衆議院

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第6号 平成14年3月19日(火曜日)

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平成十四年三月十九日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      河野 太郎君    左藤  章君
      新藤 義孝君    滝   実君
      谷  洋一君    谷本 龍哉君
      野中 広務君    望月 義夫君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        若松 謙維君
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   総務大臣政務官      滝   実君
   政府参考人
   (総務省大臣官房審議官) 衞藤 英達君
   政府参考人
   (総務省人事・恩給局長) 久山 慎一君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省年金局長)  辻  哲夫君
   政府参考人
   (社会保険庁次長)    小島比登志君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十九日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     望月 義夫君
同日
 辞任         補欠選任
  望月 義夫君     佐藤  勉君
    ―――――――――――――
三月八日
 恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)
同月十五日
 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)
同月十四日
 法人事業税の外形標準課税導入反対に関する請願(木島日出夫君紹介)(第七一二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。片山総務大臣。
    ―――――――――――――
 恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
片山国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、最近の社会経済情勢等にかんがみ、普通恩給及び扶助料の最低保障額の一部の引き上げ等を行うことにより、恩給受給者に対する処遇の改善を図ろうとするものであります。
 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。
 この法律案による措置の第一点は、傷病者遺族特別年金、実在職年六年未満の者に係る普通恩給及び普通扶助料の最低保障額の増額であります。
 これは、低額恩給の改善を図るため、平成十四年四月分から、傷病者遺族特別年金については二千八百円増額して四十万四千八百円に、また、実在職年六年未満の者に係る普通恩給及び普通扶助料の最低保障額については各千円増額して、それぞれ五十六万八千四百円、四十万円に引き上げようとするものであります。
 第二点は、遺族加算の年額の増額であります。
 これは、戦没者遺族等に対する処遇の改善を図るため、遺族加算の年額について、平成十四年四月分から、公務関係扶助料に係るものにあっては三千三百円増額して十四万八千五百円に、傷病者遺族特別年金に係るものにあっては二千六百四十円増額して九万八千九百五十円に、それぞれ引き上げようとするものであります。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
平林委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
平林委員長 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官衞藤英達君、総務省人事・恩給局長久山慎一君、厚生労働省大臣官房審議官三沢孝君、厚生労働省年金局長辻哲夫君及び社会保険庁次長小島比登志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 恩給法、先ほど大臣から御説明ありましたが、中身に入る前に、幾つか、最近、小泉内閣が誕生して十一カ月になりますが、いろいろな政と官にかかわる問題が続出をしております。冒頭、大臣にお伺いをします。
 先週は鈴木宗男さん、昨日は加藤紘一さんが自民党を、秘書の問題そしていろいろな疑惑の問題を含めて離党いたしております。総務大臣として、このようなあり方、国民から決して許されざる問題がございますが、大臣としては、政と官の関係、そして今の政治のあり方についてどんな御評価をなさっているのか、冒頭、お伺いを申し上げます。
片山国務大臣 今、後藤委員が言われましたように、鈴木議員の離党、あるいは昨日、加藤議員の離党等の問題が起こりました。私は、全体必ずしも正確に承知しているわけではありませんけれども、大変残念である、遺憾な事態と思っております。
 私の好きな言葉に、信なくば立たず、こういう言葉がございますけれども、やはり政治、政治家、政党に対する国民の信頼がなければ国のもとは揺らぐんではなかろうか、こういうふうに思っておりまして、ぜひ今後とも、すべて、政治倫理の確立あるいは政と官との関係では、政と官の節度ある関係を樹立するということ、こういうことに努力する必要があるんではなかろうか、こういうふうに思っております。
 官は、やはり政に対する選択肢を提示する、あるいは政が決めたことについてはそれを忠実に実行するということが官の役割でございまして、政は、官の補佐を受けて、選択肢の提示を受けて判断して決めていく、政策を決定していく、こういうことでございますので、その間の節度ある緊張した関係をつくっていくということが必要ではなかろうか、このように思っております。そのために私も、微力ではございますけれども、私どもの総務省もそういうことの上で今後ともやっていきたい、こういうふうに思っている次第であります。
後藤(斎)委員 もう一点、これは自民党議員のみならず、今自治体の市長さん、知事、徳島県知事初め石岡市長、下妻市長、いろいろな方が、地方自治という、本来であれば倫理規程も今までなかった方々が、大変なまたこれ贈収賄も含めて辞任に追い込まれ、そして今、国民から大きな浄化を地方自治自体も求められております。
 国家公務員については公務員倫理規程が一昨年成立をし、そして今実施をされておりますし、地方公務員についても、同様な政治倫理の規程を求める条例の制定ができることになっております。そして、市長には、まさに住民から信任を受けたということで、その規程ないし考え方さえ示されておりません。
 大臣は、この自治体の首長さんたちの不祥事、この相次いでいるものについてどういうふうな御評価を持っており、そして、首長の倫理規程というものを設ける必要があるかどうかも含めて、御意見をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 これも、今御指摘のように、知事さんあるいは市長さんが御承知のような疑惑で逮捕される事態が起こっておりまして、これまた大変私は遺憾である、こういうふうに思っております。
 国は議院内閣制でございますが、地方は御承知のように大統領制でございまして、知事さんだとか市町村長さんというのは政と官のトップなんですね。独任制執行機関でございますから、すべての権限が国と違って知事や市町村長に集中するわけでございますので、その意味でも、身を持するにこれ以上厳でなければならないということはない、こういうふうに思っておりまして、今後ともそういう職責の重要性、特殊性を認識していただいて、地方の首長さんはしっかりやっていただきたい、こういうふうに思っております。
 今、二十一世紀は、私どもは、地方の時代、地方分権推進のチャンスだ、こう思っておりますけれども、そういう時期にこういうことが起こりますと、地方分権というのは何なんだろうか、地方自治を強化することはどういうことなんだろうか、国民にそういう不信を持たれるんではなかろうかと大変心配いたしております。ぜひともそういうことを知事さんや市町村長さんに強く期待いたしたいと思いますし、今都道府県では大体、国家公務員の倫理法と同じような倫理条例をつくっておりますけれども、今後、もう一遍その内容の見直しだとか、あるいは市町村にも場合によっては倫理条例等の制定の検討をお願いすることも考えなければならないな、こういうふうに思っている次第でございます。
後藤(斎)委員 ぜひそんな形で、大統領的権限を持っている首長さんたち、その御認識はあるにもかかわらず、昨今のいろいろな厳しい経済状況の中で、ややもすれば業界の方からの甘い誘いに乗ってみずからの初心を忘れた中で対応している。これは、住民にとってみれば、あってはならないことだというふうに思っています。ぜひ、大臣が先ほどお話しになられたような、地方の分権の時代の中で逆行するかもしれませんが、総務省としても要求すべきはし、そして、政治倫理を確立するということは国民全体での課題でもありますので、先ほどお話しになられたような、積極的に自治体への働きかけもお願いを申し上げます。
 三月七日、参議院の予算委員会で、私たちの同僚の福山議員が、鈴木宗男さんの政治献金の問題で、六人の副大臣、政務官の方に、どんな認識を持っているかというお尋ねをしております。
 そして、大臣、総務省が所管をしております政治資金規正法、これは、なぜこの法律が制定をされているかといえば、一条の目的にありますように、政治活動の公明性と公平性を確保し、もって民主政治の健全な発展に寄与することを目的とするという大きな目的がございます。そして、三十一条には、監督責任として、形式上の不備があり、またはこれらに記載する事項の記載が不十分であると認めるときには、当該報告書を提出した者に対して、説明を求め、または訂正を命ずることができるという規定がございます。
 これらを勘案しますと、この六人の明示をたまたま福山議員はしておりますが、この六人の方の報告書につきまして、鈴木さんからは出ているはずですが、例えば、入っているかというチェックは総務省としてなさっているんでしょうか。
片山国務大臣 それは、私自身が確認はいたしておりませんが、鈴木さんの方からそういう届け出が出ておりますので、恐らく、今言われた六人の方も政治資金の収支報告書に記載されていると私は思います。
 いずれにせよ、チェックしまして、また御報告申し上げます。
後藤(斎)委員 今のお話はぜひそういう形にしていただきたいんですが、なぜこのような話をするかと申しますと、大変お聞きをしにくいことですが、三月六日の各紙に大臣の問題が載っております。これは新聞報道によりますと、暴力団幹部に住宅を賃貸し、その月額の家賃収入は五万円、年間六十万円だというふうに記載されておりますが、所得報告に大臣が記載した不動産収入は年間二十四万円ということで、差がございます。これは真実も含めてどうなのかという御説明をお願いしたいと思いますし、そしてあわせて、なぜこのようなことが大臣対応されているのか、背景も含めて御説明をお願い申し上げます。
片山国務大臣 これは私のプライベートなことに属しますけれども、私がかつて岡山県庁に在職しましたときに、県の公社が開発しました団地がありまして、売れ残りが出たんですよ、何カ所か。そこで、あんた買わないかという話がありまして、私、買いました、もう二十何年前なんです。そこで、それを買いますと、二年以内に家を建てるというのが約款になっておりまして、小さな家を建てまして、そのうち私は岡山県庁からよそに転勤いたしましたので、地元の人にお任せし、議員になってからは私の事務所に全部任せておったんです。ところが、事務所も忙しいものですから、全部不動産屋さんにまた任せているわけですね。それで、不動産屋さんがあっせんしてくれた御希望の人、たまたま一昨年の途中から入った方が、報ぜられているように暴力団の構成員だった、こういうことでございます。
 私もびっくりしまして、私は全く関係ございませんので、名誉のために言っておきますが。すぐ出てもらえ、こういうことにいたしまして、四月から出ることになっている、こういうふうに思います。ただ、そうはいいましても、私所有の名義の土地や家でありますし、事務所や不動産屋が介在したとしましても、そういうことをやってきたことは大変私自身は申しわけないな、こういうふうに思っております。
 家賃も事務所に任せて、不動産屋さんと決めてもらっておりますから、私は詳しいことは知りませんが、五万円だそうでございまして、年間六十万でございますが、何で二十四万になっているかといいますと、途中から入ったんです、その入った人が。それから、固定資産税や管理料を引きまして、もう家が相当古くなっておりますから、二十何年前ですから、修繕をかなりやっているんです。そういうことの差っ引きが、言われたように二十四万何がしかになった、こういうふうに思っておりまして、そういう意味では、いろいろ皆さんに御心配をかけたりしたことには大変私自身申しわけないな、こういうふうに思っておる次第でございます。
後藤(斎)委員 今のお話のように、冒頭、鈴木宗男さんや加藤紘一さんのお話を聞いた、大臣が、総務大臣として、まさに小泉内閣の中枢の方が今のように事務所にお任せになられたということは、確かにそういう部分があるのかもしれませんが、私は、きちっとやはりこれからの対応をしていただく必要があるんではないかなというふうに思っています。
 それでは、この所得報告の修正ということはお考えになっていらっしゃるでしょうか。六十万と二十四万の差です。
片山国務大臣 いやいや、二十四万が本当の話ですから、所得の。修正申告じゃなくて、申告は毎年しておりまして、申告で、今言いましたように、六十万丸々入っていないんですよ。途中から入られているということで、恐らく四十何万か五十万ぐらいになっている、固定資産税と管理料と不動産屋に、それから修繕料を引いたものがこれだ、こういうことですから、全くこの点に関しては修正申告するつもりはありません。
後藤(斎)委員 そういうふうなことでの資産公開も含めて、大臣、ぜひ率先をして、国民の方にややもすれば、そういう疑惑と言うと大変失礼かもしれませんが、持たれかねないこと、これから厳にぜひお慎みになられて、これからの対応をきちっとするように求めたいと思います。
 それでは、本論に入りたいと思います。
 今回の恩給法の改正、ややもすればつかみだというふうな御批判も一方でございます。また一方で、恩給受給者の御家族の方、必要性もありというふうな御説明をなさっておりますが、先ほど、提案理由の説明では十二分にその辺が理解をできない部分もございます。
 もう一度御説明を求めたいと思います。今回の恩給法の改正の目的を具体的に、なぜ必要なのか、御説明をお願いします。
片山国務大臣 恩給の改善につきましては、恩給が国家補償的な性格を有するものである、こういう特殊性をいつも考慮しながら物を考えておりますが、基本的には、公務員給与の改定、物価の動向等諸般の事情を総合勘案の上行う、こういうことにしております。
 それで、来年度は、御承知のように公務員給与が今回据え置かれたこと、それから、物価がマイナスであるということがありますが、同時に、大変恩給とも関係がございます公的年金が据え置きになったわけでありまして、そこで、財政当局は引き下げ論もありましたが、我々としては、もう最低据え置き以上だ、こういうことで折衝いたしまして、恩給年額そのものは据え置くことにしたわけであります。
 ただ、先ほども言いましたが、恩給は国家補償的な性格を有するものでございますから、最も低額な恩給だとか、それから、戦没者の遺族等に対して給される加算につきまして特に措置を要するものにつきましては、これはベースアップが行われない中においても考えてほしい、国家補償なんだから。こういうことで強くその改善を求めまして、結果としては、財政当局の了承を得て今回の引き上げになったわけでございまして、この厳しい状況の中では、こういうふうに予算が決まったことは私はやむを得なかったのではないかと考えております。
後藤(斎)委員 その改善のベースには、関係者、関係団体からの要望、ヒアリングもなさっていると思います。その点について、具体的にその要望の内容を明示をお願いいたします。
片山国務大臣 もちろん、毎年の例でございますけれども、予算折衝におきましては、関係者、関係団体からの要望を詳しく聞いております。最終的に決定する段階でも皆さんの御了承を得てこういう形に落ちついたわけでありまして、各団体ごとの要望につきましては、人事・恩給局長から少し詳しく説明させていただきます。
久山政府参考人 お答えを申し上げます。
 恩給関係の団体は幾つかございますが、例えば日本遺族会あたりでは、公務扶助料等につきまして、人事院勧告の公務員給与上昇率を適用して増額改定すること、遺族加算は寡婦加算と同額にすること、あるいは特例扶助料等を公務扶助料等と同額にすること。
 それから、日本傷痍軍人会と日本傷痍軍人妻の会でございますが、こちらの方からは、傷病恩給等の改善、特に款症者妻に支給される傷病者遺族特別年金の大幅改善でございます。
 それから、軍恩連盟全国連合会の関係でございますが、国家公務員給与の改定に即する普通恩給及び普通扶助料の増額を図ること、それから寡婦加算の増額を図ること。三つ目に、普通恩給及び普通扶助料の最低保障額の引き上げを図ること。四つ目に、普通恩給及び普通扶助料の算出率の特例措置の改善を図ること。次に、旧軍人一時恩給を受けた者の一時恩給控除を撤廃し、普通恩給及び普通扶助料の改善を図ること。そして最後に、加算率等の見直しを行い、普通恩給及び普通扶助料の改善を図ること。
 以上でございます。
後藤(斎)委員 今のような御説明がありましたが、それぞれどんな時期にこの関係者、関係団体から総務省はヒアリングを受けて、話し合いをしているんでしょうか。具体的な時期を教えてください。
久山政府参考人 お尋ねの時期でございますが、いろいろな時期がございますけれども、集中しておりますのは予算関係時期でございます。
後藤(斎)委員 今御説明いただいた中で、いろいろな御意見があって、先ほど大臣がお話しになられたように、いろいろな財政当局との調整の中で決まっていくというふうな御説明がありましたが、今回の加算について、実際、受給者の方の実態調査をきちっとして、その合理性というのはどんな観点からそれぞれあるのか、御説明をいただきたいと思います。
若松副大臣 今、受給者の生活実態の調査についてのお尋ねでございますが、恩給受給者の生活状況につきましては、昭和五十一年以降、毎年、順次、恩給種類別に、例えば家族構成、世帯年収、家計に占める恩給の割合、公的年金の受給状況、健康状況、受給者の意見、要望等について調査を行っておりまして、その把握に努めているところでございます。
 最近の調査結果を概観いたしますと、恩給を主たる収入としている者ですけれども、旧軍人公務扶助料受給者で約四割、文官普通恩給、同普通扶助料受給者については約三割、また、傷病恩給を主たる収入とする旧軍人傷病恩給受給者は約四割となっております。公的年金の受給に関しましては、旧軍人普通恩給受給者、同普通扶助料受給者につきましては、公的年金を受給している者の比率が高い状況を認識しております。
 なお、この受給者の意見、要望につきまして、私も現場を視察しましてさまざまな電話のやりとり等聞かせていただいたわけですが、いずれの調査におきましても、感謝しているという声が強いと同時に、恐らく委員も同じような御認識だと思いますが、恩給の増額を求める、こういった意見も多いということも認識しております。
後藤(斎)委員 今、副大臣からお話がありましたが、確かに、大臣からも御説明があったように、恩給というのは国家補償的な年金であるという趣旨は理解ができます。ただ、本当にその家計の中心者が受給者であって、その方の恩給が家計にどんなウエートを占めるのか調査していますでしょうか。していたら、その比率ないしウエートを教えてください。
久山政府参考人 お答えを申し上げます。
 家計の中心たるべき者が受給者自身であります場合には、増加恩給が多うございます。戦争による大きな傷病を抱えつつ家計を担っているということで、その内訳を具体的に見てみますと、旧軍人増加恩給七四%、文官普通恩給七一%、旧軍人傷病恩給六一%、それから文官普通扶助料四八%等というふうになっております。
後藤(斎)委員 今の局長のお答えは、これは家計全体に見ている数字の中の数字ですか、それとも受給者がその家計全体の収入を賄っているんですか、確認を求めます。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げました説明は、受給者が家計の中心的な存在になっている、そういう家庭でございます。
後藤(斎)委員 では、ちょっと違った論点から恩給制度について確認を求めたいと思います。
 恩給のほかに昭和三十六年に老齢福祉年金という制度が発足をしました。この中で、財源は全額国庫負担という趣旨も含めて、恩給法等に基づく他の公的年金の給付を受ける場合に併給限度額というものを求めることになっております。これは旧年金法第五条並びに第六十五条ということでありますが、その上限は、十二年四月、ですから二年前から七十一万二千円という数字になっております。そして、恩給も含めたこの併給限度額の七十一万二千円の設定で、受給者の三つのケース分けができることになります。
 その一つ目のケースは、老齢福祉年金と恩給等の他の公的年金給付が七十一万二千円を下回る場合。そして、恩給等の公的年金の給付に老齢年金が一部ひっかかって支給停止になる場合。そして、恩給等の公的年金給付が既に七十一万二千円を上回って全額老齢福祉年金が停止になる場合。この三つがケース分けになっております。
 まず、七十一万二千円というふうにこの併給限度額を規定した根拠について教えてください。
辻政府参考人 老齢福祉年金の併給限度額の根拠について御説明申し上げます。
 この老齢福祉年金、先ほど申されましたように、昭和三十六年四月に国民年金が導入されまして、当時五十歳以下の方に強制加入ということで保険料を納付していただきまして、年金を受けていただくと。しかしながら、当時五十歳を超える方につきましては、もう保険料を納める期間が短いということで何ももらえないということになりますので、全額国庫負担で老齢福祉年金が支給されたという経過のものでございます。
 したがいまして、他の年金制度から年金を受けられる場合は、その制度があるので支給しないというのが原則でございまして、そういう前提のもとで、しかし、他の年金制度で低額の年金がある、低額の年金の者については、当初、老齢福祉年金相当額まで併給するということで、この併給制度ができたものでございます。
 その中に恩給もあったわけでございますけれども、その後、恩給制度が改善される中でその限度額というものも見直しが行われまして、考え方といたしましては、普通恩給の短期在職者、これは六年以上九年未満の短期在職者でございますが、この最低保障額をやや上回る額に設定するという考え方で、この最低保障額の引き上げに準じまして見直しが行われ、したがいまして、今御指摘のように、現在七十一万二千円となっているものでございます。
後藤(斎)委員 その七十一万二千円は、恩給等の公的年金の給付並びに老齢福祉年金で十分な生活が営める数字になっているんでしょうか。
辻政府参考人 申しましたとおり、この老齢福祉年金は、国民年金制度ができますときに、強制加入して、将来に向けて保険料を納めた方が保険料を納めたことに応じてもらうという制度のもとで、いわば加入ができない方に対して支給するという性格のものでございます。したがいまして、その後保険料を納めた方の年金はどうかと申しますと、当時五十歳以下ということですから、五十歳の方が六十歳まで十年間納められます。その方の年金額は四十八万八千六百円ということで、現に、逆に言えば四十八万八千六百円しか出ておりません。
 そういうような意味でできた制度でございますので、この併給限度額というものが一定の生活保障をするというような観点からこの公的年金制度の方はセットされておりませんので、あくまでも当時の、今申しましたような経過から設けられた限度額であると認識いたしております。
後藤(斎)委員 先ほどケース分けを三つしました併給の制限、それ以下の者、一部停止の者、それを上回る者、それぞれの人数そして実際予算を支出している規模を教えてください。
辻政府参考人 まず老齢福祉年金の受給権者でございますが、平成十三年三月末現在で十八・五万人、万単位で失礼いたします、十八・五万人となっておりますが、このうち恩給や他の公的年金を受給しておるために一部が支給停止となっている者、これが〇・八万人、それから全部が支給停止となっている者、これが三・七万人となっております。ただ、支給停止されている者のうち、恩給を受給されている方がどの程度かということは私ども分類上とっておりませんので、残念ながら、恩給の方についてというデータはございません。
 それから、支給総額でございますが、十三年度で老齢福祉年金の支給総額は四百八十六億円でございます。
後藤(斎)委員 今のお話ですと、じゃ、この公的年金併給限度額を下回る方は、十八万五千人から四万五千人を引いた十四万人ということで理解をしてよろしいんでしょうか。
辻政府参考人 そのうち、実は、支給停止されている方の中で、別途所得制限、本人の所得が、公的年金でございますので、高いときには御遠慮願うという制度がございますので、その所得制限によって支給停止になっている方がございます。したがいまして、それを除きますと、一部支給停止が八千人程度、それから全部支給停止が三万七千二百人程度でございます。
後藤(斎)委員 ですから、限度額を下回っている方は何人いらっしゃるんですか。
辻政府参考人 失礼いたしました。したがいまして、十三万六千七百人程度が全額支給でございます。
後藤(斎)委員 なぜこのような質問を、細かいと思われるかもしれませんが、しているのは、この年金併給限度額ないしこの七十一万二千円の限度の設定、そして本当にそれが受給者の方にプラスになっているかどうかということを私は明らかにしたいということで、確認を今、年金局長にしているわけです。
 ややもすれば、恩給制度、確かに冒頭の趣旨説明にもありましたように、必要な制度であるということの認識に立った上で、本当に生活実態をきちっと把握をし、その中で、年金というものがどんなウエートを持っているかというのが先ほどの恩給局長のお話にもありましたけれども、家計の中で旧軍人増加恩給で七四%、文官普通扶助で四八%、数字を挙げられましたが、これは多分、私がいろいろな話を聞く中で、いろいろな要素が加味をされているものだというふうに思わざるを得ないんです。
 と申しますのは、今、年金局長が話をされたように、この限度額に達するかどうかというものも、一つ所得制限的な要素もあり、逆に言えば、恩給等のウエートというものを政府全体でやはり縦で考えているからではないかなという観点がします。
 私は、もう少し、確かにトータルとしたら七百七十億くらい、昨年に比べてこの恩給制度にかかわる予算額は減資をしておりますが、この九億数千万という支出が、どう考えても本当に合理的な理由があってやっているのかというものには当てはまらないような感じがするんです。
 改めて大臣にお伺いをしたいと思います。
 受給者が、恩給を受給する中で本当にありがたいと思っているものはあるにしても、きちっと他の公的年金の問題も含めて実態調査を行って、その実態に基づいてこれからは受給を、額を決定するようなおつもりはあるのかないのか、まずお尋ねしたいと思います。
若松副大臣 今委員からさまざまな御質問がございましたが、まず基本的な考え方として、この恩給制度というのは国家補償的な性格を有する制度であるということが一点でございます。そして、この公的年金というのは、いわゆる相互扶助の精神に基づいて保険数理の原則によって運営されるというものでありまして、その基本的な性格は、さらに仕組みが異なっている、その認識はぜひ御理解いただきたいと思います。
 そうはいいながらも、やはりこの恩給も、年金としての機能から見ますと公的年金と共通する面もあるわけでありますので、総務省といたしましても、公的年金とのバランスも考慮しつつ、今後とも必要に応じて、厚生労働省年金局等の他の機関との連携並びに調査等を行ってまいりたいと考えております。
後藤(斎)委員 その観点でお願いをしたいんですが、もうかなり前になりますが、昭和六十一年に当時の臨時行政改革推進審議会で最終答申が恩給制度について出ております。恩給制度については、年金制度改正とのバランスを考慮し必要な見直しを急ぐとともに、引き続き新規の個別改善を行わないと。それに基づいて、恩給審議会等々で今副大臣が御説明をいただいたような趣旨で議論がまとまったという話も聞いております。
 ただ、これは昭和六十一年という時代背景の中で対応しているものであって、もちろん基本的な考え方は、国家補償的な性格を有するという恩給制度の趣旨、これ自体はわかっています。ただ、つかみとして、今回の加算をしたその合理的な説明にはやはりなってないと思うんです。
 では、例えば千円上げた部分は、普通恩給の最低保障額の増加、この千円というのをどういうふうな評価を大臣はなさるんでしょうか、その実態調査を含めてやられて。
久山政府参考人 お答えいたします。
 先生御質問の引き上げの額でございますが、これは先ほど来話題になっております、私どもがやっております毎年の調査結果の中身を十分勘案しながらでございますけれども、恩給受給者の処遇を図るという観点から、受給者の方々の要望や従来の経緯などを踏まえまして、恩給制度内のバランスを考慮しながら低額恩給改善の趣旨に即しまして、財政事情の許す範囲内で最大限の努力をした結果であるということで御理解を賜りたいと思います。
後藤(斎)委員 理解をしたいのもやまやまなんですが、ではもう一点、角度を変えてお尋ねします。
 今回、初年度では、今回の措置で九億八千万の所要経費になります。それが十五年度以降は十三億に増加するのは何ででしょうか。
久山政府参考人 お答えをいたします。
 御質問の件は、ちょっと突然の御質問でございまして、私ども手元にその関連の資料がございませんものですから、ちょっとお答えを差し控えさせていただきます。
後藤(斎)委員 確かに今の初年度、平年度の質問通告はしてありませんが、これは予算の組み立てで、私、何か正直言って元気がちょっと出なくなってしまったんですが、なぜそういうような説明になってくるのか。
 ちょっと大臣、大臣の御認識をまずお伺いしてから。調べておいてください。
片山国務大臣 今の千円の話ですね。どうやるかというと、積算の根拠はあることはあるんですが、実は、今言いましたように、今までの経緯、それから恩給間のバランスというのが大変各団体の関心が強いんです。我々がいつも困るのはそういうことなんですね。財政当局はできるだけ、こういう財政事情ですから予算をふやしたくない。
 しかし、どうやって全体のバランスをとって、しかも従来の経緯に反しないようにして各団体の御納得を得るかというところは大変難しいところでございまして、その結果がこういう予算の枝ぶりになったわけでありまして、私自身はやむを得ないかな、こう思っております。
 また、来年度以降の予算で、今回の十四年度の予算の状況を踏まえながら各団体の意向を聞いて十五年度以降の恩給全体の予算措置については考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
後藤(斎)委員 ちょっと調べておいてください、さっきの平年度、初年度のものは。
 大臣、今まで年金局、そして恩給局長も事務当局もお答えになっていただきましたように、今回いろいろお聞きをしていてわかるのは、やはり他の公的年金との連携というものをきちっともう一回整理を私はすべきだと。
 十一カ月前に、大臣は留任になりましたが、小泉内閣が、聖域なき構造改革と称していろいろなものを時代に合わせた形で変えていく、変えなければいけないということでこの十一カ月対応してきたはずであります。
 やはり縦割りのいろいろな行政の仕組みが、先ほど年金局長から答えていただきましたが、その限度額についても、そして少なくとも厚生労働省の仕組みでは、恩給等の、その他の公的年金給付というものを全体を絡めて、それに老齢福祉年金を加算して併給限度額を認定しているという仕組みも一方でとっております。
 これが、本来の国家補償的な意義というものがその中でどういうふうな位置づけになるかというのは、やはり総務省のみならず厚生労働省ともきちっとした連携をとっていただいて、公的年金全体、そしてその中での恩給制度の位置づけを、もう一度明確にすべき時期に、日本の恩給制度ができて百数十年たって、逆に見直す時期に来ていると思うんですが、その縦割りの関係、そして他の年金制度の関係も含めて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 先ほど若松副大臣からお答えしましたように、恩給制度は、年金ですよ。年金だけれども、国家補償的な性格が大変強いですね。それから、年金そのものは、やはり相互扶助の精神で、一定の数理計算で出る。しかし、お金をもらう、公的にもらって生活保障をやるという意味で大変似ているんで、そこの整理が、後藤委員言われるように必要だと。
 今までも厚生労働省の年金局その他とは十分相談をしてまいっておりますけれども、こういう時期、全体の年金制度のあり方についての議論もある時期ですから、そういうことでこの恩給とその他の公的年金制度の関係については、今後どういう考え方でやるかは十分連携をとって協議してまいりたい、我々も研究してまいりたい、こういうふうに思っております。
後藤(斎)委員 恩給局長、先ほどの平年度のベースの十三億はよろしいですか。まずそれを答えていただかないとちょっと最後に行けないんですね。
久山政府参考人 お答えいたします。
 手元に資料がございませんが、その点につきましては、支給月と会計年度の関係から、初年度は全体の十二分の九を計上するということで、九億八千万円ということに相なります。そして、次年度につきましては、つまり十五年度におきましては、その額が約十三億必要になるということでございます。
後藤(斎)委員 というのは、六月、七月からの支給になるということですか、改正が。そういうふうな説明はさっきなかったんですが。四月分からというふうに先ほど大臣の提案説明の中ではありましたけれども、なぜ十二分の九になるんですか。
久山政府参考人 四月、五月、六月分は七月支給、それから、一月、二月、三月は四月支給ということからくる関係でございます。
後藤(斎)委員 ちょっと、大臣の提案理由の説明と若干私は内容が違うと思うので、後日、説明を当委員会に対して、きちっと資料を含めて提出するように要望いたします。
平林委員長 久山君、よろしいですか。――それでは、後藤委員のおっしゃるように、後日、説明をしてください。
 後藤君。
後藤(斎)委員 きょうの質疑の中でいろいろな点が明らかになったと思います。
 私は、副大臣が何度かお答えをいただきましたが、受給者の生活実態、これをきちっとまずやっていただきたい。そして、必要があれば、本当に、この千円、二千八百円、それぞれの加算が適切かどうかという他の公的年金との制度的な連携を、先ほど大臣もお答えになっていただいたように整理していただきたい。
 この二点に基づいては、本当に受給者の方が必要であれば、やがて二十年か三十年たって、この恩給制度というのはほかの部分に引き継ぎを、完全にバトンタッチができる制度であります。そのめり張りというものをつけて、本来であれば、対応しなければいけない時期に逆に言えば来ているというふうに私は思っています。
 国民総意が納得して、今までの旧軍人の方を含めた方々に対する本当にその真摯な気持ちというものが国民全体にあるような形にこの制度をこれからも運営していただき、それは厳然として法律に基づいて運営していただくという趣旨が、今まで、ややもすればそうではない形で私は対応してきた部分もあるのではないかなと思っております。
 私は、そういう意味では、国民全体が納得していただくその数字的根拠、ないし、その根拠というのは、きちっとした実態調査をしてやっていただきたい。その中で国民的な合意形成をして、私は、この恩給制度というものを運営していただけるように心から希望する一人でございます。本当に、めり張りがついてこれから制度運営をし、そして他の年金制度との関係も含めて対応していく。
 最後に、きょうの質問の全体をまとめた、納得いくべき国民的合意形成をしながらの年金制度の運営にすべきだというふうに私自身は考えておりますが、大臣に、その辺、最後に御確認をして、質問を終了させていただきます。
片山国務大臣 委員から何点か御指摘を受けました。言われるとおりでございまして、国家補償的性格といいましても、やはり国民の皆さんが納得できるような仕組みや運用にする必要があると思いますので、御指摘の点を踏まえまして、関係の方面とも十分協議しながら、我々としても今後検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
後藤(斎)委員 終わります。よろしくどうぞお願いします。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 これまでの質疑でちょっと重複するところもありますけれども、改めて質問いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、まずもって、恩給問題の前に、公的年金の基本的課題をお伺いいたしたいと思います。
 最近、厚生労働省が公表された人口推計によりますと、六十五歳以上の人口は、二〇二五年に約三千五百万人と二〇〇〇年に比べ六割近くふえ、ほぼ三人に一人が高齢者になり、公的年金財政を直撃しそうであります。御案内のとおり、我が国の経済は危機的状況にありまして、需要不足からくるデフレスパイラルに突入しつつある中、政府のデフレ対策は具体性に欠け、市場から冷ややかに見詰められております。GDPの約六割を占める個人消費の多くは、このように増加している高齢者の消費動向いかんにかかっておるのではないかと思っております。
 社会保障については、過去、税方式か社会保険方式か、多くの議論がされております。しかしながら、構造改革の根幹をなす基本課題であるにもかかわらず、経済財政諮問会議の中期展望でも何ら方向性の提示がなされておりません。それに加えて、国民は経済不況の泥沼にあえぐ中、たび重なる給付減と負担増の改正を繰り返すことによって、年金制度に対する不安は解消されるどころかますます増長している、これが現状であります。このため、老後を快適に生活できるライフプランを設計できず、不安要素の大きい分を余計に貯蓄に回さざるを得ない、安心して消費できない、これが実態ではないでしょうか。
 政府は、社会保険方式を堅持するとの方針でありますけれども、世間では、年金の空洞化等の社会保険方式に対する不信が強くあらわれておりまして、税方式を望む声も少なくないと聞いております。
 また、社会保障審議会の年金部会では、平成十六年度の財政再計算に向けてさまざまな議論が始められたと耳にしておりますけれども、その中で、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げることなどが主要な課題になると思っております。
 そこで、現在、年金を給付するための財源には保険料と税金が充てられておりますけれども、それぞれどのような役割、そしてまた長所短所があるとお考えでしょうか。そしてまた、基礎年金に税方式を導入することなどは、当然、経済財政諮問会議、あるいはまた税制調査会でも検討されるでしょうから、この年金部会でこの機会にこれらの検討を具体的に開始してはどうか、こう思いますけれども、厚生労働省の見解を求めておきたいと思います。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
辻政府参考人 まず、租税と社会保険料、この役割、機能でございますけれども、これは同様に、法律に基づいて国民に負担をお願いするという意味では同じでございますが、やはり性格、機能は異にしております。
 具体的に説明申し上げますと、租税、これは社会共通の費用を賄うというのが基本でございます。したがいまして、ある個人が税を納付するということと、通常、社会共通の費用ということですので、納付をしたからそれに着目して、それに連動して給付を受けるという結びつきはございません。
 このために、税だけを財源とする場合は、逆に言えば負担の有無を要件とすることなく給付ができるという点がございます一方、税財源の性格上、先ほど議論のありました福祉年金やあるいは各種手当と同じように、一定水準以上の所得の者については給付を制限するということが通常でございます。
 一方において、社会保険料でございますけれども、例えば年金制度を例にとりますと、高齢になった場合にいわばそれまで得た所得を得られなくなる、それを補てんする、俗に保険事故と呼んでいますけれども、高齢に達することによって所得が得られなくなるという保険事故を補てんするために、あらかじめ社会保険料を納めて、そして高齢になったときにその財源から給付が出る、こういった仕組みでございます。これは保険料納付を行わない者に対しては保険給付を行えないという一方、負担したことが記録されて負担に連動して年金額が定まるという権利性を有しておる、これが基本的な役割や機能の違いかと存じます。
 この場合、基礎年金を税方式にするべきという場合の考え方は、今申しましたように、個々の税負担と年金額が連動することのない制度にするという考え方と存じますが、これにつきましてはさまざまな論点がございます。
 るる申しませんが、そもそも、若いときから老後の生活の落ち込みに対して準備をして、そして老後、所得保障を得るという考え方が、我が国の自助と自立をもととする精神、これにむしろ合致するのではないかという基本論のほかに、今申しましたように、負担と給付が連動しない税方式におきましては、上昇し続ける負担に合意が得られるのか。
 例えば、目的消費税だけでお願いしました場合には、基礎年金の給付費について、現在五・五%このためだけの税率が必要でございますが、二〇二五年には九・二%に引き上げなければなりません。このようなことに合意が得られるのか。
 あるいは、今申しましたように、当然所得制限というものが導入されようと思いますので、現役のときに所得を得る努力をした者からもらえなくなる、そして第二の生活保護になってしまうのではないか。こういった論点がございます。
 そのようなことで、政府の考え方としましては、社会保険料を基本とし、これに公費負担を適切に組み合わせる、そして、御指摘がありましたように国庫負担を二分の一とすることについて鋭意検討をするということになっておるわけでございますが、御指摘のように、次期制度改正に向けた社会保障審議会の年金部会におきまして、当然、今申しましたような租税と保険料についての性格の違い、このようなことについて、十分国民に開かれた形で御議論をいただいて、議論を進めていただきたいと考えております。
黄川田委員 我が党は、国民が主役の社会の実現を目指して、社会保障制度改革を政策の大きな柱の一つに掲げております。そして、基礎的年金、高齢者医療そして介護などの財源を消費税に求めることによりまして、直接税及び社会保険料などの直接的な国民負担の軽減を図る、これを主張しております。
 いずれ、財源の安定化、そしてまた世代間及び所得階層間の負担の公平化、これらも含めて考えていかなければいけないということでありますので、この税方式の考え方についてもよくよく御議論していただきたいと思っております。
 そしてまた、去る三月八日でありますけれども、これまた社会保険庁の発表によりますと、平成十二年度の国民年金の未納率は二七・〇%と、一九六一年度の制度発足以来の最悪を更新いたしました。約二千百五十万人が加入する国民年金の未納率は年々高くなっておりまして、最近の景気悪化による所得の減少で保険料を払わない加入者の増加と、低所得のため保険料を免除されている約三百七十万人を加えると、加入者の三割以上が保険料を払っておらず、まさに制度の空洞化が加速していると思っております。
 さて、地方分権推進整備法の施行に伴いまして、現在市町村が行っている保険料収納事務は四月一日から国が行うことになりました。そしてまた、郵便局のほか簡易郵便局の窓口でも保険料を社会保険庁に納入することができるように、昨年六月郵便振替法及び簡易郵便局法の改正がなされました。その際、地域住民に身近できめ細かい相談に応じてくれる市町村窓口事務から、国の徴収事務に切りかわることで地道な督促等が難しくなるのではないか、そしてまた、さらに収納率が悪化し、空洞化が一層促進されるのではないか、そういう懸念を私は指摘したわけであります。
 そこで、制度切りかえを目前にしまして、社会保険庁の収納事務の準備は万全であるのか、そしてまた、その後収納率向上を目指してどのような新しい手段を講じてきているのか、これまた厚生労働省の見解を求めておきたいと思います。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
小島政府参考人 お答えを申し上げます。
 平成十四年度からの社会保険庁の収納事務体制整備についてでございますが、平成十四年の四月分の国民年金の保険料から、社会保険庁が直接その保険料を収納するということでございまして、保険料納付案内書の作成、送付、それから口座振替先の変更の確認及び口座振替開始通知書の作成、発送等がまず必要になるわけでございますが、四月の円滑な実施に向けまして現在そのための準備を鋭意進めているところでございます。
 また、こうした事務切りかえに伴いまして、被保険者から社会保険事務所あるいは市町村にさまざまな相談が寄せられると思いますが、これの対応につきましては、各市町村にパソコンを設置いたしまして、国民年金の納付記録でありますとか厚生年金からの脱退情報でありますとか、オンラインで市町村へその情報を提供して相談のために資するというシステムをこの四月から稼働する予定でございます。
 また、市町村におきます相談業務が円滑に実施できますように、各社会保険事務局に市町村からの照会専用電話を約二百回線設置することとしております。このことによりまして、社会保険事務所における被保険者の方々への相談も効率的にできると考えております。
 今後とも、事務処理の効率化を図りながら、被保険者等からの相談に十分応じられるよう努力してまいりたいというふうに考えております。
 また、収納率向上対策についてでございますが、まず、未納者対策といたしましては、納めやすい環境づくりという観点から、日銀歳入代理店のほか、農協、漁協、信用組合、全国の金融機関で国民年金の保険料納付を可能といたしました。また、昨年、御指摘のように簡易郵便局でも国民年金の保険料の納付ができるようにしていただきました。
 これに伴いまして、口座振替を行っていない人全員に定期的に口座振替の申込用紙を送付し、その促進を図るとともに、また未納者に対しては、早期に対応することが効果的だということから、年六回催告状を送付し、これに応じられない方についてはまた早期に電話等による納付督励を実施することといたしております。
 さらに、未納者に対しまして戸別訪問による納付督励や口座振替の勧奨等を行うために、国民年金推進員を全国で十四年度千八百五十八人を設置することといたしました。
 こうした未納対策を実効あるようにするためには、やはり若い方々を中心として公的年金制度の意義、役割について周知していくことが必要だと考えておりまして、昨年十一月にはインターネットで年金専用のホームページを設けました。そこで、例えば二十代前半、二十代後半から三十代前半、三十代後半といった年代別に重点を置いた広報を行っているところでございます。
 さらに、国民各層の公的年金への理解が得られるよう努力してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
黄川田委員 国民年金は、老後を支える本当に重要な制度であります。そしてまた、事務の相当部分が国に移るわけでありますけれども、国民にとって逆に不便になったり、あるいは制度運営がうまくいかなくなったというようなことのないように万全な対策を望むものであります。いずれ無年金者が生じないように、市町村との連携をよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、本題の恩給法の改正について伺いたいと思います。
 恩給受給者は、昭和四十四年度には二百八十三万人とピークを迎えましたが、戦後五十七年の今日なお約百四十万人の方々がおられるわけであります。
 恩給は、命を賭して国に尽くされた方々に対する国からの給付でありまして、まさに国家補償であり、社会保障制度の一環としての公的年金とはそもそも根本的に性格が違うものと私も思っております。そしてまた、恩給受給者の大多数が遺族、傷病者でありまして、かつそのほとんどが平均年齢八十一歳という高齢者であります。厳しい財政事情でも、それなりの処遇、対応はしなければならないと思っております。
 そしてまた一方、三年連続で消費者物価の下落が続いておりますが、その中で、物価スライド制を採用しております厚生年金等の公的年金は、年金額を据え置くための特例法案を今国会に提出されている、これも承知しております。
 そこで、この公的年金が据え置きという状況の中で今回恩給の改善を行うこととした基本的な考え方でありますけれども、改めて大臣からお伺いいたしたいと思います。
片山国務大臣 何度も同じことを申し上げておりますが、やはり恩給というのは、基本的には国家補償的な性格があるということが一つ。しかし、同時に、公務員給与あるいは物価の動向等の諸般の情勢を総合的に勘案して物を決めていく、こういうことでございまして、今回は、御承知のように公務員給与は改定が見送られまして据え置きとなりました。物価がマイナスである。しかし、公的年金は、年金額の引き下げは行わずに据え置きにした、こういう事情の中で、恩給年額は据え置くことにされたわけであります。
 ただ、恩給の中で最も低額な部分の恩給や戦没者の遺族等に対して支給される遺族加算などについては、国家補償的な性格を重く見て特別に措置をしていただく、こういうことを我々もお願いしまして、それではそういうふうにしよう、こういうことになったわけでございます。この決定につきましては、先ほども申し上げましたが、関係の皆さんのおおよその御了承を得て決めたわけでございまして、現下の厳しい財政事情のもとでは、我々としてはやむを得ない措置であった、こういうふうに考えております。
黄川田委員 恩給の国家補償的性格といいますか、それを基本としまして、この低額恩給の是正についても今後とも取り組んでいただきたいと思っております。
 残り少なくなりましたので、最後に、関連しまして、在日韓国人旧軍人軍属戦没者遺族等に対する弔慰金等の支給に関してお尋ねいたしたいと思います。
 昨年の本委員会で、その準備に遺漏なきをお願いしたわけでありますけれども、その実施状況はいかがでしょうか。そしてまた、対象人員は当初二千人から三千人と聞いておりましたけれども、それと比較して請求件数が少ないように思われますけれども、その実態はいかがでしょうか。
 よろしくお願いいたします。
衞藤政府参考人 お答えいたします。
 ただいま先生からお話ございましたように、昨年四月から弔慰金等支給法を施行いたしております。先月二月末までの状況、十一カ月間の施行状況でございますが、請求を受け付けたものは百九十九件、審査中などを除いて、現在のところ百四十九件について支給決定を行っております。その内訳は、御遺族等に弔慰金を支給したものは百四十件、重度の障害を受けられた御本人に対し見舞金等を支給したものが九件ということでございます。
 お話ございました対象人員の件数でございますが、当初、三年間の請求期間におおむね二千から三千人御請求いただくというふうな見込みを持っておったわけでございます。これは、当時ございました旧軍等の残存の資料等をもとに見込んだ数でございますが、ここ一年弱の請求動向を見る限り、当初の推計は、やはり戦後五十年を経ていたようなこと、それから受給対象者の実態調査などの資料が不十分であったことなどから、やむを得ないことながら、ちょっと一定の限界があったのかなと今の請求動向を見ていますと感じておるところでございます。
 そういうことで、請求件数は、先生お話しのように見込みの件数を下回っておるわけでございますが、当方といたしましては、人道的観点からの事業でございますので、この立法の趣旨を踏まえまして、一人でも多くの対象の方々にこの制度を有効に活用していただきたいと考えてございます。
 そういうことで、現在、政府広報の充実、ポスターの掲示、それから韓国系新聞への広報、それからまた地方公共団体にいろいろお願いしまして、地域に応じた広報の充実、それから対象となり得るような方々を見込んでフォローなど、それぞれ工夫を凝らした広報の取り組みをやっているということでございます。
 以上でございます。
黄川田委員 この弔慰金等については、種々議論が重ねられて議員立法で実現を見た措置であると伺っております。いずれこの請求の窓口は市町村でありますので、広報の強化あるいは事前相談、こういうものによりまして請求漏れがないよう、そしてまた、請求があった場合には迅速な処理をよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。
 以上であります。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 改正案は、かねがね私たちが、上に厚く下に薄い、そういう形態やあるいは月五万円程度の支給しか受けられないというような問題については問題提起をし、改善することを要求してまいりました。今度出されておりますこの改正案、そういう点からいきますと、まだまだささやかであり、しかしながら一歩前進だなというふうには思っております。
 そこで、私、戦没遺族の方々の問題で幾つか質問していきたいと思います。
 先日、さきの大戦で東京都関係の戦没者十六万人が祭られている東京都戦没者霊園、これを訪ねまして、その敷地内にあります建物の中の会議室で、実は、平和を願い戦争に反対する戦没者遺族の会、略称平和遺族会、このように呼んでおりますけれども、この会の全国世話人会、この方々と懇談する機会がありました。
 そこで、遺族の方々からいろいろな御意見や御要望などをお聞きしたわけであります。もう相当の年輩の方々です。親を戦争で亡くされた方あるいは兄弟を戦争で亡くされた方などなど、こもごもいろいろな話題になりましたけれども、私その中で、この遺族の皆さん方の心の傷というのは六十年以上経過したにもかかわらず消え去ることなく、今でも痛み続けているということを痛切に感じました。そしてまた、これらの方々は、再び戦争の惨禍を繰り返してはならない、そのためにも戦争の惨禍の実態あるいは戦没者の実態、こういうものを調べ尽くすことが、失礼な言い方かもしれませんが、余生のすべてをかける一つの生きがいとなっているということを痛切に感じました。
 大臣、こういう遺族の方々の心情について御感想がありましたら、聞かせていただきたいと思います。
片山国務大臣 今お話がありましたが、私も近いような感じを持っておりまして、本当に遺族の方はかけがえのない肉親をさきの戦争で亡くされたわけでございまして、その痛みは、相当長い間時日が経過しておりますけれども、決して消えてはいないな、こう思っております。
 そういう意味では、そういうことを風化させてはならないな、こう思っておりまして、今後とも、今お話しのように、平和を求めていくし、そういう遺族の方々には、我々としても十分責任を持っていく、こういう姿勢が必要ではなかろうかと考えております。
矢島委員 その話し合いの中で、いろいろ出ましたけれども、ある方は、ビルマ戦線の兵たん病院でお父さんが亡くなった、ベッドのそばの穴に埋められたということは判明している、だからそのお父さんの遺骨を連れて帰りたい、こういうお話もありました。それから、西ニューギニアで戦死したお父さんの最期を知りたい、こういうことを願っている六十歳の遺族の方もいらっしゃいました。
 今まで子育てやあるいは仕事に追われて半生を過ごしてきましたけれども、いよいよこの時期になりまして、残された日々の生きがいというのが戦争の惨禍の実態あるいは戦没者の実態、これを掘り起こす作業だというふうに向けられているんだなと感じました。
 そこで、厚生労働省、三沢官房審議官にお聞きしたいんですが、厚生省の遺骨収集事業がこれまでもずっと続けられてきましたけれども、なかなかまだまだ遺族の願いに十分こたえ切れていない、残された部分あるいは地域も多いわけです。
 そこで、残された地域への遺骨収集の対策を大いに急ぐことが必要だと思うわけですけれども、厚生省の取り組みはどうなっているか。ここ二、三年で結構ですから、遺骨収集のための事業、これにどれだけの予算をとり、どれだけの人たちが遺骨収集の作業に参加しているか、それをお答えいただきたい。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 まず最初に、戦没者の遺骨収集事業の現状について申し上げたいと思います。
 遺骨収集事業、これは昭和二十七年度から南方地域において開始しておりまして、また、平成四年度からは旧ソ連地域における抑留死亡者の遺骨収集、これを本格的に実施してきております。これまでに、海外戦没者、約二百四十万を数えると言われておりますけれども、そのうち約百二十四万柱を本邦に送還しているところでございます。
 お尋ねの過去三年間の遺骨収集事業の予算額でございますけれども、平成十一年度は四億二千四百六十万円、平成十二年度は三億九千三百八十二万円、平成十三年度、本年度でございますけれども、四億八千三百六十七万円となっております。
 また、過去三年間の派遣数及び派遣人員についてでございますけれども、平成十一年度は二十三派遣、二百二十三名、平成十二年度は十九派遣、二百三十名、平成十三年度は二十三派遣、二百七十二名となっているところでございます。
矢島委員 遺骨収集事業のほかにも、慰霊巡拝あるいは墓参事業というのも厚生労働省がやっているわけですけれども、それはともかくも、私がお聞きしたいのは、先ほどビルマ戦線の兵たん病院で亡くなられた遺族の方の発言をちょっと御紹介しましたけれども、相当私聞きまして、確実性があるんだと思うんです。ベッド、それから兵たん病院の位置、そのわきの掘られた穴、そういうことで、ぜひそういう場所へ行って、相当確実な情報だろうと思いますので、遺骨収集に参加したいということを願っていらっしゃるんですが、どうやったら参加できるのか。
 それから、参加募集というのがあるけれども、なかなか遺族の方に知らされていない、あるいは知らそうと思ったけれども、実際には届いていない。日本遺族会の窓口一本方式ではなくて、何か、広く遺族の方々のそういう願いにこたえるような広報活動も必要だなと思うんですが、その辺はいかがですか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども御説明申し上げたところでございますけれども、遺骨収集の状況につきまして、旧ソ連地域における抑留中死亡者につきましては、事前の埋葬地調査、これを行っております。この埋葬地調査などにより遺骨が確認できた埋葬地について実施するということでございます。
 また、お尋ねの南方地域でございますけれども、南方地域につきましては、確かな残存遺骨情報がある、そういう情報に基づいて当該地域の遺骨収集を実施しているということでございます。
 この遺骨収集の問題につきましては、国が主体的にみずから実施するというものでございますけれども、必要に応じて、民間の方々の御協力もいただいているところでございます。具体的に、現在、民間の方々としては、財団法人の日本遺族会、日本青年遺骨収集団、慰霊事業協力団体連合会、このような団体の協力をいただいておりますけれども、先生御指摘のような場合につきまして、関係者から申し出がございますれば、その内容から適切な遺骨収集が可能と判断されたときには、派遣団の構成などを勘案の上、適切に対処してまいりたい、こう考えている次第でございます。
矢島委員 遺族年金の総額も年々減少しています、亡くなられる方もいらっしゃいますから。ですから、私、この遺族の皆さん方の願いである遺骨収集だとか、あるいは墓参だとか、こういうことへぜひ、減ってくるんですから、年間一千億円ぐらい減りますか、こういうものを回していただきたいということを要望しておきます。
 それから、もう一つお聞きしたいのは、そのとき話に出たことですが、昭和二十年の七月、レイテで戦死したお父さんの上官だった人が持ってこられた資料、それがお父さんの最後の状況を物語る資料だったわけなんです。その遺族の方から、こんな希望が出されたんです。そういうものの裏づけのために、厚生省の地下倉庫にあるマイクロフィルム化されている資料、こういう関係資料を公開してもらいたい、見せてもらいたい。
 資料の保存と公開、今どうなっているか、お聞かせをいただきたい。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども厚生労働省では、旧陸海軍から引き継ぎました、陸軍の部隊別名簿あるいは海軍の履歴原表等の人事関係資料を保管しております。
 この資料、作成されてから五十年以上経過しているということで、損傷もかなり見られます。そういうことで、記載内容の滅失を防止する、あるいは関係者の高齢化にかんがみまして、資料の検索を効率的に行う、こういう観点から、電子媒体、光ディスクに格納することを計画しておりまして、現在、平成六年度から計画的に電子化を推進してきているところでございます。
 これらの資料の公開の問題でございますけれども、私どもとしては、戦没者の遺族あるいはこれらの者から委任を受けた者に対しましては、情報の提供を現在でも行っております。それ以外の者に関しましては、これらが個人情報である、こういうことを踏まえまして、原則として提供を控えさせていただいているところでございます。
矢島委員 遺族の方々、気軽にというとあれですが、要するに、余り手続上面倒くさくなく資料を見ることができるような方法をぜひ御検討いただきたいと思います。
 そのためには、例えば、今厚生労働省の方で保管しているいろいろな資料、あるいはその他のものもあるかと思いますけれども、そういうものを収集したり保管したり、あるいは公開する、そのための施設ですかね、そういう公的な施設というようなものがあると、遺族の方々もそこへ行っていろいろ調べたり見せてもらったりすることができるんじゃないかなと思うんです。
 日本遺族会が運営している昭和館というのがあります。あそこにもいろいろな資料があるんですが、遺族の方々が願っているような、特に平和遺族会の方々が願っているような形での収集や保管や公開になっていないんですよ。ですから、ぜひ遺族の方が気軽に行って見せてもらえるような、そういう公的な施設をつくろうというお考えはありますか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 先生お話しになりました昭和館でございますけれども、これは私ども厚生労働省が設置して日本遺族会に運営を委託している、こういう施設でございます。そういう意味では、公的な施設であります。
 昭和館の運営の話、いろいろございました。私どもとしても、戦没者あるいは戦争に関係いたします記録、これが滅失するということは非常に大きな問題だろう、こう考えておりまして、このような資料の保存、保管、提供、これをどのような形でやっていくかということは非常に重要な問題だと認識しておるところでございます。
矢島委員 昭和館の運営の実態等もひとつぜひお考えいただきたいと思います。
 そこで、時間がなくなってまいりました。今、全国の自治体に、いろいろ戦没者名簿についてどうなっているかということを、作成や公開について、私たちの方もいろいろ調査はしてみたんですが、厚生省として、今現在、戦没者名簿の作成や、あるいはそういう事業に取り組んでいる地方自治体、どんなふうになっているか調べてありますか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども厚生労働省の関係で申しますと、各都道府県は戦後、旧陸軍から引き継ぎました兵籍簿、戦時名簿などの人事関係資料を保管しております。ただ、先ほども申し上げましたように、作成後五十年以上も経過しているということもございまして、実は、私ども、昨年十月、各都道府県におきます旧軍関係の人事関係資料の保管及び整備状況について調査をしたところでございます。その調査によりますと、関係資料につきまして、マイクロ化、デジタル化をしているところは約半数しかない、こういう状況でございました。
 こういうことを受けまして、本年三月四日でございましたけれども、社会・援護局担当の都道府県の主管課長会議を開きまして、最近資料整備を行った県の事例を紹介しながら、未整備の県にその整備を促しているところでございます。
矢島委員 三月十日、これは東京大空襲のあった日ですけれども、このときNHKのニュースを見ましたら、戦没者名簿の作成と公開ということの問題で、アンケートを実施したその内容が放送されておりました。全国三百の自治体にアンケート調査を実施したわけです。東京あるいは沖縄など十五の自治体は現在も名簿の作成を続けている、こういうのが一つ、それから一般に公開しているところが二十四自治体あるということ、遺族だけに公開しているところが十五ある、それから非公開の自治体は七つある、こういうようなアンケート結果が画面に出てまいりました。
 そこで、大臣に最後にお聞きしたいんですが、総務大臣が所管しております平和祈念事業特別基金に関する法律というのがあります。その三条に目的というのがあるわけですが、その目的のところに、「今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す」というのがあります。
 そこで、戦争犠牲ということを銘記し、かつ永遠の平和を祈念するための一つの大きな仕事として、戦没者、戦災者の名簿作成事業、こういうのに取り組むということは非常に重要だと思うんです。そのため、この名簿作成公開事業を厚生省が委託する先として、地方自治体にかかわりを持っている総務省として、特に大臣として、すべての自治体にこういう名簿作成事業というものを進めるよう、あるいは委託する、あるいは国が援助する、そういうお考えはございますか。
片山国務大臣 今矢島委員が引かれましたのは、これは平和祈念事業の基金の法律の目的規定でございまして、全般にこれが当てはまるかどうかというところはありますが、今お話しのように、幾つかの地方団体は戦没者名簿等をつくっているんですね、公開しているのも一部ありますし。
 そこで、すべての地方団体にやらせるかどうか。こういうことを言いますと、やはりお金の議論だ、これは国の事務か地方の事務か、こういう議論になりますし、また、仮に地方の事務としても、交付税その他、地方財政措置で対象になる事業かどうか、こういういろいろな検討を経た上での議論になりますので、委員の御提案は御提案としてきょうは承らせていただきたい、こういうふうに思います。
矢島委員 戦後これだけの長い年月がたった今日、依然として、先日硫黄島で戦没者の合同慰霊追悼式が行われました。その模様がやはりこれも報道されておりましたけれども、まだまだたくさんの遺骨が残っているということが放送の最後に出たわけです。
 ぜひそういう面も含めてこれから積極的に取り組んでいただくということをお願いして、私の質問を終わります。
平林委員長 次に、重野安正君。
重野委員 恩給法等の一部を改正する法律の改正案に対しての質問をいたします。
 まず、質問に入ります前に、今回の法改正の経緯に関し質問をいたします。ことしの一月十日付、軍恩新聞の報道によりますと、自民党の高鳥議員を会長とする軍恩議員協議会が、昨年十二月十九日、開催された。これには軍恩連会長でもある恩政連会長を初め、同会役員九十人余が出席した。この種の会合を否定するものではありませんが、この会合に人事・恩給局長が出席をし、状況説明をした、この事実を一つ確認するとともに、どういう状況説明をされたのか、お伺いいたします。
久山政府参考人 今のお尋ねは、ことしという意味ですか。ことしであれば、私、人事・恩給局長……(重野委員「昨年の十二月十九日」と呼ぶ)私の前任の局長が出席しているということでございます。
重野委員 どういう状況説明をされたのか。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 私、この一月八日付で人事・恩給局長に着任いたしまして、その時期の以前の話でございますので、また突然のお尋ねで手元に資料等ございませんので、ちょっとお答えを差し控えさせていただきます。(重野委員「局長がかわったら当時のことはわからぬなんという無責任な話じゃないでしょう」と呼ぶ)
平林委員長 重野委員、発言を求めてからにしてください。
重野委員 今の答弁はちょっと無責任じゃないですか。役所はそんなものじゃないでしょう。
久山政府参考人 お答えいたします。
 手元に資料がございませんが、先生お尋ねの昨年のその日におきまして、前人事・恩給局長が予算関連でいろいろとお話があったというふうに仄聞しております。
重野委員 ちょっと今の答弁は納得しがたいんですが、事実の確認と、そこで人事・恩給局長が行って何を申したのか。人がかわればわかりませんというのでは、ちょっと話になりませんね。これはやはりきっちりやってもらわなければ困る。今ここでそのことが、確認したい部分があれば、後ほどでもいいですから、確認をして、正式に私に答えを出してください。わずか二十分という時間でありますから――今の点を確認してください。出してください。
平林委員長 ただいまの重野委員の御要求に対して答弁をしてください。
久山政府参考人 後ほど提出いたします。
重野委員 そこで総務大臣にお伺いいたしますが、同日付のその新聞で、片山総務大臣の特段の御配慮を得て云々という記事があるわけですね。その特段の配慮とは何かというふうに思うわけです。
 この報道だけを読むと、公務員賃金は実質切り下げ、デフレによる物価の下落という経済状況が一方にあり、他の年金はすべて据え置きというこの状況の中で、わずかとはいえ改善等の措置が講じられたわけです。この報道に言う特段の御配慮、その特段の配慮にもらう側は謝意を表したわけですね。
 今回のこの改善等の根拠、あるいは精算根拠とも密接に絡む問題でありますが、この改善等の根拠、重複いたしますが、大臣、再度ひとつ答えていただきたい。
片山国務大臣 財政当局は、終始、公務員給与据え置きだし、ほかの年金も一切いじらないんだから恩給関係も同じにしてくれと強い要請がございました。
 しかし、それは、先ほども答弁いたしましたが、私は、恩給は国家補償的性格が強いので何にもしないというわけにいかない、最も団体の要望の強い今までの経緯もある、低額恩給あるいは遺族加算については、特別な配慮をしてもらわないとこれはだめだ、こういうことを強く言いまして、結局は、いろいろな議論がありましたけれども、きょう御説明を申し上げたような何点かについて財政当局の了承を得たわけであります。そのことを格別の御配慮と、恐らく軍恩の関係の協議会ではそういうお話があったと思いますし、私も、いろいろこっちも言い分がありますけれども、こういう厳しい状況の中でそれなりの予算が獲得できたことは、財政当局も理解を示したのではなかろうか、こういうふうに思っております。
 額につきましては、今までとのバランス、従来の経緯と、それから恩給の中でのいろいろな経緯とのバランスでございまして、極めてきっちり、大変緻密に積み上げたというものでは必ずしもございませんので、その辺は御理解賜りたいと思います。
重野委員 次に、恩給法の体系についてお聞きいたします。
 端的に聞きますが、「図解 恩給の請求手続等」というのがあるんですけれども、これを見ますと、請求者が請求をする、本属庁は厚生労働省、都道府県、こうなっているんですが、それが今度、裁定庁に行きますと、ここは総務省人事・恩給局長、こういうふうになっているんですね。
 一方は大臣で、一方は人事・恩給局長、ここは一体どういう理由でそういうふうになるんでしょうか。例えば援護法の法律に基づけば、援護法の裁定者は厚生労働大臣ですね。なぜそうなるのかなと思うんですが、説明してください。
久山政府参考人 お答えいたします。
 突然のお尋ねでございますので、今は手元に資料がございませんので、お答えを差し控えさせていただきます。
重野委員 局長、あなた、突然の質問ですがと、突然も何も、聞かれたことに対していつも答えられないんですか。前もって言わなきゃそんなことも答弁できないんですか。
久山政府参考人 それにつきましては、これまで、恩給制度につきまして、その運用が百年以上にわたる古い制度でございまして、今のそのシステム、流れにつきまして、その根拠というものはそういう長い過程の中でつくられてきたものであるというふうに理解しております。
重野委員 ちょっと、今の答弁は重大な問題がありますよ。百年以上という連続性を言っているんですよね。
 いいですか、戦争が終わりまして、二十一年にこれはいわゆる廃止されておるんですよ、一遍。廃止されて二十八年に復活したんですよ。だから、そんな連続百年の歴史があるなんか言ったら、一体この中断は何ですか。今の議論はおかしいんじゃないですか。それはちょっと僕は容認できない。
久山政府参考人 お答え申し上げます。
 私が百年以上と申し上げましたのは、恩給制度についてでございまして、今の先生の関係では、昭和になって、戦後、恩給制度は復活したわけでございますが、二十八年以降のお話でございます。
重野委員 この中断というのは、単に時間的にとまったということだけじゃないんですよ、戦争が終わって。ですから、それ以前の恩給の性格、精神と戦後の恩給の精神というのは全然違うんですよ。そこのところが、あなたは、事務の責任者としては僕はちょっと認識がおかしいと思いますよ。時間的な問題だけじゃないですよ、これは。その点はどうなんですか。
片山国務大臣 戦前は、こういう年金の調定みたいなものは大体局長がやったんですね。戦後になりまして、新しい制度になったものは大体大臣になっているんです。ところが、これだけは、一応中断しましたけれども、言われますように、局長がそのまま残ったんですね。私は、立法政策の問題だと思いますし、今後は検討の余地はあると思います。
重野委員 確かに、今言うように、戦前の恩給局長は極めて高い法的地位にあったということは私も承知しています。現在でも、賞勲局長なんというポジションというのはそうだと思うんですね。
 それにしても、恩給というのはある種の国家補償の意味があるわけで、したがって、これは行政機関としての裁定庁に当たるものが人事・恩給局長であるという点については、僕はやはり問題があるんじゃないか。都道府県の場合は知事がなっていますというふうな並びから見ても、僕はやはりその辺は検討の余地がある。大臣、もう一度。
片山国務大臣 私もやや不勉強のところがありますので、十分経緯を調べ、状況を見まして、バランスも考えながら、今言いましたように、検討の余地があると私も認識いたしております。
重野委員 では、そういうことでよろしくお願いをいたします。
 次に、恩給法においても、当然、異議申し立て及び審査請求の手続が保障されています。
 異議申し立て数は昨年四月からこの二月までに百二十四件、またこれにかかわる決定期間は、平均九カ月かかっているということ、また審査請求は同様に五十二件で、決定まで平均一年五カ月かかっている、こういうふうに聞いておりますが、まずその点を間違いないか確認したい、これが第一点ですね。
 それからもう一つは、行政不服審査法に基づく異議申し立て期間は六十日、審査請求は三十日とされているのに対しまして、恩給法ではそれぞれ一年間及び六カ月間となっている。これは、一九六二年の行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理法に基づく特例とされていると聞いています。そうした特例を設けた理由は何か、説明をお願いします。
久山政府参考人 委員のお尋ねは二点ございます。
 まず第一点目でございますが、異議申し立てと審査請求の平均処理期間でございます。
 平成十三年四月から十四年二月までの期間におきましては、人事・恩給局長に対する異議申し立ての受け付けが百二十四件、総務大臣に対する審査請求の受け付けが五十二件となっております。その平均処理期間につきましては、異議申し立てに関しましては九・三月、審査請求に関しては十七月となっておるところでございます。
 それから、第二点目のお尋ねでございますが、行政不服審査法と異なる申し立て期間にした趣旨ということでございますけれども、昭和三十七年の行政不服審査法制定時におきまして、恩給の不服申し立て期間につきましては、恩給受給者の利益保護に寄与するという観点に立ちまして、また、それまでの恩給行政の実情にも照らしまして、申し立て期間に特別な定めを置き、異議申し立てにつきましては一年、そして審査請求につきましては六カ月としたものであります。
 以上です。
重野委員 なぜ一年間あるいは六カ月なのかという点を聞いたんですが。ただ一年間と六カ月を確認しただけで、なぜそういう特例を設けたのかという点について、再度、明確にしてください。
久山政府参考人 慎重な審査を期するためでございます。
重野委員 本当にまじめにやってもらいたい。
 そこで、今の局長の答弁ですが、私はこう考えるんですね。恩給行政の上からも、また恩給受給者の利益保護の観点からも、いろいろな角度から研究して、検討して、こういう期間設定になったんだろうなというふうにはおぼろげながら思うのであります。であれば、この恩給受給者の利益保護の観点から、異議申し立て及び審査請求にかかわる決定期間について一定の上限を設けて、縛りをかけていく、そういうことが考えられてしかるべきではないかな、こういうふうに思うんですが、その点について、総務大臣の見解をお聞かせください。
片山国務大臣 行政不服申し立てが一般の方と恩給法で違いますのは、先ほども局長がちょっと触れましたが、結局は恩給受給者の利益保護ですね。長い方が利益保護なんですよ、短い方が忘れておるとか期間が過ぎるとかということがありますから。それと、恩給の実際の異議申し立てや審査請求を見ますと、かなり時間がかかっているんですね、今まで。そういうことで、恐らく特例として今の一年、六カ月という規定にいたした、こういうように思います。
 慎重に審査するというのはこっち側の話で、受給者の方からいうと、やはり期間が長い方が私は結果的には利益保護になる、こういう観点からとられたんではなかろうか、こういうふうに思っておりまして、これも実情を見ながらいろいろ検討してまいりたいと思っております。
重野委員 以上で終わります。
平林委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
 次回は、明二十日水曜日正午理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十時五十五分散会


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