衆議院

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第5号 平成13年11月7日(水曜日)

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平成十三年十一月七日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 御法川英文君

   理事 荒井 広幸君 理事 川崎 二郎君

   理事 渡海紀三朗君 理事 平林 鴻三君

   理事 田並 胤明君 理事 松崎 公昭君

   理事 若松 謙維君 理事 黄川田 徹君

      赤城 徳彦君    河野 太郎君

      左藤  章君    佐田玄一郎君

      坂井 隆憲君    新藤 義孝君

      滝   実君    谷  洋一君

      林  幹雄君    菱田 嘉明君

      平井 卓也君    宮路 和明君

      山本 公一君   吉田六左エ門君

      荒井  聰君    伊藤 忠治君

      大出  彰君    金子善次郎君

      玄葉光一郎君    武正 公一君

      中沢 健次君    中村 哲治君

      山村  健君    高木 陽介君

      山名 靖英君    佐藤 公治君

      春名 直章君    矢島 恒夫君

      重野 安正君    横光 克彦君

      中田  宏君

    …………………………………

   総務大臣         片山虎之助君

   総務副大臣        遠藤 和良君

   総務大臣政務官      新藤 義孝君

   総務大臣政務官      山名 靖英君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      中島 忠能君

   政府参考人

   (人事院事務総局総務局総

   括審議官)        吉藤 正道君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  香山 充弘君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  石井 隆一君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    久山 慎一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局国民健

   康保険課長)       宮島 俊彦君

   総務委員会専門員     大久保 晄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月七日

 辞任         補欠選任

  浅野 勝人君     林  幹雄君

  野中 広務君     菱田 嘉明君

  平井 卓也君     伊藤信太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  林  幹雄君     浅野 勝人君

  菱田 嘉明君     野中 広務君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)




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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局総務局総括審議官吉藤正道君、金融庁総務企画局長原口恒和君、総務省自治財政局長香山充弘君、総務省自治税務局長石井隆一君、総務省統計局長久山慎一君、財務省大臣官房審議官木村幸俊君及び厚生労働省保険局国民健康保険課長宮島俊彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武正公一君。

武正委員 皆さん、おはようございます。民主党の武正公一でございます。

 地方税法等の一部を改正する法律案について、質問に立たせていただきます。昨日も財務金融委員会で租税特別措置法改正案が審議され、議決されておりますが、これを受けての今回の地方税法の一部改正といったことでの質疑でございます。

 私は、今の日本の経済状況において、やはりこの景気低迷を打破するかぎは、人や物やお金や情報、この流動性を高めることが肝要だと思っております。そして、そのための阻害要因はできるだけ減らしていく、ただし、例えば個人のプライバシーなどは守るといったことが原則というふうに考えております。

 その中で、千四百兆円の個人資産でございますが、これが預金、株式について、一九九〇年度末、日本でありますが、株式・出資金が八・四%、現金・預金が五三・八%。これはアメリカと比較すると、アメリカは、株式・出資金三六・九%、現金・預金は九・六%。もう本当に極端な対比でございます。すなわち、日本の千四百兆円の個人資産が、株式での運用が一〇%弱、現金・預金が五割を超えている。これは、先ほど私が冒頭で触れましたお金の流動性を高めるといった点では、やはり問題がありというふうに考えるわけでございます。

 また、株式委託売買は、平成元年と十三年を比べますと、個人の株主でございますが、三〇%から一七%に減りました。一方、外国人、これは機関投資家だと思いますが、一一%から五〇%超ということで、株式の委託売買の半分を外国人の機関投資家が占めている。個人は一七%であるといったところも、やはり個人の株主といったものがもっとふえていく、そんなインフラが必要だろうと考えるところでございます。

 そういったところを受けまして、総務大臣もメンバーであります経済対策閣僚会議は、四月六日、緊急経済対策で、証券市場の構造改革、個人投資家による長期安定的な株式保有の促進など証券市場の活性化を図る、そしてまた八月八日に金融庁の改革プログラム、そして今回の改正となっていると考えますが、この預貯金からの流動性向上を目指して、貯蓄から株式への大きな流れといったものについての総務大臣の御所見をお伺いします。

片山国務大臣 今回の改正は、今、経済財政諮問会議というのがありまして、そこで今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針というのを六月の終わりに出しましたが、いわゆる骨太方針の中で、今、武正委員御指摘のように、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方を切りかえていく、こういう観点から考えられたものでございます。

 今、アメリカと日本の比較のことを言われましたが、金融資産の株式保有の比率を見ますと、アメリカが日本の大体四倍ですよね。ちょっと数字がいろいろあるので、私の方の数字では、金融資産に占める株式の割合が、日本は六・四になっていますね、アメリカは二四・二、ドイツが一二・七。日本が大変低いことは事実ですね。

 それは、やはり株式市場そのものに対する信頼性が今まではやや低かったのではなかろうか、こう思うわけでありますが、今後は、今お話しのように、流動性を高める、あるいは金融・証券市場を通じて資源が効率的に成長分野に流れることを確保することが必要だ、私もこう思っております。そのためには証券市場の構造改革に資する制度改革が必要でございまして、そういうことの一環で、透明性、公平性を高める、あるいはリスクを緩和するというようなことから、今回の国、地方を通じる税制改革が行われたわけであります。私は、委員御指摘のように、この大きな流れというものは加速させていく必要があるのではなかろうかと考えております。

武正委員 預貯金から株式へという流れを加速させるという総務大臣の御所見でございます。

 株式市場の透明性が低いということに関しては、昨日の財務金融委員会でも、民主党がかねてから主張しております日本版SECがやはり前提であるということで、先ほどの租税特別措置法改正については修正案を出しております。

 さて、週刊ポストの十一月十六日に、ペイオフ解禁を前に郵便貯金にいわゆる自治体の公金が流入していると。今一千億を超えているといったときに、郵政事業庁幹部は、それがこの勢いでは一兆円を超えるのは時間の問題だというようなことも言っているんですね。また、朝日新聞の七月十日付では、「郵貯の自主運用の拡大にともなって株式運用を十兆円程度増やす方針」、これもやはり総務省のお話でございます。そういった意味では、預貯金から株式へといったところが、先ほどの加速するといったところにあらわれていると思っております。

 さて、昨年十一月三日の日経を見ますと、「住民税の減収を懸念する自治省も、大蔵省と足並みをそろえて反対する構え」といったことが出ておるんですが、今回の改正に当たって、税収に与える影響と、それを踏まえての所見をいただきたいと思います。

石井政府参考人 お答えいたします。

 現行の株式等譲渡益課税につきましては、今先生がおっしゃいましたように源泉分離課税を選択いたしますと地方税が非課税になるとか、諸外国に例のないみなし利益に課税するものであり所得課税としてふさわしくないですとか、申告分離あるいは源泉分離の使い分けによりまして税負担の意図的な軽減が可能であるといったこと、あるいは課税に対する匿名性があるといったような問題がありまして、課税の公平、適正化の見地から、できるだけ早期に申告分離課税への一本化を図るべきと考えていたところでございます。

 今回、申告分離課税への一本化に合わせまして、他の預金利子等とのバランスから二六%を二〇%というふうにしたものでございまして、これに繰越控除制度の導入でございますとかいろいろな措置を講じまして、国民の皆さんが安心して証券市場に参加できる環境の整備を図るために必要な措置が講じられたのではないかと考えております。

 なお、今回の措置によって地方税の大まかな増減収はどうかということでございますけれども、申告分離課税への一本化による増収としては約一千三百億円程度、申告分離課税の税率の引き下げによる減収が約四百五十億円程度、それから損失の繰越控除の特例の創設によります減収が約四百七十億円程度と見込んでおるわけでございます。

 そういたしますと、この増減収については十三年度の予算の税収を基礎に計算しておりますので、実際のいろいろな取引いかんによって変わるわけですけれども、各年度おおむね数百億円程度の増収にはなるのではないかというふうに考えているところでございます。

武正委員 今回申告納税に一本化ということでございまして、その背景について今お話がございましたけれども、私は、そもそも税を納めるというのは、源泉徴収というような形でいわゆる天引きというよりも納税者がみずから申告をする、源泉徴収ではなくて申告納税というのがやはりあるべき姿ではないかなと。国あるいは地方の運営については、そうやって納税された税金をもとに何をすべきかがあるのであって、先にこれをやらなきゃいけないから税をという、もとい、いろいろ仕事があって、そのためにやはり税が必要だといったところが私の考えるところであります。

 その源泉から申告納税へという流れについてなんですけれども、これも日経の十月四日の社説で、「すべての所得を透明にして総合課税する方向に向かわざるを得ず、納税者番号制の導入も視野に入れた本格的な税制の大改革に行き着く。」ということで述べているわけなんですね。

 まず、この源泉徴収から申告納税へという流れについての御所見と納税者番号制度についての考え方、これをお伺いするとともに、一方、株式譲渡益課税の適正化の中で源泉分離課税を廃止して申告分離課税への一本化が今回の改正でありますが、個人投資家の確定申告の煩わしさをできるだけ軽減する簡便な納税方法をどう工夫するかといったことも課題とされておりまして、二〇〇二年一月からの申告書様式の見直しや二〇〇三年度からの電子申告の導入といったことが国税庁から言われておりますが、これについての工夫について、財務省さん、お答えをいただきたいと思います。

木村政府参考人 お答えいたします。

 今、先生から三点御質問があったかと思います。順次お答え申し上げたいと思います。

 第一点目は、源泉分離から申告への流れについてどういうふうに考えるか、この問題についてでございますが、御承知のとおり、現在、サラリーマンの場合でございますが、一般のサラリーマンにつきましては、年末調整によりまして本来納付すべき税額の精算が行われておりまして、ほかに所得がなければ特段の確定申告を要しないということにされております。ただ、御質問のように、現在、サラリーマンみずからが年末調整のかわりに申告によって税額の計算、確定を行うことは重要なのじゃないかというような御指摘もなされているところでございます。この問題につきましては、所得税そもそも論にさかのぼるわけでございますが、特に給与所得控除のあり方にもかかわる問題でございまして、国民的な議論の中で今後検討されるべき問題と考えております。

 ただ、今回のキャピタルゲインの問題につきまして、これは給与と違いまして利益と損失の発生がいろいろ生じてくるわけでございます。したがって、利子とか配当、さらに給与、そういったものと違いまして、なかなか取引ごとに源泉徴収をする現行法制になじみにくいといった問題もございますので、一概に給与、利子等と同列に論じられないのではないかと考えているところでございます。

 それから、納税者番号制度についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、これまでも政府税制調査会等におきまして審議が行われてきておりまして、昨年七月に取りまとめられましたいわゆる中期答申におきましては、適正、公平な課税の実現、それから税務行政の効率化、高度化、さらには納税者の税制への信頼の向上にも資する、一方、付番方式、それからコストと効果、プライバシー保護など引き続き検討すべき課題が残されている、したがって、その導入につきましては国民の理解と協力が不可欠であるといった指摘がなされているところでございます。

 こうした指摘を受けまして、今後、納税者番号制度につきましては、制度の意義や付番方式、コスト、効果、繰り返しになりますがプライバシー保護など、さまざまな論点につきまして、国民の受けとめ方や考え方を踏まえながら、資料情報制度のあり方など、納税を支える他の諸制度のあり方ともあわせまして、その導入につきまして検討を進めていく必要があると考えているところでございます。

 それから、三点目、今回の申告分離課税への一本化に伴いまして、簡易な申告についての御質問だったと思います。

 今回の改正によりまして、株式の譲渡を行いまして年間を通じまして利益が生じた、そういった場合には原則として申告が必要になるわけでございます。したがいまして、その申告が簡便に行えるようさまざまな配慮を行っていくことが重要かと考えているところでございます。したがって、今回の改正におきましては、これは租税特別措置法の改正法の中に書いてございますが、取得価額が不明な場合の取得費の特例を設けることによりまして、納税者の申告事務負担に配慮することとしております。

 また、タッチパネル式自動申告書作成機というのがございます。これは銀行のATMをイメージしていただければと思いますが、そういったタッチパネル式の自動申告書作成機の機能拡充などの対応も予定しているところでございます。

 さらに、今後、証券会社においても顧客サービスの見地からさまざまな工夫がなされることが期待されまして、これらの対応が一体として納税者の簡便な申告に役立つものと考えているところでございます。

武正委員 先ほどちょっと混乱いたしましたが、私が源泉徴収から申告納税へという流れということを申し上げたのは、先に税が決まっている、あるいは税額が決まっていて、収入が決まっていて、その後仕事を、何を国民のために、あるいは地方の住民のためにやらなきゃいけないかということを考えるのではなくて、まず国民や地方の住民のためにやらなければならない仕事が先にあって、その後に税が出てくるといったことでありますと、先に、こういった国民サービスあるいは地方の住民へのサービスを国なり地方自治体がやります、皆さん、どうでしょう、では、それについてこれだけの税を納めましょう、そのときは源泉徴収ではなくてやはり申告納税がいいだろうといった議論でございます。

 さて、今、納番についてのお話がございましたが、住民票コードの納番転用を政府税調会長が示唆、これに対して、昨年五月十九日衆議院大蔵委員会で我が党の河村議員が指摘、その後、中期税制答申では住民票コードの納番転用をしない旨の記載がされた。

 納番導入には条件があるということは、石村耕治朝日大学教授が税務広報で述べておりますが、やはり課税庁が付番機関になるべきだといったことでございます。一方、総務省は、来年通常国会に、オンラインでの納税申告や旅券の交付申請に向けて、本人確認に必要な電子証明書を地方自治体が発行するための法案を提出、これは住民基本台帳ネットワークを念頭に置いているのではないかという新聞記事もございます。

 一方、杉並区の山田区長は、朝日新聞七月十五日「論壇」でこのように述べております。

  住基ネットは住民の居住を確認するための利用に限定するという条文は法案を通す方便で、いずれ再改正して納税者番号や運転免許証番号、金融機関の顧客番号などほかの個人番号と連動させようというのなら、行革や企業支援の経済効果は費用を上回るだろう。ただし、それでは国民総背番号制度にほかならず、今度は政府や企業による個人のプライバシー侵害が広がる危険が生じてくる。

  住民番号を納税者番号としても利用しているスウェーデンでは「人は個人ではなく第一に個人識別番号(PIN)だ」と、同国のデータ検査院長官が嘆いたことがある。一九九六年に来日した彼女は、こうも警告した。「PINはプライバシーに対する脅威のシンボルとなった。導入はお薦めしません」

といったことで、既に杉並区では、住民基本台帳の番号がプライバシーを侵害するおそれがあるときにはということで、そのときには国には通知しないといった条例を通しております。

 また、政府は、ICカードを二〇〇三年度、希望する国民に配付といったことも打ち出しております。来年八月から始まる十けたの住民基本台帳番号を国民一人一人に付与するといったことと納税者番号制度が連動されることに危惧する声があるわけですが、総務大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 御承知のように、平成十一年の八月に住民基本台帳法の一部を改正する法律が成立いたしまして、現在その準備をやっているところでございまして、今、武正委員御指摘のように、来年の八月から施行する。そこで、恐らく行政庁からの住民確認と住民票の取り扱いについてのネットワーク利用というのが始まるわけでありますが、この改正住民基本台帳法は、住民票コードの民間利用は禁止しておりますから、このシステムをそのまま納税者番号制度に使うということはできない。それは、そういうことでないということを国会の審議でも答弁いたしております。一方では電子納税の研究、検討が今進められておりますけれども、これは、これとは全く別の角度から、別の観点から検討されているわけでありまして、今御心配のように、この住民票コードが直ちに納税者番号に転用されるということは私はあり得ないと考えております。

 ずっと将来どうなるかということは、またこれはいろいろな議論の余地があると思いますけれども、納税者番号制度そのものにつきましても、政府税調でも、大変そういう意味ではいろいろな観点からの検討が必要だという、ある意味では慎重な答申が出ておりまして、住民基本台帳の方の住民票コードは違うんですよ。納税者番号制度導入そのものも、国民の意識がかなり高まってある程度のコンセンサスが得られないとなかなか難しいんじゃなかろうか、こういうふうに私は考えております。

武正委員 ぜひそのようにお願いしたいと思いますが、来年の通常国会に本人確認の法案なども出されるようですので、非常にいろいろな角度から、この住民基本台帳法の改正に絡んで地方自治体との関係でこの国会での論議が行われると思いますので、ぜひ今の指摘について御留意をお願いいたします。

 さて、有価証券報告書の内容は投資をするのに役立たないという議論が多いというふうに言われております。また、今回の法改正で対象となってまいりますREIT二社の目論見書を見ても、非常に分厚くて内容がわかりづらい。このような点にかんがみ、一般投資家でもすぐ理解できるような有価証券報告書、目論見書へ改善していく動きがあるのかどうか。特に企業に国際会計基準導入が始まっているわけですが、これを今の有価証券報告書、目論見書にしっかりと記載させることなども含めて、金融庁の御所見を伺います。

原口政府参考人 投資家が自己責任原則に基づいて投資判断を行うためには、御指摘のように有価証券の内容あるいは発行会社の事業内容、財務内容等について適切なディスクロージャーが行われているということが重要でございます。そういう観点から、有価証券報告書等につきまして、国際的調和の観点も踏まえつつ、金融商品の時価会計の導入でありますとか実質支配力基準に基づく連結会計への移行等、その内容の充実に努めてきているところでございます。

 特にまた、投資家にとってわかりやすい目論見書ということは、特に投資信託等の場合、個人投資家が参入するために非常に不可欠の条件だと考えております。そのため、八月の構造改革プログラムにおきましても、一つのテーマとして、投資家にとってよりわかりやすくするための目論見書の記載内容の改善ということを検討項目に挙げております。現在、金融審議会第一部会のディスクロージャーワーキンググループにおいて具体的な検討を進めていただいておりますが、その報告等をいただいた上で、投資家にとってわかりやすいディスクロージャーのための目論見書の記載内容の改善という方向で検討していきたいと考えております。

武正委員 国際会計基準の導入についてということも指摘をしたんですが、これもしっかりと入れておくべきだというふうに私は考えます。

 さて、「郵政」という雑誌というか広報誌というか、ございまして、この二〇〇一年三月号に黒川専修大学教授がこんなことを書かれております。郵政公社の保有する資金を市場にさらす場合、みずからの経営管理が当然のこととなりますが、この場合、どのようにしたならば適正な管理が果たせるでしょうか。これは、国際会計基準を導入する以前の民間企業を参考にするのではなく、国際会計基準を導入している現在及び将来の企業から多くの示唆が得られるでしょうというふうに述べているんです。今、国際会計基準を各企業が導入を進めておりますが、郵政公社化後、この郵政公社は国際会計基準を導入すべきではないかと考えるんですが、総務大臣の御所見を伺います。

片山国務大臣 郵政事業の公社化後の会計につきましては、例の中央省庁等改革基本法の第三十三条第一項第四号で、企業会計原則に基づき処理する、こういうことが明記されております。一方、国際会計基準の導入を図るべきだという企業会計基準委員会ですか、そこでの御検討もあるようでございまして、したがいまして、企業会計に国際会計基準を導入するということになれば公社の方も当然同じ扱いになる、こういうことで、現在、私のところの郵政事業の公社化に関する研究会の財務会計制度ワーキンググループで関係の先生方に御検討をお願いいたしているところであります。

武正委員 会計制度の大きな変革に耐え得るだけの体力があるのかどうかで企業間格差が広がるという見方がありまして、よく総務大臣がデジタルデバイドということを申されますが、これからはアカウンティングデバイドということで、国際会計基準といったものがきちっとこなせるかどうかで企業も、さらにまた公社もその存在感が問われるということですので、ぜひこの国際会計基準を新しい郵政公社は導入すべきということを重ねて申し上げます。

 さて、公営ギャンブルでございますが、「主催団体の四割赤字 二〇〇〇年度競馬黒字ゼロ 累積五百億円に」、これは十一月四日の東京新聞でございます。今、地方公共団体の主催する公営ギャンブルが大変経営が厳しいといった中で、これは埼玉県の所沢市が平成十三年三月三十日、市長名で経済産業大臣に、「平成十二年度所沢市営競輪に係る日本自転車振興会交付金の取り扱いについて」ということで要望書を出しております。

 この中で、地方公共団体の競技事業はもともと地方財政を補助するんだ、自転車競技法と国会審議からそう読み取れるということで、日本自転車振興会交付金はその地方自治体の特別会計の収益金から支出すべきであって、このように収益がない場合、一般会計から支出をしなきゃいけないわけなんですが、これは支出すべきではないだろう。そしてまた、特に同法の第一号の交付金というのが、昭和三十二年に交付金支払い義務のない売上額を六千万円と決めた。その後ずっとこれが改定されずに来た。当時の月間の現金給与額が二万一千三百二十四円、平成五年と比較しますと十八・三倍になっている。これを単純に六千万円に掛けますと約十一億円だろう。このように、せめて交付金を払うべきか払わないべきか、この基準を物価上昇率ではなくて現金給与額の上昇率に合わせて上げるべきではないかといったことを、これは経済産業大臣に要望を出しているんですね。

 これはまた経済産業委員会でも取り上げるべきというふうに考えておりますが、地方自治体の公営ギャンブルが今このような状態の中で、所沢市のこういった経済産業大臣への要望について、総務大臣としての御所見をお伺いします。

遠藤(和)副大臣 御質問の競輪事業が大変不振になっているわけですね。したがいまして、地方団体の財政負担が生じておる。これは地方団体の方からも私どもの方にお話を伺っておりまして、所管をしておる経済産業省とよくお話をしていきたい、このように考えております。

 おっしゃるとおり、現行の法律上は、売り上げが六千万円以上の場合は納付金を出さなければいけない、こうなっているんですけれども、それが収益の中から出せなくて一般会計の方から出さざるを得ないというふうなことにも矛盾がありますし、経済産業省とよく話を聞いてぜひ調整をさせていただきたい、地方自治体の声を代弁して、私ども働いていきたい、このように考えております。

武正委員 今の見込みで国税収入が一兆円を超える減収、地方税収がどの程度減収なのかというのがちょっとまだ、おわかりになりますか。もしおわかりならお願いいたします、これはちょっと質問になかったんですが。――それはまた資料でいただきたいと思いますが、単純に言えば、半分とか五千億とか、かなりの税収不足になるんではないか。そういったときに、やはり地方自治体が大変財政で苦しんでおりますので、ぜひ今の副大臣の御答弁、総務大臣としてもよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、荒井聰君。

荒井(聰)委員 民主党の荒井聰でございます。

 我が党は、一年生議員、優秀な議員が多くて、なかなか私まで質問が回ってこないので、久しぶりの質問でございます。よろしくお願い申し上げます。

 さて、昨日、我が党の松崎委員が高祖問題について議論をさせていただきましたけれども、私は、この問題はやはり、公務員制度の信頼を損なってしまった、あるいは選挙の公明性とか公平性といったようなものを損なってしまったのではないかと大変憂えております。

 そこで、人事院は公務員制度の安定性なり信頼性ということについて責任を持つ所管庁だと思いますけれども、その一環として、公務員が再就職をする場合に一定の制約を加えていると思います。関係する業界に再就職をする場合には、職業の自由な選択を規制してでも、数年間の再就職というものを制限しているというふうに思うんですけれども、この趣旨はどういう意味でしょうか。人事院総裁、お願いいたします。

中島政府特別補佐人 公務員が営利企業と結びついて、行政の公正性と透明性、そういうものを国民から疑いを持って見られる、そのようなことがあってはならないということで、一定期間、再就職を原則禁止している、そういう制度でございます。

荒井(聰)委員 同様の趣旨から、ある一定の役職についた国家公務員、これは関係業界に大変大きな力を持っているわけですから、その方がやめてすぐ選挙に出るということは、公務員の公平性あるいは安定性、さらには選挙の公平性、安定性を保障するという意味から、大変問題があったのではないか、ここが今回の高祖問題の根っこにあったのではないかというふうに私は思っているんですけれども、これは人事院総裁と片山総務大臣に、それぞれ御所見をお伺いしたいんです。

中島政府特別補佐人 おっしゃることはよくわかります。私が民主党の議員なら、同じようなことを言ったかもわかりません。ただ、この問題は今まで何回か国会で議論されておりますけれども、事が憲法上にかかわる問題でございますので、非常に難しい議論がそこに伏在しておるというふうに私は認識いたします。

 先生がおっしゃいますように、選挙の公正性の確保というのは非常に重要な公益でございます。公の利益でございます。それは非常に大切にして、それを確保するための措置というものはいろいろな方面から考えていかなきゃならないというふうに思います。片一方、憲法上、一人の国民として自由に選挙に立候補できるという、その自由権の保障というのもまた大切にしていかなきゃならない権利だということでございます。この二つの利益といいますか公益というものの微妙なバランスの上に現在の制度が成り立っておるというふうにやはり理解せざるを得ないと思います。

 そういう議論が過去に何回か行われまして、そしてその結果、公職選挙法を見ますと、幾つかの枝番号で、在職中の公務員が地位利用をして選挙運動をやってはいけないとか、地盤培養行為をやってはいけないとかいうような規定が生まれておりますけれども、やはり、今先生がおっしゃいますように立候補そのものの制限をしてしまうということになりますと、非常に難しい憲法上の問題が生じますので、なかなかそこに踏み切れないといいますか、そこまでの合意が法律的には難しいというので今の制度が成り立っておるということでございますので、やはり、立候補を制限するというところまで一気にいかずに、在職中の行為等を通じて、不正が起こらないような措置をどのように講じていくかということではないかというふうに思います。

片山国務大臣 今、人事院の総裁からもお答えがありましたが、基本的には、立候補の自由といいますか、そういう憲法上の議論に絡んでくる、私もこういうふうに思います。選挙に出るというのは、やはり国民にとっては基本的な権利の一つですから、それが職業によって制約されるというのはいかがかな、こういう議論で、要は、立候補する人の心構えだとか選挙のやり方だとか、そういうことに帰するんではなかろうか、私はこう思います。

 今の公選法の中には特別連座制度というのがありますね、特別連座制。これはやはり、そこにいた人が立候補して、後輩その他に、自分の選挙運動、投票依頼をした場合に連座になる、こういう規定でございまして、公選法でそういう一種の歯どめをかけていると私は理解しておりまして、要は、先ほども言いましたが、立候補する個人の姿勢あるいは選挙運動のやり方その他ではなかろうか、こう思っております。

 今回、こういうことで近畿郵政局管内を中心に何人かの人が起訴、略式起訴、起訴猶予等の刑事処分を受けましたことは、私も大変、総務省のトップとして責任を痛感し、大変残念に思っている次第でございます。今後は、ぜひこういうことがないように頑張ってまいりたいと思います。

荒井(聰)委員 憲法上の制約もあって云々というお話なんですけれども、私は、人事院が関係業界に再就職する際に制約を加えているというのは、これもある意味では職業選択の自由を侵しているわけですので、憲法上のそこを乗り越えて、公務員制度を守っていく、あるいは何らかの公平性を担保する、そういうことに踏み切ったんではないか。同じような論理から、この選挙制度についても同様の検討を加えていくべきだ。このあたりは、幾ら議論をしても短い時間の中ですので、また改めて別の機会にでも議論したいと思います。

 ところで、この高祖問題の背景には、郵便貯金、郵政三事業の民営化問題というのが小泉政権になってから大きな政治課題となり、その政治課題に対応するために関係者が選挙に白熱化してしまった、そういう背景があると思うんです。

 郵貯の民営化、郵政三事業の民営化問題の中でも、私は、特に郵便貯金あるいは簡保の肥大化、過大化ということが民営化問題に拍車をかけたんではないかと思います。私自身は、今は民主党の中でも郵政三事業の検討会の座長をさせてもらって、今まとめているところであるんですけれども、この郵貯や簡保の国に果たしてきた役割というのは、今までの役割というのは大変大きなものがあったと思います。

 国債がこれだけかなりスムーズに消化されているのも、郵貯の果たしてきた、財投の果たしてきた役割ですし、あるいは、社会基盤というものが整備されてきた、つまり公共事業が整備されてきたというのも、この郵貯の果たしてきた役割、大きいものがあったと思うんです。しかし、余りにも大きくなり過ぎたんではないか。世界最大の銀行になってしまった。その世界最大の銀行が国家という保証を背景にできてきてしまって、かなりの個人資産がここに吸収されてきたことによる過大化、そして、その過大化によるさまざまな問題が、例えば、公共事業を削減しようとしても、あるいは特殊法人を削減しようとしても、供給側の方がまだまだ余力があるよ、そういう状況になっていて、今、民営化の問題というのが大きな政治課題になってしまったんではないだろうか。

 その際にポイントになるのが、現在、預け入れ限度額が一千万円という限度額でございまして、これは、我が党の中でも、少しこれを下げるべきではないかという議論や、地域の方では、一千万の限度額を保持するべきではないかというさまざまな議論はあるのですけれども、私個人は、郵貯の過大化ということを防ぐためには、この一千万円の限度額というのは、公社化経営の際にやはり引き下げるべきではないだろうかという考え方を持っているのです。片山総務大臣、このあたり、御所見を伺いたいと思います。

片山国務大臣 荒井委員、お詳しい話でございますが、郵便貯金というのは、小口で、個人で、しかも全国各地隅々までの基礎的な貯蓄等のサービスを行う制度でございまして、私は、恐らく、地方においてはお年寄りの方の安心の根源にもなっていると思いますね。

 それで、今まで定額貯金の満期に合わせて限度額を引き上げてまいりましたけれども、このところ、一千万で頭打ちにいたしております。そこで、来年度以降、ペイオフが解禁になりますと、一千万までは保証する、それ以上は保証できない、こういうことでございますし、民間金融機関においても、一千万から大口、一千万以下は小口、こういうふうに分けております。今、恐らく世帯の平均の貯蓄額は千四、五百万だと思いますね。それで、一世帯としてどのくらいの貯蓄目標を持つかというと、大体二千百万とか二百万とかというのですね。今まで郵貯の限度額は、それぞれの国民の貯蓄、世帯の貯蓄目標額ぐらいまで、こういうことをやってきましたけれども、その結果が一千万ということでございます。これがいいか悪いか、いろいろな議論がございまして、現在、私どもの方の公社化のための研究会で、この限度額をどうするかも実は議論していただいております。

 ただ、郵貯自身は、委員御承知のように、昨年から定額の満期でずっと額が落ちていることは事実でございまして、最終的には、一番高いときよりはかなり落ちるのではなかろうかと我々は見通しておりますが、いろいろなことを勘案しながら、この限度額が妥当かどうか検討してまいりたいと思っております。

荒井(聰)委員 私は、郵貯が地域金融に果たす役割というのはこれからもますます大きくなると思うのですね。特に、市町村、地方自治体が要する資金需要、安定的な資金需要というのは、郵貯が果たしていく役割というのは大きくなるのではないかというふうに思います。ただ、その際に、資金需要の部分と、それから郵貯あるいは公社化の際の、全体の集まる資金がどのぐらいのバランスになっているのかということを考えた制度設計をするべきではないかなというふうな考え方を持ってございます。

 人事院総裁、お忙しいでしょうから、もう結構でございます。ありがとうございます。

 ところで、今回、地方税法の改正があるわけですけれども、今度の改正案というのは株式市場を活性化させようということが大きなねらいだと思うのですけれども、今回のこの改正によって株式市場がどの程度活性化すると見込んでおられるのか。株式の話ですからなかなか答えにくいのかもしれません、見通しが難しいのかもしれませんけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正、先ほど大臣からも申し上げましたように、いわゆる骨太の方針に記されました貯蓄優遇から投資優遇への投資のあり方の切りかえという基本理念を踏まえたものでございます。したがいまして、市場監視、取り締まり体制の充実ですとか、あるいは証券市場の信頼向上のためのインフラ整備ですとかいったようなことにあわせて、税制面での改正をしたわけでございます。これらの措置によりまして、個人投資家にとっては、安心して証券市場に参加できる環境の整備が図られることとなります結果、個人投資家の市場への参加が促されて、厚みのある市場の形成に資することになると考えておるわけでございます。

 では、定量的に投資家がどのぐらいふえるかということになりますと、これはなかなか、先生も御承知のように、先ほど大臣が個人の金融資産に占める比率が六・四%というお話を申し上げましたけれども、十年ほど前には、この金融資産に占める株式の投資は、日本の場合でも一三・八%だったわけであります。この辺の変動が、やはり経済の動向ですとか、株価がどういう水準にあるかとか、企業の業績がどうなるかというようなことによりまして、税制の問題だけではなくて、個人投資家の投資マインドが変化いたしますので、定量的にどうかというのはなかなか難しいというのは御理解賜りたいと思います。

荒井(聰)委員 恐らく、株式市場の活性化というのは、税制の改正もそれなりの効果はあるのかもしれませんけれども、基本的な解決策ではないと思うのですね。日本の経済全体をどういうふうに持っていくのか、そういうビジョンを打ち出して、新しい企業をつくる担い手を育てていくということがポイントだと思うのですけれども、私は、そのあたりの対策が非常に欠けているような気がしてなりません。

 ところで、今回の改正は、地方税の充実確保ということよりも、債券市場の活性化におつき合いしたという性格が強いんだと思うのですけれども、この地方税の抜本的な改正、改革というのはもはや避けて通れない、そういう時期に来ていると思います。そこで、国から地方への税源移譲ということも含めた検討の状況、抜本的な改正の状況あるいはそのスケジュール、そういうものをぜひお聞かせ願いたいと思うのです。

 その際に、検討状況の中で、私は、国税と地方税というのは理念的にしっかり分けるべきではないか。大きな税目、例えば所得にかかわるものについて、国も地方もそれぞれ分け合う、そういう考え方というのは国民に大変わかりづらいし、住民から言わせれば、市民から言わせれば、国にも取られ、地方にも取られという考え方になりがちではないか。それよりも、地方税というのはこういう理念だ、国税というのはこういう理念だということがしっかりしていくことが必要なのではないかと思いますけれども、このあたり、大臣の御所見はいかがでしょうか。

片山国務大臣 例の経済財政諮問会議のいわゆる骨太の基本方針の中には、税源移譲を含め国と地方の税源配分について抜本的に見直す、こういうことが明記されております。これを明記するに至ります過程では、財務大臣と私どもの方で相当意見を闘わせました結果、大方が、税源移譲を書くべきだろう、こういうことになったわけであります。

 その際、私が経済財政諮問会議で申し上げましたのは、国税と地方税の比率が今六対四ですね、五十兆と三十五兆ですから。それをせめて五対五にしてほしい、これを申し上げたわけであります。それから、その際、移譲してもらうとすれば、所得税から個人住民税へ、消費税が今四対一ですから、四パー対一パーですから、この比率を上げてほしいと。というのは、この所得税や消費税が税として偏在性が少ない、安定性がある、こういうことから申し上げたわけでありまして、一応、骨太方針には書き込みました。

 改革先行プログラムその他で、改革工程表でどうするかという議論はありましたが、これは直ちに来年度からというわけにも、国の財政がこういう状況でありますので、いずれにせよ、議論としては始める、検討は重ねる、こういうことでございまして、経済財政諮問会議はもとより、地方分権改革推進会議でもこの議論を始めていただいておりまして、できるだけ早く実現の見通しを得たい、こういうふうに思っております。

 そこで、後半の質問でございますけれども、わかりにくいといえばわかりにくいですね。所得について所得税があり住民税があり、法人については法人税があり法人事業税があり、あるいは資産についても固定資産税と地価税がある、今地価税は凍結していますけれども。そういう意味で、税源と国、地方の税の分け合いをリンクするというのは一つの考えだと私は思っているのです。

 これは私個人の考えですが、例えば、所得関係は国税、消費関係は都道府県税、資産関係は市町村税とぴしゃっと分ければ、それはそれでいいんですが、それでは恐らく税が余ったり余らなかったりしますので、今は一つの税源で分けていると思いますけれども、例えば所得について、所得税と住民税と分け合っておりますけれども、住民税の方は、課税最低限も所得税より低くするとか累進度を大変なだらかにするとか、そういうことはやっておりますし、本当は法人事業税が外形標準課税化されれば、これははっきり違いますから、法人税の方は収益ですから、こういうことをするとか、あるいは固定資産税については、地価税が今凍結の状況ですから、これをさらに安定的なものにしていくとか、いろいろな工夫ができると思います。

 しかし、長い国と地方の税源配分上、税源とそれぞれの税制をリンクしていくという委員のお考えは、私も、方向としては正しいのではなかろうか、こういうふうに思っている次第でございます。

荒井(聰)委員 前回の通常国会だったと思いますけれども、当委員会で委員会決議として、税財源の地方への移譲ということを初めて委員会決議したわけでして、それ以降、税財源移譲というのが世の中の常識になりつつある。片山総務大臣にも一生懸命頑張ってもらって、その方向がどんどん、そういう形で動いているということは大変望ましいことだと思いますし、また国会、議会というものが、税をどういうふうに徴収して、それをどういうふうに使うのかというのがもともとの、本来の場でありますし、また設立の経緯でもありますので、わかりやすい税の構築の仕方、それも旧自治省、総務省を中心にぜひ構築をしていただければというふうに思います。

 ところで、国、地方合わせて六百六十六兆円という債務が発生しているわけですけれども、その債務は一体どこで発生しているのかというと、ある意味では使うところで発生しているわけですから、地方で発生している。蛇口のところはどこなのかというと、地方自治体の意味というのは大変大きなものがあったのではないのか。国で借金の形をとっていますけれども、その借金がどこで使われたかというと、ほとんど地方自治体を通じて使われたという経緯でございます。

 そこで、地方自治体がなぜそういう形になってしまったのかというと、ある意味では、補助金だとかあるいは交付税という形で、自分で汗水出して徴収した税財源ではなくて、国が汗水垂らして集めた税を地方に配分してもらってそれを使っていくという、そこの構造のところにやはり問題があったのではないか。本来、自治体あるいは経営体というのは自分で集めたお金を自分で使うということが本旨であって、その本旨からいけば、少し今の税構造なり歳出構造というのに問題があったのではないだろうか。

 そういう過程の中で、各自治体が法定外税というのを導入し出しました。独自課税の動きが出てきたわけですけれども、私は、これは大変好ましい方向であり、またこの独自課税の方向というのを強めていくべきだというふうに思いますけれども、このあたりのお考えはいかがでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 法定外税の問題ですけれども、先生御承知のように、昨年四月の地方分権一括法による地方税法の改正によりまして、法定外普通税の許可制が協議制に改められましたし、また法定外目的税も創設されたということでございます。総務省としては、できるだけ、地方分権の時代でございますから、個々の地方団体において地域の実情を踏まえて課税自主権の活用を検討されること自体は、大変好ましいことと思っております。

 ただ、条例制定など具体的な局面になりますと、税制の公平、中立等の原則ですとか、地方税法の趣旨に沿って、納税者の理解も得ながら、議会等で十分な議論を行って適切に判断をしていただきたいと考えている次第でございます。

荒井(聰)委員 先ほども片山総務大臣からお話がございましたけれども、独自財源をいろいろ検討していくと、どうしても外形標準課税というものを本格的に導入するという動きになるのではないかなというふうに思いますし、私、地方自治体が広く薄く税源を求めていくということになるならば、あるいは地方自治体のサービスというものに着目するならば、この外形標準課税というものを国民にわかりやすい形で導入する時期にそろそろ来たのではないだろうか。特に、市町村の大型合併というのが出てくるこういう時期も絡んで検討していくべきなのではないかなというふうに思うんですけれども、外形標準課税の検討状況はいかがでしょうか。大臣、どうぞ。

片山国務大臣 今、荒井委員言っていただきましたように、外形標準課税というのは、私は、地方税にふさわしい税のあり方だ、こういうふうに思っております。

 ただ、今回、残念なことには、外形標準課税を入れるということは増税だと関係の団体の皆さんが誤解されている向きもあるんじゃなかろうか。税収中立ですから、増税をする考えは全くないんで、今、黒字法人だけが全体をかぶっておりますものを、これは三五%ぐらいですから、赤字のところも申しわけないけれども広く薄く御負担いただく、そうする方が公平だし、応益課税としての性格がはっきりするし、それで税としても安定してくる、こういうふうに考えておりまして、今後とも努力いたしたいと思います。

 昨年は、政府の税調の答申にも、与党の税調の答申にも、速やかな導入を図ると書いてはいただきましたが、中で大変議論がありまして、なかなか、それを実現するというところまで至っておりませんが、関係の団体等の意見をある程度入れまして、昨年出した案を修正して再度話し合い、調整をやらせていただこう、できれば来年度から実現できればいいなと。

 ただ、景気がこういう状況でございますから、なかなか、今の税負担の状況が変わるということに抵抗がございまして、これがどういうふうにそれぞれの税調で御判断いただけるか、こういうふうに思っておりますけれども、基本的には外形標準課税は地方税としては正しいと思っておりますので、今後とも粘り強く努力してまいりたいと考えております。

荒井(聰)委員 私も、外形標準課税というのは、そういう性格を持っているし、そろそろその時期に来たのではないかと。ただ、今、不景気な、景気が悪いという状況、そういう中で導入する場合に、特に中小企業に与える影響というのは大きいわけですので、そのあたりを考慮に入れた検討というものがなされてしかるべきだというふうに思っております。

 ところで、地方税の検討に当たっては、地方財政の赤字要因が一体どういうところに多く発生しているんだろうかということをしっかりとらまえる必要があろうかと思います。さらに、外形標準課税の導入に当たっては、私は、社会福祉関係の構造あるいは制度とある意味でリンクさせるとわかりやすいんではないかと。

 私たちの党では、年金制度の基礎年金の部分を全額税にしてはどうかという考え方を持っていて、その場合に、事業主負担の部分というのは減税になるのですから、この事業主負担の部分について、外形標準課税見合いで、その部分を外形標準課税として徴収していくということはあり得るんではないかという考え方を持っているわけなんですけれども、このように、地方での負担の部分あるいは赤字の部分というのは、社会保障関係が非常に大きいというふうに思います。私の住んでおります札幌などでも、国民健康保険の赤字というのは市町村財政を大変圧迫しております。

 このあたり、今、厚生省では医療制度の抜本改革をやろうとしておりますけれども、総務省として、あるいは地方財政を扱う担当の省庁として、どのような対応あるいは方針で臨もうとされているのか、ぜひお聞かせ願えればと思います。

遠藤(和)副大臣 お尋ねのとおり、市町村が運営主体をしております国保ですけれども、これが平成十一年度の決算でも実質三千二百三十五億円の赤字になっていまして、一般会計から多額の繰り入れを余儀なくされている、こういう状態です。

 今、医療保険制度の改革については、厚生労働省は試案を出しまして、それをたたき台にいたしまして政府・与党で、社会保障制度改革協議会、そしてこのワーキングチームをつくりまして、精力的に一週間に一回議論しています。私もそこのメンバーでして、いろいろと議論をしておるわけですが、やはり、医療保険制度改革に当たって、国保制度の改革なくして医療保険制度の改革はない、こういうふうに思います。

 そして、私たちが主張しておりますのは、将来の医療保険制度の一本化に対する道筋を明確にすべきだ、そういう将来ビジョンを明確にすべきだ、こういうことを言っております。それからさらに、具体的には、当面、国保財政の安定化を図る必要がありますから、その財政基盤を一層強化するために、老人医療費拠出金の算定に係る老人加入率の上限を撤廃する、退職者に係る老人医療費拠出金の負担の見直しを行う、高額医療費共同事業を拡充する、あるいは財政安定化支援事業を見直しする、こういうふうな個別の主張もいたしておるわけでございまして、いずれにしても、国保制度の改革をこの医療保険制度の中できちっと行っていきたい、こういう考えでございます。

荒井(聰)委員 時間が来たんですけれども、国保制度については、問題点は幾つか指摘をされております。私は、八年前、七年前になりますか、介護保険制度をつくるときに、この介護保険制度というのが、国保の持っている弱点を修正するような形で介護保険制度をつくったつもりでおります。したがって、介護保険制度というのは、将来の国保制度の形を念頭に置いた制度設計にしたつもりなんですけれども、そのあたりもぜひ念頭に入れて御検討願いたいというふうに思います。

 また、市民、地域住民は、現在、政府の中で首都高速道路公団など特殊法人改革が随分議論されているわけですけれども、同じような状況が地方自治体にもあるんではないか、地方自治体が持っている第三セクターの不良債権というのはかなりのものになるんではないかという漠然たる不安を持っております。そのあたりについても、当委員会なり、あるいは総務省として、しっかりとした指導をしていただければというふうに思ってございます。

 以上、時間が来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。質問で一部重複するところがありますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。

 さて、これまで株式譲渡益については、実際の利益に対して課税する申告分離課税とみなし利益によって課税する源泉分離課税とを投資家が取引ごとに選択できる制度になっております。源泉分離課税については、証券会社における源泉徴収によって課税関係を終了させられ、納税者にとっては申告の手間がかからない便利な制度であります。実態として、源泉分離課税を選択している投資家は七割にも及ぶと聞いておりますが、この源泉分離選択課税制度は、どれだけ利益が大きくても一定のみなし利益率による納税で済まされるので、利益が出る場合には源泉分離課税を選択し、損失が出る場合には申告分離課税を選択することにより、納税者が意図的にといいますか、税負担を軽減することが可能であります。

 源泉分離課税が選択された場合は、申告が不要なため透明性に欠けること、地方税が非課税であったことから、早急に適正化が図られることが望まれておりました。そして、今回、この源泉分離選択課税制度を廃止し、申告分離課税への一本化の時期の前倒しを実施することは、課税の適正化、透明性の観点、さらには地方税源の充実の観点からも評価できるところであると思っております。しかしながら、今般の証券税制改革の全体像を見ますと、三年に限定した小手先の暫定措置が多く、思い切った恒久策を講じないことには構造改革にもつながらず、どこまで株式市場の活性化に寄与できるか、疑問を感じるところもあります。

 そこで、最初にお伺いいたしますが、今回の改正案では、申告分離課税への一本化時期の前倒しに合わせて、上場株式等の譲渡をした場合、現行の二六%から二〇%への軽減税率を適用する制度を恒久的措置として創設することとしております。個人の金融資産の多くを間接金融から直接金融へと移行させるためには、貯蓄よりもリスクを伴う株式投資を優遇する税制としなければならず、預貯金と同率の二〇%よりもなお低く設定すべきであると考えるのでありますけれども、この軽減税率設定の基本的な考え方につきまして、総務大臣からお伺いいたしたいと思います。

片山国務大臣 基本的には、株式市場が国民から信頼してもらえるようにする、こういうことで、一つが透明性、公平性という観点、もう一つがリスク負担の緩和、こういうことでございまして、その結果、今の税率二六を恒久的には二〇パーにする、銀行に合わせる、利子に合わせると。

 黄川田委員は、銀行よりも少し低くした方がいいんではないかと。そういうことの観点もありますので、平成十五年から三年間においては、一年以上保有した上場株式については一〇パーにする、それから所得が百万未満の場合には特別控除を適用する、こういうことをやっておりますから、当面は銀行の利子よりはこちらの方が優遇されている、こういうことになっておりますけれども、長期的にどう考えていくかということは議論としてありますね。

 日本の今の金融資産の保有の形式がどうも預貯金で、株式の支出が相当低い。しかし、これから直接金融ということをもう少し重視して、そのことが企業の活性化にもつながっていくという観点からいいますと、中長期的にはこの環境をいろいろ考えていく必要があると私も問題認識は持っております。

黄川田委員 期限を区切るのではなく恒久的な対策を望みますし、また株式投資信託の税制についても、税率の引き下げなどさまざま検討していただきたいと思っております。

 次に、今回の改正案では、二〇%の軽減税率とあわせまして、上場株式等の譲渡に係る恒久的措置として、さらに三年間の損失繰り越しを認めることとしております。個人所得課税においては、暦年ごとに所得を把握するのが基本でありまして、所得計算において生じた損失については、原則として翌年以後の所得金額の計算に影響させないこととしているわけであります。上場株式等の譲渡損失についての繰越控除制度の創設は、そうした暦年課税という個人所得課税の原則からすれば、いわば例外的な措置を設けることとなります。しかし、個人の株式投資を促進し、そしてまた一千四百兆円にも及ぶ個人金融資産を間接金融から直接金融へできるだけ振り向けるためには、これまた必要な仕組みでもあります。

 御案内のとおり、我が国の個人金融資産に占める株式の割合は極めて低く、日銀の統計資料によりますと、一九九九年末で、日本が六・四%に対し、米国二四・二%、ドイツ一二・七%、英国九・三%であります。また、この損失繰り越しが可能である期間は、米国や英国は無期限であり、我が国も今回の三年間よりもっと長期化、または無期限にすべきではないかと私は思っております。

 そこで、この点について、現行制度において設けられております他の損失繰越制度の状況とあわせまして、自治税務局長からお伺いいたしたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生おっしゃいましたように、個人所得課税は暦年課税が原則になっているということがございますし、また、個人住民税は地域社会の費用をその能力に応じて広く負担を分任するという性格を有しておりますので、損失の繰越控除制度というのは、やはりあくまで例外的な措置だと考えておるわけでございます。今回は、お話にございましたように、投資家の市場参加を促進して厚みのある市場形成に資するということで、思い切って導入することにしたわけでございます。

 そこで、何で三年かという点でございますけれども、先生も御承知のように、現在、この損失の繰越控除を認めております分野としては、不動産所得、事業所得についての純損失ですとか、災害、盗難なんかの場合の損失でございますとか、特定の居住用財産の買いかえ等の場合の譲渡損失ですとか、範囲が非常に限定されておるわけですが、こういった災害、盗難といったような場合でも、現在、損失の繰り越しが認められておりますのが翌年度以降三年間、こういうふうになっていることとの均衡ですとか、実際問題として税務執行上の問題等、データの管理ですとかいろいろな問題がありますので三年間の繰り越しというふうにさせていただいておるわけでございまして、御理解を賜りたいと思っております。

黄川田委員 また、上場株式等について二〇%の軽減税率及び損失の繰越控除制度が創設されるわけでありますけれども、このような恒久的な措置の創設による株式投資の促進策は、短期の対策の部分では一応理解できます。

 今回の改正案では、このほかにも、お話のとおり、暫定的措置として、平成十五年から平成十七年中に一年を超えて保有した上場株式等の譲渡をした場合二〇%から一〇%へ低減する暫定税率を適用する措置が設けられております。税制上の優遇措置により株式の長期保有を促す観点からは、これは好ましいことでありますが、先ほども申し上げたことと同様、三年間の時限的な措置ではどこまで証券市場の構造改革に寄与することができるか、これまた疑問もわいてくるわけであります。三年間に限ったことはその場しのぎの感が強く、なぜ長期保有の上場株式等についての税率一〇%は暫定税率とすることとしたのか、また、株式投資による個人資産形成の促進からも、もっと長期化または恒久化を図るべきではないのか、改めてあわせて副大臣にお伺いいたしたいと思います。

遠藤(和)副大臣 先ほど大臣からも答弁がございましたけれども、上場株式等における申告分離課税の税率ですが、二六%を恒久的には二〇%にする、これは利子課税とのバランスをとってそのようにした。この二〇%が将来とも妥当かどうかという議論は、大臣も先ほど答弁がありましたが、将来としてはまた再検討するかもしれません。それは将来の状況で考える、こういうことでございます。

 暫定税率についてお尋ねがありまして、一年以上保有した上場株式は、平成十五年から平成十七年末までの間は一〇%という半分の税率にする。この理由は、この六月に、この委員会でも御審議をしていただいたわけですけれども、特別控除の百万円まで、この特別控除の適用期間もあわせて平成十七年末にする案が出ておりまして、これと同じタイミングにしたということでございまして、この百万円の特別控除並びに三年間に限って一〇%という税率で措置をして株式個人投資家の拡大を図っていく、こういう趣旨をそろえたわけでございます。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

黄川田委員 お話しをいただきましたけれども、証券税制改革を短期的な株価対策のために行うのではなくて、中長期的に日本の株式市場、資本市場を活性化させる、こういうことが大事であるということを指摘しておきたいと思っております。

 次に、今回の改正案において新たに設定される税率でありますけれども、国税、地方税合わせて二〇%の場合には五%が、同じく一〇%の暫定税率の場合には三%が地方税として個人住民税の税率となっております。地方財源の充実という観点からは、国よりも地方に手厚く配分するところがあってもよいのではないかと思っております。

 そこで、地方交付税の基本的仕組みの変更など、時間がかかることがあるわけでありますけれども、この辺、できるところは直ちに実行するというようなことが構造改革につながるのではないかとも思っております。今回の国と地方の税率の配分、これについての基本的な考え方はいかがなのでしょうか。

片山国務大臣 委員の言われるとおりなんですけれども、額が余り大きくありませんし、ここで大げんかするのもいかがかな、こういうこともありますので。

 特に、一五と五にしましたのは、利子課税がそうですね。それから、長期保有の土地の譲渡益課税がそうなんですよ。それで、二六のときは二〇と六だったのです。それを今度は二〇にしたときに一五と五ですから、それは比率からいうと大分地方は得しているんですよ。(発言する者あり)いや本当に。

 それで、今度は一〇ですよ。一〇の暫定税率は、本来からいうと七・五と二・五なんですよ。それで、これは私も強く主張しまして、それは七と三にしてもらったんです。ただ、これをするのもそれは大変なんですよ、財務省は財務省の言い分と既得権的思想がありますので。まあ、徐々に直していきまして地方の取り分をふやしていきますので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。

黄川田委員 私は地方からの議員で、一回生でありますので、大臣のお言葉、大変慎重に聞いておりますけれども、国と地方の財源問題については引き続き抜本的な検討をお願いいたしたいと思っております。

 次に、配当課税の見直し等についてお尋ねいたしたいと思います。

 証券税制改革に当たっては、預金や貯金の保有という貯蓄よりも株式保有のような投資を有利なものとして、先ほど言いました一千四百兆円にも達する個人の金融資産を貯蓄を中心の間接金融から株式投資中心の直接金融へと振り向けていく促進策として、株式市場からも直ちに評価される必要があります。株式を長期保有すれば金融資産の運用上有利にするというような構造改革の観点からすれば、恒久的な措置の部分はともかく、三年に限った限定的な部分については昨今の低迷する株式市場の活性化対策としては不十分である、このように私は思っております。

 一方、株式の配当政策は、市場活性化の根幹であり、基本的には個々の企業努力の責務でありますけれども、長期保有の個人投資家をふやす観点から、また、低金利時代の今、利回り運用を重視する潜在投資家が多いわけでありますから、配当課税の見直しが今回の法改正の対象になっていないことは私は問題であると思っております。

 そこで、この点について副大臣からその見解を伺いたいと思います。

遠藤(和)副大臣 個人投資家を促進するという角度から、配当課税について配慮すべきだというのは、私、正論だと思います。株式譲渡益課税だけに着目をしてやるというよりも、長期安定的に株式を保有するということを促進する意味からも、配当課税について議論をするということは当然あってしかるべきだと思っております。

 現状を若干申し上げますと、今でも配当課税については少額配当申告不要制度というのがございます。いわゆる一銘柄につきまして年間十万円以下の少額配当については、所得税において二〇%の源泉徴収がなされた上、申告を不要とする、こういう制度でございまして、今、大多数、九〇%ぐらいの方々はこの制度の適用を受けておりまして、これは結果的に利子課税と同じ二〇%ですから、均衡は保たれている。その上に、年末に確定申告をして配当控除を受けることによると、これは利子課税よりも低い負担になるわけでございまして、その点では一応利子課税との均衡はとれていると私どもは理解をしているわけです。

 なお、さらに、この今の状況では個人住民税はゼロになっていますから、地方税を所管する立場から申し上げますと、将来の課題ですけれども、もっと踏み込んで検討して、配当課税の中からも地方税が見込まれるような角度の検討というのはあってしかるべきだ、このように考えております。

黄川田委員 副大臣の後段お話しの部分は、ぜひともよりよい検討をお願いいたしたいと思います。

 次に、老人マル優関係についてお伺いいたしたいと思います。

 従来のように、貯蓄をすれば投資の拡大を通じて経済が発展する、そういうふうな時代ではなくなっておりまして、個人の貯蓄を株式投資等へ振り向けることが喫緊の課題であると思っております。そのため、個人の株式投資に対するインセンティブを付与することにとどめず、貯蓄についての優遇措置の見直しをもあわせて行うことが必要なのではないでしょうか。今回の改正案では、個人の株式投資については優遇措置が講じられているものの、預貯金を中心とする貯蓄については何ら制度改正はなされておりません。

 貯蓄については、従来から老人マル優等の少額貯蓄非課税制度が設けられており、我が国の個人の金融資産を貯蓄へと促してまいりました。しかしながら、時代が大きく変化し、個人の金融資産を預貯金から投資へと振り向ける必要があること、そしてまた高齢者層が金融資産の過半を保有するという実態から考えても、このような貯蓄優遇税制については、あわせて何らかの見直しも行うべきものではないかとも思っております。また、この貯蓄優遇税制の典型である老人マル優制度でありますけれども、これについて今後どのようにとらえていくのか、考えていくのか、これまた副大臣にお伺いいたしたいと思います。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

遠藤(和)副大臣 老人マル優制度というのは、長い歴史があって、定着している制度なんですね。しかし、一方におきまして、間接金融から直接金融へ、あるいは株式に対する、市場を安定的に拡大していくという視点から申し上げますと、この制度がそれを阻害しているのではないかという議論も理解ができます。

 ただ、今の老人マル優制度は、いわゆるフローの所得がなくなった方々に対してストックからの所得を保障するという意味もあるわけでございまして、総務省といたしましては、郵貯のこともございますし、これは高い次元からいろいろ考えていかなければいけない問題であろうと思っております。今後、政府税制調査会におきましてもいろいろな角度から検討はされてくると思いまして、私どもも適切に対処していきたい、こう思っております。

黄川田委員 それぞれの御意見の集まりの中でいい方策を考えなきゃいけないということで、大変だと思いますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それでは、まだ時間が多少ありますけれども、終わりに税収関係についてお尋ねいたしたいと思います。

 申告分離課税への一本化に加えて、軽減税率や繰越控除の創設、さらには暫定税率など、複数の措置が講じられることになりますけれども、これらは税収に相当の影響を与えるものと考えられます。昨今の厳しい地方財政の状況にかんがみれば、強い関心を持つところであります。今回の証券税制改革については、国と地方を通じた改正が行われるものであり、総合して考えると、年度で変わりますが、ほぼ減収になると聞いております。

 そこで、具体的に、地方税の税収について、今回の改正項目ごとにどの程度の増減収を見込んでおるのか、税務局長にお伺いいたします。また、あわせて国税分についても財務省からお伺いいたしたいと思います。

石井政府参考人 それでは、地方税分についてお答え申し上げます。

 まず、幾つか要素がございますが、申告分離課税への一本化によりまして、これは増収になるんですけれども、約千三百億円程度と考えております。それから、申告分離課税の税率の引き下げによる減収は四百五十億程度でございます。それから、損失の繰越控除の特例の創設によります減収、これが四百七十億程度ということでございます。

 この増減収の額につきましては、十三年度の国の予算税収を基礎にして試算をいたしておりますので、実際の今後の取引のいかん等によってもちろん変わるわけでございますし、また年度によりまして変動もあると思いますけれども、こういった要素を全部合算して考えますと、各年度おおむね数百億円程度の増収にはなるのじゃないかというふうに見込んでおるわけでございます。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の証券税制の改正によりましての国税の減収額でございますが、基本的な見積もりの方法につきましては、ただいま自治税務局長からお話のあったとおりでございます。したがいまして、数字を申し上げますと、申告分離課税への一本化につきましては約千六百億円程度の増収、税率の引き下げにつきましては千九百億円程度の減収、それから損失の繰越控除の導入につきましては千四百億円程度の減収ということが見込まれております。まさに年度によって違いがあるわけでございますが、概して申しますと千億円程度以上の規模の減収になるかと考えております。

 なお、一言申し上げますと、緊急投資優遇措置、これは別途あるわけでございますが、これにつきましては、まさに本措置の適用開始から十四年末までの購入期間でどの程度の株式が取得され、またそのうちどの程度が平成十七年から十九年の間に売却されるかという点について、定量的に見込みがたいということを付言させていただきたいと思います。

黄川田委員 残り時間がまだありますけれども、この法案が、株式に対する当面の駆け込み需要を期待するだけの、株価維持のための暫定的な施策ではなく、小泉総理が言われるような構造改革の有機的な一環、こういうふうにならなきゃならないと思っておりますので、その点を指摘しまして、以上で質問を終わります。

御法川委員長 次に、矢島恒夫君。

矢島委員 今回の地方税に対する改正案というのは、政府の景気対策、株価引き上げのために、証券市場に個人投資家を呼び込んでいこう、千四百兆円と言われる個人の金融資産を株式投資に引っ張り出していこうというものだと思います。

 ただ、総務省が六日に発表しました消費の支出というものが、実はやはり三・七%前年同月比減少している、六カ月連続だ、こういう新聞記事が載っておりましたけれども、個人消費も設備投資も大変冷え込んだままになっている。こういう状況の中で、株価を今度のこの法改正によって人為的に操作して引き上げようとしても、マネーゲームは活発になるかもしれませんが、経済に対して悪影響をもたらすのではないだろうか、つまり、景気対策としてその効果が甚だ疑問なんですが、大臣、いかがでしょうか。

片山国務大臣 しかし、今の株式市場の低迷というのはこのままにしておけませんね。私はよく言うのですけれども、株が上がって怒る人はそんなにいないですよね。土地が上がると、怒る人がかなり出てきますね。今の株式の状況では、本当に景気に対する心理的な悪影響があると思いますので、日本の経済の実力からいったら、もう少しダウが高くてもいいな、こういうふうに私は思っております。

 かねがね、日本は金融資産の持ち方が預貯金偏重である、もう少し株式を持ってもらってその比率を高めないと、直接金融市場が育たない、こういうことが言われておりまして、そういう第一歩として、国民の皆さんに安心して証券市場に参加してもらえるような環境を整える、それは、一つは透明性、公平性だろうというのが例の申告分離課税への一本化ですし、それから、リスクあるいは税負担を少し下げるというのが、今の税率の引き下げや損失繰越制度の導入でございまして、私は、当面このくらいのことから始めて、直接金融市場の育成をやらないと、やはり資源配分が偏るのではなかろうかという気を持っております。そういう意味では、いろいろな議論がありますけれども、こういう改革というのはやらざるを得ないものではないかと思っております。

矢島委員 株価と個人消費というものの関係については多くのエコノミストが、影響は極めて小さい、こういう見解を述べております。アメリカのように個人の株保有率の高い国では、株価上昇によって資産効果というものが個人消費拡大につながる、そういう可能性は認められていると思いますが、日本のように個人の株保有率の低い国では、家計消費というのは可処分所得との連動が大きくて、やはりリスクの多い株価上昇と個人消費拡大、こういうものは連動していないというのが多くのエコノミストの見解だと思います。

 例えば、第一生命経済研究所レポートというのに載っておりましたけれども、株価が一〇%上昇したときの消費の増加率というのを一九七五年から九九年までグラフにしてあるわけです。それを見ますと、バブル崩壊後の状況については、九二年以降ずっと見ておりますと、株価が一〇%上昇することによる消費の増加率は大体〇・一から〇・二%程度の水準で移行している。

 それからまた、これは日本経済研究センターの会報ですけれども、この中にも、バブル期でも、株価上昇による資産効果というのは耐久消費財を中心に発生しており、消費全体に対する影響は大きくなかった、こう言えるというような記事も載っておりました。

 そこでお聞きしたいのですが、スーパー優遇税制として世界的にもいろいろと批判のある源泉分離課税のもとで、これほどまでに個人投資家がなぜ証券市場に背を向けているのか、その原因はどこにあると、どのようにお考えでしょうか。

片山国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、やはり証券市場に対する信頼性が低いのではないかと私は思いますね。それから、もっと端的に言うと、株式投資してももうからなかったということですよね。非常に効率が悪い。

 今、矢島委員が言われましたように、日本は株式保有の率が低いですから、個人消費にストレートに、効果がアメリカよりは低いかもしれないと私は思いますけれども、やはり心理的な影響というのは大分あると思いますよ。売らなくても、株、ダウがどんどん下がっていけば、何となく国民の皆さんは損をしたような気になって、それでは消費を手控えようかと、そういうマイナス効果があるのですよ。どんどん上がったら、これは売らないからもうかっていないわけですけれども、それではどんどん使おうかということになるのかならないのかはともかく、そういう意味で、もう少し株式市場、直接金融市場を育成していくということが必要ではなかろうか。それでは、余り効果が乏しいからといって何もしなくてもいいのか、私はやはり何かしなくてはいかぬ、こういうのがその第一歩だと思っております。

矢島委員 日本の株式市場に対する信頼という問題ですけれども、これは、現在、証券監視委員会の委員長さんですか、高橋さん、その方が述べていらっしゃるのですが、「我が国証券市場には、投資家の三つの不信がある」と言われている。市場仲介者、いわゆる証券会社等ですが、これに対する不信、それから市場参加者に対する不信、監視当局への不信である、こういう文章があります。

 それから、元証券取引等監視委員会の総務検査課長でした滝本さんが「財経詳報」の中でこんなふうなことも書いております。「公正・透明な市場と投資家への適切な開示・説明が証券投資の前提として不可欠な条件であるが、」証券会社においてこのような、いろいろと違反事例がありました、こういうことが起こるのはゆゆしき問題である。

 そこで、金融庁にお聞きしますけれども、個人投資家の参入をふやすには、税制優遇というよりもまず証券市場の改革が先ではないかと私は思うのですが、どんなことを考えていらっしゃいますか。

原口政府参考人 御指摘のように、我が国の証券市場を活性化させるために個人投資家の積極的な市場参加を促すためには、証券市場への信頼向上のための環境整備が不可欠だと考えております。そういう問題意識のもとに、八月に金融庁におきまして証券市場の構造改革プログラムというのを発表しております。

 これは中身は広範にわたりますが、証券業界の方でやっていただけることとして、例えば、証券会社のいろいろな取り組み、自主規制機関による市場監視の強化ですとか、あるいはいろいろな情報開示の促進というふうなことを進めておりますし、また一方におきまして、行政当局としてやり得る、例えば、証券会社の行為規制違反に係るすべての行政処分の公表といったような、即時にできることは実施に移しております。

 また、今後の、市場監視の強化に向けて、今年度の定員要求におきましては、従来に増して証券取引等監視委員会の人員増強を今お願いしているところでございます。

矢島委員 前のSECの委員長だったアーサー・レビットさんが七月十九日の日経新聞に「「公正な市場」へ」ということで書いていらっしゃるわけです。それを見ますと、「日本の資本市場は投資家からの信頼を得ていないようだ。これは政策当局の責任でもある」、市場には取引所、証券会社、企業、機関投資家あるいは個人などさまざまな参加者がいるが、個人の利益代弁者はいない、詐欺的な金融商品や不正取引の回避ノウハウを、こういう説明会をSECでは全米で主催し、教育活動を強化してきた、これも個人を重視する理念の一環だ、アメリカでも八〇年代後半までは機関投資家が中心だったと、こういう文章があるわけです。

 やはり個人の利益の代弁者がいないという指摘があるわけですが、なるほど、今までそういう状況だったわけですから、今八月につくった構造改革プログラムを読ませていただいておりますけれども、その点も十分に目配りしながら、重点的に改革を進めていく必要があるだろうと思いますけれども、いかがですか。

原口政府参考人 まさにおっしゃるように、個人投資家の不信といったようなものを払拭していくということは不可欠でございます。そのためにプログラムにおいてもいろいろな対策を講じておるわけでございますけれども、これを一つ一つ早急にやっていくということと、あと、監視委員会におきましても、徹底した監視体制の強化とか、あるいは起きた事犯の厳正な処分を行政当局としても心がけていきたいというふうに考えております。

矢島委員 そのとおりだと思うんです。

 それで、これは「証券アナリストジャーナル」の一昨年の九月号ですけれども、横浜市立大学の松浦教授が「家計の株式投資行動の変化」という一文を載せております。その中で、家計からすれば企業に対する資金供給は目的ではないんだ、リスクを積極的にとることも使命ではない、平穏で豊かな生活を行うために家計の富を構築すべく投資するのである、家計の目的に応じた市場の整備、こういうのが一つは重要なんだという指摘がございました。

 そこで、今度の法案とのかかわり合いで大臣にお聞きしたいんです。といいますのは、今度の法案、先ほど来ありますように、証券投資収益に対する一〇%課税、百万円までの控除、あるいは株を売っても一千万円までは非課税、こういうのがあるわけです。一方、いよいよペイオフ問題がいろいろと論議されております。庶民の預貯金の利息というのは二〇%課税である。リスク収益を目的としない利息の課税と、リスク収益を目的とするところの証券投資収益課税とのバランスというものを私は崩すべきではないんだろうと思うんですが、これは不公平税制という以外の何物でもないと思うんですが、大臣、どんなふうにお考えですか。

石井政府参考人 今回、株式譲渡益については、まず上場株式等につきまして従来二六%だったのを二〇にした。ここは預貯金利子とバランスを考えたということでございます。

 そこで、一〇%の暫定税率はどうかということだと思いますけれども、これは先ほど来大臣からも御説明しておりますように、貯蓄優遇から投資優遇への金融のあり方の切りかえという基本理念に立ちまして、個人投資家の株式の長期保有を促すための暫定措置としまして、一年を超して保有する上場株式について、十五年から十七年までの譲渡に限って預貯金に対する二〇%の税率よりも低い措置を講ずることにしたということでございます。

 これは、個人投資家の方々が株式市場への参加をされるきっかけを何とかつくりまして、そして厚みのある市場形成に資するという政策目的を持って、適用期限を区切って思い切った措置を講じたものでございます。その際も一年を超えて保有する上場株式等に限定しているわけでありまして、一部の個人投資家が短期の回転売買等で利ざやをねらうといったようなケースは除くことにしているわけでございまして、不公平ということはないんではないかと思っております。

 なお、損失繰り越しについても御質問がございましたけれども、これもリスク負担の緩和ということで暦年課税原則の例外として設けているわけでございまして、同じく何とか投資優遇への金融のあり方の切りかえという理念に沿って行っているものでございまして、御理解をいただきたいと思っております。

片山国務大臣 今、税務局長が答えたとおりなんですけれども、今のいろいろな状況は、このままいきますと、また不良債権もふえるんですよね、株が下がることによって。そういう意味で、この異常な状況をどうやって脱却するかに臨時特例的なきっかけを与えるために三年間だけ下げよう、しかも、一年を超えるということにすれば、そこで利ざやで回転して売買をしてというものが防げるんではなかろうか。これは委員が言われるように、いろいろな議論、見方があると私も思いますよ。恒久、三年、それから百万どうだとか、あると思いますけれども、私は今の株式市場を見るときに、やむを得ない措置かな、こういうふうに思っておりますので、御理解賜りたいと思います。

矢島委員 この問題では確かにいろいろな論議があると大臣も言われましたが、そのとおりで、いろいろな人がいろいろな意見を述べております。これはことしの五月二十九日の読売の夕刊ですが、財務省の税制一課の山崎補佐さんが、源泉分離課税という諸外国にない優遇措置が存続する限り、申告分離課税のこれ以上の優遇措置は不公平を拡大することになるということだとか、あるいは政府税制調査会の金融小委員会の中でも、バランスという問題で、やはりその他の譲渡益に対する負担水準というものとのバランスという言葉が出てまいります。

 いずれにいたしましても、先ほど局長が損失繰越金控除という、私、まだそれはこれから質問しようと思って質問の中には出ていなかったんですが、先にお答えいただいたんですが、特例的な措置だということでおっしゃられました。何といいますか、今まで、株を取得できる階層といいますか、いわゆる高額の所得者層と、それから低額の所得者層との間では、やはり株を持つ機会も、またその額も差があるわけですね。そういう意味では、不公平の拡大じゃないかという観点でお聞きしようと思ったわけです。

 そこでお聞きしたいのは、バブルの最盛期の八九年度の一番所得の多い階層、第五分位階層、ここの株式保有額はどれくらいになっていますか、わかりますか。

久山政府参考人 総務省が実施しております貯蓄動向調査の結果によりますと、一九八九年の全国全世帯におきます年間収入五分位階級別の一世帯当たり株式現在高は、第五階級で七百三十三万六千円となっておるところでございます。

矢島委員 第一分位から第四分位ぐらいまでのを見ますと、やはり百万円前後だろうと思うんですが、七百三十三万六千円というので大分、それ以下の所得の人たちと比べてみますと、大体倍ぐらいは第五分位の階層の方が株を保有している。バブル崩壊後も、株離れが進んでいるとはいえ、この優遇制度というのはやはり高額所得者、第五分位階層の大金持ち減税にすぎないと言えるのではないだろうかという点なんです。

 投機、投資活動への減税の一方で、先ほどちょっと触れましたけれども、庶民にはペイオフが迫ってくる、とらの子の貯金さえ危険な事態を迎えている。それから、介護保険についても全額徴収が十月から始まりました。また、医療費の負担増なども迫っている。そういう庶民に対しては、預貯金に対して二〇%の利子課税。一方、株については一〇%の株譲渡益課税、一千万円までの株を売ったときの免税、百万円の控除は引き続き行う、さらには損したときには繰越控除まである、こういう不公平税制というものがさらに一層拡大されていくんではないかという懸念を持つんですが、この点については大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

片山国務大臣 株は、やはり所得の高い階層がたくさん持っているということは言えると思いますね。

 ただ、低い階層が何で持たないかというと、やはり安心できないから、信頼できないからというところが今まであったわけであります。そこで、今回の措置で信頼性が増す、安心度がふえれば、私は、低い階層の方も、それでは株をやってみようか、参加してみようかと、こういうことになるんじゃなかろうかと思いますね。

 株は危ないとかなんとかというような感じを私は払拭していくことが必要なんで、やはりそういうことを整えていくためにも、今回の税制はそれなりの意味があるんではなかろうかと考えております。

矢島委員 先ほど、損失繰越控除の問題が出てまいりました。もちろんこれは、災害などによって被害を受けた方々に対する特例として認められているわけで、今度も特例的な措置だと局長は言われました。しかし、こういうものにいわゆる繰越控除を認めてしまうということは、非常にバランスを失するんじゃないか。例えば、宝くじなどは地方財政に役立っている、だから、宝くじが外れた外れ券の人には損失控除を認めたらどうだ、そんな議論もあるわけで、これはなかなか国民が納得するような制度改正ではないということを指摘しておきたいと思うんです。

 さて、もう一つは、既に質問が出されましたので、質問通告には出していたんですが、同僚議員の方からもう質問がございました。今度の改正によってどれだけ地方税収というものが減るのか、こういうことで、お答えによりますと、九百二十億円ぐらい、こう出ていたと思います。

 厚生労働省の調査で、十月一日現在、全国で三百十自治体で介護保険料の独自減免を進めているということが発表されておりました。高齢福祉年金受給者二十一万人、この高齢者の介護保険料を無料にするためには約九十億円が必要だと言われております。

 今度の税制改正によって、実際には九百二十億円、地方税、マイナスが出てくる。もちろん、プラスの部分もありますから、プラマイでいけばわずかですがプラスだということですけれども、いずれにしろ、申告分離課税の引き下げによって損失というものが四百五十億円出てくるとか、あるいは特例の創設によって四百七十億円の損失が出てくる。そういう損失が出てくるわけですから、これがなければ、大いに地方自治体は、九十億円程度で済む介護保険料を減免していくという方向を打ち出すことができる。

 各市町村長会やあるいは全国の町村会あるいは市長会の方々が、株式譲渡課税に係る個人住民税の申告分離課税における特別控除を行う場合において、地方への支障を来すことのないような措置をとってもらいたい、あるいは、税制改正による減収等が生じる場合は、今後における都市の自主的な財政運営に支障を来すことがないよう適切な財源措置等を要望する、こういう自治体の要望を大臣はどう受けとめていらっしゃいますか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、税率の引き下げでございますとか損失の繰越控除の創設などは、確かに減収要素になるわけですけれども、他方で、現在、源泉分離課税が選択されているものにつきましては地方税が非課税になっていることから、申告分離課税への一本化によりまして増収要素の方が大きくなりまして、先ほど来御説明申し上げましたように、地方税収全体としては、各年度おおむね数百億円程度の増収が見込まれるわけでございます。

 この点につきましては、私ども、地方団体の皆さん方にもいろいろな機会に御説明をしておりまして、私どもの受けとめとしては、今回の改正によって全体として増収になる、かつ、それから、長年の懸案でございました申告分離課税への一本化もできたということで、地方団体の大方の方々は、これは一歩前進だということで前向きに評価していただいているというふうに理解をしているわけでございます。

矢島委員 時間が来ますので、最後に大臣にお聞きしたいんですが、参議院の方の、あれは三月二十七日だったと思うんですが、総務委員会、我が党の富樫議員が地方への税源移譲問題で大臣に質問いたしました。

 これに対して大臣が、国と地方の税財源の見直しについては、できれば来年度、安定的なプラス成長になって、再来年度にしっかりそれが定着するようになれば、そういう段階で私は、しっかりした論議の上で見直しを図って、できれば税財源の移譲ということの具体的な議論、検討に着手してもらいたい、長期的なマクロモデルをつくってシミュレーションしてみようじゃないか、そういう準備を今から始める必要がある、こういう答弁をなされているんですが、この検討、議論、どの程度進んで、今どういう状況にあるか、結論はいつごろ出てくるのか、その辺についての見通しをお伺いいたします。

片山国務大臣 参議院の方でそういうお答えを確かにいたしました。

 今、経済財政諮問会議では、マクロモデルをつくりまして、いろいろな試算をやっておりまして、その結果で中期的な経済財政計画をつくろう、そういうことの中で地方財政をどう位置づけていくか、こういうことでございますけれども、景気の状況はこういうことだし、財政は国、地方ともに逼迫いたしておりますから、直ちに来年度からどうということに、あるいはならないかもしれませんけれども、私は、中長期の視点を持ちながら検討を始めるべきで、地方分権改革推進会議がもう今いろいろな活動をしていただいておりますので、そこで御議論をまず賜ろう、もちろん、経済財政諮問会議でも骨太方針で税源移譲と書いたわけですから、これはここでもさらに議論を詰めていこう、今こういう段階でございます。

矢島委員 できるだけ早くお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

御法川委員長 次に、重野安正君。

重野委員 私は、ただいま議題となっております地方税法等の一部を改正する法律案について、特に公平性等の観点から、幾つか基本的問題を中心に質問をいたします。

 まず、税制調査会金融小委員会の「証券税制等についての意見」との関連で質問をいたします。

 同小委員会は、「「公平・中立・簡素」の原則に立って構築することが基本」、このように述べております。

 本改正案では、申告分離課税の税率は、二〇〇三年一月一日以降、現行の二六%から二〇%に引き下げる。さらに、一年超の長期保有株については一〇%と大幅に引き下げることとし、その適用期間は二〇〇三年から二〇〇五年までの三年間となっています。このことに見られるように、本改正案は短期的措置と恒久的措置とがまざり合った内容となっている。株価つり上げのためなら税のバーゲンセールもいとわない。これが本改正案の最たる特徴と私は思います。これでは、同小委員会の言う簡素化に真っ向から反するものではないのか、このように思いますが、見解を伺います。

石井政府参考人 委員の御指摘のように、税制のあり方については、公正、中立、簡素という原則に立つのが基本ですけれども、こうした前提に立ちつつも、やはり現在の証券市場等の状況にかんがみまして、真に必要な範囲で政策的な配慮をしたということでございます。

 今回の改正におきましては、個人投資家の市場の参加により厚みのある市場の形成に資するという観点から、御案内のとおり、申告分離課税への一本化ですとか、税率の引き下げとか、損失繰越制度といったものを導入したわけでございます。

 こうした暫定措置も組み合わせての税制改正ですけれども、これによりまして、できるだけ多くの個人投資家が市場に参加していただけるようになるのではないかと期待しているわけでございまして、御理解を賜りたいと考えております。

重野委員 経済対策の一手段として税制の活用があることは否定いたしません。しかしその場合でも、公平性の原則は決して侵してはならないはずであります。しかし、本改正案はこの原則を無視しているのではないか。

 二〇〇二年末までに購入した上場株一千万円までについては、二〇〇五年から二〇〇七年までの三年間に売却した場合に限って一千万円までは非課税とされています。この優遇措置を最も享受するのはどのような所得階層か、ここが問題であります。

 収入から理論上の生計費、租税及び社会保険料を控除した残額をすべて株式に投資するという前提に立って仮に計算をしてみます。首都圏の勤労者の平均的収入七百万円の場合、投資可能額は百六十七万円という計算が出るわけでありますが、しかし、これはあくまでも理論上の数値でありまして、実際には、ローン負担などさまざまな必要支出があるわけで、したがって、実際の投資可能額は限りなくゼロに近い。

 逆に、理論的生計費等を積み上げ、一千万円の投資可能額を生み出す収入は幾ら必要か仮に計算してみますと、最低でも三千万円以上の収入が必要となる。どんなに少なく見積もっても、この一千万円の非課税措置の恩恵を最も効果的に享受し得る者は、三千万円にさらに大幅なプラスアルファの収入がある者に限定されてくるということになるわけであります。しかも、百万円の特別控除制度はそのまま延長されることになっている事実を見ますと、高額収入者の投資優遇は一層手厚いものとなります。

 なぜこれほど優遇しなければならないのかという素朴な疑問がわくわけでありますが、どのように説明されるんでしょうか。

石井政府参考人 委員の御指摘のとおり、株式保有層につきましては、当然、所得水準の高い方々の方が個人資産に占める株式の保有割合も高いわけでございますから、おっしゃるような御懸念もあろうかとは思いますけれども、先ほど来大臣からも御説明申し上げておりますように、現在の経済動向、なかんずくこの株式市場の置かれた状況を考えますと、一方で、大きな経済の流れとして、間接金融から直接金融への流れをできるだけ進めていくという強い要請もあるわけでございます。

 そういった状況もろもろ踏まえまして、証券市場への信頼性の回復ですとか、インフラ整備ですとかいったこととあわせまして、税制面でもこの際、思い切った税制改正措置を講じたと。ただし、それはおっしゃるような点、議論もありますので、恒久的に二〇%に引き下げるという部分もありますし、また、暫定的に一〇%にするとか、あるいは緊急に一千万円までは非課税にするとか、いろいろな措置を組み合わせておるわけでございまして、その点御理解を賜りたいと思っております。

重野委員 どうも歯切れがよろしくない。今の説明では納得できません。

 それなら聞くんですが、財務省による、同額の給与収入または株式譲渡益収入がある場合の所得税の比較という資料がございますが、その資料で、額に汗して働く勤労収入者の方が、株式譲渡益より所得税負担が高い、このように指摘をしているのであります。

 一例を挙げますと、両者がともに一億円の収入があった場合、給与収入の場合の所得税は三千七十万四千円、こういうふうになっています。株式の場合ではわずかに百五万円、これが財務省の出している資料の数字であります。一億円をもって比較することは大変現実離れした点もないではありませんが、問題の本質を政府みずから証明しているのではないか、このように思わざるを得ません。

 優遇に優遇を重ねることによる税制のゆがみ、結局、国民の税不信を招くことにつながるのではないか、このように私は思いますが、いかがお考えでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 この後、自治税務局長の方から御答弁があるかもしれませんが、ちょっと今の、先生が御指摘になりました資料につきまして、一言コメントさせていただきたいと思います。

 今、先生から御指摘があった数字につきましては、まさにそのとおりの数字がございます。ただ、これは給与収入と株式譲渡収入に係る所得税額負担を比較するに当たりまして、なかなか簡単に比較できないわけでございます。特に株式譲渡益課税につきましては、現在、源泉分離課税の選択が認められているということで、その源泉分離選択課税をとった場合にこういった負担になるということで数字がつくられたわけでございます。例えば、源泉分離選択課税を選択いたしますと、税負担が非常に少なくて済んでしまうといったことがございますので、そういったことも勘案いたしまして、今回、まさに源泉分離課税を廃止して申告分離課税に一本化しようとしているところでございますので、その点だけをまず申し上げさせていただきたいと思います。

石井政府参考人 今、委員がおっしゃいました数字の中で、一億円の場合の百五万円という数字は、これは今財務省からも御答弁がありましたように、源泉分離課税を選択した場合の話だと思うんです。

 今財務省からもお話がありましたように、申告分離課税に今度一本化いたしますから、その場合ですと、一億円の譲渡益に対しまして、百万円の特別控除を適用し、かつ、税率一〇%としましても、私どもの試算では、所得税が六百九十三万円、それから住民税が二百九十七万円、ざっと九百九十万、一千万近い税がかかるようになるわけでございまして、源泉分離課税と比べますと、申告分離課税に一本化した場合の効果が出るわけでございます。

 しかし、委員はそれでも給与所得に対する課税と比べればまだまだ低いではないかとおっしゃると思いますけれども、その点につきましては、先ほど申し上げましたように、現在の証券市場の状況等を考えまして、できるだけ貯蓄優遇から投資優遇へ進めていこうじゃないかという大きな流れの中で、今回、個人投資家の皆さんにできるだけ参加していただくというために、恒久措置それから暫定措置あわせまして、思い切った措置を講じたわけでございまして、何とか御理解をいただきたいと思っております。

重野委員 今の答弁で、はい、そうですねというわけにはまいらないわけです。

 それならお伺いしますが、本改正案によって株式市場に対する投資家と投資総額は一体幾らふえるというふうな見積もり、思惑を持っておられるか、示してください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問のございました、今回の税制改正によりまして個人投資家の方々がどの程度ふえてくるだろうかということでございますが、これはなかなか具体的な計数を申し上げることは難しゅうございます。

 ただ、私どもといたしましては、今回の改正措置を通じまして、一般的な個人投資家にとって安心して証券市場に参加できる環境の整備が図られてくるだろう、少なくとも税制面においてはそうなるものと考えているわけでございます。その結果といたしまして、個人投資家の市場への参加が促されまして、もって厚みのある市場の形成に資することを期待しているところでございます。

重野委員 非常にあいまいでありまして、優遇する具体的な数字ははっきり書いて、しかし、その政策を打ち出した場合に、それがどういうふうな効果あるいは成果を上げるかということになると、わからないと。これでは、僕は、やはり非常に不親切だと思いますね。少なくとも、財務省、優秀なスタッフがそろっているわけですから、私は、あらゆる能力を駆使して、この政策を打った場合に、具体的に、およそだけれども、こういう成果が上がる、そういうふうなものも出さないと、この政策を論ずることができないじゃないですか。そこら辺の努力をする考えがあるかどうか、もう一度お聞かせください。

木村政府参考人 答弁、繰り返しになって恐縮でございますけれども、本当に、個人投資家の方々がどういう形で、証券市場に参加してくる、そういったことについていろいろな方々がいらっしゃると思います。そういったことを考えますと、一概に、今回の措置によりまして具体的にどの程度ふえてくるか、これは正直言ってなかなか難しゅうございますので、その点、御理解賜りたいと思います。

重野委員 理解できませんが、用意している質問がそのほかにありますので、もう時間もどんどんたちますから先に移りますけれども、しかし、今のままでとまっておいては困るんですよ、そこら辺の努力をやっていただきたい、このことをお願いしておきます。

 次に、証券広報センターによる株式投資に対する誘因調査というのがございます。株式購入条件として、証券税制の見直しを挙げた人はほとんどいない。こうした調査結果が出るのも、結局は魅力ある投資対象がないからではないか、このように思うんですね。昨年末までの十年間において、投資収益がプラスであった上場企業は百社強、そのうち、収益が一〇%台になったのは四十数社にすぎないという調査結果がございます。株価が上昇する気配のないところに投資はない、これが市場の実態ではないかと思うんです。しかも、この間の証券業界の不祥事による不信感もある中で、超優遇税制をもってしても証券市場の活性化は期待できないのではないか、これが問題の第一であります。

 もう一点は、証券市場の活性化とは、頻繁に取引が行われて初めて成り立つものだ、このように考えるんです。にもかかわらず、下落対策として長期保有優遇策を導入するということは、果たしてこれが活性化のためになるのか、むしろ、活性化の阻害要因ともなるのではないか、そういう危惧を持つわけであります。

 そういう意味では、この点をとってみましても、本改正案は矛盾している点があるのではないかと思うんですが、そういう思いを持つことは間違いなのかどうか、お聞かせください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の趣旨でございますが、要するに、保有の促進ということと、市場の活性化ということは矛盾するんじゃないだろうかということだと思います。

 我が国経済の再生を図っていくためには、金融・証券市場を通じまして、資源が効率的に成長分野に流れることが必要だと考えております。そのためには、家計が預貯金中心の貯蓄重視から証券への投資に向かうことによりまして、証券市場のすそ野を拡大いたしまして、厚みのある市場を形成することが重要である、これが目指すべき市場の活性化のあり方ではないかと考えておるところでございます。

 今回の改正というのは、保有ということを考えておりますけれども、まさに個人投資家にとりまして安心して証券市場に参加できる環境の整備が図られることになる。これは、繰り返し申し上げているとおりでございますが、それによりまして、個人投資家の市場への参加が促進されまして、もって、先ほど申しました、厚みのある市場の形成に資する、それがひいては市場の活性化につながっていくものと考えておるところでございます。

重野委員 税調の金融小委員会では、申告分離課税への一本化後の税負担について、百万円の特別控除制度については、課税ベースを大きく縮減させるもので、そのもとでの税率引き下げは適当ではない、税率引き下げを行う場合は、この百万円の特別控除制度は、廃止または縮減することが適当、このように指摘をされています。税率の二〇%への引き下げについては両論併記となっています。

 そこで伺いますが、まず、この十月から施行されたばかりの百万円の特別控除について、その政策評価はどうなっておるのか、その政策評価もないまま延長するということは問題ではないか、このように考えます。また、税率を引き下げるなら特別控除は廃止すべきである、特別控除をやみくもに延長するなら税率は下げるべきではない、このように考えるんですが、税調の金融小委員会の考え方と、今、私の指摘したことを含めて、見解を伺います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 百万円特別控除制度、これはさきの通常国会でお認めいただいた制度でございますが、御指摘のとおり、本年の十月一日から実施されているところでございます。

 ただ、なぜこの制度を導入したかということでございますが、これは緊急経済対策の一環といたしまして、個人投資家の株式市場への参加を促進する観点から、現行の源泉分離選択課税制度、まさにこれを、今回、十五年一月から申告分離課税に一本化しようとしているわけでございますが、現行の源泉分離選択課税制度のもとで、最大限の政策的な配慮のために設けたものでございます。

 今回の証券税制の改正を受けまして、まさに御指摘のとおり、平成十七年末までこれを継続することとしたところでございます。この措置が当初の予定どおり十五年三月末で終了いたします場合には、これは一年超の保有の上場株式等についての特例でございますので、平成十四年三月末、したがって、来年の三月末までに購入しない限り、その措置の適用が受けられないことになりまして、個人投資家の株式市場の参加を促進するとの所期の政策誘導効果が薄れることになりかねないという事情に配慮したものでございます。

 それからもう一点、政府税制調査会の金融小委員会の意見につきましては、ただいま委員からお話のあったとおりでございます。まさにそのとおりでございますが、最近の経済情勢及び株式市場の動向等踏まえまして、個人投資家の株式市場への参加を促進する等の観点から、この控除につきましては、先ほど申しました、平成十七年末までという期限を区切った上で、特別に税負担を軽減することとしているところでございます。

重野委員 次に、地方税制との関連で質問しますが、源泉分離が廃止され、申告分離に一本化されること、このことで、住民税の課税対象となることは、税収面で前進というふうに受けとめます。実際にどれほどの税収効果が期待できるのか、また、税率引き下げによって税収はどの程度相殺されるのか、試算が非常に難しい面もあると思うんですが、わかる範囲でお聞かせください。

石井政府参考人 お答えいたします。

 今回の措置によります地方税の大まかな増減収の見込みでございますが、まず、申告分離課税への一本化によりまして、これは増収になりますが、この増収額が千三百億円程度でございます。それから、申告分離課税の税率の引き下げによります減収につきましては、約四百五十億円程度ということでございます。それから、損失の繰越控除の特例の創設によります減収は、四百七十億円程度ということでございます。

 これらはいずれも十三年度の国の予算の税収を基礎に試算をしておりますので、実際には今後の取引状況いかんによって変わるわけでございますし、また年度によっても変動があるわけですけれども、各年度、おおむね数百億円程度の増収は確保できるのではないか、こういうふうに考えております。

重野委員 ところで、二六%を二〇%に引き下げるに当たって、中央、地方の税率は二〇%対六%から一五%対五%になる。さらに、都道府県と市町村とでは二%対四%が一・六%対三・四%とされています。

 都道府県と市町村の税率において、市町村の絶対税率の方が、わずかではありますが、落ち込みが大きいのではないか。それはどういうことなのか。申告分離課税への一本化によって市町村の方が府県より税収増となることから、このような税率設定となったのかなというふうに思うのですが、いかがでしょうか。

 第二点は、この改正によって、中央、都道府県、市町村間の税収のシェアはどのように変動するのでしょうか。当然、地方の方が厚くなると考えるのですが、具体的配分シェアについて説明いただきたい。

 さらに、税率を二〇%とした理由は何か。株式譲渡益課税の性格からすれば、利子課税と必ずしも同じにする理由はないのではないかというふうに思うのですが、見解をお聞かせください。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず二〇%に引き下げる際の、県、市町村の税率の配分でございますけれども、現行の株式譲渡益課税及び土地譲渡益との並びを図ることが適当ということで、道府県が一に対して市町村二を基本にしております。端数が出ますと、それは市町村に配慮するということでございまして、現行の道府県二%、市町村四%を道府県が一・六、市町村が三・四、こういうふうにしたわけであります。もともと、市町村分の税率の絶対数が多いものですから、下げ幅で見ますと、多いように見えますけれども、実質は、今申し上げたように、市町村にむしろ配慮した内容になっております。

 それから、二点目の個人所得課税全体の中での所得税と個人住民税のシェア、それから個人の道府県民税と市町村民税のシェアということですけれども、まず今回は、先ほど大臣からもお話し申し上げましたように、それほど大きな増収額があるわけでございませんが、おおむね数百億円程度の増収、それから所得税は一千億程度の減収ということでありますので、シェアという点では、若干、個人住民税が拡大します。あえて計算しますと、三七・二%から三七・五%に、〇・三%程度拡大するということになります。

 それから、個人の道府県民税と市町村民税についてでございますけれども、現在は道府県民税二・八兆円に対して市町村民税六・三兆ですから、大体三対七になっているわけですが、これはほとんどシェアに与えるほどの影響ではございませんけれども、市町村の方に少し厚くなる、シェアが大きくなるということでございます。

 それから、税率二〇%の根拠ですけれども、これはいろいろな議論がありましょうけれども、やはり、金融資産を、預貯金なりあるいは株式投資に、どっちを選ぶかというときに、できるだけ中立的な方がいいであろうということで、基本は上場株式について、これは預貯金利子とのバランスから二〇%というふうにしたわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。

重野委員 もう時間も来ましたので、最後に、いずれにしても、本改正案の内容の多くは二〇〇三年からのものが多いんですね。にもかかわらず、本年、何ら政策評価もないまま、なぜ年内に二回もの改正をしなければならないのか、どうしても納得できません。結局は、内閣の政策的な一貫性、そのもととなる根本的政策、そこに欠陥があるのではないか、こういう印象をぬぐえません。

 そういう点を十分受けとめて検討していただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。春名直章君。

春名委員 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方税法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 本法案は、小泉内閣の骨太方針及び改革先行プログラムに掲げる証券市場の構造改革に基づくもので、個人の金融資産一千四百兆円を株式市場に誘導するために格別の株式譲渡益課税の減免を図ろうというものであります。しかし、株価の低迷は、長引く不況、企業の将来見通しの悪化など多様な要因の反映であります。また、株式への投資が拡大しないのは税制の問題ではなく、企業の業績に対する展望や証券業界に対する国民の不信感など、他の要因が主たる原因であることは多くの識者が指摘しているところであります。しかるに、本法案は、こうした実体経済の回復や証券業界の信頼回復という本質的な問題の解決を抜きにして、株式譲渡益の優遇課税によって個人投資家を誘導し、証券市場の活性化を図ろうというもので、本末転倒の株価対策と言わざるを得ません。

 また、株式を保有する所得階層は、年間収入一千八十万円以上の世帯が株式保有全体の五三%、八百二十四万円以上の世帯を含めれば全体の七七・三%を占めるという、圧倒的に高所得階層が多いという実態となっています。税率の引き下げや繰越控除制度の創設などの措置は、結果として富める者への優遇措置にならざるを得ず、現行の不公平税制をさらに拡大するものとなり、到底容認できるものではありません。

 今、景気対策として何よりも必要なことは、経済の六割を占める個人消費を温めることであります。一部の金持ちのための減税では景気はよくならず、逆に納税者の不公平を拡大し、結果として所得間格差を一層大きくするものであるということを強く指摘いたしまして、反対討論を終わります。

御法川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより採決に入ります。

 地方税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

御法川委員長 次回は、明八日木曜日午後一時三十分理事会、午後一時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会




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