわけですよ。

 それが、いろいろ意見を聞いた、デジタル懇の方々から意見を聞いた、だから、その意見を踏まえて共同検討委員会でと、こうなるわけですが、ただ私は、共同検討委員会というのは、NHKと民放連とそれから郵政省でしょう、三者ですね。デジタル懇には消費者の代表も入っていますよ、あるいはその他の有識者も入っています。そういうところで決めたものが、いきなり三者会談で今度は打ち切りだと決めたんですから、明らかに政府の方針を変更したんだというように言わざるを得ないわけなんです。

 そこで、現在の地上放送のユニバーサルサービスの問題に移りますけれども、こういう性格があり、ライフラインとしての性格、これは大臣もそのことを必要だとお認めになったわけです。

 ところが、今回の、最初に終了時期ありきという、私に言わせれば方針転換、そういう言葉を使うとあるいは別の答弁があるかもしれませんが、私に言わせれば方針転換。これはまさしく、普及率に関係なく、デジタル放送がどれだけカバーしているかというようなことにも関係なく、二〇一一年、ここでデジタルテレビを持っていない人は、何世帯あろうと、残っていようと、すべて足切りをするという方針なんですね。ですから、方針転換だと。ユニバーサルサービスやライフラインとしての性格を大切にするといいながら、本当に大丈夫か、こういうことを考えるわけなんです。いかがでしょう。

小坂副大臣 委員の御指摘というか、おっしゃっている意味はそれなりに私も理解できるんですが、しかし、目標を定めないでやった場合の不利益ということも、やはり国民経済的にも、また国民のデジタル化時代の世界の流れの中での利益というものも考えておかなきゃいけない。

 その面から、このデジタル共同検討委員会も特に重点を置いて考えられたと思うわけであります。消費者の皆さんの考え方というものも、基本的にはデジタル化という方向は一つの流れだという認識では一致していると思っておりますので、その流れをいかに円滑に計画的に確実に実施するかという点で、今回の目標設定、こう至ったわけでございます。決して、足切りをして、その時点で市場の状況が全く違うのに何が何でもやみくもにぶった切るんだ、こういうことではない。

 そうならないような方法として何があるかいろいろ検討した結果、そして、技術的な今後の政策の経費、セットトップボックス等の価格、そういったものを勘案して、また、先ほど一部申し上げましたが、フルサービスのデジタル放送というのはかなり複雑な機構が必要でありますが、デジタルテレビの映像を現在のアナログで受けるだけのセットトップボックスというものは非常に簡単な構造になりますので、今後、フルデジタルのサービスを基本的にしながら、動向を見ていきますけれども、委員の御指摘のような懸念がもしあるとするならば、それは決して検討しないということではございませんで、私どもは、状況をしっかり見ながらそういった開発をまたお願いするとか、そういうようなことで、無理なくデジタル化への移行が計画的かつ確実に行われる、それが国民の一番求めているところだ、このように確信をして進んでまいりたいと存じます。

片山国務大臣 ほぼ小坂副大臣から答弁したとおりなんですが、私も、無理のない努力目標を示せば、またこれは無理なく今の、普及率も八五%、カバー率も一〇〇%が到達できるということで今回、二〇一一年、こういうことを示していただいたわけであります。普及率がそれまでじっと待ってそれからばたばたということでは、世界の、ドッグイヤーと言われる速いデジタル化の風潮に我が国がおくれをとるのではないか。一〇年中も、我々はそんなに無理な期間だと思っておりませんし、その期間をとれば、目標を示せば、それは十分カバー率も普及率も移行できる、こういう考えでございますので、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

矢島委員 普及がどういうふうに進むかというのは先のことですけれども、私、これまでいろいろと他の委員にお答えいただいた中で、納得できないことが一つあるんです。

 それは、今のテレビに満足している人たちは十分いるわけですね。チャンネル数をふやせることも、双方向も、あるいは鮮明な画像じゃなくても今のでいいよ、こういう人もいるわけです。こういう人たちが、例えばハイビジョンや双方向テレビが出たからといって飛びつくのでなくて、テレビが壊れたら、買いかえよう、こう考えている方もいらっしゃるのです。そういう人たちが、いわゆる耐久年数とのかかわり合いで、テレビ買いかえサイクルといいますか、大臣が八年から十年だと、大体そんなものだろうと私も思います。ただ、私の議員会館の部屋のテレビは九二年製で、まだよく映っております。

 この地上放送デジタル化のスケジュールというのを見ますと、放送が始まるのが三大広域圏で二〇〇三年ですね。その他の地域は二〇〇六年から始まるんです。そうすると、二〇一一年までこれは八年と五年しかないんですね、電波が出てから。ということは、買いかえサイクルは八年ないし十年だという御答弁と、ここが矛盾しているのですよ。だから、まだ相当映るテレビが、この買いかえサイクルから考えますと、相当残っているのではないかという事態になるのです。そういう人たちもテレビを買いかえなければならない、こういうことになるわけで、まさしくユニバーサルサービスの問題やライフラインの停止の問題とも絡んでくる問題なのですが、その辺はどういうふうにお考えになるのですか。

小坂副大臣 同じような例として、私は適切だと思っているのですが、携帯電話がアナログ携帯からデジタル携帯電話に移行しました。移行するときには、市場ではアナログ携帯電話は大変安かったのですね。しかしながら、皆さん、高いデジタル電話をわざわざお買いになって移行していった。

 それはなぜかといえば、いずれ、アナログの携帯電話は時代おくれになっていくという認識が確実にそこの市場にあったと思うのですね。したがって、今アナログを買っても、機械としては使えるかもしれないけれども、いずれ、それはシステムの上で使えなくなってくるのだろう、それならば、ここで新たなものに乗りかえていこう、音質もいいし、いろいろなサービスがそこに出てくるらしいという期待と合わさって移行が進んできた、それがインセンティブになったと思っております。

 今回の放送のデジタル化も同じような意味がありまして、そこに十年という一つの目標年次を定め、二〇〇三年から三大広域圏、そして、二〇〇六年からはその他の地域でございますが、二〇〇三年の三大広域圏に実施されたときには、全国的な大変なニュースになってまいります。その評価はそこに住んでいらっしゃらない方でも、訪れて御友人宅で見られる、あるいはいろいろな関係でごらんになることがある、バスで訪れて、そこではデジタル放送の受信があったとか、いろいろな接触機会はあると思いますので、そういう認識のもとに、次にテレビの買いかえサイクルが来たときにどう判断されるかということであります。これは二〇〇六年実施の地域の方も恐らく、その時点で、二〇〇六年に買いかえようというふうに思われたときには電器屋さんに行ってデジタル対応のテレビをお買いになるだろう、これが普通の行動パターンではないかと思うのですね。

 いやいや、これだけ安い何分の一かの値段だから、あとたった四年しか使えなくても買おうという方は別でございますが、そういうサイクルで購入動機が形成されてくるだろうと思いますので、合意を得られるというふうに考えております。また、絵だけ見たいという方の需要が余り強ければ、多分メーカーもそういったアダプターも開発すると思いますので、無理なく移行できるというふうに御理解をいただきたいと思っております。

矢島委員 携帯電話の場合には、アナログがデジタルにかわって、手元にあって、しかも、いろいろな機能がついていて使える、そのメリットが国民によくわかるのですよ。なるほど、こっちの方が使いやすいし、いいやと。

 ところが、デジタルテレビの場合には、先ほど来、何回もメリットについてお話しいただいておりますので、繰り返していただかなくても結構ですが、そういうメリットが国民の間に十分に理解されていない、知られていないというのもあるし、それからもう一つは、二〇〇六年から実施する地域においては、まだ買いかえサイクルに、つまり、八年なり十年なりたっていないけれども、その時点でかえよう、こういうことに期待されるというのが今の副大臣の答弁だろうと思うのですね。

 まだ四年しか見ていないけれども、今度デジタル放送になるから、ひとつそれが見えるようなテレビに買いかえてしまおうということになるのですが、実はこれは、消費者にとってはまだあと四年なり五年なりそのテレビでも見られるんだけれどもということがあるわけですよね。そこにやはり、ああ、買いかえざるを得なくなったんだなという意識があるということは、ぜひこれも考慮しなければならない問題だろうと思います。

 そこで、地上放送のデジタル化ということで、高画質、双方向、あるいはいろいろなメリットがあるというお話の中で、そのメリットを積極的に選択していこうという視聴者もいるでしょう。しかし、今の放送に満足している人、こういう人もいらっしゃるんですよ。

 これは朝日新聞の朝刊です。「デジタル化は年寄りいじめ」という「声」の欄ですね。七十一歳の方です。こんな投書があるのです。「今のテレビは旅行や食べ物の番組ばかり多く、でなければタレントの私事を暴くのに熱中する。こんな愚劣な番組が増えて何になる。チャンネル数ではなく、ほのぼのと心温まる話や、美しい自然の姿、日常生活に役立つ情報を伝えるのがテレビの役割で、今のままで十分だ。 放送局も視聴者も余計な出費は断りたいはずだ。外国で普及したというのは理由にならないし、今の地上波放送はいずれ廃止されるという。アナログあり、デジタルありで、視聴者の選択に任せるのがあるべき姿だと思う。 我々は電器メーカーのために生きているのではない。わずかな年金で暮らす老人所帯をいじめるのはやめよ。老人は、物事や機械の変化に弱いのだ。」こういう投書が載っておりました。

 つまり、ここでこの方も言っているのは、テレビは今のままでも十分だというのが一つのお考えだと思うんですよ。この二〇一一年打ち切りは、こうした人にテレビ放送を停止してしまうことになるのだ。やはりこれは考えなければならないことじゃないですか。大臣、いかがですか。

小坂副大臣 私も、矢島委員が今、引用されましたお年寄りの気持ちはよくわかります。そういう気持ちを尊重しなければいけないということは、そのとおりだろうと思います。

 そういった方々に実際には、いや、あのとき私はデジタル放送は年寄りいじめだと言ったけれども、今、考えてみれば福音だわな、十年一昔というけれども、この十年の間にえらい変わったもんだなと言っていただけるような実施というのが理想なのだと思うんですね。

 そういうふうになるようにデジタルコンテンツ、放送内容等が整備されて、今おっしゃったように、私は自然の風景だとか人情だとかそういった番組が一番好きだから、できればそんなことばかりやってくれる放送も欲しいのだといった方々の需要にもデジタル化によって対応できるわけですね、多チャンネル化ということができまして。そういったお年寄りの気持ちをしんしゃくしながらテレビ事業者にも、また、いろいろな新しいサービスを企画する上でも、これに関連する皆さんに深く考えていただきたい。

 そういった考え方は私も持ち続けたいと思いますし、委員の御指摘が広く伝わっていくように私も願うところでございまして、そういった意味においても、これは必要だと私どもは考えるわけでございます。

矢島委員 放送のデジタル化ということを考えたときに、大きく言って三つの利害代表がいると思うのです。一つは放送事業者だし、一つはテレビメーカーだし、一つは消費者だ。今回の二〇一一年打ち切りというスケジュールが国民や視聴者にどういう影響を与えるのか、そのことに対して最も的確に判断できる利害代表ということを考えると、視聴者、消費者だということが言えると思うのです。

 九八年の地上デジタル放送懇談会には、例えば先ほど三者協議を行ったという中で出てきましたけれども、消費者団体の、主婦連の清水鳩子さんが入っていたと思うのです。私、この電波法の改正案が出たのを機会に清水さんにお会いしてみたのです。中身はこういうことなんですということの説明も含めてお伺いしました。やはりこの二〇一一年打ち切りということに対しては、大変驚いていらっしゃいました。あのときの懇談会の状況からはちょっと考えられないですねというようなお話がありました。

 そこで、今度の法案を提出するに当たって、消費者団体からの意見を聞きましたかという質問をしたのは、私、予算委員会の第二分科会だったと思うんです。そうしたら、聞いていないという答弁だった。そのことは間違いないんですね、聞いていませんね。

小坂副大臣 今御指摘の地上デジタル放送懇談会のときに、消費者の関係の、あるいは労組関係の委員の方がいらっしゃいました。それを参考にはしておりますが、それ以外に、共同検討委員会の方で聞いたということではないものですから、それ以外の部分であるかと聞かれれば、ないわけでございます。

矢島委員 消費者代表が入って決めた、いわゆる最初の八五%、一〇〇%、まあ、八五%はどうか、一〇〇%はどうかというのは別として、これを変更する、それに当たって、懇談会のメンバーであった消費者代表の意見も聞く。これ、普通やらなきゃならないことじゃないかなと。共同検討委員会、三者協議を行った、行ったというけれども、消費者代表を入れない、あるいはその他の有識者を入れない、こういうことは、この手続上問題があるんではないかと私は思うんですが、大臣、この問題をどういうふうにとらえて解決するんですか。

片山国務大臣 委員が言われる懇談会は、地上波のデジタル化へ全面的に移行すべきだ、こういう御答申をもらったんですね。あとは、いつ、どういう形でやるかということでございまして、そこは、関係者の方と共同検討委員会をつくりましていろいろ議論した結果、十年のいわば経過期間を置いて、そうなれば、懇談会で言われたカバー率も普及率も無理なく達成できるだろう、それを努力目標にして移行していこうということを決めたわけでありまして、その点、あと、懇談会の皆さんの御了承を得る必要は私はなかっただろうと、これは諮問機関でございますから。

 そういうことで、あとは役所の責任で、関係の方が相談してこの法案を出させていただいたわけでありまして、国民の代表でございますこの衆参の国会で十分な御議論をいただき、適正な御結論を賜ればそれで結構である、こういうふうに思っております。

矢島委員 時間が来ましたので。

 私は、この地上放送の特殊性というのがあるから、十分考慮して、今回の規定を地上テレビ放送に当てはめようとする場合には、アナログ周波数の終了というのは、やはりデジタル放送のカバー率だとか、デジタルテレビの普及率など、こういうものを要件として入れるべきだと思うんです。

 ただ、それが達成できない、つまり、何%がいいかということは今後論議するとしても、それが達成できないときには、十年という年数を変更する措置をとることも考えるべきではないか。私、そのための修正案を提出する方向で今、検討しておりますので、そのときにはよろしくお願いしたいと思います。

 終わります。

御法川委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問をさせていただきます。

 テレビ放送が開始されましてから約半世紀になります。そして、この間、テレビ一億台、ビデオ六千万台、これだけ多くの形で広く国民に普及してきたアナログ放送をデジタル化する、つまり、すべての家庭に定着しております放送のシステム、これを大転換するわけですね。すべての国民にかかわる大変な国策であると、先ほどからお話が出ておりますように、私は大変な大きな一大事業であるというふうに受けとめておるわけでございます。

 放送というのはすべての国民に関係するわけで、そうしますと、この大転換で一番大事なことは、やはり何といっても、国民のコンセンサスをいかにしてかち得て、お話しされておりますように、スムーズな形でデジタル化に移行できる、これが、国策である以上、一番気をつけなければいけない最大の課題である。これは、朝からこれまで各委員ほとんどの方が指摘されていた問題でございます。

 そこで、国策である以上、国にとってよりよい形になるために変えるわけですね。あるいは国民にとってよりよい形になる、だから変えるんだ、これが大前提であろうかと思います。

 まず、国策、国にとってどういった利益があるか、いま一度お話しいただけますか。

片山国務大臣 私はいろいろな国益があると思いますけれども、一つは、最も国民に身近な基幹的メディアでございますから、これがデジタル化によって、例えば高品質な映像、音声サービスができる、データ放送、双方向サービス、あるいは先ほども議論がございましたが、高齢者の方にとっても、話すスピードが変わったり、色を好きなように変えたり、高齢者や障害者の方にも優しいサービスがデジタル化によっていろいろできるようになる、そういう意味では、万般における多くのメリットを国民にもたらすということがまず一つあると思います。

 それから二つ目は、これは何度も申し上げますが、アナ・アナを経てデジタル化をやることによって四分の一から三分の一の、現在の周波数にゆとりができてくる。それが携帯電話等の新しい電波需要に十分に対応できていく。これは大変大きいあれではなかろうかと。

 さらに、デジタル化を進めることによりまして、テレビショッピングなどの新しいビジネスがいろいろ出てくるんではなかろうか。あるいは、その機器等を変えることによって、情報化で全体に大きな刺激を与えるということで、経済も活性化してくる。これを使うことによって、さらには、先ほども申し上げました、我が国の産業構造が中抜きになって変わっていく、あるいは生活様式も変わっていく、さらには、国民そのものの意識も変わっていくということは一つの革命的な起爆剤になり得るというふうに思っておりまして、そのことが二十一世紀の我が国にとっては不可欠な国益ではなかろうか、こう考えております。

横光委員 確かにそのとおりだと思います。国にとりましては経済的にも大変大きなプラスになるでしょうし、産業構造の変革、効率化ということにもなろうかと思います。また、新しい世界の流れという話も先ほどございました。これも時代の趨勢、技術革新の流れということで理解できます。そしてまた、国民に対していろいろなプラスの面も今、お話をいただきました。

 確かに、移動体の受信、これなんかはまさに画期的だと私は思っておりますし、地上波でなければなかなかできないことであろうと思っております。高齢者にとってもあるいは周波数の有効利用、非常に大きなプラスになるということはよくわかるんです。

 しかし、大きなプラスになるとしても、なるために、その移行の過程でさまざまな問題点、課題があるわけですね。それがこの委員会でほぼ集約された形できょう質問されておるんですが、やはり、そこにたどり着くまでの問題点は、国策である以上、それなりにしっかりと対応しなければならないということをまず認識していただいて、その点をちょっと質問させていただきたいんです。

 確かに、高品質、高画質、データ放送あるいは双方向、こういったことはBSデジタルが始まる前に盛んに言ってきた。BSデジタルが始まるまでのこれが最大の売り物だった。そして、昨年の十二月にそういった形で始まったわけですね。

 ところが、それだけ売りにして、BSデジタルの方はこれだけ画像がきれいになりますよ、質がよくなりますよ、双方向もできますよ、データ放送もできますよと言ってきたことが、ここ何カ月、半年近くたって、そういった売りが果たしてそのまま形となって国民に評価されていると思いますか、思いませんか。

片山国務大臣 BSデジタル化は、確かに去年の十二月からでございますから、約五カ月、四カ月ちょっとでございましょうか。これは、地上波と違いまして、普及がかなり限定的でございますね。そういう意味で、また利用の実態を私どもの方はしっかりと調査いたしておりませんけれども、あるいは横光委員の言われたような点があるかもしれません。ただ、地上波の場合とは少し違うのではなかろうか、これはケーブルテレビを入れまして百五十万でございますから。しかし、それも一つの貴重な参考資料ですから、十分調査して検討させていただきたいと思います。

横光委員 ケーブルテレビ経由を入れて百五十万という普及、これはある意味では、私は、順調とも言えると思うのですね。しかし、その最高の売りであったいろいろなものの中でどれだけ国民が評価しているかというのが、これから地上波デジタルに移行するための最大の、BSデジタルの今日までの、まだ短期間だから評価できない部分もあるでしょうけれども、ここが一番私はキーポイントになると思う。ここが普及をすれば地上波もかなりいい形でいくだろうが、ここのところにいろいろ問題点があるのではなかろうか。まだ余りにも受信機が高いということもございましょう。

 これはある人から聞いたのですが、データ放送も、野球あるいはドラマを見ていて、例えばこの俳優さんのことをちょっと個人的に調べてみたり、検索する。そうすると、それが出ている間に実際ドラマは進むわけですね。人間の目は一つしかないわけです。それで、推理ドラマの場合はかなり大事なところを見落としたという話も聞く。余りにも便利過ぎて結局、落とし穴があったというようなこともある。BSがもう一つ広がりにくい部分というのが、先ほど言った最高の売り物ということが国民の中にまだ浸透していないのではないかという気がしないわけではありません。

 放送というのは、国民にとりましては、電気、水道、ガス、電話、全くのライフラインですね。まさに国民生活にとって不可欠とも言える共有財産になっているわけでございます。先ほど言いましたように、大事なことは、国策でアナログ波を停波する、一一年にはもう打ち切るのだという、事のよしあしはまたこれから論議しますが、そのことを十分に国民に知らしめなきゃいけないということがまず一つですね。そして、停波することにより、何の落ち度もない視聴者がテレビを見ることができなくなる、そういった事態だけは絶対に発生させてはならない。このことは、私は、国策でやる以上、大変気をつけなきゃいけない面であろうと思っております。

 そこで、先ほどから各委員が質問をいたしております、いわゆる地上デジタル放送懇談会の最終報告で、世帯普及率は八五%、そしてカバー率が一〇〇%ということが報告されているのですが、この二つの要件は、今回、全くそのまま加味されているのです。この要件には変更はないのですね。

小坂副大臣 国民の皆さんに広く理解していただくことが基本であるのは、委員の御指摘のとおりでございます。

 BSデジタルにいたしましても、私も、過日、BSデジタルをごらんになった方が、いやあ、びっくりした、すごいきれいだね、あんなに画面がきれいだと思わなかった、こういう表現をされまして、周りにいた人が、本当にそんなにきれいなのか、みんな引き込まれるような思いをした。やはり表現によって興味というのはわいてくるわけなんですね。こういうものが浸透すると、どんどん広がっていくのかな、こういうふうに思います。

 そういう面も踏まえまして、周知徹底を図るということにつきましては、総務省のみならず政府挙げて、あらゆる機会を通じて皆さんに理解していただく。そういう中から、当初の基準でありますようなものが結果として達成をされている、こういう状況をつくり出すことが私どもは必要だと思っておりますし、それは無理なくできる方向であるということが共同検討委員会でも指摘をされ、私どももその線に乗って実施をする、こういうふうに至ったわけでございます。(横光委員「いや、ちょっと質問は違うんです。八五%、一〇〇%はこのまま変わっていないのかと聞いているのです」と呼ぶ)

片山国務大臣 先ほども答弁いたしましたが、我々は、ここに十年という期間を置く、努力目標を置くことによって、懇談会の言われたカバー率一〇〇%、普及率八五%は無理なくクリアできるのではなかろうか、そういうことで十年という期間をとらせていただいたわけであります。

横光委員 要するに、二〇一一年の段階で八五%の普及率が達成されたら打ち切るのですね。

小坂副大臣 法律上、再免許を行わないことになっておりますので、打ち切るということになります。

横光委員 放送法では、あまねく放送の義務という規定がございますね。これはNHKにとっては義務です。民放にとっては努力義務です。そのために、各放送事業者みんな、あまねく放送するために懸命に努力してきたのでしょう。

 そして今度、八五%普及していれば、国の施策であるので打ち切るのだということであるならば、極端な話、八五%を超した、ところが、まだ九〇%であって、あと一〇%のところは普及していない、それでも打ち切る、ということは、あまねく放送の義務という行政のあり方に矛盾するのじゃないですか。

小坂副大臣 NHKがあまねく受信できるように体制をとっていくということにおきまして、受信可能な地域、いわゆるカバー率を一〇〇%にするという目標を譲ることはできないと思っております。

 また、普及率が、デジタルテレビの世帯保有率が八五%を超えるかどうかにつきましては、懇談会の意見の中にそれが提示をされておりましたが、今回は、そういった世帯の保有率という数字を使うのではなくして、十年という一つの目標期限を定めて、そこへ向かって皆さんの認識を高めていただいて、無理なく移行していただける環境づくりをしよう、こういう方向でやっているわけですね。

 ですので、先ほど私が申し上げましたのも、そういった、国民の皆さんに広く理解されることによって、結果として二つの目標がそこに達成できているように今回の法律では考えて、十年という期間を出してきて、そこで停波をするということを明確にしているわけでございます。

横光委員 これだけの国策であるなら、期限を切るというのは一つの方法だと私は思います。その気持ちもよくわかるのです。

 ただ、そのときに、すべてスムーズに、今、大臣、副大臣がお話しのような形に進めばいいのです。ただ、進むためには大変な努力をしなきゃいけないこと、そして、進まない可能性もあるということを認識した上で行政というものは進めなければいけない。要するに、二〇一〇年の時点あるいはその前の一定の段階で、受信機の普及台数などで普及の状況を確認して、その状況いかんでは、柔軟な対応といいますか、そういったこともあり得るのですね。

小坂副大臣 私の方から答弁させていただきます。

 もし政府なり行政側が、何か一つの目標を定めるけれども、これは常に変更があるんですよということを言って実施しようとした場合に、これは恐らく政策目的を達成できないと思います。政策目標を掲げて十年という数字を出したときに、それが確実に実現できるかどうかという面で幅広い検討を行った結果、この数字が出てきているわけでございまして、状況を常に注視していくということは、もちろん私どももやらせていただきます。

 そして、その時々に応じて、さらに広報が必要であれば広報を強化する、またさらに、内容的にもっと新しいサービスが必要であればそのように放送事業者にお願いもしていく。そういう中で、皆さんが、この十年という、二〇一〇年までの期間にそれぞれが買いかえていただいて、八五%という数字で言うならば、それを上回る結果が出てくるような方向を私どもは目標といたしたいと思っておりますし、それは達成可能である、こう思っているところでございます。

横光委員 これはどう見ても、普及世帯数、普及率一〇〇%、カバー率一〇〇%、当然のことなんですね。でも、今の国策としては、そういった形、八五%で十年たった場合は一応アナログは打ち切るという方針でございます。例えば、その時点で八五%というと、一五%まだカバー、普及していないといった場合、現在、四千五百万世帯にテレビがある、その中で一五%といったらこれは大変な数ですね、四百万以上。それを目標以上にいっていることを確信していると、九〇%、九五%いっているかもしれません、一〇〇%いっているかもしれません。例えば九五%いっていても、残り五%おるということは事実なんです。

 ですから、これから質問するのは、残された人たちにはどう対応するかということをまずお聞きいたしたいと思っております。

 こういった大変な施策が、やはり一番大事なことは、先ほどから各委員が言っているように、国民の皆様方、視聴者の皆様方の理解と支持ですよね。ですから、余りに性急な目標時期の設定をしてしまうと、それを達成することだけが今度優先されて、支持されたり理解されたりする理解活動が二の次になるおそれがあるので、逆にしてくれぬか。そっちの方をまずわあっと広げていただいて、国民のコンセンサスを得て、それから、スムーズにあなたたちが望んでいるような形に、確信しているという形にいくべきではないかという気がいたしております。

 仮に、そういった時期が来て、アナログが見られなくなったというような人たちが出てきたときの対応も、やはりお聞きしておかなければなりません。

 一番の問題は、この法律によって買いかえの強制になってはならないということですね。あくまでも主体的に選択できる、そういった形で移行をしていくというのがやはり大事だと思います。それでもなお何%の人が見られなくなるという事態がもし発生したとき、そういうことはないというおつもりで、なければ一番いいです、なければ一番いい、でも、もしそういった方たちが発生したような場合、要するに、デジタル放送の受像機あるいはチューナーの価格をまず一番やらなきゃいけないのは、大幅に引き下げる施策を事業者、メーカーとも、これは国策である以上ともに協力して、早急にかなり大幅に引き下げる努力をまずしていただきたいということでございます。このことについては、どのようにお考えでしょうか。

小坂副大臣 委員が御指摘のように、最終段階でどうするか、これは確かに重要な問題でございます。そうならないように努力をする、その中で、CS、BS、地上デジタル放送、そして、携帯電話によるデジタル放送の受信ということも可能になるかもしれません。こういった場合に、部品の共通化が図られますと、価格の大幅低減が可能でございますので、その技術基準を定めさせていただいて、それを業界に対して提示をし、部品の共通化が促進されるように努力をする、これが一つございます。

 それからまた、NHKが今後、受信対策としてどのような形をとっていくかまだわかりませんけれども、今、受信ができない地域に対して衛星放送の受信設備を提供してやるようなことも受信対策としては行われてきておりますが、最終停波する状況において、例えばNHKはあまねく受信ということでございますが、その地域における世帯のほとんどが受信体制は整ったけれども、数世帯がまだだめであるというような場合に、では、そこに受信対策をとるためにどういう形をやったらいいか、これは経済的な指標として新たな放送設備をそこに投入するのか、あるいはそこの受信機自体を取りかえる形によって対策をとっていくのか、いろいろな方法が考えられると思うんですね。

 そういったものを一つの流れの中で、一番最後のところでどういうふうになるのか、私どもも全く考えないわけじゃございませんけれども、今ここでどういうことが考えられるというふうに提示をいたしましても、これは毎年技術がどんどん変わってまいりますので、その時々に常にウオッチをして、それなりに考えておきたいと思っております。ここで委員の御質問にお答えするというよりは、そういった姿勢で常にウオッチをしてまいりたい、このことはお約束しておきたいと思っております。

横光委員 それはちょっと納得できない部分があるんですね。

 これは何も国民がそうしてくれと言ったんじゃないんですよ、放送事業者だって積極的にデジタル化してくれと言ったわけじゃないと思うんです。先ほど言ったように、大きな国益になる、国民にとってもプラスになる、物すごい二十一世紀の新しい時代の流れである、そういったところにはみんな賛同しているんです。ですから、そのために生じるいろいろな問題点も同時にカバーしていかなきゃならないということを私は申し上げているんです。

 そういった先のことまで何も考えていないというのは、無責任に近い。ですから、私は、辛うじて九〇%でもいって、あともうちょっとだけれども、もう打ち切るしかない、二〇一〇年になった、そのときにそういった人たちのことに対しては、やはり具体策も考えざるを得ないというぐらいのことを今からしておかないと、それこそスムーズに移行する一つの障害になるんじゃないかという気がするわけですね。

 例えばイギリスではどういう状況か、ちょっとお話ししていただけませんか。

小坂副大臣 イギリスにおきましては、二〇〇六年から二〇一〇年の間にアナログテレビジョンの放送を終了するということを予定いたしておりまして、その際に生活困窮世帯あるいは高齢者世帯に対する配慮は何か講じているか、こういうことで調べてみましたところ、アナログの停波の時期は英国の場合には二つ条件を付しておりまして、主要な無料放送チャンネルがデジタルで視聴可能であること、すなわち、アナログと同水準の人口カバレッジを達成しているということですね。それからもう一つは、デジタル受信機が大部分の視聴者にとって購入可能な価格水準になっていること、こういうことを条件として出しております。この条件はありますが、特に配慮策といったものは今のところ講じられておりません。

 ただ、BBCは、視覚障害者に対して昨年四月から受信料の五〇%免除、あるいは七十五歳以上の視聴者に対して十一月からBBCの受信料の全額免除というものを別途講じておりますが、これは決してデジタル化とリンクしたものではないわけでございます。

横光委員 デジタル化とリンクしていないと言いましたが、放送そのものとしては変わらないわけで、そういった中ではイギリスではいろいろな施策をしていると私はいろいろな報道から聞いてもいるんです。

 その中で、買いかえが経済的に困難な貧困家庭については、政府は補助金などの措置を講じて支援することを検討しているという話もございます。これは後でこういったことが事実かどうか調べておいてください。それで私にも報告してください。

 もう一つは、年金受給者には受信料を無料化しているということも聞いているんですが、これも事実かどうか、後で調べてお知らせいただきたいと思います。

 そこで、私は、しつこいようですが、最後の最後に、どうしてもデジタル受信機を買えない、チューナーも買えない、アダプターも買えないという人たちの施策として一、二ちょっと提案を申し上げます。

 例えばデジタル放送の受像機やチューナーの、生活保護世帯ですね、こういった方々については、テレビの買いかえの際にいわゆるアナログ受信機との差額、これはまだデジタル受信機が高いから、アナログ受信機をデジタル受信機に買いかえるわけですから、そのときの差額を援助するなどの施策をひとつどうか。いざその時点になったときに、買いかえるときの差額を、国策である以上、国としては生活保護者に対して援助すべきじゃないか、それが一つ。

 いま一つは、結局、地上アナログ放送の打ち切りをする場合、同じような生活保護者世帯に対して、二〇一一年、受像機買いかえ、もうアナログは見られない、でも受像機を買いかえることは経済的に難しいんですから、もうデジタルしか見られないんだから、いずれ買いかえるまでの間、デジタル放送用のチューナーを無償で貸与する、これぐらいのことを国策である以上考えている、その辺のことはどうですか。

小坂副大臣 今、副大臣としての立場もございますが、これは委員と政治家同士の話として申し上げるわけであります。実は私も、数年前、党の政策部会等におきまして、受信のためのセットトップボックスは最終段階で無料で配布したらいいじゃないか、こういうことを申したことがあります。それはどういう意味かといいますと、デジタルの放送をアナログテレビで受信できない部分を解消するセットトップボックス、すなわち、絵だけはちゃんと見られる。多機能ではないかもしれない、しかし、少なくとも絵が見えない状況だけは解消するというようなものが考えられるだろう、こういうふうに考えたことはございます。

 しかし、今、この立場で申し上げるわけでございますが、市場ではいろいろな施策が講じられてくるんですね、これから。例えばメーカーとしても、部品の共通化を図るためにはなるべく点数が少ない方がいいものですから、デジタル化にもう早く生産ラインを切りかえたい。そういうことになりますと、逆に、デジタルテレビを買っていただけるならば、お宅のアナログテレビをこれだけ高く下取りしますよと言ってそれを促進するとか、あるいは技術的にも、ソフトウエアでそういったものがかなり調整できて、安価なアダプターが、セットトップボックスが開発されるとか、そういったことは十分考えられますので、市場の推移を見ながら最終段階を見詰めていきたい。

 先ほどは、考えないと言ったわけじゃないんですよ。先ほど申し上げたように、常に前向きに、慎重に見守っていきたい、そうして、必要なことは、今、公言できないけれども、常にその時点その時点のものを温めて持っていきたい、こういうことを申し上げたわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。

横光委員 少しほっとしました。要するに、そういった事態が発生しないように努力をされるわけです。発生した場合は、何らかの、形は今、公言できないにしても、いろいろな案をメーカーともども、技術革新というのはこれから十年、すさまじく進むと思いますので、私が心配していることは杞憂に終われば一番いいんですね。よろしくお願いしたいと思います。

 BSデジタルがスタートしました。これから地上波デジタルが始まるわけですが、一番の普及する点は、やはりソフトですよ。BSデジタルが始まっていますけれども、このテレビの番組を見て、おお、見たいというような番組がそんなに多くあるような気が私はしないんですね。スポーツ中継とか芸能中継、舞台中継とかいうのはすばらしいんですが、なかなか新しいソフト、見たい、魅力的な、引きつけるようなソフトがまだまだ乏しいというような気がいたしております。これから地上波デジタルが出てきますと、やはりそこがデジタルの普及する一番大きなキーポイントであろう。移行をしやすい環境、いわゆるコンテンツの充実、これに放送事業者ともども努力していただきたいということを最後にお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会




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