衆議院

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第22号 平成14年6月11日(火曜日)

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平成十四年六月十一日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 平林 鴻三君
   理事 荒井 広幸君 理事 稲葉 大和君
   理事 川崎 二郎君 理事 八代 英太君
   理事 安住  淳君 理事 後藤  斎君
   理事 桝屋 敬悟君 理事 黄川田 徹君
      赤城 徳彦君    浅野 勝人君
      伊藤信太郎君    大野 松茂君
      河野 太郎君    左藤  章君
      佐藤  勉君    新藤 義孝君
      滝   実君    谷  洋一君
      谷本 龍哉君    野中 広務君
      増原 義剛君    山口 俊一君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      荒井  聰君    伊藤 忠治君
      玄葉光一郎君    島   聡君
      田並 胤明君    武正 公一君
      中村 哲治君    松崎 公昭君
      松沢 成文君    遠藤 和良君
      山名 靖英君    石原健太郎君
      春名 直章君    矢島 恒夫君
      重野 安正君    横光 克彦君
      三村 申吾君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   総務大臣政務官      滝   実君
   総務大臣政務官      山内 俊夫君
   政府参考人
   (総務省郵政企画管理局長
   )            團  宏明君
   政府参考人
   (総務省郵政公社統括官) 野村  卓君
   政府参考人
   (郵政事業庁長官)    松井  浩君
   参考人
   (ヤマト運輸株式会社取締
   役社長)         有冨 慶二君
   参考人
   (全逓信労働組合中央執行
   委員長)         石川 正幸君
   参考人
   (竹富島交通観光ガイド) 與那國光子君
   総務委員会専門員     大久保 晄君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十一日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     山口 俊一君
  谷本 龍哉君     増原 義剛君
同日
 辞任         補欠選任
  増原 義剛君     谷本 龍哉君
  山口 俊一君     佐藤  勉君
    ―――――――――――――
六月七日
 法人事業税の外形標準課税導入反対に関する請願(藤木洋子君紹介)(第三八七二号)
 同(穀田恵二君紹介)(第四〇一九号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第四〇二〇号)
 国家公務員の残業改善に関する請願(伊藤忠治君紹介)(第四〇二一号)
同月十日
 国家公務員の残業改善に関する請願(中村哲治君紹介)(第四三二四号)
 法人事業税の外形標準課税導入反対に関する請願(松本善明君紹介)(第四四七八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 日本郵政公社法案(内閣提出第九二号)
 日本郵政公社法施行法案(内閣提出第九五号)
 民間事業者による信書の送達に関する法律案(内閣提出第九三号)
 民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第九六号)


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     ――――◇―――――
平林委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、日本郵政公社法案、日本郵政公社法施行法案、民間事業者による信書の送達に関する法律案及び民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。
 本日は、各案審査のため、参考人として、ヤマト運輸株式会社取締役社長有冨慶二君、全逓信労働組合中央執行委員長石川正幸君、竹富島交通観光ガイド與那國光子君、以上三名の方々の御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、各参考人の方々からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、有冨参考人、お願いいたします。
有冨参考人 ヤマト運輸の有冨でございます。郵政関連四法案に対する私の意見を述べさせていただきます。
 御存じいただいていると思いますが、当社は、宅急便という商標で展開している宅配便事業を主たる事業とする会社でございます。宅急便は、一九七六年一月、一般の消費者が日常生活において荷物を送りたいと思ったとき、いつでもどこでも簡便に利用できるサービスとして営業を開始いたしました。
 当時、一般の消費者が日常生活において荷物を送るには、旧国鉄の小荷物扱いか郵便小包を利用するしか手段はありませんでした。どちらのサービスも独占的に国が提供していたサービスであり、お客様にとっては使い勝手が必ずしもよいとは言えないものでございました。
 ですから、当社は、宅急便を商品設計するに当たり、お客様の要望を満たすことを最優先課題としてまいりました。その結果、取扱個数は飛躍的に増加し、営業開始五年目には、初年度の四倍近い個数を取り扱うこととなりました。
 また、当初は関東一円だけでサービスを提供しておりましたが、お客様からの要望が高まり、全国にネットワークを広げていくことにいたしました。どこからでも、どこへでも手軽に運べるというネットワークがサービス業の強みだと考えたからでございます。
 一九九七年十一月、小笠原諸島をエリアの中に入れまして、念願であった全国ネットワークを完成することができました。この間費やした歳月は、実に二十一年余に上ります。この期間の大半は、古い慣行や行政の壁との戦いでございました。
 例えば、お客様がリーズナブルな料金で宅急便を利用できるよう、当時主流であった路線運賃とは別建ての運賃を申請しましたが、一年以上放置されたことがありました。また、全国にネットワークを広げるべく、各地で路線免許の申請をいたしましたが、長いものは四年以上たなざらしにされたこともありました。
 こうした歴史を振り返ってみて、皆さんにぜひ御理解いただきたい点は、公正で自由な競争環境でさまざまな企業が切磋琢磨することにより、新しい市場が形成され、現在に至るまで拡大を続けているということでございます。
 これまでの経過から、当社は、古い慣行や行政の壁にとらわれず、お客様の要望を満たすことを第一に考え、知恵と工夫を凝らしつつライバルとサービス競争を展開していけば、自社の利益が増大することはもちろんのこと、市場全体も拡大し、お客様の利便性は飛躍的に向上するということを学びました。
 すなわち、独占環境にあってはサービス提供者が自発的にサービスの高度化を図ることは難しく、市場全体も停滞し、お客様は乏しい選択肢の中から選ぶしかなく、利便性はなかなか向上しないのでございます。競争環境にあれば、多数のサービス提供者が知恵と工夫を凝らしてサービス競争を展開することで、市場全体も拡大し、お客様は多様な選択肢の中から使いたいものを選ぶことができ、結果として利便性は向上することになります。当社はあくまで後者の立場に立ち、競争型サービス業を志向しております。
 さて、こうした観点から今回提出された四法案を見ますと、これまで法律上に明文化されていなかった信書について、概念を拡大解釈した上で法的根拠を与えようとしている点が挙げられます。
 民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の第三条では、郵便法第五条第二項の一部を改正し、信書を「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」として明文化しようとしております。
 また、民間事業者による信書の送達に関する法律案、いわゆる信書便法案の第二条第七項には、「長さ、幅及び厚さの合計が九十センチメートルを超え、又は重量が四キログラムを超える信書便物」という表現があります。
 これまでの常識的な判断に基づいて、信書に該当するのははがきや手紙の類だろうと考えておりましたが、この法律が施行されますと、大きさや重量とは無関係に、運んでいる荷物のあらゆるものが信書に該当することになってしまいます。これでは、競争環境のもとで多数の企業がサービス競争を展開している宅配便やメール便の市場で、現在運んでいるものが運べなくなってしまいます。
 総務省の見解は、信書便法案における一般信書便事業者として許可を受ければ、現在宅配便やメール便として運んでいるものを今後も運ぶことができますということですが、一般信書便事業者として許可を受けるには、かなりハードルが高い条件をクリアしなければなりません。
 この条件とは、信書便法案第九条第二項によれば、「全国の区域において一般信書便役務に係る信書便物を引き受け、かつ、配達する」ことであり、総務省令で定める基準に適合する信書便差出箱の設置その他の措置を講じることとされております。この条件は、信書便事業者として最もきめ細かい配達ネットワークを全国に整備していると自負している当社ですら、クリアするのはかなりの負担を覚悟しなければならないものであります。
 これでは、信書便法案が施行される場合、一般信書便事業者として許可を受け、事業を展開できる体力がある民間企業は、当社を含め数社にとどまることが予想され、国による独占環境が国と数社の民間企業による寡占環境へと変化するにとどまることを意味しております。
 しかも、許可する主体は総務省であり、ライバルである郵政公社は総務省の現業部門であります。これでは、審判員とプレーヤーが一体化していると言わざるを得ず、そうした総務省に一挙手一投足を縛られていたのでは公正な競争は望み得ないと思います。
 すなわち、信書便法案は、国による独占環境を維持しつつ、一部の民間企業を参入させ、国の事業と同じことをさせることで市場の一部を分け与えようという意図のもとにつくられた民間官業化法案と言え、その他多くの企業にとっては、現在行っている事業を制限しかねない規制強化法案であると言わざるを得ないのであります。
 そもそも、今回の四法案が果たすべき使命の一つは、規制緩和によって信書の集配業務への民間参入を促進し、公正かつ自由な競争により、その結果、国民の利便性を向上させるという、小泉総理大臣の崇高な理念を実現することであったはずです。
 しかし、四法案のうち、とりわけ信書便法案及びその関連法案は、これまで述べてきたとおり、そうした崇高な理念に逆行するものであったばかりではなく、宅急便開始以来、ヤマト運輸社員が一丸となって、絶えずお客様の要望を満たすことを最優先課題として事業を展開してきた当社にとっても、経営理念とは相入れないものであったため、当社は同法案の許可事業者となることを断念することにいたしました。
 今後は、真の意味で規制緩和の理念が達成されるまで、お客様の要望を満たすことを最優先課題として、既存のクロネコメール便のさらなる事業拡大を図り、お客様の利便性向上に努めてまいりたいと思います。
 ありがとうございました。
平林委員長 次に、石川参考人、お願いいたします。
石川参考人 全逓信労働組合の委員長の石川です。
 本日は、国会の委員会の場に招致いただき、郵政関連法案に関する私どもの考え方を述べる機会をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
 私は、郵政事業に働く職員で構成する労働組合の代表者として、当委員会で審議されている郵政関連法案に対し考え方を申し上げます。
 郵便局は全国津々浦々に二万四千七百局に及ぶネットワークを構築し、国民生活と地域社会に大きな役割を果たしてまいりました。一円の補助金も受けずに独立採算のもとに、全国どこでも公平かつ平等にサービスを提供してまいりました。また、地域においては、単に郵便を配達するのみではなく、ひとり暮らしのお年寄りの生活援助を行うひまわりサービスなど、事業を通じて地域に貢献を行ってまいりました。阪神・淡路の大震災が発生したときも、郵便局は一日も休むことなく、地域のセーフティーネットとして生活に必要なサービスを提供し続けてまいりました。郵便貯金・簡易保険事業においても、国民の皆さんから信頼できる金融機関として支持を得てきたものと心得ております。
 郵便局ネットワークは国民の財産であり、私どもは、公社に移行してからも安心、安全でかつ良質な公共サービスを提供する地域コミュニティーとして、より機能を充実発展させていくべきと考えております。郵政関連法案を考えるに当たり、私どもは、この郵便局ネットワークを壊すような論議には断じてくみするわけにはまいりません。
 その立場に立って、以下、考え方を申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。
 さて、郵便事業への民間事業者の参入をめぐり、さまざまな論議がなされており、私どもは、新たに参入する民間事業者とサービス面において競争し、国民の皆さんにとって郵便利用の選択肢が広がることを否定するものではありません。ただ、参入の方法と条件につきましては、慎重に論議されませんと、現在のユニバーサルサービスが確保できなくなることを最も恐れるものであります。
 仮に民間事業者の全面参入となった場合、当然の企業原理として、収益性の高い大都市やDM等に限定した参入、いわゆるクリームスキミングが発生することになります。その場合、公社のユニバーサルサービスの維持のための財務構造が悪化し、結果として、全国津々浦々まで五十円、八十円という低廉な料金で行われている郵便サービスが維持できなくなることになります。確かに、大都市部や大企業など一部の利用者は、料金低下などによって競争導入の恩恵を受けるかもしれません。しかし、地方や小規模事業所、個人利用者は、逆にそのしわ寄せを受け、料金引き上げやサービス低下を余儀なくされることになります。
 郵便事業は公共サービスであります。利用者にとってひとしく公正に享受されるものでなくてはなりません。そのためには、現在の郵便事業が行っているユニバーサルサービスを維持できるよう、民間事業者の参入条件について厳格に設定されることが必要であると考えるところであります。
 ユニバーサルサービスの維持に不安を残す今回の条件つき全面参入を前提とした信書便法案については、反対と言わざるを得ません。
 諸外国の例を見ても、ユニバーサルサービスを確保するための政策的配慮がなされており、そのほとんどが一定の重量または料金を超える部分に民間参入を認めているのみで、今回の法案のように全面的に参入を認めている国はありません。
 例えば、ドイツでは、重量二百グラム、料金五倍までの郵便物はドイツ・ポストが独占権を持ち、その有効期限は、当初、二〇〇二年十二月まででしたが、ことしに入って郵便法が改正され、二〇〇七年まで五年間延長されることになりました。また、その間はドイツ・ポストがユニバーサルサービスの義務を負うことになっています。
 また、イギリスでは、当初、二〇〇六年三月までに予定されていた完全自由化が、郵便会社であるコンシグニアの経営再建と利用者サービスの確保のため、二〇〇七年以降に先送りとなりました。
 すなわち、欧米諸国では、ユニバーサルサービスの確保と郵便自由化の兼ね合いが適正にチェックされ、段階的に市場開放が行われているのです。
 次に、信書の秘密の重要性につきましては、私どもは、国家公務員として守秘義務が徹底され、退職後もこの守秘義務を厳格に守ってまいりました。民間事業者の皆さんにおいても、信書の秘密を守るためには、秘密保持を可能とする差し出しシステムや職員の取扱規定等を整え、万全の上にも万全を期すことが不可欠であります。
 また、信書の定義の議論と称して信書に当たるものの秘密を守らなくてよいとするようなことがあってはなりませんし、ダイレクトメールについても、諸外国においては信書の範囲に含まれ、秘密が保持されています。
 信書の秘密の保持につきましては十分な御論議をいただき、信書の秘密を厳格に守り、利用者及び国民の声をよく聞き、自治体や地域住民の意見が十分に反映されるような法律になるよう、十分な審議を御要請申し上げるところであります。
 私どもは、九八年の中央省庁等改革関連法案の成立以降、明年の郵政公社移行を目指し、国民のための郵政事業を守るため、必要な効率化には協力し、これまで努力してまいりました。とりわけ郵便事業につきましては、平成十三年度から、約一万五千人の人員削減を含む効率化計画を現在進めているところであります。
 雇用確保は、労働組合にとって生命線であります。欧米諸国の例を見ましても、急激な郵便自由化は、多くの郵便労働者の雇用を削減し、結果として、利用者へのサービス低下をもたらしています。日本におきましても、関係労働者の雇用面にも御配慮をいただき、欧米の郵便改革の先例を参考にしながら、段階的かつ慎重に進めていただくようお願い申し上げます。
 さて、次に、郵政公社案について申し上げます。
 私どもの基本的な考え方は、ぜひ、今国会で法案を一部修正の上、成立を図り、明年四月一日に円滑に公社のスタートを切らせていただきたいということであります。
 昨年十二月十四日、小泉総理と片山総務大臣の会談で、公社が自律的、弾力的経営を行えるようにするため、郵便関連事業に出資することができることについて合意したと理解しております。また、同じく昨年十二月二十日に公表された郵政事業の公社化に関する研究会の中間報告でも、公社の業務委託先や公社の業務と密接に関連する事業に対し出資を行えるとされているところです。このいわゆる出資条項が今回の法案では見送られたことは、今後の公社の経営を考えた場合、看過できない大きな問題があると指摘せざるを得ません。
 今後、想定される民間事業者との競争激化の中で、公社が顧客ニーズに的確にこたえ得るサービスを提供し、ユニバーサルサービスを堅持しつつ、効率的事業経営を行う上で、この出資条項はなくてはならないものであり、ぜひとも公社法に含まれるよう強く要請する次第であります。
 さらに、法案では国庫納付金を課すことになっておりますが、御承知のように、公社は一兆八千億という過少資本で発足せざるを得ない状況になっています。この過少資本の要因の一つは、企業会計原則の適用により新たに計上することになりました職員の退職給付引当金の存在がございます。公社の健全経営を確保するためにも、生ずる利益については内部留保し、資本の拡充を図ることが必要と考えます。
 最後に、私ども労働組合は、郵政事業に携わる職員の雇用と労働条件を守ることにとどまらず、公社化を機会に、さらに経営に対するチェック機能を十分に果たし、その社会的責任を全うしてまいりたいと考えております。そのためには、公社のコーポレートガバナンスに労働組合が関与し、職員の声を経営に反映させるシステムをつくることが必要です。
 私どもは、全国二万四千七百の郵便局ネットワークを生かし、国民のための郵政事業を常に最重要視し発展させるために、積極的に正すべきは正し、改革の提言を行っていく所存であることを申し上げ、労働組合としての考えといたします。
 本日は、まことにありがとうございました。(拍手)
平林委員長 次に、與那國参考人、お願いいたします。
與那國参考人 おはようございます。沖縄県八重山郡竹富町竹富島から参りました與那國光子と申します。よろしくお願いいたします。
 竹富島は、石垣島から六キロ離れた小さな島です。周囲が九・二キロ、人口は三百十名、戸数が百五十二戸あります。
 星の砂や安里屋ユンタの歌で有名な島、西表国立公園の中の竹富島、町並みが、赤がわらの家並み、白い砂の道、石の垣根と、国の伝統建造物群の町並み保存に指定をされています。また、島の祭り、種子取祭という祭りが国の重要無形文化財に指定されております。また、今つけていますミンサーという、模様がついていますが、その伝統織物も通産省より指定を受けております。
 このようにすばらしいものをたくさん自慢できる竹富島、そして、島の人の心、うつぐみの心、その情報の発信の場は郵便局です。
 さて、この会場まで約二千キロ、車、船、飛行機、電車を乗り継いでまいりました。沖縄の離島の離島、特殊事情のある沖縄県の五十二市町村はどうなるんでしょうか。気になっている一人です。
 例えば、竹富町は、竹富島、小浜島、黒島、西表島、鳩間島、新城島、船浮島、由布島、波照間島等、合わせて竹富町です。石垣市と与那国町、一市二町を合わせて八重山と呼んでいます。離島の中の離島、そして、ぜひあってはならない、しなくてはいけないと思うのが格差是正です。沖縄県に特別優遇策を考えてほしいと思います。
 地域の利用者として、皆様、左手をごらんください、赤がわらの立派な建物は郵便局です、丸いポストを大事に使っています、島で唯一の金融機関ですといつもガイドをしながら自慢している郵便局です。郵便局は、私たち利用者の全国ネット、ユイマール会社のようなもので、心のよりどころ、交流の場、憩いの場、私たちや若々しいお年寄りのコミュニティーの場でもあります。島の人々や観光客にとっても、島々の郵便局は世界遺産のような地域の宝だと思います。
 小さな郵便局ほど本当に親切です。顔がわかり、名前がわかり、お互いが信頼し合い、身分がきちっと保障された郵便局員です。公社化になっても民営化になっても、なくてはならない郵便局です。
 例えば、学校の児童生徒が一人いても、学校はなくてはなりません。沖縄に住んでいる人も、田舎も都会も、全国どこでも、だれもが、いつでも利用できる、日常生活に必要不可欠な郵便局です。
 郵政が地域社会と密接に結びついていくことが大切であり、三事業と情報ネットワーク、ひまわりサービスなど、田舎だからこそ必要なんです。だからこそ、地域の人々が安心して暮らせる、親しみのある郵便局を廃止するようなことがないようにと願うものです。
 今やどこにでもあるコンビニのような行政機関の郵便局になってほしい。離島の多い島々にとって、わざわざ島を渡り、役場へ行く。これから先、幾つかの書類が、役場へ行かずとも郵便局で用件が済む、すばらしいシステムのスタートがある。ワンストップ行政、私も実験者の一人でした。ボタンを一つ、カード一つで、郵便局の用事のついでにそのサービスが受けられます。その便利さ、竹富町の島々にとって最高のシステムだと思います。
 今や、市町村合併で、行政の出先も減ってきます。行政の窓口として、今ある郵便局を国民の財産として利用するのも効率化だと思います。国営、公社化だからこそ、沖縄県の島々の郵便局が今よりもよかったと言える制度になってほしいと思います。
 終わります。ありがとうございました。(拍手)
平林委員長 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口俊一君。
山口(俊)委員 自由民主党の山口俊一でございます。
 きょうは、それぞれお三人、参考人として来ていただきました。大変お忙しい中、また大変遠路からもありがとうございました。
 それでは、お三人、お話を聞かせていただきましたが、有冨社長さんは、民間参入といいますか、まさにさまざまな事業で、これから、今回の法律にどういうふうに対応してやろうかというふうな民間の代表の方であります。あるいは、石川委員長は、まさに郵政事業を支える現場で働いておられる皆さん方の代表、そして與那國さんは、大変離島で、いわゆる国民の皆さん方の代表といいますか、利用者の代表というふうなことであろうかと思いますが、それぞれ大変興味深いお話を聞かせていただきました。
 ただ、おもしろいことに、お三方とも共通しておるのが、今回の、特に信書便法に対する御不安が大変強いということですね。反対というふうな、反対をせざるを得ないというふうなお話さえあったわけです。
 実は、私も今回のこの法案には不安を持っておる一人なわけなんですけれども、本来、郵便事業というのは国の責任であろう、そして国民の皆さん方の権利なんだろうと思っております。そして、いつでもどこでもだれでもが、低廉で、しかも安心で、かつ、ひとしく全国民が同じようなサービスを受けられるものでなくてはならないというふうに思っております。その拠点が郵便局のネットワークであり、今與那國さんのお話にありました、まさに皆さん方の憩いの場といいますか、そうしたものであろうと思っておりますが、せっかく、わざわざ御遠方より與那國さん、おいでいただきましたので、最初に一点だけお伺いをいたしたいんです。
 先ほど、民営化になろうとも、なくなってはならない郵便局というふうなお話がありましたが、私は、民営化になるとなくなっちゃうんじゃないかなと。今回の法案がそれに向けての一里塚なんという話も実はあるんですね。
 信書便法というのは、御案内のとおり、特に一般信書便法にはある意味でユニバーサルサービスのまねごとのようなことの条件をつけて、これができればどうぞと、大変な競争になってくるわけですね。そういった中でネットワークが壊れていくおそれがあるというふうな心配を実は私どもはしておりまして、そこら辺に対する御感想を、まずせっかくですのでお聞かせをいただけたらと思うのです。
與那國参考人 島々の離島の郵便局というのは、やはり民営化の心配が一番大きいです。ですから、一銭二銭のはがきさえ千里万里の旅をするという歌にもあるように、同じ料金でどこへでも届けてもらえるような、安い一律料金、それがやはりユイマール経営だというような考えを持っております。全国あまねく公平に、また確実に玄関まで届けてくれる、そのような郵便局になってほしいということであります。
 ゆうパックでも、八重山はパインとかマンゴー、ドラゴンフルーツなど、ふるさと小包として生産者、取扱業者と提携して全国に郵送していますけれども、そのふるさと小包なども、積み残しがあったりとか、やはりいろいろな問題も出てくるので、その問題にしても、ぜひとも民営化という言葉というよりも郵便局を大事にしたいということを申し述べたいと思います。
 ありがとうございます。
山口(俊)委員 大変ありがとうございました。そうした郵便局を何とかやはり守っていかなきゃいけないというふうな気持ちで実は私もおるわけです。
 そこで、ヤマト運輸の有冨参考人にお伺いをしたいんですが、私もこれまで自民党の方の部会等々でもクロネコヤマトさんの方から出席をいただいて、議論をしたりヒアリングをしたり、あるいは総務省のヒアリングの議事録も読ませていただきました。そうした中で、今もお話があったんですが、結局何をおっしゃりたいのかということがよくわからないという正直な気持ちが実はあります。
 というのは、当初、全面参入、全国参入の、いわゆるユニバーサルサービスというさまざまな条件もクリアできる、全面参入できるというふうなお話があったわけですし、同時にヒアリング等でも、ただ一社、ただおひとり、部分参入じゃなくて全面参入ということをずっと主張してこられたわけですね。
 それが突然、参入は断念をしますと、四月二十六日ですか、会見でお話しになられました。見解をお変えになったわけだろうと思うんですが、その理由を、さっきもちょっとお触れになったかと思いますが、お聞かせをいただくことがこの法案審議にも大変役立つのではないかということで、ぜひともお伺いをしたいわけであります。
 四月二十六日の会見でも、先ほどもお話があったんですが、条件は無理をすればクリアできるんだ、今でも五十円、八十円のサービスというのは可能とお考えになっておられるのか。
 また、昨年の十二月十四日に総務大臣と総理とがお話し合いになって、今後、郵便事業の民間参入についてこういう方針でいこうというふうなことがあったわけなんですけれども、これも当然マスコミ等を通じて御存じだろうと思うんです。今回の法律というのは、これに極めて忠実にこしらえた法律なんだろう、そういったところが実は私も不満があるんですけれども、それにもかかわらず、そういうふうなことで方向転換をなさったというふうなことに関して、ぜひとも再度、しっかりした理由というのをお聞かせいただきたいということであります。
有冨参考人 ただいまの御質問は、全面参入できるというふうに主張しながら途中から方針を変えたのではないか、こういう御質問だと思いますが、決して変えたわけではございません。そして、全面参入することが、当社に限って言えば、今でもできるというふうに判断をしております。
 ただ、冒頭お話ししましたように、この法案そのものが信書便あるいは信書便物などという定義のはっきりしない概念をつくり出しまして、しかも、その定義のはっきりしないものを扱う事業を想定して法律で規制をつくろう、こういうふうに受け取らざるを得ないということがまず一点。
 それから、その結果、国と数社の民間事業者で寡占状況をつくって、いわゆる民間の活力といいますか、そういうものが発揮できない可能性がある。そこに参入しても、結果的に国民のためにもならないし、我々社員を含めて頑張ってやろうという意欲につながらないという意味で、断念をしたというふうに御理解をいただきたいと思います。
 以上でございます。
山口(俊)委員 確かに、寡占状態の中では民間の創意工夫云々とか、私も会見の記事を読ませていただきましたけれども、ヤマトとしてはそういうぬるま湯は選択しないんだというふうな勇ましいお話もあったわけなんですが、それにしても、やはり唐突な感は否めないんじゃないか。
 しかも、記者会見等のお話で、実はこれまで、一切かどうかはわかりませんが、ほとんど触れてこられておらなかったいわゆる郵便法の五条の問題、これについて、突如そういうふうなお話をなさり始めた。ある意味で信書の概念も撤廃しようというふうなお話でありました。そこら辺がどうも私はしっくりこない思いがいたすわけでありますけれども、この郵便法五条について、突如それを前面に出しておっしゃる。
 民間官業化法案というのは、また恐らくどなたか先生方がお聞きになると思うんですが、この件について再度お伺いをしたいのと、同時に、この五条というものについて、どういうふうなお考え方を持っておられるのか、これもお伺いをいたしたいと思います。
有冨参考人 私どもは、かねてから、クレジットカードを配送しようという時点で、当時の郵政省といろいろ話し合いをしてきました。そのときから五条の問題というのは、本来は撤廃して、もう少し民間に開放するべきではないだろうかということを言っておりまして、突然ここへ来て五条の問題を申し上げているということには認識をしておりません。
 以上でございます。
山口(俊)委員 以前から、例えば商品券は信書じゃないんじゃないかとか、あるいはクレジットカードは信書じゃないんじゃないか、DM等々、いろいろな議論をなさってきておられたのはもちろん承知しておりますけれども、今回の法案に関して、参入しない、五条がおかしいじゃないかというふうなことが結びついてだっと出てきたものですから、あれ、おかしいな、今までの御主張と随分違うなというふうな思いがしたものですから、お伺いをしたわけなんです。
 先ほど申し上げましたように、郵便事業というのは国の責務であり国民の皆さん方の権利だと思うんですよ。そういった観点からすると、ユニバーサルサービスというのはどうしても守っていかなければいけない点だろうと。そういう意味合いから、やはり五条というものをなくしてしまいますと、もう御案内のとおり何でもありなんですね。何でもできるわけですよ。それはやはりちょっとおかしい話になってくるんじゃないかなと。
 再度、もう一つ言いますと、例えば親の様子を聞く子供からの手紙にしてもあるいはラブレターにしても、貨物になっちゃうんですね。どういうことなのかなと思うんですが、そこら辺はいかがでしょうか。
有冨参考人 ユニバーサルサービスの御質問だというふうにお伺いしています。それから、先ほどから民間参入あるいは郵政の民営化が行われると、別に私は民営化すべきだとは必ずしも思っておらないという前提で申し上げているわけですけれども、民間では非常に末端のサービスを切り捨てて、そしてそういうサービスがなくなってしまうんではないだろうかという議論があります。
 実は、ちょっと私どもの会社のことをお話しさせていただきますと、ヤマト運輸は、先ほど冒頭お話ししましたように、約二十六年間かかって宅急便のネットワークをつくってまいりました。現在、直営の営業所が三千店ございます。郵政省の二万数千店と比べるとはるかに小さな組織ですが、その三千店のうち約三割は赤字の営業所でございます。赤字の営業所を切り捨てればお客様に対するサービスの程度が下がってしまうわけですから、我々のいわゆる競争型サービス産業としてはそういうことはできないわけでございまして、特に、これからさらに高いサービスをするために、我々は、社内的にはここ数年の間に五千店にまでふやそうと。三千店のうち三割の赤字の店を持ちながら、さらに二千店ふやそう、こういうことがございます。
 民間がやればユニバーサルサービスが行われなくなって切り捨てられて、そして国民の生活が不便になるということには決してならないと我々は信じております。
 以上でございます。
山口(俊)委員 お話、これはもうよくわかります。もちろん、企業として、やはり使命感というか何というか、そうした信念というか考え方のもとに事業展開をしていかれる、これはよくわかります。
 ただ、ニュージーランドにお邪魔をしてお話を聞いたんですけれども、ニュージーランドの郵政公社も同じようなことを言っておりました。やはりそういった、いわゆるユニバーサルサービスというか全国展開するということが企業としての売りなんだと。これがなければ例えば競争に勝てないんだというふうなお話でした。
 しかし、それも実は限度があるんだというふうなことですね。やはり企業というのは、あくまで民間企業というのは、利潤の追求あるいは株主の利益を図るということは大変大事な話ですね。そこら辺とのバランスをどう考えていくかというのは、これは当たり前の話なんだろうと思うんです。
 ですから、別に利潤の追求は悪いとも何とも申し上げておりません。ただ、先ほどもお話がありましたけれども、ユニバーサルサービスを展開しながら事業をやっていくということは大変難しいんじゃないか。特に、公社のサイドにしても、そうした民間事業者がどんどん入ってくることによって、それこそ野方図に入ってくることによって経営状態がおかしくなる。そうなると、当然これは合理化等々図っていかなきゃなりませんから、恐らく竹富島の郵便局というのは廃止になるんでしょうね。やはりそうしたことをやらざるを得ない。
 ですから、どこかがしっかりとユニバーサルサービスを保障するためには、私は公社がやるべきだと思っている。ですから、同じように参入していただく皆さん方には、同じようなそうしたクリームスキミングがないような条件を課すというのが当たり前なんだろうと思うんです。そこら辺についていかがですか。
有冨参考人 民間が入ってきて仕事量が減ると過疎は合理化されて廃止につながる、この辺がやはり根本的に我々との考え方の違いではないかというふうに思います。我々は、お客様に使っていただいてこそ仕事が成り立ちます。おっしゃるとおり、例えば無理をして、今一年か二年で五千店の営業所をつくったら、ヤマト運輸自体がつぶれてしまいますから、ヤマト運輸は、トータルで賄える間は頑張ってつくっていきますけれども、つぶれてはできませんから、その限度というのは必ずあります。しかし、第一線のところを強化することによって仕事がふえ、あるいは市場のパイが広がっていくという前提から考えると、我々は歯を食いしばって、例えば今竹富島のお話が出ていましたけれども、竹富島でも何か島民の皆さんにサービスのできるようなことを考えて、そして収入を上げると、別の形で。
 ですから、もっと仕事の自由度をさらに高めるという、民間参入と同時に郵政事業の自由度を高めるということを一緒にやることによって、必ずしもユニバーサルサービスができないような状況が実現するというふうには考えておりません。
 以上でございます。
山口(俊)委員 おかげでといいますか、全体的に郵便事業というのは単年度赤字を出しましたけれども、恐らくそれも黒字に転換をしていってやっていくんだろうと思うんですね。もちろん、これは公社化に移行する中で、自由度を高めつつさらなるサービスをということで、しかも信書便法というものがありますから、民間の皆さん方との若干の競争ということを踏まえながらいろいろこれはやっていくんだろうと思いますけれども。
 ただやはり、全体のネットワークを維持するというのは相当なコストがかかるだろうと認識をしておりますし、先ほど有冨社長さんのお話でも、今の信書便法案だと寡占状態になる、それほど大変なんですね、これは実は。
 ですから、少なくとも、私は、今回の信書便法案という、いわゆる全面参入ということによってかなり郵便局のネットワークが大変なことになってくるんではないかな、そんなことを思っておりますし、同時に申し上げたいのが、結局、民間の皆さん方と公社が担う役割あるいは業務目的というのは違うんだろうと思うんです。
 さっき、同じ審判とプレーヤーという話がありましたけれども、私は、役割とか目的とか業務が違うので、つまり土俵が違いますから、先ほどのようなお話は若干当たらないんじゃないかなというふうなことで、やはりクリームスキミングをされないように、しっかりと経営をちゃんとしていく中でネットワークを維持して、同時に、三事業を通じ、あるいはワンストップサービスを通じて、よりよき行政としての国民サービスを強化していくということが大事だと思っておりますので、まだまだお話をお伺いしたいことがありましたけれども、後の質問者の方に譲りたいと思います。本当にきょうはお忙しい中を、お三方、ありがとうございました。終わらせていただきます。
平林委員長 次に、田並胤明君。
田並委員 民主党の田並胤明でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、大変御苦労さまです。時間がないので端的に幾つかお伺いしますが、主に有冨参考人になると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 四月二十六日に、貴社が「「信書便法案」に関する当社の見解」を発表されました。主な内容というのは、今のやりとりの中でもありましたように、一つは、規制緩和によって郵便の民間参入が相当進むんじゃないか、そのことによって公正で自由な競争が行われて、国民の皆さんにとって大変利便性が高まる、これを期待しておった、またこれも小泉総理の理念だった、これが一つの主な理由です。
 もう一つは、今はちょっと出なかったんですが、有冨参考人の十分間の説明の中だから出なかったんでしょうけれども、郵便法の五条の撤廃があればすべてが解決する、それがなかった、こういうようなことが大体中心だろうと思うんです。あとは、こういう状況なので、参入はしばらくはできないので、今やっているクロネコメール便よりもうちょっと小さいサイズの取り扱いを商品化して、利用者の皆さんのニーズに十分こたえていきたい、こういうような内容でくくられていると思うんです。
 そこでお聞きしたいのは、今も前の質問者から出ましたが、この郵便法の五条の撤廃を従来から主張されておったというんですが、これは、小泉総理もそのようにお考えだったのかなというふうに推測をされておったんですか。それとも、小泉総理は従来から民営化論者ですから、公社を飛び越えて一挙に民営化をされる、郵政の民営化をされるということがあって、この五条の撤廃というのは余り表面的には我々の耳に聞こえなかったわけですよ。ここのところへ来て、何か郵便法の五条が撤廃されれば何でもできるんだ、こういう物の言い方になったんですが、そういうことは相当小泉総理に期待をされておったんじゃないですか。いかがですか。
有冨参考人 五条の問題に絡めてといいますか、私どもと小泉総理との関係をお聞きになっているというふうに御理解してよろしゅうございますでしょうか。
 というのは、小泉総理とヤマト運輸とは、この信書便法に関する問題で一切お話ししたことがございませんので、どういうふうに思われているかということは、私としてはわかりませんというお答えになると思います。
田並委員 そういうふうにおっしゃるのは結構ですが、私どもはそう思っていなかったということだけ申し上げておきたいと思います。
 それと、先ほど、郵便法第五条の撤廃をされれば一番問題が解決をする、こう言われているんですが、この郵便法五条で規定されている信書の国家独占というのはユニバーサルサービスと一体のものだというふうに考えていただきたいんですよ。ユニバーサルサービスと一体で信書の国家独占が今まで認められておったということだと思うんです。ですから、切り離すことのできない表裏の関係だ、このように私は思うんです。
 しかし、今、国会で審議されている信書便法案では、国家独占をやめて、今度は民間にもどうぞ参入してください、お入りくださいと。ただしかし、郵便事業を民間に全面開放したとしても、これは何としても、ユニバーサルサービスと一体のものとして郵便法五条があったものですから、法は置きますけれども、実際には、今までその法があって参入できなかったものを信書便法の中で参入を認めようということになりますと、どうしてもこのユニバーサルサービスというのは一体のものとして考えていかなくてはいけないわけですね。
 ところが、このユニバーサルサービスというのは、御社の考え方からいくと、いろいろなヒアリングの中で言われていることというのは、それは国家がやればいいことだ、そんなことは政府が考えることだ、ユニバーサルサービスは民間が考えることじゃない、こういう主張をいろいろなところでされているんですね。
 ですから、公社化研究会の中間報告でも、このユニバーサルサービスを全面開放の、全面参入の条件として民間の業者にも義務づけるんだ、それが結果的には国民の皆さんが、民間が参入したとしても安心して郵便を民間の業者にもあるいは公社にも託すことができる、こういうことだと思うんですよ。これは公社化研究会の中間報告の骨子ができたときに、この中間報告をつくった公社化研究会の幹部の方が、報告に来いというので、総理大臣の懇談会に報告に行ったわけですね。そうしたら総理大臣が何を言ったかというと、御社と同じですよ。ユニバーサルサービスは公社がやればいいんだ、民間はできるところからやらせればいいんだ、こういうふうに主張された。
 ところが、公社化研究会の方々は、それは総理、違いますよと。郵政公社が長期に安定的に経営をするためには、そういうユニバーサルサービスを公社だけに負わせるということは、まさに経営がおかしくなって、結果的にはユニバーサルサービスを国民に提供することができなくなるということにつながります、これはだめですということで、総理大臣もきっと渋々でしょう、承知をして、先ほどの十二月十四日のペーパーにまとまった、こういう状況なんですね。
 そうすると、私が求めたいのは、ユニバーサルサービスを義務づけられたのでヤマトさんでは参入できなくなってしまった、こういうふうにも解釈できるんですが、いかがですか。
有冨参考人 いろいろなところで、いろいろな人がいろいろなことを言っていますので、ここでちょっと明確にしておきたいと思います。
 少なくとも我々ヤマト運輸としては、五条とユニバーサルサービスとの関連というのは理解を十分にしておりますし、そして、ヤマト運輸として民間参入するということは、ユニバーサルサービスというか、あまねく公平に皆さんの、いずこからでも一通でも発送、配達ができるような、そういう仕組みをつくらなければならないものだという理解というか覚悟といいますか、そういうものはあるというふうに御理解をいただきたいと思います。
 ただ、まだまだ不十分なところはもう百も承知なんですけれども、先ほどちょっとお話ししましたように、現在三千店の直営の営業所を数年の間に二千店ふやして、さらに、できるだけサービスの内容を高めていこう、こういうことを申し上げたのは、そういう意味から御理解いただけるとよろしいと思います。
田並委員 ここに、これは公社化研究会でつくられた郵便民間参入政策ワーキンググループ第四回の会合のがあるんですが、これを見ますと、事業者を呼んでいろいろと御意見を承った。その中で、ヤマト運輸さんの場合は、ユニバーサルサービスについて、民間にユニバーサルサービスを義務づける必要はない。もう一つの通運会社は、全面開放された場合には、民間もユニバーサルサービス義務を負うべきだという発言をされているんです。これは総務大臣の公社化研究会の中でつくったワーキングチームでの発言です。ですから、当面、民間参入をされないという根拠の中に、ユニバーサルサービスが入ってしまったので、これは弱ったというのでヤマトさんが抜けたのではないか、このように私は思うんです。
 ですから、ユニバーサルサービスをもし義務づけないということになりますと、先ほど質問にもありましたように、それは確かに自由度を高めていただいて、出資条項をきちっと入れて、いろいろなところに新しい商品開発ができるような、そういう公社に私たちはしなくちゃいけないと思っているんですよ。必ず民間参入があると思いますから、それに備えて、ユニバーサルサービスをしっかり確保して、国民の皆さんに安心して今までどおり郵便を利用していただくような体制にするためには、これはどうしても新しくできる公社も、先ほど有冨社長が言われたように、そういう自由度を高めて、新しい商品を開発してとにかく頑張っていただく、こういうことはもちろん必要だろうと思うんですね。それは改めて総務省の方に求めたいと思いますが、そういうことなんですね。
 ですから、ユニバーサルサービスが義務づけられたのでどうもかなわないな、これが一つの理由になっているような気がするんです。
 それと、もう一つ、郵便法の第五条を廃止するということは信書を廃止するということになるんですよ、つながるんですよ。要するに、これは有冨社長が言われているんでしょうか、何かの雑誌。カーゴニュースという、ことしの五月十六日に記事が出ておりましたが、それを見ると、信書云々というよりも、信書を取り扱うとかなんとかじゃなくて、それよりも、もっと小さなものを運んで、便利な仕組みをつくってビジネスチャンスをつくりたいんだ、だから、それは信書も何も関係ない、要するに、五条が撤廃されれば信書は信書でなくなるわけですから、小型貨物になるわけですから、そういうことでがらがらやればいい、ビジネスチャンスを広げていきたい、それが我々の真のねらいなんだ、こういう言い方をされています。
 ですから、五十円のはがきだとか八十円の封書というのは、それはもう公社に任せておいて、それより値の張るもので付加価値の高いものは我々がやるよ、こういう意味のことだろうと思うんですが、いかがですか。
有冨参考人 まず最初の御質問の、ユニバーサルサービスが出てきたからヤマト運輸は撤退を決めたのか、これについては、そんなことはございませんで、ヤマト運輸が信書の送達をビジネスとしてできるようになるとすれば、我々としては、ユニバーサルサービス、巷間言われている、ちょっと定義そのものが必ずしも明確ではございませんが、それは覚悟の上でいる、これがまず一点。
 それから、第五条を廃止すれば小さなものを自由にできるじゃないか、それは貨物としてできるじゃないかというよりも、本来、民間参入の一番はっきりわかりやすいのは、五条を撤廃していただいて、そしてもちろん信書の秘密を守るとかというようなものは何らかの手だてを打って、民間の皆さん、どうぞおやりになったらいかがですかというふうに言っていただくことが一番わかりやすいんじゃないだろうか、こういうことを申し上げているという意味でございます。
田並委員 それはちょっと水かけ論になりそうですから、私の方はそういう認識だったということについて御理解をいただきたいと思います。
 それで、実はここに郵便局に関する世論調査、時事通信社、本年の一月調査の資料があるんです。この中で、郵便サービスに民間企業が参入した場合、全国均一料金やサービスはどうなると思いますか、こういう質問に対して、これは複数回答でよろしいということですから、イコール、足して一〇〇になりません。一つは、通信の秘密が本当に守られるか心配だ、これが四四・一%です。それから、二つ目が、地方あてや地方差し出しの料金が高くなるんじゃないか、これが三八・一%。それから、大口と都市部は料金等で改善をされるんじゃないか、しかし、小口や過疎地ではサービスが低下をされるんじゃないか、これが三三%。それから、大量に出すものは安くなるけれども、個人のものは高くなるんじゃないか、これが三一・七%、こういう結果です。それで、一番しまいのほうになって、あらゆる分野に参入が行われてすべての料金が安くなるんじゃないかというのが一九%。あらゆる分野に参入、すべてのサービスが改善されるというのが一七・六%。これは私が言っているんじゃなくて、もし必要ならば世論調査の結果をお渡ししますが、こういう状況です。
 そこで、今言われたように、民間参入、御社が郵便事業に参入をされた場合に、ここにありますように、一番心配なのは秘密の保持なんです。これはもちろんどこでも同じだと思うんです、業務上知り得た知識をやたらに他に漏らしちゃならないということになっているんですから。
 ところが、これは大分旧聞になって申しわけないんですが、ある新聞の朝刊で、今はもう現役から引退をされております元会長の小倉さんが、ある方との対談で、こういう、これはもう新聞に出ちゃったんですから、出ているんです。要するに、ある方が質問をしたことに対して、どうも大蔵省の悪口を言うとすぐ税務署が来る、何も悪いことをしているわけじゃないんだけれども気分はよくないですね、でも、私は一ついいことを考えた、小倉さんが言っているんですよ。どういうことですかと聞きましたらば、大蔵省幹部に届けられたお歳暮やお中元の伝票のつづりを会社でとってあります、今後、悪口を言ってきたらその伝票をばらまいてやろうと思ったりしている、こういう記事なんです。これはそういう記事なんですよ。
 これは二つ問題があると思うんです。そういうことが許されるのか。今、個人情報保護で大変な時代ですよ。しかも、この方はもう第一線から退いて元会長です。だから、元会長さんと言われる方がこういうことができるということは、第三者でもこういうことができるということなんですね。ですから、伝票の管理もずさんで、お客様の個人情報の保護も十分でないということをこれは示しているんじゃないですか。これは非常に心配です。
 例えば、今の郵政職員の場合、国家公務員として守秘義務があると同時に、退職後も業務上知り得た知識を漏らしてはならないということになっている、これは罰則があります。(発言する者あり)個人情報保護法もそうです。あの中にはマスコミの関係があるから私たちは反対ですけれども。つまり、国民の皆さんが民間参入で一番恐れることは秘密が漏れること。
 それから、果たして、本当に今まで以上のサービスが受けられるんだろうかと。ユニバーサルサービスがなくなれば、それは当然地方は料金が高くなって、いいところ取りで都市部は安くなる、大口は安くなって小口は高くなる、こういういろいろな心配が出てくるんですね。ですから、参入する場合はユニバーサルサービスはぜひやってほしい、当然のことだ、こういうふうに思うんです。
 ですから、秘密の問題が一つ。それから、ユニバーサルサービスについてもう一回考え方を聞かせていただきたいということが一つ。
 それともう一つは、これも小倉元会長の言で、この間ニュースステーションを撮って見ていましたら、郵便法五条があるので、国家独占の上にあぐらをかいて、国民にとってサービスは悪いし、赤字を垂れ流している、こういう言い方をしているんですね。
 これも郵便局のモニター制度というのがありまして、一般の方を募集してモニターになってもらう。その方々に時折、文書でもって、今の郵便局のサービスの内容あるいは窓口の接遇態度、いろいろなことを聞くわけですよ。ここにその一部がありますけれども、郵便局は安心して信頼できるというのがトップで八七%ですよ。あるいは、サービスがいいか悪いか、非常にサービスがいいというのは七五%ですよ、二五%は悪いのかもしれませんけれども。ヤマトさんはそれ以上いいのかもしれないけれども。いずれにしても、そういうあれが出ているんです。
 それでしかも赤字の垂れ流しという言葉を聞いたら、これは、職員も一生懸命汗水垂らして努力をしているし、どうもその言い方がどこかの国の総理大臣によく似ているんですね。何か抵抗族みたいなのをつくって、悪者をつくっておいて、それに対決をする形で自分の正当性を主張しようとする。どうも、いや、今、御社の直接関係のある人じゃないんですが、相当な影響力を持っている方だろう、こういうふうに思いますので、以上の点について、もう時間がないからお聞きをしたいと思います。
有冨参考人 三つの御質問をいただいたというふうに思います。
 一つは、地方の料金が上がってしまうのではなかろうか、要は、ユニバーサルサービスという概念をきちんと守れるのか、こういう御質問だと思います。それは先ほどお答えさせていただいたとおりでございます。
 それから、二つ目、信書の秘密を守れるのか。税務署が調べに来たら偉い人の到着情報を表にばらまくぞなんと言ったかどうか、よくわかりませんけれども……(田並委員「書いてあるんです」と呼ぶ)ああ、そうですか、事実は言ったのかもしれませんけれども、これは言語道断だというふうに思います。
 当社は情報セキュリティー規定というのをきちんとつくっておりまして、最近は、コンピューターの問題とか、それから伝票の保管の問題だとかがありまして、多分、今小倉が会社へ来てそういうものを探そうとしても難しいのではないかというふうに判断しております。
 小倉がいろいろなことを言っているのは、昔から、現役の時代に我々厳しくやられたことから考えると、今、世の中に向かってやっているのかなという感じがしないわけではないんですけれども、まあちょっと、余り最近会っていないんですけれども、会ったら今度注意をしておきたいと思います。
田並委員 終わります。
平林委員長 次に、遠藤和良君。
遠藤(和)委員 公明党の遠藤和良です。
 きょうは、有冨さん、石川さん、與那國さん、本当に、大変お忙しい中ありがとうございます。
 では、私、最初に有冨さんからお聞きしたいと思います。
 きょうも今お話がありましたけれども、ヤマトさんは、かねてから郵便法第五条の撤廃ということを主張されているわけですけれども、この第五条の撤廃というのは、大変大きな意味がありますね。これについて、きょうは、国民利用者の立場から、私聞きたいんです。
 日本国憲法第二十一条、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」とあります。これを具体的に法律で担保しようとしているのが、郵便法の第五条ですよね。ですから、この郵便法第五条を撤廃するということは、つまり信書の概念を撤廃する、ということは、すなわち憲法第二十一条を空文化する、こういう仕事になりますよ。こういうことを御主張されているというのは、私は、国民利用者の立場からいって、到底承服ができないことだと思うんですね。
 今、国会で、個人情報保護法案ということが議論になっているんですけれども、私は、個人情報保護も大事なんですが、もっと大事なのは、憲法で明確に書いてある「通信の秘密は、これを侵してはならない。」これをどのように実体社会の中で担保していくかということだと思うんですね。信書を出す人にも、通信の秘密を守ってもらいたいという期待感があるし、それから受け取る側も、通信の秘密を守ってもらいたいという期待を持っています。これを、第五条を撤廃して、そんなことどうでもいいんだ、こういうふうなお考えなんですか。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
有冨参考人 第五条を撤廃することによって通信の秘密が空文化してもよろしいのか、こういう御質問だと思いますが、決して私どもはそうは思っておりません。
 ただ、一つ、通信の秘密を守れるのは官業のみであるという考え方については、少々異議があると思います。官業で働いている人も日本の国民でございますし、ヤマト運輸で働いている人も日本の国民でございまして、いろいろ制度の問題等の整備の必要はあるかとは思いますけれども、官業でやれば信書の秘密は守れ、民間でやるとこれが空文化するという御主張には、少々異論があるというふうに申し上げたいと思います。
遠藤(和)委員 いや、官業、民業の話じゃなくて、法律の議論をしています。この五条を撤廃する、こういう意味を聞いているんです。この五条がなくなれば、官も民もありません、信書がなくなっちゃうんだから。そうすると、通信の秘密を守る法律がなくなっちゃうということだ。これについてはどう考えているのかということを言っているんです。
有冨参考人 通信の手段は、信書だけではございません。ファクスとか、最近はコンピューターのメール等があります。そういうことも民間でやっておりますし、第五条には官のみが信書を運べる、こういうふうに書いてあるわけですけれども、民間で守れないという意味にはならない、そういうふうに理解しているというふうに思っております。
遠藤(和)委員 今度の信書便法案は、信書の国家独占を廃止しているんですよね、全面参入をしているということは。
 私は、その信書便法案で十分にあなたの御主張は貫いているんであって、郵便法第五条を撤廃するということは、国民の側からいって、憲法に保障された、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」とする憲法の要請にこたえる条文を削除するという意味になりますよと、こういう警告を発しているわけですね。官と民の話は、信書便法案の中で、一般信書便事業者の方は第五条の例外規定を設けているわけですから、これは全面参入、国家の独占を廃止している、こういう話ですから、それは、あなたの期待に対しては、信書便の方で十分にこたえている話だと私は思います。
 だから、郵便法第五条の撤廃を会社の経営として言うのはいいんだけれども、その言っていることの意味が本当にわかっているのかということを私は聞いています。国民利用者にとって、憲法二十一条の空文化になる、法律がなくなっちゃうわけだから。官も民も、根拠にする法律がなくて信書を取り扱うという話になっていいのかという議論をしているんです。どう思いますか。
有冨参考人 また同じような御回答になりますけれども、第五条は、官のみが信書の秘密を守ることができるというふうに書いてあると理解をしております。
 ですから、民も、別の立場で考えれば、十分に信書の秘密を守る手段はある、こういうふうに考えております。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
遠藤(和)委員 ヤマト運輸は株式会社ですから、利潤の追求が至上目的ですよね。そして、より大きく市場を拡大していくためには、消費者の皆さんにできるだけ安い運賃でサービスを提供する。こういうことを優先される話ですけれども、利用者の側から見れば、やはり価格だけがサービスではないんであって、きちっと本当に通信の秘密を守ってくれる取り扱いはしてくれるのかと。ということは、やはり信書という概念をなくしてもらったら困ります、やはり信書というものの中で、通信の秘密を守ってもらいたいと。
 そのことについて、公社もやるし、あるいは民間会社もやる、これはいいことなんですけれども、余りにも利益というものが、金銭的利益だけが利益だと思って、国民が期待する通信の秘密あるいは安心、こういったサービスを提供することに不熱心ではないのか、あるいはどういうふうに具体的に、通信の秘密を全従業員に知らせることが本当にできるのか、こういうことを懸念しますがどうですか。
有冨参考人 民間企業たるものは利益の追求のみを考えて、場合によっては安心感や信頼を損なっているのではないか、そのうちの一つとして、信書の秘密を守ろうというような考え方を放棄している可能性がある、こういう御指摘でございます。
 これについては根本の問題でございますから明確に御回答しておきたいと思いますが、我々の商売というのはサービス業でございまして、株式会社ですから、利益を追求するのは当然でございます。しかし、利益を追求するためには、お客様から利用していただかなければなりません。利用していただくためには、信頼、安心、それから当然価格の安さ、努力による、合理化による安さ、こういうものを実現しなければ、お客様がついてきてくれません。ですから、当然お客様が不信感を持つようなことをやるという前提でお話しいただくことは大変問題があるというふうに考えております。
 以上でございます。
遠藤(和)委員 先ほどちょっと触れましたけれども、今回政府が出している信書便法、全面参入を条件つきですけれども認めている。ということは、信書の取り扱いについての国家の独占を廃止した、こういうふうに私は理解するんですけれども、そのように理解されていますか。
 国家の独占はなくなった、民間も自由に全面参入できる、こうした法案になった、こういう根本的な理解をされていないのではないかなと私は思うんですけれども、それは、全面参入ということは御社の御主張であったはずですね。それをきちっと法律として明確に実行しようとしている。これは一部反対の方もおりますけれども、法律の文面から見れば、全面参入、国家独占の廃止、これを行い、郵便法第五条に例外規定をつくった、こういうことでございますね。どうですか。
有冨参考人 冒頭でも申し上げましたように、今回の法案は、結果的には国と数社の民間企業による寡占環境をつくっただけで、国の独占を排除して民間参入が実現できるという形にはなっておらないという認識を持っております。よって、参入ができないという表明をしておるところでございます。
遠藤(和)委員 私は法律の話をしている。実態の話は、またその時代時代によって変わります。
 この法律は、初めて郵便事業に対する国家の独占を廃止した、それで全面参入を認めた、こういう歴史的な法律だと私は思うんですね。そういう理解の上で、具体的に参入できるかできないかというのは時代によります、ニーズにもよります、状況にもよります。これは法律とは関係がない、ある意味では。法律が、そういうふうな大きな国家の独占を廃止したという歴史的法案である、私はこう思うんですけれども、そこの理解をしていますかということなんです。具体論の話ではありません。
有冨参考人 法律論になると、いろいろわからないところがたくさんありまして、よくわからないんですけれども、少なくとも、法律ではあるいはそうなのかもしれませんが、我々としては、国の独占をやめて実質的な民間参入が担保された法律なのだというふうに言われても、ちょっときちんとおなかの中に落ちるという感じにはなりませんということを申し上げておきたいと思います。
遠藤(和)委員 これは平たく言えば、郵便事業に対する国家の独占を廃止する、いわば正面玄関をあけて、どうぞいらっしゃいと。そのかわり、ユニバーサルサービスを提供する事業者ですから、それだけの許可は受けてくださいね、こういう話なんですね。一たびその事業者になれば、すべての信書を御自由に扱って日本全国でサービスを展開してください、こういうふうな話になるわけですね。
 にもかかわらず、その正面玄関をせっかくあけたのに入らないで、従来どおり木戸口から入ってきて、取り扱える、信書以外の範囲だけお願いします、こう言っている。そうすると、また木戸口で、これは信書か、これは信書じゃないのかという不毛の論争が続くわけですよね。そうすると、何のために苦労して全面参入の道を法律で担保したのか、意味がなくなっちゃう。国民から見ると、やれ小切手はいいけれども地域振興券はだめだとか、同じ話を続けているんじゃないか、何も改革は進んでいないじゃないかという話になるんですね。
 こういうことで、私は、そういうことは国民にとっても不幸な話だから、余り木戸口でこそこそやらないで、もっと真っ正面からこの議論をして、せっかく国家独占を廃止したわけですから、堂々と入って、すべて、信書は全部取り扱える、こういうふうにした方がよっぽどすっきりする議論になるんじゃないか、こう思うんですが、いかがですか。
有冨参考人 この問題、場合によってはユニバーサルサービスの問題よりも大きな問題ではないかという感じがします。今の御質問が、巷間、マスコミ等からも疑念を持たれているところではないかというふうに思います。
 どういうことかといいますと、ヤマト運輸は、冒頭にもお話ししましたように、正面玄関をあけて信書の送達をできるようにしてやる、そのかわり頑張ってユニバーサルサービスをやりなさいよ、そうしたら入ったらどうだと。それで私は、無理をすれば入れます、こういうふうに申し上げています。事実、そうだというふうに信じております。しかし、入らない。何なんだと。いわゆる条件闘争をやっているのか、こういう疑念がずっとあります。
 私が記者会見をやった後にも二つの反応がありまして、一部、失礼な、民間官業化法案というような言い方をして。しかし、ある記者の方が、独占に近いところに入ってくるんだから、もうかる可能性があるんだから、入らないのは株主に対しても問題なのではないか、こういう質問がありました。そのときに私は、我々の宅急便というメーンのビジネス、六千億円以上の売り上げがあるんですけれども、ここのところで、お客様第一という形でやっているのを、競争状況があるからそれができるのであって、独占というか、寡占になるとそれができないんだ、だから入らないんだ、こういう回答をしました。この回答に対する二分された見方というのが、どうも今回ヤマトの言っていることはよくわからないなということの原因ではないかというふうに感じています。
 まず、いいことから言うと、ヤマト運輸よく言った、こういう方がおられます。それからさらに、こちら側では、どうもおかしいぞ、民間企業だったらそんなことは、当然おいしいところにぷっと入っていって、寡占なら寡占でいいじゃないか、やったらどうなんだという考え方の方は、どうもあいつ何か裏でクリームスキミングだ、ユニバーサルサービスが嫌だ、あるいは条件闘争をやっているんではないだろうか、こういうふうに見られています。
 しかし、明確に言っておきますけれども、ヤマト運輸の経営理念というのは、社員全員がお客様のサービスを第一に考えて、そして、その結果、利益を享受させていただくという考え方でおります。よって、うちを褒めてくれる方とけなす方の考え方の違いというのは、これは厳然とあるというふうにしか、ちょっと今のところ考えられないというふうに私は思っています。
 ですから、きょうも大変いい御質問をいただいたというふうに、ちょっと長い話で申しわけないんですけれども、我々は本当にまじめにお客様のサービスをして、そして結果的に利益を上げるということを考えるのであって、玄関を広げたんだからおまえだけ特別入れてやるということに対しては、少々、ごめんなさい、こう言わざるを得ないというふうに思います。
遠藤(和)委員 この法律は、何もヤマトさんを念頭にしてつくった法律ではありません、失礼ながら。法律ですから、国家の独占を廃止して、そして、ぜひ国民のために、公社も民間会社もお互いに切磋琢磨をして競争する状況になれば、これはハッピーなことだ、こういう念頭のもとにつくった法律でございまして、この法律を生かして参入されるかどうかというのは、それぞれの会社の経営方針で決まるわけですね。
 最後に、国民の代表としてはるばるいらっしゃいました與那國さんに聞きたいんですけれども、私が今お話をさせていただきましたように、この法律をきっかけにして、国民の皆さんのために、公社も民間の会社もそれぞれ切磋琢磨し、協力し、あるいは競争し、国民に安心のできる郵便事業、そして信書便事業というものを展開してもらいたい。そして、そのことによって公社も一層緊張し、努力をし、よりいいサービスに徹していく。そしてまた、民間の事業者の方も、単に経営的、経済的な利潤の追求だけではなくて、大きく国民全体のためにみずから頑張っていく、こうあってほしい。こういう事業でなければ生き残れない時代になっている、私はこう思うので、そう期待したいんですけれども、與那國さんも同感でしょうか。ちょっと国民の代表で、きょうは女性は一人ですから、お伺いして、最後の質問にしたいと思います。
與那國参考人 大変ありがとうございます。私もいろいろなことを言いたいと思って書いてきましたけれども、ちょっと読み上げていいですか。
 銀行や生命保険会社がつぶれる時代に郵便局は安心であるというのは、やはり民間でないからです。私は東京で保険に入っていて、沖縄に帰るとき、代理店、支店がないので、嫌々解約をさせられました。復帰の年に島に戻って、しばらくして簡保があることを知って、子供も私も入りまして、必要なときにいつでも借り入れをしたり、それを繰り返しながら満期を迎えて、そしてそれを、私の主人のような保険である、そういう形で簡保を今でも勧めたりしております。二万四千七百もある郵便局だから、全国、住所が変わっても安心ですよと。沖縄県内には二百一局あります。
 例えば、貯金の場合でも、こども郵便局をしたり、親が子供のために貯金をしていたのが、子から親へ、親から子へと、昭和二十三年に私が生まれたときに。EM会というのを月一回集いでやっておりますが、婦人会とか、それからいろいろな会でも、すばらしい郵便貯金を利用しながら、そして、貯金通帳を現在は家計簿がわりに使っています。PTAとか婦人会、竹富島文化協会などの監査をしてきましたけれども、手元に現金がなくても、通帳残高でオーケーを出しています。
 銀行のない離島、気軽にふだん着のまま出入りができて、島に住む人、また観光客の唯一の金融機関、今はATMの手数料を取らないのは郵便局であるということ、また、簡保の資金、郵便貯金の資金などが政府系金融機関の公共工事のいろいろなものに貸し出されて、団地とか学校、下水道施設、道路の整備とか、社会資本に大きく貢献しています。
 そんな郵便局を、採算が合う合わないにかかわらず、公社化によってサービス面に、採算を重視した収益の高い大都市と、また山間地域や離島の不採算地域で、サービスの低下、それに料金の値上げの結果で、また廃局にならないように切にお願いしたいと思います。
 ありがとうございます。
遠藤(和)委員 終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。三人の参考人の皆さんには、本当に御苦労さまです。特に與那國さんには遠くからはるばるおいでいただきまして、本当にお疲れさまです。順次お尋ねしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず初めに、ヤマトの有冨参考人からお聞きいたしたいと思います。
 ヤマトさんでは、この信書便法案に基づく一般信書便事業者としての許可を求めないというふうな形で発表されたと聞いておりますけれども、この件は本心なのでしょうか。一部、ハードルを引き下げるための戦術ではないかと勘ぐる方もおられますので、その点、改めてお尋ねいたしたいと思います。
有冨参考人 先ほどもお答えさせていただきましたように、心から本心でございます。条件闘争をしているということではございません。
 以上でございます。
黄川田委員 よくわかりました。
 それでは、ヤマトさんでは、郵便事業の今後の市場規模についてどのようにお考えになっているか、お尋ねいたしたいと思っております。今後も成長する市場であるのか、あるいはまた、成熟市場といいますか、参入しても余りうまみはないと思っているのか、この辺をお伺いいたしたいと思います。
有冨参考人 はっきり言うと、専門家ではなくて、どちらかというと旧郵政省が専門家だというふうに思いますので、我々は郵政研究所の将来の予想なんかをちょっと見たりしておりまして、これを信じたところで言うと、民間参入が起きると、一時郵政の扱い量が少し減るかもしれないけれども、将来はわからない、こういう書き方をしているんですけれども、我々は、複数の民間企業が入ってくることによっていろいろなことを多分考えるだろうというふうに思います。
 例えば、郵政省も今までたくさん考えてきて、お正月の年賀状だとか、あるいは夏の暑中お見舞いだとか、そういうようなことを考えてきて拡大している、ふるさと小包なんかもそうだろうし。多分、民間企業が参入することによって今考えられないようなことが必ず出てくる。これは、宅急便をやって、クール宅急便、ゴルフ宅急便、そういうことをやった経過から見ると、もう信じて間違いないことではないだろうか、こういうふうに考えております。
 以上でございます。
黄川田委員 まだまだいろいろなことをやれる事業だ、こういうお話でありますけれども、特に、ここでお話ししにくいでしょうか、もし参入しやすいのであるならば、こういうことを考えているというのは、ここではお披露目はできないでしょうか、具体的な事例でもあれば。
有冨参考人 少なからず一生懸命考えておりまして、これは当たるかどうかはもうまるっきりわからないことでございますが、やはり企業秘密でございまして、おっしゃるとおりでございます。よろしくお願いいたします。
黄川田委員 実は、昨年の通常国会で電気通信事業法の改正がありました。その際に、ユニバーサルサービスの提供確保の観点から、適格電気通信事業者は新たに設置される支援機関に利益の一部を負担することとされておりまして、その負担の集まり、基金によりましてユニバーサルサービスを確保しようという仕組みになっております。
 そこで、仮に郵政公社のみにユニバーサルサービスが義務づけられた場合、その費用は、新規郵便参入業者が負担する基金方式か、NTT等と同じような形ですね、あるいはまた政府が当然税金で負担する方法か、それとも郵政公社が負担すべきか、いろいろあると思いますけれども、どれがよいと思いますか。あるいはまた、それにかわる何かよい方式でもヤマトさんの方で考えておるならば、これもお示しいただきたいと思います。
有冨参考人 先ほどもお話ししましたように、ヤマト運輸としては、信書の送達事業に参入する前提としてユニバーサルサービスをするべきだというふうに考えています。そちらに向かって努力をするつもりでおります。そういう意味からいうと、余り補てんのことについては、場合によったらもらう立場になる可能性もあるということになって、考えておりませんでした。ですから、意見を求められても、申しわけございませんが、どうあるべきだということについては御回答できないことを御容赦いただきたいと思います。
黄川田委員 それでは、電気通信事業の方ではこういう仕組みをとっておるわけなんでありますけれども、それに対する感想みたいなものを、突然のお尋ねで大変なんですけれども、お願いいたします。
有冨参考人 本当に突然で余り考えていないので、こういう場で申し上げていいかどうかということは少しちゅうちょするんですが、信書便の世界においても、場合によっては、本当に最先端のところで問題があるというようなことになった場合に、まあヤマト運輸が入らなくて、例えば国だけがというか、公社だけが確保しなければいけないというようなことがあったときに、国の補てんというものがあり得るのかなという感じは、個人的には、ちょっと会社の見解というふうに受け取らないでいただきたいんですが、個人的にはそういう感じは少し持ちます。
黄川田委員 いずれ、国民一人一人が、このユニバーサルサービスがつぶれること、これを最も心配している方々がアンケート等でも多いわけでありますので、ちょっとお聞きしたわけなんであります。
 それでは、まだ石川参考人にはお聞きする方がありませんので、私の方からちょっとお尋ねいたしたいと思っております。
 これまた、昨年の通常国会におきまして、郵政官署法といいますか、住民票の写し、あるいはまた印鑑証明書、戸籍謄本、抄本、それぞれ地方公共団体、市町村の特定事務を郵政官署にて取り扱うことができるようになったというわけであります。その後いろいろと市町村と契約するところはふえておるところでありますけれども、また一方、地域においては、単に郵便物を配達するのみではなくて、ひとり暮らしの高齢者の生活援助を行うひまわりサービス、そういうものも、調べますと全国で約二百二十件ぐらいあるんですか。あるいはまた道路の損傷状況の報告、そしてまた地震あるいは津波等の防災協力、これは多分市町村との締結だと思うんですけれども、そういう地域安全への協力が全国で約二千八百件ぐらい行われているというような実態であるようであります。
 そこで、地方の郵便局長あるいはまた職員の方々ですが、これらの協力業務や付加業務に対する認識度合いといいますか、どんな感じを持っているでしょうか、お伺いいたします。
石川参考人 いわゆるワンストップサービスというものについては、ことしの四月の時点で三百九十一町村、九百十五局というふうになっております。
 今、先生申されましたように、ふれあい郵便だとかひまわり郵便、シルバー郵便、いわゆる独居老人の家に声をかける運動、そしてそれを市町村に反映するという運動を展開しております。そしてさらには、進みまして、例えば産廃の廃棄をしている業者の、どういうものがあるか、配達をしながら車番等通告する地回りサービス。
 それから、これからやはりやっていこうと思うのは、四キロ以内に郵便局があります。今三千三百ぐらいあって、少し減りましたか、将来は統合して一千市町村ぐらいになるんですかね。そうすると支所がどんどん減っていくというふうになりますから、ただし郵便局は残していく、二万四千七百の郵便局は残していきますから、そこで、住民票だとか印鑑証明だとか、将来はパスポート、やはり遠距離に今パスポートがありますから、そこに行けばすべての行政サービスがとれるということが一番いいわけであります。しかし、これはなかなか、縦割り行政でございまして、パスポートの所管は外務省というふうになっておりまして、これは今後の課題として、先生方にお骨折りをいただきまして、やはり郵便局ですべての行政サービスが展開できるというふうになれば、私ども、非常に住民サービスが、より深まってサービスができるというふうに考えております。
黄川田委員 国の財産であります郵便局のネットワーク、これを活用しながら、そしてまた地方の郵便局の市町村との連携等々、さらに多角化を広めていった方がいいんじゃないのか、こういう認識だと私、今、理解したわけなんです。
 今やっているような仕組みといいますかやり方のほかに、加えて、こういう事業の連携があるんじゃないかということが、突然の質問で大変なんですけれども、もしあれば、ここでお示ししていただきたいと思います。さまざま今やっていることはお話しされたんですけれども、今後こういうことも考えられるんじゃないかというものがありましたら、お尋ねいたします。
石川参考人 私が所属をしております全逓は、総合生活支援ネットワーク事業ということを大会で決めております。これは、公社化になりまして、より二十一世紀にどういうサービスが展開できるのか。
 例えば今ひまわり郵便だとかふれあい郵便、これは地方ではかなりできるんですが、都市部ではなかなか難しいんですね。マンションであるし、フェース・ツー・フェースができませんから。そうすると、今、都市部ではファイナンス、要するに簡保や貯金の外務員の皆さんが、これはフェース・ツー・フェースなんですね、具体的に契約をとるわけですから。しかし、今いろいろな悪徳商法がはやっておりますね。とりわけ老人の皆さんをだますといいますか、これだけもうかりますよということで、ほとんど配当のないものを買ってだまされた。そういうものについてしっかり情報を開示する、そういうものについてはこうではないですかというファイナンスのサービスを展開するというものもやはり必要ではないかというふうに思っています。
 それから、二十一世紀ですからどういうサービスが展開できるのか、これから検討しますが、私は、三事業一体となったサービスがいいと思うんですよ。例えば、郵便だけじゃなくて貯金と簡保と一緒になったサービスがどういうふうに郵便局で提供できるのかということですね。
 簡易保険は御承知のように福祉でありまして、貯金は決済、郵便は信書の配達、この三つが一つになるようなサービス。例えば物を送れば決済は郵便局の貯金でできるとか、簡易保険はもう少し今の時代のニーズに即応したものをやはりつくり上げていく、それで貯金と簡保の融合みたいな商品ができれば、これは最大の住民サービスになるんじゃないかというふうに思っています。これはこれからの検討課題です。
黄川田委員 それでは、もう一点石川参考人にお尋ねいたしたいと思います。
 私は経営学の専門家ではありませんけれども、ドイツでは、経営協議会等と称するものに労働組合の幹部が参画しまして企業経営に主体的に参画する制度が進んでいると聞いております。そこで、先ほどお話しになりました、今回の郵政公社のコーポレートガバナンスへの労働組合の関与のあり方についてお尋ねいたしたいと思っております。
 郵政事業にかかわる職員の声を経営に広く反映させるべくこのようなシステムの構築が必要と私も考えております。その場合でありますけれども、経営の意思決定を行う取締役会というふうな感じの参加イメージか、あるいはまた経営の事後チェックを主とする監査役会、そういう参加のイメージか、どんなふうに考えておられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
石川参考人 私は、公社になりますと、新たな労使関係というふうに今銘打っています。新たな労使関係というのはどういうことかといいますと、企業会計原則が入りますから、当然数値による交渉、そういうものが必要になってくると思います。今まではある面では一方的な数値で私どもはそれに対して要求しておった、こういうことから、より積極的に参加をしていく。
 残念ながら日本には労働者の参加法はありませんが、経営協議会的な参加のやり方、例えば今申されました理事会、さらには監事に参加をしていって、どういうふうに経営のチェックをしていくのか、さらには政策提言をしていくのか。政策提言をすれば、その政策について決定したことについては、当然労働組合も責任を持つということを同時に決めていかないと大変なことになりまして、その中には当然、経営目標、それから経営計画策定というものについて、数値をもとにこれから政策提言を私どもも考えていきたい。
 さらには、策定、実行、そして結果、結果にも我々は責任を持ちたいと思うんです。それは、我々の労働組合が推薦をする理事や監事がきちっと経営と結果についてチェックをしていく、そしてそのもとに、コーポレートガバナンス、企業の統治をきちっとしていきたい、それがやはり国民、住民にもこたえる道だというふうに考えております。
黄川田委員 残り時間が少ないので、最後になりましたけれども、與那國さんにお尋ねいたしたいと思います。
 先ほど遠藤委員からお話しのとおり、まだまだ言い足りないところが何かあるみたいでありますので、改めて、これまで離島にあって郵便局が果たしてきた役割といいますか、その評価といいますか、あるいはまた唯一の金融機関として、あるいは財布がわりとして、そして顔の見える郵便局といいますか、そういう形の中で、例えば、こういうときに助けられたなとか、何か具体の、まだ話しておられないことがあったら述べていただきたいと思います。
 時間も残りもなさそうですので、重ねてお伺いするわけなんですけれども、先ほど全逓の石川さんにもお聞きしたのでありますけれども、郵便局の果たす将来的な役割。私も実は地方から来ている国会議員でありまして、周辺は五千人とか八千人の町村が多くて、総務省が推し進めています合併対策だけでは何ともならないところがあるところも事実なのであります。
 それで、国がやるべき仕事あるいはまた地方のやるべき仕事、そういう役割分担を真剣に考えなきゃいけない。また、県のあるべき姿といいますか、今、国、県、市町村と三階建てでありますから、そういう、さまざまあるのでありますけれども、その中にあって、国がやっている機関の郵便局だとか市町村がやっている仕事だとかというのじゃなくて、行政という大きなくくりの中で、さらに郵便局にこういう仕事もやっていただきたいなというようなことがあれば、それもあわせてお尋ねいたしたいと思います。
與那國参考人 今は、竹富町の役場は石垣島にあります。竹富町の島々の中心地を石垣にということで、役場が竹富島から移されております。さらに現在は、西表島へ移転しようという話が大分固まってきています。ですから、ワンストップ行政の、一番最初につくってほしい、その機械を設置してほしいというのが第一の願いです。
 役場が石垣から西表島に移っても、各島々から役場へ行かずと書類がとれる。そして今では、情報化社会になって、その時代の流れで、テレビ電話もありますし、インターネットを通して、そしていろいろなシステムを通して、郵便局のその場所へ行けば用事が全部できる、さらに世界じゅうとの結びもできて、子や孫、そして友人や知人たちとその場所から会話ができるすばらしい郵便局にさらに発展してもらいたいと思っていますので、つぶれる話、つぶす話じゃなくて、なおいいように私たちは活用したいと思っております。
 お金の面ですけれども、例えば、よそに借りに行くと、だれだれさんが借りに来たよと、すぐ、何秒もたたないうちに広がってしまいます。それが、大変ありがたいと思ったのが保険です。簡保に入って、だれにも相談せずと郵便局の窓口に行って、その当時は、幾ら借りられますと言って、幾ら幾らですという、その金額を借りたりしていました。今では、カード一つで、ATMといいますね、その機械に通して、そして幾ら借りられるという数字が出てきますので、その金額を黙って借りることができる。そしてまた、必要なときに借りたものを返したり、また、返さずとも、満期が来れば、その残額プラス少しの、今、利子が安くなりましたので、その利子がもらえるというようなすばらしいシステムです。
 ですから、郵便局がなかったら困る、本当に困る困るという言葉を発していきたいというような気持ちで来ておりますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
黄川田委員 時間でありますので、終わります。参考人の皆さん、本当にありがとうございました。
平林委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。三人の参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。
 まず、石川参考人にお伺いしたいと思います。
 郵政改革というのであれば、私は、今一番最初にやるべきことは、国民の皆さんが考えていることは、高祖事件に見られるような政権党と特定郵便局長会などとの癒着を断つということじゃないでしょうか。同時に、渡切費などに見られるような不明朗な会計運営を国民の監視にさらすことじゃないかと思います。今、渡切費という形ではなくなるということになっていますけれども、そういう問題。
 公社になれば、これらの国民の疑念や批判が解決をしていく方向になるのかどうか、むしろ、国会のチェックがなくなってしまうなどの問題が指摘をされていますので、国民の監視の目が届かなくなる、こういう心配もあるわけですね。この点、どうお考えかをお聞かせいただきたいと思います。
石川参考人 先ほど申し上げましたコーポレートガバナンスの関係だと思います。ですから、労働組合はもちろん労働組合の立場で、そういう二万四千七百のネットワーク上に存在する高コスト構造、いろいろな問題について改革を提言しています。同時に、理事会や監事を推薦で送りますから、その中できちっとした経営をするべきだ。それはすなわち、経営をするべきということが、国民利用者の皆さんにこたえる道だということで、改革提言はこれからもやっていきます。
春名委員 もう一つ、石川さんにお聞きします。
 先ほども議論が少しありましたが、民間業者が参入をしまして、競争が激化するということになりますと、率直に考えると、二つの心配が生まれてきます。一つは、ユニバーサルサービスの後退が生まれるんじゃないかという面、もう一つは、労働者へのしわ寄せという面、その二点が心配されるわけです。
 私も郵便局の職員の人と何度も話す機会がありますけれども、新夜勤勤務の導入であるとか、それからノルマによる労働強化とか、かなりいろいろ御自身も、労働者全体も努力をしながら、ただその中で、労働者へのしわ寄せという問題も看過できない問題としてあるし、過労死という問題も起こっていますけれども、そういう心配について、公社になり、あるいはその先、民営化という方向になったときにどういう弊害が生まれていくのか、どうするのかということが一つ大きなテーマになると思いますね。その点、どうお考えになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
石川参考人 労働条件の改善、維持は、これは労働組合の使命でございますから、ごく当たり前のことであって、いかなる、今の経営形態でも公社になろうとも、当然これは当たり前のことであります。労働者の命と、労働条件を維持してどういうふうに改革していくか、これからもやっていきますし、御心配なさらないように、よろしくお願いしたいと思います。
春名委員 それでは、與那國参考人に一点、お聞かせいただきたいと思います。
 はるばる、本当に御苦労さまでした。今、皆さんの周りに、郵便局を民営化してほしいという声がどれぐらいありますか。あるとすれば、なぜ民営化してほしいのかという理由、同時に、もし一層改善をしてほしいということもありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
與那國参考人 民営化は絶対に反対ですという声が全部上がります。といいますのは、民営化になったら郵便局なくなるよという話がずうっと、お年寄りまで、子供たちまで響いております。民営化って何なのと聞かれたら、民営化になったら郵便局がなくなるってよというくらいに話が通じております。ですから、民営化は郵便局のなくなることだというような意味を持っております。
 それからもう一つ、何をとおっしゃっていましたっけ。(春名委員「現時点で、もっと改善してもらいたいこと」と呼ぶ)改善してほしいことですね。
 例えば、私は、郵便貯金通帳を別につくって、郵便局回りをしております。そして郵便局で、その局に入ったら、郵便貯金をして、スタンプを押してもらっていますが、その郵便局の一局一局を見て回っていますが、やはり小さい郵便局はすごく対応がいいです。そして接客もいいです。ですから、働かない人、また働きの悪い人、成績の悪い人は減給したり、やめさせてもらったりもいいんじゃないかと思います。
 さらにもう一つ言いますと、せっかくなれて、郵便配達が上手にできるようになったのに、住所を覚えたころにはすぐ転勤になっちゃうというのがありますので、なるべく小さな島々の郵便局は、配達の方の異動をしょっちゅうしないようにしてほしいと思います。
春名委員 大変率直な御意見をありがとうございました。
 続いて、有冨参考人にお伺いしたいと思います。
 先ほどの議論も聞いておりまして、やはり民間参入とユニバーサルサービスという問題が最大の焦点だと私は思っております。昨年の十月の公社化研究会の報告の中では、ヤマトさんの代表が、民間にユニバーサルサービスを義務づけるべきではないという旨を強調されている、先ほども少し出ましたけれども、そういうことが報告をされているわけですね。
 ただ、きょうのお話を聞きますと、ユニバーサルサービスをやる覚悟はありますということをお答えになっておられます。その点、もう一回確認をしておきたいと思います。
有冨参考人 民営化研究会での意見が前提になっておりますけれども、これには多分二つの意味が含まれているんではないかというふうに思います。
 まず、冒頭の陳述でも申し上げましたように、民営化ということはたくさんの民間企業が参入するべきである、よって、すべてのところにユニバーサルサービスを義務づける必要はないのではないだろうか、これがまず一つでございます。
 もう一つ、私どもの会社に限って言えば、ユニバーサルサービスというのは強みだというふうに思っています。全国津々浦々まで配達できることが当然、都会の需要も取り込める、そういう強みになるというふうに考えております。当然のことながら、ユニバーサルサービスというのは、サービス業として、少なくともいわゆる全国サービス業としてはやることが強みになるんだ、こういうふうに考えておりますので、しきりに御心配になっているように、それが前提で今回参入をやめたんではないかという御疑念については、明確に否定させていただきたいというふうに思います。
 以上でございます。
春名委員 ヤマトさんが、ヤマトさんというか有冨さんがお考えになっている、そのユニバーサルサービスの内容なんですけれども、今、御存じのとおり一種、二種、三種、四種ありますね、一種、二種が大宗を占めているわけですけれども。それから政策減免をやっていますね、三種、四種。定期刊行物の減免、それから点字郵便物の無料等々も、全体として独占だからこそできているという面もあるわけですね、そういう点。あるいは、ポストが今十七万七千本ありますね。いつでも一通からそこに投入して、それで集配するという仕組みをつくっている。それから、当然、料金の地域の格差はない。五十円と八十円を守るということになっていますね。
 ユニバーサルサービスといえば、今のそういうことが当然前提になるわけなんですが、有冨さんがお考えになっている、ヤマトさんがお考えになっている、ユニバーサルサービスに覚悟はあると言われる中身ですね、どういうことを想定されているのか、そこをお聞かせいただけませんか。
有冨参考人 ユニバーサルサービスというのは、割り増し料金などを負担することなく、全国どこへでも信書を配送できるサービスだというふうに考えております。
 当然のことながら、料金的な面、それから出すときの便利さということについては、お客様がどこを選ぶかという立場から考えたならば、今よりもさらに高度なものを何とか実現するように努力しなければならない。今よりも条件を悪くして参入するということは我々としてはちょっと考えられない、要は仕事が来ませんから。ですから、そういう前提でユニバーサルサービスを考えているということでございます。
春名委員 そうしますと、ちょっと私わからないのは、私は信書便法案は賛成じゃありませんけれども、今の信書便法案の中での参入の条件というのは、ハードルが高過ぎるというふうに私もイメージを受けたんです。それで参入しないというふうにお考えになっているように受け取っているんですが、その辺との関係はどうなるんでしょうか。
有冨参考人 改めて申し上げますと、信書便法案で参入しない理由というのは二つありまして、一つは、今回の信書便法案は、信書便物のサイズを大きくしたり、あるいは、冒頭で申し上げましたように、信書というものの解釈を拡大しているところがあります。それによって、我々あるいは我々の仲間が現在仕事としているところまで信書という形で取り込んでしまって、場合によっては、民間の働いている人間の職場がなくなってしまうということにもつながる。これがまず一点です。
 それから、非常にハードルを高くして寡占状況をつくる法案については、我々は、私どものところはという意味ですけれども、やはり、創意工夫が伴わない可能性があるので、今回参入を見合わせる。この二つの理由でございます。
 以上です。
春名委員 そうしますと、信書のサイズの大きさとか信書の解釈の拡大ということで、今、民間のヤマトさんなどがやっておられる事業そのものも信書便法案の中に取り込まれてしまうと。ということになりますと、今度、法律の中に信書の定義をどうするかというのが今議論になっているんですけれども、例えば、ダイレクトメールなんかを入れない、それから大きさというところもちょっと修正するというような話になると、入る必要は一切なくなる、参入はしないということで、当然そういうニュアンスの意味合いになりますね。そういうことでしょうか。
有冨参考人 そういう条件がどうなったから参入するとかしないとかということとは違って、ですから、ヤマト運輸の経営理念といいますか、お客様に喜んでもらうサービスを提供して、買ってくれるお値段を提案して、その範囲の中で何とか商売になるように仕組みを考えるという流れを我々は常に考えているわけですけれども、そういうものが全部何か決められて、信書を出すときには箱を用意しろとか、そういうことではやはり乗り切れないなというのが本音でございます。
春名委員 信書の大部分は、はがきと封書でございますね、今の大宗は。それで、この分野で全国的、全面的な競争が起きますと、例えば、五十円、八十円のはがきや封書が安くなることもあるかもしれない。ところが、ヤマトさんの代表は、昨年十月の公社化研究会で、五十円、八十円のはがきと封書に類するものはできず、付加価値サービスなどの提供を考えておりますということを発言されたと報告もされております。
 ヤマトさんは、五十円、八十円のはがきや封書で郵便局と全国的あるいは全面的な競争をするということについては、どうお考えになっているのかということをお聞かせください。
有冨参考人 信書と言われているものの大部分がはがきや手紙ということではないというふうに思いますけれども、それはちょっとこちらへおいておいて、当然、お客様のニーズがあるところには、我々はお客様が御利用する値段の範囲で商売にする仕組みを考えるというふうにさっき申し上げましたけれども、そういう意味からいうと、はがきや信書を除外してやる、必ずしもそういうことを考えてはおらないというふうに御理解いただきたいと思います。
春名委員 御存じのとおり、一種から四種までありますけれども、一種、二種によって、そこのとりわけ大都会の収入によって、三種、四種、あるいは過疎の地域を支えるというのが全体としてつくられているというのは、もう御存じのとおりですね。
 そうしますと、そこに向けて進めていくということになると、私の貧困な発想からいえば、やはり民間業者、民間の企業さんというのは営利を目的にしなければならないわけですし、目的にしているわけなんですよね。ですから、心配しているのは、クリームスキミングの話が出てくるわけで、このはがき、封書が大部分を占めている、そこも含めてユニバーサルサービスに参入されるといったときに、民間企業から考えたら、そういうリスクという話を真剣に考えなきゃいけないじゃないですか。
 今、私の認識では、宅急便あるいはメール便ということで付加価値がありますので、十分利益が出ているという印象を持っているんですけれども、そこにこういう形で全面的に参入されて、率直に、心配といいますか、本当に成り立つのかというふうに思うんですよね。その辺はどうお考えになっているんでしょうか。
有冨参考人 さっきからお話ししていますように、クリームスキミングということをやるという気持ちは毛頭ございませんし、それから、現在の料金体系あるいは制度そのものをそのままやるということを考えているわけではございません。
 要は、常にお客様が現在のサービスに対して潜在的に持っているのではないかという不満を、我々は商品化して提供することによって需要を喚起する、こういう意味ですから、例えば五十円とか八十円とか、今と同じサービスをするという意味ではその努力をしますけれども、場合によっては付加価値をつけるサービスもありますし、トータルでペイをするということにすれば我々は生きていけるわけですから、常に、先ほども言いましたように、ヤマト運輸の営業所の三千店のうちの三割は単位的に言うと赤字でございますけれども、これを切り捨てるようなことはありません。こんなことを切り捨てていたら、お客様は逃げてしまいます。
 以上でございます。
春名委員 四月九日付の東京新聞に「いまこの人に」という記事がちょっと出ておりまして、ちょうど見つけたものですから、きょうここに持ってきているんですが、ヤマト運輸の常務さんの山崎さんという方がインタビューに答えておられまして、興味深く読ませていただいたんですけれども、その中に一つちょっと気になっていることがありまして、全国二万四千もある今の郵便局数は明治の飛脚便時代そのままのネットワークなので明らかに多過ぎる、こういう発言をされておられるわけなんですね。
 それで、先ほど、お話を聞いていますと、支店を三千から五千にふやす、それ自身も大変な御努力だと思うんですけれども、郵便局のネットワークというのはそれをはるかに超える網の目のようなネットワークをつくっていて、竹富島の方もおっしゃったように、そういうことがあるわけなんですね。
 そのことを考えますと、一つは、社長さんもこの山崎常務のように、今の二万四千の郵便局数は率直に言って多過ぎるというふうにお考えになっているのかどうか、その辺と、そういう網の目のようなネットワークということの意味合いといいますか、大切さといいますか、そこら辺をどうお考えになっているかをお聞かせいただきたいと思います。
有冨参考人 二万四千というのは、我々のやっている仕事と少し次元の違う条件でございまして、集配拠点という意味からいうと、多分五千店と大ざっぱに言ってよろしいんだというふうに思います。
 ですから、山崎が、どういうふうに書いてあったのか、私ちょっと覚えておりませんけれども、二万四千店は受付窓口という意味だと思うのです。ですから、数があればあった方がいいのであって、どういう発言で新聞記者の方が書いたかというのはちょっとよくわかりませんけれども、そういう意味からいうと、すばらしいネットワークを持って、強力なライバルだというふうに私は思っております。
 先ほども全逓の委員長さんがおっしゃっているように、福祉の保険と決済の金融と、それから物流をやっているということになると、まだまだビジネスチャンスは物すごくあるし、これだけのネットワークを持っているところと場合によっては、きょう、こうやって皆さんにお話ししているのは、ユニバーサルサービスをやるということは正面から戦うつもりだみたいな、そういうことを表明して、かえって大丈夫かなという感じもちょっとしないではないのですけれども、覚悟を決めて、やはり競争関係があることがサービスが向上することだということを信じて、ぜひ進めていきたいというふうに思っております。
 以上でございます。
春名委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。終わります。
平林委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。きょうは、三人の参考人の皆さん方、本当に御苦労さまでございます。
 まず最初に、有冨参考人にお伺いしたいと思うのですが、ヤマト運輸が、先ほど冒頭のお話にもございましたように、全社員が一丸となって国民の要望を満たすために頑張ってきた、そして、運輸省との長い戦いの結果、確かに、小型貨物輸送、これの物流システムは根本的に変革をされて、国民の利便性の向上、あるいは国民生活にプラスになった、これはもう紛れもない事実だと思うのです。このことは私も評価したいと思うのです。
 確かに規制緩和あるいは競争、これも必要でしょう。そして、その結果、サービスの向上や選択肢の拡大につながるということもあるでしょう。であるならば、すべての国民にそれは享受されなければならないと思うのですね。
 まずお聞きしたいと思うのですが、この郵政事業、郵便事業というものは公共サービスであるという御認識をしっかりお持ちでしょうか。
有冨参考人 公共サービスという意味が、国あるいは公共団体がやらなければならないサービスなのかという意味で御質問だというふうに受け取ると、我々としては、必ずしもそうは思わない、民間でも十分にサービスができるだろうというふうに自負をしていると申し上げておきたいと思います。
横光委員 今、有冨さんたちがやられている宅配あるいは宅急便、こういったものは、いわゆる物流ですね。ところが、今度、信書便法案になりますと、信書ということになりますと、これは通信の秘密、表現の自由、こういった憲法に保障されているものになってくるわけですね。非常に公共性が高いわけです。こういったときには、ただ競争とか利益だけでは通用しない、守らなければならない部分が出てくるわけです。そこのところをやはり私はしっかりと認識していただかなければならないという気がするのですね。先ほどからずっとお話を聞いていますと、やはりそこが一つのキーポイントだなという気がするのです。
 先ほどからお話がございますように、郵政事業の公社化に関する研究会のヒアリングの中では、ユニバーサルサービスという部分で、学識経験者あるいは経済界、さらには消費者団体、地方の文化事業団、大口の信販協会、あるいは通信教育、書店等をやっている大口ユーザー、こういった関係者すべてがユニバーサルサービスは必要だという意見発表をしている。同じ民間でも、日本通運の意見発表も、ユニバーサルサービスは義務を負うべきだと。
 そういった中で、ヤマト運輸だけがこれを必要ないということを意見発表されておるのですが、これだけ多くの関係者が必要であるという認識を持ちながら、なお、あの時点では、必要ない、負うべきでないと。先ほども、民間参入者が全事業者が負うものではないというお話もございましたね。それではやはり、先ほど言いましたように、いわゆる公共的な分野というものを国民に保障することはできなくなるんじゃないんですか。いかがですか。
有冨参考人 その点については、少し考え方が多分違うんだろうと思います。ユニバーサルサービスというか、どこにいても手紙、信書の配送を享受するべきだというのは、これはもうそのとおりだと思いますし、ヤマト運輸はどうかと言われると、ヤマト運輸は津々浦々までサービスすることが強みだというふうに思っておりますので、それはやります。
 しかし、あくまでも、先ほど通信の秘密を守るのは公共性が高いんだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、国以外に何人も通信の秘密を守ることができないというのは、どちらかというと官尊民卑の考え方ではないのかなという感じがしておりまして、働いている人はみんな日本人、お互いに。ヤマト運輸も郵政で働いている方もそのとおりでございます。制度その他については何がしかの手当てというのが必要だという気持ちはありますけれども、少し先生のお考え方とは一線を画しておるところでございます。
横光委員 十二月十四日に総務大臣が総理に郵便事業への民間参入について説明をいたしておりますが、このときには、いわゆる全面参入を可能とする、そしてまた、そのための三つの条件を書かれているわけですね。このときには、ヤマトさんの方は何ら異論も申し上げなくて、この内容は理解していたわけですね。
有冨参考人 十二月の時点では参入に意欲があって、四月の後半には突然参入を取りやめたのは、ちょっとおかしいのではないかという御指摘だというふうに思います。
 十二月のころからずっと、ちらりほらりと法案の中身が我々にも伝わってまいりました。そして、最終的に全容が見えたのは四月の二十日前後でございます。ほとんどがペンディングのPのマークのついた法案を我々はずっと見ていたという状況でございまして、最終的に四月の二十日ごろの最終案を見て、これはちょっとやめよう、そういう意思決定をしたというふうに御理解をいただきたいと思います。
横光委員 その後、いろいろな細かいところの感じが非常に厳しいハードルになるだろうと考えということを今申されましたが、それはあくまでも先ほどから論議されておりますユニバーサルサービスという部分に入るわけですから、ヤマトさんは、そういったユニバーサルサービスはもう郵政公社でやってくれ、そして民間参入事業者はできるところから郵便サービスを始めればいいじゃないかというお考えがあるような気がしてならないんですね。言われておりますクリームスキミングに、それはつながるわけですよ。どうしてもそういうようになってしまう。
 先ほどからお話がございますように、郵便事業が、いろいろな福祉支援サービスとか三種、四種、あるいは災害特別事業とか、いろいろやられていますよね。こういったことに対しても、福祉サービス等は郵便事業ではやる必要はないというお考えなんでしょうか。いかがですか。
有冨参考人 決して福祉サービスを切り捨てるべきだというふうには考えておりません。それよりも、場合によっては、民間の方も新しい考え方で、独占的にサービスをしていた以上のものが考えられる可能性も非常に高い。宅急便等で切磋琢磨した結果、さっき先生がおっしゃったように、非常に世の中便利になったというふうに自負をしているところから考えて、そういうふうに信じておるということでございます。
横光委員 参考までにお聞きしますが、仮に参入するようなことがあった場合、今、ヤマト運輸の会社の方針、社長のお考えは、まず第一はお客様へのサービスである、それが先である、利益は後であるというのがモットーであるというような感じを受けましたが、であるならば、もし参入した場合、こういった政策料金、あるいは三種、四種郵便物の扱いや災害発生時の特別扱い、こういったものは実行するおつもりなんですか。いかがですか。
有冨参考人 先ほどから申し上げていますように、我々のところで商品をつくるときには、当然、国民の皆様に御利用していただけるという前提で考えております。ただし、現行やっているものをそのまま踏襲するかどうかということについては、必ずしも同じようにやるという意味合いで申し上げているのではございません。
横光委員 いかにお客様のため、利益は後だというお考えでも、私はこういったことまで手が回るということはほとんど不可能に近いと思うんですね。それだけに、今の、郵政公社の役割というのは非常に国民の中に浸透しているわけでしょう。もし参入するなら、そういったこともしっかり、シビルミニマム、国民が最低限享受する利便性、こういったものをはっきりと責任を持ってやれるという形でなければならないと思うんですね。
 そしてまた、最初、信書便法案が民間官業化法案という批判をされております。宅配便に適用されております貨物自動車運送事業法、これは、では民間官業化法案という認識はないんですか。同じような評価なんですか。
有冨参考人 これは、現実の対応としては、ほとんど官業化法案というふうには考えておりません。
 条文的には非常に似ておりますけれども、当初、我々が宅急便を始めた時点は、それこそ官業化法案と言わざるを得ないぐらい、店をつくるにしても、路線免許を取るにしても、冒頭お話ししましたように、もう非常に時間がかかりました。しかし、その辺だんだん、お客さんの利便性が高まるということを御理解いただいてから、最近は非常に、運用といいますか、そういう面で、ちょっと語弊がありますけれども、支障のあるようなことというのは我々としてはほとんど感じておらない、こういうことでございます。
横光委員 今回、民間官業化法案という思いを持たれている、非常に規制でがんじがらめになっているという意見が出されましたが、私は、先ほどから言っておりますように、信書、これは本当に秘密性の保持の高いものでございます。そういった意味からの規制の高さというのは、これは国民のためにも必要であろうというところで、この認識の違いがあるんだろうと思っております。
 次に、石川参考人にお聞きをしたいんですが、労働組合として今後の公社経営にいかにかかわっていくかというのが、これからまた新しい公社という形でスタートするわけですから、大事だと思うんです。事業の効率化あるいは人員削減、こういったものを、これから一万五千人、取り組むわけですね。公社化された場合、そういった計画がさらに進められていくという懸念もあるわけです。やはり、郵便事業の一番のもとは、いわゆる現場の職員、とりわけ外務の方々のフェース・ツー・フェースという形の関係がこれまでの郵政事業の中心になっていると思うんですね。ここが損なわれてしまうようであってはならないという気がするんですが、そのような効率化計画に対して労働組合はどのように対応していくつもりなんでしょうか。
石川参考人 公社の船出は大変厳しいというふうに思っています。なぜかといいますと、電子メールや、それから低成長下ですから、郵便の財務が大変悪化をしております。当然、そのことを見越して、私どもは、先ほど冒頭申し上げましたように、五年間で一万五千人、そういう人員削減に労働組合として対応しているということでございます。
 しかし、問題は、この郵便というのは、やはりお客さんをどう獲得するか、買ってもらうかでございますから、フェース・ツー・フェース、例えば外務員が一通一通配達する、これは非常に重要でございまして、例えば窓口でお客さんに対応する、こういうところの要員の確保はきちっとしておかないと、私はこれからの事業展開はできないというふうに思っています。
 もちろん、窓口の後方事務だとかいろいろな、効率化できる、機械化できるところは最大限私どもは提言をしていきたい。同時に、公社全体で、やはり管理部門だとかむだなコストのところは最大限効率化する、リストラする、これは労働組合としての提言もこれからやっていきたいというふうに考えております。
横光委員 これから郵政公社としてスタートする場合、その経営のあり方については、本当に、労も使も真摯に意見交換できる信頼関係が何よりこれから大事になってくるだろうな、私はそういう気がいたしております。何といっても、郵政事業というのは労働集約的な産業でございますので、ここの労使の円滑化というものは、いろいろな現場の声を経営にもこれから反映させるんだ、それぐらいの意気込みで、積極的に対等な立場で取り組んでいっていただきたい、このように思うわけです。
 與那國さん、本当に二千キロかけて御苦労さまでした。お聞きしたいんですが、本当に、今や郵便局は島の誇りだというお話が先ほどございました。とりわけ、地方の方々、あるいは過疎の地域、離島とかいろいろなところもそうですが、與那國さんと同じようなお考えを持って、そしてまた郵便局がそういった方々の生活にしっかりと根づいていると思うんですね。そういった中、今こうして郵政公社となる、そして信書便法案では民間も参入できるようになる、さらに総理の小泉さんのお言葉では、これは民営化に向けての一里塚であるということですね。
 いずれ民営化ということになったら、先ほど私が申しました、郵便を集配するだけでなく、いろいろな形で生活に密着したそういったものが大変な危機的な状況になろうかと思うんですが、そのあたりを含めて、もう一度、郵便局の必要性、重要性というものをお話しいただければと思います。
與那國参考人 郵便局は絶対になくてはなりません。民営化になってもという言葉を私は使いましたけれども、世の中は、私たち国民は、生きる権利というのがありますけれども、同じようにサービスを受ける権利もあるんじゃないかというような気持ちを持っております。ですから、民営化に持っていってもという言葉を使ったのはその気持ちがあるからです。
 ぜひとも、世界じゅうが、日本国民がすばらしい郵便局を守ってほしいと思います。一人のためにじゃなくて、同じ生きている人のためにという言葉を使いたいと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
横光委員 終わります。どうもありがとうございました。
平林委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十分開議
平林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 内閣提出、日本郵政公社法案、日本郵政公社法施行法案、民間事業者による信書の送達に関する法律案及び民間事業者による信書の送達に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案審査のため、本日、政府参考人として総務省郵政企画管理局長團宏明君、総務省郵政公社統括官野村卓君及び郵政事業庁長官松井浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
平林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
平林委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒井広幸君。
荒井(広)委員 自由民主党の荒井広幸でございます。
 小泉純一郎日本国内閣総理大臣そして自民党総裁にきょうはお越しをいただきまして、六年前を思い出しますと、ああ、本当にこういう状況になったなということで、六年前の郵政民営化に対する公開討論会を思い起こしながら、総理の所信とそして大臣のお考え、これは、とりもなおさず、やはり国民の皆さんの将来に対する責任をしょっておりますし、同時に、公社をしっかりスタートさせる、こういう観点からも十分な議論が必要なところだと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 早速ですが、総理、ワールドカップで、この間、日本が勝ちました。いや、よかった、こういうことでございましたけれども、あの勝因はどこにあったというふうに総理はお考えでございましょう。
小泉内閣総理大臣 日ごろの選手諸君の練習の成果が見事に実ったと思います。
荒井(広)委員 私が期待いたしましたのは、チームプレーだと思うんです。三人が連係でつないでいるんです。
 こういうことを考えますと、ぜひ総理には、与党三党、そして自民党、幅広く国民の視線に立ったいい意見があります、そういったものを十分お酌み取りをいただいて、間違いのないかじ取りをしていただきたい、このように思っております。
 さて、総理、郵政公社をしっかりスタートさせるということで間違いございませんね。総理のお考えをお尋ねします。
小泉内閣総理大臣 まずは郵政公社にするための法案でございます。
荒井(広)委員 微妙な言い方でございますけれども、しかし、まずはで結構です。それぞれ意見があるわけです。
 しっかり公社にしていくためには、既に、特にこの信書便法案は、制度設計上、破綻しております。その公社がひっくり返るような中身にもなっております。総理のまずはといいながらも、これはうまく進みません。
 大臣、そもそも、この信書便と公社の設計を立てるときに、三種、四種の政策割引、特に福祉割引、これらを法律から外しましたですね。時間がありませんからうなずいていただければ結構なんです。外しましたですね。そして、超党派の議員連盟、公社をつくろうという議員連盟と与党三党、そして我が党も部会を含めて、申し入れに参りました。それでも、今、法律上は、現行制度よりも非常に、障害者の方々を含めて、生活者に圧迫の内容になっております。これが三種、四種です。
 総理、これだけ多くの陳情が来ているんです。弱い人たちに配慮をしない国営公社などというのはないんです。しかし、民間を入れろと総理がおっしゃるから、その経営負担を取り除くためには、弱いところからまず犠牲にしなければならないという公社法の設計になっているんです。これ一事をとりまして、やっと法律、若干昔に近い形にはしましたが、既に小泉郵政改革とは、弱い者をどんどん弱くしていく、本当に必要とする人から奪い取るような民営化論者、こういうことを断じざるを得ません。
 こういったことを私たちは考えますので、委員の先生方には、この法案は昔の事業庁時代に戻すということで御賛同をぜひ、後刻、採決のときにいただきたいと思っている次第でございます。
 それから、総理は再三、大臣に、政省令とガイドラインで民間参入ができるようにしてほしいということを伝えていらっしゃいます。これは先刻の委員会で片山大臣がそうおっしゃっているわけでございます。省令、ガイドラインで民間参入ができるようにする、一般信書便法でございますが。これは、総理のお考えとしてお変わりないんでしょうか。その点、いかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 民間企業が参入できるような法案にするということであります。
荒井(広)委員 片山大臣、現在のところ、民間参入の状況はどうなっておりますでしょうか。知っている範囲で結構です。
片山国務大臣 荒井委員、その前に、三種、四種を、最初の案ではどうしようかと検討中だったんですよ。これは、できるだけ公社に自律的、弾力的な経営をさせろというのが基本法の精神ですから、我々は迷っておったんですよ。しかし、皆さんの御意見もあるんで、仕組みを今の公社法には残しました。だから、それは、弱い者を切り捨てるとかなんとかという考えではございませんので、ぜひひとつそこは誤解のないようにしていただきたい。
 それから、政令、省令というのは、今の法体系では、法律の委任か執行でなきゃできないんですよ。そこで新たなものをつくるとか、新たなものを決めるとかということじゃないんで、法律に書いたものについての具体化なり執行なり委任ですから。
 そこで、今民間はどうかということなんですが、一々民間にお伺いを立てて我々立法作業をしたり仕事をしているわけじゃありませんけれども、報道の伝えるところによると、全面参入の方についてはちゅうちょをされている向きはありますけれども、私は、これからだんだんいろいろなことがわかっていくわけですから、さらに御検討いただけるものだと思っておりますし、特定信書便の方は、これも報道でございますけれども、三社なり四社が参入を御検討いただいている、こういうふうに承知いたしております。
荒井(広)委員 迷っていること自体が問題なんです。ユニバーサルサービスを考えるときに、大臣が迷っていたなどということが問題なんですよ。最低の生活を保障していくということですから。国民の権利にこたえるということです。それに対して、国が三事業を通じて、ひまわり福祉サービスや、町村合併の時代の新たな、我々は国営民活という言葉を言っておりますが、むしろ、このネットワークを、拠点を、人材を、民間にも、そして自治体にも開放して使ってもらった方がいい、これの方がよっぽど、総理、改革だと私たちは思っているんです。
 そういった点からいうと、今ほどありましたが、今示されている法案の骨格というのは、言ってみればゴルフ場です。十八ホールつくったわけです。さあプレーしてくださいと言ったら、だれも入っていないんですよ、今。午前中の審議でも、ヤマト運輸さんも入らないと言っているんですから。
 私は、実際に歩いてきております。全面参入したいなどというところはございません。それだけの投資をしても利益が上がらない、同時に株主責任を負わなけりゃならないということなんです。これが企業の特徴であります。だけれども、小包は、総理がおっしゃるように非常にいいサービスしていますね。そこは私たち、否定しません。しかし、五十円、八十円というところを果たしてできるか、こういったことになりますと、世界的に例が本当にないんです。
 こういったことを考えていきますと、総理に今の前提でお話をさせていただきたいんですが、十八ホール、法律でつくりました。しかし、プレーヤーがいない。そこで、省令、ガイドラインというのに委任しているところが非常に多いんです。大臣の委員会の言葉で言うと、有権解釈、法律にのっとって、その幅で省令やガイドラインができるというふうにおっしゃっていますね。結局、その部分は、ホールの穴を二メーターにまで広げるから、さあ入ってきてくださいということになるんです。今、どれぐらいのホールの穴にするかということを決めているんです。それを今決めずして、法律が通った後に、パブリックコメントなどをとりながら決めるということになれば、まさに裁量行政の最たるものと言わざるを得ないんじゃないでしょうか。
 総理、ガイドラインと省令をつくる、法律を通してからつくるということは、裁量行政の幅を認めるということなんです。こういうことでルールとしてしっかりした法律ができるんでしょうか。
片山国務大臣 信書につきましては、何度も当委員会でも答弁させていただきましたが、これは決まっているんですよ。判決でも、特定の受取人に対して差出人が意思の伝達及び事実を通知する、これを有権解釈ということで決まっているんですが、例えば、際どいものがこれから出てきたり、若干どういう観点からということがありますので、そこについては、パブリックコメントや関係者の方や学識経験者の方の意見を広く聞いて範囲を明示したい。そこでホールの穴を二メートルにしたりなんかするんじゃないですよ。ホールの穴は決まっておるんです。決まっていますけれども、そこの際どいところについては、なかなか解釈上の理由があるから、理屈があるから、これについてはガイドラインで明らかにさせていただきたい、国民に対してわかりやすいそういうものを示したい、こう思っているわけであります。
荒井(広)委員 大臣、正確には二つに分けないといけませんですね。ガイドラインでやるところは専ら信書の定義ですよ。省令は、委員の先生方、そして総理、もうこれは矢印をつけますとほとんど、省令において決める、省令において決める、省令において決めるですよ。こんな問題点がある法律、そもそも廃案にしなければならない、私はこう思っているんです。省令をどんどんと、省令でつくっていくということは、この委員会に何もかけないということですよ。何も委員会にかけなくて議論ができますか。こういう問題点があるから、総理、もっと議論をして、それからお出しになったらいかがでしょうかと申し上げた、これが部会の真意なんです。
 そこで、お尋ねいたしますけれども、片山大臣、戦後の混乱期、これはお金がありませんでした。そのときを除いて、郵政三事業は戦後、税金、国民の血税を使ったことがありますか、あるいは国の補助金を入れたことがございますか。
片山国務大臣 その点はありませんが、またその省令の話に返りますけれども、例えば、差出箱や何かについては法律で全部書き切れないんですよ。(発言する者あり)いや、そこで、随時簡便な方法まで認めますよ、基本的にはこうですよということを法律に書かせていただいて、あとは省令で決めさせていただこうと。省令の議論をしていただくのはもう一向に構いませんから。それを我々だけで物を決めるとかなんとかという時代じゃないんですよ。その辺はぜひ御理解を賜りたいと思います。(荒井(広)委員「いやいや、税金の」と呼ぶ)いや、だから、税金を投入したことはありません。
荒井(広)委員 総理、この事実を御承知でございましたでしょうか。御確認させていただきます。
小泉内閣総理大臣 税金ということを考えますと、これは、はっきり言えば税金を投入しているとも言えるんですよ。なぜかといったら、郵便貯金とか簡保特会を集めたお金、財政投融資制度という制度から各特殊法人に回っているわけですね。そして、今特殊法人がどれだけの債務を抱えているんですか。これは国民に回しているんでしょう。結果的にだれが負担するんですか、郵便貯金、この債務、赤字。郵便貯金、預けた人に負担を転嫁するんですか。介護保険、加入した人に負担させるんですか。できないから、最終的に国民が税金を負担するんでしょう。
 考えてみれば、めぐりめぐって、その郵貯で集めた、簡保で集めたお金というのは、国民の税負担じゃないですか。それを考えてみれば、これは、明らかに将来、赤字が出れば税金で負担しなきゃならない大きな制度なんです。郵貯、簡保、財政投融資制度、各特殊法人、そこを考える、その改革をするのが大事だと私は言っているんです。そういう点において、今回の郵政改革というのはまず第一歩なんです。
荒井(広)委員 総理、少なくとも予算総則というところで予算を立てたときに、国会できちんとこれは議論して、特殊法人については政策的にこういう要請があるのでこういうふうに支出をする。そのためには、資金運用部に預かったいわゆる郵貯、簡保、そして、総理が大臣をやられた年金ですよ。郵貯を言うなら年金ですよ、まず。それは、総理が責任を持っておられた。そのお金を資金運用部に七年預託するんです。
 例えて言えば、お母さんが一生懸命働いて郵便局に貯金をして、そして子供の学資保険にでもしたい、学資に使いたいと思ってやってきたところ、ぐうたらなお父さんがそれを引きおろしちゃって、それで、むだなところに使って借金をしてしまったということなんですよ。
 そのぐうたらなお父さんが、まさに悪い意味で言えば特殊法人ですが、必要なものもやっているんです、その特殊法人も。中には、ぐうたらなお父さんがいるということなんですよ。そのぐうたらなお父さんが悪い、放蕩したのが悪いということを言わないで、郵便局に責任をなすりつけるということが問題なんです。
 そのお母さんと、貯金をしたい気持ちに対してどうこたえるんですか。今の金融機関がその責めを十分に果たしていますか。こういうふうに金融不安があるときに、セーフティーネットとしての郵便局をまずなくすような一歩だとか一里塚と言うこと自体が、失礼ですが、庶民感覚から非常に離れております。
 そこで、総理が残念ながら認めざるを得なかった、税金を使っていないということを言わないというのは、アカウンタビリティー、総理としての説明責任がないと私は思います。現実として使っていないです。大臣、もう一回、今総理がそのような説明をしましたが、それで所管大臣として済みますか、はっきり説明責任してください。
片山国務大臣 私が言いましたのは、特別会計でやっていますから、直接税金の投入をしているわけではなくて、特別会計として全部運用してきている、こういうことを言っているわけであります。総理の答弁は、それが郵貯あるいは、簡保はちょっとあれが違いますけれども、特殊法人の原資として資金運用部で運用された、その特殊法人の問題を言っているわけでありまして、郵貯の方は義務委託ですから、今までは義務預託ですから、資金運用部に全部預託する、例外を除いて。こういう仕組みについて、これがよかったか悪かったかということで、去年から、この財政投融資制度は大幅な改正をいたしたわけでありますから、その点は御理解を賜りたいと思います。
荒井(広)委員 結局、大臣、これは使っていないわけですから、それは内閣不一致になりますから苦しいところだと思いますが。総理、現実は、総理の言葉にもありましたが、将来、国民負担は出てくるかもしれない。しかし、それは国会全体で、特殊法人を含めて、いわゆる予算だけでは社会資本を含めてなかなか充実ができなかった。そして、民には失敗もある、市場原理には暴走もある。そこをある一定の、政府が担わなければならない役割を担っていく、そういう着眼もあったわけですね。
 そこで、総理にお尋ねをしたいわけです。今回の法律は、まさに国づくりを考えています。私たち自民党の部会は、政府の役割そのものを議論していると思っているんです。国民一人一人にあまねくだれにでも、心の重さに差をつけず、五十円、八十円で、三日以内で、一週間に六日、速達は七日やっておりますが、だれにでも簡便な方法で郵便を出してきちんと届く、これをユニバーサルサービスといいます。このサービスを守ることが我々の至上命題なんです。そのために、官がいいか民がいいかはその次の次元なんです。どういうやりくりがあるかというのは手段論なんです。
 総理がおっしゃっているのは、民間を参入させることが目的であって、ユニバーサルサービスは目的でないと聞こえますが、どちらが上位概念なんでしょうか。民間を入れることが目的なのか、国民の幸せを守る郵便、これの信書を含めたユニバーサルサービスを守っていくのが上位概念か、総理の、国としてやるべき哲学をお聞かせいただきます。
小泉内閣総理大臣 今回の方針は、民間でできることは民間に任せよう、税金のむだ遣い構造をなくそう、民間参入によって国民に対するサービスの向上を図ろうというのが私の趣旨であります。郵便局をなくせなんというのは一言も言っていません。
 先ほど委員が指摘されたように、税金を使っていないと言うけれども、いかに特殊法人と財政投融資制度、これから国民が多くの税金のツケを負担しなきゃならないか、それを御理解いただきたい。
 広く考えれば、郵貯制度、簡保制度ともにすぐれた制度だったんです。しかし、これからいろいろな制度の改革を考える場合、財政投融資制度というものが今後存続していくべきかどうか、現状のままで。特殊法人のいろいろの経営が今のままやっていけるのかどうか。これを考えなきゃいけない。
 そういうことを考えますと、この財政投融資制度を初め、特殊法人のいろいろ経営形態、これは何を原資にしているかということを考えなきゃいけない。だから私は厚生大臣のときに、年金の資金をいろいろ、採算性も合わない、将来、国民の負担をしなきゃならないような問題に使っているのはいかがなものかということで廃止をさせた。その趣旨に沿っているんですよ。
 私は、郵便局をなくせなんていうことは一言も言っていませんよ。民間参入によってサービスが向上すると思っている。結果的に全国いろいろなサービスが保持される。小包配達を見てもそうであります。郵便局もやっている、民間もやっている。何もユニバーサルサービスが維持されないわけじゃない。
 私は、民間にできることは民間にやらせないという現状のあなた方の意見がいかにおかしなものであったか、それを反省してもらいたい。そう思わないのか。今までの小包配達でさえも、当初は役所は猛烈に抵抗したじゃないですか、民間参入に。しかし、結果的に、特定のサービスを配達することなどによって、今や民間は全国郵便局に負けないほどのサービス網を展開して、国民にサービスを提供している。
 民間参入したことによって、小包の方は、旧郵政省は値上げできなくなったんです。値下げ競争に走らざるを得なかったんです。今回も、私は、郵便が民間参入することによって、もう役所の方は値上げできないでしょう。役所が思っていた以上のサービス展開されると思っています。これが、ひいては国民にいろいろなサービスを展開する。そして将来、民間にできることはどんどん民間にさせることによって、今我々が想像した以上の、郵便局は多様なサービス展開ができるような組織に変わると思っております。
荒井(広)委員 総理がお疲れだと聞いていましたけれども、非常に迫力があるので、私はほっとしております。
 しかし総理、よくお考えください。もう大手含めて、百四十四だったでしょうか、十兆円、国民の血税、返ってまいりませんよ。銀行に入れた血税が返ってきません。十兆円ですよ。
 民間を過信し過ぎていませんか。私たちも民間を信頼はしますが、市場原理で過信して、果たして、アメリカのエンロンの倒産、そして人々がお金主義で生きていって、心の幸せを忘れているんじゃないですか。今の日本の閉塞状況は、まさにそうしたグローバリズムに対して、日本人の心を取り戻そうというための冷却期間だと私は思います。
 そのときに、総理がおっしゃるのは、検証性のない、それは、申しわけありませんが空虚な論理です。思わないのかというお答えに、思いません。なぜならば、七七%がヤマトは宅配便なんです。七百十二円なんです。きょう有冨さん、おっしゃらなかったですけれども、七七%は宅配なんです。七百十二円ですよ。だからできるんです。
 では、小包と五十円と八十円の信書を一緒にできるかといったときに、私たちは、例えばどこに例を持ちますでしょうか、アメリカの例を出しましょうか。アメリカは国営で独占です。アメリカでさえ、何ゆえに個人情報の重要さを言っているか。どんどんインターネットに食われる、そのときに、ある方が郵便を使いたいというときのために、一生懸命維持しているんですよ。
 そして、民間の方が効率がいいとおっしゃいました。総理がおっしゃる、そして秘書官も、大蔵省も、大勢いらっしゃいますが、経費率をとってください、経費率。銀行の経費率、百万円を集めるために幾らの経費がかかっているか。都市銀行で、百万のうち一万円かかっているんです。税金前ですよ、郵便局とイコールにしますから。郵貯の方は、百万円集めるのに四千四百円なんです。半分以下の経費率でやっているんです。こういう実態は、大蔵省の発表ですよ。税金前ですよ、イコールにしているんですから。
 官が効率が悪いなどということは、総理、一般論として言っているのかもしれませんが、郵政三事業についてもっと検証していただきたい。それは、三つの事業を一緒にやっているからなんです。こういったことを範囲の経済といいます。
 その中で、世界に例をとります。大臣からまずお答えいただきたいと思いますが、全面開放をしている国は、大臣、幾つになりますでしょうか。手短にお願いいたします。
片山国務大臣 スウェーデン、フィンランド、イギリス、ニュージーランド、アルゼンチンですが、最初から独占分野を撤廃した国はスウェーデン、フィンランド、アルゼンチンでございます。ニュージーランド、イギリスについては段階的な自由化でございます。
荒井(広)委員 百八十九カ国、UPU、万国郵便連合に入っている国が百八十九なんです。総理、その中で五つなんです。そして、大臣がおっしゃったように、全面参入させているのは三つです。ともにそれなりの条件をかけています。今回と同じなんです。
 それじゃ、おっしゃったアルゼンチン、去年会社更生法の適用で倒産です。イギリス、実質上は早朝、即配だけが、五社だけが入っています。全面参入やっておりません。ニュージーランド、クラーク首相に総理が言われたと思います。国有郵便局の方が成績いいんです。そういったことを考えて、私はここを次に言いたいです。スウェーデン、福祉の国です。個人から個人に差し出す料金は五クローネから八クローネに上がっているんです。
 そこで、お尋ねをいたします。
 総理、先ほど国民の利益、利用者というふうにおっしゃいましたが、利用者とは具体的にどういう方を総理は念頭に置かれるのでしょうか。
小泉内閣総理大臣 利用するすべての人です。
荒井(広)委員 それでは郵政事業の経営が成り立たないんです。
 総理は、公社化をまずはするとおっしゃいました。利用者は、郵政の中では、世界的に、大きく言って三つぐらいあるんです。まず差し出す人、その次にもらう人。差し出す側は、大口、つまりデパートなどのダイレクトメールに象徴される。次は小規模事業者、多少まとまって二十通、三十通。そして最後は一人一人なんです。受ける側も同じようになります。
 総理がおっしゃっている小包分野の活性化は世界に共通しています。それは、集める努力をしないで、どっと持ってきて、そしてその何百円かのものをまた運んでいく、三日以内ではございませんよ、物によって。それをまた一軒一軒に配っていくということなんです。
 郵便のコストというのは、最たるものは一軒一軒運んでいくことなんです。最大手のヤマトでさえ百件のうち五軒しか今配達していないのです。郵政は百件のうち五十五軒配達しているのです。だからお年寄りのところに福祉サービスで声がかけられるんです。本来だったら、これは介護保険の横出しサービスの一つに入れるようなことですよ。
 そういう付加価値まで考えて、総理は果たして利用者のことを考えているのか、これが私たちの大きな疑問なんです。総理、個人が五十円、五十円差し出す、ここを守るというのが万国郵便連合条約の、九九年、改めて北京大会で条文に入れたんです。私たちは、大口の方々が利益目的で出すようなダイレクトメールではなくて、子から父へ、父から子へ、全国どこでも同じ気持ちを同じく送達する、この価値を至上の価値、サービスと考えているからこそ、総理の性急な全面参入についてひどく反対をしているのです。
 二十兆円です、総理、物流の世界は。既に競争ですよ、小包は。二兆円の世界です、独占は。しかし、世界の国が、九九%の国が、独占を認めながら、その中で、料金と重さという部分で多少の効率を競わせながら、しかし、効率よりもしっかり一人一人の幸せを守っていくというところに最大の価値を置いているんです。
 私たち自由民主党は、そういう政党でなければならないんではないでしょうか。少なくとも、一企業に振り回されるような省令やガイドラインなどということはできないはずですから、早急に大臣、ガイドライン、省令、今お考えになっていること、ポストの数もそうですよ、事業計画もそうですよ、お出しいただかなければこの議論ができないではありませんか。そういう議論ができないような法律を総理みずからがお出しになったわけです。これが、私たちの部会が、審議できる内容に値しないので提出することはおやめくださいというふうに言っている中身なのです。
 そして、利用者の利益とは情報保護です。プライベートの情報を守る。ですから、信書、これはDMは信書です、世界的に。きちんとこの定義をガイドラインでも書かなければなりません。こういったことを課題として考えてまいりたいと思います。
 結びになりますけれども、総理、郵便局は郵便局にあって郵便局にありません。きょうも竹富島から女性の方がお越しいただきました。大変な戦後の苦労があった、しかし、国旗を立てて、この島にも郵便局はある、私たちを国は見捨てていないんだ、国は私たちを見捨てていない。こういう、郵便局が廃局につながるような民営化、そして総理がお考えになる全面参入、これについては、少なくとも心ある者たちは賛成はできないのでございます。
 しかし、議論を進めながら、総理も国民の声に耳を傾けていただき、私たちも自分の持論を捨てていきます。一番いい形で、この委員会で、国民を代表する国会で決めたことに総理も耳を傾けていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 郵便局がやっている仕事がなくなるとは、再三言っていますが、あり得ないんです。郵便局がやっている仕事は民間でもできるということを私は言っているんです。
 そして、現に、郵政三事業にしても、役所の郵便局は、貯金事業にしても簡保事業にしても、民間のやっていることをやらせろやらせろといって仕事を拡大してきた。なぜ郵便事業だけ、民間ができるにもかかわらず国家独占にこだわるんですか。片っ方の郵貯、簡保は民間のやっている仕事をどんどんどんどんやらせろといいながら、郵便だけは独占じゃなきゃいけない。
 現に、先ほど小包は届かないと言っていましたけれども、小包でさえも、最初は一部地域しか配達できませんでした。今や郵便局にまさるとも劣らないようなサービス展開、全国津々浦々、過疎、離島、全部配達しているじゃないか、民間で。それは、当初は確かに全地域には配達できなかったでしょう。しかし、国民のサービス向上を図るために、民間の創意工夫、努力によって、今や役所にまさるとも劣らないようなサービス網を展開して、商品を開発して、税金を負担しながらサービス展開しているんです。なぜ郵便事業だけ国家独占にこだわるんですか。自由民主党じゃないですか。民間にできることは民間に任せなさいよといって、みんな賛成しているじゃないですか。なぜこれだけ民間はやっちゃいけないと言っているんですか。その方がよほどおかしい。
 現に、当初は一〇〇%役所がやっていたのが、民間が参入したことによって、小包は既に八割以上が民間がやっているじゃないですか。私は、そういう意味において、むしろ国家独占にこだわるほどおかしい。今までわけのわからないような理屈をこねている。このチラシは国家しかやっちゃいけない、このチラシは民間がいいとか、そういうことを役所が規定する方がおかしい。民間参入しようとするなら、できるだけ窓口は広げて、あとは民間の創意工夫に任せて、役所にできないことを民間がやるかもしれない、民間ができないところは役所がやればいい、柔軟な立場で考えればいいと私は思っております。
荒井(広)委員 もう時間がたちましたので、総理、残念ながら、今総理がおっしゃったところは商業物流の世界です。もっと厳密に、世界の九九%が独占にしているのは、独占にこだわるのではないのです。一人一人のユニバーサルサービスを達成する、その手段として独占を認めているということをもう一度申し上げまして、私の質問を終わります。
平林委員長 次に、松沢成文君。
松沢委員 民主党の松沢成文でございます。どうも総理、ごぶさたしておりました。お疲れぎみだと聞いておりましたが、お元気でしょうか。
 私は、荒井さんの今の議論とはかなり違った考え方を持っておりまして、郵政改革というのは、財政改革、行政改革、金融改革のど真ん中にある、日本の構造改革の中で大変重要な改革だと思っておりまして、それをやらなければいけないと頑張っておられる小泉総理の姿勢には共鳴するところがございます。だから、国会でもともに研究会をつくり、郵政民営化に向けて研究をしてきましたし、そして本も一緒に書いてまいりました。
 しかし、総理、今回あなたの責任でお出しになられた郵政公社関連の四法案、まさしく欠陥法案であります。この法案じゃ、あなたが目指している郵政改革の理念は、私は決して実現できないというふうに考えております。きょうの質問はそういう視点から厳しく行いたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 まず第一に、一里塚発言について。
 これはさまざまな物議を醸しておりますけれども、総理は、我が党の代表者の代表質問に対して、本会議の答弁で、郵政事業の民間参入は民営化への一里塚、本丸への壮大な改革の中でかぎを握る、外堀を埋めたと言っても過言ではない、将来は民営化すべきである、公社化で終わりではない、夏までに取りまとめて検討していきたい、こういう勇ましい明言をされたわけであります。
 それに対して、あなたが任命した総務大臣、お隣にお座りであります、何と言ったか。郵政事業庁の公社化後の民営化事業のあり方についての願望を言ったものだと思うと。あなたの任命された総務大臣にあなたの理念を否定されたわけであります。あれは総理の願望で、政府の見解じゃないと言っているわけであります。
 総理、そんなのでいいんですか。政府の中も自分の改革理念でまとめられないで、みずから指名した総務大臣に、あれは小泉さんのひとり言だ、政府はそんなこと決めていないと正々堂々と言われているわけです。いいんですか、総理、これで。
小泉内閣総理大臣 これは、今出している法案は、郵政公社化のための法案なんですよ。信書便も含めて。その後の問題は、私には私の持論があります。郵政公社化後の議論は、制約いたしません。
 私が総理大臣になって大きく変わったということは、ともかく、郵政公社化の後、民営化は決して行わない、国営堅持だというのが、私の総理就任前の党の公約でした。私が総理になって変わったんですよ。そんな公約にとらわれる必要ないと。郵政公社化後は自由に議論してもらう。私個人としては、民営化はふさわしいと思っている。今でも変わらない。
 しかしながら、これは、今回は郵政公社化の法案なんですから、そのために全力を尽くすのは内閣として当然だと。何ら矛盾しないんです。
松沢委員 私はせんだっての委員会でも総務大臣に申し上げましたが、公社化で終わりの公社と民営化に向けての公社では、公社設計が違うんです。そこを総理、わかっていただかなければ困る。
 例えば、今争点になっている郵便事業、これは、民営化に向けての公社であれば、民間とできるだけ、プレーヤーは違いますけれども、同じ条件で競争するように法案を持っていくべきであります。あるいは、イコールフッティングの問題。国庫納付金についても、あるいは金融検査についても、将来民営化に持っていくのであれば、できる限りイコールフッティングにして民間と競争しながら、民営化の準備をしてもらわなきゃいけない。
 もし公社で打ちどめであれば、むしろ民間の事業者と公社の役割分担を明確にして、できるだけ民業を圧迫しないように、事業を縮小させながら存続するということも考えなきゃいけない。
 あるいは、総理、もし民営化に向かう公社であれば、国営の公社として国家公務員じゃなきゃいけないという議論もおかしいと思いますよ。これまで国鉄や電電公社は公社の公務員でありました。国家公務員ではありませんでした。
 総理、民営化に向かう公社なのか、それとも公社で終わりなのかでは、公社の設計が違うんですよ。そこをしっかり議論しないと、この法案はしっかりしたものにならないんです。だから、私は、そこを政府の統一見解として出せ、それでないとこの議論はできない、こう総務大臣に迫ったんです。
 総理、どうですか。私の意見、間違っていますか。
小泉内閣総理大臣 いや、はっきりしていますよ。
 しかし、ここが、政治上難しい問題を、私があえて、私が総理大臣だから、民営化、ほとんど反対、与野党みんなそうでしょう、私がこういう提案をしたからこそ今議論が活発になってきた。今回、確かに、郵便事業に民間参入させることに対しても、恐らく私が総理大臣でなかったらこういう議論はできなかったでしょう。そういう中で、私は、まず民間参入をさせることが大事だ、そして、今後の議論は制約いたしません。一歩一歩あるべき姿に近づく努力をするのが大事だ。
 確かに、松沢議員の議論ははっきりしていますよ。ここで、公社化で国営のまま変えないという議論なのかどうか、将来、民営化がやれるのかどうかはっきりさせろという理屈はわかります。しかし、現在のいろいろな政治状況、国会の多数の議員の賛成を得ないと、なかなか、長年やってきた、民間参入させることができ得ないという状況を考えながら、いわば綱渡りの状況なんですよ、この法案。
 そういう意味において、一歩一歩努力していくのが大事だ。一〇〇%満足できなきゃ反対だ、こんな簡単なものではありませんよ、何でも。一歩一歩やはり努力していく、あるべき姿に。その努力をしていく一つの手段が今回の法案である。
松沢委員 ちょっと論を戻しますけれども、本会議の代表質問に対する総理の答弁というのはどういうものであるべきなんでしょうか。
 総理、あのとき、衆議院の議長は内閣総理大臣小泉純一郎君と総理を呼んで、総理は答弁に立ったわけですね。これは政府の首長の答弁であります。ですから、この答弁が、あれは総理の政治家としての思いを言ったのであって政府の方針とは違うなんという詭弁に侵されていたら、国会はどうやって議論するんですか。これは国民を欺くものじゃないですか。完全なダブルスタンダードですよ。
 では、総理、もしその悪例を前例とするのであれば、これからの総理大臣の答弁は、すべて、政府が攻撃されると、あれは総理の個人見解だ、政府の見解じゃないと逃げられることになりますよ。そうでしょう。ここが一番大事なんですよ。ダブルスタンダードでない、きちっとした総理としての答弁、これが本会議での代表質問の答弁でないと、そんな逃げ道つくっちゃったら、国会はどうしたらいいんでしょうか。
 総理は、おれにはオフレコ発言がない、すべて本音で勝負だと言っていますよね。完全に国会の場でダブルスタンダードを認めるわけですよ、あれはおれの思いだ、政府の公式見解じゃない。総理はよく、こんな詭弁は小泉内閣じゃ認めない、国会でも手を振り上げて言いますよ。でも、私に言わせれば、そんな政府の詭弁は国会は絶対に認めませんよ。
 総理、いいんですか。もしこれを前例とするならば、これからの総理の答弁というのはトラブルだらけになると思います。攻撃されれば、すぐにあれは個人見解だと逃げられる、それでもいいんですか。
小泉内閣総理大臣 言論の自由を尊重する松沢議員の言とは思えない。
 政治家としての持論を問われたから述べたのであって、今の総理大臣としての仕事、変わってちっともおかしくないんです。民主党の鳩山党首は憲法改正論者だと言っている。しかし、今、憲法改正すべきだとは言っていない。党首討論でもそうですよ。
 私は郵政三事業民営化論者なんです。しかし、今は郵政公社化のための法案なんです。聞かれて、将来、私は、郵政三事業を民営化した方がいいと言うのは、何ら矛盾しないじゃない、総理大臣としても。(発言する者あり)
平林委員長 不規則発言は慎んでください。
小泉内閣総理大臣 あなたがそう言っても、私はそう思っていないんだから。政治家同士の発言として、私の考えを述べる、総理大臣だろうが、衆議院議員だろうが、自由に述べる。しかし、今の、この審議している状況は、その法案のためだ。何ら矛盾しない。どこが矛盾しているんですか。
松沢委員 今は公社の議論をしている、この公社の議論が済んでから今後どうするかの議論に入る、こういうことですね、そうですね。
小泉内閣総理大臣 前にも言ったでしょう、郵政公社化の後の議論は制約しない、自由に議論してもらいたいと。
松沢委員 そうであれば、総理が個人的な諮問機関としてつくっているいわゆるあの懇談会、これはおかしいんじゃないですか。今、総理は、公社化後のことはこれから議論するんだといいながら、御自身は個人的に懇談会をつくって、恐らくあれは、私的懇談会といっても、費用弁償は国のお金が出ていると思いますよ。そういう、評論家の皆さんも集めて、公社化後民営化するその具体案を検討しろと指示しているじゃないですか。それで、八月までにそれを出せとも言っているじゃないですか。
 そうやって公社化までやって、その後議論をしましょうといいながら、御自身がやっていることは、もう民営化に向けてどんどんどんどん進めているんですよ。それは総務大臣にもある意味で失礼だと思いますし、そちらに並んでいる自民党の先生方にだって失礼だと思いますよ。
 私は民営化論者です、はっきり言って。私は民営化の議論を進めるべきだと思っている。でも、今の総理の答弁からいうと、やっていることおかしいじゃないですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 ちっともおかしくない。郵政公社化後の民営化のあり方はどういうものであるかということを識者を交えて議論してもらう、国民に材料を提供する、何がおかしいんですか。制約しない。むしろ、私の言論に忠実なんじゃないですか。おかしいと言っている方がよっぽどおかしい。
松沢委員 これからみんなで議論しようと言っていて、自分じゃどんどんどんどん裏で進めていて、その既定事実をつくっちゃうということにしか見えないんですけれどもね。
 総理、総理大臣という責任ある政治家として、この場に臨んで、私は、三つの選択肢があるんじゃないかというふうに思っているんです。
 一つ目は、きっちりと郵政改革の方向性を示す政府統一見解を出すことであります。そうすれば、国民も、ああ、こういう方向の改革で、小泉さんは今これをやっているのかなとわかります。
 それができないというのであれば、衆議院本会議の発言は、あれはちょっと言い過ぎでした、間違いでした、政府の見解では今ここまでですと言って、発言を取り消すことであります。
 もしそれもできないというのであれば、今、政府内で、あと政府と与党の中で、郵政改革に向けての方向性が全く違うんですから、これは衆議院を解散してそして国民に信を問い直す。
 私は、これが責任ある立場の内閣総理大臣がとる行動だと思いますが、いかがですか。三つのうちから選択してください。
小泉内閣総理大臣 それは松沢議員の考えであるということを、私はあえて否定するものでありません。私には私の考えがあります。時期が来れば国民に信を問います。
松沢委員 今、郵政改革に対する考えの違いを見ても、もうその時期じゃないかと思っていまして、一刻も早い解散・総選挙を願うところであります。
 次に、またこれも大きな議論になっています信書の定義について総理にお伺いします。私もずっと総理の発言も聞いておりましたが、クレジットカードそして地域振興券、そしてダイレクトメール、これは信書ではない、もう民間で十分運んでいただけるものだ、信書であるというその理由づけも見当たらない、これが総理の持論だと思いますが、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 今までの信書の定義はあいまいだったということは認めます。だからこそ、いろいろ民間が配達していたことに対して、旧郵政省がこれは信書だといって嫌がらせというか妨害して、民間の仕事を邪魔していた、私はこれに憤慨していたんですよ。民間ができることをなぜ民間にさせないのかと。
 だから、今回、独断に陥ってはいけませんから、信書の定義というのはある程度法律には書かなきゃいけないだろう、しかし、民間にできることはできるだけ民間を参入させるような方法を、いろいろ各方面の意見を聞いて、今後、法案が成立したら民間が参入できるような形ではっきりさせていけばいいなというふうに思っているわけであります。
松沢委員 信書の定義をどう法案に明記していくか、あるいはガイドラインということに今なっていますけれども、ここが大きなポイントだと思うんですね。
 それで、今までの法案審議を通じての与野党の動きを見ると、どうやら自民党の例えば総務部会の議論なんかでも、やはり信書の定義はきちっと法案に書くべきだ、限定列挙した方がわかりやすくていい、参入業者だってそれを見て判断できる。そして、野党側の質問でもそういう意見が多々出ておりました。
 小泉総理も、いろいろな発言を取り出して恐縮ですが、これは総理が初めての所信表明演説、そのとき我が党の枝野幸男議員に対して代表質問の答弁で答えているわけですね。こう言っています。「かつてのように、商品券は民間企業が配達してよい、しかし地域振興券は民間企業が配達しちゃいかぬという旧郵政省のわけのわからない論理は、小泉内閣には通用しないということを銘記していただきたい。」「過去の郵政省の事業を見ていると、むしろ、民間企業の活動を妨害している面がある。こういうことは、小泉内閣では断じて許さない。」
 私は、あえて、小泉さんの個人の発言ではない、小泉内閣として発言をしていますね、これは政府の発言であるというふうに考えます。
 さあ、そこで、総理、この信書の定義を法案に盛り込む、そして、きちっとどれが信書でどれが信書じゃないということは書き込んでいく、その方向には賛成ですか、反対ですかということと、そうであれば、今まで総理がこんなものは絶対信書じゃない、民間で運べると言っていたダイレクトメール、クレジットカード、地域振興券、まあ地域振興券はもう出ないと思いますが、これは信書の規定から外して民間業者に運ばせる、その方向でよろしいんですね。
小泉内閣総理大臣 私の国会の答弁の発言を引用しましたけれども、そのとおりなんですよ。なぜ商品券がよくて地域振興券がいけないのか、チラシまでこれは信書だといって役所は民間の仕事を妨害していたんですよ。これをおかしいと思わない自民党議員はどう思っていたのかと憤慨していた、だんだん意見を変えてきて、なるほどなとやって、私はこういう法案提出にこぎつけることができた。
 今回、ダイレクトメールといいますけれども、ダイレクトメールというのもいろいろな種類があるんです。定義をはっきり言うと「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。」これは、いろいろありますよ。
 だから、私はできるだけダイレクトメールも、多くの人に見てもらっても構わないというようなものは、どんどん信書の定義から外して民間でできるようにしていくべきだと思っているんです。こういう方向で、法案が成立したらガイドラインを決めていきたいと思っております。
 だから、小泉内閣は、今までのようなわけのわからない、実際民間がやっているのにもかかわらずやっちゃいけないというようなかつての役所の定義というものをやはり反省しながら、見直していかなきゃならぬというふうに思っております。
松沢委員 残り時間も少なくなってきたので次に行きますが、私は、今回の法案の中で、幾つかの最もやるべき改革が含まれていないというところに大変大きな不満を持っているんです。その最たる例が特定郵便局長制度であります。
 皆さん、高祖さんの事件があって、国家公務員である特定郵便局長さんがかなりの選挙運動にかかわっていたということが明らかになりました。そういう意味では、自民党の最も大きな支援母体の一つでありますし、非常に政治的なこともやっている組織なんですね。この特定郵便局長制度というのは非常にユニークな制度で、長い歴史もあるんでしょう。ただ、私から見ると物すごく非効率であります。さまざまな疑惑も多い。
 例えば渡切費、八百億、九百億と言われている。これは今度廃止するんだというけれども、それ自体がなくなるわけじゃなくて、用途をきっちり限定するだけであります。あるいは局舎の借り上げ料、これも実勢価格と比べればちょっとおかしいんじゃないかと思うような料金を払っているということも言われています。あるいは公務員の選抜制度、これは一般の国家公務員試験を受けずに、ある意味で特別なやり方で、採用方法も示されずに、試験の内容も公表されない、公務員の試験がですよ。この点についても全く改革がなされていない。
 人件費だけとっても、局長さんですから、かなり高い人件費を払わなきゃできません。でも、せっかく国の直営、郵政事業庁から公社に大きな制度改革するんですから、こういうところにしっかりメスを入れて効率化しなきゃ改革じゃないですよ、総理。例えば、一万九千局のうち一万三千局が赤字だとも言われているんです。これは、いろいろやり方を考えて、局長さんはその地域で一人にして、ほかを出張所のような形に効率化できれば、私はもっともっとリストラは進むと思いますよ。そういう改革、全くやっていない。
 国民は総理に対して、自民党をぶっ壊すぐらいの改革をやるんだ、そう言ったから期待したんですよ。今の郵政制度の中で最も自民党的であって、そして非効率であって、さまざまな疑惑を生んでいるこの特定郵便局長制度に何のメスも入れないで、それで改革と言えるんでしょうか。総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は、特定郵便局であろうが普通郵便局であろうが、郵便局の職員が大変努力しているということは大いに認めているんです。これからもそれぞれが努力しなきゃならない点もたくさんあるし、民間が参入することによって今以上に努力しなきゃサービス競争に勝てないという面も出てくる。だから、今までの反省すべき点はどういう点かと、今議員の指摘も含めて、私はこの見直しをするのに一番いい方法が民間参入だというふうに考えているんです。
 今後民間参入することによって、いやが応でも、今の特定郵便局のみならず普通郵便局も含めて、郵便局の三事業というのは改革に進まざるを得ないと思っておりますので、改むるべき点は今後大いに御指摘いただきたいと思っております。
松沢委員 もう一点、新しく公社に移行する、そこで、今までの国営事業とは、おのずと周辺の関連機関についても私は合理化ができると思うんですよ。
 例えば郵政監察、今千百四十数名いる。これは、郵政公社に司法権限を有する監察官を配備する合理的な理由がまだあるのか。身内には極めて甘いと言われています。不正や汚職を摘発できない、あるいはする気がないんじゃないかとも指摘されている。罰則規定がしっかりあれば一般の警察で対応できるわけであります。千百名以上いるこの郵政監察には何らメスが入っていない。
 そして、中間管理職。今までの国営の郵政事業だったら、地方郵政局というのはある意味で必要だったのかなという気もします、選抜試験なんかはそこでやっていたみたいですから。しかし、今回、公社になります。これは五千人以上ですよ。そして、きょうは郵政企画管理局長さん来ていると思いますが、郵政企画管理局というのもある。これは、国営の事業であったから大きな局まで中央官庁に必要だったわけですよ。それを今、公社に移行して、ある意味で行政改革を進めたわけでしょう。企画管理局なんという局に四百三十六人いるとか、これだけの人が必要なんですか。中間管理職を全くリストラできていないんです。
 総理、郵政事業の実務には、二十七万人の方が働いているんです。しかし、その二十七万人を維持していくために二万人以上の管理部門が今いるんですよ。二十七万人の現業を維持するために二万人以上の管理部門、必要ですか。ここをリストラしないで何が行政改革なんですか。今回の公社化では全くメスが入っていない。どう思いますか、総理は。
片山国務大臣 まず、特定局のお話がありましたが、特定局につきましては、特推連という業務組織があるんですけれども、これの全国やブロックの組織は全部廃止することにしました。それから、渡切費につきましては、もう既に答弁させていただいておりますが、本年度からやめまして、共同事務センターをかませる、チェックする、会計検査院への証拠書類の提出等の新しい仕組みを導入いたしまして、全体としては、国民の皆さんから見て納得ができるような仕組みにいたしたいと努力いたしております。
 そこで、今、監察官のお話や中間管理職のお話がありましたが、監察官は、これは専門的な、大変技術的な監察ですから、普通の警察官というわけにはなかなかいかない。だから、この活用は今度の公社では考えないといけません。
 それから、中間管理職云々のお話がありましたが、今、全部の三事業で二万人の人を、リストラと言ったら語弊がありますが、少なくしよう、郵便事業だけで一万五千人を考えているわけでございまして、一年ではいきませんよ、これは何年間かかかりますけれども、ぜひそういうことで、とにかく今度は、公社は場合によっては民間と競争するわけですから、いろいろな意味で。国民の目から見て、しっかりやっている、こういう体制、仕組みにするように、今後、公社は来年の四月発足ですけれども、我々も十分な検討をしてまいりたいと考えております。
松沢委員 もう最後の質問になりますけれども、今私、幾つかの指摘をさせていただきましたが、総理、この公社化法案、よく、民間業者が郵便事業に参入すると、自由にやらせると、いいとこ取りされちゃうと。いいとこ取りと言いますよね。私は、この公社化法案は、公社いいとこ取り法案だと思うんです。まさしくそのとおりです。
 例えば、国営の公社としています。国営の恩恵にあずかっているんですね。身分は国家公務員でいこう、これは安定した雇用につながるんでしょう。国の保証も離さない。郵貯、簡保が優位になるに決まっていますよね。
 普通、国営になると経営の自由度というのは制限されるんです。それにもかかわらず、公社の経営が危なくなるといけないから出資を認めろだとか、いろいろなことを言っています、これはこれからの議論ですけれども。
 民間と同じ仕事をしているのに、競争条件、一緒じゃありません。例えば、国庫納付金は、この法文ですと先送りされるようなことになっています。現に片山総務大臣は、中期経営計画が出る四年間は無理だろうみたいな発言をしているんですね。金融庁の検査、これも、しっかりと検査マニュアルに従ってやるかどうかなんかは書いてありません。政令で決めていくと書いてある。嫌なところはみんな先延ばしですよ。
 先ほど言った郵貯、簡保の規模の問題。もう世界一でかい金融機関になっていて、それが金融市場を大きく支配しちゃっている、このいびつな形。こういうところは何にも改革は入っていません。特定郵便局長制度しかり、あるいは郵政監察の制度しかり、既得権益はどっぷり守って、市場で競争するときは、できるだけ経営に影響を与えないように制限をしてもらう。私にしてみれば、公社いいとこ取り法案としか言いようがありません。小泉さんの改革の理念、本当にこれでいいんですか。公社の焼け太りだと思います。
 私は、大変失礼な言い方ですが、官僚や抵抗勢力の皆さんにあなたの改革の理念が骨抜きにされている法案だ、そう思いますけれども、総理はいかがでしょうか。
小泉内閣総理大臣 骨抜きじゃないんですよ。改革への骨が入ったんですよ。現状、抵抗、反対、多い中を、民間参入阻止が国会議員の全体の中でいかに多いか、今まであなたもよくわかっていたでしょう。特定局長だけじゃない、全逓の労働組合、全郵政の労働組合、選挙運動、その票を期待して、国会全体が、民間参入、今まで一言も言わせなかった。こういう構造というものを改革しなきゃいかぬ。
 なおかつ、財政投融資制度から特殊法人全部にわたる改革の第一歩なんです。民間参入、今まで国会でこれだけの議論をしたことがありますか。いまだに、私が提案していながら、民間参入相ならぬという議論が多い。
 民主党がそうだったら、民主党をまとめて賛成してくださいよ、一歩でも。
 だから、私は、そういう中、自由民主党が今賛成しようと努力してくれている。いかに自民党が改革勢力かということがわかるでしょう。自民党も公明党も保守党も、やはり改革しなきゃいけないということを理解して、たとえ野党が反対しても改革に一歩前進、二歩前進していこうという努力をしているのが、今、与党、自民党、公明党、保守党じゃないですか。
 私は、これは法案が成立して郵政公社化になれば大きな一歩前進だということを、民間参入によって国民は理解してくれるのではないかと確信しております。
松沢委員 時間ですので。どうもありがとうございました。
平林委員長 次に、安住淳君。
安住委員 民主党の安住でございます。
 きょうは、前半で荒井議員と松沢議員がそれぞれの立場から議論をしているのを私、伺っておりまして、やはり総理、率直に申し上げまして、質疑も始まって二十時間近くたつんですけれども、同じところを行ったり来たりするんです、質疑が。
 これはなぜかというと、私もきょう聞いていて非常に感じたんですけれども、大きな問題は二つあると思うんです、この法案には。一つは、総理、やはりどっちの方向で行くかということがないので、そこから先の議論が全然進まない。それは確かにそうなんです。ですから、我が党の松沢委員は、そういう意味では民営化論者で、総理と同じかもしれません。そういう方から見ると、これは多分やはりいいとこ取り法案だということになるんです、公社化。
 そして、なおかつ信書便に関しては、現実には、きょうヤマトの有冨社長にもおいでいただいて、みんなで話を聞きましたよ、総理。そのときのことは後で私は質問しますけれども、入ろうと思っている会社自体がこれを、民間を官業化させる法案だと。だから、これでは全然、要するにハードルが高くて入れないと言っているわけですね。そういう点からいったら、非常に中途半端なんです。
 他方で、荒井議員もそうなんですが、やはり公共性を大事にしたいと思っている人もいるんですよ。それは全然、私はそれをどっちがいいとか悪いとか言っているわけじゃないんですよ。そっちから見ますと、総理、これは民間クリームスキミングのおそれのある法案だと思っちゃうんですよ。これは公共性をだめにするのではないか、それから田舎切り捨てじゃないかということですよ。
 つまり、そこは総理、合理的に考えることができることとできないことがあって、つまりワンストップサービスを含めて、おひとり暮らしのお年寄りの方を含めて、利益にならない仕事も確かに郵便局は今もやっているわけですね、田舎では。ですから、そういう点を考えると、つまり方向性が見えなくて、お互い、両者から見ると極めて中途半端。方向がないから、中途半端に多分映っているんですよ。
 私も正直迷っています。迷っているんです。つまり、私は、それは公共性を本当に維持するのであれば、多分違う形になるだろうと思いますよ。それから、民間参入といいますか、競争原理を本当に取り入れてやるんだったら、こんな法案になるわけないんですよ、公社化なんか私はあり得ないと思っていますから。そのときは多分、特殊会社になって、そういうプロセスの中で株を持って、どんどんそれを順番に放出していって、最後は、逆に言えば、経営の自由なものも何でもやってもらう、公社にも。そして、民間として立ってもらう。極端なことを言えば、ヤマトとも競争してくださいということになると思うんです。ところが、今回のものは一貫した理屈がないんです。見ようによってはお互いのいいところを適当にミックスしてつなぎ合わせているから、どっちから質問されても中途半端な答えになるんではないかなと思うんです、これは私の感想なんです、総理。
 だから、逆に言うと、総理、やはり個人の政治家と今の政治状況という、私はまだ議員になって日が浅いので、どういう政治状況を言っているのかわかりませんから、今の政治状況の中でこういう法案になったという、まずその政治状況を詳しく教えてください。
 なおかつ、私が今申し上げましたこの考え方でいうと、これは総理らしくないということなんですよ。最初から、一貫性があるんだったら、完全民営化でどんと来てくださいよ。それを、一里塚だ、二里塚だと言っているから、じゃ、その先どうなるんだ、本当にそうかといったら、何かよくわからないことを言うから、これ質疑にならないわけですよ。質疑にならないから、私は野党を代表して総理来てくださいと頼んだんですから。来たのにますます質疑できなくなっちゃったら、法案終わってしまうということなんです、もう会期末ですからね。総理、そういう状況を考えて、まず政治状況と、私が今言ったことに対するコメントをぜひいただければと思います。
小泉内閣総理大臣 議員の言うこと、中途半端と言っておりますけれども、民間参入拒否論者からいえば、これは民間参入、入ってくるからけしからぬという理屈は立つでしょう。逆に、完全民営化論者から立てば、もっとすっきりした形にしろということが言えるかと思います。
 しかしながら、政治的な状況からいえば、急進的な改革よりも、まず、じゃ、民間参入したらどういう形になるのかという姿を見せるということも私は大事ではないかと思っております。民間参入してサービスが悪くなるのか、公共性が維持できなくなるのか。私はそう思わないんです。電電公社にしても、急激に完全民営化の道を歩んだわけではない。今回も、公社の形を維持しながらも、民間参入することによって、ああ、かなり民間でも今まで郵便局がやっていた仕事をできるんだな、サービスも低下しないな、公共性も維持されるなということを、姿を見せることによって、ああ、郵便局はなくならないんだ、郵政民営化というのは郵便局はなくならないんだという姿を、一歩でも二歩でも安心感を与えるために漸進的な改革も必要ではないかということから考えれば、私は両方からの、完全論者からいえば不十分という指摘は当然出てくると思いますが、民間にできることは民間に任せようという、私の、小泉内閣の方針からすれば、これは今まででき得なかった分野に踏み込むということで大きな意義がある法案であるというふうに私は思っております。
安住委員 総理、今から、午前中に有冨ヤマト運輸社長がここでお話ししたことを私は丁寧にちょっと説明しますから、何をおっしゃっているか、それをよく聞いていただきたいんです。
 つまり、総理、確かに民間参入をすることによるメリット、つまりパブリックなところに競争原理を入れたいということですよね。それはしかし、結果として入れることが目的なんじゃないですよね。入れることによって、利用者がもっと安いお金でもっといいサービスが得られる社会にならないとだめなんですよね。そういうことですね。
 そのときに、今度の法案でいうと、実は過去の経緯をちょっと言わせてもらいますけれども、これは、私は野党ですから、十二月十四日ですよ、去年の。あの時点で総理と総務大臣は、ある一つの合意をしましたね。このときに総理、総理は全面参入方式ということを総務大臣に言われたんじゃないですか。
 つまり、私ちょっと気になっているんですけれども、実は部分参入から徐々に入っていって、三年後、五年後に完全民営化というのは、私は個人的にはそういう考えなんですよ。総理、全面参入なんということを途中で変に持ってきたから、この法案、おかしくなったというふうに私は思うんですよ。その論理展開、今からするんですけれども、違いますか、総理。
 実は、部分参入から徐々にやっていった方がスムーズにいった可能性だってあるんじゃないかなと思うんです。しかしこれは、全面参入がまずありきで、私は、全面参入しても、まあそれはいいかもしれませんが、ハードルを、だから無理に高くしようということを総務省側は逆に考えたんじゃないかというふうに疑っているんですよ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 もうちょっと具体的に言ってくれませんか。
安住委員 つまり、特定の信書便に、例えばバイク便とかそういうので首都圏というふうな参入のことは僕はあると思うんですよ。そういうことから徐々にやっていって、何年か先には、公社も例えば一本立ちができるようになって、ある程度民間にいっても大丈夫だというときになって全面参入しようという考え方だってあると思うんですよ。つまり、総理が言っている漸進的というのはそういう話ですか。
小泉内閣総理大臣 それも一つです。もう一つは、最初から全面参入できたら全面参入してもいい。両方あるんです。
安住委員 ですから、去年十二月に片山総務大臣をお呼びになったときに、総理はその時点で全面参入の法案を出してくれというふうに指示なさったんじゃないですかということです。
片山国務大臣 御指摘のその十二月十四日は、実は公社化研究会の結論を出すことが近づいてきまして、公社化研究会での議論を総理に御報告して、総理のお考えも聞いたわけでございます。直接指示とかなんとかという話じゃなくて、公社化研究会は、これは安住委員御承知のように、三つの案を検討しておったんですよ。条件つき全面参入と今言われた段階参入と部分参入と。外国の例をずっと引きながら研究しておりまして、そういうことで、こういう状況でこういう検討をしております、こういうことを私は申し上げたわけでありまして、そこで今までの考えを変えてどうこうということじゃございませんで、最終的には、競争の限定をつけるんじゃなくて、全面参入をしてもらおう、そのかわり、何度も言っておりますが、ユニバーサルサービスというものは確保してもらう、こういうことにいたしたわけでございます。
安住委員 やはり全面参入というものをまず前提に法案づくりに入ったと判断せざるを得ないんですね。それはいいんですが、そのときに、総理がおっしゃっているように、全面参入できるような法案だったらいいんですよ。ところが、けさも聞きましたし、ここには非常にこの問題に詳しい方がいらっしゃるので、なかなか全面参入するという会社はないですね、この法案では。今のところはゼロだと思いますよ。
 ですから、では何が全面参入を阻んでいるのかということに私は議論を移したいと思うんです。
 総理、本当にこの法案の、例えば信書便法、三十七条ありますけれども、この法案をごらんになって、民間会社は全面参入できると信じておられますか。いかがですか、率直な御感想で結構でございますから。
小泉内閣総理大臣 私は、民間企業に対してあれやれこれやれとは言うつもりはございませんが、まず門戸を開放したい。そして、民間のことですから、いろいろそれぞれの企業によって違いますが、仕事のチャンスがふえるな、この分野に国民のいろいろな要望があるなと思えば、私は必ず参入してくると思います。そして、一社が参入して利益を上げれば、また他社は考えていく。
 当初、小包の配達だって、だれもが、こんな一つ一つ小包を各家庭に届ける、利益が上がるわけないと思っていたわけですが、それが意外や意外、利益を上げるような形に発展してきたんですから。私は、まず民間参入の基盤をつくっておく、そしてその後の状況を見きわめながら今後のことを議論すればいいんじゃないかというふうに思っておりますから、この法案が成立すれば、必ず、ヤマト運輸はどうかわかりませんけれども、民間企業は一つでも二つでも参入してくると思っております。
安住委員 総理、すると、あれですか、民間参入を求める信書便法案は、ガイドラインの作成時点で、民間がより入りやすい方向に総務大臣を指導してガイドラインをまずつくっていくということですか。ちょっと一点だけ確認をさせてください。
小泉内閣総理大臣 できるだけ民間が参入しやすいようなガイドラインをつくりたいと思っております。
安住委員 実は、今の質問をなぜしたかというと、この部分については、有冨社長が参考人でいらっしゃって、おもしろいことを言っているんですね。その部分のことで言うと、答えています。玄関、今、門戸と言いましたね、門戸開放した、玄関だけはあけたと。これに対して有冨さんは何と言っているかというと、玄関を広げたんだから、例えばヤマトならヤマト、おまえだけ入ってこい、とにかく入りなさいと言われたら、民間の論理からいったらばとても入れませんとさっき答えているんですよ。
 では、なぜか。なぜかというと、我々は条件闘争をしているわけではありませんと、民間会社は。顧客を第一にやっていて、そして、あえて言えばユニバーサルサービスもやろうと思えばできます、赤字のところも出るでしょう、しかし、赤字のところをだからといってやめたら信用がなくなるから、そこはちゃんと全部全域をフォローすることによって、全体の利益が上がるんだったらば入ってもいいとは思っていますと。
 しかし、信書便法で、今回の法案を見るからに、いいですか、具体的なことを言っているんですね。例えば、信書についての概念をむしろ拡大して規制をする方向に行っているんじゃないかと。それから、信書物についても、長さ、幅まで、九十センチや四キロを超えるとか具体的なところまで定義をして、今やっている仕事の分野までむしろ信書に入れてしまって、結果的には国や一部の会社が寡占状態になるんではないかと言っているんですよ。これは私じゃないですよ、さっき言いましたよね。寡占状態をつくっていったらば、いい競争の中で自由な発想に基づいて企業が、民間が言ってみれば競争し合うような状況にはなり得ないと言っているんですよ、総理。
 だから、総理は力を込めて、これで必ず参入するといったって、現実に法律を悪いけれども総理よりもよく知って調べている業者は、とてもこの法案は民間を官業化させるための法案としか思えなくて、今は無理ですねと言っているんです。総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは有冨社長ですか。それは私、話を聞いたことがありませんが、そういう発言をなされたのならば、今も配達できるものが逆に信書扱いされてできなくなってしまう、自分たちの仕事が狭められて、むしろ公社の分野の方が広がるという危惧の念を表明されたということですね。
 そういう危惧の念について、私はじかに聞いたわけではありませんが、そのおそれというものは、若干理解できない面もないわけではない。というのは、今まで嫌がらせとか妨害を受けていましたから、民間は。しかし、今回はそういうことないです。できるだけ民間が参入しやすいようにする法案が今回の法案ですから。
 私は、そういう意味において、今の信書の定義につきましても、今まで民間ができ得たことをさせないというような意図は毛頭ないし、そのようなことは決してさせないと私は断言したいと思います。
片山国務大臣 安住委員、参入すれば、信書の範囲がどうであろうが全部できるんですよ。信書ももちろんできるために信書便に入ってくるんです。信書以外はもともとできるんですから。だから、そこのところは、信書の範囲がどうこうだから参入できないということはないんですよ。参入すれば全部できるんです、信書の範囲がどうであれ。信書以外はもともとできるんですから。ぜひひとつ御理解を。
安住委員 そんなことは私は百も承知です、今有冨さんの話を、大臣、紹介してあげているんですから。だけれども、入るであろうと予想されている会社の社長は、参考人質疑できょう午前中、そういう話だったんですよ。
 ただ、総理、お言葉を返すようですけれども、必ずそういうふうに、参入できるようにするとかおっしゃるんだったら、具体的に、法案のここのここはこうするからとか、ガイドラインのここでこういうふうな直し方をしますとかと言っていただかないと……(発言する者あり)省令と言ったの。それは出してもらわないと、多分民間の会社だって、総理のかけ声倒れに終わっているんじゃないかと思っていると思いますよ。
 例えば、この法案では、特定信書便事業で、オートバイの、ソクハイというのは会社の名前ですからあれですけれども、オートバイ業界は参入に意欲を示していると言われているんです。
 その中のある会社がおもしろいことを言っているんですよ。特定地域、例えば東京都内を限定とした即配をやるとなったときに、今のままでも条件が緩和されれば入ってもいいと言っているんですけれども、条件が絶望的に難しいというようなことを言っているんです。東京都内を三時間以内で配達しろと言っているらしいんですよ、法案の中では。総理、多分知らないでしょうから私が説明しますと、無理らしいんですよ、無理、オートバイで三時間というのは。どうするかといったら、スピード違反しても配達しろということですかねという話なんですよ。
 片山大臣、そんなこと言ったって、大臣はこれを五時間以内に見直すとか何かという発言をちょっと閣議後か何かなさったという話を聞いたんだけれども、出してきたときは、まだこれは直してもないんだけれども、総理が言っている、旧郵政省のわけのわからない論理は小泉内閣には通用しないと、あなたの出してきた法律はこうなんですよ、どうですか。
片山国務大臣 今の安住委員のお話は、特定信書便事業、これは三時間以内か千円以上か、こういう条件を書いているわけですが、これは、公社化研究会で、事業者の皆さんにヒアリングをやったんですよ。そうしたら、そのときに、千円以上で提供している現在のバイク便の延長上をやってほしい、または五百円、千円程度の水準での二時間以内のサービスがいい、こういう御意見なんですよ。
 そこでまた、法律をつくるときに、今度は役所の方がヒアリングをやったんですよ。そこで、三時間というのはそういうことで、本当は二時間なんだけれども、あるアンサーを見て三時間にしよう、千円以上だ、こうしたんですが、例えば、これ以上の時間をやりますと全部やっちゃうんですよ、信書便を。そうやるといろいろ議論になる、クリームスキミングになるんです。
 だから、そこのところが大変難しいのですが、私が記者会見で言いましたのは、実態を見てみよう、やってみて、それでそういう弊害が出ないなら、将来の問題として検討の余地はあるということを申し上げたわけであります。
安住委員 総理、笑っていらっしゃったけれども、だけれども、三時間と五時間なんて、私から言わせてもらえば、部分参入は私はいいと思っていますから。それで、ちょっとお話を聞くと、なかなか東京都内で、郵便局の皆さんも、配達するのに大変なことがある、だから少々入ってもらう分にはいいと思っている。しかし、入るときに、総務大臣はそうおっしゃったけれども、民間の会社は、テレビや新聞なんかで会見していて、全部顔出しのクレジットで名前まで言ってこういう話をしているということは、総理、やはり法案に総理の目が行き届いていないんじゃないかと私は思っているんですよ。それをちゃんと総務省なり指導しないと、小泉内閣の方針はわけのわからない論理になっちゃうんじゃないですか、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は、総理として、民間参入できるようにしなさいと大きな方針を出して、そしてあとは、よくいろいろな方々の意見を聞いて可能な方法を考えてくれという指示を出しているわけであります。
 ですから、今この委員会でいろいろな御批判もあるでしょう、こういう点については今後の検討課題だと思っております。
安住委員 ぜひ検討してください。
 ただ、総理、大方針を出せば、確かに総理もお忙しいですからいろいろなことあります、自分のところの閣僚があんな、非核三原則を踏みにじるような発言までして、委員会にまで出されて、いろいろなことがあるから、この問題だけとは思いません。しかし、総理は、この法案に対しては大変自分の、御自身の思いが強いわけですね。なおかつ、去年からいろいろな指示をなさっているわけです。
 しかし、それが実際、現実に履行されているかどうかをチェックするのは、やはりそこは総理の責任じゃないですか。私はそう思いますので、細部にわたって、私は賛成するかどうかわかりませんよ、細部にわたってその方針を貫くんだったらそういう形でやらないと、この委員会のように堂々めぐりを繰り返す。片山さんだってかわいそうですよ、総理は多分こう言ったと思いますという答弁、二十何回しているんですから。だからおいでをいただいたということです。
 そこで、次の問題なんですけれども、出資条項について伺います。
 つまり、私が最初に申し上げましたように、行き着く先がどっちの方向かわからないと、実は、出資条項の話は私は逆に言うと難しいと思っているんです。これは確かに、総理、こういうことだと思うんですよ。私なりのこの出資条項に関する問題点の整理の仕方を今から申し上げます。
 民間に、特に郵便事業にかかわることに対して郵政公社に出資を認めたらいいのか悪いのか、法案には今回書いていないです。しかし、総理、もし公社をこのまま、未来永劫とは言いませんが、民営化の段階を踏まないで公社のままにするということであれば、私はこれは逆に言うと、官僚の天下りの問題とかファミリー企業の問題が出てきますから、これは私はやるべきでないと思う。
 ところが一方で、これは賛否あるかもしれません。しかし、私は、私もNHKにおりましたから、そういう意味では同じようなことを経験したことを見ています。もし民営化をすることを前提にやるんだったら、私は逆に、経営の自由度の手足を縛ったらいろいろな意味で公社の構造改革はできないんですよ。だから、子会社をつくることによって経営の合理化を図らせたり、変な話ですけれども、人員の適正を図ったり、またそれで結果的には雇用を守るという方法があるんですよ。
 ですから、出資条項一つとっても、総理、その先の、松沢委員が言うように、方向を示さないと、現状でつくるかつくらないかで修正を出す出さないという議論も今あります。しかし、私は結論から申し上げて、その方向によっては出資をしない方がよかったり悪かったりがあるなと思っているんです。
 これは総理の出された法案ですから、どっちが総理の行く方向なのかを、だから、出資はやはり修正案を出して認めるべきだ、そういう根拠なのか、出さない方がいいというのかは総理がやはり判断しないといけないんですよ、総理。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 この問題については今財務省と総務省が協議しております。その協議を見守りながら、今後……(安住委員「国庫納付金じゃないですよ、出資ですよ」と呼ぶ)出資のでしょう、出資の条項、まだこの法案にはないんですから、今後の検討課題であり、そしていかに対等の立場から競争を促すかということで考えていけばいいのではないかと思っております。
安住委員 いやいや、違うんですよ。それは全然違うんですよ。多分国庫納付金のことと間違って答弁なさっていると思うんですけれども。総理、これは子会社をつくるという、天下りの先をつくって、それでファミリー企業をつくって、いろいろな意味でのあしき弊害をまたつくるんじゃないかという危惧があるんですよ。
 しかし一方で、さっき私が言ったでしょう、経営の自由度を高めて、いろいろなことをやって公社を強くするには、逆に言うと、出資条項というのは必要かもしれないですよ。ですから、それは大蔵省との協議じゃないでしょう。総理が方向を出さなければいけない話で、これは公社化の中の話ですから。片山大臣、答弁しないでください。これは総理に聞いているんですから。総理、いかがですか。
片山国務大臣 この問題は、法案の立案の過程でも大変大きな問題で、財務省といろいろ協議しまして、今安住委員が言われるような懸念もあるものだから、どういうケースの場合にどういう形で出資をしようかということが詰め切れなかったんです。詰め切れないものをそのまま法案化するのもいかがかと思いまして今回は見送りましたが、将来の経営の自由度やいろいろなことを考えますと、やはり必要性は私は十分あると思いますので、今後とも財務省その他関係の役所と協議いたしまして、合意に達すれば、しかるべき時期にはお願いすることもあるな、こう思っておりますが、今回の法案には、総理が答弁しましたように入れておりませんので、御理解賜りたい。
安住委員 総理、この話は政治が決めなくてどうするんですか。あなた、いつも言っているじゃないですか、政治主導でやるって。何でそんなことを、大蔵省との調整をしているからって、あなた、そんなこと言っちゃだめですよ。一番重要な話ですから、これは。公社に勤める側から見たって、これを認めてもらえるのかもらえないのかで制度設計全然違いますよ。総理、御自身でちゃんと答弁してください、政治家なんですから。
小泉内閣総理大臣 政治として結論を出したんですよ。
 技術的な議論だから、出資が適当な事業の範囲、あるいは公社にふさわしい出資制度とするためにはなお検討すべき課題がある。だから今回の法案に盛り込まなかったんですよ。本件について引き続き検討を進める必要がある、これは政治決断なんです。
安住委員 総理、私が言っている話はわかっていただいているという前提で私は話をしているんですよ。
 だから、この先は大変な話なんです。この先がわからずして、ただ、結局は、行き方の方向が見えないから宙ぶらりんにしているという話じゃないですか。それで賛成も反対もしようがないというのが現実なんですよ。そこをぜひわかってもらわないと、この法案が何を目指しているのかが見えないということだけ申し上げておきます。
 次に、総理、こういうことはどうですか。ユニバーサルサービスの維持、今度はその話にします。
 ユニバーサルサービスの維持をするときに、Aという会社とBという会社とCという会社が、全国展開を一社でやるのは大変だから、企業連携をしながらやっていこう、企業連携をしながらユニバーサルサービスを維持しようと思って企業提携をした、今回の法案ではそういうことは認められるんでしょうか。片山大臣、そんな答えを教えないでください。総理、これは重要な話なんですよ。
小泉内閣総理大臣 それは全体でユニバーサルサービスが確保されるということが重要だと思います。
安住委員 重要ですよね、総理。それは重要だと思うんですよ、私も。
 片山大臣、認めてくれるんですか、これは。
片山国務大臣 これも法制化の過程で検討いたしました。
 ただ、それが、責任が不分明になるとか、ジョイントのぐあいがどうだとか、いろいろな議論がありまして、我々もちょっと自信が持てなかったものですから、今回の法案には入れておりませんが、今総理が答弁しましたように、今後の検討課題の一つだ、こういうふうに思っております。
安住委員 これは、総理、実は冒頭我が党が質問に立ったときに、玄葉委員がこの話もやったんです。
 私は思うんですけれども、これを、例えば責任の所在とかといいますけれども、例えば民間の一部上場企業の何社かがそうやってネットワークの構成をするということで、例えば全面参入という場合には、今の法案をやはり改正するしかないんですよ、もしやるとすれば。総理、いかがですか。どういうふうにお考えですか。それぐらい方針は出せるんじゃないですか。
小泉内閣総理大臣 それは、将来そういうことは十分あり得ます。
安住委員 来年からはできないということですか。いつの時点から。
小泉内閣総理大臣 今回の法案ではできませんが、民間参入の状況を見て、改正すべきは改正すればいいということであります。
安住委員 これは、総務大臣、責任の所在が問題ですか、それとも、つまりここに営利主義とユニバーサルサービスの接点という問題があるわけですよね。まさにそのユニバーサルサービスを貫徹します、それで利益も上げます、しかしこれは、反面、公共性を大事にする方から見ると、ここの堰を切られたら、地域間連携の企業でだあっといきますよ。どっちがいいんですか、どっちのおつもりでやるんですか。
片山国務大臣 連携の仕方、した場合の責任のとりぐあい、問題が起きたときの処理、いろいろなケースを考えまして、ちょっと今のところはこの仕組みを入れることがどうかなということで今回見送りましたが、状況を見まして、しかも我々が今心配していることのきちっとした心証が得られるならば、それは検討の余地がある、こういうふうに考えております。
安住委員 公社化法案の中で一番問題になるのは、総理、私は、これは民営化をする側からの論理を言っているんですから、ずっと。
 最後に聞きますけれども、民営化をしたい側というか、するべきだという側から、これはやはり行司と相撲取りが同じ人間というのは、総務省とそれから郵政公社ということに対して非常に批判がある。そうですよね、総理。
 それと、これはこのまま続けますか、それとも何か新しい組織をつくって、許認可を――片山総務大臣、そんな教えないでください。いいですから。余計なこと言わないでください。総理と話しているんですから。
 総理、ここをどうしますか。ここだけ総理の考えを教えていただけませんか。
片山国務大臣 これも既にお答え申し上げましたが、我が国は、何度も言いますけれども法治国家でございまして、法律に基づいて監督する、事業の認可もするしチェックもするし、しかもそれは法律に基づいてバランスをとっていくことで、我が国は議院内閣制ですから、国会に対して責任を持つ大臣がそういうことの仕事をやることが我々はベターだ、こう考えて今回の法案を出させていただいた次第でございます。
安住委員 よくわかりませんでしたから、また細かい議論はやります。
 さて、それでは、公益性、パブリックな面を重視する側からの考えに基づいて何点か、時間がないので、私は疑問を呈します。それに総理、ぜひ答えてください。
 まず、総理、郵便局はどうあるべきでしょうか。つまり、例えば一人一人のお年寄りの面倒を見ている地域もあります。ワンストップサービスもやっている。いろいろな、三種、四種のサービスもやっている。つまり、これからです、これから、こういうこともなおかつ続けてもらって利益を出してもらって、できれば個人事業というか商売もやられて、コンビニエンスストアも経営する。こんな都合のいいバラ色の郵便局に全部がなるなんて私は考えられないものですから。そういう点では、総理は、この郵便局、つまりそれを将来どういうふうな形に持っていきたいのか、そこをお答え願いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 これが公社、郵政事業庁が郵政公社になって、民間が参入してどういうサービスが展開されるかという点については、ある期間が必要だと思います。
 また、現実にどういう民間企業が参入してどういうサービス展開がされるか、どのような商品が国民に提供されるかということをよく見なきゃいけないと思いますが、私は、郵便局の役割、特に今までやってきた郵政三事業の役割というのは将来も多くの国民が必要とする、される事業だと思っております。
 さらに、郵政三事業以外の仕事もしたいという郵便局が出てきても不思議じゃないと思っております。その点については、どのように住民の、国民の利益に合うようなサービスを展開するか、商品を開発するか、まさに郵便局自身、郵政公社自身、そしてそれに参入してきた民間企業の創意工夫によるところが多いものではないかと思っております。
安住委員 何といいますか、郵便局に何をしてもらいたいのか。そういうところで私はこの法案の行方というのはわかると思うんです、実は。つまり、合理的でないもの、非合理なものもある程度やってもらわないといけない、そういうふうに思っていらっしゃるのか、いやいや、これはもう採算ベースでいくしかないだろうと思っているのかでこれは全然違いますから、そこはぜひ、より明確な方向を出してもらいたいと思うんですね。
 そこで、総理、経営の自由化の問題なんですが、その中で、実は片山総務大臣は、総務大臣、答えなくて結構ですから、能力主義でやっていくんだ、企業会計を導入すると。これは私、非常にいいことだと思っているんです。だから、それはどんどんやってほしい。しかし、身分だけは国家公務員の扱いにしていくというのはどういうことでしょうか。能力主義を唱えたら、国家公務員の身分で、給料体系は年功序列、こんなばかな話、私はないと思いますよ、総理。
 だから、逆に言うと、働いている側から見たって、これはどっちの方向なんだろうかと。公の公務員的な身分を与えられて仕事をしろと。しかし一方で、能力主義で、企業会計まで入れて出せと。これは相矛盾しますよ、総理。
 ですから、総理、そこはもっと丁寧に方向を出された方がいいと思いますよ。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 公社に移行した後は、公社が企業的経営はいかなるものかと。それを進めることに対して妨害してはならないし、阻害要因をつくらないというのは公社自身の努力による。
 私は、公社が企業的経営を取り入れて、いかに国民の必要な事業を展開するかということに鋭意努力していただきたいと思っております。
安住委員 いやいや、ですから、それで国家公務員という身分で縛りつけるのはどうなんですかと言っているんですよ。逆に、国家公務員であれば、ちゃんと公務員として利益目的の商売をやらないでということになってしまうんじゃないですか。そこがやはり中途半端なんですよ。
小泉内閣総理大臣 国家公務員がサービスしないというのはちょっと偏見ではないだろうか。(安住委員「いや、利益と言ったんです」と呼ぶ)国家公務員が利益を上げるような努力をしても大いに結構なんです。これは、民間が公共的利益を考えないというのはおかしいのであって、民間企業だって公共的利益をやるんです。ある面においては損な分野にも進出することによって全体で利益が上がればいいというのは民間企業でも考えるんです。
 ですから、公社になったとしても、国家公務員だとしても、これは、利益を上げるようにいかに努力するかというのを考えるのは私は当たり前で、何ら批判されるべきことではないと思っております。
安住委員 いやいや、私の質問をよく聞いてください。
 公務員という身分を与えて実績主義だ、成績主義だとやったって限度があるんですよ、総理、だって何号給と決まっているんですから。民間会社の実績主義というのは違いますからね。三十歳で社長になることもあるし、一千万もらう人もいれば、五十歳になったって六百万の人だっているんですよ、企業というのは、競争の中で生きているんだから。
 つまり、先ほどから申し上げているように、方向が決まらないから、いずれにしたって中途半端なんですよ。だからそれは働く側だって公社で頑張ろうという気持ちにならないと思うんです。ある程度早い時点で方向を出さないとだめです。
 そこで、最後に政治的な話をさせていただきますけれども、法案修正の動きもあります。総理、これは信書便を含めて、もし民間参入にとって後ろ向きと思われるような修正がここから出てきても、あなたは容認しますか、しませんか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 仮定の議論ですが、民間参入を阻害させるような修正には応じません。
安住委員 それは自民党の総裁としてそういうことをおっしゃっていらっしゃるんですか。
小泉内閣総理大臣 自民党総裁であると同時に、内閣総理大臣として発言しているわけです。
安住委員 それでは、要するに、この法案は、修正を仮にやったときに、総理自身というか、世間から見ても後ろ向きと思われるような修正を与党の側からするということはあり得ないということですか。いかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は、与党は民間参入を阻害するような修正案を出すとは思っておりません。
安住委員 八代先生は、総理はよく総裁と相談しろと言っていますけれども、同一人物ですから、それは同じ人間の答弁と私は考えます。
 それで、総理、いよいよ来週で国会も終わります。どうしますか、この法案。私どもとして見れば、まだ十三時間や四時間しか審議していないから、総理も呼んだし、まあそれは、与党がどうしても採決するんだというんだったらそれはいいですけれども、これは常識で言えば廃案か継続ということですけれども、いかがなさったら望ましいんですか。
小泉内閣総理大臣 国会が早くこの法案を成立させていただくことを期待しております。
安住委員 私は重要法案だと思っているんです。重要法案は、総理も自民党の国対副委員長が長かったから、平均四十時間でしょう、これは四つあるから百六十時間なんですよ、衆議院。
 毎日来てくださいよ。総理がいてもかみ合わないんだから、総理がいないともっとかみ合わないんですよ。総理、何度かお呼びをしますし、この法案のことについては答弁いっぱいしたいでしょう。いかがですか。ここに来ていろいろ議論したいんじゃないですか。私ももうちょっと、きょうはちょっと歯切れの悪い総理を見ました。歯切れの悪い総理では、これはもっと支持率おっこちてしまいますから、サッカーに行ったって支持率落ちるんです。ですから、歯切れのいい答弁をしてください。それで我々は、それに基づいて出してきた政府の案に対して、賛成か反対かちゃんと決めますから。
 賛否が決められないような中途半端な今の法案には反対するということだけ申し上げまして、終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、桝屋敬悟君。
桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。
 総理から先ほど、賛成するように努力をしている公明党、こう御紹介をいただきまして、そういう立場なのかなと思いながら、複雑な気持ちでこの席に立たせていただいております。
 三人の同僚議員の総理との議論を聞きながら、しみじみ今思っておりますことは、きょう総理にお出ましをいただいたことはよかったな、こう正直思わせていただいております。こんな早くに総理が来られてどうなるかな、きょうこの委員会、紛糾してとまって、私まで質問の番が回ってこないんじゃないか、こう思っておりましたけれども、本当に、ある意味ではすれ違いの議論もありましたけれども、かみ合った議論もあったように思いますし、少なくとも私には、総理の本音といいますか、心が見えたような気がいたしまして、その辺を最初に申し上げたいと思います。
 私ども公明党は、小泉内閣のもとで、小泉さんが叫んでおられる小泉改革をぜひお手伝いしたい、そんな思いで今日まで、微力ではありますが、頑張ってきたつもりであります。今、小泉政権が誕生して、世間からはその成果が大きく求められているという状況にあることを、我々も理解をしております。ただ、同時に、小泉改革という改革の作業、その作業の手順といいますか、一つ一つのその具体的な姿というものも、しっかり国民の皆さんに理解をされながら進めなければならないのではないか、こういうふうに思っているんです。
 私は、もう批判を恐れずに、正直に言います。小泉総理の物の言い方といいますか、国民に対するお話し方というのは、ちょっと早いところがありまして、我々も困っているところがあります。
 今回のこの問題も、きょう一里塚発言が随分出るかと思いましたけれども、一部出ましたけれども、私ども公明党は、今回のこの郵政の法案については、今までの政府の検討した結果からすると、まずは公社化をきちっとやり遂げる、そして、公社化のなったその郵便の事業、郵政事業というものがきちっと行われると。まあ、その前には、これも小泉さんが早々とおっしゃったけれども、民営化への見直しをするしないという議論がありましたけれども、そういうことではなくて、まず公社化をきちっとやる、それだけでも大変な変化でありますから、そのことをきちっとやるということが、私は、極めて大事なことではないかな、こう思っております。
 そんな思いできょうこの席に立ちまして、総理のさっきの話を聞いて、一歩一歩理想に向けて努力をしていくんだ、こういうお話をされた。一等最初に、まずはとおっしゃったから、冷やっとしましたけれども、一歩一歩というこの表現は、まさに我々の思いでありまして、そこは極めて、国民の皆さんに理解をしていただく、小泉改革を理解していただくという意味では、きょうの総理の御発言というのは大事な発言ではないかな、私はこのように理解をさせていただきました。
 総理、これから、郵政公社になる、日本郵政公社ができる、その中でどういう事業が展開されるか、それだけでも全国大変な動きなんだということをぜひ御理解いただいて、できるだけ、この法案の中ではどうなるのか、その先ばかりをおっしゃらずに、いろいろな野党の皆さんの意見もあるけれども、ここをどうするのかということをぜひ念頭に置いていただいて、そういう御説明をこれからもお願いしたいと思っておりますが、最初に総理のお考えをお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 桝屋議員は、私が思っていることをよく表現してくれて、さすが、いつも与党として激励してくださるなと感謝したい気持ちでいっぱいであります。
 まず一歩が大事なんですよ、一歩も出せなかったんですから。数年前の議論を見てくださいよ。民間参入まかりならぬという議論、政治家の間ではほとんどだったでしょう。それがようやく、民間参入をさせようということがこうして公で議論される。そして公社化の法案が提出された、信書便法案が提出された。まあ賛否両論いろいろあるのは承知しておりますけれども、あるべき改革に向けて、千里の道も一歩からという言葉があります。まず一歩を大きく踏み出すための法案なんです。
 そして、その姿を見てから、これから、民間でも十分できるなと思えば、今まで民間はやっちゃいけないという方も、ああ民間やっていいんだなという議論に変わってくれるかもしれないし、あるいは、民間で足らざるところは国がやるべきだというのだったら、民間の足らざるところを国がやらなきゃならない分野も出てくるでしょう。ともかく一歩踏み出して、踏み出した後どういう事業が展開されていくかということを見てからその先の議論を進めても遅くはないと私は思っております。
桝屋委員 先ほど総理は、まさに綱渡りだ、そういう心境を吐露されましたけれども、そこは私どもも十分理解をしてこれからの議論をしたいと思っております。
 郵便の郵という字は、辺境における村々といいますか、そういう意味を持つ、そして便というのは、まさに郵便を届ける、そして都合がいい、利する、こういう意味があるというふうに聞いております。
 私も、地元の郵便局に参りまして、本当に今の郵便局が地域の中で、特に私は田舎でありますから、山口県や中国五県回っておりまして、それぞれの地域でそれぞれの郵便局がどういう役割を果たしているのか、その姿を十分に見させていただきました。そうした郵便局の役割、機能というものは、公社後においても変わってはならないと私は思いますし、ぜひ維持、継続をしなければならない機能であるというふうに思います。そのことは、総理、やはり総理がおっしゃるとどうしても都会の、町場の雰囲気に聞こえてしまう。それは地方の皆さん方の率直な気持ちであります。
 総理は先ほど、郵便局員の努力はよくわかっている、こうおっしゃった。ありがたい言葉です。本当にそこをぜひ御理解いただきたい。郵便の持つ意味というものをしっかり理解いただいて、これからも、公社後においても、今日まで果たしてきた郵便局の役割というものはぜひとも続けるべきであると私は思っております。
 先ほど総理は、民間でも郵便局はできるのではないかという発言もありましたが、これも少し早過ぎる気がするんですね。そこは説明が要るんだろうと思うんです。どうぞ、公社後における、当面の公社後における郵便局の、特に地方における、辺境とは言いません、地方における郵便局の役割ということについて総理の御決意を伺いたいと思います。
小泉内閣総理大臣 よく郵便局と民間の金融機関を比較される方がありますが、私は、一般国民から見れば、郵便局のいわゆる金融の仕事は、民間の金融機関に比べてはるかに親しまれ、信用されていると思っております。また、郵便局の局長さんなり職員の皆さん方の日ごろの努力というものは多くの国民から信頼され、そして民間の金融機関よりも頼みやすい、入りやすい、あるいは相談しやすいという状況にあるということは、私もよく承知しております。
 現に、私自身も、こう見えても、特定局長さんから今でも支持されているんですよ。私は、特定局なり郵便局を必要ないと言ったことはないし、まして敵だとか思ったことは一度もない。現に私は郵政大臣もやっていますし、祖父は逓信大臣もしたんですから、一番郵便局とかかわりの深い、郵便局の皆さんと一番親しいと言っても過言ではなかった。まあ最近、民営化論者だということから敬遠している方も出てきていましたけれども、私は、郵便局の役割というのは十分認識しているつもりであります。
 ただ、これが果たして国家公務員じゃなきゃできない仕事かということについて疑問を持っていたし、同時に、郵便貯金、簡易保険、この資金というものが本当に有効に使われているのか。財政投融資制度、特殊法人制度というのが、これからも果たしていいものかどうか。今までは確かに大きなプラスの面を持った部分が多いと思います。しかし、成功してきた例が二十一世紀の時代において、果たしてこのまま続けていって成功するかどうかというのはまた別問題であります。
 そういうことから、私は、今の制度を見直す際には、これから特に特殊法人改革、財政投融資制度を見直すのだったならば、郵政三事業の分野にまで踏み込まないと、これは改革が完結したとは言えないのではないかということから、前々からこの問題についていろいろ議論をしてきたわけでありますので、今回もまずは、国家公務員しかできないという分野に、初めて今度は郵便事業に民間に参入してもらう法案であります。
 公社になって、民間企業が参入して、果たしてどれだけのプラスマイナスがあるのか、見てもらうのが先決だ。そして、その後に、これからのあり方について私は私なりの考えを展開します。これに対して国民がどう判断するか、国会議員がどう判断するか、それはこれからのことである。この後の展開については自由に議論していただいて結構だと思っております。
桝屋委員 総理が後半部分をお話しされると冷や冷やするわけでありますけれども、全く自由に議論を我々もさせていただきたい、こう思っております。
 最後に一点だけ、三種、四種の政策的な料金の減免制度、これは総理、本会議でお伺いしまして非常につれない御答弁をいただいたような気がしております。
 三種、四種、話は出ておりますが、確かにこれから具体的な手順は、手続は踏襲をされていますから仕組みは残っているわけでありますが、先ほど出たように、点字については無料というその法文がなくなったということもあります。総理のさっきの御説明では、値上げなんかこれからできませんよと。いろいろと厳しい財政の中で、それはもう政策料金については値上げになるのは火を見るよりも明らかだと心配されるのが自然でありまして、ここはやはり一工夫が要るのではないか、こう思っておりますが、特に、総理、点字図書館、これはもし料金が有料になって上がるというようなことになると、厚生労働省としても新たな手だてを考えなきゃいかぬ、こんなこともあるわけでありまして、ぜひ工夫を検討いただきたい。我々も考えたいと思っておりますが、最後にお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 三種、四種で大変御心配をおかけしておりますが、法案の書き方は無料と書いておりませんが、無料はもちろんあるんですよ。ただ、これは公社に決めさせるということです。公社の決めたものを総務大臣が認可、恐らくこういう手続になっていると思いますけれども、我々は、経営努力によって公社に頑張ってもらいたい、こういうふうに思っております。
桝屋委員 これで終わりますが、昭和三十六年以降続いてきたこの制度、今の総務大臣のお答えでは、私はやはり無理ではないかという気がしておりまして、引き続き検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
平林委員長 次に、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。一回生でありますので、初めて小泉総理と質疑させてもらいますが、よろしくお願いいたしたいと思います。
 総理は、幾つかの改革の旗印を掲げ、絶大な国民の人気を博し、昨年四月の就任以来一年有余を経過いたしました。総理は、郵政三事業の民営化に大変な熱意を示しておられますけれども、この三事業の改革は、五年前の橋本行革で既にその基本方針が制定されていたと私は認識しております。
 そこで、まずお伺いいたしますけれども、総理に就任以来構造改革を唱えておられますけれども、国民のだれの目にもわかる小泉改革の成果は何であるのか、その最大の成果と思われるものを示していただきたいと思います。
    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕
小泉内閣総理大臣 まず、改革なくして成長なしということを大方の国民は理解してきてくれているんじゃないかなと思っております。今までの成功例が必ずしも今後続くとは限っていない。今までかち得てきたいろいろな権益、利益、既得権、これがそのままいって果たして維持されるのか。そうではない。やはり新しい時代に即応するためには、今までの既得権を手放さなきゃならない分野もあるのではないかということを、私は多くの国民が理解してきてくれているのではないかと。
 同時に、昨年四月、私が総理に就任する前は、道路公団民営化、こんなことできるわけない、住宅金融公庫廃止、こんなことはできるわけない、ましてや郵便事業に対して民間参入、とんでもないという議論が国会の中では多数意見だったはずであります。それが着々と、現に道路公団民営化の法案がつい先日成立いたしました。住宅金融公庫、これは民間にできない。廃止を宣言した途端、住宅金融公庫にまさるとも劣らない商品を民間の金融機関が開発してきました。今、郵便事業の民間参入。民営化の議論はしてはいけないというのが去年の三月までの意見でした。今、堂々と民営化の議論ができます。
 こういうことを見ても、着々と構造改革は進んでいる。一年や二年で改革が実現するとは思っておりません。私は、この改革路線を今後も着実に進めていきたいと思っております。
黄川田委員 道路公団の話等々ありました。そしてまた、この郵政の関係も、小泉さんの抵抗勢力との力関係、これをはかる象徴的なものだと思いますけれども、しかしながら、第三者機関ですか、道路公団に関しても委員会のメンバーの人選、これをしっかりと総理ができるか、私は疑問に思うところもあります。私は、総理の最大の成果だと思うのは、ハンセン病判決の上告を取りやめた決断だと思っております。
 お話のとおり、構造改革は順調に進んでいるとのことでありますけれども、景気を一つとっても、地方にあっては底入れの感は全然ありません。NHKのアンケート調査で、きょうあたり発表していると思うんでありますけれども、景気の回復、実感となっていないというのが現状だと思っております。総理は、どちらかというと、官邸と外国に身を置きまして、国内の隅々の諸課題に興味がないように思われます。声を上げれば大都市の再生であります。私は、もっと全国の現場の生の声を取り上げる、そういう聞く耳を持つことが大事だと思っております。
 さて、最近総理が提出されました重要法案につきましては、政策理念の軸足のぶれが目立つと思っております。今回の郵政公社法案の公社化後の民営化問題についても大変な軸ぶれだと思っております。
 四年前に制定されました中央省庁等改革基本法第三十三条の法解釈は別にいたしまして、三年前の参議院で野田元郵政相は、公社化後、民営化等の見直しは行わないと基本法を解釈して、そう答弁されております。
 そこで、まさに大きな軸ぶれでありますので、私からも改めて、国民一人一人にわかりやすい形で、公社化及び民営化の方向性に関し、総理の基本的見解を重ねてお伺いいたします。
    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕
小泉内閣総理大臣 確かに三年前の参議院において野田聖子元郵政大臣は、中央省庁等改革基本法を解釈して、公社化後、民営化等の見直しは行わないと答弁しておりますが、私は、これは公社化までのことを規定したものだと理解しております。
 公社化後のことは自由に議論してもらいたいと再三表明しておりますし、この考えは今も変わりません。しかし、今は公社化までの議論をしているわけですから、そこを混同しないでいただきたい。公社化後はどういう経営形態にすべきか、それは私は妨げるものではないと思っております。
黄川田委員 公社化後の形は議論を妨げることはないということでありますので、それでは、今般この総務委員会で議論しなければならないのは、きっちりとした、しっかりとした、足腰のある、民間に負けない骨太の公社をつくりたい、だからしっかり議論してくれということでよろしいわけですね。
小泉内閣総理大臣 公社化された後、民間に負けないような、国民のいろいろな要望にこたえ得るサービスを公社も展開してもらいたい。今、そういうための法案を提出しているわけでありますので、その後のことは実際公社ができた後にいろいろまた議論をしていただきたいと思っております。
黄川田委員 後の話ではなくてその前の、前段の話でありまして、しっかりした公社をつくってくれ、そういう意味で理解してよろしいわけでありますね。
 それでは、先ほど来の議論の中で、郵政事業は三事業ありまして、郵便事業もありますけれども、貯金の事業、簡易保険等の事業がありまして、これが、財投制度の中で特殊法人等に資金が垂れ流しされたんじゃないかとか、あるいはまた、私は自治体職員から国会に来ておりますので、自治体とすれば、地方債を発行いたしまして、簡易保険の還元融資としていろいろお世話になった部分もあります。しかしながら、借りた金はきっちりと利子をつけて返しておるのでありまして、それはお互いさまなのでありますけれども、総理の、公社化は公社化にしまして、民営化の中で郵貯、そして簡易保険がどんな形になればいいという姿を国民にわかりやすく示していただきたいと思いますし、そのときの郵便局というのはどんなものになっておるのでしょうか、お尋ねいたします。
小泉内閣総理大臣 郵政公社化後どういう議論が展開されていくかは人それぞれによって違ってくると思いますが、まずは、私は、郵政三事業は民営化できると前々から思っておりましたから、今までの総裁選挙におきましても、総裁候補としてそういう議論を展開してきたわけであります。
 そして、総理に就任したからには、やはり責任ある姿を示さなきゃいけないと思いまして、就任後、郵政三事業についてそのあり方を考える懇談会を設立いたしました。その中で、郵政民営化というのはどういうものだろうか、あるいは郵政三事業が民営化した後の姿はどういうものかというものを示すことも必要ではないかと思って、この懇談会を発足させ、今議論をしてもらっているわけであります。近いうちに、その郵政三事業が民営化された姿が示されると思います。私が考える、独断と専行というものは排さなきゃいかぬ、できるだけ多くの識者の考えを取り入れながら、その姿を私は国民に提供して議論の素材に供したいと思っております。
 この姿については、私は、時期が来れば国民の前に明らかにして、多くの国民の方々にも、ああ、郵政三事業の民営化の案というのはこういうものか、決して郵政三事業がなくなるものではないな、郵便局がなくなるものではないなという姿を見せることができるのではないかと思っておりますし、これは公社化後の話であります。公社化前の話ではないんです。そこの点は誤解されないようによろしくお願いしたいと思います。
黄川田委員 総理がこんなに長く答弁してくれるとは思いませんでしたので、項目をいっぱい用意したのでありますが、時間が少なくなってまいりました。
 触れられた懇談会のことについて、では、ちょっとお聞きいたしたいと思います。
 総理が主宰する懇談会は、民営化の要否を含め、基本的方向づけをめぐって議論が大きく分かれていると聞いております。そしてまた、田中座長もまとめ切れないほど混乱し、この六カ月もの長い間、正式な懇談会を開ける状態にないとも聞いております。そこで、多くの国民が議論の成果を直視しておるわけでありますけれども、それにもかかわらず、研究会と称しまして、今の時代に合っていない、一切情報公開を行わないというのは不自然であると考えておりますけれども、いかがでしょうか。そしてまた、これは一里塚以前の総理の指導性が今まさにここで問われておるのではないかと思っております。私のこの意見に対して、総理の見解はいかがでしょうか。求めておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 決して密室でやっているわけではございません。この郵政三事業に関する懇談会というのは公開しているはずであります。そして、この議論も今後の行財政改革に大きな影響を与えるものでありますので、私は、結論が出次第、多くの国民にわかりやすいように、わかる形で発表したいと思っておりますし、その具体案を見て多くの国民がどう反応するか、また議員が賛否両論どういう議論を展開していくかというのはこれからのことではないかと思っております。
黄川田委員 懇談会の中で民営化を具体的に議論してもらうということでありますけれども、今、公社化ということで始まっているわけでありますが、では、この公社は何年ぐらいもたせるべきという形の中で我々は議論したらよろしいのでしょうか、その辺の長期見通しはあるのでしょうか。
小泉内閣総理大臣 百年以上国営でやってきたこの郵政三事業、そして公社化になって初めて民間が参入する。その姿を見てどういう議論が出てくるか。今から何年後にこの形態がどのようになるかというのはちょっと早計じゃないでしょうか。まずはこれが公社化になってからどのような議論が展開するか、いろいろな議論を聞く必要があるし、私自身は民営化論者でありますけれども、これについてどういう反応が出るかというのはこれからのことではないかと思っております。まずは公社化させるのが先決だというふうに考えております。
黄川田委員 いずれ、立派な公社をつくってくれということでありますね、そうでないと立派な民営化もできないということでしょうから。では、一生懸命立派な公社をつくるために我々も議論したいと思います。
 それでは、今回の法案提出をめぐりまして、政府・与党内の確執が報道されておるところであります。党内議論を超越した総理の決断でありますか、もう最初から荒井委員と壮絶な戦いが始まりましたけれども、ある意味では、政治主導ということで総理は頑張っておるわけなんでありますけれども、これがまた一夜にして官房長官が、連立与党の幹部に、今回限りのこととしてくれということで謝罪しております。そこで、このような迷走ぶり、それについて国民はどうも冷ややかな感じで見詰めておるのではないかと私は認識しておりますけれども、総理の認識はいかがでありましょうか。
小泉内閣総理大臣 改革に冷ややかだったらこんな形で提出できませんよ。本来、議院内閣制だったら、私は提出する前に与党から全面的な賛成を受けて提出したかったんです。しかし、それが残念ながらできなかった。こういう事前審査抜きの法案提出は全く異例だということは、私承知しております。しかしそれは、私自身、この法案は構造改革に必要だから提出しているのであって、今までは賛否両論、異論がいろいろあることは承知をしておりますが、最終的には、私は、与党の皆さんはこの法案に賛成してくれるということを期待しております。
黄川田委員 時間も残り少なくなりました。
 午前中、参考人質疑をしたわけなんでありますけれども、この郵便事業の民間参入に関しましては、都市部の地域参入は別にしまして、ユニバーサルサービスを遵守した全国参入を希望している会社は現実には一社もないのではないでしょうか。この参入条件を法案で明確にしないで後で政省令で定めるとして行政裁量の余地を多く残す政治手法は、小泉総理の政治理念にそぐわないのではないですか。また、このような重要法案の準備不足を棚に上げまして会期延長を論ずるというようなことは、立法府、国会を軽視すると言わざるを得ないのでありますけれども、あわせて総理の見解を求めておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 国会の状況については、国会がこれからどのように決めるかということはお任せするしかございませんが、私は、多くの国会議員が、必要だという法案については成立させるための努力をしてくれると思っておりますし、また、その成立させるために必要な審議時間を確保するためにはどういうことが必要かということは、国会議員の皆さんもよく理解してくれているのではないかと思っております。
 そういう意味において、会期が非常に限られておりますけれども、その辺の状況は国会議員の皆さん方にお任せしなければならないのではないか。私は、できるだけ、今国会提出している法案、全部成立するよう努力するのが総理大臣の責任ではないかと思っております。
黄川田委員 総理は、さまざまな法案を出してありますけれども、最近目立つのが、立法府にげたを預けないで、議員たちにきっちりと立派な法律をつくってほしいというような形の中で議論をさせないで、政省令にゆだねる場面が本当に多いわけなんです、裁量行為といいますか。先ほど来、隣にいたら、省令を奨励するのか、ショウレイ内閣だというふうな話もありますけれども、やはり本当に大事なものは時間をかけて、国民一人一人の目線に立ってしっかりした議論をして、三方一両損じゃなくて、三方がみんな得をする、そういうやり方が最も必要ではないかと思っております。
 時間でありますので、終わります。ありがとうございました。
平林委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 私、本会議でも代表質問で総理に御答弁いただきました。その後、当委員会でも二回にわたって、それぞれ、片山総務大臣を初め総務省の見解などを聞いてまいりました。
 そこで、一番最初に、私、確認しておきたいという問題。もちろん法案の中身等についての総理の見解もお尋ねしたいと思いますけれども、先ほど来、二人の委員から、いわゆる一里塚問題と短く言っておきます、公社化のための法案だ、その後の問題は私の考えもある、これはもうずっと小泉首相、そういう答えだ。そこで、私、そのことを聞きたいんじゃないんです。
 実は、五月二十一日の本会議の答弁の中で、この民間参入法案というのは、この公社化法案によりまして、将来、郵政三事業の民営化につなげていきたいと。このつなげていきたい問題なんです、私がきょう確認したいのは。つまり、今回のこの四法案は、いわゆる民営化への一里塚だ、こういう答弁だったわけです。
 私、片山大臣に、六月四日の当委員会ですけれども、この問題でお尋ねいたしました。それについてはほかの委員からもいろいろ質問がありましたので、大臣は、何度も申し上げましたけれども、この公社化法案はつなぐ法案じゃないのです、こう答えられました。いわゆる民営化への一里塚じゃない、こういうことです。政府の答弁書にも、私としては民営化に向けた一里塚であると考えておりますというのは、政治家の持論を述べたものとしている。
 つまり、そういう言いわけが成り立つかどうか、これは問題ですけれども、それはともかくも、ひとつ、一政治家ではなくて内閣総理大臣として御答弁いただきたいのは、小泉首相は、つなげていきたい、そういうものだと。それに対して、片山大臣は、そうじゃないんだと。これは、今論議しているのは民営化につなげていく法案なのかどうかということですね。その真意をお尋ねしたいんです。
 つなげていく法案として論議するとなると、またこれは論議の方向が違うんですよ。いや、つなげないでここで切って、それは後の問題だ、これはつなげるんじゃないんだということになれば、片山大臣のような答弁ですね、これはまたそれなりの方向があるわけです。その点をはっきりしていただきたい。
小泉内閣総理大臣 まず、今回の法案は郵政公社にするための法案なんです。その後のことについて、私はかねがね、郵政三事業民営化論者であります。その郵政三事業民営化の必要性を訴えて、総裁選挙に打って出て、そして総裁に選ばれ、総理大臣に就任しているわけであります。これはいまだにその考えに変わりありません。
 しかしながら、今回、郵政公社化の法案のための審議に当たりまして、これを言ってはいけない、あるいはおかしいという議論がありますが、私自身、矛盾するとは思っておりません。将来の話と現在の話、当然、政治家として一つのあり方を述べるのは、私は自由だと思っておりますし、私の改革論議の中でも、いろいろ分野において改革が必要だと思っておりますが、郵政三事業の分野、そして財政投融資制度の問題、さらには特殊法人全体にわたる問題、これが今後の日本の大きな構造改革に必要だと思っていますので、これは自分の持論を述べたものでありまして、その点の、今の法案の審議と将来の私の持論を展開するということについては、私自身、矛盾するとは思っておりません。
矢島委員 これ以上論議しませんけれども、私がお尋ねしたのは、このつなぐというのは非常に重要な問題だと思うんですよ、言葉のあやだとかなんとかいうことがありましたが。実はこの公社化法案は民営化につなぐ法案だというのか、そうじゃないのか、この辺がこれからこの中身を論議するのに非常に重要ですが、私、持ち時間二十分しかありませんし、たくさん大臣にお聞きしたいし、総理にもお聞きしたいので、先へ進めていきたいと思います。
 小泉首相はやはり郵政改革ということを言っておられる。私もこれは必要だと思うんですよ。この郵政三事業、今のままで、このままでいいかといったら、決してこのとおりでいいとは思いません。ただ、私は、それを言うのならば、つまり、改革を進めていって、そして、この郵政公社というものを本当に国民から信頼されるような公社として発展させていく、それを言うのならば、今やらなきゃならないこと、先ほど松沢委員の方からも話がありましたが、私、去年一年間、高祖問題あるいは例の渡切費の流用問題というのを何回も取り上げてまいりました。そういう腐敗と癒着の状況、こういうところを改革するということを国民は求めているんですよ。
 ところが、でき上がったこれを見ましたら、焼け太りというお話も今さっきありましたけれども、国会のチェックというものやあるいは国民の監視、こういう目が届かないようにする、まさに官僚の身勝手法案だと私は言わなきゃならない。自民党をつぶすか、それとも小泉内閣をつぶすかだ、こう首相は言いました。ところが、この法案を見ますと、自民党をつぶさずに、国民のセーフティーネットやあるいは国民の郵便ネットワークをつぶすものじゃないかと私は見るわけです。
 つまり、特定郵便局長と自民党との癒着、これはなくなるのか、ここにメスが入るのか、そういう改革になっているのか、ぜひこの点についてお答えいただきたい。
小泉内閣総理大臣 郵便局というのは、私は、大変住民に密着して、それぞれの地域の重要な事業として支持されていると思うのであります。これを癒着と見るか、国民の中に入って親切にいろいろな事業を展開しているかというのは、それぞれの見方があると思いますが、私は、やはり癒着と言われるような批判がないような改革をしていかなきゃならない、その点は大事だと思っています。
 今後、できるだけ多くの国民の中に入っていって、国民から信頼され、必要とされるような事業展開のためにいろいろな改革が必要だ、また、いろいろ今まで御指摘されたような批判を受ける点というのは改めていく必要がある、それは異論がございません。
矢島委員 私は、国営でいくのなら、やはり国会のチェックをきちんとできるような法案の中身にすべきだという点、これは、次の質問に入っていきたいと思いますが、この点だけ指摘しておきたいと思います。
 そこで、民間参入法案、これは民営化を持論とする首相の指示のもとに全面参入の法案となりました。私は、これによって国民利用者へのサービスがどうなるのか。向上するのか。よくなるのか、悪くなるのか、こういうところが本当に国民的議論としてやっていく必要があると思うんです。
 そこで、総理が指示した郵便事業への全面参入と、それからこの郵便サービスの関係について、何点かお尋ねしたいと思います。
 まずその第一は、これは第六回の郵政三事業のあり方を考える懇談会で総理が発言された中身ですけれども、国鉄料金は均一料金ではない、距離により電話料金が違うように郵便も均一料金である必要はない、地方に行けば高く、近ければ安くてもよい、こう発言されたという記録があるんです。
 例えば、東京二十三区、近いところへここから出したらはがきは二十五円で行く、ところが、地方へそれを出せば百五十円になっちゃうよというような、近ければ安く、遠いところは高くなる、そういうお考えなのかどうかをまず確かめたいと思います。よろしくお願いします。
小泉内閣総理大臣 今回の法案は、全国均一料金で提供されることが適当であるという考え方から、この法案を提出しております。
 しかし、私の、先ほど議員が指摘された議論というのは、将来の問題として、地域によって値段の高低があってもいいのではないかという議論が出てくるんじゃないか。現に、電話においても、あるいは鉄道においても、あるいは郵便事業においても大量発送者に対しては割引料金もあるということを考えれば、将来、そういう問題も出てくるのではないかと。
 しかし、今回は、大方の国民は全国均一料金の方が安心するのではないかということで、今回、この法案は全国均一料金が適当ではないかということで提案しているということであります。
矢島委員 将来の問題としては、地帯別の料金も認めるというお考えだと思います。
 そこで、もう一点ですが、同じこの第六回の懇談会ですけれども、全面自由化というのは、民間企業ができるところから参入していく、できるところからやらせればよい、こういう発言をされているので、実は、これは後のクリームスキミングとのかかわり合いがあるんですが、総理は、この発言というのは、民間はもうかるところから参入すればよいということを言われたのかどうか、その辺を確かめたい。
片山国務大臣 総理が言われましたのは、クリームスキミングを認めるということじゃないんです。ユニバーサルサービスは確保しながら、こういうことでございまして、ただ、サービスによってはいろいろありますから、そこで、今回の特定信書便事業なんというのは、これはまさに、特別に高くして、特別のサービスは特別の料金を取れ、こういうことでございまして、将来、状況によっていろいろな変化が出てくれば、それに従って対応することは当然ある、こういうことでございます。
矢島委員 今、私が聞いたのは、懇談会における総理の発言として、その意をと。そうしたら、総務大臣が出てきて総理の考え方を言われました。
 そこで、総理、今の、できるところからやらせればよいというときに、こういう発言も続いているんですよね。ピザも全国配達しなければ認めないと言ったらどうなるかというのが続いているんですね、その発言の中に。
 つまり、この発言の中は、今総務大臣が言われたことがそのままなのかどうかという答えでは、時間がありませんので、イエスかノーかで結構なんですが、いわゆるいいとこ取りというのではないんですね。
小泉内閣総理大臣 クリームスキミングとかいいとこ取りとかという考えが適当かどうかわかりませんが、民間がどのようなサービスを展開していくか、そして利用者のサービスの利便がどう向上していくかということを考えるのが重要ではないか。
 そして、これは、まずは全面参入といいますか、郵政公社と同じように全国展開できる民間業者がすぐ生まれるとはなかなか想像しにくいわけであります。だから、特定の問題については、私は特定の民間業者が参入できるような条件を考えていいのではないかということであります。
 これを果たしてクリームスキミングというのか、いいとこ取りというのか、それはどうとっても構いませんが、私は、まず、民間が参入しやすいような条件を考えることによって、将来、民間というのはいろいろ事業分野を広げていく基盤をつくれるのではないかというふうに考えております。
矢島委員 そこで、総理は、いわゆるクリームスキミングとユニバーサルサービスは両立する、そういうお考えですね。
小泉内閣総理大臣 私は、両立すると思います。
 まず、民間が特定な分野に参入しますね。しかし、郵政公社というのは全国でサービス展開しているわけですから、これは、国民にとってみれば、ある民間業者がこの地域には配達しないと思っても、郵政公社は全地域に配達できるんですから、その民間業者に頼みたくないと思えば、郵政公社に頼めば、全国できるわけです。
 現に、小包配達についても、最初から全国まで配達できなかったわけであります。一部地域に配達を始めて、だんだん広げて、今や全国展開できるようになったということを考えれば、私は、民間が一部地域しか配達できないということがあっても、郵政公社自身は全国配達できるんですから、これは国民に対して何ら不便になるものとは思っておりません。
矢島委員 時間がありませんので急ぎますけれども、いいとこ取り、いわゆるクリームスキミングとユニバーサルサービスというのが両立するかどうか、こういう問題なんですが、これは先ほど、世界の状況についてどうなっているかということの質問と、それから説明がありました。つまり、ドイツも、ユニバーサルサービスを義務づけられているドイツ・ポスト、ここには独占領域というのが認められておりますし、ほかの国々についても、全面参入をやったけれども失敗したというようなところもある。つまり、この二つは両立しないというのが、今世界の標準的な考え方だという点も十分考えていただきたい。
 最後になります。
 そもそも、もうかるところだけ競争していたのでは全体の効率が悪いというので発足してきたのが、今日の近代的郵便制度だと思うんです。そのことは、「みんなの郵便文化史」という中で小林正義さんが書いていらっしゃいます。
 「郵便が創業される直前の通信制度に、飛脚便があった。」という書き出しで、そして、
 明治四年に新しく登場した郵便制度は、それまでの飛脚便にはなかった事業内容とシステムで運営された。
  飛脚便との違いは、「いつでも」「どこでも」「誰にでも」利用できる、「国の事業」として創設されたことが、まず挙げられる。
  当時の飛脚便は、全国どこにでも信書を送ることのできる制度ではなく、利用者の多い、主要な都市間にしか通じないものだった。それ以外の地域にあてた信書には、「別仕立」という取り扱いがあったが、料金が非常に高かった。また、採算が合う地域でしか取り扱わなかった。
まさに我々が今心配しているような事態という状況の中で、新しい郵便制度、近代的郵便制度が出てきたわけです。出発したわけです。
 小泉首相の考え方というのは、日本でいえば、近代郵便制度、これを江戸時代の飛脚便の時代に逆戻りさせるものじゃないかと私は思うわけです。何かありましたら。最後です。
片山国務大臣 段階参入なら、いろいろな参入の仕方があるんですよ。ただ、今回は、この法案は、信書便法案は全面参入ですから、そこで法律の中で、いわゆるユニバーサルサービスを確保していただく、こういうことでございますけれども、特定便の事業を認めているということは、そういう特定の付加価値の高いサービスについては、これは地域を限っても、やり方を限っても結構だ、こういうことでございまして、ぜひその点は御理解を賜りたいと思います。
小泉内閣総理大臣 江戸時代の飛脚便に逆戻りするのではないかというんですが、当時は車もなかったんですよ。Eメールもない、携帯電話もない。それと今回の民間参入法案を比較してもらっちゃ困りますね。やはり、時代の趨勢に合わせて、いろいろな事業展開ができるし、民間の創意工夫というものがあったからこそ、日本の経済は発展してきたのではないかというふうに私は考えております。
矢島委員 事業の効率化という問題と、それからサービス、料金の問題も含めて、それとの比較ということで、自動車の話をしたわけじゃないということを申し上げて、終わります。
平林委員長 次に、重野安正君。
重野委員 社会民主党の重野安正です。今提案されております四つの法案について、それぞれ生活に果たす重要な郵政事業であるという見地に立って質問をしたいと思います。
 まず、郵政事業のいわゆるユニバーサルサービスの概念あるいは考え方について伺います。
 いかなる経営形態であろうとも、郵政三事業について国民は、全国あまねく公平に、なるべく安くサービスを受けられる、これが大前提と考えます。その場合、いわゆるユニバーサルサービスの概念はこの三つの概念だけにとどまっていいものかどうか、この点についてまず最初に総理の見解をお聞きしたい。
小泉内閣総理大臣 先ほど飛脚の話が出ましたけれども、飛脚は全国同じ値段で届かなかった。それを郵便事業として国が整備したから、安い料金で届くようになった。やはり、民間の役割と、民間のできない分野を国としてやっていくという大きな意義があったわけであります。そういうことで、この郵便事業が多くの国民から信頼され、親しく今日まで利用され発展してきた、その意義を私は否定するものではありません。どの地域でも同じ値段で、そして安心して届けられる、このサービスというのは、私は、民間が参入しても当然維持されるものと思っております。
重野委員 もう少し突っ込んでお聞きしますが、ユニバーサルサービスの概念、多様な条件に置かれている個々のサービス受給者の社会的条件、そのこともこのユニバーサルサービスの概念上含まれるべきものと私は考えるわけであります。
 端的な例を挙げますと、三種、四種郵便の扱いでありますが、継続されることになっておりますけれども、盲人郵便物、点字図書などの無料規定は削除されております。
 しかし、こうした郵便物、図書などによって唯一社会的コミュニケーションを図っている方々、そういう方々もまたこのユニバーサルサービスに含まれるべき重要な概念ではないかと思うんですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
片山国務大臣 ユニバーサルサービスというのは、全国あまねく公平に、同じ料金、同じサービス、こういうことですね。これは、憲法の保障する表現の自由と裏腹で、やはり基礎的な通信手段は、しっかり全国どこでも確保される、それからもう一つは、これも憲法に書いてあります、通信の秘密を守る、こういうことですね。
 そこで、今の三種、四種の問題ですね。何度も言いますけれども、無料の規定はありませんが、無料にしてもいいわけですよ。ただ、これは公社の自主的な判断を仰ごう、こういうことでございまして、そこで、公社の経営との議論になるので、私は、前に答弁したことがあると思いますけれども、将来、福祉という観点からは、公的な助成、そういうことを含めて今後は議論していくべきではないか、こう思っております。
 この三種、四種は、ユニバーサルサービスよりももっと突っ込んでいるんですよ、今のあれは料金を取らないんですから。だから、そういうプラスアルファのユニバーサルサービスでございまして、これは福祉の観点からそういう措置をとっているわけでございます、現行法は。だから、その考え方は、今回の公社法にもそのまま継承する、こういうことでございます。ただ、幅は公社の経営判断に任せる、こういう仕組みにいたしたわけであります。
重野委員 大分わかってきましたが、いずれにいたしましても、公社になるわけでありまして、当然、独立採算制、こういうことになってまいります。しかし、公社である以上、私は、その担うべき役割は中央政府の一機関と言ってもいい具体的内容にあるのではないかと。したがって、だからこそ国民生活の安定、向上というものがうたわれるわけであります。
 でありますれば、適切な言葉ではありませんが、社会的にハンディを余儀なくされている方々に対する社会保障的措置、こういうものがこの条文の中に明記されてもいいのではないか、このように思うんですが、見解をお聞かせください。
片山国務大臣 私、重野委員の考え方は理解できるんですが、公社法にそこまで書くかどうかですね。公社はこの基本法で自律的、弾力的な運営というのは、公社経営のフリーハンドの幅が相当ある、こういうことでございまして、そこまで書くのは、先ほども言いましたが、もっと別の観点から、そういうハンディのある方の福祉をどうやるか、そういう方の基本的な通信手段である郵便について公がどういう助成や関与をするか、こういうことと裏腹ではなかろうか、こういうふうに思っております。
重野委員 今の大臣の答弁、言わんとすることは理解できます。問題は、現実にその公社がいよいよスタートして仕事が始まるわけでありますが、その中で、今質問をした趣旨というものが現場において生かされていく、そういうことについてはそのように理解していいですか。
片山国務大臣 料金は、民間の方が参入した場合には届け出なんですよ。公社の場合には認可にしておりますから、認可ということで公的な関与をするという観点からいえば、そういう配慮は当然あるべきだろうと思います。
重野委員 この問題は郵便局の設置についても言えることなんですね。公社法第二十条、郵便局設置を総務省令にゆだねる、こういうことになっています。その際の条件として、「地域住民の利便の確保について配慮しなければならない。」と規定しているにすぎないわけですね。
 地域社会、特に過疎地域においては、郵便局は、都会と違って、より存在感のある、身近な、そして重要な社会的インフラであることは総務省も十分承知しているはずであります。私が住んでおります大分県の集落は、それこそ、うちの集落から先にもう道はないわけでありまして、そういう地域が、特に国土の七〇%を山が占めているという日本の国土的、地理的特徴、こういう点から見ますと、より一層この問題は非常に切迫感があるわけでございます。そういう非常に不便な地域でも、雨の日も風の日も、はがき一枚でも間違いなく確実に配達される、そのことに対する思いというのは、都会の方々以上に重いものがあることを十分総理も認識していただきたい、このように思うんです。
 そういうことを考えるとき、この二十条の内容、郵便局設置の問題を総務省にゆだねるという点は、私は、非常に消極的ではないのかな、もっと明確にこの法律の中に具体的にその趣旨が生かされる、読めばわかる、そういう内容のものを書き込むことが必要ではないか、このように思うんですが、この点についてはいかがでしょう。
片山国務大臣 郵便局は、何度もこれもお答えしましたが、百三十一年の歴史がありまして、郵便局の数とか位置とかというのは、やめるとか変えるとかといったら、これは大変なんですね。そういうことで、条文上はこういうことになっておりますが、現行は規則なんですよ。それは内規的なんですね。
 それを今回は、こういう意味で法律に根拠をはっきり書き、しかも具体的な基準は省令だ、こういうことにいたしたわけでございまして、法律上もう少しはっきり書け、こういう御要請だと思いますけれども、私は、今までのこの長い歴史と評価、実績からいって、これで委員の御心配のような事態は起こらない、我々もそういうふうに努力いたしたい、こういうふうに思っております。
重野委員 それでは、そういうことでひとつ、今後どう具体化していくか、重大な関心を持って見守っていきたいと思います。
 次に、私の地元大分県では、郵便局に働く仲間たちが独創的にふれあい郵便というプログラムを発想し、現在取り組んでおられます。全逓大分地区本部の仲間たちは、このふれあい郵便を自分の仕事を通じて実践をされている。これに対する、特に高齢化率の高い我が県のお年寄りたちの評判は大変なものでありまして、いろいろな意味で頼りにされております。
 一方、公営交通はどんどん路線が廃止をされる、あるいは地方自治体が大変な補助金を出さなければその路線が維持できない、こういう状況があるわけでありまして、結局、そういう場合には、最後は路線を廃止される。
 私は、このユニバーサルサービスを担う郵便事業が、そういうふうに縮小再生産みたいな形で持っていかれたのでは問題である。したがって、そういう社会保障的価値を実際に実行している、そのことを真っ当にやはり評価する制度、システムというものを考えるべきではないか、私はこのように思うんですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
片山国務大臣 公社化にするということは、今の、国そのものがやって、国の事業として大変かみしもを着ているような限定された仕事しかできないよりは、もっと自由に、自律的、弾力的にやってもらう、こういうことでございます。
 今お話しの、ふれあい郵便というのでしょうか、これはよそではひまわりサービスと言ったり何かやっておりますし、去年からワンストップサービスも始まりましたので、そういう本来の三事業以外のことも、コミュニティーの拠点として、情報、安心、交流の拠点といってよく郵便局に書いてありますけれども、そういう仕事をやってもらうことは私は大変いいことではなかろうかと。合併によって市町村は大きくなりますから、やはりコミュニティーのセンター的な機能を郵便局に担っていただくこともそういう意味では大変必要ではなかろうか、こう思っておりまして、そういう活動についての、きちっと評価するシステムについても今後検討いたしたい。今もあると思いますけれども、もっとシステムを必要とするならば検討いたしたい、こういうふうに思っております。
重野委員 もう時間もないようですが、総理にこの点について確認をしておきたいと思うのです。
 きょうもすべての各会派の方々も質問したようでありますけれども、いわゆる郵政事業の民営化という問題、郵政事業の民営化、小泉さんというふうな、そういうイメージはもう定着していますね。
 それで、私、今度質問に立つのでいろいろ、総理がこの間この問題でどういう発言をしておるかというのをずっととってみたんですね。一九九二年郵政相の時代から、一九九六年厚生大臣、そして二〇〇一年総理大臣に就任と、この十年間の小泉総理のこの問題に対する発言、これはもう一貫していわゆる民営化ですね、一貫して民営化です。
 私が言いたいのは、そういう小泉総理の過去があり現在がある。それは、この法案を審議する中でも、いろいろな角度から議論をされた上でこの法案ができ上がって、今、国会に提出をされている。であるならば、いや、これはこれ、しかし民営化という私の考えは変わらないということをおっしゃる、そのことは、私はやはり事の歴史とそして今とを考えたときにおかしいんじゃないかと。そういうあなたの発言がずっとあって、一時期あなたはその担当の大臣をしておって、そういう経過があって、そして今こういう結論になった、それを政府が提出しておる。これはこれ、その先は、まだ私はそれを言いますというような言い方はちょっと聞けないんじゃないかな、こう思うんですが、どのようにお考えでしょうか。
小泉内閣総理大臣 十年以上前から私は郵政民営化論者だったんです。
 郵政大臣のときにも、郵政省職員に向かって、人から言われるんじゃなくて郵政民営化を考えたらどうかという発言まで講堂に集めてしたくらいなんですよ。自民党から総スカンを食いましたからね。それでも、総裁選に立候補した際にも主張を変えなかったんです。そういう経過があるにもかかわらず、総理大臣になったら郵政民営化は考えないと言った方がはるかにおかしいと思いませんか。私は、今回は郵政公社化のための法案なんです、その先については自由に議論してもらいたい、私は郵政民営化論者だと言っているんです。
 しかも、今、民間参入反対論者はたくさんいますけれども、現在でも郵便局は民間の会社を使わないと郵便を配達できないんですよ、アルバイトを雇わないと年賀状を配達できないんですよ。役所、役人だけじゃなきゃ配達できないということ自体、いかにおかしな論理か、それをよく考えてもらいたい。
重野委員 もう終わりますが、それほどおっしゃる総理のもとで今ここに提出されておる法案をどう見るんですか。私は、総理の言ったことはおかしい。
 以上、終わります。
平林委員長 次回は、来る十三日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十三分散会


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